9: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/11/30(水) 18:50:31.30 ID:7FZgc2Oz0
フレデリカと最後に会ってから一年が経った。
それでもフレデリカの顔は簡単に見ることができる。テレビ、雑誌、ネット上に。ちょっと調べれば簡単に探すことができるほど、彼女は知名度を上げて、そしていまもなお活躍している。
だけど、僕はなにも変わらなくて。むしろフレデリカのいなくなった日常はいっそう物寂しい気がして、誤魔化すように色々と挑戦してみたけれど、寂しさを誤魔化す雰囲気がより寂しい気がして、結局すべてやめてしまった。
フレデリカの活躍を目にするたび、ぼくはなにかをしないといけない気分になった。あいつが頑張ってるのにと、そう思ってもなにをして良いのかわからない、中途半端な日々が続いた。
元に戻っただけなのだ。元々ぼくにはなにもなかった。考え過ぎている。それなのに、気分は落ち着かなくて、雪が降る朝、寒さに目を覚ましたぼくはあの日と同じ公園に出かけた。
まるで一年前を再現したような光景が、展望エリアから覗けた。白くてきらきらした街並み。だけど、隣には誰もいなくて、ぼくはひとり街を見下ろす。
いつも通りの光景が寂しく見えるなんて損だよな。そう呟いて、タタンタタンとステップを踏んでみる。フレデリカは軽々しくやっていたけれど、ぼくのはとてもステップなんて言えるものではなくて、それでも悔しいからくるりと回ってみると、足を滑らせて尻餅をついた。
起き上がるのもしんどくて、そのまま寝転ぶ。白い息が消えていくのを眺めながら、あの日を思い出した。
きらきらと輝く笑顔。白く白く綺麗な心。
フレデリカにはあのまま、汚れないで白くいて欲しいと、密かに願う。でも、もう会いたくないと思った。余計に寂しくなるだけだから、会いたくない。
たぶん思うまでもなく、会うことはないだろう。
雲の切れ間から射し込む光は、ぼくを照らしてはくれなくて悲しくなった。
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