5: ◆JdP.BncS3o
2017/07/20(木) 02:14:43.72 ID:tOIXXBPCo
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4合目 道に迷ったら
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「ほのかさん……大変です」
「どうしたの?」
「道を間違えているかもしれません」
「あ……」
言われてみれば、すでに通過しているはずの分岐点が見当たらず、道の先はゆるやかな下りに向かっている。
「どこかで下山道に入っちゃったのかな」
「わかりません。一度引き返しましょう」
「そうだね」
まだ来た道すらわからなくなっているほど深刻な状況にはないと思っていた私達は、特段深く考えず引き返すことにした。
「ごめんなさい、私先導していたのに全然分かれ道に気づかなくて」
「いや……私も見てたつもりだったけど気づかなかった」
そんな苦境に追い打ちをかけるように小雨が降りだす。
間もなく滝のような土砂降りとなり、土道はところどころ泥沼になりかけている。
目の前は水のカーテンに阻まれて5メートル先も見えなくなった。
こんなときは闇雲に動かず視界が戻るまで待つのがセオリー。
とはいえ。今日は本格的な雨対策をしていない。
こんな日に、いつ止むかもわからない雨を耐え忍ぶのはあまりに辛すぎる。
雨に打たれ泥にまみれながらも慎重に歩を進めていると不幸中の幸い、雨除けになりそうな小屋を見つけて飛び込んだ。
「助かりました〜」
「休憩所みたいだけど、なんだかまともに使われてる形跡がない」
「やっぱり、登山道からは外れてるみたいですね」
崩れかけた床の上には木の板と塗料が片隅に並べられていた。
ここで看板でも作っていたのだろうか。
何か所も雨漏りしているし、小さな窓はガラスが入っていないため当然そこからも雨が入り込んでくる。
それでも屋根があるかないかの違いは大きい。
「もう雨は弱まってるけど、少し休んでいこうか」
「そうですね〜」
泥まみれのレインコートを脱ぐと上着まで泥まみれになっていることに気付く。
上着をはたいて泥を落としていると、ここなちゃんはインナーシャツまで脱ぎ始めた。
気持ちはわかるけど、私にはちょっと無理……
「ほのかさんは着替えないんですか?」
「いや、私は大丈夫……」
意識しすぎとはわかってるけど、今日に限ってはここなちゃんの下着姿さえもまともに見ることができずにうつむいてしまった。
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