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レッドドラゴン「聖杯戦争?」 - 製作速報VIP(クリエイター) 過去ログ倉庫

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1 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 17:57:42.65 ID:uyGnBYY0
「――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
呼ばれている、知らない声。
強く引き上げられる、そんな感覚。
「誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

ーー第一章 覚醒ーー
一節 契約の紅
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
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2 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 18:00:14.64 ID:uyGnBYY0
「なっ!?」
我等の姿を見て、おそらく『マスター』であろう小娘が絶句する。
それもその筈、ドラゴンというものは本来人間などが目に掛かれるようなものではない。
「っ! 取り乱すな、遠坂凛!」
しかし、そやつは自身に喝を入れると、こちらに一歩踏み出す。
普通の人間なら我の姿を見ただけで逃げ惑うというのに、この小娘は踏み出して来た。
成る程、これがマスターか。
「貴方が私のサーヴァントね」
そして、我等の目の前まで来た小娘は、そう言ってこちらに指を突きつける。
と言っても、我ともう一人のどちらに向ければいいか分からないらしく、
一時その指を宙に迷わせた後、取り合えず我の隣の人間に突きつけ直した。
3 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/03/31(水) 18:03:18.12 ID:uyGnBYY0
「ーーーー」
しかし、その人間が口を開く事はない。
「貴方が、私の、サーヴァントね」
一時の沈黙ののち、小娘が再び口を開く。
先程より幾分強い語気で、一句一句を区切りながら。
「ーーーー」
それでもまだ人間は口を閉じたままだ。
小娘の体が震え出す、侮辱されたとでも思ったのだろう。
そんな事はどうでもいいが、これ以上不要なやりとりを交わすのも面倒だ。
「そいつは口を聞けん。人と言葉を交わすなど願い下げだが、今回は特別だ。
名乗れ、マスター。すればこちらも答えよう」
予想外の方向からの声に驚いたのか、小娘は一瞬体を震わすと、こちらに向き直る。
しかし、やはり人間というべきか、目を合わせようとはせずに俯いたままだ。
「……るな……ける……負けるな!」
しかし、少しの間そのままの姿勢でなにかを呟いたかと思うと、
唐突に足で地面を叩きつけ、我の目を見据える。
「あんた達が先に名乗りなさい、そうしたら名乗って上げるわ」
そして目を離す事なく言葉を紡ぐ。その声に先程見せた恐れは無い。
4 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/03/31(水) 18:04:38.88 ID:uyGnBYY0
「恐れを[ピーーー]か、面白いな。
いいだろう、我等はライダーのサーヴァント、
カイムとレッドドラゴン。
名乗れ小娘、我等を喚びし魔術師よ」
「魔術師、遠坂凛!」
「喜べ、我に名を呼ばれることを。
マスター、遠坂凛よ!」
5 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 18:05:31.50 ID:uyGnBYY0
「恐れを殺すか、面白いな。
いいだろう、我等はライダーのサーヴァント、
カイムとレッドドラゴン。
名乗れ小娘、我等を喚びし魔術師よ」
「魔術師、遠坂凛!」
「喜べ、我に名を呼ばれることを。
マスター、遠坂凛よ!」
6 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 18:08:06.65 ID:uyGnBYY0
二節 初陣

「で、あんた達はどっちが本体なの?
二体で一つのサーヴァントなんて聞いたことがないわ」
紅茶を口に運びながら自らのサーヴァント、専ら竜の方に問いかける。
ちなみに紅茶は自分で淹れた物だ。
最初はこいつらに掃除を頼もうとしたが、
男が剣を空間から引き抜き、竜が口に炎を溜め込んだのを見て諦めた。
というか、竜の方はとにかく、
人間の方は喋らないわ何考えてるのか分からないわでどうにもならない。
紅茶を頼もうとも思ったけど、
剣を引き抜いて暴走でもされたら困るのでやめておいた。
7 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 18:12:28.24 ID:uyGnBYY0
「主従があるのならば、我が主である。
と言いたいが、恐らくカイムが主であろうな。
我はこの世界ではカイムの宝具に近いものになるのだろう。
しかし、こいつ一人では意思伝達も測れまい。
こいつがセイバーとして召喚されなくてよかったな、凛よ」
竜がこちらの問い以上の答えを口にする。
元は神と対等であったとも、神自体だったとも言われる幻獣、ドラゴン。
知識は人間が及ぶべくも無く、膂力に於いても言わずもがな。
そんなものを召喚できたのだから魔術師冥利に尽きるし、
何より今回の聖杯戦争の勝利も約束されたようなものだ。
セイバーを召喚しようと思っていたが、
まるで棚から純金が転がって来たような幸運。ただ、
8 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 18:14:55.00 ID:uyGnBYY0
「そんなものを使役してるあんたは何者?カイム?
そんな名前の英雄聞いたことないわ。
悪魔なら聞いたことあるけど」
目を人間の方に向ける。
隻眼の剣士、カイム。
言葉を持たない英霊。
「それもしょうがない。
恥ずべき無知ではない、あり得ざる既知なのだ。
我等はこの世界のものではないのだからな。
それと、使役ではない。契約だ。履き違えるな」
「なっ!? 違う世界! ……でも、うん、あり得ない話では無いわね」
それに、それなら納得が行く。竜と共に戦う剣士に。
そもそも、今までだって神話の英雄が呼び出されている筈だ。
それだってこの世界の者ではない。
9 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 18:17:46.78 ID:uyGnBYY0
「それにしても、そんな事できるなんて。
ほんと規格外ね、聖杯って」
「願いを叶える聖杯か。
聞いていなかったな、凛よ。聖杯に何を願う?」
そうか、忘れてた……。
そういえば、願いなんて考えなくちゃいけなかったっけ。
まぁいい。そんなことよりも、とりあえずは、
「この聖杯戦争を勝ち抜くこと」
そう、そして遠坂の名を再び輝かせること。
「フッフッフッ、ハァーハッハッ!
やはり面白いな、凛よ!
まぁいい、聖杯は儂等が取るのは決定事項。それまで考えておけ」
「そういうあんた等は何を願うのよ?」
サーヴァントは願いがあるからサーヴァントになる。
そうでなければ、好んで人に使役されようとは思わないだろう。
まして、彼等は英雄。
生前様々なものを得て、それでも渇望するもの。
それが何か、凄く気になる。
「ない」
「は?」
拍子抜けだ。無い?
10 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 18:21:24.32 ID:uyGnBYY0
「だったらなんでサーヴァントになったの? マゾ?」
「知らぬわ。いつの間にやらこんなものにされておったのだからな。
それに、その我を無理矢理呼び出したのはお主だ。
せっかくの眠りを邪魔しおって」
フンッ、と炎を吐く竜。
火事になるからやめて欲しいけれど、強く言えない。
主従逆転とはこのことか。情けないぞ、遠坂凛。
「ーーーー」
そんな風にやりとりを続けていると、
隻眼の剣士がこちらに何かを訴えるような視線を送って来ているのに気づく。
11 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 18:23:50.66 ID:uyGnBYY0
「ハッ! 凛よ、カイムがさっさと殺させろと言っているぞ。儂も退屈だ」
「殺させろって……。あんた達、英雄でしょ?」
「成り行きだ。元々そいつはただの殺人快楽者、気狂いだ」
「なっ……」
最悪……。
竜の方は当たりだったけど、人間の方は間違いなく外れだ。
掃除も紅茶淹れも出来ず、しかも殺人快楽者……。
さらに言えば、そっちが私のサーヴァントで、竜は実際おまけ……。
「落ち込むな、凛よ。
まぁ、敵に回さなければそこまで悪い奴ではない。
戦いならば文句のつけようもないだろうしな」
「……そうね、文句言っても仕方ないわ。
それに、さっさと戦ったほうがいいっていうのも確かだしね。
待ちの戦法が出来そうな感じでもないし」
ぐーっ、と残りの紅茶を飲み干し、
「そうと決まれば先手必勝!」
と言いながら勢い良く立ち上がる。が、
12 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 18:27:02.90 ID:uyGnBYY0
「ーーーー」
既に竜の背に乗って、こちらに非難の視線を送る剣士。
というか、既に剣をお出しになって気の早いことで。
「さっさと背に乗れ、凛よ。
この儂に乗るなどと、本来あり得ぬことだぞ。
それに、もたもたしているとカイムがお主に斬り掛かるやもしれん」
竜の言葉に剣士が嗤う。
その冷たい笑みに自分の死のイメージが浮かびあがり、ゾクリと背筋が震える。
「わ、わかったわよ!」
そのイメージを消し去るように大声で答えると、さっさと竜の背に近づく。
というか、私はこいつに……、この狂人に抱きつかないといけないの?
「ーーーー!」
カイムの目が鋭くなる。わかった! 分かりましたよ!
ぎゅっとカイムの腰に手を回す。ああ、やってしまった。
13 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 18:29:20.09 ID:uyGnBYY0
「乗ったな、では行くぞ」
そう言って、竜が翼をはためかせる。
そこで一つ疑問が浮かんだ。
この家からこの竜はどうやって出るのだろう?
さっきは霊体化して移動したけど……。
「邪魔だ」
考えていると、不意に頭上で何かが爆ぜたような音がした。
カイムの背中で良く見えないけど。
少し間をおき、何かが私の横を通り過ぎる。
「いやぁぁぁぁぁ!」
屋根の破片だった。
こいつ、屋根破壊しやがった!
前言撤回、こいつら両方外れだ!
14 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 18:33:05.10 ID:uyGnBYY0
三節 開戦の号砲

「ふむ、ここまで早く見つけられるとは思わなかったが、運が良いな」
遥か遠方のビルから弓を弾く弓兵を見据える。
赤い服に身を包む白髪の男だ。
「ーーーー」
珍しくカイムが意見を出す。カイムらしからぬ提案。
だが、無理もない。
15 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 18:35:31.06 ID:uyGnBYY0
「そうだな、挨拶がわりだ。やるとしよう」
「なによ!? 私にも教えわっ!」
「黙っておれ、舌を噛むぞ、凛」
心身共に多少幼いマスターを窘め、その場で停止する。
「この程度で死んでくれるなよ、弓兵」
その場で魔力を練り上げる。強く、強く、ただ強く。
「契約の<ドラゴン>」
そして、練り上げた魔力で空に魔法陣を展開する。人には扱い得ない巨大な魔法陣。
「紅<ブレス>」
全てを展開し終え、照準を合わせる。捉え、発動。
広げた魔法陣から灼炎が疾り、その全てが目標、赤き弓兵に向かう。
弓兵が放った矢は炎に飲まれ、眩い光を放ち爆発する。
しかし、炎の勢いは衰えず、弓兵のいた場所を中心として辺りを焼き尽くす。
16 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 18:39:55.18 ID:uyGnBYY0
「なっ、なっ、なっ」
「どうした?凛よ、我の力に感激したか?」
「なにやってんのよ!」
予想外の言葉。
賞賛を求めはしないが、その正反対とは思わなかった。
「あんた、今ので何人死んだと思ってるの!?
何件巻き込んだと思ってるの!?」
やはり、幼い。
この小娘は優秀だ。
この我が一時であれ従うことをよしとするほどに。
しかし、幼い。
17 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 18:42:30.50 ID:uyGnBYY0
「ならば降りろ。この聖杯戦争からな。
我等はこの戦い方しか知らぬ。
幾万を殺し英雄となった我等はな。」
「でも!」
「ーーーー!」
不意に煙の中から飛翔した矢をカイムが切り落とす。
が、それは向きを変え、尚こちらを射抜こうとする。
「ちぃ! 降りろ、カイム! 我は矢を受けよう!」
「ーーーー!」
「なっ!ちょ! 待って! まだ話が!」
「うるさい小娘! 連れていけカイム!」
最後まで聞かず、カイムが凛を抱え背から飛び降りる。
自身を狙う矢はその一瞬に三倍まで増えている。
強く羽ばたき、全速で上昇する。
18 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 18:45:00.30 ID:uyGnBYY0
「ちょこまかと! 落ちろ!」
狙いを付け火球で打ち落とそうとする。が、
その矢は爆炎につつまれてなおこちらを追尾する。
それを尻尾と羽で払い、更に上昇する。
「カイムよ、どうもこれは今の姿では破壊は無理だ。頼むぞ」
回避を続けながら声を送る。
この矢は対象をどこまでも追い続ける類いの宝具だろう。
しかし、所持者が消えればこれも存在し続けることは出来ない。
逃げるのは性に合わないが、今は仕方がない。
19 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 18:47:29.05 ID:uyGnBYY0
四節 竜騎士と弓兵

「フッ、竜は行ったか」
降りた先では弓兵が待ち構えていた。
その体は、先ほどの魔術のダメージで傷だらけだ。
「貴様等の派手な挨拶には恐れ入った。
あの一撃でマスターまでくたばった。
いや、これは礼を言うべきか。
いけすかないやつだったからな。
ただ、俺はアーチャーのサーヴァント。
多少ならそれでも現界できる。
竜騎士、土産にその首貰うぞ!」
「ーーーー!」
言い終わると、弓兵は空間から短剣を二本引き抜き、目にも止まらぬ早さで距離を詰めてくる。
20 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 18:50:13.42 ID:uyGnBYY0
「きゃ!」
凛を放り投げ、使いなれた剣で応戦する。
ガギンッ、と剣戟特有の金属音が響き、押しに負けた弓兵が後ろに飛ぶ。
「馬鹿力だな!」
そう言いながら、潜るように姿勢を低くし、左の剣による内からの薙ぎ払い。
左手のガントレットでそれを弾き、即座に剣を叩きつけるが、
その刃が届く前に弓兵は後ろに退き、同時に右の短剣を投擲。
飛んで来たそれを剣で弾くが、その隙に距離を取られる。
「これはどうだ?」
そして、その間に持ち替えたのであろう弓による射撃。
それを剣で弾きつつ接近する。
三発めを弾いた時点で距離は無く、
薙ぎ払いを躱しきれず弓兵の胴が浅く裂ける。
21 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 18:55:22.27 ID:sCP1NCQ0
「ッ!」
「ーーーー!」
その勢いのまま一回転し、剣を叩きつける。
またも弓兵は持ち替えた短剣で防ぐが、力ではこちらが上。
そのまま叩き込むと、刃が通るのも構わず弓兵が後ろに飛び退く。同時に胸元が裂ける。
「やはりやるな、竜騎士」
「ーーーー」
そう言いながらも、弓兵は笑みを浮かべる。
確かに仕留めたと思ったが、意外なほど傷は浅いようだ。
これが英雄か、面白い。
22 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 18:58:40.21 ID:sCP1NCQ0
「言葉は無しか。いや、違うな。
言葉を持たぬ、か。まぁいい」
そう言うと、弓兵は笑みを消し短剣を構える。
明らかに斬撃に移行する構えではない。
「行くぞ!」
両手の短剣の投擲。予想通りの攻撃だ。が、
それは見当違いに飛び、自分を素通りする。
しかし、弓兵は更に同じ物を引き出し投擲する。
そして、間を置かず装飾のある長剣を引き出し、こちらに走りだす。
こちらも弓兵と同じに剣を構え、走る。
飛んでくる短剣が邪魔だが、こんなものに構う必要もない。
23 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/03/31(水) 19:01:45.59 ID:sCP1NCQ0
「っ!?」
短剣が両肩を貫く。さらに、何かが背後を突き立てる。
それを見て弓兵が目を見開く。一瞬の隙。
剣の間合いはほぼ同じ。
しかし、弓兵は一瞬遅れた。逃さずに、振り抜く。
深く、深く胴を切り裂き、赤い血が吹き出る。
「グッ!」
しかし、まだ浅い。
間一髪で弓兵は後ろに退きながら剣を振るう 。
胸元が撫でられ、血が吹き出す。
「ーーーー!」
だが、逃がさない。
左手で、戦士の歯車<ウェポンホイール>に入った、親友の、イウヴァルトの剣を掴む。
そして、弓兵目掛け思い切り投げつける。
24 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 19:04:01.91 ID:sCP1NCQ0
「ッ!」
親友の剣はブレることなく弓兵の腹に刺さる。
間髪入れず、その剣の柄に蹴りを叩き込む。
「ガハッ!」
剣は弓兵の腹を貫通し、血を滴らせた。
弓兵は二三歩後ずさると、力なく仰向けに倒れる。
「くっ、はっはっ! 完敗だ、竜騎士。
まさか、あれに怯みもせんとはな。
いや、それこそが英雄の証明か。」
血を流しながら弓兵が笑う。
「ーーーー」
そんな誇り高き弓兵に近付き、剣を振り上げる。
もしも自分に声があったのなら、称賛の言葉を彼に送れるのだが、
生憎とうにそんなもの失ってしまった。
ならば、せめて最後まで全力を。
25 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 19:06:55.81 ID:sCP1NCQ0
「やめなさい!」
しかし、今振り下ろそうと思った瞬間背後から響く少女の声。
それと、振り上げた腕に掛かる重圧。
振り向くと、自分を召喚した魔術師が、自分の腕を押さえつけていた。
意外なほど力は強いが、振り下ろせないほどではない。
だが、興を削がれ、振り下ろす気も失せる。
「甘いな、俺は君の敵だぞ。
そのサーヴァントを止める必要はない筈だ。
それとも、情けでもかけているつもりか?」
弓兵は、安堵では無く怒りを表情に出して言う。
「抵抗も出来ない奴がなに言ってんのよ?」
しかし、そんな弓兵の不満など介さず少女が不敵に笑う。
しばし呆然とし、つられて弓兵も笑う。
26 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 19:11:33.23 ID:sCP1NCQ0
「フッ、それもそうか。
ならば、ついでに死に行くものの願いを聞いてくれるか?」
「……何よ?」
「君の名を教えてくれ。俺を破った、マスターの名を」
「……遠坂凛よ」
「遠坂凛……、凛か。
……ああ、この響きは実に君によく似合っている。
俺のマスターが、もし君であったなら……。
いや、もう過ぎたことだ。
願くば、君がこの先幸福であらんことを」
そういって弓兵が少女に手を伸ばす。
しかし、その手は少女に届くことは無く、
弓兵は光の粒子となって消えて行った。
最後に一言、
「さらばだ、凛。……そして、竜騎士カイム」
と残して。
27 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/03/31(水) 19:14:48.46 ID:sCP1NCQ0
「ーーーー」
その場に残った親友の剣を拾い上げ、ウェポンホイールに戻す。
そして、空いた手で、泣きそうになっている少女の頭を撫でる。
「なっ!」
泣きそうな顔が、みるみるうちに真っ赤になっていく。
血に塗れた手でも、父も母も妹も親友も、愛するものすら救えなかった手でも、
一人の少女の涙くらいなら止めることができる。
ならば、その時くらいは剣を持たずに。
ただ撫でてやることくらいしか出来なくても。
28 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 19:17:12.71 ID:sCP1NCQ0
五節 勝利への葛藤

「終わったか」
我を執拗に追い続ける矢が消え、
カイムの気配を辿り地上に降りると、
凛が真っ赤になってカイムに何かを叫んでいた。
「何かあったのか?」
問いかけにカイムが首を振る。
「凛よ、何があった?」
そこで凛はやっとこちらに気づくと、何やら言おうとしてはいたが、
最終的に「なんでもない」といって黙ってしまった。
29 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 19:19:38.63 ID:sCP1NCQ0
「……?まぁ、なにはともあれ、これで聖杯に一歩近づいた訳だ」
その言葉を聞いて凛は何かを思い出したらしく、
こちらを睨みつけてくる。
「そういえばあんたたち、こんな街中であんな魔術使うなんて何考えてんの!?」
忘れてはいなかったか。
「とは言っても凛よ、我等の、特に我の戦い方ではこれしか出来ぬ。
戦争ならば味方より前に出ればいいが、ここではそうもいかん。
それに、あれでも狙いを定め被害を少なくした。
これ以上望むのならば、
自分の引いたサーヴァントを呪い、
この聖杯戦争から降りるのだな。
それと、礼呪で人を殺すなと命じても無駄だぞ。
言わば不可抗力なのだからな」
「ッーー! でも、でも……」
それでも我の答えに納得行かないのか、凛は俯いて唇を噛み締める。
30 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 19:24:10.43 ID:sCP1NCQ0
「……そうよ!」
しばらくそのままでいたが、不意に何かを思い付いたのであろう。
勢い良く顔を上げると、カイムを指差す。
「こいつが戦えばいいんじゃない!
そんな対軍宝具持ってる訳でもなさそうだし、
無関係の人を殺すような奴でもないでしょ。
さっきの戦いを見る限り」
そう言って勝ち誇ったように踏ん反り変える。
確かにそれは凛にとって最善で最良の選択だ。しかし、
31 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 19:28:33.15 ID:sCP1NCQ0
「それは無理だ。
お主は先程の戦いを間近で見たのだろう。
我の大魔術を食らい消耗した弓兵に、
そいつはそれだけダメージを負うのだ。
まぁ、カイムの戦い方にも問題はあるがな。
ただ、勘違いするな。これは力不足ではない。
カイムを見ろ。英霊というものは全盛の姿で召喚される。
だが、そこにいるカイムが全盛に見えるか?
左目を失い、生の半分を辿ったそのカイムが。
それに、我も本来このような姿ではない。
本来の力ならば、先程の魔術でこの街一帯を消し飛ばすことも出来る。
信じる信じないは勝手だがな」
そう、全盛であったのならば単騎でサーヴァントと渡り合い、
勝利することもた易いだろう。
ただ、今の姿ではそれも叶わない。
いや、戦うことも、勝利することも不可能ではない。
不可能ではないが、限りなく危険なのだ。
32 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/03/31(水) 19:29:56.45 ID:sCP1NCQ0
「……だったら、どうしろってのよ」
またも俯いてしまった凛が呟く。
「受け入れるか、逃げるかだ。
まぁ、どちらにせよ今日はもう遅い。じきに夜も更ける。
帰ってから考えろ」
しかし、凛は俯いて黙ったままだ。
そんな凛の手をカイムが掴む。
そして、そのまま引きずるように我の隣に凛を立たせると、
背に引っ掛けるように投げ飛ばし、続いて自分も背にまたがる。
33 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 19:32:23.66 ID:sCP1NCQ0
「全く、ここまでされても自分で動かんとは……、強情な小娘だ。
まぁいい。飛ぶぞ、落ちるなよ」
そう言うと、背を掴む力が心無しか強くなる。
「フンッ、本当に強情な小娘よ」
「ーーーー」
カイムもそれに頷き、笑う。
こいつが人を殺す時以外に笑うとは、珍しい。
何か不思議な感覚を抱いたまま飛び立つ。
恐らく、この優秀な小娘はもう答えを決めているのだろう。
しかし、幼さ故整理が追いつかないのだ。
ならば、待とう。
我等二人が認めたマスターを。
ーーその答えを。
34 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/03/31(水) 19:35:39.48 ID:sCP1NCQ0
ーーーー英雄に憧れている
英雄になっていたーーーー

ーーーー全ての人を救い
妹も親友も救えずーーーー

ーーーー誰一人見捨てない
愛する者を犠牲にーーーー

ーーーー正義の味方みたいな
世界を救っただけのーーーー

ーーーーそう、そんなーーーー

ーー第二章 英雄ーー
一節 少女の覚悟
35 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/03/31(水) 19:37:43.24 ID:sCP1NCQ0
お父さんが撫でてくれるだけで、幸せな気持ちになった。
でも、その今日はなんだか違って、
もうお父さんと二度と会えなくなってしまう気がした。
だから、追いかけた。必死で走った。
だけど、お父さんの背中はどんどん遠くなって、やがて見えなくなる。
そして、辺りを見回すと知らない景色。
泣きそうになる。
でも、そんな私の頭を撫でる手。
お父さんだと思って顔を上げると、そこには知らない顔。
目まで隠れる黒い髪と、色の白い左目。
怖くなって、ついに泣き出してしまう。
そんな私を見て、その人は困ったような顔で微笑む。
その顔がなんかにあわなくて、私は泣きながら笑ってしまった。
ーーーー。
36 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/03/31(水) 19:40:01.58 ID:sCP1NCQ0
「ゔぅぅぅ……」
けたたましい目覚ましの音に、無理矢理覚醒させられる。
なんかいい夢を見た気もするけど、もうすでにあやふやになって、
曖昧な輪郭だけが浮かぶ。
……朝は苦手だ。
「ゔぅぅぅぅぅぅぅ……」
ただ、そのままでいれば二度寝は確実なので、無理矢理引きずるように体を起こす。
「ゔぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……」
ダメだ。やっぱ寝る。
37 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 19:42:45.13 ID:sCP1NCQ0
「起きろ、凛。
三秒やろう、それまでに起きねば、側にいるカイムが剣を抜くぞ」
「起きてるからっ!」
今まさに自分を眠りに誘おうとしていた毛布をはねのけ飛び上がる。
そして、即座に左右確認。って、
「カイムは?」
「冗談だ」
この竜は……、立場というものがどうも分かってないようだ。
「レッドドラゴン、確認するけど、
私がマスター、あんたはサーヴァント。オーケー?」
「黙れ小娘、さっさと広間に来い」
……。
38 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 19:44:55.83 ID:sCP1NCQ0
「家ごと燃やすぞ?」
「分かったわよ!」
パジャマから着替えて、
憂鬱な気分で広間まで体を引きずっていくと、
テーブルで紅茶を飲みながら本を読む隻眼の男。
無駄に絵になっていて、何故か悔しい。というか、
「その紅茶、誰が淹れたの?」
カイムを指さして、竜に尋ねる。
「我がそんなことすると思うか?」
するしないの前に、出来る出来ないの問題だとは思うけど。
まぁ、あれを淹れたのはカイムということで間違いないようだ。
39 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 19:49:58.92 ID:sCP1NCQ0
「出来るのかよ!」
剣振るくらいしか出来ないと思ってた。
いや、それはあり得ないだろうけど、雰囲気的に。
それと、もう一つ気になったこと。
「それ、なんの本?」
私が尋ねると、カイムがこちらに本の表紙を向ける。
私の魔術書。しかも、それなりに高度なやつだ。
「あれ?カイムって魔術使えるの?」
「使えはせんが、興味深い。らしい」
カイムへの問に、竜が代わりに答える。
もしかして、カイムって頭良かったりするのだろうか?
40 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 19:55:39.75 ID:sCP1NCQ0
「意外ね。なんか、英霊ってもっと殺伐と「はぐらかすのもその辺でいいだろう?凛」
私の言葉を遮り、竜が言葉を挟む。
分かっている。
ただ、遠ざけたかった。
それを口にすれば後には引けないから。でも、
「決めたか?」
竜が私の目を見据える。
「……決めたわ」
目をそらすことなく答える。
答え自体はあの夜すでに決まっていた。
しかし、それで本当にいいのかは分からなかった。
何度も何度も、何度も何度も何度も繰り返して、
そして辺りが明るくなった頃、ようやく覚悟した。
ただ、それは目の前の英雄とは、恐らく違う覚悟。
41 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 19:58:27.43 ID:sCP1NCQ0
「人は殺さない、極力ね。勿論、勝ちも頂く!」
言いながら、拳に力を入れる。
「今後交戦は人のいないとこですること!
特にレッドドラゴン、あんたの魔術は私に許可とってから発動するように!」
そして、竜に指を突きつける。
こいつが一番危険だ。
だが、魔術さえ制限すれば大丈夫だろう。
「ハッ、一晩待ってその答えか! 甘いな!」
しかし、私の答えは一笑に伏される。やはりダメだったか。
分かってはいた。その選択が、覚悟が、甘いということは。
それでも、私にはその覚悟が限界だった……。
落胆。だが、竜の言葉はそこで終わりではなかった。
42 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 20:01:51.59 ID:sCP1NCQ0
「甘いマスターに当たったのが運の尽きというものか。
まぁよい、人を殺さずに勝利?
いいだろう、やってみせようではないか」
そう言って笑う竜。
これって、つまり、
「認めてくれるの?」
恐る恐る竜に聞く。
「認めるもなにも、お主が決めたことであろう、マスター。
しかし、極力人は殺さん。とは言っても、これは戦争、
その時はある。心しておけよ」
竜に念を押される。
「大丈夫。その時が来たなら迷いはしない、絶対にね」
それも覚悟の内。
43 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 20:05:43.99 ID:sCP1NCQ0
「でも、本当にいいの? カイムもあんたも、全盛の力じゃないんでしょ?
なら……」
「フンッ、阿呆が。
お主が呼び出したのは、伝説すら打ち倒した英雄だ。
それが最強でないはずなかろう」
その言葉を最後に、竜はそっぽを向いて顔を地面に落とす。
「うん、ありがとう」
聞こえないように言う。
そう、私が呼び出したのは最強のサーヴァント。
竜騎士カイムと、紅き竜レッドドラゴン。
なにを恐れていたんだろう。そんな必要ないじゃないか。
44 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 20:07:41.78 ID:sCP1NCQ0
……だけど、尻尾をビタビタと壁や床に打ち付けるのはやめて欲しい。
暇なんだろうけど、へこむから。壁も私も。
でも、やっぱ強く言えない私。
せめて竜を恨めし気に睨んでいると、テーブルの方でなにかを置く音がした。
そちらに目を向けると、カイムがティーカップを今まで座っていた席の対面に置いていた。
あれは、やっぱ私に、だよね、きっと。
なんか、マスターっぽい。いや、マスターなんだけどさ。
45 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 20:13:02.33 ID:sCP1NCQ0
二節 日常と非日常

「おはようございます。遠坂さん」
「ええ、おはよう」
挨拶を交わしながら通学路を歩いていく。
足取りは軽やかに、歩幅は常に一定。
『常に優雅たれ』
という遠坂家の家訓を完璧に実行したその姿は、
穂群原学園のアイドルとさえ呼ばれるようになっている。
「おい、凛。お前を見た猫が逃げていくぞ。
大方とって喰われるとでも思ったのだろうな」
そんな通学途中、不意に竜の声が頭に響く。
家を出る時に声をかけたら、
「何故我がお主に着いて行かねばならん?
何かあるなら呼べ。
この様な小さな街、一飛びで辿り付けよう」
なんて言ってたのに、どうも近くにいるらしい。
46 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 20:18:00.93 ID:sCP1NCQ0
というか、だんだん分かってきたけど、あの竜は大分自意識過剰だ。
なんでもかんでも大袈裟に言ってる気がする。
さっきは場の雰囲気で、「最強のサーヴァント」なんて安心しちゃったけど、
だんだん不安になってきた。
ちなみに、このテレパシーみたいな能力は『声』と呼ばれるもので、
本来なら幻獣との契約者のみが使えるものだけど、
その幻獣との契約者であるカイムと契約した事によって、
私にもその能力の恩恵が与えられているらしい。
ならカイムとも話せるんじゃ?と思って、実験ついでに声を送ってみたけど、
帰ってきた答えは「ーーーー」だった。
どっちにしろ無口なのかよ。
47 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 20:20:26.20 ID:sCP1NCQ0
「よう、遠坂!」
回想に耽っていると、背後から馴れ馴れしく声がかかる。
ーー美綴綾子。
武道全般を修め、時代が時代なら女傑とでも呼ばれているであろう才女。
そして、私の数少ない友人の一人。
「ええ、おはよう。美綴さん」
猫を被ったまま挨拶を返す。
彼女との会話では時折素が出てしまいそうになるので、
いつもより念入りに。
「おいおい、どうした? 眠そうだな。
まぁ、いつものことだけど、今日はなおさらだ。
よし、理由を当ててやろう! ……恋煩いだな。
相手は……、衛宮、衛宮士郎だろ!」
そう言って彼女はカラカラと笑う。
彼女は、良く言えば中性的、悪く言えば男勝りだ。
だから私とは馬が合うのだけれど、
学園生活中は危険人物になる。
48 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 20:22:30.35 ID:sCP1NCQ0
「ふふ、面白い冗談ね。熱でもあるのでは?
いい脳外科医さんを紹介してあげましょうか?美綴さん」
精一杯の笑顔を作って、今の状態で出来る最大の皮肉を言う。
「ははは、ご機嫌斜めだな。こわいこわい。
それじゃ、私は先に行くとするよ。倒れるなよ。じゃあな」
そう言って肩を叩くと、彼女は学校へ走って行く。
足取りは早く、私でも追いつけないかもしれない。
というか、朝から元気だなぁ。
ーーーー。
49 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 20:24:00.42 ID:sCP1NCQ0
時は過ぎ、昼休み。
「おーい、遠坂。一緒に昼飯食べようぜ」
という綾子の誘いを断って、私は今屋上にいる。
「気付いた?」
声を送る。
「ーーーー」
「ああ、待ち伏せされておるな。場所は分からんが、
まぁ、昨日撒いた種もあることだしな。
それに、そこら中飛び回ってここにくれば、
いくら鈍かろうが気付くのも当然であろう」
こいつ、着いてこないなんて言うと思ったらそんなことしてたんだ。
あと、カイムはなんか喋れ。
50 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 20:26:18.00 ID:sCP1NCQ0
「恐らく人のいない時間まで待って攻める気であろう。
どうする? 罠でもはるか?
先に言うが、我は手伝わんぞ」
なら言うな。それに、
「正面からねじ伏せる。
私に喧嘩売ることの馬鹿さ加減を叩き込んでやるわ」
罠なんて性に合わない。ただ叩き潰すのみ。
「それでこそ我等のマスター。
案ずるな、勝利は確定。取り合えず、お主は眠れ。
その状態で戦闘にいられても邪魔なだけ。
眠り、万全を喫せ」
ああ、やっぱ私の引いたサーヴァントは最強だ。
ただ、これで掃除が出来て、家を壊さなければ言うこともないんだけど。
ーーーー。
51 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 20:27:49.19 ID:sCP1NCQ0
夜。校舎に既に人影はなく、念のため人除けの結界も貼ってある。
下校時刻から今までずっと眠ってたこともあって、体調も万全。
今なら私一人でサーヴァントにも勝てそうなくらいだ。
……それは嘘だけど。
「これはこれは……、まさかとは思ったが、
本当に竜だとは思わなかったぜ」
唐突に闇の中から声が響く。
それと同時に現れる、青い服に身を包んだ、槍の男。
52 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 20:30:02.72 ID:sCP1NCQ0
「お初にお目にかかるぜ、ライダーのサーヴァント。
……で、あってるよな」
「いかにも、我等はライダーのサーヴァント。
それは竜騎士カイム、我はレッドドラゴン」
「ちょ!」
いきなり名乗るなんて何考えてるんだ、この竜は。
「いきなり名乗られるなんてな、負けたぜ。
それじゃ、俺も名乗らねぇ訳には行かねぇな。
ランサーのサーヴァント、クー・フーリン!」
「ちょ!」
相手も馬鹿だった。
というか、もしかしたらサーヴァントってみんな馬鹿だったり?
いや、昨日のアーチャーはマトモだった。
こいつらがきっと例外だろう。というか、そうであって。
「ふむ、気概はいいな。……それでは始めるか。
なに、案ずるな。
我に名を覚えられたことを誇り、死ね。槍兵」
「へっ、いいねぇ!
だが、死ぬのはてめぇらだ! 行くぜ!」
53 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 20:32:53.85 ID:sCP1NCQ0
三節 もう一つの始まり

槍兵が駆ける。そのスピードは正に疾風。
「ラァ!」
そして気合一閃の突き、なんとか剣先で軌道をそらす。
しかし、次の瞬間には次の突き。
それをそらせば、また次。
「ーーーー!」
速い。
まさか長物でこの速度とは……、想像もつかなかった。
「おいおい、この程度か? 竜騎士!」
突きを繰り出す手を休めず、槍兵が言う。
……面白い。
54 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 20:34:32.39 ID:sCP1NCQ0
「ーーーー!」
気合を入れ、槍兵に肉薄する。
ガードしきれなかった突きが右脇をえぐる。
そのまま槍を脇に挟み込み、顔面に左の回し蹴りを叩き込む。
「グッ!」
槍兵が呻き、後ずさる。
その隙に持っている剣を投げつける。
槍はその長さ故に攻撃には適しているが、守ることには向いていない。
予想通り、槍兵はその剣を弾くために槍を振るう。好機。
すかさず戦士の歯車<ウェポンホイール>からイウヴァルトの剣を抜き、薙ぎ払う。
55 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 20:41:32.42 ID:sCP1NCQ0
「ッ!」
槍兵はすぐさま後ろに引くが、躱しきれなかった刃が胴を裂く。
「おいおいおい、それが騎士の戦い方かよ……」
そのまま二、三と飛び退くと、槍兵は腹の血を拭って地面に払いながら言う。
たったの三歩だというのに、槍兵との距離はかなり広い。
強靭な脚力。恐らく、逃げられたなら追いつくことは出来ない。
「……ちっ、仕方ねぇ。
てめぇは危険だ。ここで殺す、
覚悟しな」
愛用の剣を拾い、親友の剣を戦士の歯車<ウェポンホイール>に戻すと、
槍兵は待っていたかのように口を開く。
いや、実際待っていたのだろう。あれは純粋な騎士だ。自分とは違う。
56 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 20:44:00.01 ID:sCP1NCQ0
「見たなら死。必殺の槍、受けて見せろ竜騎士!
刺し穿つ<ゲイ>」
槍兵が槍を構える。
しかし、その時不意に響く、ガシャンという音。
音の方に目を向けると、少年が校舎の中へ走って行くのが見えた。
「チィ!」
槍兵が舌打ちをし、その少年を追う。
「追いなさい! カイム!」
凛の声。
しかし、それには従わずに凛の方へ走る。
「きゃあ!」
勢いのまま凛を抱え、竜に飛び乗る。
57 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 20:46:11.18 ID:sCP1NCQ0
「カイム! さっき追えって「黙れ小娘! 飛ぶぞ!」
何も言わずともこちらの意を解し、竜が校舎に向かって飛ぶ。
ある程度近づいた所で勢いのまま飛び降り、窓を蹴破る。
遅れて、勢いを殺しきれなかった竜が校舎に激突し、
衝撃に窓がはじける。
「一瞬、あと一瞬だったな。竜騎士」
しかし、間に合わなかった。
槍兵は少年から槍を引き抜くと、「興が削がれた」と言い、その場から離脱する。
58 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 20:47:56.41 ID:sCP1NCQ0
「くっ……」
抱えたままだった凛が呻く。
そのまま手を離すと、勢いのまま地面に落下する。
「あんたねぇ!」
落ちた凛は、怒鳴りながらすぐさま立ち上がり、こちらに向き直す。が、
今はそれをすべきでないと悟ったのか、振り返り、少年に駆け寄る。
「ごめん、巻き込んじゃった。
本当に、ごめん」
少年への謝罪。
自分が悪い訳ではないのに、優しい少女だ。
……多少傲慢に過ぎるような気もするが。
「っ!」
だが、少年の顔を見た瞬間、凛の表情が変わる。
「なんで……、あんたが……」
まるで呻くような呟き。
友だったか、恋人だったか。
知ろうとも思わないが、それが少女にとって特別な者だということは分かった。
59 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 20:51:39.82 ID:sCP1NCQ0
ーー不意に景色がフラッシュバックする。
ああ、ーー父と母が黒き竜に殺されたのは、自分がこの少女と同じくらいの歳の頃だった。
あの時自分はーー、そうだ。復讐を誓った。
しかし、その目的はいつの間にか人を殺すことの名分になり、
自分はただの殺人鬼となった。
それがどうだ? いつの間にやら英雄と呼ばれ、そしてここにいる。
これは贖罪か? ならば、この少女を守ろうと、そう決めた。
60 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 20:53:50.19 ID:sCP1NCQ0
しかしどうだ? たった今、この少女の特別な者を守れなかった。
あの姿であったなら、槍兵を逃すことも無かった。
己の力不足に、衰えている体に、怒りが湧く。
「……カイム」
不意に凛が口を開く。
「あいつを追いかけて。
わたしはこいつをーー」
61 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 20:58:49.78 ID:sCP1NCQ0
四節 少女の宝

「チッ、隠れおったか、小癪な」
上空から見下ろし先の槍兵を探すが、その姿はどこにも見当たらない。
「レッドドラゴン、こっちは終わったわ。そっちは?」
そのまま飛行しながら、様々な場所を探索し、それなりの時間が経過すると、
ようやく凛が声を飛ばしてきた。
ーーーー。
62 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 21:00:32.59 ID:sCP1NCQ0
「わたしはこいつを、蘇生する」
凛はそう言った。
確かにその小僧の魂はまだ剥がれてはいない。蘇生は可能だ。
しかし、これを治癒するのには莫大な魔力が必要。
我ならまだしも、凛の魔力くらいなら完全に消耗しつくすだろう。
割に合わない選択だ。
「捨て置け、凛。
今は戦い、不可避の死に流されるな」
しかし、凛は我の忠告に首を振る。
63 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 21:02:59.36 ID:sCP1NCQ0
「それでも、こいつは桜の、妹の大好きな人だから」
妹、という言葉にカイムが反応する。
「ーーーー」
送られる声。
どうもこいつの妹への偏愛は死後どれほど経っても衰えないらしい。
いや、更に強くなっている。
それがどんな結果を産んだか、忘れた訳でもあるまいに。
「フンッ、馬鹿どもが。勝手にしろ。
乗れ、カイム。行くぞ」
「ーーーー」
我の言葉に頷き、カイムが背に乗る。
そして、凛だけを残し、飛び立つ。
ーーーー。
64 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 21:05:14.42 ID:sCP1NCQ0
「うーん、あんたが追えない訳ないし、
どっかに隠れてるのは確かなのよね」
「だから、そう言っているであろう。
魔術に失敗して、耳でも腐ったか?」
拾った凛を背中にのせ、もう一度辺りを飛び回る。
「あのねぇ、もう一度いうけど、あんたは私のサーヴァント。オーケー?」
「黙れ小娘、振り落とすぞ」
今は些か機嫌が悪い。
忠告を却下され、カイムにたしなめられ、槍兵は見つからない。
本来ならこんなことしなくても、辺りを焼け野原にしてしまえば済むことなのだ。
65 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 21:06:48.40 ID:sCP1NCQ0
「チィ、面倒だ」
魔法陣を展開する。
従うのはやめだ。そもそも、道楽に苛つくなど馬鹿らし過ぎる。
「ちょっと! なにやってんの!?」
背で小娘が騒ぐ。
ピーピーうるさい奴だ。本当に振り落とすか?
「ーーーー」
しかし、その魔術はカイムによってキャンセルさせられる。
今の我はこいつの宝具といってもいい存在、カイムの支配力の方が上だということだ。
66 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 21:09:09.31 ID:sCP1NCQ0
「何をする、カイム?」
「ーーーー」
我の不機嫌な声に、窘める様な声を送ってくるカイム。
どうも自分も不機嫌の元凶となっていることは分からぬらしい。
「だったら、どうするのだ?」
「ーーーー」
簡単な提案だった。
至極当然、なぜ行き当たらぬか分からぬほどに。
「……すまぬな、冷静を欠いた」
カイムに謝罪する。
しかし、カイムはそれを気にする風でもない。
「ふーん、殊勝なことね! 許すわ」
「黙れ、小娘!
お主にいったのではないわ!」
67 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 21:29:21.32 ID:B8OHVj20
五節 剣の騎士

「ちっ、ようやく諦めたと思ったら、待ち伏せかよ」
槍兵が言う。
自分が竜にした提案、それは、先の少年を餌にすること。
こいつは自分との戦いを中断してまで少年を殺した。
ならば、それが生きているのなら、また殺しにくるのは当然。
考えれば簡単だった。
そして、現にこいつはここにいる。
「俺はあんたらと戦いに来た訳じゃねぇんだが、
通してくんねぇか?」
槍兵が頭を掻きながら言う。
「無理ね! おとなしくやられなさい!」
それに答えるのは凛。
今理解したのだが、この少女は大分自意識過剰の節がある。
事実この少女自体は優秀なのだが、
その性格は肝心なところで転びそうで危なっかしい。
……どことなく竜に似ている。
68 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 21:31:38.22 ID:B8OHVj20
「ちっ、じゃあ、やるとしますか!」
途端、槍兵が殺気を放ち、槍をその手に出現させる。
「ーーーー!」
応じ、自分も剣を構える。
「なっ!?」
しかし、攻撃は後ろ。火球が槍兵を襲う。
間一髪でそれを躱す槍兵。だが、
「グゥッ!」
渾身を込めた一薙ぎ。
槍の柄でそれを止める槍兵だが、
宙に浮いたその体に衝撃を止められるはずもなく吹き飛び、先の少年の家の塀を突き破る。
69 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 21:33:19.85 ID:B8OHVj20
「なっ! さっきの!」
「テメェ!」
「ーーーー!」
開いた景色の先には、少年がいた。
それに気づき、即座に標的を彼に変える槍兵。
少年は土倉に逃げ込み、その出入り口に竜が火球を放つ。
それに怯んだ槍兵を薙ぎ払うが、刃が届く前に炎を超え、槍兵は土倉へ飛び込む。
「グゥッ!」
「ーーーー!?」
それを追おうと足を踏み出すと、何故か煙の中から槍兵が吹き飛んでくる。
躱しきれず激突し、数メートルほど一緒に転がる。
「チィ、あいつもマスターだったか!」
即座に立ち上がった槍兵が、土倉を睨みつけながら言う。
何が起こったのかは分からないが、その機を逃さず剣を振り上げる。
しかし、槍兵はこちらを見ずに掌で制止の合図を出す。
無視してもよかったのだが、背を見せ、
戦う気のない相手を斬るのもつまらない。
それが雑兵ならまだしも、彼は英雄。
仕方なく剣を下ろすと、少しの時間を置いて土倉からでてくる人影。
少女だった。
鎧に身を包み、髪を束ねた金髪の少女は、自分達の異様に怯えもせず口を開く。
70 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 21:35:09.40 ID:B8OHVj20
「槍のサーヴァントと、そちらは……、剣?
まぁ、いいでしょう。
二人同時に。というのなら、それでも構いません。
相手になります」
よく通る声でそういうと、少女は剣を構えるような仕草をする。
しかし、その手には剣はない。
「あー、俺はもう疲れた。
頼んだぜ、竜騎士の兄さん」
構えた少女を見て槍兵は笑うと、そう言って自分の肩を二度叩く。
そして、凄まじい速度で夜の闇に消えていった。
「ランサーは逃げましたか。
あなたはどうするのですか? 隻眼の剣士」
そのまま構えを解かず、少女は目だけを動かしこちらに尋ねる。
「ーーーー」
「言葉は無し。
逃げる気も、なさそうですね。
ならば」
無言を戦闘の意有りとうけたのか、少女がこちらに駆ける。
その速度は、小柄な体からは想像もつかない程に速い。
そして、剣を振り上げるような動作をして、そのまま振り下ろす。
その気迫に押され防御の姿勢を取ると、遅れて衝撃。
71 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/03/31(水) 21:36:15.11 ID:pgwbg2DO
DODて珍しいな〜
隻眼ってことは1Aendから2で逝ったカイムだよね、なんで教授の剣持ってんの? 
なんか渡す件とかあったっけ?
72 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 21:37:13.69 ID:B8OHVj20
「ーーーー!?」
振り払い、距離を取る。
見えないが、確かに存在する剣……。
「その膂力、バーサーカー?
いえ、でもそれにしては……」
それを持つ少女は、小さな声で何かを呟いている。
「狂戦士などと一緒にするな!
我らはライダーのサーヴァントだ!」
すると、土煙をあげながら、竜が背後に着地する。
「そうでしたか、これは失礼しました、ドラゴン。
私はセイバーのサーヴァントです」
少女は降りて来た竜に一瞬驚いた顔をするが、すぐに気を取り直し、律儀に答える。
「そうか、名を言う事を許そう。名乗れ」
「断ります」
それに竜が気をよくしたのか名前を尋ねる。
しかし、少女はすぐに拒否の言葉を口にする。
「フンッ、まぁよい。
では、名も知られずに死ね」
「……」
竜の言葉に少女は答えず、ただ剣を構える。
73 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 21:39:32.99 ID:B8OHVj20
「ーーーー」
こちらも同じに。
「では、行きます!」
「やめろッ!」
少女の気迫が最大限まで高くなったところで、不意に聞きなれない声が響く。
目を向けると、土倉の扉に少年が立っていた。
その少年は少女のところまでかけて行くと、
まるで少女をかばうかのように、得物を、ただの鉄のパイプを構えた。
74 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/03/31(水) 21:42:17.05 ID:B8OHVj20
>>71
簡単に言うと、持たせたかったから
まぁでもノウェのことフリアエとイウヴァルトの転生体って知ってるし、
拾ってても不思議じゃない気もするから
75 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 21:44:10.93 ID:B8OHVj20
六節 夢現の英雄

「英雄気取りか? 小僧」
竜がその少年に言う。酷く冷たい声で。
「英雄気取りなんかじゃ……ない!」
しかし、少年は怯えもせずに返す。
「俺は英雄に……、そう、正義の味方になるんだ!
気取りなんかじゃない!
だから、誰一人、俺の目の前で傷つかせない!
誰一人、泣かせたりしない!
誰一人、見捨てたりしない!
誰一人、救われないことがあっちゃいけない!
今は無理でも、いつかはそうなるんだ。絶対に!
だから、俺は恐れない!
今は、今出来ることをする!
それは、目の前の女の子を守ること!
俺は……、戦う!」
「シロウ!」
「下がってろ!」
少年の手の甲が光り、少女が一歩下がる。
そして、少年は一歩自分の方に歩を進める。
76 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 21:45:58.42 ID:B8OHVj20
「……殺せ、カイム」
更に冷たくなった声で、竜が言う。
「ーーーー」
「やめっ!」
凛の止める声。しかし、言い終える前に少年に刃を這わせる。
「がっ!?」
「シロウ!」
「衛宮くん!」
舞う血飛沫、肉を斬る感触。
いつもなら歓喜に打ち震える瞬間が、どうしてこうも……。
分かっている、この少年のせいだ。
吐き気のする理想。
下らない、下らない、下らない。
だが、肩から袈裟に切られた少年は……、倒れない。
「ーーーー」
77 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 21:47:35.39 ID:B8OHVj20
浅かった?
いや、有り得ない。
この少年が少し頑丈なのだろう。
薙ぎ払う。
血が吹き出、今度こそ……。
だが、……倒れない。
「ーーーー!?」
何故だ?
確かに刃は深く胴を切り裂いた。
だが、何故倒れない?
「ーーーー!」
もう一度、斬る。
逆袈裟に斬られ、血を撒き散らす少年。
しかし、まだ倒れない。
「ーーーー!」
更に、一撃。そして、もう一撃。最後に、もう一撃。
その傷は、間違いなく致死。
飛び散った血は、地面を紅く染める。
しかし、少年は倒れない。
78 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/03/31(水) 21:48:01.57 ID:pgwbg2DO
>>74
なるほど確かにもっててもおかしくないか、それにそのほうが熱いし。 
期待してるよ>>1がんばれマジがんばれ
79 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 21:50:01.08 ID:B8OHVj20
ーー似た感覚を思い出す。
死神と契約した男。
こいつも、奴と同じに死を失っているのか?
いや、あり得ない。
皮肉に顔を歪める。
ただ、凛の為に、凛の妹の為に、
無意識に手加減をしたのだ。きっと、そうだ。
「ーーーー」
今度こそ、とどめだ。
少年の腹に剣を突き刺す。深く、深く。
剣は少年の腹を突き破り、月明かりに照らされる。
だが、
「ぐっ……、守る……、守るんだ」
「シロウ! もうやめて下さい!」
「カイム! 止め「凛、礼呪を使うと言うのなら、我はお前を殺すぞ?」
背後と前方で声がする。しかし、それを理解することができない。
少年が、自分の手を掴んでいたから。
80 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 21:52:17.44 ID:B8OHVj20
「ーーーー!」
何故だ? 何故倒れない?
その異様に剣から手を離す。これは、恐怖?
少年の手を振り払い、下がる自分を追い詰めるように、
少年はぎこちない足取りで歩く。
腹に剣を生やしたままで。
「ーーーー!」
親友の剣を抜き、大上段に構える。
両断すれば、生きてはいまい。
81 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 21:53:34.44 ID:B8OHVj20
「ーーーー」
だが、もしもそれで生きていたら?
自分は、理想に負けるのか?
そんな筈はない。
戦った。幾万を殺し、英雄と呼ばれるまで。
しかし、救えなかった。
大事な者は、ただの一人も。
全てを救う? 不可能だ。
そんなものは夢幻、現実にはあり得ない。
そんな世界は、有り得てはいけない。
そう、有り得ては、いけないんだ。
「ーーーー!」
82 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 21:55:27.70 ID:B8OHVj20
七節 約束された勝利の剣

フリアエとイウヴァルトを連れて、城を抜け出した。
衛兵を騙すくらいなら何とかなる。
城からさほど離れない丘で、イウヴァルトが歌う。
それに合わせてみるけど、何故かイウヴァルトのようにはいかない。
そう言うとイウヴァルトは、「歌まで負けたら、僕はカイムに何にも勝てないじゃないか」
といって笑う。
フリアエは疲れたのか、自分の膝の上で眠ってしまっている。
イウヴァルトがそれを見て微笑む。つられて、自分も。
ーーーー。
83 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 21:57:30.24 ID:B8OHVj20
夢を見た。
久しぶりの夢だ。
まだ幼き日の、幸せだった頃の記憶。
「んぅ……」
声に気づき、そちらに目をやると、凛が自分の横で突っ伏していた。
その頭は自分の膝元に乗っている。
「ーーーー」
撫でる。
すると彼女は、幸せな夢でも見ているかのように微笑む。
84 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 21:59:18.01 ID:B8OHVj20
「起きたか、カイム」
竜の声。
「お主の負けだ」
そうか、そうだった。
あのとき、自分は剣を振り下ろすことができなかった。
そして、
「ただ、生きている」
約束された勝利の剣<エクスカリバー>、そう少女の声が響いた。
瞬間、自分の体は極光に飲み込まれた。
「フンッ、あの程度で怖じ気付きおって」
しかし、その光を遮る巨体。
生きて、死ぬまで、体は離れても、心は共にあった竜。
「次は、勝つぞ」
85 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 22:00:31.89 ID:B8OHVj20
ーーーーああ、アンヘル。
86 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 22:01:47.63 ID:B8OHVj20
サーヴァント
ライダー(カイム) 秩序・悪
竜騎士の英霊。
紅き竜の契約者であり、一心同体でもある。
そのため、二体同時に召喚されることとなった。
ただし、そのペナルティか、40歳程度の年齢の状態になっている。
また、宝具の初期化と数の制限、竜の退化というペナルティも課せられた。
能力
筋A+ 耐A+ 敏C 魔E 幸E 宝A
87 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 22:03:19.02 ID:B8OHVj20
スキル
対魔力 D
一工程による魔術行使を無効化する。
魔術除けのアミュレット程度の対魔力。
騎乗 EX
竜種を含む全ての生物に騎乗できる。
又、戦闘機等の特定空戦兵器にも騎乗可能。
戦闘続行 A
狂気。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
歴戦 A
単純な戦闘経験の量。
相手に合わせ、常に効果的な戦闘方法を取ることが出来る。
悪運 EX
全ての物事が自分にとって悪い方向へと進む。
ただし、戦闘はこの限りではない。
カリスマ C
軍団を統率、指揮する才能。
圧倒的な力により兵士の士気を上げる。
聴唖 ー
契約の代償により言葉を失っている。
レッドドラゴンを通さなければ意思の疎通が不可能。
隻眼 ー
左目の視力を失っている。
ただし、竜との契約により身体能力が上昇しているため、
戦闘等には殆ど影響は無い。
88 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/03/31(水) 22:06:06.49 ID:B8OHVj20
宝具
契約の紅(ドラゴンブレス) A++
レッドドラゴンによる炎の大魔術。
竜の叡智により詠唱などを必要としない。
カイムがレッドドラゴンの背に騎乗していなければ発動できない。
対軍、対城と使い分けることが可能だが、対城の場合一定の距離を要する。
戦士の歯車(ウェポンホイール) ー
カイムの運命の歯車を鞘として、武器を収納する宝具。
運命を直接書き換え、世界の修正により武器を取り出すため、
タイムラグは殆ど存在せず、収納〜装備変更〜攻撃を一動作で可能。
ただ、現在内部には二本の剣しか入っていない。
カイムの剣(ブレイジングファング) B
爆炎を秘めた、カイム愛用の剣。
イウヴァルトの剣(ファングオブシヴァ) B
絶氷を秘めた、カイムの親友、イウヴァルトの剣。
89 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/03/31(水) 22:08:29.10 ID:B8OHVj20
VIPからお引越し完了
ちょこちょこ文章直したり、カイムのステータスも多少修正
三章は出来れば明日。もしかしたら明後日になるかも
90 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/03/31(水) 22:15:34.83 ID:YAxXZlgo
ひゃっはーまってたぜ1よ
完結目指して頑張ってけろ
91 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/03/31(水) 22:18:45.12 ID:pgwbg2DO
>>1
今更ながらこれが噂のフェイトってやつか…約束されたなんたらで気付いたぜ

ステータスの幸Eとか戦闘機なのに搭乗なり操縦でなく騎乗なのがカイムらしいな。
続きも楽しみにしてるよ。
92 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/03/31(水) 23:44:44.83 ID:mtglAxIo
カイムとレッドドラゴン大好きな俺が興奮!
続きを楽しみにしてますぜ!
93 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 00:14:50.11 ID:VmhwVgDO
こっちに移ったのか
楽しみにしてます
94 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 06:56:32.01 ID:J7utv3w0
VIPで検索しまくってたらこっちか
まじで楽しみにしてる!
95 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/04/02(金) 00:29:01.90 ID:PqbGFDE0
日超えてしまった……
何とか今日中に投下できるよう頑張る
96 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 08:03:52.57 ID:Qs4EGIDO
待ってます
97 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 11:15:40.41 ID:ThdwVcAO
ドラッグオンドラグーンなのか?
98 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:03:03.50 ID:3rkafqc0
資格などは無い!
ただ俺は生きたいだけだ!
憎むなら憎め!
それでも俺は、生きてやる!

ーー三章 血塗ーー
一節 紅き竜の騎士
99 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:04:35.96 ID:3rkafqc0
先の戦闘で敗北した自分が目覚めたのは、
他でもない、自分が切り刻んだ少年の家だった。
しかも、自分が目覚めた時には少年は既に目覚めており、
その傷は、腹の風穴以外ほぼ完癒していた。
さらに、その少年は自分を責めることもなく、
「確かに痛かったけどさ、でも、あんたも痛かっただろ?
だったらおあいこだ」
と言って笑った。
狂人。そう、少年は狂人だった。
100 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:05:29.26 ID:3rkafqc0
ーー衛宮士郎。
自分が現実に狂った狂人だとするなら、
彼は理想に狂った狂人。
誰も傷付かず、誰も争わない。
叶うことなき、遥か遠き理想郷。
下らない、吐き気のするような戯言。
少年は、士郎はそれを疑うことなく信じていた。
ーーーー。
101 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:07:07.79 ID:3rkafqc0
「だからさ、セイバー。
折角遠坂が協力しようって言ってるんだ」
「シロウ、あなたは彼等に殺されかけたのですよ!?
いいえ、本当なら死んでいたはずです。
それが同盟などと」
「だけど、生きてるだろ。
それに、俺は魔術師として未熟だ。
だから」
「なら、私が全てのサーヴァントを打ち倒せばいいだけ」
「でも、あの日のやつでほとんど魔力ないんだろ?
遠坂ならきっとどうにか出来るだろうし」
「魔力などなくても、私は勝ちます」
「だから」
「しかし」
102 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:08:29.84 ID:3rkafqc0
ーー先ほどからずっと、士郎とセイバーが言い争いをしている。
その争いの発端は、
「衛宮君、私と組まない?」
という凛の一言。
自分とアンヘルはそれに反対だった。
永遠に理解出来ない理想に生きる者と、
肩を並べて戦うなど不可能だ。
しかし、
「どうせ戦うことにはなるんだし、
だったら最後に取っといた方がいいじゃない。
最後の最後でリベンジを果たす。
なんかこっちの方がいいでしょ? ね?」
と言って凛が笑うと、
「フンッ、 マスターがそういうならば仕方なしか。
まぁ、他の雑兵どもを蹴散らした後で相手をする。
というのも悪くはないな」
と言って、アンヘルも笑った。
103 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:09:42.03 ID:3rkafqc0
「ーーーー」
不満に声を送る。
無論、凛には届かぬように。
「まぁ、カイムの言うことも分からんでもない。
あやつとおぬしは真逆の人間。
だが、あやつを殺すのは何時でも出来る。
それに、あやつはヴェルドレの様なゴミとは違う。
もしかすれば、面白いことになるかもしれんぞ」
帰ってくる声。
不満は消えないが、アンヘルが言うのならば仕方ない。
104 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:10:48.65 ID:3rkafqc0
「……ハァ、分かりました、シロウ。
ただし、もし彼等が不穏な動きを見せたなら、
即座に叩き切ります」
どうやらあちらも一段落ついたようだ。
しかし、その言葉に反応し、アンヘルがセイバーを睨みつけながら口を開く。
「フンッ、調子に乗るな、騎士。
本来ならカイムを消滅の危機に追いやったおぬしは万死。
いや、その魂焼き付くし、二度と輪廻を廻れぬようにするところだ」
「ハッ! そうですか!
ならば表へ出なさい、竜よ。
魂ごと我が聖剣で叩き切ってあげましょう」
そう言い、セイバーも負けじとアンヘルを睨み返す。
ちゃぶ台を挟み迸る殺気。
それを止めたのは士郎だった。
105 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:11:45.82 ID:3rkafqc0
「やめろって!
ほら、これからは仲間なんだし、自己紹介でもしてさ。
セイバーもそんな怖い顔しない!
女の子なんだから」
二人の間に入り、そう言って笑う士郎。
その笑顔に、セイバーもアンヘルも呆れたような顔をし、殺気を納める。
「ハァ、本当にあなたは……」
「フッハッハッ! 面白い小僧よ!」
そして、溜息を吐くセイバーと、笑うアンヘル。
その後、先に口を開いたのはセイバーだった。
106 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:13:22.29 ID:3rkafqc0
「まぁ、いいでしょう。
前も言いましたが、私はセイバーのサーヴァント。
名は……、宝具も見せてしまいましたし、既にお分かりでしょうが、
アルトリア・ペンドラゴン。
かつてアーサーと名乗っていた者です。
私の紀元と同じ色の竜よ」
「ふむ、やはり竜の因子を持つ者か。
しかも、それが我と同じ紅き竜とはな。
これも何かの因果か?
まぁ、よい。
そちらも名乗ったのだ、こちらも名乗ろう。
それは竜騎士カイム、我はレッドドラゴンだ。
紅き竜の騎士よ」
107 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:14:14.42 ID:3rkafqc0
互いに自己紹介をする二人。
それを見て凛は満足したように笑い、口を開く。
「よし、決まったわね!
じゃ、いきなりだけど、衛宮君。
この聖杯戦争の監督役のとこに行くわよ」
108 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:15:54.73 ID:3rkafqc0
二節 英雄の願い

「ここよ」
教会の前で立ち止まった凛は、そう言ってこちらに振り返る。
とは言っても、我等は霊体化しており、
目視で確認できるのは騎士だけだが。
「さて、じゃあ入るけど」
「私は残ります」
「そう。
じゃあカイムとレッドドラゴンもここに残って。
行くわよ、衛宮君」
そう言い残し、凛は小僧と共に教会へ向かう。
109 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:17:02.38 ID:3rkafqc0
「竜よ」
二人が教会に入り少しして、不意に騎士が口を開く。
「あなたは、聖杯に何を望むのですか?」
「望みか? そんなものはない」
「では何故聖杯戦争に?」
「知らん。何時の間にやら勝手にこんなものにされ、
そしてあの小娘に召喚されたのだ。
まぁ、暇つぶしにはいい戯れだ」
「そうですか……」
我の答えに満足したのか、騎士はそれ以上口を開こうとはしない。
「おぬしは、何を望むのだ?」
今度は逆に、こちらから問いかける。
110 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:18:04.23 ID:3rkafqc0
「……私は、やり直したいのです。
王の選定を。私が滅ぼした、国の未来を」
帰ってきた弱々しい答え。
馬鹿馬鹿しい願い。
「フンッ、やはり人間、その程度か」
笑う。
そのようなことに囚われ、救いを求める英雄を。
「ッ! あなたに! あなたに何が分かると言うのですッ!」
そんな我に、烈火のごとき怒りを放ち叫ぶ騎士。
111 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:19:03.09 ID:3rkafqc0
「青いな、騎士よ。
おぬしはあの小僧以下だ。
理想に囚われ、しかし、叶えられず生を終えた。
それだというのに、死して尚それに縋っている。
滑稽としか言い用がない」
「うるさいッ! 人を知らぬ竜が!
私は王だ! 民を守る義務がある!
獣が吠えるなッ!」
「ほう、我を獣扱いするか。
本来は許さぬが、まぁよい。
我が人を知らぬとも言ったな?笑止。
我は人の温もりを知り、自身を、伝説を、
竜を超えた竜ぞ。見くびるな」
「うるさいうるさいうるさいッ!」
錯乱し、剣を抜く騎士。
112 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:19:58.65 ID:3rkafqc0
「ーーーー」
それを見たカイムが実体化し、剣を構える。
「やめろッ!」
今斬り合おうという瞬間、小僧の叫び声が響く。
気付き、そちらを向く騎士とカイム。
「止めないでください、シロウ!」
走り、カイムと騎士の間に割って入った小僧に騎士が叫ぶ。
113 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:20:46.65 ID:3rkafqc0
「いやだ!」
「何故ですか!?」
「何故もなにもないだろ!
なんでそんな戦いたがるんだよ!」
「彼等とは分かり合えない!」
「分かり合えないからって戦うのか!?
それで考えを押し付けて、ダメなら殺すのか!?
ふざけるなッ!
そんなんじゃ誰も幸せになんかなれない!
誰もそんなこと望んじゃいない!
言葉が、心があるんだろ?セイバー!
だったら使えよ! 分かり合えないからって諦めて、
それで戦って血を流して、殺し合って!
そんなのは人間じゃない!」
「あなたは甘すぎる!
人は必ずしも同じではない!
理想に立ちふさがるのなら、
剣を抜かねばならない時もあるのです!シロウ!」
「そんな理想は誰も必要としないッ!」
「私がッ!私が必要とするのです!
それが私の存在意義、為すべきことなのです!」
「黙れッ!」
言い争う二人を一喝する。
114 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:22:16.61 ID:3rkafqc0
「騎士よ、醜いぞ。
おぬしは何を求める?
救いだろう? しかし、犠牲なき救いなどはない。
考えろ。 滅びぬ国があったか?死なぬ人間がいたか?
自身を責めるのは勝手にしろ。
死にたいのなら、その胸を剣で貫け。
おぬしが言うは理想ではない。
ただおぬしは逃げたいのであろう?
王としての責任を果たせなかった責務から。
救われたいのであろう?
自身を追う悪夢から。
全てを他人に被せ、ただ安息につきたいがために、
理想と言う名分に縋りついて戦う。
それが王?笑わせるな」
「うるさいッ!
うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!
何が分かるッ! 誰が分かるッ!
私は戦ったのだ!国を、民を守るために!
それでも、守りきれなかった……。
私は……、戦ったのだ……」
「ならば、誇れ。
その生を、その戦いを。
おぬしは王だろう?背負え。全てをな」
「私は……、その重さに耐えられない……。
だからこそ、聖杯が必要なのです……」
「……馬鹿者が」
115 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:24:07.34 ID:3rkafqc0
三節 狂った英雄

「……」
来た道を戻る。
言葉はなく、セイバーは今だうなだれたままだ。
「先の言葉、おぬしにも言ったのだぞ、カイム」
アンヘルから声が届く。
「ーーーー」
分かっている。
自分は、救いを求めている。
フリアエを、イウヴァルトを、ーーアンヘルを救えなかったことを、
凛を守ることで贖罪しようとしている。
116 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:25:25.46 ID:3rkafqc0
「だが、仕方ないのかもしれぬな。
人間の生は、あまりに短すぎる」
違う。
きっと弱いのだ。自分も、セイバーも。
「なんか暗いねー、お兄ちゃん達」
不意に響く知らない声。
目を向けると、年端もいかない少女が坂の上で微笑んでいた。
傍には巨人。
117 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:26:48.70 ID:3rkafqc0
「何があったか知らないけど、まぁいいや。
私はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。
初めまして、お兄ちゃん」
「……なんの用だ? 人形」
アンヘルが実体化し、少女に言う。
「もー、人形じゃないよ!
イリヤスフィール! イリヤって呼んで!」
不満げに少女が返す。
「黙れ人形。なんの用かと聞いているのだ」
「あー!もう怒ったんだから!
殺しちゃえ!バーサーカー!」
「■■■■■■■■■■■ーーー!」
アンヘルの言葉に怒りを隠さず、少女が巨人に命令すると、巨人は雄叫びを上げながらこちらに突進してくる。
118 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:27:44.80 ID:3rkafqc0
「私は……、私はァッ!」
それを迎え撃つため実体化する自分を横切り、セイバーが飛び出す。
「クッ!」
しかし、巨人の振るった斧を受け刃を弾かれた直後、返す一手で切られ、自分のところまで後退する。
「大丈夫か? セイバー」
「寄るなァッ!」
それに駆け寄る士郎を声で制止し、剣を杖に立ち上がるセイバー。
「私は……、私は……、私はッ!」
そして、愚直な猛進。
しかし、その体に攻撃を受け切れるはずもなく、胴を深く切られ吹き飛ぶ。
119 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:28:52.60 ID:3rkafqc0
「ッ! カイム! ここは逃げるわ!
時間稼ぎをお願い!」
「時間稼ぎ? 笑わせるな。
倒してしまっても構わぬだろう?」
凛の送った声に、アンヘルは一笑して返す。
「へぇ、そんなこと言うの?
言っておくけど、私のバーサーカーは強いよ。
だって、ヘラクレスなんだから」
「ヘラクレス!?」
少女の言葉に凛が驚愕の表情を表す。
120 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:29:55.31 ID:3rkafqc0
「ヘラクレス? 知らぬな」
「神話の英雄よ。しかも、死後神になるほど高位のね。
それを狂化するなんて」
「ーーーー!」
「神か、面白い!
散々振り回された礼、今返してやる!」
アンヘルが奮い立つ。
同時に、自分も拳に力が篭る。
あの世界で、あれだけ自分を振り回したのだ。
ただでは済まさん。
121 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:31:04.87 ID:3rkafqc0
「退け、竜騎士! そいつは私が!」
「いい加減にしろ! セイバー!」
士郎の掌が光り、セイバーが大人しくなる。
そして、士郎はセイバーを抱え走り出す。
「カイム! レッドドラゴン! 無理しないでよ!」
声を送り、凛もそれについて行く。
「行ったか。騒がしい奴らよ」
それを確認し、アンヘルが笑う。
「では、始めるか。狂いし神よ」
122 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:32:11.49 ID:3rkafqc0
四節 神との戦い

巨人の振るった斧を受け止める。
「ーーーー!」
瞬間、地面が砕け、体が軋む。
が、
「ーーーー!」
振り払えぬほどではない。
「すごいね、バーサーカーを吹き飛ばすなんて。
でも、何時までもつかな?」
少女が笑う。
そして、先程と同じに斧を振るう巨人。
123 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:33:09.49 ID:3rkafqc0
「ーーーー」
剣先でそれを受け止める。
しかし、受け止める場所の違いに、掛かる力は倍増する。
もちろんそれに耐え切れるはずもない。
だが、それが狙い。
「ーーーー!」
その力を利用し、空中で一回転する。
そして、勢いのまま首に斬撃を叩き込む。
分厚い筋肉に抵抗を受けるが、それでも刃は止まることなく、
巨人の首を跳ねる。
飛ぶ頭。遅れて血が吹き出し、巨人の体が崩れ落ちる。
124 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:34:08.59 ID:3rkafqc0
「えっ……?」
絶句する少女。
弱い、弱すぎる。
確かに力はある。ただ、それだけだ。
「ーーーー?」
しかし、少女はすぐに驚きを消し、不敵に笑う。
「カイム! 避けろ!」
アンヘルの声に振り向くと、目前には先程殺した筈の巨人。
「ーーーー!?」
咄嗟に飛び退くが、躱しきれなかった斧が腹をえぐる。
125 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:35:08.52 ID:3rkafqc0
「ふふん! さっきは驚いちゃったけど、
バーサーカーはその程度じゃ死なないよ!
あと10回殺さない限りはね!」
少女が自慢げに笑う。
「ーーーー」
そうか。十回も殺していいんだな?
「ーーーー!」
もう一度首に斬撃を叩き込む。
「ーーーー!?」
しかし、刃は全く通らず弾かれる。
「無駄だよ!
バーサーカーに同じ攻撃は二度きかないんだから!」
毎回ヒントを寄越すとは……、あの少女は……。
まぁいい。
多少は厄介だが、無理と言うほどでもない。
126 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:36:03.99 ID:3rkafqc0
「ーーーー!」
巨人に向かって走る。
斧が自分目掛け振るわれるが難なく躱し、
巨人の肩に飛び乗る。
そして、アンヘルとの魔術回路から魔力を受け取り、剣に込める。
「ーーーー!<ブレイジング>」
魔力を込められた剣が赤く染まり、
「ーーーー!<ファング>」
爆炎を発生させる。
爆炎は巨人の頭に直撃し、そのまま吹き飛ばす。
またも頭を失い、倒れる巨人。
127 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:36:58.50 ID:3rkafqc0
「ーーーー」
これで、二回目。
「もー! なにやってるの、バーサーカー!」
少女が叫ぶ。
しかし、巨人の再生はまだ終わらない。
その間に剣を持ち替える。
「■■■■■■■■■■■ーーー!」
再生が終わり、咆哮する巨人。
そしてそのままこちらに突っ込んでくる。
「ーーーー」
さらにアンヘルから魔力を受け取り、剣に込める。
「ーーーー!<ファングオブ>」
魔力を込められた剣が冷気を帯び、
「ーーーー!<シヴァ>」
巨人の足を凍らせる。
その足を蹴りで砕き、倒れた巨人の心臓に剣を突き刺す。
128 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:37:53.95 ID:3rkafqc0
「ーーーー」
これで三回目。
だが、
「フッ、手詰まりだな。
どうする? カイム」
笑いながらアンヘルが言う。
「ーーーー」
声で返す。
再生する巨人。
しかし、立ち上がった直後にアンヘルの火球に上半身を失う。
「ちょっとちょっと! ずるいずるいずーるーいー!」
半分泣きながら少女が地団駄を踏む。
更に再生する巨人。
ただ、今度は立ち上がる間もなくアンヘルに食いちぎられる。
129 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:39:05.07 ID:3rkafqc0
「これで五回目。いや、六回目だな」
足で巨人を叩き潰し、アンヘルが言う。
そしてそのまま上空に持って行くと、勢いを付け叩き落とす。
「ーーーー」
これで、七回目。
「うわーん! ずるいよ!
イジメだイジメだー!
暴力はんたーい!」
少女は完全に泣いている。
……自分で弱点を教えたのに、一体何をしたいんだ?
「ふむ、手詰まりだな。
乗れ、カイム。帰るぞ」
言われたままにアンヘルの背に乗る。
やっと立ち上がる巨人。しかし、既に自分達は飛び上がった後だ。
130 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:40:40.74 ID:3rkafqc0
「逃げるな逃げるなー!」
「五月蝿い人形だな。
土産だ、受け取れ」
喚く少女にアンヘルが小火球を打ち出す。
だが、どうせ巨人にかき消されるだろう。
「ーーーー?」
しかし、巨人は少女をかばうかの様に覆い被さる。
直撃する火球。
しかし、その背中は殆ど無傷だ。
131 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:41:49.13 ID:3rkafqc0
「ハッ! これは面白い!
凛よ、魔術を使うぞ!」
「ちょっと!」
「答えは聞かん。案ずるな、人も殺さぬ」
アンヘルが凛に声を送る。
そして、上昇。
「しっかり守れよ、狂戦士!」
ある程度の高度まで上昇し、アンヘルが叫ぶ。
「契約の<ドラゴン>」
そして魔法陣を描き、
「紅<ブレス>」
発動。
魔法陣から放たれた灼炎が帯になり、重なり合って巨人を目指す。
そして、爆発。
132 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/02(金) 19:43:11.54 ID:3rkafqc0
「ーーーー」
アンヘルから飛び降り、地面に降りる。
先程の巨人は溶け、原型を失っていた。
「我の炎に直撃したのだ。十一の命など紙のようなものよ」
そう言って笑うアンヘル。
「ーーーー」
巨人であったものを蹴り飛ばす。
少女は……、生きていた。
ただ、気絶している。
「ふむ、殺すか? カイム」
「ーーーー」
アンヘルの言葉に首を振り、少女を担ぎ上げる。
「甘くなったな。おぬしも」
確かに、甘くなったものだ。
133 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/02(金) 19:44:52.74 ID:3rkafqc0
五節 銀色の少女

「で、持ってきたと」
カイムが持ってきた少女を冷ややかな目で見る。
「ふふん、お兄ちゃんもいいって言ってくれたもんねー!」
その少女はカイムに抱きつき、首元に登って笑っている。
なんか……、ムカつく。
「カイム、あんたってロリコン?」
精一杯の皮肉をカイムに送る。
134 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/02(金) 19:45:43.24 ID:3rkafqc0
「ーーーー」
「そんなこと言ってー、羨ましいんでしょー、凛」
なぜか答える少女。
っていうか、
「いい加減に、離れろー!」
「やだー。べー」
それでも離れない少女を無理矢理ひっぺがす。というか、
「カイムもカイムよ!
さっきまで殺し合ったやつに、デレデレすんな!」
「嫉妬だ嫉妬だー! やーい、やきもちー」
そんな私を笑う少女。ムカつく……。
「ほら、カイムもこんな凛じゃなくて、私をマスターにした方がいいよ!」
「ほう、それは興味深い」
「乗るなー!」
……そんな風にして、騒がしい夜は過ぎていった……。
135 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/02(金) 19:47:31.42 ID:3rkafqc0
三章終わり
眠い……
四章は出来れば三日後の夜に投下します
136 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 20:25:33.79 ID:Qs4EGIDO

アンヘル強すぎじゃね?
137 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 23:01:35.20 ID:RcFAdcDO
>>1乙 
戦闘続行Aてのはゲームシステム的なあれか
しかしカイム丸くなったな、まだ誰も蹴っ飛ばしてないし 

138 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/04/03(土) 00:33:51.38 ID:JolGNjc0
>>137
カイムって基本的に敵に対してしか攻撃しないから
しかも、無能な味方は士郎くらい……
狂気見せるとこが無いんだよね
まぁ、一応そういう場面も想定してるけど
>>136
まぁ、カリバーンで7度死ぬかませ犬相手だし
さらに前回負けたフラストレーションを発散した
139 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/04/03(土) 05:35:24.01 ID:EJG52Qo0
ここまでの人物紹介
カイム
連合株式会社の元社長で、アンヘルの夫。
良家の子息で、文武両道容姿端麗のパーフェクト超人。
だけど、致命的なまでに性格が悪い。
主な感情表現は殴る蹴る。場合によっては刃物を向ける。
へタレが嫌い。
リアリストっぽいが、実は愛に生きる人。
友達には優しかったりする。
アンヘルとは未だラブラブの鴛鴦夫婦。

アンヘル
カイムの妻。
聡明な女性だが、勝気で高飛車。殆どの人を見下す。
少しメンタルが弱い面があるが、カイムに撫でられるだけで勇気百倍。

士郎
カイムとアンヘルの息子。
ミュージシャンになりたくて両親を説得しているが、
カイムからは認められず殴る蹴る斬るの暴行を受けている。
ロマンチスト。


カイムとアンヘルの娘。
母に似て、勝気で高飛車。
お父さんが好きだけど、素直になれないお年頃。

イリヤ
カイムとアンヘルの娘。
お父さんもお母さんも大好き。
でも、お兄ちゃんはもっと好き。



140 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/03(土) 05:47:07.41 ID:EJG52Qo0
フリアエ
カイムの妹。薄幸の美女。
表向きは清楚だが、実は超腹黒。
お兄ちゃん以外の人間は自分に跪くか死ね。
でもお兄ちゃんは大好き。
全部病気のせいなんです。
昔は活発な子だったとはカイム談。

イウヴァルト
へタレ。でも意外と良いやつ。
だけどへタレ。歌は上手い。
やっぱへタレ。実は貴族。
それなのにへタレ。でも愛に生きる。
熱烈なアタックで折れたフリアエと一児をもうける。
だけど、あまりに喋るのが下手だったので、
知り合いの竜に預けました。

セイバー
士郎の彼女。
イングランド商事の若社長。男装してます。
業績悪化に苦しんでるけど、誰の首も切りたくないので悩んでる。
ロマンチスト。
カイムとアンヘルとは相性が悪い。
141 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/04/03(土) 05:50:29.53 ID:EJG52Qo0
なんか眠気とれねーなと思ったら熱あった
そのまま書こうとしたら上みたいのが出来ました
寝ます
142 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/03(土) 06:14:56.47 ID:H3eemwAO
パロディワロタwwwwwwwwwwDODを知り尽くしてるな
ゆっくり休め!期待して待ってる

イリヤに懐かれるカイムがたまらんwwwwwwwwww
143 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/03(土) 06:19:45.12 ID:sjqVIoDO
>>141 
無茶しやがって… 
>>1のことは俺が暖めてどうにかしておこう
144 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/03(土) 18:02:08.69 ID:xdgEo6DO
>>1がぶっ壊れたのかと思ったwwwwww
145 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/04/04(日) 17:42:27.26 ID:tlhL2jE0
日常生活をするカイムが想像できねぇ……
カイムとフリアエinこたつ的な暴走もできねぇ……
146 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/04(日) 22:30:10.04 ID:fNndim60
>>139を見て、2の設定資料集に乗ってる学園モノを思い出したわww
147 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/04/05(月) 17:34:55.60 ID:Jolbp/k0
ごめん、すこし伸びる
木曜までには投下できると思う
148 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/05(月) 19:49:13.92 ID:D88aF.DO
おkドラゴン暖めて待ってるお
149 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 21:01:11.79 ID:0RuXEYDO
vipじゃないし
ゆっくり行こうぜ
150 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/06(火) 20:20:30.72 ID:gXghDVo0
ーー四章 停滞ーー
一節 虎日和

「あー! 士郎が女の子連れ込んで、しかも、同じベッドで寝てるー!?」
「んぅ……?」
誰かの叫び声に目を覚ます。
傍の時計に目をやると、いつも起床している時間よりもずっと早い。
誰だこんな時間に騒いでるのは?
とも思ったけど、それよりも眠気が勝る。お休み……。
「って、あー! こっちには……、遠坂さんっ!?」
夢の世界に今足を踏み入れようとした所で、
私の意識は無理矢理引き上げられる。
布団から顔を出して叫び声の方に顔を向けると、
「藤村先生!?」
なんでここに?
「士郎ー! 説明しなさいー!」
私が混乱していると、藤村先生は叫びながらものすごいスピードで部屋を飛び出していった。
「一体、なんなの……?」
隣では、未だにイリヤが寝息を立てていた。
ーーーー。
151 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/04/06(火) 20:23:29.53 ID:gXghDVo0
ミスった
152 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/06(火) 20:24:02.39 ID:gXghDVo0
天使が割った
奇妙な皿の上で
燃えて
尽きる

ーー四章 停滞ーー
一節 虎日和

「あー! 士郎が女の子連れ込んで、しかも、同じベッドで寝てるー!?」
「んぅ……?」
誰かの叫び声に目を覚ます。
傍の時計に目をやると、いつも起床している時間よりもずっと早い。
誰だこんな時間に騒いでるのは?
とも思ったけど、それよりも眠気が勝る。お休み……。
「って、あー! こっちには……、遠坂さんっ!?」
夢の世界に今足を踏み入れようとした所で、
私の意識は無理矢理引き上げられる。
布団から顔を出して叫び声の方に顔を向けると、
「藤村先生!?」
なんでここに?
「士郎ー! 説明しなさいー!」
私が混乱していると、藤村先生は叫びながらものすごいスピードで部屋を飛び出していった。
「一体、なんなの……?」
隣では、未だにイリヤが寝息を立てていた。
ーーーー。
153 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/06(火) 20:25:24.04 ID:gXghDVo0
「ふーん、居候ねぇ」
「そうそう、この男の人がカイムさん。
で、こっちが娘のイリヤとセイバー。
遠坂の知り合いなんだけど、泊まるとこが無いっていうから」
「ふーん」
藤村先生は説明に納得しきっていないのか、
私たちの顔をまじまじと見比べる。
154 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/06(火) 20:26:25.03 ID:gXghDVo0
「イリヤスフィールです。
この度は衛宮さんの厚意に甘えさせて頂いております」
「セイバーです。お邪魔しています」
「ーーーー」
カイムを挟むように座っている二人が頭を下げる。
どうでもいいけど、イリヤってああいう言葉遣いも出来るんだ。意外だ。
ちなみに、カイムはものすごい嫌そうな顔をしている。
まぁ、無理矢理二人の父親役をやらせてるんだから無理もないか。
155 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/06(火) 20:27:42.19 ID:gXghDVo0
……で、なんでこんなことになっているのかというと、
昨日の夜、突然セイバーが倒れた。
理由は簡単、魔力が尽きかかっていたからだ。
それで、本当ならマスターが魔力を供給するのだけど、
士郎は未熟過ぎてそれが出来ない。
その解決方法として、士郎の魔術回路をセイバーに移植することに。
魔術回路が減るというのは魔術師として致命的なんだけど、
士郎はためらうことなく即決した。
結果、移植は成功。
そのまま二人を放っておいたら、藤村先生がそれを見つけてしまったという訳だ。
156 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/06(火) 20:28:53.93 ID:gXghDVo0
「まぁいいや。
士郎、ごはんー」
藤村先生はまだ納得してはいないみたいだったけど、
それよりも食欲の方が大事みたいで、
テーブルをバンバン叩きながら食事の催促をする。
「はいはい、すぐ作るよ」
それを見て、士郎が苦笑いしながら台所に向かう。
多分いつものことなんだろうな。
「先輩?」
不意に玄関の方から戸を開ける音と少女の声。
「桜ちゃーん!」
その声に、藤村先生が飛び出す。
すこし経って、藤村先生が声の主を連れて戻ってきた。
「ね……、遠坂先輩?」
「おはよう、間桐さん」
私の妹、間桐桜を。
157 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/06(火) 20:30:00.51 ID:gXghDVo0
二節 面影を宿す少女

「ーーーー!?」
「ほう? これは……」
騒がしい女性が連れてきた少女、桜は、
ーーフリアエによく似ていた。
「ーーーー」
「これが凛の妹とは……、偶然にしては出来過ぎておるな。
しかし、これはおぬしの妹とは違うぞ? 分かるな?」
大丈夫だ。
確かに、自分は後悔している。
フリアエを救えなかったことを。
その贖罪のために凛を守ろうとしている。
だがーー、それだけだ。
フリアエを求めてはいない。
「ならばよい」
158 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/06(火) 20:31:08.03 ID:gXghDVo0
三節 戦争の傷跡

「ご馳走さまー!」
「じゃあ俺は皿を洗うよ」
「私も手伝います」
「ーーーー」
台所に向かう士郎と桜に、何故かカイムがついていく。
目で追うと、桜の手伝いをしているらしい。
らしい、というのは、カイムがいることで仕事がはかどっているようには全く見えないから。
というか、桜が「あ……、あの」とか、「い……、いえ」とか言ってビビりまくっている。
そりゃあの顔じゃビビるわ。
159 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/06(火) 20:32:18.99 ID:gXghDVo0
しかも、士郎を手伝おうという気は全く無いらしく、
そっちを向こうともしない。
まぁ、元々仲良くなれる訳ないし、
奇跡的に問題なくやってくれているだけで、
こっちが申し訳無いくらいだけど。
「へー、さすがは外人さん。レディーファーストだねー」
その様子を見て藤村先生が言う。
あれはレディーファーストではない気もするけど……。
でも、カイムって何気にそこまで悪い奴でもない気もする。
最初はレッドドラゴンの言葉とかで外れだと思ったけど、
見境が無い殺人鬼でもないし、常識がない訳でもない。強いし。
160 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/06(火) 20:33:24.01 ID:gXghDVo0
「うーん……」
でも、レッドドラゴンが嘘をつくとも思えない。
それに、士郎を斬り刻んだのは事実だしなぁ……。
「どうしたんだ?」
いつの間にか洗い物は終わったらしく、士郎がテーブルの対面に座っていた。
「少し考え事」
「ふーん」
士郎は別に興味があったわけでもないらしく、すぐにテレビに向き直る。
「ん? もうこんな時間か。
そろそろ準備しないとな」
「準備って、なんの?」
テレビの時報を見て立ち上がった士郎に、藤村先生が尋ねる。
161 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/06(火) 20:34:26.58 ID:gXghDVo0
「何って、学校だろ?」
当たり前の様に返す士郎。
「学校って、休校でしょ?
って、士郎は電話出なかったっけ?
なんか分かんないけど校舎がぐしゃぐしゃになってたの。
ニュースにもなってたんだよ」
「げっ……」
そういえばレッドドラゴンが突っ込んで、
校舎ぶっ壊したんだった。
士郎は死んじゃってたし、蘇生した後は校庭に放り出しといたから知らないだろうけど。
162 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/06(火) 20:35:59.30 ID:gXghDVo0
「どうしたの? 遠坂さん?」
「い、いえ。なんでも」
まぁ、不可抗力だよね。
気にしない、気にしない。
「でも、最近おかしいよね。
この前はビル群がガス爆発で吹き飛んじゃったし……」
「藤ねえ!」
「え、あ……」
士郎に怒鳴られて、藤村先生が気まずそうな顔をする。
そして、おずおずと口を開く。
「ごめんね、桜ちゃん」
「大丈夫です。兄さんのことはもう整理出来ましたから」
こっちも忘れてた……。
桜の兄、間桐慎二は死んだんだ……。
他でもない、私たちのせいで。
だけど、間桐の家は魔術師の家系。
聖杯戦争のことを知らないはずがない。
しかも、あそこにはアーチャーがいた。
更に、「いけすかないマスター」という言葉。
恐らく、間桐慎二はマスターだった。
163 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/06(火) 20:37:11.43 ID:gXghDVo0
確か間桐は魔術師としては潰えたはずだけど、
それでもサーヴァントを呼び出す術はあったんだろう。
でなければ、あの場にあいつがいるはずがない。
あの時犠牲になったのは、慎二以外中年男性だけだったからだ。
そもそも、娯楽施設がある訳でもない深夜のあの場所に、
ただの学生がいるはずもない。
それに、レッドドラゴンはアーチャーの傍に小僧がいたと言っていた。
桜には悪いけど、これは戦いなんだ。
最低限の被害には留めるつもりだけど、
マスターなら場合によっては殺すことだって覚悟しないといけない。
それに、あいつだって仮にもマスターだったなら、死を覚悟していたはずだ。
だから、私は桜には謝らない。
164 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/06(火) 20:38:12.53 ID:gXghDVo0
「遠坂先輩、具合、悪いんですか……?」
そんな私を覗き込んでくる桜。
その心配そうな顔に心が痛む。でも、
「大丈夫」
私は、後悔しない。
戦うと決めたんだから。
165 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/06(火) 20:39:31.26 ID:gXghDVo0
四節 一時の休息

「あぅ……、なんかしめっぽくなっちゃった。
よ、よーし、士郎!
遊びに行くわよ!
桜ちゃんも遠坂さんも!
ついでにカイムさんたちも!」
場の空気を変えようと思ったんだろう。
藤村先生がそう言って拳を振り上げる。
「藤ねえ……、普通教師っていうのは勉強しろとか……」
「おだまり士郎!
遊べる時には遊ぶの!」
ビシィ! と士郎に指を突きつける藤村先生。
それに肩を落としつつ、士郎が口を開く。
166 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/06(火) 20:40:42.62 ID:gXghDVo0
「はぁ、分かったよ。
で、どこに行くんだ?」
「そんなのは行ってから決めればいいでしょ!」
「はぁ……」
士郎が更に肩を落とす。苦労してるんだなぁ……。
「はーい! 水族館に行きたいー!」
そんな士郎の気持ちを知ってか知らずか、
イリヤが勢いよく挙手する。
「はい、水族館ね」
決まったらしい。
「私は服を見に……」
そういいながら、おずおずと桜も挙手をする。
「りょーかーい」
これも即決。
167 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/06(火) 20:41:47.84 ID:gXghDVo0
「で、遠坂さんとセイバーさんとカイムさんは?」
うーん……、別に行きたい場所もあまりないような……。
強いていえば、
「私は何か美味しいものが……」
言おうとしていたことをセイバーに取られてしまった。
っていうか、セイバーって意外と食いしん坊?
さっきも何気にかなり食べてたし。
「はい、美味しいものね。
遠坂さんとカイムさんは?」
「私も服とかでいいです。
カイムさんもいいわよね?」
「ーーーー」
カイムが頷く。
「よーし、じゃあこれで決定!」
168 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/06(火) 20:43:04.55 ID:gXghDVo0
五節 何気ない昼間

「ーーーー」
何故こんなことになったんだ?
「似合う似合う!」
鏡に見なれない男が写っている。
ーー騒がしい女性の一言が始まりだった。
「カイムさんの服って、パジャマ?」
基本的に英霊が持つ服というのは、生前に着込んでいたものらしい。
そして、自分が着込んでいた服は確かに正装ではない。
いや、みすぼらしいと言われて当然なものだ。
戦闘になれば遥か昔使っていた籠手や甲冑を具現もするが、
非戦闘時に装備するわけにもいかないだろう。
だが、別に何があるわけでもない。
身なりなどに固執するような立場はとうに捨て去っていた。
169 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/06(火) 20:45:07.83 ID:gXghDVo0
しかし、この女性ーー、いや。
桜も、凛も、セイバーも、イリヤも、この時敵になったーー。
「これなんかよくない?」
「カイムさんはこういうほうが……」
「こちらの方が似合うと思うわ」
「お父さんはこういうのだよ!」
「いえ、父は意外とこういうものが」
手に手に得物を持った女性がこちらに迫る。
自分は丸腰、今まで感じたことのない危機だ。
「ーーーー!」
アンヘルに援護を求める。
「諦めろ、カイム」
っく……、ここまでなのか?
それとセイバー、自分に恨みがあるのは分かるが、
虎の着ぐるみを持ってくるな。
「許せ、カイム」
「ーーーー!?」
裏切ったか、士郎!
やはりあの時止めをさすべきだったーー。
「ほら、観念しなさい!」
「ーーーー!」
170 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/06(火) 20:46:08.09 ID:gXghDVo0
六節 目覚め

「ふぅー、久々にこんな遊んだわ!」
そう言って藤村先生が伸びをする。
結局私たちは夜になるまでずっと遊んでいた。
イリヤは疲れ切って眠ってしまい、今はカイムがおんぶして歩いている。
ちなみに、服屋で私たちに着せ替え人形にされていたカイムは、
現在GパンにTシャツという大変ラフな格好だ。
服屋にいる間ずっと不機嫌な顔だったのは言うまでもないだろう。
171 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/06(火) 20:47:14.90 ID:gXghDVo0
「ふう、じゃあ私は桜ちゃんを送るから」
「ああ、頼むよ藤ねえ」
「まっかせなさい!」
「先輩、お休みなさい。
遠坂先輩とカイムさんとセイバーさんも」
「ええ、おやすみ」
「お休みなさい、桜」
「ーーーー」
家までは向かわず、適当な場所で別れる。
律儀に頭を下げる桜。
今はもうカイムに怯える様子もない。
というか、服屋では率先して服を持って来ていたくらいだ。
そして、カイムも何故か彼女を睨んだりはせずに、
困ったような顔をするだけだった。
私はものすごい睨まれたけど。
「……!?凛、今すぐ桜を追え!」
そんなことを思い出しながらそれなりに歩いていくと、
不意にレッドドラゴンの声が届いた。
その声には珍しく焦りがある。
172 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/06(火) 20:48:21.02 ID:gXghDVo0
「ーーーー!」
振り向き走り出すカイム。
イリヤを背負っているというのに、かなり早い。
すぐに見えなくなったカイムを、セイバーを先頭にして追って行く。
そうしていくつか曲がり角をこえると、カイムが何かを覗き込むようにしゃがんでいた。
「どうしたの?」
横から覗き込んでみると、そこには見覚えのある……、
というか、さっきまで一緒にいた女性。
173 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/06(火) 20:49:40.25 ID:gXghDVo0
「藤村先生!?」
「騒ぐな、眠っているだけだ」
すぐ近くにレッドドラゴンが実体化する。
「魔術師の仕業だな、桜が攫われた。
なんのためかは知らぬが、大方罠でも張るのだろう」
「あんたなら追いつけるでしょ!?」
「空間転移だ。我にも追いつけん。
場所は大方の目安はつくがな」
空間転移……。
それを使えるということは、相手は魔法使いレベルの魔術師。
もしかしたら、魔法使いそのものかもしれない。
でも、
「私の妹を攫うなんて、いい度胸ね」
絶対許さない、桜を巻き込むなんて。
叩き潰して土下座させてやる。
だけど、そんな私の気持ちを死ってか知らずか竜が言う。
174 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/06(火) 20:50:52.99 ID:gXghDVo0
「おぬしはついてくるな」
「なんで!?」
「ーーーー」
竜は私の問いに答えようとはしない。代わりに、カイムからイリヤを押し付けられる。
「行くぞ、カイム!」
「待ちなさいよ!」
「凛!?」
イリヤをセイバーに任せて、飛び立とうとしていたレッドドラゴンに飛び乗る。
「後悔するぞ?」
レッドドラゴンが言う。
「そんなのはもうし飽きてるわよ!」
強気で返す。
「……分かった。
では、行くぞ。落ちるなよ」
175 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/04/06(火) 20:54:39.55 ID:gXghDVo0
四章終わり
日常生活は大分はしょった。というか、書けない
五章は来週の今日までにはなんとか
ようやく書きたかった話に入ってける……長かった
176 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/06(火) 21:12:32.11 ID:FAz226AO
177 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/06(火) 21:32:20.83 ID:UZTr9Oo0
天使が割った
皿の下で
燃えて
尽きる

・・・河童
178 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/06(火) 21:40:25.00 ID:rysNtpU0
シリアスなのにっ!
179 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/06(火) 23:07:29.99 ID:m/zEn6AO
嫁に助けを求めるカイム可愛いよカイム
180 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/06(火) 23:11:56.28 ID:j7Qg1VUo
―(ダッシュ)使わないの?
181 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/04/06(火) 23:34:47.73 ID:KjwcgrE0
>>180
iPhoneだと使えないっぽい
コピペで持ってくのはできるけど、流石に面倒すぎる
と思って弄くってたら出来た
――――。
これからは使ってく
182 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/06(火) 23:59:25.30 ID:j7Qg1VUo
>>181
そうだったのか。でも良かったー
ちょっと気になってたんだww

最近DoDやったから期待してるヽ(・ω・)ノ
183 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/07(水) 07:25:23.10 ID:wZ6FiYAO
ライダー何時出んのか楽しみにしてたけどよく考えたらカイムがライダーのサーヴァントだったでござるの巻
184 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/04/08(木) 03:33:40.16 ID:Zvmf9.s0
そういや12日ペイヴメントのライブだったわ……
まぁ11日までにはなんとか投下すると思う
185 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/08(木) 18:14:56.68 ID:oqg1G62o
毎日VIP検索してたけど製作に移ってたのか
やっと追い付いた
頑張れ
186 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/09(金) 06:17:30.64 ID:jIlbxgDO
カァァァァァァアイム!!!!!!!
187 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/09(金) 14:50:02.44 ID:ChYXIuQ0
気付けば、辺りは血の海だった。
気付けば、自分は嗤っていた。
気付けば、何も分からなくなっていた。
気付けば、
――自分は狂っていたんだ。

――五章 狂気――
一節 少女の行方
188 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/09(金) 14:50:56.07 ID:ChYXIuQ0
「おかしい、確かにこの場所のはずだが……」
竜が降り立った場所、それは柳洞寺だった。
しかし、そこには誰の気配も無い。
いや、気配がないのではない。本当に人一人いないのだ。
「っ! ちょっと待って、これは……」
不意に感じた違和感。
魔力の残滓。いや、少し違う……。
「ついて来て」
カイムとレッドドラゴンにそう言って、その違和感を辿って行く。
一歩進むごとにその違和感は強くなる。
そして、
189 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/09(金) 14:52:06.22 ID:ChYXIuQ0
「ここね」
たどり着いたのは一つの岩。
そこから尋常ではない魔力が漏れ出していた。
「ふむ、これが入り口か。小さいな。
しかし、まさかおぬしに先導されるとはな」
「一言余計! ほら、さっさと行くわよ」
今はレッドドラゴンと喧嘩してる場合じゃない。
というか、したってどうせ負けるし。
……とにかく、早く桜を救わなければ。
「――――」
しかし、私を手で制してカイムが先に入って行く。
190 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/09(金) 14:53:30.59 ID:ChYXIuQ0
「っ!」
その表情は今まで見せた事がないほど険しかった。
ゾクリと背筋が震え、足が竦む。
「……凛よ、もう一度言う。
退け、今なら間に合う。
案ずるな、我らは負けぬ」
私を追い越したレッドドラゴンが振り向き、そう言う。
その言葉も今までにないほどの力を孕んでいる。
震えが止まらない……。だけど、ここで立ち止まる訳にはいかない。
191 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/09(金) 14:54:34.59 ID:ChYXIuQ0
「桜は私の妹なんだから、私が助けなきゃいけないの!」
叫ぶ。
そうでもしないと恐れに潰されてしまいそうだから。
「フンッ、馬鹿者が」
そう言い残して、レッドドラゴンも岩の中に入って行く。
追わなければ……。
だけど、足は言う事を聞かない。
「何やってんのよ、私は!」
もう一度叫び、地面を踏みつける。
桜が攫われたんだ。これだけはあの二人に任せきる訳にはいかない。
踏み出す。足は重いけど、負けはしない。
桜は、私が助けないといけないんだ。
192 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/09(金) 14:55:37.92 ID:ChYXIuQ0
二節 言葉無き悪魔

「な……、なに、これは……」
岩の中に入った私の目に飛び込んだのは、
まるで……、いや、本当の地獄だった。
赤に染まった地面、人間の頭、手、足、胴体、内臓……。
そして、それらに囲まれ、剣を持って佇むカイム。
嗤っている。声は無く、けれど確かに。
193 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/09(金) 14:56:36.68 ID:ChYXIuQ0
「だから来るなと言ったのだ」
「レッドドラゴン……、なんで……」
「……大方洗脳でもされておったのだろう。
あやつらはいきなりカイムに武器を振るったのだ。
まぁ、結果は見ての通りだがな。」
「……でも、……こんな、こんなに、殺さなきゃいけなかったの?」
震える。目の前の惨状に。
……確かに、覚悟はしたんだ。そのはずだった。
だからって……。
194 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/09(金) 14:57:42.37 ID:ChYXIuQ0
「あやつらは攫う相手を間違えたのだ。
眠る竜を起こしおって……」
「でも……、カイムはこんなこと」
「するはずがないとでも思ったか?
……確かにあやつはおぬしには甘かった。
だが、それはおぬしが妹の代わりだったからだ。
あやつはおぬしを守ることで生前妹を守れなかったことの贖罪にしようとしているのだ」
「妹……?」
「そうだ。それに、おぬしもあやつに父を重ねておっただろう。
全く。死者は生き返らぬというのに、いつまでもとりつかれおって」
私が、カイムとお父さんを重ねてる……?
カイムが、私を妹代わりにしてる……?
195 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/09(金) 14:59:08.56 ID:ChYXIuQ0
「そもそも、おぬしが我らを起こさねばこんなことにはならなかった。
カイムは、あやつは確かに剣を、血塗られた道を捨てたのだ。
我と共に尽きた時にな。
だが、ここに呼び出された。
最初の夜に言ったであろう? カイムは狂人だと。
忘れた訳ではあるまい。
しかし、狂ったとはいってもあやつは意味のない殺戮はせん。
だが、聖杯戦争という名分を与えられた。
そして、捨てた剣を拾ったのだ。
これも言ったな。カイムが早く殺させろと言っておると。
あの時の笑みにおぬしは何も感じなかったか?」
思い出す……。
最初の夜……、笑みを浮かべたカイムに、私は……、死をイメージしたんだ……。
196 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/09(金) 15:00:06.16 ID:ChYXIuQ0
「……しかし、弓兵と戦った後のカイムは違っていた。
おぬしを見て笑ったのだ。
戦いの中以外であやつが笑うのは珍しい。
しかも、その後のあやつは驚くほどに穏やかであった。
そして、殺すためにとった剣を、おぬしを守りために振るってきた。
まぁ、小僧のことは例外だ。あれはカイムにとっても、
我にとっても許せぬ理想だったからな。
それに、もしカイムが今のように狂気に身を委ねておったら、
あの小僧は生きてはいなかった。」
……二日目の朝、カイムが入れてくれた紅茶。
あれは、私のためじゃなくて、妹のため……?
197 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/09(金) 15:01:10.05 ID:ChYXIuQ0
「しかし、敵は桜を奪った。
カイムの妹の生き写しをな……。
あやつには言っておいたのだが、やはり無駄だったようだ。
これでは生前の繰り返しだ。
カイムはまた狂ってしまった。
余計なことをしおって……」
「ふざけんな……」
意味分かんない……。
妹の代わり?
この私が、妹の代わり?
それに、カイムがお父さんの代わり?
笑えない……。
笑えない冗談だ……。
198 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/09(金) 15:02:29.68 ID:ChYXIuQ0
「ふざけんじゃないわよ!」
カイムに向かって全力で走る。
そして、そのにやけ面を、
「――――!?」
思いっきりぶん殴る。
「何が妹だ! 死んでからもうじうじして!
私は、私は……、遠坂凛だ!」
吹き飛んで行ったカイムに向かって叫ぶ。
強化のおまけつきの拳だ、痛くないわけないだろう。
だけど、こんなんじゃ全然足りない。
199 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/09(金) 15:03:31.45 ID:ChYXIuQ0
「あんたがお父さん!? そんなわけないでしょ!
私のお父さんはあんたみたいに恐い顔じゃない!」
倒れたカイムに近づいて、胸を叩きつける。
何度も何度も。
「私のお父さんは、こんなに人を殺さない!」
涙が溢れて来る。
こいつの馬鹿さに。それと、自分の馬鹿さに。
それは、止めようと思っても一向に止まってくれない。
200 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/09(金) 15:04:40.76 ID:ChYXIuQ0
「私のお父さんは、もう側にいてくれない!
あんたの妹だって、もう側にはいない!」
涙で視界が滲んで、上手く叩けない。
ちくしょう、これじゃ痛くも痒くもないじゃないか。
「あんたは、私のサーヴァントなんだ!」
なのに、私の手は痛いんだ。
ずるい、ムカつく。
「だから! だから、私の言う事を……、聞いてよ……。
そんな、そんな恐い顔しないでよ……」
くそ、手が痛くて動かない。
声も、嗚咽で上手く出ない。
まだ殴り足りないのに……。
201 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/09(金) 15:05:28.65 ID:ChYXIuQ0
「そんなカイムは、嫌だよ……。
笑わなくても、喋んなくてもいいから、
そんな顔しないでよ……。
そんなカイムは……、嫌だよ……」
もう、ダメだ……。
涙で前も見えやしない。
声も、もう出ないや。
こんな女の子しちゃうなんて、かっこ悪いなぁ……。
「――――」
そんな私の頭に置かれる、大きな手。
この、馬鹿カイム……、血がつくじゃないか……。
202 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/09(金) 15:06:22.34 ID:ChYXIuQ0
三節 死して断つ妄執

「――――」
血に塗れた手でも、父も母も妹も親友も、愛するものすら救えなかった手でも、
一人の少女の涙くらいなら止めることができる。
ならば、その時くらいは剣を持たずに。
ただ撫でてやることくらいしか出来なくても。
そして、次に剣を持つのならば、
復讐ではなく、守るために振るおう――。
確かにあの夜、そう決めたはずだったんだがな。
203 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/09(金) 15:07:24.20 ID:ChYXIuQ0
「狂気は、捨てたか?」
「――――」
自分が――、いや、俺が狂気を振り払える訳が無い。
お前だって分かっているだろう、アンヘル。
――しかし、楽にはなった。
まさか、殴られるとは思わなかったが――。
――正直、かなり効いた。
204 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/09(金) 15:08:18.51 ID:ChYXIuQ0
「フッ、そうか……」
「――――」
――誓おう。
俺はもう、囚われはしない。
過去に。そして、守りきれなかった全てに――。
一度死んだのだ。何を迷う?
そう、迷う必要などない。
今度こそ守ればいい。
これを神が仕向けたというのなら、一度だけ感謝してやろう。
205 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/09(金) 15:09:01.53 ID:ChYXIuQ0
「――――」
我が名は――、カイム!
凛に呼ばれし、ライダーのサーヴァントだ!
206 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/04/09(金) 15:14:33.76 ID:ChYXIuQ0
五章終わり
本当は小次郎さんとキャス子さん戦も書こうと思ったけど、
キリがいいのでここまで
三番目に書きたかった部分だから書いてて楽しかった
六章は来週の木曜に投下できるように頑張る
小次郎さんはfateで一番好きなキャラなんで次回も楽しみ
ちなみに二番目は美綴さん
207 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/09(金) 20:39:44.35 ID:t3UUo/wo
乙〜
208 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/10(土) 17:02:36.69 ID:U37GqUAO
新しいの来てた
乙!ゆっくりでいいから完成させてくれ
209 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/11(日) 00:22:27.99 ID:x.sq8kDO

DODやってからピーターに可能性を感じるようになった
210 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/16(金) 16:29:57.39 ID:yi9KswDO
日曜かな
211 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/04/16(金) 20:55:05.86 ID:KYQXCvk0
できれば明日投下。遅れてすまん
上手い展開が思いつかんかったから
次のSSの為にPSのバロックやってた……
212 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/16(金) 23:16:17.01 ID:Bo4G9Vg0
DoDやりたくなった。

売ってしまったのを思い出した。

泣いた。
213 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 01:02:51.41 ID:iIwy6wAO
黒いー朝ー
214 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/17(土) 08:42:41.56 ID:fwKegEAO
時告げるー
215 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/17(土) 10:32:37.73 ID:16FIIoDO
汚れー血よー
216 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/17(土) 19:52:59.82 ID:7yZtGb20
ただ、剣に生きてきた。
しかし、一度も死闘はなく、その生を終えた。
そう、これはただの、
――泡沫の夢。

――六章 救出――
一節 少女は煉獄を進む
217 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/17(土) 19:53:44.61 ID:7yZtGb20
「この、アホー!」
蹴る。思いっきり蹴る。そりゃもう蹴りまくる。
だんだん腹が立ってきた。
なんで私が泣かなくちゃいけないんだ。
悪いのは全部カイムなのに!
「――――」
というか、こいつはもっと痛そうな顔をしろ。
なんか私が馬鹿みたいじゃないか。
喉は痛いし、目は痛いし、手は痛いし。
あー、もう。ムカつく!
218 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/17(土) 19:54:48.85 ID:7yZtGb20
「それくらいにしてやれ、凛。
そやつも悪気があったわけではない。
それに、早く桜を助けねばならぬであろう」
「分かってるわよ!」
だからってムカつくものはムカつくんだ。
それに、こいつはこれだけの命を私に抱えさせたんだ。
もしかしたら、それは必要なことだったのかもしれない。
だけど、殺さずにすんだかもしれないじゃないか。
219 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/17(土) 19:56:29.34 ID:7yZtGb20
「……凛よ、背負う必要は無いぞ。我らが背負うからな」
「うるさい! 私はマスターなんだ。
嫌だって言ったって背負ってやる!」
「……真に強情な小娘よ。
だが、おぬしがそう言うなら仕方もない。
ならば我は弔うとしよう。
我の炎、浄火に劣ることもあるまい」
そう言って、レッドドラゴンがかつて人だった物に火を放つ。
その火は瞬く間に燃え上がり、全てを焼き尽くす。
220 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/17(土) 19:58:01.08 ID:7yZtGb20
「……ごめんなさい」
燃え上がる炎に向かって言う。
こんな言葉に意味はない。
でも、言わなくちゃいけない。
私はカイムの罪もレッドドラゴンの罪も全部一緒に背負うと決めたんだ。
だからこれは、私の罪でもある。
「――――」
「……行くぞ」
「うん」
振り返り、一歩歩を進める。
今はしっかり供養する暇はない。
いつかはきっと。なんて都合がよすぎるけど、
今は桜の方が大切なんだ。
罵られたって構わない。
この足を亡者が引くなら、引きずってでも歩こう。
その先が例え地獄に繋がっているとしても。
221 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/17(土) 19:59:04.11 ID:7yZtGb20
二節 孤高の剣士

――背負わせてしまったな。
この小さな体に、俺たちの罪を。
「後悔しているか? カイム」
少しは、な。
人を殺す事に躊躇いなどないが、
凛に罪を背負わせるというのは本意ではない。
「……フッ、次は気をつけねばな。
こやつにこれ以上背負わせる訳にもいかぬからな」
ああ、そうだな。
222 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/17(土) 19:59:59.78 ID:7yZtGb20
「ふむ、狂気を納めたか。
いや、その少女が鞘となったのか?
まあ、どちらでもよい。
私はアサシンのサーヴァント、佐々木小次郎。
先ほどの戦い、面白かったぞ。狂刃」
「――――!?」
不意に階段の上から降ってきた声に顔を上げる。
階段の上には、長剣を携えた男が、長髪をたなびかせ立っていた。
223 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/17(土) 20:01:06.43 ID:7yZtGb20
「邪魔よ!」
凛が一歩前に出て言う。
「強気な娘だな。通りたくば勝手に通れ。
私はそこの剣士と手合わせするので手一杯だからな」
剣士はそう言うと人が通れるように道を開ける。
「そちらの蜥蜴も通ってよいぞ」
付け足したその言葉にアンヘルが激怒する。
「誰が蜥蜴か! 我は竜だ!」
「竜……? それはすまなんだ。
いかんせん学がないものでな」
「フンッ! 行くぞ、凛」
呆れた様に剣士の横を通り過ぎるアンヘル。
224 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/17(土) 20:01:56.55 ID:7yZtGb20
「絶対勝ちなさいよ、カイム」
「――――」
頷く。
それを見て満足したのか、凛もアンヘルを追って剣士を通り過ぎる。
「では、始めるか」
二人が階段を上ったのを確認し、剣士が剣を構える。
「――――」
「いざ、参る!」
225 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/17(土) 20:02:43.99 ID:7yZtGb20
三節 無垢な剣

「――――!」
下段から浮き上がる様な斬撃をかろうじて弾く。
しかし、剣士はその衝撃を利用し回転すると、刃を地に這わせながら更に斬撃を繰り出す。
「――――!」
地面に剣を突き刺し、力の限り振り上げそれを弾く。
226 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/17(土) 20:03:29.13 ID:7yZtGb20
「……ふむ、刀が歪んだな。
先ほどのそなたなら一刀で両断できたのだが、今は違うか……。
気を抜きすぎたな」
一歩引いた剣士はそう言って笑う。
「――――」
どうも剣技では圧倒的にあちらに分があるようだ。
――どうやって攻めたものか。
「まぁ、その方が楽しめる。
簡単に死んでもらってもつまらぬからな」
まるで隙だらけの構え。
だが、迂闊に間合いに入れば首を落とされるな――。
227 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/17(土) 20:04:10.69 ID:7yZtGb20
「来ないのか? では」
「――――!」
剣士が無拍子で首を目掛け剣を払う。
それを剣の腹で受け、刃を走らせ接近する。
「甘い」
「――――!?」
不意に足を掬われ、体が宙に浮き、
間をおかず刃が首目掛け降ってくる。
咄嗟に剣を地面に突き刺し、それを軸に体を捻ると、紙一重を刃が通り過ぎる。
すぐさま逆立ちの状態で剣を振り抜き、その反動で体勢を直す。
剣士がそれを剣で撫でる様に受け流し、同時に踏み込みからの当て身。
228 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/17(土) 20:05:09.98 ID:7yZtGb20
「――――!」
宙に浮いていた体はたやすく吹き飛ばされ、
「貰った!」
さらに首を落とす薙ぎ払い。
「――――!」
「ッ!?」
すかさず持っていた剣を投擲する。
それを躱すために剣士が体勢を崩し、ずれた切っ先は腹を撫でる。
「――――!」
着地と同時にイウヴァルトの剣を抜き出し薙ぎ払う。
それを剣士は受け流しきれず鍔競りあう。
229 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/17(土) 20:06:05.80 ID:7yZtGb20
「ッ!」
「――――!」
力だけはこちらに分がある。
このまま剣ごと叩き切る!
「甘いと言っている!」
「――――!?」
唐突な無力感に体勢が崩れる。
それと同時に走る熱に飛びのくと、自分を追うようにして赤が伸びる。
「――――」
「ふむ……、躱されたか……」
――斬られたのか?
斬撃の軌道すら確認できなかったのだが――、化物か?
「返すぞ、狂刃」
俺が先ほど投擲した剣を剣士が拾い、投げ返してくる。
230 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/17(土) 20:07:05.28 ID:7yZtGb20
「――――」
それを受け取り、イウヴァルトの剣を仕舞う。
「面白いな、その邪剣。
私の剣も邪剣だが、それとはまた違う。
いや、殺すための剣というところは同じか」
そう言って笑う剣士。
舐められているのか?
「そう睨むな。馬鹿にしている訳ではない。
ただ楽しいだけなのだ。この死闘がな」
「――――」
「フッ、無駄話はいらぬな。
さぁ、まだ足らぬ。存分に死合おうぞ!」
231 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/17(土) 20:07:56.79 ID:7yZtGb20
四節 魔女の思惑

「あら、案外早かったのね。
あの門番も人間も役に立たないわね」
階段の先にある祭壇、そこに桜はいた。
そのすぐ側にはフードを深くかぶった女と、何の変哲もない男。
「葛木先生!?」
その男を見て、凛が声を上げる。
「知り合いか?」
凛が頷く。
「……そうか。では忘れろ」
「え……?」
「おぬしは桜を救え。あやつらは我が相手をする」
「……分かった」
「よし、では……、走れ!」
凛にそう言うのと同時に、火球を男に向けて打ち出す。
232 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/17(土) 20:08:52.72 ID:7yZtGb20
「無駄よ」
結界を張りそれを防ぐ魔術師。
同時にいくつもの魔力の球がこちらに飛んでくる。
「当たらぬわ!」
飛び立ちそれを躱す。
そして小火球を二人に放ちつつ接近する。
しかし、あと少しというところでその姿が消える。
それと同時に降ってくる魔力弾。
「チィ!」
いくつか被弾しながらその場から離脱し、魔術師の姿を探す。
233 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/17(土) 20:10:10.43 ID:7yZtGb20
「こっちよ」
「グゥッ!?」
声に振り向くと、更に大量の魔力弾。
躱すこともできず、そのまま地に落とされる。
「あらあら、意外と脆いのね」
「人間が、調子に乗るな……」
とは言っても、今の姿では多少厳しい状況だ。
カイムがいれば違うのだろうが……、仕方ない……。
「何故桜を攫った?」
「あら、時間稼ぎ?」
「死ぬ前に言わせてやると言っておるのだ」
「そう、死ぬのはあなたのほうなんだけど。
いいわ、冥土の土産に教えてあげる。
あの子を攫ったのはね――」
234 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/17(土) 20:11:07.12 ID:7yZtGb20
五節 究極の一

「ハァッ!」
「――――!」
切り上げを右手に持った愛用の剣で防ぎ、同時に左手でイウヴァルトの剣を抜き出し叩きつける。
しかし、剣士は体を捻り紙一重でそれを抜け、至近距離まで接近してくる。
「――――!」
「グゥッ……!」
剣士が突き出した剣の柄が、左の脇腹に食い込む。
だが、それを受けつつ右の膝蹴りを返す。
235 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/17(土) 20:11:57.92 ID:7yZtGb20
「――――!」
間髪入れず右の剣で切り上げる。
「ッ!」
剣士が撫でるように刃を走らせ、その軌道をそらす。
そして勢いのまま一回転しての袈裟斬り。
「――――!」
左の剣でそれを叩き落とし、右の剣で突きを放つ。
「クッ!」
あと少しのところで剣士が体勢を立て直し、刃で突きの軌道を逸らす。
そして即座に距離を取る。
236 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/17(土) 20:12:52.18 ID:7yZtGb20
「――――」
――決まったと思ったのだがな。
「クックッ……、驚いたな。
まさかそのような大剣を片手で振り回すとは……、
恐ろしい腕力だな。刀が折れぬのが不思議なくらいだ。
面白い……。実に面白いぞ、凶刃。いや、竜騎士!」
「――――」
ほとんどダメージを受けていないというのに、よくいうものだ。
だが、二本の剣を使えば互角に渡り合うこともできる。
これであいつにバーサーカー並の腕力があったなら負けていたな――。
237 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/17(土) 20:13:42.86 ID:7yZtGb20
「……本来ならばこの戦を永遠に楽しみたいところだが、
些かあちこちが軋み出した。
この体と刀が健在な内に、我が秘剣、お見せしよう」
そう言って、剣士が構えを取る。
背をこちらに向け、剣を顔の高さで水平にするという、
全く戦闘に向いていないであろう構え。
あれから繰り出せる技など、薙ぐ以外に考えられない。
――ただ、それは普通の人間に限ってのこと。
あいつは普通の人間などではない。
「秘剣」
「――――!」
「燕返し!」
238 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/17(土) 20:14:43.84 ID:7yZtGb20
六節 誓約の紅

「ハッ、聖杯とは名ばかりに、
再生の卵を人為的に作り出すか。
しかもその生贄が桜だとはな」
「さぁ、もう十分でしょ。死になさい」
「笑わせるな。行くぞ、カイム!」
「――――!」
地面を火球で吹き飛ばし、全力で飛び立つ。
直後、カイムが背に飛び乗る。
「全く、往生際が悪いわね」
大量の魔力弾。だが、躱す必要もない。
239 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/17(土) 20:15:39.05 ID:7yZtGb20
「馬鹿の一つ覚えだな!」
「っ!?」
被弾する。しかし、痛みはない。
四肢に力が漲る。懐かしい感覚。
どうやら多少力が戻ったらしい。
「おぬしが殺した人間の魂か」
「――――」
「まぁよい、凛と桜を拾うぞ!」
急降下し、凛達のすぐ側を滑空する。
「――――!」
「な、なに!? きゃあ!」
カイムが凛と桜を掴んだのを確認し、そのまま天井近くまで上昇する。
240 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/17(土) 20:16:34.20 ID:7yZtGb20
「魔術師、我を舐めた礼だ。受け取れ。
契約の<ドラゴン>」
魔法陣を展開する。
「紅<ブレス>」
発動。
放たれた炎が集束し切らずに辺りを巻き込む。
「無駄よ」
煙の中から感じる魔力。
「ふむ、足りぬか。では。
誓約の<ドラゴン>」
さらに魔力を練り込み、魔法陣を肥大させる。
「なっ!?」
「紅<ブレス>」
241 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/17(土) 20:17:34.99 ID:7yZtGb20
七節 泡沫の夢

「くっくっ、負けたな……。
我が燕返し、完全だったのだがな」
刀を振り上げる。
先ほどまでこの身体程長かった刀身は折れ、半分程になってしまった。
「あぁ、いい気分だ。
これで月が見えれば言うこともないのだが……。ん?」
気を抜けば閉じてしまいそうな目を凝らす。
あれは……、竜か?
242 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/17(土) 20:18:23.31 ID:7yZtGb20
「フッ、これはこれは……。
最後の最後にこのような綺麗な物が見れるとは、
サーヴァントというものも捨てたものではないな。
感謝するぞ、竜よ」
そのまま眺め続ける。
段々と複雑になっていく真紅の模様を。
……あぁ、真に綺麗だ。
243 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/04/17(土) 20:23:08.42 ID:7yZtGb20
六章終わり
一番書き辛かったけど文章量はそれ程でもないという……
七章は来週の木曜日までを目標に
244 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/17(土) 21:50:50.84 ID:xbu8qYDO
乙!
245 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 21:56:33.01 ID:0tatkBco

アサシンかっこええわぁ
246 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/18(日) 12:42:48.10 ID:2GYcJcDO
>>1
対地上大魔法に対空大魔法被せた感じ?
247 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/04/20(火) 21:40:22.33 ID:hyL0Yjs0
>>246
アンヘルが使ったのは空中戦の奴です。見た目的にそっちのが好きなんで
あと、書ききれなかったんですけど、六節で第二形態にもどっています
で、手加減して最初のを撃って、二発目が本気でという感じです
描写不足すいません

248 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/22(木) 00:22:45.31 ID:WrL5P6DO
>>247
なるほど空中のかー 
かっこいいよねあれ正に大魔法って感じで。
第二形態に戻ったのは、アサシンの魂ってとこら辺で解ったから大丈夫だよ。 
きっとアサシンのEXP高かったんだね
249 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/04/23(金) 21:25:21.05 ID:mlzbJvI0
すいません。すこし延びます
月曜日までにはなんとか……
250 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/23(金) 23:16:17.34 ID:2UAmxADO
把握した 
まぁのんびりいこうぜ
251 :管理人、Twitterを始める http://twitter.com/aramaki_vip2ch [sage]:2010/04/26(月) 02:14:18.96 ID:Qu8YLIDO
明日か
252 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/26(月) 23:46:17.80 ID:Zj82CkDO
>>1はどちらかと言うとやる奴だよ。
253 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/27(火) 02:28:44.17 ID:UlbjOoAO
まだか
254 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/04/27(火) 10:38:45.22 ID:hty/18Q0
すいません、遅れました
255 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/27(火) 10:40:04.65 ID:hty/18Q0
――七章 追憶――
一節 魔女の願い

「くっ……」
まさか、ドラゴンの魔術がここまで強力だとは思わなかった……。
だけど、私はこんなところで終わるつもりはない。
「宗一郎様……」
ただ一つの望み。
なにがなんでも、それを叶える為に。
「宗一郎様……」
なのに、なんで……。
「宗一郎様……」
なんで……、あなたは答えてくれないのですか?
「宗一郎……、様……」
256 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/04/27(火) 10:44:16.36 ID:hty/18Q0
ミスった……。寝惚けてたよ……
257 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/27(火) 10:44:58.27 ID:hty/18Q0
それは、罪。
それは、罰。
燃える、燃える、燃える。
紅は、幸せだった。
寄り添った男も、幸せだった。
それは、――愛。

――七章 追憶――
一節 魔女の願い
258 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/27(火) 10:45:03.66 ID:UlbjOoAO
頑張れ
259 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/27(火) 10:45:37.35 ID:hty/18Q0
「くっ……」
まさか、ドラゴンの魔術がここまで強力だとは思わなかった……。
だけど、私はこんなところで終わるつもりはない。
「宗一郎様……」
ただ一つの望み。
なにがなんでも、それを叶える為に。
「宗一郎様……」
なのに、なんで……。
「宗一郎様……」
なんで……、あなたは答えてくれないのですか?
「宗一郎……、様……」
260 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/27(火) 10:46:50.25 ID:hty/18Q0
二節 果たす願い

「アアアアアァァァアァァアアァアァァァアアァッ!」
「――――!?」
煙の中から叫び声が響き渡り、
それと同時に魔力が一点に集まり出す。
「チィ、しぶとい奴め。
何をするつもりだ?」
分からん。だが、良いことではないだろうな。
とりあえず降りるぞ、アンヘル。
「分かった」
アンヘルが頷き、高度を下げていく。
261 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/27(火) 10:48:00.58 ID:hty/18Q0
「アアアアアァァァアァァアアァアァァァアアァッ!」
地上に降りた俺たちを待っていたのは、
焼け焦げた何かを抱きしめ、涙を流しながら叫ぶ魔術師だった。
「狂ったか……。
抱きしめているのは、……恐らくあやつのマスターだな。
フンッ、人が狂うは愛ゆえ。
あやつ、サーヴァントの身でマスターを愛したか」
――あいつが何をしようとしているかは分かったか?
262 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/27(火) 10:48:54.88 ID:hty/18Q0
「さぁな。大方この辺りを吹き飛ばすつもりであろう。
いつの世も人が考えることは変わらぬ。
自分が不幸ならば、他者にもそれを背負わせようとする。
全く、救いようがない」
そうか――。
「――――」
剣を抜き、魔術師の方に足を進める。
――愛か。
昔は分からなかっただろうが、
今ならあの魔術師の気持ちも分からんでもない。
263 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/27(火) 10:49:54.76 ID:hty/18Q0
生前アンヘルを解き放つ為に、数えきれない程を殺した。
他人の為に振るう刃など持たない俺が、だ。
それはきっと、愛だったのだろう。
世界など、それに比べれば余りにも小さい。
それの為であれば、滅んだとしても構わぬ程に。
そして、あいつは失ったのだ。
その、世界よりも遥かに大事なものを。
そして、その結果の世界への憎悪か。
「――――」
共に尽きることの出来なかった苦痛は、俺が終わらせよう。
眠れ、魔術師。
せめて抱きしめたそれを離さぬように、共に貫いてやる。
264 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/27(火) 10:51:27.71 ID:hty/18Q0
三節 歪な純粋

カイムの剣に貫かれたキャスターが、何かを呟いて微笑む。
そして目を閉じると、光となって散っていく。
その腕に、葛木先生の亡骸を抱きしめたまま。
……可哀想だとは思わない。
あいつは桜を攫ったし、無関係の人を操ってカイムを襲わせた。
私はそれを許さない。だけど……。
もしも私が彼女だったら、どうしただろう……。
大事な人の為に、何かを犠牲にする。
それは本当に間違っているんだろうか……。
265 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/27(火) 10:52:31.62 ID:hty/18Q0
「愛というものは存外厄介だ。
それ自体に善悪はないが、それを持った者は違う。
愛を得られなかった少女が、世界を憎み破壊しようとした。
愛を得られなかった女が、その胸を自分で貫いた。
愛を得られなかった男が、愛した者の亡骸を持って転生を外れた。
……愛する者を、その声を見失った愚か者が、世界を焼き付くそうとした。
それらはただ、純粋故の狂気。
理解することは不可能だ。割り切れ。
あやつはただの狂人。気に病むな、凛」
まるで私の心を読んだみたいに、レッドドラゴンが言う。
266 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/27(火) 10:53:28.38 ID:hty/18Q0
……そういえば、ちょっと前も心読まれたな……。
もしかしたら、こいつは本当に読心術とか使えるのかもしれない。
いや、ただ単に私が分かりやすいだけ……?
……まぁ、そんなのはどうでもいいや。
「……うん、大丈夫」
本当は分かってるんだ。
もしも――だったら。なんていう仮定に、意味なんかないことは。
だけど、間近で彼女の狂気を、愛を見て、感傷に浸っただけ。
「大丈夫」
繰り返す。
267 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/27(火) 10:54:29.94 ID:hty/18Q0
「そうか」
二人共それ以上は何も言わず、消えていく光をただ見続ける。
「……そろそろ行くぞ。乗れ、カイム、凛」
その光が完全になくなってから、レッドドラゴンが言う。
「――――」
「うん」
促されるままにその背に乗り、カイムにしがみ付く。
こいつは私が死んだら、彼女みたいになるんだろうか……。
桜が攫われるだけであれなんだから、きっと……。
……まぁ、死ぬつもりなんてないけどね。
268 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/27(火) 10:55:36.77 ID:hty/18Q0
四節 偽りの希望

「これは一体……」
戦いを終え、小僧の家に戻った我らを待っていたのは、
血に塗れて倒れる騎士と小僧だった。
「くっ……、すいません……。
イリヤを攫われるました……」
騎士が剣を支えに立ち上がりながら言う。
「ランサーか。しかし、あやつにひねられる程おぬしが弱いとは思えぬが……」
「話せば少し長くなります……」
「ふむ、ならば後だ。カイム、桜と小僧を寝かせておけ」
「――――」
カイムが頷き、二人を背負って奥に消え、凛もそれに続く。
269 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/27(火) 10:56:24.67 ID:hty/18Q0
それにしてもあの小僧、あれだけ穴だらけになっても息があるとは……。
カイムに斬られた時といい、人間だとは思えぬな。
まぁ、あれは考えても分からぬ類いのものだな。
「歩けるか?」
思考を中断し、騎士に向き直りながら問いかける。
「大丈夫です……」
そうは言うものの、どう見ても大丈夫そうでは無さそうだ。
「……仕方ない」
牙を立てぬように騎士を咥え持ち上げる。
「なっ、なにを!?」
270 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/27(火) 10:57:15.04 ID:hty/18Q0
「黙っておれ、牙が刺さるぞ」
逃れようとする騎士をなだめ、外から縁側へ回る。
そして、騎士を広間に投げ込む。
「痛っ」
勢いをつけすぎたか、受身を取れず騎士が転がって行き、
テーブルにぶつかって止まる。
「……竜よ、運んでもらったことは感謝するが、もう少し加減してもらいたい……」
テーブルに手をかけ、よろよろと立ち上がりながら騎士が言う。
「すまぬな」
罪悪感などはないが、一応謝罪しておく。
271 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/27(火) 10:58:06.25 ID:hty/18Q0
そして、そのまま地に伏せる。
この家はそれなりに広いのだが、我が中にはいれるほどの広さではない。
しかも、今の我は先の戦いでかつての姿を取り戻している。
――とは言っても、未だ全盛期の姿ではないが……。
「待たせたわね」
「――――」
少しの時間が経ち、凛とカイムがこちらに来る。
そして、セイバーの向かいに座る。
「さて、まずは「我から話させてもらう」
272 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/27(火) 10:59:04.39 ID:hty/18Q0
凛の言葉を遮り、言葉を続ける。
「アサシンとキャスターは倒した。
残るサーヴァントは我らと騎士、それと槍兵の三体だ。
それともう一つ、聖杯のことだ。
あの聖杯は危険だ。破壊する」
「へ? なんで……?」
「竜よ! 何故ですか!?」
「あれは神が我らを弄ぶ為に創った玩具、再生の卵の贋作だ。
願いを叶えるなどと……、馬鹿馬鹿しい。
あれは存在してはいけぬもの。そもそも、救いなどありはせぬ。
道を開きたくば己の手で開け。
いいな、聖杯は破壊する。分かったか? 騎士」
273 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/27(火) 10:59:57.86 ID:hty/18Q0
「クッ……」
騎士が拳を握り、唇を噛み締める。
「おぬしが聖杯に固執しているのは分かっている。
そして、それ自体はどうでもよかった。
だが、あれが再生の卵だと知った今は別だ。
まぁ、おぬしが我らを倒せるはずもないがな」
「……一つ聞かせていただきたい。
神の玩具、再生の卵……。それはなんなんですか?
聞かなければ納得することが出来ない……」
274 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/27(火) 11:05:10.49 ID:hty/18Q0
……さて、どこからどこまで話すべきか。
「――――」
分かっておる。
我らの最後、それに関することは教える気などない。
言うべきは……、そうだな。
「長くなるぞ……」
275 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/27(火) 11:06:14.65 ID:hty/18Q0
五節 重なる世界

「我らが存在した大地、ミッドガルド。
その世界は神の庇護、……いや、支配を受けた世界だった。
そして、その神は残虐であった。
全ての命は神にとって取るに足らぬ小さきものだったのだ。
神は試練を与えた、その世界全ての命に。
我らドラゴンは全ての種を超越した最高位の生物、
来るべき神の試練全てに打ち勝つことが出来るが、人間たちは違った。
試練の度に危機に瀕し、そして、絶望していた。
そこで人間は考えた、神を封じる方法を。
そして、それは成功し、神を封印することが出来た。
276 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/27(火) 11:07:06.44 ID:hty/18Q0
ただし、生贄が必要にはなったがな。
封印の女神、カイムの妹がそれだった。
それと時を同じくして、封印を解き放ち、世界を混沌に導こうとする輩がいた。
帝国などと呼ばれてはいたが、その実、神にとりつかれし少女を崇める狂信者の集団だ。
我らはそやつらと戦った。女神を、ひいては世界を守る為に。
しかし……」
「――――!」
「分かっておる。
とにかく、我らの戦いも虚しく、封印は崩壊してしまった。
そして生じたのが、再生の卵。
いや、骨の柩と呼ぶか……?まぁ、どちらでもよい。
277 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/27(火) 11:08:14.88 ID:hty/18Q0
あれは願いを叶える、確かにな。
だが、願いなどと言うものは余りに軽く、欲望に塗りつぶされるのが道理。
例外も確かにいたのだがな……。そういえば、あの小僧によく似ている……。
これはどうでもよいな。
とにかく、あれが起こす救済は歪んでおるのだ。
それは異端なる進化であるかもしれん。
または、そのまま朽ちゆくだけということもあり得よう。
そして、世界を崩壊させることも十分にあるのだ。
分かるか? あれを使うことは許されぬ。縋るものなど始めからなかったのだ」
278 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/27(火) 11:09:47.41 ID:hty/18Q0
六節 剣が知らぬ鞘

レッドドラゴンは話し終えるとすぐに地面に伏せてしまった。
セイバーは俯いて、拳を握り締めている。
……彼女が何を望んでいるかは知らないけど、
それでも、英霊になって使役されてまで叶えたい願いだ。
それは彼女にとって、とても大事な願いだったんだろう。
だけど、本当に聖杯がレッドドラゴンが言ったようなものなら、
彼女の願いを叶えることは出来ない……。
それに、レッドドラゴンが言ったことは多分合っている。
10年前に起こった冬木の大火災、あれは聖杯に起こされた惨事だったんだろう。
279 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/27(火) 11:11:04.60 ID:hty/18Q0
「私は……」
セイバーが俯いたまま口を開く。
漏れ出た声は小さく、今にも消え入りそうだ。
「私は……、それでも……、あれが……」
途切れ途切れに聞こえて来る言葉。きっと諦め切れないんだろう。
しょうがない、そんな簡単に切り捨てられはしないんだ。英雄だって人間なんだから……。
「紅き竜は竜族でも気高き種族、おぬしはそれに連なる者であろう?」
「私は……、欲望などに負けはしません……」
「馬鹿者が……、それが欲望なのだ。
……一つ教えてやろう、おぬしは既に手に入れておるはずだ。
願いも、欲望も、そして、その命の価値すら凌駕する、唯一無二のものをな」
280 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/27(火) 11:12:11.73 ID:hty/18Q0
「それは……?」
「自分で考えろ、愚か者」
諭すように、優しい声でそう言うレッドドラゴン。
まるでワガママを言う子供をあやす母親のようだ。
「さて、我は寝る。おぬしの話は明日でいいだろう。
今夜奪い返しに攻めるには多少消耗が酷い。それに、場所も分からぬ。
おぬしは考えろ、真におぬしに必要なのは何かをな。
これはおぬし以外には見つけられぬ」
それだけ言って、レッドドラゴンが風景に溶け込んで消える。
「――――」
281 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/27(火) 11:14:05.72 ID:hty/18Q0
それに続くようにカイムも姿を消す。
残されたのは、私とセイバーだけだった。
「凛、私は一体どうすれば……」
「私に聞かれても分かんないって。
そういうのは士郎に聞きなさいよ」
「シロウなら、私に教えてくれるのでしょうか……。
私が進むべき道を。取るべき選択を」
「さぁ? それは分かんないけど、一緒に考えて、一緒に歩いてはくれるんじゃない?
あいつ、馬鹿だから」
「……ありがとう、凛」
「……私ももう寝るわ。 じゃあね」
未だに俯き加減なセイバーを置いて、自分が寝ている部屋に向かう。
「感謝されるようなこと、してないのにな……」
282 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/04/27(火) 11:16:55.48 ID:hty/18Q0
七節 剣は鞘と眠る

「全く、世話がかかる……」
ああ、そうだな。
「フンッ、まさかあそこまで馬鹿だとはな。
全く、誰に似たのであろうな」
さぁな、少なくとも俺に関係は無い。
「……まぁよい。……あとは、あやつ次第だな」
心配は必要無い、きっとな。
「そんなことは分かっておるわ」
283 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/04/27(火) 11:25:17.33 ID:hty/18Q0
七章はここまで
最初の予定から大分遅れてすいません
最初はニーアの発売日までには完結させる予定だったんだけど、無理でした
八章は来週の木曜日までには。だんだん期限が意味を成さなくなってるんで、
次はしっかり守れるように頑張ります
284 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/27(火) 11:42:50.10 ID:WGOTnoIo
乙!
285 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/27(火) 16:14:52.64 ID:fo2Eu6DO
乙!
286 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/27(火) 21:25:05.38 ID:6UhOmgAO
支援の最後は乙に非ず!
287 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/27(火) 22:00:53.95 ID:CehN.6DO

2は好き嫌いあるけど俺は1以上にハマったわ
288 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/28(水) 10:56:54.70 ID:lg9y2uMo

次も期待して待ってるぜ
289 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/01(土) 01:14:02.23 ID:u41ZnUAO
乙!>>1はニーア買ったのか?
キャスターに罵倒され、イリヤに萌える素敵なゲームだった
290 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/04(火) 03:09:52.04 ID:Px2FIQAO
そういえば中の人同じだったな
291 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/05/05(水) 12:01:49.54 ID:p4uLG.M0
>>289
買ってないんだ……
というか、家にゲームハードどころかテレビすらない……
更に今はサマソニと家の契約更新が重なるから金も無い……
292 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/05(水) 12:46:45.80 ID:WeJGvGo0
素晴らしすぎる・・・・
AOGu5v68Us様・・・・・・・・
あなたは神ですか?
293 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 17:53:34.92 ID:R1HqKYs0
ここは……神の国なのか?

――八章 決意――
一節 激戦の翌日
294 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 17:54:29.26 ID:R1HqKYs0
「起きろ、凛」
「――――」
「起きろと言っておるのだ」
「――――」
もぅ……うるさいなぁ……。
「こやつ、一度痛い目を見ぬと分からぬようだな。
カイム、蹴り起こせ」
「――――」
「何? 断るだと? おぬしがそんな慈悲に満ち溢れた人間だとは、初めて知ったな」
295 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 17:55:12.38 ID:R1HqKYs0
「――――」
だから、うるさいってば……。
「面倒だ、我が蹴り起こす」
「――――」
「案ずるな、死にはせぬだろう」
「――――」
……今、すごく嫌な予感がしたけど、気のせいだよね。
「これが最後だ。起きろ、凛」
「――――」
296 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 17:55:49.73 ID:R1HqKYs0
……カイムなら、止めてくれる……よね?
……って! こいつに期待出来るわけ無かった!
「ッ!」
飛び起きる。それはもう俊敏に。
直後、床に叩きつけられる紅い足。
同時に何かが砕けるような音が響き渡り、
さっきまで私が眠っていた布団が床にのめり込む。
「起きたか、凛」
「――――」
「うん、おはよう!
って、違う! あんたたち、私を殺す気か!」
297 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 17:56:27.55 ID:R1HqKYs0
「大丈夫だ、加減はした」
ベキベキと音を立てながらレッドドラゴンが足を床から引き抜く。
その光景に背筋が震え、冷や汗が吹き出る。
「いや、それ絶対に死ぬから」
というか、蹴り起こすじゃないじゃん。踏みつけるじゃん、それ。
どっちかっていうと、踏み殺すっていう方が正しいだろうけど……。
「知らぬな、おぬしが起きぬのが悪い。
そんなに睡眠を取りたいのなら、いっそ永眠するのもよかろう」
「よくないからっ!」
298 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 17:57:10.52 ID:R1HqKYs0
冗談も程々にして欲しい。
なにもこんな年で死んでいいと思える程達観していない。
というか、こんな下らないことで死にたくない。
「それに、あんたたちだって少し寝過ごすくらいあるでしょ?」
「ないな」
「カイムは?」
「こやつは睡眠に無駄な時間を使うくらいなら敵を殺すことに使っておったわ」
「……はぁ、あんたたちに聞いた私が馬鹿だった」
疲れる……なんで朝起きるのに命かけなきゃいけないんだ……。
小さく愚痴りながら破壊された床を直す。
299 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 17:57:51.31 ID:R1HqKYs0
「ほう……」
何故かそれを興味深げに眺めるレッドドラゴン。
「なによ?」
「魔術とはそのようなことも出来るのか」
「はぁ? あんな大魔術連発するやつに言われたくないわよ。
こんなのは初歩の初歩、出来ないの?」
「うむ。……いや、出来ぬわけではないな。
あまりに使う機会もない上、何かを修復せねばならぬ機会も無かったからな。
本気になればおぬしらには作り得ぬ建造物をも創ることができる」
「……なら自分で直してよ」
「断る」
300 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 17:58:26.91 ID:R1HqKYs0
言うと思った。
まぁ、これくらい別にどうでもいいんだけどね。簡単に直るし。
集中し、破壊された床と無惨に散った布団の復元をする。
そして、それが終わったのを確認し、レッドドラゴンが口を開く。
「よし、直ったな。では広間に行くぞ。小僧と騎士も既に待っておる」
レッドドラゴンが振り返る。だけど、進む気配は無い。
少しの間そうして、
「……チッ、邪魔だ」
ふすまを火球で吹き飛ばした。
301 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 17:59:11.74 ID:R1HqKYs0
そして満足気に、
「フンッ、我の道を阻むなど、身の程を知れ」
と言って、部屋から出ていく。
その途中で翼が壁に引っかかるけど、気に止める様子もなく壁を破壊しながら進む。
……ふすまを開けれないのは分かる。壁に引っかかるのも。
でも、ここまでは霊体化して来たんだろう。
じゃあ、霊体化して出てけよ……。
302 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 17:59:51.40 ID:R1HqKYs0
「――――」
焼け残ったふすまの残骸を蹴り飛ばして、カイムがレッドドラゴンに続く。
蹴り飛ばされたふすまの残骸は勢いよく吹き飛び、表の塀にぶつかってさらに酷いことになっている。
「……私に直せと?」
303 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 18:00:33.29 ID:R1HqKYs0
二節 装った日常

「遅いぞ、凛」
庭で伏せていたレッドドラゴンが、こっちを向いて言った。
「誰のせいよ……」
結論から言って、ふすまは復元出来なかった。
当たり前だ。消し炭になったものまで復元できるほど、魔術も便利じゃない。
まぁ、壁は直ったから、ふすまは取り替えればいいんだけど……。
304 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 18:01:23.32 ID:R1HqKYs0
「はぁ……」
ため息をつきながら座ると、すぐに目の前に水と食事が並ぶ。
「ほらほら、不景気な顔してないで飯でも食えよ」
昨日は穴だらけだったのに、今じゃそんなこと思わせないほど元気な士郎が笑う。
こいつの体は一体どうなってるんだ? 多分セイバーが関係あるんだろうけど……。
まぁ、考えても分かんないし、
日常生活では全く役立たずなサーヴァントのせいで無駄に疲れた。
今はただ、目の前の食事に専念しよう。
「いただきます」
そう言って箸をとってから気付いた。
305 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 18:02:07.87 ID:R1HqKYs0
「あんたたちは?」
私の問には答えず、士郎がテレビを指差す。
そこに表示された時刻は、10:00だった。
……多少寝すぎたかもしれない……。
「ま、まぁ、いいわ。
じゃあ改めて、いただきます」
…………。
一人だけ食事をするというのは、なんだか落ち着かない。
というか、ここまで寝てしまったんだから、
朝は抜いて昼に多めに食べれば……。
306 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 18:02:45.22 ID:R1HqKYs0
いや、でも、折角作ってくれたものを無駄にするのは……。
…………うん、さっさと食べてしまおう。
急いで箸を進める。
その間、士郎とセイバーはテレビを何げなしに眺め、レッドドラゴンは庭で伏せ、
カイムは……剣を磨いていた。
……普通、食事する真横で剣磨くか……?
極力そっちを見ないように食事に専念する。
でも、どうしても視線はそっちに流れる。
「――――」
307 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 18:03:20.63 ID:R1HqKYs0
磨く、物凄い勢いで磨いてる。
そして、納得がいったのか、その剣を掲げ物凄い楽しそうな笑みを浮かべる。
そのまま何度か裏表を確かめ、指でなぞったりした後、そっと剣を脇に置いた。
やっと終わったか。と思ったのも束の間、すぐさまもう一つの剣を出して磨き始める。
「――――」
磨く、磨く、磨きまくる。
その表情は真剣だ。
……なんか……まぁ、いいや。
308 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 18:03:57.02 ID:R1HqKYs0
そっちはもう気にしないようにして、今度こそ食事に専念する。
食卓に響くのは、ニュースキャスターの声と、剣を磨く音だけ。
その得体のしれない重圧に耐えながら、やっとのことで食事を終え、
食器をキッチンに置いてもどると、待っていたかのようにセイバーが口を開いた。
309 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 18:04:35.99 ID:R1HqKYs0
三節 騎士王の過去

「早速ですが、昨夜攻めてきたサーヴァント、それは……ランサーとアーチャーです」
「アーチャー? あやつなら我らが倒したはずだが」
「はい、それは分かっています。
昨夜のアーチャー、それは先の聖杯戦争のアーチャーです。
なぜ今まで現界できているかは不明ですが、間違いありません」
「ふむ……、まぁ、例外などいくらでもあり得よう。我らとてその内だ。
だが、おぬしは何故それを知りうる?」
310 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 18:05:12.90 ID:R1HqKYs0
「私は……前回の聖杯戦争にも参加していました。
マスター、衛宮切嗣のサーヴァントとして」
「……因果だな……だが、それもまた……。
いや、何でもない……続けろ」
「その聖杯戦争で私達は勝ち残り、そして、最後に戦ったのが昨夜のアーチャーです。
数多の宝具を湯水の様に出現させ、それを躊躇いなく魔弾として撃ち出す弓の騎士。
真名は分かりませんが、恐らくかなり名のある英雄だと……」
311 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 18:05:53.56 ID:R1HqKYs0
「数多の宝具……心当たりはあるが……有り得ぬな。
それで騎士よ、おぬしは負けたのだな?」
「…………はい。
しかし、聖杯は破壊しました。令呪による命令によって、ですが……。
……冬木の大火災、あの惨事も……」
「そんなものはどうでもよい。
奴らの場所は何処だ? 言わずに去ることは有り得ぬだろう」
「明日の夜、柳洞寺にて聖杯を降臨させると……」
312 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 18:06:31.47 ID:R1HqKYs0
「明日の夜ということは、今夜か……。
……今日が最後になるな……小僧、騎士を連れて何処かへ行け、我は寝る。
夜になったら戻ってこい」
「なんでさ?」
「黙れ、おぬしらが目に入ると苛つくのだ。さっさと行け」
「……分かったよ。行こう、セイバー」
313 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 18:07:09.33 ID:R1HqKYs0
四節 終わりの始まり

士郎がセイバーの手を引いて外に出る。
出ていく時に振り返ったセイバーは、困った様な嬉しい様な、複雑な顔をしていた。
その後姿が見えなくなったのを確認して、レッドドラゴンが口を開いた。
「……行ったか」
「あ、私もあっち行ってた方が……」
「待て、話がある。
おぬしを我らのマスターと認めての話だ」
314 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 18:07:47.63 ID:R1HqKYs0
そう言ってレッドドラゴンが私の目を見据える。
その眼力に気圧されながらも、しっかりと見つめ返す。
「フッ、多少は強くなったな」
「なによ、それ」
「気にするな。さて、何から話すか……」
レッドドラゴンが視線を私の隣にいるカイムに移す。
その視線を受け、カイムが頷く。
「そうだな……まずは……」
315 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 18:08:30.51 ID:R1HqKYs0
五節 決戦の地へ

「乗ったな」
ドラゴンというものは気高き生き物である。
生態系の頂点に位置し、その知識は人間ですら及ぶことはない。
その竜の背に、今、四人の人間が跨っていた。
「恐らく辿り着くまでにアーチャーの攻撃がある。
本気で行くぞ、振り落とされるな」
カイムを除いた三人が頷く。
カイムからしてみればアンヘルに跨って飛ぶことなど造作も無いことだが、
それは彼の異常なまでの騎乗スキルと、二人の間で交わされた契約によるもの。
316 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 18:09:12.13 ID:R1HqKYs0
セイバーも騎乗スキルは所持しているが、竜を御することは到底できないレベルだ。
恐らくしがみついているのが精一杯であり、
カイムの様に両手剣を振り回しながら飛び回ることは不可能だった。
それは、カイムに抱きついている凛と、セイバーに抱きついている士郎も同じだった。
そしてそれは、士郎からすればかなり情けないことだった。
見た目だけなら自分とそう変わらない歳の少女にしがみつかなければ、
この竜の背に乗っていることすらできないのだ。
しかし、そんな彼の思いなど知らずにアンヘルが羽ばたく。
317 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 18:09:49.22 ID:R1HqKYs0
一、二と翼をはためかせると、その巨体が重力を無視して浮き上がり、
「行くぞ!」
掛け声と共に三を数えると、その体が宵闇を切り裂いた。
景色が恐ろしいほどの速度で吹き飛び、すぐに柳洞寺を視界に捉える。
その時、闇の中で何かが光った。
一つ、二つ、瞬く間にそれは数を増やしていく。
「来ます!」
セイバーの言葉が合図だったかの様に、その光がアンヘル目掛けて放たれた。
318 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 18:10:35.23 ID:R1HqKYs0
宝具の雨。一撃でも直撃すればただでは済まないそれを、アンヘルが躱しながら飛ぶ。
しかし、柳洞寺に近付くにつれ、その雨の密度も増していく。
「――――!」
カイムも飛来するそれらを切り払っていたが、やがて限界が来た。
「クッ……!」
アンヘルの体を掠める宝具。
休む事なくその雨は降り続け、アンヘルの体を抉っていく。
「チィ! これほどとは……厄介だな!」
アンヘルが進路を柳洞寺から遥か上空に変更し、宝具の雨もそれに従う。
しかし、大空にある限り、竜という生物に追いつけるものは存在しない。
319 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 18:11:12.60 ID:R1HqKYs0
たとえそれが、魔弾と化した宝具であっても、だ。
宝具の雨はアンヘルに追いつくことも出来ず、虚空に消えていく。
しかし、アンヘルは依然上昇しつづける。
そのまま遥か上空にある雲を突き破り、真紅の軀が月明かりに鋭く反射する。
既に宝具の雨は止んでいた。
アンヘルはそこでやっと速度を落とすと、
地上を見下ろす様に向きを変え、存在を誇示するかの様に翼を広げる。
そして、口を開いた。
「凛よ、我らが真の姿、見せてやる」
320 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 18:11:52.99 ID:R1HqKYs0
六節 封印の紅

「The days when we fought
<その涙が鎧であった>」
アンヘルが、まるで歌を詠うように言葉を紡ぐ。
遮蔽物に遮られることの無いその声は、まるで永遠に響くかの様に大気を震わせる。
321 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 18:12:31.22 ID:R1HqKYs0
「The sky which we rushed
<その声が牙であった>」
「……これは……」
凛は気付いた、それが魔術の詠唱であることに。
しかし、竜はその深淵なる知識により、
詠唱などは基本的に必要としないということも彼女は知っていた。
322 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 18:13:13.71 ID:R1HqKYs0
「The wound that we suffered
<その温もりが翼となり>」
神言以上の竜の知恵を持ってしても詠唱を必要とする魔術。
それがなんなのか、凛には分からなかった。そう、次の瞬間までは……。
323 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 18:13:50.86 ID:R1HqKYs0
「The blood which we drained
<その姿が標となった>」
変化は唐突にして緩慢だった。
空気の流れが変わり、月から刺す硬質な光がその鋭さを増す。
324 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 18:14:27.71 ID:R1HqKYs0
「In the world that was out of order
<身を引き裂く苦痛も>」
現実を浸食する魔術、固有結界。凛はそれを知っていた。
しかし、その魔術は局所的に現実を浸食するのであって、
今この竜が使おうとしているものは別次元であることも理解していた。
325 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 18:15:14.21 ID:R1HqKYs0
「I have been out of order
<心を蝕んでいく空虚も>」
アンヘルは、世界を、大いなる時間を歪めるつもりだった。
『第二魔法』それに類似した神秘により、この世界を根底ごと変え、
本来この世界にあらざる自身を無理矢理肯定することにより、
本来の力を発揮しようというのだ。
326 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 18:15:58.68 ID:R1HqKYs0
「But I do not forget it eternally
<この身を討ち滅ぼすことは出来ない>」
生前は無かった記憶――血の記憶でも、自身の記憶でもない、
聖杯によってもたらされたのであろう記憶――を辿り、持てる限りの魔力を練り上げ呪文を紡ぐ。
327 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 18:16:42.74 ID:R1HqKYs0
「I sing for a beloved person
<世界ではなくたった一人の為の>」
その呪文がなぜ与えられたのか、アンヘルにさえ分からなかった。
しかし、詠唱を開始して理解した。
浸食する世界とは逆に、自身を蝕む様な意思が流れ込んで来る。
だが、そんなものはアンヘルには無駄だということを、神は理解していなかったのだろう――――。
328 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/05/06(木) 18:17:23.52 ID:R1HqKYs0
「Red dragon angel
<封印の紅>」
329 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/05/06(木) 18:24:57.97 ID:R1HqKYs0
八章終了
この詠唱は最初からあったやつで、ようやくこのシーンにたどり着けた……
九章は来週の木曜日を目標に
だけど、恐らく一番長くなるから伸びるかも……
ついでに、この章から今まで使わなかった三人称を使ってます
最初は全部一人称で行こうと思ってたんだけど、こっちの方がいいと思ったんで……
330 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/06(木) 18:27:36.84 ID:z61VzsAO

331 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/06(木) 20:09:00.46 ID:x3y5mJMo

次回も期待してる
332 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/06(木) 21:56:31.55 ID:olBYmAU0
>>325
第二魔法以上の神秘・・・
身体能力・精神力・魔翌力、全てにおいて完全に他の存在を圧倒的に凌駕し、神の宿る御使いさえ下すほどの竜ならではの力、といったとこかな?
333 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/06(木) 21:58:10.06 ID:olBYmAU0
>>332
×・・・魔翌翌翌力
○・・・魔翌力
334 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/06(木) 22:29:29.92 ID:olBYmAU0
ここまで出来がいいのならArcadiaとかに出せば?
335 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/10(月) 08:59:40.87 ID:RdK5wkDO
ニーアとこのスレが最近の楽しみになってきたぜwwwwwwwwwwwwww
336 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/22(土) 22:44:59.97 ID:Qjac0YDO
忙しいのかな
337 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/22(土) 22:45:07.63 ID:Qjac0YDO
忙しいのかな
338 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/23(日) 23:22:33.37 ID:wRZLhUDO
延びるかもって言ってたし、まぁゆっくりまとうや
339 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/30(日) 20:42:48.20 ID:w7rN1EAO
あと1400年は待てる
340 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/04(金) 06:53:53.41 ID:ZKyvJV.o
待ってます
生存報告だけでもしてくれると赤目たちが救われる
341 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/06(日) 22:45:06.32 ID:PlnpQbso
書き手のレスがないまま1ヶ月が経過したのでご案内

続ける意思がなくなった場合は以下のスレでHTML化依頼をお願いします
■ HTML化依頼スレ Part1
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1190564438/

続ける意思がある場合は2週間に1度ぐらいでいいので生存報告をよろしくお願いします
みんなで仲良く製作速報を使えるようになるべく放置スレを減らしましょう
342 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/07(月) 00:11:21.05 ID:ICLn2EAO
DoD好きの俺にはたまらんスレだな…
待ってるぜ
343 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/07(月) 04:01:33.87 ID:SBY2fsAO
>>341お前みたいな自称自治厨が一番ウザいんだよ
344 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/07(月) 14:55:54.01 ID:CKlsWtMo
生存報告来るかな
来てほしい
345 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/14(月) 03:30:24.02 ID:K1rI0YQo
1週間経過
待ってる人がいるようなので目に付きやすいように一旦ageますね
生存報告期待
346 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/14(月) 11:05:24.75 ID:lkVOM9ko
お疲れ様です
347 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/07/01(木) 01:10:36.28 ID:wKOxra.o
そろそろ二カ月か……
348 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/01(木) 02:06:10.26 ID:hOUdxEAO
希望の最期は死に非ず!!
349 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/08(木) 09:48:53.71 ID:KUrexfMo
書き手のレスがないまま2ヶ月が経過したのでご案内

続ける意思がなくなった場合は以下のスレでHTML化依頼をお願いします
■ HTML化依頼スレ Part1
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1190564438/

続ける意思がある場合は2週間に1度ぐらいでいいので生存報告をよろしくお願いします
みんなで仲良く製作速報を使えるようになるべく放置スレを減らしましょう
350 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/08(木) 11:12:37.26 ID:LoDuoico
お疲れ様です
このまま>>1が来ないと強制HTML化とかされちゃいますか?
351 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/08(木) 17:50:06.74 ID:KUrexfMo
待ってる人が多そうであれば依頼はしませんよ
一応案内後1週間以内に3レス以上を目安にしてます

ただ生存報告なしで3ヶ月を超えるとさすがに依頼しちゃいますが…
352 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/08(木) 17:53:42.52 ID:LoDuoico
了解です
この流れで行くとやっぱり3カ月音沙汰無しコースだろうな……
353 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/07/08(木) 22:06:47.08 ID:knbToQAO
来てくれ〜
354 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/08(木) 22:25:36.71 ID:8tCFEcAO
来てくれ
355 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/07/08(木) 22:45:37.30 ID:WAOAHTEo
この際生存報告だけでもいいからはやく>>1きてくれ
356 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/07/11(日) 09:56:23.27 ID:ZeSQFks0
懐かしい感覚だった。
とうに失い、もう二度と戻らないと思っていた感覚だ。
「フッ……懐かしいな、カイムよ」
アンヘルから届く『声』も、心なしか力に満ちている気がする。
「――――」
意識して笑みを作る。
アンヘルと共に空を駆けた、遠い昔に浮かべていた笑みを。
それはすぐに馴染み、まるで自分達は今まで夢を見ていたのだと錯覚するほどだった。
「行くか、カイム。これが最後の戦いだ」
「――――」
頷き、剣を握る。
いつか知らぬ間に鈍く錆びた剣は、昔日の鋭い刀身を取り戻し、
来たる決戦を待ち望むかのように鈍く光っていた。

――九章 宿命――
一節 盟約の紅
357 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/07/11(日) 10:03:14.82 ID:a2jfxI60
言い訳はしません、相当間が空きました。ごめんなさい
後、これからは一節ずつ投下していきます。時間も少しかかると思います
それでも見てくれるなら、どうかよろしく
完結は必ずします
358 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/11(日) 10:20:44.14 ID:prn6N8ko
きてたああああああああ
生存報告さえしてくれればまったりでいいよ!
359 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/11(日) 11:40:49.36 ID:mswq.1go
待ってた!超待ってた!!
全力で支援するぜ
360 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/07/11(日) 12:26:35.38 ID:SpYR4Ew0
段々と、眼下に見える雲が近づいていた。
ゆったりとした落下だった。
それでも徐々に勢いは増し、雲に入り込む頃には何かにしがみつかなければならないほどになっていた。
そして凛は、いつものようにカイムにしがみついた。
だが、何かが違った。
それが何なのかは分からなかったが、ほんの少しだけの、しかし確実な違和感があった。
それはきっと、今までカイムの後ろにいたからこそ分かった変化。
361 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/07/11(日) 12:28:13.00 ID:SpYR4Ew0
しかし、その微妙な変化を吹き飛ばすような景色が、雲の向こうには広がっていた。
「――うわぁ」
見渡す限りの荒野。そのところどころにキャンプや砦があり、
中心には西洋風の立派な城がそびえ立っている。
そんな映画のワンシーンのような光景に、凛は思わず感嘆の声を上げてしまっていた。
それくらい、その景色は予想を上回っていた。
「封印の女神の城、かつて我らが共に駆けた空だ」
レッドドラゴンの言葉に、凛が息を飲み、無意識に拳をつくる。
362 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/07/11(日) 12:29:26.55 ID:SpYR4Ew0
それはこれだけの世界を構築したレッドドラゴンの魔術に対する畏怖ではなく――確かにそれもあるのだが――、
カイムとレッドドラゴンが生きた空に自分がいるという昂揚だ。
今までは認めるとは言われながらも、どこか一歩だけ後ろを歩いているような、
そんな感覚を抱いていた。
しかし、今は共に同じ場所にいる。そんな実感を得られた。
しかし、その余韻は長くは続かなかった。
「――来ますッ!」
緊迫したセイバーの声が響く。
見下ろせば、封印の城の城壁の中の広場に瞬くいくつもの光。
それが先の宝具の雨であることは、考えずとも分かることだった。
しかし、レッドドラゴンは速度を落とす素振りも、回避行動を取る素振りも見せない。
それどころか、速度をさらに上げていく。
363 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/07/11(日) 12:30:32.59 ID:SpYR4Ew0
「なにを!?」
「黙っておれ、舌を噛むぞ」
言うが先か、紙一重を神話の槍が掠める。
それを皮切りに、スコールの様に高密度な宝具の雨が降り注ぎはじめた。
しかし、一時前の姿より一回り、いや、二回り近くは巨大になっているはずの体は、
それ以上に進化した飛翔により、その雨を一つも受けることなく進んで行く。
そして宝具の合間を縫いながら、レッドドラゴンはさらに速度を上げる。
「このまま着地するぞ!!」
レッドドラゴンがそう声を上げた時には、アーチャーがこれ以上は意味がないと判断したのだろう、宝具の雨は止んでいた。
それでもレッドドラゴンは速度を落とさずに着地する。
響き渡る轟音。その衝撃に耐えきれず地面が砕け散り、破片と砂埃が宙を舞う。
364 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/07/11(日) 12:32:30.33 ID:SpYR4Ew0
「待たせたな」
声が響くと同時に、突風が巻き起こる。
途端、宙を舞っていた砂埃が吹き飛び、その中から真紅の竜が現れる。
「は……ハッハッ! いや、派手な登場だな!!」
その光景に少しの間呆気に取られていたランサーが、
それでもすぐに気を取り直し、拍手で迎える。
「――――」
その拍手を受けながら、カイムがレッドドラゴンから降りる。
そしてランサーと向かい合い剣を構え、いつかの笑みを浮かべる。
それに対し、ランサーも拍手をやめて槍を構え、笑みを浮かべた。
そのまま何秒向き合っただろうか。合図は無く、それでも開始は同時だった。
「――――!!」
「ハァァァァッ!!」
365 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/11(日) 17:56:54.42 ID:eLQ9wIAO
おかえり

ニーアやってたの?
366 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/16(金) 23:44:19.06 ID:M7rIDe.0
おかえりー
367 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/08/03(火) 15:08:30.59 ID:dPE2IXM0
二節 封印に結ぶ運命

剣と槍が交差する。刹那、耳障りな金属音が響き渡り、接触した部分から火花が飛び散る。
槍を扱うのは、出会ったほとんどのサーヴァントを必殺したカイムが、
二度も逃がすことになったランサーの英霊、クー・フーリン。
そして、それと対峙する剣を扱うサーヴァントは、――私の知らない男だった。
その身に纏う青い鎧も、ぶかぶかの籠手も、確かに見覚えのあるものだけど、
本来それを身につけていた男は、おっさんだし、無精髭だし、無駄に前髪が長いし、
片方目が無いし、とにかく、あれとは違う。
カイムは、――そう、えーっと、お父さん的な感じなんだ。
あんなどっかの先輩的な感じじゃない。あれじゃよくてお兄ちゃんじゃないか。
「あれがカイムの全盛期だ」
368 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/08/03(火) 15:09:43.37 ID:dPE2IXM0
――――――――んなこと分かってるっての。
大体、あんな趣味悪そうな笑い方をするのは綺礼とカイムくらいだし、
全然声ださないし、間合い取るたびに顔ぶんぶんして前髪どかすし。
分かってる、そんなのは。でも、それを認めるのは少しばかり癪でもある。
まあ、ほら、あれに私は抱きついたりしたりしなかったりなわけだし……。
「おい遠坂、さっきからぶつぶつ言って、頭でも打ったか?」
「うるさい!」
士郎に八つ当たりしながら、レッドドラゴンの背中から飛び降りる。
369 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/08/03(火) 15:11:19.85 ID:dPE2IXM0
「っ――!?」
違和感。あるべきはずの場所に地面がなかった。
階段がもう一段あると思ったらなかった時のことを思い浮かべてほしい。あれだ。
普段ならこれくらいどうってことないんだけど、この時色々あって動揺していた私は、
――――見事にこけた。
「っつ――」
「おい、大丈夫か? 遠坂」
「うるさいッ!!」
なんなのこれは。ああ、もう、腹が立つ。
元凶に恨みを込めた視線を送る。
「どうした?」
デカくなってるし――。
こいつら、私に無断で勝手に変身しやがって。
370 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/08/03(火) 15:12:31.24 ID:dPE2IXM0
「これが我の真の姿だ。凛よ、目に焼き付けておけ」
「これじゃ家に入れないわね。あんた、これから外」
「――――フッ、そうだな。あのような狭き家にはこの体では入れぬな。
この城なら問題もないのだが」
まぁ、どうせもう一緒に帰ることもないんだけど。とは口にしなかった。
というか、どうせ向こうだって分かって合わせてくれてるんだろうし。
「おい! 我を無視するとは図太い雑種だな」
気高い、というよりも傲慢そうな声と、カチャリ、と金属が擦れる音がした。
咄嗟にそちらに視線を飛ばすと、金色の鎧を纏い、金色の髪をした男が、
腕を組んで踏ん反り返っていた。
それを睨みつけて、レッドドラゴンが口を開く。
371 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/08/03(火) 15:13:48.21 ID:dPE2IXM0
「ほう、貴様が騎士を下した弓兵か。
先程の玩具遊び、暇つぶし程度にはなったぞ」
「ほざくな、獣。我は英雄王ギルガメッシュ、
貴様のような下賤の輩が他安く口を聞ける存在ではないぞ」
「ギルガメッシュ? 知らぬな。しかし、所詮は人間。我にとっては取るに足らぬ。失せろ」
「言ったな、獣」
「刃向かうか、人間」
こいつら、似たもの同士だ。
超自信家の俺様主義、しかも、見合う能力があるから手に終えない。
一番付き合いたくないタイプだ。
そんなある意味馬鹿二人の間に、セイバーが割って入る。
とはいえ、戦いを止める訳では、もちろん無い。
372 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/08/03(火) 15:14:42.29 ID:dPE2IXM0
「待ってください、竜よ」
剣を抜き、セイバーが構える。
「ここは私に――」
「勝手にしろ」
最後まで言わせずに、レッドドラゴンがそっぽを向く。
多分だけど、あれは挨拶みたいなものなんだろう。こういう系統のやつなりの。
あっちも――英雄王ギルガメッシュも、最初からセイバーと戦うつもりだったみたいだし。
「凛よ」
既に英雄王なんて眼中にないレッドドラゴンが、明後日の――いや、
カイムの戦いを視界に納めたまま声をかけてきた。
373 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/08/03(火) 15:16:09.54 ID:dPE2IXM0
「おぬしも行け。ここは運命が重なる場所だ。無論、おぬしの運命も。
自身の力で運命を切り開け。おそらく城の中、女神の部屋の前にでもいるだろう。
小僧、おぬしもだ」
「――うん、分かった」
「お、おい! 俺はまだ――」
「さっさと行くわよ、士郎!」
もたもたしてる士郎の手を掴んで、城に向けて走り出す。
レッドドラゴンが言ったことはよくわからないけど、
いままであいつの言ったことに間違いなんてなかった。
だから信じよう。あいつらが勝つことも、この先に待つ運命のことも。
374 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/08/03(火) 15:18:41.34 ID:dPE2IXM0
二節終わり
我ながらなんという遅筆
>>365
箱もPS3も持ってない……というか、金も時間もない
一応友達の家でカイネと戦うとこまでやらせてもらった
375 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/03(火) 17:14:13.37 ID:AFKNM1.o

俺もニーアやりたいな
ゲシュタルトが日本語音声ならば箱ごと買ってくるのに
376 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/03(火) 23:23:11.64 ID:fTSfKIAO
377 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/04(水) 01:57:01.36 ID:P6m34yko
おつおつ
378 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/05(木) 12:51:54.99 ID:ctxCN.AO
待っててよかった
379 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/08/23(月) 07:34:57.88 ID:itOdLn6o
三節 剣の目覚め

幾度目かの交差を終え、ランサーがカイムから距離を取る。
両者に傷という傷はなく、戦闘能力が拮抗していることが見てとれる。
「その姿、見掛け倒しじゃねえようだな」
薄く笑みを浮かべながら、ランサーが口を開いた。
とても楽しそうな声色だ。いや、実際楽しいのだろう。
クー・フーリンという英雄は、運命に恵まれていた訳ではない。
いや、この聖杯戦争に参加する全ての英霊がそうだろう。
しかし、彼はその中でも異端だった。
本来英霊は、願いを叶える為に聖杯戦争に参加する。
戦いは手段であり、願いを叶えることこそが目標なのだ。
380 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/08/23(月) 07:36:03.96 ID:itOdLn6o
だが、彼は違った。
彼にとって聖杯などはどうでもよく、その過程の戦闘こそが望みだった。
そして今、彼は望んだ物を手にしていた。これが楽しくない訳がない。
しかも、相手は恐らく接近戦最強のサーヴァント。
バーサーカーすらあしらったとあれば、
相手に不足など唱えられるはずもない。
だが、気にかかる部分もあった。
「だけどあんた、全然本気じゃねえだろ」
381 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/08/23(月) 07:36:48.73 ID:itOdLn6o
「――――」
その言葉に、カイムが笑みで返す。
事実、本気などではなかった。いや、ある意味に於いては本気だった。
それは一本の剣を使う、一人の剣士としての本気だ。
カイムという人間は、その半身に神の血が流れている訳でも、竜の系譜を引き継いでいる訳でも、
神の試練に単身打ち勝った訳でもない。
ただの人間だ。王子として生まれ、父に戦いを習っただけの。
魔術はアンヘルからの補助と、触媒となる武具がなければろくに使えず、
そもそもアンヘルと契約し身体能力を強化されていなければ、
まともにこの聖杯戦争などで戦うことは出来なかっただろう。
382 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/08/23(月) 07:37:38.20 ID:itOdLn6o
事実、今までの戦いに於いても彼一人の力で勝利を得たのは、
カイム以上に神秘と関係を持たなかったアサシンのみだ。
制限による弱体化も要因の一つではあった。
それでも、カイムという『人間』は、この聖杯戦争の中では明らかな『格下』だった。
だが、負けるつもりなどは毛頭なかった。
自惚れているわけではない。
ただ、カイムと共に空を駆ける紅き竜、アンヘル。
全ての竜の中でも最強と言って過言ではないその名に、
自分が傷を付けるわけにもいかなかった。
――それともう一つ、自分のマスターの名にも。
383 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/08/23(月) 07:39:39.41 ID:itOdLn6o
「――――」
愛用の剣を竜騎士の歯車<ウェポンホイール>に納め、一本の短剣を取り出す。
漆黒に彩られたその剣は、材質は愚か、制作者すら分からない。
分かっているのはただ一つ、その剣の名前が『古の覇王』ということのみ。
「おいおい、そんな短剣出して、どういうつもりだ?」
その剣を見て、呆れたようにランサーが力なく笑う。
その反応は当たり前のものだった。
何故なら、戦闘に於いてリーチというのは最も重要な要素であるからだ。
384 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/08/23(月) 07:40:38.70 ID:itOdLn6o
ここのように開けた場所ならば、尚更その有利は強くなる。
しかし、リーチが長い得物は、同時に扱いに難が生じる。
アサシンのような人外は例外として、
それはどれだけ卓越した技術の持ち主でも補いきることはできない。
だが、もしもそのリーチと扱いを兼ね備える武具があるとしたら、
それはおそらく最強の武具の一角になるだろう。
そしてその剣は、それに値するものだった。
「――――」
カイムが笑みを浮かべる。
ここから先は、この聖杯戦争で初めての、正真正銘の本気だ。
385 : ◆AOGu5v68Us [saga]:2010/08/23(月) 07:41:40.85 ID:itOdLn6o
「へぇ……こりゃ油断できそうじゃねえな」
何かを予感して、ランサーも気を入れ直す。
束の間の静寂。
「――――!!」
先にそれを破ったのはカイムだった。
386 : ◆AOGu5v68Us [sage]:2010/08/23(月) 07:45:32.60 ID:itOdLn6o
三節終わり
金とか色々やばい……
でも家の契約更新が契約時に言われた五分の一くらいしか取られなかった
最近訴訟とかされてるからか?
段々落ち着いてきたので次からはもう少し早くできると思う
387 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/23(月) 07:57:11.10 ID:f.NVRI6o

期待してる
388 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/23(月) 08:23:25.53 ID:R3EY7ywo
乙!
389 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/23(月) 18:05:30.83 ID:6o0qBIAO
390 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/24(火) 01:32:06.74 ID:Q8JhuHAo
おつ
391 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/03(金) 01:55:20.10 ID:7E7Uv7o0
まだか……まだなのか……
392 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/03(金) 06:44:12.31 ID:bAVwxIUo
まだ一週間とちょっとだろうに
393 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/12(日) 01:05:57.85 ID:u1WE2cAO
期待だ
394 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/27(月) 18:19:32.84 ID:N4UU/6DO
あげ
395 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/21(木) 08:34:01.07 ID:E3b.XKgo
復活きたし期待してる
396 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/04(木) 21:49:00.22 ID:rGFFw2AO
待つ
397 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/10(金) 01:22:18.87 ID:b7XdPOco
age
398 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/22(水) 19:13:46.88 ID:2Js.CIAO
期待
399 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/22(水) 23:57:18.57 ID:61IEGUAO

宿
400 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! :2011/01/01(正月) 17:40:43.16 ID:95iN2PUo
待ってるぜ
401 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/16(日) 17:51:45.02 ID:Y74hQkzAO


SS・小説スレは移転しました
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/ Mobile http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/

402 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/02/09(水) 22:41:34.48 ID:FMmVY63AO
403 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/02/11(金) 22:36:07.80 ID:sUPUKbFAO
紅き血
404 :lain. [sage]:2011/02/20(日) 09:57:41.00 ID:???
SS・やる夫系スレッドは、SS速報VIP【http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/】へ移転することになりました。
それに伴いこちらのスレッドをHTML化させて頂きます。
スレッドを立て直す際はSS速報VIPへお願いします。
154.27 KB   

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