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【阿良々木】化物語SS【戦場ヶ原】 - 製作速報VIP(クリエイター) 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/23(木) 17:05:17.27 ID:.LAUwo2o
再利用しやすいように総合化してみました。
尚、今回も八九寺さんは出て来ません、ごめんなさい。

では、始めます。
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【怪獣8号】ミナ「日比野カフカ今日は奢りだ!好きなだけ食え!」 @ 2025/08/02(土) 00:14:58.07 ID:l6LpFqfaO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1754061298/

すいか 67.1 立ててみるテスト @ 2025/08/01(金) 14:24:40.59 ID:GCnrlbTY0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1754025880/

もう8月ですね... @ 2025/08/01(金) 06:51:37.98 ID:tUwLog300
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1753998697/

【デレマス】橘ありす「花にかける呪い」 @ 2025/07/31(木) 00:03:20.38 ID:DoK8Vme/0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1753887799/

【学マス】広「笑って」 @ 2025/07/30(水) 20:41:14.60 ID:VXbP41xf0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1753875674/

パンサラッサ「安価とコンマで伝説の超海洋を目指すぞぉ!!」 @ 2025/07/29(火) 21:13:39.04 ID:guetNOR20
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1753791218/

落花生アンチスレ @ 2025/07/29(火) 09:14:59.83 ID:pn6APdZEO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1753748099/

ライナー「何で俺だけ・・・」 @ 2025/07/28(月) 23:19:56.58 ID:euCXqZsgO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1753712396/

2 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 17:06:06.86 ID:.LAUwo2o
夏休みも半分を過ぎた辺りに、家の玄関が半壊する事件が起きた。

事件と云うか、テロ。

実行犯との攻防は一応の決着を見たが、夏休みが終わる頃から後遺症的な感じで、僕と妹達との攻防が始まった。

血で血を洗う、骨肉の争い。

そう言っても過言でない戦いの火蓋が切られた。
3 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 17:06:45.76 ID:.LAUwo2o
天気がいい日に布団を干したい母親が、僕の布団を持って来るよう妹達に命令する。

例え休みだろうが、僕が徹夜した後だろうが、彼女達は僕の部屋にズカズカと侵入し、僕の布団を引っ剥がし、それを持って出て行ってしまう。

以前なら―――

「兄ちゃん、起きなよ。布団干すから!」とか「お兄ちゃん、早く起きて!」とか。

まずは布団の上から僕を揺すり、寝ぼけ眼で意識を取り戻しかけた僕に追い打ちを掛ける様にしていたのだが……

最近は、ちょっと違う。

まず、ドアが開いても誰が―――いやどっちが入って来たか分からない。

そして、布団に包まる僕の耳元で呟く。

「お兄様」と。

まぁ、その時点で鳥肌が立って僕は起きるんだけど。

妹に「お兄様」などと言われたのは、記憶する限り火憐が神原に会いたい時に言った位だな。

でもって、たまに寝不足気味で気がつかない時は大変。

布団の中に手を潜り込ませ背中を突っついたり腰を撫でたり、はたまた耳に息を掛けられたり、酷い時はうなじを舐められた!

特にうなじの辺りは拙い。

忍に血をやっているので、傷跡がある。

まぁ、そんなのはどうとでも言い訳できるが、忍がコッソリ血を吸いに来たのかと思うと、恐ろしくて目が覚める。

勝手に飲まれる=死亡フラグ成立とも言い切れないからな。
4 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 17:07:58.36 ID:.LAUwo2o
ということで、そこで目覚めるのだけど……

起きたら起きたで、僕の顔前12センチで「おはようのキスは要りますか?」なんて、ほざきやがる。

確かに1度はしたよ、1度だけ。

あ、ちがうな。

何度か有ったな。

無理やりされたと言った方が正しいな。

彼女達は、その後「えへへ」と笑い呆けやがる。

でもって、毎朝そんな事が繰り返される。

布団は週に1回干す程度なのに。

二人の妹のどちらかが毎朝やってくる。

ちなみに、上は中3、下は中2。

思春期真っ只中。

こんな妹になってしまったのには、原因がある。

上の妹、火憐に至っては囲い火蜂にやられたのでその対応に。

下の妹、月火に至っては―――その存在の真偽を確かめるが為。
5 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 17:08:35.99 ID:.LAUwo2o
いや、嘘だな。

兄として、妹のファーストキスを他人様に奪われるのが辛かったと言う訳ではないが、

何となく、衝動的に僕が妹達にキスをしてから変な方向に転がり始めた。

まぁ、そんな行為の結果が、毎朝の攻防に繋がった訳だが、何も突然そうなった訳じゃない。

ツンデレの如く、突然デレた訳ではない。

幾つかのポイントを経た結果で今に至る。

ポイントを作ったのは何を隠そう僕。

いや、胸張って言う事でも無いんだけど、一応僕。

人に鬼畜と言われようが、この事を引き起こした原因は僕に有り、また引き起こした事と戦っているのも僕である。

ただ、今回の件はあまりにも特殊なケースの為、誰にも相談できない。

そりゃそうだろ?

「妹達にキスしたら、妹達がデレて毎朝僕に攻撃を仕掛けます。攻撃と言っても暴力じゃなく、暴走的な禁断の愛です」なんて言えるか?

相談した時点で、ドン引きするか、奇異な目で僕を見るだろう。

それで無くても友達の少ない僕。

相談できる相手なんて片手で足りる。

それに相談したら……ほぼ全員の回答が予想できる。

例えば―――
6 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 17:09:37.58 ID:.LAUwo2o
戦場ヶ原の場合

「―――と、言う訳なんだ」

「不潔」

「いや、まぁ説明した様に火憐の場合は蜂避けで、月日はその存在を―――」

「不潔」

「ちゃんと聞いてくれよ」

「話を聞いて欲しいなら、もう少しマトモな話をしなさい」

「いや、だから、ちゃんと話したし」

「中身の問題よ」

「だから、事実だし」

「事実だから不潔なの。一つ言わせてもらえば、そんな汚い唇で二度と私とキス出来ないと思いなさい」

「それは……絶縁ですか?」
7 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 17:10:13.01 ID:.LAUwo2o
「そうとっても構わないわ」

「え……」

「キスどころか、その口から発せられる言葉を聞くのも嫌よ。不潔な言葉で私の鼓膜が汚されるわ」

「何もそこまで言わなくても」

「ついでに言えば、臭わなくても口から変なガスが出てそうで、そのガスで私が腐敗されそうだわ」

たぶん、これ位は言われる。

もっと酷いかも知れない。

もう文章にしたら猥褻物陳列罪とかで捕まるような言葉を浴びせられそうだ。

いや、言葉の暴力で僕が殺されてしまう。

だから、戦場ヶ原には絶対に相談できない。

確実に僕に死亡フラグが立つ。

次に相談できるのが、委員長の羽川。
8 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 17:11:58.86 ID:.LAUwo2o
「―――と、言う訳なんだ」

「あのね、阿良々木君。人間には理性ってものがあるんだけど、阿良々木君にはないのかな?」

「いや、あります」

「有るのにするって言うのは、きっとその理性に欠陥があるのよ」

「はい……」

「『はい』じゃなくて。理性で本能や欲求を抑えているから人間であって、それを失ってしまうのは野生動物と同じなの、わかるかな?」

「はい」

(中に野生動物飼ってるくせに!)

「何か言った?」

「いえ、なんでも……」

「こう―――どうして、もっと外に目を向けられないのかな?ちゃんとした目で見れば、家庭の外にそう言った環境が揃っていると思うわ」

「まぁ、それも分かってる」

「分かっているなら尚更じゃない。それに彼女が居るんだし、そういう事は彼女とすれば良いんじゃないかな?爛れない程度に」

「十分すぎる位、分かってるんだけど……つい」

「ついねぇ……。ごめん、阿良々木君。私、君の事を更生させようと頑張ったけど無理。
 だって人間だったら言葉で説明できるけど、野生動物に言葉は通じないものね。
 叩いて躾しようなんて、今の私には無理。
 だから―――視界から消えて欲しいな」
9 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 17:12:48.69 ID:.LAUwo2o
と、案外酷い事をサラッと言いそうだ。

いや、きっと言う。

間違いなく言う。

それも超説教モードで!

もしかしたら、壁新聞作って掲示板に貼られるかもしれない。

「野生児に注意!」みたいな見出しで。

で、完全に他人から隔離された僕を憐れむように、優しいけど上から目線で言うんだ。

「ね、阿良々木君。君の理性は間違ってたでしょ?ちゃんとしなさいよ」とか。

こんなの空想かと思うだろうけど、大いにあり得る。

あいつはそういう奴なんだ。

表向きは上品で優等生だけど、中に恐ろしいぐらい黒い野生動物を飼っているからな。

その黒いのが「更生してやるにゃん」とか攻勢をかけそうな気もして怖い。

それこそ、今度は忍と羽川の第三ラウンドが始まって死人が出る。

あー!もう!次!次の相談相手!

友達だけど、1つ下の後輩、神原の場合。
10 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 17:14:09.66 ID:.LAUwo2o
「―――と、言う訳なんだ」

「先輩、それは何と言うエロゲだ?」

「いや、リアルだし」

「リアルでそこまで持ち込める阿良々木先輩に感服し、尊敬の念で私の小ぶりな胸はいっぱいだ」

「いや、そこまでプラス方向で話されると僕も困る。というか、神原は小ぶりなのか?」

「何を謙遜している?実の妹を調教出来るチャンスではないか?
私など、調教したくても相手が居ない。勿論、兄弟姉妹など夢のまた夢。
目の前にあるチャンスを生かす阿良々木先輩が素敵すぎて眩し過ぎる。
 あと、小ぶりかどうかは―――阿良々木先輩が直に触って判断してくれればいい」

神原に至っては、確実に褒められる。

褒め殺される。

そして、僕を陥れようとする。
11 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 17:15:20.83 ID:.LAUwo2o
「ちなみに、どういう風に調教するのですか?勿論、最後は3Pルートで孕ませENDですよね?」

「いや、それは人としてダメだろ?」

「何を今更言っておられるのか?阿良々木先輩の中には鬼の血が流れているのでしょう?」

「まぁ―――そうだけど」

「なら話は早い。鬼畜道まっしぐらですよ」

「おいおい……」

「ブッチギリな鬼畜。例えば、3Pで上の妹さんは執拗に責めてドM開眼、下の妹さんはその場で放置プレイでドM開眼ですよ」

「全然リアリティがねぇ!」

「それは行動して既成事実を作り、リアルにすればいいんです。考えては駄目、今すぐうちに帰って、始めてください」

なんて絶対に僕のエロ師範代になって、指示するだろう。

散歩プレイや挿入登校とか平気で言いそうだし……

というか、そういう話をしつつ、絶対に胡乱な目つきで―――

「私も混ぜて4Pでも構わないぞ」とか言いそうだ。

お前はどっかの変態生徒会のある学校に転校しやがれ!と僕が言ってしまいそうだ。

だから、神原にも相談できない。

次は……ああ、これは相談する方が馬鹿かも知れない。

まぁ、一応考えるか、八九寺の場合を。
12 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 17:16:13.13 ID:.LAUwo2o
「―――と、言う訳なんだ」

「阿良々木さん、いやエロロギさん死んでください」

「うわぁ!お前いきなりなんて事言う!」

「噛んでません」

「噛んだ事にしてくれよ!」

「か、み、ま、し、た、!」

「わざとかよ!」

「そもそも、実の妹にキスしただけでも、打首獄門に匹敵します。

 万に一つ、それ以上の事を行った場合、あなたを産んだ親も同罪です。

 お家お取り壊しですよ?遠山の金さんが許しません」

「そ、そんなに重罪なのか?というか、町奉行がお家取り壊しとか無いだろ!」

「まぁ、そうですけど。然しながら、重罪ですよ。かなり。結構。非常に」

「ぼ、僕はどうすれば―――」


「どうしようも出来ないんじゃないですか?覆水盆に返らずです」

「なら、もう僕は―――八九寺!お前だけでいい!会いたかったぞー!」
13 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 17:17:41.98 ID:.LAUwo2o
「動かないでください!エロがうつります!」

「僕は伝染病か何かか!」

「ええ、病気なのは間違いありません」

「え?」

「阿良々木さんは自分が病に冒されている事に気付いてないのですか?」

「これ病気なの?」

「勿論ですとも!完全に病気です!体も精神も冒されています!それもかなりの難病です。おまけに伝染します」

「伝染って……」

「いいですか、阿良々木さんの病原菌がうつった妹さんも既にエロ病を発症しています。

 この病はどんどんと人に感染し、一定の期間を経てダイナミックが起こります!」

「うわぁー、僕の体はそんな勢いのある菌に犯されていたんだ!というかパンデミックだろ!」

「というか、阿良々木さん自体が菌ですから」

「は?」

「だから、近づかないでください!私はあなたの事が嫌いです!隔離します!」

なんて大騒ぎするだろう。

で、最後はパッと消えて、公園の公衆トイレの壁に僕の事を落書きしそう。

「阿良々木暦は病気持ち気を付けろ! 090−****−****」とか。

あとは……千石。

あいつに話す方が逝かれてるよな。
14 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 17:19:12.84 ID:.LAUwo2o
「―――と、言う訳なんだ」

「ブクブク―――」

と口から泡を吹きながら失神するルートか、若しくは親身に聞いてくれるルート。

というか、ルートなんて言ってる僕はもうダメかも知んない。

「そんな事無いよ、暦お兄ちゃん。暦お兄ちゃんは駄目じゃないよ」

とか言ってくれるか。

「撫子ね、ちょっとララちゃん達が羨ましいな」

「え?」

「だって、暦お兄ちゃんを起こしに行けるんだよ?撫子には出来ないし」

「まぁ、それはそうだけど」

「あ、いい事思いついた。今度、ララちゃんちに泊まりに行ってみようかな?それで私が一番に起きて暦お兄ちゃんを起こしに行くの」

「そうすると何か有るのか?」

「火憐ちゃんとララちゃんの邪魔をして、暦お兄ちゃんを私の物にするんだ」

と……まぁ、そこまでは言わないか。

でも、あいつの場合、少し常識はずれなところもあるし……

「なんなら、窓のカギ開けておいてくれたら、朝起こしに行くから」

とか。

それ、なんてストーカー?

おまけに、僕の部屋2階だし。

火憐達に競争心燃やされても困るので、言えないな。

というか、人外なら兎も角、妹と同じ歳の人間に相談とかありえないし。

はぁ、僕はどうすればいいんだぁ!
15 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 17:19:52.37 ID:.LAUwo2o
そんな破廉恥な妄想を昼前までしていると、影からぬぅっと忍が現れる。

「お前様、えらく困っておるのぅ」

「おお、忍!」

「儂がお前様の悩み相談をしてやろうか?」

「忍……いや、要らない」

「何故じゃ?経験豊かな齢500の儂の指導を受ければ、妹二人なぞあっという間にお前様の眷族じゃぞ?」

「これ以上、人外を増やす気はねぇよ!」

「なんと!お前様は儂だけで十分というか?そうかそうか、かかか!流石、我があるじ様」

「何笑ってんだよ?」

「今夜はいつも以上にサービスした夜伽をしてやろう」

「いつも何にもされてねーよ!」

「ふん!口でどんなに否定しようとも、妹共が来た時は喜んで居るではないか?感覚共有の儂に嘘が通じるとでも思っておるのか?」

僕が喜んでる?

確かに、忍には僕の感覚が伝わる。

だからと言って、喜んでいるとかありえないだろ?

それに、忍にレクチャーなどされた日には僕の人としての「人生」は完全に終止符を打たれる。

感嘆符を打たれるなら未だしも……
16 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 17:20:56.19 ID:.LAUwo2o
「で、お前様はどうされたいのじゃ?」

「まぁ、出来れば元に戻せたらと」

「かかか、そんな事無理じゃ。まぁ、100%無理と言う訳でもないが、それはお前様が人間に戻ると言う事と同じ位、難しい事じゃ」

「難しいが戻る事は可能なのか?」

「ああ、可能じゃ」

「どうすれば?」

「[ピーーー]ばいい」

「は?」

「お前が人間に戻るには―――儂が[ピーーー]ば良い。お前の妹共が元に戻るにはお前様が[ピーーー]ば良い」

「って……それはどういう事なんだよ。僕は妹達の血を吸った覚えは無いぞ?」

「ふはは!まぁ、後出しで悪いが、今回の件、すべて唾液感染じゃからな」

「唾液感染?」

「ああそうじゃ。お前様も知っておろう?吸血鬼としての食欲、睡眠欲、性欲について」

「ああ、まぁ一応は。前に話した事だよな?」

「そうじゃ。故に吸血鬼スキルを若干残したお前様の唾液には、その一部である性欲を促進する成分が含まれておる」
17 :16校正 [sage saga]:2010/09/23(木) 17:21:25.53 ID:.LAUwo2o
「で、お前様はどうされたいのじゃ?」

「まぁ、出来れば元に戻せたらと」

「かかか、そんな事無理じゃ。まぁ、100%無理と言う訳でもないが、それはお前様が人間に戻ると言う事と同じ位、難しい事じゃ」

「難しいが戻る事は可能なのか?」

「ああ、可能じゃ」

「どうすれば?」

「死ねばいい」

「は?」

「お前が人間に戻るには―――儂が死ねば良い。お前の妹共が元に戻るにはお前様が死ねば良い」

「って……それはどういう事なんだよ。僕は妹達の血を吸った覚えは無いぞ?」

「ふはは!まぁ、後出しで悪いが、今回の件、すべて唾液感染じゃからな」

「唾液感染?」

「ああそうじゃ。お前様も知っておろう?吸血鬼としての食欲、睡眠欲、性欲について」

「ああ、まぁ一応は。前に話した事だよな?」

「そうじゃ。故に吸血鬼スキルを若干残したお前様の唾液には、その一部である性欲を促進する成分が含まれておる」
18 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 17:27:42.74 ID:.LAUwo2o
「それ本当か?」

「今更、儂がお前様に嘘をついてどうする?現に結果を見ておるではないか?」

確かに、戦場ヶ原は『ツンデレからツンドロ』に。

妹達は従順な『兄萌え』になっている。

「である。故に、お前様にキスされた時点で、彼女共の体内にその成分が入り、性格がエロくなる。

 お前様の専用携帯食―――いや、彼女か。

 あれもエロくなった故に、お前様に対して優しくなっておるのじゃ」

「そ、そうなの?」

「お前様にエロな行為をされたいと云う願望がな」

「僕の唾液はそんなに凄いのか!」

「それはもう、凄いの一言じゃ。ただ、あの者の場合、心に負った傷がまだ癒えておらぬ。

 まぁ、この先、その成分が増えれば傷も癒え、お前様とまぐわう事となろうぞ」

「どのくらいでそうなってしまうんだ?」

「成分と言うのは菌とは違う、勿論血とも違う。

 勝手に増殖する訳ではなければ、体内で組成される訳でもないのじゃ。

 次々とその成分を注入する必要がある」

「と言う事は……しなきゃ元に戻るのか?」

「ああ、そうじゃ。しなければな。
 
 また、一度入った成分が抜けきるまで、最短でも1回の軽いキスで1週間。

 長ければ一ヶ月は消えぬ。その間に追加注入すれば益々じゃ、かかか」
19 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 17:30:40.92 ID:.LAUwo2o
「ますます?ますますどうなるんだ?」

「簡単な事よ。唾液主のお前様のいいなりじゃ。それと消えかかる頃に禁断症状が出て、またキスをしたくなる」

「マジで?」

「本当じゃ」

「うわぁ……もう何度かしちゃったよ」

「それは御愁傷さまじゃの。ちなみに、先程少し触れたが、エロくなると言っても、唾液主にだけじゃからな。誰でもいいと云う訳ではない」

「て、言う事は……」

「そうじゃ、お前様の周りには3人の女共がお前様の唾液を狙っておる」

「僕の唾液はそんなに狙われているの?」

「まぁ、行く行くは……唾液以外の体液をだな―――」

「ごめん、もうそれ以上言わないで!もうそれだけで胸が苦しいです」

「何を言っておる。吸血鬼として、いいなりになる人間を造る事は誉れであるぞ?」

「そんな誉れはイラネぇ!」

「そうか。なら自分で自制し唾液を奪われんようするか、死ねばいい。

ちなみに、箸などでの間接感染は殆どないからのぅ。あくまで直接感染じゃ。

唾液は空気に触れれば、直ぐに乾燥しその成分は破壊される。

ただし、舐めた指などは危険じゃぞ。では頑張るとされよ、かかか」

笑い飛ばしながら、忍は影の中に消えていった。
20 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 17:31:41.85 ID:.LAUwo2o
はぁ、困った。

戦場ヶ原とは、結構な回数をしてる。

火憐と月火に至っては、数回。

いや、火憐はもう少し多いか。

月火に至っては、ベロチューまでしちゃってるからな……

マジで、この状況は拙い。

戦場ヶ原がエロく、いや毒気が抜けて丸くなってくれる分は構わない。

でも、妹は拙いよな。

常識的に考えても、禁断だ。

さて、どうすればいいものか……

「ああ、そうそう言い忘れておった。

 お前様、お前様もほぼ人間と言えども、吸血鬼のスキル、回復能力は持っておろう?

 それと同じで、性欲も多少は前より増えておるから、我慢できるかどうか心配じゃな、かかか」

と、影の中から笑いやがった!

たしかに、突然妹達にキスしたのはそのせいかも知れない。

原因が分かったところで状況は何も変わらない。

何か、解決の糸口を見つけなくては……

「しかし、お前様よ。何をどうすればああなったのじゃ?儂が眠っておる時か?それともDSに夢中になっておる時か?説明してみよ」

じゃあ、順を追って回顧するわ。
21 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 17:32:26.30 ID:.LAUwo2o
『火憐デンタル』

火憐の場合、最初に囲い火蜂の熱を奪う為にキスをした。

その後は……行きがけの駄賃とは言わないが、じゃんけん話から歯ブラシプレイ。

その歯ブラシプレイを月火に邪魔され―――本当ならそこで終わりだった。

が、夜な夜な火憐が歯ブラシ勝負を挑みに来た。

で、一線を越えかけた事も有ったが、何とか踏みとどまっている。

「ばーろー!越えやがれ」とか声も聞こえそうだが、この場合越えてしまうと人間強度というか、家庭強度が落ちてしまうだろう。

強度が落ちて、崩壊。

それだけは避けたい。

何としても避けたい。

その一心で踏みとどまる事は出来たが、その踏みとどまりが、結構きわどい線なのである。
22 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 17:33:13.09 ID:.LAUwo2o
「兄ちゃん、今日も勝負だ!」

「やれやれ、またか?」

「昨日は2分35秒で倒されたが、今日こそは5分、5分耐えて兄ちゃんを倒す」

なんて粋がってやってくる。

「しょうがねぇな。ほら、こいよ」と僕は胡坐を組んだ足の上に火憐を寝かす。

「いくぞ!」と時計がジャスト0秒から挿入。

最近は黙々と擦るだけではなく、解説付きでやっている。

まぁ、月火対策なんだけどな。

突然、部屋のドアを開けたところで歯科検診だと言いきってやる為に。

「ほら、火憐。お前の前歯の間に夜ごはんのゴマの皮が詰ってるぞ」

「うぐぐ……」

「親知らずの奥側、磨き足りないな。歯垢が付いてる」

「はぅううう」

勿論、純粋な歯磨きだけじゃない。

抑え込んだ顎から頬のラインを親指と人差し指でなぞる。

なぞる様に摘まむ。

その指を少し上げて、唇の下あたりから皮膚と肉越しに歯茎マッサージも行う。

この方法だと、火憐は3分持たない。

今回も3分足らずで火憐がギブアップ。

半分涙目で、悔しそうな顔をして部屋から出てゆく。

あまり短時間で終わらせると、今度は僕の歯ブラシをもってきて、僕の口の中を弄ろうとするし。

「兄ちゃん、横になれよ!」とか言ってね。

そんな場合は―――
23 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 17:33:49.30 ID:.LAUwo2o
「駄目だ、さっき磨き残しが有ったからもう一回だ」と火憐を再び寝かせる。

ちなみに歯ブラシは僕のだ。

「火憐ちゃん、では始めます。ちなみに今回は僕の歯ブラシだから」

「!!!」

驚いたところで、時すでに遅し。

僕は自分の歯ブラシを火憐の口の中に入れ、磨き倒す。

「どうだ?兄ちゃんの歯ブラシの味は?歯磨き粉の味の中に兄ちゃんの味がするか?」

これはこれで、かなり衝撃的らしい。

「これって間接キスだよな?歯ブラシで間接キス。火憐はいやらしい子だ」

はい、撃沈。

起き上り、僕にしがみ付いたかと思うと、泡だらけの口で僕にキスを迫る。

「兄ちゃん……間接キスも直接キスも変んないよね?」と。

「ああ、そうだな」

と、ついキスしてしまう。

キスはレモンの味なんて嘘。

キスは歯磨き粉の味だ。

「それから―――兄ちゃん、さっき後頭部に当たってたのが固くなってた。大丈夫か?」

「ああ?気のせいだ、気のせい」

「兄ちゃんがその……いいって言うなら……私もいいんだよ?」

「だーめ!はい、うがいして寝なさい」

何とか一線を越えず、僕は耐えている。

え?越えてる?越えてないだろ。

おまけに、足を閉じてもぞもぞしている火憐に何とも思わないんだぜ?

完璧に、一線を越えず耐えていると思わないか?
24 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 17:34:24.93 ID:.LAUwo2o
「かかか、そんな事をしておったのか?お前様達が寝る準備をする頃と言えば、儂がDSに熱中している時間じゃ。今度からなるべく観察するようにするぞ?」

「しなくていいよ」

「かかか、照れるな」

「照れてねーよ!」

「で、お前様。結構いい具合に壊れておるが……」

「やっぱキスは拙いよな?」

「さぁ、どうかのう?西洋では一般的だが、日本じゃそういう風習はないからな」

「まぁ、今後は気を付けるよ」

「儂は一向に構わんぞ?好きな事を好きなだけすればいい。家庭崩壊したところで、儂とお前様の関係は、今以上に密になるだけじゃ」

冷たい言葉を影の中から発した忍は、また沈黙する。

勿論、キスから先、火憐とは何も起こっていない。

これを越えたら……僕が人間で居られる自信は無い。
25 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 17:41:28.21 ID:.LAUwo2o
『月火ジャジメント』

月火の場合、殆ど何の躊躇も無く、ただ「キスしたい」という感覚でやった。

勿論、初回は非常に怒られた。

二段ベッドのハシゴから突き落とされるほど。

でも、「今度やったら舌を絡め取ってやる」と言われた。

そんな事が有った頃から、月火も火憐同様に行動に変化が有り、僕の事を多少なりと良く思ってくれている節がある。

ただ、タイミング良くドアを開けるのは、天性なのか?

火憐と怪しい雰囲気になった折には、何度も助けられている。

助けられていると云うか、殺されかけているとも言えるんだが。

それでも兄思いの良い妹になった。

夜遅く受験勉強をしていると部屋に夜食を持って来て呉れたり。

「お兄ちゃん、頑張ってる?」なんて一丁前の言葉を掛けながら。

「ああ、まぁそこそこに」

「先生が良いからね。頑張って良い大学に入ってよ。何せファイヤーシスターズ自慢のお兄ちゃんなんだから」

「あ、ああ。頑張るよ」

本当に変った。

今までそんな気の利いた事を言うような奴じゃなかったのに。
26 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 17:42:57.23 ID:.LAUwo2o
「ところでお兄ちゃん」

「ん?」

「今でも火憐ちゃんとキスしてる?」

ブッ!

僕は夜食に持ってきてもらったコーヒーを吹き出す。

「何を突拍子もない事を!」

「いやね。前にいってたよね?火憐ちゃんは病身を襲ったって」

「ああ、それが?」

「あれから火憐ちゃん、何か変なんだよね?」

流石、ファイヤーシスターズ参謀、頭の切れは凄いと云うか、直感的にド真ん中を突いてくる。

「変とは?」

「瑞鳥君とも相変わらずギクシャクいているし」

「そ、それは僕と関係ないところで、もめているんじゃないのか?そういう月火はどうなんだ?」

「え?私?うーん……自分で言うのも何だけど、ダメだわ」

「駄目って?」
27 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 17:43:44.75 ID:.LAUwo2o
「なんでだろね?前ほど燃えないんだよね」

「燃えるって……」

「なんか恋の炎が鎮火したみたいな」

「そ、そうなのか?」

「すんごい勢いで冷めた。そんな感じ」

「やっぱ、それも兄ちゃんのせいか?」

「ん〜どうなんだろ?よく分かんない」

「そっか。僕のせいじゃないなら……」

「100%無い訳じゃないよ?50%かも知れないし、99%若しくは1%かも」

「ええ!」

「多少は関与してるってことだよ」

「そう……」

「でね、火憐ちゃんの事に話は戻るんだけど、瑞鳥君と上手くいっていない事に全然落胆してないのね」

「ふーん」

僕はまたコーヒーに口を付ける。

「でね、私思うんだけど、もしかして、お兄ちゃんと火憐ちゃんは今でも―――してんじゃない?」

またコーヒーを吹き出してしまった。

コーヒーカップのコーヒーは殆どをノートとティッシュに飲まれた。
28 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 17:44:18.30 ID:.LAUwo2o
「な、なんでそんな事いうかな?」

「何となく、何となく怪しい。夜、寝る前に歯磨きしてくるって部屋出た後、必ずニコニコして帰ってくるんだよね」

「それは、歯磨きして良い事があったんじゃないのかなぁ?」

「歯磨き如きで良い事なんか起きないよ」

「なら廊下で100円拾ったとか?」

「毎日?」

「ああ、毎日!」

「怪しい……お兄ちゃん、何か隠してるでしょ?」

「いや、何も」

「嘘!」

「月火ちゃんこそ、何か隠してないかな?その帯の後ろとか」

「え?」

「やっぱり」

「えへへ、返答次第じゃ刺してやろうかと、千枚通し入れてた」

「今すぐおいて来なさい!」

「はーい」

月火は返事をして、僕の部屋から出て行った。
29 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 17:44:57.32 ID:.LAUwo2o
「はぁ、本当に拙いなこれは」

なんて溜息といっしょに悩みを吐露していたら、また帰って来た!

「でね、さっきの続きなんだけど―――」

「いや、兄ちゃんはこれから勉強するから」

「勉強と妹の事、どっちが大事かな?」

「それはまぁ―――妹だけど」

「でしょ?でね、火憐ちゃんがさ、寝る前にまたパンツ履き換えたりもするんだよね」

「……え?」

「パンツ。お風呂入って着替えるのに、寝る前にまた着替えるの」

「ぼ、僕にはよく分からないよ」

「なんでだろうね?」

「だから、分かんないって」

「何故パンツを履きかえるか、それが疑問中の疑問なの」

「僕には全く分からないって!」

「ふーん……パンツ履きかえる理由って何だろう?」

「そりゃ、汚れたとか」

「汚れたって……お風呂入ったあとだよ?」

「……」

「お風呂から寝る間に、何があってパンツが汚れたか、そこが疑問なのよ」

「僕は何も知らない」
30 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 17:46:43.86 ID:.LAUwo2o
「ふーん。私はてっきり、兄ちゃんが火憐ちゃんに変な事して―――『濡れて』汚したのかと思ったよ」

「!!」

「何驚いているの?」

「お前、なんて話してんだ!女子が、それも中学生が濡れるとか!」

「え?普通だと思うけど?学校でもみんなそんな話してるもん」

「マジ?」

「うん、女子も男子もそういう話は好きだからね。それに、処女じゃない子もいるよ?」

「……」

「ま、童貞のお兄ちゃんには分からないだろうけど」

「非処女みたいな物言いするな!まるでお前は戦場ヶ原か!」

「ん?ところでお兄ちゃん、また話は戻るんだけど」

「だからなんだよ?」

「私の疑問の解消を手伝ってくれないかな?」

「は?」

「お兄ちゃんと火憐ちゃんがキスしていると、私は仮定しているの」

「仮定すんな!家庭の中で仮定する事じゃない!」

「でね、もしそれが原因で濡れているのなら検証が必要だと思うのよね」

「検証?」

「そう、検証。本当にキスで濡れるか。パンツが汚れるほど、濡れるか」
31 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 17:47:15.88 ID:.LAUwo2o
「お前、アホだろ。なんで僕がそんな検証に付き合わなきゃならない」

「だって、お兄ちゃんに以外に頼めないじゃない」

「そんなもん、人に頼むな!」

「だって、キスは一人で出来ないんだよ?」

「そりゃそうだけど」

「それに蝋燭沢君とは、どうでもいい感じだし、万が一濡れて、その先まで要求されたら私困るし」

「兄ちゃんだって困るわ!」

「ね、一応ほら、前にキスした事もあるんだし、いいでしょ?」

「駄目」

「いいでしょ?」

「だからダメだっ―――」

断り続ける僕の背後に立った月火は、僕の首筋に重く冷たい物を当てる。

「ねぇ、お兄ちゃん。動いちゃダメだよ?」

「えっと、見えないけど何が当っているのかな?細くて鋭利で重くて冷たいんだけど?」

「さぁ?なんだろうね?お兄ちゃんが協力してくれないなら、これを横に引くけど?」

どう考えても包丁。

千枚通しの方が100倍マシ。
32 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 17:48:57.06 ID:.LAUwo2o
「ね、お兄ちゃん。こっち向いて」

僕は恐る恐る椅子を廻し、月日の方を向く。

「ぬぁ!」

「しっ!大きな声出さないの」

月火は僕の膝の上に跨る様に座り、じっとこちらを見つめる。

首に包丁を当てたまま。

「では実験します。お兄ちゃんは変な動きをしない様に。動くと上下に分裂しちゃうよ?」

「あはは……」

月火は寝巻にも和服、というか浴衣を着る。

その浴衣の前が少しはだけ、微妙な曲線が僕の目に飛び込む。

つい、喉を鳴らしてしまった。

「お兄ちゃん……」

月火が僕に接吻する。

何度も何度も繰り返し。

僕は動かず、じっとしたまま。

「ねぇ、お兄ちゃん。パンツ汚れているかな?」
33 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 17:50:05.57 ID:.LAUwo2o
しらんわ!

「ちょっと触って確認してみて」

「無理!」

つい、声を出してしまう僕。

「声出したら、火憐ちゃんにバレるでしょ」

と、月日は僕の舌を自分の舌で抑えつけてきた!

「ふふ、絡め取ってやったぞ。話せないでしょ」

絶句。

「で、どうかな?濡れてる?」

僕は言われるまま、恐る恐る月火の浴衣の隙間から手を入れ、パンツを触ってみる。

「何とも……ない。大丈夫」

「そっか。じゃあ、キスだけじゃないんだ。何やってるのかな?お兄ちゃん?」

「え?」

「私が知らないとでも思ってる?毎晩、火憐ちゃんがお兄ちゃんの部屋に入るの知ってるんだよ?」

「うっ……」

「もしかして、ここを触ったりしているのかな?」

と、月日は僕の手を掴み、自分の胸元へ入れた。

「火憐ちゃんのと、どっちが大きいかな?」

生まれて初めての生乳接触でした。

それも妹の……
34 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 17:50:42.37 ID:.LAUwo2o
「さ、触ってないから……分からないよ」

「ふーん……こんな事はしてないんだ。じゃあ、何やってるのかな?」

僕は沈黙を決め込む。

というか、本当に動けない。

下手に動くと首がもげる。

「ちょっと揉んでみてよ」

「無理!」

「いいから、いいから」

月火は、僕の手の上に自分の手を当て、ゆっくりと動かす。

「はぅ……」

吐息を零す月火。

「なんか、変な気分だよ、お兄ちゃん」

僕は気が狂いそうですから、もう止めて!お兄ちゃんのHPは0よ!

「で、どうかな?濡れてる?」

また確認を促される。

「いや、何ともないよ。大丈夫……」

「おかしいな?なんでだろ?みんなはこれで濡れるって言ってんのに」

「さぁ?兄妹だからじゃないのか?もう気が済んだろ?」

「でもそれじゃ、火憐ちゃんのパンツの件が解決できない」

「いいじゃないか。個人差もあるんだろうし」

「個人差ね……じゃもう少し頑張ってみる?」
35 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 17:51:52.20 ID:.LAUwo2o
「頑張らない!もう終わりだよ!幾ら頑張ってもここは濡れないだろ?」

と、ツンと突いてしまった。

自分でも無意識に。

軽くツンと。

それは大統領命令でコードを打ち込み、二人一組で鍵を同時にONにすると飛んでくヤバいミサイルのスイッチだった。

「ピュッ!」

そんな音が聞こえてもおかしくない様な勢いで、月日のパンツが濡れた。

僕の指先が濡れるほど。

「くはぁ!」

タレ目の月火がより一層タレ目で、僕を見る。

「お兄ちゃん……ごめん、パンツ汚れた」

自分で自覚できる程だったようだ。

「お兄ちゃん、今のなんて攻撃?」

「しらねぇ!というかスマン!そんな事するつもりじゃなかったんだ」

「いいよ、別に。怒ってないし」

そういうと、月日は僕の膝の上から降り、そそくさと恥ずかしそうに部屋から出ていった。

僕は少し照る指先をじっと見つめ……とりあえず洗面台へ向かった。
36 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 17:53:36.88 ID:.LAUwo2o
「とまぁ、こんな事があってから、毎朝『ツンツンしても良いんだよ?』とか言いながら来たり」

「……」

「おい、忍。何とか言ってくれよ」

「鬼畜」

「shit! お前には言われたくない言葉の一つだ!」

「というか、もう十分すぎる程、いいなりじゃ」

「え?」

「本当にお前様は鈍感じゃな。既に二人とも配下ではないか?」

「そうなの?」

「夜伽させようと思えば、どちらも素直に従うであろう」

「ええー!それは困る」

「困ると言われても、儂が困る。あとは好きにされよ」と言い捨て、影に沈む。

はぁ、困った。

どうしたらいいんだろうか。

一人悩んでいると影からまた忍が出てくる。

「お前様、少しお願いがあるんだが?」

「なんだよ?」

「血を少し貰えぬか?」

「血?」

「ああ、あと4歳程大きくさせよ」

「まぁ、それ位なら良いけど」

「すまぬな」

僕は忍に血を分けてやる、いつもより多めに。

僕の血を吸った忍は、14〜5歳という姿になった。

忍が何を考えているのか分からないけど、まぁ今はそんな事より妹達を何とかしなきゃ拙い。
37 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 17:54:08.59 ID:.LAUwo2o
やれやれ、この先どうなっちまうんだろうな?

とりあえず、これ以上唾液を与えては駄目だな。

夜も朝もしっかりと鍵を掛けて……

と言っても、家の中のカギなど、有って無い様な物。

僕の部屋の鍵は、前に掛けたままドアを閉め(内プッシュ式の鍵)、開けられなくなって仕方なくドライバーを突っ込んで廻したら解錠出来た。

故に、今でも鍵を掛けようが、ドライバーを突っ込めば開く。

だから、僕の部屋はいつでも入ろうと思えば入れる。

僕の貞操はどうなっちまうんだ!

「ところでお前様、阿良々木家の門限は何時じゃ?」

「あー、一応夕方だが、妹達の場合友人宅にいくなら大目に見て貰えるし、僕は無いに等しい」

「ほう、成程」

「で、何か良い策でもあるのか?」

「さぁ?何をすれば良いやら。儂にも全く見当がつかんわ、かかか」

「なんだ、用も無いのにそんな事聞くなよ」
38 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 17:54:36.65 ID:.LAUwo2o
「お前様、悪いが今からドーナツを買ってきては呉れぬか?」

「やだ」

「何故じゃ?」

「自分で買いに行け」

「ケチ」

「ケチとはなんだ!ケチとは!僕の財布からお金が出る上に、買いにまで行くなんて無いだろ!」

「この炎天下、儂に出ろと言うのは少々酷ではないか?」

「そりゃそうだけど」

「あと、郵便切手を2枚。80円を2枚じゃ」

「何すんだよ?」

「少し手紙を書こうと思ってな」

「誰に?」

「秘密じゃ」

「なんだ、そりゃ?とりあえず、切手が欲しいなら、ほら」

僕は数少ない年賀状で当った切手を机の引き出しから2枚出す。
39 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 17:56:00.54 ID:.LAUwo2o
「これで良いだろ?」

「ドーナツは!」

「切手が欲しいのか、ドーナツが欲しいのかどっちだ!」

「ドーナツ食べながら手紙の内容を考えるから両方じゃ!とっとと買って来やがれ!」

「お前!誰にそんな事言ってんだ!これでも一応、お前の『あるじ』なんだぞ!」

「うるさいうるさい!買ってこい!買って来ないと家の中で暴れるぞ!」

「あー、ごめん。僕が悪かったです。その代り今のセリフ、もう一回言いなおしてくれるかな?」

「ふん、それ位楽な事じゃ」

「但し―――と言ってくれ」

「なぬ!」

「嫌なら、いかなーい」

「くっ……足元見おって!」

「はいどうぞ!」


「うるちゃいうるちゃい!買ってきやがれー!買って来ないと家の中であばれるじょ!」


「はい、よく出来ました」

忍はプルプルと怒りで震えながら僕にこう言った。

「ゴールデンチョコをいつもの倍買ってこい!お前様の頭の上で食い散らかしてやる!」と。

忍を弄るのは本当に楽しいなぁ。

あるじの特権とでも言うか。

僕は自転車に乗り、国道沿いのミスタードーナツを目指した。
40 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 17:57:19.87 ID:.LAUwo2o
帰宅すると、忍が僕の机に座り、何やら作業をしていた。

「ん?何をやってるんだ?」

「手紙を書いておるのじゃ。それより遅かったの」

「ああ、少しトラブって。で、誰に書いてる?」

「言わん」

「なんで?」

「儂のプライバシーの問題じゃ」

「プライバシーねぇ」

「ところで、お前様。何故手ぶらじゃ?」

「ん?ああ、国道沿いのミスタードーナツ、潰れてた」

「なぬ?」

「ごめんな。折角行ったのに、店がなきゃ買えないよ」

「そ、そんな……」

「いやー、隣町まで行こうと思ったら、自転車のタイヤがパンクしてさ」

「走って何故行かん?」

「おいおい、神原じゃ有るまいし。走ったら片道2時間はかかるぞ」

「今からもう一回行ってこんか?」

「やだね」

「お願い、行ってきて」

「絶対ヤダね」

「こ、今度は何を言えば行ってくれるのじゃ?」

「んーそうだなぁ。じゃあ―――」

「くぅー!我があるじ様も殆ど病気じゃな」

「いやならいいよ?」

「分かった分かった、わかりました、いいます、いうぞ!」
41 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 17:58:47.71 ID:.LAUwo2o

「べ、別にドーナツが食べたい訳じゃないんだからねっ!あ、あんたが、たまには外に出られるようにと思って言っただけなんだから!」


「はい、よく出来ました!」

「わ、儂に何を言わせるんじゃ!」

「じゃ、もう一回行ってくる」

僕はドアを閉め、再び開ける。

「ただいまー」

「ん?なんじゃ、忘れ物か?」

「いや、ほらドーナツ」

「チッ、買ってきてたのか、儂を騙したな!」

「おいおい、酷い言い方だな、騙すなんて」

僕はドーナツが入った袋を手渡す。

「ぬぉ!これは……」

『ホワイトドーナツ 6個入り 180円』

「なんじゃこれは?」

「コンビニで買った」

「これはミスドか?」

「だから、ミスド無くなってたから……コンビニでドーナツ買ったんだよ」

「こんなの、こんなの、こんなのドーナツちゃうわぁ!」

「まぁ、美味いから食えよ」

忍は半べそかきながら、コンビニの菓子パンドーナツを頬張る。
42 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:00:10.76 ID:.LAUwo2o
「美味いか?」

「美味い訳が無い」

「それもドーナツなんだぜ?」

「儂が食いたいのは―――」

「お前が食いたいのは?」

「ミスドじゃ」

「しょうがねぇなぁ。隣町まで行ってきてやるよ。その代り―――」

「またなのか!」

「いやなのか?」

「うぐぅ」

「嫌なら別にいいよ」

「言います、言いますから!」

「はい、どうぞ」


「右手にミスド、左手にカルピス、これであと10年は戦えるッ!!」


「おおー、いいね!似てる似てる。じゃ、行ってくる」

「最高速でいってこい!」

「ああ、分かったよ」

と、僕はもう一度廊下に出て、隠しておいたミスタードーナツを部屋に持ち込む。

「また忘れ物―――ぬお!ミスドではないか!」

「ははは、忍もミスタードーナツの事となると必死で可愛いな」

「儂を、儂を騙したな!」

「いやー、どんな顔をするかなと―――」

「お前様、いっぺん死んでみる?」

「ごめん……」
43 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:01:09.84 ID:.LAUwo2o
「ところで、お前様。本当に助かりたいのか?」

忍はゴールデンチョコを齧りながら僕に問う。

「まぁ、妹達は元に戻って貰わないとな」

「そうか。なら助け船を出してやろうか?」

「本当か?」

「ああ、その代り、成功報酬はドーナツ100個だぞ?」

「100個か……まぁ、家庭崩壊に比べりゃ安いもんだ」

(チッ、200個と言えば良かったか)

「ん?何?」

「なんでもない。あとは儂が指示するまで、死守しておれ」

「ああ、分かった」

忍はドーナツを全部平らげ、影に戻って行った。

ちなみに、文句を言いつつコンビニドーナツも全部食べちまった……どんだけ好きなんだよ!

忍の助け船か、とりあえずは期待できそうだな。

と思った矢先、その晩に事件が起こる。

僕が羽川に勉強を見て貰って、夕方遅く家に帰ってからの事。
44 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:02:04.24 ID:.LAUwo2o
自室で勉強をしていると、いつものように火憐がやってくる。

「兄ちゃん、今日も勝負だ!」

「ごめん、今日は無理」

「勝ち逃げすんなや!」

「いや、そう言う事じゃなくて、本当に無理。忙しいんだ」

「おいおい、兄ちゃん。そりゃないだろ?歯ブラシまで持って来てるのに」

「お引き取りください」

「なんだよ!昨日までノリノリだった癖に!」

「まぁ何というか。この間、月火ちゃんに怒られたんだ。それで、何となくダメかなと」

「え?」

「毎晩、火憐ちゃんが僕の部屋に来て、パンツを汚して帰ってくるって」

「えっ……」

「なぁ火憐ちゃん、やっぱこういうのは良くないよな?

 歯磨きが勝負だけなら良いけど、その、なんていうか、女性としての快感を得られたりするのは拙い。

 それ自体は拙くは無いが、兄弟だろ僕達。な?分かるだろ?」

「……」

「だから、今日から大人しく部屋で居てくれないか?」

「わ、分かった」

火憐は真っ赤な顔で部屋から出て行ってしまった。
45 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:02:39.30 ID:.LAUwo2o
やっぱり、少々過激すぎたか?

年頃の子に、「濡らして」なんてのは、ちょっとな。

おまけに二人の秘密だと思っていた事が、家族にバレていたというのは流石に衝撃的か。

火憐が出て行き、暫くの間家の中に静寂が広がっていたが……

突然、振動と悲鳴がした!

「何!」

僕は慌てて部屋から飛び出す。

「どうした!?」

騒ぎ声のする妹部屋のドアを開けると―――

腕から血を流す火憐。

片や、顔面から血を流す月火。

そして尚、月日に執拗なパンチを繰り出す火憐。

その火憐に対し、アイスピックを振るう月火。

「二人とも止めろ!」

僕は部屋の中に飛び込み、二人を制止する。

「やめないか!」
46 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:03:34.58 ID:.LAUwo2o
「とめんなや!今日はこいつを死ぬまで殴り続けてやる!」

火憐は冷静さを失い、僕にまで殴りかからんとする勢いだった。

「出来るものならやりなさいよ。毎日お兄ちゃんに弄られて濡れてるような淫乱女に私が負けるとでも?メッタメタにしてやるよ」

月火もいつものような優しさを失い、本気で戦闘モードだった。

「二人とも、止めろって!これ以上やったら死人が出る」

「ああ、上等だよ。こんな奴死ねば良いんだよ」

「死ぬのはあんたでしょ?私のお兄ちゃんを独占しようとして」

「お前こそ、人の事こそこそ嗅ぎまわりやがって!私と兄ちゃんが何しようが勝手だろ!」

もう全然収拾がつかなくなってしまった。

下階の親も心配して上がって来た。

僕はドアから半身を出し、「ちょっとした姉妹喧嘩だから大丈夫」と安心させ、とりあえずは退場を願った。

ここで原因が僕だと知ったら親は悲しむだろう。

家庭崩壊してもおかしくない理由だからな。

ドアを閉め、睨みあいの妹達の間に割って入る。

「とりあえず、その拳とアイスピックは仕舞え」

僕の言葉には従順なのか、少しの沈黙の後、火憐は拳を解き、月日はアイスピックを僕に渡した。
47 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:05:34.07 ID:.LAUwo2o
「二人とも、そこに正座」

僕は薬箱を持ってきて、二人を治療する。

まぁ、ちょっと裏技的にアイスピックで指先を切り、火憐の傷口に僕の血を塗る。

月火は鼻血だけなので、軽く血を染ませ丸めたティッシュを両方の鼻に突っ込んでおいた。

「にーたん、いきがふるしい……」

「口を開けておけ」

スーハースーハーと大きく口で呼吸する月火。

火憐の方も血は止まり、傷も癒え始めたがとりあえず絆創膏で誤魔化す。

で、説教タイム。

「で、お前等の喧嘩の理由は?」

僕は何となく分かっていたが、一応聞いた。

「あの……まぁ、そのさっきの話が原因で―――」

「そっか。ということは―――二人ともゴメンな。僕のせいで喧嘩させちまって」

「あ、いや……兄ちゃんは悪くないよ―――」

「ほ、ほうだお。にーたんはわるふないお」

「二人してそう言ってくれるのは嬉しいけど、原因は僕にある。どうやって償えば良いかな?」

考え込む二人。

「二人で話しあって決めてくれ。決して拳や道具に頼らず、お互いの口で話すんだぞ?いいな」

「はい…」

「ふぁい…」

僕は妹達の部屋を出て、部屋に戻る。
48 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:06:04.35 ID:.LAUwo2o
「月火ちゃん、ごめんね」

「わたひこそ、ほめん」

「ていうか、もう鼻血止まってないか?」

「ん?ああ、本当だ。もう止まってる」

「兄ちゃんに嫌われたかな?」

「嫌われたかも知れないね」

「どうする?」

「どうしよう?」

「ところで、月火ちゃん。兄ちゃん好きなのか?」

「火憐ちゃんは?」

「好きかな?いや、大好き……」

「私もだよ。この際だから―――もう好きにしちゃう?」

「え?」

「三人で仲良くすれば良いと思うよ」

「それは……」

「成り行き成り行き!」
49 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:07:52.09 ID:.LAUwo2o
喧嘩を収め、部屋に戻ると忍がぬぅっと出てくる。

「わぉ!ビックリさせんなよ。というか、なんでそんな恰好な訳?」

「どうじゃ?似あうか?」

忍は見知らぬ学校の制服を着ていた。

「どうしたんだよそれ」

「作った」

「作ったって……というか、制服なのに何故かゴージャスに見えるな」

「お?分かるのか?このスカーフはシルクじゃ。この色合いといい、デザインといい素晴らしいじゃろ?」

「というか、そんなのを着てどうするんだ?」

「まぁ、今となっては無用になってしまったが……」

「は?何それ、どういう意味だ?」

「お前様の妹共に手紙を書いて呼びだして、ちょっと諦めさせようと思ったのじゃが……

 我があるじ様は自分で解決の糸口を見つけてしまって悲しんでおるのだ」

「いや、それと制服の繋がりが見えない」

「だから、同年代に喧嘩を売られて買わない妹共では無かろう?」

「ああ、成程―――ていうか、僕の妹が死ぬだろ」

「殺すような事はせん。少し、ハードかも知れんが」

「何する心算だったんだよ?」

「ん?それは簡単な事じゃ」
50 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:09:22.92 ID:.LAUwo2o
そういうと忍は僕の所にすぅっと近づき、軽く抱きつく。

「何すんだ?」

「こう言う所を妹共に見せつけて、諦めさせる算段だったのじゃよ、かかか」

「抱きつくところ見たぐらいで諦めるか?」

「何もそこだけではないわ。恋のライバルは過激に行かなくてはならん」

「へ?」

「こうやって、接吻をする」

忍に接吻された!

ドーナツの甘い香りがするキスをされた!

キスはドーナツの味だった!

「どうじゃ?こう言うのを見せつければ諦めがつくであろう?」

「お前!なんて事するんだ!」

「たかが、接吻ではないか?それに儂とお前様は同じ血で結ばれておるぞ?諦めさせるには他の女の存在が一番であろう?」

「まぁ、そうかもしれないが……それはそれで他の問題が発生する―――」

「なーに、その他諸々、些細な事よ」

と、忍がまた僕にキスしようとする―――

ガチャ

「兄ちゃん、さっきはごめんなー」と、部屋のドアが開く。

抜群に悪いタイミングだった。

そこには火憐と月火が立っていた。
51 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:10:35.65 ID:.LAUwo2o
「謝ろうと来たんだけどー、お取り込み中でしたか?兄ちゃん」ピクピク#

「ちょっとドア締めて開け直した方がいいかな?」ピキピキ#

僕は慌ててドアを閉め、意味のない鍵をする。

直ぐにドアのカギはぶち壊され、妹達が闖入。

「おい、てめぇ!何モンだ!うちの兄ちゃんに手ぇだしやがって!」

「そうだそうだ!私達のお兄ちゃんなんだぞ!家に上がり込んで何してやがる!」

忍はにやりと笑い、妹達を見下すように一瞥。

「ははは、なんだこの小娘共は」と無駄に刺激する。

「おい、やめろ」

「てめぇ!ちょっと来い!」

「はん。儂を捕まえるか?面白いな、いつでも勝負してやるから、今日は大人しく寝ていろ、色ボケ姉妹よ」

そういうと、忍は月火の頭上を越え、部屋の扉の方へ飛び、部屋の電気を落としてしまった。

「見えねぇ!月火ちゃん、アイスピック振り回すなよ」

「月火ちゃんこそ、殴らないでよ」

やっと目が慣れ、ドアの方へ向かい部屋の電灯スイッチを入れる。

「あれ?」

「居ない?」

どうやら、一瞬の闇の間に僕の影に戻ったみたいだ。
52 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:11:16.22 ID:.LAUwo2o
「で、兄ちゃん。色々と聞かせて貰おうか」

「うんうん、朝までたっぷり時間があるからね」

「あの金髪は誰かな?」

「知らない制服、どこの子かな?」

僕は全力でとぼけた。

が、二人の執拗な尋問が始まる。

「とりあえず、ベッドに寝かせて縛りつけようか」

と、火憐が僕の大腿に蹴りを入れる。

言葉に出来ない程の痛みと痺れが僕の足を襲い、僕はそのままへたり込む。

曙の気持ちが少し分かった気がする。

月火がどこからかロープを持ち出し、僕を縛りあげる。

「さて……お兄ちゃん、正直に話さないと―――嘘一回に付き、針一回刺すからね」と月火が笑う。

忍!たすけてくれー!

が、猫の時の様に現れる事は無かった。

僕は夜明け近くまで妹達の尋問という拷問に耐えなければならなかった。
53 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:14:59.70 ID:.LAUwo2o
「―――で、もう一度聞くけどあの子の名前は何?」

「忍野忍」

「年齢は?」

「多分、500歳」

ゴンッ!

「いてぇ!」

「500歳の人間なんて居るか!」

「まぁ500歳の人間は居ないけど」

「だから何歳でどこの子なんだよ」

「知らない」

「名前しか知らない子を家に入れて、抱き合ってキスとか変だろ?」

「いや、本当なんだって」

「もういいや。言いたくないなら本人に直接聞くから」

「とりあえず、お兄ちゃんから連絡してくれるかな?」

「出来るよね?兄ちゃん」

「今夜9時にアリーナ前で集合な」

「じゃ、お兄ちゃん、ごゆっくりお休み」

やっと解放されたが、僕は身も心もボロボロだった。
54 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:15:39.08 ID:.LAUwo2o
妹達が去った後、忍が首から上だけを出し、話し始める。

「今夜が楽しみじゃな、かかか」

「笑い事か?どうすんだよ?」

「行くに決まっておる」

「手紙を送る手間が省けたわい、かかか」

「何か良い策でも?」

「ない」

「へ?」

「何も無い。ただ、戦うだけじゃ。ま、殺しもしなければ、危害も加えん。黙って見ておれ」

「それってどういう事なんだ?」

「まぁ、夜までしっかりと寝ておけ。今夜は長丁場になるぞ?」

そう言って、忍は影に潜ってしまった。

窓の外は、少し明るくなり、日の出が近くなっていた。
55 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:16:26.97 ID:.LAUwo2o
夜、自宅で晩飯を食う。

まるで通夜のような……

火憐も月火も何も言わない。

食事が終わると、そそくさと二人して入浴し、着替え出掛けて行ってしまった。

僕も少し遅れて家を出る。

「お前様、では行くか」

「ああ。ところで本当に大丈夫なのか?」

「案ずるな。一切危害は加えん」

「そっか。なら安心だ」

「あと、途中でコンビニに寄ってくれぬか?」

「コンビニ?いいけど。何を買うんだ?」

「食糧じゃよ。お前様らの言うところの」

アリーナ近くのコンビニに寄り、僕らは買い物をする。

忍はカゴに6個180円のホワイトドーナツを入れる。

「なんだ気に入ったのか?」

「ち、ちがうわい。非常食じゃ」

「はいはい。ところでそっちは?」
56 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:17:36.16 ID:.LAUwo2o
「このカゴか?これはお前様の妹共の分じゃ」

「それにしては多くないか?」

忍はカゴ一杯にスポーツドリンクを詰める。

「まだ足りんぐらいじゃ」

「何時間戦うつもりだよ!」

「そうじゃな、48時間ぐらい」

「ええ!」

「まぁ、心配するでない。今日は金曜日、明日明後日と休みであろう?」

「そうだけど」

「では、行くぞ」

「ああ」

僕は前かご一杯にした自転車の後ろに忍を乗せて、アリーナに到着。

時間は9時少し前だった。

そこには火憐と月火が既に待っていた。
57 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:18:24.92 ID:.LAUwo2o
「へー、ちゃんと来たんだ。というか、なんで兄ちゃんの後ろに乗ってるかな?ムカつく」

「そーだぞ!乗って良いのは私と火憐ちゃんだぞ」

「五月蠅い娘共じゃな、では早速始めるか。どっちから相手にされたい?」

「勿論私だ!」

火憐が口火を切る。

「威勢がいいのぅ。何か良い事でもあったの―――」

忍が全部言い終わる前に、火憐の蹴りが炸裂する。

が、忍はそれを難なく避ける。

「ほぅ。多少は心得があるのか?されど、そんな蹴りでは儂に当らんぞ?真剣に掛かってこんか」

忍は火憐を挑発する。

「なにを!後で詫び入れんなよ!」

「お前こそ、泣きごとを言うでないぞ。何なら二人まとめて掛かってくるがいい」

「お前なんて、私一人で十分だ!」

火憐は覇気を滲ませ忍に挑む。

が、忍は避けて避けて逃げ回る。
58 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:19:04.85 ID:.LAUwo2o
「お前、逃げてばっかすんな!このチキンが!」

「はっは、お前の遅いケリでは儂は止められんか?」

「今までのは準備運動、ここから本気で行くから、死んでも文句言うなよ!」

さっき以上に火憐の身体が切れる。

とんでもないスピードの蹴りを繰り出す。

が、やはり忍には当らない。

空を切る蹴り、微かに忍のスカートに当たるが破れもしない。

「それがお前の本気か?そんな事で儂を殺すなど、笑止!」

忍は走りだし、火憐の後ろに回る。

空かさず、火憐が後ろ蹴りを入れるも、また当らない。

忍は火憐の側面に周り―――

デコピンを入れた。

「いてっ!」

「かかか、どうした?もう終わりか?今のが拳ならお前の首は折れていたぞ?」

「何を!今のはお前の力を見ただけだ!まだまだ!」

それから30分あまり、忍と火憐の攻防が続く。

が、火憐が少し疲れ始めている。
59 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:20:04.16 ID:.LAUwo2o
「お前、少し休憩をさせてやろうか?」

「休憩?そんなもんいらねぇよ!」

「まぁ、落ちついて水でも飲んで来い、息が上がっておるではないか?」

「チッ」

火憐は月火からペットボトルを受け取り、500ccの水を一気に飲み干す。

「後で後悔すんなよ。敵に塩を送った事をな!」

「ほう、そんな事を知っておるのか?博学じゃな」

笑いながら、火憐を翻弄する忍。

もう1時間以上、ダッシュで忍を追いかける火憐。

すでにジャージはベタベタで汗だらけ。

対する忍は、一つも息を乱さず駆けまわる。

「こいつ、化け物か?」

「化物とはなんじゃ?酷い言われようじゃな、かかか。それより、そちらのちっさい方が代わってやるか?」

忍の誘いに、月日が立ちあがる。

「火憐ちゃん、ちょっと休んでいいよ。次は私が行くから」

「あ、ああ」

疲弊した火憐は、月日と代わり座りこみ息を整える。
60 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:20:53.75 ID:.LAUwo2o
「おい、これで良かったら飲めよ」

僕はコンビニで買ったスポーツドリンクを火憐に渡す。

「わりーな、兄ちゃん」

「ああ、腹が減ったらこの―――」

「馬鹿者!それは儂のじゃ!」

と、ドーナツを手にした瞬間、忍に怒られる。

その瞬間を見逃さなかった月火。

「どこ見てるのかな?」と忍に腕を振り下ろす。

咄嗟でかわす忍。

セーラー服の後ろ襟に月火が振り下ろしたアイスピックが刺さり、破れる。

「あー惜しい!もう少しで肩ぶっ刺せたのに!」

「ほう、やるの。案外、こっちのチビの方がやるか?」

「あんたこそチビじゃん。そういう言い方、プラチナムカつくんだけど」

と、笑いながら忍を攻撃する月火。

が、相変わらず忍は避けるだけ。

一切の攻撃を仕掛けない。

何故?

「お前、さっきよりスピードが落ちておるぞ?ほら、どうした?その右手の千枚通しは飾りか?ここを刺さぬか?」

そう言って、忍は拳の親指を立て自分の胸を指す。
61 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:21:58.43 ID:.LAUwo2o
「へへ、あんた、私を本気にさせたよね。後で後悔しても知らないよ?」

笑いながら、忍に襲いかかる月火。

それを紙一重でかわす忍。

段々と月火の息が上がり始める。

「月火ちゃん、一度代わろう」

「まだ大丈夫」

「美しい姉妹愛か?なんなら、二人で掛かるとするか?」

「五月蠅いんだよ、お前。さっきから変な日本語話しやがって」

「そうだよ、日本語でOKなんだよ」

「儂の日本語は変か?なら英語で話そうか?」

「勝手にしやがれ!」

息が整った火憐が飛び出す。

「月火ちゃん、水でも飲んで休憩しな」

「オーライ!レッツパーリィー!」

「ダセェ英語使ってんじゃねえ!お前はどこの正宗なんだよ!」

「OH!yeah!」

「糞が!そのうち捕まえて、ボコボコにしてやるから」

火憐は体から雨のような汗を出しながら、忍を追い回す。

「マジこいつウザ。走って逃げてばっかで」

「火憐ちゃん、それがそいつの作戦かも!私達の体力を奪う気かも」

と、月日参謀の声に、足を止める火憐。
62 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:22:40.33 ID:.LAUwo2o
「成程。じゃ、ここで待機だな。さぁ、来いよ!」

足をとめたまま、忍を睨む火憐。

「ははー、何か勘違いしておるようじゃな?儂も同じ様に走っておるのに、お前等が勝手にくたばっておるだけじゃ」

「何!」

「よかろう、ではお前の前に立ってやるから、儂を殴れ」

「言われなくてもな―――」

火憐は忍に突きや蹴りを繰り出す。

しかし、どれもこれも当らない。

結局、また息が切れて月火に代わる。

そんな事を何度も何度も繰り返す。

「おい、お前様」

「なんだ、忍」

「儂も腹が減った、ドーナツをよこせ」

「ああ」

僕がドーナツの袋を手に取り、開封しようとすると、忍がそのまま投げろと言う。

「え?」

「いいから、こっちにそれをよこせ。あとカルピスウォーターをくれぬか?」

「分かった」

僕は忍にドーナツとカルピスを投げる。

妹の攻撃を避けながら受け取り、美味そうにそれを喰う。

「えらい余裕じゃん、このボケがぁ!」

「お前も一つどうじゃ?」

と、火憐の口にドーナツを押し込む。

「う、うぐぐっぐ」
63 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:24:56.08 ID:.LAUwo2o
「息ができぬか?なら、休憩して何か飲んで来い」

と、火憐の背に廻り、軽く突き飛ばす。

火憐はそのまま月日の居る所へヨタヨタと飛ばされる。

「こいつ、面白いぐらいにやるじゃん」と月火が言う。

「お前もドーナツ喰らうか?」

「私はドーナツは嫌いなんだよ」

「それはそれは、こんなに美味いのにの」

「お前と同じ位、嫌いなんだよ!」

「食わず嫌いはいかんぞ?ほら喰え」

アイスピックを振り回しながら突進する月火の口にドーナツを押し込む忍。

「どうじゃ?うまいか?かかか」

「げほっげほっ」

「お前、勿体ないではないか?時間をやるからちゃんと喰え。嫌いなら水で流しこめ」

かれこれ数時間、火憐と月火が忍に翻弄され、そろそろ空が薄ら明るくなってきた。

「はぁ、今日はこの辺で許してやるわい。儂も日が昇ると用があるでな」

「逃げんのか!」

「逃げはせん。また今夜ここに来い。幾らでも相手してやる、かかか」

「まてや!」

「儂はのう、右手にドーナツ、左手にカルピスがあれば10年は戦えるから安心せい。何度でも相手してやる、ではな」

そう言うと、忍は火憐達に背を向け、歩きだした。

僕も一緒に。

「お前ら、先に帰るから、ゴミ捨てて帰ってこいよ」

僕は、自転車の後ろに忍を乗せ、家路に就いた。
64 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:26:12.81 ID:.LAUwo2o
「かかか!久々に遊んだわい」

「本当に、手を出さなかったな」

「当たり前じゃ、あと1日もやれば良いだろう」

「ん?」

「なんでもない、こっちの話じゃ」

「そうか」

「では儂はまた今夜の為に寝るからな、お前様も休めよ」

「ああ、お休み」

「おやすみ、我があるじ様」

暫くして、火憐と月火が戻る。

二人とも疲労困憊、おまけに汗だく。

「兄ちゃん、あいつ何モンだ?」

「さぁ?よく知らない」

「本当かよ!でもまぁ、いい。今夜こそケリ付けるから。じゃ、風呂入って寝る」

「ま、頑張れよ」

「ちなみに、兄ちゃんはどっちの味方だ?」

「別に。どっちの味方でもねーよ」

「なんだそりゃ?」

「早く風呂に入れ、汗臭いぞ」

「分かったよ。覗くなよ!」

「ああ、了解」

忍との一戦の尾を曳いているのか、火憐は少し昔の火憐の様だった。

月火は終始無言で、僕をチラッと見た後、そのままバスルームに消えてしまった。
65 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:27:03.08 ID:.LAUwo2o
夕方、よく寝て体力が回復した二人は早目の夕食を取り、二人で作戦会議。

「兄ちゃんは向こう行ってろ。私達の味方じゃないのに聞かれるのは困る」

「敵でも無いだろ?」

「そんなの、わかんねぇよ!」

「そうかい。じゃ、また今夜な」

僕はそう言って、今日は先に家を出た。

アリーナに向かう途中、羽川に出会った。

「阿良々木く〜ん」

「おお、羽川。どうした?」

「どうしたもこうしたもないわよ」

「え?」

「え?じゃなくて、戦場ヶ原さん怒ってたわよ」

「なんで?」

「あらら。阿良々木君、今日は戦場ヶ原さんに勉強を教わる日じゃなかったの?」

「!!」

「やっぱり忘れてたんだ」

「そういえば、寝ている最中に携帯が鳴ったような……気もする」

「寝てたの?」

「うん。昨日徹夜だったんで、朝からさっきまで寝てた」
66 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:27:59.45 ID:.LAUwo2o
「ふーん。何が有ったか知らないけど、戦場ヶ原さん、私の所に電話してきて『今日は羽川さんが担当の日だっけ?』って言ってたよ。

 とりあえず、お詫びの電話を入れた方が良いんじゃないかな?」

「分かった。そうする」

「ところで―――徹夜して何してたのかな?」

「えっと……家庭崩壊の危機を救ってた」

「家庭崩壊……?」

「ああ、でもまぁ、全部原因は僕にあったので、尻拭いってとこかな」

「そう。何でも良いけど、無茶は駄目だからね」

「ああ、分かってるって」

「じゃ、また来週」

そういうと、羽川は僕の視界からゆっくりと消えていった。
67 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:30:48.91 ID:.LAUwo2o
僕は携帯を取りだし、戦場ヶ原に電話を入れる。

1コールで着信……繋がったかと思うと切れる。

もう一度架ける。

1コールで着信…が切れた。

「あれ?電波状態が悪いのかな?」

もう一度架ける。

呼び出し音が鳴らず、アナウンスが流れる。

「おかけになった電話は現在、電波の届かない場所にあるか電源が入っていない為架かりません。こちらは―――戦場ヶ原ひたぎです」

「おい!」

「何、阿良々木君。あなたに『おい』呼ばわりされる覚えは無いわ。

 あなたと私の親って兄弟姉妹かしら?そうであっても、私はメイに当たるわ。

 言っとくけど、阿良々木君が大好きなメイドじゃないから」

「誰がボケろと言った!それに僕は作者と違ってメイド萌えじゃねぇ!」

「ボケてなきゃやってられないわ。私の貴重な時間を割いて阿良々木君の為にと思ったのだけれども……それを連絡も無しにキャンセルするんだから」

「あ、それはゴメン」

「ごめんで済めば軍隊は要らないのよ」

「スケールでか!」

「言っておくけど、私に勉強を見て貰いたい『ひたぎ蕩れ』男子は、全国で10万人はいるのよ?

 その10万人の中から選ばれているのに、それをブッチでドタキャンするなんていい度胸よ。1対99999の戦争をしたい訳?」

「いえ……というか、10万もファンがいるのかよ!」

「居るわよ。で、ドタキャンの理由は何かしら?」
68 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:32:22.61 ID:.LAUwo2o
「寝てました」

「誰と?」

「え?」

「誰と寝たのか聞いているのよ。私の授業よりさぞ、気持ちの良い『寝た』だったのでしょう?誰と寝たのかしら?」

「意味が分かりません」

「『寝た』の意味が分からないだなんて、流石童貞ね」

「いや、ただの睡眠だよ、睡眠。徹夜明けで寝てしまい、目が覚めたら夕方だった」

「わ、私はただの睡眠に負けたの!悔しい!」

「眠気に負けたのは僕だから!」

「で、徹夜の理由は何かしら?」

「まぁ、一言で言えば人道支援」

「また―――」

「ごめん、またなんだ」

「そう。それなら仕方が無いわ。人道支援は阿良々木君の存在理由を唯一証明できる事だから」

「何それ。僕ってそれ以外に生きている理由が無いのか?」

「当たり前じゃない。阿良々木君から人道支援を抜いたら……ただの木偶の坊じゃない」

「……」

「まぁ、仕方が無いわ。今回は一応許すから」

「あ、ありがとう」

「その代り、この穴埋めはちゃんとしなさいよ」

「分かった」

「どう分かったのかしら?」

「えっと……最高のデートプランを練らせて貰います」

「そう。最近、ちゃんと分かってるじゃない。期待してるからね」

「ああ」
69 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:33:47.76 ID:.LAUwo2o
「で、今どこかしら?」

「外に居るんだ。今日も人道支援、家庭崩壊の危機から脱出する為に戦いに」

「ふーん。そう、頑張ってね」

「ああ」

「死なない様に」

「大丈夫だって」

「ちゃんと帰って来なさいよ」

「そんな無茶はしないから」

「分かったわ。じゃ、行ってらっしゃい」

「はい、行ってきます」

ピッ

とりあえず、許して貰えた。

「しかし、お前様も大変だな」

影から出てきた忍が荷台に座っていた。

「ん?ああ」

「ついでにあの専用携帯食も処分するか?」

「なんて事言うんだ!」

「ちっ、残念じゃ」

「そんな事されたら、僕が無念だよ!」

「まぁ、いい。今日もコンビニへ寄ってから行くぞ」

「はいよ」

僕らは昨日と同じようにコンビニへ寄ってから、アリーナに到着。
70 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:34:35.14 ID:.LAUwo2o
電話や買い物をしている間に、火憐と月火に抜かれたようで、二人は既に到着していた。

「やけに遅かったじゃん?先に出たから、もう来ているかと思ったのに」

「また二人で来て――ムカつくよね、そのビッチ」

「誰がビッチじゃ!」

「なんか声がビッチくせえんだよ」

「!!」

「今夜は昨日みたいには行かないぞ、何せ作戦があるからな」

「ほう。それよりもお前らこそ儂を怒らせたようじゃな。今日は攻撃させて貰うぞ」

「おい忍!それは拙いだろ!」

「ビッチ呼ばわりされて、許せるとでも思うか?」

「だけど―――」

「心配は要らん、死なない程度の攻撃をする」

「それは死んだも同然だろ!」

僕の意見など無視し、忍が動く。

併せて、火憐と月火も動く。

忍を挟む形で攻撃を仕掛ける火憐と月火。

「ファイヤーシスターズの真髄をちゃんと見とけよ」

「ふんっ、ガキの遊びじゃあるまいし。ああ、ガキであったな」

「ふざけるのも、大概にしろっていうの!」

火憐が攻撃し、忍を追い込む。

その先に月火が待機し、得物で忍を狙う。

「小癪な」

忍は、月日を飛び越え、攻撃をかわす。
71 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:36:17.34 ID:.LAUwo2o
「何度やろうと、お前たちに負ける儂では無い。では、今日は儂から一度攻撃を仕掛けるぞ」

電光石火で月火の背後を取り、両の手を押さえそのまま火憐の居る方へ突進する。

「かわすか?かわせばこいつはコンクリート壁に激突じゃ」

火憐は両の手を広げ、月日を受け止めようとする。

忍は―――何の躊躇も無く、突き進む。

「ぐはっ!」

火憐と月火が衝突し、地面に打ちつけられ、鼻血を流す。

「ほぅ、姉妹愛か。素晴らしいな。なら、一緒に死ねば良い」

地面に這い蹲る二人に、忍は飛び蹴りを入れる。

「忍、それ以上は!」

僕の声に反応し、忍はその軌道を変え、妹達の真横に降り立つ。

「助かったな、貴様ら」

「うぐぐ」

「悔しいか?」

「畜生!」

立ちあがり、忍に牙をむける火憐。

「ほう、まだやるか?ならば、あの世に送ってやろうぞ」

「忍、もう止めてくれ。それ以上すれば、僕の妹は死んでしまう」

「まぁ、お前様が言うなら―――」

「五月蠅い兄ちゃんだな、少しは黙っとけよ」

「火憐ちゃん、何度やっても勝てる相手じゃないんだ!」

「黙っててよ、お兄ちゃん。ここは私達の戦場なんだから」

「戦場って……」

と、そこに―――
72 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:37:09.05 ID:.LAUwo2o
「あら?呼んだ?」

振り向くと、戦場ヶ原が居た。

「今、誰か私を呼ばなかったかしら?」

「戦場ヶ原!」

突然登場した戦場ヶ原に驚いた僕。

僕の驚いた声に動きを止めた3人。

「やぁ、阿良々木先輩、何か面白い事があると戦場ヶ原先輩に聞いてやってきたんだが?」

神原まで居た。

「神原先輩!」

神原の登場に火憐も驚く。

「なんか面白い事をやってる聞いて、来たんだけど、相撲?柔道?それより、バスケットしましょう、バスケット」

神原は僕にバスケットボールを投げる。

「さっきから見てたんだけど、殴り合いとか野蛮だからスポーツで決着しないか?」

神原が提案してくる。

「儂は何でも構わないぞ」

忍が同意すれば、それは満場一致に等しい。

神原の意見に服従する火憐、火憐の意見に賛同する月火。

「じゃ、3on3でやろう。ゴールはこの街灯の一番上だ」

「で、神原。チームはどうするのかしら?」
73 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:38:09.13 ID:.LAUwo2o
「阿良々木先輩チームと火憐ちゃんチーム。私は火憐ちゃん達のチームをアシストします」

「そう。なら私は阿良々木君を『助ける』しかないわね」

数分前まで、流血刃傷沙汰だったアリーナ前が突然、3on3会場に。

こいつらの懐の大きさ、引き出しの多さにはいつも感心させられる。

「では始めるわよ」

「お前様、バスケットボールは経験あるのか?」

「体育の授業でな」

「では、戦力外じゃな」

「!!」

「ところで審判はどうするのかしら?セルフジャッジかしら?」

「審判は私がしようか?」

その声に振り向くと、羽川が居た。

「お前、どうして……」

「人道支援だ家庭崩壊だって聞けば、心配になるじゃない」

「でもよくここが分かったな」

「何となくね。何となく阿良々木君が闘うならここかなって思って」

「おいおい、そこは学校って選択肢だろ?」

「ふふ、戦場ヶ原さんから連絡貰ったのよ」

「あー嘘ついた!」

「私、嘘なんか吐いた事無いよ?」

紛れも無く、それは嘘だった。

羽川はそういう奴なんだ。
74 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:40:44.20 ID:.LAUwo2o
「役者はそろったわね、では始めましょう」

羽川の合図でゲームは始まった。

喧嘩ではなくスポーツ。

みんな汗だくで走りまわった。

火憐と月火、それ以上の動きの神原。

こちらは常軌を逸した動きの忍に、中学陸上で快速少女だった戦場ヶ原。

今でも足は速かった。

で、その中で一番動きの悪い僕。

それでもシュート力はそれなりにあった。

数時間後、そろそろ日が昇り始める時間になっても僕達はまだ遊んでいた。

「いつまでたっても決着がつかないわね、最後は何か他の事で決める?」と羽川が口を挟んだ。

「決着?そんなもん、とうの昔についておるわ。かかか」と忍が笑う。

「どういう意味なんだよ?」

「戯れじゃ、戯れ。今は戯れておる。決着は昨日の時点でついておるわ」

「え?」

どういう意味なんだろうか?

僕は忍にその訳を聞いてみた。

これが大失敗とも気がつかず……
75 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:42:27.88 ID:.LAUwo2o
「そもそも何故、儂が昨日は逃げ回ったか分かっておるか?」

「さぁ?」

「汗をかかせる為じゃ」

「汗?」

「まだ分からんか?大量の汗と共にお前様の成分が流れ出し、水分を取る事で希釈される。

 また流れ出る。恐らく、昨日の風呂の時点で大凡の成分は出切ったであろう」

「成程。じゃ、なんで今日も来たんだ?」

「予備日じゃ、予備日。まだ抜けておらん場合に備えてな。しかし、再戦希望があったからな、暇つぶしじゃ」

「というか、そんなに簡単に抜けるのか?」

「簡単には抜けんわ。ただ、お前様の妹共の運動量は普通の人間のそれとは違う。

 明らかに、倍、いやもっと多いであろう。故に発汗量も並みではない。

 通常の人間の3倍は出ているのではないか?」

「ああ、だから昨日、あれだけのドリンクを買ったんだな」

「そういう事じゃ。見ての通り、昔の様に凶暴であろう?」

「凶暴って……まぁ、昨日の時点でなんか変だったけど」

「ま、そういう事じゃ。これで一件落着じゃ。今後は不用意に妹とキスなどするでないぞ?かかか」

笑い飛ばす忍とは別に、戦場ヶ原と神原と羽川が真顔で僕に迫る。

「今の話、詳しく聞かせて貰えるかしら?」

「はい?」
76 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:45:10.45 ID:.LAUwo2o
今回の後日談、というかオチ

忍がペラペラと全部喋ったお陰で、戦場ヶ原達に全部ばれた。

その場で、5対1のドッジボールが始まり、僕は散々な目にあった。

「阿良々木君、不潔」と戦場ヶ原に顔面狙いで投げられ、

「野生児は嫌よね」と羽川にはフェイントパスを仕掛けられ、

「自分だけリアルエロゲなんてずるいぞ!」と神原に金的を狙われる。

火憐と月火に至っては、忍の正体を教えろと、相変わらずハードに攻めてくる。

で、当の忍は……

アリーナの壁にもたれ、コンビニで買ったホワイトドーナツを美味そうに食っている。

走りまわりながら僕は忍に聞いた。

「忍、ホワイトドーナツは美味いか?」って。

忍は嬉しそうに「いや、全然ダメだ。早く解決協力した分の報酬のミスド100個頼むぞ」と言った。

ちなみに、翌日以降の話だけど、火憐と月火は以前と同じように僕に対して冷たくなり、朝は布団をバリバリ剥がしてく。

あと、弊害というか……

戦場ヶ原も汗をかき過ぎたせいか、昔の戦場ヶ原になっていた。

これは非常に残念だけど―――またデレやドロになるところを見れると思えば、それはそれで良いかも。

「阿良々木君、当分私とキス出来ないと思いなさいね」と言われたけれど。


解散後、僕は汗だくボロボロの姿でミスドに行き、200個のドーナツを買って帰宅した。

え?100個多いだろうって?

それは、みんなで仲良く自宅でドーナツパーティーをやったからだよ。


おわり
77 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/23(木) 18:49:09.05 ID:.LAUwo2o
短めのSSで、タイトルも決まりませんでしたので、総合という形で立てて投下させていただきました。
タイトルは呼んでくれた方が、何か付けてくれると嬉しいです。

次回は暦と翼の少し切なくて悲しいお話です。

御静聴、ありがとうございました。

尚、誤字脱字は意図的に仕組まれています。
原作になるべく近い設定で書きましたが、本編とは一切関係ありません。フィクションです^^;

また近いうちに。
78 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 18:51:57.04 ID:nJIfJq2o
とりあえず乙
79 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 18:52:09.30 ID:eTnagsAO
乙であった
80 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/23(木) 23:44:20.88 ID:dRRNTMAO
乙!
妹達が可愛い過ぎて生きるのが辛い
81 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 00:41:45.03 ID:euQ81kEo
やはり忍が一番だ
82 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 13:52:41.60 ID:ONrLMIDO
乙だぜ
83 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 20:58:31.22 ID:qPoDTwAO
ご飯が帰ってきた!!





あ、乙です
84 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/24(金) 21:19:17.21 ID:JSRTFMSO


修行してエロスも書けるようになりなさい
85 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/25(土) 14:45:10.67 ID:aFz776SO

やっぱ忍だな
86 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 00:59:44.25 ID:suDELDYo
楽しかったよ乙
87 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/27(月) 04:07:10.19 ID:CTPjZcs0
面白かったです
続編を考えてたらで
いいので、
続き書いてみてください
88 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 09:36:21.78 ID:F6Spye.o
寝取られも読みたい
89 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/27(月) 18:05:35.45 ID:5W7BaWko
中途まで書けました。
待ちくたびれそうなら言ってください、落とします。
90 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:10:46.48 ID:.m1dZ6AO
\(^o^)/
91 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/27(月) 20:30:20.78 ID:jAM2IYSO
よしこい
92 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/27(月) 23:18:06.24 ID:5W7BaWko
「こよみフェイク」(仮)

また今回も題が決まっていません。
つくも%趣味で書いています。
誤字脱字は仕様です。
ちなみに、今回は八九寺さんが出てきます。

では、始めます。
93 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/27(月) 23:19:53.60 ID:5W7BaWko
秋、体育祭まであと少しという時期の話。

近く行われる体育祭に向け、HRで競技種目出場の割り振りを決めていた。

「―――という事で決まりましたが、異議のある方は居ますか?」

羽川は、クラス全員に賛否を問う。

勿論、異議異論を唱える者など誰もいない。

そりゃそうだ、基本的に自分で出たい種目に挙手し、出たい種目が無い人は自動的に綱引きだから。

HRが終わり、僕達―――羽川と戦場ヶ原は教室の隅で少し話し込んだ。

「戦場ヶ原は400mリレーか」

「ええ、久々に走ろうかと」

「で、羽川は騎馬戦」

「ええ、騎馬戦なの」

「なんか意外だな?」

「そう?ダンスとか玉入れって地味じゃない」

羽川らしくない発言に少し驚いた。

「で、阿良々木君は棒倒し。棒倒しの棒に立候補するなんて素敵ね」

戦場ヶ原がボケる。

「おい、なんで僕が棒なんだよ!」

「冗談よ。本気になるなんて阿良々木君もまだまだ人が出来ていないわね」

「悪かったな、半人半鬼で!」

「誰もそこまで言っていないわ」

「へー、そうですか」

「ええ。冗談はさておき、棒の先端に一番に登ってくれる事を楽しみにしているわ」

「お、おお。頑張る」

「で、その棒が一気に倒れたら面白いのに」

「僕が死んじゃう!」
94 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/27(月) 23:22:06.95 ID:5W7BaWko
そんな放課後の一時を僕達は、雑多な会話で浪費していた。

「体育祭が終わったら、あとは受験だけよね。阿良々木君、自信のほどは?」

羽川が僕に話を振る。

「ああ、まぁなんとか。先日の秋季模試では偏差値6上がったし」

「6上がったところで幾つになったのかしら?40が46になるのと、60が66になるのとでは意味が違うのよ?」

辛辣な戦場ヶ原。

「まぁ、そうなんだけど。一応、55が61になった」

「あら?いつの間にそんなに上がったの?」

報告しなかった事に少し機嫌が悪くなった様な気がしたが……僕は続けて話した。

「夏の模試で55だったんだ」

「羽川さんは知っていたの?」

「うん。というか私が―――夏休みに全国模試があると聞いて、阿良々木君に勧めたのよ」

「ふーん。私には一言も言わなかったわね、阿良々木君」

「え……いや、まぁ、なんというか、上がったら驚かそうと思って」

「あっそ。まぁ、上がって当然よね。私と羽川さんに教えられているのだから」

「ちなみに、羽川と戦場ヶ原はいくつなの?」

「私は―――受験する気ないから、模試らしい模試は受けてないけど、春の校内模試では79だったかな」

「79……えっと、その偏差値だと、どういった大学に行けるんだ?」

「阿良々木君、79だとあなたの行けない大学の殆どに行けるわ」

「やだな、戦場ヶ原さん、大げさよ」

「そうかしら?最高峰も目指せるのじゃ無くて?」

「まぁ、それはそうなんだけど。ちなみに、戦場ヶ原さんは?」

「私は、77よ」

「77……」

僕は改めて、この二人の頭の良さに敬服した。
95 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/27(月) 23:23:39.06 ID:5W7BaWko
「ちなみに、戦場ヶ原が受ける大学は偏差値どのくらいなんだ?」

「さぁ?」

「さぁ?って、決めているんだろ?」

「まだ決めていないわ。学校推薦も断ったし」

「なんで?」

間髪いれず、羽川に丸めた体育祭の小冊子でポコンと頭を叩かれた。

「阿良々木君、本当に君は鈍感だね」

「え?」

「とりあえず、今は阿良々木君が頑張ればいいの。阿良々木君が入れそうな大学が戦場ヶ原さんの志望校なんだから」

「どういう意味なんだよ?」

僕は羽川に質問をしたが、戦場ヶ原が話し始める。

「あら、羽川さん。よく知っているわね」

「今の話から何となく分かるじゃない」

「そう。本当に羽川さんは何でも知っているわね」

「……最近、二人とも似てきてない?」

「そうかしら?」

「私に何か言わせようとしていない?」

「別に」

「そう。ならいいんだけど」

冗談なのか本気なのか、静かな口論に見えるこの二人の会話は少し怖い。

何か火種になりそうな気がいつもする。

鈍感と言われた僕でも分かる気がした。
96 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/27(月) 23:26:47.04 ID:5W7BaWko
しかし、僕の入れる大学が戦場ヶ原の志望校?

!!!

なんてこった、同じ大学に行くつもりなのか!

嬉しい気もしたが、よくよく考えれば……

これは下手にランクの低い大学に行ってしまうと、『阿良々木君のせいで私の人生、台無しよ』とか言われる!

これからは良く考えて行動しようと心に誓った。

が、2年半の時間は戻らないんだけどな。


ふと、羽川の方へ目を遣ると、苦しそうな顔が一瞬見えた。

「それより羽川、気分でも悪いのか?」

「なんで?」

「さっきから、少し顔色悪いぞ?」

「そ、そんな事無いよ。元気だよ」

「ふーん、なら良いんだけど」

「阿良々木君が心配ばかりかけるから、私も羽川さんも気が気でなく心労が溜るのよ」

「僕はそんなに迷惑かけてる?!」

「別に迷惑とか心配事とか掛けられてないから大丈夫」

羽川は慌てて、取り繕う。

「そっか。今年の夏は暑かったから、疲労かもな」

「今年は……色々とこの半年で有り過ぎたからね、特に阿良々木君や戦場ヶ原さんは―――」

「そうね、色々あったわね。私や神原とか―――」

「ま、古い話を蒸し返しても仕方が無いし、帰ろっか」

僕は何となく、戦場ヶ原の話の腰を折った。

「そうね」

僕達は鞄を持ち、校門まで並んでグランドを歩く。
97 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/27(月) 23:29:02.09 ID:5W7BaWko
「じゃ、私こっちだから」

羽川と別れ、僕は戦場ヶ原と帰る。

僕は戦場ヶ原を自転車の後ろに乗せて家の近くまで送ってゆく。

二人乗りして帰るのに羽川に見つかると五月蠅いので、こっちを見ていないかと振り向いたら……

羽川が頭を押さえながら、歩いている後ろ姿が見えた。

―――頭痛?

「どうしたの阿良々木君?」

「あ、いや、なんでもない」

「そう」

「ところで戦場ヶ原。お前、羽川の前で僕の話とかする?」

「たまに」

「そうか……」

「それがどうかしたの?」

「いや、なんでもない。何でもないんだけど……」

「何か?」

「あいつ最近、頭痛がするとかそんな話してなかった?」

「さぁ?話すと言っても、阿良々木君の受験勉強のカリキュラムの相談程度だし、今日の雑談なんて沢山話した方よ」

「そうなんだ」

「ええ、そうよ」

「そっか。なら僕の気のせいか」

「阿良々木君。阿良々木君は私に何か話すべき事があるのかしら?」

「いや―――」

と、言葉を濁した瞬間、戦場ヶ原の顔を僕の真横に、ニュッっと近寄る。

「話しなさい」

勿論顔だけじゃなく、何かの文房具も僕の体に近接していた。
98 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/27(月) 23:30:46.26 ID:5W7BaWko
「いや、別に大した事じゃないんだけど」

「でも、羽川さんにとっては重大な事なのではないのかしら?」

「ああ、まぁそうなるかも…」

「言いたくないの?」

「いや、そういう訳じゃないけど」

「怪異がらみ?」

「ああ、まぁそんな所」

「だったら尚更、文化祭の時も羽川さんの事で『人道支援』とか言ってたわよね?」

「よくそんな古い事、よく覚えてるな」

「ええ、私は―――今まで、阿良々木君が言った全ての言葉を記憶しているわ」

「お前はボイスレコーダーか!」

「正確には記録しているね。日記に書いたり、メモしてみたり」

「そっちの方が怖いわ!HDDじゃあるまいし」

「あら?それだけあなたの事が気になるのよ」

「……まぁそう言われたら嬉しいけど、全部記憶しないでください。というか監視されてる?」

「嫌よ。あなたが私に吐いた言葉は全部私の物だから。というか阿良々木君の全ては私のものよ」

「そんな事言われたら、二度と話せない!」

「私は―――離さないわよ」

つくづく、愛されるの意味を考え直させる奴だな。
99 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/27(月) 23:33:41.99 ID:5W7BaWko
「―――で、私には言えない事なのかしら?」

「そういう訳ではないんだが……」

「無いけど?」

「なんていうか、非常に言い難い」

「言いなさい」

「えっと……とりあえず、場所を変えてちゃんと話させて欲しい」

僕は人に聞かれると言う事よりも、戦場ヶ原のリアクションが気になり、道で話す事を躊躇った。

「分かったわ。では、このまま家に来て」

「ああ、そうする。助かるよ」

僕は戦場ヶ原のアパートへ向かった。

「狭いところだけど上がって」

「ああ」

「本当に狭いと思ってもう口にするもんじゃないわ」

「別にそんな事思ってませんから!」

「今、『ああ』って同意したじゃない!」

「それは『上がって』にだ!』

「ニダニダ五月蠅いわよ」

「……」
100 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/27(月) 23:36:22.38 ID:5W7BaWko
「―――で、羽川さんの関係する怪異って何?」

「猫」

「それはどんな猫なのかしら?」

「人の生気を吸い取るんだ、エナジードレインと言って吸血鬼にもある能力」

「ふーん……それが羽川さんの元気の源な訳?」

「いや、そういう訳じゃない。特に羽川が元気になる訳じゃない」

「?」

戦場ヶ原は不思議そうな顔をする。

「羽川のストレスによって発現し、やたら滅多と暴れる猫。そいつが吸うだけだ」

「あら暴れるの?まるで羽川さんと逆なのね」

「そう、それなんだ。忍野曰く、二重人格の様なものらしい」

「ふーん。普段四角四面で真面目な羽川さんの裏面……凶暴そうね」

「ああ、そうだ。非常に厄介な存在だ。羽川のストレスが消えるまで暴れる」

「その凶暴な猫をどうやって退治したの?」

「退治というか、鎮めただけで今でも羽川の中に居るんだ」

「それって、私とは違って―――神原の左手の様に?」

「ああ。そういう事。ただ、神原のように20歳で元に戻るとかそういう確約は無い」

「へぇ。じゃ、またその猫が現れると?」

「ああ。その予兆で羽川の頭痛が始まる」

「今日、彼女が頭を押さえていたので、そう思った訳なのかしら?」

「ああ。多分、また何かストレスを抱え込んでる」

「で、さっきの話ね。どんなストレスなのかしら?」

戦場ヶ原が僕を―――僕の目を真剣に見つめる。

僕が嘘をつかない様に。
101 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/27(月) 23:39:17.67 ID:5W7BaWko
「えっと、聞いても気を悪くしないで欲しい」

「分かったわ」

「あと、その視線やめてくれないか?」

「あら?視線恐怖症なのかしら?どこの猟師なのよ、阿良々木君」

「いや、僕は猟師じゃないし」

「似ているじゃない」

「は?」

とまた、よく分からない話になってしまった。

気を取り直して、僕は意を決して話した。

「猫曰く、羽川は僕の事が好きらしい。春休みからずっと……」

「ふーん」

顔色一つ変えず、眉一つ動かさず戦場ヶ原は生返事を繰り出す。

「で、前々回GWは家族の事でストレスが溜って―――これはあいつの家庭の問題なので、

 詳しい話は端折らせて貰うけど、二重人格的な猫が暴れたんだ」

「そう。その時はどう対処したの?」

「忍野の所に居た女の子、忍が猫のエネルギーを吸い取って元に戻った」

「そう」

相変わらず、生返事。

半信半疑なのだろうか?

「それで忍野と知り合ったんだけど」

「で、前回は阿良々木君の事が好きでストレスなの?」

「猫曰く、お前がサラッと奪って行ったらしい」

「あら?奪うだなんて。私は誰からも奪っていないわ。現にその時の阿良々木君は『フリー』だったじゃない」

「そうなんだけど……」
102 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/27(月) 23:43:23.01 ID:5W7BaWko
「で、前回の―――文化祭前の人道支援ではどうやって鎮めたの?」

「うん、やっぱ忍が助けてくれた」

「ねぇ、阿良々木君。人道支援とか言っちゃてるけど、それって根本的に何の解決にもなっていないわよね?」

「え?」

「自立できない人に食事と寝床を与えるだけで、何もさせていないのと同じじゃない?」

「……」

「彼女がまた別の事でストレスを溜めたらら猫が暴れる。その度に阿良々木君は助けに行くのかしら?いえ、助けに行けるのかしら?」

戦場ヶ原の言う事は正論だ。

確かに、今はクラスメイトとして一緒に居るけど、この先―――僕達は必ず離れる。

そんな状況で羽川がストレスに負け、猫を出してしまったら……

数週間から数カ月、いやストレスの度合いによれば1年近く暴れるかも知れない。

そして、その間の記憶が無い。

それはそれで、羽川自身の精神が折れるかも知れない。

だからって、どうしようも無いじゃないか?

「阿良々木君、解決するなら羽川さんの人間強度を上げるしかないんじゃない?」

「ん?」

「もっと活発で、内に溜めこんだりしない性格、そうね私ぐらいに」

「それは無理だろ?そういう干渉とか認めそうにないし、おまけに結構強情だし」

「分かっているわよ、そんな事。だからいつまでも阿良々木君を諦められないのでしょ?」

「……」

「告白して振られ恥をかきたくない、人が奪ったとか考える癖に言葉に出来ない。じっと我慢して内に溜める」

「まぁそうかもしれないけど―――」

「結局彼女は『いい子』で居たいだけなの。汚れ役とか拒んでね」

「そんな事は無いだろ?」

103 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/27(月) 23:48:20.40 ID:5W7BaWko
「あら、偉く庇うのね。なんなら羽川さんを選択してみてはどうかしら?悲劇のヒロインと思い込んでいる羽川さんをね」

初めて戦場ヶ原の眉がピクリと動いた。

「はぁ?意味分かんない」

「羽川さんと付き合いなさいって言ってるのよ」

戦場ヶ原は眉間にしわを寄せ、僕に言葉を投げかけた。

「ぼ、僕は二股なんて出来ないぞ!」

「二股?そんな事、私が許すとでも思って?」

「だって、付き合えって言ったじゃないか!」

「ええ、言ったわ。だから、私と別れなさい」

「え?」

頭の上に雷が落ちたみたいだった。足の先まで痺れた。

「今なんて?」

「別れましょう。こう言った方いいかしら?」

「なんで、僕が戦場ヶ原と別れなきゃならないんだ?」

「人道支援」

「そんな、それが人道支援になるのか!?」

「自己を犠牲にしてでも助ければ良いじゃない?それが本当の人道支援でしょ?」

「しかし―――」
104 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/27(月) 23:52:06.87 ID:5W7BaWko
「ああ、もういいです。じゃ、ハッキリ言うわ。私、阿良々木君事が嫌いになったので別れてください」

「おい、話しが短絡過ぎるだろ!」

「短絡的?突然、私の頭の中がショートする様な話をしたのは阿良々木君じゃない」

「それは、お前が話せって言うから」

「歯に衣を着せるって言葉を知らないのかしら?この人は」

「なんだよ、その言い方。僕はありのままに説明しただけだろ?」

「はい、そうでございますか。それはそれは。理解出来なかった私が悪かったです。だから別れてください。これでいい?」

「まてよ!」

「待ちません。さようなら」

「急にそんな事言われても」

「お引き取りください。楽しい数か月だったわ。あと、勉強も見ないから、全部羽川さんに見て貰って」

「待て―――」

僕はコンパスの針を両目に突き付けられ、そして冷たく言われた。

「私、阿良々木君の全部が欲しかったの。その存在に他の者が好意を抱くと聞いただけで虫唾が走るわ。

 それを好きな人から―――これ以上言わせないでね」

どうして、羽川の事で僕達が別れなきゃならないんだ?

おかしいだろ?

僕の思考はフル回転していたが、戦場ヶ原に家を追い出されるまでに答えは見つからなかった。
105 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/27(月) 23:56:57.60 ID:5W7BaWko
今日はここまで。
一応、話の区切りです。
次回、みんな大好き八九寺ちゃんが登場します。
え?忍を出せって?

ごめん、出番ないかも。
106 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/28(火) 00:28:45.20 ID:GmgSYj.o
おつ
待ってるよ
107 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/28(火) 06:32:03.97 ID:K5YFdsSO

八九寺とか誰得
108 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/28(火) 07:29:42.32 ID:NU46Hi2o
僕は、自転車を押しながら夕暮れの道を歩く。

四つ角を曲がった時に、そこに見慣れた姿の小学女子が居た。

「おやおや、あれれ木さんじゃありませんか?」

「やぁ、八九寺。元気か?」

「私は元気ですけど。どうされました?やけに沈んだ顔ですね。それに名前を噛んだのに突っ込まないし」

「ああ、ごめん。僕は阿良々木だ……」

「なんですかそのローテーションは!」

「ごめん、なんかすげー暗いよな僕」

「違います!そこは『ローテンションだ!』と突っ込んでくれないと!」

「へ?ああ、ごめん、ローテンションな、ローテンション……ロー―――」

「阿良々木さん、阿良々木さん、何かありましたか?」

僕は小学女子に心配されて、ついその場で涙を流してしまった。

「あ、あ、阿良々木さん!こんな所で男泣きは拙いです!周りの人に私は見えません。頭のおかしい人だと思われますよ?」

「別にいいんだ」

「よくはありません。ほら、泣かずにこっちに来てください」

八九寺に手を引かれ、公園のベンチに辿りつく。

少し落ちつきを取り戻した頃、八九寺が話しかける。
109 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/28(火) 07:30:59.55 ID:NU46Hi2o
「どうしたんですか?いつもの調子じゃないし、泣きだすし」

「振られた」

「んは!」

「戦場ヶ原に振られた」

「ええ!何故に?」

「羽川が僕の事好きだって言ったと戦場ヶ原に言ったら……」

「阿良々木さん、馬鹿ですね」

「へ?」

「そりゃ誰だって怒りますよ。そんな話聞かされたら」

「やっぱり?」

「ええ。自分でも多少の自覚はあるんですね?」

「まぁ、一応は……」

「今ならまだ間に合います、携帯で電話して謝って、それからもう一度会いに行きましょう」

「はちくじー!やっぱお前はいい奴だなー!」

「当り前です。こう見えても人生経験豊富ですから」

「へ?八九寺って何歳?」

「見た目は11歳ですが、何か?」

「いや、実年齢」

「まぁ、この世界に来てからかれこれ……レディに年齢聞くなんて失礼です!」

「ちっ、折角知るチャンスだったのに!」

「何を馬鹿言っているんですか?早く電話しないと他の男に取られますよ?案外、もう居たりして、にひひ」

「おい!悪い冗談はやめろ!」

「なら、善は急げです」

「分かった」

僕は戦場ヶ原に電話をした。
110 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/28(火) 07:32:49.86 ID:NU46Hi2o
が!

「どうされました?」

「着信拒否」

「プツ!きゃはっは!」

「笑うな!」

「完全に終わりましたね」

「終わってる?やっぱり?」

「ええ、確定です。御愁傷さま」

「ううう」

「ほら泣かないで。あの、眼鏡の人ですね、羽川さんって?」

「ああ、そうだけど」

「乗り換えればいいじゃないですか?」

「そんな―――」

「恋の電車は結婚が終着駅なのです。それまで色んな線に乗り換えなきゃなりません」

「お前、何才なんだよ!その表現!」

「ちなみに、私は11歳。スクールバスですので乗り換えは出来ません、あしからず」

非常に残念だった。

「ところで、実年齢だったらどの線ぐらいなの?」

「そうですね、山手線開業よりも遅く、おおさか東線より早い、そんな所ですね」

「幅広過ぎて特定出来ない!」
111 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/28(火) 07:33:43.78 ID:NU46Hi2o
「ま、その辺は次回作を読めば分かるんじゃないですか?」

「なんだよ、次回作って?」

「SS次回作は私が主人公です!」

「そうなの?」

「そうなのです。作者さんが言ってました」

「いつ?」

「今」

「は?」

「まぁ、そういう細かい話はどうでもいいんです。それよりも、羽川さんにどういうんですか?」

「まぁ、ストレートに別れたと」

「ふーん、憐れみを醸し出し気を引く作戦ですね」

「いや、別に羽川と付き合うとか無いし」

「何故?」

「別に好きじゃないし」

「ふーん……」

「なんだよ?」

「告白されたらどうするんですか?」

「え?」

「どうするんですか?」

「どうするも何も、羽川はそんな事しないよ」

「どうして言い切れるのですか?」

「それは……」
112 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/28(火) 07:37:59.54 ID:NU46Hi2o
「そもそも阿良々木さんの様な、つい最近まで掃いて捨てるほど、どこにでも転がっていそうな人物が、

戦場ヶ原さんなる深窓の令嬢とお付き合い出来た事自体超ラッキーなのですよ?」

「宝くじレベルかよ!」

「いえ、受精レベルです」

「激しい戦いだな!」

「ですので、選り好み出来る立場ではありません。例えそれが嫌いな女性でもウンというしかないのです」

「ええ!」

「いいですか?モテない男がモテる様になる秘訣を教えますね」

「いらねーよ!」

「ただですから、聞いてください」

「仕方ねぇな」

「告白する時は自分より経験値の少ない相手を選びます」

「経験値0だったら?」

「そりゃ0を狙います。RPGと同じです、レベル0じゃラスボスは倒せないんですよ」

「ひでーなお前」

「まぁ阿良々木さんに至っては、チートだったと言えるでしょう。バグを突いた一瞬の攻撃がクリティカルヒット!と言ったところでしょう」

「まぁ……否定はしないけど」

「で、0でも1でもいいんです。自分より経験値の低い、レベルの低い相手と付き合って自分のレベルを上げるのです」

「ほうほう」

「で、告白された時は逃げずに受け入れる。何せ、告白されると言う事自体がメタルスライムに遭遇しクリティカル入れる様なものですから」
113 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/28(火) 07:39:35.74 ID:NU46Hi2o
「成程」

「わかりましたか?要は経験値を稼ぐと言う事が大事です」

「本当に八九寺の言う事は為になる―――訳無い!なんだその酷い傷のなめ合いみたいな交際は!」

「え?」

「一瞬のときめきとか一切無視かよ!」

「一瞬のときめきが一生の後悔よりマシだというのですか!」

「ああ、僕はそれでいい、僕は……戦場ヶ原と付き合えた事を誇りに思う!」

「じゃ、一生その栄誉を抱きしめ、一人身で居てください」

「ああ、戦場ヶ原に振られた事を、後生大事に墓場まで掲げて行ってやる!」

そんな馬鹿話をしていた時だった。


「阿良々木君、今の話本当なの?」


「へ?」

振り向くと、そこに羽川が居た。

どうしてこうも都合よく登場するかな?

ここは八九寺と僕の馬鹿話で終わって、翌日僕がげっそりした顔で登校するのがセオリーだろうに。

そして僕に『阿良々木君、何かあったの?』と聞いてくれよ、羽川。

そんな事より、どこまで聞かれたか、それが問題だ!
114 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/28(火) 07:40:55.05 ID:NU46Hi2o
「いや、あの、どこまで聞いた?」

「戦場ヶ原さんと別れたってところかな」

「そう。ああ、そうだ、そうなんだ。実は戦場ヶ原に振られてさ」

「今さっきまで泣いていました」

「八九寺、いらない事を言うな!」

「冗談かと思ったのに……本当だったんだ」

「えっと、まぁ、そうなんだ」

「原因は?」

「振られたんだよ」

「いや、振られた原因よ。何か喧嘩でもしたの?」

「羽川さん、浮気ですよ、浮気」

「浮気?阿良々木君、本当なの?!」

「ち、違うよ!八九寺!いい加減な事をいうな!」

「まぁ、似た様な物じゃないですか」

「全然違う!」

「とりあえず、謝ったの?」

「だから、僕は何もしていない」

「なのにどうして?」

「さあな。何となくだろ。飽きたんじゃないのか」
115 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/28(火) 07:50:45.00 ID:NU46Hi2o
「そんな……今日の今日まで仲良く下校していてそれは無いでしょ?」

「羽川さん、それは違います。一瞬先は闇、男女の中は一瞬先が別れです」

「あのね、真宵ちゃん。例えそうであっても、戦場ヶ原さんが阿良々木君を振るなんて考えられないよ?」

「まぁ事実ですから」

「そうなの?本当なの?」

「ああ、この期に及んで嘘をついても仕方が無い。本当さ」

「いいの?」

「いいのと言われても。僕一人の事じゃないし」

「なんなら私が間に入って―――」

「いや、それだけはやめてくれ。僕にもプライドはある」

「そう……」

結局その先の話しは続かず、僕は羽川に付き添われる形で家に帰り、玄関先で羽川と少しだけ話をした。

「ねぇ阿良々木君、今は受験で大事な時だから……」

「分かってるって」

「そう。ならいいんだけど」

「あ!あと、勉強の方は羽川が全部見てくれないかな?」

「ん?別にそんな事お安い御用よ」

羽川は笑顔で答えてくれた。

「あまり気にせず―――いつも通りの阿良々木君で居てくれると嬉しいな」

「ああ、わかった」

「じゃ、私はこれで」

「うん、じゃまた明日」

僕は羽川の背中を見送った。

見えなくなるまで。
116 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/28(火) 09:48:10.57 ID:L3mu7sDO
>>107
俺得が止まらない
117 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/28(火) 23:13:40.07 ID:4EtTdgIo
乙ですww
続きゆっくりでもいいんで頑張って下さい
118 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/28(火) 23:45:14.26 ID:jeF1N6SO
忍でないのか…
119 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/29(水) 07:48:59.96 ID:zmulY/Mo
翌日、いつものように登校する。

ただし、僕は殆ど寝ていなくて、目の下に薄らと隈が出来ていた。

教室に入るといつものように羽川が居た。

「おはよう、阿良々木君」

「お、おお、おはよう」

「元気?」

「あー、まぁそこそこに」

「そっか」

何故か会話がギクシャクしてしまう。

「元気だしなよ、またそのうちいい事もあるからね」

「いい事ねぇ」

「そ、いい事」

今の僕にとってのいい事って何だろう?

席に着き、ぼんやりと窓の外を眺めながら考えていると、後ろから挨拶された。

「阿良々木君、羽川さん、おはよう」

戦場ヶ原だった。

てっきり完全にシカトされると思っていたのに、よりによって相手から挨拶してきた。

「お、おはよう」

「あら?目の下に隈が出来ているわよ?寝ずに勉強でもしたの?」

今日の戦場ヶ原は饒舌だった。

「いや、別に……」

「そう。夜更かしは体に良くないから。勉強もほどほどにして睡眠はちゃんと取るべきよ」

「ああ。わかった」

いつもと何ら変わらない会話であり、雰囲気だった。
120 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/29(水) 07:50:25.28 ID:zmulY/Mo
でも、そんな会話を聞いた羽川の顔が曇った様に思えた。

多分、僕と戦場ヶ原が別れたって事に疑問を感じているのだろうか?

僕は羽川の動きを凝視した。

が、羽川は何のアクションも起こさず、ただ前を向き授業の準備を始める。

気のせいか。

羽川もいつもと変わらない。

表面上、誰も何も変わっていない。

ただ、僕と戦場ヶ原が恋人同士では無くなったという事だけ。



午前の授業が終わり、昼休み。

僕は殆ど毎日、弁当を中庭で食べていた。

正面には戦場ヶ原がいて……

でも、今日は一人だ。

昔と変わらない、一人中庭で食べる昼飯。

1年の時も2年の時も、雨の日と真冬以外、僕はずっとそうしていた。

基本的に友達が居ない僕はそれで良かった。

春先に一度羽川と食べた事があったな。

偶然、羽川が外で昼食を取るときに出会った。

ベンチは隣だったが……

その後は殆ど戦場ヶ原と一緒にここで食べる事が多くなったのだが。

今日は昔のように誰もいない。
121 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/29(水) 07:51:16.76 ID:zmulY/Mo
いやー、人間強度が久々に上がりまくりだ。

と言いたいが、やはり強度が下がった今の自分には一人飯は辛い。

箸が進まない。

「ふぅ」と小さなため息をついて、弁当箱の蓋を閉じた時、頬に温かい物が接触する。

「あちっ!」

「ごめん、熱かった?」

振り向くと―――羽川だった。

「お前、最近僕の背後から良く現れるな?」

「そう?」

「昨日だって……」

「前から登場したら、風が吹いてスカートが捲れて下着を凝視されちゃいそうだし」

「って!」

「嘘々、冗談よ。はい、これ。食後のコーヒー。昨日あまり寝てないんでしょ?眠気覚ましにカフェインをどうぞ」

「あ、ありがとう」

僕に缶コーヒーを渡し、羽川は横に座る。
122 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/29(水) 07:53:53.07 ID:zmulY/Mo
「カフェインを取ってから少し寝るといいよ」

「カフェインを取ったら眠れないじゃないか?」

「ううん、直ぐに効果がある訳じゃないの、摂取して1時間ぐらいあとぐらいからなの」

「へーそうなんだ」

「だからね、摂取して少し昼寝すると、寝起きがスッキリするの」

「本当にお前は何でも知っているな」

僕は羽川がくれたコーヒーを一気に飲み干す。

「何でもは―――そう、何でもは知らないわ」

「知ってる事だけか?」

「そうだね。でも最近は知りたい事も多いし、理解出来ない事もあるよ」

「ふーん」

「では、おやすみなさい」

僕の横に座った羽川は、そういって僕の頭を引き寄せ自分の膝の上に置いた。

「!!」

「午後の授業、英語だから寝ちゃダメだよ?寝るなら今寝ておくといいよ」

そして僕の耳の上に軽く手を置いた。
123 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/29(水) 07:54:33.35 ID:zmulY/Mo
「なぁ、これは寝られないぞ」

「ん?どうしてかな?耳も塞いでいるから静かじゃない?」

「いや、状況的に変だし。緊張するし」

「そっか、ごめんね」

今度は僕の頭の下に手を入れ、また元の様に起こす。

ベンチから立ちあがった羽川は、僕の背後に廻り、また頭を持って僕を寝かせた。

「これでよし」

「よしって……」

「これなら眠れるでしょ?」

「まぁ、そうだけど」

「昼休みが終わる頃に起こしてあげるから」

「そっか、じゃ、お言葉に甘えて」

さっきの羽川はなんだったんだろ?

突然すぎてテンパったが、よくよく考えると―――大胆過ぎるだろ!

いきなり膝枕とか羽川らしくない。

色々考えていたが、貫徹に近い状態の僕は、そのまま眠りこけてしまった。
124 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/29(水) 08:01:38.97 ID:zmulY/Mo
「おーい、阿良々木君、予鈴5分前だぞ」

「う、ん?ああ、もうそんな時間か」

羽川の声で目覚める。

むくりと体を起こすと、ベンチの前で羽川が膝を抱え座っていた。

微妙な角度だった。

見えそうで見えない。

体を起こす前にしっかりと見ていれば……

「何、ぼんやり考えているの?」

「いや、何でも無い」

「阿良々木君、教室に戻らないと」

「ああ、今行く」

僕はベンチからゆっくり腰を挙げ、教室に向かって歩き出す。

僕の歩調に合わせるように、少し早足で羽川が並んで歩く。

「スッキリした?」

羽川が僕に話しかける。

「ああ、助かったよ」

「ところで、教室に戻る前に顔を洗った方がいいかもね」

「ん?」

「涎の痕がついてるよ」

「!!」
125 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/29(水) 08:04:43.33 ID:zmulY/Mo
僕は羽川と廊下で別れ、トイレの洗面台で顔を洗う。

ポケットを探ってもハンカチが無い。

教室に戻れば鞄の中にフェイスタオルが入っている筈。

仕方が無い、教室までこのまま戻るか……

トイレから出ると―――

「はい、ちゃんと拭かなきゃ」

と、羽川がハンカチを差し出す。

「あ、いいの?」

「いいよ」

真っ白なハンカチ、控えめなレースが縫い込んである可愛らしいハンカチだった。

僕はなるべく汚れがつかない様に、軽く水気だけを叩く。

そんな僕のしぐさを見かねたのか

「汚れても気にしないから、しっかり拭いていいよ」

僕の手からハンカチを奪うと羽川は僕の顔を拭く。

「あ、ありがとう」

「いえいえ、どういたしまして」

満面の笑みで返事をする羽川。

教室の前まで来た時、授業開始のチャイムが鳴った。

「ギリギリセーフね」

「ああ」

ドアを開け、教室に入る。

昼休みの喧騒が静まり、やがて気だるい午後の授業が始まった。

羽川に貰ったコーヒーのお陰で、眠気も来ずに午後の授業は最後まで受けられた。
126 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/29(水) 08:29:41.36 ID:zmulY/Mo
放課後、帰り支度をしていると僕の横に戦場ヶ原が立つ。

「さよなら」

「さよなら」

「また明日」

「ああ、また明日……戦場ヶ原、今から時間ある?」

「呼び捨ては勘弁だわ、阿良々木君」

「ご、ごめん。戦場ヶ原さん」

「ええ、それで良いわ。ちなみに、今から予定があるので時間はありません」

「じゃ、今夜電話してもいいか?」

「拒否します」

「……」

また打ちのめされた気分になった。

そこに帰り支度をした羽川がやってくる。

「戦場ヶ原さんと仲直りの話?」

「いや」

「そう。なんで怒ってるんだろうね?きっと暫くしたら仲直りで出来るわよ」

「そんな気配、微塵も見えないんだけどな」

「大丈夫、大丈夫」

「そうか?」

「ところで阿良々木君、もう帰るの?」

「ああ、帰るけど」

「はい、残念。今日は委員長会議でしょ?」

「あ、そうだっけ?」

「そうだよ。ちゃんと覚えておいてね」

「ああ、ゴメン」
127 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/29(水) 08:31:32.98 ID:zmulY/Mo
僕達は視聴覚室に集まり、委員長会議に参加する。

今日の議題は体育祭の場所分け。

待機場所のくじ引きだが、これは結構重大な仕事だ。

何せ、秋だと言っても炎天下で行う運動会は暑い。

午後から校舎の影になる場所は特等席となり、人気が高い。

人気席には全学年で5〜6組の応募がある。

で、その抽選に僕が行く。

3年生なので、とりあえず一番に引かせて貰える。

で、一撃で当り。

「やったじゃない、阿良々木君」

「なんか数少ない運を無駄に使った気分だよ」

「運ねぇ。そう言えば、私も最近少し運を使ったかも」

「へぇ。何に?」

「内緒」

ニコッと笑った羽川は、場所分けの書類を受け取ると鞄に収め、

「さて、会議も終わりだし、帰りましょう」

と僕よりも先に立ちあがり、視聴覚室を後にした。
128 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/29(水) 08:32:43.94 ID:zmulY/Mo
僕と羽川は基本的に住んでいる方向が違う。

僕は自転車、羽川はバスと徒歩。

校門前でいつものように挨拶をし、別れるのだが今日は羽川も自転車だった。

「あれ?自転車なの?」

「うん、このまま阿良々木君の家に行けるようにね」

「???」

「勉強見なきゃならないんでしょ?」

「ああ、そうだ。昨日頼んだんだ」

「もう、しっかりしてよ」

「はい……」

自宅に着くと、直ぐに勉強が始まる。

「えっと、前回の模試で低かったのが英語ね」

「まぁ、以前に比べれば多少は良くなったんだけどね」

「とりあえず、この長文の訳からやってみよっか?」

羽川は僕に問題を出す。

正直、全然ダメ。

「うーん、単語力はそこそこなんだけど、文法がダメだよね、阿良々木君って」

「そ、そうか」

「単語の数に比べれば、文法の数なんて知れているから、要所を押さえれば直ぐに伸びるわよ」

「そうなのか?」

「そうなの」

羽川に太鼓判を押されると何故か嬉しくなる。

というか、今日一日もっと沈んだ一日になると思ってたのに……なんだろ、この安定感。
129 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/29(水) 08:37:33.10 ID:zmulY/Mo
それから2時間弱勉強したところで、今日の家庭教師は終わり。

「飯くってけば?」

「ううん、家で食べるから」

「そっか、なら送って行くよ」

「大丈夫。往復の時間を勉強に充てるか……」

「充てるか?」

「ん、何でも無い」

「なんだよ、言えよ」

「えへ、時間の貯金をして他で有意義に使ってください」

「?」

「時は金なりって言うでしょ?だから、今勉強すれば、往復時間を貯金できるじゃない」

「ん、ああ、わかった」

「だから―――貯まった時間は―――ね」

少し言葉を濁し、俯く羽川。

「じゃ、私帰るから」

「うん」

羽川は僕に軽く手を振り、漆黒の闇の中をいつものように立ち漕ぎで消えていった。
130 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/29(水) 22:19:47.74 ID:oPvttV.o
>>1乙です。
頑張ってくださいwwww
131 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/30(木) 00:03:52.24 ID:JabZlkSO
いいのう
132 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/30(木) 17:50:09.84 ID:qOOJE0ko
Few days later


新しい生活?が始まって数日後の土曜日、朝早くに羽川が家に来た。

「おはよう、阿良々木君」

「どうした、こんな早くに」

「勉強を教えに来たよ」

「ええ……まだ8時前だぜ?」

「朝の勉強は、夜の3倍効率がいいんだよ?」

「だったら事前に電話ぐらいくれよ」

「うーん、電話しようと思ったんだけど、睡眠を妨げるのはどうかなって思って」

「思って?」

「着いてから起こして貰ったの」

「おいおい……」

「さ、阿良々木君。今日も勉強するわよ」

やけに嬉しそうで、張り切った羽川がそこに居た。

ここ数日間、文法を集中的に教えて貰った僕は、羽川に問題を出され、それを解く。

「ちゃんと正解出来たら朝ご飯だからね」

「出来なかったら?」

「お預け」

「僕は犬かよ!」

「はいはい、私語は謹んで。制限時間は30分だからね」

二つの長文問題に取り掛かる、寝巻代わりのジャージのままで。
133 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/30(木) 17:51:49.78 ID:qOOJE0ko
「ん?」

「どうしたの?」

「いや、何でも無い」

不思議な位、文章が簡単に訳せる。

30分の制限時間を半分残して僕はペンを置いた。

「出来たの?」

「ああ、一応」

「見直しは?」

「大丈夫」

「じゃ、採点するね」

赤鉛筆を持った羽川が、僕の訳した文章を線でなぞる。

「うんうん、凄いね阿良々木君。全部正解!」

「いや、お前の教え方が上手いだけさ。この間から教えて貰った文法が殆どだろ?」

「そんな事無いよ、ひっかけ問題的な文章もあったんだから」

「ああ、そこは―――貯金だっけ?そう言われて自分でやった所なんだ」

「そう。凄いね阿良々木君」

「いや、本当にお前のお陰だよ」

僕は少し謙遜気味に謝辞を述べた。
134 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/30(木) 17:52:42.79 ID:qOOJE0ko
「では、朝食にしましょう」

「ん?何それ」

「朝食」

「作ってきたの?」

「簡単なものだけど。サンドウィッチ嫌い?」

「いや、どちらかというと好き」

「よかった」

「じゃ、下でコーヒーでも淹れてくる」

「あ、私が―――」

「いいよ、僕んちだし。羽川はお客さんだろ?」

「ごめんね」

「気にするな」

僕はコーヒーを淹れ、部屋に戻る。

簡単な食事だと思っていたが、それは結構なボリュームだった。

何より、これだけのものをいつ作ったんだ?

家に来たのが、8時前。片道30分でも7時半には家を出る……

作るのに1時間、自分の出支度まで考えると―――6時前には起きて作ったのか!

「これのどこが簡単なんだよ?」

「え?サンドウィッチにミートボールとフルーツじゃない?」

「豪華過ぎんだろ!」

「そうかな?」

「ああ、豪華過ぎる」

「気に入らない?」

「いや、そんな事はない」

「よかった」
135 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/30(木) 17:53:44.52 ID:qOOJE0ko
僕は遠慮なく羽川が作ってくれた朝食を頂く。

「美味い!」

僕の感嘆に笑顔を見せる羽川。

「ねえ阿良々木君、時間の貯金頑張ってるね」

「そうか?」

「うん。この構文の解釈にあと1週間は掛かるかなって思ってたんだけどね」

「まぁ―――時は金なりって言われたら、頑張らないと」

「そっか。うん、偉い」

「ちなみに、あと1週間掛かると思われてたって事は、僕は168時間の貯金が出来た訳だ」

一瞬、空で計算した羽川。

「阿良々木君は、数学得意だもんね。急に時間で言われて、計算しちゃったよ」

「あはは。僕は数学だけは得意だからな」

「でも、睡眠や学校での時間を差し引くと、実際は14時間ぐらいしか貯まって無いよ?」

「そうか!!」

「14時間か……」

「その14時間、どう使うのかな?」

「え?」

「阿良々木君はその14時間を、どうやって使うのかなって思って」

「んー……」

なんて答えればいいんだろう?

遊ぶ!とか、寝る!とかいうと、それは説教の対象になりかねない。

羽川の説教は的確に僕の悪い所を突いてくるから、堪えるんだよな。

「今のところ何にも使えないな」

僕は当り障りのない様に答えた。
136 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/30(木) 17:55:31.21 ID:qOOJE0ko
「ふーん。使えないの?使い道が無いの?」

「どちらか言うと、使い道が無い」

「そう」

一瞬、羽川が何かを言いかけて、言葉を飲んだ。

「ん?何かいい使い道ある?」

「そうだね。無い事も無いんだけど」

「何?」

「授業料として14時間払って貰える?」

「……それは、14時間、僕が羽川の下僕になれって事か!?」

「下僕だなんて。違うわよ。ただ少し時間があるなら付き合って欲しいかなって」

「どこか行きたい所でもあるんだ」

「正解」

「別に構わないぜ。じゃ、外に行く準備してくる」

「?」

「一応、僕も出掛ける時は寝癖ぐらい直すから」

「その髪、寝癖なの?いつもと変わらず頭の上で跳ねてるけど?」

「いや、これは寝癖だ。跳ねる方向がおかしい」

「クスッ。面白いね、阿良々木君って」

「そうかぁ?」

嬉しそうに笑う羽川。

笑いながら羽川は、食べ終わった朝食の包を片し、テーブルの上を拭きあげた。
137 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/30(木) 17:56:19.42 ID:qOOJE0ko
「じゃ、ちょっと用意してくる」

「うん。あ、阿良々木君、今度部屋に戻るときはノックしてね」

「?」

「お願い」

「ああ、分かった」

羽川の奴、何考えているんだ?

僕が居ない部屋で……捜索でもされるのか!

ヤバい!ベッドの下の箱には……

そう、何を隠そうエロ本が入っていた。

ガサ入れされる!

が、時既に遅し。

ドアを閉め、階段を降り、洗面所のある1Fに居た。

「見つかったら、また白い目で見られるんだろうな……」

そんな事を呟きながら僕は髪型を直し、歯磨きして部屋に戻る。

コンコン

「はーい、どうぞ」

僕は恐る恐るドアを開ける。

テーブルの上に、エロ本が有りませんように!と願いながら。

が、予想を大きく外し、斜め上の結果がそこにあった。
138 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/30(木) 17:56:55.62 ID:qOOJE0ko
「わっ!」

「初めてなんで、少し恥ずかしいんだけど」

「あ、うん……」

正直、僕はあまりの出来事に声が出なかった。

というか、目のやり場に困りながらも羽川を凝視する僕。

「感想は?」

「カッコいい」

「カッコいい?」

「いや……なんていうか、驚き過ぎて言葉にならない」

「そう?」

「ああ、本当に驚いた」

「じゃ、行こうか、阿良々木君」

羽川はゆっくりと立ちあがる。

私服の羽川を僕は生まれて初めて見た。

僕が用意している間にここで着替えていた訳か……成程、ノックの意味が分かった。

以前は制服しか持って居ないと思っていた時期もあった。

パジャマ姿は一度見た事があるんだけど、本当の私服は始めて。

髪を切り、眼鏡をコンタクトに変え、そして私服姿。

春先に学校の前ですれ違った羽川の面影は、そこに微塵も無かった。
139 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/30(木) 17:57:28.46 ID:qOOJE0ko
「ん?どうしたの?」

「いや、全然違う人かと思った」

「やだな阿良々木君、どんな格好でも『私は私』よ」

「だよな……」

そう、どんな格好であっても羽川は羽川なんだ。

玄関を出て、僕は羽川にどこに行きたいのかと尋ねた。

「うーん、どうしよっか?」

「どうしよっかって―――決めてなかったの?」

「うん、何となく思いつきで言ったの」

「はぁ」

「こら、そこ。溜息つくと幸せが逃げちゃうよ?」

「ごめん」

「前から行ってみたかったところでもいいかな?」

「ああ、どこでも構わない。羽川の行きたい所にいけばいいよ」

「じゃあ、こっち」

羽川は歩いて、バス停へ向かう。

「バスで行くの?」

「うん」

「どこに?」

「到着したら分かるわよ」

「ふーん」

僕達はバスに30分ほど揺られ、郊外に出た。
140 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/30(木) 17:58:10.67 ID:qOOJE0ko
「えっと、この道を少し歩くんだけど大丈夫?」

「どのくらい?」

「半時間ぐらい」

「―――別に構わないけど」

秋の午前中は少し肌寒いぐらいの気候だが、流石に30分近く歩くと少々汗ばむ。

「あ、見えてきたよ」

「ん?どこ?」

「あそこだよ」

何の変哲もない公園。

大きな池があるだけで他には何も無い。

「ここ?」

「うん」

「何か思い出でもあるの?」

「うーん、思い出というか記憶かな?」

「記憶?」

「ねぇ、阿良々木君。この池って貸しボートがあるんだけど、乗らない?」

「いいよ。乗ろうか」

僕達は貸しボート屋に向い、ボートを一隻借りる。

閑散期なのか、時間が早いのか、30分600円の看板があるにもかかわらず、初老の店主は飽きるまで乗っていればいいと言った。
141 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/30(木) 17:59:53.79 ID:qOOJE0ko
「今日は私達が看板ね」

「何それ?」

「誰も乗っていないと、貸しボートがあるって気がつかないじゃない」

「ああ、なるほど」

「誰かが乗っていると乗りたくなるものよ」

「そんなものか?他にそんな事って何かある?」

「例えば―――行列の出来るお店とか」

「ああ、そう言われてみればそうだな」

「でしょ?」

「うんうん、確かにそうだ」

ボートに乗り込み、オールを漕ぎ、池へ繰り出す。

「風が気持ちいいね」

「ああ。本当にこんなにリラックス出来る時間は久しぶりだよ」

「うふ、良かった」

「ところで羽川。さっきの記憶って?」

「あー、うん。昔ね、一度家出してここで何時間も時間を潰したのよ」

「家出?羽川が?」

「うん。小学校高学年の時に、色々親に言われてね」

「そうなんだ」

「で、ここで泣いていたらボート屋のおじさんが色々話聞いてくれて、最後は家まで送ってくれたの」

「じゃあ、さっきの人が?」

「さっきのおじさんは違う人だったわ。何年も前の事だし、もしかしたら―――」

「多分、今でも元気にしているんじゃね?定年退職だよ、きっと」

「ならいいんだけどね……」

「きっとそうさ」
142 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/30(木) 18:02:13.73 ID:qOOJE0ko
羽川の過去話はなるべく触れたくない。

以前聞いた親の話で結構ブルーになってしまったから。

というか、僕の周りの人間は何かしら家庭の問題を抱えている。

両親が離婚した戦場ヶ原。

両親が事故死した神原。

自分自身が事故死し両親と別れた八九寺。

実父は分からず、実母は自殺してしまった―――両親が偽物の羽川。

そして、偽物の妹がいる僕。

よくよく考えれば、みんな酷い家庭環境だ。

千石が普通の家庭で良かったよ。

あの性格で親が居ないとか大変な事になっちまうだろうな……

「阿良々木君、どうしたの?考え事?」

「あ、いや、何でも無い」

「そう。ところで阿良々木君、あれから戦場ヶ原さんとは?」

「全然」

「そう。仲直りしないの?」

「仲直りというか……学校では話もするし、以前と何にも変ってない」

「そうだけど。彼氏彼女って関係は?」

「あー、正直どうでも良くなってきた。ある人に言わせれば、恋愛なんてのは一種の精神病らしいし」

「あらあら。じゃ、この先、彼女とか作らないの?」

「僕の性格はこんなのだろ?あまり女子も寄りつかないし……」

「そうかなぁ?最近は結構有名らしいよ?」

「ああ、それは知ってる―――神原の後輩連中とか、うちの妹の友達とかにだろ?」
143 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/30(木) 18:03:05.45 ID:qOOJE0ko
「その女子から告白されたりしたら?」

「あー、多分断る」

「えー!なんで?」

「面倒だし」

「……面倒?」

「なんか、もう恋愛とかどうでも良くなってきた」

「阿良々木君、悟っちゃった?」

「そういう訳じゃないけど、何というか流石に今回は堪えたんだよ」

「精神的ショックが大きかったんだ」

「まぁ、そんな感じ」

「ふーん……」

羽川は、ぬるい返事をし、水面を見つめる。

あの猫の言った事は本当なんだろうか?

今、僕は羽川に試されているんだろうか?

「ねぇ阿良々木君。もしも。もしもだよ―――」

「模試?」

「もしも」

「もしも何?」

「もしも―――私が告白したらどうする?」

「え?誰に?」

「阿良々木君に」

「!」
144 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/30(木) 18:04:26.08 ID:qOOJE0ko
時間が止まった。

思考だけは働いているが、答えが見つからない。

瞬き出来ない視線の先には、顔を微かに赤く染めた羽川が見える。

だけど、だけど、僕は何も言葉に出来ない。

暫くして、心拍数が落ちつき、口から言葉が漏れる。

「は、羽川が僕に告白?それってどんなドッキリなんだよ?」

本心とは全然違う言葉が出てしまった。

「えっ……」

「だって、羽川みたいな天才が凡人以下の僕とだなんて釣り合わないだろうし―――」

「恋愛は頭のレベルでするもの?戦場ヶ原さんの時もそうだった?」

「いや、そういう訳じゃないけど……あれ?僕は何を言ってるんだ?」

「ごめんね、阿良々木君。変な事聞いて。そりゃそうだよね、戦場ヶ原さんなんかと比べたら私なんて美人でも無いしスタイルだって―――」

「おい、やめろ!もうそれ以上いうな」

「ご、ごめん。迷惑だったよね、こんな話」

「違う!違うんだ!」

僕は必死に言い訳を考える。

いや、言い訳なんかじゃない。

本当の事が言えなかったんだ。

『お前が僕の事を好きだって事は知ってる』と。
145 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/30(木) 18:05:37.71 ID:qOOJE0ko
「なぁ、羽川。その話は少し待ってくれないか」

「え?」

「今は、その、なんていうか、僕もまだ気持ちの整理が出来ていないから」

「うん……」

ふと気付くと、水面には何隻かのボートが浮かんでいた。

僕はその間を縫うようにゆっくりと漕ぎ出し、船着き場へ戻った。

船を降りた僕達の間には、まるで見えない壁でもあるかのようにお互いを意識しなようにする。

ただ何も考えず公園を散策する。

黙々と歩く僕に、歩調を合わせついてくる羽川。

どうしたら良いんだろうか?

僕は羽川の気持ちに気付いてしまった。

本人の口から聞いた本当の言葉。

その上で、さっきの返事。

『待ってくれないか』

多分、これは期待させた状態だろう。

でもあの時、『告白したらどうする?』ではなく、告白されていたら……

多分、素直に頷いていたかもしれない。

決して羽川が嫌いだと言う訳じゃない。

むしろ好きかも知れない。

猫に羽川の気持ちを伝えられてから、僕の心の中にその存在はいつもいた。

いや、春から居たんだ。

春の事件の時、あれだけ必死に僕を助けてくれた羽川を僕は気にかけていた。

でも、「いい奴」「お節介な委員長」で。

でもそんなの嘘なんだ。
146 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/30(木) 18:07:00.52 ID:qOOJE0ko
自分の中で釣り合いのとれない相手だと思って、心を偽装していただけ。

僕が一番好きなのは羽川なんだ。

その気持ちに気がつく前に―――僕は戦場ヶ原と付き合ってしまっただけなんだ。

「羽川、疲れないか?」

「あ、うん。大丈夫」

「そこのベンチで休む?何か飲み物買ってくるよ」

僕は羽川を待たせ、自動販売機でジュースとコーヒーを買う。

「気を使わせてごめんね」

「いや、気なんて使ってない。お金を使っただけさ」

「あ、自分の分は自分で出すよ」

「いいって。お礼だよ」

「お礼?」

「ああ、今日は色々と感謝しなくちゃならない」

「なんの?」

「自分の本当の気持ちに気付かせてくれた事」

「本当の気持ち?」

「ああ、本当の気持ち」

羽川は僕をじっと見つめる。
147 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/30(木) 18:08:22.81 ID:qOOJE0ko
「なぁ羽川、一つ質問していいか?」

「何?」

「あのな―――僕が告白したらどうする?」

「誰に?」

「羽川に」

「えっと……こんな時なんて言えばいいんだろ?」

羽川はポロポロと涙を流しながら僕に言った。

「えっと……いや、あの……」

「阿良々木君、ちゃんと―――ちゃんとしなさい」

「はい」

僕はもう一度羽川に言いなおす。

「羽川、僕と付き合ってくれないか?」

羽川は一回、強く瞼を閉じ、涙を切った後に、言った、

「はい。不束者ですが宜しくお願いします」と。
148 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/30(木) 18:09:58.37 ID:qOOJE0ko
翌日曜、僕は妹達に叩き起こされる。

「兄ちゃん、起きなよ!」

「う、うん、もう少し寝させて。日曜だし、まだ8時前だろ?」

「お客さんだよ!」

「ん?だれ?」

「おはよう、阿良々木君」

「は、羽川!」

「まだ寝てたの?」

「ああ……直ぐに着替えるから。ちょっと廊下で待ってて」

僕は直ぐに寝巻を脱ぎ捨て、普段着に着替え布団を畳む。

「お、お待たせ」

「おはよう」

「ああ、おはよう。それよりどうしたんだ?」

「勉強会に決まってるじゃない」

「はい?日曜は無しじゃなかったかな?」

「何言ってるの、しっかり貯金して頑張らないと―――」

「頑張らないと?」

「ボートに乗れないよ?」

「ああ、そりゃ大変だ!」

勉強する事がこんなにも楽しいだなんて思ったのは初めてだ。

いや、今は何をやっても楽しい。

捗る勉強に、新しい優しい彼女。

僕はそう思っていた。

明日が来るまでは……
149 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/30(木) 21:19:01.45 ID:3S34JASO
あま―――――い
150 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/30(木) 23:12:30.91 ID:z7rD3x2o
羽川√もいいなww
この後の展開にwktk
151 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/01(金) 23:00:02.66 ID:qeGM2kSO
今日は来ないんかーい
152 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/02(土) 08:02:57.67 ID:6xPP/OAo
いつものように登校し、駐輪場に自転車を停め、教室に向かう。

教室に入ると羽川がいつものように

「おはよう、阿良々木君」

と声を掛ける。

「おはよう」

ちょっとだけ二人で見つめあう。

笑顔が零れる。

席に着き、授業の準備に取り掛かる。

鞄を開けたところで、背後から挨拶をされた。

「ご機嫌いかがしら?阿良々木君」

戦場ヶ原だった。

「おお、おはよう。ご機嫌?悪くないけど?」

「そう。ならいいのだけど」

本当に突拍子もない事を言う奴だ。
153 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/02(土) 08:03:25.51 ID:6xPP/OAo
「ところで阿良々木君、人道支援は順調かしら?」

「さぁな」

僕は少し言葉を濁す。

「あらあら?目的を忘れてしまったのかしら?」

「何の?」

「阿良々木君の目的は『人道支援』であり、『人間強度』を上げる事でしょ?」

「ああ、その件か。それなら問題ないさ」

「そう……良かったわ」

「戦場ヶ原に都度報告しなきゃならない事でもないだろ?」

「戦場ヶ原さんでしょ。呼び捨てにしないでと言ったわよね」

「ご、ごめん」

「まぁいいわ。この週末、余程いい事があったみたいだし」

「え?」

ニッと笑い、戦場ヶ原は席に着いた。

僕は―――戦場ヶ原の笑いに悪意を感じ、何か得体の知れぬ不安を抱いてしまった。

その不安が的中するのは、そう遠くない日の事だった。
154 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/02(土) 08:03:59.23 ID:6xPP/OAo
数日後、僕は羽川と一緒にお弁当を食べていた。

ここ最近、昼食は二人して中庭で摂っている。

食事が終わると、羽川が僕に色んな話を振ってくる。

で、昼休みが終わる頃に僕の口から

「本当にお前は何でも知ってるな」

と、何かを期待していつものセリフが出る。

それに応え、羽川が「何でもは知らないわよ。知っている事だけ」と答えてくれる。

何のストレスも感じない、緩やかな、それでいて幸福感あふれる学生生活。

3年の後半からというのが残念で仕方が無い。

今日もいつものように、昨日までと変わらない昼休みだと思っていたのだが……

弁当箱の蓋を閉め、一息ついているとそこに奴が現れた。

『戦場ヶ原』

「もう昼食は終わったのかしら?」

「戦場ヶ原さん。うん今終わったよ」

「そう。少し羽川さんとお話がしたいのだけど」

「え?私?いいけど」

「では、そういう事なので、阿良々木君は席を外して貰えないかしら?」

「あ、うん。分かった」

僕は弁当箱を片手に立ちあがり、その場を去る。

何か気に掛りながら。

歩きながら後ろを振り向く。

戦場ヶ原と羽川が話している。

特に問題はなさそうだ。
155 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/02(土) 08:04:53.97 ID:6xPP/OAo
教室に戻り、机で英単語集を読み流しながら、羽川が戻るのを待っていた。

予鈴が鳴り、授業ギリギリで羽川と戦場ヶ原が戻ってきた。

元気そうな戦場ヶ原に対し、羽川は少し不機嫌そうに見えたのは僕の気のせいだろうか?

授業中、後ろから羽川を見ていると―――頭痛?

頭を軽く押さえ、俯いていた。

午後の授業が終わり、帰宅準備をし、駐輪場へ向かう。

ここで羽川と待ち合わせ。

が、幾ら待っても羽川が来ない。

「おかしいな、今日は何の用事も無い筈なんだけど……」

独り言を呟きながら、校舎の方に目をやる。

待てば海路の日和あり、待ち人来たり!

羽川がこっちに向かって歩いてきた。

「はねかわー!」

僕は手を振り、声を掛ける。

僕の存在に気付いた羽川が手を上げる。

「遅かったな」

「ごめんね、少し教室で戦場ヶ原さんと話していて―――」

「昼休みの続き?」

「え?ああ、うん」

「何の話?」

「ああ、何でも無いよ。ちょっとした女の子同士の話」

「ふーん」
156 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/02(土) 08:05:34.88 ID:6xPP/OAo
「ところで阿良々木君、今日の勉強会中止にしていいかな?」

「どうした?」

「ごめん、少し体調が悪くて……」

「大丈夫か?」

「うん、大丈夫。家に帰って休めば明日からまた―――」

羽川はまた苦痛の表情をする。

「羽川、頭が痛いのか?」

「うん、風邪かな?少し頭痛がするの」

頭痛―――それは羽川からのシグナル。

これが本物のシグナルで無い事を僕は願いつつ、羽川を自宅まで送って行った。

「ごめんね、遠回りさせて」

「大丈夫、ここ数日間で送迎分位の貯金は出来てたからな」

「うん。ちゃんと治して明日からまた元気に行くから」

「ああ、無理はすんなよ」

「うん」

「じゃ、帰るわ」

「あっ!阿良々木君」

「ん?何?」

「あのね―――あの、私、阿良々木君の彼女だよね?」

「何言ってんだよ、当り前じゃないか」

「そう。よかった」

昼休み以降、初めて羽川が笑った。

その笑顔に安心し、僕は家路に着く。
157 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/02(土) 08:06:41.83 ID:6xPP/OAo
帰り道を急いでいると、前方に八九寺発見!

今日は正攻法で行ってやる!

「よぉ、八九寺。元気か?」

「あら?阿良々木さん、もう元気になったんですか?」

「へ?」

「やだな。先日会った時は犬の様に泣いていたじゃないですか?」

「犬?」

「ワンワンと」

「それをいうなら、ワーンワーンだろ!」

「どっちでも良いんですよ、そんな事」

「いいのかよ!」

「それより阿良々木さん、他の女の匂いがしますね?」

「お前は犬か!」

「おっと、図星の様ですね。カマ掛け大成功といったところでしょうか」

「……」

「もしかして、羽川さんですか?」

「うっ……」

「この人は―――節操がありませんね」

「何を!」

「別れたと思ったら次の女性に。あーやだやだ、不潔」
158 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/02(土) 08:07:19.00 ID:6xPP/OAo
「ぼ、僕はそんなにあれこれしてないぞ!」

「本当でしょうか?どうせ、『羽川は僕の彼女だ!揉ませろー!』とか言って、あのたわわな胸に飛び付いた事でしょう」

「幾ら僕でも、そこまでやってねぇよ!」

「で、彼女だという事は否定しないのですね、ほほほ」

「あ……」

「まぁ、前回の話の流れからこうなるのは明らかでしたから」

「そうなの?」

「非を見るより明らかです!」

「おい!何の非が誰にあんだよ!」

「すみません、噛みました」

「全然噛めてねぇ!ただの誤字だ!」

「という事は、凄いゴジラも居るんですね」

「ごめん、八九寺。これ以上突っ込めない。時間が無いからな」

「ええー!そんな!放置プレイはおやめください!」

「帰って勉強しなくちゃならないんだ」

「今何と?」

「帰って勉強」
159 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/02(土) 08:07:45.57 ID:6xPP/OAo
「阿良々木さんの口から勉強って」

「なんだよ」

「それって、某国が世界平和の為に会議しましょうと歩み寄るようなもんです」

「例えが難し過ぎるわ!どこの国なんだよ!一歩間違えたらこの会話ごと消されるぞ!」

「にひひ、私は霊ですから大丈夫。生身の阿良々木さんは拉致でもされればいいんです」

「もうそれ以上言うな。どこか分かってしまう」

「ではこの話は終わりにして。あ、そうそう。阿良々木さん、お幸せに」

「ああ、ありがとう」

八九寺は言いたい事だけ言うと、どこかに消えてしまった。
160 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/02(土) 08:08:57.95 ID:6xPP/OAo
自宅に戻り、僕は勉強を始める。

が、どこかうわの空。

「一応、メールしておくか」

僕は羽川にメールする。

『今帰宅した。体調は大丈夫?暦より』

送信ボタンを押して、送信完了から同時間に返信が来た。

相変わらずメールを打つのが早いな。

『阿良々木君、心配掛けてごめんね。大丈夫だから。また明日』

非常にフランクな文章だった。

いつもなら、『拝啓』から始まるのに。

やっぱ付き合うとそうなるのか?

それとも体調が悪くて……

就寝前にもう一度メールをしたが、その日のうちに返信は来なかった。

それから僕は今日あった事を振りかえる。

羽川と戦場ヶ原の話し合い。

羽川に二人の関係を確認された。

そして頭痛。

羽川のストレスの原因となる僕の存在は、今一番羽川に近い所に居る。

じゃ、なんだ?何が原因なんだ?

ただの風邪じゃないとすれば……

僕の思い過ごしてあればと願った。
161 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/02(土) 08:09:49.72 ID:6xPP/OAo
翌日、登校して教室に入っても羽川は居なかった。

僕は席に着き、メールを打つ。

相手は勿論、羽川。

今日は休みなのかと。

が、返事は来ない。

程なくして、戦場ヶ原「さん」がやってきた。

「阿良々木君、おはよう。今日はいい天気ね。教室の中も何故か清々しいわ」

「何が言いたいんだ?」

「別にぃ、なにもぉ」

「なんだよ、そのふざけた話し方は」

「さぁ?何かしら?私はいつもこうなのよ。知らなかった?あ、忘れちゃった?と聞いた方が良かったかしら?」

「あー、はいはい、そうですか」

僕は、適当にあしらう様な返事をする。

「ところで阿良々木君、今日は羽川さん休みみたいね」

「それがどうかしたのか?」

「彼女が来なくて寂しくない?」

「そ、そんなのお前に関係ないだろ」

「羽川さん、当分来ないんじゃないかしら」
162 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/02(土) 08:10:24.50 ID:6xPP/OAo
「お前!お前何か言ったのか?!」

「さて?何かとは何の事でしょうか?」

「羽川のストレスの原因になる様な事だ!」

「さぁ?どうかしら?彼女が私の言葉をどう思うかなんて私には分からないわ」

「何を言ったんだよ!」

「さぁ?覚えていないわ。何なら本人に聞けば?『なんて言われたんだ!』と熱血漢丸出しで聞けば良くて?」

「戦場ヶ原、お前!」

「何度も言ってるでしょ、『さん』を付けなさい。私とあなたは無関係なんだから」

「無関係なら、僕と羽川の邪魔をするな!」

「あらあら、そんなに大きな声で話すと教室中に聞こえるわよ」

「くっ」

「これだけは言っておくわ。あなたの大好きな人道支援、私も協力している事忘れないでね」

そう言い捨てると戦場ヶ原は自分の席に戻ってしまった。
163 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/02(土) 08:11:26.81 ID:6xPP/OAo
僕は鞄を取り、急いで教室を出る。

駐輪場の自転車に飛び乗り、校門を登校する学生と逆行する形で走り抜ける。

勿論、目指しているのは羽川の自宅。

出来るだけの力を振り絞って自転車を漕ぐ。

そして羽川の家に到着し、僕は息を整え家のチャイムを鳴らす。

が、誰も出てこない。

携帯を取り出し、羽川に電話する。

1コール、2コール、まるで時間がスロー再生されているみたいだった。

4回目の呼び出し音で電話がつながった。

「もしもし、僕だけど」

「阿良々木君……」

「羽川、具合悪いんだろ?」

「うん……」

「今、家の前なんだけど、開けてくれないか?」

「……うん、分かった」

暫くし、家の扉が開く。

パジャマ姿の羽川。

頭には帽子。

いつかの記憶が蘇る。

そう、あの時と一緒だった。
164 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/02(土) 08:12:23.71 ID:6xPP/OAo
「ごめんね、心配掛けて」

羽川はそう告げると、僕を家の中に招き入れた。

「えっと、家の人は?」

「両親は仕事に行ったわ」

「そう……」

「だからって、変な事考えちゃダメよ?」

「何もしねぇよ!」

多分、今の羽川には精一杯の冗談だったんだろう。

羽川の部屋に通される。

整理整頓という言葉がぴったりな位、綺麗に片づけられた部屋。

ただ、不自然な位大きな本棚が一つあった。

「私、結構本が好きだから、溜まっちゃうのよね。別に処分しても問題ないんだけどね、全部記憶しているから」

「本当にお前は凄いな」

「それぐらいしか取り柄が無いのよ」

「そんな謙遜いうなよ」

「ごめんね、心配掛けて」

「ああ。ところで羽川、こっちに来てくれないか?」

「え?」

「僕の前に座ってくれ」

「う、うん」

「その帽子、取ってくれないか?」

「……うん」

羽川はゆっくりと帽子を取る。

そこにはやはり猫の耳が生えていた。
165 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/02(土) 08:13:46.35 ID:6xPP/OAo
「阿良々木君、これ見たの2回目だよね?」

「ああ」

「前に忍野さんの所に連れて行って貰った時と同じのよね?」

「ああ、そうだ」

「これって何なの?自分では分からないわ」

そう、この耳が出ると羽川はブラック羽川になる。

そして暴れまわり、羽川のストレスを解消し、やがて元に戻る。

その間の羽川の記憶はない。という事になってはいるが……

「なぁ、羽川。最近、ストレスを感じた事は無いか?」

「え?……」

「一昨日まであんなに元気だったのに」

「昨日、戦場ヶ原さんと話して―――」

「話して?話してどうなった?いや、どんな話をしたんだよ」

羽川は薄らと涙を浮かべる。

「阿良々木君は私を憐れんで付き合ってるだけだって……」

「ば、馬鹿野郎!そんな訳無いじゃないか!」

「人道支援で、私を―――私の人間強度を上げる為に別れたって。だから私が強くなれば、阿良々木君はまた戦場ヶ原さんの元に戻るって」

「ば、馬鹿な事言うな!僕は、僕は、確かにそう言われたけど、本心から好きなのはお前だよ、羽川!」

「阿良々木君……」

「な?だからそんな事考えるな。今まで通りで居ろ。そうすれば二人とも幸せだろ?」

「うん……」

僕は羽川を抱きしめた。

「僕が守るから。何があっても」

僕の腕の中で羽川は声を出しながら泣いた。
166 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/02(土) 08:14:35.67 ID:6xPP/OAo
すると、頭の上の耳が消えた!

戦場ヶ原に言葉で攻められ、それがストレスになったんだろう。

僕の本当の気持ちを知り、安堵からストレスが解消され、元に戻った。

「羽川、今からでも学校に行こう」

「でも―――」

「もう大丈夫。ほら、何も無いだろ?」

僕は羽川の手を取り、頭の上を触らせる。

「あっ」

「な?だから行こうぜ、学校」

「うん」

「じゃ、表で待ってるから、着替えて出てこいよ」

「うん」

僕は一足先に玄関を出て、自転車に跨り、羽川を待つ。

10分もしないうちに羽川が出てきた。

「おい、羽川。今日は僕の後ろに乗れよ」

「阿良々木君、二人乗りは―――」

「いいから、乗れよ」

「うん……」
167 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/02(土) 08:16:03.21 ID:6xPP/OAo
僕は羽川を乗せ、学校へ急ぐ。

学校へ到着したのは2時間目が始まった後だった。

教室に二人で入り、教師に理由を説明する。

羽川が通学途中で気分が悪くなったので迎えに行ったと。

教師は羽川にその真偽を確認すると、羽川は頷く。

勿論、これで何のお咎めも無い。

流石は羽川の御威光だ。

この場合、僕が『老婆を助けて遅刻しました』と言っても、信じて貰えないだろうが。

で、何故迎えに行ったのが僕なのか?

殆どのクラスメイトは「委員長命令で副委員長が走った」程度にしかとらえてないだろう。

本当の事を知っているのは―――そう、こっちを睨みつけている戦場ヶ原だけだ。
168 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/02(土) 12:56:38.35 ID:O2N2vg6o
羽川部屋無いはずだがまあいいか
ありゃりゃぎさん色々と酷いな
169 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/02(土) 13:26:42.48 ID:6xPP/OAo
ネタバレ自重して欲しかった
猫を読んだ人にしか分からない話じゃSSは続きませんから

これで全部パーですわ
170 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/02(土) 13:29:04.30 ID:JNoxCbIP
俺も悪かったがそれならそうと書いといてくれよ…
171 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/02(土) 13:45:33.85 ID:3sLTaAAO
原作を全く読んでない俺には何の事なのか全く読めないぜ!

え、終わりなの?
172 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/02(土) 16:00:56.78 ID:6xPP/OAo
>>170 誰も悪くにゃいにゃ

>>171 今、手にゃおししてるにゃ。8000文字ぐらい書きにゃおす。話の流れが修正ににゃりましたので、次回投下遅れます。

ちなみに、今夜の晩ごはんのお店です↓

http://photozou.jp/photo/show/113373/11051435

ブラック羽川が店主のようですね

にゃにせ、誕生日ですから、一人焼肉するんです。
173 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/02(土) 16:34:48.22 ID:sFUV2ADO
とてもそそられる店名だけど営業してんのかそれ
174 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/02(土) 17:14:40.89 ID:6xPP/OAo
いや、既に廃業してますw

まぁ、行きつけの店に「はにゃん」というのもあるので、そちらの方へ行こうかと。
175 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/02(土) 17:16:20.05 ID:6xPP/OAo
ちなみにこちら
http://www.triangletown.jp/miyuki/ko_higashi/hanyan.html

ただねぇ……通りが怖いのよ
なんかねぇ、忍野みたいなのがウロウロしてるし
176 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/02(土) 19:37:31.84 ID:sFUV2ADO
アロハ着たおっさんがうろついてんのか。それは恐いな
177 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/02(土) 20:49:10.91 ID:0J2KCeEo
メメじゃなくて忍かもしれないぞ……

天国じゃねえか
178 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/02(土) 23:12:04.55 ID:3KeV/Oso
忍だったら毎日通うよ。血吸われたい
179 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/04(月) 08:39:27.03 ID:fhqct.DO
自分が猫物語読んでないからネタバレしないで、って素直に言えばいいのに
180 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/04(月) 11:24:27.18 ID:crsSSIDO
以下猫物語ネタバレスレ

前半80ページは妹達と話してて終わる
181 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/04(月) 13:01:33.71 ID:sY7IUU.P
SSなのに原作設定に従順な怪異が湧いてるなww
前スレ辺りから必死に猫物語の設定を引っ張り出しでは難癖付ける怪異は忍に食われてしまえwwwwww

以下その頃のコピペ
369 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/09/11(土) 00:11:29.70 ID:dO0fq0go
ま、気が向けばだけど、書き直す事もありけり

ちょい、沈んだので再掲
AA略

                       西尾維新・アニプレックス・シャフト


*この物語はフィクション(SS)であり、実在する書籍と設定や性格が多少異なる事があります
*作者には校正してくれる編集さんがいませんので、たまに敬が抜けたり等の誤植がありますが、お許しください
*スレタイは殆ど関係ないと言うか、一番最後です


372 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/09/11(土) 00:16:47.76 ID:VxGd0zso [1/2]

猫読んでなかったのか


374 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/09/11(土) 00:45:18.32 ID:VO7UpEAO
激しく乙
なるほどこういう方向性のお話も好きだったんだな、俺
新しい自分に出会えたよ

>>372
ヒント >>369の最後の数行


375 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/09/11(土) 00:51:21.83 ID:dO0fq0go [10/11]
>>370 校正乙であります
>>371 ありがとう
>>372 猫はまだ1週目途中、埃かぶってるわ
>>373 いい夢みてください。夢に忍野が出てきたらいいな。


377 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/09/11(土) 01:12:44.17 ID:VxGd0zso [2/2]
>>374
???
単にSS書くほど化物語(の設定・世界観)が好きな人が猫までは読んでないのかと思って聞いただけ
他の巻で描写があったかは覚えていないけど猫黒の羽川の家の部分は既読者なら忘れないような気がして
182 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/04(月) 13:39:27.23 ID:H79So6DO
続きまだかな?
設定は作者任せでokだろ
183 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/04(月) 19:20:02.80 ID:QTuHLfMo
やっぱ全部落とさないとこうなるんだよね

でも気を取り直して、出来たところまでですが……

その前に

>>176 真冬でもアロハ着てるオッサンがぁ!
>>177 残念。忍は無いわ
>>178 元キスショットみたいなのは居ます
>>179 自分が猫物語読んでないからネタバレしないで
>>180 スレが乗っ取られる!?
>>181 前スレからの読み手、感謝です。ちなみに、猫の埃は全部落ちましたよ
>>182 あざーす
184 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/04(月) 19:21:16.67 ID:QTuHLfMo
昼休み、弁当のない羽川と購買に行き、その足で中庭に向かい昼食を摂る。

「ごめんね、お昼ごはん遅くなって」

「いや、大丈夫。しかし、いつ行っても購買は凄いな」

「本当ね」

「しかし、良かったよ。羽川がちゃんと来てくれて」

「うん……」

「なぁ、羽川。これから先、色々とあるかも知れないけど、困った時は僕に相談してくれよ」

「うん。分かった」

「なんだか阿良々木君って頼りになるね」

「ん?」

「そんな風に見えなかったのにね」

「ええー!」

「嘘。冗談よ」

「おい羽川。羽川は嘘ついた事無いって言ってなかったか?」

「そう?」

「あー!また嘘ついた!」

「やだな、今のはとぼけただけよ」

以前と変わらない、明るい羽川。

うん、僕の羽川はこうでなくっちゃ。

いつもと変わらない日常が戻ってきたように思えた。
185 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/04(月) 19:22:24.54 ID:QTuHLfMo
放課後、僕は羽川を送って帰った。

今日の勉強会は僕から中止を申し入れ、少し寄り道。

公園のベンチで世間話。

今の僕達は、もっと話し合ってお互いを知るべきだと僕は思った。

勿論、羽川も今日は二つ返事で賛同してくれたし。

日が落ち、辺りが暗くなるまで話し込んだ。

面白い話から真面目な話まで。

また自転車の後ろに羽川を乗せ、自宅まで送る。

「阿良々木君、今日はありがとう」

「いや、何度も礼を言われる事じゃない」

「うん」

「困った時はお互い様だろ?」

羽川は笑顔で頷く。

「じゃ、また明日」

「また明日、おやすみ。暦君」

「!―――お、おやすみ」

羽川に挨拶をし、僕は自転車を漕ぎだす。

羽川の家が見えなくなったのを境に、僕は興奮が口から洩れる。

「羽川に『暦君』とか言われちゃったよ!いやー、いいよなー暦君」

「あ、そうだ。僕も明日から『つばさ』って呼ぶべきなのかな?」

「こよみ&つばさ、いい、とってもいい!」

傍から見ればただの馬鹿だったと思う。

でもそれぐらい嬉しい事だった。
186 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/04(月) 19:24:39.95 ID:QTuHLfMo
ニヤニヤしながら自転車をフルスピードで走らせ、家に帰る。

幸福感120%で玄関先に自転車を停め、扉を開けると―――見慣れない靴があった。

「ん?火憐ちゃんか月火ちゃんの友達でも来てるのか?」

僕は何気なくリビングの扉を開ける。

そこに座っていたのは……


「こんばんは」

顔色一つ変えず、僕に挨拶する来客がソファーに腰掛けていた。

僕の方は、顔面から血の気が引き、多分真っ青だっただろう。

「阿良々木君、お邪魔しているわよ」

「ええ、ごゆっくり」

僕はリビングのドアを閉め、自室に戻る。

が、火憐に連れられ客は僕の部屋に来た。

「用があるのは、阿良々木君によ。妹さんじゃなくてね」

そういって、ズカズカと僕の部屋に入ってきた。

そしてテーブル前のクッションに座り、こちらを凝視する。

「改めて、今晩は。阿良々木君」

「何の用なんだよ、『戦場ヶ原さん』」
187 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/04(月) 19:25:14.35 ID:QTuHLfMo
「あら?やけに余所余所しいわね」

「当たり前だろ!お前のせいで羽川は―――」

「阿良々木君、何か勘違いしていないかしら?」

「は?」

「確かに私は阿良々木君と別れたけど。それは阿良々木君が羽川さんを助けたいって言うから」

「別れたんなら僕がその後どうしようと、僕の勝手だろ!」

「勝手?そんなの認められないわ」

「は?」

「だから、人道支援の為に私と別れて羽川さんと付き合いなさいって言ったの。覚えてない?」

「ああ、覚えているさ。『嫌いになったから別れる』とも言われたしな」

「ああ、それは―――そうでも言わなきゃ、阿良々木君は私にゾッコンだから、行動出来なかったでしょ?」

「何を今頃そんな事言ってんだよ!人を小馬鹿にするのもいい加減にしろ」

僕はかなり憤慨していた。

が、そんな僕を他所目に戦場ヶ原は相変わらず冷静かつ冷酷に話を続ける。
188 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/04(月) 19:27:43.90 ID:QTuHLfMo
「阿良々木君、何故今回、私と阿良々木君が別れたか、そこのところをもう一度確認しておきましょう」

「確認も何も無いだろ」

「いいえ、あるわ。根本は羽川さんの人間強度を上げる為、もっと噛み砕いて言えばストレスを溜めない性格へ。噛み砕いても分からないなら消化物程度で言いましょう」

「なんだよ、その気持ち悪い表現は!」

「羽川さんと別れなさい」

「は?」

「羽川さんと別れればいいのよ。恋をして振られて、諦めもつくでしょう?」

「まて、お前はどうしてそう短絡的なんだ?」

「短絡的?そんな事無いわよ。私、これでも気長に待ってる方なのよ?」

「何をボケた事を言ってるんだ!」

「そもそも阿良々木君が遅いのよ。私と別れたその足で羽川さんに告白して、次の日ぐらいに振って帰ってくればいいものを……いつまで、ダラダラと遊んでいるのかしら?」

「待てよ。そんなの羽川をおちょくっているだけだろう」

「おちょくる?彼女の願望を叶えているのよ?それも、ちゃんと私と阿良々木君が別れてね。何が不満なのかしら?二股やフェイクな彼氏だっていうなら責められてもいいけど」

「根本的にそこがおかしいだろ!」

「はて?何がおかしいのか私には分からないわ」

「羽川が僕の事が好きだって事を言ったら付き合えとか」

「羽川さんの願望は叶ったじゃない」

「今度は別れろとか」

「失恋で強度が上がるじゃない」

「そこにお前が関与しているのが分かったら、またストレスになるだろ!」

「だから、それが何?」

「それが何って……」

「ただの怪異でしょ?どこにでも居るし、どこにも居ない、阿良々木君は怪異に対して敏感過ぎるんじゃないのかしら?」

「お前……まさかお前の口からそんな事を聞くとは思わなかったよ」

「何か間違った事を言ったかしら?」
189 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/04(月) 19:29:28.45 ID:QTuHLfMo
「お前も―――戦場ヶ原も怪異に苦しんだろ!」

「ええ、苦しんだわ。でも、最終的に私は助かったわ。それがどうかした?」

「自分が助かったら、他の人間はどうでもいいのかよ!」

「阿良々木君、何か勘違いしているんじゃない?」

「何を僕が勘違いしているんだ!」

「人は―――勝手に助かるだけよ。手助けされてね、忘れた訳じゃないわよね?」

「そんなの忍野の詭弁だろ!」

「いいえ。現にあなたも私も神原もあなたの妹の御友人も皆、『勝手に』助かっただけよ」

「……」

「分かったかしら?だから、この先、彼女が助かるには―――いつまでも阿良々木君が彼女と居ては駄目なのよ」

「居て助かるのならそれでいいじゃないか!」

「そう。では一つの仮定を立てます」

「何の」

「阿良々木君と羽川さんが結婚しました。いつまで経っても子供が出来ません。行為はしますが」

「生々しい仮定を立てるな!」

「で、その原因は―――不妊症でした。この場合、羽川さんのストレスはどう解消するのかしら?」

「それは……」

「解決策として、阿良々木君が他の女性に子供を産ませました。その女性は阿良々木君の愛人から本妻になりました。羽川さんのストレスは誰が解消するのかしら?」

「……」

「分かる?いくら阿良々木君が一緒に居ても、彼女のストレスは無くならないわ」

「だからって……」

「だから、ストレスを与えて猫を出して戦うのよ」
190 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/04(月) 19:31:15.96 ID:QTuHLfMo
「何!」

「戦うの」

「誰が?」

「私が」

「お前、死ぬぞ!」

「構わないわ。別に死んだところで何の後悔も無いわ」

「お前―――」

「阿良々木君が居ない人生なんて死んだも同然なの。だから、私は人道支援の最後の詰めを行うわ」

「待てよ」

「もう私も限界なの。阿良々木君が羽川さんと一緒に登校したり、昼食したり、下校したり、うんざりよ」

「なら、何故最初にそれを言わないんだ!」

「敵を欺くには味方からでしょ?それに、言ってしまえばそれこそ―――フェイクな彼氏じゃない」

「フェイク……」

「そう、暦フェイク」

戦場ヶ原の言う事は一理ある。

羽川自身がストレスの解消法を見つけなければ―――いつまで経っても堂々巡りだ。

でも、あまりにも急すぎやしないか?

長い時間掛ければ、羽川だって変れる筈。

「あ、そうそう。言い忘れてたけど、三つ子の魂百までって言うのね。彼女の場合、生まれて直ぐに今の感情制御が身に付いたと思うわ。だから、いくら時間を掛けても無駄よ」

戦場ヶ原には見透かされていた。
191 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/04(月) 19:32:56.38 ID:QTuHLfMo
「言いたい事も言えず、ただ利口に生きる。それが彼女の世渡りなのよ」

「じゃあ、その根本を―――」

「ええ、ぶち壊すわ」

戦場ヶ原はそう言って立ち上り部屋から出ようとした。

「そうそう、阿良々木君。羽川さんとキスしたのかしら?」

「え?……」

「したの?していないの?答えなさい」

「えっと……まだです」

「そう。よく分かっているじゃない」

「何がだよ?」

「その唇は、私のものよ」

「……」

「じゃ、私はこれで」

「戦場ヶ原!僕は……そのなんていうか、今日の話に賛同できないかもしれない」

「そう。別に構わないわ」

戦場ヶ原は軽く微笑み、僕の部屋から出ていったしまった。

下階から『おじゃましました』という声が聞こえ、玄関が閉まる音がした。

僕は部屋の真ん中で天井を仰ぎ、ただ茫然と―――。

が、直ぐに携帯の呼び出し音で我に返る。

「もしもし」

「言い忘れてたけど、明日からも普通にしてね。羽川さんには私が仕掛けるから」

「あ、まってく―――」

僕の言葉を遮る様に電話は切れてしまった。
192 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/04(月) 19:38:52.68 ID:pBWnX2Mo
ガハラさんマジ鬼畜
193 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/04(月) 20:12:22.97 ID:3SY6A1go
ガハラ△
194 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/04(月) 22:15:12.66 ID:rytCiUSO
うわ…





ガハラさん






うわ…
195 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/04(月) 23:07:35.49 ID:zulZMNEo
さすがガハラさんだわ
196 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/04(月) 23:14:29.28 ID:iTLGO8Mo
どっちも好きな俺には、
バサねぇもガハラさんも選べねぇwwww
197 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/04(月) 23:39:51.59 ID:TQ7qCwMo
俺なら忍を選ぶ
198 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 08:35:20.42 ID:C7McrcDO
この人が書くガハラさんはいつも酷いな
嫌いなの?
199 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/05(火) 12:21:44.21 ID:5wNjXqoo
翌日、言われるまでもなく普通に登校する。

教室に入ると、羽川が居て、元気そうに僕に話しかける。

「おはよう、阿良々木君。昨日はありがとうね」

「あ、うん。おはよう」

「どうしたの?元気ない?」

「いや、そんな事全然ないよ。いつもと変わらないさ」

「そう。なら良かった」

「うん」

そんな朝の挨拶をしていると、背後からいつもの抑揚のない挨拶が飛んできた。

「おはよう、阿良々木君、羽川さん」

「おはよう、戦場ヶ原さん」

「お、おはよう」

「どうしたの?朝から二人してニヤニヤして」

「え?別にニヤニヤなんてしてないよ」

少し照れながら弁解する羽川。

「そ、そうだよ。別にニヤニヤなんてしてない」

「ふーん。ところで阿良々木君、昨日は美味しいコーヒー御馳走様でした」

「!」

「ん?昨日、戦場ヶ原さんと逢ったの?」

戦場ヶ原が席に戻った後、羽川に尋ねられた。
200 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/05(火) 12:23:34.95 ID:5wNjXqoo
「ん、ああ、少し話があるって、家に来た」

「ふーん。何の話?」

「あ、いや、そう大した用じゃなかった」

「大した用じゃないのに戦場ヶ原さんが阿良々木君の家に押し掛けるの?」

「急に来ちゃって、あははは……」

質問を通り越えて尋問になっていた。

「何の話だったか、私には言えないのかしら?」

「言えない事は無いけど、言ったところで本当に大した話じゃなかったんだ……」

羽川に冷たい目で圧し迫られる。

その冷たい目は疑惑というより、嫉妬から来ているものだというのは僕にも分かった。

表情全てが固まり、思いつめる様な目をして……

「あの―――」

そこで予鈴が鳴った。

救われたとでも言うべきだろうか。

「また後で話す」

僕はそう言って、席に戻った。
201 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/05(火) 12:24:11.01 ID:5wNjXqoo
授業中、二度ほど羽川が僕の方を振り返った。

羽川の様子が少しおかしい。

やはり僕と戦場ヶ原の事を疑っているのだろうか?

別に何もやましい話は無い。

ただ、話をしただけだ。

それに戦場ヶ原の話に僕は乗った訳じゃない。

そんな事を考え、黒板を見詰める。

視野に入る羽川が軽く頭を押さえ、俯く。

「は、羽川?」

最初は俯いていたが、だんだんとその体が机に突っ伏した。

「羽川!」

僕は咄嗟に席を立ち、羽川の方へ駆け寄る。

「どうした?阿良々木?」と教師が僕に尋ねる。

「先生、羽川の体調が悪いみたいです」

「ん?羽川、大丈夫か?」

「すみませ……ん。少し……頭痛がして……」

「おい、保健委員。羽川を保健室へ連れて行ってやれ」

「いや、僕が連れていきます」

「いや、阿良々木。保健委員に……」

教師の言葉を遮る様に

「いや、授業を続けてください。僕なら授業に遅れても今更問題ないです」

と、かなり自虐的な発言で。
202 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/05(火) 12:25:34.33 ID:5wNjXqoo
羽川に肩を貸し、教室を後にした。

教室を出る時、みんなの視線が背中に突き刺さる。

振り向くと―――あいつは軽く笑っていた。


保健室に羽川を連れてきたが、保健医が居ない。

とりあえず羽川をベッドに寝かせ、声を掛ける。

「おい、羽川大丈夫か?」

「あ、阿良々木君?私どうしたのかしら?」

「お前、頭痛が酷くて机に突っ伏してたろ?」

「ああ、そうなんだ。で、阿良々木君が連れて来てくれたの?」

「ああ」

「ありがとう」

「いや、礼を言われる様な事じゃない。当り前の事だ」

「そう」

「それから―――朝の話は気にするな。僕は何一つやましい事など無いし、これからもずっとお前の彼氏だ」

「うん……」

そう返事をすると、羽川は眠ってしまった。

その後、保健医が戻ってきたので僕は頭痛である事を説明し、教室に戻った。

結局、羽川は午前中全ての授業を欠席した。
203 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/05(火) 12:27:12.34 ID:5wNjXqoo
昼休み、僕は羽川の様子を伺いに行く。

休み時間に行きたかったんだが、教室移動や何やらで行けなかった。

だいたい、休み時間が10分しかないなんてどうかしてる。

保健室までの往復で消えてしまう。

そして4時限目が終わり、昼休みとなり僕は保健室へ向かう。

教室を出て、階段を降りている最中に校内放送。

何故か僕が呼ばれている。

目的地を保健室から職員室へ変更し、僕はドアを開ける。

「失礼します」

そこには担任教師が待ち構えていた。

「阿良々木、すまんな。昼休みに」

「いえ、別に構いません」

「悪いんだが、羽川を自宅まで送ってやってくれないか?」

「へ?」

「いやな、羽川の自宅に連絡したんだが、両親に連絡が取れなくてな。かなり頭痛が酷い様なので、家まで送ってやってくれないか?」

「はぁ……」

「タクシーで帰って貰いたいんだが、羽川がお前に送って貰いたいというんでな。それに、一人で帰らすのは心配だ。いいか?」

「別に構いませんが」

「おお、流石副委員長だな。最近、お前が羽川に勉強とか見て貰ってるそうじゃないか。どうりで素行が良くなって来た筈だ」

なんだよそれ。戦場ヶ原が僕と居るようになって、どうのこうの言ってたくせに。

教師なんて、所詮そんなもんか。

でも、実際のところ、僕以外が送っている最中に何かあっても困る。
204 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/05(火) 12:28:49.57 ID:5wNjXqoo
「あー、それと昼からの授業は出席扱いにしておく。くれぐれも頼むぞ」

「あ、はい」

「それから阿良々木。お前、受験するんだって?」

「はぁ……」

「それに備えて羽川に勉強を教わってるのか?」

「ええ、まぁ」

「そうか、頑張れよ。きっといい結果が出る筈だ」

「ありがとうございます」

僕は一礼をし、職員室を後にした。

本当に羽川さまさまだ。

以前の僕なら、こんな話をされる事など皆無だったからな。

一旦教室に戻り、自分と羽川の鞄を取る。

クラスメイトがこちらを見る。

「ちょっと羽川を家まで送ってくる」

誰に言った訳でもないが、とりあえず説明的な感じで声にした。

普段、殆ど話さない隣の席の女子に、

「阿良々木君、ちょっと見直したよ。カッコよかったじゃん」

と、褒められる。

「いや、委員長には色々心配掛けてるから―――罪滅ぼしってところだよ」

確かに、今、物凄く心配を掛けている。

僕が送って行く事で、それが相殺できるなら安いもんだ。

「じゃ、HRは代わりに頼むぜ」

「え?私?」

「僕に話しかけたのが運の尽きだよ」

僕は軽く笑いながら教室を後にした。
205 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/05(火) 12:30:11.82 ID:5wNjXqoo
保健室のドアを開け保健医に連れて帰る旨を伝えると、白いカーテンの向こうへ行き、羽川を連れてきた。

「羽川、大丈夫か?」

「うん……」

「とりあえず、家まで送るよ」

「ありがとう」

保健医には早目に病院に行くよう勧められた。

病院で治療出来れば何の問題も無いんだけど。

そうじゃないから……困っている。

自転車の後ろに羽川を乗せ、自宅へ送る。

家に到着し、玄関前で羽川が僕に礼を言った。

「いや、気にすんなって」

「うん……暦君、本当にありがとう」

「つ、つばさも無理するなよ」

「う、うんっ!」

一瞬、羽川が今まで見せた事のない笑顔になった。

「なんか今、頭痛が無くなったよ、えへへ」

「そ、そうか!それは良かった。でも、ちゃんと休むんだぞ。それから明日の朝は僕が迎えに来るから」

「うん」

「もしもまた頭が痛くなったら直ぐに電話して来い、いいな」

「うん」

「じゃ、僕は時間も早いし一旦学校に戻るから」

「気を付けてね」

このままここに居ても良かったが、それはそれで羽川に心配をさせてしまう気がし、僕は学校へ戻った。
206 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/05(火) 12:32:19.36 ID:5wNjXqoo
ぼくは来た道を走り、学校へ戻ると5時限目の終わりごろだった。

教室の扉を開け、何食わぬ顔で席に着く。

後ろでヒソヒソと僕の事を話している奴が居る。

でも今はそんな事どうでもいい、羽川の事だけが気にかかる。

いや、羽川を追い込もうとする戦場ヶ原の事も。

6時限目まで終わった後、職員室へ行き、担任に送った旨を報告する。

「阿良々木、別に戻らなくても良かったんだぞ?」

「いや、授業も大事だし。それに、羽川はだいぶ良くなったみたいなので。帰りに一度寄ってみます」

「おお、悪いな阿良々木」

「いえ」

「まぁなんだ。お前も根は真面目だからな。やればできる。それよりももっと早く羽川と同じクラスになっていれば良かったかもな、ガハハ」

「はぁ……では失礼します」

僕は職員室を出、教室に向かう。

もっと早く羽川と同じクラスか……

多分、僕の人生は大きく変わってたかもな。

夜中にエロ本買いに行くような事も無くて、吸血鬼に逢う事も無かっただろう。

しかし、人生にタラレバなんてナンセンスだ。

そんなどうでもいい事を考えながら歩いているうちに教室に着く。

殆どのクラスメイトは下校。

3年のこの時期になれば、クラブ活動など殆ど誰もしない。

帰って受験勉強するのが普通。

何人かが教室で話しをしているぐらい。

僕は鞄を取り、駐輪場へ向かう。

遠くに見える僕の自転車に誰かが跨っていた。

戦場ヶ原だった。
207 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/05(火) 17:54:46.32 ID:5wNjXqoo
「よお、帰らないのか?」

僕は平静を装い、声を掛ける。

「ええ、今から帰るわ」

「そうか。僕も帰るから自転車から降りてくれないか?」

「嫌よ」

「はぁ?僕に歩いて帰れってか?」

「別にそんな事は言っていないわ」

「しかし、お前がそれに乗っていると僕は運転できない」

「じゃ、こっちに座らせて貰うわ」

荷台へ座りやがった。

「送ったりしないぞ」

「別に彼氏以外の人に送って貰おうだなんて思わないわ」

「じゃ、何だよ?」

「羽川さんのお見舞いに行くんでしょ?」

「あ、ああ」

「なら、私も一緒に行くわ」

「別に来なくていい」

「あら?私は羽川さんのお見舞いに行くのよ?阿良々木君に拒否権なんて有る訳無いじゃない」

「お前が僕と一緒に行けば、羽川がどう思うか、想像できるだろ!」

「ええ、よく分かるわ。だから一緒に行くのよ」

「お前……どうしても僕達を別れさせたいのか?」

「あらあら、随分ね」

「何が!」

「じゃ、こっちから質問させて貰うわ」
208 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/05(火) 17:56:42.17 ID:5wNjXqoo
「ああ、好きにしろ。僕は急いでいるから手短にしろ」

「どうしても私の所に戻ってこないの?」

「ああ、戻らない」

「そう。分かりました」

そういうと素直に戦場ヶ原は自転車から降りた。ついに諦めてくれたか。

「阿良々木君、今の答えであなたは幾つかを失くしたわよ」

「何も失ってなんかいない」

「羽川さんは死ぬわよ」

「死なない」

「いいえ、私が殺すわ。本体が居なくなれば怪異なんて取り付く島も無いんだし」

「お前!」

「それに、私もあなたの前から居なくなる。この歳で逃げまくるなんて無理だもんね」

「止めろよ!そんな話」

「受験どころじゃなくなって、高卒で社会人がいいところかしら?夢も希望も無いわね」

「僕の事はどうでもいい!羽川には手を出すな」

「いやよ」

「駄目だ」

「どうしてもって言うなら、私を止めてみなさいよ。殺してでもね」

「そんな事出来る訳ないだろ!」

「私は出来るわ」

「冷静になれよ」

「冷静になった結果よ。羽川さんを殺されたくないなら、私のところに戻りなさい」

「無理に決まってんだろ!」

「今のが最後通告。あとは好きにさせて貰うわ」

「だから、冷静に―――」
209 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/05(火) 17:58:30.18 ID:5wNjXqoo
パンッ!

戦場ヶ原が僕の頬を叩いた。

目に涙をいっぱい浮かべ、それが零れない様にぐっと堪えながら……

「どうして、どうして私じゃダメなの!私だけを見ないの!付きあってからも羽川、羽川って、私が彼女なんでしょ!」

「戦場ヶ原―――」

「もういい!もう阿良々木君なんてどうでもいい!」

「落ちつけ!」

駐輪場に居合わせた学生がこっちを見る。

「もういいの。阿良々木君、私はどうやっても羽川さんに勝てないんでしょ?」

「勝ち負けの問題じゃない」

「じゃ、何の問題なのよ!心?心の問題なら、私は羽川さんに負けない位阿良々木君事が好きよ」

これだけ感情を曝け出した戦場ヶ原を見たのは初めてだった。

「お願い……お願いだから、私の想いを返してよ!お願いだから―――」

僕は何も言えなかった。

確かに、僕は戦場ヶ原の彼氏だった。

が、小さな、本当に小さな事がきっかけとなり、別れた。

そして、自分の中の本当の気持ちに気が付いてしまった。

この先、僕は誰を守ればいいんだろう。
210 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/05(火) 18:00:13.67 ID:5wNjXqoo
「ごめん、本当にごめん」

口から出た言葉は、戦場ヶ原に対する謝罪だけだった。

「もういいわ。なんか馬鹿らしくなってきた」

「え?」

「泣いても喚いても阿良々木君は戻ってきてくれない。だったら答えは一つしかないわよね?」

「お前……」

「ええ、今のは泣き真似。取り乱したフリをしただけ。羽川さんに対抗するには、作った感情も必要でしょう。でも、それも通じないようだし、あとは行動するだけ」

「まてよ!」

「別に逃げたりはしないわ」

そういうと羽川は携帯を取り出し、電話を始めた。

「今から5000の同志が阿良々木君を襲いに来るから」

「冗談はやめろ」

『もしもし、私。元気にしてる?そう。ふーん』

戦場ヶ原は誰と話しているんだろう……

『そう。ところで、今日あなたの彼氏借りてもいいかしら?別に何もしないわよ。心配しないで。元彼氏だし、今更手を出してもね、くくく』

「戦場ヶ原!」

「五月蠅いわね、電話中なの」

『じゃ、外野が五月蠅いのでこれで。一応断っておかないと……横恋慕したと思われたら癪に障るから。横恋慕なんて人間の恥だもんね』

プツッ

「さて、阿良々木君。羽川さんには許可を取りました。行きましょうか?」

「お前、今電話でなんて言った!横恋慕だと!羽川はそんな事してないだろ」

「だれも羽川さんが横恋慕しただなんて言ってないわ」

「くっ!」

「じゃ、漕いで貰える?それとも私が漕ぐの?」

仕方なく、僕は戦場ヶ原を後ろに乗せ、出発した。
211 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/05(火) 18:01:17.04 ID:5wNjXqoo
「で、どこに行くんだよ」

「羽川さんの家」

「それはダメだ」

「ダメとか言う立場じゃないでしょう。さっきも言ったわよ?」

あくまでも羽川に会うつもりだ。

喩え僕が拒んだところで、こいつは絶対に行く。

一人でも。

歩いてでも。

僕は渋々だが、こいつに従うしか無い。

まぁその方が安全なのかもしれない。

僕達が羽川の家に着いた頃、日は大きく傾き、空は赤と黒のコントラストが鮮やかだった。


「こんばんは、羽川さん」

「こんばんは、戦場ヶ原さん、阿良々木君」

「少しお話がしたいんだけど、いいかしら?」

「ちょっと待っていてくれる?今、準備するから」

「いえ、少し上がらせてもらえればいいんだけど?」

「ごめん、もうすぐ家の人が戻ってくるから―――」

「あら?家の人に余所余所しいのね。まるで他人みたい」

「戦―――」

「うん。やっぱ色々と遠慮しちゃうんだ、ごめんね。外で話してくれる?」

そう言って、羽川は一度ドアを閉め、暫くして制服姿で出てきた。
212 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/05(火) 18:02:19.28 ID:5wNjXqoo
「じゃ、公園で話しましょうか?」

戦場ヶ原に先導され、僕達はあの公園へ向かう。

「ねぇ、羽川さん。頭痛は大丈夫?」

「あ、うん。今のところは。さっきも少ししたけど、今は大丈夫」

「ふーん。それ何かの病気じゃないの?」

「え?」

「脳の病気とか。一度、脳外科で見て貰った方がいいかもしれないわよ?」

「うーん。でも定期的に起きる訳じゃないし」

「そう……」

二人はベンチに腰掛け、話をしている。

蚊帳の外の僕は、一人で少し離れたジャングルジムに登り空を仰いでいた。

「ところで羽川さん、阿良々木君は優しい?」

「え……うん、とても。あの、戦場ヶ原さん、私―――」

「ええ、何を言いたいか分かっているわ。でも、それを今、口にするのはどうかと思うわ」

「うん。分かった」

「優しいか。本当に阿良々木君は誰にでも優しいからね。その中でも羽川さんには特に」

「え、そうかな?」

「そうよ。昔から『羽川、羽川』って五月蠅かったし」

「や、やだな、そんな事言ってたの?」

「ええ。というか、言い方を変えれば気が多いのかしら?そのうち、違う女子の名前を連呼するかもよ?または私の名前を連呼するかも」

「そ、それはちょっとヤダな」

「嫌よね、自分以外の名前を連呼されるのって」

「う、うん……」
213 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/05(火) 18:04:37.34 ID:5wNjXqoo
「そんな気持ち、理解できる?」

「何となくだけど」

「ふーん。クレーバーな人は言う事が違うのね」

「別に私は賢い訳じゃないよ」

「そうね、ずる賢いの方かしら?」

「え?」

「では、そろそろ本題に入らせて貰っていいかしら?」

「本題?」

「ええ。本題」

「何?」

一瞬、冷たい空気が辺りを支配する。

「今日はお願いに参りました。羽川さん、阿良々木君を返して貰えないかしら?」

「返すって……別に、阿良々木君は私の所有物じゃないわよ?」

「ふーん。そう。それは有難い話ね。阿良々木君は元々は私の所有物だったけど、所有物と思ってないなら、返して貰う手間が省けるわ」

「ちょっと、戦場ヶ原さん。怒るよ?」

「何に?」

「阿良々木君は物じゃないんだから!」

「そうね。でも、私には何にも代えられない大事な宝『物』だったの。物って言うからには所有物なのよ」

「だからって返せとか、今更じゃない!」

「今更?今更というなら、それはこっちのセリフよ」

「え?」

「私と阿良々木君が付き合っているのを知りながら、何故あそこまで阿良々木君に関与するのかしら?いつまでも諦められず、ベタベタと。それこそ今更じゃない?」

「それは―――」
214 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/05(火) 18:05:40.99 ID:5wNjXqoo
「私と阿良々木君に対する矯正プログラムだっけ?あれって監視して、隙あらばってところでしょ?私があんな事に従っていたと?そんなの見透かして従ったフリをしただけ」

「そんな……それは違う!」

「廻りくどいのは嫌いだから、ハッキリ言うわ」

「……」

「あなたがいつまでも阿良々木君への想いを断てないから助けてあげたの。1度ぐらい彼氏になってあげれば悩みも解消するかと思ってね」

「それどういう意味?」

「レンタル彼氏。阿良々木君と私が、ただ普通に別れたとでも思って?」

「嘘。そんなの嘘!だって阿良々木君、私の事―――」

「あなたはまんまと騙されたのよ、羽川さん。彼を貴女の彼氏にする為に一旦別れただけ。もう思い残すこと無いでしょ?そろそろ私の『彼氏』を返して貰える?嫌とは言わせないけど」

「やだ……」

「何?聞こえないのだけど?」

「嫌よ、そんなの!阿良々木君は私の彼氏で、戦場ヶ原さんには関係ないわ!」

「やっぱりそう言うわよね?でもね、阿良々木君も同意の上の話よ」

「嘘!」

「本当よ。羽川さんの人間強度を上げるって事。ストレス溜めては暴れてるそうじゃない」

「別に暴れたり……」

「そう?なら教えてあげる、あなたは怪異に取り憑かれているの。だから阿良々木君が気に掛けるだけよ。羽川さん自身になんの魅力も無いのだから」

「え……それってどういう事?」

「自分でも気付いているのでしょ?ただ、それを夢か何かだと言い聞かせて。貴女の得意な現実逃避じゃない」

「私……そんな事……痛っ!」
215 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/05(火) 18:06:34.97 ID:5wNjXqoo
「あら?頭痛?何か悩みごと?逃げないでね。最後までちゃんと話を聞いてくれる?」

「痛い……痛……」

僕は羽川の異変に気付き、駆け寄る。

「阿良々木君、そこにいなさい!触れないで」

戦場ヶ原が僕を一喝する。

「羽川さん、あなた全部覚えているんでしょ?自分のした事を。さぁ、現実を見なさい」

「い……た……」

羽川がそのままそこに倒れる。

「羽川!」

次の瞬間、羽川の髪の色が白く輝き―――ブラック羽川に変ってしまった。

「五月蠅い人間だにゃ」

「ふーん、これが羽川さんの怪異なの」

戦場ヶ原は平然とブラック羽川を見つめる。

「お前、さっきから五月蠅いにゃ。御主人の恋路をにゃぜ邪魔するかにゃ?」

「邪魔?邪魔なのはそっちじゃない?」
216 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/05(火) 18:07:38.74 ID:5wNjXqoo
「うちのご主人様が狙っていたのに、人間お前が横取りしたんじゃにゃいか!」

「横取り?恋愛なんて早い者勝ちよ。狙うだけなら誰でも出来るのよ。勿論、告白する事もね。それもしないで横取りなんて、へそで茶が沸くわよ」

「屁理屈の多い人間だにゃ」

「屁理屈を捏ねているのは貴女の御主人、羽川さん自身でしょう」

「にゃにを言うか!お前さえ黙ってあの人から去れば全て上手くいくんだにゃ」

「どうして、それをハッキリ言わないの?怪異ではなく、人間の時に」

「お前にゃ、勘違いしているだろ。俺は御主人の代弁者であって本人ではにゃい」

「ふーん。でもね、羽川さんが表に居る時に、猫あなたは羽川さんの気持ちを知ったのよね?」

「それがどうした」

「今でも羽川さんの意識はその体の中で覚醒している。というか、意識は一つで、代弁では無く羽川さん本人が話しているだけでしょ。」

「お前……知った様な事をいうにゃ!」

「あら?事実を言われて焦っているの?」

「そんな事はにゃい」

「そう。私にはどうみても羽川さん本人にしか見えないんだけど」

「にゃにを!お前、殺されたいようだにゃ」

「ええ、ここで殺せるなら殺しなさい。阿良々木君が見ている前で。そして阿良々木君の心を掴めば?まぁ、殺人者に魅了される阿良々木君ではないでしょうけど」

「くっ……」

「さぁ、早く。私はいつでも準備出来ているわよ」

「……」
217 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/05(火) 18:09:28.94 ID:5wNjXqoo
「ねぇ、羽川さん。あなたの生い立ちにどんな不幸が有ったか私には分からないわ。でもね、これだけは言える。

同じ人を好きになった時は五分五分の立場で、同じ目線で話なり喧嘩なり争奪戦をすればいいの」

「勝者が偉そうに言うにゃ!」

「勝者?私が勝者なの?あなたは負けたの?誰に?私?私は誰とも戦ってないわ。ただ、阿良々木君に自分の気持ちを伝えただけ」

「お……ま……え…もう……ゆるさ……ない!」

「許さないと言ったわね。それでいいのよ『羽川』さん。やるならトコトンやりましょう」

「死ねよ、お前」

「ええ、阿良々木君の為になら私は死ねる」

「キー!」

「その前に、お別れの挨拶を阿良々木君としておくわ、いいでしょ?」

「ああ、好きしろ。今生の別れをにゃ」

「阿良々木君、今までありがとう。それと―――」

戦場ヶ原は僕に小さな声である質問をした。

僕の返事は「いつでも」だった。

「はい、お別れの挨拶は終わり。始めましょう」

「秒殺してやる」

「あ、そうそう。これどうぞ。あなた好きでしょう?」

「?」

戦場ヶ原はポケットから小袋を出し、それを猫の前でまき散らす。
218 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/05(火) 18:11:02.67 ID:5wNjXqoo
「はぅ、これは!」

突然、ブラック羽川がまき散らしたものに飛びつき、地面をゴロゴロと転がり廻る。

「さて、猫さん。それを好きなだけあげるから、そろそろその体から出ません?」

戦場ヶ原はベンチに駆け寄り、置いてあった自分の鞄から今度は大きな袋を出し中身をぶちまける。

猫はいっそう狂ったかのように悶え、そして羽川の身体から半分身を乗りだし、まるで幽体離脱の様に見えた。

「阿良々木君、今のうちに忍ってのを呼びなさいよ」

「へ?」

が、僕が呼ぶ間もなく、影から忍が飛び出し、猫の怪異に飛びつき―――

そのまま飲み込んでしまった。

一瞬の出来事に、僕は何が起きたか分からなかった。

が、忍がてくてくと歩いて僕の元に戻り、一言だけ残し影に戻った。

「うむ、非常に美味であった」と。
219 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/05(火) 18:11:51.22 ID:5wNjXqoo
「戦場ヶ原!」

「何?」

「今のは?」

「またたび。猫には麻薬みたいなもの。自我を忘れて惚けるのよ、知ってた?」

「そりゃ知ってるけど。もし効かなかったらどうする心算だったんだよ!」

「死ぬだけよ。いいじゃない、阿良々木君を賭けて死ねるなんて素敵よね。というか、羽川さんは阿良々木君の前で私を殺したり出来ないわ」

「でも……」

「それより、あんなところに羽川さんをいつまで寝かせておくつもり?」

羽川は冷え込んだ地面の上で突っ伏したまま動かない。

「おい、羽川!大丈夫か!」

僕は羽川を抱き上げる。

意識を取り戻した羽川を僕は強く抱きしめる。

「阿良々木君、ごめんね」

羽川の頬を涙が走り、僕の腕に落ちた。

「気にするな」

「うん。ごめんなさい。私、今までの事全部知ってたんだ」

「もうそんな事はどうでもいい」

「ごめんね、嘘ついて」

「もういいから」

「あのね、阿良々木君。私が阿良々木君の事好きってのは嘘じゃないんだよ」

「分かってる。分かってるから―――」
220 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/05(火) 18:13:35.04 ID:5wNjXqoo
僕と羽川の前に戦場ヶ原が立つ。

腕を組み、大股で、まるで仁王立ちの様に。

「阿良々木君、羽川さんに言うべき事があるんじゃ無くて?」

「あ、ああ」

「ちゃんと見届けるから、伝えなさい」

「羽川。ちゃんと聞いてくれ。僕は―――」

「ダメ!阿良々木君。もう何も言わないで。戦場ヶ原さんのところに……」

「駄目だ!ちゃんと聞け。僕は、羽川が好きだ!」

僕の言葉を聞き、羽川は安堵の表情を浮かべたが、直ぐに戦場ヶ原の方へ視線を向ける。

「よかったじゃない。ちゃんと好きって言えた上に好きだと言われて」

戦場ヶ原は優しい笑顔で僕達を見下ろし、抑揚をつけて話した。

「恋愛なんて簡単なのよ。生きるという事も同じ。言いたい事をちゃんと人に伝えれば、否定も肯定もされる。それを避けて生きるなんて出来ないの。どこかにシワが寄るだけよ」

戦場ヶ原はカッコよかった。

本当に痺れるぐらいカッコいい。
221 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/05(火) 18:15:20.96 ID:5wNjXqoo
「羽川さん、ちょっとダメなところがあるけど、阿良々木君の事大事にね」

「戦場ヶ原さん……」

「人道支援って言うのはこういうものよ、阿良々木君。本気で、正面からぶつかって相手を理解しなきゃダメ。自分の痛みは相手の痛み、相手の痛みは自分の痛みよ」

「はい」

「犠牲も大きいけれど、それだけの価値があるのよ、友達ってのはね」

「はい」

「友達が出来たら人間強度が下がるなんて誤解もいいところ。人は人に強くされるのよ」

「はい」

「じゃ、私は帰るから。風邪ひく前に帰りなさい。あと、このまま勢い付いて爛れた関係にならない様に。羽川さんなら大丈夫だと思うけど」

「ああ」

「本当に世話が焼けるわ。ここまでの演技料500万円付けておくから」

未成年なのに1000万円の借金が出来た瞬間だった。

戦場ヶ原は笑いながら、鞄をグルグル廻しながら公園から去ってしまった。

僕は羽川を起こし家まで送り、僕も帰宅した。
222 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/05(火) 18:19:47.72 ID:5wNjXqoo
翌日、登校すると羽川に挨拶される。

「阿良々木君、おはよう」

その横に戦場ヶ原。

「おはよう」

「お、おはよう」

二人は僕の方を見て、ニヤニヤと笑う。

「なんだよ、何かいい事でもあったのか?」

「さぁ?まぁ、昨日は楽しかったけどね」

昨日、僕が帰った後、戦場ヶ原が羽川の家に上がり、色々と話をしたらしい。

親をも巻き込んで。

それでかなり良い方向に色んな事が転がり始めたようだ。

そして、二人は僕にこう言った。

「ええ、とってもいい事が有ったわ。お互い、素敵な友達が見つかったの」と。

223 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/05(火) 18:40:36.11 ID:5wNjXqoo
今回のオチというか、後日談。

体育祭で戦場ヶ原は、400mリレーをブッチギリの速さでゴール。

その速さは、現役陸上部(とはいっても夏で引退したが)を遥かに凌駕するものだった。

「まぁ、私が本気を出せば次のオリンピックで金独占よ」とか。

羽川の方と言えば、騎馬戦で怒涛の強さを見せる。

一人で殆どの相手の鉢巻きを取り上げた。

正に一騎当千の如く。

「あースッキリした!たまには大きな声を張り上げるのもいいわね」とか。

そりゃ、あの羽川がとんでもない事を言いながら騎馬を走らせりゃ、相手もビビる。

何を言ったかって?それは想像にお任せします。

多分「ピー」って変換されてしまう様な事だろうし。

で、僕と言えば、公園の件以降、二人から愛される『友人』として毎日頑張ってる。

戦場ヶ原には

「なんか影に幼女飼ってるとかありえない。そんなの彼氏とか無理だし」

と言われ

羽川には

「なんかちゃんと伝えたら冷めちゃった。というか、戦場ヶ原さんと遊ぶのが忙しいのでお別れね」

と振られた。

少し強くなりすぎてんじゃないのか?
224 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/05(火) 18:45:20.94 ID:5wNjXqoo
二人は非常に仲良くやっているようで、20歳になったら独立するという羽川を戦場ヶ原が口説き、卒業後ルームシェアして住むらしい。

ちなみに、羽川は進学も考えるとかで、二人して授業料の安い国立を目指すようだ。

そうすればバイトで何とか生計を立てられるとか何とか。

まぁ、これで僕が彼女達と同じ大学に入るのは無理になった訳だが。

で、寂しい想いをしているかと言えば、そうでも無い。

今日の棒倒し、リクエストに応え、棒の一番上まで一番乗りだった。

というか、ハイジャンプで棒に飛びつき、一気に駆け上がりガッツポーズ。

昨晩、忍に腹いっぱい飲ませたからな。

どよめきと歓喜が交差して、おまけに黄色い声援も飛んできた!

勿論、棒は瞬時に倒れ、僕はそのまま地面に直撃。

影から忍が支えてくれたお陰で、怪我ひとつなくVサイン出してヒーロー気取り。

「阿良々木ってすげーな!」

「いや、阿良々木・戦場ヶ原・羽川3人が凄い。3人合わせて直江津ファイターズだな」

なんて冗談も飛び交う。

いつだったか、HRを任せた隣の席の女子にタオルとスポーツドリンクを差し出して貰ったりた。

え?交際してるのかって?

ないない。

お互い受験で忙しいし、特にそこまで意識している訳でもないし。

それと僕には野望があるし。

僕はこれからあの二人にもう一度アタックするから!

そのお話はまたいつか機会が有れば。


おわり
225 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/05(火) 18:51:45.89 ID:5wNjXqoo
>>192 ガハラさんは優しい良い人なんです
>>193 またガハラ▲から!
>>194 うわ・・・…なんかやっちゃいましt?
>>195 ですよねぇ
>>196 という訳で、こういう結末はいかがだったでしょうか?
>>197 ごめん、少ししか出せなかった。
>>198 ええ、大嫌いですよ。もう可愛さ余って憎さ100倍って感じ。


ここまで読んで頂き、誠にありがとうございましたー!

尚、ネタ募集中です。
無い場合、八九寺短編集というか、馬鹿丸出しの文章で繋ごうかなと。
その前に、いつものあの怪異の多い国へ出張かも知れません。
226 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 18:58:43.89 ID:qjORUx.o
乙です面白かった
八九寺さんをもっと出してください
227 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 20:30:26.09 ID:nDqoDZwo
乙です。
さすがのクオリティですね。面白かったです。
八九寺ネタいいですねww
そこに神原も加わったカオスなやり取りも見てみたいです。
228 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:47:50.90 ID:OCt7LYSO
神原の純愛を見たいと何度も……

言ってないけど見たい
229 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/06(水) 01:32:58.34 ID:uSz4UkAO
いっそ、あららぎさんの一切出てこない話とか
どうだろう
230 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/06(水) 02:02:25.40 ID:yrkpQo.o
一言だけいわせてもらおう
ファイヤシスターズが大好きである、と
231 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/06(水) 09:55:22.64 ID:YQhn61ko
>>226 次回、八九寺中心で

>>227 いつもありがとうございます。神原が入ってカオス化しない筈が無い!と思うのですが

>>228 カオス化する神原をどう、純愛させるか?ていうか、純愛相手は誰?そこが問題

>>229 語り部は誰にさせます?ばさ姉?

>>230 うーん……月火ちゃん嫌い><

とりあえず、八九寺に次回作書いてやると約束したんで、八九寺中心に。
八九寺心中でも構いませんけどね。
232 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/06(水) 20:33:14.43 ID:yWtFklEo
>>1
宜しくお願いします。
楽しみに待ってますww
233 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/06(水) 22:02:39.16 ID:uSz4UkAO
>>231
>八九寺心中
もう死んでr
……一緒に忍に喰い尽くされるとか?

あららぎさん無しの語り部は思い付いた時に好きな人でお願いします。
234 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/07(木) 21:00:17.34 ID:PEJgJkAO
忍に血をちゅーちゅー吸われたい
235 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/10(日) 07:53:21.92 ID:gbSynj6P
続きまだかな
236 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/11(月) 19:29:36.42 ID:unSKa2Yo
ふぅ……かの国は隣国ではあるが隣人であらず

さて、化け物にウダウダと言われながら仕事は完了
本業開始します。
237 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/11(月) 19:31:08.52 ID:unSKa2Yo
「わりとヒマな委員長の一日」


口数の少ない生徒だった彼との出会いが全ての始まり。

そんな彼が、次から次と面白おかしい話を持ってくる。

ううん、たまに切なかったり怖かったりもしたんだけど……

彼と出会った事で私の生活や性格、それと外見も変った。

色々と影響を受けて。

何より一番の影響は友達が沢山出来たって事。

不思議よね、誰とも話そうとしない人なのに色んな人を連れてくる。

いえ、色んな人と仲良くなる。

あれは一種の才能だと思うんだけど、彼自身が友達をあまり作ろうとしないが彼の不思議の一つ。

お化けなんかよりも信じがたい話。

そんな彼とその友達の話をしてみようかな。
238 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/11(月) 19:31:47.57 ID:unSKa2Yo
学校が休みの日に、近くの公園を散歩していたら彼の友人に出会った。

「真宵ちゃん、こんにちは」

「あら、アロハ着さんのお友達なのか彼女なのか、そのポジションがハッキリしない羽川さん、こんにちわ」

「……」

「あれ?私何か気に障る事言いました?」

「別に」

「いきなり怒らせた感が拭えません!」

「べ、別に怒って無いよ?」

「本当ですか?」

「うん。私、あまり怒ったりしないからね。それより、アロハ着って何?」

「噛みました」

「ああ、阿良々木君の名前を噛んだのね」

「ええ。というかですね、そこは『ワザとだろ!』とツッコミを入れるのが阿良々木流ですよ?」

「そうなの?」

「ええ。ちなみに年中頭が常夏の阿良々木さんと常夏のハワイの服を噛みあわせました!」

「ふーん」

「ふーんって……羽川さんは真面目すぎます!」

「そうかな?普通だよ?さっきも言ったけど、あまり怒ったりもしないし」

「その割に、阿良々木さんは非常に貴女の事を恐れていますよ?」

「え?そうなの?」

「ええ。まぁ、阿良々木さんはいつも『今日も羽川に怒られた』と言ってますから」

「あー……それはね、真宵ちゃん。怒ってるんじゃ無くて、注意しているだけなのよ」

「ほうほう。怒るではなく、叱るの方ですね」

「そういう事」
239 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/11(月) 19:32:58.30 ID:unSKa2Yo
「案外、羽川さんって優しいですね」

「え?」

「あんな人はコテンパンに二度と立ち上がれない位、怒った方がいいですよ?」

「まぁ、本人は悪気があってやっている訳じゃないし」

「あまり羽川さんの前では素の自分を出していないのでしょうか?」

「素?」

「阿良々木さんの本性ですよ」

「本性?阿良々木君は、二面性とか無い竹を割ったような性格じゃない?」

「甘い!」

私は小学5年生の女子に腕組み状態で踏ん反り返られ、鼻息を浴びせられながら言い切られました。

「羽川さん!貴女は甘すぎです。あの鬼畜で非道でこんちきしょうな阿良々木さんを二面性が無いとか、眼鏡の度が合って無いのでは?」

「それはちょっと言い過ぎじゃない?」

「そんな事ありません。それよりも羽川さん。話は横道に逸れますが、眼鏡どうしたんですか?」

「うん、眼鏡やめちゃった」

「嗚呼、お可哀そうに。阿良々木君の行動を見たくないばかりに、眼鏡まで外すだなんて、羽川さんも案外苦労していますね」

「あー、コンタクトにしたの」

「へー最近の眼鏡はそんなに小さくなったんですか。全然見えませんね」

「あの―――もしかしてそれコンパクトの事?」

「……やだな、冗談ですよ冗談」

「だよね、あははは」
240 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/11(月) 19:34:57.46 ID:unSKa2Yo
「コンタクトレンズは良いとして、コンパクトディスクが全然コンパクトじゃない事に付いてどう思われますか?」

「突然CDについてどうって言われても……」

「今の時代、掌に隠れるMP3プレイヤーが当たり前の時代に、あのサイズでコンパクトとかありませんよね」

「うーん。まぁ、出た当初はあれでもコンパクトだったんだろうけど。確かに、今の時代ではコンパクトとは言えないわよね」

「ですので私、新しい名前を考えました。略してもCDである事を前提に!」

「おー!それは凄い!パチパチ。で、なんて名前にしたの?」

「CHUTOHANPA DISC」

「え?」

「中途半端なサイズじゃないですか!ですから中途半端ディスク」

「あの、最初の部分は何故日本語なの?」

「え?ダメですか?」

「駄目じゃないけど……うーん?」

「ぬぬぬ」

「まぁ、中途半端なのは認めるけど」

「まるで阿良々木さんの様ですし」

「阿良々木君が中途半端?」

「ええ、かなり中途半端です」

「どういう風に?」

「さっきの話に戻りますが、あの人の二面性は恐ろしいです」

「例えば?」

「羽川さんや戦国時代さんと居る時は控えめで、格好付けていますが……私と二人っきりの時は大変なのですよ」

「どういう風に?」

「突然背後から抱きつき私のたわわな胸を揉みまくったり、頬にキスしたり舐めたり」

「……」

一瞬、目眩がしました。
241 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/11(月) 19:35:55.07 ID:unSKa2Yo
「羽川さん、聞いてます?」

「あ、うん……」

「中途半端だと思いませんか?どうせやるなら、上着をバーン!と脱がせて生乳を拝みながら揉むとか、ベロチューぐらいすればいいのにと思う訳です」

「あの……真宵ちゃん?今の話本当?」

「ええ、本当ですよ。もう、私は阿良々木さんにお嫁にもらって貰わないと駄目かも知れません」

「え?」

「ここらの知人には『今日も変態に乳揉まれてたな』とか言われます」

「……」

「羽川さん、目が死んでますよ?」

「へ?ああ、大丈夫よ、大丈夫……」

「ですので、以前阿良々木さんは他の人にもそんな事をするのかな?と思いまして、あとを付けたのですが……」

「どうだった?」
242 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/11(月) 19:36:45.22 ID:unSKa2Yo
「ええ、羽川さんとは普通ですし、神原さんとは腕組みするぐらいです」

「だよね。というか、私も監視されてたの?」

「はい!あと戦場のメリクリさんに至ってはベロチューしてましたけど。まぁバカップルですから仕方ありませんね」

「……」

「知ってます?阿良々木さんと戦国武将さんとのベロチューの時の会話」

「いやー聞きたくない!」

「聞いておくべきだと思いますよ?」

「いや、もうやめて」

「いや、聞かせます」

「真宵ちゃん、怒るよ!子供がそんな話しちゃダメ!」

「私を子供だと怒る羽川さんは大人なので、聞いてください」

「聞きたくないよ、大人だったとしても」

「でもこんな話、私の小さな胸に収めていたら、私狂いそうです!」

「小さいと言ったり、たわわと言ったりどっちなの!」

「まぁ、羽川さんには負ける小ささです」

「……」

「行きますよ?その耳の穴、かっぽじって聞きやがれ!です」
243 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/11(月) 19:37:41.31 ID:unSKa2Yo
『阿良々木君、今日はベロチューをします』

『よしきた!歯磨きして良かった』

『ちなみに私、リステリンしました」

『僕はガードハローフッ素入りで磨いたのでコーティング済みだ』

『そう。なら安心ね』

『じゃ、行くぞ』

『はい』

チュー

『今、私の唾液が阿良々木君の口の中に』

『僕の歯周病菌が戦場ヶ原の中に入ったぞ』

『奥歯に詰っていたネギを送りこんだわ』

『僕はピザを食べた時のバジルを』

『胃酸が上がってきたわ』

『大丈夫、胃酸も遺産も僕は受け入れる!』

「―――みたいな感じです」

「……」
244 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/11(月) 19:38:52.93 ID:unSKa2Yo
「どうしたのですか?羽川さん?何故泣いているのでしょう?」

「ご、ゴメン、真宵ちゃん。もう、聞きたくない」

「流石に衝撃的すぎましたか?」

「ええ、かなり。というか二人ともただの変態じゃない!」

「私はその場で卒倒しましたが、今でも生きています。いえ、死んでいますが」

「まぁ、それだけの事をリアルタイムで聞けば精神が汚染されてもおかしくないよね」

「ええ、まぁその後二人がどうなったのか、定かじゃありません」

「見てないの?」

「いえ、目が覚めたら朝でしたので」

「なんだ……(残念!)」

「え?続きが気になります?」

「え?ううん。そんな事無いよ……そんな事」

「ジー」

「あ、やだな、真宵ちゃん。あ、それより喉乾かない?ジュース買ってあげようか?」

私は物で小学生の気を逸らしてしまった。

「本当ですか!」

とても簡単に釣れたんだけど……阿良々木君って本当にあんな事してるのかしら?

そうだとしたら……

「面白い話のお礼にね(あの二人、躾が必要よね)」

「羽川さん、顔が!顔が怖いです!」

私は、何故か般若の様な顔になっていたと真宵ちゃんに言われた。
245 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/11(月) 19:39:48.76 ID:unSKa2Yo
「ところで羽川さん、羽川さんは阿良々木さんのどこが良くてお友達なのですか?」

「ん?そうね―――優しいところかな?」

「優しい?まぁ、優しいというか、お節介ですね。直ぐに何にでも首を突っ込みますし」

「まぁ、確かに。人を捨て置けない性格なんだとおもうよ?」

「どうせ突っ込むなら、首じゃ無く、頭にすればいいのに」

「首を突っ込むと言う事は、もう頭は入っているって事じゃない?」

「という事は、根元までズッポリという事でしょうか?」

「はい?」

「だから、ズッポリと奥まで入れちゃったんですよ、戦国乙女さんに」

「こら!ダメでしょ!そんな事を言っちゃ!」

「え?何を入れたんでしょうか?」

「は?やだな、そんな事私には分からないわ……」

「ふーん。羽川さんにも分からない事があるんですね」

「そりゃ、何でもは……言いませんから」

「みんな期待していると思いますよ?」

「ここには私と真宵ちゃんしか居ないじゃない!」

「え?そんな事ないですよ。そこにもあそこにも上の方にもいっぱい居ますよ、にひひ」

「……ちょっと怖いんだけど?」

「まぁ、冗談はさておき。何の話をしていましたっけ?」

「えっと……阿良々木君の二面性についてかな?」

「ああ、そうでした、そうでした」

「真宵ちゃんの件については、私から阿良々木君にきつく言っておくね」

「あー……それはそれで困ります」

「え?」

「過度なスキンシップですが、普通に挨拶してそのまま通り過ぎられるのも困ります」
246 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/11(月) 19:41:30.43 ID:unSKa2Yo
「何で?」

「え?いや、その……まぁ、阿良々木さんってカッコいいじゃないですか?」

「カッコいい?」

「ええ、カッコいいと思いません?エロな部分を除けば、優しいし、親身だし、男気はあるし。勿論、本人には言いませんけどね」

「そうだねぇ、結構そう言うところあるよね、阿良々木君って」

「ですよね。初めて羽川さんと意見が合致した気がします」

「そう?」

「ええ。ですので、今日から羽川さんの事をお姉さんと呼ばせて貰います!」

「そんな」

「羽川お姉さん……ちょっと長いですね」

「そうよね」

「はねねぇ」

「割れたスーパーボールを嘆く小学生みたいだよ?」

「うーん……何にすれば」

「私、羽川翼だから、つばさお姉さんでも良いけど?」

「それも少し長いような。つばねぇとかどうでしょうか?」

「何となくヤダな」

「じゃあ、どうしろって言うんですか?」

「羽川さんじゃダメ?」

「駄目です。全然姉妹感がありません」

「じゃあ……私、『ばさ』ってあだ名で呼ばれていたから、『ばさねぇ』とか?」

「ばさ姉……いい!とっても良いです!」

私に妹が出来た瞬間でした。
247 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/11(月) 19:43:05.00 ID:unSKa2Yo
「で、ばさ姉はそんなカッコいい阿良々木さんの事、好きじゃないんですか?」

「うーん、好きだったって言った方がいいかな?」

「え?振られたんですか?」

「振られたというか、まぁモヤモヤと葛藤している間に他の人と、くっ付いちゃったしね」

「くっ付いちゃった!死ね!って、余程残念だったのですね」

「訂正します、くっ付いちゃったからね」

「ええ、承りました。そこまで完全否定しなくてもいいです。ただのボケですから」

「ボケだったのね」

「ええ。ちなみに、先程から何度もボケで阿良々木さんの彼女さんの名前を噛んでいるのに突っ込んでくれませんね」

「いや、つっこんだら負けなような気がして」

「ふっ……まだまだ甘いですね、ばさ姉は」

「あーなんか真宵ちゃんと話していると、年上の人に虐められているみたい」

「すみません、年増で」

「やだな、5年生なのに年増だなんて」

「いえ、それは外見の問題で……実は私、中身は―――ヒソヒソ」

「!!」

私が酷く驚いた瞬間でした。

「これは阿良々木さんには内緒にしていただきたいのですが」

「うん、分かった……」

「これ、阿良々木さんの耳に入ったら『八九寺〜やらせろ〜未成年じゃないから大丈夫だ〜』と言われますから」

「ありえるよね……いや、ないでしょ!」

「肯定したり否定したり、忙しいですね、ばさ姉は!」

「忙しくさせているのは真宵ちゃんでしょ!」
248 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/11(月) 19:45:03.62 ID:unSKa2Yo
「ま、無料脳トレですよ」

「脳トレねぇ」

「ちなみに、阿良々木さんは『脳蕩れ』らしいです」

「何それ?」

「人体図鑑で脳のページを開いては前頭葉に萌え狂い、挙句に『前頭葉蕩れ!』とか言ってます」

「……嘘よね?」

「ええ、嘘です」

「もう、真に受けちゃうじゃない!」

「それぐらい、阿良々木さんは何をやってもおかしくない人なのですよ」

「で、何の話だっけ?」

「もう、ばさ姉ったら。阿良々木さんの二面性についてですよ」

「ああ。そうだったわ。なんか脱線しまくりで本線が見えなくなったじゃない」

「まぁ、私と阿良々木さんとはいつもこんな感じで話をしてますよ?」

「そうなんだ?」

「ええ、それが私の楽しみですから」

「へー」

「ところで、ばさ姉は今からどちらへ?」

「うーん、散歩中だった」

「そうなのですか。なんなら、ちょっとそこまで御一緒しませんか?」

「あ、うん。良いけど」

「ちなみに私、この辺りの事は知り尽くしているので何でも聞いてください」

「へぇ、物知りさんなのね」

「ええ、何でも知っています。隣の奥さんの情事からスーパーの特売日まで」

「なんか凄い喩えね」

「まぁ、今のは冗談として……多分、もうすぐその角を自転車で阿良々木さんが曲がって来ますよ」
249 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/11(月) 19:46:00.10 ID:unSKa2Yo
「え?そうなの?」

「ええ、毎週この時間はここを曲がって来ます。そして酷い事を私にします」

「えぇ!」

「さっきの話が本当かどうか見ますか?」

「でも……」

「私なら大丈夫です、慣れましたから」

「そんな事に慣れないで!」

「あと5分ぐらいですから、ばさ姉はそこの路地にでも隠れてください」

「でも……」

私は真宵ちゃんに背を押され、路地に隠されてしまった。

で、真宵ちゃんと言えば阿良々木君が来ると言う角とは反対の方を向き、キョロキョロと。

そこに、予告通り阿良々木君が来た。

真宵ちゃんを発見した阿良々木君は、自転車から降り、まるで忍者の様に忍び足で真宵ちゃんに近づく。

そして背後から―――
250 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/11(月) 19:47:32.30 ID:unSKa2Yo
「八九寺〜!この野郎!逢いたかったぞ〜」

「ぎゃー!」

「もっと揉ませろよ!舐めさせろよ!嗅がせろよ!スーハーさせろ!この野郎!」

「ひゃー!」

「ほらほら〜」

「ふしゅー!」

『女生徒は見た』ってドラマが出来そうなぐらい、衝撃的な映像でした。

私は路地から飛び出し、つい本気で阿良々木君に拳骨を入れてしまった。

「いてぇ!何すんだ……あれ?れれれ?羽川?」

「阿良々木君っ!なにしてるの!」

「へ?いやこれは……」

「あのね阿良々木君、やって良い事と悪い事があるでしょう!」

「あ、うん……ごめんなさい」

「ごめんで済めばいいけど、真宵ちゃんはどうするの!」

「えっと傷付いてる?」

「いえ別に。いつもの事ですから」

「あのね!二人とも!公衆の面前でやって良い事と悪い事があるぐらい分からないの?」

「まぁ、そう固い事言うなよ。これは一種のスキンシップで……それに大多数には見えないし」

「わ、私も阿良々木さんだから許している部分もありまして……」

「二人とも、そこに正座しなさい」

「はい……」「はぁ……」
251 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/11(月) 19:48:31.37 ID:unSKa2Yo
私は道端にも拘らず、二人を正座させ叱りつけた。

今思えば、少し大げさだったかも?

「阿良々木君、真宵ちゃんはまだ小学生なんだよ!そういう事は―――」

「もしかして、羽川。やきもち焼いているのか?」

「え?何を馬鹿な事言ってるの!」

「羽川にじゃなく、八九寺にしたからさ。僕は羽川が揉んでくれというならいつでもOKだぜ?」

「阿良々木君……そんな事したら一生軽蔑するから!」

「良かった。まだ軽蔑されていないみたいで」

阿良々木君は立ち上り、ズボンに付いた埃を叩き落とし

「じゃまたな!羽川、八九寺」

と颯爽と去ってしまった。

「まぁ、こんな感じです」

「こんな感じじゃないよ!真宵ちゃん」

「でもそこまで怒る事も無いと思いますよ?何せ、体は女の武器ですから!」

「あのね、もっと自分を大事にしないと―――」

「ばさ姉は分かって無いです。愛されるの意味が」

「え?」
252 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/11(月) 19:50:13.31 ID:unSKa2Yo
「男と女の間にある隙間を埋めてこそ愛。その隙間を埋めるには、【か・ら・だ】ですよ?」

「あのね、真宵ちゃん。武器だとしても安売りしちゃうとダメなのは分かってるよね?」

「ええ、勿論です。ですので、生乳は拒みますし、それ以上も勿論」

「はぁ……」

「どうされました?」

「中途半端と言ったり、拒むと言ったり……」

「ですから、TPOですTPO。何でもかんでも一辺倒ではダメなのです。その時々に合わせ、拒んだり受け入れたりなのですよ」

「そう。ごめん、そろそろ頭痛がしてきたから帰るね」

「まぁ帰るのは、ばさ姉の勝手ですが―――」

「何?」

「これだけは言っておきます。殻を打ち破ってこそ、成長のチャンスです!」

「真宵ちゃん、もっと体が大きくなってから言おうね、そういう事は」

「仕方がありません。何せ怪異の類はそう簡単に大きくなりませんから!」

「そうなの?」

「ええ、阿良々木さんの居候さんなんて500年生きて28歳ぐらいの見た目ですよ」

「確かに」

「私も200年後ぐらいには、ばさ姉と一緒ぐらいの巨乳美人になります」

「巨乳とか言わないで!」

「美人は否定しないのがしたたかですね」

「うぐっ……美人じゃない!」

「私は美人になりますので、あしからず」

「……」
253 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/11(月) 19:50:51.11 ID:unSKa2Yo
「まぁ、その乳もただ飾っているだけでは無駄乳と言われますよ?見せるなり揉ませるなりしないとです、ええ」

「そんなの……」

「そうでしょうか?その胸だけで阿良々木さんを仕留められると思いますけどね?」

「え?」

「まだ好きなのでしょ?」

「……」

「是非揉ませてあげてください。そうすれば何かが手に入ります!」

「でも、何かを失いそうで怖いよ」

「まぁ、いつかは失うものですから、早かれ遅かれ」

「……」

「ま、思い悩むのも青春ですから頑張ってください」

と、小学5年生に諭されてしまった。

彼はいつもこんな話をしているのかしら?

「じゃ、私はこれで!」と言いながら、真宵ちゃんは去ってしまった。
254 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/11(月) 19:53:54.47 ID:unSKa2Yo
今日はここまで

3連休はどうでしたか?
楽しい毎日だったでしょうか?
私は……先程も述べましたが、酷かったです。
本当に、何かいい事有ったのか?
狂うほど元気よく五月蠅かったです。

続きはまた明日以降にでも。
次パート、┣¨┣¨┣¨┣¨回也
255 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/11(月) 19:55:40.90 ID:A3D8WG6o
羽川相手なせいかアロハ着で忍野しか出てこなかったww
256 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/11(月) 20:39:16.32 ID:fOkck/2o
超乙
257 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/11(月) 20:44:21.16 ID:FYYv3.DO
おっつん
258 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/11(月) 21:05:05.29 ID:7nUOs.DO
毎回楽しいです!これからも頑張って下さい!
259 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/11(月) 22:25:51.06 ID:J3TkCASO
撫子もだしてもらいたいな
260 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/12(火) 09:33:35.29 ID:n6q/55oo
>>253 続き

真宵ちゃんと別れた後、気分直しでもう一度散歩をし直ししようと、街並みを楽しみながら歩く。

ゆっくりと歩いていると、何かの物体が私を追い越す。

その直後、風切り音がし、続いてスカートが少し捲くれ上がった。

「え?」

私が驚いていると、その物体は私の前方で止まり、振り向き後ろ走りでこっちに来た。

「やぁ、羽川先輩ではないか」

「あれ?神原さん」

成程、神原さんなら仕方が無いよね、まるで音速を越えた様な現象が起きても。

「何をしているのか?」

「うん。天気もいいし散歩中。神原さんは?」

「私は……イライラを解消する為にランニング中だ」

「イライラ?」

「ええ、イライラだ」

「神原さんでもイライラする事があるんだ」

「ええ、今非常にイライラしている」

「それをランニングで解消していると。どのくらい走るの?」

「そうだな、あと3時間ぐらいは走ろうと思うのだが」

「3時間か。神原さんの脚だと45kmぐらい走れるのかな?」

「いえ、もう少し走るぞ。こう見えても、フルマラソンを2時間30分で走るからな」

「凄いね」
261 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/12(火) 09:34:16.03 ID:n6q/55oo
「いやー、それほどでも。ちなみに、朝の5時から走っているので、もう5時間ぐらい走っている事になる」

「え……」

「って事は、フルマラソン2回分?」

「ああ。今日はフルマラソン3回分の距離を走れば何とかイライラも解消するかと」

「あのね神原さん、あまり体に負荷をかけるのもどうかと思うよ?」

「でも、イライラが止まらない」

「何か悩みごと?」

「ああ、恋の悩みだ」

「恋……」

「誰かに話だけでも聞いて貰えれば、多少なりと私の心も解放されるのだが」

「わ、私で良かったら聞くけど?」

「本当か!羽川先輩に聞いて貰えるなら百人力だ!」

「そんな」

「では、どこかで休憩しよう」

「この先に、カフェがあるからそこで」

「あー、残念だが今日は財布を持ってきていないので公園にしてくれないか?」

「ん?」

「公園なら水が飲み放題じゃないか」
262 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/12(火) 09:35:27.42 ID:n6q/55oo
「ああ。気にしなくていいわよ、私が出すから」

「いや、それは困る。先輩に奢って貰うほど、私は先輩に対して何もやっていない」

「うーん。じゃあ、先払いと言う事で」

「先払い?」

「ええ。この先、何か困った時に助けて貰うと言うか、その足の速さで何かを頼むかも知れないと言う事で、ね?」

「うーん……分かった。先輩がそうまで言ってくれるなら、遠慮なく頂こう」

結構律義なんだなと少し感心したの。

カフェで私はホットコーヒーを、彼女はアイスレモンティーをオーダーし、テラスで一息つく。

「で、神原さんは何にイライラしているのかな?」

「あー……恋愛です」

「恋愛?」

「ええ、好きな人が出来たのだが―――」

「へー、どんな人?」

「どんな人と言われても。まぁ普通の人だ」

「普通の人かぁ」

「どこにでも居る、でもどこにも居ない。そんな感じの人」

「なんか掴みどころのない人ね」

「そう!それなのだ!全然掴みどころが無い人なのだ」
263 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/12(火) 09:36:07.82 ID:n6q/55oo
「同級生?」

「いや、一つ上の先輩」

「カッコいいの?」

「うーん、外見は正直普通。でも、中身がエロカッコいい」

「エロカッコいい……」

「そのエロカッコいい先輩が、私の好きだった先輩と付き合ってしまい、私は困っている」

「は?ちょっと話が見えないんだけど?」

「ん?何が見えない?好きだった人が他の人と付き合った。私もその人が好きになった。それだけの事ではないか」

「……」

「まだ何か?」

「あのね、恋愛ってのは男女間でするじゃない。最初に好きだった人も次に好きになった人も男性だと、そのカップルは男性同士って事になるよね?」

「ぬおおおおおおおおおおおおおお!」

「神原さん!どうしたの!?」

「ああ、すまない。少し取り乱してしまった。確かに、その組み合わせは素晴らしいな」

「へ?」

「正にBLの世界ではないか」

「BL?」

「ボーイズラブだ、先輩」

「ああ、あれね」

「羽川先輩はBLに興味はないのか?」

「はい、全然全くこれっぽっちも」

私はきっぱりと答える。
264 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/12(火) 09:36:50.73 ID:n6q/55oo
「それは残念だ」

「いや、そんな事より、付き合っちゃた人の話が心配よ」

「いや、何も心配は要らない。最初に好きになったのは女性で、次に好きになったのは男性だ」

「そう、なら良かった……良くないよ!」

「何が?」

「最初に好きになった人が女性って……神原さんも女性じゃない」

「ああ。それがどうした、先輩」

「女性が女性を好きになるなんて……」

「変なのか?」

「うーん―――恋愛は自由だと思うけど」

「だろう?別に好きになったらそれが女性だろうと男性だろうと問題はない。有るか無いかなんて小さな問題だ」

「……」

「ただ、どちらの人もカッコよすぎて私が入る隙間が無い」

「まぁ、横恋慕になっちゃうよね」

「しかし、どうも諦められないのだ」

「どっちが?」

「最初に好きになった方」

「女性よね?」

「ええ、そうなのだが……はぁ、どうして阿良々木先輩と付き合っちゃんだろうか……」
265 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/12(火) 09:38:31.79 ID:n6q/55oo
「え?もしかして、羽川さんが好きだったのは戦場ヶ原さん?」

「ええ、それがどうかしましたか?はぁ……」

神原さんは、小さくため息をつきながら右手で額を押さえ、天を仰ぐ。

「と言う事は、阿良々木君も好きなの?」

「ええ、大好きですよ。阿良々木先輩って優しいし、親身だし、男気はあるし、その上エロいじゃないですか」

「エ、エロいのはどうかと思うけど」

「エロくないですか?」

「いやそういう意味じゃ無くて、エロい部分を好きな理由に挙げるのはどうかと思うの。というか、さっきから何度もその言葉を口にさせないで」

「いや、やっぱり男も女もエロくなくてはイケない」

「そ、そうかな?」

「そうです。絶対に」

彼女は目の前のアイスティーを一気に飲み干しながら目を輝かせる。

「はぁ」

今度は私が額を押さえながら溜息を零す。

「まぁ、ですので私は阿良々木先輩に嫉妬し、ぶち殺してやろうと思ったのですが、そうすると戦場ヶ原先輩に嫌われるので、180度転換して好きな人が好きなので自分も好きと思うようにしたのです、ははは」

「えらく前向きなのね」

「ええ、人間いつでも前向きに生きないとダメではないか」

「そうね」
266 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/12(火) 09:41:23.66 ID:n6q/55oo
「でも、いつも思うのだ。誰かほかの人を阿良々木先輩が好きになって、二人が別れれば良いのにと」

「そんな人の不幸を願っちゃダメでしょ」

「だな。羽川先輩の言うとおりだ」

「そうよ。幸せそうにしているなら―――」

「ところで羽川先輩。羽川先輩は好きな人は居ないのか?」

「え?私?うーん、まぁ居たんだけど、振られたというか、他の人を選んじゃったからね」

「ほう。それは興味深い話だな」

「まぁ、ただの片思いだっただけよ」

「いや、今からでも遅くない。その二人を別れさせて、羽川先輩の好きな人を奪うべきでしょう」

「そんな……そんなの無理よ」

「やってみなきゃ分かりませんよ?」

「うーん……じゃあ例えばどうすれば別れると思う?」

「それなのだが―――それが分かれば私もイライラしなくて済むのだが」

「は?」

「だから、戦場ヶ原先輩と阿良々木先輩を別れさせる術が思いつかない」

「ああ、それで走ってたんだ」

「そうです。走っている内に何か思い浮かぶかと思ったのですが、無理だった」

「うーん、作戦ねぇ」

「何か思いついたのか?先輩」

「いえ、特には」

「そっか、それは残念だ。羽川先輩なら何とかしてくれると思ったのだが」

「いや、そんなの無理だし」

「あーなんか良い案は無いものか?」

「有ると良いね」
267 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/12(火) 09:42:33.17 ID:n6q/55oo

「ちなみに、羽川先輩の好きな人って誰ですか?」

「え?えっと……」

「何を遠慮している、こういう事は必ず秘密厳守がお約束ではないか。私はこう見えても口は固い」

「いや、固いとかそういう問題じゃないし」

「では、どういう問題なのか?」

「……」

「さぁ、さぁ、言ってください」

「あ……阿良々木君」

「ああ、阿良々木先輩か……ええええええ!それは本当なのか!」

「うん、まぁ」

「なら話は早い。お互いの利害関係は一致した。二人を別れさせれば、戦場ヶ原先輩は私の元に、阿良々木先輩は羽川先輩の元に帰る」

「そんなのダメでしょ?」

「何故だ?」

「その……仲の良い二人を裂くなんて酷いじゃない」

「だが、その為に私達は悶々としている。これはいいのか?」

「まぁ、なんていうか外野になっているというか……」

「その程度を気にしていては生きていけないぞ、羽川先輩」

「いや、生死を賭ける様な事じゃないし」

「とりあえず、今から作戦会議をしよう。是非私の家に来てくれ」

私は神原さんに手を引かれ、彼女の自宅へと向かった。
268 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/12(火) 17:02:25.92 ID:XXavBL.o
羽川もBLに目覚めるのか
269 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/12(火) 18:41:01.61 ID:S8kbtcSO
さあバッチこーい
270 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/13(水) 17:50:54.09 ID:xqFI8Aso
>>267 続き

彼女の家は古風な日本家屋。

門をくぐり、土間のある玄関から渡り廊下を通って彼女の部屋へ。

部屋は広かったが……噂に違わぬ荒れ模様だった。

「神原さん、凄い本ね」

「ああ、これは全部私の宝物だ」

「宝物なら、大事にしてもっと整頓しないと」

「うーん……あはは、近く阿良々木先輩が掃除しに来てくれるので問題ない」

「えっと……そういう問題じゃないと思うよ?」

「まぁ、自分で片付けようとすると余計に乱れてだな」

「じゃ、今日は私が手伝ってあげるから、一緒に片づけましょう」

「いいのか先輩?」

「うん、全然問題ないよ。今日はヒマな一日だからね」

「それは助かる。実は、探したい本もあってだな」

「じゃ、まずは窓を開けて……」

窓まで行く道が見えなかった。

どこをどう通れば、窓に行けるのか?

ほんの数m先に窓は見えているのに、窓に手が届かない。
271 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/13(水) 17:53:03.53 ID:xqFI8Aso
「ねぇ神原さん、掃除するのに換気が必要よね?どうやったら窓が開くのかしら?」

「ん?ああ、その窓か?ちょっと待って居てくれ」

そういうと神原さんは部屋から出て行ってしまった。

そして暫くすると窓が開く。

「これでいいか?羽川先輩」

窓の外から神原さんが声をかける。

「え、ええ……あの、鍵は?」

「鍵?そんなもの必要無い。締めた事など無い」

「不用心じゃない」

「まぁ、大和撫子たるもの、いつでも夜這されてもいい様に窓の一つぐらい開けておくものだ。そもそもこの部屋は襖戸と障子戸でいつでも出入りは自由だ。なので、その小窓に鍵など意味は無い」

「そうなんだ。でもね、今時夜這なんて無いよ?有るのは性犯罪者の闖入ぐらいよ?」

「ちんにゅうかぁ……それは非常にワクワクする言葉だな」

「あっ……」

彼女に誤解を与える発言だったと後になって後悔した。

「これからはちゃんと締めておこうね」

「まぁ先輩がそういうなら。そう言えば、阿良々木先輩はこの窓に鍵が掛かっていない事を知っているのに、一度も夜這に来なかったな」

「当り前よ!」

「そうなのか?男子たるもの、夜這は礼節の一つだと言っていたのに」

「本当にそんな事言ってた?」

「んー、言ってたような言って無いような」

「それ多分言って無いと思うよ?」
272 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/13(水) 17:54:02.72 ID:xqFI8Aso
「ああ、すまない。その話をしていたのでは無く、そういう話の本を読んだのだ」

「そう……ところでこの本って殆どがその手の本なの?」

「ああ、勿論だとも。それ以外、何を読めと言うのだ」

「あのさぁ、一般文学とか興味無い?」

「全然」

「他にライトノベルとか」

「全く」

「少女マンガとかは?」

「これっぽっちも」

どこかで聞いた事がある返事をされてしまいました。

「まぁいいわ。とりあえず片づけましょう」

「そうしよう」

「で、阿良々木君はいつもどんな風に片づけてたの?」

「50音順に並べてたが。とはいっても「あかさたな」ぐらいの分類だった」

「……」

「例えばこの本のタイトルを読みながら手渡すとそれを一旦仕分けて、次にそれを順番にそこの棚に並べるだけだ」

「そう、じゃあ同じようにするね」

「では行きますよ」

私は本を積み上げるスペースをまず確保し、分類の準備に取り掛かる。
273 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/13(水) 17:54:47.82 ID:xqFI8Aso
『ノーカラー』

「な行」

『身勝手なあなた』

「ま行」

『イケない男子校』

「あ行……」

『だめっす先輩』

「た……」

『お前をバクりたい』

「あ……ゴメン、無理」

「どうした羽川先輩?」

「あのね、そのタイトルと表紙が目に飛び込んだ瞬間に鳥肌が立っちゃった」

「何故?阿良々木先輩は『バクる?爆なのか縛なのかそれとも曝なのかハッキリしろって感じのタイトルだな』と、つっこむが?」

「ごめん、そういうのは阿良々木君とやって。私には無理」

「酷いな羽川先輩。本を差別していないか?」

「いえ、差別だなんて。ただ、私には無理なの」

「なら仕方が無い。羽川先輩の好きなように並べてくれたまえ」

「とりあえず、同じサイズの本を同じ向きで並べましょう」

私は文庫本とコミックをサイズ分類し、並べ始める。

しかし、半端無い数なので、いくら棚に積んでも足元から本が消えない。

1時間ぐらい片づけて、やっと畳が少し見えてきた。
274 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/13(水) 17:55:22.04 ID:xqFI8Aso
「ところで羽川先輩、時計は12時を指している」

「そうね」

「そこでだ、少し休憩しないか?」

「んー、まぁこの調子だとあと2時間は掛かりそうだし、少し休みましょう」

「では、こちらへ」

「ん?」

案内され、客間に入ると昼ごはんが用意されていた。

恐らく神原さんの祖母だと思う女性が私に話しかける。

「ごめんなさいね、大したものが無くて」

「いえ、こちらこそ気を使っていただき恐縮です」

「これからも孫娘の事、お願いしますね」

「いえいえ、こちらこそ」

やはり、神原さんの祖母だった。

軽く会釈すると、そのまま部屋から出ていってしまった。

「さぁ、先輩召し上がれ。大したものじゃないが」

と言う割に、豪華な昼食でした。

神原さんは、あんな性格なので食事中も何かと五月蠅いのかと思いきや、非常に物静かで礼儀正しく食事を進める。

あっという間に食事を済ませ、こちらを見ている。
275 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/13(水) 17:57:30.99 ID:xqFI8Aso
「ん?どうしたの?」

「いや、羽川先輩の食事姿に見蕩れている」

「―――」

「こう何というか、そう、箸を口に運ぶ手つきや、それを口に入れる瞬間が『エロい』」

「え!うそうそ。そんな風にみえちゃうの?」

「ああ、羽川先輩の動きはいつもエロい。特に食事は―――絶品だ」

一瞬箸を止めたが、ここで止まると負けのような気がしたので、黙々と食事を続ける。

「出来るなら、その唇になってみたいものだ」

「お断りします」

「やわらかそうで、その上弾力性のあるような唇。先輩、一度吸わせて貰えないか?」

「ゴホッゴホッ」

「大丈夫か?羽川先輩」

「神原さん!そういう事を軽々しく言わないの!」

「心の叫びなのだが?」

「それでも……ダメなの!つい、口からご飯粒が飛ぶところだったじゃない」

「おお!羽川先輩と鼻からご飯。絶対あり得ない組み合わせだな、エロいな」

「鼻じゃ無く、口よ口!どうして何でもそうイヤラシイ考えをするの!?」

「それは……エロが好きだからだ、わっはっは。ところで羽川先輩はエロい事を考えたりしないのか?」

「―――そりゃ、一応人間だからね」

「ほう。非常に興味深い話だな。是非、私に羽川先輩の武勇伝を聞かせては貰えないか?」
276 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/13(水) 17:59:53.13 ID:xqFI8Aso
「武勇伝だなんて……ある訳無いじゃない。彼氏だっていた事無いんだから」

「そうなのか?案外、その胸で幾つもの男子という城を落としてきたのではないのか?」

「無いです、全然全くこれっぽっちも!」

本当は、春休みの阿良々木君との一件を話そうかと思ったんだけど、今は言わない方がいいと何故か思ったの。

「意外だな」

「何がよ?」

「委員長ってのは、裏では凄いという設定が定番なのだが?」

「それ、どこでの設定なのよ!」

「むー……」

神原さんは腕組をし、首を捻りながら何かを考えてる。

「まぁ、その辺の事は次回ゆっくり話し合おう」

「話し合いませんから」

「ケチをいうな、羽川先輩」

「ケチって……」

そんな話をしながら昼食は終わる。

また神原さんの部屋に戻り、片づけを再開したんだけど……
277 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/13(水) 18:01:10.77 ID:xqFI8Aso
「ねぇ、どうしてこんなに散らかるの?」

「さぁ?それは私には分からない」

「普通、本を読んだら元のところに戻すでしょう?」

「うーん……例えば、この本を読んでいる時に『ああ、あの本にこんな設定やあんなコマがあったな』と思いだすとすると」

「うんうん」

「ついその本を探してしまう」

「それで?」

「その本を見ているうちに、あの本の主人公と「×」したら〜とか思ってまた本を探しているとこうなったのだ」

「探し物連鎖の結果なのね?」

「そういう事だ、エヘン」

「胸張って言わないの!」

「やはり羽川先輩ほどの大きさになるまでは張ってはイケないのか?」

「サイズの問題じゃないから」

「形なのか?」

「形でも無く、胸を張るの意味自体取り間違えてるから」

「そうなのか?」

「ええ、そうよ」

半ば、やけくそ気味になりつつある私が居た。
278 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/13(水) 18:02:36.68 ID:xqFI8Aso
「じゃ、続きをするわよ」

「はい」

それから1時間ほどして、本は片付いた。

部屋の畳が全部見え、真ん中に布団らしきものが鎮座していたの。

「これも干しましょう。まだ日は高いし」

「分かった!」

神原さんは部屋の障子戸を開け、廊下の向こうの大窓を開ける。

そこには立派な庭があり、片隅に物干し台があった。

「じゃ、干してきます」

「うん、お願い」

神原さんが布団を持ちあげると、布団の下からもまた本が出てきた。

「お!その本は!それを探していたのだ!」

「これ?」

「そうだ!」

「何の本?」

「漫画だ」

「ふーん」

私はペラペラとページをめくる。

が、数秒で本を閉じる。

タイトルは「メガネの委員長の百合園」だった。
279 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/13(水) 18:03:35.05 ID:xqFI8Aso
「はぁ……」

「その本を読むと萌え死にしそうになるのだ」

「……」

神原さんは布団を片手に、私が持っていた本を取ろうと手を伸ばす。

手渡し出来たつもりだったんだけど、何故か本が二人の手から滑り落ちた。

「あっ」

「うわっ!」

片手で布団を持っていた神原さんがバランスを崩し、布団ごと倒れてきた!

「きゃっ!」

ドスン!

「痛たぁ……すまない、羽川先輩」

「だ、大丈夫」

「本当に……」

「うん、大丈夫だから……退いてくれる?」

神原さんは、私に馬乗りになる形で覆い被さっている。

「……」

「おーい!神原さーん」

「先輩!」

「はい?」

「すまない!」

「え?」

そのまま抱きつかれてしまった。
280 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/13(水) 19:20:54.26 ID:GE/3OSMo
まじかよ
281 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/13(水) 20:16:19.97 ID:A0TKWhoo
>>1乙です。
やばいww
神原とバサねぇとか斬新すぎるwwwwww
282 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/13(水) 22:13:11.58 ID:qGlV4QSO
頑張れ
超頑張れ
283 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/13(水) 22:19:51.21 ID:vaeIhsAO
二人の間に挟まれているのが僕です
284 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/13(水) 22:45:55.34 ID:A0TKWhoo
>>283
あれっ!?いつの間に?
今まで俺の横で寝てたじゃないか。
285 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/13(水) 23:07:00.44 ID:ETsTklso
あらゆる平行世界で>>283が同時観測されるという現象が起きた
286 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/13(水) 23:12:46.50 ID:pAigeYDO
一方その頃暦の家では・・・

 ドコドコドン             ミ   ))←暦
       I    /            //        /
   _  ヽO丿    __      /O>      O セックス!!
  ( () ∧/ ←火憐  〔 TV 〕       __  /V \
   I ̄I   )       || ̄.||        |PC | /> ←月火
287 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/14(木) 08:56:09.58 ID:Jj9udeMo
>>279 続き

「は、羽川先輩!」

「ひっ……」

「凄いです。この柔らかさ。何で出来ているんですか?」

神原さんは私の胸に顔をうずめ、そのまま顔を左右に動かす。

「ちょっと、やめてよ!」

「駄目です、もう止まりません!」

「お願い、こんな事ダメでしょ?」

「もう、もう我慢できない」

「ちょ、ちょっと……」

「キ、キスしてもいいですか?」

「だ、ダメ!絶対!」

「じゃ、じゃあ揉ませてください」

「それもダメ!全部ダメ!」

「でもそれでは私の気が収まらない」

「それは私のせいなのかな?」

「そうだ。先輩がこんなエロい体をしているからだ」

「そうだとしても……ダメでしょ?こんな事」
288 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/14(木) 08:57:03.39 ID:Jj9udeMo
「先輩は私が嫌いなのか?」

「嫌いじゃないわよ」

「じゃ、好きなんだな」

「でも、こういう行為は嫌いよ」

「嘘だ。さっき『一応人間だから』と言ったではないか!嫌いな筈が無い」

「だとしても、女同士なんて嫌だよ!」

「では、私を男だと思ってくれ」

「無理だから、ね?神原さん落ちついて」

「私は冷静だ」

「冷静とは思えないよ?」

「もう戦場ヶ原先輩も阿良々木先輩も要らない。羽川先輩だけが居てくれればいい!」

彼女は私にキスしようとした。

正直、「ああ、ここで私の貞操は失われるんだろうな」と覚悟した瞬間だった。

彼女が私にキスをしようとしたが、間一髪で首を横に逸らし、首筋に彼女の唇の柔らかさを感じる。

そのまま彼女は唇を這わせ、私の頬へ上がってきた!
289 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/20(水) 23:39:32.11 ID:LkrNM2AO
わーい続きだ
290 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/21(木) 07:33:03.71 ID:/BbSomso
続きは
291 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/21(木) 08:51:22.30 ID:Xpd3366o
必死に抵抗しても、男勝りの腕力の神原さんには敵わない。

それどころか、未体験の恐怖に体が震えだす。

「か、神原さん、お願いだから……」

「お願いだから?どうされたいのだ?」

もう彼女の思考ベクトルは一方向にしか向いていなかった。

私にはどうしようも無くなって……諦めるしかないのかな?

神原さんの手が私の胸元を弄る。

もう片方の手がスカートに伸びる。

(お願い!助けて阿良々木君!)

ギュッと目を瞑り、私は念じた。

その時だったの―――

私の携帯電話が鳴る。

「で、電話!」

「出なくていい」

「駄目よ、この着信音は阿良々木君だし」

「……いや、ダメだ。助けを呼ぶかもしれない」

「ね?お願いだから、電話に出させて。急用かもしれないじゃない?」

神原さんは私のスカートのポケットに手を入れ、携帯を取り出し、そして―――電源を切ってしまった。
292 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/21(木) 08:52:49.31 ID:Xpd3366o
「か、神原さん!」

「もうこれで誰にも邪魔をされる事は無い。さぁ羽川先輩、私の物になってくれたまえ」

「いやよ、絶対にいや!私、ファーストキスもまだなんだから!」

「ならそのファーストキスは私が頂こう」

「やめて、本当に怒るよ!いま止めてくれたら冗談で済むから」

「冗談?これのどこが冗談だと言うんだ?私は本気だ」

ああ、もうダメ。

携帯電話も取り上げられ、助けも呼べない。

大声を出したところで、彼女の力なら私の口を押さえつける事ぐらい容易い事。

そう思うと、何故か涙があふれてきた。

「ごめんなさい、ごめんなさい、もう許して―――ごめんなさい」

「羽川先輩の泣き顔もエロい……ああ、濡れる!」

「お願いだから……本当にもうこれ以上は―――やめて!」

「いい、本当に良い。羽川先輩が取り乱して泣き喚く姿など誰が想像できようか?私はこの時間を至福の時間だと感じている」

「う、うぅぅ……」

胸を揉まれ、スカートの中を弄られ、段々と私の感情が薄れる。

恐怖も怒りも悲しみも希望も……全て潰えて心が色を失う。

「恨まないで欲しい。恨むなら私や羽川先輩を選ばなかったあの二人を。戦場ヶ原先輩と阿良々木先輩を。」

阿良々木……その名前を聞いただけで、微かに心が動き始める。
293 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/21(木) 08:53:31.58 ID:Xpd3366o
「ちがう、そんなの違う。全部間違ってる!」

心の奥底に淀んでいた感情が爆発する。

「私は、阿良々木君が誰を選ぼうとも彼を恨んだりしない」

恋しくて愛しくて止まらない彼への想い。

あの日の事を今でも忘れない。

ずっとずっと待ってる。

諦めた筈なのに、今も待ってる。

伝えられなかった気持ち、言えなかった気持ち、どうすればいい?

走馬灯のように彼の笑顔が蘇る。

そして、激痛が私を襲う。

「い、痛い……痛い」

「ど、どうした羽川先輩!」

「痛い……」

そこで私の意識は途絶えてしまった。
294 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/21(木) 08:54:43.62 ID:Xpd3366o
暫くして目が覚めると私は神原さんの部屋の隅で横たわっていた。

辺りを見回すと、部屋の真ん中で神原さんが倒れていた。

ゆっくりと近づく。

全然動かない。

生きているのか死んでいるのかすら分からない。

怖くなった私は、畳の上に落ちていた携帯電話を拾いあげ、彼に電話する。

震える指が、上手くキーを押せない。

それでも何とか発信できた。

名前登録の時に読み方を『ああららぎ』にして、いつも一番上に来るようにしていた事がこんな所で役立つだなんて。

『もしもし―――阿良々木君?』

『おー、羽川。さっき電話したのにどうしたんだよ?その後電源が切れてしまったし』

『あのね、あのね、助けて!』

『ど、どうした!』

『い、今……神原さんの家に居るんだけど、私、意識を失って、気が付いたら目の前で神原さんが倒れていて……動かないの』

『分かった、直ぐ行く。だからそこから離れるな。絶対だぞ!』

『はい……』

私は綺麗に整頓された部屋の片隅で膝を抱え、震えながら彼を待つ。

そして視線の先に、全く動かない彼女が転がっていた。
295 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/21(木) 08:56:32.14 ID:Xpd3366o
暫くして、廊下を走る音が聞こえる。

襖戸が音を立て、全開する。

「羽川!大丈夫か!」

「あ、阿良々木君」

彼の姿を見た途端、ポロポロと涙が溢れ、ポタポタと畳の上に落ちる。

「そ、それより神原さんが―――」

阿良々木君は部屋の真ん中で倒れる神原さんのところに駆け寄り、声を掛ける。

「おい、神原。神原?大丈夫か?」

「う、ううん……ひっ!阿良々木先輩!何故ここに!」

「神原は生きている、羽川。心配するな」

神原さんは重たそうにその身体を起こし、部屋の真ん中に座る。

「何があった?言ってみろ!」

激しく詰問する阿良々木君に少し戸惑う神原さん。

「あの……あはは、あれ?思い出せないや」

「嘘つけ。何か見たんだろ?」

「あ…うん」

「実は……突然羽川さんが変身して私を襲ってきたのだが……」

「ほう。それで?」

「いや、その後は覚えていない」

ゴツン!

阿良々木君は神原さんの頭に拳骨を入れ、楽しそうに話始める。
296 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/21(木) 08:57:41.70 ID:Xpd3366o
「お前、馬鹿な事言ってんじゃない。羽川ならそこに居るだろ?『普通の姿』で」

「いや、本当なのだ阿良々木先輩。信じてくれ!」

「どうせ、真夜中までエロい本でも読んで妄想が幻覚になったんだろ」

「本当なんだ!信じて。真っ白な猫―――」

「あのな神原、妄想ってのは程々にしないと、虚言癖のある人間だと思われるぞ?お前もこれ以上称号を増やしても仕方が無いだろ?」

「は、はい……」

「でぇ、神原と羽川が何故ここに一緒にいるんだ?部屋も綺麗だし」

「えっと……羽川さんと出会って、そのまま部屋に来て貰って、あまりの惨状に部屋を片付けて貰い……」

「ふーん。で、部屋に呼んだ理由を聞こうか?神原」

「あの―――えっと―――その……」

「神原、言いたくないのか?言いたくないならこうだ!」

阿良々木君はポケットから電話を取り出しどこかに電話する。

そして2分足らずで、彼女がやってきた。

「戦場ヶ原さん!」

これには私も驚いた。

「さっきまで一緒に居たんだよ。で、用が有って神原を呼ぼうと思って電話したのに出ないし、羽川もだし。で、一緒に来て表で待って貰ってただけさ」

「そうなんだ」
297 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/21(木) 08:58:40.39 ID:Xpd3366o
「羽川さん、御機嫌は如何?」

「うーん……最低かも」

「そう。うちの神原が迷惑を掛けたみたいね。この責任、ちゃんと取らせるから」

「あ、いや。別に責任だなんて」

「いいえ、神原のする事など想像がつくわ。神原、ちょっとこっちへ来なさい」

「はい……」

「暫しの間、阿良々木君を貸しておくので少し慰めて貰えば?」

戦場ヶ原さんはこちらを見て微笑む、いや何か少し軽蔑された様な笑いだった。

神原さんは戦場ヶ原さんに連れられ、客間のほうへ行ってしまった。

「で、羽川。体に異常は無いか?」

「え?」

「うーん……何も問題は無いんだけど―――神原さんの言ってた変身って何だろ?」

「さぁ?何かの勘違いだろ?」

「ねぇ阿良々木君、阿良々木君は何か知ってるんじゃないの?」

「何にも知らない」

「嘘。だってさっき、神原さんが何かを言いかけたのを止めたじゃない」

「何も知らないさ。知ってる事でも知らない」

「何それ?」

「まぁ、お前が無事ならそれでいい。また時が来れば話すから」
298 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/21(木) 08:59:27.42 ID:Xpd3366o
「やっぱり何かあるのね?教えてよ」

「いや、言わない。何があっても言わない」

「なんで?」

「うーん……理由かぁ。言いたくないから」

「そんなのおかしいよ、知ってるのに言わないなんて」

「言って知った所でどうにもできない事だったら?知る事が苦痛になったとしても知りたいか?」

「えっ……」

「知った所で対処法が無いかもしれない。それでも知りたいか?」

「えっと……」

「話ならいつでもできる。ただ僕は話さない方がいいと判断しているだけだ。それでも知りたいって言うならいつでも話す。だから慌てず考えておけ」

阿良々木君がとてもカッコよく思えた。

あー、でもこれって甘えなのかな?

阿良々木君に心配を掛けさせているかも知れないし……

ふと気がつくと体が小刻みに震えている。

そんな私を阿良々木君は抱きしめてくれた。

「羽川。今は落ちつきを取り戻せ。それが一番大切な事だ」

私は、緊張感から解き放たれ、阿良々木君に抱かれたまま気を失うように眠ってしまった。
299 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/21(木) 22:24:50.75 ID:j1DA/6SO
抱きしめただけで失神させるとは……
300 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/23(土) 08:55:15.39 ID:H1Z5EG2o
こんなアララギはアララギじゃない
301 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/23(土) 17:11:04.06 ID:Ku78qIAO
僕です
302 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/23(土) 18:35:57.84 ID:be0I4VAo
おまえか
303 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/23(土) 20:28:04.38 ID:kz231USO
いや、俺達だ
304 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/23(土) 22:32:10.69 ID:3F68agIo
なんだ、おまえ達だったのか
305 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/23(土) 23:23:37.70 ID:oKjHVs2o
暇をもてあました
306 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/23(土) 23:30:34.02 ID:K2S5G7oo
神々の
307 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/24(日) 02:46:35.78 ID:ukZNac6o
あそび
308 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 21:55:42.65 ID:Gu74SYDO
>>1頑張れage
309 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/25(月) 01:52:55.02 ID:p4T/AkAO
ageだと稀に荒らしの標的にされるからあんまり使わない方がいいよsage
310 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/27(水) 13:59:40.68 ID:.1SYlu2o
続きは?
311 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/27(水) 23:07:02.29 ID:RNDhUcYo
また中国でもいってんじゃねーのか?
312 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/27(水) 23:33:02.04 ID:vB4rK6wo
今中国はまずいだろ
313 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/28(木) 19:40:09.19 ID:d0XhlUAO
俺の隣で寝てるよ
314 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/31(日) 20:29:27.36 ID:8hrN3oSO
続きまだー
315 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/04(木) 21:50:42.59 ID:bqWnrNQo
>>1
頑張って下さい!
316 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/07(日) 07:02:47.59 ID:lHQwLASO
せめて生存報告だけでもしてくれ……
文字通りの意味で
317 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/07(日) 10:24:40.30 ID:hEr8ICAo
猫読んでんじゃね?
318 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/08(月) 04:02:43.61 ID:USRwiEAO
あけ
319 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/11/09(火) 09:18:14.25 ID:7uiAeqAo
さーせん、急な仕事でまた飛んでました。
国内で片付け終わったらまた落とします。
ていうか一言だけ言うね。

そんなに日本が嫌いなら仕事辞めちまえ!
320 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/09(火) 21:27:16.48 ID:zscTRpYo
基地外国行ってたのか
ぜってー行きたくねーな
白は読んだか?
321 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/09(火) 23:59:52.89 ID:9qhh66Mo
>>1
リアルでも乙かれー!
wktkしながら待ってますよーwwww
322 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/11(木) 08:23:57.69 ID:Jb//3rYo
102 :名無しさん@├\├\廾□`/:2010/03/05(金) 09:47:15 ID:z9nJsKC3
      ΩΩ
     |・・|
     | J| ここは首を長くして
     |ー| 待つのが得策かと……
     |  |
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     |  |      ∧_∧
    /     \   (     ) よく言った!
.__| |    .| |_ /      ヽ
||\  ̄ ̄ ̄ ̄   / .|   | |
||\..∧_∧    (⌒\|__./ ./
||.  (    )     ~\_____ノ|   ∧_∧
  /   ヽ  その通りだ   \|   (    ) 正論だな!
  |     ヽ           \/     ヽ.
  |    |ヽ、二⌒)        / .|   | |
  .|    ヽ \∧_∧    (⌒\|__./ /
323 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/11(木) 19:07:24.57 ID:YypS/ESO
頬っぺたなげぇぇぇぇぇええええ!!
324 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/11(木) 19:55:04.74 ID:ysiO3UUo
いやいや、これは顎が伸びてるんだ
325 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/11/18(木) 14:18:58.07 ID:BJLlU5go
気が付くと、私は神原さんの部屋の真ん中で寝かされていた。

私を囲むように阿良々木君と戦場ヶ原さんと神原さん。

「あら?お目覚め?」

戦場ヶ原さんが私に微笑みながら話しかける。

さっき見た、軽蔑を含む笑いではなかった。

阿良々木君は心配そうに私を見ている。

神原さんは、何故だかずっと正座のまま私に頭を下げている。

続けて戦場ヶ原さんが話す。

「良かったわ、羽川さんが神原の毒牙にかからなくて」と。

「まぁ、神原も悪気はなかったんだ。許してやってくれないか?」

阿良々木君は、神原さんを心配し私を宥める。

多分、私が眠っている間に神原さんは戦場ヶ原さんに酷く怒られたのか、ずっと頭を下げたまま、お詫びの言葉を繰り返す。
326 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/11/18(木) 14:20:11.84 ID:BJLlU5go
「うん、別に気にしてないよ。というか、ちょっと驚いただけ」

「まぁ誰だって驚く世界だから―――最初はね」

戦場ヶ原さんは小さく頷きながら私に同意した。

「でも―――私の友人に馬乗りになるのは良くないわ。その件についてはきつく叱っておいたから」

「うん、ありがとう」

「いえ、どういたしまして」

「で、羽川。神原を許してやってくれるか?」

「許すも何も、最初から怒って無いから今まで通りでいいよ?」

「だって。神原、良かったな」

阿良々木君に言われ、初めて頭を上げた神原さん。

「本当に、本当にすみません」

「うん、大丈夫。それに、少しだけ神原さんの気持ちも分からない事もないし」

「え!」

少し誤解を与えたのか、阿良々木君と戦場ヶ原さんが固まる。
327 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/11/18(木) 15:09:39.46 ID:BJLlU5go
「いや、あっちの世界の話じゃなくて、寂しいと思う気持ちの事よ」

「そう。がっかりだわ」と、戦場ヶ原さんは微笑む。

「何でがっかりするのよ?」

「羽川さんがあっちの世界に目覚めてくれたら、私の心配ごとも減る訳だし」

「心配ごと?」

「何でも無いわ。失言」

「そう」

何となく何を言われたのかは分かったけど、ここは笑ってごまかした。

私の本心は……どっちなんだろ?

本当の気持ちはどっちだろう?

奪ってでも欲しいの?それとも幸せな姿を眺めるだけで良いの?

ううん、そんなの分かりきってるじゃない。

言葉になんてする必要なんて無い。

敗者は黙って去るだけ。

それでいいの。

自分の中で何かに言い聞かせるようにする。
328 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/11/18(木) 15:10:36.40 ID:BJLlU5go
「で、羽川。体調はもういいのか?」

「あ、うん。驚きと恐怖で少し脱力しただけだから、もう大丈夫。いつも通り!」

「そっか。なら、そろそろ行こうか?」

「え?どこに?」

「ん?今日はみんなで出掛けようと思ってな」

「そうなの?」

「阿良々木君、突然何かを思い出したように電話してきたのよ」

「へぇ……珍しいね」

「あー、なんて言うか、卒業までにこのメンバーで色々しておきたくてね」

「色々かぁ」

私はその『色々』に妄想を膨らませる。

今までも色んな事が有ったけど、この先もまだ何か起こるのかな?と。

「じゃ、出掛けようぜ」

阿良々木君の言葉でみんな立ち上り、表に出る。
329 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/11/18(木) 15:11:28.16 ID:BJLlU5go
阿良々木君を先頭に一列で歩く。

「なんか小学生の通学みたいになってるぞ?横に並べよ」

その言葉に反応し、戦場ヶ原さんがスッと阿良々木君の横に並ぶ。

ああ、やっぱり彼女なんだなと痛感した瞬間。

「羽川さんも反対側に並べば?」

「え、いいよ」

「神原と並ぶと心配でなくて?」

「あ、うん、もう大丈夫」

「そう」

でもいつの間にか横一列で歩いていた。

阿良々木君の横に戦場ヶ原さん、反対側に私、そしてその横に神原さん。

「あら?神原はそこがいいの?」

「まぁ何と言いましょうか……」

「別に好きにすればいいわ」

戦場ヶ原さんが少しだけ冷たく言い放つ。

その言葉に反応するように神原さんが戦場ヶ原さんの横に並ぶ。

「本当に節操が無い子ね」とぴしゃりと言うと、神原さんは困って一歩下がって阿良々木君の後ろをついてくる。
330 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/11/18(木) 15:12:32.95 ID:BJLlU5go
「ねぇ、神原。貴女もいい加減諦めて新しい恋をしなさいよ」

「はぁ」

「まぁ頑張って阿良々木君みたいな『男』を探しなさいね」

「はい」

神原さんは小さく返事をし、微笑んだ。

でも、その神原さんに向けられた言葉は私にも言っているようにも聞こえた。

阿良々木君みたいな人か……多分、沢山いるんだろうな。

「阿良々木君みたいな男はそう滅多に居ないから、見つけたら直ぐにアタックするように」

と、最後に付け加えられた。
331 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/18(木) 20:17:17.17 ID:fjgPq.SO
おう、おひさ(^^)ノ
332 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/19(金) 01:53:41.50 ID:g/P.JOo0
ひさびさの更新、乙!
ゆっくりでもいいからこの話を終わらせてくれよ
333 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/07(火) 08:17:58.31 ID:c2S7bMSO
待ってるぞ
334 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/14(火) 16:24:15.74 ID:sFr19YAO
まだか
335 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/18(土) 18:03:05.45 ID:hJ2VXV6o
中国人に殺されたんじゃねぇの?
336 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/24(金) 00:35:41.21 ID:hu8m/PEo
萌えのがはらさんverってなんて読むの?
教えてエロい人
337 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/26(日) 08:39:49.93 ID:YQvrN6SO
蕩れ(とれ)
338 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/26(日) 20:53:46.75 ID:y1tcGvco
惚れ
339 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 22:41:34.88 ID:xGLODwywo
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340 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 16:15:31.23 ID:mcBCK5PIo

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