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南夏奈「こいつきもっ……」 - 製作速報VIP(クリエイター) 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/08(木) 15:32:39.18 ID:ayPLMOk0
 いつも夏奈ちゃんは元気だから背後から
「夏奈ちゃんはすごいねいいこいいこ^^」
 って頭撫でてあげたらびくって驚いてすごい勢いで振り向くと
 嫌な顔して「きもい…」って言ってどっか行っちゃった
 あの日だったのかな
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
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いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
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【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
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こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
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アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
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2 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/08(木) 15:36:23.01 ID:ayPLMOk0
 いつも夏奈ちゃんは元気だから僕も嬉しくなって
「うおー!」って突然夏奈ちゃんが叫んだタイミングで僕も
「好きだー!」って叫んだらこっち見もしないで足早にどっか行っちゃった
 重いタイプなのかな
3 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/08(木) 15:41:12.64 ID:ayPLMOk0
 いつも夏奈ちゃんは天使みたいに可愛いから、僕は何だか逆に怖くなった
 だってこれって奇跡じゃない? どうして夏奈ちゃんってあんなに可愛いんだろう
 活発で活動的で躍動して太陽のように明るくて花が咲いたような笑顔に犯罪的な可愛らしさを誇る髪形
 これって奇跡としか思えないよ。地球に宇宙人がやってきて「今からチンコ二本以上生えてない奴は[ピーーー]」
 って言い出して突然ジェノサイド勃発してだけど追い詰められた地球人の中から次々と
「俺は三本ある」「俺は五本ある」「俺は三十二本ぐらい」って名乗りを上げる勇者たちが出始めて
 ついには宇宙人を撃退しちゃうっていうF級映画がお茶の間で「全米が泣いた」ってコマーシャル
 されちゃうぐらいの奇跡だと思う
 って話を本人にしたら「お前大丈夫?」って言われた
 多い日なのかな
4 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/08(木) 15:50:17.79 ID:ayPLMOk0
 いつも夏奈ちゃんは元気だから僕も何だか嬉しくなって
「夏奈ちゃんのおかげで毎日が楽しいよ」ってにこってしたら
「私はあんたのせいで毎日うざくてたまらないよ」って言われた
 思わず僕は「ええ!」って驚いた
「だって夏奈ちゃん昨日は朝からバルサミコ酢のこと何かの呪文だと勘違いしてたっていう
話題で盛り上がって散々笑ってたじゃない! それに昨日の帰りでは大型犬にからまれて
かおべろべろ舐められながらもげらげら笑ってたじゃない! くっそ!
それに家に帰ってからも人参が食べられない妹を馬鹿にするのに全力を注いで
心地いい疲労感に包まれながらお風呂にゆったりつかりながらGreen歌って
その日はすごくいい笑顔で眠りについてたじゃない!
一体どこでうざがる要素があったの!?」
 って言ったら警察呼ばれた
 そっか〜
5 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/08(木) 15:56:26.38 ID:ayPLMOk0
 いつも夏奈ちゃんは元気でその日も友達と楽しくおしゃべりしてたから
 僕も話題に入りたくなって「何の話してるの^^」って声かけた
 すると夏奈ちゃん急に舌打ちして「あっちで話そう」って明らかに僕のこと避けてた
 僕は驚いてしまって「何で!?」と叫んだ
「僕は夏奈ちゃんのことを楽しませる話題一杯知ってるよ!?
 例えば最近夏奈ちゃんが嵌ってる漫画とか昨日全巻読破したし
 夏奈ちゃんが今やってるゲームもとっくのとうにクリアしてしかも今五週目だし
 それからそれから…」
 ってそしたら夏奈ちゃん僕の話を遮って「そんな話一度もお前にしたことないけど…」
 って青ざめた顔で言ってたから「盗み聞き^^」
 ってにこってしたらその日から夏奈ちゃんが無口になっちゃって辛い
6 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/08(木) 16:03:28.41 ID:ayPLMOk0
 夏奈ちゃんが家に遊びに誘ってくれたから行ってみたら
 皆来るって言う話だったんだけど僕しかいなくて
 僕一人でおじゃまするのもアレだし夏奈ちゃんと二人きりで話題続く自身もないから
「じゃあ日を改めて……」ってお暇しようとしたら
 夏奈ちゃん急に「えぇっ!」ってびっくりしちゃって
 僕が「ど、どうしたの?」って聞いたら「何で帰るんだよ…」
 って涙目の顔で言うから僕まで驚いた
「でも二人きりっていうのもさ」って言ったら
「私と二人きりだと嫌なのか」って顔俯かせちゃった
 僕は慌てて「そ、そそそんなことないけど」って言ったら
 夏奈ちゃんぱって顔明るくして「じゃあゲームでもするか!」
 って現金な感じやらたなぁこれ参ったなぁ
 って夢を見たんだって夏奈ちゃんに話したら
 夏奈ちゃんにこって笑って「それ百億年経ってもありえないよ」だってさ。
 ってことは百億一年後にはありえるってことだから今から楽しみでしょうがない
7 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/08(木) 16:24:14.19 ID:4mW5WDUo
夏奈かわいい
8 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/08(木) 16:25:38.18 ID:MON5SC20
こうたろうか?
9 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/08(木) 16:32:48.35 ID:ayPLMOk0
 夏奈ちゃんがご飯食べてるところって可愛いから、つい目で追っちゃうんだ
 そしたらぱって目があっちゃって、恥ずかしくなってつい目をそらしたんだ
 そしたら向こうからつかつか近寄ってきて「何見てんだよ〜」ってちょっと怒ってる声
「別に見てないよ」って言ったら「嘘付け思い切り目が合っただろうがー!」ってヘッドロック
 かけられた
 胸があたってたから恥ずかしくなって顔真っ赤にして何もいえないでいたら
 夏奈ちゃんも自分の胸が当たってることに気づいて、ぱって咄嗟に離れてお互い顔赤くしてた
 幸せってこういうことだと気づいた
10 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/08(木) 16:36:51.83 ID:ayPLMOk0
>>8
11 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/08(木) 16:53:36.13 ID:ayPLMOk0
 夏奈ちゃんと手を繋ぎたいとふと思ったんだ
 でもそんなこと無理に決まってるから、とりあえず現金で十万用意した
 本人の目の前にそれをぽんと置いた「とりあえずこれで手を繋がせて」
 っていったら「別にいいけど…」と了承
 不機嫌そうな夏奈ちゃんと手を繋ぎ続けるのはすごく興奮したけど、
 同時にすごく悲しくなった
 そこで目が覚めた
 っとそんな夢をみたんだって本人に言ったら、
「別に手ぐらい繋いでやるけどなー」って言って握手してくれた
 この夢よどうか覚めないでくれと思った
12 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/08(木) 17:03:25.87 ID:ayPLMOk0
 夏奈ちゃんと一緒にゲームしてたら何だか知らんが検尿の話になった
 僕が「あれ女の子ってどうやってんの? 男は手元にあるからいいけど」
 と言ったらおもむろにM字開脚して手元を股間の方に持っていき「どうって言われてもこうだよこう」
 と卑猥な体勢を始めたので焦った
 何もいえないでいたら夏奈ちゃんも己の恥ずかしい格好に気づいたのか赤面したと思った瞬間
 僕をビンタした
 夢なら覚めないでくれと思った
13 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/08(木) 18:48:15.47 ID:MON5SC20
少し前に孝太郎という変態がVIPに夏奈への愛を語ったSSがあったんだ
14 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/09(金) 03:36:36.54 ID:Ge5mzUIo
だんだん夏奈が優しくなってるな
15 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/09(金) 04:07:19.14 ID:ZA6Gf.AO
妙に萌える
16 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/09(金) 18:01:46.11 ID:m2nlGGEo
>>1は少し前に水銀燈を愛しながら深紅に射精するやつを書いてた人な気がする
17 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/10(土) 09:51:16.10 ID:G8Itr.U0
>>16
何故わかったし
18 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/10(土) 15:39:39.93 ID:5SHPpEAO
マダァ-?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
19 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/10(土) 18:48:10.17 ID:G8Itr.U0
 夏奈ちゃんはいつも明るいから僕はこれは何か秘密があるに違いないと思った
 きっと夏奈ちゃんの体の真ん中には太陽があるに違いない。永遠に燃え尽きることの無い美しい太陽が
 でもその軌跡の太陽が体のどこにあるのかは不明瞭
 だから確かめようと「これかな?」って夏奈ちゃんの乳首あたりを指でつついてみたら
 一時的に視力を失うほど顔を殴られた
20 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/10(土) 18:59:17.18 ID:G8Itr.U0
 ふと、夏奈ちゃんはいつも明るくて悲しいことがあったときどんな顔をするのだろうと気になった
 本人に聞いてみたら「別に普通に悲しい顔すると思うけどな」とつまらない答え
 なんとしても夏奈ちゃんの悲しい顔を見たいと思ったから、
 僕はおもむろにずぼんを下げてグロテスクなマイサンを夏奈ちゃんに見せ付けてみた
 夏奈ちゃんはくすって笑ってた
 泣いた
21 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/10(土) 19:10:17.70 ID:G8Itr.U0
 ふと夏奈ちゃんは男性器というものを見たことがあるのか気になった
 本人に聞いてみたら「うるさいこの変態!」とどちらともとれる答え
 いてもたってもいられなくなって「ないよね? ねぇないよね?」としつこく問い詰めたら
 夏奈ちゃん赤い顔で「な、ないけど…」と答えけど絶対嘘だと思った
 きっと好奇心旺盛の夏奈ちゃんのことだから夜な夜なインターネットでエロサイトを巡回して
 エロ画像やエロ動画をエロツールを使ってエロエロ採集しているに違いない
 そう考えたら興奮してしまって「ここに無修正があるけど?」とズボンをさげたら
 夏奈ちゃん泣きだして「好きな人のを見たかった」だって
 眩暈を覚えるほど興奮した
22 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/10(土) 19:34:20.29 ID:G8Itr.U0
 もしの話だけど、一生に一度、人はワープができるとしよう
 だけど欠点があって、一つの物質しか一緒にワープできないんだ
 大抵は服と一緒にワープするんだけど、まあその話は置いておこう
 その時君は火星にいるんだ。そして、酸素をためたボンベはもう残り少なくて、あと五分でなくなってしまう
 君を助けにいく宇宙船はあと三日は火星にこれない
 君を助ける方法は一つだけ。もうわかるよね?
 僕は君のもとへ酸素を届けるよ。一生に一度のワープで、君のもとへいく
 たった一つだけ、君のための酸素を、僕は全裸で届ける
 君はどんな顔をするかな? 僕の姿を笑うかもね
 でもわかってほしいのは、僕はそれでいいんだってこと
 酸素はないから喋れないけど、僕は君に向かって、愛してるよっていうよ。
 って話をしたら夏奈ちゃん「ばーか」って言ってこめかみを指でつついてた
 僕はそれでいい
23 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/10(土) 19:51:55.25 ID:G8Itr.U0
 放課後、珍しく夏奈ちゃんのほうから声をかけてきて、どうしたのかと思ったら
「一緒に帰ろうぜ」
 付き合っているわけでもないから嫌だと断ったら「じゃ、じゃあさ」と言った後しばらくもじもじし始めた
 どうしたのかと不振に思っていると突然おじぎするように頭を下げ僕に手を差し伸べてきた
 気持ち悪かったからそのままにして帰ったら次の日もそうしてた
 こわい
24 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/10(土) 21:49:04.79 ID:Aum11Ns0
たぶん>>1は普段の生活だと常識人
25 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/11(日) 00:05:42.54 ID:cp.sWKMo
しかも>>22を見る限りスゲーかっこいいのが悔しい
26 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/11(日) 00:09:58.54 ID:ywsXg.Mo
ここがVIPなら保守したところだがここでは必要ないのでとりあえず俺がwktkしていることだけ伝えておく
27 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/11(日) 15:20:54.76 ID:cskxGiA0
 夏奈ちゃんが便秘に困っているという話を聞いたから
「ヨーグルトがいいよ」と教えてあげたら次の日嬉しそうな顔で
「出たんだ出たんだー!」と騒ぐから困った
 女の子がよしなさいと注意したんだけどよほど嬉しいのか聞く耳持たず
「あのな、こんぐらいのが出たんだよー!」と手でブツのサイズを克明に表現しだして
 そのサイズがあまりにもあんまりだから僕は驚くほど興奮して
 最早抑えきれなくなり「僕のと同じぐらいだねほら」とズボンをさげたら
「いやもっと太かった」
 と冷静に突っ込まれて泣いた
28 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/11(日) 16:13:58.15 ID:cp.sWKMo
まずい夏奈にバカが感染してる・・・
29 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/11(日) 16:33:51.40 ID:h7Osiv20
>>28
夏奈はバカだよバカやろう
30 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/11(日) 17:09:51.85 ID:cskxGiA0
 自分は普通の人間とは違うと気づいたのは五歳の頃だ。
 別に超能力が使えるとか、裂けた肉から湧き出る血に興奮するとかそういう格好良い話じゃない。
 五歳の頃僕はものっそい変態だと気づいた。
 幼稚園の先生がうんこしているところを覗くのが好きだった。トイレットペーパーを几帳面に畳む奴と
 くしゃくしゃにする奴といてその違いに興奮した。
 うんこに限ったことじゃない。同級生の女の子が謝って毛虫を手のひらで潰してしまって大泣きしているところを
 見たときには勃起して、精通すらした。
 その頃変わったオナニーを覚えた。自分の陰茎をマーカーでカラフルに塗りたくるのが好きだった。
 何度も母親に注意されたがやめなかった。そのたび母親が僕の股間を拭いたがそのときも勃起していた。
 僕は変態だ。小学生になる頃にはそんな僕の異常性は周囲の人間にも知れることになって、友達は今を持って一人もいない。
 いや、いるといえばいるが……。それは置いておこう。
 僕の話に戻る。僕はもう、今年で二十八になる。そして童貞だ。
 今まで一人も女性と付き合ったことが無い。
 自販機の飲料水補充業者をやって細々と暮らしている。そして死ぬまでこうなのだろうと悟っている。
 さすがにこの歳になったら変態趣味は人の目にはつかないところで済ませるぐらいの理性はつき、見かけだけは普通を装っているが、
 僕が筋金入りの変態であることは純然たる事実で、それが僕を苦しめる。
 だってそうだろう? たまたま僕はこんな風に生まれた。
 足が速い奴、ピアノが上手い奴、顔が良いやつ。それぞれ個性を持って生まれてくる。それが人間と言う奴だ。
 僕はたまたま、ガチの変態だったというだけのこと。
 運が悪いよ。
 だから僕は孤独だ。多分死ぬまで。
 頭の片隅で、うっすらと、僕は気づいている。
 そろそろ、限界が近いと。
31 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/11(日) 17:12:40.85 ID:cskxGiA0
 通り魔が出た。僕が住むアパートの界隈で。
 通り魔は女の人を狙ってばかりいて、既に一人殺されている。
 その夜も、髪の長い女性を後ろから羽交い絞めにし、ナイフを首元に突きつけた。
 しかしその人は一本背負いをかまして、なんとか助かったらしい。犯人は逃げた。
 何故僕はこの事件にとってこんなに詳しいのか?
 襲われた人は、僕の友人だからだ。
 通り魔にとって誤算だったのは、その人は女ではなく、男だということだ。
 しかも三十五のオジサンだ。名は森本さんという。女装が趣味の、僕の変わった友人。その日も女装して夜な夜な近所を徘徊していたと

ころらしい。余談では120パーセント勃起して既に射精寸前だったらしい。女装して歩くだけでそれだから彼もまた凄まじい変態だ。
 ああ、前言撤回しよう。彼は特に僕の友人ではない。隣の部屋に住んでいるからといって、友達ぶる迷惑な隣人だ。
「俺は決めたよ河島くん」
 夜中、警察からの事情聴取を終えた森本さんが、僕の部屋にやってきた。勝手に入ってきた。そして何やら妙な話を始めた。
「俺はね、決めたよ河島くん」
「……なんですか。さっきからそれしか言ってませんよね」僕は時計をちらりと見る。既に午前二時を回っている。「言いたいことがある

なら早く終わらせてくださいよ」
 森本さんは少しはげてきた頭をくしゃくしゃと両手で乱すと、絶叫した。
「俺は正義のヒ〜ロ〜になるっ!」
 すると隣の壁が荒々しくどんっ、と叩かれた。繰り返すが現在午前二時だ。
「森本さん、勘弁してください。ここは僕の部屋ですよ。文句いわれるの僕なんですから」
「あ、ああすまない。興奮してしまってね。何しろ警察の事情聴取が数時間にもわたって、苛々してるもんだから。
 あいつら、まるで俺が変態みたいに扱いやがって。ただ女装してただけだろう」
「逮捕されなかっただけ感謝するべきですよ。それで、何ですか。ヒーローになるってどういうことですか」
 そう訊くと森本さんはもったいつけた様子で煙草を取り出すと、僕に断りも無く勝手にふかし始めた。
「昨夜の件で、俺は決めたんだよ河島君。俺はヒーローになる。そして、あの通り魔を捕まえる」
 また変なことを言い出した。
32 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/11(日) 17:16:42.36 ID:cskxGiA0
「何でまた」
 そう話を促してやると森本さんは気持ち悪い顔でにやっと笑い、嬉々として語りだした。
「俺は柔道なんかやったことない。だのに、美しく一本背負いが決まった。俺は全身を翻しながら、夜空に浮かぶ丸いお月様を見た」
「ええ」
「それは綺麗だった……。そしてお月様にこう言われているような気がした。『やっちゃいなよ』と……」
「ええ」
「気づけば通り魔は道路に倒れげほげほと咳き込んでいて、俺はそれを悠然と見下ろしていた。
 俺は恐ろしかった。包丁を持った通り魔が、じゃない。自分自身が怖かったのだ。
 だってそうだろう? 柔道どころか、そろそろ足腰も弱くなってきて階段を上るのすら苦労するおっさんが、あれほど
 見事に一本背負いを決められたんだ。
 河島くんこれはね、神様の啓示だよ」
 森本さんは煙草で僕を指差すと、つばを撒き散らしながらでかい声で言うのだ。
「かのジャンヌダルクがそうだったように、俺は神の声を聞いたのだ! 神様はお月様の姿を借りて、俺にこういった!
 『あんたすごい力もってるよ。ちょっとがんばってみなよ』とっ!」
 また、壁が叩かれた。ついでに怒声も聞こえる。
「あの、本当にちょっと静かにしてくれませんか」
「小さいことは気にするな河島くん。そんなわけで、俺は手始めにあの通り魔を捕まえる。俺にはその力がある」
 突然森本さんはうぐっ! と呻くと胸を押さえ床に倒れた。
「ど、どうしたんですか」
 体を起こしてやると、森本さんは酷く苦しげな声で「俺は自分が怖い……! この不思議な力を持つ自分が……!」
 などと言うから僕は手を離して森本さんを床に落とした。
「言いたいことはそれだけですか? それじゃあもう帰ってくださいよ。通り魔を捕まえるなりなんなり、好きにしてください」
 しかし森本さんはいつまでも床に寝そべり立とうとしない。
 怪訝げな視線を送っていると、森本さんは空の一転を見つめながら、ぽつりと言った。
「河島くん。俺と一緒に通り魔捕まえない?」
33 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/11(日) 17:31:53.62 ID:cskxGiA0
「嫌です」って殆ど反射みたいに口が動いた。
「頼むよ!」森本さんはおっさんらしからぬ素早い動作で起き上がると、土下座した。
「通り魔は既に一人殺している超危険な奴だ! 幾ら俺が物凄い力を持っていたとしても、ちょっと一人では怖い!」
「嫌ですよ! 相手は包丁持っているんでしょう? 幾ら二人がかりでも、最悪殺されちゃいますよ!」
「[ピーーー]ばいいじゃない!」
「はあ!?」
「河島くんみたいな変態は、殺されちゃえばいいじゃない! その間に俺は通り魔をとっつかまえるから!」
「変態だとかおめぇええええに言われたくねぇえええええんだよおおおおおお! [ピーーー]ハゲ!!!!」
「ハゲてませんんんんん!! ギリギリまだハゲてませんんんんん!!」
 大家さんが僕の部屋に殴りこんできて、僕たちの喧嘩は終わった。森本さんはいいオッサンの癖に泣いていた。
 馬鹿みたいだ。あんなおっさんにまで、僕は見下されている。
 森本さんのいった言葉が、布団にもぐりこんだあとも、ぐるぐる頭の中で回った。
『河島くんみたいな変態は……』
 次の日、仕事から帰ってくると、森本さんが僕の部屋に前にいた。僕を見つけると、何やらビニール袋を差し出してきた。
「昨夜はすまなかった河島くん。これはせめてものお詫びだ」
 中身を見てみると大量のコンニャクと、全裸シリーズの最新作だった。
「本当にすまなかったな」
 森本さんはそそくさと部屋に戻ろうとする。
 反射みたいに、僕はそれを引きとめた。
「捕まえましょう」
「え?」
 振り返った森本さんの顔は脂ぎっていて気持ち悪かった。
「捕まえましょう、通り魔。僕たちで」
34 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/11(日) 17:46:14.40 ID:cskxGiA0
 僕と森本さんは近所のファミレスに移動して、そこで話をした。森本さん曰く、作戦会議だと。
 ずずっとアイスコーヒーを飲み干して、森本さんはいう。
「しかし河島くん。何でまた、通り魔を捕まえようと決意してくれたんだい」
「僕はもう、限界なんです」
 僕は俯いて、自分の膝を強く握った。
「毎日が同じことの繰り返しで、何も起こらない。ただ一つ確実なことといえば、僕は変態で、一生孤独だということ。
 昨日の夜、森本さんにまで見下されているのだと気づいてから、思ったんです
 このくそったれな現実を、変えてやりたいと」
「そ、それってつまり、河島くんはかなり俺のことをむかついてるってことかな」
「はい」
「ご、ごめんよ……」
「それはもういいんですよ。とにかく、僕はこの単調で孤独な日々を変えてやりたい。その手段は何だっていいけど、
 今は、森本さんと一緒に通り魔を捕まえることです」
 言いながら、僕は多分自分を肯定したいのだと思った。人殺しを捕まえることで、正しくありたい。
「なるほどね……」
 森本さんがちらっと顔を背けた。視線の先を追うと、ウェイトレスのお姉さんがいた。
「あの子、おっぱい大きいね」
 僕は盛大にため息をついた。
「それで、何か考えがあるんですか森本さん」
「え?」
「通り魔を捕まえる考えですよ」
 強い語調でそう訊くと、森本さんは罰の悪そうな顔でじとっと汗を掻き始めた。
「何も考えてないよ」
 僕はまた盛大にため息をつく。
「そんなことだろうとは思いましたよ」
35 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/11(日) 18:11:21.87 ID:cskxGiA0
 取り繕うように森本さんはそれにしても、と話を始めた。
「俺には河島くんがそれほどいかれた変態野郎には見えないけどねぇ」
「昨日と言っていることが違いますね」
「そりゃあ、君がいつかぽろりと言ったことを覚えていたからね。二歳ごろには既に精通していたとか、
 幼稚園の女の先生を二、三回レイプしたことがあるとか」
「そこまでは言ってないですけど、けどまぁ大体そうですね」
「その話があまりに強烈だったから、当時はちょっと距離を置いたりもしたんだけど、
 もう少し付き合ってみれば、話に聞いたほどじゃない、別に普通の奴だったから、今こうして友人同士でいるんだよ」
「僕は友達だとは思ってませんけど」
「……まだ怒ってるのかい」
「同じですよ」
「え?」
「人を[ピーーー]ことに興奮する奴も、普段から『げへへ血ぃ舐めてぇ〜』とか言っているわけじゃないでしょう。
 痴漢の常習犯だって、普段から『最近は指をどこまで入れられるのか試してる』とか言っているわけじゃない。
 僕はそれと同じです」
「……君って結構変な話するね。今気がついたよ。おじさんちょっと後悔してるかも」
36 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/11(日) 18:26:33.52 ID:cskxGiA0
 僕と森本さんがその後話し合って決めたのは、僕が女装して夜中界隈を闊歩するということ。
 何故僕なのかというと、既に森本さんの顔は割れている可能性があるからだ。ウィッグや服を変えればいい
 だけの話だが、はっきりいって怖いらしい。後ろから羽交い絞めにされてナイフを首に押し付けられるあの感触は
 一生忘れられないかもしれないと言っていた。
 それはそうだろう。僕も怖い。
 僕はわざわざウィッグと、女物の服を買った。どんな服を着ればいいのかは森本さんが逐一教えてくれたから困らなかったけど、
 女の服ってのはすごく高い。鞄や靴などの小物を合わせれば、相当痛い出費だった。
 僕が女装して歩きながら、森本さんが隠れて僕の後を追い、通り魔が現れるのを待つという作戦内容だ。
 森本さんの推理では、犯人は近隣に住んでいる。
 通り魔なんてするぐらいだから犯人は極度の馬鹿だ。だから足がつくのを恐れて、遠くの方で犯行するとかいう考えはもたないだろう。
 事実、一人目の被害者も、この近所で殺されている。そして二人目、これは森本さんだが、森本さんが襲われたのもこの近所。
「完璧だよ河島くん。これで通り魔をすぐにひっとらえることができるだろう」
 と森本さんは言ったが、正直、この作戦でどれだけ警察の捜査を出し抜けるかは、懐疑的だった。
 既に一人殺した奴だ。警察も必死で追っているに違いない。それも、威信とやらにかけて。
 僕たちの頭の悪い作戦は、果たして通り魔を追い詰められるのだろうか。
 既にその作戦を決行して、一週間がたった。
37 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/11(日) 18:57:00.78 ID:cskxGiA0
 そろそろ頃合だと、僕と森本さんは口には出さないものの、思っていた。
 そろそろ止めようよ、ということだ。特に森本さんは顕著で、
「ちょっと腰の調子が悪くて……今日は悪いけど河島くん独りでいってきてよ」
 などとゲームをしながら言う始末だ。
 最初から通り魔を捕まえるなど無理だったんだ。警察ですら、犯人の足取りはいまだつかめていなくて、
 やはりこの近隣に住んでいるということぐらいしか、わかっていない。
 それでも僕は諦めがつかなかった。森本さんが飽きてしまっても、僕は一人で女装して夜中街を闊歩し続けた。
 無駄な気がする。全てが。ため息ばかり増えた。
 その夜は少し変わっていた。
 歩いていると突然、「あのう」と背後から声をかけられた。女性の声だった。
 驚いた。振り向けるわけがない。こんなことは想定していなかった。
 そのまま逃げ出せばよかったのだけど、動けなくなった。
 そうしていると、ひょいっと顔を後ろから覗き込まれた。
 目が合った。若いお姉さんだった。髪を茶色に染めた今風の女性で、僕が女装している男だということに
 気がつくと、「ひぃっ」と声をあげて走り去ってしまった。
 羞恥に塗れながら帰宅し、その日はすぐ寝た。
 朝になると、森本さんが勝手に僕の部屋に入って、食パンをかじっていた。鍵を閉め忘れたらしい。
「やぁおはよう河島くん」
「……何の用ですか」
「つれないなぁ。実はな、さっきまた神からの啓示を聞いたんだ」
「へぇ」重い体を起こして、テレビをつけた。「それでなんて言っていました」
「『やっぱ危ないことはやめなさい』」
「……帰ってください」
 僕は何気なくつけたテレビを、ぼんやりと眺めた。あるニュースをやっている。
 それを見たとき、膜が張ったようなはっきりしない意識は、すぐに鮮明になった。
『昨夜深夜ごろ、女性が道路で倒れているのが発見されました。体中をナイフのようなもので刺された跡があり、
 病院に運ばれましたが、数時間後死亡しました。警察は、一連の通り魔事件に何か関係があると断定し、捜査をしています』
 殺された女の人の写真が、テレビに映った。僕は口を塞ぐことができなくなった。
 その女の人は、昨日の夜、僕に声をかけてきた人だったからだ。
38 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/11(日) 19:15:05.45 ID:cskxGiA0
 僕は知らない間に通り魔に近づいていたのだ。それはとても、近いところまで。
 通り魔は二人殺した。これは十分、異常な数だ。
 そしてはっきりしたのは、通り魔は本当に頭が悪いということ。
 警察がこれだけ捜査を広げているのにもかかわらず、また殺した。
 通り魔は変態だ。きっと人を[ピーーー]ことにとても強い欲求を持っているんだろう。
 そうじゃなきゃ、普通こんなことしない。
 いや、普通じゃないのか。だから捕まらないのか。
 そして僕と森本さんは一つの決断を迫られた。
 このまま続けるのか、もう止めるのか。
 このまま続ければ、いずれ必ず通り魔と接触するだろう。
 その時無事でいられるかという保障はない。全く、無いのだ。僕一人だけでは、なおさら。
 僕一人だけで続けるのは、もう限界がきていた。目の前に明確に、命の危険が見えるのだから。
 だから森本さんに、一緒にいて欲しいとお願いしたのだけど……。
 僕と森本さんは話し合った。そして十分ぐらいで、その話し合いは終わった。
 結果として、『あと一回だけがんばろう』ということいなった
 あと一回だけで終わりにしよう、ということだ。
 これは僕と森本さんの折衷案だ。通り魔を捕まえるまで二人で頑張ろうと主張する僕に対し、
 森本さんは今すぐ止めよう、と主張した。そして君もやめたほうがいいと。
 森本さんは泣いた。もう三十五のおっさんの癖に、みっともなくわんわん泣いた。
 そして怖い、と言った。近所に二人も殺した通り魔がいるなんて、恐ろしくて仕様がないと。
 同時に、友達が殺されるかもしれないことも、怖いと。
 僕はそれ以上は言えなかった。
 森本さんは一度襲われたことがある。ナイフを突きつけられた恐怖は、きっと本人にしかわかることではないのだろう。
 そして今夜、最後の作戦が決行される。
39 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/11(日) 19:28:01.93 ID:cskxGiA0
 森本さんはさっきから、隙を見てはこっそり帰ろうとしていて、僕は気が気でなかった。
 定期的に後ろを振り向かなければいけなくて、これでは通り魔を待つどころの話ではない。
 やはり無駄だったか、と思ったとき、背後で森本さんの「うひゃあ!」というみっともない悲鳴を聞いた。
 驚いて振り向くと、電信柱にもたれかかる森本さんに、女性がナイフを突きつけていた。
 一瞬で血の気が引いた。ついに現れたと思った。
 体が痺れたように動けなくなり、鼓動が早まるのを感じる。
 だけど頭の片隅では妙に冷静で、森本さんがおしっこを漏らしている姿を汚いと考えた。
 女性は動けない森本さんの首元を掴むと、道路に押し倒し、「ついに捕まえたぞこいつ!」と怒号した。
 何かが違うと思った。森本さんは泡を吹いて気絶している。女性はどこからかガムテープを取り出すと、
 そんな森本さんをぐるぐる巻きにして拘束した。
 僕は恐る恐る、女性に近づき、声をかけた。
「あのう、通り魔の方ですか?」
「いいえ、私は違います。通り魔はこいつです」
「えっと、その人は僕の友人なんですけど」
 ふっと、女性が僕を見上げた。綺麗な人だった。
「何であなた女装しているんですか」
「話せば長くなるんですけど……」
 気絶した森本さんがぶっとおならした。
40 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/11(日) 20:58:33.06 ID:cskxGiA0
 ファミレスに移動し、開口一番女性は「あなたたちは何なんですか?」と僕らを問い詰めた。当然の疑問だ。
 一つずつ彼女の疑問を解消しながら、最終的には「僕たちは通り魔を追っているんです」と告げた。
 すると次は「それは何故ですか?」と女性は僕らを問い詰めた。
 ナイフを突きつけられた森本さんは、彼女の高圧的な態度に怯えながらも、そろそろ腹が立ったのか、突然怒号した。
「あんたこそなんなんだよ。ナイフなんぞ持ち歩いて、突然ぐるぐる巻きにしやがって。警察にも見えないし、
 俺たちよりあんたのほうがよっぽど不審だぜ」
 それはないだろうと僕は思った。僕はいまだに、女装した状態で、ファミレスにいる。はたから見れば僕らの方が百万倍怪しい。
「私も通り魔を追っているんです」と女性は言った。「一人目の被害者の女性、あれは私の姉なんです」
 突然の告白に、僕と森本さんは絶句した。
 女性は平然とした様子で、「私の理由は聞かせました。あなたたちの通り魔を追う理由もお聞かせください」と続ける。
 そういわれて困った。森本さんを横目で見ると、既に口を閉じて知らぬ顔だ。僕に全てを任せるらしい。
 まあ、森本さんの理由はあってないようなものだから、ここは僕が喋るしかないのだろう。
「自分を変えたかったんです。それだけですよ」
「通り魔を捕まえることが、自分を変えることになるんですか? 何故です」
「自分でもよくわかりません。何かしたかったんです。……でも、もうやめようと思っていて」
「え?」
「実は今日で最後だったんです。これ以上は本当に危険だからって。多分、犯人は本当に頭が悪い……」
「本物の馬鹿ですか?」
「言ってはなんですけど、本当にそうだと思います。でたらめで、でたらめだから、捕まらない。
 多分、こうして犯人の話をしているだけで、まずいんだと思います」
「そうですね。近くに潜んでいるかもしれないし」
 何故か去り際、お互いの連絡先を交換することになって、それから僕らは解散した。
 女性の名前は岬さんという。帰路、僕は携帯のメモリに母親以外の連絡先があることに静かに驚き、
 ひょっとしたら彼女から連絡があるかもと期待した。
 その後起こったことは、僕にとっては通り魔以上に大きな事件だったかもしれない。
 自宅に帰ってからすぐ、岬さんから連絡があった。
『良ければ今度会いませんか。二人で』
 変な宗教勧誘とかだったら嫌だな、と思った。
41 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/11(日) 21:50:40.71 ID:cp.sWKMo
わっふる
42 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/12(月) 20:40:24.75 ID:6jjqRGU0
 僕の嫌な予感は外れて、岬さんはごく普通に僕をお茶に誘った。
 場所は件のファミレスで、僕と岬さんは会った。
 僕はすごく、緊張していた。今までの人生で、女の人と二人きりで食事をするなど、全くなかった。
 岬さんはぼうっとファミレスの窓から外を眺めながら、ストローをくわえている。
 こうしてみると、やはり岬さんは綺麗な女性で、男との経験が豊富そうだった。
 だから、彼女が何故僕なんぞと二人で会いたいなどと思うのか、全くわからない。
 岬さんは何も喋らない。僕が道端を指差して「あの犬可愛いね」などと話をふっても「そうですね」
 としか切り返さないで、ずっとぼうっとしている。
 僕はだんだん腹が立ってきた。どうして僕を呼び出しておいて、岬さんは何も喋ろうとしないのか。真意が読めない。
 僕が言うのもなんだが、変わっている人だ。美人だけど鉄面皮で、アンドロイドみたいに無表情。
 そんな風に考えて警戒を強めていると、岬さんはぽつりと「私、緊張しています」と言った。
「はい?」
「ごめんなさい、呼び出しておいて何も喋れなくて」
「いえ、それは別に……」
「私のこと変な女だと思いますか」
 そう言って岬さんは外を眺めるのを止めて僕を見た。彼女はどうしてか、赤面していた。
「いや〜……」
「いいんです、はっきり言ってください。私変わってますよね」
「まぁ、個性的とは思いますけど…」
「そうですよね…」
 岬さんはがくりと肩を落として、顔を俯かせた。
「私、無表情でしょう。人形みたいでしょう。よく言われるんです。感情が上手く表せないんです」
 何の話が始まったのだろう。僕を置いてけぼりにして岬さんは続ける。
「さっき河島さんが犬を指差したとき、犬が可愛くて可愛くて、思わず絶句したのですが、気づきましたか?」
「いや全然…」
「そうですよね。さっきから呑んでるこの台湾ティー、美味しくておいしくて没頭していたのですが、気づきましたか?」
「…いいえ」
「そうですよね。気づきませんでしたよね。私無表情ですから」
43 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/12(月) 20:48:39.49 ID:6jjqRGU0
 岬さんはさらに続ける。
「姉が殺されたときも、そうだったんです。私は悲しくて悲しくて言葉を発することすらできなかったのですが、
 家族にはそれは無感動に見えたようで、私は叱責されました。家族ですらそうなのですから、私の真意など誰にも
 わからないのかもしれません。
 でも家族に叱責されたとき、私は悔しくて悔しくてしょうがなかったのです。こんなに悲しいのに、
 何故誰も理解してくれないのか。腹立たしくすらありました。
 だから私は、通り魔を捕まえることで、私の感情を証明しようと思ったんです」
「今日はそれを話したかったんですか。僕に?」
「いえ違うんです!」岬さんはがばっとすごい勢いで机に突っ伏した。「すみません関係ない話をしてしまいました。
 ただ私がどれだけこの無表情に思い悩んでいるのかを知ってほしくて」
「僕に?」それはどうして
「なんというか!」
 岬さんがあまりにも大きな声で騒ぐから、周りの客が僕たちに注目し始めた。
「岬さん、もう少し小さな声でお願いできますか」
「すみません」
 そう言って顔を上げた岬さんはやはり無表情だったが、顔はさらに赤くなっていた。
44 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/12(月) 21:00:32.02 ID:6jjqRGU0
 そして岬さんは僕を見つめながら突然
「私あなたに恋をしたかもしれません」と言った。
 僕はいよいよ、岬さんが変な宗教の勧誘とか、高い壷を勧めてきやしないかと警戒した。
「……何故ですか」
「何故でしょう」
「何故でしょう、って」
「強いていえば、河島さんの女装姿にきゅんときたというか」
「もう二十八になる男の女装姿に、きゅんと来たんですか」
「何故でしょう」
「知りませんよ」
「河島さんの女装が似合っていたとかは私も特に思いません。だけど何だか、こう、心の琴線にくるものがあって…」
「はぁ」
「一目ぼれって奴でしょうか」
「そんなこと訊かれても」
「こんな気持ちは初めてなんです」
 僕を見つめる岬さんはやはり無表情だが、瞳は潤み始めていた。
「私は今年で二十四になります。だけどこの歳になっても未だに男性とお付き合いした経験がありません。
 これまで声をかけてくれたり、仲良くなってくれる男性はいましたが、私は恋愛感情を抱きませんでした。
 恋愛面に関しては、私はひょっとしたら本当に無感動なのかもしれないと、恐怖すら覚えたこともあります
 そこで河島さんが現れたんです」
 ふと気づくと、岬さんは僕の手をいつのまにか握っていた。無表情の美人が僕を見つめる。
 そして臆面も無く言うのだ。
「私には河島さんが白馬に乗った王子様に見えるんです」
「…マジ?」
「マジで」
45 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/12(月) 21:04:09.38 ID:6jjqRGU0

 夢を見た。
 夢の中で僕は小さな小屋にひきこもっていた。体育座りをして結構長い間ひきこもり、そして外界との関与を
 一切遮断していた。
 ある日巨人が現れた。彼は僕の小屋の屋根を引き剥がすと、小屋ごと僕を持ち上げて、
『お兄さん、今度はあんたの番だよ』
 と大きな口で言う。
「番とは、なんの番ですか」
『あのね、おじさん世界を回す仕事してるんだけどね、今度はお兄さんの世界を回すことになったの。よろしくね』
「はあ」
 そこで目が覚めた。
46 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/12(月) 21:15:38.74 ID:6jjqRGU0
 回り始めている。僕の世界が。
 何かを変えたくて、通り魔を追い始めて、そしたら本当に、世界が回り始めた。
 出来すぎた話じゃないか? と自分でも思う。
 岬さんは僕に告白した。あんなに美人な岬さんが、二十八にもなって一度も女性と付き合った経験の無い、
 もちろん童貞の僕に、とても大真面目に告白してくれた。
 混乱した僕をおいて、岬さんは『お返事は今度聞かせてください』と言うと、引き止める間もなくファミレスを飛び出していった。
 取り残された僕は、頭がぐるぐる回るのを感じ、これは混乱と言うものだな、と時間をかけて気づいた。
 夢を見ているようなはっきりしない意識でアパートに帰って、気絶するみたいに布団にもぐりこんだら、件の夢を見た。
 そして今僕は、布団の上でぼうっとしている。
 携帯を見ると、メールが来ている。岬さんからだった。
『今日は失礼しました。混乱していたのです。
 ……自分でもどうかしていると思います。姉の敵の通り魔を追っていたのに、こんなことになるなんて
 だけど、自分でも抑えられないんです。
 来週の土曜日にまた会ってくれますか? そのときに、お返事をお聞かせください』
 べただけど、ほっぺたを抓ってみたりした。痛かった。
 この一週間後に僕と岬さんは付き合いだし、その数ヵ月後に始めてのセックスをし、さらにそれ以外もたくさんの思い出が
 できることになるのだけど、それを語ろうとは思わない。この物語はそういうものではないからだ。
 僕たちはこのとき気づくべきだった。
 僕の生活から通り魔は消え去った。姉を殺された岬さんでさえも、通り魔を忘れていた。
 僕たちはこのとき気づくべきだったのだ。事件を忘れ去って、危機感すら忘却する人間こそが
 恐ろしくて、最も馬鹿なのだと。
 僕と岬さんが付き合いだしてから半年後に、事件は起こった。
47 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/13(火) 06:06:34.51 ID:dzM8tnoo
スレタイに釣られたけど後悔はしていない
48 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/15(木) 19:00:03.05 ID:IuP4fhM0
 まずは森本さんの近況から語ろうと思う。
 岬さんと付き合い始めて少ししてから、森本さんはしつこく僕に「女の匂いがする」と問い詰めてきた。
 単に香水の匂いがするという意味だったらしいが、それにしても鼻がいい。また森本さんは女装趣味が高じて
 香水にも詳しいから敏感なのだろう。
 観念して彼女ができたと白状すると、森本さんは「裏切り者め!」と大いに騒ぎ、それから一週間部屋に閉じこもって、
 僕の部屋の前にオナニーティッシュを捨てるという嫌がらせを繰り返した。
 一週間後部屋から出てきた森本さんはやせこけていて、やつれた顔で僕の部屋にやってくると「河島くん、俺は悟ったよ」
 とまた奇妙な話を始めた。要約すると、「俺は女装趣味を極めるよ」とのことだった。たったそれだけの内容の話を
 森本さんは七時間かけて語るので参った。
 森本さんは元々とても頭のいい大学の出身だった。だけどどういうわけか、運が悪かったのか、それとも人間性を見抜かれたのか、
 就職活動で失敗して、そこで挫折し、定職につかずアルバイトをして今まで生活してきた。
 森本さんはプライドが高い。そんな彼が自分を保つために選んだのが女装趣味で、だというのに、
 岬さんが僕に興味を持ってくれた経緯は森本さんのプライドをずたずたにした。
 そんなわけで女装趣味を極めようとした森本さんは有言実行し、幾度も警察のお世話になっては、その度僕に
 迎えに来てもらうということを繰り返した。
 こんな状態がいつまでも続くのはよくないと森本さんもわかっていたが、彼曰くもうどうすることもできないのだという。
 そうやって追い詰められた森本さんは、とうとう怖い人たちに目をつけられることになった。
 その話は置いておいて、次に僕と岬さんの近況を語ろう。
49 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/15(木) 20:02:42.32 ID:IuP4fhM0
やばい…とある科学のレールガン超面白かった…
今まで「けっ。どうせラノベ原作なんて当りねぇよ!」って思ってたのに
試しに見てみたらいつの間にかどっぷり嵌ってた…
木山先生ェ…
木山先生が目の下の隈を気にしているところに抜群の保湿効果があると誑かして
俺の精液を顔面に塗りたくらせるSSスレを立てればよかった…
次は禁書を見よう
50 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/15(木) 20:25:06.61 ID:IuP4fhM0
「セロテープって使うとき、どんな気分ですか?」
 いつものファミレスにて二人でお茶をしているとき、岬さんは突然そんなことを言った。
「うまく貼り付けよう、って考えるね。折れちゃったりしたらめんどうだから」
 と僕が答えたら、「セロテープの気持ちは考えませんか?」と岬さんは返す。
「セロテープの気持ち?」
「まあセロテープじゃなくてもいいんですけど、例えば鋏とか、スティック糊とか。
 もしそれらに痛覚があったら、とか考えませんか?」
「考えたこと無いな。文房具に痛覚があるだなんて、ちょっと怖いし」
「セロテープはテープを切られるたび皮膚を破かれるような痛みに
 襲われているかもしれないし、鋏は紙を切るたびにアルミホイルを噛んだような悪寒が走るのかもしれないし、
 スティック糊は使われるたび頭蓋骨を鑢で削られるような痛みに襲われるのかもしれない
 でも文房具たちはそれをわかってもらえないんですよ。喋れないから」
「そういえば何の話なの?」
「河島さんが私のことを本当に考えていてくれているのか試したんです」
 岬さんは無表情でそう言った。ぞっとした。
「ごめん、考えていなかった」
「冗談ですよ」
 岬さんはそう言うが、代わらず無表情だ。不安そうな僕の顔を見て、「本当に冗談ですよ」と念を押したが、
 僕の背筋の寒気は取れない。
「君に嫌われたらって考えたら、怖くてしようがない」
「それは私も同じです」
 恥ずかしくなって僕がへらっと笑ったら、岬さんは顔面の筋肉全体を左上に持ち上げてひきつった顔をした。
 其の表情は岬さん的に照れたときの笑いだ。ビートたけし的なその仕草に最初は驚いたが、今は可愛く見える。
 自分で言っては何だが、僕たちは上手くやっている。ラブラブといって差し支えない。もうべちょべちょだ。
 僕たちはとても上手くやっている。
51 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/15(木) 23:20:15.87 ID:IuP4fhM0
 夜までデートをして、そろそろ帰ろうかとなったときのことだ。
 岬さんは帰ろうとしなかった。僕が「送るよ」といっても、無表情で僕を見つめる。
 何か言いたいことがあるようだった。
 じっと岬さんが言葉を発するのを待つことにした。
 しばらくして岬さんは「コンドームってどこで売っているんでしょうね」と言った。
 いくら童貞の僕でも、彼女が何を言わんとしているのかはすぐにわかった。
「薬局とか…」
「この時間薬局はやっていませんね」
「コンビニでも買えるらしいよ」
「そうなんですか? 便利ですねコンビニ」
「そうだね」
 岬さんはふい、と夜空を見上げた。
「買いに行きますか?」
 僕が「はい」と答えたのは数分してからのことだ。
52 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/15(木) 23:26:50.22 ID:IuP4fhM0
 岬さんはコンビニの外で待つといってきかなかったので、仕方なく僕一人でコンドームを買った。
 その行為は気恥ずかしさと、言っては何だが優越感があった。
 岬さんと一緒に僕のアパートに向かう帰路。
 僕は岬さんとのセックスを、明確に意識した。
 心臓が高鳴ってしようがなかったし、勃起が収まらなくてしようがなかった。何なら射精寸前だった。
 岬さんがそっと僕の手を握ってきた。それだけで少し出た気がした。
 多幸感に包まれていた。
 僕のアパートに行ったら、まずお風呂に入って、岬さんがお風呂に入っている間に布団を敷いて、僕も風呂に入って
 終わった後は、どうしよう。寝てしまうものなのかな? ぴロートークとかいうのはやっぱり必要だよな。
 そんでピロートークが終わった後はどうすればいいんだ?
 色々考えたが、そのどれも、実行することはなかった。
 アパートに帰り、僕の部屋で待っていたのは、煙草をふかしながら、僕のテレビゲームを勝手に遊んでいる
 数人の男たちと、ガムテープで全身ぐるぐる巻きにされ、浴槽に転がされていた森本さんの姿だった。
「おかえりなさい、遅かったですね」
 固まって動けない僕たちに、一人の男が振り返っていった。タンクトップから覗く、
 プロレスラーみたいに太い腕には、大きな刺青があった。
53 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 17:31:34.87 ID:jrkQECU0
 そっと扉を閉めようとしたら、一番奥にいたスキンヘッドの男が、「動くなよ」と言った。
 よく見たら銃を構えていて、僕と岬さんに突きつけていた。
 頭が真っ白になった。スキンヘッドの男の落ち着き払った顔が、それはモデルガンではないと
 教えていた。
「ゆっくり部屋に入れ。そこに座れ」
 スキンヘッドの男は部屋の中央を銃で指した。
 僕は動けなかった。岬さんだけでも逃がしたいと考え、その隙を伺っていた。
 そうしているうち男が発砲した。発砲したのだと気づいたのは数秒後のことだが、乾いた破裂音が響き、
 床に焦げたような穴があいた。
「部屋に入れ」
 岬さんが僕の腕を掴んだ。彼女の握力には、「言う通りにしよう」という意思が込められていた。
 足が痺れて上手く動かず、僕たちが部屋の中央にたどり着くまで少し時間がかかった。
 男たちは僕らを取り囲むように立ち上がると、「まあ座ってください」と刺青の男は言った。言われたとおり、するしかない。
「僕たちに何の用ですか」
 なるべく冷静をつとめて発したが、声は裏返り、震えていた。
「すみませんね、怖がらせてしまって。床にも穴あけちゃったし」
 刺青の男はそう言いながら僕の目の前に座った。言葉は丁寧だが、それが逆に恐怖を煽った。
 彼は妙な話を始めた。「想像して欲しいんですけど」場違いなことに、僕はビートルズのイマジンを思い出していた。
54 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 17:33:50.08 ID:jrkQECU0
「蟷螂さんがさ、天敵の虫がいたとしますよね。例えば天道虫とか、弱くて小さい虫。
 でも天道虫さんは隠れて暮らし、蟷螂の脅威から逃げている。
 ところで蟷螂さんの大好物が、コーラフロートだとしますよね。
 ある日突然、コーラフロートを売り歩くゴキブリ野郎が、天道虫さんが住む近所に
 現れたらさ、どうなっちゃうと思いますか。
 天道虫さんにはいい迷惑ですよね。君たちがやっていることって、そういうことなんですよ」
 子供に諭すような口調で、刺青の男は僕たちにそんな話をする。
「何の話ですか」
「通り魔を捕まえようとしていると訊きました」
 刺青の男が、言いながら煙草に火をつけた。よく見たら、部屋中に煙草の吸殻が捨てられていて、
 傍には床に火を押し付けて消した跡もあった。
「風呂場で転がっている男は、何度も警察に世話になってますね。そのおかげで、ここらへんにおまわりさんが
 注目し始めちゃってね。それで僕たちは、迷惑しているんですよ」
 全てを理解して僕はぞっとした。この人たちは、悪い人たちだ。僕らが知らないような世界で生きていて、
 警察に怯えて暮らしているんだ。そして僕らに苛立っている。
 でもと声をあげたのは岬さんだ。「でも、通り魔事件が発生した時点で、警察はこの近辺に注目していますよね。
 私たちのせいではないと思います。それに、もう私たちは通り魔を捕まえようとはしていません。
 女装は森本さんの趣味です」
 あまりにも流暢に岬さんは反論をまくし立てた。落ち着いた声だった。いや、そう聞こえるだけで、怖がっているんだ。
 僕の腕を掴む岬さんの握力が強まった。
 刺青の男は「うんまぁそうなんだけどね」と岬さんをいさめるように手を振った。
「通り魔野郎が騒いだときも、僕たちはすごく迷惑したんですよ。でも事件ってのは風化していく。
 それまで身を潜めていたんですよ。だというのに、森本さん? はしつこく不審行動をしてね。
 いい加減僕らのお父さんも怒ってしまったというわけです」
「私たちを[ピーーー]んですか」
 刺青の男は、ふっと鼻で笑った。
「まさか。そんなことしませんよ。ただお願いがあるんです」
「お願い……」
 嫌な響きだった。銃で脅せば僕らを[ピーーー]ことも岬さんを犯すことも簡単なのに、お願い。
「あなたたちに、通り魔野郎を殺して欲しいんですよ」
55 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 17:36:45.09 ID:jrkQECU0
「そんなことが上手くいくと思うんですか」
 と発言したのは僕だ。刺青男は平然と「行きますよ」と答える。
 行くわけがない。こんなことが。でたらめだ。どんな手順をとっても、警察は絶対にこの人たちが言うところの
 お父さんまで突き止める。
「あなたたちは逮捕される覚悟なんですか」
 そう問えば、「そうですよ。だからさっき発砲したんです」
「あなたたちが逮捕されれば、事件は簡単に明るみに出る」
「出ませんよ」刺青男は僕を睨んだ。「どうして銃声がしたっていうのに、おまわりさんは駆けつけないんですかね」
「それは…」
「おまわりさんも結局人間ですよ。殺されたくないんですよ。きっと奴らは、誰かが殺されて、銃の弾が無くなる頃に
 ようやく駆けつけてくる。
 ちなみに僕らとお父さんに関係する経歴も全部抹消済みです。それ以上深く探れば、確実におまわりさんの何人かは
 死んじゃうようになっている。それに気づいた時点で奴ら何も調べなくなります。
 僕らはお友達です。姉を殺された岬さんを不憫に思い、屈強な男と彼氏が集まり、銃を用意して、通り魔を[ピーーー]。
 そういう事件になります」
 男はごそごそと懐をまさぐると、銃を取り出した。
 それを岬さんの前に落とすと、「それで殺してください。居場所は携帯からナビするんで」と付け足す。
 岬さんに銃を渡しても何もできないと考えているのか、余裕の態度だった。それに岬さんが外に出れば、事態は発覚するだろう……。
 そこまで考えてはっとした。
 恐る恐るナイフに手を伸ばす岬さんに、刺青男は言った。
「おまわりさんに通報するとか、それを僕らに向けるとか、妙なことは考えないでくださいね」
 そのタイミングで、僕はこめかみに冷たく硬いものを感じた。
 銃を突きつけられていた。
「彼氏さんを人質にしていますから」
 思ったとおりの事態だった。
 岬さんの顔が、みるみる青ざめていくのを見た。
56 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 17:59:31.75 ID:jrkQECU0
1ですが、スレ違いのもん投下して申し訳ない
もうちょっとで終わるんで、そしたらまたカナちゃんの可愛いSS
掻くからもう少しお付き合いください
57 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 18:37:48.17 ID:jrkQECU0
 刺青の男はさらに、岬さんに携帯電話と、ぺら紙に書いた簡単な地図を渡した。
「通話はとぎることのないように気をつけてください。一度でも切れれば彼氏さんは殺します」
「そんなことしていいんですか。自分たちの罪を軽くしたいから、わたしにこんなことをさせているんでしょう」
 と岬さんは銃を重そうに持ちながら言う。
「ええまあそうですけど、それは運が良いときですね。最悪、僕が彼氏さんを[ピーーー]よう、段取りしてます。
 銃を持った興奮と諍いで、殺してしまったと。この場合痴情のもつれになりますね。僕が岬さんを好きだったと」
「絶対にそんな風に上手くいかない」
「行きますよ」
 刺青の男は事も無げに言い、うっすら微笑んだ。
 男は岬さんに銃の扱い方を教え始め、僕はその様を横目で見た。
 岬さんは無表情ではあるが、青ざめて、震えていた。真剣に銃の扱い方を聞き、彼女は本気で通り魔を殺そうとしている
 のだと気づいた。
 僕を守るために。
「あの」考えるよりも早く僕は発言していた。「僕も彼女についていっていいですか」
 岬さんが不安げな顔で僕を見た。刺青の男はくすっと笑うと、「ごめんなさい、それはできません。あなたは人質ですから」
 と言う。
 それでも僕は食い下がる。
「警察には絶対行かない。通り魔を二人で殺してくる」
「嘘ですね。風呂場に転がってる森本さんに人質の価値はないですから。あなたたち二人を部屋から出してしまっては、
 確実にまずいですね」
58 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 18:38:38.89 ID:jrkQECU0
「どうせもう戻れない。僕たちが仮に警察のもとまで逃げて、事件が発覚しても、
 あなたたちはどんな手段を使ってでも僕たちを殺そうとするでしょう。
 損得を考えずに、感情のままそうする。それはあなたたちは死ぬほど頭が悪いからだ。知ってるよ」
 僕の言葉に男の眉根がぴくりと動いた。
 僕は構わず続ける。
「僕たちはもう戻れない。だったら、彼女だけにそんなことをさせてくない。お願いです。
 それに、森本さんは僕にとっては結構、人質の価値がありますよ」
 言い終えたかいい終えないぐらいの瞬間、視界ががつんとゆれた。
 こめかみがやけどしたみたいに熱くなって、指で触れると生ぬるい液体がついた。
 銃で殴られたのだ。血が出ている。
「あなたたちが警察にいかないと僕たちが信じるにはどうすればいいですか」
 刺青の男はそんなことを言った。
「どうにもこうにも信じてください」
 男は懐をまさぐると、ナイフを取り出した。それを、僕の目の前に置く。
 彼が何を言わんとしているのかはすぐにわかった。
「切り落としてください」
「……どこをですか」
「やめて」
 岬さんが僕の肩を強く掴んだ。
 僕はその手を払う。僕らのやりとりを見て、刺青の男は楽しそうにけらけら笑った。
「指っていうのは、切り落とすのにかなり力がいるんですよね。ナイフじゃまず難しいし、出血量も多い。
 それも面白いですが、これから人を殺しにいくのに、指がなければ難儀ですよね」
「どこを切り落とせばいいですか」
「やめてよ!」
 岬さんが絶叫した。初めてきく感情的な声だった。
 刺青の男は薄く笑うと、「耳を切り落としてください」と言った。
59 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 19:56:08.04 ID:jrkQECU0
 岬さんは何度も僕を止めた。
「そんなことしても、部屋の外に出してくれるかわからないんだよ」
 岬さんは泣いていた。
 本当にその通りだけど、僕はゆっくり、右耳にナイフを当てた。冷たい鉄の感触がちくりとして、背筋が凍った。
 耳は軟骨で形成されているから、ぶり、とかごり、とかいう柔らかい感触が気色悪くて、それが嫌だった。
 自分の耳を目の前で見るという経験は新鮮だった。驚くことに血はほとんど出なかった。ただじんじんとした痛みが
 熱と共にどんどん大きくなって、酷い頭痛がした。
「これでいいですか」
 僕は自分の耳を刺青男に突き出した。そんな意図はなかったのだけど、彼は僕の耳を受け取ると、
「氷ってあります? あとビニール袋」と言う。
 一人の男が、冷蔵庫を勝手にあさり、ビニール袋に氷を詰めて持ってきた。
 その中に僕の耳が入れられる。
「これで一時間ぐらいならもちますよ。一時間以内に通り魔野郎を殺してきてください。その後病院につれていって、
 元通りにしてあげます」
 そのままじゃ目立つので、深く被れる帽子を被ってでてください、と刺青の男は続けた。
60 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 20:18:22.61 ID:jrkQECU0
 耳にティッシュを当てて帽子を被ると傷口が押さえられ、痛みが少し緩和した。
 岬さんは携帯電話を通話し続けなければいけない。電話の内容は僕には聞こえないが、移動しろ、と指示がされたのだろう。
 岬さんは僕の腕を引くと、歩き出した。僕は何気なく夜空を見上げる。星が綺麗に見えた。それに、風が冷たい。
 歩き始めて少しして、岬さんが僕の肩を叩いた。見ると、電話で通話しながら、道の先をくい、くい、と指差した。
 その先は駅に続いている。そして駅には、交番がある。
 僕は首を振った。
 岬さんは眉を潜めて、どうして? と口を動かした。
 僕は何も言わないで、ただ彼女を見つめた。
 岬さんは困惑して僕を見たが、次第に恐怖するような顔つきになった。とても表情が豊かだと、僕は妙に冷静に思った。
 殺そう、と僕は口を動かした。通り魔を殺そう。
 岬さんはまた、顔を白くした。
 僕は彼女から携帯電話を取り上げて、無事なほうの耳にあてた。
「すみません。僕が変わります」
 電話の向こうは、刺青男のようだった。
『岬さんを逃がそうとか考えてませんよね』
「二人で殺しにいきます」
『それじゃあ一分ごとに二人で電話を変わってください。ちょっとでも通話が途切れたら森本さんを殺しますから。
 まあこの脅しはあまり意味ないと思いますけど』
「そんなことはないですよ」
61 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 20:20:44.68 ID:jrkQECU0
 会話していると、電話の向こうには聞こえないような小さな声で、岬さんが呟いた。
「どうして」
 だからもう、さっき言った通りだよ。
 森本さんを殺したくないってこともあるよ。半分はそう。耳を取り戻したいとも思う。
 でもそれだけじゃない。
 もう僕たちの日常は終わってしまった。非日常の形に世界は回り始めた。
 もう終わってしまったんだ。
 僕は岬さんを睨んだ。
 あまり見苦しくあがくなよ。どうせこんなもんだ。
62 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 20:58:18.37 ID:jrkQECU0
 携帯電話で指示された先には、一軒のアパートがあった。ごく普通の、強いて言えば古ぼけたアパート。
 夜空に屹立するその家屋は寝静まっているようだったが、二階の部屋に、電気が点いているのが見えた。
『そこにいますよ。通り魔野郎』
「どうやって中に入ればいいんですか」
『どうとでも。岬さんが銃持ってますよね。声をかけて、出てきたら、それを突きつけたらいい。
 声をかけるのは岬さんにやらせた方がいいですね。一分経ったので、変わってください』
 僕は岬さんに携帯電話を向けた。岬さんはもう、僕の顔を見ようともしない。
 そして携帯電話を受け取ろうともしなかった。
 まずいなと思った瞬間、岬さんは僕に銃を突きつけた。
 僕はとりあえず、通話を再開した。
『どうしました』
「銃を突きつけられました」
「逃げようよ」と岬さんは言った。鬼気迫った声色だった。
「ここで逃げれば、きっとまた元に戻れるよ」
「戻らないよ。終わったんだ。どうせ殺される。ねぇ、殺しに行こうよ」
「嫌……」
63 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 20:59:06.20 ID:jrkQECU0
 電話口で刺青の男が脅すように言った。
『岬さんを逃がせば森本さん殺しますよ』
 僕はちょっと考えた。ちょっとのつもりだったんだけど、時間にして数分ぐらい、僕は黙ってしまっていたみたいだ。
 刺青の男が電話口で怒鳴る声が聞こえる。岬さんが僕に銃を突きつけている。
 ほらもう日常は壊れている。
 僕は何事か怒鳴る男に言った。
「じゃあもう、森本さん殺していいですよ」
 次いで、岬さんに手を伸ばす。岬さんはびくりと肩を震わせてあとじさった。
「岬さん、銃を貸して。僕が殺しにいくから。岬さんは逃げて良いよ」
 岬さんは目を見開いて僕を驚愕の表情で見つめた。がたがたと震える。じっと待った。電話口の向こうで『わかった殺してやるよ』
 と響く怒鳴り声を、遠い意識で聞いた。
 しばらくして岬さんは僕に銃を渡すと、走り出し、逃げた。
 僕はその背中をぼんやり眺めながら、銃の重みを手に感じた。
 電話の向こうで声が聞こえる。
『女逃げたんだな? 逃がしたんだろう? やっぱりな。じゃあもういいよお前も逃げて。好きにしろ。
 だけど、一生怯えて暮らすのを覚悟しろや』
「いや、殺しにいきますよ」
『はあ?』
「通り魔は僕が殺しにいくんで」
『…………』
「どうやって銃使うんですか」
64 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 21:22:46.07 ID:jrkQECU0
『やめろ。何でお前が[ピーーー]んだ。女が殺さなきゃ意味ねぇんだよ』
「安全装置を立てればいいんですか。こうかな」
『やめろって……』
 もう電話をしている意味はないようだったから、僕は通話を切った。携帯電話は投げ捨てる。
 アパートの入り口を探すのに意外と苦労した。周囲をぐるぐる回って、ようやく小さな門を見つける。
 そこから入ると目の前に鉄階段があった。上っていき、明かりのついた部屋を目指す。
 こんな時間に出てくれるかなと思って、少し不安だったが、ノックをした。
 するとやっぱり、出てこない。僕は銃をドアノブに向けて、試しに引き金を引いてみた。
 発砲すると結構すごい衝撃が手に返ってきたので驚いた。乾いた発砲音とともに、火花が散るのを見た。
 ドアノブは銃弾によって形を変形させたが、開くことはなかった。
 ドアを蹴ってみる。都合よく蹴破れないかと思ったのだが、さすがにそんなことはない。
 ドアの向こうから声が聞こえてきた。
「誰だよ。何してるんだよ」
「あの開けてくれますか」
「……お前何言ってんだよ。さっき聞こえたのって、ひょっとして銃声か。お前銃持ってるのか」
「通り魔さんのお宅ですよね。あなた人殺しましたよね」
 息を呑む音がはっきり聞こえた。
「俺を殺しにきたのか」
65 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 21:23:28.00 ID:jrkQECU0
「そうです」
「お前だれだよ!」
 何発か撃って、ようやくドアは開いた。
 部屋からは据えたにおいがした。部屋の奥で、メガネをかけて陰気そうな男が、青ざめた顔で、
 恐怖した顔で僕を見た。テレビにはゲームの画面が映っている。二人殺した男としては、惨めな奴だった。
 僕は銃を彼に向けた。何発も立て続けに撃ったせいで、手は痺れていた。
「やめろよ」
「あ〜なんか、今気づいたんですけどいいですか。どうせお互いもう終わりですし」
「何言ってるんだよ。やめろ、撃たないでくれ」
「僕、ずっとあなたに会いたかったみたいです。今気づきました。あなた変態でしょう」
「やめろって!」
「まあ聞かせてください。人を[ピーーー]と興奮とかするんですか? 答えないと撃ちますよ」
 そう付け加えると男はかすれた声で「ああ、興奮するよ」と言った。
「とんでもない変態ですね」
「ああ、変態だよ。なぁ、撃つのか? 答えたから撃たないよな?」
「僕も変態なんですよ。もうすんごい変態。お互い損ですよね。たまたまこんな風に生まれた」
 男の顔色が絶望を映した。もう何を言っても僕には伝わらないと気づいたのだろう。
 僕は言う。
「僕、ずっとあなたに会いたかったみたいです」
 引き金を引く指は妙に重かった。
66 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 21:28:33.85 ID:jrkQECU0
やっと終わった。スレ違い申し訳ない。
これから時間をかけてみなみけSSスレに戻します。
どうしてこんなのを突然書き始めたのか説明させていただきますと、
単なる習作のつもりだったんですよ。
でもまさかこんなに長くなるとは思わなかった、って感じです。
いや〜申し訳ない。
67 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/17(土) 22:06:05.69 ID:jrkQECU0
 夏奈ちゃんが「いや〜お菓子食べすぎちゃって最近おなかの肉がさぁ」という話をしていたので
 僕はいてもたってもいられなくなり「脂肪吸引してあげゆ!」と夏奈ちゃんのお腹に吸い付いた
 夏奈ちゃんのお腹は柔らかくって、甘い匂いがして、少ししょっぱくて、僕は一瞬夢を見た。
 それは幸せな夢だった。夏奈ちゃんが僕の隣にいて、僕は夏奈ちゃんに愛をささやいている。
 夏奈ちゃんはくすくす笑いながら僕の話を聞いていて、たまにからかうように「そんなに私のこと好き?」と聞いてくる。
 僕は「人間はどこの星に住んでいる?」と訊いた。
 夏奈ちゃんは不思議そうな顔をして、「地球だろ? 何でそんな当たり前のこと聞くんだ?」と首をかしげる。
 僕は「つまりそういうことだよ」と答えたら、夏奈ちゃんはにへへってはにかみ、僕のほっぺにちゅーした。
 ああ良い夢だったとそろそろ目を開けたのだけど、何故か真っ暗だ。
 なんてことは無い眼球が抉られただけだった。
68 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 22:07:33.78 ID:jrkQECU0
あげてしまった
69 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 22:13:47.04 ID:jrkQECU0
 夏奈ちゃんが「弁当忘れた〜」と騒いでいた。
 それならと「僕のあげるよ」と差し出したら、心底気味悪そうな顔をして「いらねーよ…」と断られてしまった。
 あまりの辛辣な態度に僕は思わず泣いてしまった。
 めそめそ泣いているとさすがに不憫だと思ったのか夏奈ちゃんは僕の肩を叩き「ほら、そういうことじゃなく、
 さすがに人の弁当食べるのは悪いしさぁ」と慰めてくれた。
 その言葉でピン、とひらめいた。
 まず僕がお弁当を一口。存分に味わい咀嚼する。
 それを夏奈ちゃんに口移し。
 これで万事解決だ。
 夏奈ちゃんが飲み込みやすいようにもぐもぐ一生懸命咀嚼していたら右頬を思い切り殴られて
 舌の三分の二を噛み千切ってしまった。
70 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/17(土) 22:52:57.33 ID:jrkQECU0
 夏奈ちゃんの健康的で少し日焼けした手足を存分に嘗め回すことができたらそれは何と
 幸せなことだろう、とふと思った。
 我慢できなくなり本人に頼んでみたら「氏ね」とばっさり切り捨てられた。
 でもどうしても諦めきれなくて、そうだ消しゴムを落としたふりして夏奈ちゃんの足にむしゃぶりつけば
 いいんじゃないかと考えた
 そして舌が濡れていたらきっと気づかれるだろうから、
 すーはー呼吸を繰り返して舌を完璧に乾燥させたら
 きっと夏奈ちゃんに気づかれること無く、おみ足を堪能できるに違いない
 さっそく実行したら舌を踏みつけられた
 夏奈ちゃんの上履きの裏を舐めることができて幸せだった。
71 : ◆jhpJcpiffs [sage]:2010/04/18(日) 01:29:55.31 ID:gb5x3tMo
変態編も夏奈ちゃん妄想ダイアリーもステキ!
72 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/18(日) 04:52:42.23 ID:hlhIn52o
何故か一日一回は覗いてしまうスレ
73 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/18(日) 10:15:49.75 ID:iDgZz.k0
>>71
変態編は正直読まないのが吉

>>72
毎日投下するのでこれからもよろしくどうぞ!
74 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/18(日) 18:53:18.91 ID:iDgZz.k0
 その日、廊下を歩いていたら画鋲を踏んでしまい、痛い思いをした。
 廊下の真ん中でうずくまってめそめそ泣いていたら、お尻を蹴られた
 一体何のご褒美だと振り返れば、同じクラスの藤岡くんだった
 彼は僕を怖い目で睨んでおり、被害者は僕だというのについ萎縮してしまう

「君は最近南にちょっかいを出しているね」

「はい、まあ……」

 藤岡くんは僕の胸倉を掴むと引き上げ、ドスを利かせた声で言った。

「南を悲しませたら、僕が許さない」

 藤岡くんの整った顔立ちと、凛々しすぎる瞳に射抜かれて、
 その瞬間激しい興奮に襲われ、思わず射精してしまった
 以降藤岡くんは僕に話しかけてきてくれない。
75 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/18(日) 19:05:20.74 ID:iDgZz.k0
 休み時間になり、いつものように僕は夏奈ちゃんのところへ行って楽しくお喋りをしようと思ったのだけど、
 夏奈ちゃんの様子が何かおかしかった。
 青ざめた顔で腹を押さえ、呼吸が少し荒い。

「どうしたの?」

 声をかけたら夏奈ちゃん露骨に嫌な顔で舌打ちをした
 それでもしつこくwhat’s the matter with you? と尋ねていたら

「腹が痛いんだよ…」

 と卑猥な答え
 苦しむ夏奈ちゃんを見ていたら僕まで苦しくなって
 何とか力になりたいと、ラマーズ法という呼吸法が良いと教えたら
 藁にも縋りたいのか夏奈ちゃん必死になってラマーズ法を繰り返し始めた
 翌日夏奈ちゃんは学校を休んだ
76 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/18(日) 20:46:07.85 ID:iDgZz.k0
 学校からの帰り道、どこからか石が転がってきた
 何の気は無しにそれをこつんと蹴ったら、側溝の隙間に落ちてしまった
 そのとき後ろから声がしたので驚いた。

「あ」

 振り返れば、小学生が佇んでいる。

「お前、私の石を…」

「ああ、君が蹴った石だったの。それはごめん。なくしちゃったよ」

 素直に謝ったのだが、小学生石が落ちた側溝を指差して

「拾うんだ」

 などとふざけたことを言う。
 子供に舐められてはいけないと剥きになって言い返したら口げんかに発展し、最終的に殴り合いにまで展開した。
 ぎりぎり僕が勝利を収め、相手の小学生は泣かしてやることができたが、
 泣きながら側溝に手を突っ込む小学生の後姿があまりにもエモーショナルで不憫で
 一緒に夜遅くまで石を探してやった
 結果的に親友と書いてダチと読むような関係になり、最後は硬く握手をして別れた。
 その日から帰り道にその小学生が待ち構えるようになってさすがに引いた。
77 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/20(火) 18:48:10.95 ID:ggIwmoI0
途中で放り出して申し訳ないけどこのスレはHTML化依頼を出します
少なからず期待してくれていた方へ

『木山先生「君はどうしようもない変態だな」』
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1271511684/l50

『ジュン「水銀燈を可愛がりたい」』
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1271380812/l50

上記のスレでSSを絶賛投下しています。興味があればこちらを覗いてみてくれたら幸いです

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荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
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