過去ログ - 三船美優「サイレントマジョリティ」佐藤心「ノイジーマイノリティ」
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◆i/Ay6sgovU
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2017/05/12(金) 18:04:20.18 ID:VhHRxgJT0
「ふぅ……」
1人だけのレッスンルームに、息を吐く音。念のために説明させてもらうが、深呼吸だ。溜め息ではない。
"レッスンが終わった後も自主練習をしている"と表現すれば聞こえはいいが、その実、そこまで素敵なものではない。例えるなら、テストで赤点を取ってしまい補修をしているとでも形容しようか。
……いや、流石にその表現も極端か。
「次回はこのステップの復習から始めますね」
というトレーナーさんの言葉を受け、不安だったから念のため確かめていた。その程度だ。
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◆i/Ay6sgovU
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2017/05/12(金) 18:04:48.85 ID:VhHRxgJT0
ステップについては大丈夫だろう。そもそも、まだアイドルになってから何か月も経っていない。トレーナーさんだって、見るからに動きが鈍い自分にそこまで多大な期待を寄せてはいないだろう。
息を整えようと壁に寄りかかり腰を下ろす。
なるほど、OL時代には思いもしなかったのだが、スポーツドリンクというものは運動後に飲むと美味しい。
以下略
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◆i/Ay6sgovU
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2017/05/12(金) 18:05:26.30 ID:VhHRxgJT0
高揚感はあった。今までの、敷かれていたレールの上を歩くだけの、相手が望むであろう選択肢を選び続けていただけの生き方にNOを突き付けたのだから。
しかし、こうして、ふと我に返る時がある。
果たしてこの努力は実るのだろうか。この努力に意味はあるのか。
答えなんて出るはずがない。結果がわかるのなんて、まだまだ先のことなのだから。
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◆i/Ay6sgovU
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2017/05/12(金) 18:05:53.87 ID:VhHRxgJT0
〜〜〜〜〜
この日はオーディションがあった。
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◆i/Ay6sgovU
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2017/05/12(金) 18:06:30.88 ID:VhHRxgJT0
「8番、三船美優です」
落ち着いて。落ち着いて。
自分に言い聞かせ、セリフを読み上げる。
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◆i/Ay6sgovU
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2017/05/12(金) 18:07:28.99 ID:VhHRxgJT0
もう少し、自分より後に演技をする人の並びを横目で見ていると。
(……え?)
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◆i/Ay6sgovU
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2017/05/12(金) 18:08:31.24 ID:VhHRxgJT0
もしかして、自分は受けに来るオーディションを間違えてしまったのか?
そう思ってしまうほどに、前述の女性は自信満々に自己紹介を終わらせ、セリフの読み上げに入った。
「や〜ん♪ 悩みがあるならぁ、このはぁとに相談してもいいんだぞ☆」
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◆i/Ay6sgovU
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2017/05/12(金) 18:09:30.45 ID:VhHRxgJT0
「では、以上でオーディションを終了とします。結果は事務所を通じて後日ーー」
いつの間にか、最後の参加者の演技をもって、オーディションは終わっていた。
それでも、他の参加者が続々と部屋を後にするタイミングになっても、美優は心を見つめていた。
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◆i/Ay6sgovU
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2017/05/12(金) 18:10:30.81 ID:VhHRxgJT0
言ってから気が付く。これは失礼だ。余りにも。
単純に、疑問を言っただけだった。
普段の美優なら絶対に言わないだろう。普段の、相手の顔色を見て、言葉を選び、慎重に話を進めていた美優だったら。
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◆i/Ay6sgovU
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2017/05/12(金) 18:11:23.88 ID:VhHRxgJT0
呆然と会場を後にし、自宅に帰っても、美優の頭の中には、あの異質な存在が支配していた。
彼女は一体なんだったのだろうか。
もしかして、募集要項には隠れたメッセージが書いてあって、あの恰好が正解なのでは?
まさか、本当に宇宙から……?
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◆i/Ay6sgovU
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2017/05/12(金) 18:12:11.63 ID:VhHRxgJT0
〜〜〜〜〜
さて、レッスンの日々に戻り、心のことも頭から抜け落ちようかという時、美優に吉報が届いた。
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◆i/Ay6sgovU
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2017/05/12(金) 18:12:40.95 ID:VhHRxgJT0
あっという間に撮影の日はやってきた。
役柄上仕方がないことではあるが、衣装はOL風のもの。袖を通す際に少し、嫌な気分が胸をよぎった。
それに加えて、初めての撮影現場。見るからにこの世界で長そうな方から、歳は下でも自分より落ち着いた人まで。
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13
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◆i/Ay6sgovU
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2017/05/12(金) 18:13:07.45 ID:VhHRxgJT0
ドラマ撮影の現場というのは、とにかく目まぐるしい。邪魔にならないようにと端に立ち、全体を眺めてはいるものの、何も頭に入って来てくれない。
そうこうしている間に美優の出番がやってきてしまった。
思えば、今までの人生でここまで他人から注目を浴びることがあっただろうか。
何かを代表して前に立ったことなど一度もない。見られないように、目立たないように生きてきたのだから当然だ。
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14
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◆i/Ay6sgovU
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2017/05/12(金) 18:14:02.19 ID:VhHRxgJT0
その場にいた全ての人間の視線が、彼女に注がれる。
当の本人は涼しい顔だが。
「〜♪ あ! 続けちゃって〜?」
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◆i/Ay6sgovU
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2017/05/12(金) 18:14:38.73 ID:VhHRxgJT0
(あっ……と、とにかく……)
「す、すみません」
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◆i/Ay6sgovU
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2017/05/12(金) 18:15:10.66 ID:VhHRxgJT0
「……あれ?」
"問題なく"?
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◆i/Ay6sgovU
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2017/05/12(金) 18:15:44.12 ID:VhHRxgJT0
「あれあれ? もしかして美優ちゃん、"私のためにわざわざ……"なんて思っちゃった〜? そういうの、嫌いじゃないぜ☆」
「い、いえ、そ、そういうわけでは……なくて……」
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◆i/Ay6sgovU
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2017/05/12(金) 18:16:14.70 ID:VhHRxgJT0
「でもでも〜、期待してたおこぼれはないのかな☆ 帰ろっと☆ んじゃね♪ ……あ、美優ちゃん、オーディション通過おめでと♪」
またもや、こちらが唖然としているのをよそに、心は目の前からいなくなっていた。
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◆i/Ay6sgovU
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2017/05/12(金) 18:17:23.59 ID:VhHRxgJT0
〜〜〜〜〜
いくらか時間が経ったある日、事務所のPCを借りて、調べてみることにした。
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20
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◆i/Ay6sgovU
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2017/05/12(金) 18:18:04.01 ID:VhHRxgJT0
「モデル部門への異動……ですか?」
なんでも、この事務所は近々、モデル部門の強化を図るつもりらしい。
アイドルという業界全体が近ごろ不振気味で、タレント部門やモデル部門の方が使いやすいという業界の流れもあるようだ。
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21
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◆i/Ay6sgovU
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2017/05/12(金) 18:18:36.26 ID:VhHRxgJT0
「お? 美優ちゃん、悩み事かい☆ 悩みがあるならぁ、このはぁとに相談してもいいんだぞ☆」
「……え?」
以下略
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