このスレッドは製作速報VIP(クリエイター)の過去ログ倉庫に格納されています。もう書き込みできません。。
もし、このスレッドをネット上以外の媒体で転載や引用をされる場合は管理人までご一報ください。
またネット上での引用掲載、またはまとめサイトなどでの紹介をされる際はこのページへのリンクを必ず掲載してください。

『拾って下さい』 - 製作速報VIP(クリエイター) 過去ログ倉庫

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 12:50:06.63 ID:hIxXWHE0
家出「『拾って下さい』ねえ」

箱「……」

家出「こんな貼り紙の付いた段ボールが道端に置かれるなんてこと、本当にあるんだな」

箱「……」

家出「…猫と一緒にこの中に入ってれば、誰か心優しい人が拾ってくれたりなんかして…なんて」

箱「…ニャー」

家出「…猫の準備は大丈夫そうだな」

箱「ニャー」
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】

ごめんなさい、この製作速報VIP(クリエイター)板のスレッドは1000に到達したか、若しくは著しい過疎のため、お役を果たし過去ログ倉庫へご隠居されました。
このスレッドを閲覧することはできますが書き込むことはできませんです。
もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。

諸君、狂いたまえ。 @ 2024/04/26(金) 22:00:04.52 ID:pApquyFx0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714136403/

少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714054765/

渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

2 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 12:51:59.98 ID:hIxXWHE0
家出「いや、何を考えてるんだ」
家出「…あの家を出てから早5日。まさに野良猫のような生活をしてきたりもしたけど…そんなことを考えるまでおかしくなってしまったのか」

箱「ニャー」

家出「…ふっ、まさかそんな馬鹿げたことするわけないじゃないか」

箱「ニャ」

家出「……」

箱「……」

家出「…でも箱も結構大きいし、一人くらいなら入っても大丈夫そうだな」

箱「…ニャー」
3 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 12:54:01.05 ID:hIxXWHE0
ぐぅ…
家出「…腹減ったな。あれから忙しくて何も食べてなかったからなぁ」

くぅ…
箱「…ニャー」

家出「あれ?そう言えば……猫って、食べられるんだっけか」

箱「……」

家出「どこぞのファーストフード店では猫の肉で作られたハンバーグが使われてるだなんて都市伝説があるくらいだし、食べられないわけじゃないよな」

箱「…ニ、ニャー」

家出「成長してたら肉も固そうだけど、子猫だったらたぶん柔らかいよな」

箱「……」

家出「…よし、そうと決まればさっそく品定めだ。鳴き声からして中にいるのは子猫一匹だと思うけど、どうだろうか―」

箱「ニ、ニャー!」
4 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 12:56:00.52 ID:hIxXWHE0
ガサッ
箱「…ハズレ」

家出「……あ、ども」

箱「ニャー」

家出「……」

箱「……」

家出「…えーっと、子猫一匹に追加で…女の子が一人?」

箱「違う、美少女が一人」

家出「そこに『美』は必要ない」
5 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 12:58:00.25 ID:hIxXWHE0
家出「…えっとその、もしかして君は…ホームレス…さん、だったりする?」

箱「違う」

箱「ニャー」

家出「あ、違うんだ」

箱「ここが我が家」

家出「……世間ではそれをホームレスと呼ぶんだけど」

箱「ちなみにこれは三軒目」

家出「…すでに二回壊れてるんだ」

箱「新築住宅、築6時間」

家出「いや、建ててはないだろ」
6 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/01(木) 12:58:06.65 ID:P9KbcAAO
期待
7 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:00:01.34 ID:hIxXWHE0
家出「こんな所で何やってんの?」

箱「見てわからない?」

家出「…えっと、捨てられる猫の気持ちを身をもって感じてみてる、とか?」

箱「ニャー」

箱「惜しい。約一年間も狭い箱舟の中に乗せられていた動物達の閉塞感はどんなものだったのか味わっていたの」

家出「わからねえよ」

箱「旧約聖書、創世記第6章」

家出「それは知ってる」

箱「…知ってたの?」

家出「いや、ゴメン。知らなかった」
8 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:01:59.95 ID:hIxXWHE0
家出「見たところ成人してるように見えないけど…まさかここで暮らしてるってわけじゃないよね?」

箱「勿論」

家出「よかった、さすがにそうか…」

箱「我が家は持ち運びに便利」

箱「ニャー」

家出「…冗談、だよね?」

箱「四割冗談」

家出「…六割も本気なのか」

箱「実は意外と持ち運び難い」

家出「しかも冗談はそこかよ」
9 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:04:02.46 ID:hIxXWHE0
家出「食事なんかはどうしてるんだよ」

箱「……」

家出「…?どうした」

箱「…この子猫は、元々二匹いたの」

箱「ニャー…」

家出「…えっと、もう一匹はどうした」

箱「今日の食事に変わった」

家出「食ったのか、この外道!」

箱「…さっきまでこの子猫を食べようとしてた人間の言葉とは思えない」

箱「ニャー」
10 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:06:02.68 ID:hIxXWHE0
箱「そうではなく、子猫と交換で食料をいただいたの」

家出「親切な人もいるもんだな」

箱「うん…その親切な方に銀のスプーンをいただいた」

箱「ニャーン」

家出「それは君じゃなくて子猫にあげたんだろ」

箱「硬くて食べられなかった」

家出「本当にスプーンだったのか!」

箱「せめて白いスプーンならよかった」

家出「…上白糖?」

箱「バケツ一杯の砂糖水があれば一週間は生きていける」

家出「いや、たぶん高血糖で[ピーーー]る」
11 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:08:01.66 ID:hIxXWHE0
やっぱり引っ掛かるのか…
さっきのは(氏ね)です


箱「けど、ないものは仕方ないから猫とその猫缶を食べた」

家出「あ、やっぱり猫缶の方か」

箱「ばらすのは大変だったけど久しぶりの肉で美味しかった」

箱「ニャー」

家出「…まさか猫の肉じゃないよな」

箱「……」

家出「その沈黙は何だ」

箱「想像に任せます」

家出「違うなら違うと言ってくれ」

箱「黙秘権を行使します」
12 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:10:02.53 ID:hIxXWHE0
家出「その猫って懐いてるみたいだけど、やっぱり君が飼ってるのか?」

箱「飼ってるというか飼われてる」

家出「…飼われてる?」

箱「ニャー」

箱「この猫がいるから食料が手に入る」

家出「ほお…って、それでいいのか?」

箱「この猫は命の恩人」

家出「まあ…本人がそれでいいってんなら、それでいいんだろうけどさ」
13 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:12:02.75 ID:hIxXWHE0
箱「違う、人じゃなくて猫」

家出「いや、本人ってのは猫じゃなくて君のこと。…それに本猫って何だよ」

箱「本猫?本の猫…かわいい」

箱「…ニャー」

家出「勝手にしてくれ」

箱「猫の体がバラバラとめくられる」

家出「怖っ!何やってんだよ」

箱「そして小さな子供にページや表紙を破られて大変なことに…」

家出「かわいくない、かわいくないよ!それじゃはっきり言ってただのホラーだ!」

箱「ホラーとラブは紙一重」

家出「んなわけあるか!」
14 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:14:01.65 ID:hIxXWHE0
家出「ともかく、女の子が一人でこんな所にいたら危ないよ」

箱「…一人じゃない。猫もいる」

家出「でも女の子は一人だ」

箱「女の子じゃない、美少女」

家出「美少女ならなおさら危ないだろ。まだ夜遅くってわけじゃないにせよ、こんな遅くに人気のない道に一人でいたら誰かに襲われるかもしれないぞ」

箱「……」

家出「…悪いこと言わないから、帰る家があるんなら早く帰りな」

箱「…ニャー」
15 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:16:01.82 ID:hIxXWHE0
箱「…私に帰る家が―」
箱「帰る家が、あると思ってるの」

家出「……」

箱「段ボールの中に子猫と一緒に入っているような人間に、そんな立派なものがあるわけないじゃない!…それどころか、自分の両親が誰なのかも知らないわよ」

家出「…悪かった、ゴメン」

箱「…謝ってどうするの。あんただって人のことをどうこう言える立場じゃないでしょ…家出のくせに」

家出「……」

箱「帰る家があるのは、あんたの方じゃない…自分がしてないことを他人に押し付けてるだけ。私の家はここで、家族はこの猫だけなの」

箱「ニャー」
16 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:18:01.71 ID:hIxXWHE0
家出「…あの家に、帰る場所なんてない」

箱「私には家すらない」

家出「……」

箱「…ニャー」

家出「……君、名前は?」

箱「…クロ」

家出「それって本名?」

箱「貰われていったもう一匹の名前…あんたに私の本名は絶対教えない」
17 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:20:02.39 ID:hIxXWHE0
家出「そうか…ならこっちは『家出』だ」

箱「…は?」

家出「そっちが本名を教えないのなら、こっちも本名を君に教えない」

箱「…別に知りたくもない」

箱「ニャ」

家出「へえ、君らとこれから一緒に暮らすことになるっていうのにか?」

箱「……今、何て?」

家出「…だから、箱に『拾って下さい』って書いてあっただろ。これから君らを拾ってやるって言ってんだよ」
18 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:22:03.08 ID:hIxXWHE0
箱「…家出なんかに拾われても後の生活が大変になる」

家出「確かに家は出たが、住む家がないってわけじゃないんだよ」

箱「どうして家出なのに家がある」

箱「ニャー」

家出「ああ…何て、言うかな……正確には家出というか、今まで住んでいた家から逃げてるんだよ。自分の勝手な我が儘で生まれ育ってきた家を捨てて逃げてきた。だから―」

箱「…それ以上は言うな」

家出「…ありがとう」

箱「礼を言われるようなことじゃない…私がその話を聞きたくないだけ」

家出「…そうか」
19 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:24:02.17 ID:hIxXWHE0
箱「…生活待遇は?」

家出「三食昼寝付き。衣食住については心配しなくていい…ただし条件付き」

箱「条件…何?」

家出「勝手に出て行かないこと」

箱「…何その条件」

家出「だから、黙って一人だけ取り残されるのは寂しいってこと」

箱「何それ」

箱「ニャー」
20 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:26:01.60 ID:hIxXWHE0
箱「…確かにそれなら、家出のあんたに拾われても生活は大丈夫そう」

家出「だろ?」

箱「けど、一つ困った問題がある」

家出「何だそりゃ?」

箱「私はあんたが嫌い」

箱「ニャー」

家出「それは困るな、どうする?」

箱「どうしようもない」

家出「少しは考えてくれよ」

箱「断る」
21 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:28:03.96 ID:hIxXWHE0
家出「…そうか、そっちがその気なら仕方ない…こっちも最終手段をとらせてもらおうか」

箱「…最終手段?」

家出「ああ、そうだ……おりゃ!」

ガサッ
箱「何っ!」

箱「ニャー…」

家出「さぁ、この猫を返して欲しければ大人しく言う通りにするのだ!」

箱「くっ…人質は卑怯」

家出「人質ではない猫質だ。ほらほら、早くどうするか決めないと、君の大切な命の恩人が大変なことになるぞ!」

箱「…大変なことって、何をする気?」

家出「あ、えーっと……こ、この猫の肉球を、ひたすら触りまくってやる!」
22 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:30:01.90 ID:hIxXWHE0
箱「……」

箱「ニャー…」

家出「……」

箱「…ふっ」

家出「…えっと?」

箱「拾われてあげる」

家出「えっ、本当?」

箱「…悔しいけど仕方ない。その肉球をあんたなんかに触りまくられるわけにはいかない」

家出「…意地っ張りなお嬢さんだねえ」

箱「ニャ」

箱「…何か言った?」
23 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:32:03.04 ID:hIxXWHE0
家出「ところで、貰われてった方の名前はさっき聞いたけどさ、その猫には名前付けてないの?」

箱「…シロ」

箱「ニャ」

家出「芸で綿飴とかできそうな名前だな……でもその猫って黒猫、だよね?」

箱「二匹まとめてクロとシロって呼んでたら、何でか名前を逆に覚えた」

家出「…じゃあ貰われてったのは白猫のクロで、ここにいるのは黒猫のシロか」

箱「その親切な方はタマって呼んでた」

家出「まあ、定番だけどな」

箱「今は私がクロ」

家出「そうだったな」
24 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:34:01.37 ID:hIxXWHE0
家出「それじゃ行くか、クロ」

クロ「うん」

シロ「ニャ」

ガサッ
家出「…っておい、まさかその段ボールも一緒に持ってく気か?」

クロ「勿論、まだ築6時間ちょい」

家出「だから建ててはないだろ」

クロ「シロの家になる」

シロ「ニャー」

家出「…あ、そう」
25 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:36:02.21 ID:hIxXWHE0
クロ「家出の家はどんな家?」

家出「…うーん、さっきは家があるって言ったけど、実は住まわせてもらってる部屋があるってだけなんだよね」

クロ「普通?」

家出「…まあ、寮や下宿って感じなのに名目上ではアパートになってるし、少し変わってるのかも」

クロ「…変?」

家出「いや、変わってるだけ…のはず」

クロ「やっぱり変か」

シロ「ニャ」
26 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:38:02.36 ID:hIxXWHE0
クロ「…あれ」

家出「ん?ああ、あの建物がそう」

クロ「…古い」

シロ「ニャー」

家出「まあ、そう言うなよ。家賃が格安な上に、毎日三食の食事の面倒まで見てもらってるんだぞ」

クロ「どうして?」

家出「それはまあ、ここの家主というか管理人さんの個人的趣味のせいみたいなもんだろうな」

クロ「趣味のせい?」

家出「ま、気を付けてな」

クロ「?」
27 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:40:04.02 ID:hIxXWHE0
管理人「…あら、今日はずいぶんと早いお帰りですね」

家出「どうも、5日振りです…ええとそれで、やっぱりあの話は―」

管理人「戻ってきたということは、結果は言わなくてもわかります…またここに住むことになるのですね?」

家出「ええ、その通りです。またお世話になりたいと思います」

管理人「ふふ、楽しみですね」

家出「はは…で、できれば今日はあまり張り切らないで下さいね」

クロ「…どゆこと?」

シロ「…ニャー」
28 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:42:06.30 ID:hIxXWHE0
管理人「あら……その子は、どうしたのですか?」

家出「ああ、道端で拾ってきたんです」

クロ「…拾われた」

シロ「ニャー」

管理人「…誘拐は犯罪ですよ」

家出「これが誘拐だったら犯罪ですね」

管理人「…違うのですか?」

家出「ギリでセーフです」

管理人「ガチでアウトでは…」
29 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:44:02.21 ID:hIxXWHE0
管理人「はあ…住む場所がないからここで一緒に住むことにしたと…」

家出「はい、そうです」

クロ「そうらしい」

シロ「ニャー」

管理人「……」

家出「…本当、ですよ?」

管理人「…少女誘拐の上に監禁ですか…どうやってごまかしましょう」

家出「…だから、違いますって」
30 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:46:02.63 ID:hIxXWHE0
管理人「…では表向きはそういうことにしておきましょう」

家出「表向きはって…」

管理人「少女を監禁…いえ、少女と一緒に生活するのに、何か必要なものとかはありませんか?…法に触れない程度で」

家出「…そんな心配は必要ありません。じゃあ、この子にあう服なんかがあれば貸してもらえませんか」

管理人「えっ…私の持っているコスプレ用品を貸してほしいと?」

家出「そんなことは言ってません」

管理人「冗談です。貸しませんよ」

家出「…持ってるんですか」

管理人「奴隷の服は彼女には装備できません」

家出「させませんよ!」
31 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:48:02.24 ID:hIxXWHE0
クロ「……」

管理人「…あら、後ろの子が何か言いたそうにしてますよ」

コクッ
クロ「…黒い服がいい」

家出「名前をクロにしたからって、着る服まで黒にするのか?」

クロ「黒は女を美しくするらしい」

シロ「ニャー」

家出「…お前、魔女にでもなる気か」

管理人「魔女の衣装も持ってますよ」

家出「…それも持ってるんですか」
32 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:50:02.20 ID:hIxXWHE0
管理人「冗談はともかく、その子もここに一緒に住むということですか?」

家出「…そうですよ」

クロ「らしいです」

シロ「ニャー」

管理人「それでは少し狭くなりますが、前と同じ部屋で問題ないですか?」

家出「ええ、ペット同室でもいいのなら他に問題はありません」

管理人「それは構いません。…それで、本当に大丈夫ですね?」

家出「…大丈夫ですよ」
33 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:52:03.30 ID:hIxXWHE0
管理人「大丈夫ですか?…でしたら何も問題はありません。家賃も特別に今までと同じで構いませんよ」

家出「ほ、本当ですか!」

管理人「ただし条件付きです」

家出「条件?…何ですか」

管理人「大したことではありませんよ。条件は一つ…たまには実家に顔を出してあげて下さい」

家出「……」

管理人「それがいつになっても構わないですから、いつか帰ってあげて下さい」

家出「…いつかでいいんなら、いいですよ」

クロ「……」

シロ「…ニャー」
34 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:54:04.12 ID:hIxXWHE0
管理人「ではせっかくですから、その子たちの入居祝いでもしましょうか」

家出「!…い、いえ今日はもう遅いですし、またの機会にしましょう」

管理人「…そうですか?でも―」

クイクイッ
クロ「……」

家出「…どうした、クロ」

クロ「お腹空いた」

シロ「ニャー」

家出「…猫缶は食ったんだろ。ならもう少しだけ我慢しろ」
35 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:56:00.68 ID:hIxXWHE0
管理人「猫缶?」

家出「…あ、やば」

管理人「猫缶…って、あの猫缶ですか?それはいけませんね。もっと栄養のある食事を食べませんと」

家出「そ、そうですね」

管理人「…わかりました。これから私が栄養満点の夕食を作ります!」

クロ「…おー」

シロ「ニャー」

家出「わ、わざわざ今から作ってもらうわけにはいきません。何か夕食の残り物なんかで結構ですよ」

管理人「…そう、ですか」

家出「そうですよ…はあ」

クロ「?」
36 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 13:58:01.11 ID:hIxXWHE0
管理人「それでは、おやすみなさい」

家出「はい、おやすみなさい」

バタンッ
家出「……はあ、疲れた。結局残り物は手に入らなかったけど、仕方ないか」

クロ「さっきのあれは?」

シロ「ニャー」

家出「あれ?…ああ、どうして手料理をああまで断るのかってことか」

クロ「不味いのか?」

家出「いや、めちゃくちゃ美味い」

クロ「なら見た目か?」

家出「盛り付けも彩りも申し分ない」

クロ「?」
37 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 14:00:02.96 ID:hIxXWHE0
クロ「ならどうして?」

家出「…組合せ、かな」

クロ「食べ合わせではなく、組合せ?」

シロ「ニャー」

家出「もしくはタイミング」

クロ「…ますますわからない」

家出「…明日の食事を見ればわかるさ」

…くぅ
クロ「…お腹空いた」

家出「今は我慢しな…まあ、そう言ってられるのも今のうちだけだからな」

クロ「?」
38 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 14:02:03.80 ID:hIxXWHE0
家出「…それで、どうする?」

クロ「何が?」

家出「寝る時の話だよ。残念ながら一組しか布団は持ってないんだ」

クロ「…床で寝る」

家出「いや、君には三食昼寝付きを約束したんだ。そんなわけにはいかないよ」

クロ「あんたが床で寝る?」

家出「うーん…毛布なら一応あるけど、それだけだとこの時期はまだ寒いよな」

クロ「…なら、一緒に寝る?」
39 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 14:04:02.01 ID:hIxXWHE0
シロ「…ニャー」

家出「まあ、それでいいなら」

クロ「……」

家出「ん、どうした?」

クロ「…つまらない」

家出「何が?」

クロ「毛布貸して、床で寝る」

家出「おい、いいのか?さっきも言ったけど、毛布だけだとまだ寒いぞ」

クロ「問題ない。今までは外だった」

シロ「ニャー」

家出「確かにそうだけど…」
40 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 14:06:01.91 ID:hIxXWHE0
クロ「毛布だけで十分」

家出「…わかった、なら床で寝な」

クロ「そうする」

家出「ただし、毛布じゃなくてこの掛け布団を使うこと。…この時期に風邪でも引いたら大変だ」

クロ「…あんたよりは丈夫」

シロ「ニャ」

家出「丈夫だからって寒くないわけじゃないよ。君はもうこの部屋で一緒に住む家族なんだ。これくらいは甘えてくれ」

クロ「家族…」

家出「そうだ」

クロ「なら床で寝ろ」

家出「やだ」
41 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 14:08:02.18 ID:hIxXWHE0
家出「それじゃ寝る前に風呂でも入るか…とは言っても今日はシャワーかな」

クロ「!」

家出「どうする、疲れてるだろうし先に浴びるか?」

クロ「い、いい」

家出「そうか?ああ、そう言えば着替えがないんだったな。貸してやれればいいんだけど、サイズが合わないよな」

クロ「そういう問題か?」

家出「じゃあ先に浴びてるから、さっきの管理人さんに服を借りてきな。部屋は一階の左端にあるからすぐにわかるよ」

クロ「……何さ」

シロ「ニャー」
42 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 14:10:04.59 ID:hIxXWHE0
キィ…
家出「はーあ…(さすがに迷わないとは思うけど、大丈夫かな)」

家出「……箱入娘のお嬢様って、そのままじゃないか。笑えねぇな…」
家出「…何で拾ったんだろ」

シロ「ニャー」

家出「…お前は拾われてよかったか?」

シロ「ニャ」

家出「まあ、猫なんだからにゃーとしか言うわけないか…」

クロ「当たり前」
43 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 14:12:03.15 ID:hIxXWHE0
家出「おう、帰ってきたか…って、その格好はどうした?」

クロ「…変?」

家出「いや、変っていうか…君は何故メイド服なんかを着てるんだ?」

シロ「ニャー」

クロ「…貸してくれた」

家出「貸してくれたって…何であの人、君にこんな服を貸したんだ?」

クロ「似合う?」

家出「うん、かなり似合ってる、けど…それは寝る前に着る服じゃないよな」

クロ「そう…」
44 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 14:14:02.96 ID:hIxXWHE0
家出「まあ、早くシャワー浴びてきな」

クロ「…そうする」

家出「…ああ、そうだ。それからこの猫もついでに洗ってやってくれないか。黒い毛並みが土埃にまみれて少し白くなっちゃってるんだ」

シロ「ニャー」

クロ「わかった」

家出「それじゃよろしく」

クロ「……」

家出「どうした?」

クロ「…覗くなよ」

家出「?いや、覗かないよ」
45 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 14:16:05.81 ID:hIxXWHE0
クロ「…ちっ」

家出「女の子が舌打ちなんかするなよ。それとも何だ、君は本当は覗いてもらいたかったりするのか?」

クロ「…氏に方は何がいい」

家出「恋人の腕に抱かれて、かな…まあ、それは叶わない望みだけどね」

クロ「…その望み、叶えてやろうか?」

家出「はは…なに、ただの冗談だよ」

クロ「……」

シロ「ニャー」

家出「…そうだ、何か拭くものを持ってないんならタオルでも貸そうか?」

クロ「…借りる」
46 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 14:18:03.53 ID:hIxXWHE0
わしゃわしゃ
クロ「……」
クロ「…あいつは何なんだ」

シロ「…ニャー」

クロ「あれだけ露骨な挑発だったのに、まったくうろたえる素振りがない」

シロ「ニャ」

わしゃわしゃ、わしゃわしゃ
クロ「…あれだと面白くない」

シロ「ニャー」

わしゃしゃしゃしゃ!
クロ「つ・ま・ら・なーい!」

シロ「ニ、ニャー!」
47 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 14:20:02.68 ID:hIxXWHE0
家出「…何やってるんだ、君たちは」

クロ「別に…」

シロ「ニャー」

家出「まあ、いいや。今日は疲れたし、早く寝よう」

クロ「…突っ込まないのか」

家出「何を?」

クロ「この服」

家出「ああ、その丈の長いワイシャツのことか…まあいいんじゃないか、意外とワイシャツって寝易いし」

クロ「それだけ?」

家出「あれ、他に何かあるかな?」

クロ「別に…」
48 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 14:22:01.24 ID:hIxXWHE0
クロ「んっ、はあ…」

家出「なあ…中に入れてもいい?」

クロ「えっ、そんな…急に」

家出「お願いだ、入れさせてくれ」

クロ「やだ、だってほら…まだ体も全然暖まってないし…」

家出「…そんなこと言って、もう十分暖まってるじゃないか。こっちはもう我慢できないんだ!」

クロ「そ、そんなに乱暴にしないで…」

家出「ご、ごめん…優しくするよ」

クロ「あっ…」
49 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 14:58:02.87 ID:hIxXWHE0
シロ「ニャー」

家出「…やっぱ、あったけぇ」

クロ「…取られた」

家出「でもこれくらいはいいだろ。…君がくしゃみなんかして寒そうだから、結局敷き布団まで渡したんだし」

クロ「頼んでない」

家出「頼んでなくてもだ」

クロ「…高慢」

家出「誰が高慢だ。それにさっき言ったように体はあまり丈夫じゃないんだよ」

クロ「…なら代われ」

家出「それはそれ、これはこれだ」
50 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 15:00:02.37 ID:hIxXWHE0
チュンチュン…
家出「…朝か」

クロ「…これが俗に言う朝チュンか」

シロ「…ニャー」

家出「朝になれば小鳥くらい鳴くだろ」

クロ「…夢のないやつ」

家出「そんな夢は捨てちまえ」

クロ「夢は諦めないもの」

家出「夢は寝て見るものだ」

クロ「…つまらないやつ」
51 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 15:02:00.74 ID:hIxXWHE0
家出「…っと、結構寝てたみたいだけどまだ時間は大丈夫そうだな」

クロ「…何の時間?」

シロ「ニャー」

家出「朝食の時間だよ。管理人さんはだいたいこの時間に朝食を作ってるから、行けば朝食を食べさせてもらえるんだ」

クロ「集るのか」

家出「いや、ご相伴に預かるのだ」

クロ「つまり、集るのか」

家出「…まあ、そうなんだけど。せめてご馳走になるとか言ってくれない?」

クロ「集り屋」

家出「…すみません」
52 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 15:04:00.98 ID:hIxXWHE0
家出「でも食べるからには覚悟しとけ」

クロ「…覚悟が必要?」

家出「必要だな。地獄を見るくらいとは言わないが、偶然道端で会った女の子を部屋に泊めるくらいの覚悟は必要だ」

クロ「ずいぶん軽い覚悟だな」

家出「そうか?」

クロ「そう聞こえる」

シロ「ニャ」

家出「…結構覚悟は必要なんだけどな」

クロ「飯が食えるならなんでもいい」

家出「…その言葉、後で後悔するぞ」
53 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 15:06:01.66 ID:hIxXWHE0
管理人「どうぞ召し上がって下さい」

家出「……」

クロ「……」

シロ「……」

管理人「どうしました?」

家出「…今朝はなんか、一段と張り切って作ったみたいですね」

管理人「ええ、張り切りました。新しい仲間も増えましたし、昨晩は何もお祝いできませんでしたから」

家出「それでこの料理ですか…」

管理人「はい、そうです」
54 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 15:08:02.77 ID:hIxXWHE0
家出「…塩ラーメンに餃子、豚の角煮に麻婆豆腐、グラタンにスパゲティ、後はちらし寿司に舟盛りですか…」

管理人「ここには出てませんが、食後に杏仁豆腐とチーズケーキもありますよ」

クロ「……」

シロ「…ニャー」

家出「…これ、朝食ですよね?」

管理人「はい、昼食と夕食には他の料理を用意する予定ですよ」

家出「…な、覚悟しとけって言ったろ」

クロ「う、うん…」
55 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 15:10:02.55 ID:hIxXWHE0
家出「さてと…すみません管理人さん」

管理人「何ですか?」

家出「急ぎの仕事があるんで、ラーメンだけ食べてすぐに出掛けます」

管理人「…そうですか、少し残念です。お仕事頑張って下さい」

クロ「わ、私も―」

家出「それから、その子はすごくお腹が空いてるみたいなんでしっかりと食べさせてあげて下さい」

管理人「はい、わかりました」

クロ「そんな…」
56 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 15:12:01.43 ID:hIxXWHE0
家出「はあ…さすがにあの量は無理だ…まあ、クロには悪いけどこれもここに住むための通過儀礼だってことで」

シロ「ニャー」

家出「…何だ、お前はちゃっかり食べるもん食べたら逃げてきたのか」

シロ「ニャ」

家出「…調子のいいやつめ。いいのか、独りぼっちなんかにされちまったらクロのやつ、もしかしたら泣いちまうぞ」

シロ「ニャー…」

家出「ほら、こんな所で油売ってないでさっさと戻ってやりな」

シロ「…ニャ」

家出「……いや、まさか言葉が通じてるなんてことは、ないよな…」

シロ「ニャ」
57 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 15:14:11.40 ID:hIxXWHE0
クロ「…うう、裏切り者」

管理人「あら、どうしました?まだまだお代わりはたくさんありますよ」

クロ「いや、もうお腹いっぱいで…」

管理人「そんな、遠慮なんてしなくてもいいのですよ。お腹が空いている時に何も食べられないのは悲しいことです」

クロ「だからもう…」

管理人「ですから、気にせずどんどんと召し上がって下さい」

クロ「……」

管理人「どうしました?」

クロ「…胃腸薬を下さい」

管理人「ふふ、ご冗談を」

クロ「いや、マジで…」
58 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 15:16:02.58 ID:hIxXWHE0
クロ「ああ、もうだめ…」

シロ「ニャー」

クロ「…あ、裏切り者のシロだ」

シロ「ニャー…」

クロ「冗談だよ」

シロ「ニャ」

クロ「…でも、また勝手にどこか行ったりなんかしないでよ」

シロ「ニャー」

クロ「…約束だからね」

シロ「ニャ」
59 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 15:18:01.55 ID:hIxXWHE0
家出「…よ、よう」

クロ「……」

家出「さっき君を置いてったのはその、悪かった…ごめん謝るよ」

クロ「……」

家出「君が早くここに馴染めるようにと思ったんだけど、これは少し悪巫山戯がすぎたみたいだ」

クロ「……」

家出「本当に、申し訳ない」

クロ「……」

家出「……クロ?」

クロ「…すぅ…」
60 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 15:20:01.43 ID:hIxXWHE0
家出「…何だ、寝てたのか」

シロ「ニャ」

家出「はあ…何か謝り損だったな」

クロ「すぅ…」

家出「…それにしても、こんなに近くで騒がしくしてるってのにまだ熟睡してるとはな。やっぱり昨日はあまりよく眠れなかったのか」

シロ「ニャー」

クロ「…すぅ…」

家出「まあ、行き擦りの人間と同じ部屋で熟睡できるような図太い神経をしてるようには見えなかったからな。もう少し寝かせといてやるか」

クロ「……」

家出「でも何も掛けずに昼寝なんかして風邪でも引いたら大変だ、毛布だけでも掛けとくか」
61 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 15:22:28.17 ID:hIxXWHE0
クロ「……」

シロ「ニャー」

クロ「…ああわかった、起きるよ」

シロ「ニャ」

クロ「あんなこと言われて起きれるわけないでしょ…嫌なやつ」

シロ「ニャー」

家出「そうだな、これだけ言われて寝てなかったら、本当は神経が図太いやつだったのかって思われるかもしれないからな」

クロ「そういうこと」

シロ「…ニャー」

クロ「……あれ?」
62 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 15:24:02.36 ID:hIxXWHE0
家出「オハヨー」

クロ「お、おはよう」

シロ「ニャー」

家出「はい、これお土産」

ガサッ
クロ「…これは」

家出「見てわかる通り、衣食住の衣だ。サイズは目測だったから、合ってるかはわからないけど」

クロ「でも…」

家出「衣食住については心配するなって言ったろ。まさか、あんなコスプレ服をずっと着続けるつもりだったのか?」

クロ「…それは嫌」
63 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 15:26:00.75 ID:hIxXWHE0
家出「袋から出してみな」

クロ「うん…」

バサッ
クロ「黒いワンピース…」

家出「それだけじゃないけど、服は黒がいいって言ってたから、それに合わせて色々と買ってきたんだ」

クロ「…ありがとう」

家出「どう致しまして」

クロ「……」

家出「どうした?」

クロ「…下着まで黒」

家出「ああ、何か黒って女を美しくするらしいよ?」

クロ「死に晒せ」
64 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 15:28:16.81 ID:hIxXWHE0
家出「それはともかく、どうだった?」

クロ「どうって、何が」

シロ「ニャー」

家出「だからここでの生活のことだよ。馴染めそうかい?」

クロ「…まだ1日目だし他の部屋の人にも会ってないからわからない。でも―」

家出「でも?」

クロ「ここなら私の家だと認められる」

家出「…それはよかった」

クロ「拾ってくれてありがとう」

家出「どう致しまして」
65 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 15:30:01.49 ID:hIxXWHE0
家出「それじゃ、行ってきます」

クロ「…行ってらっしゃい」

シロ「ニャー」

バタン
クロ「はあ…行っちゃったよ」
クロ「…さて、ここに住み始めて数週間になるけど…困った」

シロ「ニャ」

クロ「…これじゃあまるで、ただのヒモかニートみたいじゃない」
66 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 15:36:01.20 ID:hIxXWHE0
クロ「まあそれで困るってわけじゃないけど、やっぱり罪悪感が湧くよね…」

シロ「ニャー…」

クロ「あいつに家賃は一切払わず、それでいてこういう展開でありがちなご奉仕タイムも全然ないし」

シロ「ニャー」

クロ「それにあいつと一緒にいる時も、ただゴロゴロとしているだけだし」

シロ「ニャー」

クロ「だけど、かといってあいつと私はその…恋人同士って感じでもないし…」

シロ「……」

クロ「…これってまさにペット生活?」
67 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 15:38:02.04 ID:hIxXWHE0
クロ「まさか…あいつにとって私は、ただの愛玩動物だったのか!」

シロ「ニャー!」

クロ「…何て叫んではみたけど、あいつってそんなキャラじゃないよな」

シロ「ニャー」

クロ「…何て言うかそういう外道な野郎って感じじゃなくて、むしろその正反対で保育園の先生って感じだし」

シロ「ニャ」

クロ「せんせぇ、もぉおひるねのじかんなの?……って、私は園児か!」

シロ「……」

クロ「はあ…誰も突っ込んでくれない」
68 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 15:40:01.54 ID:hIxXWHE0
管理人「…一人ボケ、一人ノリ突っ込みは見ていて痛々しいだけですよ」

クロ「!」

シロ「ニャ!」

管理人「おはようございます」

クロ「お、おはようございます」
クロ「……それであの…聞こえてましたか、さっきの?」

管理人「さっきの?…いえ、私は朝食の後片付けでいつも通り忙しくてあなたの恥ずかしい独白も途中からしか聞いてませんよ」

クロ「そうですか…」

管理人「はい『はあ…行っちゃったよ』からしか聞いていませんでした」

クロ「だから、そこの話を聞いて欲しくなかったんですよ!」
69 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 15:42:03.62 ID:hIxXWHE0
管理人「あら、そうだったのですか?…まあ、私には関係ないですけど」

クロ「…それで、何しに来たんですか」

管理人「そうでした、ニー…クロさん」

クロ「…ニートと言おうとしたな」

管理人「いえまさか、私はただユニクロと言おうとしただけですよ。被害妄想はやめて下さいませんか、ニートさん」

クロ「自分の間違いを認めないどころか人のせいにしたよ…しかも、今度は言い直してすらいないし!」

管理人「あ、すみません間違えました。ええと、それでクロートさん」

クロ「それ微妙に混ざってる。私の名前はクロートでも、玄人でもないから!」

管理人「なら、素人さん?」

クロ「クロです!」
70 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 15:44:02.18 ID:hIxXWHE0
管理人「つまりそれなのですよ」

クロ「それって…何を唐突に」

管理人「いえ、唐突ではありませんよ…ですから、どうして普段からその口調で話さないのです?」

クロ「?話してるじゃないですか」

管理人「ですからあの人と」

クロ「……」

シロ「ニャー」

管理人「何故です?」
71 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 15:46:03.16 ID:hIxXWHE0
クロ「…関係ないでしょ」

管理人「はい、ありません」

クロ「なら―」

管理人「…関係はありませんけど、興味は十分あります」

クロ「興味本位ですか?」

管理人「興味津々、津々浦々です」

クロ「……」

シロ「ニャー」
72 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 15:48:10.35 ID:hIxXWHE0
管理人「…ツンデレ、というのは当人にデレるものなんじゃないですか?」

クロ「!」

管理人「ああ、ツンデレとも違いますね…クーデレって感じですか?」

クロ「誰がっ―」

管理人「…まあ、どちらにしてもデレる相手が違ってますかね」

クロ「デレるかっ!」

管理人「素直じゃないですね…」

シロ「ニャー…」
73 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 15:50:02.98 ID:hIxXWHE0
クロ「そ、そんなじゃ…」

管理人「……」

シロ「……」

クロ「あいつとは、その…」

管理人「その?」

クロ「別にす、好きとかいうんじゃ…」

管理人「好きか何て、一言も言ってませんよ」

クロ「!」

管理人「…これは見事なツンデレトークですね、シロさん」

シロ「ニャ」
74 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 15:52:01.77 ID:hIxXWHE0
管理人「はて?周りにはツンデレってるのに当人にはクール…これって何と呼ぶのですかね?」

クロ「…知るか」

管理人「そもそもツンデレもクーデレも言ってはみましたけど、何のことなのかさっぱりなのですよ」

クロ「知らなかったのかよ!」

管理人「ツンデレってシベリアあたりにある絶対凍土のことでしたっけ?」

クロ「それはツンドラだ」

管理人「そうなのですか?」

家出「そうらしいですよ」

シロ「ニャー」
75 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 15:54:04.40 ID:hIxXWHE0
クロ「!」

管理人「あら、いつ帰ってきました?」

家出「ついさっきですよ。今日はATMからお金を下ろしてくるだけでしたし…って、そう言ってませんでしたっけ?」

管理人「言ってましたか?」

シロ「ニャー」

クロ「…き、聞いてない」

家出「そうだったかな…ごめん」

クロ「……」
76 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 15:56:03.46 ID:hIxXWHE0
家出「クロ?」

クロ「……」

家出「…あれ、もしかして怒ってる?」

管理人「いえ、クロさんは怒っているわけではありませんよ。ね、シロさん?」

シロ「ニャ」

家出「そうですか?ならいいですけど……いつからシロと仲良くなったんです?」

管理人「勿論、はじめからですよ。このアパートにいる生き物たちはみんな私のペットなんです」

家出「…餌付け、されてますからね」
77 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 15:58:01.93 ID:hIxXWHE0
管理人「はい、当然あなたもですけど」

家出「…マジですか」

管理人「二割冗談です」

家出「本気が八割!」

管理人「いえ、冗談二割に嘘三割。本気は二割しかありませんよ」

家出「…残りの三割は何ですか」

管理人「乙女の秘密?」

家出「…さいですか」

シロ「ニャー」
78 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 16:00:04.04 ID:hIxXWHE0
管理人「では、お昼はどうします?」

家出「うーんと、そうですね…せっかく手元にまとまったお金がありますから、外にでも食べに行こうかと…」

管理人「そうですか、残念です…今日は久しぶりにみんなでお昼をいただけると思いましたのに」

クイッ
家出「…クロ?」

クロ「…作る」

家出「作るって…何を?」

クロ「…私が昼食作る」

家出「…はい?」

シロ「…ニャ」
79 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 16:02:09.74 ID:hIxXWHE0
管理人「楽しみですね」

家出「あの箱入娘が料理…あの、すごく心配なんですけど…大丈夫ですかね」

シロ「ニャー…」

ガランガランッ!
クロ『ギャー!』

管理人「ええ、大丈夫ですよ」

家出「…今の騒音を聞いた上でどうして大丈夫だと答えられるんですか」

管理人「まあ、これでも女の子ですから…恋する乙女の気持ちはわかるのです。あなたにはわかりませんか?」

家出「さっぱり…恋する乙女の気持ちは全く理解できませんよ」

管理人「あら、そうですか?」
80 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 16:04:06.95 ID:hIxXWHE0
管理人「でも、彼女が誰に恋しているのかはわかりますよね?」

家出「…さあ、どうでしょ」

管理人「それとも理解できませんか?」

家出「ああ…理解、できないね」

管理人「あら、本当に?あれほどフラグを立てておいて、理解できませんか」

家出「…旗を立てるのは砂浜で十分だ。そんなの、立てた端から折ってるよ」

管理人「えげつないですね」

シロ「ニャー」
81 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 16:06:02.22 ID:hIxXWHE0
家出「それなら、あんたの方がよっぽどえげつないんじゃないか?」

管理人「何のことです?」

家出「弄るだけ弄って、あのお嬢さんの勘違いを正してあげてないじゃないか」

管理人「それはあなたの仕事です」

家出「だけど…これだけ一緒に暮らしてれば、わからない方が難しいと思うぞ」

管理人「盲目な彼女ですから」

シロ「ニャ」

家出「恋は盲目?…まさか、実際に目が見えないってんじゃないんだから」
82 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 16:08:01.95 ID:hIxXWHE0
管理人「それもそうですね…なら、一緒にお風呂にでも入ってあげたらいいじゃないですか?すぐに解決しますよ」

家出「風呂か…あの年頃は複雑だから、絶対に嫌がるよ」

管理人「年頃の娘を持った父親って感じですね、その言い回しは」

家出「…父親はやだな」

管理人「けど、それなら千年の恋も一瞬で冷ませそうですよ」

家出「…でも、その後が大変そうだからその手は止めとくよ」

管理人「そこは躊躇うのですね」

家出「それは、一応ね…」
83 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 16:10:03.96 ID:hIxXWHE0
クロ「…お待たせ」

家出「はあ、やっとできたか…」

管理人「お疲れさま」

シロ「ニャー」

家出「…で、これは何だ?」

クロ「…シチュー」

家出「ジャイアン作の、か?」

クロ「大福は入れてない」

家出「スマン、冗談だ」
84 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 16:12:02.76 ID:hIxXWHE0
家出「冗談だけどこれって…シチュー、なのか?何だかやけに水っぽいような気がするんだけど…」

シロ「…ニャー」

クロ「…シチューっぽい物」

家出「…っぽいって何だよ。それっぽいだけじゃ、シチューとは言えないぞ」

管理人「…ええ、そうですね。ですが、食べられないわけではないようですよ」

家出「…食べたんですか」

管理人「確かにシチューっぽい食べ物という感じ、名前を付けるならそうですね…野菜のミルク煮込みですか」

家出「…なるほど、ミルク煮込みか」
85 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 16:14:12.33 ID:hIxXWHE0
ズッ…
家出「ミルク煮込み…そう考えるなら。まあ、中々美味いんじゃないかな」

シロ「ニャ」

クロ「…そう」

家出「でも、これだけっていうのは少し物足りない感じがするな…」

クロ「なら、もう一品―」

家出「そうだな…もう一品、何か主食になるようなやつを作ってやるよ」

クロ「…えっ」

管理人「そうですね。お願いします」

シロ「ニャー」

家出「あいよ、任せな」
86 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 16:16:03.89 ID:hIxXWHE0
家出「おっ待たせー!」

クロ「…全然待たなかった」

家出「ん、何か言った?」

クロ「別に」

シロ「ニャ」

家出「ならいいけど…はい、お待ち遠様。空豆とソーセージのピラフ、それと片手間に作った空豆の揚げ餃子ですよ」

管理人「美味しそうですね」

家出「いやいや、さすがにあんたの料理には負けるよ」

管理人「そんな、ご謙遜を」

クロ「……」
87 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 16:18:03.85 ID:hIxXWHE0
クロ「…美味しい」

家出「ありがと。君がそう言ってくれると、久し振りに誰かに作ってやった甲斐があるよ」

シロ「ニャー」

家出「おお、シロもか…でもクロたちに作ったのとは違うからなあ」

管理人「美味しくできてますよ」

家出「なんか、あんたにそう言われると嫌みに聞こえる」

管理人「言葉に他意はありませんよ」

家出「…でもその悪意のなさそうな顔に毎度騙されるんだよな」

管理人「ふふふ…」
88 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 16:20:01.30 ID:hIxXWHE0
管理人「本当にいいのですか?」

家出「たまには休んでな…じゃなくて、休んでいて下さい」

管理人「では、お願いします。それと…ふふ、別にいいですよ。いまさら無理に口調を戻さなくても」

家出「はて…何のことでしょう?じゃあ後片付けはやっておくから、クロは先に部屋に戻っててくれ」

クロ「わかった」

シロ「ニャー」
89 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 16:22:03.13 ID:hIxXWHE0
バタンッ
クロ「…料理も上手いなんて反則だ」

シロ「ニャー」

クロ「…この部屋だってそうだ。いつも綺麗に片付いてて、私が掃除する余地なんてないじゃない」

シロ「…ニャー」

クロ「あいつの家事の手伝いすらまともにできないなんて…これじゃあ、まるでただの飼い猫じゃない」

シロ「……」

クロ「私なんて…」
90 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 16:24:04.68 ID:hIxXWHE0
バタンッ
家出「ただい…ま―」

クロ「お帰りなさい」

家出「何、やってんの?」

クロ「ご飯にする?お風呂にする?それとも…た・わ・し?」

家出「いや、パジェロで」

クロ「間違えた…」

シロ「ニャー」

家出「……って、そうじゃなくて。またそんな、メイド服でお出迎えだなんて…漫画とかアニメの影響か?」

クロ「…ご奉仕タイム」
91 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 16:26:03.54 ID:hIxXWHE0
家出「何だよご奉仕タイムって、そりゃどこの番組―…」

クロ「……」

家出「……ん、ああ。そういうことか…」

クロ「…覚悟はできてる」

家出「そんな覚悟は必要ない」

クロ「でも…」

家出「はあ、全く…何考えてんだよ。君がそんなことする必要なんてないだろ」

クロ「…だったら」
クロ「だったら、私は何のためにいる!あんたが家事も仕事も全部完璧にできるなら!…私なんかが、ここにいる必要はないじゃない…」
92 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 16:28:01.06 ID:hIxXWHE0
クロ「…それともあんたは、私をここで飼うペットとして拾ってきたの…?」

家出「……」

クロ「この部屋で一緒に住む家族なんだって…そう言ってくれたじゃない…」

シロ「ニャー…」

家出「ああ、言ったな…」

クロ「じゃあ何で…やっぱりその言葉は雰囲気に流されて言った嘘だったの?」

家出「雰囲気に流されて言ったわけじゃない…でも、情には流されたかな…」

クロ「なら、嘘だったんだ…」

家出「嘘じゃない」

クロ「嘘だよっ!」
93 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 16:30:05.33 ID:hIxXWHE0
クロ「…ならどうして、私に何も言ってくれないの」

家出「何もって、何を―」

クロ「どうして私のこと…す、好きだって言ってくれないのさ!」

家出「……はい?」

クロ「…私みたいな家に帰れない子どもが、もし知らない誰かに拾われることになったら、その後どんなことになるのか考えたことがないわけじゃない」

家出「……」

クロ「何をされるかとか、何がどうなるなんて…そんな怖いことは考えないようにしてたけど…やっぱり酷いことになるって思ってた」

家出「……そんな、大げさな…」

クロ「大げさなんかじゃない……あの日、あんたに拾われるって時だって同じだった…口ではそう優しいことを言ってても、やっぱり最後は酷いことになるんだろうって思っていたんだ」

シロ「ニャー…」

クロ「…最低だよね」
94 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 16:32:05.47 ID:hIxXWHE0
クロ「でも、あんたは違った…あんたはとても優しかった。それでも、いつ本性を表すかと怖かったんだけど…全然そんなことはなかった」

家出「……」

クロ「あんたはずっと優しかった」

家出「…優しくなんか、なかったよ…」

クロ「ううん、すごく優しかった…それが残酷に思えるくらいに」

家出「……」

クロ「そうやって、私に優しくするから勘違いなんてしてしまうんだよ…なのに私がどんなに誘っても、あんたはさらりとそれを躱してしまって…」

クロ「私の話を聞いてくれない」

家出「……」
95 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 16:34:02.55 ID:hIxXWHE0
家出「それで、なのかい?」

クロ「……」

家出「薄々わかってはいたけど、今日のことだけじゃない…何かにつけて誘ってきたのは全部そういうことだったのか」

クロ「…そう」

家出「……」

クロ「……」

シロ「…ニャー」

家出「……好きだよ」
96 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 16:36:04.68 ID:hIxXWHE0
クロ「…え」

家出「でも、ごめん…こうして言ってはみたけど、これがどんな意味合いの好きなのか、実はよくわからないんだ」

シロ「ニャー」

クロ「それって…」

家出「娘に対する好きなのか、それとも恋人に対する好きなのか…はたまた別の好きなのかもしれない。でも…」

クロ「でも?」

家出「君は大切な家族で、とても愛してるよ」
97 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 16:38:04.79 ID:hIxXWHE0
クロ「あ、愛して…」

家出「おっと、抱き付くのは待った」

クロ「そんな…」

家出「おい、泣くなよ……さて、これで満足ですか?そこの出歯ガメさん」

シロ「ニャー」

クロ「で、出歯?」

管理人「出歯ガメとは失礼ですね。そこはしっかり覗き見と言って下さい」

クロ「管理人さん!?」
98 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 16:40:03.86 ID:hIxXWHE0
クロ「い、いつ…」

家出「いつから見てたんです?」

管理人「そんないつからだなんて…勿論最初からですよ」

クロ「最初から!?」

管理人「あのクロさんが深刻そうな顔で服を借りに来たのですよ?その時点で、何か面白いことがあると思いますよ」

クロ「……」

家出「嵌められたな」

シロ「ニャ」
99 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 16:42:02.02 ID:hIxXWHE0
家出「…さてと、丁度いいし今のうちにお願いしとこうかな…管理人さん」

管理人「何ですか?」

家出「クロに料理の作り方を教えてあげてください」

クロ「はい?」

管理人「はあ…それは構いませんけど、ご自分で教えにならないのですか?」

家出「そんな、自分で教えたら楽しみがなくなってしまうじゃないですか」

クロ「楽しみ?」

家出「だから花嫁修行だよ。ほら、それで密かに上達した美味しい手料理を振る舞ってもらえるって楽しみがあるだろ」

管理人「ああ、なるほどそうでしたか…では、どうしますか?」

クロ「…よろしくお願いします」
100 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 16:44:05.39 ID:hIxXWHE0
家出「箱入娘の花嫁修業か…大変だな」

管理人「そうですね…では、クロさんの告白を記念しまして、今晩の食事は豪勢にしま―」

家出「!そ、そうですね。じゃあ今晩は豪勢に外へ食べに行きましょうかね!」

管理人「わざわざ外へ行かなくても―」

クロ「さ、賛成!外へ食べに行こう!」

管理人「えー…そんな。シロさんは?」

シロ「ニャー…」

管理人「そうですか…」
101 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 16:46:02.55 ID:hIxXWHE0
クロ「では行きましょう!」

シロ「ニャ」

家出「はいはい…」

管理人「…よかったですね。クロさん、やっと子どもらしい顔になりましたよ」

家出「今まで無理し過ぎだったんだよ。下手にお嬢様然としようとしてるのが見え見えだし、子どもはやっぱり方を張らずに無邪気で元気じゃないとね」

管理人「私もそう思います」

家出「…でも、この後が大変そうだ」

管理人「ふふ、私もそう思います」

家出「これじゃあ、お風呂でばったりの方がまだよかった気がする…」

管理人「それは自業自得ですよ」
102 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 16:48:07.46 ID:hIxXWHE0
管理人「ふと、思ったのですが…私たちは周りからどういう風に見られているのでしょうか?」

家出「そりゃ…たぶん家族とか?」

管理人「では、私が母でクロさんが娘…という感じですかね、お父さん?」

家出「まあ、この三人の配役的には当然そうなるでしょうけど…」

クロ「…母の役は私だ!」

家出「うわっ、どこから聞きつけた」

管理人「ふふ、そうですね。それでは、私の役はどうしましょうか?」

クロ「管理人さんは、私のお姉さん」
103 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 16:50:02.41 ID:hIxXWHE0
家出「お姉さん?それはちょっと無理が…あ痛いっ!」

管理人「会いたい?はて、誰にですか…ありがとうございます、クロさん」

クロ「…でも、今のところは料理の先生だから、管理人さんは私の師匠だね」

管理人「あら残念」

家出「…お姉さんよりはしっくりくるな」

シロ「ニャ」

管理人「何ですか?」

家出「いいえ、何も」
104 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 16:52:04.93 ID:hIxXWHE0
クロ「…あれ?」

シロ「…ニャー」

管理人「あまり、美味しくありませんでしたね」

クロ「そんな、でもやっぱり…美味しいは美味しいんだけど…?」

家出「はあ…やっぱりね。舌が結構肥えちゃってるから、これくらいで満足できなくなっちゃったんだよ」

クロ「あんたは?」

家出「適度に外でも食べようにしてるよ…やっぱり日本人たるもの、ジャンクフードを美味しく食べられるようじゃないと」

クロ「…それはそれで変じゃない?」
105 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/01(木) 16:54:05.20 ID:hIxXWHE0
管理人「…さて」

家出「さて?」

管理人「…あなたはどうするのですか?お嬢様は一歩先に踏み出しましたよ」

家出「本当、いつの間にか先に行かれてましたね…となると、こっちもいつまでも目を背けてるわけにいきませんよね」

管理人「はい」

シロ「……」

家出「…シロ、この生活が好きか?」

シロ「ニャ」

家出「おお、そうか…でもこの生活も、そろそろ終いになるかな…」


…さて、残りどうしようか
106 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/01(木) 18:12:59.87 ID:nkLBprQo
面白いじゃないか 
107 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/02(金) 00:38:21.05 ID:Hqoyk/Uo
話しの流れが強引すぎやしないかい?
あと人物設定(おおよその年齢など)がいまいち分からない気もする
108 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/02(金) 01:19:45.45 ID:NGrSa8oo
そんなことより続きをくれ
109 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:00:03.70 ID:dbUpHyI0
>>107 家出は20代後半、クロは10代前半、管理人さんは若いけど年齢不詳ってことで。
…あまり詳しく書くとネタばれっぽくなってしまうので、スミマセン

続き書き始めます


■■「…こちら■■、定期報告をお願いします」

■■■「はいこちら■■■、…今回の報告はお嬢様に変化ありです」

■■「変化?」

■■■「色恋沙汰です」

■■「…そうですか。相手の男の特徴を詳しく教えて下さい…排除します」

■■■「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。どうやら一方通行みたいですから」

■■「でも、邪魔な虫…いえ、危険因子は排除しておいた方が…」

■■■「危険因子はあなたの方ですよ」
110 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:02:02.85 ID:dbUpHyI0
■■■「ふふ、それにしましても…恋する乙女とは面白いものですね」

■■「悪趣味です」

■■■「ここまでベタな展開ですと、後のパターンがある程度決まってますし、結末まで安心して見れますよ」

■■「出歯ガメ」

■■■「覗き見と言って下さい」

■■「それはただの変態です」

■■■「紳士という名の変態というやつですね」

■■「それは逆では…」
111 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:04:04.18 ID:dbUpHyI0
■■■「では、変態という名の変人で」

■■「悪化してる」

■■■「管理者という名の覗き?」

■■「まあ、それが正解かな…」

■■■「でしたらあなたは、保護者という名のストーカーですね」

■■「しばきますよ」

■■■「SMプレイ?」

■■「排除します」
112 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:06:03.17 ID:dbUpHyI0
■■「他に報告はないですか」

■■■「他にですか…」

■■「まあ、ないなら―」

■■■「ああ、そうでした。つい最近、お嬢様と三人で外食に行きましたよ」

■■「外食?」

■■■「わかってはいましたけど、外の食事はやっぱり美味しくないです」

■■「どうしてわざわざ外なんかに―」

■■■「はい、どうやら告白のお祝いだそうです」
113 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:08:03.60 ID:dbUpHyI0
■■「こ、告白だって!」

■■■「本当は私がご馳走したかったのですが、お嬢様が外で食べたいと―」

■■「そんなことはどうでもいい!」

■■■「…そんなこととは失礼ですね。もう切りますよ」

■■「おいっ、切るな!ことの詳細を―…ったく、何だよ。この大変な時に」

■■■「では、切りますね」

■■「だから少し待って!…で、どうした―……何だって、それは本当か!」

■■■「…どうしたのですか、大きな声なんか出して」

■■「……亡くなったそうです」
114 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:10:04.24 ID:dbUpHyI0
■■■「…亡くなったって、誰が―」

■■「旦那様ですよ」

■■■「あら…」

■■「今さっき病院から連絡があった…どうも急に容態が悪化して、そのまま…だそうです」

■■■「…困りましたね」

■■「どうします…早くお嬢様に戻ってきていただかないと大変なことに」

■■■「…この件について、お嬢様には私から伝えます。ですが、その後の判断はお嬢様に任せます…あなたはまだ行動を起こさず待機していて下さい」

■■「…まだ、待っていろと?」
115 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:12:04.86 ID:dbUpHyI0
■■■「そうです」

■■「…旦那様の一人娘が失踪中ということも隠してるのに、これ以上の隠蔽は無理です。このままだと、明日にも情報が漏れますよ!」

■■■「…これが最後です」

■■「しかし、何回最後だと―」

■■■「逃しません…今回こそ、お嬢様にご決断させます」

■■「……」

■■■「時間切れですよ…お嬢様の遊びの時間はもう、終わりです」

■■「…了解」
116 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:14:02.99 ID:dbUpHyI0
クロ「おーい、家出ぇ。そろそろ時間じゃない?」

家出「ああ、そろそろ時間か…ちょっと待て、今着替えてるところだから」

クロ「…まったく、着替えに何分も時間掛けすぎなんじゃないの」

家出「仕事の着替えってのは時間が掛かるものなんだよ」

クロ「そういうものかな…いちいち隣の部屋に着替えに行ったりして、面倒じゃない?」

家出「面倒だけど、そういうものなの」

シロ「ニャー」

クロ「ふーん、そうなんだ…まあ、遅れないようにね。先に朝食もらいに行ってるよ」

家出「ああ、先に行ってな」
117 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:16:03.06 ID:dbUpHyI0
家出「はあ…」

管理人「どうしたのですか、朝からため息なんて」

家出「いやあ…クロも変わったなと思いまして」

管理人「そうですか?…そうですね、あなたの前でもちゃんと素直になるようになりましたね」

家出「はあ…でもなんていうのか、いい方向に向かってるとは思うんですけど。あれから性格変わりすぎなんじゃないですか…」

管理人「クロさんは元からあんな感じでしたよ?」

シロ「ニャー」

クロ「んー、何か言ったぁ?」

家出「はあ…何でもないよ」
118 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:18:04.25 ID:dbUpHyI0
クロ「?どうしたのさ、ため息なんか吐いて。そんなんじゃ、幸せが逃げてくよ」

家出「…そろそろピンチかなって感じ」

クロ「ピンチ?…あ、もしかしてお金がないとか?」

家出「いや、お金は十分ある。そうじゃなくて、こっちの話」

クロ「?別にいいけどね、言わなくっても…あーあ、何か面白い番組やってないかなぁ」

テレビ『―では、本日のヘッドラインニュースの時間です…』

クロ「ニュース番組は別にいいかな」

家出「待て待て。新聞取ってないんだから、ニュースくらいはちゃんと見とけ。じゃないと、知らない間に時代の波においてかれるぞ」

クロ「えー」

管理人「ふふ、言うことがお父さんみたいですね」

家出「黙れ母さん」
119 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:20:03.25 ID:dbUpHyI0
テレビ『―日本有数の資産家の一人であった××氏が入院先の病院で亡くなっていたことが、本日行われた緊急記者会見で明らかになりました…』

クロ「××氏って、あの××会社の社長のことだっけ。まだそんな亡くなるような歳って感じじゃなかったけど、そんなに重い病気だったんだ」

家出「…よく知ってたな」

クロ「伊達に部屋に引きこもってないよ。ニュースだって最近のやつはほとんど知ってるし」

テレビ『―また、その行方がわからなくなっている××氏の一人娘…―』

家出「……さてと、もう出掛けるかな」

クロ「あー、なんで消しちゃうの。さっきの内容ちょっと気になったのに…えっと誰だっけ、その行方不明って」

家出「テレビにばっか噛り付いてないで、子どもはもっと外で遊びなさい」

クロ「…さっきと言ってることが違くない?」

シロ「ニャー」
120 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:22:03.70 ID:dbUpHyI0
クロ「それに、外で遊べって言っても。危ないから一人で外に出ないようにって言ったの、家出じゃない」

家出「…そう言えばそうだったな」

クロ「だったら大人しく部屋に引きこもってテレビを見るくらいしかすることないじゃない」

家出「花嫁修業はどうした。料理とか家事のことを色々管理人さんに教わるんじゃなかったのか」

クロ「それだって四六時中教わっているわけじゃないよ。なんか他にも仕事があるみたいでそれは私に手伝わせてくれないし」

管理人「それは乙女の秘密の時間なんです」

家出「…なら仕方ないか」

シロ「ニャー」
121 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:24:03.71 ID:dbUpHyI0
家出「…わかった、外に出掛けてもいい」

クロ「ホンとに!」

家出「ああ、ただし条件付きだ」

クロ「…家出は条件をつけるのが好きだなぁ」

家出「好きだから付けてるわけじゃない…条件は三つだ」

クロ「今回はひとつだけじゃないのか」

家出「一つ、知らない人について行かないこと。二つ、シロを一緒に連れて行くこと。三つ、このアパートの見える範囲から出ないこと…以上だ」

クロ「…色々と納得いかないことがあるけど。家出だし、仕方ないか」

シロ「ニャー…」

家出「何だその妥協の仕方は」
122 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:26:03.33 ID:dbUpHyI0
クロ「でも、それだと外に出掛けるって言っても散歩にしかならないじゃん」

家出「散歩で十分。女の子が一人だけで知らないところに行ったりしたら危ないだろ」

クロ「…こういうときは女の子扱いするくせに」

管理人「お父さんは過保護ですね、シロ」

シロ「ニャー」

家出「…何か言いました?」

管理人「いいえ」

シロ「ニャ」
123 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:28:03.58 ID:dbUpHyI0
クロ「それじゃあ、行ってきまーす」

シロ「ニャー」

家出「行ってらっしゃい……大丈夫かな」

管理人「やっぱり過保護ですね」

家出「最近世の中も物騒になってきてるし、心配して過ぎることはないと思うけど…過保護ですかね、これって」

管理人「それでもよろしいのじゃありませんか…それに私も先ほどから過保護と言っておりますけど、あのお嬢様のことは少し心配です」

家出「世間知らずなところがあるからな…まさに箱入娘という感じで」

管理人「ふふ、笑える冗談ですね」

家出「…本当のことだから笑えないよ」
124 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:30:03.44 ID:dbUpHyI0
クロ「へぇー…」

シロ「ニャー…」

クロ「…散歩くらいにしかならないって言ったけど、結構広いんだねこの辺りって」

シロ「ニャー」

クロ「横道や脇道もたくさんあるし、入り組んでて中々楽しそうじゃん」

シロ「ニャ」

クロ「…迷わないかな」

シロ「ニャー…」
125 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:32:04.51 ID:dbUpHyI0
管理人「確か道端の段ボールの中に入ってらしたのですよね、クロさんは」

家出「それもあるけど、少し気になることがあって…」

管理人「と言いますと、どうかしたのですか?」

家出「…いやな、あのお嬢さんが着ていた服なんだけどさ。だいぶ汚れてはいたけど、かなり上等なものだったんだ…多分ここら辺の店じゃ扱ってないよ」

管理人「それは特注品、ということですか」

家出「断定はできないけど、多分そうだと思う。それに、料理を食べる時もあの歳にしてはしっかりとテーブルマナーを守っていた…これはどういうことだと思う?」

管理人「…それなりのマナー指導を受けていたということですか」

家出「そういうこと…ということは、彼女は本当のお嬢様なのかも知れない」
126 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:34:03.37 ID:dbUpHyI0
管理人「ですが、私は彼女が嘘を吐いているとは思えませんけど…」

家出「確かに…出会った時の会話も、嘘で言えるようなんじゃなかったしな…」

クロ『―そんな立派なものがあるわけないじゃない!…それどころか、自分の両親が誰なのかも知らないわよ』

家出「彼女は本当に自分が誰なのか知らないのか…」

管理人「もしくは、忘れているのか…ですね」

家出「…調べてみるか、あの箱入娘のことを」

管理人「そうですね。ですが…ほどほどにしてくださいね」

家出「わかってるよ。ほどほどに、ね」
127 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:36:03.47 ID:dbUpHyI0
クロ「てなわけで…」

シロ「ニャー」

クロ「見事に迷ったわけなんですね、これが…ははは」

シロ「ニャー…」

クロ「笑えないっつーの!」

シロ「……」

クロ「ここはどこなの、私は誰?…私はクロで、ここはどこ!?」

シロ「ニャー…」

クロ「迷子になったら道を訊く。だけどここには誰もいなーい!…どうすればいいの、この状況」
128 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:38:02.93 ID:dbUpHyI0
クロ「にゃー」

シロ「ニャー」

ネコ「ニャ」

クロ「にゃー…って、猫に訊いてもわかるわけないでしょ!」

ネコ「ニャー、ニャニャー…」

シロ「ニャー」

クロ「どうしたの、シロ…えっ、まさかついて来いって?」

シロ「ニャ」

クロ「さすがシロ、やっぱりいざというとき役に立つね!」

ネコ「…ニャ」
129 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:40:03.85 ID:dbUpHyI0
シロ「ニャ」

クロ「…やっと見覚えのあるところに出た」

主婦A「―…さんのところ…なんですってぇ…」

主婦B「―…まあ、そうなの…」

クロ「おばさんたちの井戸端会議だ…へぇ、ホンとにあるんだ」

主婦B「それで聞きました、最近よく出るっていう不審者のこと」

主婦A「えぇ、葬式でもないのに真っ黒なスーツ着てるんでしょ。怪しいったらないわよねぇ」

主婦B「特に何をするってわけでもないらしいけど、怖いわよねえ」
130 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:42:04.47 ID:dbUpHyI0
クロ「不審者か…物騒な話だな」

シロ「ニャ」

主婦C「いえ、それが何もしないわけでもないらしいですよ」

クロ「あ、若奥様の登場だ」

主婦A「あらぁ、何かあったの?」

主婦C「どうもずっと監視してるみたいなんですよ。ほら、例のアパートのことを」

主婦B「例のアパートって…あのアパートのことかしら?」

主婦C「そう、あの大きな古いアパートですよ…怖いですよね。というか、誰か住んでるんですかあそこ」

クロ「うわっ…そこってうちのアパートじゃない!」
131 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:44:04.46 ID:dbUpHyI0
主婦A「一応誰か住んでるらしいわねぇ…でも、なんか怖い噂があるらしいのよぉ」

クロ「ちょっと、そんな話はじめて聞いたよ。もっと詳しく、おばさん」

シロ「ニャー」

主婦C「怖い噂、ですか。それってどんな噂なんです?」

主婦A「それがなんでも、少し昔に若い夫婦が暮らしてたらしいのよぉ。あ、夫婦って言ってもお子さんはまだいなかったみたいでぇ…」

主婦B「ああ、それってあのどこからか駆け落ちして来たっていう夫婦?それならあたしも知ってるわよ」

主婦C「それで、その若夫婦がどうしたんです」

主婦A「しばらく夫婦仲よく暮らしてたみたいなんだけど、旦那が事故に遭って亡くなったらしいのよぉ」
132 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:46:21.72 ID:dbUpHyI0
主婦B「あら…その旦那さんて、あの人のよさそうな顔した好青年のことよね。でも最近会ったわよあたし」

主婦A「それなのよ怖い噂ってぇ…亡くなったのは旦那のはずなのに、その旦那が生きてるのよぉ」

主婦C「それって勘違いとかじゃないんですか?…ほら、本当は奥さんの方が死んだとか」

主婦A「それはないわよぉ…だって、その時救急車を呼んだのがこの私なんだからぁ」

主婦C「…それじゃあBさんの見間違い、とか?」

主婦B「そんな、見間違なんて何回も見てるのにするわけないでしょう。今朝だってあのアパートから出てきたのよ」

主婦C「…それじゃあ、本当にその旦那さんが生き返ったんじゃ…」

主婦A「まさかぁ…所詮ただの噂ですよぉ。本当は旦那が亡くなってなかったってことじゃないかしらぁ?」

主婦C「そうですよねえ…ははは」

主婦B「……」
133 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:48:03.62 ID:dbUpHyI0
主婦A「あらやだ、もうこんな時間。ヘアサロンの予約が入ってるのよぉ…残念だけど失礼するわねぇ」

主婦C「はい、また今度……どうしたんですかBさん、さっきから顔色が悪いみたいですけど」

主婦B「思い出したのよ…」

主婦C「思い出したって、なにをですか?」

主婦B「旦那さんは本当にもう亡くなってるって。だってあたし、彼の葬式に参列したもの…」

主婦C「……」

クロ「……なにそれ、かなり怖いんだけど…」

シロ「…ニャー」
134 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:50:03.36 ID:dbUpHyI0
クロ「そういえば他の部屋の人に会ったことがないなって思ってたけど、他の部屋はほとんど空き部屋になってたのか…」

シロ「ニャー」

クロ「そりゃ他にも安い物件はあるんだし、怪奇スポットのアパートなんかに入居希望者は来ないよね」

シロ「ニャ」

クロ「亡くなった人が甦った?…本当にあるのかな、そんなこと」

シロ「……」

クロ「…って、こうしちゃいられない。早くアパートに戻って真相を聞かないと」

シロ「ニャ」
135 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:52:03.07 ID:dbUpHyI0
クロ「たっ、ただいまっ!」

家出「おお、お帰り…どうしたんだい、そんなに急いで」

管理人「水でも飲みますか?」

クロ「お、おねがい、します…」

シロ「ニャ」

家出「シロもお帰り」

クロ「はぁ…はぁ…」

管理人「はい、肌水」

クロ「どうも、飲…まないよ!」
136 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:54:02.83 ID:dbUpHyI0
ゴクッ…
クロ「……」

管理人「…だが、結局飲むのでした」

クロ「飲んでないって、これは普通の水道水だよ!」

家出「まあまあ、冗談はそれくらいにして…どうしたんだい?」

クロ「あ、そうだ。二人に訊きたいことがあるんだった」

シロ「ニャー」

管理人「私たちにですか?」

家出「へぇ…そりゃまたなんだ?」

クロ「このアパートに住んでたっていう若い夫婦の噂についてなんだけど…」
137 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:56:02.75 ID:dbUpHyI0
管理人「…嫌ですね、このアパートの噂ですか。その噂はいつ知ったのです?」

クロ「ほんのついさっき。おばさんたちがそんな話をしてるのが聞こえたんだよ」

シロ「ニャー」

家出「ほお…で、それってどんな噂なんだ」

クロ「うん、亡くなったはずの旦那さんがまだ生きてるって噂」

家出「それって、ただ亡くなってなかったんじゃないのか?」

クロ「ううん、それはないみたい。話をしてたおばさんの一人が、その人の葬式に参列してたんだって」

管理人「では、どうしてまだ生きていると言われているのです?」

クロ「それが…その旦那さんをたまに見かけるんだって。今朝も見たってそのおばさんが言ってた」
138 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 09:58:12.10 ID:dbUpHyI0
家出「……?ああ、そういうことか」

管理人「どうしたのですか」

クロ「何かわかったの!」

家出「…なに、噂なんてそんな結末だよなってね」

クロ「かっこつけてないで、はやく教えてよ」

シロ「ニャ」

家出「格好付けてるわけじゃないんだけどな…それはただの勘違いと見間違いだよ」

クロ「だからそれは―」

家出「だから、それで当たりだよ。間違いなくね」
139 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:00:09.02 ID:dbUpHyI0
クロ「…なんだよ。せっかく面白い話だと思ったのに、空振りだったのか」

家出「なんだ、その噂の真相が知りたくて急いできたのか」

クロ「そうだよ、悪いか」

シロ「ニャー」

家出「いや、暗くなる前に帰ってきてくれてよかった」

クロ「なんだよそれ…あーあ、それなら不審者の話の方がよっぽど面白かったかな―」

管理人「え、不審者ですか?」

クロ「うん、このアパートのことずっと見てるんだってさ」

管理人「そうですか…」
140 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:02:02.83 ID:dbUpHyI0
クロ「それってヤバそう?」

家出「不審者ってのは変質者よりも性質が悪いからな」

クロ「そうなの?」

家出「そりゃ、不審者はなにやるかわからないからな。変質者だったら変なことやるんだろってわかるだろうけど」

クロ「それってなんか違うんじゃない、色々とさ…」

シロ「ニャー…」

管理人「とにかく、です…これからは安全対策のため、クロさんは一人で外に出掛けたりしないで下さい」

クロ「そんなぁー…」

管理人「外出許可が出た直後に残念だとは思いますけど、身の安全の方が重要です。わかりましたか?」

クロ「…はーい」
141 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:04:03.10 ID:dbUpHyI0
ガチャ…
クロ「…だが、そんなこと言われてじっとしているはずがないのであった」

シロ「……」

クロ「なーに、大丈夫だって。不審者になんてそうそう出会うはずないって」

シロ「ニャー…」

クロ「心配ないって。さあ、行こっ!」

シロ「…ニャ」

クロ「さてと、今日はどこに行こうかな…」

■■「……」
142 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:06:04.73 ID:dbUpHyI0
家出「あのお嬢様が言うことなんか聞くかな…」

家出「……」
家出「やっぱり今日は部屋であいつを見張ってよう」

管理人「お嬢様!」

家出「…あれ、どうかしたんですか管理人さん?」

管理人「あ、すみません。クロさんが部屋にいないものなので…」

家出「やっぱりか…もっと早く戻ってればよかったな」

管理人「どうしましょうか…」

家出「まだそう遠くにはいってないと思いますけど…」
143 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:08:02.99 ID:dbUpHyI0
シロ「…ニャー」

家出「シロ?…どうしてここに」

シロ「ニャー」

管理人「付いて来いと言っているみたいですね」

家出「…クロの所か」

シロ「ニャ」

管理人「…急ぎましょう。何かあってからでは遅いです」

家出「ええ、行きましょう…シロ、案内よろしく」

シロ「ニャ」
144 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:10:06.50 ID:dbUpHyI0
クロ「…何のつもりよ」

■■「……」

クロ「何か答えなさいよ、この不審者!」

■■「……」

クロ「…その胸のバッチ、確か××社の…何か関係あるの?」

■■「……」

クロ「答える気はない、か」

■■「…お嬢様には時間がないんです」
145 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:12:02.77 ID:dbUpHyI0
クロ「…今、何て」

■■「お嬢様には旦那様の後を継いでいただかなくてはならない…」

クロ「お嬢様…」

■■「いつまでも、こんな場所で自分の立場を忘れて遊んでいてもらうわけにはいかない」

クロ「お嬢様って誰?」

■■「…ましてや、また恋愛沙汰になってしまうだなんて。そんなことはあってはならないんですよ」

クロ「だから、お嬢様って誰なのよ!」

■■「…メディアにはもう情報が漏れてしまった。だから、お嬢様の決断を待ってはいられない―」

ガチャ…
クロ「ひっ―」

■■「だから排除します。あなたに××の名はふさわしくない」
146 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:14:04.64 ID:dbUpHyI0
クロ「わ、私が××の名を…?」

■■「知らなくて結構です。あなたは何も知らなくていい」

クロ「私の名前は□□□よ、××の名が付くわけないじゃない!」

■■「…あまり騒がないで下さい。弾の処理が面倒です」

クロ「…っ!どうしてこんなことに…」

■■「…お嬢様があのアパートなんかに住んだことが間違いだったんです」

クロ「……」

■■「いや…あの男と出会ったことが間違いだったんだ。よくもお嬢様をたぶらかして…!」

クロ「…それは違う」
147 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:16:06.54 ID:dbUpHyI0
■■「…何が―」

クロ「あの人はたぶらかしてなんかいない…ただ、勝手に好きになってしまっただけ…」

■■「……」

クロ「…好きになることは間違いなんかじゃない」

■■「…だったら、二人が出会ったことが間違いだったんです」

クロ「出会わなければよかったとは思わない。間違いなんてなかったよ」

■■「……では、そろそろお別れです。最後に何か言うことはないですか?」

クロ「…あの人に、拾ってくれてありがとう。やっぱり、あなたが好きでした…と伝えてください」

ガチャ…
■■「…了解」
148 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:18:03.15 ID:dbUpHyI0
家出「…伝える必要はありません」

クロ「家出っ!」

■■「そんな…どうしてここが―」

シロ「…ニャー!」

管理人「シロさんが連れてきてくれたのです」

■■「……くっ!」

管理人「…さあ、どういうことか説明してもらいましょうか、■■」

家出「……」
149 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:20:02.73 ID:dbUpHyI0
■■「……」

管理人「答えないつもりですか?…なら」

ガチャ…
管理人「お嬢様への危険因子としてあなたを排除しますよ」

クロ「そ、そんな排除だなんて。だめだよ、そんなことしたら!」

管理人「ですが…」

クロ「私はもう大丈夫だからさ、もう許してあげてよ」

家出「クロの言うとおりだな。さあ、今すぐ謝ってくれるなら今回のことはなかったことにしてあげるよ」

■■「えっとその……も、申し訳ありませんでした、お嬢様!」
150 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:22:04.50 ID:dbUpHyI0
クロ「そうそう……って、え?ちょっと、どっち向いて謝ってんの!」

■■「?お嬢様の方ですが…」

クロ「…なんで、私がそのお嬢様なんじゃないの?」

■■「?何を言ってるんです、彼女は」

管理人「ふふ、それは素敵な勘違いですね」

クロ「じゃあ、誰が…?」

家出「……私だ」

クロ「……………………………………………………………え?」

シロ「ニャー…」

家出「だから…私がお嬢様なんだって」

クロ「えええぇええええええええええええええええええええぇ!!!!!!!!」
151 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:24:02.81 ID:dbUpHyI0
家出「さすがに驚きすぎじゃないか?」

クロ「いや、だってほら…あれ?なんで?家出って、男じゃなかったの?」

管理人「確かに男らしいですからね、お嬢様は」

家出「…本当に気づいてなかったんだな、君は」

クロ「女…だったの?」

家出「そりゃ『お嬢様』だからな」

管理人「クロさんが勘違いするのも仕方がありませんよね、こんな格好をしていたら」

クロ「そ、そうだよ。何でそんな格好してるのさ!」

家出「…そりゃ、まあ色々とあってな」
152 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:26:03.17 ID:dbUpHyI0
管理人「お嬢様はあるお方と駆け落ちなさったのです」

クロ「駆け落ち?」

家出「!おいこらっ、なに勝手に語り始めてんだよ!」

管理人「…■■」

■■「…はっ!」

家出「こらっ、てめぇ放せ!私の言うことが聞けないのか!」

管理人「聞きませんよ。あなたはそこでじっとなさっていて下さい」

■■「…すみません」

家出「…くそっ、覚えてろ…」

シロ「ニャー…」
153 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:28:02.98 ID:dbUpHyI0
クロ「それで、駆け落ちって…」

管理人「お嬢様はあるお方と恋に落ち、周囲の反対を押し切って駆け落ちなさいました」

クロ「家出が恋?…男と、ってことだよね」

管理人「はい、意外なことに」

家出「意外とはなんだ、意外とは!」

管理人「意外ですよ?…そしてこのアパートで仲良く二人で暮らしてらしたのです」

クロ「へぇー、そうだったんだ…」

シロ「ニャー」

管理人「籍は入れていなったのですが、事実上はすでに夫婦みたいなものでしたよ」

クロ「そうか、二人とも幸せだったんだね」
154 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:30:03.76 ID:dbUpHyI0
管理人「…ですが、その幸せも長くは続きませんでした」

シロ「ニャー…」

管理人「事故で亡くなったのですよ。そのお方が…」

クロ「そんな…」

家出「……」

クロ「えっ、まさかその話って…」

管理人「ええ、例のアパートの噂になっている話です」

クロ「じゃあ―」

家出『恋人の腕に抱かれて、かな…まあ、それは叶わない望みだけどね』

クロ「あの言葉は冗談じゃなかったんだ…」
155 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:32:03.20 ID:dbUpHyI0
管理人「それからお嬢様は今まで着ていた服を全て捨て、亡き恋人の服を着て生活するようになりました」

クロ「それが噂の…」

管理人「私はお嬢様の行動を監視するため、このアパートの管理人として生活していました。ですが、私もその機会にお嬢様に正体を明かしました」

クロ「…どうして正体を明かしたんですか」

管理人「表向きは心が不安定になっているお嬢様を支えるため、裏向きには早くお屋敷に帰ってきてもらうためです」

シロ「ニャー」

クロ「…逆ですよね、本当は」

管理人「…ふふ、私はそんなに優しい人間じゃありませんよ?」
156 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:34:02.06 ID:dbUpHyI0
家出「…もういいだろ。そろそろ放してくれ」

■■「あっ…申し訳ありません」

クロ「それじゃあ、管理人さんやこの人はいったい―」

管理人「私たちですか?…ただの××家に仕える使用人です」

■■「…私は××家の当主を守る護衛兼、秘書です」

管理人「私は屋敷と家族を守るメイド長兼、料理長兼、教育係兼、指南役兼、監視員兼、視姦員兼…―」

家出「いや、長いから。それにとんでもないもの混ざってるぞ」

管理人「―護衛部隊長を務める突っ込み役です」

クロ「本職は突っ込み役なんですか!」

家出「あんたはボケ役だ」
157 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:36:08.25 ID:dbUpHyI0
管理人「…ではこの機会にご決断していただけますか、お嬢様」

クロ「決断って、何を…」

家出「××の家を継ぐか、どうかだ」

管理人「ですが、それの意味合いも今となっては変わってきますね」

クロ「どういうことですか」

管理人「現当主であった旦那様が亡くなった今、お嬢様が後を継がなければ××家は滅びます」

クロ「だったら、家を継がないと」

管理人「ですがお嬢様が家を継げば、あなたに会うことはもうないでしょう」

クロ「そんな…」
158 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:38:02.74 ID:dbUpHyI0
管理人「あなたに会う前なら、お嬢様もただ意地を張って継がなかっただけなのですが。今は違います」

家出「……」

管理人「家かあなたか、どちらかを選ばなければいけません」

クロ「家出…」

家出「少し、考えさせてくれ…」

■■「お嬢様っ!」

家出「大丈夫、もう逃げない。しっかり決断するよ」

管理人「…わかりました」

■■「そんな、主任!」

管理人「…では考えて下さい、お嬢様。あなたにとって、最良の選択は何なのか」
159 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:40:02.34 ID:dbUpHyI0
家出「■■、車を頼む。■■■…クロをよろしく」

■■「…了解しました」

管理人「かしこまりました」

クロ「待って、家出!」

家出「クロ…、ごめんな」

クロ「家出ぇ…!」

シロ「ニャー」

管理人「…では、私たちも帰りましょうか」

クロ「……うっく…家出ぇ…」
160 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:42:13.27 ID:dbUpHyI0
■■「…本当によろしいのですか、それで」

家出「××家を継ぐ。それはもう決まっていたことさ、仕方ないよ」

■■「お嬢様…」

家出「私はあの家から逃げ出してきた。望めばなんでも手に入る、そんな化物みたいなところから」

■■「化物だなんて…」

家出「でも、あいつは私にない物を持っていた。だから彼を好きになったんだ」

■■「……」

家出「でも失ってしまった。やっと手に入れたと思ったら、なくしてしまった…」

■■「……」

家出「同じ思いはもうしたくない…!」
161 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:44:04.49 ID:dbUpHyI0
■■「…お嬢様、彼女の過去がわかりました。どうしますか?」

家出「…聞かせてくれ」

■■「はい…まず、彼女の生まれは一般家庭です。お嬢様ではありませんでした」

家出「そうか…」

■■「それと、彼女は親に捨てられたみたいです。施設に暮らしていた記録があります」

家出「……」

■■「ですがその施設…合法的なものではなく、人身売買的な色が強かったようです」

家出「じゃあ、そこでマナーを一通り教えられたということか…」

■■「おそらくはそうだと思います…彼女はその後施設を脱走し、それ以来行方がわからなくなっていました」

家出「…そしてあの日、私に出会ったのか」
162 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:46:04.36 ID:dbUpHyI0
■■「あと、彼女の名前ですが―」

家出「それはいい」

■■「…わかりました」

家出「…それは彼女から聞かなければ意味がない」

■■「……お嬢様は本当にそれでいいのですか?」

家出「どうしたんだ、家を継ぐんだから問題はないだろう」

■■「あのお嬢さんのことです…これで良かったとは思えません。彼女の意思はどうなるんです」

家出「彼女の気持ちはすでに聞いた…私は私に出来る最良の選択をしただけだ。文句を言われたくはない」
163 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:48:03.30 ID:dbUpHyI0
クロ「…はぁー……」

管理人「ほら、クロさんもそんなに気を落とさないで下さい」

クロ「私、あいつのことが好きだったのに、何もわかってなかった」

管理人「お嬢様は意図的に隠していましたからね。仕方ありませんよ」

クロ「管理人さんはどうして教えてくれなかったんですか…」

管理人「面白そうだったから、ですかね?」

クロ「この人でなしぃ・・・」

シロ「ニャー」

管理人「ですが、それ以上に嬉しかったからです」
164 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:50:05.84 ID:dbUpHyI0
クロ「嬉しかった…?」

管理人「はい、お嬢様が楽しそうに笑っていましたから…とても嬉しいのです」

クロ「楽しそうに笑ってた?…そうかな」

管理人「あんなに楽しそうなお嬢様は久しぶりでした」

クロ「久しぶりって…そんなに笑ってなかったの、あいつ」

管理人「…あのお方が亡くなってから、すっかり笑わなくなってしまいましたから」

クロ「そうだったんだ…」

管理人「だからお礼を言わせて下さい。お嬢様を笑顔にしていただいてありがとうございます、クロさん」
165 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:52:02.66 ID:dbUpHyI0
クロ「…お礼を言いたいのはこっちだよ」

シロ「ニャー…」

クロ「あいつは私に全てをくれた。暖かい家も食べ物も家族も、喜びも笑顔も楽しさも、全部あいつが私にくれたんだ…」

管理人「クロさん…」

クロ「なのに、私はあいつに何も返してない。私はいつももらってばかりだ!」

シロ「…ニャー」

クロ「……うっく…私はまだ、あいつのことが好きなんだ。あいつと、もっと一緒にいたいよぉ…」

管理人「……」
管理人「はあ…お嬢様、彼女のためにもあなたはあなたの最良の選択をするのですよ」
166 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:54:10.70 ID:dbUpHyI0
家出「……」

■■「……」

クロ「……」

シロ「……」

管理人「…決断は、出来たようですね」

家出「はい、決めました」

管理人「では教えてください、お嬢様」

家出「…私は―」

クロ「……家出…」

家出「××の家を継ぐことにした」
167 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:56:02.85 ID:dbUpHyI0
クロ「…そん、な」

管理人「それが、最良の選択ですか?」

家出「ええ、これが私の最良の選択です」

ザッ…
クロ「……っ!」

シロ「ニャ!」

家出「!待て、クロっ!」

■■「お嬢様!……これで良かったんですかね…」

管理人「…あら、あなたにしては珍しい意見ですね。あんなにお嬢様に戻ってきていただきたかったというのに」

■■「それが…」
168 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 10:58:05.52 ID:dbUpHyI0
家出「おい待て、クロっ!」

クロ「なんで、追いかけて来ないでよっ!」

家出「…だから止まれって!」

クロ「誰が止まっ……きゃあ!」

グヴォッシャーン!
クロ「うーん…」

家出「…前むいて走らないと危ないだろ」

シロ「ニャー…」

家出「ふっ、また箱の中か…」
169 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 11:00:02.23 ID:dbUpHyI0
クロ「うーん……はっ、ここは!」

家出「奇しくも出会った時のように段ボール箱の中だ」

シロ「ニャ」

クロ「!…ん、出れない」

家出「手くらい貸してやるよ」

クロ「…なぜ追って来たんだ」

家出「君が大切な話をする前に逃げ出しちゃったからね…」

クロ「大事な話…?」
170 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 11:02:04.60 ID:dbUpHyI0
管理人「ふふ、そうですか。それは確かに最良の選択ですね」

■■「笑いごとじゃありません。もしお嬢様が本当にそんなことをしたら…」

管理人「何も問題はありませんよ。今度はお嬢様が最高権力者ですから」

■■「そうですが…」

管理人「これがお嬢様の最良の選択です。私たちはそのバックアップをするだけですよ」

■■「…了解」

管理人「…■■、クロさんへの嫉妬もほどほどにね」

■■「!そ、そんなことは」

管理人「ふふ、後は彼女次第ですね…」
171 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 11:04:02.91 ID:dbUpHyI0
家出「君を××家の養女として、正式に迎え入れることにしたんだ」

クロ「…はい?」

家出「そうすれば君と本当の家族になれる」

クロ「私が、本当の家族に…」

シロ「ニャー」

家出「その、勿論…君が望むのなら、なんだけど…」

クロ「…ふっ」

家出「…えっと?」
172 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 11:06:04.49 ID:dbUpHyI0
クロ「…生活待遇は?」

家出「三食昼寝付き。衣食住については心配しなくていい…ただし条件付き」

クロ「条件…何?」

家出「…私より先に、亡くなったりしないでほしい」

クロ「…何その条件」

家出「だから、一人だけ取り残されるのは寂しいってこと」

クロ「何それ」

シロ「ニャー」
173 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 11:08:03.40 ID:dbUpHyI0
クロ「…確かにそれなら、あんたに拾われても生活は大丈夫そう」

家出「だろ?」

クロ「けど、一つ困った問題がある」

家出「何だそりゃ?」

クロ「私はあんたが好き」

シロ「ニャー」

家出「それは困るな、どうする?」

クロ「どうしようもない」

家出「少しは考えてくれよ」

クロ「なら…もう一度私のことを愛してると言って」
174 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 11:10:02.80 ID:dbUpHyI0
家出「…愛してるよ、クロ」

クロ「…もっと」

家出「愛してる」

クロ「もっと大きな声で!」

家出「クロ、君のことを愛してる!」

クロ「…ははは」

家出「…はぁ、はぁ」

クロ「近所迷惑だよ」

家出「…誰のせいだよ」

シロ「ニャー」
175 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 11:12:03.13 ID:dbUpHyI0
クロ「でもさ…」

家出「ん、どうした?」

クロ「それは恋人としての愛してるじゃないんだよね」

家出「…ごめんな、君の思いに応えられなくて」

クロ「ううん、いいの…だって私は今、とーっても幸せなんだから」

家出「クロ…」

クロ「でも、私の本名はもう教えないことにするよ…」

シロ「ニャー…」

クロ「私はクロ。あなたが拾って私にくれた名前だよ、お母さん」

家出「クロ……ふふ、じゃじゃ馬の箱入娘が泣かせてくれるじゃないか」

クロ「これからはずっと一緒だね」

家出「ああ、一緒だよ」

シロ「ニャ」


■終



■反省点
・展開が上手くいかずぐだぐだ
・人物像がはっきりとしなかった
・一人で最後まで突っ走ってしまった
・今度は人の集まる話にしよう…
176 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/02(金) 11:36:42.77 ID:NGrSa8oo
177 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 14:50:06.24 ID:dbUpHyI0
■おまけ後日談


クロ「おーい、お母さん。そろそろ時間じゃない?」

当主「ああ、そろそろ時間か…ちょっと待て、今着替えてるところだから」

クロ「…まったく、着替えに何分も時間掛けすぎなんじゃないの」

当主「仕事の着替えってのは時間が掛かるものなんだよ」

クロ「そういうものかな…いちいち何回も違う服に着替えたりして、面倒じゃない?」

当主「面倒だけど、そういうものなの」

シロ「ニャー」

クロ「ふーん、そうなんだ…まあ、遅れないようにね。先に行ってるよ」

当主「ああ、先に行ってな」
178 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 14:52:05.88 ID:dbUpHyI0
当主「はあ…」

メイド長「どうしたのですか、ため息なんて」

当主「いやあ…結構変わったなと思いまして」

メイド長「生活がですか?…それはそうですよ、あなたはもう××家のトップなんですから。忙しくて当たり前です」

当主「はあ…覚悟はしていたつもりですけど、やっぱり大変ですね」

メイド長「ふふ、まだまだです。あの子のためにも、お母さんはもっと頑張らなければいけませんよ」

シロ「ニャー」

クロ「んー、何か言ったぁ?」

当主「何でもないよ…うんそうだね、私が頑張らなきゃ!」
179 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 14:54:06.03 ID:dbUpHyI0
秘書「…変わりましたね、お嬢様」

メイド長「ふふ、どんどん高翌嶺の花になってますよ?」

秘書「!主任、からかうのはやめて下さい」

メイド長「あらそう?…でも早くしないとお嬢様、再婚してしまいますよ?」

秘書「そんな…」

メイド長「これは本当の話です。最近お見合いの話がたくさん寄せられていますから…大変ですよ?」

秘書「…主任、お願いがあります」

メイド長「何ですか?」

ガチャ…
秘書「お嬢様にお見合いを申し込んでいる輩のリストを作ってもらえませんか、早々に排除します」

メイド長「事後処理が面倒ですから、警察沙汰にはしないで下さいね…」
180 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/02(金) 14:56:06.17 ID:dbUpHyI0
クロ「お母さん」

当主「ん、どうしたんだいクロ」

クロ「これ、お弁当。師匠に教わって作ってみたの」

当主「師匠ね…花嫁修業しっかり頑張ってるみたいだね。えらいぞ」

クロ「へへへ…」

シロ「ニャー…」

当主「でも、いつかクロが誰かにもらわれるかと思うと寂しくなるな…」

クロ「…私はお母さんのお嫁さんになる」

当主「うーん…なれるかなぁ?」

クロ「なれるよ」
クロ「私はお母さんのことが、大好きだから!」


■完
181 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/02(金) 23:07:44.67 ID:NGrSa8oo
続ききてた
乙乙

でも、お母さんのお嫁さんって……
NHKスペシャルでも見てきたかww
182 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/03(土) 04:58:08.56 ID:YVAocQ6o
乙 面白かったぜ
183 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/07(水) 11:27:57.31 ID:4/X6B6DO

よかった
88.66 KB   

スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)