過去ログ - 大石泉「ロジカルな夢と未来と焼肉」 -SS速報VIP

過去ログ - 大石泉「ロジカルな夢と未来と焼肉」

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1:名無しNIPPER[saga]
2016/11/11(金) 18:51:52.87 ID:1VAkGEh4O
「プロデューサーちゃんプロデューサーちゃん」

「どうした、亜子」

「いずみ、どこにいったか知らん？」

「泉？」

「ケータイにかけても出んし、さくらも何も聞いてないらしいし。行方知れずなのよ」

「そうなのか。俺も特に何も聞いていないが……いや、ひとつ、心当たりはあるな」

「ほんと！？　どこ？」

「ちょっと探してくるよ。亜子はこれからレッスンだろう」

「あー、そうやった。頼んだよ、プロデューサーちゃん！」

「ああ」

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2:名無しNIPPER[saga]
2016/11/11(金) 18:53:39.31 ID:1VAkGEh4O
――その日の空は、あいにくの曇り模様だった。
10月も中ごろにさしかかり、秋が深まるにつれて気温が下がってくる時期。天気が悪いと、昼間も肌寒くて過ごしづらい。

「はーっ……さすがにまだ、息は白くならないか」

3:名無しNIPPER[saga]
2016/11/11(金) 18:57:04.99 ID:1VAkGEh4O
「――学校の宿題か？」

唐突に背後から声をかけられる。でも、私は特に驚きはしなかった。
ひとつは、それがとても聞きなれた、安心できる声だったから。

4:名無しNIPPER[saga]
2016/11/11(金) 19:00:04.28 ID:1VAkGEh4O
「って、反省するのは私のほうか。亜子とさくらに謝らないと」

「さくらにもか」

「ええ。亜子が探していたってことは、当然さくらにも声かけてるはずだから。だからあの子にも心配かけちゃってる」

5:名無しNIPPER[saga]
2016/11/11(金) 19:04:39.62 ID:1VAkGEh4O
「それで、宿題の進捗はどんな感じなんだ」

「宿題？」

「だから、将来の夢の作文」

6:名無しNIPPER[saga]
2016/11/11(金) 19:07:32.47 ID:1VAkGEh4O
「ふふ」

「くそ、俺が理系に弱いことを突いてきたな」

「たまには、私があなたをからかってもいいでしょ。それより、私ってそんなに顔に出るタイプかな」

7:名無しNIPPER[saga]
2016/11/11(金) 19:09:12.30 ID:1VAkGEh4O
「前に、聞いたことあるよね。『アイドルは、私の人生を捧げる価値があるものなのか』」

「ああ」

「プロデューサーは、『ある』と答えた。私はその言葉を信じた……ううん、今でも信じてる」

8:名無しNIPPER[saga]
2016/11/11(金) 19:11:24.61 ID:1VAkGEh4O
翌日。

「うーん……」

「泉さん。何か考え事ですか」

9:名無しNIPPER[saga]
2016/11/11(金) 19:12:46.05 ID:1VAkGEh4O
「デートって、デートですか」

「う、うん」

「………私、誘われたことないのに」

10:名無しNIPPER[saga]
2016/11/11(金) 19:14:05.06 ID:1VAkGEh4O
「………ペロ」

「え？」

ふたりで腕を組んで考え事をしている間に、作戦会議のメンバーがひとり増えていることに気づく。

11:名無しNIPPER[saga]
2016/11/11(金) 19:15:57.19 ID:1VAkGEh4O
――そして、迎えた次のオフ。

「まずは言い訳させてほしいんだけど、これはあくまで変装の一環であって、決して私が好きだからこういう猫耳フードを着てきたわけではないといいますか」

12:名無しNIPPER[saga]
2016/11/11(金) 19:17:48.56 ID:1VAkGEh4O
亜子やさくらだって、

『やっぱ逆玉の輿は誰もが憧れる女の夢やね！』

13:名無しNIPPER[saga]
2016/11/11(金) 19:18:52.61 ID:1VAkGEh4O
プロデューサーがあらかじめチケットを買っていた映画は、最近世間で話題の感動スペクタクルものだった。
適当にポップコーンとジュースを買って、劇場へ。席についてほどなく、上映開始の時刻になった。

さて、どんなものかしら……なんて品定めする気持ちでいたのも開始10分ほど。
さすがに各地で絶賛されているだけはあり、私はどんどん物語に引き込まれていき。

14:名無しNIPPER[saga]
2016/11/11(金) 19:20:52.51 ID:1VAkGEh4O
「評判通り、いい作品だったね」

「だな」

映画館の近くにあった喫茶店に入り、お互いの感想を語り合う。

15:名無しNIPPER[saga]
2016/11/11(金) 19:23:11.65 ID:1VAkGEh4O
「お、やきいもの屋台が出てるぞ」

「本当ね。せっかくだし、買っていく？」

「そうだな。ゲーセンで遊んで、いい具合にまたお腹が減ってるし」

16:名無しNIPPER[saga]
2016/11/11(金) 19:24:25.07 ID:1VAkGEh4O
「ほら、貸して」

左手にあったやきいもを奪い取り、強く息を吹きかける。

「ふーっ、ふーっ、ふーっ。……はい、このくらいでいいんじゃない？」

17:名無しNIPPER[saga]
2016/11/11(金) 19:25:26.82 ID:1VAkGEh4O
「そっか。そういうことなんだ」

さっき、おぼろげだけど出かかっていた答え。それが今、はっきり形になった気がする。

「今日のデート、ずっとプロデューサーとふたりきりだった。だから、私」

18:名無しNIPPER[saga]
2016/11/11(金) 19:26:22.34 ID:1VAkGEh4O
「難しく、考えすぎていたのかも」

一曲歌い終えて、私はすっきりした気分になっていた。
デートを通して、凝り固まっていた心がほどけて。思いのままに歌ったことで、私の中で何かがかちりとハマった気がした。

19:名無しNIPPER[saga]
2016/11/11(金) 19:27:35.92 ID:1VAkGEh4O

※

20:名無しNIPPER[saga]
2016/11/11(金) 19:28:36.14 ID:1VAkGEh4O

※

21:名無しNIPPER[saga]
2016/11/11(金) 19:29:23.79 ID:1VAkGEh4O
「ふふっ」

やった、仕返し成功だ。私が負けず嫌いなこと、改めてプロデューサーは感じたと思う。

「………」

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