過去ログ - 鷺沢文香は、茜色に染まる -SS速報VIP

過去ログ - 鷺沢文香は、茜色に染まる

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1: ◆7uGVQpzDpA[saga]
2017/04/23(日) 12:09:47.73 ID:WnTIuVfMo
零

一目見たとき、私の中で決まった。

この人は、私にとって必要な人だ。

私はバスタブに浸かりながら、

これからどうしていけばいいかを、考えた。

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2: ◆7uGVQpzDpA[saga]
2017/04/23(日) 12:11:29.39 ID:WnTIuVfMo
１

――どうしようもない、恋をしている。

3: ◆7uGVQpzDpA[saga]
2017/04/23(日) 12:16:52.82 ID:WnTIuVfMo
２

日野茜「おはよーございます！　いやー今日も良い天気ですね！」

4: ◆7uGVQpzDpA[saga]
2017/04/23(日) 12:19:03.45 ID:WnTIuVfMo
P「ところで、茜はどうしてこんな早くに事務所に来たんだ？」

茜「ゼッケンズのライブの打ち合わせですよ！　でも、文香ちゃんはゼッケンズじゃないのに、あれ、……何かがおかしいですよ、プロデューサー！」

P「茜、１時間早い」

5: ◆7uGVQpzDpA[saga]
2017/04/23(日) 12:22:12.07 ID:WnTIuVfMo
P「じゃ、打ち合わせの続きをするぞ、文香」

文香「……」

P「おーい、文香？」

6: ◆7uGVQpzDpA[saga]
2017/04/23(日) 12:24:02.22 ID:WnTIuVfMo
プロデューサーさんは、ふうと一息ついてから、私のことを見据える。

P「文香は本が好きで、……アイドルも好きか？」

7: ◆7uGVQpzDpA[saga]
2017/04/23(日) 12:25:43.02 ID:WnTIuVfMo
ずず、とプロデューサーさんはコーヒーをすすってから、「安心した」と私の目を見て、言った。

文香「何が、ですか？」

8: ◆7uGVQpzDpA[saga]
2017/04/23(日) 12:28:30.64 ID:WnTIuVfMo
文香「プロデューサーさんは……どうしてプロデューサーに？」

これ以上、問いかけられると真理に至ってしまいそうな気がして、私は先ほど飲み込んだ質問を投げかける。

9: ◆7uGVQpzDpA[saga]
2017/04/23(日) 12:31:18.57 ID:WnTIuVfMo
文香「……好きな人といられるのは、この上なく幸せなことなのでしょうね」

P「へ？　あ、いや！　そりゃ、見惚れるとは言ったけど！　好きとか、そういう恋愛感情はないからな！　親心的なあれだぞ！」

10: ◆7uGVQpzDpA[saga]
2017/04/23(日) 12:32:56.56 ID:WnTIuVfMo
P「それは？」

文香「それは、その通りだと思います」

P「文香もそう思うか……。まっ、恋愛するなら俺にもバレないように上手くやってくれ」

11: ◆7uGVQpzDpA[saga]
2017/04/23(日) 12:34:24.98 ID:WnTIuVfMo
３

その日は結局、打ち合わせの後にレッスンが入っていたので、茜さんとお話をすることはなかった。

――だって、人生は一度きりしかないんだぞ。

12: ◆7uGVQpzDpA[saga]
2017/04/23(日) 12:36:48.34 ID:WnTIuVfMo
４

茜さんと出会った日のことは、今でも鮮明に覚えている。

それは私がプロデューサーさんにスカウトされて、初めて事務所を訪れた日のことだった。

13: ◆7uGVQpzDpA[saga]
2017/04/23(日) 12:38:54.45 ID:WnTIuVfMo
茜さんに圧倒されていた私を助けてくれたのは、プロデューサーさんだった。

P「遅くなって済まない、ふみ……」

14: ◆7uGVQpzDpA[saga]
2017/04/23(日) 12:40:01.02 ID:WnTIuVfMo
P「とは言ったものの、まだ文香さんから正式に契約書を貰ってないから……」

プロデューサーさんと目が合った。

15: ◆7uGVQpzDpA[saga]
2017/04/23(日) 12:41:40.47 ID:WnTIuVfMo
５

私は茜さんのダンスレッスンを拝見した。

率直に言って、茜さんのダンスは上手だった。

16: ◆7uGVQpzDpA[saga]
2017/04/23(日) 12:43:28.73 ID:WnTIuVfMo
P「茜は……」

隣で一緒に見ていたプロデューサーさんは、口を開いた。

17: ◆7uGVQpzDpA[saga]
2017/04/23(日) 12:45:32.05 ID:WnTIuVfMo
プロデューサーさんが、ためらいがちに口を開く。

P「……文香さんには、ちょっと厳しいものを見せてしまったかも知れない」

18: ◆7uGVQpzDpA[saga]
2017/04/23(日) 12:49:08.30 ID:WnTIuVfMo
６

正式に事務所と契約を交わし、大学に通いながら「アイドル」を目指してレッスンする日々が始まった。

不思議なことに、レッスンは茜さんと一緒になることが多かった。茜さんが私に話しかけてくれるおかげで、他の方たちともすんなり交流することができた。人見知りである私を気遣った、プロデューサーさんの采配だったのかも知れない。

19: ◆7uGVQpzDpA[saga]
2017/04/23(日) 12:52:13.19 ID:WnTIuVfMo
茜「文香ちゃんは、本が好きなんですか？　初めて会った時も本を読んでいたと記憶しています！」

文香「そうですね、１日に１冊読む程度ですが」

茜「１日１冊！　１日で私の１年を超えていますよ！　どういった本を読んでいるんですか！？」

20: ◆7uGVQpzDpA[saga]
2017/04/23(日) 12:53:55.49 ID:WnTIuVfMo
茜「文香ちゃん、どうしました？　もしかして、本の貸し借りはご法度でしたか！？」

文香「いえ、その。茜さんにとって面白い本について考えているのですが……」

茜「……？？？　私は文香ちゃんが面白い本を読みたいんですが！」

21: ◆7uGVQpzDpA[saga]
2017/04/23(日) 12:57:14.58 ID:WnTIuVfMo
文香「……私の、とっておきの１冊があります。読んでいただけますか？」

茜「とっておき！　読みます！　読ませていただきます！」

文香「少々、難解な部分があるかも知れません。その時は、私から注釈や解釈をお話しさせて頂いてもよろしいですか？」

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