鷹富士茄子「絶対に許しません」
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10: ◆FreegeF7ndth[saga]
2018/05/20(日) 18:20:29.02 ID:8NRe1KMEo


『あなた幸せそうね、とは今まで何度も言われました。
 でも、君は人を幸せにできる、と言ってくれたのはあなただけなんです。
 確かに、私はプロデューサーのその誘いに乗りました。アイドルとして、それを楽しみにもしました』

運転するつもりがなかったので、俺も茄子もシートベルトをしていなかった。
茄子は助手席から俺の方に身を乗り出してきた。

『でもね、幸運がじきに失われるとしたら、どうでしょう』
『失われるって、どうして』

このときの俺は、茄子の言っていることが理解できなかった。

『あなたのおかげで、あなたのせいですよ』

いずれ幸運が失われることは聞いていても、なぜ失われるかは聞いていなかったから。
そして茄子は、俺に「なぜ」とは問わせなかった。

『アイドルとして、他のヒトの幸せを導けるのは嬉しいことです。だから、あなたとやってこれた。
 でも、幸運じゃなくなったらどうなるでしょう? それを考えると……』

茄子が勝つといえば必ず勝つ、売れると言えば必ず売れる。
今までそれにプロデューサーとして寄り掛ってきた俺に、疑問は許されなかった。

『私の幸運が失われたとしたら、きっとみんな離れていくでしょう。
 それは、まぁいいです。わかっていることだから。けれど、あなただけはダメ』

茄子はアイドルとして、プロ野球選手がプレッシャーで押しつぶされそうなほどの人数の期待の目を、
いつも浴び続けてきた――ひょっとしたらそれ以上かもしれない。
それを、俺はプロデュースの賜物として、さっきまで誇りに思っていた。

『私のこの喜びも、苦しみも、あなたのせいなのだから』

それは喜びであると同時に苦しみであった――茄子はそう告げてきた。
俺は反論を許されなかった。プロデューサーは裏方で、あの視線の重みを知る由もないのだから。

『責任とってください。じゃなきゃ、絶対に許しません』

茄子は俺に一蓮托生になれ、と迫ってきた。
お前はただ幸運にすがり利用するだけではいや、と。

プロデューサーから見て代えの効く担当アイドルの一人ではなく、
もっと重い立ち位置をよこせとねだってきた。

それをこの場で手っ取り早く証すのが、茄子を抱くことだった。





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