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上条「…死体?」土御門「ああ、屋上と体育館裏で見つかった」 - 製作速報VIP(クリエイター) 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/26(土) 14:23:35.34 ID:RIZxZIDO
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満身創痍 @ 2024/03/28(木) 18:15:37.00 ID:YDfjckg/o
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part8 @ 2024/03/28(木) 10:54:28.17 ID:l/9ZW4Ws0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1711590867/

旅にでんちう @ 2024/03/27(水) 09:07:07.22 ID:y4bABGEzO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1711498027/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:18.81 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459578/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:02.91 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459562/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:25:33.60 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459533/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:23:40.62 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459420/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:22:39.08 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459358/

2 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/06/26(土) 14:28:55.47 ID:ESomw2w0

突然失礼します。
スレタイはネタです。関係ありません。

文章が拙く、妄想垂れ流しです。
オリジナル要素やIFの展開多いので、注意して下さい。
今回は総合スレさんの転載のみです。
3 :断片(海賊版) [sage saga]:2010/06/26(土) 14:30:40.54 ID:ESomw2w0

 
 一方通行。
 これは《今》の自分の名前。
 それは『昔』の《彼女》の名前になるはずだった名前。

 『学園都市最強』、そう謳われた能力。
 それに伴いきれてはいない、幼く脆弱な精神。
 白い髪、紅い目。可憐さより陰鬱さが、印象に残る整った容姿。可哀そうなくらいか細い身体。
 周りの闇がどこまでも深く、黒く、重いほど、対比して浮きだち――いや、沈みゆく。白い、白い、誰よりも白い無垢な少女。

 そんな《彼女》に出会ったのは、『暗闇の五月計画』という《彼女》の能力を基盤とした能力者を量産しようとする計画の直後だった。
 その計画の実験対象は、自分も含む《置き去り》の子どもたちだった。

 《検体番号一〇〇三二》。
 それが計画内で自分に与えられた記号。使い捨ての歯車の一部。
 命を懸けた籤引き番号、選ばれなかったら堕ちていく受験番号。
 「………」
 そして、自分は選ばれた――。
 関係あるなしに関わらず、多くの犠牲を中からただ一人だけ。
 たった、独りだけ…。

4 :断片(海賊版) [sage saga]:2010/06/26(土) 14:35:12.07 ID:ESomw2w0

 実験は明らかな失敗だった。
 求められた人員や基準を満たせず。ましてや、多くの失敗を出しながら何の方法論の確立はおろかその手がかりすら残せなかったのだから、仕方はなかった。
 結果、この計画に関わった研究者たちはこの『計画』を自身のキャリアに残したくないと、一人一人、静かに研究室から消えていき、最終的には自分ともう一人、顔に刺青を入れた男の研究者だけしか研究室に残らなかった。


 その男の研究者は自分に通告する。

 『明日、お前の処分が決まる』

 『確かに、お前は運が良く、生きる価値のあるクズだ』

 『でもよ。残念な事に現実は厳しいんだよ、クズが。結果を出ない奴を生かしておく義理や暇はねぇ』

 『……だが俺は寛大だ、慈悲深い。クズはクズでも、使いそうなクズは使う』

 『だから、テストだ。お前みたいな臭いブタでもわかるルールだ』

 『俺が大切に大切に、だ…、調教、もとい育てた上げたろりぃなあいつに傷ひとつでもつけたら、テメェの勝ち。
負けたら…わかるな。同じクズでもと一緒に、焼却炉でおねんねだ』

 『精々頑張れ。

 相手はたかだか普通の学園都市最強、だ。

 ギャハハハハッハ、ハ、ハハハハハッハハハハァハ』

 『あと最後に』

 『ねぇ、と思うが…億が一、あいつに傷でもつけたら、俺が殺す』

 『地獄の底までテメェに着いていって、三千回以上ブチ殺す。』

 『絶対にお前を殺す』

 そして、残念な事に自分はそのテストに合格した。
 《彼女》を傷つけた自分は、男の研究者に重症を負わされ、一週間後、目覚めた。
5 :断片(海賊版) [sage saga]:2010/06/26(土) 14:42:08.00 ID:ESomw2w0

 気持ち悪いほど、紅く染まった天井。
 自分に繋がっている多くのチューブ、計器、様々な装置。
 四分の一しか開かない窓からは、夕日が差し込み、レースのカーテンを揺らしている。
 外の空の青は段々濃くなっていき、夜の冷気が部屋を満たしていく。

 自分の右手を掴み、心配そうに覗きこんでいる白い《彼女》。
 自分が目を覚ますと《彼女》は、慌てて手を離し、顔を背けた。

 訪れる沈黙。
 《彼女》の背けた顔の左頬には大げさに貼られたガーゼ。
 自分が《彼女》に負わせた傷。
 自分は全身の痛みを我慢しながら、《彼女》の温もりが残る右手を上げ、そっと僅かに《彼女》の左頬に触れ、小さく呟いた。

 ごめん、と。
 自分の精一杯の誠意のつもりだった。

 
6 :断片(海賊版) [sage saga]:2010/06/26(土) 14:44:25.15 ID:ESomw2w0

 それを聞くと、彼女は一度だけ、びくん、と肩を震わせ、頬に赤みが増し、こちらを向き、舌足らず口調のまま、まくし立てた。

 『何がごめんですか、こっちは超心配したンですよ。
 ホント、超ウザイです』

 ――…本当にごめん。

 『なんで何回も謝れるンですか、この超変態』

 ――変態でもなんでもいい、悪かった。

 『謝るのはもういいですから、この傷の超責任とって下さい。
 私を瑕ものしたせ、き、に、ん』

 ――責任か…とれればいいが。どうやってとればいいのか、正直わからない。

 『…どういう方法で超責任とれば、いいのかって。
 そンなの、自分で考えて下さいよ』

 ――……、……。

 『……。わかりました。
 この超ノロマなあなたに代わって、超責任のとりかたを教えてあげます。あなたは、私の超しもべになりなさい』

 ――……悪い、言って意味がわからない。

 『意味が判らないって。ホント超馬鹿ですね。私のしもべの仕事は…』

 『ずっと私が傍にいる事。

 ずっと私を怖がらない事、無視しない事。

 私がいけない事をしたら、きちんといけないと言ってくれる事。

 それからそれから――』

 夕日が沈み、薄暗い病室の個室の中で《彼女》はわずかに自分から顔を背け、静かに確かに、こう自分に呟いた。

 『――ちゃんと私を殺してくれる人……』

 そう言った《彼女》の表情を自分は見る事ができず、何も言えなかった。

「……」

7 :断片(海賊版) [sage saga]:2010/06/26(土) 14:46:35.15 ID:ESomw2w0

 
 その後、しばらくは割合穏やかな日々が続いた。
 自分に幾つかの変化が起きる。

 一つ目は自分の名前が《一方通行》になった事。
 理由は《検体番号一〇〇三二》では《彼女》曰く、『超呼びにくい』との事。それはまったくの同意だが、この名前もどうかと思う。
 聞けば、《あの》男研究者が《彼女》の能力に例えて、考えた名前らしいが、《彼女》はどうしても嫌らしく、『超呼びにくい』自分の名前に転用されたらしい。南無。

 二つ目は《あの》男研究者がやけ自分を狙ってくる事。
 新薬投与やら、新型の駆動鎧やら、能力開発(実際は人間サンバック劇場)の実験に強制的に参加させられ、狙われた。
 その度に自分は入院させられ、朦朧する中、対岸には多くのギャラリーが見守る川原で、新種の人型カエル《冥土返し》と死闘を繰り返す夢を見た。

 そして、三つ目は《彼女》がずっと傍から離れない事。
 食事の時も、就寝の時すらも一緒だった(流石にトイレ時と入浴時は遠慮した)。
 いい加減に離れてくれ、と頼んでみたが、《彼女》が上目遣いで『…だって、離れると超怖いですから』と言われると、何も反論できなかった。

 《彼女》は自分の『能力』開発にも手伝ってくれた。
 もともと《彼女》の能力や演算パターンを基盤にしている為、見違えるように自分の『能力』は向上した。

 ありがとう、と言うと《彼女》は笑顔になった。
 初めて見る《彼女》の笑顔だった。
 その笑顔は温かく、他人がどう言おうと少なくとも、自分はこの笑顔の為に死ねると思った。


8 :断片(海賊版) [sage saga]:2010/06/26(土) 14:48:33.11 ID:ESomw2w0

 そう、確かに思ったさ。

 でもこれは『人』が《記号》として、処理されていく実験の間に『人』としてまだ、自分は大丈夫か、と問いあう馴れ合いだったのかも知れない。
 甘噛み、に似た行為。

 痛みから立ち向かう事をせず、覚悟もなしにお互いを慰めあう幼稚な行為だったのかも知らない。
 だが、当時の自分はこの事は知らないし、気付かなかった。

 でも、《彼女》は知っていて、自分に教えなかったかもしれない。

 そして、時間は経ち。
 暖房から冷房に空調が変わる季節が訪れ、この実験は始まった。



 《絶対能力進化実験》。
 自分はこの計画の内容は詳しくは知らないが、この《学園都市》の最高の能力者の位である《レベル五》から、更に上の『神』にも似た能力者を生み出そう、という計画らしい。
 その《絶対能力進化実験》の被験者に選ばれたのは、当然ながら『学園都市最強』たる《彼女》だった。

 ふと、自分はその《実験》にさまざまな疑問を感じる。
 人として、いや。《能力者》として、この《学園都市》としての――現状ではあるが――ハイエンドたる《彼女》にこれ以上、何を求めようというのか。

 いや、そもそも《学園都市》が考える『神』とは何か。
 あの論理や宗教とは真逆というより『無関係』の奴らがそんなものを信じるとは思えない。

9 :断片(海賊版) [sage saga]:2010/06/26(土) 14:49:49.77 ID:ESomw2w0

 『神』。
 奇跡の代名詞。
 不条理の対象。
 人が創った概念。
 その概念を創った人よりなおも高みにいく『モノ』。
 そして。
 死んで初めて、なれる『モノ』――

 人は自分たちの為に科学や宗教に使っていると思っているが、本当は科学や宗教に自分たちは使われているのではないだろうか。
 脳と身体の関係。
 記憶と魂の因果。
 罪と罰。

 それに、自分たちのこの『能力』は、自分たちの遠い祖先が捨ててきた《過去》ではないのか。
 《過去》。できるだけ長く生きる、あるいは自分たちが進み過ぎて絶滅――自滅しないように捨ててきた自分たちの『未来』、『可能性』のひとつ。
 安全装置。妥協。限界点。
 それを無意識に考え、鬩ぎあい、僅かな前進と大きな失敗をくり返しながら、積み上げ、成長してきた人の歴史。

 人間は、本当に人間『以上』でなく、人間『以外』になれるのだろうか。
 少なくとも、自分にはわからなかった。理解できなかった。
 他人には他人しかなれず自分は自分しかなりえない、と考える自分には。




10 :断片(海賊版) [sage saga]:2010/06/26(土) 14:51:35.10 ID:ESomw2w0


 《彼女》が自分に名前をつけて欲しい、と言ったのはその《実験》が始まる三日前だった。
 その前後から自分の傍から《彼女》は離れるようになった。

 自室で二日間考えたが、全然女性の名前なぞ自分には考えられず、不本意ではあるが人に頼る事にした。

 頼ったのは、何度か自分と面識がある『完全ニートマニュアル』を愛読する女性研究者だった。
 女性研究者は、自分が二日間ろくに寝ずに考えた問題を三秒足らずで解決し、《彼女》の名前を書いたメモを自分に渡した。
 自分は彼女に礼をいい、その部屋を急いで出た。

 小さく後ろで聞こえる、
 『ごめんなさいね。
 わたしって、どこまでいっても、甘いから。
 優しくなくて、甘いから』
 と、いう言葉が聞こえず、《彼女》の部屋にむかった

 しかし、《彼女》は部屋にはいなかった。
 薄暗い部屋の中、雨の音だけが響いた。
 電気をつけると、机の上にメモが残しあった。

 『今まで、超ありがとう。そしてごめんなさい』と。

 《彼女》の嘘に気付いたのは、その時だった。
 いや、この嘘に気付いていないのは、自分だけだったかもしれない。
 自分はゆっくりと女性研究者のメモを開く。
 そして、そこに書かれた文字を見て、周りの音が消え、感情が一定になり静かに涙が出た。


 メモの文字。
 そこには自分が《彼女》に与え続けようと思った感情。
 これから先欠け続け、ずっと埋まる事がないであろう気持ちが書かれていた。
 たった二文字。


 ――『最愛』と。


11 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/26(土) 14:54:12.96 ID:CcSuLSYo
読みづらい。
彼女って一通? 絹旗?
12 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/06/26(土) 15:04:09.58 ID:ESomw2w0

11さん。レスありがとう。
この《彼女》は学園都市第一位になった絹旗です。

どの辺が読みにくいのか、教えてもらえば幸いです。
13 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/06/26(土) 15:11:29.62 ID:ESomw2w0

ちょっと用事できたので、あとのは後日投下します。

基本的に一週間、二週間ペースで進めていこう思います。
短編単体をひとつずつ、投下していって繋げていくスタイルなります。

ここまで見て下さった皆さん、有難うございます。
それでは失礼します。
14 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/26(土) 15:42:52.84 ID:j4UIWEAO
何がどうなったら絹旗の能力が一方通行って2つ名になるんだ?
15 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/26(土) 19:30:50.33 ID:CcSuLSYo
>>12
彼女が誰なのかわからないから

俺は一通か、文の流れや場面によって一通と絹旗どっちかを指すみたいなイメージで読んでたから

パラレルワールドなのはわかるけど学園都市第一位になった絹旗ってのがわかりにくい
会話もカタカナ混じりになってるしルックスが白いっていうと一通しか出てこない
16 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/26(土) 19:33:36.50 ID:w/kUESUo
敢えて色々錯覚させようとしてるのは分かるけどねww
17 : [sage saga]:2010/06/27(日) 01:54:30.24 ID:keb1pI20

遅れてすいません。
皆さんレスありがとうございます。
質問にお答えさせてもらいます。

>14さん
基本的のこのSSの《彼女》である絹旗は、原作の能力をもっていない設定です。
この絹旗の能力は原作の一方通行の『ベクトル操作』か、
もしくは、オリジナル設定で空間系の能力(簡単に言うと封神演技の十天君の宝貝か、サイレンのアゲハの父ちゃんの能力のパロディ)、
にしようと思ってました。

『一方通行』の通り名はオリジナル設定の場合、「一歩でも入ったら、もう戻れない」と言う意味合いにしよう、と自分は考えてました。

>15さん
ご指摘ありがとうございます。

《彼女》の口調は絹旗で統一すべきでした。自分のミスです、すいません。

白いルックスの方はこれは完全に個人的な嗜好です。
本来なら前に述べたようなオリジナル設定にする場合、原作のルックスの方が矛盾なく進められたのですが、
白髪、赤目、そして少し陰りのある絹旗を妄想してしまったら、……やばかったから。
そんな訳で、何故こんな容姿なった理由聞かれると「能力の弊害です」という通らない言い訳(こじつけ)しようと思ってました。
…ごめんなさい。

>学園都市第一位なった絹旗がわかりにくい
これも自分も技術、描写不足です。
この《彼女》の立場や孤独のディテールやエピソードを挿入すべきでした…

>16さん
なんていうか、奇に衒いすぎて墓穴堀まくった感じですね。
自分の力不足が実感できます。
18 :戦場の弧狼 [sage saga]:2010/06/27(日) 01:56:32.17 ID:keb1pI20

次も総合スレさんからの転載です。
19 :戦場の孤狼 [sage saga]:2010/06/27(日) 02:01:56.57 ID:keb1pI20

 君は何か、絶対的に信じていたものが壊れた事はあるだろうか。
 ない、とは誰でも言えないはずだ。

 『年とともに信じるという事は薄れていく。
 ならば、信じていくという行為を信じなければいけない』

 これは信じていた誰かの言葉。
 信じなければいけない行為の一つだ、と自分は信じている。
 目的と手段の逆転。それでも構わない、と思う。
 肥大していき制御の効かない手段が、『自分が求めていた目的』に届きさえすれば……。その先は求めない。
 例え、自分が用いた手段が別の目的にはむかっていても。
 そして『自分が求めていた目的』が通過点で、自分を従わせる枷にしているとしても――。
 構わない。そう俺は祈るように『信じ』、行動した。

「……、……」
 
 しかし、失敗した。
 あと少しだった…。
 失敗した原因ははっきりしていた。十中八九、『彼女』いや『彼』だった。
 『彼』。
 そう、彼だ。彼の事を考えると、顔が愉しそうに歪むのが自分でもわかる。
 何度でも血だらけで倒れる彼を見るのは、愉快だ。
 何度でも努力し、戦術を工夫して立ち向かってくる彼を削っていくのは、最高だ。
 何度でも彼の大事なモノを傷つけたのを、彼に思い出させて眺める彼の表情なんて、射精ものだ。
 …本当にたまらない。

「        」

誰かの声が聞こえた。思考に専念した自分の意識を引き戻す。
「もうすぐ到着ですよ。…大丈夫ですか、上条さん」

「――、ああ」

 俺は静かに応答し、車の振動で揺れる窓に顔を向け、外の様子を見る。
20 :戦場の孤狼 [sage saga]:2010/06/27(日) 02:03:36.50 ID:keb1pI20

 時折、遠くで聞こえる爆発音。
 アスファルトの舗装が剥げ、何かを引き摺ったような染みがある道路。
 道路側に斜めに倒れこんでいる、道路の両脇に並列しているように並んでいる電柱たち。
 人の気配さえ感じない住宅開発地域。
 断片的に建てられている新築の家。
 背の高い建物が少ないせいか、空がやけに広く、黒く、重い雲が重なり浸食している。

 窓に小粒の雨が張り付く。段々、激しく窓に叩きつけた。
 雨。自分が何もできなかった日。自分が無力だと知った日にも降っていた。
 そう、御坂美琴が死んだ日にも降っていた――。
21 :戦場の孤狼 [sage saga]:2010/06/27(日) 02:07:37.02 ID:keb1pI20

 窓の端に自分の座席の隣にいて、心配そうに自分の顔を見ている黒髪の地味目の女性が映る。

 「………」

 俺はその女性の顔を見ず、そっとその女性の左手を自分の人指し指全部と小指の一部が欠けている傷だらけの右手で握りしめた。女性の頬に 紅が差す。何度も、身体を重ねているのに何時まで初々しく、変わらない。
 可愛い、と感じた。しかしそれでも心を揺らがず、それがわずかに哀しかった。
 彼女は赤みを帯びたまま、聞く。

 「本当に。もう、本当に…これが最後なんですね」

 「……ああ」

 俺はさっきの言葉をもう一度だけ、吐く。
 彼女はその言葉を聞くと、微笑み、俺の肩に自分の身体を預け、目を瞑った。
 彼女は純粋すぎて、良い子だ。…だが、それだけに残念だ。
 もし彼女が目を瞑らず、もう一度俺の顔を見ていたら、この自分の嘘を見破れかもしれないのに。
 嘘。
 あの白いシスターは気づいていたのかも、しれない。
 それでも彼女は協力してくれた。最終的には自分達を破滅に導くかもしれない仕事を。

 『自分はどんなに他のものを裏切っても、これだけは裏切れない』

 初めて自分の手で殺した友人の言葉を思い出す。
 今なら彼の言葉の意味と重さがわかった気がした。
 この気持ちだけは、裏切れない。
 今日、『彼』と『彼女』達だけでもなんとかしなければ。
 最後にしなければ――

 「……一方通行……フルチューニング……」

 そう言い、車の窓で見た自分の顔は醜く、歪んでいた。………。
22 :極めて近く、限りなく遠い世界に(プロローグ) [sage saga]:2010/06/27(日) 02:10:35.36 ID:keb1pI20

転載続きます。
23 :極めて近く、限りなく遠い世界に(プロローグ) [sage saga]:2010/06/27(日) 02:13:13.96 ID:keb1pI20

 二年前、学園都市は崩壊した。

 崩壊した理由は簡単だった。《学園都市》つまり彼らは力を持ち過ぎてからだ。
 学園都市。その名の通り、都市全体を学校や研究所にし、学生や研究者を集め、様々な学究の頂きを目的とした都市計画。

 独特の軍事力。独立した行政、立法、司法。独自の外交。
 本当に彼らにこんなものが必要だったのだろうか。

 しかも、だ。世界唯一と言ってもいい、『専守防衛』『平和主義』を謳う極東の島国からこのような《都市》が生まれたのかは、
 誰も知らないし。
 わかっても、誰もが口を閉ざした。
 そう。本来のそこの土地の権利者たる極東の島国さえ、黙認という選択しかできなかった。

 治外法権地帯。
 学園都市の目的や制度を利用した問題《置き去り》。
 『善』、『悪』という言葉はなく、人は記号として処理され、積み上げられていく研究成果。
 それらを土壌として、色々なプロセス、時間、そしてタブーすらも省いて押し進んでいく、彼らの《科学》。
 《科学》。十年、二十年、いや数十年先でも自分達でも届く事ができないかもしれない卓越した技術/先鋭化された思想。

 他の人々は恐れた。口や態度には出さずとも、生物的に彼らを恐れた。
 彼ら《学園都市》がいくら紳士的態度で接してきても、常に恐怖のイメージは纏わりついた。

 生物の歴史。進化した生物に淘汰されていく日々。
 他の人々は知っていた。いや、刻みこまれていた。

24 :極めて近く、限りなく遠い世界に(プロローグ) [sage saga]:2010/06/27(日) 02:14:51.20 ID:keb1pI20

 しかし刻みこまれていても、他の人々はできるだけ《学園都市》とは友好関係を築こうとした。他の人々は思考する。生物的には危険かもしれないが、『合理』的に考えれば、ここで《学園都市》と敵対しても損さえすれど、何の得にもならない、と。
 長いものには巻かれろ、油断せず静観。

 それが《学園都市》に対しての基本方針となった。

 そして、時は流れ――

 ――この『友好』関係が終わりを告げる。

 アメリカにある学園都市の姉妹都市である《学芸都市》への軍、介入。
 
 九三〇事件。学園都市に謎のテロ集団が侵入。

 イギリス国内でのクーデータの成功。

 そして、ロシアが《学園都市》に対してのいきなりの宣戦布告。
 その結果、世界有数の軍事力をもつロシアは、たかだか一国家ですらない《学園都市》に敗北を喫した。

 《ロシア国家》の敗因。
 戦局のターニングポイント。
 それはヨーロッパの東部とロシア北西部に接する小さな独立国家集合体、エリザーナ独立国同盟。その国境に近い、廃寺院での大きな戦闘だった。

 形式的な戦闘報告書だけで、具体的な状況は何も書かれていなかった。
 双方の被害は甚大。
 しかし『奇跡』的にもロシア軍の軍人の死傷数は、二桁をこさなかった。

 その一週間後、ロシアは大きな反攻作戦もなく、クーデータして間もないイギリスの仲介によって降伏勧告を受け入れた。
25 :極めて近く、限りなく遠い世界に(プロローグ) [sage saga]:2010/06/27(日) 02:16:12.39 ID:keb1pI20

 ロシアと《学園都市》の自作自演。
 確かに、そういう声もある。しかしお互いにメリットが無さ過ぎるし、なにより、近年緊張状態にある東アジア地域に、火種を出すような事をあの聡明な《学園都市》がするだろうか。否、しないはずだ。
だったら何故だろう、と疑問は残る。
 まさか、あの《ロシア国家》が、『誰か』に利用されていたのか――

 答えはない。
 答えられるはずが、ない。

 まあ、それはともかく。他の人たちは恐れた、この《ロシア国家》と《学園都市》との戦争を。近い未来自分達が選びゆく現実に重ねた。
 そして、他の人々は表情を変えず、水面下で行動した。

 確実に、そして着実に。
 地獄には底があるが、人間の業には底はない。

 少しずつ、少しずつではあるが、《彼ら》は《学園都市》の力を徐々に削いでいった。
 軍事力や技術力だけが、力ではない。
 
 《学園都市》は確かに都市レベルとしては他の都市と比較するのが、失礼なくらい次元が違ってはいるが、国家レベルとしてはあまりにも小さく、耐えうる器ではなかった。

 そして、学園都市は崩壊した。
 盛者必衰。出る杭は打たれる。多数決の原理。
 《学園都市》の復興を願う残党は抵抗したが、その努力も叶わず次々に討伐されていった。

 『イギリスの英雄』、《上条当麻》らによって。
26 :極めて近く、限りなく遠い世界に(プロローグ) [sage saga]:2010/06/27(日) 02:17:07.40 ID:keb1pI20

 そして、今現在《学園都市》最後の残党《グループ》の拠点の掃討作戦が始まろうとしていた――
 
 
27 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/06/27(日) 02:19:24.45 ID:keb1pI20
今週は転載のみです。

また次回投下します。

それでは失礼します。
28 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/27(日) 13:08:30.86 ID:xrnXPcDO
晒しage
29 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/06/30(水) 12:31:51.92 ID:0U8q25Y0
やべぇ。
垣根「いい加減返事(略」スレ、面白い。

胸がキュンキュンする――これが恋なのか……。
30 : [sage saga]:2010/07/04(日) 04:05:46.52 ID:EWLKRLA0

本当に申し訳ありません。

このSSの次回の投下は、一身上の都合により未定させてもらいます。
一身上の都合とは信じてもらえないかもしれませんが、自分は七月末で会社を解雇される為です。
…正直、未来が見えませんし、現実を見たくありません。
一寸先は闇、とはよく言ったものです。普通に生きるという事がこんなにも、難しいとは。

それに悪い事は続くもので…
ご迷惑をかけた皆さん、本当すいませんでした。
この失態は自分なりに精一杯責任をとったつもりですが、しかしこれは自分の自己満足かもしれません。
どのような叱責も、受け入れる覚悟です。

今日から一ヶ月以内に自分から投下もしくは報告なかったら、html依頼を有志の方々お願いします。
自分でもできる限り依頼したいのですが、携帯が止まってしまう可能性も否めない為の処置です。

本来ならここで書き溜めないし、プロットを投下すべきですが。
今までのはほぼ一日の突貫作業で行っていた為、プロットも書き溜めもなく、投下できません。
ごめんなさい。
できるだけ、ここに戻ってくるように努力します。
もうここでしか書けませんしね。

ここまで読んでくれた皆さん有難うございます。
それでは失礼します。


31 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/20(火) 17:32:55.36 ID:RSRi1Tg0
>>1です
長い間、スレを放置してしまい申し訳ありませんでした。
諸事情で時間に余裕がなくなってしまったため、続ける事が困難になってしまいました。
大変残念ですが、ここで打ち切りという形にさせて頂きます。
スレ見ていただいた方どうもありがとうございました。
32 : ◆jW6Lod/BRQ [sage]:2010/07/21(水) 00:23:15.76 ID:KWRyBv20
33 : ◆5puPwza7mo [sage]:2010/07/21(水) 00:24:46.22 ID:KWRyBv20
t
34 : ◆5puPwza7mo [sage]:2010/07/21(水) 00:27:58.90 ID:KWRyBv20
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35 : ◆W1mpg3pUHw [sage]:2010/07/21(水) 00:29:00.71 ID:KWRyBv20
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36 : ◆jW6Lod/BRQ [sage]:2010/07/21(水) 00:30:02.14 ID:KWRyBv20
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37 : ◆UK9sAMCve2 [sage]:2010/07/21(水) 00:31:33.79 ID:KWRyBv20
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38 : ◆UK9sAMCve2 [sage]:2010/07/21(水) 00:32:31.67 ID:KWRyBv20
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39 : ◆jW6Lod/BRQ [sage]:2010/07/21(水) 00:33:16.39 ID:KWRyBv20
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40 : ◆qpl3a5wNoM [sage]:2010/07/21(水) 00:34:12.65 ID:KWRyBv20
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41 : ◆W1mpg3pUHw [sage]:2010/07/21(水) 00:34:40.37 ID:KWRyBv20
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