過去ログ - 輝子「三つ編みのこと」
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12: ◆S6NKsUHavA[saga]
2016/12/15(木) 22:08:13.60 ID:TASUOcfu0
「フ……フヒ……はぁぁぁぁ……」
「お、おい、お前! 大丈夫か!」

 荒い息を吐きながら、私はぼんやりとした頭で声のする方を向いた。目の前には、心配そうな表情をするあの人の顔。そのまま周りを見渡したけど、男の人はもういなくなってて、私はすっかり安心した。
 どうやら、上手くいったみたいだね。そう言って気が抜けたみたいに笑うと、あの人はちょっと怒ったような顔で私に言ったんだ。

「バカ! なんて無茶すんだよお前は!」
「ふひひ……ご、ごめんよ……どうしても、じっとしてられなくて……」
「こんなに汗かいて震えて……お前も怖かっただろうになんで……」

 今度は、一転して心配そうな顔で。よく見たら、あの人の手も、ちょっとだけ震えてた。きっと、あの人も怖かったんだ。一人であんな男の人に立ち向かって。だから、私はやっぱり飛び出して良かったって思った。
 だって。

「だって……私のキノコトーク、いっぱい聞いてくれたから……」

 もう一回、何とか笑顔で言ったら、あの人は目を丸くして、それからやっぱり怒ったみたいな顔で。

「……やっぱりバカだよ、お前」

 そう言って、ちょっと乱暴に頭を撫でてくれた。私はそういうの慣れてないから、くすぐったくて、ちょっと恥ずかしくて、撫でられてる間ずっとニヤニヤとキモい笑顔を浮かべてた。
 そうやってしばらくして、あの人が気付いてくれたんだ。

「お前、その髪……もしかして、アタシの真似、か?」
「……あ、そうだ。これ、やり方を聞こうと思って……」

 何度やっても上手くいかなかった、私の編み込んだ髪。さっきのごたごたでなんだかグシャグシャになって、リボンも取れて何処かへ行っちゃってた。それを見て、あの人は笑った。

「形だけでも、ってか。いいね、それも向上心だし。ちょっと貸してみ」

 あの人は前みたいに手鏡を出すと、それを私に持たせて後ろに回った。鏡の角度を私に指示しながら、グシャグシャの編み込みをほどいて櫛で綺麗に伸ばしてくれた。それから、もう一度髪を束にしてまとめて、自分でやったときよりも低いところで結び始めた。

「基本は両端の束を交互にクロスさせる三つ編みだな。これが出来りゃ、後はアレンジで遊べる。紐か何かで試したか?」
「う、ううん……本を見て、鏡を見ながら何とか……」
「なら家で試しなよ。練習は基本。OK?」
「わ、分かった」




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