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女「うぇっ……吐きそう……」その2 - 製作速報VIP(クリエイター) 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/04(日) 19:14:13.70 ID:UDPPc0Ao
女「うぇっ……吐きそう……」より
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1269781188/
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ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713353246/

木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1713351945/

いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713279251/

【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713277692/

こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713183168/

【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713091115/

アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713089503/

2 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/04(日) 20:23:07.63 ID:q2Fm8CA0
これ視点が違うだけで携帯小説と一緒だね
3 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 10:15:58.54 ID:EeXmGwDO
先生×生徒とか大好き
4 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 10:54:29.82 ID:mitT.hQo
立ってたのか
5 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 11:10:18.82 ID:Qgut2ac0
おい誰か早く転載しろ
6 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/05(月) 13:08:46.04 ID:OTI5V8Io
ちょっと待っててくれ。
今転載する
7 :ageてた。ということで転載 [sage]:2010/04/05(月) 13:09:47.98 ID:OTI5V8Io
男「…………」

初冬を感じさせるような、肌寒いある日の夜刻。
見知らぬ小娘が俺の家の前で──

女「グェェェーーーーッ!」

ゲロっていた……。

女「あー、すっきりしたぁ……」

男「う、嘘だろ……」

女「……ん?」

女「あっ、センセーじゃ〜ん」
8 :ageてた。ということで転載 [sage]:2010/04/05(月) 13:10:20.94 ID:OTI5V8Io
この酔っぱらいめ。
親御さんが泣いてるぞ、って……

男「……せ、せんせい?」

女「うへへ、こんばぁんわぁ〜」

男「…………」

あれ? なんか見覚えが。

男「……ま、まさか」

女「うははは〜」

男「……女?」

……………。
……………。

9 :ここって連投規制なる? [sage]:2010/04/05(月) 13:11:14.57 ID:OTI5V8Io
時は経過して……。

おんぼろアパート一室のソファーの上で、
酒臭い一人の小娘が寝転んでいた。

俺はコップを片手に彼女の元へ。

男「ほれ」

女「……え?」

男「水だ。少しは楽になるぞ」

女「どうも……」

今だ目をとろ〜んさせ、顔を仄かに赤く染めていた。
明るい所で見ればよく分かる。
間違えるはずもない。この娘は俺の教え子だった。

男「……聞きたいことは山ほどある」

女「…………」
10 :ここって連投規制なる? [sage]:2010/04/05(月) 13:11:42.57 ID:OTI5V8Io
男「頭は少しは冴えてきたか?」

女「……まぁ、多少は」

コップに口を付けながら、彼女は上目遣いで俺を見る。
まだ酔いはかなりありそうだ。
喋りながら少しずつ改善してくれればいいが……。

男「まず初めに」

女「……はい」

男「どうやって、俺の家の住所を知った?」

女「……ええと」

男「このご時世だ。住所の名簿は渡されていないはずだが」

女「……見たんです」

男「ん?」
11 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:12:08.98 ID:OTI5V8Io
女「この通りを歩いていた時に偶然……」

男「俺がここに入るのを?」

女「……はい。……あ〜……頭いたっ……」

男「……そうか」

女「すみません。もう一杯水貰えます?」

男「おう……」

流し台にいき、水道水をコップに注ぐ。
すると、ソファーの方から声が聞こえた。

女「……えっ。水道水なんすか?」

女「ちょっとそれ嫌なんですけど……」

意外とずうずうしかった。
12 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:12:44.00 ID:OTI5V8Io
男「水道水なめんなよ。殺菌されてるから心配ない」

女「いや、逆にそれが不安というか……」

男「わがまま言うな。俺の家には、水に金を払う余裕などない」

女「そんな自慢げに言われても……」

男「ほれ」

女「……ありがとです」

文句を言いながらも水を飲み始める少女。
相当、自分の酔いを自覚しているようだ。

男「続けて良いか?」

女「あ、はい」

男「俺の家を知っていた理由は分かった」

男「じゃあ次。どうして、そんな状態なんだ?」

女「…………」
13 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:13:10.11 ID:OTI5V8Io
男「未成年の飲酒は法律で禁止されてる」

女「う……」

男「今すぐ、ご両親に連絡してもいいが……」

男「教え子を易々売るのも気分がいいもんじゃない」

女「……すみません」

男「いやいや、まだそう決まったわけじゃないぞ」

男「きちんと俺に説明してくれてからな?」

女「…………」

俯いて黙りこくる少女。
少し厳しめにいこうか……。

男「黙ってちゃ分からん」

男「これだと連絡せざるを得ないぞ」

男「尋常じゃない飲酒量だ。問題ないというほうがおかしい」

女「…………」
14 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:13:54.97 ID:OTI5V8Io
男「ご両親もかなり心配しているはずだぞ」

女「……ッ」

少し反応があった。

男「…………」

目の前にいる少女は確か二年B組。
ちなみに俺は、彼女の担任ではない。
数学の科目を担当しているだけで、週に三回ほど会うだけだ。

そんな彼女のことを鮮明に記憶している理由は単純で、
それはつまり、彼女の容姿が一際目立つからに他ならない。

教師の間でも然ることながら、生徒の間だと最早芸能人扱いだ。
聞いた話ではそれもあながち間違いではなく、
時にはモデルとして、ファッション雑誌に載っているらしい。

性格は良。成績も良。
悪い噂はあまり聞かないし、教師受けも悪くない。

そんな彼女が目の前で、泥酔していた。
何かただならぬ訳があるのだろうと初めは考えていたが……。

男「違うな」
15 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:14:33.05 ID:OTI5V8Io
女「……え?」

男「こうやって酔うのは初めてじゃないだろう?」

女「……っ」

男「……常習犯か。どこで飲んでるのかしらんが、かなり問題だな」

女「……ぅ」

男「両親はこのことを知ってるのか?」

知らないはずはない。だが、敢えて聞いた。
それが恐らく彼女の弱みだと思うから。

女「…………」

男「悲しむと思うぞ。いいのか?」

女「くっ……」

男「こんなことばかりして、ご両親が可哀想だと……」

女「あん……に……な……わかる……」

男「そんな小さな声じゃ聞こえん」

女「くっ──」

16 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:15:02.11 ID:OTI5V8Io
女「あんたに何が分かるんだって言ったんだよ!!」

男「…………」

唐突に彼女の感情が暴発した。

女「親、親、親って、私の親が心配してるわけねぇだろっ!」

男「…………」

女「ちょっと教師だからって良いヤツぶりやがって……」

女「分かってんだよ、お前らの視線が私の体に向かってることぐらいよ!」

男「…………」

女「ちっ……どいつもこいつも……」

いつもの様子からは想像もつかなかった。
言葉遣いは荒く、目つきは険しい。

だが、俺は疑問だった。

男「なぁ……」
17 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:15:32.43 ID:OTI5V8Io
女「……なんだよっ! 何か文句でもあるのかっ!」

男「その不良ぶった言い方さ……」

男「正直、疲れるだろ?」

女「…………」

男「普通に喋れよ普通に」

男「お前慣れてないだろ? わざわざ悪ぶろうとするな」

女「……っ」

先ほどの威勢はどこにいったことやら。
悔しそうに唇を噛み締めている。

少し沈黙の間が続いた。
先に口を開いたのは少女の方。

女「ど、どうして……?」
18 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:16:09.04 ID:OTI5V8Io
男「ん? 何のことだ?」

女「……口調のこと……」

男「ああ、別に簡単だ。今時、あんな言い方するのはヤンキー崩れだけ」

男「レディースなんてのが存在してたときは、ああいう娘も少なからずいたけど」

男「今はそう見ないな」

女「…………」

男「分かった?」

女「……うん」

男「…………」

あれ? これはこれで違う気が……。
彼女の口調に違和感を覚える。正直、馴れ馴れしい……。

女「普通に喋れって言ったのはそっちでしょ?」

男「まあ、そうだが……」

19 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:16:35.53 ID:OTI5V8Io
女「私もこっちのほうが楽だから」

男「…………」

女「それで?」

男「は? それで、とは?」

女「これからどうすんの? 私の親に連絡するの?」

男「……それも一つの選択肢だ。お前はどっちがいい?」

女「私はどちらでもいいよ。今更あいつは何も言わないと思うし」

男「あいつ?」

女「母親のことだよ……。父親はいないから」

男「そうか……」

母子家庭か……。少々複雑のようだった。

20 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:17:04.42 ID:OTI5V8Io
男「分かった……。連絡はやめよう」

女「そう」

男「……嬉しそうでもないな」

女「別に……」

男「まあ、いい。それで、酔いは冷めたか?」

女「普通に歩けて、軽く冗談を言えるぐらいは」

男「ならオーケーだ。今度からは飲んだとしても軽めに抑えとけ」

女「冗談を聞いてくれる……てわけでもないのね」

男「当たり前だ。急いで家に戻れ。もうすぐ零時を回るぞ」

女「…………」
21 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:17:34.95 ID:OTI5V8Io
しかし、女はその場から全く動こうとしなかった。
俺は再度促す。

男「夜道が怖いなら送ってくぞ」

女「…………」

男「何も言わないんじゃ、こっちも分からん」

女「…………」

女「帰りたくない」

帰りたくないって……。
ここは俺の家だぞ……。

女「もう何日もあの家には戻ってないし」

男「……ちょっ、ちょっと待て」

聞き捨てならなかった。

22 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:18:02.10 ID:OTI5V8Io
男「なら、今までどうしてたんだ? 野宿か?」

女「そんなわけないでしょ。昨日までは女友達の家に泊まってた」

男「……はぁ」

色々大変だな……。

男「家庭の問題はひとそれぞれだから、あまり余計なことは言えんが」

男「その女友達の家に今日も泊めて貰えば……」

女「それは無理」

彼女の綺麗な瞳は、確実に俺を捕らえていた。
自然と目を逸らしてしまう。

男「ど、どうして……?」
23 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:18:29.98 ID:OTI5V8Io
女「今日の朝に、喧嘩した」

男「それだけじゃ、分からん」

女「あんまり言いたくはないけど……聞きたい?」

男「ああ、簡潔に頼む……」

女「分かった。簡潔に説明すればいいのね」

男「……おう」

女「その娘には二年ほど付き合ってる彼氏がいたんだけど……」

女「私に惚れちゃった。おしまい」

男「…………」

驚きのあまり声が出なかった。
俺は急いで次の案を探る。
24 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:19:01.69 ID:OTI5V8Io
男「じゃ、じゃあ、他の女友達んとこに──」

女「他はほとんど上辺だけの友達だから無理」

男「…………」

そんな寂しいことを平然とした顔で言うな……。
そうやって諭したいところを、何とか抑える。

男「ふーむ……」

足りない頭では妙案が思いつきそうもなかった。

しばし黙って熟考していると、
目の前の彼女は少し気分を害しているようだった。

女「ちょっといい?」

男「むー……ん? 何だ? 良い案でも見つかったか?」

女「良い案って……。聞くけど、そんなに私を泊めるの嫌なわけ?」
25 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:19:29.04 ID:OTI5V8Io
男「好みの問題ではない。教師としての倫理がな」

女「じゃあ、それを抜きにして考えてよ」

男「抜きにしてって……」

女「私は泊めるに値する? しない?」

男「…………」

正直、男としては確実に前者だった。
それだけ彼女は女として魅力的だ。
スタイルもいいし……って……。

女「で、どっちなの?」

男「…………」

男「……し、しない」

女「…………」

周りの温度が二三度下がった気がする……。
26 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:19:55.42 ID:OTI5V8Io
女「……そう、ならもういい」

男「お、おい……もしかして素直に家に帰るのか?」

女「はっ? 帰るわけないでしょ?」

男「野宿するつもりなら、それはダメだ」

女「はいはい違いますから。てかもう関係ないんだから干渉しないでよ」

男「そういうわけにはいかない」

男「お前の担任ではないが、教師としては最後まで見届ける必要がある」

女「ふん、大人ってホント綺麗事ばかり」

男「ああ、綺麗事で結構。で、どこに泊まるんだ?」

女「だから、きちんとした住まいだって。もう、おせっかいは十分です」

男「いいから言え。どこだ?」

すると、彼女はここにはもう用が無いといわんばかりに立ち上がり、
俺を見下ろしてこう言った。
27 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:20:35.34 ID:OTI5V8Io
女「ほかの男んとこ」

男「な……」

女「先生と違って、他のみんなは喜んで泊めてくれると思うし」

自信の顕われか、彼女の右の口元が上がっていた。
しかし、どう考えたって……

男「ダメに決まってんだろっ!」

自然と立ち上がり、俺は怒声を挙げた。
胸の内では怒りがむらむらと沸き上がる。

男「相手がどういう意図で泊めるか分かって言ってるのか!」

女「わかってるわよ。私の好意目当てでしょ?」

男「それだけじゃない。運良ければ身体も、なんて考えてるんだぞ!」

女「べ、別にそんなの承知の上よっ!」

女「せ、SEXの一度や、二度くらい、減るもんじゃないわよっ」

こ、こいつぅ……。
28 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:21:03.83 ID:OTI5V8Io
女「てかそんなことでピリピリしちゃって、先生まさか童貞?」

男「なっ……」

女「はっ、もしかしてマジだったり? うわ、その歳で童貞とか……」

男「ち、違う、俺は童貞ではない」

女「いいえ、童貞ですから。態度でバレバレよ」

女「しかもそれなら今までの怖じ気づきぶりも理解できるし」

男「ご、誤解だっ!」

女「はん? チェリー君が何言っても無駄ですから」

男「くっ……」

女「ほんと大人のクセしてガキ臭い」

何故かいつのまにか、俺が童貞か否かの問題に……。
色んな意味でマズかった。
29 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:21:37.91 ID:OTI5V8Io
男「てか、そんなことはどうでもいいっ!」

女「あ、ついに認めたんだ」

男「そのことじゃないっ!」

女「じゃあ、何?」

男「お前が男んとこに泊まるって言い出した話だ!」

女「いいじゃん、私の勝手でしょ?」

男「勝手じゃない。俺は許可しないからな」

女「何の権利をもってそんなこと言ってるわけ? ただのバカ?」

女「教師でも、プライベートまで干渉していいはずないんですけど」

男「くそ、あーいえば、こーいいやがって……」

女「しかも許可って……先生の許しなんて何の価値もないから」
30 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:22:04.83 ID:OTI5V8Io
確かに彼女の言い分は正しい。
教師だからといって、そこまで口出す権利はない。
一応、止めたのだから、後は本人の自己責任だ。

ただ──

男「俺は認めんぞ」

女「……はぁ……まだそんなこと言って……」

正直な話、ここが彼女にとっての分岐点のような気がするのだ。
選択を間違えれば、全てが悪い方向へ言ってしまうような。
そんな嫌な予感が付きまとって仕様がない。

だから……

1.男の恐ろしさを分からせる。
2.家に泊まらせる。
3.もう干渉しない。

>>50
31 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:23:25.17 ID:OTI5V8Io
>>50は2とレス

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
選択 2.家に泊まらせる。

男「…………」

女「もう言うことがないなら、さよなら」

彼女は扉の方へ向かって歩いて行く。

ドアノブに手が触れようとした、その時──

女「……電話しないでくれたことは……感謝してる……」

そう小さな声が、……聞こえたような気がした。

男「……ッ」

男「お、おいっ!」
32 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:23:53.11 ID:OTI5V8Io
俺は無意識のうちに彼女を呼び止める。

その後に何を続けるつもりなのか。
その言葉が自らの教師生活を棒に振ることになるかもしれない。

恐怖、不安、将来……

いろんなものが頭の中で交錯する中、
意外にもすんなりと次の言葉が出た。

男「泊まっていきなさい」

女「……え……」

覚悟はもう決めた。

……………。
……………。
33 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:24:19.10 ID:OTI5V8Io
永延と続く夜空の中に、ぽつんと小さな一つの星があった。
小さいながらも他を寄せ付けないほどの綺麗な赤。

ただし、周りに釣り合うほどの星は見えず。
星座の一つに数えられることもなく。

ただ、そんなことにめげず、今日も必死に輝き続ける。
誰かに気付かれようが、気付かれまいが。
ただ一つで、輝き続ける。

そんな夜空が。
そんな星が。

地上の誰かの目にトまるなら。

その時。
もしかしたら、新たな物語が始まるのかもしれない。

それは、星と星の物語ではなく──
その星と、それを見つけた誰かの。
越えることの出来ない狭間での、果敢ないお話なのだと。

……………。
……………。
34 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:24:47.15 ID:OTI5V8Io
男「んと……確かこの辺の……」

男「よし、あった」

女「えっと何を……」

男「んじゃ、お前にも協力してもらうかな」

女「えっ……きょ、協力って……」

男「なんだ? 人の家に泊まるんだろ。なら家主の命令には逆らわない」

男「ん、分かったか?」

女「……う、うん」

ゴソゴソ。
35 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:25:14.41 ID:OTI5V8Io
男「よし、じゃあ立たせてくれ」

女「……えっ」

男「ほら、分かるだろ。立たせて」

女「わ、わかったわよっ……だけど」

男「ん? だからそっちにある棒を立たせてくれと」

女「そ、その……ま、まだ心の準備が……」

男「一体、何の準備がいるっていうんだ?」

女「……ッ」
36 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:25:40.42 ID:OTI5V8Io
女「は、傍からは遊び慣れてるって思われてるのかもしれないけど」

女「それは第三者からの勝手な目で……うぅ……」

男「……えっと」

男「なんか勘違いしてない?」

女「私も普通の……って、え?」

男「だから、ここに仕切りを作りたいんで」

男「向こうに倒れてる棒を立ててくれ、ということなんですが」

女「…………」

男「まあ、勘違いは誰にでもあることだから気にするな」

女「………くっ、し、死にたい……」

……………。
37 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:26:07.47 ID:OTI5V8Io
色々勘違い?もあったわけだが、無事仕切りも出来て。
零時をとうに過ぎていることから、すぐさま寝ることに。

だがここにきてまた問題が──

男「風呂は明日にしろ」

女「ちょっと信じられないんだけど」

男「信じられるとか信じられないとかそういうことじゃない」

女「不潔でしょ、不潔。風呂入らないで寝るとか……」

男「そんなこと言ったって仕方ないだろ」

女「何が?」

男「俺は明日休日出勤なんだ」

女「はぁ、それが?」

小馬鹿にしたような声が仕切りの向こう側から聞こえる。
38 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:27:14.96 ID:OTI5V8Io
男「早く寝たいんだよ!」

女「だったら寝ればいいじゃん。私は入らせてもらうけど」

男「それが問題なんだ」

女「意味がわからない」

男「お前は男というものを理解していない」

女「さらに一層意味がわからない」

女「きちんと分かるように説明してくれないと、私勝手に入るよ?」

男「むむむ……」

説明するといっても……正直どうしていいことやら。
ここははっきりと男の生態を説明してやる必要があるのかもしれない。
39 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:27:41.04 ID:OTI5V8Io
男「いいか……」

女「うん」

男「お、男ってのはな……」

男「女性が浴びているシャワーの音を聞いたりすると……」

女「すると?」

男「…………」

女「その続きは?」

男「……元気になる」

女「……よく分からない。何が?」

男「ナニガだ……」

女「はっ? ごまかさないで、具体的に言ってよ」

男「………くっ……」

……完敗だ。

しかし、なんなんだこの娘は。
ピュアなのか、はたまた天然なだけなのか……。
40 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:28:08.60 ID:OTI5V8Io
男「くそっ! こうなったら!」

女「な、何よ……」

男「お前が風呂に今から入るっていうなら、俺も入るぞ」

女「何を言うと思ったら……。先生の家なんだから勝手にすればいいじゃん」

男「分かってないみたいだな。いいか……」

男「女が浴びてる最中に、俺も同伴するってことだよ」

女「なっ!?」

女「し、信じられないっ! 一体なんでそんなことになるわけっ!?」

はっ、その問いは既に予測済みだ。

男「俺だって入りたいんだ、お前だけ入るのはずるい」

女「だからって別々に入ればいいじゃんっ!」
41 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:28:35.31 ID:OTI5V8Io
女「もう三時なのに、一向に眠る気配ないじゃんっ!」

男「す、すまん……眼が冴えてしまって……」

女「ああ……こんなことなら無理矢理にでも入っとけば良かった……」

男「『後悔先に立たず』」

男「はは、数学教師なのに俺、意外と博識だろ?」

女「…………」

初めて現実で怒りマークをみた……気がする。

男「す、すみませーん……ネマース……」

女「ふんっ」

ザッ!!

……………。

そして……しばらくの後、俺はやって寝ることが出来た。
後から聞いた話だが、四時近かったそうな……。
南無南無。

……………。
……………。
42 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:32:11.07 ID:OTI5V8Io
すまん順番ミスった。
>>41取り消し
43 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:32:37.46 ID:OTI5V8Io
男「水がもったいない」

女「…………」

女「う、嘘だよね?」

男「いいから、明日にしろ。これは家主命令だ」

女「くっ……こんなことなら、他の家に行けば良かった……」

男「まあ、俺が寝てからならいいからさ。今は止めてくれよ」

女「……はぁ……」

……………。

ザザッ。

女「……先生、もう寝た?」

男「…………」

男「……う、うっす」

女「あ、あああぁぁっ!!」
44 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:33:03.67 ID:OTI5V8Io
女「もう三時なのに、一向に眠る気配ないじゃんっ!」

男「す、すまん……眼が冴えてしまって……」

女「ああ……こんなことなら無理矢理にでも入っとけば良かった……」

男「『後悔先に立たず』」

男「はは、数学教師なのに俺、意外と博識だろ?」

女「…………」

初めて現実で怒りマークをみた……気がする。

男「す、すみませーん……ネマース……」

女「ふんっ」

ザッ!!

……………。

そして……しばらくの後、俺はやって寝ることが出来た。
後から聞いた話だが、四時近かったそうな……。
南無南無。

……………。
……………。
45 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:33:29.81 ID:OTI5V8Io
早朝。俺は自然と目を覚ます。
時計を見ると、時刻は六時。いつもと同じだ。

男「ふわぁぁぁ……」

大きな欠伸を一つする。これもいつもと同じ。
背を伸ばして、独り言を呟く。

男「……今日も一日頑張ろう」

変わらない、いつもの繰り返し。
いや、変わらないはずだった……──

男「あれ……? なんだ? この仕切り……」

ザザッ。

女「すぅ……すぅ……」

男「……あ……」

腕で両目を擦るが、目の前の状況は一向に変わらない。
敷き布団に一人の少女。所々、衣服は乱れ……以下略。

女「すぅ……すぅ……」
46 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:33:59.08 ID:OTI5V8Io
……………。

──『■の目□  時■ な て』

……………。

男「ッ……」

気を取り直せ。自らのペースを崩すな。
そう心の中で言い聞かせる。

男「さあ、朝飯の準備かな」

一人呟き、俺は台所へ向かった。
そう、また新しい一日が始まるのだ。

……………。
47 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:34:25.78 ID:OTI5V8Io
女「……ん……」

女「あ……れ……?」

女「ここ……ああ、そうか……」

女「先生は?って、もう出たよね……」

女「今、何時ぐらいだろ……あれ、携帯の電池切れてる……」

女「時計、時計っと」

女「おっ、目覚まし時計はっけーん」

女「さてさて…………」

女「………って、えっ?」

女「──────」

女「まあいいや、今日は休みだし……」

女「もうちょっと……寝よう……」

バサッ……。

……………。
……………。
48 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:35:16.33 ID:OTI5V8Io
溜っていた仕事を一つ一つこなしていく。
今の場合は、こないだ行った定期考査の採点だった。

何枚もの解答用紙を束にして、
一問目、二問目と一気に丸付けをする。

男「………よし」

やっと、最後の問題まで丸付けが終わる。
次にやるのが、そう、点数計算だ。

男「……木下……6、5、5、6……で、引いて78点」

この作業は意外と疲れる。
間違えてしまえば、とばっちりをくらうのは生徒。
出来るだけミスはないようにするのだが……。

男「いかんせん……量がな……」

数百枚と扱っていると、頭がおかしくなってくる。
けれども、それが教師の役目であり……
生徒が試験で頑張った証を、丁寧に評価していかねばなるまい。
49 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:35:43.83 ID:OTI5V8Io
男「学生時代は教師って楽だと思ってたんだけどな」

見えるものだけが全てではないと。
なぜあの頃、そんな単純なことに気付けなかったのだろうか。

男「……考えても答えは出ない……か」

それが大人になったということだと。
ただ漠然とそう、理解した。

………………。

男「よぉぉぉし、終わったぁーー」

最後の採点が終わり、あとは片付けをして帰るだけだ。
時刻は……。

男「午後三時か……」

日が暮れるまでには少し時間がありそうだ。
もう一つの野暮用を済ましていくか……。

そう思い、立ち上がった矢先……
50 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:36:09.70 ID:OTI5V8Io
……とんとん。

ふいに右肩を優しく叩かれる。

男「んっ?」

すぐに振り向く。

すると……

女教師「男先生、採点終わりました?」

すぐ後ろで、柔和な笑みを浮かべているのは、
自分より二つ下の同僚だった。

男「ああ、今終わったとこ。もしかして、君も採点してた? 」

そうは言うものの、先ほどまで職員室には、
俺と老教師の二人しかいなかったはずだが。

女教師「いえ、今までクラブで指導をしてたんです」

男「確かバレー部だっけ?」

女教師「はい。朝から始めて、今終わったところです」

男「はぁー、よく頑張るなぁ」
51 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:36:35.05 ID:OTI5V8Io
女教師「別に私は疲れませんよ。大変なのは生徒達です」

男「こないだいいとこまで行ったんだよな。何位だっけ?」

女教師「県で、ベスト4」

男「おお、ならあと二つで全国か」

女教師「そうですけど、そこからのレベルは跳ね上がりますから」

女教師「うちの学校なんかは、スポ薦がほとんどありませんし……」

男「いやいや、だから凄いんだ」

純粋に、そう思う。

女教師「あ、はい、生徒達も喜ぶと思います」

男「悔いがないように」
52 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:37:01.91 ID:OTI5V8Io
女教師「そうですね……」

そう言った彼女は、少し思い詰めるような表情をしていた。
心底、教え子達が心配なのだろう。
悔いがないようにといっても、言葉通りにいくのは非常に難しい。

誰もが過去の一瞬を後悔し、嘆き、時には変えたいと願う。
だが、現実の時は立ち止まることを知らない。

男「……ん、そうだ」

女教師「あ、はい」

男「確か君の受け持ちのクラスって……」

女教師「二年B組ですよ。でもそれが一体?」

………………。
………………。
53 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:37:28.31 ID:OTI5V8Io
ガチャ。

我が家に到着。
靴を脱いで、まずはシャワーか、って……。

男「…………おい」

玄関には見覚えのある女靴が一組。
まさしくそれは……。

女「おおっ! 遅かったじゃん!」

男「…………」

女「お腹が減っちゃって……早く何か食べようよ」

男「…………」

女「そういえば、朝ごはんありがとね」

女「先生が自炊できるなんて思ってもみなかった」

女「でも、昼ごはんは用意されてなかったら、少し減点」

男「…………」
54 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:37:58.61 ID:OTI5V8Io
女「味はぼちぼちってとこかな。まあ、あれぐらいなら許容範囲かも」

男「……ッ」

黙って聞いてればいい気になって……。
ここははっきりと言ってやる必要が、大いにある。

男「おいっ!」

女「何? 急に大きな声出して……」

男「分かるだろ、なんでまだここにいるんだって話だ!」

女「なんでって、行くとこないからじゃん」

男「家に帰れ、家に」

女「いやだ」

男「家でお母さんが待ってるぞ」

女「い・や」

男「……強引に追い出したら?」

女「街中で声かけられるの待つ」

男「…………」
55 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:38:25.35 ID:OTI5V8Io
女「そんなに嫌なら私は別に構わないよ」

女「先生を困らせたいのが本意なわけじゃないし」

男「くぅ……」

こちらの弱みを分かってやがる。
とりあえず、妥協案でも探すか……。

男「……まあ、しばらくはいい」

女「え、ほんと? 先生、気が利く〜」

女「じゃあ、話は終わりだね。ご飯にしようよ」

男「いやいや、問題は山積みだ。まず初めに……いつまでいるつもりだ」

女「んー、未来のことは私にも……」

男「お前のさじ加減一つだよ、お前の!」

女「あーもううっさいなぁー、んじゃ、四ヶ月」

男「よ、四ヶ月!? ダメだダメだ!」
56 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:38:51.26 ID:OTI5V8Io
女「えー、それなら二ヶ月」

男「長い」

女「むー、一ヶ月半」

男「もう一声」

女「仕方ない……じゃあ、一ヶ月で」

男「…………」

女「もうダメだよ。これ以上はまけられないから」

男「あぁそうだな……ありが──」

あれ? 俺が感謝するの?

男「って! なんで俺がお願いする側なんだよっ! 逆だよ逆っ!」

女「もう細かいことばかり気にするから、今だ童貞なんでしょ」

男「だから、童貞じゃなーーいっ!!」

波乱はまだ続きそうだった……。

………………。
………………。
57 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:39:22.93 ID:OTI5V8Io
男「それで、いつになったら話してくれるんだ」

女「えっ?」

遅めの夕飯時。
俺は野菜炒めを口で咀嚼しながら、何げなく問う。

男「家に帰らない、本当の理由だよ」

女「……わけわかんない……」

少女はふて腐れたように、そっぽを向く。
身体は大人びていても、年相応の幼さが滲み出る。

男「分かるだろ、ほら」

彼女の触れたくないことだって。
既にわかっていたことだけど。

それを話さない限り、前には進めないはずだから。

女「…………」

男「お母さん、バーのママやってんのな」

女「……ッ」
58 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:39:48.22 ID:OTI5V8Io
女「ま、まさか」

男「ちょうど、仕事が早めに終わったもんだから」

男「無駄話を少々」

あの後、同僚から女の家の連絡先を聞き、
日が暮れるまで少しの間、保護者面談擬きをしていた。

まあ、同僚には多少怪しまれたけれど。

女「ちょっ、ちょっと信じらんないっ!」

女「連絡はしないって言ってたのに! 嘘つきっ!」

男「嘘つきで結構です。嘘も方便っていうしな」

バンッ!

女「最悪っ! もう私、出てくっ!」

よほど母親と会われたのが腹に立ったのだろう。
貸した箸をテーブルに叩き付けて、席を立つ。
59 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:40:16.91 ID:OTI5V8Io
男「まあ、そう怒るな」

女「ちょっと信頼しかけてたのに……ホント最低」

男「……まあいいから座れ」

女「いやですっ! もうあんたと同じ空気を吸うのも嫌よ」

意外にやっかいだった。
仕方ない……。

男「特にお前のことを話してきたわけじゃないよ」

女「はっ? また得意の嘘?」

男「違う違う。さっきも言ったろ、『無駄話』だって」
60 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:40:44.26 ID:OTI5V8Io
女「……じゃあ」

男「ん?」

女「何を話して来たって言うの?」

男「とりあえず、座れ。話はそれから」

女「…………」

ガタン。

多少、音は立てたが、席に座ってはくれた。
ただまだ顔に残るのは猜疑心のみ。

ちょっと話の出始めを間違えたかな。

警戒心を解くのは時間がかかりそうだった。
61 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:41:20.05 ID:OTI5V8Io
男「教師ということは隠していった」

女「……どういうこと?」

男「ただの客として行ったってことだよ」

男「最近の世間話とか、ママの生い立ちとか……」

男「まあ、娘の話も多少はね」

女「……最低」

男「まあ、そう言うなよ」

女「結局、聞いてるわけじゃん」

男「別にお前のことばかり話してたわけじゃない」

男「今日の本題はな」

男「お前が嫌っているその母親が、どういう人となりかってことだよ」

女「…………」
62 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 13:41:46.32 ID:OTI5V8Io
さきほどの怒りはどこにいったのやら。

今は下を向いて口を閉じ……
この後、何を言われるか、分かりきっているように。

男「はっきり言うぞ」

男「娘思いのいいお母さんじゃないか」

女「……ッ」

普通に喋ってみれば、ある程度の性格は分かる。
たとえそれが猫かぶりであったとしても。

本当に娘のことを邪魔に思っているのならば、
あんな、笑顔……娘の話の最中に、するわけないじゃないか。

男「自慢の娘だってよ」

女「…………」
63 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/05(月) 15:03:45.67 ID:Vy/YTAYo
誘導してくれた人ありがとー
こっちなら書き込める

つっても、さるも連投規制もないから支援のしがいないけど・・・
64 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 16:06:33.20 ID:Oqeqe6g0
誘導d
紫煙もsageた方が良いのかな
65 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 16:11:44.89 ID:OTI5V8Io
男「時々、モデルもやってるって言ってな」

男「頼んでもいないのに、その写真も見せてもらった」

女「……変態」

侮蔑の言葉にもキレがない。
ということは、自覚しているってことか。

なら……

男「お前さ、俺に昨日言ったよな」

男「『あの母親が心配するわけない』みたいなこと」

女「………う……」

男「心配しない? そんな親じゃない?」

男「いいや、違うな」

男「心配しないわけがない。そんな親なわけがない」

男「お前自身が一番、分かってるんだろ?」

女「…………」

その沈黙は肯定だ。
66 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 16:12:10.30 ID:OTI5V8Io
男「どうしてだ?」

男「一人でお前を育ててきたんだろ?」

男「女の身一つで養っていくのがどれだけ大変か」

男「お前だって……」

女「──分かってるっ」

急に声を張り上げる。

女「そんなこと……言われなくても分かってる……」

男「それなら何でなんだ?」

純粋に疑問だった。

しかし──

女「…………」

……少女は答えてはくれない。
67 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 16:12:36.50 ID:OTI5V8Io
男「ふーむ……黙ってちゃわからんのだが……」

正直、埒が開かない。

恐らく彼女の中で、
俺が話すに値するのか、計りかねているのだろう。

女「…………」

よし、なら俺の話でもするか。
最悪、彼女の気分転換にはなるだろう。

まあ、ちょっと重い話ではあるけど。

男「実はな、俺も片親なんだよ」

女「……へっ?」

男「ただお前と違うのは、それが父親だったってこと」

男「でも、血は繋がっていない」

女「それって……」
68 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 16:13:04.70 ID:OTI5V8Io
男「父親代わりをしてくれたってことだよ」

女「…………」

男「赤ん坊の頃に両親が死んで、母親の弟、つまり叔父か」

男「その独身だったあんちゃんが俺を引き取って……」

男「一応、育ててくれたったわけ」

女「……じゃあ、両親の顔は覚えてるの?」

少し喰いついてきた。
俺は彼女の疑問に答える。

男「覚えていない。いや、正確には覚えていなかった」
69 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 16:13:30.29 ID:OTI5V8Io
男「後で写真を見せてもらったからな」

男「その時に、初めて知った」

女「…………」

少女は思い詰めるような表情で。
喉まででかかっていた言葉を……やっと、吐き出す。

女「わ、私……」

男「……ん?」

女「お父さんの顔……みたことないんだ……」

男「…………」

俺は黙って彼女の言葉に耳を傾ける。

女「母さんは……」
70 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 16:13:58.06 ID:OTI5V8Io
女「お父さんのこと、何一つ話してはくれない」

女「こないだもそうよ……」

女「私が、お父さんの写真を見せてって言ったら……」

女「『そんなのはどこにもない』って」

女「『もう、父親のことは忘れなさい』って」

男「…………」

女「だから私……母さんと喧嘩しちゃって……」

男「……そうか」

そういう事情があったわけか。
71 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 16:14:24.34 ID:OTI5V8Io
女「で、でもっ! 普通なことでしょっ!」

男「ん?」

女「父親の顔を一度でも見てみたいって、思うことは……」

女「……当然、だよねっ?」

男「…………」

……………。

君は気付いているのか。
……意識しているのだろうか。

……………。

父の存在を何故か隠そうとする母。
それに反抗し、父の影を追い求める娘。

何かがまだ、欠けているような気がした。

“お”父さん……か。

……………。
……………。
72 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 16:15:30.91 ID:OTI5V8Io
男「というわけで……」

女「うん」

男「分かっているとは思うけど、明日からは平日だ」

胸の内を吐き出したせいか、
少女の表情には、安堵の色が見られ。

夕飯を片付け、くだらないバラエティで笑い、
湯の浸かった風呂に入った。

……勿論、最後は時間をずらしてだが。

彼女の家の問題だとか。
同僚の女教師に預けさせたほうが得策か、とか。

色々、問題は尽きないけれど、
ひとまずは彼女を我が家で預かることにする。

すぐにでも解決できる話ならば良かったのだが、
今回の件は意外に複雑そうで。

とりあえず……
73 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 16:15:56.14 ID:OTI5V8Io
男「見つかる訳にはいかんっ」

女「あー、そういうこと」

学校側に事が知られれば、
彼女は停学。俺は最悪、懲戒免職……。

同性ならば大きな問題にはならないはずが、
異性となれば週刊雑誌を賑わすほどに。

男「出る時間をずらすことはまず第一に必要だし」

男「特に、お前は出入りする時に一番、気をつけろ」

女「まあ、バレちゃまずいよね」

男「マズいなんてもんじゃないっ」

男「近所じゃ俺が教師ってことは知られてないと思うが」

男「毎日、女子高生を連れ込んでいると思われた日には……」

考えただけで、ゾッとする……。
74 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 16:16:23.51 ID:OTI5V8Io
女「でも誰にも見られないでってのは、かなり無理があるよ」

男「それは分かってる」

男「だが、できるだけ注意してくれ」

女「んー……まあ、私の生活もかかってることだし」

女「一応、協力します」

そう言って、彼女はニヤッっと笑った。

男「なんだ……その笑みは」

女「べっつにー」

男「頼むぞ、俺の今後の人生がかかってるんだ……」

女「ふふふ」

男「…………」
75 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 16:16:53.91 ID:OTI5V8Io
女「……ねぇ? 先生」

男「……なんだ」

女「これってさ」

女「私が先生の『生殺与奪』を握ってるってことだよね」

男「……………」

男「……え?」

……激しく不安だった。

………………。
………………。
76 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 16:17:19.38 ID:OTI5V8Io
学校。職員室。
授業開始を告げるチャイムの音がする。

男教師「……はっ」

さきほどまで隣で熟睡していた男教師が目を覚ます。
まだぼぉーっとした顔で、こちらを向き……

男教師「今、何限っ!?」

男「二限目です」

男教師「はぁーっ……セーフだ」

男「ぐっすり寝てましたね。昨日、かなり飲んだんですか?」

彼は苦笑したような……
或いは、少し嬉しそうな顔で、こう言った。

男教師「いやな、実は昨日、昔の友達に偶然会ってさ」

男教師「初めのうちは早めに切り上げようと思ってたんだが」

男教師「話が進み進んで……」

コップの形を作った右手を持ち上げる。
77 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 16:17:45.56 ID:OTI5V8Io
男「ぐいっといっちゃったわけですか」

男教師「そうなんだよ。……あ、男君」

男「はい」

男教師「君はこの時間、空きなのかい?」

男「はい、大丈夫です」

男教師「そうか……ならちょっと俺の話を聞いてくれ」

顔色も悪いし、息も酒臭い。
酔いはまだ抜け切れていないようだ。

俺は黙って、彼が続ける言葉を聞く。

男教師「それで、自然と仕事の話になったんだが……」

彼は一呼吸おいて……

男教師「──今は医者だってよ」
78 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 16:18:11.78 ID:OTI5V8Io
男「旧友の方がですね。ほぉー凄いですね」

男教師「羨ましいだろ。で、俺も褒めちぎったわけよ」

男教師「だけど、アイツは『教師のほうがいいだろ』って言うんだ」

男「ふむ、それは一体?」

俺がそう聞くと、彼は辺りをちらりと見回し……
小さな声でこう言った。

男教師「……『教え子と色々出来るだろ』ってさ」

男「…………」

男教師「か、勘違いすんなよっ」

男教師「俺が言ったことじゃねえ、ソイツがそう言ったんだよ」

男「はぁ……」

男教師「でもよ……俺達は分かるよな」

男「え?」
79 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 16:18:37.47 ID:OTI5V8Io
男教師「そんなの無理だってことがだよ」

男教師「俺は二十年この職だけど、恋の『こ』文字も出ねえよ」

男「あ……」

男教師「初めの頃は、そんな余裕なんて無くてさ……」

男教師「しかも、新米だって理由で、ガキどもに舐められて……」

男教師「気が付けばこの歳だよ」

男「……は、はは」

男教師「今はもう、完全にこの仕事に馴れはしたが」

男教師「今度はあのガキども。口を開けば、ハゲハゲと」

そう言った彼の頭は、
照明の明かりを見事に反射させていて。

男教師「戻りてーな」

男教師「まだ、入った当時の頃によ」

男「…………」
80 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 16:19:03.43 ID:OTI5V8Io
男教師「それなら、もしかしたら……ってな」

言いたいことは分かる。
やり直しがきくのなら、誰だって過去を変えたいのだ。

今の人生に満足していないわけではない。
ただ、あの時、あの瞬間、あの場所で。
違った選択肢はなかったのかと……思ってしまうのだ。

男教師「まあ、年寄りの戯れ言よ」

そうやって、一人自嘲する。

男教師「ん、話に付き合わせちゃって悪かったな」

男「いえいえ、そんな」

男教師「そうか、わりぃな」

彼は席を立ち、職員室の扉の方へ向かっていく。

男教師「俺はちょっくら、顔でも洗ってくるわ」

男教師「次の授業で、この顔はまずいしな」

少し後ろ姿がかっこ良いな、と思った。

……………。
……………。
81 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 16:19:29.20 ID:OTI5V8Io
授業中。
四限を終える鐘の声が聞こえた。

男「ん……では、ここまで」

男「明日は小テスト行う予定だから……」

言い終わる前に、生徒たちの悲鳴が聞こえ始める。
俺はそれを遮るように、出席簿で教壇を叩いた。

男「やかましい、きちんと復習しとけよ」

捨て台詞を吐いて、
俺は逃げるように教室から出る。

そういえば、もう昼か。
82 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 16:19:55.10 ID:OTI5V8Io
自分は空き時間に学食を済ませていたが、

男「あいつは昼飯どうするんだろうな」

ちょっと気になった。

男「まあ……何とかなるか」

そう思い、また廊下を歩き出す。

すると……──

ドンッ。

男「うおっ……」

突然後ろから衝撃を受けた。

誰かと思って振り返ると……

女「何とかならないわよっ」
83 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 16:20:22.95 ID:OTI5V8Io
腰に手を当て、胸元を突き出すポーズ。
正直、ちょっとエロかった。

男「……お、お前か」

しかし、一体何の用事で……。

女「お金頂戴」

男「はっ?」

女「お・か・ね、よ」

男「な、なんで……?」

女「昼飯食べるために決まってるじゃん。バカ?」

男「それは分かってる。なんで、俺が払わないかん」

女「生徒を助けるのが、教師の役目でしょ」
84 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:17:16.03 ID:OTI5V8Io
元スレ落ちた
85 :規制されたかと思った [sage]:2010/04/05(月) 17:19:05.33 ID:OTI5V8Io
男「自分の金はどうした?」

女「もうほとんど使っちゃって、今は……」

女「二十三円」

男「…………」

えっと……こういうときは……

男「う、うまい棒が二本買え……」

女「──却下」

男「………はぁ」

女「ほら溜め息なんてついてないでさ、お金」

男「はいはい、もう分かったよ……」

これじゃあ、体のいいパシリじゃないか……。
まあ、一ヶ月……いや、二週間ぐらいの辛抱と我慢しよう。
86 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:19:34.74 ID:0bGpgKc0
なん……だと……!?
87 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:19:34.82 ID:OTI5V8Io
男「ほれ」

辺りに誰もいないことを確認し、
彼女の掌に五百円玉を握らせる。

女「……すくなっ」

男「文句を言うな、文句を」

女「先生って意外にケチンボなんだね」

男「……それ以上言うと、返してもらうぞ」

女「いやですぅー。ベーっだ」

そう言って、舌を出す。
腹が立ってもおかしくないのに、何故か……
88 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:20:01.36 ID:OTI5V8Io
男「ふっ、ガキだな」

女「……ッ」

男「まあ、その五百円で良いもんでも食えよ」

女「何よその言い方……」

男「でもいいのか?」

男「早く購買いかないと、売れ残りしかねぇぞ」

女「……はっ!」

女「ちょ、ちょっと、そういうことは早めに言ってよねっ!」

女「あーもう、急がないとっ」

すぐさま駆け足で廊下を走っていく。
俺はその様子を何となく、ただじっと眺めていた。

……………。
……………。
89 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:20:27.94 ID:OTI5V8Io
放課後、全ての授業が終わった後も、
明日の小テストを作り、雑務を終わらせ……
気が付けば、既に日は暮れて。

同僚達からの飲み会の誘いを断り、
寄り道一つせずに我が家へ帰る。

玄関に入れば、すでに見慣れた光景。
たったったっと、リビングから誰かが駆ける音。

女「おかえりっ」

だから思う。

男「…………」
90 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:20:57.63 ID:OTI5V8Io
この環境に一番満足しているのは、
俺自身なのではないかと。

彼女に寝床を与えるという名目で、
一番、利を得ているのは俺なのではないかと。

そして、この温もりが……
当然のものだと錯覚してしまうこと……。

それが俺は……

男「……ただいま」

──……本当に恐ろしいのだ。

……………。
……………。
91 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:21:27.93 ID:OTI5V8Io
それから、何事もなく数日が経った。

奇妙な形から始まった、この同居生活。
彼女の母親は今も尚、娘の帰りを心待ちにしているのだろう。

ここでふと、疑問が生まれる。

警察沙汰にならないのは何故か。

恐らく、彼女は母親に対して、たびたび連絡を行っているのだろう。
自分はまだ他所にいる、けれど、心配しないで、と。

しかし、だからこそ分からない。
そうやって母親に気遣う心を持っている癖して、
いつまでも父親の影を追い続ける理由だ。

そして、この家に留まり続けたい、と思う理由だ。
92 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:21:55.26 ID:OTI5V8Io
>>86
一応誘導もしてあるし、>>1も復活したら来るよな?
93 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:22:22.32 ID:OTI5V8Io
彼女は既に、俺の生活に順応し始めている。

彼女特有の親しみ易い性格がもたらしたものか。
或いは俺が、孤独の餓えに苦しんでいたせいなのか。

分からない。けれども、分かることもある。

一人で暮らしている時よりも、
会話があり、笑いがあり……
そしてなによりも……人の温もりがある。

それは、確かに俺が求めていたもので。
逆に言えば、既に失ってしまったもので。

そろそろ何とかしなければならない。
……それも、取り返しがつかなくなる前に、だ。

既に疑問は、ある程度の予測がついていた。
あとは、きっかけだけだった。

……………。
……………。
94 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:24:18.06 ID:OTI5V8Io
女「先生、先生っ」

男「あーもう……ちょっと待て」

女「何よ、その迷惑そうな言い方」

女「学園のアイドルが話しかけてるって言うのに……」

男「『迷惑そうな』ではない」

女「だったら何なの」

男「いいか……俺は今、二人分の夕飯を作ってる」

男「正直、他に神経を使う余裕はない」

男「つまり、現に迷惑してるんだっ」

女「…………」

男「後で構ってやるから、後にしろ後に」

女「……ふんっ、なら、もういいよ」

男「おいおい、むくれんな……」

キッチン越しに何度も話しかけてくる彼女を、
俺は軽くあしったが、少女はその態度に気を悪くしたようだ。
95 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:24:45.57 ID:OTI5V8Io
彼女の身体の向こうには、
見慣れた家具やら寝具やら。
だが、それに加えて……

男「……で、またその……増えたわけか」

結局は、構ってしまうのは男心の悲しいところで。
むくれた少女の顔を見ただけで、胸の中が罪悪感で埋め尽くされる。
俺のかけ声を聞いた少女は、
さきほどまでの不機嫌な表情がまるで嘘かのように、
華やかな、そして、綺麗な笑顔をこちらに向けて……。

女「ねっ、可愛いでしょっ?」

彼女が胸に抱えているのは、ピンク色の何か。
それは正しく……

男「イルカ……か?」

女「うんっ」

いつの間にか、俺の家の中は、
日に日にぬいぐるみやら、赤やピンクの柄物やら。

少女の生活そのものが、
馴染み始めてきた……証拠だった。

………………。
96 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:25:11.72 ID:OTI5V8Io
女「ねぇ、先生」

男「ん……何だ」

飯を口に頬ばりながら、彼女の方をちらっと見る。

女「ちょっと、先生の昔の話を聞きたいな」

男「……なんだ唐突に」

女「いいじゃん、今、思いついたの」

男「んーー……昔の話ねぇ……」

女「話したくないなら無理には聞かないけど……」

男「いや、そういうことじゃなくてな」

男「ちょっと漠然としてて、何から話したらいいものか」

女「だったら、学生時代のことがいいなっ」

男「学生時代?」
97 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:25:39.48 ID:OTI5V8Io
女「うん、私と同じ年齢の時の話とか」

男「ああ……そういうことね……」

その頃の話で、何か、食事中の暇つぶしに
なるようなものがあっただろうか。

俺は頭の中で、過去の記憶を辿る。

男「……十七歳……」

そういえば……確か……あれは……

男「ん……いいのがあった」

女「聞かせてっ」

男「そこまで面白い話ってわけじゃなく……」

男「ちょっとした、何ていうか……その……」

女「前置きはいいから、早く進めてよ」
98 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:26:06.24 ID:OTI5V8Io
男「う、うるさいぞ君っ」

男「こういうのは形から入るのが大事なんだよ」

女「えっー」

男「まっ、端的に言えば、自虐話だ」

女「ふむふむ」

男「……失恋話だ」

女「ふむ」

男「間違えて、男に告ってしまったという……」

女「……………」

茶の間は静まりかえったそうな。

……………。
……………。
99 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:26:36.44 ID:OTI5V8Io
早朝。職員室。

定例の職員会議が、あと五分で始まるという時に、
俺は二年の学年主任に呼び出される。

男「…………」

もしかして、女との同居生活がバレたか……。

……と、ふとそんな不安が頭を過ったが、
それもすぐに間違いだと気付く。

それが仮に公沙汰になったのなら、
校長室に呼び出されるだけでは済まされないわけで。

だが、俺の心の中には、
漠然としたわだかまりが未だ残っており……
それを抱えながら、老教師の元へ向かった。

老教師「……ああ、男君、おはよう」

男「先生、お早うございます」

彼は俺が数十年前……
まだこの学園の生徒の一人だった頃からいる、
熟練の教師の一人だった。
100 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:27:02.10 ID:OTI5V8Io
しかも、一度、クラスの担任になったこともあり、
或る程度は、互いを知った仲だった。

昔に比べて皺が一層増えた老齢の顔で、
彼は俺に向かって言葉を続ける。

老教師「実はさっき、女教師クンから電話があって」

老教師「熱があるので休みたいとのことだったんだよ」

男「あー……そうなんですか」

予想だにしなかった話の入り方だったので、
俺は戸惑いの色を隠せない。

そんな俺を知ってか……或いは、知らずか、
彼はすぐさま本題に入った。

老教師「で、そこで頼みなんだが……」

老教師「今日だけ二年B組の担任をお願い出来ないだろうか?」

男「はぁ……」
101 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:27:30.24 ID:OTI5V8Io
男「別に構いませんが、副担任は?」

老教師「彼は今日出張でね」

そういうことか……。

男「分かりました」

男「では今日、自分が代わりを務めさせてもらいます」

特に断る理由もなかった。
加えて、老教師のお願いとあっては……。

老教師「そうか、ありがとう」

男「いえいえ」

いつまでも変わらない……
その腰の低さに、俺はただただ恐縮するばかりで。

男「あーそういえば……」

後になってから……
二年B組というのが女がいるクラスだと、
気付くことになる。

……………。
……………。
102 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:27:56.73 ID:OTI5V8Io
教室の前で、少し気合いを入れて……

男「……よしっ」

その高まった気持ちを維持したまま、
ドアを勢いよく開ける。

ガラッ。

男「席につけー」

生徒たちは各々席を離れており、
教室の至る所から視線を受ける。

生徒A「あれ……? なんで男先生が?」

生徒B「女教師ちゃんはどうしちゃったの?」

入ってくるのがいつもと違う教師だと言うことに
すぐさま気付いているようだった。

次々と声をかけてくる生徒たち。
大体は、このクラス担任を心配するような内容で、
彼女が彼らから信頼を受けていることが伺える。

だが、俺はそれには答えないで。
103 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:28:22.42 ID:OTI5V8Io
男「いいから、座れ」

文句の声を聞き流す。
まずは彼らの出席を取ることが先決だ。

…………。

男「おし、最後。渡辺」

渡辺「うひっ」

男「ふむ……全員出席だな」

出席確認も全て終わり、
次に連絡事項を伝えなければならないのだが……
そろそろ彼らが一番に聞きたがっている内容に答えねば。

男「女教師先生は、今日はお休みだ」

すぐさま一列目の男子が声を上げる。
104 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:28:48.59 ID:OTI5V8Io
生徒A「え? 大丈夫なんですか?」

男「熱が高いらしいが、多分、ただの風邪だろう」

生徒A「はぁー……なら良かったわ」

生徒A「事故だったらホントどうしようかと思ったよなあ」

生徒C「男先生が勿体ぶるから心配しただろうが」

生徒B「そうだよねぇ」

男「うるせぇぞ、お前ら」

糞生意気だった。

生徒C「でも、じゃあなんで先生が?」

生徒A「そうだよ、副担は男先生じゃないじゃん」

男「副担任も休みだったので、俺が代理」

生徒B「へぇ、そんな偶然もあるんだぁ」
105 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:29:18.30 ID:OTI5V8Io
生徒C「ハゲが来なかっただけ、ましか」

生徒E「ハハハ、言える言えるー」

男教師先生……。
俺が、助太刀しときますっ!

男「そういうことを言うんじゃないっ」

男「お前らだって将来どうなるか分からないんだからな」

生徒A「えーそれはヤダなぁ」

生徒C「アイツみたいなハゲになるくらいだったら死んだ方がマシ」

男「……そ、そんなことっ」

すぐさま否定しようとしたが、
無意識のうちにどもってしまう。

すると、生徒はすぐに切り返してきた。
106 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:29:44.15 ID:OTI5V8Io
生徒C「いいや、あるね」

生徒C「先生だって、明日からハゲになるって言われたら嫌だろっ」

男「……う」

生徒C「朝、鏡見て、『うわっ……死にたい……』って思うって」

男「……そ、そんなことは……」

生徒A「なんだっ、先生も俺たちの仲間じゃん」

生徒E「そりゃ、先生だってあの頭はね?」

生徒C「ムリムリ百パー有り得ないって」

男「…………」

俺は心の中の男教師先生に語りかける。

先生っ、す、すみません……助太刀どころか……
先生の背中にロケランをぶっ放してしまいました……。
でもごめんなさいっ……。
お、俺も、日光を綺麗に反射させる頭(ハゲ)は……
う、うぅ……正直……無理なんですぅ……。
107 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:30:12.06 ID:OTI5V8Io
仲間への裏切りに心を痛めながら、
俺が胸の内で悲しみの涙を流していると……

教室後方から……
もの凄い圧力を感じた。

女「…………」

あ、あいつ……。
なんて目で見てやがる……。

男「くっ……」

本能的に、あちらに向いてはいけないと
頭が俺に訴えかける。

あれは……肉食の動物だ。
獲物を見つけた、女彪の目だ……。

担任の代理と言っても、
後はあってもないような連絡事項を簡単に伝えて、
教室を出てしまえば、六限の終わりまでは担任の仕事はない。
108 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:30:38.64 ID:OTI5V8Io
加えて幸いにも、本日はこの教室での授業はないし、
そこまで未知なる恐怖に怯える必要はないのだが……。

女「………ふっ」

何だ……何だあの笑みは……。

久しぶりの武者震い。
あれは確か、幼少の頃の動物園で、
眠っていた猿に声をかけた以来のものだ。

もの凄いスピードで面前に飛んでくるウ●コを見たのは、
あれが最初で最後のことだった。

あれ以降、今でもあの時の恐怖がしばしば蘇る。
最悪にも五年生の修学旅行で夢に出てきて、
寝小便をしてしまったのは、思い出したくない記憶の一つだ。

そう……恐怖を前にした時の、
あの震え……これはまさしく同一のものだった。
109 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:31:05.62 ID:OTI5V8Io
男「……れ、連絡事項は……」

早く、出来るだけ早く済まそう。
あのハンターが、まだ余裕を見せている間に。

生徒A「あれ……どうした先生?」

生徒B「冬なのに……汗びっしょり……」

男「ええと……連絡、連絡事項は……」

男「…………」

男「なんだっけ?」

うおおおおおおおおーーー。
こんな時に物忘れなのかぁぁぁぁー。

女「……フフフ」

既に猛獣は爪を研ぎ始めている。
急げっ! これは一刻の猶予もないぞっ!

俺は職員会議での話を必死に思い出す。

瞬間、頭の中に教頭の発言が思い出された。
110 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:31:31.65 ID:OTI5V8Io
……………。

教頭『そういえば、私の湯のみが割れてたんだが……』

教頭『誰か、知っている人はおらんかね?』

……………。

出て来たの違ぇぇぇぇぇっ!

アンタの湯のみなら、男教師先生が、
ゴルフの素振りの練習やってて壊したんだよっ!

しかも初めは直すと豪語してたのに、
途中でめんどくさくなって……

……………。
111 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:31:58.84 ID:OTI5V8Io
男教師『百均の湯のみ買って、すり替えておいたら』

男教師『案外、教頭バカだから気付かれないんじゃね?』

……………。

とか、言ってました。
一応、確実にバレるので止めはしたが。

生徒E「先生マジでどうしたんだ?」

生徒A「もしかして先生も熱あんじゃないの?」

表情がコロコロ変わるのを見てか、
次第に生徒たちは俺のことを心配し始めた。

そうじゃない……そうじゃないんだよ。

問題はすぐそこさ。
君たちも振り返ればすぐさま分かる。

アイツの──

女「ニヤッ」

……………。
112 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:32:24.17 ID:OTI5V8Io
彼女はさきほどとは違った、
『既にゲームは終了したぜ』と言わんばかりの……
要は、人を完全に見下した笑みを浮かべていた。

そうか、タイムリミットを越えてしまったか……。
現実は本当に厳しかった。

俺は出来るだけ彼女を見ないようにする。
彼女が天にも突き刺さるのではないかと思えるほど、
腕をびしっと高く上げていたのは……見えていないはず。

男「…………」

無視だ無視。
俺は崖があったからといって飛び降りるような、
度胸……いや、無謀さは持ち合わせていない。

男「……んまっ、そんなに大事な連絡は無かったよ」

男「んじゃ、そういうことで……」

そう言って……逃げ出そうとすると……
113 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:33:42.38 ID:OTI5V8Io
女「──先生っ!」

…………。

終わった。あー終わっちゃったよー。
声かけられちゃったよー。無視できないよー。

俺はもうすっかり諦めて、
死の宣告を受ける患者のような気持ちで、
彼女の名前を呼んだ。

男「……なんだね、女くん……」

女「やっと、先生気付いてくれましたねっ」

傍から見れば、美少女が可憐に笑っているように映るだろう。
だが、俺にはそれが獲物を捕らえた獣の笑みにしか見えなかった。

女「先生は、もしかして気付いてないのかもしれないですけど」
114 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:34:08.05 ID:OTI5V8Io
女「今日は、四限にHRがありますよ」

男「あれっ?」

その程度……?
他に何かあったから呼んだんじゃないの?

色々読み違いがあったわけだが、
確かにHRのことは失念していたのは事実。

男「ああ、そうだったか」

男「教えてくれて、ありがとうなっ」

素直に教えてくれたことは感謝したい。

なんだ、良い娘じゃないか。
俺の野生の本能もまったく当てにならないものだ。

女彪ではなく、天使。
彼女は俺のエンジェルだっ!
115 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:34:34.48 ID:OTI5V8Io
安堵のせいで、少し電波的な考えをしてしまう。
こうなってしまうと教師的にはマズいので、

「じゃあ、四限目になっ!」

そう言って、俺は教室から出ようとした……

──が。

女「それで、先生、お話があるんですが……」

男「……へっ?」

お話っ? まだ、何かあるの……?

女「今月の終わりには文化祭ありますよね」

女「それで私たちのクラスは演劇をやることになっているんですが」

男「あ、ああ」

話が全く読めなかった。
116 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:35:01.60 ID:OTI5V8Io
女「女教師先生にも今回、役をもって貰っていて」

女「でも先生が休んでしまったので……練習が」

男「……進まないのか?」

女「はいっ、そうなんですっ」

つまり、彼女が言いたいのは、
女教師の代わりにその練習に付き合えってことか。

……むむ? 別にそれぐらい問題ないのだが……?

男「ん、良ければ彼女の代わりに俺が練習に付き合うよ」

女「ほんとですかっ! ありがとうございますっ」

男子E「うおお、先生かっけぇー」

渡辺「せ、先生……すす、凄過ぎるぜ、そこに痺れる憧れるっ!」

男子C「キモオタは黙ってろよ」

生徒たちからも賞賛の声が。
少し俺は気分を良くしていた。
117 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:35:33.12 ID:OTI5V8Io
男「演技は下手だが、羞恥心はないから練習には付き合えるだろう」

男「まあ、よろしく頼むよっ」

ちょっと上から言ってしまったのは、調子にのったせいか。

女「ほんとうにありがとう、先生っ!」

男「それで、女教師はどんな役なんだいっ?」

男「まさか、木の役とかじゃなよな? もしかして村人AかBか?」

ハハハっと一人笑う。
すると、そんな俺に彼女は笑いながら……

女「──王子です」

男「……おうじ?」

女「うちのクラスは白雪姫をやるんです」

女「で、先生が王子役、私が姫役」

男「…………」
118 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:36:08.79 ID:OTI5V8Io
生徒E「そういえば、今日ってどのシーンの練習だっけ?」

生徒A「あー、たしか姫様が毒リンゴ食べちゃったぐらいのとこ」

生徒B「それってキスシーンのとこだよね」

渡辺「フェイトちゃんとちゅっちゅっしたいよぉーっ」

生徒C「ほんと黙んねえと[ピーーー]ぞ、なぁ?」

俺は既に周りの会話に興味をなくした。
さきほど聞いた一単語を復唱する。

男「……キスシーン?」

女「毒リンゴを食べたお姫様を、王子様がキスして眠りから救う」

女「……って、場面です」

やられた……完全にやられた。
119 :どうやら「ころす」は表示できないみたい [sage]:2010/04/05(月) 17:37:10.73 ID:OTI5V8Io
女「お願いしますねっ!」

彼女はそう言って、満面の笑みを浮かべる。

……ああ、これは天使なんかじゃない。
悪魔だ……黒い尻尾のついた……小悪魔に違いなかった。

……………。
……………。
120 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:38:03.69 ID:ch635cDO
ID:OTI5V8Ioがんばれ
121 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:38:17.89 ID:OTI5V8Io
放課後の教室。
六限終わりのSHRが終わると、
待ってましたと言わんばかりに彼女は席を立った。

そして、教壇で生徒たちを見送っている俺の元へ、
すぐさま駆け寄ってきた。

女「先生ほんと酷かったよねっ、ふふっ」

男「……おい、他の生徒たちがいるぞ」

口調が家での時と同じになっている。
学校での俺と彼女はそこまで親しい関係ではない。
これを聞いた周りの生徒たちからどう思われるか、少し不安だ。

女「別にいいって。誰も気付かないからさ」

男「念には念を入れないと……」

しかし、そんな俺の気持ちを彼女が考慮してくれるわけもなく。
既に少女の頭の中には、ある一つのことしかないようで。
122 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:38:44.06 ID:OTI5V8Io
女「そんなことよりっ」

女「ふふっ、四限のあれ何? 何なのっ?」

やはり、俺の四限での奇行が気になるようだ……。
俺はそれを思い出しただけで、胃が痛くなる。

男「な、何って……」

女「練習始まる前から、そわそわそわそわ」

男「…………」

女「あれだけ羞恥心がないと豪語してた演技も……」

女「──有り得ないくらいガチガチ」

男「……それは悪かった……」

その時の俺は、次にくるであろう、
あるシーンのことで頭が一杯で。

それはつまり──
123 :120 ありがと [sage]:2010/04/05(月) 17:39:33.84 ID:OTI5V8Io
女「で、王子のキスのシーンが始まった」

…………。

女「いつまで待っても顔は近づいてこないし」

女「なんか予期せぬ問題が起きたのかなーって」

女「それで、半目でそっちのほう見ると……」

男「……うぅ……」

女「ちょっと顔下げたところで……ふふっ」

その時の俺の様子を思い出したのだろうか。
少女は会話の途中にもかかわらず、笑い出す。

ああ、盛大に笑ってやってくれ……。
せめて、笑い話で片付けてくれるほうが楽だ。

女「石、みたいに、かた、固まってっ……」

必死に笑いをかみ殺しているせいで、
彼女はうまいように喋れない。

俺は、ただ俯いて……
124 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:39:59.72 ID:OTI5V8Io
男「……それ以上は……」

次にくるであろう言葉を……
聞きたくない一心だった……。

けれど──

女「た、タコ唇で固まるとかっ、ふ、ふふっ」

女「ふはははははっ」

男「……泣きたい……」

いつかこれも、
思い出せばすぐに笑えるような、
そんな思い出になるのだろうか。

そんなことを頭の片隅で少し考えたのだった。

………………。
………………。
125 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:40:25.34 ID:OTI5V8Io
ガチャッ。

男「これでよし」

戸締まりを全て確認したので、大丈夫だろう。
誰もいなくなった教室に鍵をかけた。

夕陽が窓から廊下に差し込み、
俺は空を眺めながら、職員室までの道のりを歩く。

思い出すのは、四限目のHRでの出来事。
思わぬ醜態を教え子たちに見せてしまったが、
今、考えるのはそのことではない。

白雪姫と王子様のキスシーン。
お話が最高潮に盛り上がる、そんな場面。

一度命を失った一人の女性が、
彼女に想いを寄せる男性の愛の力によって生き返る。

あまりにもご都合主義的だ。
でも、だからこそ、見る人の心を打つ。

現実では起こり得ない奇跡に、
何か心弾ませるものを覚えてしまう。

そんな感動的なシーンで……

男「…………」
126 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:40:51.90 ID:OTI5V8Io
──どうしてなのだろうか。

俺が見るに耐えない格好をしてしまったことではない。
一瞬そのせいで、教室が静まり返ってしまったことでもない。

白雪姫のことだ。
偶然、我が家に転がり込んできた家出娘のことだ。

俺は疑問だった。

男「……あの時」

それは恐らく、彼女の心を紐解く鍵の欠片で。
欠けてしまったバズルの1ピースで。

男「どうしてアイツは……」

だからこそ、不思議だった。

あの後、俺をからかって笑顔を見せていた少女が、
何を思っているのかが、その深意が、分からない。

そう。

どうして、彼女はあのシーンで……

──微かに震えていたのだろうか……。

………………。
127 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:41:17.22 ID:OTI5V8Io
?「あのっ、男先生っ!」

階段を降りていると、ふと後ろから声をかけられる。
聞き覚えの無い声。一体誰だろうか。

振り返った先にいたのは、
夕陽を背に浴びた、一人の男子生徒。

顔は凛々しい顔立ち。
一瞬で、スポーツをやっていると分かるような、
絞られた身体が制服越しからも見て取れる。

男「君は……」

俺は頭の中で彼のことを思い出そうとする。
見た記憶は確かにある。では一体どこで──

男「ああー……」

そうだ、思い出した。
彼は……

男「君は、二年B組の……」

男子生徒「はい」
128 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:41:43.94 ID:OTI5V8Io
そういえば、視界の隅に捉えた記憶がある。
授業中は真面目なタイプなので、
そこまで強い印象は受けなかったが……

男子生徒「先生にお話したいことがあるんですが」

よく見ると、とても整った顔立ちをしている。
俺にはないものを多くもっていそうだ。

正直、彼と話しているだけで、
男の尊厳が削げられている気がしてならないが、
教師としては断る訳にもいかず。

男「ん、なんだ?」

男「でもクラスの話なら、明日、女教師先生に話した方がいいぞ」

男子生徒「違います。少し、個人的な話で……」

男子生徒「男先生にご相談したいんです」

男「……ふむ」
129 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:42:09.80 ID:OTI5V8Io
何やら真剣な様子。
俺とは全く縁のない彼だが、
そこまで言うほどの用とは一体何なのだろうか。

男子生徒「実は……」

俺は彼の言葉を待つ。
そして、それが……思いがけないものなのだと……

男子生徒「同じクラスの女さんのことで……」

男子生徒「──ご相談があるんです」

男「…………」

何となく、気付いていた。

………………。
………………。
130 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:42:35.06 ID:OTI5V8Io
部活動の指導やら、早めの帰宅やらで、
数人ほどしか残っていない職員室を俺は彼を連れて歩く。

教頭のデスクの前までくると、
その後ろにかかっている鍵を一つ取る。

男子生徒「……先生、それは?」

男「会議室の鍵だ」

男子生徒「……なんか迷惑をかけてすみません……」

頭を下げ、すぐに謝罪を述べる。
そんな彼を、俺はじっと見つめ……

男「そんなこと気にするな」

君が気にすることではない。
何故ならそれは、俺にとっても都合のいいことだから。

彼が何の話をするのかは分からないが、
それが彼女のことである以上、万全を期したい。

男「こっちだ」

職員室を出て、角を曲がる。
普段は学年会議などで使う教師専用の部屋だが、
使用していない場合は、こうやって面談にも使える。
131 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:43:01.16 ID:OTI5V8Io
会議室の前に着くと、
俺は鍵を入れて、ドアノブを回した。

男「そっち側に座ってくれ」

男子生徒「……あ、はい」

二人着席した後、一つ深呼吸をして、
彼に話を切り出した。

男「……それで、相談というのは?」

初めから直球に。
余計な遠回りはいらない。

男子生徒「はい……女さんのことで」

それは分かっている。
既に聞いたことだ。

心の中で、彼を急かす自分がいる。
そんな気持ちを押さえつけて、
ゆっくりとした口調で、彼に合わせる。

男「同じクラスの女のことだな」

男「その彼女のことで、どういった相談なんだ?」
132 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:43:27.25 ID:OTI5V8Io
すると男子生徒は、顔を俯けてしまい……
次の言葉が中々出てこない。

何を躊躇っているのだろうか。

男「…………」

そして気付く。

俺と彼女の同居についての話ではないのか?
もしや……俺の考えていることは完全な思い違いか?

まさか。

いや、ならば話もつく。

彼は……

男「お前……女が好きなのか?」

男子生徒「────」

黙っていても、その反応だけで理解する。
そうか、彼はその相談をしにきたのか。

俯いていた彼は顔を上げ、
少し情けないような笑みを浮かべて、
やっと口を開いた。
133 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:43:55.81 ID:OTI5V8Io
男子生徒「先生……よく分かりましたね……」

男子生徒「僕、態度に出てましたか?」

男「態度っていうか……」

男「まあ、男の感だな」

高校生の男子がそんな真剣な顔で、
加えて話づらいとなれば、それは恋の話に違いない。

何て言ったって学生生活の重要なイベントは、
第一に恋愛なのだから。

男子生徒「今日、先生がクラスで劇の練習に加わってるのを見て」

男「あれは……情けない姿だったな」

男子生徒「いえ、僕はそんな風には感じませんでした」

男子生徒「普段は週に数回授業をやるだけのクラスで」

男子生徒「急にその中に入って、あれだけ生徒たちと馴染めるのは……」

男子生徒「正直、凄いなと思いました」

男「…………」

考えてもみなかった褒め言葉に、
俺は少し背中がむずかゆかった。
134 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:44:21.47 ID:OTI5V8Io
気を取り直して、話を戻す。

男「……そう言ってくれるのは、嬉しいな」

男「しかし、相談相手は本当に俺でいいのか?」

男「君の中でも、まあ今日のことで印象は悪くないのかもしれないが」

男「こんな話をするほど、信頼されているとは思えない」

男子生徒「ほら、先生」

男「ん?」

男子生徒「授業後の時に……」

男「ああ……」

それだけ大体、理解できた。
恐らく……。

男子生徒「女さんと親しげに話してたじゃないですか」

男子生徒「それで、先生に相談するのが相応しいなと……」

男「そういうことね」

男子生徒「すみません、信頼してないみたいに聞こえちゃいましたか?」

男「んや、そうじゃなくて謎が解けたって感じだ」
135 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:44:47.26 ID:OTI5V8Io
ここにきてあの時の心配が……
形を変えて降り掛かってくるとは、全く想像もつかなかった。

仮に、彼女が親しげに声をかけてこなかったら。
俺が練習の誘いを断っていたら。女教師が風邪をひかなかったら。

果てしなく続く、偶然の連鎖。
その終着点が今の状況だと考えると、
不思議と人生というものが些細なきっかけで大きく変わるのだとわかる。

──それは俺が常に感じていることで。
……一時も、忘れたことはなくて。

彼は本題に入る。

男子生徒「もうお分かりだと思うんですが」

男子生徒「僕は、彼女のことが好きなんです……」

男「そうか」

男子生徒「去年も同じクラスだったんですが」

男子生徒「声をかける勇気もなくて……」
136 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:45:13.65 ID:OTI5V8Io
男子生徒「他の女子となら普通に話せるんですが」

男子生徒「彼女と話すと……やっぱり他の子とは違って」

男「……そういうもんか」

男子生徒「きっかけを待ってたんでしょうね」

男子生徒「受け身でいても何も始まらないって分かってたのに」

男子生徒「何となく、運命みたいのを信じてたみたいです」

男「…………」

男子生徒「でも最近、これじゃ駄目だなって」

男子生徒「来年、同じクラスになれる保証なんてないし」

男子生徒「……色々考えてしまって」

男「それで……君はどうしようと思う?」

俺はできるだけ優しい口調で問いかける。
137 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:45:40.24 ID:OTI5V8Io
男子生徒「告白しようと思うんです」

男子生徒「しかも、できるだけ早くに……明日にでも」

男「……ほう」

それは思い切ったな。
彼がこの決断をするのに、どれくらい悩んだのか。
ある程度は予想もつく。

男子生徒「先生、どう思いますか?」

男「告白のことか」

男子生徒「はい……」

男子生徒「先生は……女さんと仲がいいんですよね?」

男「まあな」

男子生徒「じゃあ、彼女に好きな人がいるかどうかは……」

男「…………」

俺は考える。
アイツの好きな男か……。
138 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:46:06.57 ID:OTI5V8Io
思い出すのは、今日の劇の時の彼女の様子。
そして、一人震えていた少女。

男「いない」

俺は確信していた。

男子生徒「ほんとですかっ」

それを聞いた彼は、一瞬うれしそうな声を挙げる。
だが、すぐに……

男子生徒「でも……僕の告白が成功しなきゃ何の意味もないですね」

一人呟いて、落ち込んでいる。

そんな彼に俺は伝えなければならない。
彼にとっては酷な事実だとは思うが、
相談を受けた以上は、答えてやらねばならない。

男「はっきり言おう」

男子生徒「えっ?」

男「告白はやめとけ」

男子生徒「…………」

確実なことは言えないが、
恐らく彼女は彼が望む返事をしないだろう。
139 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:46:32.11 ID:OTI5V8Io
根拠は何か。
そう判断できる理由は何故か。

勿論、それはただの推測にしかすぎず。
けれども、俺はその確率が高いと確信している。

会議室の中は静まり返った。
少し経った後、彼はおもむろに口を開く。

男子生徒「それでも……」

男子生徒「それでも自分は、挑戦してみようと思います……」

男「…………」

男子生徒「女さんと親しい男先生だから、その忠告は正しいと分かってるんですが」

男子生徒「ここで諦めたら……あとで一生後悔するじゃないかって……」

男「……そうか」

そうだよな。
どうせ失敗するのなら、できるだけ納得の出来る形がいい。
しかもまだ、告白がうまくいく可能性だってあるのだ。

人生で一度も後悔をしない人間なんていない。
誰もが必ずどこかで失敗をし、悔しいと感じる。
140 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:46:58.04 ID:OTI5V8Io
あとはその加減だ。
どれだけ自分がその悔いを認められるかだ。

男「頑張れよ」

男子生徒「はいっ」

男子正当「先生、相談に乗って頂き……」

男子生徒「本当にありがとうございました」

……まっすぐな瞳でこちらを射抜く。

そんな彼を見て、その想いが本気なのだと。
想像以上に、この男子は良い奴なのだと。

最後になって気付いたのだった。

……………。
……………。
141 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:48:10.43 ID:SK./ogAO
142 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 17:48:19.54 ID:OTI5V8Io
以上でひとまず終わり。
あとは>>1が復活するのを待つのみ。

では落ちる ノシ
143 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/05(月) 18:40:32.05 ID:nUlYWms0
144 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/05(月) 19:19:24.59 ID:rIxYBgAO

ホントに来るのかなぁ・・・
145 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 20:45:38.46 ID:Oqeqe6g0

期待して待つ
146 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/05(月) 23:55:16.70 ID:.uPXrYAO
期待
147 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/06(火) 01:04:04.05 ID:NUg0hpI0
VIPのスレが落ちたな
元スレ>>1はここに気づいてるだろうか
148 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/06(火) 06:38:59.25 ID:16Ls3fco
乙。
このスレ立てといてよかった(爆)
だが>>1は気付けるのか…?
不安なんだが
149 :1 [sage]:2010/04/06(火) 07:48:59.11 ID:OT1He.SO
スレ立てありがとうございます。
かなり遅筆ではありますが、
何とか完成まで頑張りたいと思います。
今後とも、よろしくお願いします。
150 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/06(火) 08:07:13.50 ID:BhWExAAO
1きた

待ってます
151 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/06(火) 08:22:26.55 ID:OPb2xBY0
渡辺頑張れw
152 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/06(火) 08:32:17.20 ID:NVfV4QAO
1来た

ゆっくりでも構わんよ
153 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/06(火) 08:37:14.62 ID:vYYiL9M0
ゆっくりで全く構わない
>>1の赴くまま書いてくれ!

楽しみにしてるんだぜ!
154 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/06(火) 09:45:56.04 ID:4glpoas0
うわああぁぁぁ今から仕事だ
155 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/06(火) 10:28:38.05 ID:iu/dMQDO
>>1おかえり、楽しみに待ってるんで自分のペースで頑張ってくれ、応援する

ID:OTI5V8Ioも乙
156 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/06(火) 12:56:44.16 ID:NUg0hpI0
待ってました
これからも待ちます
157 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/06(火) 18:42:25.60 ID:K2RsyEAO
 ぺぺぺク
(´・ω・`)
158 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/06(火) 20:18:04.85 ID:/imApxY0
仕事帰り保守
159 :1 [sage]:2010/04/06(火) 22:20:16.13 ID:OT1He.SO
男「では、お先に失礼します」

職員室で残りの教師達に別れの挨拶をし、
俺は家路につこうとする。

廊下の窓から空を眺めると、
西の太陽は沈みかけ、辺りを黒が覆い隠そうとしていた。

俺はその光景をじっと見つめる。

何秒、いや、何分ほどか。
次第に時間の感覚が狂い始め、
いつの間にか、空は黒に染まっていた。

……………。

暗い夜道を一人歩きながら、
今日の出来事を思い返していた。

俺は迷っていた。

男「…………」
160 :1 [sage]:2010/04/06(火) 22:21:50.89 ID:OT1He.SO
少年の、女に対する恋心を知った時から、
仕事が全く手につかなかった。

無為に時間だけが過ぎて行き、
気が付けば、六時を回る。

原因を何かと考えてみると、
それは少年との会話に他ならず。

最後に受けた彼の印象が、
彼の笑みが、俺の脳裏に焼き付いている。

男「……ッ」

……………。

──『私の目□  時■ なって』

……………。

純粋な恋心。
汚れ一つない、純白色。
161 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/06(火) 22:23:57.74 ID:bNhpf7Yo
 *     +    巛 ヽ
            〒 !   +    。     +    。     *     。
      +    。  |  |
   *     +   / /   イヤッッホォォォオオォオウ!
       ∧_∧ / /
      (´∀` / / +    。     +    。   *     。
      ,-     f
      / ュヘ    | *     +    。     +   。 +
     〈_} )   |
        /    ! +    。     +    +     *
       ./  ,ヘ  |
 ガタン ||| j  / |  | |||
――――――――――――
162 :1 [sage]:2010/04/06(火) 22:26:23.42 ID:OT1He.SO
そんな彼の心に触れてしまったせいか、
さきほどから感情が安定しない。

考えられる原因は一つ。

……俺は、彼に自分の過去を重ね見ている。

男「……ははっ」

俺が? あの少年に?

馬鹿馬鹿しい。
あまりにも滑稽だ。

不釣り合いなんてものじゃない。
彼と俺では、何もかもが違いすぎる。

環境も、状況も、過去も、現実も。

でも、それでも。

あの、真っ白な恋心だけは……
かつての俺が持っていたもので。

俺は……
163 :1 [sage]:2010/04/06(火) 22:27:31.67 ID:OT1He.SO
男「……どうすればいい……?」

正直、迷っていた。

少年の手助けをするか、だ。
少年の、少女への想いに協力するのか、だ。

今、何故か偶然の結果、
少女は俺の家に泊まっている。

彼女の存在によって孤独の餓えを紛らわせてはいるが、
それが長く続くとは到底思えない。

いや、そうじゃない。
あの状況こそ、既にあってはならないものなのだ。

生徒との同居生活に安息など感じている
それ自体が、倫理的に問題であり、
異常に他ならない。

間違っているのだ。
全てが。あの初めの選択が。
彼女を家に泊まらせてしまった、あの決断が。
164 :1 [sage]:2010/04/06(火) 22:28:35.60 ID:OT1He.SO
…………。

……だが、一つ気になることもあった。

男「……アイツは」

……彼女は、一体どう思っているのだろう。
俺との同居生活をどう捉えているのだろう。

ただの体のいい寝どころに過ぎないのか。
或いは彼女自身もまた、この生活に愛着を持ち始めたのか。

でも、それが……
仮に後者であったとしても。

男「……いつかは終わる」

今回は、一時の偶然が転がり込んで来ただけ。
この生活がこれからずっと続く訳もない。

必ず終わりがやってくるのだ。

たとえ、俺が一ヶ月という限度を設けなかったにせよ、
彼女はじきに本当の家へ帰らなければならないだろう。
165 :1 [sage]:2010/04/06(火) 22:32:25.66 ID:OT1He.SO
あの娘想いの母親のことだ。
我慢の限界もそろそろ近づいている可能性だってある。

だから。
これがいいタイミングなのかもしれない。

男「……だな」

少年の恋を後押しして、
そのついでに彼女を家へ連れて帰らせよう。

ここが、大事な決断だ。
前のように、間違ってはならない。

後で後悔しても、
過去だけは変えられないのだから。

男「…………」

俺はこの同居生活を──

1.終わらせる
2.続ける

>>168
(ただし、連投は不可)
……………。
……………。
166 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/06(火) 22:32:45.84 ID:S7t2Tp2o

167 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/06(火) 22:39:37.97 ID:3jHJsLMo
断然2
168 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/06(火) 22:39:47.93 ID:GFyUwjso
169 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/06(火) 22:40:52.25 ID:3jHJsLMo
・・・え?
170 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/06(火) 22:41:43.43 ID:GFyUwjso
しまっっったあああああああああああ
押し間違えたあああああああああああ
171 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/06(火) 22:45:09.54 ID:FXbHVgo0
おい




おい
172 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/06(火) 22:48:36.19 ID:1azUx6AO
>>168[ピーーー]
氏ねじゃなくて[ピーーー]
173 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/06(火) 22:48:41.69 ID:I4ke29wo
ここで安価とな
174 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/06(火) 22:50:33.83 ID:8nP9FyYo
トゥルーエンドっぽくていいじゃないか
終わらせてまた始まれば問題はない
175 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/06(火) 23:05:15.23 ID:pHi5J3Eo
>>168
おまえは何をしてるんだ
176 :1 [sage]:2010/04/06(火) 23:05:38.13 ID:OT1He.SO
【少ないですが、とりあえず今日はここまでです、すみません】
【量は日によってまちまちになるとは思いますが】
【その分、毎日来ますのでよろしくお願いします】
177 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/06(火) 23:06:33.26 ID:pHi5J3Eo
>>176
把握した
178 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/06(火) 23:08:46.49 ID:bNhpf7Yo
焦らなくていいぞ 乙
179 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/06(火) 23:09:46.76 ID:1azUx6AO
>>176
180 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/06(火) 23:20:07.53 ID:OPb2xBY0
焦るなよー

これで君は修造だ!
181 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/06(火) 23:30:02.24 ID:fJUvIAYo
乙です
明日も楽しみだ
182 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/06(火) 23:58:01.49 ID:BhWExAAO
乙でした
183 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/07(水) 00:00:18.11 ID:64InmO.o
>>176

今日見にきてよかったわ
184 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sega]:2010/04/07(水) 00:03:35.90 ID:Pf654Gso
>>176
乙カレー
185 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/07(水) 00:48:23.53 ID:/1Qr3QDO
乙!
>>168は間違えて1を押したって事は本当は2の展開がいいんだよね?

ということで2の方向で進めてね>>1さん
186 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/07(水) 00:53:42.41 ID:YIPuWd.o
おつ〜

>>185
むしろ1やってから2をやって欲しい
187 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/07(水) 01:42:40.64 ID:ru8wpcAO
おつ
誰か>>168より前のセーブデータを
188 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/07(水) 08:26:54.11 ID:PB6YfwAO
>>187
>>1から読んでくださいっ><
189 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/07(水) 12:06:37.70 ID:W2fwpKA0
てか1の展開のほうがいいでしょうよ
190 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/07(水) 14:21:05.10 ID:28SeeEk0
1でよかったよ
191 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/07(水) 14:29:10.88 ID:0KTHUZgo
女が悪いほうに転ばなければ1でいい
192 :1 [sage]:2010/04/07(水) 15:09:59.67 ID:z3EA6ISO
[1を選択]

家への足取りは重かった。
原因は分かっている。
しかし、それを認めたくない自分もいる。

葛藤。
心の中の軋轢。

目の前を自転車が通り過ぎる。
そこに乗っているのは、一人の学生。
練習着を羽織っていた。

部活動も終わる時間か。
何の用事もない少女は、
とっくに家に着いていることだろう。

もちろん、腹を空かせてだが。

不思議とその様子を思い浮かべて、
笑みがこぼれる。

男「…………」
193 :1 [sage]:2010/04/07(水) 15:10:36.87 ID:z3EA6ISO
そしてすぐにそんな自分に嫌気がさす。

もう終わるのだ。終わらせるのだ。

心にそう強く言い聞かせて。
重い足取りを必死に動かした。

……………。

我が家につく。
階段をゆっくりと上り、
扉の前へ。

俺は一つ息を吐いて、
鍵を差し込み、ドアを開ける。

誰かの優しい声が……

──確かに聞こえた
194 :1 [sage]:2010/04/07(水) 15:11:24.52 ID:z3EA6ISO
………………。
…………。

女教師「先生、男先生っ」

女教師「もう無視しないで、返事して下さいよっ」

男「…………」

女教師「……あーもうっ……」

女教師「って、あっ!!」

女教師「もしかして男先生っ、寝てるんじゃっ……!?」

男「起きてるよ……」

女教師「あーもう、やっと返事してくれた……」

女教師「なんで無視するんですか……私悪いことしました?」

男「いや……ちょっと考え事をな」
195 :1 [sage]:2010/04/07(水) 15:11:45.90 ID:z3EA6ISO
女教師「考え事って……」

男「…………」

女教師「…………」

女教師「で、何を考えてたんですか?」

男「……ああ」

男「ちょっと、昔のことだ」

女教師「……昔ですか……」

男「……悔やんでも仕方ないのにな」

女教師「…………」

男「何故かいつも、考えてしまうんだよ」

女教師「……男先生」

男「ん?」
196 :1 [sage]:2010/04/07(水) 15:12:18.82 ID:z3EA6ISO
女教師「もういいんじゃないんですか」

男「…………」

女教師「それがどんな過去のことは私は分かりませんけど」

女教師「時には、どうにもならないことだってありますよ」

男「……そうかな」

女教師「きっと、そうです」

男「……ああ」

男「多分、そうなんだろう」

男「俺に出来ることはなかった」

男「俺がすべきことはなかった」

女教師「…………」

男「……でも」

男「ふと思い出してしまう……」
197 :1 [sage]:2010/04/07(水) 15:12:57.33 ID:z3EA6ISO
男「そしてあの時、違う選択を選んでいたら……」

男「…………」

女教師「…………」

女教師「行きましょう、先生」

男「……ん」

女教師「……時間が、解決してくれますよ」

男「……ははっ」

男「……そうだといいな」

──俺は知っている

時間は誰にでも平等で、留まることをしらない。
巻き戻すことも、取り戻すこともできない。
198 :1 [sage]:2010/04/07(水) 15:13:42.39 ID:z3EA6ISO
女「はいっ、生徒たちが待ってますよっ」

女「急ぎましょっ」

男「おう……今日も頑張るか」

──俺は知っている

時がいかに残酷かを。
それが、人を苦しめ続けることがあるのだと。

男「…………」

俺は廊下を振り返る。
授業の開始を伝えるチャイムが鳴ったせいか、
人一人いなかった。

誰かの俺を呼ぶ声が。
聞こえたら良かったのに……。

振り返った先に……
199 :1 [sage]:2010/04/07(水) 15:14:21.06 ID:z3EA6ISO
男「……ッ」

やめろ。
それ以上は、考えるな。

心にそう言い聞かせて、
俺は生徒の待つ教室へ歩く。

あれから、時は止まらず進み続け、
もう三年目の冬が過ぎる。

アイツは……
女は……


──どこに消えてしまったのだろうか……


〜BADEND〜
200 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/07(水) 15:19:26.51 ID:YIPuWd.o
やっぱりBADだったのかー

2もやってほしいでつ
201 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/07(水) 15:29:33.40 ID:caIsy7Mo
ここは書き込めるって忘れてた。

BADですか〜。なら2はきっとHAP(ry
202 :1 [sage]:2010/04/07(水) 16:01:19.35 ID:z3EA6ISO
【今回はBADの選択肢でしたが】
【今後、場合によっては展開が変わるものもあります】
【元々はVIPのスレの頃からやりたかったのですが】
【いかんせん、時間が迫られていたので……】
【今回の選択肢は二つだったので、自動的に2に入ります】
203 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/07(水) 16:20:55.33 ID:7Wh5SF6o
なんかよくわかんないけど2もやってね
204 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/07(水) 16:36:27.77 ID:5R2.VgwP
え。なにこれ。
205 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/07(水) 17:05:41.88 ID:8RvuS.oo
選択肢とか出さなくていいから普通に進めてくれ・・・
だれもバッドエンドなんて望んでないから・・・
206 :1 [sage]:2010/04/07(水) 17:18:09.60 ID:z3EA6ISO
>>205
分かりました
207 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/07(水) 17:23:39.35 ID:CiWak2AO
前スレ>>1来てるじゃん
待った甲斐があった
208 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/07(水) 17:55:16.57 ID:RISB8wso
BAD...
209 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/07(水) 18:14:07.97 ID:/dkyrns0
エンドからつづきからっ
210 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/07(水) 18:56:17.93 ID:29i2gAAO
( ・∀・)
211 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/07(水) 19:23:19.60 ID:TQkHg2DO
wktk
212 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/07(水) 20:29:00.65 ID:gq2fBgAO
楽しみにしてるぞ
213 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/07(水) 22:59:30.96 ID:.COk4D60
まだですか?
214 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/07(水) 23:03:24.63 ID:/1Qr3QDO
バッドエンドとか誰得だよ
215 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/07(水) 23:04:12.66 ID:28SeeEk0
書き貯めてるんだよね!
216 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/07(水) 23:12:34.45 ID:L6DCWfco
安価だろうがバッドエンドだろうが>>1が一番モチベーション上がる書き方で書いてくれ
外部にくると新規が少なくなってだんだん書かなくなることが多いから
217 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/08(木) 00:53:34.42 ID:UlMykyco
BAD読んだ上で・・・
さらに、期待!
支援だっ!!
218 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/08(木) 08:50:30.50 ID:dPxxfFk0
>>1
がんばれ〜
219 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/08(木) 09:52:23.23 ID:IpWoyPk0
>>1
期待してるよ〜
220 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/08(木) 09:53:18.92 ID:IpWoyPk0
>>1
期待してるよ〜
221 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/08(木) 16:21:00.26 ID:RKWO95Io
sだsd
222 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/08(木) 18:31:51.25 ID:2wz8R.DO
>>214
俺得だよ
223 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/08(木) 22:28:45.44 ID:hlEOAAc0
期待して待つ!!
224 :1 [sage]:2010/04/08(木) 23:55:21.48 ID:zxk8KMSO
すみません、今日は書く時間がありませんでした。
明日には必ず少しでも投稿したいと思います。
時間はかかってしまいますが、最後まで完成させる意志は固いです。
最後に、今日は申し訳ありませんでした。
225 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/09(金) 00:20:33.74 ID:ipQQPwSO
>>224
すげぇ立派な書き手だわ!
明日はハッピーエンド期待してるぜ
226 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/09(金) 00:33:14.85 ID:1Ir3p2Qo
がんばってくれ
応援してるわ
227 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/09(金) 02:41:18.90 ID:qLCzY6AO
>>224
ガンガレ
228 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/09(金) 08:43:48.50 ID:TcjdigUP
待ってるぞ
229 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/09(金) 10:00:07.55 ID:xlsqngQ0
>>224
期待してまってるww
そしてもっと楽しませてくれww
230 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/09(金) 11:20:42.70 ID:odRDo.DO
期待してる

>>229
お前はsage覚えろよ
231 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/09(金) 15:39:23.59 ID:G0Vb66U0
>>230
こうですか><
って別人だがな。

>>1まってるぜ
232 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/09(金) 20:29:25.13 ID:ZVqDKf.0
楽しみに待ってる!

時間がかかってもいいから、是非とも完結させて欲しい
233 :1 [sage]:2010/04/09(金) 23:15:57.80 ID:bIcZLUSO
今帰ってきたので、これから書いていきます。
ちなみに明日は休みなので、出来るだけ進みたいです。
234 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/09(金) 23:18:31.77 ID:RUhSQ2s0
>>233
待ってた。

期待してるぜgんgr
235 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/09(金) 23:44:39.73 ID:Yn0FcoAO
よしこい
236 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/10(土) 00:19:27.94 ID:nD4EAY.o
製作速報だし慌てんでもいいぞ
237 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/10(土) 10:19:50.95 ID:FVqHIP60
>>233
ゆっくりでもいいんで期待しとります
238 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/10(土) 10:33:46.97 ID:G0zv/oAo
超期待
239 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/10(土) 12:17:19.17 ID:qA9jmM.0
ふひ待機
240 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/10(土) 17:42:41.29 ID:6yzsQ0U0
今日>>1くるといいなぁ
241 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/10(土) 18:27:11.11 ID:ZxcTDUAO
まぁ存分に書いてくれ
242 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/10(土) 22:51:58.76 ID:/ds2pUSO
製作速報なんだし、急がなくていいからクオリティだけは保ってくれ
243 :1 [sage]:2010/04/11(日) 00:10:25.14 ID:44KNEQSO
[2を選択]

我が家に着くと、すぐさまリビングの方から
足音が聞こえてきた。

女「おかえりっ!」

満面の笑みを浮かべて、俺を迎える少女を見た時、
それが誰かと被った。

遠い過去の記憶だ。
思い出したくのない過去の断片だ。

自然と口元が緩む。
それが自らへの嘲笑だと気付いていた。

男「ただいま」

女「もう、帰ってくるの遅すぎっ!」

男「仕事が長引いてな……」

女「こっちは腹ぺこでもう死にそうなんだからっ」

あまりの予想通りの反応で、
笑いが漏れる。
244 :1 [sage]:2010/04/11(日) 00:11:19.90 ID:44KNEQSO
女「あっ、なんで笑うのっ!」

男「そんなに元気なら、あと数日は死なんよ」

女「だめ、あと一時間も待てない」

男「お前は口を開けば、『腹が減った』ばかりだな」

男「ちょっとばかし色気の一つやふた……いてっ」

直撃するのは、彼女の空手チョップ。

少女は両頬を膨らませて、
心外だと言わんばかりのご様子だった。

学校での彼女とは違う。
顔の上に被された仮面は完全に脱げ、
そこからは年相応の少女が伺える。

初めは分からなかった。

ただの優等生だと。
何年かには一人いる、綺麗な生徒なのだと。

漠然と上辺だけで判断していた。
いや、中身を知るだけの機会すら無かった。
245 :1 [sage]:2010/04/11(日) 00:12:15.78 ID:44KNEQSO
女「レディーに向かって、その言いようはひどいと思う」

男「レディーというか、まだガールだな」

きっかけは何だったのか。

全ての始まりはどこだったのか。

平穏と進むはずだった日常が、
綻びはじめたのはいつだったのか。

考えるまでもない。

すぐに思い出せる。

そう、あれは……

女「……むー」

男「言いたいとがあるならはっきりどうぞ」
246 :1 [sage]:2010/04/11(日) 00:13:38.88 ID:44KNEQSO
女「……いいわ」

女「そんなに私の魅力的なバディーを見たいのなら」

女「幾らでも見せてあげるっ」

男「……なぜそういうことになる……」

女「私の身体はガールじゃないからですっ」

男「俺はそういうことが言いたいんじゃない」

男「精神的に大人の女性がそうだと言いたいんだ」

女「ふんっ、そんなこと口で言っても……」

女「正直、見たいんでしょっ?」

男「…はっ、そんなもん見てもどうにもならん」

女「ふふっ、強がっちゃって」

女「はっきり言って私、ちょっとばかしスタイルには自信があるの」

女「まあ見て、先生が判断してよ」
247 :1 [sage]:2010/04/11(日) 00:14:50.54 ID:44KNEQSO
女「レディーなのか、ガールなのかを……ねっ!」

スルスル……

男「ちょっ……お前こんなとこで何脱いでるんだっ!」

女「うるさいわねっ、証明よ!」

なんとかして、服を脱ごうとする彼女の両手を掴む。
これ以上は、色々問題だ……。

女「ちょっとっ! 止めないでよっ!」

男「止めないわけあるかっ!」

女「でもそれじゃ、私が……」

男「いいよっ! お前はれっきとしたレディーだっ!」

女「…………」
248 :1 [sage]:2010/04/11(日) 00:15:55.93 ID:44KNEQSO
男「俺が保証するからっ! ちょっとからかっただけさっ!」

女「……ホント?」

動きを止めて、
綺麗な両目でこちらを見つめてくる。

男「……ホントだ」

すると彼女は怒った顔を和らげて。

女「……うん」

女「なら、良かった」

心底、ほっとしたような表情を浮かべた。

………………。
249 :1 [sage]:2010/04/11(日) 00:17:39.18 ID:44KNEQSO
あの肌寒むかった夜刻。

溜った仕事をある程度片付けて、
撮り溜めた映画でも見ようと帰ってみると、
一人の少女が家の前で泥酔していた。

初めはどんな女なんだと、多少苛立も覚えたが、
よく見るとその少女は自分の教え子に他なら無くて。

とにかく家の中に連れ込んで、酔いをさまさせ、
話を聞いてみると、何やら複雑な問題を抱えていることが分かった。

……きっとそれがきっかけだった。

全てはここから始まった。

だからこそ、気付かなければならなかった。

彼女を家へ泊まらせる決断した以上、
もう見逃すことは出来ない。
250 :1 [sage]:2010/04/11(日) 00:22:16.55 ID:44KNEQSO
ピースが足りないのだ。
彼女の闇を紐解くには必要なのだ。

あとは、きっかけだ。

あとは、手がかりだ。

全ては、あそこから始まった。
物語は、異常は、全てあの日から始まった。

既に分かっていた。
気付いていた。

それなのに、俺は見て見ぬ振りをした。

この生活には笑いがあり、温かさがある。
それは人にとってかけがえのないもので。
俺にとっては、長年忘れていたもので。
251 :1 [sage]:2010/04/11(日) 00:24:16.04 ID:44KNEQSO
正直、失いたくなかった。

今の俺は、心底この日常に幸せを感じていた。

でも……少女は違う。

彼女は俺とは違い、これからの未来がある。希望がある。
それを奪ってしまうほど、自分は愚かではない。

……だから、終わらせる。

全てはあの日。

どうして彼女は……

──酔っていたのか

初めの問題をまずは片付けよう。

……………。
……………。
252 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/11(日) 00:26:49.12 ID:jlqFOZA0
キテルーーーーーーーーーーー!!!
253 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/11(日) 01:02:24.52 ID:W2p1ifYo
とにかく支援だっ!!
254 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/11(日) 01:42:29.35 ID:Pc8YNgSO
>>1キテルーーーーーーーーーーーー
待ってたよ!!!
255 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/11(日) 02:34:51.47 ID:j9x7B6k0
終わりか?
256 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/11(日) 04:54:22.03 ID:NUFtwjk0
あれ?ねた?
257 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/11(日) 10:00:12.67 ID:IeHwPpo0
>>1楽しみにしとります
258 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/11(日) 10:41:07.77 ID:i.4YrLko
キテル-----


つC

259 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/11(日) 11:50:48.88 ID:hWrutNMo
放置プレイか…
嫌いじゃないぜ
260 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/11(日) 13:14:05.82 ID:QiXK9zk0
C
261 :1 [sage]:2010/04/11(日) 19:33:01.28 ID:44KNEQSO
二人で遅い夕飯を食べた後、
ふと彼女が口を開いた。

女「あ、そうだ」

男「どうした?」

女「今日は私が食器洗うよ」

俺は一瞬、耳を疑う。

男「……聞き間違いかな……」

女「……失礼ね」

女「それならもう一度だけ言って上げるわよ」

女「食器洗いは私がやるわ」

男「…………」

女「食器洗いは私がやるわっ」

男「何度も繰り返さなくても大丈夫だ」

女「心ここにあらずって感じだったじゃん」

男「いや……そうか……ふむ」
262 :1 [sage]:2010/04/11(日) 19:33:59.56 ID:44KNEQSO
共同生活の一歩は、助け合いから始まる。
一方が施すだけでは、共同とは言えない。
それはただの居候に過ぎず、長くは続かない。

女「そんなにびっくりすること?」

男「ん、まあな」

俺から彼女に対して、家事の分担を願うつもりはなかった。
一時の期間のみ、教師という立場で彼女を預かる。
そこには責任がある。ただし、彼女に義務はない。

彼女自身も理解しているものだと思っていた。

男「理由を聞いてもいいか」

女「理由って……」

女「手伝いたいって思ったから」

女「それが理由ってことじゃ、駄目?」
263 :1 [sage]:2010/04/11(日) 19:34:49.03 ID:44KNEQSO
男「そうか」

彼女の中でこの生活が違うものへと変わった。
そんな前触れのような気がしていたが、
俺の単なる思い過ごしなのかもしれない。

純粋に生活の助けになりたいと考えたのか。

男「よし、じゃあお願いしよう」

女「なんでそんなに偉そうなの」

男「一家の主だからな」

女「ワンルームの主ね」

小さい主だった。

………………。
………………。
264 :1 [sage]:2010/04/11(日) 19:38:41.58 ID:44KNEQSO
彼女が食器洗いをしている間、
ひげ剃りクリームを買うために、一人家を出た。

向かう先は、少し歩いたところにあるコンビニだ。

店に入った瞬間、客の訪問を知らせる音楽が鳴る。
奥の方から現れたのは、一人の女性。

いや、少女か。

店員「いらっしゃいませー……って……」

店員「えっ?」

何やら怪訝の様子だったが、俺は雑貨のコーナーへ向かう。
すぐに目的のものを見つけたが……

男「……そうだ」

そういえば、酒のつまみがない。
これから作るのも微妙な時間。
即席のものを一つか二つ、買っておこう。

レジへ向かった身体を回転させ、
奥のおつまみコーナーへ向かう。

すると、誰かに肩を叩かれた。
265 :1 [sage]:2010/04/11(日) 19:39:16.97 ID:44KNEQSO
店員「やっぱりそうだ」

男「……ん?」

店員「男先生でしょっ?」

男「そうだが……君は……?」

振り返った先にいたのは、
さきほどレジにいたアルバイトの少女。

名前はすぐに出てきた。

男「……女生徒じゃんか」

女生徒「先生、気付くの遅い」

男「いや、いつもは学校の制服姿しか見んもんでな」

女生徒「どう? 似合ってるっ?」

男「仮に似合ってると言われて、お前は嬉しいか?」

女生徒「ははっ、嬉しくないね」
266 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/11(日) 19:39:17.02 ID:J0x6LXEo
( ゚∀゚)ο彡゚
267 :1 [sage]:2010/04/11(日) 19:39:52.45 ID:44KNEQSO
男「可愛い制服とは……お世辞にも言い難いな」

女生徒「そういうのでバイト選んでるわけじゃないからね」

男「やはり時給か」

女生徒「まあね、この時間は結構いいし」

男「明日も学校だぞ」

女生徒「シフトが毎日入ってるわけじゃないから、大丈夫」

男「そうは言っても、つらいだろ」

女生徒「一日ぐらいは平気だよ」

男「んー、教師的には微妙だ……」

女生徒「ははっ」

突然、女生徒は笑う。
268 :1 [sage]:2010/04/11(日) 19:40:37.09 ID:44KNEQSO
男「なんだ、どうした?」

女「いや、ごめん」

女「なんか男先生の言い方が変だったからツボって」

男「言い方がか?」

女生徒「うん」

女生徒「『駄目』じゃなくて、『微妙』なんだなーって」

男「あー……まあな」

学園でアルバイトは認められていない。
特別な場合を除いて、見つかった場合は何らかの処罰がある。

他の生徒は勿論のこと、教師に見つかればアウトだ。

彼女が言いたいのはそういうことだろう。
269 :1 [sage]:2010/04/11(日) 19:41:11.85 ID:44KNEQSO
女生徒「男先生的には、バイトはOKなの?」

男「OKではない」

男「でも、駄目なわけでもない」

女生徒「どういうこと?」

男「金を稼ぐってことを、今の内に勉強するのは良いことだ」

男「何も知らないお嬢さんよりは、好感がもてる」

男「でもな」

男「だからといって、学生の本分から外れるのは駄目だ」

男「例えば、水商売とか」

女生徒「……戻れないね」
270 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/11(日) 19:43:51.33 ID:QiXK9zk0
ktkr
271 :1 [sage]:2010/04/11(日) 19:50:26.03 ID:44KNEQSO
男「そうだ、戻れない。一回嵌ると、底は意外に深い」

男「だから、そういうのは許容できない」

女生と「ふーん……なんか達観してるんだね」

男「達観じゃない、放任してるってだけだ」

男「分かってるのか?」

女生徒「え、何のこと?」

男「責任が付きまとうってことだ」

干渉しないってのはそういうことだ。
生徒側からすれば、いちいちルールが規定されているのは、
気分がいいものではないし、押し付けられるのは腹が立つ。

けれども、ルールの元を辿れば、
大半が生徒のことを考えて作られているものであって、
自由であることが得てして良いとは言い難い。

女生徒「で、こんな時間に先生は何を買いに来たの?」

男「何だと思う?」
272 :1 [sage]:2010/04/11(日) 19:51:00.33 ID:44KNEQSO
女生徒「エロ本」

男「…………」

女生徒「18禁成年雑誌」

男「言い換えるな」

女生徒「男の人だからしょうがないよっ」

男「だから違うって」

女生徒「えー、つまんないなー」

男「おいおい……」

女生徒「やっぱ男は獣じゃないと」

男「…………」

ドン引きだった。

……………。
273 :1 [sage]:2010/04/11(日) 19:51:35.04 ID:44KNEQSO
女生徒「はい、おつりとレシート」

男「ありがと」

女生徒「先生、また来てね」

男「ん、近いからたまに様子見に来る」

女生徒「同じ曜日のこの時間帯にいるから」

男「了解」

女生徒「じゃあね」

男「ん。帰る時は気をつけるんだぞ」

女生徒「はーい」

手を振っている彼女を尻目に、
俺は自動ドアへ向かう。

そして、思いついたようにゆっくりと振り返った。

男「……そういえば」
274 :1 [sage]:2010/04/11(日) 19:52:32.28 ID:44KNEQSO
女生徒「ん、何?」

男「お前って、彼氏いるのか?」

女生徒「えっ……告白? 禁断の愛?」

男「それはない」

断言した。

女生徒「おかしいな……逆に振られた感が……」

男「で、どうなんだ?」

女生徒「どうだと思います?」

男「……最近別れた男が一人いる」

女生徒「えー何それー?」
275 :1 [sage]:2010/04/11(日) 19:53:31.59 ID:44KNEQSO
男「正解は?」

女生徒「ぶーっ、残念でしたー」

女生徒「今まで付き合った相手はいませーんっ」

男「……そうなのか」

女生徒「ほんと無いよねっ、こんな良い女をほっとくなんてさ」

男「急がなくてもいい。君の価値は次第に上がる」

女生徒「えっ? どういうこと?」

男「大人になれば分かるよ、じゃあな」

そうとだけ言って、俺は店を出た。

………………。
………………。
276 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/11(日) 20:22:29.49 ID:hpODnoU0
見てるよ
277 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/11(日) 21:36:12.75 ID:LDpeLyA0
俺も見てるぜ
278 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/11(日) 21:40:06.26 ID:uSC0MhE0
支援
279 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/11(日) 22:02:06.75 ID:kvnIqjA0
支援
280 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/11(日) 22:23:35.90 ID:zYRLBE20
前スレから一気に読んできた。
面白い支援。
281 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/11(日) 22:45:39.16 ID:hpODnoU0
続きはまだですか?
282 :1 [sage]:2010/04/11(日) 22:46:24.24 ID:44KNEQSO
早朝。
自然と目を覚ます。

男「……雨か……」

窓の外を見ると、疎らに雨が振っている。
今日は一段と冷え込む一日になりそうだ。

いつものように、目覚まし時計で時間を確認。
布団を畳んで、歯磨きを済ます。

昨日のうちから用意しておいた可燃ゴミを、
料理をする前に出しに行っておく。

男「今日は……」

ハムサンドでも作るか。

レタスをちぎり、キュウリを切る。
アクセントにトマトなんかも合うだろう。

着々と準備をする。
壁にかかった大きな時計を見ると、
時刻は既に七時を回った。
283 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/11(日) 22:49:33.72 ID:hpODnoU0
キター
284 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/11(日) 22:50:17.73 ID:44KNEQSO
男「……よし」

そろそろ、お姫さまを起こさなければならない。

仕切りのカーテンを引き、
そこには未だぐっすりと眠る、綺麗な少女が。

男「…………」

そう言えば……。

思い出すのは昨日の夕方。
一人の少年が、俺の前に現れた。

彼はこの少女のことが好きだと言った。
そして、告白すると言った。
この想いを伝えねば、後悔するとも言っていた。

純粋にして、一途なそんな恋心。

それが今日、潰えるか、それとも叶うのか。

男「さて……どうなるだろう」

答えはまだ、誰も知らない。

………………。
………………。
285 :1 [sage]:2010/04/11(日) 22:50:50.18 ID:44KNEQSO
女教師「男先生っ」

男「んー……」

女教師「まさか寝てるんですかっ」

男「ああ、悪い……ちょっと寝てたかも……」

職員室。
空き時間でのんびりしていると、
興奮し気味の女教師が俺を眠りから覚まさせた。

女教師「駄目ですよっ、寝たら死にますよっ」

男「ここは雪山か」

女教師「雪山なら先に死ぬのは私ですね」

男「ははっ……笑えない」
286 :1 [sage]:2010/04/11(日) 22:51:18.64 ID:44KNEQSO
女教師「そんなことよりっ」

男「──体重が増えちゃったんですっ」

女教師「違いますっ! もうっ、ふざけないで下さいっ」

男「ちょっとした冗談なのに……」

女教師「ほら、これ見て下さいよっ」

彼女が手に持っているのは、一冊の本。
どこかで目にしたことがある、大手の男性雑誌だった。

男「なんだ、生徒から没収でもしたか」

女教師「いいえ、これは男教師先生のものなんですけど」

男「はは、またあの人何かやらかしたのか」

男「中身がエロ本とかそんなノリだろ」

女教師「……ありえそうなのが怖いです」
287 :1 [sage]:2010/04/11(日) 22:51:56.27 ID:44KNEQSO
女教師「が、今回はまたちょっと違います」

男「ん?」

女教師「ちょっと気になったんで、借りたんです」

女教師「ほら、このページ」

彼女が差し出してきたページは、雑誌のグラビア。
モデルの女性がポーズをとっている写真が幾つも載っている。

そのモデルに……何やら見覚えが……。

男「ありゃ……」

女教師「ねっ? 分かりましたよね?」

見間違えるはずもなかった。
今朝も寝顔を見たばかりだった。

雑誌に載っている女性は、一緒に生活している女だった。

男「……はぁ……すげえな」

これでもう、読者モデルなんてレベルではない。
既に全国区だ。
恐らく事務所が売り込みに出たのだろう。
288 :1 [sage]:2010/04/11(日) 22:52:23.17 ID:44KNEQSO
女教師「凄いですよね……」

男「現役の教え子がまさか、な」

女教師「同性の私から見ても、確かに可愛いからなあ……」

女教師「ほら、こっち見て下さいよ」

男「ふむ」

女教師「何が『ふむ』なんですか……」

女教師「これだから男の人って……」

男「ちょ、ちょっと待て……何か要らぬ誤解を……」

女教師「言い訳しなくても、わかりますよー」

女教師「このスタイルに釘付けですもんねー」

男「……否定はしない」

女教師「…………」

下衆を見るような目で見られた。

しかしこれで……
289 :1 [sage]:2010/04/11(日) 22:52:58.97 ID:44KNEQSO
男「少々、問題が起きるな」

女教師「えっ?」

男「この雑誌はいつ発売したんだ?」

女教師「えっと、今日だと思いますけど……」

男「じゃあ、もう情報が生徒に回ってるかもな」

女教師「確かに……」

男「恐らく昼頃には、二年B組は凄いことになるだろう」

女教師「見物人が大量発生ですか……」

男「最低でも数日は続くな」

女教師「はぁ……担任としては重荷ですね……」

男「頑張れとしか言いようがない」

女教師「休みたいなぁ……」

男「こないだ休んだばかりだろうが」

女教師「えーん」
290 :1 [sage]:2010/04/11(日) 22:53:43.29 ID:44KNEQSO
喋りながら俺は一つのことを考えていた。
それは多くの人間に囲まれるであろう……
少女の心配ではなかった。

彼女に告白しようと決意した少年のことだ。

彼にとって、今回のことは……
明らかにタイミングが悪すぎだ。

それでも彼は、今日、決着を付けるだろう。
一度決めた思いを、そう容易く曲げることは出来ない。
なんせ、それは一年半ほど悩んだ末の決意だったのだから。

俺は写真の中の少女をじっと見つめる。

彼女が口元に浮かべるのは、優しい微笑み。
恐らく見た者の心を揺さぶることになるだろう。
それほど、彼女は美しく、そして可憐だった。

けれども俺は……そんな彼女より……
家で見る、あの子供っぽい笑顔のほうが
……何倍も綺麗だと思った。

………………。
………………。
291 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/11(日) 23:19:27.96 ID:lIb3/kAO
今北
すげぇ面白い
292 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/11(日) 23:36:24.64 ID:QpjVsgDO
続きまだかよ
293 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/11(日) 23:37:47.12 ID:hpODnoU0
いらないと分かっていても紫煙する
294 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/11(日) 23:44:01.31 ID:keY6puE0
いいね
295 :1 [sage]:2010/04/12(月) 00:02:24.99 ID:fdJbKMSO
俺の予想は的中した。

見事、二年B組は人という人で溢れ帰り、
授業中にまで抜け出す奴も出る始末。

結果的に休み時間は、教師たちの見回りが行われ、
彼女の教室を警備員のようにガードすることになる。

特にひどかったのは、上級生。
既に受験を諦めた生徒たちの執念はそれはそれは凄まじく。
あらゆる手を使って侵入を試みた。

けれども、教師側も負けてはおらず。
担任である女教師は、職員室ではああ言ったものの、
熱心な仕事ぶりは目に見張るものがあり。

バスケ部エースにして、
引退後は受験戦争にすぐさま蹴落とされた
三年E組の金子司との一騎打ちは、後世に語り継がれることだろう。

なんて……

男「馬鹿なことを考えてる場合か」
296 :1 [sage]:2010/04/12(月) 00:02:49.76 ID:fdJbKMSO
六限の授業も終わり、生徒たちを家へ送り返した後、
職員室では、教師達の雑談が何となく始まっていた。

男教師「はぁ……しかし今日は疲れたな」

男「ですね……」

男教師「また明日も続くと思うと……ぞっとするよ」

女教師「そんなこと言っちゃ駄目ですよっ」

女教師「私たちが彼女を助けなくてどうするんですかっ」

男教師「元気だね……」

ありあまる元気だった。

男「じゃあ、自分はこの辺で失礼します」

男教師「えっ……もう帰っちゃうの?」

女教師「今日ぐらい飲みに行きましょうよ」
297 :1 [sage]:2010/04/12(月) 00:03:21.64 ID:fdJbKMSO
男「いや、ちょっと疲れててね」

男教師「あー……確かにな」

女教師「えーっ! なんででですかぁー!」

男「うっぷ……」

女教師「ちょっと、男先生っ!」

女教師「いまこっち見て、吐きそうな顔しましたねっ!」

男「……声のボリュームが一々でかいんだよ……」

男教師「俺も……帰ろう……」

女教師「そんなーっ!」

委員長「もうっ! 腑抜けの男子達ねっ!」

何故か最後、女教師が中学生の頃の委員長に被って見えた。
予想以上に、疲れているみたいだ……。

……………。
……………。
298 :1 [sage]:2010/04/12(月) 00:03:53.19 ID:fdJbKMSO
職員室を出た後、
偶然、廊下で話題の渦中にいる少女と出会う。

女「あ、先生……」

男「うっす」

見るからに疲れ切った様子。
少し顔が青みを帯びているのが気になった。

男「大丈夫か……って聞くのも変だな」

女「うん……」

男「今日は大変だったろ」

女「こんなことになるなんて」

女「ちょっと想像してなかった……」

男「雑誌に掲載されることは知ってたのか?」

女「それはね……多少は聞いてたけど」

女「ここまで話題になるほど大きな雑誌だとは知らなかったよ……」

男「まあ、女性には馴染みがない名前かもしれんな」
299 :1 [sage]:2010/04/12(月) 00:04:23.08 ID:fdJbKMSO
女「ちょっとアルバイトの感覚だったんだけどね……」

女「思わぬ影響に、私もびっくり」

男「そうか……」

気の聞いたことを一言や二言思いつけばいいのだが、
こういう時に限って、俺の頭はうまく働かなくて。

男「ええと……」

何を言ったらいいのだろうか。
今の彼女に対して相応しい言葉は何なのか。

いくら考えても答えは見つからず。

すると、彼女は周りをぐるっと伺い、
誰もいないことを確認して。

……こう言った。
300 :1 [sage]:2010/04/12(月) 00:04:59.45 ID:fdJbKMSO
女「先生」

男「……ん?」

女「今日は帰るの早いの?」

男「……今日はもう帰る」

女「えっ……いつもに比べて、全然早いじゃん」

男「家でゆっくりしようと思ってな」

女「そうかぁ……なら……」

女「私も一緒に帰って良いかなっ?」

男「えっ?」
301 :1 [sage]:2010/04/12(月) 00:05:39.05 ID:fdJbKMSO
それは、笑顔だった。
疲れが見て取れるその顔が、綺麗に咲いたのだ。

写真の中のあの笑みではない。

この生活が始まって、次第に彼女と親しくなって……
そしてふと見せてくれた、あの年相応の笑顔。
純粋なそれは、俺の心をいつも掴んで放さなくて。

言いたかった。

言ってしまいたかった。

──そうだな、一緒に帰ろう

……と。

けれども、未だ脳裏に焼き付いているのは、
昨日の少年の表情。一途な想い。

それに触れてしまった、少しでも、知ってしまった。

だから、俺は……
302 :1 [sage]:2010/04/12(月) 00:06:16.17 ID:fdJbKMSO
女「……先生?」

男「なぁ」

女「あ、うん」

男「もう少し、お前は学校にいろ」

女「え……で、でもっ」

男「夕飯作って待ってるから、な?」

女「あーうん……やっぱ、そうだよね……」

女「一緒に帰ったら……誰かに見られるかもしれないもんね……」

男「…………」

項垂れる少女を見ると、胸の奥が痛んだ。

女「うん、了解」

女「おいしい料理作って待ってるんだぞ?」

男「ははっ、期待しとけよ」
303 :1 [sage]:2010/04/12(月) 00:07:04.88 ID:fdJbKMSO
女「ふふ、じゃあね」

男「ん、またな」

そう言って、俺は踵を返す。
彼女の視線を背に浴びながら、一人廊下を歩く。

男「女」

女「なにっ?」

男「人を好きになるって……」

男「とっても勇気がいることだよな」

女「……え?」

男「家で待ってるから」

女「ちょっと、先生、それって、どういう意味……」

彼女の言葉は続いていたが、俺はそれには答えないで。
背の方に片手を振りながら、階段へと消えた。

雨の音が……何故か深く耳に残った。

………………。
………………。
304 :1 [sage]:2010/04/12(月) 00:08:56.28 ID:fdJbKMSO
【今日はここまでです】
【皆さん、お疲れ様でした】
305 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/12(月) 00:13:29.39 ID:wMgCHvwo

おもしろいよ
306 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/12(月) 00:14:25.88 ID:qJk5GUDO

明日もよろ
307 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/12(月) 00:18:57.29 ID:c4ZnMXc0

みてたよ
308 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/12(月) 00:21:26.82 ID:RqzRUBoo
乙っす
明日も書いてくだしあ
309 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/12(月) 00:28:15.02 ID:61yNUoE0
乙でした
続きを楽しみにしてる
310 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/12(月) 00:31:14.38 ID:7aC6RsAO

嫌な予感が…
311 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/12(月) 05:42:08.67 ID:qmij.XIo
312 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/12(月) 07:18:41.30 ID:0BH6cJgo
なぜか萌えた。
_ノ乙(、ン、)_
期待してるぞ
313 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/12(月) 22:41:11.47 ID:Im3m67E0
待ってる
314 :1 [sage]:2010/04/12(月) 23:12:21.26 ID:fdJbKMSO
傘をさして、家までの道を一人歩く。
空は未だ曇っており、朝より強い雨が地面へと降り注ぐ。

ブーブー。

ズボンのポケットから、携帯の振動音が聞こえる。
俺は傘を左手に持ち替えて、右手で携帯を開いた。

男「……ッ」

携帯に表示された名前は、俺の心を抉った。
時から取り残された残滓が、今、表へ現れる。

迷う。

出るか、出ないか。

かつての俺なら、すぐさま後者を選択していただろう。
迷う必要すらない。無意識のうちに身体が動いた。

しかし、今は。
何故か、取ってもいい気がした。

男「…………」
315 :1 [sage]:2010/04/12(月) 23:12:50.48 ID:fdJbKMSO
携帯はまだ振動し続けている。
相手側の気持ちが、嫌でも伝わってくる。

用件は大体、予測できた。

何を聞かれるのか、何を尋ねられるのか。

どちらにせよ、俺の答えは既に決まっている。
何年も前から、変わることはない。

だから、電話に出る意味は見つからなかった。
過去への忘れ物を、未だ取りにいくつもりもない。

けれど。

気が付けば俺は……携帯を耳に当てていて。
ゆっくりと……通話のボタンを押す。

男「……もしもし」

懐かしいような。温まるような。
向こう側から、そんな声が聞こえた。

………………。
………………。
316 :1 [sage]:2010/04/12(月) 23:13:45.31 ID:fdJbKMSO
人を好きになるのは人一倍の勇気が必要で。

相手に想い人が現れるかもしれない。
相手の想いが決して自分に向かれることはないかもしれない。
そんな恐怖が、常に潜んでいて。

だけど、人は人を好きになる。
懲りずにまた、人を恋しいと願う。

少年は一人の少女に恋をした。

その恋は、誰がどう見ても純白だ。
汚れ一つないその想いは、応援したい気を起こさせる。

そんな一途な恋心。
それは、かつての俺が同じく胸に抱いたものに他ならず。
彼と自分を重ね合わせていることは確実だった。
317 :1 [sage]:2010/04/12(月) 23:14:40.59 ID:fdJbKMSO
少女の話をしよう。
彼女は確かに人知れず大きな闇を抱えている。
それが何のか、今の俺にはまだ掴み切れていない。

ただ一つ分かっていることもある。

演劇の練習の際、どうして彼女は震えていたのか。
あれほど無邪気で悪戯好きな少女が……
助けを求めるように、微かに震えていたのは何故か。

俺は少年に伝えた。

君の想いは……実らないと。

根拠はない。
直感がそうだと伝えるだけだ。
318 :1 [sage]:2010/04/12(月) 23:15:13.29 ID:fdJbKMSO
男「…………」

窓の外では、雨がさきほどより一層……
激しく降り続けていた。

窓際に寄りかかりながら、
俺は彼女の帰りを静かに待った。

どんな答えが訪れるのか。
予測はできても、確定された未来を見ることは不可能だ。
何かがきっかけで、状況が一変する可能性だってある。

少女と学校で別れてから……
──ちょうど2時間が経過していた。

………………。
………………。
319 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/12(月) 23:15:13.39 ID:bf4ciX.o
キターC
320 :1 [sage]:2010/04/12(月) 23:15:44.70 ID:fdJbKMSO
いつの間にか時は流れ……時刻は、九時を回る。

男「……遅い」

明らかにおかしかった。
仮に少年の用事が時間がかかったとしても、
ここまで遅れるのは異常だ。

胸の中では、不安という不安が渦を巻き、
いてもたってもいられなくなった俺は……
傘を持って、家の外へ飛び出した。

………………。
321 :1 [sage]:2010/04/12(月) 23:16:57.35 ID:fdJbKMSO
既に外は暗闇に覆い隠され、街灯の明かりだけを頼りに、
俺は学校までの道のりを歩く。

男「……連絡先……聞いとけば良かったな」

彼女の携帯番号を俺は知らない。
基本的に彼女は家にいたし、連絡があれば学校で伝えれば良かった。

完全に想定外だ。
しかし、今、悔やんでも仕方がない。

男「……行き違いになってないといいが……」

口ではそう言ったものの、
本当はそんな心配をしているわけではなかった。
322 :1 [sage]:2010/04/12(月) 23:17:32.21 ID:fdJbKMSO
最悪のケース。
もしかしたら……と、そんな思いが頭から離れない。

早く、早く。

気持ちが焦る。
彼女の安否を早く確認したい。

一度、家へ電話をかけてみる。
十回ほどコールを鳴らしたが、反応はなし。
まだ彼女は……家に帰ってはいない。

男「……くそっ」

どこだ。
どこにいるんだ!

………………。
323 :1 [sage]:2010/04/12(月) 23:18:00.42 ID:fdJbKMSO
学校に着いた。
門は既に閉じている。

中を確認したが、誰も見当たらない。
ここに、彼女はいないようだ。

………………。

女教師に電話をかける。
挨拶を軽く済ませ、女の緊急連絡先を聞く。

不審がられたが、今は緊急時だ。
誤解などこれから幾らでも解くことが出来る。

まずは彼女と連絡を取りたい。

教えてもらった番号に電話をかけるが、
電源が入っていないとの通知。

そろそろ俺も本気で焦り始めた。

………………。
324 :1 [sage]:2010/04/12(月) 23:18:24.23 ID:fdJbKMSO
駆ける。
雨の中を必死に駆ける。

学校の周辺を当ても無く探す。

明らかに、効率が悪かった。

男「はっ……はっ……はっ」

雨がさらに強く降り注ぐ。
手元の傘は、既にその意味を無くしていた。

顔にかかる水滴で、前が思うように見えない。
街の光が視界でぼやける。

寒い。季節は冬だ。
身体が次第に震え始める。

それでも俺は駆けた。

そろそろ保護者や警察に電話をかけたほうがいいと、
心の誰かが訴えかける。
325 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/12(月) 23:19:27.73 ID:kiiQ1kAO
つC
326 :1 [sage]:2010/04/12(月) 23:21:24.48 ID:fdJbKMSO
誰が訴える?

お前は誰だ?

答えはすぐに見つかった。

──過去の自分だ

………………。

意識が朦朧としてきた。
雨で視界も遮られる。頭がガンガンしている。

今、自分がどこにいるのかもわからなかった。
ただ闇雲に街中を走る。転ける。立つ。走る。

誰かが俺に声をかけた。
声からして酔っぱらいだろうか。
心配をしているというよりは、からかっているのだろう。

相手にする気力も無い。
次に向かおうとすると、肩を掴まれた。
振り払う。相手のわめき声が聞こえる。無視。

男「……はぁ……はぁ……はぁ……」

いない。
いない。

どこにもいない。
327 :1 [sage]:2010/04/12(月) 23:21:51.83 ID:fdJbKMSO
最悪のケースって何だ?

いやだ。考えたくない。
消えろ。頭の中から消え失せろ。

………………。

──『私の目□  時■ なって』

………………。

忘れたはずだ。鍵をかけたはずだ。
それなのに、過去の断片が俺の思考を邪魔する。

俺は逃げる。
彼女を探す。

俺は逃げる。
彼女はどこだ。

俺は逃げる。
ここはどこだ。

俺は逃げる。
俺は逃げる。

………………。
328 :1 [sage]:2010/04/12(月) 23:22:16.69 ID:fdJbKMSO
時間の感覚は狂っていた。
家を飛び出して、もう何分経ったのか……
あるいは何時間経ったのか……。

気が付けば、雨は止んでいた。

未だ意識ははっきりとはしないが、
正常に判断が出来るほどには戻っていた。

辺りを見渡すと……

男「……家の近くか……」

知らない間に、馴染みのある道にいた。

携帯を見る。
時刻は、十一時。

限界だ。タイムリミットだ。

これはもう俺の力ではどうにもならない。
外部の助けがいる。

……いや、もっと前に連絡する必要があった。
街中を一人で探そうとしたって、それは無理がある。
329 :1 [sage]:2010/04/12(月) 23:22:39.98 ID:fdJbKMSO
男「……あぁ……」

どうしてこうなったのだ……。
何が間違いだったのか……。

同じことの繰り返し。
何度も悔やみ苦しんだのに、結果は同じ。

男「……ッ」

帰ろう。
一旦、家へ帰ろう。

俺はそう言い聞かせて、家へと向かった。

………………。
330 :1 [sage]:2010/04/12(月) 23:23:04.56 ID:fdJbKMSO
我が家の前まで着き、階段を上がる。
これからのことを考えると、頭が突き刺すように痛くなる。

身体が重かった。
もう動きたくないと訴える。

しかし目の前の現実からは逃げ出せない。
過去からは逃げられても、今はすべきことがある。

電話だ。
学校、保護者、警察への連絡だ。

背きたくなる事実がそこにはあるだろう。
けれども俺はそれに向き合わねばなるまい。

震える身体を押さえつけて、
俺は部屋のある階まで上がる。

何となしにそちらに目をやった。
何の期待も、希望もしていなかった。

それなのに──
331 :1 [sage]:2010/04/12(月) 23:23:35.09 ID:fdJbKMSO
男「……え」

初め、目を疑う。
自分の作り出した妄想かとも考えた。

けれど。

女「せ、先生……」

彼女のか細い声を聞いた時、
これは現実なのだとはっきりと理解できた。

びしょ濡れの彼女は、俺の家の前で……
膝を抱えて、座り込んでいた。

それは、あの日の光景と被るように。

………………。
………………。
332 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/12(月) 23:28:12.95 ID:bf4ciX.o
C
333 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/12(月) 23:29:00.81 ID:5k/O9JUo
見てる
334 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/12(月) 23:43:43.57 ID:61yNUoE0
待ってました
335 :1 [sage]:2010/04/13(火) 00:00:37.45 ID:eRYawoSO
【とりあえず今日はここまでで】
【また明日来ます】
336 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/13(火) 00:06:07.26 ID:8.C9f96o
wktkして、明日を待つよ
337 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/13(火) 00:55:38.36 ID:lfokywAO
なんという焦らしプレイ・・・
338 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/13(火) 01:06:44.73 ID:rJlRi7Mo
おいおい焦らしかよ…
339 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/13(火) 01:27:10.69 ID:3cq7vkwo
>>1
ドSすぎだwwww
340 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/13(火) 01:34:46.30 ID:qtrCxDEo
ちょww
いいとこで止めすぎだろww
(0゜・∀・)ワクワクテカテカ(0゜・∀・)ワクワクテカテカ(0゜・∀・)ワクワクテカテカ(0゜・∀・)ワクワクテカテカ(0゜・∀・)ワクワクテカテカ
(0゜・∀・)ワクワクテカテカ(0゜・∀・)ワクワクテカテカ(0゜・∀・)ワクワクテカテカ(0゜・∀・)ワクワクテカテカ(0゜・∀・)ワクワクテカテカ
(0゜・∀・)ワクワクテカテカ(0゜・∀・)ワクワクテカテカ(0゜・∀・)ワクワクテカテカ(0゜・∀・)ワクワクテカテカ(0゜・∀・)ワクワクテカテカ
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341 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/13(火) 08:56:49.72 ID:Wwg5BYgo
くああああああああ
342 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/13(火) 08:57:19.39 ID:pHAR/4w0
wktk
343 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/15(木) 17:51:33.81 ID:1s7ojsIo
なおった?
344 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/15(木) 18:02:30.76 ID:6YPcmhEo
な ぜ そ こ で 止 め た
345 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/15(木) 18:29:38.43 ID:IweqI5U0
あ、繋がった。
346 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/15(木) 18:40:46.29 ID:Oz28LADO
復活したか
347 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/15(木) 18:45:41.08 ID:7Wdxxus0
復活した良かった
348 :1 [sage]:2010/04/15(木) 20:02:12.67 ID:aI09rASO
バスタオルで身体を拭き、服を上から下まで取り替える。
そして、冷蔵庫から冷えた缶ビールを一本取り出し、
そのまま喉へ流し込んだ。

男「……ふぅー」

耳をすませば、風呂場から水しぶきの音が。

部屋の前で座り込んでいた少女は、
俺以上に身体を雨で濡らし……
なによりも、目の周りが赤く腫れているのが気になった。

すぐさま語り出そうとする彼女を遮り、
俺は無理矢理、風呂場へ向かわせた。

高まった感情を落ち着かせるため。
彼女の話をしっかりと受け止めるため。

みっともない姿を生徒に見せるわけにはいかない。
時間を置くということが、今の俺には必要だった。
349 :1 [sage]:2010/04/15(木) 20:03:00.13 ID:aI09rASO
……二十分ほどが経っただろうか。

彼女が風呂からやっと出て来た。
バスタオルを首にかけ、それで濡れた長い髪を乾かしている。

少女は目の前にやってくる。
未だ腫れぼったい眼で、俺をじっと見つめる。

……一度、唾を呑み込んだ。

心が落ち着いていることを確認して。
俺は彼女に向かって口を開く。

男「とりあえず……座ろう」

女「……うん」

……少女の話が、始まる。

………………。
350 :1 [sage]:2010/04/15(木) 20:03:47.01 ID:aI09rASO
女「どこから話したらいいのか、正直分かんない」

女「だから……」

女「とりあえず、はっきりと言うね」

女「私……」

女「……恋愛って大嫌い」

女「……いつのことだったかなあ」

女「気がついた時には、男の人が恐ろしくて」

女「昔は少し近づかれただけでも、身体の震えが止まらなくて」

女「でも、中学の終わりぐらいからは自然と馴れてきて」

女「今みたいに普通に会話は出来るようになったんだけどね」

女「……それでも、少しでも身体が触れそうになると……」

女「無意識のうちに震えが止まらない……」
351 :1 [sage]:2010/04/15(木) 20:04:14.62 ID:aI09rASO
女「相手が誰だとか、ほんと関係ないの」

女「もしかしたら……先生も気付いてたかな?」

女「傷つけちゃってたらごめんなさい」

女「はは……でも先生のことだから私なんて眼中にないね」

女「……それで、つまり」

女「演劇練習の時に、震えちゃったのはそういうこと……」

女「先生がわざとあんなことしてくれたおかげで」

女「正直、かなり助かった……」

女「ありがとう……本当にありがとうね……」

女「そして、からかっちゃってごめんなさい……」

女「……ええと、なんか照れくさいね」
352 :1 [sage]:2010/04/15(木) 20:04:52.33 ID:aI09rASO
女「どこまで話したっけ……ああ、身体の震えとこか」

女「だから私、男の人が怖くて恐ろしくて」

女「男女が想い合うなんて、ほんと気持ち悪かった」

女「前に先生には言ったと思うけど」

女「私って、父親のこと何も知らないんだ」

女「いつも思ってた」

女「なんで私にだけ二人の親がいないのかって」

女「周りのお父さんとか見るたびに、いつも羨ましいって思ってた」

女「それがどこでおかしくなっちゃったのか分からないけど」

女「気が付いたら、男性は恐怖の対象で」

女「色々、原因を考えたけど……」

女「これと言ったものも見つからなくて……」

女「けど、最近思うのは……」
353 :1 [sage]:2010/04/15(木) 20:05:47.67 ID:aI09rASO
女「父親がいないという現実から逃げるために、必要だったのかなって」

女「男性に恐怖する自分は、父親なんていらなかった……」

女「そうやって自分で、無意識のうちに正当化してるんじゃないかなって」

女「……本当はどうかは分からないけどね」

女「何となくそれが一番近い気がしたんだ」

女「あー……話が脱線しちゃった」

女「それで、今まで何度か私、告白されたことあるんだけど」

女「そう言った理由で、全部断ってきたんだ」

女「大体は他所のクラスとか、あまり話したことない人とか」

女「だから、断るのもそんなに大変じゃなくて」

女「私の上辺だけ判断してるんだなぁっていつも思ってた」

女「でもね……」

女「今日は違ったんだ……」
354 :1 [sage]:2010/04/15(木) 20:06:47.92 ID:aI09rASO
女「正直、驚いて言葉が出なかった……」

女「名前は出さないけど、その人は私のよく知ってる人で」

女「去年から同じクラスの人で……みんなからの信望も強くて」

女「思ってもみなかった……」

女「先生と別れた後、唐突に声をかけられて」

女「彼は……迷わずはっきりと、私に言った……」

女「その時、私、どんな顔してたんだろ……」

女「何を言ったらいいのかわからなくて、パニクって……」

女「それなのに彼の目はずっと私のことを逃がさないで……」

女「分かったの、伝わってきたの」

女「彼の本気の想いが、私を大事に思っている心が」

女「それが分かっちゃって……さらに分からなくなっちゃって……」

女「気が付けば、彼は笑って」
355 :1 [sage]:2010/04/15(木) 20:07:30.50 ID:aI09rASO
女「『困らせちゃって、ごめんね』って……」

女「私……何も言えなかった……」

女「断りの返事すら言えなかった……」

女「謝りたいのは私のほうなのに……私……いやだ……」

女「こんな自分……本当に、いやっ!」

女「……なんで?」

女「……ねぇ、なんでなの?」

女「私、もしかして病気なの……?」

女「どうして、恋愛が怖いんだろ……?」

女「わかんない……こんな風になりたいわけじゃなかったのに……」

女「もう、どうしていいのか分からなくて……」

女「気が付けば、雨の中を呆然と歩いてて……」

女「結局最後は先生の家に戻るなんて……滑稽だよね……」

女「……ねぇ、先生」
356 :1 [sage]:2010/04/15(木) 20:10:28.91 ID:aI09rASO
女「私……わたし……」

女「……もう、こんなのやだよ……」

女「……普通に、なりたい……」

女「……人を好きになったり……愛しいと思ったり……」

女「そんなあたりまえのことを……経験してみたい……」

女「……このまま一生……」

女「……こうやって人の想いに怯えるなんて……」

女「……わたし……いやだっ………」

女「………う……」

女「……ううっ……」

女「うぅぅああぁぁ……」

………………。
357 :1 [sage]:2010/04/15(木) 20:10:57.19 ID:aI09rASO
少女の目から大粒の涙が、溢れ出す。
俺はそれを、ただじっと見つめていた。

既に嗚咽で言葉を続けることが出来ない。
顔を伏せて、必死に声を抑えようとしているようだが、
彼女の思い通りにはいかないようだ。

男「…………」

特に言うことも無かった。
言う意味も、必要性も、感じなかった。

少女は語りたかったのだ。
胸の奥にくすぶっていたものを、吐露したのだ。

未だしゃくり上げている少女を寝床まで連れていき、
彼女が寝るまで、隣で座っていた。

誰かの温もりが恋しくなる時もある。
それが今、彼女には必要なもので。

しばし時間が経過した。
いつの間にか少女は眠ったようだ。
疲れ切った顔が……今はとても穏やかだった。

俺は考える。
358 :1 [sage]:2010/04/15(木) 20:11:54.95 ID:aI09rASO
彼女が震えてしまう理由。
彼女が恋愛を恐れる理由。

考えても考えても答えは見つからない。
少女の言う通り、
いなくなった父親が関係しているのだろうか。

男「……ただ」

それより、気になることがあった。

あれは確か昨日のこと。
些細な言い合いで、彼女が服を脱ごうとした時。

男「俺は確かに、彼女の手を掴んだはずだ……」

それなのに少女は震えていなかった。
動きを止めて、こちらをじっと見つめてきた。

もしかして。

俺はここで一つ仮説を立てる。

そして、それが正しければ……
彼女の震えに……解決策があるかもしれない。

一筋の希望の光が、確かに見えた気がした。

………………。
………………。
359 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/15(木) 20:20:14.12 ID:7Wdxxus0
再開紫煙
360 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/15(木) 20:25:36.31 ID:Oz28LADO
C
361 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/15(木) 20:48:01.59 ID:FSaB4UDO
キター!!
362 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/15(木) 20:48:39.25 ID:CGpyqB.o
ずっと待ってた!この時を!!!
363 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/15(木) 20:58:55.01 ID:R1aHlEY0
おおおおおおお!!
364 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/15(木) 21:34:30.43 ID:PeTx65Io
続きが気になってそわそわしっぱなしだったぜ
365 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/15(木) 22:09:12.60 ID:0tOx.sDO
ざ・わぁるどっ!
366 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/15(木) 22:24:23.26 ID:oTPvaPso
終わるのはやくねえか
367 :1 [sage]:2010/04/15(木) 22:34:49.09 ID:aI09rASO
朝、目が覚める。

男「いてぇ……」

頭が痛い。昨日雨に打たれたせいだろうか。
横になっていたい気持ちを抑えつけて、俺は起き上がる。

身体を軽く動かして、何となしに窓の外を眺めた。
雨は降っていないものの、今もまだ曇り空。
今日も一段と冷え込む一日になりそうだ。

?「……んんぅ……」

男「?」

ふと、カーテンの向こう側から声が聞こえる。
それは明らかに少女のものに違いなくて……。

ザザッ。

男「おい、どうし──」

女「……はぁ……はぁ……はぁ……」
368 :1 [sage]:2010/04/15(木) 22:35:58.73 ID:aI09rASO
慌てて仕切りを引くと、そこには……
汗を大量にかいて、苦しそうに悶えている少女がいた。

見るからに、熱がある。

女「……はぁ……はぁ……」

女「……うぅ……ん?」

女「 あぁ、せんせー……」

彼女は目の前の俺の存在に気付く。
苦しそうに息を吐きながら……

女「……おは、よう……」

男「……ッ」

……彼女は静かに笑う。

その笑みは本当に痛々しくて……。
俺のための精一杯の笑みで……。

一瞬、自分が何をしたらいいのか、
……分からなくなった。
369 :1 [sage]:2010/04/15(木) 22:37:17.23 ID:aI09rASO
男「……しっかりしろ」

しっかりしなければならない。

今、彼女が頼れるのは俺だけだ。
俺を信用しているからこそ、彼女は笑顔を見せたのだ。

その期待に、その信頼に、
俺が応えなければ、それは……。

男「……ちょっと、待ってろ」

まず第一に。

足りない頭を必死に動かして、
俺は台所へと向かった。

……………。
370 :1 [sage]:2010/04/15(木) 22:38:28.69 ID:aI09rASO
学校への連絡は簡単に済ませた。
まずは自分が休む旨を伝え、その後、少女に担任へと連絡をさせた。

彼女のことに関しては、初め連絡無しでも良いかと思ったが、
もし担任の女教師が彼女の母親に電話をかけるとなると、
これはまた厄介な話になりそうで。

熱でうなされている少女に無理を言って、
電話をかけてもらった。

今は、身体を布団でしっかりと温めて、
おでこの上には冷えたタオルが置かれている。

女「……ふぅ……ふぅ……」

まだ息の音は荒い。
市販の風邪薬は飲ませたが、
最悪、病院に行く必要が出るかもしれない。

男「…………」

とりあえず、今は様子を見ることだ。
これ以上彼女の容態が悪化するようなら、次の策を考えるようにしよう。

俺は彼女のすぐ横で座っていた。
苦しそうな少女をじっと見つめる。
371 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/15(木) 22:38:46.18 ID:/cby8x.o
C
372 :1 [sage]:2010/04/15(木) 22:39:38.94 ID:aI09rASO
意味はない。
俺が側にいることで、彼女の容態が回復するわけでもない。
それでも、それでも……だ。

女「……はぁ……はぁ……」

男「……俺は、ここにいるからな」

聞こえているのだろうか。
少女に耳には届いているのだろうか。

彼女がふと目を覚ました時、
視界に俺がいることで、少しでも安心するのなら。

男「……頑張れ……」

人を看病するなど……何年ぶりだろう。

少女が俺と暮らすようになって。
確実に……何かが変わっていた。

………………。
373 :1 [sage]:2010/04/15(木) 22:48:27.01 ID:aI09rASO
【今日はここまでです】
【金土日でいけるとこまでいきたいなあと思ってますが】
【どうなるか自分にも分からないです】
【あと予定では、来週のどこかで終わるはずです】
【最後の部分は一気に投下したいので、数日空きの日を頂くと思いますが】
【詳細はまた後日改めます】
【最後までお付き合い頂けれは幸いです】
374 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/15(木) 22:52:02.28 ID:WHyfiao0
おっつ
375 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/15(木) 22:52:49.19 ID:FSaB4UDO

楽しみにしてる
376 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/15(木) 22:54:57.60 ID:Uqvr9cDO
乙です。
377 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/15(木) 22:57:39.20 ID:dd.qvbQP
いいね
378 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/15(木) 22:58:25.61 ID:/cby8x.o
まってるぜ
379 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/15(木) 23:04:40.84 ID:PY.A892o
オツ!
380 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/15(木) 23:32:26.53 ID:IweqI5U0
乙ー。
381 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/15(木) 23:43:03.53 ID:7Wdxxus0

ずっと待ってる
382 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/15(木) 23:56:42.40 ID:YMsVroAO
383 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/16(金) 01:23:29.31 ID:86Fj7cA0
おつ
384 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/16(金) 01:46:35.04 ID:osoDwsQo

是非とも、最後まで頼む!
385 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/16(金) 12:02:38.07 ID:1qSAeM20
乙!
面白いので最後までよろしくです
386 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/16(金) 14:22:42.97 ID:fU4yLmAo
乙です
387 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/16(金) 18:23:50.56 ID:lIVDURco
乙!
来週楽しみにしてるb

それにしても、鯖落ちの原因って何なの?
388 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/16(金) 18:29:51.60 ID:dvpsQcDO
毎月恒例カード残額切れじゃね?
389 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/16(金) 18:30:48.25 ID:lIVDURco
thx
スレ汚しすまそ
390 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/16(金) 23:03:13.02 ID:1ZBX0sDO
早く書けよ
391 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/16(金) 23:05:27.53 ID:skhBqiko
いや、毎度毎度乙なんだけどさあ、

毎度毎度いいところでとめるよなあ貴様ァ!!!
392 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 01:34:04.50 ID:ivG1P6DO
きさまぁ
393 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 02:05:51.58 ID:30GoqPo0
まさきぃ!
394 :1 [sage]:2010/04/17(土) 02:06:54.85 ID:f9VvtQSO
連絡が遅れて申し訳ありません。
今日は時間がとれず、進むことが出来ませんでした。
明日は今日の分も頑張りたいと思うので、よろしくお願いします。
最後に、遅筆で本当に申し訳ないです。
395 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 02:36:15.75 ID:ib1FPo20
まったりゆこうぜ!
396 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 04:17:14.32 ID:SUrgb2AO
焦らずリアルを大切に
397 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 14:11:57.74 ID:nMa/4gA0
>>394
最後まで書かない人もいっぱい居るけど
律儀に書けない旨をレスしてくれる人は珍しい

俺は>>1を応援するぞ
398 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 15:51:20.83 ID://89qgAO
>>397
下げるならちゃんとさげようぜ
399 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 17:56:46.84 ID:nMa/4gA0
>>398 
さーせんwwww
400 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 20:52:21.22 ID:nsT6wgwo
おい次に「遅筆」って自虐したらぶっ飛ばすぞ
401 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 21:05:04.12 ID:/jJJ0VQo
だぶりゅーだぶりゅーだぶりゅー
402 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/17(土) 22:22:47.18 ID:O6iJbcE0
>>400
お前を、か? 
403 :1 [sage]:2010/04/17(土) 23:21:40.85 ID:f9VvtQSO
男「お腹は空いてるか?」

女「……あー……」

女「……今は……いい……」

男「体力回復のためにも食べたほうがいいと思うが」

男「でも、無理することはない」

女「……ごめんね……」

男「別に気にするな」

時刻は三時を回ったところだった。
少女の熱は一時期より下がったものの、回復にはほど遠い。

おかゆを入れた茶碗を台所のカウンターに置き、
俺は彼女のタオルを取り替える。
404 :1 [sage]:2010/04/17(土) 23:22:39.78 ID:f9VvtQSO
女「うっ……つめたい……」

男「ひんやりして気持ちいいだろ」

女「うん……なんか一瞬、すかっとする……」

女「でもまたすぐ……ぼぉーっとなる……」

男「頻繁に取り替えてやるよ」

女「……ありがと、先生」

男「まあ、これぐらいお易い御用さ」

女「それだけじゃないよ……」

男「どういうことだ?」

女「私のために、学校……休んだんでしょ……?」

男「んー……まあな」

女「……ホント迷惑かけて、ごめんなさい……」

男「何だ、辛気くさい顔をして」

男「病人なんだから、されて当然みたいな態度でいいんだよ」

女「でも……」
405 :1 [sage]:2010/04/17(土) 23:23:39.15 ID:f9VvtQSO
男「お前をここに泊まらせるって決めたときから」

男「こういう状況だって考えたさ」

男「だから、俺には責任がある」

女「…………」

見間違いか。一瞬、少女の顔が歪んだ気がした。
そんな彼女を見て、何故か俺は……

男「……勿論、責任だけじゃないぞ」

女「……えっ?」

男「朝、うなされているお前を見て」

男「何も考えずに、ただ、今日は一緒にいようって思った」

男「正直、心配だったんだ」

男「義務とか責任とか……そんなこと抜きにな」

女「……ふ、ふーん……」
406 :1 [sage]:2010/04/17(土) 23:24:42.39 ID:f9VvtQSO
男「だから、今日ぐらいは目一杯甘えていいぞ」

女「……ふふ、なにそれ」

男「言葉通りだ。普段は聞かないことも今日は特別だ」

女「……なんでも、いいの?」

男「俺が出来る範囲内ならな」

男「あと、お前の病気が悪化しないのが条件だ」

女「……ぶぅー、意外に制約多いよー……」

男「文句言うと、聞いてやらんぞ」

女「……うぅ……ひどい……」

男「で、何かして欲しいことでもあるか?」

女「…………」

女「……うんとね……」

男「あぁ」
407 :1 [sage]:2010/04/17(土) 23:25:14.70 ID:f9VvtQSO
女「……そばに……」

女「……そばにいて……」

……一瞬、俺は言葉に詰まる。
それでも、何とか冷静さを取り繕うように……

男「……それだけでいいのか?」

女「……うん……」

女「……じっと私のこと見てて……」

女「それだけでいいから……」

男「…………」

男「……分かった」

男「しっかりとここで見守ってるよ」

女「……うん」

そう言って、少女は瞼を閉じた。

………………。
408 :1 [sage]:2010/04/17(土) 23:25:57.71 ID:f9VvtQSO
いつの間にか、日は暮れかけ。
辺りは、黄金色に耀く幻想的な世界が続く。

女「すぅ……すぅ……すぅ……」

穏やかな吐息。
もう馴れて手つきで、彼女のタオルを交換する。

男「…………」

何を血迷ったのだろうか。
俺は彼女の額に右手を置こうとする。

女「……ん」

瞬間、彼女が目を覚ました。

俺は今にも触れそうだった手をひっこめようと……
いや、思い直してそのまま動かした。

そして──

女「あ」
409 :1 [sage]:2010/04/17(土) 23:26:36.20 ID:f9VvtQSO
確かに……
少女の額に俺の手が載った。触れた。

男「……熱は下がっているようだな」

男「この調子なら、明日にはもう治るだろう」

女「……あれ……」

眠りから覚めたばかりで、少女は意識がはっきりとしない。
俺の顔を一度見て……次に、視線は腕へと注がれた。

女「……え……」

男「…………」

震えてしまうのだろうか。
心とは無関係に、身体が拒絶するのだろうか。

俺はその様子をじっと見つめていた。

少し経って、少女の口が開いた。
410 :1 [sage]:2010/04/17(土) 23:27:17.37 ID:f9VvtQSO
女「……震えない……」

女「……あれ……震えないよ……」

女「……どうしたんだろ……」

女「……もしかして、これ……夢……?」

女「……直ったの……直ったのかな‥…」

女「ああ……」

女「わかった……やっぱり……夢だよ……」

女「……はは……」

女「…………だって……」

そして、また穏やかな寝息が聞こえてくる。
どうやら、この状況を夢の中だと判断したようだった。

ほっと胸を撫で下ろし、俺は一瞬安堵を覚えた後で、
少女が次に言った言葉に……愕然とする。
411 :1 [sage]:2010/04/17(土) 23:28:15.53 ID:f9VvtQSO
女「──お父……さん……」

女「看病して……くれるなんて……」

女「……ふふ……」

女「…………」

女「すぅ……すぅ……すぅ……」

男「…………」

……仮説は、今、証明された。

……………。
412 :1 [sage]:2010/04/17(土) 23:30:27.20 ID:f9VvtQSO
男「……もしもし」

男「ああ……いえ」

男「こちらこそ……すみません……」

男「それで……」

男「……はい、はい」

男「分かります……分かってはいるんです……」

男「でも、やはり俺には無理みたいです……」

男「……本当にすみません……」

男「まだ……」

男「いえ、そういうことでは……」

男「……はい」

男「では……失礼します」

ピッ。

一つ深呼吸をして、俺は携帯をポケットにしまった。
未だ胸は激しく鼓動していた。
413 :1 [sage]:2010/04/17(土) 23:31:01.04 ID:f9VvtQSO
現実の時は立ち止まることを知らない。
誰にでも平等に、同じ時を歩む。

それが。そんな当たり前の事実が。

男「…………」

熱が完全に下がった少女の顔を見る。
穏やかに眠るその表情に、俺は心底安心した。

彼女は元気でいるときの方が似合う。

無邪気に笑い、時には悪戯を試みる。
そんな年相応な彼女に、俺はいつもペースを乱される。
俺が常に固執していた日常をもだ。

既に生活の一部になって。
心の奥底までにも入り込んでいて。

終わらせたくない。

この生活がずっと続けばいいなと思ってしまう。

でも。

それでも。
414 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 23:31:34.72 ID:cUScz9w0
再開紫煙
415 :1 [sage]:2010/04/17(土) 23:31:54.40 ID:f9VvtQSO
男「……終わらせよう」

そろそろ重い腰を上げなければならない。
少女の闇に、触れなければならない。

それが。
それがせめてもの、少女への恩返しだ。

きっかけをくれた。
俺に、かつてのような感情を思い起こさせてくれた。

忘れようと必死に努力した。
忘れまいと切り捨てることを躊躇った。

それなのに、未だ俺は永遠に続く螺旋の中にいる。
そして、一生、囚われ続けるのだろう。

けれど少女は違うのだ。
これからの未来が、幾らでも開けている。
416 :1 [sage]:2010/04/17(土) 23:32:57.00 ID:f9VvtQSO
まだ、何も始まってはいない。
彼女の人生は、時は、止まっている。

既に、疑心は確信へと変わった。

男性に恐怖しながらも、彼女は我が家に泊まり続ける。
それは明らかに奇妙であり、矛盾している。

けれど。

それの答えは……見つかった。

男「……父親……か」

窓の外を見つめれば。
幾千もの星が……綺麗に輝いていた。

………………。
………………。
417 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 23:38:31.80 ID:O1ZIlLEo
支援せざるおえん
418 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/17(土) 23:42:13.46 ID:5GGoqcM0
どういうこっちゃ
419 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 23:56:08.59 ID:EmzH5u.o
wwktk
420 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/18(日) 00:30:48.49 ID:XncD1ac0
まだですか?
421 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/18(日) 00:39:19.59 ID:QTgjaYA0
ああ、主人公のちtなんでもない。
422 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/18(日) 01:06:15.36 ID:qD9gd2Uo
いいよーいいよー
423 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/18(日) 08:13:58.45 ID:q9GBF3U0
>>1 乙です!

しかし、これ程までの話を作り出せる >>1 に感動する
じっくり作りあげて欲しい!

がんばれ〜
424 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/18(日) 10:05:33.51 ID:7LCKzM6o
べ、べつに支援したいわけじゃないんだからねっ

C
425 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/18(日) 12:14:03.52 ID:A3QWIUSO
>>423
同意だがお前すげぇ厨くせぇ
あと、さげろksg
426 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/18(日) 12:15:20.54 ID:bqK9GXoo
傍から見たらお前も十分だ
427 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/18(日) 12:40:54.58 ID:RcXugxQ0
いちもつ
428 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/18(日) 22:44:55.08 ID:qLV6rYDO
まだか
429 :1 [sage]:2010/04/18(日) 23:31:51.40 ID:d//akASO
いつもの朝がやってくる。

男「……おはよう」

女「……あ、うん」

女「……おはよ……」

少し照れくさそうに。
今日は珍しく、彼女も早起きだった。

男「どうだ、体調は」

女「おかげさまで」

女「見事、完治致しましたっ」

男「元気一杯だな」

女「そりゃあ、あれだけ寝れば誰でもこうなるよ」
430 :1 [sage]:2010/04/18(日) 23:32:40.07 ID:d//akASO
男「ならんならん」

女「えーっ」

男「風邪は治りかけが一番危険だからな」

男「油断すると、あとで痛い目を見るぞ」

女「ちょ、ちょっとやめてよっ」

女「そんなこと言われたら、怖いじゃん……」

男「そのぐらいが丁度いいんだ」

女「むぅー……」

納得しきれないのか、頬を膨らませる。
そんな様子を見て、自然と笑みが零れた。
431 :1 [sage]:2010/04/18(日) 23:33:34.19 ID:d//akASO
女「あっ、何笑ってんのっ」

男「いや、なんか、お前らしいなって」

女「何が?」

男「感情表現が豊かなことだよ」

女「……言い換えると」

男「──子供っぽい」

女「むきーっ!」

男「うわぁー怒るな怒るなー」

朝から賑やかだった。

………………。
432 :1 [sage]:2010/04/18(日) 23:37:09.84 ID:d//akASO
二人で向き合いながら、朝食を食べる。
今日のメニューは、ハムエッグだった。

男「で、今日はどうするんだ」

女「どうするとは」

男「学校に行くのか?」

女「そりゃあ、勿論」

男「少しでも怠いなら、無理する必要はない」

男「またぶり返されても困るからな」

女「その心配はありがたいけど」

女「文化祭も近いし、練習しないといけないから」

女「今日は行くよ」

男「……まあ、それなら仕方ない」

本音を言えば、今日は大事をとって休ませたかった。
もう治ったとは言え、あれだけの高熱だったのだ。
少しぐらい様子を見たいところだった。
433 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/18(日) 23:37:53.27 ID:EJZEsjYo
kita-
434 :1 [sage]:2010/04/18(日) 23:37:59.20 ID:d//akASO
男「だが、何かあったらすぐに保健室に行けよ」

女「うん、分かってる」

女「みんなに迷惑もかけたくないしね」

女「もちろん……先生にも」

男「別に俺のことはいい」

女「でも……」

男「大事なのはお前の身体だ」

男「それさえ無事なら、まあ、後はなんとかなるさ」

女「……うん」

女「ねぇ……先生」

男「何だ?」

女「ありがとうね」

男「…………」
435 :1 [sage]:2010/04/18(日) 23:39:03.53 ID:d//akASO
女「本当にありがとう」

男「……ああ」

女「そして、これからも……」

女「──よろしくね」

男「……おう」

男「任せとけっ」

女「ふふっ、なんだか照れるなぁ……」

そう言って、頬を赤く染める少女を見つめる。

あれは、俺を信じて疑わない目だ。
心底頼りきっている目だ。

けれど、君は覚えているのだろうか。

初めて母親のことで口論した時。
君は俺になんと言ったのか。

……少し胸の奥が痛んだ。

…………………。
…………………。
436 :1 [sage]:2010/04/18(日) 23:39:28.67 ID:d//akASO
女教師「あーっ!」

女教師「男先生、おはようございますっ」

男「おはよう」

職員室に入ると、すぐに同僚が話しかけてきた。
彼女はジャージ姿。恐らく、朝練があったのだろう。

女教師「もう大丈夫なんですか?」

男「ん?」

女教師「ほら、昨日休んだじゃないですかっ」

男「ああ……」

風邪を引いたのは俺ではなく少女だったので、
一瞬、自分も休んだことを忘れていた。

彼女は続ける。
437 :1 [sage]:2010/04/18(日) 23:40:34.70 ID:d//akASO
女教師「私がここに勤め始めた頃から」

女教師「男先生が休んでいるの見たこと無いし」

女教師「だから、昨日のことはかなり心配したんですよっ」

男「それは、すまん」

女教師「よっぽど見舞いに行こうかと思ったぐらいで……」

女教師「でも寸前で迷惑だと思ってやめたんです」

男「は……はは……」

乾いた笑いしか出てこない。

そんなことになったら、悲惨な結末が待っていた。
俺は女教師の寸前での判断に感謝する。

女教師「それで大丈夫なんですか? 無理してないですか?」

男「おう、しっかりと治して来た」

男「だから心配しなくてもいいぞ」

女教師「だったらいいですが……」
438 :1 [sage]:2010/04/18(日) 23:41:47.97 ID:d//akASO
女教師「無茶だけはしないで下さいね」

男「無茶するような歳か、俺は」

女教師「ふふ、それもそうですね」

二人して苦笑する。

その後も少し雑談をして。
もう朝の職員会議が始まるという頃、
女教師が、ふと思い出したように口を開いた。

女教師「あっ、そうだ」

女教師「昨日のこと……男先生は聞いてます?」

男「昨日? 何かあったのか?」

女教師「その反応だと、まだ誰にも聞いてないみたいですね……」

女教師「実は昨日、うちのクラスの女さんも休みだったんです」

男「……そうだったのか」

女教師「で、思った以上に混乱はなくて」

女教師「教師一同はほっと安堵したんですが……」
439 :1 [sage]:2010/04/18(日) 23:42:45.90 ID:d//akASO
男「……どうした?」

言い難そうにする彼女を、俺は急かす。
漠然と、嫌な予感があった。

女教師「問題はここからで……」

女教師「あれは確か昼頃だったと思います……」

女教師「急に……──」

男「…………」

一瞬、耳を疑った。

しかしその後、女教師が語る詳細を聞いて、
何となしに、曖昧な全てが繋がった気がした。

……………。
……………。
440 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/18(日) 23:58:47.68 ID:iVpZkm6o
つづけろ。いや、つづけてください
441 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/19(月) 00:22:09.34 ID:mwXoe9.o
こんな良い所で・・・・
怖い月曜日が迫ってるから寝るか・・・・
442 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/19(月) 01:14:02.26 ID:S/kniHA0
>>441
月曜日「えへへ・・・きちゃった///」
443 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/19(月) 01:21:31.43 ID:3FzXdrU0
帰れよ!
444 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/19(月) 08:09:49.01 ID:..HRNd.0
>>442お帰りください
445 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/19(月) 12:38:03.11 ID:BsW6F1Qo
焦らしプレイが上手すぎるだろ・・・
446 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/19(月) 17:06:44.92 ID:/RQGSNUo
ネタバラシとかだったらスマソ

男=女の将来の父or本当の父 ってことでFA?
今までに何度かフラグらしきものはあったけど・・・。
447 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/19(月) 18:20:27.71 ID:U/UT8KUo
脳内だけでやってろ
態態謝ってまで書き込むな萎える
448 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/19(月) 18:37:12.31 ID:/RQGSNUo
すいません。結構勉強して1週間前に始めたばっかなんです・・・。
もう書き込みません
449 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/19(月) 19:11:37.51 ID:2qoIJsDO
二万年ROMれ
450 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/19(月) 19:30:43.67 ID:jTlY81ko
やっぱ二年ROMれ
451 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/19(月) 19:39:45.37 ID:f.GwhEAO
二世代に渡ってROMれ
452 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/19(月) 19:51:00.31 ID:YrKkb2AO
二回ROMれ
453 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/19(月) 19:52:53.02 ID:n7Df8QAO
ロムってなに?
454 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/19(月) 20:15:24.17 ID:e.XDTVw0
ggrks
455 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/19(月) 21:26:41.04 ID:i9USwESO
なんだこの流れ
456 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/19(月) 21:42:52.74 ID:/gBnrNYo
mdk?
457 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/19(月) 22:36:18.09 ID:rQZnnAAO
この流れがむしろ面白いわ
458 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/19(月) 22:45:03.76 ID:AJupFgDO
>>446
でもそれじゃ男と女の年齢が相当離れてることにならないか?
俺の中の男は20代なんだが
459 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/19(月) 23:14:11.24 ID:f2Ki.5I0
まだかな
460 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/19(月) 23:20:02.30 ID:aIsFcQDO
>>458
それ以前に男は童t・・・・・・いや、なんでもない
461 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/20(火) 00:11:45.34 ID:t4./h8A0
>>446
女の母と面識なかったぽいし、違うでしょ。
むしろ男の…いや、なんでもない
462 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 00:41:31.09 ID:0fvEl7M0
推測はやめないか??
面白くなくなるし>>1へのプレッシャーにもなるし
463 :1 [sage]:2010/04/20(火) 01:21:37.56 ID:yTUKTkSO
連絡遅れてすみません。
今日は全く書き溜められなかったので、
今日の分も加えて明日頑張ります。
待っていた方、申し訳ありません。
464 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 01:54:16.85 ID:7gVAhMAO
下腹部が寒いんだ、早くしてくれ
465 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 19:54:20.82 ID:imgC4Goo
>>462
otu
ganbare
466 :465 [sage]:2010/04/20(火) 19:55:42.71 ID:imgC4Goo
すまんトリップミス
>>463
467 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 20:00:49.08 ID:pHAQXIDO
>>463
待ってるぜー

>>466
それトリップやない、安価や
468 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 20:26:47.97 ID:A5czVBQo
ワロタwwwwww
469 :1 [sage]:2010/04/20(火) 22:39:17.73 ID:yTUKTkSO
授業は終了。時刻は、五時を回る。

俺は溜った仕事を急いで片付け、
荷物をまとめて、帰りの準備に入った。

そんな俺を不思議に思ったのか、隣の席の男教師が話しかけてくる。

男教師「なぁ、もう帰るのか?」

男「あ、はい」

男教師「定時に帰るなんてお前にしては珍しいな」

男教師「やはり、まだ体調が優れないか」

俺の身体を本気で気遣う心が伝わってくる。
そんな彼に、俺は……

男「いえ、そういうわけではないんですが……」

男「万一に備えて、病院で薬を貰ってこようかなって」

男「身体の方は、もう大丈夫です」
470 :1 [sage]:2010/04/20(火) 22:39:59.48 ID:yTUKTkSO
男教師「そうか……でも、無理はするなよ」

男「はは、女教師と同じことを言いますね」

男教師「そうだったか……それは、ちょっと恥ずかしいな」

照れを誤魔化すように、右手で後頭部をかく。
そんな姿を見て、自然と口元が緩んだ。

だが。

男「……では、お先に失礼しますね」

男教師「おう、じゃあな」

男教師「また元気になったら、一杯行こう」

男教師「もちろん、俺のおごりでだ」

男「ははっ、その時は、絶対ご一緒させて頂きますよ」

男教師「楽しみにしてるぞ」

男「こちらこそ」

ガラガラ……。
471 :1 [sage]:2010/04/20(火) 22:40:55.43 ID:yTUKTkSO
職員室を出た後、廊下の壁に身体を預ける。
人知れず、胸の中で何かが蠢いている。

それを必死に抑えつけようと、鞄を胸の部分に押し当てた。
心を落ち着かせようと、大きく息を吐く。

けれども胸の中は未だ、何物かが暴れ狂う。
肺を犯さんばかりで、呼吸をするのも苦しかった。

分かっている。
それが何か、確実に理解していた。

男「…………」

……嫌悪だ。
それも自分に対する、人一倍の嫌悪感だ。

身を案じる同僚に、平気な顔で嘘をつき。
信頼を寄せる少女に対して、偽善を言う。

いつから、嘘が得意になったのだろう。
平然とした顔で、出任せが言えるようになったのは何時だ。

……約束の時間まで、あと三十分。

俺は学校を後にした。

………………。
………………。
472 :1 [sage]:2010/04/20(火) 22:41:47.49 ID:yTUKTkSO
男「もしもし」

女『え……どなたですか』

男「……俺だよ、俺」

女『…………誰?』

男「しがない数学教師だ」

女『…………』

女『もしかして……男先生?』

男「正解」

女『え、でも……』

女『私って、先生に番号教えたっけ?』

男「ああ、こないだ、お前の担任から聞いた」

女『なにそれ……』

男「なんか問題でもあったか」
473 :1 [sage]:2010/04/20(火) 22:42:25.17 ID:yTUKTkSO
女『大有りだよっ』

女『先生だけ、私の番号知ってるとか……』

女『……不公平』

男「……意味がわからん」

男「とにかく、今かけてる番号が俺の携帯のだから」

男「緊急用に、登録しとけ」

女『ん、まだ納得いかないけど、了解』

女『それで、用件は何?』

男「あ、そうだったな」

男「悪いが、今日は遅れる」

女『…………えっと』

女『……理由を聞いてもいい?』
474 :1 [sage]:2010/04/20(火) 22:43:16.73 ID:yTUKTkSO
男「別に構わんが……何だ気になるか」

女『……うん、すごく気になる』

男「…………」

女『うわ……今、ちょっと恥ずかしいこと言ったかも……』

男「……自覚があるなら良かった」

女『うわっ……何気にひどいよ……』

女『それで……何の用事があるの?』

男「……同僚との飲み会だ」

女『女教師先生とかと?』

男「残念なことに、男連中ばかりでな」

女『そうなんだ……』

女『ちなみに、何時ぐらいで帰ってくる?』

男「……遅くても九時には」

女『結構、早いね』
475 :1 [sage]:2010/04/20(火) 22:44:18.08 ID:yTUKTkSO
男「みんな家庭があるからな」

男「明日から土日だし、家族サービスもしないと駄目なんだろ」

女『ふーん……じゃあ、私にもそれは適用されるんだね』

男「……お前は家族じゃないだろ……」

女『ふふ、既に家族みたいなもんじゃん』

男「ばか、居候だよ」

女『そうとも言う』

男「ははっ、何言ってんだか」

女『ふふっ』

男「……じゃあ、もう切るからな」

女『うん、遅くても待ってるぞー』

男「…………」

男「おう」

ピッ。

………………。
476 :1 [sage]:2010/04/20(火) 22:46:37.17 ID:yTUKTkSO
外は既に暗闇に包まれていた。

一段と冷え込んだ風が、街中を流れている。
時たま、吐息を両手に吹きかけ、凍てついた肌を温める。

こんな寒い日にもかかわらず、街は人で溢れていた。

腕を組んで、互いに身を寄せ合う恋人たち。
小さな子供を連れた、笑みが絶えない若夫婦。

誰もが誰かを求めている。
誰もが誰かに恋している。

俺は、とある喫茶店の前で一人立っていた。
人を待っていた。ある女性が来るのを待っていた。

どれだけの人が目の前を通り過ぎたことだろうか。

基本的に待つことに馴れている俺も、
そろそろ三十分が経とうとした頃、正直疲れを意識した。

その時……
ふと、通りの向こうから、知っている顔を見つける。
477 :1 [sage]:2010/04/20(火) 22:47:22.04 ID:yTUKTkSO
向こうもこちらに気付いたようで、無邪気に手など振っていた。
正直、照れくさかった。

信号が、青に変わる。

人の波が、道路に溢れ。
俺の待ち人も、こちらへ向かってくる。

距離が縮む。あと少し。

彼女は笑顔だった。
遅れているにもかかわらず、笑っていた。

俺はそんな彼女に苦笑しながら、
何となしに空を見上げた。

息を吐く。視界を白が覆う。

季節は冬。十二月。

もうすぐだ。
あと少しで、やってくる。

──初雪が降る、その瞬間が。
478 :1 [sage]:2010/04/20(火) 22:48:08.46 ID:yTUKTkSO
?「先生、待ったー?」

喧騒の中から、俺を呼ぶ声がした。
空から視線を外し、目の前にいるだろう彼女に向ける。

男「約束より、三十分も遅れてるぞ……」

男「これなら急いで学校を出る必要もなかった」

俺は溜りに溜った愚痴は吐く。
彼女は苦笑して。

?「ごめんごめんっ」

?「ちょっと一旦家帰ったら、遅くなっちゃった」

男「まあ、言い訳は後で聞くとして……」

男「とりあえず、店に入ろう」

ドアを開いた瞬間、扉についた鈴が軽く鳴り、
店員の、気持ちのいい挨拶が聞こえた。

……………。
479 :1 [sage]:2010/04/20(火) 22:49:14.98 ID:yTUKTkSO
窓際の席を案内される。

席に座ると俺は一息ついて、
温かいおしぼりを袋から取り出そうとする。

すると、目の前の彼女が口を開いた。

?「さてさて……」

?「今日、男先生は、何を話そうと言うのかな?」

男「…………」

女生徒「こんなか弱い教え子を誘っといて、ね」

男「……まずは」

俺の推測が正しければ……

男「──何か、頼もうか」

欠けたピースはここにある。

……………。
……………。
480 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 22:52:34.95 ID:7gVAhMAO
481 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/20(火) 22:53:37.15 ID:A6DHdYDO
面白い
482 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 23:04:12.91 ID:dARVOQgo
クライマックスktkr
483 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 23:04:52.10 ID:A5czVBQo
ドキがムネムネする
484 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 23:05:20.66 ID:7wHkWI2o
まさかここで焦らしプレイなんてないよな・・・?
485 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 23:24:59.81 ID:U/RjDLA0
話の流れが分からなくなってきたので続きを下さい
486 :1 [sage]:2010/04/20(火) 23:56:06.71 ID:yTUKTkSO
この辺りで一旦進行を止めて、
三日お休みを頂きたいと思います。

つきましては、今週の土曜日(恐らく22時以降)。
書き溜めたものを一気に投下させ、
それにて、この物語は完結致します。

ここまで、長期に渡ってしまいましたが、
ご愛読本当にありがとうございました。

読んで下さる方がいらっしゃったお陰で、
あと少しで話の最後まで辿り着けそうです。

土曜。物語は、終焉を迎えます。

それまで暫しの間、お待ち頂けますよう、
どうぞよろしくお願い致します。

ではまた。
487 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 23:56:50.06 ID:fPn4IFso
ここでっ・・・・
待ってる
488 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 23:57:47.52 ID:dARVOQgo
( ゚д゚)・・・( ゚д゚ )!?
489 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/21(水) 00:02:20.02 ID:P.5h0DA0
3日間なんて・・・耐えられない・・・っ!
でも待ってる。
490 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/21(水) 00:21:21.89 ID:gf1f9eE0
ふぅ…

俺としたことが先走っちまったぜ
491 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/21(水) 00:26:23.86 ID:1wA1fsAO
楽しみ
492 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/21(水) 00:41:15.50 ID:9jp0IADO
いちもつ
先走りすぎたろwwwwwwwwwwww
493 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/21(水) 00:48:32.41 ID:y60iPMAO
おつ
494 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/21(水) 01:21:11.34 ID:jD.eoVE0
乙です
期待して待ってるぞ
495 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/21(水) 06:43:14.58 ID:YEAWO3Eo
>>486
はあ゛?
496 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/21(水) 07:28:43.60 ID:mMunGnA0

待たせてもらいます
497 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/21(水) 10:24:43.13 ID:VF9v6O2o
乙です。
楽しみにしています。
498 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/21(水) 11:41:14.47 ID:teT23x60
おつ
待ってる
499 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/21(水) 17:19:12.40 ID:ySs5m8Io
おつ。土曜は予定ないからたっぷり見られるよ
ここでも焦らしプレイとは、さすが>>1wwwwww
500 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/21(水) 22:30:33.82 ID:.oERQcDO
>>486
は?焦らしかよ
最低だな見損なった
501 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/21(水) 23:01:04.53 ID:xsUhckAO
>>500
とりあえずちんこしまえよ
502 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/21(水) 23:33:12.90 ID:Y8mWvjY0
物語は、終焉を迎えます

とかさ〜
503 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/22(木) 00:09:50.31 ID:.1q9MESO
お前の感想とかいいからsageろよカス
あとVIPじゃねーんだから、批判厨は黙って消えろよな
504 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/22(木) 00:32:42.72 ID:L.pd1QAO
505 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/22(木) 08:13:15.23 ID:R5YxWrw0
いやでも、俺も

土曜。物語は、終焉を迎えます。

はハズイと思った
506 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/22(木) 19:47:24.82 ID:NcTaIHg0
そっか??盛り上げ方としてはいいんじゃね??
ドラマとかみたいでw
もー少し肩の力抜けよ
507 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/22(木) 19:56:34.53 ID:hPW9e/Yo
期待
来たい
来れない(´・ω・`)
508 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/22(木) 23:26:15.35 ID:QQIZlUU0
イイネェ
509 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/23(金) 18:55:09.12 ID:BFg8ZSk0
ヤルネェ
510 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/23(金) 23:36:59.28 ID:a1WaWow0
>>508
イイネェ
主にIDが
511 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 05:58:03.37 ID:nuTYSwDO
+   +
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・)   
 (0゚∪ ∪ +
 と__)__) +
512 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 07:07:30.76 ID:6nxxZ7I0
やっと土曜日だな
513 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 13:59:52.22 ID:8R9MHcAO
まってたぜ
514 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 17:21:21.81 ID:hv/GOS.0
どうせ今日で終わるわけない
515 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 18:18:26.47 ID:VApYDr.0
ダレモイナイ...
バルタン スルナラ
イマノウチ...

|∧∧
|・ω・)
|⊂
|

フォッフォッフォッ
 (V)∧_∧(V)
  ヽ(・ω・)ノ
   / /
  ノ ̄ゝ

フォッフォッフォッフォッ
  (V)∧_∧(V)
  ヽ(  )ノ
   / /
 ..ノ ̄ゝ
516 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 18:20:47.66 ID:z/Pi6Xso
久々にそのAAみた
517 :1 [sage]:2010/04/24(土) 18:55:22.90 ID:F4jVbsSO
>>514
(´・ω・`)
518 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 18:57:41.53 ID:2dLAexYo
>>514
ツンだな
素直に終わってほしくないって言えお
519 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 19:20:52.88 ID:6nxxZ7I0
早く結末を知りたいが終わって欲しくはない
520 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 19:52:38.96 ID:SvdbikAO
>>514
同意
なにかしら待たされると思う。
それか未完結で終了
521 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/24(土) 20:51:45.80 ID:XVfMUuYo
終焉()とか言っちゃうようなやつに期待してやるなよ
522 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 20:51:52.76 ID:Jd9ffQA0
黙って待つ・・・・・・それがっ・・・・・・真の漢っ・・・・・・!
523 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 20:53:01.36 ID:z/I1lFco
漢ってなにぃ?
524 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 21:02:01.78 ID:2dLAexYo
漢とは、秦滅亡後の楚漢戦争にて項羽との争いに勝利した劉邦によって建てられた。都は長安
7代武帝の時に全盛を迎え、その勢力は北は外蒙古・南はベトナム・東は朝鮮・西は敦煌まで及んだが、14代孺子嬰の時に重臣の王莽により簒奪され一旦は滅亡
その後漢朝の皇族であった劉秀により再興される。前漢に対しこちらを後漢と呼ぶ。
中国においては東の洛陽に都した後漢に対して西の長安に都したことから西漢と、後漢を東漢と称される。
前漢と後漢との社会・文化などには強い連続性があり、その間に明確な区分は難しく、前漢と後漢を合わせて両漢と総称されることもある。
525 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 21:06:35.03 ID:rfhYpPM0
>>524
そうきたか
526 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:16:21.08 ID:F4jVbsSO
【すみません……】
【完結まで行き着くことが出来ませんでした】

【ただ三日、書き溜めた分がありますので】
【その分を今から投下していきます】

【当初の予定より大幅な変更はありましたが】
【終わりまでの構成は出来ているので】
【焦らず、あとは1シーンずつ確実に書いていきます】

【よろしくお願い致します】
527 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:17:13.20 ID:F4jVbsSO
一時間ほどが経ったのだろうか。

俺は彼女に対し、全てを話した。

女が家の前で酔っぱらっていたこと。
成り行きで自らの家に泊まらせていること。
今も尚、同居生活を続けていること。

始まりのあの日から、最近のことまで。
分かり易く、丁寧に、一つ一つ説明していった。

現状を言葉に出せば出すほど、
今が如何に倫理的に誤っているのかが分かる。

目の前の女子生徒の表情は、
初めの無垢な笑顔から、今は険しいものに変わっていて。

茶化すこともなく、俺が話し終わるまで、じっと……
ただ、じっと聞き入っていた。

男「……というわけだ」

女生徒「…………」
528 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:17:43.54 ID:F4jVbsSO
やっと全ての話が終わった。

それなのに、目の前の少女は黙っていた。
目を閉じて、一言も喋ろうとはしない。

暫く沈黙の時間が過ぎた。

先に口を開いたのは、少女の方だった。

女生徒「……で」

男「ん?」

女生徒「先生は、その話を私にして……」

女生徒「一体、どうしてほしいわけ?」

女生徒「私、馬鹿だからよく分かんないけど」

女生徒「今の話、私が学校に連絡したら、先生クビだよね?」

女生徒「マスコミだって別に構わないよ」

女生徒「今話題の女のことだから、どっかの雑誌は絶対に喰いついてくる」

女生徒「それってさ、先生的にはオッケーなの?」
529 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:18:14.36 ID:F4jVbsSO
男「…………」

女生徒「こんなこと言うのもなんだけどさ」

女生徒「男先生さ……」

女生徒「おかしいよ」

女生徒「間違ってるよ」

女生徒「先生は教師で、女は生徒なんだよ?」

女生徒「深い関係は一度もなかったって言ったって」

女生徒「そんなの、全く通用するわけないじゃん」

男「そうだな……」

女生徒「分かってるなら」

女生徒「そうやって分かってたんなら……」

女生徒「意地でも女を泊まらせちゃ駄目だったんだよ」

女生徒「仮にそれで、女にとって好ましくない結果になったとしても」

女生徒「そこは譲っちゃいけない、大事な部分でしょ」

男「…………」
530 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:18:51.01 ID:F4jVbsSO
女生徒「……ねぇ、先生」

女生徒「なんか私、おかしなこと言ってるかな?」

男「……いや」

……正論だった。
それも、反論の余地が何処にも見当たらないほどの。

男「全て、君の言った通りだ」

女生徒「…………」

男「全ての責任は俺にある」

男「初めのあの瞬間……」

男「アイツを家に泊まらせたその決断が……」

男「間違いだった」

男「完全な、誤りだった」

女生徒「…………」

男「でも」
531 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 22:19:37.85 ID:qXpuGKso
わっしょい
532 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:19:48.45 ID:F4jVbsSO
女生徒「……え?」

男「もう、戻ることは出来ないんだよ」

時は進み続けている。
今も。過去も。そして、未来も。

止まることはない。勿論、戻ることも出来ない。
俺に残された唯一の道は……

男「アイツを家に泊まらせた時点で」

男「どんな結末だって受け入れる覚悟は出来ている」

女生徒「……クビになっても?」

男「……ああ」

女生徒「社会的非難を浴びても?」

男「ああ」

女生徒「…………」

女生徒「女が……それで……」
533 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:20:24.28 ID:F4jVbsSO
女生徒「……傷ついても?」

男「…………」

でも。それでも。

男「勿論だ」

……もう、前に進むことしか出来ないのだ。

女生徒「…………」

少女は再度、黙った。
俺から視線を外し、窓の外を眺める。

その横顔には、彼女の揺れる心の動きが映っていた。
どの選択が最適なのか。少女は迷っているのだろう。

俺と彼女の未来を、今まさに彼女が握っている。

これからどんな結末を迎えるのか。
今の俺には、全く分からなかった。
534 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:21:20.29 ID:F4jVbsSO
けれど、仮にそれが俺の求めるものでなくても。
受け入れる覚悟は、既にしている。

ただ、一つだけ悔いが残るとしたら。

それは居候の彼女のことに他ならず。
少女が傷つき、苦しむ姿を想像すると、胸が痛んだ。

女生徒「……はぁ」

俺が他のことに気を取られていると、
目の前の少女は、先ほどとはうってかわって。
胸の奥の蟠りが消えたような、清々しい表情を浮かべていた。

女生徒「……付き合うよ」

男「……え?」

女生徒「二人の秘密に私も付き合うよ」

男「それって……」

女生徒「先生がどうなったって、私は気にしないけど」

女生徒「女が悲しむのは、嫌だからね」
535 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:23:01.16 ID:F4jVbsSO
女生徒「先生も、それが分かってて私に話したんでしょ?」

男「…………」

女生徒「別に、無理して言わなくてもいいよ」

女生徒「あーでも、そうか」

女生徒「そう考えると、何だか合点がいくね」

女生徒「こないだコンビニのアルバイトの時に偶然会ったけど」

女生徒「もしかしてあれって……」

男「……そうだ」

女生徒「あーやっぱりそうなんだ」

女生徒「なーんか、変だと思ったんだよなー」

女生徒「彼氏がどうとか、最後に聞いてくるし」

女生徒「さっきの話を聞いて、やっと分かったよ」

男「……すまん」

女生徒「謝らなくていいって」

女生徒「それだけ、真剣に女のこと考えてるってことなんでしょ」
536 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:25:52.02 ID:F4jVbsSO
女生徒「正直、まだ先生のこと信用したわけじゃないけどさ」

女生徒「その想いだけは、確実に本当だって分かるから」

女生徒「……それで」

少女は、俺の言葉を待っている。
彼女を呼び出した理由。秘密を明らかにした理由。

その意味を。その訳を。
彼女はじっと待っている。

男「小学生の頃からずっと一緒で」

男「唯一彼女が気の許せる君に」

男「……聞きたいことがある」

女生徒「…………」

男「……彼女の父親は」

……彼女の記憶は。

男「……死んでないんだな?」

──どこで狂い始めたのだろう

…………。
………………。
537 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 22:26:54.09 ID:6nxxZ7I0
誰かと思ったらコンビニでバイトしてる子か
538 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:30:26.25 ID:F4jVbsSO
女教師「あれは確か昼頃だったと思います……」

女教師「急に……」

女教師「一人の男性の方が、職員室の方へやって来られて」

女教師「ドアを開けたと同時に、大きな声で言ったんです」

女教師「『女はどこだっ?』」

女教師「『この学校にいるんだろっ?』」

女教師「初めは週刊誌を見た変質者だと思ってたんです」

女教師「それで男の先生方も何とか追い出そうとしてたんですけど」

女教師「その後に言った言葉に皆、愕然としちゃって……」

女教師「私、彼女の担任なんで、彼女の家庭の事情も知ってまして」

女教師「実は彼女の家って、母子家庭なんですよ」

女教師「お母さんはスナックのママさんやっていて」

女教師「でも、凄く感じの良い方で……あの女さんの母親ですもんね」
539 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:31:42.55 ID:F4jVbsSO
女教師「だから、その人の言うことは嘘だと思ったんです」

女教師「だって、その男性、異常なぐらい……血走った目をしてたんですよ……」

女教師「それで、とりあえず、お引き取り願ったんです」

女教師「彼女も休みだったし、また後日改めて……ということで」

女教師「でも、あの人……」

女教師「帰り際も、ずっと怒鳴り散らしてました……」

女教師「『俺は、女の父親なんだっ!』」

女教師「『その親が、子供に会っちゃいけない理由がどこにあるっ!!』」

女教師「……何だか凄く怖かったです……」

男「…………」

………………。
…………。
540 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:32:31.45 ID:F4jVbsSO
家に帰った。

いつものように女の出迎えがあって。
俺の帰りを素直に喜んでいた。

部屋の中は、食欲を誘ういい匂いが漂っていて。
匂いの元はすぐに分かった。

コンロの上にある鍋の中には、温かいカレーが。
我が家に来て、初めて彼女は手料理を作ったようだった。

照れくさそうに、それでも俺が食べるのをじっと見つめて。
「おいしい」と言ったときの、少女の笑顔は。
俺の心を強く揺さぶった。

その後は、二人で楽しい夕飯の時を過ごして。
くだらない番組を二人して笑って。
交代で風呂に入って。

明日は休日だということもあってか、
床に入った後も、どちらかが眠たくなるまで
カーテン越しで雑談をした。

楽しかった。
幸せだった。
541 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:33:48.31 ID:F4jVbsSO
少し経ち……。
少女の穏やかな寝息が聞こえてきて。

俺は、普段は吸わない煙草を一本持って。
音を立てないように静かにベランダへ出て、一服をする。

男「…………」

胸が温かくなる、そんな生活だった。
満たされていると実感できる、そんな日常だった。

けれども。

そこには、矛盾があり、異常がある。
綻びは、次第に、大きくなっている。

俺は彼女の看病をして確信していた。

彼女は、俺と父親を重ね見ていた。

だからこそ、時に俺が触れても少女は震えない。
俺と父親を重ねている時は、身体が拒絶しないのだ。
542 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:34:23.97 ID:F4jVbsSO
全ての始まりを思い返す。

彼女を家に止める決意をしたあの日。
確かに、少女は俺に嘘を言った。

家の前で酔った彼女と出会うまで……
友達の家に厄介になっていたと聞いた。

その友達が女生徒のことだとは、すぐに分かった。
少しの間、泊まっていたというのも事実だ。
今日、本人から聞いた。それは正しい。

けれど、彼女に付き合っている男性はいない。
女が言う、問題は起こらなかった。
それなのに、女は彼女の家を出てどこかで酔った。

酒を飲んだ場所が問題なのではない。
重要なのは、何故、彼女の家を出たのかだ。

それを今日、聞かなければならなかった。

女生徒はこう言った。

………。
……………。
543 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:34:55.82 ID:F4jVbsSO
女生徒「……あー……」

女生徒「確かに、喧嘩はしちゃったんだ……」

女生徒「女があまりにも自分の母親のこと悪く言うもんだから」

女生徒「私も、ちょっとイラッときちゃって……」

女生徒「『お父さん、お父さん、言うけどさ』」

女生徒「『女の父親が良いやつだなんて、私は全く思わないけど』」

女生徒「そしたら、女、怒っちゃって……」

女生徒「でも、おかしいなって前から思ってんだ……」

女生徒「女と仲良くなったのは、四年生の終わりなんだけど」

女生徒「その前はあんまり接点もなくて」

女生徒「夏休みが終わった頃だったかなあ……」

女生徒「少しの間だけど、女が休みがちだった時期があったんだ」
544 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:35:30.44 ID:F4jVbsSO
女生徒「理由は何なのか分からなかったんだけど」

女生徒「噂で、女の両親が離婚したとか……そんな話で……」

女生徒「いつの間にか、普通に学校にも来るようになって」

女生徒「その後、席が近くなったことで仲良くなって」

女生徒「でも……家庭の事情とかは詳しく聞けなかった」

女生徒「なんか遠慮しちゃってね……」

女生徒「それで、中学の時に思い切って聞いたら……」

女生徒「『私、父親のこと知らないんだ……』って言うんだ」

女生徒「でも、私知ってるんだよ」
545 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:36:11.31 ID:F4jVbsSO
女生徒「物心ついた時には、確実に女に父親はいたんだ」

女生徒「小四の時だっていたはず」

女生徒「それなのに、何故そんなこと言うのかなって思ったけど」

女生徒「あんまり触れられたくない話だから嘘を言っているんだと判断したんだ」

女生徒「けど……」

女生徒「後になって、どうも、おかしいって気付いた」

女生徒「明らかに嘘言ってるようじゃないんだよ」

女生徒「本気で……」

女生徒「父親のこと、忘れているみたいで……」

………………。
…………。
546 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:36:50.47 ID:F4jVbsSO
少女の記憶はどこかで狂い出した。

今の彼女は消えてしまった父親に、飢えている。

しかし、その父親は現に生きていて。
彼女に会いに、学校まで現れている。
女生徒の話もそれが事実だと裏付けていた。

何かがおかしい。
何かがずれている。

やれるべき手は尽くした。
……けれども、まだ足りない。

彼女の闇を解き明かすには、何かが抜け落ちている。

それはもう、俺の出来る範疇を越えていて。
限界だった。ここからは、自力で進むことは困難だ。

男「…………」

既に。

俺の頭の中には、
最後の選択肢しか残っていなかった。

………………。
………………。
547 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:41:09.43 ID:F4jVbsSO
女「先生、おはよっ」

男「あぁ……おはよう」

女「ふわぁー……休日なのに早起きなんだね」

女「何時から起きてるの?」

男「んー……いつもと同じだ」

男「昔から目覚めだけは良くてな」

男「自然と時間になると目が覚める」

女「……その能力、私も欲しい」

男「日々のサイクルを狂わせなければ」

男「次第に、意識しなくても出来るようになるさ」

女「つまりそれって、二度寝とか出来ないってこと?」

男「勿論だ」

女「……ないわ」

女「そんな地獄、想像しただけでもぞっとする……」

そう言って、少女はまた布団に潜り込む。
548 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:41:40.16 ID:F4jVbsSO
男「おいおい、もう九時だぞ」

女「………ん……あと少し……」

男「駄目だ、起きろ」

女「あと……三十分だけー……」

男「……子供かよ」

俺は彼女に聞こえるような、大きな溜め息をつく。
少し演技臭かったのは、センスの無さか。

男「はぁー……」

男「それなら、もう仕方ないな」

女「……やったぁ……」

男「しかし、残念だな」

女「……え?」

男「……せっかく今日」

男「遊びに出かけようと思ってたのにな」

女「…………」
549 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:42:11.31 ID:F4jVbsSO
男「まあ、仕方ない」

男「代わりに女教師でも誘ってみよう」

女「……あのー」

男「ん?」

少女は布団の影からこちらを覗き込んでいた。

その様子に俺は、思わず笑みを零しそうになり、
必死に、残念そうな表情を取り繕っていた。

女「……今からでも間に合うかな……?」

男「それは、急げば何とかなると思うが」

男「お前、まだ寝たいんだろ?」

女「え、ええと……なんか頭が冴えてきちゃったっ」

がばっと瞬時に身体を起こし、
ちょこんと正座してアピールしている姿は……
正直、可愛らしかった。

そんな彼女を見て。
俺の心の奥には、少し意地悪な気持ちが沸き起こり。
550 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:42:42.69 ID:F4jVbsSO
男「おいおい、無理に俺に合わせなくていいんだぞ」

男「確かにチケットはもう買ってしまったが」

男「こないだ、女教師が見たいって言ってた映画だし」

男「誘えば喜んでOKするはずだ」

男「女もまだ風邪から治ったばかりだったからな」

男「今日は遠慮しないで、ぐっすり寝とけ」

女「……いや」

女「ぜーったいにいやっ!」

男「しかし……」

女「私が行くからっ!」

女「そんな面倒な真似しなくていいよ!」

女「女教師先生だって、部活の練習あると思うし」

女「多分、迷惑だと思うっ」

男「……そうかな?」
551 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:43:21.21 ID:F4jVbsSO
女「うん、そう!」

女「だから、私と行こうっ!」

男「……ふむ」

少し考える動作をする。
そんな俺の様子に、少女は内心ドキドキしているようで。

笑いを堪えるのは、既に限界だった。

男「……ふ、ふ」

女「へ?」

男「ふはははははっ」

女「ちょ、ちょっとっ」

女「な、何がおかしいのよっ」

男「ははっ、いやな……こっちの話だ」

女「もう絶対馬鹿にしてるし……」
552 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:43:51.03 ID:F4jVbsSO
男「わりぃ、わりぃ」

男「よしっ、そうと決まったなら」

男「早く出かける準備をしないとな」

女「あ……」

女「うんっ」

女「急いでするねっ!」

男「おう、出来るだけ急いでくれ」

満面の笑みで、洗面所へ駆けて行く姿は微笑ましい。
早速俺は、キッチンで二人分の食事を作り始めた。

………………。
553 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:44:29.30 ID:F4jVbsSO
今は閉められているカーテン越しから、
ふと彼女の声が聞こえてくる。

女「ねー先生っ?」

男「んー、何だ?」

女「それで、買った映画のチケットって何時からなの?」

男「うんとな」

女「うん、昼ぐらいかな?」

男「単刀直入に言うぞ」

女「いいよ」

男「映画のチケットは……」
554 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:45:18.48 ID:F4jVbsSO
男「買ってない」

女「…………」

女「はっ?」

男「嘘も方便って言うじゃないか」

女「ええと……それって……」

男「あーでも言わないと、女は意地でも起きそうになかったからな」

男「意外に策士だろう」

女「……………」

女「……ひ」
555 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:45:58.72 ID:F4jVbsSO
男「ひ?」

女「ひっどーーーーーいっ!!」

女「この私を騙したわねぇーーっ!」

ガチャン……ガチャン……。

男「うわっ……今、火の元だからっ!」

女「関係ないわよっ、このぉーーっ!」

女「もう先生の……」

女「バカーーーーーっ!!」

……地獄絵図だったとさ。

………………。
………………。
556 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:51:33.00 ID:F4jVbsSO
映画の内容は割とありきたりな、悲恋の物語だった。

ある一人の青年がいて。
その彼が恋してしまったのは、十も歳が違う女性で。

初めは全く相手にされない。
手紙を送っても。本人に想いを伝えても。
彼女は本気にならず、いつもはぐらかすだけだった。

けれど、青年は諦めなかった。

彼女はある大学の研究室の講師だった。
青年は高校生だったが、それを利用して何度も足を運んだ。
雑用だろうが何だろうが、彼は必死に頑張った。

次第に研究室の教授に好かれるようになって。
他のメンバーからも彼の恋を応援する者も現れた。

確実に、想い人との距離も近づいていた。

そんな矢先。

その女性は、彼にある条件を出した。
いつまでも諦めない青年に、渋々折れて。
付き合うためのチャンスを与えたのだ。
557 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:52:10.41 ID:F4jVbsSO
条件の内容はこうだった。

四年前、突然いなくなってしまった彼女の愛犬を探し出すこと。
手がかりは一枚の写真だけ。
彼女と愛犬が仲良さそうに写っている写真だ。

見つけられるはずもない。
既に四年もの時間が経過している。

それは人にとっては人生の短い一時かもしれないが、
動物……特に犬にとっては、あまりにも長過ぎる時間だった。

要は……その女性は、
青年と付き合う気など更々なかったのだ。

いつまでも諦めない彼に対して、
それは事実上の拒絶を意味していた。
しかも、永遠の。

彼の恋を応援する者も、その話を聞いて皆落胆した。
時に青年を励まし、他の恋を薦めるものもいた。

けれど。

青年は、諦めなかった。

……いや、逆に喜んでいた。
558 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:52:43.49 ID:F4jVbsSO
彼は言う。

『もし、自分がその犬を見つけ出せれば』

『僕は彼女と付き合うことができるんです』

『僕だって分かってますよ』

『何事もなく、このまま続いたとしても』

『彼女の想いは僕に向かれることはない』

『それに……』

『いつまでも研究室に行くことは出来ません』

『どこかで必ず無理がやってくる』

『それは僕の方に問題が起こるかもしれないし』

『彼女が違う大学へ転勤してしまう可能性だってある……』

『だから、今回の彼女の発言は僕にとってチャンスなんです』

『変わるはずもなかった日常が』

『止まってしまったこの恋が』

『前に進むことのできる……』

『大きな一歩だと言えませんか?』
559 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:53:31.48 ID:F4jVbsSO
恥ずかしがることもなく。
青年は一人、前を見続けていた。

そこからは、彼の苦しい闘いが始まる。

たった一枚の写真だけを頼りに、
チラシを配って、保健所にも足を運んで。

しかし、予想通りと言ったところか。
彼の探す犬の手がかりは、全く得られない。

無駄な時間だけがただ過ぎていく。

初めはやる気に燃えていた青年も、
次第に少しずつ、現実という壁を実感し始め。

研究室に行くことも無くなった。
口を開けば彼女のことばかりだったのに、
その話すら全くしなくなった。

青年は……遂に、自らの恋の限界を自覚した。

何かが抜けてしまったように、
日々の生活をただ呆然と送る青年。

そんな彼を内心は心配していた彼女だったが、
自分が原因を作ってしまった以上、会うことも出来ない。
560 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:54:03.37 ID:F4jVbsSO
そして、物語は終盤へ差し掛かる。

ある日、青年が学校からの帰宅途中、
一人の老婆とすれ違う。

最初は気付かなかった彼も、
その光景を垣間見て、勢い良く振り返った。

何度も見た。何度も脳裏に焼き付けた。
片時も忘れることはなかった。写真。
彼女と愛犬が仲良さそうに映る、あの写真だ。

そして、そこに映る犬の首には。
真ん中に赤いラインが入った、
金色に輝く、楕円型のコインがついていた。
561 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:54:34.66 ID:F4jVbsSO
振り返った先にいたのは。

老婆と……一匹の、ゴールデンレトリバー。

後ろ姿からは伺えない。
彼らを呼び止めるため、彼は声を挙げる。

ゆっくりと。
彼らがこちらへ振り返る。

老婆の横にいる、犬の首元には。
あの……見覚えのある……金色が。

しかし。
青年はすぐに気が付いた。

その犬は……小柄だった。
写真で見たものに比べても、明らかに小さい。
562 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:55:15.26 ID:F4jVbsSO
久しぶりの研究室へ。

彼女も他の連中も、彼が既に諦めたと考えていた。
それ故、彼を視界に入れて皆驚く。

場面は変わって。
大学の中庭で半年ぶりに青年と女性は会話をする。

青年はただ詳細を伝えた。

消えてしまった犬の子供も見つけたと。
けれど目当ての犬は既に死んでしまったと。

彼は説明を終えると、彼女の元を去ろうとする。

呼び止める女性。まずは感謝の言葉を述べる。

無理難題を押し付けたことの後悔と。
今は、青年が気になっているとの旨を伝えた。

いつの間にか、日常に入り込んでしまったと。
この半年会えなかったことで、気付けなかった感情を自覚したと。
563 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:55:46.55 ID:F4jVbsSO
彼女は言った。
それは確かに、青年がずっと求めていたものだった。

だが。

青年は最後に言う。

『ありがとう』

『本当に嬉しいよ』

『ずっと好きだったから、ずっと付き合いたかったから』

『この日をどれだけ待ち望んだか』

『……だけど』

『もう駄目なんだ……』

『僕はこの想いを信じてた』
564 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:56:23.37 ID:F4jVbsSO
『条件は無理だと分かっていたけど』

『そんなことは関係ないと思えた』

『けど、現実は違った』

『僕は諦めた』

『僕は逃げたんだ』

『だから……』

『もう付き合えない』

『もうあの頃には戻れない……』

『あなたを必死に想っていた……あの頃には……』

………………。
565 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:58:55.39 ID:F4jVbsSO
女「……うぅ……くっ……うっく……」

男「……泣けたか」

女「だ、だって……か、可哀想じゃん……」

女「両想いなのに……こ、こんなの……うぅ」

女「うぅ……くっ……」

男「しかし……」

女「……ずずっ………なに……?」

男「一つ疑問なんだが」

男「どうして犬は、彼女の元から消えたんだ?」

女「……え?」

男「仲良かったんだろ?」

男「その犬が、主人をおいて勝手にどこかに行くなんて」

男「犬の習性上、考えられないんだけどな」
566 :1 [sage]:2010/04/24(土) 22:59:35.89 ID:F4jVbsSO
男「そういうところが、この映画のミスだな」

男「脚本家がいかに犬を知らないかが分かる」

女「…………」

男「しかも、物語なんだから最後ぐらいハッピーで終わらせろと」

女「……先生」

男「何でもいいから奇跡を起こせっ……って、ん?」

女「…………」

男「な、なんだ怖い顔して……」

女「……もう、何にも分かってないんだね」

女「はぁー……先生には、ラブストーリーは早すぎたか」
567 :1 [sage]:2010/04/24(土) 23:00:27.94 ID:F4jVbsSO
男「ちょ、ちょっと待て、それはどういう意味だ」

女「言葉通りの意味ですよーだっ」

女「人が感動してるところで、水差さないで欲しいよ」

女「ホント、女教師先生と行かなくて良かったね」

女「そんな反応されたら、完全に失望もんだよ」

男「……す、すまん」

女「…………」

女「まっ、でも私だからね」

女「他に先生の良いとこ知ってるし」

女「私で良かったね、先生っ」

………………。
568 :1 [sage]:2010/04/24(土) 23:02:43.44 ID:F4jVbsSO
男「ちょ、ちょっと待て、それはどういう意味だ」

女「言葉通りの意味ですよーだっ」

女「人が感動してるところで、水差さないで欲しいよ」

女「ホント、女教師先生と行かなくて良かったね」

女「そんな反応されたら、完全に失望もんだよ」

男「……す、すまん」

女「…………」

女「まっ、でも私だからね」

女「他に先生の良いとこ知ってるし」

女「私で良かったね、先生っ」

………………。
569 :1 [sage]:2010/04/24(土) 23:03:46.06 ID:F4jVbsSO
その後は、彼女のショッピングに付き合って。
買う金も無いというのに、何店も見て回った。

最後は、予約していたホテルのレストランで夕飯を食べる。
目の前の少女は、料理が出てくる度に興奮していた。
コース料理を食べたことが一度も無かったようだ。

俺もこれほど豪勢な食事を食べるのは久方ぶりだった。
独り身に外食はつらい。教師仲間とは飲むのが基本だし、
こんなところに毎日行けるほど給料が良いわけでもない。

けれど、少しばかりは溜めていた貯金もあって。
今日はそれを切り崩して、お店を予約した。

少女の笑顔を見れただけでも、
その価値はあったと言って良い。

ただ。

彼女の笑みを見れる、それだけで。
満足してしまうという事実は、問題だった。

ここまでくると明らかに、教師の範疇を越えていた。
責任という言葉を使うだけでは、もう説明できない。

こうして、幸せの一日が過ぎる。

楽しかった一日が終わった。

………………。
………………。
570 :1 [sage]:2010/04/24(土) 23:04:59.91 ID:F4jVbsSO
【書き溜めはここまでです】
【また明日来ます】
571 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 23:05:57.14 ID:AUEOkI.o
いいよーいいよー
572 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 23:08:27.70 ID:6nxxZ7I0

明日が楽しみだ
573 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 23:12:32.02 ID:1uVfQr6o

映画見てみたいなww
574 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/24(土) 23:12:49.56 ID:498N2sI0
otu
575 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 23:18:33.56 ID:2dLAexYo
俺も映画気になる。映画も>>1の創作なのか?
576 :1 [sage]:2010/04/24(土) 23:30:24.48 ID:F4jVbsSO
>>575
特定の映画を参考にしたわけではないです。
話の中での創作物になります。
577 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/24(土) 23:32:48.05 ID:XVfMUuYo
しゅうwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwっうぇんwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
















携帯小説にくいついんてんなよ糞ども
578 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/25(日) 00:04:41.57 ID:BWO1ntM0
映画すげぇwwww
素直に見たいと思った。
579 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/25(日) 00:08:39.75 ID:407p.F2o

明日も頑張れ
580 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/25(日) 00:20:31.43 ID:yeNe0UAO
>>520だが、疑ってスマン。
頑張ってくれ
581 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/25(日) 00:21:14.47 ID:vzceuvAo
582 :管理人、Twitterを始める http://twitter.com/aramaki_vip2ch [sage]:2010/04/25(日) 03:34:53.70 ID:VwYu.ESO
>>577
ならわざわざ製速までくんな
巣に帰れ
583 :管理人、Twitterを始める http://twitter.com/aramaki_vip2ch [sage]:2010/04/25(日) 09:41:23.83 ID:50y/qsko
その映画誰か作れよ
気になるじゃないか
584 :管理人、Twitterを始める http://twitter.com/aramaki_vip2ch [sage]:2010/04/25(日) 16:59:51.37 ID:CBd5V520
なんだろう。
585 :管理人、Twitterを始める http://twitter.com/aramaki_vip2ch [sage]:2010/04/25(日) 17:26:24.59 ID:knKoxyAo
乙です
586 :管理人、Twitterを始める http://twitter.com/aramaki_vip2ch :2010/04/25(日) 23:42:38.63 ID:blrb56AO
頑張れ
587 :管理人、Twitterを始める http://twitter.com/aramaki_vip2ch [sage]:2010/04/25(日) 23:44:50.77 ID:R1wEbPko
続きはまだか・・・
588 :1 [sage]:2010/04/25(日) 23:46:41.00 ID:Bvcc9YSO
今帰宅したので、書き溜めてきます。
589 :管理人、Twitterを始める http://twitter.com/aramaki_vip2ch [sage]:2010/04/25(日) 23:53:02.45 ID:vzceuvAo
ガンガレ
590 :管理人、Twitterを始める http://twitter.com/aramaki_vip2ch [sage]:2010/04/26(月) 00:44:45.20 ID:s51YGCEo
まってるんだぜ
591 :1 [sage]:2010/04/26(月) 01:11:34.86 ID:qic1FkSO
日曜日がやってきた。
何変わらない日常がそこにはあった。

いつものように目覚める俺。
少し遅れて、少女は起きる。珍しく早起きだった。

どうやら朝食を作りたかったようだ。
先に起きている俺を視界に入れると、悔しそうな顔をした。
すぐさま台所に入って、料理の準備。

俺はその様子をじっと見守った。
千切りにすら悪戦苦闘する少女。
手助けしようとしたが、彼女に止められる。

時間は多少かかったものの、料理の出来は良かった。
基本、何でもこなせる子なのだろう。
練習さえすれば、すぐに俺を抜かせそうだ。

食後、食器を二人で洗った。
一人でやるより明らかに効率が良かった。
592 :1 [sage]:2010/04/26(月) 01:12:01.17 ID:qic1FkSO
テレビの前で寛いでいる少女。
俺は彼女に向かって、掃除の手伝いを申し出る。
渋ると思っていたが、意外にすんなりと了承した。

あっという間に、正午になる。

朝食を作ってくれたお返しということで、
昼は俺の得意レパートリーを披露した。

メニューはシンプルなチャーハンだ。
けれど蟹缶をふんだんに使い、卵との相性が抜群で。
タマネギの柔らかい甘さが、その美味しさを引き立てる。

中華鍋を片手に具材が宙を舞う。
その様子を少女は感嘆の目で見つめていた。

正直な話、いつもより上手に出来た。
「おいしい」と言いながら笑顔で食べてくれる少女に、
口元が勝手に緩む。照れくさかった。
593 :1 [sage]:2010/04/26(月) 01:12:37.20 ID:qic1FkSO
片付けを終えた後は、何となしに雑談する。
クラスの話とか、職場の笑える話とか。

話題は何でも良かったのだ。
ただ、二人で喋っているその空間が心地いい。
俺も、そして、彼女もそれを自覚していて。

楽しい時間が過ぎた。

独りでに時は進んだ。

時刻は──

……五時を回った

気が付けば、外はオレンジの光で包まれていた。
夕陽の日差しが窓から俺達を照らす。

俺はふと今の状況を再確認した。
目の前には輝く空を見つめる少女がいた。
594 :1 [sage]:2010/04/26(月) 01:13:28.78 ID:qic1FkSO
光は彼女の瞳を綺麗に反射させ、
俺はその美しさに目を奪われた。

きっと。間違いなのだろう。

きっと。錯覚なのだろう。

いつの間にか、俺の心に入り込んでいた。
けれど、その事実を信じたくはなかった。

少女は外から視線を外し、
真向かいに座る、一人の教師を……見つめた。

俺も……少女を見つめる。

静かな時間が過ぎだ。
何故か、言葉を交すことは無かった。

じっと。
ただじっと。

二人の視線が交差する。

沈黙を破るように、
少女が口を開こうとした瞬間──
595 :1 [sage]:2010/04/26(月) 01:14:34.02 ID:qic1FkSO
女「……え?」

男「…………」

チャイムの音が聞こえる。
来訪者を知らせる音が鳴った。

男「……客みたいだな」

女「宅急便かな?」

男「……ああ」

男「そうかもしれない」

男「けれど」

男「多分、違うはずだ」

女「……どういうこと?」

男「…………」

俺は彼女の質問には答えず席を立つ。
ゆっくりとした足取りで、玄関へ向かった。

少女もそっと物陰からこちらを覗いていた。
俺はそれを確認して。

……扉を開けた。
596 :1 [sage]:2010/04/26(月) 01:15:49.33 ID:qic1FkSO
?「…………」

女「……なっ」

男「お久しぶりです」

男「とりあえず中へ上がってもらえますか」

男「話さなければいけないこと」

男「謝らなければいけないこと」

男「話すことはたくさんありますから」

女「…………」

母親「……はい」

女「……母……さん……」

そして。

変わらない日常は。

幸せだった日々は。

──一瞬にして終わりを告げた

………………。
………………。
597 :1 [sage]:2010/04/26(月) 01:22:24.73 ID:qic1FkSO
【ここまでです】
【微妙なとこで止めてすみません】

【明日は来れないかもしれませんが】
【明後日は必ず来ます】
598 :1 [sage]:2010/04/26(月) 01:28:03.92 ID:qic1FkSO
>>594を訂正

×光は彼女の瞳を綺麗に反射させ、
○光は彼女の瞳を綺麗に反射して、

他にも、誤字脱字等あるとは思いますが、
脳内変換よろしくお願いします。
599 :管理人、Twitterを始める http://twitter.com/aramaki_vip2ch [sage]:2010/04/26(月) 02:04:00.69 ID:cZugWgSO
続き楽しみにしてます!!
今日もお疲れ様です
600 :管理人、Twitterを始める http://twitter.com/aramaki_vip2ch [sage]:2010/04/26(月) 04:40:35.59 ID:9SGiJxY0

待ってます
601 :管理人、Twitterを始める http://twitter.com/aramaki_vip2ch :2010/04/26(月) 08:15:40.34 ID:woqmD/s0
おっつん
待ってる
602 :管理人、Twitterを始める http://twitter.com/aramaki_vip2ch [sage]:2010/04/26(月) 08:17:28.50 ID:Y0VIN7k0
土曜終焉だったはずが結構ひっぱるな
あとどのくらいなんだろ??
603 :管理人、Twitterを始める http://twitter.com/aramaki_vip2ch [sage]:2010/04/26(月) 08:28:37.34 ID:ab4OGBIo
もう終わるだろ
母親でてきたし
終わるのか・・・
RPGのラスボス直前のセーブポイントにいる気分だわ
続き読みたいけど終わって欲しくないっていう
男と女両方とも幸せになってもらいたいものだ
604 :管理人、Twitterを始める http://twitter.com/aramaki_vip2ch [sage]:2010/04/26(月) 08:34:07.36 ID:e.0SuIDO

ハッピーエンドだといいなぁ
605 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/26(月) 10:51:10.83 ID:Va5DTGYo
乙です
606 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/26(月) 17:13:39.04 ID:plxe7V6o
乙です
ハッピーエンド、期待してます。
607 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/26(月) 18:55:00.94 ID:b0mVQsAO
世間に広まりさえしなけりゃなんでもいいや
がんばれ
608 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/27(火) 21:56:59.59 ID:gU3E46Eo
てs
609 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/28(水) 07:11:59.32 ID:KVOMrTIo
あれ?続きは?
610 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/28(水) 18:45:13.91 ID:Du5zIdMo
続きは?
土曜終了のはずがもう水曜だよww
611 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/28(水) 20:09:41.54 ID:g0oeADQo
このすれ立てといて本当に良かった…
612 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/28(水) 20:10:20.55 ID:EOI33gAO
>>610
そうだねよかったね(笑)^^
613 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/28(水) 20:11:40.18 ID:pdrNbjgo
わざわざ反応してあげるなんて親切だね^^
614 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/28(水) 20:44:34.07 ID:EOI33gAO
携帯なものですから^^
615 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/28(水) 20:44:59.46 ID:l8YMTYY0
>>1は書ききるっていってんだからおとなしく待ってようぜ。
616 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/28(水) 22:07:54.82 ID:jPVv3/Ao
まだかなぁ〜(´・ω・`)
617 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/29(木) 07:37:18.01 ID:Rz55/9U0
土曜。物語は、終焉を迎えます。

アハハ
618 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/29(木) 08:01:24.51 ID:kgP1Czso
そろそろ土曜だな
619 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/29(木) 09:51:49.77 ID:8b7I82DO
そうだな
620 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/29(木) 09:58:54.72 ID:ttkk8Y.o
そうだなー
621 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/29(木) 23:04:51.87 ID:aY8J96AO
待っとるよ
622 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/29(木) 23:22:35.54 ID:sQbJJkAO
>>520の通りになってるな
623 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/30(金) 18:39:20.67 ID:O/zkv9Io
なんという罠
624 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/30(金) 19:35:35.01 ID:KQmS2fQ0
こね〜な〜
625 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/30(金) 21:27:26.52 ID:KBN58kAO
気長にまってるぞ〜
626 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/30(金) 21:31:29.45 ID:PLzYrc6o
明日来るんだろ 土曜日だし
627 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/30(金) 21:51:33.50 ID:FQpweyco
何回目の土曜日で終わるんだろう
まあ完結さえしてくれればいいや
628 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/01(土) 02:35:09.73 ID:gX6ZiRc0
御大層な事言った割には来ないね
629 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/01(土) 22:11:06.21 ID:xC30TgAO
まだか
630 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/01(土) 23:12:27.50 ID:TVaEWsgo
事故にでもあったのか
631 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/02(日) 00:02:22.39 ID:Kmvkf6DO
日曜になったわけだが…

GW中の楽しみが…
632 :あぼーん :あぼーん
あぼーん
633 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/02(日) 00:38:44.26 ID:47MpYfAo
>>632
専用スレ以外の宣伝は報告対象なので報告しときました
あと、ポイント目的で進めるのはいけませんよ
634 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/02(日) 02:26:43.42 ID:mTWxrfo0
そういや
土曜。物語は、終焉を迎えます。
とは言ったけどいつの土曜とはいってないよな。
もしや、来週までおあずけなのか?
635 :1 [sage]:2010/05/02(日) 04:45:33.83 ID:HdxAJwSO
目の前に座っているのは、少女の母親。
小さな飲み屋で日々働いて、一人の娘を育て上げた。

そこには子に対する愛がある。
親の責任を全うした意志がある。

そんな女性に、母親に、俺は頭が上がらない。
自らを育ててくれた叔父と被って仕方が無かった。

だからかもしれない。
彼女に怒鳴られても、叱られても。
時には暴力を受けたとしても、全く構わなかった。

或いは、彼女に断罪して欲しかったのか。
教師の身でありながら女を泊まらせたという罪に、
少しでも償いをしたかったのかもしれない。

けれど。

目の前の女性は、全く動じることはなかった。

瞼を閉じ、真摯に俺の説明を聞き、
その表情は実に穏やかで……。
636 :1 [sage]:2010/05/02(日) 04:46:22.88 ID:HdxAJwSO
俺は……それが逆に不安だった。

その静かさが。とにかく、恐ろしかった。

冬にもかかわらず、俺の額からは一筋の汗が流れた。

幾ら弁明しても、全てを見通されているような。
そんな恐怖が……胸の中を渦巻いていた。

男「…………」

やっとのことで、全てを話し終える。
無限に感じられた時間が、終わりを迎えた。

隣にいる少女は、じっと下を向き。
その様子は、何かを必死に耐えているようで。

しばし、沈黙の時間が続いた。

二三分が経っただろうか。

彼女の母親が、ゆっくりと。
……まず初めにこう言った。

母親「……ありがとうございました」

男「……え……?」

その言葉に、俺は耳を疑う。
637 :1 [sage]:2010/05/02(日) 04:47:08.46 ID:HdxAJwSO
彼女は続けた。

母親「この娘が家を出てから……」

母親「正直、毎日が不安で仕方ありませんでした」

男「…………」

母親「一時期は全く連絡もなくて……」

母親「警察に捜索願を出そうとも考えてたんです」

母親「……けれど、そんな矢先」

母親「急に、定期的に連絡が来るようになって……」

母親「凄く安心したのを覚えています」

男「……はぁ」

それが、侮蔑でもなく、憤怒でもない……
感謝の言葉を俺に述べる理由になりうるのだろうか。

ただ、相づちを打つことしか出来なかった。

そんな俺の内心を察していたのだろうか。
何故か彼女は……笑顔だった。
638 :1 [sage]:2010/05/02(日) 04:47:42.97 ID:HdxAJwSO
母親「今の先生の話を聞いて……」

母親「やっとその理由が分かりました」

男「……?」

どういうことだ……?

事情が分からない俺は、ただ狼狽えるばかりで。

助けを求めるように隣の少女を見ると、
一瞬視線が合ったのだが、すぐに逸らされてしまう。

目の前の女性は、まだ笑っている。
俺の答えを待っているようだった。

男「……ええと」

母親「まだ分かりませんか?」

男「は、はい……」

男「正直……さっぱりです……」

母親「男先生」

男「あ……はい」

唐突に名前を呼ばれる。
639 :1 [sage]:2010/05/02(日) 04:48:14.42 ID:HdxAJwSO
母親「この娘がここに泊まり始めたのはいつですか?」

男「ええと……」

男「約二週間前です」

母親「実は……」

母親「連絡がとれるようになったのも」

母親「同じ、二週間前なんですよ」

男「…………」

男「……えっ」

俺は慌てて、隣の少女を見る。

女「……うっ」

また視線を外されてしまうが、
彼女の頬がほんのりと赤く染まっているのに気が付いた。

ああ。

そういうことか。

つまり──……
640 :1 [sage]:2010/05/02(日) 04:48:50.95 ID:HdxAJwSO
母親「この娘、先生に迷惑かけたくなかったんでしょうね」

母親「下手に学校や警察に連絡されると」

母親「確実に先生の家に泊まってることが分かってしまう」

母親「それだけは防ぎたくて、私に連絡をするようにしたんでしょう」

男「…………」

どんな反応をすればいいのか。

隣の少女はさきほどより深く俯いていて。
それが、母親の言うことが事実だと裏付けている。

まさか。
本当に考えもしなかった。

連絡をとっているのは知っていたが、
それが俺のためだったなんて……気付けるわけもない。

少女を保護した気持ちになっていたが、
皮肉にも彼女も俺を守ろうとしていたなんて。

男「……は、はは」
641 :1 [sage]:2010/05/02(日) 04:49:34.78 ID:HdxAJwSO
滑稽だ。
自分に対して嫌気がする。

常に上から彼女のことを見て。
教師面、大人面をして。余裕を持った振りをして。

何も考えていない危なっかしい生徒を、
少しの間だけ、泊まらせてやった。

そんな風に思っていた俺が、
実は、彼女に助けられていたなんて。

男「…………」

とても恥ずかしかった。
それも、人生で一二を争うぐらい。

すぐにでも、床でのたうち回りたい気持ちを抑えて。

けれど。

胸の中に宿ったのは……
642 :1 [sage]:2010/05/02(日) 04:50:10.46 ID:HdxAJwSO
男「…………」

男「……なあ、女」

女「……うっ」

男「今のことは本当なのか」

女「べ、別に先生のためだけって訳じゃないよっ」

女「母さんにも心配かけたくなかったし……」

女「面倒は御免ってだけで……」

母親「ふふっ」

女「ちょ、ちょっと、母さんっ!」

女「笑わないでよっ」

母親「ごめんなさい、女の必死の言い訳がおかしくて……」

女「言い訳って……」

女「まあ……確かに……そうかもしれないけど……」

男「…………」

少女はちらちらとこちらを伺っていた。
そんな彼女を俺は見つめる。
643 :1 [sage]:2010/05/02(日) 04:51:31.64 ID:HdxAJwSO
男「女」

女「……うぅ」

男「ありがとうな」

男「そんな気を遣ってくれてたなんて」

男「本当に思いもしなかった」

女「…………」

男「もし、仮にお前が連絡してくれなかったら」

男「俺は、教師の職を確実に追われていたな」

男「或いは、牢屋にぶち込まれてたかもしれない」

女「そ、そんなことは……」

男「いいや、あるさ」

男「それだけ俺の行為は、非難されるべきことだ」

男「仮にお前が困っていたとしても」

男「違う良い方法が、必ずあったはずなんだ」

女「……せ、先生」
644 :1 [sage]:2010/05/02(日) 04:55:02.28 ID:HdxAJwSO
男「まあ……」

それでも。

これからどうなるのかはまだ分からない。

全ては──

男「お母さん」

母親「……はい」

男「それで……」

男「この後、どうします?」

男「学校にも、警察にも……」

男「……望むままにして下さい」

母親「…………」

女「え、え?」

女「ちょ、ちょっと待ってよっ」
645 :1 [sage]:2010/05/02(日) 04:56:00.37 ID:HdxAJwSO
女「先生、その言い方だと……」

母親「良いんですか」

男「はい」

女「か、母さんっ!」

母親「女は少し黙ってて」

女「で、でもっ!」

女「私が勝手に泊まっただけだよっ!」

女「先生は、何も……何も悪くないってっ!」

母親「……女」

女「……うぅ……」

彼女が少女の名前を呼んだだけで、
俺を必死に庇う少女は静かに黙った。

それだけ、この母親は大きな存在なのだ。
646 :1 [sage]:2010/05/02(日) 04:56:46.56 ID:HdxAJwSO
男「…………」

俺から最早言うことはない。

母親「…………」

彼女は俺をじっと見つめる。

そして──

母親「……そうですね」

母親「いくらこの娘が無理を言ったとしても」

母親「あなたが教師である以上、それは止めるべきだった」

母親「選ぶべき選択ではなかった」

女「……か、母さん……」

少女の悲痛の声が聞こえる。

けれど、俺には分かっていた。
あれが間違いだったと。過ちだったと。

男「…………」

母親「……先生」
647 :1 [sage]:2010/05/02(日) 04:57:17.16 ID:HdxAJwSO
母親「今、あなたはどんなことを考えてますか」

母親「泊まらせたのは間違いだと」

母親「過ちだったと」

母親「……思ってはいませんか?」

男「…………」

母親「……多分ね」

母親「それが、普通の反応だとは思うんです」

母親「社会的に見てもそうでしょうね」

母親「…………」

母親「……でも」

男「……え?」

母親「私は、先生の判断は正しかったと」

母親「そう思ってしまうんですよ」

男「…………」

母親「あの日」
648 :1 [sage]:2010/05/02(日) 04:57:48.90 ID:HdxAJwSO
母親「先生がこの娘を家の前で見つけた時」

母親「かなり酔っていたと聞きました」

母親「もし……」

母親「行き着く先が、先生の家じゃなかったら」

母親「その前に、他の人たちに連れ去られていたら」

母親「先生が泊まるのを頑なに拒んで……」

母親「そのままこの娘が飛び出してしまったら」

母親「私は……それを考えるとぞっとします」

男「…………」

母親「だから」

母親「私は、本当に感謝してます」

母親「先生で良かったなって……」

母親「今日、この娘が必死に庇う姿を見て」

母親「それは確信に変わりました」
649 :1 [sage]:2010/05/02(日) 04:58:21.23 ID:HdxAJwSO
母親「ありがとう」

母親「本当に、ありがとうございました」

母親「……そして」

彼女は笑顔を止めた。

厳しい顔つきで、こう続けた。

母親「お話をしなければならないこと……」

母親「お願いしなければならないことがあります」

男「……?」

女「……え……?」

彼女は、静かに息を吐く。

少しの間があった後──
……彼女は言った。
650 :1 [sage]:2010/05/02(日) 04:58:53.95 ID:HdxAJwSO
母親「もう少しの間だけ」

母親「……この娘を預かってもらえませんか」

男「それは……」

この生活をまだ続けるということか。
娘をここに置いていくということか。

分からない。理解に苦しむ。

何の意味があって、そんなことを……。

頭の中で色々巡らせてみるが、理由は見つからない。

母親「実は……」

母親「事態は緊迫してまして……」

母親「話せば長くなるんですが……」

彼女はすまなさそうな表情で、俺に言った。

その時。

頭の中で。
何かが一つに繋がった。
651 :1 [sage]:2010/05/02(日) 04:59:42.73 ID:HdxAJwSO
男「…………」

男「それは」

男「数日前に学校に来た……」

男「女を探している男が関係してますか?」

母親「…………」

女「……え? なに、それ?」

母親「そうですか……」

母親「学校にも足を運んでるんですね……」

女「ちょっと待って」

女「ごめん、状況が全く掴めないんだけど」

女「誰か、私に会いにきたの?」

男「……お前が風邪で休んでる日にな」

女「それって……誰?」

男「…………」

男「その疑問に答えられるのは一人だけだ」
652 :1 [sage]:2010/05/02(日) 05:00:18.76 ID:HdxAJwSO
女「…………」

女「……母さん?」

母親「…………」

男「説明して頂けますか」

母親「……はい」

そう言って。
目の前の彼女は席を立った。

既に日が落ちて、外は真っ暗闇だ。
彼女は窓からその闇をただ眺めていた。

母親「女」

女「う、うん」

母親「あなたによく聞かれたわよね」

母親「いつも聞かれては、うやむやにしてきた」

母親「あなたが家出をした原因、覚えてる?」
653 :1 [sage]:2010/05/02(日) 05:00:53.70 ID:HdxAJwSO
女「…………」

女「……お父さんのこと……」

女「それで……また喧嘩して……」

母親「……そう」

母親「あなたの父親のこと」

母親「私は一切、教えてこなかった」

母親「ずっと、黙ってきた」

母親「それで言い合いになっても、喧嘩しても……」

母親「話す気はさらさらなかった」

女「…………」

女「で、でも……それが……」

女「今……話していることに関係あるの……?」

母親「…………」

母親「気を強く持ちなさい」

母親「そして」
654 :1 [sage]:2010/05/02(日) 05:04:40.76 ID:HdxAJwSO
母親「今のうちに謝っておくわ」

女「……え?」

母親「ごめん」

母親「ごめんなさい」

母親「私は母親として失格よ」

女「……か、母さん……?」

女「ど、どうしたの……?」

母親「私は……」

母親「……わたしは……」

母親「……いえ……」

母親「まずは説明しないとね……」

母親「先生が言った、学校に現れた男は……」

母親「おそらくだけど……」

女「……う、うん」

母親「あなたの」
655 :1 [sage]:2010/05/02(日) 05:05:19.17 ID:HdxAJwSO
母親「──……父親よ」

男「…………」

……予想通りか。

女「……ほ、ほんとに……?」

女「本当に、お父さんなの……?」

歓喜のあまり少女の瞳には涙が溜っていた。

嬉しいのだろう。
ずっと恋しく思っていた父親の情報が得られたのだ。
すぐ近くにいるということが分かったのだ。

男「…………」

だが。

まだ終わりではない。

どうして父親のことを隠す必要があるのだ。
ここまで隠し続けようとした理由は何だ。

加えて……

母親「……聞いて」
656 :1 [sage]:2010/05/02(日) 05:05:58.37 ID:HdxAJwSO
母親「まだ、話は終わりじゃない」

女「でも、お父さんがいるってっ……」

母親「違うの」

母親「それはあなたの“お父さん”じゃない」

女「えっ?」

女「……意味がよく分からない……」

女「だ、だって、今、その人はお父さんだって……」

母親「あなたの“父親”だった男よ」

女「…………」

女「……『だった』?」

記憶を失うとはどういうことだろう。
記憶が消えるとはどんな意味を持つのだろう。

母親「今は、あなたの父親でもなんでもない」

母親「既に離婚してるの」
657 :1 [sage]:2010/05/02(日) 05:06:35.85 ID:HdxAJwSO
女「……それでも」

女「離婚してても、私のお父さんじゃ……」

人間には防衛本能がある。

時にそれが生じた結果、
無意識的に記憶が改竄されることがある。

母親「違う」

母親「違うの」

母親「あの男は……アイツは……」

母親「あなたにとって……」

少女の、父親の記憶は狂っている。
明らかに書き換えられている。

それが。
彼女の父親とどう繋がるのか。

母親「──二番目の父親なの……」

……嫌な予感しか、しなかった。

………………。
………………。
658 :1 [sage]:2010/05/02(日) 05:07:39.38 ID:HdxAJwSO
あるところに一人の女性がいた。
彼女はとても美しく、何人もの男性から求婚を受けた。

けれど、どの男も彼女の心を奪うことは出来なかった。

小さい頃から多くの異性に声をかけられてきた、
そんな彼女にとって、生涯を共にしたいと思えるような男性は、
そう見つかることはなかった。

彼女の夢は、歌手になること。
それはテレビの中で歌っているアイドルたちではない。
洒落たお店で、劇場で、客の心を掴むそんな歌手になりたかった。

容姿端麗な彼女にとって、その夢は現実可能だ。
すぐさま、ある店から声がかかる。

彼女は歌った。
人生を歌に乗せた。

恋愛など彼女には最早不必要な存在だ。
オレンジ色の柔らかい光があたる……
そんな場所で歌えることだけが、彼女の幸せになった。

客の誰かが言った。

あの店には、最高のシンガーがいる、と。

それを聞いて訪れた誰かが言った。

あの歌を聞けるだけで、大金を積む価値がある、と。
659 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/02(日) 05:07:53.87 ID:BZvJzsoo
頑張れ
660 :1 [sage]:2010/05/02(日) 05:08:19.45 ID:HdxAJwSO
……いつの間にか。

彼女は店の看板になった。
口コミは広がって、見る見る客の数も増えた。

けれど、彼女にとっては既に些細なことだった。
何かに邪魔されることなく、自らの意志だけで歌う。
それが、とても心地よかった。

ある時。

一人の客が、歌い終わった彼女の元にやってきた。

いつものことだ。

歌を絶賛するか。
それとも彼女の気を引きたいだけか。

数多くの台詞を彼女は聞いたが、
基本的にこの二つのどれかに分類できた。

相手は、男性。

彼女は後者だと思った。
今度はどんなユーモアに富んだ台詞を聞けるのか。
どちらにせよ、自分の答えは決まっている。

そうやって、内心で小馬鹿にしていた。
661 :1 [sage]:2010/05/02(日) 05:08:50.04 ID:HdxAJwSO
いつもの営業スマイルで迎える。
彼は言った。

『とても綺麗な歌声でした』

聞き飽きた台詞だった。

しかし。

その後の言葉を聞いた彼女は凍り付いた。

『けれど……』

『何故か、胸には届かなかった』

『あなたは何を思って歌ってますか』

『何を考えて歌っていますか』

『とても美しい歌でした』

『が、心には響かない』

『……期待していただけに』

『本当に残念です』

そう言い終えた彼に、反射的に彼女は、
飲んでいた酒の中身を浴びせた。
662 :1 [sage]:2010/05/02(日) 05:09:23.48 ID:HdxAJwSO
許せなかった。

あれほど皆が絶賛するしているのに、
この男は何を言っているのだと、腹が立った。

けれど。

その言葉は彼女をずっと蝕むことになる。

あれだけ楽しかった、歌う行為が。
次第に苦痛になっていく。

気が付けば。
彼女は、店を辞めていた。

そして、再開の日はすぐにやってきた。

駅のホームで偶然、あの男性を見かける。

時刻は深夜。
正直、女性から声をかけるような時間ではない。
躊躇った後、結局は彼の肩を叩くことになる。

初めは驚いていた彼だったが、金曜日ということもあってか、
少し話をしようということになる。

彼女は聞きたかったのだ。
663 :1 [sage]:2010/05/02(日) 05:10:02.79 ID:HdxAJwSO
どうしてあの時、彼はああ言ったのか。

ずっと疑問に思っていた。
胸の中で蟠りとなっていた。

公園のベンチに座り、彼女は切り出す。
まずはあの時、酒を浴びせたことに対する謝罪を。
そして、ずっと聞きたかったことを。

彼は言った。

それはあの日と同じ台詞だった。

『あなたは何を思って歌ってますか』

『何を考えて歌っていますか』

彼女は答える。

特に何かを考えて歌いはしない、と。
本能に任せ、気分良く歌うだけだ、と。

正直に、包み隠さず言った。

『多分、それが普通なんでしょう』

『でも僕は、何か違う気がしたんです』
664 :1 [sage]:2010/05/02(日) 05:15:37.24 ID:HdxAJwSO
『あなたは何故歌いたいと思ったのか』

『初めの頃、何をもって歌いたいと思い始めたのか』

『恐らく、多くの人を感動させたいと』

『多くの人の心を掴みたいと思ったと思うんです』

『けれど、あの時のあなたには……』

『それが全く感じられなかった』

『あれは、あなたの自己満足に過ぎない』

『あなたは客を全く見ていなかった』

『ただの見物人に過ぎないとしか思っていなかった』

『視界の隅にも入れなかったはず』

『それが……何となく感じられて……』

『生意気にも、あんなことを言っちゃったわけです』

彼女はそれ聞いて。
はっと気付くものがあった。
665 :1 [sage]:2010/05/02(日) 05:17:06.14 ID:HdxAJwSO
確かにそうだ。
自分は客のことを一切無視していた。

聞きたければ聞け。
時には、聞かせてやっているのだ、とも考えていた。

それもある意味、一つの形だ。
誰かに否定させる言われはない。

けれど、自分はどうだ。
どうして、歌手を夢にしたのだ。

人を感動させたいと。
強く願ったからではなかったのか。

忘れていた。一番大切なことを失念していた。
周りに評価されて、天狗になっていたのか。

彼女は納得して、落ち込んだ。
彼に言い返せる気力も、反論も、なかった。

そんな彼女を見て、彼は言った。

『そんな悲しませるつもりはなかったんです』

『それでも……』

『また無礼なことを……お願いしてもいいでしょうか』

『もし……』
666 :1 [sage]:2010/05/02(日) 05:18:28.89 ID:HdxAJwSO
『よろしければ……もう一度ここで』

『あなたの歌が聞きたい』

勿論、返事は決まっていた。

彼女は歌う。
彼に向かって。

彼女は歌う。
たった一人の客に向かって。

自分の歌声を聞いている彼が。
隣にいることを意識しながら。

彼が自分の歌に聞き入っていることが。
言葉を交わさずとも伝わってくる。

気持ち良かった。
あの不快感が嘘のように、楽しかった。

彼女の生涯にとって。
それは一生、忘れられない一瞬となる。

歌い終わった時。
彼は何も言わず、彼女に向かって、ただ笑った。

その笑みを。
彼女は、愛しいと。

……そう、感じたのだ。
667 :1 [sage]:2010/05/02(日) 05:19:31.23 ID:HdxAJwSO
時は経って。
二人は愛し合った。

結婚するのに、時間はかからなかった。

二人の愛の結晶が。子供が。
生まれる。

幸せが続いた。

彼女にとって、最高の時間が続いた。

けれど。

それは、唐突に終わりを迎える。

二人の子が、ちょうど一才になった頃。
彼は急性の心臓発作で亡くなった。

彼女は嘆いた。運命を呪った。

愛しい彼の待つあの世へ、行こうかとも考えた。

しかし、彼女には子がいる。
まだ、立つことも出来ない子供がいた。

そのことを考えると、止まるわけにはいかなかった。
歩み続けるしかなかった。
668 :1 [sage]:2010/05/02(日) 05:20:06.00 ID:HdxAJwSO
水商売で金を稼ぐ。そんな生活が続く。

必死に毎日を生き、子の笑顔を生き甲斐にした。

いつの間にか。
子供は、小学生になった。

必死に働いた結果、金もかなり溜っていた。

彼女はそれを元手に、店を開くことにする。
小さな店だ。客も二十人ほどしか入らない。

けれど、前以上に時間が出来、余裕がある。
彼女の苦労も、少し減った。

だが、そのせいで。
彼女は胸にぽっかりと空いた穴を意識し始めた。

それは、夫が死んでしまった代償だ。
がむしゃらに生きた間は忘れられたが、
また悲しみと、愛しさが募り始めた。

そんな時。あの男と出会ったのは、
ちょうど夏のことだった。

とにかく人が恋しく、限界だった。

かつての自分なら、相手もしないような男だった。
けれど、彼は何度も店に足を運んだ常連だった。
669 :1 [sage]:2010/05/02(日) 05:20:42.51 ID:HdxAJwSO
明らかに自分を好いているのが分かる。
それが、彼女の判断を鈍らした。

何度も男の誘いを、愛の囁きを拒んでいたが、
ついに彼女もそれに乗ってしまう。

恋は盲目と言う。
長年人恋しかった彼女は、周りが見えなくなった。

優しい言葉を常に囁く彼に、彼女は虜になった。
プロポーズを受ける。そして、二度目の結婚を迎えた。

また、幸せがやってきた。
いや、やってくるはずだった。

しかし、現実は違った。

問題は、彼女の連れ子だ。

男は始め、良い父親として彼女に振る舞った。
土日には子供を可愛がった。

けれど、それも長くは続かない。

子供が小学三年を迎えた頃から、
男は明らかにその存在を無視することになる。

一緒に暮らしているというのに、
男は子供を全く相手にしなかった。
670 :1 [sage]:2010/05/02(日) 05:21:18.12 ID:HdxAJwSO
食事のときも。家にいるときも。
完全に無視を続けた。

彼女はそれ見て、この生活が既に限界だと気付いてた。
けれど、一度恋してしまった感情を捨て去ることを恐れた。

彼女もまた、彼の前では子供を相手にしなかった。
男に嫌われるかもしれないという恐怖が、それを強制した。

確実に狂い始めたのは。
その年の冬。

その日、男は平日にも関わらず早く帰宅した。
理由を問うと、仕事を辞めた、と答える。

結婚して初めて、夫婦喧嘩になる。
そのこと自体も異常だった。

口論の末、男は彼女に暴力をふるった。

そう。
確実にこの時から狂った。

あとは、よくある話だ。

仕事がない男は、酒に溺れ。賭け事に手を出し。
仕舞いには、金を外で借りるようになる。

次第に家に帰ることも少なくなった。
671 :1 [sage]:2010/05/02(日) 05:23:06.17 ID:HdxAJwSO
既に彼女の愛も冷めていた。
いや、初めから偽りの愛だったのだ。

子供は大きくなった。小学四年生だ。
そろそろ終わりにすべきだ、と彼女は考えた。

もう少し経てば、子供も身体が大人びてくる。
女性として身体が大きく変化し始めた時、
男がどう出るのか、それが恐ろしかった。

彼女は決断する。

いつものように酔って帰って来た男に、
彼女は別れの話を切り出した。

そして──

そこからの記憶がない。

気が付けば、病院のベッドに横たわっていて。
隣には泣き腫らした子供が彼女の手を握っていた。

あとで事情を警察に聞かれる。

病院の話では、男が過度な暴力を彼女に振るったようだった。
ただ、彼女はその内容を具体的には覚えていなかった。
頭を強く打ったせいか、医者はそう言っていた。
672 :1 [sage]:2010/05/02(日) 05:23:50.40 ID:HdxAJwSO
ここで一つ問題があった。
恐らく、子供はその全てを見ていたということだ。

彼女は自分の怪我の様子を見て、
それが壮絶なものだったことを理解する。

そして、その様子を子供が目撃していた。

ショックがないと言ったら嘘だろう。
せめてもの救いは、子供は無傷だったことだ。

彼女は意図的に、子供に何があったのかは聞かなかった。
あまり刺激するのは良くないと判断した。

彼女は警察にもそれをお願いして、
行方をくらました男を捕まえて欲しいと、
被害届を提出した。

その後、裁判所に申し立てを行って、離婚は成立。

もう一度、人生をやり直すことを決意する。
子供が大人になるまでは、頑張ろうと。

彼女が異常に気付いたのは、数ヶ月後。

ふと子供が父親のことを聞いてきた。
だから、彼女は忘れなさいと言った。

が。
673 :1 [sage]:2010/05/02(日) 05:24:32.06 ID:HdxAJwSO
その後、子供が言ったことを思い出して。
彼女は鳥肌が立った。

『お父さん』

あの男のことを、
一度だってそんな風に呼んだことがあっただろうか。

いや、ない。
そんな呼び方はしなかった。

慌てて話を聞く。

不安は的中した。

子供は、父親のことを完全に忘れていた。

彼女は悔やんだ。

それが、あの日の出来事を見た衝撃の代償だったと分かった。
674 :1 [sage]:2010/05/02(日) 05:25:47.24 ID:HdxAJwSO
そこで、彼女は決断した。

忘れているなら、思い出す必要はない。

子供にとって、それがトラウマなら。
あえて掘り起こす必要ない。

父親のことは封印する。

記録に残るものは、実家へ送ろう。
本当の父親のことも。あの男のことも。

そして、年月は過ぎた。

こうして、彼女は父親のことを子供に隠した。

これが事実だ。

これが女の母親が語った全てだった。

………………。
………………。
675 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/02(日) 05:34:38.60 ID:0c3HI2DO
見てるよ!
676 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/02(日) 05:38:44.11 ID:j0mxyzIo
起きてて良かった。
677 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/02(日) 05:57:51.43 ID:Jbg1F0Mo
寝落ちかな
678 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/02(日) 06:36:17.34 ID:Kmvkf6DO
急かすような事言ってごめんなさい


早起きは3文の得だね

乙です
679 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/02(日) 06:49:59.19 ID:T7A9QcDO
おーこのスレこっちでやってたのか


続き気になってたのに途中で落ちちゃったから、続き見れるのがすごいうれしい
680 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/02(日) 07:36:51.83 ID:PUE0EEDO

戻ってきてくれてよかった
681 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/02(日) 08:57:24.62 ID:pjx2KBgo
682 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/02(日) 10:43:42.77 ID:uMulH7M0
乙!
683 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/02(日) 11:02:31.26 ID:diX4lNI0
684 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/02(日) 11:32:30.81 ID:Fx8R/n20
みてるよ乙
685 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/02(日) 13:23:16.66 ID:HCmRZtc0
いっきにつまんなくなったな
686 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/02(日) 13:27:47.00 ID:YEJW4eAo
687 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/02(日) 13:41:02.67 ID:BRhLAIAO
続き楽しみだ
688 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/02(日) 17:55:33.08 ID:6aa5gjEo
ゆっくりでもいいから完結してくれ
689 :スレ立て主 [sage]:2010/05/02(日) 21:10:26.00 ID:upkolq.0
よしきた

がんがれファイトォ
690 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/03(月) 05:09:36.52 ID:8bhADeMo
期待
691 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/03(月) 09:20:38.55 ID:ab0Oe2AO
来週まで保守の時間か
692 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/03(月) 10:02:48.34 ID:vDdUFgco
こっちは保守いるのか?
ここにはこのスレから来たので知らんがパー速なら保守いらんしどうなの?
693 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/03(月) 10:56:08.20 ID:PB4yzdgo
保守はいらん。

それよりも>>1乙。楽しみにしてるよ
694 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/03(月) 13:01:53.84 ID:ridxOgso
え?
695 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/03(月) 14:47:04.02 ID:TnsjZUDO
>>694
え?
696 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/03(月) 16:37:30.53 ID:NvlOFPM0
ブラウザで壊れてるとか出たから一応てst
697 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/04(火) 00:59:56.05 ID:bM464gAO
がんば
698 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/04(火) 03:43:55.00 ID:4L9Uazko
 
699 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/04(火) 04:08:30.17 ID:4L9Uazko
 
700 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/04(火) 04:55:49.17 ID:KonIDx2o
保守はいらんぞ?
701 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/04(火) 13:21:33.28 ID:4L9Uazko
いや、なぜかログが破損しているらしい
702 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/04(火) 13:26:45.03 ID:cphmMvko
703 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/04(火) 14:03:24.77 ID:yO1IUXAo
いや誰も聞いてないし
704 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/04(火) 20:34:06.32 ID:jGELpUY0
とっとと
705 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/04(火) 23:20:56.72 ID:siy2loAO
どうせ1000レス近くまで延ばしたいんだろ>>1は。
土曜日とかもうなんでもいいから早く書き切れ
706 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/05(水) 12:39:49.73 ID:v5GxgYAO
>>705ったらもうせっかちねぇ
707 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/05(水) 20:02:01.21 ID:WHtMF6s0
mdk?
708 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/05(水) 22:01:51.03 ID:f.0OI/g0
madadayo
709 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/06(木) 21:08:50.75 ID:ADGGMEAO
madamada
710 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/06(木) 22:04:53.58 ID:i9AE8gAO
うぜぇなこの流れ…











madadesuka
711 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/07(金) 19:45:13.31 ID:cMvT6IUo
>>1がこのスレの存在を忘れてる、という有名オチ
712 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/08(土) 00:14:01.41 ID:SPx5B.E0
俺はそんオチで満足なんてしないぞ
713 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/08(土) 01:08:02.00 ID:FzYEuxMo
土曜日がきた!
714 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/08(土) 14:45:34.85 ID:LAY352M0
>>1よGWはとっくに終わってるぞ
715 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/08(土) 17:07:51.09 ID:yaxkjMs0
冷静に読み返して恥かしくなったんじゃないか
716 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/08(土) 17:58:02.67 ID:00.u4GU0
madadesuka
717 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/08(土) 23:17:23.18 ID:XD4DLQYo
土曜日が終わってしまう
718 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/09(日) 00:22:39.24 ID:Mc0Iel6o
土曜日が終わった
719 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/09(日) 09:35:46.38 ID:4ZOkiUAO
720 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/09(日) 15:05:31.47 ID:L9L5wTwo
まだ来ないの?
721 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/09(日) 15:06:59.57 ID:L9L5wTwo
連投でスマンが
674 1 mail:sage 2010/05/02(日) 05:25:47.24 ID:HdxAJwSO [39/39]
これ以降来てないってどうなんよ?1週間経ってるぞ
722 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/09(日) 16:35:24.95 ID:Vi2a1fQo
旅行でも行ってんじゃね
723 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/09(日) 17:30:22.11 ID:LHhwoboo
一週間ぐらいどうってことないと思うが
724 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/09(日) 21:13:36.65 ID:pwQwzz6o
まだか
725 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/10(月) 03:49:25.26 ID:R/vxR.DO
GWだったし忙しかったんだって信じてる
726 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/10(月) 19:36:27.55 ID:hYmrexk0
文章の自分浸り具合だけは高くなってるんだけどなー
727 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/10(月) 20:08:02.60 ID:lkm0Idgo
帰省中ならぬ規制中だろ
728 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/10(月) 20:58:13.98 ID:XLJ/HWoo
誰がうまいこと言え(ry
729 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/10(月) 21:13:06.08 ID:L.wjPAco
ここって規制とか関係ないんじゃ・・・
730 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/10(月) 22:06:28.55 ID:/gfc.MAO
節子、それドロップやない。釣り糸や
731 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/11(火) 19:08:36.54 ID:U76Majgo
規制関係ないんなら>>1来ればいいのに・・・。
732 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/11(火) 19:11:26.83 ID:.MXvZkko
IDtest
733 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/12(水) 22:17:23.04 ID:BnmzvUMo
tes
734 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/12(水) 23:01:00.85 ID:ql58vUQ0
まだかなー
735 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/13(木) 08:50:15.85 ID:22CWMIAO
楽しみに待ってるぞーい
736 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/13(木) 23:30:23.92 ID:S5/SnAAO
はやくこーい
737 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/14(金) 09:32:43.30 ID:Y02VMkAO
おそーい
738 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/15(土) 16:40:50.02 ID:ddVHykAO
こねーのかよ氏ね
739 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/15(土) 16:42:32.02 ID:4tcpSz60
>>734-737同一だろwww
740 :1 [sage]:2010/05/15(土) 20:24:02.68 ID:9W.osoSO
女の母親が帰った後も、俺達は座ったままだった。

勿論、そこには会話はなかった。
互いに視線を合わせることもなく、ただ時間だけが過ぎていく。

俺は一つ溜め息をついた。

母親が語った真実はあまりにも重かったのだ。
それも、予想していたよりも……ずっと。

彼女自身にとって過去を語る事は非情に酷だったはず。
なおさら、女にとっては明らかに辛いのが目に見えていて。

女は、未だ俯いた状態で放心している。
目は虚ろ。そこに心があるのかと心配になるほどだ。

俺はそんな彼女を横目で捉えながら、
何となしにこれからのことを考える。

女の母親が言っていたことが事実なら、
元夫は何故、今さらになって彼女の娘に会おうとしたのか。

それも学校へと訪れるほどの異常ぶりだ。
少し調べれば、今では女と疎遠であることが知られるだろう。
そんなリスクを負うまでする理由が、俺には分からなかった。

一つだけ確かなことがあるとすれば。

ここ最近、学校内が騒がしいということ。
そんな矢先に、あの男が唐突に現れたということ。
741 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/15(土) 20:25:43.92 ID:9rgimo2o
きてたー
待ってたぜ!
742 :1 [sage]:2010/05/15(土) 20:26:10.07 ID:9W.osoSO
女「……ねぇ、せんせい」

男「……ん、なんだ」

思考を一旦、中断する。

彼女はこちらを向きはしなかった。
焦点の合わない視線をただ机に浴びせて。

女「私さ……先生も知ってると思うけど」

女「自分のお父さんのこと、本当に気になってて」

女「正直……ファザコンなのかもしれないって思ってた」

男「…………」

女「ことあるごとに、母さんに問いつめて」

女「よくそれで喧嘩して」

男「ああ」

女「何で私だけこんな辛い思いするんだって」

女「こんな変な家に生まれたくなかったって」

女「両親がいる普通の家庭が良かったって」

女「そうやって……」
743 :1 [sage]:2010/05/15(土) 20:27:11.59 ID:9W.osoSO
女「……心の中で、母さんを罵ってた」

男「……ああ」

女「……ッ」

女「………ははっ……」

女「ぜーんぶ」

女「勘違いだったんだね……」

男「…………」

女「私の……勝手な被害妄想……」

女「……結局は」

女「記憶を失ったイタい子が一人いて……」

女「意味不明なことを周りに喚いて」

女「時には母親のことを愚痴って」

女「……それで……」

女「父親のことで私と言い合ってた母さんは……」

女「今までどんな気持ちだったんだろう……」
744 :1 [sage]:2010/05/15(土) 20:27:54.06 ID:9W.osoSO
女「……辛くて……苦しくて……悲しくて……」

女「でも、それでも」

女「娘のことをただ思って、一人で隠し続けた……」

女「私……」

男「……ん」

女「…………」

女「ねぇ……せんせい」

女「なんで……」

やっと彼女の瞳が俺に向けられた。

両目の周りは痛々しいほど真っ赤に腫れていて。
その中央には、今にも溢れそうな涙が溜っていた。

彼女は俺に問う。

女「真実をやっと知ることが出来たのに……」

女「……記憶……」

女「……どうして、戻らないんだろうね……」

……………。
745 :1 [sage]:2010/05/15(土) 20:28:43.62 ID:9W.osoSO
それはある冷えた冬の日のこと。

時に無邪気に笑い、その笑顔で人を幸せにする少女は。
心の内に秘められた自らの闇に触れた。

消えてしまった父親を絶えず渇望していた少女は。
それが意味する本当の訳を知った。

そしてそれから。

笑顔が美しい、人一倍綺麗な少女は。

──笑うことを止めた

…………。

時間だけが過ぎた。

気が付けば。二週間が経っていた。

……………。
……………。
746 :1 [sage]:2010/05/15(土) 20:32:39.51 ID:9W.osoSO
【すみません、最近忙しくて時間がとれませんでした】
【あとどれくらいかかるか分かりませんが】
【何とか頑張ります】
【今後連絡がなくても書き溜めていると考えて下さい】
【来週の土日で終われるといいのですが……】
747 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/15(土) 20:58:41.54 ID:GdRXISQo
いつ終わるのやら
748 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/15(土) 21:18:01.14 ID:TvXE31oo
楽しみにしてる頑張れ!!
749 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/15(土) 21:21:30.40 ID:KexvXtQo
来たと思ったら終わっていた
750 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/15(土) 22:13:24.75 ID:qo1LqVI0
まってる
751 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/15(土) 23:21:54.32 ID:oDsNWRU0
待ってるから完結に期待してる
752 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/16(日) 09:01:57.89 ID:L6DZogA0
待ってるから完結させろよー
753 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/16(日) 11:04:05.08 ID:AvkvvSoo
完結すればこまけぇこたぁいいんだよ
754 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/16(日) 13:02:19.53 ID:jOp1CsE0
待ってるよwwww
755 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/16(日) 17:10:34.79 ID:81ilawco
楽しみにしてるぞー!
756 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/16(日) 18:52:25.36 ID:R5Y4R8Y0
まってたぜー!
757 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/16(日) 19:15:59.18 ID:TCIqzhco
まってるぞー!
758 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/16(日) 22:53:12.12 ID:oUpTSIAO
またこいよー!
759 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/17(月) 08:08:03.54 ID:n0B.cUAO
ヒーハー!
760 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/17(月) 18:52:49.49 ID:bj5yux.0
どうせまた終わらないんだろ
わかってるよ
761 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/17(月) 19:45:11.20 ID:n0B.cUAO
終わって欲しくないっていう願望のあらわれですよね?
762 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/19(水) 21:17:25.44 ID:OgxODJM0
イヤ、単に口ばっかりでダラダラしててへぼいな、と思ってたよ
763 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/19(水) 21:50:21.33 ID:ZkUV4woo
へぼいな(笑)
764 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/19(水) 21:53:24.54 ID:0JgOoR6o
へぼいな()笑
765 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/20(木) 13:59:12.73 ID:G9vkx6AO
はやくこーい
766 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/22(土) 10:14:53.19 ID:3.kZWzw0
ヘボいっつうよりはハズい
またはカユい
767 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/22(土) 10:59:39.67 ID:OGLbsAAO
厨房はとりあえず氏ね
言ってることもわからんのかks
768 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/22(土) 18:59:26.61 ID:4FwxVeUo
来るのだろうか
769 :1 [sage]:2010/05/22(土) 23:45:44.78 ID:o3bzSQSO
夕飯を食べた後、
いつの間にか日課になった、二人での食器洗い。

いつもはそこに会話があった。
くだらない冗談を言って、二人して笑い合って。

けれど……。

男「…………」

女「…………」

食器の洗剤を落とす水の音。
洗い終わった食器を一つずつ、少女に渡す。

男「……これ」

女「……ん」

そこにかつてのような会話はなかった。
勿論、笑いなどあるわけもなく。
770 :1 [sage]:2010/05/22(土) 23:46:13.27 ID:o3bzSQSO
彼女の母親が真実を告げた日から、
少女の元気は見るからに失われていて。

俺にはどうすることも出来なかった。

当初は励まそうと何とか努力していたが、
辛そうに表情を歪める少女を見て、それも止めた。

男「…………」

黙々と、作業を続けていく。

俺に出来ることは、彼女を黙って見守ることだけ。
一時の間、泊まる場所を提供し、日々の生活を手助けする。

ただ、それだけだった。

………………。
771 :1 [sage]:2010/05/22(土) 23:46:47.94 ID:o3bzSQSO
電気を消した暗闇の中。

男「……なぁ、女」

時刻も零時近くになり。
何もすることのない俺達は、そろそろ就寝の時間。

けれど俺は、
仕切りの向こうにいるだろう少女に語りかける。

その行為には、何の意味もない。
砂粒ほどの価値だってない。

でも。それでも。

少しだけでいいから。
彼女の心を安らげさせることは出来ないかと。

性懲りもなく……考えてしまう。

男「…………」

しかし、暫く経っても一向に返事の気配はなく。
結局は俺の空回りで終わりそうだった。

男「……寝ちゃったか……」

そうやって一人呟いて。
布団に身体を預け、そっと瞼を閉じた矢先──
772 :1 [sage]:2010/05/22(土) 23:47:15.35 ID:o3bzSQSO
女「……ん」

……微かだった。
けれど、確実にそれは彼女の声で。

男「…………」

諦めるのはまだ早そうだ。

男「……返事が遅いから、寝たと思ったぞ」

男「でも起きててくれて、ホント良かった」

女「…………」

しかし、返ってきたのはやはり沈黙だけで。
それでもめげず、俺は続ける。

男「……少し話がしたいんだ」

女「…………」

男「堅苦しい話じゃなくてな」

男「俺の……昔の話」

女「……え」

驚いた少女の声が聞こえる。
反応が返って来ただけでも、正直嬉しい。
773 :1 [sage]:2010/05/22(土) 23:47:42.07 ID:o3bzSQSO
男「つまらない人生だけど、お前よりは長く生きてるからな」

男「色々話せる話はたくさんある」

男「ただ、好みの問題もあると思うしな」

男「女、君はどんな話が聞きたい?」

女「…………」

女「……それなら」

女「先生の……恋の話が聞きたい……」

男「……好きだった人が男だった話か?」

女「……それは前聞いたよ」

男「でもなぁ、話せる恋の話はそれぐらいしか……」

女「ねぇ、せんせい」

男「……ん?」

女「わたし……先生の恋の話、聞きたい」

男「…………」

女「こないだ、母さんと話して……」
774 :1 [sage]:2010/05/22(土) 23:48:20.24 ID:o3bzSQSO
女「私が、無意識に男の人を怖いと感じる理由は分かった」

女「恋愛を極力避けてた理由も分かった」

男「……あ、ああ」

あの日以来、そのことには触れずにいた彼女が、
自らその話を切り出したことに、俺は驚きを隠せない。

仕切りの向こうからは、未だ彼女の声が聞こえる。

女「……結局のところさ」

女「二人目の父親のせいでこうなったのに……」

女「失ってしまった父親の記憶の穴を必死に求め続けて……」

女「……だけど」

女「記憶がなくなっても、その時の恐怖は未だ身体が覚えてる」

いつの間にか、少女が語る側になっていた。
俺は静かに彼女の言葉に耳を傾ける。

女「……なんかさ、理不尽だと思わない?」

女「どうせなら、全て綺麗さっぱり忘れられれば良かったのに……」

女「意味も分からず怯える毎日が、ホント馬鹿みたいで……」
775 :1 [sage]:2010/05/22(土) 23:49:05.87 ID:o3bzSQSO
女「……事実が分かったのに、記憶を取り戻せない自分に嫌気がさして」

女「………だから」

彼女は一呼吸おいて。

女「──……先生の恋の話が聞きたいんだ……」

男「…………」

女「私が知らない世界を」

女「私が避け続けていた恋愛を」

女「……先生に、聞きたい」

女「…………」

女「もう……意味も分からず」

女「怯え続ける日々は……嫌だから……」

彼女は分かっていた。
自分が、前に進むしか出来ないことを。

幾ら過去を振り返っても、そこには何の意味もない。

大切なのは、今で。
……そして、これからの将来で。
776 :1 [sage]:2010/05/22(土) 23:49:42.20 ID:o3bzSQSO
男「…………」

ならば……。
少しでも彼女の役に立つのなら……。

男「どこから話せばいいか……」

女「……うん」

男「……恥ずかしい話だが」

朧げな記憶を頼りに、自らの過去を掘り起こす。

男「高校時代までは恋愛というものには縁がなくてな」

男「お前は知らないと思うけど、告白ってすごく勇気がいるんだよ」

男「勿論、ナマ半端な覚悟じゃ駄目だ」

男「それが一度目で、まぁ……その相手が男だった話だけどさ」

男「あれで色々身にしみてね」

友達に馬鹿にされながら、励まされて。
今思えば、どれだけ友に助けられたことか。

男「その後も好きになった女子はいたが、告白するほどでもなかった」

男「そりゃあ、怖かったってのもある」
777 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/22(土) 23:50:45.17 ID:K6qAKGUo
来てる!!
778 :1 [sage]:2010/05/22(土) 23:51:30.43 ID:o3bzSQSO
男「だけど、人を好きになるとさ」

男「そんな恐怖とかも忘れて、勝手に身体が動き出すんだ」

男「失敗したらどうしようとか、周りの連中にばれると恥ずかしいとか」

男「色々考えてしまうけど、結局は想いを止めることは出来ない」

仕切りの向こうからは声は聞こえてこない。
けれど、真剣に話を聞いてくれていることが自然と分かる。

男「……俺がそれに気付いたのは、大学二年の時だな」

男「一年目は忙しいだけで、あっと言う間に過ぎてしまって」

男「二年目、そろそろ大学にも馴れ始めて……」

男「そんなある日、ゼミのダチに隣の女子大との合コンに誘われてな」

男「それで……まあ、当然飢えてた俺はそこに参加して」

男「……うん」

男「あとはお察しの通り、恋に落ちた」

男「告白するまではそんなに時間はかからなかったよ」

男「何回か一緒に食事とかしたりして……気が付いた時には、気持ちを伝えてた」

男「……あの時は……俺も若かったなぁ……」
779 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/22(土) 23:52:10.20 ID:gSc8sZAo
キターーーーーーーーーーー!!!!!
780 :1 [sage]:2010/05/22(土) 23:52:12.62 ID:o3bzSQSO
ムードもへったくれもない、屋台のラーメン屋で、
ぽろっと零してしまう辺り……飽きれてしまうほどだ。

女「……それで」

男「ん?」

今まで黙っていた少女の声が聞こえる。

女「それで、その後、どうなったの?」

男「…………」

男「……告白は成功だったよ」

女「……そう……」

女「……で、嬉しかった?」

男「ああ、嬉しかった」

家に帰った後、一人雄叫びを上げるほど。
隣の住人には怒られたけど。

女「相手も、先生のこと好きだったんだ」

男「何か知らんが、気に入ってくれたな」

男「……理由は未だ分からんがね」

女「…………」
781 :1 [sage]:2010/05/22(土) 23:54:12.96 ID:o3bzSQSO
女「付き合ってる間はどうだった?」

男「……幸せだったよ」

女「めんどくさいとか、思わなかったの?」

男「終末には必ず会うとか、電話を毎日するとか?」

女「……そんな具体的には聞いてない」

男「ああ、悪い……」

女「別にいいけどさ……そこまでしてたんだ」

女「大変だと思ったことはないの?」

男「んー……特にそういうことはなかった」

一緒にいるだけで。声が聞けるだけで。
とにかく幸せな毎日だった。

男「告白したのは俺だしな」

男「捨てられないよう、必死に頑張ったわけだ」

女「……ふーん」

男「でも、一度だって義務感に駆られたことはなかった」

男「そうすることが、自分にとっても幸せだった」
782 :1 [sage]:2010/05/22(土) 23:54:40.09 ID:o3bzSQSO
女「…………」

女「……私には」

女「そんな気持ち、きっと分からない……」

元気のない声が隣から聞こえてくる。
俺はそんな少女に向かって──

男「……焦らなくていい」

女「…………」

男「俺だって、そんな感情を知ったのは20過ぎてからだ」

男「高校時代なんて、男同士で馬鹿やった記憶しかないさ」

女「……うん」

男「……いつかきっと」

男「お前にも、そう想えるような相手が見つかるよ」

女「………ほんと?」

男「ああ、いいから俺を信じろ」

女のことだ。これからますます綺麗になっていって、
出会いの数も、俺とは比較にならないほどあるに違いない。
783 :1 [sage]:2010/05/22(土) 23:55:39.20 ID:o3bzSQSO
そしてその中には、彼女と釣り合う相手が必ず一人はいるはずだから。

女「……先生を信じてもいい?」

男「おう、大船に乗ったつもりでいればいい」

女「……砂で出来たりしないよね?」

男「任せろ、氷山にぶつかっても沈没しないぐらい頑丈な船だ」

女「……うん」

女「……分かったよ、先生を信じる」

男「ああ信じろ」

男「そして、これからを楽しみにしてればいいさ」

……彼女の先は長い。

時間はかかってしまうかもしれないが、
これから少しずつ、男性への恐怖をなくしていけばいい。
恋愛に対する拒否反応を薄めていけばいい。

そして。
それが感じられなくなった頃に。

彼女の隣にいるのは……きっと──

………………。
………………。
784 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/22(土) 23:58:22.80 ID:4FwxVeUo
きてるぅぅぅぅx〜〜〜〜((( ゚д゚)))
785 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/23(日) 00:07:49.01 ID:gt9jsrIo
ktkr
786 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/23(日) 00:18:01.28 ID:RVCB2mgo
キテター!
787 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/23(日) 00:52:54.46 ID:cBbt7MM0
wktk
788 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/23(日) 01:17:11.72 ID:vQrkeIAO
789 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/23(日) 01:23:03.16 ID:oKaP9mUo
あれ、終わり?
790 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/23(日) 01:56:09.73 ID:bq3ufw20
続きは?
791 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/23(日) 02:14:26.48 ID:hO7mJkQ0
来たと思ったらおわった
792 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/23(日) 06:19:11.98 ID:OAhgY1g0
なんだそりゃ
793 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/23(日) 12:56:33.08 ID:tXMI9AAO

これまだ続くのか?
それだけおせーて
794 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/23(日) 13:18:38.50 ID:Ta8zptYo
完結してないんだから続くだろ
795 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/23(日) 20:37:19.31 ID:MAKrzmQo
今日もきてくれるかなぁ(´・ω・`)
796 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/24(月) 02:41:33.50 ID:v/HqQm.0
引っ張った挙句これか
797 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/24(月) 02:51:59.86 ID:EH4JjsAO
来週まで待ってやろうぜ、兄弟
798 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/27(木) 21:18:34.94 ID:u/vsE7o0
臭文章まだー?
799 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/28(金) 23:32:13.43 ID:h48brwDO
もうすぐ来る?
800 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/29(土) 00:38:01.93 ID:hqEcYDM0
わかる訳無いだろ
801 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/29(土) 07:43:10.35 ID:GLsW3cA0
こねーなー
いつだかの>>1のちょっと痛いセリフが懐かしいぜ
802 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/29(土) 12:29:26.64 ID:qHqxSz2o
>>801=>>798=>>796
803 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/29(土) 21:32:51.82 ID:aycbbj2o
そろそろかなぁ(´・ω・`)
804 :1 [sage]:2010/05/29(土) 23:31:13.93 ID:LORjT6SO
キリのいいとこまで書いたら投下しますね。

それと……すみませんが、まだ終われそうにありません。
次は確信が持てたときに伝えます。
ご迷惑をおかけしました。
805 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/29(土) 23:39:55.72 ID:dPTF9mMo
こまけぇこたぁいいんだよ
806 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/29(土) 23:50:10.86 ID:.VC5Yn6o
wktk
807 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/29(土) 23:53:36.86 ID:joqsGS.o
そんなこと気にしないで書け。な?
俺は元スレからの数少ない読者なんだからww

元スレが落ちてない内から見てる奴ってどんくらいいるの?
808 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/30(日) 00:03:02.83 ID:VGjg6Rko
>>806
なんのアピールか知らんが(○ ̄∀ ̄)ノぁぃ
809 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/30(日) 00:42:33.45 ID:EkdKqMDO
焦らしに定評のある主。
810 :1 [sage]:2010/05/30(日) 00:58:41.29 ID:q9eDGESO
生徒F「先生、ここに看板って置いて良いですか」

男「廊下は人で混雑するから駄目だな」

生徒F「えぇー、じゃあ張り紙は?」

男「教室側はOK、窓際は禁止」

生徒F「ぶぅーぶぅー」

男「文句なら実行委員に言ってくれ」

男「俺が取り決めたわけじゃないからな」

生徒F「じゃあ、先生がなんとかしてくださいよー……」

男「無理」

生徒F「決断はやっ!」

生徒F「でも客寄せには必要なんだけどなぁ……」

男「……とりあえず」

男「プラカードについては何も言われてないから」

男「その辺で代用してくれ、頼む」

生徒F「はーい」
811 :1 [sage]:2010/05/30(日) 00:59:13.23 ID:q9eDGESO
手作りの看板を生徒が教室の中へ運んでいく。
不満ありげな様子だが、納得してくれたようだ。

俺はそんな生徒の後ろ姿を見守った後、何となしに窓の外を眺める。
しかし白く曇ったガラスからは、外の景色をあまり伺うことは出来ない。

冬もそろそろ本格的に本領発揮といったところか。
今日もコートを手放せないほど、外は冷え込んでいた。

遠くの方から呼び声が聞こえる。

生徒G「男せんせーい!」

男「おうー何だ?」

校舎の中では、生徒達がひっきりなしに動き回っている。
現在の時刻が授業中にもかかわらずだ。

生徒G「足りない布地を買うために外出許可が欲しいんですけど」

男「担任の先生に言えば貰えるはずだぞ」

生徒G「いやぁ、その担任が全く見つからなくて……」

男「ああ……そういうことか」

生徒G「差し支えなければ、お願いできますか」

男「何の布がいるんだ?」
812 :1 [sage]:2010/05/30(日) 00:59:42.39 ID:q9eDGESO
生徒G「外装に必要な黒い布地が予想以上に足りなくなってしまって」

生徒G「ほら……あの部分です」

男「あー……確かに」

男「ん、よし分かった」

生徒G「先生、ありがとうございます」

男「構わん、ほれ用紙見せろ」

生徒G「はい」

彼の手元にあった用紙の所定の欄に、印鑑を押す。
これで校外に出る時も大丈夫だろう。

男「なにかあったら、俺に直接電話してこいよ」

生徒G「分かりました」

男「よし、じゃあ急げ」

生徒G「はいっ!」

元気よく返事をして、生徒は階段に向かって駆けていく。

『廊下は走るな』なんて、いつもは注意するところだけれど、
今日という今日は特別だ。

なんせ……。
813 :1 [sage]:2010/05/30(日) 01:00:06.65 ID:q9eDGESO
生徒たち「「男せんせいー」」

男「あーもう、休む暇もねぇなっ」

男「わかったっ! 今すぐ行くからっ!」

いつも以上に元気一杯の生徒たち。

一つのことに力を合わせて頑張って。
明日という日を迎えるために日々努力して。

今日は、学生の本分は勉強とか、そんな正論はまかり通らない。
どんなに厳しい教師だろうが、文句の一つもないはずだ。

だって。
明日は生徒にとって、一年で最大のイベント。

……そう、『文化祭』なのだ。

………………。
………………。
814 :1 [sage]:2010/05/30(日) 01:00:44.54 ID:q9eDGESO
男教師「あー! 疲れたぁーっ!」

女教師「ふふっ、男教師先生ったら」

男「まぁ、気持ちは分からんでもないです」

時刻は八時をとっくに回り……。

女教師「今日は特に疲れましたからね……」

中々渋って帰ろうとしない生徒たちを無理矢理帰宅させ、
やっとのことで職員室に戻って来ると、今までの疲れがどっと押し寄せてくる。

男教師「電気を消しても、教室に隠れて作業を続ける馬鹿はいるし」

男教師「寝袋まで持ってきて、泊まる気満々のトンチンカンもおれば」

男「……ははは」

その光景を今まさに目撃してきた者としては、
乾いた笑いしか出てこない。

男教師「毎年ながら、なぜこうもガキどもの考えることは同じなんだ……」

女教師「別に先輩から教わってるわけでもないみたいですよ」

男「考えることはみな同じってことかな」

男教師「……はぁ……疲れる……」
815 :1 [sage]:2010/05/30(日) 01:01:24.74 ID:q9eDGESO
そう言いながらも、男教師の表情はどこか優しさを持ち合わせていて。
馬鹿な生徒ほど可愛いというか、
それだけ頑張ろうとする姿は、完全に否定出来ない。

男教師「それに、あのクラス、七時には終わるとぬかしたのに……」

女教師「……あはは、九時近いですね……」

男「まぁ仕方ないですね」

本来ならば六時に全ての作業は終わらせる決まり。
強制的に教室の電気は消え、教師たちは各クラスを見回りする。

しかしやはり、その時間には間に合わないクラスもあって。
そうなると完成していないのに無理矢理帰すのも可哀想だから、
仕方なく教師たちの監視のもと、作業の続行を黙認。

結局、貧乏くじを引いたのは俺たち三人の教師で、
さきほどまで一緒になって生徒の出し物の準備を手伝っていた。

女教師「でも、明日は今日以上に大変になりそうですね……」

男教師「……いつものことだよ、いつもの」

男「ええと、外回りと校舎内の見回りですよね」

女教師「私は、午後に外回りです」

男教師「俺は午前に外回りだが……」
816 :1 [sage]:2010/05/30(日) 01:02:38.61 ID:q9eDGESO
男教師「あーもうっ!」

男教師「また、どっかのアホが校舎から脱走しようとするに決まってるっ!」

男「……はは……しますね絶対」

男教師「絶対逃がさんぞっ」

男「……はりきって怪我しないように……」

俺の予定と言えば、午前と午後に校舎の見回りが少し入っているだけだ。
各クラスの催しものをそれとなく眺めることが出来るので、
外で突っ立っている外回りより、多少楽と言える。

だが。

女教師「明日、快晴ですって」

男「それは……素直に喜んでいいものなのか……」

男教師「……込むぞ……確実に込むぞ……」

勿論、生徒たちにとっては嬉しいことなのだろうが、
明日の客の入り用を考えると……少し、ぞっとしたりもする。

女教師「男先生は校舎内の見回りですよね?」

男「あ、うん。この調子だと、明日はかなり大変かも」

女教師「ですね……」
817 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/30(日) 01:04:48.19 ID:ha9xSsAO
支援
818 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/30(日) 01:06:19.00 ID:myPAN32o
とにかくガンバ
819 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/30(日) 01:06:49.91 ID:myPAN32o
IDがmyPAN・・・自分のパン?ww
820 :1 [sage]:2010/05/30(日) 01:07:36.55 ID:q9eDGESO
女教師「……で、それでお願いするのも気が引けるんですが」

男「ん?」

女教師「私が午後の外回りで、手が空いてない時」

女教師「それとなく、二年B組の方、少し見てやってくれませんか?」

男「ああ、そういうこと」

女教師「ちょうど、演劇の初公演が12時ぴったしで……」

女教師「見回りのほうと若干被っちゃうんですよね……」

男「ん、了解。俺で良かったら様子見とくよ」

女教師「ありがとうございますっ」

女教師「みんな……うまくやってくれるといいなぁ……」

男教師「いいね、女教師ちゃん。なんか初々しくって」

女教師「もうっ、からかうのは止めて下さいよっ」

男「はははっ」

女教師「男先生までーっ……」

教師の方も、生徒たちの出し物がうまくいって欲しいと願うばかり。
担任となれば、その企画や作業に携わることも多くて、
思い入れは……もしかしたら、生徒たち以上なのかもしれない。
821 :1 [sage]:2010/05/30(日) 01:08:51.62 ID:q9eDGESO
というか、そういえば……。

男「そうだ、女教師は演劇の準主役じゃなかったのか?」

男教師「あっ……そういえばそんなことも聞いたような……」

女教師「あー……はい」

男「結局、止めちゃったわけ?」

女教師「いや、なんというか、その」

女教師「他にやりたい子がいたみたいだったので……譲りました」

男「あー……うん」

男教師「初めはやる気なかったのに、後でやりたくなったと」
822 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/30(日) 01:09:11.37 ID:ha9xSsAO
一週間の楽しみをこの程度で終わらせるのは酷すぐる
元スレから居るが、これはない
823 :1 [sage]:2010/05/30(日) 01:09:31.88 ID:q9eDGESO
女教師「そんなところです」

男「それなら仕方ないな」

男教師「何だ、女教師の演技が見れないなんて残念だな」

男「確かに、言えてますね」

女教師「もうっ、二人ともぉ」

そんな雑談をしながら、誰もいない学校の中で
三人の笑い声はしばらくの間、絶えなかったそうな……。

こうして。
文化祭を翌日に迎えた騒動の一日は、
ひとまず終わりを告げたのだった。

……………。
……………。
824 :1 [sage]:2010/05/30(日) 01:11:12.60 ID:q9eDGESO
男「…………」

女「…………」

男「…………」

女「……うぅ……」

男「…………」

女「……ひっく……う、うっ……」

男「……ふぅ……」

女「…………う〜っ……良かったぁ〜……」

男「……あ、ああ……」

男「何度見ても、良い映画だ……」

女「……うん、うんっ」

テレビの前のソファーで二人してくつろいで、
画面のエンドロールを未だ余韻が残った状態で眺め続けていた。

女はテッシュ箱を片手に、目の周りは赤く腫れていて、
時折、鼻を啜る音が真横から聞こえてくる。
825 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/30(日) 01:11:15.82 ID:myPAN32o
>>822
まぁそう焦るな
826 :1 [sage]:2010/05/30(日) 01:11:38.43 ID:q9eDGESO
女「やっぱり親子っていいよ……」

男「これを見せられるとな」

女「初めはどうなるかと思って」

女「正直、見てるのが辛かったけど」

女「最後のほうのお父さん……凄くかっこ良かった」

家に着いた時には、既に十時を過ぎていた。

帰宅が遅くなるとのメールを事前に送っていたので、
女は先に夕飯を済ませていて、
俺がシャワーを浴びている間に、彼女が料理を温めてくれた。

男「名優って言われるのもよく分かる」

女「確かこれでアカデミー賞取ったんでしょ?」

男「ああ、ちなみに主演女優もこの作品で貰った」

女「あーそうだよね、演技ホントうまかったもん」

男「うまいなんてレベルじゃないよな……」

男「その世界に入ってるというか、演技してるって事実を忘れさせるほどだ」

一人で夕飯を食べている間も彼女は向かい側の席に座っていて、
学校での準備の様子などを語り、俺の話し相手になってくれた。
827 :1 [sage]:2010/05/30(日) 01:12:03.11 ID:q9eDGESO
男「子役も可愛かったな」

女「うんっ! あれは可愛すぎだよねっ」

女「あぁ、あんな子供欲しいなぁ……」

男「『パパ、愛してるよ』か……」

男「死ぬまでに、一度くらいは言われてみたいな」

女「…………」

男「えっ? どうして無言?」

女「……なーんか先生が言うと、卑猥」

男「…………」

身体は疲れていて、すぐにでも横になりたかったが、
すぐに寝るにしては時間がまだ早かったり……。

何か時間潰しに最適なものは、と考えているうちに、
戸棚にあった……とある映画のDVDが目に入って、
少女に聞くと、まだ見たことがないと言うもんだから……。

女「あ〜なんか、ほんと良かったよ」

男「いい映画を見た後って、最高の気分だよな」

女「うんっ、最高っ」
828 :1 [sage]:2010/05/30(日) 01:12:55.11 ID:q9eDGESO
男「あー……でも、もうこんな時間か」

女「明日も早いし、そろそろ寝ないとマズいね」

男「そうだな……寝坊なんかしたら大恥だ」

女「私なんて、早朝に劇のリハがあるからヤバいかも」

男「……主役がいなかったらリハどころじゃないな」

女「大混乱だよっ」

男「そうとなったら、一刻も早く寝ないと」

女「急げっ、急げっ♪」

男「テンション間違ってるぞ……」

テレビの電源を消して、各自寝る準備へと入る。
幸いにも歯磨きなど済ませた後だったので、
数分で二人とも床につくことができた。

男「……んじゃ、電気消すぞ」

女「ん、おやすみ」

男「ああ、また明日」
829 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/30(日) 01:13:13.37 ID:myPAN32o
てかよく>>1は携帯でこんな長い文章打てるよな
830 :1 [sage]:2010/05/30(日) 01:13:32.34 ID:q9eDGESO
女「…………」

男「…………」

女「ねぇ……先生」

男「ん? どうした?」

女「明日……先生は、見に来てくれる?」

男「二年B組の白雪姫」

女「うん、我ながら結構出来はいいと思うんだ」

女「時間……合う?」

男「初公演が12時だろ?」

女「うん、次は2時で……その次は……」

男「いや、多分、初回のやつを見れると思う」

女「ほんとっ?!」

男「ああ、女教師先生にも頼まれたしな」

男「女の勇姿をしっかりと見させてもらうよ」

女「うわぁ……なんか、緊張してきたかも……」
831 :1 [sage]:2010/05/30(日) 01:18:20.79 ID:q9eDGESO
男「はは、大いに失敗してくれ」

女「ちょ、ちょっとぉ〜!」

男「台詞が噛み噛みでも俺だけは笑わないでやるよ」

女「ぜっーたい噛まないっ!」

男「挙動不審でも通報は控えるさ」

女「ひ、ひどい……」

男「冗談だ、教室の奥のほうでそっと見てる」

女「あ……うん」

女「絶対、見に来てね」

男「おう、頑張れ」

女「…………」

女「……じ、じゃ、おやすみ」

男「おやすみ」

……………。
832 :1 [sage]:2010/05/30(日) 01:18:43.18 ID:q9eDGESO
傍からは、少女が元気を取り戻したようにも見える。
あれだけ沈んでいた日々に比べれば、今は安心出来るのかもしれない。

けれど、実際は未だ心は折られた状態のままで。

死んでしまった本当の父親。
記憶を失った原因を作り出した二人目の父親。

彼女の頭の中では、今も尚、過去への懸念が渦を巻き、
母親の話を全て納得したとは到底言い難いだろう。

それでも。
少女は前に進むと決めた。
833 :1 [sage]:2010/05/30(日) 01:19:44.75 ID:q9eDGESO
俺に……

『怯え続ける日々はもう嫌だ』

と、語った。

だからこそ、少女は人一倍、強がり続ける。

それを分かっていて。それに気付いていて。

俺は彼女のへたくそな強がりに合わせる。
彼女がそう決めた以上、その想いを無駄にしたくはない。

季節は冬。12月。
そろそろ雪が降ってもおかしくない……
……そんな寒い日が続いていた。

……………。
……………。
834 :1 [sage]:2010/05/30(日) 01:20:27.46 ID:q9eDGESO
司会「続きまして、グループ『ファンキー』の登場です」

校舎の前に設置されたステージでは、
我が学園の生徒たちの出し物が次々と登場。

司会「途中、メンバーが一人ぬけてしまうという災難もありましたが」

司会「『この日のために』と、汗水流して練習を続けてきましたっ」

司会「そして今日、彼らがその集大成を見せてくれますっ」

司会「歌うのはこの曲っ! 皆さんもきっとお分かりでしょうっ」

今は複数ある演奏グループの一つが、
季節に合った歌を大勢の観客の前で披露していた。

公式の部でもない彼らにとって、今日というイベントは絶好の機会に違いない。

辺りを見渡せば、他校の女子生徒がうようよといる。
そんな彼女たちといい関係になれる……なんて、期待もありそうだ。

生徒H『こな〜ゆきぃぃ〜っ』

だから、この日のためだけにたくさんの努力を……

女子1「……ねぇ……」

女子2「う、うん」

女子1「あれ……」
835 :1 [sage]:2010/05/30(日) 01:20:59.72 ID:q9eDGESO
女子2「…………」

女子1「音低……外しすぎじゃない?」

男「…………」

してきてる……はずなんだけどなぁ……。

……………。

司会「え、ええと、『ファンキー』さん、演奏ありがとうございました」

司会「とても素晴らしい歌声でしたね……まぁ少し斬新でしたけど」

観客の方から苦笑いが漏れる。

歌い終わった彼らは早々とステージから降りていった。
しかし、その表情には達成感の色しか伺えない。

司会「えー、続きましては、大道芸を滝君が披露してくれますっ」

司会「滝君っ、ステージの方へどうぞ──」

楽しい文化祭は、まだ始まったばかりだ。

……………。
……………。
836 :1 [sage]:2010/05/30(日) 01:21:41.69 ID:q9eDGESO
生徒I「三年E組の作る『焼きそば』」

生徒I「出来立てほやほやで、250円ですよ〜」

生徒I「お好みで、ソース味と塩味選べます〜」

生徒I「あっ、男先生っ」

男「どうだ、繁盛してるか?」

生徒I「どう見えます?」

男「……行列に行列って感じだな」

男「宣伝班いらないんじゃないのか?」

生徒I「……やっぱそう思いますよね……私もです」

男「売り子の方は……んー……ここからだと見えん」

生徒I「戦線は休む暇もないですよ」

男「今日は例年以上に人が多いからなぁ」

さきほど出た来客人数の発表によれば……
かつてないほどの好ペースで込み……失礼、増え続けているようだ。

男「受験シーズンなのに、大変だな」

生徒I「みんな初めのほうはグダグダ言ってたのに」
837 :1 [sage]:2010/05/30(日) 01:22:22.87 ID:q9eDGESO
生徒I「始まって見れば……そんなこと忘れて楽しんでますよ」

男「はは、いい気分転換になるといいな」

生徒I「はいっ」

我が学園では一二年はクラスで出し物をし、三年は外で出店を開く。
準備期間がかなりいるクラス発表を止めることが、
受験を迎えた三年生への、せめてもの配慮といったところなのだろう。

日頃、鬱憤が溜っているせいか、
皆、仕事中にもかかわらず、笑顔が絶えない。

男「しかし、何か腹に入れたいと思ったんだが」

男「……この調子だと無理そうだな」

生徒I「ああ……そうですね……」

生徒I「今並ぶと、最低でも数十分は……」

男「見回りの途中だからな。そんなことしてたら、教頭に怒られちまう」

生徒I「ははは、ですね」

生徒I「あ、でも……」

男「ん?」

目の前の生徒が閃いたとばかりに、俺に向かってニヤリと笑った。
838 :1 [sage]:2010/05/30(日) 01:22:58.15 ID:q9eDGESO
生徒I「ちょっとここで待ってて下さい」

男「お、おい、でももう行かんと……」

生徒I「すぐ戻りますからー」

そうとだけ言い残して、生徒は人ごみへと消えて行った。
俺はどうしていいか困り、何となくぼうっと立ち尽す。

少し時間が経って、生徒が戻ってくる。

生徒I「先生っ」

男「おいおい、なんだって……」

文句の一つや二つほど、言ってやろうと思っていたが、
しかし彼女のその手元を見て……

男「……お、お前……」

生徒I「ハイっ、我が店自慢のソース焼きそばですよ」

とてもおいしそうな香りが、ここまで匂ってくる……。
空いた腹には……これはあまりにも……。

男「……で、でも、いいのか」

生徒I「ほんとは駄目なんですけどね」

生徒I「男先生は特別ですっ」
839 :1 [sage]:2010/05/30(日) 01:23:29.69 ID:q9eDGESO
男「…………」

生徒I「……肉も奮発しときましたから」

ごくりと……唾を呑み込む。

生徒I「はい、先生」

生徒は手元にあった焼きそばの入ったパックを、
俺の方へ向かって、ぐいっと差し出してきた。

本当なら、一教師として断らなければいけない。

けれど……。

男「ありがとうな」

俺って自分に甘いなぁーと、つくづく反省。

しかし、うまいな焼きそば。

……………。
……………。
840 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/30(日) 01:23:33.67 ID:myPAN32o
寝よ。>>1ガンバ
841 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/30(日) 01:25:24.37 ID:DYLl1e.0
再開紫煙
842 :1 [sage]:2010/05/30(日) 01:26:21.40 ID:q9eDGESO
生徒J「一風変わったお化け屋敷!」

生徒J「でも、その違いは入ってからのお楽しみだっ」

生徒J「そこのお嬢さん、どうよ、寄ってかない?」

校舎の中に入れば、その熱気は外以上。
各クラスの生徒たちが廊下で熱い宣伝バトルを繰り広げ、
客の方も人という人で溢れんばかり。

男「あーすみません、ちょっと通して下さい」

前へ進むのだって一苦労だった。
俺は何度もぶつかる人に謝りながら、目当ての場所へと向かう。

女子3「あのー」

すると後ろの方から声がかけられる。
振り返るとそこにいるのは、見るからに他校生の女の子。

男「へ? 俺?」

女子3「あ、はいっ」

彼女の周りにいる取り巻きの女子たちが騒ぎ立てる。
正直、ちょっと苦手な空気だ。

その中心にいる彼女は、少し深呼吸をした後、
上目遣いで……俺に向かってこう言った。

女子3「メルアド……交換しませんか?」
843 :1 [sage]:2010/05/30(日) 01:26:48.57 ID:q9eDGESO
男「…………」

男「……今、なんて?」

少々、動揺している俺だった。

女子3「ええと……駄目ですか?」

男「いや、駄目というか、何と言うか……」

女子3「……そ、そうですか」

男「いやさ……その、俺はその……」

女子3「……はい」

男「……この学校の教師なんだ……」

女子3「…………」

なんだか変な空気になってきたぞ……。
周りの女子たちも呆然と口を開けたままになっている。

男「まっ、そういうことだからさっ」

男「んじゃ……」

女子3「──それでも構いませんっ」
844 :1 [sage]:2010/05/30(日) 01:27:24.85 ID:q9eDGESO
女子3「メルアド教えて下さい!」

男「…………」

女教師「あれ? 男先生っ?」

女教師「こんなところで一体どうしたんですか?」

男「あ、ああー……」

男「いやな……ちょっと」

女教師「…………」

女教師は挙動不審の俺に目を細めて……
その視線を、目の前でもじもじしている女子にずらした。

女教師「……男先生」

男「……俺は悪くない」

女教師「こんな歳の違う子を、一体どうするつもりですか」

男「どうするつもりもないさっ」

女教師「本当に?」

男「ああっ、神に誓って」

女子3「メルアド教えて貰えないんですか……?」
845 :1 [sage]:2010/05/30(日) 01:28:02.00 ID:q9eDGESO
男「…………」

女教師「…………」

………………。

女教師「しかし、男先生がねー」

男「言いたいことは心の内にしまっときなさい」

女教師「ホントは、メルアド交換したかったんじゃないですか?」

男「し、失礼なっ」

女教師「本当ですかぁ?」

男「もう本当だってばっ」

何とか、さきほどの少女には丁重にお断りを言って、
人ごみの中、今は女教師と並んで目的地へと向かう。

女教師「ああいう場面は、ばしっと言わなきゃ駄目ですよ」

男「いや分かってるんだけどさ……まあ、察してくれ」
846 :1 [sage]:2010/05/30(日) 01:28:34.57 ID:q9eDGESO
女教師「可愛い子でしたね彼女」

男「……意外としつこいね君も」

しかし隣の彼女は未だ俺の対応に不満げのようで。

女教師「まっ、別に良いですけどね」

女教師「約束したんですから、頼みますよ」

男「ああ、分かってる。あの時も向かってたところだ」

女教師「はい、お願いします」

男「おう、任せとけ」

女教師「じゃあ時間もそろそろなので……」

男「お勤め頑張ってな」

女教師「はい……あっ、そうだっ」

男「ん、何かまだ用があったか?」
847 :1 [sage]:2010/05/30(日) 01:29:10.82 ID:q9eDGESO
女教師「男教師先生の話、聞きました?」

男「いや、聞いてないが……何かあったのか?」

もしかして、怪我でもしたか……?

女教師「大いにありましたよ」

男「お、おい」

女教師「脱走者を三人ほど捕獲したそうです」

男「…………」

やるなぁ……あの中年教師。

……………。
……………。
848 :1 [sage]:2010/05/30(日) 01:30:27.35 ID:q9eDGESO
【キリが悪いですが、ここまでです】
【また今度来ます】
849 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/30(日) 01:31:41.04 ID:YdpmLUco
おつ!
また今度っていつだwwwwww
850 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/30(日) 01:31:55.57 ID:kLeqkLoo
>>848
乙。
待ってるよ
851 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/30(日) 01:32:43.26 ID:ha9xSsAO
乙、悪いこと言ってスマソ
お腹イパーイ
852 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/30(日) 02:14:05.74 ID:hxPH5oAO
乙!
最後までちゃんと読ませてくれよ!
853 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/30(日) 03:14:10.12 ID:DYLl1e.0
次回に期待してる
854 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/30(日) 05:31:32.84 ID:nltPOr.0
>>486の威勢は何だったんだろうな
855 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/30(日) 07:19:47.26 ID:myPAN32o
乙。最後まで絶対いるからガンバ!
今度がいつか気になるけど、まぁ頑張れww
856 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/30(日) 07:20:13.91 ID:myPAN32o
ちょ待て。てす
ww
857 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/30(日) 09:06:02.02 ID:1y1HUr60
乙です。
858 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/30(日) 10:01:27.40 ID:KQX7vz.o
859 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/30(日) 13:29:13.05 ID:Qx6hMg20













ヒロインなのに・・・
860 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/30(日) 14:43:17.91 ID:YdpmLUco
>>859
そんなのよくあることだ 気にしちゃ負けだ
861 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/30(日) 20:39:00.86 ID:ITa/HO.0
仮所属wwwwwwwwwwwwwe
862 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/30(日) 21:01:33.63 ID:ITa/HO.0
それも期待wwwwwww
863 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/30(日) 21:02:34.62 ID:ITa/HO.0
下のプロ、ヤマダに行くのかwwww
864 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/30(日) 21:24:24.66 ID:ha9xSsAO
自演乙
865 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/30(日) 22:30:41.06 ID:94gCx9Mo
酷いものを見た
866 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/30(日) 22:33:12.81 ID:ITa/HO.0
>>861-863
誤爆してたことに今きずいた.....

ごめんなさい。
867 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/30(日) 22:55:34.16 ID:ha9xSsAO
ず→づ
868 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/30(日) 23:10:07.45 ID:I46R8Uko
きずくの遅くね
869 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/31(月) 02:44:29.80 ID:GAi6ok20
物語は、終焉を迎えます
870 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/31(月) 03:04:18.48 ID:CjoQQu2o
とにかく最後まで書いてくれれば問題はない

頑張ってかいてねぇ〜
871 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/31(月) 03:35:36.69 ID:3urN2Sc0
>>869
それ、恥ずかしいから止めて
872 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/31(月) 13:13:10.21 ID:qOkFqkSO
イジメカッコワルイ
873 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/31(月) 22:04:59.46 ID:LEmljt2o
妙なアンチが居着いた
874 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/01(火) 10:26:22.80 ID:lt9DgQw0
匂うぜ
875 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/01(火) 16:58:29.32 ID:YI6psiI0
色々臭いしね
876 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/01(火) 23:35:10.99 ID:C9Je2co0
終焉がどうとか書いてから、結構経ったね
877 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/01(火) 23:44:22.64 ID:ecE8Ehko
せめて佳境にしとけばよかったのにね
878 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/02(水) 23:31:02.58 ID:bPWmJUw0
忘れてあげて
879 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/04(金) 02:05:26.54 ID:BYd/2NU0
vipの頃からよんでるよ
というか製速に移ってたとは
思わはなんだ…楽しみにしてる!
880 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/05(土) 21:34:11.08 ID:CFdY.Q6o
今週も来てくれるかなぁ(´・ω・`)
881 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/06(日) 19:07:33.55 ID:VxwsZHo0
作者が消える、それもまた終焉
882 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/06(日) 20:46:58.13 ID:82OxZUAO
俺はまだ待ってるぞ
883 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/07(月) 01:37:48.20 ID:AXDR/5I0
今週が終わっても第二、第三の土曜があるしな
気長に待ってるぞー
884 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/08(火) 17:57:20.14 ID:eVqf8oDO
ところで、なんで土曜日だけなんだ?
885 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/08(火) 18:06:48.19 ID:dYde1Y.o
仕事があるし、日曜日はデートがあるだろ普通
886 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/08(火) 18:54:33.02 ID:5sGSbYAO
>>884
>>1から読めばわかる
887 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/08(火) 22:25:23.18 ID:yLcpiqs0
イヤ、>>486だけで良いでしょ
888 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/08(火) 22:33:20.00 ID:MVF0p2Ao
この辺りで一旦進行を止めて、
三日お休みを頂きたいと思います。

つきましては、今週の土曜日(恐らく22時以降)。
書き溜めたものを一気に投下させ、
それにて、この物語は完結致します。

ここまで、長期に渡ってしまいましたが、
ご愛読本当にありがとうございました。

読んで下さる方がいらっしゃったお陰で、
あと少しで話の最後まで辿り着けそうです。

土曜。物語は、終焉を迎えます。

それまで暫しの間、お待ち頂けますよう、
どうぞよろしくお願い致します。

ではまた。



これコピペにしようぜ
889 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/08(火) 22:48:41.92 ID:PoD1mk.o
別に普通じゃね?
コピペになる程じゃない
890 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/08(火) 23:04:45.11 ID:3mID/AU0
まだー
891 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/08(火) 23:07:22.61 ID:RGf1hsAO
>>888
お前みたいなお荷物はいらないよ^^
892 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/08(火) 23:14:10.43 ID:l2xqx4Qo
せめてマジソースぐらいのインパクトがないとな
893 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/08(火) 23:43:21.47 ID:MtOQsWko
1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 21:59:48.81 ID:tnhwaBzA0

・・・俺は3月末からこのスレを見ていたのか。
894 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/09(水) 00:21:50.53 ID:9lOe8uw0
終焉とか寺かっこよす
895 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/09(水) 21:05:30.87 ID:wHbBDgAO
ほんと気がつきゃ3月からみてんだな俺も
楽しみにしてるぞ
896 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/10(木) 22:06:14.45 ID:KGEhYoAO
もうそんなにたったのか…
897 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/11(金) 13:10:14.73 ID:HhEWfGY0
まだー
898 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/11(金) 21:22:29.27 ID:H07awIDO
明日は土曜日ですね^^
899 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/12(土) 06:55:12.21 ID:/lelbYMo
くるんだろうか
900 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/12(土) 07:38:11.12 ID:tvDYRAMo
きたい
901 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/12(土) 07:54:13.83 ID:EYXorSM0
まってるー
902 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/12(土) 09:23:27.13 ID:E4m2kPI0
こいこいっ!!!
903 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/12(土) 22:18:32.55 ID:iTo/SH2o
そろそろかなぁ(´・ω・`)
904 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/12(土) 23:18:49.51 ID:nNQ/OsAO
忘れてるのかもな
905 :1 [sage]:2010/06/13(日) 01:23:12.41 ID:nSuvl4Ao
連絡遅れてすみません。
やっとネットの回線が繋がりまして、これからはパソコンから投稿します。
忙しさも今週で何とか乗り切ることが出来ました。
来週からはある程度時間が取れると思います。
書き溜めはないので、今からと明日の午前に書いて、夜に来ますね。
よろしくお願いします。
906 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/13(日) 03:12:28.13 ID:usm/zGE0
待ってたよ
907 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/13(日) 03:52:56.57 ID:aCn3awAO
待ってるよ、お疲れ
908 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/13(日) 06:59:19.32 ID:5QV6d5s0
まってるー
909 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/13(日) 07:48:53.12 ID:/xzlqeo0
楽しみにしてる
910 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/13(日) 08:58:05.73 ID:Ihxc2dwo
ネット繋がってよかったな。おめ!
911 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/13(日) 08:58:34.42 ID:Ihxc2dwo
どのくらいで次スレ立てたほうがいいかな?
>>980位?
912 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/13(日) 17:17:15.56 ID:zm95oYDO
スレ内で完結できなくて、>>1が必要性を言い出したら
もしくは、>>1が立てればいい
913 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/13(日) 18:33:56.26 ID:yGV0uZAo
夜が待ちきれないお(´・ω・`)
914 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/13(日) 22:32:46.59 ID:0Xg29e60
追いついた...だと....!?

wktkしながら待ってるお
915 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/13(日) 23:30:00.58 ID:Ihxc2dwo
>>912
おkおk。やっぱ>>1だよな、立てるの
916 :1 [sage]:2010/06/13(日) 23:36:14.71 ID:nSuvl4Ao
少し小走りに教室へ向かう。
時刻は12時5分。約束の時間より少し遅れている。

やっとのことで2年B組に着くと……馴染みの生徒を見つけた。

生徒A「あっ、先生じゃん」

男「まだ入れるか?」

生徒A「ええと、立ち見でもいい?」

男「もちろんだ」

生徒A「じゃあ、オッケー。楽しんでってね」

男「ああ、期待してるよ」

扉を静かに開け、暗くなった教室へ入る。
既に劇は始まっていた。そして、舞台の上には……。

男「……っ」

自然と息を呑む。

舞台の上には、一人光を浴びる少女の姿が。
917 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/13(日) 23:36:34.62 ID:Ihxc2dwo
>>1ktkr
918 :1 [sage]:2010/06/13(日) 23:37:43.37 ID:nSuvl4Ao
女王に嫉妬されるほどの美しい黒髪を。
その素肌は誰もを魅了するほど透き通っていて。

目を離させまいとする存在感。
しかしそこには保護欲を掻き立てる脆さも見て取れる。

男「…………」

ああ、そうだ。

ありふれた陳腐な言葉だって分かっている。

誰かが聞いたら、鼻で笑われるに違いない。

けれど、観客の視線を集める彼女は……

本当に綺麗だったんだ──
919 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/13(日) 23:37:58.24 ID:Ihxc2dwo
やば、ねみい。>>1ガンガレ
920 :1 [sage]:2010/06/13(日) 23:38:40.44 ID:nSuvl4Ao
…………。
………………。

『男〜』

『あ? どうした?』

『こっちのやつなんてどうっ?』

『ん……どれどれ』

『ねっ? 綺麗でしょ?』

『ああ……まぁな』

『草花が絡まってる感じがいいよね』

『……ん』

『……なんか不満げ?』

『…………』

『口で言わないと伝わらないよ』

『なぁ……』

『うん、なに?』
921 :1 [sage]:2010/06/13(日) 23:40:48.94 ID:nSuvl4Ao
『お前……俺に気遣ってるだろ』

『……遣ってないって。男の勘違いっ』

『……本当か?』

『もう疑り深いんだからっ』

『さっきからお前が選ぶの……比較的安いヤツだぞ』

『そ、そうなんだ〜。そりゃ偶然だねっ』

『偶然にしては出来過ぎてるな』

『もう……いつからそんな捻くれたヤツになっちゃったの?』

『知らなかったのか、付き合い始めた頃からだ』

『うっそだ〜、あの時はもっと単純脳だったよ』

『単純脳って……』

『好き好きアピールとにかく凄かったもんね』

『なっ……』

『その癖して、こっちの気持ちにはホント鈍感でさ』
922 :1 [sage]:2010/06/13(日) 23:41:27.79 ID:nSuvl4Ao
『や、やめてくれ……』

『ふふっ……でも、その一途さが私は好きだった』

『…………』

『不器用さもね、ホント大好きだよ』

『……もういいから、早く決めるぞ……』

『あら〜もしかして照れてる〜?』

『う、うっさい』

『ははっ可愛い』

『……なぁ……』

『ん?』

『お前は……その気にしてくれてるんだと思うけどさ』

『…………』

『こんなの人生に一度しかないんだ』

『あんまり余計な気遣いは無用だぞ……遠慮すんな』

『……遠慮なんてしてないよ』
923 :1 [sage]:2010/06/13(日) 23:42:21.49 ID:nSuvl4Ao
『でも……』

『いいの……こういうのは形じゃないって』

『ここで無理するより……私はもっと違うところで使いたいな』

『……例えば?』

『北海道に二人で旅行とか楽しそうじゃん』

『……まあな』

『ねっ、一緒においしいものとか食べてさっ』

『蟹とかな』

『うん、そうそう!』

『ああ……そうか』

『そうだよっ、私達にそういうのは必要ない』

『なんせ、告白の場所があそこだからな……』

『ふふっ、意外性があって良かったよ』

『そういってもらえると俺も助かるが……』
924 :1 [sage]:2010/06/13(日) 23:43:15.56 ID:nSuvl4Ao
『ねぇ……白雪姫って知ってる?』

『唐突にどうした? 白雪姫……毒リンゴの話か?』

『そうそう、七人の小人が出てくるお話』

『確か、王女の企みで毒リンゴを食べさせられて……』

『死んでしまったところをお王子さまに助けられるんだよな』

『うん、その白雪姫』

『キスされて生き返るんだっけ?』

『そうだよ、でもね……』

『ン?』

『本当の白雪姫ではそんなシーンないんだ』

………………。
…………。
925 :1 [sage]:2010/06/13(日) 23:44:26.06 ID:nSuvl4Ao
近頃、昔の記憶が唐突に思い出される。

それが女と出会ったからなのか。
或いは、自分で何か思うところがあったのか。

原作の白雪姫には王子がキスをして生き返るシーンは存在しない。
確か、ふとした弾みで白雪姫は毒リンゴの欠片を吐き出すのだ。

そして最後のシーンで、全てを企んだ女王は狂い死ぬ。
人々に、真っ赤に焼けた鉄の靴を履かされて踊らされて。

目の前の舞台では着々と物語が進行していた。
今は、白雪姫が七人の小人と出会うシーンだ。

俺はその劇を眺めながら……。
ふと頭の中を過ることがあった。
926 :1 [sage]:2010/06/13(日) 23:45:41.93 ID:nSuvl4Ao
男「…………」

あの記憶の後、彼女はなんと言ったのだろう。
唐突に始まった白雪姫の話……けれど、あれに何の意味があったのか。

考えてみても思い出すことは出来ず。
いや……無理して掘り返す必要もない。

だって、あれは既に終わったことだから。
もう一度、始めることは決して出来ないのだから。

壇上では、女が白雪姫を演じている。

恐らく、今日の物語も原作ではないだろう。
文化祭の劇でやるにしては……あれは適さない。

終演まで、あと四十分ほど。

教室の後ろの方で……俺は劇をただ見続けた。

……………。
……………。
927 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/14(月) 01:00:45.15 ID:i6iTOgY0
終わり??
928 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/14(月) 01:24:26.93 ID:S/ImryU0
そろそろ終わりだな
929 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/14(月) 09:41:49.78 ID:im086qg0
ひたぎを思い出した。北海道、蟹...
930 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/16(水) 17:43:06.16 ID:nIIuHSko
彼女が白雪姫のこと何でしゃべったかkwsk
931 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/16(水) 21:24:59.93 ID:LXnib/M0
>>930
まぁ間違いなく違うと思うが、俺の解釈としては

白雪姫=ヒロイン=女、彼女

女が劇中で演じているのは王子のキスで生き返る白雪姫であり、
一方彼女の話に出ている白雪姫は生還に王子を必要としない原典

ここにいう王子は当然男のことで、彼女が男と離れてしまう(必要としない)が、女には男が必要だということを暗示している
932 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/16(水) 21:26:23.12 ID:LXnib/M0
あと何でこのタイミングで彼女がそんな話をしたかについてはまったくわからん
933 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/16(水) 21:29:19.99 ID:nIIuHSko
>>931-932
thx
やっぱタイミングは分からないか
934 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/19(土) 00:29:48.40 ID:clMNmcDO
何を選んでいる状況かと、告白の状況が分からないと何とも言えないな
935 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/19(土) 01:10:51.58 ID:/Z85vaA0
>>934
選んでいるのは雰囲気的に結婚指輪とかそこら辺臭くないか?
北海道云々は新婚旅行でさ
936 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/19(土) 07:25:37.00 ID:6XuUlT60
信者しかいないSSは気持ち悪いな
937 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/19(土) 08:03:32.79 ID:DCMsHBco
>>936
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1269896380/
ここのやつらにも言ってやるといい
938 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/19(土) 22:32:37.04 ID:yjjqgbMo
さて、土曜なわけだが
939 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/19(土) 23:54:19.67 ID:A.o.XgYo
>>937
涙ふけよ
940 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/20(日) 00:21:56.80 ID:Wav7KJAo
>>937
それまだ続いてたんだ
941 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/20(日) 16:13:41.60 ID:hKRs22g0

                          刀、           , ヘ
                  /´ ̄`ヽ /: : : \_____/: : : : ヽ、
              ,. -‐┴─‐- <^ヽ、: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : }
               /: : : : : : : : : : : : : :`.ヽl____: : : : : : : : : : : : : : : : : : /
     ,. -──「`: : : : : : : : : :ヽ: : : : : : : : :\ `ヽ ̄ ̄ ̄ フ: : : : :/
    /: :.,.-ァ: : : |: : : : : : : : :    :\: : : : :: : : :ヽ  \   /: : : :/
    ̄ ̄/: : : : ヽ: : : . . . . . . . . . . .、 \=--: : : :.i  / /: : : : :/
     /: :     ∧: \: : : : : : : : : : ヽ: :\: : : 〃}/  /: : : : :/         、
.    /: : /  . : : :! ヽ: : l\_\/: : : : :\: ヽ彡: : |  /: : : : :/            |\
   /: : ィ: : : : :.i: : |   \!___/ ヽ:: : : : : : :\|:.:.:.:/:!  ,': : : : /              |: : \
   / / !: : : : :.ト‐|-    ヽ    \: : : : : l::::__:' :/  i: : : : :{              |: : : :.ヽ
   l/   |: : :!: : .l: :|            \: : : l´r. Y   {: : : : :丶_______.ノ: : : : : :}
      l: : :l: : :ト、|         、___,ィ ヽ: :| ゝ ノ    '.: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : /
      |: : :ト、: |: :ヽ ___,彡     ´ ̄´   ヽl-‐'     \: : : : : : : : : : : : : : : : : : イ
        !: :从ヽ!ヽ.ハ=≠' , ///// ///u /           ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
      V  ヽ|    }///  r‐'⌒ヽ  イ〉、
              ヽ、______ー‐‐' ィ´ /:/:7rt‐---、       こ、これは>>1乙じゃなくて
                  ィ幵ノ ./:/:./:.! !: : : : :!`ヽ     ポニーテールなんだから
              r‐'T¨「 |: | !:.∨:/:./: :| |: : : : .l: : : :\   変な勘違いしないでよね!
               /: : .|: :| !:.!ィ¨¨ヾ、:.:/ !: : : : l: : : : : :.\
942 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/20(日) 18:39:08.83 ID:IpFb2noo
そもそも>>1じゃないしな
943 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/21(月) 01:25:01.86 ID:H1VRr6AO
944 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/21(月) 02:21:04.54 ID:sidiUQAO
残念だがもう来ないんじゃないか
これだけ有言不実行だと>>1が来辛いだろうし
945 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/21(月) 16:22:37.16 ID:318Io6AO
それでも俺は待ってる
946 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/25(金) 00:40:20.26 ID:m1vDKcAO
wwktk
947 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/25(金) 18:43:48.82 ID:d9JCdLEo
なんでwwが2個になるん?
948 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/25(金) 20:26:45.21 ID:G/O7AEAO
それだとwは四個ってことになるな
949 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/25(金) 21:28:59.51 ID:d9JCdLEo
ちゃう。1×2=2てこと。分かってるかもしんないけど。
半角 w
全角 ww
どっちが2個なった?
950 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/26(土) 00:25:19.63 ID:gcVSIYko
パー速とGEPで、全角wを増やしたくないなら、メ欄に注意しる。
951 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/28(月) 02:52:29.58 ID:XD3kx.DO
そんなギミックがあったなんて知らなかったw
952 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/28(月) 07:26:44.06 ID:kPgXOiM0
今週は来なかったか・・・・
俺は待ち続けるぞ
953 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/28(月) 13:24:29.05 ID:25i5swDO
お、おれも・・・
954 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/28(月) 20:30:10.71 ID:Pm52fEwo
>>950
面倒くさいなw
sagaじゃなきゃ、機能しないのか?
955 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/29(火) 00:16:36.62 ID:qF/fJSMo
>>954
[ピーーー]とかと同種の変換機能だから
956 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/29(火) 07:28:55.79 ID:MFESYlEo
>>955
把握した。↓test
死ね殺す
957 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/29(火) 07:29:22.19 ID:MFESYlEo
ピーなるのってsageだけか・・・
958 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/29(火) 20:09:20.41 ID:DKxPQ/co
通報した
959 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/29(火) 22:05:40.01 ID:qF/fJSMo
>>957
変換を無効化するのがsagaだぞ?
960 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/07/01(木) 15:08:22.20 ID:8CSLs.DO
早く帰ってきてくれ待ってるから
961 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/01(木) 23:41:15.04 ID:QeQhPaE0
最初は割かし良かったのに、どんどんキモ文章度が上がって行くな
962 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/02(金) 09:56:48.61 ID:DT95boAO
俺は待ってるぞーい
963 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/02(金) 19:56:12.22 ID:wBwHndko
[ピーーー][ピーーー]てst
964 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/03(土) 12:01:43.20 ID:ayyoRsDO
今日は来るかな?
まじで待ってんだけど…
965 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/07/03(土) 16:09:42.19 ID:wS6IKII0
もう来ないっぽいな
966 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/03(土) 16:11:20.39 ID:vIMHSTso
だって終わったもん
967 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/03(土) 18:22:28.11 ID:udF5roAO
それでも俺は待ってるぞーい
968 :1 [sage]:2010/07/04(日) 15:38:30.40 ID:wyrZrW2o
陽が落ちた暗い夜道を、俺と女は並んで歩いていた。

女「ねぇ、先生」

男「……ん、何だ?」

奇妙な同居生活が始まってから、何度そうやって彼女に呼ばれたことか。
俺はいつものように、気怠そうな返事をした。

女「演劇……どうだった?」

男「良かったよ」

女「どんなふうに?」

男「魔女役の彼女……あれ、ホントに学生かよってぐらい」

女「……むぅ」

男「はは、分かってるさ」

君が聞きたいのはそんなことじゃなくて。

男「とてもいい演技だった」

女「……え」

男「ちょっとぐらい馬鹿にしようかと思ってたけれど」

男「気が付けば、姫の一挙一動に目が離せなくてな」
969 :1 [sage]:2010/07/04(日) 15:39:11.92 ID:wyrZrW2o
女「……うん」

男「練習大変だったろ」

男「誰だって分かるさ、あの演技を見れば、な」

躊躇うことなく流暢に発せられる台詞。
声に乗せられた感情の機微。

学園祭の舞台で見るには、少し……出来過ぎていた。
それが彼女の持って生まれた天性のものなのか。

一つだけはっきりしていることがあれば……
見る者を惹き付ける何かを、彼女は確実に持ち合わせている。

女「でもね……初めは凄く緊張したんだ……」

女「幕が上がるまでは、ずっと両足が震えちゃってね」

男「そうだったのか?」

そんな様子全く感じなかった。

女「わたし……ホントは少し怒ってるんだよ」

男「え」

女「舞台が始まる前に観客席を覗いたら、先生……いないんだもん」

男「あ、ああ……」
970 :1 [sage]:2010/07/04(日) 15:40:16.71 ID:wyrZrW2o
女「それで『約束したのに』って、一人で腹を立ててたら」

女「いつの間にか緊張とか無くなってて……」

男「は、はは……」

女「結果的には良かったけど……」

女「やっぱり初めから来て欲しかった」

男「……悪い」

不安だった時に彼女が観客席を覗いたのは……きっと偶然ではないだろう。
始まる前に一言ぐらい声をかけてやるべきだったと、
今になって反省する。

女「まあ、来てくれたことには変わりないからさ」

女「約束を守ってくれたことは、評価に値します」

男「はっ、姫さま。ありがたき幸せ」

女「ふふ、何それっ」

男「お詫びのしるしといっちゃなんだけど……」

男「今日は君を一国のお姫さまとして扱うことにした」

女「じゃあ、先生は何の役?」

男「どこにでもいそうな家臣の一人」
971 :1 [sage]:2010/07/04(日) 15:40:43.96 ID:wyrZrW2o
女「……で、本当は?」

男「隣国の姫を籠絡するために送られた、敵国のスパイ」

女「…………」

男「…………」

女「……ぷっ」

男「……くっ」

男・女「「はははははははっ」」

……………。

馬鹿なことをやりながら、また今日という一日が過ぎる。
何事もなく、何の進歩もないのだけれど……
多分、それが一番大切で、幸せなことなんだって。

昔から気付いてた。昔から分かっていた。

あの後、彼女が言った続きを。
今になって思い出す。

………。
……………。
972 :1 [sage]:2010/07/04(日) 15:41:16.51 ID:wyrZrW2o
『ねぇ……白雪姫って知ってる?』

『唐突にどうした? 白雪姫……毒リンゴの話か?』

『そうそう、七人の小人が出てくるお話』

『確か、王女の企みで毒リンゴを食べさせられて……』

『死んでしまったところをお王子さまに助けられるんだよな』

『うん、その白雪姫』

『キスされて生き返るんだっけ?』

『そうだよ、でもね……』

『ン?』

『本当の白雪姫ではそんなシーンないんだ』

『え? そうだっけ?』

『うん、家来が棺を揺らして、その際に食べたリンゴの欠片を吐き出すんだ』

『なんだそれ……』

『そう、ロマンチックじゃないよね』

『ああ……ちょっと拍子抜けだな』

『うん……でもさ』
973 :1 [sage]:2010/07/04(日) 15:42:01.62 ID:wyrZrW2o
『私はそれでいいんだと思う』

『…………』

『劇的な話じゃなくてさ、なにかの弾みで進んでいく』

『確かに白雪姫が生き返ったのは奇跡だけど』

『そこにムードの欠片もないよね』

『おう、でもそれが……』

『私達もさ、ムードとか形とか、そんなのいらないよ』

『…………』

『楽しくいこう? 格好に拘らないでさ』

『……ん、そうだな』

『お前に出会えただけで……確かに奇跡だもんな』

『これ以上、求めるものなんてないか……』

『そうそう、奇跡は言い過ぎだと思うけどね』

『何事もなく……このままただ進んで』

『二人が楽しく一緒に過ごせれば』

『うん』

『最高だなっ──』
974 :1 [sage]:2010/07/04(日) 15:42:42.89 ID:wyrZrW2o
……………。
………。

だから。

男「──────」

……………。

目の前にある光景が。

──信じられなかった

……………。

女「……あ、……あ」

何事もなく進む、それだけが。

どれほど幸福なことなんだって。

……………。

──『私の目□  時■ なって』

……………。

何時の日か。気付いたはずだった。

……………。
975 :1 [sage]:2010/07/04(日) 15:44:09.14 ID:wyrZrW2o
そうだ──

女「……あ、あっ……」

俺は、目の前の光景が……ただ。

女「……あああ、あ……」

女「い、……」

女「いやああああああああッ!!」

──憎かったんだ

……………。

父親「……やっと」

父親「やっと見つけたぞ……」

……………。

初めて。

人を殺してやりたいと、思った。

……………。
……………。
976 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/04(日) 15:44:57.65 ID:VsQC1EAo
きてるー!!
977 :1 [sage]:2010/07/04(日) 15:44:59.77 ID:wyrZrW2o
異常な光景だった。

隣にいる少女は身体を激しく震わせて、
口元からは言葉にならない何かが絶えず発せられている。

そして、それ眺める彼女の父親は……何故か笑っていた。
何かに取り付かれたような、光を失った両眼。
そこには、子に対する親心や愛情など勿論なかった。

父親「……これで」

『これで』……なんだというのだ。

今まで姿を隠し続けていたこの男が、
今になって血の繋がらない一人の少女に固執する。

考えられる要因は……恐らく。

男「……何の用件ですか」

自分で驚くほど、冷めた声だった。

父親「……部外者はひっこんでろ」

男「そうは言っても、彼女は私の教え子ですから」

父親「…………」

男「……もう彼女とあなたには何の関係もないでしょう」

父親「……見つけたんだ」
978 :1 [sage]:2010/07/04(日) 15:45:40.46 ID:wyrZrW2o
男「……は?」

父親「やっと……やっと見つけたんだ……」

男「…………」

……駄目だ。これでは駄目だ。

目の前の男の視線は俺と一度も交わることはなかった。
彼は隣にいる少女をただじっと見つめ続けている。

そう、何かに囚われるように。
それは異質だった。狂気があった。

父親「これで……元に……」

男「…………」

マズいな……。

こんな人間を……俺は今まで見たことがない。

初めのうちは言葉の通じる相手だと思っていた。
事情を既に知っていた俺は、彼女の代わりに怒りをぶつけようと。
最悪、警察を盾に彼女を守ろうと安易に考えていた。

だが、これでは。

父親「……女……」

少しずつ冷静になる。
沸点まで高まった感情が冷えていくの感じる。
979 :1 [sage]:2010/07/04(日) 15:46:29.77 ID:wyrZrW2o
目の前の男は、季節が冬にもかかわらず……かなり薄手だった。
ところどころが破け……見るからに汚れていて。

何年、逃げ続けてきたのだろう。

父親「……ああ……やっと」

父親「……やっと……」

男「…………」

男「……ああ」

……そういうことか。

何となく分かってしまう。

この男が女のことを偶然、雑誌で見つけて。
自分が失った人生を……やり直せると願ってしまったことを。

父親「……これで」

だから俺は。

父親「元に……」

男「──戻せるわけないだろ」

父親「……ッ」

初めて……父親の意識がこちらに向かった。
痩せこけて皺だらけの顔。
今まで気付かなかったが、ここまで弱り切っていたのか。
980 :1 [sage]:2010/07/04(日) 15:47:14.73 ID:wyrZrW2o
だが、躊躇うことなく。

男「何を勘違いしているのか知れないが……」

男「あんたの人生はもうとっくに終わってるんだよ」

父親「……ち、違う」

男「お前が彼女の母親に手を上げたときから」

男「いや、ギャンブルに心底嵌り込んでしまった時かもしれない」

男「でも、確実に……あんたの人生は終わっちまったんだ」

父親「違うッ!!」

焦った人間の、悲痛の声が聞こえた。

父親「や、やり直せるはずだっ」

父親「もう一度、昔みたいにッ!」

父親「娘とさえ仲良くできれば、アイツだって、もう一度俺を……」

父親「……きっと……いや絶対に、やり直せるはずなんだっ」

男「…………」

人はいつも願う。

過去をやり直したいと。
あの瞬間に戻れればいいなと。

けれど。
981 :1 [sage]:2010/07/04(日) 15:47:54.29 ID:wyrZrW2o
男「……いつまで夢を見てるんだ」

それは……。

誰に向かっての言葉だったのか。

男「……叶うことのない夢をいつまで見続けるんだ……」

あの日。

どうして俺は……目覚めなかったのだろう。

男「時間は、絶えず進んでいるんだ」

男「あんたが望む世界は……もう……終わったんだよ」

父親「……ち、ちがう……」

男「……終わったんだ」

父親「……ち……」
982 :1 [sage]:2010/07/04(日) 15:48:45.53 ID:wyrZrW2o
父親「…………」

父親「……う……」

父親「……あぁ……うっ」

父親「……ああ、あああ、あああああっ」

……………。

路上で、一人の男が泣いていた。

彼には何もない。何一つ、残っていない。

そんな男でも……かつての一時、本当に幸福だった瞬間があった。

彼はそれを忘れられなかった。

もう一度と、願わずにはいられなかった。

分かってしまえば、とても単純な。
そんなありふれた話が、あっただけだった。

……………。
……………。
983 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/04(日) 15:53:00.82 ID:H.dBzz6o
きてる!!!
984 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/04(日) 15:55:47.53 ID:89OMHEMo
Wao!
985 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/04(日) 16:09:23.54 ID:mKkC9mko
ひゃっほーーー(・∀・)・・・

レス足りるのか?
986 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/04(日) 17:26:28.80 ID:HCeWXEDO
きてたのかー!!
987 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/04(日) 17:32:25.12 ID:WT.UHToo
次スレはどうしたもんか
988 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/04(日) 17:43:25.95 ID:8EIq4qYo
必要なら自分で立てるだろ
989 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/04(日) 18:04:15.90 ID:phLB1Poo
きてたー
990 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/04(日) 20:59:03.40 ID:8v4XTEU0
ひゃっほーい!!!
991 :1 [sage]:2010/07/04(日) 22:07:29.95 ID:wyrZrW2o
足下がおぼつかない少女の肩を抱いて、我が家に着く。

男「……女、大丈夫か」

女「……はぁ……はぁ……」

彼女の身体は未だ震え続けている。
眼は虚ろで、顔の色は真っ青。荒い呼吸音がただ聞こえた。

女「……はぁ……はぁ……」

女「……やだ……やだよ……」

男「…………」

焦点の合わない視線の先には、一体何が映っているのか。
忘れていた過去の光景を……今になって繰り返しているのだろうか。
……俺には想像することしか出来ない。

彼女の痛みを、苦しみを。
俺が肩代わりしてやれれば、どんなにいいことだろう。
天で高見の見物をしている神を、久しぶりに心底怨んだ。

男「……水でも汲んで……」

女「──やだ……いやだっ」

男「うおっ……」
992 :1 [sage]:2010/07/04(日) 22:08:37.56 ID:wyrZrW2o
ソファーから立ち上がった俺の服を、彼女がもの凄い力で引きつける。

その拍子にバランスを失った身体は……
彼女に覆い被さるようになってしまった。

男「わ、悪いっ」

焦って取り繕う俺のすぐ目の前に、彼女の顔がある。
すぐさま少女から離れようとした時……。

女「……側にいて……」

男「…………」

確かに聞こえた。

助けを求める少女の声が、微かに……でも確実に聞こえた。

男「……ああ」

女「……やめて……うっ……」

少女は震え続ける。
意味のない言葉を絶えず口ずさむ。

俺は彼女のすぐ横に、座り直して……。

男「……大丈夫だ……俺は、ここにいる」

女「……やだ……もう、止めてよ……」
993 :1 [sage]:2010/07/04(日) 22:09:29.88 ID:wyrZrW2o
男「ここにいるから……ここにいるからさ」

女「……ああ……もうやだよ……母さんをそれ以上……」

男「……ッ」

彼女の両手を握りしめる力が自然と強くなる。
震えが俺の腕まで伝わり……何も出来ない自分がひどく惨めになる。

男「……くっ……」

女「……ああ……やだ……お願い……」

男「……くそっ……」

なんて理不尽なんだ。無力なんだ。

女「……助けて……」

女「……先生……助けてよぉ……」

気が付けば。

俺は少女の身体を抱きしめていた。

……時間だけが過ぎていく。

誰にでも平等に。正確に。

いつもは憎むべきそんな当たり前のことが。
今日という日は、何故だか有り難かった。

……………。
……………。
994 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/05(月) 01:23:58.80 ID:AWtEtkDO
きてた!
995 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/05(月) 01:27:38.18 ID:eh.Bzx2o
>>994
残像だ
996 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/05(月) 12:54:54.06 ID:yXHm1rQo
おい次スレ
997 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/05(月) 20:57:39.07 ID:g8Pu73Uo
うまるな
998 :by_sK ◆N8kku2gJS6 [sage]:2010/07/05(月) 22:26:53.22 ID:fXgSDZgo
次スレ

女「うぇっ……吐きそう……」その3
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1278336338/

>>1がくるまでここはうめるなよ
999 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/07/05(月) 23:05:59.73 ID:z8CqkJc0
うめ
1000 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/05(月) 23:07:59.64 ID:z8CqkJc0
1001 :1001 :Over 1000 Thread
    ´⌒(⌒(⌒`⌒,⌒ヽ
   (()@(ヽノ(@)ノ(ノヽ)
   (o)ゝノ`ー'ゝーヽ-' /8)
   ゝー '_ W   (9)ノ(@)
   「 ̄ ・| 「 ̄ ̄|─-r ヽ
   `、_ノol・__ノ    ノ   【呪いのトンファーパーマン】
   ノ          /     このスレッドは1000を超えました。
   ヽ⌒ー⌒ー⌒ー ノ      このレスを見たら期限内に完成させないと死にます。
    `ー─┬─ l´-、      完成させても死にます。
        /:::::::::::::::::l   /77
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       l;;ノ:::::::::::::::l l;.,.,.!  |
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      ヽ;;;>     \;;>

1002 :最近建ったスレッドのご案内★ :Powered By VIP Service
粘着テスト @ 2010/07/05(月) 22:29:09.79 ID:24leBsAO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/zikken/1278336549/

女「うぇっ……吐きそう……」その3 @ 2010/07/05(月) 22:25:38.77 ID:fXgSDZgo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1278336338/

【くしゃみついでに】嫁が最近デレ期らしい【ヘッドバット】 @ 2010/07/05(月) 22:18:37.10 ID:XKYtTUAO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1278335917/

おもしろくないSSばっかで困る>< @ 2010/07/05(月) 22:06:40.96 ID:Mk5V/3M0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1278335200/

粘着 @ 2010/07/05(月) 21:55:39.33 ID:24leBsAO
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