鷺沢文香「アッシェンプッテルの日記帳」
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7: ◆ao.kz0hS/Q[sage saga]
2017/10/07(土) 23:54:53.83 ID:mxDxIcFa0
そして三日前のことです。
夕方というよりは夜の時間帯のことでした。

いつものように用も無いのに事務所のソファに陣取り、デスクでお仕事に励むPさんを視界の隅で視姦していたのですが、そこに美波さんがやってきました。
平静を装いつつ2、3の言葉を交わしたところ、大学のレポートの進みが芳しくなく、かといって自室では集中できないので、事務所でやるために来たのだとか。
自室で集中できないというのは私としては理解しがたいことですが、適度な雑音がある方が集中できるという方も確かにいるようですね。
尤も、それが本当の理由を隠すための方便であることは明白でした。
既に帰宅したスタッフさんのデスクで、レポート用紙にペンを走らせ始めた彼女は“大変だ”と言う割にとても良い表情で…。
それに何より、集中するために来たと言いながら、全く集中できているようには見えなかったのですから。

この頃になると、外野から見える範囲での二人の接触は極端に減っていました。
それはきっと他の方に自分たちの関係を勘繰られるのを避ける為だったのでしょう。
挨拶もお仕事とレッスンの報告も簡潔かつ最低限。
一時はベタベタするという単語以外思いつかなかったスキンシップも、最近ではほとんど見られなくなっていて。
ですが、おそらくは油断したときなのですが、二人が熱っぽい視線を見せることがあり、その先にはいつも決まってお互いが居ました。
夢と希望と愛に満ち溢れた二人の表情は、やはり変わらず私の胸と下腹部を無慈悲に締め上げてくれるのです。

このときの美波さんもやはり、時折伸びをする仕草にPさんへの熱視線を紛れ込ませていました。
カモフラージュで広げた書籍から、視線だけを動かして彼らを盗み見るのも、慣れたものです。

21時を過ぎた頃、事務所に残っているのは私と美波さんとPさんと、あとは数人のスタッフさんだけになっていました。
美波さんからは帰ろうとする雰囲気はまだ感じられません。
私としてはもう十分な『撮れ高』がありましたから、この後のお愉しみに備えて帰宅することにしました。
レポート作成を終え、別の講義のレジュメと思しき書類に目を通している美波さんに帰る旨を伝え、事務所が入るビルを出て…。
冷たい風に吹かれたところで、愚鈍な私はようやく気付いたのです。

美波さんはPさんの様子を見に来る為だけに事務所に来たのではない。
これから二人は逢引するつもりなのだ、と。


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