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ダンテ「学園都市か」【MISSION 03】 - 製作速報VIP(クリエイター) 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 00:29:41.92 ID:pqf.Puk0
「デビルメイクライ」シリーズと「とある魔術の禁書目録」のクロスです。

○今までの大まかな流れ

本編 対魔帝編 

外伝 対アリウス&ロリルシア編

上条覚醒編

↓←今ここ

上条修業編(予定)


本編については、ダンテ「学園都市か」で検索すればまとめてくださったサイトが出てきます。

○過去スレ

一スレ目
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1267417603/

二スレ目
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1269069020/


○有志の方がうpして下さった過去ログ(dat)
ttp://www1.axfc.net/uploader/Sc/so/88288.zip
pass:dmc


※DMC勢はゲーム内の強さよりも設定上の強さを参考にしたため絶賛パワーインフレ中。
それに伴い禁書キャラの一部もハイパー状態です。

※また、妄想オリ設定が結構入ります。
ダンテ・バージル・ネロの生い立ちやキャラ達の力関係、世界観、幻想殺し等『能力』の正体など。
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】

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もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。

いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713279251/

【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713277692/

こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713183168/

【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713091115/

アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713089503/

エルヴィン「ボーナスを支給する!」 @ 2024/04/14(日) 11:41:07.59 ID:o/ZidldvO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713062467/

さくらみこ「インターネッツのピクルス百科辞典で」大空スバル「ピクシブだろ」 @ 2024/04/13(土) 20:47:58.38 ID:5L1jDbEvo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713008877/

暇人の集い @ 2024/04/12(金) 14:35:10.76 ID:lRf80QOL0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1712900110/

2 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 00:33:27.09 ID:XAE8aEQo


∴<このスレはムンドゥスに監視されていました
3 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/20(火) 00:35:47.22 ID:5.oblrIo


毎日の楽しみだぜ
4 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/20(火) 00:41:38.40 ID:NN9oj7g0
>>1乙毎日このスレ見に来るのが最近の日課だ
5 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 00:49:02.36 ID:pqf.Puk0
―――

常盤台女子寮。

御坂「あが……ぐぐぐ…」
御坂は机の上に広げている冊子と睨めっこをしていた。
荷造りはすでに終わり、任務要項に目を通していた。

辞書程の厚さがある。
とてもじゃないが一晩で暗記できるレベルではない。
前頁に目を通しきれるかどうかも危うい。

しかもその内容。様々な事態への備えなのだろうが、余りにも多岐にわたりすぎている。

規則や報告の仕方等事務的な物から、悪魔との戦闘方法、
奇襲された場合の上条の保護の仕方等のボディガード術、
負傷した場合の応急手当の仕方、
現地で買える食材で作る病み上がりの上条の為のレシピ、
様々な日用品の現地での呼称などなど。

御坂「…むぐ…」
重要そうな物だけを選別して暗記していくが、それでも頭がパンクしそうだ。
だが御坂はここで弱音を吐くつもりは無い。

御坂は上条の保護役なのだ。
上条はこれから困難に立ち向かおうとしている。
この程度で御坂が負けてしまう訳には行かないのだ。
6 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/20(火) 00:50:20.97 ID:pqf.Puk0
黒子「…」
自分の机に向かい、ジャッジメントの書類を書いていた黒子が心配そうに御坂を見る。

黒子「お姉さま、少し休まれては?」

御坂「……むむむ…」

黒子「おっっっねえっさま!!!!」

御坂「……へ?」

黒子「少し息を抜かなければ逆に非効率ですの!」

御坂「……そ、そうね…15分くらい休憩するわ」

御坂がふらつきながら椅子から立ち、そのままベッドに進んでうつ伏せに倒れこむ。

御坂「もがー」

黒子がくるりと体を回し、椅子に前後逆の姿勢で座り、背もたれの部分に両腕を乗せる。

黒子「無理はいけませんの!行く前から疲労を溜めてどうするんですの!?」

御坂「うーん……そうだよねぇ」
7 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/20(火) 00:52:56.77 ID:pqf.Puk0
上条と同じく、御坂も例のダミーの計画に参加するという事でしばらく学校・寮から離れる事になった。
もちろん関係者である黒子は真実を知っている。

黒子「全く……体調だけは崩してはいけませんの!!向こうでは何が起こるかわかりませんのよ!!」

御坂「……はいはい……ごもっともで…」

黒子「ですから…」

御坂「?」

黒子「わたくしも連れて行ってくださいましぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!」
黒子がテレポートしてうつ伏せになっている御坂の背中へ飛び掛った。

御坂「うげぇ!!!!ちょっと!!!」

黒子「お姉さまと離れるなんて!!!黒子はぁ!!!黒子はぁあああああ!!!!ほひょぉぉぉぉぉおお!!!!」

御坂「だぁああらぁあああ!!!!」
御坂の体が放電する。

黒子「うぎぃぃぃぃぃ!!!!久しぶりですのおおおおお!!!!」
8 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/20(火) 00:56:26.82 ID:pqf.Puk0
数分後。

毛先が少し縮れている黒子が御坂の方を向きながら自分のベッドに腰掛けていた。
御坂はさっきと同じ姿勢で寝そべっていた。

黒子「…離れるどころかあの類人猿と一緒に行くなんて……これは正に試練ですの……」

御坂「えへへへへ…そう…一緒に行くの。あいつと一緒一緒♪」
寝そべり、顔を黒子のほうに向けたまま御坂はニヤニヤする。

黒子「全く……お姉さま。一つ言わせて頂きますの」

御坂「なぁに?」

黒子「あの殿方には修道服を着た方がいますの。お姉さまは気付いておられないようですが、あの関係はどう見ても―――」

御坂「うん。知ってる」

黒子「」

御坂「いいの」

黒子「お、お姉さま…?」

御坂「そりゃ悔しいけど…でもあいつが笑ってくれるなら良いかなって」

黒子「…んまぁ……」
9 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 01:00:39.81 ID:eECmtwAO
んまぁ… このSSの中ではみんないい奴だな。
10 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/20(火) 01:06:42.25 ID:pqf.Puk0
御坂「それに……確かにあたしはあいつにそういう風に見られてないけど…」

御坂「でも大事に思ってくれてる」

御坂「あの子には負けるけど、でもあたしの事も凄く大事にしてくれてる」

黒子「お、お姉さま……」

御坂「大満足ってわけじゃないけど、それでも充分嬉しいかなって」

御坂「あいつが笑ってくれて、それでその顔が見れるなら何だって良いの」

黒子「なんと……まあ……」

御坂は四六時中上条の事を強く想い続けるあまりある種の境地に達してしまったのだ。
正に『聖女』だ。少なくとも黒子の目にはそう映った。

黒子「素晴らしい……美しいですの…お姉さまが今まで以上に輝いて見えますの…後光が差しておりますの……!!!」
黒子がプルプルと震え始める。

御坂「……でも…諦めたわけじゃないから」

黒子「……ん、んん?」

御坂「隙があったら押しまくるわよ。残念ながら今のところ隙は無いみたいだけど」

御坂「でも一つくらいあるでしょ?何年でも何十年でも待つわよ」

御坂「最後に一緒の墓に入ったほうが勝ちなんだから」
御坂が狡賢そうな笑みを浮かべた。

黒子「……」
黒子の見解は外れていた。
どうやら『聖女』ではなく、メーターが振り切れてぶっ飛んでしまったようだった。

黒子は思った。
どう足掻いても御坂には勝てないと。

―――
11 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 01:11:53.57 ID:mW4zAgMo
ハァハァ
12 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/20(火) 01:14:10.93 ID:pqf.Puk0
―――

上条宅。

上条「ふぅ〜」
風呂から上がり、歯磨きを終えたところだ。

タオルを肩にかけ、バスルームのドアを開けリビングにでる。

白いパジャマを着てもう寝る準備が出来ているインデックスがベッドに寄りかかりながらテレビを見ていた。
芸人が出ているのであろう。賑やかなざわめきがテレビから発せられていた。

禁書「おかえりなんだよ!ちゃんと暖まったかな?」

上条「おう、ほかほかで上条さんは幸せですよ!」

この時期、長時間夜風に吹かれるのはさすがに身に応える。

そのおかげ(?)で家に着いた時、
繋いでいた手がかじかんで中々外れなかったというささやかな事件があった。

上条「さて…」
玄関に向かい、やや大きめのバッグを開ける。
忘れ物が無いかどうか荷物の再点検だ。

上条「…おし……全部あるな」

別に忘れてもトリッシュがいればすぐ戻れるのでどうにかなるだろうが、
無償でお世話になるのだ。できるだけ迷惑をかけたくない。

病院にいた時にステイルから聞いたが、通常のダンテの依頼料は、
僅か数分で終わるような簡単な仕事でも日本円に換算すると最低でも数十万単位らしい。

そのダンテを数週間拘束するなどとんでもない額になる。
13 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/20(火) 01:21:05.48 ID:pqf.Puk0
イギリスもネロをアドバイザーとして雇うのに、
学園都市製の最新鋭の戦闘機が数機買える程の金を積んだという。

あのスパーダの一族だ。それでも安いだろう。

ダンテやネロ達は別に金にはこだわり無く、気に入ったらタダでも依頼を受ける。

というかネロは寄付したりフォルトゥナ復興の為に使い、ダンテの場合はレディ等に持っていかれる為、
両者の手元にはほとんど残らない。


だがそこは人間側の、依頼する側の体裁というものだ。
人間にとっての額の多さはその契約の信頼度・重要度を表すものだ。

ましてやイギリスの場合は国家としてのプライドがある。


そんな話を聞いて上条は鳥肌が立ったが、幸いにも今回は報酬無しでやってくれるらしい。
どうやらインデックスのおかげらしいが彼女はあまり詳しくは話してくれなかった。

そんな事で、貧乏・質素倹約が板についている上条は、ダンテとトリッシュにとにかく迷惑をかけないようにと心に決めていた。
それこそご飯仕度や掃除など何でもやるつもりだ。

そして上条のせいで同行するハメになった御坂にもだ。
(御坂は嬉々として行くが)

上条「よし…」
上条は立ち上がり、玄関から離れると机を挟んでインデックスの向かいに座った。
14 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/20(火) 01:26:37.87 ID:pqf.Puk0
上条「ふひ〜、あちいあちい…お?」
シャツをパタパタと捲り扇ぎながら携帯を開く。
御坂からメールが来ていた。

禁書「とうま〜湯冷めしちゃうんだよ〜」
インデックスがテレビの方を向きながら気の抜けた声で言う。

顔を見なくても分かる。眠いのだろう。昨日から色々あって疲れが溜まっているはずだ。

上条「へいへい〜」
御坂からのメールを見ながら軽い返事をする。

明日からの事についての業務的な内容だったが、
その下の方には、可愛らしい絵文字が使われたまるで旅行に行くようなテンションの文があった。

上条「(あいつ……俺の為にこんなに明るく振舞って……うう…)」
御坂は本当に楽しみなのだが、当然の如く上条は勘違いして受け取った。

上条「ん?」
ふと気付くと、小さな寝息が聞こえていた。

顔をあげると、インデックスが目を瞑っていた。頭がゆらゆらと揺れている。

上条「そうだな……もう寝るか」
御坂に手早く返信し、目覚めのアラームを設定して携帯を閉じて机の上に置いた。

目覚まし時計もあるのだが、明日は絶対に寝坊は出来ない。
上条もそれなりに疲れが溜まっているので、ほっとくと昼まで寝てしまいそうなのだ。
15 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/20(火) 01:32:52.18 ID:pqf.Puk0
上条「よっこらせっ……とな」
上条は静かに立ち上がり、テレビの前まで行きくと屈んで電源を切った。

その時だった。

上条「…ッ」

消えたテレビに映った自分の顔。

瞳が赤く輝いていた。
その光はすぐに消えたが、上条はそのままの姿勢で数秒間固まっていた。

上条「……」
インデックスの方を向き、彼女を抱き上げようと膝の裏と背中に手を回した。

上条「……よっと」
立ち上がり持ち上げる。
すんなりと特に重みも無く。

上条「……」
インデックスが軽いのではない。

この感覚は前にも経験済みだ。


上条の腕力が異常に増しているのだ。


上条「…わかってるさ……わかってる…」
16 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/20(火) 01:37:07.89 ID:pqf.Puk0
上条はインデックスを静かにベッドの上に降ろし、優しく掛け布団をかける。
そして電気を消した。

カーテンの間から月明かりが差し込み、インデックスの透き通るような白い肌を淡く照らす。

そっとその顔を撫でる。

しっとりしつつハリのある肌。
女の子特有の甘美な香りがほのかにしてくる。

細い首。パジャマの襟の間から鎖骨が見える。

上条「……」
上条はただ見つめていた。
いつもなら思春期男児特有の欲情が湧いてきただろう。
いや、今もその感情が一切無い訳ではない。

飛び掛りたいという下劣な思いも確かにある。

だがそれ以上に。

その感情が脇に簡単に押し退けられてしまうほどに。

上条は彼女の事を『純粋』に『美しい』と思った。
あまりにも美しく、触れると壊れてしまいそうだ。

天使とはこういうのを言うんだろうな と上条は思った。

実際に存在している『天使』ではなく、芸術的概念で言う『天使』だ。
17 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/20(火) 01:40:50.24 ID:pqf.Puk0
上条はベッドの脇に座った。
ベッドに軽く肘を付き、インデックスの寝顔を見つめる。

いつものようにバスルームで寝ようと思っていたが、考えが変わった。
できるだけこの『天使』の姿を目に焼き付けておこうと思ったのである。

寝ている女の子を、本人の知らない間に見まくるというのはいただけない。
それは上条の良心にも思いっきり引っかかる。

だが今日だけは。

上条「今日ぐらいは……神サマだって許してくれるさ…」

今日ぐらいはわがままをしてもいいだろう。

インデックスの顔を眺めながら小さな声で呟く。

上条「俺、絶対に戻ってくるからな」

上条「全部…今までどおりに戻る…」


上条「また一緒に笑って」

上条「一緒に泣いて」

上条「一緒にご飯を食べて」


上条「一緒に暮らそうぜ」
18 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/20(火) 01:45:57.62 ID:pqf.Puk0
上条「一緒に冒険…いやそれはもうお腹一杯だな」

上条「……平和に暮らそうぜ」

小さな寝息を立てているインデックスに向けて言葉を続ける。

上条「そうだ…俺、言ってないことがあるんだ…」

上条「俺……記憶が無いんだ…」


上条「お前と会った頃の……あの時の俺とは違うんだ…」


上条「……」


上条「…俺」


上条「俺、お前の事が―――」


上条「―――」


上条は言った。
素直な気持ちを。

当然、寝ているインデックスからは反応は返ってこない。
19 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/20(火) 01:48:12.09 ID:pqf.Puk0
上条「……ぶっ…はははは」
上条は小さく笑った。

あまりにも卑怯で無様だ。ムードもクソも無い。
それどころか相手は寝ているのだ。

これがネロなら強くストレートに、ダンテならクールにカッコよく、
最高のオーラを放って起きている相手にキメただろう。

上条「……まだまだですね上条さんは…今のはナシで」


上条「戻ったらちゃんと言うよ」


上条「戻ったらな……」


そのまましばらくインデックスの顔をぼんやりと眺め続けた。
そしていつしか眠気が襲ってきて、上条はベッドに顔を突っ伏した。
ほのかなインデックスの香りの中で、上条はまどろみへ落ちて行った。

夜が更けていく。


上条は知らない。知る術がないだろう。

しばらくの後に彼が『戻った』とき。

最愛の少女は彼の言葉を『聞ける』状態では無いという事に。

―――
20 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 01:49:23.06 ID:pqf.Puk0
今日はここまでです
再開は明日の夜11時辺りから
21 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 01:50:13.70 ID:cAp3.qM0
おつ……
続きが気になるんだよ!
22 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 01:56:02.06 ID:eECmtwAO
乙だがなんだその不穏なフラグは!

しかし回収がしばらく先になりそうな伏線を張るってことは、まだまだ楽しませてもらえそうで嬉しいな。
23 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 02:08:18.82 ID:lUuxshIo
乙。早く続きが読みたくなる
これ一度の投下分にどんぐらい時間かかってる?
24 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 02:11:58.04 ID:P.Kpqu6o
なんだ正規ヒロインはインデックスか・・・って思ってたら・・・そんなフラグ立ててくれなくてもいいのに!!!
25 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 02:20:18.90 ID:pqf.Puk0
>>22
上条修業編の次か、その次あたりなので仰るとおり回収はしばらく後に

>>23
大体1レス五分くらいです
26 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/20(火) 02:36:33.58 ID:BlQy9mA0
(´ω`)ゞ 乙でしたー。そして3スレ突入おめです
27 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/20(火) 02:43:19.63 ID:BlQy9mA0
送別会で土御門が「ベオやん」って言ってるのが芸コマで嬉しかったww
28 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 03:17:54.33 ID:KXiTUFso
今度は何処のドイツがインデックスにちょっかいをかけるのか・・・って天使?


っていうと、まさか、ジェベレェ〜〜〜〜ッウスなあの教団か?
29 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 06:14:35.00 ID:mW4zAgMo
毎回楽しみにしてるです
30 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/20(火) 08:56:48.06 ID:MOdqvYAO
頑張れ……カミヤン
31 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 12:12:16.21 ID:qfOw7.DO
インデックスがヒロインで嬉しいです(^p^)
つか続きあるのかよwwwwしかも次の次もあるってwwwwww嬉しいけど何故か笑いがwwww

誰かまとめてくれ…
32 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 15:21:14.56 ID:UvaqFLco
スレタイ、ダンチに見えた
33 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 18:10:21.03 ID:qfOw7.DO
そろそろダンテはボルテクス界に行くんじゃね?
34 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 19:51:49.94 ID:lUuxshIo
>>25
5分て…俺なら15分はかかるわ
書く内容がはっきり纏まってるかどうかなんだろうな
体には気をつけて頑張って
35 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/20(火) 22:31:30.98 ID:XM26olIo
寝る前にテンション上がっちゃうと寝れなくなるから早く来てくださいお願いします
36 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/20(火) 23:03:48.09 ID:pqf.Puk0
―――

事務所『デビルメイクライ』の地下のトリッシュの仕事部屋。

薄暗く埃っぽい部屋の壁は全面が本棚で覆い尽くされており、
本棚に入らない書物がその前に平積みにされていた。

あちこちに魔具や魔界の言語が書かれた古めかしい紙、魔導書が無造作に積みあがっている。

人間が入るには余りにも危険すぎる部屋だ。

トリッシュはその部屋の中で、書物の山を漁っていた。
アレイスターに見せたいものがあるのだ。

それはトリッシュが長年研究してきた『人間界』についてのレポート。

トリッシュから見れば、先の寿命の件の他にも人間界にはおかしい点がある。

『力』についてだ。

魔界も天界も全ての世界は元は同じ『種』から成長した。
だがなぜ人間界だけ、人間界に住まう者達だけがこんなにも非力なのか。
数多の世界があるが、その弱さはダントツの最下位だ。

そういう法則が元からあったとしても余りにも弱すぎる。
まるで『何か』によって強引に押さえつけられているような感じだ。

そしてその『何か』の拘束は、2000年前の魔界による侵略防がれた直後から更に強まった気がする。
そう、天界からあの『神の子』が降りてきた時期から。
37 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/20(火) 23:09:53.35 ID:pqf.Puk0
『天界』がこの件に何らかの形で関っているかもしれない、とトリッシュは思った。
魔界と比べればその力は小さいが、一癖も二癖もある油断できない勢力だ。

神として降り、信仰を集める。更には力を垂れ流し、人間はそれを『魔術』と称して使っている。
フォルトゥナ等魔界から力を引き出している人間達もいるが、天界の場合は自らが進んで放出しているのだ。

なぜ天界の神々はこんなに人間界に関っているのだろうか。

そしてなぜ。

人間界そのものの『神』はいないのだろうか。

魔界には魔帝をはじめ何人もの『神』が歴史上登場した。
天界なんか今でも多数の『神』が乱立している群雄割拠だ。

魔界の神も天界の神も、元々は熾烈な競争を這い上がってきた強者だ。

ではなぜ『人間』の中からそういう者が這い上がって来ない?

なぜ人間界から『神』は生まれない?

なぜ人間界そのものの『力』が使えない?
38 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/20(火) 23:13:36.02 ID:pqf.Puk0
トリッシュはダンテと共に人間界に住まうようになってからその異常な点に気付いた。
そしてしばらく調べてみたものの、疑問を解決する手がかりはないまま月日は過ぎた。

いつしか『学園都市』、『超能力』という言葉を耳にするようになったが、
それも天界の力を行使する魔術の一種だろうと思っていた。

二ヶ月前までは。

だが実際にその力を目の当たりにし、自分の予想が外れていたことが分かった。

彼等の『能力』は天界でも魔界のものでもない、全く別の力だった。

そしてトリッシュの頭に一つの説が浮かんだ。
この『能力』こそが『何か』によって押さえつけられていた人間界そのものの『力』の一部ではないのか? と。

そして能力について調べ始めた結果、
『魔術』は『能力者』に対抗する為に構築された、『能力』と『魔術』を同時に見に宿すと肉体が破壊される、
と言われているらしい事がわかった。

トリッシュは思った。やはり天界の曲者共が何らかの形で関っているかもしれないと。
トリッシュは天界の事が嫌いだ。

中にはそれこそ人間に崇拝されるに相応しい良心的な者達もいるが、大半は自らの権力の拡大に固執している。

それも魔界のように潔い力と力の正面衝突ではなく、姑息でセコイ手段を使ってだ。

ついこの間、天界の一部の者達ととある人間達の教団がジュベレウスを復活させようとしたが、それでも纏まらなかったのだ。

そんな天界が人間界に何らかの形で関っているとしたら。
そしてそれが人間を虐げるものならば。

『デビルメイクライ(こちら側)』としては黙っているわけには行かない。
39 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/20(火) 23:18:29.63 ID:pqf.Puk0
トリッシュ「あった」

トリッシュが書物の山から一枚の古めかしい紙を引っ張り出した。
魔界の言語だが、アレイスターなら大体はわかるだろう。

全部読んでもらわなくてもいいのだ。

トリッシュがその人間界の『謎』に気付き意識しているというのを伝えられればいい。

言葉で喋るのも良いが、こうして実際の研究資料を直接見せたほうがインパクトがあるだろう。
こちらの本気度がわかるはずだ。

あの男は恐らくこの謎の答えを知っているはずだ。

そしてあわよくばもっと情報を得ることが出来るかもしれない。
力ずくで吐かせる事もできるが、相手は学園都市のトップだ。人間の社会的に少しマズイ。

トリッシュ「ふふ…」
トリッシュは小さく笑った。

計画に無かった思いつきの行動だが、それもまた楽しい物だ。
トリッシュだってダンテ程ではないがたまには思いつきで行動することもある。

あのアレイスターがどんな反応をするか。

人間の反応を見るのは面白いのだ。

トリッシュ「さて、『坊や』、今行くからね」

その古い紙をひらひらさせながらトリッシュは黒い円に沈んでいった。


―――
40 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/20(火) 23:22:29.09 ID:pqf.Puk0
―――


バッキンガム宮殿の一室。

薄暗い質素な部屋に、神裂、ネロ、最大主教、そして女王エリザードがいた。

この埃っぽい部屋は女王がいるにはあまりにも相応しくないが、何百年も前から王室が使っていた秘密の場所である。
結界が何重にも張られ、いざという時のシェルターでもあるのだ。

中央に大きな机があり、上座に女王が座していた。
その右側に最大主教が座り、神裂は下座の方に立っていた。
ネロはドアの横の壁に寄りかかっていた。

神裂は先日の『謎の襲撃者』について報告していた。

世界最高峰の魔術的要塞である聖ジョージ大聖堂に易々と侵入し、
そして天使化していなかったとはいえ、この神裂を圧倒した女だ。

目的はわからない。

トリッシュの提案で、この件は保留する事となった。
今現在、イギリス国内の悪魔掃討、そして例の『覇王』の事件の調査で手が一杯なのだ。

実際に戦った神裂は、これ程の新たな脅威を放置するのは納得しづらかったが、
この目の前にいるイギリスのトップ二人がトリッシュの案に同意した為従うしかない。
41 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/20(火) 23:25:08.47 ID:eECmtwAO
毎日の楽しみきてたー!
安定して連載してくれて感謝です。
42 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/20(火) 23:26:53.23 ID:pqf.Puk0
エリザード「ふむ……お主の刀を見て退いたのか」

神裂「はい」

最大主教「ネロ殿。どう思いになりける?」

ネロ「……」
実はまだ、魔具と化した神裂の七天七刀の『親』がバージルだということは誰にも言っていない。

言うか迷ったが、先にトリッシュやダンテに言った方がいいだろう。
この場は適当に流すを事にした。

ネロ「さぁな」
ネロは軽く首を傾けて肩を竦めた。

エリザード「お主でもわからぬか……」

エリザード「ご苦労。戻ってもいいぞ」

神裂とネロがドアの方へ向く。

ネロが木製の分厚いドアを開け、レディファーストで神裂を先に行かせた。
そして自分も出ようとした時。


最大主教「ネロ殿。そなたにはもうしばし話がありけるのよ」

ネロ「あ?」
43 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/20(火) 23:30:15.88 ID:pqf.Puk0
エリザードが扉の向こうの神裂に合図をする。

その意味を悟った神裂は部屋から離れ廊下を進んでいった。
ネロが扉を閉める。

ネロ「秘密の話ってか?何だってんだ?」
ネロがめんどくさそうな表情でエリザードへ目を向けた。


エリザード「『自動書記』についてだ」


ネロ「なんだそりゃ?」

最大主教「禁書目録の自動防御及び制御魔術でありけるの」

ネロ「で?」

エリザード「それの遠隔制御霊装がの」


エリザード「四日前の深夜に強奪されてな」


ネロ「……」
四日前の晩、つまり例の覇王の事件の時だ。
44 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/20(火) 23:34:39.10 ID:pqf.Puk0
エリザード「あの混乱を利用されたのだ」

神裂・ステイル・ネロは人工悪魔と不完全ながらも現出した覇王と戦い、シェリーは北部で上条達を保護、
バッキンガム宮殿を守っていた騎士団長ら騎士の精鋭部隊は王室の避難に付き添った。

戦力が分散し、一時的にバッキンガム宮殿の防備が手薄になったのだ。

ネロ「どういう物なんだそれは?」

エリザード「その名の通り、禁書目録の自動書記を遠隔操作できる。つまり禁書目録の行動を制御できるのだ」

最大主教「そして禁書目録内の『記録』も引き出せる事が可能でありけるのよ」

エリザード「もちろん、フォルトゥナ製の『魔界術式』の魔導書もな」


ネロ「へぇ……犯人は?」


最大主教「それが分かりけるなら苦労はせぬの」


エリザード「だから今、全力で調べているのであろう」


ネロ「……なるほどね」

強大な力がある者が襲撃してきたにもかかわらずその件を保留し、
未だに手がかりがつかめない、特定できそうも無い、
四日前の事件の黒幕探しに全力を注いでいるのはその為だろう。
45 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/20(火) 23:40:13.44 ID:pqf.Puk0
エリザード「ウィンザーに残留していた力と、宝物庫に残留していた力が完全に一致したのだ」

最大主教「同一犯、もしくは同組織の犯行」

ネロ「神裂達には教えねえのか?」

最大主教「ふふ、色々事情がありけるのよ」

最大主教がイタズラ好きそうな笑みを浮かべる。
彼女は結構な歳だが、見た目は『かなり容姿の整った18歳』だ。

だがそんな可愛らしさもネロには逆効果だった。

ネロ「……(好けねえババアだ)」

エリザード「これは最高機密だ」

ネロ「……で、俺に手伝えと?」

エリザード「うむ。手を貸して欲しい」

ネロ「悪魔掃討はどうする?」

エリザード「もちろん、平行して」


ネロ「チッ……」

どうやら更に忙しくなるようだ。
だが断るわけにも行かないだろう。

イギリス側は最後の頼みの綱としてネロに頼んでいるのだろう。
国内の仕事がおろそかになる危険を知っていながらだ。
46 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/20(火) 23:43:58.04 ID:pqf.Puk0
エリザード「現状を見る限り、まだ使用されてはいないようだ」

エリザード「だが盗って行ったからにはいずれ使う気なのは間違いない」

ネロ「だろうな」

最大主教「よきかしら?」


ネロ「……良いぜ。その依頼も受けてやる」


エリザード「当然、報酬は上乗せする」

ネロ「別にいらねえよ。その金でウィンザーの街でも直すんだな」

エリザード「それはありがたい」

エリザード「後々、そうだな……明日辺りからでも動いてもらおうぞ」

ネロ「……OK」

ネロはそっけなく返事をしながら二人に背を向け、扉を乱暴に開けて出て行った。


―――
47 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/20(火) 23:47:00.39 ID:pqf.Puk0
―――

窓の無いビル。

アレイスター「……」

水槽の前5m程の所にトリッシュが立っていた。

アレイスター「何の用だ?世間話しにきたのではないだろう?」

トリッシュ「ええ」
トリッシュがニヤリと笑い、右手に持つ紙を顔の横にあげる。

アレイスター「何だそれは?」

トリッシュが無言のまま笑みを浮かべ、水槽の方へ歩いていく。
そしてアレイスターが読めるように、逆さまに紙を水槽に押し付けた。


アレイスター「…………」


トリッシュ「へぇ……」

人間なら気付かないだろう。

だがその紙を見た瞬間。

アレイスターの心拍数があがり、僅かに彼の心がブレたのをトリッシュは察知した。
48 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/20(火) 23:50:43.09 ID:pqf.Puk0
アレイスター「………」

トリッシュ「どう思う?私間違ってるかしら?」

アレイスター「……そこに気付くとは……さすがだな」

トリッシュ「ありがと」

アレイスター「……」
トリッシュは一体どこまで知っているのだろうか。
なぜこのタイミングなのか。

そして。

アレイスターの目的に感づき始めているのだろうか。

全てを見通す彼の目でも、トリッシュの真意は見えなかった。
彼女はただ不気味に笑っていた。
49 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/20(火) 23:55:10.32 ID:pqf.Puk0
トリッシュ「あら、かわいい顔するじゃないの。あなたもやっぱり人間ね」

アレイスター「……」

このタイミングでこれを伝えるか。
この金髪の妖艶な女が何を考えているのかわからない。

これ以上関らせるのを阻止する為に、上条当麻の学園都市外への『連れ出し』を却下することもできる。

だがそんな事をしたってどの道彼らは易々と連れ出してしまうだろう。
彼らが はいそうですか と悪魔化している上条をほおっておくはずも無い。

なにせ上条の体の中の力はあのベオウルフのものなのだ。
そこらの雑魚悪魔ならまだしも、大悪魔レベルとなれば彼らとしても黙って見ているわけにはいかないだろう。

わざわざアレイスターに許可を求めに来たこと自体がかなり良心的なのだ。

アレイスター「……」

慎重に言葉を選ばなければならない。
この場での選択を間違えば、最悪プランが完全に瓦解する可能性がある。

元々悪魔達の思考など予想がつかない。
似た部分は多くあれど、根本的なところが全く別物だ。
50 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/20(火) 23:58:33.50 ID:pqf.Puk0
アレイスター「……何が知りたい?」

トリッシュ「そうね…」
トリッシュが小首を傾げ、色っぽい半目をアレイスターに向ける。

トリッシュ「じゃあ、今の私の考えを簡単に述べるから、よかったら添削して?」

アレイスター「……話せ」

トリッシュ「寿命。あれは人為的なモノ。人間界の外の『誰かさん』が作った」

トリッシュ「人間の魂は固く繋がれ、生死の『運命』は外部から操作されている」

トリッシュが両手を広げてアレイスターの返答を促す。

アレイスター「……続けて」

トリッシュ「そしてそれと同時に人間界の真の姿が隠蔽されつづけている。今の人間界の姿は偽物」

アレイスター「……」

トリッシュ「『能力』は『それ』が僅かに溢れ出てきたもの。つまり人間界そのものの力」

トリッシュ「で、『誰かさん』はそれを処分するために能力の無い人間に力を与え、『魔術』として行使させた」

トリッシュ「それでしばらくは安定していた」

アレイスター「……」
51 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/21(水) 00:03:32.39 ID:gOAfcgs0
トリッシュ「でも月日が流れ、人間が『科学』を手にした時、その安定は覆された」

トリッシュ「『とある人間』がその『科学』を使って能力者を人工的に増やしたから」
トリッシュがアレイスターの目を真っ直ぐ見つめる。

トリッシュ「『誰かさん』達は人間がここまで頭を使える種族とは思っていなかったみたいね」

トリッシュ「そしてその『人間』は徐々にその力を引き出し強め、範囲を広げていっている。『AIM拡散力場』と呼んで」

トリッシュ「で、その『人間』の目的は?」

トリッシュ「戦争?」

トリッシュ「報復?」

トリッシュ「力を解放して己が人間界の神になる?」

トリッシュ「人間界を新しく作り直す?」


トリッシュ「それとも人間達の魂の解放?」


トリッシュ「どう?」

アレイスター「……言う事は無い」
それは間違っている部分が無いという意味か、それとも何も教えないという意味か。

トリッシュ「……」
52 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/21(水) 00:07:40.66 ID:gOAfcgs0
アレイスター「少し補足を付けてあげよう」

トリッシュ「あら。嬉しいわね」

アレイスター「スパーダがやってくる遥か前、人間界にも『神々』や『天使』がいた」

トリッシュ「……」

アレイスター「人間界の中にも『天界』と呼べる層が存在していたのだよ。魔界での魔帝の『玉座の界』のようにな」

トリッシュ「……」

アレイスター「ある時、彼らは不意をつかれ『奴等』によってその『界』ごと封印された」

アレイスター「『神』はバラバラにされ、『天使』は『器』を砕かれた」

アレイスター「その時から人間界は力の根源を失ったのだ」

アレイスター「そして侵略者の『奴等』が入れ替わりに『神』と称して降臨し、人間達の魂を『鎖』に繋いだ」

トリッシュ「そんな事があったのね」

アレイスター「当時の出来事は人間の歴史から抹消された」

トリッシュ「へぇ」

アレイスター「ふん、こんな辺境の小さな世界など魔界は一切意識してはいなかっただろう」

アレイスター「それに君達は多くの世界を滅ぼしている最中で忙しかっただろう?」

トリッシュ「ふふ、そうね」
53 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/21(水) 00:10:24.93 ID:gOAfcgs0
アレイスター「だがその『界』と『力』が失われたわけでは無い」

アレイスター「事実、『力』は能力として現出している。そして『神』や『天使』達も死んではいない」


アレイスター「私はその『天使』の一人と会った」


トリッシュ「……へぇ…私も会いたいわね」


アレイスター「そう簡単に会わせる訳にはいかないよ。こちらも色々事情があるのでな」

実はもしかしたら二ヶ月前に人間界側の戦力として
動員されていた可能性があったのだが、それは言う必要は無いだろう。

アレイスター「……今言えるのはここまでだ」

トリッシュ「いいわ。面白い話聞かせてくれてありがとうね」
トリッシュは紙を丸め、それを顔の横で軽く振った。

トリッシュの足元に黒い円が浮かび上がった。


アレイスター「待て。こちらも聞きたいことがある」
54 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/21(水) 00:13:08.05 ID:gOAfcgs0
トリッシュ「何?」


アレイスター「なぜスパーダはこれを黙認していたのだ?」


スパーダは人間の味方だ。
ではなぜ魂が虐げられ自由を失っていた人間達を解放しようとしなかったのか。

彼程の力なら解放することはできただろう。


トリッシュ「さぁ」

アレイスター「君でもわからないのか」

トリッシュ「スパーダが何を思っていたのかなんて彼自身にしかわからないわよ」

アレイスター「……」


トリッシュ「でもただ一つ言える事は」


トリッシュ「彼が愛したのはその時の『力なき弱き人間達』だったってことね」
55 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/21(水) 00:15:34.49 ID:gOAfcgs0
アレイスター「……」

トリッシュ「もし人間界が力を失ってなかったら」

トリッシュ「彼の心を揺さぶる事は出来なかったかもしれないわね」

アレイスター「……最後にもう一つ」

トリッシュ「どうぞ」


アレイスター「私の目的。その答えを知りたくは無いのか?」


トリッシュ「知りたいわよ」

アレイスター「ではなぜそこを直接聞かない?」

トリッシュ「だって、楽しみじゃない?」


トリッシュ「人間が懸命に足掻いて自分自身の力で立ち上がる姿はイイ物よ」


トリッシュ「その目的がどうあれね。それはあなた達『人間の歩み』なんだから」
56 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/21(水) 00:18:30.31 ID:gOAfcgs0
『人間の歩み』。

その歩みに『外』からの意思が関与しているのならばダンテ達は介入するだろう。
だがこれは人間自身が決めた行動だ。

『今のところ』はダンテ達が割り込む余地は無い。

ダンテ達は人間同士の戦争などにも介入しない。
その行動目的が悪意であろうと、当事者が人間である限りそれは『人間の歴史』だ。

それもまたダンテ達が守るべき人間の一面なのだ。


アレイスター「……」

トリッシュ「ま、楽しみにしてるわね」


トリッシュ「でも」


だが『今のところ』だ。


トリッシュ「『見てる』からね。常に」
57 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/21(水) 00:21:13.49 ID:gOAfcgs0
この件は人間界だけの問題では無い。
いずれ『外』とも摩擦を起こすだろう。

アレイスター「……」


トリッシュ「じゃあね」
トリッシュが笑みを浮かべながら黒い円に沈んでいった。


アレイスター「……」

果たしてダンテ達が敵となるか味方となるか、それとも最後まで傍観するのか。
その時になってみなければわからない。

アレイスターにも予測できない。

だが彼は止まるつもりは無い。
もし刃を交えなければならなくなったら。

全力で戦うまでだ。
勝ち目が無くてもだ。

それが全てを捨て、この道を信じ進んだ彼の信念だ。

―――
58 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/21(水) 00:23:06.06 ID:gOAfcgs0
―――

翌日の正午ちょうど。

とある病院の会議室。

ここに上条、インデックス、ダンテ、御坂、そして一方通行と土御門がいた。
上条は大きなショルダーバッグを肩に掛け、御坂は彼女の体に似合わぬほど大きなキャリーバッグを脇に置いていた。

インデックスは着替え等が入った小さなバッグを持ちながら上条の隣に立ち、
ダンテはソファーに寝そべり小さな寝息を立てていた。

上条はそんなダンテを見て少し面白かった。
あのダンテがこんなに可愛らしい寝息を立てるとはかなりギャップがある。

まあ、逆に豪快なイビキをかくのもなんか似合わない気がするが。

別のソファーには一方通行と土御門が座っていた。

土御門はアレイスターの代理として見送りに立ち会うことになったらしい。
インデックスはこの後そのまま一方通行と共に行動する手はずになっている。

上条「……」

落ち着かない。
旅行に行く直前の、空港で飛行機を待っているような感覚だろうか。

隣にいるインデックス、そして近くにいる御坂もそわそわしているのが分かる。
59 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/21(水) 00:23:13.53 ID:0VLFO.AO
アレイスター「(マジおっかねぇ…)」
60 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/21(水) 00:27:07.77 ID:gOAfcgs0
禁書「とうま……」
インデックスが上条の袖を引っ張る。

上条「な、何だ?」
上条はインデックスの顔をぎこちなく見下ろした。

少し照れくさいのだ。
あのままベッドの脇で突っ伏したまま寝てしまい、朝起きた時はなんとインデックスが彼の頭を抱きしめていたのだ。

その前の晩は少し自分のわがままを許したが、さすがにこの朝の件のレベルまでは無理だった。
上条は動揺しながらすぐに跳ね起きた。

幸いな事にインデックスは起きなかった。

果たしてインデックスはそれを知っているのだろうか。
寝てるままの無意識でそうしたのか、それとも一度起きてそうしたのか。

上条にそれを聞く勇気は無かった。

禁書「電話するんだよ」

上条「お、おう、毎日するぜ」

そんな二人の会話(主に上条)を見ながら、
御坂は一見すると穏やかだがどこかに陰のある笑みを浮かべていた。

御坂「(……あたしは一緒に行ける。あたしは一緒に行ける。だから悔しくないだから悔しくない)」
61 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/21(水) 00:32:02.20 ID:gOAfcgs0
土御門「……最近随分とお熱いぜよ、あの二人」
土御門が隣に座っている一方通行を肘で突きながら呟く。

一方「知ッたこッちゃねェよ」

土御門「手出すなよ?」

一方「死ね」

土御門「まぁ、お前にすればちょっと成長しすぎか。心配ないにゃーかみやん」

土御門「それにこいつには愛しい愛しいラストオーダーちゃんもいるから大丈夫だぜよ」

一方「テメェいつかマジで殺してやる」


そうやってしばらく適当に時間を潰していると、
部屋の中央に黒い円が浮き上がりトリッシュが現れた。

トリッシュ「揃った?行くわよ」

一方通行と土御門が立ち上がり、
インデックスと上条、そして御坂が緊張のせいか特に意味も無いが姿勢を正した。

トリッシュ「……」

相変わらず寝息を立てて安らかに眠っているダンテにトリッシュは視線を落とす。
そして歩いて近付きソファーを強く蹴った。
62 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/21(水) 00:35:49.30 ID:gOAfcgs0
ダンテ「……んぁ……」

トリッシュ「起きなさい。時間よ」

ダンテが髪を掻き上げながらかったるそうに上半身を起こす。

ダンテ「……時間かッッッ……ぁぁぁあ」
そして体を伸ばして大きな欠伸をした。

土御門がトリッシュの方に向かう。

土御門「かみやんの事頼んだぜよ。規則は守ってな」

トリッシュ「ええ」

土御門「なあ、聞いていいか?アレイスターに何か言ったか?」

先ほどアレイスターの所に呼ばれたとき、彼は見るからに不機嫌だった。
感情の欠片すら今まで見せてこなかったアレイスターが、眉間に皺を寄せてしかめっ面をしていたのである。

あんな顔を見るのは初めてだ。

トリッシュ「さぁ」
トリッシュは軽く流した。心当たりは大有りだが。

土御門「そうか……まあいいぜよ」

土御門は上条の方へ向いた。

土御門「かみやん」

上条「おう」
63 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/21(水) 00:39:41.82 ID:gOAfcgs0
土御門「頑張るんだにゃー」

上条「ああ」

土御門「できれば俺にも毎日電話欲しいにゃー」

上条「そ、そうか……いいぜ!」

土御門「……冗談だぜよ。かみやん緊張しすぎだにゃー!」

上条「あは、ははははは…」
上条がばつが悪そうに苦笑いする。

土御門「まあ、インデックスは任せるんだにゃ。24時間とはいえないが、俺も見張るぜよ」

上条「そいつは頼もしいぜ!!ありがとな!!」


土御門「『膜』もしっかり守るにゃー。あのロリコンにはやらねえぜよ」


上条「ぶッ!!!バカッてめぇ!!!!!い、いらねぇよ!!!い、いや、違う!!そ、それはマジで困る!!!」

上条「い、いやいや!!!ち、違う!!!そういうことじゃなくてな!!!ぁああ!!!!」
上条が手を激しく動かしながら動揺する。

何のことを言っているかわからないインデックスと御坂はキョトンとし、
一方通行は額に青筋を浮かび上がらせていた。

トリッシュとダンテはニヤニヤしながら生暖かい目で上条を見ていた。

土御門「はっは〜落ち着くにゃ。ちょっとからかっただけだぜよ。ほら、体がほぐれただろ?」
64 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/21(水) 00:42:23.55 ID:0VLFO.AO
膜とか言ってんじゃねーよwwwwww
65 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/21(水) 00:45:05.07 ID:gOAfcgs0
上条「…………………………はぁ……」
緊張は確かに無くなったが、逆に力が抜けすぎてしまった。


トリッシュ「さて、禁書目録」

一方「おィ」
一方通行がインデックスに顎でこっちに来いと合図をする。

インデックスが上条の正面に行き、顔を見上げた。

禁書「……」

上条「アクセラレータ」

一方「あァ?」

上条「頼んだぞ」


一方「チッ……俺を誰だと思ッてやがンだァ?」


一方「サッサと済ませて帰ッてこィや三下ァ」


上条「おう!」
66 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/21(水) 00:47:38.13 ID:gOAfcgs0
ダンテとトリッシュが上条と御坂の方へ向かい、二人を挟むように並ぶ。

禁書「トリッシュ」

禁書「短髪」


禁書「ダンテ」


インデックスが順に三人の顔に目を向けていく。

トリッシュ「ええ」

御坂「う、うん」



ダンテ「任せろ。お嬢ちゃん」



インデックスが再び上条の顔を見上げた。

上条「大丈夫だ」

禁書「……絶対に戻ってくるんだよ」

上条「おう」
67 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/21(水) 00:51:27.61 ID:gOAfcgs0
禁書「……約束して」

上条「誓うよ」

禁書「絶対なんだよ」

インデックスが左手を上条に伸ばした。
上条は右手で優しく掴んだ。


上条「絶対戻って来る」


御坂「……(あばばばばばばば)」

トリッシュ「行くわよ」
四人の足元に大きな黒い円が浮かび上がり。


禁書「とうま」

上条「インデックス」


そして姿が消えた。
インデックスの左手から暖かい感触が消えた。

彼女はそのままの姿勢で数分間立ちつくしていた。
背後の二人はその間何も言わず、ただ黙って待っていた。

―――

上条覚醒編 おわり
68 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/21(水) 00:52:51.69 ID:gOAfcgs0
今日はここまで

今日はオリ設定の説明的な部分が多くてすみません。
また次の投下は明後日の夜11時辺りの予定です。

明日は投下できません。すみません。
69 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/21(水) 00:54:26.02 ID:Y9ZUBCko
うおおおおおおおおおつううううううう
70 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/21(水) 00:55:36.50 ID:Zmn84dYo

明後日楽しみしてるぜ!
71 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/21(水) 00:58:01.00 ID:AcyDWkk0


土御門がスティンガーで膜をぶち破ってきそうで怖い
72 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/21(水) 00:59:36.85 ID:hdBiK/ko
乙、修行編待ってる
73 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/21(水) 01:01:32.69 ID:0VLFO.AO
乙なんだよ!
74 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/21(水) 02:02:56.02 ID:4tlwEFM0

今後の展開が楽しみすぎる…!
75 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/21(水) 02:03:15.83 ID:1ar.2cw0


スパルタ系ダンテ式待ってます
76 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/21(水) 15:22:41.68 ID:MXfOsx2o
やっと追いついてしまったんだよ

明後日に期待するんだよ
77 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/22(木) 01:30:24.56 ID:qai0Arg0
一通さん丸くなったなぁ・・・(*´ω`)
78 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/22(木) 17:20:46.47 ID:K.8gpQAO
79 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/22(木) 18:54:53.05 ID:1jk5092o
スーパーベオやんマダー?
80 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/22(木) 23:01:09.79 ID:vxcdb2AO
そろそろか
81 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/22(木) 23:08:32.55 ID:EXBrS4Y0
上条修行編

―――
『こちら』の時刻は深夜。


上条「ここが……」

御坂「………へ?」

四人は事務所デビルメイクライの一階に立っていた。
床は木目、壁は石造りで洋風の古い建物だ。

一階はホールとなっていた。

壁には得体の知れない金属の彫刻らしき物や、
何か得体の知れない剥製のような物がたくさん雑に掛けられている。

あちこち傷だらけのビリヤード台、所々カバーの剥げたくたびれたソファー。
所々色がくすんでいるドラムやギター。
ホールの隅にある古いジュークボックス。

そしてホールの中央辺りに置かれている大きな机。
机の上には古いレトロな電話と積み上げられた雑誌。
その後ろには大きめの『二つ』の椅子があった。

その机と椅子の後ろ側は物置のように様々なガラクタが積み上げられていた。
82 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/22(木) 23:12:59.80 ID:EXBrS4Y0
上条「おおお……」
上条はホールの中をまじまじと見渡した。

以前ベオウルフを介してダンテの記憶も見た。当然この事務所も見た覚えがある。
だが実際に来て見るとやはり違う。妙に感動する。

あのスパーダの息子、ダンテの家なのだ。
その感動もまた記憶を見た上条だからこその物だろう。

それにあの時よりも随分と様変わりしている。
当時はまだ物がほとんど無くガラガラだった。

御坂「わぁ……」

トリッシュ「ようこそ」


トリッシュ「『デビルメイクライ』へ」


御坂「あ、お、お邪魔します!」

上条「お、お世話になります!!」
二人がダンテとトリッシュに礼をする。

トリッシュ「ええ」

ダンテ「ふぁ……ああ」
ダンテが大あくびをしながら、ゆらゆらと歩いて離れていった。

そしてコートを脱ぎビリヤード台の上にぶん投げ、
そのまま歩きながら今度はベストとその下の黒いインナーを脱いでソファーにぶん投げた。

上半身裸のまま更にそのまま歩き、ホールの隅のドアを開けて中に入っていった。
シャワーを浴びに行ったのである。
83 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/22(木) 23:13:24.76 ID:vxcdb2AO
きたー
修業楽しみ
84 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/22(木) 23:16:32.17 ID:EXBrS4Y0
トリッシュ「まあいつもあんな感じだから」

トリッシュ「じゃあ来て」

トリッシュがホールの奥へ歩き始めた。
上条はショルダーバッグを背負い、御坂はキャリーバッグを引きながらその後に続いた。

トリッシュ「このホールは主に来客用、事務所の顔ね」

トリッシュ「さっきダンテが入ったところがバスルームとトイレ」

一向はそのまま進み、ホールの隅の階段を上がる。
一段一段上がるたびに古い木目の板が軋む。

御坂「む!むん!むむむっ!!!」

大きなキャリーバッグを持ち上げようと御坂が奮闘していた。
金属製のキャリーバッグなので電磁力で持ち上げることも出来るが、中に電子機器もいくつか入っている為それは論外だ。

上条「俺が持つよ」

見かねた上条がキャリーバッグの取っ手を掴みヒョイと軽々と持ち上げた。

御坂「ありがとッて…わっ!!あんたそんなに…」
力があったっけ? と続けようとしたが、ハッと気付いて言葉を止めた。
悪魔化してきているため腕力があるのだ。
85 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/22(木) 23:17:03.21 ID:lbiHqk2o
きたあ
86 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/22(木) 23:22:02.95 ID:EXBrS4Y0
御坂「…ご、ごめん」

上条「ははは!!!いいって!!行こうぜ!!!」
上条は一切気にする風も無く階段を上がっていった。

御坂「(あたしってば早々……だめね…)」
御坂は少し肩を落としながらその上条の後を追って上がって行った。


階段の上は薄暗い廊下だった。

トリッシュ「この部屋はダンテの仕事部屋」
トリッシュは階段に一番近い所にある扉を指差した。

ダンテが主に銃器の改造を行う部屋である。
また、良く使う魔具等も置いてある。

トリッシュが廊下を進み二人がついていく。

二つ目の扉の前でトリッシュが止まった。

トリッシュ「イマジンブレイカー。ここがあなたの部屋よ」
そして扉を開け、電気を付けた。

上条「……」

部屋の中央には大きな薄汚いベッド、壁際にある今にも倒れてきそうなぼろいクローゼット。
それだけしかなかった。

窓のカーテンすらない。
そして裸の室内灯は不規則に点滅していた。

トリッシュ「もともとダンテの部屋だったんだけどね」

トリッシュ「彼はいつも下のソファーで寝てるから」
ちなみにダンテの着替えはさっきの仕事部屋に置いてある。
87 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/22(木) 23:26:53.30 ID:EXBrS4Y0
上条「……」

上条は恐る恐る部屋に入り、ベッドにショルダーバッグを下ろした。
その途端凄まじい量の埃が舞い上がった。

まるでスモークが炊かれたかのような「もや」の中に上条の姿が消える。

上条「……」

トリッシュ「あとで自分で掃除しなさい」

トリッシュ「じゃあ来て」
呆然としている上条をほっといてトリッシュは御坂に顎で合図をした。

御坂「う、うん」

その隣の部屋の扉の前でトリッシュは止まった。

トリッシュ「ここがあなたの部屋」

御坂「……」
御坂は緊張した。

上条と同じく、自分の住む部屋の惨状を覚悟した。

トリッシュが扉を開け電気をつけた。

御坂「……へ?」
88 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/22(木) 23:29:32.71 ID:EXBrS4Y0
その部屋の中は余りにも予想外だった。

上条の部屋とは正反対に、埃っぽさの欠片も無かった。
たった今掃除されたかのようにキレイだった。

アンティーク調のおしゃれなベッド、同じくきれいな装飾が施された化粧台と大きなクローゼット。
床に敷かれた高そうな絨毯、そしてこれまたアンティークな小さな机がベッドの傍にあった。

壁際にはもう一つ大きな机と椅子。机の上には電気スタンドがあった。

窓には高そうなしっかりとした生地のカーテンがついていた。

その部屋はまるで映画の中に出てくるような洋風の美しい空間だった。

御坂「な、な、な……!」

トリッシュ「10年位前にある女の子が一時期居候してたの」

トリッシュ「その子の家具よ」

トリッシュ「今でもたまに遊びに来るからダンテが撤去しないで残してるの」

トリッシュ「それと私が一応掃除しておいたから」

御坂「うぅううう!!!ありがとう!!!本当にありがとう御座います!!!」

トリッシュ「当然でしょ。女の子を廃墟部屋に住まわす訳にいかないわよ」

上条「……うう…くそッ…」
扉の所に立っていた上条はうな垂れていた。
89 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/22(木) 23:32:38.16 ID:EXBrS4Y0
トリッシュ「じゃあ今日はもう休んでいいわよ」

トリッシュ「二人とも色々とやることあるでしょ」

上条「……掃除とかな……」

御坂「……あ、あたしも手伝ってあげるから」

トリッシュ「それと、時差もあるし眠くないと思うけど早めに寝たほうがいいわよ」

トリッシュ「シャワーはダンテがもうすぐあがるから少し待ちなさい」

御坂「あの……キッチンはどこ?」
任務要項によれば御坂が上条のご飯を作ると言う事になっている。

トリッシュ「あ〜、あそこ」
トリッシュは廊下の突き当りの左側を指差した。

トリッシュ「一階にもあるんだけど、もう何年も使ってないから」

トリッシュ「使うのなら二階のね」

御坂「は、はい」
90 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/22(木) 23:33:07.70 ID:vxcdb2AO
居候なんていたっけ?アニメかなんか?
91 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/22(木) 23:36:22.95 ID:EXBrS4Y0
>>90 アニメでパティ嬢が

トリッシュ「あと二階のトイレはそっち」
トリッシュは廊下の突き当たりの右側の扉を指差した。

トリッシュ「それと言っておくけど、ダンテの仕事部屋と地下の私の仕事部屋には勝手に入らないように」


トリッシュ「下手したら死ぬわよ」


上条「…おう」

御坂「わ、わかりました」

きっととんでもなく危険な物が無造作にゴロゴロ置かれているのだろう。
この二人にもそれは簡単に想像できた。

トリッシュ「じゃあ、朝までごゆっくり」
トリッシュは踵を返して階段を降りていった。

上条「……」

御坂「よ、よし!!掃除しよっか!!!」

上条「うう……ありがとう…ありがとう…」
92 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/22(木) 23:40:43.77 ID:vxcdb2AO
やっぱアニメかー。今度見てみようかな。
93 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/22(木) 23:44:17.09 ID:EXBrS4Y0
上条は部屋の惨状を見て、掃除は朝までかかると思っていた。
というか掃除機どころか箒も雑巾もないのにどうやって掃除しようか考えていたが、
それは御坂が解決した。

御坂が静電気を使って埃を器用に集めていった。
まるで綿菓子のように埃がボール状に纏まっていく。

そんな事で僅か10分で部屋は綺麗になった。

上条「すげえな!!!お前本当に器用だな!!ありがとな!!」
上条はもう埃の舞い上がらないベッドにショルダーバックを置き、
中から服やら何やら生活用品を出しながら賛美の声をあげた。

御坂「へへん!!こんぐらい簡単よ!!」
御坂はしばらくそのまま上条をニコニコしながら見つめていた

上条「……ん?お前も自分の荷物出して来いよ?」

御坂「あ、そ、そうね!!あははははは…!」

と、その時一階のホールで扉が乱暴に開け放てる音が響いた。
続いて重い乱暴な足音。

上条「んあ、あがったみたいだな。御坂先に入って来いよ」

御坂「う、うん!!そ、そうする!!」
御坂は小走りで部屋を出て行った。

上条「……あいつもこれからの事で緊張してんだろうな…」

上条は荷物の中からバスタオルと着替えを出し、部屋を出て1階へ降りていった。
それと同じく御坂も風呂道具を持って階段を降りていった。
94 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/22(木) 23:46:49.97 ID:j1V5OwDO
とあるベオの使い魔 三魔人のスタイリッシュ輪舞
95 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/22(木) 23:47:19.45 ID:EXBrS4Y0
ダンテは上半身裸で椅子に座り、机の上に足を組んで上げていた。
そしてワインボトルをラッパ飲みし雑誌を捲り始めた。

御坂「あの〜……お風呂いい?」

ダンテ「ご自由に」
ダンテがそっけなく答え、御坂はバスルームの方へ向かって行った。

上条がゆっくりとダンテの方へ向かい、机に寄りかかった。
ダンテは特に気にすることも無くワインを飲み雑誌を読んでいる。

上条「なあ……聞いていいか?」

ダンテ「何だ?」
雑誌に目を向けたままダンテが返事をする。

上条「具体的に……何するんだ?」

ダンテ「まずお前に悪魔の力を引き出させる」

上条「へ?」

ダンテ「お前が悪魔化している時の状態を調べたいんだとよ。トリッシュが」
96 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/22(木) 23:52:24.11 ID:EXBrS4Y0
ダンテ「それを調べてから解決策を探すって訳だ」

上条「なるほど……」

ダンテ「それと平行して俺がお前に悪魔の力の使い方を叩き込む」

上条「……」

ダンテ「治すまで時間がかかりそうだしな。その間、ただ垂れ流しておくわけにもいかねえだろ」

上条「そうだな……」

ダンテ「覚悟しとけ坊や」
ダンテがニヤリと笑みを浮かべ上条の顔を見た。

上条「?」

ダンテ「言ったろ?血ヘド吐くってよ」

上条「……おう」

上条「上等だ。何だって乗り越えてやる」

ダンテ「ハッ。良い根性だ」
97 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/22(木) 23:55:26.09 ID:EXBrS4Y0
バスルーム。

御坂は呆然としていた。

御坂「何よ……コレ……」

広いがらんとした部屋の隅にバスタブがありその上にシャワーが付いている。
その周りにカーテンがあるいかにも欧米的な作りだ。

それと対角線の角に便器。
そしてまた別の角には、
コインランドリーに置いてあるようなドラム式の洗濯機がドンと無造作に置かれていた。

だが御坂を驚かせたのは別の事だ。


その汚さだ。


御坂「…ここも掃除しなきゃね…」
御坂の前髪に電気が走る。

そのまま御坂は思いつきで掃除をし、
上条がシャワーを浴びる事ができたのは一時間後であった。

―――
98 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/22(木) 23:57:06.91 ID:EfcoPNwo
パティって孤児院に住んでるんじゃなかったっけ
99 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/23(金) 00:00:06.00 ID:mTc0LDc0
>>98 あれっそうだったっけ。って調べてみたら孤児院住みだった……すまん…無かった事に…

―――

学園都市。
こちらの時刻は午後二時を過ぎたところだ。

一方通行はとあるマンションの一室にいた。
教員でありアンチスキルでもある黄泉川の家だ。

家主である黄泉川本人は当然仕事中で家にいない。

今、その家の中はかなり賑やかになっている。

二人の騒がしい少女がいるのだ。

一方「……るせェな…クソッ…」
ソファーに座り缶コーヒーを飲みながら一方通行は呟いた。

芳川「とか言いつつまんざらでもない」

向かいの椅子に座り小難しい本を読んでいた芳川が、
一方通行のその言葉にいらぬ捕捉を付けた。

一方「テメェもうるせェ」
100 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/23(金) 00:07:14.78 ID:mTc0LDc0
上条達が出発した後、土御門と別れたインデックスと一方通行は
この黄泉川のマンションに向かった。

二人はその間無言だった。
インデックスはうつむき、一方通行も何も喋らなかった。

そのまま二人は目的地であるマンションにつき、
一方通行は黄泉川宅のインターホンを鳴らした。

そして重苦しい空気を纏った彼らを出迎えたのは。

ドアから飛び出して来た、はち切れんばかりの笑顔の打ち止めであった。

思わぬ再開に戸惑うインデックスに打ち止めは飛びつき、
そしてそのまま家の中へ引っ張り込んでいった。

黄泉川・芳川には昨日の夜に「もう一人居候が増える」と伝えてあった。
なにか訳ありなのもいつもの事と、二人とも理由を聞くことなく快諾した。

黄泉川にいたっては やったじゃん!家族が増えたじゃんよ! と喜んでいた。

裏の事情を知っている打ち止めは当然快く受け入れた。
なにせインデックスは、打ち止めや一方通行にとってとある事件以来の恩人でもあるのだ。


二人が来てから一時間。

今のインデックスは打ち止めとテレビを見ながらぎゃあぎゃあと楽しそうに騒いでいる。

一方通行は顔には出さなかったが、少し安堵した。
ずっとあんな陰気な感じでいてもらったらさすがに困る。
101 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/23(金) 00:12:21.31 ID:ngbtJHw0
>>99
パティ嬢はデビルメイクライに入り浸りだったから寝床もちゃっかり用意した、と脳内保管しとくよ
102 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/23(金) 00:12:26.46 ID:mTc0LDc0
一人になるとインデックスはまた沈んだ顔になっているが、
打ち止めと一緒に騒いでいる間は笑顔だ。

まあ初日なのだ。
強引なやり方であろうが、笑顔を浮かべてくれたら上々だ。

だが。

一方「……チッ…」

予想はしていたが、さすがにうるさ過ぎる。
インデックスにはもう少し『落ち込んで』いてほしいとさえ思った。
今すぐにでもチョーカーのスイッチを入れて音を遮断したい気分だ。

この空間に数週間も居なければならないとは。
24時間の護衛という任務、そして上条の大事な者を預かっている以上、そう簡単に離れるわけにはいかない。

芳川「今日はハンバーグだって。材料は黄泉川が買ってくるってさ」

一方「……」

打ち止め「ハンバーグ!!!?わーい!!!ってミサカはミサカは晩ごはんが待ちきれずに跳ねてみたり!!!!」

禁書「むむむッ!!!!!!!!おおおおおお腹減ったんだよ!!!!!!」

一方「………アァ……早く帰ッてこィや三下ァ……頼むぜェ…」

一際大きな声で騒ぐ二人。
それを無視して読書し続ける芳川。
そしてソファーでうな垂れる一方通行。

彼の苦行も始まったばかりである。

―――
103 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/23(金) 00:12:56.53 ID:SWlt6Qoo
アニメのOPカッケエ
104 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/23(金) 00:18:17.55 ID:mTc0LDc0
>>101 ありがとう。お願いします。
>>103 第一話のOPまでの一連の流れは何度見ても鳥肌もの

―――

事務所デビルメイクライ。

翌朝。

上条「……」
意識が徐々に戻っていく。

上条「……う…ん…」
まぶた越しに強い光が差し込み、彼の睡魔のベールを剥ぎ取っていく。

上条「………(?)」
ぼんやりした意識の中で、誰かの気配を感じた。
誰かがすぐ傍で自分を見ているような感覚。

上条「……」
そして上条はパチッと目を開けた。

視界に入ってきたのは痛んだ木目の天井と。

御坂の顔だった。
ベッドの端に腰掛け、彼の顔を覗き込んでいた。

上条「…………み……さか?」
105 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/23(金) 00:22:27.05 ID:mTc0LDc0
御坂「んはぁっ!!!!」
御坂が跳ねるように慌てて立ち上がった。

上条がそんな御坂を特に気にすることも無く欠伸をしながらゆっくりと上半身を起こした。

上条「ふぁああああッ………あ〜、おはよ……」
上条がトロンとした目で御坂に朝の挨拶をする。

御坂「お、お、おはよ!!!さ、さっさと起きなさいよ!!!」

御坂が顔を真っ赤にしながら言葉を返した。
10分ほど上条の寝顔を眺めていたなど口を裂けてもいえない。

上条「……なんだそのカッコ?」

気付くと、御坂はラフな私服の上にゲコ太を模した大きな緑色のエプロンを付けていた。

御坂「!!!あっえ、えーっと!!!あ、朝ご、ご飯作ったから!!!そ、そ、その!!!アアアアアアアンタの分も!!!」

御坂「キ、キッチンにいるから!!!さ、さっさと目覚まして来るのよ!!!」
言うだけ言って御坂は小走りで部屋を出て行った。
106 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/23(金) 00:23:34.13 ID:F9333EAO
>>100の黄泉川のセリフであれを思い出してしまった
107 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/23(金) 00:26:14.46 ID:mTc0LDc0
上条「……お〜、ありがとな…」
一人になった上条は寝ぼけたまま礼を言った。

窓から朝日が差し込む、
ベッドとクローゼットしかない廃屋のような部屋でその声は小さく反響した。


数分後。


上条「ぷはっ…うう…さぶッいな…」

上条は二階のトイレに備え付きの洗面台で顔を洗っていた。
今の季節、冷水で顔を洗うのは厳しい。

鏡で自分の顔を見る。

上条「おし!」
そして遂に始る試練に向けて気合を入れ軽く両頬を手で叩いた。

トイレから出て、すぐ近くのキッチンのドアを開ける。
その途端、食欲を刺激するおいしそうな香りが鼻の中を満たした。

上条「おおお…」

御坂「あ、そっちに座って」
キッチンに向かっている御坂が背を向けたままテーブルの端を指差した。

上条がいそいそと席に着く。
108 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/23(金) 00:28:37.09 ID:mTc0LDc0
御坂「はいはいはいはい」

御坂がキッチンとテーブルを行き来し、朝食を並べていく。

バターが塗られたトースト、レタスやトマト等のサラダ、スクランブルエッグとベーコン。
そして牛乳と水とフォーク。
小さなテーブルの上はそれだけで埋まってしまった。

上条「お〜」

御坂「よしっと」

御坂が上条の向かいの席に付く。

上条「お〜うまそうだぜ」
上条がまじまじとテーブルの上を眺める。

御坂「……」
御坂はその上条の姿を見つめていた。顔が徐々に赤くなっていく。

御坂「(ヤバイってこのシチュエーション!!!!)」

御坂「(これじゃあまるで……!!!まるで夫婦みたいじゃない!!あああああばばっばああ!!!)」

御坂「ちょ、ちょっと適当でゴメンね。夜はちゃんとしたの作るから」

上条「お前……飯作れたんだな…」

御坂「ッ!!!何よ!!!あたしだってこんくらい……!!!」
109 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/23(金) 00:32:55.71 ID:mTc0LDc0
上条「おおおお悪い悪い!!!あ、ありがとな!!く、食おうぜ!!!」

御坂「ったくッ!……いただきます!」

上条「い、いただきます」
二人は手を合わせ、そしていそいそと食べ始めた。

上条「んん、んまいぞ」

上条がトーストに噛り付きながら言う。

御坂「……嬉しいけど、トーストを褒められてもねえ」

御坂「そうそう、これ、全部今朝あたしが買ってきたの」

上条「?」

御坂「何も食べ物無かったのよココ」

上条「あ〜…」
まあ予想できたことだ。あの二人が料理を作る姿など想像できない。

大方いつも外食やデリバリーで済ませているのだろう。
というか生粋の悪魔であるトリッシュは物を食べる必要があるのだろうか と上条は思った。
一応一階のホールに冷蔵庫らしき物があったが、恐らく飲み物系しか入っていないだろう。

上条「まあ、水が出て火も使えただけでも良かったってか」

御坂「そうね」
110 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/23(金) 00:36:04.42 ID:mTc0LDc0
上条「てかよ、金あんのか?」

御坂「学園都市製のATMあったから。換金もそのままATMでできたし」

上条「そうか…って御坂英語喋れたのか?」

御坂「簡単な話はできるわよ」

上条「……」

御坂「しばらくこっちにいるからアンタも覚えたほうが良いんじゃない?」

上条「覚えたほうがいいって……そう簡単にできませんよ御坂さん…」

その時、部屋のドアが開きトリッシュが現れた。

トリッシュ「おはよ」

上条「おはよう」

御坂「おはようございます」

トリッシュはそのままテーブルに進み、サラダの皿から一枚のレタスを摘み上げ口に運んだ。

トリッシュ「うん、うん」
口を動かしながら何やら小さく頷いている。

トリッシュ「あ、そうそう、10時になったら始めるから」

上条「……」

御坂「……」

二人の顔が引き締まる。今の時刻は9時を回ったところだ。
111 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/23(金) 00:38:37.01 ID:/sJtHpMo
>>106
おいやめろ
112 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/23(金) 00:40:51.10 ID:mTc0LDc0
トリッシュ「あなたはダンテと一緒に」
トリッシュが上条を見ながら言う。

上条「ああ」

トリッシュは御坂に目を移した。

トリッシュ「あなたはここに残りなさい」

御坂「……へ?」

トリッシュ「今後の生活用品や食材買ったりとか色々用事があるでしょ?」

御坂「い、いや、あたしも同行しなきゃ……!」

トリッシュ「今日はそんなに大事なのじゃないから。それに見ないほうがいいと思うわよ」

上条「(見ないほうがいい……)?」

御坂「で、でも!!」

トリッシュ「言う事聞かなかったら学園都市に戻すわよ?」

御坂「ぐ、ぐぅ…」

トリッシュ「大丈夫だから。今日はコッチにいなさい」

上条「(コッチ?どこかに行くのか?)」

御坂「うん…」
113 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/23(金) 00:43:43.59 ID:mTc0LDc0
朝食と歯磨きを終え、上条は自室に戻っていた。
ベッドに腰かけ、深く息を吐く。

上条「……遂に始まるんだな…」

上条「あっ」
上条はふとある事を思い出し、バッグから携帯を取り出した。

上条「向こうは……そろそろ寝る時間かな?」

そしてとある番号に電話をかけた。
コール音は一度、すぐに相手が出た。

禁書『とうま!!!!!!!』

上条「おう!そっちはどうだ!?」

禁書『大丈夫なんだよ!!!晩ごはんもたくさん食べたんだよ!!とうまは!?」

上条「おう!特に問題はねえぜ!」
まだ寝ただけで本題は始まっていないが、問題ないのは確かだ。

上条「…って随分そっち賑やかだな?」
携帯越しからかなり賑やかな女性と幼い女の子の声が聞こえる。

上条「(…?どこにいんだ?)」

その時、部屋のドアが開きトリッシュが顔を出した。

トリッシュ「時間よ」
114 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/23(金) 00:47:15.60 ID:mTc0LDc0
上条「あ、お、悪い!時間だ!」

禁書『時間?』

上条「ああ!また夜に…そっちは朝か、そん時に電話するぜ!」

禁書『あ、う、うん!!待ってるんだよ!!!』

上条「じゃあな!!迷惑かけるなよ!」

禁書『うん!!がんばるんだよ!!!』

携帯を切りポケットに入れトリッシュを追って部屋を出て、一階に降りた。
その上条の姿を見てダンテがソファーから立ち上がる。

ダンテ「行くぜ」

上条「おう!……ってどこにいくんだ?」
トリッシュが上条の横に並ぶ。


トリッシュ「ネバダ」


トリッシュが笑みを浮かべながら答えた。
同時に黒い円が出現する。

上条「……へぁ?」

三人の姿は消えた。
115 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/23(金) 00:51:17.32 ID:mTc0LDc0
ダンテ、トリッシュ、上条はネバダ砂漠のど真ん中に立っていた。
ジリッと肌が焼けるような日差し。乾いた埃っぽい空気。

そして見渡す限りの荒野。

上条「……一体何すんだ?」

トリッシュ「半径10km圏内には人間はいないから好き勝手できるわよ」

ダンテ「OK」

上条「……好き勝手?」

トリッシュ「終わったら呼んで」
トリッシュがダンテに黒い石のようなものを投げ渡した。

そしてすぐに黒い円に沈んでいって姿を消した。

上条「なあ…一体…?」
これから何をするのか検討が付かない。

ダンテ「あ〜、そうだな……」
ダンテが顎をさすりながら上条を見る。

ダンテ「上は脱げ」

上条「は?」

ダンテ「さっさとしろ。上半身裸だ」
116 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/23(金) 00:52:27.83 ID:F9333EAO
※ここから濃厚なホモスレになりません
117 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/23(金) 00:53:08.58 ID:ngbtJHw0
あっぶねwwww
一瞬アッーかとオモタよwwww
118 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/23(金) 00:55:46.32 ID:xG3k0gDO
最終的に人修羅にされそうだなベオ条ww
119 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/23(金) 00:56:44.17 ID:fB321SY0
ダンテ「これから俺のスパーダを全力でブチ込む。そいつを耐えるんだ」
120 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/23(金) 00:57:23.48 ID:mTc0LDc0
ダンテ「『力を使って』俺に向かって来いって事だ」

上条「……どうやって?」

ダンテ「暴走した時の事でも思い出しな」

上条「あ、ああ」

上条は目を瞑り、この間のデパートの事を思い出す。

上条「……」

上条「……」

上条「……」

上条「……あの……難しいです……」

ダンテ「しょうがねえな」

ダンテは首を鳴らし、続けて手の骨を鳴らした。
いかにも 殴り合いの準備中です と言っているような仕草だ。


ダンテ「やっぱこうするしかねえか」


上条「……あの〜……何をするんでせう?」
凄く嫌な予感がする。
121 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/23(金) 01:02:47.66 ID:mTc0LDc0
ダンテ「さっさと『覚えろ』」


ダンテ「さもねえと死ぬぜ?坊や」


次の瞬間ダンテは地面を蹴り、一気に距離を詰めてきた。


上条「―――いぃ゛?!!!」


反応する間も無く。


上条の胸にダンテの右拳がめり込んだ。
体内から何かが折れる湿った不気味な音。

上条「がぁッッッッ!!!!」

口からを血を噴き出しながら上条の体が5m程宙を舞い、地面に叩き付けられた。

ダンテ「おいおい、このレベルでもまともに受けちまうのか?」
ダンテが手を広げて、嘲笑的な笑みを浮かべた。

ダンテにとってはかなり優しく、遅めに小突いただけだ。
122 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/23(金) 01:04:22.60 ID:XVzn0FYo
ああ、半殺しねww
123 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/23(金) 01:06:11.49 ID:mTc0LDc0
ダンテ「あ〜、暇つぶしにもなんねぇな」

ダンテは呆れたような目を上条に向けながら歩いていく。

上条「がッ……!!」
胸を凄まじい激痛が襲う。
肋骨が何本も折れているらしい。

肘を地面に突き何とか起き上がろうとした時。



ダンテ「いつまでオネンネしてる?」


ダンテの蹴りが上条のわき腹に食い込んだ。

上条「ガフッッッ……!!!」

更に5m程上条の体が吹っ飛んだ。
そして間髪いれずに宙を舞う上条の足が掴まれ。


ダンテ「ほら、濃厚なキスしてやれよ。『ネバダ』にな」


そして地面に思いっきり叩きつけられた。
肉片が飛び散り、不気味な篭った破砕音が響く。
124 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/23(金) 01:11:20.55 ID:mTc0LDc0
上条「……あがぁッ……」

あっという間に血まみれになった上条は地面の上で力なくもがいた。
体が全く動かない。

列車に撥ねられるレベルの衝撃だ。
全身の骨が砕け内臓は潰れた。

視界が徐々に暗くなっていく。

ダンテ「……」

血まみれでボロボロな、
どこからどうみても『助かる見込みの無い』上条をダンテは見下ろした。

ダンテ「hummm.....」

だが上条は死ななかった。
傷がゆっくりと塞がっていき体が再生しつつある。

僅かだが、死の危険によって悪魔の力が引き出されているようだ。
体も一応人間以上には頑丈らしい。


しかしこの程度ではまだまだ全然足らない。
125 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/23(金) 01:13:40.99 ID:mTc0LDc0
上条「ぶはぁッ……!!!」
上条は勢い良く起き上がった。

上条「はぁッ…」

ダンテ「起きたか」
近くの岩の上に座っていたダンテから声。

上条「……」
上条は先ほどの情景を思い出す。
ダンテに『瞬殺』された。

だがその瞬間、体の中からあの『力』が少し湧き出てきたのを感じた。

上条「そうか…」
上条は理解した。
この『やり方』が一番手っ取り早いのだ。

ダンテ「立て。もう一度だ」

上条「……ああ」

上条は表情を引き締め地面に手を付いて立ち上がった。

ダンテが岩から跳ねるように降り、
手を広げて小馬鹿にするような笑みを浮かべた。

ダンテ「来い。坊や」
126 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/23(金) 01:14:51.85 ID:F9333EAO
なんというサイヤ人式修業
127 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/23(金) 01:16:18.90 ID:ngbtJHw0
ボコボコ系ダンテ式ktkrwwwwwwww
128 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/23(金) 01:17:50.29 ID:9wJXvx2o
スーパー上条さんの画像ください
129 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/23(金) 01:19:51.09 ID:mTc0LDc0
その後、約三時間の間ダンテの『しごき』は続いた。

三時間とだけ聞けば、『苦行』としては短いように感じるかもしれない。
だがその内容は凄まじく『濃い』ものだった。

頭を割られ、骨を砕かれ、内臓を叩き潰され、
普通の人間なら200回以上も死んでいるであろう凄まじい苦痛に満ちた地獄の三時間だ。

しかし上条はその『死』の痛みを堪え何度も何度も立ち上がり、ダンテに向かっていった。
ダンテはその上条を容赦なく叩きのめした。

そしてこの一方的な組み手が始まってから三時間後、上条は遂に完全に意識を失った。
地面に力なく横たわり、ピクリとも動かなくなった。

だがその傷の再生速度は明らかに速くなっていた。徐々に悪魔の力が引き出されてきているのだ。

ダンテ「……」

ダンテは意識を失っている上条の腕を掴み、乱暴に担ぎ上げた。
そしてコートのポケットから通信用の黒い石を出し握った。

ダンテ「トリッシュ。来い」

トリッシュ『あら、終わったの?』

ダンテ「とりあえずな。のびちまった」

トリッシュ『ふふ。今行くわ。次は私の「番」ね』

ダンテは黒い石をコートのポケットに放り込み、
その手で上条の服を拾った。


ダンテ「まあ初日の『前半』としちゃあ上々だぜ。坊や」


―――
130 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/23(金) 01:21:11.18 ID:mTc0LDc0
今日はここまで
再開は明日の夜11時辺りからです
131 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/23(金) 01:21:49.70 ID:F9333EAO
トリッシュのしごきだと…?
132 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/23(金) 01:22:53.08 ID:fB321SY0


上条さんのHPLPがもう・・・
133 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/23(金) 01:23:42.31 ID:F9333EAO
終わりか。乙!

トリッシュのしごき楽しみにしてる!
134 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/23(金) 01:24:12.05 ID:9wJXvx2o
ブラック企業乙
135 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/23(金) 01:25:07.98 ID:ngbtJHw0
前wwwwwwwwwwww半wwwwwwwwwwwwwwww

136 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/23(金) 01:31:08.46 ID:6T4BMLg0
きっついなwwwwww
乙!!
137 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/23(金) 01:31:09.52 ID:XVzn0FYo
とwwwwwwりwwっわwwっうぇwwwwwwずwwwwwwwwwwww


上条さんスタイリッシュに[ピーーー]るまで頑張れwwwwww
138 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/23(金) 02:12:36.76 ID:NT8r/sk0
・・・何と言う死んで覚えゲー(;´ω`)
139 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/23(金) 02:23:15.75 ID:Qta/bAoo
死の淵から生き返るとパワーアップ・・・なんというサイヤジン
140 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/23(金) 08:16:30.45 ID:7FpZ8iIo
デビルメイクライ側が舞台ってことはレディの出番に期待
141 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/23(金) 21:07:22.82 ID:O8XzPYAO
まさかのパティと御坂ご対面の期待
142 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/23(金) 22:23:53.86 ID:EBHAm5Io
ttp://blog-imgs-44-origin.fc2.com/n/i/c/nicovip2ch/20100423kininku01.jpg
ダンテさん、この悪魔を退治してください。きっとすごく強いです。
143 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/23(金) 22:24:51.99 ID:zM8/bEoo
どうゆう状況だよ
144 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/23(金) 22:59:29.41 ID:F9333EAO
>>142 凄まじい狂気を感じる
145 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/23(金) 23:09:05.20 ID:mTc0LDc0
―――


御坂「はぁ…」

御坂は一階のホールのくたびれたソファーに座っていた。
上条が出発してから三時間が立つ。

トリッシュは帰ってきたかと思うと、
鍵を御坂に投げ渡し「ちょっとでかけるから」とすぐにまたどこかに消えていった。

御坂はトリッシュを見送った後外出し、適当に買い物を済ませた。
ちなみにここ一帯はスラム街でかなり治安が悪いが、当然御坂の場合は心配は無い。

実際、買い物を済ませて事務所に帰って来る際に、
視点の定まってない見るからに薬中のチンピラが、
聞き取りにくい崩れた英語で御坂に絡んできた。

御坂は『いつも通り』軽く電撃を放って追い払った。

通常、学園都市外での能力使用は固く禁じられているが、今回は当然許可されている。
146 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/23(金) 23:09:51.62 ID:F9333EAO
                       / : /: :/ : /: :.:/ : : : :/!: ヽ : : :ヽ
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  ┃┃      ┃┃      ∠: :/ :厶-\  {    ノ   イ: }\            ┏━┓
  ┗┛      ┗┛      Vヘト、\::{> _ー'´ <:::レ∨.             ┗━┛
                 {   ヽ::}ハ  \/ }:::}/::ハ
                 {    }:jハ />ヘ/::::}::/ 〈
                 ハ   \レ:::::::{てノ二ン〉::j// }
                   {  ___ヽ:::::|  {  /†>く_ }
                  '<「  |__〉:ノ  ,ノ {::〈_「  |>'
147 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/23(金) 23:16:44.38 ID:mTc0LDc0
御坂「あ〜ぁ……」
特に意味も無く気の抜けた声を放った。
空しくホールに響く。

ヒマなのだ。

こう何もしていないと、あの少年の事ばかりを考えてしまってますます心配になる。

荷物も整理したし、生活用品等も一通り調達したし、今日の夜の献立ももう決めた。
買い物の帰りに小さな汚い本屋に寄ってみたが、御坂がいつも読んでいる週間の漫画雑誌は無かった。
それどころか日本語の書籍自体が無かった。
まあ当然だが。

英語もそれなりに読めるので、英語媒体の物でもいいかと思ったが、御坂が読みたくなるような物は無かった。
そして目を背けたくなるような本が多かった。

思いっきり成人向けの雑誌が、とくに分けもされずに棚のあちこちに陳列されていた。
グラマラスな金髪女性が股を大きく開けていたりなどなどその表紙もかなりどストレートな物ばかりだった。
御坂は顔を真っ赤にさせて店を後にした。


御坂はソファーに座りながら携帯を見た。
黒子にでも電話をかけようかと思ったが今日本は深夜だろう。

御坂「あ〜…」


その時、ホールの中央に黒い円が出現した。
148 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/23(金) 23:19:22.78 ID:mTc0LDc0
御坂「!!!!」
御坂は飛び上がるようにソファーから起き上がった。

黒い円からトリッシュとダンテ、そしてダンテに担がれた、上半身裸の上条が出現した。

御坂「お、おかえりっ!!!……って!!ちょ、ちょっと!!!えっえっえええ!!!!!」
血まみれで力なく体が伸びている上条。
御坂はすぐにダンテの所に駆け寄った。

当然御坂は半ばパニックになりかけるが、トリッシュが制止した。

トリッシュ「大丈夫。すぐ起きるから」

ダンテは持っていた上条の服をビリヤード台の上に放り投げ、彼をを担いだままバスルームに向かった。
御坂がその後を小走りで追った。

ダンテは上条をバスタブに乱暴に放り込み、シャワーの蛇口を捻った。
大量の冷水が容赦なく上条の体を打ち付ける。
こびり付いた血や砂が流されていき、バスタブの底に赤い水が溜まる。

ダンテ「おら」
ダンテがシャワーを掴み上条の顔に至近距離からぶっかけた。

上条「ぐぶほぉあああ!!!ぶへぇえええ!!!!」
しばらくして上条が口を金魚のようにパクつかせながら目を覚ました。
149 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/23(金) 23:23:31.33 ID:ngbtJHw0
うわあああwwwwwwww
150 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/23(金) 23:28:12.42 ID:mTc0LDc0
上条「ぶはッ…!!!ごはッ…!!!ふぁあああ…」
上条がバスタブの中で上半身を起こし顔を擦った。

ダンテ「よう」

ダンテがシャワーを止め、ふざけた調子の笑みを浮かべる。

御坂「だ、だいじょうぶ!!!?」
御坂がバスタブの脇に屈み、上条の方へ上半身を伸ばす。
今にもバランスを崩してバスタブの中へ転げ落ちそうな体制だ。

上条「あ、ああ…大丈夫だぜ」

御坂「一体何があったのよ!!!?」

上条「あ〜…」
上条がダンテの顔を見上げた。

ダンテはニヤリと笑みを返した。

上条「……『修行』だ」

御坂「しゅ、しゅぎょう?」

トリッシュ「次コッチ」
トリッシュが開いたドアから顔と手だけを出して手招きした。

トリッシュの顔には不気味なほどに妖艶な笑みが浮かんでいた。
151 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/23(金) 23:32:56.44 ID:mTc0LDc0
バスルームから出て、一向はトリッシュの地下の仕事部屋に向かった。

薄暗く埃っぽい部屋の壁は全面が本棚で覆い尽くされており、
本棚に入らない書物がその前に平積みにされていた。

普段は魔導書が無造作に開かれたまま置かれていたりと、人間にとってはかなり危険な部屋だが、
上条と御坂が入るとあってトリッシュは少し片付けた。

少なくとも見ただけで精神が侵されるような物は見えないように閉まった。

上条「つ、次は何すんだ?」
上条は濡れたままの上半身を擦り、寒そうにしながらトリッシュに聞いた。


トリッシュ「脱ぎなさい」


上条「……………………へ?」

御坂「……………………え?」

今、上条は上半身裸だ。この状態の上条に「脱げ」と言うことは。

トリッシュ「早くしなさい」

上条「……下をか?」


トリッシュ「当然」


トリッシュ「全部」


御坂「ぶふッッッッ!!!!」
152 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/23(金) 23:38:31.20 ID:mTc0LDc0
上条「ちょちょちょちょ!!!!おおおいぃぃぃぃ!!!」

トリッシュ「何?何でもやるって息巻いてたのにこんなのに尻込みするの?」

上条「うぐっ……どうしてもか…?」

トリッシュ「全裸の方が見やすいのよ」

トリッシュ「そのチンケな羞恥心で効率を下げたいなら別に良いけど」

上条「……わ、わかった…」
上条が意を決してベルトに手をかけた。

御坂「あわわわわわあわあわあがががががが」
御坂には出来るだけ多くの事を見聞きして報告する義務がある。
そしてそれ以上に上条の事には常に立ち会っていたい。

だがさすがに。
いや、嬉しくない訳ではないのだが、余りにも急な展開過ぎて心の準備が出来ていないのだ。

トリッシュ「……あなたは出てれば?」

御坂「んぎぎぎぎ………」

上条「……御坂は見たく無いだろ?出てた方が…」

御坂「いや!!!いいえ!!!って違くて…いやいやいあやじゃへgヵういmkあsp」

トリッシュ「じゃあ目瞑ってなさい。私達の会話だけでも充分でしょ」

御坂「は、はいぃいぃぃぃぃぃ!!!」
153 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/23(金) 23:42:06.10 ID:mTc0LDc0
御坂が顔を両手で覆った。
背を向ければいいのだが、体は前を向いたままだ。

ダンテはニヤニヤと笑っていた。

上条「よし…じゃあ…」

上条は神妙な面持ちで下を脱いだ。
覚悟は決めていたのだが、やはり少し内股になってできるだけイチモツを隠そうとしてしまう。

当然、そんな抵抗も無駄だ。丸見えだ。

トリッシュ「じゃあそこに寝て」
トリッシュが近くの大きな木製の古い机を指差した。

トリッシュの態度は先と全く変わらない。
ダンテが出発前日に言った通り、トリッシュにとって上条は『モルモット』なのだろう。
上条のブツを見ても全く反応を示さなかった。

ダンテ「へえ、結構立派なのもってんじゃねえか」

だがダンテは思いっきり反応した。
反応したというよりは上条をからかっているのだろう。

上条「る、るせぇ!!」

御坂「へ?!へ?!何が!!?」

上条「き、気にすんな!!!そのままにしてろ!!!」
154 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/23(金) 23:46:18.65 ID:F9333EAO
なんという羞恥プレイ
155 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/23(金) 23:47:13.07 ID:zM8/bEoo
トリッシュに見られるなんて…
俺だったら間違いなく勃起してr
156 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/23(金) 23:48:50.32 ID:mTc0LDc0
上条はぎこちなく指示されたテーブルの上に仰向けに寝そべった。

トリッシュ「さてと…」
トリッシュの手には鉛筆ほどの大きさの、先端が尖った金属の棒らしきもの。

上条「……」
とてつもなく嫌な予感がする。

トリッシュ「ほら寝てなさい」

上条「お、おう」
上条は頭を倒し、天井を仰いだ。

トリッシュ「じゃあちょっと痛むけど我慢して」
次の瞬間、上条の胸に凄まじい激痛が走る。


上条「んぎぃ!!!いってぇええええええええええ!!!」


上条が驚いて顔を上げ自分の胸を見る。
トリッシュは黒い金属製の杭を突き刺していた。
しかもその痛みは尋常じゃない。

まるで体内を無数の針で刺されているような激痛だ。
トリッシュが力を流し込んでいるせいだ。


トリッシュ「ん〜良い声ね。人間の悲鳴って最高。正に芸術ね」

そう言いトリッシュは更に深く差込んだ。


上条「ぎゃひぃいいいいいああああああ!!!!」
157 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/23(金) 23:53:06.74 ID:mTc0LDc0
御坂「な、なに!!?なにやってんの!!!!??」
顔を両手で覆っている御坂が声をあげた。

上条「何でもねええええええ!!見るなああああああああ!!!!」

トリッシュ「寝てなさい」
トリッシュは足を素早く上げ、起き上がりかけていた上条の顎をヒールのかかとで強く抑えた。

上条「んぐぉおお!!!!」

トリッシュは杭をゆっくりと引き抜いた。
そして傷口が塞がっていくのをまじまじと見つめていた。

トリッシュ「へぇ」

トリッシュは上条の体の中の力の動きを見ているのだ。
どのように反応しているか、流れは、量は、性質は。

この方法が刺激を与えられて一石二鳥だ。

ちなみに麻酔は効果が無いので使わない。
悪魔に効く麻酔なんかあれば対悪魔戦術の革命が起きるだろう。

こうして上条の苦行の後半戦が始まった。

『一日目』の分の。
158 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/23(金) 23:56:53.40 ID:mTc0LDc0
上条「ひぃいいいっぃぃぃぃぃいいいい!!!!!

上条「本当にごめんなさいいいいい!!!!!ごめんさないいいいいい!!!!!」

上条の脳裏に今までの思い出(約半年分しかないのだが)が駆け巡った。
走馬灯だ。

それはどっからどう見ても拷問にしか見えなかった。
いくら体が治るとはいえ、あまりにもキツイ。

トリッシュは場所を移して上条の体中を何度も差して回った。
胸から始まり、腹、上腕、下腹部、首、太ももといった風に徐々に範囲を広げて。

そのたびに上条が悲痛な叫びをあげ、ダンテはニヤニヤと笑い、
トリッシュは色っぽい不気味な笑みを浮かべていた。

トリッシュの力が流れ込んでいる杭は正に最凶の拷問器具と化している。


まあここまで力を流し込む必要は無いのだが、そこはドSなトリッシュの趣味だ。


上条「んきゃああああああああぁふおおああああああああああああ!!!!!!!」

ダンテ「ハハ、お前喜んでねえか?」


トリッシュ「あなた、本当に良い声で『鳴く』わね」

そこはドSなトリッシュの趣味だ。
159 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/24(土) 00:01:07.01 ID:urstnuE0
トリッシュ「……」
トリッシュの手が上条の股の真上で止まった。

上条「―――ま、まさかッ…!!!」
そのまさかだ。

上条「そ、そこは……!!そ、そこだけはッ……!!た、頼む!!!!」
上条が泣きそうな顔で懇願する。

ダンテ「ぷははっ!!お前本当に面白えな!!!いいじゃねえかどうせ治るんだしよ!!!」
ダンテがそんな上条を見て吹き出す。


上条「マジであんたら悪魔だ!!!悪魔だぁあああああ!!!!いやあああああああ!!!!」


トリッシュ「あらまぁ良い顔ね。喜んでくれてお姉さん嬉しいわよ」


トリッシュ「ご褒美あげちゃう」


トリッシュが足で上条を押さえながら、不気味なほどに美しい笑みを浮かべた。
そして杭を持つ手を躊躇い無く降ろした。


上条「んぎゃぁあああああひぃぃぃぃぃいあああああああんぐぉあああああひぃぃぃぃぃぃ!!!!!」

上条は正に地獄を味わった。

ダンテは血ヘドを吐くと言っていたが、それはダンテがやる事ではなく、
トリッシュがやる事を言っていたようだ。

厳しい事になるとは聞いていたが、上条の予想を遥かに超えていた。
そもそも、あの『ダンテ』が『血ヘドを吐く』という表現を使う時点で気付いておくべきだったのだ。
160 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/24(土) 00:04:08.85 ID:455Jk.60
oh・・・
161 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 00:04:59.01 ID:K6c2JXMo
これで御坂さんが何かに目覚めたら上条さんの夜は大変だな
162 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 00:05:58.83 ID:QHcXz.AO
次はうつぶせだな
163 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/24(土) 00:07:14.02 ID:urstnuE0
数分後。
ゲッソリとした上条はメソメソと泣きながら服を着ていた。

上条「…………うう……おうち帰りたい……」

御坂「ね、ねえ……だ、大丈夫だからね、ね?」
その横で御坂が慰めていた。

ダンテ「どうだ?」

トリッシュ「ん〜2%ってところね」
まだその程度しか上条の悪魔の力は引き出されていない。

ダンテ「どのくらいまで必要だ?」

トリッシュ「50か60。そこまで行けば『見えて』くるわよ」

ダンテ「具体的には?」

トリッシュ「そうね……あの暴走時のレベルを制御して維持できれば完璧」

ダンテ「あ〜、時間かかりそうだぜ」


トリッシュ「もう少し厳しくしてもいいんじゃない?」


ダンテ「だな」


トリッシュ「まあコツを掴めばすぐに伸びると思うけど。記憶もあるし」

上条は以前ベオウルフを使ったし、暴走時の事も覚えている。
その時の感覚を上手く利用する事ができればすぐに力の使い方を覚えるだろう。
164 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 00:09:51.33 ID:emVDsHw0
トリッシュが尻の穴に突き刺しそうで怖い
そして何故か今股間を押さえているんだが
165 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/24(土) 00:14:21.47 ID:urstnuE0
トリッシュ「はい、じゃあこれで今日は終わり」


トリッシュ「これが『一日分』のメニューね」


上条「…………ま、待て…まさか今のも毎日やるのか?」

トリッシュ「当然でしょ」

上条「………………あひぃ……」

ダンテ「なぁに、一週間もすりゃあそんくれえの痛みなんざ慣れるさ」

御坂「ねえ、な、何したの?」
御坂はずっと顔を覆っていたため、上条の身に降りかかった災難を知らない。
ただ、とてつもなく苦痛に満ちていたのは分かるが。

上条「………御坂……お前は『人間』だよな……ううううう」

御坂「?」

ダンテ「ウダウダうるせぇな。お前も『悪魔』になりかけてんじゃねえか」

トリッシュ「さ、ちょっと遅いけどお昼にしましょ」

ダンテ「ああ、腹減った」

上条「……うああああ……」

四人は地下室から出て行った。
こうして上条の一日目の試練は幕を下ろした。


―――
166 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 00:16:22.31 ID:K6c2JXMo
あ・・・チ○コ解体・改造する糞みてーな動画を思い出してしまった・・・くそ・・・悪魔め・・・
167 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/24(土) 00:16:59.33 ID:Qqd1JDY0
いかん、上条さんが開発されちゃうwwwwww
168 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/24(土) 00:20:35.33 ID:pS.P/.DO
ダンテやネロ親子の痛覚とかってどうなってんだろう。
覚醒初期の頃はベオ条みたいに地獄を見たんだろうか。

しかし原作の上条の数億倍の苦労してるなベオ条はww
169 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/24(土) 00:22:15.99 ID:urstnuE0
―――


ロシアの内陸部。

季節は冬。
ロシア名物冬将軍が猛威を振るい、
一帯には人の存在を示すものは何一つ無く、見渡す限りの無人の雪原だ。

だがその地下は違った。

地下にある巨大な円形状のホール。
元々はロシア成教の『殲滅白書』の拠点であったが、今は別の者が占有している。

中央に大きな机と椅子が一つずつ置いてあった。

その椅子に一人の華奢な、一見すると若い男が座っていた。
赤い長めの髪に赤のストライプのスーツ。
何もかもを見下しているような高慢な目つき。

ローマ正教、『神の右席』のリーダーであり事実上のローマ正教のトップである男。

右方のフィアンマ。

椅子の手すりに肘をつき、こめかみに人差し指を当てて思想にふけっていた。


その時。

すぐ背後に気配を感じた。
170 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/24(土) 00:27:05.75 ID:pS.P/.DO
パラレルエピローグで兄貴にコテンパンにされたフィ按摩さんいらっしゃったwwww
171 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/24(土) 00:27:16.85 ID:urstnuE0
フィアンマ「俺様の後ろに立つとはな」
その背後の人物にフィアンマは振り返らずに言葉を飛ばした。

フィアンマ「アリウス」

葉巻の匂いが漂ってくる。


アリウス「後ろに立ったらどうだというのだ?」


フィアンマ「反射的に殺してしまいそうだよ」

アリウスは咳き込むような低い声で嘲笑的に笑った。

アリウス「試してみるか?ん?小僧」

アリウスがゆっくりと歩き、フィアンマの横へ向かった。

フィアンマ「ふん。で用は?」

アリウスが机の上に何かを乱暴に置いた。
重い金属音が響く。

フィアンマ「……もう少し丁寧に扱ってくれないか?これは大事なモノなのだが」

アリウスが置いた物。
それは小さな円筒形の金属の塊。
小さなリングが多数ついており、ダイヤル式の南京錠のようにも見える。

つい最近イギリスから消えた、禁書目録の『自動書記』の遠隔制御霊装だ。
172 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/24(土) 00:31:11.37 ID:urstnuE0
フィアンマ「まあ、とりあえず礼を言おうか。聞いたよ。大変だったのだろう?」

フィアンマ「スパーダの一族に散々な目に合わされたらしいじゃないか」

アリウス「他人事にできるのも今だけだぞ小僧。いずれ貴様も奴等の刃の前に立つ事になるのだからな」

フィアンマ「それは恐ろしい。せいぜい楽しみにしておくよ」
フィアンマが軽く笑みを浮かべた。

そう、『いずれ』だ。

『今の状態』ならば軽く一蹴されてしまうだろう。

アリウス「それで、準備はどうなっておる?」
アリウスが机に尊大な態度で腰掛け、葉巻をくゆらせる。

フィアンマ「七割というところだ」

フィアンマ「『こっち』の準備はほぼ完了したがな、『向こう』は予想以上にてこずっている」

アリウス「あの『魔女』か……」

フィアンマ「そうだ。建て直しにはまだしばらく時間がかかる」

フィアンマ「そっちはどうなんだい?」

アリウス「六割程度だ。まだ『アルカナ』が全て揃っていない」

フィアンマ「頼むよ。雑魚悪魔共なんかいくらいたって意味が無いんだからな」
173 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/24(土) 00:34:06.86 ID:urstnuE0
アリウス「……」

フィアンマ「動けるのはお互い早くて一ヶ月後か」

フィアンマ「……少し危険だな」
フィアンマが机の上の遠隔制御霊装を見ながら呟いた。

アリウス「……」

フィアンマ「あのネロが『コレ』の捜索に参加する事になったらしい」

アリウス「それは貴様の問題であろうが。せいぜい隠れるんだな」

フィアンマ「そう言わないでくれ。冷たいな」


アリウス「他にも問題はあるぞ」
アリウスが顔をしかめながら煙をゆっくりと吐いた。


アリウス「『魔女』とバージルが接触している可能性が高い」


フィアンマ「……ふん」
174 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/24(土) 00:40:28.84 ID:urstnuE0
フィアンマ「……」
ダンテとネロ、そしてイギリス清教と学園都市の監視はいくらかできている。

だがあの二人の動きはほぼ全く『見えない』。

もしこちらが動く前に、向こうが察知して動き出したら。

あの『魔女』とバージルの手にかかれば、
準備の整っていないこちら側など一夜で叩き潰されてしまうだろう。

フィアンマ「全く……碌な情報を持ってこないなお前は」


アリウス「……それとダンテと幻想殺しとやらだ」

アリウス「貴様の大事な『核』であろう?どうするのだ?その内大悪魔並みの力を行使できるようになるぞ?」


フィアンマ「なぁに。それにはいくつか方法はあるさ」
フィアンマは手を軽く広げ不敵な笑みを浮かべた。

フィアンマ「とにかく、今は見ているしか無いだろう」

フィアンマ「ダンテの所にいる以上、手は出せないしな」

アリウスは低い笑い声を上げた。
そして机から離れ、フィアンマに背を向けて歩き始めた。
175 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/24(土) 00:44:07.33 ID:urstnuE0
フィアンマ「死なないでくれよ?俺様の事が終わるまでは生きていてくれ」
フィアンマがアリウスの背中へ言葉を飛ばした。

アリウス「それはこっちの台詞だ。小僧」
アリウスは振り返りフィアンマの顔を見据えた。

フィアンマとアリウスはお互いに挑発的な笑みを向けた。

それは仲間に向けるものではなく、敵へ向けているようなものだった。

実際、二人はいずれぶつかるかもしれない。
計画が成功すれば力の頂点に二人が君臨する事になるのだ。

今は当面の利害が一致している為に、お互い『協力』という名目で利用しあっているだけだ。

この二人にとって、『味方』というものは存在しない。

利用できるか敵か。それだけだ。

黒い円が出現し、見下すような笑みを浮かべたままアリウスは沈んでいった。

フィアンマ「ふん……クソジジイが…」

―――
176 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/24(土) 00:48:06.79 ID:urstnuE0
―――


御坂は自分の部屋にいた。
四人でピザを食べ、この後は自由時間だ。

トリッシュは再びどこかに消え、ダンテは下のソファーで昼寝をしている。
上条も自室で疲労の為寝ている。

御坂「……」
机の上に、報告用に渡されたミサカネットワークに接続できるイヤホンが置かれていた。

このイヤホンには今回の為に少し手が加えられており、接続すれば自動で御坂が見聞きした情報がそのまま送信されるらしい。
つまり報告書なども作らなくて良いというわけだ。それと昨日以前の情報は引き出されないとの事らしい。

過去のプライベートの記憶を妹達に見られることは無いとの事だ。

御坂「じゃあ……いっちょやりますか」
御坂はそのイヤホンを手に取り、恐る恐る耳にかけた。

その瞬間。

『お姉さま』
『お姉さま』
『お姉さま』
『お姉さま この女狐め』
『ミサカ一同お待ちしておりました』
『抜け駆けお姉さま』
『お姉さま』
『わーい!!お姉さまだー!!』
『ずるいですお姉さま』
『お姉さま』
『お姉さま』
『お姉s

御坂はすぐにイヤホンを外した。
177 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/24(土) 00:51:39.70 ID:urstnuE0
御坂「……」

予想はしていたが、それはそれは凄まじい物だった。
ずっとつけていると頭が狂いそうだ。

御坂「はぁ……もう一度やるか」
御坂は再び耳にかけた。

『お姉さま』
『お姉さま』
『お姉さま』
『なぜ切ったのですか?』
『お姉さま』
『この女狐め』
『ノリが悪いですお姉さま』
『お姉さま』
『おn

御坂「ストォォォォオッッッツップ!!!!!静かにッ!!!!」

『ミサカ達静かに!!!これはお姉さまの命令だよ!!』
『……』
『……チッ』
『……』
『……ケッ』

御坂「っよし……いい?一度に喋らないでね」
178 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 00:52:07.42 ID:QHcXz.AO
ミサカネットワークに上条さん画像が大量流出するな
179 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 00:54:17.35 ID:455Jk.60
>>178
何故か妹たちが「zipで」とか言ってる光景を想像して吹いた
180 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/24(土) 00:55:09.95 ID:urstnuE0
御坂「っていうか、あんた達この中では普通に喋れるのね?」

『データ量が無駄に増えますので』
『お姉さまのつけている受信機はそこらへんを削除してます』

御坂「へぇ…」

『では早速データを』
『早く見せてください』
『どれどれ』
『ぐふふ』

御坂「……」

『ほうほう』
『なるほどなるほど』
『おお、おお』
『ふむふむ』

御坂「……」
御坂の脳から情報が送信され妹達が目を通しているのだろう。

〜〜〜〜〜〜〜〜

『おや、素晴らしい寝顔』
『保存』
『保存』
『何でここで決めないんですか?弄り放題じゃないですか』
『根性ありませんね』

御坂「……」
181 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/24(土) 00:57:52.51 ID:Qqd1JDY0
何かこれどこぞの20000号がいそうで怖いwwww
182 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/24(土) 00:59:35.40 ID:urstnuE0
『一緒にご飯ですか』
『これどうにかして感覚共有できないんですか?』
『憎…いや羨ましい』
『デレちゃって不甲斐ないですねお姉さま』

御坂「……」

〜〜〜〜〜〜〜〜

『ほう……上半身裸とは』
『素晴らしい』
『水も滴る良い男とはこの事を言うのですね』
『あの水いくらですか?』
『保存』
『あ、この臆病な子犬みたいな顔も素晴らしいですね』
『保存』
『けっこう筋肉質ですね素晴らしい』
『いや〜本当に素晴らしい』


御坂「……」
183 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/24(土) 01:04:36.34 ID:urstnuE0
『なん……だと……?』
『ほう………下も脱ぐと……』
『トリッシュさん良い事言いますねいやホント』
『うひょひょ』
『トリッシュさん神です』
『トリッシュさんになら抱かれても良いです』
『なるほど……なるほど…』
『ミサカ達よ、刮目せよ。我等は進化する』


御坂「……」


『……ってなんでそこで見ないんですか』
『……あれ、黒くなったんだけどコレはデータ破損ですか?天狗の仕業ですか?』
『……なんですかコレは。最悪です。最悪すぎます』
『……さんざんひっぱっておいてこれですか』
『意気地無しお姉さま』
『こらー!!!お姉さまをいじめちゃダメだよ!!!!』
『うっさいチビ』
『黙れクソ上司』
『死ね』
『腰抜けお姉さま』
『バーカお姉さまのバーカ』
『お姉さまは一万人を失望させました』
『臆病女狐』
『根性無し』
『バーk

御坂「だぁあああああうるさいうるさい!!!!」
御坂はイヤホンをむしりとり、部屋の隅へぶん投げた。

その後、上条の悲痛な叫びのオーケストラでミサカネットワークは大混乱に陥ったという。

―――
184 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 01:05:42.78 ID:urstnuE0
今日はここまで
明日は投下できるかわかりませんが、もしできたら今日と同じ時間辺りからです
185 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/24(土) 01:06:14.51 ID:ytyiFI.o
186 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 01:06:33.85 ID:QHcXz.AO
ミサカネットワークは変態の多いインターネッツですね
187 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/24(土) 01:09:51.28 ID:Qqd1JDY0
変態ネットワークじゃねーかwwww
乙です
188 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 01:24:50.12 ID:ypimBUY0
乙!
禁書は知らないが十分楽しめてるぜ!!
189 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 01:25:55.63 ID:rtg19OAo
190 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/24(土) 02:18:46.58 ID:LMRaRz20
(;´ω`)・・・

今回は思いっきりお笑いモードで書きましたねwwめっちゃ笑わせて貰いましたwwwwww
191 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 02:28:48.70 ID:h6Pv7CMo
この話ってロシア編の前の話?
禁書本編に絡めたエピソードとかあったけど今後も絡めてくのかな?
192 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 08:55:23.39 ID:BqSbOwQo
ウホッのフィアンマが隠れてこそこそやっているあたりロシア編の前じゃないかな
193 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/24(土) 23:42:31.65 ID:iaGkzoAO
マダー?
194 :管理人、Twitterを始める http://twitter.com/aramaki_vip2ch [sage]:2010/04/25(日) 21:36:59.82 ID:xqjNhRwo
禁断症状が表れそうだ
195 :管理人、Twitterを始める http://twitter.com/aramaki_vip2ch [sage]:2010/04/25(日) 23:37:49.12 ID:Lh3jEcAO
気長に待とうぜ。
まだたった1日あいた位なんだし。
196 :管理人、Twitterを始める http://twitter.com/aramaki_vip2ch [sage]:2010/04/25(日) 23:59:50.08 ID:qzcSMMDO
名前欄が変なことになってるな
197 :管理人、Twitterを始める http://twitter.com/aramaki_vip2ch :2010/04/26(月) 02:08:55.44 ID:qeoFCVg0
>>1のペースに任せようさ
198 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/26(月) 20:51:03.46 ID:/jdjFwAO
続きまだかな〜
199 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/26(月) 23:51:01.90 ID:HAF4L2DO
予告も無いし、程度はあれど何かあったんだろうな。
無事だといいが…。
200 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/27(火) 00:01:16.46 ID:MOC0C2Qo
まだ三日しかたってないぞ。落ち着け。
201 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/27(火) 00:06:51.73 ID:D/MBtUDO
いつのまにか、オレの中で>>1の存在がこんなに大きくなってたなんてな//
バージルでもいじめながら待つわwwwwww
202 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/27(火) 00:10:06.79 ID:rHfIezA0
すみません色々あって投下できませんでした。

今から少しばかり投下します。
203 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/27(火) 00:11:04.15 ID:rHfIezA0
―――


とある大陸の内陸部にある古い洋館。
うっそうと茂る深い森の中にその城のような館は立っていた。
壁面をツタが覆い、ところどころ崩れている。

『人間』はここ数十年住んでいない。

『人間』はだ。


辺りはしんと静まり返り、動く者の気配は無い。
風による木の葉のざわめきすら無い不気味な静寂。

だがその静寂が突如破られた。

凄まじい炸裂音が響き、洋館の二階の壁が爆散し爆炎が噴き出し、窓ガラスが飛び散る。

続けて乾いた銃声が連続する。

そしてもう一度凄まじい炸裂音。

その後、再び辺りは静寂に包まれた。
204 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/27(火) 00:13:19.64 ID:rHfIezA0
洋館の二階。

その大きな部屋は床板が剥げ、天井や壁が崩れていた。
残っている壁には無数の巨大な弾痕。

そして部屋の中央に一人の女性が立っていた。
手に持つサブマシンガン、MP5Kの銃口から一筋の煙がゆっくりと上がっていた。

胸元が大きく開いた白いジャケットに、パンツが見えそうなくらいギリギリのホットパンツ。
高そうなサングラスをかけ、無造作なショートヘア。
露になった太ももには銃と弾装、腰にも多くの武器がぶら下がっており、
背中には先端に巨大な刃がついた身長ほどもありそうな大きなロケットランチャー。

人間の中では世界最高峰のデビルハンター。

レディだ。

レディ「これだけ?」
レディは左手を腰にあて、右手に持つMP5Kで軽く肩を叩きながら、
少し残念そうに呟いた。

この洋館に居座っているという悪魔狩りの依頼を受けてきたのだ。

レディは心躍らせながらここに来たが、
出迎えてくれたのは『ムシラ』という猿のような下等悪魔ばかりだった。
205 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/27(火) 00:17:30.69 ID:rHfIezA0
レディ「……何よ…つまんないわね」
レディは呟いた。

そして踵を返して部屋を出ようとした時。

レディ「―――」
胸の奥で妙なざわつき。
高等悪魔が出没する時の感覚だ。

レディは振り返った。

すると5m程のところ、この大きな部屋の中央に。

ゴートリングが立っていた。
全身から黒いもやが溢れ、目が赤く輝いている。

高等悪魔の中でも上位に位置する、強大な力をもった存在。
到底人間の手には負えないと言われている悪魔。

部屋全体、そして建物全体がこの高等悪魔の放つ力で振動する。

レディ「あはっ―――」

だがレディは笑った。
つまんなそうだった顔に見る間に心底嬉しそうな笑みが浮かぶ。


レディ「―――『当たり』 ね♪」
206 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/27(火) 00:17:37.77 ID:iN4Rw1wP
来てた!やったー!
207 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/27(火) 00:24:43.66 ID:rHfIezA0
ゴートリングが憤怒の篭った咆哮をあげ、次の瞬間猛烈な速度でレディに飛び掛った。

レディ「―――」

そして普通の人間には到底見えない速度でゴートリングはその拳を振り下ろした。
だがその拳は当たらなかった。

レディはギリギリのところで横に跳ね転がり、その振り下ろされた『破壊』から逃れた。

ゴートリングの拳が床をスナック菓子のように粉砕する。

レディの頬には一筋の赤い線。
飛び散った床の木片がかすったのだ。
そしてじわりと赤い液体が垂れ、顎先へと伝っていく。

レディはその血を下で軽く舐めた。

レディ「んん、そうこなくっちゃね」
そして笑みを浮かべた。

レディは能力も無い『人間』だ。
だが『普通』では無い。

先のゴートリングの攻撃は『見えて』いたわけではない。
勘で避けたのだ。

レディの先祖は戦巫女。
2000年前に先祖はスパーダと共に魔界と戦ったと代々伝えられてきた。

優れた戦巫女の母、そして数百年に一人現れるかどうかという天才的な素質を持っていた父、『アーカム』。

彼女はその二人の『才能』を色濃く受け継いでいる。

聖人が天界の加護を受けているのなら、レディは魔界の加護を受けているのだ。
そして何よりも彼女の強さの根源は、数多の戦いによって鍛え上げられた超人的な感覚と経験だ。
208 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/27(火) 00:27:41.44 ID:rHfIezA0
レディは屈んだままの姿勢で右手のMP5Kを向ける。
そして引き金を絞った。

複雑な術式が刻まれ、大量の魔力が篭められた破魔の銃弾がばら撒かれる。

その大量の銃弾がゴートリングの側面にめり込んでいく。
だがゴートリングの外皮は非常に固く、このレディの作った破魔の銃弾でさえ貫通しなかった。

レディ「やっぱ固いわね」

ゴートリングは咆哮をあげ、振り返るようにレディの方へ腕を振るい横に薙ぎ払った。
衝撃波で床板が剥げていく。

人間程度の脚力では、横や後方に避けても間に合わない。
ましてやダンテ達のように真上に高く跳躍することも出来ない。

レディ「はッ―――!!!」

レディは前に飛び出した。
その凶悪な腕の下を掻い潜ってゴートリングの懐に飛び込んだ。

ちょうど、屈んでいるレディの背中に背負っているロケットランチャーの砲口が、ゴートリングの顎の真下に来る。
レディは瞬時に背中へ手をまわし、ロケットランチャーの引き金に指をかける。

レディ「これはどう?」

そしてそのままの姿勢で引き金を引いた。
轟音が響き、燃焼ガスが噴出し床板が捲れあがる。
表面に術式の刻まれた、先端の尖った杭のようなロケット弾頭がゴートリングの顎下に食い込んだ。
209 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/27(火) 00:31:18.63 ID:rHfIezA0
顎下に杭のような弾頭が突き刺さり、ゴートリングが呻く。
レディは瞬時に身を低くして前に飛び、ゴートリングの股下を滑り込むようにして潜り抜けた。

そしてレディがゴートリングの背後に『脱出した』と同時に弾頭の遅延信管が炸裂した。
大爆発が起こり、崩れかかっていた天井や壁、床が更に吹き飛んだ。
だがゴートリングの体が盾となってレディにはその爆発は到達しなかった。

レディはスライディングしながら振り返り、腰に下がっているソードオフショットガンを左手で引き抜いた。
そしてゴートリングの膝裏へ一発ずつ、至近距離から放つ。

通常のショットガンなら傷一つつかないが、
レディの放つ銃弾は術式が刻まれ、莫大な量の魔力が練り篭められている。

散弾の雨を浴び、ゴートリングの膝が力なく曲がり、巨体が仰向けに倒れる。

ゴートリングの顎から胸にかけて、先の爆発で大きな穴。

レディは立ち上がり、右手のMP5Kを放り投げ腰についている手榴弾を一つ手に取る。
この手榴弾もまた対悪魔用に凄まじく強化されているものだ。

レディは親指で安全ピンを器用に引き抜き。

レディ「まあ暇つぶしにはなったわよ」

後ろに跳ねながら、仰向けに倒れているゴートリングの胸の傷穴に放り込んだ。

次の瞬間、ゴートリングの体が爆散した。
レディの凄まじい畳み掛けるような攻撃により、傷を再生させ治すヒマもなくゴートリングは敗れ去った。
210 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/27(火) 00:34:26.49 ID:rHfIezA0
レディ「さて……」
レディは体についたチリを手で払いながら、MP5Kを拾う。
そして弾倉を交換しながら粉塵に包まれている『爆心地』へゆっくりと歩いていった。

粉塵が徐々に晴れる。

すると、ゴートリングの鎖骨辺りから上が転がっていた。
その目はまだ赤く光っていた。

レディ「『こっち』来ないでよ。向こうで大人しくしてれば良いものを」
レディはMP5Kの銃口を向けた。

『…来る……』
脳内に直接響いてくる低い声。

レディ「うるさいわねとっとと死になさいよ」
レディの指が引き金を引き始めたが。

『我等が王、我等が主が……』

その言葉を聞いてふと止めた。


レディ「―――は?」
211 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/27(火) 00:38:47.12 ID:rHfIezA0
『あのお方が再び『立つ』…我等が王よ…………』

その悪魔の言葉を聞いてレディの顔が段々引きつっていく。

覇王の事を言っているのだろうか?

いや、それはない。

悪魔達が『主』、『王』と呼ぶ存在は一人しかいない。

『魔帝』だ。

覇王は魔界の統一玉座に座る前にスパーダによって封印されたため、そうは呼ばれていない。
だが魔帝は二ヶ月前にスパーダの一族達の手によって完全に滅んだはず。

魂ごと完全にだ。
どこにもその『力』の欠片は存在していないはずだ。

つまり復活の可能性はゼロ。

ではこの目の前の死にかけの悪魔は『誰の事』を言っているのだろうか。


レディ「―――何を言ってんの?」
レディがゴートリングの頭部へ銃口を向けたまま問う。


だが悪魔は何も言わなかった。
ただ小さく、その山羊のような口が曲がった。
レディにはわかった。

この悪魔は笑っている と。

次の瞬間、ゴートリングの頭部が白くなりひび割れ、砕け散って砂となって消えた。


―――
212 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/27(火) 00:44:15.90 ID:rHfIezA0
―――


上条がデビルメイクライに居候して10日経った。

上条はこの生活にすっかり慣れていた。

さすがにあのトリッシュの凌辱的な『拷問』は厳しいが。
(御坂は相変わらず顔を手で覆いながら立ち会っている)

朝起きて御坂の手作りの朝食を食べ、
ダンテと共にネバダ砂漠に行き文字通り『挽肉』になるまでしごかれ、
戻ってすぐにトリッシュの地獄の検査を受けて遅めの昼食。

その後は昼寝したり御坂と話したり、また彼女に英語を教わったりして過す。

たまに御坂の買い物に付き添い外出し、周辺をぶらぶらしたり
ちょっとした喫茶店に寄ったりして時間を潰した。

心の底から嬉しそうに振る舞う御坂を見て上条の疲れも癒された。
整った顔の女の子の笑顔を見るのは悪くは無いものだ。

ちなみに御坂にとっては昇天してしまいそうなくらい幸せな時間だ。

そうやって午後を過ごし、夜に御坂の手作りの晩御飯を食べ、
インデックスに電話して眠りにつく。

それが上条の一日だ。
213 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/27(火) 00:48:26.99 ID:rHfIezA0
上条の内なる悪魔の稼働率は15%。

ダンテやトリッシュの予想を上回る速度で上条は力を引き出し始めていた。
感覚が鋭くなり、身体能力、反射速度が軒並み向上していった。
ダンテ達から見ればまだまだだが、高等悪魔とそれなりに戦えるレベルだ。

更に上条はその力を使いこなし始めてきていた。

その上条の習得速度やセンスにはダンテすら少し驚いた。
ダンテ達と比べれば遠く及ばないものの、かなりの素質がある。
本当に元は人間だったのか? と疑いたくなる程だ。

元々かなり喧嘩慣れしており、右手1本でとんでもない敵を打ち倒してきたが、
それでも説明できないレベルだった。

そしてトリッシュが少し驚いた点がもう一つあった。
これには御坂も驚いた。

御坂から英語を教わっているのだが、その習得速度が異常なのだ。

ここに来たときは挨拶や簡単な単語程度しか分からなかった上条が、
いまや、簡単な日常会話なら特にどもることなくスラスラと喋れるようになっていた。
(それに伴ってダンテやトリッシュも『いつも通り』英語を使い始めた)

たった10日でだ。

その覚え方も面白い。
ノートに何度も書きこんだりするのではなく、直感的に飲み込んでいったのである。

上条曰く「あれっ俺今英語で喋ってるな」という感覚らしい。

『覚える』のではなく、気づいたら『知っている』というものだ。

どう考えても先の力の使い方を学ぶ速度と言い英語の件といい、普通では無い。
214 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/27(火) 00:53:39.83 ID:rHfIezA0
トリッシュは二ヶ月前から思っていたが、この少年は実は馬鹿に見えてかなり頭が冴えているらしい。
そして直感的な感覚もかなり鋭い。

馬鹿と天才は紙一重と言うが、正にその言葉通りだ。

というか、この少年は『元』から少し人間離れしている。

大体、右手にしか無効化の力が無い。それ以外はタダの人間。
それなのに御坂が勝てないとは。

トリッシュはそれを最初聞いた時は信じる事ができなかった。

普通の人間が雷速に反応するなど到底無理だ。
避雷針になったとしても話が出来すぎている。

あの二ヶ月前にベオウルフをつけて無理やり蘇生させた時も、すぐにベオウルフの力を使い始めた。
ステイルなんかは無数の術式でガチガチに固めてやっとイフリートを操作する事ができた。
御坂は電気の性質を完璧に理解していた為にアラストルを使えた。

だが上条の場合は、
PCを触ったことも無いアナログ人間が、OSの入ってないPCをいきなり使いこなすようなものだ。
『ベオウルフの記憶を見たから』だけでは説明がつかない。

そして彼の『魂』の頑丈さも普通では無い。
先日暴走した時も、彼の本来の魂が耐えられずに押しつぶされて消滅していてもおかしくないのだ。
たとえ消滅しなかったとしても、確実に破壊され廃人と化してたはずだ。

トリッシュからすれば暴走した時点で完全アウトなのだ。

だが上条はまともなまま、そして五体満足で生き延びた。
しかもその次の日には退院できるレベルまで回復だ。

前々からトリッシュは疑問を持っていたが、先日の件とこうして一緒に過す事で確信した。
この少年は元から普通では無いと。
215 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/27(火) 00:57:56.07 ID:Xiae/oAO
そういえば原作でも人間離れしてるもんな。主人公補正で片付けるには勿体ない位に。
216 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/27(火) 00:58:26.83 ID:rHfIezA0
『上条当麻』という研究材料はトリッシュの好奇心をくすぐる。

上条が普通じゃない原因は彼が元から持っている『幻想殺し』によるものなのだろうか。
それが悪魔化の刺激によって顕著になってきているのだろうか。

彼の力もまた他の能力と同様、天界でも魔界の物でもない、『人間界の隠された力』か。
だがそう決め付けるのは早計だ。

なにせ他の能力と比べれば余りにも異質すぎる。

『人間界の隠された力』としても、少なくとも『全く一緒』ではないだろう。

通常の『能力』と上条の『幻想殺し』。

トリッシュからすると、魔界で例えるなら通常の悪魔の力と魔帝の『創造』の力のように、
生まれた場所は同じでも本質的な次元が違うような関係に見える。

このまま悪魔化が進み、魂と力の器が肥大化したら、彼が元から持つ力はどうなるのだろうか?

彼の中に巨大な『何か』が眠っているとするのなら、それが目を覚ますのだろうか?

彼の右手自体も悪魔化したらどうなるのだろうか?


この『上条当麻』という少年は一体何者なのだろうか?


この『研究素材』はトリッシュの好奇心を強く揺さぶる。
しかし今の彼女には答えを出すことは出来なかった。

何せ『幻想殺し』の情報が無いのだ。
『人間界の隠された力』などつい最近気付いたことで、トリッシュにとってはまだまだ未知の領域だ。

それに一応『幻想殺し』について調べることも固く禁止されている。
今、それをわざわざ破って学園都市との関係をこじらせるのはあまり好ましくない。

だが彼女はほくそ笑む。
いずれ答えを出してやる と。
とにかく知りたいのだ。

それこそ、今の仕事をほっぽり出して上条を徹底的に解剖してみたいくらいだ。

その執念じみた知識欲もまた、『力』に固執する悪魔の本能からくる衝動だ。

―――
217 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/27(火) 01:06:19.79 ID:rHfIezA0
―――


ネバダ砂漠のど真ん中。

上条は仰向けで地面に倒れていた。

上条「がぁ……」
全身の傷が湿った軋むような音を立てて塞がっていく。

上条「ッ…」
ぎこちなく上半身を起こした。
裸の上半身は相変わらず血まみれだったが、傷は全て消えていた。

右手以外はだ。

上条「……」
白いギプスのような物に覆われている右手を見る。

右手の地肌が一切見えないように包帯を巻き、
その上にトリッシュとダンテが加工した魔界の金属生命体のプレートを被せ、
そして学園都市製の強化ギプスで固定しているのだ。

これぐらいしないと、この激しい組み手の中で右手は簡単に千切れ飛んでしまうだろう。

トリッシュによると、ほんの僅かだが徐々にこの右手も悪魔化してきているという。

だが、依然この右手の治癒力・耐久度は相変わらず人間並みなのだ。

ダンテ「ヘィ!!どうした!?もう降参か!?」
10m程の所に立っていたダンテがまるで犬を誘っているかのように手を叩きながら挑発する。

上条「へっ!!!」
上条が左手で口の血を拭い勢い良く立ち上がった。
218 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/27(火) 01:09:53.23 ID:rHfIezA0
上条「おおおおおお!!!!」
上条が地面を蹴りダンテに突進する。
人間の限界を遥かに超えた脚力は上条の体を一瞬でダンテの前に運んだ。

上条は左拳をダンテの顔面目がけて振るう。
だがダンテは欠伸をしながら顔を軽く傾けそれをかわした。

そして次の瞬間、上条の顎に下からダンテの膝蹴りが振るわれた。
上条の顎が一発で粉砕され、彼の体は20m程宙を舞った。

しかし上条は地面には叩きつけられなかった。
空中で体制をひらりと身を建て直し、地面に着地した途端、再びダンテへ向けて一気に突き進んだ。

ダンテ「humm......」

その突進してきた上条へ向けてダンテは足を振るう。

完璧なカウンターのタイミングだったが、上条は瞬時にそれに反応した。
咄嗟に左手をかざしガードする。この速度に慣れ始めてきたのだ。

更に、徐々に悪魔としての力を使いこなし始めている。
左手が白く輝き、悪魔の力で『強化』される。

ダンテ「いい動きだが―――」


だがまだまだだ。


ダンテの蹴りは上条の左手を砕き、そのまま首に炸裂した。


ダンテ「―――避けるか防ぐかの判断はまだつかねえか」

上条の首があさっての方向へひん曲がり、彼の体は大きくスピンしながらぶっ飛んでいった。
219 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/27(火) 01:15:01.14 ID:rHfIezA0
上条「んぐぁっ!!!!!」
首が大きく曲がり、骨が粉砕される。

上条の体は人形のように地面を弾み、20m程吹っ飛ばされた。

普通なら死ぬだろう。

上条「ふんがぁ!!!」
だが上条は僅か5秒後に再び立ち上がった。
あさっての方向に曲がっていた首も砕かれた左手と顎も完全に再生していた。


上条「ぶはぁ!!!まだまだぁ!!!」
上条が血を吐き、右手で拭いながらダンテを睨む。

ダンテ「(……慣れてきたな……もうちょっと強くいくか)」

ダンテ「来い」

上条「らぁ!!!」
上条が再び地面を蹴り突進する。

だが次の瞬間、ダンテの姿が消えた。

上条「へぁ―――?」

そして赤い光の塊が目の前に現れたと思った瞬間に胸に強い衝撃。
肋骨が砕け、肺と心臓が潰される。
何が起こったのかわからないまま上条は後方に大きく吹っ飛ばされ地面に叩きつけられた。

上条「げはぁ…!!!」

気付くとダンテが地面に這いつくばる上条を見下ろしていた。


ダンテ「おめでとさん。レベルアップだ。坊や」


上条「……ハッ!!!上等だぜ!」

上条は口から溢れる血を左手で拭い、勢い良く立ち上がった。



―――
220 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/27(火) 01:16:53.95 ID:rHfIezA0
今日はここまで
再開は恐らく明日の夜12時辺りからです

色々と忙しくなってきたので、少しペースが落ちると思います
221 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/27(火) 01:18:08.14 ID:Qq.DLOQo

毎晩期待してます
222 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/27(火) 01:21:26.63 ID:5kwzHcc0
(´ω`)ノシ 復活おめです。乙でしたー♪
223 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/27(火) 01:28:18.06 ID:Xiae/oAO
乙カレー
忙しい時は無理せずに、完結まで楽しませてくれ。
224 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/27(火) 01:34:35.92 ID:.lIKQQ6o
乙期待乙
225 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/27(火) 01:34:59.94 ID:a8yBnvg0
乙!
無理ないペースで投下していってください
226 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/27(火) 02:38:00.20 ID:R.7qvr60
これはいいwww
元が元なだけに想像力をkskさせるな!

楽しいぜ>>1、乙!!
227 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/27(火) 18:30:28.34 ID:LDOkfo.o

やはりダンテはパネェな
上条さんもだがww
228 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/27(火) 19:18:11.64 ID:x1WjMoDO
二週間くらい読む暇なかったけどやっと読めた
御坂ネットワークって元からこんななのか?
229 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/27(火) 19:39:32.59 ID:BQ2NFMAo
内部がどうなっているかは特に言及されていなかったと記憶しているが
230 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/27(火) 23:15:18.40 ID:pB5AolA0
SS2で御坂妹たちがミサカネットワークで会話してるだけのシーンがあるけど、だいたい似たようなもんだった
妹達による全世界同時テロの経過報告にネコが気になるだの、戦車の相手は面倒だの私語を挟む感じ
231 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/27(火) 23:44:09.46 ID:rHfIezA0
―――


御坂は事務所の一階のホールのソファーに座っていた。

御坂「あ〜…」
気の抜けた声。
ダンテと上条は毎度の如く『修行』に行き、トリッシュもいつもと同じくどこかに外出中だ。

この時間帯は特に何もする事が無く、いつもヒマなのだ。
洗濯も掃除も済ませ、晩の献立も考え終わり、そして留守番。
いつもの事だ。

それにこの事務所には不思議なくらい客が来ない。
少なくとも御坂達が滞在してから一度も来ていない。

ここの経営は大丈夫なのだろうかと御坂は時々思う事がある。

だが今日は違った。
御坂がソファーでのびていると、突如玄関の大きなドアが乱暴に開いた。

一瞬トリッシュが帰ってきたと思い上半身を起こしたが、入ってきたのは別人だった。

胸元が大きく開いた白いジャケットに、パンツが見えそうなくらいギリギリのホットパンツ。
高そうなサングラスをかけた、無造作なショートヘアのグラマーな女性であった。
露になった太ももには銃と弾倉、腰にも多くの武器がぶら下がっており、
背中には先端に巨大な刃がついた身長ほどもありそうなロケットランチャーを背負っていた。

御坂「……ッ!!」
明らかに、どっからどうみてもカタギではない。

御坂は立ち上がり、前髪に電気を走らせながらその奇妙な客人を警戒して見据えた。

その女はそんな御坂の緊張なんか気にも留めずに普通に入って来た。

「ダンテは?いないの?」

女が事務所の中を見渡しながら、流暢な英語で呟いた。

御坂「い、いないわよ!」
御坂がぎこちない英語で返す。
232 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/27(火) 23:48:39.44 ID:rHfIezA0
女が軽く鼻を鳴らし、御坂の方を向いた。
そしてサングラスの端を摘み、軽く下ろした。

下げられたサングラスの上端から、赤と青のオッドアイの瞳が現れた。

御坂「…!」

女は上目遣いのまま御坂を舐めるように見た。

御坂「……」
御坂は前髪に電気を走らせながらジッと睨み返した。


「ところであんた誰?」


御坂「あ、あんたこそ何よ!?」
御坂は言いながらあたしは何様よ と思った。
相手は少なくともダンテの知人だろう。

恐らく御坂が部外者なのだ。
だが、この目の前の女から向けられる異様な威圧感と殺気で、
反射的に敵対的な態度を取ってしまった。

女はそんな御坂を見ながら、首を傾け小さく笑った。
まるで小馬鹿にしているかのように。

御坂「な、何よ!?」
233 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/27(火) 23:54:08.51 ID:rHfIezA0
「まあいいわ。待たせてもらうから」

女はそっぽを向いて、近くのビリヤード台に腰掛けた。
そして恐らくダンテが適当に置いたであろう、ビリヤード台の上にある雑誌を手に取り捲り始めた。

御坂「……」
御坂は電気を前髪に走らせたまま、警戒の態度を崩さずにソファーに座った。

数十分。

重苦しい沈黙の空気。
重苦しい空気を醸し出しているのは御坂だけなのだが。

女はそんな御坂を気にも留めず、
まるでカフェテリアで午後の休息をとってるかのように優雅に雑誌を捲っていた。

と、そんな時、再び事務所のドアが大きく開けられた。

「よう!!ダンテェ!!トリッシュ!!いるか!?」

またもや御坂の知らない人物だった。

姿を現したのは小太りのチビな男だった。
くたびれたコートにハットとサングラス。脇には大きなトランクを抱えていた。

御坂「わひゃ!!!」
御坂は驚き、先よりもさらに放電しながら再び立ち上がった。

女も流し目で凍て付くような視線をその男に向けた。
234 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/27(火) 23:58:13.61 ID:rHfIezA0
「……って!!!おおおおい!!何だよ!!!」
男が二人の視線を浴びて玄関のところで戸惑う。

「相変わらず声がデカイわね。エンツォ」

エンツォ「す、すまん……で、レディ、あっちのガキはなんだ?トリッシュの親戚さんか?」

エンツォ「なんかバリバリ言ってるぜ?」

レディ「知らない」

御坂「……」

エンツォ「ダンテとトリッシュは?」

レディ「知らない。あの子に聞けば?」
レディと呼ばれた女が御坂の方に目を向けた。

御坂「…!」

エンツォと呼ばれた小太りの男がノソノソと事務所内に進み、
下品な笑みを浮かべながら御坂に近付いてくる。

エンツォ「へへへ、なあおチビちゃん……」

御坂「……」
チビにおチビちゃんと呼ばれ少しイラっとする。

御坂の前髪から、それ以上近付くなとでも言うかのように小さな電撃がエンツォの足元に放たれた。

エンツォ「ひぃいいい!!!す、すまん!!悪かった!!!」
跳ねるようにエンツォは数歩後ずさった。
235 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/28(水) 00:02:43.85 ID:Q.OOMDg0
御坂「な、何っ?」
あからさまな嫌悪感を浮かべた顔でエンツォに言葉を放った。

エンツォ「……ダンテとトリッシュはど、どこかな?」
レディと違い、この男の英語は汚くて少し聞き取りづらい。

御坂「出かけた」

エンツォ「そうか……いつぐらいに帰って来る?」

御坂「知らない」

エンツォ「ああ……ったく何だよ…早く来いって言っておきながらよぉ…」

エンツォがブツブツと不満を漏らした。

エンツォ「あのアマ……なんでこうどいつもこいつも…」


トリッシュ「何?文句ある?」


エンツォ「うひぃいあああ!!!!」
エンツォの背後にいつの間にかトリッシュが立っていた。
236 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/28(水) 00:06:40.42 ID:Q.OOMDg0
御坂「ト、トリッシュさん!!この人たちは…!」

トリッシュ「ああ、心配しないで。知人だから」

エンツォ「な、なあ、そのお嬢ちゃんなんなんだ?アンタの親戚か?」

トリッシュ「違うわよ。人間よ。訳ありでね」

レディ「……能力者ってやつ?」

トリッシュ「そう」

レディが雑誌を後ろに放り投げ、ビリヤード台から跳ねるように降りて御坂の方へ向かった。
そしてズイッと彼女を覗き込み、珍しそうにジロジロ見た。

御坂「……ッ!!な、な、な…」

レディ「へぇ〜……電気使い?」

御坂「そ、そうだけど」

レディ「どんくらい使えんの?」

御坂「えっと……大体10億ボルトくらいの…」

レディ「すっごいわね。人間の癖してそこまでできるなんて。私も能力者になりたいわ」

御坂「……?」

レディ「私も人間。よろしくね電気使いちゃん」
237 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/28(水) 00:09:01.69 ID:h.jmYgko
さすがエンツォwwwwww
238 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/28(水) 00:14:46.87 ID:Q.OOMDg0
エンツォ「へっはぁ〜すげえな、能力者って始めて見たぜ」

トリッシュ「あなたはあんまり見ないほう良いんじゃない?」

トリッシュ「この子気味悪がってるわよ」

エンツォ「お、おい!それどういう意味だ!!この野郎!!」

トリッシュ「いいから来て」

エンツォ「うおいっ!」
トリッシュがエンツォの襟を引っ張り机の方へ連れて行く。

低身長小太りのエンツォと高身でスレンダー(出るところはかなりでているが)なトリッシュ。
それはまるで教師が肥満の生徒を引っ張っていくような光景だ。

エンツォ「わぁったからよ!」
エンツォがトリッシュの手を振りほどき、机の上に大きなトランクを載せた。

トリッシュ「見せて」

エンツォ「おうおう」
エンツォがトランクのいくつもある複雑な厳重なロックを手馴れた手つきで外していき、開けて広げた。

御坂「?」
その中には、不気味な光沢を放つ奇妙な金属の塊、
古めかしい分厚い本、

そして妙な模様のある黒い拳銃が入っていた。

トリッシュ「ありがと」
トリッシュが金属の塊を手に取り、点検するように眺め机の上に置いた。
次に本を手にとってペラペラと捲り、机の上に置いた。

そして最後にその拳銃を手に取った。
239 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/28(水) 00:19:33.91 ID:Q.OOMDg0
M1911コルトガバメントを改造した物だ。
通常の物よりも銃身とスライドが長く、そして肉厚になっている。
一見するとダンテのエボニーに似ている。
あれよりも一回り小さいが。

表面は黒く滑らかで、黒曜石のような光沢を放っていた。

スライドの側面には木の枝のような銀色の紋様、
そしてその『枝』の先、銃口あたりには十字を二つ重ねたような、
『光の輝き』をあしらったようなこれまた銀色の紋様。

トリッシュ「へぇ…」
トリッシュはその銃のスライドを引き、マガジンを出し入れし、左手を真っ直ぐ伸ばして構える。

エンツォ「へへへ、どうだ?」

トリッシュ「ええ。さすがロダンね。良い仕事するわ」
そして引き金のところで手馴れた手つきでクルクルと西部劇の一幕のように回した。

レディ「見せて」
御坂の傍に立っていたレディが興味津々の顔をしてトリッシュとエンツォの方に歩いていった。

トリッシュがその拳銃をレディに差出す。

レディ「……」
レディが重そうに受け取った。

レディ「へぇ…良い銃だけど…」

レディ「相変わらずあんた達が使うのって重いわね。どっち?ダンテの?」

トリッシュ「違うわよ。あたしでもダンテでもない」
240 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/28(水) 00:24:50.91 ID:Q.OOMDg0
レディ「じゃあ?使い魔に持たせるとか?」

トリッシュが顔を横に振った。


トリッシュ「とある坊やにね」


レディ「何?あんた達子供でもできたの?」

トリッシュ「……あなた殺すわよ」

トリッシュ「『居候君』のよ」

御坂「……!!!」
御坂はピンと来た。

恐らく、いや間違いない。
トリッシュが言う居候君・坊やとは一人しかいない。


つまりあの銃は上条に―――。


御坂「(あいつの……!)」

トリッシュ「……」
その時、トリッシュが宙を見つめて動きを止めた。

トリッシュ「ちょっと待ってて。今ダンテ達を迎えに行ってくるから」
241 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/28(水) 00:28:28.43 ID:Q.OOMDg0
トリッシュは銃を机の上に置き、黒い円に沈んでいった。

レディ「ダンテ『達』?」

と、10秒ほどでトリッシュと共にダンテが戻ってきた。
ダンテの肩には『いつも通り』血まみれでのびている上半身裸の上条。

御坂「お、おかえり!!!」

ダンテ「おう」

ダンテ「お前らも来てたのか」
ダンテがレディとエンツォを見る。

エンツォ「ようダンテェ!!……ってその坊主はなんだぁ?」

レディ「へぇ……その坊や?」

トリッシュ「そう」

ダンテ「ちょっと待ってろ」
ダンテがバスルームの方に向かっていき、御坂がその後を小走りで追っていった。
242 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/28(水) 00:31:24.10 ID:Q.OOMDg0
開かれたバスルームのドアからシャワーの音が聞こえる。

レディ「で、あの坊や、何?」
机に腰掛け、置かれている銃を指で撫でながらトリッシュに問う。

トリッシュ「まあ、ベオウルフと人間の相の子、ってところね」

レディ「ベオウルフ……ああ、二ヶ月前の例の子ね。ダンテから聞いたわよ」

トリッシュ「そうそう」

エンツォ「……なんだぁ?もしかして『ここ』の新しい従業員にでもすんのか?」

トリッシュ「さぁ。どうかしら」
トリッシュがニヤリと笑った。

「ぶほぁ!!!!げほッ!!!げはぁっ!!!」

バスルームから少年のものと思しき咳が聞。

ダンテ「トーリーッシュ」
続けてダンテの声。

トリッシュ「はいはい」
トリッシュがバスルームに向かった。
243 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/28(水) 00:34:11.20 ID:Q.OOMDg0
ダンテがバスルームから出て、エンツォとレディのいる机の方へ歩いてくる。

バスルームからはトリッシュに続いて上半身裸の上条と御坂が出て、
そのまま地下室へ続く階段の方へ向かっていった。

レディ「何してんの?」

ダンテ「『育て』てる」
ダンテが机の上にある新品の銃を手に取り、点検するように眺めながら答えた。

レディ「悪魔化させんの?」

ダンテ「まあな。それで終わりじゃねえが。最終的には人間に戻すのが依頼内容だ」

エンツォ「?じゃあさっさと悪魔の部分殺せば良いじゃねえのか?おめぇの剣ブッ差したりしてよ」

ダンテ「それができねえからこうしてんだろ」

レディ「魂ごと融合してんだって」

エンツォ「……それって…無理じゃねえのか?『悪魔を人間に転生』させるなんざ聞いたことねえぜ?」

ダンテ「転生じゃなくひっぺ剥がす」
244 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/28(水) 00:37:20.07 ID:KNo8EMAO
ダンテ「転生じゃなくひっぺ剥がす」バリバリ
245 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/28(水) 00:37:35.12 ID:Q.OOMDg0
エンツォ「それじゃあますます無理じゃねえか。どうやるつもりなんだよ」

ダンテ「だから今その方法を探してんじゃねえか」
ダンテが持っていた銃をエンツォに向けた。

エンツォ「……うぉッ!!!な、何すんだよ!」
弾は入って無いが、さすがにいきなり銃口を向けられると驚いてしまう。

ダンテ「イイ銃だ。ロダンに礼言っといてくれや。近い内に店に顔出すともな」

エンツォ「おおう、そうだ」
エンツォがコートのポケットからくしゃくしゃの紙を取り出した。

エンツォ「その銃の仕様だ」

ダンテがその小さな紙切れを受け取り、鼻を鳴らしながら眺めた。

この銃はダンテがロダンに注文した物だ。

ダンテのエボニー&アイボリーをモデルとし、
ベオウルフの力に耐えられる、またベオウルフの力でブーストできるように、
そして秒間10発の連射に耐えられるように とだ。

つまりダンテのエボニー&アイボリーの下位互換だ。
ちなみに出来上がった現物は15kg程、ダンテのエボニー&アイボリーの約半分の重さだった。

当然、自動装填の術式も組み込まれている。
上条に使わせる場合は右手で触れないようにさせなければならないが。
246 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/28(水) 00:40:29.42 ID:.eYDzF.0
>>244
やめて!
247 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/28(水) 00:41:18.17 ID:Q.OOMDg0
ダンテ「いいじゃねえか。最高だぜ」
仕様書を眺めながらダンテが笑みを浮かべた。

エンツォ「へへへ……ところでよ…あのよ…」
エンツォが下品な笑みを浮かべて、胸の前で両手をすり合わせる。

ダンテ「いつも通りツケといてくれ。この銃の代金はお前が立て替えとけ」

エンツォ「………へーへー」
まあいつも通りだ。


「んぎゃあああぁぁぁぁぁあああああひぁああああああああんぎいいいいいいいぁあああああ!!!!!!」


地下室の方から突如悲痛な叫びが聞こえてきた。

エンツォ「うおぃっ!!!!!な、なんだよ!!!!」
エンツォが驚き、慌てふためく。

ダンテ「ハハァ、始まったか。なぁにいつもの事だ」

ダンテが気にする風も無く銃を弄る。
手馴れた手つきで分解し、パーツを机の上に並べていく。
248 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/28(水) 00:44:16.03 ID:Q.OOMDg0
レディ「で、具体的に何してんの?」
レディが引き金の部分のパーツを持ち上げ、重そうに手の平の上で転がす。

ダンテ「午前中は俺がぶちのめしてその後にトリッシュが『遊ぶ』」
ダンテが銃身の部分のパーツを顔の前に持ち上げ、覗き込みながら答えた。

レディ「面白そうね。手伝ってあげよっか?」

ダンテ「『どっち』を?」

レディ「当然ぶちのめす方。トリッシュの悪趣味なことには付き合いたくないわよ」

ダンテ「いいぜ。朝10時前に事務所に来い」

レディ「OK」

ダンテ「言って置くがよ、油断すると痛い目に合うぜ?あの坊や結構強くなってるしよ」

レディ「私を誰だと思ってんの?『悪魔も見惚れる』世界一美しいデビルハンターよ」

ダンテ「……」

エンツォ「……ぶふっへっへっへ…」

レディ「何がおかしいの豚野郎。金玉ぶち抜くわよ」

エンツォ「……いや……悪い」
249 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/28(水) 00:47:03.03 ID:X5dFSkoo
レディ可愛いよレディ
250 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/28(水) 00:50:23.01 ID:Q.OOMDg0
地下室のドアが開く音がする。
そして見るからに機嫌が良いトリッシュが戻ってきた。
その後ろにメソメソと泣く上条と、彼を慰める御坂。

ダンテ「よう、楽しかったか?」
ダンテが銃を組み上げながら三人の方へ声を飛ばした。

トリッシュ「最高よ」

レディ「本当悪趣味ね」

トリッシュ「何よ」

ダンテ「つーかよ、お前は今日何の用だ?また暇つぶしか?」

レディ「あ〜……」
例の洋館での件で来たのだ。
なんでもないタダのたわ言かもしれない。だが一応は伝えておいたほうがいいだろう。

レディ「この間ゴートリングを殺したんだけどさ、そいつが死ぬ前に喋ったの」


レディ「『あのお方が再び立つ。我等が王が』って」


ダンテの手が止まった。


ダンテ「………………へぇ」


レディ「……って、ちょっといい?」
レディがホールの隅でゲッソリしてうな垂れている上条に目を向けた。
251 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/28(水) 00:54:55.14 ID:Q.OOMDg0
ダンテ「あ〜、おい!イマジンブレイカー!来い!」
ダンテが手招きをする。

上条がうつろな目でふらふらしながら彼らの所へ向かった。
御坂が上条の背中をさすりながら後に続く。

レディ「へぇ……この子がベオウルフの…」

上条「ど、どうも…」

レディ「はじめましてって、そっちははじめてじゃないわね」

上条「あ…はい…まあ一応」
上条はベオウルフの『記憶』を見た事によってレディとエンツォを知っている。

エンツォ「この坊主もあれか?能力者ってやつか?」

トリッシュ「まあね。能力者で悪魔ってところかしら」

エンツォ「すげえな坊主!!!聞いてるぜ!よくあんな代物とくっついて生きてられんな!」

上条「は、はあ」

エンツォ「で、能力はなんだ!?火とかか!?」

トリッシュ「なんて言えばいいのかしらね……イマジンブレイカーって言って、魔術とか片っ端から消しちゃうの」

エンツォ「……はぁ?」
252 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/28(水) 00:57:47.04 ID:Q.OOMDg0
トリッシュ「レディ。弾一つちょうだい」

レディが腰から銃の弾倉を1本引き抜き、銃弾を一つ押し出して机の上に転がした。

表面に術式が刻まれ、魔術的に強化された破魔の弾丸だ。

トリッシュ「これ、触って」
トリッシュが上条へ言う。

上条「おう」
上条が右手の拘束具の人差し指の部分だけ外す。

そしてその弾丸を人差し指で軽く触った。

すると次の瞬間、銃弾にひびが入りそして細かく砕け散った。

エンツォ「うおおお……まじかよ!!!!」

エンツォがその砕けた銃弾を食い入るように見る。

レディ「へぇ〜おっもしろいわね」

トリッシュ「凄いのよコレ。魔帝の『創造』もぶっ壊しちゃったんだから」

レディ「あ〜そういえばそんな事もいってたわね」

エンツォ「おいおい……マジかよ……すんげえぞそれ……」
253 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/28(水) 01:01:21.19 ID:Q.OOMDg0
レディ「消せる力の量とかには上限は無いの?」

トリッシュ「一応あるみたい。そうね………ダンテが魔人化した時とかの力は無理かしら」

トリッシュ「でも、純粋な力を消すには上限はあるけど、内部の構造をぶっ壊すのには制限は無いみたい」

トリッシュ「魔帝の『創造』だって力を正面から消したんじゃなくて、『方程式』を破壊して崩壊させたような感じだし」

レディ「へぇ〜。原理は?」

トリッシュ「さぁ」

レディ「……」

エンツォ「しっかし……それにしても『ふざけた』力だぜ……お前さん達もアレだが、この坊主も中々やばいじゃねえか」

レディ「ところでさ」

トリッシュ「何?」

レディ「さっきの弾の代金、ちゃんと借金に上乗せしとくから。一発だからって見逃さないわよ」

ダンテ「………」

トリッシュ「………」


―――
254 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/28(水) 01:02:32.05 ID:Q.OOMDg0
今日はここまでです
再開は恐らく今日と同じ時間辺りから
255 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/28(水) 01:08:51.64 ID:NwWL/6ko
べオってエンツォ知ってたっけ?
256 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/28(水) 01:11:05.80 ID:KNo8EMAO
今日も乙でした

ところで親切な人エンツォについて教えてくれまいか。
257 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/28(水) 01:12:20.44 ID:KeCXygMo
>>256
情報屋
258 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/28(水) 01:16:07.90 ID:bXwOVuAo
259 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/28(水) 01:17:40.66 ID:KNo8EMAO
>>257
アニメキャラ?
260 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/28(水) 01:18:47.25 ID:Q.OOMDg0
>>255
3終わった後に会ったという事にしています。
それとドラマCDによるとダンテの魔具達は借金の肩代わりということで、
何度もエンツォに預けられていた というところから。

>>256
主に3のコミック版とベヨネッタに出てくる情報屋です。
261 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/28(水) 01:23:49.90 ID:YMezAn60
エンツォはダンテが使ってる情報屋、神谷の設定したキャラだから、
ゲームには出てないけど1の頃から設定上存在してたのは間違いない。
ちなみにダンテが出て来るビューティフルジョーにも↓のセリフのみ出てる

 ダンテに用だって? さあて…獲物を見つけたら、どこまでもスッ飛んで行っちまうからな。
 月で聞いてみたらどうだい? ─情報屋エンツォ・フェリーニョの証言
262 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/28(水) 01:26:57.70 ID:YMezAn60
>>260
乙でした、今後も期待してる
263 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/28(水) 01:28:57.60 ID:7CNaqxQo
264 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/28(水) 01:32:42.50 ID:KNo8EMAO
>>257 260 261
情報サンクス
265 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/28(水) 01:36:08.29 ID:KeCXygMo
モリソンも出て欲しいねぇ
266 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/28(水) 01:36:47.28 ID:h.jmYgko
そしてベヨ姐さんに車を何度も廃車いされてるかわいそうなおっさんww
267 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/28(水) 02:03:57.45 ID:gB2VDIDO
エンツォ・フェリーニョなら1の説明書から登場してる

あとここのセリフで「弾丸が鼻先1インチを通っても眉ひとつ動かしやがらねぇんだ」って言ってるから、
俺のイメージとしては相手の攻撃はその殆んど避けてると思ってる
だからダンテとかネロが再生するのには個人的にかなりの違和感を覚える
268 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/28(水) 06:13:45.98 ID:KXGGilw0
>>267
ダンテ思いっきり串刺しにされて、そのままケロッとしてるじゃんwwwwww
1のopとか。

だから問題ない。
269 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/28(水) 08:47:29.44 ID:DMEz576o
俺のIDおしい
270 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/28(水) 10:43:01.58 ID:bXwOVuAo
Devil May Escape(悪魔も逃げ出す)

ってか
271 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/28(水) 12:39:18.49 ID:EyErTog0
>>270
だれうまwwwww
272 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/28(水) 13:15:17.16 ID:AbG3MgDO
これ読んでて、面白そうだから買おうと思うんだが、初心者に優しいのってどれ?
3のSE?
273 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/28(水) 13:50:03.07 ID:TUL.IASO
今買うなら3SEがお得
バージルも使えるし、難易度も控え目からある
でもトリッシュは出て来ないよ
このSSに出てるキャラの雰囲気見るなら4の方がいいかも(兄貴以外全員出てるし、SS自体4ベースだし)
274 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/28(水) 16:57:30.18 ID:AbG3MgDO
>>273
サンクス
275 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/29(木) 00:52:27.34 ID:eDZfa.AO
今日は無しか?
276 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/29(木) 01:12:26.90 ID:z1OU9kA0
のんびり待とうや
277 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/29(木) 23:09:04.39 ID:OPQrPOg0
―――

学園都市。

とあるマンション。
時刻は夜中。
黄泉川と芳川、そしてインデックスと打ち止めは奥の寝室で並んで寝ている。

リビングの中は静かだった。
ただ聞こえるのは、缶コーヒーをすする音。

一方「……」
一方通行は缶コーヒーを左手に持ちソファーに座っていた。

そしてもう一人。

机を挟んで一方通行の向かいの椅子に座っている赤毛の長身の男。

ステイル。

彼もまた一方通行と同じ銘柄の缶コーヒーを飲んでいた。

ステイル「……そうだな…はっきり言っておこう」
ステイルが手に持つ缶コーヒーに目を落としながら、神妙な面持ちで静かに呟いた。

一方「……なンだ?」


ステイル「これはコーヒーとは言えない。泥水だ」


ステイル「日本人にありがちだけどね、何でも缶に詰めれば良いってもんじゃないんだよ」

一方「るせェ」
278 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/29(木) 23:13:49.11 ID:OPQrPOg0
ステイルはインデックスの様子を見に来たのだ。
一方通行とステイルは直接会話したことは無かったが、二ヶ月前の事件の後、お互いを病院で何度か目にした。
それにステイルは彼が『学園都市最強』のレベル5第一位というのを知っていた。

彼はいきなりこのマンションに押しかけて来たが、インデックスの友人という事もあって黄泉川は快く家にあげ、
一緒に夕食まで食べたのだ。

ステイルは誰とも馴れ合わない気質だが、黄泉川や芳川はそんな人物を相手にするのは慣れっこだ。
それにステイルも少し上機嫌だった。

インデックスが彼を親しい『友人』のように出迎えてくれたのだ。
彼女が記憶を失ってから、ステイルはあくまで良くて『知り合い』だった。

だが二ヶ月前、ステイルが命を捨てかけてまでインデックス救出の為に戦った事により、
インデックスの中でステイルの株がかなり急上昇していたらしい。

そんな事で、同僚や部下達が見たら、気持ち悪がってしまうほど柔らかい表情でステイルはすごした。


ステイル「とまあ……それはさておき…彼女の件だが…」

一方「……俺は保育士じゃねェ。サービスの文句は受付ねェぞ」

ステイル「いや、今回はただの確認さ。特に文句も無い」

一方「……」

ステイル「彼や土御門が信頼しているのなら構わないんだけどね」

ステイル「彼女を預けるのなら一度直で会っておかないとね」

一方「……へェ」
279 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/29(木) 23:18:11.76 ID:OPQrPOg0
ステイル「まぁ、君も『それなり』に強いらしいし任せるよ」

一方「……」
そのステイルの言葉で一方通行の眉毛がピクリと動いた。

一方「テメェ……今『それなり』ッつッたな?」

ステイル「それが?この僕が認めたんだ。喜びなよ」

一方「ヘェ。そいつはありがてェ。ガリガリのマッチ棒野郎に認められるとはよォ。俺も随分とエラくなッたもンだ」

その挑発的な言動を聞いてステイルの眉毛もピクリと動いた。

ステイル「僕も本当は信じられないんだけどね。こんな色白のモヤシ野郎が学園都市最強だなんて」

痩せているのはお互いサマなのだが。


一方「そォかいじゃァそのお日サマみてェな頭にねじ込んでやろうかァ?今なら地球の自転ベクトルもプレゼントしてやるぜェ」


ステイル「僕も君を少し焼いてあげようか。こんがり小麦色にね。特別に超新星爆発並のサービスしてあげるよ」


一方「……」

ステイル「……」

二人は小さく笑みを浮かべたまま、笑っていない鋭い目をお互いに向けた。
280 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/29(木) 23:21:05.36 ID:OPQrPOg0
一方通行は風の噂(主に土御門)により、このステイルが悪魔化した炎使いだと言う事は知っている。
ステイルもまたこの一方通行が、『学園都市最強』の名を冠するに相応しい力を持っているというのは知っている。

だがお互いが二ヶ月前に、誰とどのように戦ったかという事までは知らない。


二人とも戦略兵器級、それこそ小国程度なら一人で滅ぼせる程の力を持っているのは自覚している。
そしてその強さが自分の存在証明でもある。

力にある意味固執しているそんな二人が、それも他人を貶すような態度がナチュラルである彼らが、
こうして二人っきりになるといがみ合うのも当然だ。

黄泉川からすれば正に思春期のガキのガンの飛ばしあいに見えるだろうが、
そのガキ達の力は戦略兵器級なのだから困ったものだ。

二人ともこうして実際に話してみて確信した。
『こいつはいけ好かない』と。

ステイル「……まぁ…」

一方「……アァ」

ステイル「こんぐらいにしておこう」

一方「だな」

だが二人はある方面ではそこらの大人よりも『熟成』している。
二人とも『戦場』が日常の者だ。

一時の感情や衝動に身を任せるのは『戦士』として失格だ。
そんな事をする者はただのケダモノなのだ。

まあ二人ともたまに大事な者を守る為に『ケダモノ』になってしまう事があるのだが。
281 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/29(木) 23:21:08.56 ID:eDZfa.AO
待ってた!
282 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/29(木) 23:21:34.99 ID:gYpYo8.o
缶コーヒーって外人ウケ悪いのか?
英語の講師いわくかなり美味しいらしいが
283 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/29(木) 23:30:10.93 ID:OPQrPOg0
ステイル「……とにかく、任せるよ」

ステイル「報告はそっちでもしているだろうが、『サブ』として土御門にも報告してくれ」
ステイルが缶コーヒーを口に運びながら言う。

一方「アァ」

ステイル「……それにしてもマズイなこれは」
手に持っていた缶コーヒーを見ながら眉間に皺を寄せる。

一方「チッ……じゃァ飲むんじゃねェよクソが」

ステイル「ああ、悪いね。せっかく出してもらったのに。ちゃんと飲みきるよ」

ステイル「社交辞令さ。イギリス紳士は礼を守らなきゃね」

一方「それを言ッてんじゃねェよ。おしゃべりな野郎だぜ」

ステイル「ああそうそう、一つ言っておくよ」

一方「アァ?」

ステイル「彼女『には』手を出さないでおくれよ?」


ステイル「もし手を出したら少なくとも僕と天草式の『天使』が君を殺しに来るよ」


一方「……」
一方通行の頭の中に、サングラスをかけた金髪のアロハシャツの男の顔が浮かんだ。

一方「……………(土御門の野郎…ぜッてェいつか殺す)」


―――
284 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/29(木) 23:32:29.98 ID:tvc0QCI0
にはwwwwwwww
285 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/29(木) 23:35:51.34 ID:OPQrPOg0
―――

事務所デビルメイクライ。

レディとエンツォが帰った後、
ダンテ、トリッシュ、上条、御坂は一階のホールで遅めの昼食をとっていた。

机の上には三枚のピザ。
ダンテは椅子に座り、背もたれに思いっきり寄りかかりながら、
上条と御坂は近くのソファーに座ってピザを食べていた。

トリッシュも机に軽く腰掛け、ピザを摘んでいた。

ダンテ「……」

トリッシュ「どういうことかしらね」

ダンテ「さぁな」

ダンテとトリッシュは、先ほどレディが伝えてきたとある悪魔の最期の言葉について話していた。

レディは 死ぬ間際のうわ言かも と言っていたが、完全に無視することはできない。
その言葉を放ったのが高等悪魔ならば尚更だ。

上条と御坂はピザを食べながら黙って二人の話を聞いていた。

トリッシュ「まあ、復活はありえないわよね」
286 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/29(木) 23:37:33.98 ID:gYpYo8.o
>>282はやっぱなしで
考えてみたら講師アメリカ人だったわ…
287 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/29(木) 23:40:19.33 ID:OPQrPOg0
ダンテ「多分な」

トリッシュ「多分って何よ。あなた達が止めを刺したんでしょ?」

ダンテ「ああ。全部吹き飛ばしたぜ。木っ端微塵で跡形もなくな」

トリッシュ「本当に?」

ダンテ「ウソはいわねえ。魂は完全に消えた。あのクソ野郎は完全に死んだ」

トリッシュ「……魂はね……でも『力』がどこかに残ってたら?」

ダンテ「んなもんどこかにあったって使えるやつなんざいねぇだろ」

トリッシュ「あなたぐらいなら使えると思うけど?」

ダンテ「……」

トリッシュ「バージルも。ネロもギリギリ使えるわね。あと封印されてる覇王とかも」

トリッシュ「魔界の大悪魔達の中にも何人かいるかもしれないわね」

ダンテ「使う奴がいたらまた叩き潰す。それで文句ねえだろ」

トリッシュ「……」

ダンテ「つーかあんくれぇの力なんざ残ってたら目立ちすぎてすぐに気付くだろ」
288 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/29(木) 23:44:59.17 ID:OPQrPOg0
トリッシュ「……形を変えて残してたら?」
トリッシュが上条の右手を見た。

魔帝の『創造』に触れ、それを破壊した右手を。

トリッシュ「例えば……『力』ではなく『情報』として。『記憶』とか」

ダンテ「……へぇ」

上条「……ん?」

トリッシュ「案外近くにあったりして」

ダンテ「……面白え」

トリッシュ「まあ、忘れて。ただの一人言」

ダンテ「気にすんな。こっちの話だ」
ダンテも上条を見ながらニヤリと笑った。

上条「……お、俺の事か?」

ダンテ「何でもねえ」

トリッシュ「忘れなさい。ま、そのうち喋ってあげるから」

トリッシュ「今やる事に専念しなさい」

上条「お、おう……」
289 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/29(木) 23:47:27.92 ID:OPQrPOg0
ダンテ「そうだ、坊や」
ダンテが上半身を起こし、机の上にある黒い銃を手に取った。

そして引き金の部分に指をかけクルっとまわし上条の方に差し出した。

上条「……へ?」

ダンテ「ほれ」

上条「あ、ああ」

上条が不思議そうな顔をしてソファーから立ち上がり、
机の方に行きその銃のグリップを左手で恐る恐る握った。

ダンテ「どうだ?」

上条「どうって……?」

ダンテ「お前のだ」

上条「………………はぃいいい?!!!!」

御坂「(やっぱり……!!)」

ダンテ「お前がこれから使う。名前でもつけてやんだな」
290 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/29(木) 23:50:22.47 ID:OPQrPOg0
上条「……ナ、ナゼ?」

ダンテ「あった方が色々便利だぜ?楽しいしよ」

ダンテ「スパイスだスパイス」

上条「……………」

トリッシュ「ダンテからプレゼントなんてそうそう貰えないわよ。おめでと」

上条「…………ハ、ハイ…」

上条はその左手にある銃を顔の前に持ち上げまじまじと眺める。

ダンテ「あとよ、生身の右手で触るなよ?」

上条「へ……?」

ダンテ「装填用の術式が剥げる。術式がねえと一瞬で弾が切れんぜ」

上条「そ、そうか……でも俺、銃の使い方なんか…」

ダンテ「教えてやる」

トリッシュ「ああ、そうそう、明日特別講師が付くから」

上条「?」
291 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/29(木) 23:50:30.68 ID:IJJMgdAo
きてたのねーーー!
292 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/29(木) 23:53:23.98 ID:LwAXesgo
ババアwwwwwwww
293 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/29(木) 23:55:16.62 ID:OPQrPOg0
ダンテ「お前が『知ってる』奴だ。会ったことはねえけどな」

上条「……は、はあ」

御坂「ま、まあよかったんじゃない?、ほ、ほら、それも結構サマになってるし!」

上条「そ、そうか?」
上条が戸惑いと嬉しさが混ざった笑みを浮かべる。

御坂「でさ、ところで……一つ良いかな?……」
御坂が何か言いたそうにもじもじする。

トリッシュ「どうかした?」



御坂「そ、その……あたしも……欲しいかな〜って…」



御坂が上条の銃をチラチラ見ながら小さな声で言った。

トリッシュ「……」

ダンテ「…………何言ってんだお前?」
294 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/29(木) 23:59:55.37 ID:OPQrPOg0
※訂正 >>293の一行目「会ったことはねえけどな」の部分は無かった事にしてください。


御坂「あたしも……何か……そ、その、あたしはそういう為にここに来てるんじゃないのは知ってるけど…」


トリッシュ「……」
トリッシュは二ヶ月前の事を思い出した。
御坂はブリッツをダンテの銃を使って一撃で屠った。

この少女は確かにかなりの力を持っているが、戦闘時はほとんど無駄にしているようだった。
ダンテの銃のように、力を無駄なく束ねて一点集中できる物があればかなり戦い方も効率化されるだろう。

ダンテ「……」
ダンテもまた思い出した。
この少女はダンテの知る限り、『強い』のがかなり好きらしい。

はっきり言うと戦闘狂の気がある。


この間の地下駐機場のときもアラストルを手にしてかなり喜んでいた。
(ちなみにアラストルはまだ見つかっていない)

それに、この少女は上条の傍にいて彼を守りたいからとにかく強さを欲しいのだろう。
上条の横で並んで戦いのだ。

御坂「お願いします!!!お願い!!!」


ダンテ「……あ〜」
295 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/30(金) 00:03:31.43 ID:jDb3X/w0
トリッシュ「……」
トリッシュがダンテの顔を見る。

トリッシュ「いいんじゃないの?パパって作ってあげれば?」


御坂の子猫のような目を見てダンテが手を広げた。

ダンテ「あ〜……しょうがねえな」


御坂「!!!!」
御坂の顔がパーッと明るくなった。

ダンテ「だがわざわざロダンに注文はしねえ。俺があり合わせで作るからそれで我慢しな」

御坂「うんうん!!!お願いしますッ!!!!」

ダンテ「あと弾は自分で買え。レディから」

御坂「?レディってさっきの…」

トリッシュ「あなたは悪魔じゃないから弾頭強化出来ないでしょ?」

トリッシュ「チタンとかで強化したのでも別に良いけど、レディに術式で強化してもらった弾の方が安いと思うわよ」

トリッシュ「そっちの方が悪魔には効果抜群だし」

ただし、比べると安いというだけだ。

その分野のスペシャリストが一発一発術式を刻んで作る破魔の銃弾だ。
普通の弾よりは遥かに高い。
296 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/30(金) 00:05:26.06 ID:jDb3X/w0
ダンテ「明日もあいつ来るからそん時に話しな」

上条「(明日?特別講師ってレディさんか?)」

御坂「は、はぁ…」
少ししか話していないが、あの女はなんか苦手だ。
まあこの感覚は、初めてダンテと会った時も味わっのだから一時的なものだろうが。

トリッシュ「お金はあるんでしょ?レベル5はお金持ちって聞いたけど」

御坂「ま、まあそれなりには……」

ダンテ「油断するなよ」

御坂「へ?何が?」

ダンテ「ぼーっとしてるとよ、全部搾り取られるぜ」

御坂「?」


―――
297 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/30(金) 00:12:22.54 ID:jDb3X/w0
―――

四人で遅めの昼食を食べた後、
トリッシュはいつも通りフラッとどこかに行き、
ダンテは上条の銃を調整・御坂の武器を作るために仕事部屋に篭り、
上条は軽く御坂と談話した後自室で昼寝していた。

そして御坂は自分の部屋で洗濯物を畳んでいた。

コインランドリーに置いてあるような大型の洗濯機で上条と自分自身の服を洗い、
一番日当たりの良い御坂の部屋で干していたのだ。

当初は上条の服をいちいち手にとっては頬を赤らめてボーっとしていたが、
今はテキパキとこなせるようになった。

相変わらず少し頬を赤らめているが。

ちなみに妹達には
『所帯じみて来ましたね』とか『一つくらいパンツ盗んでもわかりませんよ』
『匂い嗅がないんですか』などなど好き勝手な事を毎晩言われている。

本音を言ってしまえば嗅いでみたいのだが、
それをやってしまうと越えてはいけない一線を越えてしまいそうな気がするのだ。
身近に、その一線を越えてしまった、彼女を「お姉さま」と慕うツインテールの少女等の良い例がある。

それに妹達も見ている。
これ以上『姉』としての威厳を落とすのは御坂のプライドが許さない。

御坂「よしっ…と」

二人分の服を畳み終え、積み上げられている上条の服を見ながら表情を引き締めた。

御坂「じゃあ…行きますか」

上条の服を持ち、立ち上がり部屋を出る。
そしてすぐ隣のこの服の主の部屋の扉の前で立ち止まり、一度深呼吸した後軽くノックをした。
298 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/30(金) 00:15:58.78 ID:jDb3X/w0
御坂「……」
上条はこの時間はいつも爆睡している。
当然返事は返ってこない。

御坂「お、お邪魔します」
御坂がゆっくりと扉を開けた。

案の定上条はベッドで仰向けに大の字になって寝ていた。

御坂がおずおずと、上条の寝顔をチラチラと見ながら部屋に入る。

御坂「……」
御坂は扉を静かに閉めた後、真っ直ぐと上条の所へ直行した。
そしてベッドの脇へ洗濯物を下ろし、自分も屈んだ。

上条の寝顔をじっくり眺める。
これもは『日課』だ。

御坂「……」
御坂の頬が徐々に赤くなっていく。
これもまた『日課』だ。

そして上条の頬を人差し指で軽くつついた。
これは五日前から増えた『日課』だ。

御坂「(……やっばいって!!ひょおおおおおお!!やばいやばい!!!)」
御坂は声を出さぬままその場でわたわたとはしゃぐ。


上条「んん………」
上条が少し動く。

御坂「(やばい!!!!まじやばいって!!!!!!!あばばばbあmhskkk)」

こうして数十分すごした後、御坂は上条の服をぼろいクローゼットにしまう。
そしてまたベッドの横に座って上条を眺めたり軽く触ってすごす。

これが上条が昼寝している間の御坂の日課だ。
299 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/30(金) 00:18:46.11 ID:jDb3X/w0
上条の服もしまい終わり、後は上条が目覚めるまで彼の寝顔を眺めるだけだ。
御坂はベッドの横にすわり、両肘をベッドの上に乗せる。

御坂「……ふにゃ〜」
ジーっと小さな寝息を立てている少年の顔を見つめる。
ずっとこうしていてもいいくらい幸せな時間だ。

その時。上条がもぞもぞと体勢を変え始めた。

御坂「!!」
一瞬起きたかと思い驚いたがそれは違ったようだ。
そしてそれよりも、この直後に上条が発した寝言の方が御坂の心に強く刺激を与えた。


上条「……イン……デックス」


御坂「……」
その言葉を聞いて御坂の表情に少し影が落ちた。

御坂「……うん。そうだよね」

わかっている。
この少年があの少女の事をどう想ってっているのかなど、端から見れば一目瞭然だ。

御坂「……」
だがそんな事は重々承知だ。

確かに悔しいが、それはもう覚悟して自分でも納得している事だ。
300 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/30(金) 00:21:10.06 ID:jDb3X/w0
それこそ上条がこっちに振り向いてくれれば最高だが、
今はこうして傍にいられるだけで充分だ。

御坂は上条の顔を見て穏やかに微笑んだ。
一瞬差していた影が彼女の顔から消えた。

こうやって誰かの為に、誰かを思って迷うことなく試練に飛び込んで突き進んでいく上条が好きなのだ。
自分の事など一切顧みず。

インデックスはもちろん、この少年は御坂の事にも命をかける。

この部分がきっかけで惚れてしまったと言っても過言ではない。

彼は御坂に多くの物を与えてくれた。

想い人であり、そして救世主だ。

御坂「……」
御坂は上条の顔を見ながら、心の中で改めて決意した。

彼が望むのなら、自分もそれを命がけで守る と。
彼の大事なもの全てを、彼が守ろうとするもの全てを守る と。

そして彼そのものを守る と。

その優しい目を、優しい笑みを何が何でも守ると。

例え目を向けてくれなくても良い。

だからその背中の後ろで、横で。

傍で彼とともに戦う と。
301 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/30(金) 00:23:41.41 ID:jDb3X/w0
御坂「……あたしも頑張らなくちゃ!ね!」
御坂は顔を引き締める。

と、その時だった。
いままで上条に夢中なせいで気付かなかったが、
耳を済ませてみると壁の向こうから話し声が聞こえた。

御坂「……?」
ダンテの仕事部屋の方からだ。

今トリッシュはいないはずだ。
では誰と話しているのだろうか。

御坂「……」
あまり良い事ではないが、御坂は聞き耳を立てた。

何やら低い声が聞こえる。

御坂「……」
耳に集中する。

会話の内容が徐々に聞こえてきた。

『なるほど』

『なるほど』

最初は一人の声だと思っていたが、よくよく聞いてみると
同じ声の『二人』の者が喋っているようだった。

『ダンテも優しい』

『優しいダンテ』

『小娘に銃を手作りとは』

『銃を手作りとは』


「お前等しゃべんなつってんだろ」
そしてダンテの不機嫌そうな声。


御坂「……?」
302 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/30(金) 00:26:07.20 ID:0JAuCBYo
懐かしい奴らがでてきたなwwww
303 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/30(金) 00:26:46.72 ID:wDICuoE0
アグニルドラwwwwwwww
304 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/30(金) 00:27:23.88 ID:jDb3X/w0
『我は前から思っていた』

『我も思っていた』

『『ダンテは本当は優しいのだ』』


「うるせぇ」


『認めぬのか?』

『認めるのだ』

『主自身が気付かない点を』

『指摘し』

『気付かせるのも』

『『我ら忠実なる僕の使命』』


「黙れつってんだよ。つーかお前ら何でここにいんだよ」


『それは主が』

『我等を』

『『呼んだからだ』』


「それ二ヶ月前の話だろ」
305 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/30(金) 00:34:13.28 ID:jDb3X/w0
『何?』

『何だと?』

『だが確かに』

『そうだ確かに』

『『あれは二ヶ月前』』


「さっさと帰れ」


この双子の魔具は借金の肩代わりではなく、
ダンテがあまりのうるささに耐えかねてエンツォに売ってしまったのだ。

その為、ダンテが使わない時はいつもエンツォの倉庫の奥底に閉じ込められていた。

だが二ヶ月前に久々に召喚されたのが相当嬉しかったのだろう。
そのままデビルメイクライに居ついているという訳だ。

ちなみに買い取ったエンツォも特に文句は言ってこない。

むしろ厄介払いが出来たと喜んでいた。

なにせ主の命令もろくに聞かないのだ。
エンツォの指示で静かになるわけが無い。
306 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/30(金) 00:36:19.69 ID:jDb3X/w0
『あの時』

『我等は』

『数年ぶりに』

『『ダンテに召喚されたのだ』』


「いい加減にしねえと換気扇とガスコンロ代わりに使うぞ」


『そしてダンテは』

『我等を手に持ち』

『『振るった』』

『なんとも』

『なんとも』

『『甘美なひとときだったことか』』

『あれはs


「うるせぇ黙れいい加減しろやてめぇら」


次の瞬間、固い金属同士を強くぶつける音が壁越しに聞こえた。


「No talking.」


続くダンテの声。
そして静かになった。

御坂「……」

―――
307 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/30(金) 00:37:41.48 ID:jDb3X/w0
今日はここまでです。
明日はちゃんと夜11時頃から投下できます。
308 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/30(金) 00:40:04.11 ID:gQZlKG2o
309 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/30(金) 00:40:13.16 ID:JzWm8R.0
アグニルドラ相変わらずすぎるwwwwww
310 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/30(金) 00:45:31.77 ID:NQhyGgSO

健気よのう
311 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/30(金) 00:48:00.96 ID:g8rXzEAO
乙!
やっぱダンテとアグルドの絡みっていいなww
312 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/30(金) 02:03:48.73 ID:u4x0aNQ0
(´ω`)ノシ 乙!
313 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/30(金) 02:26:16.74 ID:.vrZPew0
つかアラストルwwwwwwwwまだwwwwww迷子wwwwwwwwwwwwww
314 :あぼーん :あぼーん
あぼーん
315 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/30(金) 04:01:34.44 ID:zKWVXYco
乙!
316 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/30(金) 23:09:59.35 ID:/Ck3yMAO
うおおおおおおおお待ちきれねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
317 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/30(金) 23:22:04.95 ID:g8rXzEAO
ダンテェ…
318 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/30(金) 23:24:58.13 ID:jDb3X/w0
―――

翌日。

ネバダ砂漠のど真ん中。

地面に仰向けに倒れている上半身裸の上条。

上条「ぐふッ…いってぇ……」

その上条から20m程離れた場所に、ニヤつきながら立っているダンテ。

そしてその二人から40m程離れた所にある岩に座っている御坂とレディ。
二人はダンテと上条の組み手を眺めていた。

上条が立ち上がり、ダンテに再び突進し攻撃する。
それをダンテは軽々といなしかわし、上条を一方的にぶちのめす。
そして上条はまた地面に倒れる。

その繰り返しだ。

上条が倒れるたびにそれを見ている御坂の体もビクンと跳ねる。
大丈夫なのはわかっているのだが、さすがに想い人が何度も何度も半殺しにされるのを見るのは少々キツイ。

だが御坂は目を背けようとはしなかった。

試練に立ち向かう上条を見守るのもまた彼女の義務であり、そして彼女自身が決意したことだ。
(さすがにまだトリッシュの『検査』を見る勇気は無いが)
319 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/30(金) 23:30:35.67 ID:jDb3X/w0
御坂「……うひぁ…」

レディ「へぇ〜。タフねあの坊や」

レディはあの二人を眺めながら少し懐かしい気持ちになった。
かつて、若かりし頃自分もダンテにあんな感じで遊ばれたのだ。

あの今の二人のように友好的な関係ではなかったが。

なにせレディは本気でダンテを殺そうとして向かっていたのだから。


もう十数年前の事件の事だ。

その事件の中心地、『テメンニグルの塔』に飛び込んでいく前まで、彼女は己を最強のデビルハンターと自負してた。

だがその自信はあっけなく砕かれた。

次々と現れる、伝説級の神クラスの大悪魔達。
そしてそれを軽々と打ち破っていくスパーダの息子。

悪魔と人間の圧倒的な差を見せ付けられた。
その凄まじい悪魔同士の戦いを見た。

彼女はそれを目の当たりにして恐怖した。
だが彼女は止まらなかった。

その圧倒的な力を見るたびに、恐怖を上回るどす黒い怒りが彼女を覆い尽くした。

あの力を手に入れる為に父は悪魔に転生したのだ。

その『くだらない欲望』のせいで母は生贄にされ殺された。

そんな力なんて、悪魔達なんて全て滅ぼしてやる と。

父を殺し。
悪魔を殺し尽くす。

当然、ダンテ達半人半魔も例外ではない。

その底なしの怒りが当時の彼女の原動力だった。
320 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/30(金) 23:33:17.53 ID:jDb3X/w0
そしてその過程で遂にダンテと直接激突した。

己の持ちうる全ての技と力をダンテにぶつけた。
全ての怒りを叩き付けた。

だがあっさりと完敗した。

戦いが始まってからダンテに当てることができた銃弾はたった一発。

それもダンテはわざと避けようとしないで額で受け止めた。

まるで彼女のと憎しみと怒りを知り、それを全て正面から受け止めるかのように。
お前の苦しみを全部背負ってやるとでも言うかのように。

彼女の信念に正面から向き合い、あえて徹底的に捻じ伏せた。
彼女の中に渦巻いていた禍々しい思念を吐き出させ、叩き潰したのだ。


最終的に、レディは父を殺害するという目的を己の手で果たした。

だがその直後に流した『涙』。

ダンテが彼女の中に渦巻いていた、負の思念を叩き潰していなかったら、
その儚い雫は落ちていなかったかもしれない。

ダンテに会っていなければ、彼女は底無しの憤怒に身を任せ、どこまでも堕ちていったかもしれない。
そのまま父の遺体を八つ裂きにしていた事だろう。

ダンテが彼女の心を『人間』のまま繋ぎとめたのだ。
321 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/30(金) 23:38:15.45 ID:jDb3X/w0
今も一見遊んでいるように見えて、実はダンテはあの少年を救おうとしている。

欠伸をし、緊張感の欠片も無い舐めたような態度をとり、ヘラヘラと笑う。
『どうでもいい』だの『めんどくせぇ』だの『しるか』などなどの適当な言動。

だがその下、誰にも見せない底の部分では、絶対に揺るがない熱い信念が常に力強く鼓動している。

悪魔的な絶対に揺るがない芯と人間的な強く純粋な情念。
それが見事に融合した、彼の『最強』たる所以の『魂』。

一見何も考えて無さそうであり、全ての行動が行き当たりばったりに見える。

だが蓋を開けてみれば、最初から計算していたのか?と聞きたくなるくらいに、
完璧なタイミングでピースが組みあがっていき、全てが丸く収まりダンテの狙い通りの結末となる。

レディはそんなダンテに神秘性を感じる事が多々あった。

まるで本物の『全能の神』だ。
全ての事象が彼の思い通りに動いているように見えた。

ダンテにそんな事を言ったら鼻で笑われ一蹴されるだろう。

しかし、彼に惹かれる者は皆意識していなくとも、
どこかで無意識の内にそういう目で彼を見ているはずだ。
トリッシュもレディも、あの少年も皆。


レディは常々思う。

ダンテは不思議な存在だ と。


レディは組み手をする二人を懐かしそうな目で見ながら、小さな笑みを浮かべていた。
322 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/30(金) 23:41:04.81 ID:jDb3X/w0
レディ「……全く…相変わらずね」

御坂「…?」

御坂が隣のレディの小さな笑みに気付く。

レディ「何?」

御坂「い、…なんでもない」

レディ「……あ〜そうそう聞いたわよ」

御坂「?」

レディ「私から弾買いたいんだって?」

御坂「あ、うん。ダンテがあたしの作ってくれるって…」

レディ「いいわよ。売ってあげる。口径は?」

御坂「……へぁ?」

レディ「ああ、まだ何も聞いてないのね」

御坂「うん……まだ何も。今作ってくれてる最中らしいけど…」

ふと気付くといつのまにか静かになっていた。

特に汗もかいてない普段どおりのダンテがコートをなびかせて颯爽と、
血と汗と土にまみれたズタボロの上条がヨロヨロと御坂達の方へ歩いてくる。

ダンテ「休憩だ」

上条「ふへぁ……」

御坂がタオルを手にして岩から飛び降り、上条の元へ駆け寄った。
323 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/30(金) 23:46:06.50 ID:jDb3X/w0
御坂「だ、大丈夫?!」

上条「はは、いつもの事だぜ。大丈夫だ」
上条が御坂の手からタオルを受け取ろうとしたが。

御坂「あ、あたしが拭くから!!!!す、座って休んで!!!」
御坂がタオルを持つ手を引っ込める。

上条「おう、いいのか?サンキュ!」

上条は近くの岩へ腰かけ、その前に御坂が屈んで上条の顔を少しぎこちなく拭いていく。

上条「う……お」

御坂「ん……むむ…」

上条「……」

御坂「……」

さすがの上条も、このシチュエーションがどういったものなのか気付く。
二人とも少し目を俯き、ぎこちない。


レディとダンテは少し離れた、大きな岩に寄りかかりながらその二人を眺めていた。

レディ「何アレ?なんか妙にムカつくんだけど」

ダンテ「あ?いつもの事だ。気にすんな。ほっとけ」
324 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/30(金) 23:46:19.22 ID:OlaRFRAo
しかし兄貴が空気ってレベルじゃないな
325 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/04/30(金) 23:46:58.91 ID:jDb3X/w0
レディ「そうそう、あの電気使いに銃を作ってあげてんでしょ?」

ダンテ「まぁな」
ダンテ自身が手作りしているのは、別に御坂の為に特別なのを作ろうとしているからでは無い。

そっちの方が安上がりなのだ。
ロダン等のその線のスペシャリストに発注するとかなりの金がかかる。
ダンテとしては借金が別に増えても良いのだが、トリッシュがうるさいのである。

それに御坂『程度』にロダンが作った業物を持たせても、その性能を100%引き出すことはできないだろう。

そしてダンテは銃弄りが好きだ。そこで娯楽も兼ねて作っている。

レディ「で、口径は?」


ダンテ「12.7x99mm」


レディ「……は?」


ダンテ「大体…そうだな、6,000m/sでも融解しないようにお前お得意の術式で強化」

ダンテ「それと対悪魔仕様で。一発でゴートリングを三体貫けるくらいにしてくれ」


レディ「…………………………あの子に何持たせる気?」
326 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/30(金) 23:47:50.33 ID:uOaU0bgo
パネェww
327 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/04/30(金) 23:48:32.51 ID:g8rXzEAO
この時の兄貴ってもうババアにこき使われてんだっけ?
328 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/04/30(金) 23:49:16.39 ID:OCeoxUDO
バーレット携帯させる気かダンテwwwwww
派手好き過ぎるだろwwwwww
329 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/01(土) 00:00:21.95 ID:g084P7k0
ダンテ「いや、あの嬢ちゃんはもうでっけえ大砲持ってるからよ」

ダンテ「俺はその性能を効率よく引き出せる『銃身』を作るだけだ」

レディ「ベースは?」


ダンテ「ブローニングM2」


レディ「……ぶふッ……デカ過ぎんじゃないの?」

ダンテ「お前あのお嬢ちゃんの必殺技見たらデカ過ぎとは言えなくなんぜ」

レディ「必殺技?」

ダンテ「どうやってんのか知らねぇけどよ、コインを電気で飛ばすんだとさ」

ダンテ「ゴートリングも一発で貫いたぜ?」

レディ「………電気…」
レディが御坂の方を見る。

相変わらず固まっている上条の体を御坂は頬を赤らめながらぎこちなく拭いていた。


レディ「レールガン?リニアモーターガン?コイルガン?」

ダンテ「あ?……お前何喋ってんだ?」

レディ「あ、わからないか」
超ド級の機械音痴のダンテに次世代の技術の事を言っても無駄だ。


レディ「ってあんた原理も知らないで何作ってんの?」

ダンテ「知るかよ。俺は頑丈なのを作るだけだ」

レディ「……」
330 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/01(土) 00:06:20.25 ID:g084P7k0
ダンテ「何だ?何か文句あっか?」

レディ「……なんていうか…本当に相変わらずね…」

ダンテ「まあ後にしようぜ」

ダンテ「おい!!!イマジンブレイカー!!!始めんぞ!!」
ダンテが上条の方へ叫ぶ。

上条「お、おう!!!!」

ダンテ「次はお前だぜ。レディ」
ダンテが岩に肘を乗せて寄りかかりながら頭を傾けレディを見る。


レディ「あ、やっとね。待ちくたびれちゃった」

レディがつかつかと上条の方へ向かい、
御坂が小走りで慌てて離れていていく。


上条「へ?」

レディ「次は私」

歩くたびに体中の装備同士が擦れる音。
そしてレディが上条から20m程離れている所に立つ。
331 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/01(土) 00:10:56.38 ID:g084P7k0
ダンテ「ちょっと趣向と相手を変えてな!いつも同じやり方じゃ飽きちまうだろ?!」
30m程離れた場所の岩に寄りかかっているダンテが声を飛ばす。

上条「……い、いや…」
上条にとって飽きるとか感じる余裕すらない日々だったのだが。

ダンテ「違う戦い方も経験しとけ!坊や!」

上条「お、おう」

レディ「はじめるわよ」

レディ「……」

上条「……」

静かに、向かい合ったまま10秒ほどが経過した。

レディ「何?来ないの?」
レディが不機嫌そうに首を傾げる。


上条「だって……なぁ、レディさん『人間』だろ」

上条「能力者でもねえし…」

上条「もし間違って殺しちゃったりでもしたら……俺まだそういう加減できねえし…」


レディ「……………へぇ」
その上条の言葉でレディの表情が変わった。

空気が凍る。


ダンテ「あ〜……やっちまったな坊や」
ダンテがそのレディの様子を見ながらポツリと呟いた。
332 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/01(土) 00:13:24.79 ID:qNwlELYo
あ、死んだ

上条さん死んだよ
333 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/01(土) 00:14:25.58 ID:g084P7k0
レディ「まぁまぁまぁ……こんなに舐められたの久しぶりね」

レディは相変わらず笑みを浮かべているものの、
さっきまでのふざけたような空気は完全に消えていた。


レディがサングラスを外し、胸元にかける。

凍て付くような鋭いオッドアイの瞳が上条へ向けられた。

上条「うお……あれっ俺なんかしたか……?」
その異様なレディの威圧感に押され上条が少したじろぐ。


レディ「ダンテェェェェッ!!!!」


レディが上条を見据えながら声を張り上げた。
突然の大声で上条がビクっとする。

ダンテ「あぁ?」


レディ「このクソガキさぁ!!!!」


レディ「殺しても良い?!!!」


ダンテ「……まぁ程々にな!!!」



上条「……あれ、俺もしかしてヤバイ…感じ?」
鈍感な上条がようやく自分の置かれている状況に気付く。
334 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/01(土) 00:16:30.38 ID:nxRNycAO
か/み/じ/ょ/う
335 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/01(土) 00:17:11.11 ID:qNwlELYo
はい、おわった! 上条さんのライフまた終わったよ!
336 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/01(土) 00:19:06.26 ID:Gtt1MIDO
魂へのダメージ込みで追い込まれそうだなww
しかしレディがもし学園都市で能力開発受けてたらどうなってんだろう?
337 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/01(土) 00:19:51.92 ID:g084P7k0
先に動いたのはレディだった。

レディが右手を腰のMP5Kにまわし、左手で手榴弾を二つほど、指にピンの輪を引っ掛けるようにして取る。

上条「―――」
レディが目にもとまらぬ速さで、二つの手榴弾をピンを抜かないまま上条の方へ高く放り上げた。
その二つはどう見ても上条の所へ落ちる軌跡ではなく、それぞれ離れた場所に向かって放物線を描いた。

上条「?」
そして次の瞬間、レディの右手のMP5Kから大量の銃弾が放たれた。

上条「―――うぉ!!!」
いきなりだったが、上条は悪魔の感覚で反射的にかわす。

上条「(あれっ……これだけか?)」

上条はひらりひらりと銃弾をかわし、素早く跳ねながらレディへと進む。
サブマシンガン程度の弾速ならば、今の上条にとってかわす事は容易だ。

記憶によれば、レディの身体能力はあくまでも人間のレベル。
破魔の銃弾はかなりの威力だが、避けてしまえばどうってことは無い。

つまりそのまま距離を詰めて近距離戦に持ち込めば勝利 と上条は思っていた。

―――と思っていたのだが。

上条「―――へ?」
気付くと、先ほど宙に放り投げられていた手榴弾が顔のすぐ真横に降って来た。

そしてその手榴弾にレディの銃弾が直撃した。

顔から僅か30cmという至近距離で、尋常じゃないくらいに強化された対悪魔用の手榴弾が爆発する。
338 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/01(土) 00:20:56.59 ID:2xUAcbwo
かみ / じょう
になるのか
339 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/01(土) 00:25:07.46 ID:g084P7k0
無数の破魔の破片と爆風を浴び上条の体が大きく横にぶっ飛ぶ。

上条「んぐぉおおお!!!!」

開始早々ズタボロになった上条の体が宙を舞う。
そして地面に叩きつけられる瞬間。

上条はその地面に見た。

先ほどレディが投げたもう一つの手榴弾が地面に転がっていた。

上条「やっべ―――!!!」
気付いた時は既に遅し。

その手榴弾にもレディの銃弾が食い込んだ。

そして再び至近距離で爆発した。
上条の体が再び宙を舞った。

上条「ぐぁ……」
地面に叩きつけられる。


レディ「なっさけないわね。この程度でも喰らっちゃうなんて」


レディ「さっさと立てやクソガキ」
340 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/01(土) 00:29:05.03 ID:g084P7k0
上条「痛ッ…!!」
体に食い込んでいる破魔の破片が、傷の再生を阻害する。いつもよりもかなり遅い。
体内の力がかき乱される。

世界最高峰のデビルハンターのレディが作った弾なのだから当たり前だ。
悪魔の治癒能力を妨害する機能があってもおかしくはない。
むしろ当然だろう。

そしてさっきの戦術も。
上条が銃弾を避けることを見越され誘導されていたのだ。

完璧に動きが読まれている。完全にレディの手中だ。

数多の死線で培ってきた経験と、鍛え上げられてきた技と感覚。

世界最高峰のデビルハンターの名は伊達ではない。


上条「くっそ……!!ああ、甘く見て悪かったぜ!!!」
上条が口から溢れる血を左手で拭いながら立ち上がる。

レディ「そうその意気。もっと苦しんでもがいて」

上条「……上等だぜッ!!野郎!!!」



レディ「殺してあげる」


レディ「バッラバラにして ね」



レディが心底嬉しそうな、そして不気味な笑みを浮かべた。


上条「……………………い、いや、それはカンベンしてください……さっきの事なら謝りますので…」
その強烈な本物の殺意に上条は完全に押されてしまった。


ダンテ「ま、せいぜい頑張れや。坊や」
ダンテは相変わらずニヤニヤしていた。


―――
341 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/01(土) 00:29:45.65 ID:/l6rIpM0
上条さんオワタwwww
342 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/01(土) 00:35:28.75 ID:g084P7k0
―――


イギリス。

バッキンガム宮殿の地下室。厳重な結界が張られている蔵書。

ネロ「………………んが…」

ネロは本に埋もれたその部屋で、机の上に足を組んで上げて寝ていた。
先日から例の事件の黒幕、『遠隔制御霊装の強奪犯』の捜索に就く事になった。

とは言うものの、実際に各地で情報を集めているのは王室直属の、学園都市風に言えば『暗部』の者達だ。
今のところ、ネロ自身がやることはその集められた情報を選別し統括することである。

要するにヒマなのだ。

掛け持ちである対悪魔戦のアドバイザーという仕事ももうほとんど終わっている。
イギリスの騎士や魔術師達の中には、もう一人前の『デビルハンター』と言っても過言ではない者達も続々と増えつつある。

机の上には様々な書類、そして遠隔通信用の書物型の霊装が開かれたまま置かれていた。

その通信霊装が光出す。

ネロ「んあ……」

ネロの目がゆっくりと開く。
そしてぎこちなく腕を上げ、体を伸ばして大あくびをする。
343 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/01(土) 00:39:22.66 ID:g084P7k0
ネロ「……」
眉間に皺をよせ、寝起きの不機嫌な顔で、机の上の光る通信霊装をジロっと睨む。

そしてその上に足を乱暴にドンと載せた。
本来は手を載せて起動するのだが。

ネロ「……なんだ?」

『お時間はよろしいでしょうか?』
通信霊装から若い男の声。

ネロ「良いからさっさと用件を言え」

『ヴァチカンに潜入していた者より報告です』

ネロ「続けな」

『枢機卿の者数人が、ウィンザー事件の直後にロシア成教『殲滅白書』の幹部と秘密裏に接触していました』
例の事件はウィンザー事件と呼ばれている。

『目的は不明です。ただ、かなりの隠密行動でした』

ネロ「へぇ…」
ローマ正教とロシア成教の同盟は周知の事実だ。
それなのにわざわざ影でコソコソ動き接触するということは、外に『知られたくない』事情があるのだろう。

『それと、ヴァチカンでは『悪魔の力』の痕跡は発見されませんでした』

『現地の指揮官によると、少なくとも「ヴァチカンには悪魔の力を行使する者はいない」との見解です』

『後ほど詳細なデータをそちらに』

ネロ「……」
344 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/01(土) 00:39:34.82 ID:5rWU9igo
骨は拾ってやr・・・・骨すら残らないかww
345 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/01(土) 00:42:57.38 ID:g084P7k0
『もう一点、興味深い報告がありました』

ネロ「言え」

『「悪魔と融合した銃」が三つ、リスボンで目撃されました』

ネロ「……」

『ウロボロス社製の小銃に複数の下等悪魔のムシラを結合した、恐らく人造悪魔かと』

ネロ「恐らく?」

『はい。捕獲はできませんでした。発見と同時に攻撃を仕掛けてきたため応戦、その後逃げられたと』

ネロ「……」
人造悪魔。
例の事件の黒幕もその線のスペシャリストだ。
何せ大悪魔クラスの人造悪魔を生み出したのだから。

ネロ「完成度は?」

『8名でも捕獲できませんでした。その内3名が死亡』

騎士団や必要悪の教会から選抜された、「デビルハンター」として認められた者が猛者が8人。
それを退けて離脱したとなるとかなり完成度が高い人造悪魔だ。
346 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/01(土) 00:47:50.73 ID:g084P7k0
ネロ「作った野郎の痕跡は?なんかねえか?破片とかよ」

『何も入手できなかったと』

ネロ「……チッ…」

銃の現物の破片でもあれば、
そこからその銃の購入者を割り出して特定することもできるが、それは無理なようだ。

『続けてもう一つ。ローマ正教及びロシア成教圏内に多数の霊装兵器が配備されつつあります』

『全容はつかめませんが、その形式は第二次大戦時の戦時体制に酷似しています』

『ただ、同じような演習が何度も、一昨年にも行われていた為、これが本物の実戦配備なのかどうかは判断しかねます』

ネロ「…………」

『それともう一つ。これは科学側の件ですが……何しろかなり大きな動きですので。よろしいでしょうか?』

ネロ「言え」

『ウロボロス社が、隠密裏にかなりの低価格で大量の兵器を売りさばいているようです』

『未発表の最新兵器まで元値の1割程度です。中にはタダ同然の取引も。買い手はロシア、イタリア、フランス』

『各国とも凄まじい量の兵器を買い漁っています』

ネロは少し引っかかった。
この三国はローマ正教・ロシア成教と強いつながりを持ち、
ウロボロス社や学園都市等の多国籍にまたがる科学勢力を敬遠していた国だ。

民間同士のつながりはあったとしても、国が進んで前に出てくることは無かった。

この三国は、兵器は自国開発を主としていたはず。

ネロ「……全部隠密裏か?」

『はい。完全に水面下の行動です。一切公表されていません』

『ウロボロス社は共同関係にある学園都市側にもその事実を隠しています』
347 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/01(土) 00:53:56.52 ID:g084P7k0
ネロ「……で、イギリスは?買ってねえのか?」

『報告の中にはありませんでした。その点はご自身で「上」にお聞きになった方が確実かと』

ネロ「……そうだな」

ネロ「……」
明らかに不穏な動きだ。どうみても戦争準備だ。
だがウィンザー事件と結びつけるにはまだ早い。

ローマ正教もロシア成教も、そして各国も悪魔達の力を目の当たりにして急いで軍備拡張をしているのかもしれない。

それにもし大きな戦争が起こるとしても、今のところそれは人間同士の戦いと思われる。
ネロが出る幕ではない。

ネロは『イギリスの為』に動いているわけではないのだ。

悪魔の関わりが無いのなら、ネロには関係ない事だ。

人間同士の戦争なら好き勝手やってくれというスタンスだ。

ネロ「他は?」

『以上です』

ネロ「下がれ」

『了解』

ネロ「―――」
とその時だった。

ネロの頭に突如一つの、『最悪の説』が浮かんだ。


ネロ「待て」
348 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/01(土) 00:55:49.46 ID:g084P7k0
それはあまりにも突拍子も無い荒唐無稽な説だ。
ネロ自身でさえ疑いたくなるような内容だ。

だがどんなに小さな、有り得無そうな可能性でも一応調べる必要がある。

ネロ「最後に一ついいか?」

『なんでしょう?』

ネロ「リスボンの人造悪魔、ウロボロス社製の銃だったな?」

『はい』



ネロ「ウロボロス社の件で、それと同型の銃は取引されてるか?」



『少々お待ちを』
通信霊装の向こう側から紙を捲るような音が聞こえてくる。
おそらく報告書を調べているのであろう。

『ありました』

ネロ「数は?」


『ロシアに3万丁、イタリアに5000丁、フランスに2万丁』
349 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/01(土) 00:58:53.30 ID:nxRNycAO
グチャグチャの上条さんが平和に見えるほどの不穏っぷり
350 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/01(土) 00:59:18.19 ID:g084P7k0
ネロ「……………」
ウロボロス社製のメジャーな商品の一つだ。
大量に取引されていてもおかしくない。

だが、もし今頭の中に浮かんでいるこの荒唐無稽な説が正しかったら。


人造悪魔を作った者はウロボロス社自体に関る者で。


この銃全てが人造悪魔だったら。


そしてもしそうならば。


取引されている他の兵器も人造悪魔の可能性がある。



そしてリスボンの人造悪魔は報告を聞く限りではかなりの完成度。
その製造者がウィンザー事件の黒幕と同一犯だったら。

ネロ「……」
これが正しかったらとんでもない事態になる。

だがそうと決めるのはまだまだ証拠が足らない。
証拠も無く推測に推測を重ね、飛躍させたものはただの妄想であり狂言だ。

だが可能性はゼロとは言いきれない。

『この報告書も後ほどそちらに』

ネロ「……ああ」
351 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/01(土) 01:06:20.69 ID:g084P7k0
通信を追え、ネロは机に足を乗せたまま、静かに考え込んでいた。
突拍子も無い説だというのは分かっている。

だが妙な胸騒ぎがする。
悪魔的な勘が何かに引っかかる。

この事も頭に留め、一つの答えの姿として候補に入れて置くべきだ。
そして女王達にも報告しておくべきだ。

ネロの頭の中で様々な憶測が飛び交う。
相手の狙いは戦争。それも人造悪魔を使った。

取引している国、そしてその規模から、相手はイギリスか学園都市、もしくはその両方。
魔術サイドと科学サイド、それぞれの内部が割れて全面戦争が起こるというのか?

最終的な目的は?
裏で手を引いてるのは魔界で、再び侵略する為の橋頭堡作りなのか?

それとも人間自らが悪魔の力に手を染め、その力を人間同士の戦争に使うつもりなのか?

この説が正しければネロも介入せざるを得ない。
これは『人間同士の枠』を越えたモノになる。

覇王とウィンザー事件、禁書目録の遠隔制御霊装、ローマ正教側の不穏な動き。

ネロの頭の中でギチギチと音を立てるかのように、この不吉なピースが結びついていく。

ネロ「………………」

まだまだこの図式にの空き埋めるべき、見つかっていないピースは大量にある。
もともと結びつかない、ただの妄想かもしれない。

だがこれがもし正しかったら。

正に最悪のパターンだ。

2000年前の大戦に匹敵する、とんでもない規模と領域の戦火が人間界を包むかもしれない。

ネロ「………マジでクソだな」

―――
352 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/01(土) 01:07:33.18 ID:g084P7k0
今日はここまで
再開は明日の夜11時辺りからです
353 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/01(土) 01:09:10.58 ID:d6ME3.AO
乙!
354 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/01(土) 01:09:30.45 ID:nxRNycAO
おつなんだよ!
355 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/01(土) 01:20:19.26 ID:sqRKylwo
乙!
356 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/01(土) 01:27:26.00 ID:/l6rIpM0
乙!
357 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/01(土) 03:38:30.50 ID:IxVi/ag0
(´ω`)乙!
358 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/01(土) 12:01:11.06 ID:EuKPOsc0

上条さん少しでも肉片残るといいな
359 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/01(土) 16:41:38.53 ID:A6gPDADO


銃とか無機物にとり憑くならムシラとかじゃなくインフェスタントじゃない?
それとも無理矢理合成したのか
360 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/01(土) 23:28:51.90 ID:g084P7k0
>>359
とり憑くのではなく、人間的な技術で強引に合成して作った物という設定です
4でアグナスが作っていたような感じで

ちなみにインフェスタントさん達には後々もっと良い物にとり憑いてもらいます
361 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/01(土) 23:30:28.08 ID:g084P7k0
―――


上条が銃弾を掻い潜りながらレディに突進する。

だが避けているはずなのに上条の体に何発も食い込んでいく。
レディは上条の回避先を事前に的確に予想しその空間へ銃弾を『置いて』いっているのだ。

そこへ上条が自分から突っ込んでくる形になる。

かわせなかった分も、力を左手や両足の脛に集中させて銃弾を弾き捌くが、その動きすら予測されていたのか、
手足の間を潜り抜けて銃弾が食い込んでくる。

上条の動きは、このデビルメイクライでの『修行』が始まった頃に比べれば別人のように見違えたが、
相手のレディは一枚どころか何枚も上手だ。

上条「いぎッ!!!!」
激痛が走り、銃弾に刻まれている術式によって傷口が痺れて治癒が遅れる。
そこに再びレディの銃弾がピンポイントで食い込んでいく。

この銃弾に対抗する為に右手を使おうとも思ったが、術式がなくなっても相手は『銃弾』。
発砲には見たところ通常の炸薬も使われている。

つまり生身の右手で受け止めて術式を破壊しても、銃弾がそのまま人間程度の耐久力しかない右手を貫く。

前日に実験したとおり銃弾は砕け散るだろうが、それはこの状況を打開する役には立たない。
ただ『散弾』に変わるだけだ。

右手があっという間に蜂の巣になってしまうだろう。

右手に出来ることは、傷口に指を突っ込んで体内の銃弾に触れてその効果を打ち消すことだけだ。

飛んでくる銃弾はかわすしかない。
362 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/01(土) 23:33:01.82 ID:g084P7k0
上条はなんとか避けようと、出来るだけ変則的な動きを心がける。
だがレディはそれでも軽々と銃弾を上条に当ててくる。

上条「(クッソ!!!!!こうなったら!!!!)」

上条は顔をガードするかのように左手を前にかざし、力を集中させる。
左手が眩く白く輝きだす。

上条「おぁあああぁあああああ!!!!!」
そして真っ直ぐに突進していく。

ゴリ押しだ。

レディ「芸が無いわね」

レディが突進してくる上条に大量に銃弾をぶち込んでいく。

全弾が上条の守られていない腹部へと食い込んでいく。

だが彼は腹を守ろうとはしなかった。
左手は顔の前から動かさなかった。

もし腹を守ろうと左手を下ろしたら、レディは確実に顔面へ銃弾を叩き込んでくる。
そうなれば絶対に怯んでしまい、また手榴弾等で吹っ飛ばされるのがオチだ。

上条「んがああああああああああ!!!!!!」
上条は激痛を堪えて突き進む。

レディ「(……それなりに考えてるみたいね)」


レディ「(甘いけど)」
363 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/01(土) 23:38:43.63 ID:g084P7k0
上条が遂にレディの所へ到達する。
もう手を伸ばせば届く距離だ。

上条「ハァアアアア!!!!!」
上条がガードに使っていた左手を勢い良く伸ばした。

レディを掴んで取り押さえるべく。
その手は人間では到底捕捉出来ない速さだ。

レディも避けれなかった。

まあ避ける必要が無いのだが。

左手を伸ばしたと同時に上条の瞳に、平行に並ぶ二つの大きな銃口が映った。
レディがソードオフショットガンをいつの間にか手に持ち、上条のがら空きになった顔へ向けていた。


レディ「ハロー」


上条「―――」


次の瞬間、至近距離でショットガンがぶっ放された。
364 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/01(土) 23:43:19.33 ID:g084P7k0
顔面へとてつもない衝撃を受け、上条の頭部が大きく仰け反った。

そして首から下は突進の慣性によって前方に跳ね上がり、
上条はまるで足を滑らせて転んだかのように、その場の地面に背中から叩きつけられた。

上条「げぼぁ――!!!」

ミンチ状態になった顔面から血が噴出す。

視界が点滅しぼやける。
立ちくらみをおこしたかの様ににそのぼやけてる景色が回転する。
耳鳴りがし、周囲の音をまともに聞く事ができない。


上条「…がッ……んぁ……んぎ!!!!」
そうしていると突如左手の肘辺りに激痛が走り、そして何かで固定でもされたのか全く動かなくなった。

上条「!!!」
何が起きているのか分からないうちに続けて右足と左足の膝の部分にも激痛が走り、同じく動かなくなった。
そして最後に胸に激痛。

上条「んぐあああああああああああああああああああ!!!!!」
トリッシュの『拷問』の痛みに似ている。

やっと頭部が再生してきたのか、視界と聴覚が徐々に元に戻る。

そして上条は自分が置かれている状況をようやく見て確認する事ができた。

レディが、先端に刃が付いている巨大なロケットランチャーを上条の胸に突き立てていた。

左手の肘、両足の膝には複雑な術式が表面に刻まれている杭形のロケット弾頭が突き刺さり、
上条を地面に磔にしていた。

弾頭に刻まれている術式のせいか、力が全く入らない。

そして右手はワイヤーのような物で地面に固定されていた。
365 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/01(土) 23:48:42.28 ID:g084P7k0
レディ「おはよ」

レディがニヤつきながら上条を見下ろす。

上条「クソッ…!!!」
なんとかして抜け出そうとするも力が入らない。

レディ「クソガキ。あんたの負け」

上条「………ぐッ…」
どうやらそのようだ。

これが実戦だったのなら、今頃弾頭が炸裂して上条は見るも無残な姿になっていただろう。

体に突き刺さっている今の状態でもこうなのだ。
この弾頭の破片を全身に満遍なく大量に浴びてしまったら、再生どころの話では無いだろう。

上条「俺の……負けです」

レディ「そうそう」

レディ「で、あんたを負かした相手の名は?」

上条「…?」
なんでそんな事を聞くのだろう。

上条「レ、レディさん」

レディ「違う」
レディが足で上条の喉元を踏みつけて押さえつけた。

上条「ふが!!!」


レディ「『世界一美しくそして最強のデビルハンター、レディ様』」
366 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/01(土) 23:50:59.97 ID:g084P7k0
上条「へ、へが??」

レディ「で、あんたを負かした相手の名は?」

上条「…………『世界一美しくそして最強のデビルハンター、レディ様』」

レディ「OK」


ダンテ「いいか、お嬢ちゃん。この世には絶対怒らしちゃなんねえモンがある」
そんなレディを遠くから眺めながら、ダンテは横にいる心配そうな表情を浮かべている御坂へ声をかけた。

御坂「……は、はい」


レディ「じゃあおしまい」


レディは上条の顎から足を離し、

上条「んぐ!!!」

胸に突き刺していたロケットランチャーを乱暴に引き抜き、そのままスタスタと離れていった。
相変わらず上条は地面に磔にされたままだ。

上条「へっ?……ま、まて!!!」
367 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/01(土) 23:54:07.89 ID:g084P7k0
上条「お、おい!!!これ外してくれよ!!!」
地面に磔にされている上条が、離れていくレディの背中へ叫ぶ。


レディ「殺すつったでしょ。バラバラにして」


レディが背中越しに上条に声を飛ばした。
そして指を軽くパチンとならした。

上条「……へぁ?」
その時、カチンと妙な音が三つ。
弾頭の方からだ。

ふと目をやると。

弾頭に刻まれている術式が淡く光り始めていた。

上条の悪魔の目に、その弾頭の中に莫大な力が渦巻き、圧縮されていくのが映った。

上条「……ま、マジかよ!!!!」


上条「……ちょ、ちょ、ちょっとまてぇええええああああ!!」

レディは聞く耳を持たずにどんどん離れていく。

上条「頼む!!!!頼むからあああああ!!ごめんなさいいいいい!!!!!」


上条「お願いします!!!!!俺が悪かったです!!!!だかr


次の瞬間三つの弾頭は爆発した。

ダンテ「……あ〜」
368 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/01(土) 23:56:13.85 ID:YU2.ceco
スタイリッシュに爆散しましたなぁ
369 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/01(土) 23:59:27.42 ID:g084P7k0
ダンテ「……あ〜………」

大爆発。
轟音が響き、衝撃波が発生し、無数の破片が飛び散る。

そして上条も『飛び散った』。

粉塵が辺りを覆った。

御坂「……!!!!!ちょ、ちょっと!!!!!……うそッ………まってよ!!!!!」

御坂が形相を変えて走り出そうとした時。
ダンテがその手を掴んだ。

ダンテ「ここにいな」

御坂「な、ななッ!!!!!!!!離してってば!!!!!」

ダンテ「おとなしくしてろ」
ダンテがもう一方の手で御坂の顔を、無理やり覆った。
今御坂が言ったら、とんでもない姿に成り果てた上条を見るハメになるだろう。

御坂「離してよ!!!!!離せあああああああ!!!!」
御坂が放電しジタバタするもダンテの拘束はびくともしない。

レディ「何?随分荒れてるみたいだけど」
レディが何事も無かったかのような顔で近付いてくる。

御坂「あああああああああああ!!!!!」


ダンテ「………お前少しやりすぎだぜ」


レディ「何よ。殺しても良いって言ったじゃないの」
370 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/02(日) 00:02:36.73 ID:8hUunYQ0
「がふ!!!うげふッ!!!!うげえええええっっっふ!!!!んがああああいってぇえええええ!!!!!」

その時だった。
粉塵の向こうから少年の咳と雄叫びが聞こえた。

「んぎぃいいいあああ……んぐぉいおお…」

ダンテ「お」
とりあえず生きていたようだ。
そして声が出ているという事は少なくとも頭部は元に戻ったらしい。

御坂「―――!!!!」


レディ「………チッ」


御坂「ちょ、ちょっと!!!!!大丈夫!!!!??」
御坂が粉塵の向こうへ声を張り上げた。

上条「だ、げふッ!!!…いじょうぶだ!!!!大丈夫!!!!」

粉塵の向こうから上条の声が返ってくる。

上条「今そっちに……い、いや!!!!!待て!!!!!」
上条が何かに気付いたかのように声を強めた。

御坂「な、何!!!!??怪我でもしてるの!!!!!??」

上条「い、いや、そうじゃなくてな!!!!!それは大丈夫なんだが……」

上条「なんつーか……そのよ、と、とにかく来るんじゃねえ!!!!」
371 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/02(日) 00:03:41.30 ID:8hUunYQ0
ダンテ「ハッハァ」
ダンテは笑った。
上条が何に慌てているか分かったのだ。

レディ「……」
レディも当然気付いているだろう。
肩を小さく竦めてダンテと顔を見合わせた。

トリッシュの必殺の弾頭三つの大爆発だ。

上条は全て剥ぎ取られたのだ。体の大半も吹き飛ばされて総取っ替えしたのだろう。

つまり全裸だ。

ダンテはニヤつき、御坂の手をわざと放した。
御坂が形相を変えて、能力まで使って弾丸のように上条がいる粉塵の中へ消えていった。

砂漠という環境もあってか、粉塵はもうもうと立ち込めて一向に晴れる気配が無い。

ダンテ「……」

レディ「……」

しばらくして御坂の怒号とともに雷鳴が響いた。
そして慌てながら御坂をなだめようとする上条の叫びが続く。


ダンテ「へっへっへ」

レディ「……ほんとガキ臭いこと好きね」

ダンテ「なんだよ。面白えじゃねえか」
372 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/02(日) 00:05:40.42 ID:8hUunYQ0
レディ「あ〜、それにしても本当に腹立つわ」

ダンテ「あ?まだやり足らねえか?」

レディ「それもあるんだけど……あれほど頑丈とはね」


レディ「私の特製弾頭三発も喰らっておきながら死なないなんて」


ダンテ「つーかよ、今のあれ、結構ギリギリだったぜ?」
もう一発弾頭があったら上条は本当に死んでいたかもしれない。


レディ「うん、足らなかったみたい」


レディ「もう一発持ってきてれば良かったわね」


ダンテ「……………おぃお前マジで…」


レディ「冗談よ冗談」


レディはニコッとあざとい作り笑いを浮かべた。

ダンテ「……」
373 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/02(日) 00:10:10.12 ID:8hUunYQ0
レディ「ま、本元がベオウルフだしね。今回はこんなもんでしょ。ろくに準備もしてなかったし」

レディ「次はフル装備で本気でやらせてもらうから」


ダンテ「ハッ。(もう呼ばねえよ)」


レディ「で、どんくらい引き出してんの?力。二割ってところ?」

ダンテ「……そんぐれえだな」

レディ「ふーん。じゃあ私が勝てるのも今のうちね」


ダンテ「まあな(もう戦わせねえけどな)」


レディ「何普通に同意してんの?もっと何か良い言葉かけれないの?」

ダンテ「(相変わらず面倒くせぇ奴だな)」

今回はレディが圧勝したが、実際に持っている『力』の量なら現時点でも上条の方が遥かに強大だ。
だが力の量は必ずしも戦闘の強さに直結するわけではない。

確かに今のレベルでも上条は既に強大な力を有しているが、戦い方はまだまだ未熟だ。
だがそのレディとの差も時期に埋まるだろう。


レディ「本当に悪魔って『ふざけてる』連中よね」

ダンテ「良く言うぜ。お前も充分ぶっ飛んでるじゃねえか。それ以上いくと一生独身だぜ」


レディ「……ねえ、あんたにリベンジして良い?もう一発くらいぶち込ませてよ」

ダンテ「ハッハァ。やれるもんならやってみな。『お嬢ちゃん』」
374 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/02(日) 00:14:14.99 ID:8hUunYQ0
相変わらず粉塵の向こうからは雷鳴とともにぎゃあぎゃあと少年と少女の叫び声が聞こえる。

ダンテ「おい!!!次はじめんぜ!!!!」
ダンテが粉塵の向こうへ声を飛ばした。

上条「おう……って!!!!なんでもいいからなんか着る物を……だぁああああっあぶね!!!いってぇええ!!!」

上条「よ、よせってば!!!つーか直撃してんじゃねえか!!!お、おいココは寄せ!!!どこ狙って…んぐぅうぅぅぅぅうおおおお!!!!」

御坂「んぎゃああああああああああ!!!いやああああああ!!」

ダンテ「お嬢ちゃん!!!!お前はこっちに来いや!!!!」

ダンテ「騒がしい連中だぜったくよ」
ダンテが近くの岩の上にかけてあった、上条の上着を右手で掴み上げ、
左手で上条の使う黒い銃を取る。

そして気だるそうに粉塵の中へ向かっていった。

レディ「あら、すっかり『保護者』ね」
レディがそのダンテの背中に小馬鹿にしたような声を飛ばす。

ダンテ「お前もナデナデしてほしいか?『お嬢ちゃん』。可愛がってやんぜ?」
ダンテが歩き離れながら、ふざけた調子の声を背後のレディに飛ばす。

レディ「嫌よ。かわりにトリッシュでも撫でてあげれば?」

ダンテ「ハッ。そいつはお断りだ。殺されちまう」

ダンテはヘラヘラと笑いながらそのまま粉塵の中を進んでいく。
時間がたったせいか粉塵が少しづつ晴れてきている。

しばらく進んだところで、今にも蒸気を噴出しそうなくらい顔を真っ赤にした御坂が猛ダッシュですれ違っていった。
375 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/02(日) 00:16:32.27 ID:HKB46es0
ついに上条さんの全裸が一万人に中継されるのか…
376 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/02(日) 00:20:09.20 ID:8hUunYQ0
ダンテは更に進む。
粉塵が徐々に晴れ、直径20m程のクレーターが姿を現す。

上条「いってぇ……」

そしてその真ん中に全裸の上条が両手で股間を覆いながら立っていた。
やはりあの爆発で服は全て吹き飛んでしまったらしい。

右手の防具も、表面の強化ギプスが跡形もなく消え、
魔界の金属生命体製の黒い手甲が剥き出しになっていた。

ダンテ「なさけねえな」

上条「う、うるせえ!!!あいつココに当てやがったんだぜ!!!」

上条が右手で自分の股間を指差した。

ダンテ「…………」

そんな上条を見た時、ダンテの脳裏にいつかの記憶が蘇った。

ギター形態のネヴァンを抱いたまま寝てしまい(ry


ダンテ「………ああ……そいつは……キツィな……」

上条「……へ?」
突然のダンテの同意に上条は少し戸惑った。

ダンテ「まあいい」

ダンテは右手に持っていた上条の上着を彼へ向けて放り投げた。
上条がそれを掴み、腰に巻く。

上条「ふぅ……」
これで一応大事なところは隠れた。風が吹いたり激しく動けばチラチラ見えるだろうが。

ダンテ「ほれ」
ダンテが左手の銃を差し出した。

上条「……?」

ダンテ「次はコレの練習だ」

―――
377 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/02(日) 00:26:25.27 ID:8hUunYQ0
―――

ネロはバッキンガム宮殿の豪奢な廊下を早歩きで歩いていた。
左手には黄ばんだ古めかしい羊皮紙の冊子。

たまにすれ違う者はそのネロの見るからに不機嫌な顔を見て一瞬凍り、
そして慌てて脇に寄って頭を下げる。

イラついているネロは無視して進む。

そして、とある大きな扉の前まで来た。
衛兵がその扉の横に立っている。

「お、お待ちを!!!」
衛兵がネロを制止させようとするが、ネロは無視してそのまま突き進み、扉を乱暴に蹴り開けた。

部屋の中には長い机。
見るからに高そうなスーツを着た、上層部の者達がその机を囲んで座っており、
上座にシンプルでありながら豪奢なドレスを着たエリザード女王が座していた。

皆大きく目を見開いて、いきなり部屋に踏み込んできたネロを見る。

恐らく何かの会議中であったのだろう。
机の上には書類らしきものが並んでいた。

ネロ「全員出ろや」

ネロが強烈なオーラを放ちながら、威圧的な声を放った。
378 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/02(日) 00:28:36.68 ID:8hUunYQ0
ネロの凄まじい空気に圧倒され、女王を省く全員が慌てて逃げるように部屋を出て行く。

エリザード「……ふむ」
エリザードはネロの非礼を特に咎めなかった。
彼がここまでするのなら、それ相応の理由があるのだろう。

ネロがつかつかとエリザードのいる上座へ向かう。

ネロ「読め」

ネロが持っていた冊子をエリザードの前へ乱暴に放り投げた。
机にバサリと音を立てて落ちる。

ネロは近くに会った椅子を引き寄せ、乱暴に座った。

エリザード「……」
それはネロが作った報告書だ。

先の『最悪の説』のだ。

エリザード「……」
エリザードは無表情のまま目を通していく。
379 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/02(日) 00:29:56.97 ID:8hUunYQ0
エリザード「……証拠は?」
エリザードが報告書を捲りながら声だけをネロに飛ばす。

ネロ「ねえよ」

エリザード「ではなぜ?」

ネロ「勘だ」

エリザード「……」
これがネロではなかったら、エリザードは聞く耳を持たなかっただろう。

だがネロだ。

『ネロ』の、『スパーダの孫』の勘だ。

到底無視することはできない。


エリザード「……これは…困ったものだな…」

エリザードが冊子を閉じ、軽く前に放り投げながら天を仰いだ。
380 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/02(日) 00:31:34.11 ID:8hUunYQ0
ネロ「まあ、可能性の一つだ」

エリザード「……」

確かに荒唐無稽だ。
証拠も何も無い。

だがこのネロの説は、エリザードも妙に納得した。
今までの事件が見事に繋がる。

エリザード「……」
信じたくは無い。否定したい。
だが納得してしまっている自分もいる。

エリザード「これが正しい確率は?」

ネロ「さぁな。裏付ける証拠もねえし。今の状況を見る限りじゃ、かなり低いだろうな」

エリザード「……問い方をかえよう。『悪魔の勘』は何と言っておる?」


ネロ「……100%だ」


ネロの言葉を聞いてエリザードの顔から血の気が引いていく。
381 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/02(日) 00:34:40.34 ID:8hUunYQ0
エリザード「……」

『表』の部分だけでも、人間社会全体を揺るがす規模の、
それこそ第三次世界大戦と呼ばれてもおかしくない戦争になる。

表の部分だけでそれだ。

そこに魔術サイドと科学サイドの『裏』、更には悪魔の力さえも加わる。
そしてネロの報告書は、それさえもただの『始まり』に過ぎないかもしれないと暗示していた。

もっと大きな何かが起こると。

エリザード「……」

ネロ「一つ言っておくぜ」

ネロは重く、確かな声をエリザードに放った。

ネロ「わかってるだろうけどよ、ちゃんとハッキリさせておく」


ネロ「俺は『イギリス』の味方じゃねえからな」


エリザード「……それはわかっておる」


そもそもネロがイギリスと契約を交わしたのも、イギリスに悪魔が大量に出没するからであって、
そこに住まう『人間』達を悪魔達から守る為、そして自らの力で身を守る術を教える為だ。

『イギリス』を守る為ではない。
たまたまその土地の国がイギリスだったというだけだ。

遠隔制御霊装の件に協力しているのも、その強奪犯がウィンザー事件の黒幕との関係が濃厚だからだ。
382 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/02(日) 00:37:57.64 ID:8hUunYQ0
戦力だけで言えば、今のイギリスはローマ正教側と全面衝突しても互角以上に渡り合える。

『悪魔』と『天使』を保有し、対悪魔戦で鍛え上げられ、『魔界魔術』を習得した百戦錬磨の騎士・魔術師の大部隊もある。

圧倒的な戦力だ。

だがそれが逆にイギリスの足枷にもなるのだ。

今のところネロは『こちら側』だ。
相手陣営の裏で手を引いているのはウィンザー事件の黒幕なのだから。

だが一旦戦争が始まったら。

イギリスはその『悪魔の力』の使い方には注意しなければならない。
使い方を誤れば、ネロが味方では無いどころか『敵』として対峙する事も充分有り得る。

人造悪魔を狩り、黒幕を追い詰めるのには制限は無い。
むしろその為の戦力なのだ。どんどん使って良い。

だがもしイギリスが自国の保守に走りすぎた場合。
悪魔の力を本来の用途以外に大々的に使った場合。

極端に言えば、『勝利』を求めるあまり、悪魔の力を使ってローマ正教側の『人間』を徹底的に殲滅し滅ぼそうとするなどだ。


その場合、ネロとダンテの『人間という種族の保護』の信念に抵触する可能性がある。
383 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/02(日) 00:39:36.42 ID:8hUunYQ0
ネロ「アンタらがどう動こうと知らねえがよ」


ネロ「自重しろよ」


エリザード「……重々承知だ」


ネロ「ま、とにかくまず今やることはだな、」

エリザード「戦争を避ける。これが第一だな」

ネロ「だな。俺もできるだけ動く。先に『根元』を狩っちまえば戦争なんざ起きねえしな」

エリザード「うむ。頼んだぞ」


ネロ「まぁ俺としちゃ、今すぐヴァチカンに乗り込んで片っ端から尋問してぇんだけどよ」


エリザード「ははッ。そんな事をやられてはこちらが困ってしまうわ」
今そんな事をしてみれば、ローマ正教側からはイギリスがネロをけしかけたと見えるだろう。

いや、彼らもネロが『イギリス』の為に動く事は無いというのは知っているが、格好の開戦の口実になるだろう。

今のネロは何かと動きにくい立場なのである。

ネロ「まあな」
384 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/02(日) 00:41:37.32 ID:8hUunYQ0
ネロが椅子から立ち上がり、扉の方へ向かう。

ネロ「ああ、そうだ」
ネロが立ち止まり、振り返った。

ネロ「トリッシュもこの間から動いてくれてるからよ。今後は少しばかり捗ると思うぜ」

エリザード「それは頼もしい。……で、どこまで話したのだ?」

ネロ「遠隔制御霊装以外は全部」

エリザード「……ふむ…そうだ。こちらも一つ」

ネロ「あ?」

エリザード「先ほどな、ローマ正教側からある申し出があってな」

エリザード「ウィンザー事件の捜査に協力したいと」

ネロ「ぷッはははっ!!」
ネロは拭き出した。

裏で戦争準備をしておきながら、表では歩み寄ってくるとは。
あからさま過ぎる。ますます怪しくなってくる。

エリザード「さっきの会議もな、その為の緊急招集でな」

ネロ「ハッそいつは悪いな邪魔してよ」

エリザード「なぁに。自らの地位を守ることしか能が無い、死に底無いのジジイ共のボヤキを聞くこと無くてせいせいしたわ」
385 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/02(日) 00:43:26.52 ID:8hUunYQ0
ネロ「で、どうすんだ?」

エリザード「当然、こっちも『歩み寄って』やる」

ネロ「まあ、だろうな」
突き放すよりは、応じた方が得る物も多い。

まだ確実な向こうの狙いはわからないが、こちらは戦争を回避したいのだ。
それならばどんな形でも、例えそれが策略が張り巡らされたまがい物のパイプでも、
とにかく繋がりを持っておいた方が言い。

こちらの言葉を伝える手段が何も無いよりはマシだ。

エリザード「大使をヴァチカンに招待したいとな」

ネロ「大使の使命はあったか?」

エリザード「それはない。高官なら誰でもかまわないと」

ネロ「じゃあこれから決めるのか?」

エリザード「もう決めておる」


エリザード「神裂だ」


ネロ「……へぇ」


本物の『天使』の神裂がヴァチカンへ。


ネロ「……お似合いじゃねえか」 

―――
386 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/02(日) 00:44:16.61 ID:8hUunYQ0
今日はここまで
明日は投下できるか分かりませんが、できたら同じ時刻辺りから
387 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/02(日) 00:46:29.11 ID:/RIMzXY0
乙!
世紀末のカウントダウンに入ってるなww
388 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/02(日) 00:46:42.63 ID:cXW4n8oo

上条さんと御坂の絡みがあると和むな
389 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/02(日) 01:29:41.96 ID:GVpdfco0

上条さんがまっぱにwwww
390 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/02(日) 02:00:13.23 ID:vBMm2EMo

MNWはどうなってるのやらwwwwwwwwwwww
391 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/02(日) 18:57:00.28 ID:G3/szx20

ネヴァンとの一件でダンテもトリッシュに雷打たれたってことか…
392 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/02(日) 19:26:22.52 ID:BhHy2Ggo
いや、ネヴァンにヤられた可能性だってあるぞ。プレイの一環としてな……
393 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/02(日) 20:56:52.96 ID:vTmfg2DO
ネヴァンは雷を操るサキュバス、サキュバスは本来眠ってる対象から精気を吸い取る。
ネヴァン(雷+サキュバス)を抱いて(身に付けて)眠る。
大悪魔クラスでも数時間でシワシワか炭にされてそうだ。
394 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/03(月) 00:10:49.67 ID:lCh5hMDO
さっきもう少しでネヴァン倒せそうだったのにキスで一気に勝負つけられた。
ネヴァンこんなに強かったのか…
395 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/03(月) 01:31:52.78 ID:JuMCieE0
>>393
ダンテの場合しわしわは無さそうでもグロッキーはあり得そうだwwww
396 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/03(月) 16:55:36.33 ID:Tr770RY0
レディって今幾つなん?
397 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/03(月) 19:18:07.57 ID:Ry4chtUo
>>395
さんじゅ・・・あっ誰かきたようだ
398 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/03(月) 19:40:04.82 ID:pAVaIGoo
特に設定されてないみたいねー>年齢
レディさんじゅうはっさい?
399 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/03(月) 19:59:04.78 ID:3LqFqsAO
3の時は女子高生位の年齢だっけ
400 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/03(月) 23:13:50.99 ID:A8wcTCc0
まだ3のときは10代かそこらじゃね?
そこから10年以上たってるからもうババアか
401 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/03(月) 23:35:57.15 ID:BUpkiFM0
ダンテがサイレンの宇理炎手にいれたらどうスタイリッシュに使いこなすか想像してワロタ
402 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/03(月) 23:40:03.77 ID:GdSv2rI0
―――

学園都市。

時刻は夜中。

とある路肩に止めてあるキャンピングカー。

その中に土御門、結標、海原の三人のグループメンバー。

そして。

アイテムの元リーダー、麦野沈利がいた。

彼女は一方通行がいつも使っていた簡易ベッドに座っていた。
失われた右目と左腕の肩口からは青白い光が迸っている。

右手の袖口からチューブが伸び、隣においてある、
取っ手が付いた一辺が30cm程の箱に繋がっていた。

彼女の体はボロボロなのだ。
この機械はその彼女の生体活動を補佐する物だ。

麦野がなぜここにいるかというと、
彼女は一方通行の代わりとしてグループに所属する事になったからだ。


麦野「で、……もう終わったんでしょ?」
麦野が苛立ちの篭った声を放つ。

たった今、4人は任務を済ませてきた。
先日のデパート立てこもり事件を起こしたテロリストの残党を皆殺しにしてきたのだ。
403 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/03(月) 23:43:43.58 ID:GdSv2rI0
土御門「仕事はな」

土御門「だけどよ、もう少しばかり付き合って欲しいぜよ」

土御門が運転席の方を向きながら壁を強めに叩いた。
それに運転席の男が反応し、キャンピングカーを出す。

麦野「……はあ?悪いけど帰るわよ」
麦野が脇に置いている箱型の機械の取っ手を右手で掴み、立ち上がろうとする。

海原「そう言わずに。少し話しませんか?」

麦野「何?グループって馴れ合いチームなの?随分とまあ、めでたいわね」

土御門「少しお前の事調べさせてもらったぜよ」

麦野「……あ゛?」
麦野の残った左目がかすかに殺意を帯びる。
右目の穴の光が彼女の感情に合わせて強まる。

海原「全部知ってますよ。アイテムの内部抗争、あなたがそうなった訳、下っ端と元同僚を殺そうと追い回していたこと」

麦野の眉間に皺が寄り、右目の光がますます強くなる。

麦野「あ〜着任早々なのに。もう殺したくなってきちゃった」

だが海原は一切動じずに言葉を続けた。


海原「それと先日の第23学区の件」

麦野「……」
その言葉を聞いて、麦野の眉がピクリと動いた。
404 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/03(月) 23:48:37.79 ID:GdSv2rI0
土御門「あの件の事を調べてるな?」

麦野「……」

そう、確かに調べている。

あの日から麦野の目に映る世界が変わった。

『上』に良いようににこき使われ利用され、殺し殺される『日常』。
それが今まで麦野にとって『普通』だった。

だがあの日以降、そう思えなくなってしまった。

もう今や、この光の差さないどん底の世界にいるのは我慢できなかった。


暗い地下駐機場での戦い。

彼女の前に現れた正に『天使』のような怪物。
その圧倒的な存在の前に彼女のアイデンティティは脆くも砕け散った。
全てを捨て死を受け入れかけた。

そこに現れた赤いコートの男。

どん底まで堕ち、怒りも憎しみも全て剥がされ、諦めと絶望の海に沈んでいた彼女を軽々と運び上げた男。

血なまぐさい濁った過去と思念を脱ぎ捨てて上へ上へと向かった。

一度手に入れかけた彼女の魂を逃さないと言うかのように、崩れ押し寄せてくる壁と天井。
その間を突き抜けて彼女の体を運んでいく真紅の烈風。

駆け抜けた爽やかな風。

全ての闇から、全ての重石から解き放たれ、まるで翼が生えたかのような浮遊感。

そして眼前に現れた、突き抜けるような青い空。

それと男の放った『自由』という言葉。


麦野は思った。

あの瞬間、自分は『自由』だったと。

あの時、麦野は知ってしまった。

そこから『見える』景色を知ってしまった。
405 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/03(月) 23:50:11.17 ID:GdSv2rI0
あの日以来、彼女の心が叫ぶ。

あの『翼』が欲しい と。

このクソッタレな世界から。

このクソ溜めに繋ぎとめる足枷から。

この体を解放し空高く運びあげる『翼』が。


「何様だ。そんな権利でもあると思っているのだろうか。
 散々血にまみれ、数多の人生を断ち切ってきた分際で。
 せせら笑い、快感を感じながら儚い命を叩き潰してきたクズの癖に。

 地を這い無様な断末魔を上げ、肉と血を腐らせ腐臭を放ち、蛆に食われ朽ち果てていくのがお似合いだ」


そんなことは分かりきっている。
自覚している。

だがそれでも。

それでも『翼』が欲しいのだ。


一度絶望の底に落ち、何もかも諦めたのだ。
もう何も怖くない。 もうなりふり構わない。

プライドも、暗部としてのケジメも、闇の世界のルールも何もかもクソ喰らえだ。
わがまますぎると言われようが、筋が通ってなかろうが、自業自得・因果応報だろうが知ったこっちゃ無い。
誰一人許さないとしても、彼女は『自由』が欲しい。

とにかくもう一度あの『高さ』からの景色を見たいのだ。
406 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/03(月) 23:52:04.65 ID:FqeMItg0
3の少し前でレディはJKだったはず。(コミックでそう書かれてた)
3のダンテが18〜22くらいに見えたし、4のネロも同じくらいに見えるから、
ダンテは30代後半〜40代前半くらい?
てことはレディは30代前半〜30代後半くらいじゃ……おやこんな時間に誰か来たかな
407 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/04(火) 00:00:28.79 ID:MTGOvD.0
投下が来てた!
408 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/04(火) 00:04:53.28 ID:OLEJxXQ0
あの日以来、麦野は一人で事件の事を調べていた。
あの異質な怪物たちの正体、そして赤いコートの男の事が何としても知りたかった。

そして麦野はしばらくして、例の事件は最重要機密となった事を知った。
それも麦野にとってうってつけだった。

具体的に自由を手に入れる方法も見えてきたのだ。

自由になるにはまず上層部との関係を覆す。

『上層部』が軟化してしまうほどのネタをちらつかせてだ。
そして体の完全な治療、暗部からの完全離脱、そして『自由』の保障を確約させる。
(ちなみに彼女の体を完全に治療しないのも、彼女を繋いでおく為の『首輪』の一つだろう)

ネタとしてあの事件はかなり良い物だろう。

あれ程の異質すぎる存在だ。
レベル5の麦野でさえ手も足も出ない力の存在だ。

きっと重要度はレベル5よりも遥かに上の『何か』だ。正に御あつらえ向きだ。

ネタとしても充分、そして純粋に知りたいという欲求もある。

そういうことで麦野はあの怪物共、
そして彼女に一瞬だけ『翼』を与えてくれた、あの男の情報をとにかく集めはじめた。

だが得られる結果は芳しかった。
というか10日以上も奔走したが、何も情報は得られなかった。

というか、麦野は戦闘や作戦指揮は得意だが、諜報活動は元々あまり得意では無い。
下されてくるオーダーも大抵が戦闘主体のものだった。

それにいくらレベル5といっても、麦野一人でやれることは高が知れている。
アイテムとしてその力をフル活用できたのも下部組織のサポートがあってこそだ。

彼女の自由への道、『翼』を手に入れる という目的は早くも頓挫し始めていた所だった。
409 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/04(火) 00:08:10.48 ID:OLEJxXQ0
麦野「……」

土御門「お前の事は全部調べさせてもらったぜよ。メルトダウナー」

土御門が身を乗り出し、不敵な笑みを浮かべながらサングラスの上端から目を出して麦野を見上げた。

土御門「あんまり捗ってねえだろ?情報収集」

麦野「……」
麦野が立ったまま、土御門を鋭い目で見下ろす。

麦野「で、何よ?それがどうかしたの?」


結標「言っておくけど、どの道そのネタじゃアレイスターを揺さぶれないわよ」

結標が壁に寄りかかりながら、軍用ライトを右手でクルクルと回す。


麦野「……」
麦野の表情が殺気を帯びる。

アレイスターに自分の動きがバレているのか?
このクズ共は自分の殺害を命じられているのか?

麦野は右袖のチューブを引き抜いた。


麦野「戦るってんの?」

土御門「落ち着け。そうじゃないぜよ。戦う気は無い」
410 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/04(火) 00:13:07.05 ID:OLEJxXQ0
麦野「じゃあ?飼い主に尻尾ふりながら今の事を報告しにでもいくってんの?」
右目から閃光が空気を切り裂く音を立てて、威嚇しているかのように噴出す。

海原「違います」

土御門「はっきり言っちまうとな、お前と俺達の最終目的は一緒だってことだぜよ」

麦野「………は?」

土御門「理由は知らねえし知ったこっちゃねえが、とにかく『上』と同じテーブルに座りたいんだろ?」

麦野「……」

海原「こちらにも皆それぞれ訳アリでしてね」

麦野「……」

土御門「いや〜良かったぜよ。お前が『忠犬』じゃなくてな」

麦野「なるほど…ね……」
『忠犬』という表現で意味が分かる。
このいけ好かない連中は、飼い主に噛み付き、
『首輪』を外そうと画策している『狂犬』のようだ。

自分と同じだ。

麦野「……とりあえず…話だけでも聞くわ」

麦野はゆっくりと簡易ベッドに座った。
だが右袖のチューブはいつでも戦闘態勢に入れるように外されたままだった。
411 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/04(火) 00:15:27.39 ID:OLEJxXQ0
土御門「まずな、これから起こる出来事なんだが、」

土御門「近い内にな、とんでもない事が起きる可能性が高い。世界規模のな」

麦野「……?」

土御門「『世界』が変わっちまう程のだ。それこそ、学園都市でさえ存亡の危機に立たされるレベルのだ」

麦野「ぶはっ」
いきなりの突拍子も無い話で麦野は思わず笑ってしまった。

海原「……」


土御門「かなり信用できる確かな情報だぜよ。俺がそっちのスジからさっき手に入れたばかりのな」


麦野「ざけんな。んな与太話を聞く暇なんざ……」

海原「ウソを言う必要なんて無いでしょう」

麦野「……ま、いいわ。で、それが起こるとして?」

土御門「つまりその時は学園都市も切羽詰る」

海原「そこを利用するという訳です」

麦野「へぇ……なるほどね」
412 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/04(火) 00:19:48.28 ID:PATjbDYo
ふむ
413 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/04(火) 00:20:21.74 ID:OLEJxXQ0
土御門「一方通行を含めた俺達、そしてお前」

麦野「……」

土御門「どうだ?面白くなると思わねえか?」

麦野「………」

存亡の危機に立たされるレベルの事態。
学園都市は当然、その問題を解決する為に全力を尽くすだろう。

そこで暗部の反乱。
外に全力で集中するべき時に内で発生した大きな問題。

学園都市側にある選択は二つ。

武力による強引な解決か、軟化して交渉のテーブルにつくか。

だがこの反乱を起こす者の中にはレベル5第一位がいる。
更に第四位が加われば、それはそれは強大な勢力になるだろう。

鎮圧は不可能ではないだろうが、もし戦うとすれば学園都市も大きなダメージを負うだろう。
上層部としては、そんな重要な時期にこんな事態は避けたいはずだ。

となると上層部は交渉のテーブルにつく可能性が高い。
414 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/04(火) 00:28:52.58 ID:OLEJxXQ0
土御門「確かに動きとしてはデカ過ぎるかもしれないけどよ、もうなりふり構ってらんねえぜよ」

土御門「学園都市自体が危ねえんだ。このまま大人しくしてれば俺達もどうなるかわからねえぜよ」

麦野「……」
それは言えている。
最悪、自分達は二ヶ月半前と同じく戦力として狩り出されるだろう。
道具として。捨て駒としてだ。

土御門「この大きなチャンスは逃すわけにはいかねえ」

海原「こちらの駒はできるだけ多い方が良いのです。今の時期にこうして会えた事はお互いにとって幸運でしょう」

結標「相手が相手なだけにね。戦力が充分って事は有り得ないの」


土御門「この『船』に乗る気はねえか?メルトダウナー」


結標「お互いにとって利益があると思うけど」

海原「それぞれ理由と目的を持つ者同士として、お互い『利用』し合いませんか?」

学園都市への反乱。
それぞれが絶対に引けない理由を持っている。

ある者は何かを守る為に。
ある者は何かを得る為に。

その為に『学園都市の前』に立つ必要があるのだ。

麦野もまたその一人だった。

麦野「……」

これを断る理由は見当たらない。
彼女の目的への歩みは完全に頓挫していた所だ。

そんな時に受けた、この土御門達の誘いは正に救いだ。

麦野「―――いいわよ。乗る」
415 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/04(火) 00:31:22.26 ID:OLEJxXQ0
土御門「はは、決まりだぜよ。じゃあ―――」

麦野「その前にちょっといい?」

土御門「何だ?」

麦野「一つ条件があるんだけど」

土御門「言ってみろ」


麦野「この船にさ、もう『三人』分の席空いてない?」


土御門達はニヤリと笑った。
麦野の行動は全て掴んでいるのだ。
彼女が誰の事を指して『三人』と言っているのか容易に想像がつく。

その点は麦野も先からの土御門達の言動で気付いている。
だからあえてその三人の名前を出さ無かった。

土御門「へぇ〜………」

海原「……」

土御門達が手に入れた情報によると、麦野はあの三人を殺そうとしていたらしいが、
第23学区の件で何か考えが変わったのだろうか。

だが、ここは暗部。他人のプライベートなどお互いに興味が無い。
ただ力を提供してくれればそれで充分だ。
理由を聞くのは野暮というものだ。

麦野「答えは?」

土御門「いいぜ。構わねえぜよ」

海原「まあいいでしょう。その内の二人はかなり使えそうな方ですし」
416 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/04(火) 00:35:43.66 ID:OLEJxXQ0
麦野「それでさぁ、もうちょっと要望があるんだけど」

土御門「へぇへぇお次はなんでしょうかい?」

麦野「その三人さ、『ゲスト』として乗せて」

土御門「……ぁ?」

海原「それは……どういう意味ですか?」

麦野「私一人で四人分の『切符』買うから、あとの三人は交渉する時に乗せて」

結標「………『乗組員』じゃなくて『ゲスト』 って意味ね…」

土御門「……らしくねえなメルトダウナー」
さすがの事に土御門も思わず突っ込んでしまった。

冷酷非道の虐殺女帝として暗部の間で名を馳せていたこの怪物女が、つい最近まで殺そうとしていた三人を自由への船に乗せ、
更にその『切符』を無償で配ろうとしているとは。

どういう心境の変化があったのか、土御門もさすがに少し興味がわいた。


麦野「うるせぇよ。どうなのよ。無理っつんなら乗らねーわよ」

土御門「……お前が他の三人の分も働いてくれるってんなら問題はねえぜよ」

海原「……まあ、呑みましょう。レベル5がもう一人加わるなら安いもんでしょう」

麦野「ならよし」
417 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/04(火) 00:39:57.67 ID:OLEJxXQ0
麦野「じゃあ話続けて」

土御門「OK。一つずつ話していくぜよ」
土御門が身を乗り出し、仕切り直すようにパンと一度手を叩いた。

土御門「まず…第23学区の件からは手を引け。忘れろ」

麦野「……はぁぁあ?」

土御門「あのネタじゃ『上』は揺さぶれない。学園都市自体にはあんまり関係ねえんだぜよ」

土御門「というか下手にアッチに進むとだな、もっと『ヤバイ連中』に目をつけられるかも知れねえ」

もっとヤバイ連中。
学園都市よりも敵に回すと恐ろしい勢力があるとでも言うのか。

麦野「……」

土御門「お前も見ただろ?『あの力』の矛先がこっちに向いたら全部終わる」

海原「『彼ら』を絶対に敵に回してはいけません」

結標「下手に動かれて敵対でもしたら困るからね。そっちは土御門に任せて」

土御門「俺が専門なんでな。そっち方面は任さしてもらう」

麦野「……なっ…」
418 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/04(火) 00:43:00.13 ID:OLEJxXQ0
麦野はコートの内ポケットに入っているバラを意識する。
彼女にとって『自由』の象徴。

忘れろと言われてもそれはできない。
むしろ麦野は知りたい。
今の目的とは関係な無く純粋にだ。

だがそれは後回しにした方が良いだろう。
今は自由、『翼』を手に入れるのが先決だ。

麦野「……わかったわよ」

土御門「よし」

麦野「で、具体的に何をするの?まさか事が起きるまで待ってろって言うつもり?」

土御門「いや、動いてもらうぜよ。できるだけ交渉用のネタを集めといたほうが良い」

麦野「まあ、それも言えてるわね」

切羽詰った事態の時に、レベル5が二人と歴戦の暗部組織という時点でネタとしてはかなりの物だが、相手が相手だ。
充分ということはない。


麦野「何か良いネタでもあるの?」


土御門「『ドラゴン』」
419 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/04(火) 00:43:59.30 ID:OLEJxXQ0
麦野「……はぁ?」

ドラゴンと聞けば普通は竜の類を思い浮かべるだろう。
このときの麦野も同じだった。

その麦野の反応を見て三人は やっぱり という仕草をする。

土御門「知らねえか。ま、当然だな」

麦野「何よそれ?」

土御門「知らない」

麦野「からかってんの?」
麦野の右目と左肩口から青白い閃光が迸る。

土御門「これから調べるんだぜよ」

土御門「滞空回線の機密コードの一つだ」

麦野「……」

土御門「ドラゴン。このコードだけ一切情報が無い。この文字だけだ」

麦野「……なるほどねぇ」

土御門「興味あるだろ?アレイスターが何としても隠したがっているモンだ」
土御門が狡賢そうな笑みを浮かべた。

土御門「調べてみる価値はあると思うぜ?」

土御門「いい『ネタ』になるかもしれねえぜよ」
420 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/04(火) 00:49:05.51 ID:OLEJxXQ0
麦野「……調べる方法は?」
麦野が土御門に合わせて不敵な笑みを浮かべた。

土御門「『色々』だ。ま、間に合いそうも無かったら理事会の一人でもとっ捕まえて無理やり吐き出させるぜよ」

土御門「襲撃でもしてな」

麦野「それは私の得意分野ね」

土御門「ああ、それとな、もう一ついい切り札がある」

海原「こちらはもう手に入れてましてね。上層部もまだ気付いていません」

土御門「いや〜、掘り出すのは苦労したぜよ」

麦野「…?」

土御門「それはな、強力なネタにもなるし、何よりもお前がいることでかなりの戦力増強ができる」

海原「これも我々にとってかなり幸運でしてね。あなたのような能力の持ち主じゃなきゃ到底扱えないブツでして」

土御門「本当はレールガンが適任だったんだけどな、お前でも充分扱えるモンだ」

海原「まあ、使い方を間違えたら皆終わりなんですが」

結標「綱渡りなんだけどね。ま、今更そうも言ってられないでしょ」


麦野「ちょっと、今度は何?」



土御門「―――『アラストル』って聞いたことあるか?」


―――
421 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/04(火) 00:59:31.40 ID:a7zrLyc0
それを使ったら本当に死ぬぞwww
422 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/04(火) 01:01:50.30 ID:OLEJxXQ0
―――


事務所デビルメイクライ。

上条「いひぃいいいいいいいいでええぇええええええ!!!!」

上条の悲鳴が響く。
午前中のダンテのしごきを終え、いつも通り事務所に戻ってのトリッシュの『検査』だ。

全裸で机の上に仰向けになっている上条。
その上条に、相変わらずご機嫌な顔で杭をブッスブッス差しているトリッシュ。
それを見ながら壁に寄りかかってニヤニヤしているダンテ。

御坂は『色々』あって精根尽き果てたらしく、今ホールのソファーで休んでいる。


トリッシュ「……と、OK、おわり」

トリッシュが古い布で杭についている血を拭き取る。

上条「うへぁ………うぅ…」
上条はヨロヨロと、ぎこちなく机の上から降り、近くにおいていた上着を先と同じように腰に巻きつけた。


その上着には、ドングリ程の淵が焦げた穴が所々に開いていた。

銃弾が貫いた跡だ。
423 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/04(火) 01:08:00.46 ID:OLEJxXQ0
レディの『制裁』の後、上条の修行のメニューに新たな要素、『銃』が加わった。
戦い方の幅を広げる便利な物である。

しかし、別に戦闘能力を強化するのが目的ではない上条からすれば、特に必要が無い様に感じられたが、
ダンテ曰く『銃は悪魔狩りに欠かせないスパイス』とのことで『必修科目』らしい。

それにこれはただ単にダンテの趣向という訳ではない。

銃を使わせ、体内の力を収束させて弾頭強化を行わせる。
つまり悪魔の力を更に上手く扱えるように鍛えるのである。

それは上条の中の力にも刺激を与え、
『悪魔の力をより引き出す』というダンテ達の一番の目的にも繋がる。


ということで上条は銃の扱い方を半ば強引に教わされる事になった。
当然ろくに説明も無くいきなり使わされる形で。

だが新たな要素が加わったとはいえ、組み手の内容が劇的に変わったわけではない。
変わった点は、上条が負う傷の種類に銃傷が加わったぐらいだ。

上条が銃弾を放ってもダンテはひらりひらりとダンスしているかのようにかわし、
上条の放った銃弾を銃弾で『撃ち落し』、更に指でデコピンするかのように弾き返す。

そして「こうやれ」と言い、弾頭強化した魔弾を放ち、上条へ何発も叩き込んだ。

相変わらず上条はぶちのめされ、新要素の銃でぶち抜かれ地面に何度も倒れた。
 
その後いつも通り最終的に意識を失ったという訳だ。
424 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/04(火) 01:11:55.20 ID:OLEJxXQ0
ダンテ「どんくれぇだ?」
相変わらず死相が出ている上条を、ダンテが壁に寄りかかり横目で見ながらトリッシュに声を向けた。

トリッシュ「驚くわよ。大体35くらい。レディがかなり刺激になったみたいね」
昨日までは20%いくかいかないか程度だった。
たった一日で、約15%も引き出したのだ。

ダンテ「へぇ」

トリッシュ「……レディにはもうやらせないでね」

ダンテ「……わかってる」

上条「上条さんも……もう嫌です……」

確かにこの成長は素晴らしい。
だがあまり急激に引き出すと、暴走して元に戻らなくなってしまう可能性もある。
いくら上条の魂が頑丈とはいえ、何度も暴走させてしまうとかなりの負担がかかってしまうだろう。

というか暴走するかどうか以前に、レディの『制裁』は本当に死んでしまうかどうかというギリギリのラインだった。


ダンテ「ま、結果的には良しとしようぜ。大分レベルアップしたしな」

トリッシュ「まあ上手く力を使えてるかどうかはまた別の話だけどね」

トリッシュも横目で上条を見やる。

力をかなり引き出してはいるが、実際に上手く使えているのは半分程度だろう。
まあそれでも状態としてはかなりいい方だ。
425 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/04(火) 01:14:30.80 ID:OLEJxXQ0
トリッシュ「ああそう……ちょっと良いかしら?」

トリッシュがダンテの顔を見つめる。
そして眉をピクリと動かした。

ダンテ「……」
ダンテはその意図を悟った。

ダンテ「イマジンブレイカー」

上条「んぁ……なんだ?」
上条が虚ろな目でダンテの顔を見る。

ダンテ「さっさと服着てソファーで寝てるお嬢ちゃんのとこ行ってやれ」

上条「はぃ?」

ダンテ「お前の『坊や』見たからああなってんだろ。ちゃんとフォローしてやれ」

上条「へ……あ、あれは…」

ダンテ「良いからさっさと行け」

上条「お、おう…」

上条が腰に巻かれている上着を抑えながら、少しふら付きながら地下室から出て行った。

トリッシュ「あら、あなたにも一応乙女心のフォローとかの概念あったのね」

ダンテ「うるせぇな。で、何か話があんだろ?」


トリッシュ「まあね。ネロから面白い話聞いちゃったの」
426 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/04(火) 01:17:58.26 ID:OLEJxXQ0
トリッシュはネロから聞いたことを簡単にダンテに説明した。

ウロボロス社とローマ正教側の動きと人造悪魔。

ネロの説によればウロボロス社にウィンザー事件の黒幕が関っており、
人造悪魔がローマ正教側へ大量にばら撒かれつつあると。

悪魔の力が行使される戦争が起こるかもしれないと。


ダンテ「……ハッハァ…随分と派手なパーティになりそうだぜ」
ダンテが不気味な笑みを浮かべる。

トリッシュ「でしょ、面白そうよね」

トリッシュ「とりあえず私が探るから。あなたは坊やの件を今まで通りに進めて」

今のダンテが『暇』じゃないのは幸運だった。
上条の件が無かったら、ダンテは単身ウロボロス社にすぐに乗り込んで大暴れするだろう。

だがこの件は非常にデリケートだ。
フォルトゥナの時と同じく、先にトリッシュが影で動いて下地を作っておいた方が良いだろう。

ダンテを解き放つのは勝負を決める時だ。

それにネロの話によれば、今見えている事の後ろにももっと何かがある可能性が高いとの事だった。
それにはトリッシュも同意した。

ウィンザー事件の黒幕の目的の一つが、覇王の完全復活というのは確実だ。
だが、それだけではこれ程までの戦争を起こそうとする理由にはならない。
復活と戦争。

この他にも『何か』があるのだ。
この二つのワードを繋げる『何か』が。

その辺りもトリッシュが先に探りを入れておいた方がいいだろう。

ダンテ「OK」

トリッシュ「ああ、そうそう、坊やの件が終わる前にパーティが始まったらどうする?」

ダンテ「さぁな。そん時はそん時だ」
ダンテはわざとらしく方を竦めた。

トリッシュ「ま、任せるわ」
427 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/04(火) 01:22:11.13 ID:OLEJxXQ0
トリッシュ「……それにしてもね。覇王なんて……お馬鹿さんはいつもどこかにいるわね」

トリッシュ「スパーダの一族も忙しいわねぇ」

ダンテ「なぁに、『親』の尻拭いは『子』がするもんだ」

ダンテ「それにあの野郎とは色々とあってだな」

ダンテ「また遊びてえと思ってたんだ」

あの野郎。ウィンザー事件の黒幕。
学園都市でダンテと戦った後、ウィンザーで覇王の力の一部を引き出したあの男。


ダンテ「覇王―――最高の『暇つぶし』になりそうだ」


口を横に裂き、殺気と狂気と喜びの混じった笑み。
一瞬目が赤く光り、トリッシュでさえ息が詰まるような威圧的なオーラが噴出す。


ダンテ「ヘッハァ。俺の獲物だぜ」


トリッシュ「……見つけたらちゃんととっておいてあげるから」

そんなダンテを見て、トリッシュは少し例の黒幕に同情した。
この男にこれ程までに気に入られているとは、本当にご愁傷様だ。

まあ、相手もわざわざダンテに直に喧嘩売る辺り、それを承知しているだろう。
人間にも結構骨のある奴がいるらしい。

そういう勝ち気がまたダンテをそそるのだ。

ダンテ「待ち遠しいぜ。よろしくな。俺はいつでもいい」

一瞬姿を見せた悪魔の『顔』は影を潜め、いつものふざけた笑みに戻っていた。

ダンテはコートをなびかせて、扉に向かい地下室から出て行った。


トリッシュ「……本当に相変わらずね」

そんなダンテの逞しい背中を眺めながら、トリッシュは微笑しながら呟いた。


―――
428 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/04(火) 01:23:03.58 ID:OLEJxXQ0
今日はここまで。
明日は投下できるかわかりません。
明後日は確実に投下できます。
429 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/04(火) 01:24:36.82 ID:ZlA2XsAO
乙なのよな
430 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/04(火) 01:24:53.18 ID:xG1DYqEo
いい物語をありがとう乙!
431 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/04(火) 01:31:31.48 ID:L5xsPZMo
乙!
432 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/04(火) 01:31:44.40 ID:a7zrLyc0


上条「どうだい・・・よく仕上がっているだろう」
とか言いそうで怖い
433 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/04(火) 02:37:20.27 ID:PATjbDYo
おつ
434 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/05(水) 18:08:14.20 ID:Ixgb4dg0
上条さんの『坊や』・・・・wwww
435 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/05(水) 20:39:56.22 ID:1c.KzgEo
上条さんの下条さん
436 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/06(木) 00:06:30.83 ID:A74GXvE0
―――

窓の無いビル。

アレイスターはミサカネットワークから送られてきたデータを閲覧していた。

アレイスター「……」
上条は安定したまま急速に悪魔化していっている。
恐らく、体組織はもう既にかなりの部分が悪魔のものとなっているだろう。

トリッシュの『検査』自体の映像は御坂が目を伏せているため無いものの、何をやっているのかは容易に想像が付く。
それにトリッシュはご丁寧に解説までしてくれている。
この解説は御坂とミサカネットワークの向こう側、このアレイスターへ向けられているものだろう。

アレイスター「……」
今のところ順調だ。
このまま上手くいけばプランも大きく短縮できるだろう。
それこそ一気に最終段階まで飛ぶ事ができる。

元々あの『竜王の顎』を本格的にフル稼働させる為に、彼の魂の『器』としての強化が必須だったのだ。
この過程が一番デリケートであり、そして手間も時間もかかるものだった。

だが悪魔化によってその過程が一気にすっ飛ぶのだ。

二ヶ月前からの悪魔サイドの関りによって、一時はプラン全体を停止する必要もあるのではと思われたが、
幸いな事にこの巨大なイレギュラー因子は彼のプランを成功へと導きつつある。

だがあくまでイレギュラーであり、それなりに危険も伴う。

彼のプランも急速に進んでいくが、
それと同時に世界の流れも予測がつかない方向へ変わりつつあるのだ。
437 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/06(木) 00:09:34.39 ID:A74GXvE0
根絶したと思われていた魔女によるジュベレウスの死。
それに起因する天界の混乱と、その戦いによる弱体化。

バージルの復活、ネロの覚醒による魔剣スパーダの完全な覚醒。

魔帝の死による魔界の混乱。
それによる各世界間のパワーバランスの崩壊。

『悪魔』と『天使』を手に入れ力を増大させたイギリス清教。

それを見て学園都市に不気味な程に低姿勢で歩み寄ってきたローマ正教とロシア成教。
それと同時に行方を眩ませたローマ正教、『神の右席』のトップ。

イギリスを始めとする人間界の歪み。
それに起因するアリウスの動き、解けかかっている覇王の封印。

その後のアリウスとローマ正教・ロシア成教の不穏な動き。
とんでもない低価格で最先端兵器を売りさばき大国へ根を回していくウロボロス社。

兵器として世界中へ拡散されていく『人造悪魔達』。

水面下で莫大な力が渦巻き、徐々に崩れ行く人間社会。


今の人間界は、いつ炸裂するかもわからない爆弾の上に載っている状況だ。
438 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/06(木) 00:11:13.02 ID:A74GXvE0
数多の世界の者達がこの人間界を中心とする、魔界と天界の動乱に注目している。
アレイスターとしてはこれは避けたかった事態だ。

なにせ、その動乱の中心にあの『上条当麻』もいるのだから。
無数の者達が上条を『見る』。

そうなれば誰かが上条の中にあるモノに気付くのも時間の問題だ。
アレイスターの目的に気付くのもだ。

そして天界に気付かれれば。
天界の者達は全力で、あらゆる手段を使ってでもアレイスターを止めにかかるだろう。

そうしなければ天界そのものが結果的に『滅ぶ』のだから。
学園都市に天界の軍勢が直接押し寄せてくるかもしれない。

そんな事態になればアレイスターは完全に孤立する。
今は一応同盟を結んでいるイギリス清教も、その本質は『天界』に帰属する組織だ。

もし気付いていたら、この瞬間にでも彼らは宣戦布告し、全魔術サイドが敵にまわるだろう。



そして魔界。
この勢力はどう動くか予測がつかないが、味方につくことは絶対にありえない。

なにせ絶頂を極めていた魔界の覇権が地に落ちたのは人間界のせいなのだから。
そして魔帝の死により、その怨嗟には更に拍車がかかっている。

何かあったら、その混乱に乗じて魔界は必ず動く。

ましてやアリウスの目的が達成され覇王が復活したら、魔界はその旗の下に集い再び大規模な侵略行動を起こすかもしれない。
あのスパーダの一族がいるとはいえ、全面戦争となれば人間界には必ず大きな傷跡が刻まれる。

これ以上人間界を歪ませられると、アレイスターのプランにとって障害となりうるのだ。
現にイギリスを中心として人間界に流れ込んで来る魔界の力が、AIM拡散力場に徐々に干渉し始めている。
439 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/06(木) 00:13:00.12 ID:A74GXvE0
スパーダの一族。これは最大の懸念の一つだ。
守護者でありながら大きな障害でもある。
離れたくとも、今は離れられない。

今の上条を育てるにはダンテ達の手が必要なのだ。

今、上条当麻は悪魔化し、その内包する力も徐々に覚ませながら成長してきている。
その傍にはトリッシュとダンテ。

トリッシュは見たとおりかなり頭がキレる。
そしてダンテも一見なにも考えて無さそうだが、その嗅覚と頭の回転はトリッシュ以上かもしれない。

そんな二人が上条を、『幻想殺し』を見ているのだ。
今のところ、トリッシュ達は『幻想殺し』を調べないという条件をしっかり守ってくれている。

だがその内、調べる事も必要が無いくらいに丸わかりな状態になってしまうかもしれない。
上条が成長するにつれてその可能性が徐々に高くなってきている。

いつか、彼の中の『モノ』が何かの衝撃で溢れるかもしれない。


彼がその右手で触れてきた『記憶』が。


どうやって『力』を消し、『構造』を崩壊させてきたか。

どうやって『相殺』と『分解』を行っているのか。

その原理が知られてしまえば大変な事になる。
440 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/06(木) 00:17:33.62 ID:Hvpa3LQ0
きてた
441 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/06(木) 00:18:47.76 ID:A74GXvE0
アレイスターにとってその中に詰め込まれている『記憶』は必要ない。
成長しきって完全に目覚めた、フル稼働できる『竜王の顎』が必要なのだ。

ダンテ達もその『記憶』の存在を知ったとしても興味は無かっただろう。
二ヶ月前までは。


あの右手が魔帝の『創造』に触れるまでは。


これはアレイスターにとって一番大きな誤算であり、利用しようがない要素だ。
あの二ヶ月前の件はアレイスターにとって鬼門だった。

彼の当初の計画では、ダンテとバージルが衝突、その隙に一時的に強化された一方通行が禁書目録を奪還するという物だった。
上条が悪魔化するのも戦線に加わる事も完全に予想ができなかった。

ましてや魔帝の『創造』に触れてくるなど。

あの少年はとんでもない物を身に宿してしまった。


ダンテ達が上条のにある『記憶』に気付いたら。
いや、もう薄々感づき始めているだろう。

最悪、上条が処分されるかもしれない。
いくらダンテが約束を守る男でも、『創造』とあれば何よりもその処分を優先するはずだ。


なにせスパーダの一族の運命を2000年に渡って縛り続けた存在なのだ。
2000年に渡って人類を脅かし続けた力なのだ。


どんな手を使ってでも最終的に処分しようとするだろう。
442 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/06(木) 00:20:54.79 ID:A74GXvE0
今のアレイスターは正に綱渡り状態だ。

だが今、上条を成長させるにはダンテ達の手が必要だ。

これを避けて通るわけにはいかないのである。
ゆっくり上条を成長させている暇は無い。

今の状況からプランを成功させるには、ダンテ達に上条を預けるしかないのだ。

もう時間は無い。
世界の流れは止まらない。

巨大な爆弾の導火線には点火され、カウントダウンが始まっている。

今のアレイスターに出来ることは一つ。

『流れ』に『追いつかれる』前に事を成し遂げる。

どうやら1000年以上の寿命はいらなかったらしい。
この一度きりで全てが決まる。

今しか無い。

学園都市が滅ぼうが知ったこっちゃない。

今、この時の為に築いてきたのだ。
成功の為とあらば、全てを失っても良い。

この命もだ。
443 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/06(木) 00:24:03.48 ID:A74GXvE0
ちなみもう一つ、先日アレイスターの耳に飛び込んできた情報があった。

『グループ』とその周辺の動き。
『一方通行』と『原子崩し』の結託。

だがこれはアレイスターにとって特に問題でもない。

彼らはこの戦争に付け込んで、学園都市そのものを人質にとってこちらと交渉するつもりらしい。
だが前述の通り、アレイスターはこの戦争以降は学園都市がどうなろうと知ったこっちゃ無い。

残念ながら、哀れなネズミ達の計画は最終的に瓦解するだろう。

この行動を半年前にでも起こしていたら、少しはアレイスターを困らせた事ができたかもしれない。
だがもう遅い。

今のアレイスターにとって学園都市の保守は二の次なのだ。

理事会の者を殺され、『ドラゴン』の情報を引き出されたところで痛くも痒くも無い。
もう隠し隠れる必要も無いのだから。

むしろ、これはアレイスターにとって好都合だ。
444 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/06(木) 00:25:30.75 ID:A74GXvE0
いまや彼のプランの要の一つとなっている『一方通行』。
彼が自ら進んで『舞台』に上がってくる。

『ドラゴン』に接触したいのなら。

『エイワス』に会いたいのならお望み通りそうしてあげるだけだ。
ちょうどアレイスターもそうさせようとしていた所なのだから。

学園都市内、科学サイド内の動きなら全てアレイスターの手の平の上だ。
彼らは知らず知らずの内にアレイスターの敷いた線路の上を進んでいくだろう。

アレイスター「……もう少し…もうすぐだ」
水槽の中で小さくほくそ笑む。


歯車は更に加速していく。

その流れは彼をも運んでいく。

アレイスターは確信していた。
不安要素はたくさんあるが、最後の最後に勝つのは己だと。


確かに、彼が『知る限り』の状況からならそう確信できるだろう。


だがアレイスターが『知らない』要素が目の前にあった。
彼は気付いていなかった。

その歯車の一つに大きなほころびがある事に。

プランそのものを一瞬で砕いてしまう程の巨大な爆弾が紛れ込んでいた事に。

学園都市外、科学サイド外、そして人間界の外からやってきた最悪のイレギュラー。

ここに来て彼は見誤ってしまった。

この猛烈な速度の流れの中で、見落としてしまったのだ。


『アラストル』を。


―――
445 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/06(木) 00:30:57.27 ID:A74GXvE0
―――

事務所デビルメイクライ。

二階のキッチン。
上条と御坂は夕食を食べ終わり、食器を並んで洗っていた。

御坂「……」

上条「……」

会話は無い。
午前中、御坂は上条のムスコを見てから一言も口を聞いてくれなかった。
顔を真っ赤にして俯き、上条に何かを聞かれたときは頭を振って答えた。

上条は最初は怒っているのかと思っていたが、言葉を放たないとはいえ、
一応首振りで話に答えてくれるのでそうではないらしい。

乙女心がわからない上条は、自分のムスコが見られた事が原因とは全く考えていなかった。

上条「……(こいつ……風邪でも引いたのか?)」
顔を少し火照らせてる御坂を見ながら上条は思った。

そうではなく、御坂は未だにパニック状態が冷めていないだけなのだが。

上条「なあ……」
食器を洗いながら、となりの御坂に声をかけてみる。

御坂「……」
御坂がやや俯き加減で上条に顔を向ける。

上条「お前具合悪いのか?」

御坂は頭を横に強く振る。

上条「いやいやいや無理すんなよ?明日は休んでも良いぞ?たまには俺が飯作るから」

御坂は更に強く頭を振った。
446 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/06(木) 00:33:18.68 ID:A74GXvE0
上条「(う〜ん……こいつ絶対に何かおかしいぞ……体調が悪いんじゃねえかな…)」

上条「(あ、もしかして……女の子の日ってやつか?)」

上条「(でもなあ……インデックスはこうはならないしなあ……やっぱ違うかな…)」
インデックスは『お腹が減るといつも以上に不機嫌になる』という症状だった。

まあ、ともかく上条の推理は全て的外れだ。

上条「……」

御坂「……」

そのまま二人でしばらく後片付けをしていると、一回の方から勢い良く扉が開く音が聞こえてきた。
いつもこの時間帯はダンテがシャワーを浴びている。

これはダンテがあがった音だろう。
その証拠に、乱暴な足音のあとに椅子にドカリと座る音、そして机の上に足を叩きつけるように乗せる音が聞こえた。

上条「お……あがったな…御坂、入ってきて良いぞ。俺が片しとくからよ。今日は早く寝な」

御坂が首を横に振る。

上条「う〜ん……じゃあ俺が先にパッて入って来るぜ?」
上条が手を軽く振って水を切った後、タオルで拭く。

と、その時だった。

上条「……ん?」

御坂が俯きながら上条の袖を掴んでいた。
447 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/06(木) 00:35:54.99 ID:A74GXvE0
上条「どした?」

御坂「……」
御坂は俯き、モジモジしている。

上条「――――」
そんな御坂の姿を見て上条はハッとした。

上条「(………………………そうか…)」

上条「(わかった……わかったぞ……)」

上条「(御坂お前………)」

上条は御坂がこうなっている原因を突き止めた―――


上条「(見ちまったんだもんな……)」


―――つもりだったが。


上条「(俺が半殺しになるのを。怖かったんだな……そりゃそうだ……)」

上条「(俺が午前中何をしているか、初めて具体的に知ったんだもんな……)」

相変わらず大ハズレだ。
448 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/06(木) 00:37:29.13 ID:A74GXvE0
上条「御坂……すまん……」

御坂「……?」

上条「すまん。あんなモン(俺のスプラッタ)見せちまって……」

御坂「―――ーッ!!!!!」

上条「そりゃあ見たくねえよな……あんなモン……」

御坂「い、いや……そ、その…!!!」
御坂の顔が一気に真っ赤になる。


上条「でもよ………俺はああしなくちゃダメなんだ」


御坂「―――ッ!!!!!!!!!!!(何が!!!??見せなきゃダメってんのッッッ!!!??)」

御坂「(も、ももももももももしかしてそういう性癖!!!!!??)」


上条「俺が(この道を)選んだ。俺が決めたんだ。これは俺が自分から求めてやってることなんだ」


御坂「(自分から……決めて……選んで……あたしに……求めて…にゃばばばばばぁああぎkhぐんmsヴぁぁああ!!!!!!!!!!)」
最早思考は昼辺りから色々とぶっ飛んでいる。
そしてこれだ。

遂に御坂の中で何かのピンが弾け爆発する。

御坂の頭の中が晴れ渡った。
爽やかに。


御坂「(うん、問題ない。そんな性癖どうってことない。当麻なら問題ない。別にOKOK。むしろ頂きます全部あたしが見ればいいだけ)」

御坂「(つーかコレってもしかして勝った?あたしあのシスターに勝っちゃった?)」

―――
449 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/06(木) 00:40:30.32 ID:A74GXvE0
―――

トリッシュは例の件の調査を終え、事務所に戻ってきた。

トリッシュ「……?」

だが一階のホールは無人だった。
いつもなら、この時間はダンテは定位置で飲んだくれてるはずだ。

トリッシュ「……」
まあ行きつけの店にストロベリーサンデーでも食べに行ったのかもしれない とトリッシュは思った。
何も言わずにフラッと行ってしまう事も多々ある。

トリッシュはホールを通り抜け、地下室の仕事部屋に向かおうとした。
だがその時、二階から僅かな気配がした。

トリッシュ「……ダンテ?」

妙だ。これはあえて気配を消している。
誰にも見つからないようにだ。
いつも傍にいるトリッシュじゃないと察知できないくらいに反応が小さい。

この事務所にいる非番の時は一切抑えずに垂れ流しているはず。

これは完璧に仕事モードだ。

トリッシュ「……」
トリッシュの目の色が変わる。

トリッシュは気配を消し、一切音を立てずに、二階へと続く階段を上がっていった。

そして二階の廊下に出ると。


トリッシュ「……あなた何やってんの?」
トリッシュが呆れた声を放った。

廊下の先、キッチンの扉の横の壁に、ダンテがワインボトルを片手に寄りかかっていた。
足元には、黒い布に包まれた長さ1m程の棒のような物が転がっていた。

キッチンの扉の向こうからは上条と御坂の声が聞こえてきている。

ダンテはトリッシュの姿を見ると、ニヤけながら人差し指を口に添えた。

トリッシュ「……」

静かにしろという合図だ。

―――
450 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/06(木) 00:45:04.92 ID:A74GXvE0
―――


上条「あれはキツイだろうな……」

御坂「……」

上条「……嫌なら無理して見なくてもいいぜ。お前はいつも通りこk」

御坂「んんんんん!!嫌じゃない!!!!!見る!!!!!!!見たい!!!!」
御坂がいきなり顔を上げ、上条の目を真っ直ぐ見て大声で叫んだ。
その顔は湯気が上がりそうなくらいに紅潮していた。

上条「うぉぉお!!!!!」
あまりのオーラに上条は圧倒された。

上条「み、見たいって?!!!!(俺のスプラッタを)」

御坂「み、見る!!!!(上条の×××を)」

御坂「アンタが見せたいってんなら良いわよ!!!!!見る!!!!アンタがそうしたいってんなら!!!!」
御坂は最早自分が何が言っているのか良くわかっていなかった。

御坂「んぎぃいいいいいい!!!!!!ハァッ!!!!」

御坂が口を固く縛り、拳を握り、仁王立ちする。


御坂「さあいいわよ!!!!見せなさい!!!!思う存分!!!!」



上条「…………はい?」


御坂「C'mon! Hurry up!!!!」
451 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/06(木) 00:48:41.21 ID:A74GXvE0
上条「……あのう……見せろって……今でしょうか?」
上条は思った。この場でスプラッタ状態になれとでも言うのでしょうか と。

御坂「な、何よ!!!!」

上条「い、いや……大体どうやるんだよ!!!!」

御坂「ど、どうって……!!!!!」
御坂は思った。 ベルトを外してズボンを脱げば降ろせば と。

上条「つうかよ!!!相手は!?御坂がやってくれるのか!?」

御坂「あああああああああああたしいぃぃぃぃ!!!!??」

御坂「(あたしが降ろすの?!!!って相手って……まさかぁあああああああああああああ!!!!!)」

御坂「いぃいいいいいいいいいいい良いわよ!!!!!」


上条「っていうか、それ以前に家の中じゃダメだって!!!」


御坂「な、何で??!!!!!!!外の方が問題じゃない??!!!!!!」


上条「だって戦(ヤ)れば事務所壊れんだろ!!!!ダンテさんに怒られんぞ!!!」


御坂「(ヤればって……本当に…!!!!!ちょ、ちょっと待って!!!!!!そんなに激しいの!!!!!!!???)」


御坂「ま、待って待ってよ!!!!あたし………そ、その……!!!!!」

上条「?」
452 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/06(木) 00:49:24.02 ID:jT8xvxQ0
なんかすごい事にwwwwwwwwww
453 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/06(木) 00:52:29.50 ID:A74GXvE0
御坂「そ、そういうことするの……は、初めてだし……そ、その……優しくしてくれないかな……」

上条「……は?何言ってんだお前?(戦うの)初めてじゃないだろ。散々やってるじゃねえか」

御坂「―――ッ!!!!!ヤ、ヤってないわよ!!!!!!!!」

上条「おい……お前本当に大丈夫か?もしかして頭でも打ったんじゃあ……」

御坂「ヤってない!!!!!ヤってないつーの!!!!!!」
御坂が凄まじい形相で上条に突っかかる。


上条「い、いや、二ヶ月以上前から思いっきり悪魔ぶっ殺してんじゃねえか!!!!」


御坂「だからぁあああああ!!!あたしは処j……………………は?」


上条「へ?」

御坂「はい?」

上条「……ど、どうしたんでせう?」


御坂「………」

上条「………」

とその時だった。

「ぷふッ……」
扉の向こうから、微かに笑い声が聞こえてきた。

御坂「………」

上条「………」
454 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/06(木) 00:56:23.43 ID:A74GXvE0
上条「………」

御坂「ねえ……あたしがこうなってる理由、何だと思ってる?」


上条「み、見ちまったからだよな?」

御坂「……何を?」


上条「俺が半殺しになるの」



御坂「………う……うわぁあああああああああああああああああああああんんんんんん!!!!!!!」
御坂が顔を真っ赤にして、扉に突っ走る。

上条「お、おい!!!!!!なんだってんだよ!!!!!」

御坂が勢い良く扉を開けた。
だがキッチンの外には出れなかった。


ダンテ「………ププププ……いやあ、ヤるなら家の中でもいいぜ?思う存分、盛っちまいなよ。…プフッ」

トリッシュ「人間の思春期って面白い思考回路してるわね」
口を抑えて笑いを堪えているダンテと、穏やかな笑みを浮かべているトリッシュが立っていたからだ。


御坂「ひあああああああああああああああああああんんんんんん!!!!!!!!」
455 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/06(木) 00:56:36.70 ID:GT5MqmM0
こらえきれずに笑ってやがるwwwwww
456 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/06(木) 00:57:42.61 ID:eK7n0nAo
クソワロタwwwwwwwwww
457 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/06(木) 00:58:16.82 ID:6iY6fgU0
腹筋痛いww
458 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/06(木) 01:00:15.56 ID:dCCXjEEo
笑うwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
459 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/06(木) 01:04:47.50 ID:A74GXvE0
上条「へ?!へ!?」

ダンテ「へっへへへへはぁ……坊や…へっへ……お前はパーフェクトだ」

ダンテ「ぶふッ…パーフェクトすぎる。パーフェクトな『0点』だ。世界遺産並だ。非の打ち所がねえへっへへへ」

ダンテが笑いを漏らしながら上条を『採点』する。

ダンテ「Devil May Amazed(悪魔も呆れる)ってか?ヘッヘヘヘハハハヘヘヘ……」

上条「な、なにがだよ?!」


御坂「ひぃいいいいあああああああんんんん!!!!!!」

ダンテ「だから………ハハッ…言ったじゃねえか…このお嬢ちゃんがへばった理由hんkぎggg」
次の瞬間、トリッシュがダンテの首に手を当て電気を流した為、彼の言葉がそこで遮られた。


トリッシュ「ほんとガキね。あなたも。このクソガキ共」


そして上条の頭の顔に小さな電気を飛ばした。

上条「いぎッ!!!!いでぇえええ!!!!俺が何したってんだよ!!!!」

御坂「……ひあああああ!!!!!どいてえええええええええ!!!!!!」

御坂がトリッシュとダンテの間を抜けて自分の部屋に向かおうとする。

と、その御坂の手をトリッシュが掴んだ。

御坂「はなしてぇえええええええ!!!!!もう寝るぅうううううううううう!!!!!!」

トリッシュ「ダンテがあなたに用があんだって」

ダンテ「………………完成したぜ。お嬢ちゃんの『大砲』がよ」

首元から煙が上がっているダンテが、足元に置いていた長さ1m程の包みを持ち上げた。

御坂「…………ふぇ?」
460 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/06(木) 01:07:21.37 ID:GT5MqmM0
おwwwwwwww仕wwwwww置きwwwwwwされてるwwwwww
461 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/06(木) 01:11:06.91 ID:A74GXvE0
10分後。
四人はキッチンの小さなテーブルを囲み、その上に置いてある黒い包みを眺めていた。

御坂は疲れてしまったのか、それとももうどうでもよくなってしまったのか、腑抜けた顔をしていた。
ちなみにダンテの首元からはまだ煙が上がっていた。

ダンテ「ほらよ」

ダンテが黒い布を剥ぎ取った。
姿を現したのは、黒い金属の塊。

直径15センチはあろう丸太のような棒の先に長方形の箱がくっついているような形だった。
その箱からは斜めに棒が突き出していた。
一見すると、柄が曲がっている棍棒のようだ。

その箱とは反対側の先に、直径1cm弱の穴、銃口が開いていた。

御坂「こ、これが……あたしの?」

ダンテ「ああ」

ダンテがあり合わせで作った御坂専用の銃だ。
ブローニングM2重機関銃をベースに、その銃身を魔界の金属生命体の物と取替え、
駆動部も同じ金属生命体でコーティングしたものだ。
462 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/06(木) 01:12:54.90 ID:A74GXvE0
完成した現物の重量は50kgを越えている。
そして引き金とグリップ、例の曲がった柄のような部分の配置も反動を一切考慮していない。

だが御坂専用なのだ。
重さも反動も考慮する必要は無いだろう。


ダンテ「発射速度は500発/分。連射可能だ。ま、装弾数は10から200までお好みで」

ダンテ「銃身は7万度まで耐えられる。一万発連射したところで銃身は一ミクロンも歪まねえぜ」

ダンテ「ライフリングの磨耗も心配しなくていい。自動で修復する」

ダンテ「射程はお前がどんだけ力を流し込むかで決まる。まあ、最大出力にすりゃ地平線の端までは届くだろ」

ダンテ「それと安全装置はねえから注意しな」
首元からまだ煙が上がっているダンテが立て続けに説明をした。

上条「……」

トリッシュ「……」

御坂「……」

ダンテ「とりあえず持ってみろ」
463 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/06(木) 01:18:37.48 ID:A74GXvE0
御坂が恐る恐る手を伸ばし、柄のようなグリップを握る。
そして能力を使い持ち上げた。

ダンテ「どうだ?」

御坂「……良い感じかも…!」
手にしっくりくる。
グリップも握りやすい。

ダンテ「お前砂鉄集めて剣とかに出来るんだろ?それも銃身の形変えられるぜ?」

御坂が頷き、力で操作する。
すると銃身が薄くなり、長さ1.5m程の漆黒の刃となった。

御坂「な、なにこれえええええ!!!!す、すごいすごいすごい!!!!!!」

ダンテ「強度はそうだな……それで撃つ弾を弾けるレベルだ」

御坂「!!!!」

トリッシュ「(『魔具もどき』ってところかしらねアレ)」

上条「(これが本物の『魔改造』ってか)」

ダンテ「操作をやめれば元の形に戻る」

御坂が操作をやめると、刃は元の銃身の形に戻った。

御坂「きゃああああああああ!!!!!!すっごい!!!!やばいやばい!!!!!」
464 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/06(木) 01:25:34.39 ID:A74GXvE0
御坂「ありがとうございます!!!!!!!ありがとうございます!!!!!!!」
御坂がその巨大な大砲を抱きしめ、ダンテに何度も礼をする。

ダンテ「大事にしろよ」

御坂「はい!!!!!抱いて寝ます!!!!!!!」


トリッシュ「(……こんなもん持たせてどうすんのよ……)」
トリッシュが、首元からいまだに煙が上がっているダンテを呆れた目で見た。

ダンテ「なんだよ」

トリッシュ「やりすぎ」

ダンテ「これは男のロマンだ」

トリッシュ「女の子が持つ物に男のロマン追求してどうすんの?」

トリッシュ「何考えてんの?頭おかしいの?バカなの?もっと欲しいの?これ?」

トリッシュが右手を顔の横にあげる。
指先には金色の電気が走っていた。

ダンテ「……明日にしてくれや。俺は寝る」

トリッシュ「いいわよ。一発で寝かせてあげる」

ダンテ「ハハ、生憎子守唄はいらねえよ」

トリッシュ「遠慮しないで」
トリッシュがダンテの首へ再び手を当てた。

ダンテ「お前nglsgれぎksss」

―――
465 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/06(木) 01:26:52.90 ID:A74GXvE0
今日はここまでです。
再開は明日の夜12時あたりから。
466 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/06(木) 01:28:00.75 ID:GT5MqmM0
乙です!


ロマン追求したらお仕置きとかwwww
467 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/06(木) 01:30:49.64 ID:eK7n0nAo
乙!

さすがダンテさん、わかってらっしゃるww
468 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/06(木) 01:33:45.94 ID:YTATQFMo
乙!
魔改造はロマンだよねww
469 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/06(木) 02:03:17.60 ID:Ef3K/5ko
乙!
やっぱロマンって大事だよね・・・
470 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/06(木) 02:04:49.93 ID:Z5ZdWdIo
銃とか詳しくないからわからんけどブローニングM2重機銃って普通手で持ち運びするような銃なの?
普段どこに置いとくんだww
471 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/06(木) 02:25:18.60 ID:jT8xvxQ0
wikipediaによるとこんなの。
http://beebee2see.appspot.com/i/agpiZWViZWUyc2VlchULEgxJbWFnZUFuZFRleHQYibiHAQw.jpg

どう見ても据え置き兵器です。本当に(ry
472 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/06(木) 03:39:11.62 ID:vbbB7YQ0
バイト中だけどおつううううう!!

いやーロマンとか変形とか、もうあれだ

うんなにが言いたいかってーと乙!!
473 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/06(木) 04:37:42.08 ID:ubLzv0g0
相変わらず見事です乙

大喜びしてる御坂がかわいい

そしてダンテさんぱねーす
このダンテになら掘られてもいい
474 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/06(木) 07:53:51.51 ID:suT.5.Uo
>>470
持ち運びは手でもできるだろーけど複数人でバラバラに運ぶはず
そして使う時は基本据え置き。手で持ってぶっぱなすのは無理ww
475 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/06(木) 08:14:32.28 ID:ZB0ZZO.0
3のスパイラルみたいなモノか?
476 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/06(木) 14:14:00.21 ID:9I0nmNko
アラストルさんよかったね!君がナンバーワンだ!
477 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/06(木) 22:23:02.10 ID:f2lcRlo0
ギャグパートクソワロタwwwwww
いつも更新お疲れ様です
次回も楽しみだ!
478 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/07(金) 00:12:06.35 ID:02VBpOI0
―――


バッキンガム宮殿。

地下の蔵書。

ネロは机の上に足をあげ、だらしなく椅子に座っていた。
相変わらず蔵書の中は散らかっている。

壁際には古めかしい本が積み上げられ、机の上にも黄ばんだ羊皮紙が大量に散らばっていた。

そしてその机の前。

ネロの向かいの椅子に、神裂が座っていた。
その後ろの扉には腕を組んでるステイルが寄りかかっていた。

神裂「五日後に決まりました。向こうは枢機卿を出してくるそうです」

ネロ「誰が同行する?」

神裂「五和を」

ネロ「へぇ……まあ、とにかく気をつけな」

神裂はイギリス清教の大使として、ローマ正教の総本山であるヴァチカンに向かうのだ。
今の時期、わざわざ相手の本拠地に赴くと言う事は自殺行為に等しい。

例えるならば、大きく顎を開いた獅子の口の中に飛び込んでいくようなものだ。

だから。

神裂「ふふ、心配いりませんよ」

だからイギリス清教はその口の中に巨大な爆弾を放り込む。

もし噛み砕こうとすれば、頭もろとも吹き飛んでしまうほどの爆弾を。
479 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/07(金) 00:17:29.24 ID:02VBpOI0
神裂「ネロさんは自分の仕事の心配を」

神裂がイタズラっぽく笑う。
こうしてみると年相応の18才の女の子だ。

ネロ「ハッ良く言うぜ」

ステイル「万が一の対策もちゃんとある」
扉に寄りかかっていたステイルが薄く笑いながら話の輪に加わってきた。

ステイル「『神裂を救出』しなければならなくなった場合、僕がヴァチカンに『投下』される」


ステイル「弾道弾ミサイルでね。15分で行ける」


ステイル「その間、シェリーがココを守護する」

ネロ「……ま、問題ねえな」

ステイル「そうするのは最後の手段なんだけどね」

ステイルが『投下』されるのは、どう足掻いても全面戦争が避けれなくなった場合だ。
ヴァチカンでイギリス清教所属の『悪魔』が戦闘行為をするのだ。
宣戦布告に等しい行動だ。

そもそも神裂に救出が必要と言う時点で、ヴァチカンは廃墟になっている可能性が高い。
それはもう既に戦争状態だ。


神裂「その必要ありません」
神裂が顔を引き締め、毅然とした声をあげる。

ステイル「……」


神裂「……絶対に戦争は起こさせません」
480 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/07(金) 00:22:59.48 ID:02VBpOI0
ステイル「……ああ、同感だ。絶対に避けなければならない」

ネロ「……だな」

だがそれはタダの気休めにしか過ぎなかった。
悪魔の勘が行っているのだ。

絶対に戦争は起こると。

同じく悪魔であるステイルも微かに感じていた。
そして天使である神裂も。

三人は、心の奥底ではもう確信している。
いずれ戦争が起きると。

神裂「……」

ネロ「……」

ステイル「……」

ネロ「まああれだ」
重苦しい空気を断ち切るかのように、ネロが両手を広げ軽い声色で声を放った。

ネロ「神裂が戻ったら飲もうぜ。また非番の連中片っ端から集めてよ」

ステイル「いいね。僕も君にリベンジしたいしね」

ネロ「ハハッ上等だぜ。もう一度フォルトゥナ式で教育してやる」

神裂「……あのぅ……」

ネロ「あ?」

神裂「その……私飲めません…」

ネロ「知るかよ。茶でも飲んでな」
481 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/07(金) 00:27:47.74 ID:02VBpOI0
ネロ「とにかく付き合え」

ステイル「ああ、次は君がメインなんだ」

ネロ「顔ぐれえ出しな」

神裂「……は、はあ。わかりました。ではそろそろ時間ですので」

神裂が椅子から立ち上がり、それに合わせてステイルも扉のノブに手をかける。

神裂はこれから出発するのだ。
五日後と言ったが、それは会合の日時だ。

事前にイタリア入りし、済ませなければならない事務処理がたくさんあるのだ。


ネロ「待て」


ネロがその神裂の背中に声を飛ばした。

神裂が振り向くと、ネロは右手拳を差し出した。

ネロ「とにかくだ。お前が『戻ったら飲む』」


ネロ「キャンセルはナシだ。許さねえ」


ネロが神裂の目をジッと見つめ言い切る。
482 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/07(金) 00:29:04.51 ID:02VBpOI0
神裂「……ふふ…」

それは、言い換えれば「神裂が戻った時、宴会が『できない』状況は許さない」ということだ。

戦争は避けようはないのかもしれない。

だが先延ばしは出来る。
できるだけ時間を稼ぐ。

そうすれば、戦争を避けるという道も見つかるかもしれない。


神裂がネロの方へ進み、彼の右拳に自分の左拳を軽くぶつけた。


神裂「当然です!当たり前ですよ!」

ネロ「OK。問題はねえ」


ネロ「行って来い。神裂火織」


神裂「はい!!行ってきます!!!」


―――
483 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/07(金) 00:31:59.83 ID:02VBpOI0
―――

事務所デビルメイクライ。

上条は自分の部屋のベッドに寝そべり、天井をボーっと見上げていた。

上条「……いてぇ…」
先ほどトリッシュによって、電撃を鼻先に叩き込まれたせいで未だにヒリヒリ痛む。

一応右手をかざしてみたが、トリッシュの力は体内の奥深くまで浸透しているらしく効果は無かった。
鼻を引きちぎり右手を突っ込めばこの痛みは消えるだろうが、それだと比べ物にならない激痛を味わうので本末転倒だ。

上条「……」
隣の部屋からは御坂の嬉しそうな声が聞こえる。
さっきからスゴイだのヤバイだのを連呼している。

恐らく部屋の中でいろいろ弄ったり、剣型に変形させては戻したりを繰り返しているのだろう。


上条「……んあ?」
ふと携帯の時刻を見た。

上条「お、そろそろいいな」
学園都市はちょうど朝だ。
もうインデックスも起きている事だろう。

上条は携帯を握り、お馴染みの番号へ電話をかけた。

ワンコールで相手が出る。


禁書『とうま!!!!!おはようなんだよ!!!!!』
484 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/07(金) 00:40:19.73 ID:02VBpOI0
上条「おおう…相変わらず出るのはええな!!!おはよ!!!」

上条は知らないが、彼はいつもこの時間帯にかけているので、
インデックスは毎度欠かさずスタンバイしている。

禁書『そっちはどう!?大丈夫!?』

上条「おう、問題はねえぜ」
いつものやりとりだ。

ちなみに、インデックスは上条が具体的にどんな目に合っているかは知らない。
もし知ってしまえば発狂してしまうだろう。

上条「お前はどうだ?ちゃんと飯食ってるか?」

禁書『うん!!!あのね―――』

インデックスが昨日一日の出来事を嬉しそうに事細かく喋る。
上条は穏やかな笑みを浮かべ相槌を打ち、彼にとって心温まる歌のような少女の声に聞き入る。

上条にとって最高の癒しだ。
この声を聞けば、全ての疲れが吹き飛び、そして安眠できる。
485 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/07(金) 00:42:16.95 ID:Jm34VwAO
相変わらずこのインデックスはいいインデックスだなぁ
486 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/07(金) 00:45:48.05 ID:02VBpOI0
禁書『―――なんだよ!!!』

上条「はははそうか〜!」

禁書『でねでね……んん?』

上条「?」
インデックスが向こうで誰かに話しかけられ、言葉を止めた。

禁書『ちょっとまって。あくせられーたが話があるって。今かわるんだよ』

上条「お、おう」
上条は少し嫌な予感がした。
まさかインデックスが何か迷惑かけたのか と。

電話越しに 少しだけなんだよ!!!すぐ終わらせて!!! とインデックスの声が聞こえた。

上条「……」


一方『よォ』

上条「おう」

一方『どォだ?そっちはよォ』

上条「……へ…あ、ああ、特に問題ねえぜ」
少し拍子抜けした。
開口一番に文句を言うと思って身構えていたのだ。
487 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/07(金) 00:50:48.66 ID:02VBpOI0
一方『そォか。そィつはイイ』

上条「ま、まあな」

一方『……』

上条「……」

少しばかりの沈黙。

お互いともなんとなく古い友人のように思っていたが、お互いをそこまで知っているわけではない。

確かに拳を重ね、魂をぶつけ合い会話をし、背中を合わせてお互いを信頼して共闘もしたが、
こういう平時ではどういう風に接すればいいのかお互いともわからなかった。
何を話せばいいか分からないのである。

一方『……つーかよ』
先に口を開いたのは一方通行だった。

一方『話し長ェよあのガキ。テメェもよ』

上条「あ、あ〜、もしかして待ってたのか?」
30分以上もインデックスと話していたのである。
代わるタイミングを待っていたが、ついに耐えかねてインデックスに代われと言ったのだろう。

一方『まァな。まァ……ガキは話が長ェってのはどこも共通みてェだな』

上条「みたいだな。ま、お互い色々と苦労してるみたいだな」

一方『まァな………って、ンなこたァどォだっていィんだよ!!!クソがァ!!!』

いきなり一方通行が語気を荒げ、凄まじい勢いで自分に突っ込みを入れた。

上条「……」
488 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/07(金) 00:54:31.52 ID:02VBpOI0
一方『なンでテメェなンぞとグダめいて、苦労を共有しなくちゃなンないんですかァァ゛?!!!!アァァ゛ァ゛!!!??』

上条「……なんか…その……すまん」
上条は お前がその話を振ってきたんじゃねえか と思ったが、
それを突っ込むと色々面倒になりそうだったのでここは謝った。

一方『チッ………つーかよ、テメェはいつ帰ってくンだ三下ァ?』

上条「あー、まだわかんねえな」

一方『大体でもわかンねェのか?』

上条「ん〜……全然」

一方『……クソッ』

上条「?何かあんのか?……まさかインデックスがなんか迷惑を……」

一方『それはねェ。あのクソガキにも見習わしてェくれェに大人しくしてる」

上条「おおおお……そうか……良かった……」
上条は心の底から安堵した。

一方『色々あンのは俺だ』

上条「?」

一方『……「用」があンだ。大事な「用」がな』
489 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/07(金) 00:59:06.45 ID:02VBpOI0
上条「いつだ?」

一方『さァな。だが近い内にだ』

上条「う〜ん……丸一日とかあける位の用か?」

一方『まァな』

上条「むむむむ……とりあえずステイルに連絡してみるぜ」
ステイルなら二つ返事ですぐに飛んでくるだろう。

一方『つーかよォ、そっちに連れてけや』

上条「そ、それは……」
それは色々と面倒な処理が必要になるのは上条も知っている。

上条「うーん………待てよ……そうだ」

上条「俺が一時的に戻るってのはどうだ?その日だけ俺が代わりに面倒を見る」

一方『いや……代わりじゃねェ。『交代』だ。俺はその日以降面倒は見ねェ』

上条「……そんな長い期間の用事なのか?」

一方『多分なァ』

上条「……と、とにかく、とりあえず近い内に一度帰れないかトリッシュさんに話してみるからよ」

上条「できればだが、そん時にちゃんと話そうぜ」

一方『……あァ。早く帰って来い。三下ァ』

上条「ああ、できるだけ早く行くよ」
490 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/07(金) 01:05:37.97 ID:02VBpOI0
一方『話してェのはこンだけだ。じゃァガキに代わんぜ』

上条「おう」

一方『いや……最後に一つ聞く』

上条「?」

一方『ダンテよォ……なンか言ってねェか?』

上条「何かって……何が?」

一方『学園都市に関係することでだ』

上条「……特に何も聞いてないけど……なんかあったのか?」

一方『いや、何も聞いてねェなら別に言い』

上条「……ちょっとまてよ……そうだ、確かまだ魔具の一つが返って来ないって言ってたな」

上条「『まあいつか返ってくる』っていつも通り笑ってたけどな。それだけかな、学園都市の話が出たのは」


一方『……………………………………………………へェ。そいつは「知らなかった」ぜェ』


一方『じゃァな三下ァ。早く帰って来い』

上条「おう」


―――
491 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/07(金) 01:10:48.11 ID:02VBpOI0
―――


とあるマンション。

一方通行はインデックスに携帯を投げ渡した。

インデックス「わ!!!ちょ、ちょっと!!!」
インデックスがわたわたと慌てながらキャッチし、すぐに耳にあて大声で再び喋りはじめた。

一方通行はソファーに乱暴に座った。
背もたれの上辺に後頭部を当て、天井を仰ぐ。

一方「……」
黄泉川がつくっているのだろう、朝食の香りが鼻腔を優しく刺激する。

一方「……」
こうやって過してもう二週間が経とうとしている。

あまりにも場不相応だ。
こんな自分がこんなに明るいところで暮らしているなど。
そしてそれを悪くは無いと思っている自分もいる。

誰も殺さず、笑顔に囲まれてだ。

一方「……」

そう、この笑顔。

この笑顔をなんとしても守らねばならない。
492 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/07(金) 01:15:11.04 ID:02VBpOI0
とんでもない何かが起ころうとしている。
恐らく戦争だろう。

相手が誰かは知ったこっちゃ無いが、土御門曰く学園都市は厳しい戦いを強いられるとのことだ。

自分は必ず戦力として動員される。
ミサカネットワークという強い情報網を持つ、妹達と打ち止めも利用されるかもしれない。
アンチスキルである黄泉川は兵として動員されるかもしれない。

前線に立つことはないであろう芳川も、この学園都市に残れば危険かもしれない。

このままだと全て壊れるかもしれない。

一方「……」

だから彼は動く。


打ち止めを守る為に。

その少女の周りの『世界』を守る為に。

学園都市に固く繋がれている鎖を断ち切る為に。

『アレイスター』という死神から逃れるために。

今が立ち上がる時だ。
493 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/07(金) 01:20:03.37 ID:02VBpOI0
中に住まうものにとって最大の禍である『学園都市の危機』は、一方通行達にとっても最終通告だ。

だが皮肉な事に、一方で彼らにとってこれ以上ない程の最大のチャンスともなる。

役者は全て揃った。

『アラストル』もある。

後はとりあえず『ネタ』をできるだけ漁りながら時期を待つだけだ。

一方「……」

『アラストル』。

一方通行はこれには少し迷いがある。
使って良いのだろうかと。

土御門や海原は使う気マンマンらしいが、一方通行は少し気が引ける。

確かにアラストルがこちらにとって究極の切り札になるだろう。



今、こちら側にはレベル5が二人いる。

しかし、いくらレベル5がとはいえ、『学園都市の能力者』である。
つまりアレイスターの手の平の上だ。

だからアレイスターの裏をかくには彼の手の外、彼の手が届かない領域の力が必要なのだ。

そこで『アラストル』なのだが。
494 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/07(金) 01:28:17.07 ID:02VBpOI0
確かに有用だ。

だが一方通行は知っている。

実際に直で目にしたことの無い土御門や海原とは違う。

彼はその領域の力を直にこの身で味わっている。
圧倒的な破壊を目の当たりにし、底なしの恐怖と絶望を味わった。

『あんな物、あんな力、人間の手には到底扱えない』

それが一方通行の考えだ。
あのアレイスターでさえ及び腰になってしまう領域だ。

一方「……」

一方通行は迷っていた。
事を成し遂げるには『アラストル』の使用が必要なのだ。
それはわかっている。

自分達だけじゃ、あまりにも頼りなさすぎる。

だが『アラストル』を使うという事には、自滅するという可能性も含れている。

アレイスターにとってイレギュラーだが、一方通行達にとってもイレギュラーなのだ。

一方「……クソッ…」

あまりにも危険すぎる。
しかし使うしかないのだろう。躊躇っている余裕は無い。

一か八かの賭け。
負ければ全てを失う。
そしてこの賭けを降りればもう二度と立ち上がれない

だから道はただ一つ。

勝つだけ。

絶対的な勝利を手にする。

そしてその為には『アラストル』が必要なのだ。

一方「…………」
495 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/07(金) 01:36:55.97 ID:02VBpOI0
鎖を砕き、自由への切符を手に入れる為の戦い。
かけがえの無い存在をその『船』に乗せる為の戦い。

当然、彼は己自身がその『船』に乗るつもりは無い。
クソはクソ溜めに残るのが相応しい。

学園都市が滅ぶというのなら共にする。

一緒に消えて無くなるべきだ。

一方「……カカッ…」
一方通行は天井を仰ぎながら小さく笑った。

こんな自分達の姿が何となく滑稽だ。

あまりにも無様なだ。
クズが寄り集まって足掻く。

見るに耐えない薄汚れた戦いだ。

所詮悪役のカス共だ。
こういう戦い方しか出来ないのだ。

ヒーローの様に己が身一つで、拳のみで掴み取ることは出来ないのだ。


一方「……」
己が見たヒーロー達の姿を思い出す。


ボロボロになりながらも前に突き進むツンツン頭の少年。

赤いコートをなびかせ、華麗に疾駆していく銀髪の男。


忍び寄ってくる運命をねじ伏せ、鎖など自力で簡単に引き千切ってしまう強き『主人公達』を。


一方「………かっけーなァ…おィ…」


―――
496 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/07(金) 01:37:51.49 ID:02VBpOI0
今日はここまで。
明日は投下できるかわかりません。
明後日は確実に投下できます。
497 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/07(金) 01:38:49.73 ID:dPH1aYUo

毎晩おつかれさま
498 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/07(金) 01:40:12.68 ID:PR0Ajtk0

楽しみにしてる
499 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/07(金) 01:41:17.60 ID:nbjtPVMo

待ってます
500 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/07(金) 01:41:30.89 ID:Jm34VwAO
今日も乙でした。
501 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/07(金) 02:23:11.98 ID:3oSN1x.o

次も楽しみだ
502 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/07(金) 06:45:11.58 ID:45eNaVYo
乙 ほんと楽しみなんだぜ!待ってる!
503 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/07(金) 10:02:13.48 ID:AIiouADO

一方通行のダークヒーローっぷりは好きだな

ステイル14歳と聞いたが一応家での飲みなら大丈夫な歳なのな
まあ公共の場じゃアウトだが
504 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/08(土) 01:13:08.77 ID:OQdqu260
乙乙!
ほんとに面白い作品だな
505 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/08(土) 22:44:38.84 ID:1bb1vNw0
今日更新くるか
506 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/09(日) 00:12:47.23 ID:efQIU8E0
―――


事務所デビルメイクライ。
時刻は深夜。

ダンテは一階のホールのソファーに寝そべり、うとうとしていた。
いい具合にアルコールがまわり、極上の一時だ。

だがその至福の時間が、電話のけたたましい音で中断される。

ダンテ「………」
だがダンテはソファーから動かない。
面倒臭いのだ。

机の上の電話は相変わらず鳴り響いている。

ダンテ「………」

根競べだ。
電話の主が先に諦めるか、ダンテが降参して受話器を取るか。

ダンテ「………」

電話が鳴って3分が経過した。
徐々にダンテの苛立ちがつのってゆく。

ダンテ「………」

だが彼は負けない。
そうと決めたのなら、意地でも突き通す。
どんな戦いだろうと負けねえ と。

その時だった。

トリッシュが早歩きで地下室へ続く階段の方から、
ダンテが寝そべっているソファーの方へ真っ直ぐに進んで来た。

トリッシュ「出なさいよ」

そしてソファーを思いっきり蹴飛ばした。衝撃でダンテは床に転げ落ちた。
507 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/09(日) 00:16:54.17 ID:IS1jTP2o
ダンテwwwwww
508 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/09(日) 00:17:08.12 ID:efQIU8E0
ダンテの小さな戦いはそこで終わった。

トリッシュ「いい歳こいて居留守とか。ホントしょーもないわね」

トリッシュはそう吐き捨て、早歩きで机に向かい受話器を取った。
ダンテは悪態を付きながらモタモタとソファーに這い上がっていた。

トリッシュ「Devil May Cry」

机に軽く腰掛け一言。

トリッシュ「ねえ。合言葉アリだけど」

トリッシュが、再びソファーの上に寝そべっているダンテへ声を飛ばした。
その言葉を聞いてダンテが勢い良く上半身を起こした。

ダンテ「場所は?!」
ダンテが見るからにワクワクしている笑みを浮かべトリッシュに声を飛ばした。

トリッシュ「というかかわって。エンツォだから」

ダンテ「ハッハァ!」
ダンテがひらりとソファーから飛び起き、一切無駄のない華麗な動きで進みトリッシュから受話器を奪い取った。

ついさっきソファーから無様に蹴落とされた男とは別人のようだ。

トリッシュ「……ったく…」
トリッシュはそんなダンテを呆れた目で眺めた。
509 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/09(日) 00:21:19.04 ID:efQIU8E0
ダンテが相槌をし、ハハッと笑い、そして 任せろ と言って受話器を放り投げる。
宙を舞った受話器は、まるで磁石にでも吸い寄せられているかのようにストンと元の位置に収まった。

トリッシュ「何だって?」

ダンテ「タレコミだ。四日後にリスボンの港に例の人造悪魔を積んだ船が入るとよ」

トリッシュ「へぇ……ウロボロス社の?」

ダンテ「ああ。その次の日もだ。二日続けて入るとよ」

トリッシュ「面白いわね。そろそろ現物が欲しかったところなのよね」
現物が手に入れば、
それを調べる事によってかなり詳細な黒幕についての情報を掴むことができる。

トリッシュ「いいわ、私がいk」

ダンテ「俺が行く」

トリッシュ「……」

ダンテ「そろそろパーっとやりてぇんだよ。良いだろ?」
ダンテが軽く手を広げニヤける。

トリッシュが呆れたようなため息を付く。

トリッシュ「ま、いいわよ。あなたが決めることだし。じゃあ私はその二日間の間坊やの面倒を見るから」

ダンテ「ヘッハァ!」
510 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/09(日) 00:28:47.79 ID:efQIU8E0
トリッシュ「わかってると思うけど」

ダンテ「あんま暴れんな だろ?わかってる」

トリッシュ「……」
わかってはいるが、その言いつけを守るとは言わない。
いつもの事だ。

どうせその船が真っ二つに折れて爆沈でもするのだろう。
先にトリッシュが早めに何体か捕獲しておかないといけない。

その時、階段を降りてくる音が聞こえた。

トリッシュ「あら、まだ起きてたの?」

上条が階段の所に立っていた。

上条「おう。電話しててな。でさ、ちょっと話あんだが……いいか?」

トリッシュ「どうぞ」

上条は簡潔に説明した。
インデックスの面倒を見ていた一方通行が、近い内にその役から降りなければいけないと言う事。
とりあえずその事を話す為に、今週中にでも少しだけでも向こうに顔を出したいと。

トリッシュ「……へぇ」
511 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/09(日) 00:30:42.25 ID:efQIU8E0
トリッシュ「ちょうど良いわね」

ダンテ「だな」

上条「?」

トリッシュ「良いわよ。ダンテが四日後から出かけるから。二日間」

上条「!!」

トリッシュ「一日目はあなたの力を調整するわ。二日目はお休みにしてあげる」

今の荒削りのままだと、ダンテやトリッシュの傍から離すのは少し不安だ。
一日かけて『バリ』を削り落とし、上条の力をある程度安定させてからの方が良いだろう。

上条「ってことは………戻って良いのか!!!?」

トリッシュ「ええ。一日だけだけど」

上条「おう!!!全然おっけーだぜ!!!!」

ダンテ「ま、久々に羽伸ばしてきな」

上条「ああ!!!サンキュ!!!」

こうして上条は五日後に一時帰宅する事になった。


―――
512 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/09(日) 00:39:55.06 ID:efQIU8E0
―――


バッキンガム宮殿地下。
とある蔵書。

ネロは険しい表情で椅子に座り足を机に乗せていた。

ネロ「……」
この妙な胸騒ぎ。日に日に徐々に強くなってきている。

悪魔の勘が叫ぶ。
『数日中に開演する』と。

ネロ「……」

一番近い、大きなイベント。それは五日後に行われる神裂とローマ正教の枢機卿との会合。

ネロ「……」
神裂を信頼し任せるか。
それとも女王に直談判でもして中止させるべきなのだろうか。

だが悪魔の勘は「そんな事は無駄だ」という。
どちらの道を選んでも結局『開演』すると。

ネロ「……最悪だな……ホント最悪だぜ畜生が…」

その時、机の上の通信霊装が光りだした。
513 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/09(日) 00:42:03.85 ID:efQIU8E0
ネロ「……」
報告の時間はいつも大体決まっている。
つまり、この通信はそれ以外。

嫌な予感がする。

机に乗せている足で通信霊装を乱暴に叩き起動する。

ネロ「あ?」

『フォルトゥナからネロ殿に』
通信霊装からの男の声。

ネロ「……」
予想通り報告ではなかった。

そしてフォルトゥナから。
ネロの顔が少し引きつる。

心当たりがある。
ここ最近なんやかんやでしばらく家に帰っていない。

ネロ「……つなげ」

『了解』

数秒後。

『ネロ?』
通信霊装から、穏やかで優しいハープの音色のような透き通った女性の声。

その声を聞いてネロは机から足を下ろし、一瞬で姿勢を正した。

ネロ「悪い!!色々忙しくてっ!!!……本当に悪い!!!」
そしてネロは相手の話を聞かずに即座に謝罪をした。

相手はキリエだ。
514 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/09(日) 00:48:16.40 ID:efQIU8E0
キリエ『うん、いいの、それはしょうがないよ』
声だけで分かる。
素直で優しい、まるで天使のようなキリエは何も怒っていないだろう。
だが逆に素直すぎて、彼女の寂しさもビシビシ伝わってくる。

ネロ「すまん!!!本当にすまん!!!!」

キリエ『いいってばもう……そうそう、ご飯とかちゃんと食べてる?』

ネロ「ああ、大丈夫だぜ」

キリエ『洗濯とかちゃんとしてる?』

ネロ「お、おう、してるぜ。そっちはどうだ?」

キリエ『うん、特に何も問題ないよ。あ、そうそう……』

そこからキリエは女の子特有の世間話を始めた。
その内容は、同じ世界にいるのかと思いたくなる程に微笑ましいものだった。

キリエの話した内容はお隣さんのわんちゃんが子犬を無事出産したとか、
家の前の花壇のお花が咲いたとか、孤児院の子が元気 などなど。

その美しい歌のようなキリエの話をネロは穏やかな笑みを浮かべ、優しく相槌を打ちながら聞いていた。

今のネロにとって最高の安らぎだ。
515 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/09(日) 00:53:01.26 ID:efQIU8E0
しばらくそうしてキリエの話を聞いていると、蔵書のドアが軽くノックされた。

ネロ「(チッざけんな誰だクソッタレぶっ殺すぞクズ野郎)」

ネロ「おっと、わりぃ!ちょっと待ってろ」

キリエ『…それでね…えっ?、あっうん』

ネロは通信霊装の書物を閉じ、緩んだ表情を一瞬でいつもの冷たい仕事モードに戻した。

ネロ「入んな」
そして扉に向けそっけなく声を飛ばした。

扉が開き、黒いローブに身を包んだ背の高い修道女がいそいそと入ってきた。
緩いローブ越しからでもわかるそのグラマーな体。
ローブについている帽子を深く被り、俯いている為顔は見えない。
手には黄ばんだ古めかしい紙。

特におかしい点は無い。
こうして『暗部』の者が報告書を直に持ってくる場合も多々ある。

ネロ「……」

だがネロはその妙な『空気』に気付いた。


ネロ「―――止まれ」


ネロの制止を受けて、『グラマー』な修道女は部屋に数歩入ったところで止まった。
516 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/09(日) 00:59:43.19 ID:efQIU8E0
ネロは椅子の背もたれに寄りかかりながらその修道女を睨む。

ネロ「―――で、どちらさんだあんた?『来客』の予定はねえはずなんだが」

修道女が顔を上げた。
ローブの帽子の下から、黒縁のメガネをかけた整った女性の顔が見えた。
そして―――口元のほくろ。

女は色っぽい笑みを浮かべている。

ネロ「………」

ネロは一目で気付いた。
この顔やほくろ、メガネや体格は神裂の証言と完全に一致している。

聖ジョージの襲撃犯だ。

「はじめまして。坊や」

女が口を開いた。
その声は不気味なほどに色っぽい妖艶な物だった。

ネロ「遊びてえのか?バァさん」

ネロは右手を隠しもせずに顔の横にあげ、指を曲げながら力んで関節を鳴らした。
異形の右手の青い光が強まる。

同時に目が赤く光る。

「あら、ダディに似て冷たいのね。でもそういうところもセクシーで可愛いわよ」

そんなネロを見ても女は一切動じずに、余裕の篭った妖艶な笑み。


ネロ「……(ダディ……?)…親父を知ってんのか?」
517 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/09(日) 01:03:05.71 ID:MzE/2.DO
ベヨネッタwwwwwwwwwwww
518 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/09(日) 01:06:44.59 ID:efQIU8E0
「よ〜く知ってる」

女が熱い吐息を漏らし、身をくねらせる。

ネロ「……」
なぜか無性に腹が立つ。今すぐにでも叩き切りたい。
なんというか、初めてダンテに会った時の感覚に似ている。

自分が幼稚園児扱いされているのだ。

ネロ「……へぇ…じゃあ聞かせてもらおうか?ああ?」
ネロが苛立ちを隠しもせずに上半身を起こし、机の上に右手を叩きつけるように乱暴に乗せた。

「待って。私は別に『遊び』に来たわけじゃないの」

ネロ「へぇ。てっきりそうだと思ってたがよ」

右手の光が増す。
ネロは後ろに立てかけてあるレッドクイーンを意識する。

何かあればすぐにデビルブリンガーを伸ばし、そして叩っ切る為に。

「可愛い子ねぇ。ちゃんと聞きな。アンタのダディから『伝言』よ」


ネロ「……あ?」


「『今すぐイギリスと縁を切れ』」


「『魔術サイドとも学園都市とも、どの人間の勢力とも関るな』」


「『即刻フォルトゥナに戻れ』」


ネロ「………………は?」
519 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/09(日) 01:11:03.91 ID:efQIU8E0
「ちゃんと伝えたわよ。じゃあね」
女は手をひらひらさせ、ファッションモデルがターンするかのように華麗に踵を返して扉の方へ向かった。

ネロ「おいッ!!!……待てやババア!!!」
ネロが勢い良く立ち上がる。
その反動で座っていた椅子が後ろに倒れた。

「……あんまりババアって言わないでくれる?」
女が立ち止まり、振り向かないまま不機嫌そうな声を背後のネロに飛ばす。

「それ結構ムカつく」

ネロ「るせぇ!!!」

ネロがデビルブリンガーを一気に伸ばした。
女を鷲掴みにしそのまま扉に叩きつけるべく。


「You want to touch me? Huuummhum....Bad boy」


その巨大な右手が女の体に触れる瞬間。

ネロ「―――!」

女の体がバラバラに、いや、小さな無数の黒い蝶になった。
ネロのデビルブリンガーはその蝶の群れを突き抜け、そのまま扉をブチ破った。

ネロ「―――チッ!!!!」

女の体はどこにも無かった。
そして蝶の群れも一瞬で掻き消えた。
520 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/09(日) 01:15:49.36 ID:efQIU8E0
ネロは机を飛び越え、女が最後に立っていた場所に着地する。
そしてその床に右手を当てる。

力が僅かに残留していたものの、追跡に利用できるような情報は一切無かった。

ネロ「……何だってんだクソ……」

父が伝言とは?

あの女は何者か?

その関係は?

あの女が先日の聖ジョージ大聖堂襲撃犯なのは確実だ。
イギリスに対して友好的では無いのは確実だ。

もしかして父もあの女と同じくイギリスに対して非友好的なのか?

そしてあの伝言の内容。

ネロ「……」

これは確実にこれから起こる戦争に深く関係しているはずだ。

一体何がどうなっているのか。

父は何を知っているのか。

何を望んでいるのか。

そして何をしようとしているのだろうか。
521 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/09(日) 01:18:29.26 ID:efQIU8E0
ネロは己の異形の右手に目を落とす。
いつもと変わらず、この『向こう』側に父の存在を感じる。


ネロ「なあ……知ってんだろ?」
右手を見ながら小さく呟いた。


ネロ「教えてくれよ……何が起こってんだ?……親父ィ…」


『ネロ?ネロ?』


その時、自分を呼ぶ透き通った声に気付いた。
どうやら先ほど右手を机に叩き載せた拍子で起動してしまっていたらしい。

ネロは慌てて机の方に戻る。

ネロ「悪い!!!…色々立て込んでてな…」

ネロ「……ってどこから聞いてた?」

キリエ『えっと……女の人が「遊びに来たわけじゃない」って……」

となると本題は全て聞かれていた。

ネロ「(クソ…)」
ネロは、このキリエだけはこういう暴力と殺戮の禍々しい世界から遠ざけておきたかった。

彼女だけは触れさせてはならないのだ。
絶対に関らせてはならないのだ。

ネロ「……」
522 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/09(日) 01:19:07.93 ID:IS1jTP2o
しぇn
523 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/09(日) 01:25:55.00 ID:efQIU8E0
キリエ『それと…お義父さまの伝g』

ネロ「キリエ。今の事は絶対に誰にも話さないって誓ってくれ」

キリエ『……うん』

ネロ「……よし。じゃあまた後で、次はこっちから連絡するよ」
背後からざわめきが聞こえる。
大方、扉が破壊された騒ぎで警備の魔術師達が大慌てでこの地下に降りてきたのだろう。

キリエ『待ってる』

ネロ「じゃあ―――」

キリエ『ネロ』

ネロ「……ん?」

キリエ『愛してる』

ネロ「俺も愛してるぜ」
通信霊装の向こうから照れくさそうな小さな笑いが聞こえた。

キリエ『じゃあね』

ネロ「おう」
ネロは通信霊装をゆっくりと閉じた。

頭の中が混乱している。

ネロ「……………何が何だってんだよ…」

ネロは机に手を突いて、寄りかかった姿勢のまま一人吐き捨てるように呟いた。

―――
524 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/09(日) 01:28:06.88 ID:efQIU8E0
―――


事務所デビルメイクライ。

上条は自室のベッドの上に座っていた。
下でトリッシュと日程を話し合った後、すぐにインデックスへ電話を掛け、彼女と一方通行に伝えたところだ。

五日後の朝にトリッシュに学園都市に送ってもらう、つまり向こうに着くのは五日後の夜だ。
それから丸一日の自由時間という訳だ。

インデックスはこれでもかという位に大はしゃぎし、
上条にも聞こえてくるくらいに一方通行に うるせェ!!!! と向こうで怒鳴られていた。

上条「ははぁ〜!!」
上半身を勢い良く倒し、天井を見る。

上条「久々だな〜……」

考えてみると、インデックスとこんなに長期間離れたのは初めてだ。

上条「………うへへ…へへはあ……」
久々にあの愛おしい天使に会えると思うと、ニヤニヤしてしまう。
自分でも分かる。今の己の顔はかなり気持ち悪いだろう。

上条「……ん?」
そうやってニヤニヤしていたところ、ふと隣の部屋からの声に気付いた。

御坂が何やら大声をあげている。

上条「……」
まだあの大砲ではしゃいでいるのかと一瞬思ったが、どうやらそれは違うようだ。
何やら誰かと話しているようだ。
電話でもしているのだろうか と上条は思った。
525 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/09(日) 01:31:00.88 ID:efQIU8E0
「うるさい!!!!皆黙っててば!!!黙りなさい!!!」

上条「……」
誰かと電話越しか何かで喧嘩しているようだ。

「ちょ、ちょちょちょ…!!!!!消しなさい!!!!」

「見ないで!!!!見ちゃだめだって!!!」

「共有って……ダメだって!!!お願い!!!!いやぁあああ!!!!」

「全部消せってば!!!!だめぇ!!!!見んな!!!」

「ちょっと!!今『保存』って言ったの出てきなさい!!!出て来い!!!!出て来いやぁあああああ!!!!」」


「保存すんなゴルァアア!!!!!!!そこさりげなく長さ測ろうとしてんじゃねぇええええ!!!!」


「てめぇら試し撃ちの的にすっぞウラァァァァアア!!!!!!!」


「アァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛!!!!…………へ?……ウソ…そんなに長いの…?…た、確かに…そんぐらいあったような…」


「……え?!もっと大きくなるの?!!に、二倍ぃい?!!」


「………ってうるせェエ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛!!!!!!!!!!!」

上条「……」
526 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/09(日) 01:34:44.48 ID:efQIU8E0
上条「……」
そういえば、五日後に学園都市に帰る事を御坂にも伝えとこうと思っていたのだが、
今はやめておこう と上条は判断した。

上条「……明日でいっか」
上条はティッシュを耳に詰め、部屋の電気を消し床についた。

相変わらず隣の部屋からは御坂の怒号が聞こえてくる。

上条は夢にも思っていなかった。
自分のムスコの映像が一万人の手に渡った事に。

己が今リアルタイムで公開処刑されているなど。

上条「……まあ元気そうでなによりだぜ。早く寝ろよ。御坂。おやすみ」
壁に向かって小さく呟く。

そして。


上条「おやすみ。インデックス」


五日後に会えるであろう、地球の裏側の少女へ向けて。

そう、『五日後』。

それは『開演』の時。

―――
527 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/09(日) 01:35:37.24 ID:xR76kIIo
人によっては二倍どころではすまないんだぜ・・・
528 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/09(日) 01:37:14.78 ID:efQIU8E0
―――


とある深い森の中にある、古い廃屋。

時刻は深夜。
満月の月明かりが、周囲をぼんやりと照らしていた。

その廃屋の前に、黒いボディスーツに身を包んだグラマラスな女が立っていた。
右足に体重を乗せ体をしならせ、右手にはスティックの付いたキャンディ。

魔女、ベヨネッタ。

ベヨネッタ「ヴァチカンに行くのあのエンジェルちゃんだって」

ベヨネッタ「五日後の昼に会合を開くみたい」

ベヨネッタ「どうする?良い機会だと思うけど」
ベヨネッタが星空を仰ぎながら声を放った。

その声の相手は、廃屋の屋根に座って瞑想している男。

後ろに撫で付けた銀髪。
青いコート。傍らには黒い鞘に納まった日本刀。

バージル。
529 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/09(日) 01:41:40.75 ID:efQIU8E0
ベヨネッタは廃屋の屋根に座っているバージルへ向けて言葉を続ける。

ベヨネッタ「も〜う待ちくたびれちゃった。これ以上おあずけなんか無理」

ベヨネッタ「アンタももうそろそろ暴れたいでしょ?」

バージルが静かに目を開け、傍らの閻魔刀を掴み立ち上がった。

ベヨネッタ「どう?」


バージル「……異論は無い」

ベヨネッタ「じゃあ『天使』は任せて」
その言葉を聞いてベヨネッタが甘い吐息を吐き、妖艶な笑みを浮かべる。


ベヨネッタ「で、思いっきりブッ差してもいいの?あの『刀』?成功する確率は半々だと思うけど」


バージル「構わない。『天使』は殺せ」


ベヨネッタ「Huuum.Okaaay」
530 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/09(日) 01:44:04.47 ID:efQIU8E0
ベヨネッタ「そうそう、ところで坊やはどうすんの?一応伝えたけど」

ベヨネッタ「結局動かなそうよ坊や。『親』に似てガンコっぽいし」

ベヨネッタ「アンタの『弟』も。それとあの金髪悪魔が色々嗅ぎまわってるけど」

バージル「……必要な場合は俺が行く」

ベヨネッタ「……手を引かなかったらどうするの?」

バージル「その時はその時だ」

ベヨネッタ「……………仲良いんだか悪いんだか。面白い家族ねえ」

ベヨネッタ「じゃあもう行きましょ。色々下見も必要だし」

バージル「一人で行け」

ベヨネッタ「?」
ベヨネッタが大げさに首を傾げる。

ベヨネッタ「一緒に来ないの?」

バージル「さっさと行け」


ベヨネッタ「もう……ノリ悪いったらありゃしないわね」
531 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/09(日) 01:49:20.74 ID:efQIU8E0
ベヨネッタ「じゃあ何かあったら『喚ぶ』から。ダディ♪」

ベヨネッタが腰をくねらせ軽くウインクをする。


バージル「失せろ」


バージルが親指で閻魔刀の鍔を弾いた。
僅かに姿を現した刃が月明かりを浴びて不気味に光る。


ベヨネッタ「もう、そんなに嫌われてると悲しくなっちゃう」

ベヨネッタ「恐い恐いって坊やに言われない?ダーディ?」

ベヨネッタがキャンディを咥え、相変わらず舐めた態度で笑みを浮かべる。
このバージルにこんな態度で接する事ができるのはダンテか彼女ぐらいだろう。

バージル「……」
バージルが猛烈な殺意の篭った赤く光る瞳で睨み返す。

だがその瞳に晒されても尚ベヨネッタは一切動じなかった。

ベヨネッタ「はいはいわかったってば。じゃあね」
ベヨネッタは踵を返して森の中へ、腰をくねらせながら消えていった。


バージル「……………」

―――
532 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/09(日) 01:50:12.44 ID:efQIU8E0
今日はここまで。
再開は明日の夜12時辺りからです。
533 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/09(日) 01:51:04.63 ID:WHV3nvIo
乙!
上条さんのムスコがwwwwwwww
534 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/09(日) 01:53:57.29 ID:aStpCf.o
乙!
バッボーイwwww
535 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/09(日) 01:59:29.80 ID:N6M/BcDO
乙!
536 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/09(日) 04:20:14.80 ID:eC.3r.Io
いいインデックスだなぁ
537 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/09(日) 07:14:00.23 ID:RthPfMDO
バージルはあのパラレルエンドのようにベヨ姐と契約してる?
しかし上条一万人に息子大公開とは哀れすぎる、御立派様なのがせめてもの救いか…
538 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/09(日) 09:22:58.01 ID:hyFWZoDO
久しぶりにDMC3やってて思ったんだがこっちのダンテはクイックシルバー使わないのかな
一番好きなスタイルなんだが
539 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/09(日) 10:03:56.19 ID:b5xIeADO
上条さんインデックスにデレデレだなwwwwwwだがそこがいい
540 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/09(日) 11:54:56.60 ID:ll0hrTgo
キリエ可愛いなww乙
541 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/09(日) 12:43:02.18 ID:hpu7TcI0
(*´Д`)おヨネさん本格参戦の予感!!
542 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/10(月) 01:03:43.24 ID:mJZkMyM0
―――

四日後。夜

事務所デビルメイクライ。

上条は自室のベッドに寝そべっていた。
朝の内にダンテはトリッシュに送られて、嬉々としてリスボンに向かった。

トリッシュはすぐに帰って来て、そのまま上条の調整に入った。
全身にいつものように杭を差して。

上条にとっていつもと同じ『拷問』だったが、トリッシュ曰く違うらしい。
まあ、とにかくこれで暴走する可能性はほぼゼロだという。
今日一日は絶対安静という条件付だが。

その後、トリッシュは再びダンテの元にいった。
明日の朝に上条を学園都市に送る為に戻ってくるという。

上条「……へへへへ…」
今から半日後はもう学園都市だ。
インデックスが傍にいることだろう。

そう思うと自然と顔が綻んでしまう。
543 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/10(月) 01:07:51.54 ID:mJZkMyM0
ドアが軽くノックされる。

上条「おう」

ドアが開き、隙間から御坂がヒョコッと顔を出した。

御坂「えへへへ……準備できた!」

上条「おいおい、気が早いな。明日の朝なんだぜ?」

御坂「だって……久しぶりに戻るんだし…」
もう荷物を持って、今すぐにでも出発できる体勢の御坂が部屋に入ってくる。

上条「………って!それも持ってくのか!!?」
上条は勢い良く上半身を起こした。

彼が突っ込んだのは御坂の背中にある黒い棒状の大きな包み。
例の『大砲』だ。

良く見ると、手にも大きな箱型のバッグを持っている。
あのバッグにも見覚えがある。
昨日レディが持ってきた、術式強化を施した弾が300発程入っているバッグだ。

御坂「へ?うん。そうだけど」
御坂が 何かおかしい? とでも言いたげな顔で上条へ言葉を返した。
544 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/10(月) 01:16:05.21 ID:mJZkMyM0
上条「持ってってどうすんだよ!!!使う気かよ!?」

御坂「だ、だって!!!あたしはアンタの護衛なんだから!!!万が一に備えなきゃ!!!」

上条「……」
決して自惚れているわけじゃないが、自分には到底護衛が必要とは思えない。
この二週間でかなりダンテに鍛えられたのだ。

あの暴走時程とはいかないものの、光を集めて擬似的にベオウルフ風の装具も出現させられる。
学園都市の基準に照らし合わせれば、今の自分はレベル5クラスだと上条は思っている。

だが護衛も御坂の仕事であり義務の一つなのだから、しょうがないだろう。

上条「まあ……無闇に使うなよ」

御坂「フンだ!!……ってアンタはアレ持ってかないの?」
御坂が部屋の隅にある、小さなテーブルに乗っている黒い拳銃を指差した。

上条「……俺はいいかな」

持っていく気は無い。
インデックスにはあまり見られたくないのだ。

いつも通り、『ただの上条当麻』として会いたい。

御坂「……そう…」

とその時だった。

一階の電話がけたたましく鳴り響いた。
545 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/10(月) 01:20:16.16 ID:mJZkMyM0
上条「……一応出た方が良いよな?大事な件かも知れねえし」

御坂「……うん」

上条がベッドから飛び起き、廊下に出て階段を駆け下りていく。
御坂が荷物を上条の部屋に降ろして、そのすぐ後ろに続く。

上条は1階に降りると、素早く滑り込むように机の上の受話器を取って耳に当てた。

上条「はいはいこちらDevil May Cry」

エンツォ『んお?あの坊主か?俺だ俺。エンツォだ』

上条「あ、あ〜どうも」

エンツォ『ダンテかトリッシュいるか?悪魔狩りの依頼が入ったんだがよ』

上条「いや、まだ二人とも帰って来てないぜ」

エンツォ『ああ、クソッ……そういやぁそうだったな……参ったぜ…』

エンツォ『…………待てよ。おい坊主!』

上条「ん?」


エンツォ『お前がやってみねぇか?』
546 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/10(月) 01:23:00.51 ID:BPJT4uYo
なんと
547 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/10(月) 01:24:47.47 ID:mJZkMyM0
上条「……はい?何をでせう?」


エンツォ『お前が悪魔退治すんだ』


上条「………………はぃいいいいいいいい?!!!!」


御坂「何!!どうしたの!!!?」

エンツォ『お前強いだろ!?何せベオウルフだしよ!!二ヵ月半前も魔帝軍とやりあったんだろ!?なら余裕だぜ!!!』

エンツォ『ギャラも出るぜ?1万5千ドルだ。悪くはねえだろ?』

上条「いやいやいやいや……すんません……無理です。動くなって言われてるし…」

エンツォ『ダメか?!できるだけ早く!!!い、いや、今すぐやってもらわなきゃヤベェんだ!』

上条「ああ……悪いけど………(……って『今すぐじゃないとヤバイ』?)」
エンツォが言ったその言葉が妙に引っかかる。
そんなに急を要する自体なのだろうか。

エンツォ『そうか……悪いな。邪魔したな。他を当たってみるぜ』

上条「……ちょっと待ってくれ。今すぐじゃないとヤバイってどういう意味だ?」

エンツォ『んあ?……まあ…その悪魔共な、ココ最近毎晩のように人間をぶっ殺して喰ってるらしい』

上条「!!!!!」

エンツォ『退治が一日遅れるたびに人間が殺されるってこった』


上条「………ッ!!!!!!!!!」
そんな事を聞いてこの上条が黙っていられるわけがない。

良心の塊であるこの少年が、人が殺されるのを黙って見ているわけがない。

エンツォ『まあそういうことだ……じゃあn』


上条「―――俺がやる!!!今すぐ行く!!!!」
548 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/10(月) 01:29:48.18 ID:mJZkMyM0
御坂「ちょ、ちょっと……どうしたの…!?」
いきなり声を荒げた上条に驚き、御坂がオロオロする。

エンツォ『うおおおお!!!!良いのか!!!!?』

上条「当然だ!!!!俺がそいつら全員ぶっ飛ばす!!!!」

エンツォ『こりゃあ良い!!!場所は―――」
エンツォが場所を伝える。

上条が相槌を打ち即座に暗記していく。
こういう時の彼の頭の回転は人間離れしているのだ。

その悪魔達がいる場所は、ここから20km程離れた街のスラム街にあるそうだ。
悪魔の力を使って駆ければ10分もしない内に行けるだろう。

エンツォ『連中は全員下等悪魔らしい。お前なら5秒もしねえ内に片付けられるだろ。じゃあ頼んだぜ!!!』

上条「おう!!!!任せな!!!」

ちなみにトリッシュから絶対安静と言われ、当然悪魔の力の使用も禁止されていたが、
上条にとって、人の命と天秤にかける間でもない。

それに下等悪魔が相手なら、暴走するような状況にはほぼ確実にならないだろう。

上条は受話器を置き、御坂の方へ向いた。

御坂「ね、ねえ…ど、どうしたの?何かあったの?」


上条「悪魔狩りだぜ!!!!」
そう一言だけ告げると、上条は階段に向かい一気に駆け上がっていった。


御坂「……はぃ?ちょ、ちょっと!!!」
御坂がその後を追う。
549 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/10(月) 01:34:00.48 ID:62DCorE0
さすが上条さんだ
550 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/10(月) 01:41:52.43 ID:GKJ4i6.o
なんか死亡フラグが・・・
551 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/10(月) 01:43:02.60 ID:mJZkMyM0
上条は自室に駆け込み、真っ直ぐに小さな机に向かい銃を左手で取る。
そしてスライドを引き、動作を点検した後に慣れた手つきで弾倉を入れ、
力を流し込んで自動装填の術式を起動する。

上条「よし」

その銃を腰のベルトの部分に差込み、今度はクローゼットに向かい右手を保護するための手甲を手に取った。

御坂「ね、ねえ……悪魔狩りって?」

上条「これから退治に行く」
手甲を右手に装着しながら上条が答える。

御坂「こ、これからって…!!?」

上条「俺は行くぜ」
右手を開いたり閉じたりして馴染ませる。
金属生命体である手甲は上条の腕の形に合わせてフィットするように形を変えた。

手のひらの部分だけは素肌が出ている。
これはダンテと相談の上で、戦闘中にも幻想殺しを使えるようにした物だ。
右手を守るときは手を拳を握れば良い。

御坂「だ、ダメよ!!!トリッシュさんが……!」


上条「すぐに退治しねえと人が死ぬ。理由はそれだけで充分だろ」


御坂「……」
その上条の目を見て御坂は諦めた。
彼の心に火がついたのだ。
こうなるとてこでも動かなくなるのは何度も経験済みだ。


御坂「……わかった。でもあたしも行くから。拒否する権利は無いからね」
御坂が踵を返し、足早に荷物の方へ向かい、大砲の包みを剥す。
そしてバッグを開け弾を取り出し、装填していく。

上条「おう。だがお前は見てるだけでいいぜ」

上条「俺に任せろ。全部俺の獲物だ。全員俺が叩きのめす」

御坂「……そう」

―――
552 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/10(月) 01:47:02.50 ID:56d7Zis0
力に溺れてるな
553 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/10(月) 01:50:21.83 ID:mJZkMyM0
―――

リスボンの港。

ダンテはコンテナを下ろす為の大きなクレーンの鉄骨の上に寝そべっていた。


ダンテ「……」
正面は月明かりが反射している水平線。
後ろはリスボンの夜景。

空はうっすらと明るくなりつつある。
もうすぐ日が昇るだろう。

ダンテ「……つまみには悪くはねえ景色だ」
ワインボトル片手に一人呟く。

そうやってしばらく時間を潰していたところ、背後に気配を感じた。

ダンテ「見つけたか?」
ダンテがワインボトルに口をつけながら、振り返らずにそのまま声を放った。

トリッシュ「ええ」
そのトリッシュの言葉と同時に、ダンテの前に黒い小銃が放り投げられてきた。
クレーンの鉄骨とぶつかり金属的な音を放つ。

トリッシュ「小銃はざっと500丁ってところかしら。それと戦車が三台、戦闘ヘリが一台」

トリッシュ「小物は無理やり合成した人造悪魔ね。デカブツはインフェスタントかそれ系統のが複数取り憑いてるみたい」

トリッシュがダンテの後ろからそのまま説明する。
ダンテは放り投げられてきた小銃を手に取り眺めていた。

ダンテ「おい、随分おとなしいな。コレ」

トリッシュ「それは持ち帰りやすいように封印式ぶちこんであるから。中に入ればかなり盛大におもてなししてくれると思うわよ」

ダンテ「それなら文句はねえ」
ダンテが後ろのトリッシュの方へ小銃を放り投げた。
554 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/10(月) 02:03:48.57 ID:mJZkMyM0
ダンテ「で……どの船だ?」

ダンテが上半身を起こし、トリッシュの方を見る。

トリッシュ「あそこ」
トリッシュが1kmほど離れた所に停泊している巨大な貨物船を指差した。

トリッシュ「船倉のカーゴに」

ダンテ「へぇ…」

トリッシュ「いい?二隻目が来るまで待ちなさいよ?」

今やってしまうと、襲撃の報を受けた二隻目が引き返してしまうかもしれない。
狩られるとわかっててみすみす寄航はしないだろう。

トリッシュ「下手したらお楽しみが半分になるわよ」

ダンテ「へーへー」

ダンテが手をひらひらさせ、再び寝っころがった。

トリッシュもその場に座った。

ダンテ「……帰らねえのか?」

トリッシュ「見張り。あなたの」

ダンテ「……」

トリッシュ「ワインちょうだい」

ダンテ「……これは俺んだ」

トリッシュ「ケチ」

ダンテ「……」

―――
555 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/10(月) 02:10:20.75 ID:mJZkMyM0
―――


とあるスラム街。

時刻は午前二時。

その寂れた町の一角、路地の裏に薄汚いクラブがあった。
日中も常に影になって日の光がささない。
夜の今はその闇が更に強い。

路地の奥。

唯一の光源である、オレンジ色のランプが照らしていた薄汚い木製の扉。
扉には手描きで「OPEN」と書かれているプレートが下がっていた。

その前に、フードを深くかぶった全身黒尽くめの少年が立っていた。

フードのついた黒い皮製のくたびれたジャケット、黒いカーゴパンツ、そして黒いハイカットの革靴。
フードの影がまるで黒いアイマスクのように落ち、少年の鼻から上を隠していた。

だがその瞳だけはその影のカーテンを貫いて光を放っていた。

少年の左手がゆっくりとノブに伸びる。
そして掴み、まわし、扉を開けた。

来客を知らせる鈴の音色とともに、少年はその暗いクラブに入っていった。
556 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/10(月) 02:14:00.54 ID:mJZkMyM0
クラブの中はガランとしていた。
掃除の時のように円テーブルの上には椅子が上げられ、ステージの上にも誰も立っていない。

三人の客と思しき、見るからにカタギではない目つきの悪い男が奥の机を囲んで酒を飲んでいた。
カウンターには顔に傷があるこれまた強面のバーテンダーが一人。

クラブの中にはこの四人しかいなかった。
音楽も鳴っていない。

唯一営業中と思わせてくれるのは暗めに設定されている室内灯だけだ。

客やバーテンダーの睨むような視線を向けられたが、
少年は特に気にするそぶりも見せず、カウンターに進み円椅子に腰掛けた。

バーテンダー「よう、坊主。ここはガキの来るところじゃねえぜ?」

バーテンダーが嘲笑的な笑みを浮かべ、少年に言い放った。
少年の背後から客のものと思しき笑い声。

「水、くれないか?」

少年が口を開いた。

バーテンダー「んなもんは置いてねえ。これしかねえよ」
バーテンダーがショットグラスにウイスキーを注ぎ、少年の前に乱暴に叩きつけるように置いた。

「……これだけか?」

バーテンダー「ああ」

「他にもあるんじゃねえのか?」


「―――人間の『血』とかよ」
557 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/10(月) 02:17:27.51 ID:mJZkMyM0
少年のフードの下の、光に当たっている口の端が僅かに上がる。
探りを入れているかのような、挑発的な笑みだ。

バーテンダーは相変わらずニヤニヤしていたが、その目の色が鋭く冷たいものに変わった。

「なあ、妙な話を聞いたんだ」
少年は笑みを浮かべたまま言葉を続ける。

「なんでもこの辺りで人を喰う『悪魔』が出るってよ」

バーテンダー「……」

「笑っちまうよな。なんのホラー映画だっつーの」

バーテンダー「……」

「でもよ、あながち嘘でも無いらしいんだ」

「実際に何人も跡形も無く失踪してるらしいぜ」



「んで、ここも血の匂いがプンプンしてるしよ」



バーテンダー「……」
バーテンダーは相変わらず笑みを浮かべていた。

少年の背後に座っていた三人の男が立ち上がる。
558 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/10(月) 02:19:10.89 ID:f7b2OwI0
アニメのDMCみたいだな
559 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/10(月) 02:21:33.77 ID:mJZkMyM0
>>558そのまんまです

「へっへ。血の匂いか」

三人の内の一人が、不気味に笑いながら、カウンターに座っている少年の背中へ声を飛ばした。

「確かに匂うぜ。へっへへへ。腹ぁ減ってきちまった。そろそろ『仕入れ』の時間だなぁおい」
もう一人も下品な笑みを浮かべながら呟く。

「しょうがねえ。俺が―――」
三人目がゆらりと前に出る。
見開かれた目が赤く輝き、指先から黒く巨大な爪が皮膚を裂いて生える。

そして。

「―――奢るぜぇぇえええええ!!!!」

カウンターに座っている少年の背中へ、手を振り上げ人間離れした脚力で一気に飛びかかった。

その凶悪な爪が少年の背中に食い込もうとした時。

一発の銃声が鳴り響いた。

突進していた男は額から赤い液体を撒き散らせながら大きく仰け反り、後方に吹っ飛ばされ、テーブルを叩き潰して床に転がった。

バーテンダー「―――」

二人の男とバーテンダーの顔が一瞬凍る。

カウンターに座っていた少年がゆらりと立ち上がった。
左手には、一筋の煙があがっている黒い拳銃。

「俺が奢るよ」

少年が深く被っていたフードを右手で降ろし、微笑を浮かべながら声を放った。


『遠慮はしなくていい―――』


瞳が赤く輝いているツンツン頭の少年。
声は『悪魔特有』のエコーがかかっている。


『―――上条さんが奢ってあげるぜ!!たっぷりとよ!!!』
560 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/10(月) 02:23:30.67 ID:mJZkMyM0
二人の男が、到底人間の物とは思えない咆哮を上げた。
その瞬間、皮膚がはち切れる様に裂け、その下から黒いザラついた『本体』が姿を現した。

トカゲ人間のようなシルエットの、全身が黒い悪魔。
瞳は赤く輝き、手足の先には鋭い爪、そして大きく裂かれ開かれた口からはおぞましい牙。


上条『来いよ』


上条が笑みを浮かべ、右手で手招きをした。

それに応じたかのように二体の悪魔が一気に飛びかかる。
同時に上条が前に踏み込んだ。

上条『―――』

一体目が上条の顔面へ手を突き出す。
だが上条は軽く頭部を傾けてスレスレでかわした。
右頬から僅か数センチの所を黒い巨大な爪が突き抜けていく。

そしてかわすと同時に、左肘の突きを悪魔の胸部へ叩き込んだ。
鈍い炸裂音と共に、突進してきた慣性もかかって悪魔の体が大きく『く』の字に曲がる。

だがその衝撃で後ろに吹っ飛ぶのは許されなかった。

上条は、肘の突きが炸裂したと同時に、畳んでいたその左腕を一気に伸ばす。

上条『―――ハァ゛ッ!!!!』

銃を握っている拳が悪魔の顔面へ叩き込まれた。

一瞬の間の二連撃。
悪魔の体はその場で床に叩きつけられた。
木製の床板の破片が飛び散り、大きな穴が穿たれる。
561 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/10(月) 02:25:54.58 ID:mJZkMyM0
それはほんの一瞬の出来事だった。

常人なら何も見えなかっただろう。
そして飛び掛っている悪魔達自身も何が起こったのかわからなかった。

ほぼ同時に突進していた二体目の悪魔は、
その上条の異常な戦闘能力を『認識する前』に、彼の間合いへと侵入してしまった。

上条は左腕を勢いよく引き、その反動で体を『駒』のように回転させる。

上条「―――ッ―――」

そしてその『駒』は一回転し再び元の方向、二体目の悪魔の方へ向く。
白く光り輝く『左足のハンマー』を引き連れて。

上条「―――ッラァァァァァァァァァァァァァアア!!!!!!!」

上条の回し蹴りがカウンターとなって二体目の悪魔の顔面へめり込んだ。
直撃の瞬間、白い光がその『ハンマー』から溢れ、柔らかい肉を金属の塊で打ち付けるような炸裂音が響いた。

衝撃波でクラブ内の机・椅子・ステージありとあらゆるものが薙ぎ倒され、床板が捲れ上がっていく。
そして悪魔の体は跡形も無くチリと化した。

上条「―――シッ!」
振り切った左足を畳み、息を短く吐きながら右足で軽く跳ねる。
562 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/10(月) 02:27:57.23 ID:mJZkMyM0
バーテンダー『なッ―――』
先の三体の悪魔と同じように、本来の姿を現していた『バーテンダー』の悪魔が、
カウンターの影でその上条の立ち回りを見て固まっていた。

バーテンダー『(ここは逃げるしか―――)』
バーテンダーの足元に黒い円が浮かび上がる。

そして直ぐにバーテンダーの体が沈み始めていく。

だが次の瞬間。

上条「待てや―――」

上条がバーテンダーの方へ振り向き、跳躍し一瞬でカウンターを飛び越えて、彼の目の前に着地した。

そして上条は右手を床に叩きつけた。
ちょうどバーテンダーの足元に浮かび上がっていた、黒い円の『淵』に。

次の瞬間、黒い円は割れ砕け散った。


悪魔の使う移動用のこの黒い円。
原理は、悪魔の力で強引に空間を切り裂いて『穴』を作るという物だ。

ただの空間の亀裂である『穴』自体には、上条の右手の効果は無い。
だがその淵、『身から離れた』悪魔の力によって、空間を切り崩し『穴』の形を維持している部分。
亀裂を元に戻そうとしている空間の力を塞き止めている堤防。

そこには上条の右手は通じる。

そしてこのバーテンダーのように移動途中に、下半身だけ沈んでいる時にその穴を塞がれたらどうなるだろうか。

空間を自分自身の手で歪められる程の力を持っていない、
このバーテンダーのような下等悪魔達は当然真っ二つになる。


激痛に襲われたバーテンダーの咆哮が、半壊したクラブの中に響いた。
563 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/10(月) 02:35:27.88 ID:mJZkMyM0
上条がその上半身だけとなったバーテンダーを光輝く足で蹴り、踏みつけて押さえる。
そして左手の銃をバーテンダーの顔へ向けた。

上条『奢るって言ったじゃねえか。ノリが悪いな』

バーテンダー『……!!!!』

上条『まあ、「向こう」に帰るってんのも別にいいけどよ、』

上条『どうせまた来るんだろ?人間はお前等にとってご馳走だもんな』

バーテンダー『……我等にとって餌。本来は我等の糧となるべき卑小で下等な存在。何が悪い』

上条『いいか?人間はそんなもんじゃねえ』

上条『お前等よりも高潔とはいわねえ。でもよ、「下」でもねえ』

上条『お前等の生き方もルールも分かる。だがよ、それは「向こう」での話しだ』

上条『確かによ、お前等の行動自体は向こうのルール通りだ』

上条『だがよ、ここは魔界じゃねえ。人間界だ』

上条『「こっち」にも『こっち』のルールがある』


上条『「こっち」にいる限り、間違ってんのはお前等だ』


バーテンダー『………ふざけるな……』
564 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/10(月) 02:38:19.17 ID:f7b2OwI0
やべえ、ついにスタイリッシュお説教アクションが見られるのか・・・
565 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/10(月) 02:38:24.29 ID:/R4CLQAO
悪魔相手にも説教ですか上条さん
566 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/10(月) 02:41:44.84 ID:mJZkMyM0
上条『勘違いすんじゃねえ。こっちはお前等の庭でも領地でもねえ』

上条『人間はお前等のもんじゃねえ』

上条『お前等には人間を殺す権利はねえ』

上条『もしその権利があると思ってんなら―――』


上条『もしそう思ってんならよ―――』



上条『―――そんな幻想ぶっ殺す』


上条の顔に怒りの色が現れる。
それは虐げられ殺された人間達を代弁しているかのような憤怒。


銃を握る手に力が入り、引き金が小さな軋む音を立てて徐々に引かれていく。

バーテンダー『黙れ小僧!!!!……そもそも貴様も我等が眷属でありながら……忌まわしき逆賊めが!!!』
バーテンダーの目が更に強く赤く光る。
その声も、光もどす黒い、救いようの無いほどの憤怒が篭っていた。

いや『救う』という表現は合わないだろう。
改心させる事が出来たとしても、それは彼らの概念からすると堕落だ。

悪魔達と人間達の概念は根本的な部分から違うのだ。
人間が救いと考える物も彼らにとっては拷問と化す。

人間の正義が彼らにとっての悪であり間違いである。
567 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/10(月) 02:49:32.17 ID:mJZkMyM0
バーテンダー『なぜわからぬ!!!』

上条『わかってるさ。その上で言ってる』

バーテンダー『ではなぜ人間共に付く?!!!なぜだ!!!?貴様は悪魔だ!!!』

なぜ?

上条『違えよ。俺は―――』


守りたいたいからだ。


上条『「上条当麻」だ』


人間達を。
あの愛しい少女を。


上条『それ以外でも。それ以上でもそれ以下でもねえよ』


その為なら戦う。

ありとあらゆる力を使ってでも。


上条『一応聞くぜ。どうすんだ?もう二度と来ねえってんなら見逃しても良い』


バーテンダー『DARBS CNILA OL AMMA (くたばれ 忌まわしき者)』
バーテンダーは猛烈な憎しみの篭ったエノク語を発した。

忌まわしき者。
悪魔達から見れば、魔界のルールに照らし合わせれば今の上条は正にそうだろう。


上条『……そうか』
上条の顔に一瞬悲しそうな影が差す。


上条『じゃあこれは上条さんの奢りだぜ。ちゃんとあの世まで持っていけよ』

上条は引き金を引ききった。
一発の銃声がクラブ内に響く。


―――
568 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/10(月) 02:51:01.23 ID:mJZkMyM0
今日はここまで。
明日は多分夜11時半頃から投下します。
569 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/10(月) 02:52:42.79 ID:k6cm90Yo
遅くから乙!
570 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/10(月) 02:53:28.40 ID:KwP3efs0
(´ω`)ゞ 乙でした!今夜は遅くまで御苦労様です
571 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/10(月) 03:00:26.02 ID:/R4CLQAO
乙ぱい!
572 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/10(月) 03:01:26.96 ID:f7b2OwI0
乙っす!
スタイリッシュっすなぁ
573 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/10(月) 03:05:15.08 ID:RtCCuOM0
乙!
まさにスタイリッシュ説教アクション!
574 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/10(月) 04:25:46.32 ID:SkRknO6o
おっつおー
575 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/11(火) 00:24:18.15 ID:urmDRbIo
今日はこれなそうかな?
576 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/11(火) 00:44:40.37 ID:LwGjk5Uo
スタイリッシュ説教アクションが本当に実現される日が来るとはww
577 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/12(水) 05:16:57.14 ID:0x1iU.E0
スタイリッシュ上条さんきた!!!!
これで勝つる!!!!
578 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/12(水) 06:19:48.04 ID:VxobauA0
説教し過ぎて狂っちまいそうだぜッッ!
579 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/12(水) 23:50:48.78 ID:UiEp/yE0
―――

『ハァ゛ッ……』

額から赤黒い血を流す悪魔は、闇に包まれた路地を突き進んでいた。
彼は三体の内、一番最初に上条に突進した悪魔だ。

どうやら彼は幸運だったようだ。
あの少年は恐らく威力偵察の為、初撃である彼へ放った銃弾はかなり力を押さえ込んでいたらしい。

そのおかげか、瀕死ではあるがなんとか命を失うことなく、ドサクサに紛れて逃げることができた。

『恐怖』という感情をこちらの人間界で味わうとは思ってもいなかった。
過去に何度か、魔界で大悪魔を目の当たりにして恐怖した事があったが、
戦闘態勢に入ったあの少年の放つオーラはそれと同じ物だった。

同じ悪魔とはいえ、大悪魔クラスは彼らにとって『神の領域』だ。

どう転んでも勝ち目は無い。
百の仲間がいても到底勝てない。

逃げるしかない。

黒い円も出せなかった。
かなり力を押さえ込んでいたとはいえ、あの銃弾にも彼からすれば莫大な量の力が練りこまれていた。
撃ち抜かれてから、体内の力がかき乱されて上手く使えないのだ。

今は力が回復するまでとにかく走ってできるだけ遠ざかるしかない。

『……ッ』


とその時だった。路地の向こうに気配を感じた。


立ち止まり、悪魔の目で見通す。

その先には。

茶髪の日系の少女が立っていた。
580 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/12(水) 23:54:33.40 ID:UiEp/yE0
『……』

その少女はキャップを深く被り、灰色のパーカーにベージュの短いスカート、
黒いレギンスに黒いブーツという出で立ちだった。
キャップの下からは短めの茶髪の髪が、路地を吹き抜ける微風で小さくなびいていた。

だが服装なんかはどうでもいい。

彼にとって一番重要なのは、その少女の持っている物だった。
長方形の箱に丸太が付いているような、長さ一メートル半程の金属の塊だった。
少女自体は人間のようだ。

だが、手に持つその金属の塊から莫大な量の悪魔の力が感じられる。

それに見た感じかなりの重量がありそうなのに、少女は片手で軽々と持っている。
明らかに普通では無い。

「見つけたわよ」

少女が彼をジッと見据えながら声を放った。
その英語は癖のある、少しぎこちないものだった。

「全部任せとけって言ってたくせに……ちゃんと逃げられてんじゃないの……」

少女が溜め息混じりにブツブツ呟きながゆっくり歩いてくる。
ブーツの靴底が、アスファルトの地面とぶつかる音が路地に響く。
581 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/12(水) 23:58:58.71 ID:UiEp/yE0
「ま、試し撃ちになるしいいわね」

少女が小さく笑い、彼から15m程のところで立ち止まった。
そしてその丸太のような金属の塊を軽々と掲げ、先を彼に向けた。

その金属の先端には直径約1cm程の穴。

『……』

誰でもわかる。
あれはきっと銃のような武器だ と。

彼は瞬時に地面を蹴り、射線から逃れる為に真横に飛ぶ。
人間離れした脚力による高速の移動。
それは常人には捕えきれない速度。

常人にはだ。

だが相手は、彼よりも遥かに強大な力を持つゴートリングや、ブリッツを倒した経験がある少女だ。
残念ながら、彼のとった回避行動は無意味だった。


「ごめんね。でもアンタさ、人間殺し捲くったんでしょ?」


大気が切り裂く音。路地裏が青白い光で照らされる。
金属の『丸太』が迸る電気で覆われる。

「自業自得よ。ツケは払ってもらうから」

『―――なッ』

その異変に気付いた時にはもう遅かった。
というか、この少女に出会ってしまった時点で彼の命運は尽きていた。


「バイバイ」


次の瞬間、その金属の丸太の先端から、目を覆ってしまいそうになる位の青白い光が噴出した。

術式で極限まで強化された12.7mm弾が、この少女の能力でブーストされ音速の五倍以上の速さで放たれる。
プラズマを纏った全てを貫く破魔の光の槍が彼に向かった。

衝撃波で路地裏の壁・地面が一瞬で砕かれ捲れる。

その銃弾は彼の体を『貫通』しなかった。

直撃と同時に、弾頭が『貫ききる前』に彼の体は蒸発したのだから。
582 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/13(木) 00:02:54.75 ID:.DMD5uc0
放たれた弾頭はそのまま斜めに天を貫いて突き進んでいった。
そして3キロ程飛んで行った所で爆発した。

御坂「………」

長さ10cmの巨大な薬莢が地面に落ちる音が響く。

御坂「……ほひゃああああ……」
御坂は目の前に広がる惨状を見て思わずマヌケな声を漏らしてしまった。

崩れている両脇のビルの壁。大きく抉られている地面。
ジリジリと音を立てて、淡く赤く光るガラス化した地面。

路地裏は一瞬で無残な姿に変わった。

御坂「……なによこれ……すごい…すごいけど……さすがに強すぎ……かな?」
御坂は手に持っている『大砲』に目を落とした。


今の一撃の破壊を見てさすがの御坂も少し尻込みしてしまった。

これを渡された時、トリッシュがダンテに怒った理由がわかるような気がする。

ちなみに弾頭が3キロ程で爆発したのはレディの術式の為だ。
最高速6000m / sで放たれる『矢』だ。

打ちっぱなしにしてれば大変な事になるのだ。

ダンテは最大出力にすれば地平線まで届くと行っていたが、
さすがの御坂でもそんな長距離の照準はできないので、そこまでの性能があっても意味が無い。

そこでトリッシュがレディにこの弾頭の自爆機能をつけさせたという訳だ。

御坂「(……使いにくい……)」
583 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/13(木) 00:06:54.82 ID:.DMD5uc0
上条「御坂ッ!!!!」

上条が御坂の真後ろへ上から飛び降りてきた。
着地の衝撃でアスファルトが割れる。
ビルからビルへ跳んでここまで来たのだろう。

御坂「あ……お、終わったわよ!!!」

上条「うぉい!!!どっからどうみてもやりすぎじゃねえか!!コレ!!」
上条がすぐさまこの惨状に突っ込みを入れた。

御坂「だ、だって……こんなに『コレ』が強いなんて思わなかったんだもん!!一発しか撃ってないのに…」

御坂「それにアンタ達みたいに相手の強さなんかわかんないし……」

御坂は人間だ。
上条や、ダンテ達のように悪魔の感覚で相手の力量をおおまかに知ることは出来ない。
レディのように種類や力関係を理解している訳ではない。

御坂にしてみれば、実際に戦うまで相手の力量が全然わからないのだ。

上条「……あ〜…………まあ、最初だし…しょうがねえよな……」
上条が頭を掻きながら、少し申し訳無さそうに答えた。

御坂「え、あ、い、いや!!!別にいいわよ!あたs」

上条「!!!!」
その時上条が血相を変えて顔を上げた。

御坂「―――」
その理由はすぐに御坂にもわかった。

サイレンの音が猛烈な勢いで近付いてくる。
これだけの大騒ぎだ。
当然、誰かが通報したのだろう。

上条「に、逃げんぞ!!!!」

御坂「わひゃ!!!!ちょ、ちょちょちょちょちょっと!!!!」
上条が御坂を抱き上げ、真上へ一気に跳躍した。


―――
584 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/13(木) 00:09:02.68 ID:o9SU1D2o
うおおおおおおおおおおおおおおおおおお
585 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/13(木) 00:11:58.52 ID:.DMD5uc0
―――

一方その頃。リスボン。朝。

クレーンの上にダンテとトリッシュはいた。
ダンテは右手でワインボトルを抱きながら小さい寝息を立てていた。

左手は大きく放り出され、クレーンの鉄骨からはみ出してブラブラと揺れている。

その横にトリッシュが座っていた。
ダンテの左手と同じくトリッシュの足も地上50mの高さで揺れていた。

トリッシュ「……」

そっとダンテの方に手を伸ばす。
その先、目的はワインボトル。

トリッシュ「……」
ボトルの先の部分を掴み、引き抜こうとするが案の定抜けない。

だがトリッシュはそんな事は予想済みだ。

トリッシュはボトルを掴んだまま軽く電気を放った。
その電気がダンテの右手に伝わり、バチンっと勢い良く手のひらが開いた。

その隙にトリッシュは素早くワインボトルを引き抜く。

ダンテは常人なら心停止してもおかしくない電気を浴びても尚、相変わらず寝息を立ていた。
タフすぎるのも考え物だ。

トリッシュ「甘いのよ」
トリッシュは親指で弾くようにコルクを飛ばし、ボトルに口をつけ流し込んだ。

トリッシュ「あ」

三飲みしたところで気付く。
弾いたコルクはそのまま下に落ちていった事に。

降りて探して拾うのは面倒くさい。

トリッシュ「……しょうがないわね…全部飲まなきゃね。私が」
586 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/13(木) 00:16:37.82 ID:.DMD5uc0
ダンテからワインを奪って15分後。
ボトルは空になっていた。

トリッシュ「……」
トリッシュは空になったボトルを軽く振りながら、港を眺めていた。

トリッシュ「……あ」

水平線の彼方に船。
昨日から停泊しているのと同型の貨物船だ。

トリッシュ「来たわよ」

トリッシュが空になったボトルでダンテの頭を強めに突く。
だがダンテは起きる気配が無い。

トリッシュ「来たってば」
徐々に力を強めて突く、いや、半ば叩いているのだが、それでもダンテは起きない。

トリッシュ「起きなさい」

トリッシュはダンテの頭に思いっきりボトルを振り下ろした。
気持ち良いくらいにボトルが豪快に砕け散った。

ダンテ「……いってぇ」
ダンテがうっすらと目を開け呟いた。

トリッシュ「ほら来たわよ。二隻目」

その言葉を聞いてダンテが跳ね起き、

ダンテ「ハッハ〜♪やっとか!!!」
勢い良く立ち上がり、両手を組んで伸ばして骨を鳴らす。
587 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/13(木) 00:21:22.61 ID:.DMD5uc0
トリッシュ「あそこ」
トリッシュがこちらに進んでくる二隻目の貨物船を指差した。

ダンテ「やっちまっても良いんだな?!」

トリッシュ「ええ。程ほどにね(ワインの事忘れてるみたいね)」

ダンテ「OK!!!」

ダンテが腰を落とし屈む。

トリッシュ「いい?あんまり―――」


ダンテ「It’s SHOW TIME!!!!!!!Yeaaahuuuuha!!!!!」


そしてトリッシュの話を最後まで聞かずに思いっきり跳躍した。
クレーンの鉄骨が大きくひしゃげ、ダンテの姿が一瞬で消えた。

トリッシュ「……」

ダンテであろう、赤い『砲弾』が沖の貨物船へ真っ直ぐに放物線を描いて飛んで行った。

トリッシュ「……やっぱり一隻は沈むわね」

トリッシュは大きく揺れ今にも倒壊しそうなクレーンの上で呟いた。

トリッシュ「……」
停泊しているもう一方の貨物船を見る。

トリッシュ「……向こうは私がやるかしらね」
トリッシュがやれば沈む程の不必要な破壊はまず無い。

これも人間の財産を守る為だ。
ダンテはグチグチ言うかもしれないが、ピザでもあげてればどうせすぐに機嫌が直る。

人の言う事を守らないダンテが悪い。
一隻沈ませたダンテに そら見たことか と突っ込めば強くは出れないだろう。

トリッシュは立ち上がり腰から二丁の拳銃、ルーチェ&オンブラを引き抜いた。

トリッシュ「さ、私もたまには運動しなきゃね」

そして軽く跳躍しクレーンから飛び降りると、もう一隻の方へと向かっていった。

―――
588 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/13(木) 00:27:00.67 ID:.DMD5uc0
―――

ロシア、とある内陸部の巨大な地下の円形ホール。

そのだだっ広いホールの中央に大きな机と椅子。
フィアンマはその椅子に座っていた。

そして彼の向かい、机の前には葉巻を咥えたアリウス。

フィアンマ「コレの調整は終わった」
フィアンマの右手に持つダイヤル式の南京錠のような禁書目録の遠隔制御霊装。

アリウス「ふむ……」

フィアンマ「それとだ、『四元徳』の内二人が魔界からの脱出に成功した」

アリウス「誰と誰だ?」

フィアンマ「フォルティトゥードとテンパランチア」

アリウス「ほう……」

フィアンマ「だが残りの二人は間に合うかどうかわからない。サピエンチアに至っては絶望的だろう」

アリウス「ふむ……で、その二人は乗り気なのか?」

フィアンマ「もちろん。俺様を全面的に支援してくれる」

『四元徳』。

天界において最上位に位置する四人。
肩書きは一応『天使』だが、それは表現の一つに過ぎない。
『主神ジュベレウス』の僕である『天使』という意味であり、実際は『神』と称されるべきレベルの強大な存在だ。

事実、『四元徳』率いるジュベレウス派が天界における最大派閥である。

忠誠に魔女狩りを扇動し、更に500年前に直接手を下して魔女の本拠地を壊滅させたのも彼らだ。

つい最近、その魔女狩りの『報復』を受けたが。
589 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/13(木) 00:30:59.06 ID:9Le5.0go
天使カエッテキタワー
590 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/13(木) 00:35:46.65 ID:.DMD5uc0
>>588 訂正 下から三行目の最初の「忠誠に魔女狩り〜」→「中世に魔女狩り〜」

数ヶ月前に、『プルガトリオ』と呼ばれる狭間の世界で勃発した、ジュベレウスの復活を賭けた魔女との戦い。
それにより『四元徳』は打ち倒され、魔界の煉獄に堕とされた。

魔女に殺された天界の者は皆、魔界に堕ち永遠に『殺され続ける』。
想像を絶する苦痛だ。

だが四元徳の内二人はその圧倒的な力をもって、何とかその煉獄から抜け出した。
『神』と称されてもおかしくは無い彼らだからこそできる芸当だろう。
逆に言えば、彼らでもギリギリであったという事だが。

事実、他の二名は魔女との戦闘による傷が更に深く、その内の一人はもう絶望的だ。

アリウス「動けるのか?まだ力も完全には復活していないだろう?」

フィアンマ「なぁに、どうせ人間が大量に死ぬ。それで『補充』は充分だろう。すぐに回復する」

アリウス「……『セフィロトの樹』か」
アリウスが嫌悪感を露にして呟いた。

『セフィロトの樹』。

天界の者達と人間達の魂の繋がり。
その実体は天界の神々が作った『エネルギーのパイプライン』であり、
人間の魂を繋ぎ留め管理する制御システムだ。

死した人間の魂は天界に運ばれる。
『天国へ行く』と言えば聞こえは良いだろう。

だが実際はそれとは程遠い。
運ばれた魂は天界の者達に吸収され力の糧と成る。

運が良ければ下っ端の天使として転生できる場合もあるが、
そうなったとしてもどうせ前線に出され捨て駒のように扱われる。

人間界は天界にとってのエネルギー源であるのだ。
いわば『油田』、『畑』のようなものだ。

人間達の魂は管理され『養殖』されているのである。
頭数は厳格に定められ、その生死も操作されている。
591 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/13(木) 00:39:35.62 ID:.DMD5uc0
本来、魂とはその世界の中を輪廻する。
魔界も天界もそうだ。

死した者は長き時を経て復活するか、
世界の礎である力の源へ帰り、新たに生まれてくる者達の糧となるかである。

だが人間達の魂は違う。

力の源、『人間界の本来の天界』は封印されている為、そこに帰ることはできない。
そして同じ理由で力自体も非常に矮小な為復活もできない。

その無防備な魂を、天界が作り上げた『セフィロトの樹』というシステムが拾う。

人間達の魂はそのパイプを通り、世界の外、天界に吸い出され奪われる。
これは人間界の魂が枯渇するまで半永久的に続くだろう。

(ちなみに『御使堕し』という魔術はこの魂の流れを強引に逆流させるものだ。
人間界の魂の頭数は厳格に管理されている為、予定外の魂の流れは当然エラーを引き起こす)


だが全ての人間がこのシステムの制御下にある訳ではない。
一部はこの『セフィロトの樹』とは繋がっていない。

天界以外の強い力に染まった魂はその制御下に置く事ができないのだ。

フォルトゥナや各地のデビルハンター等と魔女達、


そして人間界の本来の力を行使する者達―――『能力者』の極一部。
592 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/13(木) 00:43:16.79 ID:.DMD5uc0
天界の手により『人間界の本来の天界』は封印されたが、それは完璧ではなかった。

人間界の本来の力は微弱に漏れ出し、極少数ながらも生まれながらに力を宿した者達が現れてくる。
『原石』と呼ばれている者達だ。

これは天界にとって大いなる脅威だ。
流出する力の量が増えれば封印が砕け、全てのシステムが瓦解する恐れがある。

魂を直接制御できない者は、力をもって強引に押さえつけるしかない。

天界は制御下にある人間達に天界の力を、『魔術』という武器を与え、この能力者達へ対抗させた。
原石と魔術師達の数の差は圧倒的であり、数千年の間、『魔術サイド』の絶対的優位は揺るがなかった。

だがこの数十年の内に、とある人間の手によって人工の能力者が爆発的に増えつつある。
大半はまだ一応形だけ制御下にあるものの、生死を直接操作する事が出来ない状況にまでなりつつある。

500年前に魔女の本拠地を一気に殲滅した時のように、直接軍勢を降臨させなければならない可能性がある。

だが人間界と天界は『物理的』には直接繋がっていない。
(魔女との戦争はプルガトリオと呼ばれる『狭間の空間』で行われた)

学園都市を直接破壊する為には、物理的に二つの世界を繋げなければならない。
そしてその問題はジュベレウスの復活によって簡単に解決するはずだった。

はずだったのだ。

ジュベレウス程の存在なら一瞬でその穴を繋げる事ができるが、結局は魔女の手によって失敗してしまった。


だが全ての手が尽きたわけではない。
穴を直接繋げる方法は他にもある。

それに悪魔達の人間界への侵入もかなり激化している。
2000年前の戦争前夜とまるで同じだ。

天界の正念場は今だ。
人間界から『魔界の力』と能力者を一掃する。

今を逃せば後はもう立て直しようが無い。
ジュベレウスを失い、続けて人間界をも失ってしまったら天界は一気にその力を失墜させてしまうだろう。

それを回避する為に天界はフィアンマを『支援』するのだ。

そしてフィアンマもそれを『利用』する。
593 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/13(木) 00:55:04.44 ID:.DMD5uc0
フィアンマ「彼らは乗り気だ。むしろ喜んでいたよ。この『チャンス』に」

アリウス「つまりまんまと貴様の罠に嵌った訳か」

フィアンマ「ああ、向こうは俺様を信じきっている。今の天界には疑問を抱く余裕すらないだろうしな」

フィアンマ「『穴』が開いたらすぐにでも現れるだろうよ」


アリウスの策謀により、人間界に悪魔が溢れ大規模な戦争となる。

そこに直接開いた穴から降臨する天界の軍勢。

そしてこの戦争は天界と魔界の全面衝突に一気に発展する。

確かに魔界の力は圧倒的だ。
だが今の魔界は魔帝の完全な死によって大きく混乱し、内戦も激化している。
外に注意を払う余裕など今の魔界には無い。

魔界にしてみれば人間界などちっぽけな存在だ。
それよりも、魔界の諸王達は魔界内での覇権を優先するだろう。

天界もジュベレウスという旗印を失い混乱しつつあったが、魔界よりは纏まりがある。
彼らはこの戦争を好機と見て立ち上がるだろう。

魔界が内側に集中している間に一気に勝負をかけるはずだ。
己の『所有物』である人間界を守る為に『能力者』を、そして悪魔を一掃する為に。


それにスパーダの一族にも怯えることはないと天界は睨んでいる。
裏の目的はどうあれ、天界には『人間を守る』という大儀があるのだ。

それに理由は定かではないが、かのスパーダ自身がこの天界の制御機構を黙認した。

天界の者達は、少なくともスパーダの一族が刃を向けてくることは無いと思っているのだ。
もしかして味方として戦ってくれるかもしれない とも思っているだろう。
594 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/13(木) 00:57:56.78 ID:9Le5.0go
展開は詰めが甘いからなぁ
595 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/13(木) 01:01:32.66 ID:.DMD5uc0
アリウス「マヌケな奴等だ」

フィアンマ「そう言うな。俺様はこれでも表向きは敬虔な聖職者だ。その絶大な信頼を裏切るのだよ」

フィアンマ「あの正直者達に気付けと言うのは酷だろう」

アリウス「お前は相変わらず醜い。醜いな」

フィアンマ「言ってくれるね。だがお前も協力する振りをして結局は裏切るだろう?魔界を」

アリウス「それは向こうでは当たり前の事だ。裏切りも勝つ為の手段の一つにしか過ぎん」

アリウス「俺の行動は向こうのルールに沿っている」

フィアンマ「ふん……」

その戦争がアリウスとフィアンマにとって隠れ蓑となる。

フィアンマは天界に、アリウスは魔界に表向きだけ協力する。
そして出し抜く。

二人ともその隙に、強大な力を手に入れるのだ。

『哀れな』天界はフィアンマを信頼し、軍と『穴』を開く為の『鍵』を与え、そして『封印』を掛け直す権限を与える。
天界の動きを見た魔界は、アリウスの覇王復活を支援するはずだ。

そして二人ともその二つの強大な力をみすみす返すつもりは無い。

魔界と天界がそれに気付いた頃にはもう遅いだろう。

その頃には、

アリウスは覇王と『魔帝』の力を手に入れ、魔界の統一王に相応しい存在となっている。

フィアンマは『人間界の真の力』と天界の力を全て取り込み手中に収め、天界と人間界を統べる『神上』となっている。


そこまでいった二人が手を結べば、スパーダの一族も魔女達ももう恐れることはない。


フィアンマ「ともかくだ、最高のショーになりそうだな」

アリウス「同感だ」


―――
596 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/13(木) 01:05:22.85 ID:.DMD5uc0
―――

学園都市。現地時間午後二時。
第七学区、上条宅。

禁書「〜まだかなまだかな♪」
上機嫌なインデックスがベッドに腰掛けながら、落ち着きなく足をパタつかせている。

一方「……」
少し離れた所で、壁に寄りかかる形で一方通行が座っていた。

上条が帰って来るのは夜だ。
8時から10時の間辺りと上条は言っていた。

それまでは黄泉川のマンションにいる予定だったのだが、
インデックスが待ちきれずに急かした為、こうしてもう上条宅にいるわけだ。

一方「……」

一方通行にとってはどこで待つかなんて事はどうでもいい。
とにかくこのシスターをできるだけ早く上条に引き渡したいのだ。

彼は今日この後、大事な『私用』がある。

シスターの引き渡しが完了次第、土御門達と合流する。


そして理事会の一人である塩岸を襲撃する予定だ。
597 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/13(木) 01:08:24.46 ID:.DMD5uc0
元々第四位と土御門達でやる予定だったのだが、
彼も動けるのなら加わった方が良いのだ。

一方「……」
テレビの横に置いてある時計に目を向ける。

三分おきぐらいに見ている。
当然、時間はいつも通り平常運行だ。

三分ごとに見れば、三分しか進んでいないのは当然だ。

一方「……チッ…」

早くして欲しいのだ。
時間もベクトル操作できりゃァなァ と彼は思った。

禁書「あくせられーた?」
インデックスが首を傾げながら彼の名を呼んだ。

一方「あァ?」

禁書「……なんで怒ってるのかな?」

一方「……」
少し顔に出てしまっていたようだ。
それに打ち止めもそうだが、こういう純粋な少女は人の感情を読む事にかなり長けているらしい。

一方「怒ってねェよ」

禁書「ああ!わかったんだよ!!私と離れるのがいやなんでしょ!?」

禁書「だよね!こんな可愛いシスターさんがいなくなったら寂しいもんね!!」
上機嫌なインデックスが天真爛漫な笑みを一方通行に向けた。

一方「ンなわけねェだろクソガキ」
598 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/13(木) 01:10:39.21 ID:.DMD5uc0
禁書「むぅ!あくせられーたは素直じゃないんだよ!!」

一方「……」
絶対に表には出さないが、確かにインデックスがいなくなる事で少し残念な事がある。

インデックスを見送った打ち止めは少し寂しそうだった。
二人は気が合うようで、いつも一緒に騒いでいた。

芳川もだ。
手塩にかけた生徒が卒業するのを見ているような顔をしていた。


一方「……なァ。一つ頼みがあンだが」

禁書「?」


一方「たまにで良いからよォ。今後もラストオーダーに付き合ってくれや。黄泉川ンとこにも顔をだしてよォ」


禁書「何当然な事言ってるのかな!?皆で遊ぶんだよ!とうまも一緒によみかわの家でご飯食べるんだよ!!!」

一方「はッ……そィつはありがてェ」

彼の頭の中に浮かんだ、黄泉川家の団欒の光景。

だがそこには一方通行自身はいない。


彼はいない。
いてはならないのだ。
599 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/13(木) 01:15:48.01 ID:.DMD5uc0
今日の夜から、彼は絶対に引き返せない道へと進む。
死と血にまみれた殺戮への道。

端から見れば大量虐殺を行うテロリストだ。

彼の手は今以上に血に塗れるだろう。
今まで溜め込んできていた、学園都市に対する怒りが全て噴出すだろう。

確かにこれは自由への戦いだ。だが同時に報復戦でもある。

自分でも分かる。

己は歓喜し、笑いながら学園都市側の者達を引き裂いていくだろう。
彼は己の憤怒を全て受け入れ、そして全てを清算するべく吐き出す。

その大量の血に沈んでいく。
今よりも更に深くへ、深い闇へ堕ちこんで行く。
一切光の差さない、一片の光も浴びる資格が無い奈落の底へと。

全てを背負い、全てを受け入れて。

そんな血に濡れた手で。血を浴びた体で。血を受け入れた瞳で。

再びこの少女達の住まう光の世界に上がれるわけが無い。
そして上がるつもりも無い。


一方「……」

禁書「もちろんあなたも一緒だよ!!!皆一緒に遊ぶんだよ!!!」
インデックスの純真無垢な笑顔。


彼には眩しすぎた。
一方通行は目を細めた。


一方「頼んだぜ」

そして一言。
自分も一緒という言葉には答えず、願いの言葉を。


―――
600 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/13(木) 01:17:26.37 ID:.DMD5uc0
今日はここまで。
次は明後日の夜中になると思います。
601 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/13(木) 01:19:44.66 ID:w1OLiqUo
乙!ここは安定して投下してくれるから安心できるな…
602 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/13(木) 01:20:19.47 ID:KkOH4yYo

葛藤を押し込めて自ら裏の世界に飛び込んでいく一方さんを見ると切なくなるね
まあそこがいいんだけど
603 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/13(木) 01:21:56.24 ID:.Ysi0cIo
ここではインなんとかさんなんていえないな

604 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/13(木) 01:24:24.27 ID:DYoEdqQ0
乙!一方さんが一方さんらしすぎて切ないわ
605 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/13(木) 01:33:31.43 ID:o9SU1D2o
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< ││││     \ >  >       /'⌒ヽ__ノ\` ー───' /   !   |./  /´  `ヽ
< └┘└┘        >     /  /⌒ヽ  \      .イ   U |ー /´  ̄`ヽ. ヽ
<  [] []         >     ′  '  . '⌒ヽ.  \   / .′  i!   | //´  ̄ ヽ   j
 ∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨      !    /  '⌒ヽ、   \cc
606 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/13(木) 01:33:47.03 ID:FFC76pU0
乙!なんか難しいから他のSSスレとは頭切り替えんとついてけねえwwww
607 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/13(木) 01:46:29.50 ID:aBRNmTIo
一方さん……
608 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/13(木) 01:57:55.08 ID:lgJI6lUo
ついに動き始めるわけか・・・
彼らに祝福があらんことを
609 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/13(木) 03:46:51.44 ID:zrX/llA0
乙です
一方さんのダークヒーローさがたまらん
610 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/13(木) 07:07:19.11 ID:Twy53BYo
6時間も前から待ってるインデックスかわええ
無事に再開できるといいね
611 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/14(金) 11:58:32.73 ID:tmVxskDO
関係ないけど、ライドウが何かの陰謀を阻止すべく学園都市までタイムスリップするのを夢想した
612 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/14(金) 12:20:46.61 ID:0AA4IHAo
ライドウとダンテはメガテン3繋がりだったな、そういえば
613 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/14(金) 18:12:09.29 ID:tmVxskDO
>>612
誰か書いてくれねーかな…スレチだからもうやめるけど
614 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/14(金) 23:30:16.12 ID:96h2gMDO
人修羅とダンテではダンテの方が強いんだっけ?
マサカドゥスを装備した人修羅より
615 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/14(金) 23:31:46.67 ID:onuc3PAo
閣下戦では大して役に立たないのよね・・・・・
616 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/15(土) 00:00:26.46 ID:0mf4Q9Q0
―――


リスボンの港に向かう、全長300メートルはあろう大きな貨物船。
甲板には大量のコンテナが規則正しく積み上げられている。

そのコンテナの『タイル』の上に一発の赤い砲弾が着弾する。

直撃したコンテナは紙箱のようにあっさりと潰れ、
とてつもない衝撃がコンテナの『タイル』全体に伝わり、拘束具が弾け、
数トンはあろうかという大量のコンテナがポップコーンが弾けるかのように飛び散り、海面に落ちていく。

艦橋の船員達は突然の事に皆驚き、喚き立てる。

そして彼らは見た。

無残に倒壊したコンテナ群の中央に立つ、銀髪の赤いコートを羽織った男。
背中には不気味に光る銀色の大剣。

全身を赤い光の靄が覆っていた。
その男の出現と同時に巨大な貨物船全域が、重く圧し掛かるような異様な空気に覆われた。

「死にたくねえなら降りな!!!!!!」

突如男が叫ぶ。
船員達の脳内に直接響いてくるような、聞く者にとって抗いようのない圧倒的な恐怖を伴った声。
その声は船内にいる者にまで伝わる。

そして男は左手を天に掲げた。
その手には黒い拳銃。

次の瞬間、大音響と共にその拳銃から赤い光の矢が放たれ天を貫いた。

「おっと、救命胴衣とボートは忘れんなよ」

今度は小さく呟く。
だがそれも船員達の脳へ直接響いた。

それと同時に堰を切ったかのように、船に乗っている人間達は我先に走った。

船員達は無我夢中で救命胴衣を着、そしてゴム製のボートを海に投げ込み続けて飛び込んでいった。

皆、何が起こったのかという事を考えている余裕がなかった。
とにかくこの場から、この圧倒的な恐怖から逃げ出したかっただけだった。
617 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/15(土) 00:03:07.64 ID:q3sHS1Io
まあ2ならともかく4舞台じゃほぼ無理だな
作者もこれ以上風呂敷広げさせられないし
618 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/15(土) 00:05:36.63 ID:0mf4Q9Q0
ダンテ「Humm.......」

ダンテはしばらくその場で人間達が下船しきるのを待っていた。

ダンテ「……」

三分後、最後の一人であろう『気配』が下船した。

ダンテ「……」

そして足の下から別の気配が伝わってきた。
それもかなりの数。

ダンテ「……起きたか」

ダンテの存在を感知し、船倉の人造悪魔達が動き出したようだ。

ダンテは両手にエボニー&アイボリーを持ち、
足元の無残にブッ潰れたコンテナに銃口を向けた。

ダンテ「OK、お邪魔すんぜ」

そして体を駒のように回しながら引き金を凄まじい速度で引いた。
円を描くかのように無数の銃痕がダンテを中心として穿たれていく。

一回転し、

ダンテ「Ha!!!!」

軽く床を蹴った。
次の瞬間、銃痕の円に沿って床が抜け落ちる。
綺麗に円形に切り出された金属の円盤はダンテを乗せたまま真下に落ちていく。

その下階の床も全て撃ち抜かれており、連続して抜け落ちていく。
619 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/15(土) 00:07:13.92 ID:0mf4Q9Q0
天井と床だった金属の円盤が、パンケーキのように何重にも積み重なって、
轟音を響かせながら船倉の床に落ちた。

ダンテ「Humm……」
そのパンケーキの上に立つダンテ。

船倉の中は一応電気も点いているがかなり暗い。
天井に空いた穴から光が差し込み、ダンテの周りだけを明るく照らしている。

小さなステージに立っているようだ。

船倉の中は、ウロボロス社のマークが入った無骨なコンテナが積み上げられており、
その奥にはシートが被せられている何か大きな物が置いてあった。
一目でわかる。

あのシートの下にあるのは戦車だ。

ダンテ「……へぇ」

静かだ。

物音は軋む船体の音のみ。
他には何も無い。

だが悪魔の気配は充満している。
こちらの様子を静かに見ているのだろう。
620 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/15(土) 00:11:20.02 ID:0mf4Q9Q0
ダンテ「Hey!!!!! Good Morning Guys!!!!!」

ダンテが両手の銃をクルクルと回しながら叫んだ。
薄暗い船倉にその声が反響し響く。

だが答えは返ってこない。
悪魔達はまだ彼を静かに見ているようだ。

ダンテ「挨拶もねぇとはな。礼儀がなってねえ」

無視されたダンテを小ばかにするかのように、
パンケーキ状のステージの淵から海水がピューっと小さく噴出した。

船底まで貫通しないように力を加減したが、どうやらまだ強すぎたらしい。


ダンテ「ノリわりぃぜったくよ。じゃあ―――」

ダンテが銃を腰に差し込み、そして両手を広げた。

ダンテ「―――無理やりでも踊ってもらおうか」



ダンテ「ネヴァン!!!!!!!」



次の瞬間、ダンテの右手に紫色のギターが出現する。


ダンテ「Let's Rock!!!!!!!!!!!!! Yeeeeeeeeeaaaaaaaaaaaaaaaaahaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!!!!」


『ステージ』もある。
『客』も大勢いる(ノリが悪いが)。

狂気のライブを開演させるにはもってこいだ。

―――
621 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/15(土) 00:16:12.28 ID:0mf4Q9Q0
―――

ローマ。
とある低めのビルの屋上。

ベヨネッタはキャンディを咥えながら、遠くに見えるサンピエトロ大聖堂を眺めていた。

足元には『イギリス清教』の修道服。

ベヨネッタ「……臭っさいわねココは」

ポツリと不機嫌そうに呟く。
人間界において、最も天界の力が充満しているこの街。

ベヨネッタにとってかなり胸糞が悪い。
暴れて暴れまくって掃除して更地にしたい気分だ。

その時、真後ろから足音がした。

ベヨネッタ「……」

振り向かなくても気配でわかる。
良く見知った『仲間』だ。


「着ないのか?もうすぐなんだろ?さっさと着な」


背後の者がベヨネッタの背中へ向けて声を放つ。
いかにも気が強そうな、締りのあるキレの良い女の声。

ベヨネッタ「その時になったら着るわよ」


「ヘマするとまたバージルに嫌われるぞ」


ベヨネッタ「じゃあアンタがこの役やる?ジャンヌ」
622 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/15(土) 00:19:25.14 ID:9GAt78Mo
ジャンヌきたああああああああああ!!!
623 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/15(土) 00:22:42.44 ID:0mf4Q9Q0
ジャンヌ「良いのか?あの天使も私がもらうぞ?」

ジャンヌと呼ばれた女性が答える。
短い銀髪、濃い化粧、そしてベヨネッタと同じようなピチピチの赤いボディスーツ。
袖には狐の尻尾のような白い飾りが下がっている。

そしてこれまたベヨネッタと同じくヒールのかかとに取り付けられている巨大な拳銃。

ベヨネッタの唯一無比の親友であり、生き残った魔女の片割れでもある。
お互いとも、相手の為なら命を投げ出しても構わないという程の仲だ。

ベヨネッタ「ん〜んやっぱり私がやる。あの天使は私の獲物」


ジャンヌ「チッ。セレッサ、次はアンタが裏方やりな」

ジャンヌ「次は私がメインディッシュを貰う」

『セレッサ』とはベヨネッタの本名だ。
彼女だけはこう呼んでいる。


ベヨネッタ「わかったってば。でも今の『コレ』の裏方も楽しいと思うけど」
ベヨネッタがジャンヌの方へ振り向き、左手のひらを上に向け軽くあげた。

ジャンヌから見て、ちょうどベヨネッタの手にサンピエトロ大聖堂が乗っているようだ。


ベヨネッタ「イギリスが『悪魔』送ってくるかも。弾道ミサイルに乗っけて」
624 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/15(土) 00:27:52.86 ID:0mf4Q9Q0
ジャンヌ「強いのか?」

ベヨネッタ「それなりに」

ジャンヌ「……」
強いのならば文句は無い。
暇つぶしにもなるし、得る物もあるだろう。

気に入ったら力でねじ伏せて強引に使い魔にするのも良い。
どうしても従わないのならば力を剥ぎ取り吸収してしまうのも一つの手だ。

ベヨネッタ「面白いこと教えてあげる。その来るかもしれない悪魔、こう名乗ってるみたい」

ベヨネッタ「『イノケンティウス』」

ジャンヌ「……はッ」
ジャンヌが小さく笑う。

イノケンティウス。『魔女狩りの王』。
その名を名乗っているとは。

ベヨネッタ「どう?」


ベヨネッタ「ムカつかない?」


ジャンヌ「はははッそいつはイイ―――」

ジャンヌの考えが変わった。
使い魔にする気も、吸収する気も無くなった。


ジャンヌ「その名を冠する資格があるかどうか―――」


ジャンヌ「―――試してやんよ」


―――
625 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/15(土) 00:32:36.79 ID:0mf4Q9Q0
―――


ロシア、とある内陸部の巨大な地下の円形ホール。

そのだだっ広いホールの中央に大きな机と椅子。
フィアンマはその椅子に座っていた。

フィアンマ「……」

重量感のある禁書目録の遠隔制御霊装を右手で弄びながら思索に耽る。

フィアンマ「……」
この遠隔制御霊装。

禁書目録の制御システム『自動書記』の操作端末であり、これを使うことによって10万3千冊の魔導書の情報を引き出したり、
それを元にして新たな術式を創り出すことも出来る。
(また、『首輪』と呼ばれる防衛システムを起動することが出来、あの少女を『兵器』として使うこともできる)

今のフィアンマには、その莫大な情報と術式を新たに創り出す機能が必要なのだ。

フィアンマには『聖なる右』という絶大な力がある。

『聖なる右』とは『手』だ。

『行使する手』。
確かにコレだけでも力は絶大だ。
その力は圧倒的であり、一振りで地形を変えてしまう程だ。

だが制約もある。

かなり不安定なのだ。
数回使ってしまえば、しばらくはまた安定するまで使えなくなってしまう。

一撃の破壊力は相当なものだが、これから始まる規格外の戦いを考えればかなり心もとない。
神クラスの者達とも合間見える可能性がある以上、まだまだ力不足だ。

このままだと目的を達する前に斃れてしまう事だって在り得るのだ。
626 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/15(土) 00:35:42.18 ID:0mf4Q9Q0
だからフィアンマにはまず禁書目録が必要なのだ。

禁書目録を手に入れ、『頭』の一時的な代替となる術式を創らせて『聖なる右』を安定させる。
そうすれば『聖なる右』単体でもそれなりの力を連続して使うことが出来る。

それでとりあえずは大丈夫だ。

とりあえずはだ。

元々この『手』は単体で使えるものではない。
禁書目録を使って行う代替の策はあくまでも一時的な物だ。

『手』を動かし、制御して本来の力を発揮するには『頭』が必要だ。
そしてその『頭』と『手』を繋ぎ一つにできる『器』も必要だ。

今のフィアンマには、その『頭』と『器』が無い。

だからこそ『頭』と『器』を手に入れる。
それがフィアンマの一番の目的でもある。

『頭』はとある少年が持っている。
だが『器』は、この力達が切り離された時に砕かれた為、別の物で代替しなければならない。

そこで当初フィアンマが目をつけていたのは、『御使堕し』の際に天界の魂を一時的に宿した、ロシア成教に所属する少女の体だ。
完璧とは言えないが、魂の『器』としての強度は一応最低ラインを越えている。

その少女を手に入れる為にロシア成教に根回しをしたといっても過言ではない。

だが現状を見ると、どうやらそんな必要は無かったようだ。

『頭』を持っている少年がここ二ヵ月半の間に、更に頑丈な『器』も手に入れてしまったのだから。
627 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/15(土) 00:38:49.75 ID:0mf4Q9Q0
今、『頭』と『器』は一つになっている。

悪魔サイドとの関わりにより、一時はフィアンマでさえ頭を悩ませたが、どうやらそれは杞憂に過ぎなかったようだ。
結果的にフィアンマにとってかなり好ましい事になった。
『頭』と『器』を調整し結合させる手間も省けた。

かなり行程が短縮できる。

後はこちらの『手』を、禁書目録で創った術式で結合させれば良いだけだ。


更に魔帝の『創造』という素晴らしいオマケ付だ。


そのオマケがあるからこそ、アリウスも協力してくれる。

いくらフィアンマでも、アリウスの協力無くして『魔界と天界の全面衝突』という巨大な隠れ蓑を作る事はできないし、
それが無ければ天界の助力も得られなかっただろう。

『創造』という報酬を約束することでアリウスの協力を手に入れることが出来たのだ。

まあ、渡す気はさらさら無いが。
そんな素晴らしい力を手に入れておきながら はいどうぞ と渡す程このフィアンマはおめでたくはない。

アリウスもそれはわかっているだろう。
だが『創造』を引き出すにはフィアンマの目的が成就しなければならない。

だからアリウスはとりあえず協力しているのだ。

フィアンマもわかっている。
その内、機会を見てアリウスは打って出るだろう。
力ずくで奪う為に。
628 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/15(土) 00:42:17.66 ID:0mf4Q9Q0
フィアンマ「……それにしてもな……面白い」
フィアンマは一人呟いき、右手にある遠隔制御霊装を見つめる。


これを調整していた時に、面白い事実が明らかになった。


禁書目録は元々かなりの魔力を有している様だが、それは全て『自動書記』の維持に使われている。
あの少女自身の意志では魔術を行使できないのだ。

なにしろ10万3千冊の魔導書、更にはフォルトゥナの魔剣生成・人造悪魔・界の封印式等の、
規格外の『魔界魔術』まで記録しているのだ。

『自動書記』はこれを守るという役割もあるが、
また一方でこの少女自身がその力を独断で行使するのを防いでいる訳である。

―――と、ここまではフィアンマも知っていたし、業界内でトップ地位にいる者達の間では常識とされている。

だがこの遠隔制御霊装を詳しく調べてみた結果、とんでもない事が、
それこそこのフィアンマすら驚愕する程の事実が判明した。

自動書記は外に対する防御と、彼女自身への拘束具の役割もしているが、
その外と内に振り分ける力の量が余りにも偏っていたのだ。

実に、力の9割が内側への拘束に使われている。
つまり自動書記と『首輪』が行使する伝説級の魔術、『聖ジョージの聖域』や『竜王の殺息』の源は残りのたった1割の力だ。


あまりにもおかしい。
普通は逆であるはずだ。
いかに元から有する魔力が多いとはいえ、少なくとも『普通の人間』なはず。

だが実際に目の前の証拠は揺ぎ無い事実を告げている。

そしてそこから導き出される答えは?

これ程の力をかけて拘束する必要があるのならば、
その拘束されている『モノ』はそれこそ大悪魔や神クラスの『何か』だ。

つまりあの少女、インデックスの中には、記録してある魔導書以外にとんでもない代物が隠されているという訳である。
629 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/15(土) 00:44:43.74 ID:0mf4Q9Q0
見つけた物は更にもう一つある。

遠隔制御霊装に篭められている術式。
その言語はラテン語から古代ギリシャ語、ルーン文字等かなりの種類が複雑に組み合わされている。

この遠隔制御霊装の根幹となる術式を作った者は正に天才だろう。
これだけでも、魔術に携わるフィアンマにとってかなり興味深いものだった。

だがそれすらもどうでも良くなってしまうようなモノがこの術式の核の部分で見つかった。
この術式の器であり、核である根幹に使われている言語。


それは『エノク語』だった。


『エノク語』とは主に天界の者達や、魔界の一部の者が使う言語だ。

文字そのものが『生きて』おり、これで祝福の言葉を発せば本当に祝福され、
呪いの言葉を発せば本当に呪いがかかってしまう、運命を捻じ曲げる力を持っている と称されている。

そして人間には扱えないと言われている。
『エノク語』で魔術を行使すれば、効力を出す以前に術者の魂が耐え切れずに崩壊してしまうという。

例えると、持った時点で死に至る銃だ。
弾丸を放てば圧倒的な力を発揮できるが、使用者自身が引き金を引く前に死んでしまうので意味が無いという訳だ。

その線のエキスパートであるフォルトゥナの騎士達や、最高峰のデビルハンター達でさえ敬遠しているという言語だ。

『人間には使えない』 それが魔術を行使する者達の間での常識だ。


つまりこの遠隔制御霊装、及び自動書記を作った者は一介の人間を超越しているという事である。

更に『エノク語』を使ってまで抑えこまなければいけないという事実は、
とんでもない『何か』があの少女の中にあるという事を更に裏付ける。
630 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/15(土) 00:47:33.46 ID:0mf4Q9Q0
フィアンマ「……」

フィアンマの思索は更に深く進んでいく。


ではこの遠隔制御霊装、及び自動書記を作ったのは誰だ?

天界の者か?

だがこの術式の組み上げ方は人間のやり方だ。

つまり、人間界で術式の作り方を学んだ何者かだ。
そしてたった一つだけ、それに該当する者達がいる。


『アンブラの魔女』達だ。


彼女達は好んでエノク語を使った。
『アンブラの魔女』達は一応人間とは呼べるものの、普通とは違う。

生まれながらにして魔界の『祝福』、十字教側から言えば『呪い』にかかっている。
例えるならば魔界版の『聖人』だ。

彼女達は寿命も無く力も絶大だ。
一部の者は神クラスにも達している。
その証拠は、四元徳やジュベレウスが魔女に敗れたという事実で充分だ。

そのレベルの者達なら、この遠隔制御霊装と自動書記を作るのは造作も無いことだろう。

フィアンマ「……魔女か」

そう、つまり魔女の手によって遠隔制御霊装と自動書記は作り出されたかもしれない とフィアンマは推測する。
631 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/15(土) 00:49:43.49 ID:0mf4Q9Q0
魔女達の手によるもの。

イギリス清教があの少女を『禁書目録』として使い始めたのは10年程前。

だがそれはローマ正教が入手した情報の範囲内での話だ。

あの少女の出身地も親もわからない。
年齢すら確かな事は分かっていない。

『禁書目録』となる前の情報は何一つ無い。


フィアンマ「…………」

疑問。

魔女と関わりを持ったとしたら、それはいつだ?どんな関係だ?

なぜエノク語を使ってまで、内なる『何か』を拘束し封印しなければならないのか?

また、そこまでして封印しなければならない『何か』をなぜ破壊せずに残しておくのか?

『それ』は一体何なのか?

魔女達の手にすら余る代物なのか?―――

―――それとも魔女達が封印しつつも残す という決断を取ったのか?

―――まるで何者かの目から隠すかのように。


―――あの少女は『いつ』生まれた?


―――そして『何歳』なのだ?
632 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/15(土) 00:51:34.84 ID:0mf4Q9Q0
そう考えると、これまで禁書目録について導き出していた『答え』も全てが怪しく見える。

フィアンマは己の中で、業界内では既に『答え』が出ている疑問を再度反芻し、
もう一度考え直し、この遠隔制御霊装を調べて判明した事実を基に、『別』の『答え』を導き出す。


―――なぜ魔導書を直に見て記憶しても精神が犯されないのか?

それは魂の『器』が大きいからではないか?


―――力に対する嗅覚が異常に強いのはなぜだ?


悪魔や天使が先天的に持っている『感覚』に似ていないか?


―――そしてなぜイギリス清教は記憶を消し続けていた?


生まれも親も隠し、過去を抹消する為では無いか?

つまりあの少女本来の『身分』を隠す為ではないか?



フィアンマ「………まさかな―――」

浮き彫りになった『裏』の答え。
今までの推理をもう一度確認する。

推理から導き出された答えは一つの事実を示していた。
633 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/15(土) 00:54:39.67 ID:0mf4Q9Q0
フィアンマ「……面白い」

どうやらあの少女を直接迎えに行った方が良さそうだ。

本来はあの少女自身を手元に置かなくても、遠隔制御霊装を使えば術式を引き出せる。
フィアンマも元々はそのつもりだったが、あの少女自体にも興味が湧いたのだ。

使い様によってはかなりの武器になるかもしれないのだ。

フィアンマ「直に行ってやるか」

フィアンマはあの少女も手元に置くことにした。

今は学園都市最強の能力者、あの『境界から半歩踏み出している』少年が護衛しているという事らしいが、
フィアンマの『聖なる右』と遠隔制御霊装があればどうとでもなる。

ついでにその少年を殺しておくのも良いかもしれない。
アレイスターの最終目的は確実ではないものの大体予想がついている。

あの者の行動がこちら側の障害になるのは確実だ。
ならばその者の目的の核の一つを破壊しておくに越したことは無い。


フィアンマ「それにしても……驚いたな―――」


この推理から導き出した答え。
自分でも少し信じられない。

この推理が正しければ。

あの少女の生まれは―――。

あの少女の正体は―――。



フィアンマ「―――こんな所にもう一人いたとはな」


―――
634 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/15(土) 00:57:31.98 ID:0mf4Q9Q0
―――


リスボン沖の貨物船。船倉。

ダンテは金属板が積みあがった即席のステージの上で、ネヴァンの弦を弾く。
大音響が鳴り響き、船倉を振るわせる。

ネヴァンからは爆音のようなBGMと共に紫色の稲妻が発せられ、船倉の中をクラブのように明滅させて照らす。

ダンテ「Bless me with your gift of light」

ダンテ「Righteous cause on judgment night」

その大騒ぎを受け、ようやく人造悪魔達が動き出した。
積まれていたコンテナが爆発するかのように弾け、中から背中に小銃を括りつけた小さな猿のような悪魔達が飛び出し、
ステージの上で一心不乱にギターを奏で歌うダンテに向かって四方八方から飛び掛る。

ダンテ「Feel the sorrow the light has swallowed」

ダンテは歌いながらギターを掲げ、ネックの部分を掴んでハンマーのように大きく振るった。
ハイになりすぎたギタリストが闇雲に乱暴に振るが如く。

ダンテ「Feel the freedom like no tomorrow!!!」

その瞬間、ギターのボディが変形し巨大な刃が飛び出した。

ダンテ「Yeaaaaahh!!!!!!!!」

巨大な『鎌』となったネヴァンが、飛び掛ってた『客達』を一気に薙ぎ払った。
更にその刃から放たれた紫の稲妻が周囲を穿つ。

船倉の壁や床に穴が開き、辺りに飛び散るバラバラになった悪魔達の破片と火花が、
この狂気のライブをより一層盛り上げる。
635 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/15(土) 01:00:53.51 ID:0mf4Q9Q0
人造悪魔達は今度はダンテの周りを囲む。
天井・壁にへばりつき、背中の銃をダンテに向ける。

更に船倉の奥から轟音が響いてきた。

重いキャタピラの音。
そしてコンテナを踏み潰しながら、所々が黒い甲羅で覆われた戦車が姿を現した。
船主側からと船尾側から一台ずつ向かってくる。

砲塔にある赤く輝く巨大な目がダンテを真っ直ぐ睨む。

ダンテ「Stepping forth a cure for soul's demise」

ダンテが再びネヴァンをギター型にし、歌いながら前へ踏み出しステージから跳ぶ。
それと同時に小銃型の人造悪魔達の銃口が一斉に火を噴く。

無数の銃炎が連続して明滅し、大量の銃弾が跳び上がったダンテ目がけて放たれた。
上下左右、前後ろ全ての方向から。

ダンテ「Reap the tears of the victims cries」

普通なら逃れようが無い鉛の網。
どこに移動しても、どうかわしても絶対に直撃してしまう―――。

―――普通ならばだ。

ダンテ「Yearning more to hear the suffer」

だがダンテには一発たりとも当たらない。
身を捻り、銃弾と銃弾の僅かな隙間、穴場へと瞬時にそして正確に体を移動させる。
皮膚からわずか数ミリというスレスレのところを銃弾が通過していく。

だが銃弾が接近できたのはそこまでだ。
この『数ミリ』の距離は凄まじく遠かった。

銃弾は無数に放たれているが、ただの一発もその『数ミリ』の距離を縮めることが出来ない。
なびいているコートにすら当たらない。

ダンテ「Of a demon as I put it under」

床に降り立ち、ギターを奏で歌い、ステップをキメながら『華麗』に突進する。
その周りの床に、ダンテを追って無数の銃弾がぶち当たり、大量の火花が彼の足元を彩る。
636 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/15(土) 01:03:27.85 ID:0mf4Q9Q0
ダンテ「Killed before―――」

ダンテがネヴァンのネックを掴み、再び振るう。
そして今度はそのまま放り投げる。

巨大な鎌型に変形したネヴァンが稲妻を放ちながら、船倉の中を弧を描きながらブーメランのように飛び、
次から次へと人造悪魔達を切り裂き砕いていく。


ダンテ「―――a time to kill them all!!!!!!!!」


同時にダンテは突進し、小銃型の人造悪魔を鷲掴みにする。
そして腰だめに構えた。

ダンテの莫大な力を大量に流され、その人造悪魔は抵抗することすら出来ずに彼に『使われる』。

ダンテはそのままフルオートでぶっ放す。

彼の力を帯びた赤く光る銃弾が一瞬で大量にばら撒かれ、
他の人造悪魔達を穴だらけにしていく。


だが僅か一秒も経たずして、ダンテの抱えていた人造悪魔は流れ込む力に耐え切れずに破裂した。


ダンテ「Passed down the righteous law」

ダンテは残ったグリップを放り投げると、
相変わらず歌いながら今度は正面の戦車の方へ突進した。
637 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/15(土) 01:04:00.73 ID:q3sHS1Io
これはネヴァン入手ムービーの一人ライブ曲?
638 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/15(土) 01:07:37.18 ID:.ArAMtAo
ミドシンのMADを思い出した・・・
639 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/15(土) 01:08:32.65 ID:0mf4Q9Q0
>>637 3の『Devil's Never Cry』です

正面の戦車の砲身が真っ直ぐにダンテの方に向く。
後方の戦車もその砲口をダンテの背中に向けたのを彼は感じ取った。

そして二つの大砲が同時に火を噴く。
120mm滑腔砲弾が1650m/sという速さでダンテに前と後ろから一発ずつ向かう。


だが今度はかわすどころか、ダンテはその二つの砲弾を『掴んだ』。


ダンテ「Lifeless corpse as far as―――」


そして砲弾の慣性を利用して体を回転させ、後方の戦車へ二発続けてぶん投げる。

その僅かな一瞬でダンテの力を注がれた砲弾は赤い光を帯び、
放たれた時の数十倍もの破壊力をもって戦車の砲塔をぶち抜いた。

より一層巨大な爆炎と火花がこのライブを更に彩る。

ダンテは投げた反動を利用してもう一台の戦車の方へ大きく跳ぶ。

そして宙で右手を掲げる。
その右手に、帰ってきたブーメランのように鎌型のネヴァンが収まり―――。


ダンテ「―――the eye can seeeeeeeeeeeeee!!!!!!!!!!!!!!!!」


―――そのまま砲塔の上に着地すると同時にネヴァンを振り降ろす。

紫の電撃を帯びた刃が、分厚い装甲を難なく引き裂き深く食い込む。
640 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/15(土) 01:11:49.56 ID:0mf4Q9Q0
ダンテ「The eye can seeeeeeeee!!!!!!!!!!!!!!!!」

ダンテはシャウトしながら、ネヴァンをその『砲塔ごと』引っこ抜いた。

車体から砲塔が強引に千切られ、ターレットから大量の火花と悪魔の血が噴出す。
そして今度は、突き刺さったネヴァンをグリップ替りににしてその砲塔を巨大な銃のように腰だめに構えた。


ダンテ「The eye can seeeeeeeee!!!!!!!!!!!!!!!!」


その120mm滑腔砲が今度はダンテの力を帯びて、いまだに船倉に残っている大量の人造悪魔達へ放たれた。
それも単発ではなく、彼の力で強引に連射して。

赤い砲炎を連続して噴出す120mmの『マシンガン』が人造悪魔の群れを吹っ飛ばしていく。


AC−130ガンシップもびっくりの圧倒的な物量の弾幕だ。

天井、床、壁に巨大な穴を穿っていき、そこから大量の海水が雪崩れ込んでくる。

だがハイになっているダンテはお構いナシに撃ちまくる。

爆炎と海水が何重にも絡み合い飛び散る。

そして遂に砲身がその熱と負荷に耐え切れずに歪みはじめた。
熱で誘爆する寸前だ。
641 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/15(土) 01:14:10.64 ID:0mf4Q9Q0
ダンテは右手でネヴァンを引き抜き、左手で砲身を掴むとそのままハンマー投げのように一回転し、

ダンテ「The eye can see!!!!!!!!」

歌いながら壁際にいる人造悪魔達の方へ砲塔をぶん投げた。
悪魔達が巨大な金属の塊に叩き潰され大爆発を起こす。

ダンテはネヴァンをギター型に戻し、再び弦を弾く。

ダンテの体から赤い光が溢れ、弦が弾かれるごとに巨大な稲妻がネヴァンから四方八方へ放たれる。
雪崩れ込む海水の轟音、軋む船体、船体の壁から弾けるボルトの音、飛び散る火花、業火と稲妻の明滅と爆音。

ダンテ「The eye can seeeeeeeee!!!!!!!!!!!!!!!!」

狂気と破壊のライブは最高潮に達する。

ダンテはネヴァンを抱え前に跳ぶ。

そして両膝で滑り込むように着地し、天を仰ぎ。


ダンテ「THE EYE CAN SEE!!!!!!!!!!!!!」


シャウトをキメ、思いっきり弦を弾いた。
その瞬間、ネヴァンから紫の閃光が溢れ、船倉の中を覆い尽くした。
残っていた人造悪魔達は一瞬で消し飛び、更に天井、壁、床を全て吹き飛ばした。

船底も甲板も何もかもが消失し、ネヴァンの稲妻は天を貫き海を割る。

この瞬間に貨物船の中央の部分、実に全船体の三分の一が『消滅』した。


―――
642 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/15(土) 01:15:44.01 ID:q3sHS1Io
>>639
サントラあるけど歌詞はうろ覚えだったww
サンクス
643 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/15(土) 01:15:48.65 ID:0mf4Q9Q0
今日はここまでです。
明日は投下できるかわかりません。
恐らく明後日になるかと思います。
644 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/15(土) 01:25:08.68 ID:q3sHS1Io
乙!
645 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/15(土) 01:27:05.36 ID:E6eYix6o
乙!
ネヴァンかっこいいよネヴァン
646 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/15(土) 01:27:20.69 ID:ly4aXkAO
乙!
俺この歌パチスロ版が一番好きだな。歌詞すっげーしりたい。
647 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/15(土) 01:34:13.48 ID:pYPd/Tw0
ネヴァンカッコ良いんだが使いこなせねえ…
乙っした
648 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/15(土) 01:52:02.34 ID:D2tzruwo
乙!こんなライヴあっても行きたくねぇwwwwww
649 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/15(土) 03:45:29.12 ID:8c9xqM.0
>>613
これでいいなら…
http://2syokan.blog.shinobi.jp/Entry/534/
650 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/15(土) 04:10:51.80 ID:Abml3EAO
俺のダンテと違う…
651 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/15(土) 12:05:07.61 ID:hXb33sDO
俺のダンテだと、かなり苦戦してるな。
652 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/15(土) 12:17:06.36 ID:55BSpL20
Devil's Never Cryきたあああああああああ
653 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/15(土) 12:22:44.09 ID:984RkADO
>>649
あったのか、サンクス
ホワイトライダーにビビんねー美琴にワロタ
654 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/15(土) 13:53:29.39 ID:X5nIlMDO
>>646
ググれば出てくるはずだが色んな意味で歌えたもんじゃないぞ
舌が回らなくて泣いた

みんなネヴァン使いにくいみたいだが結構いい武器だぞ
リバーブショックやらクレイジーロール、ディストーション辺りは使いやすいしエボアボで空中浮翌遊できるし
とにかくLet's Rock!しようぜ!
655 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/15(土) 15:05:04.81 ID:7wYVOe20
スーパーダンテでネヴァン使うと浮翌遊して雷落とせるんだっけ?
656 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/15(土) 15:16:42.25 ID:VBPYzKEo
アラストルさんの空中技が使えるんだっけか
657 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/15(土) 15:20:46.97 ID:nHR9Vmso
>>655
つかえるよ
658 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/15(土) 21:07:01.13 ID:iwc6BVco
>>655
普通のダンテで使えるよ
659 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/15(土) 21:16:34.97 ID:7wYVOe20
そうだったか。スーパーダンテだと魔翌力無尽蔵だからまさに悪魔だよなwwww
660 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/16(日) 00:30:28.19 ID:NdE8IoQ0
生マ※コ気持ち良過ぎやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
http://motoyuyu.net/ak/yr5u40e
我慢とか無理!
締め付けとヌルヌルがマジたまらんくて2分ぐらいで出してもうたよ。。。
661 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/16(日) 00:32:10.67 ID:XjJfesco
>>660
[ピーーー]
662 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/16(日) 01:18:46.26 ID:0BARqwAO
>>654
ようつべに歌詞付きであったわ。さんきゅ
663 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/16(日) 01:38:09.09 ID:hOSjxGco
>>654
カラオケで歌いたくて練習してたが入ってなくて絶望
664 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/16(日) 01:39:29.00 ID:YnGbTNMo
ステイルさん原作だけじゃなく二次創作のSSでも死亡フラグたってんのな
665 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/17(月) 00:10:44.17 ID:nOTTbJE0
―――

一方その頃。

事務所デビルメイクライ。

現地時間午前六時。

上条と御坂は一回のソファーでお互いにもたれかかる様にして座りながら寝ていた。
近くのビリヤード台には無造作に置かれている御坂の大砲と上条の黒い拳銃。

上条「……んあ……」

まぶた越しに目に差し込む明るさに気付き、うっすらと目を開ける。

上条「……朝か…………ん?」
腑抜けた声でポツリと呟く。
そして気付いた。

肩にかかる重さ。ほのかに漂ってくる良い香り。
ふと見やると、御坂が自分の肩に頭を乗せ、上条の左腕に固く手を回しながら可愛らしい寝息を立てていた。


上条「………………」
起きたばかりの上条の頭が、今の状況を理解するまでには10秒ほど必要だった。


上条「………!!!!!!!み、みみみみみみm!!!!」

そして理解した途端一気に鼓動が早まる。
666 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/17(月) 00:12:19.52 ID:nOTTbJE0
上条「(なんでこうなってる!!!!!?思い出せ!!!!思い出すんですよ上条さん!!!)」

脳内の最後の記憶を細かく確かめていく。

悪魔を退治し、警察から逃げる為に御坂を抱き上げてビルからビルへと跳び、
そのまま事務所に帰ってきた。

御坂は疲れていたらしく、ふらふらとソファーに向かいポスリと座った。
その隣に同じく疲れていた上条も座った。

『初仕事』ということもあってか、そのまま二人は疲れで寝てしまった。

というのが上条の記憶だ。

上条「………御坂」
恐る恐る名前を呼んでみる。

だが反応は無い。
熟睡しているようだ。

上条「(疲れてんだな……寝かしといてやるか……)」

上条はもぞもぞと動き、左腕に絡まっている御坂の手をゆっくりと外す。
そして起こさないように慎重に立ち上がり、御坂を優しくソファーに横たわらせた。

御坂は ん… と小さな声をあげうずくまった。

上条「(いつもはキリッとしてるけど……こいつ『も』こういう顔して寝るんだな……)」
667 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/17(月) 00:14:27.27 ID:nOTTbJE0
上条はビリヤード台に寄りかかり、
己の銃を軽く服の袖で磨きながら御坂をなんとなく眺めていた。

上条「……」
御坂とインデックス。
数々の視線をくぐりそれなりに猛者でもある二人も、
寝顔はやっぱり年相応の年下の女の子だ。

上条「(……つうかこうしてよく見てみると……御坂もすっげえ可愛いな…)」

上条「(良い匂いしたし……暖かk……って何考えてんですか上条さんは!!!うぉおおお!!!!)」

自分のムスコが元気一杯なのに気付き慌てる。
一瞬顔を出した男の欲望を慌てて抑えこむ。

寝起きにおっ勃つのは若い男性特有の『症状』ではあるが、
それに更に溜まっていた欲望が上乗せされいままで見たことも無いくらいにギンギンになっていた。

というのも、もう大分前から一人の『営み』をしていない。

数ヶ月前に、インデックスが寝静まった後に風呂場で一回だけした事があったが、
翌日の朝に彼女に とうま、何か変な匂いするんだよ と突っ込まれてから一度もしていなかった。


御坂「ん……ん……」


上条「!!!!!!」

御坂がもぞもぞと動き、甘えるような声を放つ。
その声は上条の耳に入り、彼の中の本能をより強く刺激した。
668 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/17(月) 00:16:31.59 ID:nOTTbJE0
御坂のはだけたパーカーの間から見える、Tシャツ越しのささやかな膨らみ。
その上に見える綺麗な鎖骨と首。


上条「(マズイ!!!!!これはやべぇ!!!)」


何もかもが今の上条にとって刺激が強すぎた。
服役していた囚人が、シャバで何十年振りかに直接女を見たような感覚に似ているだろう。

上条「(いぎぎぎっぎ!!!)」
強引に下げ、股の間に挟んでとにかく沈めようと奮闘する。

もう少しでトリッシュが返ってくる予定だ。
こんな調子で更に刺激的なトリッシュを見てしまったら大変だ。


御坂「んん……」

御坂が再びもぞもぞ動く。どうやら眠りが浅くなってきているようだ。


上条「(やばい……とりあえず避難した方が…!!!!)」


御坂「と…うま……」


上条「……………は、はい?」
669 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/17(月) 00:18:14.64 ID:nOTTbJE0
突然名前を呼ばれ、上条は股間を押さえたままの姿勢で硬直した。

だがそれだけだった。
御坂は相変わらず寝息を立てている。

上条「(……寝言?夢に俺が出てんのか?……つうか『とうま』って今言ったよな?)」


御坂「………当麻」
御坂が再び呟いた。

上条「これは本当にやばいな」
思わず声に出してしまった。

名前を呼ばれ、上条の立派な『竜』はますます熱り立つ。


御坂「……当麻……」

上条「(ごめんなさいもうカンベンしてくださいお願いします)」
そう思いつつもなかなかこの場から離れようとしないのは男の性だろう。



御坂「………好き………当麻………大好き……」
670 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/17(月) 00:20:28.35 ID:bzVRMwDO
上条さんの下条さんがやばいことに
671 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/17(月) 00:23:11.03 ID:htCXCDQo
ウオオオオオオオオオオオオ
672 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/17(月) 00:27:25.05 ID:nOTTbJE0
上条「………………………………は?」
一瞬耳を疑った。

時間が止まる。

上条「…………なッ……!!!」

上条「……ッ……」

上条「………」

ダンテに世界遺産認定される程のこの鈍感少年もさすがにわかる。
そして一旦感づいてしまえば、後は一気に答えが組みあがっていく。

この修行期間でより鮮明に浮き彫りになったが、上条は元々かなり頭の回転が速い。
ヒントやきっかけさえあれば、すぐに答えを導き出してしまう。

御坂の今までの行動も。
彼に対する態度の理由も。

今までの全てが一つの答えを裏付けてしまった。

彼はようやく気付いたのだ。

この少女の想いに。

上条「…………(そうか……)」


上条「…………御坂……ありがとう」

三分程考え込んだ後、上条がポツリと呟いた。
673 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/17(月) 00:31:16.56 ID:nOTTbJE0
上条はゆっくりとソファーに向かい、御坂の前に屈んだ。
そして左手でそっと御坂の頬を撫でた。

上条「……ありがとう」

乱れた御坂の前髪を優しく正す。

上条「…でもよ……あのな…」


上条「……確かにお前を、お前の世界を守ると誓った」


上条「それは絶対に破るつもりはねえ。死んでも守る」


上条「お前は俺にとって大事な人の一人だ」


上条「だがよ……」


上条の頭に一人の少女の顔が浮かんだ。

白い修道服を着た、青い髪の『天使』。


上条「俺は……」


上条「そのな、何て言うか……お前のその気持ちには……」


上条「……って寝てる相手にこりゃねえよな。またかよ俺」
上条は苦笑した。

これではこの事務所に来る前夜と同じではないか と。
相変わらず卑怯だな と。
674 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/17(月) 00:33:15.41 ID:nOTTbJE0
上条「あ〜……」
右手で乱暴に頭を掻いた。

上条「……ちゃんと……時期が来たら起きてる時に話すよ」

上条「お前もそっちの方がいいだろ」
上条は立ち上がり、小さく伸びをした。
さっきまで熱り立っていた欲望もいつのまにか影を潜めていた。

上条「(……シャワーでも浴びるか)」

上条は頭を掻きながらバスルームへと向かっていった。

そして彼の姿がバスルームに消えた後。


御坂「……うん…知ってる」

御坂が小さく呟き目をうっすらと開いた。


御坂「わかってるよ」


そして再び目を閉じた。

穏やかな笑みを浮かべたまま、御坂は再びまどろみの中へ落ちて行った。


―――
675 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/17(月) 00:36:15.14 ID:htCXCDQo
ウッ…
676 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/17(月) 00:37:33.80 ID:nOTTbJE0
―――


リスボンの港に停泊している貨物船。
トリッシュはそのマストの上に座りながら、沖を眺めていた。

沖には黒煙を立ち上らせて沈む船の残骸。

海面から船首が突き出している。
更にそこから400m程離れた海面から船尾が突き出し、本来見えるはずの無いスクリューが露になっていた。

ついさっきあの船の中央辺りで紫の光の爆発が起こり、巨大な稲妻が天を貫いたのだ。
それによりあの船は木っ端微塵になってしまった。

トリッシュ「……やっぱりね」

予想通りだ。
そしてよりによってネヴァンを使ったらしい。

ネヴァンを使うとダンテは更に見境が無くなるのだ。

トリッシュ「……」
しばらく眺めていると、その残骸の方角から赤い砲弾のような物体が、
猛烈な速度で放物線を描いて飛んで来た。

『砲弾』はトリッシュの真横に着弾した。
衝撃で鉄骨が大きく歪み、マスト全体が悲鳴のような金属音を立ててしなった。
677 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/17(月) 00:39:25.02 ID:nOTTbJE0
トリッシュ「おつかれさま」

トリッシュがその砲弾の方へ向く。
そこには水を滴らせているダンテが立っていた。
右手にはネヴァン。

ダンテ「お前ッ……」

ダンテがこの貨物船を眺めながら、少し不機嫌そうに声を放った。

トリッシュ「こっちは私が片付けといたから」
トリッシュが右手の銃を口元に沿え、未だに銃口から立ち昇っている硝煙の煙をフッと吹く。

ダンテ「おいおい……」

トリッシュ「楽しかったでしょ。思いっきり『沈んだ』わね」
トリッシュが作り笑いを浮かべながらダンテの顔を見た。

ダンテ「……………」

トリッシュ「私の言った事覚えてる?さっき言ったわよね。暴れn」

ダンテ「OK文句はねえ」
ダンテが左手の平をトリッシュに向け、彼女の言葉を遮って瞬時に負けを認めた。

こうでもしないと、またグチグチネチネチ小言を言われ続けるのだ。
それは何よりも回避したい。

トリッシュ「OK」


ネヴァン『感じ悪い女ねぇ相変わらず』


とその時、ダンテの右手にあるギターが声を放った。
678 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/17(月) 00:42:03.39 ID:nOTTbJE0
トリッシュ「あらいたの?」

ネヴァン『ねぇんダンテ、こんな女やめて私にしない?私ならダンテの命令にもちゃあんと従うわよ』

トリッシュ「そんなに盛りたいのなら自分の鎌でも突っ込んでなさいガラクタ女」

ネヴァン『あらあら可哀そうな子。己の方が上とでも思っているのかしら?実際は私の方が愛でられてるのよ』

ダンテ「……」

ダンテはその二人の会話を完全に無視して左手でコートを払い、
そして髪を軽く叩いて水気を払っていた。

トリッシュ「くだらないわね。所詮淫魔ってところかしら」

ネヴァン『本当に可哀そうね。この快感を知らないなんて』


ダンテ「……帰らねえか?シャワー浴びてえんだが……」


ダンテが遂に耐えかね、二人の会話を遮った。
女の口喧嘩ほど聞くに堪えない音は無い。

トリッシュ「じゃさっさと帰りましょ」
トリッシュが生け捕りにした小銃型の人造悪魔を手に取り立ち上がった。

ネヴァン『私もお供してあげる。シャワー』

ダンテ「………いらねえ」

ネヴァン『遠慮しなくてもいいわよ。戦いの後はたっぷりと癒さn」

トリッシュ「いい加減黙りなさい。ダッチワイフギター」


ダンテ「………」

再び始まった言い合い。
下手に介入するとかなり面倒臭くなる。

ダンテは目を細め沖を遠い目で眺めながら、黙って二人の言い合いを聞き流しながら黄昏ていた。

―――
679 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/17(月) 00:46:00.69 ID:nOTTbJE0
―――


学園都市。現地時間午後6時。

とある路地に一台のキャンピングカーが停まっていた。

その中には二人の少年と二人の少女。

麦野「………アクセラレータは?まだ?」
簡易ベッドに座っている麦野が、苛立ちを隠そうともせずに声を放った。

土御門「ああ、用事を済ませたらすぐに来るぜよ」

麦野「待たなくても良いじゃないの。私がいれば充分でしょ」

今日、これから理事会の一人である塩岸を襲撃する予定なのである。

一方通行が合流するのを待っているのだが、麦野からして見れば自分一人で充分だ。

それに土御門の話によると、一方通行は確かに『最強の能力者』だがそれは時間制限付きらしい。

それならば尚更こういう『小さな仕事』に参加させるのは気が進まない。
これから先、壮絶な戦いが待っているのは確かなのだ。
こちら側の戦力はできるだけ温存しておいた方が良い。

今夜の件は自分だけでちゃっちゃと済ませた方が良い と麦野は考えていた。


海原「まぁまぁ…そう焦らないで」
近くの椅子に座っていた、海原が穏やかな笑みで麦野をたしなめた。
680 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/17(月) 00:48:14.04 ID:nOTTbJE0
麦野「…………チッ」
海原の顔が気に入らない。

あの柔和な笑み。
そこらの人間ならコロっと騙されるだろう。
だが地を這い闇の中を生きてきた麦野には、その仮面の下の本性が見えてしまう。

まあ所詮暗部の者だ。
自分も含めゴミクズなのだ。

いけ好かないのが当然なのだ。

それともう一つ麦野の苛立ちを加速させる事がある。

この連中といるとはっきりとわかる。
見ていると、彼らはお互いにかなりの距離を開けている。
正に『赤の他人』だ。

任務時にしかお互い顔を合わせないのだろう。

自分が属していたアイテムとは大違いだ。
なにせ彼女達は、任務外の時でも四六時中皆で集っては時間を潰していたのだ。

麦野「…………チッ」
このグループのメンバー達を見ていると、それと対照するかのようにアイテム時代の記憶がより鮮明に呼び起こされる。
自暴自棄となって、己の手で破壊した『世界』の姿が。

そして彼女の心の中でよりはっきりとした声が響いてくる。

「欲しかった物が目の前にあったのに、お前は自ら気付かぬまま破壊した」と。


「お前は間違いを犯した」と。


土御門「さすがだな。辛抱強さの無さも『女帝』並だぜよ」

眉間に皺を寄せ不機嫌全開の麦野へ、土御門がからかうような声を向けた。

麦野「うるせえんだよクズが」
681 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/17(月) 00:50:47.22 ID:nOTTbJE0
30分後。

麦野「あー!!!もういい!!!行くわ!!!」
麦野が遂に耐えかねて、閃光を迸らせながら簡易ベッドから立ち上がる。

土御門「……だーわかったぜよ!!!待ってろ!!!」
土御門が携帯を取り出し、一方通行へ電話をかけた。

一方『あン?』
数コールで彼はすぐに出た。

土御門「まだか?隻眼の女王様がお前を待てねぇって駄々こいてんだ」

麦野がピクリと眉を動かして土御門を睨む。
それを海原が柔和な笑みでなだめた。
逆効果だが。

一方『合流できンのは夜っつってンだろ』

土御門「女王様はよ、お前がいなくても充分って言ってるぜよ」

土御門「まあ、はっきり言えば俺も女王様に同感だ。アラストルもあるし理事会程度なら余裕だろ」

一方『……』

土御門「ちゃっちゃと終わらせちまった方がいいと思うぜよ。お前も無駄にバッテリー使わねぇで済むしな」

一方『チッ……あァ……わかったぜ。先に始めとけや。しくじンじゃねェぞカス共』

土御門が麦野へ向けて親指を立てた。
麦野が軽く鼻を鳴らして返事を返す。

土御門「OK、じゃあ後でな」

一方『待て。メルトダウナーに代われ』
682 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/17(月) 00:53:04.47 ID:nOTTbJE0
土御門が携帯を麦野に放り投げた。
麦野が右手でキャッチし、耳に当てる。

麦野「何?」

一方『テメェが先鋒だ。俺の「ステージ」を汚すんじゃねェぞクソアマ』

一方『ヘマしやがったら左目と右腕すり潰して左右対称にしてやンぜ』

麦野「減らず口叩いてんじゃねえよ。脳ミソ足らねェ死に底無いが」

麦野「それにもし私がヘマしたらてめぇも道連れよ。後の事は心配すんな」

一方『……一ついいかァ?』

麦野「あ?」

一方『聞け。塩岸も奴に従ってる連中も―――』


一方『――ー殺せ。殺し尽くせ。ブタみてェに泣き喚かせろ。この世に生まれてきたことを後悔させてミンチにしてやれやァ』


麦野「―――当たり前よ。目玉くり貫いて、手足引きちぎって、チ××引き抜いて焼いて口に放り込んで」


麦野「口からケツ穴までぶち抜いて、ニワトリみてぇに丸焼きにしてチリにしてやる」


一方『カカカカ!!問題はねェなァ!!!テメェは最高のクソアマかもしンねェぜ!!』


麦野「はッお褒めの言葉どうもね。モヤシ野郎」
683 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/17(月) 00:57:13.42 ID:nOTTbJE0
麦野は通話を切り、携帯を土御門に放り投げた。

土御門「ま、つーことで始めんぜよ」

海原「ではこれを」

麦野「?」

海原がキャンピングカーの床板を捲り、銀色の頑丈そうなケースを取り出した。
土御門が手伝い、長さ1.5m程のケースが麦野の前に置かれる。
結構な重量があるらしく、重い音が響いた。

麦野「……何これ?」

土御門「言ってたろ。『アラストル』だ。お前の武器だぜよ」
土御門がケースの厳重なロックを外しながら答える。

麦野「はっ武器なんざいらないわよ」
麦野が左肩から青白いアームを発生させ、これ見よがしにうねらせる。


土御門「そう言うな。きっと気に入る」


海原「ちょうど封印が解けかかって三割程度の力は引き出せます」


海原「第23学区の件以来、意識は未だに眠ってるようですが、我々にとっては好都合でしょう」

海原「もし起きてたら色々面倒ですし」
684 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/17(月) 00:59:20.53 ID:nOTTbJE0
麦野「……は?」
土御門達が何の事を言っているのか全くわからない。

土御門「おしっと…」
全てのロックを外し終え、土御門がやや乱暴にケースを開けた。

麦野「…………はぁあああ?」

ケースの中には、古そうな一本の剣が入っていた。
銀色の刃と柄、鍔には翼をあしらったような飾り。

麦野にしてみればどう見てもガラクタだ。

てっきり『アラストル』というコードの、学園都市製の最先端機器かなんかだと思っていたのだが。


土御門「『アラストル』だ」


麦野「…………これを使えって?」


海原「はい」


麦野「ふざけてんのてめぇら?」
685 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/17(月) 01:01:55.47 ID:nOTTbJE0
土御門「良いから持ってみろって」

麦野「チッ……」

麦野がイラつきながらもその柄を右手で乱暴に握る。

麦野「こんなのなんz……………へ?」
その瞬間だった。

麦野「―――」

右手から、この奇妙な剣から何かが体内に流れ込んでくる。
全身から力が漲る。

麦野「―――!!!!」

麦野の左アームの光が一気に増す。

土御門「うおおお!!!待て!!離せ!!」

麦野「すごい―――何これ―――」

麦野が剣をゆっくりと持ち上げる。
更にアームの光が強くなり、麦野の全身からも青白い光が溢れ始める。

土御門「タンマ!!!!離せ!!!!!ここが吹っ飛んじまう!!!!」

麦野「はは、ははははあははははは!!!!!!」

海原「離してください!!!!!!!」

結標「―――チッ!!!」
結標が海原と土御門の腕を掴み、瞬時にキャンピングカーの外へテレポートした。

その次の瞬間、キャンピングカーが青白い閃光に包まれ吹き飛んだ。
686 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/17(月) 01:03:39.65 ID:nOTTbJE0
土御門&海原「―――ッ!!!」
二人は固いアスファルトの上に落ちた。

結標「―――あのクソ女!!!」
その後に着地した、少し息の荒い結標が悪態を付く。

三人はキャンピングカーから40m程離れた路地の奥にテレポートしていた。

さっきまで三人が乗っていたキャンピングカーは跡形も無く消え、粉塵がもうもうと立ち込めていた。

土御門「………」

三人はしばらくその粉塵のもやを眺めていた。

海原「………失敗……でしょうか?」

一番最初に口を開いたのは海原だった。

土御門「……」

結標「……」
三人とも同じ事を考えていた。
麦野の体がアラストルの力に耐え切れず爆発してしまったのだろうかと。

だがその時だった。

粉塵の向こうからヒールの音が響く。

土御門「いや……うまくいったみたいだぜよ」

靄の中から麦野が何事も無かったかのように姿を現した。
右手にアラストルを持ち、左肩からはより一層強く光を放っている巨大なアーム。
全身に纏わりついている青白い光の衣。

そして僅かに赤く輝いている左の瞳。

彼女は口を大きく横に裂き、まるで『悪魔』のような笑みを浮かべ三人へ声を飛ばした。


麦野「さ、行くわよ。楽しい楽しいパーティ会場に―――」



―――
687 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/17(月) 01:08:46.84 ID:nOTTbJE0
―――


一方その頃。

ヴァチカン、サンピエトロ大聖堂。

現地時間午後一時。

とある大きな礼拝堂の長椅子に、神裂と五和は並んで座っていた。
五和はそわそわと落ち着かない様子だ。

神裂「少し落ち着きなさい」

五和「……は、はい」

二人はイギリス清教側の大使としてここにやってきた。
数日前からイタリア入りし、多くの事務処理を経てのようやくの謁見だ。

神裂「……」

しばらく待っていると、複数の足音が響いてきた。

五和「き、きました!!」

ホールの入り口から数人の従者を引き連れた、枢機卿と思しき老人が進んでくる。

神裂と五和は立ち上がり姿勢を正した。

神裂は落ち着き払う一方で、五和は緊張で更に硬直する。
688 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/17(月) 01:11:23.23 ID:nOTTbJE0
枢機卿「ようこそ」

枢機卿の老人が神裂へ手を差し出した。

神裂「お招きいただき光栄です」
神裂がその手を握り挨拶をする。

枢機卿「こちらこそ。『天使』とお会いできるとは光栄です」

枢機卿「ささ、そう固くならんで下さい」

神裂「はい」

枢機卿「社交辞令は抜きにして、早速本題に入りましょう」

枢機卿「我等は友です」



「『友』―――ねぇ」



神裂「―――」
その時だった。真横から放たれてきた声。

それは神裂は聞いた事がある声。

忘れるはずが無い。
689 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/17(月) 01:14:54.06 ID:nOTTbJE0
神裂がその声の方へ振り向く。
5m程離れたところに、イギリス清教の修道服に身を包んだ、高身長のグラマーな女性が立っていた。

黒縁のメガネに口元のほくろ。

色っぽい笑みを浮かべていた。

「時間稼ぎはもういいから」


「グダグダしないでさ、さっさとおっぱじめてくれないかしら」


神裂「―――なっ……!!!」
その姿を見て、その声を聞いて神裂が固まる。

五和「?」

枢機卿「おや、他にもお連れの方が―――」


その瞬間。

大砲が放たれたかのような凄まじい炸裂音と同時に、枢機卿の体が『何か』に弾き飛ばされた。

枢機卿の体は猛烈な速度で長椅子を砕きながら吹っ飛び、
壁に叩きつけられ赤い液体を噴出しながら床に力なく落ちる。
690 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/17(月) 01:18:05.06 ID:nOTTbJE0
「―――」

その場にいた者が皆、突然目の前で起こった破壊と殺戮で固まる。


「戦争、始めましょ。『イギリス清教』の答えは宣戦布告。わかった?」


イギリス清教の修道服に身を包んだ『部外者』が、枢機卿の従者達へ向け言葉を放った。
枢機卿の従者達がわらわらと慌てて逃げていく。

五和「……な、な―――!!!」

次の瞬間、五和の体が後方へ吹っ飛ぶ。
神裂が五和を突き飛ばしたのだ。

己の刃の間合いから追い出したのだ。


神裂「―――ハァアァァアアアアッ!!!!!!!」
すかさず神裂が踏み込み、七天七刀を神速で抜刀する。


だがその刃は空のローブを切っただけだった。

女は宙を舞い、そして礼拝堂の中央にある高さ5m程の神像の頭の上に着地した。

衝撃で神像の頭部が叩き潰される。

黒いピチピチのボディスーツ、高く結った長いポニーテール。
黒縁のメガネに口元のほくろ。両手には巨大な拳銃。

そして更にヒールと一体化してるかのように両足に取り付けられている巨大な拳銃。
計四丁の銃を装備した、とてつもなくセクシーで妖艶な女。

天井のステンドグラスから差し込む光が女を包み込んでいた。

女が艶っぽい笑みを浮かべ、銃を握ったまま中指を立て、そのまま十字を切る。

そしてその中指を唇に当て軽く舐めた後、
腰をくねらせながら神裂に投げキッスを飛ばした。
691 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/17(月) 01:20:20.67 ID:nOTTbJE0
神裂「―――」

神像を踏みながら下品に身を捻り、中指で十字を切りその指を舐める。

聖職者からすれば、これ以上無い程の冒涜であり明らかな挑発。


神裂は艶かしい笑みを浮かべている女を睨み上げた。
彼女の頭の中が、この状況を理解するべく猛烈な速度で回転する。


今何が起こった―――?


―――イギリス清教の修道服を着た者がローマ正教の枢機卿を殺害したのだ。

―――そしてイギリス清教の名で宣戦布告をした。


その先起こる事は―――?


神裂「―――テメェエエエエアアアア!!!!!!!!!!!」

憤怒の咆哮が轟く。

神裂の目が激しく金色に光出し、全身からも光が溢れる。
そして抜き身の七天七刀の刃もそれに呼応するかのように青く光り始めた。

礼拝堂全体が激しく震え始める。

神像の上に立つ女はそんな神裂を見ながら、相変わらず笑みを浮かべていた。
692 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/17(月) 01:22:38.34 ID:nOTTbJE0
五和「―――」

五和が起き上がりながら、右手首に嵌められている銀色のバングル、非常用の通信霊装を起動した。
瞬時にイギリスへの回線が開く。

五和「襲撃!!!襲撃です!!!会談は失敗!!!!敵はh」


神裂「五和ァアアアッ!!退けェッッ!!!!」


その五和の通信を神裂の怒号が遮った。


五和「―――は、はい!!!!!」
五和が慌ててその場から走り離れていく。


神裂は戦うつもりだ。
今ここで退けばもう戦争は回避できない。

ここで戦いあの女を殺し、その屍を晒す。


そしてイギリス清教では無いと言う事を証明する。
この女の言葉はイギリス清教の物ではないという事を証明する。


それをやったところで、もうどうにもならないかもしれない。
だがここで退いてしまえば可能性はゼロなのだ。

僅かでも戦争を回避できる可能性があるのならば賭けるしかない。
693 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/17(月) 01:24:57.84 ID:nOTTbJE0
「ほんとセクシーな刀ねそれ。燃えてきちゃう」


女が右手に持つ銃でメガネの端をコンコンと軽く叩く。


「ねえ、この間の続きしましょ。もう我慢できないの」


神裂は七天七刀を鞘に納め、体の前に突き出し独特の居合いの構えを取り、
一度目を閉じ深呼吸をして精神を落ち着かせる。

そして目をゆっくりと開き、金色に輝く瞳で再び女を見据える。


神裂「名は神裂火織!!!!」



神裂「魔法名『救われぬ者に救いの手を(Salvere000)』!!!!!!」



ベヨネッタ「ベヨネッタ」



ベヨネッタ「『天使』のアンタを殺し、地獄に叩き込む名」


女が神裂の『宣戦布告』に応じ、名を告げる。
694 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/17(月) 01:26:25.50 ID:nOTTbJE0
神裂「―――死になさい」
神裂の右手がゆっくりと七天七刀の柄に添えられた。


ベヨネッタは両手を頭の上に伸ばし、体を見事なS字状にしならせる。


ベヨネッタ「huummmyeah....Let's party. Let's dance. Let's play」


そして甘い吐息を吐きながら、自らの首・胸・腹を上から順に愛撫するかのように撫で下ろした。


ベヨネッタ「Come on Bitch. Sweetie Baby」


撫で下ろし、右手を神裂に向け銃で軽く『手招き』。


それを見て神裂が床を蹴った。
石畳が砕け、爆音と共に『天使』が突き進む。



遂に舞台の幕が上がる。

開演を飾るのは魔女の死かそれとも天使の死か。


今ここサンピエトロ大聖堂で、『大天使』と『魔女』が再び刃を交える。



―――
695 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/17(月) 01:27:24.78 ID:nOTTbJE0
今日はここまで。
次は多分明後日に。

次の分で上条修行編は終了します。
696 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/17(月) 01:29:24.80 ID:4rju.7Yo
乙!
697 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/17(月) 01:30:26.98 ID:9OF47oQo
乙!
698 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/17(月) 01:38:39.00 ID:/jBzXr6o
乙!
ベヨ姐さんセクシーすぎるだろ・・・
699 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/17(月) 02:10:12.24 ID:L7wBd260
乙!
ベヨ姐さん流石過ぎるな
700 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/18(火) 03:10:32.43 ID:YWEDc.AO
ベヨネッタを知らん俺にはいけ好かんババァにしか見えないぜ!
701 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/18(火) 03:23:24.36 ID:/EDbCeIo
ベヨネッタ=女ダンテ


こう考えたら良いのよ、チェシャ
702 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/18(火) 08:55:14.74 ID:QttMosDO
カーマボーコーされないようにね!
703 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/19(水) 14:51:02.11 ID:LdB9I5wo
復活したか
704 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/19(水) 17:59:11.20 ID:V.z5vTso
女ダンテ・・・かんざきさん逃げてえええええええええええええええええええええ
705 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/19(水) 23:21:16.52 ID:ms64fwQ0
>>700
DMC系とはちと違うけどノリは近いんで機会があったらプレイして欲しい。面白いよ
706 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/19(水) 23:53:51.37 ID:iYD8b6DO
俺も>>700と一緒だな
DMC1が好きだから好きになれるとは思うが……、眼鏡は趣味じゃ(ry

それ以上に新ハードなのがネックだな
707 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/20(木) 01:19:20.86 ID:igp9E9co
箱○のバリュー買ったら?ちょうどおヨネさん付いてくるし
それと眼鏡に関しては神谷の趣味みたいだしなwwww
708 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/20(木) 03:10:12.35 ID:97.GoR20
(゚Д゚)メガネは大事だよ!!メガネ最高!!
709 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/20(木) 23:10:49.04 ID:97.GoR20
>>708
おヨネさんの魅力は尻だろ
710 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/20(木) 23:56:56.90 ID:xOClrzs0
―――

ロシア、とある内陸部の巨大な地下ホール。

フィアンマ「…………」
フィアンマは険しい顔で、机の上の通信霊装を睨んでいた。

書物型の霊装に映っているその映像。

光が差し込む礼拝堂で向かい合う『大天使』と『最強の魔女』。

まるで神話のような、正に旧約の一ページを映像化したかのような幻想的かつ荘厳な光景。

だがこれは現実に今起こっている事態だ。
幻想的なのは見た目だけだ。
一度刃が交われば、恐ろしい程の破壊がばら撒かれる。

フィアンマ「……まずいなこれは」

フィアンマにとってあまりにもイレギュラーな事態だ。

今はまだ事を起こすタイミングではない。
依然、準備は整っていないのだ。

先に禁書目録を使って己の力を安定させた後に始めるつもりだった。

この会談だって時間稼ぎの一つだった。

だがこの魔女の乱入。
魔女の最終目的はわからないが、とにかく戦争を誘発させようとしているらしい。
そしてその目的はフィアンマにとっては迷惑な話だが達成されるだろう。

ここまでの事態となってしまえば、さすがのフィアンマでも抑えこむことができない。
今まで彼が抑えていたローマ正教・ロシア成教のタカ派は確実に噴火する。

魔女が介入してきた事により、天界も号令を発するだろう。

イギリス清教の『天使』はどうやらまだ諦めてはいないようだが、
どう見ても開戦はもう避けられない。
711 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/21(金) 00:00:55.64 ID:W6j0Q8k0
フィアンマ「仕方ないな……」

この巨大な流れはフィアンマでも止められない。
一度動き始めたら、その流れに乗るしかないのだ。

彼は机の上にあるもう一つの書物型の通信霊装を開いた。

フィアンマ「アリウス」

アリウス『……どうやら時が来たようだな』
通信霊装から低い男の声が響く。

どうやらアリウスもヴァチカンの状況を把握しているらしい。
それなら説明する必要は無い。

フィアンマ「計画を少し変更する」

アリウス『……』

フィアンマ「俺様は禁書目録を取りに行く」

アリウス『……その必要は無いのではなかったか?』

フィアンマ「気が変わった」

アリウス『好きにしろ。俺はフォルトゥナに行く。「エサ」を取りにな』

フィアンマ「最初にそれか?」

アリウス『先日、魔女がスパーダの孫に接触した。フォルトゥナに帰られて守りを固められでもしたら手が出せなくなる』

フィアンマ「本当に大丈夫か?」

アリウスの言う『エサ』。それを一旦奪ってしまえば、もう後には引けない。
少なくともスパーダの孫は死に物狂いでこちらに向かってくる。
まあ、そうさせておびき出す為の『エサ』なのだが。

だが、準備がまだ整っていない今は少し危険な気がする。
712 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/21(金) 00:03:12.99 ID:W6j0Q8k0
アリウス『迷っている暇は無い』

フィアンマ「……今行くのか?」

アリウス『なんだ?ここに来て腰が引けたか?小僧』

フィアンマ「ふん……俺様を誰だと思ってる」

アリウス『ならばさっさとロシアとフランスに命を下せ。さっさと宣戦布告しろ』

フィアンマ「ああ」

アリウス『ヘマはするな。ミスが一つでもあれば我々は共倒れだ』

フィアンマ「わかってる」

フィアンマはやや乱暴に通信霊装を叩き、アリウスとの通話を切った。

そして通信霊装の横にあった遠隔制御霊装を手に取り、
ゆっくりと優雅に立ち上がった。


フィアンマ「では……少々予定が繰り上がったが……」


フィアンマの力を帯びて遠隔制御霊装が淡く光る。
同時に彼の背中からオレンジ色の光が放出され始めた。


フィアンマ「早速『迎え』に行くとするか」


―――
713 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/21(金) 00:04:46.12 ID:W6j0Q8k0
―――

事務所デビルメイクライ。

上条「ふう……」
上条は頭にタオルをかけたままバスルームから出た。

そのまま髪を軽く拭きながらホールの中を進みソファーの方を見た。

上条「……あれ?」
さっきまでソファーに寝ていたはずの御坂の姿が無い。

ふと気付くと、何やらおいしそうな香りが漂ってきた。

上条「?」

とその時、二階から物音。
そして階段の上の方から御坂がヒョコッと顔を出した。

御坂「今朝ご飯作ってるから〜。待ってて」

上条「お、おう!」

そのいつもの御坂の笑顔を見て一瞬慌てる。
さっきあんな事があったばかりだ。
何となく御坂と目を合わせ辛い。

御坂「どうしたの?」

上条「いや、なんでもねえ!今行くよ!」
714 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/21(金) 00:07:29.61 ID:/FeATpko
よしきた
715 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/21(金) 00:07:39.94 ID:W6j0Q8k0
上条は髪を適当に拭きながら階段の方へ向かった。
とその時、ホールの中央に金色の円が浮かび上がった。

上条「あ……」

その円から、見るからに不機嫌そうなトリッシュと、全身ずぶ濡れのややテンションが低いダンテが姿を現した。
トリッシュの右手には黒い小銃。

上条「お、お〜おかえり。どうだった?」

トリッシュは上条を見ると、その問いを無視して真っ直ぐに早歩きで向かってきた。
そして乱暴に上条の胸ぐら左手で掴み、強く引き寄せた。

上条「うぉんぐッ!!!!な、なにをッ!!!」

驚異的な腕力に半ば持ち上げられ、上条はつま先立ち状態になる。
トリッシュは目を見開き、そんな上条の顔を覗き込んだ。


トリッシュ「何したのアナタ?」


そして一言。
鋭く冷たい声。

上条「……!!!い、いやぁ……その……」

トリッシュが何に対してそう言っているのか、上条はすぐにピンと来た。
逐一細かく上条の力を見ているトリッシュが、ほんの僅かな力の異常を見過ごすはずも無いだろう。

ダンテは無言で服を脱ぎ散らしながら、スタスタと二人の横を通ってバスルームに直行していった。
716 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/21(金) 00:15:33.86 ID:W6j0Q8k0
上条が簡単に昨晩の事を説明する。
エンツォからの依頼であり、すぐに退治しなければ人が死んでいたと言う事を。

トリッシュ「………」

上条「す、すまん………言いつけ守んなくて……」


トリッシュ「そう……いい根性してるわね坊や」


トリッシュは胸ぐらを掴んでいた手を離した。

突然縛から解放され、上条は尻餅をついてその場に転んだ。

上条「いッ……本当にすまん!!!この通り!!!」
上条はすぐさま体勢を立て直し、その場で非の打ち所が無い完璧な土下座をした。

上条「本っっっっ当にすみません!!!!!!ごめんなさい!!!!!」


トリッシュ「……お疲れ様。問題は無いわね」


上条「………へ?」
素っ頓狂な声をあげ、トリッシュを見上げた。
上条はてっきりまた何か酷い目に合わされると思っていたのだ。

トリッシュ「ま、その状況じゃ仕方なかったでしょ」
717 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/21(金) 00:18:56.30 ID:W6j0Q8k0
トリッシュ「逆に、動いてなかったらダンテに八つ裂きにされてたわよ。坊や」

トリッシュ「とにかく、あなたの取った行動は正しい」

上条「……お…おお」

トリッシュ「でしょ!!!?」

トリッシュがバスルームの方へ叫んだ。
すると、

ダンテ「まぁな!!!問題は無え!!!文句はあるがな!!!!!」

とダンテの返事が帰って来た。

ダンテにとって獲物を横取りされるのは許し難いが、
人間の命が当然最優先だ。

トリッシュ「ま、見たところあなたにも異常は無いし、問題は一つも無いわね」

トリッシュ「さっさと立ちなさい」

トリッシュが上条の背後、階段の方を指差した。

上条が振り返ると、階段の中程のところにエプロンをつけた御坂が笑顔で立っていた。

トリッシュ「ほら、朝食食べたら出発するわよ」

トリッシュが上条の肩を軽く叩き、
そのまま横を通って地下室へ続く階段の方へ向かっていった。

上条「おう!」
718 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/21(金) 00:24:06.10 ID:W6j0Q8k0
上条は素早く立ち上がると、階段を駆け上がっていった。

上条「おっと……」
廊下に出て、走りかけたところでふと自室の前で立ち止まる。

そろそろインデックスに電話する時間だ。
携帯は確か自室のベッドの上に置いてある。

だが今電話してもし長引いたりでもしまったら、
朝食を待っていてくれている御坂に迷惑をかけてしまう。

上条「……先に飯にすっか」

もう数十分で会えるのだ。
予定が押しているのにわざわざ電話することは無いだろう。

上条は御坂が待っているキッチンの方へ向かっていった。


その一分後。


上条の部屋のベッドに置かれている携帯が激しくバイブしていた。

着信表示は―――


―――『インデックス』。


だが彼女がかけてたのではない。

彼女を護衛していた少年がかけていたのだ。


護衛すべき少女の身に突如降りかかった禍を報せる為に。


―――

上条修行編    おわり
719 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/21(金) 00:25:01.16 ID:jx4TZvwo
インデックスが危ない!
720 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/21(金) 00:28:20.43 ID:W6j0Q8k0
勃発・瓦解編

―――

遡ること数分前。

学園都市。第七区。
上条宅。

一方通行は上条宅の扉の前にいた。

一方「クカカ……ハハッ…」
不気味な笑い声を立てながら、携帯をポケットに押し込んだ。
土御門・麦野と通話していたのだ。

この会話を当然インデックスに聞かせるわけにはいかない。
ということでこうして外で話していたという訳だ。

一方通行「メルトダウナーねェ……気に入ったぜェ。イイ女じゃねェか……カカカ…」

ゆっくりと振り向き、杖を突きながら扉を開け屋内に戻る。

禁書「お友達?」

ベッドに寄りかかりながらテレビを見ていたインデックスが声を向けた。

一方「………そンなところだ」

一方通行は適当に返事をし、靴を履いたまま玄関に座った。
721 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/21(金) 00:29:32.41 ID:Kx3QRJE0
久しぶりの乙!
722 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/21(金) 00:30:15.49 ID:/FeATpko
>>721
まだだまだ終わらんらしい!
723 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/21(金) 00:31:17.67 ID:W6j0Q8k0
一方「つーかもうそろそろだろ?なンか連絡とかねェのか?」

禁書「ないんだよ〜」
インデックスがテレビを見ながら返事をする。

一方「ハッ……呑気な野郎だ…」

禁書「待つんだよ。我慢した分楽しみも増えるんだよ!」

禁書「とうまも……………」

とその時だった。
インデックスの言葉が急に止まった。

まるで時間が止まったかのように硬直し、瞬き一つすらしない。
口も最後に放った『も』の形で止まったままだ。

一方「……おィ―――」

一方通行が声をかけようとした瞬間。


一方「―――」


妙な感覚。

ここ一帯の空気の質が瞬時に変わった。
異質な『何か』がこの部屋に充満している。
それが肌に当たり、チリチリと音を立てているような感覚だ。

一方「―――」

彼の数々の死線で鍛え上げられてきた勘が叫ぶ。


『何かが起こった』と。
724 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/21(金) 00:32:54.40 ID:Kx3QRJE0
>>722
むしろ嬉しい♪
725 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/21(金) 00:35:20.98 ID:W6j0Q8k0
一瞬で一方通行の目つきが変わる。

異変を感じ取った彼は、立ち上がりながら素早く首元のチョーカーに手を伸ばしスイッチを入れた。

能力が起動し、周囲の力場の状態を調べてみようとした矢先―――

―――固まっていたインデックスが横向きに床に倒れ込んだ。

一方「―――おィッッッ!!!!!」

杖を放り投げ、当然土足のままで一目散にインデックスの所へ駆け寄った。

一方「どォしたッ!!!!!??おィ聞こえるかァ!!!??」

床に横たわっているインデックスは、さっきまでの人形のような様子とは打って変って、
全身から汗を噴出して苦しそうに激しく呼吸をしていた。

一方通行の声を聞く余裕すら無いのは一目瞭然だ。

一方「――――」

そのインデックスの姿を見て、過去の記憶が脳裏に鮮明に呼び起こされる。

ウイルスに犯され、凄まじい負荷を受けて苦しんでいた打ち止めの姿が。

その映像が、今この目の前の少女と重なる。



一方「(――――ざっっっっっけンじゃねェぞッ!!!!!!!!!)」
726 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/21(金) 00:44:58.65 ID:W6j0Q8k0
上条と約束した以上、何が何でも対処しなければならない。

そしてこの少女の症状。

苦痛に呻く姿。

その姿が打ち止めと重なり、一方通行を更に強く突き動かす。


絶対に、どんな手を使ってでも救わなければならない と。


一方「(そォはさせねェ!!!!させねェぞこンチクショウが!!!!)」

一方通行は右手を少女の額にかざし、
能力を使用してバイタルチェックをする。

一方「(こィつは……!!!!)」

少女の内部に渦巻く力を検知した。
どうやらこれが諸悪の根源らしい。

能力を集中させ、さらに詳細にチェックする。

その力の『外側』の部分は一方通行にも何とか干渉できるモノのようだ。

一方「………シッ……」

いける…! そう心の中で呟く。

未知の力だが、解析すればある程度操作できるだろう。
上手くいけば囲い込んで遮断し、外へと排出させる事も可能かもしれない。

―――と思ったのも束の間だった。
727 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/21(金) 00:47:53.35 ID:W6j0Q8k0
一方「……な、なンだこりゃァ………」

その力の核の部分を見て一方通行は思わず声を漏らしてしまった。

核を構成している力の性質。

それは一方通行の手には負えない代物だった。何度も経験済みだ。
この系統の力で二ヵ月半前も死に掻けた。


悪魔が使う、彼が干渉できない力だ。


存在や量・強さ等の『外身』はなんとなくわかるが、
その本質の部分はどうやっても見えないのは経験済みだ。

演算し操作するなどもっての他だ。


一方「―――クッソ!!!!!!チクショウがッ!!!!!」


一瞬差した希望の光は一瞬で消滅した。
根源は排除できない。

一方「(考えろ―――!!!他には!!!!)」

一方通行は何とかして他の切り口を探そうと、
今度はインデックスの脳内電流に能力を集中させる。
728 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/21(金) 00:52:10.38 ID:W6j0Q8k0
そして読み取ろうとした瞬間。

一方「がッ!!!!!!!!!」

強烈な『何か』が一気に一方通行の頭の中へ流れ込んできた。

その『劇薬』は凄まじい頭痛を引き起こす。
あまりの痛みに一方通行は両手で頭を抱え込んでしまった。

一方「な………!!!!」

能力による検査を中断した瞬間痛みは治まった。

理由はわからないが、この少女の脳内を『見る』のはかなり危険らしい。
あのまま見続けていたらこちらの頭がどうにかなってしまいそうだ。

一方「………チッ!!!」

一方通行は右手で素早くインデックスを抱き上げると、ベッドの方に左手を向けた。

ベッドの上にあったインデックスの携帯が吸い寄せられるように飛び、彼の左手に収る。

そして能力を使い素早く立ち上がり窓へと突進する。
道を開けるかのように窓が吹き飛び、インデックスを抱いた一方通行が弾丸のように射出された。


今ここでできる処置は無い。

目指すはとある病院。

最後の頼みの綱、『冥土帰し』の下へ。

彼は夜空を突っ切って真っ直ぐに進んで行く。
729 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/21(金) 00:59:10.70 ID:W6j0Q8k0
一方通行はインデックスを抱えたまま、砲弾のように夜空を猛烈な速度で切り裂いていく。
日が沈んだばかりの空は、地平線の彼方がまだ僅かに赤く燃えていた。

一方通行は左手にあるインデックスの携帯を操作する。
もともと登録されている件数はかなり少なかったため、目当ての番号はすぐに見つかった。

『とうま』と表示されている番号をダイヤルする。

だが出ない。

一方「何してやがンだ三下ァ!!!!!!」

インデックスはぐったりと力なくうな垂れている。
小刻みな呼吸、汗が噴出している顔。

その姿が更に一方通行を焦燥させる。


一方「出ろ!!!!出ろやァァァァァ!!!!!!!」


その時だった。


一方「―――」


彼の能力が真後ろから来る、巨大な『攻撃性』を感知した。

そして次の瞬間、背中の反射膜に、
どこからか放たれてきた衝撃波のような攻撃が直撃する。
730 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/21(金) 01:02:15.24 ID:W6j0Q8k0
一方「チッ!!!」

かなりの力であり、そして未知の物でもあったが反射は何とか機能した。

だが解析しきっていないので正確には反射できなかったようだ。
爆音を響かせながらその『衝撃波攻撃』が、虹のようなカラフルな光に姿を変え無軌道に拡散した。

空で受けたのが幸いだ。
地上ならば、周囲一帯を破壊してしまっただろう。

一方「ッ―――!!!!」

一方通行はそのまま下の道路に着地した。

時刻はまだ午後六時。
それにここは学生寮が集中している第七学区。

通行人や、通りを行きかう車はまだまだ大量にあった。

爆音に次いで突然空から降ってきた、
少女を抱える白髪の少年に驚き通行人達が驚きの声を上げた。


一方「何見てやがンだァ!!?失せやがれ!!!!!!」


一方通行が声を張り上げ、続けて足元のアスファルトを能力で捲り上げる。
それを見て通行人達が慌てて離れていく。
731 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/21(金) 01:05:00.15 ID:W6j0Q8k0
一方「(どこだァ……どこにいやがる!?)」

周囲を見渡し、襲撃者の姿を探す。

このタイミング。
今抱きかかえている少女の状況と何か関係がある可能性が高い。
無視して病院に向かうのはマズイ。
後を追われ、施設ごと破壊されでもしたら治療どころではなくなる。


一方「カッ!!!!来いやァ!!!!ビビッてンのかァッ!!!!!!」


姿を見つけれず、苛立つ一方通行は声を張り上げた。


「なるほど」


その時、背後から声。

一方通行は勢い良く振り向いた。
彼から30m程離れた路上に立つ華奢な優男。

オレンジのストライプのスーツに、男にしては長めの赤い髪。
両手をポケットに突っ込んでいる。


「確かに『境界』は越えているな」


優男が独り言のように呟き、
高慢な笑みを浮かべながらゆっくりと歩を進めてくる。


一方「テメェかァァァ?!!」


一方通行は目を見開き、凄まじい敵意と殺意の篭った瞳で優男を見据えた。
732 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/21(金) 01:06:24.52 ID:W6j0Q8k0
「その子を渡してくれないか?」

一方「……ハッ…そォいう事か…」

優男が放ったその言葉。
この少女の症状と何か関係があるのは確実だ。

木原の時の様に、この少女を救う何らかの手段を知っている、もしくは持っているのかもしれない。

ならば手早く戦力を削いで生け捕りにするのが最適だろう。

殺すのはその後だ。


一方「生憎だが、断わン―――」


一方通行が軽く左足を振り。


一方「―――ぜェ!!!!!」


そして先ほど捲りあげたアスファルトの破片を一つを蹴り飛ばす。

破片は一瞬で音速の数倍にまで加速され、
摩擦熱で眩く輝きながら優男へと突き進んでいった。

光の矢が優男の左足の膝辺りに直撃し、大爆発を起こす。

地響きが起こり、衝撃波で周囲のビルの窓ガラスが砕ける。

だが被害を最小限にする為の一方通行の操作により、
ガラス片や瓦礫は飛び散ることなくその場に落ちた。
733 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/21(金) 01:09:00.72 ID:W6j0Q8k0
轟音が響き、逃げ惑う人々の悲鳴が聞こえる。
破壊は最小限に食い止めた為、少なくとも死者は出ていないだろう。

そしてこの爆音と地響きにより、周囲の一般人は皆逃げていくはずだ。

一方通行は軽く足で地面を叩く。
するともうもうと立ち込めていた粉塵が『割れ』、一気に晴れ上がった。

一方「……チッ」

優男は先と同じく悠然と立っていた。
足元の地面は大きく抉れているのに、優男には傷一つ、汚れ一つ無い。


「やはりな……では力ずくで貰おうか」

優男が薄い笑みを浮かべ、口を開いた。


「……そうだ、まず自己紹介でもしよう。一応の礼儀だ」


「俺様はローマ正教『神の右席』」



フィアンマ「右方のフィアンマだ」



一方「ハッ。ゴミクズの名前なンざいちいち覚えてらンねェンだ。こちとら脳ミソに余裕がねェンでなァ」


フィアンマ「心配しなくても良いさ。いくら脳ナシとは言え『最期』に聞く名ぐらいは覚えられるだろう?」


フィアンマ「お前はここで死ぬのだからな」


一方「カッ!!上等だぜェ!!!!やってみろやカマ野郎ォッ!!!!!!」


―――
734 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/21(金) 01:09:45.02 ID:W6j0Q8k0
今日はここまで
次は明後日の夜11時辺りからです
735 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/21(金) 01:14:03.27 ID:/FeATpko

また引き上手なんだから//
736 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/21(金) 01:20:35.05 ID:jx4TZvwo
クリリン「はやくきてくれーっ!」
737 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/21(金) 01:21:47.59 ID:u9W8C5go
ttp://dol.dengeki.com/news/200904/17/c20090417_bayonetta_01.jpg
俺「是非!よろしくお願いします!」
738 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/22(土) 23:35:14.20 ID:Bc16/PE0
―――

イギリス。

バッキンガム宮殿の一室。

エリザード「……なるほど…」

女王エリザードは椅子の手すりに右肘を付き、頬杖をしながら神妙な面持ちで呟いた。
彼女の前の机の前には、二つの書物型の通信霊装が置かれていた。

片方には、外見は18歳程の美しい金髪の女性、最大主教ローラ=スチュアート。
そしてもう片方には、五和から送られてきたヴァチカンの画像が映っていた。

七天七刀を構え力を解放して全身から光を放出している神裂、その正面の神像の上に立つポニーテールの女。
神裂の証言、更に今この瞬間の彼女の様子を見る限り、先日の聖ジョージの襲撃犯で間違いない。

そして。

エリザード「……魔女だな」

証言からでも薄々感付いていたが、実際に映像を見てエリザードは確信した。

あの装束。
あの武装。

間違いない。


あの女は『アンブラの魔女』だ。


エリザードは魔女の事を『良く知って』いる。
実際に会ったことも『数え切れない』くらいある。
739 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/22(土) 23:38:09.29 ID:Bc16/PE0
とはいえ、神裂が今向かい合っている魔女にはエリザードは会ったことは無い。
エリザードが会ったことのある魔女は別人だ。

エリザード「……で…間違いないのだな?」

エリザードはもう片方の通信霊装へ向けて、口を開いた。

ローラ『もちろん。本人でありけるのよ』


ローラ『ジュベレウスを屠った者』


通信霊装の向こう側の美しい女性は、いつも通りの余裕が溢れる態度を崩さずにあっさりと返答した。

エリザード「……」


エリザードよりも魔女という存在を『良く知っている』最大主教が言うのならば間違いは無い。


かの魔女はつい先日、天界で最上位に位置する四元徳を片っ端から打ち倒し、
そしてその四元徳の長であるジュベレウスをも倒したのだ。


つまり、所詮一介の『天使』である神裂に勝ち目はない。

どう足掻いても。


神裂というイギリスの最大戦力の一つを守るには、一刻も早く支援を送り脱出させるしかない。

彼女を救うにはステイルを送るしかない。

だが相手が相手だ。

二人とも狩られてしまう可能性が高い。
今の時点で、最大戦力を二つ失うのはイギリスにとってあまりにも痛すぎる。

エリザード「……」
740 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/22(土) 23:43:30.70 ID:Bc16/PE0
五和からの通信があった直後に、ステイルを『搭載』した弾道ミサイルがアイリッシュ海の原潜から放たれた。
十数分後にヴァチカンに着弾するだろう。

そして、襲撃犯がかの魔女だという事がわかったのはその発射の一分後だ。

五和から画像が届き、魔女を『知っている』最大主教がその顔を確認する頃には、
既にステイルはフランスの遥か上空の大気圏外を秒速7kmで飛んでいたのだ。

もう遅い。

ステイルが載っている弾頭を撃墜するという案も出たが、
(少なくともステイルは死なない。しばらくは弾頭の破片と共に地球を周回する為、帰還には時間を有するだろうが)
今やフランス上空であり、魔術もミサイルも射程外だ。

ステイルは確実にヴァチカンへ、あの『怪物女』の前に立つ事になってしまう。
そしてそのまま神裂と共に喰われ、イギリスは一瞬で二つの切り札を失う事になるかもしれない。

このままだとマズイ。

あの二人の存在がローマ正教・ロシア成教に対する抑止力にもなっていたのだ。
兵の数こそは少ないものの、戦力のみならばイギリスは優勢だった。

だがその優位性が瓦解する。

エリザード「……んむむむ…」

エリザードは重苦しい表情で言葉にならない呻き声を上げた。

ローラ『……』

通信霊装に映るローラは、相変わらずいつも通りの穏やかな表情でただ黙って待っていた。


エリザード「……一つ。『友』として頼みがある」

エリザードが通信霊装に映る美しい女性に向けて口を開いた。
741 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/22(土) 23:52:16.63 ID:Bc16/PE0
エリザード「これは命令では無い。『頼み』だ。聞いてくれるかな?」

ローラ『聞きたるわよ』

ローラがニコリと笑い返答する。
まるでエリザードがこれから言う事をもう知っているかのような顔だ。

エリザード「……そなたの『手』を借りたい」

ローラ『それは「最大主教」として?」


エリザード「いや、『ローラ』。そなた『自身』の手を借りたい」


ローラ『なるほどなるほど……あの「力」を使って欲したりけるのね』

ローラはわざとらしく うんうん と小さく相槌を打つ。


エリザード「……うむ」


ローラ『良きよ。私に任したるの』


エリザード「……」


ローラ『ただ、一つ良きかしら?相手が相手。二人共救えるとは限らぬのよ』


ローラ『それにそもそも「コレ」はいずれやって来る、「あの子」の封印を解く時の為に残したる物』

ローラが画面の向こうで、己の長い長い金髪の一房を手に取り、
エリザードに見せびらかすように振るう。


ローラ『今回の為に全力行使するわけにはいかぬのよ』


エリザード「かまわん。少しでも良いから手を貸してくれ」

ローラ『よし、ではその頼み、しかと受けたるわ』
742 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/22(土) 23:58:58.46 ID:Bc16/PE0
その時、エリザードがいる部屋の外から何やら騒ぎが聞こえてきた。

エリザード「む……」

ローラ『あら、わんぱく坊やが来たるのね?嫌われ者はお暇させて頂きけるの』


ローラがひらひらと手を振る映像の後、通信霊装の回線は切断された。

その僅か数秒後、この部屋のドアが今にも蝶番が弾けそうなほどに勢い良く開け放たれ、
険しい表情のネロがズカズカと踏み込んできた。


ネロはコートをなびかせ、エリザードの元へ真っ直ぐに早歩きで近付いてくる。
先ほどの部屋の外の騒ぎは衛兵とのものだろう。
いつもの事だ。

ネロ「ヴァチカンは?!状況はどぉなってやがる!?」

ネロが興奮を隠そうともせずに叫び、エリザードの前の机に叩きつけるように手を載せた。

エリザード「うむ……それなのだがな……」

エリザードは背もたれから体をゆっくりと起こし、言葉を選びながら状況を説明しようとした―――

―――矢先だった。

「ネロ殿!!!!」

開け放たれた扉の向こうで、フードで顔を隠した黒装束の一人の魔術師が息を荒げながら屈んでいた。
陛下の御前という事もあってか、床に膝を付き顔を伏せている。
急いでネロの後を追ってきたのだろうか、肩が激しく上下していた。

「緊急のお、お報せが!!!!」

ネロ「チッ―――うるせぇ!!後にしろ!!」

ネロは振り返りもせずに叫んだが―――。


「で、ですが!!!!ふ、フォルトゥナの件でして……!!!!」


その後に続いた言葉で勢い良く振り向いた。
743 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/23(日) 00:04:26.72 ID:Cbw1e8s0
ネロ「―――言え」


ネロがその魔術師を真っ直ぐに睨み、小さな、だが重く響く威圧的な声で呟いた。

「あッ……」

その凄まじい威圧感で一瞬魔術師はどもってしまったが、なんとか言葉を続ける。
この状態のネロに言うのはかなり勇気の入る内容だが。

「さ、先ほど、ふ、フォルトゥナから緊急通信がありまして……」


「大量の悪魔に襲撃されたと……」


ネロ「…………あ?」


ネロの放つ空気が一変する。
エリザードでさえ、その強烈な悪寒で体が固まり鼓動が早まった。

不気味な沈黙が部屋全体を覆い尽くした。

エリザード「……確かか?」

エリザードがその深く顔を伏せている魔術師へネロを挟んで声を飛ばした。

「は、情報部からの報告も届いております。こ、こちらに」
魔術師が立ち上がりおずおずとネロとエリザードの方へ進む。

そしてローブの袖から数枚の写真を取り出しネロに差し出した。
ネロはそれを乱暴に奪い取り、ジッと見つめた。

それはフォルトゥナを捕えた衛星写真。

彼の故郷の街が大量の粉塵で覆われていた。
744 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/23(日) 00:10:12.95 ID:Cbw1e8s0
粉塵の隙間からは倒壊したと思しき建物が見える。

ネロは顔を近付け、愛する者がいるはずの自宅を探す。
だが粉塵の陰に隠れていて見えない。

ネロの手に力が入り、写真に皺が寄る。


エリザード「良いぞ。下がれ」


エリザードが、憤怒するネロに怯えている魔術師に声を放つ。

魔術師は逃げるかのように足早に退室していった。

ネロ「……」

ネロが無言のまま、持っていた写真を床に放り投げた。
彼から放たれているオーラは更に強烈になっている。

それを至近距離で浴び、エリザードは己の全身から嫌な汗が噴出すのを感じていた。
心なしか、バッキンガム宮殿全体がネロの放つオーラで微振動しているように感じる。

いや、実際にこの宮殿に張られている結界が反応しているのだろう。

耐性の無い一般人なら一瞬で気を失ってしまうかもしれない。
それ程にネロの体から溢れる空気は凄まじかった。


今、このスパーダの孫は逆鱗している。


誰が見ても一目瞭然。
完全にブチ切れている。

エリザードは今にも爆発しそうな超新星の前にいるようなものだ。
745 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/23(日) 00:14:11.10 ID:Cbw1e8s0
エリザード「……契約は……解除しよう。そなたは自由だ」
エリザードが恐る恐る口を開いた。


ネロ「―――当たり前だ」


ネロがエリザードの方を見もせずに背中越しに返答した。
やや語気が荒く、脳内に直接響いてくるような声。
その一言を聞いただけで、寿命が10年縮んでしまったのではないかと思ってしまう程の強烈な威圧感。


ネロ「達者でな」


ネロはコートをなびかせ、足早に部屋から出て行った。
彼が一つ歩を進めるたびに、地響きのような音がして建物全体が僅かに揺れる。

今度は気のせいではなく、本当に確実に揺れたのだ。


エリザード「ふ〜〜……なぜこうも我が治世に……」

エリザードは背もたれに力なく体を預けながら、大きく息を吐き呟いた。


エリザード「……この件が終わったら隠居してやる。絶対にだ。誰にも文句は言わせぬぞ」


イギリス王室史上、一・二位を争うかという程の苦難の女王は、
遠ざかっていく『巨獣』の足音に耳を傾けながら天井をぼんやりと眺めていた。


だが、女王エリザードの苦難はまだまだ始まったばかりだ。

越えなければならない針の山はまだまだ眼前遥か彼方まで連なっている。

―――
746 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/23(日) 00:21:33.32 ID:Cbw1e8s0
―――

聖ジョージ大聖堂の薄暗い一室。

時代を感じさせる古い石壁を蝋燭の淡い光が照らしている。

最大主教、ローラは小さな木作りの机の上にあった通信霊装をゆっくりと閉じた。


ローラ「………さて……早速点検でもしたるか。錆付いておらぬかな」


座っていた椅子からゆっくりと立ち上がり、髪留めを外す。
身長の2.5倍もの長さがある金髪がふわりと解放され、大きくなびいた。

ローラ「今から如何なる者も通すな」

ローラがその長い長い髪を手櫛でゆっくりと梳きながら、声を放つ。

『はッ』

どこからともなく従者の声が返ってきた。

ローラ「あ〜それとな、今から異常な『力』を検知したると思うが、それは私だから心配は無きよ」


『……りょ、了解』


ローラ「……さて上手く動きたるかどうか…な…」

一通り梳き終え、ポツリと呟く。


良く手入れがされた、美しい長い長い金髪。


この長い長い『髪』が彼女の武器であり、彼女の真の『姿』の象徴。

他は全て飾りだ。
天界の力を使う魔術も、この最大主教という地位も。
全ては彼女の長きに渡る人生を隠す仮初の姿に過ぎない。
747 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/23(日) 00:24:27.38 ID:Cbw1e8s0
ローラ「……どれどれ…試してみたるのよ」

目を瞑り、背筋を伸ばして深呼吸。

そして。


ローラ「MICMA」


エノク語で一言。


その瞬間、彼女の長い髪が突風に吹かれたかのように大きくなびき、
同時に眩く金色に輝き出した。

そして彼女の前方2m程の床に金色の魔法陣が浮かび上がり、
そこから金色の髪の毛が大量に噴出すように生えて来た。


大量の髪の毛が床の魔法陣から生えてくる。
そしてその金の繊維の網のの中に、高さ3m程、幅1.5m程の巨大な釣鐘型の黒い金属の塊が出現した。

頂上部には不気味な顔の彫刻。
円筒部には取っ手の様な物。

魔術に携わるものなら、これが何なのかは一目でわかるだろう。


拷問具、『鉄の処女』だ。


ローラ「ふむふむ。なかなかなかなか。上々上々」

ローラが己を賞賛するかのように軽く拍手した。
748 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/23(日) 00:26:09.56 ID:Cbw1e8s0
ローラは軽く床を足で叩いた。

次の瞬間、『鉄の処女』は魔法陣の中に沈み、大量の金髪も逆再生でもしているかのように沈んで行き、
そして魔法陣は消えた。

同時にローラ自身の髪の毛もその光が収まっていた。

ローラ「……久しいのよ…」
椅子にゆっくりと腰掛け、再び己の長い長い金髪を梳きながら呟いた。


この力を使うのは『幾百年振り』だろうか。


ローラ「……」

髪を梳きながら過去の記憶に耽る。

恐るべき戦いで死んでいった母と父。
死んでいった多くの同胞達。

その後は身分を隠し、己の心の姿を闇に隠しながら生きてきた。
かけがえの無い存在を封印し、敵の目から隠してきた。

そして、いつかの日か禍から解放されるのをずっと待ち続けてきた。

そして今。

確かに時代が変わりつつある。

今が『その時』なのかもしれない。


ローラ「懐かしけるのよ……のう?」



ローラ「―――『セレッサ』よ」



―――
749 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/23(日) 00:30:59.84 ID:Cbw1e8s0
―――


ヴァチカン。
とある礼拝堂。

ベヨネッタ「―――」
ベヨネッタは神像の上でふと顔を上げた。

今、名前を呼ばれた気がしたのだ。
それもやけに懐かしい声で。

だが考えるのは後にした方が良さそうだった。


天使化した神裂が床を蹴り、猛烈な速度で突進してきているからだ。


神裂『シッ!!!!!』
神裂は神速で七天七刀を抜刀し、ベヨネッタの喉元目がけて横一閃に振るう。

だがベヨネッタは大きく仰け反り、軽々と交わす。
彼女の鼻先僅か数cmのところを青い刃が通過していく。

その刃から放たれた剣風が、ベヨネッタの背後の礼拝堂の壁に甲高い音を立てて筋を刻む。

ベヨネッタ「HA!!!!!!!!」

ベヨネッタが仰け反る慣性を利用し、刀を振り切った神裂の顎目がけて下から右足を振るう。
だが神裂は瞬時に反応し、鞘を持っている左腕を突き出す。
750 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/23(日) 00:37:04.96 ID:Cbw1e8s0
神裂の胸元で、凄まじい轟音を響かせながら彼女の左肘とベヨネッタの蹴りが激突する。
蹴りが顎に直撃するのは防いだ。

だが。

神裂『―――』

胸元の辺りで止めたため、ベヨネッタの左足に付いている銃口がちょうど神裂の心臓辺りに向く。

神裂『ハァ―――!!!!』

危険を感じ、咄嗟に左手に持っていた鞘でベヨネッタの足を右側に弾く。
一瞬遅れて、ベヨネッタの左足から驚異的な破壊力を秘めた魔弾が放たれた。

その魔弾は神裂の右わき腹の光の衣をかすり、そしてそのまま背後の壁をぶち抜いた。


弾きかわすと同時に神裂は右手に持つ七天七刀を返し、
仰け反っているベヨネッタの腰の辺り目がけて振りぬいた。

ベヨネッタ「Hu!!!!!」

ベヨネッタが左足を強く踏み込んでバック転し、その刃を跳ねてかわす。
踏み台となった神像が爆散する。

そしてバック転しつつ両足から大量の魔弾を神裂に放つ。

神裂はかわし、七天七刀で弾きながらその嵐をいなし、
鞘を放り投げると左手を突き出しゴッドブリンガーの拳を放った。

神裂『ハァアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!』

渾身の力を篭めて叩き込む。


しかし。


ベヨネッタ「Too late!!!!!!!!!!」
751 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/23(日) 00:45:14.99 ID:Cbw1e8s0
神裂『―――』

その拳は当たらなかった。

ベヨネッタが叫ぶと同時に、彼女の姿が残像となる。

天使化している神裂ですら、微かに黒い影を捕えることしかできない程の猛烈な速度。


神裂『な―――』


神裂『ツッ―――!!!!!』

それは一瞬だった。
ゴッドブリンガーの拳が壁に食い込み、その衝突エネルギーが伝わって破片を『生み出す』までの極僅かな瞬間。

ベヨネッタ「―――Ya!!!!!!Ha!!!!!Ha!!!!YeaaaaahAAAA!!!!Ha!!!!!!」

その間に無数の光の筋が神裂へ向けて走り、大量の魔弾が彼女の体に叩き込まれた。
何とか反応して七天七刀で捌こうとするも、弾けたのは一割程度。

残りは全て神裂に直撃した。

神裂『―――ッガァアアアア!!!!!!』

ようやくゴッドブリンガーの拳を受けて壁が砕かれる。
それと同時に猛烈な散弾を浴びた神裂が後方へと大きく吹っ飛ばされ、反対側の壁に叩きつけられぶち抜く。


吹っ飛ばされた神裂の体が壁を何枚も貫いてく。

そして彼女の視界が急に晴れた。
建物を何個も貫き神裂は、ヴァチカンの顔でもある広大なサンピエトロ広場に出たのだ。

神裂『カァッ!!!!!!』

ゴッドブリンガーを地面に突き立て、ブレーキをかける。
金色の巨大な拳が石畳に食い込み、捲りあげていく。

そしてある程度減速したところでそのゴッドブリンガーで跳ね、
広場の外円部に聳え連なっている列柱廊の上に着地した。
752 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/23(日) 00:53:57.84 ID:Cbw1e8s0
広場を囲むように聳える列柱廊。
屋根には、等間隔で140体の聖人像が並んでる。

その聖人像の間に神裂は屈んでいた。

神裂『くッ……』

一瞬で大量の魔弾を浴びたが、何とか無事だ。
傷も瞬時に塞がり、剥ぎ取られた光の衣もその厚みを戻す。

神裂はゆっくりと立ち上がり、今自分がぶっ飛んできた方角の列柱廊を睨む。

崩れている柱、その向こうの建物の壁に開いた大穴。

そしてその向こうから感じるあの女の視線―――。



サンピエトロ広場は一般にも開け放たれており、それなりの数の市民が散策していたようだ。

皆悲鳴を上げて、散り散りになって神裂がごっトブリンガーで穿っ場所から離れていく。
彼らからしてみれば何か爆発が起こったかのように見えたことだろう。

当然、高速で動いた神裂の姿を捉えた者はいない。

誰一人神裂の方を見ていなかった。

次の瞬間までは。



神裂『オァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!』


響き渡る神裂の咆哮。

そして広場にいた者は見た。


列柱廊の上に立つ、青く光る刀を持った、金色の羽を生やした『天使』の姿を。
753 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/23(日) 01:07:05.75 ID:Cbw1e8s0
神裂『―――アアアアアアアアアアッツ!!!!!』

神裂は力を更に引き出す。

それに比例して、右手にある七天七刀も青い輝きを増す。

神裂『―――ッツ!!!!』

七天七刀を持つ右手に走る、焼けるような激痛。
本来相容れるはずの無い魔界の力と天界の力が激突しているのだ。

なぜかは分からないが、この刀はウィンザー事件の際にとんでもないレベルの悪魔の力を宿したらしい。
実際、今の神裂でさえこの七天七刀の力を全て使いこなしているとは良い難い程のだ。

だが幸いな事にこの『魔剣』は神裂を主と認め、この莫大な力の乱流でも彼女の魂と自我が
押しつぶされないようにを守ってくれている。


そしてその七天七刀の声がする。

言葉として聞こえない。
だがこの『魔剣』の意志が伝わってくる。


神裂『―――』

神裂は痛みを無視し、七天七刀の意志に沿い右手を振り上げた。
七天七刀の青い光が更に増す。


そして思いっきり、あの女の気配の方へ振るった。



次の瞬間、七天七刀の剣筋に沿い青い光の線が走る―――。


それはまるで―――。


この魔剣の『親』とも呼べる、かの男の『太刀筋』と瓜二つだった――。

―――
754 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/23(日) 01:08:15.63 ID:Cbw1e8s0
―――


五和「……ッ!!!」

礼拝堂の隅で見ていた五和にとって、瞬きする間に終わってしまうような一瞬の出来事だった。

あの女が神像の上で神裂に対して手招きをした瞬間、
神裂の姿が光になって消え、ほぼ同時に神像が砕け両側の壁が爆散したように見えたのだ。

何が起こったのか、全く捉えることができなかった。

ふと一方の壁際に目をやると、ベヨネッタが壁に垂直に『立っていた』。
足元がぼんやりと青く光っている。

そして反対側の壁に開いた大穴を『見上げて』いた。


五和「!!!」

五和は礼拝堂内を見渡すも、神裂の姿が見つからない。

まさかと思い、ベヨネッタの視線を追い反対側の大穴を見る。
壁の破片が音を立てて落ち大量のチリが舞い、それを大穴から差し込んでいる光が照らしていた。

状況を見る限り、神裂はベヨネッタの見ている巨大な穴の向こうへと吹っ飛ばされたようだ。

五和「……プリエステス……プリエステス!!!!!!!」

敵に見つかる危険性も顧みず神裂を呼んだ次の瞬間。


神裂『オァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!』


地の底から聞こえてくるかのような、神裂と思しき巨大な咆哮がその穴の向こうから響いてくる。

そして鼓膜が裂けそうな甲高い金属音と共に、青い光の筋が礼拝堂内に走る。
755 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/23(日) 01:12:29.26 ID:Cbw1e8s0
その青い光の筋は一瞬で壁・天井・そして反対側のベヨネッタの立っていた壁を切り裂く。

ベヨネッタは軽く鼻で笑いながら半歩動きスレスレでかわす。

五和「―――ひゃ!!!!」

青い光の刃が礼拝堂を一刀両断。
その切り口があまりにも滑らか過ぎ、礼拝堂は少し軋んだだけで崩れはしなかった。


ベヨネッタ「いい剣筋。そっくり」


ベヨネッタが嬉しそうに呟き、軽く壁を蹴って地面に降り立つ。

ベヨネッタが軽く鼻で笑いながら壁を蹴って、それをかわし床に降り―――

―――た瞬間。

ベヨネッタの全身からか黒い靄のような物が溢れ、彼女の体の形が一瞬で変わった。


セクシーな女体が、スマートな『黒豹』へと。


それとほぼ同時に、神裂が穴の向こうから更に放ったと思われる青い光の筋が、
再び礼拝堂を縦に掻っ捌いた。

何発も何発も、甲高い金属音と共に続けて筋が走る。

だが『黒豹』には当たらない。
756 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/23(日) 01:14:32.53 ID:Cbw1e8s0
『黒豹』は無駄のない身のこなしで軽々と剣撃をかわす。


黒豹の足が触れた床は砕け、
花弁が髑髏の不気味な花が一瞬で生えては、また一瞬で枯れて散る。


そのまま『黒豹』は髪飾りをなびかせながら目にも止まらぬ速さで駆け、
神裂が吹っ飛んでいったと思われる穴から外に出て行った。


数秒後、格子状に切り裂かれた礼拝堂が巨大な化物のような悲鳴をあげて軋んだ。
天蓋や壁の菱形・三角の巨大な破片がずり落ちてくる。

五和「!!!!」

五和は礼拝堂の出口に滑り込むように飛び込み、その崩落から何とか逃れる。


五和「ふぁッ!!!!」


息を吐き、今しがた潜り抜けてきた出口の向こうを見る。
天蓋が雪崩のように崩壊し、礼拝堂は完全に崩れていた。
757 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/23(日) 01:16:45.33 ID:Cbw1e8s0
五和はそのまま廊下を少し走り、石像の物陰に身を身を潜めた。
脅威はあの女だけではない。

いや、どちらかというと五和にとっての目下の脅威はここに大勢いるローマ正教の者達だ。


五和「支援は……!!まだですか……!!!」

五和は息を荒げながら右手のバングル型の通信霊装に声を放つ。


『3分20秒後に支援部隊がそちらに到着します』


『9分30秒後に、サンピエトロ広場に「イノケンティウス」が「着弾」します。それまで持ちこたえてください」


バングルから事務的な声が返ってくる。

五和「了解……!!!」
左手に持つ携帯用の槍を点検しながら返答した。



外から大地全体を揺るがす轟音が響いてくる。

怪物達の死闘の撃音が。


五和「プリエステス……どうか…どうかご無事で…」


―――
758 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/23(日) 01:17:55.41 ID:Cbw1e8s0
今日はここまで。
明日は投下できるかわかりません。
明後日は確実に投下できます。
759 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/23(日) 01:21:20.50 ID:d5i4oADO
乙乙乙tylish!!!
次回も楽しみだ。
760 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/23(日) 01:24:21.37 ID:kSfLE4w0
ttp://img.5pb.org/s/10mai447933.jpg
761 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/23(日) 01:48:11.25 ID:ke4arYSO
乙したヒャッホウ
762 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/23(日) 02:16:56.14 ID:vYiAUiEo

やはり強いな・・・
763 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/23(日) 02:20:46.83 ID:HCcO7o2o
ベヨさんってただの痴女だと思ってたけど強いんだね
764 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/23(日) 02:37:01.54 ID:td5u0BQo
設定ではダンテ以上の実力なんだっけ?
765 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/23(日) 04:15:49.70 ID:Cbw1e8s0
あまりにもアレなミスなんで今更ですが修正。

>>755の14行目から16行目までの

ベヨネッタが嬉しそうに呟き、軽く壁を蹴って地面に降り立つ。

ベヨネッタが軽く鼻で笑いながら壁を蹴って、それをかわし床に降り―――

の部分を

ベヨネッタが嬉しそうに呟き、軽く壁を蹴って床に降り―――

に修正です。
766 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/23(日) 04:27:13.82 ID:GLF/4Vk0
どうしよう今から全部読むかな
767 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/25(火) 00:42:59.77 ID:gTuFZOA0
―――


フォルトゥナ。

数年前の魔剣教団の暴走による破壊からも立ち直り、
再び以前の美しい街並みを取り戻しつつあった古都。

民の顔にも笑顔が戻り、騎士団も新生しフォルトゥナには再び平和が戻りつつあった。

―――戻りつつあったのだが。

突如襲来した悪魔の大軍。

フォルトゥナ全域が再び苛烈な戦火に包まれる。


キリエ「走って!!!」


キリエは廃墟と化した街を三人の子供達と走っていた。

目指すは、かの劇場。

数年前の事件の発端となった、ダンテが教皇サンクトゥスを襲撃した建物だ。

襲撃と同時に騎士団は即座に警報を発令し、
市民達に最寄の騎士駐屯所、もしくは劇場等の大きな建物に避難するように命令したのだ。
768 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/25(火) 00:46:12.32 ID:gTuFZOA0
キリエ「はぁ!!!はぁっ!!」

道の向こうに見える、劇場の大きな屋根を目指し、
前を走る子供の背中を支え押しながらとにかく走る。

普段なら歩いて数分程の距離。
だが今は果てしなく遠く感じる。

距離が一向に縮まない感覚。

瓦礫が散らばる道路に足が取られ、体力だけがどんどん減っていき、
彼女を更に焦燥させる。

悪魔の咆哮と轟音、そして奮戦する騎士達の怒号が方々から聞こえてくる。

走る中、たびたび目に入る瓦礫の下から突き出している血まみれの足や腕。
下敷きになり、ピクリとも動かない人の姿。


キリエ「(ああ―――!!!なんで……どうして―――!!!)」


走っているキリエの頬を雫が伝う。

それは恐怖からではなく、いきなり降りかかった理不尽によって命を失った人々への想い。

口を固く結び、走りながら彼女は祈った。

不運な子羊達の魂を想って。

そしてまだ生きている者達の救いを求めて。
769 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/25(火) 00:51:14.14 ID:gTuFZOA0
キリエ「―――!!!」

その時だった。

一段と大きな咆哮が響き、前方20m程の場所に丸盾を持ったトカゲのような悪魔が突如降り立った。

巨大な足の爪が石畳を砕く。

『アサルト』と呼ばれる悪魔だ。
フロストの亜種であり、氷を使わない熱帯仕様の兵といったところか。

更に続けて何体もどこからか跳躍して降り立つ。
道の両側の住居の屋根にも。

そして。

キリエ「!!!!」

彼女達の後方にも。

キリエは子供達の腕を掴み、即座に自分の身に寄せる。
子供達は皆キリエにしがみ付き、小刻みに震えていた。

キリエ「(囲まれた―――!!!!)」

どこか逃げ道が無いか周囲を見渡すも、見つからない。
数十体ものアサルトが完全に彼女達を包囲していた。

逃げ場は無い。

と、その時。

「キリエ殿!!!!!!!」

後方から若い男の声。
それに続く金属的な切断音と悪魔の咆哮。
770 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/25(火) 00:53:33.97 ID:gTuFZOA0
キリエ「!!!」

3人ほどの若い騎士がアサルトの包囲網へと殴りこんできた。

アサルト達は一斉に咆哮を上げ、騎士達に一気に跳びかかって行く。

若い騎士達は雄叫びを上げ、道路の中央で勇猛に剣を振るい応戦する。
剣に搭載されている噴推装置イクシードが金属的な悲鳴を上げ、火花を散らす。

それと同時にもう二人の騎士が、包囲網が崩れた一瞬の隙を縫って彼女達の前に降り立ってきた。

「こちらに!!!」

キリエ「―――で、でも……!!!」

キリエは後方で戦っている騎士達の方に振り返った。

たった三人で数十体ものアサルトを相手にしている。
それぞれが互いに死角を守り合いながら完璧なチームワークで。

だがいつまでもつか。


対悪魔のエキスパートであるフォルトゥナ騎士。

しかし、数年前の事件で歴戦の精鋭達はほとんどが死んだ。
(教皇付きの最精鋭達はダンテとネロによって悉く葬られた)

今戦っているあの三人は、事件の後に称号を得たまだまだ若い騎士だ。

幹部クラスならまだしも、一介の新人騎士達だけであの数は捌けない。

このままだといずれ確実に死ぬのは、素人目に見ても一目瞭然だ。
771 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/25(火) 00:55:01.39 ID:gTuFZOA0
キリエ「……あの方達が…!!!」

「構いません!!!!」

キリエの傍にいる騎士が即答する。

まあ、その答えはフォルトゥナの者なら誰しもが予想できる常識的なものだ。

あの騎士達は自分達の命と引き換えに、
彼女達を生きながらえさせようとしている。

それが騎士の最大の役割だ。

命を賭してでも市民を守るのが彼らの義務である。

キリエ「―――」

そんな事はキリエも知っている。


だがそれでも。

それでも心優しいキリエにとっては耐えられない。


しかし、今の彼女に出来ることはタダ一つ。

彼らの信念を蔑ろにしない事。

彼らの命を無駄にしない事。

『生きろ』という遺言を、あの騎士達は己の命を賭けて今体現しているのだ。
772 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/25(火) 00:55:46.07 ID:gTuFZOA0
「さあ!!!早く!!!!!」

キリエ「……は、はい―――」

キリエは現実を噛み締め、前を向き地面を強く蹴り進む。


後方から響く剣撃音と怒号。


再び彼女の頬を慈しみの雫が伝った。



そして彼女は呼ぶ。


キリエ「(早く―――お願い―――守って)」


心の中で『彼』の名を呼ぶ。

フォルトゥナの守り神であり救世主、最高の騎士の名を。


キリエ「(皆を―――守って!!!)」


キリエ「(ネロ―――!!!)」


最愛の男性の名を―――。


―――
773 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/25(火) 01:01:13.60 ID:0oGxtygo
今日はこないかと思ってた
774 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/25(火) 01:01:54.75 ID:gTuFZOA0
―――

学園都市。窓の無いビル。

アレイスターがいる水槽の中に、二つのホログラム映像が浮かび上がっていた。

一つはヴァチカンで発生した事態に関する、ローマ正教・ロシア成教内での通信を傍受しリアルタイムで表示している。

もう一つは。

第七学区で一人の少女を賭けて激突する少年と男。

インデックスと一方通行。

そして。

アレイスター「右方のフィアンマ……か」


突如現れたローマ正教のトップ。
ヴァチカンの件により、彼らは遂に動き出したらしい。

聖なる都を襲撃した者の正体は分からない。
敵か味方か、そして属する勢力もだ。
画像の一つでもあれば判別が付くかもしれないが、ローマ正教・ロシア成教内の通信ではそれはまだ拾えていない。

それどころか『イギリス清教が宣戦布告し、攻撃した』として情報が飛び交っている。

戦争回避が最大の目的であったイギリスがこんな事をするはずはない。

ローマ正教内の慌てっぷりを見る限り、これは彼らにとっても完全なイレギュラーだということがわかる。
ウロボロス社も同様だ。
各地に今だ積み上げられたままの人造悪魔兵器を、慌てて急いで降ろし展開している。

そしてダンテ達やネロ、フォルトゥナもこんな大規模な戦争を望むわけがない。


つまり、このヴァチカンを襲撃した者は明らかな第三勢力だ。
775 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/25(火) 01:05:45.73 ID:gTuFZOA0
状況を見る限り、この第三勢力は戦争を誘発させるのが第一の目的だろう。

そしてそれは成功するはずだ。

明日にでもローマ正教とロシア成教に率いられたロシアとイタリア・フランスが、
イギリスと学園都市に宣戦布告するだろう。

現に、ローマ正教内の通信でその命が各地に向けて発令されているのだ。



アレイスター「……早いな」


今、この人間世界のトップ達は皆、ヴァチカンの襲撃者の手の中で遊ばれている。

戦争が起こるのは確実だったが、それがこうも早いとは彼も思っていなかった。
少なくともあと一ヶ月先だと睨んでいた。

プランもそれに合わせて修正したのだ。

魔術サイドとウロボロスの連中が慌てふためき混乱するのは好都合だが、
こちらにもかなり面倒な事になった。

アレイスター「……」

一難去ってまた一難。

この二ヵ月半、彼が進もうとしている道のりは一気に険しくなった

目的地は見える。
だがそこまでの道が深い闇に包まれており、見通すことができない。

どんな障害があるのか。

手探りで進むしかない。

そしてその手が突然障害に『触れ』、存在を知ったと同時に問題が発生する。

今も正にその状態だ。
776 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/25(火) 01:14:16.90 ID:gTuFZOA0
考えること、やるべき事は山ほどある。
だが、まず今の問題は第七学区の件だ。

右方のフィアンマ。

彼の目的はどうやらインデックス。

これは良い機会だ。
フィアンマがいずれこちらのプランの障害になるのは目に見えている。
みすみすインデックスを渡して、あの『聖なる右』を安定させるなど誰が許すか。

障害の芽は摘んでおくべきだ。


アレイスター「……」


こちらが手を打てば、一方通行は右方のフィアンマを打ち負かす事が可能だ。
再びミサカネットワークに未元物質の脳を接続し、二ヵ月半前の力を使わせれば良い。

魔人化していなかったとはいえ、あのバージルに血を流させた程の力だ。

確かに右方のフィアンマの力は強大だが、あの状態の一方通行なら一蹴できるはずだ。


アレイスター「……」


だが、今それを使う訳には行かない。

未元物質の脳が耐えられるのはあと一回だ。
次で未元物質の脳は、莫大な負荷を受けて完全に死ぬ。
そして下手をすると一方通行の脳も損傷する。

今この段階で重要なパーツを消費するのは論外だ。

換えのパーツの材料はあるものの、そこから作っている暇など無い。

一方通行と未元物質をあの段階まで昇華させ、
『境界』を越えさせたのにどれ程の時間と労力を費やしたことか。

一方通行と未元物質を失う訳には行かない。

どちらか一方を死なせ、それでもう一方を生かすのもダメだ。
それだと意味が無い。
777 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/25(火) 01:19:22.33 ID:gTuFZOA0
ではどうするか?

あのレベルの戦いについていける者は、
今の学園都市にはエイワスとヒューズ=カザキリ、そしてアレイスターしかいない。

エイワスとヒューズ=カザキリを使用すれば色々と面倒な事になる。
これも一方通行や未元物質同様、下手に使うとプラン自体がお釈迦になってしまう。

だがアレイスター自身が出るのも問題だ。

彼自身もまたプランの最終局面に必要だ。
今ここで手傷を負うのは避けたい。


アレイスター「……ふむ」


と、こう考えると八方塞のようだが―――実はそうではない。
別の手がある。


幸運な事に、ちょうどこれから上条が帰って来る予定だ。
トリッシュも付いて来るだろう。

その二人が加われば、フィアンマはここで葬る事ができるはずだ。

今の状態のフィアンマでは、トリッシュと強化された上条、
そして一方通行の三人を一度に相手にするのは不可能だ。

アレイスターは上手く誘導すれば良い、いや誘導する必要も無いだろう。

彼はただ見ているだけで良い。

ローマ正教のトップが蹂躙され挽肉に変わるのを。
778 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/25(火) 01:24:59.05 ID:gTuFZOA0
アレイスター「……」

第七学区の件は高みの見物でもしてればいい。

それと暗部のネズミ共が動き始めたようだが、今はもうどうだって良い。
アレイスターは、この戦争の後は学園都市がどうなろうと良いのだ。

ネズミ達はせいぜい理事会を襲撃してその貴重な時間を浪費してればいい。

アレイスター「さて……」

アレイスターはプランの修正作業に入る。
脳内で複雑なパズルを一度崩し、再び組み上げていく。

アレイスター「(問題は無いな)」

かなり大幅な修正が必要だが、結果的には問題は無いようだ。
そこに起こりえりそうなイレギュラー因子を想定し、ねじ込んでシミュレーションし、
バグを弾き出し更に修正していく。

―――と、そう作業している時だった。

アレイスター「―――」

突如押し寄せてきた悪寒。

この薄暗いビル内の空気が一気に重量を増す。

アレイスター「―――これは」

前にも一度体験したことがある感覚。
あのスパーダの息子が、このビルの壁を切り裂き強引に入ってきた時の感覚に似ている。


―――だが『似ている』だけだ。


―――確かに良く似ているが。


―――あの時のモノよりも更に鋭くて冷たい。


―――そして筆舌に尽くし難いほどの強烈な殺意―――。
779 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/25(火) 01:26:49.12 ID:gTuFZOA0
アレイスター「―――」

アレイスターは水槽の中で一気に目を見開き、右手を横に勢い良く伸ばした。


次の瞬間、アレイスターのその開かれた右手に銀色のねじくれた杖が出現する。


彼の『杖』だ。

これがアレイスターの力の象徴であり、彼の最大の武器。
これが学園都市の頂点に君臨する、彼の地位を保証しているといっても過言ではない。


だが。


だがそれほどの武器でさえ―――。


アレイスター「―――」


水槽の目の前に、突如現れた男にとっては小枝のような物だろう。

アレイスターの前に立つ男。

銀髪を後ろに撫で付かせ、青いコートを羽織り左手には日本刀。


「そんなガラクタでどうするつもりだ?―――」


男が、アレイスターを凍てつくような瞳で真っ直ぐ見て、口を開いた。


「―――人間」


アレイスターは硬直する。

その瞳を見て。


―――バージルの瞳を見て。



―――
780 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/25(火) 01:30:03.26 ID:gTuFZOA0
―――


事務所デビルメイクライ。

トリッシュは地下室にて、リスボンで捕獲してきた小銃型の人造悪魔を解体していた。

トリッシュ「……」

木造りの大きな机の上にパーツやバラバラにした悪魔の肉片を並べ、一つ一つ入念にチェックしていく。

合成されていたのは複数体のムシラという下等悪魔だ。
『憑く』という性質が無い悪魔を強引に合成させていたらしく、拒絶反応が常態化していたようだ。

この哀れな悪魔達は四六時中かなりの激痛に襲われていた事だろう。
はっきり言ってこの合成の仕方はかなり雑だ。

だが力の性質を見る限りウィンザー事件の黒幕と、この人造悪魔の製造者が同一なのは間違いない。

大悪魔クラスもの人造悪魔を作り出せる程の、
まぎれもなく人類トップクラスの悪魔技術を持つ者がなぜこんなに手を抜くのか?

それは恐らく、この小銃は量産型だからだろう。
かなりの数を急いで作ったのだ。

とにかく頭数を揃えるのが第一の目的だったようだ。

腐る程いるムシラを使ったのも、個々の戦力よりも数を優先した結果だろう。

それを裏打ちするかのように、『数』では無く『戦力』メインの個体はしっかりと手が加えられていた。
貨物船に積まれていた戦車等だ。

あれには元から寄生する性質を持っていたインフェスタントが憑いていた。

インフェスタントを、小物の雑兵如きに憑かせるのは、
勿体無いと思うのはトリッシュも同感だ。
781 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/25(火) 01:32:18.80 ID:gTuFZOA0
そして量産型というのが裏付けられた以上、
それはあのリスボンで処理した人造悪魔達は、全体の極々一部という事を暗示している。

更にあの貨物船はウロボロス社の物。
人造悪魔達もウロボロス社のコンテナに詰まっていた。

つまり、あの『兵器』達を出荷したのはウロボロス社。

やはりネロの推理が正しかったようだ。
ウロボロス社が大々的に人造悪魔を製造し、そして世界中にばら撒いている。

トリッシュ「……さて……どうしましょ」

人造悪魔が使われるとなれば、デビルメイクライ側も黙ってはいられない。

かの呪われし兵器群はもう世界中に配備され、その号令の時を待っているだろう。

トリッシュ「……」

だが、さすがのダンテでも今からその大量の人造悪魔を処理するのは厳しい。

いや、やりようによっては『短時間』でもできるだろうが、
その場合は人間界にかなりの負荷がかかり、無数の人命が巻き添えを食い『地図が書き換え』られてしまう。

当然そんなやり方はダンテ自身も確実に拒否する。

トリッシュ「……」


やはり司令塔、『頭』を潰すしかない。
782 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/25(火) 01:34:45.28 ID:gTuFZOA0
こういう件は、大概は少数の首謀者が全体を牛耳っている。
頭を狩ってしまえば、事態は一気に沈静化するだろう。

それが一番手っ取り早い単純な解決方法だ。

問題はその頭が どこにいるか だが。

トリッシュ「……」

とにかく情報が必要だ。
だがいつものやり方、トリッシュが先に潜入して探る という手を使っている暇は無いだろう。

短時間で手に入り、かつ信頼性のある情報はどこにある?

そう考えた時、トリッシュの頭に一人の人物の顔が浮かんだ。

アレイスターだ。

学園都市はウロボロス社と共同関係にあるのは表の世界でも周知の事実だ。

あれ程の男が何も知らないと言う事は無いだろう。

トリッシュ「ま―――」

トリッシュは立ち上がり、机の上に置いてあった二丁拳銃を手に取り腰に差し込んだ。

トリッシュ「―――ちょうどいいわね」

ちょうどこれから上条を学園都市に送る予定なのだ。
そのついでに聞けばいい。

ただ、今回は今まで通りとはいかないが。

彼が言わないのなら、場合によってはちょっと乱暴な手段で聞き出さなければならない。


ちょっと乱暴な手段でだ。
783 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/25(火) 01:39:48.98 ID:gTuFZOA0
―――


上条「よしっと…」

上条は朝食とその後片付けを済ませ、手を振りながら流し場に軽く寄りかかった。

テーブルに向かいペンを持ち、紙に何やら書いている御坂。

上条「?何してんだ?」

御坂「んーちょっとねー」

御坂が紙に目を落としながら返事をする。

御坂「ダンテがさー、たまに冷蔵庫漁って勝手に私達のを食べてるからさ……」

上条「あ〜…」

そういえば夜中にそれらしき物音と、
ダンテの「Yeah....」と、何かを見つけ嬉しそうな声がここ最近聞こえてきていた。

それにたまにダンテがワインを飲みながら、パンやレタスを摘んでいたのも何回か見たことがある。
その時は 毎日俺に付き合って動いてるから腹が減るんだろうなあ と上条は何となく思っていた。

ピザ等のデリバリーを頼める回数は、事務所の財布を握るトリッシュによって一日ごとに決められているらしく、
小腹が空いた時は二階のキッチンの冷蔵庫を漁って、何とか凌いでいたらしかった。

御坂「だから……ほらっ!」

御坂が跳ねるように上半身を起こし、手に持っていた紙を上条に見せる。

その紙にはゲコ太らしき絵と、そこから吹き出しで「Don't eat!!!!!」と書かれていた。

上条「……な、何でせうそれは?」

御坂「これ冷蔵庫に張るの!」
784 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/25(火) 01:46:30.35 ID:gTuFZOA0
上条「なあ、俺達明日にはまた帰って来るんだぜ?別に一日ぐらい…」

御坂「その一日の間に全部食べられてたらどうすんのよ?ダンテならここぞとばかりにやりかねないわよ?」

上条「インデックスじゃあるまいし……それにそん時はまた買い直せば良いn」

御坂「ちょっとぉ!誰が買ってると思ってんのよ!!」

御坂「それに献立もちゃんと作ってあるのに、また一から買い揃えて献立も作り直せってんの!?」

上条「あ〜そうか……良いと思うぜ」

なら直接ダンテに言えば良いんじゃね と思ったが、
突っ込むと色々面倒臭そうなのでやんわりと肯定した。


御坂は もう! とプンスカしながらも、その紙を冷蔵庫に張った。
そして冷蔵庫の前に立ち、その己の描いた紙を見て今度は嬉しそうに口を綻ばせた。


御坂「よし!どう??!」

上条「良いと思うぜ」

まあ、どう考えてもダンテがあの張り紙程度で止まるはずは無いが、
上条はそれにも突っ込まないであげておいた。

それに御坂の可愛らしい笑顔を無闇に壊したくも無い。
785 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/25(火) 01:48:59.91 ID:gTuFZOA0
御坂「ちょ、ちょっと!!!な、何よ!」

穏やかな顔で御坂を見つめていた上条に、彼女が少し言葉を詰まらせながらも声を飛ばした。

上条「ん?あっ……い、いや、何でもねえ!」

突っ込まれ、上条も少し焦りながらも言葉を返した。

御坂「そ、そう……」

上条「あ……ああ」

御坂「……」

上条「……」

しばし沈黙。

上条は頭を掻き、御坂は目のやり場に困ってそわそわ。
お互い共、少し気まずいのだ。

上条にはさっきの件がある。

御坂としては、その話の内容自体は既に自分の中でもある程度答えを出していたが、
己の想いを知られているというのはさすがに気まずい。

その時だった。

トリッシュ「時間よ!!」

階下から、その重苦しい空気を叩き割るトリッシュの声が響いてきた。

御坂「あ……じ、時間!!!」

上条「お、おう!!!い、行くか!」

二人はぎこちなくもドアに足早に向かい、
キッチンから出てそれぞれの部屋へ荷物を取りに向かった。
786 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/25(火) 01:50:46.12 ID:gTuFZOA0
上条「ふぅううはああ〜〜〜!!」

上条は自室の扉を閉めると、大きく息を吐いた。

先ほどの二人っきりの沈黙。
呼吸することすら忘れていたかのように苦しかった。

上条「あ〜……何やってんですか上条さんは……」
頭を掻き苦笑しながらベッドに向かう。

そしてその上に置いてあった携帯を手に取った。
向こうに持っていく予定の荷物はこれだけだ。

上条「ん…?」

ふと、携帯の着信表示に気付く。

相手はインデックスだ。
ちょうど朝食を食べ始めた辺りにかかって来ていた。

上条「―――?」

首を傾けかけたが、

トリッシュ「早くしなさい!!!」

上条「お、おう!!!!」

再びトリッシュの声が響いてきた為、この件は上条の頭の中で後回しになった。
どの道もうすぐ後に会えるのだ。

ここで時間を潰すよりは、さっさと行ってしまったほうが良い。
787 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/25(火) 01:52:57.88 ID:gTuFZOA0
上条が階段を駆け下り、一階のホールに飛び降りた。

御坂は既に荷物を持ってトリッシュの横に立っていた。
どうやら本当にあの大砲を持っていくらしく、弾が入っている大きなショルダーバッグを肩にかけ、
胸元にこれまた大きく長い包みを両手で抱いていた。

ダンテは相変わらずいつもの定位置で、机に足を載せながら雑誌を読んでいた。

トリッシュ「行くわよ。私も用事があるんだから」

上条「おう!」

トリッシュ「ちょっと待って、あれ、持って行きなさい」

トリッシュがビリヤード台の上に置いてある、上条の銃と右手の防具を指差した。

上条「い…いや…あれは……」


トリッシュ「持って行きなさい」

トリッシュが真顔のまま強い口調で再び言う。

上条「は、はい!!!」

その異様な気配を感じ、逆らわない方が良いと瞬時に判断した上条はそそくさとビリヤード台に向かい、
己の銃を腰に差し込み、防具を右手に装着した。


トリッシュ「さ、行くわよ」

上条「おう!」

御坂「うん!」

トリッシュ「っと、先にレールガンちゃんの寮ね」

御坂「うん!荷物を置きに!」

トリッシュ「OK」

三人を囲むように、床に金色の円が浮かび上がる。
788 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/05/25(火) 01:54:44.28 ID:gTuFZOA0
ダンテ「お〜」

ダンテが雑誌を振り適当な挨拶をし、それに御坂と上条が満面の笑みを返す。

そして三人は沈んでいった。


向かうは学園都市。



ダンテ「む……」

ダンテは再び雑誌を顔の前に広げていたが、
ふと何かを思い出したかのように雑誌をバサリを倒し、今しがた三人が立っていた空間に目をやった。

ダンテ「…………」

眉をしかめ、鼻を鳴らす。

先ほどのトリッシュの顔を思い出す。
その映像が脳裏に浮かぶたびに彼の悪魔の勘がざわざわと騒ぐ。

あの三人に関して何か、かなり嫌な予感がする。

特に―――。

―――トリッシュ。


はっきり言うと。


―――それは死相だった。


ダンテ「………トリッシュ」

ダンテは小さく呟きながら、雑誌を机の上に放り投げゆっくりと立ち上がった。
顔からはいつもの気の抜けた、ふざけた空気が消えていた。

―――
789 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/25(火) 01:55:15.20 ID:gTuFZOA0
今日はここまでです
次は明後日になる予定
790 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/25(火) 02:33:21.67 ID:OXFcmyco
乙!
トリッシュ・・・
791 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/25(火) 08:07:30.80 ID:j2D1XMUo
乙なんだぜ。
楽しみなんですよう。まってますよー
792 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/25(火) 12:02:38.89 ID:xOMXAZI0
乙でした〜
793 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/25(火) 18:41:43.69 ID:FGqrzEDO
ほかのスレでは人気者のていとくんもこのインフレ下では消耗品扱いか
794 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/26(水) 02:25:21.22 ID:LZ85cEDO
常識が通用しない奴ばかりだしな
795 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/26(水) 15:28:25.73 ID:nVKafb.0
おっつー


え、まさかトリッシュピンチ?マジで?
796 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/27(木) 00:36:48.65 ID:fVN1SF60
すみません。

急に忙しくなったため、
そしてプロットに問題があり大幅に修正する事になったため、
更にはそのプロット自体が練りきられていないため、今月中の投下は無理になるかと思われます。

早ければ日曜辺りにでも再開できるかもしれませんが、今のところは何とも言えません。

どうかご容赦を。
797 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/27(木) 00:39:07.52 ID:rAVeN5Eo
おー期待して待ってますぜ
無理せずがんばって
798 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/27(木) 00:42:08.23 ID:va4OFmo0
職人すなぁ…
マイペースで頑張って下さい
799 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/27(木) 00:45:34.60 ID:NttVCEk0
じっくり練りこんで下され。
のんびりまっておるですよ
800 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/27(木) 00:53:00.76 ID:GO/SNfAo
今月中って今月そんなに日数残ってないだろうに
801 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/27(木) 00:54:54.57 ID:7IFoJ1Uo
うむ、より精錬された文章になるのならいつまでも
802 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/27(木) 01:02:04.60 ID:O7dXY.o0
いつまでも待ってるので無理せずに納得行くように書いてくださいな
803 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/27(木) 09:26:03.61 ID:es1qosDO
ちゃんと終わらせる気があるなら私は一向に構わんっ!
804 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/27(木) 22:32:11.03 ID:Ikn7mpw0
http://blog.sohaya.com/2010/05/22/devil-may-cry-for-iphone/
へー
805 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/27(木) 23:19:19.67 ID:qyAm3LIo
>>803
いつの情報だよ
806 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/28(金) 01:43:25.83 ID:OXk.R2Yo
iPhoneでデビルメイクライとか無理ゲーすぎるだろ
バイオといいこれといい何故iPhoneでゲーム出すんだカプコンwwwwww
807 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/05/28(金) 09:08:47.45 ID:UPjALYAO
iPoneは出るのに何故PSPでDMCが出なかったんだ……!!
808 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/05/28(金) 23:00:20.38 ID:STTGDEM0
>>807
ちょっと前に企画は挙がってたそうなんだけどね。ウチも期待してたんで残念。
809 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/01(火) 19:49:34.81 ID:gVdaDI.o
まだかー
810 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/02(水) 01:21:31.28 ID:lbtPMeU0
明後日、木曜の夜11時辺りから再開します。

一向に忙しさが収まる気配が無いため、
今後の投下は少し不定期になってしまうかもしれません。
最低でも週に1.5回のペースで続けていきたいと思っております。
811 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/02(水) 01:29:10.80 ID:MnfRm0Eo
続けてくれるなら不定期とか全然気にしないから!
812 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/02(水) 01:30:36.98 ID:0nBu8P6o
元々失業寸前の暇で始めたんだよなwwww
813 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/02(水) 01:37:43.81 ID:lbtPMeU0
>>812
仕事があって生活に困らない今も良いけど、
午後を丸々妄想に使えたあの頃も良かったなぁと。
814 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/02(水) 01:56:09.81 ID:NWUkO9Y0
不景気に負けずスタイリッシュに頑張って下しあ
815 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/02(水) 19:35:38.68 ID:mLNIMYAO
やっぱ悪魔狩りは大変なんだな…
816 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/03(木) 23:25:17.59 ID:NJNKIss0
―――

ヴァチカン。

サンピエトロ広場。

その広大な広場を囲むように聳え立つ、4列で並ぶ計372本のドーリア式円柱で構成されている列柱廊。
ヴァチカンの顔でもあるこの荘厳な場所は、普段は観光客やローマの一般市民の散策の場にもなっている。

だが今は違う。

神の庭であるこの聖域は今や戦場と化していた。


神裂『ハァアアアアアアアアアアアア!!!!!!!』


神裂が咆哮し、列柱廊の上から七天七刀の青い斬撃を何発も続けて放つ。

その光の線は広大な石畳に、長さ40m以上もあろう何本もの鋭い筋を刻んでいく。

そしてその『格子』の中を容易く掻い潜り、軽やかに疾走してくる『黒豹』。

姿形は先の女とはかけ離れている。
だが、その体から溢れている力の性質は全く同じだ。

神裂は驚きも迷いもせずにその黒豹に『砲撃』を続ける。


幸いな事に神裂の派手すぎる登場により、広場にいた者達は一目散に逃げた為、
彼女の射線は無人となっていた。
817 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/03(木) 23:27:19.24 ID:NJNKIss0
黒豹が砲撃の雨を掻い潜ながら突如強く地面を蹴った。

その瞬間、黒豹が一気に加速した。
天使化している神裂ですら、その姿はおぼろげな黒い残像としてでしか捕えられない。

神裂『(―――また!!!)』

先と同じだ。
あの女はさっきも突如爆発的な加速をした。
まるで時間を操っているかのようにだ。

その影は一瞬で距離を詰めてくる。

神裂『シッ―――!!!!!』

神裂は足に力を篭め、瞬時に真上に跳ねた。

あの速度のまま近接戦に持ち込まれたら危険だ。



そして次の瞬間、いやほぼ同時と言っても過言ではない。

列柱廊の神裂が今まで立っていた場所に漆黒の砲弾が激突し、
10数本の柱が一瞬で砕け灰色のチリのカーテンへと姿を変えた。

神裂『―――ふァッ!!!』

天使化した神裂の脚力は、彼女の体を地上100mもの高さまで一瞬で運び上げた。
その神裂の後を追うかのように、真下の凄まじい激突で生じた破片もこの高さまで舞い上がって来る。


そしてその破片の『霧』の中―――。


―――いや、『中』ではなく『手前』だ。


神裂『!!!!』


目の前、すぐ真下にいる黒豹。


気付いた時にはもうその距離は10mを切っていた。


黒豹はあの速度のまま即座に垂直に方向転換し、真上へ跳んだ神裂の後を追って来たのだ。

飛び散り舞い上がった破片よりも速く、だ。
818 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/03(木) 23:31:37.58 ID:NJNKIss0
神裂『―――』

黒豹と目が合う。

獣の表情など分からないはずなのだが神裂は何となく感じ取った。

この猛獣は確かに薄っすらと笑っている と。

それはまるでご馳走を前にした捕食者のような笑み。

瞬間、神裂の背筋を冷たい波が走る。

『捕食者』を前にしての戦慄。


黒豹が身を捻り、黒い靄を纏わり付かせながら神裂の目の前で一回転する。

黒豹が流し目で神裂を見、そして反対側を向き再び彼女の方へ振り返えると。

その顔は黒縁メガネをかけた、美しくもあり不気味でもある笑みを浮かべている元の『人型』の顔に変わっていた。

続いて、回転して一瞬形が見えなくなった豹のしなやかな足が、
今度はこれまたしなやかで長い人間型の足となり、回し蹴りとなって神裂の視界へと帰って来る。


神裂『―――ッ』


一連の動きは全て一瞬。


神裂の左わき腹目がけて、ベヨネッタの右足が。


―――強烈な蹴りが放たれる。
819 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/03(木) 23:34:43.59 ID:NJNKIss0
炸裂と同時に青黒い円形の光の衝撃波が拡散し、轟音が響く。

神裂の体が『く』の字に折れ曲がり、大きく横へ40m程吹っ飛ばされた。

神裂『はッ!!!!!』

だがその蹴りはわき腹までは到達していない。

ベヨネッタの足は、神裂の折りたたまれた左腕、更にそれに重なるゴッドブリンガーに直撃したのだ。

神裂はギリギリのところで反応し、何とか防いだのだ。

神裂『ツッ……!!!!』

モロにダメージを喰らうのは避けれたが、盾となった左腕に鈍痛が走る。
しかしそんな痛みに、左腕の状態に注意を払っているヒマなど一瞬たりとも無い。

吹っ飛ぶ神裂を追い、ベヨネッタは再び瞬時に距離を詰めてくる。


神裂『……ッ……らぁああああアアアア!!!!!!!!』


神裂は七天七刀を振るい斬撃を放って迎撃するも、
ベヨネッタは先と同じくその間を難なく縫って迫ってくる。
820 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/03(木) 23:37:49.02 ID:NJNKIss0
神裂『(……くッ!!!)』

近接戦は避けたかった。

あの速度で、しかも四肢全てが凶器。
神裂で例えると、四本の七天七刀を手足全てに装備しているような物だ。

攻撃速度は上、手数も単純計算で二倍。
しかもその手足から放たれる攻撃は二段構えだ。

鞭のような打撃に続き、手足の先の銃口から槌のように重い魔弾。

殴打を仰け反って避けてしまうと銃口がこちらに向き、射線に入り魔弾の餌食となる。

一番簡単で体勢も崩しにくく、
そして次の攻撃にも繋げ易い『後方に少し下がる』という回避方法はダメなのだ。


完全に退けるには、いなして弾くか身を横にずらすかだ。

手数も速度も圧倒的、更には避け方も限定される。

一方で、こちらの攻撃は今まで一発も当たっていない。
かすりもしていない。


この女は薄ら笑いを浮かべ、ダンスでもしているかのように優雅にそして華麗に神裂の攻撃をかわす。
まだまだ余裕があるのは誰が見てもわかる。


神裂は薄々感じ取っていた。

この女は全然全力を出していない と。

己は遊ばれているのだ と。
821 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/03(木) 23:39:32.34 ID:NJNKIss0
神裂『―――』


今戦っているこの女。

圧倒的だ。

この『遊ばれている状態』の今でさえ、
ボルヴェルグよりもそしてウィンザーで合間見えた人造悪魔の少女よりも強い。


『大天使の力を持つ神裂』ですらこう思った。


―――この女は正真正銘の化物だ と。


全力を見なくてもわかる。
いや見たくも無いし、この女は力の底を見せるまでもなく神裂を打ち倒せるだろう。


今まで神裂がこう思った人物は三人。
スパーダの一族だ。

そして目の前にいる4人目の化物。

その4人目が、今こうして己を殺すべく向かってくるという現実。

圧倒的な格の違いと抗いようの無い絶望。



神裂『―――』



だが神裂の戦気は揺るがない。

むしろ七天七刀を握る手に更に力が入る。
822 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/03(木) 23:40:06.97 ID:FSs1bXso
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!支援
823 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/03(木) 23:41:03.23 ID:NJNKIss0
天使として、人知を超えた力を持つ者として神裂は超越した感覚を持っている。
勘とも呼べるだろうその知覚は未来を微かに見通すことが出来る。

その勘があるからこそ、神裂はこうして戦う。
ここで退けば待ち受けているのは世界を覆い尽くす暴力と殺戮だ。


それだけは絶対に防がなければならない。


イギリス清教・学園都市とローマ正教・ロシア成教の全面衝突。

無数の弱き者達が死んでいく。


十字教の為でも、神の為でも、己が属するイギリス清教の為でもない。


神裂は、人々に襲い掛かる禍を払う為に戦う。


そしてイギリス清教が所有するあの『少女』、インデックスの為に。


戦争が起きれば、間違いなくインデックスにも禍が降りかかる。

なにせ、10万3千冊の魔導書が記録されているのだ。
魔術サイドのパワーバランス基盤の一つなのだ。

そんな少女が、これほどの戦争に無関係でいられる訳が無い。
むしろ強引にその舞台に引き上げられてしまうだろう。



神裂『(―――ふっっっざけんなっ)』



そんな事、絶対に許されない。


そんな事、絶対にさせない。
824 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/03(木) 23:43:15.06 ID:NJNKIss0
あの『少女』だけは。

あのかけがえの無い『友人』だけは―――。


今ある『神裂』の全てはあの少女に出会ってから始まった。


彼女を守る為に技を鍛えてきた。

忘れ去られ敵と認識されても尚、影から守り続けてきた。


神裂はステイルと共に誓ったのだ。


何があろうと、どんな事があろうとあの少女を守ると。
あの少女に降りかかる火の粉は我々が払い続けると。

例え命を落とそうともその誓いが揺らぐ事は無い。
二ヵ月半前も神裂は、彼女を救う為に迷い無くこの人外の力に身を染めた。

そして今も同じだ。

例え七天七刀が折れようと。

この四肢が無くなろうと。


―――神裂は戦うのを止めない。


例え確率がどれだけゼロに近かろうと、可能性がある限り神裂は諦めない。


―――彼女の勘が『彼女自身の死』をも叫んでいたとしても。


―――己の死地は今この場だ と叫んでいても。


―――弱き者を守る為。


―――そして誓いを立てた『友』を守る為。


神裂『来いやああああああああああああ!!!!!!!!!!』


神裂は戦う。
825 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/03(木) 23:47:26.65 ID:NJNKIss0
近接戦は確かに危険だ。

だが神裂は今度は下がらなかった。
距離を開けようとはしなかった。


遠距離からこちらの攻撃が当てられないのなら、
命中する可能性が高い近接戦に持ち込むしかない。


七天七刀を握り、宙で構える。


神裂『―――シッ―――』

この女を殺す。

可能性が僅かしかなかろうと神裂は迷わない。


神裂『―――ハァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!!!!!』


そしてベヨネッタと神裂がお互いの間合いへと入る。


ベヨネッタ「Yaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!! Ha!!!!!!!!」


双方が凄まじい乱撃を繰り出す。


ベヨネッタが放つ四肢の乱撃と無数の魔弾―――。


―――それを捌く神裂の七天七刀とゴッドブリンガー。



地上100mの空で刃を交える二人の怪物。

眩く輝く金色と紫や青の色とりどりの光、連続する爆裂音。

落下しながら絡み合う光の束と爆発。


それは壮絶で破滅的な破壊の嵐であるにも関らず、

どんな芸術にも勝る荘厳で美しい光景だった。
826 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/03(木) 23:53:02.02 ID:NJNKIss0
当然、予想した通り全てを捌くことは不可能だった。

一発、また一発と神裂の体にベヨネッタの鞭のような打撃と破城槌のような魔弾が叩き込まれる。


その度に神裂の体を包む光の衣が削がれ飛び散る。

そして皮膚が裂け赤い液体も噴出し、弾ける光に混じり飛び散る。


しかし神裂は怯まずに七天七刀を振るう。


被弾を引き換えに放たれる彼女の青く輝く刃は何度もかわされる。


それでも。


それでも手を休めない。


それでも神裂は怯まない。


体中の悲鳴や激痛を無視して渾身の力を篭めて拳と刃を振り続ける。


神裂『アアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!』


そして―――。


―――神裂の刃が遂に。



―――ベヨネッタに届く。
827 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/03(木) 23:56:58.25 ID:NJNKIss0
―――それは宙で激突してから僅か数秒後。


50m落下する間に二人が交わした刃と拳の回数は数百。

そしてこの打ち合いを色々な意味で場面転換させる一撃が神裂から放たれた。

地上50mの空で、ベヨネッタの喉元目がけて振るわれた神裂の七天七刀。
青く光る白銀の刃は今まで以上に速く、そして重い。


ベヨネッタ「―――」


ベヨネッタの顔色が変わる。
彼女は上半身を仰け反らせるも、その刃を完全にかわすことはできなかった。

耳が切り裂かれるような金属の切断音。

神裂の刃は、ベヨネッタの黒いボディスーツの襟に小さな鋭い切れ込みを刻んだ。


―――襟を切っただけ。


その言葉だけなら別にどうってことは無い様に思えるだろう。

だが『魔女』にとって、ベヨネッタにとっては少し問題だ。

このボディスーツは彼女の『髪』でできているのだ。

(ちなみに厳密に言うとベヨネッタは衣服を纏ってはいない。このボディスーツは彼女の長い長い黒髪が姿を変えたものだ。)


魔女にとって『髪』とは力の証明であり、最強の『矛』と『盾』でもある。


魔女が行使するありとあらゆる力は『髪』を媒体としている。
例えるならば、己の髪の毛自体を『魔具』としているようなものだ。


ベヨネッタ「―――Hum」


その髪で形作られているボディスーツを裂くとは。


ベヨネッタ「さすがってところね―――」


ベヨネッタ「―――その刀」
828 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/04(金) 00:03:41.81 ID:iiy3dHc0
ベヨネッタ「しょうがないわね―――」


ベヨネッタは相変わらずの余裕の笑みだ。
だが纏っている空気が一変する。


神裂『―――』


ベヨネッタは両手を頭の後ろに持っていき、髪留めを外した。

長く艶やかな黒髪がなびきながら大きく広がる。


ベヨネッタ「―――少し本気だしてアゲル」


ベヨネッタが足を畳む。


蹴りが来る と瞬時に察知した神裂はすぐさま反射的に回避行動に移った。


しかし。


ベヨネッタ「―――たっぷり味わいなっ!!!」


次の瞬間、ベヨネッタの足のすぐ横に直径2m程の魔法陣が出現した。
それが何なのか、一体何が起こるのか考えるどころか、神裂の鍛え抜かれた直感すら反応する暇を与えられなかった。


―――そして魔法陣から現れる、黒い繊維のような物で形作られている巨大な『足』。


ベヨネッタ「Yeeehey!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


それがベヨネッタの蹴りと連動して―――。


神裂『―――がぁッッッッ!!!!!!!!』


―――神裂へ叩き込まれた。
829 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/04(金) 00:06:30.14 ID:iiy3dHc0
正に『破城槌』と呼べる程に巨大な『足』のかかとが神裂の腹部にめり込む。

体内から響いてくる、湿った不気味な破砕音。


その破壊力は今までの攻撃とは比べ物にならなかった。
この一撃で神裂の纏っていた光の衣が、ガラスのように全て砕け散った。

あまりの威力に神裂の意識が一瞬途切れかける。

だが攻撃は続く。


容赦の無い二撃目。


ベヨネッタはその長い足を振り上げた。

かかと落しを放つべく。

腹部を折点に体が『く』の字になっている神裂の後頭部目がけて。


再び魔法陣が出現し、そこから巨大な足が出現する。
そして振り下ろされるベヨネッタの足に連動して、その巨大なヒールを履いたような足型の『破城槌』も動く。


『ウィケッドウィーブ』。

髪の毛に強大な魔を宿らせる魔女の秘技だ。



当然、神裂は回避するどころか察知する余裕すらない。


ベヨネッタ「Yaaaaaaaaaaahaaaaaaa!!!!!!!!」


内臓が潰れてしまいそうな程重い炸裂音。


―――神裂の後頭部に巨大な破城槌が直撃する。
830 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/04(金) 00:08:08.86 ID:6SwU6IAO
さすがベヨ姐、容赦ねえ
831 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/04(金) 00:13:30.42 ID:iiy3dHc0
神裂は広場の中央辺りに叩きつけられた。


さながら隕石が落下してきたように。


広大な広場の石畳は捲りあがり、大地が歪み直径100mものクレーターを形成した。

その衝撃の波を受け、広場の中央に聳え立っていたオベリスクも根元から折れ宙に跳ね上がる。


神裂『―――くッ……はッ……』


『爆心地』、瓦礫の上に突っ伏す神裂。

朦朧とする意識の中、七天七刀を大地に突き杖代わりにしてなんとか立ち上がろうとする。


だが。


ベヨネッタ「Haaaaaaaaaa!!!!!!!!」


その神裂の背中に放たれる追い討ち。
巨大な黒い足が神裂を真上から踏みつける。


ベヨネッタ「Ya!!!!!!! Ha!!!!!!! Ha!!!!! HuuummmHAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!」


何発も何発も。

巨大な足が魔法陣から出現しては神裂の背中を叩き踏む。
金属の塊を打ち付けるような轟音と地響きが続く。


そして。


ベヨネッタ「Yaaaaaaaaa―――」



ベヨネッタ「―――Smashing!!!!!!!! BABY!!!!!!!!!!!!!!!!」


一段と強い一撃。

クレーターの底が更に沈み粉塵と瓦礫が一面に爆散する。
832 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/04(金) 00:19:46.23 ID:QAbQjRUo
さすがに木馬は使わないかww
833 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/04(金) 00:20:54.69 ID:GP.KpZ2o
オーバーキルすぎる
834 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/04(金) 00:21:40.74 ID:iiy3dHc0
浮き上がっていたオベリスクが、重力に従い逆さまに地に落ちる。

そして爆心地から40m程の地点、
石畳が剥げむき出しになった土砂の地面に杭のように刺さり再び聳え立った。


その上に、真下に蹴りを放った反動で跳びあがったベヨネッタがヒラリと降り立ち、
長い黒髪をなびかせながら粉塵で覆われている爆心地を見下ろした。


ベヨネッタ「Hum......」

相変わらずの妖艶な笑みを浮かべたまま、何かに納得したかのように鼻を鳴らした。

その視線の先、爆心地の中に浮かび上がる影と青い光。

杖代わりの七天七刀に寄りかかりながらも、何とか立ち上がっている全身は血まみれの神裂。

その体からは金色の光の衣が消えていたが、
代わりに右手に持つ七天七刀から溢れる青い光が彼女の体をうっすらと包み込んでいた。

そしてその瞳。

不規則に金と青の光を放っている。

ベヨネッタ『……』

ウィケッドウィーブのラッシュで、ほとんどの天界の力は削ぎ落とされたようだ。
だが七天七刀に宿る『魔』はまだまだ健在だ。

あの七天七刀が無ければ、神裂は一連のラッシュで粉々に吹き飛んでいただろう。
そしてベヨネッタのボディスーツ、『髪』を切断する事も出来なかったはずだ。


さすがは『バージルから生まれた力』と言ったところか。

だが彼女はどう見てもその力を使いきれてはいない。

内包する天使の力、

そして聖人という普通の人間よりも更に天界に近い繋がりを持つ魂が、
それを拒んでいるのだろう。


ベヨネッタ「……あ〜ぁもったいないわね」
835 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/04(金) 00:27:11.81 ID:iiy3dHc0
今にも倒れそうな満身創痍の神裂。
最早傷を修復する力さえ無い。

(神裂自身は知る由が無いが天使の力を宿す聖人の体が、
 七天七刀の『魔』が肉体を修復させようとしているのを妨害しているのである)

だが瞳にはまだ光と意志が宿っている。

七天七刀を握る右手は緩まない。


彼女は絶対に諦めない。


神裂『―――』

朦朧とする意識の中、とある人物の顔が浮かんだ。


『諦めるな』


その言葉を体現する、学園都市で合った一人の少年。
神裂にとって、そしてあの少女にとってもかけがえの無い恩人。

ステイルと神裂の生き方を変えた少年。

『抗いようの無い運命など存在しない。
 そんな物など認めない。
 諦めるな。戦うのを諦めるな』

彼はそれを身をもって証明した。


神裂『―――はい』


脳裏に映る少年の声に対し返事をする。

そして大地に逆さまに突き刺さったオベリスクの上に立つ女を見据える。

揺らぐことの無い、固い信念が宿った瞳で。

もうどう見ても戦える状態ではないのに。

神裂の心は未だに折れてはいなかった。
836 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/04(金) 00:32:21.67 ID:iiy3dHc0
ベヨネッタ「………それにしても良い顔ね」

ベヨネッタは神裂を見下ろしながらポツリと呟いた。

あの女は、戦い始めた時からその芯が全くブレていない。
圧倒的な力の差を見せ付けられても、怯むことも無い。

そしてあの顔。

あの表情は天使の物では無い。
天界にいる者はあんな顔はしない。


常に穏やかな笑みを浮かべているが、その下は無機質で温かみの無いロボットのような連中だ。

天界の存在は感情の起伏などほとんど無いのだ。
一応あるのだが人間ほど激しくは無く、生ぬるいノロノロとした感じのモノだ。

(死ぬ間際になってようやく見せることもあるが、
それは昆虫の断末魔のようなもので、感情と言うよりはプログラム的な反応と言った方が良い)


ベヨネッタ「……」


神裂は半身が天使だ。

だが全てを委ねているわけではなく、その本質は人間のままらしい。

十字教の神々に心から身を捧げているのでは無いらしい。


ベヨネッタ「……」
837 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/04(金) 00:37:40.14 ID:iiy3dHc0
ベヨネッタ「(へぇ……)」


とある『理由』があって、神裂の事については事前にあらかた調べ上げている。

禁書目録の護衛に付き、あの少女を守る為に何度も命令違反した事も知っている。

記録を見た限り、その行動はどう見ても護衛任命された義務感では説明できない程のものだ。

はっきりいって、守る為なら罷免されようが破門されようが構わないというスタンスに見える。


彼女をそこまで駆り立てるモノは?


『神』の為に戦っているのか、それとも―――。


そこが今回のもう一つの目的の要の部分でもあり、

それがわざわざこうしてこの『天使』と戦う理由の一つでもある。


ベヨネッタ「……一つ聞くわよ。答えな」


ベヨネッタがオベリスクの上から神裂に向けて声を放った。


神裂『……』

神裂は無言のままベヨネッタを見据えた。
苦痛に喘ぐ体が小刻みに震えている。


ベヨネッタ「アンタは何の為に戦ってるの?」


神裂『―――は?』
838 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/04(金) 00:38:20.12 ID:iiy3dHc0
神裂『(……何を……?)』

愚問だ。

何の為?戦争を防ぐ為に決まっている。
神裂は無言で睨み返した。


ベヨネッタ「……質問変えるわよ」

ベヨネッタはその神裂の表情を敏感に読み取り、
そして次はストレートに問いかけた。


ベヨネッタ「これも禁書目録を守る為?」


神裂『―――』

突然出たその名。

神裂が一瞬で凄まじい形相になる。

その名前が。

彼女の名があの口から発せられたことが許せない。



神裂『―――ッッッせぇええええええええんだよッ!!!!!!!!!』


神裂は吼えるも、体が動かない。
今すぐにでも飛びかかりたいのだが、最早今にも地に突っ伏してしまいそうな程ボロボロだった。


ベヨネッタ「―――そう」

その神裂の反応を見てベヨネッタがニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
839 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/04(金) 00:41:39.73 ID:iiy3dHc0
あの神裂の反応を見れば一目瞭然だ。

瞳を見れば。

ベヨネッタ「……」

力の悦に浸るためでも、戦いそのものを求めているわけでもない。


間違いない。

あの聖人は『誰か』を守る為に戦っているのだ。

天界の力もその為に利用しているにしか過ぎないはずだ。

たまたまその系統の力を宿し、それを使う環境で育てられただけなのだ。

ならば問題ない。

『誰か』の為にあの瞳をするのなら。


ベヨネッタ「……」


同じ瞳だ。


あの『時』の瞳と―――。


―――ジュベレウスに取り込まれそうになったベヨネッタを救い出したジャンヌの瞳と。


ベヨネッタ「……」


どうやらバージルの『読み』は当たっていたようだった。

『ならば』計画通り事を進める。


ベヨネッタ「(OK、問題ないわね)」
840 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/04(金) 00:47:34.55 ID:iiy3dHc0
ベヨネッタ「そう…ね……一つ言って良い?」

煮えたぎる神裂の腹の底などお構い無しにベヨネッタがひょうひょうと再び口を開いた。


ベヨネッタ「矛盾してるわよ」


ベヨネッタ「禁書目録を守りたいが為に―――」


ベヨネッタ「―――天界側に付いてその力を使うなんて」


神裂『―――は……?』

いきなりのその言葉。
満身創痍で意識が朦朧としている神裂の思考は当然上手く働かない。


ベヨネッタ「……ま、『調教』が徹底してる十字教徒。そこら辺は知らなくて当然よね」


ベヨネッタ「あれよね?『セフィロトの樹』も思念上での界の構造マップみたいな風に教わってるでしょ?」


神裂『……な……?』

セフィロトの樹。
以前、それに関る事件に巻き込まれたことがある。

『御使堕し』という魔術により、『セフィロトの樹』を介して天使が天界から引き摺り下ろされ、人間の体に宿り、
そのせいで人間達の魂と肉体が椅子取りゲームのように一つずつズレてしまった事件だ。

だがそれがどうしたというのだろうか。


ベヨネッタ「おかしいと思わないの?そもそもなぜ人間の魂が数珠繋ぎで天界と接続されてるのか」


ベヨネッタ「って、哀れな『奴隷』達はそこら辺は思考停止しちゃってるから無理ね」


神裂『―――何を……?』

禁書目録と言うワードが引っかかるが、当然今の状態ではその言葉の意味を理解することは出来なかった。
841 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/04(金) 00:53:05.21 ID:iiy3dHc0
ベヨネッタ「……ちょっと喋りすぎたわね」

ベヨネッタが苦笑しながら首を軽くかしげた。


元々彼女はこういう場でお喋りするようなガラではない。


それに、どうせ神裂はこの後『すぐに』真実を身をもって知るのだ。


今言ったところで無意味だ。


ベヨネッタ「じゃあそろそろ―――」


ベヨネッタが両手を真上に伸ばし、腰をくねらせる。



ベヨネッタ「―――『くたばって』ちょうだいな」



そして長い黒髪の束がなびき、扇状に大きく広がった。


ベヨネッタ「(……)」


天界の力はもうほとんど削ぎ落としたが、七天七刀の『魔』は未だに彼女の体を固く守っている。

ブチ破るのならもう少し強めに、もうちょっと本気を出した方がいいだろう。



ベヨネッタ「(じゃあ……喚ぼうかしらね)」


ベヨネッタ「(『どのコ』にしようかしら)」
842 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/04(金) 00:58:23.06 ID:iiy3dHc0
神裂『(……)』
察知した神裂はよろめきながらも七天七刀を地面から抜き、大きく振り上げ肩に乗せ腰を落とした。

次が最後の一撃。

もうこれ以上戦うことは出来ない。そしてこの一撃で倒せる可能性も限りなくゼロに近い。

―――だが神裂は前へ、地面を蹴り進む。


神裂『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!』


ベヨネッタ目がけて。

前へ。

前へ。


だが力の差はやはり圧倒的だった。

現実は無情だった―――。


ベヨネッタ「決めた」

ベヨネッタは一言呟いた後、ダンスでもしているかのようにオベリスクの上で身をくねらせる。

そして天を仰ぎ―――。



ベヨネッタ「―――ASCHA IAIDA!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」



次の瞬間、彼女が見にまとっていたボディスーツがバラけ髪の毛の姿に戻り、彼女の艶かしい素肌が露になる。

解放された大量の髪が絡み合いながら天に向かって勢い良く伸び。

その先に浮かび上がる、直径40mはあろうかという赤く巨大な魔法陣。


そして魔法陣の中から出現する―――。


―――凄まじく巨大な六本の『黒い腕』。
843 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/04(金) 01:02:48.03 ID:iiy3dHc0
ベヨネッタは大悪魔を召喚したのだ。


その名は『ヘカトンケイル』。


その拳は山をも容易く砕き、足踏みをしただけで大地震が三日間も続く。

大悪魔の中でも頂点クラスに君臨する、魔界の諸王の一人とも呼べる圧倒的な存在。


―――その六つの拳が。


―――神裂に容赦なく降り注いだ。



地面は割れ列柱廊は崩れ落ち、その後方に広がる建物群も亀裂が走り破片が舞い飛ぶ。
巨大なクレーターが何重にも重なって穿たれていく。

全てを叩き潰し粉砕する圧倒的な火力。


ヘカトンケイルは一瞬で50発以上ものパンチを叩き込んだ後、
巨大な魔法陣の中に吸い込まれるように消えていった。

そしてその魔法陣も風に吹かれるように消え、伸びていたベヨネッタの髪も逆再生するかのように元の位置に戻り、
再びボディスーツへと姿を変え彼女の身を包んだ。


凄まじい轟音にかき乱された空気を取り戻すかのように、
不気味な静けさが無残な姿になった広場を覆う。
844 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/04(金) 01:05:11.32 ID:iiy3dHc0
拳の型がありありと残っているクレーター群。

その中央に力なく仰向けに横たわる神裂。


体は七天七刀のおかげか原型を保っているものの、彼女の魂と力は粉砕された。


しかし未だに胸が小さく上下していた。
まだ息があるのだ。

その手もまだかろうじて形だけ七天七刀を握っていた。


ベヨネッタ「……」


そんな神裂を見下ろすベヨネッタの顔からは今までのような舐めた笑みは消えていた。
そしてどことなく哀しげな空気を漂わせていた。

彼女は軽く跳ね、オベリスクの上から降り立ちゆっくりと神裂の方へ腰をくねらせながら進む。

そして神裂の前に立つ。


虚ろな神裂の瞳がベヨネッタの姿を捉える。
その瞳には未だに信念の光が宿っていた。

ベヨネッタ「……」

ベヨネッタは感じ取った。
この女はまだ『負けていない』 と。

だが彼女の動きはそれだけだった。
どこかに穴が開いているのか、呼吸するたびにヒューっと空気が漏れる音がしていた。
845 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/04(金) 01:08:55.54 ID:iiy3dHc0
ベヨネッタは七天七刀を軽く蹴る。

だが神裂の右手は離そうとしない。

ベヨネッタ「……」

ベヨネッタは左手に持つ銃を神裂の右手へ向け、引き金を引いた。
炸裂音と共に神裂の指が吹き飛び、七天七刀が遂に彼女の肉体から離れ地面に転がった。

神裂は指を吹き飛ばされても反応しなかった。
最早痛みに反応する余裕すらないのだろう。


ベヨネッタは七天七刀の切っ先を踏みつけた。
その衝撃で、シーソーのように柄の方が上に跳ね上がる。

ベヨネッタはその柄を右手で掴んだ。


ベヨネッタ「……ッツ」

掴んだ瞬間、右手に走る小さな痛み。
七天七刀がベヨネッタを拒否しているのだ。


ベヨネッタ「本当にけなげなコね」



ベヨネッタ「わかってちょうだい」


ベヨネッタは七天七刀に己の思念を流し込む。
すると痛みは治まった。


七天七刀が、ベヨネッタが今『やろうとしている事』を知り抵抗をやめたのだ。


ベヨネッタ「ふふん、妬いちゃうわね。こんな良いコに気に入られているなんて」


ベヨネッタは七天七刀を振り上げる。

神裂の瞳がその切っ先を追った。
846 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/04(金) 01:14:16.17 ID:iiy3dHc0
次の瞬間神裂の横たわっている地面に、
彼女を中心として直径5m程の黒い円が浮かび上がった。

その淵は燃えているかのように赤く揺らいでいる。


魔界の『煉獄』へと続く穴だ。


魔女に敗れた『天界の者』に待ち受ける末路。


その先は魔界の深淵。

死んでいった魔女達の怨念が渦巻く煉獄。


無数の黒い腕が円から突き出し、神裂の体を鷲掴みにしていく。

神裂「……っはぁっ……」

その大量の手が神裂の体に触れた瞬間、彼女の体が小さく跳ね目を見開いた。

死んでいった無数の魔女達の思念が神裂の中へ流れ込んでいく。
847 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/04(金) 01:15:05.31 ID:iiy3dHc0
凄まじい憎悪。

魔女が受けた迫害の歴史。

天界によって抹消された、人間界の真実の歴史。

天界が今まで何をしてきたのか。


―――そして聖人は。


―――己は何の為に生まれてきたのか。


真実を知った時。
神裂は凄まじい罪悪感と絶望に打ちひしがれた。

今まで信じてきたモノが音を立てて崩壊していく。


神裂「あ……あぁ……」


『友』を守る。


人々を守る。


その為だけに刃を振るってきたのに。

その為にこの聖人と天使の力を使ってきたのに。


その力自体が―――。


この天界の聖なるはずの力が―――。


―――守るべき対称を。


―――人間達を。


―――インデックスを蝕む一番の癌だったとは。
848 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/04(金) 01:19:46.74 ID:iiy3dHc0
神裂は目を見開き、ベヨネッタを見上げる。
その瞳に宿っていた猛烈な敵意は消えていた。


何もかもに困惑している幼い子供のような瞳。


今にも泣き出してしまいそうな瞳。


ベヨネッタ「そうそう、じっくり味わいなさい」


ベヨネッタが七天七刀を振り上げたまま神裂にそっけなく口を開いた。


ベヨネッタ「それでよぉ〜く考えることね―――」


そしてが七天七刀を振り下ろす。


その切っ先が向かうは―――。


―――神裂の胸。


―――心臓。


ベヨネッタ「―――『後』はアンタ次第よ」


刃が食い込み、神裂の胸を貫いた。神裂の体が僅かに跳ねる。
849 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/04(金) 01:23:12.48 ID:iiy3dHc0
メリメリと音を立てて七天七刀の青く光る刃が神裂の胸に沈んでいく。


ベヨネッタ「あ、それと最期に言っておくわね」


ベヨネッタ「私、『天使』は大嫌いだけど」


ベヨネッタ「アンタみたいな『人間』は大好きよ」


ベヨネッタ「アンタみたいな―――」



ベヨネッタ「―――『悪魔』も ね」



神裂の『聖人』として、『天使』としての魂が『魔』を宿した刃によって貫かれ砕け散る。

そして彼女の瞳孔がゆっくりと開いていき、光を失う。

彼女の体を掴んでいた無数の腕が、ゆっくりと彼女の体を黒い円の中に沈めていく。


ベヨネッタ「Good night. Baby」


『聖人』であり『天使』である神裂。


ベヨネッタ「See you---」


―――ここに堕ちる。


ベヨネッタ「―――later」


―――ここに死ぬ。


―――
850 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/04(金) 01:23:47.97 ID:j8kUhUgo
ちょwwwwwwwwww悪魔成人式するのかwwwwwwwwww
851 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/04(金) 01:24:06.88 ID:iiy3dHc0
今日はここまでです。
次は日曜か月曜の夜になるかと。
852 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/04(金) 01:27:13.21 ID:QAbQjRUo

さすが神裂派
出番と見せ場が他のキャラとは比べ物にならないぜ
853 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/04(金) 01:47:42.72 ID:GP.KpZ2o

ねーちんが悪魔化か
今後の展開への期待がさらに高まりまつた
854 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/04(金) 01:53:31.11 ID:Oq6.K1so
やばいこのわくわく・・・
楽しみにしてる!乙!
855 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/04(金) 01:59:44.73 ID:3q75Jhk0
復活おめ&キタ━━(゚∀゚)━━!!!

(`・ω・´)ゞ乙ですもう最高!!!
856 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/04(金) 03:34:18.39 ID:RWJ/IADO
ベヨネッタに捕まると悪魔にされちゃうのか?
857 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/04(金) 08:26:13.77 ID:CxoKlkDO
>>856
違う
神裂は悪い奴じゃないの知ってるから殺さないけど、天使の力を魔女として見過ごすことは出来ないから、堕天使化させた…でいいのかな?
普通なら天使は魔界へ強制送還だしな
858 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/04(金) 09:10:18.83 ID:wuv6R.DO
ねーちんのヴァージンが……(′・ω・`)
859 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/04(金) 10:11:26.59 ID:ZV40NBs0
ねーちんのヴァージン言うなwwwwwwww
とりあえず乙
860 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/04(金) 15:47:54.75 ID:WcIOBV6o
毎度悪魔の成人式は冷や冷やするぜ
今回が一番痛い目にあっているような気がする
861 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/06(日) 20:52:11.04 ID:eOOYg6DO
フラグ回収うまいなぁ
引き付けて引き付けて取るから読んでて面白いです
862 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/07(月) 23:49:38.64 ID:gdoK7KU0
―――

学園都市。第二学区。

とあるビルの屋上。

そこに二人の少年と少女が立っていた。

土御門、海原、結標、そして。


アラストルを所持した、青白い衣を纏っている麦野。


四人は1.5km程先に見える、同学区内にある巨大なドーム型の建造物を見ていた。


学園都市統括理事会の一人、潮岸の根城であるシェルターだ。
非常に警戒心が強い潮岸は、常日頃から学園都市の試作型の強固なシェルターに居座っているのである。


特に軍事・兵器関連に強い影響力を持つ潮岸は、理事会の中でも特にアレイスターに近い一人とも言える。
恐らく土御門らがまだ知りえていない、そして学園都市に対するカードになり得る情報を持っているはずなのだ。

学園都市を脅迫するネタはいくつか揃っているが、もっと集めたほうが良いのだ。
足りないと言う事は無い。

それにこの襲撃により、恐れた理事会の中にこちら側と交渉しようと歩み寄ってくる者も現れるかもしれない。
更にそこから離反が起こるというもっと好ましい状況になるかもしれない。

またもう一つの目的もある。

アラストルを所持した、新生した麦野の『試運転』でもあるのだ。

土御門「じゃあ始めるぜよ」

結標「作戦は?」

海原「さて……どうしましょう?」

土御門「どうするかな」

海原と土御門が麦野のを横目で見ながら結標に、
そして麦野へ向けて何かを確認するかのように答えた。
863 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/07(月) 23:56:11.64 ID:gdoK7KU0
麦野「……OK、じゃあ耳かっぽじって聞きな」

麦野が少し面倒臭そうに口を開き。


麦野「バカでもわかるように簡単に説明してやるから」

麦野「作戦はこう」



麦野「私がぶち抜いて吹き飛ばす」



麦野「アンタ達はその後に残りカスを処理」



麦野「説明終わり」


土御門「完璧だぜよ」

海原「文句はありませんね」

結標「ま、その為にそれ持たせたんだからね、当然でしょ」


三人はわざとらしく大げさにうんうんと頷く。
864 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/07(月) 23:57:52.46 ID:gdoK7KU0
土御門「じゃあもう一度仕切りなおしだぜよ」


土御門「始めるぜよ」


土御門「新生した麦野姫の初陣だ」


麦野「はッ!!!!!」

麦野は短く鋭い笑い声を上げ、その場で右手に持つアラストルを天に掲げた。
同時に剣身から、そして彼女の全身から大気が焼け付く音と共に青白い閃光が迸った。


土御門「うぉお!!!!ここでやんのかよ!!!!!」

三人が慌てて麦野の傍から離る。


そんな三人を尻目に麦野はニヤけながら、
光が蓄えられたアラストルの切っ先をゆっくりと1.5km先のドームの方角へ向けた。

そして次の瞬間。

集っていた光が一気に剣筋に沿って『射出』された。



麦野「カァァァァァァァァァッッッッ!!!!!!!!」



―――壮絶なる反乱劇の開幕を告げる『烽火』―――。


直径が4mがあろうかという青白く眩い巨大な『柱』が一瞬でドームまで到達し―――。


―――着弾し貫いた。


夜空を大きく震わせる轟音と地響き。


吹き上がり飛び散る、溶解したドームの破片が構成するオレンジ色の巨大な『粉塵』。


―――穿たれる巨大な『穴』。
865 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/08(火) 00:02:59.64 ID:MAc1vAM0
アラストルの補助を受けた麦野の砲撃。

例え1000発の核攻撃を浴びてもびくともしないシェルターの隔壁が、いとも容易く全く抵抗無く貫かれた。
さながらカステラに銃弾を撃ち込むように。


麦野「―――ははッ」


麦野は己の湧き上がる力と、そこから放たれた攻撃を見て呆れたように軽く笑った。
潮岸を殺さないように少し力を抑えた今の砲撃でさえこのレベルだ。


麦野「……」

右手の不気味な装飾の大剣に目を落とす。

流れ込んでくる凄まじい量の『力』。

それが何なのかわからないのに、なぜか使い方がわかる。まるで本能のように。

以前から無意識の内に知っていたような感覚。『頭』ではなく体そのものが自然に動く。

誰からも教えられることも無く麦野はアラストルの力を上手く引き出して使っていた。
いや、強いて言うならばアラストル自体が教えてくれるといったところか。

力と共に何らかの形で、記憶のような『何か』が流れ込んできているのだろうか。

それが『魔に魅了され取り付かれ侵食される』ということなのだが、もちろん麦野自身は知る由も無い。
また、もしその危険性を知っていたとしても彼女は手放そうとはしなかっただろう。

彼女はその圧倒的な力に完全に魅了され心が奪われたのだ。

麦野「―――」

どうなろうと手放す気は毛頭無い。


それに―――。


―――あの『時』と何となく同じ匂いがする。


麦野「―――あはっ」


―――吹き抜けていった爽やかな風と。


―――第23学区で彼女を『自由』の空へ運び上げた『男』と。
866 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/08(火) 00:05:59.31 ID:MAc1vAM0
海原「……あれ、中にいる方々は全滅では無いでしょうか?」

土御門「……やり過ぎじゃねえか……?」

結標「初っ端から皆殺しにしてどうすんのよ……」


三人が恐る恐る麦野の傍に戻りそれぞれの感想を吐きながら、
オレンジ色の炎が吹き上がっているドームを食い入るように見つめた。


ドームに穿たれた巨大な穴はもちろん、全体に走っている亀裂の間からもオレンジ色の光が噴出している。
内部はさながら火山の中のような超高温の灼熱地獄だろう。

潮岸は常に駆動鎧を身に纏っているらしいが、それでもあの状況で耐えられるかは疑問だ。


麦野「うるせぇ。どうせついでの仕事だったし別にいいじゃないの」


麦野がバトンのようにアラストルをくるくる回しながら、不機嫌と上機嫌が混ざった奇妙な表情で言い放った。
回転するアラストルが空気を裂くたびに、まるで某SF映画に出てくるライトセーバーのようなブーンという音が発生する。


麦野「逝っちまってたらそん時はそん時で次の『獲物』を狩れば良いでしょ」


海原「ま、彼女の『初陣』ですし戦力計測と考えれば無駄では無かったでしょう」


土御門「はぁ〜……」


麦野「グダめいてんじゃねえよ。座標移動!私をあそこまで運びな!さっさと確認してくるわよ!!」


結標「はいはいお姫サマ仰せのままに」

麦野の乱暴な『命令』に結標がため息混じりに嫌みったらしく返答する。

とその時だった。

土御門「んお……」

土御門のポケットに入れておいた携帯が激しくバイブしたのだ。
867 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/08(火) 00:07:53.85 ID:MAc1vAM0
土御門は手早く携帯を取り出し、画面を確認する。

着信はグループ直属の下部組織からのものだった。
この水面下の反乱作戦には、土御門ら幹部以外にも下部組織の者達もそれなりの数が参加している。


皆もうゴミクズとして扱われる人生にウンザリしたゴミクズ共だ。
確かに『兵士』だが、学園都市上層部に対する忠誠心などもう欠片も無い。

『上』に見切りをつけ、せめて最後くらいは己の意志で戦いたいという信念を持った者達だ。

それで死んでも本望なのだ。
またゴミクズとして扱われる人生に戻るよりはマシなのだ。

ちなみに彼らが裏切る可能性はかなり低いだろう。

この話を持ちかけられるも拒否した者や答えをはぐらかせうやむやにした者達は、
皆後々にグループによって機密性を保つために『粛清』されたからだ。


つまり信頼に足りうる者達しか残っていないという事だ。


土御門「……」

着信はその下部組織内の情報収集を担当している部隊からだった。

土御門「何だ?」

土御門は携帯の通話ボタンを押し耳に当てるとそっけなく応答した。


『緊急報告です』

土御門「簡単にな」


『未確認情報ですが、ヴァチカンにおいて大規模な戦闘が起こったとの事です』


土御門「―――……なに……?」
868 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/08(火) 00:11:35.23 ID:MAc1vAM0
土御門は通話をしたまま手を挙げ、麦野らにその場で少し待てと合図をする。
三人は土御門のその険しい顔から、何か重大な事が起きたことを読み取りその場で静かに待った。


『その事を受け、各国ともに水面下で軍事的行動を開始し戦時体制に入りました』

『特にイギリス・イタリア・フランス・ロシアが活発です』


『―――そしてここ学園都市でも、つい先ほどいくつかの戦闘部隊に対して緊急招集がかかりました』

『また軍用機の稼働率を90%以上に維持し待機するようにとの命も下ったとの事です』


土御門「……」


この電話口の隊員は、『それぞれの勢力が軍事行動を始めた』という事を伝えたかったのだろう。
魔術サイドを知らないこの男はヴァチカンで起こった件自体はそれほど重要に思ってはいないのかもしれない。

だが裏の裏を知っている土御門にとっては逆だ。

確かに遂に来たこの早すぎる開戦は大きな問題だがそれ以上に。


ヴァチカンで起きたその何らかの戦闘が最も懸念すべき事に感じられた。


土御門「(神裂……)」


ちょうど今、ヴァチカンで神裂がイギリス清教の大使としてローマ正教の枢機卿と会合をしていたはずだ。

それが無関係とは思えない。


一体何が起こっているのだろうか。


『……少々お待ちを』


その時だった。
向こうの背後で何やら騒がしくなった。
慌てている声が聞こえる。
869 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/08(火) 00:13:23.05 ID:MAc1vAM0
土御門「どうした?」


『た、たった今傍受した情報です』

焦りを何とか隠そうと取り繕っている男の声。


『ア、アクセラレータが第七学区にて何者かと交戦中との事です』


土御門「―――」


『相手は学園都市外部の者、規模から見て『最低でも』レベル5相当の戦力を保持している可能性があります』


突然告げられたその言葉。
土御門の顔が固まる。


戦争に向けて早速ローマ正教かロシア成教が動き出したのか。
学園都市最大戦力のレベル5を狙って襲撃したのだろうか。


いや―――。


一方通行以上に『戦い』を引き付ける存在が今、彼の元にいるではないか。


―――インデックスが。
870 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/08(火) 00:18:33.56 ID:MAc1vAM0
相手の目的はインデックス。

恐らく7〜8割方そんなところだろう。


土御門「その場所を俺の携帯に転送しろ」

『了解』

土御門「お疲れさん」

土御門は一言そっけない言葉を与えた後すぐに、相手の返答も聞かずに通話を切った。

そして携帯に目を落としながら、今の状況とこれから己がやるべき事は何かを瞬時に考えていく。


一方通行とインデックス。

見捨てることも出来る。
トカゲの尻尾のように切り捨てる事もだ。

一方通行自身も支援を求めてはいないだろう。

己に降りかかった火の粉は己の手だけで振り払い乗り越える。
それが出来なければ死ぬだけ。

それが彼ら暗部に属する者達の暗黙のルールであり掟だ。


だが、もし彼が負けてしまえば失う物が余りにも大きすぎる。

まず一方通行。

彼はこちら側の要でもある。

その気になれば大悪魔に匹敵する程の力を行使できる彼はいわば最後の砦であり、

そして彼『そのもの』が学園都市を脅迫する重要な『ネタ』の一つでもあるのだ。

そんな彼が失われるのは余りにも痛い。


そしてインデックス―――。
871 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/08(火) 00:21:39.93 ID:MAc1vAM0
あの少女はそうそう誰かの手に渡ってはいけない『モノ』という事は説明する必要すらないだろう。
それに今ここで見捨てたことが後々にイギリス側に知られれば厄介なことになる。

土御門はイギリス清教の『必要悪の教会』にも所属している。

学園都市で暗部に属しアレイスターと深く繋がりつつ、
イギリス国旗に忠誠を誓った魔術師でもあるのだ。

今までその状況を上手く使って二大勢力のクッションとパイプとなったり、
双方の情報を手に入れて己自身の目的にも利用してきた。


だが今この時、『それ』は土御門にとって大きな枷にもなっていた。


使える者は多少の不義に目を瞑ってでも飼い続ける『寛容』なイギリス清教でも、
今のこの世界情勢で『インデックスを見捨てた』という不義を働いた者に対しては慈悲を見せないだろう。

インデックスを見捨てると言う事は、今の状況において究極の『不忠』となり得る。

開戦間近の敵国への核弾頭と最新技術の漏洩を、
『私利私欲』の為に見てみぬ振りする『兵』をそのまま置いておく国がどこにあろうか。

必要悪の教会から除名され、重要な情報ルートが切断されるかもしれない。
ましてや『報復と責任』という名目で刺客を送り込んでくる可能性すらある。


土御門「……」


取るべき行動は決まっている。

今のこの潮岸の件は元々スペアプランであり、時間的余裕があったからやっているだけだ。


優先すべきはもちろん。


一方通行の支援だ。
872 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/08(火) 00:22:58.31 ID:MAc1vAM0
土御門のこの決断の理由は、前述の事の他にも一つある。


『禁書目録』としてではなくインデックスという一人の少女と、上条当麻の関係。


土御門にとって上条当麻は唯一無比の親友だ。
殺伐とした裏の世界で知り合った戦仲間ではなく、本物の『友人』なのだ。


その友人の想い人が危機に晒されているというのなら―――。


土御門「(しょうがねえ―――)」


―――戦うのが当たり前だ。


友人の大切な想い人を見捨てる程。


土御門の心は腐ってはいない。



土御門「(―――かみやん、一肌脱いでやるぜよ)」
873 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/08(火) 00:25:10.49 ID:MAc1vAM0
これは土御門のアイデンティティーの問題でもある。

ここで無視して手を打たなければ、最後の一線を越えてしまう気がしたのだ。

それを越えてしまったら後は果てなく堕ちて行き。

光を浴びる資格を。


そして自分自身が守ろうとしている少女の前に。


舞夏の前に立つ資格すら失ってしまう気がしたのだ。


どれだけ血に染まり、闇に落ちたとしても土御門はそこだけは失いたくなかった。

血生臭い事も必要とあらば易々とやってのける彼の中に残った最後の良識。


偽善と言われようと、それはタダのワガママ、エゴだと言われようが知ったことでは無い。


守りたいものは己自身の手で守り、それが無理なら諦めろという暗部のルールなんかクソ喰らえだ。


それに上条はそんな闇ではなく光の住人だ。


元々暗部のルールなんぞ当てはめる必要も無い。


土御門「(上等だ)」


―――かけがえのない表の世界の『親友』の為に。


それ以上の理由があるだろうか。


戦う事に。
874 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/08(火) 00:27:39.23 ID:MAc1vAM0
土御門「聞け」

土御門が三人へ向けて重く鋭い声色で口を開いた。


土御門「アクセラレータが第七学区で何者かと交戦中だ」


土御門「目的はインデックスと考えるのが妥当だぜよ」


その言葉を聞いて海原と結標の表情が固まった。


魔術師である海原はもちろん、
色々と話を聞かされている結標もインデックスという少女がとんでもなく重要な存在というのは何となく知っている。

何せ二ヵ月半前の動乱も、あの少女を中心にして引き起こされたと言っても過言では無いからだ。


その一方でいま一つ状況が掴めていない麦野は怪訝な表情を浮かべていた。


麦野「で?アクセラレータなら大丈夫でしょ?」


その麦野問いに三人は沈黙を返した。

インデックスを中心にして引き起こされる争乱、
そして彼女が引き付ける敵のスケールは徐々にインフレを起こしてきたのだ。

そして二ヶ月半前に悪魔サイドと絡み合い、そのインフレは超新星の如く遂に大爆発を起こした。


今となっては、一方通行よりも強い敵が突如出現しても何らおかしな事ではないのだ。
875 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/08(火) 00:28:33.38 ID:MAc1vAM0
麦野「何黙ってんだよ」

三人の沈黙に麦野が苛立ちの篭った声を上げた。


土御門「ともかく、俺は行くぜよ」


土御門「役に立たねえかもしれねえが、脇役には脇役の活躍の仕方があるぜよ」


土御門「俺には力はねえが頭があるしな」

この知識があれば一方通行の役に立てるかもしれない。
相手が悪魔や魔術師等ならば尚更だ。


土御門はそれだけ言うと、三人の返答を聞かずに踵を返し下階へ繋がる階段の方へゆっくりと歩み進んでいった。


麦野「おい!!何考えてんだよ!!!この期に及んでお仲間ゴッコかよ!!?」


麦野がその土御門の背中へ叫ぶも、彼は無視してそのまま進んでいった。


海原「……全く……仕方ないな」


海原が小さく呆れたように呟くと、その土御門の背中の後を追った。


結標「しょうがないわね……待ちな!!私が送ってやる!!!」
876 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/08(火) 00:30:11.65 ID:MAc1vAM0
結標が発した声で海原と土御門が振り返り、

土御門「そいつは助かるぜよ」

海原「到着した時にはもう終わってたなんて惨めですしね」

口を小さく綻ばせながら言葉を投げ返した。


そして三人はゆっくりと麦野の方へ向き、ニヤニヤと嫌味な笑みを浮かべた。


麦野「……な、何?私は行かないわよ!!」

別に気にすることも無いのだろうが、
自分が少数派であるこの現状が少し気まずい。


土御門「なあ、メルトダウナー」

麦野「あぁ゛!!?」

土御門「付いて来ればよ、さっきのとは比べ物にならねえ程に暴れられるかもしれねえぜよ?」

海原「もっと力を確かめたいでしょう?」

麦野「……!!」

麦野の表情が揺らぐ。

確かに。

確かにそれは良い『条件』だ。

麦野「……」

麦野「……」

麦野「……」


土御門「急いでんだ。早く決めt」


麦野「わぁったよ!!!!行くわよ!!!!行きゃあいいんでしょうが!!!」
877 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/08(火) 00:32:43.41 ID:MAc1vAM0
土御門「はっはー助かったぜよ」

海原「さすがに僕等だけじゃ心もとないですしね」

麦野「チッ」

結標「ちょっと。ちょっといい?」

結標が軍用ライトを突き出し、三人の間を割るようにして口を開いた。


土御門「ん?」


結標「まず私は送るだけよ。戦いに参加するかは相手を見てから決めるから」

土御門「まあお前は後ろで見てな。全員を一気に避難させる必要もあるかもだしな」


結標「それもあるけど、ブチギレたアイツやそこの『破壊大帝』サマの戦いの中に巻き込まれたくも無いのよね」

麦野がピクリと腹立たしげに眉を動かした。


結標「それとまた前の『怪物』みたいなのに会うのは嫌だから」

前の『怪物』とは、圧倒的な恐怖で彼女にトラウマを植え付けたバージルの事を言っているのだろう。


土御門「はは……まあそのレベルの奴にそう頻繁に会うことはさすがにねえと思うぜよ」

海原「ま、その時は全部諦めて逃げるが良しですよ」


麦野「は?誰が来ようと逃げるなんざありえないっつーの」

麦野がアラストルを肩に乗せ、挑発的な笑みを浮かべるが。


土御門「いや、お前も会っただろ?第23学区でな」

海原「あの『赤いコート』の男に勝てると思いますか?」


麦野「……へぁ?」

指摘を受けて素っ頓狂な声を上げた。

『無理』

その一言が彼女の頭の中で木霊する。
878 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/08(火) 00:35:52.95 ID:MAc1vAM0
麦野「……」

確かに、今の自分はあの時とは比べ物にならない力を有している。

だがあの時あの男が彼女の目の前で行使した『力』は、今彼女が有している力を遥かに凌駕していた。

『アレ』が何なのか全く理解ができないが、頭よりももっと深淵の『何か』が『到底勝てない』と叫んでいるのだ。


麦野「……あの男……来るの?」


ただ、戦う戦わない以前にあの男自体にも興味がある。
良く分からないが、もっと知りたいのだ。

土御門「いやいや例え話だぜよ。あのレベルが来たら潔く諦めましょうってこった」

結標「それと私が言ってんのは『そいつ』じゃなくて『色違い』の『青い』方だから」


麦野「???」


海原「ま、話は後です。今はさっさと行きましょう」

これ以上話を続けると余計にややこしくなり更に時間を潰してしまうだろう。
海原は軽く手を叩き場の空気を切り替えた。


そして不機嫌そうにブツブツ文句を垂れる麦野を含めた三人は、
結標の座標移動で現地へと向かっていった。



四人は心にも思っていなかっただろう。


まさかその例え話の『男』が本当に目の前に現れるとは―――。


―――それも『青い』方が。



―――
879 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/08(火) 00:36:56.45 ID:MAc1vAM0
今日は少し短いですがここまで。
次は明日の夜11時半頃に投下予定です。
880 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/08(火) 00:37:33.20 ID:aUaK4.s0
この4人が生存するシーンが思い浮かばない
881 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/08(火) 00:38:04.45 ID:aUaK4.s0
乙を忘れるとは

作者乙です
882 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/08(火) 00:41:23.10 ID:3FxZimco
乙なんだよ!
883 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/08(火) 00:45:12.59 ID:SaGEuCEo

ってことはアレイスターは・・・うーん気になる
むぎのんも対峙したら動けなくなるな
目を合わせれば腰抜かすな
884 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/08(火) 00:45:55.04 ID:Skj8rIgo
青い方呼ばわりかww
885 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/08(火) 00:48:59.48 ID:sFc.ICko
乙!
886 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/08(火) 07:02:10.11 ID:MflWzSE0
乙!
朝からテンション上がったヽ(´ヮ`)ゝ♪
887 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/08(火) 08:54:29.64 ID:UfeJ/mM0
乙!
相変わらず良いとこで切りますな。
888 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/08(火) 23:56:41.68 ID:MAc1vAM0
―――

フォルトゥナ郊外。

とある丘の上にある半ば崩れかけている古い塔。
遥か昔に打ち捨てられ、そして忘れ去られたかつての城塞の一部だ。

その上に立つ赤いマントと純白のスーツを身に纏った一人の壮年の男。
逆立った黒髪に立派な口ひげ。

キューバ産高級葉巻の煙を燻らせながら、戦火に包まれる遠くのフォルトゥナの街並みを静かに眺めていた。

アリウス「……」

今、彼が放った悪魔の軍勢が街を攻撃しつつ『ある人物』を見つけようと捜索している。

『エサ』を見つけようと。

後々の保険にもなるし魔剣スパーダを所有するネロをしかるべき『場所』に、こちらの土俵へ誘い込む重要な『エサ』でもある。


魔剣スパーダを奪い取る為の土俵へ。


その力を、スパーダの力を手に入れるのもアリウスの目的の一つでもある。

覇王、魔帝、そしてスパーダ。
この三つを手に入れ全てを超越した存在になる事が彼の最終目的なのだ。


そこまで行けば天界と人間界はおろか、他の数多の世界、そして魔界すらも彼の手の中に落ちる。


彼に並ぶ物は誰一人存在しなくなる。


人間界生まれの『全能の神』の誕生だ。


覇王はアリウスが己の手で復活させ手に入れる。
魔帝の『創造』はフィアンマから最終的に奪う予定だ。


そしてスパーダの力は―――。
889 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/09(水) 00:05:03.29 ID:PMjEk2I0
例えアリウスが覇王と同化しその強大な力を宿そうと、魔剣スパーダは到底扱えないだろう。

使い手にはそれ相応の力が必要なのだが、もう一つの条件が『主』として認められることだ。
今、完全に覚醒している魔剣スパーダは、己が認めた『主』以外の手の中には納まらない。

一時的に持つこと自体は前回のウィンザーの時のようにできるだろうが、その力を制御下に置くことは不可能だ。


ではどうすればいいか。


まず『スパーダの血族の力』を宿していることが条件だが、
単純にそれだけでは無いということが二ヶ月半前に実証されてしまった。

ダンテが正式に主として認めていられていなかったのは、
魔剣スパーダが彼の力はまだ不十分と認識していた とアリウスは長年推測していたのだが、

ダンテ程の力を持っていないネロが正式に『主』として認められた事により、その『力の量』説は覆された。

魔剣スパーダが『主』として認める基準がわからなくなり、アリウスは頭を悩ませた。


だが人間随一の頭脳を持つ彼はこの程度の問題では頓挫しなかった。

主として認める『理由』がわからなくても、彼は魔剣スパーダの主となる方法を思いついたのだ。


―――既に『主』として認められている『者』の力を奪えば良い と。


だが今のネロから武力で奪うのは、例え覇王の力を宿していても厳しいものがある。
正面から激突すればこちらもかなりの傷を負ってしまうだろう。


しかし問題は無い。


もう『一人』、『主』として認められていた者がいるではないか。


―――『スパーダ』本人が。
890 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/09(水) 00:13:12.29 ID:PMjEk2I0
スパーダ。


人間界にはいない。

魔界にもいない。

もちろん天界にも。


誰一人スパーダが今どこにいるか、そして生きているのかは知らないだろう。

アリウスも同じく知らない。


だが彼は、スパーダ本人の『力』の在り処は知っている。


それは『人間界と魔界の狭間』の奥深く―――。



かつての大戦の際、魔界と人間界は『直接』繋がった。

それも今のように『小さな穴』ではなく、世界そのものが重なりつつあったのだ。
あの悪魔の移動術を使い空間の亀裂を介さずとも、その足で直に歩を進めて侵入できる程だったのだ。

魔界『そのもの』が人間界に雪崩れ込んできていたのだ。
太陽は陰り、空は漆黒に包まれ、緑の原は黒ずんだ荒野と変わり、大海は血の海へと姿を変えた。

最早人間界が完全に魔界に取り込まれるのも時間の問題だったのだ。


その現象を食い止めたのがスパーダだ。

彼はその『大穴』を塞ぎ封印したのだ。


そしてその『大穴』を封印する際、スパーダは己の『大半の力』をその礎として『埋め込んだ』。

大穴を己の力で堰き止め、その周りの空間を閻魔刀で捻じ曲げ固めて巨大な堤防を築いた。


例えるならばスパーダの力は土嚢の中に詰め込まれた土砂であり、
閻魔刀がそれを包む袋と固定する縄を作ったということだ。
891 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/09(水) 00:23:34.83 ID:PMjEk2I0
今現在もスパーダ本人の『力』は堤防として存在している。


それを強引に引き出して手に入れると言うことは、かの『大穴』の封が解けるのを意味するが、
アリウスにとっては大した問題では無い。


どうせ近い内に自然に解けてしまうのだから。


その封印はかなり強固であり、2000年もの間誰も手を出そうとはしなかった。
拘束を解くには莫大な力、それこそスパーダレベルの力が必要だったのだ。

だが今は違う。

二ヶ月半前から始まった一連の動乱とそこから来る負荷により、今やその拘束は痛み傾いている。

魔帝とダンテ・バージル・ネロの総力戦。
その圧倒的な力の激突は、漏れ出した余波だけでこの拘束に大きな亀裂を入れてしまったのだ。


そしてその後のイギリスを中心とする人間界の歪みも、
アリウス自身が引き起こしたウィンザーの事件が決め手となり最早修復不可能だ。

今や、『界』の自己治癒能力は追いついていない。

急速に歪みが広がりつつあり、ほっといてもいずれ拘束は崩壊し封印は解ける。


そして最終的にまた2000年前と同じく大穴が開く。


これは逐一観測し続けてきたアリウスだからこそ知っている事実だ。
恐らくこの事を知っている者は彼とフィアンマ以外にはいないだろう。


皮肉な事にアリウスとフィアンマが動かなくてもどの道、
近い内に人間界は壮絶な災厄に覆い尽くされる運命なのだ。
892 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/09(水) 00:28:07.06 ID:PMjEk2I0
結果が同じなのならば、こちらから手を打ってその『封印の残骸』、
スパーダの力を再利用しようというのがアリウスの『親切心』だ。


また爆発的な封の崩壊の反動により、2000年前以上よりも巨大な穴が開くかもしれないが、
アリウスにとってそれは好都合だ。

今とは比べ物にならない規模の悪魔の軍勢が人間界に一気に侵入することができ、
手駒の補充にも事欠かなくなる。

それに同じく直接繋がった穴から降臨してきた天界の軍勢と鉢合わせして、
より混沌とした大乱戦となるだろう。


他の者の目を逸らさせる『隠れ蓑』が更に強固で大きな物になるのだ。

その影でアリウスは悠々と計画を進められる。



結果的に人間界は黙示録すら生ぬるい程の災厄に見舞われるが、アリウスにとっては知ったことでは無い。

戦わずしてスパーダの力を宿すことが出来るのだ。
その為ならば安い代償だ。

いや、アリウスにとって『代償』ですらない。

全ては『全能』になる為。


スパーダの力をこの身に宿せば、魔剣スパーダもほぼ抵抗なくしてこの手に納まるかもしれない。
もしそうで無くとも、ネロから力ずくで奪えば良い。

覇王とスパーダの力を手に入れたなら、ネロと正面からぶつかっても確実に勝てるはずだ。


―――魔剣スパーダをも所有し、その力を制御下に置ければ。


ダンテやバージルに打ち勝つのも絵空事ではなくなる。
『竜王の顎』と結合したフィアンマを倒し『創造』を奪い取るのなんか赤子の手を捻るようなものだ。


そして最後に立っているのは―――。


―――『全能』となったアリウスのみ。
893 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/09(水) 00:29:54.49 ID:PMjEk2I0
アリウス。

人間界生まれの一人の人間でありながら、全ての存在の頂点を目指す『挑戦者』。


『弱き人間』

『矮小なる存在』


そうやって人間を卑下してきた者達もいつかは彼の前に平伏す事となる。
壮絶なる下克上だ。


アリウス「……」


アリウスは以前アレイスターに言った。

それはなにげの無い一言と捕えられたかもしれない。


だが彼の行動と信念は全てあの言葉に集約されているのだ。



―――最後に勝つのは『人間』だ。



―――という言葉に。
894 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/09(水) 00:32:16.07 ID:PMjEk2I0
アリウスは遠い目で、破壊から生じた黒煙が幾本も立ち昇っているフォルトゥナの街を眺めていた。


今これは時間との勝負だ。


ネロが帰還する前に目的を果たさなければいけない。
当然、即座にネロにも連絡が伝わっているだろう。

いつ戻ってくるかわからない。

トリッシュに送られてやってくるかもしれないし、
不慣れな悪魔式の移動術を無理やり使ってでも来る可能性もある。

ネロはあの移動術が『使えない』という訳ではなく、あくまで『苦手』なだけあるはずだ。

ダンテと同じく下手をすれば予想外の地点に飛ばされたり、
穴の調整をミスして周囲を大きく破壊する可能性もある為使っていないだけだろう。

力が大きすぎる為の弊害だろう。
幼少期から使っていたバージルとは違い、不慣れな事に手古摺って己の力を持て余してしまうのだ。

アリウス「……」

だが、今の状況を考えればネロは強引に使うかもしれない。
何が何でも、とにかくすぐにここに来ようとしている筈だ。

アリウス「うむ……」

アリウスは少し眉を顰め、小さく何かを確認するかのように声を漏らした。


もっと急がなければならない。
攻撃ではなく捜索に費やす人員を更に増やした方が良いかもしれない。


アリウス「……む…」

しかし後の戦いの事を考えると、ここで戦力を消費するのは好ましくないのだ。
895 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/09(水) 00:37:00.32 ID:PMjEk2I0
かの大穴の『封』が解ければいくらでも『兵』は補充できるのだが、
それまではできるだけ温存しなければならないのだ。

天界の軍勢が降りてくるのは、魔界の大穴の『封』が解ける前だ。

つまり、天界を誘い出す際は今アリウスが従えている悪魔達だけで大暴れさせる必要があるのだ。
その悪魔達の数が足りなかったら天界から降臨する兵数も当然小規模なものとなる。

それは何としてでも避けたい。

天界と魔界の諸王諸神達の、目を逸らす事ができる程の隠れ蓑を作り出す必要がある以上、
出来る限り大きな争乱を引き起こさなければならないのだ。


アリウス「……」


それに今戦っているフォルトゥナの騎士達。

例え全盛期からかなり力が衰えとはいえ、腐っても対悪魔を極めた最精鋭の強者達だ。

アリウスはフォルトゥナに2000を越える悪魔の軍勢を放った。
それもフロストやアサルト等の精兵達だ。


これ程の規模なら対悪魔防御を固め始めたロンドンでさえ陥落させる事ができるだろう。
(神裂・ステイル、シェリーや騎士団長等がいなければの話だが)


だがそれ程の軍勢も、150足らずの騎士達により今やその数は半数にまで減っている。
騎士達の損害は多くても四分の一程度だろうか。

完璧な奇襲であったにもかかわらず、虐殺された市民の数も思ったよりは多くない。

戦いの情勢も拮抗しているどころか、徐々にフォルトゥナ側が体勢を持ち直しつつある。

アリウスは目的の『者』拉致するついでに、
後に邪魔になるであろうフォルトゥナ騎士団を壊滅させようと目論んでいたのだが、それはどうやら難しいらしい。


そしてこれ以上兵数を増やしても無駄にこちらの損害を多くするだけだろう。


アリウス「……しかたあるまい」
896 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/09(水) 00:40:34.55 ID:PMjEk2I0
アリウスは軽く地面を足で叩いた。


すると今立っている崩れた塔の淵、
アリウスの背後2m程の場所に黒い円が浮かび上がり、3人の女性が出現した。

3体とも襟飾りの付いた赤と白のタイトなスーツを身に纏い、
顔には鳥を模した仮面を被っている。


アリウスの『秘書』だ。


だがその正体は人間ではない。


―――人造悪魔。


『セクレタリー』

セクレタリーとは、アリウスが身辺の護衛を勤めさせる為に作った人造悪魔達だ。

以前イギリスに放った最高傑作の『χ』と比べればその力は及ばないが、
戦闘能力は大悪魔に匹敵するいわば最精鋭の『親衛隊』だ。


生産数は全20体程度に過ぎないが、単体でも戦局を変える力を有しているアリウスの切り札の一つだ。
897 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/09(水) 00:42:31.25 ID:PMjEk2I0
アリウス「捜索しろ」

アリウスがそっけなく背後の3体のセクレタリーへと声を放った。

彼はフォルトゥナ殲滅は諦め、少数精鋭による目標の奪取のみに集中する事にした。
フォルトゥナ騎士にセクレタリーが倒されるという懸念もあったが、出し惜しみしている場合では無いだろう。

セクレタリー達は小さく頷いた後、
瞬時に跳躍して猛烈な速度でフォルトゥナ市街へ向けて駆けて行った。


アリウス「……急いだ方がいいか」


アリウスは内心少し焦り始めていた。
嫌な予感がする。

この感覚の原因は当然かの『者』だ。

その者の凄まじい憤怒と殺気がこの場に向けられている。


もうすぐやってくるのだろう。


フォルトゥナ史上最強の『騎士』が―――。


―――スパーダの孫が―――。


鉢合わせしたら最期だ。


それまでに何としても目的を達さねば。


―――
898 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/09(水) 00:46:09.09 ID:PMjEk2I0
―――

窓の無いビル。


この薄暗いビル内で今、一人の人間が『最強』の男と対峙していた。

水槽の前、アレイスターの正面5m程の所に立つバージル。
彼の体から放たれている圧倒的なオーラ。
充満する抗いようの無い殺意。


アレイスター「―――な……」


突然のその男の出現により、アレイスターは明らかに動揺していた。

なぜバージルが己の下に、しかもこのタイミングで。
アレイスターにはその理由が見出せなかった。


だが少なくとも『アレイスターを殺す』というのが目的では無いらしい。
いや、それも目的の一つかもしれないが、こうして前に立ち姿を見せるのなら別の目的もあるはずだ。


もしアレイスターをタダ殺すつもりで来たのなら、バージルは即座に彼を切り捨てていただろう。
アレイスターは、己の身に何が起こったか理解する暇も無く絶命していたはずだ。

それをしないでこうして立っているということは、『現時点』ではアレイスターを殺す気は無いということだ。

とはいえ、とても安心できる状態ではない。


この向けられている圧倒的な殺意。


少なくとも友好的ではない。
899 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/09(水) 00:47:16.42 ID:PMjEk2I0
アレイスター「……何の用だ?」


アレイスターはバージルに向け、静かに口を開く。
その声はいつもの無感情のモノとは違い、彼の焦燥感がありありと滲み出ていた。


バージルは無言のまま、アレイスターの前に浮かび上がっているホログラム映像に目を移した。


一方はローマ正教内のヴァチカンに関する通信を傍受している画面、
もう一方は一方通行とフィアンマの戦いの映像。


アレイスター「……答えろ。君ともあろう者が世間話しをしに来た訳でもあるまい」


アレイスターは再度言葉を告げる。

そしてようやくバージルが返答したが。



バージル「禁書目録をフィアンマに引き渡せ」



アレイスター「―――何だと?」


返ってきた答えはあまりにも予想外の物だった。
900 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/09(水) 00:50:07.07 ID:y4.J8b6o
な・・・んだと・・・・!?
901 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/09(水) 00:52:56.72 ID:PMjEk2I0
アレイスター「―――」

余りのことにアレイスターは言葉を失った。


アレイスター「(この男―――)」


目的が何なのかはわからない。
だがこれだけは言える。

現時点において、バージルはアレイスターのプランの邪魔をしている『敵』だ。


右手にある杖を意識し、その握る手に力が入るが。


バージル「―――無駄だ」


バージルは悠然と立ったまま、僅かに身構えたアレイスターに鋭く言い放った。


アレイスター「―――」


そう、無駄だ。

敵と認識したからなんだ?

『戦う』という道を選べば結果は一つ。

いくら本気を出せば大天使や大悪魔クラスの力を行使できるアレイスターでも、相手があまりにも悪すぎる。


相手はそこらの大悪魔クラスなど軽く一太刀で屠ってしまう正真正銘の『化物』。


アレイスターが攻撃しようと動いた瞬間、彼の体は寸断されるだろう。


あるのはこの頭が転げ落ちるという未来。

ただそれだけだ。
902 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/09(水) 00:59:08.29 ID:PMjEk2I0
ここでアレイスターは死ぬ訳には行かない。

もうあと一歩なのだ。
人生を、全てを賭けた目的の成就はもうすぐなのだ。

目的が遂げられた『後』ならば、こんな命など幾らでも差し出そう。


『成就』と引き換えならば、喜んで命を差し出そう。


だが確実な己の死でプランが完全に消滅してしまう、結果が決まっている戦いなど受け入られるわけが無い。


アレイスター「………」

確かに今、フィアンマに禁書目録を渡してしまえば大きな障害を生み出すことになる。
しかしだからといってプランが成し遂げられないということではない。


ならば選ぶ答えは当然。


アレイスター「………………………良いだろう…………………了解した」


アレイスターは杖を握る手をゆっくりと開いた。
ねじくれた杖がふわりと水槽の中で浮く。


アレイスター「だが一つ」


アレイスターがそのまま言葉を続ける。


アレイスター「一方通行を失う訳にはいかない。その為の手は打たせてもらう」
903 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/09(水) 01:02:30.03 ID:PMjEk2I0
バージル「好きにしろ」


バージルはあっさりと即答した。


アレイスター「……うむ」


邪魔をしなければ別にどうだって良いということだろう。

邪魔をしなければだ。

『障害』と認識させなければバージルは見向きもしないだろう。
ならば方法はある。

一方通行を無力化させる方法が。


バージルの足元に青い円が浮かび上がる。
どうやら用はこれだけだったということだ。


アレイスター「待て。いくつか聞きたいことがある」


アレイスターが呼び止める。

バージルは無言のまま再びアレイスターを見据えた。
返事はないが、足元の円が消えたのを見ると、話くらいは聞いてくれるらしい。


アレイスター「……答えなくないのならば聞き流してくれ」



アレイスター「―――なぜだ?この行動の理由は?」


アレイスター「君の事だ。フィアンマとアリウスが何を企んでいるのか知っているのだろう?」



バージル「……」
904 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/09(水) 01:06:23.28 ID:PMjEk2I0
数秒間の沈黙。

バージルは答えなかった。

彼は相変わらずの無表情のまま、ただ無言を返す。


アレイスター「(……)」


フィアンマとアリウスのやろうとしていることは、明らかにスパーダの一族そのものと敵対する行為だ。
彼らの計画では、スパーダ一族の殲滅が最重要目的の一つでもある。

バージルならば当然それはもう知っているだろう。

ではなぜ即刻その二人を排除しようとはしないのだ?

更に、逆に放置するどころかこうして影で誘導をしているとは。


まるで自ら敵を育てているような行動だ。
二ヵ月半前の魔帝の時のように、あえて出現させて完全に滅せさせようとしているのだろうか。


―――だがそれだと腑に落ちない。


それが目的ならば、こんな回りくどいことをする必要は無いはずだ。

前と同じ目的なら、即刻アリウスの所に行って無理やり覇王の封印を解かせれば良い。
フィアンマについても、バージル本人が幻想殺しと禁書目録を直接届けて力ずくでさっさとやらせれば良いのだ。

二ヵ月半前と同じく自らが表に立って強引に推し進めれば良いのではないのか。



つまりこうして気付かれないように影で動いているということは、二ヵ月半前の件とは目的も状況も違うのだ。

一応『敵』の排除も目的の一つかもしれないが、それよりも重要な狙いが他にあるということだ。
905 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/09(水) 01:16:36.27 ID:PMjEk2I0
アレイスター「……」

アレイスターは頭の中で、フィアンマとアリウスがこれからやろうとしている事、
そしてその行程を一つずつ確認していく。

あの二人をあえて野放しにしているのなら、
バージルの狙いはその二人がこれから取る行動のどれかと関係があるはずなのだ。


アレイスター「……」

アレイスターは二人の全てを知っている訳ではない。
この考察には多分の推測が含まれている。


だが最終目的についてはかなり確実性の高い予想を建てている。
そこへ自分を置いて、『己ならどうするか』を考えれば自ずと『やるべき』事が浮かび上がってくる。


アレイスター「―――まさか……」


そして。

並べていったフィアンマとアリウスがこれからする行程。

その中のとある『部分』にアレイスターの思考が引っかかる―――。


―――フィアンマは天界と人間界を『物理的に直接』繋げようとしている。


魔術を極めたアレイスターもかつて似たような事について研究したことがある。

天界と人間界を直接繋げるには、天界側の協力も必要なのだ。

天界から『鍵』を受け取る必要があるのだ。

この部分がバージルが己の手で強引にやろうとしない理由にも合致する。


もしバージルが表立ってそんなことを推し進めれば、
当然天界は警戒して協力などしないはずだ。


バージルの行動の全てを裏付ける理由としては少し弱い気もするが、これなら納得が行く部分も多い。
906 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/09(水) 01:20:30.97 ID:PMjEk2I0
顔の前に表示されているホログラム映像に一瞬目を移した後、
アレイスターは再びバージルへ向けて言葉を飛ばした。

アレイスター「確認したい……今起こっているヴァチカンの件、君が絡んでいるのではないか?」


バージルは無言のまま軽く鼻を鳴らした。
小馬鹿にするように。


アレイスター「―――成る程……」

そのバージルの反応、どう見ても『否定』ではない。

恐らく『肯定』。

そしてこの答えがアレイスターの頭の中で組みあがった推測を更に確たるものにした。

衝突を誘発させたのもさっさと天界と人間界の穴を繋げさせる為だろう。


アレイスター「……」


だがここから先はアレイスターの頭脳をもってしても推測できなかった。


―――ではなぜ穴を繋げさせようとする?


―――穴を繋げてからどうするというのだ?


情報が足らなすぎる。

彼の思考は壁にぶち当ってしまった。
907 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/09(水) 01:29:01.72 ID:PMjEk2I0
これがダンテやトリッシュの起こした行動ならば、
最終的には人間にとって好ましいことになる為心配はいらないが。
(そもそもあの二人がこんなリスキーなことをするはずも無いが)


バージルとなると話は別だ。


二ヵ月半前だって、結果的にはそうなったものの彼自身は人間界の為に動いていた訳ではない。
以前と同じく未だに『力』を求めているのならば、
この一連の件の結果は人間界にとって最悪の展開になり得る可能性だって多々ある。

彼が心変わりしたのならば別だが、そんな事などわかる訳も無いし情報も何も無い。

彼がダンテと同じく『人間の為に動いている』のならば喜ばしいことだが。


―――そんな夢のような話など『現実』にある訳が無い。


アレイスター「……(この男……)」


アレイスターは再認識する。

二ヵ月半前でもそうだったが。

この『男』。

『バージル』は今までアレイスターが認識した中で最大のイレギュラーであり―――。


―――『脅威』だ。


行動の予測が全くつかない。
恐らくフィアンマとアリウスの二人もこの神出鬼没のバージルを最大の脅威と見ているだろう。


放って置くとプランどころではなくなる。


しかし、それを再認識したところでどうしようもない。

この『障害』はアレイスターにとって大きすぎるのだ。
908 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/09(水) 01:38:09.59 ID:PMjEk2I0
アレイスター「……」

恐らく今この場でアレイスター自身を殺さないのも何らかの理由があるのだろう。

わざわざこうして忠告するのではなく、即刻この首を跳ねてしまえば良いのにそうしようとはしない。

つまり彼もまたバージルの思い描く計画の歯車の一つとして見られているかもしれない。
アレイスターがこれからやろうとしている事の内どれかも利用しようと考えているのだろうか。

だがこう行動が予測できない相手じゃ断言もできない。


アレイスター「(参ったな……本当に参った)」


この目の前の男、バージルの規格外のスケールの片鱗を見せ付けられ、
アレイスターは心の中で呆れたように苦笑してしまった。

いっそ考えるのをやめて全てを放棄した方が楽なのだろう と。

そんな事をするつもりなど微塵も無いが。


とその時だった。


バージルがふと顔をあげ、何も無い中空に視線を移した。
いや何かを見ているのではなく、どこかに耳を澄ませているような仕草だ。

そして口を開いた。



バージル「貴様が『呼んだ』のか?」



アレイスター「―――」


バージルが何に対してそう言っているのかアレイスターはすぐに察知した。

先ほど確認したばかりでは無いか。



―――トリッシュと幻想殺しがやって来るのだ。
909 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/09(水) 01:43:33.75 ID:PMjEk2I0
アレイスター「―――いや違う」


さっきまではあの二人の到着は好機と見ていた。
フィアンマを滅ぼさせようと考えていた。

さっきまではだ。


だがバージルが現れて状況は180度変わった。
今やアレイスターにとって、あの二人の到着は問題以外の何物でもない。


トリッシュと上条は確実に禁書目録を全力で守ろうとするだろう―――。


―――そしてフィアンマに禁書目録を引き渡そうとしているバージル。


アレイスター「(なんという事だ―――)」



結果がどうなるかは自明の理だ―――。



バージルはフンっと小バカにしているように小さく笑った。
いや、笑ったというのは声だけであり相変わらず凍て付くような無表情だったが。


そして彼の足元に青い円が浮かび上がる。


アレイスター「(―――マズイ)」


バージルは向かう気だ。


あの二人の『前』へ。
910 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/09(水) 01:55:52.59 ID:PMjEk2I0
アレイスター「(これは―――)」

プランを邪魔する気が無いのならば、そしてそれも歯車の一つならば上条には手を出さないと言える。

だがもしそうでなければ―――。

そしてもう一つ重大な事実がある。

フィアンマは『穴』を開けようとしているが―――。


―――その行為そのものに『幻想殺し』は必要『無い』のである。


アレイスター「(―――マズ過ぎる)」


つまりバージルが『幻想殺し』に手を出さないとは限らない。


アレイスター「待つんだ―――待て!!!!!」


アレイスターは円に沈みどこかへ行こうとしているバージルへ声を張り上げた。


アレイスター「手を出すな!!!!―――」


アレイスター「―――幻想殺しには手を出すなッッッ!!!!!」


叫び終わった後には既にバージルの姿は消えていた。


上条とトリッシュ。


そして彼らの前に立ち塞がるであろうバージル。



アレイスター「………………………………………なんという事だ」


果たしてどんな結果になるのだろうか。


最早アレイスターには全く予測できなかった。

―――
911 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/09(水) 01:58:03.19 ID:PMjEk2I0
今日はここまで。
次は金曜の夜中になる予定です。
912 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/09(水) 02:00:35.78 ID:Gm0Nn2AO
今日も乙!
アレイスターがこれほど涙目になるSSがいまだかつてあっただろうか。
913 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/09(水) 03:06:01.62 ID:oM//r5I0
乙です(´ω`)ゞ!!
六つ巴の抗争を華麗に書ききる文才が凄いよ!
914 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/09(水) 03:31:08.79 ID:y4.J8b6o
乙です!
珍しいアレイスターが見れたwwww
915 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/09(水) 08:01:11.61 ID:EniwPqo0
残り100を切ってるから一言だけ。
乙、終わりまで追いかけるぜ!!
916 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/09(水) 09:07:19.04 ID:BlTxTQDO
叫ぶアレイスターなんてここでしか見れないなwwwwww
これだけラスボスが集まってきてるのにそれでも災害扱いの兄貴はさすがだ
917 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/09(水) 11:25:49.02 ID:.qj0kiko
乙!
918 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/09(水) 21:14:10.18 ID:cucZfOI0

兄貴ってどこ行っても危険な存在なんだねぇwwww
919 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/10(木) 21:28:09.21 ID:HEYdhJs0
すげぇwwwwwwww久しぶりに覗いてみたらエラい量の続編がwwwwwwwwしかし完成度は揺るがないっていうwwwwwwwwww乙ww

ところで一気に読んで来たから見逃しちゃってるかもだけど、麦野っていつアラストル拾ったっけ?
920 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/10(木) 21:53:30.50 ID:3uIC34wo
>>919
たしかダンテが美琴貸したやつを美琴がなくす

土御門達が回収

そしてむぎのんへ・・・
921 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/10(木) 21:53:44.00 ID:8X9qkZY0
>>919
>>683あたり

土御門達が第23学区の廃墟からこっそり回収

潮岸襲撃直前に麦野へ
922 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/10(木) 22:55:57.70 ID:jIicK52o
今更だけど
「幻想殺し『には』手を出すな」
そしてダンテが見たトリッシュの死相・・・

で昨日寝れなかったと報告してみる
923 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/11(金) 00:56:36.82 ID:MTrOlnI0
>>920-921
サンクス
興奮のあまり数百のテキストをすっ飛ばしてたわwww
924 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/11(金) 02:29:04.63 ID:bObxgUAO
すげえ・・・
いつかVIPで見たタイトルだと思ったらまさか製作で続いていたとは・・・しかもめちゃくちゃながい・・・
ちょっとこれは眠れそうにないな
925 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/11(金) 22:03:18.81 ID:meHdxVw0
そういえばマヴカプ3にダンテ出るらしいな
926 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/11(金) 23:50:39.87 ID:uUHK8F.0
―――

学園都市、第七学区のとある路上。


普段は若者で賑わうこの通りも、今や壮絶な姿へと変貌し廃墟と化していた。
ビルは倒壊し道路は抉れ、ひん曲がった街頭が弱弱しく明滅している。


その淡い光が醸し出す哀しげな空気をかき乱す轟音。


白い修道服を着た少女を固く抱きかかえている白髪の少年。


そしてその少女を我が物とせんとする華奢な優男。


人間の『限界域』から半歩踏み出している、
最早半分『人外の化物』と言っても過言ではない二人が壮絶な戦いを繰り広げていた。


オレンジの光の衝撃波が一方通行を襲う。

捲りあげられた道路を更に抉り、破片を粉砕していく。

だが一方通行に到達した途端彼を包む『反射膜』にぶち当たり、
虹色の光に姿を変え辺りに弾けるように飛び散る。


一方「カッ―――!!!!」


そしてお返しとばかりに放たれる一方通行の攻撃。

大気のベクトルを操作して生み出された鋭く巨大なドリルのような数本の『竜巻』。

長さは40m太さは5m、先端からは圧縮された大気がプラズマ化して生じた超高温の光。


その先端がフィアンマに衝突する。
927 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/11(金) 23:56:30.47 ID:uUHK8F.0
巨大な超高温のドリルは何もかもを焼き削り、溶解した瓦礫や地面の破片が光の雫となって飛び散る。


だが『標的』に対しては全く効果は無かった。


フィアンマ「はは、面白いな」


余裕の篭った声が響く。

その爆心地に悠然と立っている傷一つ無いフィアンマから。



一方「チッ……」

さっきからこんな感じだ。

向こうの攻撃は一応防ぐことができるもののうまく反射できない。

本来なら反射膜に当たった途端、ベクトルが180度向きを変え正確に反転されるはずだ。
だがそれが機能しないのだ。

このように一応防げる、つまりベクトル操作が適用できるのになぜ上手く反射できない?

一方「(どォなってやがンだ……)」

さっきから同種の攻撃を何度も受け、そのたびに解析して法則を随時更新して適用している。
本来ならもう完璧に反射できてもおかしくないはず、いや反射できていなければならないはずなのだが。


バージル等『ふざけたレベル』の連中が使う解析すら『できない』程の規格外の力ならまだしも、

垣根帝督と戦った時と同様ある程度解析できるのならば、
何発か同種の攻撃を受ければ完璧に法則を見つけ出すことができるのだが。


何と言えば良いだろうか、例の『解析できない』力と解析できる力の『合いの子』とでも言えば良いだろうか。


解析『できている』のに『わからない』のだ。
928 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/11(金) 23:59:08.18 ID:uUHK8F.0
そしてこちらの攻撃を防いでいるのも恐らく同種の力だ。

上手く操作できない以上、その盾を強引に剥ぎ取るのは危険だ。
どんな現象を引き起こすかわからない。


一方「(クソ……めンどォな野郎だ……)」


更にその相手の様子を見てれば一目瞭然。
己と同様、相手はまだ本気を出し切ってはいない。


一しきり二人はお互いの力を図るような攻撃を交わらせた後、再び対峙した。
二人の距離は30m程。

敵意むき出しの憤り立った形相でフィアンマを睨みながら、
人類有数の演算能力を持つ頭脳をフル回転させこの状況を解析する一方通行。

そしてゆっくりと口を開く、尊大な薄ら笑いを浮かべているフィアンマ。


フィアンマ「お前のは中々便利だな」


フィアンマ「俺様のは少々使い勝手が悪くてな、注意して扱わないと色々と面倒な事になるんだ」


見るからに苛立ちが募って行く一方通行を無視して、彼は己の声に酔っているかのように言葉を続ける。


フィアンマ「だが『モノ』は良い」


フィアンマ「お前のような安っぽい『オマケ』とは格が違うんだ」


フィアンマ「まあ、お前の『それ』の―――」


フィアンマが右手をポケットから抜き一方通行へと向けた。
その瞬間、男の背中からオレンジ色の光が溢れる。



フィアンマ「―――『上位互換』といったところか」
929 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/12(土) 00:01:44.93 ID:.K0Oabo0
一方「(……チッ!!!!どィつもこィつも―――!!!!)」

嫌な予感しかしない。
今までの経験上、ああやって体から光が溢れた相手は皆規格外の強さだった。

半ばトラウマ的な物だ。


もしかするとこの男もそういう系統の力を使うのかもしれない。
ならば危険だ。

今までの一連の攻撃は反射膜で防げたが、油断は禁物だ。


この二ヵ月半でこの反射膜が全く役に立たない規格外の『怪物』と二度ほど戦い、
そして二度とも死ぬ一歩手前まで追い詰められたのだ。


一方「(ざっっっけンじゃねェ―――!!!!!!!)」


次の瞬間、フィアンマの放っていた光がより一層強くなった。


フィアンマ「―――おっと動かないでくれよ、その子に当たったらどうするんだ?」


そして彼の背後に浮かび上がる、より一層強いオレンジの光を放っている―――。


―――長さ5m程の『柱』のような『モノ』。


一方「―――」


ぞわりと悪寒が一方通行の全身を走る。


アレは『ヤバイ』 と。


フィアンマの背後に浮かび上がっている柱がゆらりと蠢めき、一方通行は察知する。


―――来る と。
930 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/12(土) 00:05:36.72 ID:.K0Oabo0
地面を蹴り、凄まじい速度で一気に横に跳ね回避行動を取る。
今の状態で可能である最大速で、その放たれた『何か』の射線を外れ、かわ―――。

―――そうとしたのだが。

間に合わなかった。


一方「―――」


一方通行の目に映ったのは、目の前に迫るオレンジの光の塊。

次の瞬間、その光の塊が『爆発』し彼の視野は一気にホワイトアウトする。

そしてさっきとは桁違いの凄まじい衝撃と爆風。
粉砕され粉上となって消し飛ぶビルや街頭。

衝撃と圧力が熱エネルギーへと変わり、
爆風の嵐から逃れたなんとか原型を留めていた構造物の表面を一瞬で溶解させる。


爆心地から半径100mは最早生命が生息できる環境ではなかった。

その中央に立つ、この破壊の元凶のフィアンマは当然何事も無かったかのように立っていたが。


フィアンマ「………………成る程、『その』領域まで達していたのか」


フィアンマがその灼熱の荒野を眺めながらぽつりと呟いた。


フィアンマ「謝ろうか。少しお前の事を『過小評価』していたよ」



その視線の先30mの場所にいる―――。


―――額から一筋の血を流しながらもフィアンマを鋭く睨んでいる―――。


―――背中から黒く巨大な影を噴出している少年へ。
931 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/12(土) 00:16:38.62 ID:.K0Oabo0
一方『―――ハッ……』

一方通行は軽く息を吐きながら笑った。

あの瞬間、彼は本能の危険信号を受け反射的に黒い翼を展開し、己を覆った。

案の定、フィアンマの攻撃は彼の反射膜を強引にそして易々とブチ破ってきた。

彼の頭部のみを狙って正確に。

翼を展開し盾にするのがあと一歩遅れていたら彼の頭は跡形も無く吹き飛んでいただろう。


一方『……』


何かの拍子で切ってしまったのか、
額から流れる血が彼の顎を通り落ち、
胸元に抱きかかえているインデックスの純白の修道服に赤い点をつける。

ポタリポタリと。


一方『……』


なぜかその光景が一方通行にとってかなり気分が悪い物だった。

今そんな事を考えている場合ではないのだが、
自分の薄汚い血でこの清らかな少女が汚れてしまうのがなんとも許せなかった。


それに苦痛に喘いでる少女の姿と、本能的に死や禍を連想させる血の赤い色。

この光景の何もかもが一方通行の心の奥底の怒りを刺激する物だった。

深淵に潜んでいるドス黒い憤怒を。

そして更に重なる。

打ち止めの姿と。


一方『クソが……最っっ高だ……』



一方『……最っっっ高にムナクソ悪いぜこンチクショウが』


最悪に気分が悪い。
932 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/12(土) 00:21:25.80 ID:.K0Oabo0
フィアンマの背中から生えている巨大な一本の『柱』。
いや、それは良く見ると『腕』だった。

表面はうろこのような物で覆われ、四本ある指の先には大きな鉤爪。
周囲にオレンジ色の光が纏わりついている。

トカゲ等の爬虫類、イグアナなどの手に似ているだろうか。
サイズはその数百倍、長さにして5m近くもあったが。


フィアンマ「―――どうだい?美しいだろう?」

フィアンマは自慢げな笑みを浮かべ、それに呼応して巨大な腕が揺れる。


一方『るせェ……もォうンざりだ』

そんなフィアンマに対して一方通行は吐き捨てた。

抱き抱えているインデックスの体温が徐々に上がっていく。
呼吸も更に激しくなり、鼓動も速くなってきている。
容態が悪化しつつあるのは一目瞭然だ。

一方『もォダメだ―――』

あの優男を生け捕りにする とさっきまで考えていたが、一方通行はもうそんな事を思ってはいなかった。
これほどの戦力を有する相手を生け捕りにするのは難しい。

それに。

それ以上に。


一方「ァーもォ良い。我慢できねェ―――ぎゃは―――」


このこみ上げてくる抑えようの無い怒り。

彼はそれに身を委ねる。


―――このクソッタレなゴミクズを。


―――あのゲス野郎の頭をこの手で即刻捻じ切れ というドス黒い叫びに。


一方『―――ブっっっっ殺してやンぜェエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!クソガァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!』
933 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/12(土) 00:25:41.19 ID:.K0Oabo0
もう良い。

全力で叩き潰す―――。

激怒した彼の咆哮が廃墟の中に木霊する。

学園都市最強の能力者の雄叫びが。


一方『オァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!!』


彼の背中からザラついた繊維のような無数の筋が天高く伸び、
そしてうねりながら絡み合い、表面が滑らかな黒い杭を何本も形成する。

大気が振るえ、周囲の地面・ビルも微振動し、細かなチリが舞い上がる。

以前、暴走した上条を止める際に使用したこの『滑らか』な黒い『杭』。


従来の雑な黒い翼を進化させた、今の彼が使うことが出来る最大戦力だ。


黒い杭の群れは挙動を確かめるかのように一度大きくうねり、そして扇状に広がった。
さながら孔雀が羽を広げたような光景だ。

孔雀のように鮮やかではなく漆黒だが。

高温に熱せられた周囲の淡い光を浴び、漆黒の杭は不気味な光沢を放ってる。


フィアンマ「へぇ……これはs」

フィアンマが少し驚いたような顔をして、何か言おうとした瞬間―――


一方『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!』


―――無数の黒い杭がぶち込まれた。

何本も何本も、音速の数十倍もの速度で続けて叩き込まる。
とてつもない運動エネルギーは衝突と共に熱エネルギーに変換され、
爆炎を吐き散らし地響きと共に粉塵を巻き上げ、優男の姿を覆い隠した。
934 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/12(土) 00:27:34.98 ID:UDfcjX.o
いいよいいよ
935 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/12(土) 00:29:14.30 ID:.K0Oabo0
一方『シッ―――』

黒い杭を瞬時に引き抜き、元の位置に引き戻す。
纏わり付いていた煙が糸を引くかのように黒い杭の航跡をなぞり、火の粉がワンテンポ遅れて舞い散る。


周囲の景色は高温の為揺らいでる。
ベクトル操作で熱風を逸らしていなければ、インデックスと彼はあっという間に炙り焼きになってしまう。
それどころか彼が操作して抑えこんでいなければ、高温の衝撃波は辺り一帯を吹き飛ばしていただろう。


一方『(避けやがったか―――)』


大量の杭が直撃する瞬間、フィアンマは姿を『消した』。
その原理は能力者の『テレポート』に似ているだろうか。
使っているベクトルはこれまた未知の物で、行き先を特定することはできなかったが。

一方『(なるほどなァ―――)』


避けたという事で、一つの好ましい事実がわかった。

今の攻撃は、あの優男にとって『避けなければならないモノ』だったということだ。


こちらの攻撃は相手にとって『脅威』。

それだけで充分だ。

フィアンマが使っている力は何らかの限度があり、こちらの攻撃を防ぎ続けるとマズイのか。
限界に達すると力が使えなくなったりでもするのだろうか。

それとも防ぐことすら出来ないのか。

どちらにせよ、相手がこちらの攻撃を受けるのを嫌がっている。
ならばそこを徹底的に突くのが一番近い道だ。


ブチ殺すのに。
936 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/12(土) 00:36:04.44 ID:.K0Oabo0
一方『どこに行きやがったァ……?』

フィアンマの姿が見えない。
インデックスを固く抱きかかえたまま、周囲をゆっくりと見渡す。

一方『……ghhkdf……かァーくれンぼですかァ?!!!!』


目耳で捉えることが出来ないのならば能力で捕捉すれば良い。

一方通行は黒い杭を再び扇状に展開し、そして能力の感知範囲を広げる。

周囲を舞うチリ、無数の火の粉が発する熱、物が動き押し出される空気の流れ、
そして抱きかかえているインデックスの鼓動まで全てのベクトルを認識する。

半径200m内の力の流れが全て一方通行に『見える』。


これら全てを操作するとなれば一方通行でさえかなり厳しい。

演算の大部分を使って黒い杭の制御を行っているからだ。

この制御を切ってしまえば、黒い杭はバラけて従来の雑な噴射物の帯になってしまう。

残りの演算スペースも熱風を逸らしたり周囲に流れ出させない為に使っている。

だがベクトルを操作するのではなく、
感知するだけならこのエリア一帯全てをカバーするのは何とかできる。


一方『もォーいいかィクソ野郎?!!でーておィでェ!!!』


軽口を叩きながらも能力に集中し、周囲の力の流れに神経を研ぎ澄ます。

見つけるのは簡単だ。
この領域内で通常の法則外の動きを、アノマリーを見つければ良いだけだ。

ちょうど良い具合に相手の力は『自己主張の激しい』未知の物だ。

少しでも使えば瞬時にこの探査網に引っかかるはずだ。
937 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/12(土) 00:41:30.12 ID:.K0Oabo0
一方『―――みィ―――』

その時。
背後30m程の位置ににアノマリーを感知する。


一方『―――っっっけたァ!!!!!』


振り向きもせずに瞬時にその位置に黒い杭を放つ。
同時に一方通行の後頭部に向かって先と同じ強烈な光の塊のような攻撃。


一方『オアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!!!』


杭が広がった黒い盾にその光の攻撃が直撃する
同時にフィアンマが出現したであろう場所の大地を別の杭の束が穿つ轟音。

二重の地響きと衝撃波。
弾け飛ぶ光と切り裂かれる大気。


一方『(まァた避けやがったか―――だが)』


再びテレポート『もどき』で回避されたのか、背後に放った杭は外れた。

だが二度は通用しない。
相手の力は操作することは出来なくとも、解析は何とかできる。

一方通行は、今度は移動先を即座に割り出した。


一方『(あめェよカマ野郎―――)』


一方『(三時方向、距離25m、高度2m、誤差補正±45cm)』


移動先を瞬時に割り出し、再び複数の黒い杭を放つ。
再び地響きが起こり、爆炎と衝撃波が地面を大きく抉った。


―――そして感じる手応え。


一方『―――アタリだぜェこンチクショウがァ!!!!!』

先とは違う、金属同士が激突するような轟音。
938 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/12(土) 00:47:17.91 ID:.K0Oabo0
一方『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!』


すかさず残りの杭も連続して叩き込む。

巨大な粉塵がぶち上がり、能力で守られている一方通行とインデックスの真横を、
大量の瓦礫の破片と熱風の嵐が突き抜けていく。

そして戻る静寂。

崩れ落ちる、ビルの瓦礫の音。
チリチリと音を立てる、熱せられたアスファルトの破片。


一方通行は杭の束を瞬時に引き戻し、背後に扇状に展開する。

一方『チッ……』

軽く舌打ちをし、足で地面を叩く。
能力を使い、モーセのように視界を覆いつくしていた粉塵の靄を割った。


その靄の隙間の向こうに、無傷のフィアンマが立っていた。
背後から伸びる巨大な腕から光のカーテンが下がっており、フィアンマを包んでいた。


一方『……』


どうやら今の一方通行のラッシュはあの腕の『力』によって防がれたようだ。


フィアンマ「……さすがだな。今のは少し、いや結構効いたよ」
939 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/12(土) 00:48:57.30 ID:.K0Oabo0
フィアンマ「すごいな。よくやってるよお前」

フィアンマが一方通行へ向けて賞賛の言葉を送ったが、
高慢かつ余裕が溢れた態度は一切隠しておらず、その嫌味っぷりには拍車がかかっていた。


一方『(……そォか……)』


「『防ぐ』ことは出来るがそれには『限度』がある」という事だろう。
耐久度の限界か、それとも力の残量的な限界か。

まあ、どちらにせよこちらが有利になりつつあるのは違いない。

それに相手が欲しがっているインデックスをこちらが持っている以上、優位性は揺らがない。


一方『(だが……)』


しかしあの余裕が気に食わない。
他にも何か奥の手があるのだろうか。

そんな思索を巡らせている一方通行を尻目に、
フィアンマは自分に酔っているような口調で話を続ける。


フィアンマ「教えてやろう。お前は『境界』自体は越えてはいるが、己自身が気付いていない」


フィアンマ「目の前に扉があるのに、見ようともしていない」


フィアンマ「そのせいで未だに物質的な枷に縛られたままだ」


一方『意味わかンねェ事ウダウダ言ってンじゃねェキチガ―――ッッッツ!!!!』

黒い杭を展開し再び攻撃態勢に入った瞬間、針が突き刺さるような頭痛が走り顔を歪ませる。


フィアンマ「ははっ、そうそれだ」


その苦痛に顔を歪ませる一方通行を見て、フィアンマは嘲笑的な笑みを浮かべながら指摘した。
940 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/12(土) 00:52:29.16 ID:.K0Oabo0
一方『……ッ…!!』


黒い噴射物自体を発生させる事自体には演算は必要ない。
意識すれば勝手に背中から噴出す。

だがこれを制御し、より強い破壊力を持つ滑らかな杭の状態を維持するには、
演算が必要であり結果的に脳にかなりの負荷がかかるのだ。


一方通行自身がこの漆黒の力が何なのかを理解していない。
強引にねじ伏せて杭の形状に保っているのだ。


フィアンマ「そのままだと死ぬぞ?」

フィアンマ「ナイフの鞘にはロングソードは納まらない。小銃で砲弾は放てない」


フィアンマ「だがお前はそれを強引にやっている」


フィアンマ「確かに驚愕に値するが、所詮無駄な労力だ」


一方『ッッツ………』

相手の口ぶりからして、この黒い力が何なのかを知っているようだ。
正直言えば一方通行も興味がある。
一昔前の彼なら、その話に飛びついただろう。

だが今は違う。

『そんな事』よりも優先しなければならない事がある。


一方『るせェェェェェェェェェェェェェェェサッサと死ねやァアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!』


こんな所で時間を潰してる暇など無い。
941 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/12(土) 00:59:21.50 ID:.K0Oabo0
一方通行の背後に展開していた杭が一斉にフィアンマに向かう。
全ての杭を使った全力の攻撃だ。

それとほぼ同時にフィアンマの背中から伸びる巨大な腕が天に掲げられ―――


―――その真上の天空に、オレンジ色の凄まじく巨大な光の帯、剣のような物体が出現した。


その刃の長さは有に4km以上あるだろうか。
光の帯が大空を割る。

一方『―――』

そして一方通行が放った黒い杭の束に、その超巨大の刃が振り下ろされた。


激突。


大地が激しく揺れ、光が溢れ大気が引き裂かれ、耳を劈く爆音が響き渡った。


一方『チィッッッッ!!!!!!!!!』

力の激突に押されながらも、体が後方にふっ飛ばされないようにブレーキをかけ、
同時に周囲に放たれようとしていた衝撃波や熱エネルギーを、ベクトル操作で内側の激突点へと『返す』。


一方『―――シッ―――』


瞬時に操作を行い、安堵の気持ちが篭められた息を軽く吐く。

この二つの力の激突は、直径80m程のクレーターを大地に穿つ『程度』で済んだ。

こうでもしなければ、まるで隕石が落下してきたかのような破壊で一帯が全て吹き飛び、
無数の一般人が巻き添えを食ってしまっていただろう。
942 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/12(土) 01:01:20.77 ID:.K0Oabo0
フィアンマ「……やはり無駄も多い。力が拡散しがちだ」

フィアンマ「今のも本来は1m程度に凝縮しなければならないのだが……まあそれは後で調整すれば良いか」

クレーターの淵に立っていたフィアンマが、背中から伸びる腕をしならせながら小さく口を開いた。
どうやら一方通行のモノではなく、己が放った攻撃へ向けた独り言のようだ。


一方『……カッ……(クッソ……ますますメンドーになってきやがったぜェ……)』

全ての杭を使った全力の攻撃が難なく相殺されたのだ。
今までの攻撃とは次元が違う。
ようやく本気を出してきたのだろうか。

フィアンマ「さて少し困ったな。お前がその子を抱いている以上、コレを直接ぶつける訳にはいかない」

フィアンマ「万が一が起こったら大変だからな。それにそもそもこれは何発も使えないんだ」

一方『……』

この発言に嘘が無ければ、一方通行の予想通りだ。
やはり使用に量的な限度があるのだろう。

だがなぜそれを言う?

それが嘘だとしても、言う必要が無い。

あの余裕。
更に別のカードがあるというのだろうか。


フィアンマ「ということでだ……そろそろ試すか……」


フィアンマが左手をポケットから抜いた。
その手にはダイヤル式の南京錠のような金属の塊。


一方『……ベラベラとおっせかィな野郎だ……』

状況から見てあれは何かしらのカードだろう。

一方通行は警戒し、杭を展開して身構える。
943 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/12(土) 01:04:04.51 ID:.K0Oabo0
だがフィアンマはその金属の塊を持ったまま何もアクションも取らなかった。
金属の塊がボンヤリと光っているだけだ。

一方『……?』

何も起こらない。
あの巨大な腕もゆらゆらと揺らいでいるだけで、何かを仕掛けてくる気配が無い。

怪訝な表情をしている一方通行にフィアンマが声を放った。


フィアンマ「せいぜい注意しておいた方がいい。攻撃するのは―――」


フィアンマ「―――俺様ではない」


一方『―――あァ?』


その言葉の直後。
ふと抱いているインデックスに違和感を感じた。

目を下ろしてみると。

インデックスの目が大きく見開かれていた。
だがその瞳には一片の感情も篭っていなかった。

まるでロボットのような、カメラのレンズのような瞳。


一方『おィ―――』


そして。


禁書「警……告 警告」


禁書「遠隔……制御霊装使用者の権限により……敵性因子の排除を開始します」
944 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/12(土) 01:06:56.95 ID:.K0Oabo0
一方『―――』

突如インデックスが口を開いた。
機械のアナウンスのような、事務的で無感情な声。


禁書「敵性因子を……確認。捕捉完了」

インデックスの見開かれた無感情な瞳が真っ直ぐと一方通行を見据える。


一方『おィ!!!!どォした!!!!?』


強く揺さぶるもインデックスは一切反応せず、淡々と言葉を述べていく。


禁書「使用術式、解析不能。術式属性、解析不能」


禁書「敵性……因子の戦力不明」


禁書「制御霊装使用者より……対称の情報を受信」


禁書「脅威度の指定有り」


禁書「警……告。脅威度……第二級」


一方『クソガキ!!!どォした!!!??』
945 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/12(土) 01:13:22.46 ID:.K0Oabo0
禁書「記憶……を照合」


禁書「対称は『能力者』。能力はベクトル操作」


禁書「照合……完了。迎撃開始します」


そう言葉を発した直後、インデックスの顔の前に青白い複数の円と紋様が浮かび上がる。

円の重なっている部分が、まるで空間そのものが裂かれたかのようにビキビキと音を立てて黒く染まって行く。


一方「な―――」

その漆黒の割れ目の奥を見た瞬間、一方通行は戦慄した。
まるでどこまでも引き摺り込まれてしまいそうな感覚。

得体の知れない、とてつもない『何か』がその割れ目の向こうから一方通行を『見ていた』のだ。


一方通行がそうやって顔を強張らせている間に円の周囲に光が集っていく。


そして次の瞬間。


一方通行の顔目がけてその浮かび上がった円から―――。



―――至近距離から巨大な光の矢が放たれる。



―――『竜王の殺息』が。



―――
946 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/12(土) 01:14:42.62 ID:.K0Oabo0
今日はここまでです。
次は日曜か月曜に。
947 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/12(土) 01:18:23.52 ID:n7QM52Ao
948 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/12(土) 01:19:09.81 ID:UDfcjX.o
おつおつ
949 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/12(土) 01:54:00.75 ID:XlPY/Cso
うおおどきどきしてきた! 乙
950 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/12(土) 03:26:58.83 ID:4unyHJw0
乙でした〜
インデックス・・・
951 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/12(土) 13:31:42.07 ID:VTzHqIDO
ここもそろそろ埋まるな
952 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/13(日) 01:54:51.97 ID:tvXcCso0
最初はまだよかったんだが禁書はアニメ、ベヨネッタは体験板しかやったことのない俺は間違い無くこの話を100%味わうことができない……
953 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/13(日) 01:55:17.90 ID:tvXcCso0
最初はまだよかったんだが禁書はアニメ、ベヨネッタは体験板しかやったことのない俺は間違い無くこの話を100%味わうことができない……
954 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/13(日) 02:04:38.95 ID:twJg7DQo
何かと思えば末尾0か
955 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/13(日) 23:30:43.36 ID:HH5Az2go
俺はベヨネッタの体験版すらやったことないぜ・・・
が、しかし動画やwikiの情報で何とか脳内構築するという外道を行ってるぜ!


ごめんなさい
956 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/13(日) 23:58:44.98 ID:BENXOAko
メインはあくまでもDMC勢と禁書アニメ出演組みであり、禁書原作組みとベヨ勢はゲスト

という方針のつもりでしたが、あれもこれもと欲張ったらこの有様となりました。
すみません。

原作未読・ベヨネッタ未プレイの方も出来る限り楽しんで頂けるよう精進していく所存です。

※ちなみにこのSSの諸設定は、禁書・DMCの設定を超拡大解釈して、
好き勝手に都合が良いように組み立てた妄想で構成されています。

特に本編以降は『こうなったらとことん』と好き放題やっている状態です。
wiki等を参考になされる際はその点のご注意を。

では、はやぶさも無事帰還したことですし再開します。
957 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/13(日) 23:59:44.23 ID:BENXOAko
―――

ヴァチカン。


五和「はぁッ!!!!ふぁっ!!!」

五和は半壊している長い長い回廊を無我夢中で走っていた。
その先はサンピエトロ広場。

『報告しろ。現在位置は?どこにいる?』

右手に嵌められているバングル型の通信霊装から事務的な男の声がするも、五和は無視して走り続ける。

当初の計画によれば、五和は数分前に支援部隊の魔術師と合流しているはずだったのだが、
彼女は合流地点へは向かわずに再び今来た道を戻っているのだ。


さっきまで絶え間なく響いていた轟音が、一際大きな地響きを最後にピタリと止み、
不気味な静寂がヴァチカン全体を包んだのだ。

それは戦闘が終了した報せなのか。

だとしたら一体どちらが―――。


五和「はぁッ!!!!はぁッ!!!!プリエステス……!!!」


―――勝ったのだろうか。


最悪の展開が彼女の頭の中をよぎる。
だが五和は頭を強く振り、その不安を振り払う。
958 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/14(月) 00:02:27.49 ID:E1/q7Fco
走り続けていると、回廊の先から光が差し込んで来ているのが見えた。

数分前に通った時は、あの場所もその先もまだまだ回廊は続いていたはずだ。

広場の激戦の破壊はここまで到達していたのだ。
そして広場は大きく『拡張』されてしまったのだ。

五和は無我夢中でその光の方へ突き進み、遂に『外』に出る。

眼前に広がる、見るも無残な姿になったサンピエトロ広場。

広場を囲んで聳え立っていた列柱廊は瓦礫の山と化し、
石畳の広場はいくつもの巨大なクレーターが穿たれている荒野へと姿を変えていた。


そしてその中央辺り。

一際大きく深く窪んでいるクレーターの中央に立つあの襲撃者。

手には七天七刀。

青く光る刃は振り上げられていた。


五和「―――」


その刃の真下。

もごもごと蠢いている黒い沼のような所に浮かんでいる―――


―――神裂。



そして次の瞬間。



―――振り下ろされる七天七刀。
959 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/14(月) 00:04:16.36 ID:ZPgC2i2o
まああんまり気にしすぎないほうがいいよ。変に意識しすぎてワケわからなくなったら元も子もないし
俺もDMCとアニメしか見てないけど十二分に楽しめてますしおすし
960 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/14(月) 00:05:11.36 ID:E1/q7Fco
五和「―――」


五和は見た。


敬愛する『主』の愛刀が―――。


―――『主』の胸に突き立てられるのを。


五和「プリ―――エステス……?」


ズブズブとめり込んでいく七天七刀。
皮膚が裂け骨が砕かれていく音がここまで聞こえて来そうな程に生々しく。


五和「ア―――」


その光景を見ていた五和の頭の中で何か音を立ててキレた。


五和「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!!!!!!!」


雄叫びを上げながら、凄まじい形相で槍を抱えて駆け出す。


神裂と襲撃者の下へ。


一直線に。
961 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/14(月) 00:06:41.69 ID:bE68Ao2o
きた”!
962 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/14(月) 00:08:14.10 ID:E1/q7Fco
絶叫しながら突進していく五和のこめかみに血管が浮き上がる。
そして彼女の持つ槍が淡く白く輝き始める。

フォルトゥナ式の対悪魔用の魔術だ。

だがこんな『モノ』など、神裂を倒した程の相手にとってはオモチャにすらならない。

五和もそれは自覚している。

しかし彼女は止まらない。

最早、こみ上げてくるこの衝動は抑えられなかった。
そして抑えるつもりも無かった。


五和「―――ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!!!!!!!」


泣き叫んでいるかのような絶叫。

いや、実際に彼女は泣いていた。

小さな儚い雫が瞳から零れ落ち、彼女が走り抜けた地面に落ちる。

荒れ果てた地面で何度も躓き転びそうになるも、五和はとにかく前へ前へと突き進む。

主の下へと。


と、その時だった。


襲撃者までの距離が50mを切った時。


突如目の前に『赤い光の塊』が重い金属音を立てて着弾した。


五和「―――」


何が降って来たか。


それは目の前に優雅に立つ、銀髪で赤いボディースーツに身を包んだ厚化粧の女。

服のデザイン系統は向こうに立っている襲撃者と同じだ。
両手足にも同じく大きな拳銃。

ジャンヌ。
963 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/14(月) 00:13:44.64 ID:E1/q7Fco
ジャンヌ「止まりな」

鋭利な刃物のような声が五和の耳に響く。
これ程の絶叫をしながら高速で突き進んでいるのにも関らずハッキリと。

だが五和は聞く耳を持たず、止まるどころか槍を構えて突き進んだ。


ジャンヌ「チッ」


五和「どけぇええええええええええええええあああああああああああ!!!!!!!!!!!」


五和が渾身の力を篭めて、その邪魔者の顔面へ向けて躊躇いなく突きを放った。

だがその切っ先が当たる瞬間。


突如白い光が周囲に溢れ、五和の槍はまるでスナック菓子のように脆く砕け散る。

そのまま光の衝撃波に弾かれ、
五和の体が3m程後方の地面に仰向けに叩き付けられた。

五和「ぐぅ……!!ぁ……あぁああああああああああ!!!!!!」

しかし五和はすぐに跳ね起き、武器を失ったにも関らず再び突進する。


ジャンヌ「止まれって言ってんだよ」


そして当然の如くまたジャンヌによって止められた。

今度は胸を蹴り飛ばされ先と同じように地面に仰向けに倒れる。

ジャンヌはすかさず前に出て、
五和が起き上がれないように彼女の胸を踏みつけた。
964 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/14(月) 00:16:45.15 ID:E1/q7Fco
五和「あああああああああああああ!!!!!!!」

五和は何とかジャンヌの足をどかそうと暴れるもびくともしない。
さながら巨大な鋼鉄の万力に挟まれ拘束されているように。

五和「どけぇええええええあああ!!!!!!!どけぇッ!!!!!!」

ジャンヌ「諦めな。もう遅い」

ジャンヌ「お前の主は負けた」



ジャンヌ「『死んだ』のさ」



五和の耳に入る事実。
薄々わかっていたが、それでも信じたくない。

しかし現実は現実。


五和「あああああああうぅ………うぅうううううううううううううう………」


五和の顔が見る見る歪んでいく。
大暴れてしていた体からも力が抜ける。


五和「ひぁあああああぁあぁぁあああぁあぁぁぁぁあぁああああ……」


そして五和はジャンヌの足の下で弱弱しく泣きじゃくった。

今すぐ殺されてもおかしくないはずの己の置かれている状況も忘れて、
プリエステスと小さく子を発しながらただただ泣いた。


少女は涙を流した。

心の底から敬愛していた主を想って。
965 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/14(月) 00:21:22.84 ID:E1/q7Fco
ジャンヌ「(……まだガキじゃねえか……)」

ジャンヌは足の下で泣きじゃくる五和を見ながら、軽く下を鳴らした。

本来ならどんな小さな障害も排除しておくべきなのだが、さすがに殺す気にはなれない。

そもそも魔女にとって人間を殺すということ自体がお門違いなのだ。

魔女がその銃口を、力を向けるべき相手は天界のクズ共と昔から相場が決まっている。

ベヨネッタが枢機卿を殺したのも計画の為已む無くだ。

相手が強気で猛々しく、感情を表に出さない生粋の戦士ならまだ戦いようもある。
だが主の事を想って己の身の危機も忘れて泣き崩れてしまう、こんなけなげな少女に手をかけるなど。

十字教等の天界の『加護』の傘下にいる魔術師達は、
感情に流されやすい『甘ちゃん』連中だと聞いていたがこれ程までとは思ってもいなかった。

怒りに身を任せて突き進むならまだしも、戦闘中に泣いてしまうなど思いっきり萎えてしまう。

それにもう大方用も済んだので無理して殺す必要も無い。


そしてジャンヌが五和を殺したくない理由はもう一つある。


実は彼女、こう見えても表の世界では至極全うな職、


高校教師をやっているのである。


(どこぞの実質半無職のデビルハンターや、自由気ままに放浪する癖のある魔女とは偉い違いだ)


年が近いのだろう、五和の姿が生徒と重なってしまうのだ。

ジャンヌ「(……チッ)」

こんな姿を見ていると、
慰めの声の一つや二つをかけたくなってしまう衝動に駆られるのはやはり教師の性か。

本当にかけてしまうほどマヌケではないが。
966 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/14(月) 00:27:19.44 ID:E1/q7Fco
ジャンヌ「セレッサ!!!!」

ジャンヌが首を掲げて、背後50m程の場所に立っているベヨネッタへ言葉を飛ばした。

ジャンヌ「終わったんならさっさと帰えるよ!!!!」


ベヨネッタ「いいの?!アンタのメインディッシュはこれから来るのに!」

ベヨネッタが少しニヤつきながら声を張り上げて言葉を返す。


ジャンヌ「萎えちまったんだよ!!!んな湿気た空気で戦えるか!!!」


ベヨネッタ「ん〜……じゃあもうちょっと待っててくれない?」

ベヨネッタ「この子が完全に飲み込まれるまで……あ」


と、その時だった。

何かの気配を感じ取った二人の魔女の表情が変わる。

ベヨネッタ「そぉら―――」

ベヨネッタがにっこりと作り笑いを浮かべジャンヌの方を向いた。


ベヨネッタ「―――噂をすればお出ましよ!」


ジャンヌ「……」

ジャンヌは無言のまま大空を見上げた。
まだ視界には入っていない。

だが確実に、そして急速に接近してきている。

例の悪魔だろう。
悪魔特有のむせかえる様な殺気と敵意が降り注いでくる。

どうやらあの『魔女狩りの王』を名乗っている命知らずは、今この足の下にいる少女程『甘ちゃん』では無いらしい。


ベヨネッタ「ほらほら!!!向こうはやる気マンマンみたいだけど!!」


ジャンヌ「ハッ!!!」

ジャンヌは口を大きく横に裂き、軽く笑った。
967 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/14(月) 00:34:33.02 ID:E1/q7Fco
ジャンヌ「セレッサ!!」


ベヨネッタ「なぁに?!」


ジャンヌ「気が変わった―――」


不完全燃焼で萎えてしまった鬱憤が、より一層彼女の闘志を煮えたぎらせる。


ジャンヌ「―――狩るよ!!」

ギラリと、仄かに赤く光る鋭い瞳で天を仰ぎ睨む。


ベヨネッタ「いってらっしゃい!!」

ベヨネッタが左手を軽くひらひらと振った直後。


大気が切り裂かれる音と共にジャンヌの姿が消え、
赤い光の筋が猛烈な速度で天に向かって爆進していった。


ベヨネッタ「さてと……」


ベヨネッタは足元の神裂に目を落とす。


今しがた『殺した』天使の亡骸は依然沈みきっておらず、未だに上半身の大部分が見えていた。
『煉獄』に引きずりこまれる速度がかなり遅い。

魔女の亡霊達の『腕』が何かに妨害されているようだ。
968 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/14(月) 00:37:18.73 ID:E1/q7Fco
ベヨネッタ「……」

恐らくこのヴァチカンの土地柄のせいだろう。
1000年以上も昔から頑丈な結界が何重にも張り巡らされてきた場所だ。

人間界において一番天界の『支配』が強い場所。

まあ少しくらいの妨害は当たり前だろう。
それに心配は無い。

魔女の怨念はそんなチャチな代物では防ぎきれない。
後一分程度で神裂は煉獄へと完全に引き摺り込まれるだろう。

それを確認してこの場の仕事は終了だ。

それまでにはジャンヌも『狩り終えている』だろう。


ベヨネッタ「……?」

ふと気付くと、ズリズリと何かを引き摺るような音が聞こえてきた。

そちらの方を見やると。

拘束が解けた五和が相変わらず泣きながら、
四つんばいで這いずりながらベヨネッタと沈み行く主の方へ進んで来ていた。

ベヨネッタは再び神裂の方へと目を落とし呟いた。


ベヨネッタ「アンタ、良い部下持ってるわね―――」


ベヨネッタ「―――あの子も連れてく?」


当然返事は返ってこない。


―――
969 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/14(月) 00:44:50.68 ID:E1/q7Fco
―――


学園都市。第七学区。

上条宅。

そこに上条とトリッシュは立っていた。
視線の先は、本来は窓とベランダがあったはずの場所に穿たれた巨大な穴。

上条「―――なっ」

その惨状に言葉か詰まる。

一体何が起こっているのか。

この破壊は一体何なのか。


―――そしてインデックスはどこにいるのか。


そんなのは容易に想像が付く。

何者かに襲撃でもされたのだろう。
目的は当然インデックス。


上条「―――がぁあああああああああああああチックショウがァアアアア!!!!!!!!!」


上条が飛び込むようにその穴の淵へ駆け、眼前に広がる学園都市の夜景を血眼で見渡す。


上条「!!!!!!」


その視線の先、数キロ離れた場所だろうか、
夜空でもわかるほどに黒い煙が濛々と立ち上り重い激突音が地響きを伴って聞こえてくる。
970 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/14(月) 00:49:02.87 ID:E1/q7Fco
何者かが戦っているのだろうか。

だとしたら。

インデックスを守り一方通行が戦っているかもしれない。

上条「ぐッ………!!!」

その時だった。

恐らくその戦場の中心地。
そこから天に伸びる『白い柱』。
雲を貫きどこまでも伸びてく。


上条「―――」

上条は記憶を失っている為、あのの光の柱はインデックスが放ったものだと言う事はわからない。


だが『頭』の記憶を失っても『心』の―――。

―――魂の中にある記憶は今もある。


頭で考え識別する必要など無い。


『絆』は魂の繋がりだ。


その魂の耳に入る『悲鳴』。


あの白い光の柱が放つ轟音が上条には『悲鳴』に聞こえたのだ。

苦痛に喘ぎ、誰かの名前を懸命に呼んでいるような―――。


―――いや、確実に呼んでいる。


上条「―――イン……デックス」


―――己の名を。
971 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/14(月) 00:50:39.91 ID:E1/q7Fco
トリッシュ「聞きなさい」

トリッシュが上条の背後へ鋭い声を飛ばす。

トリッシュ「己を見失わずに冷静に」


トリッシュ「また暴走したら元も子もないわよ」


上条「ああッ!!!!わかってんよんなこたぁッッッ!!!!!!」


トリッシュ「OK、行くわよ」


そしてトリッシュが上条の背中を軽く押した。

上条は腰から銃を引き抜きながら大穴の淵を蹴り夜空へと飛び出した。


トリッシュがその後に続く。

この二人なら、たった数キロ程度の距離などその気で駆ければ一瞬だ。


―――途中に障害がなければの話だが。

寮から飛び出し、500m程進んだ所のビルの屋上に二人が着地する。
そして瞬時に前に踏み出し更に進もうとしたその時。


トリッシュ「―――」


上条「―――」


二人は足でブレーキをかけ、屋上のタイルを捲り上げながら急停止した。

そうせざるを得なかったのだ。

なぜなら。


甲高い金属音と共に、突如眼前に青い筋走ったからだ。


するりと抵抗も無く綺麗に寸断され割れるビルの屋上―――。
972 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/14(月) 00:56:10.75 ID:E1/q7Fco
上条「―――うぉおおああ!!!!!!!」

腰を落とし、更に手を屋上の床に付きなんとか制止する。
その上条の体の僅か30cm前の床に走る青い筋。

この筋がとんでもない代物だと言う事は、今の上条にとって当たるまでも無くわかる。
当たっていないはずなのに、避けたはずなのにそれでも全身の皮が削ぎ落とされてしまいそうな強烈な重圧。

これ以上何ほどに滑らかでありながら、全てを一瞬で剥ぎ取ってしまいそうなヤスリのような空気。

見覚えがある。
忘れるはずも無い。


上条「(これは―――)」


この感じ。

この力の『匂い』。


―――間違いない。


上条は勢い良く顔を上げ、その視線が放たれてくる正面に目を移した。


そして目に入る。


その屋上の端。


二人の正面20m程の所にいつの間にか悠然と立っていた男。


バージルが。
973 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/14(月) 00:59:03.29 ID:E1/q7Fco
上条「なッ………!!!!」

突如目の前に出現した『最強』。

もう一人の『最強』のように友好的とは断言できない怪物。


そしてそんな男が再び上条の前に立っていた。
息苦しい程の殺気を放ちながら。


上条「―――まさか」


二ヵ月半前の光景が再びフラッシュバックする。


そして上条の頭に最悪のパターンが浮かぶ。

まさかまたバージルがインデックスを狙っているのか と。


上条「お、おい―――てめぇまた―――!!!!!!」

上条が怒りを露にして叫んだがトリッシュがサッと手を伸ばして彼を制止し、


トリッシュ「アナタ、もしかして『また』なの?」


口を静かに開いた。
彼女もまた上条と同じ事を思っていた。


バージルはただ無言のまま、強烈な威圧感を放ちながら二人を冷たい瞳で眺めていた。

張り詰めた空気。


今にも弾け飛び、何もかもが一瞬で破砕されてしまいそうな。


そんな空気。
974 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/14(月) 01:00:26.06 ID:E1/q7Fco
バージル「俺では無い」


上条「……は?」


トリッシュ「……じゃあ何?何の用かしら?そんな殺気をぶつけるワケは?」


バージル「貴様等はここから進ませない」

バージルが真っ直ぐと二人を睨みながら言葉を放った。


上条「……ちょっ……な……!!!」



バージル「この場に留まるのならば手は出さない」


バージル「だが進みたいと言うのならば―――」


張り詰めていた空気がより一層緊張を増す。

固く冷たい『空気』が擦れ合うヂリッという音が本当に聞こえてきそうな程に。



バージル「―――話は別だ」
975 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/14(月) 01:02:51.94 ID:E1/q7Fco
上条「何で―――」


上条が怒りと悲しさが混ざった複雑な表情で口をそっと開いた。


上条はベオウルフの記憶から、このバージルの孤独な闘争の人生も見てきた。

二ヵ月半前の戦いで、彼が今まで一人で背負ってきた『重責』から遂に解放されたのも知っている。

バージルは長年の闘争からようやく解き放たれ、『彼』の『戦い』は終わったのではないのか?


上条は決してこのバージルが『友好的』になったとは思っていない。

だが少なくとも『敵』では『無い』と確信していた。

そしていつか、いつかダンテとネロと共に同じ道を歩んで行ってくれると思っていた。


しかし。


上条「……何でだよ!!!!??」


では今のこの状況何だ?


『何で』こんな状況になっている?


『何で』こうして再び戦う必要が?


―――バージルの『戦い』はまだ終わっていないのか?


それとも。


―――再び一人で背負わなければならない程の『新たな戦い』が彼を繋ぎ止めたのか?
976 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/14(月) 01:08:27.93 ID:E1/q7Fco
上条は困惑した。

もう何もわからなかった。

バージルを突き動かすその訳も。

なぜインデックスを守ろうとする上条の前に立ち塞がるかも。


上条「何でだよ!!!?答えろよ!!?」


バージル「己が『使命』の『障害』は―――」


返ってくるハッキリとした鋭い刃のような言葉。


バージル「―――『排除』する」


バージル「『理由』はそれだけで充分だ」


バージル「貴様も『同じ』だ」


バージル「違うか―――?」



バージル「―――『上条当麻』」



上条「―――」


バージルから放たれたその言葉。


『幻想殺しを持つ人間』でも『ベオウルフの力から生まれた悪魔』でも無い―――。


―――『上条自身』へ向けられた言葉。
977 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/14(月) 01:12:43.20 ID:E1/q7Fco
上条「―――」

その言霊が上条の魂へ響く。
バージルが、『上条当麻』へ真っ向からぶつけてきた覚悟。

上条「あぁぁ……―――」

上条はわかってしまった。

そう、『同じ』なのだ。

上条がインデックスを守ろうとしている衝動も。
バージルが二ヵ月半前まで闘争の道を歩んで来た理由も。


そのバージルを今、こうして突き動かしている『何か』の衝動も。

根元は己が魂の声。

それは一番単純でありながら、最も重く大事な全ての『芯』。
己が存在『そのもの』。


上条「―――ああ、そうだ」


目的は何なのか?

どちらが正しくてどちらが間違っているか?

どちらが善で悪か?

そんな『陳腐』な議題をこの場に持ち込むなど最早無意味。

お互いがその信念と覚悟に従いこうして向かい合っているのなら。

もう議論の余地は無い。
978 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/14(月) 01:21:01.72 ID:E1/q7Fco
考えたところで、
そして言葉をぶつけたところで何かが変わる事は絶対に有り得ない。


どちらも『絶対に退けない』。

理由はそれだけで充分だ。


上条「あんたの言うとおりだ―――」


『戦い』という『契約』を成立させる理由は。



上条『バージル』



覚悟を決めた上条の体から白い光が溢れ出す―――。


上条『俺はアンタの言う「現実」なんざ認めねえ』


そんな『現実』など認めない。

インデックスを救えない『現実』など。


上条『アンタも俺の「現実」は認めねえ』


上条『じゃあ仕方ねえよな』


上条『やろうぜ、やるしかねえ』


やるしかないのだ。例え勝ち目が無くとも。
上条は戦わなければならない。



上条『ぶち殺し合いをよ―――』


上条『―――どっちかの「幻想」が死ぬまでよ』
979 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/14(月) 01:23:45.86 ID:E1/q7Fco
トリッシュ「……」

トリッシュはその二人の『戦士』の掛け合いを静かに聞いていた。

インデックスを狙っているのはバージルではないというのは真実だろう。

バージルがわざわざ口を開いてまで嘘を吐くのは考えにくい。
そもそも基本的に言葉数が少ない男だ。
誤魔化したいのなら無言で通すのが彼の性格だ。

では、インデックスを狙って襲撃した者を『支援』する理由は?
バージルに聞きたい事が山程ある。だが喋るとは限らない。

むしろ、『敵』と認識しているらしい今の状況を鑑みると親切に喋ってくれるとは到底思えない。


―――と、そんな事を考えている暇では無いだろう。

答えが返ってこないのを知りながらわざわざ聞くのも時間の無駄だ。
バージルの行動の理由は帰ってからゆっくりと考察すれば良い。

トリッシュ「……」


帰れたらの話だが。


上条『トリッシュ』

上条『これは俺の「戦い」だ。アンタは手を出さなくて良い』


トリッシュ「……」


行くな。

この場に留まれ。

とバージルは告げている。

上条も彼女を外に置こうとしている。
彼はトリッシュの事を思って言ってくれているのだろう。
いくらトリッシュでもバージル相手ではタダでは済まないのは周知の事実だ。

だが。

トリッシュ「ふふ、お断りよ」
980 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/14(月) 01:26:59.25 ID:E1/q7Fco
上条『………は?』

トリッシュ「失礼ね。私にも戦う理由『くらい』あるわよ」


そう、彼女にも。


ボスであるダンテの依頼人であり友人でもあるインデックス。
その少女の危機を見てみぬ振りをするなんて有り得ない。

上条も一方通行も、ダンテが『認めた』者。

見捨てるという選択肢などある筈が無い。

ダンテならどうするか?

ダンテならそんなふざけた事など聞かない。
ならばトリッシュも同じく動く。


トリッシュ「―――私を誰だと思ってんの?」


彼女は『トリッシュ』。

ダンテが最も信頼する友であり『最高』の相棒。


その繋がりを裏切る訳にはいかないし、その気も無い。
それを否定するなど、今ある彼女の『全て』を否定するに等しい。


トリッシュ「―――生憎だけど、アンタ『達』の言う事を聞く訳には行かないの」


その信念と誇りを裏切る選択など―――。


トリッシュ「絶対に ね」


―――いっその事死んだ方がマシだ。
981 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/14(月) 01:28:08.32 ID:bE68Ao2o
かっけええええええ
982 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/14(月) 01:28:38.97 ID:E1/q7Fco
『死んだ方がマシ』


実際にその『表現』が今ここで現実の物になるかもしれない。

皮肉な事にトリッシュをそう目覚めさせた『男』の兄が、今彼女の信念と誇りの前に立ち塞がっているのだ。


バージル「そうか」

バージルがポツリと呟きゆらりと閻魔刀の柄に右手をかざした。


上条『―――!!』

上条が歯を食いしばり身構える。
目が赤く光り、左手や両足に半透明の光の装具が浮かび上がった。


トリッシュ「……」


言葉の制止を聞かなかったら武力で排除する。
当然の結論だ。

円を組み一時事務所に撤退し、ヒマであろうダンテを連れて戻るという方法もふと頭に浮かんだが、
バージル相手にそれはダメだ。
『ここに留まれ』と言うのはその意味も含まれているだろう。

円を浮かび上がらせようとした瞬間にバージルは瞬時に刃を振るうはずだ。

あの移動術は制止していなければ使えない。
バージルはそんな隙など与えない。


ならばこの状況を打開する道は一つ。


トリッシュ「やっぱりこれしかないわね―――」


トリッシュは腰から黒と白の二丁の拳銃、ルーチェ&オンブラを引き抜いた。
983 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/14(月) 01:32:19.47 ID:E1/q7Fco
トリッシュ「イマジンブレイカー。聞きなさい」

上条『い、いや、あんたは……』


トリッシュ「私が引き付ける」

トリッシュ「あなたは隙を見つけて現場に向かいなさい」


上条『……ッ?!!!』


そのトリッシュの言葉の意味を上条も即座に理解する。
相手はバージル。

いくら二人係でも到底打ち負かすことなど不可能だ。
片方が捨て身で囮となり片方が突破するのが妥当だ。

そして当然、上条は己程度では囮にすらならないのは自覚している。
いくら今の自分は以前よりも強いとはいえ、バージルにとってはゴミ同然だ。

つまりトリッシュの打ち出したそれぞれの役割は妥当だろうが―――。


上条『……で、でも……!!』


バージルを『相手』に囮役になるなど―――。


トリッシュ「『でも』は無し」

トリッシュがそんな上条の心配を察したのか小さく、
そして今まで見たこと無いほどに優しく穏やかな笑みを浮かべた。



トリッシュ「―――20秒は持たせるから」



そして告げられるたった『20秒』と言う言葉。
トリッシュの笑みは穏やかで、到底こんな危機の場でするような物ではないはずなのだが―――。

―――不気味な程にこの場に馴染んでいた。
984 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/14(月) 01:33:59.62 ID:E1/q7Fco
上条『―――』


上条はそのトリッシュの笑みから伝わってくる彼女の覚悟と思いを読み取った。


上条『(―――トリッシュ―――あんた―――)』


トリッシュは何としてでも上条を送り出すべく―――。


上条『―――ああ。わかった』


『覚悟』には『覚悟』でのみ答える。
今の上条に出来る最大の『恩返し』。


上条『頼んだぜ』


トリッシュ「OK―――」


トリッシュが返答した次の瞬間、彼女の体から金色の光が溢れる。


その光の強さが徐々に増して行き―――。


彼女の姿が見えなくなったと思った次の瞬間、光が爆発するかのように周囲に溢れた。


そして再び姿を現したトリッシュの容姿は―――。


――今までの『金髪の美しい女性』とはかけ離れていた。
985 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/14(月) 01:36:23.35 ID:E1/q7Fco
普段のトリッシュの人間としての姿は、元々魔帝によって与えられた物だ。
かつてダンテを誘い出すため、彼とバージルの母親のエヴァと瓜二つの姿を与えられたのだ。

あれ以来、トリッシュ自身もなんとなくその姿を気に入り、ダンテの相棒になってからも、
平時で人間に化ける際はあの姿を使い続けて来たのだ。

普通に考えればダンテが煙たがりそうだが、彼はそんな事は一切気にしなかった。
彼にとって姿形などどうでもいいらしい。

そもそも魔帝の命を受けて初めてダンテに会った時も彼は然程反応しなかったし、
結果的に見ても魔帝の『母親の姿で彼の心に漬け込む』という作戦自体はあっさり失敗した。

ダンテの心を動かしたのはその姿ではなく、何よりも『トリッシュ自身』が持つ心と魂だったと言う訳だ。


そして今、トリッシュのその『魂』を体現する彼女の真の姿が露になった。


バージルはその姿を見て少し目を細めた。


金色の羽に覆われた鳥人のような姿。
背中から伸びる、滑らかで美しい巨大な翼。

それは『悪魔』と言うよりは『天使』と表現した方が良い程の姿。

仮初の姿にも負けない程美しく、

そして元『魔帝軍の幹部』であり、ダンテの『相棒』である『大悪魔』という身分に相応しい圧倒的な『力』。


煌びやかな金髪はねじり合わさり大きな数本の角となって後方へ伸びていた。

顔には鳥を模した仮面ようなもの。それが鼻先まで覆い隠していた。

その仮面の目の部分に開いた穴の下から、瞳の赤い光が溢れている。


トリッシュは魔人化し己の力を解放したのだ。


『困難』に全力で挑むべく。
986 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/06/14(月) 01:37:48.74 ID:E1/q7Fco
トリッシュ『(久しぶり……ね)』

思えば、魔人化するのはかなり久しぶりだ。
ダンテの相棒となってからはこれが初めてだ。
つまりダンテにもこの姿は見せたことは無い。


トリッシュ『……さ、始めましょ』


上条『―――おう』

上条が小さく静かに、だが重く確かな声で返事をした。


上条へ向けてニコリと口を軽く綻ばせた、次の瞬間トリッシュは地面を蹴り、
今の上条ですら目で追えない程の速度でバージルへ向けて突進する。


それを見てバージルは腰を落とし身構えた。


―――トリッシュの『戦い』も始まる。


それは一歩間違えれば己の『破滅』へと直結する。


だが彼女に迷いは無い。


―――全ては誇りと信念の為。

そして。


―――彼女に絶大な信頼を寄せてくれている『相棒』に応える為―――。


彼女は突き進む。


―――
987 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/14(月) 01:40:42.55 ID:E1/q7Fco
今日はここまでです。
次は火曜か水曜の夜中になります。

ちなみに次は新スレから投下しますので、再開時までには埋める方向です。
988 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/14(月) 01:41:25.09 ID:Uy45h6Ao
どいつもこいつもカッコイイぜ
989 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/14(月) 01:42:29.41 ID:ZPgC2i2o
乙!
埋める方向ってどうやって?
990 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/14(月) 01:43:53.48 ID:bE68Ao2o
普通に書き込んで埋めるんじゃ
991 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/14(月) 01:44:45.79 ID:E1/q7Fco
>>989
残ってた場合は『埋め』の連投で
992 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/14(月) 01:45:40.51 ID:GpKLo7U0
乙埋め
993 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/14(月) 01:46:25.50 ID:5LPXBDUo
そういや御坂さんはどこ行ったの?
994 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/14(月) 01:49:18.65 ID:E1/q7Fco
>>993
一つエピソード飛ばしてたの今気付きましたorz
先にトリッシュに学生寮に送られてます。

というか今新スレ立てます。
995 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/14(月) 01:53:56.45 ID:bE68Ao2o
お疲れ様!
996 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/14(月) 01:55:14.87 ID:YGnkJ4Eo
乙!
997 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/14(月) 02:10:10.56 ID:E1/q7Fco
新スレです
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1276448902/
998 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/14(月) 02:11:14.43 ID:ZPgC2i2o
      ????
      ????????
     ??????   ??
     ???  ???? ▲
   ????? ??? ??▲?
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  ?  ??▼????    ??? 赤ブチャイク
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      ????????
999 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/14(月) 02:11:33.66 ID:Uy45h6Ao
乙なんだよ!
1000 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/14(月) 02:11:40.14 ID:ZPgC2i2o
                                            __          , - 、      _,、_
                                         └一 、 ̄L__,、   〈  }r─‐冖'ィ^´
                                             L.r‐- 、_  ` ̄` `ア^  {フ }
       , -─- 、                                         , -=マ      、_ |
.       /.::/ ̄`ヽ.:ヽ.                                     //^}::::}      \`´        _
     l:::::}    _ 、::.、             __                    //   ,'.::,' . : :      ` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    ̄>
     l:::/  // ',:::',        _  /.::::}     _                _/.:/    /.::/. : : :                   /
     |/   /.::/.   ',:::',         /.} //}::/      /.::} /}      _, - '7.:/  . ://  /  . :             {
          /.::/     ',:::}        し' {:レ'/      /.:://.:::,′__ _, - '´  /.:/ . : : : :´ _  {  :/. : _            ノ
.         /.::/     }::レ'^V^l /| _ |::/      /.:,:〃..:/ /.::}´__ ,ィ  /.:/. : : : : : /.:::::} 」 /}  { \         /
       _/.::/       ノ.:{::::ソ.:::レ',::レ'::}_ノ:{__,   /.:/.::/}::{_/.〃::レ'.::レ'.::{_ {::: {___/:/^}::レ'::レ'.:::L,  }   、     , -‐′
   __/.:::::`'ー─‐::"´_.:::〔/,イ:::/ `^}:::/{::::ノ _//{:/ .L:ィ::/L.ィ/}::7 : 、:::::::::::::::/  l_/L/}::71 j    ',  /
  ` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄´ ` ̄ `´   `´ `´  ̄/ ̄´   ア⌒´   /:/   ` ̄ ̄´     }  /:/ } {    } /
    デ ビ ル   メ イ   ク ラ イ/      _/     /:/           ノ /:/ | \_  レ'′
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                         ̄ ̄
1001 :1001 :Over 1000 Thread
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