4:名無しNIPPER
2016/12/23(金) 17:10:10.32 ID:lsZj+NMQ0
「勘違い、じゃないとしたら?」
「っ、三船、さん?」
「今日はクリスマスイブ。特別な日です。ですが、私たちのとってはそれだけじゃない……ですよね」
「そ、それは、ええ。僕らが出会った日ですから」
三船さんとはまだ出会って数年、とはいえそれなり以上に密度の濃い日々を過ごしてきたと思う。当然、鈍感ではないつもりだったし、ある程度の好意には気づいている。……、向こうも同じなのだろうか。
だが。
まだ、酔っていたからでごまかせる。でも、それ以上は。
それ以上言われては、ごまかせない。
しかし、それ以上に、三船さんに誘惑されているという疑いようがない事実にいやでも気分が高翌揚してしまう。
「Pさんに出会えて、本当に感謝しています」
「ありがとう、ございます……」
「……、あの、全部言わないと……だめ、ですか?」
「いや、でも、ぼくらは、アイドルと、プロデューサーで」
ほんの少しだけ残った職業意識を口にする。
だが本能と、この状況が理性を溶かしていく。
ああ、どうにかしなくては。
このまま部屋を出ていけばいい。ただそれだけのはずなのに、それすら出来なくなっている。ここにいる口実を探し続けている俺の姿は心底、滑稽に映っているだろう。
三船さんに握られている指が震えているのがわかる。きっと、相当の勇気を振り絞っているのだ。感情を表に出すのが未だに苦手な三船さんが、酒の力を借りているとはいえ、ここまで言ってくれている。
これまでの積み重ねを台無しにする可能性を孕みながらも、三船さんは俺との関係を進めようとしていて。
それを、どうして無下に出来よう?
「Pさんが、私とは、……アイドル達とは、仕事との関係以上には、できるだけしたくないと思っている。……であろうことは、分かります。でも、せめて今日だけは」
三船さんの顔が見えなくなる。違う、近づいたのだ。と、気づいたと同時に、唇にやわらかい感触。
「…………、Pさん。……せめて、今日だけでも、私に夢を、」
「三船、さん」
「夢を、見せてくれませんか……?」
三船さんは羞恥と恐怖で泣き出しそうな声で言う。
酒のせい、誘惑のせい、今日だけ。
あらゆる大義名分が用意され、いや用意させてしまったのだ。
ここまでさせて、誤魔化すわけにもいかない。できるわけがない。
「三船さん、ぼくは……」
「……………………、」
「いや、美優、さん。……俺は、貴女の事が、好きです」
「Pさん……はい、私も……、貴方の事が……」
酒のせいにはもうできないなと思いながら、ベッドに足をかけて、左腕を背中に回す。一瞬びくりとしたが、それだけ、なにも抵抗はなかった。
「美優さん……」
顔を近づけると美優さんは目を閉じた。頭に手を添え、そのままキスをする。
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