15: ◆JfOiQcbfj2[saga]
2017/05/07(日) 01:14:37.46 ID:upUN87ha0
はっきりと、しかし震えながら響子はそう告げて、それきり黙り伏せこんでしまった。
対する沙紀は――
「…………」
完全に固まっていた。瞬きもしない。膝に置かれた響子の手の感触だけには無駄に敏感になっていたが。
「…………」
時計の針の音と響子の少し乱れた息遣いだけが部屋に響く。このまま日が暮れてもおかしくないほど沈黙は終わらない。
「…………」
先程飲んだミルクティーの味はどこへやら、今は色々な感情のせいですっかり乾いてしまった喉を潤す方法を閃めくことはできなかった。
割と言いたいことははっきりと言う性格だと沙紀は自身のことを評価していた。もちろん空気は読む前提である。
しかし、今はその言いたいことが何も出てこなかった。
俯いている彼女に視線を落としたと思えば、また気まずそうに天井や部屋を見渡したりと、視線だけは忙しない。
そんな時だった。ぽつりと弱い声が下から返ってきた。
「あの、ごめんなさい、ごめんなさい……」
泣きそうな声だった。と思ったら小さな嗚咽がすぐに聞こえ始めた。
「わ、わっ」
当然、慌てる。しかしかける言葉は見つからず結局何か考えつく前に響子の背中に手をまわして抱き寄せることしかできなかった。
「うっ、す、すいま、せ……」
「ああああああ、謝らないで!大丈夫、大丈夫っすから!」
何が大丈夫なのか、言っていることが支離滅裂なのは沙紀自身わかってはいるものの、いかんせん浮かばないからしょうがなかった。
「ごめ、なさい……急にこんな、困りますよね……」
嗚咽混じりに話す響子の背中を撫でながら沙紀はどう答えればいいのか、固まって全く働かない頭を無理やり稼働させていた。
「いや、その、嬉しいっすけど」
「いいんです……沙紀さんは優しいですから断らないんですよね……でも、嫌なら嫌って言ってください」
「嫌って、そんなわけはないんすけど。でも、えっと響子ちゃんの言う好きって……あー、そういう好きってことっすか?」
沙紀の腕の中で響子は弱々しく頷く。
「最初は、単純に関心してたんです。私に持っていないものをたくさん持ってて、今まで付き合った人の中でもあんまりいないタイプだったりで、一緒にいて楽しいな、って思ってて」
「…………」
「でも、それからずっとアイドル活動やそれ以外で過ごしていくうちにいつの間にか……好き、になってて」
「……買い被りすぎっすよ」
「そ、そんなことないです!」
「おわっ」
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