9: ◆JfOiQcbfj2[saga]
2017/05/07(日) 01:10:11.32 ID:upUN87ha0
「お邪魔しまーす」
「はい、どうぞっ」
事務所に所属しているアイドルが住んでいる女子寮に沙紀は足を運んでいた。もちろん目的の場所は響子の部屋だ。
「あれ、その恰好って」
「あ、わかりますか?」
そりゃわかるっすよ。と沙紀はまじまじと響子を眺めていた。今日の彼女の恰好はあの日の雑誌の中にいた彼女そのままだった。
薄いピンクのワンピースに白の長めのスカート、そして白のカーディガン。
「沙紀さんが可愛いって言ってくれたので着てみました」
本の中の人物が目の前に浮き出てきたような不思議な感覚だった。それはある意味感動にも近い感情を引き起こす。
「もしかしてわざわざ買ってきたってわけじゃないっすよね……?」
沙紀の問いに響子は首を振って否定した。
「実はこれで撮った後、タダじゃないんですけど少し安く買えるっていう話が来て思わず買っちゃったんです」
だから買っておいて正解でした。と長めのスカートを左右に振る彼女はやはり可愛らしく沙紀の目に映る。
ただ、本の中では外の日を浴びて輝いている衣装であったためか、どうにも女子寮の部屋の中にいると変な違和感があるのも少し可笑しかった。
「いや、確かに可愛いっすけど。それって外に出掛ける時に着るものじゃ?」
笑いながら沙紀がそう言うと、響子も合わせて笑う。
「細かいことはいいじゃないですか!さぁ、どうぞっ」
促されて沙紀もそれ以上は何も言わず、部屋の中に足を踏み入れた。相変わらず掃除や整理整頓が行き届いているのは一目見てわかった。
「おお、流石に綺麗っすねー」
「気が付いたら掃除はしてますよ。沙紀さんの部屋はあれからちゃんと掃除しましたか?」
沙紀の目線がテーブルに置かれた花瓶に逃げたことを響子は確かに見た。
「……オオ、オハナマデカザッテアルー」
「沙・紀・さ・ん?」
ずいっと響子に詰め寄られ、沙紀は苦笑しながらまだ目を逸らしていた。響子はそんな様子にため息をついていた。
「もー、ちゃんと掃除はしてくださいよ。何だったら私もお手伝いしますから」
「それは流石に悪いっすよ。それにそこそこ整理はしてますから大丈夫っす。たぶん……」
「それならいいですけど……まあ、とにかくあがってくださいっ」
女子寮は当然一人暮らし用の設計であるため広いとは言い難い。それでも響子の整理整頓術が行き届いているおかげかそれを感じさせないのは流石である。
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