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唯「グリプス戦役!」 - 製作速報VIP(クリエイター) 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 18:29:08.16 ID:zccx4x.o
前作の終わりに続編作っちゃえと言われたので作ってみた。
キャラの立ち位置とかぜんぜん違うはんで続編って感じじゃないけど。

気が向いたら読んでください。

鬱が嫌いな人は読まないでね。

では、すたーと!
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
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【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/

2 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 18:30:15.88 ID:zccx4x.o
 ぷろろーぐ!

2学期が始まってすぐだった。
人工的に気候が調整されたコロニーとちがって、ここは残暑とやらでうだるような暑さである。

純はフルーツオレを飲み込んだあと、思い出したように口を開いた。

純「そういえば梓、進路どうするの?」

梓「ムギ先輩の会社に誘われてる。他の先輩たちもいるし、そこにしようかと思って。」

憂「私も、お姉ちゃんと一緒にいたいから、そこ受けるんだよ。入社試験、難しいみたいだけど…」

梓「唯先輩が受かったんだから、大丈夫でしょ。」

憂「もう、梓ちゃんひどいよ!お姉ちゃん頑張ってたんだから!」

梓「冗談だってば。唯先輩が頑張ってたの、私も知ってるし。」

憂「純ちゃんは、どうするの?」
3 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 18:31:00.95 ID:zccx4x.o
純は、来た、と思い立ち上がって宣言した。

純「試験が早くてさ、昨日結果が出て、地球連邦軍にきまったよ!航宙パイロット候補生!カッコいいでしょ!!ブーン!!」

純は右手を、飛行機に見立てて動かした。

梓は、驚いた。
何も考えていなそうな同級生が、いち早く進路を決めていたのだから、当たり前である。

梓「びっくりしちゃったよ…なんで軍隊なんかにはいるの?」

純「ご飯困らないから。それに、宇宙暮らしに憧れてたしね。」

梓「純は変わってるね。わざわざ棄民の仲間入りしたいなんて。」

純「梓はスペースノイド嫌いだもんね。」
4 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 18:31:39.33 ID:zccx4x.o
梓「密閉されてるコロニーなんか行ったら、この前サイド1の30バンチであったみたいに感染症で一気に1500万人全滅したりするんだよ、行くの止めなよ。怖いって。」

純「まあ、なんとかなるなる。今から楽しみだなあ。」

梓の両親は先の戦争で、ジオンのコロニー落としによって命を落としていた。
それ以来、宇宙移民者を毛嫌いしている。
憂が、気を使って話に割って入る。

憂「純ちゃんが宇宙に行っても、私たちは友達だよ!」

時は宇宙世紀0085。連邦軍による各コロニーの弾圧が激しさを増して、スペースノイドたちの不満が募り、それが新たな戦争の火種を起こそうとしていた。
5 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 18:32:37.12 ID:zccx4x.o
律「すげえぞ、このコックピット!」

律は、思わず感激の言葉を発していた。
仕事はテストパイロットだが、正規の軍人ではない。
紬と一緒に入社した、できたばかりの会社の仕事である。
琴吹グループが軍とアナハイムに取り入って興した会社で、MSを納品する前のテストを主な業務としている。

唯「いいなあ、りっちゃん。私も乗りたいよ〜。」

律「後で代わってやるから、今日のとこはその仮想敵のゲルググで我慢するんだな。」

律が乗っているのは、できたばかりの新型量産機RMS−106ハイザックである。
量産機としては初めてコックピットに全天周囲モニターと、リニアシートが採用されていた。律はそれに感激していたのだ。
6 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 18:33:35.17 ID:zccx4x.o
澪「オモチャじゃないんだぞ、さっさと模擬戦に行け!」

紬「まあまあ、そう言わないで…りっちゃん、全天周囲モニターとリニアシートはどう?」

律「おう、最高だぜ!コックピットが広くなった!周りも良く見えて、いい感じだ。」

紬「模擬戦中に違和感があったら申し出てね。」

律「了解ぃ!」

澪「部長は律に甘すぎます。」

紬「高校の時みたいに、ムギでいいわよ。仕事の大半は、斉藤がやってくれてるし、まだ部長なんてガラじゃないわ。」

澪「しかし・・・」

紬「もう…澪ちゃんは、カタイわねえ…」

澪「ム…ムギ…ごめん///」
7 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 18:34:31.94 ID:zccx4x.o
すぐに、律と唯が帰ってきた。
コックピットから二人が出てくる。
そのまま事務所に戻ってお茶を飲みながらミーティングだ。
事務所はアフリカ、キリマンジャロ基地のすぐ近くにある。

唯「新型に歯が立たないよ〜」

律「えっへん、見たか!私の腕を!!」

澪「新型の性能だろ!!」

澪は、律の頭をひっぱたいた。

律「いてえな、手加減してくれよ。」

紬「二人共相変わらずね〜…それで何か気になったことはあった?」

唯「私も新型に乗りたい!!」

澪「おい唯、お前に聞いてるんじゃないぞ!」

律「そうだな、全天周囲モニターは慣れないとちょっと気持ち悪いかな…もうちょい長く乗ってたら酔ってたかも。」

紬「ふんふん…」

律「あと、ビーム兵器の使用に制限があるのもどうかと思った。ビームライフル装備で、ビームサーベル使えないんだもんな。」

紬「そうねえ…」

律「でもまあ、相手がジオン残党なら、ザクやドム、それにゲルググ位だから、この程度の性能でもいいのかも。操縦性はすごく素直だったぜ。」
8 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 18:35:22.83 ID:zccx4x.o
紬「貴重な意見だわ。早速まとめてアナハイムと軍に報告しておくわね。」

唯「明日は私がハイザックね!」

律「はいはい…澪は乗ってみたくないのか?テストパイロット魂がうずくだろ?」

澪「私、ハイザックはジオンくさいから嫌だな…」

律「コックピットからはジオンくさい機体は見えないんだからいいじゃん。」

澪「気になる…」

律「細かいこと気にするんだなあ…」

紬「じゃあ澪ちゃんには今度来るジムUのテストをお願いするわね。」

澪「ジムU?新型か?」

紬「ジムのリファイン機よ。ハイザックと同じ全天周囲のコックピットシステムを導入して、あちこちいじって性能の底上げをはかってるの。」

澪「ふうん、いろんな機体が来て仕事も忙しくなってきたな…」

全員、やる気が出てきた。
未だジオンの残党は各地で小規模な紛争を起こしている。
各人は、自分たちの仕事が地球圏の安定に少しでも寄与出来ていることが嬉しく、誇らしかった。
9 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 18:36:28.32 ID:zccx4x.o
和は、不満だった。
MS訓練施設での成績は非常に優秀であったが、結局宇宙戦闘機のパイロットに回された。
FF−08WR ワイバーン、と呼ばれる機体である。
新しい戦闘機だが、戦闘の主力はMSである。
傍流である、という思いが強かった。任務はパトロールばかりだ。

和「女だから…かしらね…」

姫子「真鍋さん、何か言った?」

僚機の姫子が、和のつぶやきに反応した。

和「何でもないわよ、この宙域もクリアね。」

姫子「ミノフスキー粒子もほとんど観測されないし、レーダー感も無いわね。」

和「艦に帰投するわ。」

姫子「了解。」

二機のワイバーンは小さな弧を描いて反転した。
MSの運用によって得られたAMBACの技術が導入されているので、機動性はなかなかのものだ、しかし所詮、戦闘機なのだ。
和はため息を押し殺して、ゆっくりと息をはいた。
10 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 18:37:48.85 ID:zccx4x.o
第一話 ティターンズ!

梓と憂が入社して、仕事に幅ができた。

紬「新しい可変MAのテストをお願いされたわ!」

唯「ハイハイハイハイ、私が乗る!!」

紬「じゃあ、最初は唯ちゃんお願いね。」

梓「可変MAなんて大丈夫ですか?」

唯「そういえばMAが空を飛ぶの?かへんって何?」

梓「…私が変わりましょうか?」

唯「ヤダヤダ、私が乗る〜。絶対乗る!」

律「…その自信はどこから来るんだよ…」

紬「こっちに来て、もう機体は届いてるの。」

紬はMS格納庫にメンバーを連れて来た。
円盤型の機体が鎮座している。
一同が驚きにつつまれる。しかし各々が違う感想を持っているようだ。
11 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 18:39:01.23 ID:zccx4x.o
紬「NRX−044 アッシマーよ。すごいでしょ。ニュータイプ研究所も開発に一役買ってるの〜。」

紬「がんばって、テストのお仕事勝ち取ったんだから!!」フンフン

唯の眼の色が変わった。

唯「かわいい!トンちゃんみたい!!」

ちなみにトンちゃんは今、事務所の水槽で暮らしている。
大きさは全長20センチほどまでに成長していた。

梓「何か前にもそんな感想を聞いたことがあるような…」

律「これ…ホントに飛ぶの?唯隊員、遺書は書いとけよ…。」

澪「ハンバーガー食べたくなった…」ジュルリ

憂「お姉ちゃん…頑張ってね!」

唯「うん!よーし、唯、行きます!!」

唯が機体の前面にあるコックピットハッチからアッシマーに乗り込む。
紬が操縦方法をかいつまんで説明する。

紬「MA形態では基本的に垂直離着陸機と同じよ。ここのレバーを引くと、MS形態に変形できるわ。」
12 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 18:40:18.54 ID:zccx4x.o
唯「了〜解っ!」

ハッチが閉まり、アッシマーが格納庫から出てくる。
滑走路に行くと、そのまま垂直離陸して飛んでいった。

唯「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

唯「すごいよむぎちゃあああああああああああんん!!」

唯「変☆形!!」キリッ

唯が変形レバーを引くと、円盤がバラっと崩れて上半身となり、エンジン部は脚部になった。
唯はそのまま自由落下中に動きまわってみた。

唯「短時間ならこのまま空中戦もできそうだね!サブフライトシステムがいらないのは革命だよ!!」

そろそろ地面が近い。

唯「変☆形!!」クワッ

一瞬で、円盤型の飛行形態に戻る。
唯はそのまま気の済むまで飛び回ってから、帰ってきた。
13 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 18:41:25.54 ID:zccx4x.o
紬「明日からは模擬戦に入るわね。サブフライトシステムを使った仮想的と空戦、地上の敵と対地戦闘、それからMS形態での地上戦、それぞれのデータを取るわ。」

律「明日は私がアッシマーな!」

澪「ずるいぞ律!最初ビビってた癖に!」

律「そうだったか?忘れちったな。」

紬「まあまあ、皆に乗ってもらって、それぞれの感想を上にあげるから、焦らないで。私も乗ってみたいし。」

アッシマーのテスト評価は、上々だった。
軍も、紬の会社に対する評価を大いに上げたようだ。
14 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 18:43:20.88 ID:zccx4x.o
純は、怒られていた。
フリーダム過ぎる性格で、すでに教官に目をつけられている。

教官「おい、鈴木候補生!!何だこのランニングシューズは!!」

純「アシッ○スのター○ーです。」

教官「商品名を聞いてるんじゃない!お前は自主訓練時間に走っていないのか?」

純「は…走っていません。毎日ストレッチしていました。」

教官「お前、軍隊をなめてるだろ?」

純「な、なめていません…」

教官「この靴を買ってから、一度でも走ったか?」

純「…走っていません…」

教官「よし、明日からみっちり走らせてやるから覚悟しておけ!!」

純「明日は休みの日です。」

教官「走ってない奴に休みなんかあるか!明日からできるだけ走りまわって、月曜にすり減った靴を見せに来い!」

純「はあい。」

教官「返事は明瞭に!!」

純「はい!!」
15 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 18:43:59.75 ID:zccx4x.o
教官「もう行け!」

純「要件おわり、退出します…」

純は教官室から出ると、ため息を付いた。

純「あ〜あ、パイロット候補生が走らされるなんて思ってなかったなあ。」

純「走りたくないな、どうやってごまかそう…」

純「砂ボコリでもなすりつけとこうかな…底もこすって減らしとこ…」

純「明日は休み♪本日金曜日♪」

純に、走る気は全く無かった。
面倒なことは嫌いである。誤魔化すに限るのだ。
16 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 18:45:09.62 ID:zccx4x.o
その日、紬は少し複雑な表情で出社した。

紬「皆に軍籍が来てるの…」

律「へ?」

澪「ええっ!?」ビクビク

唯「ほえ?」

憂「!」

梓「なんでですか?」

紬「皆が真面目にお仕事してくれるから、軍の私たちに対する評価も上がっているの…前々から仕事で軍の機密も扱ってきたし、一生懸命頑張ったけど、もうはぐらかすことは出来なくなったの。」

紬「ごめんなさい…こうなるまで相談出来なかった。」
17 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 18:46:35.92 ID:zccx4x.o
ティターンズの情報統制はかなり厳しく、MS開発などに民間が入ることを極端に嫌っていた。
それで、地球連邦軍がティターンズ化するに従いテストの仕事がやりづらくなっていったのである。
それを何とかするため、紬の父が大枚をはたいて社員の軍籍を購入したのだった。
ティターンズのMSを扱うということは、そこまでしてもやる価値のある事業だったのだ。

梓「身分証、見せてください。」

紬「梓ちゃん…?」

梓「やってやるです!スペースノイドを、地球から残らず!!」

紬「私たちが戦うんじゃないのよ。この仕事が、軍の機密に抵触するから、軍籍をもらうだけなのよ。」

そう言いながら、紬は梓に身分証を渡した。

梓「…やった…ティターンズだ…」パアア

写真の無い身分証を見て、梓の顔がほころんだ。
18 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 18:47:36.53 ID:zccx4x.o
澪「ジオンの残党狩りの部隊だな、そういえば梓、ジオン嫌いだったからな、嬉しいのか?」

梓「私…嬉しい…これで両親の仇を討てる…」

唯「あずにゃん…」

梓「私、ヤル気が出てきました!!お仕事頑張ります!!」

憂「…」

律「ま、まあ今すぐ仕事が変わるってわけでも無いんだし、気負わずやっていこうぜ。」

紬「明日の午前中、制服の受領と身分証の写真撮影に行くわ。」

その日、仕事中誰しもが落ち着かなかった。
19 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 18:49:21.30 ID:zccx4x.o
純は、窮地に立たされていた。

教官「お前、走って無いだろ。」

純「えっと…靴も汚れてるし、すり減ってますけど…」

教官が、おもむろに純のスニーカーを自分の顔に押し付けた。

教官「クンカクンカ」

純「え?」

教官「においが無いぞ!お前は、汗をかかずに走るのか?」

純「ええっと…」

教官「じゃあ得意のストレッチ、してみるか。まず前屈な。」

純「は、はい…」

教官「よーし、ゆっくり押すぞー」

純「あいたたたた」

教官「毎日ストレッチしている奴が、これくらいで痛いのか?」

純「いや…前屈は苦手で…」

教官「いいかげんにしろ、明日から本気出せよ!!」

純は、その後人の1.5倍訓練させられ続けることになる。
しかしたくましい純は誤魔化す能力をさらに進化させ、それに対抗していくのだった。
20 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 18:50:32.74 ID:zccx4x.o
唯たちは、初めてティターンズの制服に袖を通していた。

唯「この制服、カッコいいね!!」

梓「唯先輩もたまにはイイこと言うんですね。反ジオンの象徴です。誇らしいですよ。」

澪「でもなんか黒って印象悪くないか…?」

律「でもよく似合ってますわよ。澪ちゅわん。」

澪「り…律…変なこと言うな!///」

澪は律のデコを、おもいっきり叩いた。

律「イテテ…褒めたじゃん!」

紬「いいわねえ、二人共…」ポワポワ

憂「軍隊か…そういえば純ちゃんどうしてるんだろ?」

梓「パイロットの訓練施設でしょ。落第してニホンに帰ったかもね。」

憂「梓ちゃん、ひどいよ!!」

梓「冗談。ティターンズになれたのが嬉しくてついついね。」

憂「もう!そういうの良くないよ!!純ちゃんだってきっと頑張ってるんだからね!!」

梓「ごめんごめん。」

梓は、会社に帰っても制服を脱ごうとはしなかった。
21 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 18:51:46.88 ID:zccx4x.o
和は、部屋でくつろいでいた。士官学校である。
訓練施設の後、曹長となり艦に配属して少し仕事を体験した後、士官学校に入校して一ヶ月ちょっと過ごして少尉となるのだ。
側に姫子もいる。

和「ねえ、立花さん。ティターンズってどう思う?」

姫子「どうしたの、いきなり?」

和「私たちって、地球生まれじゃない。だからなのか私たち今誘われてるのよね。ティターンズに。」

姫子「あたしも?」

和「そうよ。」

姫子は、あからさまに嫌そうな顔をした。

姫子「あたしは嫌だな。あそこなんか雰囲気変だし。」
22 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 18:52:24.65 ID:zccx4x.o
和「よかった。」

姫子「どうして?」

和「私も、あそこは変だと思ってたのよ。あなたがいなくなるのも困るし。」

姫子「真鍋さん、あたしがいなくて困るの?」

和「あなた、優秀だもの。飛行機乗りって、脇役だから腐っててやる気ない人多いのよね。あなたがいなくなって、そういう人がパートナーで来るの、嫌なのよ。」

姫子「真鍋さんも、腐ってるもんね。」

和「あら、知ってたの?」

姫子「でもやることはしっかりやってる。すごいと思うな。」

和「仕事だものね。」

翌日、和はティターンズ行きを断った。
23 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 18:53:09.13 ID:zccx4x.o
すでに社長として会社を掌握していた紬が、父親に呼び出されていた。

紬父「軍籍は、貰ったな、紬。」

紬「はい、お父様。ティターンズの隊員になりました。」

紬父「これからは、ティターンズが連邦を掌握する時代になる。私もジャミトフに恩を売っておかんとな。」

紬「はい。」

紬父「それが、我がグループの発展にもつながる。」

紬「そういう事でしたら、私に出来ることは何でも致します。」

紬父「うむ。お前の会社も、評判は上々だ。」

紬「でも私の部下の社員たちは、あまり巻き込まないように…」

言いかけると、紬父は恐ろしい剣幕で怒鳴った。

紬父「うるさい!お前は私の言うとおりにすればいい!!」

紬「はい、お父様…」

紬父「お前ももう我がグループの一員だ。慎重に考えて行動しろ。余計な感情に惑わされるな!」

紬「わかりました、お父様。」

紬は、皆にどういう顔で会えばいいのかわからなくなった。
24 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 18:54:25.00 ID:zccx4x.o
和は、少尉となって艦に復帰してすぐ、艦長に呼び出されていた。
この30代前半の若い艦長の事を、和は好きではない。
士官学校の成績は優秀であったらしいが、行動が教科書的すぎるのだった。
たまに仕事の効率が悪くなるので和がアドバイスをしたり、方向性を修正したことがある。
それ以来和に対してなんだかよそよそしい感じがするのだ。
プライドを傷付けられたので、和を避けているのだろう。
安っぽい男だ、と和は軽蔑していた。

和「何の用ですか?」

艦長「少尉、ティターンズ行きを断ったのは、なぜだ?」

和「いけませんでしたか?」

艦長「そうではない…何故なのか聞きたかったからだ。」

和「正直に申し上げますと、ティターンズは考え方が地球中心に偏っていると思ったからです。この地球圏は、最早コロニーとの相互依存によって成り立っていますので、ティターンズのような地球中心の考え方では、いずれ行動に無理が生じると思いました。」
25 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 18:55:20.47 ID:zccx4x.o
艦長「そうか…真鍋少尉になら言ってもよさそうだ…」

和「なんでしょうか?」

艦長「エゥーゴを、知っているか?」

和「何度か、聞いたことがある程度です。」

和は、嘘を付いた。
エゥーゴのことは知っていたが、軍の派閥に興味がないだけだった。
和はいずれ、エゥーゴとティターンズの間に何か起こるだろうことまで、予想していたのだ。

艦長「私は、エゥーゴの一員だ。」

和「…」

艦長「ティターンズに、密告するか?」

和「いいえ。」

艦長「君の考えは、エゥーゴ寄りだな。そうだよな?」

和「考え方としては、そうなのかも知れません。しかし、軍人ですから任務に自分の意見は反映させません。」

艦長「反ティターンズなら、君は立派なエゥーゴの一員だよ。」

軍の主流はティターンズに占められつつあった。
和は、また傍流だ、と思った。
26 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 18:56:29.51 ID:zccx4x.o
事務所に帰った途端。唯が出迎えてくれた。

唯「ムギちゃんおかえり!!」

紬「ただいま〜」

先程まで、みんなにどんな顔で会えばいいのか分からなかったが、唯の笑顔は紬の心の中にのしかかった重石をスッキリと取り除いてくれた。

澪「琴吹会長、なんて言ってたんだ?」

紬「これからはティターンズの時代だから、しっかりと働くようにって。」

梓「やるです!ティターンズは力ですから!!」

憂「梓ちゃん張り切り過ぎだよ。」

律「まあ、ジオンの残党もたいしたことないから、そう大きな戦いになることも無いだろ。」

澪「律、お前アクシズ知らないのか?かなりの数の艦艇が一年戦争の最後にあそこに潜り込んだんだぞ。連中がこのまま朽ち果てる訳ないだろ。」
27 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 18:57:02.40 ID:zccx4x.o
憂「それに、エゥーゴって言う組織が連邦軍内部に出来上がりつつあるみたいですし…最近先行きが不透明ですよね。」

梓「まとめて私がやってやるです!!」

唯「みんな物知りだね〜」

澪「お前が呑気なだけだろ!軍に入ったんだから少しは危機感持て!」

律「そうだぞ、唯。危機感持て!」

澪「お前もだっ!!」

律の頭からいい音がした。

律「いててて…殴られるのはいつも私だけなんだよな…」

紬「まあ、みんなはいつも通りお仕事をすればいいのよ。それが、ティターンズに協力することになってるんだから。」

そう言いつつも、紬は父の態度が心の中に引っかかっていた。
28 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 22:14:07.87 ID:ocyrx92o
別の禁書スレではエゥーゴ壊滅したという伝説が…
29 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 22:18:18.87 ID:Qyj.aIDO
一年戦争からやってシャアとギャンの素晴らしさを伝えてもらいたい
30 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 22:33:37.01 ID:zccx4x.o
>>28
それはひどい。

>>29
一年戦争の奴はもう落とした。


寝る前にもう少し投下する。
31 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 22:34:56.98 ID:zccx4x.o
第二話 エゥーゴ!

UC0087、2月。純は、訓練施設を卒業した。
配属先はマゼラン改級戦艦カキフ・ライ、職域は戦闘機パイロットだった。

純「こんにちは〜」

姫子「来たわね、新入り。」

純「あれ、生徒会長?」

和「あなた…確かジャズ研究会の…」

純「鈴木 純です。」

姫子「奇遇ね、この艦の戦闘機乗りは全員桜ヶ丘高校出身だわ。」

和「まあ出身校はどうでもいいわ。あなたの腕を見てあげる。デッキに上がりなさい。」

純の顔が曇る。

純「ええ〜、いきなり訓練ですか〜?」
32 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 22:35:29.87 ID:zccx4x.o
和「あなた調書に書いてあるとおりの性格みたいね。」

純「な…なんて書いてあったんですか?」

和「MS操縦、優秀。戦闘機操縦、優秀。中型航宙船舶、適性なし…」

純「私優秀だったんだ!うれしいな!」

和「まだあるわ。性格にムラッ気あり。素行不良。配属部隊において服務教育の徹底を必要とす…」

純「」

姫子「プッ…」

和「あなたの調書を暗記していたら吐き気がしてきたから、ここらへんまでしか憶えていないわ。」

純「す…すみません…」

和「もういいから、デッキに上がりなさい。」

純は、暗い気持ちでデッキにあがった。
戦闘の脇役である戦闘機、暇そうな仕事、口うるさい先輩。
純はやっていけるのか心配になってきた。
33 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 22:35:56.76 ID:zccx4x.o
紬が、緊張した面持ちで出社してきた。
メンバー全員にその緊張が伝播する。

紬「事件が起こったわ。」

澪「ティターンズとエゥーゴがらみか?」

紬「そう。グリーン・オアシス内でティターンズが秘密裏に開発していたガンダムマークUがエゥーゴに強奪されたらしいのよ。」

律「ガンダムマーク2?」

紬「連邦軍の技術を結集した新型試作機よ。」

梓「技術の流出が酷そうですね。」

紬「それともう一つ。そのさい、エゥーゴの独自開発と思しき機体も確認されているの。この機体よ。」

紬がプロジェクターを起動して、モビルスーツの写真を映し出す。
赤と黒のMSが映し出された。
34 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 22:36:27.55 ID:zccx4x.o
憂「ジオン色の強い機体みたいですね。それにこのメインカメラの形状は、今まで見たことがないものです。」

唯「憂はよく勉強してるね。よしよし!」

憂「えへへ…///」

澪「お前も勉強しろよ!」

紬「残念だけど、ティターンズとエゥーゴ、つまり連邦軍同士での内輪もめがこの事件によって本格化してしまったわ。」

梓「エゥーゴなんて地球連邦軍と言っても所詮宇宙人ですからね。獅子身中の虫って奴です。」

憂の表情がすぐれない。

梓「憂、どうしたの?」

憂「純ちゃんも軍に入ったよね…まさかエゥーゴに…」

梓「そんなはずないじゃん。純は地球生まれだよ。優先的にティターンズに回されるはずでしょ。」

憂「そうだといいんだけど…純ちゃん変わり者だからなあ…」
35 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 22:37:20.98 ID:zccx4x.o
純は、模擬戦を終えて艦に帰ってきていた。

純「はあ、しんどかった。」

和「あなた、なかなかいい腕じゃない。気に入ったわ。」

姫子「そうね。正直驚いたわ。」

純「…先輩たちにボコボコにされたから、ほめられても実感わかないんですけど…」

和「…いい腕だったわよね、立花さん。」

姫子「私も、そう思ったわ。自信持ちなよ、鈴木さん。」

純「はあ…」

和「それはそうと、ここからは大事な話になるんだけど、地球生まれのくせにこの艦に配属になったってことはあなたエゥーゴ寄りなのよね?」
36 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 22:37:59.62 ID:zccx4x.o
純「エゥーゴ?なんですかそれ?」

和「ハァ…やっぱり知らないのね。じゃティターンズは?」

純「それなら知ってる!黒い制服の、偉そうな人たち!」

姫子「…その程度の認識なんだ…」

純「あの人達、最低ですよね。訓練施設にいるときティターンズの軍曹にタメ口聞かれたんですけど、それに怒ったらティターンズは二階級上だ、とか言って髪留めのゴムを取られちゃったんですよ!」

純「そして私のくせ毛を笑ったんです!!セットしなおすのに1時間かかったんですよ!!純って言う名前も男か女か分からないってバカにされたし!!」

純「その後ティターンズの悪口言ったら校長に呼び出されるし、ティターンズには散々な目に合わされました!」

和「ハァ…それで地球生まれなのにティターンズにお呼びがかからなかったわけね…」

純「で、そのエゥーゴがどうしたんですか?」

和「私たち、エゥーゴに参加してるの。もちろんこのままだとあなたもなんだけど…」

純「へ?参加?」
37 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 22:38:37.19 ID:zccx4x.o
姫子「簡単に言うと今、連邦軍内部のティターンズとそれに反対する派閥のエゥーゴが争ってるの。軍事的な衝突も起こってるんだよ。」

純「ええ〜!そうなの!?しらなんだ…。」

和「ハァ…今なら拒否させてあげるから、どうしたいか教えなさい。」

純「ティターンズ嫌いだから、私エゥーゴとか言うのでいいです!」

和「ハァ…分かったわ。これからよろしくね…」

和は、何回ため息をついたのかわからなかった。
純と話すとひどく疲れる。

純「よろしくお願いします!」

純は、まだ事態が上手くのみ込めていなかったが、ティターンズじゃないならいいや、と思っていた。
38 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 22:39:18.20 ID:zccx4x.o
唯と梓は、アッシマーでアフリカ上空を飛んでいた。
エゥーゴがジャブローへの侵攻作戦を行い、それに呼応するようにジオン残党の動きが活発になってきたのだ。
軍籍を持たされた唯たちは軍からアッシマーを二機受領し、こうして仕事の合間にパトロールに出ることが多くなった。

唯「見て見てあずにゃん、キリンさんがいるよ〜」

梓「もう、真面目にパトロールやってください!」

その時、梓のアッシマーをビーム光がかすめた。

梓「敵です!」

ゲタ、の愛称で知られているサブフライトシステムに乗ったジムUが三機。攻撃を仕掛けてきた。
緑を基調としたカラーリングだ。

唯「緑のジム三機、下駄履き、ってキリマンジャロ基地に連絡しといたよ!」

梓「この距離だと増援が来る前に敵に逃げられます!私たちでやるです!私が囮になって引き付けますから、唯先輩は上空後方から狙い撃ちしてくださいです!」

唯「了解!」
39 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 22:39:56.04 ID:zccx4x.o
SFSに搭乗した敵との戦闘は模擬戦で何度もやった。
毎日色々なMSを操縦する唯たちは、すでに軍のパイロット以上の練度を誇っている。

梓「よし、三機とも後ろに付きましたね…」

突然、梓のアッシマーが急上昇し、MS形態に変形した。
空気抵抗をもろに受けるMS形態のアッシマーは急減速し、三機のジムUは梓のアッシマーを追い抜く形になった。

梓「もらったです!」

自由落下に任せて少し下降すると、散開しようとしている敵機はちょうどいい距離で背中を向けてモニター中央に映り込んでいた。
梓はMS形態のまま2機を撃ち落とし、地上に落下する前にMA形態に変形し、急上昇した。
残りの一機は上空から急降下してきた唯の機体に簡単に落とされた。

唯「2機もやっちゃうなんてズルイよ、あずにゃん!!」

梓「下駄履きの敵機があまりにのろいもんだから、予定を変更して撃墜しちゃいました。」

唯「やっぱりアッシマーは最高だね!」

梓「ええ、傑作機だと思います。唯先輩、取りあえず帰投しましょう。」

二機のアッシマーは、小さな弧を描いて反転した。
40 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 22:40:49.21 ID:zccx4x.o
梓「敵…ジムUでしたよね…カラーリングも意図的にエゥーゴカラーに変えてあった…」

唯「そうだったね…ジオン残党じゃないのかな?あれがエゥーゴ?」

梓「ジオン残党が新型のドダイ改とジムUを持ってるとは考えづらいですし、そもそもエゥーゴはこんなところにいないはず…一体どこのMSなんでしょうか…?」

唯「一応基地には連絡してあるけど、帰ってムギちゃんに聞いてみよう!」

二人は、得体のしれない敵に不安をいだいていた。
ジオン残党にエゥーゴ、それに今日の敵…
ティターンズには敵が多いことを身にしみて感じたのである。
41 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 22:41:36.06 ID:zccx4x.o
紬「それは、きっとカラバの偵察隊だわ。テロリスト集団よ。」

梓「あの、エゥーゴの地球支部みたいな感じの、ですか?」

紬「ええ、この前エゥーゴが間抜けにも空き家のジャブローを攻撃したでしょ?それから急に動きが活発になったらしいわ。」

梓「そうだったんですか…」

紬「でもティターンズ最大のキリマンジャロ基地があるこのアフリカにまで出てくるとは正直思わなかったわね。」

澪「これからはいつ実戦があるか分からないから充分注意しないとな…」ブルブル

律「澪ちゃん震えてるわよ〜ん」

鈍い音と共に律の頭にコブができた。

その後すぐに、会社のパトロール用アッシマーは4機に増やされた。


第二話 エゥーゴ!おしまい
42 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 22:42:06.05 ID:zccx4x.o
今日はここまで。

また明日。
43 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 23:11:14.30 ID:Qyj.aIDO
前スレを!
44 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 23:15:25.13 ID:S/poITQo
前スレ。datとかはご自分でお探しになって
唯「0079!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1282909722/

今回はティターンズか。シロッコに全員お手つきにされちゃう展開は・・・無さそうか・・・
45 : [sage]:2010/09/21(火) 19:42:01.13 ID:oUJjYLUo
>>44
それいいな、方向性変えようかな。
46 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 19:43:43.41 ID:oUJjYLUo
第三話 告白!

和は、本格的に機嫌が悪くなってきていた。
エゥーゴのほとんどの艦艇が参加したジャブロー攻略戦に参加出来なかったからだ。
純は八つ当たりされるのが嫌で、トイレを装ってミーティングルームから逃げ出していた。

純「真鍋先輩は真面目すぎるんだよなあ…」

純「結局ジャブローだって囮だったんだから行かなくて正解だったのに…」

その時、チューブ飲料の自販機が置いてある簡易休憩室から話し声が聞こえてきた。艦長と副長らしい。
純はとっさに壁に張り付いて耳を澄ましていた。
面白そうなことは、見逃さない。

副長「この艦にMSが配備されるって話ですが、まだ先延ばしに?」

艦長「う〜ん、だってなあ…」

純(え?MS…!?)
47 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 19:47:33.59 ID:oUJjYLUo
副長「艦長、せっかく士官学校の成績がよかったのに、これじゃ出世なんか望めませんよ!」

副長「旧型艦だからって、パトロールだけやってたんじゃ、エゥーゴからも文句が…」

艦長「わ、私は出世なんかに興味がないから…」

副長「艦長が興味あるのは、真鍋少尉だけですもんね!」

艦長「おいコラ!誰か聞いてたらどうするんだ!!//////」

純「工工エエエエエ(´Д`)エエエエエ工工.!!?」

副長「誰だ!」

純「(しまった!驚いて大声出しちゃった…)…パ…パイロットの鈴木曹長です…えへへ。」
48 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 19:48:10.26 ID:oUJjYLUo
艦長「…今の話、聞いていたのか?」

純「艦長が真鍋少尉に興味があるだなんて聞いていませんよ。」

艦長「聞いてんじゃん!畜生!!///」

純「そんな事よりMSが配備されるのを先延ばしにしてるんですか?」

艦長「おいおい、ここはただのパトロール隊だぞ!MSなんかいらない…」

純「真鍋少尉にさっき聞いた話しを教えたら、怒るだろうな〜。」

艦長「分かった、言う!」

純は、面白いことになってきた、と思っていた。
49 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 19:48:41.60 ID:oUJjYLUo
純「只今戻りました!あーすっきりした!」

和「遅かったじゃないの!どこでサボってたのよ!?」

純「ちょっと艦長にお会いしまして…少々お話を…」

和「艦長なんかほっときなさい!あんな事なかれ主義的官僚軍人の相手してる暇なんかないでしょ!!」

純(うっわ〜…めっちゃ嫌ってるし…)

姫子「…艦長じゃ話にならないから、MSの配備をエゥーゴ上層部に直談判するって話からだったよね…具体的にどうするつもり?」

和「一応艦の運用能力は問題ないし、パトロール中に敵MSに遭遇した時のことも考えて、配備を検討して欲しいという旨の上申書はすでに作成してあるわ。」
50 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 19:49:31.16 ID:oUJjYLUo
純「MSだったら、艦長が…」

和「ん?艦長がどうしたのよ?」

純(ヤバ…これは言っちゃいけないことだった…)アセアセ

純「…機体はやはり新型のネモ・タイプが無難でしょうか?」キリッ

和「艦長がどうしたって?」

純「…私としては、より高性能なリック・ディアスも候補に…」アセダク

和「隠し事しても無駄よ!艦長が何だって!?」クワッ

和は、ものすごい剣幕で純につかみかかった。
純がゲロするまで、1分ともたなかった。
51 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 19:50:54.25 ID:oUJjYLUo
休憩室から戻って5分ほどで、艦長室に和が入ってきた。
いつもなら喜ばしいことだが、今日は状況が違った。
嫌な予感がする。

艦長「おう、真鍋少尉か、まあ掛けたまえ。」アセダク

和「結構です。」ギロ

嫌な予感が、的中しているようだ。

艦長(畜生、鈴木の奴、早速ゲロったな…ドジめ…)

和「MS配備の件についてなのですが、艦長の一存で故意に遅らせている、という情報を耳にしました。」

艦長「(鈴木ェ…)そういうデマもあるがここは単なるパトロール隊d」

和「艦長!!!」

和が、艦長の机に両方の平手をありったけの力で叩きつけた。
それから30秒とまたずに、艦長が自白を始めた。
52 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 19:52:23.58 ID:oUJjYLUo
艦長「君が実戦に出たいと言いまくってるのは、どうも死に急いでいるように見えてなあ…」

和「…つまり私が死に急いでいるように見えて、パトロールばかりやらせて実戦に出さないようにしていたってことですか!?」

艦長「そうだ。実際君は何も見えちゃいない。危険だよ。」

和「意味が分かりません!!私一人が死に急いだところで、それがMSの配備を遅らせる要因になるなんて、どう考えてもおかしいと思います!!」

艦長「まだ何も見えちゃいないな。MSに乗せるわけにはいかん。」

和「…それでは、私に何が見えていないか、教えていただきましょうか!」
53 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 19:53:08.73 ID:oUJjYLUo
艦長「君はこの期に及んで、私の気持ちにすら気付かない。そんな鈍い奴が、戦場から帰ってこれるはずがない。」

和は、何が何だかわからなかった。
イライラしながら、聞き返す。

和「気持ち、と申されますと?」

艦長「君が、好きだ。死んでほしくない。//////」

和の言葉が、詰まった。
艦長は完璧な告白だ、と思った。
しかし次の瞬間、頬に強烈な衝撃が走り、艦長の体は横に飛んでいた。

和「最低です!軍人が職務に私情を反映させるなんて!!」

艦長が起き上がるのも待たず、和は艦長室を出て行った。

艦長「ふう…ご褒美を、貰ってしまったな…」

倒れたまま、恍惚の表情で艦長は呟いた。
反省は、していないようだった。
54 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 19:54:08.62 ID:oUJjYLUo
純と姫子は、和のいない間、ゆっくりとくつろいでいた。
鬼のいぬ間になんとやらである。

純「え、立花先輩は、艦長が真鍋先輩の事好きなの、知ってたんですか?」

姫子「そりゃそうよ。艦長室行く度に真鍋さんのこと聞かれるんだもの、気づかないハズないでしょ。ていうか、艦のほとんどが知ってることだと思うよ。」

純「なあんだ、艦の最高機密を手に入れたと思ったのになあ・・・」

姫子「鈴木さんは、情報局員には向いていないみたいね。」

その時、和が艦長室から戻ってきた。
姫子と純は、竦み上がった。まさしく鬼の形相である。

和「最低よ!!」
55 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 19:54:57.63 ID:oUJjYLUo
姫子「…えっと…何が?」ビクビク

和「艦長に決まってるでしょ!!」

純(艦長、ドジ踏んだな…)

姫子「怒ってるだけじゃ分からないから、何があったか、説明してくれない?」

和「うっ…何も無いわよ。現状変わらず…明日上申書をブレックス准将宛に郵送するわ//////」

姫子が、純に目配せしてから、続けた。

姫子「艦長が、MSの配備を遅らせていた原因はなんだったの?」

和「うっ…し…知らないわ…聞いてこなかった…//////」

姫子「それを聞いてこなきゃ、だめじゃん。代わりにあたしが聞いてこようか?」

純(立花先輩侮れないな…真鍋先輩で遊んでる…)

和「ちょっとやめてよ!!私が聞くわよ!私の仕事取らないでよ!!//////」

姫子「でもおかしいね、理由を聞いていないのに、どうしてそんなに怒っているのかな?」
56 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 19:55:53.68 ID:oUJjYLUo
その時、ミーティングルームのコールが鳴り響いた。

純「はい、こちらミーティングルーム、鈴木曹長…」

下士官「ぷっ…くくく…鈴木曹長は…くっ…艦長室に…ブッ…来るように…くく…」

笑いを必死にこらえている下士官からの通信だった。

純「えっと…そういう事ですので…」

和「じゃあ今日のミーティングはこれまでね。はい、解散!!」

姫子「ちょっとまだ話の途中…」

和「鈴木さん、艦長にさっきのこと聞いたりしないでよね!MSの件は私の仕事なんだから!!//////」

純「りょ、了解…(大体何があったか知ってるんだけど…)」

それを聞くと、和は逃げるように部屋から出て行った。
57 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 19:57:05.39 ID:oUJjYLUo
純「ぶっはあ!!ああああっはははははぁぁぁ…ヒイヒイ…」

艦長室に入るやいなや、純は爆笑してしまった。

艦長「笑うんじゃない!」

純「ヒィーヒィー死ぬ…ヒィーヒィー苦し…」

艦長の左頬には、和の手形がくっきりと張り付いていた。
先程の下士官も、これを見たせいでああなったのだろう。

艦長「元はと言えば貴様のせいだろうが!!」

純「ぜーっ・・・ぜーっ・・・大丈夫ですよ・・・逆転の秘策があります!」

艦長「よし、発言を許可する。」キリッ

純「恋愛公式です。プラスは好き、マイナスは嫌い、ゼロは無関心です。」

艦長「ふむ。」

純「今の状態はマイナス100です。が、そこにたったのマイナス1でいいから掛けてみてください。」

艦長「プラス100だ。」

純「ね、大逆転!!」テーレッテレー

艦長「そのマイナス1を掛ける、というのは具体的にどういう行動を取ればいいのか?」

純「わかりません。ご自分で考えてください。」

鈍い、音だった。
純の頭に、大きなコブができた。
58 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 19:58:19.52 ID:oUJjYLUo
紬を呼び出した父が、唐突に本題から語りだした。

紬父「社員の中から感覚に優れた者を選抜し、強化人間にしろ。」

紬「え…?」

紬は、父の言葉の意味がわからなかった。
いや、理解したくなかった。

紬父「聞こえなかったのか?強化人間を作れ。強化人間用MSのテストもできるし、なにより戦力になる。」

紬「…」

紬父「…さっきから何故黙っている?」

紬「それは…できません…」

紬父「言っていることがよく分からないのだが。」

紬「社員たちは私のかけがえの無い友達です!強化人間にするなんて、絶対に出来ません!!」

紬父「友達だと?お前は、会社に遊びに行ってるのか?」

紬「ち…違います!!」

紬父「そうだろうな、仕事をしに行ってるんだからな。」

紬父「これは、業務命令だ!!強化人間を作れ、いいな!!」

それだけ言われると、紬は父の部屋からつまみ出された。
事務所に戻る車中で、紬はずっと涙を流していた。
59 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 20:00:13.79 ID:oUJjYLUo
律「そうか、そんな事言われちゃったか…」

紬「私、どうしたらいいのかわからないの…」

律に、相談した。
いきなりみんなに言うと、大騒ぎになりそうなので何か問題があれば律に相談することに、紬は決めていたのだ。

律「最近、おかしいよな。戦争だからってのは分かるんだけど、そんなのを遥かに超越してるような気がする。」

律「むしろ、みんながおかしいから戦争が起こってるんじゃないかとも思えるんだよな。」

紬「うん…」

律「梓も、軍籍貰ってからなんか変だしな…」

紬「そうね、前からスペースノイドを嫌ってるところはあったんだけど、ティターンズになってから一段と酷くなったみたいね。」

律「お…時間だ。」

紬「パトロール?」

律「おう、澪と二人で小一時間散歩してくるわ。」

律「帰ってきたら、みんなでさっきの事相談してみようぜ。もちろんうちから強化人間を出すなんてのを、止める方法をだ!」

紬「うん!いつも悩みごとを聞いてくれてありがとう。おかげで元気が湧いてきたわ!」

律「それでこそムギだ!じゃ、ちょっくら行ってくるわ。」

律は、格納庫の方に走っていった。
紬は、見えなくなるまでそれを見送っていた。

第三話 告白! おしまい
60 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 20:07:25.69 ID:Tfx18IDO
ガンダム全く知らないけど面白いよー
61 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 20:11:09.74 ID:oUJjYLUo
>>60
わからない用語あったらぐぐってね。たいがいはそれで解決する。

他のスレチェックしたらもう一話分投下するはんで。
62 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 21:01:39.23 ID:oUJjYLUo
第四話 戦い!

澪「律!敵だ!」

レーダー感を捉えた。
こちらを補足するまで下手に手を出してこなかったということは、かなりの手練と見ていい。

二機のアッシマーは二手に別れて応戦する。

律「下駄履きのネモ・タイプが三機か!空中戦じゃ奴らの弾なんか当たんねーぜ!!」

ネモはバズーカを携帯している。弾速はビームよりも遅いため、さらに攻撃が当たる可能性は低くなるだろう。
敵ではない、と律は思った。
律のアッシマーには、二機が食いついてきた。

律「ヒョロヒョロ弾を、当ててみやがれってんだ!」

廻り込んで正面に出てきたネモが、バズーカを撃つ。
律が機体をバンクさせ、かわせる、と思った瞬間、バズーカの弾がバッ、とはじけた。
律の機体が衝撃に震える。
律は一瞬、何が起こったかわからなかった。
63 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 21:02:37.19 ID:oUJjYLUo
澪「律、奴ら散弾を持ってるぞ!かわし切れないから、撃たれる前に落とせ!!」

律「分かった!!」

そう言うやいなや、律のアッシマーは急上昇し、高度を取ってMSに変形した。
MA形態ではライフルの射角に制限があり、後ろを取らないと敵を落とせない。
そのため、射角の自由と小回りが効くMS形態の方が射撃には有利だった。

律「うわっ!!」

変形の隙をついて、散弾が撃ち込まれた。
今度はほぼ機体全体に散弾が食い込んだ。
敵はアッシマーとの交戦経験があるようだ。
戦いのコツを掴んでいる。

律「やりやがったな!!」

律のアッシマーは二機のネモをライフルで撃破した。
澪も片付け終わったようだ。
さあ、帰るか、と律が変形レバーを操作した瞬間、機体がグシャッ、と嫌な音を響かせ、コックピットが震えた。
ブザー音が鳴り響く。
ディスプレイには、変形不能、と赤字で表示されている。
散弾で、変形機構がダメージを受けたようだ。
64 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 21:03:12.13 ID:oUJjYLUo
律「澪!変形が出来ねえ!!落ちる!!」

澪「律!!私の機体に乗れ!!」

律は、澪のアッシマーにつかまろうともがいたが、人型でも円盤型でも無い中途半端な形の律の機体は、足を折りたたんだまま、手をじたばたさせながらきりもみ状態で落下していった。

澪「律!! 律!!」

澪の声が聞こえる。
モニター越しに地面の石ころが見えた。
数えてみよう、と思った瞬間、モニターがブラックアウトしてリニアシートから投げ出された。

律は、時間切れか、と思った。
65 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 21:04:29.57 ID:oUJjYLUo
泣きじゃくる澪の報告を聞いて、紬は血の気が引いていくのを感じていた。
律が、死んだ。
メンバー全員が、涙を流している。
明日は仕事を休みにする、と言って紬は解散を命じた。

しばらくベッドの上で泣いていたが、おもむろに泣き止んだ紬は起き上がってふらふらと部屋を出た。
自分の意志で動いているのではない気がする。
梓の部屋まで来た。ノックする。

梓「ムギ先輩?」

涙目の梓が出てくる。
紬の口が、勝手に動き、言葉を発した。

紬「大事なお話が、あるの。」

喋りながら、心のなかで紬は何の話をするのだろう、と思っていた。
梓の部屋に滑り込む。
もう一人の自分が、梓にささやく。

紬「梓ちゃん、力が、欲しくはない?」

梓「力…ですか?」

紬「そうよ、エゥーゴも、カラバも、ジオンも倒せる力。梓ちゃん、本物のティターンズになれるのよ。」
66 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 21:06:36.97 ID:oUJjYLUo
紬は、恐ろしいことを口走っている、と思った。
しかし別の自分は流暢に言葉を続ける。

紬「ご両親の仇も、りっちゃんの仇も討てるようになるわ。」

梓は、ほしい、と呟いた。
もう一人の紬は、小脇に抱えていた書類を広げて、梓に迫った。

紬「ここにサインをするだけでいいの。そうすれば、明日基地からお迎えが来て、梓ちゃんは軍の施設でもっと強くなれるわ。」

梓がサインをするのを見て、紬の口元が勝手に歪んだ。
紬は、自分以外の何かにあやつられているような気がした。

梓ちゃん、やっぱり止めましょう

そう言おうとしても、口が動かない。

梓の部屋を出、そのまま父の屋敷に赴いて書類を預けた。

部屋に帰ったとき、紬は大変なことをしてしまった、と思った。
しかしすぐに、自分の行動を正当化する理由を探していた
67 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 21:07:27.15 ID:oUJjYLUo
二ヶ月たって純が少尉になっても和の機嫌は悪いままだった。
今日も相変わらずワイバーンでパトロールである。
純は、うんざりしていた。

純「先輩、まだ艦長のこと怒ってるんですか?」

和は、答えない。
艦長の話をするとたいがい和は無言の圧力を掛けてくる。

純「あの〜もしもし…」

和「くだらない話をしてないで、レーダーでも見てなさい。」

和がMSの配備を早くするよう何度も急き立て、ようやく艦長が重い腰を上げたと思ったら、その艦長がMSの開発がまだ途中だ、と言い出したのだ。
当然和は嘘だと思っている。純も姫子も呆れていた。
ネモやリック・ディアスならとっくに実戦配備されているからだ。

純「ミノフスキー粒子でレーダーがバカになってます。」

和「だったら目視で捜しなさい。」
68 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 21:08:16.60 ID:oUJjYLUo
サイド2の近くである。
純がふと見上げると、細長いものがチラッと光った。

純「艦影?」

和「どこ?」

純「左800、仰520ミル!!MSを伴っている模様!」

和「艦に連絡!!」

純「了解!カキフ・ライ!こちらスワロー3!敵艦見ゆ!!繰り返す、こちらスワロー3!敵艦見ゆ!!」

和「コロニー付近で単艦航行…何かしら?接触しましょう!!」

純「ちょ…先輩!!落とされますよ!!」

和「確認したらすぐに離脱するわ!MSじゃこいつの足には付いてこれないでしょ!」

和が、敵艦に突っ込んでいく。
純は舌打ちしてから、それに続いた。
69 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 21:09:10.25 ID:oUJjYLUo
純「なにあれ?…ボンベ?」

純は、旧式のジムがボンベを曳航しているのを見た。ザクなんかもいるようだ。
それをマラサイ一個小隊三機が護衛している。
その光景は、奴隷が三人の現場監督にこき使われているように見えた。
純が離脱しようとすると、和が反転してボンベに攻撃をしかけていた。

純「先輩!!その機体じゃやられます!!」

和「そんな事言ってる場合じゃないのよ!!」

機関砲が当たると、ボンベがバッ、と破裂した。
まさか偵察の戦闘機ごときが反転して攻撃してくるとは思わなかったのだろう、護衛のマラサイが慌てて動き出す。
純は和を見捨てられず、反転してマラサイに牽制射撃を行った。

純「逃げましょう!!早く!!」

和「あのボンベを全部破壊したらね!!」
70 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 21:09:57.96 ID:oUJjYLUo
純「何言ってるんですか!そんな事してたらやられちゃいますって!!」

和「あのボンベ、毒ガスよ!!住民を虐[ピーーー]る気だわ!!」

純は、言葉を詰まらせた。
それまで和を止めようとしていたが、次の瞬間には和と意見を同じくし、ボンベに対して攻撃を始めていた。


艦内は、急に慌しくなった。

艦長「何、真鍋少尉が攻撃を開始しただと?」

通信手「敵は毒ガス部隊のようです!!」

姫子「スワロー2、ワイバーン、立花姫子、行きます!!」

艦長「よし、出せ!!」

艦長「目標ポイントまで全力で行け!!いいか、最大戦速だ!!」

艦長「神様…仏様…どうか私の天使を奪わないでください…」
71 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 21:10:57.48 ID:oUJjYLUo
敵は、戦闘機との交戦経験が無いようだ。
直線では、こちらについてこれない。
和と純はそれを上手く利用しながら一撃翌離脱を繰り返していた。
しかし敵も、徐々に戦いのコツを掴んできたようだ。

純「敵の軌道が変わってきました。先回りされます!もう限界です!!」

和「まだよ、私たちが逃げたら、何人死ぬと思ってるの!!」

その時、和の機体がボッ、と火を吹いた。
マラサイのバルカンが命中したらしい。

和「…ここまでなの…!?」

姫子「真鍋さん、離脱して!!私が代わるわ!!」

姫子が来てくれた。
お願い、と言って和が下がる。致命傷では無いようだ。
72 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 21:12:56.06 ID:oUJjYLUo
純はできるだけ直線軌道にならないように機体を操った。
敵の射線が機体と重なったら終わりだ。
もう敵の防御が厚すぎてボンベを狙うことなど出来ない。
ただの時間稼ぎだった。

純「んぎぎぎぎぎぎ…」

強烈なGを耐え切ると、照準がマラサイと重なる。
トリガー。
手応えはあったが、固定武装の25ミリ機関砲は敵には全く効いていないようだ。

増援に来てくれた姫子も、最早防戦一方だ。

純(私、ここで死ぬのかな…)

敵艦の対空レーザー砲、マラサイの攻撃、まるで雨あられのように砲火が浴びせられる。
それをくぐり抜けるのも、もう限界かもしれない。

その時、敵艦をビームの光が貫いていた。
73 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 21:13:29.99 ID:oUJjYLUo
艦長「鈴木、立花、大丈夫か!?」

敵艦が、MSと共によろよろと後退する。白いマゼラン改は砲撃を止め、おとなしく敵を逃がした。
攻撃を続けると、敵が防戦をして後退速度が落ち、戦闘が長引いていたずらに被害を招くだけだったからだ。

純「た…助かった…」

姫子「ねえ、あたし…生きてる…?」

純「生きてますよ…多分…」

姫子「艦に…帰ろっか…」

純「はい…いや…ムリかな…もう疲れて…」

操縦桿を握る手ががくがくと震える。もう限界である。
結局二機は、艦から伸びた吸盤付きのワイヤーに回収された。
74 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/21(火) 21:14:40.99 ID:oUJjYLUo
和は、艦長室に呼び出されていた。

艦長「無事でよかった。君がいなくなったら私はどうやって生きていけばいいんだ?」

和はその言葉を無視した。

和「許可無く攻撃を開始したことについて、弁明の言葉はありません。」

艦長「…分かってる。相手が毒ガス部隊だったんだ。一刻を争う事態であったことはいくら私でも理解できる。」

エゥーゴのジャブロー攻撃を期に、各コロニーでの反ティターンズ運動は活発化の傾向にあった。
運動を沈静化させるための見せしめに、サイド2のどこかのバンチを全滅させようと企んだのだろう。

艦長「少尉に、謝らねばならない。」

和「MS配備の件ですか?」

艦長「そうだ。新型が明日、納品される。それを待たずにネモかリック・ディアスを入れておくべきだったと思ってな。」

和「当たり前です!艦長のせいで死にかけたんですよ!!」

艦長「お願いだ、聞いてくれ。明日きちんとできたばかりの新型が届くんだ!上も君たちなら使いこなせると言ってる。」

和「新型?どんな機体ですか?」
75 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 21:15:50.57 ID:oUJjYLUo
艦長「メタス、と言う新型MSだ。癖のある機体だが優秀なファイターパイロットの君たちなら、乗りこなせるはずだと上は言っていた。」

和「新型なんかいりませんでした!ジムUでよかったから…」

艦長「君に愛のこもった平手打ちをされてからすぐにMSを手配してもらえるように頼み込んでいたんだ!信じてくれ!!」

和「愛なんか込めていません!!込めたのは怒りです!!」

艦長はその言葉を無視した。

艦長「エゥーゴの台所事情は厳しいんだ。だからうちにメタスが出来上がるまでのつなぎの機体なんか回せないって事で、待たされていたんだ。これは本当だ!信じてくれ!!」

艦長「新型の、可変MSだぞ!君たちは、ようやく認められたんだ!!」

和「可変…MS…?」

和は、聞き慣れない言葉に、胸がざわつくような感覚を味わっていた。
傍流から、いきなり本流に合流したように、感じられた。
76 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 21:16:51.12 ID:oUJjYLUo
律が死んでから、色々なことが変わった。
まず、梓がいなくなった。
会社の仕事はめっきり減って、もっぱらティターンズとしての軍事行動が多くなった。
そして紬も、最近様子がおかしい。
澪は、この雰囲気が少し嫌になってきた。

澪「な、なあムギ。」

紬「なあに、澪ちゃん。」ギロ

澪「あ…梓、どこに行っちゃったんだろうな?(目が据わってる…怖い…)」

紬「何度も言ってるでしょ!!キリマンジャロ基地で特別な訓練を受けてるの!!梓ちゃんたっての希望なのよ!!」

憂「…」
77 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 21:17:35.07 ID:oUJjYLUo
澪「で、でもこの前基地に会いに行ったら、そんな奴はいないって…」

紬「はあーっ…何も分かっていないのね、ものすごい訓練をしているんだから、遊びに行ったって、会わせてもらえるわけ無いでしょ!!」

紬「はあ…澪ちゃん、今日はもう帰っていいわ。唯ちゃんと二人で遊んでなさい。」

澪「で、でも仕事は…」

紬「目障りだから帰って!!仕事は憂ちゃんがいれば事足りるわ!!」

澪「ご、ごめん…ムギ…」

澪は、逃げるように退社した。
MSの開発は徐々に宇宙に移りつつあった。
それに伴い、テストの仕事もなくなっていったのだ。
78 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 21:18:18.79 ID:oUJjYLUo
二人きりになった事務所で、紬が憂に話しかける。

紬「ふう、使えない社員にも困ったものだわ…」

憂「はい…」

紬「澪ちゃんはりっちゃんを死なせたのが自分だって言う自覚はないのかしらね…?」

憂「…分かりかねます。」

紬「でもあなたは有能だわ、憂ちゃん。本当に、あなたがいてくれて助かるの。」

憂「ありがとうございます…あの…」

紬「何?」

憂「私、一生懸命頑張ります!だから、お姉ちゃんは…」

紬「うふふ…そんな事を心配していたの…大丈夫よ。憂ちゃんがいる限り、唯ちゃんも大切にするわ。」

憂「ありがとうございます!引き続き、お姉ちゃんをよろしくお願いします!!」
79 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 21:19:01.07 ID:oUJjYLUo
紬「あなたがブレックスを始末してくれたおかげで、私たちの評価は鰻登りですもの。あなた達二人の生涯賃金以上のお金は、すでにその仕事でジャミトフから貰っているしね。だから唯ちゃんは、いつまでも私の大切な友達よ!」

憂「ありがとうございます…ありがとうございます…」

正規の仕事が無くなったとき、裏の仕事が回ってきた。
憂は、無能な姉をダシにそういった汚れ仕事をさせられていたのだ。

紬「もう、憂ちゃんは大げさねえ。」

紬は、床にへばりついて感謝する憂を見て、口元を歪めた。
この有能な手駒はどんな汚い仕事でもやってくれる。
でもそれは、自分が強制してやらせているのではない。
憂が、ちょっと姉の仕事ぶりの話をするだけで進んでやってくれることなのだ。
紬はそう自分を正当化して、安心した。
自分は、汚れてなどいないのだ、と。
80 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 21:21:40.79 ID:oUJjYLUo
澪は、唯の部屋に来ていた。
唯は最近出社せずに一日中ごろごろして過ごし、パトロールの時だけ顔を見せるようになっていた。
憂が大きな仕事をしたから、もう働かなくていいらしい、ということしか澪は知らないし、知ろうとも思わなかった。
どうせ恐ろしいことなのだ。
事務所にいるときの温かみを失った憂の目を見ていれば、それくらい分かる。

澪「おい、唯、いるか?」

唯は自室でギターをひいていた。

唯「澪ちゃんいらっしゃい。今日はお仕事早かったんだね。」

澪「ああ…まあな…」

唯「ギー太、澪ちゃんが来てくれたよ〜」

ギターに返事をさせているつもりか、唯はピックで弦をかいて短い音を出した。
81 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 21:22:21.40 ID:oUJjYLUo
唯「えへへ…ギー太も喜んでるよ〜」

澪「…ゆい…」

唯の様子を見て、澪の目に涙が湧き出してきた。
それが溢れる前に、唯に泣きついていた。

澪「うう…うえええ…うっ…ひぐっ…」

唯「どうしたの、澪ちゃん。」

澪「最近みんな、おかしいんだ…いつも通りなのは、唯だけなんだよ…私…みんなが怖い…」

唯「みんな、りっちゃんがいなくなって辛いんだよ。もう少ししたら、きっとまた前みたいに元気になるよ。だからそれまで、一緒に頑張ろ。」

澪「私が律を…助けられなかったから…」

唯「そうじゃないよ…そんな事言ったら、りっちゃん天国で悲しんじゃうよ。」
82 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 21:23:15.94 ID:oUJjYLUo
澪「でも…でも私…」

唯「泣いちゃだめだよ。澪ちゃんが、笑顔でいることがりっちゃんへの一番の手向けになるんだよ。」

澪「そっか…そうだよな…ありがとう、唯。」

唯「お礼を言われるようなことはしてないよ…澪ちゃんも辛かったんだね。」

澪「私…唯がいてくれるから…辞めずに頑張れるんだ…また、ここに来て相談しても、いいか?」

唯「うん!ギー太も喜ぶよ!今度はエリザベスも一緒に連れてきて、二人で演奏しよ!!」

澪は次の日から、会社を休みがちになった。


第四話 戦い! おしまい
83 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 22:14:58.36 ID:0DjgcSgo
乙。散弾ではなあ・・・
84 : [sage]:2010/09/22(水) 19:49:56.49 ID:oxFbWico
最近けいおん終了鬱で何もヤル気が起きん。
しかし誰も見てなくても力を振り絞って二本立てで投下し続けるぜ。
85 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 19:50:40.77 ID:oxFbWico
第五話 対艦戦!

新型機を見て、和はどう反応していいものかわからなかった。
メタスが四機、うち一機には、機首にハイメガ粒子砲が搭載されているようだ。

和「へんてこな…形ね。えらく腰が細いわ。強度とか大丈夫かしら?」

純「がに股ですね!トンガリ帽子もついてます!ものすごい地雷臭がしますよ!」

姫子「どう見ても実験機ね。きっと艦長、変なのをつかまされたんだわ。」

純「立花先輩!真鍋先輩の前で、艦長の悪口はダメですって!」ボソ

純「ええと、とにかく模擬戦してみません?」

和「そうね、外見だけじゃ性能は分からないし。」

艦長「よう、君たち、メタスは気に入ってもらえたかな?」

和は、艦長を無視してメタスに乗り込んだ。
86 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 19:51:36.40 ID:oxFbWico
純は、驚きを隠せなかった。

純「すごい…」

メタスはMAに変形する。
その利便性と言ったら、他に言い表す言葉がない。
航宙機とMSの、いいとこ取りである。

和「もらったわ!」

和のメタスが、MA形態で出力を絞った模擬戦用のビームを撃ってくる。
純はバレル・ロールでそれを回避し、MSに変形して、反転し、ビームガンを射撃した。

和「やるわね!」

和はMA形態のまま純のビームを回避しながら接近し、変形し、低出力のビームサーベルを発振した。
そのまま格闘戦に移行する。
87 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 19:52:25.48 ID:oxFbWico
二度三度馳せ違うと、姫子から通信が入った。

姫子「状況終わり、時間切れよ。引き分けね。」

和「じゃあ、次はあなたが相手になって。鈴木少尉は15分計測と審判をお願い。」

姫子「インターバルはいらないの?」

和「まだいいわ。それよりこいつをもっと乗りこなしたいの!もう少しで、コツが掴めそうなのよ!」

純「すっかりメタスに御執心ですね。」

姫子「じゃ、行くわよ。」

姫子のメタスがMA形態に変形し、加速した。

純「状況、開始!」

純は、私もあんなふうに飛んでいたのかな、と思いながら二人の航跡とビーム光を眺めていた。

純「それにしても艦長、真鍋先輩をメタスに取られちゃうかな…?」

純の心配は、深刻なものだった。
88 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 19:54:08.74 ID:oxFbWico
訓練から帰ったら、すぐに食事の時間だった。
四人がけのテーブルに三人座った、と思ったら、和の向かいに艦長が滑りこんできた。

艦長「やあ、奇遇だね。」

なぜかその奇遇が2ヶ月以上途絶えることなく続いていることについては誰も突っ込まない。
和はチッ、と舌を鳴らしてそっぽを向いた。
純が、空気を読んでか読まずか艦長に話しかける。

純「メタス、なかなかいいですよ。」

姫子も、それに続いた。

姫子「そうそう。見かけによらずMS形態でも機動性がよかったな。」

純「ビームサーベルが6本もあるのはどうかと思いますけどね。どうしてそんなに付いてるんですかね?」

艦長「そうかそうか、調子がいいならよかった。私も骨を折った甲斐があったよ。」
89 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 19:54:50.62 ID:oxFbWico
和は、面白くなかった。
この二人が相手をするから毎回このつまらない男が同席して、和の食事をマズくするのだ。
無視すればいいのに、といつも思う。

和は聞こえるように大きなため息を付いて、正面の男を睨んでみた。
艦長は、ニカッ、と笑ってウインクまでしてみせる。

この男は何も分かっていない、と思った。

和「ごちそうさま。」

純「え、もう食べたんですか…って全然箸つけてないじゃないですか!」

和「目の前に変なのがいるから、食欲がなくなるの。」

姫子「どうしてそんな事、言うの?」

艦長「い…いいんだよ、別に…」

和が足早に食堂を出る。
90 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 19:55:39.58 ID:oxFbWico
艦長「はあ…私は徹底的に嫌われているようだな。」

姫子「今のはちょっと酷すぎました。後で話をしておきます。」

純(ええ〜…また一波乱あるのか…)

艦長「いや、真鍋少尉はあれでいいんだ。ツンツンしている彼女は誰よりも輝いている。」

姫子(この人、やっぱり変だ。)

純「でも、時々デレてくれた方が、絶対しびれますよ。ギャップがいいんですよ、こういうのは。」

姫子(鈴木さんまで…駄目だこいつ等、早く何とかしないと…)

姫子「とにかく、真鍋少尉には謝るように言っておきます!」

姫子は、とにかくみんなで楽しく食事がしたかった。
単純に雰囲気が悪いのが嫌なのだ。
雰囲気を良くするために、何としても和には一歩譲ってもらわなくてはならない。
戦争より大変かもしれない、と姫子は思った。
91 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 19:56:45.78 ID:oxFbWico
姫子「真鍋さん、いるんでしょ?」

姫子は、和の部屋に入っていった。
和はベッドに転がってむくれているようだ。

姫子「ねえ、どうして艦長に冷たくするの?頑張っていい機体も配備してくれたし、もう嫌う理由はないと思うんだけど…」

和「わからないの。」

姫子「え?」

和「どうして冷たくしてしまうのか、分からないのよ。」

姫子「どうしてか、教えてあげようか?」

和「いい。聞きたくないわ。」

姫子「あなたは艦長にね」

和「聞きたくない!」

姫子「甘えてるのよ。」

和「違うわ!そんなんじゃないのよ!!」

姫子「あなたは、どんなに冷たくしても艦長なら自分に優しくしてくれると思っているでしょ。」

和「違う…」
92 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 19:57:23.84 ID:oxFbWico
ドアがノックされる。
和は姫子から逃れるようにドアに向かった。
ドアが、開く。

艦長「えっと…食事を持ってきたんだけど…やっぱり訓練後だし、食べないと体に毒だと思う…」

和「…」

艦長「私が邪魔で食べられなかったなら謝るよ。だから自室でゆっくり食べるといい。」

艦長「でも、どうしても君と食事がしたかったんだ。それじゃ。」

無言の和に食事のトレイを預けて、艦長は帰っていった。

姫子「真鍋さん…?」

和の目には、涙が溜まっていた。
姫子は、二人の仲を何とかするのはそんなに大変じゃないかも知れない、と思い直した。
93 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 19:58:13.69 ID:oxFbWico
梓が、帰ってきた。
その知らせを聞いて、唯と澪は喜び勇んで事務所に顔を出した。
また、みんなで楽しく仕事が出来るようになるかも知れない、と思ったのだった。

唯「あずにゃんお帰り!」

澪「久しぶりだな、梓!元気にしてたか?」

梓「…」

冷たい視線で二人を一瞥すると、梓は無言のままどこかへ行こうとした。

唯「あーずにゃん!」

梓「私に触るなです!!」

唯がいつものように抱きつこうとした瞬間、梓は唯を突き飛ばしていた。
唯が驚いた表情で梓を見上げる。

唯「あ…あずにゃん…?」

澪「ど…どうしたんだよ、梓…。」

梓「さっきから、頭がいたいです!ほっといてください!!」
94 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 19:58:49.33 ID:oxFbWico
よく見ると、顔色は青ざめていて、目の下はクマが出来、ぎょろりとした目は血走っている。
これは梓ではない、澪はそう思った。

紬「梓ちゃん、こんなところにいたの?お薬の時間よ。」

梓「頭が痛いです…早くしないと空が落ちてくるです…イクラちゃんが遊びに来るです…」

二人は、そのまま何処かへ消えていった。

澪「なあ、唯。あれ本当に梓なのか…?」

唯「き…きっとあずにゃん疲れてるだけだよ…」

唯「そ、そうだ、今晩あずにゃんの部屋に行って私たちの演奏を聞いてもらおうよ!それで疲れなんか吹っ飛んじゃうよ!!」

澪「そ…そうだな…そうしよう!」
95 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 19:59:56.83 ID:oxFbWico
紬と、憂も来た。
梓の部屋にである。
なぜか琴吹家執事の斉藤が梓の部屋に私物を持ち込んでいたが、その理由は考えないようにしていた。

澪「よし…こんなもんだ…」ビンビンビンボンボン

唯「ギー太もあずにゃんに聞いてもらえるって、張り切ってるよ!」ジャーン

梓「ううう…頭が痛い…」

斉藤「お嬢様…!」

斉藤が、紬に目配せする。

紬「二人共、せっかくだけど、やっぱりやめたほうがいいわ。」

唯「で…でも…」

澪「せっかくだから、一曲だけでも…」

憂「…」

紬「はあ…勝手にしなさい。何が起きても知らないわよ。」

澪「よし、じゃあ…」

唯「ふわふわ時間!!」
96 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 20:00:49.61 ID:oxFbWico
唯がギターを掻き鳴らすと、梓が頭を抱えてうずくまった。

梓「ううう…うあああああああ!!!!」

梓はすぐさま壁に頭を叩きつけだす。
それを斉藤が必死に止めていた。

斉藤「お嬢様、危険です!」

梓「不快な音、不快な音、私の頭をかき回すです!!」

紬「憂ちゃん、鎮静剤を!!」

憂「はい!!」

梓「空が落ちてくる!早くギャプランで出ないと!!あああああ!!」

憂が、斉藤に押さえつけられた梓の腕に鎮静剤の自動注射器を打ち込んだ。

梓「ぷふーっ…ふう…ふう…」

紬「梓ちゃん、頭痛のお薬よ。飲んで。」

梓は薬を飲むと、ビクン、と痙攣してなにやらブツブツと独り言を言い始めた。

唯と澪は、呆然としながらそれを眺めていた。
97 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 20:02:40.43 ID:oxFbWico
非常呼集でブリーフィングルームに集められた。
全員が集まると、艦長が説明を始める。

艦長「ティターンズのパイロットがアーガマに投降したらしい。そいつの情報で、グラナダへのコロニー落としが計画されていることが判明した。」

和「エゥーゴの拠点じゃない!…それで、私たちは?」

艦長「アーガマとラーディッシュが共同で阻止に当たる。我々はこれを掩護するために、我が艦隊に近づく敵艦を叩く!対艦戦闘だ!」

和「ちょっと待ってください。単艦とMS三機で対艦戦闘なんて無茶です!」

艦長「対艦戦闘にはメタス4番機のハイメガ砲をメインに使う。本艦はあくまで囮だ。」

和「4番機のパイロットは?」
98 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 20:03:29.18 ID:oxFbWico
艦長「鈴木!」

純「はい?」

艦長「お前がやれ。」

純「わかりました!」

艦長「ちなみに試作品だから負荷が大きくてな、ハイメガ砲を最大出力で撃つと30秒間は動けなくなるから注意し給え。」

純「ち…ちょっと、それを先に言ってくださいよ!!」

艦長「以上だ、各員戦闘待機!!」

艦長は、逃げるように出て行った。

純「あーん、はめられちった!」

和「大丈夫よ、私たちが掩護するわ。」

姫子「そうよ、大丈夫よ。…多分。」
99 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 20:04:03.61 ID:oxFbWico
純「あ〜あ、今日こそ死んじゃうかもな…」

メタス4番機を見上げて、純が呟いた。
メタスを受領したカラバが原案を設計し、その設計案を基に先行して試作された機体だ。この機体の開発に時間がかかり、カキフ・ライへのメタス配備がおくれたのである。
このサイズのMSが搭載可能なハイメガ砲の運用実験機という位置づけであるため、ビームガンやグレネードランチャーなどの中距離装備が搭載されておらず、ハイメガ砲と、高出力のハイパー・ビームサーベルが武装の全てである。
つまり、敵に遭遇した時のことは考えたくない機体である。

姫子「だ…大丈夫よ、遠くから撃つだけじゃん。それに一回で全部沈めればいい話だし。」

姫子の顔がひきつっている。明らかに気休めで言っていると分かる。

和「考えても仕方ないわ。さ、行きましょ。」

和がメタスのコックピットに入り込む。
純はふくれっ面でそれに続いた。
100 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 20:04:58.68 ID:oxFbWico
艦長「作戦を開始する。」

和「メタス隊、発進します!」

艦長「発進を許可する。」

艦長「真鍋少尉、帰ってきたらいっしょn」

和が艦長の言葉を遮るように出撃呼称を叫んだ。

和「スワロー1、メタス、真鍋和、出ます!!」

姫子「スワロー2、メタス、立花姫子、行きます!!」

純「スワロー3、試作メタス改&追加ジェネレーター1号、鈴木純、行くよっ!!」

副長「艦長、振られたの何回目ですか?」

艦長「うるさい、男の甲斐性だ!!」

艦長「対艦戦闘用意!気を引き締めていけよ!!」
101 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 20:05:30.00 ID:oxFbWico
純は最大望遠で敵を捉えた。
敵艦は三隻、MS隊を射出するのが見えた。

純「追加ジェネレーター良好。…3…2…1!チャージ完了!よし…やるぞ!」

純「ハイパー・メガ粒子砲!発射!!」

三隻一気にカタをつける。
そのために純は後付けのジェネレーターを接続したMA形態のメタス改を少し旋回させた。
ビームが敵艦をなぎ払う。
MSも何機か爆散しているのが確認できる。
不意にメタス改のモニターがブラックアウトした。

純「え…もう終わり…?」

純「大丈夫かな…三隻いけたよね…?」

純「ええっと、回復まであと15秒か…」

純「暗いなあ…不安だなあ…」

モニターが回復する。

純「あれ…?」
102 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 20:06:07.81 ID:oxFbWico
艦長「クソ、鈴木の奴一隻撃ち漏らしやがった!!メガ粒子砲、前方のサラミス改を撃ちまくれ!!」

副長「敵MSは六機!メタス二機じゃ足りません!!」

艦長「艦を前に出して、対空レーザーで支援しろ!鈴木にもう一回狙わせろ!!」

通信手「鈴木少尉から通信!」

純「ハイメガ砲が壊れちゃいました。撃てません。追加ジェネレーターを狙撃ポイントに残置してMS隊の掩護に向かいます!!」

艦長「鈴木め…虎の子のハイメガ砲を壊したな…ええい、何としても敵艦を沈めろ!それで戦いは終わる!!」
103 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 20:06:59.41 ID:oxFbWico
姫子「ちょっとマズイんじゃないの!?敵だらけだよ!!」

和「艦に集中攻撃するわ!!」

姫子「でも敵が…」

その時、姫子の正面の敵に緑の機体がぶつかった。
純のメタス改だった。
メタス改は敵を数百メートル押して、いきなり弾けるように敵機を蹴って飛び退いた。
次の瞬間には、MA形態に変形して他の敵機に食いついていた。
気がつくと、メタス改に体当りされた敵機は蹴られた勢いで遠くに流された後に爆発していた。

姫子「え…なに…何が起こったの…?」

和「立花さん!今よ!!反撃するわ!!」

徐々に、敵MSを押している。
行けるかも知れない、和はそう思った。
104 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 20:08:33.54 ID:oxFbWico
敵機を、正面に捉えた。
ガルバルディβである。純はフルスロットルで急接近した。

純「ぬぬぬぬぬ…」

純「今だ!減速、変形、サーベル発振!!」

純「くらえ!鉄砲玉アタック!!」

ビームサーベルを構えたまま、純のメタス改は敵に体当たりをかけた。
機体がミシッ、と嫌な音を立てる。
武装がサーベルしかない試作機のメタス改で戦うには、一気に距離を詰めて一撃翌離脱を図るしかない。
昔見た任侠映画のドスを持ったヒットマンをヒントに、純が即興で編み出した戦法だった。

純「次!」

敵を蹴ってMAに変形し、次の敵機に食いつく。
三機目に体当たりをしたとき、機体がベキッ、と悲鳴を上げた。
ディスプレイで状態を確認すると、和が細い、と心配していた腰部と敵を蹴り続けた脚部が物理的に破損しているようだ。
変形不能、の文字も見える。

純「わ…私のメタスがぎっくり腰になっちゃったよ!!」

その時、敵艦が爆散する様子がモニターに映し出された。
戦闘が終わる。

純「よかった…ワケないか…絶対怒られるよね…機体コワしちゃったんだから…」

純はよろよろと艦に帰投した。
105 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/22(水) 20:10:40.46 ID:oxFbWico
艦長は、難しい顔で整備兵と話し込んでいた。

整備兵「こりゃ駄目ですよ。ムーバブルフレームが完全に歪んじゃってます。腰なんかクラック入ってますよ。負荷のかけすぎです。」

艦長「何とかしてくれ、うちの艦に配備されてる大火力MSはこいつしかいないんだ。戦力が低下してしまう!」

整備兵「駄目ですよ。もし直すんならメタスが三機買えるくらいかかりますし。四番機は廃棄決定ですな。」

艦長「頼む、ハイメガ砲をなくすわけにはイカンのだ!!」

整備兵「ハイメガ砲も電気系統がおじゃんです。急造品でしたからな。それをナラシもしないで追加ジェネレーターに接続して最高出力で長時間撃たせるなんて無茶をやらせましたし、壊れて当たり前ですよ。」

艦長「こいつの運用試験も頼まれてたんだ!一回目の戦闘で壊したとなるとエゥーゴ上層部に私が怒られる!!」

整備兵「諦めましょうや、真鍋少尉のことと一緒に。」

艦長「お前、ブチ殺すぞ!!」

整備兵「じょ…冗談です、すみません…(まだ諦めて無かったのか…懲りないなあ)」
106 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 20:12:55.87 ID:oxFbWico
その時、特徴的な純の頭が機体の隙間から見えた。
殴ってやろうと前に出たが、それは諦めざるを得なかった。
和がいたからだ。

艦長「お…真鍋少尉か…一体どうしたんだ?」

和「鈴木少尉の機体を見に来ました。」

姫子「わあ、すっごい。おもいっきり歪んでるじゃん!ヤバイよ、これ。直らないよ。」

純「いたたまれなくなってきたからもう帰りましょうよ…」

和「艦長、戦闘データをエゥーゴ上層部に提出することを具申します。解析、整理したいのでデータを頂きます。」

和は相変わらず、艦長に目を合わさずに話している。

艦長「も…もちろんそうするつもりだったさ…(真鍋少尉には悪いが、これはもみ消さないと私がクビになる可能性があるからなあ…)」

和「それと艦長、後でお話が…」

艦長「ああ、デートの日取りなら…」

和は平手打ちで返事をしておいた。


第五話 対艦戦! おしまい
107 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 20:32:36.55 ID:lci0DYAO
乙。ちゃんと見てるよ
唯たちのサブキャラっぷりが半端じゃないな
108 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 20:46:42.12 ID:oxFbWico
他のスレ見終わったらもう少し投下するよ。
109 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 21:10:52.59 ID:oxFbWico
再開

第六話 ニュータイプ!

艦長の隣でパソコンを操作しながら、和は話を切り出した。

和「鈴木少尉の戦い方に、驚きました。見てください。」

艦長「ああ…見せてもらおうか…(なんだ、もみ消すデータの話じゃないか…)」

下手なパイロットに貴重な実験機を預けて機体を破損させたなどといえば、自分の首が危うい。
せっかく作ってくれた和には申し訳ないが、そんなデータは握りつぶすのが吉である。
艦長は和の話を聞きながら正面のパソコンを見るふりをして、自分のすぐ横にある胸のふくらみにチラチラと目をやっていた。

和「彼女はMA形態の最大加速で敵に接近、減速して変形し、サーベルを発振、そして体当りしながら敵を貫いて、その後倒した敵機を蹴ってMA形態に変形し、最大加速で次の敵機に食いついています。これで三機を撃墜。三機目への体当たりで機体が耐えきれず破損しています。」
110 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 21:11:53.30 ID:oxFbWico
艦長にも、事の次第が飲み込めてきたようだ。
和の胸をガン見しながら口を開く。

艦長「そんな戦い方を…」

和「ええ、減速のタイミングを間違えれば、体当たりの瞬間に機体はバラバラになっていたでしょうし、変形のタイミングが違ってもあまりいい結果にはなっていなかったでしょう。サーベル発振のタイミングも言わずもがなです。」

和「このスピード戦法を、驚くべきタイミングセンスでこなしています。」

和「しかも、彼女が模擬戦時にこういう戦い方を練習していたという事実はありません。それはいつも模擬戦の相手をしている私が証明します。」

艦長「本当か…」

和「ええ、彼女、もしかしたらニュータイプかも知れません…」

艦長は、和の口からニュータイプ、という言葉が出たことを少し意外に感じた。

艦長「うーむ…分かった、報告ありがとう、真鍋少尉。」

和「で、さっきからどこに向かって話しかけているんですか?」

艦長「…ん?ああ…ええと…触ってもいいかな?なんて…」

頭が横に飛び、椅子から転げ落ちた。
室内なのに、なぜか星が見える。
艦長は、これは癖になる、と思っていた。
111 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 21:12:58.89 ID:oxFbWico
唯は毎日梓の部屋に行っていたが、そのたびに暗い表情で戻ってくる。
澪は、そんな唯が見ていられなくなってきた。

唯「あずにゃん、むったんのこと忘れちゃってるんだよ…どうしちゃったんだろ…」

澪「唯、酷い事言うようだけど梓はもう梓じゃなくなってるぞ…」

唯「そんな事ってないよ!あずにゃんを元に戻す方法が、どこかにあるはずだよ!!」

澪「唯…」

唯「明日、むったんをあずにゃんの部屋に持って行ってみる!あずにゃんも、弾いてみればきっと思い出すはずだよ!!」

澪「でも音楽を聴かせると、この前みたいに暴れないか?」

唯「でも、これに賭けてみるしかないよ!」

澪「そうだな、明日は私も一緒に行くよ。」
112 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 21:14:35.98 ID:oxFbWico
梓の部屋に行くと、斉藤が出迎えてくれた。
梓に薬を飲ませたり、暴れた時に対処するため、部屋に泊まり込んでいるのだ。

斉藤「平沢様、無駄なことはやめたほうが無難かと…」

唯「お願いです。あずにゃんを元に戻したいんです。試させて下さい。」

澪「私からもお願いします…」

斉藤「…どうぞ。」

部屋に入ると、梓はベッドの上でなにやら独り言を繰り返していた。

唯「あずにゃん、また来たよ。今日は頭痛くない?」

梓「空が落ちてくる…私の過去を…持って行ってしまうです…」

唯「あずにゃん、今日はむったんを持ってきてあげたんだよ。昨日話したでしょ?」
113 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 21:15:34.50 ID:oxFbWico
斉藤「昨日のことは、もうお忘れになっております。」

澪「…」

梓「私の過去…何もない…思い出せない…」

唯「あずにゃん、ほら、むったんだよ。何か思い出さない?」

梓は、目の前に出された赤いギターを見て、ようやく唯たちに気がついたようだ。

梓「これは…なんですか?」

梓が反応した。
ただそれだけのことで唯の顔は陽の光があたったように明るくなった。
澪はそれを直視できず、思わず顔を背けてしまった。

唯「あずにゃんが大切にしていたギターだよ。あずにゃんの思い出が、いっぱい詰まってるんだよ。弾いてみようよ。」

梓「私の…思い出?…この中にあるですか?」

唯「そうだよ!ほら、弦を弾くといい音がするよ!昔を思い出すね!」
114 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 21:16:39.65 ID:oxFbWico
梓「昔…?わからないです…」

唯「そっか、あずにゃんは弾き方忘れちゃったんだね。私がコードから教えてあげるよ。」

梓「弾き方…?…コード…?」

唯「前はあずにゃんが私に教えてくれていたんだけど、今度は私が先生だね!」

突然、梓の表情が厳しくなった。
澪はそれを見て、全身から冷や汗が噴き出るのを感じた。

梓「馬鹿にするなです!私の過去はこんなところにはない!空を落としたときにエゥーゴが持っていっちゃったです!!」

梓「エゥーゴを倒したとき、私の思い出は帰ってくるです!!こんなものが、何になるんですか!!こんなもの!!」

梓は、ベッドの上に立ってギターを持ち上げた。

唯「あずにゃんやめて!!」
115 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/22(水) 21:17:34.22 ID:oxFbWico
唯が止めに入ったとき、梓の楽器は床にたたきつけられ、すでにギターではなくなっていた。
唯は、こらえきれずに泣き出してしまった。

唯「ううう…うええええええええん!!」

梓「とっとと出撃させろです!!エゥーゴを皆殺しにして、私の過去を取り戻すです!!」

梓「ギャプランに乗せろです!!やってやるです!!」

梓「あばっ!!」

斉藤が、暴れ始めた梓の体に何かを押し付けた途端、梓は硬直してその場に倒れこんだ。
体が小刻みに震えている。

斉藤「スタンガンでございます。鎮静剤より、こちらの方が安上がりなもので。」

斉藤「中野様は少々強化をされすぎておりまして、不安定でございます。以後、過去を思い起こさせるような行動は慎まれたほうが中野様のためでもあるかと…」

唯は泣くのも忘れてその様子を見ていた。
澪は、早く部屋から逃げ出したかった。

その事件以来、二人が梓の部屋を訪れることはなくなった。
116 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 21:18:57.43 ID:oxFbWico
また敵に動きがあったというので、ブリーフィングルームに呼び出された。

艦長「毒ガス攻撃の兆候があった。今度は大規模だぞ。」

純「ティターンズは何を考えているんですかね?」

和「連中、狂ってるのよ。」

姫子「本当ね、参加しなくてよかった。」

艦長「サイド2に毒ガス部隊が向かっている。部隊規模からして二つのバンチを壊滅させる気らしい。」

艦長「エゥーゴも二手に分かれてこれに当たる。各員、出撃準備だ!」

和純姫子「了解!」

艦長「コホン、ミーティング後、真鍋少尉は残るように。」

純(艦長…まさかあれをやる気じゃないだろうな…いくらバカでもまさか出撃前にそんな事しないよね…)
117 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 21:19:49.07 ID:oxFbWico
みんな、気を使って逃げるように解散する。
ミーティングルームに二人が残された。

和「なんでしょうか?」イライラ

艦長「真鍋少尉、今まで本当に済まなかった。」

和「はい?」

艦長「私のことを嫌っていることは分かっていた。それでも付きまとってしまったことを謝っているんだ。」

和「今更謝ったところで許しませんからね。」

艦長「私は金輪際君に付きまとうのをヤメる!新しい恋を探すんだ!応援してくれ!」

和「え…? そ…それはよかったと思います。応援します…」

艦長「ありがとう。君ももう嫌なことは無くなっただろう。作戦に邁進し給え!」

和「…はい…。」

艦長(…これでよかったのかな…?)
118 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 21:20:57.54 ID:oxFbWico
艦長は純から秘策を伝授されていた。
話は数日前に遡る。

純『掛けるマイナス1が見つかりましたよ!』

艦長『なんだソレ?』

純『忘れたんですか?恋愛公式の逆転の秘策です!』

艦長『ああ、覚えてるぞ。それでどうするんだ?』

純『ズバリ、距離を置くことです!』

艦長『距離を置く?』

純『艦長は真鍋少尉にベタベタし過ぎなんです。だから逆に真鍋少尉から離れちゃいましょう。』

艦長『ふむ。』

純『そうすることによって、真鍋少尉は何があったんだろう、と気になります。もしかしたら気になりまくった真鍋少尉の方からアプローチがあるかも知れませんよ!』

艦長『ほう、真鍋少尉からアプローチな…それは楽しみだ。』ジュルリ

純『そして二人の距離は一気に縮まるんです!』

艦長『よし!でかしたぞ鈴木!!』

そして艦長は年齢=彼女いない歴の魔法使い的な頭で考えた。

艦長『よし!出撃前に距離を置く宣言をしよう!そうすれば真鍋少尉も作戦に集中できて一石二鳥だ!!』テーレッテレー
119 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 21:22:05.78 ID:oxFbWico
純「ちょっと心配だなあ・・・」

姫子「何が?」

純「私、艦長に真鍋先輩と距離をおいてみるのはどうかってアドバイスしてみたんです。そうすれば真鍋少尉が艦長の事を気にかけ始めるんじゃないかって。」

姫子「それは名案ね!」

純「でももしかしたら、今真鍋先輩が残されてるのって、その話をされてるんじゃないかと思って…」

姫子「…出撃前に精神を揺さぶられるのは危険よね…なんだかんだ言って真鍋さん艦長のこと満更でもなさそうだし…」

その時、和がMS格納庫に入ってきた。
120 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 21:22:36.14 ID:oxFbWico
純「あ…先輩!」

和「…」ボー

純「先輩?どうしたんですか?」

和「…」ボンヤリ

純「先輩!!」

和「え…!ああ鈴木さん…どうしたの?」ビクッ

姫子「…艦長…何だって…?」

和「な…何でもないわ…もう付きまとわないからって言われたのよ…」ションボリ

純(げげーーーーーーっ!!)

姫子(ビンゴだーーーーーーっ!!)

純姫子(これはまずいかも知れない…)

純姫子(艦長、何考えてるんだよー!?)
121 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 21:23:33.41 ID:oxFbWico
敵の進路が判明した。一組は25バンチ、もう一組は17バンチである。
25バンチにはアーガマを主とした部隊が向かい、和たちカキフ・ライ隊は17バンチへと向かった。

艦長「メタス隊、発進!!」

和「…」ボンヤリ

艦長「おい、真鍋少尉!!」

和「あ…はい!スワロー1、出ます!」

艦長「しっかりし給え!!」

純姫子(オメーのせいだよ!!バカタレ!!)

姫子「チッ、スワロー2、行きます!」

純「ケッ、スワロー3、行くよっ!」

三機が、射出された。
122 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 21:24:12.45 ID:oxFbWico
純「真鍋先輩!大丈夫ですか?」

和「何が?」

姫子「艦長から言われたことが気になるんじゃないの?真鍋さんなんか変だよ。」

和「どうして私が艦長のことなんか気にしちゃくちゃいけないのよ!変なこと言わないで!!」

純姫子「…(あーあ、駄目だこいつ、強がっちゃってるよ)」

和(なんなのよ…もう…)

艦長『新しい恋を探すんだ』

和(どうして…こんなに気になるのよ…?あんな奴の事が…)

艦長『応援してくれ』

和(私…冷たくしすぎちゃったのかな…?)
123 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 21:25:25.17 ID:oxFbWico
姫子「真鍋さん!!前!!」

和「え」

ビーム。
とっさに、かわした。
避けていなければ直撃コースだった。

和「敵…!?」

敵が、いた。
いつの間にか敵艦も見えている。
和は一瞬、混乱した。

純「真鍋先輩は下がって!!」

和「そんなワケに行かないでしょ!!」

和は、ガスボンベめがけて突進していく。
すると横から待ち伏せ部隊が雨あられのごとくビームを浴びせかける。
和はそれを上手くかわしているが、時間の問題だと思えた。
124 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 21:26:05.92 ID:oxFbWico
純「真鍋先輩!!戦線を維持して戦ってください!!突っ込みすぎです!!」

姫子「駄目だわ!!ほうっておくとやられる!!私たちが行って掩護しましょう!!」

純「了解!!」

二機のメタスが突っ込んで敵を引っ掻き回し、和の退路を確保した。
和は這々の体でそこから後退する。
いくらか被弾しているようだ。
退路の確保に当たっていた二機も後退し、戦線に復帰する。

純「先輩、落ち着いてください!」

和「はあ…はあ…はあ…」

姫子「真鍋さん!一度後退して応急修理してきて!」

和「はあ…はあ…はあ…嫌よ…」

和は、ヤケになっていた。
ズキズキと、心が痛む。
125 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 21:26:59.53 ID:oxFbWico
和「もう一度、突っ込むわ!」

MAに変形した和のメタスに、姫子の機体が掴みかかった。

姫子「やめてよ!あなたが死んだら艦長が悲しむわ!!」

和「艦長は私のこと、嫌いになったのよ!!私が死んでももう何とも思わないわ!!だから出撃前にあんなこと言ったのよ!!」

姫子「そんなはず、無いでしょ!!」

その時、止まっている二機のメタスにビームが殺到した。

姫子「きゃあっ!!」

姫子のメタスの、左手と右足の膝から下がなくなった。
和のメタスは機首と右腕に被弾した。

純「立花先輩!艦に後退して!!」

姫子「り…了解!」

姫子が後退した。
他の艦も来ているので戦線が破綻することはないが、手薄になっていることは確かだ。
だが戦況は味方が押している。
和たちは足を引っ張っている格好だ。
126 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 21:28:09.56 ID:oxFbWico
純「敵の防御が、薄くなってきました。私が突っ込んでボンベを破壊します!」

和「私が…」

純「先輩はここにいてください!私が死んだら、代わりにボンベを攻撃してください!!」

純「この戦線に、足の早い可変機は私たちしかいないんです!だから先輩は、私の予備として絶対死なないでください!!」

和「…」

これで、和は死に急げなくなった。
純のメタスがMAに変形する。

純「後を、頼みます!!」

言うと、純のメタスはビーム光の煌く敵陣に突っ込んでいった。
127 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 21:29:44.34 ID:oxFbWico
純「敵の薄いところは…あそこだ!!」

目星をつけて、突っ込む。
マラサイが一機。
ビームガンを撃つ。
敵が仰け反るのと、メタスがすれ違うのは同時だった。
防御部隊を抜けた。ガスの運搬・設置部隊が見える。

純「当たれっ!!」

ボンベを2つ、破壊した。
反転してさらにボンベを狙う。

ビーム。

純「わっ!!」

MS形態時の左腕に当たる部分が無くなった。
ビームガンが一丁になった。
撃ったのは、追いかけてきた別のマラサイだった。
マラサイを撃つ。当たったが、まだ健在だ。
マラサイを無視して、ボンベをさらに1つ、破壊した。
128 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 21:30:53.29 ID:oxFbWico
純「んぐぐぐぐぐぐ・・・」

Gに耐えて、大きく旋回する。
味方がボンベ部隊に攻撃を始めているのが見える。
あと少し。

ボンベ。撃った。
私の正面は、あと一個。

最後のボンベをかばうようにマラサイが重なった。

撃たれた。

変形すると、左足がなくなっていた。
加速が付いていた勢いでマラサイをパスする。

サーベル、ボンベを確かに切った。

やった。

純のメタスが、バランスを失って宇宙空間を溺れた。

純(後ろの敵機に、撃たれる…)
129 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 21:34:06.43 ID:oxFbWico
純(…)

純(…?)

よたよたと後ろを向いてみると、和のメタスがマラサイを貫いていた。

敵が、撤退していく。

和「よく頑張ったわね…ありがとう。」

純「…戦闘機で突っ込むよりはマシですよ。」

笑顔を作った途端、純の目に涙が溢れた。

まだ、生きている。

それを実感して、素直に感動した。
130 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 21:34:55.45 ID:oxFbWico
和のメタスは、純のメタスを運んで帰ってきた。
もう、三機をバラして組み立てて、一機に組み替えるしかない位の損傷状況である。
いや、スペアパーツをフルに使って、ようやく二機出来上がる位か。
とにかく、次の補給まで戦力不足である。

艦長「また、ワイバーンでパトロール隊に逆戻りかな…」

艦長は和が心配だったが、付きまとわないと決めていたので、ぐっとこらえて艦長室に戻った。
131 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 21:35:56.26 ID:oxFbWico
艦長室で報告書を作成していると、和が入ってきた。

和「失礼します。」

艦長「あ…ああ。損害報告なら整備班長から聞いたぞ。」

和「違います…その…//////」

艦長「ん?どうしたんだ?」

和「また死にかけました…//////」

艦長「そうだったな、心配したぞ。」

和「艦長のせいですからね//////」

艦長「え?何だって?」

和「出撃前に、あんなこと言うから…//////」

艦長(これは…もしや…)
132 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 21:36:45.37 ID:oxFbWico
和「わ…私のこと…嫌いになったんでしょうか…?//////」

艦長「そ、そんな事はないぞ。ただ、君が嫌がってるみたいだったから…」

和「…その…//////」

艦長(来るか…来るか…?)

和「ええっと…//////」モジモジ

艦長(駄目だな、やはり私が動かなければ…)

艦長「じゃあ、またいつも通りに接してもいいのかな?」

和「/////////」コクリ
133 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 21:37:16.36 ID:oxFbWico
艦長(キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!鈴木二階級特進だぞおおおお!!   嘘だけど。)

艦長「じゃあ、今度一緒にお泊りに!!」

平手打ちを期待して、歯を食いしばった。
が、ぺちん、と弱々しい平手打ちだった。

和「ち…調子に乗らないでください…/////////」

艦長「あ…ああ…スマン…(これか…これがデレなのか…鈴木ぃぃぃぃ!!!!)」

和が退出したあと、艦長はニヤニヤしながらこの世の春を謳歌していた。
134 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 21:40:17.20 ID:oxFbWico
しばらくして、純と姫子が入ってきた。
ちょっと顔が怖いな、と艦長は思ったが、細かいことは気にしないことにした。

艦長「おう、君たちか、作戦はだいせいk」

二人が、いきなり両側から挟みこむように平手打ちをかましてきた。

艦長「ひらめ」

純「出撃前に変なことを言う奴があるか!!!」

姫子「くたばれ!!この屑野郎!!」

艦長「やめてとめてやめてとめて」

艦長は、二人にリンチされてしまった。
アバラと鎖骨を折る大怪我だ。
この1日に天国と地獄をいっぺんに味わい、艦長はもうあの世が怖くはなくなった。


第六話 ニュータイプ! おしまい

明日の回位から唯たちも空気じゃなくなってくる…ハズ。
135 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/22(水) 22:34:02.71 ID:e5RWGV.o
乙ー。ほのぼの回があると一層鬱が引き立つね
そういえばガンダムの世界ではどうしてファーストネームで呼び合っているのだろうか・・
136 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 04:08:56.65 ID:rLNm412o
>>134

完全に和サイドにけいおんサイドが食われてて笑た。

だがそれがいい。
137 : [sage]:2010/09/23(木) 20:29:49.62 ID:pob3cqco
こっそり再開

第七話 休暇!

凄惨なリンチから一日たって、和たちは艦長室に呼び出された。

艦長「君たちに、休暇を兼ねた任務を与える。」

和「休暇を兼ねた任務?何でしょうか?」

艦長「地球に降り、ダカールへ行って今回の毒ガス攻撃に関する資料をエゥーゴシンパの議員連盟に届けて欲しい。」

艦長「それ自体はすぐに終わるだろうが、こっちはグラナダで艦の改修等を行うため、2週間暇になる。」

艦長「その間、地球で観光でもしてゆっくり静養してくれ、ということだ。」

艦長「私が誰かさんたちにやられたケガも、全治二週間だしな。」
138 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 20:30:47.20 ID:pob3cqco
姫子「よかったね。ゆっくりしてこようよ。」

純「いいですね。」

艦長(お前らァァァ…)

和「か…艦長は一緒に行けないんですか?//////」モジモジ

艦長「ざ…残念ながら艦の改修等の指揮を取らねばならんので、私は無理だ…//////」

姫子「あらあら…様子が変ね。」ニヤニヤ

純「…」ニヤニヤ

姫子「というわけで、真鍋さんは、艦に残るのかしら?」ニヤニヤ

和「い…行くわよ!//////」

純「無理しなくていいんですよ。」ニヤニヤ

和「もう!いくったら!!//////」

ミーティングルームに、笑いが響き渡った。
139 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 20:32:06.92 ID:pob3cqco
陰湿な、ティータイムだった。
紬と憂のふたりだけである。
呼び出されて部屋にお茶が用意してある時は、後ろ暗い仕事の依頼があると決まっていた。

憂「社長、今度の仕事内容をお願いします。」

紬「まあそう焦らないで、美味しいお茶とケーキを頂きましょう。」

最初の仕事はよく覚えている。エゥーゴのブレックス准将。
ヒゲを蓄えた、優しそうな紳士だった。
ホテルで寝ているところを襲撃した。
手を下す前に起きた。騒がれると思ったが、憂の姿を見ると怯んだようだった。
何名か人を使っていたが、怯んだ隙に、憂自信が手を下したのである。

紬「どう?美味しい?」

憂「はい…とても。」

最初の仕事が終わったあと、憂は唯に会社に来ないようにと伝えた。
唯を汚れた仕事から、何としても遠ざけておきたかったからだ。
あの暗い事務所に居るだけで、唯が汚れてしまうような気がした。

憂「社長、そろそろ…」

紬「お仕事の話だったわね。先日、サイド2に対して毒ガス攻撃が行われたんだけど…失敗しちゃったのよね。」
140 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 20:32:47.55 ID:pob3cqco
憂は、毒ガスと聞いても驚かなかった。
ティターンズは、それくらいは平気でやってのける集団だとすでに分かっていたのだ。

紬「その時の資料をエゥーゴシンパの議員に届けに、ダカールに士官が三名来るわ。」

紬「第一目標はその資料だけど、三名を始末してからゆっくり処分したほうが早いでしょうね。小物だから他に人が使えないけど、一人で出来るかしら?」

憂「その仕事…やらせてください。」

紬「無理しなくていいのよ。」

こうは言うものの、ここで甘えると社内ニートである唯の話題に振られる。
やるしか選択肢はないのだ。

憂「やります。」

紬「本当に、助かるわ。」

紬に、始末対象のデータが書かれた資料を渡された。
三人とも、女だ。ホテルの部屋番号が書かれている。
名前は、わからないようだった。
別にどうでもいい。
どうせ始末するのだ。名前など関係なかった。
141 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 20:34:45.73 ID:pob3cqco
憂が、部屋に帰ってきた。

憂「お姉ちゃん、ただいま。」

唯「うーいー、お帰り。」

澪「悪いな、憂ちゃん。お邪魔しちゃって…」

憂「いいんです。夕飯を食べていかれますか?」

唯「澪ちゃん食べていって!」

澪「じゃあ、いただこうかな。」

最近は、澪もこの部屋で暮らしているようなものだった。
憂は澪のことは始めどうでも良かったが、そのうちに澪がいなくなったら唯が悲しみに沈むだろうことが分かってきたので、最近は澪のことも大切に思うようになってきた。

唯憂澪「いただきます!!」

唯「やっぱり憂のご飯は美味しいね!」

澪「ああ、最高だよ。」

憂「ありがとう、お姉ちゃん、澪さん。」
142 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 20:35:11.83 ID:pob3cqco
憂「あのね、お姉ちゃん。明日からまたダカールに出張なの…」

唯「そうなんだ…」

澪「ゴメンな…私たちも手伝えれば…」

憂「い…いいんです。簡単なお仕事だし。大丈夫ですよ。」

唯「ねえ憂…付いて行っちゃ…だめかな?」

澪「おい、唯!」

唯「お仕事は足を引っ張っちゃうからダメだけど、その他のことで、憂の役に立ちたいんだあ。ねえ、いいでしょ。」

憂「…そうだね。お仕事の時は一緒に居れないけど、たまにはみんなで旅行にいくのもいいかも知れないね。」

唯「やったあ!澪ちゃんも、行こ!」

最近はパトロールも梓が斉藤とこなしているため、唯たちの出番は殆ど無かった。
まさしくこの二人は社内ニートだったのである。
143 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 20:36:21.63 ID:pob3cqco
和たちは、ダカール市街でショッピングの途中だった。
議会は閉会中で、議員連盟もシャッターを閉ざしていた。
エゥーゴシンパの議員たちがダカールをうろうろしていたらティターンズの襲撃対象になるらしい。
そのため会期中以外は地元に赴いたり、宇宙に出たり、色々逃げ回っているようだ。
それを艦に連絡すると、カラバと接触し、資料を渡すように言われた。
カラバのエージェントが接触してくるまで、和たちは羽をのばすことに決めたのだ。

姫子「この服いい感じね。地球では今こんなのが流行なのかな?」

純「宇宙にいると地球の流行なんてわからないですよね。」

姫子「流行がわからないのは、軍隊にいるからじゃないの?」

純「あ、そうだったかも。」

姫子「あれ、真鍋さんは?」

純「おかしいな、確かにさっきまではここに…」

純「あ、いたいた、あそこですよ。」ニヤニヤ

姫子「プッ…紳士物の売り場じゃない…艦長へのプレゼントね…」

純「もうラブラブですね。行ってからかってみましょう!」
144 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 20:36:53.60 ID:pob3cqco
和「う〜ん、こんなのはどうかしら?…こっちも似合いそう。」

純「このネクタイなんかどうですかね?」

和「あ…それいいかも…ってうわっ!!どうしてここに来るのよ!///」

純「」ニヤニヤ

姫子「」ニヤニヤ

和「もう!!あっちで買い物してなさい!!/////////」

純姫子「はあい!!」
145 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 20:37:34.91 ID:pob3cqco
澪「憂ちゃん、買い物に付き合ってもらっていいのか?」

憂「ええ、お仕事は夜やってしまおうと思っているので昼間は大丈夫ですよ。」

唯「憂と一緒に居られて、私うれしいよ!」

憂「えへへ…///」

唯「そうだ、そろそろお昼ごはんにしない?」

澪「そうだな、お腹すいたし。」

憂「どこにします?」

唯「あそこにマックスバーガーがあるよ!懐かしいから行ってみようよ!!」

澪「そういえば、しばらく行ってないもんな。憂ちゃんはあそこでいいか?」

憂「私はお姉ちゃんがいいならどこでもいいですよ!」
146 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 20:38:15.23 ID:pob3cqco
純「おなかすいた〜」

姫子「買い物って案外疲れるよね。」

和「お昼にしましょうか。あそこにマックスバーガーがあるわ。」

純「ええ〜ドーナツがいい〜」

姫子「ドーナツっておやつでしょ?お昼ごはんになるの?」

和「あれ…あそこの一団…どこかで見たことがあるような…」

純「あ!憂たちですよ!憂と唯先輩と澪先輩です!!お〜い!!」

唯「ん?誰かが…あ!和ちゃん!!姫ちゃん!!」

澪「ほんとだ、おーい!」

憂「純ちゃん!!」
147 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 20:39:05.90 ID:pob3cqco
6人がけのテーブルに付いて食事を始める。
久しぶりの再開だった。

唯「三人は、どうしてダカールにいるの?」

和「休暇みたいなものかしら…唯たちは?」

唯「憂が出張なの!それで旅行がてら付いてきちゃいました!」

和「唯は相変わらずね…律やムギは元気なの?」

澪「え…ああ…あいつらは今日仕事なんだ…ハハ…」

憂「純ちゃんはパイロット候補生になってたけど、今も軍のパイロットなの?」

純「あはは…キツイから辞めちゃったよ〜。今は真鍋先輩たちのとこで働かせてもらってるんだ。」

和「宇宙資源採掘関係の仕事よ。鈴木さんはモビルワーカーのオペレーターなの。軍の出身者は腕がいいから。」

純と和はいたたまれなくなった。
友人にも、身分を隠す必要があったからである。
今回は、それで正解ではあったのだが…。
148 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 20:39:51.71 ID:pob3cqco
姫子「真鍋さんったら輸送船の船長と恋仲になったんだよ〜」

唯「和ちゃん、ホント!?」

和「ち…違うわよ!何言ってるの立花さん!!//////」

姫子「二人がすれ違ってた時は、ホントハラハラしたわよね、鈴木さん。」

純「真鍋先輩ったら最初船長のことものすごく嫌ってたんですよね!」

唯「その話もっと聞きたい!!」

澪「わ…私も//////」

和「ち…ちょっと二人共、やめてよね!!/////////」

ここ一年で、最も楽しかった食事だった。
その後、6人は一緒に市内を散策し、夕食前に解散することになった。
憂の仕事の前にはホテルに帰っていなくてはいけないらしい。
当の憂は、仕事の用意があると言って少し前に帰ってしまった。
149 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 20:40:27.31 ID:pob3cqco
唯「みんなありがとう。今日は楽しかったよ。」

澪「そうだな、友達って、やっぱりいいもんだよな。」

二人の目からは涙がこぼれそうになっていた。
和は、そんな二人に少し違和感を覚えた。

和「いったいどうしたの?まるで今生の別れみたいじゃない?」

唯「ごめんごめん、最近ちょっと色々あって…」

澪「そうだな…ゴメンな和、湿っぽくなっちゃって…」

姫子「ふふふ…二人共大げさなんだから…じゃあね。」

和「バイバイ、唯、澪。」

唯「和ちゃん!姫ちゃん!また、会おうね!!」

澪「また一緒に、食事したりしような!!」

二人は、見えなくなるまで手を降っていた。
150 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 20:41:34.64 ID:pob3cqco
純「…なにか、あったんでしょうかね?」

和「わからないわ…聞けるような雰囲気でも無かったし…」

姫子「確かに変だったわね・・・あの二人・・・」

和「二人なら大丈夫よ。…さ、ホテルに帰って寝ましょう!今日は疲れたわ。」

姫子「そうね。」

純「そうですね。」
151 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 20:42:31.64 ID:pob3cqco
ベッドに横になっても、純は寝付けなかった。
考え事をしていると、いきなり突き刺すような殺気を感じた。
反射的に、ベッドから降りて床に伏せ、銃を取り出していた。
それと同時に窓ガラスが割れ、賊が入って来てベッドに発砲していた。
純は床を転がって起き上がり、賊に銃を向けた。

驚いたのは、二人同時だった。

純「憂!」    憂「純ちゃん!」

純「ど…どうして…?出張って…仕事って…?」

憂「純ちゃんが…エゥーゴ…?」

その時、部屋のドアが激しくノックされた。

和「鈴木さん!!何があったの!!」

憂「ちっ」

憂は、窓の外にたらしてあったロープを腰につけたカラビナに通すと、あっという間に降りていった。

純は、銃を持っていた手をだらりと下げ、その場に崩れるようにしゃがみこんだ。

まだ、憂が自分の命を狙いに来たことが信じられなかった。
152 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 20:43:33.19 ID:pob3cqco
憂は、風のように走っていた。
とにかく現場から離れなくてはならない。

憂「はっ はっ はっ」

ここまで来れば大丈夫か
辺りを確認する。
人の群れにまぎれ、十分ほど移動して、携帯電話を取り出した。

紬「もしもし、どうだった?」

憂「すみません…失敗しました。」

紬「明日、すぐに帰ってきなさい。」

憂「はい。」

資料の通りの部屋を襲撃したら、純がいた。
エゥーゴの士官は三名、となると、あとは和と、一緒にいたもう一人の女だろう。
憂にとっては最悪の状況だった。
153 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 20:44:08.41 ID:pob3cqco
そこまで考えて、憂は自分にまだ人間の心が残っていることに気がついた。
最初に殺しをやったとき、もう誰だろうと蚊を潰すように殺せると思ったものだった。
しかし、友達を前にしたら、殺せなかった。
自分は、まだちょっぴり人間だった。
喜ぶべきことなのかも知れないが、憂はその事実に戸惑いを隠せなかった。
仕事を続けていく上では、邪魔なだけの性質だったからだ。

憂「純ちゃん…」

頬に、涙が伝った。
これも人間だからこそなのだ、と憂は思った。
154 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 20:44:53.28 ID:pob3cqco
純は、部屋を変えられた。
その部屋に、三人が集まっている。

和「落ち着いて、説明して。」

純「ティターンズの襲撃だと思います。殺気を感じて床に伏せた瞬間、ベッドに銃弾が撃ち込まれました。窓から侵入されたんです。」

純「立ち上がって銃を侵入者に向けたところ、逃げられました。」

姫子「最悪の休暇ね。」

和「侵入者の人相は、覚えているの?」

純「えっと…覆面をしていたので、よく分かりませんでした。」

憂でした、とは言えなかった。

和「とにかく、明日カラバのエージェントが接触してくるはずよ。そこで資料を渡してしまえば、私たちを狙う理由もなくなるはずだけど、念のためそれが終わったらダカールからはおさらばしましょ。」
155 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 20:45:20.48 ID:pob3cqco
二人が部屋から出たあと、純は一人考え事をしていた。

純(憂…どうしてあんな事しているんだろ…)

純(殺し屋、だよね…)

純(昼会ったときは、いつもの憂だったのに…)

純(会えて、嬉しかったのに…)

いつの間にか、涙が次々に溢れでていた。
純は、その夜一睡も出来なかった。
156 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 20:46:21.66 ID:pob3cqco
朝食をとり終わって、部屋に戻る途中だった。
ロビーのベンチに腰掛けている少女に、小声で話しかけられた。
雑誌を読んでいる。

「こちらを振り向かないで、聞いて下さい。カラバのものです。」

和は、新聞を取って、少し間をおいてその少女の隣に腰掛けた。
新聞を広げ、顔を向けずに話しかける。

和「接触の予定時間とも、場所とも違うけど。」

「そう言うのは建前だと思ってください。ティターンズに情報が漏れているかも知れないので。」

和「分かったわ。あなたの身分証は?」

少女は持っていた雑誌のページをパラパラとめくった。
身分証らしいカードが挟まっている。
和は横目でそれを確認した。

和「ベルトーチカ・イルマさんね。身分証は本物みたい。」

ベルトーチカ「変更になった接触場所と時間を置いておきます。カラバのハヤト・コバヤシの親書も同封されていますので、確認してください。」

ベルトーチカが立ち去ると、そこには封筒が置いてあった。
和は無言でその封筒を回収すると、部屋に戻っていった。
157 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 20:47:06.65 ID:pob3cqco
慌しく、帰る準備をしていた。

憂「お姉ちゃん、ごめんね。すぐ社長に戻ってくるように言われたの。」

唯「お仕事なら仕方ないよね。」

澪「ああ、この旅行はもともと憂ちゃんの出張だからな。」

憂がチェックアウトを済ませると、後ろに純がいた。

憂「!!」

純「やっほー、憂、もう帰るの?」

唯「あ、純ちゃんだ。」

憂「お姉ちゃんと澪さんは、先にレンタカーに乗ってて。」

澪「分かった。おい、行くぞ。」

唯「純ちゃんバイバイ。」
158 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 20:47:47.06 ID:pob3cqco
二人がホテルを出て行くのを確認してから、憂が小声で警告した。

憂「…早くダカールから脱出して。ティターンズは純ちゃんたちのことを諦めたわけじゃないよ。」

純「…やっぱり憂だね。」

憂「え?」

純「あんなことさせられて、辛かったでしょ。それが私の知ってる優しい憂だもんね。」

憂「…純ちゃん…」

純「憂は、まだ私の友達だった。それが確認したくて来たの。」

純「梓によろしくね。きっと、生粋のティターンズになっちゃっただろうけど…」

悲しげな背中を見せて純がホテルから出て行く。
それを見て、憂はまた目頭が熱くなるのを感じた。
159 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 20:48:26.66 ID:pob3cqco
和とベルトーチカが、カフェでお茶を飲んでいる。
姫子は別の席でティターンズらしいものがいないか監視している。

和「白昼堂々カフェで機密情報の提供をするとは思わなかったわ。」

ベルトーチカ「こういう場所のほうがかえって目立たないし、連中も手が出しづらいんです。」

和「はい、これよ。紙媒体とメモリーカードが入っているわ。確認して。」

ベルトーチカ「確認しました。できるだけ早くダカールから脱出してください。」

和「分かってるわ。それじゃ。」

ベルトーチカが出ていくと、姫子が近づいてきた。

姫子「これからどこに行く?」

和「ニホンにでも行ってみようかしらね。里帰りってことで。」

その時ヤボ用で出かけると言っていた純が帰ってきた。

純「戻りました。」

和「よし、さっさとダカールから逃げるわよ。」
160 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 20:49:00.32 ID:pob3cqco
紬の部屋に行くと、お茶の用意がされていた。

紬「憂ちゃん、座って。」

憂「あの・・・次の仕事は・・・」

紬「当分ないわ。」

憂「あの…次はしっかりやります!!だからもう一度だけチャンスを下さい!!」

紬「本当に気にしなくていいのよ。連中は小物だったし。」

紬「まあ…お茶を頂きましょう。冷めてしまうわ。」

憂「はい…」
161 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 20:49:42.89 ID:pob3cqco
味のしないお茶とお菓子を黙々と口へ運び続ける。
沈黙に耐えきれず憂が口を開く。

憂「今日は何故お茶を?」

紬「用もなくお茶を出して悪いの?」ギロ

紬「私が誰かとお茶したいと思っちゃおかしいの!?」

紬が逆上してヒステリックに叫びだす。
憂はそれをなだめようと必死だ。

憂「ごめんなさい、そんなつもりじゃ…」

紬「もういいわ、帰って!」

紬「どいつもこいつもご機嫌取りばっかり!!」

憂「社長、すみません!許してください!!」

紬「帰れ!!」

憂は退出するとき、もしかしたら紬は寂しかったんじゃなかろうか、と思った。


第七話 休暇! おしまい
162 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/23(木) 21:09:40.39 ID:90iv8tYo
乙。
マクドナルドはマックダニエルのパクリである。許されることではない
163 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 22:10:01.73 ID:pob3cqco
寝る前に再開


第八話 キリマンジャロの風!

グラナダである。
三人は艦に帰ってすぐ、メタスを見にMS格納庫に向かった。
そこで驚愕の事実を突きつけられることになる。

姫子「あれ、メタスがワイバーンになってるよ。」

純「変ですね、いくらなんでももう直っているはずですが…」

和「艦長に聞いてみましょう。」

姫子「艦長に早く逢いたいのよね。」ニヤニヤ

和「もう!立花さん!!/////////」
164 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 22:10:57.85 ID:pob3cqco
艦長室に行くと、艦長がきまり悪そうにしていた。

艦長「あ…ああ、君たちか。どうしたんだい?」

純「MS格納庫にメタスが無いんです。」

艦長「メタス?何だそれ?夢でも見ていたんじゃないか?うちはワイバーンしか…」

姫子「あっ!!なんか誤魔化そうとしてるよ!!」

純「艦長!!ほら真鍋先輩もなんか言ってやって下さい!!」

和「メタスはどうしたんですか?怒らないから話してください。」

純「なんか弱くないですか?」

姫子「艦長!!いい加減にしないとまた殴りますよ!!」

和「艦長、話してください。お願いします。メタスはどこに行ったんですか?」
165 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 22:11:51.82 ID:pob3cqco
艦長「…スマン!!メタスは取られちゃったんだ!!」

純「はあ!?取られた!!?」

姫子「どういう事ですか!!返答次第によってはただじゃおきませんよ!!」

姫子はすでに握りこぶしにハアァ、と息を吐きかけている。
返答がどうであれ殴るつもりらしい。
それを見て、和は艦長をかばうように寄り添い、優しく問いかけた。

和「何故です?話していただけますよね?」

和の優しい声につられて、艦長が自白を始める。

艦長「アーガマに、取られたんだ…あそこはMSの消耗がハンパないからって、部品取りに…代わりのMSを申請しているんだが、その申請がまだ途中なんだ!」
166 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 22:13:00.31 ID:pob3cqco
         回想

艦長『あーあ、俺の和に逢えないのは辛いなあ…しかもグラナダは宇宙三大ブスの産地だしなあ…』

ヘンケン『よう、こんな所で会うなんて奇遇だな。』

艦長『(ゲッ…よりによって一番会いたくないやつに会っちまった…)あ…ヘンケン教官。お久しぶりです。』

ヘンケン『士官学校以来だな。秀才。』 

艦長『その節はお世話になりました。(糞教官が、超がつくほどの秀才だった俺を散々いびりやがったことは忘れてねーぞ!)』

ヘンケン『そういえば貴様も艦を預けられているんだったな。なんて艦だったかな?』

艦長『へえ、カキフ・ライっていうケチなマゼラン改ですよ。』

ヘンケン『ああ、17番ドックで装甲とエンジンとメガ粒子砲の改修を受けている老朽艦か。』

艦長『はい…その老朽艦です。(うるせーよ、俺の和がいれば老朽艦だろうがどこだろうが天国なんだよバーカ!)』
167 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 22:14:04.66 ID:pob3cqco
ヘンケン『そういえば貴様の艦にメタスが配備されてなかったか?』

艦長『はい…それが何か?(嫌な予感がしやがる…。)』

ヘンケン『やっぱりそうか、アーガマに譲渡しろ!部品取りとしてな!!』

艦長『おっしゃる意味がよく…』

ヘンケン『どうせ壊れかけのメタスだろ!アーガマではあんなのでも必要なくらいMSが消耗するんだ!!いいから譲渡しろ!!』

艦長『(ここで引き下がったらまた俺の和に嫌われる…)あれは直してまた艦で運用を…』

ヘンケン『…そう言えば貴様の艦はエゥーゴに参加したあともMSも入れずに戦闘機でパトロールばっかりやっていたよな?』

艦長『い…色々問題がありまして…何しろ老朽艦なものですから…えっと…ゆうれいとか出たり…(チッ、痛いとこ突いてきやがる…)』

ヘンケン『その時士官学校時代の教え子だった貴様に免じて見逃してやっていたのは俺なんだがな!』

艦長『そ…それはそれは…ありがとうございます…(クソ、恩の押し売りかよ…後で殺してやる…)』

ヘンケン『そういう事だ、メタスは貰って行くからな!』

艦長『あうあう…(和、ごめん…)』

         回想終わり
168 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 22:15:34.47 ID:pob3cqco
姫子「最低だわ!!この甲斐性なし!!」

純「どうするんですか!!せっかく帰ってきたのに仕事無いじゃないですか!!」

和「ま…まあまあ…代わりのMSが来るまでワイバーンでパトロール部隊として頑張りましょ。」

純「真鍋先輩はいきなり艦長に甘くなりましたね!!」

姫子「もう、あなたがしっかりしないと艦長に目を光らせる人がいなくなっちゃうわよ!」

和「で…でも無くなっちゃったものはしょうがないし…代わりにネモかリック・ディアスは無いんですか?」

艦長「すまない・・・回せないそうだ・・・」
169 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 22:16:26.26 ID:pob3cqco
姫子「もう我慢出来ないわ。こいつをリンチしてカタパルトで宇宙空間へ射出するわよ!!」

純「了解!!艦長、こっちに来てください!ノーマルスーツの空気がなくなるまでには回収してあげますよ!!」

艦長「勘弁してくれ!!許してくれ!!真鍋少尉、助けてくれ!!」

和「あなた達、艦長をいじめないで!!艦長も一生懸命なのよ!!」

艦長「ありがとう、真鍋少尉…。スーハースーハー…」

艦長は和に縋りつくふりをしてその胸に顔を埋め、深呼吸していた。

姫子「真鍋さん、裏切ったな!!」

純「二人をくっつけなきゃよかったですね!!」

怒りが満ち溢れ、艦の雰囲気は一気に悪くなった。
170 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 22:17:09.31 ID:pob3cqco
メタス事件以来ミーティングルームの雰囲気は最悪である。

艦長「アクシズが地球圏に帰還した。手を結ぼうと思ったが、アーガマの使節団がヘマをやったおかげでおジャンになった。」

姫子「ちっ、うちのメタスを取っておいてヘマやってるんじゃないわよ!」

純「はあ〜ヤル気でないな。」

艦長「そのままアクシズはティターンズの一派と手を結んだようだ。」

姫子「メタスを持ってってアクシズとティターンズを連携させて、アーガマってのは一体なんなのよ!スパイなんじゃないの!?」

純「あ〜ドーナツ食べたい・・・」

和「あなた達…ミーティング中よ!いい加減にしなさい!」

純姫子「は〜い」

和「しかし反ジオンを標榜するティターンズがアクシズと手を結ぶなんておかしいですよね。」

艦長「連中もなりふりかまってられないんだろ…」

純「なんかあそこだけ和んでますね。」

姫子「む〜…面白くない。」

その後、カキフ・ライの任務はしばらくパトロールが続いた。
171 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 22:17:58.81 ID:pob3cqco
久しぶりに全員が集められた。
紬の会社である。

紬「キリマンジャロ基地にカラバの攻撃が来るわ。出撃よ。」

梓「ヘヘヘ…血祭りに上げてやるです…」ジュルリ

唯「うん…」

澪「…」

憂(純ちゃんは、来ないよね…)

紬「憂ちゃんは持ち出す重要書類等を、事務所で整理して。」

憂「はい」

紬(他の捨て駒はいいとして、憂ちゃんを戦闘で失う訳には行かないわ)

紬「ティターンズはエゥーゴを殲滅するために遅かれ早かれ宇宙へ上がるわ。だから私たちもこの機会に拠点を宇宙へ移動させるの。」

紬「戦闘が終了したらこのポイントへ集結。宇宙へ上がる段取りはすべて私がやっておくわ。」

紬「各員、出撃よ!」
172 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 22:18:50.26 ID:pob3cqco
唯たちが出るとミサイルが雨あられのように基地に降り注いでいる。
空から大経口のビームも撃ち込まれている。衛星軌道から敵艦が砲撃しているのだろう。
各員は、アッシマーをMS形態にし、事務所の近くの岩場で姿勢を低くして支援射撃が止むのを待った。

梓はギャプランである。

ミサイルは基地を狙っているため、民間施設であるここには攻撃が来ることはない。

唯「すごい攻撃だね、澪ちゃん。」

澪「ああ、要塞、大丈夫かな…?」

梓「うるさい…うるさい…」

斉藤「…」
173 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 22:19:55.90 ID:pob3cqco
ミサイル攻撃が、止んだ。

梓「行くです!!」

唯「澪ちゃん!」

澪「ああ!」

斉藤「…」

各機は、MA形態になり、飛んでいった。
ドダイに乗るカラバのMS隊が見える。

梓「ぬあああああああああああ!!皆殺しですぅうううう!!」

梓の直線的なシルエットの機体が次々に敵を落としていく。
フォルムといい、動き方といい、アッシマーとは対照的である。

梓「私の過去、私の過去、私の過去ォォォォォ!!」
174 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 22:21:06.60 ID:pob3cqco
唯と澪は戦慄した。
梓のような軌道を取ると、普通の人間はGによって気絶してしまうからだ。
しかし梓は、常人では考えられないような動きを緩めることなくネモやリック・ディアスを破壊し続けている。

その時、反対側のフィールドに、黒く、大きな人型兵器が出てきた。
カラバのMS隊は次々とそれにやられている。
斉藤は、それを見てほくそ笑んだ。

斉藤「サイコガンダムが出たか。あっちはあれに任せておけばいいだろう。」

斉藤「強化人間、10時の方向、敵機の集団。あそこにお前の過去があるぞ。」

梓「ああああああ私の過去おおおお!!」

梓が、敵に突っ込む。
あっという間に三機ほど落とした。
まさに鬼神の如き働きである。

斉藤「フフフ…いい具合ですな。脱出までの時間稼ぎとしてはまあまあか…」

澪「梓…すごいな…」

唯「あずにゃん…おかしいよ…」
175 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 22:21:37.75 ID:pob3cqco
その時、唯たちの正面に敵機が見えた。

澪「唯、敵だ!!」

唯「了解!!」

ネモを主とした部隊だ。
すぐに混戦になる。

澪「やらなけりゃ、こっちがやられる。」

澪も、ビームを撃って敵を落とす。

唯「当たらないよ!」

唯が、敵のバズーカをかわす。散弾では無いようだ。
バズーカの射線の先には、事務所の建物があった。
176 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 22:22:12.42 ID:pob3cqco
憂は、事務所で重要書類を持ち出しのため整理していた。

憂「こっちはテスト関係の資料、こっちは帳簿…」

憂「これでよし!あとはジープに乗せて集合ポイントに行くだけだね。」

憂「お姉ちゃん大丈夫かな…?」

その時、水槽の中を泳ぐペットのスッポンモドキが目に入った。

憂「お前も、一緒に行きたいよね。待ってて、今だしてあげる。」

憂がトンちゃんに手を差し伸べようとしたとき、強烈な音と光の世界が憂を包んだ。
177 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 22:23:04.39 ID:pob3cqco
気がつくと体がうつ伏せになっていた。
呼吸が苦しい。
重い。

声を出してみたが、聞こえない。
耳をやられたようだ。
動けない。身を捩ると足が変な方向に曲る。
何かが体に乗っている。

苦しい。

助けて、お姉ちゃん。

埃が舞っていて、周りの様子が見えない。
そうだ、トンちゃん、大丈夫かな。

トンちゃん、と言おうとしたとき、声ではない、違うものが口から溢れでた。
なんだろう。鉄の味。

…まっかだ。

…血。
178 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 22:24:00.71 ID:pob3cqco
憂は、信じられないような気持ちだった。
包丁で手を切った時も、転んですりむいた時も、こんなに血が出たことは無かったからだ。

また、血を吐いた。
今度は、お姉ちゃん、と言おうとした時だった。
こんなに沢山の血は、殺しをやったときにしか見たことはない。
その時初めて、自分がもうすぐ死ぬしかないという事実に気がついた。

埃が晴れてきた。明るくなってくる。
そうだ、空を見よう。あそこに純ちゃんがいるんだ。
殺そうとしてもなお友達でいてくれた、私の大切な親友。

最期の、ありったけの力を振り絞った。


しかし、空は見えなかった。
179 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 22:24:58.90 ID:pob3cqco
敵の射弾が気になった唯は、目の前の敵を落とすと、後ろを振り返ってみた。
憂がいるはずの建物は、瓦礫の山になっていた。

唯「うーーーーーーいーーーーーーーー!!!!」

唯は、アッシマーを急旋回させて戦線を離脱し、瓦礫の付近に着陸させた。
飛び降りる。
転んでしまったが、すぐに立ち上がる。
走った。

唯「うい…うい…」

建物の形が少し残っている。書類があるとしたらあそこの一画だ。
唯は、そこに行ったとき、血溜まりの中で瓦礫に押しつぶされた憂を見た。
その途端に、唯は叫びだしていた。

唯「わああああああああああああああああああああああああああ!!!」

瓦礫の向こうで、一機のシャトルが宇宙に飛び立つのが見えた。
180 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 22:25:34.97 ID:pob3cqco
ネモと縺れ合ってビームサーベルを奪い、何とか敵を倒した澪は、懐かしいメロディーを聞いた気がして、振り返った。

澪「え?」

キミがいないと何もできないよ  キミのごはんが食べたいよ

もしキミが帰ってきたら  とびっきりの笑顔で抱きつくよ

キミがいないと謝れないよ  キミの声が聞きたいよ

キミの笑顔が見れればそれだけでいいんだよ

キミがそばにいるだけで  いつも勇気もらってた

澪「唯の…歌?」

頭の中に響く歌声を聞きながら、澪はロストした唯を必死で探しはじめた。
181 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 22:26:22.34 ID:pob3cqco
梓のギャプランが、殺虫剤を掛けられた虫のように急にふらふらと高度を下げ、不時着した。
斉藤は、それを必死で掩護している。

斉藤「どうした、強化人間!!戦え!!」

梓「う…歌が…頭が割れる…」

キミについつい甘えちゃうよ  キミが優しすぎるから

キミにもらってばかりでなにもあげられてないよ

キミがそばにいることを当たり前に思ってた

こんな日々がずっとずっと  続くんだと思ってたよ

梓「うるさい! うるさい! うるさい!!」

突然、ギャプランが急上昇する。
頭の中に響く歌が止むまで、梓はめちゃくちゃに飛び回っていた。
斉藤はそれを、追いかける事しか出来なかった。
182 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 22:27:27.89 ID:pob3cqco
紬の手配した輸送機のパイロットが、彼女の異常を感じ取った。

パイロット「お嬢様、具合でも悪いのですか?」

紬「何でも無いわ。ちょっと疲れているだけよ。」

キミの胸に届くかな?  今は自信ないけれど

笑わないでどうか聴いて  思いを歌に込めたから

ありったけの「ありがとう」  歌に乗せて届けたい

この気持はずっとずっと忘れないよ


思いよ、届け

紬「こんな時に歌が聞こえるなんて…?気のせいよね。」

確かにこの時、放課後ティータイムの全員が憂への感謝を込めて唯が作詞した曲を聞いた。
しかしすでにこの集団の人間関係は、その奇跡を確認しあうことの出来る状態にはなかったのである。
183 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 22:29:10.48 ID:pob3cqco
紬「撤退命令よ。合流ポイントへ向かって。」

紬から、通信が入った。
澪は、着陸している唯の機体を発見し、その隣に自機を滑りこませた。

澪「唯、撤退命令だ!行くぞ!!」

唯は、へたり込んだまま呆けていた。
側に瓦礫に潰された憂の死体がある。
その時初めて、澪は先程頭の中に響いた歌の意味を知った。

澪「唯…憂ちゃんは…もう…」

唯は反応しない。
澪は、なんとか唯を引きずってコックピットに押し込み、補助席を出して唯を座らせた。

澪「唯、行くぞ。お前に死なれたら、私は一人ぼっちになっちゃうからな。」

唯「」

唯は、無表情で涙を流している。
表情の作り方を、忘れてしまったように見えた。

飛び立ち、梓と斉藤に合流した。
後ろで、キリマンジャロの山が崩壊するのが見える。
澪にも噴火ではない事くらい、分かった。
184 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 22:29:50.38 ID:pob3cqco
コックピットの中で、澪は唯にできるだけ明るく話しかけた。

澪「唯の歌、私にも聞こえたぞ。きっと憂ちゃんも喜んで天国へ逝けたと思う。」

唯「」

澪「あのさ、宇宙に行ったらさ、また和たちに会いに行くか。あいつら、資源関係の仕事やってるんだったよな。」

唯「」

澪「和も立花さんも鈴木さんも、きっと喜んでくれるぞ。」

唯「」

澪「楽しみだな、唯。」

唯「」

合流ポイントが、見えてきた。
輸送機が停まっている。
側に、紬もいるようだった。
185 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 22:30:55.24 ID:pob3cqco
憂の死を報告されたとき、紬は内心、舌打ちをした。
なぜか死ぬのは、律や憂のように使える人材だけだ。
何故、唯や澪のように中途半端なものばかりが残るのか。
しかし、どんな人材でも今は使い続けなければならない情勢だ。

紬は、できるだけ優しく、自分の内面を包み隠しながら話しかけた。

紬「澪ちゃん、ご苦労様。」

澪「あ、ああ…」

紬「これからの行動について教えるわ。これからニホンに戻り、琴吹グループの施設に行ってシャトルで宇宙へ上がるわ。」

唯「」

紬「唯ちゃんは…今回宇宙へ上がるのは無理ね。ニホンで施設に預けるわ。」

澪「どんな施設だ?」

紬「唯ちゃんみたいに、戦争で心を傷つけた人たちを治す施設があるのよ。ムラサメ研究所っていってね、静かで空気の良い、とってもいいところなの。唯ちゃんもきっと気に入ってくれるはずよ。」

澪「そうか、それなら安心だな…唯。」

唯「」

紬「あそこなら、すぐに元気にしてもらえるわ。さ、行きましょ。」

紬は安心しきって笑顔を見せる澪から顔をそらし、口元を歪めた。
186 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 22:33:37.06 ID:pob3cqco
第八話 キリマンジャロの風! おしまい。

今日はここまで。

けいおんは終わるし、タバコは値上がりするしでいいことないけど明日も頑張って投下します。
187 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 22:38:33.78 ID:yyOuyuco
ムラサメ研究所…唯…行くな…行くなぁぁぁぁぁぁぁ…!
188 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 22:53:27.38 ID:90iv8tYo
前半のノリがルー・ルカとエルの掛け合いみたいで楽しいな〜〜
…と思わせといての鬱展開だよ!!乙!
189 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 00:27:13.64 ID:2x9.BsAO
乙乙。
予想外の展開になってきたぞ
190 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/24(金) 00:38:42.77 ID:cCHlMuo0
ユイ・ヒラサワ
ミオ・アキヤマ
リツ・タイナカ
ツムギ・コトブキ
アズサ・ナカノ
ウイ・ヒラサワ
ジュン・スズキ
ノドカ・マナベ
ヒメコ・タチバナ

こうしてみると和と純がそれっぽくなるよね
191 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/24(金) 00:55:51.88 ID:I6WXgZoo
支援保守
192 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 17:38:33.05 ID:5OQ3poDO
あー
ムラサメ研じゃなくてオーガスタ研か
ギャプランは
193 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 20:21:00.73 ID:ehBEHJYo
0079の時の
あの優しいムギは
一体何処へ……
194 : [sage]:2010/09/24(金) 21:15:50.30 ID:8Z5FldYo
投下するか。

第九話 ダカールな一日!

ミーティングルームは日増しに暗い雰囲気になってきた。
艦長は努めて明るく報告し、和は艦長と純たちの板挟みになってあたふたしていた。

艦長「キリマンジャロ基地が落ちたぞ。ティターンズの主力はゼダンの門に入った。」ニコニコ

純姫子「ふーん・・・」グッタリ

和「そ…それはいいニュースだわ!地球でのティターンズは壊滅したってことですもの。ね、みんな。」ニコニコ

和の明るい声とは対照的に、純と姫子は今にも死にそうだった。

純「ドーナツ食べたい。」ダラダラ

姫子「MS欲しい。」ドヨーン

それを聞いて、思い出したように艦長が切り出す。
195 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 21:16:56.40 ID:8Z5FldYo
艦長「ああ、そのMSだが、めどが立ったぞ。一生懸命頑張って、一番いいやつを納品できそうだ。」

純「ええ!!ホントですか!!」シャキッ

姫子「やったあ!!艦長最高!!」シュバ

和「あ…あなた達…」アキレタ

純「どんな機体ですか!!?」wktk

姫子「一番いい奴ってなんですか!!?」ktkr

和「ハァ…」グッタリ

艦長「新型の、可変MSだ!メタスみたいな実験機じゃなくて、ちゃんとした量産機だぞ!!その先行試作品、つまり開発し立てのホヤホヤが配備される!!」
196 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 21:17:33.08 ID:8Z5FldYo
純「もっと教えて!」キラキラ

姫子「みなぎってきた!!」ヌオォ

和「あの〜…もしもし…二人共…」

艦長「ええと、原案はカラバだが、それを宇宙用に再設計した機体でな、名誉なことに、君らが地球連邦宇宙軍で初めてこいつのパイロットになる。試作品だから、本格的な量産化に向けたテストも兼ねてる。壊すなよ、鈴木。」

純「すごい!一生付いていきます!!」

姫子「これで命を削るようなワイバーンでのパトロールともお別れだ!!バンザイ!!」

和「」ヤレヤレ

艦長(メタス改の戦闘データが評価されてうちに新型が回されたことは黙っておこう。鈴木の奴、つけあがるからな。)
197 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 21:18:22.73 ID:8Z5FldYo
艦長「ここからは任務の話だ。予定は16日、アーガマのクワトロ大尉がダカールの議会を占拠してティターンズが悪であるという趣旨の演説をぶち上げるという計画がある。」

和「演説・・・ですか・・・?」

艦長「そうだ、これを議会放送にかこつけてコロニーを含む地球圏全体に生放送するという壮大な計画だ。(計画自体はエゥーゴじゃなくてカラバがしたんだけど…)」

純「いきなり大きい話になりましたね。」

姫子「MSがなかったら大変なことになっていたわね。」

艦長「我々の任務は通信衛星の防衛だ。それを見越して訓練をやっておき給え。」

艦長「機体が届くのは明後日の予定だ。」

和「猶予は10日ね。わかりました。」

士気は、簡単に最高潮になった。
現金なものである。
198 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 21:19:00.28 ID:8Z5FldYo
すぐに2日が過ぎた。
MS格納庫に立つグレーの機体を見て、全員が感動していた。

純「カッコいい…こんなのを待っていたんですよ!!」

姫子「外見だけでも…かなり高性能であることが分かるわね。」

和「艦長、やるときはやりますね!素敵です!!//////」

艦長「そうだろう、そうだろう。今までのコネをフルに活用して勝ち取った機体だ。士官学校A課程卒業席次5番の実力を思い知ったか!」エヘン

艦長「そうそう、昨日聞いたら量産の目処が立つまであと1ヶ月以上かかるそうだぞ!まさにフライングゲットって奴だ!(鈴木、メタス改を壊してくれてありがとう!)」
199 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 21:19:36.25 ID:8Z5FldYo
整備班長「説明します、MSZ−006C1、ゼータプラスC1型です。ウェイブライダーへの変形機能を持った可変機(VMsAWrs)で、ウェイブライダー形態で艦内にて調整を行うことにより、大気圏突入も可能です。武装は…」

純「早く乗ってみましょうよ!!」

姫子「賛成。」

和「そうね、作戦まで間がないわ。早く訓練しましょう。」

整備班長「ちっ。人の話聞けよ。」
200 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 21:20:17.51 ID:8Z5FldYo
最初はテスト飛行だ、三機が飛び立つ。

純「メタスより反応が鋭い。かなり期待できますね。」

和「変形してみるわ。見てて。」

一瞬にして、和のゼータプラスがウェイブライダーに変形する。

純「ええと…メタスより複雑です…早くて何がどうなっているのかわかりません…」

和「テスト飛行コースよ、これをトレースして。戻ったら一本模擬戦をやるわ。」

ディスプレイにコースが映し出される。
簡単なコースだ。3分もあれば終わるだろう。

純姫子「了解!」

三機は、編隊を組んでコースをトレースした。
2分ほどで、終わった。

和「鈴木さん!やるわよ!」

純「行きますよ!」

姫子「状況、開始!」

時間計測・審判員として模擬戦を見ている姫子は目を見張った。
動きが、追い切れない。

姫子「すごいわ…これなら…負けない!」

三人は、一時間半後、クタクタになって帰ってきた。
201 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 21:21:04.37 ID:8Z5FldYo
和は帰ってきた後、艦長室を訪れていた。

和「いい機体を、本当にありがとうございます。」

艦長「いや、またせてすまなかった。雰囲気が悪くなって君にはずいぶん苦労をかけたな。」

和「はい、でもみんなゼータプラスに乗ってすっかり機嫌も良くなりましたよ。イライラしてたことなんか、忘れているんじゃないですか?」

艦長「そりゃ、よかった。君への、ひと足早い誕生日プレゼントだな。」

和「あれは誕生日プレゼントにはなりません。」

艦長「手厳しいな。」

和「ちゃんと、下さい。あなたのプレゼントは、いつまでも私の手の中に残るものがいいんです。MSは、どこまで行っても軍の所有物ですから。」
202 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 21:21:30.43 ID:8Z5FldYo
和「フフフ…」

艦長「何だ?」

和「そういえば、人に何かをねだったのって、これが初めてです。//////」

艦長「ありがたい事だ。君へのプレゼント、考えておくよ。」

和「あの…クリスマスのプレゼントも、欲しいです。//////」

艦長「君は意外と欲張りだな…分かった。何がいいかな?」

和「あなたが、考えて下さい。」

そう言って、和は部屋を出ようとした、が、艦長が和の肩を掴んでそれを制した。
驚いて振り返った和を、艦長がしっかりと抱きとめる。

そのまま、吸い寄せられるように二人の唇が重なりあった。

和は、これがプレゼントでもいいかも知れない、と思った。
203 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 21:22:17.05 ID:8Z5FldYo
通信衛星の周りには、2隻の味方艦がいた。
かなりオーバーな守りである。それだけ本作戦は重要なのだろう。
艦は二隻ともサラミス改である。
艦載機のネモが、和たちのゼータプラスを羨望のまなざしで見ている。
その時、緩やかなカーブを描く地平線の向こうで光が瞬いた。

和「始まったわね!こっちにも来るわ!!」

言った瞬間、近くのネモが爆散していた。

姫子「速い!!」

敵が見えた。
可変機。三機。
コンピュータが敵機を照合する。
RX−110、ガブスレイと呼ばれる機体だ。
204 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 21:22:48.98 ID:8Z5FldYo
和「可変機よ!私たちが相手をするわ!!」

和たち三機はビームスマートガンを発射する。
敵機はパッ、と三方向に散ってそれを回避した。
敵が近くなる。

純の機体が敵に突っ込んだ。サーベルを発振する。
馳せ違った後、腰のビームガンを発射した。

和たちも、前に出る。
守っているからといって、動きをなくせば可変機の意味が無い。
衛生を守る重石の役目は変形できないネモと艦に任せておけばいいのだ。
205 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 21:23:55.27 ID:8Z5FldYo
純は、得も言われぬ不快感を敵に対して感じていた。

純「なんだろう、このプレッシャーは…」

懐かしいけど、異質なもの。
そんな気がした。

和も姫子もガブスレイと互角以上の戦いをしていたが、純の相手はかなりの手練だ。
時々押される。

純「くっ…強い…」

少し距離をとると、腰のビームを撃つ、しかし敵も肩にビームガンを装備していて、それを撃ってくる。

長距離では、ゼータプラスのスマートガンのようなものを敵も持っている。

ゼータプラスと似ている。こっちが鳥だとすると、向こうはコウモリみたいな感じだろうか。
純は戦いながらそんな事を考えた。

接近する。斬りつけた。
が、敵も同じように斬りかかってきて、両機はつばぜり合いをおこした。

純「私の真似をして!!」

その時、接触回線か、敵の意志が純の頭に入り込んできたのか、純に敵パイロットの声が聞こえた

「この宇宙人め」
206 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 21:24:33.62 ID:8Z5FldYo
その声に、純は聞き覚えがあった。

純「あずさ…梓なの!?」

その時、敵機が反転、変形して、あっという間に見えなくなった。

周りを見ると和や姫子の相手も逃げたようだった。
その時、艦長から通信が入った。

艦長「放送が無事終了した。任務完了だ。」

和たちが、艦に帰っていく。

あれは、確かに梓だった。
報告すべきだろうか、せざるべきだろうか…
考えが堂々巡りし、憂のことも混ざり合い、純の頭は真っ白になった。

結局、報告はしなかった。
207 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 21:27:01.41 ID:8Z5FldYo
澪は、被弾箇所をチェックした。
問題は、なさそうである。

澪「よし、大丈夫だな。」

見たことも無い敵だった。
グレーの、可変機。
ガンダムタイプというやつだろうか?
そんな事を考えているうちに、母艦が見えてきた。

大きな艦である。
琴吹グループが購入したドゴス・ギア級を改修して会社の機能を移転してある。
紬は新しい事務所だと言っていた。グループの他の企業も入っているらしい。

豪勢な応接室や宿泊施設があり、上等な食事にもありつけるためティターンズ将校達からは、コトブキホテル、と呼ばれているようだ。

そういった施設に場所を取られるため、その巨体にもかかわらずMS搭載数は極端に少なかった。

今のところ、澪たちのガブスレイが予備を含め5機と、他の連中が使っているバーザムが1個中隊だけだ。
戦闘になったらこの大きな艦を守りきれるのだろうか、と澪はよく考える。
208 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 21:28:12.13 ID:8Z5FldYo
澪「秋山機、着艦します。」

着艦して機体から降りると、同じように降りてきた梓と目があった。
今日は一段と目付きがおかしい。
そんな事を思っているうちに、梓が頭を抱えてうずくまった。
澪は反射的に、それに近づく。

澪「大丈夫か?梓…」

梓「あのパイロット…私を知っていた…あ…頭が…」

澪「え?」

澪が聞き返したとき、それを遮るように斉藤が梓にとりついて、薬を与えたり注射を打ったりした。

その後すぐに梓はぐったりとして、どこかに運ばれていった。

澪はそんな様子を見て、心底うんざりした。
早く唯に会いたい。
それだけが、澪の心の支えになっていた。


第九話 ダカールな一日! おしまい
209 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 23:08:51.28 ID:8Z5FldYo
第十話 脱走!

グレーのガンダムもどきと交戦してから2週間ほどして、唯が帰ってきた、という話が聞こえてきた。

澪は弾む心を抑えて、唯の居室を訪れる。

澪「唯!!」

澪は一瞬、目を疑った。

唯「空が…落ちてくる…空が…憂を…取り戻す…」

唯が、梓のようになっていた。
絶望感が澪の心にのしかかる。

紬「唯ちゃん、すっかり元気になったわねえ。」

紬が薄ら笑いをうかべている。
澪はゾッとしたが、勇気を振り絞って、言った。

澪「ムギ、これはどういう事だ!!どうして唯を、こんなふうにしたんだ!?」

紬「唯ちゃん、憂ちゃんがいなくなって悲しんでいたから、エゥーゴを倒せば憂ちゃんが帰ってくる、っていう刷り込みをしてあげたのよ、そのついでに、強化したの。」
210 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 23:09:52.50 ID:8Z5FldYo
澪「なんだよ…強化って…なんなんだよ…こんなの唯じゃない!!」

紬「そこにいるのはまさしく唯ちゃんよ。何を言っているの?」

紬「澪ちゃん、差別主義者だったのね。ちょっと強化されたくらいで唯ちゃんを唯ちゃんと認めないなんて。」

澪「違う…こんなの唯じゃない…」

紬「じゃあこうしましょう、澪ちゃんも、唯ちゃんと同じように強化してあげる。そうすれば、みんな仲良く強化人間よ。どう?いいアイデアでしょう。」

澪は、心底恐怖した。今の紬ならやりかねない。

澪「い…嫌だ…嫌だ!!」ガクガク

紬「結局そうやって震えてるだけなのよね、澪ちゃんは。何もする気が無いのなら文句なんか言わないで黙ってて欲しいものだわ。」

澪は、おかしくなった唯に助けを求めるしか無かった。

澪「唯…唯…目を覚ませよ。冗談だろう、唯!!」

澪「いつもみたいに笑ってくれよ…ボケてくれよ…じゃないと私…」
211 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 23:10:28.41 ID:8Z5FldYo
唯にすがりついて、泣きながら語りかける。
それに唯が反応した。

唯「うるさいなああああ!!」

澪「…え?」

唯が澪に掴みかかる。
その時紬が何かのリモコンのようなものを操作した。

唯「かまめし」

唯は、体を硬直させてその場に突っ伏した。
足先がピクピクと痙攣している。
212 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 23:11:00.17 ID:8Z5FldYo
紬「うふふ…嫌われちゃった。無様ね、澪ちゃん。」

澪「ちょっと待て…なんだよ…今のは…?」

紬「スタンガンのスイッチよ。唯ちゃんの体に埋め込まれてるの。唯ちゃんの生体電流で充電される、我が社自慢の新製品よ。」

紬「今みたいにいけないことをしたら、このスイッチでお仕置きをするの〜。」

澪は、言葉が出なかった。

紬「さ、唯ちゃんのお薬の時間よ。澪ちゃん、出て行って。」

澪はそれを聞くなり、逃げるように出て行った。
213 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 23:11:33.91 ID:8Z5FldYo
ミーティングルームに入ると、艦長が青ざめた顔で立っていた。

艦長「ティターンズがグリプス2を大量破壊兵器に改造し、これを使用した。それによってサイド2の18バンチが全滅した。」

和「なんですって!!」

純「コロニーを大量破壊兵器にするって、いまいち想像出来ないんですけど…」

姫子「一年戦争でジオンが使ったソーラ・レイって知ってる?あれみたいなものじゃないかな?」

純「え…ソーラ・レイを作ったんですか…?」

艦長「二度と連中にこれを使わせてはいかん!!上がこれを奪う作戦を立てているだろう。そのつもりでいてくれ。」

和純姫子「了解!!」
214 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 23:12:27.56 ID:8Z5FldYo
紬は、父に呼び出されていた。

紬父「バスクがサイド2で毒ガス作戦を計画している。同じことを我々はサイド1でやろうと思っている。」

紬「ティターンズに協力もしながら我がグループの行動力を示すことが出来ますね。賛成です。」

紬父「これが作戦計画だ。直ちにお前の強化人間部隊を用いて作戦を実行せよ!!」

紬「了解!!」
215 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 23:13:00.11 ID:8Z5FldYo
紬は直ちに命令を作成し、これを下達した。

紬「…というわけよ。分かった?」

梓「宇宙人は皆殺しです!」

唯「それで憂が帰ってくるんだね!」

澪「…」

ミーティング後、澪は自室に籠って考えていた。

澪(毒ガス攻撃だって?…そんなの嫌に決まってるだろ…)

澪(もう逃げよう!ここはおかしい!みんな狂ってる!)

澪(MA形態のガブスレイの足で艦からできるだけ離れて救難信号を出すんだ。上手く行けばパトロール中のエゥーゴの艦に拾ってもらえる。)

澪(よし、行くぞ。)

澪は、意を決してMSデッキに向かった。
216 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 23:13:49.60 ID:8Z5FldYo
紬の部屋を激しくノックする音が聞こえる。
ドアを開けると、斉藤が青ざめた顔でまくし立てた。

斉藤「お嬢様!!秋山が脱走いたしました!!」

紬「あらあら、丁度いいわ、唯ちゃんのテストをしましょう。」

紬「あなたも監視員として出なさい。」

斉藤にそう伝えると、紬は唯の部屋に向かった。

紬はノックもしないで唯の部屋に入っていく。
唯はなにやらブツブツと独り言を言っていた。
紬はおもむろにスタンガンのスイッチを押す。

唯「ひぐっ!!」

強化人間は何を考えているか知らないが、いつもブツブツと独り言を言っていたり、ぼんやりと考え事をしていることが多かった。
そんな時紬が話しかけても高確率で無視されるので、最近彼女らに用があるときはスタンガンの威力を弱くして刺激を与えてやることにしている。
217 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 23:14:58.45 ID:8Z5FldYo
紬「唯ちゃん、澪ちゃんと遊んでらっしゃい。」

唯「澪ちゃんが遊んでくれるの…?」

紬「そうよ、MSで鬼ごっこ。ビームを当てて、相手を花火にしたほうが勝ちよ。」

唯「私のガンダムは負けないよ!!」

紬「澪ちゃん、敵の艦に逃げ込むつもりなの。そうなったら唯ちゃんの負けになっちゃうわよ。急いで。」

唯「うん…わかった…」

紬「唯ちゃんが勝ったら、澪ちゃんと遊べるのもこれが最後になるとおもうわ。じっくり、時間をかけて遊んであげてね。」

唯「うん…いっぱい遊んでもらうよ…」

唯はMSデッキへと降りた。
そこには通常の機体より少し大柄な、ズングリした黒いガンダムが立っていた。
ガブスレイを追いかけるために、即席の追加ブースターが取り付けられている。
唯が触れてもいないのに、その機体は目を光らせ、起動した。
218 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 23:15:39.91 ID:8Z5FldYo
紬父「脱走したダメ社員をプロトサイコのテスト相手に使うとは、お前も立派な琴吹の人間になったな。」

紬「お褒めに預かり光栄です。」

紬父「しかし見るからに不恰好なMSだな、現状で用意できる強化人間用のサイコミュ搭載MSで、本艦に格納できるサイズのものがあんなのしかないとは残念だったよ。」

紬「サイコMk−Uは大柄すぎますし、ガンダムMk−Xに至ってはインコム・システムとかいうオモチャしか搭載されていませんでしたしね。」

紬父「インコムには失望したな。何でもかんでも一般兵が扱えるようにしようというのは実に陳腐な発想だよ。もっと作ればいいのだ、強化人間を。そうすればビジネスにもなる。」

二人は、黒いガンダムが出撃するのを談笑しながら眺めていた。
形の上では笑顔だが、目が笑っていない。異常者の表情である。
219 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 23:16:19.16 ID:8Z5FldYo
和は、非常呼集のベルに起こされた。
頬を平手で叩いて気合を入れ、ゼータプラスのコックピットに入っていく。
ヘルメットをつけると、艦長から通信が入った。
かなり焦っているようだ。

艦長「ティターンズから投降してくるMSがいるようだ!救難信号を受信した。通信も入っている。周波数は民間で使われているものだ!!敵の罠かもしれんから、こっちは下手に返信出来ん!すぐに向かってくれ!!」

和は、チューナーをセットした。
雑音に混じって、わめきちらすような声が聞こえる。
女だ。
かなり怯えているように聞こえる。

和「当該機からの無線を傍受。救難信号も受信しましたので、ポイントも分かりました。念のため、スワロー3も連れていきます。」

純「了解!」

和「あら、良い反応じゃない。」

純「人助けですからね!」

和「罠かも知れないわよ。」

程なくして、白い艦から二機のウェイブライダーが射出された。
220 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 23:17:05.47 ID:8Z5FldYo
澪は、恐怖に震えていた。
暗い宇宙を当てもなく飛んでいる。
もしかしたら、この方向には保護してくれるような艦がいないかも知れないのだ。
それでも、飛び続けなければならない。加速をやめると、追っ手に捕まるだけだからだ。

澪「どこかに、エゥーゴの艦はいませんか!!助けてください!!ティターンズに追われています!!」

何度同じセリフを叫んだだろうか、レシーバーにかすかな反応があった。
澪は助かった、と思い。加速をやめてレシーバーに耳を澄ませた。
確かに声が、聞こえる。
嬉しくなって、さらに耳を澄ます。
今度ははっきりと、聞こえた。

唯「澪ちゃん、見つけたよ。いっしょにあそぼ。」

澪の頭が真っ白になる。スロットルをいっぱいに操作して、見えない敵から一目散に逃げ出した。

澪「ヒィィィィィィィィィ!!!」

辺りを索敵しても、MSらしきものは見当たらない。
それがさらに澪の恐怖心に拍車をかけた。
221 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 23:18:07.32 ID:8Z5FldYo
不意に、チカッ、と光が見えて、機体に衝撃が走った。

スラスターがやられたようだ。
しかしMSらしきものはまだ見えない。

澪「やめろ、唯!!やめてくれ!!見逃してくれ!!ゆいいいいい!!」

四方八方から次々に光が襲ってきた。
そのたびに澪の機体が跳ねる。
ディスプレイで損傷状況を見ると、スラスターの噴射口と武装だけを正確に破壊しているようだ。

澪は、混乱で自分の叫び声も聞こえなくなった。
唯の声だけが、明瞭に聞き取れる。

唯「澪ちゃんのMS、もう動けないよ。武器も取っちゃった。追いかけっこはもう出来ないよ…どうしようか…澪ちゃん?」

気がつくと、目の前に補助ブースターを付けた黒いガンダムが浮かんでいた。
222 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/24(金) 23:19:01.86 ID:8Z5FldYo
和は、耳を疑った。
唯、確かにそう聞こえたのだ。
そういえばレシーバーから流れてくる悲鳴の声質には聞き覚えがあった。

和「まさか…澪なの?」

とっさに不明機に、語りかけた。

和「澪、澪なんでしょ!!私よ、和よ!!今助けに行くわ!!」

不明機から、返答がある。

澪「和…本当に和なんだな…私はもう駄目だ、今から言う事をよく聞いてくれ…」

和「何言ってるのよ!あと1分もすれば現場に到着するわ!!」

澪「連中、サイド1を毒ガスで攻撃しようとしてる。防いでくれ!」

和「なんですって!?」

澪「律は死んでしまった。それから梓がいなくなって、ムギがおかしくなって…梓も帰ってきたら別人になってたんだ…そして、憂ちゃんも死んで、ついに唯もおかしくされた。今、目の前に唯のMSがいるんだ。私…殺さr」

澪との通信が途絶えたと同時に、モニターに小さな火球が映し出された。

和「ちょっと、澪!澪!!」

澪からは、二度と返事はなかった。
223 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 23:19:46.97 ID:8Z5FldYo
唯は、機体の胸に装備されている拡散ビーム砲を稼働させ、澪の機体を一思いに焼いた。
紬に報告を入れる。

唯「澪ちゃん、花火になっちゃった。私の勝ちだね。」

紬「そう、じゃあ帰ってらっしゃい。」

唯「和ちゃんを近くに感じるんだけど、遊んでもいい?」

紬「ダメよ。和ちゃんとはまた遊べるわ。毒ガス作戦を優先して。」

唯「分かった。」

補助ブースターを点火し、唯のプロトサイコは猛スピードで母艦に帰っていく。
224 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 23:21:09.53 ID:8Z5FldYo
純は、敵のスピートに舌打ちをした。

純「補助ブースターを使っています!ウェイブライダーでも捉えきれません!!」

和「一旦帰艦するわ!敵は毒ガス攻撃を計画している。艦でサイド1まで運んでもらいましょ!艦長にも事の次第を報告するわ!!」

反転、帰艦する。艦長に報告し、すぐにサイド1まで向かった。
サイド1宙域に入ると、三機のウェイブライダーが射出された。


第十話 脱走! おしまい

三分の一が終わったか…
225 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 23:46:14.15 ID:lYUBL7Mo
乙 まさかこんな早くに澪が・・・
226 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 23:48:03.33 ID:Q7Nh1h.o
精神崩壊してる軽音部しか生きてないなんて…

ミトメタクナーイ!
227 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/25(土) 00:51:45.37 ID:gdDemcAO
乙。軽音部完全崩壊してるなww
つーか今回は結構長いのね
228 : [sage]:2010/09/25(土) 09:44:57.76 ID:IuCi.mIo
ゴメンな、三分の二だったわ。
229 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/25(土) 12:58:20.32 ID:n/O7BGQo
支援保守
230 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 19:41:10.56 ID:IuCi.mIo
再開するか。

第十一話 プレッシャー!

この宙域は何かがおかしい、純はそう思った。
周りの雰囲気がピリピリと張り詰めているようだ。
不意に、殺気を感ずる。
機体を殺気から逃がした。そこにビームが飛んできた。
敵機は確認できない。

純「攻撃、どこから…?」

不意に、張り詰めた空気が掻き消えた、と思ったら、和の機体に四方からビームが殺到していた。
和は紙一重でそれをかわしている。
姫子も掩護しているが、機体が確認できないので虚空を撃つばかりである。

純「先輩!!」

和「私たちのことはいいから、ガス部隊を捜しなさい!!そのうち援軍も来るわ!!」

純「了解!」

先輩たちは大丈夫、そう自分に言い聞かせて純は飛び続けた。
231 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 19:41:43.55 ID:Ibc7/KA0
正気が戻ったら唯発狂するな
232 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 19:42:14.52 ID:IuCi.mIo
唯には、敵が手に取るように見えていた。
プロトサイコの腕部を射出し、迂回させて敵に近づける。
腕に取り付けられたサイコミュ制御のビーム砲で牽制の射撃をして敵を揺さぶる。
その時、敵が起こす感情の波紋を感じ取り、乗っているのが誰なのか唯にはすぐに分かった。

唯「あれは、純ちゃんだね!あずにゃんにやらせてあげよう!」

純を泳がせ、残り二機の間に牽制のビーム砲を放つ。
二機とも焦っているのが分かる。

当たり前だ。攻撃しているのは放たれたMSの腕部だけで、唯自体はかなり遠くから腕部を遠隔操作し、高みの見物を決め込んでいたのだ。

そう、相手には敵が見えないのである。
腕部も小さすぎて距離さえ適切に保っていればCGで再現しきれずモニターには表示されない。
モニター越しには、ビームだけがどこからともなく飛んでくるように見えるという訳だ。
233 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 19:44:59.36 ID:IuCi.mIo
唯は、眼を閉じて伝わってくる二人の波紋を選り分ける。
すぐに目が開かれ、口元が歪む。

唯「和ちゃん、見つけたよ。もう一人は姫ちゃんだね。」

唯はビームを和の機体に集中させる。和がそれを巧みに回避している。
姫子は混乱して辺りにビームやバルカンを連射している。
唯はそれを見て、満足そうにクスッと笑った。
もう、和しか見えていない。

唯「和ちゃん!上手、上手!…でもいつまで持つのかなあ?」

後ろのほうで、波紋がぶつかり合うのが感じられた。

唯「あずにゃんの方も、始まったね。」
234 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 19:46:14.50 ID:IuCi.mIo
純の前に、ガブスレイが二機、立ちはだかった。
一機は指示を送っているだけのようで、こちらに本気で攻撃してくるような意志はないみたいだった。
もう一機は、動きや放たれるプレッシャーからして間違いなくこの前交戦した機体だった。

純「梓…」

先に射撃したのは梓だった。
純はそれをさけて腰のビームガンで反撃する。
距離が近づく。
サーベル。
二度三度馳せ違った後、つばぜり合いが起こった。
接触回線がつながる。

純「毒ガスで人殺しなんかしようとして…一体何やっているのよ!梓!!」

梓「エゥーゴのくせに、お前は私を知っている…お前が私の記憶を持って行った敵だな!!お前を倒して、記憶を取り返すです!!」

純「意味分かんないから!!」
235 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 19:47:24.07 ID:IuCi.mIo
ゼータプラスが敵を押し返して蹴りを入れる。
変形して、ガス部隊に向かう軌道をとった。

純「付いてきてみなよ!付いてこれるものならね!!」

梓も変形してそれを追う。

梓「宇宙人め、やってやるです!」

戦闘機同士のドッグファイトのように、ウェイブライダーとMAは絡みあい、飛んだ。

純「ちょっとからかうと、いつもムキになって…そういうとこ、やっぱり梓じゃん!!」

梓の機体が近づく。
殺気。
バレル・ロールで回避すると同時に、後ろについた。
ワイバーンに乗っていた時、純の得意な軌道だった。

ウェイブライダーの操縦感覚は、ワイバーンのそれに酷似している。
純にとっては、手足のような機体だ。
236 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 19:48:14.68 ID:IuCi.mIo
純「私は食いついたら、離さないよ!」

梓はMA形態のまま逃げまわる。
MSに変形すれば戦い易いのに、それをしないのは純への対抗心からだろう。
もしかしたら、認めて欲しいのかも知れない。

梓とは、そういう人間だった。
そんな梓が、純は好きだったのだ。

純「…捕まえた!!」

純は、何度も瞬きをしながらトリガーを引いた。
視界が、涙でぼやけてくるのである。

涙のせいにしたくはなかったが、攻撃は外れていた。
237 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 19:49:04.41 ID:IuCi.mIo
斉藤は、焦って梓に司令を送っていた。
最新の可変機が、古典的な戦闘機のドッグファイトをやっていたからだ。

斉藤「おい、強化人間!!可変機構を上手く使いながら戦え!!そいつは可変MSなんだぞ!!」

梓「うるさいです!!私に指図するなです!!」

斉藤(…不安定になっている。危険だな、ここまでか…)

斉藤「強化人間、一度撤退だ!!」

梓「うるさい!!」

その時、ウェイブライダーC型のスマートガンが梓の機体をかすめた。

梓「きゃあ!!」

斉藤「マズイ、照明弾!!」

小さな太陽のような光が、戦場を照らしだした。
その隙に二機のガブスレイが撤収する。
238 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 19:50:26.56 ID:IuCi.mIo
四方から敵の攻撃を受けながら、和は不思議な感覚にとらわれていた。
敵が何をしたいのか、分かるのだ。
敵の殺気を、余裕を持って受け流す。

和「こいつはもう私一人で充分よ!!立花さんはガス部隊へ!!」

姫子「でも敵の姿さえ見えないよ!!」

和「私を信じなさい!!」

どこから来るか分からないビームをかわしながら話しかけてくる和を見て、姫子は大丈夫だ、と思って機体を変形させ、飛び出した。

和「分かるわ…あなた…唯ね!!」

不意に四方からの砲撃が止む。ビーム砲のバッテリー切れかも知れない。
初めて敵が見えた。
黒いガンダム、
殺気と共に胸がチカッと光った。
拡散ビーム砲、和はそれを無駄なく動いてかわした。
239 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 19:51:19.97 ID:IuCi.mIo
和「分かるわよ!あんたのしたいことなんか、手に取るようにね!!」

黒いガンダムの背中にしがみつき、接触回線で語りかけた。

和「昔からの、付き合いですものね、唯!!」

予想したとおり、接触回線から唯の声が聞こえる。

唯「和ちゃんを[ピーーー]よ!!そうすると憂が帰ってくる!!」

和「人を殺したって、憂は帰って来ないわよ、唯!!」

唯「帰ってくるよ!!研究所で教えてもらったんだもん!!」

和「目を覚ましなさい!!あなた達が毒ガスを注入しようとしているコロニーには、憂みたいな人がたくさんいるのよ!!」

唯「憂は一人だよ!!」

和「あなたが憂を想うように、想い合っている人たちが、あそこにはたくさんいるの!!そんな人達を、殺していいの!?」

唯「うう…」

和「あなたが憂を失った時の悲しみは、よくわかるわ…私だって悲しいもの…でもそんな悲しみを、大勢の人に味わわせようとして、あなたは満足なの!?違うわよね!!」
240 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 19:51:49.55 ID:IuCi.mIo
ああ、またやってしまった…伏せ字
241 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 19:52:31.18 ID:IuCi.mIo
唯「おおぜいのひと…かなしみ…?」

和「あなたは病気だわ!治してあげるから一緒に行きましょう!」

唯「うわあああああああああ!!」

和「ゆ…唯…?どうしたの…? 苦しいの!?」

その時和は強烈な殺気を感じた。
反射的に唯の機体から離れる。
ビームが次々に撃ち込まれる。
和がそれを回避するたびに、唯の機体から離れていってしまった。

和は、MA形態のガブスレイが爪に唯の機体をひっかけて曳航していくのを見た。

和「今はガス部隊を倒すのが先決か…。」

ウェイブライダーに変形して、加速する。

和「唯…私が絶対に助けてあげる。」
242 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 19:53:11.74 ID:IuCi.mIo
不意に目が痛くなるほどの光が発生した。
純は、それを完全に直視してしまった。

純「わっ!!まぶしっ!!」

純「目が…目がああっ!!」

不意に、姫子の声が聞こえた。
梓たちには逃げられたようだ。

姫子「何やってるのよ、ドジね。」

純「ムスカの気持ちが分かりました…って、真鍋先輩は!?」

姫子「敵は大丈夫だから、行っていいって。早くガス部隊を殲滅しましょ。目、治った?」

純「はい、なんとか…」

二機はウェイブライダーに変形して、攻撃目標へと向かった。

結局、琴吹グループが計画したサイド1への毒ガス注入計画はカキフ・ライ隊によって阻止された。
243 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 19:54:11.11 ID:IuCi.mIo
唯の機体を曳航して艦に帰ってくると、梓の状態は散々だった。

斉藤「お嬢様、強化人間が暴れだしまして…スタンガンで眠らせても起き上がると同じような始末でして…」

梓「わああああああ私の過去がああああ」

紬「薬を打ち込んで簡単な暗示をかけなさい。その後、再強化!!」

無論、唯にも同じ措置をするつもりで、すでに眠らせている唯を紬は引きずっている。

唯の部屋に入って、椅子に立てかけ、気付け薬をかがせた。

唯「う〜ん…」

紬「唯ちゃん、沢山の人を殺そうとしたこと、後悔してる?」

薬が効いているのか、ぼうっとした唯が答える。

唯「和ちゃんが、悪いことだって…私が憂を失った時と同じ気持を…たくさんの人に…」
244 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 19:55:18.29 ID:IuCi.mIo
紬「話を変えましょう。人は必ず死ぬものだっていうのは、唯ちゃん知ってるわよね。」

唯「うん…しってる…」

紬「その時、幸せな気持ちで逝くのと、そうでないの、どっちがいい?」

唯「しあわせな…ほう…」

紬「私たちがコロニーに注入しようとしたお薬は、人を幸せな気持ちで逝かせてあげるお薬なのよ。」

唯「しあわせ…」

紬「しかも、みんな一緒に逝けるのよ。誰も、さみしい思いをしないの。」

唯「…いっしょ…」

紬「唯ちゃんが寂しいのは、憂ちゃんだけが今いないからよね。あそこのガス注入が成功していたら、そんな気持ちになる人、だれもいなかったのよ。」

紬「誰も寂しくない、しあわせな、最期よ。言ってごらん。」

唯「さみしくない しあわせな さいご」
245 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 19:56:08.77 ID:IuCi.mIo
紬「これでもまだ私たち、悪いことしようとしていたと思う?」

唯「ううん、思わない。」

紬「和ちゃん、唯ちゃんに嘘を付いたのよ。いけない子なの。」

紬「嘘つき和ちゃん、言ってごらん。」

唯「嘘つき和ちゃん。」

紬「えらいわ、唯ちゃん。今お医者さんを呼ぶから、私はいいことをした、和ちゃんは嘘つきって、お医者さんが来るまで繰り返し言い続けなさい。」

唯「わたし…いいことをした…和ちゃんはうそつき…わたしいいことをした…」

紬は部屋に備え付けられている電話機を操作した。
受話器の先には医務室に常駐しているニタ研からの出向者がいる。

紬「もしもし、暗示をかけたわ。今はおとなしいから監禁して再強化をお願い。」

紬はそのまま、唯の方を見ることもなく自室に向かった。
246 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 19:57:19.59 ID:IuCi.mIo
ミーティングルームで、二人の話を聞いて姫子は驚きを隠しきれなかった。
ついこの間、一緒に食事をした元同級生と殺し合いをしたと知ったからだ。

しかも澪は唯に殺されたのだという。
泣きながら手を振る二人の姿がまじまじと思い出される。
あの後、いやあの前も、一体彼女らに何があったというのだろうか?

姫子「ごめん、ちょっとにわかには信じられないわ。」

和「そうでしょうね、私も今頭が少し混乱しているわ。」

純「実は…ダカールで私を殺しに来たのも憂だったんです…。私を見たら驚いて、真鍋先輩がドアをノックしたとき、逃げちゃったんですけど…」

和「ハァ…一体どうなっているのかしら…?」

姫子「とにかく、考えていても始まらない。私たちはティターンズを倒さなきゃいけないのよ!」

和「私は…次に唯にあったら説得してみたいと思ってるの。この前の戦闘でも、邪魔が入らなければなんとか連れ帰ることができたかも知れないのよ!」

純「私も、梓を何とかしたいです!喋っていることはおかしかったけど、あれは間違いなく梓だった…あんな戦い方をする殺人マシンでも、ちょっとは人間の部分があるんです!そこに入り込めればなんとかなると思いませんか?」
247 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 19:58:12.03 ID:IuCi.mIo
姫子「…分かったわ。私も協力する。だけど、次も会えるとは限らないし、顔が見えないから相手が彼女たちでも、区別がつかないかも知れないわよ。」

和「大丈夫よ、また会える気がするの。それに動きを見ればあの子だってすぐ分かる。」

純「私も同じ意見です。梓のことも分かります。」

姫子「…それならいいけど…」

姫子は、二人が無理をしているようで少し心配になった。
動きを見れば分かる、などというのは到底信じられる話ではないからだ。
248 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 20:01:11.00 ID:IuCi.mIo
第十一話 プレッシャー!  おしまい

続きは他のスレを巡回してから。

今脳内設定資料書いてんだけど、需要あるかな…?
249 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 20:13:44.83 ID:MjkRuXUo
面白いだけに、ティターンズ側のけいおん部のキャラが少なくなっちゃったのが寂しいな
話の焦点は絞られてるのでメインストリームに関われるのかが・・・
前作と同じで本編改変はしないのかな
250 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 22:12:06.58 ID:IuCi.mIo
>>249
俺頭悪いから本編改変したら全体の戦局がどういう流れになっちまうのか想像できん。
よって改変はしない方向で。

けいおんサイドをめちゃくちゃにしたことについてはかなり反省している。

再開するよ。
251 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 22:15:13.27 ID:IuCi.mIo
第十二話 孤独!

いきなり青ざめた艦長が主だったメンバーをブリーフィングルームに招集した。

艦長「大変だ!前々から少しずつ移動していたグリプス2の進路がわかった!!目標はおそらく、グラナダだ!!毒ガス攻撃は、その移動から目をそらせるための時間稼ぎだったらしい!!」

和純姫子「な、なんだってー!!」

和「すぐに行って防がないと!!」

純「こんな事してる場合ですか!!」

姫子「何か策はないんですか?」

艦長「アーガマのクワトロ大尉がアクシズにグリプス2への狙撃を頼んでみるらしいが、前回のこともあって、私は奴らを信用していないんだよなあ…」

和「そういえばクワトロ大尉って、シャアだったんですよね。」

純「え、そうなの?なんでジオンのシャアが連邦軍の一派であるエゥーゴに居るんですか?」

姫子「…ていうかあんた知らなかったの?もしかしてダカール演説聞いてないでしょ。」

純「あの時は作戦中だったじゃないですか。」

和「録画したものが資料室のパソコンに入っているわよ。」
252 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 22:16:03.69 ID:IuCi.mIo
艦長「と…とにかくだ、また交渉の失敗もありうる!だから我々も急行して、これの阻止に当たる!いいな!!」

和純姫子「了解!!」

作戦ポイントに集まると、味方の艦艇が多数集結していた。
ほとんどがサラミス改級だったが、アイリッシュ級も見える。
MSも多数集結していた。

艦長「もうすぐ会敵する!アクシズ艦隊も居るが、こいつらには絶対発砲するなよ!!交渉は取りあえず成功に終わったらしいから、一応アクシズは味方という扱いだ!」

和「でもギリギリまでコロニーレーザーを攻撃してくれるか
わからないのって、やっぱり不安じゃないですか?」

艦長「耐えるしかないな。我々はあくまでティターンズを引きつけるだけだ。ここで戦力を無駄に消耗するわけにはいかん!アクシズ艦隊を信じよう!!」

和「了解!いいわね、みんな!!」

純姫子「了解!」

戦闘が開始された。
三機のゼータプラスは戦場の光のなかに飛び込んでいった。
253 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 22:17:15.71 ID:IuCi.mIo
紬は、ガブスレイのコックピット内で考え事をしていた。

紬(一人になっちゃったわね…とうとう…。)

再強化がまだ終わらず、この戦いに唯と梓は参加していない。
父の親衛隊である一個中隊のうち、半分の二個小隊を借りている。
かなりの手練だが、紬はどうにも不安を押えきれずにいた。
不安の原因は、考えないようにしている。

紬「みんな、聞いて!」

親衛隊員の注目が集まるのが、紬には痛いほど感じられた。
温かみのない、命令と服従のやり取りのみがそこにはある。

一瞬、温かかった高校時代のティータイムが思い出された。
考え続けると、自分を保てなくなる。
そう思って、声を上げてその妄想をかき消した。

紬「ここでエゥーゴを排除し、グラナダへコロニーレーザーを打ち込めれば戦いに一段落がつくわ!みんなは、今その重要な局面に立っているの!」

無言の、冷たい注目が痛い。
それに負けないよう、がんばれ、と視線を送ってくれる律を想像した。
254 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 22:17:49.46 ID:IuCi.mIo
紬「みんなの命を、私に預けて!その力で、作戦を成功に導くわよ!」

自分が言っていることをちゃんと聞いてもらえているだろうか、と不安になる。
ムギ、がんばれ
殺したはずの、心を壊したはずのみんなが応援してくれていた。
紬は我ながら勝手な妄想をしているな、と思った。

紬「1、2小隊!前進!!」

6機のバーザムが、紬の号令で前進を開始した。
言うことは、聞いてくれる。しかしそれだけだ、肝心な、何かが足りない。

紬の心はどこまでも孤独だった。
255 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 22:18:54.46 ID:IuCi.mIo
会敵する。
紬がそう思った瞬間、青白いビーム光が一機のバーザムを撃ちぬいていた。

紬「散開!」

紬が言う前に、五機の配下は紬を置いて散っていた。
紬は軽く舌打ちをして回避機動を取り、敵を見据えた。
三機。グレーのガンダムもどきだった。

紬「うちの強化人間を惑わす敵ね…あの三機に集中攻撃!!」

五機が三機に殺到する。
いや、驚くべきことに手練の五機を相手にしているのは二機だ。一機は紬の方に向かってくる。

紬「うちの親衛隊もなめられたものね…高性能機だからって、そう簡単には行かないわ!」

紬が向かってきた一機にビームを連射する。
ガンダムもどきはそれを次々とかわし、まるで挨拶でもするように一発のビームを発射した。

衝撃と共に、ガブスレイのライフルが吹き飛んでいた。
紬は目を疑った。
256 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 22:20:05.25 ID:IuCi.mIo
その時、味方の悲鳴がレシーバーから溢れてきた。

「お嬢様、もう駄目です!ぐわっ!!」

「こいつら、エースだ!」

「クソ、後ろに目がついてやがる!当たらない!」

「小隊長がやられた!」

「撤退だ!撤退許可を…!」

「火が…火が…!」

会敵してから1分半。
6機いたバーザムは2機に減らされていた。
敵は、無傷のままだ。

紬「何よ…これは…?…冗談でしょ…!?」

地獄のような光景を見て、紬は反射的に変形レバーを操作していた。
そのまま反転し、加速する。
自分の安全を確保してから、命令した。

紬「一時撤退よ!!」

ガブスレイの足にバーザムは付いてこられない。
二機の配下がどうなったかは、わからなかった。
257 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 22:20:55.68 ID:IuCi.mIo
とにかく、恐怖に体が支配されていた。
操縦桿を握る手が、がくがくと震えている。

気がつくと、唯と梓の名前を呼んでいた。

紬「唯ちゃん…梓ちゃん…助けて…」

紬の目に、涙が溢れた。
みんなが側にいる、そう考えないと寂しさで気が狂いそうになる。
命令も、服従もない温かい関係。
それが必要だと、分かっていた。…分かっていたのに…。

紬「憂ちゃん…あんなことさせて…ごめんなさい…ごめんなさい…」

紬「澪ちゃん…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」

紬「りっちゃん…ごめんなさい…ごめんなさい…私…澪ちゃんを…」

紬「みんな、ごめんなさい…独りになって、ようやく気がついたの…私…みんなに甘えてた…」

紬「ごめんなさい…ごめんなさい…私を…許して…」

敵から逃げているのか、罪悪感から逃げているのか、もう紬にはわからなくなっていた。

艦が、見えてくる。

紬「唯ちゃんと梓ちゃんに…会いたい! 会って…謝りたい!!」

紬の顔は、涙と鼻水でグシャグシャになっていた。

それは、紬がようやく取り戻せた人間の顔であった。
258 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 22:21:46.10 ID:IuCi.mIo
敵が、態勢を立て直そうと引いていく。

艦長「手はず通りだ!突っ込め!!」

和「了解!行くわよ!」

純姫子「了解!」

ティターンズ艦隊を追撃すると、アクシズ艦隊がエゥーゴの後方についた。
アクシズ艦隊とグリプス2に挟まれる格好である。
和は、ヒヤリとした。
普通なら、やられる、と思うような位置取りだったからである。
快いはずはない。

アクシズ艦隊がビームを斉射する。

和「…!」

純「…!」

姫子「…!」

ビームは、正確にグリプス2へ殺到していた。
爆発が起こる。

艦長「よし、これでコロニーレーザーはグラナダを狙うことは出来なくなったな!作戦成功だ!!帰って来い!!」

作戦としては成功したが、どうも腑に落ちない。
全員が、そう思っていた。
259 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 22:22:55.04 ID:IuCi.mIo
紬は、帰るなり唯の部屋に直行した。
スタンガンのスイッチは、捨てた。

紬「唯ちゃん!!」

唯を、抱きしめる。
薬の臭いが鼻をついた。

紬「ごめんなさい…ごめんなさい…私…」

唯はどうすればいいのかわからないような表情で紬を見据えている。
紬を主と認めるように刷り込みが為されているので、紬に対して手を上げることはない。

紬「ごめんなさい…私…やっぱり唯ちゃん達がいないとダメなの…許して欲しいなんて言わない…だけどお願い…ずっと私の側にいて…」

唯は、抑揚なく答えた。

唯「嘘つき和ちゃんを倒して、憂が帰ってきたら、みんなでずっとムギちゃんと一緒だよ…」

紬「そうね、そうよね。みんなで平和を勝ち取りましょう。そしたら、みんなで一緒に暮らすの。またお茶して、演奏して…」

紬「梓ちゃんの記憶も戻してあげて…今までそうじゃなかった分、みんなで笑いながら楽しく、ずうっと仲良く暮らすの、ね、いいでしょ!」
260 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 22:24:07.45 ID:IuCi.mIo
それは、紬が考えた精一杯の償いの計画であった。
その時、部屋の隅で仮眠をしながらそれを聞いていたニタ研からの出向者がだるそうに起き上がり、口を挟む。

研究者「それはちょっと難しいかな。」

紬「え…どういう事ですか?」

研究者「それ、そんなに長く持ちませんよ。」

紬は言葉を失った。
どこまでも、落ちてゆくような絶望感を感じながら、生気のない目をした唯を見つめる。
研究者が続ける。

研究者「強化するだけさせといて、勝手だよな。大体ね、こんだけ薬漬けにされた人間がそんなに長生き出来るはずないでしょ。」

紬「で…でも十年くらいは…」

研究者「甘いですよ、お嬢様。それは持ってあと一年ってとこです。早くてあと三ヶ月くらいで限界が見えるかな。」

研究者「激しい戦闘で精神に負担がかかりすぎるとそのままぽっくり逝く事も考えられますしね。」

紬は、口をパクパクさせていた。

研究者「じっくり時間をかけて強化すればそれなりには持ちますがね、それは即席で強化した個体です。しかも再強化までしちゃったんだから相当な負担がかかってますよ。」
261 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 22:25:17.19 ID:IuCi.mIo
研究者「始めから、使い捨ての兵器だったんですよ、それは。隣の部屋の、中野とかいうのも似たようなもんです。」

紬「唯ちゃん…ひっく…ひぐっ…」

紬が泣きながら唯に縋りつく。
さらに研究者が続ける。
紬の絶望する様子が面白いようだ。

研究者「今。つらそうな顔してるでしょ。それは痛みに耐えてるんですよ。もう神経がボロボロなんでね。体中がジクジク痛んでるんです。でも痛み止めは打ちません。感覚が鈍るんですよ、そんなもん打つと。」

紬は、耐え切れずに声を上げて泣き崩れた。

紬「うわあああああああああ…ごめんなさい…ごめんなさあああい…ゆいちゃん…あずさちゃああああああん…わああああああああああああああ…」
262 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 22:26:44.04 ID:IuCi.mIo
研究者は、追い打ちを掛けるように続けた。

研究者「気休めを言っておきますとね、それは医学の研究にとても役に立つ資料になります。いいことなんですよ。」

研究者「さ、そろそろまたそれの寿命を縮める仕事に入るかな…お嬢様は邪魔なんで出ていってください。」

紬「嫌! 唯ちゃんをこれ以上苦しめないで!! 再強化はもうしなくていいわ!!」

研究者の言葉を無視して唯にしがみついていると、人を呼ばれて引き剥がされた。

紬は、ふらふらと唯の部屋を出た。
梓の部屋にはすでに人が配置されていて近付くことすら出来なかった。

部屋に帰ると、後悔が波のように押し寄せてきた。
ベッドに潜り込むと、なんとか現状と、今の気持ちに折り合いをつけようと、必死にもがき始めた。
しかし、考えても考えても、自分を納得させる事などできなかった。
263 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 22:27:55.67 ID:IuCi.mIo
第十二話 孤独! おしまい

なんか短かったな。反省。

明後日で終わる。
264 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 22:39:26.49 ID:mtPWtwso
乙です
265 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 18:41:16.92 ID:KpYFPDso
サザエ見ながら投下

第十三話 衝突!

局面が、大きく動き出したらしい。
艦長は、ここ数日の間に起こった出来事を早口でまくし立てた。

艦長「アクシズのハマーン・カーンがジャミトフと交渉すると見せかけて暗殺を企んだようだ。失敗に終わったがな。そして、この前の交渉時にこちらが呑んだ条件に対する礼として、アクシズをゼダンの門にぶつけてくれるらしい。これが成功すればティターンズは最大の拠点をなくすことになるぞ!!」

純「その人、大胆なことするなあ…それより、交渉時にこちらが呑んだ条件ってなんですか?」

和「ハァ…ザビ家再興を認めるとか言っちゃったんでしょうね。」

純「それはマズイんじゃないですか?」

姫子「そうね。上は何を考えてるんだろ?」

和「その場しのぎが出来ればいいんでしょうね。」

純「しかしすごいなあ…自分たちの要塞を、敵の要塞にぶつけちゃうなんて、そんな無茶な作戦があるんですね!」

艦長「とにかく、我々はアクシズがゼダンの門に衝突するまで、ティターンズ艦隊をゼダンの門宙域に釘付けにする作戦を行う!」
266 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 18:41:46.69 ID:KpYFPDso
純「でもお礼でそんな事までしてくれるなんて、アクシズはもうこっちの味方ですね!」

和「ハァ…わざわざお礼なんて言葉を使ったって事は、一応これで貸し借りなしだから、次会うときは知りませんよって事なんじゃないの?」

純「そ…そうなんですか…怖いですね…。」

艦長「そう考えるのが妥当だな。(…そ…そういう考え方も出来るな…さすが俺の和だ。)」

姫子「大体ジオンなんかと手を組みたくないわよ。」

和「そうよね。この前も背後を取られたとき、すごく嫌な感じがしたわ。」

艦長「アクシズとの関係については、我々がどうこう出来る問題ではない。ここで考えるのは止そう。今日はこれで解散だ。」
267 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 18:48:42.87 ID:KpYFPDso
全員が立ち上がり、部屋から出て行く。
数十秒後には和と艦長だけが残った。
切り出したのは艦長だった。

艦長「スマンな、クリスマスも、君の誕生日も過ぎてしまった…」

和「別にいいわ…このところ、作戦が立て込んで忙しかったから…//////」

艦長「…なあ、真鍋少尉…」

和「和でいいわよ…//////」

艦長「え?」

和「二人っきりの時は、和って呼んで。/////////」

艦長「あ…ああ、和…//////」

和「何?//////」

艦長「プレゼントさ…実は…あるんだ…」

艦長は、青い、小さな箱を取り出して、和に渡した。

艦長「開けてみてくれ。」
268 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 18:49:16.71 ID:KpYFPDso
プラチナの、ペアリングが入っている。

和「ゆ…指輪…?//////」

艦長「いつも…君が戦場にでてったとき…不安でな…。こいつを、私が、こっちのを、君が持っていれば、なんて言うか…心がつながっているような気がして、少しは気が静まるかと思ったんだ。」

和「…はい…//////」

艦長「私の精神安定剤みたいな感じでスマンのだが、受け取ってもらえるかな?」

和「/////////」コクリ

艦長「よかった!じゃあもうひとつの方のプレゼントは…」

和「な…何をくれるの?//////」

艦長「私たちのベイビーとか、どうかな?」
269 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 18:50:04.39 ID:KpYFPDso
久しぶりの衝撃が、艦長の頬に走った。

和「あなた、いやらしいことしたいだけでしょ!!/////////」

艦長「い…いや、私は真剣だよ!」

和「最低!出て行って!!/////////」

艦長「ご…ごめんなさーい!!」

艦長は、逃げるようにブリーフィングルームから姿を消した。

和「もう…/// 恥ずかしいったら無いわよ…//////」

和「いきなりあんなこと言って…私にも心の準備ってものが…//////」

和が真っ赤に染めた顔でブツブツ言いながらブリーフィングルームを出ると、扉の両側の壁にニヤニヤした純と姫子が張り付いていた。

姫子「私たちの…」ニヤニヤ

純「ベイビー!!」キリッ

こんどは平手打ちの音が二回、聞こえた。
270 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 18:57:30.64 ID:KpYFPDso
まだ、気持ちの整理がついていない。
しかし敵は待ってはくれないのだ。

琴吹グループにティターンズからの支援要請が来た。
それに答えて、父のバーザム部隊が慌しく準備をしている。
軍籍を持っている紬達は、有無をいわさず出撃である。

紬「唯ちゃん、大丈夫?」

唯「大丈夫だよ、それより早く嘘つき和ちゃんを退治しないとね。」

紬「無理しないでね。梓ちゃんは大丈夫?」

梓「やってやるです!私の過去と両親を連れていったガンダムもどきを、徹底的に!!」

紬「梓ちゃんも無理しないで、帰ってきたら美味しいお茶を頂きましょう。」
271 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 18:58:08.68 ID:KpYFPDso
紬「作戦を説明するわ。アクシズがゼダンの門にぶつかるまであと5時間。我々は30分後に本艦を出撃、ゼダンの門の艦隊が要塞を脱出するのを掩護するわ。」

唯梓「了解!」

紬「梓ちゃんは私と斉藤とアタッカーよ。唯ちゃんはサイコミュで支援をお願い。」

唯梓「了解!」

紬「それじゃあ出撃までコックピットで待機ね。」

各々が、それぞれの機体に流れていく。
唯と梓が居るだけで、全く不安を感じない。
やはり自分には、彼女たちが必要なのだ。
しかしそれだけ、彼女たちに残された時間が少ないという事実が、紬の心に深く突き刺さるのだった。

紬「なるべく早く、戦いを終わらせなきゃ、私たちの時間が…」

紬は、操縦桿を強く握りしめた。
272 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 18:58:50.60 ID:KpYFPDso
カキフ・ライは味方のサラミス改数隻と前進中だった。
艦長はもう勝った気でいるようだ。

艦長「ゼダンの門が落ちたらティターンズももう終わりだな!ハハハ!」

副長「真鍋少尉と仲良くなれて、地獄に堕ちるはずの人間が天にも昇る勢いですな。そのまま昇天なさらないように。」

艦長「こやつめハハハ!」

副長「ハハハ」

和「艦長、ゼータプラス隊、発進準備完了です!」

艦長「うむ、発進を許可する!ちゃんと帰ってくるんだぞ!」

和「はいはい…スワロー1、出ます!」

姫子「スワロー2、行きます!」

純「スワロー3、行くよっ!」
273 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 18:59:49.84 ID:KpYFPDso
三機が射出されてまもなく、戦端が開かれた。

和「始まったわ。でもあまり突っ込まないようにね。」

純「アクシズがあんなに大きい…あれがぶつかったらどうなるんだろう…?」

姫子「想像も出来ないわね、とにかくぶつかりそうになったら逃げるのよね。」

和「目安の時間が各機のサブモニターに表示されているはずよ。」

純「これかな?」

和「余裕を持った時計だけどそれが三分前になったら艦に合流しなさい。」

純姫子「了解!」

三機のウェイブライダーC型は、光の瞬く戦闘宙域に飲み込まれていった。
274 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 19:01:15.71 ID:KpYFPDso
虫を[ピーーー]ように次々とネモを破壊していた梓が、紬に通信を送ってきた。

梓「奴が、来ますです!」

紬「例のガンダムもどきね!」

梓「行ってもいいですか?」

紬「梓ちゃん、みんなで協力して倒すのよ!出来る?」

梓「やってやるです!!」

紬「行きましょう!!斉藤もお願い!」

斉藤「かしこまりました!」

紬「唯ちゃん、掩護してね!」

唯「分かったよ!!」
275 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 19:01:57.38 ID:KpYFPDso
ああ…またやったよ
276 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 19:03:16.83 ID:KpYFPDso
頭を貫くような感覚と共に、梓のイメージが純の脳裏に浮かんだ。

純「梓が来ます!!」

和「私も感じたわ!唯も居る!!」

姫子「ちょっと、感じるって何よ!?」

純「来る!!」

和「散開!!」

周りの敵を撤退させ、戦闘が一段落した状況である。
姫子は何故、と思ったが、それでも散開の号令には体が反応する。

三機が散った瞬間、ビームが殺到した。
姫子は、和と純が味方でよかった、と感じた。

純「梓はあれです!!できる事なら武装解除して連れて帰ります!!」

一番動きのいい機体である。
姫子は正気か?と思った。

純が、突っ込む。
姫子が掩護しようとしたが、二機の戦い方が速すぎて上手く狙えない。
射撃をしようとすればその一歩先に行ってしまうのだ。

仕方なく、他の二機のガブスレイの相手をした。
これくらいの腕なら、二機を相手にしても手玉に取れる。
277 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 19:04:02.49 ID:KpYFPDso
紬は、舌打ちをした。
ガンダムもどきが一機。紬と斉藤の行く手を阻んでいる。
かなりの腕である。

紬「唯ちゃん!サイコミュでこいつを何とかして!」

唯「了解!」

有線サイコミュのビームがガンダムもどきの左腕を飛ばした。

次の一射でカタが付く、と紬が思った瞬間、別のガンダムもどきがあさっての方向にビームを撃った。
何かがそれに撃ちぬかれ、小さな爆発が起こっていた。

紬がまさか、と思った瞬間、唯から通信が入った。

唯「プロトサイコの片腕が無くなっちゃった…嘘つき和ちゃんが撃ちぬいたんだよ!」

紬は自分の顔が青ざめていくのを感じた。
しかしここで諦める訳には行かない。

冷静になって、周りを見る。
先程まで敵がいなかった梓のガブスレイが、一機のガンダムもどきを相手に苦戦していた。

紬は、また血の気が引いていくのを、感じていた。
278 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 19:05:11.42 ID:KpYFPDso
純は、梓の武器だけを狙って戦っていた。
それは普通に撃墜するより遥かに難しい。
純は、そうまでしても、梓を殺したくなかったのだ。

憂は、私を殺せなかった。
だから私も、梓を殺さない。
純が己に課した、制約だった。

純「あずさああああ!!」

ガブスレイの肩を斬りつける。これで残りはもう一方の肩にあるビーム砲と、サーベルを操る腕だけだ。ゼータプラスのスマートガンに似たフェダーインライフルはすでに切り落としている。

つばぜり合いが起こると、機体が触れあい、接触回線が開いた。

梓「いいかげんにしろ!ちまちま武装ばかり狙って!!」

純「私は、梓を殺したくない!!」

梓「そっちがその気なら!!」

梓は脚部をクロー状に変形させ、サーベルを持つゼータプラスの左手を握りつぶした。
そのまま、もう片方の足でゼータプラスを蹴り、距離を取る。

敵を見据えると、右手を塞いでいたスマートガンを上方に向けて格納し、ビームサーベルに持ち替えていた。

梓「どこまでも…バカにして…」

梓はギリっ、と歯ぎしりをした。
279 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 19:06:06.72 ID:KpYFPDso
唯のビームを撃ち落とすと、攻撃が半分になった。
ビーム砲は二機、予備は無いらしい。
和は唯の攻撃に気を配りながら、姫子を掩護していた。

和「大丈夫?」

姫子「何とか…」

二機のガブスレイの圧力が先程より強くなっている、唯の攻撃もあって、純の掩護は出来ない。

和「あいつらを落とす!逃がしたら、もっと強くなって戻ってくるわ!!」

姫子「了解!!」

ガブスレイに攻撃を集中しようとした瞬間、二機のゼータプラスは唯の機体から放たれた拡散ビームの雨の中にいた。

和「しまった!!」

姫子「わっ!!」

姫子のゼータプラスの、右足が吹き飛んだ。
その時、警報とともに、ディスプレイの時計が赤文字になった。
280 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 19:07:24.47 ID:KpYFPDso
和「時間切れよ、撤退!!」

二機はダミーバルーンを射出しながら後退した。
和のウェイブライダーに、姫子の損傷した機体がつかまっている。
程なくして、純の機体も合流した。

全速で宙域を脱出している艦に合流する。
艦に収納してもらっている暇は無い。
そのまま三機は艦につかまった。

アクシズが、ゼダンの門に衝突する。
ゼダンの門が、ゆっくりと二つにわかれた。
もともと、二つの小惑星を繋ぎ合わせていたのだという。
それが、また元に戻ったのだ。
281 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 19:07:52.06 ID:KpYFPDso
純「うわあ…」

無数の爆発光が確認できる。敵艦だ。
純には何故敵艦が沈んでいるのかわからなかったが、すぐにその理由を知ることになる。

純「わ!アクシズとゼダンの門の破片が飛んでくる!!」

和「任せて!!」

大きな破片だったが、和がスマートガンで破壊した。
次々と同じような破片が殺到する。

艦長「対空レーザー砲、メガ粒子砲、要塞の破片を撃ち落せ!!速度、落とすなよ!!」

隣のサラミス改が隕石にぶつかって沈んだ。
しかし、どうすることも出来ない。
艦長の必死の号令と、それに答える艦内の慌ただしい雰囲気だけが、いつ終わるとも知れず、つづいていた。

数十分後、何とかカキフ・ライは破片の飛んでくる宙域を離脱した。
282 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 19:09:00.48 ID:KpYFPDso
第十三話 衝突! おしまい

続きは後ほど
283 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 21:02:02.38 ID:KpYFPDso
こっそり再開

第十四話 羽化!

紬は、帰ってくるなり唯と梓を自室に呼んでいた。

紬「二人共、お疲れ様。」

テーブルには、チューブに入ったお茶と、入れ物に入ったクッキーが貼りつけてある。
唯と梓は、どうしていいかわからないといったふうに、それを眺めている。

紬「さ、頂きましょ。美味しいわよ。」

紬がお茶の入ったチューブを口にすると、唯と梓もそれに倣う。
二人の顔が、少しだけほころんだ。
紬はそれを見て、うれしくなって、聞いた。

紬「唯ちゃん、梓ちゃん、美味しい?私が一生懸命心を込めていれたのよ!」

唯が、頷いた。
284 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 21:02:41.75 ID:KpYFPDso
梓は、頭を抱えている。

過去の記憶を消され、それを利用して強化された梓は、過去のことを思い出そうとすると頭痛による拒否反応が起こるようになっている。
紬はあわてて、梓に言った。

紬「梓ちゃん、昔のことは思い出さなくていいのよ。これからのことを、考えましょう。」

梓「これからの…事ですか?」

紬「そうよ、これから、思い出を作るの。このティータイムが、梓ちゃんの思い出になるのよ。」

紬「これから、毎日お茶を飲んで、おいしいお菓子を食べて、お喋りするの。楽しいわよ。」

梓「…」

紬「それで、戦争がおわったら、みんなでもっと楽しいことをするのよ。」

梓「もっと、楽しいこと…?」

唯「もっと…楽しいこと?何?」

紬「海に行って泳いだり、山に行ったり…それで、また、みんなで音楽をやりましょう…また…みんなで…」
285 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 21:03:14.87 ID:KpYFPDso
梓「ムギ先輩…泣いてる…」

唯「ムギちゃん…どうしたの?」

そう言われたとき、紬は初めて自分が涙を流していることに気がついた。

紬「違うのよ…これは違うの…ちょっと熱いから、汗をかいてるのよ…」

梓「エゥーゴが悪いんですね!!奴らが空を落とすから、ムギ先輩が泣くんだ!!」

唯「嘘つき和ちゃんがムギちゃんを泣かせた!!許さない!!」

紬「違うの…違うのよ…二人共、落ち着いて。」

その時、紬の父が部屋に入って来た。
286 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 21:03:48.29 ID:KpYFPDso
紬「あ…お父様…」

紬父「お前、一体何をやっているんだ?」

紬「あの…みんなの労をねぎらって…お茶を…」

紬父「強化人間にそんな事は必要ない。」

紬「でも…」

紬父は、もう紬のことなど相手にしていない。

紬父「おい、強化人間ども、それぞれの部屋に帰れ。」

唯梓「了解。」

二人が操られているように部屋を出て行く。

紬「あ…二人共…待って…」

紬父「お前、変な感情に惑わされているらしいな。この前も再強化の邪魔をしたとか…。」

紬「そ…そんな事は…」

紬父「作戦以外で強化人間に近付くことを禁ずる!」

それだけ言って、紬父は出て行った。
紬の視界に映る冷めたお茶と食べかけのお菓子が、涙でぼやけた。
287 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 21:04:22.23 ID:KpYFPDso
状況は、めまぐるしく動いている。
毎日ブリーフィングルームに呼び出され、そのたびに違うことを言われ、純は飽和気味だった。

艦長「ジャミトフが暗殺された。ハマーンがやったらしい。新しくティターンズの実権を握ったのは木星帰りのパプテマス・シロッコだ。奴がアクシズへの報復を叫んでティターンズとアクシズが潰し合いをやってくれた。」

純「この間、エゥーゴのメラニーさんがアクシズと接触したんですよね。その関係ですか?」

艦長「分からんな。そのゴタゴタで、グリプス2をアクシズが完全に掌握しちまった。それをこっちが奪おうって作戦がある。」

和「威力は超大ですが、防衛に戦力を大量に割かれる、諸刃の剣のような兵器ですね。奪えたとしても、その後が心配です。」

艦長「しかしこいつを使えれば、戦いに決着がつく。後の事は、上が考えることだ。」

和「分かりました、従います。」
288 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 21:05:03.68 ID:KpYFPDso
姫子「どんな作戦になるんですか?」

艦長「グリプス2を我が艦隊で渦のように取り囲み、傷をつけんように奪取する。名づけてメールシュトローム作戦だ!!」

純「名前だけはカッコいいですね。」

艦長「とにかく準備をしておけ、今度の敵はアクシズだ。敵の主力MSであるガザ・タイプのデータもあるから、シミュレーターで癖を掴んでおくように。」

和純姫子「了解!」
289 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 21:05:41.79 ID:KpYFPDso
シミュレーターをやりに、MSデッキへ向かう。
純は、まだ頭の整理がついていなかった。

純「なんか三つ巴の戦いって分かり辛いです。」

姫子「それでブリーフィング中に難しい顔してたんだ。」

純「よく分からないのって、振り回されているみたいで嫌ですね。」

姫子「あたしの考えでは、真の敵はアクシズだと思うよ。前の戦争で撃ち漏らした敵なんだし。」

純「そうですね…」

姫子「でも連邦軍内部で内輪揉めをしている隙を狙ってアクシズが出てきちゃったってことじゃないかしら。だから取りあえずティターンズという目の上のこぶを取り除いてからアクシズを叩きたいってのが連邦軍の考えだと思うな。」

純「先輩、頭いいですね。」

姫子「まあ、あたし個人の考えだけどね。でもあたしはあなたの方がすごいと思うけど。」
290 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 21:06:12.20 ID:KpYFPDso
純「私ですか?」

姫子「この前の戦闘、あなたが速すぎて掩護しきれなかったし。ホント成長したわよね。」

純「そう言われると嬉しいです。」

姫子「まあ、あなたはそうやって自分の出来ることをしっかりやってればいいと思うよ。難しいことはあたしと真鍋さんで考えてあげるわ。」

純「ありがとうございます。おかげですっきりしました。」

姫子「まあ、たまには先輩らしいこともしないとね。」

言い終わると、二人はほぼ同時にゼータプラスのコックピットに滑り込んだ。
シミュレーターを起動する純の目に、もう逡巡はなかった。
291 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 21:06:45.80 ID:KpYFPDso
紬は湧き上がる怒りを抑えこみ、父の前に立っていた。

紬父「ジャミトフがやられて、バスクが死に、新たにティターンズの実権を得たのはパプテマス・シロッコとか言う若造だった。」

紬「はい…」

紬にとって、そんな事はどうでも良かった。
取りあえず返事をしているだけだ。
そんな事はお構いなしに父が続ける。

紬父「エゥーゴがアクシズからグリプス2を奪う作戦を実行している。取りあえず我が方はこれを静観しようと思う。シロッコが何を考えているのかも分析したいしな。」

紬「分かりました。」

紬は、父の部屋を出ると話の内容をすぐに忘れた。
自室に入ると、すぐにベッドにうずくまった。

お茶会を父に発見されて以来、唯や梓と会うことが出来なくなっていた。
292 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 21:07:39.32 ID:KpYFPDso
それでも一度だけ、会いに行ったことがある。
二人に会わせて欲しい、と涙ながらに訴えたが、頑として受け入れられなかった。

無理矢理部屋に入ろうとした時、スタンガンが体に押し付けられ、自室に連れ戻されたのだ。
体を走り抜ける電流に体の自由が奪われたとき、紬はこの道具で二人を制御していた自分を心底嫌悪したものだった。
293 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 21:08:12.16 ID:KpYFPDso
取り留めの無い思考がだらだらと続く。
心の一部が、崩れていく。
二人に会えないことで、紬の心は急速に壊れていった。

崩れたからと言って、心がなくなるわけではない。
崩れた薄皮のその下に、黒々とした新しい心が現れるのだ。
羽化のようなものだ、と紬は思った。
羽化が終われば、新しい自分が生まれるのだろう。

もう、何もする気が起きない。
シャワーを浴びることでさえ、億劫なのだ。
羽化が始まっているとは言え、自分はまだ蛹の姿をしているのだから、動きたくないのは当たり前だ、と思った。

自分の心がまた、音を立てて崩れたような気がした。
そのたびに、口元が緩んでフフッと笑みが漏れる。

紬「今、この瞬間にも死んでいる人がいるのよね…」

そう言うと、突然可笑しくなってきて、声を上げて笑ってしまう。

紬「私は、みんながいてくれるから、大丈夫…」

何の脈絡もない独り言をつぶやき、また笑った。
自分でもおかしいと思うが、そんなおかしな自分が、紬にとって心地良かった。

もっと、おかしくなろうと思った。

この日、紬のベッドから笑い声が止むことはなかった。
294 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 21:08:44.33 ID:KpYFPDso
ガザの練度は、低かった。
和たちの敵ではない。

和「徐々に包囲が狭まっていくわ。戦線を維持!!」

グリプス2の宙域にあるアクシズ艦艇は少ない。
ゼダンの門にアクシズが衝突したさい、艦艇が急いでバラバラにアクシズから脱出したため、まだ集結しきれていないのだ。

艦長「メガ粒子砲、左舷のムサイに火線を集中しろ!!」

砲撃を受けた敵艦が沈む。
別の部隊がマイクロウェーブの受信パネルを破壊し、電気系統を沈黙させた、という情報が入ってきた。

和たちの仕事には直接関係はないが、作戦が予定通り進行している、という目安になる。
295 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 21:09:12.31 ID:KpYFPDso
艦長「しかしこんな簡単にグリプス2を放棄するのか?アクシズは。」

艦長は、敵の抵抗が弱すぎることを訝しがった。

艦長「ジオンってのはこんなに練度が低いはずではないんだがな…。」

和達が敵艦に纏わり付いている。
敵艦からは火線がハリネズミのように出ているが、それがゼータプラスをかすめることは永久に無いような気がする。
どう見てもうろたえ弾だ。素人の戦いである。

その時宙域のどこかでは、敵の旗艦から発艦した白いMSが味方のゼータガンダムと絡み合っていた。
和達はそちらの方向にざわざわとしたものを感じた。
296 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 21:09:57.34 ID:KpYFPDso
和は、唯の声が聞こえた気がした。

和「何?…唯なの?」

純は、光を感じた。

純「あっちに…何が…?」

姫子は、得も言われぬ不安を感じた。

姫子「なんだろう…これ…?」

艦長には、故郷の両親がそろそろ嫁でも貰ってくれ、と懇願している声が聞こえた。

艦長「何だ…?幻聴か…?…って余計なお世話だ!!」

我に帰ったとき、敵艦隊は撤退を始めていた。

艦長「終わったか…しかし、今のは一体なんだったんだ…?」

確かに、おかしな感覚が宙域を包んで、皆が一瞬止まった。
アーガマにはニュータイプがいるというが、それが何かをしたのだろうか。
カキフ・ライ隊のメンバーに分かることでは無かった。

目の前には、味方の手中に収められたグリプス2が、宇宙空間に静かに浮かんでいる。
艦長はそれを、信じられないような気持ちで眺めていた。
297 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 21:10:33.18 ID:KpYFPDso
ガチャリ、とドアを開けると、二人の少女が何かを待っている様子だった。
そのうちの一人が紬に縋りつく。
どうやら自分を待っていたらしい。

「けいおん部に入りませんか?」

このこは、りっちゃん

律「今部員が少なくて、お願いします。後悔はさせまs」

律は襟首を掴まれ、後ろに引っ張られる

「そんな強引な勧誘したら迷惑だろ!」

このこは、みおちゃん

それから、ゆいちゃんがきて、あずさちゃんがきて…

人生で一番たのしかった時間。

紬は、嬉しくなった。しかし、目頭が熱くなってくる。
涙!?うれしいはずなのに…何故!?

楽しかった…? 過去…?
298 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 21:11:13.47 ID:KpYFPDso
目を開ける。薄暗い部屋だ。
現実が、徐々にその輪郭をはっきりとさせる。
それに伴い、絶望が紬の心の中で実体化していく。

紬「また…同じ夢…?」

上半身を起こし、深い溜息を付いた。
そして、夢にまで苦しめられる自分を呪い、馬鹿にしたように笑った。

最近は、いつもこうだ。
食事すら取ることは稀である。
そして、取りとめのない思考の海に沈んでいくのだ。
299 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 21:11:48.01 ID:KpYFPDso
目を閉じる。

私には、友達がいなかった。

でも、高校に入ったら、すぐに友達ができた。

友達と、しあわせなひとときを過ごした。

でも、今は一人ぼっち。

それは、昔に戻っただけのこと。

だけど、みんなとの記憶がある限り、昔に戻るのは悲しいはず。

でも、悲しくはない。

二人のお人形さんがいるから。

唯ちゃんと、梓ちゃん。

私の、大切な、宝物。かわいい、お人形さん。

紬が目を開けると同時に、斉藤が部屋の扉をノックし、言った。

斉藤「お嬢様、出撃にございます。」

紬の口元が、歪んだ。
そこにいるのは人の形をした、すでに人ではない何かだった。

心の羽化は、すっかり終わっていたのだから。
300 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 21:12:50.81 ID:KpYFPDso
第十四話 羽化! おしまい

今日はここまでだな。

明日でこの過疎スレも終わりか…
301 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 21:26:05.02 ID:yCZbnEAO

今回は飛ばすなあ。ありがたいけど
302 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/26(日) 21:29:28.63 ID:YWeeEjUo

とうとうクライマックスか・・・
303 : [sage]:2010/09/27(月) 19:40:07.79 ID:COaJwCIo
和「唯、どうしたのよ?」

唯「和ちゃん、苺が食べられたんだよ…和ちゃんが盗ったんだよ!!」

和「だから私のクリをあげるっていったじゃない。」

唯「ケーキのハートなんだよ!頂上だよ!!」

和「唯の中だけでしょ。」

唯「苺は力なんだよ!このショートケーキを支えている物なんだよ!それを…それを…!こうも簡単に食べられることは、それは…それは酷い事なんだよ!!」

和「…それは、悪いことをしたわ。」

唯「何が楽しくて苺を取るんだよ…和ちゃんのような奴は変だよ!生きていちゃいけない人間なんだよ!!」

和「そうなんだ、じゃあ私生徒会行くね。」


唯「…ヤザンの真似をして欲しかったのに、和ちゃんノリ悪いなあ…最終回投下しよ…。」
304 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 19:40:54.62 ID:COaJwCIo
最終話 生命 散って

純は、コロニーレーザーを真横から見ていた。
発射されているが、光はところどころ途切れている。
光が見えているところは、ゴミの多い宙域である。
それらがレーザーを受けて発している光なのである。
何も無いところでは、レーザー光は正面からしか見えない。

純「これで、アクシズは月には落ちませんね。」

アクシズは、グラナダへ落下する軌道をとっていた。
それを今、コロニーレーザーで防いだところなのだ。
純はほっとしたが、それで終わりではない。

和「見て、敵が来るわ。」

和は、のんびりと景色でも見ているように、言った。

姫子「あっちからも来るよ。アクシズ艦隊かな?」

まるで、祭りが始まるような気持ちだった。
きっとこれで、終わる。確証はないが誰もがそう思っていた。
305 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 19:41:34.87 ID:COaJwCIo
和は出撃前、艦長室にいた。

和「いきなり呼び出して、どうしたのよ?」

艦長「君の指輪を、くれ。」

和「嫌よ。あなたがくれたんじゃない。これは私のお守りなの。」

艦長「君には、これをやる。取り替えるんだ。」

そう言って、艦長は自分の指輪を差し出した。

艦長「必ず帰ってくるんだ。そうしたら、また交換しよう。」

和は、それを聞いてにこりと笑った。

和「分かったわ、私がちゃんと帰ってきて、二人が一緒にならないと使えないってことね。」

和はそれを紐に通して首から下げ、ノーマルスーツの下に滑り込ませた。
306 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 19:42:04.49 ID:COaJwCIo
和「ねえ、出撃前に言って欲しい言葉があるんだけど…」

艦長「何かな?」

和「…愛してるって、言って欲しい…/////////」

艦長は、少し考え込んだ後、言った。

艦長「…それは無理だな。」

和「何故?」

和は、ちょっとムッとしているようだ。
艦長が得意げに演説を始める。

艦長「私はその言葉、嫌いなんだ。誰からも咎められることなく欲望を正当化する卑怯な言葉だからな。うん。」

和「ハァ…いつもいやらしいこと考えている癖に。」

艦長「和、君のことが好きだ。」

和「ふん、必ず帰ってきて、いつか言わせてみせるから。」

艦長「その意気だよ。必ず帰ってくるんだ。」

二人は長いキスをして、離れたのだった。
307 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 19:42:47.16 ID:COaJwCIo
コロニーレーザーを奪い返せれば、戦局をひっくり返す事ができる。
出撃前にそんな意味のことを言われたが、紬にとってはどうでもいいことだった。

そんな事より紬は、戦場が不快でたまらなかった。
人の意志が、脳に直接入り込んでくる。

紬「みんな人間だ…私たちの幸せを邪魔する、醜い生き物!!」

紬「ここは、そんな連中の意志で満ち溢れている!!」

紬「私の大切な人形たち、奴らを皆殺しにするのよ!!」

唯梓「了解!」

三機は、流れ作業のように次々と敵を落としていく。
いや、味方も巻き添えにしている。
斉藤は、それを見て戦慄した。
308 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 19:43:29.57 ID:COaJwCIo
紬「あっはははははは!! もらったわ!!」

紬は敵と格闘戦をしている最中の味方機を、敵機ごとビームで貫いた。

紬「ウフフフ…唯ちゃん、梓ちゃん、私達以外はみんな敵よ!!ハハハハハ…邪魔ならこうして排除してもいいわ!!」

唯梓「了解!!」

それを聞いて、唯と梓まで味方を巻き添えにし出す。

紬「アハハハ!二人共いい子ね!!フフフ…」

紬のガブスレイがまた、味方ごと敵を撃った。

紬「ハハハハハ…私、こうしてみんなでゴミ掃除をするのが夢だったの〜!!アハハハハハ…」

レシーバーから聞こえてくる音声の大半は、紬の笑い声である。
斉藤は、耳を塞ぎたくなった。
309 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 19:44:08.34 ID:COaJwCIo
出撃前、斉藤は紬の様子が心配だった。
何日も部屋からも出ず、食事ほとんども取っていない。

出撃を知らせると、紬はすぐさまMSデッキに直行し、二人の強化人間を抱きしめていた。

紬「よかった…やっと逢えた…私の大切なお人形さん達…」

紬「お父様が、隠すんですもの…あんなに大切にしていたのに…ひどいわよね…」

明らかに、様子がおかしい。
しかしそんな事より、出撃前に食事をとってもらわねばならない。
お嬢様、食事を、と簡易宇宙食を差し出すため、紬の肩に触れた瞬間、斉藤の体は宙を舞っていた。
壁に叩きつけられる。

紬「人間風情が、私に触らないでくれるかしら。私に触れていいのは、このお人形さんたちだけなの。」

さっきは、泣いているような声だったため、斉藤は紬の泣き顔を想像していた。
しかし紬の目は乾ききっていた。
まるで、人形にはまったガラスの目玉のように、冷たい目の光。
斉藤は、その視線に気圧されて、紬に食事を渡すことが出来なかった。
310 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 19:44:59.19 ID:COaJwCIo
グリプス2の防衛に当たっていたカキフ・ライから見える光景は、宇宙空間に静かに横たわる防衛対象以外、360°地獄だった。
三つ巴の、殺し合いである。

艦長「一番から三番メガ粒子砲、前方のサラミス改に火線を集中!他は対空防御だ!!味方に当てるなよ!!」

火を吹いて制御不能になっているガザCが艦に突っ込んでくる。

艦長「おい、対空レーザー!!どこ見てる!!」

レーザーが手足を切り離したが、胴体がそのまま接触する。
艦内に衝撃が走った。

通信手「右舷居住区に敵機衝突!」

艦長「隔壁閉鎖!消火作業急げ!!クソ、あのガザC、冥土の土産に和の部屋を持って行きやがった!!」

艦長「敵を近づけるな!!いいな!!」
311 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 19:45:30.16 ID:COaJwCIo
副長「了解!!艦長、ゼータプラス隊は健在ですよ!!」

艦長「当たり前だ!!俺の和が死ぬもんかよ!!鈴木も、立花もだ!!」

副長「新手の艦隊、来ます!!」

艦長「ちまちま目標を示してらんねえな!!前方の艦隊だ!ぶっぱなせ!!どいつを料理するかは任せる!!」

砲手「了解!!全部沈めてみせます!!」

艦長「おう、やってみせろ!!できたら艦全員に特上の寿司を奢ってやるぞ!!」

艦内は、異様な興奮に包まれていた。
艦長は、ちょっと危険な雰囲気かな、と思った。

しかし、どうすることも出来ない。
戦場では、流れに身を任せるしかないことが多いのだ。

艦長は、ゆっくりと息をはいて和の指輪をぐっ、と握りしめた。
312 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 19:46:17.02 ID:COaJwCIo
何機落としたか、分からない。
異常な興奮状態だ。疲れも感じない。
その時、純の脳裏に梓のイメージが閃いた。

純「梓、見つけたよ!!」

姫子「鈴木さん!!」

純「手練のガブスレイが来ます!!見えないビーム砲も!!立花先輩は真鍋先輩の側にいてあげてください!!」

姫子「わ…分かったわ!無理しないで!!」

純「了解!!」

姫子は、純が戦闘機動に移行し、何発かビームを撃つところまで、見た。

彼女が純の機体を見た、最後の瞬間である。
313 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 19:47:20.67 ID:COaJwCIo
梓は、敵を明確に感じていた。
何度か戦った、あのガンダムもどきだろう。

梓「あれは、私にしか落とせない!!私が落とすべき、敵!!」

青白いビームが飛んでくる。
梓はそれをかわしながら、数発の牽制射を放った後、狙いすました一撃を見舞った。

梓「食らいやがれです!!」

敵機が螺旋状に飛んでビームをかわす。
間違いない、避けるとき螺旋を描くのは、あの敵だ。
距離が縮まる。
サーベル、と思った次の瞬間にはつばぜり合いが起こっていた。

敵の声が、聞こえる。

純「梓、私がわからないの!?純だよ、鈴木純!!」

梓「そんな奴知らない!!宇宙人の知り合いなんていないもん!!」
314 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 19:47:53.35 ID:COaJwCIo
敵の話を聞いていてはいけない気がする。
敵を蹴って距離をとった。
ビームを乱射する。敵が離れる。
これで聞いてはいけない言葉を聞かないで済む。

梓「ムギ先輩を泣かせる、許せない敵!!死んじまいやがれです!!」

梓のビームをくぐるように敵機が螺旋を描き、飛び込んでくる。

ビーム。
避ける。
応射。

結局、また距離が詰まってきた。
梓は、頭痛に舌打ちをして、サーベルを発振した。
315 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 19:48:34.66 ID:COaJwCIo
ガブスレイと交戦中である。
和も、唯を感じている。
しかし距離があるのでなかなか捕まえることは出来ない。
しかも唯のビームが和たちをガブスレイの周りに釘付けにしている。

敵は案の定かなり腕を上げている。
二機いるうちの一機は、最早別人である。
人間味すら、感じられないのだ。

和「あのパイロット、人であることを捨てている…?」

姫子が、一機のガブスレイをサーベルで貫き、通信を送ってきた。

姫子「一機倒した!残りのガブスレイは私が引き受けるわ!真鍋さんは、唯のところへ!!」

和「お願い!!」

唯の場所は、よくわかる。
和は、ウェイブライダーに変形し、感覚を頼りに飛んでいった。
316 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 19:49:11.93 ID:COaJwCIo
姫子は、目の前のガブスレイに接近戦を挑んだ。
さっきの奴とは気迫が違う。落とせないかも知れない。
接触回線で声がする。女だった。

「私のお人形さんを、取らないで!!」

姫子「何いってんの、こいつ?」

不意に、そのガブスレイが姫子のゼータプラスから離れて和を追う軌道を取った。
すかさず、斬りかかる。

姫子「あんたの相手は、このあたしだよ!!」

敵が、姫子の方を振り返る。
姫子にはそれが、ひどくゆっくりした動きに感じられた。

敵機が半身を見せるまで振り返ったとき、MSの装甲越しから冷たい視線に射すくめられたように感じ、姫子は一瞬、その動きを止めた。
317 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 19:50:03.17 ID:COaJwCIo
斉藤が、ガンダムもどきに落とされた。
それは、どうでもいい。
むしろ微笑ましい。
あいつは人間だから。

いけないのは、もう一機のガンダムもどきが私の大切な唯ちゃんを奪いに行ったことだ。

紬「私のお人形さんを、取らないで!!」

斉藤を落とした敵をいなして、唯ちゃんを守りに行く。
しかし、その敵に邪魔される。

「あんたの相手は、このあたしだよ!!」

一瞬にして紬の中に、怒りが飽和する。
唯ちゃんのところに、いきたいのに。
邪魔をする、わるいやつ。
318 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 19:50:47.51 ID:COaJwCIo
紬「そんなに死にたいのなら、望み通りにしてあげるわ!!」

振り返りながら、横一文字にビームサーベルを抜き放った。
先程まで意志を持っていた敵は、二つの鉄くずに変わっていた。
そのまま一回転し、MA形態に変形、唯を助けに向かった。

ガンダムもどきが二つに分かれる瞬間を思い出し、紬は可笑しくてたまらなくなった。

紬「うふふふ…はははは…あーっはははははははは…」

紬「無様だわ!馬鹿な人間が、私の邪魔なんてするから…」

紬は、笑い顔から一転、恐ろしい形相になり、言った。

紬「見つけた!唯ちゃんを奪おうとする敵!!」
319 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 19:52:50.20 ID:COaJwCIo
和は、四方からのビームを回避し、唯の機体に接触した。
腕がない。
その時、和はMSの腕がビーム砲になっていることに気がついた。

和「あんたって子は!!まだそんな事やってるの!?」

唯「嘘つき和ちゃん!!もう許さないからね!!」

和「私がいつあなたに嘘を付いたのよ!!」

殺気、飛び退ると唯のガンダムの腕が、和を狙っていた。
かわし際に、そのうちの一つを撃ちぬく。

唯「腕はもう一つあるんだからね!!」

斜め後ろ。
かわした。

目の前に唯の機体。胸が光った。
危ない、と姫子の声が聞こえた。
拡散ビーム。

紙一重だ。危なかった。

和「こっちから攻撃を!!」

脚部にスマートガンを撃ち込んだが、かわされた。
腰のビーム砲で牽制射を放つと、後ろから殺気。
かわすと、ビームが飛んできた。

和「大した集中力ね!!さすがだわ!!」
320 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 19:53:51.81 ID:COaJwCIo
その時、突き上げるような殺気に、和の機体は反射的に飛びすさっていた。

ビームが空域を照らし出す。
人間の気配ではない、これは殺気そのものだ、と和は思った。
殺気の方に向き直ると、先程姫子に任せたガブスレイが突っ込んできた。

人であることを、捨てている敵だ。
姫子は、もういないのだろう。

サーベルを発振する。
二度、三度馳せ違い、つばぜり合いのまま縺れ合った。
回線から、正常ではない人の声がする。

「私の大切な唯ちゃんを取らないでよ!!この泥棒!!」

聞き覚えのある、声だった。

和「あなた、ムギなの!?」

紬「大切な、お人形さんなのよ!!お父様に隠されて、それをやっと見つけたの!!もう私からお人形さんを取り上げないで!!」

和「唯は人形じゃないわよ!!」

紬「一緒にいさせてよ!!それだけでいいのよ!!どうしてそんな簡単なことをさせてくれないの!?」
321 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 19:54:35.40 ID:COaJwCIo
唯は、おろおろと二人のマシンに付いて行くことしか出来ない。
二機の距離が近すぎて、掩護射撃が出来ないのだ。

唯「ムギちゃん、離れて!!サイコミュで支援するから!!」

紬は、目の前の敵に対する殺意に支配され、唯の言葉を聞いていない。

紬「唯ちゃん、待っててね、今嘘つき和ちゃんを倒してあげるから!!そうしたら、また一緒にいられるわ!!」

頭が、刺すように痛む。
唯は、二人が争っていることに、違和感を抱いた。
322 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 19:55:55.18 ID:COaJwCIo
スマートガンは、早々に梓のビームで抉り取られた。
バルカンは、弾切れだ。
腰のビーム砲も、片方しか生きてはいない。

純のゼータプラスは満身創痍だった。
梓のガブスレイも似たようなものである。
二機は、サーベルを弾きあわせている。
そのたびに純が語りかける。

純「梓は、けいおん部に入って、最初はヤル気のない先輩に嫌気がさしててさ、いつも怒っていたんだよ!!」

梓「うるさい!!お前の言葉は頭を痛くする!!」

純「自分の思い出で、具合悪くなってどうすんのさ!!」

梓のガブスレイの動きが、徐々に悪くなってくる。

純「梓は、夏になるといつも真っ黒に日焼けして、憂も私も、会うたびに誰?ってからかったんだよ!!」

梓「うわああああ…やめろおおおおおおおお!!」
323 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 19:57:19.43 ID:COaJwCIo
ガブスレイが斬りかかる。
サーベルで受け止める。スパークが眩しい。

もう少しだ。
純にはもう少しで、梓が何かをつかもうとしているという実感があった。

純「二年の夏休みには、梓と憂と私と、三人でプールにも行ったよね!!梓はそこで夏フェスの自慢ばかりしてた!!」

梓「うるさい うるさい うるさい うるさい!!」

純「ちゃんと聞いてよ!梓の思い出なんだよ!!」

梓「聞きたくない!!」

純「記憶を取り戻したいんじゃないの!?」

梓「お前に聞く必要がない!!研究所で取り戻す!!」
324 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 19:57:54.97 ID:COaJwCIo
梓が離れようとする一瞬の隙を付き、ゼータプラスのサーベルがガブスレイの右腕をサーベルごと切り落とした。

そのまま純は自機を梓の機体に接触させ続け、話をつづけた。

純「研究所なんかより、梓の事は私が一番良く知ってる!!」

梓「どうしてそんな事が言える!!」

純「そんなの簡単じゃん!」

純「私たち、友達だもん!!」

梓「友だち…!?」

純「そう、友達!!」

その言葉を聞いた瞬間、梓の精神が強烈な拒否反応を起こした。

梓「う…うわあああああああああああ!!」
325 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 19:59:30.08 ID:COaJwCIo
不意に、ガブスレイの動きが、止まった。
反射的に、ゼータプラスが両腕でガブスレイに掴みかかり、抱き寄せた。

純「梓…どうしたの!?」

レシーバーからは、梓の苦しそうな息遣いが聞こえる。
喘ぎ声に混じって、必死に何かを伝えようとしているようだ。

梓「もう…体が…うごかな…い…」

純「梓!!」

純はここが戦場であることも忘れ、ゼータプラスのコックピットから出て、ガブスレイのハッチに取り付いた。
ハッチの緊急開放スイッチをおもいきり叩くと、コックピットが開いてぐったりした梓が視界に入った。

純「梓!どうしたの!?」
326 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:00:12.18 ID:COaJwCIo
敵機のコックピットに入り込み、バイザー同士をくっつけ、その振動で会話をする。

梓「この…からだ…もう…だめ…な…の…」

純「梓! 梓!」

梓「わたしを…出して…せまい…とこ…きら…い…」

純は、梓を抱き上げて、ガブスレイのコックピットから出た。

梓「わた…し…の…おもいで…もっと…しりた…い…」

梓「おしえ…て…」

純は、子供に昔話をする母親のように、笑った。

純「じゃあ、先輩たちが修学旅行に行った時の話、しようか。」

抱き合った二機のMSから、同じように抱きしめあう敵同士のノーマルスーツが浮かび上がった。

それは、およそ戦場の光景には見えなかった。
327 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:01:41.85 ID:COaJwCIo
カキフ・ライは、戦いのターニングポイントとなる通信を傍受していた。

通信手「アーガマから通信、ティターンズの艦隊に向けてコロニーレーザーを発射するそうです。味方機は射線から退避するようにとのことです!!」

艦長「ゼータプラス隊に伝えろ!!」

通信手「それが…ミノフスキー粒子が濃いうえに、この混戦で、先程からゼータプラス隊をロストしています!!」

艦長「無線で呼びかけ続けろ!!何度でもやれ!!」

通信手「了解!!ゼータプラス隊!!コロニーレーザーが発射される!!射線から退避しろ!!繰り返す…」

艦長は、味方機に通信が届いていることを願うばかりだった。

艦長(私は…無力だ…)

味方機が素早く退避している。
敵機もその雰囲気を感じ取ったか、それを追うように射線から離脱して、カキフ・ライから観測できるコロニーレーザーの射線上はほとんど何もない空間になっていった。

残されるのは漂う残骸と、足の遅い敵艦だけだ。あとは気づいていない遠くの攻撃目標位だろう。それには紬の父の艦も含まれている。

残骸の中に、抱き合う二人のノーマルスーツが混じっていることなど、もちろん分かるはずもないことだった。
328 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:02:58.11 ID:COaJwCIo
純「先輩たちにバレンタインチョコを渡した時なんかね、梓すごい恥ずかしがってて、なかなか渡せなかったんだよ。」

梓「わたし…そんなだった…んだ…」

梓が、一生懸命純に語りかけようとした。
純は話すのを止め、とぎれとぎれな梓のセリフを聞き逃さないようにしっかりと耳を澄ませた。

梓「ねえ…まわ…り…だれも…いないね…」

純「うん?」

純は周りを見回した。敵味方のMSがほとんどいなくなっている。
残っているものも、逃げるように遠ざかっていく。

純「神様が、ちゃんと梓に思い出を伝えてあげられるように、周りの人達をどかせてくれたんだよ、きっと。」
329 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:04:23.44 ID:COaJwCIo
梓はもう、純の言葉が届いているのかもあやしかった。
荒かった呼吸も、静かになってきた。
梓が、純に抱きつく力を強めて言った。

梓「ともだち…あったかい…」

純「そうだね、梓もあったかいよ。」

ノーマルスーツは熱を遮断する材質でできている。
しかし二人にはお互いのぬくもりが確かに感じられていたのだ。

梓は目を閉じ、大きく息を吸い込んで、最期の言葉を吐きだした。

梓「と…も…だ…ち…」

純に抱きついていた梓の腕の力が抜けていく
それっきり、梓は動かなくなった。
梓の目には、涙の粒が輝いている。
330 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:06:07.68 ID:COaJwCIo
純が顔を上げると同時に、巨大な光の帯が宙域を照らし出した。
それが、徐々に迫ってくる。
戦闘後の宙域はゴミだらけだ。だからレーザーの光が横からでもはっきりと見えるのだろう。

正面に目をむけると、グリプス2が徐々にこちらに向きを変えてきているのが目に入った。
方向変換の為のスラスター光が瞬いているのが見える。
敵艦隊をなぎ払っているのだろう。

今から逃げても間に合わない。
それになにより純は梓を離したくはなかった。
苦労して、取り戻した友達なのだ。

純は、グリプス2を見据えながら独り、呟いた

純「そっか、私も梓と一緒に逝けるんだ…」

腕の中で眠る子供に語りかけるように、それを梓に報告する。

純「よかったね、梓。私も一緒だってさ。」

グリプス2はもう見る必要がない。
安らかな顔の梓を見つめ直し、その体を強く抱き締めて、言った。

純「今、逝くからね。」

純はふと、レーザー光を正面から見てみたいという願望に駆られた。


しかし、その瞳は最期の時まで梓を見つめていた。
331 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:07:23.81 ID:COaJwCIo
和は、紬の圧力が弱まっていることを感じ取っていた。

和「こんな事して、何になるのよ!!」

紬「うるさい!!お前の仲間が私の梓ちゃんを惑わせて壊した!!」

和「あの子はそんな事しないわ!壊したのはあなたでしょう!!」

紬「あ…梓ちゃんが!!!」

不意に紬のガブスレイが変形し、飛んでいった。

和「ムギ、ダメよ!!そっちはコロニーレーザーの射線に入るわ!!」

紬「梓ちゃんが、光の濁流に飲まれちゃう!!」

通信も使っていないのに、和の頭の中で確かにそう聞こえた。

程なくして、宙域に光の河が現れた。
ガブスレイの姿は、もう見えない。
332 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:07:54.48 ID:COaJwCIo
唯「むぎちゃああああああああああん!!!」

唯が紬を追おうとする。
和は唯の機体にしがみついてそれを必死にとめていた。

和「ダメよ!唯!!」

和のゼータプラスに衝撃が走る。
確認すると、有線サイコミュがゼータプラスの左足をもぎ取っていた。
和は舌打ちをしてビーム砲を打ち落とす。

和「唯、やめて!!」

唯「うるさい!!ムギちゃんのところに行くんだよ!!」

その時、唯の精神に何かが入り込んだ。

唯「な…なにこれ…うわああああああああああああ!!」

和「唯、どうしたの!?」
333 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:08:42.67 ID:COaJwCIo
和はその時、確かにプロトサイコのバックパックに設置されたサイコミュ・システムにたくさんの光の塊が吸い込まれていくのを見た。

和「なにこれ…やめてよ…唯に入らないでよ!!」

唯「私の中に、沢山の人が入ってくる…そんなに入りきらないのに…ああああああああああ!!」

コロニーレーザーに焼かれた者たちの情念がサイコミュを通して増幅され、次々に唯の精神を犯していく。
心の器がいくつもの魂で溢れ、唯は自分の精神を見失いそうになった。

唯「嫌だああああああああああ!!出てって!!出てってよおおおおおおおお!!」

和「唯!そのマシンから出なさい!!」

和は、プロトサイコのハッチを開けようとゼータプラスを操作したが、纏わり付く光が邪魔をしてか、ゼータプラスの力でもハッチをこじ開けることが出来ない。

和「なによこれ…どうなっているのよ!?」
334 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:09:13.67 ID:COaJwCIo
唯「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」

和「唯! 唯! ハッチを開けなさい!!」

機体を覆っていた光が、消えていく。
すべて唯の中に入ってしまったのだろう、と和は思った。

唯「あ…私が…もう私じゃなくなった…」

唯の機体は、それっきり動かなくなった。
335 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:09:41.56 ID:COaJwCIo
和「唯!今艦に連れて帰るわ!お医者さんに見てもらいましょ!!」

和は、プロトサイコを引っ張って艦に向かった。
途中、何度も話しかけたが、苦しそうな息遣いしか帰って来ない。

和「唯、大丈夫?医務室に行ったら、すぐ良くなるわ!」

唯「はあ はあ はあ」

和「艦に付くまで頑張ってね、唯。あなたならきっと大丈夫だから。」

唯「はあ はあ はあ」
336 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:10:19.93 ID:COaJwCIo
グリプス2周辺の戦闘は終了し、艦内は捕虜の収容などで慌しくなっていた。

艦長「何?もう一度言ってみろ!!」

通信手「真鍋少尉が戻ってきます!敵のMSを曳航しているようです。医者の用意をして欲しいと言ってます!!」

艦長「ガイド・ビーコンを出せ!!医務官をMSデッキに向かわせろ!!」

通信手「了解!」

艦長「副長、ここを頼む。引き続き鈴木と立花も探してやってくれ。」

副長「了解です。早く行ってあげて下さい。」

艦長は、素早くブリッジを出た。
337 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:11:09.43 ID:COaJwCIo
艦長がMSデッキに到着すると、ティターンズのノーマルスーツが担架に乗せられて運ばれているところだった。
側で和が何かを必死に呼びかけている。

艦長「捕虜か?」

和「私の親友です!生命の危険があるんです!!」

ティターンズに、親友…!?
艦長は疑問を感じたが、話を続けられる雰囲気ではない。
そのまま、担架は医務室に運び込まれた。

唯は体中が痙攣しており、呼吸すらままならないようだ。
医務官が唯にヘッドギアをつけてオシロスコープを覗いている。

医務官「やはりだ、この子は強化人間だな。サイコミュの逆流が原因だろうと思うが、脳の活動が異常に活発になっている。危険な状態だ。」

和「御託はいいから早く何とかしなさい!」

医務官「手の施しようがないんだ!!」
338 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/27(月) 20:11:59.02 ID:COaJwCIo
それを聞いた和の表情に絶望が影を落とした。
艦長がすかさず口を挟む。

艦長「苦しそうじゃないか。楽にしてやる方法はないのか?」

医務官「体のどこがっていう話じゃないんです。脳がやられている。どうにかするなら、脳の活動を何とかするしかないんです。」

艦長「何とかしてやればいいじゃないか。」

医務官「一思いに殺すってことですよ。」

艦長「…」

和「ゆい…ゆい…」
339 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:12:45.03 ID:COaJwCIo
和は、唯の手を握って呼びかけ続けている。
唯は、小刻みに震える手で和の手を握り返し、苦しそうに口を開いた。

唯「の…どか…ちゃん…」

和「唯、喋っちゃ駄目でしょ!!」

唯「わたし…もうダメ…だ…から…」

和「もういいから、喋らなくていいから!!」

唯「さっき…の…ひとたち…に…つれて…いかれ…る…」

和「そんな事あるわけ無いでしょ!しっかりしなさい!!」

唯「さいご…に…ひとこ…と…だけ…」

和「唯!!」

唯「ありが…と…」

医務官「脳波レベルが急激に低下していきます。もう…」

和は、その場に泣き崩れていた。
艦長は、そんな和を、ただ見ている事しか出来なかった。

最終話 生命 散って  おしまい
340 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:13:20.99 ID:COaJwCIo
エピローグ!

カキフ・ライは今、アクシズあらためネオジオンを相手にゲリラ的な抵抗を行っている。
グリプス戦役で戦力を消耗しすぎたため、エゥーゴには正面切ってネオジオンと戦うだけの力が残っていなかったのだ。

だが、ネオジオンは今、二つの勢力にわかれているらしい。
奴らが勝手に自滅して、この戦いももうすぐ終わりが見えそうだ。
341 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:13:51.19 ID:COaJwCIo
和「入ります。」

艦長「どうした?」

和「この区域にネオジオンに合流しようと企図するジオン残党が潜んでいる可能性があります。偵察許可をお願いします。」

艦長「今更か? やっこさんたちネオジオンが内乱状態って知らないのかな? まあ念のため瀧少尉のネロも連れていけ。」

和「ネロは足が遅いので偵察には向いていませんよ。単機で行きます。」

艦長「危険じゃないか?」

和「ゼータプラスなら大丈夫です。じゃ。」
342 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:15:04.18 ID:COaJwCIo
和はキビキビと部屋から出て行った。

戦争が終わったら、プロポーズしようと思っている。

彼女は幸せになる義務がある、と思う。
死んでいった者たちの分まで。

私には、唯という友達が死んでから、彼女がまた死に急いでいるように感じられた。
しかし、私の心配をよそにいつもちゃんと帰ってくるので最近は彼女を信じてみることにしている。
そう、一緒になるならこれくらい信頼を置いてやるのが当たり前ってもんだろう。

彼女は私よりしっかししているのだから。
343 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:15:35.50 ID:COaJwCIo
艦長「では、ブリッジに上がるかな…」

結局鈴木は帰って来なかった。
和はやっぱり、と言っていた。
立花については、和自身が帰って来ないだろうことを教えてくれた。

ブリッジに上がると、和が発艦準備を済ませて待っている。
いつものことだ。

和「遅いですよ。スワロー1、発艦準備完了。」
344 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:16:28.94 ID:COaJwCIo
艦長「和。」

和「なんですか?」

艦長「愛してる。」

和「フフッ」

艦長「何だ?」

和「あなたの、負けね。嫌いな言葉、言わせちゃった。」

艦長「あ」

和「撤回は、ナシよ。」

艦長「クソ、気を抜いた。もう行け。射出!」

和「行ってきます。」
345 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:16:58.18 ID:COaJwCIo
和が行ってしまうと、取り残されたような気分になる。
不安で、心が押しつぶされそうだ。

その分、帰ってきたら抱き締めてやろう。
キスもしてやる。

だが、そんな考えを巡らせても、辛いものは辛い。
待たされているものの気持ちというのは、こういうものだ。
何度体験しても、慣れることなどない。
346 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:17:31.62 ID:COaJwCIo
早く、帰って来ないかな。
もう、帰ってきてもいい頃だろう。
首にかけた紐に通した指輪を、そっと見てみる。

艦長「ありゃ、和のと取り替えるの忘れちゃったな。」

そういえば、どうして言ってしまったんだろう。
愛してる、なんて。
嫌いな言葉のはずなのに。

まあいっか。しかし遅いな。
偵察なら早ければもう帰ってくる頃か、通信の一つや二つは入れてきてもいい頃だが。

艦長「何か、あったのかな?」

ブリッジから見えるのは、無限に広がる漆黒の宇宙だ。
ため息が出るほど、深く、暗い。
飲み込まれたら、帰って来られないのではないか、という錯覚に陥りそうなくらい、濃い闇だ。
347 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:18:01.50 ID:COaJwCIo
慌てて、目の前の暗黒から目を逸らす。
私は、何を考えているんだろう、彼女を、信じなくては。

艦長「帰ってきたら、もう一度愛してる、とでも言ってやるか…。」

艦に戻ってくる光を信じて、目の前の空間を見つめ返す。



しかしその後、いくら待っても和が艦に帰ってくることは無かった。
348 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:18:37.34 ID:COaJwCIo
純「という夢を見てね〜、やっぱりあの生徒会長ってさ、ダメ男に引っかかりそうな感じするよね!」

憂「もう、和さんに言いつけるよ!…ところで純ちゃん、ガンダムなんてどこで知ったの?」

純「唯先輩にDVD借りたんだよ。じゃ〜ん、こんなに沢山!!」

憂「これは私が没収したDVDじゃない!!どうして純ちゃんが持ってるの!?」

唯「ごめんなさい、憂。我慢できずに憂の机から持って行って見ちゃったんだあ。そのあと純ちゃんに貸したの。」

憂「お姉ちゃん!!もう許さない、こんな物、こうだからね!!」バキ

唯「ああ…DVDが…ひどいよ、憂」
349 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:19:25.44 ID:COaJwCIo
純「ちょ…私、まだ最後まで見ていないのに…もう怒ったよ、憂がDVDの代わりをしなよ!!」

純「ネイキッド形態に変形だよ、憂、早く!!」

憂「は…はい…」スッ

唯「う…うい…」

憂「…」パサ

憂「純ちゃん…やっぱりやめようよ、こんな事…ね。」

純「ダメだよ!! だったらこのDVDくっつけて見られるようにしてよ!!」パン パチッ

純「D・V・D!! D・V・D!!」

憂「へ…変形…////////////」ヌギッ

純「妹DVD、じゃなかった…唯「グリプス戦役!」おしまい。」
350 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:20:59.61 ID:COaJwCIo
おまけ 脳内設定資料集

マゼラン改級戦艦 カキフ・ライ

0078年マゼラン級として建造。
艦名の由来は、古代インドの言葉で「落日」(嘘)
処女航宙時に、いきなりサラミス級と衝突事故を起こす。

その後、誤射や事故を繰り返し、配属された主要幹部が更迭され続けたので、「士官殺し」の異名を取るようになる。

ソロモン攻略戦時には、参加させたら不吉であるという理由で予備としてルナツーに配備された。
その時も、港口に衝突する事故を起こしている。

ア・バオア・クー攻略戦時には、ルザル艦隊に先鋒として配属された。このさい、MSを搭載せず、乗せられた乗員はすべて左遷組であった。
戦力にならない人材と共に宇宙の塵にしてしまおうと言う上層部の企てだったが、なぜか激戦を無傷で切り抜けている。
ちなみにこの戦闘で艦隊の先頭にいたにもかかわらずサラミス級1隻を誤射で撃沈している。
351 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:22:03.60 ID:COaJwCIo
この事件は戦後、軍法会議で取り上げられたが、艦長始めクルーは全員、ムサイを撃ったと証言しており、証言の矛盾も認められなかった。

戦後、いわゆるビンソン計画による改修候補からは外されていたものの、マゼラン級改修のテストベッドとして使われ、船首部のメガ粒子砲を一門犠牲にし、カタパルトデッキを一基増設される。
この改修作業で13名の殉職者を出している。

この改修により、艦内に航宙機三機を格納出来るようになり、パトロール艦として単艦で運用されるようになる。
これは、他の艦との衝突や誤射による損失を防ぐための配慮である。
ちなみにMSの搭載可能数も三機である。

パトロール任務中も衛生やコロニーへの衝突事故を頻繁に起こしている。

ちなみに事故によって他艦や施設に損害を与えまくっているものの、なぜか自艦が損傷したことは皆無である。
352 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:22:36.74 ID:COaJwCIo
戦闘においても、0088年のコロニーレーザー防衛戦まで損傷を負ったことはない。

0084年に現艦長が着任。以後は事故を起こしていない。

建造当時からシャワー室の一つにスク水姿の少女の幽霊(推定13歳)が出る。
そのため男性隊員がこのシャワー室に殺到し、何度か傷害事件にも発展しているので、0084年現在(現艦長着任時)においてこのシャワー室は使用不可になっていた。

第一次ネオジオン抗争後は練習艦となったが、訓練中に事故で沈んでいる。

ちなみにマゼラン級は>>1が最も好む宇宙艦艇である。
353 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:23:29.76 ID:COaJwCIo
脳内設定資料集その二

艦長

0085年当時の年齢は32歳。階級は中佐。童帝。
士官学校A課程(将来の将官候補に当たる課程)の卒業席次は5番であるが、運動はからっきし駄目だった。
士官学校時代のあだ名は秀才。

士官学校卒業時に、成績優秀者賞として銀時計を授与されたが、授与されたその日のうちに落としてこれを破損している。

一年戦争時は連絡幹部としてサラミス級巡洋艦に勤務していたが、仕事は全くと言っていいほどできなかったため、戦闘が始まると椅子に座って呆けていただけだった。

ア・バオア・クー攻略戦時は始めから脱出用のランチに乗船していたという噂もある。

0083年のデラーズ紛争時には、ソーラーシステムU守備部隊のマゼラン改に副長として乗艦。
戦闘中にアナベル・ガトーの搭乗するノイエ・ジールを間近で目撃しており、戦闘報告のさいその形をミジンコに例えて表現した。

デラーズ紛争は何とか乗り切ったものの、PTSDと診断され、紛争後入院している。
354 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:24:42.88 ID:COaJwCIo
ノイエ・ジールがよほど恐ろしかったと見え、入院時教育番組でミジンコの拡大映像を見た途端発狂したという逸話も残っている。

PTSDの影響で、戦闘部隊勤務が無理であると上層部に判断された彼は、0084年、厄介払いも含めてパトロール艦であるカキフ・ライに艦長として配属される。

この時の彼は出世街道から外れてやけっぱちになっており、それに振り回されるクルーたちに恨まれ艦の雰囲気は最低であった。

0085年、和がパイロットとして着任したとき、彼女は一パイロットにもかかわらず、艦内の雰囲気を改善するために奔走し、クルーをまとめ上げた。
ちなみにこの時、和のあだ名は真鍋艦長であった。
これはこの艦の仕事が少な過ぎ、和の自由な時間が多かったからできた芸当である。

その時、しっかりした彼女のことを花嫁候補として見るようになり、果敢に彼女に認められようとする姿がクルーの共感を得て彼らが協力を始め、このだらしない男を中心に艦がまとまったという経緯がある。

第一次ネオジオン抗争後はクラップ級巡洋艦ラー・チャターの艦長としてロンド・ベルに配属され、シャアの反乱時、アクシズをめぐる最終戦闘において艦と運命を共にしている。

生涯独身であった。
355 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:25:34.16 ID:COaJwCIo
ちなみに>>1は純ファンであり、この男とは何ら関係がない。
二期になって純の活躍に和が食われていると感じた>>1が和の活躍の場を作るとともに、和ファンが感情移入できるように名無しキャラとしてカップリング相手を創作したという次第である。

しかし本スレは過疎スレであるため、和ファンがこのスレを見ているかどうかは不明である。
356 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:28:27.45 ID:COaJwCIo
おしまい

支援してくれた方、ありがとうございました。

書きためている時、車が壊れ、湯沸かし器が壊れ、バイクが壊れました。

きっと殺したり精神崩壊させたけいおんキャラの怨念だと思います。

ごめんなさい、もうこう言うの書きません。だから許してください。

明日HTML化依頼出します。

もう一度、支援してくれた方、ありがとうございました。
357 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:39:18.00 ID:czsNk6AO

出てきたキャラみんな死んでるもんなww
358 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 22:02:52.75 ID:A/OClgDO
乙です
359 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/28(火) 00:23:55.17 ID:niTuQcAO
0079は「あったかもしれない」なサイドストーリーだったけど、
今回のグリプスは所々が劣化ゼータっぽい感じ

それといつの間にか和サイドが妙に強くなってたせいで、
軽音サイドが種の三馬鹿みたいな噛ませ集団にしか見えなかった…

あととりあえず全員殺っとけみたいなのもどうかと思う

でも面白かったよ。展開も読めなかったから毎日楽しみにしてた
また何か書いてくれ
360 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/28(火) 04:07:21.21 ID:GEqHtBgo
>>1乙!

前回も感情移入し過ぎて泣いたけど、今回もいい感じに泣けたよ〜
特に純が逝くところと唯が逝くところはホント山場って感じですごくよかったよ〜

それはそうと、前回と同じ夢オチってことはZZも書けるねwww

>>1の次回作期待してるよ〜
361 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/28(火) 15:34:10.74 ID:JHlUtpko
次は∀だな!!
憂「この平沢唯すごいよ!流石(ry」
362 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/28(火) 19:30:17.96 ID:5A2HD2oo
乙!それぞれ人間味があって読み応えあった
苦難にめげずこれを書き上げた精神力、ご立派です
次回作も待ってるよー!
363 : [sage]:2010/09/28(火) 19:30:38.96 ID:thVXNsIo
>>359
種見たことないから三馬鹿とか良く解らんけど、俺がマズかったなと思ってた点を的確に指摘してるなあ。

ここは読み手のレベルも高いみたいだ。

HTML化依頼出しときましたんで、また会う日まで。

みなさん本当にありがとうございました。
364 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/28(火) 22:38:01.08 ID:5ShIja2o
面白かったよー乙
365 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/30(木) 12:16:37.49 ID:GayyB3Ao
いちおつ
面白かった

まさかのラーチャター艦長とは…
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