このスレッドは製作速報VIP(クリエイター)の過去ログ倉庫に格納されています。もう書き込みできません。。
もし、このスレッドをネット上以外の媒体で転載や引用をされる場合は管理人までご一報ください。
またネット上での引用掲載、またはまとめサイトなどでの紹介をされる際はこのページへのリンクを必ず掲載してください。

イツキ「学園都市に……ですか?」 - 製作速報VIP(クリエイター) 過去ログ倉庫

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/03/31(水) 01:16:57.18 ID:Cv1AzTk0
需要はないだろうがレンタルマギカ
――――アストラル事務所
 
土御門「そうだにゃーここの魔法使いを貸して貰えないかにゃ〜、社長さん?」
 
イツキ「い、いえ、僕一人の判断じゃとても……それにどういう依頼内容なのかも分かりませんし」

土御門「ん? 社長なのに決められないのか?」

イツキ「えっとその……」

穂波「うちの社長はまだまだ半人前ですからこちらの話はまずうちらに相談してるんです」

イツキ「アハハハハ……面目ないです……」

穂波「社長! そんな苦笑い浮かべるくらいやったらもう少し勉強してください!! 魔術も社長業も半人前なんやからもう少しクドクドクドクド」

土御門「えっと……、その辺で辞めてくれないかにゃー……、こちらの依頼内容を聞いてほしんだぜい」

イツキ「す、すいません!! それで……依頼内容とは?」

土御門「それじゃぁ話させていただくぜい、依頼内容は……」


――――――――――――――――――――
――――――――――――
―――――――――
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】

ごめんなさい、この製作速報VIP(クリエイター)板のスレッドは1000に到達したか、若しくは著しい過疎のため、お役を果たし過去ログ倉庫へご隠居されました。
このスレッドを閲覧することはできますが書き込むことはできませんです。
もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713798788/

【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713788018/

ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/

【安価】少女だらけのゾンビパニック @ 2024/04/20(土) 20:42:14.43 ID:wSnpVNpyo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713613334/

ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713522243/

2 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/03/31(水) 22:28:02.60 ID:Cv1AzTk0
小萌「野郎ども喜べ! 子猫ちゃんたちも喜んで! 今日は転校生が二人来るよ!」

上条「ん、また転校生か? このクラス意外と転校生が多いな」

小萌「詳しい自己紹介とかは後でしてくださいねー。さあ転入生ちゃん。どーぞー」

小萌先生がそんな事言うと、教室の入り口がガラガラ開いて二人の男女が入ってきた。
そして教室の生徒は転入生をみて土御門を除き全員が動揺した。
なぜなら片方は海賊のような眼帯をつけた男、そして片方はハーフの美女。これで驚くなと言うほうが
無茶である。しかし、少年のほうはとても大人しそう、悪く言えば頼りなさそうな少年。そしてもう
片方の美女は眼帯の少年のように大人しそうであるが頼りになりそうな子だと一目で分かる。
少年が一歩前にでて自己紹介を始める。

イツキ「は、初めまして伊庭いつきと言いますよろしくお願いします」

穂波「穂波・高瀬・アンブラー言いますよろしくお願いします」

そう二人が挨拶すると小萌先生が話し始めた。

小萌「二人とも国内留学の方なんですー。なので一月もしたら帰っちゃんですけど
仲良くしてくださいねー」
3 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/03/31(水) 22:28:39.15 ID:Cv1AzTk0
そう小萌先生が言うと上条は疑問に思った。

上条(前方のヴェントが学園都市をめちゃくちゃにしたってのにその後すぐに国内留学生? 
何かおかしくないか?)

そう、上条は思い土御門のほうを見る。すると土御門はへらへら笑いながら手を振り後で話すと合図を
送ってきた。

上条(あの転校生に何かあるのか?)

小萌「それじゃあそろそろ質問タイム始めちゃいますねー。皆ーガンガン質問しちゃってくださいねー」

青ピ「穂波ちゃんのスリーサイブゴェ!!」

吹寄「あんたいきなり何を聞いてんの!!」

青ピ「ええやん、スリーサイズを聞くのってお約束やん!! なあ、上やん!?」

上条「うげぇ、俺に聞くのかよ!! いや、まあ聞きたいでせう……」

吹寄「上条当麻〜〜〜〜〜!!!!」

上条「ぎゃぁぁああああ、すいませんんんんんんんんんんんん」
4 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/03/31(水) 22:29:06.66 ID:Cv1AzTk0
そんなクラスの光景を見て伊庭イツキは苦笑いしか浮かべれなかった。
 
イツキ「ハハハ……賑やかなクラスだね穂波?」

穂波「そうやね社長、でもちゃんと覚えとる?」

イツキ「う、うん覚えてるよ僕たち結構危ない立場にいるのは・・・・・・」

穂波「ほんま、猫屋敷さんがお金と猫に釣られるから・・・・・・」

イツキ「確かこの都市のどこかにみかんちゃん、オルト君猫屋敷さん黒羽がいるんだよね?」

穂波「猫屋敷さんはここの歴史の先生やっはるよ」

イツキ「えぇ!? そうなの!?」

小萌は暴走したクラスを見て溜息をした後イツキ達に話しかけた。

小萌「ごめんなさいですー。いつもこんな感じなんですよー。」

イツキ「いえいえいえ、こちらこそクラス無視して話しこんじゃってすいません。」

小萌「いえいえですー。それじゃあそろそろ質問タイムを終わらせるですよー。」

そう小萌先生がいうと吹寄が「あんたのせいで何も聞けなかったでしょ!!」と青ピにキレていた。

小萌「それじゃあイツキちゃんは上条ちゃんの席の前に座ってくださいですー。あのツンツン頭の
この前ですよー。穂波ちゃんはイツキちゃんの隣ですー」
5 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/03/31(水) 22:29:49.29 ID:Cv1AzTk0
小萌先生がそう言うと二人はその席に座った。
そして休み時間上条が伊庭いつきに話を聞こうとしたら青ピがいきなり

青ピ「転入祝いに飯食べにいかへんー?」

そして、土御門が続けてこう言った。

土御門「にゃー。すき焼きだったら安くてうまい店を知ってるぜい」

その会話は伝播していき、隣にいた生徒も加わり。

「一〇月なのに鍋ってはやすぎないか。 なあ?」

そこから一気に会話の輪が広がっていく。
クラスメイトが次々と接近してくる。

「何だ。お前ら今日どっか店行く訳?」

「美味い店の独り占めとは許せませんな」

「俺はむしろ鍋より焼き肉のほうが好みなんだが」

「待て待て。みんなで金を出すんだから多数決で決めようぜー」

いつきと穂波は目を点にする。自分たちが何か言う前に転入祝いなるものが開催されようとしている。
6 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/03/31(水) 22:30:27.02 ID:Cv1AzTk0
いつき「……どうしようか穂波?」

穂波「まあ大丈夫とちゃうん? 猫屋敷さんたちには後で連絡を入れるとして今はクラスに馴染む
方が大事なんちゃう?」

するといつきは嬉しそうに顔を綻ばせて。

いつき「そっか、じゃぁ鍋が楽しみかな」

穂波「そやね、このクラスも楽しそうやし」

そんなこんなで色々あって今夜はすき焼きである。
クラスメイト全員+小萌先生+インデックス+三毛猫+転入生二人と言うメンツで、土御門元春の
知っている鍋の店へ歩いて行った。 

7 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/03/31(水) 22:33:49.04 ID:nuGwAEDO
頑張れ
俺も需要がなさそうなシゴフミ書いてる
8 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/03/31(水) 22:44:05.24 ID:GzPAqMDO
内心ハルヒだろうと思いながら『なんだポケモンスレか』と書き込もうとしたら俺の大好きなレンマギスレだった



俺の大好きなレンマギスレだった
9 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/03/31(水) 23:31:41.87 ID:0kfeVRAo
マジでポケモンスレかと思った
10 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 01:42:14.62 ID:I6wfu0w0
あ〜なんだ……? 応援ありがとうな
11 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 22:31:52.35 ID:88oQtVU0
大覇星祭の打ち上げの際、インデックスはクラスの中に乱入して五秒で馴染んでしまったのでこの祝いに参加しても問題はない。
しかしインデックスは十万三千冊の原典を脳に所有している。インデックスは魔術の匂いにとても敏感だ。
何を言いたいのかと言うと、少年、伊庭いつきの眼帯は魔術が関係している。
そしてインデックスはその眼帯のおかしさをいち早く察知した。

インデックス(ねぇ当麻、なんで魔術師がいるの?)

それは当然の疑問である。しかし上条当麻は。

上条(それが分からねんだよ、さっき店入る前に土御門に聞いたんだが悪い奴らではないみたいなんだ)

インデックス(そうなの?)

それを聞いて安心しようとしたインデックスだが少年、伊庭いつきの眼帯はとても強い魔術で作られている。
それが気になって仕方ない。

インデックス(あの眼帯……、強力な魔眼殺し? でもあんなに強力な魔眼殺しなのに抑えきれていない・・・・・・そんな魔眼なんて……)

インデックスは思考に入ろうとしたが。上条が話しかけてきた。

上条(しかしインデックス、何であいつらが魔術師って分ったんだ?)

インデックス(うんそれはね、あの眼帯の人の眼帯に強力な魔術が使われているんだよ)

上条(そうなのか? ならあの眼帯には右手で触れないようにしなきゃならねぇな)

インデックス(うんそのほうが良いんだよ)

上条は土御門の方に向き話をしようとしたが。

小萌「土御門ちゃんは、何で地ビールだけで三〇種類も揃えてあるアルコール最高のこんなお店を知っているのです?」

土御門「ぐっ!? い、いや!! 違うんですにゃー高校生がアルコールの摂取など考えられないにゃーっ!!」

小萌「土御門ちゃん? 土御門ちゃーん?」
12 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 22:32:19.59 ID:88oQtVU0
と小萌先生が限りなく胡散臭い瞳を向けて土御門に話しかけていた。
上条達クラスメートはここで騒がれると鍋はお預けなってしまうので、小萌先生の全身を掴むと、まーまーと言いながら強引に
お店の団体様用宴会席へ向かう。
先生は何か言いたそうだったが取り合わない。
その光景をみていつきは「とても濃いクラスだな……」などとつぶやいていた。

土御門「いつきすまんがこの鍋が終わったら話がしたいんだがいいかにゃー?」

すると伊庭いつきではなく穂波が答えた。

いつき「えっと……」

穂波「良いですよ、幻想殺しと禁書目録のことやろ?」

土御門「話が早くて助かるにゃー、まっ今は鍋を楽しんでいってくれにゃー」

穂波「そうさせてもらうわ」

そう言い終わるとそれぞれは鍋の席に着いた。まあ当然ながら一つの鍋を四〇人前後でつつきまくる訳にはいかないので、
自然といくつかのグループにテーブルが分かれることになる。『始まるぞお!』『鍋が始まるぞおー!!』と各々は勝手にテンションを
上げ、意味もなくテーブルのガスコンロのツマミをひねったり、割り箸をきれいに割るコンテストを決行したりと大忙しだ。
そのなかである意味特殊なグループができた。
順番はインデックス、上条、吹寄、穂波、その前の席にいつき、土御門、青ピ、小萌というグループができた。
13 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 22:32:47.44 ID:88oQtVU0
上条「えっと……とりあえず自己紹介しとこう」

吹寄「上条、貴様にしてはいい考えね、私の名前は吹寄制理、よろしく」

青ピ「うわーめっちゃ男らしい自己紹介やー」

吹寄「うるさい!! 貴様も自己紹介しなさい!!」

青ピ「わかったわかった、えーとワイは(中略)やでー青ピでいいでーよろしくなー」

いつき「えっと僕は伊庭いつきって言いますよろしくお願いします」

穂波「私は穂波・高瀬・アンブラーっていいます」

上条「俺は上条当麻(中略)」

土御門「俺は(中)だにゃー」

小萌「わた(中)ですー」

インデックス「(中)だよ」

姫神「(全略)」

それぞれが自己紹介を終えるとインデックスがぐでんと体を机に突っ伏した。

インデックス「とうまー。お腹がすいたんだよ」

上条「・・・・・・もうすぐ鍋が来るから。つか、お前はホントにマイペースだな」

インデックス「うう…だってお腹がすいてるんだもん・・・・・・」

そんなインデックスをみたいつきはポケットから飴を出して。

いつき「えっと・・・・・・僕アメ持ってるけど食べる?」

インデックス「いいの!?」

いつき「うん、いいよ」

インデックス「ありがと!!」

少しオドオドしながらも笑顔でインデックスにお菓子をやるその光景を見た上条当麻は土御門の言っていた悪い奴じゃない。
と言う言葉を本当の意味で信用することができた。
14 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 22:33:17.48 ID:88oQtVU0
上条「ありがとうな、いつきお前良い奴だな」

いつき「いえいえ、えっと上条さんでしたね」

上条「当麻でいいよ、俺もいつきって言うから」

いつき「うん、よろしく当麻」

こうして上条といつきは仲良くなった。
と、

土御門「鍋が来たぞーっ!!」

土御門が嘘つき少年見たいな声を出した。

上条といつき達がそちらに注目すると、数人の店員さんが両手で黒い鉄の鍋を持ってきたところだった。
すでにぐつぐつ音おたてていいる鍋からは、確かに土御門が進めてくるだけあっていい匂いがする。
どれどれ、と上条は店員さんの持っている鍋を覗きこもうとする。
ここで上条は周辺のクラスメイト達から取り押さえられた。
近くにいたインデックスが小さな悲鳴をあげ、吹寄が鬱陶しそうな顔で息を吐き、穂波が目を丸くし、いつきは

いつき「えええええ!? み、皆どうしたの!?」

と、驚きの声を上げていた。

上条「ぐわっ!? テメェら何をする!!」

「馬鹿野郎!! お前が関わったらあの鍋がひっくり返ったりするんだ!!」

「唐突にな! ほら特にあのかわいい顔で胸は巨乳の店員さんとか超危険!!」

「お前の幸せのために俺たちが空腹になるなんて間違ってるだろう!?」

「ほらいつきもこいつを押えろ!!」

いつき「え、えええええ・・・・・・!?」
15 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 22:33:43.26 ID:88oQtVU0
いつきは何が何だか分からず上条が押さえつけられるところを見ている。そして上条は色々反論したいが、多勢に無勢である。
彼の右手に宿る幻想殺しは食欲満載のクラスメイトには何の効力ももたないのだ。そんなこともあってか、今回は何の前触れもない不幸は
おきなかった。ただ、例の可愛い顔で巨乳の店員とその光景の意味を分からない穂波が、現行犯逮捕見たいになっている上条を見て
『だ、大丈夫ですか?』『大丈夫? 上条君』と言ってきたのでクラスメイト達は結局やられたなと思ったらしく、

「・・・・・・せめて不幸にならないと余計にイラついてくる。」

上条「ボソッと言うなよ怖いんだよ!!」

たくさんの腕を振り解いた上条は叫ぶが、クラスの連中の注目は鍋である。なので上条の叫びはクラスの連中には聞き届けられず
伊庭いつきにしか心配してもらえなかった。

いつき「えっと・・・・・・大丈夫ですか?」

上条「ああ、いつものことだけど・・・・・・・何でこう理不尽かな?」

と上条は思うがクラスの連中からしたらお前のフラグのたて方のほうが理不尽だと言いたいことだろう。
そして伊庭いつきは何故押さえつけられたのか理解していないし、また伊庭いつきもフラグたて男なのでその理不尽は理解できないだろう。




16 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/02(金) 22:33:47.13 ID:/T9o.qIo
古泉かと・・
17 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/03(土) 04:02:16.43 ID:FXYJpTE0
そして上条が吹寄に鍋を仕切られたり、自分の家の財政事情に泣いたりして時間が過ぎて行った。
そして上条は外に出て少し一休みしている。と言っても、そこは地下街なのであまり外と言う感じもしないのだが。

上条(戦争、か・・・・・・)

実感がわかない、いや、湧かない方が良い言葉を、思い浮かべる。

上条(そしていつき達・・・・・・)

土御門が宴会の後話し合いの場を設けてくれるらしいが気になる。何故魔術師が学園都市に、しかもうちの学校に国内留学と言えど
転校してくるのか。それは自分に関係あるのか。それが気になって仕方ない。

地下街には、大学生を中心とした、上条よりもやや年上の人たちが行きかっていた。その誰もが楽しげに笑っていた。それは平和そのものだ。
どこにでもある街並み、戦争と言う言葉の信憑性が薄れてしまいそうになるぐらいに。

それでも、爪痕は確実に残っている。九月三十日に起きた騒動で、街の一角はビルが薙ぎ倒されいるし、
学園都市外周部は地形が変わるほどの爆撃を受けていた。そう言った爪痕は、一日二日で直せるものではない。

これからは、それが世界中で起こるかもしれない。

地球儀をバラバラに打ち砕くようなことだぅて、絶対に起きないとは確約できない。
18 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/03(土) 04:03:16.24 ID:FXYJpTE0
ローマ生教。

神の右席。

上条(……、何とかしないとな)

つい先日、この街を襲撃した前方のヴェントはこう言っていた。

上条当麻を抹[ピーーー]るために学園都市を襲撃した、と。
そう、上条を中心とした大きな流れができつつある。

上条(何が何だか分からねぇが、それなら俺にも何かできるかもしれない。蚊帳の外にいるんじゃない。だれが決めたかしらねぇが、
俺が話の軸にいるなら、その流れの方向性を動かす余地くらいは残されているんじゃねぇか?)

せっかくの歓迎パーティーなのに、考えれば考えるほど気持ちが沈んでくる。上条は気分を変えるために携帯電話を取り出すと、
いつの間にかメールが着信していた。

相手は御坂美琴。

昼休み、御坂美琴からメールが届いていたのだがデータが破損していたのでメールを開くことができなかった。
なので意味分からないのでもう一度送れこの野郎とメールを送っていたのだ。
なので昼休みの事かなと思ってメールを開こうとしたが、受信フォルダを開いても『件数0』とか書かれている。
どうも、スパム扱いされ、別のフォルダに自動で隔離されたらしいが、親指であれこれ操作しても、そのスパム用フォルダが一向に見つからない。
普段あまり使わない機能なので見当もつかなかった。

上条「??? ・・・・・・・何だったんだ?」
19 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/03(土) 04:04:22.04 ID:FXYJpTE0
上条は首をひねるが、詳しい事は後にしようと携帯電話をしまう。

「上やん」

と、上条の背中に声がかかった。
振り返ると、そこには土御門元春、伊庭いつき、穂波・高瀬・アンブラーの三人が立っていた。
土御門の見た目はあくまで普通。絆創膏一つない。しかし九月三十日にはこの男もこの男で命がけの戦いをしていたらしく、注意して見ると、
歩き方が微妙にぎこちなかった。

普段からスパイを自称している土御門が、素人の上条からしても『ぎこちない』と分かってしまうぐらいなのだ。やはり、軽症ではないのだろう。

土御門は、上条がどうしてクラスの輪からこっそり抜けたのか、それを理解しているらしい。
土御門は言った。

土御門「お前に話があるからアストラルの二人を呼んだが。・・・・・・これから起こる戦争が、全部お前のせいだって思ってんなら間違いだぞ。
お前のせいでクラスのみんなが巻き込まれたんじゃない。お前はこれまで、周りの連中を守ってきたんだ。だから、そこで疎外感を覚えるのは筋違いだな」

上条「・・・・・・そうか、な」

土御門「そうだよ。戦争が起こったのは裏方がしくじったからだ。カミやんみたいな素人は、『どこかの誰か』のせいだって憤ってりゃ充分だろ」

その声を聞いて、上条は思わず笑った。
結局、上条も土御門も全く同じように、自分で自分の荷物を背負おうとしていたらしい。

土御門「でまっ、話は変わるがこいつらレンタルマギカの話だ。」

そこで上条は不思議に思う。

上条「レンタルマギカ?」
20 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/03(土) 04:05:06.21 ID:FXYJpTE0
上条の反応を予想していたのか土御門は笑う。

土御門「まっ、俺が話すよりレンタルマギカの本人たちから話した方がいいかもにゃー」

土御門はさっきのまじめ口調からいつもの口調に戻っていた。そしていつき達は土御門に話すよう言われ、話す。

いつき「えっと、簡単に言うと僕たちレンタルマギカは貸し出し魔法使いです」

上条「貸し出し魔法使い?」

穂波「こっくりさんからブゥードゥー魔術まで、ご要望どおりの魔法使いを派遣する会社やねん」

上条「???」

土御門は今一理解していない上条を見て少し苦笑いしながら答えた。

土御門「カミやん、レンタルマギカ、会社名はアストラルだがその会社は魔術サイドではかなり異色なんだぜい」

上条「なんで?」

土御門「結社や教会じゃなく会社と言うところもあるけど。普通、魔術師ってのは自分の魔術ってのを隠したがるもんなんだにゃー。
それなのに魔法使いを派遣するってことがもう異色なんだにゃー」
21 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/03(土) 04:05:40.24 ID:FXYJpTE0
上条「・・・・・・へえ?」

今一理解していない上条を見て土御門は簡単に分かるように答える。

土御門「つまりだにゃー。もしかしたら依頼主と敵対するかもしれない、その魔法使いと戦うとき手札を晒しながら戦うみたいなもんなんだぜい」

上条「それって」

土御門「そう、危険が跳ね上がるってことだぜい」

まっ、それでも負けないくらい強い魔法使いが多いんだけどな、と土御門付け加える。
そして、上条はある点に考えが直結する。

上条「じゃあ、いつき達は誰かに雇われたってのか?」

土御門「ま、そう言うことだにゃー」

上条「じゃあ何のために?」

するといつきが口を開いた。

いつき「当麻さん、貴方を監視するためです」

上条「監視!?」
22 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/03(土) 04:06:21.15 ID:FXYJpTE0
上条は自分を監視する、と言う言葉に戦慄を覚えた。

上条「な、なんでだよ!?」

土御門「まぁ落ち着けカミやん」

上条「これが落ちつけるかよ!!」

土御門「まぁ話を聞け、そこまで、と言うよりカミやんにはほとんど実害はない」

上条「??? なんでだよ」

いつき「えっと、簡単に言うと魔術サイドがいちゃもんをつけて、それを学園都市がのんで、今の僕たちがあるんです」

上条「???」

穂波「社長! 今のじゃわからへんやろ!!」

いつき「ご、ごめん穂波」

上条「社長?」

穂波「いつき君はアストラルの社長やねん」

上条「ええええええ!?」

穂波「社長の事はあとで詳しく話すこともあるやろうけど、今は上条君のことや」

上条「あ、ああなんで実害がないんだ?」
23 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/03(土) 04:07:24.30 ID:FXYJpTE0
穂波「それは魔術サイドが学園都市から攻撃をくらったっていちゃもんつけたからや」

上条「・・・・・・・は?」

上条は穂波の言った言葉が理解できなかった。いや、正確に言うと理解したくなかった。

上条「ちょっ、ちょっとまてよ!! 先に攻撃を仕掛けてきたのは魔術サイドがさきじゃねぇか!!」

穂波「学園都市の天使」

上条はその言葉聞き体が凍った。それは上条の良く知る友人の事だからだ。

穂波「その天使が学園都市の外におった魔術師を吹き飛ばしてもうたんや。」

上条は知らない、外にあった地形の変わった地面はその天使がやったことを。

穂波「そんで、事件の騒動の中心にいた上条当麻と禁書目録、それらに監視をつけろといちゃもんをつけてな」

上条「そんなの、自分勝手だろ!! なんでそんなこと!」

穂波「そんだけ魔術サイドの上層部が腐っとるんやろな、で、話を続けるけどもちろん学園都市側はそんなののまへんかった」

土御門「そんで、魔術側が学園都市と仲のいいイギリス政教以外からの魔術師なら選んでも良いと譲歩したんだぜい、まあ魔術師なら
皆破壊工作とかをすると思ってたんだろうにゃー」

そこで穂波と土御門は少し頬を綻ばした。

穂波「そんで、魔術業界で少しは有名で、甘いと言われる私らに話が舞い込んできたわけや」

土御門「魔術側も馬鹿なことしたもんだにゃー、報告義務やらをなんも言わなかったからアストラルの連中は魔術側に報告する
義務はないし学園側が魔術師をレンタルしたから裏切ることもない」

穂波「まあ、簡単に言うと科学サイドが逆に戦力を上げてしまったてわけやね」

上条「と言うと?」

土御門「何の実害もなく、いつき達と友達になるやらなんやら普通に接しとけばいいってことだにゃー」
24 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/03(土) 04:09:15.04 ID:FXYJpTE0
上条はなんだそりゃと馬鹿馬鹿しくなった。

土御門「ま、何にもなくてよかたにゃー」

上条「今までの俺の心配は何だったったんだよ・・・・・・」

上条はでもまっと気を取り直すと

上条「いつ達と友達としていられるんだな」

そう言うと土御門、穂波、いつきは笑顔になった。

第一部説明編完
25 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/03(土) 20:57:16.72 ID:/FVF1IDO
両作品とも好きなのでこれからに期待です。
26 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/07(水) 20:26:09.15 ID:AIg9fZs0
序章 あまりにも暗い聖堂
 
左方のテッラ。

 彼はバチカンの聖ピエトロ広場にいた。広場は幅二四〇メートルぐらいの楕円形で、中止からやや外れた所には噴水がある。テッラはその
噴水の緑に腰を掛け、頭上の星空を静かに見上げている。

 人工的な明かりの乏しい広場では、彼の顔は見えない。そのシルエットだけが優しい闇に包まれ、一種のヴェールとして機能していた。
 
 ちゃぽん、という小さな水温が響く。噴水のものではない。

テッラの右手には、安物の赤ワインが収まったガラスのボトルがあった。グラスも使わず、直接ボトルの口へ唇を寄せるたびに、
ちゃぽんという音と共に入れ物の中のアルコールが波を作る。
 
 ただし、テッラの体からは飲酒による浮ついた雰囲気は感じられない。
 今が昼でテッラの顔が見えたなら、なんて不味そうに酒を飲むのだろうと誰もが思ったはずだ。まるで残業でもしているような顔だった。

 「まだ飲んでいるのか、テッラ」

 低い男の声が聞こえた。
 
 テッラは噴水の縁に腰を下ろしたまま、首だけをそちらへ向ける。
 
 そちらにいるのは、テッラと同じ『神の右席』の一人、後方のアックア。青系のゴルフウェアのような衣装をまとった男だ。

 彼の隣には豪奢な礼服に包まれた老人もいる。
27 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/07(水) 20:26:39.04 ID:AIg9fZs0
ローマ教皇。
 
 このバチカンにおいて最も力のある人物は彼のはずだが、『神の右席』が二人も揃うとなると、不思議なぐらい存在感が翳ってしまっている。

 テッラは唇の端から垂れた赤い液体を腕で拭いながら、
 
 「これでも一応、補充しているんですがねー。『神の血』ってヤツを。」
 
 「パンに葡萄酒か。ミサの仕組みだな」
     ラファエル
 「私の『神の薬』は土を示しますから、力を補充するためには、大地の『実り』や『恵み』を利用するのが手っ取り早いのですよ」
 
 真面目に返したつもりだが、アックアと教皇の両方からため息が漏れた。彼らはそれぞれ、テッラの足元へ視線を落とす。
 そこには、中身のなくなったボトルがごろごろ転がっている。ガラスの側面に張られたラベルを見て、アックアは首を振りながら言う。
 
 「安酒だな。こんなものは観光客向けのぼったくり店でもお目にかかれないであろう。『神の右席』の名を使えば、もう少しましな銘柄を集められたはずである」

 「よしてくださいよ。酒の味など分かりません。ただの儀式に使ってる道具ですからねー、贅沢なことを言っては本当の酒飲みに失礼です」

 アックアとテッラのやり取りを聞いて、教皇が横から口をはさむ。
 
 「・・・・・・信徒の指導者としては、派手な飲酒は控えていただきたい所だがな」
 
 「おっと、私が責められるのは心外です」
28 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/07(水) 20:27:13.01 ID:AIg9fZs0
テッラは低い声で笑いながら、 
 
 「私の場合儀式として必要に迫られているだけですが、アックアの方はそうでもないのに酒の味や銘柄に似詳しいようですがねー?」
 
 教皇にジロリと睨まれ、アックアはやや身を引いた。他のメンバーと違い、何故か彼だけは教皇をないがしろにしないのだ。
 
 「傭兵崩れのたしなみだ。戦場ではそういうものも必要でな」

 「ハハッ、アックアはごろつきですからねー。我々、敬虔な信徒と違って悪い子なんですよ」
 
 軽い口調で口添えするテッラに、教皇は顔をしかめた。一緒にしないでほしかったのかもしれない。
 それから教皇は三〇万人もの人員を収容できる大きな広場を見渡し、
 
 「しかし・・・・・・ろくな護衛も付けず、『神の右席』の二人に、ローマ教皇まで野外に集まるとはな。やはり会合は屋内で行うべきではないのか。
この状況を警備の者が見たら泡を吹きかねんぞ」
                クローチェデイピエトロ  
 「大丈夫じゃないんですかねー。『使徒十字』の礼装効果はまだ有効ですし」
 
 テッラはワインを口にしながら、夜空を見上げて、
29 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/07(水) 20:27:58.70 ID:AIg9fZs0
  、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
 「気持ちの悪い空が広がっているじゃないですか。無数の結界が衝突・競合しすぎてオーロラみたいに揺らいでます。あの壁をぶち抜いて呪術狙撃するのは難ですよ」

 元々、結界に限らず、あらゆる魔術はその方式を解けば、対処方法や対抗策の逆算も可能となる。その集大成がイギリス精教の誇る魔導書図書館・禁書目録だろう。
 しかし、この国全体を守る多重結界は、バチカンにある建造物の九割以上が持つ十字教的な『意味』が複雑に絡み合った結果、
禁書目録による解析はもちろん、もはや最高管理者であるローマ教皇すら全容を把握しきれなくっている。
 長い時間をかけて複雑な暗号を解いた所で、パスワードのパターンが一秒ごとに変化していけば、古い『解答』には何の意味もなくなってしまう。
鍵の穴の形どころか数すら変動するのでは合鍵など作りようがない。
 
 教皇を始めローマ政教徒の誰にも明確な制御は行えなくなっているものの、バチカンを包む多重結界はそうやって、あらゆる解析術式
を撥ね退けてきたのだ。
30 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/07(水) 20:29:06.57 ID:AIg9fZs0
「しかし」
 
テッラは言う。 
 
 「禁書目録には解析できなくてもあの魔眼、グラムサイトになら『使徒十字』の力などやすやすと破ってきそうですがね」

 そしてこの結界を破って来れそうな人間を三人思い浮かべる。
 
 ローマ聖教やイギリス政教などの宗教的ではないベクトルの違う教会、その教会は魔術結社などを結集させた教会。
その教会のある人物を思い浮かべる。
 そのものは一見して、特徴のとらえづらい人物。柔らかい風貌で二十半ばから四十前半どの年にもとれる、体は中肉中背で―――――
鼻の高さも唇の厚みも眉の長さも瞳の深さも、全てが中ぐらい。

 まるで、徹底して特徴というものを削ったかのような、そんな男。
 
 「グラムサイトも恐いですが何より影埼が恐いですね、あの人は『使徒十字』くらい無効化できそうな怖さがる」
 
 そこでローマ教皇は口をはさむ。
     、、、
 「影崎はあちらの教会の人間だが、向こうはこちらには手が出せない条約を結んでいる、こちらも手は出せないが敵になることはないだろう」

 それもそうかとテッラは思うが。
 
 「でもまあ、フィン・クルーダは別問題でしょうが」

 そこでローマ教皇は押し黙る。
31 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/07(水) 20:29:52.67 ID:AIg9fZs0
オピオン。
 
 教会に所属せずあらゆる禁術を使う集団。
 
 そして取り換え児フィン・クルーダのグラムサイト。

 テッラは少し不快な顔をして言った。

 「世の中には主に逆らう化け物が多すぎますね・・・・・・」
 
 空になったワインボトルを噴水の縁に置く。彼が聖域に持ち込んだ安酒は、今ので最後だった。
 テッラはゆっくりとした動作で立ち上がると、軽く背筋を伸ばしながら、

 「『神の血』の補充も終わりましたし、そろそろ行きましょうかねー」
32 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/07(水) 20:30:20.91 ID:AIg9fZs0
その言葉を受けて、アックアの眉がわずかに動いた。
  、、
 「あれを使うのか」

 テッラは唇を薄く開いて笑う。

 口調から掴み取ったのであろう。アックアの中に、苦渋の感情があることを。
 
 「民間人を使うことが不服ですかねー、アックア」

 「・・・・・・殺し合いなら、それで糊口を凌ぐ兵隊に任せればよいであろう」

 「ハハッ、貴族様らしい意見です、しかし」

 テッラは愉快そうに笑みを広げて。
33 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/07(水) 20:30:50.92 ID:AIg9fZs0
「我々、ローマ正教最大の武器は、数です。二十億人という数字は大きな強みです。わざわざこれを出し惜しみする方が不自然なんですよ。
学園都市の総数はたった二百三十万。まさに文字通りの桁違いというヤツです」

 「戦争の勝敗は人員と物資の量で決まる決まる、か。野蛮だな。旧時代の戦争を覗いてるような気分である」

 「本当に単純な解答というものは、昔から何一つ変わらないと言うことですねー」

 テッラは結界に覆われた夜空を見上げてそう言った。
 
 浴びるように酒を飲んでいたはずだが、彼の足取りは少しも揺るがない。

 「われら『神の右席』は不完全なれど、その神秘性を持って民を導くもの」
 
 両手を水平に広げ、片足で立ち、くるりと回るように歩くあの方へ振り返って、

 「ならば怯える子羊たちには勝手に導かれてもらいましょうよ。この羊飼いである私の手によって・・・・・・笛に合わせて消えていった子供達のように」

34 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/07(水) 21:40:31.50 ID:AIg9fZs0
原作に沿って話を進めていこうと思います。
オピオンなどはたぶん出てくるんじゃないかな? でるかな? わからんけどね
フィン・クルーダはでてきます
35 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/13(火) 01:24:00.29 ID:uAd5D4g0
黄泉川達が『迎撃ショー』なるイベントのデモンストレーションの話は省略させてもらいます。
36 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/13(火) 01:24:31.49 ID:uAd5D4g0
第一章 早すぎる変化の速度

 テレビでニュースが流れている。

『現地時間で昨夜未明、フランス南部の工業都市トゥールーズで宗教団体による大規模な抗議運動が発生しました。街の中心を走るガロンヌ川に
沿って数キロの道のりが人で埋め尽くされ、現在も交通を始めインフラ網に深刻な影響が出ています』

 テレビのVTRでは、フランス語で罵詈雑言の書かれた横断幕を手にした男女や、学園都市の看板に火を点けて大きく掲げている若者などがいる。
 一応彼らは『抗議活動』をしているだけであって、統制を失った暴徒ではない。それでも、数万もの数の人間が怒りを露にして街を練り歩く様子は、
見ていて寒気を覚えるほどの威圧感を与える。

『自動車関連の日本企業が点在する地域周辺などで特に活動が盛んであることから、これも学園都市に対するアンチ行動の一環だと推測されています。
フランス国民の八割以上がカトリック系ローマ正教徒であると言われており、同様の活動が複数の都市でも見られることから――――』
37 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/13(火) 01:25:07.44 ID:uAd5D4g0

 それでもまだ、この場合はましな方だ。
 アディリシアはため息をつく、昨日見たニュースにはカトリック系の教会へ突っ込み神職者九名が重傷というニュースが流れている。
 まるで小さな火種が乾燥した藁の山へ燃えうつるように、ここ数日で世界の動きは大きくかわった。ローマ正教側が世界中で同時に起こす
デモ活動と、それに対する一部の過激な反応が、次々と争いを加速させてしまっている。
 
 しかし、アディリシアは魔法使いとして、汚いものは沢山見てきたつもりだ。このニュースにはさほど興味をひかれない。
 しかし、学園都市に行った眼帯の少年が気がかりで仕方ない。あの眼帯の少年は唯一学園都市に普通に滞在する許可が出た魔法使いを率いる社長だ。
 彼の存在は魔術サイドに何も影響を与えていない、その『影響を与えていない』それこそが問題なのだ。
 魔術側には数々の噂がでている。
 アストラルは学園都市に懐柔されたのではないか、などの噂が立っている。
 だから、この混乱に乗じてアストラルを攻撃しようとする組織が出るのではないか、と。
38 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/13(火) 01:25:54.04 ID:uAd5D4g0
確かに、学園都市は警備は優秀だ。
 だが、そこまで優秀なわけではない。過去何度か魔法使いの侵入を許している。
 だから。

 「心配し過ぎかもしれないですけど、私も動きましょうかしら」

 アディリシアは、ローマ正教の抗議の裏の事を利用し少年の噂を打ち消そうと動いた。後にその行動は意味を成さないのだが、アディリシアは
この行動をした自分に感謝することになる。
 

39 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/13(火) 01:27:17.22 ID:uAd5D4g0
むう、やはりレンタルマギカは需要ないか
40 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/13(火) 01:49:40.81 ID:UgLWF2AO
時間帯もあるし、GEPだから保守も支援も必要ないからレスが少ないだけじゃないかと
期待してますぞ
41 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/13(火) 02:14:56.83 ID:uAd5D4g0
マジで!? モチべ上がりますわ
42 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/13(火) 07:30:04.59 ID:7YpSFwAo
読んでるからガンバレ
43 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/15(木) 19:36:15.16 ID:0Z0oW5w0
レンマギのスレキター
次回も楽しみにしています
44 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/16(金) 23:24:29.40 ID:pe/DiDY0
今回の大きな『争い』の中心には、とある一人の少年の存在がある。
 
 上条当麻。
 
 幻想殺しという力を持つ以外には、ごく普通の高校生であるはずの彼。しかしこの少年は、『神の右席』の言うことが正しければ、
現在二〇億もの人間を敵に回している状態なのだ。この数か月彼が巻き込まれ、死してなし崩し的に解決してきたことを思い返せば、
まぁ無理もない話ではあるのだが。
 そういう感じで、割と争いの中心っぽい少年、上条当麻は、
 
 「――――で、何でこんな事をしたのか、先生に話してみなさい」

 職員室で長身の女教師から思いっきり説教を受けてた。
 より厳密に言うならば、説教を受けているのは上条だけではない。青髪ピアス、土御門元春と一緒に三人並んでうな垂れている。
 
 その後ろには、何であたしがこんな所に呼び出されているんだというムカムカ顔の吹寄制理、そしてアハハハ・・・・と苦笑いの伊庭いつきも立っていた。
 穂波・高瀬・アンブラーはというとこうなる事を見越して退避をしていた。
 
 乱雑に物の置かれたスチール製の事務所机がたくさん並んでいる職員室は、お昼休みという事もあってか教師の数も多い。弁当を食べたり
テストの採点をしたり電気で動く木馬に乗って体重を落としたりやっていることも様々だ。
 
 そんな中、親船素甘という女教師は弁当も食べずテストの採点もせず電気で動く木馬に乗って体重をコントロールしたりもせず、安っぽい
回転椅子に腰掛け、ベージュのストッキングに包まれた足を組んで、針金みたいに硬そうな黒髪を片手でかき上げつつ、おそらく高価なブランド商品であろう
逆三角形の眼鏡越しにジロリと鋭い眼光を上条達へ浴びせてくる。
 
 「もう一度尋ねるわ。この学び舎で好き勝手に大乱闘し、コブシを武器にアツいソウルをぶつけ合っちゃった理由をこの私に説明しなさい」
45 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/16(金) 23:25:01.88 ID:pe/DiDY0
沈黙が生まれた。

 職員室の壁際に置かれたテレビからは『イタリアのサッカーリーグでは度重なるデモ行進や抗議行動の結果、試合会場の安全性を保てなくなったとして、
今期の試合を中止することを決定した』とか言うニュースが流れている。
 
 「説明できないの?」
 
 このブランド品で身を固めた不機嫌数学教師は、上条の学校の中でも特に『しつけ』に厳しい人物という事で有名だった。上条達とは受け持つ
クラスが違うため、今まではあまり接点がなかったのだが、今日に限って彼女に捕まってしまった。
 
 ちなみに上条達のクラスの担任は月詠小萌だが、いくら彼女でも昼休み中の教室の様子までは把握しきれない。なので、ケンカ中にたまたま
居合わせた親船素甘が上条達を取り押さえ、職員室まで連行してきたという訳だ。
 そんなこんなで、素甘の前でうな垂れている三馬鹿の一人、上条当麻はゆっくりと唇を開き、
 
 「だって・・・・・」
 
 意を決し、キッ! と正面を強く見据えると、
 
 「だって! 俺と青髪ピアスで『バニーガールは赤と黒のどちらが最強か』を論じてたのに、そこに土御門が横から『バニーと言ったら白ウサギに決まってんだろボケが』
とか訳の分らないことを口走るから!!」
46 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/16(金) 23:25:57.69 ID:pe/DiDY0
ガタガタン! という大きな音と共に素甘が椅子ごと後ろにひっくり返った。
 上条の大音量もさる事ながら、逆三角形の教育者メガネをかけた女教師には少々刺激の強過ぎる意見だったらしい。
 
 数学教師・親船素甘は三馬鹿から目を離し、その背後に立っていた吹寄制理と伊庭いつきに目を向けると、
 
 「・・・・・・ま、まさか、あなた達もそんなくだらない論議に参加して・・・・・?」
 
 「あたし達はこの馬鹿どもを黙らせようとしただけです!! 何であたし達まで引っ張られなきゃならないんですか!?」
 
 こめかみから血管を浮かばせて吹寄は叫び返す。そして伊庭いつきはと言うと「ハハハ・・・・」と苦笑いをするだけ。
 
 とはいうものの、親船が上条達のクラスに踏み込んだ時、吹寄は土御門にヘッドロックをかけつつ青髪ピアスを蹴り倒し、上条当麻に硬いおでこを叩きつけている所だったのだ。
ガキ大将度で言えば間違いなく彼女がナンバーワンである。
 ちなみに伊庭いつきはオロオロしてただけ。なのに連れてこられたのは、彼が上条当麻に次ぐ不幸体質の持ち主なのだろう。
 
 一方、青いサングラスをかけた土御門は体を左右に振りながら、
 
 「にゃー。ひんにゅー白ウサギばんざーい」
 
 その言葉に黙ってなかったのは青髪ピアスだ。
 
 「こ、この野郎は何でもペタペタにしやがって!! っつかお前はバニーさんには興味なくて、とにかくロリなら何でもええんやろが!!」
 
 「それが真実なんだにゃー、青髪ピアス。この偉大なるロリの前には、バニーガールだの新体操のレオタードだのスクール水着だの、巫女服だの
そういった小さな衣服の属性など消し飛ばされてしまうんだぜい。つまり結論を言うとだな、ロリは何を着せても似合うのだからバニーガールだってロリが最強と言う事だにゃーっ!!」

 「テメェ!! やっぱりバニーガールの話じゃなくなってんじゃねぇか!!」
 
 腕まくりをして第二ラウンドを開始する三馬鹿を見て、逆三角形眼鏡で堅いスーツの女教師・親船素甘は椅子ごと後ろにひっくり返ったまま懐から取り出したホイッスルを吹く。
 ピピーッ!! という甲高い号令と共に、職員室の奥から生活指導のゴリラ教師、災誤センセイがのしのしと接近してきた。
 
 そして伊庭いつきは土御門にみかんちゃんを近づけないようにしようと心に決めた。
47 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/16(金) 23:26:40.31 ID:0.mlrcAO
超支援
48 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/22(木) 21:33:29.44 ID:O6ytFwDO
もう来ないの?
49 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/24(土) 21:44:46.74 ID:R31wVWU0
どうせハルヒだろうなーとスルーしてたけど、
もしやと思って開いたらやはりレンタルマギカだとは

50 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/02(日) 20:18:06.15 ID:nZukcts0
おくれてすまん
51 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/02(日) 20:18:34.78 ID:nZukcts0
そんで野球で伊庭いつきが何故か怒られたり、素甘が悲惨な目にあったりその素甘に上条といつきが
巨大三角定規で殺されかけたりで時間が流れた。

 「ちくしょう……ホントに死ぬかと思った」
 
 「ははは……そうだね」
 
 上条といつきは学校を出て、暗くなってきた帰り道をとぼとぼ帰りながら話していた。
 一〇月に入ると、この時間帯は少しずつ寒くなってくる。気温の変化に応じているのか、
夏場に比べると若干人の数が減っているようにも感じられた。薄暗い空に浮かぶ飛行船の大画面からは、
『空気が乾燥しているので火の元に注意してください』というアナウンサーの声が飛んできている。
 
 上条といつきは駅前の歩道をゆっくり進んでいる清掃ロボットを避けつつ、上条は今日の晩ご飯は何にするかな、
と考え、いつきは今日も大変だったけど楽しかったなと考えていた。
 と上条は冷蔵庫の中が寂しい状態にある事を思い出し。

 「あーごめんいつき、上条さんは家の冷蔵庫が今心配な状態にあるからスーパーに行ってくるでせ……う……」
 
 そんな事言ってると、常盤台中学の制服を着た茶色い髪の少女、御坂美琴の背中を発見してしまった。
 しかもジュースの自販機にハイキックをぶち当てては、『ここの自販機は駄目なのか、あれー……?』などと首を傾げている。
 
 その様子を見たいつきは、ボー然とし、上条は、いつきの肩を掴み、無言で一八〇度回転すると、急いでその場を離れることにした。
52 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/02(日) 20:19:07.61 ID:nZukcts0
「ど、どうしたの? 当麻君? そんなに急いで」
 
 「……君子危うきに近寄らず。または触らぬ神に祟りなしとも言う」

 「何がよ?」
 
 さりげなく放った独り言にすぐ後ろから返事が聞こえて、ビクゥ!! と上条の背が真っ直ぐになり、つられてビビり症のいつきも
跳ねた。
 上条と何故だかいつきも恐る恐る、もう一度一八〇度回転して見ると、そこにはキョトンとした顔の御坂美琴が。
 
 うう……と上条は思わず悲鳴めいた吐息をもらし、いつきは何故だか危ない目にあいそう、なんて直感めいた事を考えていた。

 「許してください……」
 
 「だから何がよ?」
 
 「上条さんは放課後の草むしりとカその他色々で本当にヘトヘトなのです! だからこれ以上のトラブルは本当に許してください!!」

 「だからなんだってつってんのよッ!?」

 美琴はいつきを置いてマッハで逃げようとする上条の首根っこを掴んで、その耳元で噛みつくように叫ぶ。

 「あんたはあんたの友達を置いて行くつもりなの!? っつーかことあるごとに会話を切り上げようとすんじゃないわよ! この前送った
メールの返信も放ったらかしだし、あれどうなってんのよちょっとあんたのケータイ見せてみなさいよ!!」
53 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/02(日) 20:19:33.76 ID:nZukcts0
流石に上条が可哀想なのか止めに入るいつき。

 「ちょっと、落ち着こ……」

 「あんたは黙ってなさい!!」

 「……はい」

 やっぱり無理だった。
 上条は頭に?マークを浮かべながら御坂にこたえる
 
 「メール……? そんなのあったっけ?」
 
 「あったわよ!!」
 
 上条はちょっと考え、自分の携帯電話を取り出し、美琴に見せるようにメールボックスを開いて、それから小首を傾げると、

 「……あったっけ?」

 「あったっつってんでしょ!! げぇ、受信ボックスに何もない!? もしかして私のアドレスをスパム扱いしてんじゃないでしょうね!!」

 メールの件で愕然とする美琴だったが、そこで彼女はさらなる真相に辿り着く。
 ボタンを操る上条の手をガシッと掴んで差し止め、受信フォルダにある名前を凝視すると、

 「……アンタ。何でウチの母のアドレスが登録されてる訳?」

 「は?」
54 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/02(日) 20:20:06.66 ID:nZukcts0
言われてみれば、確かこの前酔っぱらいの美坂美鈴(ss1参照)と学園都市で遭遇したが……とか上条が思っていると、美琴は眉間に
皺を寄せたまま親指で上条の携帯電話を操作し、件の美鈴へ通話してしまう。
 
 「まてって、おい!?」
 
 美坂は焦ってスピーカーフォンモードにするボタンを押してしまったのか、上条といつきの耳までコール音が聞こえてくる。
 
 「ちょっと母。聞きたいことがあるんだけど」
 
 『あれー? 表示ミスってるのかな。ディスプレイに美琴ちゃんの番号出てこないんだけど』
 
 キョトンとしている美鈴の声。
 
 美琴と美鈴の会話に耳を向けている限り、何で上条の電話に美鈴の番号があるのか、その経緯を訪ねているようだが、

 『うーん』

 間延びした声と共に出た結論は、
 
 『あの少年とは夜の学園都市で会ったと思うんだけど……ママ酔っ払ってる時は記憶なくしちゃうからなぁ。一体いつの間にこんな事に
なってたかはママにも分んないよ、はっはっはっ』
 
 うん、うん、と美琴は小さく頷いて、通話を切った。
 彼女はにっこりとほほ笑み、携帯電話を両手に包んでお上品に上条に返し、いつきは少し青ざめながら、
 
 「ア・ン・タ・は、人ん血の母を酔わせて何をするつもりだったああああ!?」
 
 「上条さん……いい人だと思ってたのに……」

 「はぁー!? 何だそのエキセントリックな推理は!? あとお前の母は絶対覚えてるよ! 何故なら最後の笑いが超胡散臭かったからッ!!
そしていつき! お前も勘違いするなよ!! しかもなんでさんづけ!?」
55 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/02(日) 20:21:00.33 ID:nZukcts0
ちょっと考えれば簡単に分かる事なのだが、プチ家庭崩壊の危機に見舞われていると思い込んでいるせいか、何やら美琴は顔を真っ赤にして
冷静さに欠け、いつきは友達が悪の道に走ったと考え青ざめている。
 もうここは話題を変更するしか!! と上条は強引な舵取りを決行し、

 「ほっ、ほらっ。上条さんは寮に帰ってお米研がなきゃいけないし……。っつーかお前の量門限あるだろ! もう日没ですよ!?」
 
 「はあ、門限? そんなんちょろっと工夫すればどうでもなるんだけど」
 
 サラリと言う美琴に上条は頭を抱えたくなった。いつきは『えー』て感じの顔でボー然と御坂を見る。
 美琴の方は上条の心境には全く気付いていないようだが、一応話題は逸れたようだ。
56 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/02(日) 20:21:32.45 ID:nZukcts0
「でも確かにちょっとチェックは厳しくなるてるように感じるわね。ここ最近慌ただしくなってきたからかもしれないけど。
前は新聞も読まなかった連中も、携帯電話のテレビニュースをチェックしたりネットで情報サイトを検索したりと忙しいみたいだし」
 
 「……、」
 
 「……、」

 「まっ流石に誰でも気になるわよね……。『あんな風になったらさ』」
 
 美琴が言っているのは、おそらく九月三〇日のことだろう。
 今の『見えない戦争』の引き金となった、そして伊庭いつきが学園都市に来ることになった直接的な一件。
 学園都市のゲートが破壊され、街の全域の住人が学生と言わず教職員と言わず片っぱしから『攻撃』され、
治安維持組織である警備員や風紀委員の機能を完全停止され、半径一〇〇メートル半径一〇〇メートル近くにわたって街並みがクレーター状
に破壊された、あの事件。その全てが一人の人物によって行われたものではないし、複数の組織や思惑が交錯したおかげで、当事者である
上条さえ事件の全貌を掴めていない。……いや、本当にそれを完璧に把握したものはいるのだろうか、とさえ思ってしまう。
 
 上条は魔術側の伊庭いつきにも聞いたことがあるが良く分かっていなかった。
 上条という中心人物ですら良く分かっていないのだから、ただ巻き込まれただけの人々に分る事は限られているだろう。
 なまじ事件の中心から外れているからこそ、『安全な位置から調べ物をする余裕』ができてしまっているのかもしれない。
 そして、美琴としても学園都市が発表した『国外の宗教団体が秘密裏に科学的な超能力開発を行っていて、そこで開発された能力者が襲ってきた』
という話を鵜呑みにはしていないだろう。
57 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/02(日) 20:22:28.23 ID:nZukcts0
美琴は上条の顔から視線を外し、やや遠くを見た。
 ここから五〇〇メートルほど先には、とある『大天使』の出現と共に切り崩された街並みがある。九月三〇日の事件について思いをはせているのかもしれない、
と上条は思ったのだが、どうも美琴が眺めているのは薄暗い空に浮かぶ飛行船のようだ。
 飛行船の側面には大画面が取り付けられており、今はニュース番組が流れている。
 
 『今までヨーロッパ圏内で活発に行われていた、ローマ正教派による大規模なデモ行進や抗議行動ですが、今度はアメリカ国内です』
 
 原稿を読んでいるアナウンサーは冷静だ。
 
 『今回はサンフランシスコ、ロサンゼルスなど西海岸の湾岸都市ですが、今後これらの活動はアメリカ全体に広まっていくものと推測されます』

 映像が切り替わる。
 おそらクロスのものだろう。
 向こうの現地時間は深夜のはずだが、録画の映像は昼間だった。
 
 (ちくしょう。また一気に拡大したな)
 
 上条はひどい傷口を見るような顔になった。
 そんな上条を見ていつきも大画面に映る人たちを見て心配そうな顔でつぶやいた、
 
 「……一体どうなるんだろう?」
58 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/02(日) 20:23:02.49 ID:nZukcts0
大画面ではマラソンのスタート直後のように、片側三車線の大きな道路が人の波で埋め尽くされていた。自分で用意したらしき学園都市の
看板に火を点けて頭上に掲げたり、横断幕をずたずたに引き裂いたりしている。
 
 そんな光景を見て伊庭いつきは、例え学園都市にいる時間が短くても新しく友達ができそして好きになった学園都市を
あんな風に批判されるのは心情的に苦しかった。

 大画面の彼らは基本的に決められた順路を数時間わたって練り歩き、『自分達は怒っているぞ』という事を強くアピールするのが目的だ。
ただ怒りに任せて街にあるものをを片っ端から壊していく無秩序なものとは違う。
 
 しかし、だからと言って安全ではない。
 
 映像では、どこかで乱闘があったのか、頭から血を流す男が救急車の壁に寄り掛かっていた。顔には青黒い痣を作ったシスターが、
ぐったりとした神父に肩を貸しながら助けを呼んでいる。
 
 誰も彼も、普通の、人たちだった……。

 超能力や魔術なんてものには縁のなさそうな人たちにしか見えなかった。
 確かにデモに参加している人達は、広い意味ではローマ正教の信徒なのかもしれない。首には十字架を提げているし、
聖書の内容を口ずさむこともできるだろう。
59 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/02(日) 20:23:31.81 ID:nZukcts0
だが彼らが『前方のヴェント』のように、ローマ正教の暗部にまで関わっているとは考えにくい。普通に学校に行ったり会社に行ったりしているだけで、
休日には家でゴロゴロしたり広い庭でバーベキューをしたり、それだけの人達のはずだ。
 
 「……どうなってんのよ」
 
 飛行船の大画面を眺めていた美琴が、ポツリと呟いた。

 「九月三〇日に何が起きたかなんて知らないけど、別にこんなの望んでなかったじゃない。あの一件が引き金になったなんて言われても、
当の学園都市は全然静かじゃない。何でこいつら、勝手に殴りあって勝手に傷つけあってんのよ。黒幕は顔も出さないくせに、こいつらだけが苦しめられるなんておかしいじゃない」

 「っ……」
 
 「……」

 上条といつきは、美琴の言葉を黙って聞いた。
 
 黒幕。
 
 美琴は無意識の内に、その言葉を使っていた。おそらくはそこに、彼女の望みがある。誰かが話をこじらせていて、たった一個の原因を取り除けば、それが全て元通り……。
         レールガン
 なまじ美琴には『超電磁砲』という強力な能力があるため、そちらの方がわかりやすくてやりやすいのだろう。

 しかし、そんな『黒幕』なんてどこにもいない。
60 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/02(日) 20:24:01.36 ID:nZukcts0
確かに、全ての原因となった九月三〇日の事件起こした者はいる。前方のヴェント、風斬氷華。さらには彼女たちの裏側にいる『何者か』。
 それを九月三〇日の時点で綺麗に止める事ができていれば、『黒幕を倒す』方法で丸く収められたかもしれない。
 ただ、火事で言うなら、これは被害の発端となるような火種ではない。
 結果として生じてしまった、莫大な山火事そのものだ。
 
 もはや黒幕を捕まえた所で何かを止められる段階は過ぎているのだ。
 
 デモを起こしているのは、あくまでその辺の普通の人たちだ。別に誰かに指示されたから無理やりやらされているのではなく、新聞やニュースを見て憤り、
それだけでデモに参加しているだけ――――個々の信条で動いているだけなのだ。
 
 『黒幕を倒す』方法を使って世界中で起きているデモを止めるには、それこそ、世界中でデモに参加している人達を一人一人殴っていくしかない。
 
 そんな方法では駄目なのだ。
 だが、それならどんな方法なら万事解決するのか。
 
 「……どうなってんのよ」

 もう一度、繰り返すように言った美琴の言葉が、上条の胸に刺さった。
 子どもが考えたところで、答えは出ない。
 
61 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/02(日) 20:24:32.94 ID:nZukcts0
行間 一 暗き罪人と黄金の姫
 
 ロンドン
 処刑塔はイギリスの観光名所としても知られている。
 かつては囚人たちの末路と知られ、この門をくぐった者は生きて出る事はできないとまで言われた血と拷問と断頭刑の施設だったのだが、
現在では一般に開放され、わずか一四ポンド足らずで……ちょっとしたお店に入ってアフタヌーンティーを楽しむより安い値段で、
誰でも簡単に見学できるようになっている。てんじされているものも、処刑設備としての歴史でなく、英国王室が所有する宝石類も並べられているぐらいだ。

 しかし一方で、この施設には現在も稼働し続ける莫大な『死角』が存在する。
                                ロンドン
 まるで強い光によって浮かび上がる黒い影のように、観光地としての処刑塔寄り添っているが、決して表からでは見ることも入る事もできない
迷路状の『死角』。現在も囚人達を捕え、必要とあらば拷問でも処刑でもためらいなく実行する、処刑塔が処刑塔という通り名をつけられた、
昔ながらの役割を持った暗黒の施設群だ。

 表の入り口から入っても、影の部分には触れられない。
 裏の入り口から入ったら、影の部分から抜けられない。

 「……、相変わらず、重苦しい空気だ」
 
 ステイル=マグヌス(14歳)は煙草をの煙を吐きながら、思わず呟いた。
 観光施設とは異なり、実用重視の通路は狭くて暗い。乱雑に石を組んだ壁にはランプの煤が黒くこびりついて、炎が揺らめくたびに人型
の染みが蠢いているように見える。湿気を逃がす機構が乏しいのか、床の表面は冷たい露でうっすらと覆われていた。
 
 しかし、その中でも王の威厳を無くさない黄金に輝く髪を持つ少女がそこにいた。
62 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/02(日) 20:25:12.14 ID:nZukcts0
行間 一 暗き罪人と黄金の姫
 
 ロンドン
 処刑塔はイギリスの観光名所としても知られている。
 かつては囚人たちの末路と知られ、この門をくぐった者は生きて出る事はできないとまで言われた血と拷問と断頭刑の施設だったのだが、
現在では一般に開放され、わずか一四ポンド足らずで……ちょっとしたお店に入ってアフタヌーンティーを楽しむより安い値段で、
誰でも簡単に見学できるようになっている。てんじされているものも、処刑設備としての歴史でなく、英国王室が所有する宝石類も並べられているぐらいだ。

 しかし一方で、この施設には現在も稼働し続ける莫大な『死角』が存在する。
                                ロンドン
 まるで強い光によって浮かび上がる黒い影のように、観光地としての処刑塔寄り添っているが、決して表からでは見ることも入る事もできない
迷路状の『死角』。現在も囚人達を捕え、必要とあらば拷問でも処刑でもためらいなく実行する、処刑塔が処刑塔という通り名をつけられた、
昔ながらの役割を持った暗黒の施設群だ。

 表の入り口から入っても、影の部分には触れられない。
 裏の入り口から入ったら、影の部分から抜けられない。

 「……、相変わらず、重苦しい空気だ」
 
 ステイル=マグヌス(14歳)は煙草をの煙を吐きながら、思わず呟いた。
 観光施設とは異なり、実用重視の通路は狭くて暗い。乱雑に石を組んだ壁にはランプの煤が黒くこびりついて、炎が揺らめくたびに人型
の染みが蠢いているように見える。湿気を逃がす機構が乏しいのか、床の表面は冷たい露でうっすらと覆われていた。
 
 しかし、その中でも王の威厳を無くさない黄金に輝く髪を持つ少女がそこにいた。
63 :すまね、同じやつ投稿しちまった :2010/05/02(日) 20:26:27.27 ID:nZukcts0
 ソロモンの姫アディリシア・レン・メイザース

 「尋問対象はリドヴィア=ロレンツェッティとアージオ=ブソーニという事らしいけど」
 
 「彼らには『神野右席』について聞きたいことがある。一部隊を率いる君でも知らないとなると、VIPに訪ねた方が早そうだしね」

 「……、それもそうですわね、その為に私も来たんですもの、喋らなかったら魔神を使ってでも喋らしますわ」

 「ソロモンの姫が何故彼らにそんなにも肩入れするのも謎だが」
 
 そう区切りステイルは心底謎だという顔で言った。
     アークビショップ 
 「我らの最大主教とお知り合いだとは知りませんでしたね」
 
 「知り合いだったのはお父様ですわ、貴方方の魔術側には興味がありませんけど……」
 
 アディリシアは眼帯の少年を思い浮かべる。
 アディリシアはあの少年が好きだ。だから、あの少年だけでも危険から回避したい、その為にここまで来た。
 『神の右席』の誰かに会い、アストラルは危険じゃないとアピールするために。 
 しかし、そんな事はステイルなんかに言えるはずもなく。
 
 「な、なんでもありませんわ早く行きましょう!!」
64 :すまね、同じやつ投稿しちまった :2010/05/02(日) 20:26:57.59 ID:nZukcts0
「?」

 ステイルは不思議そうな顔をして、気づいたら扉の前についていた。
 
 ノックもせず開けると、その先にあるのは三メートル四方の、とても狭い小部屋だ。 
 ここはまだ『尋問』室なので、宗教裁判にありがちな拷問器具は無い
65 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/03(月) 02:43:40.24 ID:74mwrJc0
すまんな、遅れて
66 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/06(木) 18:33:43.40 ID:v5KydFQ0
まだまだ序盤だな
支援
67 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/23(日) 02:32:54.82 ID:zzcYQg.0
 ある物と言えば、せいぜい床に直接ボルトで固定されたテーブルを挟んで、同じく床に直留してある椅子が二つずつ設置されているぐらいだ。
 
 向かって右側の椅子には、最低限のクッションがついている。
 対して左側の椅子は剥き出しの粗雑な板だけだ。
 おまけに肘掛の部分にベルトや金具があり、人間の腕を固定できるように作られている。
 
 そして左側の二脚には、それぞれ二人の人間が拘束されていた。

 リドヴィア=ロレンツェッティ

 ビアージオ=ブソーニ

 どちらもローマ政教も中では特殊なポジションにいる『重役』である。
68 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/23(日) 04:11:27.18 ID:zzcYQg.0
 「こちらが聞きたいことは分かっているわね?」
 アディリシアは入ってすぐ、高圧的な態度で声を放った。
 ステイルは右側の椅子に座り、アニェーゼは椅子に座らず、多少手持ち舞沙汰な感じで彼の傍らに立っていた。
 そしてアディリシアの登場にはには椅子にベルトや金具で固定されたビアージオとリドヴィアは目を見張った。
 
 「……なぜあちらの協会の魔法使いがここにいる? アディリシア・レン・メイザース」
 
 ビアージオは多少驚きながらも凄味ながらそうアディリシアに言った。
 アディリシアはその態度に心底どうでもいいという感じでビアージオとリドヴィアに告げる。

 「『神の右席』。知っていることを全て話してもらいますわ」

 その答えにリドヴィアは怪しみながらも答える。

 「何故、ソロモンの姫が神の右席について? 貴女方には関係のないことでは?」

 「えぇ、私達側の魔法使い達には関係ないですわ」

 「なら、何故です?」

 「私個人の問題ですの」

  
69 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/23(日) 04:13:29.37 ID:zzcYQg.0
遅れてすまないが、こちらの用事はほとんど終わったので
大分時間がとれるかと
70 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/23(日) 04:33:40.27 ID:zzcYQg.0
 リドヴィアは微妙に納得できない顔で引き下がった。
 そしてビアージオは顔を怒りに染めながら言う。
 
 「ふん、ソロモンの魔人でもイギリス清教自慢の拷問道具でも持ってこい。私の信仰心がどれほどのものか、未熟な貴様らに見せてくれる!!」

 ビアージオはそう、断固にして語らぬという態度で語る。

 一方リドヴィアはアデリシアの会話以降、感情を表面に表していない。
 努力して消しているのではなく、本当に自然な調子で顔に変化がない。表面上に苛立ちを示すビアージオより、あるいはリドヴィアのほうが忍耐力は強いのかもしれない。
 
 あまりにも予想通りな不遜な対応に、アニェーゼは時間がかかりそうだ、と心の中で思ったが、

 「俺達『必要悪をの教会』を見くびるなよ」

 不遜なのは、彼らだけではなかった。

 ステイル=マグヌスは煙草をうっすら吐きながら、笑う。

 ゾッとするほど酷薄に。
71 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/23(日) 04:48:20.61 ID:zzcYQg.0
 「別に拷問の過程で君達が死のうが、知ったことじゃない。『必要悪の教会』には、死体の脳か
ら情報を引きずり出す技術も存在する。それに、このソロモンの姫の魔神の力で無理やり話させることもできる。 
まぁ、前者のやり方は防御や損傷の度合いにもよるけどね」

 横で聞いていたアニェーゼすら背筋が寒くなるような言葉だった。
 そしてアニェーゼはステイルの話を涼しそうな顔で見ているアディリシアを見て人間はここまで恐くなれるのかと思う。

 リドヴィアとビアージオは、ステイルの台詞がハッタリでもない事を掴んだのだろう、ビアージオは忌々しそうに表情を歪める。
 リドヴィアもようやく興味を持ったように、眼球だけを動かしてジロリとステイルとアディリシアを見る。

 ステイルの法は特に気負いもせず、面倒な作業をしているような、億劫そうな声を出す。

 「君達の言う『拷問:』と、僕達の言う『拷問』は、種類が違うという訳だ。[ピーーー]ば楽になれるなんてナメた台詞は、通用しない。
抵抗するのは構わないけど、犬死だと言っておこうかな、まぁそもそもソロモンの魔神の力で[ピーーー]ないんだろうけど」
72 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/23(日) 04:49:24.54 ID:zzcYQg.0
ぴーの部分は し(ぬ という意味です
73 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/23(日) 09:49:20.82 ID:ARehObM0
http://www.killerjo.net/
74 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/23(日) 15:21:15.81 ID:zzcYQg.0
>>73 心臓に悪いからやめれ……
75 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/23(日) 15:40:18.17 ID:YCl7pFM0
>>73
お前別のとこでもこれ貼りやがっただろ!?
貼りやがったな!?
76 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/23(日) 15:54:21.93 ID:zzcYQg.0
YES
77 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/23(日) 16:00:54.12 ID:zzcYQg.0
 数秒間、沈黙が続いた。
 ステイルを睨みつけるビアージオに代わり、リドヴィアの方があっさりと口を開く。

 「こちらとしては、そんな些細なことなどどうでも良いのですが」

 彼女はステイルの顔を見て、言う。

 「それよよりも、ひとつ教えていただきたいのですが。現在、『外』はどうなっているので?」

 その言葉を聞いてステイルは眉をひそめたが、すぐに思い出した。

 (……言われてみれば、そんな報告も受けていたかな)
78 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/23(日) 16:23:10.73 ID:zzcYQg.0
 リドヴィア=ロレンツッェテイは社会に認められなかった人ばかりに手を差し伸べる、ローマ政教の中でも変わり種の存在だったらしい。
 そんな彼女からすれば、処刑塔に幽閉され、満足に『外』の情報を得られない状況は『保護対象』への心配ばかり生んでいたのだろう。なまじ、断片的には『世界中の混乱』の話を耳にしているだけに。

 そこまで思い出して、ステイルは口元に笑みを浮かべた。
 彼は言う。
  、、、、、、、、、、、、、、、
 「どうせ予測はついているだろう?」

 「……、」

 ビクリ、とリドヴィアの表情がわずかに動いた。
 当然ながら、暴動や混乱などで真っ先に犠牲になったのは、そういった弱い人々だ。

 「……、ふん」
79 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/23(日) 17:00:13.56 ID:zzcYQg.0
 反対に、ビアージオ=ブソーニはエリート志向の強い、新職者至上主義の人間だ。従って、混乱の被害よりも、混乱による成果や結果に興味があるらしい。
 リドヴィアはステイルの顔を見据えて言う。

 「私の協力の代償に、この処刑塔に囚われている『仲間』達の解放を要求します。この混乱を少しでも収め、弱き人々の屋根となれる人々の開放を」

 その言葉に反応したのは、ステイルではなくアディリシアとビアージオだった。リドヴィアのアッありした妥協にアディリシアはこんなにも上手く行くとは思わず、ビアージオは苛立たしげな態度を隠しもせず、唾でも吐くように舌打ちした。

 一方、ステイルの顔には余裕しかない。

 「応じると思うかい」
80 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/23(日) 17:04:54.64 ID:zzcYQg.0
 「応じさせて見せますが」
 
 「どうやって」

 ステイルが言うと、リドヴィアはわずかに呼吸を止めた。

 固定用の椅子の肘かけに両手を拘束されたリドヴィアの唇が、なめらかに動く。

 「――――聖ピエトロは皇帝と魔術師の魔手をかいくぐる」
 
81 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/23(日) 17:19:29.65 ID:zzcYQg.0
 その言葉を聞いてステイルとアディリシアは眉をひそめる。
 リドヴィアから霊装や魔具などは没収してある。この状態で呪文を唱えたところでろくな
魔術が発動しないはずだが、
 
 光が発生した。

 リドヴィア=ロレンツッェテイからではない。
 ステイルの傍らに控えていたアニェーゼの胸元にあるローマ政教式の十字架からだ。

 「チッ!!」

 「なっ!!」

 ステイルとアディリシアが反応する前に、十字架から閃光が吹きあえた杭のような光は一直線にリドヴィアへ伸びると、彼女の右腕を
固定しているベルトや金具を外側から強引に破壊する。

 リドヴィアは千切れた拘束具の鋭い金属片を掴み、ステイルの懐へ手を伸ばす。
82 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/23(日) 17:26:05.71 ID:zzcYQg.0
 アディリシアは胸元のペンダントに手を伸ばすがリドヴィアの方が早い。
 アディリシアの弱点は呪文の詠唱が長いのと、召喚まで時間がかかることだ。
 
 そしてステイルとリドヴィア、二人の手が弾丸のように交差する。

 「……、」

 「……、」

 ステイルとリドヴィアが沈黙する。

 ステイルのの喉元には金属片のとがった先端が、リドヴィアの喉元にはルーンのカードの角が、
それぞれ押し当てられている。

 「――――ッ! リドヴィア!!」
83 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/23(日) 18:50:19.28 ID:2afp1qQo
なんという俺得
84 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/25(火) 02:36:20.62 ID:Hh/0Q820
 一瞬の驚愕から立ち直ったアニェーゼが、慌てて壁に立てかけてあった『蓮の杖』を手に取る。

 しかしステイルはリドヴィアを睨みつけたまま、片手でアニェーゼを制する。
 魔術師は明らかに楽しんでいた。これでこその『尋問』だとでもつげているように。

 「この程度で、僕の命を奪えると思っているのかな?」

 「適切な人材の解放が叶わなければ、そうするしかありませんが」

 リドヴィアの声は淡々としている。

 「オリアナ=トムソン。彼女を開放し、暴動にのまれる人々を先導させうことを要求します」

 「そんな事が言える立場かどうか、もう一度考えてみろ」

 ステイルの声も震えていなかった。
 オリアナとは、リドヴィアと組んでいた有能な『運び屋』の事だ。

 「あの『運び屋』も世界中で起きている『事態』については承知している。そのうえで、『指導者リドヴィア=ロレンツェッテイの手による弱者たちの保護』という取引を持ち出して、イギリス清教との一時協力の契約を結んでいるからね。それから解放しろと言われたところで、オリアナ自身が承諾しないだろう」

「――――、」

 リドヴィアもオリアナも、同じ事を考えていたという訳だ。
 そしてオリアナの方が行動は早かった。
 
 それを聞いてアディリシアは思う。
 程度は違えど魔法使いにも本気で人助けしたがる人間がいるのかと思うとアディリシアは嬉しくなる。まるでいつき見たいな人間が増えたかのような感覚が嬉しい、そうアディリシアハ思う。が、流石に魔法使いのトップにいるアディリシアは顔には出さない。

 それとアディリシアはもう一つ思う。自分の魔術側はととても黒い。そう思わされた。

 わずかに沈黙したリドヴィアに、ステイルはさらに言う。
85 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/25(火) 02:37:33.60 ID:Hh/0Q820
>>84 魔法使いのトップではなく魔術結社の首領です
86 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/25(火) 02:53:39.60 ID:Hh/0Q820
「……彼女の覚悟を無駄にしない事だ。この状況をローマ政教、いや『神の右席』が作り上げているとすれば、その打倒にこそ解決の糸口がある。違うかな?」

 リドヴィアはしばらく答えなかった。

 ビアージオは茶番だとでも言いたげに舌打ちして顔をそらす。
 重い重い沈黙の後で、彼女はゆっくりと口を開いた。

 「あなた達の望みは何なので?」
 
 「私は私のために」
 
 と、アディリシア

 「『必要悪の教会』の目的は明快だ」

 ステイルは退屈そうに言った。
87 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/25(火) 03:05:25.56 ID:Hh/0Q820
「魔術という圧倒的な力にのまれた迷える子羊を救い出すこと。今も昔もそれは変わらない」

 ジロリ、とリドヴィアはステイルの目を見た。
 彼は怯まなかった。
 リドヴィアはステイルの何を観察しているのか、やがてゆっくりと息を吐いて力を抜いた。

 「……私は直にあった事はありませんが。その断片的な情報を耳にする機会はありました
ので」

 暗い尋問室に、リドヴィア=ロレンツェッテイの言葉が響く。

 ステイルの傍らにいるアニェーゼは、ようやく椅子に座って記録用紙の羊皮紙を広げた。

 「それによると、『神の右席』とは――――」
88 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/25(火) 03:12:25.25 ID:Hh/0Q820
 
 
            第二章 決定打となる引き金
89 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/27(木) 02:42:22.33 ID:PNvqghc0
 上条といつきは美琴と別れた後、駅前のデパートに足を運んでいた。
 地下一階の生鮮食品コーナーを覗くと、今日は野菜が安いらしいので上条は四日ほどの食材を買い込んでいく。

 「しかし、いつきも自炊派だとはな」

 「いや、ただ単に一人暮らしだったから自炊派なんで」

 上条はその歳で一人暮らし? とも思ったが、他所には他所の事情があるのだろうと深くは突っ込まない。

 「まぁそんなことより隣にいつきが引っ越して来た方がびっくりしたけどな」

 「いや……それは学園都市の人が……」
90 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/27(木) 02:54:03.23 ID:PNvqghc0
 まぁなんやかんやで主夫仲間になった上条といつきは「惣菜コーナーは人気だけど、
野菜やお肉系には人が集まってなかったな」とかいつきが「そうですね、自炊派の数って減ってるんでしょうか?」
とか主婦らしい会話をしていた。

 上条がふと、空を見上げると、そこにはやはり飛行船が飛んでいて、おなかの大画面がニュースwwpながしていた。
 先ほどと同じくアメリカの抗議デモ……と思いきや、今度はロシアらしい。
 抗議運動のニュースばかり続いているせいで、新しいものと古いものの区別がつかなくなってきていた。
 
 「……、」

 いつきは上条が両手に物袋を提げたまま立ち止まって考えているのを見て自分も思う思う。

 ついさっき聞いた、御坂と言う人の言葉を。
91 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/18(金) 01:05:56.94 ID:QjXe3wUo
?
92 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/27(日) 11:18:59.58 ID:V/5TjO.o
書き手のレスがないまま1ヶ月が経過したのでご案内

続ける意思がなくなった場合は以下のスレでHTML化依頼をお願いします
■ HTML化依頼スレ Part1
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1190564438/

続ける意思がある場合は2週間に1度ぐらいでいいので生存報告をよろしくお願いします
みんなで仲良く製作速報を使えるようになるべく放置スレを減らしましょう
93 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/07/04(日) 12:37:43.33 ID:DCCYSsDO
支援
94 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/07/04(日) 12:38:36.90 ID:DCCYSsDO
支援
95 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/07/04(日) 12:41:52.22 ID:t9FsIMDO
支援
66.91 KB   

スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)