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サーシャ「亡命します」 - 製作速報VIP(クリエイター) 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/08(日) 00:00:30.07 ID:Ru3iF620
もしもサーシャがイギリス清教の一員になったらという話です
天草とステイル以外の男キャラは出ません
微弱な百合要素あり
ギャグ要素は少なめでシリアス中心
特にこれといった山場もカオス要素もありません
時間軸や原作設定、キャラ設定などはことごとくそげぶされています

第一の質問ですが、それでも書いていいですか?
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
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いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
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【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
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こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
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アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713089503/

2 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 00:02:29.30 ID:0uT09oQ0
期待
3 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 00:02:44.49 ID:BKptyMDO
第一の回答ですが、立てたなら書け
4 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 00:03:32.65 ID:Ru3iF620
サーシャ「亡命します」

ワシリーサ「えっ?何を言ってるのサーシャちゃんッッッッッ!!」

サ「第一の解答ですが、貴様が無理矢理着せてるこの変態的な衣装にいい加減うんざりしてるので亡命します。」

サ「第二の解答ですが、もう貴様の下で働きたくありません。解答の補足ですが、ッが多くてウザい」

ワ「そう、そんなに嫌だったの。ごめんなさい、サーシャちゃんの苦しみに気付いてあげられなくて…」

サ「気付くも何も確信犯だろクソボケ」

ワ「私はサーシャちゃんが嫌がることを続けさせるような血も涙も無いサタンじゃないのよ」

サ「そのセリフを主の前でも言える自信はありますか?」

ワ「分かったわ、じゃあその服は今日限りでやめにしましょう!」

サ「とか言いつつどうせ機動少女カナミンの衣装にするとか言うんだろ?」

ワ「もうサーシャちゃんたら、私がそんな酷い事すると思う?」

サ「Да」

ワ「今回はちゃんとした布地の多い服よ。」

サ「第一の質問ですが、それは本当ですか?」

ワ「ええもちろんよ。」

ワ「ほら!ミ○キーマ○スのきぐるみ♪」

サ「うわああああああああああああああああああ!!!」グシャッ!

サーシャはワシリーサがどこからともなく取りだした○ッキーの頭部を
ワシリーサごとバールで薙ぎ払った
5 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 00:07:41.24 ID:Ru3iF620
サーシャ「さて、これから一体どこに行けば良いのでしょうか?」

早速だがイギリスはどうだろうか?
元ローマ正教の一部隊や日本の天草をまるごと受け入れたくらいだ。
きっと自分の身柄も保証してくれるだろう。


サーシャ「というわけでイギリスに亡命しましょう」

サーシャ「第一の質問ですが、あらすじは以上でよろしいですか?」

神裂「それが今あなたがここに居る理由であると?」

サーシャ「Да」

アニェーゼ「亡命ですか。服装的な意味で。」

ルチア「まさに着の身着のままですね。服装的な意味で。」

アンジェレネ「あれじゃあスカートめくりもできそうにありませんね。服装的な意味で。」

オルソラ「ロシアは非常に寒いはずですが、お体の方は大丈夫でございましょうか?服装的な意味で。」

シェリー「水着か?最近のガキは大胆だねぇ。服装的な意味で。」

サーシャ「第一の解答ですが、それがここに居る理由です。匿っていただけますか?」

「第二の解答ですが、Да。」

「第三の解答ですが、ドクサレ上司のせいで服が他にないのです。」

「第四の解答ですが、もうめくるとかめくらないとかの問題じゃないでしょう。服装的な意味で。」

「第五の解答ですが、このインナーはア○ダーアー○ー社製のコー○ドギアを魔術で強化したものですから問題ありません。」

「第六の解答ですが、スケスケネグリジェのお前が言うな。」
6 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 00:10:25.57 ID:Ru3iF620
そのころランべス宮殿では

ローラ「亡命?」

ステイル「はい、ロシア成教殲滅白書に所属するサーシャ・クロイツェフという者です。」

ローラ「へえ」

ステイル「いかがなされますか?」

ローラ「来たるものは拒まざることよステイル」

ステイル「しかし、今はロシアと学園都市の間で戦争が始まろうとしている状況です。
ロシア成教からの亡命者を受け入れるというのは…」

ローラ「アニェーゼ部隊や天草式の様な大所帯ならともかく、たかが猫を一匹拾うだけ。
そのくらいならこのローラお姉さんがどうにかしたるわ。」

ステイル(お姉…さん…?)
7 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 00:12:25.60 ID:Ru3iF620
神裂「先ほどバーコードから電話がありました。上から許可が下りたようです。
手続きも全て引き受けてくれました。」

オルソラ「そうですわね、モスクワでは35度を超える気温を記録したこともございますし。」

アニェーゼ「これで晴れて私達の仲間ですね」

サーシャ「ありがとうございます。やはりここに来て正解でした。では、さっそくこの忌々しい服を」

アニェーゼ「そのままでも良いんじゃねえですか?」

サーシャ「第一の解答ですが、それでは亡命した意味がありません。さあ早く修道服を!普通の修道服を!」

アニェーゼ「わ、わかりましたから!そんなに迫らねえでください!アンジェレネ、彼女の着替えを手伝ってあげてください」

アンジェレネ「は、はい!サーシャさん、こちらへ!」

サーシャ「Да」

これでようやく普通の格好に…
8 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sag]:2010/08/08(日) 00:15:44.30 ID:Ru3iF620
サーシャ「………」

現在のサーシャの格好
黒地を基調とした上下分割の極めて布が少ない
例えるならきわどい黒ビキニにヒラヒラしたレースをつけたもの
さらに小さな悪魔の羽と尻尾もついている
頭にはネコミミのおまけつき


ルチア「アンジェレネ、これは一体どういう事です?なぜ着替える前よりも露出度が高くなっているのですか?」

アンジェレネ「えっと、なんででしょう…?」

神裂「何やら嫌なトラウマが…」

アニェーゼ「それは私の小悪魔ロリエロメイドしゃないですか。」

シェリー「なんでアンタがそんな物持ってんだよ」

アニェーゼ「上条当麻を落とすためです!」

オルソラ「あらあら、尻尾と羽までついているのですか。とても凝ったデザインでございますね。」

サーシャ「第二の解答ですが……グスッ…ひっく……もう嫌です……」

サーシャはとうとう泣き崩れてしまった
9 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 00:17:47.20 ID:xvxd8eg0
泣いたサーシャとか想像するだけで胸が熱くなるな
10 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 00:19:05.18 ID:Ru3iF620
ルチア「シスターアンジェレネ、あとでお尻百叩きの刑です。シスターアニェーゼも後でみっちりと話し合いましょう。」

アニェ&アン「…Да」

ルチア「申し訳ありませんサーシャさん。今度はちゃんとした修道服をお渡ししますから。」

サーシャ「……ほんと?」

ルチア「ええ。ですから機嫌を直してください。」

ルチアはへたり込んで泣いているサーシャに手を差し出した


サーシャ「……うん(ぎゅっ)」

サーシャはルチアの手を握り、もう片方の手で泣きはらした目をこすりながらルチアの後についていく




オルソラ「まるで姉妹みたいございますね。なんて微笑ましい光景でしょうか。そう思いませんか?」

神裂「思いません。」

アンジェレネ「百叩き百叩き百叩き(ガクブル)」
11 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 00:22:27.86 ID:Ru3iF620
ルチア「はい、どうぞ。」

サーシャ「第一の解答ですが、ありがとうございます…たしかに普通の修道服ですね。」

ルチア「出ていきましょうか?」

サーシャ「第二の解答ですが、すぐに終わりますから。それに、こちらの修道服を着るのは初めてですので、
色々とお手伝いしていただけるとありがたいのですが。」

ルチア「わかりました。」

サーシャはルチアの前で小悪魔ロリエロメイドを脱ぎ始めた

ルチア「……」

ルチア(下着…上は付けてないのですね。それもそうでしょう、あの拘束衣では。
それにしても、陶器肌というのでしょうか?真っ白でマシュマロの様に柔らかそうで、
思わず頬ずりをしたくなる様な……はっ!私ともあろうものが何とふしだらな!
しかも相手は女の子じゃないですか!しかし、あの絹の様な肌を見せつけられては……いけない、
これはきっと主が私めに与えてくださった試練です!試練なのです!!)


サーシャ「あの」

ルチア「はい!!」サーシャ(ビクッ!)

ルチア「ああすみません、少々考え事をしていたもので。」
12 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 00:27:28.84 ID:Ru3iF620
サーシャ「そ、そうですか。では第一の質問ですが、あなたがたの修道服はなぜ
ジッパーが取りつけられているのですか?ス○ィッキィフィンガーズですか?」

ルチア「季節によって半袖に切り替える事ができますし、戦闘の際には動きやすい様スカートを短くすることができるようにと、
まあそんな感じです。私とアニェーゼはデフォルトでミニスカですけど。」

サーシャ「なるほど、魔術だけでなく機能的な意味合いが込められているということですか。
では第二の質問ですが、スカートのジップを取り外すのを手伝っていただけないでしょうか?」

ルチア「はい、えっとスカートのジップはこうやって…」

サーシャ「ひゃっ!」

ルチア「どうかなされましたか?」

サーシャ「第三の解答ですが、すみません、太股が少しこすれて…」

ルチア「そうですか。ですが、すぐに終わりますので我慢してください。」

サーシャ「はい//// (もじもじ)」

ルチア(なるほど、弱点というわけですか。サーシャさんたらかわいらしく太股を擦り合わせたりして……フフフ)

サーシャ「ん////……まだですか…?」

ルチア「終わりましたよ。」


サーシャ「第四の解答ですが、ありがとうございました/////」

ルチア「いえこちらこそ本当にありがとうございました。」

サーシャ「えっ?」

ルチア「い、いえ!なんでもありませんっ!!」


13 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 00:29:28.79 ID:Ru3iF620
ルチア「というわけで、着替え終わりました。」

オルソラ「あらあら、とても良くお似合いでございますよ。」

アニェーゼ「ついでにこの厚底サンダルもどうですか?」

サーシャ「第一の解答ですが、歩きにくそうなので遠慮します。」

アンジェレネ「百叩き百叩き百叩き(ガクブル)」

神裂「二―ソはそのままなんですね。サーシャさん、ではこれを」

サーシャ「第一の質問ですが、これはイギリス清教の十字架ですか?」

神裂「はい。改めてこちら側に付くという事になるので、建前だけでも通していただかないと。」
14 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 00:29:56.76 ID:yv9igzE0
サーシャかわいいよサーシャ…
ちょっとうちの娘になってくれないかな?
15 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 00:32:11.24 ID:Ru3iF620
サーシャ「建前…?第二の質問ですが、この※八端十字架は捨てなくてもよいのですか?」
※ロシア成教の十字架

神裂「ええ。奇天烈に感じるでしょうが、イギリス清教はそう言った面に関しては寛容ですから。
ただし、イギリス清教のために働くという事が大前提ですが。」

ドクサレ上司の職権乱用に耐えられずにロシア成教を捨てたとはいえ
長年忠と信仰を尽くしてきたのだ。自分が常に身に着けていた
ロシア成教徒の証である八端十字架に愛着が無いと言えば嘘になる。
だからこの待遇は素直に嬉しい。それでも、イギリス清教の
十字架を前にすると、改めてロシア成教を捨てた事の重みが
自分の後ろ髪を引かれるというより、引っ張られる様な気分にさせられる。

サーシャ「たぶん、そういう思いを緩和させるためにこの様な処遇を…最大主教もなかなか侮れませんね……」

神裂「どうかしましたか?」

サーシャ「いえ、第二の解答ですが、ただの独り言です。第三の解答ですが、改めて、サーシャ・クロイツェフと申します。よろしくお願いします。」

神裂「ええ、こちらこそよろしくお願いします。」


こうしてめでたくサーシャはイギリス清教の仲間入りしたのでした


16 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/08(日) 00:34:40.99 ID:Ru3iF620
その頃、ロシア成教殲滅白書では

ワシリーサ「サーシャちゃん………」

シスターA「あの、ワシリーサ様?」

シスターB「ダメね、魂が完全に抜けてるわ。殲滅白書の仕事どうしよう…」

シスターA「ニコライ司教はなんと?」

シスターB「私達(殲滅白書)の方でなんとかしろだって。だけど、トップがこの有様じゃねえ……」

シスターA「それにサーシャが居ないと、何だかんだ言ってワシリーサ様を上手く扱えるのはサーシャしか居ないし。」

シスターB「首輪を付けられてるのはサーシャの方なのにね。さすがにあの服はちょっとねえ…」

シスターA「今まで良く耐えていたと思うわ。私だったら初日で辞めてそうだもの。」

ワシリーサ「てめえらサーシャたんの悪口言ってんじゃねぇぞ売女ァ!!!」

AB「言ってねえよ!!ちょ、暴れないでください!!」


深刻なサーシャショックが発生していた


17 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 00:36:56.50 ID:Ru3iF620
アニェーゼ「ところで、サーシャが着てた拘束服はどうするんです?」

バシン!ほわァ!

サーシャ「第一の解答ですが、燃やしましょう。」

バシッ!あうっ!

アニェーゼ「え?良いんですかい?」

バチン!そげぶっ!

サーシャ「ええ、第二の解答ですが、さすがにこの服に愛着などありません。」

バチコン!アッー!

アニェーゼ「わかりました。焼却炉まで案内しましょう。」



バシッ!だんだん気持ちよくなってきました///////

アンジェレネッ!
18 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 00:38:39.15 ID:Ru3iF620

アニェーゼ「さ、着きましたよ。」

サーシャ「そぉい!」バサッ!

アニェーゼ「1秒たりとも迷いを見せずに放りこみやしたか。よほど嫌だったんですね。」

サーシャ「終わった…我々の勝利です。」

アニェーゼ「いや、私らは全く関係ないでしょう。」

サーシャ「第三の解答ですが、共にこの喜びを分かち合ってください(ガシッ!)」

アニェーゼ「そう言われても…しかも抱きつかないで、泣かないでくださいよ。」

感動的な場面なのかそうでないのか、この二人の温度差が生み出すなんとも
奇妙な空間がそこにあった。
19 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 00:41:45.52 ID:Ru3iF620
オルソラ「ところで、サーシャさんの好きな食べ物は何でございましょうか?」

サーシャ「第一の解答ですが、ガムです。」

オルソラ「ガムでございますか。それは少々難しい課題になりそうです。」

神裂「あのですね、実は今晩、寮の皆さんでサーシャさんの歓迎会を開こうという事になりまして。」

サーシャ「第二の解答ですが、そういう事は先に言っていただかないと、ガムと答えた私がKYみたいじゃないですか。」

オルソラ「まずはガムベースを購入し、それから果実エキスや香料を…」

神裂「すみません、では改めて好きな食べ物を教えていただけますか?」

サーシャ「第三の解答ですが、特にこれと言って思い浮かぶものもありませんが……
しいて挙げるとすれば、ありきたりですがボルシチですかね。」

神裂「なるほど、ロシア料理の定番ですね。」

特別ボルシチが好きというわけではない。
ただ、いつだったかワシリーサが自分にボルシチを御馳走してくれたのを思い出したのだ
あんなおちゃらけた上司だが、意外に料理の腕は高くて驚いた覚えがある


サーシャ「……」

神裂「サーシャさん?」

オルソラ「ガムの甘味料は、人工甘味料と果物の甘味料、どちらを使えばよろしいのでしょうか?
オリーブオイルでアレンジを加えるのも面白そうでございます。」

神裂「嫌ですよそんな噛む度に口が油まみれになるガム。想像しただけで吐き気がします。」

サーシャ「だいよ…かい…うえ…おぶっ!!!」

神裂「サーシャさんッ!!!」

オルソラ「ロシア料理と言えば、ビーフストロガノフも有名でございますよ。最も、私達は修道女なので肉食はできるだけ慎まねばなりませんが。」
20 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 00:45:19.60 ID:Ru3iF620
オルソラ「それでは、今宵の歓迎会の料理はロシア料理中心ということでよろしいのでございますね?」

神裂「ええ、というかロシア料理の方もレシピをカバーしているのですか?」

オルソラ「私に作れない料理はございません。」

神裂「さすがは原作者が嫁にしたいと公言しただけありますね。では、私が買物に行ってきますので、材料のメモを」

サーシャ「あの、第一の質問ですが、私に行かせてもらえないでしょうか?」

神裂「えっ!ですが、今日はあなたのための歓迎会ですよ?」

サーシャ「第一の解答ですが、寮周辺の地図を把握したいのです。ダメですか?」

神裂「しかし…」

オルソラ「まあまあ、よろしいではありませんか。せっかくですから、このロンドンの街並みを楽しんできてはいかかですか?」

サーシャ「第二の解答ですが、突然の要望を受諾してくださった事に感謝します。」

オルソラ「はい、これがレシピです。大型の食品店に行けば大抵のものは揃っているのでございますよ。」

サーシャ「第三の解答ですが、では、任務を果たしてまいります。」

オルソラ「ふふ、楽しんできてくださいね。」

神裂「……大丈夫でしょうか?今日ここに来たばかりだというのに。それに、旅の疲れもたまっているかもしれませんし。」

オルソラ「まあまあ、かわいい子には旅をさせろという言葉が日本にはございますよ?」

神裂「それは色々と間違っています。とにかく心配なので、五和に連絡しておきましょう。」
21 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 00:47:49.15 ID:Ru3iF620
五和「というわけで女教皇様から連絡を承ったので、例のサーシャという女の子を探しているのですが…」

サーシャ「……」

五和「えっと、小柄で金髪で色白で、修道服を着ている女の子ですね。」

サーシャ「……」

五和「補足として、ミニスカ二ーソで胸は控えめと…」

サーシャ「……(ピキッ!)」


五和「それらしき人は見当たりませんが…」

サーシャ「第一の質問ですが、あなたのその二つある目と乳は飾りですか?」

五和「うわっ!等身大のフランス人形が喋りだしました!」
22 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 00:50:48.84 ID:Ru3iF620
サーシャ「第一の解答ですが、宣戦布告として捉えさせていただきます」

五和「あの、もしかしてあなたがサーシャ・クロイツェフさんですか?」

サーシャ「第二の質問ですが、まさか本当に今まで気付かなかったのですか?だとしたら信じられないくらいの天然ですね。」

五和「すみません。あの、私はイギリス清教並びに天草十字凄教に所属する五和と申します。」

サーシャ「第二の解答ですが、同僚というわけですか。あなたの服装から魔術的な匂いを感じたので、
こちらから接触してみたのですが、どうやら勘違いだったようです。」

五和「勘違い?もしかして、人探しでもしているのですか?」

サーシャ「いえ、第三の解答ですが、かくかくしかじか」

五和「亡命!!なるほど、女教皇様は、私に殲滅白書から狙われてるあなたの護衛を任されたという事ですね!」

サーシャ「第四の解答ですが、全ては私の勘違いですから。補足説明すると、取り越し苦労というやつです。」

五和「そうなんですか。では、なぜ女教皇様は、あなたに接触する様に指示を…?」





サーシャ「第五の解答ですが、迷子になりました。」
23 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 00:53:01.52 ID:Ru3iF620
五和「それにしても、よく私が魔術師だって気付きましたね。天草は隠密行動に長けているので、
見つからない事には自信があったのですが。いえけして私が地味キャラだという事ではなくてですね」

サーシャ「第一の解答ですが、先程も述べた通り殲滅白書から逃げてきた身です。少々魔術の反応に神経質になっていたからでしょう。」

五和「さすがはプロという感じですね。ところで、なぜ亡命を?」

サーシャ「第二の解答ですが、どうかその事については触れないでください。」

五和「……?」
24 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 00:55:33.10 ID:Ru3iF620

店員「では、いつも通り女子寮に配達しておきますね。夕方までには届けさせます。」

五和「よろしくお願いします。」

サーシャ「第一の解答ですが、助かりました。ありがとうございます。」

五和「いえいえ、同じイギリス清教の仲間じゃないですか。そうだ、もしよろしければ、この後私達の住み家に来ませんか?」

サーシャ「第一の質問ですが、天草のアジトですか?」

五和「そんな大それたものじゃないですよ。和洋混合の長屋みたいなものですから。」

サーシャ「NAGAYA?」

五和「あー、えーっと、要は寮みたいなものです。私達が治安維持と管理を任されている日本人街にあるのですが」

サーシャ「第二の質問ですが、イギリス清教に転身した身とは言え、昨日まではロシア成教に所属していました。
そんな私をあなたがたの拠点に招いてもいいのですか?」

五和「大丈夫ですよ!根拠はないけど。」

サーシャ「はあ、では第二の解答ですが、お言葉に甘えさせていただきましょう。」

25 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 00:58:10.45 ID:Ru3iF620

私、メリーさん、今あなたのマンションの前に居るの

香焼「教皇代理、チャンネル変えましょうよ……」

建宮「何言ってんの!そんなチンケな肝っ玉で天草の十字教徒がつとまるかってのよ!!」

野母崎「おい早く外に逃げろよ!何で部屋の中に隠れるんだよ!」

対馬(なんでイギリスで日本のホラー番組が放送されてるのかしら?しかもこんな真昼間から)

私、メリーさん

建宮・野母崎・香焼(ごくっ……)




今、あなたのウ・シ・ロ・ニ・イ・ル・ノ!!




「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!」

対馬「ああうるさい…」
26 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/08(日) 01:00:34.90 ID:Ru3iF620
五和「ただいま戻りましたー。ていうか、みなさんなぜ雄叫びなど?」

対馬「ほっときなさい。ところで五和、その子は?イギリス清教のシスターさん?」

五和「ああ、彼女は」

建宮「おお五和ァ!今凄く怖い番組がやってたのよ!世の中俺達の知らない世界っつーもんがまだまだ沢山あんのよな。
お前にも見せてやりた……」


サーシャ「……」


建宮「……」


サーシャ「……?」


建宮「……(ダラダラ)」

香焼「ほんと怖かったですよねー。アレ、どうしたんですか教皇代理?そんな滝の様な冷や汗を……」








建宮「はぎゃあああああああーッ!!!!メリーさんが後ろにいいいいい!!!!!」

香焼「(ピクピク)」泡を吹いて気絶している

サーシャ「……」

五和「ちょっ、建宮さん!失礼じゃないですか!」

サーシャ「第一の質問ですが、初対面で等身大のフランス人形呼ばわりしたあなたがそれを言いますか。」
27 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 01:03:09.31 ID:Ru3iF620
建宮「いやいや先程は失礼したのよ。俺は天草の教皇代理をやってる建宮っつーもんなのよ。」

サーシャ「第一の解答ですが、私はイギリス清教のサーシャ・クロイツェフです。」

五和「お茶がはいりましたよー。はい、サーシャさん、おしぼりです。」

サーシャ「第二の解答ですが、ありがとうございます。湿ったタオルを日本ではオシボリというのですね。」

野母崎「まさか五和、あの少年だけじゃなくて、その子まで……いかんぞ!確かにイギリスは同性愛には寛容だが、
上条少年に上手くアタックできないからとは言えそっちの方向に走ってはいかんぞッ!!」

五和「な、何言ってんですか/////!!まるでおしぼりが私の求愛行動であるかの様な発言はやめてください!!」

サーシャ「…?第一の質問ですが、一体何の(ry」

対馬「気にしないで良いから。ほら、せんべい食べる?」

サーシャ「第三の解答ですが、いただきます。これは日本式のクッキーみたいなものでしょうか?すごく硬そうです。
ところで、お砂糖はありますか?」

五和「はい、どうぞ。でも、お砂糖が必要な食べ物なんてありましたっけ?」
28 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 01:06:26.49 ID:Ru3iF620
サーシャ「ありがとうございます(ドバッ)」

一同「!!!!!!?」

サーシャは豪快に緑茶の中に砂糖をぶちまけた

サーシャ「第四の解答ですが、グリーンティーは初めてです。紅茶とはまた違った香りと味を楽しめますね。」

五和(緑茶にお砂糖ですか!?)
香焼(しかもあんなに沢山!)
対馬(でも甘茶とかあるし、案外いけるのかしら?)
建宮(うっ、きもちわるくなってきたのよ…)

初めての緑茶?を堪能するサーシャを尻目に、天草式一同はカルチャーギャップをこれ以上ないくらいに感じていた

サーシャ「第五の解答ですが、センベイと言いましたか?少し硬いですが、この香ばしさと、
コクがあってほど良いしょっぱさは病みつきになりそうですね(バリボリ)」

五和「そ、そうですか、喜んでいただけて何よりです……」

サーシャ「……?第二の質問ですが、私の顔に何かついていますか?」

五和「え!?い、いえ!なんでもありませんよなんでも!」

サーシャ「……?(バリバリ)」小首をかしげつつせんべいを噛み砕くサーシャ

五和「……(それにしても)」


お茶をすすりながらバリバリと煎餅を頬張るフランス人形の様に綺麗な顔をした修道服の美少女外国人。
「なんてシュールな光景なのだろう」とその場にいた天草式の誰もがそう思わずにはいられなかった。


29 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 01:13:26.08 ID:Ru3iF620
サーシャ「第一の解答ですが、楽しいひと時を過ごさせていただき感謝します。続いて第一の質問ですが、また来てもよろしいですか?」

建宮「おう、こんなかわいいシスターさんならいつでも大歓迎なのよ!」

対馬「ロリコン?」

サーシャ「第二の解答ですが、ありがとうございます。では」

五和「女子寮まで見送りに行きますね。また迷子になったら大変ですから(ニヤニヤ)」

サーシャ「むっ、第三の解答ですが、五和は見た目に反してなかなか意地悪な方ですね。」

五和「くすっ、冗談ですよ(からかった時の反応が可愛いですね)」

野母崎「五和、襲うんじゃないぞ?」

五和「いい加減にしないとシバきますよ野母崎さん?(ニコッ)」
30 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 01:15:03.63 ID:Ru3iF620
五和「ところで、サーシャさんはなぜ亡命を?あ、いえ、話しにくい事情があるのでしたらいいですけど。」

サーシャ「第一の解答ですが、その事については触れないでくださいと先程言った気がします。」

五和「えっ!そうでしたっけ!?すみません、やっぱり話したくないですよね、深刻な問題ですし…」

サーシャ「……第一の質問ですが、なぜ気になるのですか?私が亡命した理由など」

五和「そうですね…興味があるというのも確かなんですが、なんというかその…助けたい、いえ、力になりたいんです。あなたの。」

サーシャ「私の?第二の質問ですが、もう少し詳しい説明を要求します。」

五和「だって同じイギリス清教の仲間ですし、それに友達じゃないですか、私達。」




サーシャ「友達……?」

五和「ええ、友達ですよね。」

恋には奥手の五和だが、こういう時だけはなぜか妙に積極的だ
原作ではどうか知らないが
31 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/08(日) 01:17:33.97 ID:Ru3iF620

五和「もしかして、嫌ですか?」

サーシャ「い、いえ、第二の解答ですが、あなたの認識に間違いはありません。私も…その……あなたを友人であると認識しています……/////」

五和「ではサーシャさん、あらためて」

サーシャ「第三の解答ですが、サーシャです。」

五和「はい?」

サーシャ「サーシャさんではなく、サーシャと呼び捨てしてください……/////」

五和(照れてる…かわいいなあもう!)ぎゅっ!

サーシャ「だ、第三の質問ですが!いきなり何を!むぎゅっ!く、苦しい…」

五和「よろしくおねがいしますねサーシャちゃん!(スリスリ)」


辛抱たまらなくなった五和に抱きしめられ、頬ずりをされるサーシャ
隠れ巨乳と噂される彼女の双丘の圧迫は、地味にそれでいて確実にサーシャの意識と体に
ダメージを与えていく

満足して開放した頃には、ある意味本当に物言わぬフランス人形の様になっていたという
32 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 01:20:00.64 ID:Ru3iF620
五和「それでは、この辺で。今度は一緒にロンドンを遊びまわりましょうね。」

サーシャ「第一の解答ですが、お見送り感謝します。第二の解答ですが、その時はまたよろしくお願いします。
補足させていただきますが、天草式の圧殺術をかけるのはもう勘弁してくだいさい。」

五和「す、すみません、サーシャちゃんが可愛過ぎたのでつい/////」

サーシャ「な、何を言ってるのですかあなたは/////」


赤面してうつむく二人
そこへ


アンジェレネ「大変!大変ですよー!大事件です!そこ!!女同士でなんか良い雰囲気出してる場合じゃないですよー!!」

五和「えっ!いえ!良い雰囲気とかそんなんじゃ!?」

サーシャ「第一の質問ですが、詳細な説明をお願いします。」

アンジェレネ「説明するより現場を見てもらった方が早いです!百聞は一見に如かずですっ!」

アンジェレネはサーシャの手を握り、その現場とやらに連れて行った

そこは、先程アニェーゼに連れられ、サーシャが忌々しい拘束衣と決別した焼却炉がある……いや、正確にはあったはずの場所だった
33 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 01:21:53.75 ID:Ru3iF620
神裂「シスターアンジェレネ、サーシャさんを連れてきてしまったのですね…」

サーシャ「第二の質問ですが、一体何が?」

神裂「少しショッキングかもしれませんが…覚悟してください…」


焼却炉に来た時点ですでに嫌な予感はしていた
だが、もしかしたらそれは違うと、杞憂だと、僅かな希望にすがりたかった


神裂はサーシャの前から退き、サーシャはおそるおそる、その悪夢の光景を自分の目に映し、事実の認識に努めようとした

その悪夢の光景とは、その事実とは




なぜか焼却炉が跡形も無く木っ端みじんに爆破していたこと
そして、そんな大爆発があったにも関わらず、なぜかそれが、全てを焼き尽くす紅蓮の炎に投じたはずのそれが、
目立った傷一つなくホコリすらも寄せ付けず、まるで宝箱の中に大切に保管されていた物の様にそこに鎮座されていた


焼却炉「洗濯して干してアイロンがけまでちゃんとやっておきましたよ。ただし俺の命と引き換えにな!!」とでも言わんばかりである


一体、あの拘束衣にはどんな強大な聖骸布レベルの術式が施されていたのだろう

いや、もう考えたくない


サーシャ「はは…ははははは……」

サーシャは口を引きつらせ、抑揚の無い笑い声を発した後、暗転する視界と意識に身を任せた

同僚達が自分の名前を叫ぶのが聞こえたきがするが、なんかもういいや……
34 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 01:28:23.89 ID:yv9igzE0
焼却炉ェ…
35 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 01:29:22.71 ID:uh5PRwMo
>>33
何となく予想は出来ていたww
36 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 01:30:16.57 ID:Ru3iF620
拘束衣「サーシャ!サーシャ!サーシャ!サーシャぁぁあああわぁああああああああああああああああああああああん!!!
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!サーシャサーシャサーシャぁああぁわぁああああ!!!
あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
んはぁっ!サーシャ・クロイツェフたんの金髪の髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!
間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!
禁書ss1のサーシャたんかわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!
アニメ2期決まって良かったねサーシャたん(出番はともかく)!あぁあああああ!かわいい!サーシャたん!かわいい!あっああぁああ!
21巻も発売されて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!
ぐあああああああああああ!!!禁書なんて現実じゃない!!!!あ…小説もアニメもよく考えたら…
サ ー シ ャ ち ゃ ん は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!
そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!ごっがっァァああああああ!!
この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?カラーページのサーシャちゃんが僕を見てる?
カラーのサーシャちゃんが僕を見てるぞ!サーシャちゃんが僕を見てるぞ!挿絵のサーシャちゃんが僕を見てるぞ!!
アニメのサーシャちゃんが僕に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!
いやっほぉおおおおおおお!!!僕にはサーシャちゃんがいる!!やったよ黄泉川!!ひとりでできるじゃん!!!
禁書のサーシャちゃああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!!
あっあんああっああんあアレイスターぁあ!!イ、インなんとかさん!!フレンダぁああああああ!!!木ィィィ原くゥゥゥゥゥゥゥゥン!!
俺の想いよサーシャへ届け!!ネセサリウスのサーシャへ届け!」


参考文献:クンカクンカジェネレーター


37 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 01:32:34.63 ID:DgVWb32o
サーシャちゃんマジ大天使
38 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 01:32:44.45 ID:Ru3iF620
サーシャ「!!!!!!?」

サーシャ「夢……ですか……」


たぶん今まで見た夢の中でワースト3位に入る悪夢だろう
ちなみにワースト1位は、先程の悪夢に出てきた拘束衣を上回る、もはや布がほとんど
無くて衣服として全く意味を成さないほどの服を着たまま戦死する夢だ。
あの時は本当に心の底から泣きつつワシリーサが呪われることを祈った覚えがある。


サーシャ「第一の解答ですが、当然のごとく眠れなくなりました。補足説明ですが、ついでにお腹も空きました。
って、誰も居ないのに誰に対して説明してるのでしょうか?」


あの大惨事を見た後、ショックで倒れてしまった。
亡命してきたことの疲労もあってか、そのままぐっすり寝てしまい、悪夢を見てしまったわけだが。
あれから何も食べていない。最後に何かを口にしたのは、天草の拠点で緑茶とせんべいを口にした時だ。


きゅるるとお腹からかわいらしい音が鳴るのが聞こえた


サーシャ「そう言えば、今日は私の歓迎会を開いてくれるはずでしたね。みなさんに悪い事をしてしまいました……」


サーシャ「ですが、今更悔いてもしかたありません。少し出歩くとしましょう…」


サーシャは夜中の暗い女子寮の徘徊を始めた


今度は「歩くフランス人形が!」とか言われて驚かれたりしないかと少し心配になったが、
西洋人を見なれない東洋人からすればそう見えるだけで、西洋人はそんな事を言ったりは


ルチア「……そこの歩くフランス人形の幽霊みたいなのは誰ですか?もう就寝時間はとっくに過ぎてますよ?」


サーシャ「……」

39 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 01:36:12.01 ID:Ru3iF620
ルチア「おや、サーシャさんではありませんか。」


ルチア「先程は心配しました。いきなり倒れたものですから。まああんな光景を見せられては無理もありませんが…」

サーシャ「ッ…!」

ルチア「どうかしましたか?」

サーシャ「いえ、第一の解答ですが、再びかくかくしかじか」

ルチア「確かに、それは酷い夢でしたね。心中お察しします。」

サーシャ「第二の解答ですが、もう私はダメかもしれません」

ルチア「え、いやそこまで思いつめなくても」

サーシャ「第三の解答ですが、私の灰は故郷に蒔いてください。灰になれば、
もうあの服を着る事もありませんから……フフフフフアハハハハハハハ」

ルチア「あ、あの、少しお話しませんか?話せば少しは楽になるかもしれませんし。」


修道女の寮で変死体が発見されるなどという最悪の事態を避けたかったのが本音である

40 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 01:38:43.39 ID:Ru3iF620
ルチア「どうぞ。」

サーシャ「第一の解答ですが、ありがとうございます。」

ルチアから紅茶を受け取るサーシャ
そして、その紅茶にこれでもかというくらいにミルクと砂糖を入れる

サーシャ「第二の解答ですが、ここは月が良く見えますね。まるでどこかの成金の別荘の様です。」

二人は今、女子寮最上階のテラスに居た
優雅に外の景色を眺めながらティータイムを楽しめる空間であり、休憩時には修道女達に人気の場所である。
しかし、今現在はすでに就寝時間を過ぎているため、そこにはサーシャとルチアしかいない。

サーシャ「ふぅ…第三の解答ですが、少し落ち着きました。」

ルチア「何となく誤解を招きそうな表現ですが、そこはスルーしましょう。」

サーシャ「……」








ルチア「後悔してますか?」


41 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 01:40:46.48 ID:Ru3iF620
サーシャ「第一の質問ですが、それはどういう意味でしょうか?」

ルチア「実は私も、元はローマ正教のシスターでした。あなたと同じ、自分の本来の信仰を捨てた身です。
アニェーゼやアンジェレネ達も。」

サーシャ「そうですか」

ルチア「特にアニェーゼやアンジェレネは孤児だった身を救われたのですから、ローマ正教を捨てるのは辛かったでしょう。
アニェーゼに至っては、ここに来た今でもローマの教えを貫いているくらいですから。それに、私だって辛かったですよ。
色々とあって最終的にはそうせざるを得なくなってしまいましたが。」

サーシャ「第一の解答ですが、私はあなた方とは違います。あなた方は捨てたくなかったのに捨てる事になってしまった。
しかし、私は自らの意思で捨てたのです。あなた方の信仰心は、私とは違い、とても気高きものであったと思います。」

ルチア「そんな事ありませんよ。それに、辛かったのに変りはないでしょう?」
42 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 01:47:05.87 ID:Ru3iF620
サーシャ「第二の解答ですが、少なくともここに来た事への後悔はありません。みなさんが私を受け入れて下さった事に対する感謝は、
言葉では表せないくらいです。補足しますと、友人も一人できましたし……」

ロンドンの街で出会った初めての友人の事を思い出し、少し顔が赤くなる

サーシャ「第三の解答ですが、私は友人と呼べる者は今まで居なかった気がします。
その事に改めて気付かされた時に、なぜかあの嫌な上司の顔を思い浮かべてしまったのです。
もとはと言えば、全てはワシリーサが元凶だというのに…」

サーシャは俯き、その顔を影が覆う
良く見ると、ティーカップの側面を包む様に持つ彼女の両手が、かすかに震えている様に
見える

             

サーシャ「なぜなんでしょうね?今更あの愉快なアホ上司の顔を思い出すと、こんなにも
胸が締め付けられるのは…」


結局、後悔してるのかしていないのか、辛いのか辛くないのか
それすらも曖昧なままで答えが出てこなかった

なぜか胸が苦しくなるので、考える事すら避けたかった




ルチア「たぶん、あなたはその上司の事が好きだったのかもしれません。だから、その苦しみはまだ続くでしょう。」


そういうと、ルチアはサーシャを抱き寄せ、優しく抱きしめてあげた…


43 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 01:51:41.21 ID:Ru3iF620
ルチア「気の利いた言葉は思い浮かびませんが、こうすると少しは楽になりませんか?
本当に辛い時は、誰かに甘える。焦る必要はありません。答えが見つからない時は、それを答えにしてしまえば良いのです。」


サーシャ「……」



不思議な温かさだった
ワシリーサとは根本的に性格が違うのに、なぜか同じ温かさを感じる


サーシャ「第二の質問ですが、もう少しこのままで居ても良いですか(ぎゅっ)」

ルチア「ええ、あなたの気が済むまで。」




結局のところ、答えは分からない
しかし、ここに来たという事だけは、間違いなく正解である
この温かさがそう教えてくれている

悪夢も苦しみも、今だけは全てを忘れ、ルチアの温かさに身を委ねてみようと
彼女はそう思った


44 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 01:57:06.55 ID:Ru3iF620
ここから先はエピローグ的なものです


サーシャ「第一の解答ですがルチア、ルチアはとても良い匂いです。優しくて懐かしい
匂いです。それに暖かくて、まるでお姉さんみたいですね。」

ルチア「そ、そうですか?でもサーシャさんもとても白くて綺麗でかわいいですよ?」

サーシャ「第二の解答ですが、うちのクソ上司もルチアみたいだったら良かったのですが」

ルチア「あなたの上司の代わりはできませんが、辛い時は遠慮なく私を頼ってくれて良
のですよ。それこそ、あなたのお姉さんみたいにです。」

サーシャ「第三の解答ですが、ありがとうございます、お姉様…(すりすり)」

ルチア(うっ、まずいですねこれは……)

ルチアはしっかりした性格で面倒見が良いため、年下に懐かれやすい。
アンジェレネもその一例なのであるが。
もちろんアンジェレネも可愛い。しかし、彼女の場合は手のかかる妹的な可愛さである。
そしてサーシャの場合は、それとはどこか違うベクトルの可愛さがある。

その可愛さは、なぜかルチアには「ここから先へ足を踏み入れたら戻れなくなりますよ?」
と警告されている様に思えてしまう

かつてロシアの殲滅白書のリーダーを魅了し、天草十字凄教の少女の理性を砕いた魔性の少女サーシャ

サーシャ「ルチアお姉様…(ぎゅっ)」

今、アニェーゼ部隊で最も厳格で禁欲的で理性的な敬虔なる修道女ルチアの理性をも砕こうとしていた
45 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 02:03:33.00 ID:Ru3iF620
ルチア「(いけない、このままでは理性が…)サーシャさん、とりあえず、お姉様という呼
び方は変更していただけますか?」

サーシャ「第一の質問ですが、お姉様はダメなのですか?」

ルチア「むしろ良、いやダメです!」

サーシャ「そうですか。では第四の解答ですがシスタールチア(すりすり)、ルチアは
意外と胸が大きいですね。スタイルも良くて羨ましいです(ぎゅっ)」

サーシャはルチアの胸に顔をうずめる

ルチア「(いや、何も解決できてませんね。この可愛さは反則でしょう)修道女にはその
様なものは必要ありません。それに、胸ならシスターオルソラや神裂さんの方が」

オルソラ「お呼びでございましょうか?」

ルチア「……シスターオルソラ…いつからそこに?」

オルソラ「あらあら、逢瀬でございますか?どうやら私はお邪魔のようでございますね」

ルチア「お、おうっ!?一体どこをどう見ればそんな背徳的な表現につながるというのです!!」

オルソラ「でも満更ではないのでございますよね?」

ルチア「まあ確かに……って!そうじゃなくてですね!!」

オルソラ「そうそう、お料理の準備が整ってございますわ。」

ルチア「相変わらずですが、あなたの話には脈絡が無さすぎます。ていうか、何でこんな
    時間に料理?」

オルソラ「とても微笑ましい光景で、思わず見とれてしまいました。」
   
ルチア「なぜそこに戻るのですか!?」

オルソラ「さあ、食堂へ参りましょう」
  
ルチア「もしかして寝ぼけてますか?」

オルソラ「みなさんお待ちかねですよ。」

ルチア「……」
46 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 02:05:56.72 ID:Ru3iF620
寝ぼけてるのかまじめに言ってるのか、デフォルトでこんな感じのなのでイマイチ判断が難しい

しかし、もしオルソラの言ってる事が正しいのならば、こんな夜中に飲み食いをしている
不貞の輩どもに制裁を加えねばならない


というわけで、オルソラに連れられて食堂へと歩むサーシャとルチア


サーシャ「第一の解答ですが、何やら良い匂いがしますね。」

どうやらオルソラは寝ぼけていたわけではなさそうである


ルチア「オ・シ・オ・キ・カ・ク・テ・イ・ネ」


オルソラ「さあさあ、サーシャさん、主役はあなたでございますよ。」

サーシャ「第一の質問ですが、それはどういう」

質問を言い切る前に、オルソラが食堂の扉を開けた


そこには…
47 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 02:11:15.97 ID:Ru3iF620
アニェーゼ「あ、やっと来ましたか。遅えですよ二人とも。」

アンジェレネ「シスターサーシャ!早く早く!」

シェリー「夜食を漁りに来たら私まで無理矢理参加させられたんだが」


そこには、さすがに大勢とは言えないが、こんな真夜中でも起きているシスター達が居た

オルソラ「さすがに御馳走とまではいきませんが、簡単な軽食をご用意させていただきま
した。日本で言う前祝いという奴です。」

ルチア「まったく、こんな夜中に飲み食いして馬鹿騒ぎする修道女が一体どこの世界にいるの
ですか」

アンジェレネ「まあまあ、良いじゃないですかシスタールチア。今日くらいは主も許し
てくれますよ。それよりも早く料理を」

ルチア「それに神裂さん、あなたまで。」

神裂「え、いや私はその…」

オルソラ「さあ、お二人とも、早く席についてください。お料理が冷めてしまうのでございますよ。」

ルチアはやれやれといった感じでため息をつき、オルソラに促されるように席に座る

五和「さ、どうぞ」

五和はサーシャのために椅子を引いてあげた

サーシャ「五和!?」

五和「えへへ、来ちゃいました。」


アニェーゼ「ところで、乾杯の音頭は誰がするんです?」

アンジェレネ「シスタールチアが良いと思いますっ!」

ルチア「アンジェレネッ!」

オルソラ「よろしいのではないですか?」

神裂「私も賛成です。」

シェリー「何でも良いから早く食いたいんだが」

ルチア「はぁ、これではまるでミイラ取りがミイラになってしまってるみたいですね」
 
アニェーゼ「細けえこたぁいいんですよ」
48 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 02:19:23.49 ID:Ru3iF620
サーシャ「……」

何やら楽しそうに騒いでいるのを傍からぼーっと見ているのであるが、それも自分を歓迎するためのものだと考えると、
何やら妙な気分にさせられる

ルチア「では、本日はお日柄もよく」

アニェーゼ「夜ですよ?」

ルチア「サーシャ・クロイツェフさんはロシア成教殲滅白書に所属していたという事で」

シェリー「話が長いぞ部長」

ルチア「ぐぬぬ……わかりました!では簡潔にしますよ簡潔に!!」

神裂「そんなヤケにならなくても」





ルチア「私達の新しい仲間であるシスターサーシャと、主が与えて下さったこの素晴らしい出会いの奇跡に!!!」





               全員「かんぱーい!!!」






五和「サーシャちゃん、おしぼりをどうぞ」

サーシャ「第一の解答ですが、ありがとうございます五和」

ちなにみ本格的な歓迎会は後日行われました

つづく?
49 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 02:22:06.80 ID:Ru3iF620
ひとまずここで区切ります
一応最終的な展開も考えているのですが、需要ありますか?
50 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 02:22:30.90 ID:5u9E4YSO
乙っした

サーシャは俺の理性も砕いていきました
51 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 02:33:13.21 ID:erXS/gDO
また需要きいちゃう子か…。気になるなら総合で試せよ…。
需要なんかねえっつの。ただでさえSS溢れてるのに。
結局「面白い続き書いて!」って言われたいんだろ?だから需要とかきいちゃうんだろ?
面白かったらみんな見てくれるから大丈夫だよ。
とりあえず立てちまったんだから最後まで書けよ…
52 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 02:45:57.09 ID:lgrdsOAo
サーニャかと思って来たらリアル天使ちゃんかよ
期待
53 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 11:45:09.61 ID:27qfekAO
>>51
その言い方は ちょっと…な
かなり気にする人がいるから. やめた方がいいと思うさ。現に何故か、まったく作者じゃない俺が精神ダメージを喰らってしまった…orz

>>49 作者さんへ
めっちゃくっちゃ需要はあるぜよ!どんどん書いちゃって下さいな(^o^)/
54 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 12:11:03.16 ID:MV.Xe2AO
サーシャって性別不明なの?
55 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 13:41:01.97 ID:vpAaQZgo
サーシャNGワードにしてるわwwww
ネタバレ回避で重要そうな名詞はNGにしてるから早く読み終わりたいぜ
56 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 14:21:18.31 ID:.HLiL1Yo
でも>>51の意見もちょっとわかるな
VIPならともかく、こっちでは需要とかわざわざ確認しなくてもいいと思うわ
57 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 15:30:58.06 ID:yv9igzE0
>>54
名前と見た目が合ってないからね…
クロイツェフは男の名前だからね…
かまちーあんま考えてないからね…
58 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 22:12:32.38 ID:27qfekAO
フルネームは「サーシャ・クロイツェフ」ってなってるんでしょ?
だったら、クロイツェフって「ファミリー ネーム」だよ? つまり日本でいう【名字】なんだけど…(汗)
59 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 23:33:40.19 ID:EY5cyxAo
>>58
ロシア系の姓は男女で最後の音が違うんだぜ
女性ならクロイツェフじゃなくてクロイツェヴァじゃないとおかしい
60 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 23:43:24.27 ID:7wkZCaw0
>>58涙目wwwwww
61 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/09(月) 02:44:38.61 ID:fO6ZOwAO
俺が >>58 だったら
どっちかっていうと
「へぇ〜。そんなことよく知ってるな(・o・)」って感動するぞ。
っていうか >>59 ←あんたスゲェな
62 :1 [sage]:2010/08/09(月) 04:22:20.94 ID:4LgjpiI0
サーシャがイギリスに来てから数日後



灰は灰に、塵は塵に…


ステイル「吸血殺しの紅十字!」

?「ぎゃああああああああ!!!」


ステイル「やれやれ、今日だけで三件か」



今日をーいっぱいーあーりーがーとー♪子羊のあく(ピッ)



ステイル「……土御門か。ああ、まただ。まったく嫌になる。ハロウィンはまだ先だというのに、化け者の相手ばかりだ。」
63 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/09(月) 04:26:17.28 ID:4LgjpiI0
「…呑気なものだな。こっちは深刻な人手不足だ。君の手も借りたいくらいだよ。」



「ああ、おそらく殲滅白書がまともに機能してないのだろうね。本来、
こういったこの世の“在らざるモノ“を始末するのは奴等の仕事なのだけど。」



「サーシャ・クロイツェフかい?彼女にも動いてもらってるよ。タダでさえ人が足らないんだ。
専門家を腐らせておく程の余裕はないさ。」



「それは考え過ぎだろう。たしかに彼女の戦闘力は高い。それに、大天使のテレズマをその体に納める程の潜在能力もあるだろうけど、
いくらなんでも彼女一人が欠けたくらいで殲滅白書がこれだけ堕ちるとは思えない。」



「まあ確かに無関係ではないのかもね。処理しきれない在らざるモノたちを、わざとこちら側に誘導させている可能性もある。
……ああ、大天使を身に納めた人間なんて魅力的な研究対象を手放したくはないのだろうね。」



「証拠さえ上がれば、癪だけど彼の力を借りる事になるかもしれないけどね。ああ、だけどそれ以前の問題さ。
最大主教は特に対策を打とうともしていない。一体何を考えてるんだか。」
64 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/09(月) 04:28:26.78 ID:4LgjpiI0
「そうだね。とりあえずは、そっちの方に影響が無いならそれで良いさ。重要なのは彼女の安全だ。ああ、よろしく。」(ピッ)

電話を切ると同時に、何者かの足音が聞こえてくる



サーシャ「第一の解答ですが、こちら側は全て片付きました。」

ステイル「そうか、早かったね。さすがは元殲滅白書のエキスパートってとこか。」

サーシャ「第一の質問ですが、最近の異変は、やはり私に原因が」

ステイル「君のせいじゃないよ。最大主教だって黙認してるんだから。」

サーシャ「そうですか…」
65 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/09(月) 04:29:12.97 ID:4LgjpiI0
「そうだね。とりあえずは、そっちの方に影響が無いならそれで良いさ。重要なのは彼女の安全だ。ああ、よろしく。」(ピッ)

電話を切ると同時に、何者かの足音が聞こえてくる



サーシャ「第一の解答ですが、こちら側は全て片付きました。」

ステイル「そうか、早かったね。さすがは元殲滅白書のエキスパートってとこか。」

サーシャ「第一の質問ですが、最近の異変は、やはり私に原因が」

ステイル「君のせいじゃないよ。最大主教だって黙認してるんだから。」

サーシャ「そうですか…」
66 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/09(月) 04:32:39.67 ID:4LgjpiI0
ミスりましたorz


【女子寮】

サーシャ「第一の解答ですが、ただいま戻りました。」

アニェーゼ「お疲れです。また例のあれですか?」

サーシャ「第二の解答ですが、その通りです。」

ルチア「最近やたら多いですね。そのうち、私達にも出動要請が回ってくるかもしれません。」

アンジェレネ「ええっ!!私、オバケとかそういうのはちょっと…」

ルチア「シスターアンジェレネ、その様な弱気な態度でどうするのですか。神の敵から人々を守るのも、
神に仕える我々シスターの役目なのですよ?」

サーシャ「第三の解答ですが、ご安心ください。あなた方を危険な目に遭わせたりはしません。絶対に…」

ルチア「シスターサーシャ…無理をしてはいけませんよ?」

サーシャ「第四の解答ですが、大丈夫です。心配は無用です。」




彼女達の気遣いが、口にする不安が、痛かった

サーシャはその場を逃げる様に浴場へと向かった



アニェーゼ「……」






67 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/09(月) 04:35:35.75 ID:4LgjpiI0
ところで西洋というのは、風呂の概念が日本とは異なる
あまり風呂というものに拘らない国や、蒸し風呂の国など様々であるのだが

この修道女の寮は少し特殊で、外観は洋風だが、形式は日本の公共浴場に近い
その理由としては、学園都市から送られてくる風呂により、風呂そのものにハマった
最大主教によるこだわりにより改装された事にある

サーシャとしては、洗い場と湯船が分離しているという日本特有の浴場は、この寮に来るまで経験した事なかったのだが、
最近ではわりと気に入っている


サーシャ「はぁ……」

仕事の後のひとっ風呂は良いものだな。と、やたら広い湯船に一人でつかりながら、
この年で日本のサラリーマンみたいなことを思っているわけだが、考えているのはそれだけではない
68 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/09(月) 04:37:04.50 ID:4LgjpiI0
最近イギリス各地で増えている”在らざるモノ”の事件
本来は、もともと彼女の所属する殲滅白書が中心となってそれらの処理を行っていたのだが
最近はどうも様子がおかしい。殲滅白書に何かあったのだろうか?あるいは…


いずれにせよ自分に関係がないとは思えなかった


そして何よりも、そのせいでみんなに迷惑をかける事が嫌だった。


彼女達を”在らざるモノ”との戦いに駆り出させて傷付けてしまう様な事など、絶対にあってはならない。絶対にむにゅっ

サーシャ「むにゅ?」


ふと、自分の脇から伸びてくる謎の二本の白く細い腕の存在に気付いた

謎の白くて小さい手が自分の胸を後ろから鷲掴みしている
69 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/09(月) 04:40:16.02 ID:4LgjpiI0
むにゅ♪むにゅ♪


サーシャ「だ、第一の解答ですが……一体何を?」

アニェーゼ「アニェーゼ部隊恒例のドキドキ☆身体チェックですよ。」

アニェーゼ「ふむふむ、悔しいですが、私やアンジェレネより少し大きいですね。本当にほんのちょっぴりですけどね!」むにゅ♪むにゅ♪

サーシャ「あの…ん……そろそろ離して…ください…/////」


これがワシリーサなら何のためらいもなく金槌で殴っているだろう


アニェーゼ「悔しいのでもう少し揉みしだいてやります(もみもみもみ)」

サーシャ「ひっ、ひゃめてくだ、あぅ…/////」

アニェーゼ「ここか?ここがええんですかい?(むにゅむにゅっ)」

サーシャ「誰か…助け……あぅぅ…」



アニェーゼ・サンクティス

7巻のオルソラの件と18巻のとあるものを見てもらえばわかるが
彼女はかなりのドSである
70 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/09(月) 04:41:57.78 ID:4LgjpiI0
サーシャ「ハァ…ハァ…/////」

アニェーゼ「すいません。正直調子にのり過ぎました。」


浴槽の壁にぐったりともたれ掛かるサーシャ
真っ白だった肌が、今は蒸気し、真っ赤になっている


サーシャ「第一の解答ですが、酷いです、もうお嫁にいけません…」

アニェーゼ「迷惑でしたか?」

サーシャ「第二の解答ですが、そんな当たり前の事を聞かないでください」

アニェーゼ「当たり前ですよね。迷惑をかける事なんて。」

サーシャ「第三の解答ですが、そういう意味ではなく」

アニェーゼ「当たり前なんですよ。」

サーシャ「……はい?」
71 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/09(月) 04:46:28.91 ID:4LgjpiI0
サーシャ「第四の解答ですが、けしてそんな事は」

アニェーゼ「これでも252人の大所帯のリーダーやってんですよ。甘く見ねえでください。」

サーシャ「うっ…」

アニェーゼ「良いですかいサーシャ?アンタみたいな生真面目な人間は、いつもそうやって自分を追い詰めて勝手に苦しんでるんです。
      大変なんですよ。傍から見たら平気そうな顔をしてるから、壊れちまうまで気付かねえこともあるんです。」

アニェーゼ「そういう仲間を見る度に、何でもっと早く気付いてやれなかったのか?助けてやれなかったのかって思っちまうんですよ。
      分かります?それがどれだけ辛いことか。」

サーシャ「第五の解答ですが、あなたの気持ちはわかります。ですが、これは」

アニェーセ「これは自分の問題?私らには関係無いし、何もできない?分かっちゃいないんですよ!!
      サーシャは私らに気を遣ってるのかもしんねーですけど、私らにとっちゃ、
      サーシャが勝手に苦しんでるのを見せられる方が余程迷惑なんですよ!!」」


興奮し、湯船から立ち上がるアニェーゼ。一糸まとわぬ未成熟な肢体が露わになる


サーシャ「アニェーゼ…」
72 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/09(月) 04:48:56.66 ID:4LgjpiI0
アニェーゼ「私らは、在らざるモノとの戦いに慣れてるわけじゃねえですから、サーシャの力にはなれないかもしれません。
      根本的なとこで協力できないのは悔しいです。」


そして、アニェーゼはガシッとサーシャの華奢な肩を掴み、鬱陶しい程に伸びた前髪の奥に隠れたサーシャの大きな瞳をまっすぐに見つめた


アニェーゼ「それでも、迷惑かける事を恐れないでください!!それが仲間ってもんでしょう?それとも、
      私らはサーシャにとっては仲間じゃねえんですか?」


その質問に対する解答は、1+1よりも簡単だ


サーシャ「アニェーゼ…第一の解答ですが、私は、仲間だと思っています。みんな、大切な私の仲間です!」

アニェーゼ「だったら約束してください。私らの前で、弱みを見せる事を恐れないでください。良いですか?」


自分と年端の変らない少女が、なぜか自分よりずっと大きな存在に見えてしまう。
きっと、この歳で色んな経験をしてきたのだろう。
この世の不条理、無力、絶望、色んなものを見て苦しんできたのだろう

だから、彼女の言葉はただの表面だけ着飾った聞こえの良いだけの言葉で終わらずに、心にまっすぐと響いてくる
73 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/09(月) 04:53:54.23 ID:4LgjpiI0
サーシャ「第二の解答ですが、わt」

アニェーゼ「約束できねえってんなら、分かるまでその体にとことん教え込んでやりましょうか」

サーシャ「え?」


アニェーゼは手をわきわきと動かしながら、不気味な笑顔と共にサーシャにせまる


アニェーゼ「たしか、太股が性感帯なんですよね?」

サーシャ「だ、第一の質問ですが、なぜそれを!?」


ぞくりとした寒気が背中を這うのを感じた


アニェーゼ「へっへっへっ」


アニェーゼはサーシャの太股をゆっくりと這う様に指を滑らせる


サーシャ「ひやっ!だ、だいさんの、ひぐっ!あうっ…」


サーシャはなんとか逃げようとするが、アニェーゼが後ろからガッチリとホールドする


アニェーゼ「逃がすと思ってやがるんですか?さあ、もっと良い声で鳴いてくださいよ」

サーシャ「ふにゃっ、ダメ…れす…そこは…ほんと…に…よわいんれす…はうっ…」

アニェーゼ「内側はかなり弱いみたいですねえ。こんなにも敏感なくせに、あんな拘束衣を着てさらけ出してるなんて、
      サーシャは相当なドMってやつですかねえ」

サーシャ「ちが…あれはワシリ…サが…ひゃんっ!」


前言を撤回しよう
この少女は変態だ、ただの危ない人だ
74 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/09(月) 04:55:32.36 ID:4LgjpiI0
このままではイケない、いやいけないと、サーシャは身をよじりながらなんとか逃れようとする

そして、身をよじらせながら抵抗してるその最中、サーシャは右手で柔らかい何かを掴んだ
それはちょうど、サーシャの手のひらに収まるくらいのサイズの…


アニェーゼ「きゃっ!」

サーシャ「……」

アニェーゼ「……あー、えーとその…」


アニェーゼ・サンクティス
彼女はドSである

しかし、同時に自分がスカートを捲られたり胸を触られたりするのを激しく嫌うほどの可憐な乙女である
なんて迷惑でタチの悪い性癖なのだろう


アニェーゼ「…あ、あはははは」

サーシャ「…第四の解答ですが、そういうことですか(二ヤリ)」


はよく見えないが、口は三日月の様に両端を釣り上げている

どうやらアニェーゼの胸を掴んだ右手は、サーシャに形勢逆転のチャンスをもたらす神の右手だった様だ
75 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/09(月) 04:57:43.37 ID:4LgjpiI0
「ちょっ、どこさわってやがんですか!」

「第一の質問ですが、ここですね!」

「べ、別にそんなとこ触れてもあうっ!」

「第一の解答ですが、しっかり感じてるじゃないですか」

「おのれ、反撃です!」

「だだ、第二の解答ですが、付け根は反則です!」

「反則なんて文字は私の性書にはねえんですよォ!」




ルチア「なんですか騒がしい!聖書のどこにそんな盛り上がる場面があると……」

アニェーゼ「( ゚д゚)」

サーシャ「( ゚д゚)」

ルチア「……」






アニェーゼ「( ゚д゚ )」

サーシャ「 ( ゚д゚ )」

ルチア「(^ω^#)」

76 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/09(月) 05:01:16.80 ID:4LgjpiI0
ルチア「で、風呂場で乳繰り合っていたという事ですか。修道女が?」

アニェーゼ「いえ、乳繰り合っていたのは認めますが、別にイヤラシイ気持ちがあったわけでは」

サーシャ「うそつき」

ルチア「しかもシスターサーシャまで」

サーシャ「第一の解答ですが、面目ありません。」

アニェーゼ「あの、このジャパニーズセイザという奴はかなり足に負担がくるのですが。
それと、さすがに風呂上がりで長時間バスタオル一枚というのは体によくねえと思います。」

サーシャ「へくちっ!」

ルチア「ハァ……」


ルチアは額に手を当てながらため息をついた

たぶん性格からして、サーシャはとばっちりを受けたのだと思う
そしてこのアニェーゼ・サンクティスだが、厳格な上下関係は無いとは言え、
一応自分の上司にあたる修道女である

しかしながら、自分は本当にこの修道女と共に命懸けの戦いに臨んで良いものなのかと、本気で心配になった

77 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/09(月) 05:04:42.98 ID:4LgjpiI0
アニェーゼ「やれやれ、酷い目にあいました。」

サーシャ「第一の解答ですが、あなたのせいです。」

アニェーゼ「むう」

サーシャ「……ですが、先程の事は、素直に嬉しく思います。」

アニェーゼ「えっ、そんなによかったんですかい?サーシャも意外とスケベなんですね」

サーシャ「第二の解答ですが、大事な話をしようとしてる時にボケないでください。」

サーシャ「第三の解答ですが、どうやら私は、口では仲間だと言いながら、心ではあなた方としっかり向き合うという事を
恐れていたのかもしれません。」

アニェーゼ「サーシャ…」

サーシャ「補足説明しますと、私は仲間をもっと信頼すべきだと反省しています。これからは、
もっと積極的にあなた方に迷惑をかけようと思います。」

アニェーゼ「いや、別に無理してかけるもんでもないと思いますが。まあ、分かってくれたんならそれでいいですよ。」


どうやらこの件に関しては無事解決したようだ。たぶん。
78 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/09(月) 05:06:16.75 ID:4LgjpiI0

【また別の日】


サーシャ「んっ……!」


カーテンから淡く差し込む光を浴びながら、サーシャは軽く背伸びをする

修道女の朝は早い
だが、今日はいつもよりも特別早かった
なぜなら、本日彼女は食事当番だからである


オルソラ「おはようございます、サーシャさん。」

無論、一人で食事の用意をするわけではない。今日はオルソラもその当番の一人だ。
79 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/09(月) 05:08:09.68 ID:4LgjpiI0
サーシャ「第一の解答ですが、おはようございます。」

オルソラ「サーシャさん、はい、あーんしてください」


オルソラは塩ゆでしたエビのぶつ切りを一つ、フォークで刺し、サーシャの口元に差し出す


サーシャ「(ぱくっ…むぐむぐ)……第二の解答ですが、塩加減、茹で具合ともに申し分ないと思います」

オルソラ「そうでございますか。では、次はこちらのパスタを」

サーシャ「……第三の解答ですが、こちらも塩加減、茹で具合ともに申し分ないと思います。」

オルソラ「ふふ、ありがとうございます。それでは、次はこちらを」

モブA「サーシャ、こっちもこっちも!」

モブB「ダメよ、次はこっちを味見してもらうんだから!」

サーシャ「あの…」

モブC「ずるい!サーシャは私のものよ!」

モブB「サーシャちゃん、はい、あーんして」

モブA「ちょっとB!モブキャラの分際で抜け駆けしてんじゃないわよ!」

モブC「アンタもモブキャラでしょ!」

オルソラ「あらあら♪」

サーシャ「解せぬ」


なぜかサーシャは味見係という不動のポジションを獲得していた
別の言い方をすれば、餌付けされてるとも言う
80 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/09(月) 05:11:46.74 ID:4LgjpiI0

オルソラ「主よ、わたしたちの日ごとの食物を、わたしたちに必要な糧を今日も与えて下さった事に感謝します……
それでは、主への感謝の思いを馳せながら、朝食をいただきましょう。」



サーシャ「……」

アンジェレネ「あれ、シスターサーシャ、随分と量が少ないですね。」

アニェーゼ「ダイエットですか?でもその体はむしろ栄養を必要としてると思いますよ。」

ルチア「彼女は暴食という大罪に惑わされていないだけです。アンジェレネも見習いなさい。
だいたい何ですか?朝からチョコレートドリンクにアイスって、神様にケンカ売ってるんですかあなたは?」

サーシャ「……」


言えない、味見しすぎて食べられないなんて口が裂けても言えない
81 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/09(月) 05:14:09.56 ID:4LgjpiI0
【科学vs魔術】



事件は突然起きた


アニェーゼ「大変です!洗濯機が!学園都市が誇るAIを搭載した全自動洗濯機が悲鳴を!」


アニェーゼは、何やらガタゴトと物騒な音を立てながら警告音を鳴らす洗濯機を指さし、その洗濯機と一緒に悲鳴を上げていた


ルチア「何ですって!あの布団まる洗いという荒業を成し遂げた洗濯機がですか!?」

アンジェレネ「一体何が原因なんですか…?」


てんやわんやと騒ぎながら例の洗濯機を見つめる彼女達


そして見てしまった


グルグルと回り続ける洗濯機の中に、かすかに見えるあの恐ろしい物を
サーシャの亡命の原因となったアレを




「またお前か!!!」




その場に居た誰もがそう叫んだ
82 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/09(月) 05:15:57.67 ID:4LgjpiI0
ルチア「誰ですか!あんな物騒なものを洗濯機に放り込んだのは!」

アンジェレネ「そもそもシスターサーシャは、いつもどうやってアレを洗濯してたんですか?」

サーシャ「第一の解答ですが、基本的には、インナー以外はいつも魔術関連の道具を手入れしてる人達にお任せしていました。」


つまり、普通の方法では洗濯されていなかったという事だろう


サーシャ「第二の解答ですが、あの洗濯機を止めるしかありませんね。」


サーシャは修道服の袖からバールと金槌を取り出し構える

するとそこへ


?「待ってください!」


何者かがサーシャを制止しようとする
83 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/09(月) 05:18:41.51 ID:4LgjpiI0
神裂「待ってください!そんな物騒なものを取り出して、彼に一体なにをするつもりです!」

サーシャ「(彼?)第三の解答ですが、洗濯機を破壊します」

神裂「破壊!?いけません!修道女がそんな暴力的な手段に出るなど!」

サーシャ「第四の解答ですが、あの焼却炉の悲劇を忘れたのですか?」

神裂「しかしっ!」

サーシャ「第五の解答ですが、このままではいずれ勝手に洗濯機は壊れるでしょう。彼は壊れるまで苦しみ続けるのですよ!」

神裂「うッ……」

サーシャ「第一の質問ですが、彼が苦しんでいる姿を前にして、まだ幻想にすがるのですか!?
助からないかもしれないけど、とりあえずそのまま苦しみ続けてくれだなんて言えますか!?」

神裂「……」


確かに、あの焼却炉の末路を考えれば、このまま彼を苦しめ続けるのは残酷な事の様に思える

今までの神裂ならここで諦めていただろう

しかし、彼女は知っている

自分達がずっと諦め、絶望していたにも関わらず
けして最期の最期まで諦める事無く闘った少年を
一人の少女を救うために闘い続けたあの少年を
84 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/09(月) 05:22:54.18 ID:4LgjpiI0
サーシャ「第六の解答ですが、今すぐ楽にしてあげます!」

神裂「させません!」

サーシャ「第二の質問ですが、あなたは」

神裂「うっせんだよ!!ド素人がッ!!!」

サーシャ「!?」


神裂「苦しんでる?だから楽にしてあげる?違うでしょう!彼は…彼は闘ってるんです!あの拘束衣と闘ってるんですよ!
誰にも助けを求めずに、今この瞬間も彼は一人で闘ってるんですよ!それを、これ以上苦しまないために?あの悲劇を繰り返さないために?
そんな下らない理由で彼の想いを踏みにじるんですか!!勝手に彼を値踏みしないでください!!例え私達がどれだけ無力でも、
どんな理由を並べても、それで彼が殺されていい理由にはならないでしょうが!!!それでもまだ彼の闘いに水を刺そうとするのなら、
上から目線の勝手な決め付けで彼の想いを否定しようとするのなら!!」



神裂「salvere000!!この名にかけて私があなたの幻想をぶち殺します!!」



ルチア(神裂さん……なぜそこまで必死に?)
アニェーゼ(笑顔で洗濯機をピカピカに磨いてたり、よく一人で洗濯機に話しかけたりしてましたけど、そういう性癖ですか?)
アンジェレネ(目が怖い…)



サーシャ「……第一の解答ですが神裂、私が間違っていました。」

全員(えぇーっ!!!)
85 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/09(月) 05:26:11.80 ID:4LgjpiI0
サーシャ「あなたの洗濯機に対する信頼は、私も見習わなければならないと補足します。」

神裂「サーシャさん……共に、科学(洗濯機)と魔術(拘束衣)が交差して始まった物語の結末を見届けましょう!」

サーシャ「Да!」


結局、この戦いは洗濯機の粘り勝ちで幕を閉じたわけであるが


洗濯機「神裂さん、俺やりましたよ…」

神裂「よくがんばりました…グスッ…あなたって機械(ひと)は本当に…(ぎゅっ)」

サーシャ「第二の解答ですが、これが信頼というものなのですね…」

ルチア「いえ、違う…というわけでもないのでしょうか?あれ?」


その場で謎の感動に浸っているサーシャと神裂


洗濯機が凄い事は認めるが、この二人にはなんて声をかけてあげれば良いのだろうか?

天にまします彼女達の父に答えを求めても、けして返ってくる事は無かった


つづく

86 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/09(月) 05:30:26.80 ID:4LgjpiI0
ここで区切ります
やはり需要を気にするよりも、建てた以上は最期まで書く事の方が大事ですね
自分が間違ってました

こんな調子で書いていきますが、最期まで付き合ってくれたらありがたいです
87 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/09(月) 08:58:15.81 ID:dFxeEGY0
>>1乙だにゃー
ギャグ要素は少なめでシリアス中心?はて、今まで殆どギャグだったような気がするにゃー
しかもねーちん、上やんの真似wwwwwwwwwwww上やんの真似wwwwwwwwwwwwwwww
88 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/09(月) 09:23:40.12 ID:fO6ZOwAO
こんな説教を…
即興で言える人間に
なってやる!
89 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/09(月) 11:24:16.37 ID:Gb0NTa.o
面白いよ
続き待ってるよ
90 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/09(月) 11:47:30.34 ID:EhX7qfMo
面白いわw

続き楽しみにしてますー
91 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/09(月) 13:23:22.89 ID:w6nBhcDO
イギリス女子寮のSSとかマジ俺特
92 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/09(月) 21:47:51.92 ID:DHmkwR2o
これは面白い。
ギャグ多めで時々シリアスですな。
シェリーとサーシャのやり取りとかも見てみたいかも。

それにしても、ねーちんは洗濯機が大好きなんだなぁww
93 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/10(火) 01:59:57.34 ID:sHaf82SO
サーシャたんのちっぱいペロペロしたいお
94 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/10(火) 09:06:58.18 ID:GqgJTh.o
俺もサーシャたんの体ペタペタ触りたいお
95 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/10(火) 21:01:40.51 ID:xV3NR.AO
風呂シーンあるからサーシャ男性説は晴れたんだよね
96 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/10(火) 23:04:23.53 ID:0Au8aWE0
ミーシャの話し方とか出てこないかな
ローラも
ワシリーサ禁断症状大丈夫かな?
会談って言ってサーシャ連れ戻さないよね?
97 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/11(水) 12:37:57.65 ID:ihSKrdI0
>>93-94
その妄想をぶち[ピーーー]
98 :1 :2010/08/12(木) 01:14:16.92 ID:LS4xpa.0
【これは、サーシャがイギリスに来てまだ間もない頃の話です】



シェリー「おい、そこのやたら前髪が長い金髪のちびっ子」

サーシャ「…?」

シェリー「そう、お前さんだ。」

サーシャ「第一の解答ですが、長い前髪と金髪はともかく、ちびっ子には同意しかねます。
補足説明すると、私はサーシャ・クロイツェフです。」

シェリー「じゃあサーシャ、ちょっと頼みごとがあるんだが」

サーシャ「第一の質問ですが、頼み事とは何でしょうか?ゴスロリの君」

シェリー「私が名前で呼んでるんだから、アンタも名前で呼べっつーの。」

サーシャ「……」

シェリー「もしかして、私の名前を覚えてないとか?」

サーシャ「第二の解答ですが、そんな事はありませんよ。オリバー・クロムウェル卿。」

シェリー「それは元ネタだ!!ナメてんのかテメェ!!」

サーシャ「第三の解答ですが、良いリアクションをありがとうございますシェリー」

シェリー「くッ…このガキっ…」


頼みごとなど無ければ、この場でゴーレムを召喚してどつきまわしていただろう

99 :1 [sage]:2010/08/12(木) 01:19:18.75 ID:LS4xpa.0
サーシャ「第一の質問に戻りますが、頼み事とは?」

シェリー「アンタにモデルをやってもらいたいんだが」

サーシャ「第二の質問ですが、モデルですか?しかし、私の未成熟な体系で勤まるのでしょうか?」

シェリー「はあ?」

サーシャ「第三の質問ですが、もしやロリコン向けの雑誌のモデルとかそういうのですか?」

シェリー「確かに、ロリコンには需要ありそうだな。ロリコンには。」






その頃、遠く離れた東の島国では


一方通行「ぶぁくしょい!」(パァン!)

土御門「にゃっ!!」

結標「一方通行!なんで土御門を狙撃してんのよ!」

一方通行「いや、くしゃみで照準が…誰か俺の悪口でも言ってンのかァ?」

土御門「メイドさん……最高……ぜよ(ガクッ)」

海原「土御門さん、足をかすっただけですよ」


命に別条は無かったので特に問題になりませんでした
100 :1 [sage]:2010/08/12(木) 01:20:42.19 ID:LS4xpa.0
サーシャ「彫刻?」

シェリー「ああ。つーか、私がロリコン向けの写真を嬉しそうに撮る様な変態カメラマンに見えんのか?」

サーシャ「……」

シェリー「否定しろよおおおおおっ!!!」

サーシャ「第一の解答ですが、確かに彫刻家には見えません」

シェリー「そっちじゃねえ!!!」

サーシャ「第二の解答ですが、再び良いリアクションをありがとうございます」

シェリー「[ピーーー]ッ!このガキ絶対にぶっ[ピーーー]ッ!!」

ブチ切れたシェリーはゴーレムを召喚しようとしたが、神裂が後ろから羽交い締め
して止めたため事なきを得た
101 :1 [sage]:2010/08/12(木) 01:23:08.83 ID:LS4xpa.0
シェリー「はぁ……まあつまりだ、アンタに彫刻のモデルをやってもらいたいっつー事よ」

神裂「珍しいですね、あなたが誰かに作品のモデルを頼むなんて。」

シェリー「こいつを見た時から創作意欲ってもんが湧いてたんだが、なんかもう失せた。」

神裂「まあまあ、で?どうですかシスターサーシャ?シェリーは王立芸術院で美術講師を務める程の著名な彫刻家ですよ?」

サーシャ「第一の解答ですが、その世界の権威とかいうやつですか。凄いですね。」

シェリー「い、いや、まあそんな大それたもんでもねぇけどよ…///」

サーシャ「補足すると、人は見かけによらぬものと言う事ですか。」

シェリー「なあ、お前何か私に恨みでもあるのか?あるんだな?あるんだろ!?」

神裂「お、落ち着いてください!」

サーシャ「第二の解答ですが、またまた良いリアクションを(ry」

シェリー「エリィィィイイイイス!!!こいつを踏み潰せええええ!!!」

エリス「( ゚皿゚)ゴルァ!!」

神裂「こんなとこでゴーレムを召喚しないでください!!!」


そんなこんなで平和的にサーシャはモデルを引き受ける事になりました


102 :1 [sage]:2010/08/12(木) 01:26:19.32 ID:LS4xpa.0

シェリー「とりあえずそこの椅子に座れ……」

サーシャ「空気椅子ですか?」

シェリー「したけりゃ勝手にしてろよ」

サーシャ「ちなみに第一の解答ですが、背もたれ無しでも5時間くらいは余裕でいけます。空気椅子。」

シェリー「何気にすごいなお前。どうでも良いけどよ。」

サーシャ「ところで第一の質問ですが、彫刻なのになぜ絵を描くのですか?」

シェリー「絵って言ってもラフ画みたいなもんだ。こうするとイメージが固まるのよ。ああ、手は膝の上で重ねろ。」


サーシャ「……」

シェリー「………」

103 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/12(木) 01:27:56.65 ID:LS4xpa.0

一時間後



サーシャ「……」

シェリー「もういいぞ」

サーシャ「第一の解答ですが、さすがは芸術家なだけあって上手ですね」

シェリー「ごくろうさん。帰れ。」

サーシャ「第一の質問ですが、ヤル事やったらいきなり帰れだなんて酷すぎませんか?所詮は私の体が目当てだったのですね…」

シェリー「誤解を招く様な言い方するなっての。ほら、アメやるから。」

サーシャ「第二の解答ですが、また子供扱いですかとサーシャは不満を隠せません。」

シェリー「じゃあ撫でてやるよ(ナデナデ)」

サーシャ「第三の解答ですが、あなたが私をからかっているのはよく分かりました。あとアメはいただきます。」
104 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/12(木) 01:30:09.13 ID:LS4xpa.0

それから数日後



サーシャ「第一の解答ですが、お茶が入りました」

シェリー「ああ、その辺に置いとけ」


シェリーはサーシャの方を見向きもせず、鑿と玄能を手に夢中で真っ白な大理石を削っている


サーシャ「分かりました。第一の質問ですが、このクッキーはどこに置けば良いですか?」

シェリー「同じとこに置いときゃ良いだろ。わざわざ分離する意味が分からん。ジャパニーズオリヒメとヒコボシかよ。」

サーシャ「では第二の質問ですが、小腹が空いたので代わりに私がいただいても良いですか?」

シェリー「なんなんだお前はよォ!!どういう思考回路してのよォ!!」

サーシャ「第二の解答ですが、今日も良いリアクションをありがとうございます。」

シェリー「ああ、そうか。アンタは悪魔か。悪魔なら殺しても罪にならないわよね。」

サーシャ「第三の解答ですが、ストレスは体によくありません。悩みがあるなら私が聞きましょうか?」

シェリー「……はぁ…」

そのストレスの原因はオマエだ!と叫びたいところだが、もうどうでもいいかという気持ちの方が遥かに強くなった
105 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/12(木) 01:32:21.00 ID:LS4xpa.0

シェリー「やれやれ、しょうがねえから一息つくとするか」

サーシャ「第一の解答ですが、あなたとティータイムを共にするのは初めてですね。」

シェリー「何だ、ちゃっかり自分の分も運んで来たのかよ。つーかお前、砂糖とミルク入れ過ぎ。」

サーシャ「第二の解答ですが、私はこれが好きなのです。」

シェリー「お子ちゃまの味覚だねぇ。上等なダージリンのすすり泣きが聞こえるわよ。」

サーシャ「第三の解答ですが、それは幻聴です。更年期障害の可能性も視野に入れるべきでしょう。」

シェリー「あたしゃまだ二十代だ。」

サーシャ「えっ!?」

シェリー「えっ!?じゃねえ!!」
106 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/12(木) 01:36:17.82 ID:LS4xpa.0


そんなこんなで他愛も無い話をする二人

特に意味も無く、特に何かが起こるわけでもなく

ティーカップとソーサーの重なる音が、印象的に感じられるくらいの静かな時間が流れていく

まるで放課後の静かな美術室で、何をするでもなくただ寛いでいる様な感覚

そんな平和な二人の午後のティータイム



ふと一つの石像が目に留まる

大理石で作られた等身大の少年の像
台座には、「エリス」と英語で刻まれている

サーシャ「第一の質問ですが、あの石像は何でしょうか?」

シェリー「ん?ただの失敗作だ。」

サーシャ「第二の質問ですが、とても失敗作とは思えない出来です。理由を聞いても良いですか?」

シェリー「アンタは、あの石像が本物の少年に見えるか?」

サーシャ「第一の解答ですが、さすがにそこまで精巧には見えません。」

シェリー「だから失敗作さ。所詮はタダの石像でしかない。」

サーシャ「……?」


よくわからない。石像とは石を彫って作った作品の事ではないのだろうか?
ならばそれは、無粋な言い方をすれば石以外の何物でもなく、石像が石像の枠を超える事などあり得ないはずである


107 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/12(木) 01:41:21.08 ID:LS4xpa.0

サーシャ「第二の解答ですが、よく見ると、ここには他の作品はありませんね。」

シェリー「そりゃあるわけないわよ。全部ぶっ壊してんだから。」

サーシャ「第三の質問ですが、なぜその様な事を?」

シェリー「失敗作なんか残したってしょうがねえだろ。」

サーシャ「完成品は無いのですか?」

シェリー「周り見りゃ分かんだろ。」

サーシャ「うーん……第四の質問ですが、ならば完成品とは何なのですか?」

シェリー「完成品ってのは…そうだな……例えるなら、唯一絶対的な美を持つ作品だな。芸術家ってのは、
みんなその境地を目指してんのよ。ルネサンス、バロック、新古典、ロマン、写実、印象。時代と共に現れたそれらの
形式や学派も、全ては試行錯誤の過程に過ぎないのよ。」
108 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/12(木) 01:43:51.51 ID:LS4xpa.0

シェリー「今に至るまで色んな芸術家が排出されたけど、本当の意味で完成品ってのを創った奴は居るのかどうか疑問だわ。
全てが完璧で、あらゆる推考も比較も、それを超える美の存在すらも永遠に許さない程の絶対的な作品なんて見たこと無い。」

サーシャ「では、シェリーにとっての完成品とは一体何ですか?」

シェリー「さあね。それが分かりゃ苦労しねえよ。もしそれが理解できたとしたら、それは死と同じだ。芸術家としての死さ。
それ以上求める物なんかねぇんだからよ。」

サーシャ「死…ですか。」

シェリー「ま、芸術家だけの話じゃねぇ。人間はみな死ぬまで勉強は続くんだよ。終わりのない冒険と一緒ってことだ。」

サーシャ「……第三の解答ですが、やはりよくわかりません。」

シェリー「ま、この話はお子様にはまだ早かったってことだな。」


シェリーの言う事はよくわからないが、ただ一つ想う事がある。



109 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/12(木) 01:47:00.61 ID:LS4xpa.0

サーシャ「第一の質問ですが、シェリーはその作品が完成したらどうなるのでしょうか?」

シェリー「そんなのは完成してみなきゃ分かんないわよ。」

サーシャ「第二の質問ですが、失敗作だったらまた壊すのですか?」

シェリー「失敗作なんか残したってしょうがないだろ。」

サーシャ「そうですか……第一の解答ですが、なんだか複雑な気分です。本当の意味での完成がシェリーの死を意味するのなら、
私はそれを望みません。ですが、失敗作になってしまう事ももちろん望みません。第三の質問ですが、私はどうすればいいのでしょうか?」

シェリー「何だ?さんざん生意気な口を聞いときながら、私の心配をしてるのか?ハハッ、お前も可愛いとこあるんだなぁ。」


真剣なサーシャとは対照的に、笑いながらサーシャの頭を乱暴に撫でてくるシェリー


サーシャ「むっ、第二の解答ですが、別にそういう事ではありません。自分がモデルになった作品だから、少し心配になっただけです。」


口調は丁寧だが、声色は不満を明確に主張している
強引に撫でられながらも、彼女の頬は微かに紅く染まっていた

110 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/12(木) 01:48:49.98 ID:LS4xpa.0

シェリー「心配されんのは悪い気はしない。だが、これは私の問題だ。お前が気にする事じゃねえよ。」

サーシャ「ですが、一人で悩むのは良くありませんよ。」


それは、つい二、三日前にアニェーゼから指摘された事である


シェリー「そうかい。お前さんも少しは成長したんだな。だが、一人で抱える事と依存する事は違う。
信頼ってのは、する事も大事だが、される事も同じくらい大事なんだ。」

サーシャ「むぅ……」

シェリー「ま、要は私を信頼しろって事だ。」


シェリーはそう言うが、サーシャは首を傾げる事しかできない

結局のところ、サーシャにはあまりよく分からなかった

111 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/12(木) 01:50:46.92 ID:LS4xpa.0


他愛も無い話をする二人

意味があったのか無かったのかは分からない。特に何かが起きたわけでも無かった。

ティーカップとソーサーの重なる音が、印象的に感じられるくらいの静かな時間が流れていく

まるで放課後の静かな美術室で、何をするでもなくただ寛いでいる様な感覚

そんな平和な午後の二人のティータイム




そう言えば、一つだけ聞きそびれた事がある

シェリーが失敗作の烙印を押したあの石像


彼女はなぜ、あれを壊さなかったのだろう…


112 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/12(木) 01:55:33.78 ID:LS4xpa.0

数週間後


オルソラ「失礼します……やはり起きていたのでございますか」

シェリー「ん?なんだ、アンタか」

オルソラ「差し入れでございます。」

シェリー「ありがとよ。ちょうど終わったとこだから、すぐに食わせてもらう。」

オルソラ「まあ!完成したのでございますか!」


そこには真っ白な大理石で作られた、等身大の修道女の石像があった

長い前髪から輪郭まで細かく再現されている。

石で出来ている事を忘れてしまいそうなくらいの透明間を感じる滑らかな肌は、
思わずその手で触れて、撫でたくなる誘惑に駆られそうになる


まるで、サーシャ・クロイツェフと言う名の少女が、本当にそこに静かに腰掛けている様な錯覚を覚えてしまう程だ


オルソラ「とても素晴らしい出来栄えでございますわ!この作品を一番最初に見る事ができた私は、とても幸運なのでございましょう。」


その言葉に嘘偽りは無い。オルソラは、その作品に対して素直に感動し、素直に敬意を表している。


だが


シェリー「どこがだよ。とんだ失敗作だ。アイツの1000分の1も表現出来ちゃいねえ。」
113 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/12(木) 01:58:12.56 ID:LS4xpa.0

オルソラ「そうなのでございますか……難しいものでございますね。」


素直に落胆の表情を見せるオルソラ

これのどこがダメなのか?おおよそ一般人には理解できないものである


オルソラ「残念でございますわ。これだけ素晴らしい作品なのに、壊してしまわれるなんて…」

シェリー「さて、どうしたもんかね…」


そう呟きながら、彼女は自分の作った失敗作を見つめ、後頭部を掻く


シェリー「……なんかコイツを見てると、今にも生意気な事を言い出しそうだな……
やれやれ、これじゃあ壊すに壊せねぇじゃねえかよ。」
114 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/12(木) 02:00:43.83 ID:LS4xpa.0
オルソラ「ふふ、また壊すことのできない作品が増えたみたいでございますね」

シェリー「まったく、いい迷惑だ。造るんじゃなかったよ」


自分で依頼しておきながら何とも身勝手な発言ではあるが、信頼しろといった手前、サーシャの納得の行く選択をしなければならない


完成品には程遠いが、壊すには惜しい失敗作。だから壊さないでおいてあげたのよ。

とりあえずサーシャにはそう言っておくか。と考え、シェリーは紅茶に口を付けた


サーシャ「やれやれ、お子様の相手は疲れるねぇ。せめて、この紅茶の良さくらいは理解してもらいたいもんだわ。」


第一の解答ですが、これが私なりの紅茶に対する理解なのです。ミルクティー最高です。
目の前の修道女の石像は、シェリーの独り言に対してそう言いたそうな顔をしていた


115 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/12(木) 02:05:55.63 ID:LS4xpa.0

【お酒は18になってから(by the Law of Britain)】


サーシャ「第一の解答ですが、ロシアではジャムとブランデーを入れた紅茶が定番です……とか思ってませんか?
     それは間違いです。ロシアでは紅茶はストレートで入れ、ジャムを舐めつつ紅茶を飲むのであります。
     紅茶の中にジャムを入れてしまうのは一般的ではありません。」

サーシャ「補足説明ですが、私は特にブランデーを大量に入れるのが好きです。
     さらに補足しますが、別に酒好きというわけではなく、あくまでも紅茶というベースにブランデーを多めに入れるのが好きです。
     冷え性な私には欠かせない嗜み方です。ちなみに、少量のブランデーを混ぜたジャムというのも中々イケます。」

オルソラ「というわけで用意してみたのでございますよ♪」

116 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/12(木) 02:08:35.05 ID:LS4xpa.0

サーシャ「第二の解答ですが、ジャムは入れずに、傍に置いておきましょう。」

オルソラ「はい♪」

サーシャ「ブランデーを垂らします」

オルソラ「量はお好みに合わせるのでございますね♪」

サーシャ「そして」

オルソラ「そして?」

サーシャ「飲みます」

オルソラ「いただきます♪」

サーシャ「……」

オルソラ「……」

サーシャ「……第三の解答ですが、妙に生温かいですね」

オルソラ「そうでございますか?」

サーシャ「それに、何か変った味がします。私の知ってる紅茶と違う。」

オルソラ「そうでございますか♪」

サーシャ「ま、いっか。」

オルソラ「そうでございますか♪」
117 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/12(木) 02:10:23.57 ID:LS4xpa.0

30分後


オルソラ「おかわりはいかがでございますか♪」

サーシャ「第一の解答ですが、いただきます」

サーシャ「……やはり、何かがおかしいですね…」

オルソラ「良いではありませんか♪」

サーシャ「そうですね」


1時間後


オルソラ「おかわりはいかがでございますか♪」

サーシャ「もう何杯目になるのか覚えてませんが、いただきます♪」

サーシャ「……何かが違う…」

オルソラ「良いではありませんか♪」

サーシャ「そうですね♪」
118 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/12(木) 02:12:32.58 ID:LS4xpa.0

アンジェレネ「あっ、ティータイムですか!?私も仲間に入れて下さい!」

オルソラ「どうぞでございます♪」

アンジェレネ「なんかいつもより若干テンション高くないですか?」

オルソラ「気のせいでございます♪」

アンジェレネ「へえ、ロシアの紅茶ですか、一度飲んでみたかったんですよねぇ」

アンジェレネ「えっと、まずはジャムを沢山入れて、ブランデーは少なめにしましょう……では、いただきまーす……ブフッ!!!」

オルソラ「あらあら♪」

アンジェレネ「あらあら♪じゃないですよ!何ですかこれ!まんまお酒じゃないですか!!」

オルソラ「テヘッ☆紅茶とブランデーを間違えてしまったのでございますよ♪」

サーシャ「なるほど、第一の解答ですが、通りで味が変なわけですか」

アンジェレネ「いや、一口目で気付きましょうよ!ていうか本場ロシア人のあなたが間違えてどうするんですか!!」

サーシャ「テヘッ☆」

アンジェレネ「テヘッ☆じゃないですよッ!!あなた達絶対酔ってるでしょ!酔っぱらってますよね!?」
119 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/12(木) 02:15:32.18 ID:LS4xpa.0

つまるところ、彼女達は人肌程度に温められたブランデーにブランデーを注いだ100%純ブランデーを飲んでいたわけで、
アンジェレネに至ってはそのブランデーにジャムをぶち込んでいたのである

ブランデーと言っても色々と種類があるので一律には言えないが、アルコール度数はおおよそ40から50度。
ちなみにビールは5度付近、日本酒は10から20程度である。


ところで、そもそもなぜオルソラは紅茶とブランデーを間違えたのだろうか?


実は、彼女は酒にあまり強くない(あくまでもここでの設定)
アルコール度数の高い酒は、匂いを嗅ぐだけで酔ってしまうほどだ

しかも、酔っても素面の時と性格が変らず、少し天然度とドジっ子度が上昇してしまう程度という微々たる変化しか見られない


サーシャもサーシャでなぜ気付かなかったのか?疑問ではあるが、
以前、着るまで小悪魔ロリエロメイドというゲテモノ服だと気付けなかったくらいだから、そういう事もあるのかもしれない
120 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/12(木) 02:18:06.46 ID:LS4xpa.0

アンジェレネ「なんでこんな悪魔みたいな飲み物を平気で飲んでいられるんですか!?信じられません!!」


その言葉にサーシャの眉(前髪に隠れて良く見えないが)がピクッと僅かに動いた


サーシャ「第一の解答ですが、聞き捨てなりません。あなたはロシアを愚弄しているのですか?」

アンジェレネ「むしろこの飲み物をロシアンティーだと主張する方がロシアに対して失礼なんじゃ…?」

サーシャ「第一の質問ですが、私の紅茶が飲めないというのですか?」

オルソラ「淹れたのは私でございます♪」

アンジェレネ「紅茶違うし!!茶葉とか一ミリも入ってませんし!!」

サーシャ「いいですよ…私の紅茶が飲めないというのなら……」

アンジェレネ「飲めないというのなら……?」



サーシャ「まずはそのふざけた幻想をぶち[ピーーー]!!」





121 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/12(木) 02:20:45.91 ID:LS4xpa.0

アンジェレネ「その前にサーシャがそのふざけた幻想から目を覚ましてくd!!うわああああん!!絡み酒ぇッ!!!」


サーシャは驚異的な身体能力を駆使して、逃げようとするアンジェレネを取り押さえた


アンジェレネ「誰かーッ!!シスタールチアー!!助けて下さいーッ!!」

サーシャ「クスクス」

アンジェレネ「ひいいっ!!!」


これほど戦慄という言葉が似合う笑顔は、この世には存在しないだろう


サーシャは例の悪魔の飲み物を少量口に含めた


アンジェレネ「な、なにを…ムぐッ!」


喋る間もなくサーシャはアンジェレネの唇を塞ぐ


サーシャ「んっ……くちゅ…」

アンジェレネ「…あっ…んぐっ…んっ…ふあっ……」


液体が流し込まれ、ブランデーの匂いが口内に広がる

トク、トクと液体が喉を通る音が鳴る
122 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/12(木) 02:23:01.08 ID:LS4xpa.0

アンジェレネ「ぷはっ!(え…これキス……え……?)」


アンジェレネは真っ赤な顔をして、トロンとした目でサーシャの顔を見つめる
それがアルコールによるものなのかどうかは分からない


サーシャ「第一の解答ですが、続けましょう」

アンジェレネ「はい/////……え!違う!ダメですよ…こんな事……」


とか言いつつも静かに目を閉じるアンジェレネ


するとそこへ


ルチア「アンジェレネ!何があったのですか!先程の叫び声は一体何ですか!」


近くの廊下からルチアの声が聞こえてきた

だが、その声に反応したのは、ルチアに助けを求めていたアンジェレネではなくサーシャの方だった

サーシャは馬乗りで押さえつけてる状態からアンジェレネを解放すると、一目散に廊下の方へ走っていった


アンジェレネ「らめれすよサーシャ…私たち、女の子同士で……はれ?」


123 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/12(木) 02:24:47.22 ID:LS4xpa.0

ルチア「どうやら、先程の声は食堂の方から聞こえてきたみたいですが…あら、サーシャ?」


前方からサーシャが走ってくる

ところどころ衣服が乱れているのは、一体どういう事なのだろうか?

だがそんな事は一切気にせず、サーシャはルチアに飛びつく様な感じで抱きつき、その胸に顔を埋めた


ルチア「シスターサーシャ!いきなりどうしたというのです!っていうか酒臭ッ!!」

サーシャ「お姉様…」

ルチア「……は?」

サーシャ「お姉様!ルチアお姉様!」


サーシャはさらに強く力を込めてルチアに抱きつく


ルチア「お姉…様…!?」


あの時の記憶が蘇る
理性を砕かれそうになったあの時の…
124 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/12(木) 02:27:32.11 ID:LS4xpa.0
ルチア「こほん…シスターサーシャ、何があったのかは分かりませんが、その呼び方はやめてくださいと以前言ったはずですよ?」


そう言うと、サーシャは顔を上げ、抱きついたままルチアを見上げた


サーシャ「ダメですか…?ルチアお姉様は、サーシャの事が嫌いですか?」


長い前髪から覗き込む様に、サーシャの大きな瞳が、うるうると少し涙目になっている瞳がルチアに訴えかける
まるで、主人に甘える子猫の様に……

酒の勢いか、どうやら幼稚退行している様にも思えるが、そんなところが余計にルチアの母性本能を刺激する


ルチア「うっ……負けませんよ!これしきの事!!シスターサーシャ!!いいかげん離れなさい!!」

サーシャ「ルチアお姉様…」


誘惑と戦うルチアの怒声
しかし、それはサーシャには1ヘルツも耳に届かない

125 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/12(木) 02:31:41.76 ID:LS4xpa.0
サーシャは軽くジャンプし、ルチアの首の後ろに両腕を回してぶら下がる様な感じで
引っ付いてきた

そして、その勢いのまま、サーシャはルチアの唇に自分の唇を重ねた


ルチア「……!」

サーシャ「んっ……」


そのままの状態で静止する二人
まるで、そこだけ時間が止まってしまったかの様である


サーシャ「ふぅ…クスクス、お姉様…」


ようやくキスから解放したサーシャ

相変わらず何がおかしいのか、クスクスと邪悪な笑みを浮かべている。、

唇を奪われたルチアはというと


ルチア「マ、マルコによるふくいんしょだいいっこう……ばぷてすまのよはねががこうやにあらわれて、くいあらため」


顔を真っ赤にしながら脱力し、ぐったりとその場にへたり込んで、なぜか聖書の暗唱をしていた


その後、神裂が、床で悶えているアンジェレネと、その光景を眺めながら「あらあら」と片手を頬に当てて微笑んでいるオルソラ、
そして真っ赤な顔でへたり込んで、御経の様に聖書を暗唱しているルチアと、そのルチアの膝を枕にして寝ているサーシャを発見した

それらの惨状を目の当たりにした神裂が何を思ったのかは想像に任せる


126 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/12(木) 02:41:30.91 ID:LS4xpa.0
ちなみにその日以来、ルチアとアンジェレネはサーシャと顔を合わせる度に赤面し、、
しどろもどろになってしまっていたのだが、サーシャはそれを、自分が二人から避けられているのでは?と誤解し、
神裂やアニェーゼ、シェリー、オルソラに相談したという


神裂「え?あー、まあそのですね…えーっと……」

アニェーゼ「そのうち何とかなるでしょ。それよりもキスの感想を(ry」

シェリー「あのブランデー…空けたのテメェだったのか!!」

オルソラ「あらあら」


と言う事らしい


127 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/12(木) 02:45:15.43 ID:LS4xpa.0
嘘みたいだろ?本当は、ほのぼのとしたssが書きたかったんだぜ?

ここで区切ります
次は五和とサーシャのデートもといお出掛けを書く予定
それが終わったら完全にシリアス一辺倒になります
128 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/12(木) 03:01:20.80 ID:jwD8KcSO
もう・・・ッ俺の精巣は・・・ッ・・・・・・空っぽだッッッ


・・・・・・ふぅ乙
129 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/12(木) 05:14:38.31 ID:LS4xpa.0
>>114
今更だけどミスです
最期のシェリーのセリフがサーシャのセリフになってました

最期の締めくくりなのに恥ずかしいなこりゃ
130 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/12(木) 22:20:55.60 ID:5ca5upE0
乙!
続きいつですか
131 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/12(木) 22:22:36.15 ID:vnPHDdIo
乙。イイ感じで百合度が高くなってきたな。

五和サーシャも楽しみだぜ。
132 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/15(日) 02:01:02.06 ID:h9i9L220
投下します

※注意
初っ端からオリキャだらけです
今回は地の文章がやたら多いです
ギャグはほぼ皆無
1でも説明した通り、設定そげぶです
133 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/15(日) 02:03:34.55 ID:h9i9L220
【殲滅白書】

ヴェロニカ「ようやく作戦の決行日が決まったわ。」

ローザ「いよいよってわけですね。」

オルガ「いやーこれでイギリス旅行も終わりってわけですねー!」

ローザ「遊びに来たわけではないのですよオルガ?」

アーニャ「……」


そこはロンドンの外れにあるカフェ

そのカフェの奥のテーブルに、現在4人の美少女が席についていた
そして、そのテーブルの周辺を覆う様に、魔術が展開されている。
彼女達の会話は、他者から見ればただの他愛も無い日常会話に聞こえる
魔術師が見ても、絶対に彼女達を魔術師だと判別することができないほどのレベルの高い
術式。発動させた人間がいかに強力な魔術師かが窺い知れる。


ローザ「部隊の人間は、すでにロンドンの内部に拡散し、待機させています。号令一つですぐにでも結集は可能です。」

ヴェロニカ「結局のところ、そこが一番苦労したわけよ。こんな魔術師の巣窟みたいなとこに、
殲滅白書の一部隊を感付かれる事無く侵入させるのがね。」

オルガ「でもさー、それって結局はこの作戦が失敗したらって事ですよねー?
誘拐が成功しちゃったら無駄無駄無駄ーって感じじゃないですかー」

ヴェロニカ「オルガ、無駄な戦いは避けるものよ。余計な血を流すのは双方にとって良くないわ。」

オルガ「えー?つまんないつまんないー」

駄々をコネながらとなりのアーニャに抱きつくオルガ
それに対し、若干ながら鬱陶しそうな表情をするアーニャ
134 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 02:04:42.52 ID:h9i9L220
ローザ「アンタはちょっと黙ってなさい」

アーニャ「……お腹すいた」

ヴェロニカ「店員さん、この子に何か作ってあげて。何でもいいわ。とにかくメニューに載ってるの全部持ってきて。」


店員と思しき人は少々戸惑いながらも、注文を受けて厨房へと消えていく

彼女らはロシア成教殲滅白書に所属するシスターだ
正確には殲滅白書のヴェロニカ部隊である
135 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 02:06:41.10 ID:h9i9L220
【簡単なプロフィール】

ヴェロニカ
殲滅白書ヴェロニカ部隊のリーダー
年齢 18
身長 165前後
特徴:長い金髪、部分的に三つ編み
第一印象はどこかのお嬢様
モスクワ大学に飛び級で入学した秀才だが、殲滅白書の仕事が忙しくて去年退学
単位は半分程取っていて、全て優。羨ましい。
戦闘の時には強気で判断力もある優秀な指揮官だが、私生活ではレストランでメニューを決めるのに1時間近く悩むほどの優柔不断で、
わりと小心者
悩んだ末にローザに泣きついてくるため、ローザからウザがられている

ローザ
年齢17
身長165前後
特徴:黒髪ショート、胸は大きめでヴェロニカの嫉妬を煽っている
生真面目、ドS
魔術師の家系で本人も魔術の才能あり
しかし本人は魔術よりも科学者の道を進むためにモスクワ大学に飛び級入学
そして去年、その才能をヴェロニカに見出され、本人の意思に反して無理矢理退学させられた
ヴェロニカ部隊の財務大臣だが、私物を無理矢理経費で落とす様に懇願してくるヴェロニカとオルガが悩みの種
特にヴェロニカに依存されつつあるので、最近は部隊を移動しようかどうか真剣に検討中
136 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 02:07:43.40 ID:h9i9L220
オルガ
年齢18
身長175以上180未満
特徴:銀髪ショートヘアーで側面だけ少し長い感じ
活発な印象、頭はあまり良くない
語尾を伸ばすとこがウザい
実家はロシアの実業家でリアルお嬢様
おてんばな性格を直すために修道院に送られたのだが、そこで才能を見出されて殲滅白書に入隊
身体能力はかなり高い
可愛い物が好きで、大量のぬいぐるみを経費で落とそうとしてローザに殺されかけた事もある
上記の理由でアーニャにもよく抱きつく
サーシャを見つけると同様に抱きつくが、その度にバールで薙ぎ払われる


アーニャ
年齢14
身長155付近
特徴:栗毛色で長いツインテール
口数は少なく人見知りが激しい
ツインテールは床に付くくらいに長く、たまに誰かに踏まれる(主にオルガ)
ヴェロニカ部隊最強の天才少女、食欲はインデックス級
テロに巻き込まれて両親を失い、修道院に送られ、そこでオルガと同様に才能を認められて殲滅白書へ
食べても全く太らないため、ヴェロニカとローザの嫉妬を煽っている
戦闘の時は髪が真っ赤に染まる
抱きついてくるオルガがウザい
137 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 02:10:31.54 ID:h9i9L220
オルガ「誘拐なんて回りくどい事しないでー大雑把にぶっ壊すのが殲滅白書のやり方じゃないですかー。
っていうか私の語尾ってウザいんですかー?」

ヴェロニカ「相手は在らざるモノじゃない、人間なのよ?私達は虐[ピーーー]るのが仕事じゃないの。
上は最初から文字通り殲滅する予定だったみたいだけどね。それよりもローザ、私の事密かにウザいって思ってる?」

アーニャ「もぐもぐ」

ローザ「誘拐対象の五和という少女ですが、彼女は天草十字凄教所属ですね。魔翌力自体はそれほど高いとは言い難いですが、
身体能力は中々のものです。今更気付いたのですかヴェロニカ?」

ヴェロニカ「誘拐は体力馬鹿に任せるとしましょうか。うすうす感づいてはいたわよ。反省はしてないけど。」

オルガ「誰が体力馬鹿だー!あと語尾がウザいっていうなー!アーニャもウザいって言うなー!」

アーニャ「もぐもぐ…ウザい」

ヴェロニカ「オルガ、あなたの実力を見込んでの事なのよ。これが失敗したら、本当に殲滅行動に出なきゃならないんだから。」

アーニャ「みなごろし?」

ヴェロニカ「そうね、まずはサーシャ・クロイツェフを引き渡す様に交渉するけど、交渉が失敗したら戦闘になるでしょうね。
加担したイギリスのシスターは共謀罪で全員[ピーーー]わ。ちなみにサーシャは殺さない様にね。上からも指示を受けてるから。」

ローザ「上は後始末をちゃんとやってくれるのでしょうか?あと少しは反省しろ。」
138 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 02:14:40.09 ID:h9i9L220
ヴェロニカ「とりあえず、一連の行動は私達ヴェロニカ部隊の独断ってことになるわね。まあ要はトカゲのしっぽ切りよ。
でも、ロシア本国に生還できれば問題無いわ。適当に処罰しましたーですませるつもりでしょ。
たぶんイギリス側は私達全員の首を要求するでしょうけど、適当なスケープゴートを差し出せばいいのよ。
例え文句を言ってきたとしても、ロシア成教はローマと同盟関係にある。そしてイギリスはフランスと敵対する。
この三つを同時に敵に回す度胸なんてあるのかしら?それとだが断る。」

ローザ「そんなのはどうでも良いのですよ。問題は、ローマがロシアを裏切らないかどうかじゃないですか?」

ヴェロニカ「大丈夫よ。今回のサーシャ・クロイツェフ奪還作戦は、ローマ正教の最高権力者の肝入りなんだから。」

ローザ「教皇ですか?何でまたサーシャなんて欲しがるのでしょうか?」

オルガ「決まってるでしょーかわいいからですよー!」

ヴェロニカ「そんな下っ端じゃないわよ。」

ローザ「下っ端って、もろにヒエラルキーの頂点じゃないですか」

ヴェロニカ「人間のヒエラルキーではね。だけど、人間のヒエラルキーに属さない、それを遥かに超える存在が居るとしたら?」

ローザ「天使がローマ教皇を操ってるとでも言いたいのですか?そんな馬鹿な話が…」

話半分で聞いていたローザだが、一つだけ思い当たる節がある

ローマ正教の最深部、極秘中の極秘と呼ばれる部分の話だが、ローマ正教を実際に牛耳っているのは教皇や枢機卿及び教皇庁の人間ではない
その支配者は、人間を超えた存在。その名を知ったものは、知るにふさわしくないと判断されたら例外なく抹殺される。
139 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 02:15:42.85 ID:h9i9L220
どこかで耳にしたそんな噂話


ローザ「しかし、それはオカルト的な話では?」

ヴェロニカ「科学者を目指してたあなたからすれば、魔術も十分オカルトに見えなくて?
オカルトのトップがオカルトってのも別に不思議じゃないと思うわよ?」

ローザ「まあそうですけど…」

オルガ「つまり安心してブッ殺せーってことですよねー♪」

ヴェロニカ「そゆこと♪」

アーニャ「おかわり」

ローザ「アーニャ、それ以上食べたらあなたの給料から引きますよ」

アーニャ「!?」

ヴェロニカ「まあまあ、ここは隊長権限で特別に必要経費にしてあげるから」

ローザ「じゃあヴェロニカの給料から引きます。」

ヴェロニカ「ちょ、おまっ!」

アーニャ「いただきまーす♪」


オルガの口調とテッラの口調は微妙に似ているが、両者の間に接点は無い
140 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 02:17:58.71 ID:h9i9L220
【サーシャvs五和】


ここは天草十字凄教の教徒達の修練場
一見すると日本で言う道場の様に見えるが、魔術の威力に耐えられる様に特別な術式が施こされた魔術的な空間でもある

現在その修練場で、二人の少女が木制の槍を構え、対峙している


片方は五和

戦闘ではフリウリスピアという海軍用船上槍を扱うゆえに、槍術には長けている

槍術は流派にもよるが、段位は初心・仕掛・目録・許・印可の五つに分かれている
実戦経験が豊富な事も考慮すれば、五和は最低でも許の実力はあると思われる

ちなみに五和が構えている槍は、白蝋棍を身長程度に短くし、先端を重くカスタマイズしたもので、
彼女が普段使用している海軍用船上槍に対応させたものである

対するサーシャは段位で言えば初心。今日初めて槍を手にしたくらいだ。
手にしている槍は鞭杆という短くて扱いやすいものである。
141 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 02:19:34.31 ID:h9i9L220
ところでなぜ二人は今、対峙しているのかというと、別にケンカしているわけではなく、
単に五和の槍術に興味があったサーシャからの申し出によるものである


建宮「はじめ!」

五和「はあッ!!!」


合図とともに気合いの入った声を上げ、同時にダン!と地面を蹴り、初撃をサーシャに撃ち込む
洗練された、全く無駄の無い一撃

対するサーシャは、持ち前の反射神経を駆使してそれを何とか食い止めた


五和「今の一撃を食い止めるなんてさすがですね。」

サーシャ「第一の解答ですが、ぶっちゃけビビりました」

五和「どんどんいきますよ!」


すかさず二撃、三撃と攻撃を繰り出す五和
対するサーシャは槍の扱いなど全く持って慣れていないため、防戦に徹するしかない

そしてついに、下段から上段へ、サーシャの槍を下から打ち付け、槍を空中し弾き飛ばした。
142 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 02:21:02.49 ID:h9i9L220

勝負あり。五和も建宮も瞬間的にそう判断した。

だが、サーシャは跳躍し、再び空中で槍を掴み直すと、そのまま宙に浮いた状態から片手で槍を振り回し、五和に叩きつけた

一体どんな運動神経と動体視力をしているのかと呆気にとられた五和だが、何とかそれを防ぐ
しかし、攻撃の主導権は完全にサーシャに移った

サーシャの槍術は滅茶苦茶で、例えるならスキルアウトが両手で鉄パイプを振り回している様な感じである
しかし、サーシャほどの運動神経と、実践で鍛え上げられた格闘センスの裏打ちがあると、ただの乱雑な攻撃が、
槍術の熟練者である五和にとっても脅威となる

確実に隙を突き、尚且つ隙を見せないサーシャ
逆に防戦一方となる五和
こりゃおもしろくなってきやがったのよと興味深そうに観戦する建宮

そもそもサーシャは在らざるモノとの戦闘においては、術式で強化された多種多様の拷問用霊装を使いこなす戦闘スタイルであり、
必然的に高い身体能力とマルチな戦闘能力を要求される。
そう言った面を考慮すると、身体能力や格闘センスは五和を凌駕すると思われる

身体能力とセンスでサーシャが押し勝つか、槍術熟練者の五和が巻き返すか
143 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 02:22:25.11 ID:h9i9L220

しかし、どんなに身体能力とセンスがあっても、人間である以上必ず隙というものが生まれる

五和はその隙を創りだすために、サーシャが真横から振り出してきた槍を、同時に自分の槍を縦に構える事で防ぐ
だがそれだけではない。サーシャの槍が当たると同時に、自ら強く一歩前に踏み出した。

防ぐ事と前に出る事を同時に行う五和、そして押されて若干の隙を見せるサーシャ

その隙を逃すまいと、五和は体を旋回させ、その勢いで真横からサーシャの槍に一撃を加える
サーシャも瞬時に体制を立て直し、槍をスイングする

激しく槍同士がぶつかり合い、乾いた音が修練場内に響く

同時に、両者の槍が弾かれ、手から離れ、飛んで行った
イメージでいうと、打者二人が互いに互いのバットに目がけてフルスイングした様な感じである
144 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 02:23:30.75 ID:h9i9L220

五和「はぁ…はぁ……参りました…さすがですね」

五和はわずかに息を切らせながらそう言う

一方サーシャの方は、目に見える範囲では全く疲労を見せていなかった


サーシャ「第一の解答ですが、最初に槍を飛ばされた時点で私の負けです。お見事です五和。」

五和「いえいえ、あなたの槍を弾き飛ばして油断していた時点で私の負けですよ。」

サーシャ「第二の解答ですが、実践なら私はあの時点で死んだも同然です。ですから(ry」

五和「いえいえ、それを言うなら」

サーシャ「第三の解答ですが(ry」

五和「いえ、絶対の私の負けです(ry」

サーシャ「第四の解答ですが(ry」

五和「第五の解答ですが」

サーシャ「真似しないでください」

建宮「あのう…お二人さん?」


どちらも延々と負けを譲らなかったので、とりあえずその場は引き分けと言う事になった


その後、軽くシャワーを浴びて汗を流し、着替えを済ませ、二人はロンドンの街へと繰り出して行った
145 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 02:25:44.22 ID:h9i9L220

【本編です】


五和は横幅の短いカーテンの前で、何やら期待の眼差しをそちらに向けながらそわそわしていた

彼女達は今、ロンドンのとあるブティックに居る
せっかくの友人とのお出掛けを修道服で歩き回るのは少し味気無いと思い、五和の提案でサーシャは適当に服を調達する事になったのだ。

ちなみに従業員さんは、修道服で来たお客様に少々戸惑っていた
もしも修道服ではなく、例の拘束衣で入ってきたら一体どんな顔をするのだろうか?


しばらくすると、試着室のカーテンが開かれた



そこには、修道服の時とはまた違う印象の、可愛らしい女の子が立っていた


146 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 02:28:06.08 ID:h9i9L220

上はタイト気味で、薄い生地の黒い長袖ニットチュニック。
X字に開いた胸元の下は真っ白なインナー

下は袖口が広く、少し大き目のインディゴライトのデニムショートパンツ
頭には何かないと落ち着かないという本人の希望により、黒のキャスケットを被っている

足元は黒のハーフブーツと黒の二―ソックス。
全体的に黒を基調とした格好で、サーシャの金髪がより美しく映える
長袖チュニックの袖口からは、白い指だけがちょこんと出ていて可愛らしい
ブーツとショートパンツとの間に挟まれた太股と膝小僧も可愛らしい
緩めのショートパンツなので太股全体が露出されているわけではないが、むしろそれがサーシャの足の細さを強調する
アクセサリーはイギリス清教のロザリオをそのまま付けているが、それだけでは物足りないので他数点
どう見ても俺の趣味ですほんとうにあ(ry




サーシャ「第一の解答ですが……どうでしょうか?」


サーシャは後ろで手を組み、もじもじと太股を擦り合わせながらそう尋ねるが、
返答するよりも早く五和はサーシャに抱きついていた


五和「て、店員さん!この子いくらですか!?」

サーシャ「ひゃわっ!い、五和っ!ほっぺが!ほっぺがまさつで!!」

店員「お客様!?」


最近ではこの二人の間ではよくある光景である
ちなみに服の代金の請求書は天草十字棲教に送られました
147 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 02:29:38.01 ID:h9i9L220

サーシャ「第一の質問ですが、本当に良かったのですか?」

五和「ええ、先程練習に付き合っていただいたので、特別講師料と言う事で経費で落としときます」

サーシャ「第一の解答ですが、五和がそう言うのならお言葉に甘えましょう。ありがとうございます。」

五和「いえいえ(ニヤニヤ)」

サーシャ「……」

五和「ふふ…(ニヤニヤ)」

サーシャ「……第二の質問ですが、なぜこちらを見てニヤニヤしているのでしょうか?」

五和「いやぁ、やっぱりかわいいですね。もう一回抱きついていいですか?」

サーシャ「五和……最近ワシリーサに似てきましたね……」



そんなわけで、二人は色々な場所を歩き回ったのであった
時間も移動範囲も限られているのが五和にとっては少々残念であったが、
それでもサーシャとのデートもといこうしてお出掛けできる事が素直に嬉しかった
148 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 02:31:22.25 ID:h9i9L220

サーシャ「第一の解答ですが、そろそろお腹が空きました」

五和「そうですね、じゃあ、この近くにある広場でお昼ご飯にしますか」



二人は今、広場の噴水の前に腰掛けている


五和「実はですね、なんと今日はお弁当を作って来たんですよ!」


五和は鞄からバスケットと水筒を取りだした


サーシャ「第一の質問ですが、その大きさの鞄によく入りましたね。確か、五和の海軍用船上槍も一緒に入ってるのでは?」

五和「収納スキルです。細かい事は気にしないでください。はい、まずは恒例のおしぼりをどうぞ」

サーシャ「第一の解答ですが、もはやあなたのアイデンティティーですね」
149 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 02:32:49.43 ID:h9i9L220

バスケットの中身は透明なタッパーごとに分けられたおにぎりとおかずが入っている


サーシャ「第二の質問ですが、これがジャパニーズライスボウルですか」

五和「おにぎりは初めてですか?気に入ってもらえるといいのですけど…」

サーシャ「(ぱくっ)……大変おいしいです。中身はツナですか」

五和「他にも色々な種類がありますから。あ、それとおかずもどうぞ。」

サーシャ「はい、では次はこれを……むぐっ!!!」

五和「サーシャちゃん?」

サーシャ「だ、だいさんのしつもんですが、このあかくてすっぱいのは…?」

五和「それは女教皇様特性の梅干しですよ。」

サーシャ「UMEBOSHI!?」

五和「ああ、サーシャちゃんにはちょっと慣れない味かもしれませんね。はい、お茶をどうぞ。」

サーシャ「いただきます」

五和「お砂糖もありますよ」

サーシャ「気が利きますね。」

五和「サーシャちゃん、頬っぺたにご飯粒が(ひょいパクッ)」

サーシャ「五和は良いお嫁さんになりそうですね」

五和「そんな、お嫁さんだなんて/////」

サーシャ「お茶が美味しい……」


両手を頬に当てて赤くなっている五和
特にそれを気にする事なくお茶を嗜むサーシャ
150 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 02:35:39.54 ID:h9i9L220

その後、サーシャオリジナルの砂糖たっぷり緑茶が注がれた水筒の蓋を膝に置き、改めて広場を見まわし、一息ついた


サーシャ「ここは静かですね」

五和「そうですね。観光スポットとはあまり縁の無い場所ですから。でも、私は良い場所だと思いますよ。」

サーシャ「第一の解答ですが、同意します。」


五和の言うとおり、この広場は、例えばトラファルガー広場の様な知名度も立派な建物も無い。
下町的な空間と言ったところだろうか。
人気もあまり多くないため、人ゴミが織成す喧騒も感じられない


噴水から溢れる水の音、風に揺れる木々のざわめきがよく聞こえる
頭上を見上げると、まるで傘の様に視界いっぱいの緑が広がる
その隙間から零れる木漏れ日が心地良く感じられる

サーシャにとっては、ガイドブックに載っている観光スポットよりも、
そのガイドブックに頼ってるだけでは絶対に巡り合えないこういう静かな場所の方が好きだ
151 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 02:37:00.61 ID:h9i9L220

五和「いいですね…」

サーシャ「そうですね。良い場所です…」

五和「いえ、そうではなくてですね」

サーシャ「?」


五和は前方を指差した
そこでは、二人の女の子が楽しそうに追いかけっこをしていた
身長の差から考えると、おそらく姉妹なのかもしれない

五和はその二人の女の子が遊んでいるのを羨望に近い眼差しで見つめていた


五和「私、妹が欲しかったんですよ」

サーシャ「妹…ですか…?」

五和「ええ。だって楽しそうじゃないですか。いつも一緒に居られるってところも良いですねー。」

サーシャ「そういうものなのでしょうか…」
152 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 02:39:56.05 ID:h9i9L220

五和「あーあ、私もサーシャちゃんみたいな妹が欲しかったなー。サーシャちゃんもウチに生まれてくれば良かったのに。」

サーシャ「それはまた奇妙な発言ですね。第一の解答ですが、日本人の親からこんな金髪の女の子が生まれてくるなんて想像もどうかと。」

五和「良いじゃないですか。突然変異って事で。」

サーシャ「第二の解答ですが、突然変異の前に奥さんの浮気を疑うべきでしょう。
それに、突然変異でこんなのが生まれたら、みんな気持ち悪がりますよ。」

五和「そんな事ないですよ。」

サーシャ「ありますよ…」

五和「……?」


サーシャ「あるんですよ……こんな目の赤い子供が生まれたら、誰だって気味悪がりますよ。」


五和「サーシャちゃん、あの…」

サーシャ「そう言えば、五和にはまだ話した事がありませんね。と言ってもこれを自分から話すのはあなたで二人目になるのですが。」


普段は前髪で隠れてあまりよく見えないのだが、意識して確認してみると、サーシャの目は赤い
五和はその事を微塵も気にしていなかったし、指摘された今、改めてその事を認識したくらいのものなのだ。
もしかして地雷でも踏んだのだろうか?
153 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 02:42:20.54 ID:h9i9L220
サーシャ「第三の解答ですが、人間の虹彩はイエロー、ブラウン、ブルーの三つが基本色となります。
赤い目は、本来であれば自然界には存在しないのです。本来であれば。」


赤い目は先天性白皮症に見られ、動物などに先天的に発症する。人間にもこれが発症する事はあるが…


サーシャ「補足しますと、私は俗に言うアルビノというものでは無いとの診断を受けました。
医学でも完璧に証明できないのです。」

五和「えっと、それはつまり…」





サーシャ「では第一の質問ですが、現代の科学ですら説明できないこの目を持って生まれた私は、
あなた方から見たらどの様に映るのでしょうか?」


サーシャはその赤い目で真っ直ぐに五和を見据えた
154 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 02:46:15.78 ID:h9i9L220

今でこそ先天性白皮症も医学で証明され、それを正しく知る人間は差別などという愚行を犯さない
だが、それ以前はどうだったか?日本でも見世物にされていたという記録がある。
そして現代においてさえもその知識や、そもそも医学が先進国並みに浸透していない地域ではどうだろうか?
アフリカでは、先天性白皮症の人間が今でも迫害されている。耳を疑いたくなるような悲劇も起きている。まるで現代の魔女狩りの様に。


人間は、自分達と異なる者に違和感を持つ
同時に、人は自分の知識が及ばない物や事象については恐怖感を抱く


その二つを同時に兼ね備えた彼女の赤い瞳は…

もしかすると、彼女の前髪が長いのは、その赤い目を隠すためなのかもしれない
仮にそうだとしたら、少なくとも彼女は持って生まれたその赤い目で良い思いをした事は無いのだろう


サーシャ「……」


サーシャは依然変わらずに赤い瞳で五和を見つめ続ける

同時に心の中では、彼女は後悔していた
なぜムキになってこんな下らない事を言ってしまったのかと

五和は良い人だ。
こんな事を言って空気を悪くしてしまったにも関わらず、彼女はきっと優しくフォローしてくれるだろう。

「私はそんなの気にしない。誰にだって悩みの一つはある。何らかの障害を持っていても、明るく強く素晴らしい人生を歩いている人は居る。」

まあそんなところだろう。とても道徳的で素敵な言葉だ。
まるで聖者が愚者に隣人愛を説いている様だ。心の中では憐れみ蔑みながらも。


そんな言葉は、五和の口からは聞きたくなかった
果たして彼女はどんな同情の言葉をかけてけくるのか……

155 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 02:49:41.54 ID:h9i9L220


五和「私はサーシャちゃんが好きです。」

サーシャ「……はい?」

五和「サーシャちゃんがどれだけ苦しんできたかも分かりませんし、そもそもどうすれば良いのか?
どう答えるのが一番良いのかなんて私には分かりません。私なんかにそれが分かるくらいなら、
きっと世界中から差別や偏見なんて無くなってるしょうから。」

サーシャ「……」

五和「ですから、これが答えじゃダメですか?目が赤いからどうとか言われたって、
好きなものは好きなんだからしょうがないじゃないですか。」


それは、サーシャの予想していた答えとは全く違っていた

簡潔に言えばその答えは、“どうでも良いし興味無いです”といった感じか。
そんな稚拙で冷たいとも受け取れる様な答えだ。
別の言い方をすれば、それを特別な事だと思っていないとも言える

そう言えば、以前ワシリーサにも自分からこの事を話した事がある
ワシリーサは何を言ったかと言うと「へえ、そう?まあ可愛いから良いんじゃない?可愛ければ正義なのよ!
赤い目もキュートなのよ!サーシャちゅわああん!!」とか言いながら飛びついて来たのでバールで薙ぎ払った覚えがある


サーシャ(やはり、この人はワシリーザに似てきていますね。いや、あるいは最初から…)

五和「え?何か言いましたか?」
156 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 02:52:22.87 ID:h9i9L220

サーシャ「第四の解答ですが、何でもありません。」


そう言うと、サーシャはトスンと寄りかかり、五和に体重を預けた


サーシャ「少し、疲れました。」

五和「じゃあ、向こうのベンチで休みましょうか」





ベンチに座ると、サーシャは五和に膝枕を要求してきたので、五和は快くそれを受け入れた


サーシャ「第一の解答ですが、五和は相変わらず胸が大きいですね」


膝枕のアングルだとかなり強調されるようだ。胸が。


五和「サーシャちゃん、それセクハラですよ」

サーシャ「第二の解答ですが、私の職場では日常茶飯事でした」

五和「こんな年端もいかない子にそんな事するなんて、一体どんな変態なんですかその同僚は」

サーシャ「五和に似てますよ。良い意味で。」

五和「私はそんな事してませんよ!」

サーシャ「補足しますが、良い意味で、ですよ。」


そう言うと、サーシャは意地悪な笑みを浮かべた
157 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 02:55:17.23 ID:h9i9L220


静かな昼下がりの広場
優しく自分の体を撫でる様に吹く風を感じながら、その風が奏でる木々の揺れる音に耳を傾けながら、
五和の膝枕で穏やかに寛ぐ。

多分、今この瞬間は、サーシャにとっては最期の審判の向こうにあるという神の国にも劣らない世界になっているのだろう

そしてもしも五和がその神の国に居ないのならば、サーシャは迷わず十字架を捨てるだろう



こんなに穏やかな気持ちになれたのは、ここに来た初めての夜にルチアに抱きしめられた時以来かもしれない





五和の膝の柔らかさが心地良かった

彼女の頬笑みも優しさも

時々、温かい手でそっと自分の頭を撫でてくるのも

全てが愛おしかった
158 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 02:57:23.05 ID:h9i9L220

サーシャ「五和、私は五和の友人になれた事を誇りに思います。」

五和「えっ!?いきなり何ですか?そんな恥ずかしいセリフを言うなんて」


五和は僅かに顔を赤くしながらそう言う


サーシャ「自分でも驚いています。第一の質問ですが、五和はどうですか?」

五和「もちろん、サーシャちゃんの友達になれて、ううん、それ以前にサーシャちゃんに出会えた事が嬉しいです。」

サーシャ「ありがとうございます…五和……」


サーシャはそっと目を閉じた

そして、そんなサーシャのおでこを、五和は優しい頬笑みを浮かべながらそっと撫でた

159 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 03:00:27.79 ID:h9i9L220

サーシャ「第一の解答ですが、もしも自分が男性だったら、この場であなたにプロポーズしているでしょうね。」

五和「プ、プロッって!?もう、さっきからおかしいですよ!?」


先程の恥ずかしいセリフの時よりもさらに、今度は誰が見ても明らかなくらいに顔を真っ赤にする五和


サーシャ「本心ですよ。五和は同性の私から見ても良い女です。」

五和「そ、そんな事ないですよ。私なんて、サーシャちゃんみたいに可愛いわけでもないし、
女教皇様みたいな武器(胸)も度胸(堕天使)も無いし、目立たないし、それに…」

サーシャ「それに?」


五和「…守れなかったんです。大切な人だったのに、私は何も出来なくて……
本当は私がその人を守らなきゃならないはずだったのに、逆に私はその人に守られてしまったんです。
それで、その人はボロボロに傷付いて……」


いつかの神の右席との戦いを思い出し、五和の顔が曇った

そんな五和の様子から、サーシャは察してみた


多分、その人というのが好きなのだろう。彼女にとっての大切な人なのだろう。
だからこそ、きっと大切な人を守れない自分の無力さが許せないのかもしれない。
160 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 03:03:42.77 ID:h9i9L220

サーシャ「第二の解答ですが、大丈夫です。五和は美人ですよ。私より胸も度胸もあります。目立つかどうかはともかく。」

五和「そこは否定してくれないのですね」

サーシャ「それに、戦いの強さだけが強さではありません。五和の優しさも強さです。誰かを傷付ける強さよりも、
誰かを幸せにできる強さの方が尊いものだと思いますよ。」

五和「ですが、私には、誰かを幸せにできるほどの力なんてありませんよ。」

サーシャ「ありますよ、ほら」


そう言うと、サーシャは五和に膝枕されている状態から右手を伸ばし、
そっと五和の頬に触れた



サーシャ「第三の解答ですが、私はこんなにも幸せじゃないですか。」


反則だった
その時のサーシャは、今まで見たことの無い様な優しくて無邪気な頬笑みを浮かべていた。
例えるなら、天使の頬笑みという表現がしっくりくるかもしれない
その表情を見た時に、五和は不覚にもドキッとしてしまった
161 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 03:06:40.21 ID:h9i9L220

サーシャ「私は、こんなにも五和を愛しく感じているのです。あなたの想い人にも同じ優しさを向けてあげれば、
きっとあなたに振り向いてくれるはずですよ」

五和「サーシャちゃん…」


嬉しいのやら恥ずかしいのやら、五和にはもはやよく分からなくなってしまっている


五和は自分の頬に当たっている白くて小さなサーシャの手の甲に、そっと自分の手を重ねた
そうすると、不思議と感情が落ち着いていく
自然と表情が柔らかくなっていくのを自分でも感じられる



この感覚を覚えておこう


たぶん、これがサーシャの感じている優しさであり、幸せなのだと思うから


それがあの人にも伝わるのなら…






サーシャ「第四の解答ですが、もしもその想い人が五和を泣かせたら、私があらゆる手段を持って
その人に“死んだ方がマシ”というふざけた言葉の意味を教えてあげましょう。」

五和「いえ、そこまでしなくてもいいですから。」


天使の様な頬笑みが邪悪な笑顔に変る瞬間を五和は目撃した


162 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 03:08:16.76 ID:h9i9L220

その頃遠く離れた東の島国では


上条「(ぶるっ!)な、なんか妙な寒気を感じる。上条さんは誰かから呪われてるのでしょうか?」

Dedicatus545「心当たりは沢山あると思うんだよ。」

上条「不幸だ……俺が何したってんだよ」

545[とーまは立て逃げしまくりなんだよ]


いつものことです
163 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 03:09:23.61 ID:h9i9L220

その後、一休みした後にロンドン巡りを再開した二人


五和「最後はとっておきの場所を紹介してあげましょう。フフフ」

サーシャ「第一の解答ですが、なんだか自信あり気ですね。ちなみにここはウェストミンスター宮殿です。
現在でもイギリスの国会議事堂としての役割を担っています。」

五和「ウェストミンスター宮殿と言えば、ビッグベンですね。世界で最も有名な時計塔の
一つに数えられています。」

サーシャ「宮殿に併設されているあの高い時計塔ですね。高さは96m。しかし、一般人は
登る事ができないという残念な観光名所でもあります。」

五和「ですが、もしも登る事ができるとしたら?フフフ…」

サーシャ「なるほど、だからその薄ら笑いですか。」

五和「と言っても実は私も登るのは初めてなんですけどね」
164 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 03:11:36.80 ID:h9i9L220
【時計塔前】


五和「一応、ビッグベンは国会議員の紹介があれば登れるのですが、今回はその議員でも知らないルートから登ってみましょう。」

サーシャ「裏ルートとかいうやつですね。」


五和は時計塔の壁をくまなく調べている


サーシャ「……結界?」

五和「ええ、ありました。どこかで聞いた噂通りです。だいぶ古くなっていますから、これくらいなら、
こうやってこうやってここをいじって……おっ、いけましたよ!」


ガラスの割れる様な音が響いた


サーシャ「元はそれなりに強い結界だったみたいですね。しかし、どうしてここに魔術の痕跡が?」

五和「どうやらこの時計塔は、議会を裏から掌握する王室派の方達のための建物だったのかもしれませんね。
正確には、こっちが表ルートみたいです。現在では王室派の方達もこの時計塔を使用していないみたいですけど、
それでも一般人に公開しないのは、王室派の影響力の痕跡がばれるのを防ぐためなのかもしれません。」

サーシャ「なるほど、不思議ではありませんね。そもそも議会になる前は宮殿だったのですから。」
165 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 03:13:12.01 ID:h9i9L220

結界が完璧に崩れると同時に、壁しか無かったはずの場所に一つの扉が現れた

年季の入ったその扉を開けると、その奥にはまた扉があった。

そしていくつかの扉を開けていき、いくつかの結界を破壊し、たどり着いた先には、一つの魔法陣が床に描かれていた


五和「これは…なんの魔法陣でしょうか?」

サーシャ「第一の解答ですが、攻撃的な術式は組まれていないみたいです。おそらく、大規模な転移魔術を可能にする魔法陣でしょう。」

五和「なるほど、王室の方々にこの塔を登らせるなんて事をするわけにはいきませんからね。」

サーシャ「第二の解答ですが、年季はありますが、どうやらまだ機能しているみたいです。行きましょう。」


サーシャは五和の手を引っ張り、魔法陣の中心に立った
手を握ったまま二人の体はどこかへと移転されていく
166 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 03:15:25.44 ID:h9i9L220

移転された先には、広い空間と三つの扉があった

それぞれ開けて確認してみたが、一つは王室派の従者の待機室
もう一つは、王族のための豪華な部屋
最期の一番大きな扉の向こうは、部屋の中心に高そうなテーブルが置かれた会議室の様な場所だった

おそらく、昔は本当のイギリス政治の中心だったのかもしれない

二人は王族のための部屋に入り、その部屋に備え付けられたテラスに出た




五和「……すごい…絶景かなって感じですね」

サーシャ「……」


実際に階段を登って来たわけではないので実感が湧かなかったが、どうやらここはビッグベンの最上階であるらしい


右を見ればテムズ川を一望できる
左はロンドンの名所や街並みが一望できる

世界最大の観覧車であるロンドンアイには及ばないが、それでもこの景色は彼女達に感動を与えるのに十分だった


サーシャ「第一の解答ですが、100年前の王族の方々も、きっとここからこの景色を眺めていたのでしょうね。まさに英国の頂点として……」


こんなにも有名な観光スポットなのに、この景色は絶対に誰も見る事ができない。
そう思うと、ますますこの景色が感動的のものに見えてくる。
167 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 03:17:31.51 ID:h9i9L220

サーシャ「第二の解答ですが、いつかあなたの想い人にも見せてあげられるといいですね。」

五和「そうですね。前途多難ですけど……」

サーシャ「もしもダメだったら、その時は私が貰ってあげますよ」

五和「ふえっ!?」

サーシャ「冗談です。第三の解答ですが、良いリアクションをありがとうございました。」

五和「でも、それも良いかもしれませんね。」

サーシャ「…え?」

五和「もしも私が男だったら、きっとここでサーシャちゃんにプロポーズしちゃってますよ。こんなに良い景色があるんですから。」

サーシャ「あの…五和?」

五和「クスクス、冗談です。良いリアクションをありがとうございます」

サーシャ「……」

五和「あれ、サーシャちゃん?もしかして怒ってます?」

サーシャ「別に(ぷいっ)」

五和「でも、もしも本当に私が男だったら惚れていたかもしれませんね。」

サーシャ「騙されませんよ」

五和「もう、可愛いんだから(ぎゅっ)」

サーシャ「第四の解答ですが、またですかっ!」

五和「ああ柔らかい…」


人気の無いというより、全く人の居ないこの秘密の部屋のテラス

もしも五和が男だったら、色んな意味で本当に危なかったかもしれない
168 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 03:23:47.37 ID:h9i9L220

五和「では、また一緒にどこか行きましょうね。あとさよならのハグをしても良いですか?」

サーシャ「第一の解答ですが、昔のあなたが懐かしく感じられます。」


日も完全に沈んだ時間帯だ。随分と長い時間あの場所に居たのだろう。

サーシャは女子寮へ、五和は日本人街へ、二人は別れて帰路に着いた




五和「サーシャちゃん今日も可愛かったなあ。今度はネコミミとかつけてみようかな♪」

?「えー、アタシは犬耳の方が好みかなー」

五和「そうですか?でもサーシャちゃんなら両方……誰ですか!?」

?「誰でも良いじゃないですかー?あなたの身柄にだけ用があるんですから」

五和「……魔術師ですか?そう言えば、先程から人の気配が…」

?「余所見しちゃだめですよー?」

五和「えっ…」


気付いた時には目の前の長身の少女は五和の目の前に来ていた

そして五和が言葉を上げるよりも早く、鳩尾に一撃をたたき込む


(ドゴッ!)


五和「ガフッ…!」


全身の酸素が無理矢理引き抜かれる様な感覚に襲われる

そのまま、五和の意識は途切れていった


オルガ「身体能力が高いって聞いたけど、大した事なかったですねー。よっこいしょ。」


オルガは五和を担ぐと、そのまま夜のロンドンの街並みに消えていった

169 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/15(日) 03:25:05.04 ID:h9i9L220
ここで区切ります

あまり百合成分はありませんね
次からは完全にシリアスです
170 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/15(日) 06:00:21.39 ID:h9i9L220
>>168
訂正
×目の前の長身の少女は五和の目の前に来ていた
○長身の少女は五和の目の前に来ていた
171 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 15:35:57.59 ID:BPenpDgo
乙。作者の溢れんばかりのサーシャ愛が凄く伝わってきたよww

殲滅白書ヴェロニカ部隊のオリキャラ少女4人組もそれなりにキャラ立ってるかな。やっぱ4人組良いよね。
百合成分はあの人の話題になったあたりから減ったね。まあ面白いけど。

次からはシリアスか。つまり囚われのヒロインと化した五和を巡ってバトル?
神裂さんが出張るとすぐ終わりそうな気がするので、
サーシャ・アニェーゼ・ルチア・アンジェレネ・オルソラvs殲滅白書を期待。
172 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/15(日) 23:49:30.28 ID:h9i9L220
本日分投下します

>>171
実は堕天使エロメイドさんはチート過ぎるので戦闘に出す予定はありません
一応、そのフラグはすでに出ていますが、どうつながるかはこれからという事で
173 :1 :2010/08/15(日) 23:52:10.14 ID:h9i9L220
【殲滅白書その2】


そこは、先程までサーシャと五和が居た時計塔だった


五和「うーん……ここは……ッ!」


目を覚ますと、自分が椅子に座らされ、ロープで体を固定されている事に気付いた


ヴェロニカ「お目覚めかしら?五和さん。」

五和「何の真似ですか!こんな事!」

ヴェロニカ「暴れない方がいいわよ。タダのロープじゃないから。」

五和「ッ…!」

ヴェロニカ「それよりも、早いとこ話を進めましょう。単刀直入に話すけど、
あなたにサーシャ・クロイツェフにここに来るように言ってほしいの。
本当はサーシャを直接誘拐した方が手っ取り早いのだけど、彼女は中々強いし、
たぶんオルガ一人じゃ勝てなかったでしょうから。出来るだけ穏便に事を運びたかったのよ。」
174 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 23:56:21.38 ID:h9i9L220

五和「で?それを私が承諾するとでも?あなた達は一体何者なんですか!?」

ヴェロニカ「はぁ、めんどくさいわね。こういう強気で正義感のある人って本当にめんどくさい。私達は殲滅白書のシスターよ。」

五和「殲滅白書!?ということは!」

ヴェロニカ「そうよ。理解してもらえた?ならさっさと指示に従ってくれるかしら?」

五和「聞いてなかったんですか?私は嫌だと言ったんですよ?」

ヴェロニカ「そう。じゃあ、ここで死ぬけど良い?」

五和「そんなものが脅しになると思ってるんですか?」

ヴェロニカ「へえ、面白い事言うじゃない。」



ヴェロニカ「じゃあ、ここであなたが断れば戦争になるけど、それでも良いかしら?もちろんあなたにもここで死んでもらうわ。」

五和「戦争ですって!?」

ヴェロニカ「私達はそれを避けるために取引してるのよ。一体戦争でどれだけの人間が無意味に死んでいく事か。
私は嫌だし、あなただって嫌でしょ?」
175 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/16(月) 00:03:48.97 ID:ct3zcQY0

五和「……」

ヴェロニカ「この作戦が成功すれば、誰も死ななくて済むの。平和的でしょ?だかr」

五和「ふざけるな!!!」

ヴェロニカ「!?」

五和「何が平和的ですか!そもそもあなた達が勝手に人殺しを始めようとしてるだけじゃないですか!!
サーシャちゃんを引き渡せば誰も死なない?だから平和的?ぜんっぜんおかしいですよ!!」

ヴェロニカ「そう。じゃあ戦争しかないわね。あなたのせいで無関係なシスターさんが沢山死ぬのね。心が痛むわ。」



ヴェロニカ「そう言えば、サーシャはあなたの友人だったかしら?友情と多くの人間の命、はたしてどっちが重いのかしらね?」

五和「サーシャちゃんは……あなた達から逃げて来たんですよね……?あなた達が誰も助けてくれないから、
だから私達に救いを求めてきたんですよねぇ!!だったら答えなんか最初から決まってます!!
例えどんな人でも、どんな事情があっても、敵でも味方でも、友達でもそうじゃなくても!!
救いを求める人に手を差し伸べるんですよ!!」



五和「救われぬ者に救いの手を!!それが私の唯一の信念であり、戦う理由ですから!!」



ヴェロニカ「……」

五和「戦争でも何でも勝手に起こせば良いじゃないですか!!
私達は、自分の命惜しさに仲間を売る様な弱い集団ではありませんから!!
あなた達みたいに、痛む様な心なんて持ってない人達には負けませんから!!」
176 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/16(月) 00:07:06.83 ID:ct3zcQY0

その目に確かな意思が宿っているのをヴェロニカは感じた
どんな言葉も脅しにも屈しない、そんな強い目をしている


ヴェロニカ「クッ…この…!」

ローザ「ヴェロニカ、落ち着いてください。」


ヴェロニカを宥め、五和の方を向くローズ


ローズ「戦争を起こしたくないというヴェロニカの言葉は本当です。
そして、彼女は本当はこんな手荒な真似もしたくはなかったのです。
もう一度考え直して下さい。本当に私達の申し出を断るのですね?」

五和「しつこいですよ」

ローザ「そうですか。」

そう言うと、ローザは透明な液体の入った小瓶と、口紅を取りだした
最初にその小瓶に薬指を軽く入れ、指先に付いた透明な液体を唇に薄く塗った
そして次に、紫色の口紅をその上から塗る
177 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/16(月) 00:09:38.95 ID:ct3zcQY0

ローザ「こちらとしてもあまり時間を掛けたくはありません。これも少々手荒な真似になりますが…」


ローザは五和に顔を近づけた


五和「一体なにをむぐ…」


五和の唇を塞ぐローザ
すると、ローザの唇の紫が、五和の唇へと移っていく


五和「これは…」

ローザ「自白剤みたいなものですかね。宗教裁判や魔術師の尋問で、本当の事を喋らせる薬みたいなもの…
といっても、実際は単に人の心を操って都合のいい事を喋らせたりするだけの薬ですけど。」

五和「心を操る!?」

ローザ「似たような薬はイギリスの処刑塔でも使われていたみたいですけど?まあもっとも、
今はこれに対抗するための薬もありますし、裁判や尋問での使用が確認されたら判決が無効になってしまいますが。
効果時間もせいぜい一時間程度と長いとは言えませんし。」

ローザ「ですから、手っ取り早く私の指示に従ってもらいましょうか。」

五和「うっ…」


視界がぐにゃりと歪んだ
自分というものがどこかへ消えていきそうな感覚…
覚えているのはそこまで


ローザ「では、早速ですがサーシャ・クロイツェフをここに呼び出してもらえますか?」

五和「はい」


五和の目には、先程の様な強い意志は微塵も無く、光すらも感じられない
178 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/16(月) 00:11:35.42 ID:ct3zcQY0


Prrrrr

サーシャ「おや、誰からでしょう?」


ディスプレイを確認すると、発信者は五和だった
なんとなく嬉しくなって顔がニヤけてしまう


サーシャ「第一の質問ですが、どうかしましたか五和?」

五和「……さい」

サーシャ「第二の質問ですが、よく聞き取れないのでも少し」

五和「時計塔の最上階へ来て下さい。」

サーシャ「第三の質問ですが、今からでしょうか?しかし、もう遅い時k」

五和「来てくれないと私……死にますよ?」

サーシャ「五和?…一体どうしたのですか!?」

五和「ちなみに、一人で来て下さいね。もしも誰かと動向を共にしていたり、
周囲に魔術師およびシスターの存在を確認したら、すぐに死んじゃいますから。」

サーシャ「五和!?いt!!」


そこで電話が途切れた
179 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/16(月) 00:14:18.99 ID:ct3zcQY0

サーシャ「五和……」

アニェーゼ「どうしたんですか?なんか叫んでたみたいですけど」

ルチア「五和という言葉が聞こえましたが、天草式のですか?彼女に何が?」

サーシャ「第一の解答ですが!すみません!ちょっと用事が!」

アニェーゼ「サーシャ、私達は仲間ですよ。それを分かってますよね?」

サーシャ「……第二の解答ですが、それでもこれは私一人で行かなければなりません。」


そう言うと、サーシャは二人の前から逃げるように走り去って行った


ルチア「…アニェーゼ、これは」

アニェーゼ「分かってますよ。サーシャは一人で抱えたりはしません。おそらく、誰にも言えない状況なんでしょう。
そう脅されてるんだと思います。部隊で今すぐ動ける人間を集めて下さい!それと、すぐに天草の方に連絡を!」

ルチア「分かりました!」
180 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/16(月) 00:16:33.93 ID:ct3zcQY0

サーシャは無我夢中で走っている

どう考えてもおかしい。五和があんな事を言うはずが無いし、それ以前に明らかに友人を呼び出す様な口調ですらない

嫌な予感がする
唯一心当たりがあるとすれば、彼女がかつて所属していた殲滅白書…



サーシャ「はあ…はあ…」


さすがに寮から時計塔までは、遠くは無いがそれなりに距離はある
全速力で走って来たので、さすがのサーシャでも両手を膝小僧に乗せて体重を掛け、息を切らしていた

それでも止まるわけにはいかない

サーシャは時計塔の壁を調べ始めた。すると、今日自分と五和が発見した秘密の扉はすぐに発見できた。
帰り際に結界を修復して元通りにしたはずなのに、その結界が再び破られ、扉が露わになっている。


サーシャ「間違いありませんね。」


サーシャはいくつかの扉を開け、再び巨大な魔法陣の中心に立った


サーシャ「五和、今助けに行きますよ。」


サーシャの体は最上階へと移転されていった
181 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/16(月) 00:17:58.86 ID:ct3zcQY0

サーシャ「……やはり、あなた達でしたか。」

オルガ「やっほー♪久しぶりだねー!」

サーシャ「第一の解答ですが、馬鹿を相手にしてる時間はありません。」

オルガ「酷ッ!」


サーシャは移転先で最初に遭遇したオルガを無視し、中央の一番大きな扉を開けた


ヴェロニカ「あら、早かったわね。」

サーシャ「第一の質問ですが、どういう事でしょうか?」

ヴェロニカ「安心して、彼女は傷付けてないから。ちょっと心を操らせてもらってるけど。」

サーシャ「五和!」

五和「……」


親友の声にも全く反応しない。
彼女の右手にはナイフが握られている。
182 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/16(月) 00:20:36.99 ID:ct3zcQY0

ヴェロニカ「さて、おとなしくロシアまで同行してもらえるかしら?」

サーシャ「第一の解答ですが、私はイギリス清教所属のシスターです。
こんな真似が許されると思ってるのですか?それに、なぜ私なんかを?」

ヴェロニカ「大義名分ってやつ?それなら問題無いわ。あなた、国際指名手配犯だから。」

サーシャ「なぜ…?そんな…」

ヴェロニカ「容疑は国家機密情報の漏洩に関する何とかかんとか。まあ身に覚えは無いだろうし、
嘘なんでしょうけど。その他にもテロ計画や国家反逆罪とかまあ適当に寄せ集めて色んな容疑をかけられてるみたいよ?
とんでもない冤罪ね。当然、国籍の離脱なんて却下されてるわ。」

サーシャ「第二の質問ですが、どうして私ごときのためにそんな…」

ヴェロニカ「あなたを欲しがっている人が居るみたいよ?まあどうでも良いけど、そう言う事だから大人しく連行されてもらえないかしら?」

サーシャ「第三の質問ですが、拒否した場合は?」


ヴェロニカはローザを一瞥した

すると五和は、手にしたナイフの切っ先を自分の喉に当てた
183 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/16(月) 00:23:00.87 ID:ct3zcQY0

サーシャ「……!」

ヴェロニカ「さーて、どうする?」

サーシャ「……分かりました。あなたの言う通りにします。」

ヴェロニカ「そ、物分かりが良くて助かるわ。ローザ、サーシャに手錠と拘束衣を」

ローザ「つまらないです」

ヴェロニカ「ローザ?」

ローザ「もっと抵抗すると思っていたのですが、何ですかその腑抜けた態度は?」

サーシャ「…何が言いたいのですか?」

ローザ「以前のあなたは、もっと自分のすべきことに対して冷徹で一途だったはずです。
いつからそんな顔をする様になったのですか?」

サーシャ「質問を繰り返します、何が言いたいのでしょうか?」

ローザ「甘いと言ってるのですよ。まさか友情とかいう幻想に絆されて
こんなにもあっさり受け入れるなんて、甘過ぎるのですよあなたは。」
184 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/16(月) 00:25:17.81 ID:ct3zcQY0

サーシャ「幻想なんかじゃありませんよ。」

ローザ「幻想ですよあんなもの。簡単に壊れるし裏切られる。ちょっと信頼して心を許したら、
いつのまにか勝手に退学届を出された上に除籍処分になってるんですから。」

ヴェロニカ「うっ…」

オルガ「それはヴェロニカが悪いですねー」

サーシャ「第一の解答ですが、あなたには理解できないだけです。」

ローザ「理解したくありませんし、殲滅白書にはそんなもの必要ありません。」

ローザ「と言うわけで、目も当てられないほどに腑抜けになってしまったあなたを矯正する必要があるみたいですね。五和!」

五和「はい」


ローザの命令で、五和はナイフを捨て、代わりに槍を構えた
練習用では無い。殺傷能力を持つ海軍用船上槍だ。


ローザ「サーシャ、今からあなたに彼女と戦ってもらいます。もちろん、ちゃんとトドメをさしてもらいますよ。」
185 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/16(月) 00:27:41.39 ID:ct3zcQY0

ヴェロニカ「ちょっとローザ!あなたいい加減n」

ローザ「黙れ。」

ヴェロニカ「はい。」

オルガ「あちゃー、完全にドSモードに入っちゃってますねー」

アーニャ「眠い…」


サーシャ「第二の解答ですが、あなたは馬鹿ですか?私がそんな事をするわけ無いでしょう?」

ローザ「じゃあ今すぐ五和には死んでもらいましょうか?言っておきますが、本気で戦わなかったら殺します。
あなたがとどめを刺さないなら私が殺します。10分以内に決着を着けなかったら殺します。
ちなみに気絶させるのは無駄ですよ?もともとは尋問用の薬なんですから、気絶なんて生易しい事を許すはずが無いでしょう?」



サーシャ「……第三の解答ですが、私はあなたが大嫌いですこの腐れ外道。」

ローザ「私は昔のあなたなら結構好きでしたよ?五和!」


ローザの合図と共に五和が突進してきた
186 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/16(月) 00:31:27.97 ID:ct3zcQY0

サーシャ「!」

頬を海軍用船上槍の先端が掠め、僅かに血が出る


サーシャ(速い、今日の練習の時よりも格段に速いですね)


それはつまり、五和が本気でサーシャを殺そうとしているという事だ


サーシャ「どうすれば…!」バキン!


術式で強化したノコギリで槍を受け止めたが、その刃が耐えられずに折れてしまった


ローザ「どうしたのですか?あなたなら簡単に殺せるでしょう?」


サーシャは今すぐローザの綺麗な顔にバールをぶち込んでやりたい気分になった


ローザ「余所見なんてらしくないですね」


ドスッ!


サーシャ「うッ!」


槍の柄の部分で思い切り腹を殴打されて、そのまま吹っ飛び、壁に叩きつけられた


ドガッ!


サーシャ「ぐっ…がハッ…!」

背中に鋭い痛みが走る。脇腹は、肋骨をやられたかもしれない
だが、そんな事情などで待ってはくれない
187 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/16(月) 00:34:03.31 ID:ct3zcQY0

五和は倒れ壁にもたれ掛かってるサーシャを完全に刺殺しようと、凄い勢いで槍を突いてくる

サーシャはそれをバールを打ち付けてそらし、さらに槍を下から思いっきり蹴り上げる。
そして五和の体重が後ろへグラついた瞬間を逃さずに、すかさず足払いをして五和を後ろへ転倒させた。


ローザ「どうしたのですか?転んだ今なら殺せますよ」

サーシャ「ぐっ…!」


体がふらつく
それでも今ならあのムカツク女を殺せるだろうか?

しかし、そんな事を考えている間に再び五和は立ち上がり、サーシャを殺そうとしてくる


ローザ「はぁ…とんだ期待外れですね。薬の効果もあと持って3分ってとこですか。人を操るのは難しいものです。」


その言葉はサーシャに希望の光を与えた。あと3分持ちこたえればこの状況から…


ローザ「残り2分間を戦わせて、殺せなかったら残り一分の間に自殺してもらいますか。」


希望の光は一転して絶望に変った

ローザはそれをわざと狙ってこの様な言い方をした事は、彼女の悪魔の様な笑顔から分かる
188 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/16(月) 00:36:12.17 ID:ct3zcQY0

どうする?後一分で五和を殺さなければ、どのみち五和は自害する

考えている間にも五和に壁際まで追いつめられる


サーシャ「そう言えば、五和には好きな人がいるんですよね…?」

五和「……」

サーシャ「第一の解答ですが、あなたにはまだやらなきゃならない事があるはずです。私と違って…」


カラン!


ヴェロニカ「サーシャ…どういうつもり?」


サーシャは握っていたバールを離し、床に落とした

そして、両腕をゆっくりと広げた。まるで全てを受け入れるかのように


ヴェロニカ「いけない!ローザ!」

ローザ「五和!攻撃中止!」


だが遅かった


ドスッとサーシャの肉を貫く音が部屋に響く


189 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/16(月) 00:38:14.43 ID:ct3zcQY0

サーシャ「がふ…!ぐっ…がはっ!!」


大量の血を吐き出すサーシャ
腹部を海軍用船上槍で貫かれている


五和は槍を引き抜こうとしたが、サーシャは最期の力を振り絞ってそれを阻止する
サーシャは渾身の力で海軍用船上槍の柄を握ったまま、壁を背にして床に崩れ落ちた



そこでちょうど三分



魔法が途切れ、五和が絶望する時間が始まる
190 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/16(月) 00:40:06.86 ID:ct3zcQY0


意識が戻った時、最初に目に飛び込んできたのは、大量の血液が目の前の壁にペンキの様に塗られていた事


次に、その血を絵をなぞる様に下を向くと、金髪の少女が崩れ落ちているのを確認した
あまりにも変わり果てた姿だったので、最初はそれがサーシャだとは気付けなかった


そして、サーシャの腹部には三股の槍が刺さっている


その槍を先端から順にたどっていくと、そこには自分の手が……





五和「あ、ぁ…あ…あ…ああああああああ!!!!」


五和は槍から手を離し、頭を抱えて膝を付いた

どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?なぜ!?

なぜ自分が大切な友達をこんな……


191 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/16(月) 00:41:47.27 ID:ct3zcQY0

サーシャ「いつ…わ…」


血まみれのサーシャが口を開いたのを聞き、五和はとっさサーシャの方を見た


サーシャ「に…げて……早く……逃げて……!」


しかし五和はそれを無視する


五和「ああ…早く……早く応急処置を!!回復術式を!!」


五和はヴェロニカ達をどけて自分の鞄を漁り始めた

ヴェロニカ達はそれを見ている事しかできなかった


ローザ「……なぜです…サーシャ・クロイツェフ…なぜそこまで出来るのですか?たかが友人のために……理解できない…」

ヴェロニカ「仕方ないわ。ここは五和を始末し、早急にサーシャを奪還しt」

?「させませんよ!」
192 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/16(月) 00:44:46.32 ID:ct3zcQY0

オルガ「あれー?」

ヴェロニカ「なっ…なぜあなた方が!」


そこには蓮の杖を構えたアニェーゼとルチア他部隊のシスター達が居た


建宮「五和!」


そして天草式も同行している


アニェーゼ「どうやら、サーシャの予想通行ルートに殲滅白書のシスターを何人か待機させていたみたいですね。
そのうちの一人をとっちめて吐いてもらいましたよ。後は簡単な誤認術式を発動させて、
10人一組でバラバラにわけて殲滅白書の魔術師を探させました。みんな蜘蛛の子を散らすように逃げやがりましたよ。」


殲滅白書の方は、せいぜい3人一組程度に分かれて監視していた
そこに10人一気に来られてはたまらない

ちなみに隠れた殲滅白書の魔術師を探し出す役割は天草式の術者が担った。
もともとが隠密行動を得意とする天草式は、逆に隠密行動を行う魔術師を探し出すのにも長けている。
そうしないと、自分達を狙う幕府から生き残れなかった天草式の歴史の賜物だ。
193 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/16(月) 00:47:05.30 ID:ct3zcQY0

ヴェロニカ「くっ…ここは一端引きましょう!」

アニェーゼ「させませんよ!」


アニェーゼはナイフを取り出した

しかし


ヴェロニカ「アーニャ!」

アーニャ「どーん」


突然アーニャの周辺に炎が巻き起こり、その炎を壁にぶつけた

凄まじい破壊音と共に壁が崩れる


アニェーゼが術式を発動するよりも早く、四人はそこから素早く逃走していった




ヴェロニカ「まったく、対象を殺しかけるなんて何を考えてるのよ!」

ローザ「すみません、つい…」

オルガ「サーシャが死んじゃったらどうするんですかー?アタシのサーシャが。」

ヴェロニカ「今はサーシャの無事を祈るしかないわね。作戦を練り直すわよ。すぐに部隊の人間を呼び集めなさい!」


作戦は失敗した

それはすなわち、殲滅白書とイギリス清教の小規模な戦争の勃発を意味している

194 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/16(月) 00:51:44.62 ID:ct3zcQY0

五和はサーシャの前に膝をついている

彼女の目は涙で赤く腫れていた


五和「サーシャちゃん、どうしてこんな…」

サーシャ「いつわ……これでいいのです…」

五和「良くありませんよ!こんなことって…」


涙が止まらなかった

自分の犯してしまった誤ちも、またしても大切な人を守れなかった自分の弱さも
全てが自分を責め立ててくる


サーシャ「泣かないでください……あなたは…何も悪くない…」


なぜそんな事が言える


なぜそんな笑顔でいられる


五和には理解できない


五和「サーシャちゃん……意味無いですよ、やっぱり……優しさなんて…誰も守れないじゃないですか!!!
あなたをこんな目に遭わせてしまうなら、優しさなんてなんの価値もありませんよ!!
こんな優しさなんて!!誰かを傷付けるだけじゃないですか!!!誰も幸せになんてなれないじゃないですか!!」


195 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/16(月) 00:59:09.51 ID:ct3zcQY0

泣きながら激昂し自分を責め立てる五和を、サーシャは優しく諭す


サーシャ「そんな事ありませんよ……」


サーシャは自分の血で濡れた手を伸ばし、五和の頬に触れた


サーシャ「あなたの優しさに、私は助けられました……もしも五和を殺していたら、
私は一生後悔していたでしょう……一生苦しみ続けていたでしょう……そんな地獄から…あなたは私を救ってくれた。
……あなたに出会う前の私なら、きっとあなたを殺していた……しかし、あなたが教えてくれた優しさが、
正しい答えを教えてくれたのです……ありがとう、五和……。」


サーシャの顔には苦しみも怒りも無い


ただただ穏やかで、優しかった


あの時、そう天使の様な頬笑みを見たあの時と同じように



五和「どうして……どうしてあなたはそんな顔ができるのですか…?なぜあなたを殺そうとした私にありがとうなんて……」

サーシャ「決まってるじゃないですか…」


サーシャは再びにっこりと笑う




サーシャ「第一の解答ですが、私はこんなにも幸せじゃないですか……」




五和はたまらずサーシャを抱きしめた
サーシャは声を上げて泣く五和を宥めるように、よしよしとその頭を優しく撫でてあげる
196 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/16(月) 01:13:39.04 ID:ct3zcQY0
こんな最期も悪くないと思えた
こんなに穏やかな気持ちで死んでゆけるなら、それはきっと幸せな事なのだろう




ありがとう、五和……

幸せというものをあなたは教えてくれた……




顔から血の気が無くなっていく
だんだんと痛みも感じなくなってきた


疲れたので、ちょっと眠ろう


もしかしたら、もう目を覚ます事は無いかもしれないけど


それでもこんなに幸せな気分で最期を迎えられたのなら


きっと永遠に幸せな夢を見続ける事ができるかもしれない


できる事なら、今度は幸せな夢の中で五和に会いたい


もしもまた会えたなら、また私と友達になってくれるだろうか?


大丈夫、彼女は優しいから


またあの時計塔に、広場に、一緒に……











197 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/16(月) 01:15:12.35 ID:GQguqPAo
え、ちょ、おい、この展開はまさか……
198 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/16(月) 01:18:23.81 ID:ct3zcQY0
ここで区切ります

なぜ改行規制に引っ掛かるのかと思ったら、最後の無駄な改行に気付いてませんでした
なんじゃこの無駄なスペースは?とか思ったかもしれませんが、どうか大目に見て下さい
199 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/16(月) 01:24:32.14 ID:GQguqPAo
乙。
つい投下に割り込んで書き込んでしまったぜと思ったら、これで区切るのか。
続きが気になるじゃないか。
200 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/16(月) 08:40:59.38 ID:hjKkDNIo

鬱展開やめろ
201 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/16(月) 12:45:46.24 ID:H94DKCQo
おつ

>>200
おまえに何の権限があるの?
202 :1 :2010/08/16(月) 23:52:09.00 ID:ct3zcQY0
戦闘シーンとか書くの苦手だから肩が凝る…

というわけで、鬱な展開を払拭するために小ネタを投稿します

ちなみに原作を読んでいない人はネタバレに注意してください
21巻のネタバレはありません

203 :1 [sage]:2010/08/16(月) 23:55:44.86 ID:ct3zcQY0

【一本千円で】


サーシャ「良いお湯でした。」

アニェーゼ「うおっ、金髪貞子!」

サーシャ「第一の解答ですが、失礼ですね。」

アニェーゼ「サーシャは前髪長すぎませんか?湯上りだとドザエモンみたいですよ?」

サーシャ「あなたも普段はオールバックですが、元に戻すと似たようなものじゃないですか」

アニェーゼ「そうですか?じゃあ二人でコンビ組みませんか?その名もザ・ドザエモンズです」

サーシャ「第二の解答ですが、何だか呆れを通り越して懐かしさを感じますね。」

アニェーゼ「サーシャ、私がドライヤーで乾かしてあげましょう」

サーシャ「第三の解答ですが、お願いします。」
204 :1 [sage]:2010/08/16(月) 23:58:00.45 ID:ct3zcQY0

アニェーゼ「……」

サーシャ「……」

サーシャ「第四の解答ですが、随分と静かなドライヤーですね。」

アニェーゼ「学園都市の製品ですよ。うるさい音は一切ありません。しかも最新のAIが搭載されているので会話することもできます。」

サーシャ「第五の解答ですが、マジですか!?」

アニェーゼ「マジですよ。なんなら話しかけてみてください。」

サーシャ「第六の解答ですが、では、こ、こんにちは…」

「こんにちは(裏声)!ぼくどらいやーです(裏声)」

サーシャ「……」

アニェーゼ「サーシャちゃん!ぼくとお話しようよ(裏声)」

サーシャ「……」

アニェーゼ「くきき、サーシャちゃんの今日のパンツは何色かなァ?(裏声)」

サーシャ「……」

アニェーゼ「その幻想をぶち[ピーーー](裏声)」

サーシャ「黙れ」

アニェーゼ「あれ?怒っちゃいましたか?やだなあ、ちょっとしたジョークじゃないですか。ブリティッシュジョークですよぉ」

サーシャ「第一の解答ですが、あんたイタリアンだろ。」

アニェーゼ「イタリアもイギリスも変らないじゃねえですか。」

サーシャ「最初のイと四文字なとこだけは変りませんね。英字だとその条件すら当てはまりませんが。」
205 :1 [sage]:2010/08/17(火) 00:00:01.91 ID:CgYA6aQ0

アニェーゼ「ところでサーシャの髪は綺麗ですね。」

サーシャ「そうですか?」

アニェーゼ「しかも良い匂いですね。シャンプー変えました?」

サーシャ「第二の解答ですが、昨日から新しいのを使ってます。」

アニェーゼ「ああ、良いにおいですね(クンクン)。いいねいいね最ッ高だねェ!たまンねェなァおい(クンカクンカ)」

サーシャ「あなたはワシリーサと同じ生き物ですか?」

アニェーゼ「冗談ですよ、ブリティッシュジョークですよぉ」

サーシャ「だからあんたはイタリアンだろ。あとイギリス人に謝れ。」
206 :1 [sage]:2010/08/17(火) 00:02:27.64 ID:CgYA6aQ0

アニェーゼ「ところで、サーシャの前髪は長いですね」

サーシャ「そうですね」

アニェーゼ「ちなみに後ろもちょっと長くないですか?」

サーシャ「確かに長めだとは思います。」

アニェーゼ「知ってますか?髪って売れるらしいですよ?」

サーシャ「……」

アニェーゼ「相場はだいたい50ユーロから250ユーロだとか」

サーシャ「……」

アニェーゼ「サーシャは前髪が少し長すぎませんか?」

サーシャ「第一の解答ですが、売りませんよ。」
207 :1 [sage]:2010/08/17(火) 00:05:25.30 ID:CgYA6aQ0

アニェーゼ「いやあ最近暑いですねえ、さっぱりしたいと思いませんか?」

サーシャ「売りませんよ。」

アニェーゼ「ショートヘアーのサーシャも可愛いと思いますよ。」

サーシャ「売りませんよ。」

アニェーゼ「お礼は体で払いますから。ちなみに初めてなので優しくしてください/////」

サーシャ「あなたはそうまでして人の髪で金を稼ぎたいのですか?」

アニェーゼ「確かに、良く考えたら自分の体を売った方が手っ取り早いですね。」

サーシャ「第一の質問ですが、あなたは本当に修道女ですよね?」

アニェーゼ「ちなみに布教中の神の子は、沢山の売春婦を抱えていたとか。」

サーシャ「第二の解答ですが、売春という行為を戒め、正しい道を教えるためにです。
その言い方ではまるでイエスキリストが女たらしみたいじゃないですか。」

アニェーゼ「別の言い方をすればやりチn」

サーシャ「シャーラーップ!!」

アニェーゼ「冗談ですよ、イタリアンジョークですよぉ」

サーシャ「だからあんたはブリティッシュ……あれ?」

アニェーゼ「やーいひっかかったー♪」

サーシャ「ぐぬぬ…」

アニェーゼ「ちなみに途中までは割と本気でした。」

サーシャ「えっ」

アニェーゼ「えっ」

サーシャ「第一の質問ですが、どのあたりまでは本気だったんですか?」

アニェーゼ「さ、乾きましたよお客さん。」

サーシャ「問いを繰り返しますが、一体どのあたりまで(ry」
208 :1 [sage]:2010/08/17(火) 00:09:10.70 ID:CgYA6aQ0

【ちよこれいと】


アンジェレネ「あっ、シスターアニェーゼ!チョコレートですか!?」

アニェーゼ「さっきオルソラからもらったんです」

アンジェレネ「私にも分けてください!」

アニェーゼ「良いですよ。三個で良いですかい?三個ですか?甘いの三個欲しいのですかぁ?」

アンジェレネ「四個!四個です!」

アニェーゼ「四個欲しいんですかぁ?このいやしんぼめ!」

アンジェレネ「早く早く早く!」

アニェーゼ「じゃあ四個一気に投げますよお!」


シュッ!

パクッ!パクッ!パクッ!パクッ!


アニェーゼ「おお、本当に全部食べやがったですよ。」

アンジェレネ「う〜ん、とろけます〜♪」
209 :1 [sage]:2010/08/17(火) 00:11:25.62 ID:CgYA6aQ0

ルチア「凄いのやら情けないのやら。もっと清貧というものを学ぶべきですよアンジェレネ。」

サーシャ「第一の解答ですが、私もチョコが欲しいです。」

ルチア「……」


ごそごそ


ルチア「実は、私も先程オルソラからチョコレートを貰ったのですが、食べますか?」

サーシャ「(0゚・∀・)」

ルチア「チョコ一つでなんて笑顔を見せてるんですかあなたは。はい、どうぞ」

サーシャ「あーん」

ルチア「あの…食べさせるのですか?」

サーシャ「あーん」

ルチア「……////」

サーシャ「ぱくっ♪」

ルチア(唇がちょっと当たりました。柔らかいですね。)


ぺろっ(溶けたチョコレートがついた自分の指を軽く舐めるルチア)


ルチア(良く考えたらこれって間接キスですか?/////)


後日、本当にキスすることになるとは夢にも思っていないだろう
210 :1 [sage]:2010/08/17(火) 00:14:10.03 ID:CgYA6aQ0

アニェーゼ「ひゅーひゅー♪お熱いですねールチア♪チョコレートより甘いですねー♪」

ルチア「随分と古いひやかしですね、お尻叩かれたいですか?」

アンジェレネ「ルチア、私にもください。」

ルチア「お尻叩きをですか?」

アンジェレネ「違います!チョコですよ!」

ルチア「あなたはさっき四つも食べたでしょ。」

アニェーゼ「サーシャに口移ししてもらったらどうですか?」

アンジェレネ「ええっ/////」

サーシャ「食べますか?」

アンジェレネ「いりません!/////」


後日、本当に口移しすることになるとは夢にも思っていないだろう
211 :1 [sage]:2010/08/17(火) 00:16:08.01 ID:CgYA6aQ0

【上やん公会議】

アニェーゼ「ああ、上条当麻に会いたいです。」

サーシャ「第一の質問ですが、上条当麻とはどのような人物なのですか?」

アニェーゼ「私の夫です。」

サーシャ「既婚者だったのですか!?」

神裂「嘘はよくありませんよ」

アニェーゼ「そうですねえ…顔は滅茶苦茶かっこいいというわけではないですね。」

ルチア「あと、セリフがクサイですね。よくあんなセリフを素で言えるものです。」

アンジェレネ「しかも説教好きです。」

サーシャ「第一の解答ですが、聞いた限りではあまり好印象ではないですね。ちなみにどんなセリフを言うのですか?」


212 :1 [sage]:2010/08/17(火) 00:21:09.86 ID:CgYA6aQ0

ルチア「私の時は、”断言しろよ、ルチア。その手伝いが出来るなら、俺はこんなクソつまらねえ幻想なんていくらでもぶち壊してやる。
だから断言しろよ!コイツが今ここにいて良かったなって思える一言を!歯を食いしばるだけの価値はあったんだって信じられる一言を!”
って感じですかね。不覚にもドキッとしてしまった自分が情けないです。」

アニェーゼ「私は”ありがとうな、お前がオルソラを守ってくれなかったら、きっと大変な事になってた”ですね。
てっきり怒られるものと思ってたんですが、ヒーローみたいに助けに来てくれた上に、こんな風に優しく言われたら惚れるしかねえですよ。」

アンジェレネ「私は…ないです。」

神裂「私も色々なセリフを聞きましたね。有名所では”テメェらずっと待ってたんだろ”
ってやつです。彼には本当に借りが沢山できてしまいましたよ。」

オルソラ「堕天使エロメイドを着て御奉仕したくらいでございますものね。」

神裂「シスターオルソラ!なぜその事を!?」

オルソラ「ちなみに私は252人のシスターに囚われて集団暴行を受けていたところを助けてもらったのでございますよ。」

アニェーゼ・ルチア・アンジェレネ「うっ…(ズキズキ)」
213 :1 [sage]:2010/08/17(火) 00:23:13.34 ID:CgYA6aQ0
オルソラ「たった一人で拳一つで勇ましく乗り込んできたところは、本当に素敵だったのでございますよ。」

アニェーゼ「その事については反省してますよ……悪かったです。」

ルチア「本当に申し訳ありませんでした。でも、殴っていたのは主にアニェーゼですよ。」

アンジェレネ「ごめんなさい。でも私は一回もそんな暴力なんて振るってませんよ?
アニェーゼが楽しそうに蹴ったりしてたのを止めなかったのはイケない事だと反省してますけど。」

アニェーゼ「うわー皆さん見て下さいこの薄情な部下を。」

オルソラ「まあまあ、もう済んだことではございませんか。
私はこれっぽっちも気にしてはいないのでございます。うふふ」

ルチア「笑顔が怖い…」
214 :1 [sage]:2010/08/17(火) 00:25:06.99 ID:CgYA6aQ0

アニェーゼ「そ、そうだ!上条当麻と言えば、色々とエッチな出来事もありましたよね!」

神裂「話題を逸らしましたねアニェーゼ。確かに、私は一度裸を見られた事があります。」

オルソラ「それに、堕天使エロメイドもそうでございますね。」

神裂「その話はもうやめてください」

オルソラ「私も裸を見られかけた事があるのでございますよ。」

アンジェレネ「私とルチアは裸にひん剥かれました。ただ、その時は幸い上条当麻の意識は無かったんですけど。」

ルチア「私なんてアンジェレネにスカートめくりをされて、上条当麻を含む多くの男性の前で下着を晒すという痴態を……
ああ、思い出したらムカムカしてきた。アンジェレネ!」

アンジェレネ「ひいっ!あ、あれは仕方なかったんですよぉ…」

アニェーゼ「なんですかそんくらい。私なんて上条当麻に直接裸にひん剥かれたんですよ?
それだけじゃありません。M字開脚で上条当麻の眼前でパンツを披露した事もありますし、
それに生まれたままの姿を見られた事もあるんです!なんですかこの待遇は!
お色気担当は私じゃなくてルチアがやるべきでしょう!」

ルチア「なんで私なんですか!」
215 :1 [sage]:2010/08/17(火) 00:27:29.25 ID:CgYA6aQ0

アニェーゼ「清楚なキャラを気取ってるくせに、なんですかそのイヤらしい太股の露出は!誘ってンですかァ?」

ルチア「イヤらしいとか言うな!それに、太股なら神裂さんの方がイヤらしいじゃないですか!」

神裂「わ、私は好きで露出してるわけではありません!ちゃんと左右非対称を意識した魔術的な意義があるんです!」

サーシャ「第一の質問ですが、つまりイギリス清教のシスターは淫乱という事ですか?」

アニェ、ルチ、堕天使「違います!!!」

アニェーゼ「ていうか、サーシャの拘束服が一番淫乱じゃないですか!!」

サーシャ「第一の解答ですが、確かにその通りです。」

神裂「否定しないのですね。」

ルチア「大人げなかったですね。私達…」

アンジェレネ「何だかサーシャが大きく見えます」

サーシャ「第二の解答ですが、というよりも拘束衣の話を蒸し返してほしくないだけです(ガクブル)」

神裂「ああ……」

アニェーゼ「そうだ、拘束衣といえb」

サーシャ「鬼ですかあなたは!!」

オルソラ「あらあら」
216 :1 [sage]:2010/08/17(火) 00:29:58.86 ID:CgYA6aQ0
サーシャ「ところで第二の質問ですが、結局のところ上条当麻とはどの様な人間なのでしょうか?」

アニェーゼ「スケベ」

ルチア「素でクサイセリフを言う」

アンジェレネ「えーっとえーっと」

神裂「恩人です」

オルソラ「勇敢なヒーローでございます」

神裂「それと、忘れてはいけませんが、とてつもなく不幸な人間ですね。」

サーシャ「第三の解答ですが、まとめると英雄色を好むという事ですか?」

ルチア「色を好むという感じでもないのですが」

神裂「結局のところ、上条当麻とは一体何者なのでしょうかね?」





その頃遠く離れた東の島国では


上条「そげぶッ!風邪かぁ?ツイてねえなあ」

一方通行「テメェ…唾が飛ンだぞこの野郎…」

上条「げえっ!一方通行!つーか唾くらい反射しろよ!」

一方通行「スイッチ入ってねえンだよ!とりあえず[ピーーー]やオラァ!」

上条「だあーっ、不幸だあー!!」

一方通行「逃げてンじゃねェぞ三下ァ!愉快に素敵にぶち殺してやるぞコラァ!!」
217 :1 :2010/08/17(火) 00:31:50.67 ID:CgYA6aQ0
何にも考えないで書いてみるとこんな感じになります

というわけで小ネタ終わりです
本編の方はまた後日
218 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/17(火) 08:47:09.38 ID:FZ7lu8Eo


こういう日常も好きだわw
219 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/17(火) 20:48:36.97 ID:6HEe21I0
ナイス!
220 :1 :2010/08/19(木) 06:39:08.73 ID:uSIr8tY0
必要悪の教会vs殲滅白書前半戦を投下します

かなりの原作設定崩壊や突っ込み所があるかとは思いますが、あくまでもここでの設定
と言う事で大目に見てやってください

私なりの解釈が多分に含まれていますが御了承を
221 :1 [sage]:2010/08/19(木) 06:42:01.72 ID:uSIr8tY0



そこはどこまでも深い青色の世界だった
青と言うよりは、ネイビーやコバルトと言った方が正確かもしれない

空は星が一つも無く、月だけが唯一その暗く青い空を照らしている

だが不思議な事に、その月は赤く輝いている


下はどこまでも水が広がっている

前も後ろも右も左も、どこを見渡しても水平線ばかり


ここは海なのか?


しかし、水は自分のふくらはぎの辺りまでしか浸かっていない
海にしては浅すぎる
浅いとは思うのだが、底は全く見えない



それにしても、随分と殺風景だ


静かというよりは、ほとんど無音に近い

ここは天国なのか地獄なのか?


そもそも自分は誰なのか?
名前すらも思い出せない


存在してるのかしていないのかも曖昧だ


自分は何者で、この世界で何をすれば良いのか……
222 :1 [sage]:2010/08/19(木) 06:44:22.55 ID:uSIr8tY0



そんな事を考えていると、突然目の前に何者かが現れた

修道服を着た金髪の少女

長い前髪から僅かに見える、こちらを覗く金色の瞳

それは本来の月の光にも似ている



自分はこの少女を良く知っている気がする

しかしどこか、ほんの些細な部分が違う気がする


?「nips天ergn世sigd」


何を言ってるのか理解できない


?「sbrg未snmt死phish失exdrspi」


なるほどわからん


?「nth戻ggbvrfl」


だからなんて言ってるのか分からないってば
223 :1 [sage]:2010/08/19(木) 06:47:04.89 ID:uSIr8tY0

サーシャ「日本語しゃべれよ日本語ォォオオオ!!!(がばっ!)まあ私はロシア人ですけど」

五和「サーシャ…ちゃん……?」

サーシャ「五和…?」

五和「サーシャちゃああああん!!!」

サーシャ「むぎゅっ!なぜか目が覚めたらいつものホールド」

五和「ぐすっ、本当に…よかった…良かったですっ!!!」

サーシャ「第一の解答ですが、どうやらここが本当の死後の世界ですか。望み通り、また会えましたね。
いや、会えたという事は、もしや五和は……」

五和「グスッ、何をいってるんですか?サーシャちゃんは助かったんですよ?」

サーシャ「助かった?……第二の解答ですが、たしか腹部に…」


確認してみたら、確かに傷はまだ残っていた


五和「どうやら、サーシャちゃんは回復術式と相性が良かったみたいです。」

サーシャ「つまり、運が良かったという事ですか。」


それとも、先程見た夢のおかげか?
水を司る、青を象徴とする力
赤い月
サーシャの目の前に現れた謎の人物…


サーシャ「第三の解答ですが五和、顔が酷い事になってますよ。まあそれでも可愛いと思いますが。」

五和「ばかぁ!誰のせいだと思ってるんですか!(ぎゅっ)」

サーシャ「五和…そんなに強く抱きしめられると傷口が……」


どうやら五和の話によると、サーシャはあの後寮に運ばれて回復術式による治療を受けたらしい
しかも驚くべき事に、短時間で息を吹き返し、傷口も殆ど塞がったとか
誰もがまさに神の奇跡だと喜んだという
224 :1 [sage]:2010/08/19(木) 06:49:44.98 ID:uSIr8tY0

その頃、寮の外では


アンジェレネ「みなさーん!シスターサーシャが目を覚ましましたよー!」

アニェーゼ「本当ですか!」

ルチア「良かった…本当に…」


アンジェレネもアニェーゼもルチアもみんな目が赤くなっている
それはけして寝不足で充血してるわけではない


アニェーゼ「ぶっちゃけあの傷を見た時はもうダメかと思いましたけど、奇跡ってのはやっぱりあるんですね。」

ルチア「神様が敬虔な教徒であるサーシャに加護を与えて下さったのです。
ああ、今日ほど十字教を信仰して良かったと思う日はありません」




?「ほんと良かったわ。死んだら私の首も一緒に飛ぶところだったのよ。」




全員「!?」


その声を聞いた瞬間に、一気にその場が和やかなムードから張り詰めた空気に変った


アニェーゼ「やはり来ましたか。」


アニェーゼは蓮の杖を構える
225 :1 [sage]:2010/08/19(木) 06:53:33.07 ID:uSIr8tY0

ヴェロニカ「早速ですが、サーシャ・クロイツェフの引き渡しを要求します。彼女は国際指名手配犯。
まさか神を信ずるあなた方が、罪人を匿ったりはしませんよね?」

アニェーゼ「あんたら如きが神を語るなんて、十字教文化も舐められたもんですね。
罪人は見捨てるものじゃない、教えを諭し、正しい道を歩ませるものなんじゃねえですか?」

ヴェロニカ「なら、その役割は我々に引き受けさせてもらいましょうか」

アニェーゼ「いいえ、あなた方も我々が正しい道へと導かねばならない対象ですよ?
安心してください。あなた方みたいなクソッタレの猿頭にも理解できる様に分かりやすく教えてあげますから。
少々痛い思いをするかもしれませんけどね。」

ヴェロニカ「どうあっても我々殲滅白書と対峙すると?」

アニェーゼ「いちいち言わないと分からねえんですか?」


その言葉を皮切りに、前方の闇から隊列を成した足音が響いてくる

現れたのは、ヴェロニカを中心とした殲滅白書のシスター達だ
先頭のヴェロニカは白い修道服を着ており、赤い修道服で統一された他のシスター達の中で浮いていた

ヴェロニカの修道服はまっさらな雪の様に白く、その上から体を包む様に羽織っている外套も白い。そして、その外套を胸の当たりで留めている金色の装飾物がある


双頭の鷲だ

かつては神聖ローマ帝国を統べるハプスブルク家の紋章であり、イヴァン三世が第三のローマを称し、
ロシアの主権を主張すると共にロシアで採用された守護聖獣
現在もロシアの象徴として国旗に描かれている
226 :1 [sage]:2010/08/19(木) 06:57:39.99 ID:uSIr8tY0

ヴェロニカ「宣戦布告と見なしても良いですね?」

アニェーゼ「さっさとかかってきやがれってんですよォ!!!」


必要悪の教会と殲滅白書の戦争がここに受理された



ヴェロニカ「オルガ!ローザ!それぞれ部隊を左右に展開!アーニャは中心を固めなさい!術式が完成するまで持ちこたえるのよ!」

アニェーゼ「ルチア!ローザの方をやっちゃってください!残りは部隊を二つに分けて、
一方はあの頭悪そうなデカ女を、もう片方は私と一緒にあの白い猿をぶっ潰しますよ!」


アニェーゼ部隊のメンバーは総勢252人
それに対してヴェロニカ部隊のメンバーはその四分の一にも満たない
数ではアニェーゼ部隊が圧倒的に多い


オルガ「へっへっへっ、やっと自由にうごけますねー♪」


彼女は術式強化された鉄パイプの様な長い棒を振り回し、アニェーゼ部隊のシスター達を薙ぎ払っていく

もしも修道服に防御術式が無ければ大変な事になっていただろう


ローザ「русалка、その名は美しき水の精霊、惑わし人を溺れさせる水の精霊、水は恵みであり脅威となる」


ローザの詠唱と同時に、彼女の周囲に水の塊が集まる。

その水の塊が、まるで散弾銃の様にシスター達に襲いかかった


ルチア「罪の無いものに罰は下らぬ、罪のある者にこそ罰は下る!」


ルチアの抱えていた車輪が爆発し、こちらも散弾銃の様に殲滅白書に襲いかかる

木片と水の塊は撃ち合い、相殺し合う
227 :1 [sage]:2010/08/19(木) 07:00:11.07 ID:uSIr8tY0

ローゼ「やりますね。聖カテリナの車輪伝説ですか?」

ルチア「あなたのは水の精霊ルサールカですね。水難事故の原因とされ恐れられていたとか。
水属性の精霊の加護を基に、水の脅威の面を術式として構築したと言ったところでしょうか?」

ローザ「なるほど、ロシアの民間伝承に関する知識があるみたいですね。なら、これも分かりますか?」


ローザの周りに集まっていた水の塊が、突然光り出し、バチバチとした音が鳴り響く

同時に水の塊は一匹の蛇の形になり、ルチアに襲いかかる


ルチア「これはッ!」


電気を帯びた水の蛇がルチアに絡みつき、縛り上げる


ローザ「ツモクという稲光を起こす蛇を模したものです。」


ギリギリとルチアの体を縛り付ける水の蛇
同時、体中から放電する

ルチア「ぐっ…あああッ!」

ローザ「良い眺めですね。防護術式のかけられた修道服が無ければ黒こげになっていたでしょうに。」

ルチア「こんな……ものッ!」


ルチアは縛られながらも右手を動かし、周囲に散らばった車輪の木片を自分の体を締め付ける水の蛇に向けて集める

大量の木片の襲撃を食らった水の蛇はバラバラの水の塊となり飛散した
228 :1 [sage]:2010/08/19(木) 07:03:01.98 ID:uSIr8tY0

ルチア「大した事ありませんね!!」

ローザ「なッ!」


ルチアは鋭い目つきでローザを睨む

ルチアの周囲には、木片の集合体が一定の軌道を描きながらグルグルと渦巻いている。
まるで、木でできた龍が彼女の周りを飛んでいる様だ。


ルチアが右手を振ると、木片はまるで生き物の様にローザに襲いかかる


ローザ「ルサールカ!」


自分の周りに水の塊を集め、木片の襲撃を防ごうとする。だが


ローザ「…ッ…防ぎきれないっ!」


幾つかの木片は防ぎきれず、ローザの体に刺さる


ローザ「うっ…!なんてこと……」

ルチア「まだまだこの程度では終わりませんよ。」





シスターモブ「シスタールチア、いつの間にそんな技を使えるようになったのですか?」

ルチア「二次創作では全ての設定はそげぶされるのです!」
229 :1 [sage]:2010/08/19(木) 07:08:59.11 ID:uSIr8tY0

アニェーゼvsアーニャ



アニェーゼ「私の推測ですが、たぶんあなたが部隊で一番強いんじゃないですか?」

アーニャ「がおー」(ゴオッ!)


ふざけた言葉を吐いている様に思えるが、同時に灼熱の炎が彼女の口から放たれるからシャレにならない

アニェーゼはそれを横に飛んで回避する。

アーニャの舌には魔法陣が刻まれている。
それだけではない。背中にも二カ所に対比する様な形で魔法陣が刻まれており、そこから炎が噴き出している。
まるで、一対の炎の翼の様だ。

彼女の魔術は、スラヴ神話のスヴァローグという炎の蛇が元になっている。
スヴァローグはスラヴ神話の太陽神であり、炎の翼を持つドラゴンの姿で描かれているのだが、
東欧に伝わるにつれ、悪竜とされたり守護竜とされたりと色々と形が変って来た。

ちなみに聖ダミアヌス、聖ミカエルなどはこのスヴァローグと同一視されており、復興異教主義においては最高神に列せられている。

まあ何が言いたいかと言うと、非常に格式の高い神様であり、そんな神様を模した魔術を使えるアーニャは凄いという事だ


舌に一つ、背中に二つ、そして右手に一つの合計四つの魔法陣が体に刻まれているアーニャ

魔道書の原典の恐ろしさを知る者なら分かるだろうが、体に魔術のノウハウである魔法陣を刻む事は、
自分自身が原典と同じレベルの負荷を背負う事と同じであり、非常に危険な事である。
それを平気な顔して耐えているところがアーニャの天才と呼ばれる由縁でもあるのだ。
インデックス級の彼女の食欲は、もしかしたらその反動なのかもしれない
230 :1 [sage]:2010/08/19(木) 07:12:04.94 ID:uSIr8tY0

アーニャ「もえろー!もっと熱くなれよ!!」


背中の炎の翼が無茶苦茶に暴れまくる


アニェーゼ「あちち…これじゃ近づけませんね。こんな化け物を中心に置いて白猿を守らせているという事は、
やはりあの白猿が部隊の要の様ですね。」

アーニャ「そ、そ、そ、それはちがうよ?」

アニェーゼ「無茶苦茶動揺してんじゃねえですか」

アーニャ「いずれにせよあなたはヴェロニカには近づけない」

アニェーゼ「随分と舐められたもんですね。」


アニェーゼは再び蓮の杖を構え、詠唱する


アニェーゼ「万物照応。五大の元素の元の第五。平和と秩序の象徴『司教杖』を展開。
偶像の一。神の子と十字架の法則に従い、異なる物と異なる者を接続せよ。」


詠唱すると同時に、杖に衝撃を与える


アーニャ「あうっ!」


見えない力がアーニャを吹き飛ばした


アニェーゼ「万物全ての属性を持つエーテルを操る私の杖と、強大な炎を操るあなたの術式、はたしてどっちが強いんでしょうねえ。」

アーニャ「ぐぬぬ。」

アニェーゼ「さて、さっさとそこをどいてもらいましょうか?」
231 :1 [sage]:2010/08/19(木) 07:14:05.13 ID:uSIr8tY0

オルガ「アッハッハッハ!散れ―飛んでけー!」

シスターA「なんなの?あの孫悟空みたいなのは!」

シスターB「だめ!束になっても抑えられない!」

オルガ「はいそこー!お喋りしてる余裕はないよー!」

シスターB「きゃっ!」


一人のシスターの頭上に鉄の棒を振り下ろすオルガ



ガキッ!


シスターB「ひっ!……あれ?」

サーシャ「随分と好き勝手しくれましたね。」


いつのまにか、オルガの一撃を片手に握られたバールで受け止めるサーシャがそこに居た
232 :1 [sage]:2010/08/19(木) 07:16:39.56 ID:uSIr8tY0

サーシャ「第一の解答ですが、もう大丈夫ですよ」

シスターB「サーシャちゃん/////」

オルガ「サーシャちゃん、もう動いて大丈夫なのー?」

サーシャ「ええ、第二の解答ですが、おかげさまでね!!」


サーシャはもう片方の手に金槌を握り、横からオルガの体を殴りつけて吹っ飛ばした


オルガ「ゴッハァアッ!!」


そして、オルガが吹き飛んでいく先には、五和が槍を構えている


五和「これはさっきのお返しですっ!!」


まるでバッティングの要領でオルガに槍を打ち付ける


オルガ「なんですかそりゃあー!!へぶっ!!」


さらにそのまま反対方向へ吹っ飛んでいくオルガ

それを見て動揺する殲滅白書のシスター達


戦局はイギリス清教側に有利な展開になっていた
233 :1 [sage]:2010/08/19(木) 07:19:42.41 ID:uSIr8tY0

ヴェロニカ「むむむ、不味いわね。あと少しで完成するんだけど。」


?「何だ貴様ら!」

?「きゃあッ!」


後ろが何やら騒がしい


建宮「やれやれ、後方の守りは薄いみたいなのよ」

ヴェロニカ「おや、天草式ですか?」


どうやら先程の声は、ヴェロニカの後ろを守らせていたシスター達の悲鳴だった様だ


建宮「さて、指揮官であるお前さんを倒せば、全て終わるってわけだが。」

ヴェロニカ「あ、そう。」

建宮「ここで降参するってんなら命まではとらんのよ。」

ヴェロニカ「そう言えば、私の部下が五和という少女を痛めつけてしまったわね。
我慢しないで一発くらい殴ったらどう?降参する気なんてどうせ無いし。」

建宮「そうかい。じゃあ少し痛い目にあってもらうのよ!」


建宮はフランベルジュを構え、ヴェロニカに斬りかかった
しかし[ピーーー]つもりは無く、あくまでも剣の平らな部分を打ち付ける


バギン!


建宮「なにっ!!」

なぜかヴェロニカの修道服に剣を打ち付けると同時に、剣の方が真っ二つに折れてしまった
234 :1 [sage]:2010/08/19(木) 07:23:14.58 ID:uSIr8tY0

ヴェロニカ「守護聖獣の加護を受けた法衣。名前はそのまんま”双頭の鷲”よ。
今回の任務のために上が用意してくれたの。羨ましい?」

ヴェロニカ「イギリス清教では10万3000冊の魔道図書館を守るために、”歩く協会”っていう
最高の防御力を誇る修道服を着せてるみたいだけど、この双頭の鷲はそれに勝るとも劣らない防御力があるのよ。」

建宮「クソッタレ!」

ヴェロニカ「それと、あなた達が後方から攻めてくる事なんて最初から分かってたわ。
守りの薄いとこを攻めるのは戦いの基本でしょ?だけど、あえてそれを罠にするのも戦術の基本なのよ。」

牛深「教皇代理!早く逃げて下さい!その女の周辺に、防衛術式が展開されてます」

ヴェロニカ「遅いわよ。双頭の鷲は絶対的な権力と支配の象徴。楯つく者を全て駆逐する。」


突然ヴェロニカの周りに風が巻き起こり、強風となって建宮を襲う


建宮「ぐあっ!」


強風だけではない、それに加えてかまいたちの様なものも襲いかかる。まるで、巨大な鷲の鉤爪に裂かれた様だ。

ヴェロニカの前から吹き飛ばされた建宮は、体中に切り傷を負ってボロボロになっていた
235 :1 [sage]:2010/08/19(木) 07:26:45.84 ID:uSIr8tY0

ヴェロニカ「絶対的権力の象徴である双頭の鷲を着た私に攻撃することは、絶対的権力者に反抗する事と同じ。
あなたが私に攻撃すれば、それは権力者への反逆に対する罪となってあなた自身に返っていくのよ。
あなた達、いつまで寝てるの?術式が完成したわよ?」


その言葉を聞き、先程建宮達に倒されたはずのシスター達がむくりと起き上がる



ヴェロニカ「遥か昔、キエフを守護する英雄に希望の光を与えた三人の老賢者。
歩けない者には足を、目の見えぬ者には光を、耳の聞こえぬ者には歌を、そして、弱きものには全てを覆す力を」


ヴェロニカが詠唱を始めたその瞬間から、今まで押されていた殲滅白書のシスター達の目の色が変った





サーシャ「第一の解答ですが、遅かった…非常に不味いです…」
236 :1 [sage]:2010/08/19(木) 07:28:55.41 ID:uSIr8tY0

オルガ「あはっ!すごい!力が湧いてくるー!!」


オルガは鉄の棒をサーシャに打ち付けた

先程は片手で防げた筈の一撃

しかし、バールで受け止めたはずの一撃は、威力を殺せずにサーシャの体ごと吹き飛ばした。まるで交通安全に使われる人形の様だ。


五和「えっ?これは一体どういう事…」

オルガ「こういうことー♪」


速い、いつの間にか目の前に現れて、五和もサーシャ同様に薙ぎ払われた

おかしい、明らかにスピードもパワーも先程までとは格段に違う




ルチア「何ですか…これは……?」


ルチアの前には、うわばみと言えるくらの巨大な水の蛇が立ち塞がっている。
こちらも今までのローザでは考えられないくらいの力だ。


ローザ「どうやら、ムウロメツの薬が完成したようですね。今までのお返しです。」


巨大な水の蛇は、目にもとまらぬ速さでその巨大な尻尾でルチアを弾き飛ばした
237 :1 [sage]:2010/08/19(木) 07:31:04.34 ID:uSIr8tY0

アーニャ「……」

アニェーゼ「……」


アニェーゼの額に嫌な汗が浮かぶ


ヴェロニカ部隊最強の少女は、さらに手がつけられない状態になっている

巨大なニ対の炎の翼
手にはこれまた巨大な炎の剣

見た目だけでなく、その威力も格段に上がっている。
イメージで言うと、機動力を得たイノケンティウスだ。


アニェーゼは蓮の杖にナイフで傷を付け、目に見えないの力をぶつけようとするが、
アーニャは巨大な炎剣を一振りしてその力ごとアニェーゼを吹き飛ばした


アニェーゼ「ぐっ!…やばいですね…こんな時に幻想殺しが居てくれたら…」





サーシャ「本当は、こうなる前に終わらせたかったのですが……」

五和「サーシャちゃん、これは何なんですか?なぜみんな先程とは比べ物にならないくらいに強くなってるのですか!?」

サーシャ「第一の解答ですが、これがヴェロニカの魔術の真髄です。
自分が味方であると認識した者の身体能力と魔翌力を爆発的に高めるドーピングの様な魔術。
彼女はこれをムウロメツの薬と呼んでいます。」

五和「ムウロメツの薬……ってなんですか?」
238 :1 [sage]:2010/08/19(木) 07:34:16.73 ID:uSIr8tY0

サーシャ「イリヤ・ムウロメツという英雄伝を知っていますか?ロシアでは有名な民話です。
とある子宝に恵まれない老夫婦の間に一人の子供が生まれたのですが、その子供は生まれつき足が悪く、歩けなかったのです。
しかし三十歳になったある日、三人の老賢者が彼の前に現れて、彼に薬を与えたのです。すると、歩けなかったはずの彼は
超人的な力を手に入れ、その後キエフを守るために異民族と戦う英雄になったという話なのですが…」

五和「要するに、その伝承を元に組み上げた身体魔翌力強化の術式というわけですか。対策は何か無いのですか?」

サーシャ「第二の解答ですが、この術式はヴェロニカを中心に展開されています。
そしてヴェロニカの魔翌力が途切れると、自動的にムロウメツの薬による効果は消滅します。」

五和「つまり、ヴェロニカを倒せばどうにかなるのですね!」

サーシャ「第三の解答ですが、それが出来たら苦労しません。
まず、彼女の元に辿り着くためにはアーニャを倒さねばなりません。彼女も非常に強いです。
そして、ヴェロニカの着ている真っ白な修道服は、おそらく双頭の鷲というものでしょう。
あれは、歩く協会に匹敵するくらいに強力な防護服です。その上、攻撃してきた者を自動的に強力な魔術で排除する機能も付いています。」

五和「何ですかそのチート性能、もはやどうにもならないじゃないですか。」

サーシャ「第三の解答ですが五和、オルソラのもとに行って下さい。彼女なら、何か対策を打てるかもしれません」
239 :1 [sage]:2010/08/19(木) 07:35:58.02 ID:uSIr8tY0

五和「でも!」


五和の脳裏に、先程の死にかけたサーシャの姿が浮かぶ


サーシャ「第四の解答ですが、私は大丈夫です。もうあなたを悲しませたりはしません。」

五和「絶対……絶対ですよ!約束してください!」

サーシャ「約束します。父と子と精霊の御名において」


五和はサーシャの元を離れ、寮の内部へ向かう


オルガ「あはっ♪みーつけたー!」

五和「しまっ」


五和の姿を確認して襲いかかるオルガ
だが、攻撃が届く前にサーシャがオルガに横からとび蹴りを食らわせた


サーシャ「五和!早く!」

オルガ「ぜーんぜん効いてないよ?」


その言葉の通り、オルガには全くダメージは無かった
240 :1 [sage]:2010/08/19(木) 07:38:32.08 ID:uSIr8tY0

オルガ「ねえサーシャちゃん、ヴェロニカ部隊に来ない?そうしたら、ここでボコボコに痛めつけるのは勘弁してあげるよー?」

サーシャ「第一の解答ですが、あなた方の仲間になるくらいなら恥ずかしい服を着てワシリーサの下で働いたほうがマシです!」


(ガギッ!)


鉄の棒とバールがぶつかり合い、つばぜり合いになる

ガリガリと鉄と鉄が擦れ合い、削れる音がする


オルガ「じゃあアタシの物になりなよ。アタシの実家は金持ちだからさー、何でも好きなもの買って上げられるよー?」

サーシャ「口説くならもう少しマシな言葉を聞きたいものです。そんなんじゃ虫けら一匹落とせやしませんよ!」

オルガ「もう、つれないんだから。でもそんなところが可愛いよねぇッ!!!」


鉄の棒を薙ぎ払い、サーシャの体が簡単に弾かれる


サーシャ「くっ…五和…ッ!」
241 :1 [sage]:2010/08/19(木) 07:41:12.16 ID:uSIr8tY0

五和「オルソラさん!」

オルソラ「五和さん!御無事でございましたか!」


オルソラは非戦闘員のため、シェリーと共に寮内で殲滅白書に関する様々なデータを集めていた


シェリー「やれやれ、こんな時に神裂でも居りゃ良いんだが。」

五和「残念ながら、女教皇様は別の任務についています。」

シェリー「在らざるモノか。どうやらここ最近の在らざるモノの事件は、あの殲滅白書の奴等が原因ってことで間違い無さそうだな。」

五和「どういう事ですか?」

シェリー「分からないか?奴等が何らかの方法で在らざるモノをイギリス各地に流し込み、
実力のある魔術師達を各地に分散させてるって事だ。つまり、この戦争に神裂みたいな
聖人クラスの魔術師を介入させないために、わざと事件を各地に起こる様に仕組んだってことよ。」

五和「そんな事が可能なのですか?」

シェリー「殲滅白書は在らざるモノに関する知識も魔術もトップクラスの機関だ。在らざるモノを誘導させ、
罠を仕掛ける魔術を転用させればこんくらいの事は可能だろ。
まあ、証拠が見つかっちまえば国際問題に発展する事は間違いねえけどよ、
そんなヘマを犯さねえ辺りが奴等の実力を示してるのかしらね。」

五和「なるほど…」

シェリー「感心してる場合かよ。で、アンタは何しに来たんだ?逃げ帰ってきたわけじゃないわよね?」
242 :1 [sage]:2010/08/19(木) 07:44:07.21 ID:uSIr8tY0

五和「そうでした!オルソラさん、ムウロメツを御存じですか?」

オルソラ「ええ、ロシアの民話でございますね。」


五和はサーシャから聞いた話をオルソラに伝える


オルソラ「なるほど、ムウロメツの伝承を元にした術式でございますか…」

五和「何か手はありますか?」

オルソラ「ムウロメツは……確か、天軍にも勝てるという慢心の言葉を吐いた事により、
最後は後悔の祈りと共に石像になってのでございます………良い案がございますわ!サーシャさんをここに連れてきてください!」

五和「はい!わかr」

シェリー「私が行くよ。」

五和「シェリーさん!」

シェリー「アンタはここに残ってオルソラの手伝いをしろ。」


そう言うと、シェリーは白いチョークを握りしめ、戦場へ向かっていった


五和「シェリーさん…」

オルソラ「五和さん」

五和「はい?」

オルソラ「あなたに聞きたいことがございます。」

五和「はい!私の知っている事ならなんでも!」

オルソラ「では神の右席について、あなたの戦った経験を詳しく話してください。」
243 :1 [sage]:2010/08/19(木) 07:47:35.00 ID:uSIr8tY0

オルガ「どうしたのー?張り合いがないなー!」

サーシャ「うっ…」


そろそろ体力の限界が来ている

このままでは…


オルガ「そろそろ終わりにしようかな。楽しかったよー?サーシャちゃん♪」


オルガは気絶させる程度に計算された力でサーシャに渾身の一撃を食らわせようとする

もはやそれを防ぐだけの力はサーシャには無い


サーシャ「五和、すみません…守れそうにないです……」

シェリー「シケた面してんじゃないわよ!」

サーシャ「えっ」


突然巨大なゴーレムが現れ、オルガの体を殴り飛ばした


シェリー「やれやれ、なんだよそのザマは」

サーシャ「シェリー……ありg」

シェリー「良いからさっさと五和の元に行け!お前が必要らしい。」

サーシャ「第一の質問ですg」

シェリー「質問なんかしてねえでさっさと行けって言ってんのよ!」

サーシャ「はい!」



シェリー「さーて、そこの銀髪。ガキと楽しそうに遊んでくれたみたいね?」

オルガ「だから何ですかー?」

シェリー「ムカツクガキを痛ぶってくれて感謝するわ。でもガキはお疲れみたいだから、今度は私が相手をしてあげる。行くよエリス!」

エリス「グオオオオオオオオ!!!」
244 :1 [sage]:2010/08/19(木) 07:51:09.83 ID:uSIr8tY0

サーシャ「五和!」

五和「サーシャちゃん!オルソラさん、来ましたよ!」

オルソラ「ええ!サーシャさんも御無事でなによりでございます!」

サーシャ「はぁ…はぁ…別に無事というわけではないですが、それで、私に用とは…?解決の糸口が見つかったのですか?」

オルソラ「はい。早速ですが、イリヤ・ムウロメツは、味方の一人が天軍に勝てると慢心したのが衰退の原因なのでございますよね?」

サーシャ「第一の解答ですが、その通りです。」

オルソラ「では、ここイギリスで言う天軍とは?」

サーシャ「第二の解答ですが、ヘンリー8世の天使軍でしょう。現在の王国騎士団ですね。」

オルソラ「その通りでございます。そして、その天使軍を象徴する武器と言えば」

サーシャ「……まさか、※カーテナを?」


※王家の者しか使えない慈悲の剣で英国最大の霊装。術者は天使長としての力を宿すことで強化され、
その剣からは全次元切断術式の発動できる。つまりヤバい剣。
ちなみにヘンリー8世が天使長を名乗ったのはローマ教皇に対抗し、教皇こえる地位であるとアピールするため
詳しくは禁書原作17巻と18巻を


サーシャ「あれは王家の者にしか使えませんよ?」

オルソラ「ええ、ですからあなたに女王様になってもらうのでございます。」

サーシャ「……はい?」


この人はいきなり何を言い出すんだ
245 :1 [sage]:2010/08/19(木) 07:53:53.06 ID:uSIr8tY0

オルソラ「簡潔に言えば、今すぐここで即位式をやってもらいます」

サーシャ「あの…話が見えてこないのですが…」

オルソラ「もちろん本物の即位式ではありません。全部偽物で代用し、
あなたにはたった一度だけの仮初の女王様になってもらうのでございます。」

サーシャ「第一の解答ですが、それでカーテナの力など使えるのですか?」

オルソラ「おそらくたった一度しか使えないでしょう。全て偽物なのですから。」


つまり、即位ごっこと女王様ごっこでカーテナの力を借りるというわけだ


サーシャ「成功する可能性は?」

オルソラ「他に方法がございましたら、そちらを選択させていただきます。」

サーシャ「……」

オルソラ「では五和さん、先程指示した物を用意して下さい。」

五和「あ、はい!」
246 :1 [sage]:2010/08/19(木) 07:57:04.44 ID:uSIr8tY0
サーシャ「第二の解答ですが、あなたの案に賛同しましょう。ですが、なぜ私がクイーンを?」

オルソラ「はい。失礼ながら、サーシャさんの事を調べさせていただきました。
どうやら、あなたは神の力、後方の青を司る大天使ガブリエルをその身に宿した事があるのでございますよね?」

サーシャ「そこまで調べたのですか…?」

オルソラ「そして、その時にミーシャと名乗ったと?」

サーシャ「覚えは無いのですが、そう聞いています。」

オルソラ「やはりそうですか。本来、大天使が自分の名前を変えて名乗ることなどあり得ないのです。
なぜならその名は神の力と性質を示すのですから、勝手に名を変える事は神への冒涜になるのでございます。」

オルソラ「ですが、あなたの体に宿ったガブリエルは、ロシア語でミカエルの名前を示すミーシャと名乗った。
これは明らかにおかしいことでございます。」

サーシャ「確かに、ミカエルの火とガブリエルの水では、全く性質が異なります。」

オルソラ「なぜこの様な現象が起きたのかは分かりません。しかし、もしも私の推測が正しいのならば、
今この世界では四大元素の歪みが起きているのではないかと思います。」

サーシャ「例えそうだとしても、それと私に何の関係があるのですか?」

オルソラ「ガブリエルは青と水の象徴。しかし、この歪みにより赤と火による浸食を受けてしまったのです。
ミカエルの属性に浸食されつつある中で、あなたはガブリエルにとって宿主として最適だと判断されたのでしょう。」

サーシャ「それはつまり…」

オルソラ「あなたには、ミカエルに似た性質があるのではないでしょうか?」

サーシャ「……」
247 :1 [sage]:2010/08/19(木) 07:59:49.93 ID:uSIr8tY0

話がぶっ飛び過ぎて付いていけない


オルソラの仮説はこうだ

まず第一に、大天使のテレズマを丸ごと身に納める事は普通の人間にはできない。
例えるなら、安い電卓にパソコンの機能を全てぶち込むのと同じ事だ。
そして過去に莫大なテレズマを身に納めた特別な人間として、聖母マリアがいる。

第二に聖母崇拝と言うものがあるが、これによると聖母は神の子を身に宿した時点で原罪から免れたという。
つまり、大天使のテレズマを受け入れられるかどうかは、その宿主の原罪の濃さに影響があるという事だ。

第三に、原罪を薄め、神や大天使の力の一部を行使できる者達が居る。神の右席だ。
彼らは四人居て、それぞれミカエル、ウリエル、ガブリエル、ラファエルと同じ性質を持ちあわせている。



オルソラ「つまりサーシャさん。あなたは生まれながらにして原罪を免れる者であり、
ミカエルと同等の性質を持って生まれて来たのではないでしょうか?
そしてあなたの目が赤いのは、赤を象徴とするミカエルの性質の名残ではないかと思うのでございますよ。」
248 :1 [sage]:2010/08/19(木) 08:02:36.72 ID:uSIr8tY0

五和「しかし、大天使の性質を持つ者は、普通の人間の魔術は使えないはずですよ?」

オルソラ「はい。ですが、アックアとの戦いを思い出して下さい。彼は聖母の原罪を免れる性質を転じて、
普通の魔術が使えないというルールから免れる事ができたはずでございます。」

オルソラ「神の右席は、原罪を薄めるという事で力を得ています。
つまり、原罪から逃れられぬ者がそれに抵抗するという事になります。ですが、サーシャさんの場合、
初めから原罪の束縛を受けぬ者として生まれたのではないでしょうか?
だとしたら、性質がガブリエルの生母の慈悲ではなくても、ルールから逸脱する事は可能でございます。」

五和「逃れる者と縛られぬ者の違いですか……とすると、もしかしたら女教皇様よりも強いのでは?」

オルソラ「受け入れる器があるという事と、その器がミカエルに似ているというだけの話でございます。
力を行使できるだけの能力があるかどうかはまた別の話になるのでございましょう。」

サーシャ「第一の解答ですが、こんな原作ガン無視な設定を上げてますが、結局凄いのか凄くないのかは微妙なところですね。」

オルソラ「そんな事はございませんよ?」

サーシャ「?」
249 :1 [sage]:2010/08/19(木) 08:07:13.07 ID:uSIr8tY0
オルソラ「これも私の推測ですが、本質がミカエルとは言え過去にガブリエルを身に宿したあなたは、
今はガブリエルの性質の方が濃くなっているはずです。ガブリエルは最期の審判において終焉のラッパを吹き、
死者を復活させる天使でございます。つまり、神の理を無視した力を行使できる天使でもあるのでございますよ。」

サーシャ「もしかして第一の質問ですが、私が助かったのは、回復術式との相性が良かったというわけではないという事ですか?」

オルソラ「ええ、おそらくはガブリエルの加護によって死から逃れたという事でしょう。
おそらくガブリエルはまだ四大元素の歪みによる影響から解放されていないため、
運良く見つけたあなたという器を失うわけにはいかなかったのかもしれません。」

サーシャ「第二の解答ですが、なんだかさっきから話が飛び過ぎていて、まるでとんでもな物語でも聞かされている様な気分です。」


それもそうだろう。自分がミカエルと同等の性質だの、原罪を免れる者だの、
あまつさえ自分のコンプレックスだった赤い目はその影響だのと言う話だ
納得して全てを受け入れろと言うのも無茶である


オルソラ「全てが正しいというわけではありませんし、もしかしたら全部まちがっているのかもしれません。
ですが、私はあなたに可能性を見出しているのでございますよ。」
250 :1 [sage]:2010/08/19(木) 08:10:31.15 ID:uSIr8tY0

オルソラ「カーテナの力の性質は天使長であるミカエルと同義。つまり、
ミカエルと同じ性質を持つあなたなら、擬似的なカーテナの力を振るえるのではないかということでございます。」

サーシャ「第一の解答ですが、私がクイーンの役をやる理由は分かりました。
私に出来るのであれば、喜んで引き受けさせていただきます。」

オルソラ「まあ!ありがとうございます!」

五和「えーっと、これで全部揃ってるでしょうか?」


五和が用意した戴冠式ごっこのレシピ

指輪
白い手袋
赤いペンキで塗られ、先端に棒磁石を埋め込んだ杖
白い杖
サーシャの着てた拘束衣の赤い外套
椅子
正方形の座布団みたいな石(シェリーの作業場から拝借)
香油
聖水
サーシャの修道服のベール
カーテナの力を移すための聖水で清めたナイフ

251 :1 [sage]:2010/08/19(木) 08:14:08.22 ID:uSIr8tY0

オルソラ「では、蝋燭を西に、聖水の入った小瓶は南に、北はアニェーゼさんの部屋から拝借した小型扇風機、
東にシェリーさんが彫刻に使っていた石を。」


オルソラの指示通り、それぞれの場所に、赤い蝋燭、青いビンに入れられた聖水、
黄色い絵の具で塗られた扇風機、そして緑色に着色された石が置かれた
戴冠式のための簡単な儀式場を作ったのである。


しかし、何かがおかしい


サーシャ「第一の質問ですが、風と黄色を象徴とするラファエルは東方の性質を与えられています。
位置が違うのでは?あと、それアニェーゼに怒られますよ。」

オルソラ「先程も説明した通り、四大元素に歪みが生じてる可能性があります。
大天使の四大元素の力を行使する神の右席では、前方が黄色と風を象徴とするウリエル、
左方が土と緑を象徴とするラファエルになっていたのでございます。」

サーシャ「一体どうなってるのでしょうかね?」

オルソラ「きっと神様の国で痴話喧嘩でもあったのでございますよ。さて、ではサーシャさん、部屋の中央に来て下さい。」

サーシャ「はい。」

オルソラ「では、五和さん、サーシャさん、よろしいでございますか?戴冠式の真似事とは言え、
カーテナの力を宿すための儀式でございます。道具は全て偽物ばかりのなんちゃって戴冠式ですが、
あなた方の英国と神への忠誠は本物である事を証明しなければなりません。」



オルソラ「覚悟はよろしいでございますか?」


サーシャ・五和「はい…(ごくっ)」



今、世界で一番滑稽な戴冠式が始まった



252 :1 :2010/08/19(木) 08:15:40.41 ID:uSIr8tY0
時間が無くなってしまったので続きは後ほど
253 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/19(木) 10:10:09.97 ID:V7kpUPIo
ちんぷんかんぷんだがなんかすげぇなおい
おつおつ

シリアスがシリアスになりきれないのは>>1の癖か?w
254 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 01:31:15.94 ID:PYUycpwo
>>253
ちょくちょく入るメタ発言のおかげで廚二に見えなくなってる
255 :1 :2010/08/20(金) 02:56:57.54 ID:IltzVlE0
続き投下します

>>253
癖です
シリアス一辺倒で書くのが苦手なもので
256 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 03:01:29.09 ID:IltzVlE0

ルチア「まったく、一体何なんですか!」


ルチアは不条理な状況に文句を垂れつつ車輪を巨大な水の蛇に向けて、両手と体全体を使って円盤投げの要領で投げる

そして、巨大な水の蛇に車輪がぶつかると同時に爆発する
巨大な水の蛇は爆発によって頭部が木っ端微塵に吹き飛んだ


ルチア「やった!?」

ローザ「無駄ですよ。」


木っ端微塵に吹き飛んだ蛇の頭は信じられないくらいのスピードで再生する


ローザ「ツモク!」


ローザがその蛇の名を叫ぶと、巨大な蛇の口に光が溜まり始める


ローザ「消し飛びなさい!」


巨大な蛇の口から極太の光線と化した電撃が放たれた
まるで荷粒子砲の様だ


ルチア「……!!?」


蛇の口が光り始めた時点で危険を察知したのか、ギリギリでかわす事が出来たルチア

あんなものをまともに食らったら、髪の毛一本すらこの世に残らないだろう


ローザ「さあ、いつまで避け続けることができるでしょうか?」


再び蛇の巨大な口が光り出す

257 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 03:04:22.85 ID:IltzVlE0

アンジェレネ「シスターアニェーゼ、ここは一端引きましょうよぉ…」

アニェーゼ「無理ですよ、あのスピードからは逃れられません。アンジェレネ、危ないから下がってください。」

アンジェレネ「シスターアニェーゼッ!」


アーニャ「吹き飛べ」


アーニャは上空からとてつもないスピードでアニェーゼに向かって滑空してくる
そしてその勢いのまま、自分の身長の倍近くある炎の剣の切っ先を向けてアニェーゼを潰そうとしてきた

アニェーゼ「クソ暑苦しいんですよぉ!!!」


アニェーゼも負けじとナイフで傷付けた蓮の杖を振り回す
しかし、その力を持ってしても相[ピーーー]る事すら敵わずに、炎の剣の爆発に巻き込まれる

爆発とともにアニェーゼの体は吹き飛ばされた


アンジェレネ「シスターアニェーゼ!!!」


まるで道路に打ち捨てられたゴミの様に、吹き飛ばされその体は地面を跳ねる様に叩きつけられる


アニェーゼ「…対火術式なんて…これじゃああってもなくても同じですね……」


来ている修道服は焼け焦げてボロボロになっている
それだけならまだ良いが、アニェーゼの柔和な白い肌も裂傷や火傷だらけで痛々しい姿だ
258 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 03:05:50.18 ID:IltzVlE0

アンジェレネ「ぐっ……!(ぎりっ)」


奥歯を噛みしめるアンジェレネ

腰につけている硬化袋を取り外し、十二使徒の一人、徴税者マタイの名を唱えながら硬化袋を頭上に投げる
すると、硬化袋から六つの羽が生え、同時に中から数枚の硬化が弾丸の様なスピードでアーニャに向かって発射された

しかし、アーニャのもとに辿り着く前に硬化は燃え尽きてドロドロに溶けてしまう

当のアーニャは「良く見てなかったけど、何かしたの?」とでも言わんばかりの表情をしていた。


悔しかった
何もできない自分が

目の前で傷ついてる仲間が居るのに、何もできない無力な自分が

彼女も五和と同じだ

259 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 03:08:10.86 ID:IltzVlE0

建宮「くそっ……」


半分に折れた剣を手に、ボロボロに傷付いた体を庇いながら、建宮はふら付く足で立ち上がりヴェロニカを睨みつける

他の天草式の連中は、後方の防衛を任されていた殲滅白書のシスターと戦闘していた

先程は難無く撃破できたはずなのだが、今はヴェロニカの魔術のせいで苦戦を強いられている


ヴェロニカ「もう諦めたら?どんなに頑張っても私には傷一つ付けられないわよ?
それなのにそんなボロボロになるまで頑張るなんて無駄じゃないかしら?」

建宮「黙れってんのよ……テメェには、どうしても一発ぶちかましてやらねえと気が済まねえのよ!
テメェらに利用され、自分の友人をその手で殺しかけるなんて事をさせられた、
どんな拷問よりも地獄に落ちる事よりも耐え難い絶望的な思いをした奴がいるんだよ!!
こんなとこで諦めたら、俺は五和にも女教皇様にも他のみんなにも顔向けできねえのよ!!」

ヴェロニカ「へえ、あなた随分と部下思いの上司みたいね。そういう上司は大好きよ。」


建宮はヴェロニカの話など全く聞いていない
すべき事は、あの澄ました端正な顔に一撃を与える事

建宮はヴェロニカに向かって突撃し、剣を振るう
しかし、ヴェロニカは簡単な動作でそれをかわした
260 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 03:11:47.30 ID:IltzVlE0

もはやボロボロでまともに剣を振るう力すらない建宮の一撃など、
わざわざ注意して避けるまでも無い。
そもそも双頭の鷲の加護があるので避ける必要すらないのだが。


ヴェロニカ「私も二年前までは良い上司の下で働いてたの。あなたとは違っておちゃらけた感じの人。
まああなたも普段はどうなのか知らないけれどもね。変態的な趣味の持ち主で変な服を着させられてたけど、
それでもドライでギスギスした殲滅白書の中では、珍しく人懐こくて明るい人だったわ。」


建宮「おらァ!!」(ブンッ!)


今の自分に出せる全力の一撃

しかし、そんな建宮の奮闘など微塵も意に介さず
まるで頑張りを嘲笑うかの如く簡単に避ける
いや、避けているいうよりは、むしろどいているという感じだ
261 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 03:16:09.19 ID:IltzVlE0

ヴェロニカ「実力を認められて、一部隊を任せられた時は嬉しかった。
同時に、絶対にその人を超えてみせるってヤル気まで湧いてきた。私にとっては憧れの様な人だったのかもしれない。」


建宮はヴェロニカの話に耳を傾ける事は無い

それでもヴェロニカは建宮の剣を避けながら、話を続ける

誰も聞いてはいない
なのに、なぜこんな身の上話を建宮の前でするのか、彼女自信も疑問に感じていた。

もしかしたら、建宮の部下を想う姿に何か感じ入るものがあったのだろうか。


ヴェロニカ「あなたには分かるのかしらね?自分の行動や言動だけじゃない。
その態度や表情の細かい部分一つ一つ、本当に自分でも意識していない部分でも、
それは部下に影響を与えるの。上司を心から信頼し、その指導を仰ぐ部下にとってはね。」

ヴェロニカ「上司の笑顔や褒め言葉一つでいつもの百倍は頑張れる様な気がする。
逆にため息や暗い顔ひとつで部下は不安な気持ちになるのよ。
だから、私は彼女達の前では極力明るく振舞う様にしてるわ。
人望なんて大して無いかもしれないし、憧れなんてこれっぽっちも持たれてはいないかもしれないけれど。」
262 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 03:20:16.17 ID:IltzVlE0

ヴェロニカ「上司ってそういうものなの。特に憧れ信頼してる上司は。だから分かる?
そんな上司の落ち込んでるとこなんて見たくないっていう部下の気持ちが?
上に立つ者は絶対にそういう雰囲気を出しちゃいけないし、不安な言葉を吐く事も弱みを見せる事もしちゃいけない。
なのに、自分の憧れていた元上司がそんな情けない姿を晒している事がどれだけ耐え難い事か。」


斬りかかって来た建宮を、右腕を軽く翻すだけで風を起こして吹き飛ばした


それでも立ち上がる建宮斎字


建宮「分かんねえわ、そんなの…うちはあんたらみたいにデカイ組織じゃないからよぉ……
部下である以前に、上司である以前に仲間なんだよウチらは……確かに……アンタらの組織の体裁は立派だとは思うが……」

ヴェロニカ「あら、聞いてたの?」

建宮「うおおおおおお!!!」


再びヴェロニカに向けて突進する


ヴェロニカ「はぁ……無駄だと言うのn!?」


ビュン!と何かが高速で顔の横を通り過ぎた

建宮が最後の力を振り絞って投げた剣だ

建宮が投げた折れたフランベルジュはヴェロニカの頬を掠め、修道服のベールごと遠くに吹き飛ばした


建宮「修道服の外側は鉄壁でも、内側はそうでもない…か……そういうもんなのよ、アンタらの関係は……」


何度でも立ち上がって来た建宮は、最後の一撃がようやく届いた事を確認し、そのまま倒れ伏した
263 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 03:23:02.64 ID:IltzVlE0

ヴェロニカ「……」


倒れた建宮を見つめるヴェロニカ
絹の様に滑らかで白い肌に、一つの赤い線ができている

そこから血が流れてくるが、彼女は気に留めていなかった

ヴェロニカ「建宮さんと言ったかしら……私も昔はそうだった。自分が上に立つ様になってから、
それを忘れてしまったのかもしれないわ……あの人の弱り果てた姿は、あの人の下を去ってから初めて見たから……」


ヴェロニカは、普段は部下に明るく振舞っている。部下からの暴言だって許している。
頼りないが近寄り易い上司を演じている。自分の憧れたかつての上司がそうであった様に。

演じているのだ。どこまでも演じているだけで、その枠を超える事は無いのだ。
それは例え苦しい事があっても悲しい事があっても、いつも同じ仮面を被って同じ自分を演じなければならないのと一緒。
けして自分の本質をさらけ出してはいけない。

体裁なんか気にしない様に見えるが、実際はその関係など体裁の塊に過ぎないのだ。


ヴェロニカ「もしかしたら、私はあの娘に嫉妬していたのかもしれないわね……」

264 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 03:28:27.02 ID:IltzVlE0

その頃、バッキンガム宮殿では



エリザード「ん?……カーテナが…?」

騎士団長「カーテナがどうかしましたか?まさか変な細工したとか壊したとかそんなんじゃないでしょうね?

エリザード「どんだけ主君を信用してないんだよお前は」


英国王家の者だけが手にするカーテナ・セカンド

英国女王エリザードは、そのカーテナに違和感を覚えた。
まるで面白そうな者を見つけた好奇心旺盛な動物の様に、カーテナに宿る力が何かに反応しているのを感じる。


騎士団長「ウエストミンスターの清教派の女子寮で抗争が確認されました。
どうやら、襲撃者はロシア成教殲滅白書の一部隊の様ですが…」

エリザード「知らんよ。そういうのはアイツの領分だ。あの女の事だ、
むざむざとロシアの連中の侵入を許したわけでも無いだろうし、何か企んでるだろうね。まあ大方予想は付くが。」

騎士団長「ちなみに、あの女子寮周辺で強力な結界も確認されたそうです。どうやら、
戦争が始まると同時に発動する仕掛けで、外側から援軍を送る事ができない状態になっています。
範囲は限られているとは言え、あれだけの密度の高い結界ですから、
最低でも一カ月近くかけて念入りに調整を施したのでしょう。解除するには最低でも一日は要するかと。」

エリザード「だから知らないよそんなの。あの女がどうにかなるって判断したんだろ。」

騎士団長「しかし、最近の在らざるモノの事件の急激な増加もありました。
この様な事態になるまで放置した最大主教には責任という物があると思いますが?」

エリザード「大切なのはこの国の国益だ。最終的にどう転ぶかを見届けるまでは判断できん。」
265 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 03:31:34.99 ID:IltzVlE0

(戴冠式とか見た事ないので詳細は分かりません。というわけで割愛します。)


サーシャ「これは……?」

オルソラ「どうやら成功したみたいでございますね…」


サーシャはカーテナの代用品であるナイフを右手に握っているのだが、そのナイフが異様な光を帯びている


五和「まさか本当に成功するなんて……」

オルソラ「ええ、私も半信半疑でございました。」

五和「いや、オルソラさんが考えたんでしょ」

オルソラ「とにかくサーシャさん。今この時だけ、あなたは英国女王と同等であり、
天使長ミカエルの力を有しています。ただし、その擬似カーテナは一度しか使えません。」



サーシャ「第一の解答ですが、分かっています。さあ、行きましょう!反撃開始です!」



266 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 03:34:31.88 ID:IltzVlE0

ヴェロニカ「さて、そろそろ決着がつきそうですね。予備のために組み込んでおいたコレも必要無かったみたいです。」


戦局は完璧に殲滅白書優勢

ムウロメツの薬の力を得た殲滅白書のシスター達は、一人で10人分の働きをする。


アニェーゼもルチアも、みんな傷だらけで辛うじて生きている様な状態だ。


シェリー「エリス!」

オルガ「無駄ァー!」(ドゴン!)

エリス「ゴオオォォ…」


ゴーレムがオルガの一撃で簡単に崩れ去っていく


シェリー「クソッ!化け物かアイツは!」





ローザ「さて、そろそろ終わらせますか。今まで避け続けた事は素直に賞賛します。まあ、全て無駄に終わりそうですけど。」

ルチア「はぁ…はぁ……ッ…!」


体中が痛む
極太のレーザーみたいなのは運よく一撃も当たっていないが、あの巨大な蛇には何発かテールアタックを食らってしまった

もしかしたら、わざと一撃必殺の技を当てないでじわじわと痛めつけていたのかもしれない
267 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 03:37:21.09 ID:IltzVlE0
アンジェレネ「アニェーゼ!起きて下さい!目を覚ましてください!」

アニェーゼ「……」


もはや戦える状態では無い
生きている事が不思議なくらいボロボロになってしまっている


アーニャ「もう終わり?つまらない」


巨大な炎の翼を背負い
巨大な炎剣を携え
喋るたびに口から炎がこぼれる

そんな怪物がアンジェレネとアニェーゼの前に迫ってくる


アンジェレネ「……絶対に」


アンジェレネは、アニェーゼを庇う様に両手を広げ、立ちふさがる


アンジェレネ「絶対にアニェーゼを殺させたりはしませんよ!!」


足が震える
恐怖が全身を駆け巡る
敵わないのは分かってる
このままでは自分は確実に死ぬ

それでも彼女は逃げようとは思わなかった
逃げたところで、このまま生き延びたとこでその先に幸せなど存在しない
ルチアやアニェーゼ達が居ない世界に幸せなど無い

彼女はその幸せを守るために戦う


アーニャ「邪魔。」


例え彼女の小さな幸せと大きな勇気が、アーニャの振り上げた炎剣の前に簡単に消えてしまうとしても

アーニャの炎剣がアンジェレネの頭上にギロチンの様に振り下ろされる

一瞬で灰と化すだろう……と思われた


アンジェレネ「ひっ!………あれ?」
268 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 03:39:39.54 ID:IltzVlE0

アンジェレネの頭上で、その炎剣は止まる
熱気でアンジェレネのフードの先が少し焦げ、アンジェレネは頭上の炎剣の圧迫感に思わず腰を抜かしてしまった


アーニャ「おかしい……」


自分の振るう力に違和感を感じる

その違和感を感じていたのはアーニャだけではない


ヴェロニカ「何かしら……さっきから魔翌力が乱れて……」


そして気がついた

今もイギリス清教と殲滅白書のシスター達が戦っている戦場
その奥に、異様な光が見える


それはサーシャ・クロイツェフと、右手に握られている謎の武器


その武器が異様な光を放っている


ヴェロニカ「……何よアレ…?」


あれは良くないものだ
本能でそう感じる
しかし、対策が思い浮かばない。
なぜなら、あれがどういうものでどの様な影響があるのかを理解できないからである



サーシャ「第一の解答ですが、これで終わりですよ、ヴェロニカ。」



269 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 03:44:09.38 ID:IltzVlE0

カーテナ・イミテーション

サーシャはたった一度だけ使える偽物の慈悲の剣を天に翳した


カーテナの力は地球という惑星から英国領土を切り離し、その内部を制御管理できるというもの。
まさにイギリスを支配する国王に相応しい剣だ(原作参照)
しかし、偽物ゆえにその力はカーテナ・セカンドの1割あるかどうかと言ったところだが。

それでも、「ムウロメツの薬をヴェロニカの全ての魔翌力ごと根こそぎ打ち消す」くらいは簡単にできる


ヴェロニカ「なっ!一体どうなってるの!」


ヴェロニカの体から魔翌力が光となってあふれ出てくる

あふれ出た魔翌力が全て空へと登り、消えて行く
まるで光るシャボン玉を見てる様な気分だ……


アーニャ「あれ…?」


アーニャの手から炎剣が消えた
同時に背中の炎も消える


ローザ「どういうこと……?」


ローザの水の蛇も形を維持できなくなり、崩れた


オルガ「力が…抜けてく…」

エリス「グオオオオオオ(すごいパーンチ)」

オルガ「ビブルチッ!」

ドガーン!
270 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 03:47:54.84 ID:IltzVlE0

ルチア「これは……サーシャ!」

アニェーゼ「いたたっ…どうやら……再び私達に勝機が訪れたみたいですね……アンジェレネ?」

アンジェレネ「すみません、腰が抜けて立てません……」


五和「やった!やりましたよオルソラさん!」

オルソラ「ええ!まさに奇跡でございます!」


まだ戦争が終わったわけでもないのに二人ははしゃいでいた



殲滅白書のシスター達は誰もが負けを確信した

そもそも元々の戦力差が違うのだ
ヴェロニカのムウロメツの薬が無ければ勝てない戦いである



どんな時でも、辛い時でも悲しい時でも、例え負けそうになって絶望しても、絶対に上に立つ者はそれを隠さなければならない

上司とはそういうものだと高説垂れていたヴェロニカ


ヴェロニカ「あはっ……あははははははははははっ!」

サーシャ「どうしました?敗北が確定して気でも狂いましたか?」


サーシャは、全ての魔翌力を失い立てなくなってその場に座り込んでいるヴェロニカの前に立った
271 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 03:50:45.82 ID:IltzVlE0

ヴェロニカ「違うわ。素直に満足してるの。まさかここまで私が追いつめられるなんて、今まで無かったもの。」

サーシャ「第一の解答ですが、やはり狂ったみたいですね。」

ヴェロニカ「そうじゃないって言ってるでしょ?」


突然、ヴェロニカの足元に青白い光が溢れだし、その光がヴェロニカを包んでいく


サーシャ「……!?」


ヴェロニカ「ふふっ、予備のために術式を組んでおいて正解だったわ。
まさか、私がムウロメツの薬を破壊された時のための対策を立てていない思ってたのかしら?」


サーシャはヴェロニカを殺そうと、カーテナの効力を失ったタダのナイフでヴェロニカの額に切りかかる

しかしヴェロニカはそれを避け、ナイフはヴェロニカの修道服に当たった

双頭の鷲への攻撃は、自分へ返ってくる

強風とかまいたちで切り傷だらけになったサーシャの体が吹き飛んだ


ヴェロニカ「さて、第二ラウンドと行きましょうか」

サーシャ「うっ……」
272 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 03:54:35.74 ID:IltzVlE0

ヴェロニカ「ねえサーシャ、スヴェントヴィトって知ってるかしら?」

サーシャ「スラヴ神話の…軍神…」

ヴェロニカ「そうよ。スヴェントヴィトにも色々と逸話があるけど、私はその中で、
戦士達が戦いで得た戦果の一部をスヴェントヴィトに捧げていたエピソードを元に術式を組んだのよ。」

サーシャ「……まさか、自分が相手に負わせたダメージの一部を、自分の魔翌力に還元する……?」

ヴェロニカ「さすがはあの人の直属の部下ね。でも惜しいわ、その程度ならそこらの三流でも組める術式ね。
私の術式は、自分の味方全員が相手に与えたダメージが、ムウロメツの薬を通じて全部そのまま私の魔翌力となるの。」

ヴェロニカ「ローザみたいな性癖は無いけど、あなた達の感じた痛みや苦しみ、絶望が全て私の力になるのよ?」


要するにこそこそと魔翌力を集めて予備電源みたいなものを貯めていたらしい


ムウロメツの薬が再起動した

殲滅白書のシスター達の目に再び光が宿る


どうやらイギリス清教の敗北は確定した様だ


ヴェロニカ「あなたはそこで見てなさい。あなたのせいで死んでいくイギリス清教のシスター達を。」
273 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 03:57:39.85 ID:IltzVlE0

絶望に形があるのなら、きっとこんな感じなのだろう

ゲルニカというスペイン内戦を題材にしたピカソの絵画がある
彼はきっと、こんな光景を見て絵にしたのだろう


遠くでルチアが車輪を抱えた右腕ごと光線を受けて、華奢な腕が消失したのが見えた
痛そうに苦しみもがいている

アニェーゼとアンジェレネがまとめてアーニャの炎で焼き払われるのが見えた
きっと死体は原型すらとどめていないだろう

ほかにも、戦いで敗れ、死んでいく仲間の姿が目に映る


もうやめてほしい、戦わないで、死なないでほしい

たぶんサーシャがそう懇願しても、イギリス清教の仲間達は止まってはくれないだろう

彼女達は仲間のためなら命をかける。かつて、何の関係もない自分達を命懸けで救ってくれた少年の様に。

そしてもしもサーシャが彼女達と同じ立場だったら、間違いなく自分も命をかけて仲間のために戦うだろう

サーシャは再び立ち上がり、ヴェロニカに立ち向かう

しかし、彼女も建宮と同じ様に軽くあしらわれる


ヴェロニカ「黙って見てなさい。」

サーシャ「あぐっ…!」


サーシャはうつ伏せの姿勢のままヴェロニカに頭を踏まれ、地面に縫いつけられた

274 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 03:59:03.95 ID:IltzVlE0

サーシャの視線の先には五和が居た
海軍用船上槍を構え、オルガと対峙している


シェリーの安否は確認できないが、もうゴーレムは尽きたらしい



やめて……勝てるはずがない…


五和はオルガに向かって突撃する


もうやめてほしい、どうか死なないでほしい


五和の槍は簡単にオルガに弾かれた


神様、どうか自分の命と引き換えに、五和を助けて下さい、どうか…


しかし願いは届かない

二人の勝負は早々の決着がついた

オルガの棒が五和の胸を貫き、呆気なく五和はそのまま倒れた

五和の体から引き抜いた棒には、彼女の鮮血がべっとりとこびり付いている


オルガ「あはっ♪サーシャちゃんを串刺しにしたんだらか、当然の報いだよねー?アハハハッ!」




その瞬間、サーシャの中で何かが切れた






275 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 04:02:11.85 ID:IltzVlE0

もがき、力づくでヴェロニカの足をどけると、ナイフでヴェロニカの体を切り裂く

しかし、当然攻撃は通らず、強風とかまいたちがサーシャを襲う


サーシャ「がっ、ぐっ、があああああああああああ!!!」


幾つもの裂傷を浴びて吹き飛ばされても、すぐに立ち上がり襲いかかる

もはや理性など欠片も無い獰猛な獣の様に牙をむく


ヴェロニカ「無駄だって言ってるでしょうがッ!!」


ヴェロニカは手を翻して風を起こし、サーシャに叩きつけた

しかし、サーシャはけして怯まない
おそらく腕が捥がれても足が千切れても、ヴェロニカに襲いかかるだろう

ヴェロニカは上からサーシャを[ピーーー]なと指示を受けているが、このままではサーシャの方が双頭の鷲の加護で自滅しかねない

ヴェロニカは再び風を叩きつけ、サーシャが地面に転がったところを取り押さえ、首を絞めた

そして立ち上がり、サーシャを、首を両手で絞めたままの状態で持ち上げる


サーシャ「ぐがっ!あがっ!があああああッ!!」

ヴェロニカ「まるで獣みたいね。」


サーシャの赤い目の瞳孔が猫の様に細くなっている

首を絞められながらも、サーシャはヴェロニカに噛み付こうとしていた
276 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 04:04:52.64 ID:IltzVlE0

ヴェロニカ「落ち着きなさい」

サーシャ「あがっ!!ぐっ!ああッ!!」


ヴェロニカはサーシャの首を絞める力をさらに強くする


ヴェロニカ「無駄なの?分かる?もうあなたの仲間はみんな死んだの?あなたが戦う意味は無いのよ?」

サーシャ「jfhrpl黙jduoa!!!」


声にノイズが走る


ヴェロニカ「もう終わったの。結局あなたの努力は無駄だったのよ?」

サーシャ「sbrg;snmtp|hish!」

ヴェロニカ「みんなあなたのせいで死んだの」

?「nipsergnsigd」

ヴェロニカ「だからいい加減に……」

?「nthggbvrfl……」


そこでおかしな事に気付いた

先程から、サーシャの声にノイズが混じっている

何かを喋っている様だが、言葉の意味は理解できない

そして、先程までの獣のような獰猛さが感じられない
277 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 04:06:49.25 ID:IltzVlE0

ヴェロニカ「まさか、死んd」


その刹那、サーシャの目が鋭く見開かれた


ヴェロニカ「なッ、ぐあっ!」


何が起きたのか分からず、謎の力でヴェロニカはサーシャの前から弾かれる


?「Sjhdtdplk起qlhg」


ヴェロニカの手から解放されたサーシャはそのまま空中に登って行く

突然、彼女の背中から黒い黒曜石の巨大な翼が現出した

赤かった目は、月の様に黄色く輝いている


ヴェロニカ「サー…シャ……?」

?「解一、私はサーシャではない。補足、私を示す適切な記号はミーシャ」
278 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 04:10:07.52 ID:IltzVlE0

ミーシャ「私見一、人間の下らない争いに興味は無い。私見ニ、下らない願いにも興味は無い。
しかし私見三、私はこのサーシャ・クロイツェフの体を失うわけにはいかない。」





ミーシャ「結論、よってサーシャ・クロイツェフの敵となる者を排除する。」





その瞬間、夜空から星が消えた
いや、正確には夜空を濃紺色に塗りつぶされたのだ

同時に、空一面に複雑な紋様の巨大な光の魔法陣が描かれる

279 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/20(金) 04:12:49.03 ID:IltzVlE0
ここで一端区切ります

それにしてもオリキャラ達は無駄という言葉が好きですね
Dioでも気取っているのでしょうか
280 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/20(金) 05:32:23.82 ID:IltzVlE0
再開します
281 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 05:33:58.68 ID:IltzVlE0

水の象徴、月の守護者にして後方の青を司る神の力、名をガブリエルと言う

それは最期の審判にて終焉のラッパを吹き、死者を蘇らせる大天使

それゆえに、神の定めた摂理をも覆す力を行使する事もある



ミーシャ「……」


ミーシャはその右腕を軽く振るった

ただそれだけで生と死の理が覆される
消滅と再生が逆転する


ルチア「腕が…治ってる……?」

アニェーゼ「あれは…サーシャですよね?」

アンジェレネ「私に聞かれても…」

五和「サーシャ…ちゃん?サーシャちゃんなのですか!?」
282 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 05:35:17.59 ID:IltzVlE0

ミーシャ「戦え。お前たちには加護がある。」


死んだはずの者が一人残らず復活していた
傷も全て回復している


ミーシャ「戦え、この少女を守りたくば。」


アニェーゼ「言われなくとも、百倍返しでやってやりますよ!!!」


今度こそ、本当に奇跡と共に形勢は逆転した



大天使は神の命令なしに人を傷付けたり殺したりする事はできない

ミーシャが唯一その掟を破るのは、彼女が正しい位置に還るチャンスがある時のみ

この争いに興味が無いと言っていた通り、彼女はこの戦いで直接的に相手を傷付けたり殺したりするつもりは無かった
それゆえに、五和達が復活したのは自分の代わりに戦わせるためであって、慈悲と言う物はそこには無い
283 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 05:37:15.03 ID:IltzVlE0

ヴェロニカ「あれは…大天使ガブリエルの…そんな……」


ヴェロニカの頭に初めて敗北と言う言葉がよぎる。
大天使とまともに戦って勝てる可能性が1%でもあるのなら、
初めからわざわざ聖人である神裂の居ない時を見計らって襲撃するという作戦など立ててはいない。


ローザ「ツモク!どうしたの!」


ローザの巨大な水の蛇は、再び崩れ去った

水を司るミーシャにその力を奪われたのだ


ルチア「水が使えなければただの人ですよね、あなたも」

ローザ「!?」


ルチアは魔術を行使せず、ローザの顔にハイキックをお見舞いした


ローザ「がはッ!」(ドサッ)


一撃で気絶したローザ


ルチア「こんな雑魚に構っている暇はありません!」


ルチアは一番苦戦していると思われるアニェーゼの元へ向かった
284 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 05:39:04.70 ID:IltzVlE0

五和「さっきはよくもやってくれましたね。」

オルガ「うわっ、ちょっタイム!」

五和「死んだ後ならいくらでもあげますよ?」


オルガの棒が弾かれ、体は壁に叩きつけられた


オルガ「ま、待って!ねえ待ってってば!」


五和の目は本気だ
本気で殺しに来ている

オルガは尻込みしながら命乞いをする

綺麗な顔立ちは恐怖で歪みに歪んでいた


五和「さようなら」


五和は本気の一撃を当てた。

オルガの顔のすぐ隣の壁にだ。海軍用船上槍が壁に深々と突き刺さっている。


オルガ「う……ア……」


オルガは恐怖のあまり、泡を吹いて気絶してしまった


五和「ま、これでチャラって事にしてあげますよ。」


五和は槍を引き抜き、アニェーゼの援護に向かった
285 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 05:42:32.02 ID:IltzVlE0

アーニャ「うぐっ…」

アニェーゼ「どうしたんですかい?さっきの方が百倍手強かったですよ?」


アーニャの魔術は火だ
それゆえにローザと同じくミーシャ属性による干渉を受けているため、思う様に力が機能しなかった
それでも脅威である事に変りは無いが


ルチア「アニェーゼ!アンジェレネ!」

五和「アニェーゼさん!」

アニェーゼ「ルチア!五和!」

五和「アニェーゼさん、こちらは全て片がつきました。ですから」

ルチア「あなたはヴェロニカを倒してください。ここは私と五和さんがどうにかします。」

アニェーゼ「分かりました。私は優秀な部下を持てて幸せです!」

五和「私は部下じゃないですけどね。」


アニェーゼはアーニャを二人に任せて正面突破しようとした


アーニャ「逃がさない」


アーニャはアニェーゼにむけて灼熱の炎を吐く

しかし、ルチアが車輪を投げつけ、アーニャの前で爆発させる

攻撃はアーニャの炎で全て防がれてしまったが、それでも車輪の爆発にアーニャの注意が向けられたおかげで炎の軌道を反らす事はできた


アーニャ「邪魔…」

ルチア「あなたの相手は私達ですよ!」

286 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 05:43:46.02 ID:IltzVlE0

五和「アンジェレネさん!」

アンジェレネ「はいっ!」

五和「あなたにお願いがあります。私とルチアさんだけでは彼女を倒すことはできないでしょう。」

アンジェレネ「でも、私の攻撃も全く通用しませんでしたよ?」

五和「大丈夫です、彼女の力は以前よりも落ちています。」

アンジェレネ「で、でもでも!」

五和「アンジェレネさん!あなたにしかできないんです!ルチアさんも私もあなたを信頼しています!」


五和はアンジェレネにとある作戦を簡潔に話した


アンジェレネ「……わ、分かりました!」

五和「大丈夫!あなたなら絶対にできますよ!」

アンジェレネ「頑張ります!」


アンジェレネはその場から離脱していった
287 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 05:45:06.59 ID:IltzVlE0

五和「ルチアさん!」

ルチア「はい!?うおっ!」


ルチアはアニェーゼが投げつけてきた炎の塊を避けながら返事をする


五和「アーニャを、寮の近くまで誘導してください!」

ルチア「良く分かりませんが、なにか策があるのですね!?」

五和「はい!(お願いしますよアンジェレネさん、そしてサーシャちゃん!)」

ミーシャ「……?」


ルチアは五和の指示通り、アーニャの攻撃を掻い潜り、アーニャを女子寮に近づける様に仕向けた



五和「アーニャさーん!あなたの技って大した事ありませんね!!」

アーニャ「……?」
288 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 05:47:20.65 ID:IltzVlE0

五和「ぶっちゃけステイルさんの方が100倍凄いですよ?あなたの技って100円ライターよりしょぼくないですか?
マッチですかそれ?あ、マッチに失礼でしたね。」

アーニャ「……(ビキッ!)」

ルチア「あの…五和さん?」

五和「悔しかったらあなたの全力を見せて下さいよ!どうせ大した事ないと思いますけど!!」

アーニャ「ナメてやがるな、よほど愉快な焼死体になりてぇと見える」


在庫一掃セール並みの安い挑発にキレたアーニャは空に向けて炎の剣を高くかざした
すると、突然彼女の背中の翼が膨らみ始めた

かざした炎剣も同時にさらに巨大化する
そして、巨大な炎剣は球体となり、天にかざしている右手の上で太陽の様に激しく燃えている


アーニャの持つ全ての力をこめた必殺の一撃を繰り出そうとしていた


ルチア「で、五和さん、アレどうするんですか?」

五和「……ぶっちゃけヤバいかもしれません」

ルチア「おい!」
289 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 05:49:23.90 ID:IltzVlE0

上空のアーニャから巨大な炎の塊が放たれた

たぶん逃げても逃げ切れないだろう


ルチア「オワタ」

五和「サーシャちゃん!今です!」



ミーシャ「……チッ」


同じく上空に浮かぶミーシャの黒曜石の様な巨大な翼が伸びてきて、巨大な炎の塊を簡単にズタズタに潰してしまった


五和「サーシャちゃん!やっぱり助けてくれましたね!」

ミーシャ「解一、私の名前はミーシャ。」

五和「ありがとうございますミーシャちゃん!」

ミーシャ「解ニ、別にあなたを助けたわけではない。あとちゃんはやめろ。」

ルチア(ガブリエルってツンデレなんですか?)
290 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 05:52:39.68 ID:IltzVlE0

アーニャ「……どういうこと?」


はっきり言ってここら一帯が焼け野原になってもおかしく無い様な大魔術なのに、
あの上空のミーシャと名乗るサーシャが呆気なく簡単に消してしまった

本当はプライドも一緒にズタズタにされた様な気分で落ち込んでいるが、次の攻撃に備えなければならない

そう、あれだけの大技を使ったのだから、自分の力が弱っているのだ

巨大な羽も小さく萎んでしまっている


アーニャ「じゅうでんかいし…」


アーニャ再び力を貯め始める
今度はあのミーシャごと愉快に素敵に吹き飛ばせる一撃をお見舞いしてやろうと


しかし、彼女は気付いていない


背後の女子寮の屋上から、弱って力の落ちているアーニャを狙っている人物が居る事を



五和「今です!アンジェレネさん!」

アンジェレネ「発射ー!!」


アンジェレネの羽の生えた硬貨袋から、何枚もの硬貨が弾丸の様なスピードで飛び出てきた
291 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 05:54:49.51 ID:IltzVlE0

アーニャ「!?」

前に同じ攻撃をした時は、硬貨がアーニャの炎で溶かされてしまった
しかし、今のアーニャは力が弱くなっている

ガン!ゴン!と何枚もの硬貨がマシンガンの様に上空のアーニャの体に直撃する
かなり痛そうだ


アーニャ「くっ…まけない…」

ゴン!

最後の硬貨の一枚がアーニャの額に直撃した


アーニャ「きゅう〜」


そのまま上空で気を失い、墜落するアーニャ


五和「やりましたね♪」


五和は屋上のアンジェレネに大して親指を立てて合図する


アンジェレネ「イエ―イ♪やりましたよ!私やりましたよ!」


同じく五和に向かって笑顔全開で親指を立てた
292 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 05:57:09.23 ID:IltzVlE0

アニェーゼ「やっと辿り着きましたよ…」

ヴェロニカ「ぐっ……!」


どうしてこうなった?
戦局は9割方殲滅白書に傾いていたはず
もはや勝利は確定していたはず

そして何よりも、イギリス清教のシスターは殆どが戦闘不能かあるいは戦死したはず

なのに、なぜ生きてる?なぜ形勢が逆転してこちらが負けそうになっている?



そしてなぜ、サーシャ・クロイツェフにガブリエルが?


ヴェロニカ「ふざけてんじゃないわよ!何なのよこれは!」

アニェーゼ「神様が私らに勝利する様に仕向けた。戦争に勝った方が正義なんて考えは気に食わねえですけど、
それでもあんたらよりは私らの方が正しいのであり、勝利するのに相応しいと主が判断されたんですよ。」

ヴェロニカ「主の御考えを知った様な口で語るとか何様のつもりよ!」

アニェーゼ「アニェーゼ・サンクティス様のつもりですよ!!純粋に仲間を助けたいだけの私らが負けるなら、
そんな結末を与える神様なんて初めから信仰してねえんですよ!!」


蓮の杖に衝撃を与え、エーテルによる見えない攻撃をヴェロニカにぶつける

しかし、双頭の鷲の防御力には及ばず、攻撃はアニェーゼへと還る
293 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 05:58:57.10 ID:IltzVlE0

アニェーゼ「へえ、修道女のくせに良いモン着てますねぇ。どこのブランドですか?」

ヴェロニカ「部隊の要なんだから当然でしょ?」

アニェーゼ「そうやって自分は安全な場所に立って、危険な事は部下にやらせるんですか。」

ヴェロニカ「それが私達の戦術なの。」

アニェーゼ「そうですかい。私には性に合わねえですよ!」


アニェーゼは再び蓮の杖を振るうが、当然の如く防がれ、逆に強風とかまいたちを浴びせれる


ヴェロニカ「学習しないわねほんと。」

アニェーゼ「なるほど……四大元素を統べるエーテルも防がれるという事は、全ての属性の攻撃に対して強い耐性があるってわけですか。」


アニェーゼはかまいたちで付けられた頬の傷から流れる血を軽く拭った


ヴェロニカ「当然、打撃斬撃もよ。たぶん核ミサイルも防げるんじゃない?」
294 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 06:00:17.52 ID:IltzVlE0

アニェーゼ「サーシャ!」

ミーシャ「解一、サーシャじゃなくてミーシャだから。お前らいい加減名前覚えろよ。」

アニェーゼ「私に力を貸してください。」

ミーシャ「メンドクセ」


ヴェロニカ「大天使は神の命令無しに人を殺せないのよ。一体何をする気かしら?」

アニェーゼ「こうするんですよ!」


アニェーゼは蓮の杖を振った。
すると今までとは違い、青い光の塊が放出され、ヴェロニカに直撃する


ヴェロニカ「だから、無駄だと言ってるのに。」


ヴェロニカは手を翻して風を起こし、アニェーゼめがけて投げつけた

アニェーゼはそれを避け、再び同じ様に青い塊をヴェロニカにぶつけた


ヴェロニカ「一体なにがしたいのかしら……」


そこでおかしな点に気付く

さっきからアニェーゼの攻撃を受けているはずなのに、攻撃がアニェーゼ還らない

本当なら強風とかまいたちがアニェーゼを襲うはずだが、それが無いのだ
295 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 06:02:58.76 ID:IltzVlE0

アニェーゼ「くらいやがれってんですよぉ!」

ヴェロニカ「うっ……ッ!まさか!?」


気付いた時には、ヴェロニカの真っ白な修道服が青く染まっていた


アニェーゼ「どうですか?大天使の水の加護は!」


アニェーゼの蓮の杖はエーテルを含む火、水、土、風の全ての属性を操る事が出来る

それを利用し、水を司るミーシャことガブリエルの水の加護を、蓮の杖を仲介してぶつけていたのだ

アニェーゼのぶつけていた青い光の塊は、攻撃ではなく回復魔術と同義であり、当然双頭の鷲はアニェーゼを排除しようとはしない


アニェーゼ「大天使レベルの水の加護を受けたあなたの修道服は、水の攻撃に対しては最強の防御力を得ているでしょうね。
ですが、その代わり他の属性の攻撃に対しては極端に弱くなっているはずですよ。強すぎる加護というのも考え物ですね。」


アニェーゼ「さあ、覚悟は良いですか?万物照応。五大の元素の元の第五。平和と秩序の象徴『司教杖』を展開。
偶像の一。神の子と十字架の法則に従い、異なる物と異なる者を接続せよ。」
296 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 06:05:05.77 ID:IltzVlE0

ヴェロニカ「クッ…負けて……たまるものかッ!!」


ヴェロニカは周囲に風を起こし、それを手に集める


ヴェロニカ「この私が…常勝のヴェロニカ部隊が!負けてたまるものかァァッ!!!」


有らん限りの魔翌力を手に、体を引き裂く暴風をアニェーゼに向けて投げつけた

自分のプライドにかけて、彼女達の上司としてのプライドにかけて負けるわけにはいかない


だが負けられない理由はアニェーゼにもある。

たった一カ月そこそこ一緒に生活してきただけの仲間

しかし、仲間であるという事に時間や素情など関係無い

サーシャは命を懸けるに値する大切な仲間だ
297 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 06:09:44.62 ID:IltzVlE0

アニェーゼ「教えてあげますよ。私達が何度でも立ち上がれる理由を、例え無駄だと分かっていても立ち向かえる理由を。
この気持ちは、この絆は絶対に幻想なんかじゃないんですから。」


アニェーゼは渾身の力で蓮の杖を地面に叩きつけた

あまりの力に蓮の杖の方が耐えられずに折れてしまう
しかし、その威力は死ぬ事なく、
彼女の激情の全てをぶつけるかのようにヴェロニカに向かって飛んでいく








アニェーゼ「大切な誰かのために戦う人間はァッ!!!ぜーーーーったいに負けたりしないんですよぉッッ!!!!」








水も火も土も風さえも、全ての属性を統べる万物の象徴たるエーテル

その本気の一撃は、ヴェロニカの強風を粉々に穿つ

そして彼女の激情の全てを込めた一撃は、権力と統治の象徴である双頭の鷲の加護なんかでは止められない


アニェーゼの攻撃が直撃したヴェロニカは派手に吹き飛び、声を上げる事さえも敵わずに気絶した

298 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/20(金) 06:11:41.10 ID:IltzVlE0
ここで区切ります

たぶん今日明日で完結かな
299 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 08:11:53.13 ID:09qS6xco
乙です

熱い展開になってきたな
300 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 23:36:08.11 ID:JqVvykwo

大天使がいいキャラしてるなww

あと>>287で危うく同士討ちww
301 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/21(土) 00:16:58.43 ID:dDsFTM2o
完結?あぁ、シリアスパートが、ですねわかります
残りをきゃっきゃうふふで埋め尽くしてくれー
302 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/21(土) 20:06:03.70 ID:/e.u49wo
乙。

何というかシリアスとコメディ、厨二設定とメタ台詞が混ざり合いつつも奇跡的にバランスが取れてるなww

イギリス清教の各キャラに見せ場があったのも良かった。オルソラの超仮説とか。
しかし、一度サーシャ以外がほぼ死亡した時はどうなるかと思ったら、ツンデレ大天使様々だな。

完結後にきゃっきゃうふふな後日談が来るんですね分かります。
303 :1 [sage]:2010/08/22(日) 08:15:48.09 ID:r.fmOw.0
続き投下します



>>300
きっと>>214、215でどっちがお色気担当を務めるかで揉めてるんだと思います
304 :1 [sage]:2010/08/22(日) 08:17:29.06 ID:r.fmOw.0

ルチア「終わりましたね…まだ戦いますか?」


殲滅白書のシスター達「うっ……」


今度こそ本当に殲滅白書のシスター達は武器を捨て、完全に戦意は失われていた


アニェーゼ「最大主教に連絡は付きますか?処刑塔の方から人を呼んで、全員連行してもらいます。」


アニェーゼは気絶したヴェロニカの襟首を掴み、ズルズルと引きずっている

その光景を見てまだ抵抗しようと思える者は居ないだろう


五和「サーシャちゃんは、どうなるのでしょうか?」

アニェーゼ「それは上が判断する事です。それよりもッ!!」

五和「!?」


ダンッ!と地響きが起こる

だがそれは地震ではない、ミーシャが上空から黒曜石の様な翼で攻撃してきたのだ


巨大な黒曜石の様な翼の一部が離脱し、地上に雨の様に突き刺さる


五和「サーシャちゃん?」

ミーシャ「私見一、あなた方に再び生を与え、この戦いの勝利のためにあなた方は神の力を借りた。私見ニ、その代償を要求する。」

ルチア「だ、代償ですって!?」

アニェーゼ「やっぱ、みんな生き返ってハッピーエンドですなんてわけにはいかねえみたいですね。
一体何が望みなんです…?っていうか二人称を統一してください。」
305 :1 [sage]:2010/08/22(日) 08:19:25.41 ID:r.fmOw.0

ミーシャ「解一、生死の理を覆し、あなた方に生命を与えた。ならばそれに等しい代償を要求する。」

アンジェレネ「等しい代償って、誰かの命ですか!?」

ミーシャ「私見三、それも一つの選択。提案一、あなた方の敵の命でも構わない。」


その言葉を聞き、ルチアは殲滅白書のシスター達の方を見た

すると、彼女等は怯え、目を逸らし、或いは誰かの後ろに隠れるなどとにかく目立つ事を避けようとした
当然だ、誰だってこんなところで生贄にされて死にたくはない


アニェーゼ「命に等しい代償は、他には無いんですか?」

ミーシャ「解ニ、あると思うのならそれを示されよ」

五和「もしも代償を差し出さなければ?」

ミーシャ「解三、全ての命を理において本来あるべきところに戻す。サーシャ・クロイツェフはそのために使わせてもらいましょう。」


つまり、全員死ぬという事だろうか
306 :1 [sage]:2010/08/22(日) 08:21:00.91 ID:r.fmOw.0

ルチア「誰かが犠牲になれば、それを避ける事ができるのですか?」

ミーシャ「解四、それを代償とする事を認める。」


ならば誰が死ぬ?
誰が犠牲になる?

どう転んでも後味は悪くなるが、このまま全員死ぬのはごめんだ



ルチア「どうします?シスターアニェーゼ」

アニェーゼ「……」


アニェーゼはもう一度殲滅白書のシスター達を一瞥した

確かに彼女らには死ぬほど恨みがある。むしろ死んだのだから。


五和「ですが、彼女らのうち誰かを差し出して、私達が生き残るのも…」

アンジェレネ「……」


アニェーゼ「分かりました。死ぬのは一人でいいですか?」

ミーシャ「……」

アニェーゼ「だったら、アニェーゼ部隊の代表として私が犠牲になります!」
307 :1 [sage]:2010/08/22(日) 08:24:46.41 ID:r.fmOw.0

ルチア「アニェーゼ!」

アンジェレネ「そんな、シスターアニェーゼ!」

ミーシャ「承諾、あなたの申し出を受け入れましょう。では」


五和「待って下さい!」

ミーシャ「?」

五和「サーシャちゃんは私の友人です。ですから、サーシャちゃんを助けるためにも、ここは私が犠牲になるのが筋ってものでしょう。」

アニェーゼ「五和、何言ってやがんですか!サーシャだけじゃない、私の部隊全員の命も懸ってるんです。
ここは私が犠牲になるべきでしょう!」

ルチア「ならば、私がなりましょう。同じイギリス清教とは言えど、我々部隊の人間が助かるために
部外者の五和さんを犠牲にするわけにはいきません。五和さんがなるというのなら、私も犠牲になりましょう。」

アンジェレネ「じゃ、じゃあ私も!アニェーゼやルチアが犠牲になって死んだら、アニェーゼ部隊は終わりです!
私はそんなの嫌です!二人が居ない毎日なんて嫌です!だから!」

ルチア「アンジェレネ……」

アニェーゼ「ああもう、話がこじれてきたじゃないですか!」
308 :1 [sage]:2010/08/22(日) 08:26:10.10 ID:r.fmOw.0

五和「ですから、ここは私が!」

「小さなアンジェレネが勇気を出してんのに、私達がここで怖気づくわけにはいかないわ!私がなります!」

「だったら私だって!」

「いいえ、ここは私が!」

「じゃあ私がなります。」

「どうぞどうぞ」

「おい!」


もはや収集が付かなくなってしまっていた

殲滅白書のシスター達はポカーンとした顔で不思議なものでも見るかのような目で彼女らの様子を見ていた

それもそうだろう。なんで自分から進んで死にたがるのやら。

なんでアニェーゼ部隊の人間は、ここまで自分の命を犠牲にしようと思えるのやら
309 :1 [sage]:2010/08/22(日) 08:27:25.61 ID:r.fmOw.0

ミーシャ「……」


アニェーゼ「ここは私が犠牲になればいいんですよ!」

ルチア「あなただけに良い格好はさせませんよ!」

五和「私がなりますよ!確かにまだ上条さんにこ、こ、告白とかしてないのが悔やまれるけど…」

アンジェレネ「こ、こうなったら、ミーシャに決めてもらえばいいんじゃないですか!?」


アンジェレネの一言でその場の全員がミーシャの方に視線を集めた


全員「(じろっ)」

ミーシャ「(ビクッ!)」

アニェーゼ「神の力であるあなたの決定は、神の決定も同義。さあ、誰でも好きな娘を指名して下さい!」

五和「キャバクラじゃないんですから…」


ミーシャ「……」

アニェーゼ「……」

ミーシャ「……」

310 :1 [sage]:2010/08/22(日) 08:31:52.63 ID:r.fmOw.0

ミーシャ「…………………(くすっ)」


全員(鉄仮面が笑った…)



ミーシャ「私見、とても面白い解だった。あなた方の命は最期の審判まで預けておく」


そう言うと、ミーシャの黒曜石の様な翼がバラバラに砕け散り、遥か遠くの空へと消えていった

そして、翼を失ったサーシャが落下する


五和「!」


五和は誰よりも速く駆け出し、落下するサーシャを受け止めた


五和「サーシャちゃん!」

サーシャ「………い」

五和「サーシャちゃん!大丈夫ですか!?」

サーシャ「五和……無事…だったのです…ね…」


サーシャは安心した様な笑みを浮かべると、そのまま目を閉じた


五和「サーシャちゃん…?サーシャちゃん!サーシャちゃん!!!そんな、こんな結末なんて!サーシャちゃん!」(ぎゅっ!)

サーシャ「ぐえっ」

ルチア「あの、五和さん?キマってますよ?」

五和「サーシャちゃん!目を覚ましてください!」

サーシャ「ちょ、ギブ……ぐふっ」

五和「サーシャちゃあああああん!!!」

アニェーゼ「なるほど、犠牲はサーシャということですか」
311 :1 [sage]:2010/08/22(日) 08:36:18.85 ID:r.fmOw.0
【後日談】


サーシャ「第一の解答ですが、五和は本当に心配症ですね。」

五和「仕方ないじゃないですか、トラウマなんですから本当に。」

アニェーゼ「まあ良かったじゃねえですか。あれだけの戦いだったのに、こっちも相手も一人も死人が出なかったんですから。」

アンジェレネ「ほんと、奇跡ですよね。」

ルチア「生き返っただけでも主の復活レベルの奇跡なのですが。
結局、ミーシャは誰一人代償を取らずにどっか行ってしまいましたね。あれは一体何だったのでしょうか?」

オルソラ「その事でございますが、ガブリエルと言えば慈悲や受胎告知に見られる様な天啓、それから知恵の象徴でございます。
イメージ的には穏健な大天使ですが、一度だけ神罰として破壊を行った事がございますよね?」

ルチア「旧約聖書のソドムとゴモラですね。一夜にして都市も文明も全てを焼き尽くしてしまったと書いてありますが。」

オルソラ「ソドムとゴモラは背徳の街とされ、七つの大罪、主に色欲に溺れ、神様の怒りを買ってしまったのでございます。
そして、ガブリエルは神の意志を表す大天使ですから、神様の代わりに神罰を下したのでございます。」

ルチア「それと私達の例は、どうつながると?」

オルソラ「ガブリエルは復活を象徴する天使でもあり、また死を象徴する天使でもあります。
ですが、本来は最後の審判というものは、大天使のうち、まずはウリエルが冥界の門を開け、死者に審判を受けさせます。
そしてミカエルが魂の行き先に判決を下し、ガブリエルはその判決に従って終焉のラッパを吹き、死者を蘇らせ、神の国へ導くのです。」
312 :1 [sage]:2010/08/22(日) 08:39:13.16 ID:r.fmOw.0

オルソラ「ですから、私達の場合、正確には復活したとは言えないのではないでしょうか?
復活と言うよりは、蘇生という方が的確だと思うのでございます。」

ルチア「……?」

オルソラ「つまり私達の場合、ガブリエルは審判による判決無しに独断で復活させたという事になりますよね。
ですが、それはあり得ない事でございます。なぜなら、死者は冥界に送られ、冥界を司るウリエルの管轄になるのでございます。
そうなるとガブリエルは死者に対して干渉する事はできません。」



オルソラ「そして、ミカエルの審判は神の国へ行ける者と地獄へ堕ちるものを分けるのでございます。
しかし、私達の魂はあくまでも現世に蘇ったのでございますよね?」

ルチア「そうなりますね。」

オルソラ「と言う事はつまりです。ガブリエルは冥界へ行くはずだった私達の魂を、
その摂理に反して再び私達の肉体に戻したという事になるのでしょう。
ですから、復活ではなく蘇生と言った方が正しいのではないでしょうか?
ガブリエルは死を司る天使でもありますから、そのくらいの事は独断で出来るのでしょう。」
313 :1 [sage]:2010/08/22(日) 08:41:13.65 ID:r.fmOw.0

ルチア「アニェーゼやアンジェレネは炎で灰になりましたし、五和さんは心臓一突きでしたよ?」

オルソラ「おそらく大天使にとっての死とは、冥界に魂が送られたか、或いはまだ現世に魂が残っているかが判断基準となるのでしょう。
体が木っ端みじんになっても、魂さえそこにあれば彼らにとってはまだ生きているも同然なのだと思いますよ。」

ルチア「なんか無茶苦茶ですね。まあ仮にそうだとして、ガブリエルは私達に復活…いえ蘇生の代償を求めてきましたよね?」

オルソラ「あれはおそらく嘘でしょう。私達は大天使にからかわれたのでございます。」

ルチア「what!?」

オルソラ「考えてもみてください。本来、代償を要求するのは天使ではなく悪魔でございます。
私達人間ごときが大天使に対して払える代償などありましょうか?
大天使に対して偉そうに代償などと呼べるものなど、私達は持ち合わせてはいないのでございます。」

ルチア「よく考えてみれば、確かにそうかもしれませんね。じゃあ私達は本当にからかわれただけだと?」
314 :1 [sage]:2010/08/22(日) 08:43:22.40 ID:r.fmOw.0

オルソラ「正確には試されていたのでございましょう。先程のソドムとゴモラの例を思い出して下さい。
二つの都市と文明は、背徳によって滅ぼされました。それと同じように、私達の徳というものを試されていたのではないでしょうか?」

ルチア「つまり、私達が本当に神の摂理を覆してまで蘇生させるほどの価値があるかどうかということですか」

オルソラ「はい。要するに最後の審判の模擬テストで、問題作成者と試験官はガブリエルと言う事でございます。
もしもあの時、殲滅白書の誰かを差し出すから私達の命は助けてくれと答えていたら……」

ルチア「ソドムとゴモラの様に、イギリスの地図からロンドンが消えていた可能性もあるということですね……(ゾクッ)」

オルソラ「うふふ、大惨事でございますね♪まあ流石にそこまではしないと思いますが」

ルチア「笑い事じゃないですよ…」
315 :1 [sage]:2010/08/22(日) 08:46:04.48 ID:r.fmOw.0

サーシャ「それともう一つ、第一の質問ですが、なぜ再びガブリエルは私に宿ったのでしょうか?
エンゼルフォールの時は、魔術の影響で天界から人間界に堕天してしまったので、元の天界に帰るために私に憑依し、
術者を殺そうとしたと聞きました。」


サーシャ「しかし、今回はわざわざ自分から人間界に降りて私に憑依しましたよね?」

オルソラ「そうでございますね。これも四大元素の歪みが原因なのでございましょう。
結局は天界に帰っても歪みはそのままなのですよ。例えるなら、普通の幸福な家庭だったはずなのに、
今は父親は酒飲みの暴力亭主、母は家に他の男を家に連れ込んで、姉はヤンキー、兄は暴走族、弟は引きこもり、
ペットの犬にすら警戒されてるという状態で、家に帰っても居辛いという状況なのでございます。」

五和「もう少しマシな例えは無いんですか……?」

オルソラ「サーシャさんは、この四大元素の歪みを元に戻すための鍵の一人としてガブリエルに目を付けられたのではないでしょうか?」

サーシャ「第一の解答ですが、人のいや天使の家庭事情を私にどうしろと?」

オルソラ「これも運命なのでございますよ。」

アニェーゼ「まあ何と言うか、頑張ってください。」

316 :1 [sage]:2010/08/22(日) 08:48:24.09 ID:r.fmOw.0
【処刑塔】


ステイル「おや、来たかい。中に居るから。」


処刑塔の尋問部屋

そこは石造りの部屋で、イメージで言うと岩窟王モンテクリスト伯の独房の様な部屋である。

明かりは壁に設置された燭台のみ
部屋の中央には簡素な木の机が一つある

そしてサーシャから見て机を挟んだ向こう側に今回の事件の首謀者
殲滅白書のヴェロニカが居た

尋問による目立った外傷は無いが、顔は憔悴しきっており、白くて綺麗な肌も端正な顔立ちも、もはや見る影も無い
ステイルの話によると、役70時間近く一睡もしないままロープで椅子に縛り付けられているとか

唯一トイレの時のみ解放されるが、それ以外はずっと手足も動かせない状態で座ったまま尋問を受けるというのも
考えただけでゾッとする話だ
317 :1 [sage]:2010/08/22(日) 08:50:17.04 ID:r.fmOw.0

ヴェロニカ「……」

サーシャ「第一の解答ですが、ロシア成教側は今回の事件をあなたの独断であるという認識を示しています。
あなたの身勝手なテロ行為という扱いになっていますね。」

ヴェロニカ「……」

サーシャ「第一の質問ですが、なぜあなたは今回この仕事を引き受けたのですか?
ちなみに今は記録官は居ないので、あなたの発言は全て記録に残りません。」


ヴェロニカ「……あの人のためよ」

サーシャ「……あの人とは?」

ヴェロニカ「言わなくても分かるでしょ?私も元は彼女の部下だったんだから。」

サーシャ「……ワシリーザは元気ですか?」

ヴェロニカ「元気だったらこんな仕事してないわよ。」

サーシャ「そうですか…」

ヴェロニカ「ねえサーシャ、お願いだから戻ってきてくれない?もうあの人が悩んでるのを見るのは耐えられないわ。」

サーシャ「……」

ヴェロニカ「あなたの気持ちは分かるけど、でもあなただって、あの人が嫌いなわけじゃないでしょ?」

サーシャ「私は……」


がちゃっ


ステイル「まだ話の途中かい?」

サーシャ「いえ」

ステイル「そうか。サーシャ、君に話がある。最大主教からの大事な話だ。良いかな?」

サーシャ「……はい」
318 :1 [sage]:2010/08/22(日) 08:52:47.11 ID:r.fmOw.0

その夜



サーシャ「……」


サーシャは寮の最上階のテラスに居た

季節は10月の中ごろ
イギリスは基本的に日本よりも気温が低い。
9月の中旬を過ぎれば朝晩の冷え込みも強くなり、天気の良い日中でも薄手のコートが必要になる


サーシャは薄手のカーデガンを羽織り、ブランデーの大量に入った紅茶を両手で包む様に持ちながら月を眺めていた




例えどんなに離れていても、見ている月は同じたった一つの物
同じ気持ちで同じ月を見る事ができるなら、どんなに距離が離れていても、その人を近くに感じる事ができるのではないだろうか




などと、誰かに聞かれたら鼻で笑われそうであり、「時差があるから無理だろ」と冷静にツッコミを入れられそうな事を考えていた・

たぶん普段の自分なら同じような事を言いそうだ。

なのに、今になって何でこんな可笑しな話が自分の心を惹きつけるのだろう。

なぜこんなにも魅力的な話に聞こえてしまうのだろう。
319 :1 [sage]:2010/08/22(日) 08:57:22.01 ID:r.fmOw.0

夜風がサーシャの髪を軽く揺らす

前髪から時折垣間見える彼女の赤い瞳には、ぼんやりとした光を纏う月が映っている

ただそれだけで魅力的な絵になりそうなほどの神秘的な瞳だ


軽く髪を揺らす程度の風なのだが、それでもこの時季の屋上の夜風は、肌に纏わりつく冷気がある

こんなとこを誰かに見られたら、「こんな寒いのに、そんなとこで何をしてるのですか?」
と問われそうだ。差し詰めその答えは「月を見てるのです」くらいしか思い浮かばないが、
実際にそう答えたらどう思われるだろうか?風流な人間と思われるか、或いは変人と思われるか。



ルチア「寒くないのですか?」


早速来たようだ
なぜいつもこの人なのか?と疑問に思うが、実験してみようか


ルチア「涼むにしては少し寒すぎる気もしますが。」

サーシャ「第一の解答ですが、月を見ているのです。」

ルチア「月を?………そうですか。ご一緒しても良いですか?」

サーシャ「寒いですよ?」

ルチア「その時はサーシャに抱きついて暖を取りますよ。」

サーシャ「その答えは了承しかねますが、どうぞ。」


実験の結果は不明だが、どうやらこれで彼女も自分と同類と言う事になりそうだ

320 :1 [sage]:2010/08/22(日) 09:00:07.34 ID:r.fmOw.0

その晩、ルチアは寮の戸締りをしていた
一応、グループで分担しているのであり、屋上のテラスに来たのは戸締りを確認しに来たのであって偶然ではない。
まあ戸締りなどしなくとも、戦闘力のある修道女達の寮に忍び込んで狼藉を働く様な度胸のある人間が存在するのかどうかは甚だ疑問ではあるが、殲滅白書との戦いがあったのだから、その考えは戒めねばならないだろう。


偶然なのは、ここでサーシャを見かけた事であった

まず最初に思い浮かんだ言葉は「寒くないのか?」だ

ルチアは迷わずその問いを口にした

返ってきた言葉は「月を見ている」だった

普段なら、変り者ですね。そんなに月が好きなのですか?とまあそんな感想が浮かんでくるところだろう

だが、今回はちょっと違った
321 :1 [sage]:2010/08/22(日) 09:03:40.87 ID:r.fmOw.0

人工的な明かりの無いその部屋は、唯一月の光だけが差し込み、暗く青く神秘的な空間を形成している

まるであの時、そうサーシャいやミーシャが現れた時に似ている



月の光を受けたサーシャの髪は、淡く金色の光を帯びていた

こちらを向いた時に、僅かに前髪から覗く物憂げな赤い瞳

彼女の美しい金色の髪と同様に、
月の薄化粧に飾られた、青い夜の闇に浮かぶ白く透き通った肌


いっその事、背中に白い翼でも付いていた方が自然なんじゃないかと思えてしまう


西洋では月は人を惑わし狂気を誘う魔性があるとされており、太陽と同じく神秘的な意味を付加されているのだが
それをこれほど実感させられた事は今まで無かったかもしれない


月とは、これほど人を神秘的に魅せてしまうものなのかと、ルチアは改めて月に対する見方を変えさせられた

そう考えれば、こんな寒い夜でも月を眺めてみるのは良い事なのかもしれないなどと思えてしまうくらいに
322 :1 [sage]:2010/08/22(日) 09:07:25.35 ID:r.fmOw.0

ルチア「今夜の月はどうですか?」

サーシャ「第一の解答ですが、素晴らしい満月だと思います。」

ルチア「確かに生まれてからほぼ毎日見ているのに、この美しさはなぜか飽きが来ませんね。」


ルチアはサーシャの方を見た

何とも物憂げな表情で月を見上げるその顔は、
風流で満月を楽しむと言うよりも、かぐや姫の様に月という故郷に思いを馳せている様に見える


ルチア「シスターサーシャ、最近のあなたは、柔らかくなりましたね。」

サーシャ「第一の質問ですが、それは太ったという事ですか?」

ルチア「いえ、表情の話です。ここに来たばかりの時は、まるで仮面を被っている様でした。
無理をして自分の感情を隠しているみたいに。ですが、今のあなたは表情が豊かになったと感じています。」

サーシャ「第二の解答ですが、それはここにいる事が楽しいからでしょう。みなさんのおかげです。」

ルチア「いえ、あなたが溶け込もうとした努力の結果です。」

サーシャ「第三の解答ですが、皆さんが私を受け入れてくれたから努力できたのです。」

ルチア「じゃあ両方とも頑張ったという事にしておきましょう。」

サーシャ「そうですね。」


わざわざ平行線な議論をする様な話でも無い
323 :1 [sage]:2010/08/22(日) 09:11:00.74 ID:r.fmOw.0

ルチア「ところでシスターサーシャ、以前あなたに訪ねた事がありましたよね?」

サーシャ「そうでしたか?」

ルチア「ええ。ここに来て、ロシア成教を捨てた事を後悔していないかと」

サーシャ「……」


そう言われてみればそんな事もあったなと、今になって思い出した


ルチア「答えは見つかりましたか?」

サーシャ「……第一の解答ですが、はい…今なら答えられそうです。」


サーシャ「第二の解答ですが、ここに来た事に対する後悔はありません。この答えは変わらないでしょう。
ロシア成教を捨てた事への後悔も、たぶん無いと思います。どこに居ても、どんな形でも自分の信仰を貫けば良いのですから。」

ルチア「そうですか…では、これからも」

サーシャ「ですが、第三の解答ですが、ある人を苦しめてしまった事は後悔しています。」

ルチア「……」

サーシャ「あんなふざけた服を着せてセクハラしてくる様な変態馬鹿上司でしたが、それでも私はあの人が、
ワシリーサが大切な上司だったと思います。いえ、ただの上司じゃなくて、
皆さんと同じように心から信頼できる大切な人だったと思います。」

ルチア「………答えを見つけられたという事は、やはりあなたは変ったという事ですね。」

サーシャ「第一の質問ですが、私はいい方向に変れたのでしょうか?」

ルチア「ええ、私もサーシャを見習わなければなりません。」


そう言いながら微笑むルチア

しかし、どこか寂しそうな頬笑みだった…
324 :1 [sage]:2010/08/22(日) 09:13:16.72 ID:r.fmOw.0

サーシャ「第一の質問ですが……ルチア、少し寒くないですか?」

ルチア「寒いのは最初から覚悟の上でしょう」

サーシャ「急に寒くなってきたのです。」


そういうと、サーシャはルチアに寄り添い、体を預けた
ルチアは何も言わず、サーシャの細い肩を抱いた


とても温かかった

あの日と同じように、不安な心がやすらいでいく

普段は厳しいルチアだが、アンジェレネもきっとこの温かさががあるからルチアに懐くのだろう

五和は妹が欲しかったと言っていたが、サーシャはどちらかと言えば姉が欲しいと思った



サーシャ「一つ聞いても良いですか?」
325 :1 [sage]:2010/08/22(日) 09:15:50.24 ID:r.fmOw.0

ルチア「何ですか?」

サーシャ「第一の質問ですが、例えどんなに離れていても、見ている月は同じたった一つの物です。
同じ気持ちで同じ月を見る事ができるなら、どんなに距離が離れていても、その人を近くに感じる事はできると思いますか?」

ルチア「素敵な話だとは思いますが、時差と言う物がありますし、位置によって月の見え方も変ってくるでしょうから。
どうなんでしょうね?」

サーシャ「そうですよね…」


ルチア「ですが、想いは離れていても通じるものはあると思いますよ。」

サーシャ「…?」

ルチア「私達十字教徒は、世界中色んな所へ布教し、教えを広めてきました。
上の人間は勢力拡大の意図もあったのでしょうが、実際に現地で布教活動を行う宣教師やシスター達は、
純粋に自分達の信じる物、矜持、或いは想いというものを遠く離れた国の人達とも共有したかったのだと思います。」
326 :1 [sage]:2010/08/22(日) 09:18:06.53 ID:r.fmOw.0

ルチア「離れていても想いは繋がる。祈る事でそれは紡がれる。だから私達十字教は教えを広める事ができたのですから。」


サーシャ「その想いは、いつか消えてしまう事はないのですか?」

ルチア「自分が消そうとしなければ、いつまで消える事はありません。だから2000年もの時を超えて十字教は今も信仰されているのです。」

サーシャ「そうですか…参考になります…」


そう言うと、サーシャはさらに距離を縮めてルチアに身を寄せた

いつまでも消えない様に、初めてここに来た時の心細さや不安から救ってくれた温かさを忘れない様に




きっとこれが最後になるかもしれないから…





327 :1 [sage]:2010/08/22(日) 09:21:46.05 ID:r.fmOw.0

五和「いやー今日も良い天気ですねー。」

サーシャ「第一の解答ですが、今日は運よく温かいみたいですね。
10月以降はサマータイムが終わるのでかなり寒くなるのですが、俺の二次創作に常識は通用しねえって奴ですね。」

五和「はい?」

サーシャ「第二の解答ですが、これが最後のメタ発言です。」


二人は例の時計塔の秘密の部屋に来ていた

あんな悲劇があった後で、実は別の部屋にはまだ大量のサーシャの血痕が残っているのだが、
それでもまたこうして二人で時計塔最上階から素晴らしい景色を見られる事が嬉しかった。


サーシャ「第一の解答ですが五和、膝枕してください。」

五和「え?あ、はい。良いですよ。」


そう言うと、五和は長椅子に腰かけ、膝をぽんぽんと叩いた

サーシャは椅子の上で横になり、五和の柔らかい膝に頭を乗せる
328 :1 [sage]:2010/08/22(日) 09:24:55.78 ID:r.fmOw.0

サーシャ「第二の解答ですが、やはり五和の膝枕は良いですね。五和は膝枕の天才です。」

五和「うれしい様なうれしくない様な…」

サーシャ「一家に一つは欲しい枕です。」

五和「私の体は一つしかありませんけどね。」

サーシャ「第三の解答ですが、膝だけで良いですよ。」

五和「私って膝以外に魅力無いんですか……ショックです……」

サーシャ「第四の解答ですが、五和の魅力を知ってるのは私だけで良いのですよ。」

五和「サーシャちゃん、何カワイイ事言ってくれてるんですかー?(ぷにぷに)」

サーシャ「つつかないでください」

五和「赤ちゃんみたいなもち肌ですね。どんなお手入れをしたらこんな肌になるんですか?」

サーシャ「第五の解答ですが、手入れなんて面倒な事してませんよ。」

五和「世の女性を敵に回しそうな発言ですね。悔しいのでもっとつついちゃいます(ぷにぷにぷに)」

サーシャ「うぐ……」

しっとりしたマシュマロの様な感覚を堪能する五和

集中攻撃を受けた部分の肌だけ、まるで蚊に刺された後の様に赤くなっている
329 :1 [sage]:2010/08/22(日) 09:28:28.18 ID:r.fmOw.0

五和「そう言えば、あの後連行された殲滅白書の人達ってどうなったんでしょうかね?」

サーシャ「気になりますか?」

五和「それはまあ自分も直接関わった事ですから。」

サーシャ「第一の解答ですが、彼女等は処刑塔と送られました。ですから、文字通り全員処刑」

五和「えっ!?」

サーシャ「と言う事にはならなかったのですが」

五和「紛らわしい言い方しないでください!」

サーシャ「全員ロシアへ返還される事になりました。」

五和「そうなんですか。でもよく無条件で返還なんてできましたね。内部から不満の声は無かったのでしょうか?」

サーシャ「第二の解答ですが、無条件で返還されるわけではありません。
返還の見返りとして、ロシアとイギリスの間で不戦条約が結ばれる事になりました。」


330 :1 [sage]:2010/08/22(日) 09:31:13.38 ID:r.fmOw.0

サーシャ「ローマ及びロシアと学園都市の間で戦争が始まろうとしている状況で、
イギリスは学園都市との間に協力関係がありますよね?公にはされていませんが、
それがあってかイギリスは今現在戦争における立ち場を示さねばならない状況になっています。
戦争が始まれば、イギリスはロシア、ローマ、フランスと敵対する事になるでしょう。
その可能性を一つでも排除しておくために、ロシアとの間で不可侵条約が締結されるという事です。」


サーシャ「第三の解答ですが、不可侵条約とは言っても、一方的にロシアの方がイギリスに対して攻撃できないというものですけどね。」

五和「ロシアの方もよくその条件を呑みましたね。」

サーシャ「……」

五和「……サーシャちゃん?」

サーシャ「第四の解答ですが、実は、ロシアがその条件を呑んだのには理由があるのです…」

五和「何ですか?」


サーシャ「殲滅白書ヴェロニカ部隊の返還。そして同時にサーシャ・クロイツェフの身柄をロシアに引き渡すことです…」


331 :1 [sage]:2010/08/22(日) 09:34:54.57 ID:r.fmOw.0

五和「え……?」


耳を疑った
まるで悪い冗談でも聞いてるかのようだ


サーシャ「第五の解答ですが、どうやら今回の件も含め、大天使の力を身に宿した私を手放したく無いようです。
ロシアだけではありません。ローマも私の身柄に興味があるみたいで、事はローマとロシアの同盟関係の存続にまで発展しているのです。」

五和「そんな…何で……」


理不尽だった

サーシャの言葉は、自分との別れを意味する

しかし、それが政治的な理由である事が納得できなかった

どうしてそんな事に巻き込まれなくちゃならないのかと


サーシャ「第六の解答ですが、イギリス清教にとってもこうせざるを得ないのです。」





サーシャ「残念ですが、お別れしなければならないみたいです…」







332 :1 [sage]:2010/08/22(日) 09:38:52.45 ID:r.fmOw.0

五和「そうですか…」

サーシャ「五和…?」

五和「もちろん残念ですし、悲しいですよ。でも、例えサーシャちゃんが遠くへ行ってしまったとしても、
私達が友達である事には変り無いじゃないですか。」

サーシャ「……」

五和「もう、そんな顔しないでください。私達は、あの戦いで生き残ったんですよ?
生きている限り、また会えるチャンスはいくらでもあるじゃないですか♪」

サーシャ「……そうですね、あなたの言う通りです。」

五和「ふふ、さあ!これからどこへ行きますか?最後ですから思い出作りのために思いっきり遊びましょう!」

サーシャ「第一の解答ですが、安心しました。五和、やはりあなたは明るい方が似合ってますね。」

五和「当然じゃないですか。さ、時間がもったいないですよ?早く行きましょう!」


お別れは辛い
勿論出来る事なら離れ離れになんてなりたくない


でも、これはもう決まった事だ


泣いたって仕方無い。だから、せめて最後くらいは笑顔でいよう。


最高の思い出作りには、湿っぽい涙なんて邪魔になるから


333 :1 [sage]:2010/08/22(日) 09:41:44.86 ID:r.fmOw.0

五和「サーシャちゃん!早く早く!」


サーシャをせかす五和

さあ、これからどこへ行こうか?

どこでも良い。どこだってサーシャとなら良い思い出が作れる気がするから……












やっぱり無理だ










サーシャ「五和……?」


五和は突然立ち止まると、振り向き、サーシャの方へ駆け寄って来た

そして、力いっぱいサーシャは抱きしめた


五和「ごめん…やっぱ無理です…」


いつもの様に可愛さから思わず抱きしめてしまうのとは違う

まるで、駄々をこねる子供の様に

どこかへ行ってしまいそうなサーシャを引き留めようとするかの様に
334 :1 [sage]:2010/08/22(日) 09:45:50.37 ID:r.fmOw.0

五和「無理ですよ…!こんなの!こんな別れ方……嫌に決まってるじゃないですか……!!」


抱きつきながら泣きじゃくる五和


そう言えば、あの時もそうだった


サーシャ「また……泣かせてしまいましたね……約束したのに…ごめんなさい…」

五和「なんでサーシャちゃんが謝るんですか!謝るくらいならどこにも行かないでください!!」



サーシャ「五和……以前も言いましたが、やはりあなたの友人になれて良かったです…」


サーシャはそう言うと、自分のために泣いてくれる親友を抱きしめ反した





どんなに泣いても

どんなに足掻いても

これはもう決まった事なのだ……









335 :1 [sage]:2010/08/22(日) 09:47:54.53 ID:r.fmOw.0

【それから】



まさか、またこの服に身を通す事になるとは思わなかった

全ての元凶である拘束衣

だが、この拘束衣のおかげでみんなに出会えたのだ
その点については、この拘束衣に感謝しよう






なんて思えるわけは無いのだが






神裂
あなたの洗濯機に対する友情と信頼は忘れません。色々とお世話になりました。
でもあの梅干しは正直私の口には合いません。

オルソラ
いつも笑顔で天然でしたね。私もよく天然だと言われますが、あなたには敵いません。
料理は凄く美味しかったです。でもオリーブオイルで作ったガムを食べさせられた時は
、本当に死ぬかと思いました。


アンジェレネ
ルチアの言う事をしっかり聞いて、立派なシスターになってください。あなたならきっとなれます。
でも、甘いものは控えた方が良いですよ?私も人の事は言えませんが。
あと、覚えがないのですが、キスって何の話ですか?
336 :1 [sage]:2010/08/22(日) 09:53:13.60 ID:r.fmOw.0

アニェーゼ
殲滅白書との戦争では美味しいとこを持ってかれました。
いつもセクハラされていた覚えがありますが、たまに見せるあなたの強さには尊敬しています。
あなたのおかげで信頼とは何かを理解することができました。
別れ際に無理矢理253人目のアニェーゼ部隊に加入させられてしまいましたけど、雑用係とか性的な役割とかそういうのはやめてくださいね。


ルチア
結局最後までお姉様とは呼ばせてくれませんでしたね。
でも、私にとっては今でも頼りになる姉の様な存在です。あなたを見るとつい甘えたくなってしまうくらいです。
あと、キスって何の話ですか?


シェリー
結局、失敗作と言いつつも壊さないでおいてくれましたね。
正直うれしかったです。ミルクティーも良いものだと思いますよ?


五和
今でもあなたは私の大切な友達です

ずっとずっと何があっても友達です


だから、あなたがピンチの時は、例えどんなに遠くに居てもあなたの元に駆けつけますから


今度こそ、もうあなたを悲しませたりはしないと約束します






サーシャはイギリス清教での思い出を胸にしまい、扉を開けた

ワシリーサの執務室だ

全ての始まりの場所であり、そして新たな始まりの場所
337 :1 [sage]:2010/08/22(日) 09:55:38.31 ID:r.fmOw.0

サーシャ「第一の解答ですが、ただいま戻りました。勝手にあなたの下を去った事を謝罪します。
つきましては、不服ではありますがどんな懲罰も受ける覚悟はできています。」

ワシリーサ「……」

サーシャ「あの…ワシリーサ?」

ワシリーサ「……あはッ…♪」








ワシリーサ「いひゃはははははははははははははははッッッ!!ダメだ、もォ抑えらんねェよ!
サーシャたんの写真や抱き枕だけじゃ止まンねェんだよォ! ぎゃはははは!全部ぶっ壊してェ!
片っ端からなぎ払いてェ!こんなモンで私が満足すると思ってるよォな連中も、サーシャたんを囲って「幸せ」っつーモンを
手に入れている連中も!一人残さず!一人残さずゥ!ぎゃはははははははははははははははははははは!!!!!!!!」

サーシャ「おい」(ゴンッ!)

ワシリーサ「おゴッ!…この……この懐かしい金槌の感触は…」

サーシャ「繰り返しますが、ただいま戻r」

ワシリーザ「サーシャちゃん…サーシャちゃんサーシャちゃあああああああああああん!!!!!!!!」(ドスッ!)
338 :1 [sage]:2010/08/22(日) 09:59:00.71 ID:r.fmOw.0

抱きつくと言うよりはタックルに近い


サーシャ「[ピーーー]気か」(ゴン!)

ワシリーサ「ああこの感触が懐かしい!会いたかったよサーシャちゃん!ごめんねサーシャちゃん!もう絶対に離さないんだからね!」


相変わらずな上司の反応
だが、どこか懐かしくも感じる


サーシャ「まったく、あなたは私が居ないとダメですね……」


離れてこそ分かる大切さというものもあるのだなとサーシャは思った

もしもそれが正しいとすれば、イギリス清教の仲間達は自分の事を忘れたりはしないだろうし、
自分もいつまでも彼女達の事を大切に思えるだろう。


遠く離れていても、同じ想いで繋がれるのだから。


サーシャは子供みたいに泣きつく上司の頭を、やれやれとため息を吐きながら優しく撫でた



サーシャ「亡命します」【完】


339 :1 [sage]:2010/08/22(日) 10:02:18.44 ID:r.fmOw.0

【おまけ】




サーシャ「第一の解答ですが、今まで離脱していた分を取り戻すために頑張らないとなりませんね」

ワシリーサ「ああ、えーっとね、実はその事についてなんだけど……」


ワシリーサは一枚の紙をサーシャに見せた


ウォ○ト・ディ○ニーカンパニーより
○○教会宛て

あなた方が当社のマスコットキャラクターである
ミッ○ーマ○スを無断で使用した事を確認しました
よって、知的財産の使用許諾料及び無断使用による
知的財産権への侵害に対する損害賠償として
10000000000ドルを請求します

ミ○キー「ハハッ!愉快に素敵に払いやがれってンだよォ!」


サーシャ「……」

ワシリーサ「というわけで、実は殲滅白書の存続自体が崖っぷちなのでした!テヘッ☆」

サーシャ「……」

ワシリーサ「あれー?サーシャちゃんどうしたの?どうしてそんなに眉間に皺が寄ってるの?
青筋がたってるよ?ほら、スマイルスマイル♪かわいいお顔が台無しよ?」

サーシャ「……亡命します」

ワシリーサ「え?」

サーシャ「亡命します」

ワシリーサ「え!?ちょっ!サーシャちゃああああああああん!!!」


【つづく?】


340 :1 :2010/08/22(日) 10:05:54.71 ID:r.fmOw.0
以上で完結となります
ミスが多かったり読みづらい部分やツッコミ所が多かったとは思いますが
それでも最後まで読んで下さった10万3000人の皆さまに感謝します。本当にありがとうございました。

さて、思ったよりもレスが余ってしまったので、ここでこれを読んでくださった皆様に、
今後の主人公サーシャの冒険に関する選択肢を提示したいと思います


A:イギリスにUターン(新たなる光のメンバー及び上条さんが出てきます)

B:学園都市の暗部に堕ちて約1兆円の負債を返済するために働く(時系列など気にしない)

C;もういいからこのまま落とせよ

D:騎士団長×アックア(股間のフルンティングとソールロムでアッースカロン。見事な名剣である/////)

E:一方通行が常盤台女子寮の管理人になるそうです(なンだここは?老人ホームかァ?)

A〜Cの中から選択してください
A〜Cの中から選択してください
大事なことなので二回言いました

341 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/22(日) 10:15:54.93 ID:Ee1QIYY0
乙乙!面白かった!
Bが見たい
342 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/22(日) 10:16:33.04 ID:jtdBxUAO
>>1 に惜しみない拍手(乙)を送るじぇい
(; _ ;)/~~
343 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/22(日) 10:22:43.01 ID:jtdBxUAO
しまった…選ぶのを忘れてた
「A」を読みたい(できれば「E」をry)
344 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/22(日) 10:37:40.17 ID:1IcRoLMo
力作乙乙

D!D!D!
345 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/22(日) 10:51:56.85 ID:GIKC9iso
EとBで!
346 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/22(日) 10:57:39.91 ID:JXZ3SQDO
Aをこのスレでやって、BDEをスレ立て
347 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/22(日) 12:54:41.27 ID:Zj2mRIso
乙。これは良作だったな。

Aかな。
348 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/22(日) 13:16:22.82 ID:rK309z.o


Aで
349 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/22(日) 13:33:49.30 ID:zgsA7gQo
おつおつ!楽しかった。

あぁ、そういうことか。
A→B→D→E→Cの順で頼む
350 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/23(月) 17:49:26.83 ID:R0Djw2DO
乙! よかったよ。Aで
351 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/24(火) 12:02:46.85 ID:BbEAdJoo
DだNA
352 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/25(水) 01:45:29.07 ID:7oJaGNko
E

Eなら今までのとあんまり被らないから期待できそうだ
353 :サケ?シャケ? [sage]:2010/08/26(木) 01:54:19.99 ID:NT7sJKE0
お久しぶりです

みなさんの選択の結果、Dの「騎士団長×アックア」に決定しました

それでは、漢と漢の戦いをお楽しみください
354 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/26(木) 01:57:06.63 ID:NT7sJKE0
名前消すの忘れてた

【騎士団長×アックア】


騎士団長「見よ、これが私のフルンティングだ」

騎士団長「貴様が出て行ってからの10年がここにある。もはやドーバー海峡で貴様に昇天させられたころの私ではない」

アックア「ほう、立派な名剣である/////」

アックア「ならば水速移動だ」

騎士団長「移動速度!何者にも追いつけない腰の動きだ。貴様の動きは見えている」

アックア「ぬう!」

騎士団長「武具重量!我が名剣♂は絶大な破壊力を生み出す」

アックア「ならばこれならどうであるか!」

騎士団長「切断威力!無駄だ!我が名剣♂はあらゆるものを切り裂く!」

アックア「私のアスカロンは竜をもイカせる名剣♂」

騎士団長「耐久硬度!並みの性技で私をイカせられると思うな!貴様のは所詮バカでかいだけだ!」

騎士団長「そして射○距離!何者も私の一撃からは逃れられんぞ!」

アックア「だが、貴様が一度に使える技は一度だけ!くらうがいい!」
355 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/26(木) 02:00:15.19 ID:9c9.1xso
どうしてこうなった
356 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/26(木) 02:00:23.10 ID:NT7sJKE0

騎士団長「ソーロルム術式だ!あらゆる快感をゼロにする!」

アックア「ふっ、ふはははは」

騎士団長「どうした?もう諦めたか?」

騎士団長「ならば一撃で終わらせてやる!」

アックア「見よ!アスカロンの中に隠れたもう一振りのこの剣を」

騎士団長「なにッ!!避けきれん!!」

アックア「名剣♂の中のもう一つの名剣だ♂」

騎士団長「アッースカロンッー!!」



騎士団長「ふっ……私の負けだウィリアム。あの時と同じ、また不意打ちで決まってしまったな/////」

















フロリス「第三王女などもはやどうでもいい。私はお前が欲しいのである/////……なんだこれ?
しかも日本語だし、日本人ってのは変った本を読むんだね」(ポイッ)


騎士団長×アックアの本を投げ捨てたフロリス


フロリス「ああそうそう、Aに決まったから」
357 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/26(木) 02:04:01.00 ID:NT7sJKE0

フロリス「ただいまー、何とか見つからずに運んでこれたわ」

ベイロープ「おかえり。オリジナルは?」

フロリス「この中よ」


フロリスはアタッシュケースを前に突き出した
大船の鞄(スキーズブラズニル)だ


ランシス「ス、スキーズブラズニルって…いひゃっ、いうのは、ほ、ほく、北欧神話の、ふ、ひゃめ、くすぐったい、ぐぐれ」

ベイロープ「無理するなランシス。試作品の調子はどう?」

フロリス「せいぜい完成予定の6割ってとこかしら?ロンドンに着くまでには転移もちゃんとできるように調整しないとね」

レッサー「いよいよ新たなイギリスが始まるってわけですね。オラわくわくすっぞ」

フロリス「ああそうそう、ついでにこんなのも拾ったんだけど…」


ひょいっ



サーシャ「……」(ブラーン)



レッサー「……首根っこ掴んで猫みたいな持ち方してますけど、私には猫には見えませんね」
358 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/26(木) 02:07:45.27 ID:NT7sJKE0

ランシス「ど、どうみても、ゆうかい、あひゃっ」

ベイロープ「どこで拾って来たんだよそんなの…ってかなんつー格好してんだよそれ」

フロリス「いやー、オリジナルを運んでる最中に拾ったんだけどさ。可愛かったからお持ち帰りしちゃった」

レッサー「新たなる光で唯一の常識人であるフロリスが誘拐なんて愚行を犯すとは。もうこのチームは終わりですね…」

ベイロープ「おい、それは私が非常識人だって言いたいのか?」(ガシッ)

レッサー「いだだっ!尻を鷲掴みにしないでください!割れちゃうじゃないですか!」

ランシス「セリフ、かんが、えんの、ひゃうっ、めんどくせ、あひっ」

フロリス「それがさー、この子たぶん一般人じゃないと思うのよね」

レッサー「どういう事ですか?ちょっ、私の美尻がつぶれちゃう!!」

フロリス「ほら、この子の所持品を見てよ」(ゆさゆさ)


首根っこを掴みながら乱暴にサーシャを上下に振るフロリス



ガラガラ!ガシャン!



するとサーシャの持っている拷問用霊装が床に散らばった


ベイロープ「これは…イギリス清教の拷問霊装?」

レッサー「と言う事は、この娘は必要悪の教会の……まずいですよこりゃ」
359 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/26(木) 02:10:21.91 ID:NT7sJKE0

フロリス「ところがどっこい、私も最初はそう思ったんだけど、この首輪の内側を調べると」(グイッ)

サーシャ「ぐえ」

ベイロープ「もうちょっと優しくやってあげて」

フロリス「ほら、これ八端十字架よ」

レッサー「まさかのロシア成教ですか?」

ランシス「でも、殲滅はく、しょと、イギリス、清教との、間、で、小規模な戦争が。あった、もうむり…」

フロリス「そうなのよね。この間英露条約が締結されたばかりだし、
ロシア成教の人間が堂々とイギリス国内を闊歩してるって状況は考えにくいのよ。」

ベイロープ「スパイにしたってこの格好じゃあねぇ」

レッサー「結局のところ、なんなんですかこれ?」

全員「じーっ」


これとかそれとか言われてぞんざいな扱いを受けているサーシャに視線が集まる


サーシャ「うーん…」

レッサー「おっ!お目覚めですか?」

サーシャ「あ……」

ベイロープ「ああ、言いたい事は分かる。だが私らの正体やここがどこかを聞く前に、まずはアンタが何者なのかを話してれ」

サーシャ「……」

ベイロープ「……」

サーシャ「……」

ベイロープ「……」



サーシャ「……zzz」

ベイロープ「寝るな!」

ランシス「wwwwwwwwwwww」
360 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/26(木) 02:14:28.70 ID:NT7sJKE0

【サーシャ「亡命します」U】

※注意
オリジナル設定や拡大解釈が多分に含まれています
原作設定はそげぶされています
今回のストーリーは原作の17巻と18巻が中心となっているので、そちらに目を通しておかないと話が分からないかもしれません
もう一度注意しますがオリジナル設定MAXです


サーシャ「第一の解答ですが、そう言う事です」

レッサー「なるほど」

フロリス「いや、オリジナル設定がどうとか原作がとかそんな事は聞いてないの。アンタが一体何者で、何でここに居るのかを聞きたいのよ」

ランシス「ぐぐれwwww」

サーシャ「第二の解答ですが、私はロシア成教殲滅白書に所属していたサーシャ・クロイツェフです」

フロリス「していた?」

サーシャ「第三の解答ですが、亡命してきました。もうあんな上司は嫌です。なんなんですかミ○キーって!」

ベイロープ「亡命とはそりゃまたなんとまあ…」

レッサー「殲滅白書に追われてイギリスまで逃げてきて生き倒れって感じですか?」

サーシャ「第四の解答ですが、だいたいそんな感じです。実は二回目の亡命なので、殲滅白書の追撃もかなり厳しかったのです。
”またお前かwwwwwwいい加減にしろこの露出狂wwwwww”とか言ってましたし。好きでこんなバカみたいな恰好してるわけじゃのに」

ランシス「wwwwwwwwww」
361 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/26(木) 02:16:20.96 ID:NT7sJKE0

ランシス「wwwwwwwwww」

サーシャ「第一の質問ですが、この人は何でこんなトリップ状態なのですか?」

レッサー「ランシスは生命力を魔翌力に変換する過程で、異様なくすぐったさに襲われるという病気なんですよ。
いや病気かどうかは知りませんけど」

サーシャ「やめたらいいのでは?別に今は戦闘中じゃないんですから」

ランシス「お前頭良いな」(キリッ)

ベイロープ「やめられたのかそれ」

フロリス「ダメだこのチーム…」
362 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/26(木) 02:17:42.17 ID:NT7sJKE0

ベイロープ「ねえ」

サーシャ「はい……!!?」


ドゴン!!


突然ベイロープが槍でサーシャを攻撃してきた

サーシャは辛うじてそれを避け、代わりにサーシャの座っていた木製の椅子が槍の直撃を食らってバラバラに砕けた


ベイロープ「へえ、殲滅白書でも閑職ってわけじゃなさそうね」

レッサー「ちょっ、ベイロープがご乱心ですよフロリス!」

フロリス「いきなり何やってんだよ、ほら大丈夫?」

サーシャ「あ、はい…」

フロリスは、唖然として尻もちをついたままのサーシャに手を差し出した


ベイロープ「ねえ、あなた亡命しにきたのよね?」

サーシャ「そうですが」

ベイロープ「行き先は?」

サーシャ「第一の解答ですが、ロンドンです」

ベイロープ「そう、じゃあ取引しない?私達はあなたがロンドンに辿り着くために協力する。
その代わり、あなたは私達の目的のために働く。悪い話じゃないと思うけど?」
363 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/26(木) 02:19:28.44 ID:NT7sJKE0

フロリス「確かに、今は実力のある魔術師が一人でも多く欲しいとこだけど…でも、必要悪の教会から手先の可能性も無いとは言えないし」

レッサー「スパイですか?わざとロシアっぽく見せて油断させようと」

全員「じーっ」


全員でもう一度サーシャを観察する


サーシャ「……?」

フロリス「ないわね」

ベイロープ「そうだね」

レッサー「ないない」

ランシス「ねえよwwwwww」

サーシャ「あの、第一の質問ですが、何を根拠に?」

レッサー「いくらなんでもその格好は無いですよ」

全員「うん」

サーシャ「おい!」


というわけで、新たなる光に新しい仲間が加わりました

364 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/26(木) 02:20:43.62 ID:NT7sJKE0

サーシャ「どうでしょうか?」

フロリス「おっ、似合うじゃん」


サーシャは新たなる光のメンバーと同じ、ラクロスの様なユニフォームに着替えた

ちなみにサーシャの格好は、青のスカートに黒いスパッツ、上は彼女等と同じジャケットだが、
フード付きの特別仕様で、サーシャは頭からスッポリとフードを被っている


フロリス「いやーやっぱ拾ってきて正解だったかな♪」(ぎゅっ、すりすり)

サーシャ「あの…」

レッサー「ベイロープ、フロリスがそっちの道へ走ろうとしてますよ?」

ベイロープ「ああ、次私ね!」

レッサー「ええっ!」

サーシャ「解せぬ」
365 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/26(木) 02:23:58.73 ID:NT7sJKE0

レッサー「はいちゅうもーく!みなさんちゅうもくですよー!」

ランシス「仕切んなカス」

レッサー「ランシスの口調が掴めないという問題は置いておきましょう。私達はついに念願のブツを手に入れたわけですが」

サーシャ「第一の質問ですが、念願のブツって何ですか?あと、なぜ私はあなたの膝の上に座らされているのですか?」

フロリス「そうだな……話してもいいかな?あと私は人形を膝の上に乗せるが好きなんだ」

サーシャ「人形じゃねえよ」

ベイロープ「ちなみに今ここはエディンバラなわけだけど、私達はあるものをエディンバラ城で発掘したわけよ」

サーシャ「あるもの?」

ベイロープ「そう。この英国大陸を統べるあるもの。清教派、王室派、騎士派の三派閥を束ねる象徴と言えば?」

サーシャ「……第一の解答ですが、カーテナですか?」

ベイロープ「ピンポン♪」

サーシャ「第二の質問ですが、カーテナは現在、クイーンレグナント(英国女王)の手にあるはずですが、発掘したとはいったい…?」

ベイロープ「女王の持つカーテナはセカンドよ。私達が発掘したのはカーテナ・オリジナル。失われた本物の天使長の霊装なのよ」
366 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/26(木) 02:28:00.68 ID:NT7sJKE0

フロリス「記録や文献を漁りつくしてなんとかエディンバラ城にあるという事までは掴んだんだけどさ。
さすがに英国最大にして最重要の霊装なだけあって中々発見できなかったわけよ」

レッサー「ところがですね、サーシャはウエストミンスターの女子寮で清教派のシスターと殲滅白書との間で抗争があった事を知ってますか?」

サーシャ「はい」


知ってるも何も当事者だ
むしろ自分がその原因となったのだから


レッサー「ちょうどその戦争が起きてる時に、エディンバラ城内部で爆発的な魔翌力の反応があったわけですよ。
もうテレズマとかそういうレベルじゃないですよ?今まで見た事の無いくらいに巨大な魔翌力の反応があったわけです」

サーシャ「……」


思い当たる節が一つある

あの時にサーシャが使用した偽物の王剣、カーテナ・イミテーション

しかし偽物の剣とは言え、使った力は本物のカーテナの力である

もしかしたら、そのカーテナの力にオリジナルの方が何らかの反応を示したのかもしれない



その魔翌力を頼りに発掘を行ったら本当に出てきやがったんですよと言いながら、レッサーは鞄を持ちあげた

おそらく、その中にカーテナ・オリジナルが入っているのだろう


サーシャ「それで、第三の質問ですが、そんなものを発掘してどうするつもりですか?
確かに骨董マニアには高く売れそうですけど、はっきり言ってそんな次元の話じゃ済まないくらいの霊装ですよ?」

フロリス「そう、私達はそんな次元の話じゃ済まない事をするのが目的なのよ。」

サーシャ「……」

フロリス「王家の人間がオリジナルを手にすれば、女王が持つセカンドの力はほぼ失われる。
つまり、カーテナ・オリジナルを持つ王家の人間が新たな英国の統治者となるの」
367 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/26(木) 02:31:56.19 ID:NT7sJKE0

サーシャ「王室派は騎士派に強く清教派に弱い。その三竦みを根底から崩す事になりますよ?」

フロリス「まあそうなるね」

レッサー「もう言わなくても分かりますよね?」



レッサー「イギリスは変わる。王室派の第二王女と騎士派によるクーデターでね」




サーシャ「第一の質問ですが、なぜあなた方はそんな事を?」

ベイロープ「簡潔に言えば、強い英国の復活かしら?分かるでしょ?今の英国の不抜けた現状と危機を」


ランシス「かつての英国の立ち場は、アジアで言う日本と同じ、ヨーロッパにおける窓口的な存在だったの。
第二次世界大戦までは、清教派、騎士派、王室派、そしてそれらを統べるカーテナを中心とした大英帝国の体制は、
英国国内だけに留まらずヨーロッパ全土を席捲していたの。あのローマやロシア成教も手が出せないくらいにね。」

ランシス「だけど、戦後になってからは一変して英国の力は衰退したわ。大英帝国は領土を全て手放す羽目になったし、
ヨーロッパにおける影響力も低下。通貨統合の流れや、ECSCとかECCとかの旧ヨーロッパ共同体の形成を無視できなくなった。
つまり、かつての強い英国は、ヨーロッパにおける覇者では無くなったという事なの。ポンド切り下げによる経済成長の低迷もその一因ね。」
368 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/26(木) 02:32:27.61 ID:NT7sJKE0
ランシス「英国が衰退する原因となった第二次世界大戦の裏に、イギリス清教の影響力を疎んじていたローマ正教の影があったのかもしれないわね」

サーシャ「しかし、イタリアは敗戦国では?」

ランシス「ローマ、いえバチカンにとってはイタリアなんてどうでも良いのよ。バチカンの影響力はイタリアの経済力や軍事力に依存してるんじゃなくて、その力は世界中のローマ正教徒の数にあるわけだから。むしろイタリアの方がバチカンを無視する事ができないのよ」

サーシャ「1926年にラテラノ条約が結ばれるまで、イタリア政府と教皇庁の仲はずっと悪かったですからね。結局のところ、バチカンの影響力を無視できなかったという事でしょうか?」

ランシス「そうね。そして第二次世界大戦中はバチカンとナチスの間でコンコルダート(正教条約)が結ばれて批判を浴びたけど、ナチスとカトリックは仲が悪かったから、カトリック教徒を守るために結んだって口実は一応あるけどね。結局はイタリアとナチス、そして日本が中心となって世界大戦が始まったというわけで」

サーシャ「つまり、ローマ正教陰謀説ですか。まあ話くらいは耳にした事がありますけど」

ランシス「別の言い方をすれば作者の妄想とも言えるのよ。ああ、作者って言っても原作の方じゃなくてね」

フロリス「おい、いくらランシスの貴重なセリフだからってそういうのは良くない。冷める」

ランシス「wwwwwwwwww」
369 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/26(木) 02:36:51.15 ID:NT7sJKE0
改行編集する前に書き込むを押してしまった


サーシャ「第一の解答ですが、要するに私にクーデターに加担しろと言う事ですか」

フロリス「いや、正確にはクーデターのための準備に協力しろって事だね」

サーシャ「第一の質問ですが、嫌だと言ったら?」

フロリス「今すぐサーシャのほっぺが擦り切れるまでスリスリしてやる」

サーシャ「手伝います(キリッ)」

フロリス「そんなに嫌かよちくしょう!(スリスリ)」


アアーヤワラケーマジスベスベサラサラー

チョツ!ホッペガマサチューセッツコウカダイガク


レッサー「フロリスってあんなキャラでしたっけ?」

ベイロープ「言うな、所詮は二次(ry」


ベイロープ「まあいずれにせよ、ここまで聞いた以上は選択肢なんて無い事は分かってるわよね?」

サーシャ「……(ほっぺがヒリヒリする)」


サーシャ「第一の質問ですが、仮にクーデターが起きたとしたら、騎士派のトップもそのクーデターに賛同すると言う事になるのですか?」

フロリス「まあそうなるわね」

サーシャ「では、現女王と清教派トップの最大主教は?」

レッサー「連行されるんじゃないですか?」

サーシャ「……第一の解答ですが、分かりました。あなた方に協力しましょう」

ベイロープ「いやーよかったよかった。ぶっちゃけ断られたらどうしようかと思ってたんだけどね」


サーシャ「……」
370 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/26(木) 02:38:59.09 ID:NT7sJKE0

クーデターに加担する

それはすなわち、イギリス清教の仲間を裏切る事になる

かけがえのない友人さえも

しかし…




「いえーい、割りと世界の広い範囲を敵に回しちまったZE!!これでロシア成教の命令を聞く必要はないから」




「ずーっとサーシャちゃんの味方だよー?」





そうだ、もう逃げられない

もう選択肢は無い


彼女に与えられた一縷の望み

そのカギとなる最大主教に接触できるなら…




フロリス「よろしくねサーシャ」


そう言うと、フロリスはサーシャの頭に自分の顎を乗せた
371 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/26(木) 02:43:01.42 ID:NT7sJKE0
以上です。今回は導入部分のみで

ちなみにこのストーリーは

「もしもサーシャが17、18巻のブリテン・ザ・ハロウィンに登場していたら」
という話になります
372 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/26(木) 02:48:50.52 ID:NT7sJKE0
一応上げておきます
373 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/26(木) 07:51:41.43 ID:RCcWkBAo
おつおつ
なんかサーシャがすごく不憫で…
好きに生きさせてあげて!
374 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/26(木) 08:11:58.47 ID:4UMHGkDO
乙! 初め素で騙されたwwwwww
375 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/26(木) 22:29:17.42 ID:FjrhNxwo
乙。サーシャ@新たなる光キタコレ

しかし冒頭見た時は目が点になったよww
376 :1 [sage]:2010/08/27(金) 04:54:55.33 ID:oY1I06Q0
Q:このSSってどんな内容なんだ?

A:主人公のサーシャ・クロイツェフが色んな女の子にフラグを立てたり立てられたりするSSです

というわけで投下します
377 :1 [sage]:2010/08/27(金) 04:56:44.19 ID:oY1I06Q0
レッサー「さて、めでたく我らの仲間が増えたのは良いんですよ」

ベイロープ「そうね。喜ばしい事だわ」

レッサー「ですが……さっそく仲間が瀕死とはどういうことですか?」


サーシャ「はぁ……はぁ……」

フロリス「極寒のロシアからはるばる海を渡ってここまで逃げて来たんだから、まあ仕方ないっちゃ仕方ないよな」


瀕死と言うほどではないが
あの後サーシャは急に高熱を出して倒れたのであった


378 :1 [sage]:2010/08/27(金) 04:58:22.34 ID:oY1I06Q0

ベイロープ「医者が言うには過労と栄養不足が原因らしい」

レッサー「栄養不足ですか?見た感じ、私よりありそうな気がしないでもない様な」


もにゅ

サーシャ「んっ……」

フロリス「病人の胸を揉むな!」(ゴチン!)

レッサー「痛たた、あんまり変りませんでしたぁ…」

ベイロープ「どうする?これじゃあ当分の間は動けないけど」

フロリス「仕方ないだろ、無理させるわけにはいかないし」

サーシャ「だ、第一の解答ですが、すみません…」

フロリス「気にするな。ほら、薬ちゃんと飲めよ」

サーシャ「甘いのがいいです…」

フロリス「子供かっての。いやまあ未成年だけどさ」

ベイロープ(弱ってるサーシャ、何気にかわいいな……)
379 :1 [sage]:2010/08/27(金) 05:00:57.35 ID:oY1I06Q0

レッサー「なんなら私が口移しで飲ませてあげましょうか?」

フロリス「ふざけるなレッサー。お前がやるなら私が代わりにやる」

サーシャ「普通に下さい」

レッサー「苦ッ!これマジで苦いですよ!」

ベイロープ「お前本当にやる気かよ!?」

フロリス「サーシャは私が拾って来たんだぞ!その役目は私が引き受ける!」


負けじと薬を口に含むフロリス


レッサー「ひゃあひゃあふあ、ほっひをへひゃふふへふは?」
訳:さあ、サーシャ?どっちを選ぶんですか?

フロリス「わひゃひひゃほ」
訳:私だろ?

サーシャ「あの…正直どっちも嫌なんですが」

ベイロープ「やめんかお前ら!」(バシッ!バシッ!)

レッサー&フロリス「ブーッ!!」


盛大に薬を吹き出す二人


サーシャ「……苦い」


それを顔面にモロに食らったサーシャ

発熱のせいか頬が火照っている上に、ぶっかけられた薬のせいで濡れているため、
妙にエロティックな事になっている
380 :1 [sage]:2010/08/27(金) 05:03:38.70 ID:oY1I06Q0

ベイロープ「ほれ」ぼすっ!

サーシャ「う…!」


薬の次は着替えとタオルのワンセットがサーシャの顔に直撃する


ベイロープ「体冷やさない様にさっさと着替えなよ」

フロリス「私ら忙しいからずっと傍にいて看病してあげられないけど、何かあったら通信用霊装で呼んでね」

レッサー「寂しくなったらいつでも呼んでください。このレッサーがあなたを癒してあげますよ。性的な意m」

ベイロープ「ケツ潰されたいか?」

レッサー「全力で拒否します」


バタンと扉が閉まる音と主に静寂が訪れる

とりあえずサーシャは濡れた上着を脱いだ


衣擦れする音がやたら響く室内

閑静というよりは無機質な無音に近いこの静けさは、サーシャにとってはあまり好ましいものでは無かった
381 :1 [sage]:2010/08/27(金) 05:06:37.53 ID:oY1I06Q0

この静けさは妙な孤独感を誘う

別に一人が嫌だとか、そんな子供みたいな事を言いたいわけではない。まあ子供である事に変りは無いが。

そうではなく、こういう環境だとやたら考え事をしてしまうのだ。

特にサーシャの場合、新たなる光の彼女達と共に居た事で一時的に脳裏から排除されていた物に、
再び自分の心を支配されてしまう様な感覚に陥る。


亡命の事だ


彼女にとっては2度目なわけだが、今回はその原因はあの変態的な拘束衣でも変態的な上司にあるわけでもない

突然自分に下された「捕獲命令」

確かに以前の亡命による脱走、職務放棄という罪はあるが、それは懲罰を受けて清算したはずである

つまり、身に覚えの無い捕獲命令だ

いや、身に覚えが無いと言われれば嘘になるかもしれない。
なぜなら、自分は大天使をその身に下ろした人間であり、それが理由で無理矢理ロシアに連れ戻されそうになったのだから。

ワシリーサによると、どうやらロシアと同盟を結んだローマがこの捕獲命令に関わっているらしいが、
いずれにせよこんな分けのわからない事で逮捕されるのは御免被る
382 :1 [sage]:2010/08/27(金) 05:10:40.35 ID:oY1I06Q0

それにしても、本当に最悪の状況だった

自分の所属していた殲滅白書のメンバー総出で自分を捕獲しようとするのだから、
まさにリアル鬼ごっこだ。しかも自分以外全員の鬼というエクストリームスポーツだ。

つまり、かつての仲間が全て敵になったわけだが
そうは言っても、二人だけ彼女の味方をしてくれた人物が居た


一人はヴェロニカ

かつてイギリス清教の女子寮で戦った敵の親玉である

だがどういう風の吹きまわしか、部隊を引きつれて自分を追跡するふりをして、イギリスまでの逃走経路を確保してくれたのだ

ヴェロニカいわく、「あの人のため」と言う事らしい


そしてもう一人、彼女の味方をしてくれた例のあの人がワシリーサである


彼女は自分の目の前で、殲滅白書の仕事上の契約書を片っ端からビリビリと引き裂いた

一体それが何を意味するか、もはや契約違反とか国家反逆罪とかそういうレベルでは済まされない話である。

そしてワシリーサは言ってくれたのだ”ずっとサーシャの味方だ”と




383 :1 [sage]:2010/08/27(金) 05:14:49.32 ID:oY1I06Q0

あの後ワシリーサから荷物と一緒に窓の外に放り出されたので、彼女がどうなったのかは分からない

殲滅白書の人間が束になってかかっても、恐らくワシリーサを倒すことはできないとは思うが……

しかしまあ、ワシリーサの事と言い、本格的にまた国際指名手配犯に成り下がった自分の立場と言い、
このわけのわからない大天使の力と言い、クーデターへの協力と言い、体調不良と言い、
ついでに一応ヴェロニカの事も心配してあげるとすると、本当に悩みの種は尽きないものだ


まるで多くの人間の悩みを自分だけが一手に引き受けてしまっている様で気が滅入る


ちなみに詳しい状況が知りたい場合は、とある魔術の禁書目録の原作18巻の最後の方を参照してください



だが、こんなゴタゴタな状況でもやるべき事は分かっている

最大主教であるローラ・スチュワートとの交渉だ

もはや単純に女子寮へ逃げても意味が無い。かと言って、簡単に接触できる様な相手ではない。
それが可能な状況を作りださなければならないのだ

そのためなら、例えかつてのイギリス清教の仲間達を一時的に敵に回す様な事になったとしても……


ベイロープ「おい、聞いてるのか?」(コツン!)

サーシャ「!」

384 :1 [sage]:2010/08/27(金) 05:17:58.23 ID:oY1I06Q0

どうやらいつの間にかベイロープが部屋に戻って来て自分に話しかけていたという事に気が付かなかったらしい

だからこの静けさはどうも好きにはなれないのだ
楽しい事に熱中するならともかく、嫌な事を考えるために夢中になってしまうから馬鹿気ている


ベイロープ「ほら、薬よ。さっきあの二人が盛大にぶちまけてくれたからね」

サーシャ「あ、どーも」


サーシャは薬の入った紙袋を受け取った


ベイロープ「ちなみに甘いのは無かったけど、飲みやすい錠剤にしといたわ」

サーシャ「ありがとうございます…」

ベイロープ「ほら、水」


サーシャは錠剤を口に放り込むと、コップを受け取り、口を付けた


ベイロープ「はい、薬飲んだらさっさと寝なさい」


そう言うと、ベイロープはサーシャのおでこを軽く押し、サーシャはそのままベッドに倒れた

毛布を敷き直し、額に乗せる濡れタオルも変えてくれたベイロープ
案外、面倒見が良いのかもしれない
385 :1 [sage]:2010/08/27(金) 05:20:04.25 ID:oY1I06Q0

ベイロープ「アンタの病気が治らないと先に進まないから、さっさと寝て治しなよ」


そう言い、部屋を出て行こうとする


サーシャ「あの」


それを呼びとめるサーシャ


ベイロープ「ん?何だ?一人は寂しいか?まあ病気で弱ってる時はそうなるわよね」

サーシャ「いえ、そうではなく、少し質問をしたいのですが…」

ベイロープ「ああ、まあいっか」


そういうと、ベイロープはサーシャのベッドに腰掛けた


サーシャ「第一の質問ですが、あなた方はなぜクーデターに加担しようと?」

ベイロープ「さっきも言ったでしょ?強い英国を取り戻すためよ」
386 :1 [sage]:2010/08/27(金) 05:22:53.02 ID:oY1I06Q0

ベイロープ「この間のユーロトンネル爆破事件でフランスとの懸念事項が再発した。戦争が起きれば、
イギリスはフランスと敵対する事は間違いない。フランスはローマの傀儡だからね。
昔のイギリスとは違う、戦争が起きれば、EUの主要国レベルにまで堕ちたイギリスは、その地位さえも奪われる。
そうなれば、今後百年イギリスは最低辺での低迷期を迎えるかもしれないのよ」

サーシャ「それは分かります。ですが、なぜあなた方がそんな危険な事をしようとするのですか?
確かにあなた方は一般人とは違うかもしれません。でも、わざわざ自分がそんな危険を冒す必要などあるのですか?」

ベイロープ「でもそれは逆に言えば、誰もがわざわざやる必要が無いという事は、誰がやっても良いと言う事にならないかしら?
いずれにせよ、誰かがやらなきゃ問題は解決しないんだから」
387 :1 [sage]:2010/08/27(金) 05:26:41.68 ID:oY1I06Q0

サーシャ「ですが…」

ベイロープ「サーシャの言いたい事は分かる。誰がやっても良いとは言え、わざわざ私達がこんな危険な事をする理由は何なのかって事だろ?」

サーシャ「……」

ベイロープ「簡単さ。私達はこの国が好きなんだ。いわゆる愛国心って奴さ」

サーシャ「パトリオティズムですか……」

ベイロープ「……そうか、サーシャは亡命してきたんだもんね」

サーシャ「非公式の魔術結社の働きですから、公に評価されるわけではありません。誰に認められるわけでもないのに、
英国があなた方に何かをしてくれるわけでもないのに、なぜ……?」

ベイロープ「うーん…やっぱり自分の生まれた国が好きだって事かな。例え私達がどう評価されても、
国からどんな扱いを受けても、英国のためになにかできるなら本望ってやつよ」

サーシャ「…そうですか」


立派な考えだとは思う

だが、祖国から狙われてるサーシャには理解できなかった

おそらく、どんなに話し合ってもそれを理解することはできないだろう


ベイロープ「ま、そう言う事だ。さ、そろそろ寝なさい」


ベイロープは軽くサーシャの顔を頬を撫でてから、立ち上がろうとした



388 :1 [sage]:2010/08/27(金) 05:29:49.34 ID:oY1I06Q0

サーシャ「第二の質問ですが、もう一つだけお願いをしていいですか?」


そう言うと、サーシャは布団から手を出し、ベイロープの方へ伸ばしてきた


ベイロープ「ん?何だ?」

サーシャ「少しの間で良いから握っていてください」

ベイロープ「え?ああ、まあ良いけど…変った奴だねアンタは」


ベイロープは自分に差し出された白くて小さな手を軽く握った


そして、その冷たさに驚いた


まるで、素手で氷に触れている様な感触だ

微かに震えているのが分かる


そうだ、いくら殲滅白書に所属するプロフェッショナルとは言え、まだ13か14そこそこの子供だ

不安で無いはずがないのだ。たった一人で多くの魔術師から逃げてきて、今もまだ安息には程遠い状況なのだから。


サーシャを新たなる光の活動に参加させたのは間違いだったんじゃないかとすら思えてしまう

この娘は、こんな小さな手で、小さな体で、一体どれほどのものを抱えているのか
ベイロープには想像も付かなかった


ベイロープはサーシャの手を握る力を強くする
389 :1 [sage]:2010/08/27(金) 05:33:28.40 ID:oY1I06Q0

サーシャ「第一の解答ですが……不思議なものですよね…」

ベイロープ「何が?」

サーシャ「第二の解答ですが、手は、何かを行う事においては最も重要な部位です。人を傷付ける時も、
料理する時も、赤ちゃんを抱き抱える時も、人を治療する時も、誰かを撫でる時も、全て手が必要です……
十字教的な儀式は大抵右手で行われてきました…聖書の奇跡も……」

ベイロープ「……」

サーシャ「だから、手は、人の全てを表すんじゃないかって思うんです…」


確かに、例えば初対面の人と握手する時も、文字通り手を使う
それは、自分と言う者の存在を相手に伝えるという意味があるのではないだろうか?
目で見ればそこに居るのは分かるが、手を握る事で相手を感じる事ができる

相手を感じる事ができれば、その人が自分の傍に居るのだとより実感できる


確かにそこに居るのだと、握った手の温もりが教えてくれる



つまり何が言いたいのかと言うと


ベイロープ「結局のところ、寂しいから傍に居てくれと言う事か」

サーシャ「そうとも言います」
390 :1 [sage]:2010/08/27(金) 05:35:31.15 ID:oY1I06Q0

ベイロープ「やれやれ、泣く子も黙る殲滅白書のシスターがこんな甘えん坊だとはね」

サーシャ「第三の解答ですが、もう脱退した身ですから関係ありません」

ベイロープ「はいはい。ほれ、眠れるまで傍に居てあげるから、さっさと目を閉じて聖ジョージが戦った竜の数でも数えなさい」

サーシャ「第四の解答ですが、羊にしておきます」


そう言うと、サーシャは静かに目を閉じた


歪な拷問用霊装を持ち歩いてた魔術師だが、寝顔は年相応の少女よりもあどけなく感じられる

ベイロープは、少し温かくなったサーシャの手を握りながら、退屈凌ぎにサーシャの寝顔を観察することにした



391 :1 [sage]:2010/08/27(金) 05:41:32.33 ID:oY1I06Q0
ここで一端切ります

現在のサーシャへの好感度ランキング
1位五和 ワシリーサ
2位ルチア
3位アニェーゼ
4位フロリス、ベイロープ、アンジェレネ、オルソラ

多分こんな感じです
はい、どうでもいいですね



392 :1 :2010/08/27(金) 05:42:19.31 ID:oY1I06Q0
上げ忘れました
393 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/27(金) 08:48:05.43 ID:31dXtcDO
乙!

>>391
ワシリーサと互角とか五和やるな。あとなんだかんだでルチア高いww
394 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/27(金) 10:18:04.39 ID:zTTOTFgo
五和ww
まぁ方向性が違うけど着せ替え人形にしてたしなぁ
395 :1 [sage]:2010/08/28(土) 04:54:25.56 ID:kZhdO1g0
投下します

Let’s do it?
396 :1 [sage]:2010/08/28(土) 04:57:32.82 ID:kZhdO1g0

レッサー「それじゃあいきますよー!」


レッサーはキャリーケース程の大きさの鞄を掲げた

同時に、空中に白いビロードで覆われた物体Xが現れる


ガンッ!

ベイロープ「ゴハッ!」


その物体Xはベイロープの顔面に直撃した


レッサー「あ、こりゃあ失敗ですねー。あははは」


その場を作り笑いで乗り過ごそうとするが、鼻を押さえながら涙目になっているベイロープの剣幕がそれは不可能であると全力で語っている


ベイロープ「ぜんっぜん調整できてねぇじゃねぇかこのクソボケがァッ!!」

レッサー「ちょっ!なんでベイロープは尻ばかり狙ってくるんですか!?」

ランシス「wwwwwwww」


怒りで我を忘れたベイロープは、傍にあった棒を掴んでレッサーの尻を執拗に狙って突いてきた。別に変な意味では無い。

397 :1 [sage]:2010/08/28(土) 05:00:06.35 ID:kZhdO1g0

サーシャ「ところで第一の質問ですが、この大きな鞄はどんな霊装なのですか?」

フロリス「こいつは大船の鞄(スキーズブラズニル)と言って、北欧神話の神様が乗った船を元にしてるんだよ。」

サーシャ「船?」

フロリス「ああ、今は鞄の形をしてるけど、術を解除したらボートくらいの大きさの小舟になるのよ」ツー…

ランシス「ちょっ、ひゃめ!」


フロリスはランシスの背中を指でなぞって遊びながら説明する


フロリス「まあそんな事はどうでもよくて、こいつの凄いとこは、おおまかな相手の位置が分かっていれば
半径100qまでなら自由に中の物を鞄から鞄へ空間移動させられるってとこさ」

ベイロープ「待てぇこら!!」ガシャン!

サーシャ「第二の質問ですが、要するにラクロスの要領で、空間移動でカーテナオリジナルを鞄から鞄へパスし合いながら
ロンドン市内を移動すると言う事ですね」

フロリス「そーゆーこと」

レッサー「待てと言われて待つ馬鹿がどこに居るかってんですよォ!初体験が棒だなんて絶対絶対超イヤです!!」ドタバタ

サーシャ「ですが、ここには鞄が6つありますね。私達は5人のはずですが」

フロリス「そうだね。これは第二王女のものさ」

サーシャ「クーデターの首謀者ですか」

ベイロープ「パリィパリィパリィってかァ!笑わせんなよクソガキが!」

フロリス「第二王女の手元にオリジナルが渡れば私達の任務は完了ってことよ」ツツー…

ランシス「ひゃっ、そこらめえwwwwww」ゾクゾクッ

ベイロープ「愉快にケツ振りやがってェ!くらえオラァ!」ドスッ!

レッサー「アッー!!」
398 :1 [sage]:2010/08/28(土) 05:01:26.59 ID:kZhdO1g0
【その後、買い出しを任されたサーシャとレッサー】


レッサー「いやー酷い目に遭いました」

サーシャ「大丈夫ですか?」

レッサー「ええ、前は何とか死守しました」

サーシャ「?」

レッサー「ああ、前と言うのは(ry」

Oh Burglar! please! please !help my daughter !OH my god!

レッサー「チッ、猥褻フィルターが発動しましたね」

サーシャ「第一の解答ですが、強盗みたいですね」
399 :1 [sage]:2010/08/28(土) 05:03:25.50 ID:kZhdO1g0

強盗「Freeze!don’t move!」

娘「Daddy-!heeelp!」

父「マジ堪忍してやホンマ」

サーシャ「第一の質問ですが、私達も一応英語で会話してるはずですよね?」

レッサー「そうですね」

サーシャ「なぜあの強盗と娘のセリフは和訳されていないのでしょうか?」

レッサー「それよりも父親が関西弁に訳されてる方が気になりますけど」

レッサー「どうします?無関係とは言え、義を見てせざるは勇無きなりですよ」

サーシャ「第二の解答ですが、確かに寝覚めが悪くなりそうですね」

レッサー「しかしここで一つ問題があるのですよ。実はわたくしレッサーのメインウェポンである鋼の手袋は現在アジトにあるのです」

サーシャ「第三の解答ですが、役立たずですね」

レッサー「せめてオブラートに包んで優しく言って欲しかった!」

レッサー「でもサーシャだって今武器を持ってないじゃないですか?」

サーシャ「第四の解答ですが、あなたとは違うんです」


そういうと、サーシャは何もない空間から金槌を取りだした


レッサー「おお、マジックですか!?」

サーシャ「第四の解答ですが、簡単な空間操作の術式です」
400 :1 [sage]:2010/08/28(土) 05:05:12.59 ID:kZhdO1g0

なぜサーシャがこんな魔術を使えるのか?
理由は簡単で、武器の収納に便利なベルトだらけの拘束衣でなくても、この様に空間を使った武器収納が可能である

だからあの拘束衣は必要無いとワシリーサに主張するためだ。
もちろん二つ返事で却下されたが


刃物で女の子を人質に取った強盗に、金槌一本で近寄るサーシャ


強盗「Son of a bitch!Didn’t you hear me?freeze!fuckkin!!」

サーシャ「第一の解答ですが、うるさい黙れ」


サーシャは金槌を強盗の顔面めがけて投げつけた


ガンッ!

強盗「OH JESUS…」(バタリ)

娘「daddy-!」

父「おお愛しい娘レッサー!ホンマたすかったわー!」

レッサー「だからその中途半端な訳をどうにかしてくださいよ。しかも人質の女の子私と同じ名前ですかい!」

サーシャ「第二の解答ですが、またつまらぬ物を殴ってしまった…」


ちなみに今まで殴って来たつまらぬものは、主に上司のワシリーサです




401 :1 [sage]:2010/08/28(土) 05:06:57.07 ID:kZhdO1g0

レッサー「強盗はポリスに引き渡しましたし、一件落着ですね。良いことした後は気分が良いですねー」

サーシャ「第一の解答ですが、あなたは何もしてませんけどね」

レッサー「サーシャがあんな魔術を使えるとは驚きでした」

レッサー「いっそのこと、オリジナルもサーシャが運べば良いんじゃないですか?」

サーシャ「第二の解答ですが、オリジナルは魔翌力が馬鹿みたいに大きいですから、私の空間操作術式じゃ収まりませんよ。容量オーバーです」

レッサー「なるほど、大きすぎて入らないのですか」

サーシャ「ええ、あんな大きい物を入れたら壊れちゃいます」

レッサー「……ところでサーシャ、そろそろお腹すきませんか?」

サーシャ「……そうですね」




とある公園のベンチ

ベンチに腰掛ける二人の間には、先程某ハンバーガーショップで購入したフライドポテトやシェイクが置かれている


サーシャ「第一の質問ですが、ただのアップルパイが300円とはどういう事ですか?」

レッサー「ユーロトンネル爆破事件のせいで、物流が不安定なんですよ。私が今かじってるメガハンバーガーなんて単品550円ですよ」

サーシャ「第二の質問ですが、そもそもあの店は安さが売りのはずでは?これでは可愛くないキャラクターと
高くて味はイマイチな食べ物という典型的なぼった」

レッサー「サーシャ、それ以上はダメですよ」

402 :1 [sage]:2010/08/28(土) 05:07:57.88 ID:kZhdO1g0

レッサー「サーシャ、そのアップルパイ一口ください」

サーシャ「第一の解答ですが、いいですよ」


バクッ!

サーシャ「第二の解答ですが、アップルパイが半分に減りました」

レッサー「まあまあ、私のハンバーガー一口あげますから」


パクッ

レッサー「ほとんど減ってませんね。サーシャってリスですか?」

サーシャ「第三の解答ですが、あなたが異常なんだと思います」

レッサー「サーシャ」

サーシャ「なんですか?」

レッサー「これって間接キスだよな(キリッ)」

サーシャ「そうですね」

レッサー「……」

サーシャ「……」

レッサー「もう!そこは慌てるとか赤面するとかしてくれないと、見てる方はつまらないじゃないですか!」

サーシャ「第四の解答ですが、そんなの今に始まった事じゃないですよ」

403 :1 [sage]:2010/08/28(土) 05:11:15.79 ID:kZhdO1g0

レッサー「それにしても、こうベンチに座ってると、アレをやってみたくなりませんか?」

サーシャ「第一の質問ですが、アレとは?」

レッサー「アレですよアレ」


そう言うと、レッサーはおもむろにジャケットのチャックを下ろし始めた



レッサー「Let’s do it (やらないか)」

フロリス「Wow… What a good looking girl…(うほっ、いい少女)」

サーシャ「第ニの質問ですが、なぜフロリスがここに?」

フロリス「お前らがいつまで経っても帰ってこないから探しに来たのよ」

フロリス「つーか何言わせんだよレッサー」(ゴツン!)

レッサー「痛ッ!!ノってきたのはフロリスじゃないですかー!」

フロリス「うるさい。おっ、ハンバーガー一個もらうよ」

レッサー「ダメです!これは私の自腹なんです!フロリスは私らが美味しそうに食べてるのを
そこでよだれを垂らしながら眺めていてください!」

フロリス「んだよケチ!まあお前はともかくサーシャのなら眺めてるのも良いかも」

サーシャ「……」

フロリス「なあサーシャ、一口くれよ。その今口を付けたばかりのところを」

サーシャ「第三の質問ですが、正気ですか?」

フロリス「当たり前だろ」

レッサー「サーシャが来てからフロリスが日に日に変態に進化している気がします……」

404 :1 [sage]:2010/08/28(土) 05:15:56.65 ID:kZhdO1g0

【その後】


フロリス「へー、強盗をねぇ」

レッサー「私のレッサー神拳で華麗に倒して見せましたよ」

サーシャ「……」

フロリス「あんま目立つ様な行動は控えろよ?」


ガチャッ


レッサー「ただいまもどりましたでござる」

ベイロープ「戻ったか」

フロリス「どうした?そんな真剣な顔をして。今回はシリアスを入れるつもりは無いぞ?」

ベイロープ「何の話をしてるんだよ。それよりも、ついに来たわよ」

レッサー「来たって、三日ぶりのお通(ガツン!)

レッサー「あたた…なるほど、その怒り具合だと生理が(ゴチン!)

ベイロープ「殴るぞ?」

レッサー「痛ッ!!殴ってから言わないでください。今日はやたら拳骨をくらってばかりですね…」

フロリス「ベイロープ、騎士団長からか?」

ベイロープ「そう、クーデターの日取りが決まったわ」

サーシャ「……ついに来ましたか」

ランシス(セリフ欲しい…)


いよいよ運命の戦いが始まるらしいですよ



405 :Let’s do it :2010/08/28(土) 05:21:44.16 ID:kZhdO1g0
ここで区切ります

次回から17巻の内容をサーシャ視点で書く事になるので、部分的に保管しきれない
所も出てきます(上条さんvsレッサーなど) ご注意を


406 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/28(土) 05:55:29.77 ID:88qHpUAO
乙!
407 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/28(土) 07:37:45.86 ID:rkWor.Qo
おつおつ
相変わらずシリアスになりきらないなw
408 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/28(土) 15:53:24.52 ID:50gTZEDO
乙! レッサー自由すぎるwwww
409 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/28(土) 16:52:02.46 ID:0JakCIAO
「第一の質問ですが」って英語でなんと言うんだ?
410 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/28(土) 18:36:32.77 ID:yvWFunA0
saga入れた方がよくね?
全部『魔翌翌翌力』になってるぞ
411 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/28(土) 18:37:56.04 ID:yvWFunA0
ミスった
『魔翌力』になってるぞ
412 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 18:22:19.83 ID:YGrvoQk0
投下します


>>410
御指摘ありがとうございます
413 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 18:23:57.30 ID:YGrvoQk0

最大の問題は、スコットランドからロンドンまで、魔術師という身分がばれる様な検問を避けられるルートの確保であった。
しかし、先のユーロトンネル爆事件の影響で、主要な幹線道路以外は封鎖されている

それについては、例の「熱膨張って知ってるか?」のハイジャックによる飛行機不時着で主要な幹線道路を封鎖させる事により、
逆に封鎖された道路が解除され、ロンドンへの安全ルートを確保した


そんなわけで、新たなる光のメンバーは、ランシスを除いて現在ロンドンに来ているのであった


新たなる光のメンバー
ベイロープ、フロリス、ランシス、レッサー、そしてサーシャ

任務は、カーテナ・オリジナルを英国第二王女のキャーリサの元に届ける事

この事は、第二王女のキャーリサと騎士団長を始めとする騎士派の連中以外は知らない。ちなみに騎士団長の本名も知らない。

他の王室派や清教派の者達は、新たなる光の彼女達は女王を暗殺するためにロンドン内部に侵入したと考えている

だが本意を知るにせよ知らぬにせよ、ロンドン内部ではすでに魔術師が彼女達を猟犬の様に探しまわっている
414 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 18:27:01.38 ID:YGrvoQk0

彼女達の作戦は、大船の鞄(スキーズブラズニル)を使い、中身のカーテナ・オリジナルを空間移動で鞄から鞄へパスしながら、
最終的に騎士団長の持つ大船の鞄にオリジナルを渡す事である

とサーシャは聞かされていた

実際は、ロンドン内部でオリジナルをパスし合うわけではない。
オリジナルは常にランシスがロンドンから離れた場所で保有しており、
レッサー達はゴールである騎士団長にオリジナルを空間移動できる距離まで移動するのだ。

レッサー、ベイロープ、フロリス、この三人のうち、誰か一人でも騎士団長の持つ大船の鞄に空間移動できる距離に近づけた者に、
ランシスがオリジナルをパスするという作戦である。

つまり、彼女等は中継役なのだ。

ちなみにサーシャも鞄を持っているが、彼女の鞄はダミーである。
サーシャの役割は、仮にレッサー、フロリス、ベイロープのうち誰かが必要悪の教会の魔術師と戦闘する事になってしまった時、
柔軟に駆け付けて援護するというものである。


サーシャ「第一の解答ですが、ブリーフィングは以上でよろしいですか?不十分という方は、
とある魔術の禁書目録の17巻を参照してください。これを書いてる人は所詮は三下ですから、表現力とか説明能力には限界があるのです」
415 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 18:28:51.85 ID:YGrvoQk0

サーシャ「そうそう、ちなみに第二の解答ですが、ブリーフィングと言えば、某ステルスアクションゲームを思い浮かべますね」

サーシャ「……第三の解答ですが、分かってます。雰囲気を壊す様な発言は慎むべきでしょう。
ですが、他に書く事が無いのです。たぶんそろそろ…」


突然、彼女のポケットの下から小さな電光が浮かび上がった

彼女達の基本的な通信手段は携帯電話だが、常に携帯電話の電源を切って使用するという不思議な使い方をしている

この携帯電話が発している光は魔術によるもので、実際に手にとって通話しなくても、所持しているだけで脳内に音声が届くのである

ちなみにこちらも原作16巻のアックア戦を参照してください


フロリス「サーシャ、聞こえるか?」

サーシャ「こちらサーシャ。大佐、どうかしましたか?」

フロリス「誰が大佐だ。早速だが、レッサーの馬鹿がしくじりやがった。アイツは今現在進行形で魔術師と交戦中だ」

サーシャ「第一の解答ですが、そちらへ向かえば良いのですね?」

フロリス「いや、あの馬鹿は放っとけ。サーシャはベイロープの支援に向かうんだ」

サーシャ「ベイロープ…彼女も魔術師と交戦を?」

フロリス「ああ、どうやら第零聖堂区の天草式とかいうのに遭遇したらしい」

サーシャ「天草……」


その言葉一つで、サーシャの表情が曇った


416 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 18:29:57.61 ID:YGrvoQk0

フロリス「場所は○○の地下鉄駅だ。大至急援護にむかってくれ」

サーシャ「第ニの解答ですが、了解しました……」


薄々だが、嫌な予感はしていた

早速レッサーがヘマをやらかしたみたいだが、この作戦は隠密行動が基本だ

となれば、同じ隠密行動を得意とし、尚且つ隠密行動をする敵を発見する事に長けた天草十字凄教が駆り出されるのは当然の話なのだろう


サーシャはジャケットのフードを深く被った

けして、あの少女にだけは顔を見られない様にするためにも


サーシャ「五和……」


今ここで友人の名を口に出した事の意味は特に無い

だが、あえて無理矢理そこに意味を付けるとするのなら、それは“祈り”と意味づけるのがふさわしいのかもしれない

サーシャは鞄を手に取り、ベイロープの元へと向かった
417 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 18:31:41.16 ID:YGrvoQk0

【五和VSベイロープ】


五和「うぐッ!」

ベイロープ「無理無理、その程度の武器じゃ私には勝てないわよ」


第零聖堂区ネセサリウス(必要悪の教会)傘下の天草十字凄教に所属する五和

地下鉄駅の出入り口は、他の天草のメンバーが封鎖している

そんな状況で、五和は現在ベイロープと交戦していた


いや、交戦しているなどと言える様な状態ではない

ベイロープの武器である、”鋼の手袋”により一方的な戦いを強いられ、五和の海軍用船上槍がバラバラに砕かれてしまったのだ


鋼の手袋

新たなる光のメンバー共通(サーシャ除く)のメインウェポンであるのだが
この武器は、北欧神話の雷神トールの農耕神としての面を研究し、武器にしたものである

トールの強大なパワーと、彼がその力を操作するために使用した手袋を元に得た精密性


その二つを合わせた鋼の手袋は、ただの槍を武装した敵と戦うには相性が良すぎたのだ
418 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 18:32:54.18 ID:YGrvoQk0

ベイロープ「勝負ありってとこね。まだやってもいいけど、次は”知の角杯”を使わせてもらうわ」


知の角杯は、ベイロープの頭の左側から彼女の髪をかき分ける様に伸びている霊装

これを使う事により、鋼の手袋に雷の属性を加える事が出来る

食らったら消し炭にされる一撃だ


五和「…ッ……!」


まともに戦って勝てる様な相手ではない

だが、戦わなくても勝てる算段はあった

今現在ベイロープと五和が居る場所は、地下鉄のとある線路の上

この線路が走るトンネルは現在使われていないのだが、実はこのトンネルは、
必要悪の教会がスカウトしてきた新人魔術師を試すための施設であり、トラップの一つでもあるのだ。

しかも、現在は新人を試すにはあまりにも危険過ぎると言う事で使用禁止にされている施設でもある。


ちなみに魔術的な事件が多いロンドンでは、この様な施設が沢山あると言うのはちょっとした豆知識

つまり、このままベイロープが原作通り馬鹿正直にこのトンネルを進んでくれたら、彼女を罠にはめる事ができる

しかし、それはあくまでも願望に過ぎなかった

419 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 18:36:28.51 ID:YGrvoQk0

ベイロープはトンネルの横壁に向けて、軽く鋼の手袋を叩きつけた

すると、ドガン!という爆音と共に、トンネルの横壁が崩れ、衝撃とコンクリートの破片が五和を襲う


五和「ぐッ……あガッ…!」


五和の体は吹き飛ばされ、線路の上に叩き落とされた


ベイロープ「誰だっておかしいと思うわよ。何で最初は数十人で囲っておきながら、今はあなた一人しかいなのかしら?」

五和「……!」

ベイロープ「いくら用人深く私を逃がさない様に出入り口を塞ぐとしても、最低でももうニ、三人は
あなたと一緒に私を捕まえるために戦闘に参加してるのが普通よね?」

ベイロープ「あなたの実力から考えると、はっきり言って私を一人で倒して捕まえるだけの力があると信頼されて、
たった一人で私と戦う様に仕向けられたとは思えない」


ベイロープ「つまり、直接私を捕まえる気は無いんだろ?」

五和「うっ……」


どうやらばれた様だ


ベイロープ「やたら不可思議な魔術的トラップが多いロンドンだ。きっとこのトンネルもその類だと私は見た!
だったらわざわざこの道を行く必要は無い!」


ベイロープは五和の横を通り抜け、トンネルを逆走する


このまま逃がすわけにはいかない

五和は折れた海軍用船上槍を構え、ベイロープに攻撃した

だが、ベイロープの鋼の手袋が横に振られ、折れた海軍用船上槍は原型すら留めずに粉々に砕けてしまう
420 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 18:38:10.79 ID:YGrvoQk0

ベイロープ「へえ、どうあっても私をここから逃がさないと…」

五和「当たり前じゃないですか…」

ベイロープ「そう、じゃあ死んでもらうしかないわね」


ベイロープ「私はこの任務に命を懸けてるの。別にあなたを殺すつもりは無かったし、特別恨みを抱いてるわけでも無いけど、
邪魔をするなら私と同じ覚悟を持ってもらうわよ?」


そう言うと、ベイロープはゆっくりと鋼の手袋を五和の頭上に振り上げた


五和「しまった…動けない…!」


先程の一撃と、目の前のベイロープの威圧感に気圧され、足が思う様な動かさないのだ


ベイロープ「さようなら」


振り上げた鋼の手袋が五和の頭上に振り下ろされる


五和「ッ……!」



ガギッ!!



その直前で、何かに遮られる様な金属音が響いた



ベイロープ「どういういつもり?」

?「逃走経路は確保しました。すぐにここから移動すべきです」
421 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 18:40:33.05 ID:YGrvoQk0

ベイロープと同じラクロスのユニフォームの様な格好をした少女

深くフードを被っているので顔は良く見えないが、フードに収まりきらなかった金髪が端から肩に垂れている


その少女は、バールをベイロープの鋼の手袋の柄の部分に当てて食い止めていた

刃の部分に当たれば、術式強化されたバールでも折れてしまう可能性があるからだ


ベイロープ「……」

?「天草式は人数は少ないですが、それゆえに仲間を何よりも重んずる組織です。ここで彼女を殺せば、
他の天草式の術者の士気を上げる結果になります。必ずこの計画の邪魔になるでしょう。
それに、これから24時間毎日あなたは彼らに命を狙われる事にもなりかねませよ?」

ベイロープ「……」

?「繰り返しますが、逃走経路は確保しました」

ベイロープ「……分かったわ」


そう言うと、ベイロープは鋼の手袋を引いた


ベイロープ「すでに私達の事は敵にバレてる。他の魔術師と交戦しないためにも急ぐよ!」

?「はい」


その少女は振り返らずにベイロープの後を追いかけようとする








五和「サーシャちゃん!」


?「……」


不意に呼ばれたその名前に、少女は足を止めた
422 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 18:42:07.93 ID:YGrvoQk0

五和「サーシャちゃんですよね…?」

?「……いいえ、人違いです」

五和「嘘です。その声も背丈も、その武器も、私の知っている友人と瓜二つです!」

?「……世の中そっくりな人間が何人か居るものです。それに、これは異端審問のために使われるイギリス清教の道具。
別に私が持っていても不思議ではありません」

五和「では、なぜ足を止めたんですか?違うなら、そのまま無視すればよかったと思いますが?」

?「……」

五和「なぜですか?なぜあなたがこんな事を…」

?「……」

五和「サーシャちゃん…あなたは、私達の敵なのですか!?」

?「もう一度言いますが、私はサーシャでは」

五和「大切な友達を見間違えるわけないじゃないですか!!」


ひと際大きく放たれた彼女の声は、そのフードの少女の心に深く突き刺さる

その言葉は嬉しくもあり、また彼女を騙す事の後ろめたさが自分の心を深く抉る


五和「どうして本当の事を言ってくれないのですか……私達は…友達ですよね……?」


五和は俯いてしまった



423 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 18:44:19.30 ID:YGrvoQk0

?「……一つだけ、聞かせて下さい」

五和「……?」

?「あなたは、その友人を信じる事ができますか?例え何があっても、あなたを裏切る様な事があっても、それでも信じる事ができますか?」

五和「……」





五和「……例え何があっても、私はあなたの友達ですよ……」


サーシャ「……ありがとうございます、五和…」


そう言うと、サーシャは振り向かずに走り出した

再びサーシャの名を呼びとめる声が聞こえたが、それでもけして振り向く事は無かった

その言葉が聞けただけで十分だ








ベイロープ「遅かったわね、何してたの?」

サーシャ「大した事ではありません」

ベイロープ「……」
424 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 18:45:55.49 ID:YGrvoQk0

ベイロープ「……」

ベイロープ「さっきランシスから連絡が入ったわ。フロリスとの通信が途絶えたって」

サーシャ「第一の質問ですが、援護に行きますか?」

ベイロープ「その必要は無いわ」

サーシャ「ですが、このままではフロリスが」

ベイロープ「どうやら、レッサーが上手くやってくれたみたいね」

サーシャ「レッサーが?第一の解答ですが、彼女は(ry」

ベイロープ「あの馬鹿、一時はどうなるかと思ったけど……」

サーシャ「あの、先程から何を」


どうも話が噛み合わない


一体どういう事なのか?彼女は何を言いたいのか?

だがそれを理解しようとする暇など無かった





次の瞬間、目に見えぬ速さで何かがベイロープの体を貫いた


同時に鮮血が宙を舞う




425 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 18:48:12.72 ID:YGrvoQk0

サーシャ「……」


あまりにも突然過ぎる真っ赤な光景

まるで趣味の悪い映画でも見せられている様な気分だ



サーシャ「……!!」


しつこい様だが、事態を把握するのにラグが生じるくらいに突然だった



続けてベイロープの足を、腕を何かが貫いた

三本目の狙撃でかろうじて目で捉える事ができたそれは、高速で放たれた矢だ


ベイロープ「どうやら……成功した……みたいね…」


一体どこから狙ってるのか分からない

サーシャはとっさにベイロープの体を抱え、誰も居ないと思われる建物を見つけて駆け込んだ
426 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 18:51:12.23 ID:YGrvoQk0

なんとかベイロープの腕を自分の首に回し、彼女の体を引きずる形で建物の奥に逃れる

もう片方の手を塞ぐ鞄が邪魔である事に気付き、それを捨てようとした

しかし、ベイロープはそれを制止する


ベイロープ「その鞄の中身は…ゴボッ!ハァ…ハァ……」


口から大量の血を吐き出した


サーシャ「ベイロープ!」


サーシャは回復術式を使えない

不得意というわけでなく、戦闘に特化した魔術以外は使えないのだ

普段は自分には必要のないものだと考えていた事が、今になって不甲斐無さとして重く心にのしかかる


ベイロープ「逃走用の霊装が……サーシャ一人なら…逃げ切れるから……」


サーシャは鞄を開けて確認してみた
すると、そこには変装用の術式が懸けられた服など、一人分の逃走用の道具が一式揃っていた

それはつまり


サーシャ「まさか、あなた方は最初から死ぬつもりで!?」

ベイロープ「悪かったね…巻き込んで……さあ、早く…」

?「みつけたぞ」


ガチャガチャと金属を揺らす音に気付いたのは、その声を聞いてからであった

427 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 18:52:58.27 ID:YGrvoQk0

サーシャ「……!」


いつの間にやって来たのか、突然サーシャの目の前に、甲冑を身に付けた者達が現れた

まるで金持ちの家にある中世ヨーロッパの鎧の骨董品が歩いている様な光景だ

おそらく騎士派の連中だろう


騎士「やれやれ、この革命で忙しい時にいらん手間をかけてくれるなよ」

サーシャ「第一の質問ですが、先程の矢は、あなた方が……?」

騎士「ん?ああ、ロビンフッドという長距離狙撃用の矢だなそりゃ」

サーシャ「なぜですか?」

騎士「は?」

サーシャ「新たなる光は、騎士派と第二王女のクーデターに協力していたはずです!なぜ!?」

騎士「貴様がすでに答えを言っているだろう。その事を貴様達が知ってる時点で良くない事だ」

騎士「この計画に、イギリスにとって内敵である魔術結社の手を借りた事がばれたら、これから作られる新たな政権の運営に影響を及ぼす。
今は大事な時なのだ」





428 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 18:56:13.04 ID:YGrvoQk0

サーシャ「ベイロープ達は、彼女達は、イギリスのために働いたのですよ?危険を顧みずに……」

騎士「そうか、そうだな。それは賞賛すべきだな。よく頑張ってくれた」


騎士「これで良いか?じゃあ死んでもらおうか、この国のために」

サーシャ「……!!(ぎりっ!)」


サーシャは奥歯を噛みしめた


騎士「悪く思うなよ?これは第二王女、いや国家元首たるキャーリサ様の御命令でもあるのだ」



騎士「おい、さっさと斬れ。死体袋の数は二つ用意しろ」


暗闇の中で、白くギラリと研ぎ澄まされた光が目に映る


どうしてだ?

サーシャはベイロープの言葉を思い出す


彼女は、ただこの英国が好きなだけ

ただそれだけだったはずだ

だから、彼女はこの国のために何かしたかった


サーシャは虚空からバールを取りだし、甲冑を来た騎士に立ち向かう

ガンッ!

サーシャ「がふッ…!」


しかし剣を使うまでも無く、片手で殴られ、簡単にあしらわれてしまった
429 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 18:58:41.49 ID:YGrvoQk0

サーシャ「ぐッ…」


全身に力を込め、再び立ち上がろうとするが


騎士「無駄だ」

ドガッ!

サーシャ「あぐッ…!!」


道端の空き缶の様に腹を蹴られ、軽く吹き飛んだ


サーシャ「ゲホッ!!うッ…」


胃の内容物がせりあがってくるのを、口を押さえ、なんとか耐える

だが、口に手をあてたまま、その上から騎士はサーシャの頭を強く踏みつけた


サーシャ「アガッ!」


冷たいコンクリートの床に顔を殴打するとともに、甲冑の重みが後頭部に重く乗せられる


騎士「子供を痛ぶる趣味は無いのだがな。そもそも貴様はなぜ我ら騎士派が清教派に強いのか、
この下らない三竦みの構造を分かっているのか?」


グリグリとサーシャの頭を強く踏みつける

頭蓋骨が砕けそうなほどの痛みが走るが、踏む力が強すぎてうめき声すら上げられない


430 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 19:00:58.51 ID:YGrvoQk0

騎士「どうあがいても勝てるわけがないからだ。天使長の力であるカーテナの補正を受けた我らは、
この英国では天使も同然だ。ただの魔術師ごときが、天使軍に敵うはずがないだろ?」

サーシャ「ッ……!」


そんなものは関係ない

サーシャは自分を踏みつけている騎士を睨む

しかし、頭を踏みつけられているので視界に騎士の姿は映らない
それでも、彼女の真っ赤な目は、敵意をむき出しにしていた


騎士「ほう、こんな状況でもまだそんな目ができるのか」


騎士「しかし哀れなものだな。所詮は道具に過ぎないと分かっていながら我らに協力するとは」

サーシャ「道具じゃ…無い……」


全力で絞り出したその声は、うめき声よりも弱くかすれている


騎士「あァ?」

サーシャ「彼女達は…みんな…自分の意思で……戦ったんです……」

騎士「ああそうかい。じゃあ意思のある道具って事にしてやる」


そう言うと、騎士は手に持っている剣を頭上に高く掲げた


431 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 19:02:53.44 ID:YGrvoQk0

騎士「さて、道具に対して処刑と言うのもおかしな話だが、お前達の功績を讃えて苦しまない様に一瞬で終わらせてやる……」

サーシャ「くっ……」


サーシャはふと、血まみれになりながら横たわっているベイロープを見た


あなたはこれで満足なのかと問いかけたかった


こんな結末が、こんな仕打ちが

こんなものがあなたの望んだ結果なのかと

これがあなたの望んだ、あなたの愛したイギリスなのかと




違う

こんなものは

あなただって、出来る事ならこんな結末を迎えたくは無かったはずだ

例えイギリスのためにその命を懸ける覚悟があったとしても

本当は、あなたが信じた行動で変ったイギリスを、あなたの戦いの結果が生み出す未来のイギリスを最後まで見届けたかったはずだ



こんなのは、命を懸けるに値する戦いとは言わない

こんな誰の心にも届かない、これからこの国で生きていくであろう誰かの心に、あなたの覚悟が伝わらない様な戦いは…



騎士「死ね」


高く掲げられた鈍い光を放つ剣が、サーシャの首に振り下ろされた
432 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 19:05:43.46 ID:YGrvoQk0

銀色の剣はどす黒い血に染まり、胴体との繋がりを失った首が床に転がる




はずだった


騎士「……何だ……それは……?」



サーシャ「……」


まるで深海を空間ごと切り取って固めた様な暗く青い氷の翼

サーシャの背中から生える一対の氷の翼が、彼女の首を斬り落そうとした騎士の剣を弾いたのだ



確かに、連綿と大河の様に連なるこの歴史の中では、功績を残したにも関わらず、誰にも知られず、
賞賛される事無く歴史の闇に沈んだ人間も数多くいる事だろう

そういう人達が、過去の歴史の重要な分岐点において重要な役割を果たしたという事は事実なのかもしれない。

その様な役割を担う者が必要なのかもしれない。

そして今、ベイロープはその役割を与えられたのだろう




だから何だ?

それが何だと言うのだ?
433 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 19:09:26.66 ID:YGrvoQk0

例えベイロープがこの結末を心から望んだとしても、自分はこの結末を否定する

エゴだろうと構わない

そんな小さな事情なんか知った事ではない



サーシャは立ちあがる

誰でも無いサーシャ自身がこの結末を否定するから

サーシャ自身が、誰も犠牲になる事のない結末を望むから



ただ目の前に血塗れになって倒れているベイロープを助けたいという理由だけが彼女の心を動かす



騎士「ぬおッ!」


サーシャの氷の翼が振られ、騎士数名がまとめて薙ぎ払われた


騎士「何なんだそれは!?」

サーシャ「第一の解答ですが、私にも分かりません。ただ…」



サーシャ「この状況にちょっとムカついただけです」



氷の翼を一回羽ばたかせる

それだけで無数の砲弾並の大きさの氷の塊が、弾丸の様なスピードで騎士たちを襲う

例え甲冑を身に纏っていても、その威力は頭に当たれば脳震盪を、体に当たれば衝撃で当たった部分が一時的に麻痺してしまうほどである
434 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 19:11:47.06 ID:YGrvoQk0

騎士「どういう事だ!?カーテナの補正を受けた我らがこんな小娘にッ!!」


カーテナは現所有者にして天使長であるキャーリサを介して、天使軍である騎士達に力が分配される

しかし、分配された騎士に宿るのは、所詮は擬似的な天使の力

不意打ちをかませば魔術師でも勝てる可能税がある

そんな偽物の力では、正真正銘本物の天使の力には敵わない


結局、翼を滅茶苦茶に振り回すだけで呆気なく全てが終わってしまった


サーシャ「ベイロープ…!」


サーシャはベイロープの元に駆け寄った

そして首に手を当て、脈を確認する


サーシャ「……(良かった)」


どうやらまだ生きているみたいだ

失血が酷く、気を失っている

予断を許さない状態なのに変りは無い


サーシャはベイロープを抱きかかえ、建物を出た


そして、夜空を見上げると
バサッ!と一対の巨大な氷の翼を展開し、遥か彼方へと飛び立っていった
435 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 19:13:04.78 ID:YGrvoQk0

【イギリス清教女子寮】


キャーリサがカーテナ・オリジナルを手にした瞬間からクーデターが始まった

清教派の拠点である各地の聖堂や教会および魔術的な施設は全て騎士派によって占拠されてしまった

そして、ここイギリス清教の女子寮も例外ではない


「みんな無事逃走できたのかしら?」

「まだ中に数人いるわね。まずいわ、逃走ルートはもう全部騎士派の連中に抑えられたみたい」


彼女達は、女子寮の他のシスター達の逃走を手助けするためのしんがりである

どうやら殆どのシスターは何とか逃走できたみたいだが、もう彼女達を含め、
残りのシスター達が逃走するのは非常に難しい状況になってしまっている様だ


「ほんと、無駄に手際が良いんだから。どうしよう…」

「こうなったら強行突破するしか…」


その時、遠くで爆音が鳴り響いた

聞こえてくるのは、男達の低い悲鳴


436 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 19:14:50.56 ID:YGrvoQk0

一体何があったのか?しんがりのシスター二人は音の聞こえた方向に注意を向け、警戒する

すると、その注意を向けた方向から、薄暗い人型のシルエットが浮かび上がるのに気付いた

それはゆっくりとこちらに近づいてくる

しかし、それを人だと断定する事ができない


近づいてくる者は、確かに人の形をしている

しかし、同時に左右に伸びる異様な影は何なのか?

人間にあんなものは付いていない


そして、ついに暗闇から現れたそれは、両腕に血まみれの女性を抱えた少女だった

それだけでも異様な光景であるが、そんな光景さえも少女の背中から生えている巨大な氷の翼の前には印象が薄れてしまう


その少女が二人の前に立った時、背中の翼が、まるでガラスが割れる様に音を立てて崩れた


サーシャ「第一の質問ですが、どなたか回復魔術を使える方は居ますか?」
437 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 19:17:39.11 ID:YGrvoQk0

「まさか……サーシャちゃん?」

「シスターサーシャ!」

サーシャ「この人を助けたいのです。お願いできますか?」

「ええ、確か中にまだシスターオルソラが居るはずです!」

それを聞くと、サーシャは女子寮の中に足を踏み入れた






上条当麻

右手に幻想殺しという異能の力を問答無用で破壊する能力を持つ少年

そして、同時に不幸体質と天然フラグ体質のハイブリッドという世界でも有数の才能を持つ少年でもある

ついでに主人公らしい


上条当麻は、現在女子寮の一室に居た

彼が追っていたレッサーがロビンフッドによる狙撃を受けて負傷したため、治療を受けさせるためにここに来たのだ

ほとんどのシスターはクーデターが原因でどこかへ避難してしまったのであるが、偶然にも避難し遅れたオルソラ嬢と遭遇し、
上条は彼女にレッサーの治療を依頼したのであった


上条「頼めるか?」

オルソラ「ええ、その代わりと言ってはなんですが…」

上条「分かってる、しんがりの一人としてお前が脱出するのを手伝ってやるよ」

サーシャ「その必要はありませんよ」


ふと聞こえてきた第三者の声がした方向に、上条とオルソラは振り向いた

そこには、上条が運んできたレッサーと同じ、ラクロスの様なユニフォームを着た血塗れの少女と、
その少女を抱きかかえるこれまた同じラクロスの様なユニフォームを着た金髪の少女が立って居た
438 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 19:20:00.17 ID:YGrvoQk0

サーシャ「第一の解答ですが、この女子寮を取り囲んでいる騎士派の連中は一通り始末しました。
援軍が来るまではしばらく時間を稼げたと思います」


始末と言っても全員気絶させただけで、殺してはいない


上条「お前は、コイツの仲間なのか?」


サーシャは少年の指差す方向を見た


サーシャ「レッサー……第二の解答ですが、その通りです」


どうやらレッサーもベイロープと同じく口封じをされたのだろう


オルソラ「あなたは、サーシャさんでございますよね……?」

サーシャ「第三の解答ですが、お久しぶりですオルソラ。さっそくですが、この人の治療を頼めますか?
失血は酷いですが、これ以上出血しない様に私の力で止めておきましたから…」

サーシャはベイロープをオルソラに引き渡すと、台の上に寝かされているレッサーの方に歩み寄った

サーシャ「レッサー……」


サーシャは軽くレッサーの傷口に手を当てた

すると、そこから青い光が零れる


ガブリエルは、生命の誕生を告げると同時に死を司る天使でもある

サーシャはその力の一端を使い、水の流れを止める氷の様に、生命力の枯渇を制止させる力を行使した

それが今のサーシャに使える力の限界


上条「サーシャ、お前、何をしたんだ?」

サーシャ「第四の解答ですが、出血を止めただけです」
439 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 19:22:20.33 ID:YGrvoQk0

サーシャ「では、私はやらなければならない事があるので、あとはお願いします」


その場を立ち去ろうとするサーシャ


オルソラ「お待ちください」


そのサーシャを、オルソラは後ろから抱きしめた


オルソラ「どんな理由があるのかは、私には分かりません。ですが、あなたはこの方達の仲間であると同時に、
私達の仲間でもあると言う事を忘れないでください…」

サーシャ「オルソラ……」


サーシャは後ろから抱きしめてくるオルソラの腕に触れた



「第一の解答ですが、もちろんそのつもりです」


嬉しかった

立場的に彼女達の敵に回り、こんな危険な状況を生み出してしまった原因の一人である自分を

それでもまだ仲間だと言ってくれた事が……



サーシャ「第二の解答ですが、時間を稼いだとは言え、のんびりしている暇はありません。早めに避難をすませるべきでしょう」

オルソラ「はい」

サーシャ「補足しますが、彼女達の事をお願いします」

オルソラ「もちろんでございます。サーシャさんもどうか御無事で」


オルソラから解放されたサーシャは、そのまま振り返らずに女子寮を出て行った


440 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 19:25:29.42 ID:YGrvoQk0
【サーシャVSローラ】


女王と、その女王に進言する清教派のトップであるローラ・スチュワートが匿われている場所として、
バッキンガム宮殿とウィンザー城の二つの可能性を考えた

両方とも、王族警護のために最高峰のセキュリティーが整備されているからだ

しかし、渦中のロンドンにあるバッキンガム宮殿に匿われている可能性は低い

となると、ロンドンから少し離れたウィンザーという都市にある、現在も公邸として使用されているウィンザー城が選択の結果残る

しかし時間的に考えて、おそらくは騎士派に拘束されて、すでにウィンザー城から移送されている可能性が高い


騎士派の連中は、できるだけ早くロンドンに辿り着けるルートを通って女王と最大主教を護送するであろう

だが、本当に最短ルートを通れば襲撃される可能性がある

つまり、ウィンザーからロンドンへの、襲撃を避けて馬車で走れる最短ルートを絞り込んでいけば…



サーシャ「……」


サーシャは上空から、一台の馬車が森の中へ入って行くのを見つけた

クーデターにより移動が制限されている中で見つけた、たった一台でこんな人気のないルートを通る馬車

すでに森の中へ入ってしまっていたら、おそらくはその馬車を見つける事はできなかったかもしれない

入る直前で見つけられたのは運が良かったのだろう

相手側にしてはこれ以上無いくらいに運が悪かったのかもしれないが
441 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 19:28:31.80 ID:YGrvoQk0

サーシャは上空から森の中へと降下していった


サーシャ(さて、どうしよう…)


おそらく運転している騎士が一人と、中で見張っている騎士がニ、三人居るはずだ

そのくらいなら、今のみなぎるサーシャならニ秒で黙らせる事ができるだろう


サーシャ(それにしても、なんか騒がしいですね)


馬車から聞こえてくる謎の女性の叫び声

一体何が起きているのかとサーシャは小首を傾げ、頭上に?マークを出した


そして次の瞬間、いきなり馬車が光り始めた


サーシャ(うおっ、まぶしっ!)


光っているとかそういうレベルではない

まるで小型核弾頭くらいの大きさのスタングレネードが爆発した様なまぶしさだ


そして光が収まったのを察知し、ゆっくりと目を開けた

すると、いつの間にか馬車は粉々に吹き飛んでおり、二人の女性が言い争いをしているのが目に映る


サーシャ(どういうことなの?)


まさかローラの髪が光って爆発したなんて想像できないであろう


軍馬(もう帰りたい…)


そして、あんな爆発でも逃げずにその場に留まる軍馬は評価されるべきだろう
442 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 19:31:07.96 ID:YGrvoQk0

騎士A「貴様ァ!何してくれてんだこの妖怪ババァ!」

ローラ「ババァ!?失敬な!私はまだピチピチの、花も恥じらう少女なりけるのよ!」

エリザード「嘘をつくな妖怪ババァ」

ローラ「貴様にババアなどと言われたく無きことよ!」

騎士「ええい!大人しくお縄につけいッ!」

サーシャ「そぉい」(ガンッ!)


サーシャは氷の塊を騎士の頭に思いっきりぶつけた

上空からの重力と速度を併せ持つその一撃で、騎士の鉄仮面がグワングワンと鳴り響き、そのまま前に倒れ伏してしまった


ローラ「何かよく分からないけどざまあwww」(ゲシゲシ!)


倒れた騎士を喜々として踏みまくるローラ(年齢不詳)


エリザード(王室派ってこんな奴がトップの清教派に弱いんだよな……)

サーシャ(……)
443 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 19:33:14.15 ID:YGrvoQk0

サーシャ「……」


サーシャは翼をはためかせながら、二人の前に舞い降りた


エリザード「天使…?まさか…本物か!?」

ローラ「!……」


初めてサーシャを見るエリザードにとっては、まるで本物の天使の様に見えてしまうのも無理は無い

常識的に考えて背中から翼の生えた人間など存在しないし、それから連想されるものは天使か悪魔のどちらかであるのだから


ローラの方は、サーシャのこの姿を見て一瞬驚きの表情を見せたが、彼女の素情を知る故にすぐに状況を理解した


サーシャ「第一の解答ですが、お久しぶりですね最大主教。直接会うのは初めてですが」

ローラ「お前は……そうか。その翼、天界のガブリエルとリンクしたるのだな」

エリザード(えっ?誰?)

ローラ「ここに来たるのは、コンビニ帰りというわけでも無き事であろう?私を助けしことの報償でも要求しに来たりけるのか?」

エリザード(コンビニってお前)

サーシャ「ローラ・スチュワート。第二の解答ですが、あなたと交渉するためにここに参りました」

ローラ「ほう…」
444 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 19:38:51.94 ID:YGrvoQk0

サーシャ「第一の解答ですが、あなたに要求する事は二つ。まず一つは、私の正式な亡命の受理です」

ローラ「その様な事なら、わざわざ私に要求する事では無き事じゃなくて?」

サーシャ「第二の解答ですが、あなたがヴェロニカ部隊の活動をわざと見逃していた事は分かっていますよ」


最大主教ともあろう者が知らなかったはずは無い

イギリス清教のトップに立つ彼女が、あの女子寮での戦いを防げなかったはずが無いのだ


全てはロシアとの交渉の材料を得るために、自分も女子寮の仲間達も、
ヴェロニカ部隊の者たちさえもみんなローラに利用されていただけなのだから



ローラ「それで、お前は私に恨み事でものたまいにここに来たりけるのか?」

サーシャ「いえ、第三の解答ですが、二つ目の要求として私をロシアと同じく要人として扱っていただきたいのです」

ローラ「自分からVIP待遇を要求したるとは、図々しい奴だな」


ただ亡命しただけでは、またあの悲劇を繰り返してしまう

だから、このためにクーデターに協力したのだ

誰も傷つけないように、また彼女達に元へ帰れるようにするために
445 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 19:41:10.45 ID:YGrvoQk0

サーシャ「第四の解答ですが、こちらの交渉材料として私の体を差し出しましょう」

エリザード「ローラ、貴様そんな趣味があったのか…」

ローラ「違いたるわよ!そんな変態趣味の危ない人間を見る様な眼で見るな!」

ローラ「コホン…で、お前はそれが英露条約よりも魅力的な交渉材料だと言いたるのか?」

サーシャ「第一の質問ですが、あなたも興味が無いわけではないでしょう?大天使の力を下ろしたこの体と、
いつ破られるか分からない条約モドキなど、比べるまでも無いでしょう」

ローラ「ふふ、いと面白きかな。だが、お前がロシアと同じくイギリスを裏切らないという保証はありけるのか?」

サーシャ「第五の解答ですが、このクーデターを鎮圧してみせます。それを英国への忠誠の証と認めて下さい」

ローラ「……良いだろう。本当にそれができたならば、お前の要求を全て受け入れけるのよ」

サーシャ「補足しますが、約束はちゃんと守っていただきますよ」

ローラ「そうだ、一つ忠告しておく」

サーシャ「?」
446 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/30(月) 19:45:01.71 ID:YGrvoQk0

ローラ「お前はあくまでも、天使が身を納めるための器でありけるのよ。力をつかうための能力は備わっていないがゆえ、
お前は神の右席を遥かに超えるだけの器を持って生まれたるのだ」

ローラ「そうでなければ、お前は人間ではない。器と力を両方備えてしまえば、それは人間ではなく天使として分類されたる。
お前が今人間たる理由は、片方しか備わっていないがゆえのことよ」

サーシャ「……」

ローラ「気を付けろ。その決まりを破り、人間の体で人と天使の境界を歪め、人間であるサーシャ・クロイツェフの意思で力を行使し続ければ、その先に待ち受けているのは崩壊しかなきゆえ」

サーシャ「……第一の解答ですが、私はこの力を持って人を超え、人を支配する存在になる事は望みません。
ただ些細な望みのために、必要な力を必要な分だけ行使します」

ローラ「さようか」

サーシャ「では」


サーシャは再び翼を広げ、空へ飛び立っていった




エリザード「……まるで本物の天使みたいだな。新たな争乱の元にならなければいいが」

ローラ「問題は無きことよ。ガブリエル、いやミーシャ・クロイツェフとリンクしているとは言え、
アイツが使える力はせいぜい本物のミーシャ・クロイツェフの一割、よくてニ割程度だ。聖人と同程度と言ったところか」

エリザード「それでも十二分に脅威である事に変りは無いけどな」



447 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/30(月) 19:47:04.76 ID:YGrvoQk0
ここで区切ります

サーシャちゃんマジ天使になりました
448 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/30(月) 19:51:07.03 ID:YGrvoQk0
事後報告ですが、上条さんは破壊ではなく打ち消す能力でしたな




449 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/30(月) 20:04:29.46 ID:HbkFoXMP
上条さんマジ空気
450 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/30(月) 21:29:10.66 ID:NHj.LOIo
何というサーシャの主人公ぶり。いいぞもっとやれ。
451 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/30(月) 21:46:40.08 ID:LRUgaIDO
乙! サーシャちゃんマジ天使
452 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/31(火) 09:04:58.68 ID:ZVszHqAo
サーシャちゃんマジ天使
453 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/31(火) 20:40:15.56 ID:hfZ.49E0
サーシャ=天使=ガブリエル=超天使=マジ天使
454 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/01(水) 00:49:23.04 ID:iaHYVM20
サーシャちゃんマジ天使
455 :1 [saga]:2010/09/02(木) 18:56:40.40 ID:ppJouOI0
禁書目録の魔術サイドの話を読んだ後に聖おにいさんを読むと不思議な気分になりませんか?

というわけで投下します
456 :1 [saga]:2010/09/02(木) 18:59:09.66 ID:ppJouOI0

【ミカエル(神の如き者)vsガブリエル(神は我が力なり)】


上条「うおおおおお!!!」


叫び声と共に、上条当麻は右手を目の前の巨人にぶつけた

すると、目の前の巨人は魔力を失い、自重によりバラバラに砕けて行った


巨人の名はモックルカールヴィ

北欧神話で雷神トールと戦わせるために作られたのだが、最後の最後で心臓に使う材料を間違えてしまったために
貧弱になってしまったという何とも滑稽な逸話を持つ巨人である

その巨人を何千何万何億もの大量の紙束を使って再現し、上条達が現在居るこの場所、
バッキンガム宮殿近くにある地下鉄を守護していたわけであるが


そもそもなぜこんな状況になっているのか?


サーシャが女子寮を出て行った後、アックアvs騎士団長や、フロリス&第三王女ヴィリアンとのジャパニーズモモタロウ逃走劇や、
アックアとの再会、キャーリサとの戦いを経て、上条当麻は再び天草式と合流したのだ。

そして、天草式の主に建宮からの説明によると、キャーリサと正攻法で戦うのは、聖人である神裂の力を持ってしても無理だと言う事で、
キャーリサの持つカーテナ・オリジナルの魔力を暴走させようという作戦を立てたらしい
457 :1 [saga]:2010/09/02(木) 19:01:35.39 ID:ppJouOI0

イギリス清教の空中要塞カヴン=コンパスから大規模閃光術式に使う超大容量の魔力を使って、
地下鉄経由でバッキンガム宮殿にいるキャーリサのカーテナ・オリジナルに干渉し、
カーテナの暴走を引き起こそうという内容である。

そのために、バッキンガム宮殿近くの地下鉄に、カヴン・コンパスからの魔力を受ける特殊車両を配備したのだが、
魔術的隔壁によりルートが遮断されているので、その隔壁を破壊する必要があるということだ。


詳しくはとある魔術の禁書目録18巻のp142を参照してください


?『あ、良かった、繋がりました!』


耳に当てた携帯電話から、覚えのある少女の声が聞こえてくる


上条「その声、五和か……?」

五和『は、はい!酒は完全に抜けました!』

上条「?……なんか良く分からないけど、とりあえず変な巨人みたいなのを倒したぞ?」

五和『上条さんが倒したのは、地下鉄の魔術的隔壁ロックを守るための巨人だと思います。
その隔壁ロックが破壊された事により、遠隔地から特殊車両の動力源にアクセスできたんです』

上条「そっか、それならカーテナ・オリジナルへ間接攻撃を加える事が出来るんだな?」

五和「はい、これもヴィリアン様と上条さんのご活躍の賜物です!」

インデックス「私も居るんだよ」
458 :1 [saga]:2010/09/02(木) 19:03:17.59 ID:ppJouOI0

上条「あ、そうだ。なあ、五和。ひとつ聞いても良いか?」

五和『何でしょうか?』

上条「さっき、女子寮でサーシャ・クロイツェフに会ったんだ」

五和『えっ!?』

上条「以前、俺もエンゼルフォールの時にあいつに会った事があるんだけどさ、いや、あれはミーシャだから正確には初対面か」

五和『サーシャちゃんと何かあったのですか…?』

上条「いきなり女子寮に怪我人を抱えてやってきたんだよ。サーシャはどうやらレッサー達の仲間らしいんだが。
ってことは、レッサー達と一緒にカーテナ・オリジナルをキャーリサのもとに運ぼうとしてたって事になるよな」


上条「でも、もうその役割は終わったはずだ。だからレッサーも、サーシャが運んできた怪我人も、騎士派の連中に粛清されそうになった」



上条「でも、アイツはこう言ったんだ。”やらなければならない事がある”ってな」



五和『やらなければならない事ですか……?』

上条「アイツの役割は終わった。終わったのにやらなきゃならない事って何なんだ?サーシャは一体何をしようとしてるんだ?」

五和『すみません、私にも分かりません…』

上条「……そっか。オルソラの話だと、アイツは五和の友達なんだってな。もしかしたらお前なら何か分かると思ったんだけど…」
459 :1 [saga]:2010/09/02(木) 19:06:30.25 ID:ppJouOI0

五和『……実は、私もサーシャちゃんと会ったんです』

上条「えっ?」

五和『地下鉄駅で新たなる光の人と交戦状態になって、その時に殺されかけたんですけど、
そこにサーシャちゃんが突然現れて、私を助けてくれたんです』

上条「…実は俺も、オルソラと一緒に女子寮から脱出する時に、アイツに助けられたんだ。
アイツが女子寮を囲っている騎士派の連中をまとめて退治してくれたみたいでさ」

五和『そうなんですか…』

五和『上条さん…あなたは、あなたの目から見て、サーシャちゃんは味方だと思いますか?それとも……敵だと思いますか……?』

上条「さあな。俺はサーシャの事は良く分からねえから何とも言えねえよ」

五和『そう…ですよね……すみません……』

上条「でも、お前は友達なんだろ?だったらお前が自分で判断すれば良い。判断した結果は、何があっても曲げるんじゃねぇぞ」

五和『……そう言われても、私にもどうすれば良いのかわからないんです……』

上条「お前がアイツと一緒に友達として過ごしてきた日々を思い出せ。それで、アイツが信用できるかできないか、敵か味方を判断しろ」
460 :1 [saga]:2010/09/02(木) 19:11:14.99 ID:ppJouOI0

サーシャと過ごしてきた日々

もちろんとても楽しかった

なんとなく自分が迷惑かけてばかりだった様な気がする

自分の方が年上だが、サーシャの方が歳不相応に大人びているせいだろうか?

まあそんなサーシャがたまに見せる子供っぽさがたまらなく可愛いのであるが


そんなこんなで色々と思い出はあるのだが、一つだけ確かだと胸を張って誇れる事がある

自分があの時計塔で拘束され、操られていた時、サーシャは命を懸けて自分を守ってくれた


上条「味方だと思うなら最後まで信じ抜けば良い。敵だと思うなら、全力でアイツを止めてやれ。
誰かの考えを聞くんじゃなくて、自分の判断を信じろよ。間違ってるかどうかなんて関係ない。
お前が信じる判断で、お前が正しいと思うやり方でアイツと正面からぶつかりあえよ。それが友達ってもんだろ?」

五和『上条さん…』

五和『……そうですね。ダメですね、私は…。あんな些細な事で臆病になって…』


不甲斐無い自分のせいでサーシャを殺しかけたのに、それでもサーシャは「幸せだ」と言って笑ってくれた

最後のお別れの時、耐えられずに泣いてしまった自分を、泣きやむまで抱きしめ続けて、慰めてくれた

自分だって悲しいはずなのに

……そういう人なのだ

目の前のたった一つの幸せのためなら、命を投げ出す事すら厭わない

もしも自分達の敵に回る様な選択をしたとしても、その裏に、ひとつの幸せを守りたいという想いが存在する


サーシャ・クロイツェフとはそういう人物なのだ


上条「……」

五和『決めました!私、サーシャちゃんを信じます!きっと何か言えない理由があるだけで、
今でもサーシャちゃんは私達の仲間のはずですから』
461 :1 [saga]:2010/09/02(木) 19:13:37.81 ID:ppJouOI0

上条「そっか。お前がそう言うならきっとそうなんだろうな」

五和『ありがとうございます!上条さん!』

上条「別にお礼を言うほどの事じゃ『ああっ!!』うわっ!何だよいきなり!」

五和『すみません!すっかり忘れてました!!』

上条「心臓止まるかと思った……どうしたんだ?」

五和『現在、カーテナ用特殊車両が、バッキンガム宮殿直下へ配置するためにそちらへ猛スピードで走行しています!
ですから早く離れて下さい!!』

上条「………」


上条「えーっと、それはつまり?」

五和『これから特殊車両を経由して、空中要塞カヴン=コンパスの心臓部とカーテナオリジナルをリンクさせます!
力の逆流に伴い、大規模な魔力放出が発生する事でしょう。おそらく異変を察知した「騎士派」がそちらへ調査活動に出向くはずですし、
そこに居ると「爆発」に巻き込まれるリスクも高いんです!!大至急こちらに戻ってきてください!!』
462 :1 [saga]:2010/09/02(木) 19:15:47.27 ID:ppJouOI0

上条「ばっ、おまっ!それを早く言えよ!!」

五和『はう、すみません…』

インデックス「なんか私たち空気なんだよ…」

ヴィリアン「仕方ないですよ…」


ガタン!ガタン!!


上条「ちょっ、なんかヤバい音が聞こえてきてるんですけどおおおお!!!」






不幸だァーーーー!!!


不幸だーーー!!


不幸だーー!


不幸だー……

だー…


サーシャ「…?」


サーシャ「地上から誰かの叫び声が聞こえた気がしますが、気のせいですね」
463 :1 [saga]:2010/09/02(木) 19:18:28.18 ID:ppJouOI0

【その頃バッキンガム宮殿では】


清教派の作戦通り、カーテナの暴走に成功した

暴走による爆発の影響は、バッキンガム宮殿を中心に半径50キロにも及んだ

とは言え、別に建物に影響があるわけではなく、その爆発も魔術を知る人間にしか感知できないものである

要は、中性子爆弾の改良型、或いは魔術を使う者だけが影響を受ける細菌兵器の様な物だと思ってもらいたい


そして、その爆発の影響を一番強烈に受けるのは、カーテナを保有しているキャーリサである


キャーリサ「がっ…ゴボッ…!」


まるで体の内側から無数の刃で突き刺され食い破られる様な激痛が走り、宮殿の豪奢な絨毯の上に赤い血の塊が落ちる


キャーリサ「カヴンコンパスからの強制逆流か…ゴホッ!ゲホッ!」


咳をする度に飛ぶ赤い飛沫

キャーリサの唇の端に、一筋の赤い血の線がなぞられる


カヴンコンパスの魔力自体は、カーテナの一割にも満たない

しかし、カヴンコンパスを通じてカーテナ自身の力に影響を及ぼし、暴走を引き起こされたら話は別だ

この爆発の影響で、カーテナの力と、それによるキャーリサの力は50%を削られた

同時に、カーテナを介して騎士派の連中に分配されていた力も大半が削られた
464 :1 [saga]:2010/09/02(木) 19:21:00.97 ID:ppJouOI0

キャーリサ「まずいな…」

もともとこのクーデターは、三派閥の一角である騎士派の長、すなわち騎士団長の合意と、
カーテナを持つキャーリサの手腕により、英国の軍事コントロールを得た事が成功の要因である

しかし、騎士団長はアックアことウィリアム・オルウェルとの戦いに敗北した

そして今カーテナが暴走し、その力の大半を削られた

つまり、騎士派の連中にとってのクーデターのニ柱のうち、ひとつは崩壊し、もう一つも崩壊寸前の状況なのである


キャーリサ「このままでは、騎士派の中でクーデターから離反する者が出てくる。そうなる前に、
何人か裏切りそうな奴を血祭りに上げて、騎士派の統制を引き締めねば……」


ガシャン!!


突然、このバッキンガム宮殿のキャーリサの居る部屋の窓ガラスが豪快に割れる音が響いた
465 :1 [saga]:2010/09/02(木) 19:24:50.88 ID:ppJouOI0

キャーリサ「何だ!?この忙しい時に次から次へと!?」


キャーリサは怒鳴りながら、ぶち破られた窓の方を振り返った


するとそこには、暗くて人物の判別はできないが、何者かが両手と片膝を付いて、まるで短距離走の選手の様な格好で屈んでいた


月を背に浮かびあがるそのシルエットは、まるで王女キャーリサに跪いている様に見える



キャーリサ「誰だ、貴様は……?顔を上げて、無礼者の面を私に見せてみろ!!」


カーテナの切っ先を”それ”に向けながら、キャーリサは叫んだ


すると、”それ”はバサッ!と翼を左右一対に大きく広げ、影が横に大きく伸びる


そして、ゆっくりと”それ”は立ち上がり、まるで猫の様に暗闇の中で浮かぶ真っ赤な瞳でこちらを見据えてきた






サーシャ「第一の解答ですが、この革命に終止符を打つべくここに参りました。どうか御無礼をお許しください」


466 :1 [saga]:2010/09/02(木) 19:34:08.71 ID:ppJouOI0

キャーリサ「ほー、貴様一人で私を倒せると?大した自身だな」


ようやく露わになったサーシャの姿を見て、キャーリサは気付く


キャーリサ「ん?貴様、その格好はもしや新たなる光の……そーか、口封じで仲間が殺された事に対する仕返しとゆーわけか」

サーシャ「第一の質問ですが、その程度の考えしか頭に浮かばないのですか?
でしたら、あなたがそのカーテナを手にして英国女王の座に就くのは場違いも良いとこでしょう」

キャーリサ「言ってくれるな小娘が」

サーシャ「第二の解答ですが、自分のために働いてくれた人間を殺す様な君主では、この国の行く末に光は無いでしょうね」

キャーリサ「甘っちょろいお子様の考えだな。切り捨てる物はさっさと切り捨てる。でなければ本当に守るべき物は守れない。
全てを守りながら天下を取る事などできないの。寛容、慈愛、融和、人道、
そんな下らないロマンティシズムに裏打ちされたパラダイムのせいで、英国はここまで衰退したの」

サーシャ「第二の質問ですが、リアリズムもロマンティシズムも両立する事はできないのですか?
できないなら所詮はその程度の器と言う事でしょう」

キャーリサ「くっ……!」


サーシャの挑発に、キャーリサは奥歯を噛みしめた


サーシャ「その程度の器では、放っておいても全て失敗すると思いますが」

キャーリサ「どの道、この英国は衰退するけどな。例え貴様がここで私を止めたとしても」
467 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/02(木) 19:35:36.45 ID:2LA0G.DO
サーシャちゃんマジヒーロー
468 :1 [saga]:2010/09/02(木) 19:38:03.01 ID:ppJouOI0

サーシャ「第三の解答ですが、そんな事はありません」

キャーリサ「何?」

サーシャ「あなたは一つの大きな力に囚われ過ぎて、もっと大きな力の存在に気付いていないのです」

キャーリサ「何が言いたい?」

サーシャ「第四の解答ですが、話し合いに来たわけではありませんから、あなたを説得するつもりはありません。
知りたければご自分でお考えになってください」

キャーリサ「言っておくが、このロンドン周辺は爆発の影響で高濃度のテレズマが満ちている。
少しでも魔術を使えば、ロンドンが丸ごと吹き飛ぶぞ?」

サーシャ「第五の解答ですが、ご安心を」


突然、空から星が消え、同時に光の紋様の魔法陣が空一面に描かれる


キャーリサ「これは…天体制御(アストロハインド)だと!?」

サーシャ「限定範囲なので、そんな大それたものではありません。ここバッキンガム宮殿の周辺のみ、テレズマを制御しました」

キャーリサ「こんな技が使えるとは、貴様は人間ではないみたいだな」

サーシャ「ええ、あなたと同じ化け物です」


そう言うと、サーシャは翼をはためかせ、無数の氷の砲弾をキャーリサにぶつけた

キャーリサはカーテナによる次元切断で作りだした残骸物質を盾にし、それを防ぐ
469 :1 [saga]:2010/09/02(木) 19:42:34.92 ID:ppJouOI0

キャーリサ「これは、氷?いや、水晶か。なるほど、水を魔力で固め、溶けない鋼鉄並みの強度を誇る氷を作りだしたとゆー事か」

サーシャ「……」

キャーリサ「そーかそーか。先程の天対制御と言いその氷の翼と言い、こんな力を使うのは、
水を司り、月と後方を守護するガブリエル(神は我が力なり)以外に思い浮かばん」

サーシャ「……」

キャーリサ「分かったぞ。貴様、サーシャ・クロイツェフだな。確か英露条約の時に殲滅白書のシスター達と一緒に
ロシアへ引き渡したはずだが、どーした?そんなに英国が恋しかったのか?」

サーシャ「第一の解答ですが、随分とお喋りが好きな様ですね。第二王女は口より先に手が出るタイプだと伺っていましたが」

キャーリサ「そーだな。いかん、どーも興奮すると口数が多くなってしまう。こーゆーのは私らしくないな」


次の瞬間、常人の目では到底追えない様な速さでサーシャに斬りかかって来た


ガギィッ!


サーシャはとっさに氷の剣を取りだし、キャーリサの一撃を受け止める


キャーリサ「この方が私らしーな!」

サーシャ「そうですね!」
470 :1 [saga]:2010/09/02(木) 19:46:06.18 ID:ppJouOI0

カーテナと氷の剣がつばぜり合いをする

気を抜けば一瞬で殺られる様な、怪物と怪物が生み出す歪な均衡状態

先に集中力を切らした方が、間違いなくその瞬間に死ぬ様な状況だ


キャーリサ「気を付けろ、カーテナは整数で表わせる全ての次元を切断する」


キャーリサはつばぜり合いの均衡状態から次元切断を発動させる事により、鋼鉄並みの強度を誇る氷の剣を次元ごと切断する事で、
強引に戦いの主導権を獲得する


そして、そのままの勢いでサーシャの首をも切断しようとカーテナが真横に振るわれた


サーシャ「ッ…!」


横に振るわれた一撃を、しゃがむ事によって回避するサーシャ

しかし、横に振るわれた時にできた、真っ白な陶器の様な形をした切断残骸物質が、そのまま重力でサーシャの頭上に落ちてくる


サーシャは後ろに飛び退く事で残骸物質を回避した。そうしなければ、潰れたカエルの様になってしまうからだ


だが、キャーリサはそれを逃さない


キャーリサ「落ちろッ!!」(ドスッ!)

サーシャ「うぐッ!!」


キャーリサは、後ろに飛び退いたサーシャに思いっきりタックルをかました
471 :1 [saga]:2010/09/02(木) 19:51:09.74 ID:ppJouOI0

吹き飛ばされたサーシャの体は、入って来た窓とは違う窓を突き破り、バッキンガム宮殿の庭園へと放り出される


ドスッ!


サーシャ「あがッ!!」


宮殿の最上階から地面に叩きつけられたサーシャの小さな体

ガブリエルの力による補正が無ければ、一体どんな悲惨な死体が出来上がっていた事だろうか


サーシャはなんとか起き上がろうとするが、怪物同士の戦いには一秒の猶予も無い

サーシャが横たわっているその上空から、キャーリサが剣を逆さに構え、そのままサーシャの体ごと地面に突き刺そうと降下してくる


重力による自由落下の速度を遥かに超えた一撃


ズドン!!とまるでロードローラー!が高層ビルの屋上から落下した様な轟音が鳴り響く


サーシャは横に転がることで何とかその一撃を回避するが、衝撃により体が軽く吹き飛び、さらに地面をニ転、三転と叩きつけられた


サーシャ「あうッ…ぐッ…」

キャーリサ「ほー、避けたか。だがまだ終わらんぞ?」


地面に深々と突き刺さったカーテナ

ここで18巻の最初の上条とキャーリサの戦いを思い出してほしい

次元を切断するほどの魔力を誇るカーテナを、地面に突き刺したらどうなるか?
472 :1 [saga]:2010/09/02(木) 19:55:36.48 ID:ppJouOI0

地響きが起きるとともに、キャーリサの立つ位置を起点として地下で大規模な魔力の爆発が起きる

その爆発はキャーリサの周囲の地面を円形にべゴン!とへこませ、さらにその周辺の地面を無理矢理まるで津波の様に盛り上げてしまう


ドガッ!


サーシャ「ッ!!!」


サーシャの体は下から強く叩きつけられ、空中に投げ出された

そして、高く空中に放り出された分だけ、地面に叩きつけられる力も強くなる


ドスン!!


サーシャ「ぐッ!!!がはッ!ごふッ!」


全身を強打し、体中の酸素無理矢理引きずり出される様な感覚がサーシャを襲う

酸素と一緒に、おびただしい量の血も一緒に吐きだされた


キャーリサ「どーした?あれだけデカイ口を叩いておきながら、もー終わりか?とんだビッグマウスだな。
こーゆーのを日本では能無しの口叩き、いや吠える犬は噛みつかぬと言ったかな。まったく日本語と言うのは面白い表現が多い」

サーシャ「うぐッ…ッ!!」


地面に這いつくばりながらキャーリサを睨みつけるサーシャ


キャーリサ「ほー、良い目だ。先程の言葉は訂正しよう。私を前にビクビク怯えて従うだけの無能な騎士共とは違うな。
ちょうど騎士団長がやられたところだ。貴様の様な強い部下は喉から手が出る程欲しい」
473 :1 [saga]:2010/09/02(木) 20:02:38.56 ID:ppJouOI0

サーシャ「第…一の解答…です…が、冗談はあなたの小さな器だけにしてください…」


地面に這いつくばったまま、ビュン!と高速でサーシャの氷の翼がキャーリサに向かって振るわれた

だが、キャーリサは次元ごとその翼を叩き斬る

硬度は関係ない

どんなに硬くても、次元ごと斬り裂いてしまえるのだから


キャーリサ「ふむ、その度胸。ますます殺すには惜しーな。本格的に貴様が欲しくなってきたぞサーシャ・クロイツェフ」

サーシャ「第二の解答ですが…どうやら剣による撃ち合いも、この翼も通用しないとなると、打つ手がありませんね…」

キャーリサ「私の力はミカエル(神の如き者)だ。ミカエルより格下のガブリエル(神は我が力なり)では始めから勝負は付いている。
私を倒したかったら、本物のガブリエルでも連れてくることだな」

サーシャ「第三の解答ですが、日本には”一矢報いる”という言葉があります……例えガブリエルの力を借りているに過ぎなくても、
こんな事もできるのですよ……」

キャーリサ「……!?」


圧倒的優位に立っていたキャーリサの顔色が変わった
474 :1 [saga]:2010/09/02(木) 20:09:19.87 ID:ppJouOI0

気が付いたら、いつの間にか見渡す限り、魔法陣で覆われた夜空の全方向に点々と赤い光が灯っていたからだ


その数は数億


キャーリサ「これは…まさか!?」

サーシャ「”神戮(しんりく)”です。かつてソドムとゴモラを一晩にして地上から消滅させた大規模一掃魔術。ガブリエルの神罰ですよ」


赤い星の様に夜空に光る点は、ひとつひとつが核ミサイル級の破壊力を持つ炎の矢

とは言え、さすがに本物のガブリエル及びミーシャ・クロイツェフではないのでそこまでの威力は無い

本物のガブリエルがこの技を使えば、おそらくイングランド全域がニ度と生命が生まれない程の焦土と化すだろう


サーシャは範囲をバッキンガム宮殿とその周辺に定め、威力もロンドンが地図から消えない様に細心の注意を払って調整している

それでも全部直撃すれば、バッキンガム宮殿ごとこの周辺を更地に変えるだけの威力はある


キャーリサ「そーか、今までただやられていたわけではなかったのだな……クソッタレ!全てはこのためにッ!!」

サーシャ「今この状況でバッキンガム宮殿という拠点を失うなんて失態を犯したら、
はたしてそれでも騎士派はあなたを信じて付き従う事ができるでしょうか?」


這いつくばりながら不敵な笑みを浮かべるサーシャ

一体どちらが追いつめられているのだろうか?
475 :1 [saga]:2010/09/02(木) 20:13:27.63 ID:ppJouOI0

キャーリサ「やってみせるさ……貴様に見せてやる!そして貴様の口から言わせてやる!!
この私キャーリサは、この英国で、いやこの世界で覇権を握るに相応しい器の持ち主だとな!!」


サーシャが氷の翼で自分の体を覆うと同時に、無数の炎の矢がキャーリサごとバッキンガム宮殿と周辺一帯を襲った


キャーリサ「誰も死なせはしない!!誰もッ!!」


全次元切断をフルパワーで使用し、カーテナを振るう

ゴオッ!!という耳をつんざく様な轟音と共に、炎の矢が一斉に薙ぎ払われ、消滅する


キャーリサ「クソッ!数が多過ぎる!」


だがそれだけでは足りない

次元切断により生まれた残骸物質を炎の矢の盾になる様に計算し、さらにまた次元切断で矢をまとめて斬り裂く


それを何回も何回も神速とも呼べる速さで行うキャーリサ



数分後には彼女の宣言通り、バッキンガム宮殿も破壊される事なく、全ての炎の矢を消し去ってしまった



キャーリサ「ハァ…ハァ……どーだ?やってみせたぞ……」

サーシャ「第一の解答ですが、お見事です…」


流石に力を使い過ぎたのか、キャーリサはカーテナを軽く地面に突き刺し、それを支えにして片膝をついている

肩で息をしており、その表情にはあからさまな疲労感がうかがえる

一方サーシャはと言うと、依然地面に伏したままだが、神戮を防がれたというのにその表情に悔しさというものは感じられない
476 :1 [saga]:2010/09/02(木) 20:16:45.65 ID:ppJouOI0

サーシャ「”誰も死なせはしない”ですか…」

キャーリサ「……」

サーシャ「第一の質問ですが、どうやら私はあなたを誤解していたみたいですね」

キャーリサ「勘違いするな。みなに死なれては私の戦力に影響が出るからだ」

サーシャ「……そうですか」

キャーリサ「これで万策尽きたといったとこか。覚悟は良いな?」


キャーリサは立ち上がり、カーテナを振り上げた


サーシャ「第二の解答ですが、I get back at you(一矢報いる) という言葉をお忘れですね」

キャーリサ「なに……ぐがッ!」(ドスッ!)


突然一本の炎の矢が、キャーリサの肩を貫いた


数億もの炎の矢に隠した本命の一本

それはキャーリサの肩を貫き、地面に突き刺さり、そして音も無く霧散して消えた


サーシャ「本来ならその体ごと粉々に吹き飛んでいるとこですが、やはりミカエル(神の如き者)の力による補正は反則ですね
……ガフッ!ごぼっ!」


再び口から大量の血を吐きだしたサーシャ

彼女の体は、本来は力を使う機能が備わっていない

それを天体制御や神戮まで本来は使えるはずのない大技を無理矢理行使し続けたのだ


ローラの言った通り、無理を続けたサーシャの体は確実に崩壊を始めている


477 :1 [saga]:2010/09/02(木) 20:20:08.80 ID:ppJouOI0

キャーリサ「貴様……わざと外したな?」

サーシャ「さて…なんの事でしょうか……がぼっ!ゲホッ!」


惨たらしく血の塊を吐きだすが、その顔は依然変わらずに満足そうな不敵な笑みを浮かべている

誰が見ても勝利したのはキャーリサだが、どうも彼女の心にはその実感が沸かない

むしろ、自分の心の内を見られた様な気がして、釈然としない忌々しさが心の内を支配する


キャーリサ「……ふん、ほっといても勝手に死ぬだろー。貴様の勇気に敬意を表したいとこだが、私を侮った事は許し難い」



キャーリサ「よって、とどめは刺してやらん。そのまま苦しみながら死んでゆけ」


そう言うと、キャーリサはサーシャに背を向け、バッキンガム宮殿の内部からキャーリサとサーシャの人の枠を超えた戦いの
一部始終を見ていた者達に向かって叫んだ


478 :1 [saga]:2010/09/02(木) 20:22:13.67 ID:ppJouOI0

キャーリサ「見たかお前達!!カーテナの力を振るう私は、大天使の力をも簡単に覆して見せたぞ!!
幾億もの炎の矢も、我らにとっては微塵も脅威にはならん!!我らの勝利と、この全英大陸の栄光は約束されている!!
栄光を欲する者は私に続け!!勝利を欲する者は私と共に剣を取れ!!」


その言葉は、不安に揺れていた騎士達の心に一つの希望の光を灯した


そうだ!キャーリサ様に従えば我らの勝利は確実だ!

全英大陸万歳!キャーリサ様万歳!

キャーリサ様マジ天使長!

サーシャ!俺だ!結婚してくれ!

騎士団長が居なくても、キャーリサ様がいればイギリスは安泰だ!


聞こえてくる騎士派の喚起の声


それに対し、キャーリサは


キャーリサ「ふん、流され易い愚か者共が。なぜ不利な時にこそ意地を見せぬ。あと若干二名、いや一名はブチコロシカクテイだな」


吐き捨てる様にそう言った
479 :1 [saga]:2010/09/02(木) 20:27:54.02 ID:ppJouOI0

後ろを振り返るキャーリサ

サーシャは受けだダメージと力の使い過ぎにより意識を失っていた


キャーリサ「……」


ほっといてもこのまま死ぬだろう

死なすには惜しい人材だが、ここでサーシャを助けるわけにはいかない

キャーリサは再び前を向き、バッキンガム宮殿に戻ろうと足を進めた




?「貴様のその雄姿、感服したのである」





突然聞こえてきた声に振り向くと、そこにはここに居る誰もが知っている人物が立っていた

青が印象的な服装

生まれながらの聖人にして神の右席の一人

騎士団長を撃破し、クーデターの柱を一つ崩した男

王女はその名を叫ぶ


キャーリサ「ウィリアム・オルウェルッッ!!」


ウィリアムことアックアは、ボロボロになったサーシャをそっと抱きかかえた


アックア「今はこの娘を回収しに来ただけである。その首はまた後ほど頂こう。しっかり洗って待っていろ」

キャーリサ「ふん、貴様の死期が伸びるだけの話だ。死んだあとに後悔しないよーに精々今のうちに余生を楽しんででおくんだな」
480 :1 [saga]:2010/09/02(木) 20:31:01.35 ID:ppJouOI0

アックア「私に後悔は無い。戦場で生きる私には、いついかなる時も死ぬ覚悟はできているのである」


それが口先だけではないという事が、彼の覚悟を奥に秘めた、研ぎ澄まされた様に鋭い眼光から感じられる

神の右席としてではなく、それが傭兵ウィリアムの生き方だから

アックアは瞬く間にサーシャを抱きかかえたまま、その場から消えていった





キャーリサ「Flere210、その涙の理由を変える者か……」


この魔法名を遂行するためなら、彼は死ぬ事さえも恐れない


キャーリサはしばらくアックアの消えて行った方角を眺めていた

そして、彼女は静かにつぶやく


キャーリサ「……それは私とて同じだウィリアム。この英国の行く末のために、この忌々しい剣を未来永劫に葬り去る事ができるのなら……」



481 :1 :2010/09/02(木) 20:46:28.24 ID:ppJouOI0
ここで区切ります


実はサーシャと五和を友人関係にした理由には、インデックスと堕天使さんの友人関係を
真似てみたという背景があります
真似てみたと言っても東洋人&天草と西洋人と言うとこだけですが

記憶を失う前は二人が親友だったという事を考えると、17巻の表紙はちょっと切なく感じるのは自分だけでしょうか?
482 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/02(木) 20:57:21.77 ID:2LA0G.DO
乙! なんかこのSSは読んでると>>1の禁書愛が伝わってくるわww
サーシャちゃんマジ瀕死!
483 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/02(木) 21:55:06.22 ID:rTu5RCso
>>478
途中だれぞ
484 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/02(木) 23:13:13.06 ID:msJDd2Qo
乙。
記憶喪う前のインデックスと神裂が、サーシャと五和みたいな感じだったと想像すると面白いね。
インさんはもう少し神裂と親しくして欲しいものだ。

しかしサーシャが一矢報いたのはいいが瀕死だなおい。
485 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/05(日) 23:54:27.21 ID:OIRO8z2o
そろそろ続き来るかな?
486 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/07(火) 23:04:35.96 ID:fgqB2dUo
wwktk
487 :1 [sage]:2010/09/09(木) 20:13:38.77 ID:vM39g9o0
へんたい遅くなってしまいましたが、続きを投稿します
488 :1 [sage]:2010/09/09(木) 20:14:56.93 ID:vM39g9o0
【再開】


目を覚ますと、視界一面が黄色に染まった

5秒後にそれがビニール製の生地であるという事を知った

10秒後に自分の体にかけられた毛布の柔らかな感触を覚えた



そしてやっと、自分がまだ生きていたという事に気がついた


ここはどこだろうか?

空間のせまさと形状から察するに、おそらくテントの中だ

と言う事は、ここは野外だろう

こんなところで、このクーデターが起きている最中に呑気にキャンプでもやっているのか?

そうだ、そう言えば、今はまだクーデターの最中だったのだ
489 :1 [sage]:2010/09/09(木) 20:20:56.62 ID:vM39g9o0

とりあえず体を起してみる

痛い、体中が軋む

先の戦いで、あの第二王女相手に力を使い過ぎてしまった様だ

ここは国家元首と呼ぶべきか?

いや、やっぱりやめよう



とりあえず、その行動自体には何の意味も無いのだが、何となく自分の右側に視界を切り変えたくなった


だから右を見た


五和が居た



サーシャ「………」



もう一度正面に視界を戻す
490 :1 [sage]:2010/09/09(木) 20:23:10.97 ID:vM39g9o0
とりあえず気持ちの整理をしてみる

まずは落ち着いてみる事が大事だ


息を吸って


サーシャ「スー」


吐いて


サーシャ「ハー」


もう一度息を吸って


サーシャ「スー」


吐いて…


サーシャ「ハー」


心が少し落ち着いた


改めて右を見る


五和が居た


まごうことなく五和がいた
491 :1 [sage]:2010/09/09(木) 20:24:20.11 ID:vM39g9o0

自分のすぐ傍に座りながら、規則正しく寝息を立てている


サーシャ「……」(ダラダラ)


冷や汗が出てくる

どうして彼女がここに居る?

と言う事は、ここは天草の拠点だろうか?

自分は天草式の人間に回収されたのか?

あのキャーリサの居るラスボスのダンジョンで?

そんな事ができる程の術者が居ただろうか?

そう言えば、聖人である神裂は天草式の女教皇だった


多分、神裂が回収してくれたのだろう

そして五和が自分の治療をしてくれたということか
492 :1 [sage]:2010/09/09(木) 20:27:09.01 ID:vM39g9o0

よくよく五和の顔を観察してみると、目元が少し赤くなっている


また彼女を心配させてしまった様だ……


ところで、自分は彼女に何て言えば良い?

正直気まずい

このまま逃げ出そうか?

いや、心配かけた上に看病までしてくれたのだ

それはいくらなんでも友人に対して不誠実ではないだろうか

だが、気持ち良く寝ている人間を起こすというのも少しかわいそうではないか?


……うん、かわいそうだ


諸々の事情は後で話せば良い

だから、今はこの状況からの一刻も早い脱出を試みるべきだ



五和「むにゃ…かみじょうさぁん、わたしはあなたの大精霊ですよぉ…」

サーシャ(ビクッ!)



………



ああ、問題ないぞ大佐(ワシリーサ)。ただの寝言だ
493 :1 [sage]:2010/09/09(木) 20:28:48.83 ID:vM39g9o0

五和「えへへ〜らめれすよぉかみじょうさん、こんなとこでそげぶしちゃ…だれかにみられちゃいますよぉ……」(グラリ)


大佐(ワシリーサ)、五和がこちらに向かって倒れ込んできたぞ


サーシャ「!!!」

バタッ!


そのまま倒れ込んできた五和の下敷きになるサーシャ

柔らかい特大オレンジが凶器となってサーシャを圧迫する

事情を知らない人が見たら、まるで五和がサーシャ押し倒している様に見えるだろう
いや、そうとしか見えない


五和「いいですよぉかみじょうさん。わたしのはじめてがほしいなら、まずはその×××で×××を×××××」


寝ぼけた五和の顔がこちらに迫ってくる

まずい!犯される!!
494 :1 [sage]:2010/09/09(木) 20:30:15.03 ID:vM39g9o0

大佐!指示をくれ!大佐!!「サーシャちゃんのはじめては私のものだ!さっさとそこをどけ売女ァ!」
とか言ってないで指示をよこせ大佐ッ!


サーシャ「大佐ぁッ!!」

五和「……」

サーシャ「あ……」

五和「……」



BGM:目が逢う瞬間



鼻先数センチの距離で、サーシャの「大佐ぁッ!」という声でばっちり目を覚ました五和と視線が重なる


サーシャ「……」

五和「……」

サーシャ「……」

五和「……」

サーシャ「だだだ、第一の解答ですが、お久しぶり…です…」
495 :1 [sage]:2010/09/09(木) 20:32:11.87 ID:vM39g9o0

五和「……」

サーシャ「お久しぶりなんです!五和が地下鉄で会った謎の少女Sは私ではないのです!ですから、あの…」


えぇーっ?サーシャちゃんはどちらかと言えばMでしょ?


サーシャ「やかましいですよ大佐!!あっ、えーっと、その…」

五和「……」


五和「ぐすっ…ふえっ…」


突然、溢れんばかりの涙で五和の目が覆われた


サーシャ「あの、五和…?」

五和「サーシャちゃああん!!」(ぎゅうううっ!!!)

サーシャ「はうあ!」(ベキバキボキバキリ!!!)


マウントポジションから無理矢理サーシャを抱き起こして、思いっきり抱きしめる五和

なにやら色々と折れた音が聞こえたが、たぶん大丈夫だろう
496 :1 [sage]:2010/09/09(木) 20:34:01.13 ID:vM39g9o0

五和「ばかっ!サーシャちゃんのばかぁ!!どれだけ心配したと思ってるんですか!!」

サーシャ「……すみません」

五和「いつも自分ばっか死にそうになって!!」

サーシャ「反省してます」

五和「私を泣かせるのはそんなに楽しいですか!?」

サーシャ「……少し」

五和「私の事が嫌いなんですか!?」

サーシャ「そんな事はありませんよ」

五和「じゃあ今すぐここで好きって言って下さい」


サーシャ「……え?」


五和「…言えないのですか?」

サーシャ「いえ、あの、その……」

五和「まさか、他に女ができたんですか?だから私の事なんて……」

サーシャ「第一の質問ですが、あなたさっき寝言で上条って連呼してましたよね?」


そう言うと、いきなり五和の抱きしめる力が強くなった


サーシャ(やばいです、全身の骨がミシミシ言ってます…)
497 :1 [sage]:2010/09/09(木) 20:35:45.54 ID:vM39g9o0

五和「誰ですか?私の可愛いサーシャちゃんをたぶらかしたのは……そっか、あの新たなる光の人達ですね……」

サーシャ「いえ、だ、第一の解答ですがッ!」(ミシミシ)

五和「ゆるせない、サーシャちゃんは私だけのもの……誰にも渡さない……クスクス」

サーシャ「第ニの解答ですが、病む対象は私ではなく上条当麻では…」

五和「じゃあ好きって言って下さい」

サーシャ「えっ」

五和「やっぱ言えないんだ…」

サーシャ「いえ、好きです。好きですよ五和(友人的な意味で)」

五和「聞こえません、もっとはっきりいってください」(ぎゅっっっ!!)


ホールド力がマックスに達し、サーシャの体がメキメキと嫌な音を立てる
498 :1 [sage]:2010/09/09(木) 20:37:00.43 ID:vM39g9o0

サーシャ「まずいでず、ごのままだどサー/シャになっでじばいまず、うぐっ!」(メキメキ)

五和「さあ、はやく」(ぎりぎり)

サーシャ「好きでず!ずぎでずがら!!」


アニェーゼ「oh…」

ルチア「修羅場というやつですか」

アンジェレネ「あれが噂の天草流殺人術なんですね」

神裂「いえ、天草十字凄教はそんな物騒な組織ではありませんから。ていうか誰ですかそんな噂流してる人は」

サーシャ「そこで眺めてないで、せめて私の体が分割される前にだずげで……ぐふっ」

アニェーゼ「無茶しやがって…」

神裂「いえ、無茶したのは五和でしょう。常識的に考えて」


サー/シャちゃんマジ天使になりました
499 :1 [sage]:2010/09/09(木) 20:39:27.76 ID:vM39g9o0

その後、サーシャは全てを話した

ロシア成教とローマ正教から狙われており、それが原因で亡命した事

前回と同じように女子寮に逃げ込んだだけでは、みんなを危険な目に遭わせてしまう

それを避けるために、最大主教と交渉する必要があった

願わくば、禁書目録級の重要人物として扱われるように

そうすれば、ロンドンのランべス区という必要悪の教会の本元に居る限りは、ロシアやローマも簡単に手を出す事はできないと考えたのだ

だから、最大主教と交渉できる様な環境が欲しかった

そのために、新たなる光に協力し、クーデターの肩棒を担いだ

その責任を取るために…



上条「キャーリサに一人で挑んだのか?いくらなんでも無茶だろ」

五和「そうですよ!女教皇様ですら一人では敵わないかもしれないのに!」
500 :1 [sage]:2010/09/09(木) 20:40:29.04 ID:vM39g9o0

アニェーゼ「ガツガツ」

インデックス「ひょいぱくっ!」

アンジェレネ「あぁーッ!今私のミートボール食べたでしょ!?」

インデックス「食べてないよ?ひょいぱくっ!」

アンジェレネ「言ってる傍から人のハンバーグを食べないでください!」

ルチア「アンジェレネ、私の分をあげますから、怒りと大食と嫉妬の三重苦からさっさと脱しなさい」

アンジェレネ「苦っ!なんですかこの苦い野菜!これ絶対毒ですよ!」

上条「誰も聞いちゃいねぇなオイ」

建宮「いつわーちょっといいか?」

五和「あっ、はい!」

サーシャ「……」
501 :1 [sage]:2010/09/09(木) 20:41:58.67 ID:vM39g9o0

サーシャ「結局、一人で私がキャーリサに挑んだ事以外は誰も責めないのですね」

アニェーゼ「責めたって仕方ないでしょう。私だってもしかしたら、サーシャと同じ立場だったら同じ行動をしていたかもしれませんし」

アニェーゼ「確かに一人で抱えて一人で行動していた事は責めたくなりますけど、それは強くない私らにも原因はあるんですから」

サーシャ「……」

アニェーゼ「まあこまけえこたぁ良いんです。サーシャは良く頑張りました。隊長として褒めてあげます」

サーシャ(そう言えば、私は無理矢理加入させられてましたね)


アニェーゼはサーシャの肩をガシッ!と力強く掴んだ


アニェーゼ「サーシャは私らを守ろうとしてくれた。今度は私らがそれに答える番じゃねえですか!」


そう言いながら、彼女は力強く逞しく笑ってみせた


サーシャ「相手は、ヴェロニカ部隊とは比較にならない程の強さですよ?」

アニェーゼ「大丈夫です。今回は聖人の神裂も居ますし、イギリス全土から清教派のシスターが集まってくれています。
それにほら、切り札に上条当麻が居るんですよ」

上条「えっ、いやまあ切り札なんて大それたもんでもないけどよ」
502 :1 [sage]:2010/09/09(木) 20:44:04.45 ID:vM39g9o0

神裂「サーシャ、ちょっといいですか?」

サーシャ「第一の解答ですが、何でしょうか?」

神裂「キャーリサに一人で挑んで、生き残る事ができたというのが不思議でならないのです。たぶん、私でも無理でしょう」

神裂「それに、あなたの体から非常に強力なテレズマの欠片の様なものを感じるのです。まさかとは思いますが、
またその体にミーシャ・クロイツェフが?」

上条「ミーシャだって!?」


その言葉に傍で話を聞いていた上条が反応した

無理も無い。彼も神裂も、エンゼルフォールの時に大天使の恐ろしさを嫌と言うほど思い知らされたのだから


たった一人で世界を滅ぼす程の圧倒的な存在

絵空事の様に聞こえるが、それを現実だと認識できた時には、他のどんな物も比較にならないくらいの恐怖に変る


サーシャ「第二の解答ですが、直接ガブリエルが降りて来たわけではありません。どうやら、
その力の一端を使える様になったみたいなのです。私もどうしてそうなったのかは理解できませんが……」

上条「でも、それでもキャーリサには敵わなかったんだよな…」

サーシャ「第三の解答ですが、それが現実みたいです。キャーリサは、王族とカーテナという特殊な条件の元で、
私と同じように大天使の莫大なテレズマを扱う事ができます。そして、彼女は私のテレズマよりも遥かに大きかったのです…」

神裂「それは覚悟の上です。それともう一つ聞きたいのですが、あなたは後方のアックアと面識があるのですか?」

サーシャ「後方のアックア……神の右席ですか?いえ、そんな大物とは面識はありません」

神裂「しかし、実は瀕死のあなたをここに運んで来たのは、後方のアックアなのです。」
503 :1 [sage]:2010/09/09(木) 20:46:56.41 ID:vM39g9o0

てっきり神裂が回収してくれたのかと思っていたが、どうやら自分は後方のアックアとやらに助けられたらしい

神の右席そのものもオルソラと五和から聞いた話でしか知らなかったのだが、なぜアックアが自分を助けてくれたのかは理解できない


実のところ、それは単に彼の気まぐれであるのだが


それと一つだけ、サーシャは上条や神裂に伝えなかった事がある

あの時、一本だけキャーリサに当てる事ができた炎の矢

実はキャーリサの言う通り、わざと狙いを外したのだ

その気になれば、キャーリサの心臓や肺を貫く事ができた

まあそれでキャーリサが死ぬかどうかは疑問だったが


漠然とだが、サーシャはキャーリサが何かを隠している様に感じた

自分と同じように、一人で何か重いものを抱えている様な気がしたのだ

論理的では無いその考えが、自分のキャーリサに対する敵意をどこか別の方向に逸らしてしまった様に思える

言葉や態度では冷徹な君主を気取っていたが、どこかそれになりきれていない様に感じられたのだ

こんな曖昧でまとめる事のできない考えなど、上条達に言う事はできないし、下手に自分の考えを話して彼らが
キャーリサに対する同情心を持ってしまえば、これから始まるであろう彼らとキャーリサとの戦いに影響を及ぼす可能性がある


それを言ってしまえば、あの時ためらうことなくキャーリサを殺していれば、これから戦いが始まって彼らが傷付く事も無いのだが


だが、本当に曖昧で漠然ではっきりしないのだが、彼女を殺してはいけないと思ったのだ
504 :1 [sage]:2010/09/09(木) 20:49:23.90 ID:vM39g9o0
【おまけと言う名の本編】


建宮「じゃじゃーん!大精霊チラメイドなのよ♪」

五和「なっ、なっ、なんでヒック」


突然現れたゲテモノメイド服を見て息が止まり、語尾がしゃっくりの様になってしまった


建宮「五和!今がチャンスなのよ!これを着て、上条にお前の隠れ巨乳をアピールするんだ!」

五和「できるわけないでしょうそんな恥ずかしこと!しかも何で建宮さんが私のバストサイズを把握してるんですか!?
で、でもこのままじゃ…」

建宮「なんでサーシャにはあんなに積極的になれるのに、上条当麻にはアタックできんのよ?」

五和「だ、だってサーシャちゃんは友達だからですよ。それとこれとは話が別です!」

対馬(そう言えば、五和って自分のペットが他人に懐くと嫉妬するのよね。独占欲が強いのかしら?)

建宮「むむむ、じゃあ仕方ない、ここは俺が着るしか」

対馬「やめんか!!」

建宮「ちなみに女教皇様の嫁入り道具であらせられる堕天使メイドと堕天使エロメイドはちゃんと保護してあります!ほら!」ヒラヒラ

神裂「ブゴッ!!」
505 :1 [sage]:2010/09/09(木) 20:51:10.64 ID:vM39g9o0

サーシャ「……」

上条「えーっと、まあ何かアレだけど、五和はお前の事すごく心配してたんだぞ?」

サーシャ「第一の解答ですが、分かっています。彼女には本当に迷惑をかけてしまいました」

上条「それにアニェーゼ部隊もだいぶ変わったみたいだし、お前は本当に良い仲間を持ったよな」


それも上条のおかげであるのだが、彼に自覚は無い


サーシャ「第二の解答ですが、その通りですね。仲間に恵まれている事が私の唯一の誇りです」


上司に恵まれているかどうかはともかく


オルソラ「上条さん!見て下さいませ上条さん、これは小悪魔ベタメイドというのでございます」

シェリー「だから着てんじゃねえよこのばかああああああああ!!!」

オルソラ「似合っているでございましょうか?」

上条「ブフッ!!オルソラ!そんなメロンみたいな胸元全開で迫られたら……!うおっ、ちょっ!!」

サーシャ「えっ、あのッ…!」


オルソラに迫られる→上条さん後退→何かにつまずく→サーシャを巻き込んで転ぶ

ドサッ!!
506 :1 [sage]:2010/09/09(木) 20:53:21.52 ID:vM39g9o0

上条「いてて…悪いサーシャ、何かに足を引っ掛けたみた…い……?」

サーシャ「あ……」


間近にそのサーシャの顔があった

雪の様に真っ白な肌と、年相応のあどけなさが残る端正な顔立ち

驚きで見開かれた赤い大きな瞳が、上条当麻の顔を覗き込むように見つめてくる


誰がどうみても上条がサーシャを襲って押し倒している様にしかみえないだろう


サーシャ「あの、第一の解答ですが、その手をどけていただけませんか////」

上条「へ?あ、ああ、なあっ!!」むにゅ

サーシャ「ふにゃっ////」


驚きのあまり、自分の手の下にあった柔らかいものを思いっきり揉んでしまった

慌ててサーシャの上から身をどけた上条さん


上条「すみませんすみません!上条さんはけしてやましい気持ちがあったわけではなくt」


インデックス「トーマ?」┣¨┣¨┣¨┣¨

五和「カミジョウサン?」ゴゴゴゴゴ


上条「あの…お二人さん?なんかすごーく顔が怖いのですが…」

インデックス「とーまのバカぁッ!」

五和「上条さんの節操無し!」

上条「な、何でお前らが怒るんだよ?ちょっと待て、槍は危ないですよ!インデックスの歯がギロチンみたいになってんですけどおおお!!」
507 :1 [sage]:2010/09/09(木) 21:14:41.98 ID:vM39g9o0
ルチア「まったく、相変わらずですねあのツンツンヘッドは」

アンジェレネ「私ももう少し胸があったら…」

アニェーゼ「なんか面白そうなんで私らも参加しましょう」

オルソラ「あらあら、賑やかでございますね」

シェリー「アンタが原因だっつーの」

サーシャ「……////」ドキドキ

上条「やめろおおおおおお!!不幸だーーーーーっ!!!」

ガブッ!!ドスッ!!アッー


【その頃アックアさんは】

アックア「む、何やら叫び声が…」

騎士団長『どうした?』

アックア「いや、気のせいである」

騎士団長『そうか』

アックア「ところで騎士団長」

騎士団長『やめてくれ。お前からそう言われるとむず痒くなる』

アックア「だが、貴様の本名を覚えていないのである」

騎士団長『……もうお前とは絶交だ』

【その頃第三王女と運び屋は】

ヴィリアン「こ、これは…騎士団長×アックアですって……?」

オリアナ「何読んでるの?」

ヴィリアン「さっき道端で拾ってのですが……ってわひゃあ!!」

オリアナ「なに間抜けな声出してんのよ。へぇ、どれどれ?”もはや第三王女などどうでもいい、
お前が欲しいのである”ああ、これってBLとかいうやつ?作者はkazari…ペンネームかしら?」

ヴィリアン「……どうでもいい?」┣¨┣¨┣¨┣¨

オリアナ「落ち着きなさい!これは同人誌だから!」

今日も平和でなによりです
508 :1 :2010/09/09(木) 21:19:05.87 ID:vM39g9o0
ここで切ります


サーシャ「ところで第一の解答ですが、ここでの私はなぜか胸を揉まれる頻度が多いですね」
509 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/09(木) 21:44:58.77 ID:M0ScWC.o
久しぶりの投下乙。
510 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/09(木) 23:14:54.13 ID:oSjtC2DO
乙! サー/シャちゃんマジ天使
一瞬、第三王女が腐ったのかと思って吹いた
511 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/09(木) 23:42:31.95 ID:5WnaBOY0
ペンネームじゃなくて本名wwww
512 :1 [sage]:2010/09/10(金) 17:39:34.51 ID:LXAF5OM0
つづきを投下します
513 :1 [sage]:2010/09/10(金) 17:41:56.40 ID:LXAF5OM0

午前三時

上条当麻は、清教派のメンバー達と共にロンドンへ突入した

さすがに馬鹿正直に歩いて行ける様な距離ではないので、20台以上もの大型トラックに乗って突入したのだ


最終決戦は始まる


キャーリサのカーテナ暴走に一役買った清教派の空中要塞カヴン・コンパスは、イギリスとフランスの国境ギリギリのところで
騎士派の連中の攻撃を避けながら、ロンドンに向けて砲撃の準備をしている

ドーバー海峡では、これまた清教派の潜水型母艦であるセルキー・アクアリウム8機が砲撃のために待機している

もはや女子寮で起きた抗争など比較にならないほどの大規模な内紛

目的はただ一つ

キャーリサのカーテナ・オリジナルを破壊する事ただそれだけ

しかし、ただそれだけなのだが、これほどの軍事力を行使してもそれは非常に難しいというのが現実である


ところでサーシャはと言うと

フロリス「まさかこんなとこで会うとはね。そんなに私に会いたかったのかサーシャ?」

サーシャ「第一の解答ですが、怪我を治療するためにここに運ばれただけです」
514 :1 [sage]:2010/09/10(金) 17:43:57.25 ID:LXAF5OM0

ここはとある聖堂の隠し部屋

サーシャもキャーリサと戦うためにバッキンガム宮殿に向かいたかったのだが、回復が間に合わなかったために本隊から外され、
ここに運ばれて治療を受けているのである


ちなみにフロリスは上条の無自覚の罠により天草に捕えられた後、ここに運ばれたのであるが…

フロリス「あの野郎、次会ったらタダじゃおかねえ」


サーシャ「第一の質問ですがオルソラ、後どのくらい掛りますか?」

オルソラ「ある程度までは回復していますが、それでもキャーリサ様と戦える様な状態ではございませんよ?」

サーシャ「ある程度で十分です」


そう言うと、サーシャはラクロス風のジャケットを手に取り、袖を通した


オルソラ「止めても無駄でございますか?」

サーシャ「第二の解答ですが、治療してくれた事に感謝しますオルソラ」

オルソラ「では約束してください。無事に帰ってくると」

サーシャ「はい、約束します」


嘘ではない。しかし、五体満足で帰ってこれる保証など無い

それはサーシャもオルソラもわかっている


フロリス「なあサーシャ、アンタは何で戦うんだ?」

サーシャ「第一の質問ですが、どういう意味でしょうか?」
515 :1 [sage]:2010/09/10(金) 17:51:36.21 ID:LXAF5OM0

フロリス「だって、亡命してきたって言っても、命を懸ける程この国に思い入れなんて無いだろ?
わざわざ自分が体を張る理由なんてあるのか?」


確かに、もうすでに目的は果たした

自分にもこのクーデターの責任の一端はあるが、仲間達からはその事でキャーリサと戦った事を責められた

今だってまともに戦える状態ではないし、むしろ無理するなと怒られるだろう

もうわざわざ自分が戦わなければならない理由などない

だが……


サーシャ「第一の解答ですが、理由は後で考えます」

フロリス「ははっ、何だそりゃ」

サーシャ「私はこれが正しい行動だと信じている。ただそれだけです。理由なんて行動した後で考えれば良いのでは?
大切なのは“どうして”ではなく“どうするか”ですから」


一生懸命頭を働かせて考え出した答えなど、自分が実際に行動した結果に比べたら価値など無い

今の彼女にとっては、戦う理由などそれで十分だ


フロリス「そっか。まあこのクーデターに協力した身だから大っぴらには応援できないけど」


フロリス「絶対に生きて帰ってきなよ?」

サーシャ「約束します。できる限り」

フロリス「一言多いんだよバカ」
516 :1 [sage]:2010/09/10(金) 17:53:21.46 ID:LXAF5OM0

聖堂の外を出ると、急に寒気がサーシャの体を襲ってきた


もうすぐ季節は冬に入る

そんな時期の凍えるような寒さは、サーシャの傷だらけの体には地味に堪える

だが、立ち止まるわけにはいかない

こうしている間にも、上条達は命がけで戦っているのだから


「行くのか?」


突然、何者かの声が聞こえてきた

低い男の声


振り返るといつのまに背後にいたのか、見知らぬ男が立っていた


鍛え抜かれた屈強な体

それは彼の青い服の上から見ても一目で分かる

そして何よりも異常なのは、彼の肩に担がれた大剣

明らかにその男の身長よりも遥かに巨大な剣である


?「戦場に向かうのかと聞いている」

サーシャ「第一の質問ですが、あなたは何者ですか?」

?「この争いを止めるために戦う傭兵である。貴様に戦う意思があるというのなら、協力してもらいたい事がある」
517 :1 [sage]:2010/09/10(金) 17:55:49.40 ID:LXAF5OM0

サーシャは背中の両翼を振るう

すると、巨大な鉄塔は簡単に切断され、ひしゃげてしまった

とどめに巨大な氷の塊を鉄塔の上に落とす

とてつもない轟音とともに、鉄塔が原型すら留めずに完全に潰れた


サーシャ「これで二つ目ですね…」


サーシャは今、謎の男と一緒に軍事用の鉄塔を破壊する作業をしていた

その男が入手した情報によると、ドーバー海峡に数隻の駆逐艦が配備され、こちらに向けて爆撃が開始されるとの事だった

イギリスの兵器事情から察するに、駆逐艦からバッキンガム宮殿にむけて放たれるのは、おそらくバンカークラスターではないかとの事

はっきり言ってカヴン・コンパスやセルキー・アクアリウムの砲撃なんて比べ物にならないくらいの脅威だ


今からドーバー海峡に向かうには時間が足りない

と言う事で、その男は、キャーリサが駆逐艦に指示を出すための通信用の鉄塔を破壊することで、
駆逐艦からのバンカークラスターの砲撃を阻止しようとしたらしい

しかし、これだけ広いロンドンとその周辺も含め、軍事用アンテナを全て破壊する事も、ましてや数あるアンテナの内、
軍事用のアンテナとして使用されている鉄塔だけをピンポイントで発見するのは、歴戦の傭兵でも専門外のため困難な事である


そこで、彼はサーシャの力を借りる事にした

二手に分かれて探し出し、破壊していけば短時間で済むからだ
518 :1 [sage]:2010/09/10(金) 18:00:23.01 ID:LXAF5OM0
サーシャ「まだ探していない所は……これは骨が折れますね…」

サーシャはロンドンの地図を見ながら、まだチェックしていない所を確認していた

そんな作業をしている時に聞こえてきた、妙な音

先程からセルキー・アクアリウムやカヴンコンパスからの砲撃が続いていたが、カヴン・コンパスの様な閃光でも無く、
セルキー・アクアリウムの様な弾幕でもない


サーシャがその地図から目をそらした時、別の方角の空に妙な物体が見えた

巡航ミサイルだ

ミサイルの向かう方角は、おそらく……


嫌な予感がした


巡航ミサイルは規定ポイントで分解され、大量の子弾をばら撒く


そして数秒後に、派手な爆発音が遠くの空で鳴り響いた


バンカークラスターは地下施設を破壊するためのものだ

地上であんな派手な爆発を起こさないはずだが


?「聞こえるか?」


通信用霊装により例の男の声が耳に入ってきた


?「一撃目が発射された。数はおよそ200発。予想通りバンカークラスターだ。宮殿上空に誰かが防護結界を張ったゆえ、
全てが直撃したわけではないみたいだな」

どうやらあの派手な爆発は、防護結界に衝突したバンカークラスターの様だ


サーシャ「!……被害はどの程度ですか?」

?「大丈夫だ。この程度で死ぬ様な奴らではない」


それはそれで異様であるが

とにかく急がねばならない
519 :1 [sage]:2010/09/10(金) 18:02:24.85 ID:LXAF5OM0

『聞きなさい』


サーシャ「!?」

?「……?」


今度は突然、その男のものでも無い、別の女性声が響いてきた


『私は英国第一王女、リメエアです』

サーシャ「第一王女…?」

?「……」


『エジンバラに放っておいた密偵からの報告により、クーデター首謀者キャーリサの真の狙いが分かりました。
これはおそらく、あなた達「騎士派」の者にも伝えられていないであろう、我が妹キャーリサが胸に秘めた本当の狙いです』

サーシャ「……」
520 :1 [sage]:2010/09/10(金) 18:04:19.27 ID:LXAF5OM0

英国の三人の王女

長女リメエアは政治に、次女でクーデターの首謀者でもあるキャーリサは軍事に、三女のヴィリアンは人徳にと、
それぞれ独自の得意分野を持っている


どうやらリメエアの声明は、サーシャ達ではなく騎士派の連中に向けられているみたいだ


長女のリメエアがこのタイミングで騎士派に訴えかけるという事は、何かキャーリサに対するスキャンダルでも掴んだのだろうかと推測した

だが、それは半分当たりであり、半分外れであった


『彼女はこの国の軍事を司る代表者としてローマ、ロシア勢力からイギリス国民が脅威にさらされている事に、
誰よりも責任を感じていました。EUを手駒として、クラスター爆弾や他の兵器類の禁止条約を盾に国の兵力を奪われ、
ユーロトンネルの爆破によってイギリスという国家そのものが挑発される状況に追いやられ、キャーリサは次の様に結論付けたのです』


『このままではイギリスという国家そのものの価値や威厳を奪われてしまう、と。』


『イギリスの民であるというだけで、よその国から嘲られ、迫害されてしまう状況が来てしまうと。だからキャーリサはこう考えたのです。
戦争によって激変する時代そのものにイギリスの民が滅ぼされぬようにするには、武力によって国家の価値や威厳を保つしかないと』

『そして同時に彼女は悩みました。軍事に優れた才を持つが故に、カーテナの強さと恐ろしさの双方を、誰よりも理解していたのです。
もしも国家元首の手にカーテナがなければ、そこまで絶対的な王政でなければ、ローマ正教との戦争がここまで酷くなる前に、
王が民の言葉に耳を傾けて国家の舵取りを修正する機会があったのではないかと』


だから、キャーリサはカーテナを対ローマ正教の切り札として振るう覚悟を決めた一方で、その戦いが終わったら、
カーテナを完全に封じようと考えていたのだ


それが、国家の暴走を民が止める手段を得るために必要だから


521 :1 [sage]:2010/09/10(金) 18:06:35.57 ID:LXAF5OM0

カーテナという絶対的な武器が無ければ、王は民の声を無視する事ができなくなるから

しかし、ただカーテナを破壊するだけでは意味が無い

実際にカーテナ・オリジナルが喪失した後も、カーテナ・セカンドが作られ、今も女王エリザードの手にあるのだから


すべきことは、カーテナの完全破壊だけではない

カーテナを使用できる王族を全て抹[ピーーー]る事

そして、今後新たにカーテナが製造される可能性を無くすために、セカンドの製造に関わったとされる暗号文や書物を全て
徹底的に破壊し尽くす必要がある


(この英国の行く末のために、この忌々しい剣を未来永劫に葬り去る事ができるのなら……)


そして、全てが終わった後のキャーリサは


『破壊したカーテナ・オリジナル、セカンドの残骸と共に、残りの人生を死ぬまで「墓所」奥深くで過ごす覚悟まで決めて』

サーシャ「……」

522 :1 [sage]:2010/09/10(金) 18:08:53.88 ID:LXAF5OM0

『結論を言います。キャーリサの狙いは二つ。一つ目は、フランスやローマ正教を排除し、後世にこの国の汚点と言われるようになってでも
イギリスを守る事。そして二つ目は、その最強最悪の兵器であるカーテナを封じ、無能な王政を排除することで、
国家の暴走を民衆の手で止められる様にする事です。……仮にこの先、何らかの要因が重なって私達とは違う王政が成立したとしても、
その王が間違えた選択をしようとしかけた時に、王が民衆の声に傾ける程度の「弱さ」を残すために。キャーリサはそれらの目的のために
「カーテナと言う極悪な兵器を振るい、国の内外に居る多くの敵を虐殺してしまった罪」を、暴君としてたった一人で背負おうとしているのです』


リメエアの演説はそこで終わった


彼女の言葉で、キャーリサに従う騎士の内どれだけの者が心を動かされたのかは分からない

中には武器を捨てる者も出てくるかもしれない


?「どうする?お前はまだ戦うか?」

サーシャ「第一の解答ですが、もちろんです」

?「そうか、ならさっさと片付けてしまうのである。また後ほど連絡する」


そう言うと、男からの通信が途絶えた



サーシャ「やはり、女王様は向いてないかもしれませんね。あなたは…」


通信が途絶えた後、サーシャは静かにそう呟いた
523 :1 [sage]:2010/09/10(金) 18:10:29.73 ID:LXAF5OM0

トップに立つ者は常に孤独である

信頼していた同じ志を持つ者から裏切られる事など当たり前の様にある

それでも信頼できる人間を見極め、政策を実行しなければならない

国民から石を投げつけられる事もあるかもしれないが、それでも国民を人徳を持って導かねばならない

それが正しい君主の在り方
自分を捨石にするだけでは君主は勤まらない



サーシャの戦う意思は変わらなかった

しかし、戦う理由は変った

ずっと一人で戦ってきた王女を

自分の様に一人で全てを抱えてしまう馬鹿な王女を助けるために、彼女は戦う







リメエア「私だけセリフが無いのは納得いかないから、強引に割り込んでやったわ」

騎士団長「セリフ?何の話でしょうか?」
524 :1 [sage]:2010/09/10(金) 18:15:16.11 ID:LXAF5OM0

そこはとあるビルの屋上

第一王女のリメエアは、ここから通信用霊装を使って騎士派の通信網に割り込みを入れ、キャーリサに従う騎士達に向けられたのだ

途中で途切れてしまったが、それがたまたまサーシャと男の間の通信にも割って入って来たのであった


リメエア「私はあなた方の行動を強制しません。あなた方にも国家のほかに守るべき家族が居て、友人が居て、恋人が居る事でしょう。
彼らを悲しませぬため、逃げ出す事を否定しません」


リメエアは演説を続ける。全ての騎士達に、そして自分の背後に居る男に向かって


リメエア「ですが、もしも我が妹キャーリサを哀れと思う方が居るのでしたら、第二王女という立場に関係なく、
一人の女を助けたいと思う騎士がいらっしゃるのでしたら。今一度、剣を取ってはいただけませんか?おそらく、
それだけで救われる女が居るはずです。どれだけ力を振るえるかではない。本当の意味で自分のために戦ってくれる人物が居る。
その事実が伝わるだけで、救われる女が」

騎士団長「……」


今度こそ本当にリメエアの演説が終わり、男は黙考した

きっと今もどこかで、彼と同じように決断を迫られている者が居るだろう

そして決断した男は、静かに剣を抜いた

つい数刻前、ウィリアム・オルウェルとの死闘の末敗れた騎士派の長


彼は再び剣を取り戦う

しかし、戦う理由は変わらない。

前も今も、第二王女いや、キャーリサという一人の女を助けるために彼は戦う
525 :1 [sage]:2010/09/10(金) 18:18:18.99 ID:LXAF5OM0

何もかもが消えてしまいそうな程の真っ白な光景が終わった

辛うじて動かせた指が地面をなぞるのを感じられた時、自分はまだ生きているという事を自覚した


上条「イン、デックス……?」


少女の名を呼ぶ。しかし返事は無い。


「神裂?五和?」


「シェリー、アニェーゼ!オリアナ!!くそっ……ルチア、アンジェレネ、建宮っ、ヴィリアン!!ちくしょう、誰か答えてくれ!!」


200発ものバンカークラスターがバッキンガム宮殿に向けて放たれた

神裂が上空に張った防護結界により、200発全てが直撃する事は無かった

それでも何発かは地面に深く潜り込み、地下で爆発し、失明を錯覚させるほどの閃光とともに上条達は爆撃に煽られ吹き飛ばされた


名前を呼んだ者達の返事は無い

バンカークラスターで盛り返された土砂の中に生き埋めにされているのかもしれない
526 :1 [sage]:2010/09/10(金) 18:19:38.64 ID:LXAF5OM0

上条は自分の体を確かめる様に少し動かしてみた

どうやら欠損した部分は無い様だ。下半身も繋がっており、足も動かせる

だが、だからと言って、何をすれば良いのかまで頭が回らない

あれだけの衝撃で、皆の生死すら分からない状況なのに、一人だけ爆撃前と変わらずに、精々ドレスに埃が被った程度の
被害しか受けずにそこに立つ怪物相手に何ができる?


「さぁーって、と。希望はまだ残ってるの?」


そんな上条の焦燥を知ってか知らずか、キャーリサは凶悪な笑みは見せながらそう言う


「駆逐艦ウィンブルドンに告ぐ、発射準備をせよ」


圧倒的な力の前に成すすべなく打ちひしがれている上条に追い打ちを懸ける様に、キャーリサは無線機を顔に近づけ、
二回目のバンカークラスターの発射を命令した
527 :1 [sage]:2010/09/10(金) 18:21:10.11 ID:LXAF5OM0

?「どうだ?」

サーシャ「第一の解答ですが、三つ目を破壊しました。残りは後一つです」

?「そうか。破壊するよりも発見する方が困難であるが、何とか見つけ出してくれ」

サーシャ「はい」


残りは後一つ



だが、再び二回目のバンカークラスターが発射されてしまった



?「あの男が居てくれれば助かるのだが…」

サーシャ「ッ……!」

?「焦るな。今はやるべき事だけに集中しろ。奴等を信じるのである」

サーシャ「第二の解答ですが、分かっています……」


そうは言われても、やはり動揺は隠せない

無事を祈るくらいの事しかできないのが歯痒かった


きっと、自分を止めずに送り出してくれたオルソラも同じ気持ちなのだろう

オルソラと同じように、今は仲間を信じて耐えるしかない。三回目のバンカークラスターが発射される前に
なんとしてでも全ての軍事用アンテナを破壊しなければならない
528 :1 [sage]:2010/09/10(金) 18:23:49.46 ID:LXAF5OM0

「ゼロにする!!」


遠方から新たな声が届いた

直後、四つに分解して大量の子弾をばら撒くはずだった巡航ミサイルが誤作動を起こした。

既定のポイントに達してもミサイルの外郭が開くことは無く、後部の噴射炎がいきなり消滅し、
暴投したようにバッキンガム宮殿敷地外の道路に落ちる

ミサイルはかなりの重量のはずだが、なぜか道路に突き刺さることなく何度もバウンドしながら転がった

まるで兵器の持つ攻撃翌力を丸ごと奪った様な現象



ヴィリアン「騎士団長……?」


第三王女の目に映るのは、クーデターの時に自分を殺そうとした男の姿だった(17巻p358〜361)

ヴィリアンは震える声で男の名を呼ぶが、彼は振り返らず、ただ静かに告げる


騎士団長「罰には応じます。このクーデターが終わったら、私の首は切断してもらっても結構」

騎士団長「ですが、せめて処断を受けるための下準備程度は我らの手で。なおかつ願わくば、再び貴女達王室派が力を合わせ、
フランスやローマ正教と正しく向き合ってくれる事を」


そう言うと、騎士団長は一本のロングソードを強く握り直した


騎士団長「キャーリサ様は、たった一人であれだけの事を成せる方です。その力を正しく扱い、
なおかつ他の王室派の方々と力を合わせる事が出来れば、必ずやローマ正教を退けられる事でしょう」


それを実現させるために、彼はキャーリサの元へ歩み寄ろうとした

死ぬ覚悟で
529 :1 [sage]:2010/09/10(金) 18:26:08.93 ID:LXAF5OM0

ヴィリアン「待ちなさい」


だが、ヴィリアンはそれを許さない

目的のために自分が犠牲になるのでは、キャーリサと同じだ


ヴィリアン「身勝手な死を押しつけられても迷惑なだけです。本気で償いをしたいというのなら、喜ぶような事をしていただきましょう。
何をすべきかは、各々が自らの頭で考えて下さい。自ら率先して行う事にこそ、意義はあるのです」


言葉こそ上品な王族のものであったが、そこには確かな力強い意志があった

優しいだけではない、確かな強さが伴った人徳の第三王女の言葉は、全ての騎士達の覚悟に揺らぐ事のない意志を与える


騎士団長「必ず勝つぞ。これ以上、キャーリサ様を一人きりにさせるわけにはいかん!」


その言葉に、キャーリサに従っていた騎士達が応えた

キャーリサに尻を叩かれなければ動かぬ馬とは違う
今はキャーリサを守るために、彼らは自分の意思で戦う騎士に変ったのだ



騎士団長「すまない。我が国と王女の行く末を、君達に預けっぱなしにしてしまったな」

上条「おう。あいつを助けるために協力してもらうぞ」
530 :1 [sage]:2010/09/10(金) 18:28:29.15 ID:LXAF5OM0

キャーリサ「なるほど、人徳のヴィリアンに続いて、頭脳の姉上まで来るとはな」

キャーリサ「最高のタイミングを狙った演説だったよ!清教派はカーテナ・オリジナルの力で心を折られかけた直後だったし、
騎士派も私が脅して何人か見せしめに斬りつけてやらねば動かぬ愚図だったのが、姉上に絆されてコロッと態度を変えやがった!」


キャーリサ「貴様らが自分の意思だと誤解しているそれも、姉上に唆されて植え付けられたに過ぎないし。
どこまでも貴様ら騎士は愚鈍な生き物なのだな!!」

騎士団長「愚鈍で構いません、あなた様をお助けする原動力となるならば」


キャーリサ「オリジナルからの供給は断たれ、微弱なセカンドからの供給のみに頼る貴様の力では、私に触れる事すら叶わんぞ?」

騎士団長「力の有無など瑣末な事、その程度では揺らぎはしません!!」

キャーリサ「チッ!気持ちの悪い男だな!」


だが、騎士達も全て騎士団長の側に着いた

しかも、自分に従っていた時と比べて圧倒的に士気が高い

けして笑える様な状況では無かった
531 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/10(金) 18:30:37.69 ID:9F421cDO
しえ
532 :1 [sage]:2010/09/10(金) 18:31:09.62 ID:LXAF5OM0

キャーリサ「対フランス用に残しておきたかったが、どうやらバンカークラスターを使い切るしかないよーだな」

騎士団長「私のソーロルム術式はカーテナと残骸物質の攻撃をゼロにする事はできません。
しかし、先程の様にバンカークラスター程度なら容易くできます。それでも無駄遣いなさいますか?」

キャーリサ「お前のソーロルムは”術者の認識する武器のうち、標的となる物を選択して攻撃翌力を無効化する”
と言うものだったな?ならばこうしよう」


そう言うと、キャーリサは再び無線機に向かって命令を下した


キャーリサ「バンカークラスター弾頭を搭載した巡航ミサイルを準備せよ。ドーバーで待機中の駆逐艦ウィンブルドンから二四発、
キングヘンリーから二六発、シャーウッドからニ十発、ヘイスティングズから一五発、シェイクスピアから一五発。
関係各位はバッキンガム宮殿に照準を合わせ、総勢八十発のバンカークラスターを私の合図とともに発射せよ」


「さーて、私はどのミサイルを幻術で隠すと思う?」


騎士団長「……ッ!!」


身を強張らせる騎士団長に、キャーリサは凶悪な笑みで応じた。


キャーリサ「単なるハッタリかもしれないが、すり抜けたら終わりだし。その上、私がカーテナで同時攻撃を仕掛ければダメ押しだな。
一発でも逃せば全員が死滅する状況で、我が剣を押し返す事ができるかどーか、英国の騎士の真髄をテストしてやろう」
533 :1 [sage]:2010/09/10(金) 18:32:11.05 ID:LXAF5OM0

上条「チッ! 止めるぞ!!」


上条は騎士団長を促しながら、自身も拳を握ってキャーリサの元へ突っ込もうとする。
 
だが、第二王女が指先を動かして通信ボタンを押す方が早い。

上条の拳が届くまえに、キャーリサは小さな無信機に向けて破壊の命令を飛ばしてしまう。


「該当する五隻の駆逐艦に告ぐ。巡航ミサイルを発射せ……」


歯噛みする上条だったが、対するキャーリサはなぜか怪訝な顔をした


直後、キャーリサの頭上を目掛けて上空から大量の鉄骨が降り注いできた


それは、謎の男とサーシャが破壊した鉄塔の残骸


キャーリサ「ッ……!!」


素早い挙動でそれを避けるキャーリサ



ガンッ!



そして、何者かが降り注がれた鉄骨の山に着地した
534 :1 [sage]:2010/09/10(金) 18:34:00.14 ID:LXAF5OM0

アックア「少々遅れたが、これで駆逐艦への無謀な指示は出せないのである。彼らとてイギリスの民。
独裁者の命令無しに、本来守るべき自国の首都に向けて攻撃できまい」

キャーリサ「なるほど、余計な真似をしてくれるし……ッ!」



サーシャ「第一の解答ですが、派手にやってくれましたねこの野郎」


さらにアックアの頭上、青い一対の氷の翼を広げたサーシャが上空からキャーリサを見下ろす


憎らしい程のタイミングで、かつて上条達を苦しめ、クーデターでヴィリアンを救い、騎士団長を打ち負かした傭兵と

莫大な大天使の力をその身に降ろし、そしてその莫大な力の一端を使えるまでに成長した少女


強力な二人の味方が戦線に加わった


535 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/10(金) 18:34:51.67 ID:LXAF5OM0
ここで区切ります

今週中にロシア編までいけるかな
536 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/10(金) 18:44:26.09 ID:9F421cDO
乙! アックアさん渋い
537 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/10(金) 19:32:53.54 ID:2Xo6PMM0
乙!
538 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/11(土) 19:29:50.02 ID:ycMU23M0
つづきです
539 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/11(土) 19:31:20.03 ID:ycMU23M0

騎士団長「……よもや、この人生でもう一度、お前に背中を預ける時が来るとはな」

アックア「フルンテイングへの移行は不能であるか。せいぜい足は引っ張らぬようにな」

騎士団長「ぬかせ」


騎士団長はロングソードを軽く振るって前を見た
 
クーデターの始まりの時、10年ぶりに再開し、剣を交え、死闘を繰り広げた古き友

もはやお互い、出方を確認し合う必要は無い


「行くぞ。互いの一〇年の研鑽を。それぞれ点検してみる事にしよう」


ゴバッ!と大地が裂けた。
二人が同時に駆けた事で、地面の方が耐えきれなくなったのだ。

アックアは右から、騎士団長は左から。

それぞれ回り込むような挙動で、もはや肉眼で追い掛けるのも難しい速度で、彼らはキャーリサの元へと突き進む。



サーシャ「……」


サーシャは上空からその様子を見ていた

聖人クラスの力が使えるとは言え、剣術において素人のサーシャはこの二人の間に入り込む余地を持てる程の実力は無い

だがサーシャが直接加勢しなくとも、戦況は確実に変っていた
540 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/11(土) 19:32:56.04 ID:ycMU23M0

キャーリサ「斬り飛ばすぞ、首」

アックア「やってみろ」


ガギッ!


カーテナとアスカロンが衝突する

しかし、刀身を交えてしまえば次元切断でアスカロンの方が負けてしまうため、アックアは剣の鍔の部分をカーテナの鍔にぶつけた

そこに生まれる純粋な衝撃は、キャーリサに強烈な重みと鈍い痛みを与える


キャーリサ「チッ!」


衝撃により両者の体は後ろに弾かれる

踏ん張ろうと足に力を込め、地面がガリガリと削られる


神裂「二人だけでっ、戦っているとは……ッ!!思わない事です!!」


体勢を立て直したばかりのところへ、すかさず神裂が斬りかかってきた

一神教の天使をも斬り伏せる真説の”唯閃”

それは、カーテナの次元切断と相殺し合うほどの威力であり、キャーリサもこの一撃を本気で受け止めざるを得ない


動いたのは神裂だけではない。ダメ押しとばかりに騎士団長も動いていた。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」


三人の雄叫びが重なって独特の震動を生み出す

人間を超越した三人が、同時にキャーリサに挑み、刃を交えた
541 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/11(土) 19:35:43.29 ID:ycMU23M0

キャーリサはアックアの足を蹴ってバランスを揺らがせ、わずかに剣の軌道を曲げる。
ギリギリの所をアスカロンが通過するのも待たず、
カーテナ=オリジナルと拮抗する神裂の七天七刀を弾くと、騎士団長の追撃から逃れるべく大きく後ろへ跳び下がる。

今までの上条達を軽くあしらっていた時とは違う、全力の回避だった。

さらにそこへ、上空からサーシャがキャーリサに向かって滑空し、氷の翼をぶつけてくる

一本一翼で山を根こそぎ吹き飛ばし、地を抉って谷を築くと言われているガブリエルの翼


キャーリサ「ええい、鬱陶しい!!」


キャーリサは体を旋回してカーテナを翼に叩きつけ、何とか直撃を避ける

そしてサーシャの翼を次元切断で斬り裂き、さらにサーシャの体に目がけてカーテナを振るうが、
間一髪の所でサーシャが上空に飛翔し、カーテナが空振りする。

そこへすかさずアックア、騎士団長、神裂が斬りかかり、サーシャは上空から投げ槍の様な鋭利な氷の塊を
キャーリサが足を取られる様に計算して放つ。

聖人二人に聖人クラスの騎士団長も合わせて三人、上空からも大天使のテレズマを行使するサーシャが後方支援に回り、
その四人の怪物相手にたった一人で立ち回るキャーリサ。
542 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/11(土) 19:37:57.29 ID:ycMU23M0

キャーリサ「……なるほど……」

キャーリサの額から、一筋の赤い血が垂れていた。
神裂やアックア達が傷つけたのではない。キャーリサ自身が回避行動の時間を取るために破壊した、
残骸物質同士の破片。それが第二王女に血を流させたのだ。


キャーリサ「このままでは私の方が消耗戦を強いられる。いかに特別な力を手に入れているとはいえ、
流石に聖人級の怪物が4人集まるのは面倒だし」

神裂「特別な人間だけで、全てを成し遂げられるとは思わない事です」

 
神裂は特殊な呼吸法で体力を取り戻しながら、静かに告げる。


神裂「我々が全力を出せるのも、それを支えてくれる者がいればこそ。現に、多くの魔術師によって全方位から
常に照準を合わせ続けられる事で、あなたは自然と死角からの攻撃を意識せざるを得ず、
本来なら数多とあるべき選択肢を狭められてはいませんか?」

キャーリサ「……かもしれない」
 
キャーリサ「確かに、味方の数が勝敗を決するという事も、軍事においては間違いではないのだが」

 
目だけをジロリと動かし、隙あらば聖人や騎士団長の攻撃を縫って遠距離攻撃を放とうとする魔術師達を睨みつける


キャーリサ「だが、だからこそ、そこに勝機があるとは考えなかったの?」

 
キャーリサから、これまでに無かった嗜虐性のようなものが広がっていく

直後、彼女は足元にあった残骸物質を恐るべき脚力で蹴り上げた

それは、神裂やアックア、騎士団長などに向けて放たれたものではない

倒れている清教派の傷を手当てするために後方で動いていた騎士派の集団を目掛けて放たれたのだ。
543 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/11(土) 19:40:18.10 ID:ycMU23M0

凄まじい爆音と共に、複数の影が宙に飛ばされる

神裂の視線がそちらへ向いた一瞬の間に、キャーリサはさらにカーテナ=オリジナルを大きく振るう

生み出されるのは100メートル級の残骸物質

キャーリサはその端を爆発させ、その勢いを利用して巨大なプロペラの様にそれを回す

全てを引き裂く回転刃と化して壁のように群衆へ襲いかかる。


騎士団長「くそっ!!」


騎士団長は音速を超える速度でプロペラの前へ飛び出し、その回転刃を弾き飛ばそうとする

同時に真後ろから攻撃を受けた

それは、本来味方であるはずの清教派の魔術師が、傷だらけの体を無理に動かして必死で放ったものだった。


「あ……」


握り返れば、向こうも向こうで愕然とした顔をしている

敵意は無い、彼女も向かってくる残骸物質を止めようとしたに過ぎない

そして、バランスを失った騎士団長へと巨大な回転刃が襲いかかった。


騎士団長「ッ!?」
 

慌てて迎撃しようとする騎士団長だったが、衝撃を殺しきれずに体を弾かれ、止める事ができなかった回転刃は軌道を曲げ、
生き物のようにのたうち回り、それがさらに別の被害を増大させていく
544 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/11(土) 19:41:59.93 ID:ycMU23M0

キャーリサ「どれほどの数が結集した集団であっても、その本質が個と個の繋がりである事に変わりはないし」

キャーリサ「ならば、個と個を切り裂くための隙は、どのよーな組織であっても必ず存在するの。
たとえ魔術的な思念や科学的な脳波を接続した所で、これは絶対に消える事はない」


キャーリサはさらに別の魔術師や騎士の集団に向かって残骸物質を投げつけた

味方を守るために神裂が七本のワイヤーを残骸物質に絡みつけ、七閃で残骸物質をバラバラにする


ドスッ!!


神裂「ゴフッ!!」


しかし、その隙だらけの彼女の腹部を目掛けてキャーリサの鋭い蹴りが入れられ、神裂の体は吹き飛んだ


キャーリサ「むしろ。数が増えれば増えた分だけ、切り裂く糸口も増すというものだぞ」


神裂に蹴りを入れたばかりのキャーリサが大勢を立て直す前に、アックアが間髪いれずに斬りかかる

だがキャーリサはそれを片手で受け止め、アスカロンとカーテナが、鍔ぜり合いの状態で拮抗する

もはや個の戦いの化してしまった上に、この英国内においては、神の右席としての力が回復していない
ただの聖人であるアックアよりも、限定的だが天使長としての力を行使できるキャーリサの方が圧倒的に強い

何度かの斬撃を交わした後、アックアの脇に浅い一撃が入れられ、そこに一瞬の隙が生まれる

その隙を逃さずに、キャーリサは浅く蹴りつけた所を思い切り蹴り飛ばした


アックア「ッ…!!」


545 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/11(土) 19:44:32.90 ID:ycMU23M0

後方に飛ばされるが、ズザザッ!と地面を足で強く噛み、深く削られると共に何とか体勢を維持した


アックア「ぐッ……」


アックアの表情は依然として殺気に満ちており、戦意は少しも失われていないが、苦悶を抑える代わりに嫌な汗が浮かんでいる


キャーリサ「数千だろーが数万だろーが、集まった所で揺らぎはしないの」


軍事に優れた第二王女は、集団を相手にした戦い方を知っている

そして、劣勢の状況から好転させるすべも心得ている

サーシャが上空から氷の剣を両手で構え、背後から矢の様にキャーリサに向かって滑空するが、
キャーリサは振り向く事無く、体を少し動かすだけでそれを避けた

そして攻撃を当てる事ができなかったサーシャの腕を片手で掴み、宮殿の壁に目がけて放り投げた


サーシャ「がッ…!!!」(ドガン!!)


サーシャが直撃した壁は、まるで爆弾でも爆発したかの様な衝撃音とともに崩れ、サーシャの体はその壁に軽く埋もれてしまった

壁にめり込んだ状態から脱出して体制を立て直す、などと考えている暇は無かった

もう次の瞬間にはキャーリサが目の前に立っていた

そして、キャーリサはガシッ!とサーシャの首を乱暴に掴み、壁から無理矢理サーシャの体を引き剥がし、サーシャの体を宙に掲げた
546 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/11(土) 19:46:49.90 ID:ycMU23M0

キャーリサ「判断を誤った。やはりキサマはあの時殺しておくべきだったな」


キャーリサは三日月の様に口の両端を釣り上げ、ぞわりと悪寒が走る様な残虐な笑みを浮かべる


サーシャ「第一の解答ですが、私はあの時殺さなくてよかったと思います……」


サーシャはあの時、一矢報いた時と同じように、勝ち誇った笑みを浮かべた

キャーリサの顔はさらに醜く歪んだ笑顔に変り、サーシャの首を握る手に力を込めた


キャーリサ「だが今度は迷わない。キサマの首の骨を折り、そのままちぎってやる」


ギリッ!!


サーシャ「うぐッ…!!」


喉が潰され、息ができなくなる

背中の翼がバラバラに崩れ、無数の氷の塊が地面に落ちる

抵抗する力ももはや残されてはいない

視界がかすみ、意識が遠のいていく……



ドゴッ!!!

キャーリサ「!?」
547 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/11(土) 19:49:12.91 ID:ycMU23M0

深い深い常闇の底へと沈んで行きそうになった意識を再び覚ましたのは、突然に響いてきた轟音

そして自分の体が一度だけ振り回されると、そのままキャーリサの手から解放され、地面に乱暴に投げ捨てられた


キャーリサ「よーやく顔を出したの、元凶たる母上よ!!」


轟音の正体は、キャーリサのオリジナルと剣を交差させた時に生まれた衝撃音

女王エリザードの手に握られたカーテナ・セカンドから放たれたものだった


ギリギリと音を立てて互いに押し合うキャーリサのオリジナルとエリザードのセカンド

交差する二つのカーテナを挟んで睨みあう二人


エリザード「好きにやるのは構わんが、やるならば徹底的に、そう、私以上の良策を提示してもらわなければな。
どうやら私以下の展開になりそうだったので止めに来たぞ、という訳だ」

キャーリサ「ほざくな元凶、そーまでして玉座が惜しいのか!!」


カーテナの力は8割がオリジナルの方に移っている

力の差は歴然。同じ材質とは思えない程に、キャーリサのオリジナルがセカンドの刀身に食い込み、
そのままセカンド共にエリザードの体ごと両断しようと迫ってくる


キャーリサ「……どれだけお膳立てをして、組織と組織がぶつかった所で、最後はカーテナ同士の激突となるか。
難しく考えてきたのが馬鹿らしくなるよーな展開だし」


傷一つないオリジナルを手に、キャーリサは自嘲するように笑った
548 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/11(土) 19:50:47.89 ID:ycMU23M0

キャーリサ「だが、カーテナ同士の戦いとなれば、それこそ私に負けはありえないし。八割以上の力を集めた私のオリジナルと、
二割に満たない母上のセカンド。同種の力を取り扱ってる以上、単純に量の差が勝負を決するぐらい分からなかったの?」


対して、エリザードは軽く笑う


エリザード「……意外と小さい女だな、我が娘よ」

キャーリサ「なに?」

エリザード「愚劣な王政の責任を取り、そしてイギリスの国民を守るため暴君と化してヨーロッパ中の敵国を丸ごと粉砕し、
その後は政治の舵取りを民衆に明け渡す。何やらスケールの大きな話だが、その端々にお前の小心が見え隠れしている事には気づいているか?」

キャーリサ「ッ……、」

エリザード「本当にこの国を変えたいか。政治を形作る巨大な柱をへし折ってでも、民を守りたいと願うのか。
それなら既存のシステムになど頼るんじゃない。やるならせめてこれぐらいやってみろ」
 

そう言うと、女王は一度大きくカーテナ・セカンドを後ろに振り、キャーリサ目がけて思い切り投げつけた。

慌ててキャーリサはそれを弾き飛ばすが、そこでふと気づく。

弾かれたカーテナ・セカンドが突然消えてしまったのだ
549 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/11(土) 19:53:25.84 ID:ycMU23M0

キャーリサ「何を……考えてるの?」

エリザード「変革だよ」


武器を失ったというのに、女王の絶対の自信を伴った表情は失われていない


キャーリサ「今までにない事、というのはここまでのレベルで初めて成立する。粋など取り払え。
停滞するセオリーを覆そうとする者が、そのセオリーにすがるんじゃない。史上初の行動を見て驚いている時点で、
お前はまだまだこの国の太い柱に縛られているぞ」


単なるパフォーマンスだと思った

ならばこちらも暴君ならではのパフォーマンスとして、最も残虐で見る者に恐怖を与える様な殺し方をしてやろうと
キャーリサはオリジナルを構える

しかし、そこで彼女は気づいた

気付くのが遅すぎた


キャーリサ「これは……まさか……」

 
カーテナ・オリジナルの調子がおかしい

見た目では分からないが、実際にそれを握るキャーリサは確かな違和感を感じていた


エリザード「だから言っただろう。これが変革というものだと」

 
バサリ、という空気を布で叩くような音が聞こえた

いつの間にか、エリザードの手には大きな布いや、旗があった。
550 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/11(土) 19:56:28.95 ID:ycMU23M0

表には現在のイギリスの国旗、裏には白と緑を基調にした、かつてウェールズの国旗として使われていたものだ。

エリザード「英国の国旗はイングランド、アイルランド、スコットランドのものを併合したデザインを採用している。
ウェールズについては、国旗制定の前に当時のイングランドが吸収してしまっていたからな。彼らの文化に敬意を表し、
こうして表と裏を合わせて一枚の旗とした訳だ。……まぁ、大英博物館までこいつを回収しに行くのは骨だったが」

 
イングランド、スコットランド、ウェールズ、北部アイルランド。

英国を構成する四文化の象徴
 
そして、カーテナの操る力の基盤となるもの


エリザード「もちろんこれがあれば誰でもできるものではないが……私の抹殺を最優先しなかったのは間違いだったな。
英国王室専用に設定された国家レベルの魔術の中には、こんなものも含まれているんだよ」


エリザードは一枚の旗を大きく振るい、夜空へ広げた。


エリザード「ユニオンジャック(連合の意義)」

 
女王は術式の名を呟いてから、一度だけゆっくりと息を吸い込んだ。


「命じる」


そして、大きな声を張り上げる


エリザード「カーテナに宿り、四文化から構築される”全英大陸”を利用して集められる莫大な力よ! 
その全てを解放し、今一度イギリス国民の全員へ平等に再分配せよ!!」
551 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/11(土) 20:00:09.82 ID:ycMU23M0

ユニオン・ジャック(連合の意義)

王室の人間だけが使える国家クラスの大規模魔術

それは発動と共に、カーテナに宿る莫大な力がイギリスの全ての国民に平等に分け与えられるものである


「詳しい理屈は明かせんが、今宵この一夜に限り、お前達は平等にヒーローになれる。その目で見てきた、
法則も分からない不可思議な現象そのものと戦える人間だ!今のお前達なら何でもできる!!
 その上で、お前達には選んでほしい。誰のために、誰と共に戦うかは、お前達のその頭で判断しろ!!」


そもそも王とは何か?なぜ王や騎士だけにカーテナの力が分け与えられるのか?

それは、彼らが単に国の代表として中心に立っているだけに過ぎない

彼らが国の意思決定機関の役割を担っているだけなのだ

だが、本当にそんなものは必要なのか?それだけで国の意志というものは決められてしまうのだろうか?


「私に協力したい者には感謝をする!クーデターに協力する者がいても一向に構わん! 
また、全く違う第三の道を提示してくれても問題はない!!力があるからと言って、無理に戦う必要もない!!
迷惑だと感じた者は”返す”と念じれば良い、自分よりも信用できる者がいると判断した場合は”渡す”と念じればそれで済む!!
今この時だけ、それは正真正銘、お前達の力だ、戦うか、逃げるか。それすらもお前達が自由に判断しろ!!」


女王は問う

国民一人一人の小さな意志を

所詮自分一人のちっぽけな力など意味が無いと諦めている国民の意志を
552 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/11(土) 20:05:56.27 ID:ycMU23M0

「誰かが言っていたから、それが正しいと教えられたから、そんな風に踊らされるな! 私自身の言葉すら否定しろ!!
あらゆる情報に主観の優先順位をつけずに一度整理して、全てを自分の頭で考えた上で、最後に残った正義と勇気と度胸にただ従え!!」


誰かに従うのではない

大きな力とその決定だけで国が動くのではない

お偉い役人や政治家、偉そうにふんぞり返る有識者の権威に惑わされてはいけない

この国に生きる者達一人一人に意志を問う

お前はどう考えているのかと

力を与えられた今、お前はこの国のために何ができるのかと


エリザード「……いい加減に、お偉い人間に好き勝手やられて振り回されっ放しなのも飽きただろう?」

 
それは、ちっぽけな一票
 
しかし確実に一つの国家を左右するであろう“力“を手にした者達に、英国女王エリザードはこう叫ぶ




「さあ、群雄割拠たる国民総選挙の始まりだ!!!」




ある意味では、カーテナの力は本来あるべきところに戻ったのかもしれない

本当に国を動かすべき者は王でも政治家でもない、国民一人一人の”意志”なのだから
553 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/11(土) 20:10:15.65 ID:ycMU23M0
ここで区切ります

実在するアレイスターはテレマ(意志)を自身の哲学の標語として掲げていました

多分禁書のスト―リーでも結構重要なワードになるのかもしれません
554 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/11(土) 20:21:33.90 ID:ST3MBUDO
乙乙!
555 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/12(日) 23:22:49.18 ID:r9YirbM0
まさか3日連続来ると思ってなくて油断した
556 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/13(月) 15:22:06.33 ID:Q322x6Uo
サーシャたんマジ天使

ペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロ
557 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/13(月) 16:42:17.77 ID:JxZ/iMDO
こえぇwww
558 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/13(月) 17:21:46.96 ID:qrHg5oko
>>556
おっと残念お前が舐めてるのは麻薬だ
559 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/13(月) 18:47:52.79 ID:FSOJ41Ao
>>556
ほぼロペロベだった
http://beebee2see.appspot.com/i/azuY1NHiAQw.jpg
560 :1 :2010/09/14(火) 19:11:25.42 ID:cuKdJHw0
>>556
サーシャ「ワシリーサ乙」

ちょいと
561 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/14(火) 19:16:23.67 ID:3MV01QDO
くるー?
562 :1 [sage]:2010/09/14(火) 19:17:05.47 ID:cuKdJHw0
やばい、途中で書き込みしてしまいました。ちょいと小ネタを投稿します


【華麗なる英国王室】

サーシャ「第一の解答ですが、みなさんお元気ですか?」

サーシャ「本日は、英国王室の王女様達にインタビューをしてみたいと思います」

※ここでの設定はあくまでも作者のオリジナルであり、原作設定とは関係まりません


では第一の質問ですが、簡単なプロフィールをお願いします

リメエア「長女のリメエア。年齢は30代前半。得意分野は政治的駆け引き。信頼できる仲間はペット兼毒見係の犬よ。
こういう世界にいると、常に暗殺や裏切りの危険があるから、私は私の素情を知る人間を信用したりはしないわ」

権力争いというのは大変なものですね。では次、さっさと始めて下さい

キャーリサ「何か私の扱いが酷いし」

そんな事ありませんよ?

キャーリサ「第二王女のキャーリサ。得意分野は軍事。趣味は射撃に剣術、アーチェリー、乗馬、キツネ狩り、あとサッカーも好きだし。
もしも私が男に生まれていたら、アーセナルで活躍してワールドカップにも代表として出ていただろーな。ちなみに年齢は2×歳だ」

年齢の部分がよく聞こえなかったのでもう一度お願いします

キャーリサ「聞こえたし。ちゃんと聞こえたし!」

リメエア「堂々と20代ギリギリって言いなさいよ。意外と小心者ね」

キャーリサ「うるさいし!20代は20代だし!」

では次にヴィリアン様、お願いします

ヴィリアン「は、はい!あ、えーっと、第三王女のヴィリアンです。年齢は24。趣味は音楽鑑賞とか、劇場鑑賞です。
音楽は自分でも実際に弾いたりするのが好きで、ピアノやバイオリンなどを嗜んでいます。あと、美術館によく足を運ぶ事もありますね」

サーシャ「なるほど、いかにも典型的なお嬢様って感じですね。ちなみに再び警告しますが、この趣味は作者の妄想ですので
原作設定とは関係ありません」



563 :1 [sage]:2010/09/14(火) 19:18:51.65 ID:cuKdJHw0

ヴィリアン「でも一番好きなのは、使用人や庭師の方達とお話する事です。みんなとても優しくしてくれて、
辛い時も女王という立場を気にせずに慰めて下さったりして、本当に素敵な人達だと思います。
ちなみにお恥ずかしい話ですが、お姉様方の様な特技は私にはありません……」

キャーリサ(あれって絶対に演技だし。私はお姉様みたいに自分の特技をひけらかしたりしませんのよオホホホ♪
みたいな感じで好感度アップを狙ってるし)ヒソヒソ

リメエア(まったく、なんて腹黒いのかしら。ヴィリアンはシンデレラで、差し詰め私達はいじわるな継母って
イメージでも植え付けるつもりね。これだから王室の人間は信用できないのよ)ヒソヒソ

ヴィリアン「そんなんじゃありません!!」


では次に第二の質問ですが、最も好きな、または尊敬しているイギリスの首相を教えて下さい

キャーリサ「何でそんなマニアックな事を聞くんだ。もっと親近感の湧くよーな質問は無いの?」

第一の解答ですが、うるさい黙れ

キャーリサ「テメェ!!表出やがれ!もう一度ガチンコ対決s」

リメエア「落ち着きなさキャーリサ。喧嘩っ早いのはあなたの悪い癖よ」

リメエア「尊敬する首相ねぇ……強いて上げるとすれば、ヴィクトリア女王の治世を支えたグラッドストンとディズレーリが上げられるけど、
私は特にディズレーリが好きね。彼の政治手腕は英国の歴史において特別ずば抜けていると言っても過言ではないわ。
ちなみに彼は様々な名言を残しているから、興味があったら調べてみる事をお勧めするわ」
564 :1 [sage]:2010/09/14(火) 19:20:39.54 ID:cuKdJHw0

ありがとうございますリメエア様。次、さっさとしろ

キャーリサ「……もーいいや。定番だが、私はチャーチルとサッチャーが好きだな。チャーチルは第二次世界大戦を戦い抜いた
英雄的存在の首相で、今でも国民的人気が高い。サッチャーもフォークランド戦争に勝利した首相だ。
男顔負けの気の強さと冷徹さから“鉄の女”とも呼ばれていたの。鉄の女……まさしくこのキャーリサに相応しいとは思わないか?」

ケツの女?そう言えば、18巻p122の9行目でそんな事言ってましたね

リメエア「あなたの場合は“脳筋女”の方が相応しいんじゃない?」

キャーリサ「いい加減私の扱いのひどさに泣きそーなんだけど……」

では次はヴィリアン様、お願いします

ヴィリアン「はい、私はクレメント・アトリー首相を尊敬しています。アトリー首相は戦後のイギリスを立て直すために、
NHSをはじめとする様々な福祉政策や住宅政策、国有化政策に力を入れ、復興のための基盤を作り上げた偉大な首相なんです」

ありがとうございました。なんとなくイギリスの王女様達の性格が分かる様な気がしますね

キャーリサ「つーか、好きな食べ物とか好きな紅茶とかそーいう質問は無いわけ?」

第二の解答ですが、紅茶の話はマニアック過ぎますし、イギリスの食べ物は不味いから参考になりません

キャーリサ「貴様は今9000万人のイギリス国民を敵に回したな。つーか首相の方がマニアックな質問だろーが」

第三の解答ですが、国を敵に回す事には慣れてますから

リメエア「苦労してるのね」
565 :1 [sage]:2010/09/14(火) 19:22:27.45 ID:cuKdJHw0

では第三の質問ですが、今最も気になっている男性、またはぶっちゃけ付き合っていますとかまあそんな感じの話をお願いします

リメエア「それは流石に明言できないわね。スキャンダルに発展しそうだし。
まあとりあえず、宮殿内には居ないとだけ言っておきましょうか」

キャーリサ「そんな男は居ない。つーか私は私より弱い男に興味が無いの」

ヴィリアン「わ、私は…その……/////」

キャーリサ「ん?ああ、あのムッツリ男か」

ヴィリアン「た、確かにちょっと寡黙で無愛想なゴロツキですけど、ムッツリとかそんな人じゃありません!」

キャーリサ「はッ!どーだか」

第四の解答ですが、たぶんキャーリサの推測は間違ってるでしょう

キャーリサ「おい、どうして姉上と妹には“様”を付けて、私だけ呼び捨てなんだ」

言わせないでください恥ずかしい/////

キャーリサ「ちょっ!いい加減にしろよお前!////」

リメエア「へぇ……呼び捨てする様な関係ってこと(ニヤニヤ)」

ヴィリアン「スキャンダルですねお姉様」

第五の解答ですが、乱暴にあんなことやこんなことをされちゃいました////

リメエア「第二王女が少女に性的虐待……明日の三面記事は決まりね。週刊誌にある事無い事書かれるんだわきっと」

ヴィリアン「見そこないましたわお姉様……」
566 :1 [sage]:2010/09/14(火) 19:24:04.77 ID:cuKdJHw0

キャーリサ「………」ポチッ

無線機(あん…////)

キャーリサ「駆逐艦ウィンブルドンに告ぐ、ウィンザー城に向けてバンカークラスターを発射しろ!!全部だ全部!!」

騎士団長「何してんだこの馬鹿王女!!早まってはなりません!!」

キャーリサ「いいや限界だッ!撃つねッ!!」

騎士団長「やめてください!」ガシッ

キャーリサ「ええい!止めてくれるな騎士団長!」ジタバタジタバタダバダバ

騎士団長「誰かッ!キャーリサ様の尻をッ!その辺に落ちてるカーテナでキャーリサ様の尻をぶっ叩いてください!」

エリザード「落ちつけバカ娘」ブスリ!

キャーリサ「アッー!」バタッ…ビクンビクン…



サーシャ「……大変見苦しい光景で申し訳ありませんが、何か滅茶苦茶になってしまったのでここで終わらせていただきます」
567 :1 [sage]:2010/09/14(火) 19:25:25.78 ID:cuKdJHw0

ヴィリアン「ところで、例の話の続きですが」

サーシャ「第一の解答ですが、ムッツリについてですね。それなら…」ゴソゴソ


騎士団長×アックア

Kazari『この話は全てノンフィクションかもしれませんよ』

ヴィリアン「………」

ヴィリアン「騎士団長、ちょっと良いですか?」

騎士団長「は、はい。なんでしょうか」ビクビク

ヴィリアン「そう言えば、“罰には応じます。このクーデターが終わったら、私の首は切断してもらっても結構”とおっしゃってましたね?」

騎士団長「ええっ!?ですが、ヴィリアン様だって“喜ぶような事をして償え”とおっしゃったじゃないですか!」

ヴィリアン「ええ、ですから、私が喜ぶ様な事をして償っていただきましょうか?」

騎士団長「ちょっ」

ヴィリアン「お別れです。最期に一つだけ、約束しましょう。斬り落とした後の首の取り扱いについてはお任せ下さい。
筋肉や皮膚に手を加え、生前と同じく……いえ、生前より凛々しいお顔になる様に演出させていただきます」

騎士団長「助けて下さい女王様!」

エリザード「やべっ!カナミン再放送の時間だ!」

騎士団長「リメエア様!」

リメエア「そろそろペットの餌もとい毒見の時間だったわね」

騎士団長「キャーリサ様ッ!ちくしょう!悶絶してんじゃねえよバカ!」

騎士団長「そこの少女!!」

サーシャ「wktk」
568 :1 [sage]:2010/09/14(火) 19:27:10.96 ID:cuKdJHw0
騎士団長「使用人!庭師!誰かぁッ!!」




ガシャン!!




エリザード「戻ったか…」

リメエア「戻ったか!」

キャーリサ「……」へんじがない、ただのしかばねのようだ

ヴィリアン「戻ったかッ!」



「「「ウィリアム・オルウェル!!」」」




アックア「ご無事ですか。王の国の騎士団長」

「……遅いん…だよ……」




騎士団長「遅いんだよ!この傭兵崩れのゴロツキがぁ!!」









初春「って感じの内容です」

黒子「……なんですの?これ?」

初春「騎士団長×アックア2『その涙の理由を変える者』です」

黒子「ダメですのコイツ…はやく“ジャッジメントですの“しないと…」
569 :1 [sage]:2010/09/14(火) 19:29:23.90 ID:cuKdJHw0
小ネタ「騎士団長×アックア」終わりです。いや、この場合はアックア×騎士団長でしょうか?

それでは続いて本編の方を投下します
570 :1 [sage]:2010/09/14(火) 19:34:28.36 ID:cuKdJHw0

10月31日はハロウィンの日である

ケルト人の1年の終りは10月31日で、この夜は死者の霊が家族を訪ねたり、精霊や魔女が出てくると信じられていた

それが様々な経緯と時代を経て一種のお祭りへと変化し、この日はオレンジ色の特大カボチャを切りぬいて
不気味な表情に形作られたジャックランタンを家の前に飾ったり、子供達が魔女やドラキュラなどの民間伝承に
出てくる様な妖怪の仮装をし、一件一件家を回ってお菓子を要求するという様な事が行われている

そしてこのクーデターの起きた日は、英国の人々がみんな、なぜだか摩訶不思議な力を使える様になったのだ


後にこの不可思議な現象が起きたクーデターを、英国の人々は“ブリテン・ザ・ハロウィン”と呼ぶようになった


ある所では、街を徘徊する軍人に怯え、映画館の一室に籠っていた少年が、そしてその両親が

またある所では大型ホテルに軟禁されていた多くの人々が、そして、その多くの人々を輸送した軍人が

老人も、ただのサラリーマンも主婦も学生も、おおよそ魔術とは縁の無い生活を送っていた人々が立ち上がった


彼らは“戦う”という選択肢を選んだのだ


この国のために、そして一人の女を助けるために


そして魔術に携わる者達も…
571 :1 [sage]:2010/09/14(火) 19:35:57.85 ID:cuKdJHw0

ベイロープ「……」

レッサー「起きてますか?ベイロープ」

ベイロープ「……」

レッサー「生理痛ですか?」

ベイロープ「[ピーーー]つもりでぶん殴るけどいいかしら?」

レッサー「起きてるなら返事してくださいよ」

ベイロープ「ちょっと考え事をしてたのよ」

レッサー「奇遇ですね。私はちょうどその事で相談しようとしてたとこです」

レッサー「アーアーこちらレッサー。通信用術式の調子はどうですか?ランシスとフロなんとか」

ランシス「キコエルヨ」

フロリス「レッサー、後でアレな」

ベイロープ「協力するよフロリス」

レッサー「嫌です!あんな事されたらお嫁にいけなくなっちゃいますよ!!」

ベイロープ「さて、何かやたら強力なテレズマが身に宿ったわけだけど」

レッサー「やだやだー!!もうアレは嫌なのーッ!!」

ベイロープ「うるさい」(ゴチン!)

レッサー「オウフ」
572 :1 [saga]:2010/09/14(火) 19:37:42.82 ID:cuKdJHw0

フロリス「カーテナの力が何らかの原因で、騎士派だけじゃなくて一般人にも分配されたってとこかな?」

ベイロープ「そう考えるのが妥当でしょうね」

レッサー「それで、どうするんですか?」

ベイロープ「どうするって言っても、ねえ……」

フロリス「……なあ、私さっき、つーか数時間前にサーシャに会ったんだよ」

ベイロープ「ほんとに!?」

フロリス「そう、本当に。第二王女とガチンコ勝負したみたいでさ、見るに堪えないくらいにボロボロになってた」

レッサー「チャレンジ精神どころか自殺行為ですよそりゃ」

ベイロープ「待てフロリス、数時間前に会ったって事は…」

フロリス「ああ、ボロボロの状態でまたキャーリサと戦いに行った」

ベイロープ「何で止めなかったのよバカ!!」

レッサー「落ち着いてくださいベイロープ!」

フロリス「……レッサー、ランシス、ベイロープ。私はサーシャに、何でそんなにボロボロになってまで戦うんだ?
って聞いたのよ。そしたら何て言ったと思う?」

ベイロープ「……」


フロリス「”理由は後で考えます”だってよ」




573 :1 [saga]:2010/09/14(火) 19:42:20.61 ID:cuKdJHw0

レッサー「……それで止めなかったんですか?おかしいですよフロリスもサーシャも」

フロリス「でもさ、良いんじゃないのか?それで」

フロリス「確かに、私らはクーデターに協力した身だ。でも、もう良いんじゃないのか?」

レッサー「フロリス……」

ベイロープ「……やれやれ。まあ確かにクーデターの共謀者が何を今さらって感じだろうけど……」

ベイロープ「一番イギリスのためになる事をするのが私達の流儀なのよね。だったら、恥も外聞も無く動くしかないか……」

フロリス「もはや、サーシャの事をどうこう言える立場でもないな」

レッサー「結局、ここで真剣に話し合ってた時間すら無駄だったって事になりますね」

フロリス「そう言う事だ。じゃ、無駄話もこの辺でお開きということで……」


四人はガシッ!と同じタイミングで武器握った


レッサー「私らも戦いましょう!この国のために、そして第二王女のために!」

ランシス(セリフ無かった…)


彼女達も“戦う”という選択をした


574 :1 [saga]:2010/09/14(火) 19:44:59.17 ID:cuKdJHw0

そしてここバッキンガム宮殿でも、何の力も持たなかった使用人や庭師達が第三王女のヴィリアンを取り囲んでおり、
みな我先にとヴィリアンを気遣う様に声をかけた

本当はすぐにでもヴィリアンの元へ駆け付けたかったのだが、彼らはみな自分には力が無いという自覚しており、
戦場に足を踏み入れる事すら躊躇っていた

しかし、今の彼らには力がある。ヴィリアンを守り、ヴィリアンと共に戦うだけの力があるのだ


彼らは敬愛するヴィリアンのために“戦う”という選択をした


キャーリサの様に軍事に優れているわけでもない、騎士派がキャーリサから離反する様に仕向けたリメエアの様な駆け引きや
根回しができるわけでもない


そんなヴィリアンが見せた人徳の力

しかし、彼女は自分の人徳を誇らない

彼女の人徳によって、勇気を振り絞ってここに駆け付けてくれた者達こそ彼女が誇るべき宝物なのだ


感極まったヴィリアンは、溢れそうになる涙を堪え、埃まみれの手で拭った


ヴィリアン「……それなら、私も自分のために使わせていただきましょう」


ヴィリアンはそう言うと、改めてボウガンを握る両手に力を込める

この者達と共に行く未来を守るために、と心の中で付け加えながら
575 :1 [saga]:2010/09/14(火) 19:48:09.27 ID:cuKdJHw0

エリザード「ガキの悪戯はもうおしまいだ。今から私が本物の国政を見せてやる」

キャーリサ「ふざけるな!!お前がやってるのは、何の力もない国民に武器を与えて戦場に送り出し、
自分だけは安全な玉座の上で享楽に耽溺するよーな事だし!!身に余る力を押し付けるだけ押し付けておいて、
守るべき国民を盾にしてでも己の利権が惜しーのか!?」

エリザード「……そういう風に考える事こそが、王の傲慢と何故気がつかない?」
 
エリザード「普通の民にはカーテナの力を扱えぬなどと、誰が決めた? カーテナを持つ新女王だけが英国を収め続けなければ
国家が崩壊するなどと、誰が決めた? カーテナによって戦争に勝利する、国家の暴走を民衆の考えで止められるようにする。
確かに都合は良いが、結局お前はカーテナの莫大な戦力を唯一存分に使える特権階級……国家元首という呪縛に囚われたままだ。
その程度の小さな変化など、歪みしか生まん。本当に捻じ曲げるほどの変革を求めるならば、自分の立ち位置の行方など恐れるな!」

キャーリサ「なん、だと……ッ!!」

エリザード「ガキのくだらん自殺願望に説教をしてやると、一人の母親が言っているだけだ。後は……そうだな。
お前があっさり絶望したほど、この国は安くはない。9000万人もの民が、ヒーローとなる決意をしてまで
お前を助けようと思ってくれている事を今から知ると良い!!」


その言葉を皮切りに、力を手に入れた多くの民間人がキャーリサに向かって突撃していった


“一つの力に囚われて、もっと大きな力に気付いていない”


キャーリサふと、サーシャの言葉を思い出した

サーシャ自身はこの様な展開を予想して言ったわけではない

しかし、サーシャは知っている。誰かのために戦う人間の強さを

そして今、9000万人のイギリスの民がキャーリサのために戦っているのだ
576 :1 [saga]:2010/09/14(火) 19:52:43.08 ID:cuKdJHw0

キャーリサ「ほざけ!!このっ、程度で……カーテナ・オリジナルが揺らぐと思うな! 現に今も、我がカーテナには……
地下鉄での暴走である程度の力を失ったとはいえ、残された総量の八割強の力を維持し続けてるの!!」

エリザード「確かに。だが一瞬でも集中が途切れれば、即座にその力は9000万人もの手によって、丸ごと削ぎ落とされるぞ。
内の制御に躍起になって、外からの攻撃をおろそかにせんようにな」

キャーリサ「くッ!!それが狙いか、この策士め!!」


時間と共に次々と増援がやってくる

それは学生であり、スーツ姿のサラリーマンであったりとまるで朝の通勤ラッシュの光景がそのまま戦場に反映されている様だ

直接的な増援だけではない。距離的に現地に赴く事ができないと判断した者達が、遠くから光弾を放ってくる


キャーリサ「いわば巨大神殿の中で執り行われる最大級に精密な儀式魔術の途中に、義勇軍の大部隊が突っ込んできたようなものだ。
力の制御を失えば失った分だけ、こちらの軍が増強される事も忘れるなよ?」
577 :1 [saga]:2010/09/14(火) 19:53:50.83 ID:cuKdJHw0
訂正します


キャーリサ「いわば巨大神殿の中で執り行われる最大級に精密な儀式魔術の途中に、義勇軍の大部隊が突っ込んできたようなものだ。
力の制御を失えば失った分だけ、こちらの軍が増強される事も忘れるなよ?」



エリザード「いわば巨大神殿の中で執り行われる最大級に精密な儀式魔術の途中に、義勇軍の大部隊が突っ込んできたようなものだ。
力の制御を失えば失った分だけ、こちらの軍が増強される事も忘れるなよ?」
578 :1 [saga]:2010/09/14(火) 19:55:42.33 ID:cuKdJHw0
キャーリサ「まやかしだっ!!どれだけ人口が増えた所で、総量ならば二割弱!
変わらず八割を掌握するこの私を倒す事などできないはずだし!!」


キャーリサの言う通り、確かにこれだけの増援が集まってもキャーリサの方が有利なのは事実である

それに、いくら力を手にしたとは言え、彼らは民間人であり力を制御する方法を知らない

だが、そんな問題は些細なものである


エリザード「そうか。ならば民だけには任せられん。なに、私も元々玉座よりは現場向きでな。
正直、純粋に手合わせする楽しみも感じてはいるんだ」


そう言うと、エリザードはキャーリサに鋭い拳を振るった

その一撃を腕で庇う様にして慌ててガードする


キャーリサ「ッ!!お前、その力……ッ!?セカンドは自ら捨てただろーが!!」

エリザード「阿呆が、女王とてイギリス国民の一人、清き一票を投じる権利ぐらいは持っているぞ。
もはや生身の拳しか振るえぬ身だが、僭越ながら花の舞台の最前線に立たせてもらおうか!!」
 

気が付くと、いつの間にか倒れていた清教派の魔術師も、騎士派の連中も、みんな民間人と一緒に戦線に加わっていた

神裂やアックア、騎士団長、エリザードを中心にまるでいくつかの部隊が形成され、キャーリサに総攻撃を仕掛けている
579 :1 [saga]:2010/09/14(火) 19:57:38.33 ID:cuKdJHw0

そして、上条当麻もサーシャもインデックスこの戦いを目にしていた。


負傷した騎士から武器を受け取ったメイドが巨大な剣を大きく振り回し、回転刃のように襲いかかる巨大な残骸物質に対し、
数十人もの警察官が同時に飛び蹴りを放って逆に弾き返す。
カーテナの力を身の内で制御しようと躍起になるキャーリサには『軍事』の才としての頭の切れはなく、
ただがむしゃらに剣を振るう内にどんどん追い詰められていく。


もちろん、本職の魔術師も負けてはいない。


アニェーゼ「ヒャッハー!作戦なんか気にしねぇで突撃突撃ィ!!」


アニェーゼ部隊のシスター達が、一つの集団となって武器を振るう


シェリー「エリス!!」


辺り一面の物体を取り込んだ巨大なゴーレムが残骸物質の攻撃を受け止める


ステイル「やれやれ、これはまた派手にやらかしたもんだね」


深夜の大空を軍の輸送機が通り過ぎたと思ったら、大量のルーンのカードがばら撒かれ、炎の巨人が坐み出される。




そして、それぞれの感想を抱いていた

これだけの事態にも関わらず、国民はけして“魔術”というものの存在を認識するという事は無い。きっと、
みんな秘めた力が解放されたとか、宇宙からの神秘のパワーだとか、包帯を巻いた右腕がとかそんなオカルト的な見解を持って
それぞれ勝手に自分自身を納得させてしまうのだろう。

インデックスは、それを可能にするエリザードの魔術の力量に驚いていた
580 :1 [saga]:2010/09/14(火) 19:59:59.39 ID:cuKdJHw0

上条とサーシャの感想はだいたい似ている

ユニオンジャックの力でもなく、エリザードの逆転劇でも無く、イギリスの国民全員が全員ヒーローになって戦っているという事に驚いていた

けしてその力を悪用する事はなく、このクーデターを止めるために、キャーリサを助けるために

そして何よりこの国のためにこんなにも沢山の人間が意志を持って立ち上がれるという事に驚嘆していた



キャーリサも本当は知っていたのかもしれない

彼らの内にある意志を

この国のために立ち上がれる勇気を、そして自分のために戦ってくれる優しさを

だからこそ、彼らをローマ正教の魔の手から守ろうとした

だが、守ろうとする過程で、彼女は軍事に走り過ぎたのだ

誰にも頼る事無く、自らの苦悩を他者に打ち明ける事も無く…


彼女は優し過ぎたのかもしれない。だから、誰にも自分の苦しみを共有させる事を許さず、守るべき民が傷付く事も良しとせず、
一人で苦しみを背負い、そして自分を犠牲にして全てを守ろうとした。


(こんなふざけた負の連鎖から、必ずあいつを引きずり上げよう)


上条は拳を強く握り、戦乱の渦中へと駆け出して行った
581 :1 [saga]:2010/09/14(火) 20:02:03.75 ID:cuKdJHw0

ちょうどその時


C T O O C U (カーテナの軌道を上に!)

S A A (斬撃を停止)

R T S T (余剰分の『天使の力』を再分配せよ)


その声が聞こえてきた瞬間、まるでマリオネットの様にキャーリサの腕が不自然な形で上空に釣り上げられ、
彼女の握るカーテナ・オリジナルが天に高く掲げられた

インデックスの強制詠唱(スペルインターセプト)

どうやら、ついにカーテナ・オリジナルへの術式介入に成功したようである


キャーリサ「く……っ!?」

 
キャーリサは歯噛みし、慌てて剣の制御を取り戻そうとする

おそらく硬直時間は数秒とない

上条は改めて右手を握り締めたが、ここからでは間に合わない


だから、上条は素直に自軍へ協力を求めた

この最高の一夜へと、本当の意味で全力を注いで参加するために
582 :1 [saga]:2010/09/14(火) 20:03:54.37 ID:cuKdJHw0

上条「アックア!!」


叫ぶと、アックアはこちらを振り向き応じた

上条が地面を蹴って数十センチ程度の高さに跳ぶと、地面との隙間を潜るように、アックアの大剣アスカロンが差し込まれる。
上条はサーフボードのように巨大な剣の側面に足の裏をつけて着地する。

打合せも何もない100%アドリブだ
だが、言わなくてもやるべき事は分かっていた。

もはや言葉は必要はない

ただ一つ、その覚悟だけを右手に…


アックア「おおおおおッ!!」


横に振り回すような軌道でアスカロンを思い切り薙ぐ

風を斬り裂き、空気さえも破いてしまいそうなほどの爆音が鳴り響く

上条当麻の体が、アックアの膂力を借りて砲弾のように射出されたのだ


キャーリサ「なッ……!!?」


キャーリサは絶句した

未だカーテナの制御を取り戻せないうちに、まるで弾丸の様なスピードで、多くの人々の間をくぐり抜けてこちらへ一直線に飛んでくる
上条当麻を見て…


上条(誇りに思えよキャーリサ。お前には、これだけの味方が居るんだ。お前一人で何もかも背負う必要なんか無いんだ。
怯える事なんて何一つ無いんだよ。)



上条「だから終わらせてやる、お前が囚われてる幻想をここでッ!!!」



583 :1 [saga]:2010/09/14(火) 20:05:54.01 ID:cuKdJHw0

着弾まで、0・1秒あったか否か。
 
しかしその一瞬の間に、第二王女キャーリサは確かに見た。

強く強く拳を握る上条当麻の顔は、力強く笑っていた事を。


バギン!!


ノーバウンドで30メートル以上もの距離を突き進んだ上条の拳は、真っ直ぐにカーテナー・オリジナルへと直撃し、
カーテナは粉々に砕かれた


ドゴン!!


キャーリサ「ぐッ…!!!」


勢いは止まらずに、カーテナを砕いた右手はそのままキャーリサの顔面も打ち抜いた


夜空へ高く飛ばされるキャーリサ

彼女の体は一度バッキンガム宮殿の屋根にぶち当たり、バウンドし、宮殿を超えて反対側の路上にまで吹っ飛んで行った


上条の手首と肘と肩の三点で、同時に骨が外れるような嫌な音が聞こえた

彼が苦痛を感じ表情を歪めるより前に、彼の体は10メートル以上前進してようやく地面に着地した。
だが当然ながら二本の足で立ち止まる事などできる訳もなく、ほとんど転がるような格好で、さらに二回、三回とバウンドしていく。


上条(終わっ……た、か……?)


キンッ!と甲高い音と共に、半ばから折れたカーテナの先端が地面に突き刺さるのを見た。
そして、その残骸は銀色の粉末と化し、風に舞って夜空へと消えて行った。



カーテナ・オリジナルは失われた

それはキャーリサの敗北と、このクーデターの終わりを意味していた
584 :1 [saga]:2010/09/14(火) 20:09:03.60 ID:cuKdJHw0

長い夜が明けた

いや、案外短かった様な気もする



サーシャ「どうやら…終わったみたいですね……」


クーデターの終わりと共に、カーテナから分配された力は消えた

普通の人間に戻った国民は、やがて冷静さを取り戻し、それぞれの帰るべき場所へと散って行った

非日常が終わり、普通の日常に戻った。ただそれだけの事だ。

だが、彼らの心には確かに残った物がある。それは、自分達にもこの国のために何かができるという事実であった。


戦いを終えたアニェーゼ達も天草式のみんなも、女王エリザードもヴィリアンも騎士団長も何やら楽しそうに話をしていた

大団円というやつだろう

あの巨大な剣を携えた傭兵はいつの間にかどこかへと消えてしまっていたが、まあ全て後腐れなく終わったのだから気にする事はない


サーシャはボロボロになった体をなんとか立ち上がらせ、みんなの元へ向かおうとした







ドクン……






サーシャ「……!?」


突然だった

まるで、何者かに心臓を鷲掴みにされた様な圧迫感がサーシャを襲ったのは……
585 :1 [saga]:2010/09/14(火) 20:10:32.32 ID:cuKdJHw0
キャーリサ「終わった…のか…」


キャーリサはロンドンの路上にぶっ倒れていた

右手にはこの期に及んでまだ折れたカーテナの柄が握られていたのを見て、自重気味に笑った

軍事に秀でているとは言いつつも、どうやら一番の臆病者は自分だったみたいだ

あれだけの強さを持った国民を信じる事ができなかった。そのくせに元首を気取っていたとは、全てが終わった今、冷静になって考えてみるとなんとも情けなく感じられる。





「ハハッ、こいつはすごいな。王女ともあろうものが血と泥に塗れて道路に転がってる様なんぞ、見られるものではないと思っていたが、
こいつは滑稽だ」





突然聞こえてきた声に、キャーリサは痛む体を無理矢理起こし、立ち上がる

そして剣を構えるが、先端が折れていた事に気付いて舌打ちをした


キャーリサ「チッ…誰だ貴様は?」

フィアンマ「右方のフィアンマ…」

キャーリサ「……!?」


その言葉を聞いた瞬間に、キャーリサの顔が驚きに満ちた表情に変った
586 :1 [saga]:2010/09/14(火) 20:13:04.09 ID:cuKdJHw0

フィアンマ「ん?返事が無いという事は知らないってことか?なら一度諜報機関を解体して組み直した方が賢明だな。
自分の国が敵対する組織のトップの名前すら知らんとは」

キャーリサ「ッ…!?」


知らないわけではない

右方のフィアンマ

ローマ正教を実質的に動かす神の右席のリーダー

ローマ正教最大の魔術要塞である聖ピエトロ大聖堂およびバチカンをたった一撃で壊滅させてしまった男


キャーリサ「なぜ貴様がここに…」

フィアンマ「なに、ちょっと欲しいモノがあった。ただそれだけだ」

キャーリサ「欲しいモノだと?……確か、貴様の属性はミカエルだったな。と言う事は、狙いは同じミカエルの属性を持つこのカーテナか?」

キャーリサ「だが、残念だったな。見ての通り、カーテナはこのザマだ」

フィアンマ「ふむ、なるほど…そうかそうか…そういう方法もあったな。それは俺様も盲点だった」


フィアンマ「うーん、いや、やはり無理だな。その程度の玩具では、俺様の力を移した途端に消滅してしまう。
属性の点ではクリアしてるが、容量の点で問題ありってとこか」

キャーリサ「カーテナが玩具だと…?なら貴様の欲しいものとは一体…」
587 :1 [saga]:2010/09/14(火) 20:14:40.20 ID:cuKdJHw0

フィアンマ「この英国において最も重要な霊装の一つだ。そんな玩具とは比べ物にならないくらいのな」

キャーリサ「……」


このカーテナ・オリジナル以上の重要な霊装…?そんなものは…


フィアンマ「その様子だと知らないみたいだな。ま、俺様がフランスをせっつかせてイギリス国内で不穏な動きを引き起こさせたのも
このためなのだが」

キャーリサ「なん…だとッ!?」


目を剥き、瞳孔が獣の様に細くなり、その表情から血の気が失われる


フィアンマ「お前らがガチで戦争でも起こして焼け野原になったロンドンから回収するって方向でも良かったんだが、
その点に関してお前は優秀だったぞ?現にお前の下らないママゴトのおかげでロンドンは虐殺と凌辱の嵐にならずにすんだのだからな」

キャーリサ「くッ…貴様ァッ!!」


真実を知ったキャーリサは激高し、刃が折れてる事も忘れてフィアンマに斬りかかった

だが…


ゴバッ!!!


キャーリサ「なッ!!?」

フィアンマに斬りかかろうとした瞬間に、強烈な衝撃波がキャーリサの体を叩きつけ、彼女を吹き飛ばした


フィアンマ「もう目的は果たした。夢見がちな王女様と遊んでやるほど俺様は暇ではないのだ。
女王のババァならともかく、お前の様な雑魚なら見逃してやっても良いんだぞ?」


特に勝ち誇るわけでもなく、フィアンマは心底メンドクさそうな顔をしてそう言った

右肩から巨大な何かを生やしながら…
588 :1 [saga]:2010/09/14(火) 20:16:13.33 ID:cuKdJHw0

キャーリサ「何だ…それは…?」


フィアンマの右肩から生える巨大なそれは、まるで爬虫類の手に似ている


フィアンマ「そうだ、せっかくだからお前にも見せてやろう」


キャーリサの質問には答えず、フィアンマはポケットから何かを取りだした

それは、手のひらサイズの金属製の錠前だった

しかも、やたら番号の多い錠前。いや、その大量に組み込まれたダイヤルに記されているのは、番号ではなくアルファベットだ。


フィアンマ「お前ら王族がコソコソと作っていた禁書目録に関する逸品だ」


フィアンマはその錠前を人差し指と親指で挟みながら、軽く回したりしてキャーリサにお披露目する


キャーリサ「禁書目録の……まさかッ!?実在したのか!?」

フィアンマ「俺様も驚いたぞ?厳重に管理してあると思いきや、まさかバッキンガム宮殿に
『盗んでくださいバカ野郎』とでも言わんばかりに無造作に置かれていたのだからな」


キャーリサですら知らなかった“錠前“を、クーデターの時にバッキンガム宮殿から
重要な魔術の品を持ちだす様に命令されていた魔術師達が知ってるはずがなかった

だから重要な物にも関わらず無造作に放り出されていたのだろう
589 :1 [saga]:2010/09/14(火) 20:17:46.43 ID:cuKdJHw0

フィアンマ「で、どうする?例えそのカーテナが100%の力を発揮していたとしても、俺様は一瞬でお前を木っ端微塵にする事ができるが」

キャーリサ「ぬかせッ!」

フィアンマ「俺様は見逃してやると言ってるのだぞ?」

キャーリサ「ローマ教皇がどーしてお前に最後まで抗ったのか、今なら分かる気がする……!」

フィアンマ「そうかい。つまらん女だ」


そして今度こそ、本当にキャーリサを消し去るために巨大な右腕が振るわれた

圧倒的な力を前にしてもキャーリサは目を閉じる事無くフィアンマを睨みつける

しかし、そんな態度を取った所でキャーリサに抗うすべなどなかった

巨大な右手がキャーリサの頭上に下される……その寸前の事だった


突然凄まじい光の爆発と共に、衝撃が四方八方に飛散した


フィアンマ「ほう」


突然目の前に現れ、キャーリサを庇う様にフィアンマの巨大な右腕を、同じく幻想殺しの右腕で受け止めた上条当麻がそこに居た
590 :1 [saga]:2010/09/14(火) 20:19:54.92 ID:cuKdJHw0
上条「ぐッ…がァッ!!」

だが、フィアンマの右腕に威力があまりにも強過ぎるため、一瞬で消し去る事ができず、上条の体はフィアンマの右腕に押される

キャーリサ「ッ…!!」


キャーリサは、踏ん張る上条の肩を押して支えた

そして、ようやくフィアンマの一撃を完全に消し去る事に成功した


上条「何やってんだテメェ…」


上条はフィアンマを睨みつけながら低い声でそう言った

だが、対するフィアンマは


フィアンマ「くっ、はは!本日のラッキーな星座のアナタはピンポイントで俺様でしたってか?
お前は最後の仕上げだと思っていたが、まさかこんな所で二つとも手に入るとはなぁ!」

上条「誰だって聞いてんだよ!!」

キャーリサ「アイツは右方のフィアンマ。神の右席の実質的なリーダーだ」

上条「…!?」

フィアンマ「オイオイ、自己紹介くらいは自分で……」


何かを言いかけたフィアンマだったが、そこで彼の口は止まった


フィアンマ「おい、お前、運命ってやつを信じるか?俺様は今、それを信じたくなったぞ」


気味の悪い笑みを浮かべるフィアンマ

その視線の先には…


サーシャ「……」

上条「サーシャ!」

怪我をした腕を庇い、足を引きずりながらこちらへ向かってくるサーシャが居た
彼女は、自分の胸を圧迫する力の正体を追ってここに来たのだ
591 :1 [saga]:2010/09/14(火) 20:21:25.07 ID:cuKdJHw0

フィアンマ「ハハッ!!もはやラッキーなんてもんじゃない!この世界の全てが今、
この俺様が計画を遂行するためにお膳立てをしてくれてるみたいだな!!」

上条「テメェ!一体何を考えてやがる!サーシャに何をする気だ!」

フィアンマ「やるか?いいぞ。不格好で申し訳ないが、やっとコイツも温まってきたみたいだからな」


フィアンマは巨大な右手をブン!と試す様に一回振った
それだけで爆発的な閃光がほとばしる

しかし、上条は怯むことなくその光に向かって右手を差し出した

バチカンをたった一振りで壊滅させた一撃

その衝撃は傷だらけの上条を容赦なく襲う


上条「くッ……!!!」


上条はそれを何とか耐え、フィアンマの放った衝撃を打ち消して見せた

眩い光が消え、睨みあう二人


フィアンマ「流石は俺様が求める希少な右手。間近で見ると、改めてその特異性に驚かされる」
592 :1 [saga]:2010/09/14(火) 20:22:48.98 ID:cuKdJHw0

フィアンマ「だが、不完全であるという点に関しては俺様と同じだな。いや、もともとが似たような力なのだが」

上条「……!」


突然、フィアンマの右腕が、まるで別の生き物であるかのようにのたうち回る


フィアンマ「どうやら時間切れの様だな。まったく、我ながら扱いにくいじゃじゃ馬を手にしたものだ」


緊迫し、敵意を向ける上条達とは対照的に、フィアンマはやれやれと言った感じでため息をついた


フィアンマ「今日の所は幻想殺しは諦めよう。せっかく手に入れた霊装を破壊されちゃたまらんからな」

上条「霊装?手に入れた?何の話をしてやがる…」

フィアンマ「お前も見るか?凄いぞ?」

キャーリサ「まずい!あれを使わせるな!」


突如叫び出したキャーリサだが、それを止める事はできなかった

フィアンマは手にした錠前のダイヤルを回す……すると


ドッ!!という轟音と共にアスファルトが砕け、真下から勢いよく何かが飛び出て来た


それは、上条にとっては見慣れたもの

金刺繍の白い修道服を着た、小柄な銀髪碧眼の……


上条「イン……デックス?」
593 :1 [saga]:2010/09/14(火) 20:24:44.80 ID:cuKdJHw0

光の無い虚ろな瞳の少女

感情の欠片さえ感じさせない、機械の様に抑揚の無い声で喋り始めた


インデックス「はい、私はイギリス、清教内……第零聖堂、区『必要悪の教会』……所属の魔道、書、図書館です。
正式名……称はIndex-Librorum-Prohibitorumで……すが、呼び名の略称の……ジジジザザザガガガガガガガ」


声に機械的なノイズが走る

フィアンマが手に入れた霊装。それは、インデックスの自動書記(ヨハネのペン)を外部から遠隔操作する装置であった

それは10万3000冊の魔道書を外敵から守るための装置であり、同時に禁書目録が絶対に反乱を起こさないという事を証明するための
安全装置でもある


フィアンマ「おや?」


フィアンマにとっても想定外だったのだろうか?
無表情にぶつぶつと言葉を発していたインデックスが、突然小刻みに震えだし、そのまま地面に倒れ伏してしまった


上条「インデックス!?」

フィアンマ「どうやら自動書記の方にダメージがあるみたいだな。だが、この程度なら問題ない。
本体の制御ができないのは残念だが、10万3000冊の知識にアクセスできさえすればそれで良い」

上条「何をした……インデックスに何をしたんだ!?」

フィアンマ「知らんよ。整備不良はそっちのミスだろ?クレームならネせサリウスか女王のババアにでもつけろ」
594 :1 [saga]:2010/09/14(火) 20:26:07.36 ID:cuKdJHw0

上条「テメェ!!」


上条はフィアンマに殴りかかるべく拳を強く握り締めた


フィアンマ「こいつを破壊されたら敵わんから、今日の所は貴様の幻想殺しは諦める。だが、せっかくだ。
天使を降ろした素材の方は回収させてもらおうか!」


正面にいたはずのフィアンマが、いつの間にか上条の背後に立ち、そして上条に対して背を向けていた

もはや上条当麻など眼中に入っていない

彼が今見ているのは、サーシャ・クロイツェフだ


上条「しまっ……」


彼は驚きの表情と共に振り返った

そして次の瞬間、さらに彼を驚かせる様な出来事が起きた


ドガン!とどこからともなく砲弾が飛んできて、それがフィアンマの目の前で爆発したのだ


フィアンマ「……」

上条「ッ!?」


さらに連続して数発の爆撃音が鳴り響く。どこかから砲撃を受けているみたいだが…

もはやクーデターは終わったはず。なのに、一体誰がこんな真似を?
595 :1 [saga]:2010/09/14(火) 20:27:56.65 ID:cuKdJHw0

ズドン!ズドン!と続けざまに砲弾が上空からばら撒かれる


上条「クソッ!何が起きてんだ!?サーシャ!!」


止む事の無い砲撃

見渡す限り一面が爆煙と粉塵に塗れ、もはやサーシャの安否もフィアンマの姿すらも確認できない




グイッ!

サーシャ「えっ…?」


そしてこの状況に唖然としていたサーシャだが、辺り一面が煙だらけで何も見えない中、突然彼女は何者かに腕を引っ張られた


「逃げるわよ!」


聞こえて来たのは女性の声

そしていきなり抱きかかえられると、そのまま凄いスピードで自分の体が宙を移動する感覚を覚えた



フィアンマ「チッ、下らない事をしてくれたものだ……」

フィアンマ「だが、行き先はもう分かっている。求めずともそこに全ては集まるのだからな」




破壊的な音が止み、辺り一面を覆っていた煙が晴れると、そこにはもうフィアンマもサーシャも居なかった


上条「サーシャ……?ちくしょう!!」


何も知らない上条は、サーシャがフィアンマに連れ去られたのだと思い憤慨した
596 :1 [saga]:2010/09/14(火) 20:30:57.15 ID:cuKdJHw0

キャーリサ「待て、そう悪い方向に考えるのは早計だ。これは明らかにフィアンマのものじゃない。
たかが少女を一人連れ去るために、こんな手の込んだ真似をするとは到底思えない」

上条「……じゃあ、誰かがフィアンマを倒すために砲撃を…?」

キャーリサ「いや、そもそも核ミサイルをピンポイントで撃った所で殺せない様な化け物だ。それにあの大量の砲弾は、
煙幕と音は激しかったが火薬の量自体は殺傷力のあるものではない。たぶん魔術的に改良を施されたものだろ」

キャーリサ「つまり、こー考えられるだろ?フィアンマに敵対する誰かがサーシャを連れ去ったとな。
あの砲撃は、フィアンマを撹乱、あるいは警告を与えるためのものだと」

上条「結局連れ去られた事に変りは無いだろ!」

キャーリサ「あのフィアンマ相手にそんな真似ができる奴は、私は一人しか知らんが。いずれにせよ、
フィアンマの手に渡るという最悪な事態は回避された可能性があるのだ。それに、今のお前にはもっと心配すべき人間が居るだろう?」


そう言うと、キャーリサは路上で倒れている少女に目を向けた


上条「インデックス!?」


上条はインデックの体を抱き起こした
597 :1 [saga]:2010/09/14(火) 20:33:31.25 ID:cuKdJHw0

白い修道服が煤汚れてはいたが、どうやら砲撃による目立った外傷は無いみたいだ

とりあえず、インデックスが無事だった事に安堵した上条。しかし、儚くもその安堵はわずか数秒で脆く崩れ去った


上条「おい、大丈夫かインデックス?……インデックス?」


上条は軽くインデックスの頬をぺチぺチと叩いた

だが、インデックスは目を覚ますどころか、顔の筋肉一つ動かそうとはしなかった


上条「嘘だろ……おい……?」


残酷な結末が上条の頭をよぎる


上条「インデックス!?インデックスッ!!……目を覚ませよ!!インデックスーーーッ!!!」





かつてその少女を守り抜くと誓った少年の悲痛な叫び声だけが、砲撃の止んだロンドンの路上で虚しく響いていた……





そして……

?「イギリスにルートを変えて正解だったみたいね。あのクソ野郎がアンタを狙っていたのは分かっていたけど」

サーシャ「あなたは…?」

ヴェント「ヴェント。そう呼びなさい」
598 :1 [saga]:2010/09/14(火) 20:36:32.39 ID:cuKdJHw0

サーシャ「第二の質問ですが、どこへ行くのですか?それに、なぜ私はここに居るのですか?」

ヴェント「私はガイドじゃない。どこへ逃げるのが最良かくらい自分で考えろ。それと次の質問だが、知りたきゃデカルトでも読みな」

サーシャ「ですが、せめてこの船の向かう先くらいは教えていただけませんか?」


そう、サーシャとヴェントは現在、海上を走る船の上に居るのだ

その船は透明な氷で作られた帆船。かつて上条当麻がイタリアのキオッジアおよびヴェネツィアで戦った女王艦隊のうちの一隻である。
先程の砲撃も、この帆船から遠隔操作で放たれたのだ。


ヴェント「お前さんの生まれ故郷だよ」


ヴェントは船の先端で勇ましく仁王立ちをしながら、サーシャの方を振り向く事無くそう答えた

彼女の舌には透き通った青い十字架と、それを繋ぐ長い鎖がぶら下がっている


サーシャ「ロシアですか!?第一の解答ですが、私はロシアから狙われている身です。なぜわざわざ敵の陣中に?」

ヴェント「ロシアはあくまでも通過点よ。それにもうあのクソ野郎のせいで戦争は始まっている。
ロシアだけじゃない、イギリス以外は全てローマ正教の陣中だ」

サーシャ「第三の質問ですが、インドや中国は?」

ヴェント「この戦争には中立の立場だ。つまり、お前を引き渡す様に要請されたら全力で協力するでしょうね。
わざわざ火種を匿うなんてバカな真似をするわけないでしょ」

サーシャ「そうなると、もはや学園都市しか…」

ヴェント「あのクソみたいな街が素直に亡命を受け入れてくれるはずが無い。もっと近くよ。ロシアの情勢を考えてみろ」
599 :1 [saga]:2010/09/14(火) 20:37:51.06 ID:cuKdJHw0

サーシャ「独立国家共同体からの離反…つまり、ロシアから離反した国に行くつもりですか?
しかし、相手側もこの不安定な情勢の中で素直に入国を認めてくれるとは……」

ヴェント「エリザリーナ独立同盟国。近年ロシアのやり方に反発してできた小国家の連合よ」

サーシャ「エリザリーナ……?」



ヴェント「全ての勢力はそこへ結集する。受け入れな、もう亡命ごっこは終わりだってな。自由が欲しけりゃ戦うしかないのよ」




600 :1 [saga]:2010/09/14(火) 20:38:34.74 ID:cuKdJHw0
ここで区切ります

ロシア編どうしよう…
601 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/15(水) 00:11:07.70 ID:ZRNOhiIo
イギリス編終了乙。
ヴェントがここで来たか。

ロシア編は折角だから殲滅白書のオリキャラ4人組再登場とか、
新たなる光全員登場とかを希望。
602 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/15(水) 00:35:18.12 ID:N8I96sY0

間が開き過ぎる気もするけど、1ヶ月後の22巻待ちもアリだな
22巻なんて知らねぇよ、って感じでオリジナル展開で突っ走るのも当然アリだと思うが
603 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/15(水) 00:37:35.69 ID:ybRUFADO
乙! サーシャ×キャーリサは正義!
ロシア編もわくてか
604 :これより神の右席定例会議を始める2 [saga]:2010/09/17(金) 20:24:13.62 ID:LwiVe3A0
ロシア編投下します

22巻発売までに完結できそうなペースなら完璧オリジナル展開になりますが御容赦ください

でももしも22巻の内容とかけ離れ過ぎてたら恥ずかしい…
605 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/17(金) 20:29:30.50 ID:LwiVe3A0
またやってしまった…

スレごとに名前がリセットされないのは中々不便ですね



20××年

ロシアの学園都市への宣戦布告により、ついに三度目となる大規模な戦争が始まってしまった

第三次世界大戦、それは長く人々の心に生々しい傷跡として残るのだろう。



そして、ここロシアでは


セルゲイ「見てくれイワン、俺の嫁のナージャだ」

イワン「T−95になんて名前付けてやがんだ」

セルゲイ「学園都市との戦争に備えてやっと予算が降りたんだ。たまんねぇだろこのフォルム。イヤらしい体しやがって、フヒヒ…」

イワン「……」

セルゲイ「俺、この戦争が終わったら、こいつをピカピカに磨いてやるんだ」

イワン「……死ぬなよ?セルゲイ」

セルゲイ「ハァ?死ぬわけねぇだろ?ナージャの硬さをナメんなよ?」

イワン「いや、戦車じゃなくてお前の事だ」

セルゲイ「ハッハッハッ!タイタニック号でも突っ込んでこねぇ限り、こいつにゃ傷一つ付けられねえよ」


┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨


ヴェント「ちょっと通りますよ」


┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ドドグシャッ┣¨┣¨┣¨┣¨ドドド


イワン「……」

セルゲイ「……」
606 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/17(金) 20:31:20.06 ID:LwiVe3A0



俺、この戦争が終わったら、こいつをピカピカに磨いてやるんだ……




セルゲイ「ナ―ジャああああああ!!!!」


ヴェント「ん?誰かアンタの名前を呼んだみたいよ?」

サーシャ「第一の解答ですが、似てはいますが私の名前はサーシャです」


現在、サーシャとヴェントはロシアを横断していた

船で…


ヴェント「これが本当の水陸両用ってやつね」

サーシャ「……」

ヴェント「完全ステルスだからレーダーにも引っ掛からないし、認識妨害も働いてるから誰にもこの船を視認する事はできない。
おまけに実は船体を地面から少し浮かせているから跡も付かない。まさに完璧な移動手段だわ」

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ドド

サーシャ「第一の解答ですが、騒音が」

ヴェント「文句があるなら歩いても良いのよ?この広大なロシアをな」

サーシャ「いえ、何でもありませんmam……」
607 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/17(金) 20:33:24.92 ID:LwiVe3A0

エリザリーナ独立同盟国

ロシア連邦内、殲滅白書の本拠地のある場所から一番近くに存在する国家。
近年、ロシアのやり方に納得できず独立した小国の集まりで形成された。
独立時の立役者である女性、エリザリーナの名を国名に頂いている。

内陸部で一国だけが独立したとしても周りは全てロシア領土となってしまい、
人員や物資のやり取りにロシア政府からの許可が必要な状況になってしまう。
そうした間接的支配から脱するために、小さな国をいくつか繋げることによって
ロシアの外の東ヨーロッパの国々までのルートを自力で構築しており、
そのため独立した国の中でも特にロシアから疎んじられている。
そのような経緯から東西に細長く伸びており、長さは大体300km程になっている。

ちなみに東京から西へ滋賀県、北へ山形県までの距離がだいたい300kmほどである



【エリザリーナ国境】

兵士A「ついに戦争が始まったな。俺達どうなるんだろ」

兵士B「大丈夫だ。俺達にはエリザリーナ様がついておられる」

兵士A「まあそうだけどよ…」


┣¨┣¨┣¨┣¨


兵士A「おい、何か変な音が聞こえないか」

兵士B「いや、連絡は何もきてないが…」
608 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/17(金) 20:35:02.29 ID:LwiVe3A0


┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨


兵士A「ほら、聞こえるだろ」

兵士B「ああ、聞こえるな。何だ?まさか本当に敵襲か?」


┣¨┣¨┣¨┣¨ドド


ヴェント「超気持ちいい」


┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ガシャンバキッグシャッ┣¨┣¨┣¨┣¨


サーシャ「……」


兵士A「……」

兵士B「……」

兵士A「なんかいきなり国境のフェンスが粉々になったな」

兵士B「お前、何か見えたか?」

兵士A 「いや、何も見えなかった。北島康介が居た様な気はしたけど」

兵士A「……」

兵士B「……」

兵士A「これって敵襲じゃね?」

兵士B「そうかもな」
609 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/17(金) 20:36:25.33 ID:LwiVe3A0

兵士「エリザリーナ様!」

エリザリーナ「どうしたの?慌ただしいわね」

兵士「国境付近で襲撃が確認されました!」

エリザリーナ「…ロシアかしら?予想よりも早いタイミングね」

エリザリーナ「敵の位置は?襲撃を受けた境界線付近の住民の避難と警護を最優先にしましょう」

兵士「それが…確認できないのです…」

エリザリーナ「…?どういう事?」

兵士「襲撃があったのは確かなのですが、報告によると、見えない何かにフェンスを食い破られたとの事です。
現在捜索を続行中ですが、レーダーにも一切反応しません」

エリザリーナ「……」
610 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/17(金) 20:38:47.93 ID:LwiVe3A0

【その後】

サーシャ「あの、この船はどこへ向かっているのでしょうか?」

ヴェント「私は回りくどい事が嫌いでね」

サーシャ「?」

ヴェント「分かるだろ?親玉のとこまで一直線よ」



そして、街が見えて来たところで氷の船が止まった


ヴェント「流石にこのまま街に突っ込むわけにはいかないしね」


ヴェントは船の先端から身軽に飛び降り、久しぶりに踏みしめる事になる地面に着地した

同じくサーシャは背中から氷の翼を生やすと、軽く羽ばたきながら雪の上に着地した

そしてサーシャが雪に覆われた地面に足を付けたのと同時に、ビシッ!と裂ける様な音が響く

氷の船の全体に亀裂が走り、巨大な氷の残骸に変った

不思議な事に、残された氷の残骸は溶ける事なく、まるで風に舞う砂の様にバラバラの粒子になって
どこかへと吹き飛んでいってしまったのであった

証拠を残さないために、ヴェントは徹底してこの氷の船の術式を調整していたのだ


ヴェント「その翼…なるほど、フィアンマがお前を欲しがっている理由が分かった気がする……」

サーシャ「?」
611 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/17(金) 20:41:06.95 ID:LwiVe3A0

二人は街の広場へとやって来た

ロシアは世界でも稀に見る多民族国家であり、その内陸部に様々な独立国を束ねて
同盟国を建てたここエリザリーナ独立同盟国もまた然りである

広場を行き交う人々は様々な人種の人が居て、また飛び交う言語も複数の種類が確認できる


そして、その人々の中に軍人の姿もちらほらと見えた


ヴェント「ここで問題を起こすのも面倒ね」


そう言うと、ヴェントはサーシャの正面に立って屈み、サーシャの首の後ろに腕を回した

傍から見ると、まるでヴェントがサーシャを抱きしめているかの様に見えなくもない


サーシャ「はわっ…////」


突然の行動に少し驚くサーシャ


ヴェント「変な声出すなバカ」


ヴェントはそのままサーシャの首の後ろで何やら作業をしていた


ヴェント「よし」


作業が終わったヴェントはサーシャを解放する


サーシャ「あの、これは?」


サーシャの胸元には、銀色のロザリオがぶら下がっていた

ローマ正教の十字架である
612 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/17(金) 20:42:15.51 ID:LwiVe3A0

ヴェント「簡単な視認障害を起こす様に工夫してある。さっさと行くわよ」


そう言うと、ヴェントは再びどこかへと足を進めた

慌ててそれについていくサーシャ

ヴェントもサーシャも衣装としてはかなり目立つ筈だが、周りの人間はそれに一切目を向ける事は無かった。
まるで透明人間にでもなったかの様な気分だ。

簡単な工夫とは言っていたが、彼女は元神の右席の魔術師である

サーシャはその事を改めて認識させられたのだった
613 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/17(金) 20:47:01.31 ID:LwiVe3A0

広場を進んでいくにつれ、軍人の姿が増えていった

そして、その先に四角い石で作られた建物が見えた

どうやら元は大きな教会の一部だった様だが、今は軍の施設と化しているみたいだ

なんとなく、アリの巣を発見した様な気分になった


ヴェント「さて、覚悟を決めなサーシャ」

サーシャ「えっ」


ヴェントは右手の指をパチン!と鳴らした


その瞬間、同時に周囲に居た軍人達が一斉にこちらを振り向いた

どうやら、視認妨害の術式が解除されたらしい


軍人「誰だ貴様ら!いつの間にッ!?」


軍人達は一斉にヴェント達を取り囲み、銃をこちらに突きつけて来る

だが、ヴェントの表情は全く変わっておらず、慌てる事も無く、不安な様子さえ微塵も感じられなかった


ヴェント「ちょいとお前らの親分に会わせてもらいたいんだけど。いいかしら?」

軍人「ふざけるな!」

ヴェント「まじめに言ってんだけどね、やれやれ…」


ヴェントはめんどくさそうにため息をついた


じゃらっ…


同時に、鎖の擦れる音と共に彼女の口から銀色のロザリオが飛び出てくる

それで全てが終わった
614 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/17(金) 20:49:25.79 ID:LwiVe3A0

サーシャ「…!?」

軍人「うっ…な、なんだ……」


ガチャガチャと一斉に構えた銃が地面に落ちる音が聞こえた

そして、彼女を取り囲んでいた軍人はみな立つ事さえできずに地面に方膝を付いていた。
まるで、ヴェントにひれ伏している様に見える。
中には、それすらも出来ずに地面に全身をあずけ、息をする事だけに全ての力を捧げている者さえいた。

もちろんそれは驚くべき事であり、サーシャの表情は目の前の不可思議な現象に対する戸惑いを隠せないでいる

だがヴェントの方はと言うと、なぜか心底落ち込んだような顔をしてため息を付いていた


ヴェント「やれやれ、これじゃあ一割も復元できてないじゃない」


彼女がガッカリするのも無理は無かった

ヴェントが発動したのは、”天罰術式”

かつて学園都市の警備員の7割を直接手を下す事無く戦闘不能にした強大な魔術である

彼女に敵意を向けた者を、有無を言わさずに仮死状態にする

しかも、それは写真や映像を通しても、脳裏に彼女の姿が焼き付いているだけでも
時間の経過に関係無く発動してしまうという凶悪極まりないものであった

わけあって今はそれを完全に使いこなす事ができないのだが、かつての威力を考えたら、
せいぜい相手を脱力させる程度の効果しか発揮できないのは、彼女にとっては不満以外の何物でもないのだろう
615 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/17(金) 20:56:37.78 ID:LwiVe3A0

ヴェント「アンタらが案内してくれないなら、勝手に探させてもらうわよ」

軍人「くッ…」


何もできず、何が起きたのかすら理解できず、倒れ伏した軍人はただヴェントの背中を見ながら歯噛みする事しかできなかった





「エリザリーナ様!」


慌ただしく司令室に駆け込む軍人


エリザリーナ「敵の正体が確認できたのかしら?」

「いえ!敵襲です!」

エリザリーナ「何ですって!?」


そして次の瞬間、その軍人の背後に黄色い服を着た女が現れた


ヴェント「 Привет♪」

「くそっ!もう来やがっ……!」


報告に来た軍人は突然しゃがみ込み、膝を付いて、近くのスチール製のデスクに寄りかかった


「ハァ…ハァ…?」


本人も何が起きたのか分からず、戸惑いの表情と共に息を荒げている


ヴェント「へー。意外と簡素な部屋ね。つーか散らかり過ぎ。掃除したら?」


そんな軍人の様子などまる見えていないかのように全く気に止めず、
ヴェントはエリザリーナの執務室を見渡して呑気に感想を述べた
616 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/17(金) 20:59:34.61 ID:LwiVe3A0

エリザリーナ「どういう事!?なぜここまで…うっ」


突然の眩暈がエリザリーナを襲う

同時に彼女はヴェントから咄嗟に目を逸らした


ヴェント「へえ、流石は聖女と呼ばれるだけの事はあるわね。本能的にコイツがヤバい物だと気付くとは」

エリザリーナ「これは……あなたは一体…?」


エリザリーナは極力敵意を向けない様にヴェントに訪ねた

ここで抵抗しても無駄だと悟ったのだ

普段は拙い腕だと謙遜しているが、エリザリーナはそれなりに魔術の腕は高い。
だが、その彼女から見てもこの相手は格が違い過ぎる


ヴェント「このままじゃ話辛いわね」


そう言うと、ヴェントは舌から垂れている鎖の先端についたロザリオを外した

すると、いくらかエリザリーナ達の顔色に生気が戻る
617 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/17(金) 21:04:14.94 ID:LwiVe3A0

ヴェント「まず最初に、私はアンタらと戦いに来たわけじゃない。
場合によっちゃ、アンタらにとっては味方になる可能性もある」

エリザリーナ「味方…ですって?」

ヴェント「そうそう、自己紹介が遅れたわね。私の名前は…ヴェントって呼んでちょうだい」

エリザリーナ「ヴェント…」


思考を巡らせる。その名をどこかで聞いた覚えがある…


エリザリーナ「まさか…神の右席…?」

ヴェント「正確には元よ。つーか、そのワードがすんなり出てこなかったって事は、
アンタはこの戦争の首謀者を知らないみたいね」

エリザリーナ「どういう事?ローマ正教のあなたが、なぜ我々に?」


彼女の頭に二つの可能性が浮かんだ。一つはローマ正教からの罠の可能性。
だがこんな小さな国を一つ落とすために、しかも罠なんて回りくどい事などさせるために
神の右席の魔術師を派遣してくるだろうか?


罠の可能性はすぐに消えた。そもそも、ここでさっさと自分を殺してしまえば、
それだけでこの独立同盟国に大きな亀裂を与える事が出来る。わざわざ話し合う必要など無いだろう。

となると、残るはローマ正教の反主流派の可能性


ヴェント「たぶんアンタの考えてるので正解よ。私はあのクソ野郎の暴走を止めたいだけ。
好き勝手やられんのが気に食わないだけよ」


どうやら後者の方で正しい様だ
618 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/17(金) 21:07:02.36 ID:LwiVe3A0

エリザリーナ「それで、あなたの要求は?」

ヴェント「要求?ハハッ、バカかアンタは?」


ヴェントは見下す様に鼻で笑った


ヴェント「良いか?術式が完璧に回復してないこの私でさえ、こんなにも簡単に懐まで入って来れたのよ?
それを分かってんのかしら?」

エリザリーナ「……」


確かに、それは否定できない

もしも彼女が自分達を始末するためにやってきたのだとしたら、とっくに全てが終わっていただろう
まるで一匹の蟻を踏み潰すのと同じくらいの容易さで


ヴェント「敵の名前は右方のフィアンマ。気に食わないが、奴は私よりも強い。
アンタらがロシア、ローマの勢力に呑まれて同盟国としての
力を保てなくなるのはもはや確定事項だって事くらい、いい加減自覚しな」

エリザリーナ「ッ…!」


エリザリーナは身を庇う様に自分の細い左腕を握っていた右手に力を込めた

ヴェントはエリザリーナに対してこう突き付けているのだ。
“この国を守りたかったら私に頭を下げて媚びろ”と
619 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/17(金) 21:08:35.15 ID:LwiVe3A0

相手は元神の右席。ここで素直に協力を仰ぐには抵抗があった。
ここで借りを作ってしまえば、後々大きな禍根を残す可能性もあるからだ。

だが、この弱小国家では到底右方のフィアンマを退ける事はできない。まさに八方塞がりな状況である


ヴェント「ついでに、私とこの娘がこの国に居る限り、敵は大規模な空爆をする事ができない。まあ理由は後で話してやるが」


ヴェントは軽くサーシャの頭にポンと手を乗せた


エリザリーナ「……分かったわ。お願い、この国のために力を貸してちょうだい」

ヴェント「良い判断だ。仕方ないから協力してやるわよ」


危ない橋だが、“右方のフィアンマ“に関する情報を集めるためには手を組まざるを得なかった
620 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/17(金) 21:11:24.80 ID:LwiVe3A0

【その後】


広場の喧騒を離れ、しんしんと静かに雪が降り積もる路地裏を二人は歩いていた

大きな足跡に少し遅れて、小さな足跡がまっさらな雪の上に作られていく


あの後、ヴェントは右方のフィアンマに関して自分の知る情報と対策、
そしてフィアンマがサーシャ・クロイツェフを狙っている事についてエリザリーナに話したのであった。

ちなみに現在、彼女等はエリザリーナから紹介された宿泊施設へ向かっている最中だ

なぜか一部屋しか用意されていないらしいが、その事に関しては深い意味は無い


サーシャ「匿ってくれるところを見つけられてひと安心しましたね」

ヴェント「……ハァ、平和ボケしてんじゃないよ」


サーシャの言葉を聞いてガックリと方を落としたヴェント


サーシャ「そんなダメ人間を見る様な目で見ないでください…」
621 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/17(金) 21:14:44.30 ID:LwiVe3A0

ヴェント「私がフィアンマの情報と対策を話した事によって、奴等はフィアンマに対する対抗手段を得た。
次にあの女は何をする?」

サーシャ「第ニの解答ですが、対抗手段を構築するための準備では?」

ヴェント「まあそうね。あの女は優秀な人間だ。けして高を括らない、それこそ数年に一人出るか否かの指導力を持つくらいのね」

ヴェント「つーことは、奴等はフィアンマに対して過剰なまでの対抗策を取るでしょうね」

サーシャ「つまり?」

ヴェント「フィアンマの狙いはお前だ。つまり、独立同盟国からお前を一端ロシアまで追い出して、
あくまでも国外で決着を付けようとするだろうな」


手を組んだとは言え、それはあくまでも表面上の話

ヴェントもエリザリーナも互いに利用し合うだけの関係に過ぎないし、
そのためなら囮に使う事すら厭わないだろう


サーシャ「何か酷い扱いですね…まあ無理もありませんが。
第二の質問ですが、それでフィアンマは倒せるのでしょうか?」

ヴェント「100%無理だろ」

サーシャ「えっ?」


ヴェントは迷う事無く断言した
622 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/17(金) 21:21:07.70 ID:LwiVe3A0

ヴェント「あの女は優秀だ。だけど、フィアンマはあの女の想像の遥か上を行く。
おそらく奴はもうすでにこの国に潜入してるわ」

サーシャ「!?」


サーシャはその言葉に驚いたが、良く見るとヴェントの表情も若干ながら緊張している様子が伺える

彼女はもうすでに警戒していたのだ。いつ、どのタイミングでフィアンマがサーシャを襲撃してくるかを。


それは明日か一時間後か、あるいはもう次の瞬間にはフィアンマが目の前に立っていてもおかしくはない。


ヴェント「そう、全部遅すぎるのよ…」

サーシャ「では、一体どうするのですか?このままでは…」

ヴェント「私が奴をぶっ[ピーーー]。それがベストね」


そうは言うが、それが非常に難しいという事は彼女自身も分かっている。

それができるなら、あの時イギリスでフィアンマを倒していただろう。



ヴェントは一つの可能性に賭けていた

サーシャ・クロイツェフと同じく、フィアンマが狙うもう一人の人物

かつて、学園都市で自分を撃ち負かしたあの少年だ。


おそらく、時間的に間に合えば彼は確実にエリザリーナと対面する事になるだろう。
サーシャと同じく、彼は交渉材料になるからだ。

これは、彼がここにやってくると言う事を前提にした話

戦力的にはあくまでも賭けであって、希望というにはあまりにも拙すぎる

しかし、いずれにせよあの右手が唯一の可能性である事に変りは無かった……
623 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/17(金) 21:24:31.65 ID:LwiVe3A0

【オマケ】

「ふぅ、意外と浴槽は綺麗だったわ。流石に一番高い部屋なだけあるわね」

サーシャ「……」

「……何だよ?おい?何で“家に帰ったら知らない人が寛いでた”みたいな顔してんのよ」

サーシャ「あの…第一の質問ですが、あなたは誰ですか?」

ヴェント「ハァ?私に決まってんだろ」

サーシャ「……」

ヴェント「だからその沈黙はやめろ!」

サーシャ「第一の解答ですが、ピアス外して化粧落としたら随分と印象が変りますね」

ヴェント「悪かったな不細工で」

サーシャ「第二の解答ですが、むしろ中々の美人だと思うのですが。意外と童顔なんですね」

ヴェント「黙りなさい」

サーシャ「第三の解答ですが、金髪青眼で美白でツリ目気味の美少女というのは中々ウケが良いと思いますよ。
ツンデレキャラみたいで」

ヴェント「なんのウケだよ。下らねぇ事言ってんじゃないっつーの!」


コンコン


「夜分に失礼しますが、エリザリーナ様からの伝言です」

ヴェント「ああ、今行くよ」


ガチャッ




軍人「誰だ貴様はッ!!」

ヴェント「だから私だっつってんだろおおお!!!!」

624 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/17(金) 21:25:34.01 ID:LwiVe3A0
ここで区切ります

ヴェントさんははたして何歳なのでしょうか?
625 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/17(金) 21:49:05.48 ID:sD5NBcDO
乙! 右席会議はここの>>1だったかww
ヴェントは顔から年齢を推測しにくいからなあ……
とりあえず入浴サーシャちゃんマジ天使
626 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/17(金) 22:48:28.92 ID:uQkpWjco
乙。
ここまではヴェントの思惑通り進んでる感じだが、問題はこっからだよなぁ。

さて、サーシャとヴェントは同じ部屋で寝るのか。ワクワクしてきたな。
627 :1 [sage]:2010/09/19(日) 18:51:10.08 ID:ND1AOxs0
投下します

ちょいと長くなりますよ
628 :1 [sage]:2010/09/19(日) 18:52:50.99 ID:ND1AOxs0

猫を飼っている人なら経験があると思うが、冬になると布団の中に猫が入ってくる事がある
それはとても微笑ましくて和むものである。


では、自分のベッドに女の子が入って来た場合はどうだろうか?


男性であればそれはとても嬉しいイベントだろう

だが、不幸な事に彼女は同性である


ヴェント「……」


真夜中の事であった

ふと目を覚ましたら、何やら自分のベッドの中に生温かい物体が潜り込んでいたのだ

とりあえず手探りでそれに触れてみた

すると何やら「う〜ん…」という呻き声がきこえてきたのであった


バサッ


ヴェントは上体を起こし、勢いよく掛け布団を捲った


サーシャ「……寒い」


すると、そこには猫というか胎児の様に体を折り曲げ、丸くなって寝ている少女が居た
629 :1 [sage]:2010/09/19(日) 18:55:22.61 ID:ND1AOxs0

ヴェント「……」


ヴェントは一瞬、サーシャの首根っこを掴んで窓から放り投げてやろうかと考えた

だが、さすがに彼女もそこまで鬼畜ではない


ヴェントはため息をつきながら、掛け布団を戻してやった

そして、本来はサーシャが寝ていたはずのもう一つのベッドに潜り込み、再び夢の世界へと旅立って行ったのであった






それから数時間後


カーテンの隙間から明るい光が零れているのに気が付き、ヴェントは体を起こした


ヴェント「くあぁ……」パキポキ


ベッドの上で思いっきり背伸びをすると、骨が擦れる音が響く

女王艦隊の連続使用に、完璧に調整の施されていない天罰術式の発動などなど、
並の魔術師だったら3日は疲労で寝込んでもおかしくはないくらいに力を使い過ぎてしまった

だが文句を垂れて体調が良くなるなら、栄養剤など販売したとこで商売上がったりだろう
630 :1 [sage]:2010/09/19(日) 18:57:04.23 ID:ND1AOxs0

ヴェントは眠たい目を擦り、長い金色の髪を軽く掻き分けた

彼女の前髪はサーシャよりも長く、フードを取って髪を降ろすと、両目が長い髪で隠れてしまうのだ。
だから、普段は前髪を右端に寄せて、左目だけが出る様な感じにしている。イメージで言うと鬼太郎だ。


それにしても寒い

室内とは言え、早朝の纏わりつく様な寒さがヴェントの肌を這って来る

ヴェントははだけたYシャツの襟元を軽く直した



ヴェント「さてと…まずは」


ヴェントは自分が寝ていたベッドの布団の中に手を突っ込んだ

すると、中からズルリと何かが引きずり出される。サーシャだ…


ヴェント「おい、起きやがれこのマヌケ」ぺチぺチ

サーシャ「うーん…」


サーシャの頬を軽く叩いて起こすヴェント

そして、朦朧としながら眠そうに目を擦るサーシャを、自分と向かい合う様な形でベッドの上に座らせた
631 :1 [sage]:2010/09/19(日) 18:58:31.87 ID:ND1AOxs0

ヴェント「お前、昨日私のベッドの中に潜り込んできたわよね」

サーシャ「ん……」

ヴェント「まあ起こすのもかわいそうだし?仕方ないから私はお前の使っていたベッドに移動して寝たわけだ」

サーシャ「……zzz」(低血圧)

ヴェント「なのに、何でその移動した先にまた潜り込んでんのよお前は!」

サーシャ「だいいちの…かいと…私はぬくもりを求める旅人…」

ヴェント「意味分かんねぇっつーの!さっさと目を覚ませ!」

サーシャ「寒っ!」ぎゅっ!

ヴェント「抱きつくなバカ野郎!」


まるで寒さを思い出したかの様に身震いし、Yシャツを着たヴェントに抱きついたのであった


632 :1 [sage]:2010/09/19(日) 18:59:29.03 ID:ND1AOxs0


サーシャ「……」

ヴェント「……」


二人は広場を並んで歩いている

早朝から多くの人々があちらへこちらへと忙しそうに動いていた

活気があると言うよりは、慌ただしいと言う方がしっくり来る。これも戦争の影響なのだろうか?
ちなみに二人とも視認障害を起こす術式を掛けられているため、一般人には彼女らを視認することはできない

すでにロシア成教の魔術師がこの街に潜入している可能性があるため、用心するに越したことは無いのだ


サーシャ「……」

ヴェント「……」


並んで歩くが会話は全くない

非常に気まずい雰囲気だ


サーシャ「あの…」

ヴェント「……」

サーシャ「第一の質問ですが、怒ってますか?」

ヴェント「別に。機嫌はよくないけど」

サーシャ「怒ってるじゃないですか…」
633 :1 [sage]:2010/09/19(日) 19:00:43.38 ID:ND1AOxs0

じばらく歩き続けた後、急にヴェントは足を止めた


ヴェント「ここでお別れよ」

サーシャ「えっ?」

ヴェント「何?」

サーシャ「すみません、謝りますから見捨てないでください。ここで捨てられたら、私はどうすれば良いのか…」

ヴェント「はぁ?ったく、朝っぱらから何回ボケれば気が済むのよ」

サーシャ「?」

ヴェント「ご指名だ。お前は一人であの女のとこに行け」

サーシャ「第一の質問ですが、私一人で、ですか?」

ヴェント「ああ、どうやら私はお邪魔らしい。ま、悪い様にはされないだろうから安心しな」

サーシャ「第二の質問ですが、ヴェントはどうするのですか?」

ヴェント「私はやる事がある」

サーシャ「そうですか……まさかこのまま私を置いてどこかへ」

ヴェント「だからんな事しねぇっての!夕方になったら迎えに来るから安心しな」

サーシャ「絶対ですよ?」

ヴェント「分かったからさっさと行け」

……

サーシャの後ろ姿を見送るヴェント


ヴェント「全く、ガキかっての……いや、ガキか。やれやれ…」


呆れながら軽くため息を吐いた後、ヴェントは路地裏へと消えて行った
634 :1 [sage]:2010/09/19(日) 19:01:57.03 ID:ND1AOxs0

ガチャ


サーシャ「失礼します…」


扉を開けると、まず乱雑に並べられたスチール製のデスクと、同じく乱雑に散らばった大量の資料が目に入る

こんなに散らかっていては、どこにどの資料があるか分からなくなるのでは?と些細な疑問が浮かぶ

そして、そんな散らかった司令室の中で、異様な存在感を放つ一人の女性

分厚いコートを羽織っているが、恐らく中はかなり痩せているだろう

顔立ちは非常に整っていて美人だと思うのだが、目のあたりが落ちくぼんでいる。

ストレスを伴う危険なダイエットをするとこうなるのだろうか?と思ってみたりもした。
まあ、それくらいに彼女の仕事は大変だと言う事なのだろうが



エリザリーナ「御労足感謝するわ。彼女は?」

サーシャ「第一の解答ですが、ここには来ません」

エリザリーナ「そう」
635 :1 [sage]:2010/09/19(日) 19:03:20.76 ID:ND1AOxs0

サーシャ「第一の質問ですが、用件は何でしょうか?」

エリザリーナ「その前にコーヒーはいかがかしら?わざわざ来ていただいたのに、
何も用意しないのはさすがに失礼でしょう?」

サーシャ「どうぞお構いなく」


とは言うが、エリザリーナは立ち上がり、ミルから既に抽出されたコーヒーをカップに注ぎ、サーシャに手渡した


サーシャ「ありがとうございます…」


それを両手で受け取るサーシャ


エリザリーナ「お砂糖とミルクは?」

サーシャ「両方いただきます」

エリザリーナ「くすっ、はいどうぞ」


サーシャは砂糖とミルクを受け取ると、それを大量にコーヒーに注いだ

もはや黄朽葉色と言うよりは、ミルクだけを注いだ白に近いかもしれない。
カップが浅かったら零れていただろう。

むしろ最初からホットミルクを勧めた方が良かったかもしれない


エリザリーナ「ふふっ…」


そんなサーシャの様子を見て、エリザリーナは少し顔を綻ばせた

あの右方のフィアンマが狙う重要人物

まだ中学生くらいの子供だが、元殲滅白書のプロの魔道士だ

だが、それでもやはり子供は子供という事なんだろうと思い、
エリザリーナは張り詰めていた心が少しだけ和らぐような感覚を覚えた
636 :1 [sage]:2010/09/19(日) 19:04:24.19 ID:ND1AOxs0

サーシャ「それで、再度質問しますが、用件とは?」

エリザリーナ「……人は誰しも守らなければならないものがある。それは財産であったり名誉であったり、
あるいは家族、友人、恋人であったりと、まあそれは千差万別なんでしょうね」

サーシャ「……」

エリザリーナ「なんて、回りくどい言い方をする必要は無いかしら?私はこの国の人々を守らなければならない。
そのための手段を選ぶ前提として、国民が誰一人として犠牲にならないと言う事が望ましいの」

サーシャ「第一の解答ですが、フィアンマとの交戦を避ける必要があると言う事ですね」

エリザリーナ「国民全員を守りながらフィアンマと戦うというのは、どうシュミレートしても勝てる見込みが無かったわ」

サーシャ「第二の質問ですが、それでも好き勝手にやらせるというわけでは無いのですよね?」

エリザリーナ「……ええ。我々は、国民の命を守りつつ、フィアンマを撃破する事も考えてる。つまり…」

サーシャ「私を一端外に追い出すと言う事ですね」

エリザリーナ「……気付いていたのね」


どうやら、ヴェントの読みは当たっていた様だ
637 :1 [sage]:2010/09/19(日) 19:05:53.66 ID:ND1AOxs0

心なしか、エリザリーナは少し申し訳なさそうな、悲しそうな表情をしている様に見えた


サーシャ「第二の解答ですが、気にしないでください。守りたいもののためにそれを行うと言うのなら、
私は咎めたりしません。それに保護してもらっている身ですから、
私に協力できる事があるのなら、喜んで引き受けさせていただきます」

エリザリーナ「ごめんなさい…あなたには感謝してもしきれないわ…」

エリザリーナ「でも安心して。外に逃げるのは、あなた一人ではないから」

サーシャ「どういう事ですか?」

エリザリーナ「フィアンマが狙っているもう一人の人物。昨日ヴェントが話していた
“幻想殺し“の少年がこの独立同盟国に入国したという情報が入って来たわ」

サーシャ「!?」


咄嗟に一人の少年の顔が浮かんで来た

キャーリサとの戦いで、カーテナを粉々に打ち砕いた

そして、フィアンマとの戦いで、あの巨大な右手の攻撃を打ち消した

ついでに押し倒されて胸を揉まれた

上条当麻がここに?
638 :1 [sage]:2010/09/19(日) 19:06:56.35 ID:ND1AOxs0

エリザリーナ「あなたは上条という少年と面識があるみたいね。そして、
彼もフィアンマを追っている。でも、彼にはマクロ的な情報はあまり無いはずよ」

エリザリーナ「だとしたら、情報を求めるために動く彼らは、放っておいてもいずれここに来るかもしれない。
でも今は急を要する事態だから、ちょっと乱暴な手段になるかもしれないけど、見つけ次第ここに連行させる様に指示を出したわ」

サーシャ「……彼に何をするつもりですか?」

エリザリーナ「あくまでもここに来て、フィアンマとの戦いに協力してもらうだけ。彼とは利害上対立する事は無いわ」

サーシャ「……」

エリザリーナ「もう質問は良いかしら?」

サーシャ「はい」

エリザリーナ「そう。じゃあこれで話は終わりよ。どうする?使ってない部屋があるから、そこで休んでいっても良いわよ?」


サーシャは一瞬迷ったが、ヴェントが迎えに来るまでは暫く時間がある

自分の立場を考えたら、あまり無暗に動き回らない方が良いだろう


サーシャ「第一の解答ですが、そうさせてもらいます」
639 :1 [sage]:2010/09/19(日) 19:08:44.30 ID:ND1AOxs0

サーシャ「……」


サーシャが案内された部屋は本当に簡素なものだった

コンクリートの壁に覆われていて、窓の無い部屋

あるのはスチールデスクとパイプ椅子がそれぞれ一つずつ

休んでいけとは言われたものの、ここは簡易的に作られた軍事施設だ
柔らかいソファーとか、そういう贅沢品があるわけは無い


サーシャ「……第一の解答ですが、まるで取り調べを受けている様な気分になります…」


……



サーシャ「……」バタリ


グデ―っと机に突っ伏したサーシャ


静かというよりも無音に近い静寂

以前もこの様な状況があったのだが、サーシャはこの静寂が本当に苦手だ

何か本の様なものでもあれば気を紛らわせる事ができるのだが、生憎とここにあるのは、異様な拘束衣に包まれた自分の身一つ

こういう状況だと、今まで蓋をしていたものを無理矢理こじ開けて考えを巡らせてしまう。

それは、時として行動の妨げになる様な不安な事も思い出し、メランコリーな気分にさせられてしまう事もある…
640 :1 [sage]:2010/09/19(日) 19:10:24.65 ID:ND1AOxs0

そう言えば、イギリス清教のみんなは今頃どうしているだろうか?

たまたま耳にした情報によると、イギリスはフランスと交戦状態にあるとの事

みな無事でいてくれると良いのだが…


それと、もう一つ気になる事がある。というか、それが一番の本命とも言えるのだが。

右方のフィアンマ

なぜ彼が自分を狙っているのか?
おそらく自分が“天使を身に降ろした”という事に関係があるのだろう

右方はミカエル(神の如き者)の位置

フィアンマの性質はミカエルである

そして、オルソラの推測によると、自分の器もミカエルと同じ性質を持っているらしい


あの時、突然自分を襲った胸の圧迫感

もしかすると、この性質になにか関係があるのだろうか?

そもそも、フィアンマの目的とは一体何なのだろうか?

今のところ、はっきりしている事はただ一つ

仮に自分がフィアンマと対峙する事になったら、確実に負けるだろうと言う事だ。
641 :1 [sage]:2010/09/19(日) 19:11:48.39 ID:ND1AOxs0

あの心臓を鷲掴みにされる様な圧迫感の正体を探った末にフィアンマの姿を見てしまった時、
やめておけばよかったと後悔した

理屈ではない、生存本能のレベルで、アレには勝てないとすぐに理解できた

フィアンマの右肩から生える、巨大な右腕

同じミカエルの性質を持つ者だから理解できたのかもしれないが、あれはただ歪で大きい腕という単純なものではない

破壊力がどうとかそういう問題でもなく、もはや勝負に勝てるかどうかの問題ですらない様な気がする。
例えるなら、捕食者と被食者の違いに似ているかもしれない。

キャーリサもカーテナの力により限定的にミカエルの力を振るっていて、
それは神裂の様な聖人クラスの人間が数人で束になって戦っても敵わなかった程の圧倒的な強さだった

だが、それすらもあの右腕の前には酷く稚拙に感じられてしまう
642 :1 [sage]:2010/09/19(日) 19:14:24.77 ID:ND1AOxs0

サーシャ「……ハァ」


悩んだ所でどうなるわけでも無いのだが…

これからどうしようか……

そう言えば、今日はヴェントに無理矢理起こされたので、いつもよりも早く目が覚めてしまった

まだ彼女は怒っているのだろうか?

まあ、良いか…

コーヒーを飲んだにも関わらず、カフェインはあまり効果を発揮していないみたいだ

目蓋が重い……




















サーシャ「カナミン…だと…zzz」


643 :1 [sage]:2010/09/19(日) 19:15:17.01 ID:ND1AOxs0











どれくらい寝ていたのだろうか?

夢と現実の間でふら付いている意識を捕まえようとしてみる……












ミ ツ ケ タ ゾ











サーシャ「!?」
644 :1 [sage]:2010/09/19(日) 19:16:54.67 ID:ND1AOxs0

まだ意識が朦朧としており、足もふら付く

だが、それでも自分の体はやらなければならない事が分かっているらしく、
ドアを蹴破り、一秒でも早くこの建物から離れようとしていた


その直後だ、とてつもない破壊音が鳴り響いたのは


まさかテロか?

いや違う、この心臓を鷲掴みされる様な圧迫感は……


なんとかサーシャは建物から脱出できた。

外はもうすっかり日が沈んでいる様な時間帯だった

一瞬、自分はどれだけ寝ていたのだろうか?と考えてみたが、広場に居る多くの人々が、
皆同じように驚いた顔をして自分が出て来た建物を見つめている事に気付き、瞬時に思考が切り変る


ヴェントが掛けてくれた術式はまだ効果が続いているみたいだ

人ごみのなかに隠れれば、あの男から逃れる事ができるかも……






「見つけたぞ、サーシャ・クロイツェフ」



サーシャ「ッ…!」


どうやら手遅れみたいだ
645 :1 [sage]:2010/09/19(日) 19:17:58.12 ID:ND1AOxs0

追い詰められた被食者は、食われないために抵抗する

サーシャは多くの人ゴミの間を縫う様に駆け抜け、フィアンマに向かって突進した


直後に、フィアンマは指で何かを弾く


ドスッ

サーシャ「がッ…!?」


何だ?何が当たった?

どんな攻撃を受けた?

腹部に強烈な衝撃を受け、何も理解できないままサーシャの体は真後ろに弾き飛ばされた


上条「サーシャ!?」

サーシャ「!?…上条…とうま…」


どうやら彼はすでにここに来ていたみたいだ
646 :1 [sage]:2010/09/19(日) 19:19:17.98 ID:ND1AOxs0

フィアンマ「ほう、まだ気を失わないとは。どうやらあの話は本当みたいだな」

サーシャ「くッ!」


サーシャは体勢を立て直す

そして、背中からバサッと氷の翼が飛び出てきた

ガブリエルの水翼

大天使の力とリンクしている時だけ、彼女は聖人クラスの爆発的な力を使う事ができる
のだ

今度は低高度から滑空しながら、矢の様な早さでフィアンマに襲いかかる


フィアンマ「その力は本来お前が使うべきものではない…」


フィアンマは軽く右手を振った


サーシャ「ッ…!?」


まるで鬱陶しい虫でも払う様に、見えない力でサーシャの体を地面に叩きつけた

右手を振るう意外の動作は何もしていない

だが今の一撃で、背中の翼がバラバラに砕け散ってしまった


フィアンマ「器は所詮、器と言う事だ」


地面に這いつくばるサーシャの元へ、ゆっくりとフィアンマが近づいてくる…

対抗するための手段が思い浮かばない

たった数秒、2回の攻撃で、近づく事すらできずに撃墜されてしまった
647 :1 [sage]:2010/09/19(日) 19:20:54.74 ID:ND1AOxs0

サーシャ「あなたの……目的は……」

フィアンマ「ん?そうだな、俺様がしようとしている事は、簡単に言えば…」


そこでフィアンマの言葉が途切れた

フィアンマは突然、自分の後方に向かって右手を真っ直ぐに伸ばした

すると、見えない空気の塊がフィアンマの右手に当たって四方八方に分散され、残った風の残骸がフィアンマの髪を軽く揺らす


フィアンマ「懐かしい顔だ」


フィアンマの背後

型は中世の女性の服装だが、それを派手な黄色に染め、現代風にド派手なパンクファッションの様なスタイルで着飾る女性

顔は大量のピアスを付け、目元にも派手な化粧をしている

そして、その女の肩には有刺鉄線で巻かれた巨大なハンマーが担がれていた
648 :1 [sage]:2010/09/19(日) 19:21:45.91 ID:ND1AOxs0

サーシャ「ヴェン…ト…?」


ヴェント「別にそこらのガキやローマ成教のシスターに肩入れする義理はないんだけどさ。
いい加減、アンタがローマ正教を引っ掻きまわすの、見てらんないのよねぇ」

フィアンマ「得意の天罰は使えんと報告を受けているが?」

ヴェント「その程度で終わるとでも思ってるワケ?」


突然、二人の周りを風が渦巻いた
まるで、空気がこの二人から逃げようとする様に


人とそれを超えた者との境界を別つように


ローマ正教20億人のトップ

その手で世界を動かしてきた、次元の違う魔術師の戦いが始まった
649 :1 [sage]:2010/09/19(日) 19:23:08.08 ID:ND1AOxs0
フィアンマ「どうやら、ある程度まで術式の復元はできている様だな」

フィアンマ「だが、天罰術式を復元するまでには至っていないみたいだ。
まあ、仮に復元できていたとしても、その方法論では俺様は倒せないぞ?」

ヴェント「もともと敵意や憎悪そのものの考え方が歪みまくってるアンタにあんなものを使おうとは思わないわよ」

フィアンマ「ならばどうする?」

ヴェント「そうだな…アンタのその右腕の力、現状では完璧に振るえないんだったな確か」


フィアンマの巨大な右腕は、圧倒的な力を持っている。だが、その力は強過ぎるが故に、
体は人間であるフィアンマには使いこなす事ができず、空中分解してしまうのだ。
それを解決するために、インデックス、上条当麻、サーシャの三人を欲しているわけだが……


フィアンマ「……」

ヴェント「その右腕、使用制限があるはずよ?」


フィアンマは上条、レッサー、エリザリーナ、そしてサーシャを退けるために力を行使した
だが、不完全であるがゆえに、莫大過ぎる力を連続して自由に使う事はできない


つまり、力が無くなれば、フィアンマはただの人同然と言う事になる



だが、なぜかフィアンマの口は緩やかなカーブを描き、余裕の表情を見せていた
650 :1 [sage]:2010/09/19(日) 19:24:33.71 ID:ND1AOxs0

フィアンマ「まさか」


フィアンマ「その程度で俺様との差を埋められるとでも?」


ヴェント「いいや」


ヴェント「面白いのはこれからよ?」


ゴバッ!!

フィアンマ「!?」


直後、フィアンマの体が真後ろに薙ぎ払われた


上条「何が…起きたんだ?……!?」

サーシャ「あれは……」


いきなりフィアンマの体が弾かれた事も驚いたが、さらに驚くべき事がもう一つ。

突然、地震が起きたかの様に雪の大地が揺れ、そして何かが大地から顔を覗かせた


サーシャはすぐにその正体に気が付いた

上条もヴェネチアでの戦いを思い出し、それを理解した
651 :1 [sage]:2010/09/19(日) 19:26:41.35 ID:ND1AOxs0

ヴェント「アドリア海でビア−ジオ・ブゾーニが“アドリア海の女王”と
それを護衛する“女王艦隊”を指揮していたのは知ってるかしら?」


フィアンマを薙ぎ払った一撃の正体は、女王艦隊から高速で放たれた透明な錨

ヴェントは囁く様に遠くのフィアンマに向かって話しかけた

どうやら、何か魔術的な力を使って声を届けているみたいだ


ヴェント「あの“聖霊十式”を実用レベルに再調整したのはこの私。“アドリア海の女王”全体の制御は不可能だけど、
大艦隊の一部だけなら、私にも操作するだけの親和性があるのよ」


ヴェントの舌からジャラリと長い鎖に繋がれたロザリオが飛び出て来た

氷の様に透明なロザリオだ


ヴェント「そうそう、もう一つ」

ヴェント「十字教じゃ海の嵐を静め、船の安全を守るエピソードが多い。神の子やら聖ニコラウスやらね。
本来、私が司る属性は風や空気だが、海の嵐は風と水の混合属性。このエピソードを介する事によって、
私は部分的に水への干渉も可能となる。……あんたの火一辺倒とは違う、複雑で巨大な効果も生み出せるのよ」


突如、フィアンマの体を吹き飛ばした氷の錨が爆発し、
無数の氷の刃と化してフィアンマの吹き飛ばされた場所を目掛けて降り注いだ

その数は、もはや隙間を見つけて逃れられるものではない

それはゾッとする様な光景、まるで鉄の処女の様な状態だ

フィアンマが氷の刃に串刺しにされている惨状か、或いはもはや原型すら留めずに無数の肉塊と化してる様なグロテスクな想像しかできない
652 :1 [sage]:2010/09/19(日) 19:28:04.70 ID:ND1AOxs0
9月30日の学園都市で、自分は何ておぞましい怪物と戦っていたのだろう

その日にヴェントを打ち負かしたはずの上条は、改めて神の右席の桁外れな力を前に身震いした

ヴェント「私を[ピーーー]ことだけを考えて戦術を組み立てていれば、多少は結果が変ったかもしれない。けど、その空中分解してしまった右腕では、今の一撃は防げないでしょうね」


嘲る様に、舌を出しながらそう言う


ヴェント「無駄弾を撃ち過ぎなのよマヌケ……っても、もう聞こえちゃいないか」






「そうか?俺様は、お前が思っているよりも物持ちは良い方だぞ?」



ヴェント「!?」


突然、爆発的な閃光がフィアンマの倒れた場所から放たれた


フィアンマ「どうやらマヌケはお前の方らしいな…」


ゆっくりとこちらへ向かってくるフィアンマ

彼に放たれた無数の氷の刃は、さらに何億倍、何兆倍もの氷の粉となって、
まるでダイヤモンドダストの様に煌めきながらその体に降り注ぐ

フィアンマの体には傷一つ無く、空中分解しているはずの巨大な右腕は、異様な存在感を放ちながらその形を保っていた
653 :1 [sage]:2010/09/19(日) 19:32:32.46 ID:ND1AOxs0

ヴェント「どういうこと……その腕はッ!?」

フィアンマ「空中分解そのものは避けられないみたいだが、状態を固定させる事には成功した」


フィアンマの右手に何かが握られていた

過剰なまでのダイヤルが付けられた錠前。インデックスの制御装置だ。

10万3000冊の魔道書から、好きな時に好きな知識を引き出せるイギリス清教の機密霊装


フィアンマ「有体に言えば、もはや今の俺様に制限など存在しない」



ヴェント「ッ…!!」


ヴェントは女王艦隊から連続して氷の錨を放った

まるで虫一匹を[ピーーー]ために、重火器を持った軍隊に一斉射撃を指示する様に

だが……


フィアンマ「破壊力はいらない」


フィアンマは軽く右腕を振るう

それだけで全ての錨が粉々に打ち砕かれた

それだけではない。ヴェントの女王艦隊も、周りの建物や景色さえも全てが根こそぎ破壊されていく

不思議な事に上条やサーシャ達、そして野次馬が居る所だけは攻撃の余波の影響を受けなかったのだが、
その周囲の物は全てが消えてしまったかの様に破壊し尽くされた
654 :1 [sage]:2010/09/19(日) 19:36:33.03 ID:ND1AOxs0
フィアンマ「触れれば終わるのだから、相手を壊すための努力は必要無い」

ヴェント「チッ!」


ヴェントは慌ててハンマーを構え直し、ぶつぶつと早口で何かを呟く

おそらくまだ切り札があるのだろう。その術式を使用するために、高速で必要な詠唱を行う


フィアンマ「速度はいらない」

ヴェント「なッ!!?」

フィアンマ「振れば終わるのだから、当てるための努力は必要無い」


数キロ先に居たフィアンマが、次の瞬間にはヴェントの真正面に立っていた

そして何も分からないままヴェントの体が吹き飛ばされる


ヴェント「ごッ…ッ!?」


だがそれだけでは終わらない

吹き飛ばされるヴェントの体に合わせて、尾を引くように漂う銀色の鎖

フィアンマはそれを軽く掴んで引っ張った。吹き飛ばされる本体と反対方向にだ。
そんな事をしたらどうなるだろう?


ブチリ…


ヴェントの舌から嫌な音が聞こえた

無理矢理舌から鎖が引き千切られたのだ


ヴェント「がッ、ああああああああああああああああッ!!!!!!」


数秒遅れてヴェントの絶叫が聞こえてくる


フィアンマ「舌を丸ごと引っこ抜いた分けじゃない。少し裂けたくらいで大げさな奴だ」


口を押さえ、雪の上でのたうち回るヴェントを、まるで下らない物でも見るかのようにそう呟いた
655 :1 [sage]:2010/09/19(日) 19:38:18.13 ID:ND1AOxs0

フィアンマは引き千切った鎖を軽く宙に投げると、肩から飛び出ている巨大な右腕を軽く振るい、ロザリオを粉々に砕いた


ヴェント「ごぶッ…な…にが…?」


口を押さえ、よろよろと立ち上がるヴェント

指と指の隙間から零れる血が雪の上に落ち、赤い浸みを作る


フィアンマ「まさかこの腕が俺様の力の本質だと思っていたのか?
だとしたらそれは勉強不足だ。この腕はいわば偶像の様なものに過ぎない」

フィアンマ「とはいえ、理屈は簡単だ。俺様の力の本質は、右腕に備わっている力そのものなのだからな。
例えば、神の子が人を癒すとき、または十字教の儀式を行う時には右手を使う。
聖書が書かれたのも右手と、まあ色々だ」


右は特別な位置である

フィアンマの属性であるミカエルも、神と対等である事を示す右に座している。
それが神の右席の由来であり、彼らが目指すところであるのだが。

十字教だけではない。例えば日本にも、“左遷“や、”右に出る者はいない“という言葉がある。
またインドでも、対極である左手は不浄の手とされている。

右が特別な物、或いは神聖なものであるという事は、例外を除けば人類にとっては普遍的なものなのかもしれない
656 :1 [sage]:2010/09/19(日) 19:40:32.60 ID:ND1AOxs0

フィアンマ「俺様の力はそれだけ多くの十字教的超常現象を操れると言う事だ。
あとは言わなくても分かるだろ?それほど無能でもあるまい」


それがサーシャが本能で感じた、絶対に勝てないと悟った恐怖の正体であった

相手の破壊力を上回る破壊力を叩きつけてやればいい

相手が速いなら、それを超える速さで砕けば良い

不思議な力を使うなら、その不思議な力ごとまとめて薙ぎ払えば良い

相手がどうしようも無いくらいに強いなら、それを上回る強さで倒せば良い

それができるのがフィアンマの“聖なる右”の本質


物語で追い詰められた勇者に奇跡が起きて魔王を倒す

その奇跡を自在に操れるのが“聖なる右”の力


ヴェント「馬鹿な……その右腕は……」

フィアンマ「そうだよ。不完全だ。本来はお見せできる様なものじゃない。
ただな、それはお前が得意げに言えた様な事でもないんだぞ?神の右席は、
いや、この世界全体さえも、そんなあやふやな状態になりつつあるのだから」

ヴェント「……」

フィアンマ「エンゼルフォールの時、不完全な状態で現れた天使は、ミーシャと名乗ったそうだ」


フィアンマの顔に影が差し、彼が初めて悲しそうな、物憂げな表情を見せた
657 :1 [sage]:2010/09/19(日) 19:42:16.79 ID:ND1AOxs0

フィアンマ「おかしいとは思わないか?ミーシャはミカエルの別称だ。なぜロシア名でガブリエリではなくミーシャなのだ?」

フィアンマ「大天使の名は神から与えられた役割を指す。その名を偽ると言う事が、どれだけ重大な事かを理解できるか?」


フィアンマは訴える様に問いかけた


フィアンマ「左方のテッラは“土”と“緑”と“ラファエル(神の薬)”を司っている。
前方のお前は“風”と“黄色”と“ウリエル(神の火)”を担っているとされている。」

フィアンマ「だがこれはおかしい。本来はウリエルが土、ラファエルが風を担っているはずなのだ」


その言葉を聞いて、ヴェントは心臓が止まりそうな程の驚きを覚えた

なぜ今まで気が付かなかったのか?

まるで、雪は冷たい、火は熱い、自分は人間、そんな言葉にする必要が無い程の当たり前な事を思い出したかのような気分だ


だがそれ以上に、自分の術式の柱としていた物がひっくり返された事の方が遥かにショックが大きかった


フィアンマ「そうだ…誰も気付かない…俺様もこの右腕がなぜ不完全なのかを考えた時に初めて気付かされた」

フィアンマ「誰も気付かない、だがそれでも世界は何事も無く回り続けている。魔術も発動できてしまう。
分かったか?これがどれだけ危機的な事か?誰かがこれを正さなければならないんだ」
658 :1 [sage]:2010/09/19(日) 19:48:30.10 ID:ND1AOxs0

ヴェント「御使堕し(エンゼルフォール)がそこまで影響していたとでも…?」

フィアンマ「何も分かっちゃいないじゃないかマヌケが。四大属性の歪みがあったからこそ、
あんなふざけた術が発動してしまう隙が生まれたのだ」

フィアンマ「サーシャ・クロイツェフ。お前はもう気付いてるはずだ。どういう経緯で理解したのかは知らんが、
でなければお前がガブリエルの力とリンクして、その一端を行使できる事など有り得ないからな」

サーシャ「……」


正確に言えば、最初に気付いたのはオルソラに指摘された時だ

この世界の属性は歪んでいる。それを知っているからこそ、歪んだ公式と異世界の法則を無理矢理繋ぎ合わせ、
天使の力を納める器という類稀なる才能を使ってサーシャは力を行使する事ができた。

歯車が歪んだまま動き続けたら、いつかどこかでそのボロが出てくる

それが御使堕しだとしたら、人類が世界の歪みに気付くために起きたボロなのだとしたら…

きっと、聡明なオルソラもそれで気付いたのかもしれない。サーシャの素情を調べると言う事をきっかけしにて…



フィアンマ「これで理解できたか?ならもう良いな。……振り返る必要は…」


フィアンマは右腕を振り上げ、それを真後ろに振るった


上条「あガッ!!……ッ!」

フィアンマ「ない」


背後から襲いかかった上条を薙ぎ払うフィアンマ

強烈な一撃を受け、全身に満遍なく痛みが駆け巡る

相手が強いなら、それを上回る強さで倒せば良い

ヴェントの女王艦隊を砕くほどに力は必要無い。右手以外はただの人間である少年を叩きのめせる程度の力で良い

もしもこの力が完成してしまったら、理論上彼を倒せる者は存在しないと言う事になるだろう
659 :1 [sage]:2010/09/19(日) 19:51:02.66 ID:ND1AOxs0

上条は唇の端から垂れる血を拭い、再び拳を握り直した


フィアンマ「……愉快な奴だ」

フィアンマ「今までどれだけの人間のために立ち上がって来た?どれだけの人間のために戦ってきた?
どれだけの事件を解決するためにその拳を振るってきた?本当に愉快な奴だよお前は」

フィアンマ「だが一番愉快なのは、多くの人間に触発されて危地へと赴いて行きながら、
結局全ての報酬や成果はお前自身の中に蓄積されている所だな」

上条「何が言いたい?」

フィアンマ「お前は自分の行動が本当に正しい物だと確信しているのか?」

フィアンマ「お前が憤っている俺様の行動と、お前自身が今まで行ってきた事は、根本的なところでは何も変わらない。
俺様は地震の問題を解決するために右腕を振るい、お前は自身の周囲で起こる事件 を解決するために右腕を振るう。
他人が必死に積み上げてきた努力を一撃で粉々に砕くような やり方でな。手段に差はないぞ。
そして俺様には確信がある……自らの行動が、絶対的な善 の到来を意味するものであるとな」

上条「……そのために、インデックスがさんざん苦しめられても放っておけって言うのか」


上条は一秒も迷わずに告げる。


上条「ふざけるんじゃねぇよ。ローマ正教の人たちを自分の都合で利用して、フランスからの圧迫を 強めて
イギリスのクーデターを後押しして、そんなものが絶対的な善だって?頭がどうにか なってんじゃねぇのか」

フィアンマ「なら、それを止めるお前は善だとでも?」

上条「善かどうかなんて問題じゃない」

フィアンマ「……、」
660 :1 [sage]:2010/09/19(日) 19:53:31.83 ID:ND1AOxs0

上条「インデックスが苦しんでいるんだ。お前が始めたクソくだらない戦争のせいで、
どれだけの 人が泣いていると思ってやがる。立ち上がりたいと思うことは、そんなにおかしい事かよ。
目を覚ますこともできない女の子のために戦おうと思うことは、そんなに悪い事かよ。
少なくとも、大勢の人を苦しめて喜んでいるような野郎に、いちいち文句を言われる筋合いはねえ」

フィアンマ「愉快だな」


フィアンマは笑いながら、右腕を上条の方に差し出した。
そこにあるのは、小さな錠前

インデックスの遠隔制御霊装だ

顔色の変わる上条に対し、フィアンマはニヤニヤと頬を緩めながらこう告げた。


フィアンマ「その台詞。お前が嘘をつき続けるシスターの前でも言えるのか?」


ピクリ、と上条の肩が僅かに動いた


フィアンマ「この遠隔制御装置を使うと、たまにあの女の意識とリンクする事がある」

上条(まさか…)

フィアンマ「その事に納得し、消化できたのはお前だけだ。だが、あの女はどう思ってるかな?
お前の自己満足で庇い続けられてきたあの女は、今までどんな気持ちでいただろうか?」

上条(気付いて…)

フィアンマ「まあ貴様の欺瞞に対してジャッジを下すのはあの女自身だが、
はたしてどんな結末になる事やら……本当にあの女にとって救いになっているのか否か、
ジャッジが下るのが楽しみだな」

上条「……」


戦意は失われ、同時に上条の顔から血の気も失せる


フィアンマ「変らないんだよ。お前も、俺様も…」


追い撃ちを掛ける様にフィアンマは反論できない事実をもう一度突きつけた
661 :1 [sage]:2010/09/19(日) 19:55:08.81 ID:ND1AOxs0

フィアンマ「さて」


軽く一息つくと、フィアンマは第三の腕をカメレオンの舌の様に動かし、サーシャの体を掴んだ


サーシャ「!?」

上条「サーシャ!?」


ふと我に返った上条はフィアンマに殴りかかろうとするが、突然フィアンマの周囲から爆風が生じる


フィアンマ「天使の媒体を確実に封じて輸送したいところだが、そうするとお前の右手が邪魔になる。
今日の所はお前を諦めるとしようか」

上条「ッ!?」


右手で爆風を防ぐのに必死で、フィアンマの元へ近づく事ができない



フィアンマ「簡単に死ぬなよ?その右手には用があるからな」



上条「フィアンマッ!!!」


衝撃を消し終わり、やっとのことでフィアンマに近付けると思った時には、もうフィアンマの姿はそこにはなかった




“本当にあの女にとって救いになっているのか否か、ジャッジが下るのが楽しみだな”




フィアンマのその言葉だけが、頭の中で狂ったオーディオの様に何度も何度も再生されていた
662 :1 :2010/09/19(日) 19:55:40.99 ID:ND1AOxs0
ここで区切ります
663 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/19(日) 19:57:52.79 ID:L6JgVsDO
乙! ぬくもりを求める旅人マジ天使
やっぱフィアンマは飛び抜けてるな
664 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/19(日) 20:51:57.18 ID:MaO9KiQo
>>659
>俺様は地震の問題を解決するために右腕を振る
なんだ平和的じゃないかと思ったのは俺だけでいい
665 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/19(日) 23:26:07.34 ID:6.uzasAO
原作を補完してくれる良いSSだ
666 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:01:29.28 ID:9CZt.is0
投下します
667 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:02:58.55 ID:9CZt.is0

そこは冷たい牢獄でもなく、薄暗い取調室でもなかった

目を覚ましたら、まず飛び込んできたのは豪奢な飾りの天井だ

慌てて上体を起こすと、自分はベッドに寝かされていたという事に気が付いた。
自分の体には不釣り合いな大きなベッドだ。

部屋を見渡すと、まるでどこぞの高級ホテルのスイートルームの様に飾られていた


サーシャ(ここは…?確か私は、フィアンマにさらわれたはずじゃ……?)


『お前は大事な素材だ。ぞんざいな扱いをするわけにはいかないだろう?』

サーシャ「!?」


サーシャはベッドの上から転がる様に脱出し、すぐさま体勢を立て直した


『おいおい、たかが人形に何を警戒している?』


そして気が付いた

声の主。それは、自分が寝ていたベッドの枕元に置かれていた、小麦粉を練って作られた人形から発せられていたものだと
668 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:04:57.89 ID:9CZt.is0

『ま、起きたのならちょうどいい。そのまま部屋を出ろ』


サーシャ「……」


『何をしている?さっさと部屋を出ないなら、少し面倒だが…』


突然、枕元にあった小麦粉の人形が宙に浮かびあがった

それだけではない、ベッドの中から、カーテンの陰から、壺の中から、様々な場所から大量の同じ小麦粉の人形が現れる


『グズグズしてると痛い目に合うぞ?』


ボン!と小麦粉の人形の内の一つが爆発した


サーシャ「!?」


それを合図に大量の人形がサーシャを目掛けて飛んで来た

サーシャは扉を見つけると慌てて駆け寄り、勢いよく扉を開け、バタンと勢いよく扉を閉めた
すると、べチべチと扉の反対側で人形がぶつかる音が聞こえてくる

だが、爆発音は最初の人形の時以来は一度も聞こえなかった

もしかしたら、あれはハッタリだったのか?


フィアンマ「そうだ、それで良い」

サーシャ「…!?フィアンマ!」
669 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:08:55.97 ID:9CZt.is0

フィアンマ「ついて来い」

サーシャ「何をする気ですか……」

フィアンマ「ここで気絶させた方が楽だが、それはお前も嫌だろ?」

フィアンマ「俺様は譲歩してやってんだ。それが理解できてるなら大人しくついて来いと言っている」

サーシャ「……」


フィアンマはどこかへと足を進め始めた

サーシャもその後について行く


フィアンマは護衛を付けておらず、無防備にもこちらに背を向けたまま歩いている

それは彼の自信の現れなのだろうか?

サーシャは試しにナイフ程度の大きさの氷の刃を出してみた


フィアンマ「俺様で遊ぶのはやめてくれないか?」

サーシャ「……」


フィアンマは足を止めず、振り向く事もせずに呆れながらそう言った

どうやら抵抗は無駄みたいだと諦め、サーシャの手から氷の刃が消えていく
670 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:10:26.83 ID:9CZt.is0

フィアンマ「……」

サーシャ「……」


サーシャ「フィアンマ、あなたの目的は何なのですか?」

フィアンマ「それはお前を使う目的か?それとも俺様の最終的な目的とかいうヤツか?」

サーシャ「第一の解答ですが、できれば両方聞きたいのですが」

フィアンマ「ははっ、俺様に負けないくらいの欲張りだな」

サーシャ「……」

フィアンマ「お前は、この世界の構造についてどう思う?」

サーシャ「……質問の意味がよく分からないのですが?」

フィアンマ「そうか。なら、例えば善悪の二元論で考えるとしよう。お前は善とは何で、悪とは何だと考える?」

サーシャ「……」

サーシャ「第二の解答ですが、それは簡単には割り切れないものだと思います」

フィアンマ「そうだな。だからこそ必要悪という言葉もあるくらいだ」
671 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:13:15.39 ID:9CZt.is0

フィアンマ「ならば、この世界の構造は善で満たされているのか、それとも
必要悪と言うものが歪なバランスを維持しているのか、はたまた
世界は悪魔が子羊を食い物にして成り立っているのか……」

サーシャ「……」

フィアンマ「答えはその全てだろう。善でもあり悪でもあり、あるいはグレーでもある。
60億人もの人間の思惑を一つの尺度で操作すると言う事は不可能だからな」

フィアンマ「俺様は善悪の尺度を作ろうと思う程傲慢な人間ではない。
だが、尺度は無くとも、この世界には、いや人類の普遍的な価値観には
善と悪と言うものが存在するのは明らかだろう。そして多くの人間は、
悪よりも善を美徳として受け入れる。だからお偉いさん方は悪を行うために
善という張りぼてを立てるんだろ?大義名分が必要だからな」

サーシャ「……つまり、あなたは何がしたいのですか?」

フィアンマ「お前も十字教徒なら分かるはずだ。十字教の本来の目的とは何だ?」

サーシャ「“救い”ですか」

フィアンマ「その通りだ。では救いとは何だ?救済は十字教徒を信ずる者だけに与えられるのか?」
672 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:16:12.69 ID:9CZt.is0

フィアンマ「ならば、十字教徒で無い者に救済は無い、いわゆる聖絶を支持するのか?
あるいは罪を犯した者でも十字教徒ならば神の国へ行けるのか?」

サーシャ「第三の解答ですが、罪を悔いるものには救いがあるべきでは?」

フィアンマ「悔いる…ね。懺悔など、ただの自己満足だとは思わないか?」

サーシャ「第四の解答ですが、それは十字教徒らしからぬ発言ですね」

フィアンマ「十字教にも様々な考え方がある。だからお前達ロシア成教や
イギリス清教、ギリシア正教、東方教会、ネストリウス、プロテスタントetcなどの分派ができたんだろ?
まあ俺様はカトリックの身だから、確かにお前の言う通りなのかもしれんが」

フィアンマ「話が逸れたが、悔いるとは何だ?」

サーシャ「それは…」

フィアンマ「神の前で罪を告白したところで、そいつに酷い目に遭わされた奴は、
そいつを許すことはできるのか?快楽殺人者に殺された奴は、そいつをどう許せばいい?」

サーシャ「……」

フィアンマ「悔いるだけでは終わらないのさ。そこには恨みという連鎖的な憎悪がある。
まあ十字教では“許す”という事も救われるための基本ではあるが、それで本当にこの世界から悪は消えるのか?」
673 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:18:01.45 ID:9CZt.is0

フィアンマ「人の世はそう簡単には行かない。かつてルシフェルが光を与えてから
幾年もの時代を得て倫理的な価値観を築いてきた。だが、それでもこの世界は善と悪、
それが歪なバランスを保ちながら動いている。だからこそ、少し歯車を狂わせれば
戦争などという人的な災害が起きてしまう」

サーシャ「戦争を起こした超本人がふざけた事を言ってくれますね」

フィアンマ「だが、火薬が無ければ弾は発射されない。俺様はトリガ―を引いただけに過ぎないのだぞ?」

フィアンマ「もともとこの世界はそうできている。結局最後に残るのは武力による衝突だ。
殴り合い、奪い合い、殺し合う。二千年経ってもそれだけは変らないみたいだな」

サーシャ「仮にそうだとして、結局あなたは何がしたいのですか?」

フィアンマ「言っただろ?“救い”だとな」

サーシャ「第一の解答ですが、どうやら私には理解できないみたいです」

フィアンマ「シンプルに考えたら良い。そして、もう一つの質問に対する解答だが」


いつの間にか、目の前には大きな扉があった

フィアンマがその前に立つと、触れる事無く扉は勝手に開いていく


サーシャ「これは……!?」
674 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:18:54.99 ID:9CZt.is0

そこは広大な儀式場だった

全体的に目が痛くなるほどに真っ赤に塗られた部屋

前方には緑の円盤、後方には青い杯、左方には黄色の短剣がある

それぞれ属性を表す象徴武器(シンボリックウェポン)

だが、それらの三つの色がそこにあると言う事自体が違和感を感じてしまうほどに、全体的に赤い印象を強く受ける


そして、どういう規則性があるのかは分からないが、数十本の細い柱が並んでいた

表面はガラスの様に透明なもので、中には黒い液体が入った柱と、白い液体に満たされたものの二種類の柱を確認できる

白と黒の一対は、儀式における“門”の象徴である

この門を通して儀式場にオカルト的な力を呼びこむわけであるが、その柱が何十本もあるという事は、
そのオカルト的な力を複雑な経路を通らせるためなのだろう

何をする気かは分からないが、儀式場自体はどうやら既存の知識で理解できるものである様だ。ある事柄を除けば…
675 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:21:02.07 ID:9CZt.is0

フィアンマ「ベツレヘムの星を浮翌揚させるぞ。奴らに天使を見せてやろう」


ベツレヘムの星?天使?

何を言っている……?


いつのまにかフィアンマの手に握られていた赤い杖

赤い杖は火の象徴武器。だが、その先端に付いているものは、ダイヤルの沢山付いた錠前の様な物。
普通は磁石などを使うのだが、一体どんな意味があるのだろうか?

そして、儀式場を取り囲む様に並ぶ、赤いローブを着た者達

あれは、ロシア成教の魔術師だろう。

おそらく100人くらいだろうか?いや、もっと居そうだ

フィアンマは、一体何をしようとしている…?


フィアンマ「お前を使う目的をまだ話していなかったな?サーシャ・クロイツェフ」


フィアンマ「不安定ではあるが、かつて発動された御使堕しの派生術式を行う。
そのために天使を降ろした素材のお前を使わせてもらう」

サーシャ「まさか……」

フィアンマ「そうだ。俺様も、いやこの世界の人類全てが未だかつてその目で見た事は無いだろうな」


フィアンマ「ガブリエルをここに召喚しよう」
676 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:22:36.86 ID:9CZt.is0

サーシャ「正気ですか……?あなたは自分が何をしようとしてるのか分かっているのですか!?」

フィアンマ「たかが大天使を一人降ろすだけだろう?大げさな奴だな」

サーシャ「一つ間違えたら世界が滅ぶかもしれないのですよ……?」

フィアンマ「あまり俺様を低く値踏みするなよ?」

サーシャ「ッ!!」


止めなければならない、なんとしてでも…!

サーシャは一対の水翼を展開させ、一瞬で氷の剣を取り出し、フィアンマに斬りかかった


だが…


バキン!


サーシャ「……!?」

フィアンマ「そんなに驚く事でもないだろ?ガブリエルは火の浸食を受けているのだからな」


サーシャの氷の剣は打ち砕かれた

フィアンマが手にする同じ氷の剣で
677 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:24:50.21 ID:9CZt.is0

そして呆気にとられているサーシャの体を、フィアンマの右腕が掴み、宙に持ち上げる


フィアンマ「この右腕が不完全である事の代償として、俺様は限定的にガブリエルの力を使えるわけだが」

フィアンマ「そもそも一つの属性は、あくまでも全ての属性における先端であるというのが本来の在り方だ。
だから、例えば火の属性なら火を操る事しかできないという見方は間違っている。
正確には、火の力が最も強く現出するという考えのほうが正しい」

サーシャ「ぐッ……!」


ギリギリとフィアンマの巨大な右腕にサーシャの小さな体が強く締め付けられる


フィアンマ「とは言え、俺様の火の属性は、四大元素の歪みのせいで水の力に強く浸食している。
つまり、火がその先端でありながら、同時に水も先端に立ってしまっているのだ。
いくらガブリエルの力が使えるとは言え、俺様の本来の力がこのザマでは割に合わないな」


フィアンマ「だから」


フィアンマ「正さなければならない。この歪みを…」


サーシャ「……」


サーシャの手足が力無く垂れ下がる

彼女の意識は、深い闇の中へと沈んでしまっていた

これから起こる悲劇を止める事ができずに……
678 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:27:43.17 ID:9CZt.is0















帰る 位置 正しい 座 天界 元の あるべき 場所



        全て 破壊…





やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおおおおおッッッ!!!!







サーシャ「はっ……!?」



本当に聞こえたのかもしれないし、はたまたそれは夢だったのかもしれない

だが、自分の目を覚まさせたあの声は、間違いなくあの少年のものだ

心の底から放たれた、恐怖と悲痛の入り混じった叫び

なんとなく、あの少年が近くに居る様な気がする…
679 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:30:51.70 ID:9CZt.is0

そうだ、大天使(ガブリエル)!

とっさに体を起こし、姿勢を低くして周囲を伺う

すると、何人かの魔術師の姿が確認できた


しかし、どうやら誰一人として自分が目が覚めた事に気付いていない様だ


チャンスは今しかない

戦うなんて馬鹿な真似はしない

サーシャは彼らに気付かれぬように、そっと儀式場から脱出した










フィアンマ「誰一人気付かんとは、不抜けた連中だ。ま、もうあの女にもお前達にも用は無いから構わんが…」

『フィアンマ様、ニコライ司教からの通信です』

フィアンマ「ああ、こちらへ繋げ(用が無くなったのは、この救い様のない司教もだな…)」



フィアンマ「さて、出撃だ、大天使ガブリエル(神の力)。いや、ミーシャ・クロイツェフの方が正しいか?」

フィアンマ「例の羊皮紙を回収しろ。邪魔する者は全て吹き飛ばせ。弱者と言えども容赦をする理由にはならないからな。
遠慮無く、全力で取り返して来い」
680 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:33:03.26 ID:9CZt.is0

果てしなく澄み渡る水色の空は、一瞬にして全てが黒く染められ、漆黒の夜空に変った

星が一つも無い夜空

普段は美しく輝く月さえも、この漆黒の空の上では不気味に感じられてしまうだろう


太陽と月と地球の位置関係すらその手で歪めてしまう天体制御(アストロハインド)



けして人間には解せない様な仕組みの大魔術


そして、それを行使するのは……


星の無い漆黒の夜空で、唯一同じような輝きを見せる一つの青い光


ソレは翼を振るうと、上空を覆っていた無人戦闘機がまとめて薙ぎ払われ、鉄屑の雨が大地へ降り注ぐ

敵と認識したものを見つけては、それを軽々と破壊していく


戦車や駆動鎧の密集地を見つけると、そこへ急降下し、ただ乱雑に、背中から飛び出る様に生えた数十本もの水翼を振るう

ただそれだけ。

それだけで科学の粋を結集した殺戮兵器が何の役にも立たないゴミに変る
681 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:34:34.07 ID:9CZt.is0

『うおおおおおおお!!』

『距離を取れ!砲撃するにしても近過ぎる!!』

『馬鹿野郎!そんな暇があると思ってんのか!?』


駆動鎧から大型の散弾銃やランチャーが放たれ、戦車が近距離から砲撃を行う

だが、避ける必要は無い

数十本もの水翼が音速で振られ、砲弾や弾丸を、戦車や駆動鎧ごとまとめて粉々にする

同時に大地が削られ、地殻津波を起こし、周りの兵器を飲み込んでいく

おそらくソレは本体に直撃してもダメージがあるかどうかは分からないし、もしかしたら本人にも
攻撃を防いでるという意識は無く、単にソレが攻撃のために振るう翼の威力が強すぎて当たらないというだけなのかもしれない。

戦場に送り込むレベルに限定した既存の学園都市の科学力では、恐らく傷一つ付けられないのだろう


大天使を[ピーーー]武器など、一体この戦場の誰が保持していると言うのだ?

聖書に出てくる様な本当の意味で神様に近い者と戦うすべなど、誰が知っているというのだろうか?
682 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:35:43.85 ID:9CZt.is0

サーシャはそんな作り笑いすらできそうにないファンタジーをモノレールからガラス越しに眺めていた

まず驚いたのが、自分の居る場所がやたら高度の高い場所だったという事だ

どうやら都市一つが浮いているみたいな感じなのだと思うが、一体地上から何千メートル離れているのだろうか?
しかも今この瞬間にもこの巨大な浮翌遊物体は上昇し続けているみたいだ

これがベツレヘムの星なのだろうか?

まあこのくらいならフィアンマのする事だからまだ許容できる。いや、本当はしてはいけないのだろうが。

そして、今自分が乗っているモノレールなのだが、この魔術的な空間になぜこんな近代的なインフラがあるのだろうか?

疑問に思ったが、まあこれもフィアンマなら仕方ない。あのフィアンマでも移動手段を確保しないと
面倒なくらいにこの“ベツレヘムの星”は広いのだろう
683 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:37:20.23 ID:9CZt.is0

本題であるが、一番驚いたのが、あの青い飛翔体だ

まるで玩具の様に学園都市の兵器を弄び、蹂躙するあの怪物

まさか、あれがガブリエル(神の力)なのか?

十字教徒である身としては、本物の天使を見られるという事以上に感動できる事などこの世にはないのだろう

神話と現実が重なる瞬間は、誰もが心を踊らされるものである


だが、違う。あのガブリエルから感じられるモノは、そんな類のものではない

例えるなら、神聖な場所だからけして立ち入っては行けないと、
注連縄で硬く閉ざされた禁断の場所に足を踏み入れてしまった様な気分だ。


神への畏敬と戦慄が、混じり合う様に心の中で渦巻く


受胎告知に見られる様な宗教画とは違うガブリエルの姿

確かに一般的に神学で語られている様な女性的な姿をしている

だが、その体は全身が青い布で覆われていた。頭の先からつま先まで、そして顔の輪郭の細部に至るまで、
まるで皮膚と同じ様に青い布がピッタリと張り付いている様だ。
684 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:38:06.65 ID:9CZt.is0
大きさは本体が2mくらいだろうか?

だが、その本体から生える暗い深海を固めた様な水翼は、100メートル級のものもあれば、
数十センチ程度だろうと思われるものまで様々である。

それが数十本、一斉に音速の様に振るわれ、台地が裂け、戦車や駆動鎧が蟻の様に散らされていく

ガブリエルの水翼は、一本一翼で山を根こそぎ吹き飛ばし、地を削って谷を作ると言われているが、
“百聞は一見に如かず”という言葉がこれ程パズルのピースの様に当てはまる光景も無いだろう

なんとしてでも止めなくてはならない

実際にその身に宿し、そしてリンクする事でその力の一端を使っていた身だからこそ、
大天使の恐ろしさは誰よりも理解しているつもりだ

一刻も早く、上条当麻との合流を果たす事がサーシャにとっての最優先事項であった
685 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:40:40.54 ID:9CZt.is0

意図して作られたのか、それともこのベツレヘムの星自体にそう言う空間が作られる必要があってできたものなのか?

サーシャは今、礼拝堂らしき場所に居た

だが礼拝堂とは言っても長椅子やその配置が似ているというだけで、
一面にパイプオルガンの様な複雑な機構が広がっているという点に関しては
“ここは礼拝堂です”と言われると首を傾げたくなるかもしれない。

モノレールを降りて進んだ先でこの様な場所に辿り着いたわけだが、ベツレヘムの星の進行状況から考察すると、
儀式を行っていた場所はベツレヘムの星の最右部で、移動してきたこの場所は恐らく星の後方という事になるのだろう。

それにしても、これからどうするか?

先程から自分もガブリエルの様に水翼を出そうとしているが、上手くいかないのだ

ガブリエルとのリンクそのものが途切れたわけではない。今でもあの大天使がどこで何をやっているのか?
おおまかではあるが、何となく伝わってくる。

そして、あの大天使が“天界、帰る、正しい位置”と断片的なワードを発しているのも聞こえていた

おそらく、本物が力を行使している間は、自分は力を借りる事ができないとか、そういうルールでもあるのだろう

まあ仮に力を使えた所で、その程度の力では大天使を倒す事などできないのは百も承知だが

あの大天使は、自分が居た儀式場と何らかの関係があるはず

術式の行程は分からないが、そんなめんどくさい物をまとめてぶち壊せるあの右手があれば……………!?

サーシャ(まずい、誰か来ました!?)
686 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:42:05.76 ID:9CZt.is0

突然、礼拝堂らしき部屋の扉が開かれた音が聞こえ、サーシャは咄嗟に長椅子の間に身を隠した


自分を探しに来たロシア成教の魔術師だろうか?

非常にマズイ。天使の力を使う事ができない今、まともに戦ったら怪我では済まないかもしれない。

となると、ここを乗り切るためには奇襲攻撃しかないだろう


扉を開け、この部屋に入って来た者は、両サイドに並べられた長椅子に挟まれた真ん中の道をゆっくりと歩きながらこちらに近づいてくる…



今だ!

サーシャその人物が自分の近くを通る直前に、真横から脇腹に体当たりを食らわせた


?「……!?」


そして、二人して床へと叩きつけられた

もつれ合う様にして床を転がる両者。この場合、マウントポジションを取れた方に勝負の主導権が渡る。

相手もそれを意識してるのか、自分が上に立とうとしている。しかし、先程の脇腹に当てた一撃は、
確実に相手に対して効果があったはず。体勢としてはこちらが有利だ。


だが


ドカッ!

サーシャ「ぐッ…!?」
687 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:44:03.69 ID:9CZt.is0

転がり合う最中、サーシャは思いっきり長椅子にぶつかってしまった

激痛が走り、動きを止めたその瞬間、覆いかぶさる様にしてその者はサーシャの腹の上に乗り上げた

奇襲は失敗だ。どうやら自分の命運はここで尽きたらしい……



「……サーシャ?」


ふと自分の名を呼ばれ、サーシャは自分の上に跨る男の顔をよくよく確認してみた


サーシャ「上条……当麻ですか……!?」



上条「無事だったのか!」


上条は確かめる様にサーシャの肩に触れ、そして強く掴んだ


サーシャ「上条当麻ッ!」ギュツ!


サーシャはそれを振り払い、上条に強く抱きついた


上条「えっ……?」

サーシャ「上条当麻、あなたを探していました!あなたに会いたかったのです!(幻想殺し的な意味で)」

上条「ええっ!いや、あのそれって……ま、まあとにかく落ちつこうぜ!な?」


上条はしどろもどろになりながらもサーシャの体を引きはがした
688 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:46:22.37 ID:9CZt.is0

上条「サーシャ、フィアンマはどこに居る!?」

サーシャ「第一の解答ですが、私にもわかりません。最後に見かけたのは、儀式が始まる前だったと思います」

上条「その儀式は、ミーシャ・クロイツェフを呼び出すためのか?」

サーシャ「第二の解答ですが、おそらくはそうだと思います」

サーシャ「……ですが、私が目を覚ました時にはすでに儀式が終わっていました。なんとか隙を見て脱走する事はできましたが」

上条「儀式場を見て何か気付いた事は無かったのか?例えばこう大天使的な何かを」

サーシャ「第三の解答ですが、儀式は十字教の様式でした。四大属性のうち、主に火を集中的に運用する奇妙な作り……。
本来、攻撃手段としての極端な使用法を別にすると、儀式では四大属性が四つワンセット揃って初めて効果が得られるとされています。
その、フィアンマと呼ばれる男の儀式場は、あまりにも一色で統一されていて……」

上条「……」

上条(なんかよく分からん)


上条はふと自分の右手を見た

あらゆる異能の力を打ち消す幻想殺し。フィアンマが欲している希少な右手だ。

今回、あのミーシャ・クロイツェフは御使堕しの時とは違い、サーシャの体の中に憑依しているのではなく、
大天使そのものが外部に露出しているのだ

だが、フィアンマはミーシャを呼び出すためにサーシャを必要とした

という事は、ミーシャの存在を安定させるためにサーシャが必要なのであり、
ミーシャとサーシャは幽体離脱の様に繋がっているのではないか?

と上条は考えた
689 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:48:07.17 ID:9CZt.is0

だとしたら、この右手の力を使えば、ミーシャに何らかのダメージを与える事ができるかもしれない


上条(こうしている間にも、ミーシャは無差別な破壊を繰り返してるんだよな……軍はもちろん、周りの民間人まで……)

上条(だったら、試せる事は全部試すしかない!今ここで動けるのは俺達しか居ないんだ!!)

サーシャ「補足説明しますと、儀式場の場所は、要塞の進行方向から見ると、このベツレヘムの星の最右部の端。
おそらく、これも火を象徴する天使のミカエル(神の如き者)の記号を利用しているのでしょう。
かなり徹底したやり方ですが、一方で、今戦場を舞っている天使はガブリエル(神の力)。
つまり、水を意味するところに強い違和感を覚えていまひゃわんっっっ!?」


突然奇妙の声を上げたサーシャ

何の前触れも無く、いきなり上条の右手が自分の頬に触れたのが原因だ


サーシャ「あの…////」

上条(ほっぺたは違うか。じゃあ肩か?腕、お腹、太股……)


ペタペタとサーシャの体を触って行く上条


サーシャ「ひゃうっ…!?」

上条(ここも違うか。まさかインデックスの時みたいに口の中とかか?一応背中も試して……
つーか、相変わらず無茶苦茶な衣装だなおい…)


上条当麻に悪意は無い

ただミーシャとサーシャの繋がりを絶とうと試みているだけである

だけであるのだが…


サーシャ(ぶちっ)

バガン!

上条「へぶッ!?」


ブチ切れたサーシャのバールが上条のこめかみにクリーンヒットした
690 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:49:12.32 ID:9CZt.is0

すかさずサーシャは上条をバールで殴りまくる


サーシャ「あなたはッ!(ドスッ!)この非常事態にッ(ドガッ!)一体何をしているのですかッ!(ゴスッ!)」

上条「なっ!ぎゃぶっ!?俺はっ!ぐはっ!ミーシャをがふっ!」


床に転がりびくびくと足を震わせながら朦朧とする意識で応える

これ以上殴り続けるとせっかく合流できた幻想殺しを本当に殺してしまう可能性があるので、
サーシャは切りの良いところでバールをしまった

サーシャ「はぁ…続けますよ?補足説明ですが、フィアンマの儀式場の道具自体は高価な物でしたが、
使っている霊装そのものはポピュラーなものでした。あれだけで大天使を制御できるとはとても思えません」

上条「そ、そうか…」

サーシャ「ただ、一つだけ見た事の無い霊装がありました。通常、火の象徴武器(シンボリックウェポン)は、
赤く塗った杖の先端に棒磁石等を埋め込むのですが、フィアンマの手に握られていた象徴武器の先端には、
見た事の無い霊装がありました。まるで錠前の様な…」


錠前と聞いて思い当たる節は、正直あり過ぎる

その錠前の正体は、おそらくインデックスの遠隔制御霊装

まさか、遠距離から他者を操る霊装の効果を利用して、ミーシャを操っているとでもいうのだろうか……?
691 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:51:20.43 ID:9CZt.is0

ミーシャ・クロイツェフによる一方的な破壊は今も続いていた

キャーリサとか傾国の女が頑張っているが、その辺の事については
このSSはサーシャ視点が中心となるので詳しくは語らない。
頑張れキャーリサ!

高度3000メートルを余裕で超える高さまで“ベツレヘムの星”は上昇し、
それでもまださらに上空へ上がり続けているのだが、ミーシャの攻撃による衝撃はこのベツレヘムの星まで響いていた


サーシャ「第一の解答ですが、ベツレヘムの星は元々、預言者が目撃した天体です。
この星の輝きによって、預言者は神の子の誕生を確信しました」

上条「人工的な方法で浮かびつつある星、か。とてつもなく不幸な感じだ。衛星軌道上まで飛んでいったり、
巨大隕石みたいに氷河期のお手伝いをしない様に祈るしかないな」


ベツレヘムの星の広さは半径40キロほど

フィアンマはおそらく、このベツレヘムの星の中でも特別な場所だと思われる最右部に居る可能性が高い

だが、とても平均的な高校生の体力で簡単に移動できる様な距離ではないだろう


上条「サーシャ、そもそもお前はどうやって最右部からここまで来たの?」

サーシャ「第二の解答ですが、ほら、あれを見て下さい」

上条「あれ?って……」


サーシャが指を差したその先に、モノレールらしき乗り物があった
692 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:52:36.95 ID:9CZt.is0

上条「……」

サーシャ「ツッコンだら負けです」

上条「でもよぉ、何でこんな遺跡みたいなとこにあんな近代的な乗り物が?」

サーシャ「フィアンマですから」

上条「そうか、フィアンマなら仕方ないな……って納得できるかぁ!」

サーシャ「第一の質問ですが、乗らないのですか?」

上条「乗るよ。乗りますよ。アイツをブッ倒せるなら、モノレールでも時速7000キロの旅客機でもなんでもな」


ぶつぶつと文句を言いながらも上条はモノレールに乗り込んだ

操縦方法は分からなかったが、どうやら場所を指定すると勝手にそこまで移動してくれるらしい。
モノレールというよりは、まるでエスカレーターの様である



サーシャは再び、最初のこのモノレールに乗った時と同じ様に、星一つない真っ暗な空をガラス越しに眺めた


サーシャ「ベツレヘムの星…」


ポツリとそう呟く


サーシャ「神の子の到来を告げる星……旧約聖書では、神の子は最終戦争の後に、
再び人類の前に姿を現し、神の国へと導くとされています」

上条「聖書の話はよく分かんねえけど、アイツを止めねぇと、このままじゃ本当に世界が壊れちまうかもしれねぇ…」
693 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:55:39.17 ID:9CZt.is0

下は分厚い雲だが、その切れ間からポツポツと赤い光が確認できる

おそらくは炎だ。争いが生み出す人を傷付けるための炎…


上条はギリッと僅かに奥歯を噛んだ


その時だった。地上の赤い輝きの中から、何か水蒸気の様な物が噴き出た。

直後に雲が流れて見えなくなったが、いきなりその分厚い雲が引き裂かれた

中から鈍く輝く、円筒状の物体が飛び出してくる


上条「地対空ミサイル……ッ!!」


1つ2つではない。50、100の光が夜の闇に風穴を開ける

おそらく起死回生の一手としてこのベツレヘムの星に放たれたのだろう
だが、そのうちの数発がこちらへ向かって飛んできているのだ

非常にマズイ。車両に当たれば木っ端微塵だろうし、車両に当たらなくとも
レールが破壊されてしまえばそのまま空中に放り出されてしまう


サーシャ「伏せてください!!」

上条「ッ……!!」


咄嗟に身を屈めた二人

同時にとてつもない爆発音が響き渡り、窓ガラスが粉々に砕け、熱風が車両の内側まで吹きぬけてくる
694 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:56:43.41 ID:9CZt.is0

だがおかしい。ミサイルが直撃したのなら、車両がまるごとアルミ缶の様に潰されて二人分の棺桶になっていただろう

ミサイルは直撃する事無く、撃ち落とされたのだ

だが、それは喜ぶべき事では無かった


上条は見てしまったのだ

この氷点下の車内で、呼吸が止まりそうな感覚を覚えた…


ミサイルを撃ち落とした正体

ミーシャ・クロイツェフが、上条とサーシャの乗るモノレールと速度を合わせ、並走していたのだ


立て続けに発射されて眼前で爆発するミサイルなど、もはや恐怖の対象としてはあまりにも矮小過ぎる

ミーシャ・クロイツェフはその全てを軽々と撃ち落としてしまう

天使は上条達を守ったわけではない。フィアンマとの協力関係において、ただベツレヘムの星を守ろうとしたに過ぎないのだ。
695 :1 [sage]:2010/09/22(水) 06:58:44.09 ID:9CZt.is0

間近で見る大天使

十字教徒であれば感動するのだろうが、無宗教の彼にとっては天使など、
自分が天界に帰るために父親を殺そうとした、しかもそのために世界中の人類全てを根絶やしにしようとした
おぞましい恐怖の対象でしかない

十字教徒であるサーシャは何を思っているのか?と上条は一瞬気になった

彼女も彼女で先程、上条と似た様な感想を抱いたのであるが

なにより、あんな恐ろしい者が自分の体に宿っていたのかという何とも表現しがたい気分にさせられたのであった

だが、そんな事を語り合っている暇など無かった




ミーシャ「…( ゚д゚) 」



ミーシャ「( ゚д゚ ) 」チラッ

上条「……(;^ω^)」



目が合ってしまった

実際には眼球と呼べる物など確認できないのだが、それでも背筋に嫌な感覚が走る
696 :1 [sage]:2010/09/22(水) 07:00:11.81 ID:9CZt.is0

ミーシャは一瞬、首を傾げる様な仕草をしたが、直後に背中の巨大な水翼を大きく弓の様にしならせた

ミーシャの目的は敵を排除する事。

上条やサーシャはフィアンマの目的に必要なのだが、ミーシャにとってはどうやらそんな事情など関係無い様だ

ミーシャは自分にとって天敵とも呼べるだろう“幻想殺し”を潰すために、無慈悲に翼を振るった


その直後



ガギィィィッ!!!



巨大な力と力がぶつかる音が響く



何が起きたのか理解できなかった


思わず自分が生きているという事を確認しようと、自分の頬や腕を触って感覚を確かめてしまった

目の前に見える光景が幻想ではないとしたら、あの凶悪な翼が振られたのにも関わらず、まだ生きているのだとしたら…


サーシャ「だ、第一の質問ですが、一体何がッ……!?」


サーシャが呻くような声を出す

大天使とまともにぶつかりあえる様な存在など、一体どこに居るというのだろうか?

だが、上条当麻は知っている。大天使に唯一対抗できそうな存在を
697 :1 [sage]:2010/09/22(水) 07:02:03.67 ID:9CZt.is0

9月30日

あの事件が起きた日に現れた、学園都市によって作られた人工の天使

AIM拡散力場の集合体

そして、インデックスと上条当麻の友人でもある彼女は、紫電の光を撒き散らし、
背中から数十の翼を生やし、ミーシャと正面から対峙する


上条「風斬…氷華…ッ?お前、どうしてここにっ!?」

風斬「……」


風斬は上条の言葉に反応し、こちらを向いた

あの時のヒューズ・カザキリとは違う、いつもの気弱そうな顔色を合わせた微笑みを見せた


そして、すぐに彼女はミーシャの方に向き直る

その顔は、今まで上条が見た事の無い様な、闘争心と覚悟に満ちていた…


ちょうどそこで上条とサーシャの乗ったモノレールはトンネルへ入ってしまったので、
その後、風斬とミーシャがどうなったのかは彼らには分からない

ただ一つ分かる事は、風斬が助けに来てくれたということ。


友達を助けたい。ただその一つの想いだけを闘争心に変えて


その想いは確かに上条に届いていた

この絶望をぶち壊すための希望として…
698 :1 [sage]:2010/09/22(水) 07:03:56.03 ID:9CZt.is0

風斬「……」


圧倒的な暴力を振るっていたミーシャと真正面から対峙し、睨みつける風斬

彼女の手には、AIMで形作られた紫電の剣が握られている


それを見たミーシャも、手の平を天にかざし、その上に巨大な氷の剣が形成されていく


ミーシャ「帰る。fr 位置。正しい。座。uj。天界。元のあるべき。qe 場所」


文章にならない言葉の羅列


ミーシャ「戻る。必要。作業 t。行う。フィアンマ。利用。利害。接点。y 計画。協力」


断片的な言葉しか理解できない

だが、そもそも理解する必要など無い。和解する事など無いのだから


風斬「……そのために、私の大切な『友達』を傷付けるというのであれば、私は持てる力の全てを使ってあなたを止めます!」



青い光と紫電の光が空中で衝突した



699 :1 [sage]:2010/09/22(水) 07:05:56.37 ID:9CZt.is0

フィアンマ「ほう、面白いなこれは…」


高度7000メートルに浮かぶベツレヘムの星の上で、フィアンマはこの戦いを見ていた

フィアンマの五感はミーシャの感覚と詳細にリンクしている

直接自分の目で確認しなくても、彼は戦果の全てを知ることができた


フィアンマ「あれは学園都市の人工天使か……そしてもう一人、ミーシャ・クロイツェフの攻撃を防いだ奴が居るみたいだ」


ミーシャの感覚を通して見るフィアンマの目には、白髪に赤い目が特徴的な少年の姿が映っていた


フィアンマ「学園都市の虎の子という奴か?どうやら、俺様の羊皮紙を持っていたのはアイツだったみたいだな」

フィアンマ「まあ良い。もう中身は確認できた。ここまで披露してくれたのだ、俺様も少しだけ
本気という奴を見せてやらねばならないみたいだ。少しだけな…」




フィアンマ「“一掃“を発動しろ、ミーシャ・クロイツェフ」




700 :1 [sage]:2010/09/22(水) 07:07:18.39 ID:9CZt.is0

夜空が瞬いた

それを確認する暇も無かった

半径二キロと設定された領域の中に、数千万の破壊の礫が降り注がれた


一方通行「ッッッ!!!」


考える暇など無い

破壊の嵐が一方通行を襲った

宙に投げられ、すべての感覚を失い、真っ白になり、ひたすら全身で破壊を受け入れる事しかできなかった


ドスッ!

一方通行「ご……ご……がッ!?」


地面に叩きつけられ、叫ぼうとした一方通行だが、喉に溜まった血液のせいで呼吸ができない

能力を駆使してなんとか血の塊を吐き出し、ようやく五感を取り戻す事に成功した


一方通行「クソッタレ……ッ!!一体何が……ッ!?」
701 :1 [sage]:2010/09/22(水) 07:08:16.20 ID:9CZt.is0

舞い上げられた雪の中で唯一異彩を放つ青い破壊の光


一方通行「ッ…!!ふざけやがって!!」


夜空に不気味な光が輝きを増す

おそらくあの一撃では終わらなのだろう

全てを破壊し尽くすまで、何発でも繰り返すつもりだ


一方通行(倒せるかどうかなんざ関係ねェ!叩き潰すための理由がありゃあ十分だ!!)


ドン!!という爆音が炸裂し、一方通行は真っ直ぐに青い光の怪物へと突っ込んでいく


ミーシャ「第二ko波。攻wager撃準備ws開始。『一掃』再ise投下までnvsp三十秒」


水の天使の無慈悲で無機質な声が繰り返された
702 :1 [sage]:2010/09/22(水) 07:09:38.70 ID:9CZt.is0
……大地だけでなく、空の果てまでも揺さぶる様な轟音とともに、一撃目の“一掃“が放たれた



フィアンマ「やりすぎだ」


フィアンマは“一掃“の成果に対し、つまらなそうに呟いた

範囲を指定した際、このベツレヘムの星もその範囲内に入ってしまっていた

ミーシャの一掃は、このベツレヘムの星よりもさらに上空で行われているので、必然的に被害を被る事になる


だが、フィアンは特に気にしてはいない様だ

ベツレヘムの星には自己修復機能があるから問題は無い

もう間もなく二発目が発動するだろうが、まあ好きにやらせとけば良いかというのが彼の率直な感想であった


フィアンマ「こんなものか」


退屈そうにフィアンマは呟く


フィアンマ「こんなものか、俺様の敵は。大天使が出てくればどの様に戦況が傾くか、シミュレートできなかったとは言わせんぞ」


学園都市の人工天使と最強の超能力者が共闘しても、ミーシャ・クロイツェフを止める事はできなかった

おそらく、このまま一掃を何回か繰り返せば、呆気なく全てが終わるのだろう
703 :1 [sage]:2010/09/22(水) 07:10:56.83 ID:9CZt.is0

フィアンマ「この程度で終わるのなら」


フィアンマの指先が杖を撫でる


フィアンマ「誰も俺様を止めんと言うのなら」


インデックスの制御霊装を組み込み、大天使の操縦へ応用した霊装を



フィアンマ「俺様の『一掃』は世界を覆うぞ?」



アックア『そうはさせん』

フィアンマ「……久しいな、アックア」


突然、フィアンマの中心から声が広がった


フィアンマ「まだ神の右席の一角を名乗るつもりはあるか?それとも、今はただの傭兵稼業に逆戻りかな?」

アックア『いずれでも構わん。貴様の暴虐を止められる立場であればな』

フィアンマ「どうやって?」

フィアンマ「世界60億人が戦乱の中で刃を交えている。この状況で、あくまでも個に過ぎんお前はどうやって皆を救う?」

アックア『……』
704 :1 [sage]:2010/09/22(水) 07:12:32.07 ID:9CZt.is0

フィアンマ「お前はむしろ、そうした戦乱の象徴だよ。暴力性を帯びた善の肯定。
各地で人知れず危機を打破し、救われた民衆へその種を撒いてきたお前は素晴らしい駒だった。
おかげで皆はお前に憧れているぞ?暴力によって解決するお前のやり方をな」


そして役目を終えた駒に様は無い


フィアンマ「この戦争がなぜ起きたのか?分からぬお前でもあるまい。引き金を引いたのは俺様だ。
しかし、火薬も無しに弾丸は発射されん。この機構の意味を理解していると判断した上で、お前に尋ねよう。
どうやって皆を救う、と」

アックア『だからといって、大天使を民衆に振りかざす理由になるか』

フィアンマ「止めるのか?結局は武力による解決だな。茶番にもならん展開だが、しかしどうする。
学園都市製の天使に加勢した所で勝敗は決している。
九月三十日、ヴェント回収のために街へもぐりこんだお前は知っているはずだ」

フィアンマ「学園都市の天使の存在は、各界へ歪みを生み、魔術の制御に強い影響を及ぼす。
ヴェントが必要以上の苦戦を強いられたのはそのためだ。アレとお前が共闘することはできんよ。
無理に武力を行使すれば、互いに競合を起こして暴走し合うのが関の山だ」

アックア『……』

フィアンマ「そして、ここが連戦を仕掛けた所で、ミーシャ・クロイツェフの総量はお前達を上回る。
曲がりなりにも本物の大天使だぞ?正面からの闘いで勝てるのは俺様ぐらいのものだろう」

フィアンマ「お前にはそこそこの力はあるが、それはあくまでも駒としての強さだ。
お前が今更どう刃を振るおうが、どう武力を行使しようが、大天使の動きは止められん。
無駄な抵抗を与える権利くらいは与えてやっても良いが、指をくわえて眺めているのが得策さ」
705 :1 [sage]:2010/09/22(水) 07:14:02.82 ID:9CZt.is0

アックア『そうか』


フィアンマは笑い声を聞いた

アックアの失笑だ


アックア『ならば、武力を使わぬ方法とやらを提示してやろう』


ドッ!とフィアンマは体の内側に衝撃を覚えた

五感をリンクさせて伝わるミーシャのテレズマが、その瞬間に一気に薄らいだのを確かに感じたのだ


フィアンマ「何を……した?いや……これは…」

アックア『忘れたのであるか?私が後方の青(ガブリエル)を司っているという事を』

フィアンマ「お前、まさか……その体の中にッ!」

アックア『十字教の術式においてテレズマの封入と解放など基本の基本。
そして、私の肉体そのものがガブリエルとリンクする最大の媒体として機能する。
仮に私が水属性のテレズマを徹底的に吸い上げた場合、
その源であるガブリエルの総量がどうなるかなど言うまでも無いだろう』
706 :1 [sage]:2010/09/22(水) 07:15:36.93 ID:9CZt.is0
フィアンマ「正気か…?」

アックア『不可能なわけではあるまい。現に貴様が利用したロシア成教の修道女とて
それができたからこそ貴様の目に留まったのだろうからな』

フィアンマ「馬鹿が、あれは元々の素養と許容量があってこそ、御使堕しの時も自然に流れただけなのだ!
誰にでもできる事ではない!仮にサーシャ・クロイツェフを複製した所で、同じ許容量が得られるとは思えん!
それほどの才でなければ、俺様が利用しようなどと思えるわけがないだろ!!」

アックア『そう言う事を言っているのではない。他人の手で出来る事なら、この私にもできる。
それだけの、単純な事実を述べているだけである』

フィアンマ「……そうか、腐っても神の右席と言う事か……」

フィアンマ「ならばやってみるがいい」

アックア『やってみるとも』

フィアンマ「だが分かっているのか?お前のその無謀な挑戦は、お前と言う戦力を確実に削ぐものだと言う事を。
お前の行いはただの自滅だよ…」
707 :1 [sage]:2010/09/22(水) 07:18:00.45 ID:9CZt.is0

アックアは巨大な大剣を地面に半ばまで突き刺し、自分の体を支えた


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!」


歪んだ青いオーラがアックアの体に纏わりつく

周囲にゆらゆらと漂う青い波

それが一気にアックアの体を目掛けて飛び込んでいく


アックアの許容量を遥かに超えるテレズマが、アックアの体に食らいつく様に取り込まれていく。
一瞬でも気を抜けば、体は内側から爆発するだろう。


血管が破裂し、神経がズタズタになり、体中から血が吹き出てくるが、アックアはそれでも倒れない

強過ぎるテレズマは、自分の体と心を内側から砕いていく

血管や神経だけではない。彼の力の根源たる“聖人”としての力と“神の右席”としての力も両方とも崩れ去って行く

それは、自分がただの人に成り下がるという事を意味している

それでも彼はけして止まる事はなかった


自分が水のテレズマを取り込めば、それだけガブリエルの力が弱体化する

本来は人を救うはずの天使の力が、人を[ピーーー]機会は減る

それだけで十分だった

そのためなら、この力も命も彼にとっては些細なものである
708 :1 [sage]:2010/09/22(水) 07:20:06.10 ID:9CZt.is0

そして…


ゴッ!!!

ミーシャ「!?」

一方通行「通じた…!?」


一方通行の攻撃が届き、ミーシャの体が揺らぐ

“一掃“は途中で照準制限を失い、夜空を揺るがす程度に留まった


一方通行と風斬の反撃が始まった

これ以上、戦場を鉄屑と瓦礫の山にしないために

そして、それぞれの守るべきもののために…



フィアンマ「後方のアックア…いや、ウィリアム・オルウェル。50%を削るだけに留まったとは言え、大したものだ」


フィアンマ「だが、50%もあれば十分だ。聖人と神の右席の両方を失ったというのに、ここでお終いか。報われんよ、お前の人生は…」
709 :1 [sage]:2010/09/22(水) 07:22:13.69 ID:9CZt.is0

さて、そろそろこの下らない戦いも終わりにするとしよう

ここで全てを潰す事ができれば、世界大戦の結果はもはや確定したも同然だ


フィアンマ「殺せ」


戦士たちへの最期の手向けとして、フィアンマは一言そう命じた

だが…


フィアンマ「……?どうした?」


殺せと命じたはずのミーシャが動かないのだ

嫌な感じだ、完全な優勢だったはずなのに、ほんの僅かに傾きが生じた。




フィアンマ「あの野郎……」


忘れかけていた、この戦場におけるイレギュラーな存在を


フィアンマ「あの野郎……ッ!」


それはある意味ジョーカーの様な存在でもあった
710 :1 [sage]:2010/09/22(水) 07:24:12.39 ID:9CZt.is0

上条当麻は件の儀式場に居た

今、彼の足もとでは白と黒の液体が混ざりあい、マーブル模様を描いている

儀式において門の役割をしていた、白と黒の柱を“幻想殺し”で全て破壊したのだ

ミーシャ・クロイツェフの根幹となる儀式場の柱を



アックアにより力の半分を削られ

上条当麻により根幹を崩され

学園都市が生み出した天使と、学園都市最強の能力者の猛攻を受けたミーシャ


サーシャは儀式場の外からミーシャの最期を見た

理性という人間らしさを持つ箍など欠片も感じれらない、むき出しの感情をそのまま言葉にした様な咆哮がミーシャの口から発せられた

そして、莫大なミーシャの力が歪み、その女性的な姿が原型を留められなくなり、爆発しようとしていた

サーシャはそれを警戒したが、大天使の爆発は、思ったよりも小規模なものだった

あれだけの総量のテレズマが爆発したら、おそらく広大なロシア全域に多大な被害が出るだろうと思っていただけに、
あまりの呆気無さに思わず肩の力が抜けてしまったくらいだ

ただ、その爆発は小規模ではあったものの、まるで外側から威力を押し込められている様に見えた事が気になった。
だが、その事については特に考察する意味も無いし、たぶん自分には理解できない現象なのかもしれないと無理矢理納得し、
そういうものなのだと受け入れる事にしたのだった。
711 :1 [sage]:2010/09/22(水) 07:26:16.11 ID:9CZt.is0

それよりも気になるのが、大天使の力が削られた原因だ

サーシャはその現象が起きた時、かつてイギリスのクーデターで、協力して共に鉄塔を破壊した、あの屈強な傭兵を思い出していた

二人は同じガブリエルのテレズマを使っていた者同士

サーシャとミーシャは共にリンクしていた。そして、アックアがミーシャのテレズマとリンクした瞬間に、
サーシャの中にアックアの意識が流れ込んできたのだった


それは計り知れない程の苦痛と、それを上回る強い意志と覚悟


総量を遥かに超えた大天使の力を取り込むなど、あくまでも受動的にではあるが、
それができる程の才能を持つサーシャから見ても正気の沙汰とは思えない


それをさせる程の強い覚悟の正体は一体何なのか?

一体何が彼をそこまで突き動かしていたのか?


アックアが神の右席としての力を失った時点で意識の交差が途絶えてしまったため、
もはやそれを知ることは叶わないし、彼が生きているかどうかも分からない

ただ、かつて命を助けられ、共に闘った者であるだけに、無関心ではいられなかった
712 :1 [sage]:2010/09/22(水) 07:28:01.23 ID:9CZt.is0

サーシャ「……!?」


だが、どうやらそんな事に想いを馳せている暇は無い様だ


突然、儀式場の方から聞こえて来た破壊音

間違いなくフィアンマの仕業だ


アックアの覚悟の正体は分からないが、その先にあるだろう彼が望むものは、きっと自分と同じものだと思う

だから、彼の覚悟を無駄にしないためにも、今は全てを忘れ、戦わなければならない

この戦争の元凶であるフィアンマと…
713 :1 :2010/09/22(水) 07:28:28.97 ID:9CZt.is0
ここで区切ります

そろそろ終わりかな
714 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/22(水) 10:50:57.90 ID:AVaGB.Io
がんばれえー
715 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/22(水) 11:11:07.79 ID:7.fMa.DO
乙! おい上条当麻そこかわれ
716 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 13:59:22.40 ID:s4G2AMko
アックアさんめっちゃカッケー
717 :1 [sage]:2010/09/22(水) 17:32:46.05 ID:9CZt.is0
ここから先は一方通行だぜ?(書き手のオリジナル解釈と想像的な意味で)

原作とはかなり乖離しますが、所詮はパラレルでマジ天使なのだと納得してください

ちなみに訂正しますが、サーシャの言っていたのは旧約聖書ではなくヨハネの黙示録でした

では投下します
718 :1 [sage]:2010/09/22(水) 17:33:58.10 ID:9CZt.is0

上条当麻は右手を体の前に伸ばし、五指を広げていた

突然彼を襲いかかった莫大な閃光を右手で受け止めたのだ


フィアンマは自分が居た場所から、遠く離れたこの儀式場目掛けて莫大な閃光を放った

そのおかげで、儀式場の壁や天井の一部が粉砕された


サーシャ「上条当麻!?」


衝撃音を聞いて慌てて儀式場に戻って来たサーシャ

そして…


上条「来るぞ……」


上条が鋭い視線を向けるその先

崩れた壁の隙間から、フィアンマの姿が見えた
719 :1 [sage]:2010/09/22(水) 17:35:46.81 ID:9CZt.is0

フィアンマ「面倒な事をしてくれたな」


インデックスの遠隔制御霊槍を片手で弄びながらそう言う


フィアンマ「おかげで学園都市やイギリスから邪魔が入る前に儀式を執行する必要が出て来た。
というわけで、そろそろその右手をいただこうか」

上条「そう簡単に進むと思ってんのか?ミーシャはもう居ないぞ?
どうしてここまで上手く話が転がったか分からねえけど、人間は大天使に勝ったんだ。
どう考えたって。天秤はこっちに傾いている」

フィアンマ「心配には及ばんよ」


フィアンマは天空を指さしながら言う


フィアンマ「……分からないか?」

上条「……!?」


そこでやっと気付いた

ミーシャを倒したはずなのに、空の色が変っていないのだ


フィアンマ「天使を倒した?笑わせるなよ。天使は神の力そのものであって、奴等に死というものは存在しない。
お前達が必死になってやってきた事は、あくまでも偶像としての天使を破壊しただけに過ぎん」


フィアンマ「ミーシャ、いやガブリエルならまだこの空に浮いているぞ?」

上条「嘘…だろ……?」
720 :1 [sage]:2010/09/22(水) 17:37:54.92 ID:9CZt.is0

フィアンマ「それと、だ。実はこの夜空を天体制御で俺様好みに塗りつぶした時点で、ミーシャの役割は終わっていたんだよ」


フィアンマは第三の腕を大きく広げた


フィアンマ「以前、ウリエル(神の火)とラファエル(神の薬)の象徴がずれているという話をしたな。
ミーシャはミカエル(神の如き者)に由来するのであり、ガブリエル(神の力)が自称するには相応しくない事も」

フィアンマ「ガブリエルを利用し、一度空から全ての星を消した上で、テレズマに満たされた
不完全な天空へベツレヘムの星だけを浮かべたのは、大きな力の流れを規定し、四つの属性を再設定するための儀式だ。
使徒十字を退けたお前なら分かるだろう?天空というスクリーンの制御にどれだけ重要な魔術的意義が付加されているのかくらいは」

フィアンマ「夜空にとある星が出現した事によって、預言者は神の子の誕生を確信したのだからな。
俺様がやっているのは、その神話的事実を応用した大規模術式と言ったところだろう」


フィアンマ「ま、世界各地の教会や聖堂を適度に破壊したことで、地上の流れも幾分か手を加えているのだけどな。
天と地、そして3と4。十字教文化において重要な数字を丸ごと独占と言うわけだ」

上条「なん、だ……?お前、何をしようと……」

フィアンマ「逆に尋ねようか?まさかとは思うが、ベツレヘムの星を浮かべた程度ではいおしまいなんて考えてはいないだろうな」


嘲る様にフィアンマは言う


フィアンマ「ベツレヘムの星も第三次世界大戦も禁書目録もミーシャも、所詮は手段に過ぎん。
何てことは無い、全てはこの右腕一本のためのお膳立てに過ぎんのだよ」
721 :1 [sage]:2010/09/22(水) 17:39:07.26 ID:9CZt.is0

上条「そんなもののために、お前は…」

フィアンマ「そんな物とは酷い言い様だな。まあつまり、事前にそうした場を整えなければ、
俺様が望む儀式が執行できないと言うわけだ。第一段階は終了と言ったところだが、
この時点でも嬉しい特典が付いてくる」


バジンッ!と異音が発せられた

星空が広がる

黄、赤、青、緑の順番に、奇妙な色の星がフィアンマの合図に合わせて夜空に上がって行く

ベツレヘムの星は、大仰なプラネタリウムだった


フィアンマ「知ってるか?」

フィアンマ「火、風、水、土。これらの四大属性は、それぞれの力の端を担っていながら、
同時に一つの属性を操ると言う事は、広義において他の属性に影響を与える者となる。
風を司るヴェントが氷の術式を使っていたみたいにな。つまり、俺様の“火”の中には最初から
四大属性の全てを制御する条件が備わっていた。その全てを制御する事で、
俺様は莫大な力を得るはずだった。……世界全体の属性の布陣に歪みさえ存在しなければ」
722 :1 [sage]:2010/09/22(水) 17:40:12.39 ID:9CZt.is0

フィアンマ「もう言わなくても分かるよな?正しい力とは、正しい世界でこそ万全に振るえるものだ」


ドン!!と見えざる何かがフィアンマを中心に炸裂した

それは殺気

ジリジリと肌をさす様な刺激を上条に感じさせるほどの、圧倒的な重圧だ


上条「……」


だが、上条は下がろうとはしなかった

インデックスを救うために、退くわけにはいかない


空中分解で苦しんでいたはずの第三の腕に、莫大な力が宿って行く


フィアンマ「さあ、正しい力の意味をしってもらうぞ…」


正しい世界の始まりと同時に、その世界で生きる者を分ける最後の戦いが始まった
723 :1 [sage]:2010/09/22(水) 17:41:36.25 ID:9CZt.is0

フィアンマ「さて、まずは邪魔者を消す必要があるな」


突然、四つの星のうち、後方の青い星が強く輝き始めた

同時に、フィアンマの右腕に歪な青いオーラが漂う


フィアンマ「何だと思う?」

上条「……」

フィアンマ「お前達が必死になって倒した、ガブリエルの残骸だ」

上条「ッ…!?」


いつの間にかフィアンマの姿が消えていた


サーシャ「ぐッ…!?」


そしていつの間にか、サーシャの体がフィアンマの右腕に掴まれていた


フィアンマ「この段階に来ると、もはやお前の才能は厄介だからな。潰させてもらう」


巨大な右手に捕えられたサーシャの体に、青い光が満ちて行く

フィアンマの右手で捕えたガブリエルの残骸を、サーシャの体の中に移しているのだ


フィアンマ「安心しろ。ガブリエルの力そのものは、お前達に砕かれたおかげでもはや
本来の力を発揮する事はできない。完璧に復元するには気の遠くなる様な長い年月が必要になるだろう」
724 :1 [sage]:2010/09/22(水) 17:43:46.12 ID:9CZt.is0

フィアンマ「だがな、お前は知らないだろうが、この女の本来の属性は俺様と同じミカエルだ。
四大元素の歪みが完璧に正されたこの世界で純粋な水の属性と化したガブリエルの力を、
無理矢理ミカエルの火の属性の器に移したらどうなると思う?」


そう言うと、フィアンマはサーシャの体を乱暴に地面に落した


上条「サーシャッ!?」


少女の名を呼ぶが、返事は無い


サーシャの体を異様な振るえが襲う

そして…


サーシャ「がはっ!ごぼっ!あああああああッ!!!!!」


体の中に入った異物を吐き出そうとするかの様に、サーシャは大量の血を吐き出し、そして地面をのたうち回り始めた


上条「フィアンマ!テメェ!!!」

フィアンマ「本来、水と火は混ざり合う事はないから、こりゃあ相当堪えるみたいだな。
オマケにお前達にバラバラにされたせいで、あの女の中に封入されたテレズマは不安定なまま暴走している」


上条はサーシャの元に駆け寄ろうとした

幻想殺しを使えば、サーシャの体の中に入ったテレズマを消せるかもしれないからだ


だが


上条「ゴッ…ぼッ!?」ドガッ

フィアンマ「おっと、残念だったな。偶然俺様の蹴りがお前の鳩尾に入ってしまったみたいだ」
725 :1 [sage]:2010/09/22(水) 17:45:34.64 ID:9CZt.is0

いつの間に上条とサーシャの間の直線距離場に割って入ったのか

そしていつ間に腹を蹴られたのか、上条にはまったく見えなかった

上条の体は吹き飛ばされ、サーシャとの距離を離されてしまった


フィアンマ「まあそう焦るな。いや、時間もそれほどあるわけではないが、
余興と言うものを見せてやるくらいの余裕は必要だろう?」

上条「ッ…!!」

フィアンマ「見ろ、これが正しい力だ」


フィアンマの巨大な右手が軽く振られた







その瞬間、世界が消えた



視界が消え、音が消え、五感が消え、思考も、存在すらも、全てが消え、真っ白でも真っ黒でもない“無“がそこに広がった







そう錯覚させるほどの衝撃


フィアンマ「なるほど、10%以下でもこれ程の力か。制御はできている様だし、空中分解もしていない」


全てが消えてしまいそうなほどの光が止み、そこに君臨する絶対的な存在
726 :1 [sage]:2010/09/22(水) 17:47:57.57 ID:9CZt.is0

感覚を取り戻した上条の目に映るのは、儀式場の壁と天井が全て破壊され事により完全に露わになった、
真っ暗な天体と異様な光を帯びる四つの星

遥か向こうに見える空の彼方まで、フィアンマの一振りによる衝撃の残骸がビリビリと震えている。
雲は全て、あの一撃で消滅した

雪の大地は全て盛り返され、白という色がたった一点すらも残さずに消えていた


そして、彼の眼前には…


上条「サーシャ!!」

サーシャ「……あ…ッ…!」


サーシャが巨大な氷の壁を作り、上条を衝撃から守ってくれていたのだ

鉄よりも硬いはずの氷の壁がバラバラに砕け、サーシャはその上に倒れ伏した


上条は倒れたサーシャに近寄ろうとするが


フィアンマ「お前の相手はこの俺様だろう?部外者にかまけている余裕など無いはずだ」


フィアンマは右腕でサーシャの体を掴み、再び乱暴に投げ捨てて上条との距離を取らせた


上条「ッ!!」

フィアンマ「さて、この力を見た後で、まだお前は抗う事をやめるつもりは無いのか?」

上条「当たり前だろ!!」

フィアンマ「そうか。大した度胸だ」
727 :1 [sage]:2010/09/22(水) 17:49:12.98 ID:9CZt.is0

上条は強く拳を握りしめ、歯噛みした

力の差など、もはや語るまでも無い

フィアンマがその気になれば、息をするのと同じ手軽さで自分を[ピーーー]事ができるのだろう

でも、ここで止まるわけにはには行かない


上条「うおおおおおおおおおおおおッ!!!!!」


インデックスを守り抜くと誓ったんだ

もう記憶を失う前の事は思い出せないけど

どういう気持ちで最期を迎えたのかは分からないけど

それでも、インデックスをこんなふうに扱う、コイツみたいな連中から

守り抜くと決めたはずだ!!


フィアンマ「小さいな」


フィアンマは小さく呟くと、殴りかかって来た上条を蹴散らした


上条「がはッ…!!」


フィアンマは特に何も動作を起こしてはいない

いや、上条の目にはそう見えただけで、実際はなんらかの攻撃を仕掛けたのだろう

だが、少なくとも彼には、まるで近づく事すら拒絶され、見えない壁に弾かれた様に感じられた
728 :1 [sage]:2010/09/22(水) 17:50:53.14 ID:9CZt.is0

フィアンマ「小さいな…」


フィアンマはもう一度小さく呟いた


上条「何だと…?」

フィアンマ「小さいと言っている。貴様の守ろうとしているものなど」

上条「訂正しろ……」

フィアンマ「俺様は事実を述べているだけだが?」

上条「ふざけんなッ!!」


上条は再び立ち上がり、拳を握りしめ、殴りかかる

だが


フィアンマ「ほら、こんなにも小さい」


再び見えない壁に弾かれた様に、上条の体は飛ばされた


フィアンマ「個を守るために生まれる力など、所詮はこの程度のものだ」

上条「ッ…!?」

フィアンマ「力は、守るモノの大きさに比例する。守るための覚悟や意志などまやかしに過ぎない。
俺様からすれば、あのアックアやキャーリサの守るものすら小さく感じられる」
729 :1 [sage]:2010/09/22(水) 17:52:25.57 ID:9CZt.is0

上条「ふざけんなよ。これだけの破壊をしてきたお前が、今更何を守ってるってほざく気だよ…」

フィアンマ「俺様が守るべきは人類全てだ。俺様は全ての人類を救うために力を手にしたのだからな」

上条「人類を救う?そんな奴が、何で戦争なんか起こしてんだよ?一体どれだけの人間が、
テメェの夢物語のために犠牲になったと思ってんだ!!」

フィアンマ「覚えてないのか?俺様とお前は同じだとな」

上条「ッ…」

フィアンマ「お前が守ると誓ったあの女に対し、お前は嘘を吐き続け、傷付けた。
俺様は、守るべき人類を傷付けてきた。必要があったとは言え、それは許されることではないだろう」

フィアンマ「俺様は審判を受けるつもりだ。貴様より遥かに重い罪を背負ってな。その覚悟が俺様にはある。お前はどうだ?」

上条「後で死ぬほど謝るさ。お前じゃなくてインデックスにな…」
730 :1 [saga]:2010/09/22(水) 17:55:27.92 ID:9CZt.is0

上条「それと、お前は間違ってる。大切なのは、守るモノの大きさじゃねぇ!!
何があっても守り通す覚悟に決まってんだろ!!」

フィアンマ「ハハッ!それは守るための力が備わっていなければ説得力に欠けるぞ?」

上条「テメェがどうやって人類を救おうと考えてんのかは知らねえが、
インデックスを守りたいって覚悟がそれに比べて小さいとは言わせねえ!!
テメェがそれをちっぽけだと否定するのなら、誰かを守るために立ち上がる奴の想いを否定するならッ!!」





上条「テメェのそのふざけた幻想をぶち殺す!!!」





フィアンマ「なら示してみろよ、お前のその想や覚悟を」

上条「ッ!!」


一瞬にして間合いを詰められる


フィアンマ「分かっただろ?」


巨大な腕が振られ、上条の体を薙ぎ払った


上条「ごがッ!ゴぼッ!があッ…!」


バスケットボールの様に地面を跳ね、壁にぶち当たり
全身の骨が砕ける様な痛みが上条を襲う

必死に呼吸を繰り返し、奪われた酸素を取り戻し、意識を明瞭にさせる事を試みた


上条「ごぼッ!ごほッ!」


だが吐き出されたのは二酸化炭素だけではなく、鮮血も一緒に飛び出て来る
731 :1 [sage]:2010/09/22(水) 17:57:39.89 ID:9CZt.is0

フィアンマ「所詮はこの程度のものなのだ。
仮にお前が言う覚悟や想いの大きさに価値があるのだとしたら、
おそらく俺様のそれはお前をかるく上回るのだろうな」

フィアンマ「だが、覚悟は所詮覚悟に過ぎない。それは大きさや量を計る対象ではない。
想いはあっても行動に移せる力が無ければ意味はない」

上条「ぐッ……」


視界が霞む

立ち上がろうと足に力を込めるが、まるで体中の神経回路がバラバラにされたか様に手足に力が入らず、
どうやって動かしていたかさえも思い出せない


フィアンマ「さて、そろそろ時間だ。優しいだろ?俺様はお前に抗うための時間を与えてやったのだから」
732 :1 [sage]:2010/09/22(水) 18:00:00.31 ID:9CZt.is0
上条「何…を…」

フィアンマ「無駄だと分かっていても抗ってみたくなる。人間の性という奴だな。俺様はお前のニーズに応えてやったのだ」


フィアンマ「だが、感謝はいらない。代金は、そうだな……こいつで払ってもらおうか」


そう言うと、フィアンマは片手を軽く掲げた

その手には、学生服の袖ごと肘から先を引き千切られた右腕が握られている








ちょっと待て


それは……誰の……




おそるおそる自分の右腕を確認してみた

同時に、ここに来てようやく絶望的な痛みが彼を襲う


上条「があああああああああッ!!!!!!」


いつだ?いつ奪われた?

いつフィアンマが動いた?

激痛により冷静な判断ができない。だが、そうでなくとも正解を導き出す事はできなかったかもしれない

答えは、いつでも奪えたし、いつでも動けた

ただそれをしなかったというだけの話
733 :1 [sage]:2010/09/22(水) 18:02:35.79 ID:9CZt.is0

フィアンマ「さて、俺様の聖なる右は、どんな邪法だろうが悪法だろうが、問答無用で叩き潰し、
悪魔の王を地獄の底へ縛り付け、1000年の安息を保障した右方の力だ。俺様の右腕はあらゆるモノを破壊する」

フィアンマ「だがな、そんな聖なる右にも足りないものがある。それが神浄の力だ。
俺様は右腕で奇跡を操る力はあるが、奇跡を打ち消す力は無い。問答無用で浄化させる力は無いのだ」

上条「ぐあッ…!」


腕の失血を止めるのに夢中で、フィアンマの言葉は聞いてはいない

だが、それでもフィアンマは話し続ける


フィアンマ「奇跡とは神の力の総称だ。空中分解は避けられたが、それでも俺様の腕には制限が残る。
俺様が人間であるという事と、この腕が扱える力の制限にな」


フィアンマ「だから、俺様はその制限をぶち壊す。この神浄の右手でな」


フィアンマは上条の右腕は軽く宙に投げ、第三の腕でキャッチした


上条「なッ!?」


フィアンマ「何を驚いている?俺様はお前とは違う、単に何でもかんでも異能の力を破壊するだけのお前とはな」


異能の力を打ち消すはずの右手を、異能の腕で握るフィアンマ

そして、上条の右腕は飲み込まれる様にフィアンマの右腕に吸収されていった


フィアンマ「さあ、計画は最終段階へ移ったぞ?どうする?」


嘲る様にフィアンマはそう言った
734 :1 [sage]:2010/09/22(水) 18:03:45.39 ID:9CZt.is0
中断します
735 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 18:31:44.24 ID:WsNP9cAO
これは期待
736 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 19:35:47.16 ID:SUAQeiQo
これは予想外
続きが楽しみ過ぎる
737 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/22(水) 21:11:23.04 ID:7.fMa.DO
乙! サーシャマジ天使だけどぼろぼろだな……
そしてさすがフィアンマ説教耐性がやばい
738 :1 [sage]:2010/09/22(水) 23:12:57.51 ID:9CZt.is0
今更だけどタイトルを「サーシャちゃんマジ天使」にすれば良かったと思う今日この頃

投下します
739 :1 [sage]:2010/09/22(水) 23:16:04.86 ID:9CZt.is0

フィアンマ「さて、もうそろそろだな…」

上条「何を…する気だ……?」

フィアンマ「救いだよ。いや、浄化とも言えるかな」

上条「……」

フィアンマ「そうだな、ここまで協力してもらったお前達には礼がしたい。
特別に、新しい世界の創造を間近で見せてやろう」


フィアンマ「上条当麻、お前はこの世界から悪を消すにはどうすればいいと思う?」

上条「何言ってんだ……そんなの……」

フィアンマ「言いたい事は分かる。そんな抽象的なモノを消す方法など考えるだけ無駄と言うものだろうな」

フィアンマ「だが、俺様はそれを真剣に考えた。どうすれば皆を救えるのか?とな。
どれほど頭を悩ませたのか、俺様自身ももはや覚えてはいない」

上条「分かんねぇ、テメェは一体何がしてぇんだよ?」

フィアンマ「”救い”だ。具体的に言えば、最後の審判だな」

上条「最後の……審判……?」
740 :1 [sage]:2010/09/22(水) 23:19:47.06 ID:9CZt.is0

フィアンマ「ああ、無宗教のお前には馴染みが無いか。最後の審判は、
世界の終末と共に天使と神の子が現れ、天国に行ける者と地獄に堕ちる者を分けるという十字教の思想だ」

フィアンマ「大事なのはこの”終末”という部分でな。終末にも様々な思想があるが、
俺様は特にヨハネ黙示録の終末思想に着目した」

フィアンマ「ヨハネの黙示録は、神の子の使徒によって書かれた新約聖書のうち、唯一預言書的な性格を持つ書だ。
このヨハネの終末論によると、善と悪の最終戦争が行われた後、神の子が降臨し、
キリスト教の教えに忠実に生きてきた善人のみを救い出し、1000年続く王国を作り出すとされている」

上条「……」

フィアンマ「気に食わないのは、キリストの教えに忠実に生きた者のみという点だな。
それでは十字教徒以外は救われないという事になってしまう。
それに、本当に最後の審判を行うとしたら、それ相応の力と知識が必要となる」

フィアンマ「だからこそ、俺様は神の右席になり、審判で判決を下すミカエルの知識を集めた。
十字教徒だけではない、全ての人間を救うためにな」

上条「つまり…テメェが善人と悪人を選ぶって事か…?」

フィアンマ「俺様はそこまで傲慢ではない」


そう言うと、突然フィアンマの右腕から一本の炎の矢が放たれた


上条「!?」


矢は上条の頬をかすり、壁を貫いた

そして、そのまま赤い塵と化し、朽ちて行く…
741 :1 [sage]:2010/09/22(水) 23:21:02.81 ID:9CZt.is0

上条「これは…」


不思議な事に、矢が掠めたはずの上条の頬には傷が付いておらず、痛みも感じない




だが、突然、彼の心に暗い影が差した



とうまは…私の事が嫌いなんだね?


上条「違う…」


なぜか、目の前にインデックスが居た

あの時、記憶を失ってから初めて会った時と同じような、今にも泣き出しそうな顔をして…


だから本当の事を話してくれなかったんだよね?


上条「違う、俺は、お前を……」


私はとうまに騙されてたんだよね

嘘をついてたんだよね…


上条「違うッ!!俺はっ!!!……はっ!」


突如我に返った上条

いつの間にか、目の前に居たはずのインデックスの姿は消えていた
742 :1 [sage]:2010/09/22(水) 23:23:53.80 ID:9CZt.is0

フィアンマ「体験版だな。言葉で語るよりもこの方が分かりやすくて良いだろ?」

上条「一体…何が…ッ?」

フィアンマ「そうだな、名前は特に無いが、メギドの矢とでも名付けようか」

フィアンマ「今お前が体験したように、この矢は直接相手を[ピーーー]ものではない。
相手の心に潜む悪意や罪悪感。それだけでなく、他者からの恨み、人類が築いてきた倫理感など、
その全てがこの矢の攻撃対象となる」

フィアンマ「罪を重ねた者は、その罪によって浄化の炎で焼き殺されるだろう。
罪の意識が無い者も、他者からの恨みで浄化される。他にも色々と調整してあるが、
まあ概要は分かってもらえたかな?」

上条「まさかお前……その矢で全人類を[ピーーー]つもりか!?」

フィアンマ「違う。この浄化の炎で作られた矢は、罪を焼くだけ。
つまり、死ぬのは罪の重さに耐えきれなくなった悪人だけだな。
まあ、改心した奴も死ぬかもしれないが、それも因果応報というヤツだろう。
ミカエルは天秤によって魂の行き先に判決を下す。俺様は、このメギドの矢によって判決を下す。
それだけの違いだ。平等で良い方法だろ?」

フィアンマ「まさに善と悪の最終戦争に相応しいとは思わないか?」

上条「ふざけんな!テメェに一体何の権利があって、そんな勝手な事が許されるってんだ!!」

フィアンマ「俺様の属性は審判のミカエルだぞ?」

上条「じゃあ何か?テメェは裁くだけ裁いて、テメェ自身はその裁きから逃れるつもりか?
一番裁かれなきゃならねぇはずのお前がッ!!」
743 :1 [sage]:2010/09/22(水) 23:26:19.02 ID:9CZt.is0

フィアンマ「聞いてなかったのか?俺様は裁きを受ける覚悟はあると言ったはずだが?」

フィアンマ「全ての人類をこの矢で浄化した後に、最後はこの俺様自身の罪も裁かれる」

フィアンマ「そして、全ての罪を浄化し、神の奇跡を操る力と、
神の奇跡をも打ち消す力の両方を兼ね備えた俺様は、さらなる高みへと登る」


フィアンマ「”神上”になるのだ。新たな善の世界を導く存在としてな」


上条「狂ってやがる…」

フィアンマ「否定するのか?今この瞬間にもこの世界では多くの人間が理不尽な悪意により苦しめられているというのに。
まあ、安穏とした先進国で生きて、悲劇などディスプレイの向こう側からしか見てこなかったお前には分かるまい」

フィアンマ「今までお前が見て来た、そして立ち上がって来た不幸や悲劇など、
俺様が見てきたものの中では最も底が浅くて生易しい部分だ。そして、
そんな生易しい悲劇すらも俺様は救ってみせるというのだぞ?」
744 :1 [sage]:2010/09/22(水) 23:27:56.15 ID:9CZt.is0

上条「それでも俺はお前のやり方を否定するけどな」


上条は立ち上がり、拳を硬く握り締めた

何の力も無い、普通の左手を


フィアンマ「吠えるだけなら犬でもできる。否定するなら俺様を止めて見せろ」


フィアンマは左右に大きく両腕を広げ、三日月の様に口を釣り上げた


フィアンマ「太陽、月、地球、そしてこのベツレヘムの星が規定とポイントに達した時に、俺様の最期の審判は始まる」





フィアンマ「さあ、始めようじゃないか!最終戦争を!」






745 :1 [sage]:2010/09/22(水) 23:29:06.37 ID:9CZt.is0

上条に出来る事は、残った左の拳を振るう事しかない

だが、利き腕で無い方の拳は当たらずに、簡単に回避されてしまう


フィアンマ「どうした?止めるんだろ?」


上条の拳を避けたフィアンマの膝が、上条の腹部にめり込んだ


上条「がふっ!!ごふっ!!」

フィアンマ「右手を失ってもまだ立ち上がれるお前の覚悟とやらは、この俺様にとっても驚くべき事だ。
その点に関しては、お前は口だけではないと認めてやる。だが…」


ブォンと第三の腕が振られ、上条の体が吹き飛ぶ


フィアンマ「結局のところ、俺様を止めるだけの力が無ければ意味は無いわけだ」

上条「ぐッ…ッ!!」


右手を失った事により、全身のバランス感覚も崩れ、立ち上がる事さえ困難である

もはや痛みさえも感じられないくらいに意識が朦朧としている

だがそれでも上条は立ち上がった
746 :1 [sage]:2010/09/22(水) 23:31:23.70 ID:9CZt.is0

自分はこの世界で起きている悲劇について、偉そうに語れる程知ってるわけではない

目の前で苦しんでいる人間を見たら立ち上がるだろうけど、
フィアンマの様に全ての人類のために立ち上がれるかどうかと問われたら、おそらく無理だろう

確かにフィアンマのやり方で救われる人間は沢山居るかもしれない

それを止めるのは、救われるはずだった人間を[ピーーー]と言う事になるのかもしれない



『オマエは、ヒーローだろォが!!!』


上条「違う…」


『助けろよ!他の誰もできねェ事ができンなら、そいつをちっとはあのガキにも向けてやれってンだよ!』


上条「違う…そいつは…お前が守らなきゃいけねぇはずだ……」


『俺は血みどろの解決方法しか選べねェんだよ!!』


上条「そんな事はない……」


『あのガキだって、あンなに苦しむ事はなかったンだよォォおおおおおおおおおおおおおおおッ!!』


上条「そいつは、苦しんでただけだったのか?お前はそいつの笑顔を守りたかったんじゃねぇのか?」



そいつは、お前が傍に居たから笑う事ができたんだろ?



747 :1 [sage]:2010/09/22(水) 23:33:01.74 ID:9CZt.is0

上条当麻は、かつて一万人以上もの人間を殺した男を知っている

そして、そいつが今、自分が犯した過ちに苦しんでいる事も

それでも守りたい奴のためにボロボロに傷付きながらも戦っている事も


もしもメギドの矢を食らったら、アイツは死ぬかもしれない


それで良いのか?


誰を守りたかったのかは知らないが、そいつに守られていた奴からそいつを奪う事が本当に正しいのか?


違う。誰かが犠牲になるハッピーエンドなんざ、本当のハッピーエンドとは言わない。


手を貸してやる、インデックスを助けるついでだけど、協力してやるよ

お前が選んだ通りにな…


上条当麻は再びフィアンマに立ち向かって行った

不安定な体で、何の力も無い普通の少年と言う事も忘れ
748 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 23:33:05.27 ID:Jyg5D6co
熱いね
749 :1 [sage]:2010/09/22(水) 23:34:17.15 ID:9CZt.is0

上条当麻、あなたはなぜ立ち上がる事ができるのですか?

なぜあなたは恐れずに立ち向かう事ができるのですか?


サーシャは這いつくばりながらそれを見ていた

体の中を異様な力が駆け巡り、内側から膨張し、肉体を食い破ろうとしている

体中が裂けそうなくらいに痛い。一瞬でも気を抜けば、自分の体は内側からズタズタに切り裂かれ、破裂するだろう


とてもフィアンマと戦おうとは思えなかった

それどころの話ではないのだ



それは上条当麻も同じだった

幻想殺しを失った今、彼がフィアンマに勝てる可能性など1%も無いだろう

だが、それでも彼はけして諦めなかった

立ち上がる事をやめようとしなかった
750 :1 [sage]:2010/09/22(水) 23:35:14.66 ID:9CZt.is0

なぜだ?なぜそこまでできる?

何がそこまで彼を動かす?

上条にしろアックアにしろ、なぜ無謀だと分かっていても戦う事をやめないのだ?



………



ああ、そうか

忘れかけていた


もう答えは知ってるじゃないか


女子寮でヴェロニカ達と戦った時、なぜみんな自分のために立ち上がってくれたのだ?

9000万人ものイギリスの民が、なぜ勇気を振り絞って戦ったのだ?



彼らはみなヒーローなのだ

守る者のために何度でも立ち上がるヒーローなのだ
751 :1 [sage]:2010/09/22(水) 23:36:53.82 ID:9CZt.is0

自分はそんなヒーローにはなれないかもしれない


十字教の目的は”救い”だ

ならば、それを実行してやろうじゃないか


弱き者、力無き者に手を差し伸べるのが救いなら

無力でも誰かのために戦うヒーローを助けるのも十字教が成すべき”救い”のはずだ


サーシャ「これは……本当に死ぬかもしれませんね……」


今なら、アックアの覚悟が分かる気がする

その覚悟に、自分の覚悟を重ねて……





ドッ!!!


フィアンマ「……?」


気のせいか?

本当に些細な違和感であったのだが、自分の右腕に何らかの衝撃が起きた気がした

752 :1 [sage]:2010/09/22(水) 23:37:58.90 ID:9CZt.is0

フィアンマ「……まさか」


フィアンマはサーシャの方を向いた

サーシャは方膝を付きながらこちらを見据えている



フィアンマ「いや、有り得ない……」

サーシャ「どうしてそう思うのですか?」


フィアンマの顔に初めて不安の表情が浮かぶ


ドッ!!!と再び第三の腕に衝撃が走った。今度は気のせいなんかではない


フィアンマ「お前……本当にそんな事ができると思っているのか?これを防ぐために、
俺様はお前の体にガブリエルのテレズマを移したのだぞ?」

サーシャ「第一の解答ですが、他人の手で出来る事なら、この私にもできる。
それだけの、単純な事実じゃないですか」

フィアンマ「……!!」
753 :1 [sage]:2010/09/22(水) 23:40:20.13 ID:9CZt.is0

狂ってる

敵意や憎悪の価値観が狂ったフィアンマですら恐れる程の狂気をサーシャから感じ取った

できるできないの問題ではない

その身に大天使のテレズマを降ろすと言うだけでも本来ならまともな事ではない

にもかかわらず、すでに大天使のテレズマを身に封入したまま、サーシャはさらに
フィアンマの右腕に宿る莫大な力をその身に移そうとしているのだ

もはや許容量の問題ではない。満タンまで注がれたコップの上からさらに水を注ぐ様なものだ。


サーシャ「私の属性がミカエルなら、あなたの右腕に干渉して力を奪えるはずです!!!」

フィアンマ「ふざけるなッ!こんな、こんな馬鹿な事がッ!!!」


サーシャの干渉を受け、力を吸い上げられた第三の腕が暴走する


フィアンマ「ぐあッ!!」


フィアンマは必至で右腕を制御しようとした


サーシャ「…………!!!!!!!!!」


アックアと同じ様に、血管が破裂し、全身から血が吹き出てくる

だがサーシャのしている事は、もはやアックアの無謀さなど遥かに超えていた

四大元素の歪みが正されたこの世界で、ただでさえ本来とは違う属性の水のテレズマを体に取り入れる事自体がすでに危険な事だ

だというのに、そこにさらに莫大な火のテレズマを取り入れるなど、それはもはや自殺と同義である
754 :1 [sage]:2010/09/22(水) 23:41:59.08 ID:9CZt.is0

水と火はけして混ざり合う事は無い

だからこそミーシャはサーシャという器を守ろうとしたし(フィアンマとの契約で乗り換えたが)
フィアンマも自身の正しい力を取り戻すために四大属性の歪みを正そうとしたのだ

二つの相容れない莫大な力がサーシャの中で葛藤し、暴れ回る

痛いなんてものではない、まるで内臓をズタズタにされている様な気分だ

サーシャは自分の体を抱きしめる様に腕を交差させ、利き手とは反対側の二の腕を掴んだ
。爪が食い込み、血が流れるくらいに強く…


サーシャ「がッ!あああああああああああああッ!!!」


赤い目を極限まで見開き、喉が潰れそうな程の咆哮を上げる






そして……







サーシャ「……」


今までの喧騒が嘘の様に、一瞬にして静寂が訪れた

サーシャの体は、背中が天井を向くくらいに項垂れた




バサッ!!!!
755 :1 [sage]:2010/09/22(水) 23:43:54.99 ID:9CZt.is0

”天使”というワードを聞いた時、誰もが思い浮かべるであろう真っ白な翼


それはガブリエルの水翼でもない、ミカエルの属性である火の翼でもない




白く、白く、白く、どこまで白く、一点の汚れさえ存在しない様な白すぎる程白く輝く翼だった




フィアンマ「何だ……それは……?」


第三の腕の制御を取り戻し、安堵したフィアンマの表情が、驚愕に変った


漆黒の夜空の闇さえも受け入れずに輝く白い翼



ガブリエルの水のテレズマと、ミカエルの火のテレズマというけして相容れない二つのテレズマを合わせて生み出された白い翼

理論などもはや存在しない。禁書目録を隅から隅まで調べても、該当するページは見つからないだろう

限界を超えるという事に、マニュアルなど存在しないのだから
756 :1 [sage]:2010/09/22(水) 23:46:02.24 ID:9CZt.is0

フィアンマ「くッ……!!!」


フィアンマの巨大な右腕が振るわれ、サーシャの体を引き裂いた

様に見えただけで、フィアンマの右腕が通過したサーシャの立っていたはずの場所に、無数の白い羽根が降り注いだ

まるで羽毛布団を切り裂いたかのように


フィアンマ「どこだ!どこに消えた!」


フィアンマは後ろを振り向く


すると、サーシャは翼と同じくらいに白く輝く剣を振りかざしていた


フィアンマ「ッ…!?」


ガギッ!!!!


それを受けとめたフィアンマ

莫大な力と力がぶつかり合い、凄まじい衝撃波が周囲に響き渡る


上条「うおっ…!」


もはやこの展開についていけてない上条は、体を庇う様にして衝撃波から身を守った

いままで多くのファンタジーを見て来た彼だが、この光景は、その中でもべスト3にランクインするだろう
757 :1 [sage]:2010/09/22(水) 23:47:42.33 ID:9CZt.is0

フィアンマ「どうやら、力の総量自体は俺様の方が上みたいだな」

サーシャ「ッ……!!!」


サーシャの体が押し返され、弾かれた

同時にその隙を逃す事無く、フィアンマは右腕でサーシャの体を掴む


フィアンマ「驚いた、本当に驚かされたぞサーシャ・クロイツェフ。だが、
どうやらこの世界は俺様のやり方を支持しているみたいだな。これが運命と言うやつなんだろう…」


フィアンマは右腕を一度大きく後ろに振り、そして思いっきり壁に向かってサーシャの体を投げつけた

得体のしれない力の塊であるサーシャを、いつまでも掴んだまましておく事に躊躇いを感じたからだ


上条「サーシャ!?」


上条は突然飛び出し、サーシャの体を受け止めようとした

だが、あのフィアンマから放たれた力は、上条がサーシャを受け止めると同時に上条の体を潰してしまうだろう

サーシャは上条に受け止められると同時に、上条の背中を庇う様に自分の翼を折り曲げた


上条「ぐッ…!!!」


その甲斐あってか、何とか無事サーシャの体を受け止めつつ、
上条の体を守る事にも成功した。上条さん余計じゃね?とか思ってはいけない
758 :1 [sage]:2010/09/22(水) 23:50:09.11 ID:9CZt.is0
上条「大丈夫かサーシャ!?」

サーシャ「ええ、何とか取り返してきましたから」


そう言うと、サーシャは切断された上条の腕を取りだして見せた


フィアンマ「なッ、何をした……サーシャクロイツェフッッ!!!!!」

サーシャ「第一の解答ですが、私をその手で掴んだのが失敗でしたね」

フィアンマ「ッ……!!!!」


第三の腕から上条の右腕を無理矢理抜き取った

だが、それだけではない


フィアンマ「がッ…ごぼ…ッ!!?」


いきなりフィアンマが吐血した

それだけではない。血管が破れ、目からも耳からも血が流れてくる…


よく見ると、彼の第三の腕には、無数の白い羽が突き刺さっていた


サーシャ「第二の解答ですが、大切な物みたいなのでお返しします」


その言葉の通り、サーシャは返したのだ。フィアンマから奪ったテレズマを

律儀にもガブリエルのテレズマという利息を付けて

火のテレズマと水のテレズマが合わさったらどうなるかなど、もはや説明はいらないだろう

空中分解に苦しんでいたフィアンマの右腕は、再び歪み始めた
759 :1 [sage]:2010/09/22(水) 23:52:00.05 ID:9CZt.is0

サーシャ「さあ、上条当麻、早くこの右腕を…」

上条「繋げるのか!?」

サーシャ「………」

上条「……どうした?」

サーシャ「すみません、幻想殺しの事を忘れていました」


この場面で今更ながら重要な事を思い出し、サーシャはがっくりとうなだれた

上条の幻想殺しは、あらゆる異能を打ち消す。例えそれが回復魔術であってもだ


サーシャ「…すみません」


だがそれに対し、上条は明るく笑ってみせた


上条「大丈夫だサーシャ。頼む、やってくれ」

サーシャ「えっ…しかし…」

上条「大丈夫だって。お前の幻想は、俺が守ってみせるから」

サーシャ「当麻……分かりました!」
760 :1 [sage]:2010/09/22(水) 23:52:56.01 ID:9CZt.is0

サーシャは露わになった上条の腕の切断面に、奪い返した腕を繋ぐ

すると、接合面から白い光が零れた……


上条「……」

サーシャ「……どうですか?」


上条は手を握ったり、指を伸ばしたりして確かめてみた


上条「サーシャ……」

サーシャ「はいっ!」

上条「ありがとうな…」なでなで

サーシャ「ふえっ…!」


思わず変な声を上げてしまった
761 :1 [sage]:2010/09/22(水) 23:54:25.37 ID:9CZt.is0

フィアンマ「ぐッ…こんな……馬鹿な事が…俺様は世界を…すくおうと…ガフッ!!」


もはや今までの圧倒的な力は影を潜め、体はふら付いており、立つのがやっとと言った感じである

彼には、サーシャの様に相反する二つの力を受け入れる事はできなかった



上条「フィアンマ」

フィアンマ「かみ…じょうっ!!!!」

上条「サーシャはスゲぇよな。あれだけ強かったお前を、ここまでボコボコにしちまうんだからな。
きっと、サーシャみたいな奴をヒーローって言うんだろ。俺には荷が重すぎる」

上条「だけどな、アイツの覚悟を無駄にしないための力くらいは、俺にもあるんだぜ?
この右手で、テメェの面をぶん殴るくらいの力はな」

フィアンマ「ッ…!!!」
762 :1 [sage]:2010/09/22(水) 23:56:44.15 ID:9CZt.is0

上条「覚悟を決めろよフィアンマ。テメェが小さいと嘲笑った、
そんな大切なモノを守るために命がけで戦ってきた奴等の覚悟が、今全部ここにある。
こいつらの覚悟を受け止めるだけの覚悟を、テメェも決めてみせろって言ってんだ」


それはサーシャであり、アックアであり、風斬であり、一方通行であり、キャーリサであったりと、
この戦争に関わって来た全ての人間の想いだ


全て、彼が小さいと嘲笑った想い



上条「誰にだって守るべきものがある。大きさなんて関係ねぇ!
そこに守りたいって立ち上がらせるほどの強い想いがあるんだよ!
それがどれだけデカイもんかも分からねぇくせに世界中に人間を救おうだなんて考えてるなら、
テメェの目を覚まさせてやる。そして分からせてやるよ。
守りたいと願う奴の、想いの、覚悟の大きさって奴をな…」


上条は右手を強く握り締め、そして駆け出した






上条「言葉にするのはここまでだ!!!あとはテメェの頭で考えろッ!!!!!」





フィアンマ「黙れッ!!俺は神上にッ!!!!」


フィアンマは不安定な第三の腕を振るった

だが、上条はそれをしゃがんで避け、そのまま低い姿勢から伸びあがり

上条の拳がフィアンマの顔面を貫いた


フィアンマの体は吹き飛び、地面をニ転三転する

それでも何とか立ち上がろうと試みたが、最後には力尽きて仰向けになったまま気絶してしまった
763 :1 [sage]:2010/09/23(木) 00:01:50.14 ID:lIUvpn60
ここで区切ります
”救い”と”浄化”と”災害”というワードから自分はこんな展開を予想しました

次回でラストかな。その後どうするべ?
764 :1 :2010/09/23(木) 00:04:49.11 ID:lIUvpn60
age忘れました
765 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 00:04:53.75 ID:Z1cpsnUo
上条さんかっこよすぎだろ…

こっからはズタボロになった神の右席が再集結する展開キボンヌ
766 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/23(木) 00:16:20.15 ID:cZhf5tQo
乙乙。サーシャちゃんマジ天使
フィアンマの計画は本当にありそうな感じでよかった

俺はもう一度イギリス清教女子寮の面々との絡みが見たいな
767 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 00:17:27.96 ID:4iYilPwo
すげえな…
本編のネタバレ言われても信じるレベル
768 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 10:39:20.63 ID:3pDr6vs0
本編最期の投稿です
769 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 10:40:43.77 ID:3pDr6vs0

上条はフィアンマからインデックスの遠隔制御霊装を奪った

だが、手に取る前に錠前は上条の幻想殺しにより、触れた瞬間にバラバラに砕けてしまった。
まあ何はともあれ、これでインデックスは助かったはずだ

遠隔制御霊装を破壊すると同時に、あの星一つ無い漆黒の夜空が終わり、遥か遠くの空まで見慣れた水色が広がった

見慣れたとは言っても、こんな高い場所から見下ろすのは初めてだし、
できれば二度目は謹んでお断りしたいものであるのだが


フィアンマ「ムカツクくらいに青い空だな……」

上条「!?」


仰向けになりながら、フィアンマは上空に広がる青を見てそうつぶやいた


フィアンマ「そう警戒するな……俺様の聖なる右は、サーシャ・クロイツェフのおかげで
使い物にならなくなった…今の俺様はもはや普通の人間だ」

上条「そうか、案外あっさりしてんな」

フィアンマ「俺様は、お前が思ってるほど未練がましくはないぞ?」
770 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 10:43:03.21 ID:3pDr6vs0

フィアンマ「だが…例えこの俺様を止めたとしても、俺様と同じ考えの人間は山ほど居る。
今回はたまたまこの俺様が動いたが、次は違う人間が動くかもしれないぞ?」

上条「……」

フィアンマ「それに、人類はいつか、俺様の悩んできたものと同じ壁にぶつかるだろう。
階級が生まれ、寡頭制が生まれ、帝政が生まれ、絶対王政が生まれ、軍事独裁や共産主義が生まれ、
そして共和制、民主主義が生まれた様にな。いつかは新たなシステムが生まれるだろう。
その時、人類にとって最も幸福で平等な世界になるのか、はたまた、俺様の様なやり方でなければ、
その様な世界は永遠に訪れはしないと悟るのか。まあそれは統治システムの限界を認めると言うことになるのだがな」

フィアンマ「歴史は繰り返す。繰り返しながら少しずつ変わっていく。
俺様は失敗したが、人類にとって最大の命題の一つとも言えるこの問題に答えが出ない限り、
また俺様と同じ考えの元に誰かが動くだろう。必ずな」

上条「その時は、また誰かが止めるさ」

フィアンマ「大切な誰かを守るためにか?」

上条「ああ」

フィアンマ「愉快な奴だ。そんな愉快なお前に愉快な事を教えてやろう」

フィアンマ「どうやらあの女にとって、お前の存在がかなり大きくなっているみたいだな」

上条「……どういう事だ?」

フィアンマ「鈍い奴だ。つまり、あの女はお前のことを…」


フィアンマが何かを言いかけた時、いきなりベツレヘムの星が激しく揺れた

同時に地面が音を立てて崩れ始める

フィアンマの魔術により支えられていたベツレヘムの星全体が、それが途切れたことによって崩壊し始めたのだ
771 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 10:46:13.68 ID:3pDr6vs0

フィアンマ「チッ、時間切れか」

上条「フィアンマ!お前、何を言おうとしてたんだ!?」


フィアンマ「求めよ、さらば与えられんだな。気付いてやれない事は、
時と場合によっては相手を傷つける事に繋がるのはもうわかっているだろ?」


そうは言われたものの、フィアンマの言葉は全く理解できなかった


上条「うわっ!!?」


儀式上の床は殆ど崩れ去り、上条の体が宙に投げ出される






フィアンマ「エリ、エリ、ラマ、サバクタニ……とか言ってみたりしてな。最期に……」




それは、神の子が処刑の際に残した一節の冒頭

ベツレヘムの星は最後にフィアンマだけを取り残し、上条は地上へと落下していった
772 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 10:47:53.14 ID:3pDr6vs0
上条「フィアンマ……」


結局、何が言いたかったのか分からなかった

今更だが、これで良かったのだろうか?

と思う前に、今一番考えなければならない問題がある



上条当麻は空を飛ぶ事ができない



上条「そうだ、忘れてたけど、俺どうすれば良いんだ?」


上空1万メートルの大空に放り出された彼に、生存するだけのスキルは無い



ああ、不幸だ……



父さん、母さん、インデックス、三毛猫、あと小萌先生といつもお世話になってるカエル顔のドクター、
ついでに土御門とか青ピとかその他

今までかなり無茶を重ねてきたけど、今回はマジで駄目みたいです

そう言えば、本棚の裏に隠したアレはどうしようか……このままでは上条さんの趣向がモロバレで、
きっと遺影の前でクラスメイトにクスクス笑われたりとか、お供え物の所にさり気無く飾られたりするんだろうな。
遺影なだけにイエーイってか?もうどうにでもなれよちくしょう!!



「諦めるのはまだ早いですよ」


上条「えっ?」


上空に閃光の様に輝く太陽に中に見えた、ひとつの影

それは大きな白い翼を広げ、天使の様に舞い降りてきた…

というよりは急降下して来たと言うほうが適切かもしれない
773 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 10:49:02.69 ID:3pDr6vs0

上条「サーシャ!ごあッ!!」ドスッ!!

サーシャ「お待たせしました」


急降下しながら勢いを殺さずに上条の胸に飛び込んできたサーシャ

せめてもう少しソフトに飛び込んで来て欲しかったと言いたいところだが、
「文句があるならパラシュートの無いスカイダイビングを楽しんでもらいますよ?」と言われそうなのでそこは我慢する


上条「えっと…」

サーシャ「第一の解答ですが、翼には触らないでください。このまま私と心中したくなければ」

上条「あ、ああ」


ということなので、上条は左手をサーシャの腰の後ろに回し、右手をサーシャの後頭部に回した。
サーシャも空中で上条の体を離さない様に強くしがみ付いているため、まるで抱き合っている様な感じである。

サーシャは器用に翼を羽ばたかせ、威力を殺しながら地上へ落下していく

気圧の影響もあまり受けていないのだが、これもサーシャの力なのかもしれない
774 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 10:51:25.32 ID:3pDr6vs0

上条「ありがとう、サーシャ。お前には助けられてばっかりだな」


ようやく地上が見えてきたおかげか、少し落ち着いた上条は、改めて耳元でサーシャに囁いた


だが


サーシャ「第二の解答ですが、まだ安心できませんよ?」

上条「なんか凄く不幸な予感…」

サーシャ「補足しますが、フィアンマにテレズマの大半を返してしまった事と、
あなたの右腕を接合するために力を使った事により、そろそろ燃料が底を尽きてしまうかもしれないという懸念事項が…」

上条「そうかそうか、それでさっきから俺の体が仰向けのまま落下してるというわけかコラ!」

サーシャ「第三の解答ですが、最悪あなたをクッションにする事で私が生還できるという素晴らしい作戦です」

上条「させるか馬鹿野郎!!!」ジタバタ

サーシャ「逃がしませんよ」ギュッ


上空2000メートルあたりで喧嘩してるのかイチャついてるのか分からないが、何やら楽しそうに騒ぎながら落ちていく二人



そして……


サーシャ「あ…」

上条「どうした?おい……まさか……」


けして右手で触れたわけではない

だが、視界いっぱいに広がる澄み渡たった水色のキャンバスに、フワフワとした白い羽根が大量に散らばった
775 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 10:52:35.42 ID:3pDr6vs0

上条「うおおおおおお!!!上条さんの人生は露出趣味の美少女のクッションになって終わるんですかああああああッッッ!!!」

サーシャ「これはワシリーサの趣味であって私の趣味じゃありません!!」







ズドン!!!






上条「……」

サーシャ「……」


サーシャ「……生きてますか?」

上条「ああ、生きてる……信じられないけど……生きてる…幸福だ……」

サーシャ「まさかあなたの口からその言葉を聞く日が来るとは」


上条「やれやれ、まあ何はともあれ、お互い無事に帰ってこれましたな」

サーシャ「クスッ、そうですね…」


サーシャは上条にしがみ付いたまま、微笑みながら同意した
776 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 10:53:57.18 ID:3pDr6vs0

上条「お?」

ポケットの中で小刻みに震える携帯を取り出す上条


『何だ、生きてたのか』

上条「何で残念そうなんだよお前は」


声はロン毛神父のものだった


ステイル『死体にコールし続けるのも不気味だし、これでも感謝してるさ。
彼女をこんな目に遭わせたクソ野郎をぶちのめしてくれたみたいだしね』

上条「そうだ!インデックスは無事か!?」


『とーま…?』


どうやらいつの間にか電話の相手が変わっていたみたいだ

それは、ずっと聞きたかったシスターの声


上条「インデックス……もう大丈夫なのか?」

インデックス「うん、とうまのおかげだよ」

上条「……」


言わなくてはならない

そして、下されなければならない。嘘をつき続けたことに対する判決を…
777 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 10:55:25.62 ID:3pDr6vs0

上条「…あのな、インデックス。実は…」

インデックス「もう良いよ」

上条「え……?」

インデックス「とーまが私のために嘘をついてたのは分かってるから。でも…」

インデックス「寂しかった……」

上条「インデックス…」

インデックス「とうまは、私の事を心配してくれた?」

上条「当たり前だ。心配しないはずがないだろ」

インデックス「私もずっととうまと同じ気持ちだったんだよ。とうまはいつもいつも自分だけで抱え込んで一人で戦って、
いつもいつもボロボロに傷ついて病院のベッドに居るんだから……だから…」

インデックス「寂しかったんだよ…」

上条「ごめん…」

インデックス「いいよ。とうまはそれでも絶対に戦うことをやめないって分かってるから。
関係無い事に自分から巻き込まれて戦っちゃうのがとうまのアイデンティティだし、別にもう気にしてないよ?」
778 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 10:57:04.76 ID:3pDr6vs0

インデックス「むしろ、巻き込まれるたびに色んな女の子と仲良くなってることの方が気になるかも。
ほら、今とうまの隣に居るその子は誰なの?」

上条「ちょっと待て!これテレビ電話じゃないぞ!どうして分かったんだ!?」

サーシャ「?」

インデックス「やっぱ誰かと一緒に居るんだね」

上条「なっ!ちくしょう、この策士め!!」

インデックス「相変わらずとうまは節操無しなんだよ」

上条「あのなあ、この一大事に上条さんは女の子とそんなピンクな空気を作ってる暇なんか…」

インデックス「暇なんか?」

上条(やべっ、そう言えばレッサーはどうなったんだろ?)

インデックス「やっぱピンクな雰囲気があったんだね」

上条「ちがッ!違うぞ!あれは一方的に迫られたでだな!!」

インデックス「とうま、語るに落ちたってやつなんだよ」

上条「だあーっ!!くそっ!何でだ!魔術以外は食べることが脳の大半を占めてるくせに、
何でこういう時に限って頭をフル回転させてやがんですか!?」

インデックス「そこはかとなく馬鹿にされてる!?とーまが悪いはずなのになんで私が馬鹿にされてるんだよ!?」

上条「だっていつもいつも二言目には“お腹すいた”じゃねえか!
インデックスが頻繁に使うワードランキングを作ったら堂々の第一位に輝くだろうな!」

インデックス「トウマ……」

上条「な、なんだよ…」

インデックス「マルカジリシテイイ?」
779 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 10:59:39.93 ID:3pDr6vs0

上条「そ、そうやってすぐ暴力に訴えるのは良くないぞ?だいたい上条さんの頭は食べても美味しくないし、
そもそも食べ物じゃありません!」

インデックス「確かに中身はスカスカしてそうだね。でも歯ごたえは悪くないんだよ?」

上条「ちくしょう!事実なだけに反論できねえ!歯ごたえは知らないけど」

インデックス「とうま」

上条「なんだよ」

インデックス「とうまは記憶を失う前もそんな感じだったよ」

上条「失う前から脳がスッカラカンだったってことか?」

インデックス「うん、それもあるけど」

上条「あるんかい!」

インデックス「でもね、とうまはとうまなんだよ。記憶があっても無くても、とうまは変わらないんだよ。だからね」



インデックス「私は、記憶を失う前のとうまも、今のとうまも同じくらい大好きなんだよ」



上条「……」

インデックス「とうま?」

上条「あ!い、いやあ!その、なんだ…俺もだな、その…」


少年は顔を赤くしながら慌てふためいた

その後、上条さんは何やらクサイセリフを発動していたのであるが、
現場を見ていたサーシャ・クロイツェフ氏は「ごちそうさま」との感想と、
「五和の恋のハードルは高そうですね」とのコメントを残していた
780 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 11:02:13.94 ID:3pDr6vs0

インデックス「とうま」

上条「どした?」

インデックス「……ううん、やっぱ良いかな…」

上条「何だよ、気になるだろ」

インデックス「……あのね、とうま。本当は私がとうまの記憶喪失に気付いてたって事、フィアンマを通じて知ったんだよね?」

上条「……ああ」

インデックス「フィアンマと私の意識がリンクした時、私の記憶もフィアンマに流れたけど、
同時にフィアンマの記憶も私に流れてきたんだよ…」


自動書記モードの時のインデックスは、本来の意識は心の深層に沈んでしまうためにその時の記憶は無い。
だが、どうやら遠隔制御霊装を介してリンクした意識については、完全記憶能力により脳内に記録されているらしい。


インデックス「フィアンマの心は、何も無かったんだよ」

上条「どういう事だ?」

インデックス「空っぽだったんだよ。誰に対しても思い入れを持つことが無く、誰に対しれも平等に扱い、
敵対すれば誰でも平等に排除する。とても怖くて、とても虚しかったんだよ…」


どこまでも平等に扱う

まるで、道端に倒れ、死んでしまった動物に対しても、道端に落ちている空き缶も同じように考える。
それは別に気取っているわけでもなく蔑んでいるわけでもなく、本当に何の疑問も無くそう考えてしまうのだ。
781 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 11:04:16.89 ID:3pDr6vs0

インデックス「色んな悲劇を見て来て、本気で人類を救いたいと願っていた。
でも、どこかで人間を一つの生き物としか見れなくなっちゃったみたい……
男も女も子供も大人も家族も友人も犯罪者も敵も他人も、同じものにしか見えなくなっちゃったんだよ…」

上条「……インデックス、サーシャ、俺は、間違ってないよな?」


彼も、キャーリサと同じだったのかもしれない

キャーリサがイギリス国民の強さを信じることができず、一人で暴走して死のうとした様に

フィアンマは、もはや人間そのものを信じる事ができなくなってしまったのだろうか?


もしも遠隔制御霊装なんか使わずに、普通にインデックスに協力を仰いでいたら

もしもガブリエルを天体制御だけに使えたら

もしも右腕を奪う方法じゃなくて、もっと違う協力の仕方があったなら

そうしたら、誰も犠牲にならずに世界を平和にできる方法が、フィアンマなら見つけられたのかもしれない

例えそれが無理でも、せめて今日一日は世界中から不幸が消えて、みんなが幸福を享受できる、
そんな世界一凄い魔術ができたのかもしれない


もちろん、世の中はそんな都合良く行くほど優しく作られてはいない。
だからこそフィアンマはこんな方法で世界を救おうとした。

人を救うという事を、数の多い少ないの損得勘定で割り切ってしまえる様になってしまったのだ。

それでも、上条はキャーリサの様に、フィアンマを救えたんじゃないかという考えをどうしても捨てられなかった…
782 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 11:06:06.76 ID:3pDr6vs0

サーシャ「第一の質問ですが、後悔してますか?」

上条「いや、インデックスを助けるために戦った事への後悔は無い。無いけどよ…」

サーシャ「第一の私見ですが、必ずしも誰かと誰かの利害は一致するとは限りません。
ですから、その時は、譲歩するか、妥協するか、或いは想いを通すためにぶつかるという事は避けられないのです」

サーシャ「今すぐ答えを出せとは言いません。ですが、少なくとも我々は、
彼の願いを踏み躙って自分の守りたいものを守ったというのは事実です」

上条「サーシャ……」



サーシャ「当麻、あなたの守った者の笑顔を見てからでも、結論を出すのは遅くはありませんよ?」

上条「……そうだな。アイツに頭をかじられてから考えるとするよ」
783 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 11:07:43.49 ID:3pDr6vs0

【その後】


オルソラ「お茶が入りましたのでございますよ」

神裂「結局のところ、第三次世界大戦は学園都市とイギリス清教の勝利で幕を閉じましたね」

五和「フランスとの戦争は大変でしたけど、結局和平という事になりましたし、何よりみんな生きて帰って来れて良かったです」

アニェーゼ「こちとら戦争の後始末でてんやわんやですよ。勝っても負けても過労死しそうです」

ルチア「戦争の勝者は国であって、シスター個人にはあまり縁が無いですからね。アンジェレネ、お砂糖入れすぎですよ」

アンジェレネ「ところで、サーシャはどうなったんでしょう?クーデターの後にすぐどこかに消えてしまいましたし」

サーシャ「第一の解答ですが、意外とどこかで元気に過ごしていると思いますよ」

五和「ですよね…でも会いたいです…」

オルソラ「生きていれば、きっとそのうちどこかで会えるのでございますよ…」

シェリー「………」




「「「「「おい!!!」」」」」



784 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 11:09:00.18 ID:3pDr6vs0
アニェーゼ「何自然に溶け込んでやがんですかあなたは!?」

神裂「隠密行動を業とする天草式の私ですら気付かなかっただと…?」

サーシャ「実はですね、ワシリーサから皆さんへこんな手紙を預かっていまして」

五和「えっと…これは…」

アニェーゼ「日本語…ですか?いえ、こんな日本語知らねぇ…」

シェリー「芸術(アート)だ…」

ワシリーサ『ス″ ├″ ラ ─ ス ├ ゥ″ィ 于 ェ♪ モ ス 勹 ワ ょ 丶) 愛を ぇ入 めτ。
ナょ ω カゝ 今回 @ 単戈 争 @ 夂几 王里 ー⊂ 、 □ ゙/ 了 成 孝攵 @
再 糸扁 成τ″ ]″ッ 勺 ]″ 勺 ι τ ゑ カゝ ら、 禾厶 @ 可愛 レヽ 廾 ─ ゙/ ャ ちゃ ω を
ι レよ″ら < ξちらτ″ 予頁 カゝ っτ < ナニ″ 、ナ レヽ 。最大主 孝攵 レニ レよ 言舌 を
イ寸 レナ τ ぁ ゑ カゝ ら問 是頁 ナょ レヽ ゎ ょ 。ξれ ι″ゃ ぁ 皆 、ナ ω 、 廾 ─ ゙/ ャ ちゃ ω
ー⊂ イ中 良 < ι τ ぁ レナ″τ ね』
785 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 11:10:54.82 ID:3pDr6vs0

ルチア「暗号ですか?」

オルソラ「目に優しくないのでございます」

アンジェレネ「クッキーおいしいです」

五和「翻訳してみますね」

ワシリーサ『ズドラーストヴィチェ♪モスクワより愛を込めて(はぁと)なんか今回の戦争の処理と、
ロシア成教の再編成でゴッタゴタしてるから、私の可愛いサーシャちゃんをしばらくそちらで預かってください。
最大主教には話を付けてあるから問題ないわよ。それじゃあ皆さん、サーシャちゃんと仲良くしてあげてね』




『追伸、くれぐれも私のサーシャちゃんに手ェ出すなよ?これを読んでる天草式のお前だあああああああああああああッッッ!!!!!!!』




五和「ひいいいっ!!!!」ガクガク

サーシャ「第一の解答ですが、そういう事なのでまたお世話になります」

全員「……」


しばらくの間、全員呆気にとられた顔をしていたが、すぐにみんな同じ言葉が出てきた





           

          『おかえり、サーシャ』







786 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 11:14:28.71 ID:3pDr6vs0
正午を告げる鐘の音で、サーシャは静かに目を覚ます



サーシャ「第一の解答ですが、という夢を見たのです」

五和「ダメですよ、そういうオチは」

サーシャ「また五和の膝枕で眠れる日が来るとは思ってませんでしたから、私にとっては夢の様な現実ですよ」

五和「結局、サーシャちゃんは何のために戦っていたんですか?」

サーシャ「そうですね……」


サーシャ「第二の解答ですが、夢を、いえ、たった一つの幻想を現実にするためですね」

五和「それはどんな幻想ですか?」

サーシャ「こんな幻想です」ギュッ


サーシャは起き上がると、そのまま五和に抱きついてきた


五和「サーシャ…ちゃん////?」
787 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 11:15:50.10 ID:3pDr6vs0

サーシャ「今この瞬間が、私にとっては幻想でした」


そして、いつも理不尽な何かで阻ばれていた幻想は、現実へと変わっていく



サーシャ「第一の解答ですが、これからもよろしくお願いします五和。
今度こそ、もうあなたを悲しませたりはしませんから」


五和「はい♪」




かつて二人で別れを悲しんだ時計塔で、二人は幸せそうに笑い合っていた


たぶん、これからも楽しそうに笑うのだろう。そのために戦ってきたのだから


今まで苦しんだ分だけ、傷付いた分だけ、彼女たちは幸せを手に入れる


もう亡命は必要ない


サーシャが求めた全てはここにあるのだから


だから、これからは……




サーシャ「自由になりました」【完】




788 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/26(日) 11:24:24.79 ID:3pDr6vs0
ちょうど一カ月と半月ですね。ようやく完結しました。
フィアンマは原作の方ではどうなるかは分かりませんが、一応ここでは実は良い奴だった
んじゃね?という展開で書かせていただきました

もはや名前すら登場させられなかった美琴先生やはまづら、滝壺、むぎのんは
原作の方で素晴らしい活躍をしてくれると思うので、そちらの方に期待します

それでは二度目になりますが、今回も最期まで見て下さったみなさんに御礼を言いたいと思います
本当にありがとうございました。
789 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/26(日) 11:35:11.69 ID:mK9Qb2DO
乙! ちくしょう第二の女子寮編開始を予期させる夢に騙されたwwww サーシャちゃんマジ天使悪魔
全編通して面白かったよ
790 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 12:10:03.90 ID:QaHZzWQo
乙!
よくこんなに先の展開を想像できるな
791 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 12:22:46.44 ID:IperKf6o
おもしろかったよ おつ
792 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/28(火) 15:00:38.93 ID:ic1sK5co
激しく乙
793 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:10:07.14 ID:X9gv6zs0
外典【サーシャによる福音書】

この物語はサーシャ・クロイツェフの日常を淡々と描くものです。
過度な期待はしないでください。

794 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:11:40.98 ID:X9gv6zs0
【フィアンマの動く天空の星ベツレヘム】


フィアンマ「………」

サーシャ「………」

フィアンマ「暇だからしりとりでもしようか」

サーシャ「……しりとり(ボソッ)」

フィアンマ「リス」

サーシャ「スクリュードライバー」

フィアンマ「馬刺しソーダ」

サーシャ「そんなカクテルありませんよ」

フィアンマ「あるんだなこれが」

サーシャ「マジですか?」

フィアンマ「マジだ」
795 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:12:59.98 ID:X9gv6zs0

サーシャ「分かりました……ダンロップは先に行く」

フィアンマ「クリスマスキャロル」

サーシャ「ルパンはとんでもないものを盗んでいきました」

フィアンマ「タイ焼き」

サーシャ「キスしてください」

フィアンマ「イヴァン・イリイチ」

サーシャ「近くに居ても良いですか」

フィアンマ「カーテナ・セカンド」

サーシャ「どうして私の気持ちに気付いてくれないのですか」

フィアンマ「カラカス」

サーシャ「好きになっても……いいですか?」

フィアンマ「お前さっきから『か』ばっかじゃないか」

サーシャ「ダメですか?」

フィアンマ「ダメだ」
796 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:13:58.64 ID:X9gv6zs0

サーシャ「では仕切り直しましょう。しりとり」

フィアンマ「リング」

サーシャ「グノーシス派」

フィアンマ「遥か心に刻んだ夢も未来さえ置き去りにして」

サーシャ「天上天下」

フィアンマ「限界など知らない」

サーシャ「意味無い」

フィアンマ「この力が光散らす」


サーシャ&フィアンマ「「そーのーさーきにー遥かな―想いをー♪」」


フィアンマ「やるな、さすがは俺様が目を付けただけの事はある」

サーシャ「第一の解答ですが、あなた伊達に神の右席のリーダーを名乗っているわけではないみたいですね」


たぶん誘拐後にこんなやりとりがあったのでしょう
797 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:15:51.21 ID:X9gv6zs0

ルチア「……」

サーシャ「……」

ルチア「シスターサーシャ?」

サーシャ「何でしょうか?」

ルチア「なぜあなたのお腹はそんなにも膨らんでいるのでしょうか?」

サーシャ「第一の解答ですが、受胎テロです」



【サーシャが妊娠しました】




サーシャ「そんなわけないでしょう」

サーシャ「第一の解答ですが、あれは今から10時間前、いえ1時間前でしたっけ?とにかく私にとってはつい先程の事です」

サーシャ「それは五和に会いに日本人街へ遊びに行った、その帰りの事でした」
798 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:16:51.52 ID:X9gv6zs0

【回想】


サーシャ「……」


サーシャの目の前には、どこかの食品会社の商号が記されたダンボール箱があった

しかし彼女はどこぞの蛇ではないので、ダンボールの事などどうでも良い。
問題はそのダンボールの中身である。


サーシャ「捨て猫でしょうか?」

猫「にゃー」

サーシャ「首輪が付いてますね」


どうやらこの捨て猫、元は誰かに飼われていたみたいである

大きさから言うと、生まれてまだ1年もたっていないだろう
799 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:18:24.62 ID:X9gv6zs0

猫「うにゃん(じーっ)」


西洋では不吉と呼ばれていた黒猫。実際、魔術的な観点から見てもそれは単なる迷信である。
例えばここイギリスでは、昔のケルトでは黒猫は不思議な力を持っており、人知を超えた予知能力があるとされていた。
他にも自宅の玄関先に見知らぬ黒猫がいたら繁栄がもたらされる。結婚する時に黒猫が横切ると幸せになる。
黒猫が道を渡ったり、自宅に入ってきたら大変縁起が良い。
結婚祝いに黒猫を送ると、新婦に幸せが訪れる。
黒猫が住みついたら、幸運がやってくる。

などなどと、イギリスでは幸運の猫とされている

イギリスだけでなく、フランスやドイツ、ベルギーでも似た様な逸話があるのだが。

黒猫が不吉の原因として嫌われていたのは主に魔女狩りが行われていた時代であり、
上記の様な黒猫の神秘性が仇となってこんな扱いを受けたのかもしれない。まあ何にせよ、
やたら持ち上げられたり迫害されたりと、人間の都合に振り回されっぱなしな黒猫にとってはかわいそうな話である。

「ただご飯を食べて日向ぼっこしながらお昼寝して、たまに飼い主に甘えるだけの俺達が何でこんな目に遭わなくちゃならないんだ!」

と叫びたい気分だろう。いやはや風評というか迷信というか、人間の思い込みや扇動というのは恐ろしいものだ。


話が逸れたが、この黒猫さん、不思議なのはその瞳である。

サーシャの赤い瞳とは対照的とも言える青い瞳。宝石で言えばアクアマリンの様な淡い色である。

その淡いスカイブルーの瞳が、サーシャの赤い瞳をじーーーーーーーっと覗き込む


サーシャ「………」

猫(じーーーっ)
800 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:19:15.70 ID:X9gv6zs0

どうだい?このしなやかな筋肉は?

飼いたいだろ?飼いたくてたまらないだろ?


サーシャ「いえ、第一の解答ですが、私の住まいは寮なのでペットは…」


アンタ、シスターなんだろ?

ここで可愛い子猫が飢えて死ぬのを見過ごすのかい?

迷える子猫には神様の御慈悲ってヤツぁねぇのかい?


サーシャ「し、しかし…」


ああ、もうすぐ冬かぁ…

このままじゃ寒さで凍え死ぬかもなぁ…

ああ、なんだか目の前が暗くなってきた……


サーシャ「むむむ……」


さあ、どうする?
801 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:20:49.02 ID:X9gv6zs0

ルチア「……」

サーシャ「……」


ゴソゴソ


ルチア「底抜けに元気な赤ちゃんみたいですね…」

サーシャ「神の子2号ですから」


ゴソゴソ(胸の方に移動)


サーシャ「……」

ルチア「数秒見ない間に随分と立派に育ちましたね」

サーシャ「成長期ですから」


猫「みゃあ!」


ルチア「……」

サーシャ「……」

ルチア「元気な子猫が産まれましたね」

サーシャ「第二の解答ですが、実は私の父親は猫なのです。ですから私は猫娘というわけで、猫の遺伝子が……」


……


サーシャ「ダメですか?」

ルチア「私にその父親を紹介できたら考えてあげなくもないですよ?(にこっ)」
802 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:22:47.51 ID:X9gv6zs0

【サーシャの部屋】


サーシャ「というわけで、どうやらダメみたいです」

サーシャ「ですが、ルチアは厳しい人ではありますが、冷たい人ではありません。
引き取り先が見つかるまでここで飼っても良いという事になりました」

猫「そうか。それは良かった」

サーシャ「……」

……………

サーシャ「気のせいですね」

猫「ああ、気のせいだ」

………

猫「どうかしたのか?」

サーシャ「今すぐあなたを捨てたくなりました」

猫「あの女よりお前の方が100倍冷たくないか?」

サーシャ「第一の解答ですが、あなたが喋った時点でアガペーゲージが0になりましたよ」

猫「猫が喋るのはそんなにおかしいか?」

サーシャ「その幻想をぶち[ピーーー]!」ガシッ!

猫「ちょっ!やめろ!窓から投げようとするな!!動物愛護法違反だぞ!!」

サーシャ「お前の様な動物がいるか」

猫「居るから!天界には普通に居るから!!」



サーシャ「……天界?」

猫「あっ……」
803 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:24:20.83 ID:X9gv6zs0

猫「驚くな。実は私はガブリエルなのだ」

サーシャ「へぇ」

猫「反応薄いな。もっと驚けよ」

サーシャ「第一の解答ですが、驚くなって言ったじゃないですか」

猫「やっぱ驚け」

サーシャ「うひゃあ(棒)」

猫「そこはかとなくムカツク」

サーシャ「第一の質問ですが、なぜ大天使がここに居るのですか?しかも猫に乗り移って」

猫「不思議な事に、この猫は大天使のテレズマを納めるだけの器があったみたいだ。お前と同じ様にな」

猫「性質は私と同じ後方の青。この猫の目が青いのは、その性質のせいだろう」

サーシャ「ていうかぶっちゃけ誰でも良いんじゃないですか?」

猫「そんな事は無い。お前の器は確かな才能の証だ」

サーシャ「フィアンマ戦で無茶をしたせいで、アックアみたいに器がボロボロになってしまいましたけどね」

猫「ドンマイwwwwww」

サーシャ「やっぱ捨てるか」

猫「お前は結論を出すのが音速過ぎる」
804 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:25:41.88 ID:X9gv6zs0

猫「それに、お前には恩があるはずだ。私がお前と力をリンクさせた事で、お前は幾度と無く死の運命を逃れてきた」

サーシャ「第一の解答ですが、私は過去にこだわらない女ですから」

猫「最悪だコイツ。あの女子寮の戦いでもお前に力を貸してやっただろ?お前の仲間たちを蘇生させてやったのを忘れたのか?」

サーシャ「そう言えば、そんな事もありましたね」

猫「なんかさらりと流されたけど、あれマジ大変だったから」

猫「あの後ぼっちゃまには怒られるわ、死者を管理するウリエルにはネチネチと文句言われるわでストレスがマッハだったから。分かる?」

サーシャ「第二の質問ですが、ロシアでは私を殺そうとしてましたよね?ていうか裏切ってフィアンマに寝返ったのを忘れたのですか?」

猫「あれは仕方ない。私はフィアンマに操られていたからな」

サーシャ「原作では自分から協力していた様に書かれていた覚えがありますが」

猫「………」

サーシャ「お帰りはあちらですよ。窓からでも結構です」
805 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:27:38.90 ID:X9gv6zs0

猫「頼む!匿ってくれ人間!私はあのピチピチマッチョとウニ頭と赤目もやしにやられてバラバラにされたんだ!
だからこのままでは天界に帰れない!」

サーシャ「でっていう」

猫「この大天使様が人間ごときに頭を下げてるんだぞ?」

サーシャ「第二の解答ですが、それが人に物を頼む態度ですか?」


猫「何でだよ!!何で誰も私を助けてくれねェンだよ!!オマエは十字教徒だろォが!
神の子の教えを信じる十字教徒なンだろォが!!だったら助けろよ!!神様を信仰してンなら、
そいつをちっとは使いっパシリの私にも向けてやれってンだよ!!
私みてェな高貴な大天使が今まで立ち上がっていた方がおかしかったンだよ!!
どォみたって場違いだろォがよ!!何をどォしたって、私は血みどろの解決方法しか選べねェンだよ!!
何で私がこンな事しなくちゃならなかったンだ!!四大属性が歪んでなければ、最初からこンな間違いなンか起こらなかったンだ!!
私だって、こンなに苦しむ事はなかったンだよォォおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

サーシャ「あの人と違って随分と自分本位な主張ですね」
806 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:29:11.83 ID:X9gv6zs0

アニェーゼ「サーシャ?サーシャの部屋から雄叫びが聞こえましたが、誰か居るんですかい?」

神裂「物凄いテレズマを感じるのですが」


ちょっとガブリエルがお邪魔してます


サーシャ「なんて言えるわけないでしょう!静かにしてください!」

猫「何で?」

サーシャ「ここであなたが大天使だとばれたら神裂に真っ二つにされますよ?」

猫「別に良い。私自身はもうバラバラだし、被害を受けるのはこの猫だけだから」

サーシャ「あなたはそれでも天使ですかこの外道が!!」

猫「神裂くゥゥゥゥゥゥン!!!!かかってこいやァァァァァ!!!!」

サーシャ「分かりました!分かりましたから静かにしてくださ!!」
807 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:30:22.52 ID:X9gv6zs0

猫「さて、今日からここでお世話になるわけだが」

サーシャ「あなたの事はなんて呼べばいいのでしょうか?」

猫「普通にガブリエル様と呼べば良いだろう」

サーシャ「死んでも様なんて付けたくはありませんが、さすがにガブリエルなんてそのまま過ぎるでしょう。
あなたが大天使だとバレたら、前述の通りガ/ブ/リ/エ/ルになりますよ」

猫「五分割!?でもこの名前は神から与えられたものだから、勝手に変えるわけにはいかないんだよ」

サーシャ「第一の解答ですが、神の命令無しに人を殺そうとしてたあなたが今更何を言ってやがりますか」

猫「人命なんか興味無いし」

サーシャ「悔い改めろよこの悪魔」

猫「天使だから。そんな事より、私の名前はどうするのだ?」

サーシャ「第ニの解答ですが、キキでどうですか?」

猫「何そのジブリみたいな名前」

サーシャ「フィアンマもハウルに似てますし、問題無いでしょう」

猫「せめてフィアンマが魔女っ子だったらな。つーかガブリエルと関連性が無いから駄目だ」
808 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:31:02.47 ID:X9gv6zs0
サーシャ「では、借り暮らしのガブリエッティで」

猫「だからジブリから離れろよ」

サーシャ「となりのガブリ」

猫「聞けよ!人の、いや猫の話を聞けよ!」

サーシャ「耳をすませガブリエル、千と千尋とガブリエル、紅のガブリエル、
平成天使合戦ガブガブ、風の谷にガブリエル、フィアンマの動く星」

猫「監督の作品で遊ぶなこの愚か者が!あと最後のはもう私の名前すら無いだろ!!」

サーシャ「ああおもしれぇwwww」

猫「もうやだこのSS」
809 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:32:26.30 ID:X9gv6zs0

サーシャ「第一の解答ですが、ガブリエルはイスラム教ではジブリールと呼ぶそうです」

猫「まあそうだな。コーランの内容をムハンマドに教えたのは私だし」

サーシャ「というわけで、略して“ジブリ“でどうですか?」

猫「どうあってもスタジオジブリから離れられないみたいだな」

サーシャ「これが嫌ならもう好きにしてください」

猫「分かった。仕方ないからジブリで手をうってやる」

サーシャ「ジブリ、お手」

ジブリ「にゃん」バリッ!

サーシャ「誰がひっかけと言いましたか」
810 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:33:44.64 ID:X9gv6zs0

アンジェレネ「あっ、猫ちゃんだ♪」

アニェーゼ「サーシャの頭の上に乗ってるソレですね、ルチアが言ってたのは」

オルソラ「青い目の黒猫は珍しいのでございます。通常は種としては確立されていないので、
シャム系の遺伝子が入っている場合に稀に見られる事があるのでございますよ」

神裂「……あの子猫から違和感を感じるのは私だけでしょうか?」

サーシャ(さすが神裂、できる女ですね…)

ジブリ「おい、ジロジロ見てんじゃねぇぞ堕天使エロメイド」

神裂「!?」

アンジェレネ「あれ、今その猫しゃべ…」

サーシャ「気のせいです!」

アニェーゼ「そ、そうですよね!猫が喋ったりするわけねぇですよね!」

猫「わん!」


………


神裂「今わんって鳴きましたよね?」

オルソラ「あらあら、とても芸達者なのでございますね」

サーシャ(自重しないと本当にドッグフード食わせますよ)

猫(人間って面白ッ)


こうして女子寮に新しい仲間が増えたのでした
811 :1 [saga]:2010/09/29(水) 13:36:46.11 ID:X9gv6zs0
二日連続で寝坊して講義に行きそびれたんだが大丈夫だろうか?

最後のセリフでジブリが猫に変ってますけど気にしないでください
812 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/29(水) 15:10:19.30 ID:NsnLMMDO
乙! また続きがきてよかった
ガブたんどうしちまったんだwwww
813 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/29(水) 18:33:19.37 ID:y2zgkI6o
フィアンマの動く星クソワロタwwww
814 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/29(水) 21:12:07.18 ID:6VwYZ8Qo
なんか始まってたww
乙wwww
815 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/08(金) 00:31:33.38 ID:nAP7A.DO
気長に待ってる
816 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/09(土) 23:46:12.51 ID:3Cla.gs0
最近ちょっと遅れ気味で申し訳ありません

まだSSが出来上がってないのですが、とりあえず過去のメモからひっぱり出してきた下書き
を投下します

もしも「サーシャが学園都市に亡命したら」あのときBが選択されていたらこんな感じでした
817 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/09(土) 23:48:12.57 ID:3Cla.gs0

【とある暗部のマジ天使】


サーシャ「第一の解答ですが、ご飯とかくれると嬉しいです」

一方通行「……」

サーシャ「第一の質問ですが、聞いてますか?第二の質問ですが、なぜ無視するのですか?
なぜ無かった事にして部屋に戻ろうとするのですか?」



一方通行「俺ァ何も見なかった。ベランダに変な服着た女なンて引っかかってなかった」

一方通行「全ては暗部の仕事で疲れに疲れ切った俺が見た幻覚だ……戸締り良し」



一方通行「簡単なンだよ現実逃避なンざ、俺を誰だと思ってやがる…」



ガシャン!!



幻覚はバールと金槌で窓ガラスをぶち破る


一方通行「ひィっ!!!」

サーシャ「ご飯くれるとうれしいです」
818 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/09(土) 23:50:01.42 ID:3Cla.gs0

一方通行「ったく、どーすンだよこの惨状。しかも誰だよ?なンだよ、なンのプレイだよその格好はよォ」

サーシャ「第一の解答ですが、ロシアから亡命してきました。かれこれ三日間何も口にしていません」

一方通行「解答も何も俺の質問とか総スルーじゃねェか。腹へってンなら、
そこらじゅうに散らばってるガラスの破片でも食ってろよ」

サーシャ「第二の解答ですが、それができたらすでにあなたの部屋のガラスというガラスを全て食べ尽くしてますよ」

一方通行「それはそれで図々しい野郎だなオイ」

サーシャ「第三の解答ですが、ばたり」(バタッ)

一方通行「テメェの最期の答えは倒れる擬音かよ!!なンなンだよクソがッ!!!」
819 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/09(土) 23:51:34.15 ID:3Cla.gs0

サーシャ「第一の解答ですが、施しに感謝します」


サーシャは一方通行が買ってきたサンドイッチや弁当にパクついている。
三日間も食べていないというので、かなりの勢いでガッつくと思っていたが、
意外と食べるスピードは遅い。まるで小動物でも見ている様な気分だ。


一方通行(クソッタレ、なンで俺がこンな事…)


本来ならば迷うことなくベランダから放り捨てていただろう。
しかし、こんな怪しい拘束衣を着た死体が自分の住んでるマンションの真下で発見され、
さらには自分がその怪しい拘束衣を着た死体を放り投げる瞬間を目撃したという人物が現れたとしたら…

どんな事になるかは想像に難くないだろう

仕方ないのでコンビニで適当に食べ物を買ってきてやったわけだが

せめてもの嫌がらせに、飲み物は「練乳いちごコーンポタージュ」という謎のゲテモノドリンクを買い与えてやった

俺がここまでこの変な女に振り回されてンだ、せめてこの変な飲み物で悶絶する姿でも拝まなきゃ割に合わねェ。と言ったところか。


サーシャ「私見ですが、この練乳いちごコーンポタージュというのはなかなか美味ですね」

一方通行「……」


その日、学園都市最強の能力者は、上条当麻と木原クンの時以来の敗北感を味わった
820 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/09(土) 23:53:59.14 ID:3Cla.gs0

サーシャ「第一の解答ですが、ありがとうございました。この恩は忘れるまで忘れません。」

一方通行「忘れねェ努力をしろ」

サーシャ「第二の解答ですが、空腹が満たされた事により睡魔が襲ってきました」

一方通行「今ここで寝たらもう次に目を覚ます事はねェぞ。確認するが、
まさかテメェは俺が食後の寝床を用意してやる様な親切な善人に見えンのか?」

サーシャ「Да」

一方通行「Нетだ馬鹿野郎。食い終わったンならさっさと出てけ」

サーシャ「第一の質問ですが、私はどこへ行けばよいのでしょうか?」

一方通行「ンな事俺がしるかっつーの。…そういや、オマエ亡命してきたとか言ってたな?」

サーシャ「はい」

一方通行「そォかそォか。じゃあ今から俺が、オマエを引き取ってくれる親切な奴をここに呼ンでやるから、それまで寝てろ」

サーシャ「第二の質問ですが、大丈夫なのでしょうか?」

一方通行「何が?」

サーシャ「第三の解答ですが、寝ている間に襲われないかと」

一方通行「そンときゃ俺がなンとかしてやる」

サーシャ「そうではなくて」

一方通行「あン?……テメェ、まさか俺が襲うかもしンねェとかそういう話か?」

サーシャ「第四の解答ですが冗談です、ロシアンジョークです」

一方通行「寝てェならさっさと寝ろ!!クソガキがッ!!」

サーシャ「zzzzzzzz ...」

一方通行「早ェなおィ!!」
821 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/09(土) 23:56:13.42 ID:3Cla.gs0

一方通行「ったくよォ……」


prrrrrr


一方通行「黄泉川、俺だ。不法侵入者を捕まえたから引き取ってくれ。そンでもって、
今度は二度とここに来れない様なとこに飛ばしてやれ。ああ、大至急な。」


pi


一方通行「やれやれ、とンだ災難だったな。ま、一件落着ってことd」

携帯電話「おい、仕事だ、早く出ろよ。おい、仕事」(ピッ)

一方通行「……テメェか。で?今回は何の仕事だ?」

土御門「迷子の子猫捜しだにゃー」

一方通行「グループはいつからボランティア団体になったンだ?」

土御門「まあ聞けよ、そいつは学園都市の人間じゃない。いわゆる不法侵入者ってやつだ」

一方通行「そンなもンよくある話じゃねェか。だいたい、この街は対不法侵入の警備態勢が馬鹿みてェに甘ェンだよ」

土御門「ああそうだな。けどそんな事はどうでもいい。問題は、そいつがどういう人物かって話ぜよ」
822 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/09(土) 23:57:37.78 ID:3Cla.gs0

一方通行「俺ら暗部組織が動かなきゃならねェほどのVIPって事か。相手は大統領か何かか?」

土御門「そんな代えの利くレベルの人間じゃない。そいつは、ロシアおよびローマにとってはかなりの重要人物だ」

一方通行「戦争相手か、なるほど話が見えてきやがった。で?そいつの特徴は?」

土御門「そうだな、肌は白、髪は金髪の女の子だ。打ち止めが後2、3年くらい成長した姿ぜよ」

一方通行「なンでそこでガキが出てくンだよ。つーか、その重要人物ってのもガキか?」

土御門「ただのガキじゃないぞ。まあ、魔術に疎いお前に言っても分からんだろうが」

一方通行「マジュツ?特徴はそれだけか?外人なンざ別に珍しくねェだろ」

土御門「これが一番特徴的なんだが、そいつは変な服を着てる」

一方通行「あン?」

土御門「なんつーか、ベルトだらけの拘束衣みたいな服だな」

一方通行「……」

サーシャ「zzz」


一方通行は何気なく、泥の様に眠っているサーシャの方を見た


一方通行「土御門、そいつはロシアからの亡命者とかじゃねェよな?」

土御門「ああそうだが、あれ?お前にその事説明したか?」

一方「ビンゴだクソッタレ。すぐに下っ端をよこせ。場所は、人材管理が住ンでたマンションだ」

土御門「おい、アクセラ」(ピッ)

一方「こいつはまたフザケタ展開を用意してくれたもンだ。クソッ!どうする!?」
823 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/10(日) 00:00:58.66 ID:2oBjgr.0

サーシャ「という感じでした」

サーシャ「ちなみに、私のガブリエルの翼は、実は一方通行の黒い翼による影響が大きいのです。
禁書最強の武器と言えば、やはり翼ですからね」

サーシャ「え?第三の腕?それは食べ物ですか?」


イギリス編でのサーシャは、一方通行みたいに仲間が居ながらも打ち止めを守るために孤軍奮闘する姿を参考にしていました。
イギリス清教の仲間を裏切って新たなる光と手を組んでクーデターに参加しながらも、
楽しかったイギリス清教での日々を取り戻すために、一人で最大主教と交渉したりキャーリサと戦ったりと色々と立ち回っていましたね。

でも新たなる光も利用しているだけでなく、彼女達も大切な仲間として認識している所は
一方通行とは180度違うヒーロー像です。基本的に表面を参考にしただけであって、
本質そのものは全く別の主人公として描けたかなと思っています。

エイワス的には、生まれ持った意思に従って戦った結果、人々からヒーローと讃えられる上条さん。
過去に犯した過ちと善への渇望が原動力である一方通行。力は無くとも誰かのために戦う浜面。

サーシャの場合はどれに当たるのでしょうか?

よくよく考えたら、サーシャの立場は脇役的な感じがしないでもありませんが…


サーシャ「22巻を読んだ方は、このSSのロシア編はどの様な感想を持ったのでしょうか?
全体的には外れていますが、当たってる部分が無い事も無いというのが私見です」

サーシャ「まあ一番の誤算は、フィアンマが……やめておきましょう。公式発売日ではなですからね」

サーシャ「第一の解答ですが、それではまた後日」


824 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/10(日) 00:18:00.81 ID:/E3M.J.o
乙! これはこれで読みたかったww
このスレは今後はどうする予定なんだろう?
825 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/20(水) 21:43:02.20 ID:pvR09B60
復活キタ!これでかつる!
826 :1 [sage]:2010/10/22(金) 00:21:15.42 ID:j0zq2VE0
久しぶりに投下します
827 :テッラの診療所2 [sage]:2010/10/22(金) 00:24:00.92 ID:j0zq2VE0


アンジェレネ「ふああぁぁぁ……」


ソファーの上で少女は身を起こして軽く背伸びをすると、ぼやけた視界をクリアにするために軽く目を擦った。
自分が横たわっていた場所に手を置くと、
そこで寝ていた自分の体によって暖められ続けた温もりが、未だ冷めずに残っているのを感じられる。
どうやら自分はかなりの時間をここで惰眠を貪る事に費やしてしまったらしい。


アンジェレネ「………」


修道服の衣擦れが印象的に聞こえる程のシンとした静寂。
ここはそれなりに多くの人間が住んでいる寮だ。
ならば何かしら誰かが居る様な気配を感じるのが普通である。

しかし、それを微塵も感じられない。物音一つしない。

まるで、たったたった一人だけこの世界に取り残されてしまったかのように……

もしも今が真っ暗な夜だったら、とてもじゃないが孤独という恐怖に打ち勝つ事などできず、
一人で震えながら同僚のルチアやアニェーゼの名を呟いていただろう。
幸いにも今は……時計を確認してみると、ちょうど午後3時だ。
怪談話をするには早すぎるし、真昼のオバケなど想像するだけでマヌケ過ぎて笑いがこみ上げてくる。
828 : [sage]:2010/10/22(金) 00:27:46.25 ID:j0zq2VE0
ちゃんと名前を1に変えたはずなのになぜ変える前の名前に戻ってる?
気にしないでください。


そう言えば、ちょっと小腹が空いた気がする。
寝ていただけとは言え、それでも人間はカロリーを消費するのだ。
でなければ、寝ていれば永遠に死なないと言う無茶苦茶な理論が成立してしまうだろう。

となれば、やる事は一つ。
アンジェレネはソファーからとび上がり、食糧を漁るために食堂へと足を運ぶ事にした。



食堂に近づくにつれ、美味しそうな匂いが鼻腔を擽る。
どうやら、誰かが料理をしているみたいだ。

それはつまり、食糧を漁るという計画の破綻を意味している。

しかし食糧を漁るのがダメなら、味見という名目で食べ物をお腹に入れる事ができればそれで良い。柔軟な発想が大切だ。


オルソラ「まあまあ、アンジェレネさん。夕食の時間には少し早いのでございますよ?」

アンジェレネ「お手伝いは必要じゃありませんか?」


ニヤニヤとしながら少女は露骨に味見を要求した。

この少女の食欲はすでに周知の事実である。
オルソラも特に嫌な顔をせず、ニコニコと笑いながら皿にスープを注いだ。
829 : [sage]:2010/10/22(金) 00:29:22.46 ID:j0zq2VE0

オルソラ「本日の料理は特性のスープでございます、パンにつけて食べるとより楽しめるのでございますよ」


オルソラはニコニコと笑いながら、輪切りにしたパン持った皿と、スープをアンジェレネの座るテーブルにそっと差し出した。


アンジェレネ「良い匂いですねー」


口調がどこかの右席みたいになっているが、アンジェレネは視線は目の前のスープに釘付けだ。
この真っ赤なスープはトマトだろうか?
粒がひとかけらも無くサラサラとしているが、おそらくそうなるくらいに丁寧に濾したのだろう。
表面に散らされた緑色のバジルが色どりを鮮やかにしている。


アンジェレネは赤い液体を救ったスプーンにそっと口をつけた


アンジェレネ「美味しいです!」

オルソラ「うふふ、喜んでいただけて何よりでございます」


ほのかで心地の良い酸味が良い感じだ。
隠し味は相変わらずオリーブオイルであるが。
830 : [sage]:2010/10/22(金) 00:30:41.55 ID:j0zq2VE0

具はどうやら肉だけの様だ。まあこれだけふんだんにトマトが使われているのだから、栄養面では問題無いのだろう。

アンジェレネはスプーンで肉を救い、咀嚼する…

少し硬くて酸味が強い。鶏肉でもない牛肉でもないこれは…


アンジェレネ「シスターオルソラ、これは何のお肉ですか?」

オルソラ「はい、そのお肉はですね……」




………………




カラン!とスプーンが床に落ちた


アンジェレネ「冗談……ですよね……?」

オルソラ「ですから、特性のスープですと言ったではございませんか」
831 : [sage]:2010/10/22(金) 00:32:08.49 ID:j0zq2VE0

あまりにも信じられなさ過ぎる言葉を聞いたアンジェレネは、驚愕で目を見開き、顔を強張らせている。

それとは対照的に、オルソラは相変わらず「美味しいですか?」とでも言いたそうな顔でニコニコと笑っている。

しかし違う…

半開きになっているその目には光が無い。口は両端を釣り上げ、緩やかなカーブを描いている。

狂気と言う言葉以外に思い浮かばないそれは、アンジェレネの知っているオルソラの笑顔では無かった。


ガン!と椅子を倒しながら、アンジェレネはオルソラから逃げる様に食堂から飛び出す。


誰か!誰でも良いからこの事を知らせなきゃ!!
832 : [sage]:2010/10/22(金) 00:33:50.00 ID:j0zq2VE0

アンジェレネは必至になって廊下を走っていた

途中、自分が食べてしまった物を思い出し、凄まじい吐き気に襲われる。
それを美味しいと思ってしまった事への深い罪悪感という名の刃物に心をズタズタに引き裂かれそうになる。

それでもこみ上げてくる胃液と赤い液体に耐えながら、アンジェレネはこの事実を話せる誰かを探して必死に走り続けた。

そして…


アンジェレネ「ルチアッ!!!」


背の高い見知ったシスターの後ろ姿。
厳しい性格だが、アンジェレネにとっては本当の姉の様な存在だ。


ルチア「アンジェレネ? どうかしたのですか?あと廊下は走ってはいけませんよ」

アンジェレネ「ごほっ! はぁ、はぁ……」

ルチア「大丈夫ですか? 一体何があったのです?」


涙目になりながら息を切らし、せき込むアンジェレネの背中をルチアは優しく撫でる。
833 : [sage]:2010/10/22(金) 00:34:54.47 ID:j0zq2VE0

アンジェレネ「大変なんです! オルソラが!! オルソラが…」

ルチア「オルソラが?」

アンジェレネ「あっ…ごぼっ!」


次の言葉が出てこない。

思い出してしまった。ルチアに会えた喜びで忘れかけていたそれを…


強烈な吐き気がアンジェレネを襲う。

むしろ吐き出してしまいたい。全部吐き出せば、まだ戻れそうな気がする……


アニェーゼ「どうしたんですかアンジェレネ?」

アンジェレネ「アニェ…ゼ……」


顔を上げると、そこには自分と同じくらいの背丈の少女が立っていた。

ズルズルと何か重たい物を引きずりながら…
834 : [sage]:2010/10/22(金) 00:35:55.99 ID:j0zq2VE0
アンジェレネ「アニェーゼ…それは……?」


おそるおそる聞いてみる。


だがはっきり言って知りたくない。その赤黒い肉の塊が何かなんて知りたくは……


アニェーゼ「こいつはただの豚の死骸ですよ」


それが本当だったらどれだけ救われた事だろう。
だが、そんなはずはない。

赤黒く変色したそれは、所々パーツこそ欠けているが、まだそれが何なのか判別できるくらいには原型を留めている。


?「う……あ……?」

アンジェレネ「ひっ!!」


醜い肉塊がかすれた唸り声を上げ、アンジェレネは思わず後ずさってしまった。


アニェーゼ「まだ生きてやがったんですか」


ドゴッ!と肉塊に蹴りを入れる。すると、肉塊は赤黒い汚物を吐き出しながらもぞもぞと蠢いた。
835 : [sage]:2010/10/22(金) 00:36:44.32 ID:j0zq2VE0
ルチア「ちゃんと殺しておかなかったんですか?」

アニェーゼ「新鮮な方が美味しいじゃないですか」

アンジェレネ「何…これ……?」


もう限界だ。いい加減頭がどうにかなりそうだ。

目の前に居るのはルチアやアニェーゼじゃない。似てるけど違う、あれは悪魔だ。ルチアとアンジェレネの姿を借りた悪魔だ。


アンジェレネ「あは…あははははっ……」


引き攣った顔で苦笑いしながらアンジェレネはゆっくりと後ろに下がる。

ダメだ、この寮はもうどこにも安全な場所などない。早く外に逃げないと……


そして、アンジェレネは足の裏の違和感に気付いてしまった。


後ずさっている時に何かを踏んでしまったらしい。
感触からして何か金属的な硬い物の様だが……


おそるおそる足を上げてみると、それは銀色のロザリオだった。


誰もが知る六端の十字架。十字教の象徴にして神聖なる教徒の証。

それを踏みつけてしまった。
836 : [sage]:2010/10/22(金) 00:38:21.33 ID:j0zq2VE0

バッ!!と同時にこちらを振り向くルチアとアニェーゼ。

その目はもはやその少女を同僚のアンジェレネとして見てはいなかった。
まるで、この世で最も汚らわしい生物を見る様な憎悪と嫌悪の入り混じった眼差し。


ルチア「失望しました。アンジェレネ、まさかあなたがこんな事をするとは…」

アニェーゼ「知ってますか? 異教徒は人間じゃねぇんですよ? 豚やロバと同じ家畜、いいや、あなたはそれにも劣る醜い肉塊です」


アンジェレネはふと、アニェーゼが引きずっていた肉塊を見た。
もうそれは動くのをやめ、スーパーに並ぶ前の清肉場で屠殺された家畜の様になっている。


自分もこれと同じ……?

自分もあんなふうになってしまうのか……?



さあ、異端審問の始まりですよ……


837 : [sage]:2010/10/22(金) 00:40:16.74 ID:j0zq2VE0

アンジェレネ「えっ…」


気が付くと、いつの間にか風景が変っていた。
薄暗い石造りの部屋。鼻を付く血と汗の匂い。冷たい鉄の感触。


アンジェレネ「ここは…処刑塔……?」


アンジェレネ「どういう事ですか!? いつの間に!?」


椅子から立とうとするが、体が動かない。
良く見ると、胴体をロープで縛られ、腕が机に固定され、さらには両手の五指の一本一本が丁寧に開かれ拘束されている。

逃れようと抵抗してもガチャガチャと拘束具の軋む音が虚しく響くだけだった。


アニェーゼ「さあ、異端審問の始まりですよ」


アニェーゼの手にはペンチの様な物が握られている


アンジェレネ「そんな! 私は異端者なんかじゃありません!!」

アニェーゼ「それはこれからゆっくりと問いただしていきましょう」
838 :1 [sage]:2010/10/22(金) 00:41:28.47 ID:j0zq2VE0

アンジェレネ「な、何をする気ですか? それは一体…」

アニェーゼ「これから右手の爪を1つ1つ丁寧に剥いでいきましょう」

アンジェレネ「つ…え……」

アニェーゼ「それが終わったら今度は左手の指に一本ずつ釘を指して潰していきます。
それから足に鉄の靴をはかせてバラバラに、両手の手首を切断して神経をほじくり出して……」


全身を虫が這いずる様に恐怖が体中を駆け巡る。
両手を拘束している金具がガタガタと音を立てている。
別にわざとやっているのではなく、震えが止まらないのだ。


アニェーゼ「ルチア、アンジェレネの手を押さえて下さい」

ルチア「はい」

アンジェレネ「ひっ…いや…ああ……」


ガチガチと歯がリズムを刻みながら音を立てる。
悲鳴を上げたいが、恐怖で喉が潰れて言葉がでない。


アニェーゼ「さて、始めましょうか」


アニェーゼはペンチの先端を開き、アンジェレネの爪の先端部分に噛み合わせた。
839 : [sage]:2010/10/22(金) 00:45:45.69 ID:j0zq2VE0

アンジェレネ「ルチア! アニェーゼ! あれは違うんです! 間違えて踏んでしまっただけなんです!!」


いやだ……


アンジェレネ「ごめんなさい!!懺悔しますから許して下さい!!!ルチア!!アニェーゼッ!!!」


いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだこわいこわいこわいこわいこわいこわい…

死にたくない、あんな醜い肉塊になりたくない…



ベキッ!と爪の割れる音がした

だがお構いなしに、そこからゆっくり丁寧に、爪と指の肉をゆっくりと剥がして行く…


アンジェレネ「いぎっ!! ああああッ!!!」

アニェーゼ「うるさいですよ、まだ半分も剥いでないじゃないですか」

アンジェレネ「ひぐっ!!」


爪を剥がされる痛みよりも、これから延々と続くであろうさらにおぞましい激痛と、
それで人間として欠落していく事の恐怖がアンジェレネから全てを奪って行く。
840 : [sage]:2010/10/22(金) 00:50:53.67 ID:j0zq2VE0


アンジェレネ「いぎゃっ! あぐっ!……あハ……ハハ…ハ…」



ダメだ……もう……もう戻れない……

ナニモカンガエラレナイ……

アハ……アハハハッ!!



恐怖に負け、考える事をやめ、全てを捨て、狂った叫び声を上げるだけの人形になる

そうすれば楽になれる。

どうせあんな無様な肉塊になって生き延びても仕方ないし、最後は食べられてしまうだけなのだから……



思考と肉体を繋ぐ最後の紐に、ハサミを開いて二つの刃を宛がう。

生きる希望とも言うべき最後の繋がりを自分の手で断ち切ろうとした。


そして二つの刃を閉じる、そのほんの一瞬手前


ゴン!!と目の前に衝撃が走り、喜々としてアンジェレネの爪を剥がしていたアニェーゼの体が吹き飛んだ。
841 : [sage]:2010/10/22(金) 00:52:57.66 ID:j0zq2VE0

アンジェレネ「……え?」


「どうやら間にあったみたいですね」


目の前には自分達と同じ修道服を着た、そして自分と同じくらいに小柄な少女。

金髪で長い前髪が特徴。その手にはバールが握られている。

そして、彼女の肩には青い目をした黒い子猫が乗っかっていた。


アンジェレネ「サーシャ……?」

サーシャ「ジブリール、補助を頼みます」

ジブリ「もって1分だ。それ以上は助けてやれんぞ」

サーシャ「10秒あれば十分です」


突然、周囲の空気が変った。

天使の力(テレズマ)が満ちて行く。

血の匂いが充満した薄暗い拷問部屋が、神聖な儀式を行うための空間に変貌していく。


そして、アンジェレネは輝くように白い翼をサーシャの背後に見た。


覚えているのはそこまで…
842 : [sage]:2010/10/22(金) 00:53:57.52 ID:j0zq2VE0

バッ!!とアンジェレネはソファーの上で飛び起きた

そして辺りをキョロキョロと見回す


あれは……夢?


時計を確認してみると、ちょうど午後三時。夢で起きた時間と全く同じだった。

アンジェレネはソファーから勢いよく立ち上がり、食堂へ向かって走り出した。



オルソラ「まあまあ、アンジェレネさん。夕食の時間には少し早いのでございますよ?」

アンジェレネ「はぁはぁ…」

オルソラ「?」


息切れをしているアンジェレネを“どうしたのか?”と首を傾げて見るオルソラ
843 : [sage]:2010/10/22(金) 00:54:41.00 ID:j0zq2VE0
アンジェレネ「あのッ!オルソラ!あの…」

オルソラ「うふふ、わかっているのでございますよ」

アンジェレネ「え?」


…………



アンジェレネ「なし崩しで食卓に座らされましたけど…」

オルソラ「お待たせしましたのでございます」


アンジェレネの前のスープとパンが差し出された。

スープは真っ赤な…ではなく、琥珀色のコンソメスープだ。
固形状の素を使ったものではなく、最初から丁寧に作ったものだ。具も肉だけでなく野菜もちゃんと入っている。

はっきり言って匂いも見た目も美味しそうだ。だが、それが逆に恐かった。


アンジェレネ「あの、シスターオルソラ、これは何のお肉ですか…?」

オルソラ「はい、そのお肉はですね……」


………


アンジェレネ「あはは、ですよね……鶏肉ですよね」

オルソラ「もちろんでございますよ」
844 : [sage]:2010/10/22(金) 00:55:44.21 ID:j0zq2VE0

アンジェレネ「ふぅ…」


スープとパンで満たされたお腹をさすりながら、アンジェレネは廊下を歩いていた。
別にどこかへ行く宛があるわけではないが、なんとなく夢の事を考えるとそうすべきかなと思ったのである。

余談だが、あんな夢を見た後で普通に食事ができるアンジェレネは意外と神経が太いのかもしれない。

アンジェレネ「あっ、ルチア」

ルチア「おやアンジェレネ、お菓子は持っていませんよ」

アンジェレネ「じゃあ悪戯しますよ? っていうか、それじゃあ私がいつもお菓子をねだっている食いしん坊みたいじゃないですか!」

ルチア「違うのですか?」

アンジェレネ「違いますよ! まあ貰えるなら欲しいですけど」

アニェーゼ「ルチア! アンジェレネ!」

アンジェレネ「アニェーゼ、その引きずっているものは…?」


それは、赤黒く変色した肉塊

ではなく、サーシャ・クロイツェフだった。
845 : [sage]:2010/10/22(金) 00:56:54.93 ID:j0zq2VE0

サーシャ「……」

アニェーゼ「何かわからねぇですけど、玄関で寝てやがったんですよ。重いんで運ぶの手伝ってください」

サーシャ「重くない…」

アンジェレネ「………」


玄関で寝ていた?

そう言えば、夢の中で最後に出てきたのはサーシャだった。


アンジェレネ「ッ…?」


その時、いきなり人差し指にチクッとした痛みを感じた。

慌てて確認してみると、爪が割れて少しだけ剥がれている。


あれは夢? それとも現実?


ルチア「どうしましたアンジェレネ? 顔色が良くないみたいですが」

アンジェレネ「いえ、なんでもない…です…」


得体の知れない恐怖に身を震わせながら、アンジェレネはルチアの修道服の袖をちょこんと掴んだ。
846 : [sage]:2010/10/22(金) 00:58:46.62 ID:j0zq2VE0

イギリス清教は異端審問に特化した宗派である。

異端審問とは何か?例えば魔女狩りや悪魔狩りなど、神の敵とされる者を葬る事。
または主の教えに背く異教徒を裁く事などをそう呼ぶ。
広義的に言えば民族浄化、例えばナチスのホロコーストなんかも異端審問の一形態として位置づけられる事もあるのだが…


まあ要するに、非常に見識が狭いのか、あるいは神への強い信仰がそうさせるのか、
不寛容であるがゆえにそれ以外を認めないという考えがその根底にあるのだろう。


繰り返すが、イギリス清教は異端審問に特化した宗派である。

血ぬられたそのページを紐解けば、十字教世界の闇を知る事となる。

処刑塔の拷問部屋の壁や机に残された血の跡を見れば、遥かな時を超えて異端者の悲鳴が聞こえてくるだろう。


そして…


凄惨な拷問を受け、異端者として殺された救われぬ者達の魂は、今もどこかを彷徨いながら虎視眈々と狙っているのかもしれない。

自分達をこんな目に遭わせた憎き十字教徒に復習する機会を……

847 : :2010/10/22(金) 01:03:19.50 ID:j0zq2VE0

【オマケ】

ジブリ「……ふむ」

サーシャ「ジブリール、何をしているのですか?」

ジブリ「とある魔術の禁書目録22巻を読んでいるのだ」

サーシャ「第一の解答ですが、あまりメタな発言はしないでください」

ジブリ「よし! ちょっと北極海に行ってくる!」

サーシャ「やめろ」


以上です。今回はソフトホラーな感じにしてみました。
848 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/22(金) 03:07:51.70 ID:4azVtvgo
乙だ!
あまりに雰囲気が違うもんだからちょっと心配になったわww
849 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/22(金) 05:25:14.06 ID:o8uRakDO
乙! アンジェレネ小動物可愛い!
異端審問こえぇ
850 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/19(金) 00:41:59.68 ID:32RZQgAO
1はどこにいった?
851 : [sage]:2010/11/19(金) 08:12:28.29 ID:tWqhuVI0
すみません、しばらく忙しい日が続いて碌に描き貯めもできていない状況なので…

一応、今できている分の前半だけ投下します
852 : [sage]:2010/11/19(金) 08:15:28.58 ID:tWqhuVI0

【神の力】


透き通る様な輝きを持つ青く長い髪は、青系統の美しいグラデーションになっている

細くしなやかなでガラス細工を思わせる様な痩駆

端正な白い顔はこの上無く美しいものであるが、それは無垢な子供を思わせる様なあどけなさも兼ね備えている。

その左手には「純潔」の象徴であるTメートルほどの長さと大きさの真っ白な百合の花

その右手には「正義と真理」の象徴たるひと振りの銀色に輝く剣

そして、背中には一対の真っ白な翼


そう、彼女は神の使い、すなわち天使である

853 : [sage]:2010/11/19(金) 08:17:00.34 ID:tWqhuVI0

その天使は溜め息が出るほどの美しさであり、また呼吸さえも忘れてしまいそうなほどの美しさでもある

触れる事も声を掛ける事すらも罪を感じてしまう程の神聖な存在

しかし、それは荘厳なものではなく、ただ彼女の姿を見るだけで心の奥底まで光が満ち溢れそうな程の慈愛の塊の様である

そして、その美しい女性の姿をした天使は、ゆっくりと前に歩む

天使の目に映るのは、一人の若き女性

彼女はただの人間であり、そして後の世で聖なる母として崇拝される者


いきなり目の前に現われた天使に戸惑いの表情を見せる女性

その女性の足元に、優美に跪く天使

そして、天使は美しい鈴の様に澄んだ声でこう言った


「おめでとう、幸運な人よ。主があなたと共におられる」

854 : [sage]:2010/11/19(金) 08:19:08.30 ID:tWqhuVI0

サーシャ「………」


目が覚めると、美しい青い天使も、その天使を膝まずかせた女性も居なかった。

あれは何の夢だろう? あの夢に出てきた天使と女性は…



おめでとう、幸運な人よ。主があなたと共におられる…



それは受胎告知の一説。

天使とは本来、性別の概念が無い。なぜなら彼らは神の道具であり、子を産み、
種を存続させるという生物にとっては当たり前の事をする必要が無いからだ。

宗教画では、天使は大抵、男性の姿で描かれている。

だが、その中で唯一、女性の姿で描かれている天使がおり、神学的にもその天使は女性であると主張する者達も居る。

それが受胎告知で有名な大天使ガブリエル(神の力)だ。
855 : [sage]:2010/11/19(金) 08:20:46.50 ID:tWqhuVI0

実際のところ、聖書にその様な記述は無いが、ロシアでフィアンマがサーシャの体を利用して不完全な形で
召喚したミーシャ・クロイツェフは確かに女性的な体つきをしていた。

無論、あの全身が布に覆われた奇妙な姿ではなく、夢に出てきたガブリエル(神の力)はもっと人間に近い姿をしていたが。


サーシャ「奇妙な夢をみてしまいましたね…」

ジブリール「たぶん私の記憶がお前に流れ込んだのだろう」

サーシャ「……」

ジブリール「起きたかネボスケ」

サーシャ「……」


見知らぬ女性が上から自分の顔を覗き込んでいる。

それは夢に見た天使と全く同じ女性。

そう言えば、そもそもいつの間に寝てしまったのかも覚えていないが、どうやら自分はこの女性に膝枕をされながら寝ていたようである。
856 : [sage]:2010/11/19(金) 08:22:17.54 ID:tWqhuVI0

ジブリール、いやガブリエル(神の力)


生命の樹(セフィロト)の第九セラフであるイェソド(知恵)の守護者

エデンの統治者にして最後の審判で死者を復活させ、神の国へと導く者。

司るのは真理、慈悲、復活、そして死。

真理を司る天使ゆえに神の言葉(真理)を人に伝える啓示の役割も担っており、
ムハンマドにコーランの内容を教え、また聖母マリアに神の子を身に宿した事を伝えた。
ちなみにエリザベトに洗礼者ヨハネを身籠った事を告知したのもこの天使である。

そして死を司る天使は、かつて堕落したソドムとゴモラを硫酸の雨で滅ぼし、
またこの女子寮で死んでいったはずの仲間達を死の運命から解き放った。
857 : [sage]:2010/11/19(金) 08:23:56.90 ID:tWqhuVI0

ガブリエル「どうした? 私の美しさに見惚れてしまったか?」

サーシャ「第一の質問ですが、これはどういう事ですか?」

ガブリエル「なに、これが私の本当の人型バージョンだ」

サーシャ「いえ、繰り返しますが、なぜあなたがその様な姿に?」

ガブリエル「ちょっとお前から生命力を根こそぎ吸収しただけだ」

サーシャ「第一の解答ですが、何てことしてくれてんですかあなたは」


なるほど、だから寝ていたのか。

しつこいようだが、ガブリエル(神の力)

天使の中でも最上級の存在で、神の後方に座し、月を守護し、水の象徴とされている。

だが一度だけ、その不品行により神の恩寵を失い、天界から追放されている。
858 : [saga]:2010/11/19(金) 08:27:54.56 ID:tWqhuVI0
時間が無いのでここまでです、続きはまた後で。今回は人型ガブリエルであれこれしたいと思います。

ちなみにガブリエルのイメージはizfactさんのところのガブリエルの画像で、二枚あるうちの露出が少ない方です。
859 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/19(金) 12:24:14.34 ID:pDijO.AO

普通に金子一馬のガブリエルを想像してたが違ったか
860 : [saga]:2010/11/19(金) 20:32:00.98 ID:tWqhuVI0
>>859
ソフトな百合を考えると、少女的で和やかな美しさのガブリエルの方が良いかなと思いましたゆえ。
ちょうどizfactさんのサイトのガブリエルがイメージ的にもピッタリかなと。

ちなみにここでの人型ガブリエルは大体身長160前半の美少女な感じです

では神の力中編を投下します
861 : [saga]:2010/11/19(金) 20:33:38.95 ID:tWqhuVI0
【最大主教と神の力】


ローラ「ふぅ…お茶が美味しいのよ…」

侍女「最大主教様、年寄り臭いですよ」

ローラ「うるさきかな。このダージリンの香りに彩られた優雅な昼下がりに水を差すような事を言うべからずなのよ」

侍女「最大主教様、それはアールグレイです」

ローラ「……下がりなさい」

侍女「はい」
862 : [saga]:2010/11/19(金) 20:34:41.14 ID:tWqhuVI0

ローラ「ふぅ……」

ローラ「いや、別に変な意味じゃなきことよ? お茶が美味しいのよ?」

サーシャ「第一の私見ですが、名より実を取るあなたらしいですね。紅茶の香りよりティータイムそのものを楽しむタイプですか」

ガブリエル「このシュークリーム美味いなぁ…」もぐもぐ

ローラ「……」

ローラ「ちょっと待たれい!!」

ガブリエル「あん?」

ローラ「お前達はいつの間にここに来たりける!? てかいつからそこに居た!?」

サーシャ「第一の解答ですが、あなたがダージリンとアールグレイを間違えたとこかr」

ローラ「人のミスを笑うな! 傷を抉るべからずなのよおおお!!!」

ガブリエル「愉快な人間だな」

サーシャ「そうですね」

ローラ「ぐぬぬ…」
863 : [saga]:2010/11/19(金) 20:36:33.80 ID:tWqhuVI0

ローラ「まったく、折角のお茶の時間に奇妙な客を招いてしまいたものね」


ローラは指先で小さなベルをつまみ、チリンチリンとそれを鳴らした。
すると、先ほどの侍女が現れた。


ローラ「この者達にお茶の用意を」

侍女「畏まりました」

ガブリエル「おいボンヌドダーム、ついでにケーキとか甘いものを大量にもってこい」バクバク

ローラ「……」


優美で壮麗な見た目とは裏腹に、不遜な言葉遣いと態度でもって、ジャムを塗りたくったスコーンを頬張りながら侍女に命令する大天使。

その大きすぎるギャップは、傍から見ているローラを唖然とさせる程である


侍女「畏まりました」


不品行により神の恩寵を失ったというのも、あながち嘘ではないのかもしれない。
864 : [saga]:2010/11/19(金) 20:37:49.26 ID:tWqhuVI0

ローラ「こほん…ところで、お前達は何しに来たるの?」

サーシャ「第二の解答ですが、このガブ…ガブリエーレが甘い物が食べたいとほざいたので」

ローラ「それならばどこぞの駄菓子屋でも行けばよかろう」

サーシャ「第三の解答ですが、どうせなら偉そうにしている人間にたかりに行こうと彼女が言ったので」

ローラ「良い性格したるわね…」

ガブリエル「ケーキうめえ…」

ローラ「……なるほど」


ローラ「聖書ではしばし甘味の快楽を語れらたるけど、天使も御多分に漏れずそうなのかしら?」

サーシャ「!?……気づいていたのですか? テレズマは相当抑えられているはずですが」

ガブリエル「そりゃそうだろ」

ローラ「クスクス……これは本当に面白い客を招いてしまったものね」

865 : [saga]:2010/11/19(金) 20:40:02.40 ID:tWqhuVI0

ガブリエル「言っておくが、お前に協力するつもりはないぞ」もぐもぐ

ローラ「それは残念ね、ケーキの代金くらいは払ってもらいたきことなりけるのだけど」

ガブリエル「見返りを求るなとイエス様から教わらなかったのか?」

ローラ「別に大した事を求めてるわけじゃなきにつき」

ローラ「ただ十字教を信ずる一教徒として、本物の天使との与太話を楽しみたきことなのよ」

ガブリエル「私の話でも聞きたいのか? だが、私にも言える事と言えない事がある」

ローラ「そんな“真理“だの“啓示“なんて堅苦しいものじゃないの。例えば、受胎告知の話とか聞いてみたいわね」

ガブリエル「受胎告知…ああ、あれか。そんな面白い話じゃないと思うが」


狡猾に権謀術策を張り巡らす清教派のトップであるローラ・スチュアート。
だがこの時の彼女は、純粋に知的好奇心からこの目の前の天使に興味を持っていた。

それもよくよく考えてみれば普通な事だろう。目の前にさり気なく現れてケーキを頬張ってはいるが、
天使が人間の前に現れる事など特別な、それこそ聖書に伝説として記されるほどの事態なのである。

普通の十字教徒であれば、泡を吹いて倒れていてもおかしくはない状況なのだ。

866 : [saga]:2010/11/19(金) 20:42:17.20 ID:tWqhuVI0

ガブリエル「そうだな…あれは初めて私がマリアに出会った頃の話だが…」


【回想】

ガブリエル「おめでとう、幸運な人よ。主があなたと共におられる」

マリア「え?」

ガブリエル「ご懐妊おめでとう」

マリア「いや、私は処女なのですが…」

ガブリエル「おめでとう」

マリア「いえですから、私は処女でございます! それに婚約中に妊娠すると死刑になってしまいます!」

ガブリエル「家族が増えるよ! やったねマリアちゃん!」

マリア「おいやめろ」

マリア「ですから、私は殿方と交わった覚えはございませんし、それに結婚前にその様な事をすると
ユダヤの法で死刑になってしまうのでございますよ」※ユダヤの衆議会には死刑の権限はありませんでしたが、
私刑により殺すという事が行われていました。

ガブリエル「大丈夫だ、問題ない」

マリア「問題しか無いでしょうが!」

ガブリエル「ほら、エリサべトだってあの歳でヨハネを身籠ったから大丈夫だよ」

マリア「いえですからそういう問題では…というか、なぜ偉大なる主は私などに主の御子を?」

ガブリエル「神って意外と地味で素朴で優しい娘が好きみた…おっと、やめておこう。色々言うと後が怖いし、何より神は絶対だからね」

マリア「?」
867 : [saga]:2010/11/19(金) 20:43:17.95 ID:tWqhuVI0

ガブリエル「まあとりあえず何かあっても神が絶対に守ってくれるし、大丈夫だ、問題ない」

マリア「本当でございますか?」

ガブリエル「神は絶対だかr」

マリア「そのネタはもう良いのでございます」

ガブリエル「ルシフェル元気かなぁ……あ、そうそう、生まれてくるのは男の子だから。名前はヨシュアって付けなよ」

マリア「それは主の意向でございましょうか?」

ガブリエル「ああ、彼の言う事には逆らえないよ。神は絶対だk」

マリア「ああ、なんという事でございましょう、主がこの私などに…」

ガブリエル「神の子だからちゃんと育てなよ? 健康な赤ちゃんを産める様にしっかり栄養をトルノデス」



ガブリエル「ま、こんな感じだったかな」

ローラ「聖書と違ってかなり軽いのね」

サーシャ「それよりもネタが寒すg」

ローラ「面白い話が聞けて満足なのよ」

ガブリエル「喜んでもらえて何よりだ」
868 : [saga]:2010/11/19(金) 20:44:41.77 ID:tWqhuVI0

ローラ「ところでイェソド(知恵)の守護者は、もっと面白い話を沢山知りたるのかしら? 私はもっとそなたの話を聞いてみたきことなのよ」

ガブリエル「……先ほども言ったが、私は話せる事と話せない事がある」

ローラ「別に難しき事ではないのよ。私が知りたき事は、そう…まずは…」

ローラ「神浄とは何か、教えてもらおうかしら」

サーシャ「神…浄…?」

ガブリエル「ふむ…私にとって話せるか否か、ギリギリの所だな。そうか、なるほどね」

ローラ「なんの事かしら? それに、未来の事は話せないのではなくて?」

ガブリエル「これを話してしまう事が未来に何らかの影響を与えてしまうかもしれない。神はそれを望まない」

ローラ「話せる範囲で良きことよ」

サーシャ「…?」

869 : [saga]:2010/11/19(金) 20:47:14.72 ID:tWqhuVI0

ガブリエル「十字教とやらでは、右手は神聖なものとされているな。まあ、ある意味自然な事なのかもしれないが」

ガブリエル「だが、あの少年の右手を十字教の規範で捉えると、その本質を見逃してしまう」

ローラ「それはどういう意味なのかしら?」

ガブリエル「簡単な事だ。あの右手があって初めて力が備わったのではない。右手の奇跡なんてものに囚われるな。
あの少年の中に潜む力があって、初めて幻想殺しが宿ったと考えるべきだろう」

サーシャ「……それで、つまるところ神浄とは?」

ガブリエル「…お前はなぜ、四大元素が歪んだと思う?」

サーシャ「それは…第一の解答ですが、私には分かりません」

ガブリエル「だろうな。魔術を当然の様に行使する十字教徒には、なぜこの世界が歪んだのかは理解できまい」

ガブリエル「そもそも魔術とは、異世界の法則によりこの世界に現象を起こしている。
思い出せ、そもそもこの世界には本来、魔術など存在しないという事を」

ローラ「……異世界の法則をこの世界に無理矢理引っ張ってくる事は、この世界と異世界の境界を曖昧にし、歪みを生じさせる」

ローラ「つまり、神浄とは、異世界とこの世界の歪みを正すこの世界の法の様な存在であり、異能の力を打ち消す幻想殺しはその副産物だと?」

ガブリエル「さあな、すべては神のみぞ知るってところか」

ローラ「重要な所をはぐらかしたるとは、本当に良い性格をしたるわね」

ガブリエル「これでもギリギリのところまで話したんだ。むしろ感謝してもらいたい」
870 : [saga]:2010/11/19(金) 20:49:43.94 ID:tWqhuVI0

ローラ「ではもう一つだけ質問したるのよ。アレイスターの目的は、そしてエイワスとは一体何者なの?」

ガブリエル「一つじゃなくて二つだな。その質問をしてくるという事は、お前はアレイスターの正体に気がついたという事か」

ローラ「……」

ガブリエル「アレイスターの目的は話せない」

ローラ「……やはりそう答えたるか」

ガブリエル「そしてエイワスについてだが、あれも実のところ、私にもよく分からない。
というのも、あれは神が生み出したものではない、我々とはフォーマットが異なる存在だからな。
そもそも、あれを天使と呼んで良いのかどうかすら疑問だが」

ガブリエル「まあ、守護天使の意味をどう解釈するかにもよるが、私はあれを、オブザーバーの様な存在だと見ている」

ローラ「つまり、エイワス自身には目的は無いと?」

ガブリエル「いや、目的はあるのだろう。だがそうだとしたら、アレイスターという男も哀れなものだな……」

ローラ「………」
871 : [saga]:2010/11/19(金) 20:51:35.48 ID:tWqhuVI0

ガブリエル「まあ、それでも奴は面白い事をしている。超能力と言ったかな?
あんな力を開発するとは、なかなか観察者としては面白い方向に世界は動いているのだろう」

サーシャ「第一の質問ですが、どういう意味ですか?」

ガブリエル「超能力の開発……能力者は、“自分だけの現実”というのを現象を起こすための拠り所としているらしいな。
実に面白い話じゃないか。聖書でも神話でもなく、自分の意思で現象を起こすのだからな」

サーシャ「…?」

ガブリエル「超能力も魔術も現象そのものは異世界のものだが、問題は法則だよ。私に話せるのはここまでだ」

ガブリエル「さて、アレイスターはセレマという言葉をよく使っていたな。セレマと超能力の関係は?
超能力と魔術の違いは? なぜ奴は十字教の時代は終わったと言った? そしてなぜこの世界は歪んでいる?
それを考えれば、もしかしたら真相の片鱗くらいは見えてくるかもな」

ローラ「そうか…実に参考になりけるのよ。感謝するわ大天使」

ガブリエル「おいボンヌドダーム、ケーキのおかわりだ。全種類持ってこい」

サーシャ「……」


何やらローラは納得したようだが、サーシャには何の事だか全く分からなかった。

ローラは何をしようとしているのか? 学園都市統括理事長アレイスターの正体?

第三次世界大戦が終わった今、この世界に何が起きようとしているのか……
872 : [saga]:2010/11/19(金) 20:52:35.85 ID:tWqhuVI0
中編はここまでという事で

神の力後篇は現在描き貯め中なのでまた後日
873 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/20(土) 03:45:51.87 ID:KUvSY5so
乙だ!
このわかったようなわからないような感じがいいな
874 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/20(土) 21:00:06.52 ID:j9HyzJco
久々の更新! 今から読んでくる
875 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/04(土) 01:03:00.12 ID:kqfWUsAO
乙!

また>>1のが読めて嬉しいよ
876 :1 [sage]:2010/12/12(日) 04:06:59.28 ID:oTfmLrQ0
やばい、長い、後篇長すぎる

今から投稿しようと思っていましたが、少し見直ししてから投稿します
877 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:16:46.87 ID:oTfmLrQ0
神の力後篇です。地の文でのガブリエルの名称が定まっていませんが、そこは勘弁願います

>>875
ありがとうございます
もうしばらく続きますが、付き合っていただけたら嬉しいです
878 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:23:17.54 ID:oTfmLrQ0

サーシャ「第一の質問ですが、まだ食べる気ですか? 最大主教のティータイムに乱入して散々ケーキを貪っておきながら」

ガブリエル「甘味は神の恵みと良く似ていてな、天使にとっては大好物とも言えるのだ」ムシャムシャ


ローラとのお茶会の後、”もっと甘味を食わせろー!”と駄々をこねるガブリエルの我が儘により
サーシャとガブリエルは現在とあるケーキショップに居た。

そしてガブリエルはテーブルに並べられた大量のケーキに舌鼓を打っているのであった。


サーシャ「それにしても食べすぎでは?」

ガブリエル「大好物なのだ」ムシャムシャ

サーシャ「……第一の解答ですが、請求書は最大主教宛てにしておきますから良いですが…」

サーシャ「ところで第二の質問ですが」

ガブリエル「ケーキにも様々な種類があるのだな。全く良く考えつくものだ人間も」

サーシャ「神様は、どんな姿をしているのでしょうか?」

ガブリエル「……」


その質問をした瞬間、ガブリエルのケーキを貪っていたフォークがピタリと止まった


サーシャ「……あの」

ガブリエル「気になるか?」

サーシャ「それは誰でも気になるでしょうが」

ガブリエル「ふむ……」

ガブリエル「……」もぐもぐ


再びケーキを食べ始めるガブリエル
879 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:24:22.45 ID:oTfmLrQ0

サーシャ「……あの」


もしかして、聞いてはいけない質問だったのだろうか?

だが、ガブリエルは再びフォークを止め、手放した。

そして、紅茶を一口啜り、サーシャの顔をじーっと真っすぐに見つめた。


サーシャ「……」


深い青色の瞳の様であり、淡いアクアマリンの様な瞳でもあり、青紫色にも見える不思議な瞳。
見方や角度、光の当たり具合によって、まるで宝石の様に天使の目はその見え方が変わってくる。

その目は本当に自分の顔を見ているのだろうか? それとも遠い過去か、遥かな未来か、或いは違う世界を見ているのか。

人とは違い、人よりも遥かに高い位置に存在する彼らの価値観など、人である自分には知る由も無い。


ガブリエル「私が神だ」

サーシャ「……」

サーシャ「what?」

ガブリエル「という冗談はさておき」

サーシャ「……」
880 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:26:12.02 ID:oTfmLrQ0

ガブリエル「そうだな…まあ別に冗談でも無いのかもしれない。ガブリエル…英語表記ではそう発音するらしいな。
もともとは神が人間どもに与えた古代ヘブライ語、或いは我々天使が使う天使の言語……お前達が言うところの
エノク文字の方がより我らに近いものではあるのだが」

ガブリエル「だがそんな事はどうでも良い。私に与えられた名は“神の力”」

サーシャ「それは十字教徒であれば誰でも知っている事です」

ガブリエル「そうだな。私が司る属性は四大属性における水だ。象徴する色は青、そして月と後方」

ガブリエル「まあ後者はともかく、なぜ私が水を司り、神の力と呼ばれているのか分かるか?」

サーシャ「第一の解答ですが、考えた事が無かったです」

ガブリエル「神が神罰を下し、神の命令により、神は本来なら人を助けるはずだった天使に人を殺させた」

サーシャ「ソドムとゴモラに降った硫黄の雨ですね」

ガブリエル「そうだ…そしてもうひとつ、神が多くの人間を殺した出来事があっただろう」

サーシャ「私見ですが、神が人を[ピーーー]事自体があまり考えられないのですが…」

ガブリエル「ノアの箱舟」

サーシャ「……あれは…あれもあなたが?」

ガブリエル「良く考えてみろ、なぜ神は大洪水などという方法で人を地上から消した?
全能の神ならば他にも数多の手段があったはずだ」

サーシャ「第一の解答ですが、それゆえに水を使った方法で地上の浄化を行ったわけですか…」
881 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:27:54.49 ID:oTfmLrQ0

ガブリエル「おそらく私ほど人間を殺した天使は居ないだろう。だから私は神の力という名を冠せられている……という見方もできるな」

サーシャ「第二の私見ですが、だとしたら」

ガブリエル「そうだ、神は直接その手で人を殺してはいない。創世記において地上を作って以来、直接手を下した事は無い。
バベルの塔も“言葉を分ける”のは神の意志であるが、実際に行ったのはどこかの天使かもしれない。
モーセの出エジプトも、海を割ったのはとある天使の所業だ」

サーシャ「かもしれないとは、曖昧な言い方ですね」

ガブリエル「天使とは言え、全てを知っているわけではないんだ。秘密を司る天使が別に居るくらいにな」

ガブリエル「まあつまりだ、神は例えるなら、このケーキのクリーム…いや、砂糖と言うべきかな。
神はテレズマという名の砂糖であり、その砂糖を分けて色んなケーキを作った。そのケーキが我ら天使だ」

サーシャ「第二の解答ですが、神は人間と似ているのではないのですか?」

ガブリエル「似ているじゃないか。神は自分の持つ素晴らしい物を沢山人間に与えてくれた」

サーシャ「そうなのでしょうか?」

ガブリエル「そうなんだ。神は人間を愛し、人間は神に愛される物を内に備えている。まあ問題はそれについてだ」

サーシャ「そう言えば、聖書にもそんな記述がありましたね」

ガブリエル「神は人間に様々な物を与えた。だが一つだけ、神が与えなかったものがある。何か分かるか?」

サーシャ「第三の私見ですが、それは力や知恵と言った類のものですか?」

ガブリエル「いいや違う、もっとお前達人間にとっては身近なものさ」

ガブリエル「人間はそれを“意思“と呼んでいるな」

サーシャ「意思…?」
882 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:30:26.64 ID:oTfmLrQ0

ガブリエル「神の意思は我ら天使の意思であり、我ら天使の意思は神の意志を超える事は許されない。
私達天使は常に神のために動いている」

ガブリエル「例えばロシアの戦争で、或いは初めてお前の体に降りてきた時、私ことミーシャ・クロイツェフは天に還るために暴れたが、
これは神の意思から外れる事を防ぐための一種の自動修正機能と言えるな」

ガブリエル「天使はラジコンと同じ、自らの意思を持つ事は許されない。そして神の意志から外れ、
自らの意思を持ってしまった時、天使は堕天使になる」

サーシャ「原作でもフィアンマが言ってましたね」

ガブリエル「そういうメタ発言もキャラが書き手の意思を外れたがゆえの所業……いや違うか」

ガブリエル「まあともかく、神は人に意思を与える事は無かったが、
代わりに人は自らの内なる物から沸き上がる自分だけの意思を手に入れた。それは、我ら天使には無いものだ」


どこか遠い目をしながら、ガブリエルは紅茶にミルクを注ぐ

澄んだ赤錆色の液体が白いミルクと混ざり合い、混ざり合い、混ざり合い…

あっと言う間に瑪瑙色の柔らかに濁った液体に変わった

元の色はどんな色だったか?

紅茶もそれを覚えてはいないのだろう…

その様子を見ながら


ガブリエル「大切にしろよ…自分の意思を…」


神の意思に塗り潰された天使はポツリとそう呟いた

883 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:33:25.60 ID:oTfmLrQ0

ガブリエル「神はどんな姿をしているのか? だったな」

ガブリエル「神はどこにでも居る。水にも、炎にも、風にも土にも。しかし、それでいてどこにも居ない神は、
私達にその意思で語りかける。神はエーテルかもしれないし、或いはテレズマの塊なのかもしれない…」

サーシャ「つまり…どういう事ですか?」

ガブリエル「分からんって事だ」

サーシャ「第三の解答ですが、やはりその結論に落ち着くわけですか」

ガブリエル「仕方ないだろうが。分からないものは分からないんだ。要するに、この世界を動かす意思の塊なんだと私は思う」

サーシャ「第一の質問ですが、それが神様が作ったこの世界のシステムの正体という事ですか?」


とサーシャは質問するが、ガブリエルは答えない

その代わりに、美しい鈴の様な声色に、ある種の厳正さを宿らせ


ガブリエル「人間よ」


今までの無垢な顔を、まるで世界の危機を救う者に啓示をしに来た時の様に、真剣な表情に変えて天使はサーシャに告げた


ガブリエル「我々は神の意思を与えられたが、自分の意思という物は与えられなかった。
だが、人間はそれを持っている。だから天使達はそれを妬み、堕天した者も居る。それをよく覚えておけ」

サーシャ「……」

ガブリエル「さて…」


ガブリエルは空になったティーカップを置く

いつの間にか彼女の顔は、今まで幸せそうにケーキを頬張っていた時の様な顔に戻っていた
884 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:35:37.27 ID:oTfmLrQ0

ガブリエル「そろそろ日も暮れてきた。行きたい所があるんだが良いか?」

サーシャ「?…ええ」


一瞬だけ天使が、まるで異様なまでの緊張感に包まれた儀式を司る司祭の様な顔になったのはなぜだろう?

天使は自らの意思が無く、神の意思を超える事を許されない。だからこそ、自分の意思を持つ人間を羨ましく思う

もしかしたらこの天使もそうなのだろうか…




………………




サーシャ「……ここは」

ガブリエル「お前にとっては馴染みのある場所だったな」


店を出た後、サーシャは“少し目を閉じてろ”とガブリエルから言われ、その通りにした。

ただそれだけ。気が付いたら、いつの間にか時計塔の最上階に居たのだ。

運ばれていた感覚はまるで無い。空を飛んでいる時の様に風を切る様な感触も無かった。

目を開けたらいつの間にかここに居て、例えるなら自分を中心に周囲の景色が変わってしまった様な感じである。
885 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:37:25.87 ID:oTfmLrQ0

ガブリエル「今夜は…月が良く見える…」


ガブリエルはバルコニーの手すりに両手を付き、遠い遥か空に浮かぶ丸い月を見上げていた。

少女の様な白い瑞々しい肌が月の光に照らされ、あどけない顔立ちが妖艶に彩られる。

青いグラデーションの髪が月光の優しい光を注がれる様に浴び、上質な絹の様にキラキラと、夜風に棚引きながら神秘的な輝きを放っている。


綺麗だった。

可愛いとか、異性に恋心を抱くとか、そういう類ではない。

ただ言葉を失い、それを表現する事が何よりも愚かな事だと思えてしまう様な神秘的な美しさだった。


ガブリエル「この世界か、あるいはもっと違う神の国か…」

ガブリエル「今からほんの少しだけ前の話だが、私が生まれた時、初めて見たのは月だった」

サーシャ「……」


彼女の言うほんの少しとは

きっと、まだアダムとイブが生まれるよりもずっと昔なのだろう

遠い遠い、どんなお伽噺よりも聖書よりも遠い昔の話
886 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:38:22.81 ID:oTfmLrQ0

ガブリエル「あの時と同じ、月は変わらない……いつも同じだ……」


美しい鈴の様な声色は、昔を懐かしんでいる様であり、またどこか寂しさを含んでいる。


そして、唐突に彼女は語りかけてきた。


ガブリエル「なあ、お前は月を見た時、懐かしさを感じた事は無いか?」

サーシャ「……第一の解答ですが」


思い出す

始めてイギリス清教の女子寮に来た時、そしてみんなと別れる決意をした時

そう…


サーシャ「……確かに何かあった時、悩んでいる時、思いつめた時、私は月が見たくなりました」


あくまでも漠然とだが、そんな感覚はあった。

それがノスタルジックなものだったかどうかは分からないが…
887 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:40:03.85 ID:oTfmLrQ0

ガブリエル「染まっているのだろうな……人ならざる存在に……」

サーシャ「第一の質問ですが、それはどういう事でしょうか?」

ガブリエル「考えた事は無かったのか? なぜお前に天使が降りたのか。
なぜお前がそんな器を持って生まれ、なぜお前が天使の力を使えたのか」

サーシャ「………」

ガブリエル「かつて、人の身から天使になった者が居る。それは偶然なのか、或いは神がそう運命を定めたのか。
神の子もそうだろう。神の子でありながら、彼は人間として生まれ、殺された」

サーシャ「第一の質問ですが、一体何が言いたいのでしょうか?」


疑問を投げかけた瞬間に、ガブリエルはサーシャの目の前に現れた。

動作は一切無く、知覚と共にそこに出現するかの様に


ガブリエル「サーシャ、私はお前に嘘を吐いた」

サーシャ「えっ…?」

ガブリエル「天に還れないというのは嘘だ。本当は…」


ガブリエルはそこで一瞬言葉を詰まらせた


サーシャ「……」


唖然とした顔で、長い前髪の向こうから大きな瞳でこちらを見つめるサーシャ

そのサーシャの赤い瞳を見つめなおし


ガブリエル「本当は、お前を迎えにきたんだ」


伝えたかった大切なフレーズを、天使は喉の奥から絞り出す様にそう言った
888 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:42:26.17 ID:oTfmLrQ0

サーシャ「……第一の解答ですが、言ってる事の意味がよくわからないのですが…」


突拍子も無い話だ。なんで天使が自分を迎えに来たなどと言うのだろうか?

まるで死んでお迎えが来たようで、あまり聞こえの良い話ではない。


ガブリエル「もう分かってるはずだ。お前は人として越えてはいけない領域を超えた。
革命の時に初めて私の力を使い、フィアンマとの戦いで、お前は完全な天使になった」

ガブリエル「……指の震えは、まだ残っているか?」

サーシャ「……」


御使下しの時に莫大な天使のテレズマを取り入れた影響か、魔術師がサーシャに近寄ると、
サーシャは不自然な指の震えと、胸の圧迫感を感じていた。

だが、最近はそれがない。むしろ、今ガブリエルが言及した事で改めてそうだったと思い出したくらいだ。
889 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:44:03.94 ID:oTfmLrQ0

器は所詮器。自分が人である所以は、自分が器だけで天使としての力は持ち合わせてはいないから…


だが、あのフィアンマとの戦いの時に、彼女は莫大なテレズマを取り込み、自分の物にし、そして氷の翼を真っ白な翼に変えてみせた。


ガブリエル「指の震えが収まってきたのは、お前が力に慣れてきたという事だろう」

サーシャ「第二の解答ですが、私はフィアンマに力を返したはずですよ」

ガブリエル「そんなものは関係ない。もともとお前には器があった。にも関わらずそこに力が備わらなかったのは、
お前の人間としての境界線が、力が流れてくるのをせき止めていたからだ。例えるなら、水をせき止める関門の様にな」

ガブリエル「最初にその門に穴が空いたのは、ベイロープという少女を助けるために騎士に立ち向かった時……
そう、お前が初めて力を手にした時だ」


そしてベツレヘムの星で、人間という境界線の門は完全に決壊した。

後は単純な話。水が高い所から低い所へ流れていく様に、そして湖に水が貯まる様に。

予定調和と同じ様に、そうあるべき場所にそうあるべき力が集まっていく。
890 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:45:08.60 ID:oTfmLrQ0

サーシャ「……だから…」


否定したい。だが、思い浮かぶ節がある。

最近はもう、人間の魔術が殆ど使えないのだ。

拷問用霊装の様に予め魔術的な処理を施されていたものはともかく、自分の力で生命力を魔翌力に変換し、人間の魔術を使う事がもうできない。

まるで最初からやり方を知らなかったかのように、どうやって魔術を使っていたのかが思い出せないのだ。


ガブリエル「今はまだ、お前の力を収めるための器が回復していない。だが、それも時間の問題だ」

サーシャ「私は…天使になるのですか?」

ガブリエル「いいや、もう天使と同じだよ、お前は」

サーシャ「……」


当然な話だが、受け入れられなかった。

本物の天使が目の前に現れて驚くだけの人間が、どうしていきなり“お前は天使なんだ”と言われて納得できようか
891 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:46:35.11 ID:oTfmLrQ0

ガブリエル「突然の事で受け入れられないのは分かる。だが、そう長く待っていられるほどの時間は無い」


ガブリエル「だから…」


月を背後に立つ天使は、とてもこの世のものとは思えない、形容しがたいほどの神々しさだった。

その天使が、ゆっくりとこちらに手を差し伸べて


ガブリエル「お前の意思を聞かせてもらおうか」


まるで本題をはぐらかす様にそう言った。


サーシャ「……第一の質問ですが、なぜですか?」

ガブリエル「……」

サーシャ「私を天使としてあなたの世界に導く……それが神の意思だと言うのなら」

サーシャ「なぜあなたは、私の意思を尋ねる様な言い方をするのですか?」
892 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:47:54.80 ID:oTfmLrQ0

ガブリエル「……そうだな、確かに不思議だ」


そう言うと、ガブリエルは子供の様に無垢な笑顔を浮かべながら


ガブリエル「私はお前を天に連れていくためにここに来た。御使下しとは違う、
神の意思があるからこそ、私は今こうして人間の世界に居られる」

ガブリエル「だが本当は、お前に興味を持ったからここに居るのかもしれないな…」

サーシャ「…それは、どういう事ですか…?」

ガブリエル「お前が好きだという事だろう…」

サーシャ「!?」


あまりに衝撃的な告白に、サーシャは再び唖然となった。
だがそんなサーシャの事など気にも留めずにガブリエルは話を続けた。


ガブリエル「世界のシステムは、神がこうあるべきと定めた予定調和により成り立っている。
人は予め神が定めた法則により、神が定めた運命に従う事で、世界は元々そうあるべきだった軌道を回る様に作られている」

ガブリエル「だが、人は“意思”の力によりそれを捻じ曲げてしまう。四大属性が歪んだのも同じ類の現象だ」

ガブリエル「サーシャ、お前とてそれは例外ではないのだぞ?」

サーシャ「私が…ですか?」
893 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:49:46.39 ID:oTfmLrQ0

ガブリエル「もしもお前が天使の力を手にしなかったら、イギリスでお前の仲間達と出会わなかったら」

ガブリエル「そして、もしも亡命なんて考えなかったら、世界はどんな軌道を描きながら回っていたんだろうな?」

サーシャ「……それは分かりません。ただ…」

サーシャ「第一の解答ですが、私は私の一連の行動に対し、なんの未練も後悔もありません。
理由はどうあれ、あの時亡命を決意したから、私は素敵な仲間達に巡り合えたのですから」

ガブリエル「そうか…そうだな。それはきっとお前の意思なのだろう」

ガブリエル「もしかしたら、それ以外にも意思の力が働いていたのかもしれない。
今までの事を思い出せ。お前が自分で決断し、苦難の道を歩いて来た事をな」

サーシャ「第二の解答ですが、苦しかった思い出は、あまり思い出したくはありません」

ガブリエル「そうか。まあつまりだ、私はお前に興味を持った。お前の意思が神の意思で定めた運命を塗り替えていくのがとても面白くてな…」

サーシャ「それはつまり、あなたは私を試しているのですか?」

ガブリエル「お前を連れていくのが神の意思なら、お前がそれを断るという事は、お前が神の意思を乗り越えるという事になる…」

ガブリエル「ああ、そうか……もしかしたら、こうしたいと願うのは、私の意思なのかもしれない……
なんて素晴らしいのだろう、自分の意思とは、自分で物事を決められるというのは……やはり人間は羨ましい…」


なぜか恍惚の表情を浮かべながら、天使は自分勝手な言葉を垂れ流していた。

894 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:52:21.57 ID:oTfmLrQ0

サーシャ「第二の質問ですが、もしも私があなたの申し出を断ったとしたら、どうなるのですか?」

ガブリエル「そうだな…例えば、アンジェレネという少女が居ただろう?」

ガブリエル「以前、あの少女はイギリス清教に恨みを持つ古い亡霊にとり憑かれた。
だがあの亡霊自体、もともとはそんな力など無かったはずだ。ましてや神に仕えるシスターが襲われるなんて事はな。
だから、今まではあんな事件など起きなかったはずだろう?」

サーシャ「もしかして、あれはあなたがした事なのですか?」

ガブリエル「意図的にではないがな。そもそも、私の様な天使がこの世界に居る事自体が本来なら異様な事であり、
特別な事情が無い限りあってはならない事なのだ。いくら力を抑えても、天使の存在は世界のシステムを掻き乱し、
予定調和を大きく捻じ曲げる」

ガブリエル「かつて御使下しが起きた時、私は天に戻るために神の意思に反して世界中の人間を殺そうとした。
そのくらいに天使が世界に及ぼす影響というのは大きいのだよ」


ガブリエル「もしかしたら私が居た事で、取るに足らない亡霊が力を得たのかも知れんが…
そんな事はどうでも良い。結論だけ言わせてもらうが…」

サーシャ「……」

ガブリエル「このままだと、お前の大切な仲間達に危害を及ぼす事になる。あのアンジェレネという少女の様にな」




サーシャ「……」

サーシャ「……そうですか…言いたい事はそれだけですか?」

ガブリエル「……サーシャ?」


取り乱すわけでもなく、落胆するわけでも嘆くわけでもない

なぜか天使の言葉を聞いた時、サーシャはクスクスと笑っていた
895 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:54:55.63 ID:oTfmLrQ0

サーシャ「ジブリ…いえ、ガブリエル。第一の解答ですが、私は今まで色々な物に巻き込まれてきました」

サーシャ「初めは上司から着せられた変態的な衣装。次は極めて政治的な事情、そしてクーデター、
挙句の果てには世界大戦にフィアンマの世界浄化計画……世界の事情にまで巻き込まれたのです」

サーシャ「私はみんなと一緒に居たかった。大切な友人の傍に居たかった。ただそれだけを望んでいたはずなのに、
ありとあらゆるものが邪魔をしてきた。ですが、さすがにもうこれで終わりだと思っていました…」

ガブリエル「……」


ただ静かに、サーシャは過去を語る。
子供に絵本を読み聞かせる様に感情を込めたものではなく、まるで淡々と事務的に説明していくかの様に


だが、それは内から湧き上がってくる炎の様な感情を抑えようと、必死に抵抗しているだけであった。


サーシャ「にも関わらず、世界の事情の次は神様の事情と来ましたか………クスっ…あはっ、はははっ………はは………」













サーシャ「ふざけるもたいがいにしろッ!!!!!!!」












突然目を見開き、吠え、激昴し、ガブリエルに掴みかかった
896 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:58:18.92 ID:oTfmLrQ0

サーシャ「一体何様だ!? 何の権利があってどいつもコイツも私の邪魔をするんですか!? 一体私が何をしたって言うんですか!!?
天使を収める器? 御使下し? なんだってそんな下らないものに私が振り回されなくちゃならないんですか!? 答えろよ大天使ッ!!!!」

サーシャ「そんなに凄い才能なら、どこかの勇者やヒーローにでも授ければ良かったじゃないですか!!
なんだって私なんかにこんなものが備わっているんですか!!! 私である必要なんかないでしょうが!!!
本当は、本当の私は、ヒーローみたいに戦える様な人間なんかじゃない!!!!!!
天使だなんて呼ばれる様な存在なんかじゃない!!!!! 私はッ!!!!!」


そして、サーシャは目の前の天使に縋りつく様にその場に崩れ落ちた



サーシャ「私は……ロシア成教のシスター……そして、五和の友達のサーシャ・クロイツェフなんですよ…ただそれだけなんですよ!!!!!」



もはや天使の服を掴む力すら無い

サーシャはその場にへたり込み、そして…



泣いた




彼女が感情的になったのは、決まって誰かが傷ついた時だけだ

いつも無表情で、冷静で、感情を表に出す事も無ければ、それを他人にぶつける事も滅多に無かった。
どんなに辛い事があってもけして自分の事情で他人に八つ当たりしたりせず、いつも全てを自分の中に押し込めて処理してきた。

そんなサーシャが、初めて自分の全てを曝け出した。
897 :1 [sage]:2010/12/12(日) 06:00:35.41 ID:oTfmLrQ0

次々と沸き上がり、溢れていく感情を抑える事ができなかった。

全てを押し込めていた壁が破られ、噴き出す血の様に、雪崩の様に今まで抑えていたものが一気に流れ出してきた。


自分よりも辛い想いをしている人間などいくらでも居る。辛いのは自分だけじゃない。
アニェーゼは両親を殺され、アンジェレネは捨てられて孤児になった。
シェリーは実験に巻き込まれて大切な友人を失った。神裂は生まれ持った幸運により、周囲を不幸にしてしまうという業を背負っていた。

それでも彼女達は前を見て生きている。そんな強い彼女達を尊敬し、仲間である事を誇りに思っていた。


だが、もう限界だ。

天使などと呼ばれても、自分はそんなに強い人間じゃない。


サーシャ「アニェーゼ! アンジェレネ! オルソラ! ルチア! 神裂! シェリー! 五和ぁッ!!!ああああああああ!!!!!!」


まるで子供の様に、いや、本来なら彼女くらいの年齢の少女なら当たり前の様に、サーシャは声を上げて泣いた


ガブリエル「……」


大天使と戦うという事は、それはこの世界にある全ての水と戦うという事に等しい。
アックアが力を削り、上条が儀式場を破壊し、学園都市が生み出した天使と学園都市最強の能力者が協力し合い、
やっとの思いで大天使を構成するテレズマを分散させる事ができた。
あくまでも分散させた程度に過ぎず、[ピーーー]事はできなかった。大天使とはそれほどに次元の違う存在である。

だがそんな大天使にも、目の前で泣く少女をどうにかするすべなど無い



ガブリエルはサーシャの前で膝を付き、泣き叫ぶサーシャの震える体をそっと抱き締めた

898 :1 [sage]:2010/12/12(日) 06:02:38.41 ID:oTfmLrQ0


……………


どれくらい泣いただろう

これほど泣いたのは、もしかしたらこの世に生を受けて産声を上げた時以来じゃないだろうか


サーシャ「……」


サーシャはガブリエルの顔を見上げた

もともと赤い目をしているが、それでも彼女が泣いていた事が分かるくらいに赤くなっていた。

だが、全ての感情を吐き出し、洗い出した後の彼女の顔は、どこか憑き物が堕ちたかのようにスッキリとした表情をしている



そして、サーシャは決断した



サーシャ「第一の解答ですが、私は天使になります」

ガブリエル「……本当にそれで良いんだな?」

サーシャ「第二の解答ですが、私は神に仕えるシスターです。神の意思ならば、それに従うしかないでしょう」


そうは言うが実のところ、もはや付き合いきれないというのが本音だ。
899 :1 [sage]:2010/12/12(日) 06:05:11.91 ID:oTfmLrQ0

ここで神に逆らっても、その後本当に天使になってしまった自分はどうやって生きていけばいいのだろうか。
天使という立場は、言ってしまえば人間である教皇や最大主教よりも遥かに上を行く地位である。
そんな立場に立ってしまった自分が、今まで通り皆と一緒に楽しく過ごす事など出来るはずがない。

それだけではない。神の意思を外れた天使がどの様な目に遭うのか、
きっと今までとは比較にならないほどの苦しみが待ち受けているのだろう。

ならばもういい。もうこれ以上の苦しみに立ち向かえるほど強くは無いし、立ち向かおうと思う様なマゾヒストではない。
それに、これは自分だけの問題ではない。自分が居る事で、大切なみんなを巻き込んでしまうのだから。

ここで終わりにしよう。これほど諦めるという選択が最良だと思えたのは、これが初めてだ。


だから、もう迷いは無かった。


ガブリエル「それがお前の意思か。まあ、それが正しいのかもしれんな…」

サーシャ「第一の質問ですが、この後私はどうすれば良いのでしょうか?」

ガブリエル「別に特別な事は必要無い。器が回復していなくとも、翼はあるはずだ。
ならば、今すぐにでもお前はこの世界から飛び立つ事ができるぞ」

サーシャ「そうですか…」


迷いは無い。だが、未練はある。


サーシャ「第二の質問ですが、最後にこの世界でしなければならない事があります」

ガブリエル「構わんよ。決断したのなら、時間はまだ十分にあるからな」


そう言うと、天使は少し屈んで顔を近づけ

そして…


サーシャ「…!?」


サーシャの唇に自分の唇を重ねた
900 :1 [sage]:2010/12/12(日) 06:08:43.54 ID:oTfmLrQ0

驚き目を見開くサーシャだったが、すぐに彼女の意識は自分の背中に集中した。

ムズムズとした感触の後に、バサッ!と空気を叩く音が響く

サーシャの背中に、再び眩しい程に輝く純白の翼が生えた

そして、頭上にはどういう仕組みで光っているのか理解できない様な丸い輪が浮かんでいる。



ガブリエル「ふぅ…、いや何、お前から奪った力を返しただけさ」

ガブリエル「今までのお前は、あのフィアンマという男と同じミカエルの性質を持つ器だったが、
その翼を手に入れた事をきっかけに、根底から器の性質が変わってきている」

ガブリエル「多分、最初は瞳の色の変化に気がつくだろう。その頃にはきっと、おまえは…」


そこまで言いかけたところで、天使の体は解ける様に霧散した

サーシャから奪った力を返した事で、ガブリエルは自分の体を維持できなくなったのだ


サーシャ「……」


ガブリエルの言う事が本当なら、タイムリミットは自分の目の色が変わるまでという事になるのだろうか

だが別に構わない。

どれだけ共に長い時間を過ごし、思い出を積み重ねてきたとしても

別れなど、いつも突然やって来て一瞬で終わってしまうのだから…


901 :1 [saga]:2010/12/12(日) 06:23:17.76 ID:oTfmLrQ0
以上で神の力編を終わります

今までサーシャを月と合わせて神秘的な存在に見える様に描写した事は何度かありましたが(文章力はともかく)
今回はそれを回収して昇華させようと試みたという感じです。

特別な力があるという理由で世界を救おうと使命感に燃えたフィアンマとは、ここでのサーシャは対照的ですね

よくよく思い返してみれば、サーシャは主人公でありながら大事な場面ではやられ役や脇役に徹していたわけで
実のところ、あまりヒーロー的な書き方はしてきませんでした。

一応展開は考えていますが、本当に天使になってお別れというのもSSの結末としては無い事もないかなと思ってもいます。

では続きはまた後日


ワシリーサ「ところでサーシャちゃん、私は?」

サーシャ「第一の解答ですが、すっかり忘れていました」
902 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/12(日) 06:46:19.06 ID:HN2cvUAO
乙なんだよ!
903 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/13(月) 00:26:54.76 ID:A5R4Q8oo
乙! あとこれを言わないといけない気がした
サーシャちゃんマジ天使
904 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/15(水) 02:06:39.77 ID:Jcn7KQAO
しばらく来てなかったら話が進んでたの巻
>>1
905 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/26(日) 13:23:45.82 ID:wl/RmQAO


切ねぇ………
906 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/15(土) 00:37:34.13 ID:Dy6vj2Pco
移動しないの?
SS・小説スレは移転しました
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/ Mobile http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/

907 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 15:36:18.40 ID:SfEol+250
ようやく書き貯めできそうな時間が取れそうなフラグ。
久しぶりに投下します。

>>906
リンクありがとうございます。
ですが、スレも900を超えているので移転せずに終わらせようかと思います。
908 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 15:40:41.68 ID:SfEol+250
【サーシャの日常】

話はサーシャが再びイギリス清教に復帰し、そして天使になってしまうまでにあった普通の日常に起きた普通の出来事。


【前髪】


アニェーゼ「サーシャは前髪が長いですね。あれでちゃんと前が見えてるんですかね?」

サーシャ「……」テクテク

アニェーゼ「お、噂をすれば幼女」

サーシャ「……」テクテク

アニェーゼ「サーシャ、そのまま歩いてたら壁にぶつかっちまいますよ……なんてベタな展開が」

サーシャ「ぜぶらっ!!」ゴチン!!

アニェーゼ「……」

サーシャ「っ………」

アニェーゼ「なぜにシマウマ?」

サーシャ「なぜここに…いつから壁が!?」

アニェーゼ「強いて言うなら私が来る前からありました」
909 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 15:42:59.88 ID:SfEol+250

サーシャ「私見、まさかこれは魔術師の仕業!?」

アニェーゼ「そんな魔術師はイヤだ」

サーシャ「敵襲じゃあ!であえー!であえー!!」

アニェーゼ「日本の時代劇でも見たのでしょうか? 最近よく天草式の方へ遊びに行ってますし…」

五和「親方様!!」

アニェーゼ「正確にはお屋形様ですね」

五和「どうなされました!?」

サーシャ「五和! 第一の解答ですが敵襲です! こんなとこにいつの間にか壁ができていました。
これはきっと魔術師の仕業に違いありません!!」

五和「おでこをぶつけたんですか?」

サーシャ「……そうとも言います」

アニェーゼ「いやそうとしか言わんでしょ。混じりっ気なしドジ100%だよ」

五和「イタイのイタイのとんでけー」さすさす

サーシャ「五和、それは天草式の魔術ですか?」

五和「そうです。日本に古来から伝わる回復魔術です」

サーシャ「第一の解答ですが、なんだか痛みが引いてきました…」

サーシャ「ありがとうございます五和」

五和「いえいえ♪(やべぇ、お持ち帰りしてぇ…)」





アニェーゼ「……」

アニェーゼ「サーシャって、実は物凄くアホ?」
910 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 15:44:50.68 ID:SfEol+250

【職業柄】


アンジェレネ「はふぅ…午後のティータイムは良いですねぇ…」

サーシャ「そうですね」

アンジェレネ「イギリスの紅茶はとても美味しいですよね」

サーシャ「第一の解答ですが、色合いがとても綺麗です。まるで血の様で」

アンジェレネ「飲んでる最中に血とか言わないでください…」

サーシャ「すみません」

アンジェレネ「オルソラの焼いてくれたクッキーもすごく美味しいですよ。ブルーベリージャムを付けてたべるとまた絶品です♪」

サーシャ「ブルーベリージャムを見るとアレを思い出しますね。拷問用霊装のペンチで“在らざるもの“の肉を潰した時の様な」

アンジェレネ「サーシャ!!」

サーシャ「すみません」
911 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 15:46:17.25 ID:SfEol+250

アンジェレネ「うぅ…もしかしてわざと言ってません?」

サーシャ「第二の解答ですが、職業病の様なものです。切ないですね…」

アンジェレネ「サーシャ…そうですよね、沢山の怪物と命懸けの戦いをしてきたんですよね…」

サーシャ「ええ、もはやドラーバーをぶっ刺して金槌でかち割ってバールでくり抜いてノコギリで引きちぎる様な作業にも慣れて(ry)」

アンジェレネ「いいです!!もういいですから!! そんな詳細事項なんて知りたくありません!!」

サーシャ「そうですか…」

アンジェレネ「何で残念そうなんですか…?」

サーシャ「第一の質問ですが、このシュークリームもオルソラが?」

アンジェレネ「はい、とても美味しいですよ」

サーシャ「中身はカスタードですね」

サーシャ「第三の解答ですが、このカスタードクリームの色合いが肉を引き裂いた時に見える脂肪の様で…」

アンジェレネ「う、うわああああああん!!!」

アンジェレネは逃げ出した

サーシャ「フフフ…」


その後、しばらくの間アンジェレネの食欲が減退したらしい。
912 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 15:48:15.41 ID:SfEol+250

【市場価格は2万から30万らしい】


五和「ただいま戻りましたー」

対馬「おかえり五和」

五和「アレ?」

対馬「ああ、サーシャね。あなたに会いに来たみたいだけど」

サーシャ「すぅ……zzz」

対馬「どうやら疲れてたみたいで、途中で寝ちゃったのよ」

五和「サーシャちゃん……サーシャちゃんが私以外の女の膝で寝るなんて…」

対馬「いや、膝枕で嫉妬されても…」

五和「やっぱ美脚ですか? サーシャちゃんも美脚が良いんですか?」プニプニ

サーシャ「ううん…zzz」
913 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 15:50:53.23 ID:SfEol+250

対馬「それにしても、外人の娘って何でこんなにも可愛いのかしらね?」ナデナデ

サーシャ「んっ……zzz」スヤスヤ

対馬「最近じゃこの子、天草の間でラッキーパーソンになってるわよ」

五和「ラッキーパーソン?」

対馬「サーシャを見かけた日は良い事があるって。最近よく日本人街へ来るからね」

五和「へぇ…」

対馬「ちょっとしたアイドルになってるわよ」

五和「……」

対馬「もしかして、拗ねてる?」

五和「別にそんな事ないですよ…」

五和「でも、例えるなら自分が応援してたマイナーなグループがメジャーデビューして人気者になってしまった時の様な、そんな感じです」

対馬「分からないでもないわ、それ」

サーシャ「うーん……いつ…わ」

対馬「あらあら、どうやらあなたの夢を見てるみたいよ?」

五和「私の夢を?」

対馬「どんなに人気者になっても、結局はあなたが一番って事なのかしら?」

五和「サーシャちゃん…////」
914 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 15:52:01.13 ID:SfEol+250

サーシャ「いつわ…どうして……どうしてですか……zzz」

五和「……なんかうなされてるみたいですけど…」

対馬「五和、この娘に何かしたの?」

五和「えっ!? い、いえ! まさかそんな!!」

対馬「なんで動揺してるのかしら…」

サーシャ「いつわ…どうしてアロワナなんかになって……」

五和「……」

対馬「……」

対馬「五和、どうしてアロワナになったの?」

五和「私に聞かれても…でもなんでアロワナ?」

対馬「良かったじゃない。アロワナって高いのよ」

五和「これっぽっちも嬉しくないです!」

サーシャ「いつわ…だいじょうぶ……例えあなたが魚でも、私はずっと…ともだちです……むにゃzzzz」

対馬「ですってよ。良かったわね」

五和「嬉しいけど何か引っかかる…」

915 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/26(水) 15:54:46.24 ID:SfEol+250
以上です。本編の方は書き溜め中。
しばらくはヤマもオチも無い平凡な日々を書いていこうかと思います。
もしかしたらこのスレだけでは足りなくなる恐れもあるので、その時は新板の方に建てます。
916 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/26(水) 18:51:16.26 ID:ZesmBjiAO

待ってました!!
917 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 19:01:59.52 ID:LOgDUyubo

本当になんでアロワナww
918 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 03:08:50.69 ID:joskqVEAO
久々に見たな乙


そういやこれ製速禁書SSまとめだと完結扱いになってたな
919 :1 [sage]:2011/01/28(金) 12:32:33.98 ID:q5y8azw00
投下します。
今日放送のアニメの内容にも触れているのでネタバレにご注意を
920 :1 [sage]:2011/01/28(金) 12:33:25.99 ID:q5y8azw00
投下します。
今日放送のアニメの内容にも触れているのでネタバレにご注意を。
921 :1 [sage]:2011/01/28(金) 12:36:56.93 ID:q5y8azw00
大事なことなので二回書きました。
べ、べつにミスしたわけじゃないんだからね!



【サーシャの日記】


「日記」。日を記すと書いて日記と読む。英語で言うとダイアリー。ロシア語でДневник。

今、私の手には一冊の日記帳がある。何てことはない、本屋に行けば普通に購入できる様な普通の日記帳である。

とは言っても、これは私が実際に本屋に足を運んで買いに行ったものではなく、オルソラがくれたものである。
突然に、何のフラグも前触れも無く。
要は気まぐれであり、特に意味があるわけでもないし、なぜ彼女は私に白紙の日記帳をくれたのかも良くわからない。

そう、特に意味は無いのだ。今回の話は私が日記を書くという事が大切なのであり、
その理由も、オルソラがくれたという事すらもどうでも良い。
単なる気紛れ。だから、この話も流す様に、考えず適当に目を追う程度に見てほしい。


サーシャ「さて、何を書くべきでしょうか…」


こういう表現の仕方もどうかとは思うが、私は日記を書くことに関しては初心者だ。
いや、書き慣れていないという表現の方がどう考えても適切であろう。
ただその日あった事を書けば良いだけなのだが、いざ書くとなると中々ペンが進まない。

そう言えば、最近ではブログというものがあり、紙の束ではなくネット上に日々の出来事を書くというのが流行っているらしい。
そして奇妙な事に、書き手はそれを不特定多数の誰かに見てもらう事でエクスタシーを感じるのだとか。
あまり私には理解できない。Twitterなど尚更だ。
922 :1 [sage]:2011/01/28(金) 12:38:28.03 ID:q5y8azw00

まあよくよく考えてみれば、新約聖書も神の子の使徒や、そのまた弟子の日記を合わせて混ぜて作った様なものだ。
歴史的に見ても、遠き偉人の書き遺した日記は重要な価値を持っている。
そう考えると、私が書き残した日記も、いつかはどこかの博物館にでも展示されるのだろうか?


【外典サーシャによる福音書】なんて…


いやいやさすがに考えすぎですね。
さて、妄想もこの辺にして何か書くとしましょうか。


サーシャ「………」

………


10月×日

オルソラから日記を貰った。


サーシャ「……」


我ながら何も無い一日だった。
なんとなく寂しい。

きっと、これからはもっと書くことが増えるはずだ。
継続は力なりと言う。とりあえずは続けてみよう。
923 :1 [sage]:2011/01/28(金) 12:42:14.14 ID:q5y8azw00

10月×日

変な猫を拾った。黒猫だ。
名をガブリエルと言うらしい。
実はさっさと捨てたくてたまらない。もはや当初の愛情など欠片も無い。
どうやって処分しようか。

そう言えば、神は白い鳩を自分の御使いとしていた。これは聖書にもよく出てくる。
ちなみにこのガブリエルも神の御使いとして有名なのだが、そのガブリエルの御使いは猫なのだろうか? 聖書にそんな記述は無い。

余談だが、神の子と同じ身体的特徴や魔術的記号を持って生まれた者を聖人と言う。
世界に20人と居ない類まれなる才能であり、神裂やアックアがそれに該当する。

だが、それとは別に、天使と同じ魔術的記号を持つ人間も居る。
聖人と比べて貴重な才能なのかどうかは判断できかねるが、例えば神の右席がそれに当たるだろう。
フィアンマの聖なる右はミカエルと同義の魔術的記号であり、それを生まれながらにして有しているという事は、
ある意味聖人以上の才能だと言える。

身近な人間で言えば、おそらくアニェーゼ。
アドリア海の女王というローマ正教が誇る霊装があるのだが、そのアドリア海の女王が使う術式に、「刻限のロザリオ」というものがある。
どうやらそれは前方のヴェントが調整したらしいが、その「刻限のロザリオ」の使用者としてアニェーゼが選ばれたとか。
前方のヴェントの性質は、四大天使のウリエル。その彼女が調整し、そして適格者として選ばれたのがアニェーゼだと言うのなら、
アニェーゼにはアドリア海の女王や刻限のロザリオに対する親和性があるはずである。
もしかしたら、アニェーゼにはウリエルと同じ魔術的記号があるのかもしれない。
とは言え、聞いただけで実際にその場に居たわけではないので、これはあくまでも私の推測である。
何となくタイムリーな話題の様な気がしないでもない。

そしてこの日記を書き、この様な事を語っている私自信がどうやらミカエルと同じ魔術的記号があるらしい。
しかも私の場合は特別で、莫大なテレズマをこの体に収める事ができるが、あくまでも収めるだけで力を使う事はできないとの事である。
それでも革命編で多少は使える様になったのだが。
しかし、私はミカエルの性質を持ちながら、ガブリエルの水の力を使っていた。
どうやらこれは四大属性の歪みに原因があるらしく、ガブリエルがその名を偽り、本来はミカエルの名前を示す「ミーシャ・クロイツェフ」と
名乗っていた様に、水の属性が火の属性に強く浸食されていた。
だからミカエルの性質を持ちながら、私はガブリエルと同じ術式を使っていたのだ。

水翼、氷の剣、果ては神戮や傷ついた人間の応急処置まで。
不思議な事だが、私はこれらの魔術をどの様に使っていたのか、全く分からない。
本来ならばそれはあり得ない事である。魔術とは聖書や神話との親和性を元に理論的に術式を組み込まなければならないのであって、
その理論や記号を知らなければ、魔術は発動しない。私達は本来なら何の力も持たないはずの普通の人間なのだから。
そう、まるでガブリエルの力を使っている時は、自分が人間ではなくなってしまった様な、そんな不思議な感覚であった。

今日はここまでにしよう。今までのおさらいだ。あまり長々と書いても仕方ない。
最後に、ガブリエルは、あの猫が自分と同じ性質で、私の様に莫大なテレズマを収める器があるとか言っていたが、
そんな馬鹿な話が有るわけないだろう。一体何を企んでいるのやら。
924 :1 [sage]:2011/01/28(金) 12:54:04.94 ID:q5y8azw00

10月×日

ワシリーサから手紙が届いた。
とても可愛らしい柄の便箋だった。
中身を見る前に燃やしたので何が書いてあったのかは分からない。


10月×日

この日は五和の居る日本人街へ遊びに行った。
何度か足を運んでいるため、天草式の面々にも顔を覚えられているみたいだ。


10月×日

この日も日本人街へ行った。
五和に和服というものに着替えさせられた。
和服と言っても大正時代の女学生風で、はかまとブーツという和洋混合の服らしい。
髪は三つ編みにするのが正装だと言われ、その通りにした。
五和を含め、天草式の者たちは何やら嬉しそうに写真を撮っていた。
一体何なのだ…?


10月×日

アンジェレネが転んだ。つられて私も転んだ。
おのれアンジェレネ。


10月×日

寒い


11月×日

アニェーゼ、寒いなら修道服をミニスカにするのをやめればいいでしょう。
私は黒いニーソをはいてるから良いのです。寒いけど。


11月×日

日本人街へ行った。今日は神裂と一緒だ。
ランチを御馳走になった。とても美味しかった。日本食も良いものだ。
そう言えば、五和に貰ったお菓子を食べた後、異様な眠気に襲われた。
そのまま寝てしまったのだが、特に何も無かった。
帰り際に神裂から気を付けてくださいを言われたが、何を気をつけろと言うのだろう。
後で鏡を見て、自分のほっぺたに、猫の髭の様にマジックで三本の線が描かれていたのを見て理解した。
水生マジックだったので許そう。こんな事で怒るほど私は子供ではない。
925 :1 [sage]:2011/01/28(金) 12:57:16.76 ID:q5y8azw00

11月×日

ルチアの胸がまた大きくなったらしい。


11月×日

ジブリールにお菓子を奪われた。
そろそろ捨てようか。
ちなみにジブリールとは、ガブリエルのイスラム圏での呼び方である。
イスラム教と十字教は経典の民と呼ばれ、同じ神を信仰しているという点では変わらない。
違うのは神や天使に対する考え方であり、あちらではムハンマドが預言者、こちらでは神の子が救世主なのである。
救世主と預言者の違いは……面倒だ。

せっかくだから、御使降しについておさらいしよう。御使降し、エンゼルフォール。その名の通り、天使を降す大規模な魔術である。
どうやらこの魔術は日本で発動されたらしいが、その影響を受けた私はガブリエルに体を乗っ取られたのだ。まったく迷惑な話である。

御使降しを説明する前に、生命の樹について説明する。
生命の樹とは、エデンの園の中央に植えられた命の樹である。
ちなみにこの生命の樹は、エデンの守護者であるガブリエルによって守られている。私のお菓子を強奪したガブリエルによってだ。

近代西洋魔術においては、この生命の樹を10のセフィラと22のパスに分けてその内部構造について研究が行われていた。
まず10のセフィラだが、上から順番にケテル(王冠)、コクマー(知恵)、ビナー(理解)
、ケセド(慈悲)、ケブラー(峻厳)ティファレト(美)、ネツァク(勝利)、ホド(栄光)
、イェソド(基礎)、マルクト(王国)の10階層に分かれている
926 :1 [sage]:2011/01/28(金) 13:00:07.95 ID:q5y8azw00

この10のセラフィは四つの世界を形成する。
まずケテル、コクマー、ビナーの三つのセフィラで構成されている世界を「アツィルト」という。
これは根源の世界であり、完全な世界、神性界とも言う。まさに神の国とも言える領域であろう。

そして第二層はコクマー、ビナー、ケセド、ケブラー、ティファレトの五つのセフィラから成る「ブリアー」という世界だ。
この世界は創造界と呼ばれ、「アツィルト」で生まれた魂はここで様々な「個」に分かれ、個性というものが形成されるらしい。
そう、人の精神や魂は、もともと一つだったのだ。

第三階層は、ケセド、ケブラー、ネツァク、ホド、イェソドで構成される「イェツラー」。
ここは形成の世界と呼ばれている。イェソドという単語を覚えていてほしい。

そして第四階層がネツァク、ホド、マルクトで構成される「アッシャー」だ。
ここは物質界と呼ばれ、人は不自由な肉体まとって生きる。つまり、生命の樹では、ここが私達の住む世界なのである。


では御使降しとは何なのかというと、この術式は生命の樹をベースにして発動された術式である。
ならば当然この術式の対象となるのも、十字教における四大天使としてのガブリエルの立場ではなく、
生命の樹におけるガブリエルの役割が対象となるのだ。

つまり、生命の樹が示す、私達の住む世界の「アッシャー」に、上位世界である「イェツラー」からガブリエルが引きずり下ろされてしまったという事。
もっと詳しく言えば、「イェツラー」を構成する「イェソド」からである。このイェソドを守護するのはガブリエルなのだ。

これが御使降しにおいてガブリエルが地上に落ちてきた理由であると思われる。
しかし、これほどの高度な術式を一体だれが行使したのか?きっとその魔術師はただ者ではないはずだ。
927 :1 [sage]:2011/01/28(金) 13:02:48.26 ID:q5y8azw00

11月×日

天使になった夢を見た。
正直やめてほしい。
きっと、昨日生命の樹や天使について長々と書いてしまった事が原因なのかもしれない。

11月×日

ヴェロニカからメールが来た。アドレスを教えた覚えは無いのですが。
どうやら最近、クランツ総大主教がワシリーサの餌食になっているらしい。
私の不在で溜まっている欲望の捌け口がそちらへ向いてるのだとか。
まあ私としては、ワシリーサの鬱陶しいスキンシップから解放されるのならば、総大主教の貞操がどうなろうと知った事ではない。
そろそろ戻ってこないかと言われたが、話はこちらの最大主教を通してくれと突っぱねた。
第三次世界大戦の影響でイギリス清教は事実上、魔術サイドの頂点を握ったに等しいのだ。
もはや私を邪魔するものは何もない。


11月×日

シェリーの作品作りの手伝いをした。
ここだけの話だが、私はシェリーが好きだ。
彼女を見るとなぜか嗜虐心の様なものが沸いてくる。
本当にここだけの話だ。


11月×日

ワシリーサからメールが来た。
削除した。アドレス拒否もした。


11月×日

最近、五和の私を見る目が怖い。気のせいだろう、多分。


11月×日

最近やたら“在らざるモノ”が増えた気がする。
どういう事だろうか?一体何が起きているのか…
928 :1 [sage]:2011/01/28(金) 13:03:49.91 ID:q5y8azw00

11月×日

魔術の行使に失敗した。
おかしい、単なる人払いなのに、なぜ失敗した?
どうも最近、魔術を使いづらい気がする。
生命力を魔翌力に転換する事すらも違和感を覚えるくらいに。


11月×日

ワシリーサから手紙が来た。
燃やした。


11月×日

上条当麻の事を考えると胸が苦しくなる……


と五和から相談を受けた。
心筋梗塞の疑いがあると答えたら嫌な顔をされた。なぜ?


11月×日

そろそろ髪を切ろうか。
前髪が鬱陶しい。
929 :1 [sage]:2011/01/28(金) 13:06:03.20 ID:q5y8azw00

11月×日

夢を見た。謎の女性が出てきた。
17、8くらいの美少女だ。全体的に青い印象だった。
彼女は一体誰なのだろう。

11月×日

アンジェレネが“在らざるモノ”に襲われた。
しかも人間の精神に憑依し、内側から蝕んでいく厄介なタイプのだ。
このケースでは、普通は憑依された人間の精神に介入し、攻撃する術式を使う。要はエクソシスト的なアレだ。
だがどういう事か、今の私の魔術は安定していない。下手をすればアンジェレネの精神を壊してしまう恐れがある。
非常に不本意ではあるが、ジブリールの力を借りてアンジェレネと私の精神を交差させた。
以前も説明したが、生命の樹の上位の世界はアツィルトと言い、ここは神性界、完全な世界、または精神の集合体とも呼ばれている。
もともと人の精神というのは一つだったのだ。できない事は無い。

余談ではあるが、このさらに上の世界は000000。つまり、原因なき原因の世界であり、神そのものでもあり、天上の意思とも呼ばれている。
どういうわけか、生命の樹においてこの世界は意図的に省かれている。
この世界に辿りついた者は、例えば部屋に引き籠って居ながら、もうひとつの肉体を現出させて外出するという事ができるのだろうか?
“神ならぬ身にて天上の意思に辿りつく“事のできない私には想像し得ない話である。

話が逸れたが、アンジェレネは無事救出できた。あの猫もたまには役に立つ。
でも早く捨てたい。


11月×日

キャーリサから何か良くわからないパーティーの招待状が送られてきた。
ドレスも一緒に送られてきた。無論全て燃やした。
社交界など興味は無い。


11月×日

キャーリサが私の謁見を要求しているらしい。
そもそも私はあの王女の事は好きではない。むしろ嫌いだ。
傾国の女にフランスパンで殴られて[ピーーー]ばいいのに。
930 :1 [sage]:2011/01/28(金) 13:09:47.86 ID:q5y8azw00

11月×日

五和に誘われて郊外へ遊びに行った。
思い返せば、初めて五和と出会った日、彼女は何の理由も前触れも無く私を友達だと言った。
今でもこれに関しては良くわからない。だが、私にとっては嬉しい事なのには変わりない。

私と五和は歳が離れている。とは言え、10も20も離れているというわけではないが、それでも彼女は私に気さくに接してくれる。
そう言えば、五和は妹が欲しかったと言っていた気がする。彼女は私を妹の様に思ってくれているのだろうか? 
だが、私は五和を姉の様に感じた事は無い。

彼女は比較的、真面目でしっかりとした性格であり、面倒見が良くまたお人よしでもある。
異性に対して恋心を抱いているが、上手くそれを伝えらず、やきもきして歯痒い思いをするなど、年相応と言おうか、青臭い少女の様な、
子供っぽい性格でもある。
対照的に、私は真面目かどうか主観では判断が付かないが、私生活は彼女ほどしっかりしているとは言い難い。
自分でズボラと言うのも情けないが、様式美よりは機能性を求めるタイプなのだ。整理整頓も必要性を感じなければやらない。
その必要が無いものはそのまま放置する。栄養豊富で見栄えの良い食事よりもインスタントを好む。
言葉使いさえも、趣旨さえ伝わればそれで良いと思っている。
“第一の○○ですが“というのはけしてキャラ作りではない、そういう意図があるのだ。
いや、よく考えてみると、これは機能性を求めているのではなく、私は単にめんどくさがりなだけではないだろうか?
まるでダメ人間ではないか。ちなみにいくら機能性を求めるとは言え、さすがに変な拘束衣とかを着るのは勘弁願う。

こうして日記に書いてみるというのは、意外と面白い事を発見できる。
自分を客観的に見る事ができるのだ。あなたとはちがゲフンゲフン。
こうして見ると、私はなんとも人間味の無い人間に見える。まるで機械の様で、実に可愛げが無い。対して五和は普通だ。
普通。悪く言えば地味。良く言えば、実に純粋に人間らしいと言える。

対照的だ。だからこそ友人になれたのだろうか?
まるでだらしない人間が真面目な人間に助けを求めすがる様に。いや人間味の無い者が、逆に人間らしい人間というのに興味を持った様に。
そして逆に、人間が流行りの機械(オブジェクト)を求める様に、私達は惹かれ合ったのだろうか。

いや違う、それは否定させてもらう。
私は五和のためなら命をかける事ができる。そして五和も私のために体を張ってくれた。
確かに私はつまらない人間だ。別れ際に泣いてくれた彼女とは対照的に、私は泣けなかった。
悲しいと思う前に仕方のない事だという気持ちの方が先行していた。
いや本当に、私は実に人間味の無いつまらない人間だ。

だがそれでも五和が私の事を友人だと言ってくれるのなら、私も彼女の友人で在り続ける。
天上の神がそれを許す限りにおいては。

今日はずいぶんと長く書いてしまった。こんな日記程度で夢中になってしまうとは不覚だ。


11月×日
とうとうキャーリサが乗り込んできた。
一体何なんだあの王女は。
あんな女にイギリス国民の血税が使われているのかと思うと、イギリスの9000万の国民に同情せざるを得ない。
931 :1 [sage]:2011/01/28(金) 13:10:44.15 ID:q5y8azw00
ここで区切ります。

次回は11月×日のキャーリサ来襲。
932 :1 [saga]:2011/01/28(金) 13:11:54.51 ID:q5y8azw00
age忘れました。たぶんこのスレだけだと終わらないかな、このペースだと…
933 :1 [saga]:2011/01/28(金) 21:07:28.51 ID:q5y8azw00
キャーリサ来襲の前に、別のネタを投下します。
934 :1 [saga]:2011/01/28(金) 21:09:11.78 ID:q5y8azw00


【とあるロリなシスターさん達】




サーシャ「……」


さて、唐突ではあるが、何から話せば良いのやら…


アンジェレネ「アニェーゼ、そのチョコは私のですー!!」

アニェーゼ「うるせーです、アンジェレネはさっき食べたでしょう」

ルチア「それでもあなた達は神に仕えるシスターですか。チョコよりも神への祈りを!」


サーシャ「……」


セリフだけでは分からないだろう。
私の口から直接言わせてもらう。


みんな幼女になった。


サーシャ「…………」


みんなロリだ。某学園都市最強の能力者の定義的にもロリだ。中学生以下だ。
935 :1 [saga]:2011/01/28(金) 21:10:38.90 ID:q5y8azw00

サーシャ「しかし、なんと言うか…」


ルチア「サーシャ、早く教会へ行きましょう! 今日も迷える子羊のために祈るのです」

アニェーゼ「賛成です」

アンジェレネ「帰りにタイ焼き食べてもいいですか?」

サーシャ「……」


見た目はロリだ。まごうことなくロリだ。
あの巨乳で長身のルチアでさえ、見た目10歳程度のロリだ。
私よりも小さいロリだ。

しかしなんと言うか、ロリ化しても、いつもと言ってる事が変わらない。
セリフに変化が無い。つまらない。
三つ子の魂百までとはいうが、もっとこう、ロリロリしたセリフを吐けないのか?

ちなみにアンジェレネはいつも通りだ。きっと10歳の頃から精神が成長していないのだろう。うつけ者が。


サーシャ「はぁ…」

ルチア「サーシャ、早くしなさい!」グイグイ

サーシャ「第一の回答ですが、分かりました。分かりましたからスカートを引っ張らないでください」

そう言えば、彼女たちは孤児だ(ルチアは知らないが)。リアルに外見10歳の頃から修道院に入り、そして魔術の訓練していた。
なるほど、ロリでも性格がたくましいのはこのためか。
936 :1 [saga]:2011/01/28(金) 21:12:19.01 ID:q5y8azw00

サーシャ「そう言えば、神裂やオルソラはどうなったのでしょう?」


【こうなった】


オルソラ「うふふ、紅茶が美味しいのでございます…」

サーシャ「……」

オルソラだ。いや、ロリソラだ。胸が大きくないロリソラだ。
いつもより若干髪が長くなってセミロングになっているがロリソラだ。
ロリソラは食堂で紅茶を嗜んでいる。


オルソラ「まあまあサーシャさんではございませんか。ご一緒にお茶でもいかがですか?お菓子もありますよ♪」

アンジェレネ「わーい♪」

サーシャ「待て」グイッ!

アンジェレネ「あーん!」ジタバタ!!

首根っこを掴んだ。暴れてる。猫かお前は。

ルチア「ダメです。私達はこれから主に祈りを捧げるために教会へ行くのです」

オルソラ「まあまあ、そうでございますか。それは御苦労さまなのでございますよ」

ルチア「オルソラ、あなたも紅茶など飲んでいる場合ですか。修道女なら神への祈りを第一義とすべきです」

あなた本当に10歳ですか?
937 :1 [saga]:2011/01/28(金) 21:14:12.83 ID:q5y8azw00

オルソラ「私はこれから寮の掃除をしなければならないのでございますよ。
それに例えどこにいても、例え牢獄の中でも主に祈る事はできるのでございます。」

オルソラ「聖書が無ければ口伝で伝えれば良い。教会が無いのなら、どこでも祈りの場に変えてしまえばいいのでございます」

ルチア「うぐっ…」


良い事を言いますね。そして論破されたロリルチアは若干涙目です。


オルソラ「しかし、ルチアさん」

いつの間にかオルソラはルチアの目の前に立っていた。瞬歩か?

オルソラ「あなた様のように、主への真摯な祈りを常に忘れない修道女は、とても立派なのでございますよ。
私も見習わなければならないのでございます」

ルチア「オル…ソラ…」

オルソラはそう言いながら、ルチアの手を両手で包む様に握った。

オルソラ「ルチアさん、どうか教会へ行けない私のこの祈りも、あなた様が主へ届けていただけませんか?
あなた様に、私の祈りを託させてはいただけませんか?」

女神の様な笑顔だ。後ろに後光すら見える。

ルチア「分かりました…シスターオルソラ……この祈り、あなたのこの気持ち、必ずや主へと届けて見せましょう!!」

なぜかルチアは感動の涙を流している。
938 :1 [sage]:2011/01/28(金) 21:16:24.70 ID:q5y8azw00

サーシャ「……」

ぶっちゃけるとつまりは、「面倒だから代わりに教会へ行って祈っといて」という事だ。
いや、オルソラにも事情があるのだから、けして怠惰ゆえに教会へ行かないというわけではないのだろう。
彼女はこれでも聖パウロのごとく異邦人への布教に努めた立派な修道女だ。
彼女の名誉のためにも訂正しておかなければならない。

それにしてもまあ、弁舌も聖パウロの如きだ。あのルチアを見事に言いくるめてしまった。
それだけではない、論破した後も相手の自尊心を落す事無く、優しく手を差し伸べて相手を懐柔している。見事としか言いようがない。
オルソラ…いや、ロリソラ、おそろしい子…!!


サーシャ「ですが、やはりあなたは10歳でもおばあちゃんですね」

オルソラ「何かおっしゃいましたか?」ゴゴゴゴゴ

サーシャ「いいえ」

お母さんに訂正しておこう。
何となく笑顔が黒い、怖い。ロリなのに…


アニェーゼ「空気だ…」
939 :1 [saga]:2011/01/28(金) 21:18:07.68 ID:q5y8azw00

ところで神裂はどうなったのだろうか?
もともと見た目が結婚適齢期ゲフンゲフン


神裂「うーん…」ズルズル

サーシャ「……」


ロリだ。ロリ神裂さん。
しかも何かを重たそうに引きずっていらっしゃる。


神裂「しちてんしちとうが重いのです。どうしてこんなに重いのですか」


ああ、そのやたら長い刀。子供には重いですよね。


神裂「どうして私はこんなものを引きずっているのですか? 重いよぅ…」


と若干涙目になりながら一所懸命に刀を持っている。
かわいい。まさにロリ大和撫子。日本人形みたいだ。


サーシャ「昔の神裂は、可愛かったのですね…」


今では洗濯機などにうつつを抜かしているが。
940 :1 [saga]:2011/01/28(金) 21:18:43.72 ID:q5y8azw00
一端ここで区切ります。
続きはたぶん深夜。
941 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 21:36:32.53 ID:j/PDLILio
一気に更新キテター
ロリ神裂は聖人の力は使えないのかな
942 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 22:25:05.25 ID:dBN5AlcAO


>>1の知識に脱帽
943 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/29(土) 01:10:12.05 ID:coqOzuf3o
SS・小説スレは移転しました
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/ Mobile http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/
944 :1 [saga]:2011/01/29(土) 21:28:35.63 ID:oNjbz9XQ0
続きです
945 :1 [saga]:2011/01/29(土) 21:30:17.04 ID:oNjbz9XQ0


【とあるロリなシスターさん達2】


ロリシェリー「うわあああん!!!エリス!!エリスー!!!」

サーシャ「……」


この泣いてる小麦色の肌に金髪の少女は誰ですか?
彼女はシェリーです。ロリシェリーです。


シェリー「エリスー!! エリスがいないの!!」

サーシャ「……」


ロリなシェリーが泣いている。泣き叫んでいる。
普段の凛々しい顔が、幼く歪んでいる。

そして私は思い出した。シェリーの部屋にある失敗作を。
そうだ。彼女は昔、大切な友を失ったのだ…


我が身の全ては亡き友のために(Intimus115)


シェリー「エリスは、エリスはどこ!!?」


そう叫びながら、彼女は私の修道服の裾を強く引っ張る。すがりつくように…

しかし、無いものは無い、知らないものは知らない、答えられないものは答えられない。

どうしようもないものは、本当にどうしようもないのだ……
946 :1 [saga]:2011/01/29(土) 21:31:59.26 ID:oNjbz9XQ0

シェリー「エリスっ…ぐすっ、ひぐっ…」


私は何て声をかければ良い。
救いを求める者に手を差し伸べるのが、神に仕える修道女のはずなのに。

私には、彼女を癒すための言葉が見つからない。見つけられない。


サーシャ「シェリー…」




ロリソラ「まあまあシェリーさん、どうして泣いているのでございますか?」


ロリソラが現れた。ほんとこの人は何の前触れもなく突然に現れる。


シェリー「エリスが…エリスが居ないの…」

ロリソラ「あらあら、それは大変でございますね」

シェリー「うん…エリス……エリスー!!うわああああん!!!」

ロリソラ「よしよしなのでございますよ」ぎゅっ

シェリー「ぐすっ…」
947 :1 [saga]:2011/01/29(土) 21:34:38.93 ID:oNjbz9XQ0

ロリソラ「大丈夫なのでございます。きっとエリスさんは何か御用事があるだけで、すぐに帰ってくるのでございますよ。
     ですからどうか泣きやんでください」

シェリー「…ほんと?」

ロリソラ「ええ」

シェリー「……」ぎゅっ

サーシャ「ロリソラ…」


言葉に説得力は無い。無責任だ。
だが、それでも彼女は人の温もりを知っている。

死んだ人間を求める人を納得させようなど、ましてや相手が子供となれば、所詮はどんな言葉を並べようが正答など存在しないわけで。
どうしてもそれは子供騙しにしかならない。
自分の持つ生と死の価値観を延々と語っても、大切な人を失った子供の心にはどれだけ届くのだろうか。


そんな100万弁の言葉も、人の温もりの前には、悲しい時に誰かが傍に居てくれる事の心強さには敵わないのだろう。


オルソラは、人の温もりを知っている。その力を知っている。
ペンは剣よりも強し。そして鋭い言葉は1000の軍よりも強い。しかし、人の温もりはそれを超える力がある。それを知っている。

ただ言葉で説得する事に長けているのが、彼女の魅力ではないのだ。

やはりオルソラ、あなたはロリでも大した人ですね…


サーシャ「ロリ…いえオルソラ、シェリーを任せても良いですか?」

オルソラ「はい、私にお任せくださいなのでございます」
948 :1 [saga]:2011/01/29(土) 21:36:16.14 ID:oNjbz9XQ0

さて、色々と省略させていただきましょう。

私とロリ三人は、教会へ行きました。いつも私達が働いている教会です。
そして主への祈りを捧げました。これもいつも通り。

しかし、私達はシスターなのであり、お祈りを済ませるだけで帰るというわけにはいきません。教会で仕事をしなければならないのです。

とは言うものの、第零聖堂区ネセサリウスに所属する私達の仕事は、魔術に関わる事。
つまりは武闘派組織であり、こういった普通の修道女がする様な仕事にはあまり関わりません。
ですから、ぶっちゃけると教会で仕事をする必要はあまり無いのです。

ニコチンと香水の匂いに塗れていても許される様に、
こう言った表の仕事で必要とされる清廉なシスターや神父のイメージを堅持する必要が無いくらいに。


まあつまり、フレックスタイム制ならぬフレックスジョブ制です。サボっても良いのです。


それでもルチアやアニェーゼはまじめなので(アンジェレネは知らないが)、こう言った表のシスターとしての仕事もきちんとこなしています。


私は…ですか? 第一の解答ですが、そんな事は今はどうでもいいでしょう。


しかしながら、この娘達は今現在進行形でロリ化しています。
教会の神父や他のシスター達に、どう説明しろと言うのでしょう?


そんなわけで、本日の仕事はサボりです。お祈りだけして帰りました。

949 :1 [saga]:2011/01/29(土) 21:38:00.74 ID:oNjbz9XQ0

アンジェレネ「たいやきたいやき〜♪」

サーシャ「第一の解答ですがアンジェレネ、あまり手を振りまわさないでください」


先頭はアニェーゼが歩いている。やはりリーダーだからだろうか。
そしてアンジェレネは私と手を繋いでいるのだが、ブンブンと振り回されて痛い。
そして後ろからルチアがついてくる。

ルチアとも手を繋ごうとしたが、拒否された。

……いや、別に私自信が拒否されているというわけではないのだろう。たぶん恥ずかしがり屋さんなのだ。そう信じたい。


アンジェレネ「えーっと、私はあんことカスタードとカレーと…」

サーシャ「それは全種類買えという事になりますね。ダメですよ」

アンジェレネ「うぅ〜」


そんな残念そうな顔をされても困る。
というかなぜロンドンでタイ焼き?今さらだけど…
950 :1 [saga]:2011/01/29(土) 21:39:48.94 ID:oNjbz9XQ0

アニェーゼ「アンジェレネ、私と半分こです」

アンジェレネ「頭の方が良いです」

アニェーゼ「はい、尻尾」

アンジェレネ「アニェーゼの方が大きくないですか!?」

アニェーゼ「そんなことねぇです。気のせいです」


サーシャ「ルチアは私と半分にしましょう」

ルチア「……」


もちろん、私はルチアに頭の方をあげた。しかも大きめにだ。
今は私がお姉さんだ。お姉さんが食い意地を張るのは良くない。


ルチア「いりません」


拒否された。また拒否されました。


ルチア「そもそも、私達は主への祈りを捧げに行ったはずです。なのに、その帰りに買い食いをするなど、
    そんな不品行を主が許すはずがないでしょう!!」

サーシャ「ルチア…」


ロリルチア。10歳の頃から生真面目だ。融通が利かない。
いや、これはこれで模範的なのだろうけど。
951 :1 [saga]:2011/01/29(土) 21:44:03.75 ID:oNjbz9XQ0

ルチア「シスターサーシャ、あなたもあなたです!! あなたがついていながら、なぜこのような事に!!」


タイ焼きを買ってあげただけなのに凄く責められています。
ロリルチア厳しいです。

しかし、ここで引くわけにはいきません。
目には目を、歯には歯を、シスターには聖書を、そしてロリっ娘には無邪気な笑顔と少しの恥じらいをです。



サーシャ「第一の解答ですが、聖書にこの様な話があります」

サーシャ「かつて最後の晩餐、すなわち神の子がユダヤ衆議会に逮捕される前の夜に、マリア(聖母マリアとは別人)は、
     敬愛する神の子のために、非常に高価な高油を塗ってあげました」

ルチア「……」

サーシャ「しかし、それを見た弟子達は憤慨しました。“この香油を買うだけのお金があれば
     一体どれだけ多くの人の食事を賄えるのか!!どれだけ多くの人間を飢えから救えるのか!!”と」

サーシャ「おそらくその香油は、マリアが一生懸命貯金して買ったものなのでしょう。
     確かに、貧しい者達を救おうとする彼らが怒るのも分かります。それは間違ってはいないのかもしれません」

サーシャ「ですが、神の子は、憤慨する弟子達にこう言いました。“マリアを責めてはならない。彼女は私のために施してくれたのだと。
     あなた達はいつも貧しい人達の傍にいてあげられる。しかし、私はもうあなた方の傍には居てあげられないのです“と」

952 :1 [saga]:2011/01/29(土) 21:45:54.18 ID:oNjbz9XQ0

サーシャ「もう二度と会えない。そんな神の子のために、マリアは財産を投げ打って高価な香油を施してあげた。
     そんなマリアの気持ちを、一体誰が否定できるというのでしょう」

ルチア「………」

サーシャ「確かに、私達は欲望に走るのを抑え、常に清廉を心がけなければなりません。
     しかし同時に、隣人のために施したいと願うその心を無碍にしてもいけないのです」

サーシャ「誰かのために何かをしてあげる。それはとても尊い事であると神の子は人々に教えてきたはずですよ。違いますか?」

ルチア「そ、それは…」

サーシャ「第一の質問です。ルチア、私の気持ちを受け取っていただけませんか?」


私はもう一度、ルチアにタイ焼きを差し出した。
中身はカスタード。


ルチア「……はい」


ルチアは少し戸惑いながらも受け取ってくれた。
そして、おそるおそるタイ焼きに口を付ける。


ルチア「美味しい…です……//////」


かわいい。ロリルチアかわいいですよ。
やはり子供は素直なのが一番です。
そしてタイ焼きはとても美味しいです。エキゾチックジャパニーズカルチャー。
953 :1 [saga]:2011/01/29(土) 21:47:45.68 ID:oNjbz9XQ0

アンジェレネ「〜♪」

サーシャ「楽しそうですね」


アンジェレネは相変わらず、鼻歌を歌いながら、握った私の手をブンブンと元気よく振り回している。


アニェーゼ「アンジェレネ、また音程を外しやがったですね」


アニェーゼは先頭を歩く。頼もしいリーダーだ。


ルチア「……」


ぎゅっ


サーシャ「ルチア?」

ルチア「……」


ルチアはそっぽを向いたまま、もう片方の私の手を握ってきた。
なるほど、生真面目とツンデレは表裏一体なのですね。


寮のみんなにもタイ焼きを買って行ってあげようかと思ったが、アニェーゼ部隊だけでも250人を超える大所帯だ。さすがに無理です。

ちなみに描写はしていませんが、他のシスター達もみんなロリになっていました。
つまり、あの寮でロリでないのは私だけという事です。
いえ、厳密には私もまだロリの範疇に入るのかもしれませんが……
954 :1 [saga]:2011/01/29(土) 21:50:06.83 ID:oNjbz9XQ0


さて、みんながロリになった衝撃で忘れていましたが。
事象があるのなら、そこには原因というものがあるはずです。





サーシャ「第一の質問ですが、三味線と剥製はどちらがお好みですか?」グイッ

ジブリール「待て!! 離せ!! 離せば分かる!!」


離す前に話せ。このバカ猫天使。私的に嫌いな天使ランキング堂々の5週連続第一位よ!!

事の顛末は、ジブリール、いえガブリエルのテレズマの暴走らしい。
もはや何でもありですねテレズマ。テレズマでみんなロリになるのですね。パナいです。

ちなみに私がロリ化しなかったのは、テレズマに対する免疫みたいなものがあるからだとか。
確かに、ガブリエルのテレズマをガンガン使ってバトルしてきましたね。


夜が明けたら、みんな元の姿に戻っていました。どうやらロリ化していた時の事は覚えていないらしいです。


とりあえず、ジブリールは三味線にする事にしました。天草式に作り方を教わるとしよう。

955 :1 [saga]:2011/01/29(土) 21:51:12.45 ID:oNjbz9XQ0
以上です。

お姉さんなサーシャも良いと思います。
956 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 13:09:43.41 ID:oX6WGhHAO

来てたー!
957 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/30(日) 14:54:18.14 ID:o7me604AO
いまだに移転せずにSS書いてる奴は頭沸いてんのか?
移転しろってコメントすら読めないと
958 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 15:14:17.21 ID:narmI8t/o
>>907
959 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/30(日) 20:26:45.24 ID:o7me604AO
それはお前らの都合だろ…
続けるならせめて上げるな、下げてやれ
なんとかなんで移転せずに〜なんとかなんで移転せずに〜そんな自己中ばかりなのかSS書いたり読んだりしてる奴は
960 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 21:34:22.62 ID:90yMYcyDo
あと40レスぐらいで埋まるんだしいいんじゃないの?
運営が今すぐ移転しろっていってるんならともかくお前が言ってもお前が自己中に見えるだけだぞ
961 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/31(月) 01:48:39.08 ID:+HDaD8X7o
>>959
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1279375638/503

503 名前:荒巻@管理人 ★[sage] 投稿日:2011/01/13(木) 20:51:06.76 ID:???
11時くらいに板作ります。

移行はとりあえず以下の選択肢から各スレ主の判断に従って行ってください。

・スレッドムーバ―を使ってスレを新板へ飛ばす
・現行スレが終わったら次スレから新板に飛ばす
・現行スレで誘導を続け、新板に更にスレを作る
・ここにしがみつく

こんなかんじでどうでしょ


で、ここの>>1は二番目を選んでいる。なにか問題でも?
962 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/02/01(火) 18:09:55.60 ID:2pJlLtyi0
つまり糞スレだから埋めろってことか
963 :1 :2011/02/04(金) 03:15:56.51 ID:ZWz1P8KK0
移転しました。

サーシャ「天使になるらしいです」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1296756681/

私が移転を渋ったせいで、皆様にご迷惑をかけてしまった事をお詫びします。
続きは新板の方で引き続き書いていこうかと思います。
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