過去ログ - LiPPS「MEGALOUNIT」
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1:名無しNIPPER[saga]
2017/12/16(土) 09:42:59.85 ID:sXivYPE/0
雷は好き?
あるいは、他のもっと、怖いもの。
化け物とか、怪物とか――あるいは天才とか。
自分の理解が及ばないものに、しばしば人はレッテルという秩序を与える。
潜在的な恐怖から、目をそらすために。
呼ばれた方は、どう思っているだろう?
深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いているという。
じゃあ、怪物なるものは普段、どんな事を考えているのか?
そんな怪物達を観察した記録の一端。
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2:名無しNIPPER[saga]
2017/12/16(土) 09:46:27.00 ID:sXivYPE/0
【1】
(◇)
京都から東京までは、のぞみで大体2時間半。
3:名無しNIPPER[saga]
2017/12/16(土) 09:48:58.83 ID:sXivYPE/0
早い話、実家から追い出されたんだよね、あたし。
ヨソの人は知らんでしょうけど、京都って結構メンドーな所でして。
4:名無しNIPPER[saga]
2017/12/16(土) 09:51:10.51 ID:sXivYPE/0
伝統ある和菓子屋の娘だと思われるのがイヤで、ずっとだらしなく生きてきた。
京都人に目つけられるの、何かと面倒でさ。
そんで高校卒業して進学も就職もせんとダラーってしてたら、この体たらく。
5:名無しNIPPER[saga]
2017/12/16(土) 09:53:06.78 ID:sXivYPE/0
振り返ると、地面にはボロボロに禿げたケータイ――えらい年季の入ったガラケーやな。
そして――。
たぶん落とし主であろう、気づく様子も無くプラプラと歩いていく金髪のお姉さん。
6:名無しNIPPER[saga]
2017/12/16(土) 09:54:43.32 ID:sXivYPE/0
「ん、こんなもんか」
初めての一人暮らしにしちゃ、結構リッパな部屋になったかなー。
備え付けの家具も、思ってたよりずっと上等。
7:名無しNIPPER[saga]
2017/12/16(土) 09:57:48.86 ID:sXivYPE/0
「あっち着いたら隣の人への挨拶くらいちゃんとおし。アンタどうせ色んな人のお世話になるやろ」
そう言われて母さんからもらったお団子は、もう残り少なくなっていた。
そもそも、食べかけのものを「はいどーぞ」ってのも失礼な話だけどさ。
8:名無しNIPPER[saga]
2017/12/16(土) 09:59:39.10 ID:sXivYPE/0
品揃えはあっちとそんな変わらないけど、そこは東京さすが。
歩いて5分と経たずエンカウントする程度には、コンビニの数が多いよね。
「んっふっふ〜♪」
9:名無しNIPPER[saga]
2017/12/16(土) 10:02:27.73 ID:sXivYPE/0
この辺の高校生かな?
ウェーブのかかった長髪で、だらしなく学校の制服と思わしき上着を着崩した女の子。
後ろのあたしに気づく様子も無く、彼女はブラブラの袖で眠そうな目をこすりながら、
自分の部屋に入っていった。
10:名無しNIPPER[saga]
2017/12/16(土) 10:04:12.26 ID:sXivYPE/0
さて、無事に新生活をスタートさせたシューコちゃんでありました、が――。
課せられた、ミッションがあったんだよね。みっしょん。
11:名無しNIPPER[saga]
2017/12/16(土) 10:08:33.98 ID:sXivYPE/0
「あ、あの〜――アイドルって、どうかな?」
三日目くらいかな。
東京名物“東京ばな奈”を片手に、将来について考えるフリをしながら駅前を歩いてた時。
12:名無しNIPPER[saga]
2017/12/16(土) 10:11:40.76 ID:sXivYPE/0
どうせやること無くてヒマだし、誘われるがまま近くの喫茶店へ。
奢りでいいって言うから、本当に遠慮無く注文しちゃったけど大丈夫かな?
「東京には、一人で来たのかい?」
13:名無しNIPPER[saga]
2017/12/16(土) 10:13:09.36 ID:sXivYPE/0
有名な芸能事務所らしいし、こういう人のインスピレーションは確かなのかも知れない。
でも、あまりに適当すぎない? あたしが言えた話じゃないけどさ。
ひょっとしたら、適当な業界人を騙るナンパヤローかも。
14:名無しNIPPER[saga]
2017/12/16(土) 10:16:12.54 ID:sXivYPE/0
席に座り直したあたしを相手に、彼は話を続ける。
「もちろん、いつまでも無償という訳ではないよ。
三ヶ月程度、体験コースというものがあって、そこに候補生として入会すればの話だ」
15:名無しNIPPER[saga]
2017/12/16(土) 10:19:18.43 ID:sXivYPE/0
「――は?」
男の人の目が点になる。
別にあたしは守銭奴であるつもりも、食い意地張ってるつもりも無いんよ?
16:名無しNIPPER[saga]
2017/12/16(土) 10:21:17.81 ID:sXivYPE/0
で、書類を揃えようと週末日帰りで実家に帰って、父さんとも相談して――。
「あ、アイドルってお前――」
「ふふ〜ん。大手の事務所にスカウトされたんだよー、あたし♪」
「ユーチューバーとかじゃないんよな?」
17:名無しNIPPER[saga]
2017/12/16(土) 10:27:54.01 ID:sXivYPE/0
契約当日、事務所の前であたしを待っていたのは、勧誘してきた人――プロデューサーさんって人と、隣にはもう一人。
それはもう、めっちゃくちゃキレーな女の子が。
18:名無しNIPPER[saga]
2017/12/16(土) 10:29:25.80 ID:sXivYPE/0
「はい、塩見さん。今のところもう一度やってみましょう」
えぇ、今のあかんかった!?
あたしだけ前に立たされて繰り返し発声練習。
19:名無しNIPPER[saga]
2017/12/16(土) 10:31:38.49 ID:sXivYPE/0
でも、あの人の事を悪く言ってばかりはできない。
何せ346プロは、期間限定とはいえ、東京でのあたしの生活をほぼ全面的にサポートしてくれている。
このまま三ヶ月間、あたしにご飯を食べさせるだけというのは、事務所にとっては詐欺みたいなもんだ。
20:名無しNIPPER[saga]
2017/12/16(土) 10:33:12.72 ID:sXivYPE/0
「一言で言えば、トップアイドルになるためね」
速水奏ちゃんは、あたしの質問にサラッとそう答えた。
へぇー、そうなんだ。
21:名無しNIPPER[saga]
2017/12/16(土) 10:34:29.90 ID:sXivYPE/0
「あぁ〜――ってキミ、おざなりな回答してるんやん!」
奏ちゃんはまた手を口元に添えた。
「ごめんなさい。悪気は無かったのだけれど」
「悪気は無いで済まされたら警察いらんよ?」
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