13: ◆JfOiQcbfj2[saga]
2017/05/07(日) 01:13:14.78 ID:upUN87ha0
「お、おいしいっ……」
殆ど無意識に口から漏れていた。響子はそれを聞いてパッと表情を明るくした。
「ほ、ほんとですか!?」
「いや、美味しいっすよこれ!市販のやつなんかより全然!」
実際響子の淹れたミルクティーは絶品だった。沙紀もそこまで味がわかるほど紅茶に通じているわけではないが、茶葉がいいのかミルクがよかったのか、しっかりとした甘味はありながらその甘さはあっさりとしたもので、紅茶本来の味もしっかりと残っている。
一言でいえばそれは『上品』なものだと沙紀は感じていた。そして沙紀はそれを思うままに口にし絶賛していた。
そして作った側として、その感想に響子は嬉しくないわけがない。自身も一口飲んでその味に満足そうに頷いていた。
「いや、これなら毎日飲んでもいいっす。ほんとに」
一口飲むごとに沙紀に褒められるものだから、響子も照れくさくありながら嬉しいという気持ちがそれ以上に身体を満たしていた。
そのせいなのか、感情がいつもより昂っていた彼女はついポロリと言葉を漏らした。
「私も、好きな人と一緒に飲んでいるせいかいつもより美味しく感じます!」
普段の口調ではあったが、その言葉を聞いて沙紀はピタッ、と固まった。
そして聞き間違いしたのかと思ったのか、ゆっくりと響子の方に顔を向ける。
「あ、あれ?今、私……?」
そして、その視線の先の彼女は沙紀よりも混乱していた。発言の本人でありながら。
「え、あ、えー……」
どうやら聞き間違いではなかったらしいことを確認して、沙紀は恥ずかしそうに髪を掻いた。言葉にならない誤魔化すような声が出たのはまだ沙紀自身の混乱が解けきっていない証拠だった。
それに対する響子は熱があるんじゃないかと言うぐらい顔を赤くしていた。そのまま恥ずかしそうに顔を俯かせてしまい、そこからぴったり動かなくなってしまう。
和気藹々とした雰囲気はどこへやら。一瞬でその場が気まずい沈黙に支配された。沙紀は幾分か落ち着きを取り戻したのかとりあえずこのままではまずいと思い、声をかけることにした。
「あ、えっと、響子、ちゃん?」
「ひゃ、ひゃいっ!?」
響子は素っ頓狂な返事と共に顔をあげる。まだ赤い表情は和らいでいない。しかし、声をかけた以上沈黙するわけにもいかず、沙紀はとりあえず場を濁すことを選んだ。
「さっきのは、その、何か言い間違えちゃった感じっすか?」
あ、そ、そうなんですよ。ちょっと間違えちゃって!
そうだったんすかー。もう響子ちゃんにしては珍しい間違いっすねー
なんて、その後の会話を期待していた沙紀だったが、響子から言葉は返ってこなかった。
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