17: ◆JfOiQcbfj2[saga]
2017/05/07(日) 01:16:55.65 ID:upUN87ha0
その言葉が耳から入り身体に浸透し、そして脳が意味を理解した瞬間、響子は身体の中心から沸々と興奮の熱が沸き起こってくる感覚に襲われた。
「……ほんと、に?」
その溢れだしそうな多幸感を何とか抑えながら、響子は恐る恐るそう聞くと、沙紀はゆっくりと頷く。
「アタシも最初は響子ちゃんと同じっす」
「……私と?」
「今まで会ったことのないタイプの仲の良い友人が出来たって、その時は素直に嬉しかったっす」
沙紀は響子と目を合わせながら言葉を続ける。
「元々アタシはソロ活動中心の方針だったんすよ。ストリート系というか少し洒落た若者をターゲット対象にして売り出していこうっていうか、確かそんな内容だったっす。たぶん」
そこは曖昧なんだ……と響子は思ったが口にはしなかった。
「だから最初はしばらく単独で活動してたけど、ある時ユニットの話があがったんすよ」
ハッと気づいたように響子は口を開いた。
「それって、アーティスターのことですか?」
響子がそう言うと沙紀は少し驚いていた。
「良く知ってるっすね。最近お互い忙しいせいであまり組まないから知らない人も多いんすけど」
沙紀から暗にどうして知っているのか尋ねるように聞かれて、響子はあっ、と呟くと顔を赤くしてしまう。
「あの、その、沙紀さんのことが気になり始めてから、以前の活動記録とか見る機会があって、その時にちょっと……」
恥ずかしそうに呟く響子に沙紀は関心したように相槌を打った。
「そうだったんすか。でも本当に良く覚えてたっすね。伊吹さんとはたまにダンスレッスンしたりするんすけど、ユニット活動はあまりしてなかったから」
沙紀はそれからスペーススタイルやダンサブルエナジーについて簡単に話した。
「どれも良い刺激になったっす。誰かと組んで何かをすることがこんなに力になるとは知らなかったし」
「それは、わかります」
響子の賛同に沙紀は頷く。
「まぁ、そんな時っすね。ハートハーモナイズの話が来たのは」
「…………」
本題である。響子も音が聞こえないように唾を飲んで彼女の言葉を待つ。
「実は最初はどうなんだろうって不安だったんすよ」
「不安?」
響子はその理由を問うと沙紀は小さく笑った。
「アタシと響子ちゃんって、けっこう方針が違うじゃないっすか。響子ちゃんは可愛い系でアタシはクール系、というか」
それは響子が最初に抱いた感想と殆ど一緒だった。
「だから、正直上手くいくか自信はなかったっす。響子ちゃんの経歴を見ても似通ったところは見当たらなかったし」
「そうですね。確かにあの時は私もちょっと緊張しちゃって……」
初めて会った時、響子も内心は少しだけ沙紀の雰囲気に気圧されていたことを思い出し懐かしむ。
「まぁ、それは結局杞憂だったけど。そっから一緒に活動していくうちにアタシはいつの間にか響子ちゃんに惹かれてた」
真剣な表情でそんなことを言われたせいか響子の身体は先程より一層熱を帯びていく。顔が真っ赤になっているのが自分でもわかるほどに。
「会う度に見せてくれる笑顔も声にもドキッとしたこともあるし、絵とか教えるときに触れあっただけでも……あー、だめだこれはちょっと恥ずかしいっすね、うん」
とにかく、と沙紀は一拍置いて再び響子に想いを告げる。
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