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フレンダ「アイテムでスノボって訳よ!」 - 製作速報VIP(クリエイター) 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/23(土) 14:55:49.75 ID:T7jGZEU0
初長編SS 初スレ立てですが、行きます。
つたない文章表現ですが、一応がんばります。


――朝6:00 @長野県白馬「あうれおるす」駐車場

「よっしゃ着いたぞー。起きろーお前らー」

アイテムの構成員、浜面仕上は車の後方座席と助手席に座っている面々に声をかける。
彼らは今学園都市を抜けて長野県は白馬のゲレンデ「あうれおるす」に到着したのである。


「んー。あと五分。はまづら…」


眠気眼をこすりつつ隣に座っている絹旗に抱きつく滝壺理后。


「むにゃー。超くっつかないでくなさい。滝壺さん」


絹旗最愛は後部座席の真ん中で寝ている。絹旗最愛の隣にはもう一人。


「結局…ぜんっぜん寝れなかった訳よ!」


目の下にクマを作って浅い眠りから目を覚ましたフレンダ。


「あー、ぐっすり寝れたわぁ。あ、おはよ浜面」


おう。おはよう。と律儀にアイテムのリーダー麦野沈利に返事をする浜面。

「ってか、お前らー!しっかりしろ!一番眠たいのは俺なんだ!コラァ!」

アイテムのスノボ旅行が始まる!
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小テスト @ 2024/03/28(木) 19:48:27.38 ID:ptMrOEVy0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/zikken/1711622906/

満身創痍 @ 2024/03/28(木) 18:15:37.00 ID:YDfjckg/o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1711617334/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part8 @ 2024/03/28(木) 10:54:28.17 ID:l/9ZW4Ws0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1711590867/

旅にでんちう @ 2024/03/27(水) 09:07:07.22 ID:y4bABGEzO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1711498027/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:18.81 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459578/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:02.91 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459562/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:25:33.60 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459533/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:23:40.62 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459420/

2 :フレンダ「アイテムでスノボって訳よ!」 [sage]:2010/10/23(土) 14:56:40.99 ID:T7jGZEU0
話は数日前にさかのぼる。

――アイテムのワゴン車

そもそも何でスノーボードか。
それは電話の女の一言から始まる。

『ちょっとー!あんたら!最近がんばってるじゃん!休暇あげっからいってきな。じゃね』プープー

っていう訳で休暇をもらった。
フレンダが開口一番元気に告げる。

「休暇ならどっか行かない?みんなで!せっかくだしこのクソ学園都市から出たい訳よ!どう?」

「「「さんせーい」」」

女性陣は一週間近い休暇の中で何日か外に出ようと決めた。
学園都市を出ることはアイテム全会一致だった。
3 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/23(土) 15:00:55.57 ID:xgQ32y2o
アイテムスレ期待
4 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/23(土) 15:42:29.91 ID:9JJqnIU0
[たぬき]
5 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/23(土) 15:45:57.91 ID:zbwivcAO
頑張れ!
6 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/23(土) 15:55:12.27 ID:02AclPso
超私怨
7 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/23(土) 15:56:57.78 ID:nCCk8cco
超まだですか?
8 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/23(土) 16:02:11.83 ID:e/JeC9w0
お、宣伝スレにあったやつだな
楽しみにしてる。支援
9 :1 [sage]:2010/10/23(土) 16:06:45.42 ID:T7jGZEU0
「問題はどこへ行くにしてもアシの確保って訳よ…」チラ

フレンダが浜面の方を見る。

「なっ、なんだよ!おいフレンダ」

アイテムの下部構成員、浜面に一同の視線が集まる。

「あんた、最近マイカー買ったって自慢してたわよね?」

麦野がにやりと笑う。

「はい。決定ー。浜面が車出すことになりましたー。皆拍手ー」ワーワーヤッホウ
10 :1 [sage]:2010/10/23(土) 16:08:56.99 ID:T7jGZEU0
麦野の音頭に乗せられてアイテムの車内は拍喝采だ。

「お!おい!待てよ!そりゃ車買ったけどよぉ!おい!いきなりすぎだろ?第一、俺は家でぐったりしてぇんだ!」

「「「「……………ハァ…」」」」

浜面の返答でアイテムの面々を乗せた車内は水を打ったように静まり返る。

「…わーった。わーった。出すよ。出せばいいんでしょ?」

抗弁する事が無駄と判断した浜面が渋々車を運転する事に了承した。

「はまづら。よく言ったね。そんなはまづらGJ」

滝壺が浜面を慰めてやる。いや、全く慰めになっていない。

「んで、どこ行くんだ?どっか行く計画でもあんのかよ?」

浜面が言いだしのフレンダにミラー越しに話しかけるとフレンダはアチャーと言った表情を浮かべる。
どうやらどこへ行くか全く考えてなかったらしい。

「…結局、なんも考えてなかった訳よ…ごめんみんな」
11 :1 [sage]:2010/10/23(土) 16:09:59.27 ID:T7jGZEU0
「んーじゃ、スノーボードいかね?最近寒いし。雪降ってんだろ」

浜面のなんとなしに放たれた一言。スノーボードという言葉にフレンダは目を輝かせる。

「え?浜面ウィンタースポーツ出来るの?超嬉しんだけど!スキー?ボード?どっち?」

フレンダのテンションが一気に最高値まで上がった。

「私の口癖超うつってますよ。フレンダ」

絹旗が指摘するとフレンダはごめん、と一言。
どうやらフレンダはウィンタースポーツが好きなようだ。
12 :1 [sage]:2010/10/23(土) 16:10:48.72 ID:T7jGZEU0
友人が家に来たので抜けます。
書きためてるんでまたあとで!
***

「あー、俺はボードだな!フレンダは?」

浜面も若干テンションが上がっているようだ。
彼ら以外はテンションを上げられず、おいてきぼり状態だ。

「結局!私もボードなのよ!あー、こんな腐った学園都市暗部でも趣味を同じくする人がいて良かった訳よ!じゃ、ボードでいいかな?皆!」

フレンダのテンションに皆気押されてしまい否定出来ない。
浜面以外のアイテムの皆はフレンダのテンションの上がり様にあたふたしてしている。
13 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/23(土) 16:18:29.71 ID:DERK1.AO
乙curry

……最新刊のアイテム再結成宣言は嬉しかったけど、フレ/ンダの事すっかり忘れさられてますよねアレorz
14 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/23(土) 20:29:28.97 ID:/hwMBDg0
しかし「あうれおるす」って℃田舎の喫茶店みたいなネーミングセンスだな
15 :1 [sage]:2010/10/23(土) 20:32:34.05 ID:T7jGZEU0

「「「…」」」

黙りこくってしまう三人。

(いつになくフレンダが超多弁ですね…。私はスキーもスノボも超やったことないんですが…)
絹旗は生まれてこのかた、ウィンタースポーツというか、積雪もあまり見たことがない。幼少期から学園都市にいるせいだろう。
学園都市は関東圏内なのであまり積雪はない。

(スキーならあるけど…ボードはちょっとこわいかも…)
滝壺はスキーの経験はあるのだが、ボードは未経験。
板が二つあってバランスを調整できるスキー。対照的に板一枚に体を預けるボードでは体のバランスも全く違う。

(え?ちょっと。なんか話がボードに行くっぽい流れ?私運動音痴だから絶対出来ないわよ!こら!)
麦野沈利ははっきりいって運動音痴だ。能力こそ学園都市第四位の彼女だが、ウィンタースポーツなど彼女の専門外だった。
もちろんボード器具なども持っていない。
16 :1 [sage]:2010/10/23(土) 20:33:01.60 ID:T7jGZEU0

「えー?結局スノボだめ?私は行きたいんだけど?どうかな?麦野!」

フレンダが麦野に声をかける。取りあえず、アイテムのリーダーの言質はとっておきたいようだ。

「ごめんフレンダ…私やったことないんだよね。」

(あちゃー、結局初心者な訳ね…麦野は)

麦野は初心者。確かに何かを始めてする時抵抗するのは当たり前だ。

「ボードとかスキー。初心者でも出来るのかなぁ?」

麦野が恐る恐るフレンダに質問する。
17 :1 [sage]:2010/10/23(土) 20:34:46.72 ID:T7jGZEU0
「そうですね…それが超気になりますね…」

「うん。私はスキーならやったことあるけど、ボードはないんだよね」

絹旗と滝壺も麦野と同じようにフレンダの方へ向いた。

「あれ?もしかしてあんた達も初心者なわけ?」

意外!とでも言いたそうな表情のフレンダ。
まぁ、と浜面が会話に割って入る。

「初心者なら、最初は転ぶかもしれないけど、なんとかなるだろよ。俺とフレンダが経験者なんだから教えりゃいいだろーし」

いつもなら、ただのドリンクバーパシリドライバー兼雑用の浜面が仕切る事に反論が飛ぶが、女性陣からは反論は聞こえない。
フレンダ以外、専門外のボードの話だからだろう。
18 :1 [sage]:2010/10/23(土) 20:36:12.95 ID:T7jGZEU0
「あのー…超未経験者なんですが、転ぶっていう事にめちゃくちゃ抵抗あるんですけど…。いくら雪でも痛いんですよね?」

そうかもねぇ、とフレンダは顎の上に手を当てる。

「でもさ、気にしてたら結局上手くなれない訳よ。ビビらないで何回もチャレンジしたら結局滑れてました!っていう感じよ?ボードって」

(うげー…慣れるまでに時間がかかるのと、転ぶの嫌ですねぇ…)

絹旗が依然ボードで転ぶ事に抵抗を隠せないでいる。が、こればかりは実際に滑ってみなければわからない。

「まぁ、絹旗!私が丁寧に教えてあげるから安心しなさいっ!」

ドン!と無い胸のあたりにこぶしをあてるフレンダ。どうやらこの流れはもうスノボに決定のようだ。

「皆もうボード行くの決定で良い?」
19 :1 [sage]:2010/10/23(土) 20:37:34.57 ID:T7jGZEU0
フレンダが珍しくアイテムの面々の中で仕切り役だ。そこで麦野が質問。

「あー、フレンダ。せっかくの流れ、真っ二つに切ってごめん。私なんていうの?あれ。ウェア持ってないわ」

麦野が申し訳なさそうに吐露する。すると絹旗と滝壺も持ってないという。
どうやらウェアを買いに行かなければいけないようだ。

「あー、浜面!三人ともウェア持ってないから、第七学区のウェア売ってる所に向かってちょ。そこでウェア揃えちゃう訳よ!」

浜面をただのパシリ程度にしか扱っていない発言。
しかし、浜面も得意(?)のボードでテンションがあがってたのか文句を言わずウェアが売っているスポーツ関連商品販売店に向かていった。

「はいよー!じゃ、いくぜ」

アイテムを乗せた大型ワゴンは第七学区のスポーツ関連商品販売店に向かっていった。
20 :1 [sage]:2010/10/23(土) 20:39:42.72 ID:T7jGZEU0
※話にリアリティを持たせるために、実際の商品名が出てきます。
ご容赦ください。


――第七学区、スポーツ関連商品販売店

「っしゃせぇー。いらっしゃいませぇー」

店員がやる気なさそうに挨拶をする。しかし、店員のやる気のない声とは対照的に品ぞろえはかなり豊富だ。
大きい入場口をくぐると時期的にもうウィンタースポーツなのか、ボードやスキー関連の商品が目に入ってくる。

「にししし!最近仕事ばっかだったから、結構お金あるわけよ…!」

にやりと笑うフレンダの隣には黄色い半そでコートを着た麦野が早くもボードウェアを見始めている。

「…これかわいいわね」

麦野が手に取ったウェアは686×Levisのコラボもので、黄色のローライズウェア。
スタイルの良い麦野にもってこいのウェアだ。黄色をチョイスした理由はお気に入りの色だから。

「上(のウェア)はどうする?」

フレンダが尋ねると麦野はむむむと考え始めた。どうやら黄色に似合っているウェアがないか探しているようだ。

「あ、これなんかどうよ麦野に似合いそうだけど。どうかな…?」

フレンダがハンガーにつるされているウェアを一着取って麦野に見せる。
ESTIVOのカラフルでサイケデリックなウェア。千鳥格子が全体にちりばめられている。ゲレンデで目を惹くことマチガいなし!

−−−−−−−−−−−−
☆麦野のウェア
上:http://item.rakuten.co.jp/bluepeter/10014748/
下:俺の妄想
上がダボっと、下がちょいタイト。
別にウェアメーカーのまわしもんじゃないっす
21 :1 [sage]:2010/10/23(土) 20:43:46.97 ID:T7jGZEU0
「えー、これ大きくない?」

麦野はフレンダが手に取ったボードウェアをマジマジと見つめると、サイジングについて質問した。
確かに大きいが、ボードウェアは自分の体よりだいぶダボつく場合がある。
あれは単にスタイルにあわないのではなく、ボードウェアがもともと大きめに作られているからだ。

「じゃ、試着してみたほうがいいんじゃない?ささ!」

「きゃ…!」

フレンダが麦野をひっぱって更衣室に麦野を押しこむ。結局着てみなければわからないのだ。
22 :1 [sage]:2010/10/23(土) 20:45:09.26 ID:T7jGZEU0
浜面は滝壺と絹旗に連れられて隣のブロックに来ていた。

「どうかな。きぬはた。結構いいとおもわない…?」

滝壺が手に取ったウェアはA-SEVENのチョコレート柄のチェックパンツだ。
上はModern Amusementのピンクブロックの柄もの。
柄on柄で多少の目がちかちかするが、一面白銀の世界のゲレンデを考慮すれば別段問題はない。

「超似合ってると思いますよ。試着室で着たらいいじゃないですか?滝壺さん!」

絹旗がそういうと滝壺はちょっとだけ嬉しそうな顔御7をすると試着室でボードウェアを試着し始めた。

「さーって私も何着るかえらばなきゃですねー…どれどれ」

絹旗は自分のお気に入りのウェアを探す。

−−−−−−−−−−

☆滝壺のウェア
上:http://item.rakuten.co.jp/spo-ichi/10002/
下:http://item.rakuten.co.jp/bluepeter/10007737/

タイトめな感じで
23 :1 [sage]:2010/10/23(土) 20:46:05.14 ID:T7jGZEU0
「どうかな?きぬはた」

滝壺が試着室から出ると、絹旗と浜面はいなかった。すると隣の試着室から声が聞こえてくる。

「すいませーん。私も超試着中なんで見えないです!すいません」

その声を聞きつけたフレンダが滝壺のウェアを見る。

「はいはい。滝壺ぉ?フレンダだよ?見して見して☆」

試着室のカーテンがぱっと開かれる。

「…ごめん。めっちゃかわいいわ。結局、滝壺はジャージ辞めておしゃれに手を出すべきだと思う訳よ」

フレンダの予想をはるか超える滝壺。あ、そうだとフレンダが近くのニット帽コーナーに行く。
耳あてがあり、そこからもこもこした毛玉がぶらさがっている。非常にかわいらしい。ナイスチョイス。フレンダ。

-------------

☆滝壺のニット帽:http://r-s.sakura.ne.jp/w/n/mw21.jpg
24 :1 [sage]:2010/10/23(土) 20:47:25.49 ID:T7jGZEU0
試着室の前にいるフレンダの声を聞いた絹旗がフレンダに声をかける。

「フレンダぁ。私はどうですか?」

今行くよーとフレンダがこたえる。
(にしし。絹旗はちっこいからどんなウェアでも似合うって訳よ!期待期待☆)

期待に胸ふくらませ、絹旗の試着室を覗こうとするフレンダ。

「絹旗?開けますよー」

カーテンオープン!

「ど…、どうですかね…ちょっと皆とは違うんですけど…」

絹旗がもじもじしながらウェア姿でこっちに振り向く。

「あー、やばい。マジでヤバイ。絹旗、あんた絶対それ買いなさい。ってかそれどこの?」

フレンダがごり押しする絹旗の着用したウェアは麦野や滝壺のウェアと違い、上下のつなぎだ。

「ぶ、ぶるとん?なんて読むんですかね?これ。超解りません。フレンダわかりますか?」

絹旗が商標ラベルとにらめっこしている。
学園都市第一位の演算パターンが脳にあるとはいえ、中学生低学年らしく、英単語は読めないらしい。

「おーい。それはBurtonだぞ。バートン。結構高いんじゃないの?」

お金は気にしないとフレンダに告げる。

「へぇ。それはそうとして、どうですか?似合ってますかね?」

くるりと一回りする絹旗。正直メチャクソヤバイ。かわいい。

(ちょっとトイレ行く時とかめんどくさそうですけど、白は私の超お気に入りなんで)

一瞬、お手ありの方法を考えるが、それよりもこの白いつなぎが気に入ってしまったようだ。

「これにしようと思ってます…」

絹旗は真っ白のつなぎを購入する事に決定した。

−−−−−−−−−−−−

☆絹旗のウェア:http://item.rakuten.co.jp/ee-powers/600721003b03860088/
25 :1 [sage]:2010/10/23(土) 20:48:57.39 ID:T7jGZEU0
すいません。バイト行きます。


「あれ?そういえば超浜面はどこ行ったんですかね?」

私服に着替え終わった絹旗がウェアのコーナーをきょろきょろ見回すがいない。

「あー、浜面ならメンズのウェアコーナーに行ってるわよ。なんか猫背で歩いていく浜面みたから」

絹旗の後ろにフレンダと一緒にいるのは麦野。どうやら先ほどのウェアを購入したようだ。

「ちょっと、浜面がどんなウェア買うか見たくない?絹旗」

麦野の提案に絹旗は頷く。足早に会計を済まし、ウェアが這いいた大きい袋を入れた二人は浜面を探しに行くことになった。
この行動が麦野の今後の恋路を決める事に…?
26 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/23(土) 21:01:20.30 ID:Klur5gwo
結局、期待な訳よ
27 :1  ID:T7jGZEU0 [sage]:2010/10/24(日) 03:05:52.71 ID:rJw17oE0
さて、自己満[田島「チ○コ破裂するっ!」]SSでも落としていきますかね。

「どうですかー?お客様?そちらの商品は(ry」
浜面仕上は店員が執拗についてくる店が嫌いだ。

店員が近づいてくるのを確認するとそそくさと他のウェアを物色し始める。

(店員苦手なんだよなぁ…話しかけないでくれ…。お、このウェアいいじゃんいいじゃん)

浜面が手に取ったのは、インハビタントの最新モデル。都市部の迷彩柄の様な雰囲気を醸し出している。
下のパンツにもやはり同じくインハビタントの都市部調の迷彩がらをチョイスした。
つなぎではないが、見た目はつなぎに見える。
浜面は手に取ったウェアに一目ぼれした。

(やべぇ。コレマジでかっけぇ。いくらだ…?わーお…クソ…買うしかねぇ!)

頭の中で今月の資金繰りを速攻で済ませると浜面は試着室に入っていく。もちろん赤字だ。火の車。
28 :1  ID:T7jGZEU0 [sage]:2010/10/24(日) 03:07:37.85 ID:rJw17oE0

――一方、フレンダと滝壺

「あれれ?皆どこ行っちゃたわけよ…?」

フレンダはレジで会計を済ましている滝壺以外、皆を見失っていることに気付いた。
ホントはボードコーナーにいるのだが。

(あちゃー、私テンション上がりすぎてみんな見失っちゃったかな?)

フレンダは皆がどこにいるか不安になる。
その時、ねぇねぇ、とウェアが入った袋を両手で抱える滝壺がフレンダに話しかけてきた。

「ボードする時に、リフト券みたいなのってひつようなんだよね?」

そう。ボードやスキーをする時、いちいちリフトの管理をする人にチケットを見せなければ、リフトは乗れないのである。
最近だと駅の自動改札のようにIDタイプのリフトゲートもあるくらいだ。

「うん。必要だね。チケットなきゃ、リフトに乗れないって事もありうる訳よ」

そのリフト券をいちいち出したり、しまったりしているとなくす可能性も考えられる。
ボーダーやスキーヤーはカードのパスケースを腕に巻き、なくさないようにしている人もいる。

「フレンダ、みんなでおそろいのやつ買おうよ。せっかくだし」

滝壺の提案にフレンダはそれもそうねと相槌を打つ。
29 :1  ID:T7jGZEU0 [sage]:2010/10/24(日) 03:12:07.13 ID:rJw17oE0

話は少しそれるが、滝壺はかつて学園都市の第三位である御坂美琴を追いつめることに一役買った。
その時、体晶という一種の劇薬を使ったことにより、身体に不調をきたし、戦線離脱。
その際、フレンダに自分の“居場所”について相談したことがあった。

居場所とは言葉通りの意味ではなく、自分が必要とされて、見出される場所の事だ。

「ねぇ、滝壺。あんたさ、前に言ってた居場所がここしかないってセリフ覚えてる?」

フレンダが数ヶ月前の製薬工場戦の後を思い出しながら滝壺に話しかける。

「うん。覚えてるよ。あの時は、はまづらいなくて、みんなも普通の知り合いって感じだったけど、今はもっと仲良くなってるよね」

そうだね。フレンダはにこりと滝壺の発言に賛同する。
あれ以降、いくつかの仕事をこなしていくうえで、失敗もあった。
けど、皆がそれを補っていけるような状態になっている。誰ひとり戦死者を出していないこの世界のアイテムの絆は高まりつつある。


「明日は学園都市を出てみんなでゲレンデに行くってなんかしんじられないよ。うれしいな」

滝壺が本当に嬉しそうな表情をする。滝壺の居場所は前よりも皆が仲良くなっている。

「皆でおそろいのもの、何か買おうよ。フレンダ」

二人はまたボードコーナーに脚を運んでいく。わくわくを隠さずに、少し駆け足気味で。
30 :1  ID:T7jGZEU0 [sage]:2010/10/24(日) 03:17:35.68 ID:rJw17oE0
――メンズウェア試着室

(っしゃ。結構いいなコレ。ちとたけぇケド、コレがいいなやっぱ)

浜面が試着したウェアは先ほども言ったが、ツナギの様に上下同じ色のウェアだ。
セットアップである。

狭い試着室の中で何度も格好をつけた浜面。
試着室の外にある大きな鏡で自分のウェアを見てみたいと思い、上下迷彩柄のウェアを着たまま浜面は外にでる。

サー…

カーテンが開き、前の正面の鏡に自分の姿がうつら……なかった。
絹旗と麦野がちょうど浜面を探していて、偶然、前に通りかかったからだ。

「お、絹旗と麦野か。ウェア買ったんだな?」
チラと二人の袋の中をのぞき、物色する浜面。

「おー、二人ともハデだなぁー。上下白とか、そうそう着れねぇよ。俺は」

絹旗がその発言を聞き、ムッとした表情になる。
「どういう意味ですか、馬鹿にしてるんですか?」

せっかく自分が気に入ったウェアを馬鹿にされたと感じたのか、絹旗はぐっとこぶしを構える。
いやいや、そういう意味じゃなくてですね?浜面があたふたと対応する。

浜面は汚れが目立つ色のウェアはあまり着用したくなかっのだ。白は実際汚れやすい。
雪も真っ白に見えて染みを作る場合がある。まぁ、撥水しているから気にする程でもないのだが。

人通り絹旗をいじり倒した所で麦野のウェアをみようとする浜面。

「…」

何も反応しない麦野。というか浜面をガン見状態だ。

「おーい?麦野?」
ウェアを着たまま麦野に話しかける浜面。しかし、全く麦野は反応しない。
31 :1  ID:T7jGZEU0 [sage]:2010/10/24(日) 03:26:27.97 ID:rJw17oE0

「おい、どうした?麦野?おい」

浜面の上下迷彩ウェアを見て固まっている麦野。
実は気分が悪い訳でも、なんでもない。ただ単に浜面のボードウェアに見とれていたのである。



――麦野の思考サイド

(は?おい、待て。浜面普通にウェアカッコいいんだけど)

(ってかいつも猫背のお前が背筋ののばすと結構がっちりしてるんだにゃーん)

(そういや、あいつスキルアウトやってる時から対能力者の為に身体鍛えてるって言ってたっけ)

(ってか…ウェア着た浜面かっこいい…//私、重傷だなこりゃ)





「おーい、どうした?麦野?」

浜面がウェアを着たまま麦野に話しかけている。
絹旗も背伸びをしながらむぎのーと呼びながらぴょんぴょん跳ねている。

「は!ごめん。完全に自分だけの現実見失ってたわ…」

危うく自分だけの現実すら失いかけていた麦野だが、浜面がそんな事を知る由もない。
「おいおい、体調悪いんなら無理しなくていいんだぞ?麦野」

浜面は適当に麦野がぼーっとしていた理由を考えるが取りあえずなだめておくことにした。

(あんたのウェア姿に見とれてましたなんて言える訳ねーだろーが。はーまづらぁ!)

何故か頬が赤い麦野。その理由はとてもじゃないが、皆の前で言えることではなかった。
しかし、絹旗は麦野沈利が完全に浜面に見とれていた所を目撃し、ニヤニヤしていた。

(ふっふっふ。これで初日の夜はいじりまくってやりますよ。麦野…!超浜面に何見とれてんですか…くっくっく)

早くもゲレンデ初日の夜は荒れそうな予感がするのであった。
32 :1  ID:T7jGZEU0 [sage]:2010/10/24(日) 03:41:24.17 ID:rJw17oE0
「じゃ、この迷彩ウェアにするわ。俺」

試着室から出て、浜面がウェアを手に持ち、会計に向かう。そこで滝壺とフレンダがやってきた。

「みんなでおそろいのパスケース…かってきたよ」

滝壺が五人分のパスケースを見せる。デスレーベルのドクロウサギがプリントされいる。

「滝壺さん…!これはバニーですよ…!超浜面の趣味に合わせたなんて感涙ですね…!」

と茶化す絹旗。でも、おそろいのものをかえて嬉しいのは絹旗も一緒だ。

「わたしとフレンダで買ったの。みんなおそろいだよ☆」

フレンダと滝壺が顔を見合し、ねー!と話す。

「あ、ちなみに女子が白ではまづらが黒だよ。いいかな?」

と滝壺はすでに買ったパスケースを袋の上から皆にみせ、確認する。
一人だけ色違いの浜面は一応男女で差をつけたんだなと判断した。

−−−−−−−−−−−−
☆浜面のウェア
上:http://item.rakuten.co.jp/freak/10003522/
下:http://item.rakuten.co.jp/freak/10003519/#10003519

☆滝壺とフレンダが購入したパスケース
http://item.rakuten.co.jp/f-janck/deathlabel_passcase_001/
33 :1  ID:T7jGZEU0 [sage]:2010/10/24(日) 03:45:49.34 ID:rJw17oE0
浜面がちらとのぞき終わると絹旗と麦野もどれどれ?と袋の上から覗き込む。興味津津のようだ。

「おおー!なんか超仲良しって感じですね!」

「あら、いいじゃない。黒でシンプル。センスあるわ二人とも」

テンションがあがる絹旗とつい先ほどまで浜面のボードウェア姿に見とれていた麦野はパスケースにご満悦なようだ。

「おいおい、アイテムもいよいよ仲良くなってきたな!」

浜面は自分のパスケースもあることで、アイテムのメンバーとして認められたことが嬉しいようだ。

「よっしゃ、そしたら会計済まして、アジト行って明日に備えようぜ!」

アイテムの面々はその日同じアジトで寝て、朝、長野の白馬「あうれおるす」に向かっていくのだった。

浜面は某つんつん頭と同じで風呂場で就寝だったそうだ。


――ウェア購入シーン終了
次はゲレンデ午前中パートです。

34 :報告 [sage]:2010/10/24(日) 03:48:34.53 ID:rJw17oE0
すいません。
書きためてたんですけど、なんと会話文と台本形式が混同していまして、地の文形式に統一・修正して投下していきます。

こんなつまらん作品読んでる人あんまりいないだろーけど、読んでる人いたら、ごめんなさい。

では寝ます。ばーい
35 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/24(日) 04:04:06.42 ID:iyErYOQo
いやいや、アイテムでほのぼの大好物ですよ!
しかしむぎのんがデフォでデレ装備とは堪りませんなあ・・・
36 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/24(日) 04:53:10.68 ID:XEbsmloo
うーん、最近のウィンタースポーツ用ウェアって、腕や胸の所にパスホルダー標準装備じゃなかったっけ?
37 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 09:11:49.38 ID:PIrB.LQ0
>>36
学園都市は基本学業に関係しないものの値段を高くする傾向があるからな
バラ売りすることで値段を高くしてるのかもしれないぜ?
いや最近のウェアについてなんてよくは分からんが
38 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/24(日) 11:18:21.44 ID:AMjnAQAO
なかなか やるようだな
>>1 超乙かれ
39 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/24(日) 12:34:11.44 ID:YUYvqgAO
インハビ好きのはまづらとは仲良くなれる気がするww
カジュアルしか持ってないけど高いんだよな。その分、格好良いし機能性も良いけど
はまづらとインハビ着てSK8やBMXやブレイクダンスしたい
40 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 12:52:28.59 ID:iriZRjQ0
スキーなんて小学生以来やってなくてあんま覚えてないんだけど
ウェアってこんなハデな物しかないの?
41 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/24(日) 13:41:58.64 ID:9j6dd6M0
>>1はよくわかってる
はまづらは迷彩柄絶対似合うと思うんだ
42 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/24(日) 13:48:50.21 ID:AMjnAQAO
>>40
普通に一人の人間として自由に
外を出歩けたり、買い物が出来るなら
どんな製品(衣類・食器・料理・雑貨)でも、派手な物・地味な物・カッコいい物・かわいい物など…
 さまざまなタイプがあるって分かる筈なんだが…。どこかに軟禁でもされてんの?
ずーっと軟禁生活で世間知らずかなんか?(TOAの主人公・ルークみたいな)
43 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/24(日) 14:08:58.94 ID:rJw17oE0
おはようございます。
セリフから地の文に修正するとほぼ書きためないような感じに…
遅くなりますが、言行一致させます。

古いウェアもかなりドロドロした色合いしませんかね?
では、落とします。

――アイテムの宿泊する予定のゲレンデ兼民宿「あうれおるす」駐車場 7:00頃

途中で白馬の山中にあるドンキで買い出しを済ませ、ゲレンデ兼民宿「あうれおるす」の駐車場に到着するアイテム御一行。

東京郊外の学園都市から煩雑な出入手続きを取り、数時間。
運転手の浜面は高速道路を下りて、山に行くにつれて雪が増えていく道を走破した。

(ったく、スタッドレスタイヤ履かせとけばよかったわ畜生)

なれない雪道をノーマルタイヤで走るのはけっこうしんどい。浜面は正直寝たかった。
駐車場に付き、先ほどまで寝言をつぶやいていたアイテムの女性陣を取りあえず車内に残して手続きに向かう。

「うーん…浜面ぁ?」

眠そうな目をこすって麦野が起きる。
(やっべ。起こしちまったか?)

浜面が運転席のドアを閉めようとした時に助手席の麦野が起きてしまった。

「あー、いいよ。俺が行くから。寝てろって」

麦野に休むように促す。実際この後は滑りっぱなしだから少しでも寝た方がいいのだが。

「いいわよ。あんたばっかじゃ悪いし、一緒にいきましょ」

(それに、ちょっと浜面が不憫だしね。運転ばっかだったし)

そんな制止も構わず麦野も車を降りる。車内の暖房をつけたまま外に出る二人。
二人の吐く白い息と車の排気筒からでる白い煙が白馬の寒さを物語っている。

なお、浜面の運転している車はローンを組に組んだ中古黒セダン。五人のりだ。

「あうれおする」に向かうまでの間にせまいだ、臭いだ、はやくしろ、飛ばせだ、はーまづらぁ、といろいろあったがここでは割愛させていただく。


------------

☆浜面の車:二代目アリスト いかにもスキルアウトって感じですねぇ。うん。
44 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/24(日) 14:13:13.55 ID:rJw17oE0
再度ですが、現実性を持たせたいため、実際の名前が出てきます。
BMXってか
----------
――「あうれおるす」受付

「〜〜ごにょごにょ〜〜」

アイテムの後部座席組が爆睡している時に浜面と麦野は民宿の人から説明を受けていた。
一泊二日のボード旅行。

付いた初日はナイターまでOK。翌日、つまり最終日は夕方まで滑っていいとの話だ。
宿はかなり広いらしい。近隣の廃小学校を改造した作りとなっている。

ゲレンデから廃校を改築した民宿までは目と鼻の先。
風呂も露天風呂。飲食品も他のゲレンデと違い、格安だ。

ただし、受付を済ませるとここからリフトで山の中腹に移動しなければならない。
「あうれおるす」はゲレンデ内にあるのだ。ふぶいた時には陸の孤島になることも。

「へぇ、結構楽しそうねぇ」

麦野が説明を聞きながら頷く。
浜面もその点同意だ。今まであんな東京都と同じくらいの大きさの地域でクソみてぇな抗争にどっぷり浸かっていたからだ。

(いやぁ、でもまさかこいつらとボードなんてなぁ。駒場とか半蔵のヤローどもとしか行った事なかったからなぁ)

浜面はボード経験者だ。今は亡き駒場利徳や今は袂を分けている親友、半蔵ぐらいとしか一緒に行った事しかない。
女性とゲレンデに行くなどそうそうない。しかも男一人。女四人。

ケツメイシの男女六人夏物語ですら男女比は半々だというのに。この男。

45 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/24(日) 14:15:24.69 ID:rJw17oE0
受付の人の説明が一通り終わる。
器具に関しては貸出ししてくれるそうだ。
しかもここの管理人であるイタリア人が相当気さくな人らしく、新品の器具レンタルを格安で行っている。

(新品でよかった…。中古ってなんか抵抗あるのよね)

おそらくお嬢様育ちであろう麦野は人の使ったものを使うのはあまり好きではないようだ。
麦野が支配人がどんな人なんだろうと「あうれおるす」のパンフを読む。

どうやら、親切にメッセージカードまで付いている。麦野は優しそうな人物像を思い浮かべてパンフをめくる。


【ようこそ。白馬「あうれおるす」へ

自然。スノーボードを楽しむために来客されたのであろう。
短い間ではあるが、楽しんでくれたまえ。

また、当店ではお客様の要求に添えるように料理に力を入れている。
新型AI搭載冷蔵庫「未元」も手に入り料理はさらにおいしくなっている。

サービスもするので食事もぜひ他の売店などではなく、こちらで買っていただければと思う。

宿に常にいるので気軽に話しかけたてくれたまえ 支配人兼校長アウレオルス=イザード

連絡先:honos-628.index-paracelsus@---.---】



(おいおい、やけに上から目線だなコイツ。ってかこいつ前に三沢塾の校長やってなかったけ?)

麦野が一瞬学園都市の事を思い出すが、せっかく学園都市外に出てきたのだから、気にとめないようにする。
浜面もよこからパンフを覗きこんでいた。

(なんだコイツ…めっちゃイケメンじゃん)
浜面はもちろんそちらの気はない。
だが、こういうゲレンデの管理人でここまで若い人は珍しい。
緑色のオールバックに白スーツ、瀟洒(しょうしゃ)な黒のエナメル革靴。

決して品を失わないイタリア貴族の様な気質。
オールバックにする為に使うオヤジ臭い整髪料の匂いや雰囲気がパンフ越しに漂ってくるようだ。
46 :すいません。ID忘れたT7jGZEU0 [sage]:2010/10/24(日) 14:22:48.50 ID:rJw17oE0

パンフやリフト券、レンタル器具の引き換え券等を受け取り、車に戻る。
レンタル器具は先述した「あうれおるす」まで行き、貸出してもらえるそうだ。


受付からすぐの所に止めている車を見て驚く浜面。

「おい、麦野、車揺れてね?」
浜面が愛車を指さすと後部座席がめっちゃ揺れてる。なんだか言い合ってる?


犯人は目が覚めたアイテムの車中待機組(フレンダ、滝壺、絹旗)だった。

「コラ!滝壺!私のデジカメ返せ!寝顔けせー!!こらぁ!」

怒っているのはどうやらフレンダ。声がめちゃでかい。

「滝壺さん、絶対返しちゃだめですよ!フレンダの寝顔取ったんで!」

絹旗!とフレンダがどなるが全く効果なし。ってかフレンダももうどうにでもなれ状態だ。

「フレンダのうとうとしてる寝顔可愛い、これは保存ものだね」

滝壺もフレンダの寝顔画像を消す気は全くないらしい。

「はぁ、麦野、何であいつら後部座席だけであんなギャーギャ騒いでんだよ。騒ぐなら外でやれよ全く」

浜面がため息交じりに運転席にのドアを開け、後ろのトランクにある各自の荷物を開ける。
47 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/24(日) 14:24:10.77 ID:rJw17oE0

「っおい、おまえらー。ったく何騒いでんだよ。ってか騒ぐなら狭い車内じゃなくて外でやらいいじゃねぇか」

浜面が車内にいた三人に言うが、三人はにやにやしている。
何?と麦野が三人に質問する。

「えー、だってここ(後部座席)から受付にいる二人みてたら、超恋人同士ぽかったので、敢えて邪魔したくなかったんですよ。ね?」

絹旗がフレンダと滝壺に同意を求める。

「ってかお似合いな訳よ。麦野だって行くときに真っ先に助手席座っちゃう訳だし?」

と茶化すフレンダ。

「むぎの、はまづら一人占めしてたね」

滝壺は若干悔しいのか?ちょっとだけむすっとしてた。

「は?え?ちょ!そういうわけじゃないって…///」

麦野がとっさに否定しにかかる。
48 :T7jGZEU0 また修正します。しばしお待ち [sage]:2010/10/24(日) 14:24:57.53 ID:rJw17oE0

「ちょっと浜面もなんとかいいなさいって!コラ///」

浜面はアイテムの痴話にしっかり耳を傾けていた。

(反応したら負けだ)
浜面はそう思い、必死にトランクとシステムキャリア(車の屋根の上に着けるボードや板を運ぶキット)から荷物をおろしていた。
麦野と同じく、顔を真っ赤にしながら。

(ま、まさか麦野が俺の事?な訳ないよな…。ってか麦野の否定する顔…真っ赤じゃねぇか…。まさか…なんてな)
自分の顔が赤くなってることに気付かないのは白馬の寒気のおかげだろうか。

「お。おう。そうだよ。麦野はたまたま起きてたから一緒に来てくれただけだよ!別にそんな付き合ってるとかじゃねぇって」

浜面が否定している最中に三人はメシウマ!とでも言いたげな表情になる。

「えー、結局私たちあんたらに恋人なんて言ってないんですけどぉぉぉ!」

「超!浜面ぁぁ、何勝手に付き合ってる考えてるンすかァ?」

「おえ!うぉぉぇ!おえ!だめだ、体晶持ってきて…」

三者三様の反応を見せるアイテムの面々。絹旗に至っては第一位の演算モデルが影響したか口癖まで一瞬変わっている。

麦野がまるでチークをべた塗りしたんじゃないかという位に真っ赤になる。

「ホントにそんなんじゃないから…」
(ちょっと気になってるだけだから…そんなんじゃないよぉ…)

照れながら言う麦野。その姿に全員が黙る。

((((カワイイってかそこはブチコロシかくていだろ!))))

しょっぱなからこんなテンション。どうなる?アイテム!
49 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/24(日) 15:14:31.92 ID:iyErYOQo
可愛すぎる
ていうか宿の名前がアレだと思ったら何やってんすかヘタ錬金さんww
あとていとくんまでwwwwwwww
50 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 15:43:57.23 ID:JWxJ7sDO
マジでヘタ錬かよwwww
工場長もなにやってんのwwwwww
51 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/24(日) 16:59:36.38 ID:YdzAQS2o
ヘタ練のメアドがヒデェwww
52 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/24(日) 17:22:57.64 ID:rJw17oE0
車から荷物を下ろすと麦野達は「あうれおるす」に向かうリフトに乗る。

「皆荷物もった?いくよー!」
さっきまで眠たそうな顔でデジカメの奪い合いに興じていたフレンダは一気に目が覚めたようだ。
先頭切ってリフトに乗ろうとしている。

超巨大リフトというか、ゴンドラ?の様なものに乗る。しばらくするとリフトは起動し、動き出す。

ごうんごうん。

「…zzz…zzz…」
ろくに寝てない浜面は少しでも寝ようとして眠ろうとする。
しかし、寝れない。気分がハイなのせいもあるだろうが、何よりアイテムの女子がうるさすぎる。

「ソゲブソゲブ」

だー、うっせぇ!浜面が起きる。対して女性陣は多少寝れなくてももう構わないとでも言いたげな表情。

と、そこで絹旗が東の空を見ている。

「ちょっと皆見てくださいよ。超きれいですよ…」

冬の夜は長い。日の出の時間帯も相当遅くまでずれ込む。
アイテムを乗せたリフトがちょうどリフトの中盤あたりに差し掛かった時、太陽が昇って来た。

ぎらっと日が昇る。リフトの中のが徐々に明るくなってくる。

「おお…」

「すごい…」

「綺麗ね…」

「ナイスタイミングだね」

日の出。綺麗だ。カメラを構えることも忘れ、五人はしばし景色に魅入っていた。
53 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/24(日) 17:23:46.80 ID:rJw17oE0
日の出を見て、少し経ち、終点に到着する。
リフトを下りると小さい乗り継ぎリフトにのり、中腹にある「あうれおるす」につく。

「おお。廃校って聞いて古めかしいイメージ出したが、かなり綺麗ですね」

絹旗が二階建ての民宿を見か感想だ。

「なんか雰囲気がいい。きたいだね」

滝壺もわくわくしているようだ。悔しいがいろいろセッティングしてくれた電話の女に感謝。
朝のキラキラした太陽の光と風で舞うフワフワした雪。視界も良好だ。

「ようこそ。お待ちしておりました。自然、疲れているだろう。シャワーや朝食も用意してある。食べたまえ」

麦野と浜面は山のふもとの受付で顔写真だけ見て確認していたが、絹旗たち車中待機組は初めて見る支配人。

「あぁ、自己紹介が遅れてすまない。自然。お客様に会えると嬉しくてね。私の名前はアウレオルス=イザード。イタリア人だ」

総支配人アウレオルスが自己紹介をする。
パンフのスーツ姿と違い、痩せマッチョのような体躯。
シンプルに黒のジーンズ、耐水完璧のゴアテクスのブーツ、ジャングル色の迷彩ロンT、紫のコロンビアのダウンジャケットといういでたちで登場。

「えーっと、五人で予約した浜面仕上です。よろしくお願いします」

チェックインする五人。

朝の心地いい雰囲気のゲレンデ。楽しくなりそうだ。
54 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/24(日) 17:24:17.77 ID:rJw17oE0

部屋に荷物を置き、私服のまま食堂に行く。
そこではほかほかの白米。味噌汁、サバの味噌煮、シャケのムニエル、納豆、浅漬けが用意されていた。

「君たちの趣味嗜好はあちらの冷蔵庫から聞いた」

アウレオルスがさっと指をさす。
その冷蔵庫にはテレビモニターの様なものが付いており、そこに文字が出力されるという優れ(?)ものだ。

《よう。おまえらひさしぶりだな》

モニターに出力される文字。
(おい、あれって学園都市で第二位だった垣根だよな…?)
浜面がひそひそとアイテムの面々に耳打ちする。

(だめです。アレに反応したら超負けな気がします)
絹旗が皆の気持ちを代弁する。

《すいません。無視しないでください》

冷蔵庫「未元」は寂しそうだ。

「ん?判然。君たちは知り合いなのか?」
アウレオルスが不思議そうに冷蔵庫とアイテムたちの間を見る。

「まぁ、腐れ縁って感じだわ」
麦野がたんと言い放つ。

《お前らの趣味嗜好に合わせて俺がサバとシャケ作ったんだからな!感謝shうわ!(ry》

突然モニターの光が消える。アウレオルスが電源を切ったようだ。
「すまない。厳然、彼はよくしゃべるのでな、電源を切らせてもらった。申し訳ない」

はぁ…となんとも言えない気持ちになる五人だった。
55 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/24(日) 17:40:23.74 ID:rJw17oE0
取りあえず、朝食と言うことで座るアイテム。
他に客はいないのいだろうか、広い食堂で朝食。食堂といっても家庭科室の床と机を改築しただけ。

「にしても、このシャケ、オイシイわね。これ何?時知らず?それとも銀毛(ぎんげ)?」

時知らずとはロシアはアムール川を下降し、海で採れたシャケの事を指す。銀毛とは秋に遡上するシャケの呼称でどちらも非常に美味だ。

そんなシャケに麦野が舌鼓をうつ。麦野の横に座っているフレンダもサバを口に含むと幸せそうな顔になっている。

「結局、このサバはうますぎるってわけよ。もしかして長崎の旬(とき)サバかな?」

フレンダが食べつつサバの産地を当てる。まさか当たる訳ないだろ、と浜面が言いかけた時にキッチンから声が聞こえる。

「お、あんた、詳しいな。サバいけるクチか?」
キッチンの声の主を見ると白いキッチン服に身を纏った男が一人。

「ふっ。よくわかったな。昨日彼がわざわざ仕入れてきたのだよ。な、牛深君?」
他の客の和膳をそろえつつアウレオルスがニヤリと笑う。

「へい。俺の地元。旬サバっす。味には自身があります。お嬢さん、どうですか」
牛深というキッチンの男の洗練された太い腕。綺麗に研がれた包丁。
そんな最高のシェフに調理されるならサバも本望だろう。

「結局、うまいわけよ。これ。ってか良く長崎からはるばる白馬まで鮮度を維持できたわね」

にやと牛深は笑い、指でクイッと「未元」をさした。
「コイツの料理にかける意地はホンモンだ。こいつがせっせと長崎から白馬まで鮮度を維持して輸送してくれたんだ」

「未元」の面目躍如といいう訳だ。
《へ、まぁな。俺の未元物質に(ry》

アウレオルスがモニターにガムテープを張り、沈黙させる。

「ま、運転してくれたのはここの副支配人の闇坂さんなんだけどな」

すると奥から寡黙そうな男が一人。そうやら彼がここの副支配人の闇坂という人物らしい。
「皆さま、喜んでいただいて恐縮の極み。ありがとうございます」

(おやじくさいね。きぬはた)
滝壺が絹旗の耳元でささやいた。


56 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/24(日) 17:40:38.99 ID:iyErYOQo
喋ったwwwwwwwwwwww
57 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/24(日) 18:41:20.22 ID:rJw17oE0
「ごちそうさまでした!」

アイテムの皆が朝食を済ますと軽く休憩タイム。といっても30分ほどだが。

「すまないが、浜面といったかな?君には申し訳ないんだが女性陣と相部屋でもいいだろうか?」

アウレオルスに呼び止められる。え?ビクリと肩がふるえる浜面。
「ちょっと待って下さいって!いや、嬉しいけd(ry」

「すごいちっそ粒子追跡爆弾」

アイテム全員からの攻撃を受け見事にヒットする浜面。

「ビブルチッ ティグルヴッ グリッキンッ」

浜面は謎の奇声をあげて倒れこんだ。

「さすがにはまづらでもそれはないわ」

体晶を使用しているのであろうか?カッと見開かれた滝壺の目。マジギレしてるっぽい。と浜面は推測する。
58 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/24(日) 18:46:44.79 ID:AMjnAQAO
浜面…
59 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/24(日) 18:47:48.51 ID:rJw17oE0
「自然。シーズンでなこちらの部屋の開き具合にも限度がある」
今日明日はかなり客が来るらしい。闇坂と呼ばれる副支配人がおもむろに入店リストをアウレオルスに見せる。

「他のお客様にも満足していただくために、部屋は一つで了承していただかないだろうか、まことに誠に申し訳ない」

「まぁ、仕方ないわね…ねぇ?」
(うーん、せっかくだし浜面も一緒でいいかな?いいよね)

麦野が自問自答しつつ皆に翻意を促す。

(むぎの。にやにやしすぎ。ヤバイ)

滝壺は浜面が同じ部屋でちょっぴりうれしそうな表情をしている麦野を見逃さなかった。
さすが滝壺。AIM追跡者はだてではない。

ともあれ、麦野の提案で浜面も同じ部屋になった。

「なにか買ってきた飲み物などあれば冷やしておくが…」
闇坂が浜面に聞く。
ここで行きにかったお酒やお菓子、ジュースなどを「未元」に放り込んでいく闇坂。
60 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/24(日) 21:35:15.54 ID:rJw17oE0

――「あうれおるす」 浜面達が宿泊する部屋

浜面が部屋に戻ると女性陣は行く支度をしていた。
昨日買ったウェアを手に持ち、皆浜面が帰ってくるのを待っていた。

「えーっと、皆は取りあえず地下一回でボード類とブーツ取ってくるのかな?」

フレンダが浜面の方を見る。あぁ、と浜面が自分の旅行バックからウェアを取り出しつつこたえる。

「じゃ、見取り図わたすからお前ら三人は地下一階でブーツと板類もらってきてくれ」
浜面がそういうと絹旗、麦野、滝壺の三人は浜面からもらった見取り図を持て地下に向かっていく。

地下と言っても雪が降りすぎて埋もれてるだけだが。
61 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/24(日) 21:35:50.52 ID:rJw17oE0

「浜面、私着替えるからあんたちょっと隣の部屋行ってよ。あんたがいると気がえられない訳よ」

あ、それもそうだな。と浜面はウェア類を持って隣の和室に消えていく。
フレンダが今いるのは洋室に改築されたリビングだ。かなりでかい。

(にしし。結局、ウェアはデニム生地こそ王道って訳よ!)
よくわからないこだわりがフレンダにはあるらしく、一見私服のように見えるジーンズ調のウェアを取り出す。

フレンダが取りだしたウェアはBlue Bloodのデニム生地風のパンツだ。
上のウェアはSpecial Blendのブルー・グレイ・ホワイトの柄物。
フレンダのルックスにしっかり決まっている。ゴーグルはオークリーのレディースものだ。
シンプルに黒のレッグウォーマーを装着し、NEFFのリュックを背負う。ニット帽も同じくNEFFのピンク色。

中には小銭入れやデジカメ、ミネラルウォーター、サバ缶、サバ缶を開けるツール(導火線にもなるテープや十徳ナイフ)などが入っている。
バックの中身は多少おかしいものが入っている点を除けば、フレンダの姿は非常にかわいらしい。
少しダボっとしたジーンズ調のウェア状態でも彼女の脚線美はしっかり強調されている。うん。かわいい。



--------
☆フレンダのウェア
上:http://item.rakuten.co.jp/society03/10006347/
下:http://item.rakuten.co.jp/ee-powers/600151001c14550095/
リュック:http://item.rakuten.co.jp/f-janck/neff_backpack-002/
62 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/24(日) 21:40:56.88 ID:rJw17oE0

浜面も都心部の迷彩柄の様なウェア(上記リンク参照)を着る。部屋にある鏡でいつもの髪型を整える。

(ちょっとおしゃれでもしてみますかね…)
路地裏の男浜面仕上が本気を出した瞬間である。
ワックスで髪をワイルドに後ろに持っていく。少し髪が後ろを向き、ワイルドオールバックの様な髪型になった。
誰もいない所でドヤ顔をしっかり決めると次はマフラー。
グレーのノーブランドのマフラーを纏い、鼻の下あたりからAIRHOLEのフェイスマスクをきゅっと結ぶ。
正直、かっけぇ。

フレンダと同じようにボード用のリュックを取り出す。BurtonのAttack Packだ。
浜面はどうやらグレーと黒がお気入りらしい。
茶髪のワイルドな髪型にグレート黒の迷彩。まさに都市に生きるスキルアウトぴったしのスタイルだ。

---------
☆浜面のウェア(補足)
フェイスマスク:http://store.shopping.yahoo.co.jp/earthweb-shop/airhole-ninja-holmesclava.html
バック:http://store.shopping.yahoo.co.jp/shootingstar/btbp-210.html
63 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/24(日) 22:26:36.62 ID:rJw17oE0

――「あうれおるす」地下一階 レンタル器具庫

浜面とフレンダが着替えている最中、彼女たちは地下のレンタル器具戸に到着した。

「あ、ここです、ここ!」

店員が上から下りてきた麦野達に声をかける。
麦野達がそれに気付くと、レンタル器具貸出の店員さんに器具貸出しチケットを見せる。
地下は暖房が効いていてとても温かい。

(うわー、超沢山ありますね)
絹旗が地下のレンタル器具用品の多さにビビる。

(うわ、すごい、ほとんど?っていうかぜんぶ新品だよ)
滝壺が手に取るブーツやボードは未使用のものばかり、というか、まるで店だ。

(これ程の品ぞろえ…もしかして垣根のヤローが全部作った?)
そう。麦野の予想は半分的中し、半分間違っていた。

垣根が作り出したものをさらにアウレオルスが洗練させたのである。
ノーブランドながら垣根の若者冷蔵庫風のセンスとアウレオルスの黄金錬成のおかげで沢山の器具が並んでいた。

「えーっと、レンタル器具のチケット拝見します。はいありがとうございます」

ネームプレートを見る限りだと対馬(つしま)という女性。
好きな器具を持って行って良いとの事。

対馬の丁寧なアドバイスの元、三人はボード、ビンディング(ブーツと板を固定する金具)、ブーツをそれぞれ揃え、地下の更衣室で着替える。
64 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/24(日) 22:27:25.80 ID:rJw17oE0

汗が出てもいいようにナチュラルにメイクをする麦野。
絹旗はまだ化粧をする年頃ではないし、滝壺も着替えはじめる。

「麦野ー、私たち着替え終わりましたよー」

持参したウェアやボードを持っている絹旗。
改めて白のつなぎの破壊力はヤバイ。考えてみてくれ、常に白のウールセーターを着ている絹旗。

そんな白い服を着こなす彼女が白のつなぎを着たら…。
持参したニット帽も白の下地に黒のスター柄。どうやら本当に雪の妖精にでもなるつもりなのだろうか?
超小柄の絹旗はSサイズのウェアでもだぼっとしており、そのギャップがこれまた可愛さを際立たせた。


滝壺だって舐めてもらっちゃ困る。
いつもうとうとしてそうな女の子。現に眠いのだけれども。
そんな滝壺がタイトめなボードウェアを着て、ニット帽を着用。どうだレベル5クラスだろう?

やる気のはいった滝壺さんはやるときゃ、やるのである。
65 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/24(日) 22:30:15.49 ID:rJw17oE0

「今終わるから―!」

何が終わるんだ?化粧か?着替えか?
滝壺と絹旗はアイテムの女王が何を終わらせたのかよくわからないまま待つ。

十五分が経過。

「ご、ごめん。ちょっと着方が分からなくて…」
黄色のリーバイスコラボのジーンズ風生地に麦野が持参したのであろう、ニクソンのロゴ入りピンクベルト。
麦野でなければ着こなせないであろう、千鳥格子の柄物スノボジャケット。

そんじょそこらの男じゃ落とせないような魅力とK2並みに高い顔面偏差値。
性格は短気だが、それをカバーしてなお余りある麦野沈利のルックスもレベル5。

学園都市第四位は服のセンスでは世界一位といっても決して言い過ぎではない。正直、かわいい。
麦野を慕っているフレンダが見たら発狂するであろう事は間違いない。

「むぎの、すごいかわいい」

滝壺のこの発言に全ては集約されている。

「いやいや、滝壺、あんたこそ。多分男寄ってくるわよ。気をつけな」

麦野も滝壺をほめちぎる。

「いやいや、麦野も滝壺さんも超かわいいですよ」

絹旗も二人を称賛。

「きぬはたもね」

お互いにお互いをほめたたいあい、あははと笑う。
対馬に一礼すると上にいる浜面達の所へと向かう三人。
66 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/24(日) 23:08:58.54 ID:rJw17oE0

「よっしゃ。来たわねー!相当待ったぞ!」
地下に行ってた三人が戻って来る。
フレンダはどうやら今すぐにでも行きたいようで、リュックを背負い、行く気満々のようだ。

「フレンダ、普通にかっこいいわね」
麦野がそう言うとフレンダはガッツポーズ。

「結局!私は麦野に認めてもらえればそれでいい訳よ!麦野もめちゃくちゃ似合ってる訳よ!」
フレンダがにしし、とわらう。

「おい、麦野!俺はどーなんだよ!スキルアウトを束ねてた浜面様はよ?」
完全に悪ノリをぶちかました浜面。正直皆に馬鹿にされる事覚悟でネタ的な感じでかましたのだが…。

「///」
麦野は顔が赤くなったまま反応しない。おやや。

「むぎの、赤くなって動かないよ」

滝壺が麦野の横を覗きこむと、麦野がやっと動き出す。

「あ、ごめんごめん。…その、普段と違うわね。なんか似合ってるわ…///」
(なーに言ってんだ私は)

自分自身に突っ込みちゃんと自己解決(?)する麦野。
67 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/24(日) 23:09:27.67 ID:rJw17oE0

一方、浜面も動揺していた。
アイテムは学園都市の暗部組織の中でも全員が女性と言う珍しい構成だ。
他の組織は多かれ少なかれ、男女で構成されている。


浜面は元々、アイテムの正式メンバーではなく、あくまで下部組織の構成員だった。
彼の明るい性格と同年代であることからアイテムの面々からの受けが非常によかった為、彼女たちとよく過ごすようになっていた。

その中でもリーダー格の麦野は浜面の好みにがっちり合致していた。

短気な所がたまに傷だが、フレンダ達と違い、静かで教養もある。
もちろん、フレンダ達も浜面とは段違いに教養を持ち合わせている事には違いない。
けれども、何より同年代の中で浜面とタメの麦野は前から気にしていた。それが恋愛感情なのか、友情的なものなのかすら判然としないが。

(皆メチャクソウェア似合ってるな。にしても、似合ってるなー麦野)
浜面がそんな事をぼんやり考える。


さて、部屋に五人、アイテムが全員揃うといよいよゲレンデに出陣である。



「アイテムでスノボって訳よ!」
フレンダの元気な掛け声。皆がおー!と反応した。
68 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/25(月) 00:33:21.45 ID:iIzYEmw0
天候は良好。
ゲレンデ「あうれおるす」の管理している山の頂上は天候が許せば、乗鞍岳やもっと遠くの山々が見渡せるそうだ。


「厳然、けがには気をつけるように」

アウレオルスがアイテムを見送る。

じゃー、と浜面が仕切る。
「俺とフレンダで最初教えるって感じで良いか?」

浜面がマイボードを持ったまま言うと後ろにいるフレンダがうんと頷く。

「じゃ、取りあえず、ボードの板の付け方から教えるか」
なんだかボードを教えるスクールのコーチの様だ。
アイテムの女性陣も早くちゃんと滑ってみたい気持ちがあり、浜面の話を茶化さずちゃんと聞いている。

唯一ふざけてるのは皆の後ろにいるフレンダだ。と言っても後で見るようにデジカメのムービーで撮影しているだけだが。

●REC〜
(にししし。こんなに真面目に浜面の話を聞いてる麦野と絹旗、滝壺は相変わらず寝むそうだけど、しっかり来てる訳よ…)
「まずはー、ブーツのひもがちゃんと結べてるかもう一度チェックしてくれ」

皆足元の左右の紐がほどけていないか確認する。

「ほどけて足りゆるかったりすると滑ってるときに足が変な方向に向くから気をつけて!」

フェイスマスクをして某中東のムジャヒディンの様。だが、ゲレンデでのフェイスマスクはカッコいい。
69 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/25(月) 00:52:49.88 ID:iIzYEmw0
さて、次はきき足の確認。

「いまさらだけど、次は利き足だな。この中できき足が左ってやついるか?」
浜面がなぜきき足を聞くかと言うとボードの乗り方が左利きと右利きで全く違うからである。


「もし、きき足が左足ならまた地下に行ってビンディングをつけ治さなきゃいけないからな」
と浜面がマイボードの足を固定する部分をコンコンと触る。


幸いにも(?)アイテムのメンバーは皆右利きのようだ。
よってボードをする際には左足が先に斜面に到達する訳だ(レギュラースタンス)。

「じゃ、これだけ確認できたら取りあえずすぐそこのコースやってみっか」

浜面のいきなりの宣言に麦野達は驚く。

「?まだボードに足くっつけてないよ?」
滝壺が不安げにフレンダと浜面に言う。
不安なあまりちょっと変な日本語になってしまったようだ。

「あー、最初は取りあえずそのままリフトに乗って上で足くっつけようぜ?」

浜面が滝壺に促すとこくんと同意し、一路、上に行くことになった。
70 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/25(月) 01:04:34.82 ID:iIzYEmw0

「あ、そうだコレコレ」

リフトにのって上に行く前にフレンダがリフト券を入れるパスケースを皆に渡していく。

上腕のあたりにフィットさせる。そこでフレンダが二日間のリフト券を配る。

(おー、おそろいってなんか団結感を感じる訳よ…!)
自分でリフト券を配りつつ、しみじみと実感する。



一番近くのコースは「てっら」というところだ。
初心者向けで、傾斜もあまりない。ごく普通のコースだ。

「じゃ、皆このチケットはなくさないように!なくしたら再発行は出来るんだけど、有料だから、気をつけて」
フレンダがびしっと人差し指を構える。

「「「「はーい」」」」
元気な返事が返ってくる。
(うう。なんか感動する訳よ…アイテム万歳!)
勝手に感動するフレンダ。

「じゃ、三人乗りだけど、そうだなぁ…板着けてないから二人ずつ乗ろうか」
浜面がそう提案する。

「結局、私か浜面が一人で乗った方がよくない?」
フレンダの提案はこうだ。

リフトに乗る人は終点に着いたらもちろん降りなければいけない。
ここでモタモタしていると後続の人に迷惑をかけてしまう(例えばぶつかったり)。

なので終点に着いたらどうやってはやく下りればいいか見本をみせなければならないのだ。
(若干過保護な感じはするけど、初心者だから、一応ね…)

フレンダの提案に浜面も納得する。

というわけで、順番は適当にこんな感じだ。


☆とあるリフトの乗車案内☆

 浜面

絹旗 麦野

滝壺 フレンダ
71 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/25(月) 01:14:09.91 ID:cudTNZI0
麦のんのデレデレ水蒸気爆発はあるのだろうか
72 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/25(月) 01:24:46.24 ID:iIzYEmw0
降り方と言っても特に難しい訳ではない。
左右に向かって下りればいいだけの話。

「とりあえず、左のやつは左に右のやつは右に降りてくれ、降りたら小走りで。後ろに人がいる時もあるから歩いちゃだめだ」

はーい。と元気な返事。まるで修学旅行やサークルの合宿にでも来ている雰囲気だ。



リフトに乗る時、上腕に巻いたパスケースをリフトの操作員に見せていく。
しかもみんなエッヘンと自信満々な表情で。リフトの操作員は何を言いたいのか全く理解できない。

(なんなんだ?おそろなのをそんなに自慢したいのか?)
操作員の予想はまさに的中していた。

ゴウンゴウン。
リフトが動き出す。

皆しっかり自分のボードを抱えている。
浜面とフレンダも皆に合わせてビンディングを装着しないで板を両手持ちしている。

-----------
☆皆のブーツとかいろいろ
絹旗のブーツ:http://www.upsports.jp/item_1_deeluxe-10raylaraboatf-wht_1_1.html
滝壺と麦野のブーツ:http://www.upsports.jp/item_1_salomon11bt-kiana-bk_1_1.html
麦野のベルト:http://store.shopping.yahoo.co.jp/thebari/eia5297816.html
絹旗のベルト:http://store.shopping.yahoo.co.jp/thebari/ei1005297815.html
フレンダのベルト:http://item.rakuten.co.jp/theusasurf/hmn320f10/
浜面のワックス:ナカノ7

ま、こんな感じか、あいかわらず実際の商品名出してますね。サーセン。
73 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/25(月) 01:34:15.04 ID:iIzYEmw0
十分ほどたってリフトの終点が見えてくる。浜面がつくぞーと手を大きく振りながら言ってる、
小走りで正面の雪の壁まで走り、次のリフトに乗ってくる絹旗と麦野を待つ。

(あ、俺もデジカメあっからあいつらとってやろ)
そう思いリュックからカメラを出し、ムービーの●RECボタンを押す。

ジー…

「お、きたきた」

絹旗と麦野は初めてのゲレンデダッシュ(?)なので緊張している。
(おいおい、なんでリフトから降りるだけであんな緊張してるんだよ…)

二人とも陸上部のと競争よろしく、今にもクラウチングスタートを切りそうな勢いだ。

「おーい、あんまり力むなって!」
二人に結局叫びは届かず、二人とも降りた瞬間に派手にコケた。

そしてその後ろから滝壺とフレンダが小刻みにこちらに向かってきた。

「ひー!ちょっと!なんであいつらアホ見たいにコケてるわけよ!あー、腹いたいわ」
フレンダがおなかを抱えて笑っている。滝壺も二人のずっこけぶりがつぼったのか、くすくす笑っている。

「むぎのときぬはた二人とも真ん中走って板がぶつかって転んでたんだもん…」

リフトの乗り降りですらこの状況。
天候の張れ具合とは対照的に、ボードのレクチャーは早くも暗雲が立ち込めているようであった。
74 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/25(月) 02:07:28.87 ID:iIzYEmw0
「ひー、痛かった。麦野、超大丈夫ですか?」
絹旗があごのあたりを押さえつつ麦野の方をちらと見やる。
麦野の方もノーガードで雪に顔を突っ込んだらしく、肩のあたりが痛い。

「えぇ、大丈夫よ…」
二人が前を向いて歩き、すでに待機している連中の元に向かっていく。

「ったくお前ら、本当におもしれぇな。しょっぱなからこけるなんてよ!」
浜面はよほど面白かったらしく、まだ笑ってる。
それにイラッときた二人が能力を使用する。

「「ちっそぱりぃ」」
またも華麗に炸裂する攻撃。

「イッヒ」
浜面は奇声を上げ、雪に見事に突っ込んだ。浜面のめり込んだ先には人型が綺麗に出来あがっていた。
75 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/25(月) 02:14:29.28 ID:Bi0ymgDO
絹旗自動防御はどうした
76 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/25(月) 02:40:53.60 ID:iIzYEmw0

>>75
とっさの事だから演算出来ませんでした☆
すいません。これで許して下さい…

----------
「浜面ー?おーい?」
「…」
フレンダの呼びかけに全く応じない浜面。
少し強くやりすぐたのか、眠る浜面をしり目にフレンダ先生のレクチャーが始まった。

「はい、じゃまずは人がきてるからはじっこに移動で!」
フレンダの号令に従いさささと移動する三人。

「じゃ、まずはボードを置いて。そんでボードの後ろにすわってー」
統制がとれたロボットのように丁寧に行動する初心者三人組。

まずは左足からガチャリとロックする。
かかとのつけねからアキレス腱の五センチくらいの所まで覆うハイバックという部分を倒してやる。
すると足が自然に入るのでまずは足をスポっと入れる。

「二つベルトがあるのわかる?ベルトっていうか、調整アジャスターみたいなの。結局、これで足をロックするのよね」

左足を完全に固定する。ゆるいと急激なターンをした時に足をくじく可能性もあるのだ。

(よしよし、みんな上手く出来てるかな?)
フレンダが人一回り見て確認する。
麦野が手間取っていた。

「クソ!このクソボードが言うこと聞かなくてさぁ…」
(おいおい、麦野ー。ボードが悲鳴上げてるぞー。ってかハイバック倒したまんまでビンディング着けられないだろ)

ハイバックがギリギリと悲鳴に近い音を上げていた。
「ちょ!麦野!!壊れちゃうよ!ハイバック上げればいいわけよ!」
フレンダがぎりぎり制止させたおかげでなんとかボードの破壊は免れた。
77 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/25(月) 02:43:07.28 ID:iIzYEmw0

「………迷惑かけてすいませんでした」
麦野が珍しく謝る。
全くフレンダの話を聞かず、見よう見まねでやろうとしたのだ。おかげで大惨事の一歩手前の状況に。。

(どうしよう。こんなに遅れてて、この調子じゃ、私だけすべれないのかな…やだな)
いつも強気の麦野だが、皆に置いてかれると考え、途端に不安になった。不安は焦りを生み、あまり良くないのだが。

「よっしゃ!ついたー?麦野はどうかな?」
フレンダがしっかり麦野のビンディングが装着されているかチェックする。良さそうだ。

「…ごめん。ちょっとゆっくりやってほしいかも。その…私ちょっと焦っちゃって」
麦野が年下のフレンダ達にぺこりと頭を下げる。

「む、麦野?平気だよ!そこまで気にする必要ないよ!ね?」
フレンダが絹旗たちの方をちらりとみる。
絹旗と滝壺がうんと頷く。決して合わせた訳ではない。

「平気ですよ。麦野。私も不安でよくわかりませんし、ゆっくりやりましょうよ」
絹旗が優しく声をかけてくれる。

「むぎの、へいきだよ。私も力がないからビンディング着けるのゆっくりだし、ゆっくりめで調度いいかな」
実際にビンディングは新品でも非力な子が調整する時に力が必要な時もある。

「うん。ありがとうみんな」
じゃっかんうる目でおどおどしていた麦野。皆においてかれるのが怖かったようだ。
けれど、皆が麦野のペースに合わせてくれた。

じゃ、次は右足ね!フレンダがきき足のビンディング装着に移ろうとした時にちょうど浜面が自前の洞窟から生還してきた。
78 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/25(月) 02:59:55.10 ID:iIzYEmw0
いてて…」

浜面が生還するとフレンダが丁寧にビンディングの装着方法を教えていた。

カチャリ、カチャカチャ。左と向きが違えど、つけ方は同じだ。皆先ほどよりも早い時間でビンディングをつけることが出来た。

「にゃはは。これで一通り滑るための手順は踏んだ訳よ!」
けれど、このままスラスラと滑れるわ訳がない。ということでフレンダが先頭、浜面が最後尾で大きくジグザグ進行をすることになった。

フレンダがビンディングを着けるとひゃっほーと叫び、シャーっと滑って行く。

「うわー、フレンダ超上手いですね…」
(正直言ってあそこまで上達できるか不安です…)

二番手の絹旗が見よう見まねで行く。
フレンダの提案で、口頭で説明するよりも、実際に滑って感触をつかんでもらった方がいいとのことで取りあえずの第一発目。

「絹旗ぁ!転んでもいいから、こっちにきてー」

ただし、後ろに転びなさいよー、と付けたすフレンダ。
後ろに転べば目のめりになってと顔を打ったりすることはないからだ。

今の絹旗は体重バランスを考える事で精いっぱいなので能力使用は全くできない。

「き、絹旗いきまーす…」
おそるおそる立ち上がる絹旗。まずここで一発転ぶ。

「あわわわ!いで!…超痛いですぅ…」

お尻を抑える絹旗。必ずと言っていいほど初心者が通る道だ。がんばれ絹旗。

もう一度立つ。よろめきながらも斜面に板を乗っけてる絹旗。
ごくわずかな角度の斜面でも非常にスピードがでる。ような感じがする。

フレンダがいる所まで数十メートルなのだが、それが遠い。何度も転んでほぼ滑れないまま絹旗はフレンダの足元に到達した。

(最後のあたりは毛虫みたいに超這ってましたね…恥ずかしいです…)
絹旗はこの悔しさを次にぶつけよつと決心した。
79 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/25(月) 03:08:21.34 ID:iIzYEmw0
すいません。寝ます。明日もちょくちょく投下していきますので。
ばーい。読んでくださる人たちがいて嬉しいです。
80 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/25(月) 03:21:09.77 ID:cSyQ2MMo
81 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/25(月) 04:16:53.92 ID:jU1tP2AO

木の葉からやらんのかい?
82 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/25(月) 11:18:39.06 ID:iIzYEmw0


次は麦野だ。
(ちょっと、どうしよう。立てるかな…)

麦野は珍しく緊張していた。
(いやー、転びたくないなぁ…)
取りあえず、絶対にあり得ないのだが、一回も転ばずに済ませたいと思っていた麦野。
しかし、それは幻想であり、数分後にブチコロシかくていしてしまう事になるのだが。

「無理しないで力抜いてみ。最初は転ぶのは仕方ないけどさ、がんばれって。お前なら出来るよ」
浜面が優しくアドバイスしてやると落ち着いたのだろうか、麦野は深呼吸し、滑り始めた。

最初の数メートルは上手く(麦野ヴィジョン)行けたが、その後すぐに転倒。絹旗と同様、お尻からこけた。

(いったた…。ちっくしょー…)

「むぎのー!がんばれー!」
滝壺が手を振って応援している。

立ちあがってもう一回ずっこけるて立ち上がると麦野がするするとフレンダ達のいる方向へ滑りだした。といってもスライドするだけだが。
なんとか麦野が到着すると次は滝壺。うまくするするとすべりだす(同じくスライドしてる感じ)。

「うまいわね…あんた」
麦野が雪まみれになったウェアを払いながら滝壺に言う。

「ありがとう。でも止まるの怖いよね」
滝壺は止まる時に自然に止まる以外の止まり方が分からないらしく、慎重すぎて遅かった。

「おーい、俺行くぞー」
浜面は経験者なのですんなり滑ってくる。

「おー、はまづらうまい。参考にしよう」
浜面の姿勢や手の位置など、しっかり覚えようと注目する。

(うーん、取りあえずは木の葉教えるの忘れてたわけよ…)
浜面にフレンダがこしょこしょと伝える。

「えー、いいんじゃないか?俺なんて始めは適当に滑らされて転びまくってそのうち慣れたぞ?」
浜面があっけらかんとした表情でフレンダに返す。

「あほか!女の子なんだよ?自動防御能力の絹旗だって混乱して窒素装甲つかえてないし、ゆっくり教えるしかないでしょ」
当初はゆっくり蛇行して滑る計画だったが、ターンも教えていない。
中断して初歩中の初歩、木の葉を教えることになった。
83 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/25(月) 11:20:06.20 ID:iIzYEmw0
麦野、絹旗、滝壺が周りで滑っている人たちを熱心に見学している。

(おー、すごいすごい、皆真剣な訳よ!これで早く慣れたら私も思いっきり滑れる…にししし)

はーい、はじめるよー。手をぱんぱんたたくと座っていた三人がフレンダのほうを向く。
両手をビシっとあわせて謝るフレンダ。

「ちょっと教える順番間違えてたわけよ…にゃはは…ごめんごめん」

フレンダが気まずそうにニット帽の上から頭をかく。
「は、はやく教えてください!超滑りたいです!ほらあそこにいる人みたいに!」
周りにいるボーダーを指さして絹旗がはやく滑りたい!と主張する。

「そうねぇ。さっきは横にスライドするだけだったけど、次は途中まで木の葉で降りるよ!浜面!」

はい!と元気よくぱしりよろしく木の葉をする浜面。

麦野達からおおー、歓声が洩れる。浜面がアイテムでほめられている奇妙な光景だ。

木の葉(このは)とはボードをやっている人はわかるとおもいます。
落下する葉っぱのようにゲレンデを下りていく事。

浜面がジグザグに降りて、途中で止まった。

「今みたいに、ゴリゴリ降りて行くって感じね」
木の葉は確かに華やかなターンや滑走と違って地味だが、これが出来なければ止まることすらできない。

「結局、基本姿勢が大事って訳よ」
フレンダがゆっくり立ち上がる。つま先を少し上げて、膝を柔らかく使うように意識する。
バランスが大事だ。

「立った時に両手を広げたり、狭めたりすればバランスが取れる訳よ。ちょっと麦野やってみ」
フレンダが半ば無茶ぶりを麦野にかます。

「いいよいいよその調子」
フレンダが麦野の横で手を支えてやる。

「ひゃ…ちょっとこわいわ…」
麦野が両手をバタバタさせている。

「クールになれ。麦野。出来るよ」
かかとの方の板(ヒールエッジ)を使ってゆっくり立ち上がる麦野。
(Koolっていっても…集中集中…)

「麦野がたったー!」
北アルプスにフレンダの声がこだました。
84 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/25(月) 11:21:18.40 ID:iIzYEmw0

「よ…し。がんばるぞ…!」
麦野は自分で立ち、両手とかかとでバランスを取る。
足元を見つつ右にスライドしだした。

「お。いいかんじいいかんじ」
下の斜面で待っている浜面が麦野の渾身の木の葉を見ている。

(木の葉をイメージして…)
さすが学園都市に第四位の演算能力を誇る麦野。
(次は左ね…)

するすると左にスライドする麦野。
(ちょっと重心を前にするとどうなるのかな?)

ほんの出来心で麦野はつま先側のエッジを少し意識した。
すると重心が自然と前に移動し、斜面に引っかかり、派手に転んでしまった。

「あちゃー逆エッジかましたかぁ、麦野」
フレンダの言う逆エッジとはつま先が引っかかることで、下を見たり重心を前に入れすぎると起きる。
ボード初心者の人が必ず通過するポイントだ。これでボードがトラウマになる人もいる。

「…」

集中したまま無言で前のめりに斜面に突っ込んでいく麦野。
とてつもなくシュールな光景だった。
85 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/25(月) 11:21:45.17 ID:iIzYEmw0
「いたたた…」
麦野はずっこけた。ヒットした自分の胸のあたりをさする。
(ったくこのデカい胸を邪魔に思ったのはこれが初めてだわ。いたたた)

自分の胸には罪はないのだが、痛すぎる。

(えーっと…前を見て、つま先の重心にに気をつけて…)
もう一度気を取り直してもくもくと木の葉を始める麦野。

(つま先をあげればかかとの方に重心が傾いて減速する…つま先側に重心を入れすぎたらさっきみたいにこける)

(そうだ、あとは前をみてと…)

麦野の木の葉にかける集中力はとてつもないものがあった。
浜面のすぐ横まで来ていたにもかかわらず木の葉で華麗にスルーしていった。

「おーい、む、麦野?」
(めっちゃ集中してたな…なんかちょっとかわいかったし…って何考えてるんだ、俺)

麦野の集中してる顔は思わぬところで影響を及ぼしているようだ。
86 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/25(月) 11:22:27.24 ID:iIzYEmw0

「ふぅ。結構様になってたわね…」
麦野が自己評価を下し、途中の平坦な所で止まる。

「あれ?」
周りを見渡す。
「あれぇ?」
フレンダ達は遥か上にいる。

(あいつら、空間移動能力者だっけ?)
否、違います。麦野さんが集中しすぎて気付かなかったんですよ。
87 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/25(月) 11:24:35.41 ID:iIzYEmw0
「まぁ、麦野の木の葉は渾身の結果だけあって、超上手く滑れてましたね」
絹旗が麦野が待っている平坦な所まで雪まみれになってやってきた。

「絹旗、あんた…」
麦野が吹き出しそうになる。

「なんですか?アイテムの逆エッジ女王とは超私の事ですが?」
絹旗は前に行く気持ちが強すぎて逆エッジしまくり、最終的に斜面をあばばする事になったのだ。

そのあとから滝壺もやってくる。
「いたい。いっぱい転んじゃった」
滝壺も何回か派手に転んだ。けれども三人とも楽しんでるようだ。
お互いの滑り方を雑談交じりに話す。

そこにフレンダと浜面が木の葉で降りてくる。
滑ろうと思えば滑れるのだが、あくまで木の葉の見本。

「そしたら、このまま木の葉で降りようか」

「「「「はーい」」」」
浜面が提案し、アイテムの女性陣が元気よく返事をする。

とりあえずは初心者コース「てっら」のリフト乗り場まで行くことになった。
天候は快晴。風に雪の結晶が舞い、太陽光がてらす、綺麗な空間が広がっている。

皆楽しそうだ。
88 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/25(月) 12:00:07.15 ID:iIzYEmw0

原則、リフトに乗る時、ボードは装着したままのる。
初心者は上でビンディングを装着するのだが、それをやると時間のロスにつながる。

というわけでリフトは右脚のビンディングを外し乗る。
スケボーで助走をつける時の様なしぐさを想像していただけると分かりやすい。

「じゃ、皆ついたかな?結局、また『てっら』に挑戦する訳よ!」
皆が木の葉で無事戻ってくるともう一度初心者コースの「てっら」へ。

「そしたら右足だけビンディング外してくださいな」
フレンダがガチャガチャと右足のビンディングを外す。
二か所のビンディングを外し、右足がフリーになる。

ばたんばたん。雪をたたきつつ歩き出すフレンダ。行き先はリフト乗り場だ。

「ほら、皆みてみて。あぁやって乗るんだよ」
フレンダが指を指すと沢山のボーダーが片足を引きずった人みたいな歩き方でリフトに乗っていく。


あれ?でも、と絹旗がリフト乗り場を指さす。
「あの人、超板着けたままですよ?」

絹旗の指さす方向を見ると単純な金色とも違う、白色の芯を含む、青ざめたプラチナの様な、何とも形容しがたい男?がいた。
しかもビンディングをはずさずにリフトに乗ろうとし、操作員に必死に制御されている。
「おい、こら!リフト券もないのに何乗ろうとしてるんだ?あぁ、?天使?しらねぇな!」

「このtei ど rihuと のrenaif はづづづずず ない betu kkama では naikkkaか」

アイテムの一同は強い違和感を覚え、見るのを辞める。
「あれはもう完全にキチガイって訳よ。きにしたら駄目」

フレンダは首を振って忘れようとする。結局、操作員のガチムチあんちゃんたちに連れて行かれた謎の人物。

「yyyaaa mmee 新宿 ttigau nityou眼 kok hha hakuba だぞ…!」
うん。さようなら謎の人。
89 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/25(月) 12:00:33.62 ID:iIzYEmw0

謎の人物でひと騒動あったリフト乗り場。喧騒が消えまた理路整然とボーダーやスキーヤーが搭乗していく。

「「「ごくり」」」
ゲレンデのリフトに乗ると言うこと自体が一つの大きな挑戦である三人。生唾をゴクリと飲む。

(体晶使って集中力増大させようかな…)
(原子崩しで空飛びたいな…)
(窒素装甲の演算能力が使えれば…悔しいですが超そっちまで気が向きません)

三人がそれぞれリフトに乗る対応(?)を思索する。

「こらこら、なんか三人とも変な事考えてるんじゃないでしょーね?」
フレンダが三人の思考回路の分析する。心理戦も得意なフレンダ。さすがだ。

順番は特に決めていない。
流れ的には麦野が最後尾になった。
先頭は浜面と麦野。

浜面ペアの順番になると浜面が先ほどフレンダが実演したようにぱたぱたとかけていく。

イメージトレーニングを持ち前の演算能力で行っていた麦野がまたしてもやらかした!
一拍のタイミングで遅れてしまったのである。

(あ、やっべ)
麦野がイメージトレーニング通りに滑りだすがちょっと遅い。
先には浜面が手を伸ばして待っていた。

「ほら、麦野」
なんとなしに浜面が伸ばした出した手に麦野は捕まる。
そのまま強く引っ張る浜面。リフトに軽く手を当てて減速させると浜面と麦野を乗せたリフトは一足先に上に向かっていった。

「麦野、イメトレしてたんだろうけど、しっかりリフトみてろよ?」
浜面がそういうと麦野は小さくごめんと返すだけ。

(???何???今日の浜面ヤバイって…///)

「どうした?麦野?」
麦野の表情を見ようと覗きこむ浜面。
フェイスマスクで目から下が隠れ、ワイルドオールバックに決まった髪型。
そしてその髪型をキープするのに一役買っている、ラフに取りつけられたバートンのゴーグル。
(浜面、それ…反則だよ…)

ゲレンデにいる人がかっこよく見えたり、かわいく見える。
ゲレンデ効果というものの影響がアイテムに出始めていた。
とあるゲレンデの恋愛慕情が始まる!?
90 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/25(月) 14:14:44.31 ID:cSyQ2MMo
浜麦展開か?期待
91 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/25(月) 20:30:11.23 ID:iIzYEmw0

浜面たちが発進したリフトから後ろを見ると絹旗滝壺フレンダの三人もしっかりリフトに乗っている。
どうやらリフトには全員無事に乗れたそうだ。

(よかったー…全員無事に乗れたな。いちいちリフト止めたりしなくてすんだな)
浜面がほっと一安心する。

「ねぇ…」
麦野が浜面に話しかける。いや、なんかもうささやきみたいな感じで。
ん?と浜面が聞き返す。

この茶髪のインハビタントのマダラ男はまだ気付いてなかった。なんと先ほどから麦野と手をつないだままなのだ。

「……もう、リフト乗れたよ?いつまでその…手つないでるの…///?」

手袋越し。けれども、少し震える麦野の細い指がわかる。顔は真っ赤だ。
雪焼け?いや、照れてる。

あ、ご、ごめん!と麦野に謝る浜面。
(麦野、指細いんだな。なんか触ったら折れちゃいそうな感じだ…)

そんな事を考えて若干、手を離すのが惜しいなんて考えちゃってる浜面。

普段の超能力者としての麦野沈利というよりも、スノボ初心者の普通の女の子としての麦野。

(麦野…いつも高飛車でわがままだけど、服装のセンスも悪くないし、ってか俺が言える口じゃないけどさ、とにかく)
浜面が視線をどこにやっていいかわからず、適当にゲレンデを見つつ思う。

(今日の麦野クッソかわいいな)
三人乗りのリフト。

すこし離れて座ればいいのに、ちょっと互いに寄ってる浜面と麦野。
92 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/25(月) 20:33:18.39 ID:iIzYEmw0

(浜面ェ…麦野に何かしたら許さない訳よ…!)
フレンダが鬼のような形相で前方を行く三人乗りリフトを見ている。

(でも)
フレンダは思う。今までアイテムでクソ仕事をしはじめてから、麦野の色恋沙汰なんてきいたことがない。
あれほどの美貌を兼ね備えているにもかかわらずだ。
今まで麦野が皆に見せたことのない表情をしている。
(結局麦野めちゃくちゃ幸せそうな訳よ…)

フレンダは麦野と浜面を見て、思いついた事があった。
(ったく。なーに二人ともあほみたいにもじもじしてんだか)

「おーい!前の二人こっちむけー!」
フレンダの呼びかけに二人がびくっと振り向く。フレンダの手にはNEFFのバックから取り出したデジカメ。

「はい、ちーず」
めっちゃぎこちない表情の麦野。ってか笑ってないし、緊張しすぎだ。
浜面、フェイスマスクで表情わかんない!

いろいろ突っ込みどころがあるが、フレンダのとっさの思いつきによる激写作戦は大成功?だ。
93 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/25(月) 20:36:06.15 ID:iIzYEmw0
「むぎのとはまづらってなんか仲いいよね」
滝壺がリフトに体を預け、前のリフトを見ながら話す。

「そうですねぇ…なんだかんだ言って学年的にも年齢的にも二人はタメだから超接点多いんじゃないですか?」
絹旗の指摘に納得する滝壺とフレンダ。

ま、実際はゲレンデ効果にお互いやられちまい、且つ絹旗達があおってるだけなのだが。

「ゲレンデ効果ってやつも考えられる訳よ…!」
ゲレンデ効果?と聞き返す二人。

ゲレンデ効果とは先述したと通り、どんな人でもかっこよく、またはかわいく見えることである。
ゴーグルを着けていたり、普段は派手な格好をしない人が派手な格好をウェアでする。
服のサイズが違うので普段と違う雰囲気を演出する。

こうした原因により、ゲレンデ効果が演出されるのだ。

フレンダのゲレンデ効果の説明をうんうん。聞く二人。

「じゃ、浜面は普段は超浜面ですが、さらにそれに磨きがかかる訳ですね」
絹旗が訳の分からない事をぼやいている。
滝壺もほうほうと頷いている。

「きょうのむぎのはかわいいし、はまつらもかっこいいとおもうよ」
滝壺が二人の事を素直に認める。

「滝壺さん、超わかってないですね。滝壺さんも相当可愛いですよ?」
絹旗が滝壺をほめる。
普段ゆるくてかわいいジャージ系少女の滝壺は相変わらずのマイペースっぷりだが、普段と雰囲気がなんとなく違うし、何より綺麗だ。

「はいはい。さっきと同じ会話!お互いほめあってる訳よ!無限ループだぞ?」
フレンダが制して会話をシャットアウト。リフトの終着点が見えてきた。
94 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/25(月) 20:41:24.80 ID:iIzYEmw0

終点に徐々に近づく。そわそわする麦野。
ちなみに手は写真を取る時にとっさに離した。

(もうちょっと手つないで手もよかったかも…)
実は異性と手をつないだのは初めてだったりする麦野。

「あまり緊張すんなって気楽にリラックスしろよ?」

浜面がそう言うとビクッと肩を震わす麦野。

「前に見える人みたいに片足ビンディング着けたまま滑ったりしなくていいからさ。あれはまだ麦野にははやい」

うん。と素直にうなずく麦野。
(なんでそんなに素直なんですか?麦野サン?)

浜面が驚いていると麦野がじゃ、どうやって下りればいいのと質問する。

「まずはリフトから降りたら麦野は右側に座ってるから、右側の方に向かって走れ」

まっすぐ走れば客を下ろして空になったリフトが後ろからきてぶつかったり、後ろからきた人にぶつかってしまう危険性があるからだ。
麦野の場合、右側に出ればリフトにぶつかる危険もないし、後ろのボーダーやスキーヤーにぶつかることもない。

「スケボーで加速する時、片足はスケボーにもう片方で助走つけるだろ?一昔前に流行ったキックボードとか」

キックボードって何?と麦野は思ったが、スケボーの助走のイメージはわかる。

「それと同じイメージでボードを前に蹴る感じで。あとは走ってるときに左足、勢い強すぎて右足にぶつけないよーにな」

浜面が丁寧に説明をし終わるとちょうど終点に着いた。

「よし、行こうぜ」

浜面と麦野が二度目の「てっら」に降りた。
95 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/25(月) 20:45:22.01 ID:iIzYEmw0

三人組の方も大変だ。左に絹旗。右に滝壺、真ん中にフレンダ。
こういう場合、左右の人はそれぞれ左右に出ればいい。
が、真ん中の人はそのまままっすぐ行く。

(結局、私あんまりビンディング着けないでまっすぐ行くの苦手な訳よ…)

リフトの終着点の右側には先ほど造営された浜面型の洞窟がある。
その洞窟の前あたりで浜面と麦野が待機している。麦野が滑り方を浜面からを口頭で聞いているようだ。

「ちょっと、緊張しますね…コレ」
絹旗のささやく。

「うん。ちょっとこわい。できるかな」
滝壺も不安なようだが、リフトは待ってくれない。

「結局考えてもはじまらない訳よ!」
フレンダが勢いよく滑りだす。

(よっしゃ、成功…!?)
フレンダは右側のビンディングに足を寄せて滑っているが、上手く浜面達がいる方向へ行こうと右側にターンしようとした。
そこでバランスを崩してどてーんと転んでしまった。

「いたたた…あーあー、上手くいったと思ったのに…」
経験者でも転ぶスポーツ。それがスノボだ。

対して絹旗と滝壺は上手くいったようだ。
96 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/25(月) 20:46:16.25 ID:iIzYEmw0

「さーって、木の葉も出来たし、次はふつ―に滑ってみる訳よ!」

えー!と麦野達から悲痛な叫びが聞こえる。

「ちょっと!まだまだ木の葉マスターしないと…」
麦野が動揺する。

「逆エッジヤバイ逆エッジヤバイ」
絹旗は何か催眠術にでもかかったかのように同じことをつぶやいている。

「あー、体調おかしいな。これはた・い・しょ・う・のせいだ。リフトに乗って帰らなきゃ」
滝壺もいよいよ体晶を大麻の様に服用しようとしている。

「お前ら…どんだけ滑りたくねぇんだ…」
浜面が呆れる。

しかし、一泊二日という限られた時間だ。
最終日(翌日)に木の葉しかできません。なんて事になったらそれこそ失笑ものだし、なにより本人が楽しめない。

「じゃ、まずは基本的な姿勢についてだけど…」
フレンダに続けて浜面が言う。
97 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/25(月) 20:51:41.56 ID:EPzHlw2o
ttp://www.youtube.com/watch?v=Pwl7qDH233Y

ttp://www.youtube.com/watch?v=9eLfwzMopiI

お好きなのをどうぞ! 

むぎのんかわいいよむぎのん♪
98 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/25(月) 21:36:18.42 ID:iIzYEmw0
>>97両方神曲じゃないすか。
アイテム最高っす。広瀬さんも。
イエティはもうオープンしたらしいっすよ。
---------------

「まずは麦野」

無能力者でイレギュラー因子、浜面の呼び声に、は、はい!と超能力者で原子崩しの異名を誇る麦野が勢いよく返事をする。

「下向きすぎだから気をつけて。前の人にぶつかりかねないから、視線は常に前」
下ばかり向いていると絹旗のように逆エッジばかり起きてずっこけてしまう。
要は体重のバランスを調節する事がキモなのだ。

「次は絹旗」

問題点はなんですか?と絹旗は熱心に聞く。
「前に行きたい気持ちが強すぎて体重が前に傾きすぎ。逆エッジはマジであぶないから気をつけろ」
先ほど言ったととおり、絹旗の問題点は逆エッジだ。顔に傷でも付いたらとんでもない。
前に行くという気持ちは良いが、慎重にこしたことはない。

逆にその慎重さが傷なのが滝壺だ。

「滝壺は遅すぎる。バランスとれてるんだからもっと早く滑れたら滑っていいんだぞ?遅すぎても転んじまう」
滝壺は確かに遅すぎた。逆エッジは起こさないものの、後ろによく転んでいた。
いくら後ろに転ぶのが良いと言っても最低限のスピードは出すべきだ。

フレンダがあと皆に共通している点が一つ!という。

「「「?」」」
浜面とフレンダの指摘に三人がもうヒットポイント0よ!と言いたげな表情を浮かべるがフレンダはお構いなしに続ける。
99 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/25(月) 21:36:48.70 ID:iIzYEmw0

「ケツがひけてるから、しっかり手を構えて!腰を落とす!はたから見れば超!!ダサイ訳よ!」

ボロクソにぶちまけるフレンダ。

(ちょっと言い過ぎたかな?ま、これでこいつら焚きつけてやるって訳よ)
正直言えば、フレンダは教えるよりも早く滑ってみたいと思っていた。
なので多少言葉がきつくなってしまったのだろう。お茶目な奴だ。

「おい、白人。いまなんつったコラ」
麦野がブチ切れた。

「超聞き捨てなりませんね」
絹旗も肩をぷるぷると震わせる。

「大丈夫。フレンダのAIM拡散力場はもう乗っ取れる段階」
滝壺も容赦がない。

(よっしゃ、そうこなくっちゃ、面白くないって訳よ!)
フレンダの簡単な挑発に見事に乗った三人。
はぁ、とデコに手をあてる浜面。
(なんて単純なんだ…こいつら…)

ボード経験者と初心者が対立する時、物語は始まる!
100 :T7jGZEU0 [sage saga]:2010/10/25(月) 21:41:39.41 ID:iIzYEmw0

「はい。立ってー!」
フルメタルジャケットの某鬼教官張りに号令をかけるフレンダ。

皆がざっ!と立ち上がる。

「結局、まずは皆のボードに関して持っている幻想(あやまったイメージ)からぶち殺さなきゃいけない訳よ」
フレンダがそう言うとまずは滑る時の構えをさせる。構えは大事だ。

「よく格好つけて手の反動でターンしてる人とかいるけど!ちゃんとした滑り方をしないと駄目な訳!」

そう、大ぶりに手の反動を利用したり、早く滑ればいいってもんではないのだ。

「山の下を見るように立つ。体は板と平行に!視線と手を行きたい方向に向けて!」
フレンダ教官が適切な指導を展開していく。

(ふっふっふ。いつも皆には能力で負けてる私がボードを指導している…にひひ)

「体重を前足に乗っけてると…?」
フレンダが斜面のスタート地点いる。
初心者の麦野達と全く同じ体勢でフレンダがスルー…っと滑りだす。

「ほらやってみて?」
三人のボードも滑りだす。フレンダの教え方はどうやら上手なようだ。

(ボードを教える瞬間…私は相手のボーダーを教えた気分になれるの。結局――)
(こいつは私にボードを教えられてるんだってね♪)

当たり前だフレンダ。
101 :T7jGZEU0 [sage saga]:2010/10/25(月) 21:43:09.58 ID:iIzYEmw0
「止まる時は止まりたい方向に手をだして、頭は止まる方向を見る!無理に流れに逆らったら結局駄目☆」
フレンダ先生のウィンクが炸裂する。

「いくら後ろに転ぶのが言いて言っても後頭部は打たないように。結局雪でも固い訳よ」

フレンダが言ってる最中に少しずつ進んでいた麦野達は言うとおりに実践し、すとんと後ろ向きに座る。

「じゃ、浜面、ふつーにターンして」

後ろでフレンダの言うことを聞きつつデジカメで撮影していた浜面がはいよ、と言いターンをする。

左、右…交互にターンをしていく。
一見、かんたんそうに見えるが左か右、どちらかのターンで最初は必ず苦戦する。

「どう?」
フレンダが浜面に右手の親指をぐっと立てつつ、初心者組のほうを見る。

「最初から超Very Hardモードですね…にしても進行方向にずっと手が向いてましたね」

「はまづらの重心が移動してない。接地面からまっすぐになんていうか、すごい」

「膝もしっかりかくんて落としたまま…浜面すげぇ…」

三人がいまさらながら浜面のテクニックに驚く。
102 :T7jGZEU0 [sage saga]:2010/10/25(月) 21:43:40.86 ID:iIzYEmw0
「そうそう。皆が言った事。それを意識して!はい。スタート!」

フレンダが三人の手を順に引っ張て一気に引っ張る。

「あ…ば…ふれんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

白馬冬のターン陣、第一騎目!麦野はフレンダの名前を叫びつつ、斜面を下りて行った。
見よう見まねだが、様になっている。

「だだだだだだだ大丈ヴ。ボードのすべりかたたたたたは記憶した」
第二騎!滝壺はくるった壊れたボナンザのようになりながらも斜面を下っていく。同じく様になっている。

「超超超!良い感じ!」
第三騎!!もはや、壊れた絹旗。某女性ユニットの曲をつぶやきつつ滑降して行った。ケツが他多少引けているが同じく様になっている。

「さて、私たちも行く訳よ…」
「だな…」
ゴーグルをスポッと着ける二人。
二、三回その場で飛び跳ね、一気に加速するフレンダと浜面。
二人は先に行った三人を追いかけ、「てっら」のコースを猛スピードで駆けぬけていく。かっけぇ。
103 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/25(月) 22:43:59.62 ID:C8v2xoAO
言うことは ただ1つ
>>1 超乙。

>>101
絹旗wwモー娘かww
104 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/25(月) 22:50:08.53 ID:C8v2xoAO
ageちまった…orz

雪ダルマになってくるわ…
105 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/26(火) 00:47:47.01 ID:i9BQGeg0

「さんっざんだったわ…」
せっかくのお気入りのウェアの中に大量の雪が混入した麦野。

「や、やばっかった…」
滝壺もいつもの眠そうな顔はどこへやらといった感じだ。よく見ると冷や汗が噴き出ている。

「超怖かったです。でも、結構楽しかったです」
そう言う絹旗も満身創痍の状態だ。

彼女たちは今初心者コース「てっら」のリフト乗り場まで降りてきていた。
フレンダと浜面に教えてもらったように、片方だけビンディングを外して待っていた。

「おーい!」
浜面が手を振りながらこっちに向かってくる。
左の方を指さす浜面。その先には中級コース「じんさく」があった。

「じんさく」は初級者コースよりも若干斜度があるがその代わりに幅がかなり広く、初心者向けのコースだ。

「あっちに行けってこと?」
麦野がそれに気付き、首をかしげつつ「じんさく」のリフト乗り場を指さす。
そんな所作の一つ一つがかわいらしい。
「あっちに行くわよー」
麦野があせあせと固定されていない右足で歩き始める。
実は平坦な道をボードで行くのは結構しんどい。ましてや歩いた状態だとなおさらめんどくさいのだ。

「これ…超疲れますね…」
絹旗が歩きつつ言う。
平坦な道に見えつつも、実はちょっとした坂道だったりすることも。

「…こうすれば平気だよ…?」
滝壺が板のビンディングを両方外してくてく歩いている。

「「…」」
麦野と絹旗は即座にビンディングを外し、滝壺の後を追った。
106 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/26(火) 00:48:42.49 ID:i9BQGeg0
今日はここまで明日また投下します。
コメント下さった皆さまありがとうございます。
-----


麦野達が「じんさく」のリフト乗り場につく。

フレンダと浜面はもう先に着いていた。
「どーだった?ターンは?」

フレンダが麦野達に聞く。

「…聞かないでください。フレンダ」
絹旗がショボンとする。あはは…と滝壺と麦野も苦笑い。

「平気平気。次のコースは中級だけど、幅が広いし斜度もあんあまり訳よ!」
フレンダが麦野達を激励する。



二人乗りのリフトがごうんごうんとやってくる。

「のってくださーい、次の人どうぞー」
左足のビンディングを着け終わった絹旗が先頭で一人、リフトに乗りこむ。

「よいしょ」
浜面のリフトに乗る時の動作を見よう見まねで実行する。

(確か浜面はリフトの椅子に手を着けてましたよね…おお!)
すんなりリフトに乗る絹旗。

次は滝壺と麦野。

「ちょっとこわいね、麦野」
二人も絹旗と同様に浜面が乗ったように椅子に手を伸ばしゆっくりとリフトに乗る。

「あ、上手くいった」
麦野があっけらかんとした声を出し、滝壺も!!と驚きの表情を浮かべた。

「はは、あいつらリフトに乗るのにもめっちゃ気ぃ使ってんな」
浜面がそういうとフレンダもゴーグルを外し、そうねと笑いながらいう。
二人は難なくリフトに乗りこんだ。

ジー…フレンダのリュックからミネラルウォーターが出てくる。
ごくごく…。

「あー、水分補給はだいじな訳よ!飲む?浜面」

フレンダが何気ない素振りで水を渡す。あ、いいよ俺もあるし、と答える馬鹿面。
107 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/26(火) 00:56:49.95 ID:EayKEKIo
なんとも淡々とほのぼの進行なのが和む・・・
108 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/26(火) 01:06:44.57 ID:WfHbHcDO

浜面にスノボ教えて貰いたい
109 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/26(火) 01:43:32.90 ID:g7dqTeoo
スノボに行きたくなるスレだなー
110 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/26(火) 06:15:39.00 ID:oxhHRUAO
スキーヤーでボードやったことないけどこれはおもろい
111 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/26(火) 17:18:11.94 ID:i9BQGeg0
コメント感謝。
ほのぼの過ぎてつまらないかもしれませんがご容赦を。

---------------

「ねぇねぇ、浜面、聞きたい事があるんだけど」
フレンダが浜面のほうをジーッと見つめる。

「な、なんだよ。フレンダ…」
(なんなんだ一体…)
あのさ、とフレンダが髪の毛をくるくる弄りながらさらりと一言。
「今日、なんで麦野の事ずーっと見てるの?」

いきなりのフレンダの問いかけに、浜面は動揺した。
浜面はフェイスマスクを外して、おやつのカロリーメイト・フルーツ味を味わおうとした浜面は黄色いアルミ袋を破く手をぴたりと止める。

「…見てないぞ?何言ってんだ?」
予想通りの解答にため息をはくフレンダ。

(結局、バレバレな訳よ!)
フレンダの誘導尋問は続く。

「ふぅーん…見てないんだぁ。じゃ、なんでさっき麦野の手握ってた訳?」

ビクッと擬音が聞こえてきそうなほど肩を震わす浜面。


「…あ、あれはだな。麦野がリフトに乗る時にうまく乗れるよーにだな…」
(なんで知ってるんだ?フレンダ…)

浜面が驚きを隠せずにいるがそんな事お構いなしのフレンダは、はいはいとテキトーに返す。
(結局浜面は阿保面ね。じゃ、こんなんどーよ)

恋のキューピッド?化したフレンダが浜面に襲い掛かる。

「あ、そーいえば麦野はずーっと浜面の事しか見てないよ?」

フレンダがニヤリと笑うが浜面にその蠱惑な表情は見えない。
カロリーメイトを盛大に吹き散らかす浜面。
112 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/26(火) 17:18:59.85 ID:i9BQGeg0
(は?あの麦野が?ありえねぇ…でもあいつの指…)

(結局、麦野の指、細かったーとか手袋ごしでもヤバイとか思ってるんでしょ?に
しても出まかせにここまで嵌まるとは…)

るろうに剣心の碓井もびっくりする心眼能力を発揮するフレンダ。

浜面は本来なら黙れ小僧!とフレンダに怒鳴りかかりたい所だ。

が、あいにくフレンダは小僧ではないし、自分の事をずーっと見てくれている麦
野の事を妄想するとニヤニヤがとまらなくなり、怒鳴るうんぬんどころではない


(麦野…)

浜面の妄想の中ではひどくデレデレしている麦野がいた。
113 :T7jGZEU0 会話形式です。 [sage]:2010/10/26(火) 17:23:09.56 ID:i9BQGeg0

麦野『ねぇ、浜面ぁ』

浜面『なんだよ、あんまりリフトで動くなよ麦野』

麦野『ボードやってる時の浜面すっごくすっごくかっこいいよ☆』

浜面『おう、ありがとう。ってか顔近いよ。麦野』

麦野『ずーっと見てたんだから☆今近くでじっとみても変わらないでしょ?』

浜面『…む、麦野、ち、近すぎだぞ…息とかかかってるし、手とか俺の手にあたってる…//』

麦野『……いやなのかにゃー?』

浜面『いやじゃないケド…ヤバイってマジで』

麦野『浜面、もっとこっちきて?』

浜面『ん?なんだ?麦野?』

麦野『ごにょごにょ』

浜面『え?きこえない』

麦野『…い…す…』

浜面『ごめん。まじで聞こえない』

麦野『だぁい好き☆』

浜面・麦野『///』
114 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/26(火) 17:29:40.78 ID:i9BQGeg0
妄想をふくらませている浜面。
「へへへへ」
まるで筋弛緩剤でも盛られたかの様にだっらしない表情になる浜面。

(結局、なーにだらけてんだかこの変態男は…)

フレンダは自分がちっそぱんちを使えない事を心底くやしがったそうだ。

「ま、結局麦野が浜面の事見てたなんて全部嘘っぱちな訳なんだけどね」
フレンダの一言で浜面は凍り付く。

「おい、フレンダおまえ今なんつった」

浜面がフレンダにスキルアウト仕込みのメンチをきる。
が暗部で長いこと仕事を続けてきたフレンダには全く効果がない。

「にゃはは、だから、冗談だって!麦野が見てたとか嘘!」

体がプルプル震える浜面。ばんばん足をたたき笑うフレンダ。

「浜面っ!あんたわかりやすすぎ!結局!いつもの冷静な麦野の姿と違って乙女みたいなそぶりにやられちゃった訳?」

恥ずかしさマックスの浜面は真っ赤に染まった頬を隠さず言い放つ。

「あぁ、そうだよ!麦野の事かわいいって思ってるし、ギャップにやられちまったよ!俺は。わりーか!」

あまりの毅然とした態度に逆にフレンダが恥ずかしくなる程だった。

「ま、まぁ。文句はない訳よ!」
(へぇ、ゲレンデ効果+ギャップ効果ねぇ…)

フレンダが感心しているとリフトの終着点が見えてきた。

中級コース「じんさく」に到着した。
115 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/26(火) 17:39:57.59 ID:i9BQGeg0

リフトから下りる事には初心者の麦野達もまだぎこちないがなれた様だ。

浜面が完全防水のフェイスのデカイ、イカついニクソンの時計を見遣る。

(時間的にはコレいれてあと三回か二回滑ったら昼だな)

正午まであと一時間程。
気付けばあっという間に過ぎてた時間。

三回目の滑走でいよいよ中級者向けコース「じんさく」に到達したアイテム。

斜度は大してかわらないと聞いていたが、実際に見るとかなり急に見える。

「これ、上級者コースじゃないんですか?」
と絹旗がびびりながらもビンディングをつける。

各自カチャカチャとビンディングを装着し、終わると麦野と滝壺が自然に滑り出した。
そして、少し行くと派手に転倒した。

「「いったたた…」」

麦野と滝壺が雪に顔を埋める。
しかし、諦めずに初級者コースで浜面やフレンダが見せた滑り方を真似し、滑ろうとする。

こける事にビビったらそこでおしまい。

ショーンホワイトだって最初はこけたはず。今井メロだって国母だって最初はこけた。

--------

☆浜面の時計:http://www.amazon.co.jp/%E3%83%8B%E3%82%AF%E3%82%BD%E3%83%B3-NIXON-51-30-WHITE-NA058100-00/dp/B000WTQTQI/ref=sr_1_9?s=watch&ie=UTF8&qid=1288082353&sr=1-9
116 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/26(火) 17:44:48.96 ID:i9BQGeg0

(むー…、もっと両足を気持ち、寄せる様にしたほうがよさそうかな?)

麦野と共に先陣を切った滝壺。
彼女は転んでしまったが、再び立ち上がり滑り出す。


ターンをする時、どうしても左側へ移行するのが苦手な滝壺。
自分では重心をあらん限り後傾させているつもりだ。

が、ターンの孤が右側方向へ向かうときのターンより明らかに膨れている。
転ぶのもたいてい左側へ向かうときだ。

(もういちど、やっとみよう)
フレンダと浜面に教えられた通りに進行方向に頭を向け、手を構える。

ビンディングに固定された両足を内側に寄せる。
腰は引かない。飽くまで落とす。
ケツが引けるようなださいフォルムにならないように意識する。
接地するエッジと体の芯は常に変わらない。

そんな自分をイメージする。

(さいごに…)
滝壺が自分自身を戒める。

(カッコつけて滑ってもこけるだけ。基本をますたーするのが一番かっこいい)

よし、と一念すると勢いよく滑り出した滝壺。

ッシャアアアア

ふわふわした雪を裂きつつターンに移る。

(スピードを殺さずに…うん。いい感じ。それっ)

クイッと優しく、力ではなく滑走している流れの中の一動作。

(…!できた!)

すんなりと滝壺のターンが決まった。

117 :T7jGZEU0 [sage]:2010/10/26(火) 17:48:26.54 ID:i9BQGeg0
粗削りだがターンのコツを習得した滝壺。
その光景を見ていた麦野。
そこへ後方からやってきた絹旗が追い抜いていく。

「私たちも超おちおちしてられませんね!」

絹旗はまだターンの孤が不格好だし、デカイし偏りもある。
しかし、転んでも転んでも立ち上がる不撓不屈の気持ちは決して折れない。

先行していく二人が撒き散らしていく雪。

そのあとに僅かに香る彼女達のトリートメントのにおい。
それらが麦野のやる気を触発する。

(ったく…あいつら。わたしも負けらんないわ)

麦野も立ち上がり、二人を追う。
ターンはまだやはり荒々しく雑だが、楽しんでいる表情は崩さない。

この三人、上達しそうだ。
118 :T7jGZEU0 厨二臭いな。だがそれがいい [sage]:2010/10/26(火) 18:04:58.00 ID:i9BQGeg0

さらに三人を後ろから見ていた浜面とフレンダ。

「あいつらうめーじゃん」
浜面が素直に彼女たちの上達振りを認める。

フレンダも否定しない。
「麦野たち、頑張ってるね」

あえて麦野と言い浜面の反応を見るフレンダ。反応はない。
(皆がんばれ!麦野、超がんばれ!)
声に出すとフレンダにキモがられるので心の叫びと化した浜面のエール。

「…だな」
クールにフレンダのいじりを交わす浜面。

ゲレンデの古いスピーカーから流れるひっとちゅーん。
http://www.youtube.com/watch?v=9eLfwzMopiI
http://www.youtube.com/watch?v=Pwl7qDH233Y&feature=watch_response

浜面は雪がついた頭をふる。
雪を落とすとワックスを着けている髪をグッと後ろに持っていき、黒のバートンのゴーグルを着用する。

フレンダもゴーグルにペッと唾をはき、雪を少しゴーグルの中に入れてこする。
曇りが取れるのを確認し二人も滑り出した。

「いくか」

「ええ」

太陽が少し雲に隠れ、こなあああああああああああああああゆきいいいいいいいいいいいいいいいいいが降ってくる。そのこなあああああああああああああああゆきいいいいいいいいいいいいいいいいいを払う勢いで進む。
誰も阻止できないし邪魔させない。そう聞こえてきそうな二人の背中がコースの終点へと消えていく。
119 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/26(火) 18:10:56.62 ID:iWVGH8Mo
割り込んですまないけど「sage saga」ってつけたほうがいいと思うよ
120 :T7jGZEU0 [sage saga]:2010/10/26(火) 18:33:53.35 ID:i9BQGeg0
>>119マジだ。粉雪って規制ワードかよ。ありがとう。
修正しました。
----------

太陽が少し雲に隠れ粉雪が降ってくる。
その粉雪を払う勢いで進む。
誰も阻止できないし邪魔させない。そう聞こえてきそうな二人の背中がコースの終点へと消えていく。


121 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/26(火) 19:03:46.10 ID:8mrx8cAO
「粉 雪」 に吹いたwwww
こなあああああああああああああああゆきいいいいいいいいいいいいいいいいい
122 :T7jGZEU0 [sage saga]:2010/10/26(火) 20:32:08.61 ID:i9BQGeg0
この後もアイテムのメンバーは中級者コース「じんさく」を二回滑り、いったん昼食タイムにうつる。



「超疲れました。もうくったくたです。おなか減りました…」
絹旗がボードを軽々と能力を使って持ち上げると、背中に乗っけながら言う。
滑る時以外は演算能力を使えるようだ。

「おなかへった。カレーが食べたい」
滝壺は板をよろよろと引きずりながら板をかける所までとぼとぼあるいている。
どうやらお昼はカレーをご所望のようだ。

「シャケ…シャケ…シャケ…シャケ…」
三度の飯よりシャケ一匹を取る程のシャケ好き、麦野は朝ごはんに引き続きシャケを食べたいようだ。
先ほどまでリフトに乗るのも浜面の手を借りていたアイテムの女王。
麦野はビンディングを一人で着脱すると滝壺同様に板を立て懸ける場所に板を置く。

「お疲れ―!」
フレンダは全く疲れを感じさせない笑顔。
勢いよく麦野達の前で止まるり、カチャカチャとビンディングを外す。

浜面もビンディングを外し、ボードを立て懸ける所に板を置くとアイテムのいるところに来た。
「いやー、皆普通に滑るの上手いな。午後が楽しみだぜ」

そういうと浜面はフェイスマスクを外し、ウェアのベルトを通す所の左側に結ぶ
そこに一人歩いてくる男性が一人。
123 :T7jGZEU0 [sage saga]:2010/10/26(火) 20:32:44.62 ID:i9BQGeg0
「おい、お前ら、今から昼ごはんか?」
全身白の作業用のツナギを着た青年がやってきた。
ツナギにはでかでかと日章旗のペイントが。

「食事中に貴様らの板を根性かけてメンテナンスをしておく」
アイテムの面々はずかずかと近付く白ツナギの男に怪しむ目を向ける。

しかし、はやくも板のメンテに入るその人物は変人には見えた。

「あの、すいません、ここの宿の人ですか?」
浜面がそう聞くと彼はそうだ、と答えた。

「俺の名前は研板(とぎいた)軍覇だ。主に板を研いだり、メンテしたりする」
そういうと研板は黙々とメンテに取りかかり始めた。

常に最良の状態でウィンタースポーツを楽しんでもらおうという「あうれおるす」の人達の粋な計らいであった。

「じゃ、とりあえず休憩も兼ねて昼ごはんにしよう」
浜面が言うとアイテムの面々は「あうれおるす」の食堂に向かっていった。
124 :T7jGZEU0 [sage saga]:2010/10/26(火) 20:34:04.66 ID:i9BQGeg0

朝の静かな雰囲気とはうってかわって食堂は大混雑だった。
絹旗がぴょこぴょこと駆けていく。

「超座席確保しました!」
ちょうど五人分の座席を見つけた絹旗。そこに店員がやってくる。

「申し訳ございません…只今のお時間料理が出るまでにかなり時間がかかっていますがよろしいですか?」
と言うのはホールを担当している人の内の一人で朝、初心者組のビンディングを調節してくれた対馬さんだ。
どれくらいなの?とフレンダが聞き返すと早くて20分、おそくて30分程らしい。

「…結局ここ以外ごはん食べる所、近くにないのよね」
フレンダが了承すると対馬はすぐに食堂の裏手に消えていった。

他の卓の料理が出ているのだろう。オーダーにてんてこ舞いだ。
125 :T7jGZEU0 [sage saga]:2010/10/26(火) 20:35:21.81 ID:i9BQGeg0

「じゃ、俺はメルヘンハンバーグ定食にダークマターピザ」
ガッツリ食べて午後に備える浜面。ピザは大きいので皆で分ける。

「んー、超迷いますね……じゃ、このアステカ丼でお願いします」
絹旗はアステカの民族料理と丼ものが融合したカオスな料理を注文した。

「結局サバなのよ。私は牛深シェフお勧めサバ寿司で」
「あうれおるす」側もフレンダがサバ好きと知ってか、サバのだけで15種類もメニューがある。

「うーん私は陰陽サーモンシチューで」
麦野はシチュー。シチューは栄養を無駄なく摂取できる。しかもあったかい。

滝壺は?と麦野が聞く。

「うーん、このビリビリカレー、おおもりで」

どれもおいしそうだ。
126 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/27(水) 02:32:30.38 ID:n90Xrkk0
言われた通り、混雑の為か料理が出てくる時間は遅かった。
しかも、名前はおかしい料理ばっかりだったが美味しかった。

午前とお昼ご飯パートおしまい。つぎは午後。


昼食を食べ終わって休憩。
しばらくしてボードが立て掛けてある外まで出る。

ボードは綺麗にメンテナンスされており、研板の何恥じない働きぶりを見せた。



「ふうお腹いっぱいですね」
案外アステカ丼がうまかったのかご満悦の絹旗。

「あれ?滝壺さんは超どこに行ったんですか?」
回りをキョロキョロ見回すがいない。

「滝壺なら食堂の畳が敷いてある所で寝るっていってたわよ。座布団の山に飛び込んで行くのが見えたわ」

麦野の目撃談によれば滝壺は疲労でグッタリモードに突入したようだ。
というわけで取り敢えずは四人で午後の滑りだしだ。

最初は中級者コースをひと通り回り、その後、チャレンジで上級者コースに行くという計画をたてた。

滝壺は合流したいときにフレンダか浜面の携帯に電話で連絡するよう麦野が指示を出していた。

(ちょっと浜面と二人でいたいかな…なんちゃって)
麦野がちょっとだけ欲張りな事をお祈りする。
127 :T7jGZEU0 [sage saga]:2010/10/27(水) 21:51:08.31 ID:n90Xrkk0
こんばんわ。グダグダ進行ですね。読んでる人がいるかどうかも
わかりませんが投稿していきましょう。せっかく書いたんだし。


--------------------


「当然。安全に楽しく滑る様に。山の天候は変わりやすい。午後はふぶくという情報も入っているから気をつけて」

宿兼ゲレンデの総責任者アウレオルス=イザードの見送りを受け、四人は中級コースを一通り滑る事に。

この時点では天候は晴れ。仮に曇ったとしても雪が降り、風情すら漂う。それがゲレンデだ。





その頃、滝壺は座布団の山に埋もれて寝ていた。

《おーい》
何か聞こえる。
《起きろ。滝壺理后》

かつて学園都市第二位を誇った男、垣根帝督、もとい「未元」が滝壺に暇つぶしに話しかけているようだ。

「うーん…誰かよんでる?」
午前中に散々転んでは立ち上がりを繰り返した滝壺。
反応は鈍くて当然だ。

《こっちだ!こっち!》
冷蔵庫の蓋がバタバタ勝手に開閉している。

いちいち冷凍庫の棚も開けるので冷器がちょいちょい漏れている。寒い。

《ひまになっちまった!話し相手になりやがれ》

垣根は必死に滝壺にアプローチをかけるが滝壺は座布団の山に顔を沈める。

(あやしい冷蔵庫についていっちゃだめって誰かがが言ってた)
誰に吹き込まれたか分からない警句を思い出し、滝壺はまた深い眠りに嵌まっていってしまった。

冷蔵庫の足元からぽたぽた漏水している水がやけにさびしそうだった。

《起きるまでまつか…ってか自分の考えてる事が他者に突き抜けっていうのもなぁ…つらいし暇だ…》
128 :T7jGZEU0 [sage saga]:2010/10/27(水) 21:52:53.75 ID:n90Xrkk0


先ほどのちょっとわがままな麦野のお祈りがゲレンデの神様に通じたのか、フレンダが絹旗とリフトにのって先に行く。
自然に浜面たちは取り残されてしまうことに。

「超お似合いですよね。二人とも」
小走りでリフトにのった絹旗がフレンダに言う。

「結局相思相愛なんじゃないの?」
そこまでいきますか?と絹旗は聞き返す。

「うーん…今はお互い気にしてるくらいかな…?」
フレンダは発言を修正する。

後ろを振り返ると「あうれおうるす」がどんどん小さくなっていく。
前を見ると灰色の雲が徐々に垂れ込んでいた。

(もしかしたら、アウレオルスさんの言ってたようにマジで荒れるかもね)
フレンダがそんなことを考えながらゲレンデを見渡す。
129 :T7jGZEU0 [sage saga]:2010/10/27(水) 21:59:54.71 ID:n90Xrkk0
あー、ちょっと百合っぽいから気をつけてね。

-------------

「あ、そうだ写真とろうよ、写真」
フレンダがなにやらたくさん物がはいったリュックからデジカメを引っ張り出す。

「そうですね。思いでつくりですね」
なんだそれー、とフレンダが言いつつデジカメを構える。

「絹旗こっちよって☆」
絹旗の肩を手袋越しにぐいと引っ張るフレンダ。
ちょフレンダ、と声をもらす絹旗。

「ほら、ちゃんとよらないと映らないわけよ!」

ぱしゃり

「どれどれどんな感じかな?」
フレンダが撮った写真を見てみる。
二人は仲良く肩を寄せている。
片目ウインクでベロをちょこっと出しているフレンダに無理やり肩を寄せられて動揺しつつもピースする絹旗。

「絹旗かわいー!」
フレンダはデジカメのディスプレイに映し出される絹旗のぎこちない表情の写真写りを見て言う。

「ちょっと、私にも見せてくださいー!」
絹旗がフレンダのデジカメを見る。
「にしし、絹旗のとっさに驚く顔…かわいいって訳よ!」

フレンダがカメラを覗き込んでいる絹旗に言うと絹旗も
「フレンダも超かわいいですよ」

「え?」
動揺するフレンダ。

「…だから、フレンダもかわいいって言ってるんですよ!」
いきなり何?フレンダは動揺しつつも自分の顔が赤くなるのが感じられた。
130 :T7jGZEU0 [sage saga]:2010/10/27(水) 22:02:46.57 ID:n90Xrkk0

(絹旗って、そのー…百合の気あったっけ?)
絹旗は勿論素直にフレンダもかわいいですよ、と言うお世辞的な意味でフレンダに言ったのだが、フレンダが勝手に勘違い。

「フレンダ、いきなりそんなに顔赤くなってどうしたんですか?」
絹旗がフレンダの顔を見る。

「あーいやぁ、平気平気。気にしなくていいから!」
(あれー。よく見れば、絹旗ちっこくてかわいいわけよ…ちょっといじめてみようかな?)

フレンダの嗜虐心に火をつけてしまったことは露知らずの絹旗。

「ねぇねぇ、絹旗。リフト降りたら競争しない?競争。どっちが先に下に降りられるか勝負よ!」
正直フレンダは卑怯だ。ボード経験者と、まだ初めて初日の絹旗には天と地程の実力差がある。
こんな出来レースが成立する訳がないのだが…。

「ちょっと待ってください!何でいきなり超勝負なんですか?しかもなんかよからぬ事をたくらんでますね?」
いやいやと首を横に振るフレンダ。怪しむ絹旗。

「ですが、ここで断れば女の名が超廃りますね。わかりました。フレンダの超決闘受けて立ちましょう!」
ドンと自分の胸を叩く絹旗。あーあ、勝負に乗ってしまった。

(にしし!これで絹旗は私のもんよ!)
フレンダが絹旗に見えないようにグッと手を握った。
131 :T7jGZEU0 [sage saga]:2010/10/27(水) 22:06:29.30 ID:n90Xrkk0

絹旗はフレンダが勝負に乗るという言質を取ると一つの提案をする。

「じゃ、負けた方が勝ったほうの言うこと聞く事!いい?」
定番であり、最もたちの悪い条件だ。

えー!卑怯ですよ!と絹旗がシャウトするがお構いなし。

「超待って下さい!それは!いくらなんでもフレンダが有利ですし…その」
その、何?とフレンダが言い返す。

「その…フレンダがどんなこと言うのかわかりませんし…」
そのとき、フレンダのため息が聞こえた。しかもこの上なくわざとらしい。

「絹旗、丸くなったなぁ…拳銃に撃たれても傷一つつかない女がこんないたいけな少女のお願い一つ聞けないなんて…」
(これでどうよ?絹旗ぁ!)
全く意味の分からない比較を持ち出すフレンダ。もはやここまで来ると卑怯を通り越してあきれてしまう。

しかし、一旦買ってしまった勝負。後には引けなかった。
「…クソ。わかりました。改めてその超勝負受けましょう」

フレンダと絹旗の謎の賭けバトルが始まろうとしていた。
132 :T7jGZEU0 [sage saga]:2010/10/27(水) 22:24:59.84 ID:n90Xrkk0

「なんか前の方落ち着きがないわねぇ…」
麦野は今浜面と二人でリフトに乗っている。
前の方とは絹旗とフレンダが乗っているリフトだ。

「あいつら、うちらん中でもひときわお茶目な奴らだからなぁ…」
浜面も前の揺れているリフトに呆れつつ目をやる。

「ところでさ麦野、もうなれた?ターン」
リフトから麦野の方に向き直る浜面。

正直言って、麦野はまだターンに自信がなかった。なので浜面の問いには首を 横にふるしかなかった。

「そっか、そしたらさ、また俺が教えるよ。マンツーマンで教えたほうが上達も早いだろうしさ」
いいの?と麦野は浜面に聞き返す。
てっきり、リフトを降りたら自由行動だと勝手に思いこんでいた麦野は一人でしょんぼりしていたからだ。

(やった!浜面とマンツーマンえ教えてもらえる…ってかいつもの私はどうした?)

(浜面はパシリ程度にしか思ってなかったのに…)

麦野の中で浜面の株は急上昇中だ。
133 :T7jGZEU0 [sage saga]:2010/10/27(水) 22:33:26.91 ID:n90Xrkk0

麦野沈利は困惑していた。
いつも学園都市にいる時は浜面はアイテムの下部構成員でレベルゼロ。
つまりは無能力者。

仕事がない日も会議と称して集合しているアイテムのメンバー。
そんな彼女たちにドリンクバーからドリンクをとってくるただのパシリ的存在。

それなのに、ここ数時間。そう、白馬に来てからというものの、麦野の心情に変化が起きていた。
ただのパシリなんてもんじゃない。
麦野は浜面に対してそれ以上の好感を抱きはじめていた。

いつからだろう。
(さっきのリフトに乗るときかな…)
リフトに乗る時に浜面に手を引っ張られた時か。

(あの時はどきどきしたわね…///)

(それとも朝のふもとの受付の時かな…?)
今日の朝、ゲレンデの受付で一人でチェックインの手続きをしようと寒い車外に一人で出て行こうとした浜面。
一人で行くのはさすがにかわいそうだと思い、一緒に受付に行くと言い出したのは麦野だった。

(やっぱり、ゲレンデに着いた時から少し意識してたのかな?)
いつもならやれ何とかしろとか、やれ、こうしろと色々浜面に命令する立場の麦野だが、今日は違う。

(パシリとかじゃなくて、組織の中だけの関係とかじゃなくてさ…)

(今みたいにこうやって、浜面と今一緒にいることがすごく心地いい)

麦野は浜面のことを好きになってしまったのかもしれない。
まだその淡い感情に自分では気付いていないのだけれども。
134 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/27(水) 23:06:34.92 ID:n90Xrkk0

浜面仕上はワクワクしていた。
アイテムのメンバー皆で旅行に来れたから。

浜面はアイテムではただのパシリだった。
ヤンキーとかにパンかってこいと言われるとかそういう風ではない。

彼の所属する暗部組織アイテムの構成員達、即ち今日一緒に来ている面々にパシリ扱いされていたのだ。

彼女達は浜面をただのタクシーの運転手兼ドリンクバー係程度にしか思っていなかった。

だが、そんな人使いの荒い奴らとも話してみると案外面白いもんで。
実際、絹旗最愛とはB級映画を見に行った事もある。

自分が入った時より、格段に仲良くなったアイテム。
他の組織とか上から、ままごとだとかごっこ遊びとか言われるかもしれない。

アイテムのあり方を非難するやからが出てくるかもしれない。
それでも構わない。そんな事言う奴らはしらねー。浜面は思う。
(これがアイテムだ)
浜面は自信を持って言える。他者の風評なんかきにしない。

(なにより…)
そう、今こうやってアイテムのみんなで白馬に来て、仲良くなることが出来て浜面は嬉しかった。



(にしても…)
隣に座る麦野をちらっと見る浜面。
昼食を食べ終わった後に少し部屋に戻ってお化粧直しをしたのだろう、唇がピンク色のグロスでほんのり潤っている。

(麦野って近くで見ても、遠くで見ても美人だな…)
(って俺は何考えてんだ?超能力者のお嬢様と無能力者の路地裏のスキルアウトって構図はなぁ…)

完全にifの世界に浸かる浜面。

(その構図、わるくねぇな…!)

浜面はまだ麦野が自分の事を好きかどうかもわからないのに勝手に妄想し悦に浸っていた。
135 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/27(水) 23:09:00.66 ID:n90Xrkk0

フレンダと絹旗は麦野たちのリフトより一足先に着くとそそくさとビンディングをつける。
お互い何故か無言だ。

険悪なわけではない。既に女の勝負が始まっているのだ。

スポーツメーカーが「絶対に負けられない戦いがそこにはある」
という標語を作ったが、今の彼女達はまさにその状態。

(この戦いでフレンダに勝ってさらに自分の自信につなげたいと思います。何でも言うことは…まぁそん時で)
絹旗はこの戦いに勝ってボードのスピードを追求したいと思っていた。

絹旗の崇高な向上心とは対症的にフレンダには何かドロドロしたふしだらな感情が…。

(勝って絹旗を手に入れる訳よ!)
フレンダは余裕綽々だ。
今までたくさんのゲレンデを滑ってきた。
オフシーズンでもDVDを見た。
ウィンタースポーツ関係の雑誌を読んだり、ボードに使うであろう筋肉のトレーニングもほんのちょっとだけした。

二人の思わくを抱え、二人は滑り出す。

どちらが勝つか?
136 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/27(水) 23:12:43.48 ID:n90Xrkk0

「なんだ、あいつら…すっげぇ速いスピードで降りてったな…」
浜面がビンディングを片方外したままリフトからスルスル降りる。
麦野は降りて小走り。

「はぁ、はぁ、結構これ疲れるわね…」
右足をビンディングから外して走る麦野。

「しゃあねーよ。まだビンディング外したままじゃまだ滑れないだろ?じゃ、つけたら滑ろうぜ?」

麦野がビンディングをつけるのを待っている浜面。急いでつける。

風は依然として強いが、相変わらず天候は晴れだ。
雪がゲレンデを舞い、明るい日差しは徐々に傾き始めているそんな時間帯。
何回リピートされているかわからない広瀬香美のトラック。

(このゲレンデの雰囲気っていうかにおいがまたいいんだよな)

浜面が冷たい空気をフェイスマスク越しに吸い込むと麦野のまだつたない滑りを見る。

137 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/27(水) 23:15:31.43 ID:n90Xrkk0

「準備できたわーはーまづらぁ」
下にいる浜面に聞こえるように大きな声で言う麦野。はいよーと下のほうから聞こえる反応。

「じゃ、ターンやってみ?左右にさ。ホラ、あそこあたりまで」
浜面が目印となるポイントを指差すと麦野がこくりと首を縦に。

「うん。じゃ、いくね」
麦野はちょっと大きいゴーグルを着け、ターンを始める。

(やっぱり…右方向に向かうときのターンがただの減速ターンになっちゃってるわね…)
自分で理解できているのだが、どうしても上手く決まらない。

「もうちょっと腰を落して…違う違う。それじゃお尻を引いてるだけ」
浜面の指摘が聞こえる。
普段の麦野なら絶対にぶちきれそうだが、ここは言うこと聞く。
下手に原子崩しでも顕現させれば水蒸気爆発で自分もろとも吹き飛びかねない。

(釈だけど…ここはちゃんと言うこと聞いてマスターしときたい…)
普段ならば出来ないと直ぐにあきらめて違う目的を見出す麦野。
けれど、基本中の基本であるターンを習得せずしてボードは楽しめない。
なにより浜面に指摘してもらってほめらることが嬉しいし、新鮮だ。

(もっとがんばろう!がらじゃないかな、私…あはは)
この変わり様。ゲレンデとはすごい所だ。
138 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/27(水) 23:18:03.29 ID:n90Xrkk0

その頃、同コース「あっくあ」のリフト乗り場にて。

「くやしー!超悔しいです!」
絹旗はムキー!とく悪しそうに首にまいたレッグウォーマーをかじり、伸ばす!
反対にフレンダは勝ち誇った顔。
これだけでどちらが勝利を収めたか想像するのは難くない。

他のスキーヤーやボーダーがいるのも憚らず子供のように騒ぐフレンダ。
「にゃはは。結局、私に勝つなんて無謀なのよ、絹旗☆」
そういいつつもフレンダも息は途切れ途切れだ。どうやら絹旗も獅子奮迅のすべりを見せたようだ。

エッジを立てて、滑った後がまるで一つのレールのようになる滑り方をカービングと言う。
それを駆使したフレンダと見よう見まねながら周囲のボーダーたちの滑り方を真似した絹旗。

絹旗は敗北したものの先頭を行くフレンダのカービング方法を参考にし、滑っている時に自分でアレンジするほど迄の地力を見せた。

(絹旗、ずっと喰らいついて離れなかったわね…正直危なかったわ)

しかし、いくら惜敗したからと言っても負けたほうが買ったほうの言うことを聞くというルールが消えるわけではない。

「にしし、結局、絹旗には、後で罰ゲームがあるので覚えて置くように!」
フレンダが心底嬉しそうな顔をする。一体何を考えているのだろうか?

(結局、フレンダ様の言うとおりになる絹旗、超可愛いって訳よ!)
139 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/27(水) 23:30:09.66 ID:n90Xrkk0
またあとで落とします。
140 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/27(水) 23:32:07.02 ID:vtvIN9so
いったん乙です!
141 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/27(水) 23:32:24.90 ID:Z8QhWMYo
絹旗がどんな目に合わされるのか非常に楽しみです
142 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/28(木) 00:03:50.92 ID:5iZ9N.AO
浜面良い時計使ってるなww じんさくが分からないんだけど誰だっけ?
143 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/28(木) 00:06:55.25 ID:ORh0YsUo
>>142
4巻の御使堕しの話で出てきたピチガイ殺人鬼さん
144 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/28(木) 02:18:15.62 ID:6MUJmxko
もう今夜は無しかな?乙
145 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/28(木) 02:32:41.73 ID:aIUvwiw0

「いいぞいいぞ!その調子!」
麦野のターンを見ていた浜面が言う。

「ホント?嬉しい!」
いつもなら冷静沈着で残忍な麦野もここにはいない。
スノーボードに興じている麦野だ。

「後はターンするときに手を使わないように!」
ビシっと浜面が人差し指をつきたてる。

「えー、手はターンするときにふると結構楽にできるんだけどなー…」
ちぇと麦野は近くにあった雪をぐいっと掴むと近くにぽいっと放る。

「いやいや、手で方向転換するのはまだ体の勢いだけでターン出来てないって言ってるようなもんだぞ?」
え?そうなの?と麦野は驚く。
確かに手を使ってターンをすればかなり楽だが、実際に見てみるとそれはあまり綺麗なフォームだとはいえない。

「そうだな。あまり指摘しないでいるとその滑り方になれちゃうから注意しといた」
なるほど。

手の反動を利用しないで滑ると浜面やフレンダのように綺麗な滑り方になれる。
なんども滑ってレベルアップってか?と思いつつ取りあえずは「てっら」のリフト乗り場までのコースを滑って行く麦野。

浜面が手本となるように麦野の前を行くが、途中で少し麦野が逸れた。
逸れないと小高いジャンプ台があるからだ。しかし浜面はそっちへ行く。

(浜面、ジャンプするの?)
麦野は先行する浜面を目で追う。

あまり大きくないがクレーンで雪を積み上げたと思われるその小さいジャンプ台に浜面は向かっていく。
(とべっかな?いや、とぶ)
浜面は不安になりつつもジャンプの姿勢に。

丘の終点(リップ)に左足に装着しているビンディングが出る。そして0コンマ数秒で右足も地上から離れる。
146 :すまん。ジョギング行ってた [sage saga]:2010/10/28(木) 02:33:27.83 ID:aIUvwiw0

(浮いた!)
左手を空にかざす。
左手から肩を経由し、両足のビンディングの間のトゥー・エッジをつかむ右腕まで一本の線が形成される。
両膝を胸に着けるように…!ぐっと引き上げる。

(っしゃぁ!決まったぁ!)

まだ早いぞ、浜面は終着点の目星を付ける。

(あそこだな…!)

まるで飛行機のように着陸姿勢を形成する浜面。
なるべく着地点の斜度に合わせる。さもないと板が痛むし、自分も体を痛くするからだ。

ざざざ!着地に見事に成功する。

「すごいわね…」
麦野はジャンプ台が終わる地点のすこし先で転んでしまったので浜面の巧みな技を見ようとその場に止まっていた。

(ってか浜面、ホント楽しそうに滑ってるわね…)
麦野は、呆れるほど純粋にスノボを楽しんでる浜面の表情をみて心臓がどきんと強く打つのを知覚した。
147 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/28(木) 02:35:00.71 ID:aIUvwiw0


ジャンプが終わり、スピードが着地の際に遅くなる。

(これくらいならいけっか?)

まだ何かしようと考える浜面。次は何をやるのだろうか。


麦野はジャンプを決めた浜面に完全に魅了されていた。
(…まだ何かやるの?)
期待する麦野が見ているそばから浜面が体を板ごと少し右に向ける。

浜面視点から見て、ちょっと遠くに先に行った麦野が見える。座ってこちらを見ている。

(よし…!ワンエイティ決めてやる…麦野も見てるし…!)

こういう時、失敗フラグというのは大抵立つ。
女の前でいいところを見せようとするからだ。まぁ、ある意味ベタでデフォな失敗動作。

しかし、現実世界で起きるそれは小心者が精進を怠り、たまにいいところを見せようと思った雑魚に限って怒るもの。
常日頃から体を鍛えボードに入れ込む浜面。
そんな彼はその失敗フラグを、地面を均していくロードローラーのように叩き潰し、実力を証明していく。

(フラグとか…関係ねぇ!)
148 :すいません。罰ゲームは明日で…! [sage saga]:2010/10/28(木) 02:35:36.60 ID:aIUvwiw0

まずはカービングをしつつ、右手・肩を後ろに持っていく。
つられるように左手・肩も右に気持ち、回していく。

右足のカカトに重心を移行させる。
すると勝手に左足の方の板が浮く。そしてそのままグッと浜面は飛んだ!

(90°位まわりゃいい)
惰性で体が自然と回る。
(うりゃ!)
自分で体をひねる。上半身の回転につられるように下半身がねじれた。
その中途半端な姿勢で着地する浜面。着地するとすぐに修正をくわえ、もとの姿勢に戻る。

「っしゃぁ!決まったぁ!」
グッと左手を力強く握る浜面。
その姿はゲレンデの陽が傾いているせいもあってか逆光でなにか神々しいものを感じさせた。

「どーよ?麦野?」
ジャンプとワンエイティを見事に決めた浜面。
その姿は否応なしに麦野の網膜に焼きつき、同時に浜面に対する麦野の思いを加速させた。

「サイコーにかっこよかったよ。浜面☆」

手を上げる麦野。それにこたえるようにパシンとハイタッチする浜面。
彼は山のふもとがわに雪を巻き上げズッシャァ!と麦野のすぐ前に止まる。
149 :一個だけ落とします [sage saga]:2010/10/28(木) 11:12:55.09 ID:aIUvwiw0
浜面が技を決めている時、フレンダ達は同コース「あっくあ」から途中の乗り継ぎポイント経由で中級コース「びりあん」に移動した。

「いやー、麦野完全に浜面に魅了されてましたね…」
絹旗はちゃっかり浜面達を滑りつつ見ていたそうだ。

「…結局私だってあれくらい出来るわ。ワンエイティなんて上半身と下半身を交互にひねればいいだけだし!」
そういいつつもフレンダは身体能力に関してはやはり浜面に劣ることは明らかだった。

しかし、その優美なカービングターンとまだ見せていないがジャンプには自信があった。
(私も後で絶対飛んでやる…!)

勝手に浜面に対抗心を燃やすフレンダ。


「あ、絹旗。さっきの罰ゲームなんだけど…」
ヒィ!絹旗が叫ぶ。一体何をたくらんでいるんだか全く予想がつかない。

「おーいー!結局忘れましたとは言わせない訳よ!絹旗ぁ」
な、なにするんですか?と明らかに動揺を隠せないでいる絹旗。

「目つぶって☆」
ゴーグルを外してニット帽の上にかける絹旗。

「な、なんで目つぶるんですか?」
絹旗がびくびくしている。

(…うーん、やっぱゲレンデ効果ってすごいわね。いつもかわいい絹旗がさらにかわいく見える訳よ…)
いいからつぶりなさいとフレンダはいう。
絹旗もなにするんですか?と言いつつも目をつぶる。

(えーい、とつげきぃー!)
フレンダはゴーグルを外しておでこにかけるとそのまま絹旗のくちびるに向かっていく。

ちゅっと音がする。温かい。体温を感じる。
肩にも手が回っている。
まさか、フレンダ?と絹旗が思った時にはすでに遅く。

「〜〜〜っ!!!」
絹旗がおもわず目を開ける。そこにはやっぱりフレンダが。

「ごめん、かわいすぎたから絹旗にちゅうしちゃった☆」
べろを出して頭をこつんと叩くしぐさ。かわいこぶってるつもりだろうか。
いや、事実フレンダはかわいいのだが。

「ふ、ふれんだぁ///これがば、ばつげーむですかぁ?」
うん。と臆面もなく頷くフレンダ。対して絹旗は顔が真っ赤っか。なんかふにゃふにゃしてる。
(超ちゅうしちゃいました)
絹旗のファーストキスは残念ながら女の子のフレンダが持っていった。
150 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/28(木) 21:43:09.85 ID:6MUJmxko
カップル出来てるw
滝壷の相手は?
151 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/28(木) 21:59:06.18 ID:ORh0YsUo
>>150
冷蔵庫だな間違いない
152 :こんばんわ [sage saga]:2010/10/28(木) 22:33:27.70 ID:aIUvwiw0
「うん。これが罰ゲーム。私にまけたから、なんでも言うこと聞いてもらった訳よ!」
ありがとね!と最後にフレンダが絹旗に手をあげる。お気楽そうだ。

しかし、その直後絹旗の様子がおかしくなる。

「え?どうした?絹旗」
ぷるぷる震える絹旗。白いつなぎのウェアに落ちる水滴。
(え?まさか泣いちゃった?)
やべ!と心中でつぶやくフレンダだが、遅きに失した。

「…なんで…ヒッグ…こんな…ウグ…こと…」
ぽろぽろと涙を流し、目じりをこする絹旗。
罰ゲームの内容にしては度が過ぎた。絹旗は泣き出してしまったようだ。

「…あ…いやぁ…その…絹旗、泣いちゃってる訳?」
フレンダが挙動不審になる。あたふたする。

どうしよう。絹旗が泣いちゃった…。
153 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/28(木) 22:35:33.62 ID:aIUvwiw0

「っごめん!」
フレンダはまず謝罪をする。

「…なにを謝るんですか?」
絹旗が赤く泣きはらした(雪焼け?)瞳でフレンダを直視する。

「…その…キスしちゃったことよ…私も度が過ぎてたし…その…私にも何かしていいって事で収まりつかない?」
神様に祈るような気持ちで絹旗の方を向くフレンダ。絹旗が泣きやむにはこれしかない。

しかし、結果からみてこれはフレンダが心理戦に負けた事になる。

(…)ニヤ

何故ならフレンダは絹旗が嘘泣きをしていたことを見抜けなかったからだ。

「…じゃ、そのさ…なんていうか…取りあえず、なんか出来ることない?その…絹旗のゆーこと聞くって訳よ!」
フレンダが泣きはらした(ような)表情の絹旗に頭をぽりぽりと掻きながら告げる。
もう投げやりだ。

絹旗が泣きやんでくれればそれでいい。フレンダは自分が安直に絹旗にキスをしてしまったことを悔やんだ。

(やっちまったぁ…絹旗には耐性あると思ってたんだけどなぁ…)
勝手にそんな事考えてたのか、フレンダ。そんな事を考えるのもつかの間。
絹旗がフレンダに指示した内容はまさに彼女を驚かせるものだった。

「超、目を閉じてください」
154 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/28(木) 22:36:18.63 ID:aIUvwiw0

言い遅れたが、彼女たちは依然閑散としている中級者向けコース「びりあん」のビンディング着脱上の近くにいる。

太陽が雲に塗りつぶされていく。
最初は太陽の明かりが必死に雲から出ようともがいていたが太陽光はさえぎられ、うす暗くなる。
それは絹旗に命令されて瞼を閉じているフレンダにも知覚出来た。

(陽が陰った?ってか絹旗は私に何をしよーとしてるんだろう?)
フレンダは全く予想がつない絹旗の行動に恐怖しつつも、泣かしてしまった罪悪感の為、目を閉じることにした。

「ちゅ」

(?)
フレンダの唇に何か当たった?
「もう目、開けていいですよ?」
フレンダが目を開けるとそこには全く泣きはらしていない、というかむしろにやにやしている絹旗がいた。
しかもなぜか頬が赤い。

「あれ?」
フレンダは一瞬混乱した。

「あれれ?私が絹旗にキスして、絹旗も私にキスした訳?」
混乱するフレンダ。正解。

絹旗は、私を泣かした超罰ですよ。とフレンダの唇に手袋外した右手の人差指を添える。

「フレンダの唇超あったかいんですね☆」
ぽかーんとするフレンダを前にして全身真っ白の少女がなめらかに告げる。

「これで超おあいこですよ☆」
絹旗の頬は淡いピンク色に染まり、照れているように見えた。

フレンダはそんな絹旗の姿に一瞬魅了された。
155 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/28(木) 22:36:53.39 ID:aIUvwiw0

「ははーん。さては私に超魅了されちゃいましたか?フレンダ☆」
絹旗は自信たっぷりと行った表情だ。

フレンダはどうも気にいらないらしい。
(結局、私が主導権握ってたのに、いつの間にかリードされてるのはなんで?)

「フレンダ、早く滑りましょ?滑ってまたリフトに乗りましょうよ☆」
先ほどフレンダが見せたレトリックな表情をそのまま返したかのような表情を浮かべる絹旗。

(これは私を誘ってるのかな?)
フレンダは疑念抱えつつも、絹旗の提案に頷く。
二人は仲良く「びりあん」を下って行った。
罰ゲームはもうしない。ちょっといたずら心が湧いた二人は仲良く「びりあん」を滑って行く。
156 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/28(木) 22:38:10.46 ID:aIUvwiw0

フレンダ達がいちゃついているときに太陽を覆い隠した雲。
それは「あうれおする」の人たちが予測した様に吹雪いてきた。

絹旗とフレンダがコースを下って行く時、山の頂上部分からどんどん雪雲が降りて来ていた。

山の天候は変わりやすい。
リフトに乗っている「びりあん」に向かってリフトに乗りはじめていた時には晴れていた「びりあん」の終着点が雲に覆われていた。

そんな光景をリフト越しから眺める麦野と浜面。
眼下を見るとボーダーやスキーヤーはゴーグルを着け、滑っている。

麦野は正直ゴーグルをつけて滑るのが嫌いだった。
ゴーグルは着けてもあまり変わらないのだが、なんとも言えない違和感を感じるからだ。

雪が降った時などはゴーグルをつければ見通しがよくなるし、何より目に雪が入らないといった利点が挙げられる。

(ゴーグル着けて滑るのやだなぁ…)
そうい思いつつも彼女たちをのせるリフトはごうんごうんと終着点までキッチリ運んで行く。
157 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/28(木) 22:39:17.41 ID:aIUvwiw0

「ついたぞー…ってか結構ふってんなぁ…」

リフトから降りると浜面は後ろから走ってくる麦野を待つ。
後続のリフトから来る客もまばらだ。

雪は音を消す。
大声で叫んでもあまり響かない。

実際に雪の降っている日は静かだ。
それは決して科学的な理由がない訳ではない。

声と言うのは本来音の振動だ。
その振動が乱されると当然、音は伝わりにくくなる。

声とは本来周囲の人が聞こえるもの。
駅で大きな声を出せばかならず周囲の人が振り向くだろう。

しかし、ふわふわと落下する雪はそうした音(声)を反射するのだ。
雪は強度もなく、粗い構成だ。なので空気の振動が当たった時に声を届けたい対象に伝わらない事がしばしばだ。

しかもその音の振動を跳ね返すほどの強度も持ち合わせていないため、音が反射する方向もまちまちに。

まぁ、雪の話はここらでおいとく。

浜面と麦野はまるでさながら二人きりになったかのような幻想をゲレンデで垣間見た。
158 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/28(木) 22:39:44.61 ID:aIUvwiw0

「すっごい静かね…」
あまりの静寂さとしんしんと、しかし増していく降雪量。
先ほどまで青々と広がっていた乾燥した空は一面灰色で塗りつぶしたカンバスのようになった。

後からたまに来るボーダーやスキーヤーはゴーグルを着け、慎重に滑って行く。

浜面のワイルドヘアの上にも雪が積もる。

「つめた!」
融けた雪が水滴になり浜面の頭皮を刺激する。

「やーっべぇな。結構ふってんな」
浜面は防止仕様のリュックから真っ黒なヘルメットをゴソっと取りだす。

「メットあんまつけたくなかったんだよなー」
そう言いつつも頭の雪を払いゴーグルをぱちんとメットに接続する。
ふふ。麦野がそんな浜面を見てくすくすと笑う。

「あん?俺のメット姿がそんなにおかしいか?」
おかしいっちゃぁ、おかしい。普段浜面はバイクに乗らないし、メットなんてつけないから。
けれどそれを麦野は否定する。

「ううん。なんか、ホントにスノボ好きなんだなって思って」
麦野がニット帽でもカバーしきれない艶やかな栗色の髪の毛にかかった雪を手ですいていきながら落としつつ言う。

浜面はメットをよいしょと着用しながら隣にいる麦野に返答する。

「あぁ、一回やってハマっちまったんだよ。おもしれーもんスノボ」
立ち話もなんだと思った浜面はとろとろと近くの開いている場所に行き、腰を下ろす。
麦野も後からちょこちょこと着いていく。
159 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/28(木) 22:41:37.59 ID:aIUvwiw0

「そっかぁ。私もあんたみたいに何かにのめり込んでみたいわ」
麦野がニット帽の位置を調整しかぶりなおす。
雪はまだ降っている。
浜面の隣にボードをつけたまま体育座りをして座る麦野。
ビンディングは座って装着した。

「麦野の趣味って何?服とか?」
麦野が浜面に聞く。確かにこの灰色の世界では時間感覚が失せる。
スキーヤーやボーダーの指標としてゲレンデのライトが明るくともる。

「服って何よ」
麦野は確かに沢山の服を持っている。
それは彼女が仕事で得た給料で沢山かったもの。
だけど、彼女は別段服が好きという訳でもない。そりゃファッションに興味はあるが。
すべての金をつぎ込んでいる訳ではない。
貯金もしてる。

「じゃ、なんかはまってることないの?」
ここまでずいずいと麦野のプライベートを聞いてくる人はそういないだろう。

うーん…と考え込む麦野。

アイテムの皆とする雑談でもここまで話したことはない。…多分。
160 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/28(木) 22:42:17.92 ID:aIUvwiw0
すこし考える麦野。
「石とか、シャケとか、あとは音楽」
その発言にむむ?と浜面は聞き返す。

(シャケはわかるとして…のこり二つは?音楽はまぁベタだが…)
麦野が大のシャケ好きとしてアイテム内で鳴らしているのは周知の事実だ。
だが、浜面の興味を引いたのは石。

「石って何だ?川原とかに落ちてる石?」
まぁ、それも石だ。だけどちょっと違う。
麦野はため息をつく。
「はぁ。浜面には説明してもわからないかな?これなんだけど…」
麦野がウェアのファスナーを開けていく。下にはピンク色のロンT。
自分の胸元へ手袋をはずした手を入れて、何かを手繰り寄せているようだ。
161 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/28(木) 22:43:50.38 ID:aIUvwiw0

(おいおい?何するんだ?え?まさかぬいじゃう?)
変な妄想で顔が赤くなる浜面。あほか。

「あんたまさか変な事考えてない?」
いやいや、そんな事全く考えていません!と真っ先に否定する浜面。
どうだか…と言いつつ、麦野は胸元にあるネックレスを手繰り寄せ、ひょいと見せる。大きい綺麗な石。

銀に縁取りされた、青い綺麗な石のネックレス。鳥の羽のようだ。
それを浜面に見せる。

「小さい時に図書館でさ…石の図鑑読んでて、それ以降はまちゃって…」
初めて聞いた。麦野がまさかそんな趣味を持っていたなんて。

「へぇ…お前がそんな趣味あったなんてな。これってあれか?トルコ石とかいうやつだろ?」
浜面がドヤ顔で知っている唯一の石の名前を出す。

ぶっぶー。

どうやら違うようだ。
162 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/28(木) 22:44:18.32 ID:aIUvwiw0
じゃ、これ何?と浜面は質問する。

「これはね、天籃石(てんらんせき)って言ってさ、んーと、ラピスラズリって言ったらわかる?」
え?オサマビンラディン?と聞きかえす浜面。駄目だコイツ。なんとかしないと…。

「ばか…。それテロ犯じゃない…。こういう石とかのペンダントやアクセサリー、ピアスって大好きなんだよね」
子供が自分の覚えたての知識を話すように楽しく話し始める麦野。

「スフェーンのピアスもしてるんだ…」
そういうと麦野は栗色の綺麗な髪をたくしあげる。
その姿を見た浜面は色っぽいなと無性に思ったがあくまで思うだけにしておく。

浜面がよく見ると麦野の耳に小さいピアス。
原子崩しという異名を獲得した時、自分で真っ先に思いついた色。それが黄色。
純粋に黄色だとおばさんくさいなと思い、少し緑が混じっている黄色のスフェーンの天然石をチョイスしたそうだ。

「…なんか喋りすぎちゃったかな…ちょっとこれはあいつらに言わないでね…!なんか恥ずかしいから…」
そうか?と思いつつも浜面は言わないでおこうと思った。
麦野の要望だし、それに、自分しか知らない麦野の一面を知れた気がしたから。
163 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/28(木) 22:45:06.10 ID:aIUvwiw0
「とりあえず、麦野の趣味とか聞けてよかったわ。なんか暗部で活躍してる時のお前とは違うな」
浜面はそういうとリュックからガサゴソと何かを取り出す。

「水筒なんてちょっとガキ臭いけどさ」
恥ずかしそうに水筒を出す浜面。麦野が中身を訪ねると「あうれおるす」の人からもらったホットレモンドリンクだそうだ。

「はー、あったまるわ。麦野も飲む?」
そういうと麦野の返答も聞かずにこぽこぽとコップに注いでいく浜面。
コップからは湯気が出ている。まぁ、そのなんだ間接キスってやつだ。浜面は気にしていないそうだけど。

(んー、これって間接キスになるんじゃ…)
高校生が間接キスで躊躇するなんて今どきの子っぽくないと思うだろう。しかし、麦野は違った。
今まで温室育ちで厳格な教育を受けてきた麦野は異性との関係を厳しく制限されていた。

その後、なんらかの不祥事を起こし学園都市のクソ暗部に堕ちた。
なのでこう見えても異性交友はほぼド素人状態だ。

「飲まないの?」
浜面が催促する。
浜面は多少間接キスだ、どーだと多少は考えたが、麦野寒そうだなと思い、善意の気持ちからコップを渡した。

「んー、ありがと」
ふーふーと息を吹きかけ飲みやすいようにする。
雪がポトリとコップに入る。

「じゃ、お言葉に甘えて…」
ずずずっとホットレモンを飲む。おいしい。
(やった!浜面と間接キスだにゃーん☆)

見た目は至って平静を保っている麦野。ともすればちょっとムスっとした様な表情にも見えなくもない。
しかし、それは全然嘘。嬉しくてたまらない。

(浜面と間接キス…)
ぼーっとしている麦野。別にそこかの常盤台の少女みたいに媚薬を混入した訳ではないのだが。
ただ間接キスをしただけ。

それだけで原子崩しの異名を獲得している学園都市第四位の女の子の自分だけの現実は崩壊寸前だった。
164 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/29(金) 00:05:26.17 ID:JLmfgoAO
そして新たな趣味は浜面になるのか
165 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/29(金) 03:41:35.42 ID:ONVd48g0

《おきろー》
奇妙な光景だ。

ここは「あうれおるす」の食堂。

《コラ》
声にはならない叫び。ドタンドタンと動く冷蔵庫。

《おーい》

絹旗達がキスを交わし、麦野達が仲良くしんしんと降る雪の中で語っている時、学園都市第二位の男は声にならない叫びを滝壺に向けていた。

《夜の時間帯まで暇なんだ》

家に必ずあると言っていいもの。それは冷蔵庫だ。しかし、冷蔵庫もコンビニのように常に利用する人がいるではない。
戦後の混乱期から日本が発展するまでに一般大衆のステータスとまで言われた冷蔵庫も食事時以外は利用されるはずはない。

いわんや、今はアイドル(昼と夜の間)の時間帯だ。当然、食堂もまばらな状態。
雑談に興じている人もいれば、寝てる人もいる。

キッチンで働いていたアウレオルス支配人や闇坂マネージャー、研板軍覇ゲレンデ責任者、牛深シェフ、対馬ホール長たちは休憩中だ。
彼らは住み込みでアルバイトしている中学生のクローンに掃除をさせている。

そんな状況下で垣根帝督は正直暇だった。
本来ならお客様に話しかけることを厳しく命じられているが今は冷蔵庫「未元」を管理する人たちがいないのでこっそり羽根をはやしてやってきたというわけだ。

《おーい、すいませーん。チッ。おきねぇか》
モニターに文字が出力されると一気に冷蔵庫のふたが開いた!そこから強風が吹き荒れる。

「…ん」
滝壺理后が微かに反応する。

《ニヤリ。おい、起きろー!》
冷蔵庫のふたがばたんばたん唸る。風がやばい。保存用の新巻きサケがボトボト落下するが気にしない。

「…あ、冷蔵庫」
滝壺理后は起きてしまった。

《暇だ。俺の話し相手になれ》
滝壺は嫌だ。というが垣根は言うことを聞かない。
166 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/29(金) 03:43:51.38 ID:ONVd48g0

(…なんで冷蔵庫なのに意思があるの?)
滝壺が思念をめぐらせていると垣根がその質問に答える。

《おいおい、俺の未元物質に常識は通用しないぜ?声にはならないが、このモニターに自分の意思を出力する事くらいたやすいぜ?》
なんでもありだ。滝壺の思考を読み取る未元物質まで作れるほどに洗練された垣根提督の能力。

「…何で私の考えてることがわかったの?」
滝壺は疑問に思った。なぜ、私の思考、即ち『冷蔵庫に意思があるか』という質問を把握していたか。

《ん?いや、なんとなく。そんな表情してたから》
どうやら未元物質を利用した訳ではないらしい。ただのチャラ冷蔵庫としての勘だそうだ。

《あーわりぃ、俺の奥にあるピンセット取ってくんない?背中かゆいんだよね》
ピンセット?と思いつつ冷蔵庫のふたをあけ、奥にあるカギ爪のようなピンセットを取る。

超微粒物体干渉吸着式マニピュレーターと呼ばれるそれは「あうれおるす」では全く役に立たず、もはや従業員の孫の手と化していた。

167 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/29(金) 03:45:18.12 ID:ONVd48g0
滝壺が超微粒物体干渉吸着式マニピュレーター通称ピンセットを装着し、冷蔵庫の裏手に回る。
神話のように羽根が生えている冷蔵庫。その羽根によく見るとご飯粒がくっついていた、かゆみの正体はこれか。

「…こう?」
ピンセットでご飯粒を削り取り、垣根のディスプレイを見やる。

《ありがとよ。おかげでかゆみがとれた。あ、それまた中にしまってください》
そういうとバタンと勝手にふたが開き、滝壺も律儀に礼をすると、ピンセット通称孫の手を慎重に奥にしまってやる。
そこに支配人が戻って来る足音が。
しかし二人は気付かない。

「自然、この状況は皆目理解出来ん。「未元」何をしている」
168 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/29(金) 03:46:04.57 ID:ONVd48g0
支配人のアウレオルスが休憩を終えてやってきてしまった。
キッチンからだいぶ移動しているため、怒られると思ったのかいきなり「未元」の電源が切れた。

「全く、彼は優秀なのだが、奈何せんお客様に迷惑をかけたがる。少女、彼が何を話したかわからないが相、申し訳ない」

アウレオルスがペコリと謝罪する。
「かさねがさね、申し訳ないが、すこし手品を披露しよう」

滝壺に向かって純白のキッチン服と高いコック帽をかぶったアウレオルスが電源オフ状態の「未元」に命令する。

「元の場所へ帰れ」
ひゅんという音とともに「未元」は元置いてあった場所に移動した。
おおーと驚く滝壺。

「フッ。君は彼に面識があるのかい?」
アウレオルスはまさかと思いつつも質問する。

「直接はないけど、学園都市の能力者バンクでみたよ」
ほう、と何ふくんだような答え方をするアウレオルス。

「すこし…話をしようか」
カシュンとZippoを出すアウレオルス。滝壺は何も答えていないのに勝手に話し出す。
169 :今日はここまで。 [sage saga]:2010/10/29(金) 03:56:56.32 ID:ONVd48g0
読んでくれている方々、こんな誤字脱字だらけぐだぐだSS読んでくれて感謝です。
明日また落とします。ばーい。

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「私は忌々しき男二人に記憶を消され、元々の顔を改ざんされてね。さらに路頭に迷った挙句ここに着いた」
そう。彼も実は学園都市出身者だったのだ。正確に言えば学園都市に活動拠点を構えていたと言った方がいいだろう。

「そんな折にここらの山のふもとで不法投棄を行っている輩がいてな、そこで捨てられていたコイツを拾ったというわけだ」
滝壺はアウレオルスの発言を聞いて不思議に感じた。
なぜなら記憶も顔も当時と違うアウレオルスがなぜ男に敗北する前の風貌と記憶を取り戻しているか。

「電源につなぐとな。ふふ。全く科学とは発展したものよ」
?という表情を浮かべる滝壺。

「きゃつの未元物質で私の記憶と顔をもう一度再修復してくれたのだよ」
アウレオルスは垣根提督(「未元」)の超高度演算処理により生み出された未元物質で全ての記憶と緑髪オールバックの自分の顔を取りもどしたのである。

「…実はな。私も彼に恩返しをしたいと考えているのだ」
滝壺がアウレオルスの方を見る。なんで恩返しするの?とでもいいたげな表情だ。

「今日あなたたちと慎ましくも談笑しようと、和に入ろうとし、失敗したこの冷蔵庫を見て思ったよ。彼は元に戻すべきだってね」
滝壺がつい身を乗り出す。あなたは何かできるの?と聞く。

滝壺はアウレオルス=イザードが生まれる時期が違えば、未来が変わっていた男。
禁書目録と言う十万三千冊もの本を記憶している少女を終生守護する事を自ら買って出た英雄。
しかし、彼に英雄としての尊称は与えられなかった。禁書目録はすでに救われていたから。

そんな自分の記憶や顔を忘れさせず、復活させてくれた「未元」。
彼ももとは人間だ。ならば同様に同じ人間の姿にしてやろう。
アウレオルスは一人の少女をすくえなかった屈辱を雪ごうと考え、いつしか「未元」を人間に返してやりたいと考えていた。

「はっはっは。そうか、知らないか。古今東西の技術の粋を集め、はるかはボヘミアに伝わるわが黄金錬成を」
滝壺には全く理解できない言葉の数々。だが一つだけわかることがあった。

(アウレオルスさんはこの冷蔵庫に恩返しをしたいんだ。記憶と顔を取り戻させてくれたこの「未元」に)

黄金錬成のアウレオルスと滝壺理后しかいなくなった食堂にぽつねんと置かれている冷蔵庫「未元」。

今こそ恩を返すのだ。
とあるツンツン頭は自己の道を突き進み英雄になる。
とある白髪モヤシは贖罪の念を立ち切り英雄になる。
とある緑髪オールバックは救えなかった少女の汚名をすすぐため、とある少年を助け、英雄になる。
170 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/29(金) 12:43:51.51 ID:ONVd48g0

「そんな目で俺を見るな。少女。安心しろ私の知識に裏打ちされた黄金錬成に不可能はない。たかが人一人の再生など」

アウレオルスは絶対の自信に顔をほころばせる。むしろ愉快にステップを踏み出しそうな勢い。
対して滝壺はやはりこの冷蔵庫がいきなり人間の姿になることがどうしても信じられないようで、猜疑心を捨てきれないでいた。
そんな滝壺表情を見てか、一言この男は告げる。

「人一人救えない様では人の存在価値などない」

続けざまにアウレオルスが発する言葉は自身満々な彼とは少し違うさびしそうな表情だった。

「それでもまだ彼女を救うには時が足りぬのだが、そちらは彼らに任せよう」
一瞬何を言ってるのかわからなかったが、滝壺は気に留めなかった。
次に何が起きるかそれが気になって仕方なかったから。

「みてみたいな、あうれおるす」
座布団をきゅっと強く抱きしめる滝壺。黄金錬成の完成度を高める為、白のスーツに変貌したアウレオルス。

「今から見せる。我が名誉は世界のために」
腐っても十字教徒。異端派?カタリ?アルビジョワ?関係ない。

「復活せよ。「未元」もとい」
アウレオルスが滝壺をちらとみる。

「垣根帝督」
滝壺がそういうと、ぱぁぁぁと食堂の窓という窓が光った。
171 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/29(金) 12:48:22.69 ID:ONVd48g0

「お?お?おいおい。マジかよコリャ。はっはっは。おもしれーわ」
垣根帝督は復活した。

「ほう。それが自然、貴様の体。「未元」か」
アウレオルスは口角を引き上げ、少し笑う。

「ったく、ありがとな」
垣根はアウレオルスにぺこりと礼をする。全裸で。

「あぁ?なンだってンだ?」
動揺して、一瞬全裸の少女を見たときの第一位の様な口ぶりになってしまった垣根。

「服を与えよ」
そういうと在りし日の垣根の服装、茶の華やかなスーツが与えられた。
アウレオルスがちらと滝壺を見る。
どうやら信じられないといった風で目をこすりまくっている。

(え?ひとが冷蔵庫から出てきた?いや冷蔵庫が人にホントになった…!)
魔術と無縁の滝壺が驚くのも無理はない。
科学が信奉されている現代。魔術の類は科学至上主義の学園都市とは全く関係ない存在だ。
この世界では表裏一体なのだが。

話を戻そう。復活した垣根は別段歓迎を受けた訳ではない。アウレオルスはすぐさま命じた。

「私の意思が垣根クンの存在理由を疑わなければ、永遠に生きられるさ」
おいおい、ホントかよ。垣根は驚く。

「あは☆」
一緒に顕現したピンセットを口に咥えながら気持ち悪い笑みを浮かべる垣根。吐きそうだ。

「全く。君がいつも馬鹿の一つ覚えのように私や牛深にディスプレイ越しに自画像をうpしていたからこそできたのだ」
アウレオルスの黄金錬成ははっきりいって彼の想像力にかけられている。
日ごろから在りし日の自分を見せたかったメルヘン男の面目躍如だ。

ふっと笑うとアウレオルスはキッチンに消えていく。そこで一旦後ろを振り返る。

「そうだ」
垣根がぴくりと反応する。

「六時までにここに戻ってこい。風呂の支度がある」
そういうと巨大な鍋に大量の野菜をぶっこむアウレオルス。

「はい」
そういうと垣根は未だに信じられないと言った表情の滝壺に近付く。
「安心しろ。俺の未元物質に常識は通用しねぇ」
全くかっこよくない、本日二度目の決め台詞だった。
172 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/29(金) 12:49:20.78 ID:ONVd48g0

「罰ゲームはなしか…」
わざと聞こえるように言ってるのか?
絹旗はそうおもいつつフレンダの方を振り向く。

「どうしたんですか?フレンダ」
絹旗が足をぶらんぶらんさせながらフレンダの方を向く。

今彼女たちが乗っているのリフトは「あっくあ」へ向かう途中だ。
誰かが降りるのをミスしたのだろうか。しばらくリフトは停止していた。

「いや、ちょっと我慢できなくて」
フレンダはそういうと絹旗にまたも特攻をしかける。

かなりの降雪量だがゴーグルを外している二人。
顔を直接見たいから?

「ちょっ…」
そこから先はフレンダの唇にかき消された。
「…ん…ちゅ…あ…」
その…フレンチキスってやつだ。言わせんな恥ずかしい。

二人が繋がっている唇から小さい水滴。二人の唾液が混じったものがぽとりと二人のつないでいる手の上におちる。

「きぬはた、さいこうにかわいいわけよ」
キスの合間合間に喋るフレンダ。そんな言葉だけでびくっと肩を震わせる絹旗。全くゲレンデで何やってんだか。

(あーだめだなこりゃ、絹旗ヤバイ)
フレンダはすっかり雪の妖精のようないでたちの絹旗に惚れこんでしまったようだ。
(ふれんだぁ…)
対してその妖精さんも綺麗な白人爆破魔にからめ捕られてしまったようで。
173 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/29(金) 12:49:49.71 ID:ONVd48g0

「寒いですね…フレンダ」
いくらボードウェアをきてるといっても寒い。
防寒機能は昨今のウェアはかなり精巧に作られているがやはり体を動かさないと時は寒い。

「もっとよってよ、絹旗」
二人が乗っているリフトが少し横に揺れる。
体重と脚にぶら下がっているボードがスライドすれば少しはリフトも揺れる。
前後に一つずつ開ける間隔しか客がいない。
降雪量からくる視界不良でチャレンジしようとしている人たちが少ないようだ。

肩が触れ合う。
絹旗のウェアについているフードはファー付きだ。
それをかぶると絹旗の目のあたりまですっぽりと覆ってしまう。
ちょっとサイズが大きいのかな?

「もっと絹旗の顔見せて欲しい訳よ」
フレンダがフードを少しだけ上げて、左手で絹旗の顎をくいと上げる。雪が入るとかどうでもいい。
絹旗はされるがままで全く拒否しない。

「結局いやじゃないの?」
首を縦に振る絹旗。よくできました。と右手で頭をなでなでするともう一度、フードをかぶった絹旗の顔へ。
174 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/29(金) 16:29:52.21 ID:ONVd48g0
――「あうれおるす」食堂にて

「そんな目で俺を見るな。少女。安心しろ私の知識に裏打ちされた黄金錬成に不可能はない。たかが人一人の再生など」

アウレオルスは絶対の自信に顔をほころばせる。むしろ愉快にステップを踏み出しそうな勢い。
対して滝壺はやはりこの冷蔵庫がいきなり人間の姿になることがどうしても信じられないようで、猜疑心を捨てきれないでいた。
そんな滝壺表情を見てか、一言この男は告げる。

「人一人救えない様では人の存在価値などない」

続けざまにアウレオルスが発する言葉は自身満々な彼とは少し違うさびしそうな表情だった。

「それでもまだ彼女を救うには時が足りぬのだが、そちらは彼らに任せよう」
一瞬何を言ってるのかわからなかったが、滝壺は気に留めなかった。
次に何が起きるかそれが気になって仕方なかったから。

「みてみたいな、あうれおるす」
座布団をきゅっと強く抱きしめる滝壺。黄金錬成の完成度を高める為、白のスーツに変貌したアウレオルス。

「今から見せる。我が名誉は世界のために」
腐っても十字教徒。異端派?カタリ?アルビジョワ?関係ない。

「復活せよ。「未元」もとい」
アウレオルスが滝壺をちらとみる。

「垣根帝督」
滝壺がそういうと、ぱぁぁぁと食堂の窓という窓が光った。
175 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/29(金) 16:42:52.07 ID:ONVd48g0
「お?お?おいおい。マジかよコリャ。はっはっは。おもしれーわ」
垣根帝督は復活した。

「ほう。それが自然、貴様の体。「未元」か」
アウレオルスは口角を引き上げ、少し笑う。

「ったく、ありがとな」
垣根はアウレオルスにぺこりと礼をする。全裸で。

「あぁ?なンだってンだ?」
動揺して、一瞬全裸の少女を見たときの第一位の様な口ぶりになってしまった垣根。

「服を与えよ」
そういうと在りし日の垣根の服装、茶の華やかなスーツが与えられた。
アウレオルスがちらと滝壺を見る。
どうやら信じられないといった風で目をこすりまくっている。

(え?ひとが冷蔵庫から出てきた?いや冷蔵庫が人にホントになった…!)
魔術と無縁の滝壺が驚くのも無理はない。
科学が信奉されている現代。魔術の類は科学至上主義の学園都市とは全く関係ない存在だ。
この世界では表裏一体なのだが。

話を戻そう。復活した垣根は別段歓迎を受けた訳ではない。アウレオルスはすぐさま命じた。

「私の意思が垣根クンの存在理由を疑わなければ、永遠に生きられるさ」
おいおい、ホントかよ。垣根は驚く。

「あは☆」
一緒に顕現したピンセットを口に咥えながら気持ち悪い笑みを浮かべる垣根。吐きそうだ。

「全く。君がいつも馬鹿の一つ覚えのように私や牛深にディスプレイ越しに自画像をうpしていたからこそできたのだ」
アウレオルスの黄金錬成ははっきりいって彼の想像力にかけられている。
日ごろから在りし日の自分を見せたかったメルヘン男の面目躍如だ。

ふっと笑うとアウレオルスはキッチンに消えていく。そこで一旦後ろを振り返る。

「そうだ」
垣根がぴくりと反応する。

「六時までにここに戻ってこい。風呂の支度がある」
そういうと巨大な鍋に大量の野菜をぶっこむアウレオルス。

「はい」
そういうと垣根は未だに信じられないと言った表情の滝壺に近付く。
「安心しろ。俺の未元物質に常識は通用しねぇ」
全くかっこよくない、本日二度目の決め台詞だった。
176 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/29(金) 16:43:21.95 ID:ONVd48g0
「罰ゲームはなしか…」
わざと聞こえるように言ってるのか?
絹旗はそうおもいつつフレンダの方を振り向く。

「どうしたんですか?フレンダ」
絹旗が足をぶらんぶらんさせながらフレンダの方を向く。

今彼女たちが乗っているのリフトは「あっくあ」へ向かう途中だ。
誰かが降りるのをミスしたのだろうか。しばらくリフトは停止していた。

「いや、ちょっと我慢できなくて」
フレンダはそういうと絹旗にまたも特攻をしかける。

かなりの降雪量だがゴーグルを外している二人。
顔を直接見たいから?

「ちょっ…」
そこから先はフレンダの唇にかき消された。
「…ん…ちゅ…あ…」
その…フレンチキスってやつだ。言わせんな恥ずかしい。

二人が繋がっている唇から小さい水滴。二人の唾液が混じったものがぽとりと二人のつないでいる手の上におちる。

「きぬはた、さいこうにかわいいわけよ」
キスの合間合間に喋るフレンダ。そんな言葉だけでびくっと肩を震わせる絹旗。全くゲレンデで何やってんだか。

(あーだめだなこりゃ、絹旗ヤバイ)
フレンダはすっかり雪の妖精のようないでたちの絹旗に惚れこんでしまったようだ。
(ふれんだぁ…)
対してその妖精さんも綺麗な白人爆破魔にからめ捕られてしまったようで。
177 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/29(金) 16:48:42.36 ID:ONVd48g0
「寒いですね…フレンダ」
いくらボードウェアをきてるといっても寒い。
防寒機能は昨今のウェアはかなり精巧に作られているがやはり体を動かさないと時は寒い。

「もっとよってよ、絹旗」
二人が乗っているリフトが少し横に揺れる。
体重と脚にぶら下がっているボードがスライドすれば少しはリフトも揺れる。
前後に一つずつ開ける間隔しか客がいない。
降雪量からくる視界不良でチャレンジしようとしている人たちが少ないようだ。

肩が触れ合う。
絹旗のウェアについているフードはファー付きだ。
それをかぶると絹旗の目のあたりまですっぽりと覆ってしまう。
ちょっとサイズが大きいのかな?

「もっと絹旗の顔見せて欲しい訳よ」
フレンダがフードを少しだけ上げて、左手で絹旗の顎をくいと上げる。雪が入るとかどうでもいい。
絹旗はされるがままで全く拒否しない。

「結局いやじゃないの?」
首を縦に振る絹旗。よくできました。と右手で頭をなでなでするともう一度、フードをかぶった絹旗の顔へ。
178 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/29(金) 16:49:34.81 ID:ONVd48g0

「じゃ、時間あっから滑るか」
垣根帝督は復活した余韻も冷めやらぬうちに地下の対馬が休んでいるウェア置き場に行く。
垣根もボーダーらしい。まぁ、いかにもチャラそうな冷蔵庫出身だし。
滝壺は取りあえず上でぽかーんとしていた。


「あんた誰?」
対馬が寒そうにストーブの前でコーヒーを飲みながら言う。
「あぁ?俺だよ俺。垣根。あー。「未元」って言った方がわかるか」

ずずずー。コーヒーを啜る対馬。
一拍置いてコーヒーを吹き返す。

「ちょっと!み、「未元」ってあんた、あの冷蔵庫の?人間だったの?私はてっきりただの頭が言い変態キチガイ冷蔵庫だと…」
対馬さん、それは言い過ぎですよ…。

「まぁ、人間になってからもここで働くってことは決めてるんで。よろしくっす」
垣根が頭を垂れて挨拶をする。
(私も魔術師のはしくれだし、何がおきても おかしくない所に身を置いてるから、ありえなくもないか…)
対馬は驚きつつも垣根にウェアを提供する。

「最近のやつは派手なヤツが多い。滑りが本領だろ?シンプルなヤツをたのむ。」
垣根がそう言うと対馬があっちと指を指す。
先にはシンプルなツナギが沢山ハンガーにかかっていた。
179 :需要あんのか?WWコレ [sage saga]:2010/10/29(金) 16:50:11.00 ID:ONVd48g0
「へぇ…かっけぇな…!」
垣根が手に取ったのは上下黒のエアーブラスタの黒のつなぎ。
大方垣根は派手さを好むと思われるが、違う。
彼はその華やかな容姿や能力ゆえに十分目立ちすぎている。
ならばそれを殺さず、むしろ生えさせるには俄然シンプルが冴える。

「ニット帽はどうすんのよ?」
対馬が黒のつなぎに魅了されている垣根に言う。
(…ニット帽か、柄じゃねぇよなぁ…)

「そのこニューエラのニットくれ。あと、このSpyのゴーグル。そこのマフラーはいらね。板は研板に出してもらうわ」
はいはい。と対馬は言われたと通りに出してやる。

(ニューエラでニットかよ)
と突っ込みたくなったがそれは黙っておく対馬。
上にいる休憩中の研板に無線で連絡を入れておく。

「一人で滑るの?」
Spyのゴーグルをぽいっと垣根に投げ、聞く。
あ?と垣根が聞き返す。

「ばーか。今から上で俺の事待ってる女とプラチナムデートだ」

-------------------
☆New垣根のウェア
ツナギ:http://item.rakuten.co.jp/stalefink/10-11airblaster_freedom-suit-blk/
ニット:http://item.rakuten.co.jp/capcollector/neweranc01/
ゴーグル:http://www.spyoptic.jp/snowgoggle/targa2/black.html
さぁ、自己満ですよー。続きますよー。
180 :気にせず投下っ! [sage saga]:2010/10/29(金) 16:52:16.81 ID:ONVd48g0

ここは中級者向けコース「びりあん」。
未だターンがうまくいかない麦野は浜面とマンツーマンレッスンだ。

体育座りをしていると雪がどんどんふっているのがわかる。
秋の日はつるべ落としというが、冬のゲレンデは相当陽の沈みがはやい。秋のそれとよりも早い。夜長だ。

「ねぇ、浜面ってやるときめたらまっすぐだよね」
あ?と振り返る浜面。ボードや車に関して浜面はかなりの知識を有している。
車に関しては犯罪まがいの知識も相当蓄えているが。

「あぁ、だって人生一回きりだからよ。後悔するくらいなら…精いっぱい楽しみたいっておもわね?」
浜面が雪をテキトーに握って遠くに遠投する。音もなく雪は消えていく。

(そういう所、ホントにすごいと思うわ…)
麦野は自分にないものを浜面に見出そうとしていた。
それは能力とかそんな陳腐なものではなく、浜面が他者に与える笑いや、楽しさ、一緒にいるときの心地よさとか。
ぬくもりとか。なんか言葉にできないもの。
181 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/29(金) 16:53:39.33 ID:ONVd48g0

心地よい沈黙が訪れ、力を発揮しようとし始めようとする時、浜面が立ち上がる。
「いこうぜ。まだ時間あるし滑ろう」
先に立ちあがった浜面が自然と麦野に手を伸ばす。

「つかまれよ」
浜面の表情はつけなおしたフェイスマスクとゴーグルとメットで分からない。

麦野もゴーグルをつけてマフラーをしているのでその表情は確認できないけれど。

(ずるいよ…浜面。もう浜面と離れたくなくなっちゃうよ)
麦野は浜面の手をがっちりつかむ。一気に引き起こされる。

「じゃ、お先!」
ズザァー。と雪をかきわけ先行する浜面。
待ち合わせは下のリフト乗り場。

(そーやって自分勝手なんだから…)
一拍遅れて取り残された麦野はすぐ浜面を追う。
182 :深夜また投下します [sage saga]:2010/10/29(金) 16:54:33.30 ID:ONVd48g0
「こねぇ…」

浜面は長くても十二、三分で終了するコース「びりあん」のリフト乗り場まで到着していた。
だが、麦野が一向にこない。

携帯電話を持ってないだろうかと思ったが、今朝あいつは部屋に置いていくのを浜面自身が目撃している。
今ゲレンデで携帯電話を持っているアイテムのメンバーはフレンダと浜面だけ。

フレンダは絹旗と行動している。今はどこにいるか全く分からない。

(フレンダ達に連絡をとってこっちに来てもらうか?)
と思いつつも圏外。

もう十五分待っても来ない。
焦る。
183 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/29(金) 21:31:56.13 ID:1K0nDUgo
(((( ;゚Д゚))) む、むぎのん!?
184 :よーし投下! [sage saga]:2010/10/30(土) 02:43:39.74 ID:Sssy7hE0

(まさか、コースを逸れたとか?)
ありえない話ではない。麦野はゴーグルをつけるのが苦手と言っていた。
滑っている間にゴーグルを外して目が雪に入ってコースから逸れた…十分考えられる話だ。

「俺が行くしかない」
ついさっき、自分だけしか知らない趣味を照れつつも話した麦野。
ネックレスやピアス、好きな石。
浜面はよくわからなかったけれども、楽しそうに話す麦野の表情は子供の様に無邪気で純粋でありながらりりしく美しかった。。

それを数分みれないだけでこの焦り。動揺。不安。何か起きているのではないかという疑念。脱ぐいきれない最悪の事態。

少し雪焼けし、赤く染まった頬で照れ笑いを浮かべる麦野の表情を純粋にかわいいと思った。

そしてそんな麦野とずっと一緒に居たいと思う。それはもう浜面にとっておかしい事ではなかった。

(…麦野も俺の事を、お前に対して抱いている様な気持ちで見ててほしい)

(――麦野の趣味か…二人で石とか買いに行きたいな…)
ちょっと二人でうきうきと通りを歩いている風景をイメージしてにへらと笑う浜面だがその直後に一気に切り替える。

(今行くからな――)

「ただいま当ゲレンデでは降雪量が増え、風も出てきています。気をつけてください」

そんなアナウンスが響く中、浜面はリフトにのり麦野を捜しに行く。
185 :誰かアイテムメンバーのボードウェア絵買いてくれたりしたら嬉しいなぁ [sage saga]:2010/10/30(土) 02:49:33.28 ID:Sssy7hE0

(あっちゃー、完全に見失ったわね。ここどこよ)

麦野は「びりあん」の中腹あたりにいた。
相変わらず吹雪は収まることを知らずに容赦なく麦野を冷気に包みこもうとする。

(浜面の後を追おうとして途中でゴーグルを外したんだっけ)

(そしたらゴーグルがとれて…匍匐前進で取って、また滑ろうとしたら転んじゃって)

(そのままコースアウトギリギリのこの木の前で止まったんだっけ)

「びりあん」の横は傾斜が急な地域。まばらに木々が茂っている。

麦野はボードがもう完全にコースアウトしており、無理やり戻ろうとすれば体ごと傾斜地帯に落ちかねない様な状況だ。
要は完全にコースアウトしてしまうのだ。

(あー、携帯があれば電話出来るのになぁ…)
実際は宿泊している部屋に置いたままなのだが。

麦野は座ったままの状況が苛立たしくなり少し横に移動する。とその時、ずいっと雪が一気に崩れる。
186 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/30(土) 02:55:51.99 ID:Sssy7hE0
「きゃ」

一瞬叫ぶが足を雪に取られて滑落する麦野。
ザザザザとボードが雪を食い止め、なんとか止まるが「びりあん」側からは全く麦野が見えなくなってしまった。

(これって結構ヤバイ?)
ちょっと焦る麦野。時計も置いてきてしまった麦野が今持っているのは可愛いらしいジェイコブの小銭入れと、ネックレ…?

(ネックレスがない…!)

(あれ?ホントにない?)

首にさっと手を回す。手袋に雪が付いているがそんなの関係ねぇ。
浜面に見せたあのネックレスがない。

(どうしよ…ゴーグル取ってずっこけた時に取れたとか…?)

思い返しても確定した場所が思いだせない麦野。
原子崩しでも顕現させてここら一体を焼野原に返してやるかと思ったが辞めておく。
下手に原子崩しを顕現させて水蒸気爆発でも起きれば大惨事になりかねない。

(結構気にいってたのに…自分以外で初めて見せたネックレスなのに…)
187 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/30(土) 03:10:10.67 ID:Sssy7hE0
斜面にかろうじて残ることが出来た麦野はふいに体が動いてさらに下に行かないようにこらえる。

(っていうことは…何もできないってこと?)
そう。助けが来るまで麦野は動けなくなってしまったのだ。
動けばさらに下の方まで滑ってしまい、見つけることが出来なくなってしまう可能性もあった。

(そんな…たまったもんじゃないわ…)
大事にしていたネックレスがない、しかもだんだん暗くなってくるゲレンデ。
風がヒステリー女の叫び声の様だ。気味が悪い。

(ちょっと怖いかも…)

いてもたってもいられなくなる。寒い。こわい。

つい先ほどまで浜面と一緒にいて楽しかったこの空間。静かな世界。

だけど、一人きりだとやっぱりさびしい。

(浜面…きてよ…)

ゲレンデはいよいよ暗くなり始める。
188 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/30(土) 07:57:31.62 ID:Sssy7hE0
浜面は麦野の悲痛な心の叫びを捉える事が出来ず、未だに探していた。

「おーい、麦野どこだー!」
浜面はあらん限りの声を出して探していた。まわりには猛然と降る雪の為、ほとんどボーダーやスキーヤーはいない。

「クッソ…。俺がついついスピード出しちまったせいで…!」
実際もし浜面がいれば、麦野はコースアウトしなくて済んだだろう。
だが起こってしまった事を悔やんでもどうにもならない。

(麦野…。寒いだろうな…絶対見つけるからな…!)

周囲を慎重に探しつつ、麦野の体調を気にかける。
白銀の世界にも関わらず、浜面の体からはびっしょりと嫌な汗が噴出していた。

大きく端から端までターンをしてコース「内」をくまなく探す浜面。

しかし見つかるはずがない。何故なら彼女はコースアウトしてしまったから。
浜面も最初はコースアウトの可能性を懸念していたのだが、「びりあん」の広い横幅を考えてコースアウトは考えにくいと判断。

浜面は「びりあん」内で麦野が怪我をしているのでは、と目星をつけて捜索しているのだった。

(頼む…麦野…無事でいてくれ…!)
189 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga さげ]:2010/10/30(土) 08:13:09.43 ID:Sssy7hE0

(はぁ…ほんっとどうしようかしら)

陽が暮れ始める。といっても情感的なものではない。
周囲がどんどん暗くなってきていることでそれを知る。

(寒いなぁ…あったかいご飯にシャケの塩焼き食べたい…あと、さっきのホットレモン)

麦野のコースアウトした場所の近くのライトが灯っている。
雪雲でグレー一色のゲレンデを明るくしているが、あくまでゲレンデに向いているため、こちらまで明かりは届かない。
こちらには多少の光が漏れてくる程度。

(ホットレモン…飲みたいなぁ…)
麦野の自分だけの現実に痛烈なパンチを加えたホットレモン。その味を昔を懐かしむ様に思い出す。
(浜面に会いたいなぁ…いつもはアホだけど、ここぞと言う時だけに登場する私だけのヒーロー…)

(なーんてね、考えすぎか。何が私だけのヒーロー笑)

自分で浜面の事を「私だけのヒーロー」と言っておきながらも一笑に付す。
ただ、

(どうしても会いたい。浜面に会いたい)

という気持ちはホットレモンを飲んで思い出したあたりから強くなっていく。


「…まづら…」


気付けば声を出していた。恥も外聞もかなぐり捨てて。

「はまづらー!どこにいるの?」
いくらレベル5と言っても声の大きさには影響しない。
多分に同年代と同じ程度の声量しかないそれは、それでも精いっぱい浜面の名前を叫んだ。

(私だけの、ヒーロー…きて…)
190 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/30(土) 08:22:10.53 ID:kU2F/oDO
wktk
191 :あげちゃった。ミス。 [saga sage]:2010/10/30(土) 08:24:25.65 ID:Sssy7hE0
もう何周しただろうか。
「びりあん」内を捜した浜面はたまたま通じたアンテナが立った。
咄嗟に滑っているだろうフレンダと「あうれおるす」で休憩しているであろう滝壺にメールを入れておく。


-------------------

To:フレンダ、滝壺理后

Title:ピンチ

麦野がはぐれた。さがしてるから、助けてくれ。「びりあん」にいる

-------------------

浜面は手袋を取り、凍える手でかちっと送信ボタンを押し、再度麦野を捜す。
送れたかどうかの確認をしている暇はない。
数秒が惜しい。

こうしている今、麦野は凍えて浜面の事を待っているかもしれないのだから。

(リフトの人に聞いたら、そんな人は見てないって言われた。…だから必ず「びりあん」にいるはずなんだ…)

その時だった。

浜面から前に数メートルの所できらっと光る物体を発見した。

(?)

どんなものでも麦野を見つける手がかりになればいい。
浜面はその一心で向かっていく。
192 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/10/30(土) 08:30:46.24 ID:Sssy7hE0
浜面はゲレンデの照明に反射しているそれに、藁にもすがる思いで向かう。

ザザザっと急停止する。

(これは…)

そう、中級者向けコース「びりあん」に到着した時に麦野が浜面に見せた――

「天籃石(てんらんせき)?」
思わず声に出す浜面
そう。ラピスラズリともいう、綺麗な青い石。

浜面の脳裏で麦野が照れつつこのネックレスを見せてくれた時の顔がよみがえる。
そして同時に浜面の思考が告げる。

(絶対に麦野のあの笑顔を絶やしては駄目)

(あぁ、分かってる、絶対に見つける)

浜面が拾った麦野のネックレスには、ほんのりと雪がかぶさっていた。

(まだ落としてそんなに経っていないのかも…?)

手袋越しに大事に包み込む様にそれを持ち上げ、リュックのサイドジッパーの部分に優しくいれてやる。
まわりは度重なる降雪でボーダーの滑った後はうっすらとのこるのみ。

浜面は血まなこになって麦野を見つけるきっかけを捜す。
193 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/10/30(土) 08:39:03.11 ID:Sssy7hE0
まだ、雪はネックレスを覆いかくしていなかった…まだ近くに居るはず…何か手がかりになるもの…)

あった。


ネックレスを拾ったところから程無くして、そのままコースアウト路線に向かっているボードの跡がうっすらと見えた。

(ここをたどるしかねぇ!)

(いてくれ…!)
スルスルと浜面がその跡をそって行く。
ヘンゼルとグレーテルのように叫んだ。

「麦野!」
しばらくしてコース外の斜面から声が返ってくる。
だんだん浜面の不安な顔が期待に変わっていく。

(頼むからいてくれ…!)
祈るような気持ち。

「浜面!」

――聞こえた。ようやくみつけた。か細い小さな声だけど。

ゴーグルを外してゲレンデ側を振り返る麦野。

顔をほころばせて嬉しさに震える学園都市第四位がそこにいた。
194 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/10/30(土) 08:48:07.91 ID:Sssy7hE0
「今行くからな」

浜面がそう言うとビンディングをマッハで外す。
麦野はうん。と一言。

浜面は斜面を下り、手近なところにある木に片手を絡めると麦野に手を伸ばす。

「ほら麦野。つかまれよ」
フェイスマスクを外し、ゴーグルを外した浜面の表情はほっとした表情だった。

「きてくれたんだ」
麦野はそう言うと華奢な腕を伸ばす。
浜面はあぁ。と力強くこたえる。

今日で三度目。

麦野は浜面と手をつないだ。
195 :また後で落とします [saga sage]:2010/10/30(土) 08:58:04.18 ID:Sssy7hE0
麦野はほどなくして浜面に引き上げられた。

彼らはそこからすぐの平坦になってるコースにいた。
長時間経過していたものの、自己申告だが、麦野の体調は表面上は特に問題ないらしい。

こぽぽぽ♪

浜面がホットレモンをよそる。
それをずいっと麦野に渡す。

「ほら、これ飲めよ。体冷えてんだろーよ」
ありがと、といい冷え切った口腔を温めてやる。

体の隅々まで暖かくなるような気がした。

「あー、それにしても浜面がいなかったらどうなる事だったか…」
麦野がいまさら自分の置かれていた環境を思い返す。
死にはしなかっただろうが、体温が低下したり、風をひいたりしたかもしれない。

「一時間半?一時間くらいか、麦野があそこにいた時間」
浜面が時計を見やる。
現在時刻は六時をちょっとすぎていた。

雪は徐々に止みつつあり、そのまま冬の夜の帳が下りようとしている。

「降りるか」
浜面がそういうと麦野は、はっといきなり両手に手を当てる。

「どーしたんだよ…?」
浜面がけだるそうに麦野の方を向く。

「どうしよ…ネックレス落としちゃったんだ…」
196 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/30(土) 09:35:03.35 ID:a4RaQfQo
朝から来てた!乙
197 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/30(土) 09:40:16.92 ID:2M.VFUAO
むぎのんはやっぱり可愛いな
198 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/10/30(土) 11:34:11.80 ID:Sssy7hE0

「あぁ、それなら俺が拾った」
がばっと浜面の方を振り向く麦野。

「ホント?嘘ついたら原子崩しだよ?」
原子崩しはマジ勘弁と、以前学園都市の構想でミンチになった死体をふいに思い出す浜面。

(冗談になってないっすよ。麦野サン)

浜面は麦野の冗談に恐怖しつつも、リュックのサイドジッパーを開ける。

「ホラ」

さっと浜面は麦野にそれを見せる。

「あ、ありがとう」
麦野はほっと肩をなでおろす。
浜面もそんな麦野を見てよかったなと言い、ため息をつく。

麦野にラピスラズリの綺麗な青のネックレスを渡すと浜面はビンディングをつける。

「行こうぜ?麦野」
な?と浜面が麦野の方を向く。うん。とにこりと頷く。

(その笑顔を見たかったんだぜ。俺は)

「よっしゃ行くか」
浜面が立ち上がる。

199 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/10/30(土) 11:40:35.79 ID:Sssy7hE0
「当ゲレンデはナイターご利用のお客様の為に整備車両を入れます」

「当ゲレンデをご利用のボーダー、スキーヤーの方々は滑雪をご遠慮くださ居ますようお願いします」

どこかで聞いたことのある様なクローン少女の声がスピーカー越しに聞こえてくる。
もう六時も犯を回る。遠くに見える「あうれおるす」の煙突排煙ダクトからは黒ろ灰色の煙が散見された。

窓の一つ一つに明かりが灯っている。

グレーな世界で一つだけ場違いな建造物のようにも見えるそれ。
そこへ向かおうとする二人。



今日の午後から天気も愚図ついて、最終的にここまでの降雪量に。
強風も加わり極度の視界不良に陥るのを恐れてゲレンデ利用者はまばら。

それに加わり、ナイター整備のためにどんどん降りていく人たち。
それに取り残された形になった二人は今度こそ名実ともにゲレンデで二人きりになった。
懐かしいヒットチューンもスピーカーから響かない。
なぜか感じる寂しさと、音を減衰させる雪だけが粛々と続く。




「浜面がネックレスつけて?」
200 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/10/30(土) 11:59:13.03 ID:Sssy7hE0
麦野は確かにそう言った。

浜面が麦野の方を見る。あきらかに動揺している。

「い、い、今なんて言った?」
(マジかー!緊張がぁ)
聞こえてたのに。浜面。

「聞こえなかった?」
(つけてよ…浜面)
麦野が立っている浜面に向けてネックレスを出す。

「いや、聞こえてたけど…あー、その、あー!?」
どうやら浜面の頭の中では異性にネックレスを正面から着ける以外に方法がないようだ。

「んんん?だってよ!おい、近いだろ!」
意味不明なことをいう浜面。
そんなことは知りませんとでも言いたげに麦野は右足のビンディングを外したまま浜面の前に来る。

「いや、あんたが何考えてるかわからないけどさ、後ろからつけてよ」
麦野は自分で栗色の髪の毛を持ち上げる。麦野のうなじが露出する。

浜面は緊張していた。
いくら後ろから着けると言っても、女性にネックレスをしてやるなんてこと初めてだから。

201 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/10/30(土) 12:25:57.67 ID:Sssy7hE0
(私だって…緊張してるわよ)

ネックレスとは本来一人で着けられるものである。
それはネックレスを買ったことがある人ならわかるだろう。
いや、勝ったことがない人でもわかる事だ。

(それをアンタに頼んでるんだからなおさらよ…)
緊張しつつも決して自分でつけるとは言いださない。

「…わかったつけるよ」
麦野が浜面にネックレスを渡す。
浜面はグローブ(手袋)を口で外す。

ぽとりと両手のグローブが雪の上に落ちる。
一度立ち上がった浜面が両方のビンディングを外し、あぐらをかく。
(…ヤバイ。麦野のうなじ…綺麗だ…)

「ネックレス乱暴に扱わないでね…?」
麦野の大事なものだし、当たり前のことだ。
そう思いつつも浜面は躊躇した。

なぜなら麦野に後ろから手をまわして、抱きつくようなポージングになってしまうから。

「いいのか?」
浜面の心臓がどきんと強く震えた気がした。

「…うん」
202 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/10/30(土) 12:38:39.45 ID:Sssy7hE0
麦野の胸元と思われるあたりにラピスラズリのネックレスがぽとりと、静かに置かれる。

「あとは固定するだけだな」
そういうと浜面はカチリと麦野のネックレスをつけた。
「うん。ありがとね、浜面」

あとは手を離して、お互いにビンディングを着けて宿に戻るだけ。のはずだが。



「わり、麦野、もうちょっとこうしてていい?」
浜面が麦野にいう。

ネックレスを着けて後ろに浜面がいるだけ。そんな体勢で何になるのか。

「あぐらしてたら足しびれちゃうよ?」
麦野がそういう。かといって足をのばそうとしても…?

麦野を両足で覆う形になってしまう。
でも、そんなのもう気にしない。

「…わかった。足伸ばすぞ…?」
うん、とこちらを振り向かないでこたえる麦野。下を向いているその表情は真っ赤だ。

(浜面、ブーツ大きいなぁ…)
数十センチ先にある浜面のブーツをみてぼんやりとそんなことを考える麦野。
けど、それよりもたまにウェア越しにむずむずと触れるお互いの足。

防寒機能付きだけど、なんか温かく、優しい感じがする。
そんなことを考えるとぽーっと顔が赤みを帯びてくるのが自分でもわかる。

(今日だけで何回赤くなってんだろ…私…)

「む、む、麦野…!」
麦野の思考が途中で遮断される。
とてつもなくきょどっている浜面の声で。

「…なぁに?」
麦野が下を向きながら応える。肩は心なしか震えている。

203 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/10/30(土) 12:51:54.76 ID:Sssy7hE0

「手、まわしていいか?」
浜面がそういうと麦野が答える前に両腕を麦野に回していく。

「…っあ…」
麦野は声にならない声しかだせなかった。
浜面の手は麦野の胸より少し下に。

ぎゅっと抱きしめるでもなく、かといって弱弱しくもないそんな浜面の腕。

「…ん」
自然と手を前に出しているために麦野の背中に浜面の体が当たってしまう。

(浜面…すごい。こんなにどきどきしてるんだ)
麦野は自分の背中越しに伝わる浜面の心臓の音がここまではやいものなのかと驚く。

それと同時に
(いつも口が悪くてわがままな私にどきどきしてくれてるんだ…)
そう思うと驚きよりも嬉しさの方が全然まさる。

「浜面、すごいどきどきしてるよ」
麦野は前を見たままいう。
後ろを振り返ったら目の前に浜面の顔が。

そんあ状況になったら顔から火が出るくらいに真っ赤になりそうだから出来ないけど。

「…あぁ、どきどきしてるな。麦野はどうなんだ?」
私を浜面の方へ振り向かせたいのかな、と一瞬勘ぐる麦野、実際投げやり的な感じで振り向いてもいいと思ったが辞めた。

(緊張して出来ないわ…)

「私もすっごいどきどきしてるよ。多分浜面と同じくらい」
なんかもうこのまま心臓が早くなりすぎて逆に止まるんじゃないかと。

浜面の外したグローブの上にはほんのり雪が積もっている。
204 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/10/30(土) 12:59:57.48 ID:Sssy7hE0

「ねぇ、浜面」
ん?浜面が聞き返す。

「今、ここで私が後ろ向くからさ、浜面は少し前にきてよ。ちょっと乗りだす感じでさ」

今度は浜面はあほみたいに動揺しないし、聞き返すことをしなかった。
それは麦野が精いっぱいの努力をして言った言葉を侮辱する事になると思ったから。

「わかった。麦野後ろ向いて?」

うん。と小さくだけどはっきりと麦野はこたえる。
浜面が麦野を覆っていた足を閉じ、膝立ちになる。そこから少しだけ麦野の右耳の方へ身を乗り出す。

「…ん」



麦野もグローブをとり、二人は手を固くつないだままキスした。
二人きりのゲレンデで。

手にあたる雪の冷たさなど、もうどでもよく感じた。



205 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/10/30(土) 13:13:14.76 ID:Sssy7hE0

どれほどだろうか。
そうう数十時間かもしれないし、数秒かもしれいない。
彼らの時間間隔はキスでうやむやになった。

先に言葉を発したのは浜面だった。

「麦野、大好き」
そんな質問になんの意味があるのか。
キス――好きな人意外と交わす事などないのに。

でも確かめなければ気が済まなかった。
麦野も聞きたかった言葉。
「私も、あんたの事大好きだよ…」

その言葉を聞くと浜面は麦野を後ろからもう一度抱き抱える。

「メッチャ嬉しい」
浜面のその発言に私も!と麦野は満面の笑みでこたえる。



206 :うわ、誤字萎えますね。すいません [saga sage]:2010/10/30(土) 13:19:37.61 ID:Sssy7hE0

「今日からお前は俺の彼女な!麦野!」
えー!と冗悪に悪態をつく麦野だが、一気にガーンと落胆した養生を浮かべる浜面。
冗談が全く通じなかったようだ。

「え?え?ちょっと、嘘よウソ!はーまづらぁ!私は今日から浜面仕上の彼女になりました☆どう?安心した?」
うんうん!と子供のように頷く浜面。

(今の麦野、か、かわええ…)
浜面は自分がこんなにも美人な子と付き合いしていいかどうか一瞬逡巡したが、すぐに打ち消す。

「麦野はもう絶対に手放さない」
浜面が麦野の前で固く誓う。

「もし、浮気したら浜面のXXXに焼き鏝だからね…?」
はい、と真顔で返事をする浜面。

つい先ほどまでの緊迫した空気はどこへやら。

207 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/30(土) 13:23:33.13 ID:i9nBdbg0
あまりにも順調すぎて浜面にとってこの幸せがいつまで続くのか怖いな・・・
208 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/10/30(土) 13:39:09.63 ID:Sssy7hE0
え?俺にシリアスなんて書けませんよ?ww
クソホノボノSSで眠りたまえww


-------------

「超、何してるんですか?」

??????????

なんで絹旗いんの?

「結局、付き合ってた訳?それとも出来立てほやほやって訳?」

フレンダまで。

「むぎの、あまえてたね。でっれでれだね。でるとだうなー」

滝壺サン?

「はっ。広瀬香美さんもびっくりな光景だなぁこりゃ」
いやいや、垣根帝督お前セリフ吹き出し《》じゃねぇの?

「いまさら何隠れようとしてるんですか?麦野」
麦野はビンディングをつけてトンズラしようとしているが、すぐにフレンダにふさがれる。

「結局、説明してもらう訳よ!浜面もね!」
浜面は観念したのかへいへいと悪態をつき、今ここでできる最大限の抵抗を見せた。







「「「「ってか」」」」

滝壺と冷蔵庫以外が同時に垣根の方を見る。

「何であんたいんの?」
完全に死後をさぼった冷蔵庫チャラ男が自然にまぎれこめるわけがなかった。
とりあえず、全員で仲良く「あうれおるす」まで皆で行くことになった。

209 :また後で落とします [saga sage]:2010/10/30(土) 13:40:29.21 ID:Sssy7hE0
一旦休憩。パン食べる。
では。
誤字脱字はマジですまん。脳内補完してくれー
210 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/30(土) 14:25:05.91 ID:OFjDQ9Mo
>>209


IDがっっっっっしぃ、って感じだし

俺もっっっっっっしぃ、って気分だぜ
211 :自分の作品、読みかえすだけでイライラしてきますねw [saga sage]:2010/10/30(土) 15:08:33.26 ID:Sssy7hE0

「おい、大丈夫か?君たち!」

「びりあん」から戻ってきたアイテム御一行。
宿にはカンテラの明かりがともっており、光の強さこそ都市部のそれに負けるが、なぜかほっこりする。

「あうれおるす」前につくと支配人であるアウレオルスが駆け足でやってきた。
ナイターの為に一時的にゲレンデを封鎖して雪を調整する車両を入れる。
そのために、従業員以外にゲレンデに人はいないはずなのだ。
しかし、浜面達が帰ってこないという知らせを聞いたアウレオルスは居てもたってもいられなくなり、宿前で待っていたのだ。

「判然、暖を取った方がいい。闇咲」
アウレオルスがそう呼ぶとハイ。と身なりの綺麗ながっちりした体躯の男が出てくる。

「彼らを暖炉の前にお通ししろ。君たち、早くビンディングを外しなさい」
カチャカチャとビンディングを外すアイテム御一行と冷蔵庫男。
アイテムのメンバーはそのまま中に入る。


「垣根」
アウレオルスが呼ぶ。声のトーンが客に使うそれと全く違う。
垣根はそれを雰囲気で感じ取ったのか、ビクリと体全体が震えた。
な、なんでしょう?と垣根がアウレオルスに聞く。

「はやくあっためといで☆」
風呂焚き当番と調理係の仕事をさぼった垣根にアウレオルスはご立腹。

その時のアウレオルスの怒りの表情はミドリ牧場のおやっさんの兄貴、飯富正虎をほうふつさせた、と垣根は語る。
212 :一つでもコメントがあるといいものですね。ありがとうございます。 [saga sage]:2010/10/30(土) 15:23:27.63 ID:Sssy7hE0
わいわい、がやがや。

ここは「あうれおるす」の食堂。
ボードウェアを着たまま暖を取っていると闇咲がやってきた。

「お食事にされますか?それとも、お風呂にされますか?それとも私にしますか?」
アイテムのメンバーは暖炉前にいるのだろうか?と思うほどにおぞましい寒気が到来する。
地球温暖化と言うのはどうやらデマらしい。

「あ、フツーに風呂入ってから飯で」
浜面がごく普通にスルーし、闇咲に返答する。

「冗談が過ぎましたね、申し訳ございせん」
一瞬つらそうな顔をすると闇咲は食堂の人ゴミに消えていった。

「なんなんだったんだ?」
ちょっと気持ちの悪いアシスタントマネージャーの闇咲さんでした。



213 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/10/30(土) 15:31:33.53 ID:Sssy7hE0
ほのぼのというか日常パートが延々です。それでもいい人は読みましょう。
もうしわけありません。
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適当に体があったまると二階の部屋に戻る浜面達。

部屋のカギをアウレオルスからもらう。
がちゃりと部屋を開けると部屋の中も暖房が利いており暖かくなっていた。

「超風呂に入りたいです。結構汗かいちゃいましたからね」
何だかんだスノボは汗をかくスポーツだ。
絹旗が風呂に入りたいというのも無理はない。

「じゃ、風呂入るか、お前ら女湯だろ?行ってこいよ」
実はこういう時、野郎一人というのはきついものだ。
女性陣は四人もいるが、浜面は一人で露天風呂。

(ま、いいか。旅先で一人で風呂なんて初めてだろうし。前にスノボした時も服部とか居たからなぁ…)

それぞれウェアを着替えて部屋着に着替える。
浜面は当然、据え付けの風呂場でこまごまとお着替えだ。

リビングのほうからはきゃっきゃと女会話が聞こえてくるがきかないことにしよう。

214 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/10/30(土) 15:41:14.88 ID:Sssy7hE0
「風呂行ってからー!」
と浜面が大きな声で告げるとハーイとフレンダの元気な返事が聞こえてきた。

浜面が風呂場に向かう。
男湯には結構人がいるようで声が聞こえてくる。

服を脱ぎ、裸一貫になった浜面はタオルを持ったまま風呂場に向かっていく。


「おや、君か」
「先ほどはすまなかった」
「板はもうメンテしたぞ。根性でな」
「いや、半年ぶりくらいの風呂だわ。たまんねーな」

アウレオルス支配人と闇咲AM(アシスタントマネージャー)と研板、垣根が横一列で体を洗っていた。
まさに漢の風呂という感じがした。

「あ、どもです」
(うわー、ここの人たちと一緒かよ。ちょっと気まずいな…)

浜面がそう思い、アウレオルスたちから逃げようとしたところ、後ろからどしんと何かにぶつかった。

(うわ…壁か?)
後ろを振り返るとそこには背中に登り竜の刺青をし、パンパンに太い両腕を振り、闊歩っする牛深シェフが。

「おう、茶髪坊主!お前、女と来たんだろ?なら今一人だろ?うちらと一緒に漢の話でもしようや!」
よ、よろしくお願いします。と恐る恐る一礼すると垣根の隣のシャワーに失礼する事にした。
215 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/10/30(土) 15:44:35.10 ID:Sssy7hE0
すいません。また中断します。申し訳ないです。

216 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/30(土) 16:04:44.27 ID:Wh.Ccoko
乙!

日常パート、大好物です ^q^
217 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/30(土) 16:43:06.94 ID:a1aXmQAO
ていとくんがいないって事は……ゴクリッ
218 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/30(土) 19:38:00.19 ID:zJVSboAO
いるじゃん
219 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/30(土) 23:18:28.16 ID:Fj9c46AO
乙 でれでれの麦野って普通の女の子って感じで良いよね
220 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/30(土) 23:31:52.55 ID:36o8a.DO



余った滝壺は俺が貰ってくから安心しろ
221 :こんばんわ [saga]:2010/10/31(日) 01:13:31.55 ID:iWbJynM0
すいません。記述に足りない所がありましたね…。
帝蔵庫はいます。

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「判然。なぜ男女比のつりあわんな。なぜそんなに多くの女性を侍らせているのだ」
アウレオルスがシャンプーでオールバックに使う整髪料を洗い落しながら浜面に聞いてきた。
こたえていいのだろうか?適当に場を濁そうとすると垣根が浜面に代わって口を開く。

「はっ。大方暗部で知り合って仲良くなって、それで旅行だろ?」
まぁ、あってる。浜面は垣根さんの言うとおりですよ、と答える。

「黙れ。私は浜面クンに質問しているのだ」
アウレオルスが位置的にほぼ端同士の垣根を見もせずに言う。

「すいません」
垣根は取りあえず平謝り。
アウレオルスは浜面にどうなのだ?と聞く。あ、垣根さんの言うと通りです。と垣根の事もしかりと立てておく。

「へぇ。あの白人の子、朝サバの知識披露してたけど、あれは何だ?お前のサーバントか?」
おやじくさすぎてどうにも出来ないギャグを豪快に話す牛深。ちなみにアウレオルスの左隣だ。

そんな牛深のおやじギャグに闇咲がクスっと笑うのを垣根は見逃さなかった。


(うわぁ…つまんねぇ…)
対して、浜面はおやじギャグをどう返せばいいかわからず、取りあえず体を洗うことに専念する。
222 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/10/31(日) 01:49:18.43 ID:iWbJynM0
牛深のギャグ混じりの質問にこたえようとして焦っていたのだろうか。
浜面はついついホントの事を話してしまう。

「いやいや、違いますよ!ホントあいつらは友達ですって!ただの暗部繋がりっす」
(麦野と付き合ってることは話さないで言いか…ってか暗部?…しまった!)

浜面がやべ!言っちまった!と思った時にはもう遅かった。

「暗部?」
闇咲が浜面に質問する。ちなみにシェービングクリームでひげをそり、なかなかの容姿だ。

「あぁー…あははは。そうですね…主に学園都市の知識の流出を守備したりとかいろいろ…」
学園都市の暗部に少しでも首を突っ込んでほしくない一心で浜面は当たり障りのないように解説する。
だが、漢達はへぇー、とか大変そうだなぁと言うばかり。

垣根に関しては本人がかつて働いていた身なので沈黙を守りつつボディソープで体を洗っている。

(あれ?皆反応が薄い?もっと喰らいついて来るかと思ったんだけど)
浜面が予想以上に皆からの反応が少ないことに違和感を覚えた。

「いやはや、垣根クンももともと暗部の人間だったんだよ」
アウレオルスは以前、不法投棄されている垣根帝督(「未元」)を回収した。
その経緯から彼は学園都市に暗部という未成年を中心に形成された少年・少女の能力者集団があることを知っていた。

また、彼らを駆使し、学園都市の防諜や守備に投じている事も知っていた。


223 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/10/31(日) 01:58:33.01 ID:iWbJynM0
「拾ってくれた事にはホント感謝してるぜ」
垣根はおちゃらけた様な言いぶりだったが、心底うれしかった。
アウレオルスには頭が上がらないだろう。

アウレオルスと垣根のやりとりを体を洗いつつ見ていた浜面はふと疑念に思うことがあった。
それは今、誰が働いているかということだった。

「すいません、支配人たちがここで風呂はいってくつろいでるのはわかるんですが、今は誰が働いてるんですか?」
当然の疑問だった。「あうれおるす」の主力従業員たちが一堂に介してこんな所で汗を流していいのだろうか?

「あぁ、それなら心配いらねぇよ。今は住み込みの御坂が働いてるからなぁ」
背中をまるで削るようにゴリゴリと洗う牛深がそういうと研板が体を流そうとする牛深の代弁をする。

「うちの宿では20人ほど住み込みで働いてるクローン人間がいるんだよ。あいつらはいいぞ。寡黙で根性がある。タフネスだ」
どうやら彼らの間ではその御坂という人物は高評価のようだ。



「全員からだを流した所だし、露天に行かないか?」
闇咲がそういうと一同はざばっと背中を流し、露天風呂へと向かった。
224 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/10/31(日) 02:08:34.55 ID:iWbJynM0
――女湯

「うわー、結局、めちゃくちゃ広い訳よ!」
フレンダが日中のボードの疲れなどそっちの気で湯船のお湯に飛び込む。

「全くあんたら…まずは体洗いなさいよ…ねぇ滝…?」
滝壺がいない。きょろきょろとあたりを見回す麦野。

大浴場の真ん中にぷかりぷかりと浮く滝壺。
人がいないのうをいいことにぷかぷか浮かんでいる。

「わたしは浮けるだけのスペースがあればいいかな…」

「麦野も超入りましょうよ」
絹旗もお湯で背中を流すと生まれたままの姿でそのまま湯船に入っていく。

(あんたら…そんな入り方してたらバカラ軍曹に怒られるわよ…)

幼少期に見たアニメの男のなかの男のセリフを一人思い出す麦野。
まずは背中をお湯で流して、体を洗い終わった後に入浴。

(ま、私だけいっか)

麦野はきゅっきゅと蛇口を回すと勢いよくお湯が出てきた。

(このあとはすっぴんか…浜面、すっぴん嫌いかな…?)
メイク落としを泡立てると肌に優しくすり込んでいくようにして化粧を落としていく。
今日はナチュラルメイクだが、それでもすっぴんとは雲泥の差がある。

(どうしよ…)
麦野はそう思いつつも、化粧を気にするのに疲れたので、一気に洗い落とす。
その後、体を隅々まで洗い、湯船にちゃぽんと浸った。
225 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/10/31(日) 02:39:43.44 ID:iWbJynM0
「むぎのけしょうしなくてもかわいいね」
まるで漂流物のように浮いている滝壺が麦野の事を見て素直に印象を話してくれた。

「ほんと?ありがと!」
麦野は嬉しかったし、安心した。

(よかった…浜面もそう言って欲しいな…)

「ねーねー、麦野ー露天風呂行こうよー!」
フレンダがドでかい声で話す。
露天風呂からはナイター整備が終了したコースがライトアップされ、綺麗に照らし出されていた。

滝壺と絹旗がUボートよろしく、浮上し、体を洗おうとしている時に、フレンダは露天風呂から眺める景色を堪能していた。
雪がしんしんと降り積もっており、ナイターでよく起こるアイスバーン(凍結)もそこまでひどくないと目星をつけるフレンダ。

「フレンダー。お邪魔するわー」
麦野が湯船に体を浸けていく。
バランスが取れた麦野の体は美しい。
豊満な胸、すらっとした脚は細くはないが、少しだけむちっとしたその美脚は華奢な女なんかじゃ到底かなわない、妙な妖艶さがあった。

(うわぁ…麦野結局超色っぽい訳よ…ほれぼれしちゃう!)
フレンダがじろじろ麦野の体を物色しつつ麦野にはなしかける。

「結局、麦野と浜面どっちから告白した訳なの?」
お湯が急に熱湯になった訳でもない。なのに麦野はみるみる内に真っ赤になっていく。





226 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/10/31(日) 03:05:16.43 ID:iWbJynM0
「あ、や、そのえ、と、あっちからかな…」
とぎれとぎれになる麦野。顔は真っ赤。
(あーあーあー麦野。今のあんたはどこにでもいる乙女だよ)

まぁ、レベル5という実力を兼ね備えているのは確かだが、恋愛のレベルは全くないひ、経験値もない麦野。
今日だけで一気に経験値を荒稼ぎし、ものしたような感じ。

「しずり、だいすきだぞ」
フレンダが麦野の隣まで移動してきて耳元でつぶやく。
キャ!と麦野は叫び、ざばんと風呂に深く沈んでいく。トリムダウン。魚雷戦よーい!


麦野はお湯が沸騰するんではないかと思われるくらい真っ赤。

「あら?もしや麦野、浜面にそんな事言われた訳?」
(む、麦野…あんたをここまでにする浜面。大した男って訳よ…!)
フレンダがあてずっぽうに言ったセリフはどうやら的を得ていたようだ。

「…違うよ…」
麦野が記憶を手繰り寄せる。へぇ、そうですかとフレンダはにやにやする。


「確か…『麦野、大好き』だよ///フレンダ」
(なーにのろけてんだか。たいしてかわってねぇーじゃん)

そう思いつつもフレンダは浜面と麦野という異性間カップル初めての誕生を祝福してやる。
「ありがと、フレンダ☆嬉しいよ」
麦野がフレンダに感謝の礼をのべるのもつかの間、フレンダはすぐに次の行動に移す。

「麦野、大好きだ」

フレンダが全く似ていない浜面の声真似をしつつ麦野に歩み寄る。
声が似てようと似てまいと麦野の脳内で全て浜面の声になって再生されるそれは絨毯爆撃の様に麦野の脳に打撃を与えて行く。
227 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/10/31(日) 03:24:38.48 ID:iWbJynM0

今日はここでおしまいです。
もうちょいでれでれシーン精細に書けるように努力します。
228 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 03:28:31.16 ID:BRS1Q/oo

デレた麦のん可愛い
229 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/10/31(日) 12:25:45.00 ID:iWbJynM0
「ふ、ふれんだぁ…もうやめてー…」
フレンダの浜面の物まね(全く似てない)に本日二度目の自分だけの現実が壊れた麦野。
彼女は頭から湯気を出して湯船に沈んでゆく。

暗部関係者をはじめとして、どうやら皆、麦野沈利と言う女性を勘違いしている。
敵を残忍に皆殺しにするとか原子崩しで命乞いする敵を殺害するだとか、そういうのは全て戦場での話。

休日ともなればうきうきと第七学区のデザートめぐりや、外泊許可が下りれば北海道にシャケ釣りに行ったことも。
ただ、滅多に学園都市を出れない人たち(暗部組織の人高レベルの能力者などなど)はその外泊申請にも苦労するのだが。

話を戻そう。

かさねがさねになるが、麦野が残忍なのはあくまで仕事中。
それ以外は趣味に没頭するごく普通の女の子なのだ。
このゲレンデまで一緒にきた諸君なら想像に難くないだろう。


また、麦野のそのとりまきもまた、普通の女の子たちなのである。

「超静かにしてください!」
絹旗が指を口元にあててシー!とやる。
風呂場でミッドウェイ海戦よろしくもみくちゃになってるフレンダと麦野を窒素で形成したビッグウェイブで鎮圧する。

どうやら、男湯の会話が聞こえてくるようだ。


230 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/10/31(日) 12:33:01.19 ID:iWbJynM0
「へぇー…君、根性もあって、彼女もいるんだ」
声の主は研板とかいう根性野郎のようだ。相手は浜面?

「はぁ、まぁ、今日から付き合うことになったんですけど…」
他にも男の声が複数聞こえてくる。
アウレオルスや闇咲の声も聞こえる。豪快に笑うのは牛深シェフか。

「名前はなんていうんだ?」
研板が興味津津と言った風に浜面に聞いている。

研板のこの質問が聞こえた瞬間に麦野はサササッ!と猿飛佐助の様に男湯と女湯の壁まで高速移動する。

(結局、自分の名前が出て自爆するだけじゃん)
フレンダの読みは的確だった。

「えっと…麦野沈利って言います…」
浜面が男集の前で言うと女湯の方からボン!と爆発音が。
麦野は浜面が自分を堂々(?)と自分の名前を言ってくれたことが嬉しく、ついぶっ倒れてしまったそうだ。

231 :あぁ、誤字…。 [saga sage]:2010/10/31(日) 12:44:56.65 ID:iWbJynM0

「おーい、そっちにいるのかぁ?麦野さーん?」
どすの聞いた声で女湯にいる麦野に話しかける牛深。
闇咲があれ?この人こんなによく喋るっけ?と思いつつ、持参してきた日本酒のあつかんをとくとく注ぐ。
闇咲さん、あんまりお酒が弱い牛深さんに飲ませないでください。


「は、ハイ!?」
反対の壁越しからいきなり声をかけられた麦野はビクっと肩を震わせて反応する。

「浜面クンのどこが好きなんだぁ?」
この男、実は下戸だ。全く酒が飲めない。よったらよくしゃべる。
長崎出身いや、九州男児の豪快さは持ち合わせたものの、アルコールは全く駄目らしい。

「え?あ?ここで言わなきゃダメですか?」
麦野は壁越しに話しかけてくる男に話すが全く我関せずだ。

「ダーメダメ!あー?聞こえん!気持ち悪くなったから出る!」
ザバァ!と湯船から出る音がし、牛深は早々と湯船を後にした。
自分が撒いた無茶ぶりという種を放置したまま。

牛深が出るとアウレオルスと闇咲、研板も出ていく。

しばし男湯と女湯で沈黙が訪れる。
雪が綺麗だ。



232 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/10/31(日) 12:51:51.77 ID:iWbJynM0
――女湯

「はぁ、あの牛深って人ヤバイね。めちゃ面白いわ」
フレンダが両足を温泉でばたばた伸ばす。

「にしても、麦野」
フレンダがずいっと湯船に浸かりもう一度温まろうとする麦野に迫る。
「ちゃんとうちらに報告ってわけよ!」

「は…ふぁい…」
(だめだこりゃ、浜面関係の話切り出した瞬間にコレだよ)




「ま、でも取りあえずは…」
フレンダがちらと絹旗とぷかぷか浮いている滝壺の方を向く。

「おめでとうって事よ!」
うんうんと絹旗と滝壺は頷き拍手!
あ、ありがとうと頬を赤くする麦野。

「でも、何であんな超浜面に惚れたんですか?」
絹旗の質問は皆が聞きたい質問だった。

反対側にいる垣根と浜面もササッ!と男湯と女湯の壁際による。







233 :なんか空白多いなすまん [saga sage]:2010/10/31(日) 13:04:44.19 ID:iWbJynM0
「え、いやだってその…」

思い返せば今日一日でいろいろなことあった。

「リフトで手つかまれた時かな…」
麦野は星で煌めく夜空を見上げる。
大気が冷えて、雪が不純物質を地表に押しつけることにより、普段よりもさらに澄んだ白馬の夜空。

ひそひそ話をする為にこじんまりと広い湯船の真ん中に集まるアイテムの女性陣。
滝壺は以前流木の様に漂流しているが、聞き耳をしっかり立てているようだ。

「思い返せば、あの時にはもう浜面かっこいいって思ってたのかな…」

ほうほう。

「でも、一番最初のきっかけはウェア姿の浜面を見た時かな?」

それも多分にデカイ。ボードウェアを着た男と女はかっこよく見えるし、かわいく見えるもの。

「うーん、でもいっちばん最初は受付の時にあんたらが無茶ぶりした時かな…あんた時からちょっとだけ浜面の事意識するようになってたかも」

つい数十時間くらい前の事を思い出す麦野。
付き合うまで時間を重ね、吟味して付き合うカップルとはまた違うが、麦野はそれでもよかった。

(だって、浜面と付き合ったことは決して後悔しないって自信を持って言えることだから…)

(もし、喧嘩しても決して今日浜面が私だけに見せてくれた表情とかいろいろなことを決して忘れないようにしよう)


234 :gdgd進行すいません! [saga sage]:2010/10/31(日) 13:16:26.21 ID:iWbJynM0
麦野が自分に誓う。

「そんでもって…リフトで手を引っ張られて浜面の技みて…お話して…遭難して…」
遭難と言うフレーズでどっと笑うアイテムの面々。

「あんときは死ぬって訳じゃないけど…凍傷?とかそんなんなったらどうしよーとかは思ったわね」

「そこで浜面がきたっていう超構図ですね」

「うん…あんときの浜面は超かっこよかったわね///…ごめん。絹旗、あんたの口癖使ったわ…」
いや超構わないですよ!と絹旗は頭にタオルを乗っけたまま言う。

滝壺さん、漂流状態がやけにながいんですけど…実はツッコミ待ちですか?



――男湯

「俺は幸せもんだな。えーっと未元?」
浜面がヒソヒソ垣根に告げる。

「あぁ、お前はサイコーに幸せもんだ!それに俺には垣根帝督って名前がある。未元でもいいけど」
垣根は浜面に親指をぐっと付きたてる。

235 :こんばんわ [saga]:2010/11/01(月) 01:18:16.60 ID:DH37SHo0
では投下していきます。
相変わらずつまらないけど、読んでくれたら嬉しいぜ。
ほのぼの嫌いな人はちょっと厳しいかも。

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――女湯

「そういえばさ、滝壺は私たちの所に来た時、誰と滑ってたの?まさか復活した垣根のヤロー?」
そう。あたかも自分もアイテムですよ。と言わんばかりに溶け込んでいた垣根。
麦野達が「あうれおるす」に着いた時にはただのAI搭載型冷蔵庫だったはずだが…。

「なんか、復活したみたいだよ。支配人のアウレオルスさんが復活させたみたい」

「もはや、この宿、なんでもありね…」
麦野がいまさらながら垣根の復活劇に驚く。
絹旗やフレンダもただただ驚くばかりだ。

「んで、うちとけちゃって一緒に滑った訳?」
垣根はウェアを対馬から借りると滝壺を連れてそのまま一緒にゲレンデに行ったそうだ。

「うん。かきね、羽根が生えてすごかったよ」
ぷぷwwと笑いだす一同。滝壺だけきょとんとしている。

「滝壺wあんたそれ、超メルヘンじゃないの…!笑える…!」
麦野が腹を抱えて笑う。
第二位は未元物質で何でも構築できると言うが、まさか羽根までお手の物とは…。

「口は悪いけど、いいひとだとおもうよ」
滝壺は短時間ながら知り合った垣根に自分なりの評価をつける。

なんでそう思うんですか?と絹旗は聞き返す。
236 :誰か絵師いたらウェア姿のアイテムを… [saga sage]:2010/11/01(月) 01:20:27.43 ID:DH37SHo0

「空飛んだの」

ハイ?
一同唖然…。

スカイハイ?

いやちがうけど。

「超どういうことですか」
絹旗が理解できないような表情で滝壺を見る。
フレンダも全く分からない訳よ…と言いながらがんばって想像する。

「かきね、わたしのことお姫様だっこして一気に頂上までいったの」
もう駄目だ。完全に名実ともにぶっ飛んでやがる。ってかマジで飛びやがった。

「『リフトに乗るのめんどくさいだろ?キリッ』って言ってわたしのこと乗っけて飛んでくれたよ」
なるほど。
滝壺さんにいい人だと言われたい人は空を飛べばいいんだ!と麦野達は頭の中のメモ帳にメモする事なく、左から右に聞き流した。

「おかげでいっぱいすべれたんだ」
垣根帝督はどうやらメルヘン機能を駆使して滝壺からのポイントアップを狙ったようだ。

全くずるいヤローだ。メルヘン。
237 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 01:26:31.32 ID:DH37SHo0
反対の男湯で聞き耳を立てていた浜面は同じく聞いていた垣根の方を見る。
「お前…何やってんの?」
浜面はおもいっきし馬鹿にした表情で垣根をみる。

天使の羽根を顕現させた理由――そう。
あくまでプラチナムデート笑を滝壺に楽しんでもらいたいと目論む垣根の極秘計画の一端だったのだ。

(クッソ…こいつらにだけはメルヘンとか言われそうだから…絶対にばれたくなかった…!)

(滝壺理后ちゃん専用のプラチナムデート計画(メインプラン)だったのに…あぁ、かわいいよ…!理后ちゃぁぁぁん!)

垣根は頭の中までメルヘン全開のようだ。
238 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 01:29:21.36 ID:DH37SHo0

「なに、お前滝壺に惚れてるの?」
浜面が怪訝な顔持ちに。

「は?わりーか?」

垣根帝督は開き直った。

「いや、お前さ、ただの冷蔵庫だったじゃん。何で滝壺に惹かれてんの?視覚なんかあったの?」
浜面が鬱陶しそうに聞くがそうやら垣根はその質問を待ってたらしい。

「俺の未元物質に常識は通用しねぇ…!」
(きまった完全にきまった)

「ふーん、んで滝壺のどこに惚れたのよ」

え?俺の決め台詞はスルーすか?浜面に華麗にかわされたことはさておき、垣根は滝壺のどこを気にいったか考える。

(ってかオイオイ!俺がまるで滝壺ちゃんの事かわいいって認めてるようなもんじゃねーか!)
と思いつつもしっかり滝壺の事を考える垣根…。

「あのか弱いウサギちゃん系っぽい感じの所かな…」
うん。キメェ。
239 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 01:45:30.54 ID:DH37SHo0

「か弱いウサギちゃん系ねぇ…」
浜面は腕を組んでムムム…と考え込む。

(確かにか弱いウサギちゃん系っちゃあ、そんな感じがするケド…)

「俺の麦野の方が可愛い。絶対にだ」

あーあー始まったよ、出来立てほやほやのかカップルに特有の自慢がさ。

「あ?お前ホントなんなの?滝壺ちゃんにマジで変なことすんならお前もゆるさねぇよ?」

議論に熱が入ってしまったのか?女湯の方で麦野の頭がショートする音がまた聞こえた。
あと、滝壺の史上かつてない程の声量のため息が聞こえてきた。うん。すっごくわざとらしい。
240 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 01:47:02.70 ID:DH37SHo0

「かきねの彼女になったおぼえはないからね。みんな」
おっとりとしかし、滝壺は高らかにアイテム女性陣の前で宣言した。

その数分後。男湯の方からむせび泣くような声が聞こえてきた。






しばらくたって浜面がミニタオルを風呂の石場に向けて絞る。

「そろそろ出るか」

腹も減ってきた頃なので浜面が湯船からでる。

「おーい、先に言ってるぞ?」
と女湯の方に告げると彼女たちは一足先にでたそうで、露天風呂にいるアイテムを目撃した人が壁越しに伝えてくれた。

「さっきの人たち。もうでたよ。ちょっと前に風呂から出た。」
声の主は誰だかわからないが、浜面は壁越しに声の主に礼を言うと滝壺に間接的に振られ、半どざえもん化した垣根を引っ張り風呂から出て言った。
241 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 01:49:06.61 ID:DH37SHo0

「ひゃー、いい湯だったなー」
バスタオルで頭をガシガシ洗う浜面。
裸一貫の男の体格は猫背の癖があり、見た目はひょろい様に見えるが、実際は相当鍛えられている。
麦野が彼のそんな体を見て驚くのはまだまだ先の話。

「おい、垣根?」
浜面が垣根を見ると、まるで死んだ魚の様な目をしているではないか。
どうやら女湯での滝壺の宣言が相当効いたようだ。

「滝壺ちゃんに喜んでもらたい一心で羽根をはやした…想像できるか?」
おとなしくリフト使えよ。

「デジカメや写目でぱしゃぱしゃ見知らぬ客に盗撮されても滝壺ちゃんをゲレンデのコースまで運ぶ俺の気持ちが」

いや、第一、滝壺頼んでねぇじゃん。ってかお前リフト券ないだけじゃん。

浜面は各種ツッコミを脳内で完成させるが、垣根の落胆ぶりに動揺してはばかられた。

(ま…こいつは気分屋っぽいし、どうにでもなるか…元冷蔵庫だし)
訳のわからない理屈を解釈すると浜面はまだ湿った髪の毛のままタオルを頭に巻き、男湯と書かれたのれんをくぐる。
242 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 01:53:14.86 ID:DH37SHo0
「超遅いです!待ったんですよー!浜面!」

「結局、何垣根といちゃいちゃしてるんだか…!麦野もなんか言いなさいよ!」

「は、は、はまづら。お、お風呂、よ、よ、よかったね///」
(緊張しすぎ!私!浜面の湯上り姿…///)

「でれとだうなーむぎのしゅつげん」

浜面達は女性陣を待たせてしまったようだ。
もしかしたら結構長くはいってたのかも。

「あれ?結局垣根はどうしたの?」

フレンダは垣根がいないことに気付いたようで、浜面は如何にして垣根の精神力のゲージがすり減って言ったかを説明してやった。
243 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/01(月) 02:03:58.06 ID:vl28SIAO
もうやめてていとくんのHPはとっきにゼロよ






















いいぞもっとやれ
244 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/11/01(月) 02:37:52.50 ID:DH37SHo0
「ぷwあははw垣根のヤローw復活早々振られたって事かよ!笑えるぜ」

「腐っても第二位…何やってるんですか…うちの滝壺さんに超手を出すなんて…」

「かきねは焦りすぎ。もっと、ともだちから始めるべきだったとおもう」
最終的に滝壺の駄目出しになってしまった。好きな人に駄目だしされるなんて、垣根さん。あんたの恋路は大変そうだ。

「じゃー、そろったし、飯にでも行くか!」

ラフな部屋着姿のアイテムのメンバーは風呂上りでぽかぽかしたまま、食堂に向かっていく。
ちなみに浜面は麦野の顔を見て驚く。

黒ぶちのRayBanのダテメガネをかけた麦野のエロ教師レベルはマックスだったからだ。

(むぎのせんせぇ…)

浜面の顔がにんまりとした表情になり、ゆがむ。キモイ。鼻血がツツーと出そうになるのを必死にこらえる。
この男、バニー以外にも結構なんでも行けそうだ。

「む、麦野!ちょっと!」
浜面が麦野を呼びとめる。

食堂へ向かう絹旗達の少し後ろを歩く浜面が麦野をよぶ。

「ん?なぁに?」

「めがねもにあってるぞ…!」

「えへへ。ありがとう☆」
245 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/11/01(月) 02:42:16.59 ID:DH37SHo0
「えー、本日はあうれおるすにご宿泊していただき、大変恐縮でございますが…」
定型句の様な音声放送が「あうれおるす」の食堂に流れる。

ディナーの時間帯を少し回り、今は20時半ごろ。
食堂にまばらに人が残っているが、他の客と時間をずらしたアイテムのメンバーは畳の広い部屋で夕食を食べることになった。

「超何が出るんでしょうかね」
わくわくを隠せないのか、絹旗は座っている所の前にある皿を箸でドラムのスティックの様に叩く。

「ぎょうぎわるいよ、きぬはた」
滝壺が絹旗にめっ!と優しく頭をたたく。多分全く痛くない。むしろ全然殴ってほしい。

「しゅいましぇん、たきつぼさん」
ちょろっとべろを出して謝る絹旗。





とここでやっと料理が来た。
「お待たせしました。とミサカは鍋をお持ちしました。というか重いんで手伝いやがれとてめぇらに命令します」
なんだぁ…柄の悪い店員だなと思いアイテムのメンバーが振り向く。

そこには着物の上にエプロンをまいた、かつて製薬工場で戦火を交えた学園都市第三位?がいた。
246 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/11/01(月) 02:44:19.83 ID:DH37SHo0

「「「「(超)超電磁砲?」」」」

そう数ヶ月前に彼女らアイテムが激闘を繰り広げた御坂美琴…………とそっくりさんがそこにいた。
浜面は「?」とクエスチョンな感じだが、学園都市第三の通り名は浜面でも知っている様で、おおーとちょっと驚いていた。

「ちょっと超電磁砲あんた何やってんのよ。こんな所で」
麦野は驚くと言うよりも、もはや呆れた。
ここの宿は一体どれほど学園都市関係者を働かせてるんだか…。

「は?冬の定番バイトといったらゲレンデ住み込みでバイトだろーが、と見知らぬお客様に向けて舐め腐った態度を取ってみます」
見知らぬ?何で?つい数ヶ月前に闘った仲(?)じゃないの?

フレンダはちょっと雰囲気が違うと思い、着物エプロン姿の御坂美琴(?)に質問する。
247 :かみなりこわい [saga]:2010/11/01(月) 02:46:23.53 ID:DH37SHo0
「…な、なに、あんた超電磁砲じゃない訳?」
フレンダがびくびくしながら聞く。今日はちゃんと喋れますよフレンダ。

「はい。私はクローンですねクローン。超電磁砲は私のお姉様。つまり、ベースですね」
ふーん。と手のひらをあごの下に置きながら首を振る麦野。

麦野は製薬工場で研究員からぶんどったパソコンから引き出した一方通行が行っている実験内容を思い出した。

(へぇ…これがぷちぷちスライムの一匹ってことねぇ…でも、ここに超電磁砲のクローンがいるってことはもう実験は終わったの?)
多分そうなのだろう。
親族が数千人も殺されているかもしれない女の前でその質問は出来なかった。

しかも、そんな会話をしてるうちにいいにおいの鍋がこぽこぽと音を立てて、出来つつあった。

アイテムのメンバーはそちらに視線を集める。
248 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 02:50:30.32 ID:DH37SHo0
「ではここらへんで失礼します」
ぺこっと頭を下げると御坂美琴のクローンは裏手に消えていった。
そこで支配人のアウレオルスが説明にやってくる。

「彼女はまだ新人でね。名前はいちまんにせんにひゃくにじゅうにと言うらしんだ。変わった名だ」

アウレオルスは西洋人でなんだかんだ言って人の名前の意味まで理解するのは無理だ。
よって、割り切って彼女の名前に疑問を抱かなかったそうだ。

夕飯の説明をはじめる。
「すまない。判然、お昼時とは別の趣向だ。飲み物はなんでも用意しよう。どんどん飲み食いしてくれたまえ」

「この後、ナイターに行くにしても、寝るにしてもさむい。ここは山の上だからな。だから暖をとっていただこうと考え、鍋にした。どうだ?お嬢さん方」
アウレオルスは麦野とフレンダの方を向く。
彼女たちがシャケとサバが大好物なのを知っているのにもかかわらず、それらが入っていない鍋を出して、食べてくれるかどうか不安になったのだろう。

「そんな!全然気にしないでください!サバなんていつでも食べれるんで!」
フレンダが両手を胸の前で降る。
麦野もフレンダの言葉にうんうん頷きくびを振っているので、どーやらなんとかなったみたいだ。

「そうか。では当宿自慢の桜鍋、いただいてみてくれ。では」

ん?桜?
249 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 02:52:13.41 ID:DH37SHo0
アイテムメンバーは一礼する。
飲み物は各自テキトーにソフトドリンク。

アイテムのメンバーはナイターゲレンデを堪能したいと言うことなので今はアルコールは飲まない。

「じゃ、いただきますか!」
おいしそうな鍋!ごくりと生唾を飲み、鍋のふたをあける。

「桜鍋ってなんなんでしょう?」
絹旗が箸を加えつつ頭をかしげる。

「おーう、今日は桜鍋かぁ!アウレオルスも気合はいってんなぁ!」
泣きはらした?様な垣根帝督がやってくる。
彼はどうやら桜鍋を知っているようだ。
なんなんだ?その桜鍋ってやつは。浜面が目を真っ赤にした垣根に聞いてみた。
250 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 02:58:38.97 ID:DH37SHo0

「いいかぁ?桜鍋っていうのいはなぁ…明治時代初期から浅草は吉原とかの女郎街の近辺で興った鍋の事だ」

(ここで俺の未元空間展開…!滝壺は完全に俺の方を見ていない…!!)

未元空間と言っても垣根が持ち前の知識(wikipedia)を発動しベラベラ話すだけなんだけどね。
鍋の知識ある俺かっけぇとでも思っているのだろうか。がんばれ垣根!

「じょろうがい?」
滝壺が疑問符を浮かべる。麦野がふーぞくと一言いう。
ご、ごめんと一言いうと滝壺は黙ってしまった。女郎街の意味を知って照れてるようだ。

(かきね、そういうところに行く前にたべてたのかな…ハァ…ちょっとかっこいいとおもってたのに)
ついでに無い垣根のポイントはもう打ち止め(うちどめ)状態!

しかし、知識を雄弁に話した垣根はドヤ顔。むしろ女郎街の意味を知って照れる滝壺を見てニヤリとする。

(て、照れてるた、滝壺ちゃん…!かわゆす…!)
うんもうお前は絶望しろ垣根。


「桜肉っていうのは超何なんですか?」
絹旗が肉をプニプニつつきながら質問する。
251 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 03:02:39.97 ID:DH37SHo0

「あ、それはきいたことある。うまだよ。おうまさんぱっかぱっか」

滝壺が鍋をじっくり見つめながら話す。
虎視眈眈と肉を狙っているようだ。
またしても体晶を使った時のように開眼している滝壺の瞳。肉はロックオン済みだ。

鍋と言っても普通の鍋とは違い、馬(桜)肉をしゃぶしゃぶのように食べる。
馬肉の他には長ネギ、みずなのみ。至ってシンプルだ。
だし汁にはカツオ、煮干し粉、昆布、干しシイタケが使われている。

「まぁ、生まれは明治の女郎街だけどよ、ここは白馬。長野だ。ってことで長野(信州)流で食べてくれ」
他の地域にも桜鍋はあるらしく、その地域地域ではいろいろな野菜を鍋に放り込むようだ。
しかし、ここ白馬(長野県)はみずなに馬肉の出汁(だし)をからませていただく。

ほうほう、とアイテムメンバーが垣根の披歴するうんちくに聞き入ってる間にちょうどいい感じに桜鍋が出来あがった。

「welcome to 桜鍋」
垣根が意味不明な事をつぶやき、キッチンに消えていった。
252 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 03:04:05.64 ID:DH37SHo0
「あ!あんたが話してる間にできあがったにゃーん☆」

「かきね、ナイス」

「結局、おうまさんをいただくって訳よ!」

「フレンダ超やめてください><」

「よっしゃ、いただきます!(にゃーんぱねぇな…)」


浜面の一声にみんなもいただきます!と元気のいいレスポンス。


「あー!それ私が狙ってた馬ぁ!!」

「ちょっと、それは超私のですよ!」

「うまぁうまぁうまぁってか?」

「ごめんはまづらでもこのエリアに入ってくる事は許せない」

「いっひwいっひwwいっひwww肉はわたさん!」


肉の取り合いが始まった。

宿の外に映る彼女たちの影はすごいたのしそうだ。
253 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 03:06:55.17 ID:DH37SHo0



腹をすかした狼…もといアイテムの手にかかった鍋はなんどか追加の肉を投入し、食べて終了。

「うーん…このまま残すのは忍びない気がしますね…」
絹旗は食べ終わった鍋を見る。鍋の中にはまだ残った出汁が。

「おいおい、そこのちっこいの、お前は雑炊しらねーのかよとあまりの無知にミサカは驚きを隠せません」

どうやら先ほどの御坂12222号がアイテムのメンバーが鍋を食べきったことを確認しにきた。
彼女の手には白米と追加の馬肉、みずな、ねぎを少量をいれたざる型バスケットが。

「超ちっこいってもしかして私ですか?超電磁砲モドキ!」

「うるせーよとまるで没個性の塊のような女を見つつ白米と肉、みずな、ネギを投下します」

ぼとぼとと鍋に落ちていく食材。

「雑炊かぁ…久しぶりねぇ…」

「わたしも」

麦野と滝壺は鍋の後に雑炊をしたことがあるようだ。
絹旗は何が始まるんですか?と鍋とにらめっこ。

「サバ以外でここまで期待するのは初めてって訳よ!」

フレンダに至ってはサバ以外の食事を二色連続で食べたことが彼女内のギネス記録を塗り替える大記録らしい。

もちろん、三度の飯よりサバのスタンスの彼女が鍋を食べることは彼女を知る麦野達にとってみれば信じられないことだ。
254 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 03:07:32.60 ID:DH37SHo0

「しばらくするとご飯が出汁を吸収しますのでご自由に御食べくださいとミサカは告げます」

「おおー!結局めっちゃおいしそう…!」

御坂12222号が去る。
雑炊?あるいは半おじや化したそれは彼女達の食欲をさらに刺激する。


「ゴクリ…おい、これはちょっと反則じゃないのか?」
湯気をモクモク立てる雑炊。
そんなガチ美味しそうな雑炊を眺めるアイテム。

取り分けは俺がやるよ!と浜面がいつものパシリ根性を発動するが…。今回ばっかしはそうは問屋がゆるさないようだ。
255 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 03:08:42.06 ID:DH37SHo0

「浜面はいつから勝手に取り分けする程超出世したんですか?」

(絹旗さん。あなたいつもジョセフではドリンクバーは俺にやらせてたじゃないですか…)

「ごめん。はまつらちょっと調子にのりすぎかな」

(滝壺さん?ちょっと待ってくださいよ…もしかしてあなたたち雑炊は絶対に譲らないっていう魂胆ですか?)

「わ、わ、私は浜面に取り分けてほしい…!!」

(麦野、今だけは無理しなくていい。お前はこの瞬間は俺より雑炊の事が好きそうな顔をしてるぞ)

結局、各自セルフと言うことで皆ゆっくり食べようと紳士協定を締結する。
しかし、絹旗が早く食べてるとか、フレンダが飲み込んでるとか、滝壺が口に入れてる時に次の馬肉を物色してるとか、麦野が浜面にでれすぎとか。
色んな理由でだんだん箸とお玉の動きが速くなり、結局早食い競争の体を晒す羽目に。

なんだかんだで雑炊は完全に彼女たちの滋養に転化した。

ふぅ。一息呼吸を整える。

満面の笑みのアイテム。





「「「「「ごちそうさまでした」」」」」
256 :今日はここまで。おやすみなさい [saga sage]:2010/11/01(月) 03:10:20.18 ID:DH37SHo0

「食べたなぁ!なんだか元気になってきたような…?」

浜面が思いっきり背中を伸ばす。

「ごめん。すこしやすみたい…」
滝壺はおなかをすりすり。

「私おなかがいっぱいで…にゃはは」
フレンダはもうおなかいっぱーいと叫び、横になってしまった。

「超おいしいですけど…ちょっと食べすぎました…!」
あれれ?いつも冷静な絹旗がここまでがっつくほどの桜鍋。それほど美味かったか想像に難くないだろう。

「いやぁ、にしてもホントに元気になった気がするわね」
麦野も浜面の意見に賛成のようだ。

実際、女郎街の近くに桜鍋があった歴史的経緯を考えると簡単に想像できる。
精力だ。馬肉には精力をつける効果があるとされる。

休憩をはさみ、ナイターゲレンデにむけてアイテムが出撃する。
257 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/01(月) 06:36:21.75 ID:rCwxS2AO
おつー。
風呂場のは姫神でいいんだろか
258 :こんばんわ、北海道はゲレンデオープンしましたね [saga sage]:2010/11/01(月) 16:55:25.56 ID:DH37SHo0
>>257
はい。彼女には風呂場の音声のみですが、出演していただきました。
どうしても出たいと言ってはばからないので。

----------------

浜面は部屋着からウェアに着替える。
暖房で温められたインハビタントのウェアはぽかぽかして暖かい。

時計を見ると22時になりそう。
普通はここまで遅い時間、ナイターをやっている所はない。

研板が外に出て雪の調子を調べるとフワフワのパウダー。
滑るにはもってこいの環境だ。

麦野達も着替えている。
ちょっと疲れているように見えるが、多少無理を押してでも滑りたい。

明日には帰らなければいけないのだから。
259 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/01(月) 16:57:28.24 ID:DH37SHo0
「着替えたかー?」
和室で一人着替えた浜面がふすま越しに着替えている女性陣に声をかける。
ちょっと覗きたいけどがまんがまん。

「ちょっとまってー!」
麦野の上ずった声。もうすこしまってみよう。

その時、入口の方からコンコンとノックする音。

「俺だ、俺。垣根帝督」
あぁ、垣根か。冷蔵庫ね。
ドアががちゃりと開くとウェア姿に着替えている垣根が。

「……まさか、お前も行くの?」
浜面に垣根が聞くと、え?行くに決まってんじゃん。と一言。

「ってか滝壺ちゃんと一緒に滑りたいんだよ。わりーか?コラ」
(俺は別にかまわないけど…滝壺本人はどうなんだ?)

滝壺が了承するかどうかはさて置いて、取りあえず垣根を和室に通してやる。
260 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 17:01:04.21 ID:DH37SHo0
「この先で着替えてるぜ。滝壺」

「え?ま、マジ?」

反応するにしてもそっから先は何にも出来ない垣根。どかっと和室の畳に鎮座する。

「おまたせー!あれ?なんでさっきの冷蔵庫さんがここにいる訳?」
ふすまが開くとアイテムの女性メンバーが登場。

「かきね…」
滝壺がぼんやりとした表情で学園都市第二位を見つめる。

「さっきはすいませんでした。羽根使いません。リフト券買いました。一緒に滑ってください」
頭を下げまくる垣根。

「どーしよっかな…うーん」
考える滝壺。いや、だるいだけ?滝壺の答えがどうでるか、アイテムの皆もおお?と興味津津。
みのさんと回答者がミリオネアの様に見つめあう滝壺と垣根。
滝壺がやっと口を開く。


「いいよ」
ッシャァ!垣根さん大喜び。
261 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 17:04:02.23 ID:DH37SHo0
ナイターは全てのコースで営業している訳ではない。
管理の問題やもし事故が起きた時の為等、さまざまな問題があるため、オープンしているコースは「てっら」「じんさく」「あっくあ」のみ。
どれも初心者か中級者向けのコースだ。


「はい。冷蔵庫」
ぽいっとフレンダは持ってきたデジカメを渡すとアイテムの皆で記念撮影。

「よっしゃ、タイマー使うぞー」
垣根はが机やイスにカメラを置いてしっかり映るかどうか確認する。
自分も映ることが出来るようにタイマー設定する。

が、それは不必要な動作だった。

何故なら垣根は映らないから――

「ハ?おい垣根、何映ろうとしてんだコラ」
麦野が鬼の様な形相で垣根をにらむ。

「ヒィッ!?お、俺も映りたいんですけど…」
垣根もいっしょに映りたいらしい。

「だぁめ。まずはアイテムで撮るんだから少し待ってろよ」
麦野は意地でもアイテムだけで記念撮影がしたいようだ。

どうしても映りたいと徹底抗戦する垣根を制しつつ、リビングのソファに麦野は座る。
262 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 17:06:01.90 ID:DH37SHo0

「ったく俺がその気になればお前らなんか(ry」
え?きこえなーい。ワーワー。きゃっきゃ騒ぐアイテム。
(…くそったれ…)

「お。お前らなぁ…俺にはむかう…(ry」

「超はやく撮りましょう」
「結局遅いって訳!はやくー!」
「すべりたいからはやくして」
「おいおい、垣根何言ってんだ?早くとれよ」
「ほらぁん。皆はやくナイター行きたいんだからちゃっちゃっと撮っちゃって!」

(あれ…?俺スクールいた時こんなひどい扱いだったけ?)
過去の栄光にすがる垣根帝督。
だが、そんな事には全く興味がないアイテム。
263 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 17:13:52.32 ID:DH37SHo0

麦野がソファに座っていると皆ソファの横に立つ。

「え?誰もすわらないの?え?」
麦野は自分が何か場違いな事をしたのか不安になる。
ソファは相当大きいので三人くらいなら余裕ですわれる。

「いやいや、そこは、はまづらだよ」

「超空気読めないですね…麦野の彼氏は!」

「なーにぼやっとしてんの浜面!ほら!座る座る!」


「あ、ええと、その…///」

あーあ、またでれとだうなーだ。

「…んで俺って訳ね」
浜面が隣に座ることに。
ちょっとだけ浜面を避けるように移動するが、途端にえー!!というクレームが。

先ほどまで垣根を馬鹿にして悦に浸っていた学園都市第四位は簡単に沈黙した。

「え?や、ちょっと、ね?え?///(めっちゃ…はずかしいよ……)」
原子崩しはここまででれでれだったか?

その通り。麦野はどこにでもいる、恋する純情乙女なのである。






その頃ソファから数メートル離れたところにいるカメラマンこと垣根は涙をこらえていた。
写真に映らせてもらえない、しかもここまで来て痴話げんか…。
(はぁ…冷蔵庫にもどっかな…グス…)
264 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 17:16:20.00 ID:DH37SHo0
「ホラホラ!もっと寄って!結局コレじゃ映らないんじゃないの?肩くっつけて!」

フレンダがおだてるおだてる。

「そうだよ。むぎのはもっとはまづらにほっぺたをくっつけるくらいにちかづかないと」
わー、滝壺さん、そんなこと言ったら麦野さん溶けちゃいますよ…。

「麦野超赤いですね。真っ赤な第四位でれでれだうなぁ笑」

「こ、こうか?フレンダ」
浜面も、でれでれだうなぁ化した麦野をからかってやろうと思い肩を寄せる。
フレンダ達がにやにやしている。

「はまづら調子にのるなぁ…はずかしいよぉ///」

熱でもあるんですか?と聞きたくなるくらいに真っ赤になってしまった麦野。

あのー、麦野さん。何皆の前ででれでれしてるんですか?


「あのー、そんなによらなくても普通に(ry」
「超いいところなんで。すいません。冷蔵庫は少し黙っててください」

垣根提督が先ほどからカメラを構えているのだが、しょっぱなから全員カメラに写っていたようで。
(くそ…会話すらできねぇ…空気の読み手か俺は…いっそガチで冷蔵庫ライフにもどるか…?)
265 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 17:21:06.29 ID:DH37SHo0

二人が肩を組んで(といっても麦野は恐る恐るといった感じ)、ソファの後ろにフレンダ。ソファの左右に絹旗、滝壺。

「はいはい。いくぞー。さん、に、いち、どばーん!」
垣根の雑なカウント。シャッターを押すと光るデジカメ。ぱしゃり。

(どれどれ…お、結構いいかんじじゃん。よし、次は俺も入れて…)

「はい、デジカメ返してー。垣根ー」

「あ」
垣根はデジカメをひょいと取り上げられた。

「んじゃ、皆でナイターにしゅっぱぁつ!」
フレンダの号令でぞろぞろと部屋から出ていくアイテム。それを見送る様な形で取り残された垣根。

「ふっ。ったく仕方ねぇ奴らだな!全くよぉ!」
垣根帝督はあくまで修学旅行のJTBの添乗員の様に写真を撮るだけ。
映ることは許されなかった。哀れ。

「…ヒッグ…グス…待ってくれぇぇ!」



写真の出来は非常にいい感じに仕上がっていたそうだ。
照れつつも、満面の笑みの麦野。
浜面は麦野をいじりつつも恥ずかしさを隠すなんとも言えない表情。
滝壺は相変わらず寝むそうに。
絹旗は片目ウィンクでぴーす。
フレンダは麦野のでれでれぶりを呆れるような表情だ。

垣根も窓の反射でしっかり映っていたようだよかったね!
266 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 17:23:15.55 ID:DH37SHo0
カギを閉めて夜のゲレンデへ。

夜。初心者がいるので皆で同じコースを滑る事に。

「まぁ、再確認だけど、逆エッジは避けるように。パウダースノーだけど、やっぱり夜だからアイスバーンしてる可能性があるからそれも気をつけて」
ただでさえさむいゲレンデ。夜になれば相当冷え込む。
自然とゲレンデの雪は固くなる。アイスバーンになっているのでころんだら相当痛い。

「後は楽しくすべろうぜ!な」

浜面がそういうとリフトへ片方だけビンディングを着けてすらすら滑って行く。
皆もそれについていく。

垣根も気を取り直しリフトに向かう。

「あんまりテンション落ちたらたのしめないよ?」
滝壺がとろーんとした目で言う。しかも垣根と滝壺の身長の高低で自然と上目遣いに。

「あ、理后ちゃん。ごめんごめん。そうだよな。まだうちらのデートは続いてるんだよな」
(だまってればいいひとなのに)
「かえる?」

「すいませんすいません」
体をくねくねさせながら雪に膝をついて謝る第二位。がんばれ。
267 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 17:26:05.82 ID:DH37SHo0
一同は一路、リフトを乗り継ぎ「じんさく」へ。

我先にと飛びだした浜面をフレンダが追いかける。

「麦野、謝るからさ!私も少しでもはやく滑りたいって訳よ!だから浜面とリフトに乗るね><」
べろをぺろりと出すフレンダ。ジーンズのツナギウェアがサイコーにクール。

「ったく。そんなのいちいち聞かないでよ!…もう///」
絹旗とえっちらおっちらと歩きながらリフト乗り場に向かう麦野。

「冷蔵庫と滝壺さん、なんだかんだで仲良く一緒にリフト乗ってますね…」
絹旗が後ろのリフトで談笑している垣根たちをみる。

「なんだかんだ似合ってるような気もしなくはないのよねぇ…」
268 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 17:28:46.43 ID:DH37SHo0
――リフト 浜面とフレンダ

「ねぇ、浜面って結局音楽とか聞いて滑れないの?」

経験者、初心者問わず、結構音楽を聴きながら滑る人はおおい。
ゲレンデのチューンを聞くのも良いが、やっぱ自分のお気に入りの音楽を聞いて滑りたいと言う人もいる。

「あー、聞くぞ。ナイターだけはちょっと聞いて滑ろうかなって思う」

「へぇ、私もなんだけどさ。結局、ボードする時、どーゆー音楽聞いてるのよ?浜面」
アイテムの仕事の時はスピーカーから流れてくるラジオ放送を垂れ流しにしていることがほとんど。
音楽の趣味なんかの話もしたことがないので自然と興味は音楽の話しになった。

「あー、結構疾走感あるやつ聞くなー。ホラ、前にエクストレイルでやってたやつとか。んーでも、hiphopも結構聞くな。フレンダはどうゆう音楽聞いてるんだ?」

浜面はどうやらいろいろな音楽を滑る時にチョイスするそうだ。
フレンダはどうなんだろうか。
269 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 17:33:27.02 ID:DH37SHo0
「あー、私は結局英語わかるじゃない?」

は?そうなの?と浜面が首をかしげる。

「コラ!失礼ねぇ。こう見えても英語はお手の物ってわけ。ってか生まれがそっちだから結構洋楽かな。特に洋hiphopとかロック系?」

あーわかるわ。
と浜面がいうが、何も英語がわかるのではない。
hiphopの様な曲を聴きつつ滑る気がわかそうだ。

270 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 17:35:08.40 ID:DH37SHo0
スキーやスノーボードのクリップを見るとわかるが、疾走感がある音楽もあれば、対照的にhiphopの様なゆっくりとしたトラックが使われているケースも見受けれられる。

「俺はコレとか聞くぞ。結構好きだな。ゲレンデって感じだわ」

浜面がバートンのリュックから無い金はたいて勝ったipodをいじる。

「結構いいセンスしてるじゃない。あんたはスキルアウトのイメージが先行しすぎちゃって重低音系のゴリゴリしたやつ聞いてるイメージがあったけど」
浜面がフレンダに聞かせたのは「TA-KA-YO-U-JI」という曲で如何にもゲレンデらしいトラックから披露される高速ラップ。
その他にも浜面はいくつかお勧めチューンを紹介した。



リフトの両端に設置されている照明は煌々とひかっている。
雪が金色の平野のように見えなくもない。
それに雪の減衰効果でいよいよ静かだ。
271 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 17:37:43.55 ID:DH37SHo0
「えーっと…私はこんな感じかな…」

フレンダはipodシャッフルを取り出す。何が流れてくるかわからない。
イヤホンと着けた瞬間耳が痛くなる。

「おいおい、お前どんだけ爆音なんだよ…耳イカレっぞ」
ドープなサウンドを皮切りに淡々と進んでいく歌。

「コレはPapercut。結構クールでしょ?これ聞きながら滑るとほんっと決まる訳よ…!」

浜面がフレンダの耳を気にするが特に本人は特にこれといって問題はないらしい。
むしろ隔絶された世界の様な雰囲気がまたいいのだとか。

ほー、と浜面は妙に納得する。

音量は調節すればいいとして、今度フレンダにアルバムでも借りてみよう。結構かっこいい。
272 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 17:44:27.35 ID:DH37SHo0
「さて、着いた訳ですが…」
リフトから降りるアイテム+垣根。

「超きれいですねー…」
絹旗がナイターゲレンデの景色に感嘆する。

浜面達がナイター整備の前に「びりあん」で見た日没直前の景色とはまた違う、完全に夜の帳に支配されたゲレンデ。


定期的な間隔毎に配置されている照明は決してボーダーたちが迷わないように道を照らしている。
日中の顔とはまたちがった趣を見せるゲレンデ。
これがまたいいのだ。


「あんま時間はながくねぇけど、何回か滑るか」
浜面がドデカイニクソンの時計を見やり、ウェアの袖の中に戻す。そしてフェイスマスクをきゅっと結ぶ。

「――」

すーっと静かに滑りだす浜面。ナイターゲレンデに自分の軌跡を正確に刻んでいく。
273 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 17:48:09.45 ID:DH37SHo0
「私たちもいきますかね」

絹旗と麦野がビンディングを装着し、パウダースノーのコースを軽快に滑って行く。

「ったく、すこしはまてっての」

垣根がビンディングを着けグローブの調子をチェック。

「なんだ、待っててくれたのか」

垣根がちらと前を見ると、滝壺だけは滑らずに支度を終えるまで待っていた。
滝壺のきょとんとしたその表情とニット帽がまた似合う。
ゲレンデの照明で逆光になり、その表情は確認できないがいつもより大人びて見える滝壺。

「うん。いこ。かきね」

あんがとよ、垣根が一礼するとヒャッホウ!と一言雄たけびを上げ、一気に行く垣根。
ぼーっとした表情の滝壺もしっかりついていく。

(普通にうめぇな、理后ちゃん…ケド)

(俺の未元ターンについてこれっか?)

ちなみにごく普通のカービングターンである。
274 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 17:53:47.39 ID:DH37SHo0
いきなだが、スノーボードの醍醐味は沢山ある。ジャンプやターンetcetc。
突き詰めれば沢山の技がある。
その中でも、器具を使うレールと言う技がある。




(あー、やっぱ良いわねLinikin☆)
フレンダは綺麗なカービング跡をのこしていく。

(ちょっと技やっってみようかな…!にしし☆)

先の方を見ると斜面の途中に階段の手すりに様なものが露出している。

(げっ。ナローレール…いけるかな?)

ナローレールとは言葉通りのせまい幅しかないレールの事だ。
フレンダがそれを見ていることに気付く浜面。

「先行って見学させてもらうぜ。フレンダ!」
先行する浜面。今回のゲレンデで初めて他人のトリックを見ることになる。

(ま、結局は私の自己満プレーな訳だけど…)

そう思いつつも必ず成功させてやると内に秘めるフレンダ。
今まで浜面と近距離で描かれたカービングターンの軌跡がするーっと一本だけ左にそれていった。
275 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 17:56:22.85 ID:DH37SHo0
スノーボードの後ろの部分に重心を移行させるフレンダ。膝を深く曲げる。
はたから見ると後ろに転びそうな人のようにも見えなくもない。

ボードの先端がさっと浮き上がる。

左足をそのままフレンダは引きあげる。

重心はどんどんボードのテール部分へと向かっていることがわかるだろう。

(やっべちょっと力みすぎたかな…?)

フレンダは少し力を抜き、左足のビンディング部分が浮き上がらない程度に先ほどのように重心を移行させる。
276 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 17:58:05.53 ID:DH37SHo0
ここでちょうどタイミング良く階段の手すり(レール)に乗る。

(にししし。ここまで行けばあとはお手のものって訳よ!)

進行方向とは逆方向にギリリリリ!と体をよじる。

摩擦で火花が散る。

一見、フレンダがレールから逆行しているように見えるが違う。

両足の感覚でしっかりとバランスをコントロールしているのだ。
277 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 17:59:10.68 ID:DH37SHo0
下半身がしっかりとバランスを取る作業に没入している時、上半身が御留守になる訳にはいかない。

上半身は進行方向へと向かうため、下半身の重心取りを助け、前に倒しすぎないようにしなければいけない。

下半身と上半身の扱いに長けたフレンダにはこんなの朝飯前。お茶の子さいさいだ。

このまま着地してしまえば、いつものフォーム(左足が前に来る状態)から逆になってフェイキー(右足が前の状態)になる。

(結局、上半身はいつものフォームに戻すために重要って訳よ!)

ひねった上半身の元に戻ろうとする力を利用する。
優しく雪原に着地するフレンダ。

「結局決まったー!」
レールが決まり、フレンダはガッツポーズ。フレンダの北米仕込みの技が炸裂した瞬間だ。
278 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 18:00:55.18 ID:DH37SHo0
「あんまうまくできねぇけど…」

垣根がサーッとジャンプ台へと向かう。相当なスピードだ。

やはりフレンダと同様に重心を後ろに移項し左足を浮き上がらせる直前まで持っていく(オーリー)。

(ダークマタージャァァァンプ!)

視線はジャンプ台のさらに先!着地をイメージする。

(イメージだけで良い!着地の事を考えすぎると受け身になって失敗する!)

(両足を上半身に引き寄せろ!)

(引き寄せたボードに手を添える…!)

そう垣根は決して自分で板をつかみに行くとはしなかった。
ここが失敗する者と成功者のわかれみちだ。
279 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 18:02:41.71 ID:DH37SHo0
なぜかって?
それは自分から手をぐいっと伸ばすと必ずバランスを崩してしまう。

左手を日中の浜面のように高く掲げる。

(ここで前足を伸ばす…!)
さながらゲレンデを征服した様な気分になる垣根。

着地は意識しすぎない。右手を優しく離してやる。

垣根は膝を使い優しく着地する事に成功した。
280 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 18:04:40.26 ID:DH37SHo0
垣根はずばばばばと雪を巻き上げ、ダークマタージャンプ笑を成功させた、派手に止まる。

(どうよ?理后ちゃん!)

ちらとコースの本線を見ると、確かに滝壺はこちらの方を見てくれているのだが、あくまでジャンプ台全体を視界に入れているだけ。
そんな感じがした。

(おいおい、まさか次に誰かいんのか?)

そう。青眼の、金髪ブロンドのフレンダが高速で滑雪してきていたのだ。
281 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 18:06:57.42 ID:DH37SHo0
その表情は確認できないが、仕事をしている時の冷静な表情とさして変わらないだろうとフレンダは自分で思う。
いや、もしかしたらそれ以上かも。

ただ、この後、自分が決めるトリックは初めてだから多少緊張している。

おそらくここでフレンダを見る人がいるとしたら、その人たちは一様に自殺志願者を見るような表情になること間違いなしだ。

だが、あくまでそれはフレンダのタフネスとボードに賭ける情熱を理解していないだけ。

(あー、前に見えるのは垣根かな?飛びたいから、どいてー!)

フレンダのお祈りが通じたのか垣根は横にスライドしていく。
282 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 18:08:27.50 ID:DH37SHo0
どうやら垣根はフレンダのトリックを観戦するそうだ。

(にゃはは。よくみときなさいよ!垣根ぇ!)

どひゅーんとフレンダは飛び上がる。暗部の仕事の時の様なおっちょこちょいなミスは絶対にしない。

(麦野にこんな事言ったら怒られるけど…結局ボードだけはヘマする訳にはいかないのよ!)
283 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 18:12:08.38 ID:DH37SHo0
垣根がとんだそれは綺麗なジャンプだったが、回転はしていない。
ジャンプを成功させるだけでもむしろ、すごい。称賛させてもおかしくない。モテるはず。

しかし、フレンダのそれは垣根のジャンプですら稚技に感じさせる。

フレンダは飛びあがったときに実践したことがあった。それは前に腕をぐっと突き出す所作だ。

この動作をすることにより、後は勝手に体が空中で回る。

(ここで…両膝を上半身に引き寄せる…!)
ヘリコプターのようにフレンダが反回転する。肩の力も抜き、くるっとまわる。

上半身が中途半端に回転しないように気にかけつつ、ゆっくりと(はたからみたら一瞬)ランディングに入る。
まるで飛行機だ。

(問題は…着地…結局フェイキー苦手なのよ…にょわっ!)
フレンダが若干着地バランスを崩す。
284 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 18:14:20.35 ID:DH37SHo0
書きため作業に入ります。またあとで。
いつもこんな駄作を読んでくれる諸兄には頭が上がりません。では。

--------------

「あわわわ!クッソ!結局!このフレンダ様をなめんなぁ!!」

誰もなめてないのだが、気合いの一言ということで。

ふんりゃぁ!と見事にフェイキー状態の着地を成功させた。

「垣根も、フレンダもかっけぇな!」
近くにいたのだろう。はじの木の陰で浜面がデジカメのムービーを撮っていた。
どーだ!浜面ぁ!フレンダがそう言うと、浜面のデジカメにむかってピース。


「次は俺がやるぜ!」
浜面はデジカメをリュックに入れるとリフトに向かって滑りだす。
下で絹旗と麦野も待っている。早く合流してもう一回滑ろう!

うん。みんな仲良し!
285 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/01(月) 20:25:05.82 ID:DH37SHo0
その後も彼らは数回ゲレンデを滑り宿に戻った。

彼らはくったくただった。

「うひゃー。疲れたわ。麦野、平気?」

「ちょっと疲れたわ。眠い」

「結局私も張り切ってつかれちゃったわー。お風呂行ってさっさと寝るわ」

「私も超疲れました。もう筋肉痛が…」

「からだがもう動かない…」
宿の前で朽ち果てそうな勢いのアイテム。

冷蔵庫上がりの垣根も相当疲れている。

「ったく…お前ら疲れすぎ…俺なんざまだまだいけるぜ?」

もちろん嘘。強がりだ。
286 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/01(月) 20:26:11.77 ID:DH37SHo0
がちゃり。
くたくたになった浜面が部屋のカギを開ける。
部屋のカギをあけると部屋のメーキングが済ませてあった。

和室に一つ。
リビングの机をどかして一つ。
畳のもう一つの和室に一つ。

それぞれ三つの大きい布団…。

「これはどーゆー事?」

麦野が布団を指さす。その指はぷるぷる震えている。

「超布団が少ないので、勝手に寝ろbyアウレオルスって書置きがありますね」

「「「「「…」」」」」
287 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 20:28:26.24 ID:DH37SHo0
手短に風呂を済ませて本当に今日一日の疲れを流す。

絹旗とフレンダは風呂からでると早々にダウンしてしまった。
二人は仲良く一つの布団の中で抱き合いながら寝ている。

「こいつら…まさか出来てたんじゃないでしょうね?」
懐疑のまなざしを向ける麦野。

「ふれんだぁ///だいすきですぅ…///」
寝言だが、はっきりと絹旗はそういった。

「むにゃ…結局ーだいすきー」
リビングで未だに粘って起きている四人―滝壺、垣根、麦野、浜面はぼんやりと寝ている絹旗達をみている。

「こいつらほんっとに仲よさそうだな…」
浜面がふぁぁとあくびをする。
288 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 20:32:00.57 ID:DH37SHo0
「うちらもそろそろ寝るか?」
言うはやすし。一体全体、どういう組み合わせで寝ればいいのか?

「ったく、めんどくせぇ。麦野来いよ」
浜面が麦野の手を引っ張る。

「あ…うん///」
麦野は抵抗しないし拒否もしなかった。

「じゃ、わたしはかきねと?」

「わりぃ、従業員用のカギもう閉まっちまって入れないんだわ。申し訳ねぇが、いいか?」

「絶対へんなことしない?」

「わーったわーった。なんもしねぇよ。これならいいだろ?」

ぱぁぁぁ!

光の光芒に消えていく垣根。光がおさまった時には…

垣根は超小さくなっていた。
289 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 20:32:33.00 ID:DH37SHo0
「ていとたん…だ…と?」

浜面はつい声にだしてしまった。
滝壺の足元に小さい手乗りサイズの垣根が。

「これでいいか?」

「か、かわいい…」

滝壺はひょいと垣根を持ち上げると優しく頭をなでなで。

「えらい。かきね」

そういうと部屋着の胸元に垣根をフィットさせると滝壺は浜面達のいないもう一つの和室に向かっていく。

「おやすみなさい、ふたりとも。変なことしちゃだめだよ」

おいおい、おまえこそ垣根に何やってんだよ、という突っ込をしたい衝動を浜面と麦野は必死に抑える。

「じゃぁなーおめぇら」

滝壺の胸元にいるミニ垣根が浜面達に手を振る。


(俺は幸せもんだよ…ありがとう理后ちゃん!)
290 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/01(月) 20:33:48.07 ID:DH37SHo0
大量に買い込んだ酒やつまみも結局一口も食べなかった。
皆疲れており、正確に言えば食べれなかった。

「ねぇ…浜面。今日色んなことあったね」

「あぁ、そうだな」

布団に入って浜面と麦野は二人で上を向きながら話す。

「だって24時間前はまだ私たち学園都市にいるんだよ?」

「そうだな。なんかまだ明日もあるけど、いろいろ濃かったな…」

「俺、正直24時間前は麦野の事すきじゃなかったもん」

「ひどーい。ま、私もなんだけどさ」

「でも、今はこうして付き合ってる。不思議だよな」

「そうねぇ…」

しばし沈黙――。
291 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 20:36:55.84 ID:DH37SHo0
「ねぇ、浜面。今度学園都市に戻ったら、第二十二学区の地下市街いかない?」

「あぁ、いいよ。なんか行きたいところあるのか?」

「石見たいの…その出来れば…おそろいのネックレスとか…時計とか…」

「俺、ネックレス持ってないから欲しいなぁ…いいよ。こんどいこうな」

浜面はそういうと麦野の頭をすりすりなでてやる。

「絶対だよ?」

「うん。絶対行こう。だったら来週の日曜日とかどうだ?」

「いいわよ。……来週の日曜日かぁ。もうその時にはここにはいなのよね…」

「そうだな…」

すこしさびしくなる二人。
292 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/01(月) 20:38:46.41 ID:DH37SHo0
「俺さ…最初は麦野にメチャ嫌われてると思ったんだぜ?最初アイテムに入ってすぐの時にでっかいへましたじゃん」

「あーあれね。あれは気にしてないよ。私がすぐイライラしちゃっただけ。短気は治さないとっておもうんだけど…」

「げー…短気は辞めてくれよ。俺、馬鹿だし。今後一杯お前に迷惑かけるぞ?」

ははと麦野は笑う。そうゲレンデでみせたあの優しい表情だ。

「いいよ。私、浮気以外ならなんでも許すよ…努力するから、浜面も短気な私を捨てないでね…?」

(その表情がやばいんですよ)
「あぁ、絶対捨てない。っていうか捨てるって言い方がおかしいな。お前ものじゃないし。麦野は俺の彼女だ」

「馬鹿。『俺の』って時点で私はあんたの所有物にじゃないの。ま、そんなことどうでもいいわ。ねぇ、浜面」

ん?と浜面は振り向く。
麦野も恥ずかしさをこらえて振り向いていた。

「「///」」

ま、対面ですわ。
293 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/01(月) 20:54:07.85 ID:DH37SHo0
「どーすんだこれ」
まさしくゼロ距離。

「上向いて寝るのはいやだし…その私の癖で遠出する時とか、寝れない時ってなにかに抱きつかなきゃ寝れないのよね…あはは…にゃーん」

「今のにゃーんはちょっとおかしいだろ…」
(ま、かわいいからいいんだけどさ)

「あはは…でさ、いいかな?その…抱きついて///」

麦野はもうこの上なく緊張していた。

「…………いいぞ?その…なんだ…抱きついても…」

「ん。ありがとう」

さっと麦野の腕が浜面の首元に回ってくる。
一気に二人の心拍数が早くなる。
294 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/01(月) 21:17:38.99 ID:DH37SHo0
(…すっげぇ顔近いけど…)
麦野の指の一本一本はすごく綺麗で、ごつごつしている浜面のそれとは全く違う。
細くて、綺麗な指。

浜面は、こんな綺麗な指から原子崩しがでるなんて、殺される敵も幸せだと思った。

「…一杯あそぼうね?」

麦野がささやく。フローラルなトリートメントの香りが浜面の調子を狂わせる。

「さっきも言ったぞ?それ。遊ぶよ。ってかお前の専用アジトどこなん?今度遊び行っていい?」

浜面の鼻のすぐ下に麦野の頭頂部がある。

「えー、部屋汚いしだぁめ。ふたりっきりだと浜面になにされるかわからないにゃん☆」

男を狂わせるトリートメントの香りで理性を失うまいと浜面は必死に理性を保つ。

「今もふたりっきりだぞ?麦野」
(なんてな今はそんなことしないよ)

「え?待ってよ…その…準備とか…滝壺とかに聞かれたら…まずいよ///」

カァァという効果音が聞こえてきそうな位に赤くなる麦野。

「準備ってなんだよ。麦野」
にやりと笑う浜面。
「あ、いや、そのさ…いろいろほら、男の人のとか…」

おろおろする麦野。ジェスチャーを踏まえて必死に説明するその素振りが初々しい。
295 :エロ書けません… [saga]:2010/11/01(月) 21:18:09.66 ID:DH37SHo0

「平気だって。麦野。今日はそんなことしないよ」

消灯しているものの、夜の月明かりでほんのりとお互いの表情が確認できる。

「沈利…」

浜面はえ?なに?と聞き返す。

「麦野はやだ。…二人でいるときは沈利かむぎのんって呼びな……ください…」

途端に恭しくなる麦野。

「わかったわかった。じゃ、むぎのんは違和感があるから…沈利でいいか?」

こくんと頷く。その動作がたまらなくかわいい。
296 :すいません。また書きためます [saga]:2010/11/01(月) 21:18:52.09 ID:DH37SHo0
「無能力者と超能力者のカップルか…学園都市でもうちらくらいじゃねぇの?こんな組み合わせ」

「そうかもね…なんか超電磁砲も片想いっぽいし」

一瞬あの忌々しいクモ女の顔が思い浮かぶがすぐに消す。



――また心地いい沈黙。

「麦野、俺指輪買いたい」

「指輪?」

麦野は上を向く。

(ちけぇ!)

浜面は麦野がいきなり顔をあげてきて驚く。左頸動脈と耳の付け根あたりにちいさいほくろがある。
ぷにっとそこを押す浜面。

「ひゃ」
「ごめんほくろ見つけたからおしちゃった…」

「くすぐったいよぉ。あんまさわっちゃやぁ…」
甘い声を出す麦野。
浜面は麦野のうなじのあたりに指を這わせる。
くすぐったさに耐えきれずにクスっと麦野は笑う。

「その…ペアリング買おうよ。安くてもいいんだ。二人の名前いれてさ…」
「うん。いいよ。浜面とおそろいのもの一杯ほしいな…」
297 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/01(月) 22:32:29.29 ID:9pkNwt2o
甘ーい、砂糖吐きそうだよーw
298 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/01(月) 23:09:49.50 ID:DH37SHo0
>>297
いやー、すんません。シリアスとか全く駄目で、あまあまのむぎのんみたくて。

----------------------

「ねぇ、浜面。おやすみのキスして…?」

「…ぷw」
浜面が笑いだす。

「…なんで笑うのよ」

ちょっとだけムスっとする麦野。

「いや、だってさ…キャラちげぇよお前。いつもははーまづらぁとか言ってるのにさ。ハハハ」

「わるかったわね…」

「いいよいいよ。皆といるときの麦野と俺といる時の麦野で全く違うってのもいいと思う。その…俺だけに見せない顔みたいなさ?」

「し・ず・り」

「わりわり、まだ恥ずかしくてさ…あはは」

恋人の前と友達の前ではだれしもが甘えたりするものだ。
麦野もそれにもれず、浜面に甘えまくる。それでいいのだ。

299 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/01(月) 23:11:21.13 ID:DH37SHo0
学園都市の暗部にいるときには常に皆を引っ張っていく実力者、麦野沈利。
一人の男の前だとただの乙女。

そういう振れ幅があってもいい。





「―――――」

浜面が小さい声で麦野の耳元で何かをささやく。
それは他の人の前では絶対に恥ずかしくて言えない言葉。

「うん。ありがとう。わたしだけのヒーロー☆」

最後に口づけをかわす――。
おやすみ。
300 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/01(月) 23:33:26.32 ID:vl28SIAO
戻ってくるのはええww今日は頑張ってんな
301 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/01(月) 23:39:12.90 ID:DH37SHo0
>>300
がんばります。むぎのんだいすきなんで。

-------------------

ゲレンデの朝は寒い。

浜面と麦野はきゅっと抱き合って仲良くご就寝したようだ。

隣の滝壺達を見てみよう。

滝壺理后はすやすや寝ている。

ではなぜ、彼女の部屋に白い鳥の羽根のようなものがむしられて散らばっているのであろうか。

そして、なぜ、垣根帝督はぼろ雑巾のようにクシャクシャになっているのだろうか?
302 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/01(月) 23:41:50.26 ID:DH37SHo0
顛末はこうだ――

昨夜、滝壺の胸の隙間にフィットしたまま垣根帝督は寝た――はずだった。

「絶対になにもしない」

そういう口約の元、彼女たちは就寝した。
だが、垣根帝督は滝壺理后が寝るとムクリと起きあがり、寝ている間にその唇を奪おうとしたのだ。


(理后ちゃん…!)
唇を近付ける垣根。垣根の唇は滝壺のそれと現状1/10位のサイズしかない。

パチリ。滝壺覚醒。
(お…おい。嘘だろ?)

「うそはだめだよ?」

滝壺は寝たふりをしていたのだ。
(わたしもねたふりしちゃったけどね)

303 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/01(月) 23:42:43.68 ID:DH37SHo0
「かきねのうそつき」
普段は観音様のように温和な滝壺もそればかりは許さないらしい。

「あ…はは…はははははははは…」
ばつがわるそうな表情の垣根。万事休す。

「わらえないよ全然」

滝壺のゴミを見るような目線に垣根はキャンタマがキュンととしたが地獄はその後にきた。

「おぶつはしょうどくだよ?」
304 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/01(月) 23:55:29.45 ID:DH37SHo0
どこかの聖帝様の部下の様なセリフを吐くと滝壺は垣根のメルヘンウィングをむしり取った。

「あああああごめんなさいごめんなさい」

「じゃ、何でちゅうしようとしたの。かきね」

「無防備だったからです。すいませんすいません」

「ちゃんとしたいなら言えばいいのに。かきねは冗談半分でそういうことしようとたり言ったりするからいやだ」

ズーン。垣根落胆。

「ちゃんと真面目な、かきねだったらいいのに…」
滝壺が呟く。垣根の耳にはしっかり聞こえていた。

(…理后ちゃん…そこまで熱心に俺の事を…。メルヘンウィング引きちぎったことはもう気にしないよっ!)
あー、だめだこりゃ。
305 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/01(月) 23:56:13.13 ID:DH37SHo0
垣根提督が半ば失神に近い形で滝壺の部屋でご就寝(ご愁傷?)している時、絹旗達はすやすやと子供のように寝ていた。

ただ、子供とちがうのは思いっきりお互いに抱き合ってること。
彼女たちは女の子同士なのに抱き合っちゃってるのだ。

「「むにゃむにゃ」」

「きぬはたー、だうー」

「ふれんだぁ…おもいですー」

どんな夢をみてるのやら。
306 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/02(火) 00:02:59.64 ID:3Rfy1rI0
むくり。

浜面が起きる。
時計を見ると九時半。チェックアウトは十六時。

「起きろ!おい!沈利!」
浜面が肩をゆする。
朝ごはんの時間があと三十分しかない。

「ううーん…はーまづらぁ…今何時?」

麦野が浜面に抱きついたまま、きょろきょろ時計をさがす。

「九時半だぞ沈利」

「ふぁーい。沈利了解でっす☆」

バタン。二度n(ry――



「沈利っっっ?」
ガバっと起き上がる麦野。

「お、起きたか沈利。おはようーふぁぁ」

(名前でよばれた///)
「…おはよー。ねむいわ」

麦野が眠気眼をこすりつつ、障子をがーっとあけると外は快晴。

昨日から降り続いた雪できらきら光っている光景ははまるで皆をゲレンデに呼んでいるようだ。
307 :ここらで中断 [saga]:2010/11/02(火) 00:06:31.99 ID:3Rfy1rI0
すんません仕事です。
書きためは作るのでまた。

ほのぼの?だらだら?
読んでてあきるよね><スマン

頑張って書ききるんで、最後まで見届けてくれると嬉しいぜ
308 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/02(火) 00:29:13.41 ID:HyQ3goAO
乙まってるぞい
309 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/02(火) 00:45:32.34 ID:WQJcNbgo
ほのぼの?だらだら?

大好物れす(^q^) 乙!!
310 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/02(火) 01:18:31.72 ID:aerFByko
311 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/02(火) 01:24:26.62 ID:SdsHd9co
らぶらぶあまあまが溜まらんね・・・!
312 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/02(火) 01:27:34.45 ID:irnSlkAO
全身の穴といき穴から蜂蜜が吹き出しそうなくらい甘いッス 取りあえず冷蔵庫はもう一回[ピーーー] 氏ねじゃなくて[ピーーー]
313 :こんばんわ。誰か麦野のウェア絵を… [saga]:2010/11/02(火) 17:02:12.11 ID:3Rfy1rI0
「おい、コラ起きろ。お前ら」

浜面にとって学園都市にいるときと同じルーティーンワークが始まる。

それはアイテムメンバーの叩き起し。
浜面の様な男は一見、朝に弱いと思うだろうが、侮るなかれ。
彼はアイテムの雑用係。
彼女たちを起こすのも立派な仕事なのだ。

「おい、絹旗、フレンダ起きろ」

「うーん、けっきょくーあと三時間ー浜面おねがーい」

「絶対駄目」

首から上までしか出していい二人は顔がすごい近い状態ですやすや寝ている。

(これはヤヴァイ)

仲良く抱き合っている様を浜面は目撃する。
デジカメでしっかり撮影した後に、彼女たちを叩き起す。
314 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/02(火) 17:03:42.84 ID:3Rfy1rI0
その後は滝壺が珍しく一人で起き、全員揃ったところで、超眠そうなアイテムの奴らを食堂に連れていく。

朝ごはんはいたってシンプル。
シャケ定食と鯖定食が麦野とフレンダに。

浜面達には納豆定食だ。

垣根は普通のサイズに戻り、キッチンで世話しなく働いている。

「「「「「「いただきます」」」」」」

まだ眠いのか麦野と滝壺はうつらうつらと箸をもちながら目をしぱしぱ。

フレンダはボードモードに完全移行したようで鯖を鬼の様なスピードで食べている。
しかし、小骨をしっかり分けているフレンダ。
315 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga ]:2010/11/02(火) 17:04:16.23 ID:3Rfy1rI0
食堂から窓を見るとすでに滑っているボーダー達がいる。
早朝のゲレンデは滑ると気分が良い。

明るい日差しに反射した雪がきらきら光り、ゲレンデは白銀の世界に変わる。

「うー、さむいわ」
麦野が肩をぶるぶる震わせる。

「今日はコースどうする?最終日だし、上級者コースいかね?」

「超どんな所なんですか?」

上級者コースはリフトを三回乗り継いで行く、「あうれおるす」が管理しているゲレンデの中で最も難しいコースだ。
316 :また誤字…。死にたい [saga]:2010/11/02(火) 17:08:22.90 ID:3Rfy1rI0
「あ、私地図もってるわ。地図地図…」

フレンダが地図を取り出してリフトの乗り継ぎを確認していく。

「えーっと『幻想殺し』と『へぶんきゃんせらぁ』っていうコースがあるわね。ん、なんかコメント書いてあるわ」

「なーんかどっかで聞いたことある名前ねぇ…」

麦野が学園都市の関係者を思い出すが眠くて思い出せない。ってかメンドイ。
317 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/02(火) 17:09:21.81 ID:3Rfy1rI0
「で、コメントは超何なんですか?」
絹旗はお味噌汁をすすり、目玉焼きをぱくり。

「『お前らが滑れるって思っている幻想は45度の傾斜があるここでぶち殺さなきゃいけない』」

無駄にかっこいいふれこみだ。
しかもここだけ名称が漢字だ。結構難易度高いコースなのだろうか。

麦野がもう一つのほうは?とフレンダに聞く。

「『帰ってこれたらほめてあげるね?』」

なんじゃそりゃ。それほどきついのか。
どんなコースなんだろう。取りあえず、相当きつそうな感じはする。
318 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/02(火) 17:11:11.32 ID:3Rfy1rI0
「おはよう。諸君。よく寝れたか?」
レビューを見て、わいわいやいのやいのやってるアイテムのメンバーを見つけてアウレオルスがやってきた。

「すまない。途中から聞いていたが、その二つのコースは難しいぞ。初心者は最初は木の葉で降りた方がいい」

「超転びやすいからですか?」
軽く手を挙げてアウレオルスに絹旗は質問すると、そうだ。と答えが返ってくる。

実際、人間は90度の角度を45度で体感できる。
ゲレンデの上級者コースで下を覗き込んだ時、さながら垂直に近い感覚を抱く。
45度と聞いて大したことない、と思うのは早計に過ぎると言えるだろう。
319 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/02(火) 17:12:03.47 ID:3Rfy1rI0
「ところで…」
アウレオルスはにやと口角をつりあげる。

「仲良く寝れたのかな?」

「あはは…その…」
麦野が気まずそうに反応する。
他の皆もそうだ。


「若気の至りというのも、また良し」

「いや、そんなんじゃ…」
浜面が否定するが、アウレオルスはにこりと笑うと他の客の所に消えていった。
320 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/02(火) 18:07:52.90 ID:3Rfy1rI0
「んで、実際昨日、お二人はどうだったのよ…?」
フレンダがにたにたしながら浜面と麦野をきょろきょろ見る。

「べ、べ、べ、べ、べつつつに」

(麦野。それじゃ、逆に何かあったって言ってるようなもんだぞ…)
浜面が動揺している麦野をなだめる。

「麦野が超でれでれでしたよね」

「………聞いてたの?」
絹旗がぷぷぷwと口に手をあてて笑っている。

そんな絹旗を麦野がぎろりとにらむ。

「きーぬーはーたー!」
鬼の様な表情へ変貌する。いや、これは般若か?
321 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/02(火) 18:08:56.42 ID:3Rfy1rI0

「そんなこわい表情しないでください。いやぁ、にしても、寝むたい中、がんばって寝たふりした甲斐が超ありましたね。フレンダ」
絹旗の発言に、フレンダはうんうんと頷く。

「ペアリングとか超欲しい。ですかぁ…沈利…☆」

「きぬはたぁ!ほんとにあんたってやつは!!」
「///」
にやにや笑う絹旗。
その様を見て、麦野がぷんすか怒る。浜面は恥ずかしさから体を左右にふりビクンビクンしてる。きめぇ。

「結局浜面と一緒に第二十二学区の地下街の宝石販売店にも行こうとしてるのよね?」

「石は…その!えーっと…」
(絶対にこいつらには馬鹿にされるから言いたくなかったのにー…)

フレンダと絹旗のいじりにもはや麦野はカンカンだ。いや、それを通り越してちょっとうる目。
322 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/02(火) 18:11:04.95 ID:3Rfy1rI0
「石って別にそんなに悪い趣味じゃないよな。むしろ、俺はいいと思うぞ。麦野、綺麗な石集めるのが好きなんだよなっ?」

そう言いながら浜面が麦野の頭をなでてやる。

「…うん。石集めるのが好きなの…浜面…はずかしいからあんまりなでないで…///」
(は、はまづら…///)

熱に浮かされた様な麦野。朝一発のでれでれだうなぁだ。


(おーいおーい。麦野さーんさっきまできぬはたぁ!とか怒鳴ってたのはどうした訳?)
(超浜面とお似合いですね…呆れた…!)
(今日の朝ごはんはさとうのかたまり…)
323 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/02(火) 18:12:22.20 ID:3Rfy1rI0

「そんで、フレンダと絹旗は私たちの会話聞いていたの?」

「はい」
「結局ふすま越しから丸聞こえって訳よ」

「ひー…><」
穴があったら入りたい気持ちになる麦野。
そしてそれを見つつ、頭をかき、苦笑いの表情を浮かべる浜面。

「でも、二人とも超お似合いですよ?無能力者と超能力者のカップル」

「あ…ありがとう絹旗」
(麦野がこの調子だとこっちもおかしくなりそうですね…調子が狂います…)

(歯が痛い…虫歯になっちゃたかな…あまいものたべすぎた…)
324 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/02(火) 18:17:22.91 ID:3Rfy1rI0
仕事の時の麦野の雰囲気は何者を寄せ付けない圧倒的な破壊力を誇る原子崩し。
しかし、今この場においては自分自身が真っ赤にめるとだうん☆しているただの年頃の女の子だ。

「結局!ほんとこっちがはきそうなくらいに麦野でれでれしちゃうんだから」

「ん。…ごめん」

(だーかーらー、それが調子狂うって訳よー!)

悶絶するフレンダと絹旗であった。
325 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/02(火) 18:19:29.58 ID:3Rfy1rI0
朝食を食べ終わると時計は十時を少し回った程度。

部屋に戻り、ウェアに着替えるアイテム。
今日は最後の日。
今日の夜にはあのクソみたいな所に戻らなければいけないのだ。

「なーんか戻りたくないわねぇ…」

「そうだね。結局、学園都市とかどうでもよくなるわよね」

着替えながらぼそりとつぶやくのは麦野。
フレンダは結構そアンチ暗部の気質が強く、すきあらば学園都市から逃げてもいいと思っている節がある。

「でも、ここから戻らなかったら多分電話のクソ女が超うるさいですよ」

「まぁまぁ。みんなさ、まいにち仕事があるわけじゃないし、今日はたのしもうよ」

「結局そうなのよね」
絹旗と滝壺のセリフにフレンダが相槌を打ち、この話は終了する。
326 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/02(火) 18:20:48.68 ID:3Rfy1rI0
「でさ、あんたら何で抱き合って寝てたの?」

麦野が絹旗とフレンダを交互に指さし質問する。
今までいじられ続けた麦野の反撃?が始まった。

「え?あぁ、あれね!むぎのー!これには深い事情があってね…!」
「そ、そうですよ!あ、あれは私が寝れなくて…そのつい///」

フレンダがわざとらしく絹旗の頭をなでなで。
絹旗の無理やりフォローは勘の鋭い麦野には通じない。

「へぇ、そうなんだ。じゃ、なんで寝ながら大好きとか言いあってたわよ?」
(ほうら、正体表せやコラ!)

顔を見合わせて冷や汗を流しまくる絹旗とフレンダ。

(超腹をくくるしかないですね)
(結局、そうなりますか…)

「あはは…ちょっといろいろあってさ…」
327 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/02(火) 18:22:09.62 ID:3Rfy1rI0
フレンダと絹旗がとつとつ話し始める。

〜説明中〜

「へぇ、あんたらにそっちの気があったなんてねぇ…」
麦野がフレンダと絹旗に追い詰められていた、先ほどの食堂とは形勢逆転状態。

(ま…でもいいか。それに、こいつらの問題だし)

「その…麦野…怒ってる?」
いや、まだ正式に付き合った訳じゃないのだけれども、フレンダと絹旗はちょっとそーゆー事をしちゃう関係。
怒られると思ったのかもしれない。

友達以上、恋人未満?あやふやな関係。それをここではっきりさせる必要はない。
第一にフレンダと絹旗が自分たちの関係を突き詰める必要がないと考えているならなおさら。

麦野も本人達がそれでいいなら、いいと思う。

「私も浜面とその、付き合ってるから何とも言えないけど、仕事に影響が出ないようにしようね」

「うん」
「はい」


「おお…!」
滝壺が謎の感動に身震いした。
328 :すまん。石外します。また夜に。 [saga]:2010/11/02(火) 18:22:41.21 ID:3Rfy1rI0
「ほら、行こうよ。浜面がまってるわ」
全員が着替えていることを確認するとふすまの扉を開ける。

「よっしゃ、白馬最後まで超堪能しましょう!」

「そうだな…!」
え?男の声?

麦野達が着替えていたリビングで男の声が。
声が聞こえてきたソファの方を見る。
329 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/02(火) 19:11:12.44 ID:irnSlkAO
成る程 石を外してリミッター解除で一気に書くわけですね 乙です
330 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/02(火) 20:22:05.90 ID:smDEJoAO
90年代の少年漫画のような>>1だな
331 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/02(火) 20:29:51.90 ID:HyQ3goAO
多分その石胴着とかなってんだろ?リストとか
332 :こんばんわ [saga]:2010/11/03(水) 01:39:39.05 ID:CDzeBpk0
「あー、いやいや素晴らしい友情だよ。お前ら。ほんとに」
「おいこら。クソ垣根。てめぇいつからいたよ」

ミニ垣根がリビングのソファのあたりでぱちぱちと手を叩いている。

「あ?俺か?ここはとっくに俺の未元物質に支配されてるぜ?えーっと二十分くらい前からかな。未元部室wwなんちってwww」

「「「「…はぁ」」」」
333 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/03(水) 01:40:21.11 ID:CDzeBpk0
麦野の手の先に原子崩しが顕現する。
絹旗も窒素を右手に集約する。
フレンダはツァーリボンバを準備する。
滝壺ははぁ、とため息。

「ちっそ粒子ぼんばぁー」

「メジャハッ!」
334 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/03(水) 01:42:31.93 ID:CDzeBpk0

「ほんと、かきね。次にこんなことしたら嫌いになるからね」

滝壺はウェアのファスナーを首元まで上げているのでミニ垣根は滝壺の胸元のポケットにいる。
彼女たちは今「あうれおるす」の外にあるボード置き場だ。

「滝壺さん、ちょっとだけ胸グリグリしていいですか?そこにいる茶髪冷蔵工場破壊したいんですが」
「きぬはた。がまん。次やったらわたしがちゃんとおこるから」

絹旗ははーいと不貞腐れた感じでボードを能力を利用して片手で掴む。

「おい、おまえら!」
あれは確か研板?
335 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/03(水) 01:45:05.49 ID:CDzeBpk0
「今日が最終日だろ?写真を撮ろう。ほら垣根。テメーも入れてやるからもとのサイズに戻れ」
「へいへい」

研板の呼びかけに垣根が応えるとひょいと滝壺の胸ポケットから出て、大きくなる。
ちなみに研板とは彼の異名だ。本名は削板なのだが、ボードのメンテナンステクを買われ、研板になったのだ。

「あいかわらずおもしれぇ能力だな、垣根冷蔵庫さまは」
「うっせぇな。ほら写真とれや」

「てめぇが言うな」
二人のやり取りを聞いていた浜面がツッコミ、研板にデジカメを渡す。フレンダもその研板にデジカメを手渡した。
336 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/03(水) 01:50:49.57 ID:CDzeBpk0
最後に垣根帝督も入れて浜面とフレンダのデジカメで写真を撮る。

「はい、チーズ!」


ぱしゃぱしゃ。
撮ってみた写真を見ると、みな良い笑顔だ。垣根もにっこりと笑っている。

「うむ。いい感じだ!」
「「「「「「ありがとうございます」」」」」」

記念撮影を済ますと、アイテムは最終日を楽しむべく、リフトに乗り出した。目指すは上級者コース「へぶんきゃんせらぁ」
337 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/03(水) 01:58:06.01 ID:CDzeBpk0
上級者コースと言うのはゲレンデの中でも山の山頂部分から中腹あたりまでで、あとは中級者向けコースに接続したりする。
「へぶんきゃんせらぁ」もそんなコースの一つだ。



「うおー…結構高いところまできたな…」
浜面がリフトから後ろを振り向く。「あうれおるす」は遥かにちいさくちょこんと見えるだけ。
今日は天候もいいのでまぁまぁ人もいる。

「ったく…なんでお前と一緒にリフトのらなきゃいけねぇんだよ。あームカツイたわ」
「うるせぇよ。俺もお前と一緒に乗らなきゃいけねぇ理由が全く分からねぇんだ。まだ半蔵の方がいいわ」

「だれだよ…ソイツ」
「こっちの話だ」

垣根と浜面という珍しい組み合わせ。後ろでは麦野達がきゃっきゃと談笑している。
338 :時系列おかしいかも。許せ [saga]:2010/11/03(水) 02:03:10.54 ID:CDzeBpk0
「あいつら楽しそうだな」
「あぁ。ってかなぁ、理后ちゃんのウェア姿は反則だよ…。チェック柄が生えてらっしゃる」

垣根の様な工場冷蔵チャラ男は一見、華美な子を好みそうだ。
だが、滝壺様なおとなしい子が好みらしい。

「お前、案外滝壺みたいな子が好きなんだな。ホラ、いたじゃん、前に暗部のバンクで見たんだけど、あの赤いドレスきた女」
「あぁ、心理定規な」
「あいつとはどーだったんだよ」
「駄目駄目。あっちが全く興味ないし、今じゃ連絡取れねぇわ。俺がクソの第一位にやられる前までは連絡取れてたんだけどなぁ」

垣根は第一位に敗北後、アレイスターの配下に回収され、垣根の演算体系や思考回路を解析し、後は産廃同然扱いで長野に不法投棄されたのだ。
339 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/03(水) 02:05:21.44 ID:CDzeBpk0
「まー昔の話は言いや。理后ちゃんは良い子だよ。俺のつまらない冗談にも付き合ってくれるしさ」
「あぁ、俺の全く当たらない勘だけど」

浜面は一拍前置きをおいた形で垣根にいう。

「多分滝壺は結構お前の子とお気に入りだぞ」
「まじ?」
(っしゃぁぁぁぁぁ!!)

「うん」

浜面は滝壺がなんだかんだで垣根帝督の事を気にいってると考えていた。
理由はよくわからないが、垣根が準備を終えるまでまってくれたりとか、そうした一面を垣間見ただけだが。

「ま、垣根が本気かどうかしらねぇけど、がんばれ」
「ふーん…あんがとよ。お前もあいつと長く続けよ。あいつ多分メチャクソ短気だぞ」
340 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/03(水) 02:38:29.59 ID:CDzeBpk0
浜面は麦野が短期なのを承知だ。
短気は今後お互いが付き合っていくうえでネックになるだろう。っだが、そんなことで別れる訳にはいかない。

(あいつは短所よりも長所の方がいっぱいあるから…)
「わーってるよ。ほらもう着くぜ、垣根」
「おー」

ザザザザザとワンフット(ビンディングを片方外した状態ででる)で降りていく二人。
341 :眠い。ねます…。 [saga]:2010/11/03(水) 02:39:47.74 ID:CDzeBpk0
垣根たちが話している最中の女リフト

「浜面達なんだかんだで仲よさそうに?話してるじゃない」

「そうですね。楽しそうにしてるかどうかは分からないけど、会話は普通にしてる感じですね」

麦野が前の方をぼんやりみながら絹旗に言う。
足をブラブラしながら絹旗は上を見る。

「結構高いですね…斜度45度…ゴクリ」
「うわー、あそこ見て、スキーヤー。がんばれー…うわぁ転んだよ板外れちゃったじゃない」

麦野たちが「へぶんきゃんせらぁ」のコースをリフトから見物している。
斜面が始まる所には何人か人がいて、滑りだしているが、いきなり皆、それなりに加減しているように見えた。
342 :今日のラスト。明日また落とします。 [saga]:2010/11/03(水) 02:41:15.21 ID:CDzeBpk0
「こんな所で逆エッジしたら絶対やばいですよね…ずーっと転がって行きそうですよ…」

「えぇ。ここで普通のターンやったらあっという間にスピードでそう…」

急斜面で転倒すると、例え後ろ向きに転んだとしても板がぎゃりぎゃりと雪を削り、一気にすべりおちてしまう事が多々ある。
しかし、大きくジグザグターンをしておりるとゆっくり下りていく形になるので、自分の力のさじ加減が非常に重要だ。

「ね、さっきのあんたらのはなしなんだけど…」

麦野がそういうとびくりと肩を震わせる絹旗。
よほど聞かれたくないのかな。
343 :こんばんわ [saga]:2010/11/03(水) 23:23:17.15 ID:CDzeBpk0
「…は、はい。なんですか?」

「昨日、二人で行動してるときにキスとかしたりしちゃったの?フレンダの事だから、見境なしにあんたを襲ったところが簡単に想像出来ちゃうのよ…」

麦野は当てずっぽうで言ったのだが、まさか自分の言ってることがあたってるなんて考えていない。
絹旗も別に隠している訳ではないが、いざ言うとなると恥ずかしい。

だって女の子同士でキスしちゃったんだから。

絹旗はニット帽をかぶりなおし、ふぅと一言白い息を吐き、答える。

「まぁ、そんな所です。超、私もフレンダのキスにとろーんと来てしまい、わるのりしちゃいました。あはは…」
「全くあんたら…」

麦野と絹旗は苦笑い。人前で、でれまくった手前何か言える訳ではないが。
そんなこんなで麦野達もリフトから降りる。

「超行きますか…」
「えぇ」

彼女たちはリフトから降りるのが苦手だ。

「うわわわ!こら絹旗、こっちよるな!」
「む、麦野こそ!超こっちこないでくだしゃい!!」

どっしーん。
ワンフットで降りようとした麦野と絹旗は大失敗。

本日一番最初にこけたのは麦野と絹旗だった。
344 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/03(水) 23:29:15.46 ID:CDzeBpk0
一方、滝壺とフレンダのリフト

「どう?滝壺、昨日のナイターでちょっろと見る限りだと、結構うまく滑れてたよーに見えたけど」

「うーん、急じゃない斜面だと結構ターン出来る自信はあるんだけど、あれじゃあちょっと…」
滝壺がグローブ越しに上級者向けコース「へぶんきゃんせらぁ」を指す。

スキーヤーはところどころでしっかり止まり、斜面を慎重に降りている。
たまに見事にコブを一つずつ潰して、制覇していく猛者がいるが、そんな高等技術は滝壺には出来ない。

「まー、上級者コースは無理しなくてもいいと思う訳よ…!結局、無理して怪我したらパーなんだしさ…!」

「なんかここで滑る前にこわいって思うのがくやしい。でもこわい…」

派手に転げて十秒程沈黙しているボーダー。
名も知らぬボーダーはまたむくりと立ち上がり滑って行く、その勇気に滝壺は拍手を送りたくなった。

「おー、あの人すごい。がんばれー」

滝壺は見知らぬ人がぼこぼことコブを征服していく様を見てエールを送っている。
リフトの上からエールを送られているとも知らずにどんどんスキーヤーやボーダーたちが滑って行く。
345 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/03(水) 23:35:26.22 ID:CDzeBpk0
「……ねぇ、フレンダ。かきねって私のこと本気ですきなのかな」
「いきなり何よ?滝壺。あの冷蔵工場長はやめときなって。ははは」

フレンダは冗談半分に返したのだが、きゅっとフレンダのジーンズ調のウェアを引っ張る。
「フレンダ」

「え?マジな訳?」
「うん」

真面目な表情だった。いつも通りの眠そうな目。けれど、真剣なまなざし。

「私、恋愛下手だし、あんまりまだかきねの事しらないけれど、ちょっと気になる」
「そっかぁ…」
(マジで垣根かーい…)

フレンダは垣根の事をよく知らないが、昨日から続く言動が本気だとは思えなかった。
滝壺もおそらくはそうだろう。

ただ、垣根があそこまで露骨に理后ちゃんや、デート笑とかぬかしているので、滝壺自身もちょっぴり気になり始めていたのだ。
346 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/03(水) 23:38:42.04 ID:CDzeBpk0
「垣根の事きになるなら、結局もっと見極めなきゃ。ここで垣根とどうなるかなんてきめなきゃいけない!って訳じゃないしさ」

「うん。ともだちからはじめてみようかな」

「そうだね。なんだったらアウレオルス支配人に交渉してお持ち帰りー!はうー!ってね…あはは」

フレンダがかつてはまった同人ゲームの某ヒロインを真似し苦笑している最中、滝壺は沈思黙考。

(え?まさかとっとこ冷蔵庫ていとくんをマジで持ち帰りしようとしている?)

「うーん。ミニていとくんは欲しいかも…」

滝壺の中でミニていとくんはお気に入りらしいが、一般サイズはまだ受け入れ難いようだ。

「ほら、月並みなことしかいえないけどさ、楽しもうよね?滝壺。ほら、いくよ!」
「うん!」

二人はリフトを下りていく。
皆が手を振って待っていた。
347 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/03(水) 23:45:58.45 ID:CDzeBpk0
ゲレンデの頂上。
綺麗だ。

青い空、白銀の斜面、澄んだ空気、遠近に散在するボーダー、スキーヤー。
それらが一緒くたになって一つの景観を構成する。
さらにそれを音割れスピーカーが盛りたてる。

「きれい」
自然と滝壺が口を開く。

「昨日のグレイな景色もなんか風情があったけど、こっちもいいわね」

「超きれいです」

「なんども悪いんだけど、結局、皆で写真撮らない?斜面がわを背景にしてさ」

「いいねぇ」

浜面はそういうと適当な所にビンディングを外して立つ。
ちょうど立ち寄ったスキーヤーに声をかけ、写真をとってもらう。
348 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/04(木) 00:00:00.92 ID:EvtjX0E0
「ありがとうございます」

フレンダがカメラをスキーヤーに返してもらい写り具合を見てみる。

(皆良い笑顔って訳よ。帰って現像したいわね)

「じゃ、行きますか。俺ばっか昨日今日で仕切っちゃてるけど、無理すんなよ。ここ結構俺もきつい」

「「「はーい」」」

絹旗、滝壺、麦野はそう返事をしつつ、斜面を見る。

(超垂直に近いですね…)
(こ、こわい…)
(にゃ、にゃーん…)

取りあえず、三人とも身震い。
三人は思った。こんな所滑れるわけねぇ。

「じゃ、私行くわ」

フレンダがゴーグルをつけ、勢いよく発進する。
ブルーブラッドのジーンズウェアと水玉チェックのウェアの少女が斜面に消えていく。

ザザザ、ザザザ。

見事に切り返していくフレンダ。しかも相当速いぞ。
絹旗達はフレンダのその冷静沈着ぶりに下をまいた。
349 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/04(木) 00:00:42.61 ID:EvtjX0E0

「俺も行くわ」

今度は上下黒のつなぎを着た垣根は出陣。
垣根はフレンダと違って若干大ぶりなターン。やはり、傾斜でカービングをするのは相当気合いのいる行為なのだ。

「あ、あそこでフレンダが待機してますね。デジカメとってますよ><」

絹旗が指をさすと「へぶんきゃんせらぁ」の中腹でデジカメを出して皆をまっている。

「ムービー取ってるからぁ!」

フレンダの大きい声はまだ滑りだしていない絹旗達にも聞こえたようで、浜面がりょうかーいと言い返す。

(そんな…まともに滑れないのに…)
(フレンダ、そんなに私たちの無様な様をみたいか…!)

「ほーら!いつまでぼさっとしてんのよ!麦野!滝壺!はーやーく!」

つい先ほどまで滝壺に無理しなくていいよと言っていたフレンダ。今は早く降りてこいとせかす。

(にしし、別に転んだって死にゃしないって訳よ!)

「じゃ、自分が超行きましょう」

絹旗がビンディングを着け斜面に向けて滑りだす。
麦野と滝壺が絹旗の姿をみて後ろから少し距離をおいて滑りだした。
350 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/04(木) 00:05:44.92 ID:EvtjX0E0
(あわわわ…これは本当にやばいですね…)

絹旗は垣根よりもずいぶん大ぶりなターンで行くが、ターンの切り返しの時に躊躇してしまった。
ターンが出来ないとずーっとまっすぐ行き、惰性でターンする羽目に。

「おーい、フレンダァ!どこまで行くんだよ!」

フレンダの隣でゴーグルを外した垣根が叫ぶ。

(クッソ…あの工場長…!超わかってるんですが…!右に切り返しするのにこの斜度はちょっと…)

一方、麦野と滝壺も同様にターン出来ないでいた。

(これはこわい…)

滝壺も右ターンをするときにするする加速し、歯止めが効きそうにないと考え、ゆーっくりと大周りに。
結局ターンするときは一気にターンをする覚悟を固めなければいけないのだが。
351 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/04(木) 00:37:04.49 ID:EvtjX0E0
「あーあー」

フレンダの目の前までとろとろやってくる滝壺と麦野。
ちょうど彼女の直前で止まる。

「結局、上級者コースはまだ早かったかな」

はぁとため息をつきながら両手をふるフレンダ。
前には雪が大量にくっついた滝壺と麦野が。

「すいません。超おくれました」
「絹旗、おつかれさん」
「なんで超浜面がもういるんですか?」

絹旗がとろとろと斜面を傾斜している数分の間に浜面は最後尾を務めながらも、絹旗より先に戻ってきていたのだ。

「うー。くやしいです」

「じゃ、競争すっか?」

「超遠慮しておきます。絶対に負けますから」

「はいよー」

絹旗が丁重に浜面の勝負依頼を断る。
その会話がちょうど終わるとフレンダが下のコースまで一気に下るルートを行こうといい、一同賛成。
そして、本日の「あうれおるす」最難関コースである「幻想殺し」に挑もうと提案した。
352 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/04(木) 00:42:48.92 ID:NZyc56AO
アイテムカワイイよアイテム
353 :仕事へ行きます。 [saga]:2010/11/04(木) 00:46:08.04 ID:EvtjX0E0
今日はここまで。読者の方々。
いつも読んで下さいまして、感謝であります。
日常ほのぼのが好きと言ってくれる方が以前いましたが、拙稿についてそう言ってもらえるとうれしい限りです。
では明日の夜にお会いしましょう。
----------

その後、一同は下まで降り、上級者コースを目指すことに。

リフト乗り場に全員が到着すると適当にリフトに乗り始める。
リフト券はもちろんゲレンデに行く前に買ったデスレーベルのパスケース。


「のろうぜ、理后ちゃん」

「うん。いいよ」
(また理后ちゃんてよんだ…)

垣根は滝壺を一緒にリフトに乗るように誘うと、滝壺もOKのよう。

「じゃ、頂上で」

垣根がそう言うとリフトは勢いよく発信していく。
頂上まで行くリフトはかなり所要時間を要す様で20分から30分ほどかかるようだ。
むぅ。長い。
354 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/04(木) 00:58:50.27 ID:ifL9Ho6o
乙!!

かきねには決めるトコ決めてもらいたいね!
355 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/04(木) 01:01:35.55 ID:NZyc56AO
おつん
356 :こんばんわ  [saga]:2010/11/04(木) 22:13:37.11 ID:EvtjX0E0
垣根達のリフトの次に麦野浜面、フレンダ絹旗という順番で乗る。
みんなどういう会話をしているのだろうか?

それぞれ見てみよう。
※リフトに乗る順番と出てくる人の順番違います。
では、みなさん、リフトに乗りましょうか。

-------------

「さっきは派手にこけてたな、麦野。怪我の方は平気か?」

「逆エッジやっちゃったからかなり痛かったけど、一時的なものだったみたい。だから平気よ」

「あぁ、よかったよかった」

「………………はぁ」

浜面は麦野が無事なので取り敢えず一安心する。が、何かおかしい。
麦野の意味深なため息…。

(どうしたんだ?まさかやっぱりどこか痛むのか?)
「なぁ、麦野?黙ってちゃわからないぞ?」

「…………はぁ」
また麦野が溜息をつき、黙りこくってしまった。

しかもさびしそうに見え、且つちょっと怒っている様な、そんな複雑な表情。
357 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/04(木) 22:14:12.78 ID:EvtjX0E0
「名前…」
「……あ、わりぃわりぃ」

麦野はぽつりと小さくつぶやく。浜面はすっかり忘れていた。
二人でいる時は麦野のことを『沈利』と呼ばなければいけないことを。

「沈利がいーぃ…」

もう語尾の方は消え入りそうなトーンになっている。

麦野がボード用グローブをはめた指をもじもじといじっている。その素振りは浜面に純粋にかわいいと思わせた。
358 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/04(木) 22:15:11.28 ID:EvtjX0E0
「ごめんごめん。沈利。あ、そーだ…写真撮らないか?」

「……いいケド、ここで?」
(ちょっと恥ずかしいわね…)

麦野が躊躇っている間に浜面がバートンのリュックからデジカメをだす。

実は彼女たち、付き合ってから初めてのツーショットだ。言いだしの浜面はもちろん。麦野もドキドキしている。

「普通に撮るの?」

「あぁ」

はたして、麦野と浜面が想像している『普通』のイメージが一致しているかは未確認。

だが、二人はどうやらツーショットを撮る事には異論はないようだ。
359 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/04(木) 22:15:51.05 ID:EvtjX0E0
「じゃ、とるぞ…!」

浜面がカメラを二人が映りそうな所にかざす。

「うん☆………え?」

浜面はがっ!と少し強引に麦野の肩を自分の方へと引き寄せる。

「あっ…」

「はいチーズってな」

パシャ
麦野の虚を突かれたような声。その後に浜面がデジカメのスイッチを押す。
出来栄えは上々。
360 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/04(木) 22:16:52.56 ID:EvtjX0E0
「か、肩組むなら事前にいわないと…きき緊張が…」

「なーにいってんだよ。お前、事前に言っても多分緊張してたぜ?だからいきなり肩つかませていただきました!」

「そ、そ、そんなことないわよ!肩とか…全然か、か、簡単に組めるわよっ!」

「…はいはい。わかりました」

そう言うと浜面は麦野の頭を撫でてやる。
麦野はニット帽越しでもうれしいようで、えへへと笑う。

彼女の唇は案外に乾燥しているゲレンデで乾燥するのを防止するためか化粧の為か、昨日と同様に淡いピンク色のグロスを塗っている。

(沈利のグロスすっげぇ…なんというかエロいよ。うん。かわいいヤバイ)
361 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/04(木) 22:18:09.84 ID:EvtjX0E0
麦野は思った。
今までレベル5だった麦野に声をかけてくるやつなんざ、たいていはへこへこしたゴミか、意気がって麦野に絡んだ馬鹿ばかり。

(でも、あんたは違う。私のこと、一人の女として見てくれてる。そんなあんたの言う事を聞くのが堪らなく好き)

(はは、私Mっ気丸出しじゃない…でも、浜面に何かしろって言われたら私はそれに応えてあげたい。でも…)

麦野は浜面と付き合う事に懸念を抱えていた。

「ねぇ、あんたは私と付き合うことに抵抗ないの?昨日の今日はまだ付き合ってないのよ?こんなにすんなりうまくいってさ」
362 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/04(木) 22:19:24.31 ID:EvtjX0E0
麦野はこわかった。
正直、浜面は他の女性から好意を持たれてもおかしくない。

それは麦野の浜面に対しての格付けと言ったら、上からの目線の様な気もするし、語弊はあるが。
ともあれ、麦野は、浜面は女性と交遊して、成功するルックスや性格といったポテンシャルは高い。と思っている。

(対して、自分はどうだ?)

浜面がどういうスタンスで麦野の事をとらえているが、知らないが、私はレベル5。
学園都市の高位能力者にもれず、脳みそをいじくられた人間。

対して、浜面仕上は無能力者。そこに天地の隔たりを感じずにはいられないのである。
363 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/04(木) 22:20:13.17 ID:EvtjX0E0
要するに、浜面はもっとまともな、つまり脳みそなんかいじられていない、まともな子と付き合えばいい。
麦野はそう考えていた。

そうじゃなくても、寄りによって、学園都市、いや世界に七人しかいない超能力者なんかと交際する必要もない。
二百万人近く学園都市には学生がいるのだ。そのうち百万位は女だろ?

(レベル5に恋愛なんて無理?)

そんな内気な事も考えてしまう麦野。


しかし、そんな麦野の幻想は即座にブチコロシ確定に付されたようだ。

「馬鹿か。お前。お前と付き合う事に抵抗?無いに決まってんだろ。沈利はもう俺のもんだから」

――もの扱いすんな。

そう思い、麦野は口を開こうとするが――
364 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/04(木) 22:23:12.06 ID:EvtjX0E0
「ありがとう…」

出てきたのは感謝の言葉。

「わたしは、浜面のものになっちゃたんだね☆」

(嬉しいよ。浜面。ホントにあなたが私の彼氏になってくれてよかった)

「あたりまえだろ?んで、俺はお前のもんって事で。ってかさ」

浜面の口からどんな言葉が出てくるのだろうか。気になる。

「沈利、もしかして自分が学園都市のレベル5だから釣り合わないみたいな、どーでもいいこと考えてるだろ…」

(浜面はすっごいなぁ…私の浅はかな考え、ばれちゃってたかぁ)

麦野がはぁとため息をつく。

それは結局浜面を試すような言動になってしまったことを悔いる意味と、幸せ者であることを実感するため息。
365 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/04(木) 22:23:41.10 ID:EvtjX0E0
「俺はさ、確かに力でいったらお前の原子崩しにはもちろんかなわないし、実力的な面でお前を守るっていうのはちょっと厳しいかもしれねぇ」

「だけどさ、お前を守るってのはなんだ…こう。お前の心とか、精神状態…あぁ、ちげぇ。なんだ、こうお前が不安な時に俺がそばにいる」

「そういう事は守るって意味にならないのか?お前がさびしかったり、不安だったり悩んだ時には必ずそばにいる。お前の心を守る…」

「こんな恥ずかしい事絶対に二度と言えないけどさ。……これからはお前が俺を守る」

あぁ、この人のことを好きになって心底よかったと麦野は実感した。
366 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/04(木) 22:24:13.04 ID:EvtjX0E0
「昨日の今日で付き合ってるとか云々とかどーでも良いんだよ。知り合ってから付き合うまでの時間とか期間なんてさ」

「もし、麦野がこの後、学園都市に戻って俺とあわないなって思ったらすぐにわかれてもいいぞ?それはそれで受け入れる」

「そんなことないよ。絶対に」

麦野が頂上から吹き上げてくる風で前髪が崩れる。それを治すように手で髪を整えていく。

「とにかく、俺は今全力でお前の事…」

麦野沈利は思った。私の事をここまで熱心に話す人。それはこの人以外にいない。
そして彼の次の言葉を聞きたくて、待ち遠しい自分がいる。体がカァっと熱くなっていくのを知覚する。
367 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/04(木) 22:25:14.78 ID:EvtjX0E0
欲しい。もっと。浜面の口から出る私の事をもっと聞きたい。

同じくらいに、私も浜面にありったけの思いのたけをぶちまけたい。毎日、いつでも。

ごくりと唾を飲む浜面。ゲレンデのリフトでする会話ではないと思いつつも耳を傾ける麦野。

「…俺は…全力でお前の事愛してるから」

(あぁ、私は本当に幸せだ…)

麦野は一生分の幸せを消費してしまったのではと思った程だ。

浜面は何の迷いもない、そして力強い意志がやどった瞳でこちらを見ている。
368 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/04(木) 22:26:40.58 ID:EvtjX0E0
「なーに私相手にマジになっちゃってんのよ…こんな短気のわがまま気質のじゃじゃ馬にさ…はは」

「でも…ありがとうね。本当に嬉しいわ。私もこれから浜面と一緒に入れるって考えるだけで、どきどきする」

「これからもよろしくな。沈利」
「えぇ。私も浜面の事だーいすき☆」

この人の前では顔を赤くしないほうが無理。
麦野はそう思った。

これからどこに行こうかな。色んな所に行こう。
369 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/04(木) 22:27:31.55 ID:EvtjX0E0

「なんか、前の方、いちゃいちゃしてますねぇ…」

「結局、あの二人はれっきとしたカップルってことよ!」

「でも、このボード旅行でいろいろ変わりましたね」

「そうねぇ。浜面と麦野は付き合っちゃうし、まさか第二位の垣根帝督とも知り合いになるなんて結局誰が予想したのかね」

「はい。あと、滝壺さんも垣根帝督となんだかんだで仲よさそうですし、何より私たちアイテムが前よりも、もっと仲良しになった気がします」

絹旗はアイテムの仲が仲良くなっていると実感している、おそらくそれは他のメンバーも思っていることだろう
370 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/04(木) 22:28:17.97 ID:EvtjX0E0
「確かに、ここに来るまではまぁ、仲良かったケド、あくまで仕事だけの関係って感じがしたし、この旅行の前後でどうなるかって所ね」

「えぇ。私はもっと皆でいろいろ遊んでみたいと思いますね」

フレンダもそれには賛成する。暗部機関といっても実態は感情の起伏に富んだ女学生たち。遊びたい盛りの年頃。
もっといろいろな所に行こう。冬にはクリスマスパーティー、春には花見、秋には食い倒れや紅葉、そして来年にはまたここに。
考えただけでうきうきしてくる気持ち。高揚する。




「私たちって結局使い捨てよね…」

そんな楽しそうな一年を自分で妄想しつつもフレンダがぽつりと吐くその言葉には言い知れない重みがあった。
371 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/04(木) 22:29:03.77 ID:EvtjX0E0
「ほら、前に製薬工場で超電磁砲と闘った時にさ、麦野が教えてくれた資料あるじゃん。超電磁砲の妹製造計画」

「あぁ、あれですね…二万体作って殺害を繰り返す云々ですね…」

「あぁゆうの実際に見るとさ、実は私たちのDNAマップとかももう転写されてて、もう私たちのクローンがいたりして。ははは」

「超考えすぎですよ。フレンダ。私たちをクローンにしたって誰が得するんですか?」

まぁ、そうねぇ。と言いつつもフレンダは昨日の夕食を運んできた超電磁砲の妹の内の一人を目撃している。

(もしかして、私たちがすでにクローン…なんてね。あはは)

思考の深みにはまっていくフレンダ――
372 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/04(木) 22:30:10.31 ID:EvtjX0E0
「フレンダっ!」




「あぁ、ごめん!考え事してた…!」
(ったく、私たちはキルドレかっつぅの!)

フレンダは某戦闘機モノの映画の悲惨な無限ループを思い出していたが、それは口に出さない。

「…でも、私たちの下部組織の人だってとっかえひっかえだったじゃないですか」

「そうねぇ…浜面もそれでここに来た訳だし…」

「使い捨てなのは事実かもね」

こちらもリフトでする様な会話ではない。
むしろ日常でもあまりしていいような話ではない。

自分の命が使い捨てだとか、不謹慎極まりない。
373 :友人宅に行きます。 [saga]:2010/11/04(木) 22:31:54.10 ID:EvtjX0E0
いつも読んで下さる皆さま本当に恐縮です。
ではまた深夜にお会いしましょう。
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「でも、逆に私たちが推測したことが超新事実だとしても、どうしようもない事じゃないですか?」

「そうねぇ…学園都市の技術からは逃げ出せないものね…」

「むしろ、使い捨てには使い捨てなりの意地って奴を見せつけてやりましょうよ。私たちだっておいそれとはやられませんよ?」

そう。絹旗達は可愛いだけではない。

窒素装甲を使いこなす絹旗、爆破のプロであるフレンダ、AIM拡散力場の追跡をお手の物にする滝壺、そして原子崩し、麦野。

彼女達をバックアップする浜面。

彼らの絆によってさらに強固になったアイテムはもはやそんじょそこらの組織では打破出来ないものになっていた。
374 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/04(木) 22:32:29.33 ID:EvtjX0E0
「命を使って何をするか、それは自分で決めろってことよね。ねぇ、絹旗。私さ、夢があるのよ」

「はい。何ですか?気になりますね」

「絶対笑うと思うけど、お花屋さんやりたいのよ」

「お花屋さん?フレンダが花屋さんで花を売ってる姿…見ものですね…。でもなんでお花屋さんに?」

今までフレンダはの趣味や娯楽といいたら鯖缶巡りや、爆弾いじりくらい。爆弾は趣味とはいえないか。
375 :こんばんわ [saga]:2010/11/05(金) 02:47:29.12 ID:60.bo7U0
さぁ、書き溜め分を落としていきましょうか。

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「絹旗、あんたさ戦車の周りに花畑が咲いてるCM見たことある?ほら、あの日清の」

「あー、あれですか、ミスターチルドレンの曲の。あれいいですよね」

「あれで結構影響受けちゃってさ、ほら、私爆薬使ってるじゃない?」

そうだ。フレンダは能力こそ使えないものの、爆弾のプロだ。



「私の爆弾もいつかは使わなくなって周りにお花とか生えたら素敵だなって思ってさ」

「それはそれでいいと思いますよ。いつもフレンダがつかってる爆弾人形に綺麗な花のつるが巻きついたりしてるのって素敵です」
(ってかめちゃくちゃ似合ってます…。私も一緒に働いてみたいです…)

「ありがとう。絹旗。んで、あんたは何か夢あるの?」

いきなりの質問に驚く絹旗。

(結局、まだ中学生だし夢とかないかな?)

フレンダの予想したとおりにうーん、と悩む絹旗。
376 :こんばんわ [saga]:2010/11/05(金) 02:48:17.12 ID:60.bo7U0

「夢というか…願望ならあります…超恥ずかしいですけど…今考え付いたんですけどね…」

絹旗はボードウェアのパンツの部分をきゅっと掴む。何やら照れてる?ようだ。

「ん?何?なんでもいいからフレンダ姉さんが聞いてあげるわよ?」

絹旗は躊躇しつつも下をむきながら話す。

「その…フレンダと一緒にお花屋さんしてみたいです」
377 :こんばんわ [saga]:2010/11/05(金) 02:49:00.17 ID:60.bo7U0
「え?」
「だから、お花屋さん私もちょっとしてみたいなって…」

フレンダは信じられないと行った視線で絹旗のほうを見ている。
絹旗もその場のちょっとした想像をめぐらして言っただけ。

けれど、絹旗はエプロンを巻いて元気に接客するフレンダと、そこに一緒に働いている自分の姿をも想像した。

「私、超他人に依存しちゃうんですよ。それもあるかもですが、今はフレンダのお花屋さん一緒にやりたいです」

「いいよ。絹旗もやりたいなら、今度お花屋さんに見に行ってみようよ?」

「私もちょっと想像しただけだしさ、デートついでに見にいこうって訳よ!」

「はい…」

胸をなでおろす絹旗を見て、フレンダは彼女の悩みを少し垣間見た気がした。
378 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/05(金) 02:50:06.24 ID:60.bo7U0
「絹旗、あんた自分が他人に依存する事気にしてるでしょ?」

「やっぱ自分の駄目な所なんで気にしちゃいますね」

「いいんじゃない?そんなこと考えるよりも楽しく生きようよ、ね?絹旗。あんたが思ってる程、絹旗他人に依存してないと思うけどな…」

「そうですか?」

フレンダは自分の一言でここまで嬉しそうに笑っている絹旗を見て可愛いなと思った。
379 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/05(金) 02:50:36.25 ID:60.bo7U0

「ってか、今気付いたんですけど…フレンダ、さっき超デートって言いましたよね?」

不安そうな、期待しているようなちょっと表情になる絹旗。

「あっはっは。ばれてたかー!」

フレンダは豪快にわらい頭をぽりぽりと掻く。

「ねぇ…絹旗。ちょっと耳貸して?」
(にしし、今から絹旗の耳を食べちゃうって訳よ☆)

フレンダがそう言うと内緒話をするような姿勢で耳を近づけてくる。
380 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/05(金) 03:12:00.94 ID:60.bo7U0
「え?なんですか?フレンダ?」
「かわいいよ。絹旗。大好き☆」

かぷ。

一瞬、ちくっと蚊に刺されたようなかゆみ。その後に温かい感触。
絹旗の右耳がフレンダにかじられたのだ。
前にいる麦野達のリフトからはこしょこしょ話をしているように見える。

後ろには二個ほどリフトが空なので見えない。

「ふぁ…いきなりなんなん…ですか…?」
小さい声で叫ぶ絹旗。

フレンダの小さい口にまるっとおさまってしまう絹旗の小さい耳。
381 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/05(金) 03:13:10.23 ID:60.bo7U0
「ふぁめ?ふぁ、ふれんだぁ。ひゃは?(駄目?フレンダ。やだ?)」

絹旗の冷えた右耳がどんどん熱を帯びていくのがわかる。彼女はフレンダの耳噛み攻撃になすすべもない。

ふるふると首を横に振る絹旗。
(だめじゃないです…もっと…)

「もっと…おねがいしましゅ…」

フレンダの口に耳をたっぷり犯されてしまった絹旗。
ふぁああと甘い声を漏らす。
382 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/05(金) 03:14:41.16 ID:60.bo7U0
「きぬはふぁのみみおいひいよ」

「…なに恥ずかしいこと、…いってる…ヒャ…んですかぁ…ふれんだぁ…」

「もうおひまいにふる?」

(もっと…してほしいです…)

もう一度ふるふる首を横に振る絹旗。

「うん。ひいほ(うん。いいこ)」
383 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/05(金) 03:16:02.71 ID:60.bo7U0
しばらくして耳攻撃を解除するフレンダ。
絹旗の耳からフレンダの口が離れていく。

絹旗は若干の寂しさを感じつつもフレンダにくってかかる。

「な、なにしてるんですか?フレンダ!!」
「えーだってぇ、絹旗がさっき喜んだ顔したじゃん?あんときめちゃ可愛かった訳よ…だからつい出来ごころでさ!」

えへへ。と気まずそうに、だけど全く反省していない表情のフレンダ。
絹旗も、もう!とちょっとぷんすかしただけで特に問い詰めなかった。
384 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/05(金) 03:18:47.05 ID:60.bo7U0
「今なら誰もみてないってことで…」
「え?なんです…(ry」

ちゅ

絹旗の唇にフレンダの本日初めてのキス。直ぐに唇を離す。

「ふぁあ」
絹旗の甘い声がフレンダの近くで聞こえた。

「今度二人ででーとしよっか☆」

フレンダのささやきに絹旗はこくんと頷いた。
デートを確約したところで終点が見えてきた。
385 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/05(金) 03:19:17.19 ID:60.bo7U0
――垣根帝督は緊張していた。このリフトは長い。
鬼の様な長さ。秒数にすると1800秒。

実際に1800数えて見ればいい。めっちゃなげぇ。

(さーって何話すかねぇ…)

沈黙…

「だーっ!」
「どうしたのかきね」

「お前、この静寂に耐えられるの?理后ちゃんは!」
「うん。平気。景色見てるだけでも面白いから」
386 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/05(金) 03:51:29.86 ID:60.bo7U0
「そいうもんかぁ?」

(なわけないでしょ。はなしてよ)
「うん、けっこうおもしろいよ」

(まぁ、確かに綺麗だけんど、これは楽しくないだろ…!)
(は!まさか、俺に盛り上げ役を期待している?)

別に盛り上げなきゃいけない訳ではないが、話を切り出さなければいけないのは事実だった。

「ねぇ、理后ちゃん。景色見てる所悪いんだけどさ」
「なに?」

長い相乗りリフトが始まった。
387 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/05(金) 03:52:20.97 ID:60.bo7U0
「理后ちゃんって彼氏いないよね?」

「うん。つきあったこととかないよ。かきねは?」

「少しだけど…あるかなぁ…前に暗部にいた時に少し」
(心理定規どこいったかなぁ…今となっちゃどうでもいいけど)

「その人の事まだ好きなの?」

滝壺はいつの間にか下におろしていた視線を垣根にしっかり向けている。

嘘はつけないよ。そう暗に主張しているような眼力が今の滝壺には宿っているようだった。
388 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/05(金) 03:55:00.16 ID:60.bo7U0
「あぁ、アイツはもう関係ないし、全く興味ねぇ。安心しろ」

「そう」

「じゃあ、話かわるけど、かきねは昨日私と滑りに行くときになんでデートとかいったの?あと理后ちゃんとか名前でよんでるし…」

「あぁ、それはだな…えーっと…」

垣根は答えに戸惑う。
確かに滝壺理后はかわいい。けど、実際惚れてるかと言えばそうでもない。
昨日の復活間際でちょっとカッコつけたかった手前もある。テンションも上がっていた。
だが、復活した時に目の前にいた滝壺をかわいいとも思った。

「正直言うとよぉ…」

(言うしかねぇな…理后ちゃん、マジな目になってるし。雰囲気も)

垣根は今の気持ちを言うことにした。
389 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/05(金) 03:56:15.12 ID:60.bo7U0
「俺は確かにお前の事かわいいっておもうけどよ、まだ好きかどうかなんてわからねぇんだよな、実際」

「うん」

「だからー…なんつうか、仲良く?友達から始めてみたいな?」

「うん」

「だから、その…友達止まりは絶対にやなんだよ。恋愛的な好意が無いっていうのは嘘になるから」

「……ちょっとうれしいかも」

「だから――付き合うっていうのを前提に、まずはちょっとお試し期間みたいな感じでこの俺と接してくれたら嬉しんだけど…どうだ?」

口調は相変わらず、態度も高飛車。だが、反面垣根はどきどきしていた。

さて、ここで垣根は自分の中で線引きをしたのである。
390 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/05(金) 03:58:15.38 ID:60.bo7U0
まず、滝壺と友達になるというのは駄目。フェイルド。

なので最低でも自分が滝壺の友人になりたい。という願望とはまた異質の願望を持っていることを的確に伝えなければならない。

垣根自身も未だはっきりとは自分自身の滝壺に対する気持ちをよく理解していない。
ならば、最低条件を提示してそこから二人でじっくりと関係を深めて行けばいい。

打算的だけれども、確実に。

賭けに出る必要はない。

誰かにさげすまされても構わない。

(確実にこいつは手に入れたい。このとろんとした目、ルックス、全て完璧じゃねぇか)

垣根の滝壺に対する思いは強くなる一方である。
391 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/05(金) 03:58:54.73 ID:60.bo7U0
しかし、ここで不意に告白しては結果は見え見え。

確かに垣根に対して滝壺も『あくま』で多少の好意を抱いている事は理解していたが、まだお互いにお互いを求めるほど――そう、
浜面と麦野の様にお互いを必要としている状態になっていない。

(だったら我慢比べだ。俺に愛想尽かすか、俺に惚れるのが先か。はっ。だったら断然後者だろーがよ)

垣根の先ほどの計算高さと一見矛盾するように見える無根拠な所からくる謎の自信。

(俺に常識は通用しねぇんだわ。ハハッ)
392 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/05(金) 03:59:39.91 ID:60.bo7U0
「ねぇ、かきね」

「あん?」

「さっきの付き合いを前提にっていうかきねの提案なんだけど、別にかまわないよ?」

「ホントか?」

垣根はがばっと滝壺の方をみる。テンションは一気に最高潮だ。

「でも、私たち今日がここにいる最終日だよ?簡単にここのお仕事辞めれるの?」
393 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/05(金) 04:00:23.82 ID:60.bo7U0
そうだ。ごくごく単純で最も最初にクリアーしていかなければいけない課題を忘れていた。
このゲレンデの住み込みそ仕事を辞めて学園都市に戻る。

(やっべぇー…すっかり忘れてたわー…)

アウレオルス=イザードにもはや産廃同然で破棄されていた所を拾われた垣根帝督。
冷蔵庫として果たした役目は計り知れない。

逆に垣根がいなければこのゲレンデの冷蔵庫は誰が務めると言うのだ?
アウレオルスの黄金錬成にも限度がある。
お客様に黄金錬成で出来た食べ物など提供できるはずがない。
394 :今日はここでおしまい。 [saga]:2010/11/05(金) 04:02:58.80 ID:60.bo7U0
もう少しでおわりです。
みなさんここまで読んでいただいて恐縮です。
ではまたねー!
----------------


「クッソ…。どうすっかなぁ…」

「このコース終わったら時間的にもお昼だから、支配人さんに話を聞いてみよう」

「だなぁ。まずははなしてみなきゃわからねぇか…」



いびつな、けれど純粋な好意で関係を構築した二人がリフトの終着点に着く。

そしてワンフットで雪原に舞い降りる。
395 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/05(金) 05:57:49.41 ID:BusfWQAO
垣と根に分かれるんですねわかります
396 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/05(金) 08:30:55.48 ID:u/mxrhgo
乙です

スキーもスノボもしたこと無いけどしたくなってきた
397 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/05(金) 13:00:05.39 ID:VixpAWgo
398 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/06(土) 02:08:35.55 ID:XDbpXiM0
「へぶんきゃんせらぁ」が上級者コース。

では、「ここ」は?
最難関コース。「幻想殺し」だ。

「こりゃーやべぇ…」

インハビタントの市街地迷彩のウェアを着た浜面がひゅーと口笛を吹く。
フェイスマスクをクイッと目の下まで引っ張る。

(こりゃ、メット被った方がいいな)

バートンのリュックからずいっと出てくるスケボー/スノボ兼用のメットを出し、被る。
399 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/06(土) 02:09:50.40 ID:XDbpXiM0
浜面は経験者の中でもかなり上手い部類に入る。
そんな彼がメットを被り、ゴーグルを付ける様は初心者の麦野たちにこのコースの難しさを意識させられずにはいられなかった。

「結局、転んだら負けとか転んだら痛いだろーなって考えたらダメな訳よ。楽しまなきゃ損ってわけよ」

彼女はそう言いつつ軽く二、三回バタンバタンとジャンプし一気に滑っていく。

「おさきー!」

鉄砲玉の様な勢いで下っていくフレンダ。

雪を派手に撒き散らしながら進んで行くそのポージングは様になっていたが――
400 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/06(土) 02:14:43.93 ID:XDbpXiM0
(あぁ、これはやばいわね。そろそろスピード抑えないと…にょわっ!)

「あ、フレンダ超転びましたね」

絹旗が指を指す方向には激しく転倒し雪が舞っている。

「だー、考えてたってダメって事ですね。超行きます」

「俺も行くわ」

「じゃ、下のあの傾斜が終わってる平坦な所でペース合わせようぜ」

「「はーい」」

全員が時間を少しずつずらし、滑っていく。浜面がデジカメでそんな皆の勇姿が斜面に消えて行くまで撮影するとしんがりを務める。
401 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/06(土) 02:28:12.61 ID:XDbpXiM0
「いきますかねー、俺も」

浜面が斜面からみると皆転びつつもその表情は楽しそうだ。
目指すは途中の合流場所である平坦な場所。






「結局あんたらこけまくってた訳よ」

「そーゆーあんたも転びまくってたじゃない」

「ぷっ」

「はははっ」

フレンダが堪え切れずに腹を抱えてわらう。

気付けばみんな笑ってた。

麦野は途中転ぶと思い、木の葉で降りたにも関わらずこけた。

絹旗に至ってはスピードが出過ぎて派手に飛びあがった。

浜面や垣根もエクストレイルばりに転げ落ちた。

そして何故か滝壺がスラスラ滑って皆のドギモを抜かしていた。
402 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/06(土) 02:30:14.05 ID:XDbpXiM0
「なぁ、あそこにジャンプ 台あんだろ、みえっか?浜面」

「もちろんっすよ。垣根さん」

彼らは年齢は同じ。あえて浜面は茶化すような言い方をする。

「この際だ。どっちが華麗な技をきめれっか勝負しよーぜ」

「路地裏のスキルアウト100人を束ねた浜面様をなめんなよ?」

ああん?とガン垂れモードの垣根。浜面も負けじと思い、ずいと胸をはる。
403 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/06(土) 02:32:31.46 ID:XDbpXiM0
「ちょっーとまったぁ!」

フレンダがゴーグルをグイっと外し、両手を腰にあてながら言う。

「このゲレンデの女神、フレンダ様をないがしろにしてなーに決着着けようとしてんのよ?いい度胸だわ!」

(これは…超バトルの予感がしますね………………フレンダの勝ちだろJK)

(あーあー別に競わなくても良いのに…………浜面頑張れ!)

(みんなすごい対抗心燃やしてる………………………かきねちょっと応援…)

「そーと決まりゃ行きますか」

「にしし、大技決めてやるわ!あ、絹旗!」

フレンダが絹旗を呼ぶとリュックからカメラを投げる。

「これで誰が凄かったか、ムービー撮って欲しい訳よ!お願いねー」

「りょーかいでーす」

フレンダがデジカメを渡すのを見て、浜面も麦野にデジカメを渡す。

「ムービーとっといてくれ。麦野」

「うん!浜面がんばってね!」

無言で右腕をグッとあげる浜面。
それを麦野は満面の笑みでかえす。

(むぎの、めちゃめちゃデレデレした表情になってる…)

滝壺はそう思いながらもスルスルと下に降りていく。

それを見た絹旗と麦野も三人の技を見るため後を着いていく。
404 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/06(土) 02:37:51.25 ID:XDbpXiM0
「最終日に相応しいイベントって訳よ。順番はどーする?」

「おれぁ最後でも構わないぜ。垣根は?」

「俺は何番でもかまわねーよ…じゃ、フレンダ行けよ」

「じゃーお言葉に甘えて…」

下の斜面では絹旗達が三人の自己満大会を眺めるべく待機している。

フレンダ、垣根、浜面がそれぞれグランドトリックを決めて行く。
絹旗達はカメラを構えながら歓声を上げている。
405 :展開早いか?すいません [saga]:2010/11/06(土) 02:41:19.45 ID:XDbpXiM0
結局、三人ともハイレベルなトリックを繰り出した。

見物していた麦野達から見た浜面達はかっこよかったし、輝いていた。




さて、楽しい時間はあっという間に終わってしまうもの。

「幻想殺し」を滑り終わり、お昼御飯の時間だ。

お昼ご飯はもちろん「あうれおるす」で食べる事に。
406 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/06(土) 02:42:53.13 ID:XDbpXiM0
垣根帝督はすっかりアイテムのメンバーと親睦を深めることに成功した。
しかし、親睦を深めたのもつかの間。別れの時は刻々と迫っていた。

食堂でご飯を食べようとしていた浜面達と一緒にいる垣根をみた牛深が声をかけてくる。



「垣根ー!支配人が呼んでるぞー!」

「へいへーい。今行くわー」

牛深の野太い声に垣根は反応してキッチンの方へと消えていった。
407 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/06(土) 02:43:44.06 ID:XDbpXiM0
「アウレオルスさん、話ってなんですか?」

「あぁ。お前が復活してからここの冷蔵庫が無くなったろだろ?それの対策で…誠に申し訳ないんだが…」

垣根は予想していた。人間に戻れて、普通の生活が送れるという、うまい展開がそう続く訳がないと。

「わかってますよ。支配人。俺が冷蔵庫になれば良いんですよね?」

「はぁ?」

「えっ」

垣根は驚いた。アウレオルスがぽかーんとした表情をしている。

「貴様が復活したので新しい冷蔵庫を買ったので、その報告をしたかっただけなんだが」

垣根はちょうどキッチンに米型の大型冷蔵庫が二基「あうれおるす」に搬入されているのを目撃した。
ラベルはEqu.Dark Matterと記載されている。

「支配人、どういうことですか?俺は失業すか?」

「否、それは貴様が決めろ。ここで働き、宿の為に働くもよし。食堂にいる新しく出来た友人たちと学園都市に戻るのもよし。全て貴様の自由だ」

「…わかりました…」

垣根はどんな答えを出すのだろうか?
408 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/06(土) 02:44:15.35 ID:XDbpXiM0
「…支配人には感謝してます。こんな不良冷蔵庫を使ってくれて…感謝してもしきれません…」

「それはお互い様だ。私も貴様に記憶を復元してもらわなければ今の私はいないだろうしな」

垣根とアウレオルスはお互いが信頼しあったパートナーなのである。
新しい冷蔵庫が来たからと言って垣根がこの宿で必要とされなくなった訳ではない。
他にも沢山の仕事がある。

「ただ…貴様は昨日今日と浜面君たちと非常に仲睦まじく交流を重ねていたではないか。先方が許せば、そちらの方へ言っても構わないぞ?」

「……支配人…。ちょっと待ってください。あいつらにも聞いてきますんで…」

垣根は複雑な心情だった。
これからもこの宿の為に尽くしていきたいと思う反面、まだ受け入れてもらってないが、アイテムのやつらと一緒に学園都市に戻りたいとも思う。

そして何より――
409 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/06(土) 02:45:02.77 ID:XDbpXiM0
――理后ちゃん

そう。垣根の思い人に昇華しつつある彼女を置いて、ここで働けない。

あのクソの肥ダメの様な場所は彼女にとっては危険だ。
ただでさえ能力の仕様を劇薬に頼る彼女を常に守らなければならない。

(俺は――理后ちゃんともっと仲良くなりたい。アイテムに入りたい)


覚悟は決まったようだ。


(俺は学園都市に帰る――!)
410 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/06(土) 02:46:10.62 ID:XDbpXiM0
覚悟を決めた垣根は食堂の方へ足を運ぶ。

「わりわりー!待たせちまったー!」

「え?誰も待ってないぞ?もう食べちまった」

「おい、浜面ぁ。俺が来るまで昼飯待ってくれなかったのかよー!」

「あったりまえだろーが。お前が戻ってくるまでどんだけまたなきゃいけないんだにゃーん?」

「…クソが…」

「結局三十分。あんたの事待ってたって訳よ…」

「超長引きましたね垣根」

「はやく座ってたべよ?かきね」

アイテムのメンバーはご飯を食べて待機してたように見せかけて、実は垣根が来るまで待っていたのである。

「あ、ありがとな…」

垣根は照れつつもアイテムのメンバーにお礼をする。
そして先ほどのアウレオルスと話した事を皆に言おうとして、腹にスウと空気を吸い込む。
411 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/06(土) 02:48:43.85 ID:XDbpXiM0
「ごめん。ご飯食べる前に一つだけ聞いてほしいことがある」

「なんだよ。垣根。そんな真面目な顔してー。先に飯じゃだめなのか?」

浜面が上のウェアを脱いで腰に巻きながらそう言うが、垣根はすまんと一言言い、話し出した。

「さっきキッチンに俺の代わりに冷蔵庫がきたんだよ。それで俺は支配人に選択権を与えられたんだ」

「せんたくけん?」

滝壺はきょとんとしつつも垣根の言う選択権という言葉が気になり、オウムがえしに質問する。

「あぁ、そうなんだ。ここにいて働き続けるもよし…もう一つは…」

――拒否されたらどうしよう。

そんな感情が垣根を支配していく。あぁ、ここで拒否されたらつらいだろうなと自分で考えながら祈るような気持ちでアイテムに口をひらく。



「お前らと一緒に学園都市に帰ってもいいって」

「「「「「それって…」」」」」

アイテムの一同がごくりと生唾を飲む。
垣根はぐっとこぶしに力を込めて言う。

「俺をアイテムに入れてくれないか…?」
412 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/06(土) 02:57:38.61 ID:XDbpXiM0
「別にかまわないわよ?ねぇ皆?」

「えぇ、おもしろいですし、パシリがもう一人超増えたと考えればむしろ良いですね!」

麦野の発言に異を唱える者は誰もいなかった。

「結局あんたが滝壺に惚れてるからでしょ?振られてもアイテムやめんじゃないわよ?」

「はい。わかってます」

いや、むしろ絶対滝壺は手に入れたい。その為にも学園都市に戻ってくるんだから。

「垣根、アイテムにようこそ!」

「浜面超なにしきってるんですか?ちっそぱーんち」

「ビブルチッ?」

どかーんと吹き飛ばされる浜面だが、その直後に絹旗も飛んでいく。

「おいおい、おちびちゃん。私の浜面になぁーにぱんちしてんのかなぁああああああああああ!」

「ひえー!」

いつもの?口げんかが始まった。
それを見て滝壺やフレンダ、垣根も笑う。



「かきね」
「何?理后ちゃん?」


「アイテムにようこそ。これから仲良くしてね」

「おう!よろしくな。理后ちゃん!」

「うん」

新生アイテムが学園都市から遥か遠い白馬で結成した瞬間である。
413 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/06(土) 03:28:45.09 ID:XDbpXiM0
「「「「「ありがとうございましたー!!」」」」」

アイテム一同は私服に着替えてゴンドラ乗り場に来ていた。
もう帰る時間だ。早い。

見送りには「あうれおるす」の従業員たちがきている。

「自然、まためぐり合うだろう。私も近々学園都市に用があるのでその時には食事でも」

「おぉーい!垣根ぇ!学園都市で今度解体(ばら)されそうになったらこの牛深様が殴り込んだるからなぁ!」

「垣根!根性で乗り切れ!あと、おまえらまた遊びこいよ!」

「じゃあな冷蔵庫。そしてアイテム御一行様、またの後利用をお願いしますとミサカはお客様に請願します」

「この闇咲、垣根との別れは惜しいが、また近いうちに会おうぞ。お客様がたもまた来られよ!」

「ご利用ありがとうございました!垣根も皆に迷惑かけんじゃないよ!」

「支配人、牛深さん、研板、12222号、闇咲さん、対馬さん…皆ありがとう!」

垣根が頭をぺこりと下げる。
涙は出なかった。一生の別れではない。今生の別れではないのだ。また会えるさ。
414 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/06(土) 03:29:57.77 ID:XDbpXiM0
宿の長クラスの方々全員のお見送りを受けた新生アイテム。

ふもとの駐車場に向かうゴンドラが来た。
いよいよ別れの時だ。
記念撮影を済まし、乗り込むアイテムの一行。

自前ボードを持っているフレンダと浜面、垣根は重そうだが、車に搭載するまでの辛抱だ。

「よっしゃ帰るか!」

「「「「「はーい」」」」」

アイテムの面々を乗せたゴンドラはどんどん「あうれおるす」を離れていく。
415 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/06(土) 03:31:25.07 ID:XDbpXiM0
ゴンドラから小さくなり消えつつある「あうれおるす」。
見送りの人たちの手を振れに見送られたが、もうその姿は見えない。

「なぁ…麦野。旅って何で終わる時にさびしくなるんだろうな?」

「さびしいってことはその時間が終わってほしくないってことよね…それって自分が十分楽しんだって事の証明なんじゃないかな?」

「なるほどね…麦野は今さびしい?」

「うん。もっとボードしたかったな。今年中にまた行きたい」

二人の会話を聞いていた絹旗達も答える。

「超行きたいです!」

「こんどは二泊三日でいきたいな」

「結局このメンバーはめちゃおもろかった訳よ!また今度行きたいわね。ほら、垣根もなんとか言いなさい!」

「…とりあえずは皆お疲れ様…!」

「「「「「おー!」」」」」



〜第一部Fin〜
416 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/06(土) 03:33:07.86 ID:3ztLtI.o
第一部とな!? 続編期待していいんだよね!?

乙です!!
417 :むぎのんだいすき [saga sage]:2010/11/06(土) 03:35:02.83 ID:XDbpXiM0
途中から失速ww
グダグダ。しかし、書ききりました!
初スレが駄作SS…。

でも書きたいこと書けたんで大満足です!
ボード・スキー楽しいよ!やろうぜ!

…皆の冬のデートを書こうと思うんだが、このままこの板使っていいかな?
どうだろうか?
418 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/06(土) 03:38:17.37 ID:3ztLtI.o
いいと思います!
419 :今日は睡魔がヤバイ寝る [saga sage]:2010/11/06(土) 03:42:06.69 ID:XDbpXiM0
>>418
じゃまた書きため作業に入ります。

こんな作品見てくれてありがとうございます。
嬉しいです。

第二部は皆のデートです。甘いよー。
420 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/06(土) 11:04:57.28 ID:GUVeFcAO
砂糖の補給は充分って訳よ
421 :1 [saga]:2010/11/06(土) 13:08:45.77 ID:XDbpXiM0
>>420
そうですか…すいません。
短編なんで早めに終わらせますんでどうかお許しを…。

蛇足何で読みたくない方はシカトで構わないっす。
422 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/06(土) 13:30:32.09 ID:XDbpXiM0
――横浜・桜木町 AM11:15

「結構さむいなぁ…」


「待ち合わせまであと15分か――」



垣根帝督は白い息を吐き、ちらと時計を見る。


(いや、俺が勝手に待ち合わせ時間より早めに来ただけだ…考えすぎだろ…)



今日はクリスマスイブ。12月24日。

街は赤、緑、白、さまざまなネオンに彩られキラキラしている。
街を行く人々は寒そうにしているが、街の雰囲気がそれを温かくしてくれているような気がする。
423 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/06(土) 13:31:18.50 ID:XDbpXiM0
AM11:28

(こねぇ…いや、後二分…)

そんなことを考えていると、ひっそりと幽霊少女が垣根の後ろから近づいてきていた。
垣根は気付かない。

「かきね」

とんとんと垣根の肩をたたく少女。

「うお!びびった!」



「遅れてごめん。横浜きたの初めてだからまよっちゃった。あと町田駅で警備員に外出理由を聞かれて少し遅れちゃった…ごめん」

「いやいや、いいさ。きにしてねぇって!今日はほら、たのしもうぜ?せっかく理后ちゃんの外出申請も取れたんだしさ」

「うん」
424 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/06(土) 13:35:15.88 ID:XDbpXiM0
垣根は以前学園都市の暗部に所属する人間でしかも学園都市第二位の「未元物質」の使い手として名を馳せていたが、それも過去の話。

今はアイテムをかげながら支える構成員として活躍中だ。

そんな垣根はゲレンデで知り合った滝壺理后に好意を抱き、ゲレンデから帰ってきて数週間、つめりクリスマスイブに滝壺をデートにさそったのだ。

「今日はどこにいくの?」

「そうだな…理后ちゃん、おなか減ってる?」

「たいやき食べたいな…」

滝壺がかわいらしいペイズリー柄の手袋で指をさすと、タイ焼き屋さんが。

「たいやき…」

「いいぜ、それ以外になんかあるか?たいやきだけじゃおなかいっぱいにならないだろ?」

「たいやきたべたらシェーキーズでピザ食べたいな」

「いいぜ、理后ちゃんが食べたいもの食べよう」

二人は取りあえずたいやき屋さんに並ぶ事に。
425 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/06(土) 13:36:30.96 ID:XDbpXiM0
とりあえず、こんな感じ。
でーとですね。

残りわずかですが暇な人はお付き合いください。

では夜にまた投稿します。
426 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/06(土) 13:38:21.19 ID:cq4i8pko
1000まで行こうぜ。

糖尿病で死ぬまで
427 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/06(土) 14:59:35.04 ID:BNBvI3so
乙です!待ってます!
428 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/06(土) 15:59:02.72 ID:k0eLEAMo
あまいら・・・インスリンの貯蔵は十分か?




さぁ初めてくれ>>1よ。第二幕を・・・
429 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/06(土) 17:32:43.31 ID:ZKMqmuYo
後日談までやるなんて、最高の>1だにゃーん
430 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/06(土) 19:37:02.18 ID:UDqEQz2o
始めッから甘いのを求めてこのスレに来てるんだ!
今更どんだけ砂糖攻めを喰らう覚悟も出来てるに決まってる!

つか町田とか横浜とかいきなり超地元臭がして来て吹いたwwww
431 :こんばんわ 少しだけ投下 [saga]:2010/11/07(日) 04:32:09.11 ID:vhhzhXQ0
皆さま。こんなにレスつくとは…。感謝です。
糖尿病希望者の方々は共に歩んで行きましょうか。

あ、そうそう。想像しやすいように学園都市の区分を大体想像して実際の地名とか出します。
服やその他もろもろに関しても実名が出ることもありますが、ご了承ください。

---------------

「クリームたいやき下さい」

「あー、俺もそれ一つくれ」

「あいよー!」

滝壺がカパンと開かれる鯛焼きの鋳型を興味深そうに観察している。
そしてそんな滝壺をじーっと見ている垣根。
432 :眠い。ねます…。明日また投下します。 [saga]:2010/11/07(日) 04:32:54.48 ID:vhhzhXQ0
(へぇ…理后ちゃん、結構私服かわいいじゃん…遊ぶ前に浜面から聞いた話でジャージしか着ないって聞いたけどよ…)

滝壺なりに気合いを入れて来たのだろうか。

コンバースのソールが白で上部が黒の定番スニーカーにTOMMY GIRLのだぼっとし
たジーンズ。

上着は白いシンプルなタートルネックのセーター。

アウターにはロキシーのピンクメインのかわいらしいカレッジ風スタジアムジャケット。

ニット帽は白が基調のペイズリー柄をチョイス。
手袋は先述したとおりだ。

手には小さい小物が入る程度のアディダスのバック。
433 :こんにちわ [saga]:2010/11/07(日) 12:54:23.30 ID:vhhzhXQ0
(理后ちゃんぱねぇな。スタジャンとか着るんだなー。しかもピンクのスタジャンなんかみたことねぇわ)

「なにちらちら見てるの?かきね」
「え?あ、いやー今日はジャージじゃなくてジーンズとかスタジャンとかきてて雰囲気違うなーって」

「ジャージの方がいい?」


「……………いや、ジャージもいいけど、今日の私服の方は本当に…」
(正直ヤバイマジでかわいい。今すぐ抱きしめたい)

「本当に…なに??」

「か、か、か、かわいいです…///」
(クッソ恥ずかしいじゃねぇか…!!)

「…あ、ありがとう///」
(麦野たちに私服考えてもらってよかった…かきねにかわいいていわれちゃったしかも真剣な顔だった…)

ボーイッシュのようなで且つ、滝壺の好きなピンク色を使った今回のコーディネート(byアイテム)は大成功のようだ。

-------------
☆滝壺の今日の服装
靴:コンバースの定番
ジーンズ:http://item.rakuten.co.jp/frames/tommy-hilfiger-17-0020/
セーター:ノーブランド。ユニクロとか想像してね
アウター:http://item.rakuten.co.jp/auc-mk-farm/rj80132/
ニットと手袋:http://r-s.sakura.ne.jp/w/n/mw21.jpg
バッグ:リンク長いからカット。adidas 03 SWTミニボストン ウルトラビューティーF kq967 で検索

やっべ。このアウター滝壺ぜってぇ似合うだろww
434 :実名ごめんね [saga]:2010/11/07(日) 12:57:22.01 ID:vhhzhXQ0
もちろん垣根も今回は気合いを入れて来た。

暗部時代と冷蔵庫時代、白馬の「未元」時代の潤沢な資金を活かし、分相応な範囲で買えるものをかった。



レッドウィングのブーツにトゥルーレリジョンのブーツカットジーンズ、茶のスタッズベルトにバックルはシンプルに銀色の楕円形。

ノーブランドの白シャツ。

その上にはバーバリーのジップアップブルゾンを着用。

アウターにはネイビーブルーのモンクレールのダウンジャケットを着用している。

バックはEA7のミニボストンバッグだ。




ここまでハイブランド品で武装しておきながらも決してブランドを安っぽく見せない。
垣根の品の良さ、容姿端麗、清潔さなどがうかがえよう。

------------
☆垣根の本日の服装
靴:http://threewood.jp/SHOP/red-wing-8878.html
ジーンズ:http://www.arcdeux.com/?pid=23548336
ベルト:http://item.rakuten.co.jp/threewoodjapan/htc-plum-tq-belt-lbrown/
シャツ:ノーブランド
ブルゾン:http://item.rakuten.co.jp/auc-season/52-b919/
アウター:http://item.rakuten.co.jp/mb/-x-ever-68950-742-x-/
バック:http://store.shopping.yahoo.co.jp/zen/7537107750-15.html

うわー軽く15万こえてまつwww
435 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/07(日) 12:59:36.54 ID:NO7s3A2o
金持ってんなー
436 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/07(日) 13:55:03.11 ID:vhhzhXQ0

「へい!クリーム鯛焼き二つお待ち」

店員が勢いよく垣根たちに鯛焼きを渡す。
それを受け取り、ぱくり。

「おいしいね」
「甘くてうめぇ」

一口つまむと二人は近くのベンチに座って鯛焼きを食べる事に。

二人がかじったところからもくもくと湯気が立ちのぼる。
437 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/07(日) 14:19:18.87 ID:vhhzhXQ0
「露店だからってナメてたけど、こりゃうめぇわ」

「うん。おいしいね」


寒空の中、ベンチに座る二人。タイ焼きが虚空をにらんでいる。


「あ、理后ちゃん。ちょっと動かないで」

え?と滝壺が反応した時には垣根の人差し指が滝壺の唇の端に手が伸びていた。
438 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/07(日) 14:38:31.89 ID:vhhzhXQ0
「クリームついてたぜ」
(理后ちゃんの唇にさわっちまった…!)

垣根はぴっとクリームを拭い、ハンカチで手をふく。

「じ、じぶんでも出来たのに…」

赤面する滝壺。垣根もちょっといたずら心が働いたのだろう。

それでも滝壺はぷいっと怒ることなく、タイ焼きにかぶりつく。

「…こんどは自分でちゃんととるから///」




天候は概ねくもり。
日は陰り、風は寒い。

天気予報によれば、午後に曇りから雪になるようだ。
439 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/07(日) 14:39:43.97 ID:vhhzhXQ0
「さむいね。かきね」

「あぁ、食べたらさっき理后ちゃんが言ってたシェーキーズにいこっか?」

(夜ごはんは予約したお店があるけど、それ以外はあんまり調べてないんだよなー。横浜は夜景がきれいだから歩こうとは思うんだけど)

本日の元冷蔵庫プロデュースのデートプランは大体こんな感じだ。


(シェーキーズでお昼御飯→適当に映画→適当にぶらぶら→歩いて予約した飲食店へ→プレゼント渡す→告白…!)

(告白できっか?いや、やるしかねぇ!わざわざ今日という日に俺が理后ちゃんを誘って、応えてくれてんだ…!ちゃんと言うぞ!)
440 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/07(日) 15:05:29.65 ID:vhhzhXQ0
すなわちゲレンデから帰ってきてすぐに、垣根は滝壺にクリスマスイブを開けてもらうように頼み込んでいた。

(ありゃ、緊張したぜ…ったく…)

垣根は緊張した面持で滝壺にクリスマスイブのデートを持ちかけた。


対して滝壺は落ち着いた感じで(ホントはちょっとドキッとしたが)、垣根に応えた。

学園都市にクリスマスが近づき、街全体があの言い知れぬ熱気に包まれ始めていたあの時。
441 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/07(日) 15:06:32.58 ID:vhhzhXQ0
――アイテムの仕事が終わり12月の夜の学園都市を二人であるいていた。


浜面の車が迎えに来るまでの少しの間に滝壺が垣根に言われた言葉。




「クリスマスイブ、理后ちゃん、あいてるよな?俺と横浜いこーぜ?」



言うことはちゃらちゃらした様な感じに聞こえるが、表情は真剣そのもの。垣根は緊張でガチガチに強張っていた。


滝壺が見たあの時の垣根。
いつもは高飛車でプライドの高そうな元学園都市第二位の男がさっと軽くあたまを下げた。
垣根を知る人が見たら卒倒しそうな光景だ。
442 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/07(日) 15:08:33.78 ID:vhhzhXQ0
滝壺が見たあの時の垣根。
いつもは高飛車でプライドの高そうな元学園都市第二位の男がさっと軽くあたまを下げた。
垣根を知る人が見たら卒倒しそうな光景だ。

「うん。いいよ。でも、かきね?」

「ん?なに?」

「言ってることとやってることが全然かみあってないよ?」

いかにもちゃらちゃらしたような表情だが、ぺこりと頭を下げてデートの確約をしようとする垣根。
その背反した様な光景があまりにもおかしくて滝壺はクスリと笑ってしまった。

「あー…はは。これはまぁ、ちょっと俺もマジってことなんだわハハハ…」

「そっか。じゃ、その日はちゃんとあけておくね」

滝壺がそう答えると、数秒間を置いて、よっしゃ!と声が聞こえてくる。
垣根がスリーポイントをたたきこんだ三井寿のようにガッツポーズを組んでいる。

(誘われちゃった…。クリスマスイブ…プレゼントどうしよっかな…)
443 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/07(日) 15:10:44.18 ID:vhhzhXQ0
もし垣根がクリスマスイブに誘ってこなかったら自分から言おうとした滝壺。
滝壺もホントは嬉しかった。

滝壺の返答を聞いて、数秒。
間を置いて、よっしゃ!と声が聞こえてくる。
垣根がスリーポイントをたたきこんだ三井寿のようにガッツポーズを組んでいる。

「ありがと。理后ちゃん」

滝壺の言葉を聞き、垣間見せる笑み。そしてすこし赤くなった頬。

(あんな真剣な表情のかきね、はじめてみた)

滝壺は思い出し、誰にも気づかれないように少しだけふふっと笑う。
444 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/07(日) 15:16:47.13 ID:vhhzhXQ0
実際、垣根と滝壺はクリスマスイブを迎えるまでに何度か遊んだ。

しかし、それはあくまでアイテムの皆で行った健康ランドやボーリング、カラオケ大会などで皆で仲良くわいわいという感じである。

なので垣根が望んだ様な二人きりで遊ぶというのは実はこれがゲレンデ以来初めてだったりする。



(…もう中途半端な関係はおしまい。付き合いを前提に友達をやってるっていういびつな関係は終わりだ)



垣根は確たる覚悟を決め、今日のデートに臨んでいる。

滝壺も垣根の純粋な気持ちに気付いて(もとからそういう関係を前提にした友人関係)いる。
故に、出来レースの様な気もするが、友人か恋人かの線引きをしっかりしなければいけない事は二人は理解していた。

垣根はそれに決着をつけようとしている。
滝壺もそれに応えようとしている。

二人の純粋な気持ち。それをこの日、この場所で確かめよう。
445 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/07(日) 15:30:35.85 ID:vhhzhXQ0
ガールズトーク。
服やお化粧、下ネタ、いろいろ。その中でもっとも話題にでるのはやはり恋の話だろう。



滝壺も今から数日前にアイテムの男衆(浜面、垣根)がいない時、垣根にデートを誘われた事を吐露した。
そして、どうすればいいのかと思い、アイテムの女性陣に相談というか、報告した。



滝壺が相談すると開口一番、麦野達はついにきたわね…と勝手に納得してうんうん頷いている。
アイテムのメンバーは滝壺が期待したようなまともな助言はしてくれなかった。
むしろ、当日に垣根がなんと言って告白するか賭けようとか、くだらないこといろいろ。
フレンダに至ってはおめでとうとか、クリスマスだからって変な所に行かないように!とか謎の警告を発していた。
446 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/07(日) 15:31:04.51 ID:vhhzhXQ0
茶化してくるアイテムのメンバー程ではないが、聖夜の前日という日程。


いまどきの若い男が女を誘うのに、ただの遊びな訳があるだろうか。
さすがに、か弱いウサギちゃん系の滝壺ですら、垣根がクリスマスに誘ってくるということの意味は重々理解していた。


おそらく垣根から何かしら言われるであろうことは想像がつく。
自分もそれには肯定的な答えを出そうと思っていた。
447 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/07(日) 15:32:07.76 ID:vhhzhXQ0
ただ、もしも垣根がそのような事を言わなかった場合、自分から言う勇気はあるか。
いや、自分は垣根が言わずとも垣根にしっかり自分の気持ちを伝えられるかどうか。
いやそもそも、垣根は私の事がホントに好きなのだろうか。


確定している出来レースにも不安は存在する。

事実は小説より奇なり。という言葉があるほどだ。

滝壺がいざその時になるまであらゆる可能性を考えてしまうのは暗部で培った悲しいサガなのだろうか。
448 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/07(日) 15:33:32.62 ID:vhhzhXQ0
それは垣根にもいえた。

滝壺がもし俺の事を振ったらどーしよう。
また冷蔵庫に戻るか…。

いや、ゲレンデに戻るか?

浜面から早く告白しちまえよと何度も茶化された。
確かにゲレンデの時より二人で話すことは多くなったし、会話自身も結構弾んでいる(はず…!)。

(いやー…らしくねぇ…。ここまで来たらもう俺の気持ちだって筒抜けだし、腹くくるしかねぇなわな…)

滝壺に振られる可能性を全て排除した未元物質の使い手はそれでも若干の恐れを抱きつつ、タイ焼きを一口頬張る。
449 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/07(日) 15:34:05.80 ID:vhhzhXQ0
しばらくして垣根と滝壺がすっと考えるのを辞めて、お互い目があう。

恥ずかしさから耐えきれずに顔をそらす二人。

二人はたいやきを食べ終わる。
取りあえず、映画まで時間がある。



「さっき言ってたシェーキーズ行こっか」

垣根は滝壺がタイ焼きを食べ終わると立ち上がった。

「おう。いこうぜ、理后ちゃん」


滝壺もたちあがり、二人は歩き出す。


手はまだつながないけれど、ゲレンデの時よりも二人の距離はもっと近付いている気がする。


今日こそ二人マンツーマン。

重なる聖なる時間、空間

どんな話をしよう

かたい話はなしとしよう


垣根はクリスマスイブ定番のチューンを思い出す。
450 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/07(日) 15:36:41.18 ID:vhhzhXQ0
「いらっしゃいませー」
(あぁ、帰ってあまんちゅ読みてぇ…)

聖なる日の前日にアルバイトをしているかわいそうな店員さんが、入店した垣根たちを満面の笑みで迎えてくれる。



リーズナブルな値段設定でかつおいしいピザが食べられるシェーキーズは様々な年齢層から人気だ。
とりわけ今日は幅広い年齢層でのカップルや夫婦が目立つ。



店内には軽快なジャズやソウルミュージックが流れている。
ちなみに今流れているのは「Through The Fire」というChaka khanの名曲だ。
451 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/07(日) 15:45:48.13 ID:vhhzhXQ0
さて、そんな音楽の話はどうでもいいとして、まずはお昼ご飯だ。

実は彼ら、朝ごはんを食べていない。



それは彼らの能力と暗部という肩書ゆえに外出申請が面倒で時間がかかる事に起因している。



滝壺も垣根もアイテムという暗部組織に籍を置いている。
故にアジトがあてがわれるのだが、先日からはお互い別のアジトで過ごしていた。
垣根は第七学区の立川駅周辺。

滝壺は多摩センター周辺の地下第23学区のアジト。

お互い、横浜からは遠い。

それを見越して二人とも早めに出たのだがアンチスキルに外出理由を詳しく聞かれたようだ。
452 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/07(日) 15:48:11.52 ID:vhhzhXQ0
さて、そんな音楽の話はどうでもいいとして、まずはお昼ご飯だ。

実は彼ら、朝ごはんを食べていない。

それは彼らの能力と暗部という肩書ゆえに外出申請が面倒で時間がかかる事に起因している。



滝壺も垣根もアイテムという暗部組織に籍を置いている。
故にアジトがあてがわれるのだが、先日からはお互い別のアジトで過ごしていた。
垣根は第七学区の立川駅周辺。

滝壺は多摩センター周辺の地下第23学区のアジト。

お互い、横浜からは遠い。

それを見越して早めに出たのだがアンチスキルに外出理由などを詳しく聞かれたようだ。
453 :あぁ、間違えた。すまん [saga]:2010/11/07(日) 15:49:25.98 ID:vhhzhXQ0
大能力者の滝壺は日本の境界線である町田でアンチスキルに引っかかったのは先述した。
早めに出たにも関わらず、クリスマスをデートして過ごそうとする学生達を嫉妬する警備員たちの半ば茶化しの様な誘導尋問に巻き込まれたのだ。

垣根も南武線を利用して横浜に向かったので、やはり矢の口駅で警備員に取り調べを受けた。
こちらの方は相当早めに出たこともあり十分まにあった。

しかし、待ち合わせに間に合った対価(?)として朝飯抜き、外出申請で時間がかかったのでいかんせん、腹が減った。
たいやき一匹だけではおなかがいっぱいになるはずもない。


((おなかへったな…))


ぐーっと、おなかがなる二人。

「かきね、おなかなったよ」

「理后ちゃんもなったぜ」

「ばれたか…」

二人は案内された卓からたちあがり歩き出す。
ふたりは荷物を置き、貴重品をポケットに入れるとピザを取りに行く。

こじゃれた店内の雰囲気とわいわいがやがやしている客たちの喧騒に垣根と滝壺も入り込んでいく。
454 :仕事に行く前に…。 [saga]:2010/11/07(日) 15:53:34.29 ID:vhhzhXQ0
さて、なんと読みにくいSSでしょうね。これ。

この後にむぎのんと浜面の1によるオナニーデートも書きたくなってきてしまいました。
当初短編にすると銘打っておきながら俄前長編にする気まんまんですね。
さーせん。

短編ということで読んでいる読者の方々には申し訳ないのですが、浜麦デート、どうでしょうか。

455 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/07(日) 15:55:54.78 ID:7dSxWXko
糖分はいくらあっても構いません
垣壷がこんなにいいものだとは思わなかった・・・!
456 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/07(日) 16:57:55.18 ID:0Cj.tvko
>浜麦デート

是非、お願いします!!
457 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/07(日) 19:01:32.67 ID:3ELUAVIo
さっきまで町田らへんいた気がするんだが
458 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/07(日) 19:28:01.76 ID:tFdhf2AO
砂糖吐きながら見てるから頑張れ
459 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/07(日) 20:05:24.66 ID:witQZ/g0
やってくれ!!
460 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/07(日) 20:34:25.54 ID:/7UkW6AO
レベル5二人とか凄いチーム
461 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/07(日) 20:48:01.99 ID:GZbLHxMo
糖分は生きるうえで必要不可欠なんだにゃーん
462 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/07(日) 22:24:04.73 ID:.NcoejU0
そう言えば題名に「フレンダ」と入っているけれど
フレンダは幸せになれないの?
463 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/07(日) 23:01:12.02 ID:drg5aL2o
>>462
超絹旗と百合百合してます
464 :わ!こんなに沢山レスが…! [saga sage]:2010/11/08(月) 16:49:10.85 ID:1xQTlh20
――上野駅、AM11:05


かつては東北方面から上京してくる人たちの受け入れ口となった上野駅。
現在でも上野の街は都市整備で整理されつつも上京してくる人々を受け入れていた当時の趣を遺している。

かつては大きな蒸気機関車が走っていたこの街は今では東京23区をぐるっと一回りする山手線、京浜東北線等のもろもろの列車を受け入れている。
そんな所に一人の男が降りる。



プシュー…と電車のドアが開き、乗車している客に押されつつ降りていくのは浜面仕上。

待ち合わせ時間に少し遅れて上野駅に着いた彼はまずは何口に降りればいのか?と考え、駅の表示をキョロキョロみている。

(えーっと…待ち合わせは確か上野の森美術館があるほうだから…あっちか!)

浜面が改札にいる人たちを足早にぬかしていく。

改札に切符を投入すると扉がバタンと開く。
競走馬のように勢いよくそこから飛び出る。そこには腕時計をみてちらちらと誰かを探している麦野がいた。

(うわー…五分遅刻しちまった…取りあえずあやまるか…お、いたいた)
465 :すまん。仕事行きます。 [saga sage]:2010/11/08(月) 16:51:50.66 ID:1xQTlh20
書きためは夜に投下します。

-------------

「沈利!遅れてごめんな!」

「うわっ!びっくりした…!待ち合わせ時間から五分遅刻だよー!はーまづらぁぁぁ…!」

「へいへい。申し訳ない。あんまこっちの方来たことなくてさ。ってか上野とか子供の時以来初めてかもしんね」

「私もあんまり記憶にないかなー…。物心着いた時には学園都市に預けられてたし、わざわざ学園都市から出るほど買いたいものってあんまりないしねー」


そこで浜面と麦野は学園都市の整備された都市でクリスマスを過ごすと言うよりもむしろ二人で外で遊んでみたいということになり上野で遊ぶことに。
466 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga ]:2010/11/08(月) 16:52:52.95 ID:1xQTlh20
上野はアメ横という電車の高架下の周辺に発達した飲食店や装飾品などもろもろの店舗が並んでおり、じっくり歩いて回れば相当時間をかけて回れる。

アメ横に行きたいと言い出したのは浜面だった。

麦野は別にこれといってどこですごしたいという願望はなく、浜面と入れればどこでクリスマスイブを迎えてもよかった。

(浜面と一緒に入れればどこでもいいのよねー)

そう思っていたが、そんな麦野に大きな変化が訪れたのはクリスマスイブを数日前に控えた日だった。
TVのCMで上野の森美術館で開催される芸術展が開催されていると聞き、急きょ麦野も上野デートを希望したのであった。



「んじゃま、最初に沈利が見たいって言った美術館行きますか」

「浜面の言ってたアメ横っていうのは行かなくて平気なの?」

浜面が行きたがっていたアメ横は麦野の行きたがっている美術館からはすぐそばで歩いて五分ほど。
まだ午前中だし、時間にはまだまだ余裕がある。

「平気だよ。アメ横はこっから近くだし。ほら、沈利」

浜面がすっと右手をのばすと麦野もすぐに左手を出す。
付き合い始めて最初の内は緊張に次ぐ緊張だったが、今では手をつなぐことはお手の物のようだ。

「ねぇ。今日は一杯たのしもうね」

「あぁ。そうだな」

二人は入館引換券をもらい、白い壁に飾られているさまざまな絵画に目を通す。
467 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/08(月) 20:15:23.24 ID:mKkCP6AO
上野でラーメン食いながら支援
468 :上野のあの雰囲気いいよね [saga ]:2010/11/08(月) 21:16:51.05 ID:1xQTlh20
自分の趣味が他人に知られるのが恥ずかしいと思う気持ちは誰にでもあるものだ。
少なくとも麦野沈利はそういう女だ。



彼女はゲレンデで浜面と交際関係を始める。
そこで浜面にアイテムの仲間であるフレンダ達も知らない様な趣味を持っていることを教えた。

それは石や音楽、そして今日の絵画。
浜面の前では自分の趣味を言えたり、実行できることがすごい心地いい。

別に隠しごとがいけない訳ではない。
けれど、麦野にとって浜面の前で『自分』をありのままにだせることが何より良い気分になれるのだ。

(できれば、私にもっといろいろ興味を持ってほしいな)

いつもは仕事で人を肉塊に変えるつまらない作業に打ち込んでいる彼女。その一面を自己否定するわけではない。
麦野自身、殺人を生業(なりわい)にしていて、そんな自分を受け入れているつもりだ。
こんな自分だが、自分をただの殺人鬼だと思わないでほしい。

浜面が麦野のことを『殺人鬼』と見ていないことはもちろん知っている。
大事にされている事も十分理解している。

けれど、不安で仕方ないのだ。時間が許す限り浜面に甘えたいのだ。


(もっと私を見てほしいな。…今日は浜面といっぱいたのしもう☆)


そう思いつつ、彼女は持参してきたデジカメで綺麗な絵画群をカシャっと一枚取る。

もちろんフラッシュは禁止なので、フラッシュはなし。
469 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga ]:2010/11/08(月) 21:30:57.14 ID:1xQTlh20

(うわー…これすごい綺麗…)

麦野が目を輝かせて見ているのはかつてイタリアで豪奢を誇ったメディシス家の女君主が十字教徒として神に召されるシーンを描いた作品だ。


(『マリー・ド・メディシスの生涯』…綺麗。大天使が何人も取り囲んで。ルーベンスの最高傑作ね…)


ここで言っておかなければならないが、麦野は取りたてて熱心な十字教徒ではない。ただの日本人だ。
そんな彼女が絵に魅せられたのは幼少期見ていたイコンの絵がきっかけだ。

麦野はこの後、ルーベンスの最高傑作の絵画を食い入るように見ていた。

マリー・ド・メディシスは決して名君であった訳ではない。むしろその逆。

しかし、天才的な画家ルーベンスに描かれたメディシスの絵は優美でルーベンスの実力をまざまざと見せつけている。
『ミネルヴァに扮したマリー・ド・メディシス』はそれを証明する最も最上のものであろう。

(すごい…こんなに繊細な…私も絵画は詳しくは知らないけれど、この絵を見るだけだえがいた人がすごかったて私でもわかる…)

麦野は中世絵画にすっきり魅せられたようだ。

「このメディシス王妃のシリーズはフランスの皇帝アンリ四世と一緒に映ってる作品もあるんだよ!けれど息子との争いでルーベンスは書けなかったんだよ!」

麦野は周りにいる見物客と一緒に添乗インの説明を食い入るように聞いていた。
たまにほうほうと軽く頷きながら説明を聞く素振りが浜面から見てめちゃめちゃかわいかったそうだ。
470 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga ]:2010/11/08(月) 21:32:07.69 ID:1xQTlh20
(沈利、説明めっちゃ聞いてるな)

浜面が一緒にいることを忘れているかのように熱心に説明を聞いている麦野。
その姿がたまらなくかわいい。


(あいつ、ホントに仕事の時とは違うなー)

浜面も持参したデジカメで麦野の事を隠し撮りする。


(熱心に絵画見てたり説明聞いてる沈利かわいすぎる…)


服もいつもお気に入りの黄色いコートとは違う。
麦野が絵画の説明を聞いている最中にちょっと今日の麦野のコーディネートを見てみよう。
471 :現実性を出すため実名。すいません。 [saga ]:2010/11/08(月) 21:33:05.10 ID:1xQTlh20
浜面から今日はいろいろ歩く、と聞いていたのでお気に入りのピンヒールブーツは断念。



その代わりに牛革スエードの黒のロングブーツをチョイス。
麦野の美脚を魅せつつ歩きやすい格好に。


ジーンズはAbercrombie&Fitchのローライズデニムをブーツイン。
ベルトにはVivienne Westwoodの鮮やかなバックルのものをチョイス。

上着にはノーブランドで黒のタートルネック。
その上からINDIVIの黒ロングコートを着ている。
472 :現実性を出すため実名。すいません。 [saga ]:2010/11/08(月) 21:35:31.27 ID:1xQTlh20
普段の麦野は黄色や赤、ピンクと言った色合いのものが好きだが、今日はちょっと地味だけれど麦野なりに大人っぽい格好にしてみた。
それが浜面には大受けのようだ。
浜面的には大人びたお姉さんという風の麦野を大変気に入ってる。


(ってかあの手袋やべぇよな…)

麦野の大人っぽい格好に惹かれている浜面をうならせたのは両手にはめられたファー付きの手袋。

(あれはガチでやばい。あれでほっぺたぺんぺんされたい)

確かに麦野の着用している手袋の破壊力はヤバイものがある。
最近二人きりになることがあまりないので手はつなげなかったが、ゲレンデでのあのか細い手…。
それは浜面仕上の頭の中の画像保存フォルダにしっかり保存してロックしてある。バックアップも十分だ。

(あぁ、麦野の手袋になりたい)

変態の極みである。


-------------

☆麦野の今日の服装
ブーツ:http://voi.0101.co.jp/voi/wsg/wrt-5_mcd-WW295_cpg-130_pno-13_ino-01.html?cid=dfs_as_pc_00000000
ジーンズ:http://item.rakuten.co.jp/d-garden/af-emmalowriseboot5/
ベルト:http://thumbnail.image.rakuten.co.jp/s/?@0_mall/love10/cabinet/free2/121029011_11.jpg
上着:タートルネックはノーブランド
コート:http://item.rakuten.co.jp/world-direct/r012120100212795302019/
手袋:http://welinaimport.com/leathershop/index.php?option=com_content&view=article&id=51:cfg01&catid=7:glove&Itemid=65

ってか安室のBaby don't cryです。本当にありがとうございました。
473 :現実性を出すため実名。すいません。 [saga ]:2010/11/08(月) 21:36:18.63 ID:1xQTlh20
麦野は一通り写真を見終わると満足した用だ。二人は売店でホットココアを買って館内の売店にあるテーブルに座る。



「なぁ、沈利。今日の服装ふつーにやべぇんだけど」

「やばいって?どーゆーこと?」


「…いや、なんつうかめちゃかわいい」

「……あ、ありがと///今日はいつもと違って黒メインにしてみたんだ☆」

「すっげぇ似合ってるぜ?俺はそういうカッコの麦野も好きだな」



浜面がうんうんと頷きご満悦のようだ。麦野も自然と笑みがこぼれる。
474 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga ]:2010/11/08(月) 22:50:31.18 ID:1xQTlh20
「浜面の格好もかっこいいよ」

「あ、あぁ!ありがと!いつものジャージじゃないぜ?結構頑張ったんだぜ?」


そういうと浜面はダウンのファスナーを少しさげて左右に動き、麦野に向かって完全ドヤ顔。
はぁ、と麦野はため息をつく。
麦野が自分のあごに右手のてのひらを乗せてふふふ、と笑う。

ほら、一昔前にはやった電車男のへるめすとかあったろ。あれだあれ。


「おおおおおい!沈利!?ひどくね?なんかコメントしろよ!俺がアホみたいじゃねぇか。笑うんじゃねぇぇ!」

「だって浜面、アホじゃん。ふふ」

「全く言いかえせねー」


そんなアホな男浜面は今日はClarksの黒デザートブーツにダークユーズドのLevis503。
ベルトはDIESELのシンプルなベルト。

白のVネックシャツの上にVANSONの赤と黒のワークシャツ。
アウターにはAbercrombie&Fitchのネイビーブルーのダウンジャケットをチョイス。


---------------
☆浜面の今日の服装
ブーツ:http://store.shopping.yahoo.co.jp/z-craft/10136911.html
ジーンズ:リーバイス503
シャツ1:Vネックシャツ
シャツ2:http://item.rakuten.co.jp/auc-rodeo/nvs-013r/
アウター:http://item.rakuten.co.jp/sp-plus/10035772/
ベルト:http://item.rakuten.co.jp/mb/-x-showon-03-x-/

大学生だな…。リア充っすね。
475 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga ]:2010/11/08(月) 22:52:16.36 ID:1xQTlh20
三十分ほど雑談をしてまだ少し残ったココアとコーヒーをくいっと飲み干すと二人はゴミ箱に飲み終わったゴミをすてる。

館内を出ると遠くから聖歌が聞こえる。
上野公園ではまだ正午ちょい過ぎにも関わらずカップルがベンチに座っていちゃいちゃしている。

「あーあー、まだそんな時間じゃないでしょうに?」

浜面がいちゃいちゃしているカップルをぼんやりと見ながら呆れたようにコメントする。

「まぁクリスマスだしいいじんじゃない?ほら」

麦野がそういうと浜面に手を伸ばす。

「一人じゃ歩けないにゃーん☆」

つい数十秒前まで一人で歩いていた麦野はいきなり歩けなくなってしまったようだ。

やれやれと心の中でため息をつきつつ、浜面は手を伸ばす。

「ふふ。気付くの遅ーい!ちゃんと手ーつなげー!はーまづらぁ!」

「はいはい」

素手の浜面の手にフワフワした感触の麦野の手が手袋越しに繋がれる。

(ったく、二人っきりの時以外でこんな素振り見せないからなぁ。ま、このギャップが良いんだけどよ)

かつては手をつなぐだけで顔を赤らめていた麦野もいくらかましになったよう。
顔は赤いが、手をつなぐ時にいちいちショートしなくなった。

「ありがとう。わたしだけのヒーロー☆はーまづらぁ」

「いってて恥ずかしくねぇのかよ…///」
(か、かわええ…)

「えー?平気だにゃーん☆」
(ホントは恥ずかしいけど、浜面から手つなごうって言わないからだよ!)

二人はアメ横に向かう。
476 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/09(火) 00:21:23.99 ID:qWycUKo0

「もうくえねー!腹いっぱいだぜ」

「私もおなかいっぱい…休みたい」

「ってかピザにバナナのってるとか斬新だよな…。しかもうめぇ」



「えっ。まずかった?バナナのやつめっちゃ美味かったんだけど」

「えっ」
(あれはあんまりというかむしろ超絶まずかった気がする…)

「ま…!人それぞれこの好みは分かれるし…!ははは。あーバナナピザクソマジぃな」

(かきね。むりにあわせなくてもいいよ)


人それぞれと言っておきながら無理に滝壺に合わせようとする垣根帝督。
平気。それぐらいで滝壺のあんたに対する評価は落ちませんよ。

シェーキーズでたらふくピザを頬張った二人は椅子にどかんと座りドリンクを飲んでいる。
結構食べたので只今休憩中である。
477 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/09(火) 00:22:57.87 ID:qWycUKo0
「さーってこの後だけどさ、映画見ないか?映画」
(ってかここで断られたら俺のメイン=プランは崩壊する…!)

「映画はちょっと…」

「マジ?」

「じょうだん。いいよ映画見たい。何見るの?」

「いやー、俺、絹旗程じゃないけど映画好きなんだよね。んで、ワールドポーターズで名作映画の再放送やってんだわ。今日は『You Got Mail』だ」

「ゆーがっとめいる?」

「あぁ。俺もずいぶん前に一回見ただけなんだけどさ。メグ=ライアンとトム=ハンクス主演のはなし。知ってる?」

「知らないどんな話なの?」

「あぁ。老舗本屋と大手本屋の人のはなしだぜ。恋愛映画だな」

ほうほうと滝壺は垣根の話に聞き入る。
垣根から見た感じ、滝壺はいきたそうだ。

最初は滝壺が何を考えてるかよくわからなかった垣根も、次第に何を考えているのかわかるようになってきた。

(理后ちゃんは無表情じゃねぇんだよ…よっくみりゃ何考えてるかとか感情とかわかるんだぜ)

垣根もだんだんアイテムの一員としてなじんできているようだ。
478 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/09(火) 00:25:29.47 ID:qWycUKo0
「ワールドポーターズっどこにあるの?」

「あー、あの中にあるんだわ。ちょっと歩くけど良いか?」

今滝壺達がいる所からは地味に遠いワールドポーターズ。

垣根が窓越しからぴっとワールドポーターズを指さす。

今彼らがいるのは桜木町駅の近くのシェーキーズ(実際は桜木町駅前にありません)。
汽車道を通って映画館まで歩く道のりは10分〜15分ほどかかってしまうようだ。


「いいよ。歩くのすきだから。あるこうか」

「そーこなくちゃ。外寒そうだけど歩きゃあったかくなるだろ」

シェーキーズは先にお会計を済ませるシステムなので彼らはバックを持って忘れ物が無いか確かめると外へ向かって歩き出した。

「ありがとーございました」
(うわー、帰ってガチであまんちゅ読みてぇ…)

店員の悲痛なお礼が店内に響き渡る。
479 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/09(火) 00:28:24.81 ID:qWycUKo0
「ねぇ、かきねって学園都市の人から戻ってきたことばれてないのかな」

「いや、ばれてるだろうな。アレイスターの野郎が何考えてっかわかんねぇけど、多分よく分からねぇ技術で監視されてんだろーな」

「なんか、電話の女もいつの間にかかきねが白馬から帰ってきたこと知ってたよね」

「あぁ。だから逆に考えたんだよ。学園都市は多分俺をもう必要としていない。アイテムに俺が入って学園都市の防諜部隊に入ってあっちは満足じゃねぇの?」

さらに垣根は喋る。

「学園都市第四位と第二位がいて大能力者と二人と火薬、爆薬の扱いに長けた人物が一人、機会いじりが趣味の無能力者が一人。こりゃ一個旅団並みの兵力だぜ?」

しかも垣根の親友のアウレオルス=イザードが学園都市に戻ってきているため、新生アイテムに喧嘩を売った場合、アウレオルスも援軍に駆けつける。
遠く白馬からはボードで知り合いになった闇咲さんや牛深さん、削(研)板も加勢する。

一気にここまで膨れ上がった広義の意味でのアイテムに喧嘩を売ろうなんて考える酔狂な輩はいないだろう。

「なんかひとのつながりってすごいね」

「だよな」

汽車道を歩きワールドポーターズに向けてゆっくり歩く二人。

二人で歩こうウキウキ、通り。
480 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/09(火) 00:52:24.14 ID:qWycUKo0
まわりには仲がよさそうに歩くカップル達。

垣根と滝壺もはたからみたらそんな仲の良い二人。

灰色な空から少しだけ陽が差す。
そしてすぐに雲に消えていく。

「さむいな…」

「うん」

シーン…。
会話の無い沈黙とは気まずいものとそうでないものが存在する。
今垣根たちが味わっているのはそうでないもの。

二人はそれぞれ違うところを見ていても取りたてて仲が悪いわけでないし、気まずい訳でもない。

(理后ちゃん、綺麗だな…)

(かきね、こっち見てる…///なんか照れる///)

ちょっと気まずいかも。
481 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/09(火) 00:53:23.50 ID:qWycUKo0

「ねぇ、あれ何?なんか赤茶のレンガ作りの小屋」

「あぁ?ありゃーえっと確か前に調べたぞ。確か赤レンガ倉庫だ」

「倉庫?どっかの会社の倉庫?それにしては一杯人いるよ?」

「いや、昔は企業の倉庫だったんだけど、今は飲食店とか雑貨店とかで占められてるらしーぜ?行きたいのか?」

「うん。映画終わったら行きたいな…いい?」



普段は滝壺から何かをしたいといいだす事は珍しかった。
垣根はそんな滝壺反応がちょっと嬉しく、直ぐに了承した。



「かきね、ありがとね」

「あん?どーしたよ。いきなり」

「ううん。わざわざクリスマス誘ってくれてありがとう」

「…おお!いや、俺こそな!ありがと!」
(いきなりどーしたんだ?理后ちゃん)

「私、自分の居場所、ここしかなかったから…」

「ここ?」
482 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/09(火) 00:53:58.19 ID:qWycUKo0
根が首をかしげる。
垣根は元々アイテムの初期構成員ではない。


むしろかつては垣根は学園都市の違う組織に身を置いていた。
なので滝壺の悩みを理解してやれることはできないのも無理はない。


「私は確かに大能力者だけど、体晶使わなきゃ能力が使えないんだよね。だから多少の無理をしても皆のために貢献したかった」

「なぜなら、自分の居場所がここしかなかったから。でもここ、そうアイテムは一杯人のつながりが出来て、私はアイテムにいてよかったて思う」


「俺もだよ。お前らが白馬「あうれおるす」にこなかったら俺はまだ冷蔵庫とか工場長とか言われてネタ扱いされてただけだ」

「俺自身もただのAI冷蔵庫で終わってたかもしれねぇ。それがここまで大きい人の集まりになって俺は嬉しいよ」

大きいといっても某説教学生のそれとは到底規模は違う。

それに比べたら小さいものかもしれない。

けれど、少なくとも垣根と滝壺は自分たちが身を投じているアイテムという組織は彼らの求めていた居場所になったのである。
人数は少ない。けれど、個人個人の繋がりは強固なものになっている。
483 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/09(火) 00:56:38.84 ID:qWycUKo0
「なぁ、理后ちゃん。俺がもっと本調子を取り戻せたら、俺がお前を補佐するよ」

「補佐?」

滝壺は首をかしげた。
何故なら滝壺は今まで麦野の照準補佐を行う役割を任されてきたから。
なぜ、私を補佐するのか?滝壺にそんな疑問が浮かび上がる。

垣根は灰色の空に向かって深呼吸をする。


「俺が完全に復活したら体晶を使わなくても、理后ちゃんがAIM追跡能力を使える未元物質を必ず生成するから。もう体晶で絶対に苦しませない」




「…うん。ありがとう。すごくうれしいし、なんかあったかいね」

ふたりはそう遠くない未来を創造した。

皆がお互いを助け合うアイテム。
いや、さらにその先。暗部がいつかなくなり、平和になった時の自分たちの姿を。

灰色の世界にひときわ輝く未来の光。そんな夢みたいな景色を見てみたいと思う。


「着いたぜ」

そんなこんなで二人はワールドポーターズに到着した。
484 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/09(火) 00:57:28.85 ID:qWycUKo0
「うわぁ、屋内あったかいね」

「外が寒かったから逆にあったかく感じるわな」

垣根はそんな会話をしつつ、館内の案内を見る。上映時間まであと三十分。とりあえずチケットを買いに行こう。

「もう二階上だ」

「うん」


エスカレーターに乗り、テクテク二階に進む。

映画館特有のチュロスの甘い香りが漂っている。

「今はチュロスのにおいかぎたくないかも…」

「俺もだ…」

バナナピザやデザートをいただいた二人にとって甘いにおいは禁物だった。

「ってか何も食べる気がしない…」

「こりゃ、おとなしく水だな」

垣根がチケットを二人分買っている最中に滝壺はちかくの売店で水を購入することに。
チケット売り場で自分の番が来るまでの間、垣根は滝壺がぴょこぴょこ歩いてる姿を目で追っていた。

(滝壺、かわいいってレベルじゃねぇな)
485 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/09(火) 01:00:16.32 ID:qWycUKo0
とその時、滝壺が小銭を落としてしまったようだ。
キョロキョロと周囲の床を見回している。

(おいおい、大丈夫か?)

垣根が見ていることに気付いたのか、不安げな表情を浮かべながらも滝壺が垣根の方を向き、首をかしげる。

(ないよーかきねー><)


もっとも周りを見ろよ!と垣根がきょろきょろする素振りをする。
滝壺はもう一回床を見る。

あった。滝壺が落とした小銭をキラーンと親指と人差し指にはさみ、垣根に見せる。
嬉しそうだ。

滝壺が両手に買った水を持ってこちらに走ってくる姿に垣根は数秒の間魅せられていた。
(…かわいい…かわいすぎるよ理后ちゃん…!)

「あのー…すいません…お客様?」

映画館のチケット購買員がマイクで何度目かの呼びかけを行って垣根は我に戻った。

「では高校生二名になりますね…三千円になります…」
(うわーリア充やん。帰ってベルセルクよみてー)

さぁ、『You’ve Got Mail』を見よう。
まだ携帯電話が発達してない時。
チャットで恋に落ちていく二人の物語り。

結末?
当然ハッピーエンド。
486 :1 [saga]:2010/11/09(火) 01:01:53.88 ID:qWycUKo0
今からジョギング行って寝ます。
遅筆すいません。

あーむぎのんとデートしたい。
明日また投下します。ではでは。

こんな駄SSよんでくれてありがとう。感謝。
487 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/09(火) 01:01:57.13 ID:lqlGZfMo
冷蔵庫とか工場長とかしれっと出てきたら吹くじゃねぇかwwwwwwww
488 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/09(火) 01:06:22.49 ID:qWycUKo0
>>487
すいません><
489 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/09(火) 01:22:40.37 ID:yCSgXUwo
砂糖が足りないよー
490 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/09(火) 06:01:35.96 ID:DpGTBEAO
あー滝壺に首輪つけて飼いたい
491 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/09(火) 20:24:29.59 ID:DesBeCc0
>>490
よほど愉快な死体になりたいらしい
492 :こんばんわ 少しだけ投下 [saga]:2010/11/10(水) 02:14:48.62 ID:PvMWkeM0
シアターに入ると予想通りと言うべきかかなりの人がいる。

列のど真ん中のベストポジションに二人は陣取る。
再発行されたパンフレットを購入した垣根はパラパラと流し読みしていく。

(トップガンといい、この時のメグライアンはやばいな。かわいい)

垣根がそんな事を考えていると滝壺のじとーとした視線を感じる。

「…」
「なに?理后ちゃん?」

「そんなにパンフレットばっかみてて…かきねはそんなにきんぱつがいいの?」
「いや、そーゆー訳じゃねぇって」

「そっか。……私もきんぱつにしよーかな」
「えっ」

映画館の中ということもあり小声のやり取りに。
滝壺はそんな中メグライアン(きんぱつ)に軽く嫉妬してしまったようだ。

「理后ちゃんは今のままが一番いいよ」

「///」

垣根が頭をやさしくなでる。すりすり。
滝壺からぽっとランプが点いたような効果音が聞こえたようだった。彼女のほっぺたがほのかに赤くなる。

「ふにゃあ」

滝壺は意味不明な事をのたまい、くにゃーと座席に脱力する。

(メグライアンにかったぁー)

ちょっぴり優越感を味わう滝壺であった。
493 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/10(水) 02:17:11.66 ID:PvMWkeM0
ブー、ブザーがなり上映前のCMが始まる。気違いじみたカメラ付きの男がくるくる回っている。
映画の盗撮厳禁である事を伝える役割があるそうだ。

(うわーこの動きやべぇWW)


そのフィルムが終わりしばらくすると映画の本編が始まる。
メグライアンとトムハンクスのラブストーリー。

(理后ちゃん…映画見てるかな)

垣根がちらと滝壺の方を向いてみる。真剣な眼差しで映画を見ている。けれど姿勢はだらーんと。
垣根も脱力した姿勢なりにだらーんとする。

(ははっ。リラックスしてるねー。あれ?)

その時ぺたりと垣根の手になにかあたる。脱力して手を下ろした直後だ。
494 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/10(水) 02:23:46.34 ID:PvMWkeM0
((?))

((手?))

うん。手。


二人はお互いの手に触れた事に気付く。

「」


声にはならない。映画館で声を出したらダメ。
二人はビクリとしつつも手を退けない。


いや、この言い方には語弊があるな。

滝壺は正直動揺して手をはなそうとした。
ただの接触だと思った。映画館は暗いしね。

けれど垣根が離さなかった。
495 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/10(水) 02:32:38.73 ID:PvMWkeM0
垣根の手は最初はぎこちなく、けれど手だけまるで別の生き物のように動く。

(理后ちゃん。いいよな?)

垣根が自分の指の部位と滝壺のそれをまさぐりながら確認してゆく。

(かきね?手繋ぎたいのかな…///)

自分の指が垣根にされるがままにいじられている。でも強引な訳ではない。
いやなら滝壺が手を引けばいいだけだから。

二人は飽くまで映画に集中している――ふりをしている。

まるで誰かにばれてはいけない。スリリングなゲームの様。
静まり返った映画館内で二人、手を握りあおうとする。
496 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/10(水) 02:34:40.44 ID:PvMWkeM0
滝壺の左手は垣根の右手に、やみくもに、けれど次第にからめとられていく。
そう、まるでクモの巣に嵌まってしまった哀れな虫のよう。

(つかまっちゃった)

滝壺はついに垣根にその左手を征服されてしまった。

二人とも言葉は発しない。
飽くまで静かに、闇の中の不埒なグレートゲームの軍配は垣根に軍配があがった。


(…かきね緊張してるの?)


垣根の手は少し汗ばみ、震えていた。クモならそうはいくまい。彼はもちろん人間だ。


(理后ちゃん、怒らねぇのか?いいのかよ)


垣根はここまであっさり。とは言わないが取り立てた苦労も無く、滝壺の手を握れた事に驚いていた。
497 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/10(水) 02:39:34.40 ID:PvMWkeM0
(……なんで何もいわねーんだ?いや、それとも俺を受け入れてくれたのか?)

垣根は混乱していた。滝壺がどうして欲しいのかわからない。
前に彼女が大体何を考えているかわかるとおお見得きったはいいが…。



それでも垣根は思う。

離したくない。怒られてもいい。

一度掴んだ滝壺の手を絶対に話すもんか。

無理矢理でもいい。滝壺を手に入れたい。


そう思うと自然に力が強くなる。ぐっ、と汗ばんだ右手に力がこもる。
498 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/10(水) 02:55:19.75 ID:PvMWkeM0
その時、垣根は滝壺がこちらを見ている事に気付く。
だらりと脱力しながら映画を見ている二人は後ろの観客からは見えないし両隣の観客から見てもリラックスしている様に見える。

「―――――――――――――――――――」

(え?)

滝壺が垣根になにか言った。
よく聞こえない。

「………なに?」


手を繋ぎながら垣根は滝壺の方を向き、小声で答える。


「かきね、ちょっといたいよ」

「……ワリィ」

二人以外誰にも聞こえない声でやりとりをする。
499 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/10(水) 02:57:41.50 ID:PvMWkeM0
恐る恐る垣根が滝壺の左手を握っていた力を緩めていく。
垣根はまるでここで万が一手を離したらもう永遠に手を握れないんじゃないかと恐れているような。

ゆっくりゆっくりと力を緩めていく。

滝壺と垣根の手は一旦離される。

じとりと垣根の手から発汗している汗。

(かきね…すごい緊張してたんだね…こんな私に…うれしいな…)

そんな滝壺の心情は垣根の耳には入らない。

(…り、理后ちゃん?)

垣根が滝壺と手を離したことで動揺する。対して、滝壺はさも当たり前の様に映画をみている。
500 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/10(水) 02:58:21.04 ID:PvMWkeM0
その時、垣根は感じた。滝壺の細くて薄い手を。

垣根よりも一回り小さい滝壺の手。
でも滝壺のそれは温かく、やさしく垣根の右手を握り返してくる。

垣根は滝壺の手をはっきりと知覚した。
そして繊細なガラス細工を扱う職人の様な手つきで慎重に滝壺の手を優しく、同じ程度の力で握り返す。

(かきねの手…おっきぃなぁ)
501 :おおー500行きましたね。初だ [saga]:2010/11/10(水) 02:59:50.79 ID:PvMWkeM0
さて、今日はここまで。遅くてすいません。
明日また投下します。
いつも読んでくれてありがとう。

文中にある誤字脱字は脳内返還で><

ではまたあした
502 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/10(水) 03:29:13.08 ID:9ddW9QAO
乙!
脳内返還ワロタwwwwww
503 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/10(水) 10:45:20.91 ID:lHLcJgMo
あーくそ、糖分が足りねェ
504 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/10(水) 11:44:42.03 ID:PvMWkeM0
わいわい、がやがや。

「うわー…人ヤバっ!はーまづらぁ」

「なんで俺の名を!?いやーガチで人がゴミのようだ…」

浜面達は上野の森美術館を出てアメ横の猥雑な通りに入り込んでいく。
アメ横には平日、休日問わずそれなりに人がいる。
クリスマスのそれはデートや買い物等の客でごった返していた。

「ゲレンデの時みたいにはぐれんなよ?」

「は?あんたが勝手に滑りに行ったんでしょー!?」

「あー?そーだったけ?」

そうですよーと麦野が悪態をつきながら応える。
二人が話すたびに口から出てくる白い息。
今年はどうやら相当寒い冬らしい。
そこで二人は何か温かいものを食べたいと思い、京浜東北線と山手線の高架下のモツ鍋屋に入る。
505 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/10(水) 11:45:25.61 ID:PvMWkeM0
「いらっしゃいー!あれ?おまえらいつぞやの」

店内で出迎えたのは頭にねじりタオルを巻き、半そでで店内を動いている削板軍覇だった。

「あれ?おまえら、何でこんな所にいるんだ?」

「いやいや、研板さんこそ。ゲレンデでバイトしてたんじゃないんすか?」

浜面と麦野はうんうんと頷き、再度削(研)板をみる。

「あー、ここは牛深のおっさんの知り合いの諫早(いさはや)さんが切り盛りしてる老舗店舗なんだわ。んで俺モツ好きじゃん?」

(しらねー)

「んで、ここに呼ばれたって訳だ」

「「ふーん」」

削板が麦野達と歓談をしていると他のお客さんに呼ばれてそちらへ向かっていった。
行く際に削板が麦野達を案内するように、香焼とかいうまだ絹旗と同い年くらいの子に頼んだ。
506 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/10(水) 11:46:04.64 ID:PvMWkeM0
「えーっと、店の中は人大杉なんで、外でもいいっすか?」

「構わないわよ?ねぇ、浜面」

「あぁ、別にどこでも構わないぜ」

「あざーっす」

そう言うと香焼は一度店内に入った浜面達を外に出るようにやんわり促す。
狭い店内から一度出る。ビニールの簡素な屋根越しに屈折した灰色な空。
今にも雪が降ってきそうな気配だ。

「あー、寒いっすよね?今暖房持ってくるんで待ってて下さい」

そういうと香焼は店内の奥から一基暖房を引っ張り出してきた。
レトロなタイプで真っ赤に燃えているヒーター部分が見える。

「学園都市じゃこんなレトロなやつないわよねー…」

「あー、そうだなぁ…なんか技術は学園都市の暖房の方が断然いいんだけどな…なんか」

「うーん、言いたいこと大体分かるわ。なんかこっちの方があったまる感じがするわよね」

学園都市製のヒーターは赤外線で人体を感知し、その部分に熱を放射し体を温めるといった優れ物だ。
無駄がなく、すぐにあったまれるというのが売りだった。
確か日本本国にもノックダウンして売られていたはずだ。
金額は確かそうとう高額。

けれど、それよりもむしろ、この風景になじんでいるこのおんぼろヒーターの方が浜面達はなぜかあったまれる気がした。
507 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/11/10(水) 11:46:32.73 ID:PvMWkeM0
少し投下したところで仕事へ。
ではまた夜にお会いしましょう。
508 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/10(水) 13:18:00.51 ID:QWItVMgo
熱輻射て知ってる?
509 :では投下。 [saga]:2010/11/10(水) 21:41:32.60 ID:PvMWkeM0
>>508
もう、恥ずかしい限りです…。
すいません…。

今gogle先生で調べました。

-------------

「へーい、お待ち!待たせたな!」

削板がどかんとモツ鍋と塩ダレ味の焼き鳥を持ってくる。

「おいしそうー!」

麦野は割り箸をパチンと割り、礼儀正しくいただきますというとモツ鍋の肉をパクンと一口。

「おいしー!浜面、これめっちゃめちゃおいしいよ!」

「マジで?じゃ、いただきまーす!……うんめぇ!」

麦野は今までこういう雑多な雰囲気の中で食事をしたことはほとんどない。
むしろ、こういう所でご飯を食べるのは想像もしてなかったし、食べようとも思わなかった。

(最初はこういうところで食べたくないって思ってたけど、これはこれでありね…!)

(これも、浜面と付き合えたからこそ出来たこと。まだ今日は長いし、いろいろ楽しまなきゃね)

寒さに負けないように一杯食べた二人はその後しばらくそこから動けなかった。
510 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/10(水) 21:42:49.78 ID:PvMWkeM0
さて、舞台は再度ベイサイド横浜。
時間は17時半を回ってもうすぐ18時に。
浜面達が食事をしている時間帯よりも少し先の時間になるが垣根と滝壺を見てみよう。



「映画よかった…」

「あの最後のほのぼのとした終わり方がいいよな。ってか俺も着信音『You've Got Mail』にしようかな」


二人は今映画館を出ておそらく日中よりも冷え込んでいるであろう外へ向かう。
映画館でつないだ手はそのまま。
まるで接着剤でぴったりくっつけてしまったように離れなかった。


「理后ちゃんがさっき言ってた赤い煉瓦の所行ってみようか?」

「うん。あの赤い倉庫は気になる」


そう言いつつ二人はエスカレーターを降りていく。
そしてウィーンと自動ドアが開く。外はすでに薄暗くなっている。
511 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/10(水) 21:43:27.54 ID:PvMWkeM0
「「うわぁ…!」」

滝壺と垣根は我を忘れて声を出していた。

桜木町駅からワールドポーターズに向けて歩いてきた二人が来た汽車道を振り返る。
日中はただの木だったのに、夜になって発光モールをくくりつけられていたそうで、鮮やかに光っている。

ベンチや芝生にはカップルが思い思いにクッソ寒い中座っておしゃべりをしている。

発行モールのさらに後ろには大きな観覧車が鮮やかに光っている。
時より観覧車のゴンドラから見えるフラッシュはおそらくデジカメで横浜のベイサイドを撮影しているカメラの光芒だ。


「綺麗だねー…」

「あぁ、ホントに綺麗だ」

横浜から桜木町、ベイブリッジ、みなとみらい…。一緒くたになり織りなす夜景に垣根たちは目を奪われていた。
512 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/10(水) 21:44:24.31 ID:PvMWkeM0
「あの赤い所も綺麗だね!いこうよ!かきね!」

「おう!っておいおい!走るなって!」


垣根の手をひっぱって少し離れた赤い倉庫まで走る滝壺。
その彼女の手に完全に引っ張られる形になりつつも歩調を整えて滝壺についていく。


(理后ちゃん、楽しそうだな…!よかった!)


垣根は滝壺の楽しそうな姿を見てほっと胸をなでおろす。
二人が向かっている、赤レンガ倉庫はもう目と鼻の先だ。
513 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/10(水) 21:45:23.14 ID:PvMWkeM0
「はぁはぁ…理后ちゃん、走るのはやいぜ…」

「…ごめん。ついコーフンしちゃって…」



滝壺は途中、あまりにも垣根が遅かったので手を離して先に行ってしまった。
ちなみに二人が今いる所は赤レンガ倉庫が二棟ありその真ん中。
広々とした空間の先にはコンクリ壁に叩きつけられたさざ波の音が聞こえる。



「ね、あっちも行ってみよー」

「お、おい、ちょっと待ってよ?」



垣根は走り慣れていないらしく、相当疲れている。

一見無口で静かな様に見える滝壺だが、興味の惹くものに関してはがむしゃらになる所があるようだ。
514 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/10(水) 21:48:09.22 ID:PvMWkeM0
垣根は先が海になっていて行き止まりの事を考え走らずゆっくり歩いていく。
滝壺は一つあいていたベンチに座って足をぱたぱたさせていた。

「ここだよ。かきね」

ほれほれと手を振る滝壺。
その横に座る垣根。

先ほどまで走っていて熱くなっていた体が急に冷えていく。
体が寒い。自然と二人の肩がくっつく。

「さむいなぁ…あ、なんか飲む?あそこに自販機あっから俺買ってくるよ」

「えーっと、カフェオレホット欲しいな」

「あいよ」

垣根が戻ってくると手袋を着けている滝壺の手を煩わせないように、事前にタブを開けたカンを渡す。

「ありがとう」
(あったかーい)

「あいよ」
(ほっとれもんうめぇ…)


ふぅー…とドリンクを飲む。白い息が口から出ていく。

滝壺の息と垣根の息が虚空で一つになっていく。
515 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/10(水) 21:48:44.57 ID:PvMWkeM0
「なぁ…理后ちゃん」

垣根が口を開く。
長らく夜景に魅入ってから発せられた一言。

それに反応し、おもむろに滝壺は垣根を見る。

「なに?かきね」



「俺、理后ちゃんの事が大好き」

「うん」



こういう時、なんて言えばいいのだろう。
相手に自分の気持ちを伝える最良の方法は?

良い日本語が思いつかない。
それでも垣根の唐突だけど真剣な問いに自分の答えを出そう。
516 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/10(水) 21:53:35.83 ID:PvMWkeM0
「理后ちゃんと付き合いたいんだけどいいかな」

「うん」

午前中に滝壺が気にしていたあらゆることが氷解して行くよう。
そんな錯覚に陥る。いや、錯覚ではない。

「さっきかきねが私のこと補佐するって言ってくれたこと覚えてる?」

「あぁ」

「すっごい嬉しかった。でも、もっともっと今よりもーっとかきねの事必要になっちゃうよ?」
滝壺も麦野と同様に自分を信用できないタイプの人間だ。
誰かに頼る事は恥ずかしくもなんでもないのに。


「それに、それに…私、こんなにひよわだし…迷惑かけ…あ」


滝壺の言葉がなぜ途中で遮られたのだろうか。
答えは簡単だ。


彼女たちは世のカップル達がごく当たり前のようにする、キスをしている。
いや、正確に言えば垣根がいてもたってもいられなくなり、滝壺のファーストキスを奪った。

「俺が理后ちゃんの事好きってことはどーゆー意味だか分かるか?」

「………」

「俺は理后ちゃんがどんなに俺に迷惑かけてもそれすら迷惑って思わない」

「だから理后ちゃんの欠点とかそーゆーの全部ひっくるめて好きって言ったんだぜ」

「これで付き合う事を前提の友人っていういびつな関係は終わりでいいよな?」




「うん」
517 :書きため作業に入ります。深夜にちょっとだけ投下します。 [saga]:2010/11/10(水) 21:54:21.41 ID:PvMWkeM0
「うん」

今まで他の人から見た二人はさながらカップルの様だった。

けれど二人は厳密にはそう言えない関係だった。

何故ならお互いの事を完全に知らないし、理解していなかったから。

今もまだホントにお互いがお互いを理解してるっていえるだろうか。わからない。
けれど、ゲレンデの時よりも遥かに深く、優しい心で二人はお互いの事を想っている。


ゲレンデからアイテムの皆で戻ってきて、三週間。
やっと彼らは結ばれた。




「だいすきだよ。ていとく」
518 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/11(木) 00:11:32.85 ID:MnxFbPIo
あまああああああああああああああい!!
たまんねっす・・・!
519 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/11(木) 01:27:13.27 ID:M/BGeDw0
ていとくぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
520 :1 [saga]:2010/11/11(木) 01:40:27.07 ID:oBoF.3Q0
すいません。飲酒の為書きため出来ずww
眠くなってきたから取りあえず今日は寝ます。

午前に少し投下する予定です。
521 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/11(木) 16:29:48.96 ID:YX/9c.AO
冷蔵庫爆発しろ
522 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 00:27:10.09 ID:8S5hFZE0
「おいおいおいおい!『かきね』から『ていとく』か嬉しいぜ」

「知り合いを名前で呼んだのはじめてかも」

「マジで?っつうことはだ」

垣根は考えた。
――もしかしたら理后ちゃんは初めての彼氏が俺?

そう大当たり。滝壺は初めて彼氏が出来たのだ。

「なに?ていとく」
(なまえで呼ぶのってすっごい緊張するんだ…)

「俺が理后ちゃんがの初めての彼氏ってこと?」

「…//」
無言。けれど、眠そうにしながらも赤面させてこくんと頷く滝壺の姿。
その容姿に垣根は頭をくしゃくしゃかき、身悶えている。
523 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 00:28:29.01 ID:8S5hFZE0
「ありがとな!ホントに」

垣根はそういうと滝壺の頭をなでる。

(それずるい…)

自分の頭をかく動作とはまたずいぶん違う。いたわるようにやさしく。

「かきねは今まで付き合ったことあるひといるの?」

当然滝壺の事を聞いといて、垣根だけ応えない訳にはいかないだろう。

(ていとくは私が付き合うの初めての人なのかな)

「はっはっは。愚問を!はっはっは!」
(ヤバイヤバイ。普通に初めてだって!チャラチャラしてるのは口だけっす!後は…雑誌とかのまねで…)


垣根はなーんか明言しようとしない。
いや、むしろ冷や汗でてますけど?

「ねぇ?ていとく、もしかして私が初めて付き合う人?」



こんな空気に耐えきれなくなったのだろう。
白状しよう。垣根は初めて付き合った女は滝壺だ。


「…………………はい。理后ちゃんが初めてです」
524 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 00:29:08.81 ID:8S5hFZE0
「ちょっと安心した」

「え?マジ?」

今まで彼女がいますよ、アピールを続けてきた垣根はいつしか引くに引けなくなっていたのだ。

「ていとくも初めてなんだよね?その…さっきのきすが初めてのきす?」

「…うん」

「ほうほう。なんか慣れてるような感じだったから、もしかしたら他の女の子と経験済みなのかと…」

「いえ、違います。ホントはドキドキでした。すいません」

「ふふ…」

滝壺が手袋をはめた手で口元を押さえながら笑う。その素振りがかわいい。

「なんだよ…理后ちゃん…」

「ていとく、今までのプライド高いていとくじゃないみたいだよ。なんかこう…」

「そっちがホントのていとくなのかもね」

そうなのかもしれない。
恋愛で今まで正直な素振りをしたことはあったか?
付き合ったことがないまでも、好きになった人くらいはいる。その人の前でも今みたいに正直になれていたか。

いや、おそらく出来ていなかったに違いない。
カッコつけて振ったり、カッコつけて振られた気持ちを紛らわしたり。

ホントは年相応に少年の様な男なのだ。垣根帝督は。
それを周りに指摘されるのがいやでどうしても大人の様な素振りを見せてしまう。

「わりぃかよ…俺は初めて彼女が出来たし、それが理后ちゃんでホントによかったよ。こんな俺じゃ駄目か?クールになんでも知ってるような素振りをする垣根帝督の方が好きか?」

「ううん。そのていとくだったら私は付き合ってなかったよ。だんだん私と話して素直になっていくていとくに私は好意をもったんだから」

「へっへへ。ありがとな」

垣根は安心した。自分のありのままの姿を出せる相手を見つけることが出来て。

二人はベンチを立ち上がり歩き出す。
長らく停泊している戦時病院船の氷川丸を左手に見つつ、二人は大桟橋へと向かっていく。
横浜のベイサイドを見よう。
525 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 00:31:09.29 ID:8S5hFZE0
――上野界隈

「ありがとうございましたー!!」

店員が礼儀よく会釈する。
店の奥から削板が手を振っている。

麦野と浜面はモツ鍋を堪能し、アメ横界隈を歩きだす。
料理の量が少ないので彼らはおなかいっぱいになるまで食べず、他の店に行くことに。
食べ歩きだ。

客引きの為にアメ横に立っている人たちは皆寒そうにしながらも精いっぱいの掛け声で歩く人々を呼びとめようとしている。

お昼時が少し過ぎ、夕方へと移行しつつある時間帯。
街はいよいよにぎやかだ。

「いいねぇ…この雰囲気」

「ね…初めて上野に来たけど、この雑多な感じが案外いいわね」

二人は手をつなぎながらまだ満たされない空腹感を満腹中枢で満たそうとし、次なる店を探していた。
そんな二人の歩の内、麦野がぴたっと止まる。
526 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 00:31:58.20 ID:8S5hFZE0
ブーツのコツコツとした音が消え街は人の喧騒が支配する。

「どうした?沈利」

「ねぇ…この店入ってみない?」

麦野が指さした店は御徒町方面へと抜けていく高架下のオールドアメリカン風のアクセサリーショップだ。
なんだか怪しいファンキーな店員がこちらを見ている。

学園都市にいる常盤台専属の美容師にそっくりな風貌だ。

「おいおい、なんかあやしくねぇか?」

「え?いいじゃん浜面、はいってみようよ!」

結局麦野に手を引っ張られる形で入店していく浜面。
527 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 00:32:42.89 ID:8S5hFZE0
(おいおいおいおい、まってくれー!)

(クリスマスプレゼントがネックレスなんだよー。ここでおそろいのネックレスでも買おうなんて言い出したらまずいって><)

ちょっと考えすぎの浜面をしり目に麦野は浜面の方を見る。

「ね、ね!あれなんかどうかな??」

黒いファー付き手袋が指すその先には…おそろいのペアリング。

(ほ、よかったー…値段も良い感じだし、買ってもかまわねぇな)

一気に安堵する浜面。

「いいぞ。沈利ちょっと着けてみろよ」

「はぁーい」

ふたりは付き合い始めて三週間ほどたっているが、まだペアリングを買っていなかった。
クリスマスに二人で買おうと決めていたのだ。


ちなみに麦野が今日渡そうとするプレゼントはシンプルに黒の手編みマフラーと手袋だ。
世界で一つの麦野が大好きな人に渡すもの。
それらは大事にバックにしたためてある。
528 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 00:33:08.82 ID:8S5hFZE0
左手の手袋をはずす麦野。
口で手袋の中指の先をかぷりと咥えてはずす。
その素振りがどうしようもなく妖艶に見えた。



手袋越しの麦野の手もさることながら、きれいな素手。
程良くのびた爪はネイルサロンでこの日の為だけに装飾した。



「沈利、指めっちゃ綺麗だな」
(なんか青いぞ。ターコイズを意識したのかな)

「えへへ。そう言ってもらえるとうれしいかな…☆」

そういうとファンキーな店員がショーケースに飾られた指輪を出す。
529 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 00:33:37.72 ID:8S5hFZE0
「どうぞ…お付けしてみてください…!」

「じゃ、失礼します…」

麦野が丁寧に左薬指に指輪をはめていく。
指輪は半分ほどはシンプルな銀色。残り半分の面は三つのハートが一つのラインで描かれたようなデザインになっている。

「綺麗…」

麦野が顔の前に右手をかざし、自分の手に深くはまった指輪に魅入っている。

「ペアリングお買い上げでしたら無料で名前も刻印できますよ?」

「いいじゃん。沈利。俺もこのデザインいいと思うぞ?」
「うーん。これがいいかも。他のやつだとシンプルすぎるし…後は男女でペアリングにするにはちょっとって感じのやつが多いし…」

「OK。沈利がこれでいいなら、これにしようか?」

「ううん。これ が いい!」
(ハートがさりげなくって感じで目立たないし、男が着けても問題ないわよね?)

「浜面、ちょっと着けてみてよー」

そういうと浜面は持参したバックを肩によいしょと持ってきてバックを抑えながら指輪をぎこちない動作ではめる。

「おおー。展示用のやつでサイズもピッタシだな。鏡、鏡」

鏡に映る麦野と浜面。その指にはおそろいの綺麗な銀のトリプルラヴィングハートのペアリング。
二人はにっこりと笑う。

(やっとペアリングかえたぜー!)
(浜面とおそろ…///)

二人はペアリングに刻印する名前を店員が渡したメモ帳に記帳する。
530 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/12(金) 00:35:22.92 ID:DfN.qPQo
ペアリングなー、いいなー。

昔駅のホームに投げ捨てたなぁ……
531 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 00:35:46.58 ID:8S5hFZE0
――三十分後

「大変お待たせしました!」

店内でいろいろな商品を仲良く見ていた二人。
どうやら寒いので店内から出なかったようだ。

店員の掛け声に反応し、二人はレジ前でペアリングを受け渡してもらう事に。

「この様な感じですがどうでしょうか?」

パカリと開けられるふた。そこには二人分の指輪が。


丁寧に磨きあげられた二人だけがつけることを許された指輪。

「きれい…ありがとうございます」

一度見ると丁寧に梱包しているケースの蓋を閉じる。

会計を済ますと二人は外へと出ていく。

「ありがとうございましたー!」
532 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 00:36:50.94 ID:8S5hFZE0
>>530
俺は喧嘩して仲直りして道を捜索したことありますww

-----------
「やっとかえたね!浜面」

「あぁ。これでやっとおそろいのペアリングかえたな!」


また外の寒い上野の街を歩きだす二人。

「ねぇ…浜面、指輪すぐつけたい」

「着けたいな。っていってもこんな所でつけたくなくね?もっと落ち着ける場所がよくね?」

「…どっかあるの浜面?」
(…二人きりになれる場所って言ったら…)

533 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 00:37:23.82 ID:8S5hFZE0
先ほどの店内では二人で指輪をつけることはできなかった。二人だけで、大切な指輪を着けたい。
麦野も浜面も絶対に二人になれる所を知っていたが、どうしてもそれは言えない。


もしそこに行こうものなら理性がどうにかなてしまいそうだから。

「ねぇ、浜面。私とえっちなことしたいって思う?」

「?????いきなりどうした!?!?!?」

麦野の唐突な質問の答えに窮する浜面。
指輪からあまりにも話が飛躍しすぎて、ついつい動揺してしまった。
534 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 00:37:49.50 ID:8S5hFZE0
「指輪つけるだけ…って絶対無理だよ…二人っきりになれる所なんて、その…そうゆう所しかないもん」

漫画喫茶があるとかカフェがあるとかカラオケがあるとかそういう野暮な事は言うな。
興が殺がれる。


「はっきり言うけど、そうゆう所ってホテルってことだよな」
(麦野はいいのかよ…)

「うん…」
(いいのかな…浜面は)



手をつなぎながら歩く二人。
下を向きながら歩く麦野は表情こそ確認できないが、耳まで赤く染まっている。
彼女がどうなっているかは推して知るべきだろう。
535 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 00:38:56.06 ID:8S5hFZE0
「ついたぞ…」
(がー!ガチで来ちまったよ…ラブホテル。避妊具一応買っといてよかったー!垣根のおかげだな)

すまない。ここまで読んでくれている諸兄なら分かると思うが、念の為に言わせてくれ。

垣根は童貞だ。例の通り、カッコつけて浜面に「ゴムくらい持ってけよ!?」とドヤ顔で言った彼の顔を想像してくれ。



さて、そんなことはどうでもいいとして…。

浜面と麦野は一旦コンビニでお菓子やジュースを買って後、ラブホテルの前まで来ていた。
536 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 00:39:33.60 ID:8S5hFZE0
麦野沈利の心臓は取れそうだった。
いや、もうなにがなんだか覚えていない。

上野のアメ横から歩くこと数十分。
二人は赤面したまま近場のちょっと高そうなラブホテルに来た。

(どーやってはいんだ?取りあえずはいってみっか…)

浜面が恐る恐る、足を踏み入れる。
そのうしろから引っ張られるようにしてはいっていく麦野。

(わわわわ…わたしきょう浜面とそういうことしちゃうの?????)

動揺して、心の整理がつかないままホテルへ。
ホテルに入るにおいて心の整理が必要というのも変な話だが。

「いらっしゃいませー」

無機質な機械の声。

「「え?」」

二人は驚く。まさか機械が案内してるなんて…。
浜面はてっきりフロントの人にニヤニヤ笑われながら部屋に入っていく様を想像していた。
537 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 00:40:12.56 ID:8S5hFZE0
ちらと横を見ると大きな電光掲示板の様な所に各部屋の写真が掲載されている。
暗くなっている部屋の写真の個所は只今使用中だそうだ。

明るくなっている場所は只今ご利用可能という訳だ。

(はまづらぁ…///はずかしいよぉ…///自分でふたりっきりになりたいとはいったけど…><)

指輪をはめるために二人きりで落ち着ける空間へ。その結果がラブホテル。
否が応でも指輪を着ける以外にも何かしそうな雰囲気だ。

(一応化粧セット一式は持って来たケド…)

「テキトーに…ここでいっか」

ぽちっとボタンを押すと部屋のライトが消える。
使用中を示す。浜面が押した部屋へと向かう二人。

会話も少なに二人はエレベーターに乗り込む。
538 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 00:41:14.49 ID:8S5hFZE0
カチャ

カードキーで開錠し、二人はそれぞれ靴を脱ぎ、部屋に入った。

「…おじゃましまーす」

別に誰かいる訳でもないのに、挨拶をする浜面はリビング兼ベッドルームへと足を運ぶ。
ロングブーツの為、脱ぐのに手間取った麦野が若干遅れて浜面のいる部屋にくる。

「うわー…結構広いんだ」
(ベッドがあるよぉ…しかもおっきい枕二つ…)

「初めてきたけど、案外広いんだな…もっとこう…雑な感じをイメージしてたわ」
(うぉぉぉ…ベッドあるぅぅぅぅぅ)

浜面は空調の暖房を入れ、風呂場の方へ行く。

「風呂はジャグジー付きだぞー!」
(ジャグジーとか、どうでもええええええ)
浜面は初めてのラブホテルという事でテンションあがったりのようだ。
539 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/12(金) 00:43:53.16 ID:DfN.qPQo
キャーキャー♪───O(≧∇≦)O────♪
540 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 00:44:42.73 ID:8S5hFZE0

「沈利…ひょっとしてこんな所来たくなかった?でよっか?」

風呂場から戻ってきた浜面は麦野がリビングにあるソファに沈みン込んで下を向いているのを見て隣に座る。

「ううん。出なくていいよ。ただ、ちょっと考えすぎちゃって…ははは」

「それはおいといてさ。取りあえず、沈利。指輪つけようぜ?」

「あ!そうだった!」

麦野は今後の展開を予想することに全演算能力を傾注していたあまり、すっかり初期の目的である指輪をつけることを忘れていたようだ。

さぁ、今こそ二人だけがつけることが許されるペアリングをつけよう。
そのあとどうするかはその時ふたりできめればいい。
541 :さーって [saga]:2010/11/12(金) 00:46:33.71 ID:8S5hFZE0
仕事行きます。

明日の夜にまたお会いしましょう。
性描写出来んのかよ?俺ww
542 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/12(金) 01:15:24.78 ID:2DuFZVIo
うわー またこれからってトコでwwwwww

乙です!仕事頑張って!
543 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/12(金) 08:21:40.74 ID:SL.VnE20
応援しているぜ☆
544 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/11/12(金) 14:30:54.70 ID:8S5hFZE0
>>542,543ありがとう。
皆さまの声援がやる気を起こさせます。

------------
パカリ

ペアリングの入ったケースをあける。

ふたりは10センチ四方程の水色のケースから指輪を静かにとろうとする。

「浜面が私の薬指に指輪入れてよ」
「あぁ。じゃ、沈利が…俺の薬指指に指輪…」

ソファーに座る二人。

「「……」」

南国のラウンジでよく目にするプロペラの様な空調機の風切り音がひゅんひゅん
と響く。

「じゃ、つけるぞ?」

「うん…」

麦野が左手をゆっくり広げる。ソファーで向かい合う。

ただの指輪をつけるだけの動作なのに、異様にドキドキする。

(浜面にこれをつけてもらったら、ホントに私は浜面のものになる…)

麦野の頭の中では超能力者(レベル5)の自分が下部構成員で無能力者の浜面の彼女になり、ペアリングを嵌める事に言い知れぬ感情を覚えた。
545 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 14:32:54.18 ID:8S5hFZE0
麦野がそんな事を考えている間にスポリとはまる指輪。


「ありがとう…すごいうれしいよ。つぎは私が浜面に指輪する番だよ」

「あぁ。頼むわ」

麦野がよいしょ、といい浜面の方に身を寄せる。

(沈利と同じ指輪…ホントこんな美人で俺思いのひとに巡り逢えてよかった)

「はい☆でーきた」

「ありがとう。沈利」

「えへへ、どういたしまして☆浜面だーいすき☆」

麦野は指輪がはまった左手を掲げ、子供の様に目をキラキラさせる。

「俺も大好きだぞ。沈利」
546 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 14:33:50.53 ID:8S5hFZE0
浜面はそう言うとハンガーにアバクロのダウンをかける。
バンソンの赤と黒のチェックシャツ姿になる。

麦野も部屋の中でコートを着続けるのはおかしいと思い、ハンガーにコートをか
ける。

二人は向き合う。
左手を固く繋ぐ。

浜面が余った右手で麦野を引き寄せる。

「きゃっ」

浜面に途端に引き寄せられた麦野は上擦った声をあげる。

コートを脱ぎ、ボディラインが浮き出ている黒のタートルネック姿の麦野の姿は
そこらの二流モデルが束になっても勝てないプロポーションだ。

両手が上がっていた麦野だが、浜面の強引なハグに徐々に力が抜けていくような
感覚を覚える。

(もう、浜面になら何されたっていい)

一時の感情の波に飲み込まれそうだ。けどそれでいい。

(浜面なら私を守ってくれる。そう信じてる)

浜面も理性という支柱が今にも崩れそうだった。
547 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 14:34:19.39 ID:8S5hFZE0
みずみずしい唇、薄くチークを塗ったピンクの頬。さらにことある事に赤面する顔、トリートメントの程よい香りと香水の香り、他にもあげたらキリがないだろう。

浜面は麦野のそれらの要素に骨抜きにされていた。

「愛してる」

「うん。わたしも愛してるよ」

「ずっと一緒にいような」

「うん。一緒にいる。約束するよ」
浜面の指が麦野の唇をなぞる。

「グロス、手についちゃうよ?」

「いいんだ…」

浜面が麦野の唇から指をはなした瞬間、麦野の唇にぴたりと浜面の唇がふれる。
今までにない濃厚なキス。
コートをかけるところで演じたその情事をベッドに写してしようとする。

「…ぷはぁ…沈利、こっちきてくれ」
「…ふぁ、なぁに?」

二人は一旦キスをやめる。
浜面ががばっと麦野を抱える。まぁ、あれだいわゆるお姫様抱っこ。

「ちょ!?えっ!?コラ!重いよ?私。最近幸せ太りしたでしょってフレンダ達にいわれるし…あっ」

そうこう言ってる間に麦野は優しくベッドの上に下ろされる。
ベッドはふかふかしていて気持ちいい。

「わりぃ、沈利。隣いくぞ」
548 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 14:35:27.02 ID:8S5hFZE0
(え?ちょ、ちょっと?え?)

当たり前と言えば当たり前なのだが、慣れない麦野は動揺。

浜面も我慢出来ずに半ば強引な感じだ。

(浜面…ちょっとこわいよ…)

麦野の横に浜面が添い寝してくる。
一気に麦野の体温が上昇する。

「私服きたままだよ?」

「いつも裸で寝てるのかよ。お前は」

「違うわよ!けど、浜面ちょっと怖いよ…私が緊張し過ぎててカチカチに固まっちゃってるからいらいらさせちゃったのかな?なら謝るから、ゆっくりさ?ね?」

浜面は、麦野のその語りかけでハッと我にかえる。

正直、ハンガーにダウンを掛けた時点で理性のタガが外れていたのかも知れない。

「わりぃ…お前がほんっとにかわいかったから…頭がおかしくなっちまいそーになって…とにかく、怖いおもいさせちまってすまん」
「ううん。うれしいよ。私みたいなので無我夢中になってくれる浜面がいてくれて」
549 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 14:36:02.47 ID:8S5hFZE0
「ふぅ」

浜面が深呼吸をして一旦ベッドからでる。首から下を潜り込ませてる麦野はキョロキョロと浜面を見る。

「沈利、俺風呂入るわ。なんか変な汗かいちまったわ」

「あ、うん!じゃ、ここでまってようか?」

「いっしょに入ろーぜ?」

「ええええええ?……あわわ…」
(えらいこっちゃ…)

「だめか?」

「み、み、み、み、みずぎないよ」
「いらねーだろ、んなもん」

「そうだよね…あはは…が、がんばるわ///」
(つ、ついさっき冷静になったんじゃなかったのかにゃーん?)

先程の様に浜面は焦っていないし、冷静さに欠ける訳でもない。

むしろ、純粋(?)に一緒に入りたいと思ったのだ。
それは目の前にいる麦野が浜面の目を見ればわかることだ。
550 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 14:37:33.39 ID:8S5hFZE0
「とりあえずお湯張りますか」

浜面がバスルームに消えていく。
その直後にザババババと水がほとばしる音が聞こえてくる。

(ひゃあ…ホントに入るのかな…)

麦野はベッドの中で足をもぞもぞさせている。
あぁ、こんなことになるならここ数日イスラム教徒よろしく、ラマダーンを実行すればよかったといまさらながら後悔する。

(ってちょっと待ちなさい待ちなさい。私なんでもう浜面と入る気満々なのよ?)
551 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 14:38:30.72 ID:8S5hFZE0
「とりあえずお湯張りますか」

浜面がバスルームに消えていく。
その直後にザババババと水がほとばしる音が聞こえてくる。

(ひゃあ…ホントに入るのかな…)

麦野はベッドの中で足をもぞもぞさせている。
あぁ、こんなことになるならここ数日イスラム教徒よろしく、ラマダーンを実行すればよかったといまさらながら後悔する。

(ってちょっと待ちなさい待ちなさい。私なんでもう浜面と入る気満々なのよ?)
552 :>>551、重複すまん。 [saga]:2010/11/12(金) 14:39:10.73 ID:8S5hFZE0
(俺はなんて事を言ってしまったんだ…一緒にお風呂入ろう、なんて…)
(でも…付き合ってたらいずれは…裸のお付き合いをする訳で…!ええい!)

麦野がいるところからは見えないが、浜面の服を脱ぐ音が聞こえる。
一拍置いてザバーンと湯船につかる音が聞こえ、麦野はベッドにもぐりこむ。

(今、今!浜面がお風呂に入りました!)

誰も聞いていないし聞こえていない!
一人実況をする麦野。

ベッドからそーっと顔を出し、そのタイトなアバクロのローライズジーンズが床にピタッと触れる。
彼女はそーっとバスルームの方を見てみる。
乱雑に放られた浜面の衣服、ドア越しに聞こえる浜面の声。

「ぷはー…気持ちいいなー。おーい沈利ー?」


「な、ななによ…?」

「なにって、はやくこいよー!外寒かったからマジですっきりすんぞ?」
553 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 14:39:36.09 ID:8S5hFZE0

「え?でも、浜面はその…もうすっぽんぽんな感じなのかな?」

「あー、わりぃが生まれた時と同じ姿だな。あ、でもなんだ…大事な所にタオルは巻いてるぞ?」

「そう…」
(やばいあややばいやびあやび)

麦野、落ち着け。

「沈利、やだったらホントに無理しなくて良いぞ?」
(いや、すいません。ホントは入りたいっす。一緒に)


「浜面ずるいよ…さっきは一緒に入りたいって行って、今は入らなくてもいいなんて…そりゃ、入りたいに決まってるじゃん…」

麦野はすとんとバスルームの前に座る。背中越しに伝わるバスルームの熱気。
この数センチの浴室ドアの先に浜面がいる。
浴室ドアからでは肌色のかたまりが動いているくらいにしか見えない。けれど、その先にいるのは浜面。
私の彼氏だ。いこう。遅かれ早かれいずれ裸になって一緒になって、肌を重ねることになるのだから。


「今から私もそっちいくから…」
554 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 14:40:26.71 ID:8S5hFZE0
「おまたせ…」

麦野はホテルのバスタオルを巻き、栗色の髪は髪止め用のゴムでまとめ、頭のてっぺんでお団子になっている。

浜面と麦野を隔てていた浴室ドアをおもむろにあける。
そこには当たり前なのだが、肌色のかたまりではなく、浜面がいた。

「…おう。こっちきなよ沈利…」

バスタオルで全てカバーできるはずがない、豊満な麦野のボディライン。
よくて胸の谷間の上のあたりから太ももの半ばまでしか隠せていない。

「あんま見ないでよ…太ってるし…その…あの…恥ずかしいし…」

ぽちゃ。
大きい湯船に左足から入る。
あったかい。

「こっちこいよ」

麦野が湯船の端っこにいこうとするが、呼び止められる。
ほんの数十センチの距離なのだが、一センチ近付くたびに心拍数が早くなる気がした。いや、事実早くなってる。
555 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 14:41:18.13 ID:8S5hFZE0
浜面の右手が麦野の背中にまわされる。
水を吸収して重くなったバスタオルが自然と取れる。

「あっ…」

気付いた時にはもう遅かった。
生まれた時の姿と同じ。つまり全くの裸になってしまった麦野は浜面に抱かれかっこうになった。

「タオルがないと恥ずかしいよ…」
(浜面の胸板…ごつごつしてる…)

「もう丸見えだぞ?麦野…すっげぇ綺麗だよ」
(胸ででけぇええええ。どんくらいあるんだ?ってか俺の胸板にあたってますけど?)

「ありがとう…えへへ。こんなカッコ人前でするの初めてだよ…」

「安心しろ、俺もだ。ましてや同年代の異性の子にこんなカッコ見られるなんてな」

「ねぇ、浜面」

「ん?なんだ?」

浜面がおでこに噴き出た汗を拭う。
麦野は浜面に抱きつかれている状態から一旦抜ける。

距離を置いて、あらわになった麦野の乳房に浜面は完全にみとれてぽかーんとだっらしのない表情になっている。
556 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 14:41:58.63 ID:8S5hFZE0
「浜面の事大好き。私あんた以外に絶対にこんな姿みせない。だから、私をみだらな女だと思わないでね」

「あぁ…当たり前だろ。俺はお前以外、誰も見てない。興味がない」

「ありがとう浜面。あなたと一緒にいれて幸せだよ」

「俺もだ」

そう言うと二人はもう一度強く抱き合う。
互いを強く求める。決して離さないように。

二人の舌が少しでも、少しでも奥へ行きたいと主張する。二人のとろとろにからまった唾液が湯船に水滴のように落ちていく。
出来れば、麦野のなにもかもを知りたいと思う。出来れば、浜面の全てを知りたいと思う。

お互いの口をおかしていく舌は激しくからみあい、二人の息は徐々に早くなっていく。

(あぁ…幸せだわ…大好き)

(コイツだけは絶対に離さない)

麦野のグロスがほとんどなくなってしまう頃、やっと二人は我に帰る。
557 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 14:42:30.79 ID:8S5hFZE0
「じゃ、体軽く洗いますか」

ざばん!と風呂からあがる浜面。
腰のあたりに巻かれたタオルは下腹部のあたりでなぜか山のようにそそり立っている。

(これが…その…浜面の…)

初めてみた。いや、まだタオル越しだが。
男のいちもつをこんな超至近距離で見ることになるなんて。一体、予想できたであろうか?

「あ…わりわり…!あはは!いや!あっらー…おさまりませんねぇ…あはは」

浜面は気まずそうに頭をかく。
麦野はじーっとソレを見ている。

(視棺されてるッ?)

違います。興味津津なだけです。

「ねぇ…浜面、私タオルとったよ?浜面も取ってよ?」

「あ…あぁ…。いいのか?」

「うん。こわいけど…いいよ」
558 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 14:43:27.77 ID:8S5hFZE0
すまん。ここまで。
書きためあるけど、電車のらなきゃ。
二日ほど旅行に行くので、投下遅くなるかも。

下手な性描写すいません。ほんっとすいません。
559 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/12(金) 14:45:37.95 ID:IlFP1xEo
苦手とか、何言ってんすか ?

ごちそうさまです
560 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/12(金) 17:16:10.40 ID:4QqbggAO
なにこれ可愛い。
遅くなろうが待ってるぜ!
561 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/13(土) 01:10:27.56 ID:.FG7zLU0
両手で顔を覆う麦野。しかし、よく見れば指と指は離れており、そこからチラーっと覗き込んでいる。

ぽろり。

「はい!こんなんですよ!すいません!あー死にたい死にたい」


(浜面の…)

まぁ、こんな状況になっててめぇのモンがおったたねぇ方がおかしいだろう。
浜面はむしろ男としての生理現象に忠実なだけだ。

顔から両手を下ろす。
麦野はそんな興奮していきり立ってしまった浜面のモノを直視して思った。

「私の事考えてあそこまでその…たっちゃてるの?」

「あぁ…そうだよ。俺のジュニアがどうしてもおさまらないのは沈利のせいだぞ!」

「こんなわがままな処女の体みてたっちゃてるのかにゃーん?このジュニアは?」

「はう!その通りです…」

浜面は風呂用の椅子に鎮座しつつ湯船でリラックスしている麦野に応える。もちろん浜面のジュニアはカッチカチにたったまんま。
562 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/13(土) 01:11:19.02 ID:.FG7zLU0
「嬉しいよ。こんな私の事考えて、浜面がそんなに興奮してくれるなんて」

麦野も湯船から出る。もう二人を覆い隠すものは何もない。
シャワーから出るあったかい水。そこから出る湯気。

麦野は浜面の前にすとんと座る。

「浜面、体洗うよ?」

「…お願いします」
563 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/13(土) 01:13:15.75 ID:.FG7zLU0
まずは首の下から。麦野はアメニティで完全滅菌消毒されていたボディタオルを手に取り、ボディソープを垂らしていく。
首の後ろから、ゆっくりと前の方へ。のどぼとけまでゆっくりと包み込むように。

「なんか、そのあたってるぞ…麦野。お前の胸…」

「だめ?レベル5の大サービスよ?」
(わざとだにゃーん☆)

先ほどまで素人丸出しだった麦野は途端に大人びたよう。
一方、浜面はあらわになっている麦野の胸に見とれている。

優しく体を洗っていくその所作もさることながら、麦野の大きく膨れた胸が浜面の上半身を滑っていく感覚は彼をおかしくさせそうだった。
564 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/13(土) 01:14:27.87 ID:.FG7zLU0
麦野の浜面手洗いツアーが腹筋のあたりまで来る。いよいよ、下半身か?浜面は期待する。
しかし、麦野はくるりと浜面の背中に回り込む。

「まずは背中からだにゃーん☆」
(しまったー。あのジュニアはどう洗えばいいのかしら?)

背中はタオルで丁寧に洗い流していく。
途中背中に胸を当てて、浜面に抱きつき、素っ頓狂な声を出させたりもした。

(さて、いよいよ下半身ね…)

下半身。いや、違うな。正確に言えば麦野は浜面の男性器をどう洗うか。それに逡巡する。
565 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/13(土) 01:14:55.64 ID:.FG7zLU0
「あ、おい沈利。下は俺があらうから平気だぞ?」

「だーめ」
(とは言ったものの…あ…確か前に絹旗達と見たギャル系の雑誌の特集で…!)

彼女たちがかつて見たのは『SEX特集・これで男もあなたにめろめろ』とかいう訳のわからないもの。
けれど、今は心底その特集を読んだ自分に感謝した。

(あぁ…たしか、こうこするんだっけ?)

浜面の背中からずいっと伸びてくる麦野の両手。
手には大量のボディソープ。

「おいおい?なに触ってんだ?おい!」
「えへへ。洗ってあげるにゃーん☆」

「うわ…おい!…くっ!…わり…めっちゃきもちい…」

「浜面、気持ちいいのかな?よかった…」

浜面は完全に麦野の事を舐めていた。
彼女は確かに処女だが、浜面を喜ばせようと必死に研究していたのだ。
566 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/13(土) 01:15:35.50 ID:.FG7zLU0
(こう、こする感じで…上下に…こんな感じかな?)

しゅしゅとしごかれていく浜面のそれ。
麦野は背中越しからそれをみる。

(浜面の大きい…こんなの私の中にはいるのかな…?)

ここまでやってしまえばおそらくこの後ベッドに戻った時に…。
それでもいい。むしろそうありたい。

二人は意志疎通はできなくとも、同じくそう思った。
567 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/13(土) 01:17:59.00 ID:.FG7zLU0
「沈利…ごめん。ちょっとヤバイ。ストップ」

「あ、ごめん…!」
(これがイクってやつなのかな??よくわからないわね…)

「今度は俺が洗うよ。いいだろ?」
(あーやべー。一人でする時よりも全然早かったわ…!)

「え?マジ?私、ふとってるし…そのだめだよ…きたないよ…?」

自分が洗われることは全く考えていなかったようだ。

「汚くない。沈利の体…その…綺麗だから…!」

「うん。ありがとう…///じゃあ、お願いします…」

麦野が風呂用の椅子にすとんと座る。
攻守交替だ。
568 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/13(土) 01:23:51.95 ID:.FG7zLU0
「あんまり見ないでね…」

「いまさら何言ってんだ?お前だって俺の裸みたくせに」

そう言いながらまっぱの二人。
今度は浜面が麦野の体を流す番だ。

「じゃ、俺は背中から…」
(いきなり前の小高い丘二つは無理です><)

浜面はボディソープをボディー用のタオルにしみこませて泡立たせていく。

「じゃ、いくぞー」

栗色の髪はおだんごになって結われている。
あらわになっているうなじからゆっくりと首の回りを洗う。
首の前の部分を当たる時にしっかりキスをする。

「…あぁ」

麦野は浜面の不意なキスに一気に襲われて、目がうつろになる。

(はう…うしろからいきなりはずるいよ…)
569 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/13(土) 01:25:12.33 ID:ehzF/bco
おおおおう……
570 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/13(土) 01:45:40.75 ID:.FG7zLU0
いまさらだけど、ここってエロ駄目だっけ?
571 :いーや。かまわねぇ。投下 [saga]:2010/11/13(土) 02:11:52.34 ID:.FG7zLU0
キスをかわした後は浜面は背中を優しくさするように洗ってやる。

(背中、綺麗だな)

素人目にみても麦野の肌は丁寧に手入れされている事がわかる。
彼女は暗部の仕事がない日によくエステに出かけているらしい。

「さーって、背中は完了しましたよ?前いいか?」
(沈利のおっぱい洗う…これはヤバイ)

「うん。その…優しくね?」

麦野の背中側に位置している浜面。

「はいよ。じゃ、ちょっと両脇に手通すぞ?」
(これしか良い洗い方が思いつかなかった…)

「ひゃう?ちょっと?浜面?」

麦野が焦るのも無理ない。
何故なら麦野の両脇からにょきっと浜面の手がつき出てきたからである。
572 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/13(土) 02:13:26.41 ID:.FG7zLU0
浜面の手には大量のボディーソープ。
おわかりだろうが、彼は麦野の胸を洗うと言うよりも、むしろ揉むことに主眼を置いているそうだ。

「ちょっと、そんなにボディソープ使って何する気なのよ?ひゃあ!」

浜面は黙々と麦野の豊満な胸を揉みしだく。
手にボディソープをつけていることもあり、麦野の胸はぬるぬる滑りつつも、相当気持ちがよさそうだ。
「あ…ひゃ…ちょっと…やめ……き…いい…から!」

「やだ、やめないよ。さっき俺のジュニアをいじめた罰だな、こりゃ」
(あえいでる沈利最高にかわいいな…)

浜面のぬるぬるボディソープによる麦野の上半身流しはもはや、胸にだけ集中したただのペッティングとなってしまったようだ。
573 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/13(土) 02:17:39.62 ID:.FG7zLU0
「は、はまづらぁ…だいすきぃ…」

声が出るのを抑えようともしない麦野。
その中途半端に開かれた口に浜面はもう一度後ろからキスをする。

しっかりと舌を絡ませる。ねっとりとした二人の唾液があわさる。

浜面は自分の唾液を少しでも麦野の体を構成する物になってほしいという願いから。

麦野も同じ考え。二人は生成されて直後の口腔にある唾液を供給していく。

キスをしつつ、浜面は麦野の恥部に手を伸ばそうとする。
熱い口づけを交わしている麦野は気付いていないようだ。

「いいか?沈利?」

浜面の声でやっと気付く。

「…ここ、いちばんきたないよ?いいの?」
「きたなくない」

「じゃあ、浜面がしたいならいいよ?」

そう言うと少しだけ、麦野は両足の力を広げ力を抜く。
ちょっとこわい。目をつぶる。
574 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/13(土) 02:19:01.91 ID:.FG7zLU0
(いたいのかな?)

「ねぇ…浜面?その…浜面の指はいっちゃうの?」

「そんな感じかな。なんか一日でいろいろなことしすぎかな?俺ら」

確かに。高校生の性のステップアップは一日ではなくて段取りを踏み行っていく傾向がある。
そんな人たちに比べてみても彼女たちは一気にお互いを求めるようになっていったのだ。

「ううん。いいのそれは。ただ、私がちょっとだけこわくて…今日何度も言ってるけど、ホントに優しくしてね?」
「あたりまえだろ?沈利。…ちょっとリラックスしてみ?」

麦野が薄く眼を開けると穏やかな表情の浜面がいる。優しく左手で頬をなでる。
一方で右手は麦野の両足のさらに深淵へと向かっていく。

「いたかったりしたら言ってな?」
(今までエロ本とか、バニーAVで研究しといてよかった…!)
575 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/13(土) 02:20:35.01 ID:.FG7zLU0
ぷちゅり。
右手の中指がゆっくりと麦野の膣にはいっていく。

「…はっ…あ…やぁ…」

「いたいか?」

首をフルフルと振り、否定の素振りをする麦野。

(痛くないよ…むしろきもちいいくらいだよ…///)

浜面の右手の薬指が上下に動く。
そのたびに水の音とはまた別の、蜜とでもいおうか。
それらの音と麦野の嬌声が二人っきりのバスルームにくちゅくちゅと響きわたる。
576 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/13(土) 02:21:26.61 ID:ehzF/bco
エロ

OK!
577 :はい。今日はここまで [saga]:2010/11/13(土) 02:21:51.48 ID:.FG7zLU0
次はあさって投下します。
性描写いかがでしょうか?
駄文にお着きあいただいている諸兄にはただただ感謝です。
578 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/13(土) 11:42:27.30 ID:Sa/n/fgo
くっ糖分攻めの次は失血を狙うとはこの>>1なかなか手強い・・・




正装して待ってます。
579 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/13(土) 15:26:31.14 ID:J5DOfVso
ふぅ...............
580 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/13(土) 19:37:59.43 ID:ZiWx96wo
ふぅ
581 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/13(土) 21:25:17.72 ID:EiHTrPoo
…ふぅ
582 :ちょっとだけ投下。 [saga]:2010/11/15(月) 12:13:55.55 ID:eZc4FM60
「は…ま…づらぁ…ぁ…」
(へんになっちゃいそーだよ…)

「どーした?沈利?」
(俺の指でこんなになってるなんて嬉しいな…)

「こえ…でちゃ…ぁ……から、はずか…しぃょ…ん…!」

「…いいよ。もっと沈利の声聞きたいから出していいぜ?」

「…ばか///」

麦野の恥部には気付けば二本の指が挿入されていた。
浜面の中指と人差し指だ。

麦野は拙いながらも必死に指をつかって気持ち良くさせようとする浜面を見て、嬉しかった。

(ありがとう浜面…すっごく気持ちいいよ)

浜面も麦野が自分の指でここまで気持ち良さそうにしている姿を見て同様な気持ちを抱いていた。
583 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/15(月) 12:15:17.80 ID:eZc4FM60
「ねぇ、ぁん…!は…ま…ぁ…ぃや…ちょとたんま…」

「ん?どーした?」

麦野の膣をまさぐっていた浜面の指がぴたりと動きを止め、話しかけてくる。

「あ……いや、気持ちいいんだけど少し寒いから一旦湯舟はいろうよ?」
「それもそうだな。夢中で寒さとか考えてなかったわ。わるい」

「…いいよ、浜面」

二人は立ち上がり、キスをかわす。
いやらしく舌と舌が交差し、絡み合う音。

二人の性器はお互いを求める様。
彼のそれはそりたち、いきり立っている。

彼女のそれはくぱっとひらいており、浜面の事を思い甘い蜜を流している。



二人は立ち上がり、ディープキスをしていると麦野の下腹部に浜面の性器が触れている事を知覚する。

麦野のお腹の先には命を育む子宮が。そこが浜面を求めるようにじんじんと熱く疼いている様だ。

(浜面のがあたってお腹があつくなっちゃってる…)

しばらくキスをすると、二人は冷えた体を労るようにゆっくり湯舟につかる。
584 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/15(月) 12:15:58.66 ID:eZc4FM60

「あぁ、あったかいわねー」

「そうだなー。少し温いけど、イイ感じだな」

浜面が蛇口をキュキュっと絞ったり、開けたりしてお湯を入れ、温度を調節する。


二人はもうお互いに裸でいる事に抵抗がないようで、普通に話しをしている。
お互いを求める気持ちは依然健在で広い湯舟の真ん中辺りに二人はいる。


浜面があぐらをかき、麦野が対面しながらその上にのり、足を浜面の脇腹に向け
てだらーんと延ばしている。両手は浜面の首の辺りにからめている。

(浜面のすごくおっきい…こんなの入るのかな?)

麦野はこの後で浜面のモノが自分の恥部に挿入されるとは考えられなかった。

(絶対痛いに決まってるわ…!)
585 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/15(月) 12:17:47.91 ID:eZc4FM60
浜面も不安だった。

(おいおい。俺のジュニア痛いくらいに立っちまってるが…実際いれるときに緊張
して立たなくなったらどーしよー?)

初体験とは緊張するものだ。
そうでない人もいるかも知れない。けれど、二人は様々な不安を抱えつつ、緊張していた。


二人が一つになろうとする意志を拒む程の緊張や不安ではないのだが。


「ねぇ…浜面」

「なんだ?沈利」

「浜面のコレが私の中にはいるんだよね?」

「あ…あぁ…。そうだな」

「痛くて、私上手くできないかもしれないけど…怒ったりしないでね……?私…はじめてだから…」

今日だけで麦野から何度も聞かされた浜面に対する謝罪と懇願。
浜面はつくづく麦野という女と付き合って良かったと思った。

ここまで健気な姿を見たのはおそらく学園都市では唯一、いや、世界でただ一人、浜面だけであろう。
けれど浜面はむっとした。

『それは怒らないでね』

という彼女のフレーズに反応しての事だった。
586 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/15(月) 12:18:39.67 ID:eZc4FM60
「ばかか、お前…」

「はぁ?なによ?こっちが真面目に言ってるのに…ひどくない?」


浜面の唐突な馬鹿発言に麦野は理不尽だと思い少し怒る。
しかし、それは麦野の思い違いだった。


「…俺も初めてだし…怒れる権力ないから。それに沈利の事大好きだから…優しくしないわけないだろ」

「そっか…変なこといってごめんね。私、今浜面と付き合えてホントによかったって思うよ…」

「嬉しいぜ。けど、それはその…全部終わってから言ってほしいな」



浜面が照れながら後頭部をかく。麦野はぎゅっと浜面に抱き着く。


「うん。わかった…」

麦野の声がバスルームに響く。
その後、二人は順にバスルームからザバッと出る。
587 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/15(月) 12:19:42.19 ID:eZc4FM60
性描写長くなってすいません。
もう少し続きます。

ここらでちょっくら仕事行ってきます。

588 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/15(月) 15:29:19.57 ID:T64Z7Dw0
俺の糖分はオーバーヒートしちまいそうだ
>>1気にすることはない俺たちはいつでも幻想を抱いてる
589 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/15(月) 23:00:31.62 ID:5d.kP6DO
追いついてしまったぜ!
590 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/17(水) 22:02:23.14 ID:aPhyv7so
俺の股間から原子崩しが
591 :遅れてすいません。 [saga]:2010/11/18(木) 11:08:30.06 ID:5Gg69gs0
レスありがとうございます。感謝。

では、投下。

-----------


ゴォーン。



麦野が濡れた髪を乾かすためにドライヤーを使っている。

浜面は先にでてベッドでソフトドリンクを飲みながらごろごろしている。



(よっし…ゴムOK、枕の下に配置完了!)




ぴたりと髪を乾かすドライヤーの音が消え、麦野がバスルーム前の鏡で一度メイクし直した姿でこちらにくる。
麦野の真っ白いバスローブ姿で完全に化粧をし直した究極美形の麦野に浜面はごくりと生唾を飲みこむ。



淡い香水のにおい、長くすこしカールした栗色の髪、すらっとした四肢。ほんのりと塗られたチーク。



「時間かかっちゃった…ごめんね?」

「あぁ、いいよいいよ!ほら、こっちきなよ」

「…うん///」

同じくバスローブ姿の浜面がベッドをがばっとあける。麦野はバスローブ姿のまま中にはいっていく。
592 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/18(木) 11:10:46.13 ID:5Gg69gs0
麦野が浜面がいるベッドに入った瞬間。

――でぃーぷきす

麦野は浜面の上に馬乗りになる感じに。強引に引き寄せられて、むさぼる様に唇を奪われた。



「沈利、すっげぇ綺麗、めっちゃかわいい、だいすき」

「うん。うん!私も大好き」


キスをしながら浜面は麦野のバスローブの腰の横あたりで出来たリボン結びの結び目をシュルシュルと解く。




胸の谷間と恥部までの直線ラインがあらわになる。



すると麦野も浜面のバスローブに手をかける。
舌を絡ませながら、手探りで浜面のバスローブを脱がしていく。

ぷちゅり…ぺちゃ…くちゅ…

キスを交わす二人。
二人は気付けばバスローブをはおるだけの姿に。浜面の熱い胸板には麦野の柔らかい胸が押しつけられている。
593 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/18(木) 11:14:25.30 ID:5Gg69gs0

「…月並みなことしか言えねぇけど…愛してる」

「うん。私も…」



栗色の髪の毛、シャワーで髪を洗ってしまったからいつものトリートメントのにおいはしないが、ほんのりと香る香水のにおいが浜面の鼻腔を刺激する。



もう駄目だ。これは誰の思考?浜面か、麦野か。おそらく二人のものだ。
頭がよくわからない。いや、この言葉の意味がわからない?



体が熱い。どうにでもなれ。いや、でもこの瞬間の言葉や行った行為の一つ一つはしっかり記憶しておきたい。


――大切な人との初めての日だから。


麦野は浜面にキスをされながら胸もいじられている。気付けば二人の位置は逆転し、浜面が今度は麦野の上に乗っかる形に。
童貞だから仕方ない。まだ力の加減もわからない。

胸を揉む力が少し強い気がするけど、それくらいでちょうどいい。



浜面の両手はすっと麦野の胸に伸びている。体を起こされ、胸をもみしだかれた麦野は気持ちよさのあまり、小さく嬌声をあげる。
594 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/18(木) 11:17:52.15 ID:5Gg69gs0

浜面が純白のシーツを見遣ると麦野の恥部のあたりから何か溢れている様な。
部屋のうす暗い明かりがついているのでそれは容易に確認できた。



「沈利もう濡れてるんだ」
「…はぁ…はぁ…うん…」



麦野の答えを待つ前に浜面はベッドにもぐりこむ。

「なに?浜面?」

麦野は胸のあたりを毛布で抑えながら浜面の次なる行動を予想できないでおろおろしている。

(え?まさか…ねぇ?ひゃ…ぁ…ぃゃ!)




麦野の足を広げる浜面。彼の舌が麦野の恥部に接触する。

そして、ずぶずぶと浜面の舌が麦野の中に入っていく。
595 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/18(木) 11:22:12.96 ID:5Gg69gs0
毛布を軽くめくると茶髪に染めあげた浜面の髪が。
麦野の恥部を必死に舐める浜面の表情。



「あ…いやぁ…はま…づらぁ…そ…こぃぃの…ぁ…」



浜面は麦野の恥部の少し上で突起している小高い丘にある突起部を見つけ、そこを重点的に舐めた。
麦野の表情は恍惚(こうこつ)としており、口は半開きのまま。


彼女の口の端から軽く唾液が垂れる。こんな表情、絶対他の誰にも見せられない。


そんな背徳感のような、自分と浜面だけの秘密を共有したような。

ああ、もうどーにでも、なんでも、めちゃめちゃにして。
596 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/18(木) 11:26:49.27 ID:5Gg69gs0
「ぁぁ…もうだめ、浜面…イっちゃいそうだよ…」



部屋の中のライトはイルミネーションに設定しているようで、うす暗い部屋を色々な色が弱い光で照らしていく。
そんな中、麦野は無意識だろうか、浜面の後頭部を優しく掴み、一番快楽に浸れる所へと誘っていく。



それは先程浜面が舐めていた小高い丘の上。
突起部の上を丸ごと包み込む様に。



「浜面…そこ…舐めて?」



麦野の指示は伝わったのだろうか?


浜面は無言で頷く。どうやら伝わったようだ。
彼女が浜面の後頭部を優しく掴んだまま浜面は無言でそこを舐める。

その後一、二分して無麦野の体ががくがく震える。

「くあ…ほんとやばいかも…ちょっとすとっぷ…ねぇ…浜面?」

「いやだ」



「ひゃ、だ、だめ…ほんっと、おかしくなっちゃいそーだよ」

「いいよ、おかしくなっちまえ…!」

あぁ、もう何にも考えられない。何かが近づいてくるような、頭ん中が真っ黒になるような、真っ白になるような。

ふわふわ浮くような。形容できない感覚が麦野に近づく。



「イっちゃうよ…はまづら…だぃ…しゅき…だいす…き!」

びくん!と麦野は背中をのけぞらせ、果てる。
597 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/18(木) 11:28:56.56 ID:5Gg69gs0
麦野が絶頂に達して暫くしてもぞもぞと動き始めた。
「私も…はまづらにするー…」



「いや、いいよ。俺の汚いジュニアなんて別に気にとめるもんじゃねーって、マジで」



「へぇ…私の中に入ろうとしてるモノは汚いんだ…」



やばい。失言だ。浜面は思った。

(だけど汚いって言わない以外だったらなんて言えば麦野は俺のジュニアを……その…しごいたり、なめないようになるんだ?)


浜面は思考のふかみに嵌まりつつあったが、麦野はずいっと近づいてくる。


「いや、その初めてなのにさ、初っ端からこんな俺のジュニアにその……なんだ、ほら」

「なめちゃだめなの?浜面だけずるいよ…私だって浜面に何かしてあげたいって思うのはダメなの?」


否定できない。ウッとまずいところを突かれた浜面。

浜面は自分の性器を麦野がいじることを不純だと思っていたのだ。
けれどそれはあくまで浜面の頭の中が作り出した幻想(麦野)だった。

(私は処女のクソガキだよ…けれど、浜面のために何かしたい。されるだけじゃイヤ)



「私が浜面のなめる番だよ」


浜面は麦野の奉仕の気持ちを断る事が出来ない。
その場で今度は浜面が横になると麦野は背中にあった枕を渡す。


枕で高さが上がったことによって、麦野の表情が少し見える。顔を赤らめてむむむとジュニアと睨めっこしている麦野の姿は滑稽な感が否めない。
だが、今から初めて愛する人の性器を口にくわえようとしている彼女になんの落ち度があろうか。

寧ろ、その崇高な愛を形にした行為を讃えるべきであろう。
598 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/18(木) 11:30:40.10 ID:5Gg69gs0
つい先程までバスルームで彼のジュニアをしごいた。


(けれど、口にいれるなんて……出来るかな?)


どんな味がするのか、どれほどまで口に入るのか、様々な懸念が麦野の思考を支配していく。



「下手くそだと思うケド、がんばるから…!……あむ」


片耳に栗色の髪をかける。浜面が麦野に返事をよこす前にジュニアをくわえる。
浜面のジュニアに髪がふわっとなびく。くすぐったい。

じゅぶじゅぶ ちゅぽ ぺちゃぺちゃ ちゅぽ

「きもひいい?」

「あぁ…やべぇ…!」

「うれひぃわ」

口に浜面の性器をくわえているので上手く発言できない。けれど麦野の全力をあげての口淫はたしかに浜面に快感という信号で伝わったようだ。



(浜面が気持ち良くなってくれて嬉しい…ちょっと奥まで…苦しいケド…やってみよ…!)
599 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/18(木) 11:31:19.86 ID:5Gg69gs0
麦野は勇気を振り絞り、浜面のモノを口の奥まで一気にくわえてみる。
吐き気が一気にこみ上げてくる。むせそうだ。
けれど、絶対にその気を浜面に悟られないように。優しく、包み込む様になめる。



原動力は浜面に対しての奉仕の気持ちと愛。
間も無く、浜面に変化が見られた。



「し、沈利っ?それは気持ち良すぎ!……やばいって!」


「えへへ…げほっ、げほっ」
(やばい…ちょっとむせちゃった…)



「おい、大丈夫かよ?」


「へいひはから」
(がんばる!)




(歯を立てないように。前にフレンダ達と見た雑誌に載ってたっけ)



(難しいな。だってこれやるとほんとおバカな表情になっちゃうし。ってかなってるんだろうな。今の私も…)

麦野はそんな事を考えながら、ちらっと浜面の表情を見ようと上目遣いで見てみる。




すると、気持ち良さそうに脱力している浜面が見えた。
それだけでこのちょっとした苦しさとかそーいった何か雑念のような物が吹き飛んで行くような感覚を覚える。

喉の奥にもっと、もっと。そうすれば喜ぶ。

(浜面が私にしてくれた時もこんな気持ちだったのかな。だったらうれしいな)
600 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/18(木) 11:33:47.14 ID:5Gg69gs0
麦野の期待した通り、浜面は誠心誠意、全力で麦野の恥部をなめた。
当の麦野はその答えをしるよしも無い。


しかし、今日一日で何度愛のささやきを二人はかわした事だろうか。
それだけで十分彼女達の純粋な奉仕の気持ちを証明出来る。



「沈利、俺結構やばい。いれていいか?」


きた。私の初体験の相手を決定づける運命の一言。

否定する理由は全然ない。
こくんと口淫しつつ頷く。



「ぷはぁ…」



麦野は一旦、口から浜面のいきり立ったそれをはなす。



ぬらぁと麦野のよだれがまとわり付いた浜面のモノに一度口づけをする。
麦野の口には大量のよだれが。それに気付いた浜面が手近にあるタオルで拭き取り二人は口づけをかわす。


そのさなか、浜面が麦野の膣に指を二本挿入する。うっと麦野がふるえながら抱き着いてくる。

麦野の膣口が溢れんばかりに濡れているのを浜面が確認するとベッドの枕のあった位置にある避妊具をとる。


「よいっと。こーして、こーして、こうだ」
「やけに手慣れてるわね」


「一人でするときにたまに着けながらやってたからな…ハハハ。っておい、ドン引きすんなや!」
「……ホント?実はあんた私に合わせてドーテーとか抜かしたんじゃないでしょーね?」


冗談の様に言うが眼がマジです。麦野さん。
601 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/18(木) 11:34:19.41 ID:5Gg69gs0
「ちげーよ。断定できる」

「ま、あんたを信じるわ。…………はやく、いれないとまた初めからになっちゃうよ?」

見た目は、言い方は悪いが生の男性器そのまま。けれど、そこにはほんの数ミリのうすい壁が。



「ちゃんと避妊しねーとな」
「…うん。結婚したら……その、その……」

「その?」

「……そのままいれていいから…///」

あー。浜面の理性が飛びそうになるのを必死に抑える。
そしておもむろに浜面がベッドに仰向けになる。



「初めては女の子が上になったほうが良いって聞いたぞ?」

「…そうなんだ。わかった…!やってみるね」


浜面の胸板に手をつき、おそるおそる麦野は浜面の上に乗ろうとする。
足が震える。こわい。

(痛いのかな…こわいよ…)

この後、どんな痛みが押し寄せるのだろうか、どんな快感が押し寄せるのだろうか。
麦野の心の中で不安と期待が入り交じる時、二人の関係は始まる。



「沈利、怖いのか?」

「うん…こわいよ…」


薄暗い部屋のベッド。

浜面の上に腰を落としている麦野。正確に言えば、浜面のゴツゴツした筋肉でコーティングされた太もものあたり。
目の前にはそそり立つ浜面のそれがある。
602 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/18(木) 11:36:19.43 ID:5Gg69gs0
「浜面…手、つないで?」



浜面はまるで死体の様にだらーんと手足を伸ばしている。そんな彼に麦野は静かに、そして緊張した面持ちのまま言う。



「いいよ」



浜面が麦野に両手をさしだす。
お互いが手を伸ばしあい、二人は固く手をつないだ。


麦野はゆっくり、本当にゆっくりだが、少しずつ浜面と一つになろうとし、腰をおろしていく。



お互いの先端部分が触れる――


「…ぁ」


麦野の嬌声。そして肩が少し震える。



ぎちぎち めりめりと麦野の中にゆっくりとしかし確実にはいってくる浜面のモノ。


(…なにこれ?こんなのホントに入るの?)
603 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/18(木) 11:39:39.10 ID:5Gg69gs0
麦野は今自分のしている行為そのものが何かトチくるっている行為なんじゃないかと一瞬思った。
それもそのはず。

今まで他のいかなる異性と性交渉を重ねたことのない女性の膣口というものはとても狭い。
初めては入りにくいし、痛い。

「…すっごく痛いよ…浜面…まだ全部はいってないの?」

「…まだ半分もはいってないぞ?」

「え?」

(あー…そんなのうそでしょ?ありえないわ…)



麦野はちらりと自分と浜面が一つになるであろう結合部位を見ようとする。
浜面のモノはまだまだ全然入っていない。



「痛かったら今日はあきらめて他の日にするか?今日じゃなくてもいいぞ?」



浜面は麦野のあまりに痛がる姿を見てこのまま続けることを躊躇する。
けれど、麦野はすんなりと辞めますとは言わなかった。



「…それはいや」
「ん?」

「私、頑張るから…ね?」
「お。おう…!」



動揺を隠さない浜面を見つつ麦野はもう一度、ぐっと力を入れていく。
痛い。相変わらず麦野の膣口からは愛液が出ているもののそれでもだ。



「沈利、俺に抱きつけ」
604 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/18(木) 11:41:37.38 ID:5Gg69gs0
「え?ちょっと…なにいってんのよ?あんたが上に乗った方がいいって言ったのに抱きついたら駄目じゃない?」

「俺が沈利の肩、ゆっくり押してやるから、それでいれてみよーぜ。俺、男だから痛いとか分からないけど、沈利が一人で苦しんでるなら助けてあげてぇ」


「…こわいよ…痛そうだし…でも…それしかないわよね……………わかったわ…」

浜面はこのまま彼のジュニアをゆっくり先っぽだけ入れて痛がるよりもむしろ、一気にいれてしまった方がいい。
そう考えた。麦野もその点合意の様だ。


「じゃ、いくからな…!?」
「うん…」


結果的に見えてこれは成功だったのかもしれないが、浜面がジュニアをはやく麦野の中に挿入したいという身勝手な欲望が発動した感も否めない。
ともあれ、この浜面の補助が二人の『初めて』になるのである。



「沈利、準備いーか?おいおい、そんな肩震わすなよ…。緊張してるの?」

「……うん」

「ほら深呼吸してー?すってー、はいてー」


「「すーはー、すーはー」」


二人は裸で密着しながら深呼吸。ちょっとおかしいけど、二人は仲良く、笑いながら、目を合わせて。



「沈利――」

「うん。――浜面きて」


麦野の膣口にあてがわれたそれが深く沈み込んでいく。
刹那、浜面の股間の辺りに少量の血が散る。


「…うっ!」


少し苦しそうに顔をゆがめる麦野。けれど、苦しそうな表情の中、目を潤ませて笑っている。
605 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/18(木) 11:42:21.48 ID:5Gg69gs0
「大丈夫か沈利?」
(は、入ったのか…!)




「………!!―――!!」
(いったーい…!)

麦野は声にならないけれど、くーっ!っと痛そうな表情を浮かべている。
彼女の恥部の入り口から出ている赤い血は彼女が破瓜(はか)した事を証明している。




「…は、入ったよ………ねぇ、浜面」


「ん?何だ?」


「このままキスして?」



二人は正真正銘、一つになったまま唇を重ねる。


暫くして二人のキスは終わる。
気づけば麦野の両目からは嬉しさの余りに涙がこぼれているではないか。

それに気づいた浜面がハグしていた腕を一旦ほどき、優しく彼女の目尻にある涙を摘み取ってやる。


「なに泣いてんだよ。沈利」

「へへ。だって痛かったし、嬉しかったし、なんかよく分からなくて…あはは…滅多に泣かないのになぁ…」

「そっか…その…今もこーして繋がっちゃてる訳なんだけど、俺、動いて良いかな?めっちゃ狭くて、きもちいーっす…」



「あ、ごめん!その…動きたいよね?もう、ほんっとじぶんかってなんだから…」


麦野の口調は怒っているけれども、決して本気ではない。あくまで冗談だ。
606 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/18(木) 11:43:12.73 ID:5Gg69gs0
麦野は浜面の上に乗りながらふふふと笑う。痛みをこらえて、少しでも浜面に気持ちよくなって欲しい、その一心で。
手は勿論つないでいる。固く、離れないう様に。



「沈利、一旦寝てみてもらっていいか?」

「うん…なんだか恥ずかしいな…」

一度浜面が麦野の膣から自分の性器を抜く。
麦野の愛液と破瓜によって流れ出た微量の血が付着した避妊具を装着した浜面のそれが麦野の前に晒される。



そして麦野が今度はごろんとベッドに仰向けに。

「沈利、さっきは痛かったっぽいけど、もう平気かな?」

「うん。多分平気かな。さっきはメチャメチャ痛かったけど…」

「そっか」

そういうと浜面は麦野の膣にゆっくりといたわるように自分のモノを入れていく。
607 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/18(木) 11:43:49.83 ID:5Gg69gs0
先程まで苦痛に顔をゆがめていた麦野の表情はまだ少し痛そうな感じだが、それほど苦しんではいないように見えた。


「はいった」

「うん――浜面が私の中にいる…なんだか変な感じ…」


「なんかその言い方照れるなぁ…じゃ、動くぞ?」

「――きて、浜面」

今度は麦野がベッドに寝るポーズで浜面が上にくる。いわゆる正常位というやつである。
浜面はゆっくりと目の前で顔を赤らめて自分が来るのを待っている人に自分の性器を挿入していく。



ゆっくりといたわりながら麦野の膣に挿入されていくそれ。

麦野は正常位の体勢で少し起き上がり、背中に毛布と枕をくるめておいてある姿勢になっているので見えた。
二人が性器を動いてこすりつけあうたびに、淫靡なあえぎ声が聞こえて、それらで部屋が満ちて行くようだった。
608 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/18(木) 11:44:56.05 ID:5Gg69gs0

「ぁ!…あぁ!はまづら!!いま…いっしょ…///だいしゅき…だいすき…!」

「沈利…!沈利…!しずり、俺もしずりのコト大好き…うぁ…やべぇ…」


二人は普段なら出さないであろう嬌声をここぞとばかりに出し、お互いを褒めちぎり、さらに愛の言葉を惜しげもなくささやく。
麦野は背もたれのようになっている枕と毛布に背中を任せ、浜面にガチリと抱きついている。


「…ずっと…ハァ…!…いっしょ…だぞ…ハァ!」

「…うん、…う…アァ…うん!」


浜面の腰を振るスピードがじょじょに早くなる。


二人の嬌声に紛れて、麦野の恥部から愛液がこぼれ出てくる。
彼女の愛液は浜面が着用しているゴムにべったりとまとわりつき、腰を振ってピストン運動を繰り返す度にぺちゃぺちゃ ぬちゃぬちゃといやらしい音を立てていく。
さらにその音に連動して、ぱんぱんと二人の接合している部分から音が聞こえてくる。

「ハァ…な、なんかはずかしー…ハァ…けど…」



「…グッ…なんだよ…?沈利…マジで…やべぇな」



「く…あぁ!…きもちいい…っよ…ハァ」
(まだ、ちょっと痛いけど…浜面が喜ぶ顔もっとみたいから…)


麦野がまだ膣無い全体に残るぼんやりとした痛みを知覚しつつ、体全体からあふれ出るような幸福感とにわかに感じ始めている快感に身を任せる。

(浜面…そんなに必死に動いちゃって…)

(私もきもちよくなってきて声だしてるから人のコト言えないけど…イヤ…きもちいい…)


(あぁ…浜面と一緒になれてホントによかった…)
609 :すまん [saga]:2010/11/18(木) 11:45:46.39 ID:5Gg69gs0
仕事いく。

また夜に。
610 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/18(木) 11:46:56.23 ID:eio4q1Io


上も下も泣きそうだぜ
611 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/18(木) 22:45:25.15 ID:P.CqacDO
シュッシュ
612 :麦野だいすき  [saga]:2010/11/18(木) 22:59:56.06 ID:5Gg69gs0
作者です

今からジョギング行きます。
12時半くらいに投下します。

待ってる人いるのかな?ww

その人たちには申し訳ありませんがもう少しお待ちを。
613 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/19(金) 00:13:24.16 ID:oiVK30Yo
まってるお(^ω^)
614 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 01:04:24.29 ID:NIZXcG.0
んな考え事を浜面の腰が振られる合間合間に考えていると右耳に何かにふさがれたような感覚に陥る。

「ちょっと…!?ひゃ…そこ…だめぇ…やばい…」

「ひーじゃんひーじゃん」

浜面は麦野の左耳を口に入れ、その裏側をぺろぺろと犬のように舐めていく。
むにむにと柔らかい浜面の舌がねっとりと唾液を出し麦野の右耳を包んでいく。麦野はそのまま耳が溶けてしまいそうな感覚を覚える。


「ぁ…ひゃぁ…浜面、みみほんっと…だ…めぇ…ぁ」


麦野の叫びは浜面には全く届かずにむなしく部屋にこだまするだけ。

外は寒くて雪が降り出している。そんなコトとは無縁のふたりは体を重ね、汗をかく。

「ひふり…はいすき…!はいすき…!」

「うん…!もっと言って?」


右耳から一度口を離す。そして正常位で腰を振り、おでこに浮かび上がる汗をぬぐいもしないで。


「大好き、沈利、愛してる」


「嬉しい。私も愛してる、もっとぎゅってして?」


ぐっと麦野の背中に手を回して挿入されたままの麦野を抱き起こして固く、離れないように抱く。
615 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 01:05:56.38 ID:NIZXcG.0
浜面はその姿勢のまま器用に腰を動かす。
あは、と麦野はわらう。


「…ごめん…ちょっとやばいな…でちゃいそう…」



「いいよ?私いっぱいきもちくしてもらったし…なんかよくわかんないけど…もーなんでもいい」


いくら麦野が処女と言っても何が出ようとしてるにはわかる。
避妊具越しに出す。それだけが少し心残りだが。自分の中で果てようとしている浜面、彼の表情は真剣で何かとてもかわいくて。


麦野は最後に強引にぐっと強く抱きしめられ、きゃっと叫び声を上げる。


「…うっ。だめだ…沈利っ!愛してる、愛してるっ…!ぐっ!」
「いいよ。きて、浜面、愛してる、だいしゅき…」



「…うっ、くっ、ひゃっ…なんかあったかいよ…やっ…!」




「イっちゃった…俺…」


ともあれ二人の『初めて』は大成功だった。
616 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 02:37:38.91 ID:NIZXcG.0
「ねぇ…浜面…渡したいものあるんだけど…」

「ん?なんだ?沈利?」

行為が終わった二人はシャワーを浴び終わり、ベッドへ。
浜面と麦野はベッドから頭だけ出して話している。もちろん、裸だ。

「今日、クリスマスだよね…その…私プレゼント渡したいんだけど…」



「お?マジで?何?」

浜面が目を輝かせながらがばっとベッドから起き上がる。


「じゃ…ちょっと目つぶってて…」

「おう!なんだ?なんだ?」
(なんなんだろう?)

麦野がベッドからそのすらりとしたなまめかしい美脚を出す。
そしてカーペットにぺたり。

持参したバッグの中からがさごそ。
クリスマスを意識して作った赤と白の包装箱には緑色のきらきらしたテープでリボン結びされている。


「おーい、目あけていいか?」


「うん☆いいよ!はい!」


麦野はまたベッドに戻る。今度は下半身だけベッドに入っているが豊満な乳房は丸見えでちょっと恥ずかしいケド。

浜面はゆっくりと目を開ける。そこにはサッカーボールほどの大きさの箱を両手で持った麦野の姿が。

「おー!なんだこの箱?あけていい?」

「うん☆あけて!」

麦野は浜面の右肩に寄りかかり、腕に両腕を回す。浜面は丁寧にラッピングテープをとっていく。
617 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 03:21:35.97 ID:NIZXcG.0
「おお…!マフラーと手袋か…?これ手作りだろ…?」



綺麗に包装された箱の中に丁寧にたたまれたマフラーと手袋が。

「…うん。どうかな…。その…気に要らない?」
「なわけねぇよ!これ…やべぇ…手袋もかわいいな…」

「浜面、ちょっと体格良いし、そのギャップというか…その…」
(おいおい、いつも敵を殲滅する麦野さんと今のギャップの方がすごいっすよ…!)


浜面はマフラーと手袋を取り出すと底に手紙があることに気づく。


「これ…手紙だろ?読んでいーか?」

「うん///恥ずかしいけど…いいよ」


麦野は恥ずかしさからか下を向きつつもちらちらと浜面を見る。


「じゃ、お言葉に甘えて…」



浜面が包装した箱の底から取り出した、海外に送るエアメール用のシンプルな手紙。


それに目を通しつつ、にやける浜面。
618 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 03:24:06.90 ID:NIZXcG.0
『めりーくりすます☆浜面

今日はこんな私と一緒にいてくれてありがとね。

こんな…とか言ったらまた怒られちゃうかな?ははは。

プレゼントは…私の独断と偏見で勝手にチョイスしちゃったけど、気に言ってくれたら幸いです。

ってか、絶対付けてよね?そこら辺の市販のヤツより絶対あったかいから!

仕事の時は私がたくさん無茶な指示するコトあるけど…それで嫌いになったりしないでね。


私はいつでも浜面のコト大好きだから。これからも我がままな私をよろしくお願いします!


最後に…私も名前で呼べるように頑張ります!


あなたの沈利より』




「これは永久保存だわマジで」


「恥ずかしいから…絶対フレンダ達に言わないでね」
(あいつらに見られたら…どんなコトになるのやら…想像しただけでぞっとするわ)

いわねーよ、と返し浜面は麦野をその大きく厚い胸板の中へと抱き寄せてやる。
619 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 03:56:23.23 ID:NIZXcG.0
「じゃー…俺もわたさねーとなぁ…」

「へ?プレゼント?嬉しい!」



「そんなお高いもんじゃねぇし…気にいるかどうかわからねぇけど…」
「ううん。浜面が真剣に選んでくれたものなら何でもいいわよ!」

「じゃ、渡すよ…でもその前に服着ようぜ?ちょっと寒くなってきちまったわ」

あ、それもそうね、と麦野はベッドからゆっくりる。浜面もソファの近くにある私服を着る。




暫くして二人は着替えが終わる。ベッドに腰を落として麦野の着替えを待つ浜面。
その手には先程麦野が浜面に渡した箱の三分の一ほどの大きさの袋が。


「ごめん!ちょっと待たせちゃったかな」

「あぁ、へーきへーき。はい!コレ!」


麦野は本当に大切なもの受け取るように両手で浜面が差し出したそれを受け取る。
袋の中をのぞき込むと筆箱ほどの長さで幅がそれの半分ほどの大きさのケースが。


(なんだろう?ネックレスかな)


麦野はわくわくしつつあける。


「うわぁ…きれい…」


麦野がかぱりとふたを開けてみる。そこにはハートキーチャームのネックレスが。
ハートには流麗な筆記体で「 i love you 」と刻印されている。

ハートから伸びる一本の鍵の部分には「SS」と突起している。

「SS」はShizuri と Shiage からとったそうだ。
620 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 03:58:21.98 ID:NIZXcG.0
「俺…石とか良くわかんねぇから…結局ベタなネックレスになっちまった。すまん。何か芸がないような…」


「さっき私言ったよ?しししし仕上が選んでくれたものならなんでもいいって。それにこれ、世界に私だけが持ってるネックレスだよね?」
(仕上って呼べたわ!)



「いや、これは一つだけじゃないんだよ…」
(仕上って呼ばれた!!)

麦野は、は?と怪訝な表情になる。


「ほら、これ」


浜面が自分の胸板をVネックのシャツを少し下ろし見せる。そこには全く同じネックレスが。


「ユニセックスだから俺も買っちまった…。ペアネックレスとペアリングだな」


浜面が世界に一つしかないネックレスというくだりを否定したのは、彼自身が同じものをもう一つ持っているというコトだったのだ。


「もう…驚かせないでよ…ばか…あんた以外の誰かが持ってるものだったらって考えるといてもたってもいられないわ」

「わりわり、驚く沈利の顔も見てみたかったからさ…ははは」

「浜面のいじわるぅ…」


まだ簡単には名前で呼べないけれど、少しずつ名前で呼べるように努力していこう。
麦野はそう思いつつ、大事にネックレスを浜面に渡す。
621 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 04:00:49.88 ID:NIZXcG.0
「つけてよ☆浜面」


そう。あのゲレンデと全く同じようにネックレスをつけよう。
あのときは麦野のおきにいりのネックレスを一時的に紛失してしまい、それを見つけた。

けれど今日はネックレスが違う。


――浜面から貰った世界に一組だけのネックレス。

お互いの名前がキーの突起部にあてがわれ、ハートには i love you の文字が。

恐らくオーダーメイドで結構根が張ったであろうそれを浜面は優しく受け取る。



腰を下ろしているベッドに浜面がぐいっと上がっていく。そして麦野の後ろに回り、ゆっくりと手を回していく。



「ゲレンデ思い出すね…浜面」

「あぁ…。あんときはじめてキスしたんだよな」

「うん。また…キスして?あのときみたいに」

麦野の栗色の髪をあげ、右手でぐるっとネックレスをかける。
光を反射してきらきら輝く銀色。

ぱちんと止めたことを確認する。

今日、何度この言葉を言ったことか。何度確かめ合ったことか。


そして二人は一言、全く打ち合わせ無しで思ったことを口にする。








     だいすき   



622 :さて [saga]:2010/11/19(金) 04:03:31.23 ID:NIZXcG.0
物語も終盤。

次は垣壺の夕飯書いてetcetcetcでおしまいだ!

今読み返しても誤字脱字、描写に欠ける部分がたくさんあるね。
ここまで読んでくれた人は少ないと思うけど、読んでくれて有り難う。

またあしたー
623 :二つだけ投下 [saga]:2010/11/19(金) 10:51:32.17 ID:NIZXcG.0
「いらっしゃいませ!ご予約して頂いた垣根様でしょうか?」


「あぁ。二人で頼んだ垣根だ」


さて、浜面達が濃厚な情事を繰り広げているうちに垣根と滝壺は仲良く手をつなぎながら赤レンガ倉庫前から中華街に移動した。
そこで垣根が予約したハンバーグ屋に入店したのだ。

値段はそこまで高くないが、美味しいとネットの情報を鵜呑みにし、その勢いで予約した店がここだった。

店内はカウンターテーブルと普通の座席に短い通路で分かれている。
垣根達はそのカウンター側に案内された。


「なんか、雰囲気すごいね…」

スタジャンを着た滝壺はカウンターの上方にある綺麗に整い、逆さに置かれたワイングラスを見て感嘆する。
奥には沢山の種類のお酒が鎮座しており、色とりどりど言った感じ。


暫くすると店員がメニューを持ってくる。
ぱらぱらと二人で一つのメニューに目を通していく。


「これやばそうだな」

「うん」

二人の目をひいたのは十二月二四日、二十五日限定ディナーセットとかいう三千円ほどのもの。
写真を見ると美味しそうなステーキにポテト、ピザ、サラダ、ポタージュスープ、白米、そして食後のパフェと至れり尽くせりのセットが格安価格だ。

メニューの走り書きには

『本来の価格から大幅ダウン!どうぞご賞味あれ、クリスマス限定ディナーセット!』

とあり、二人はお腹を空かしていたので迷うことなくコレに決定した。


少々お待ち下さい…そう言い残して手書きの伝票にセットを二つチェックを付けて店員はキッチンに消えていった。
624 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 10:52:00.06 ID:NIZXcG.0
「理后ちゃん…今日は一緒に入れて楽しかったぜ」

「わたしも。あ…!プレゼント渡して良い?」

「ぷぷぷ。プレゼント?マジで?ホントに?」

「うん。受け取って欲しいな…」

滝壺が今日持ってきた小さいバックから取り出されたもの。
麦野が浜面に渡したように自分で包装した小さい箱。それを垣根に渡すとおそるおそるあける。

垣根の反応を見ようとわくわくしする滝壺。


「これは…小銭いれ?」
(ピンク色で理后ちゃんらしい配色だな)

「うん。千鳥格子の生地で作ってみたの。裁縫は苦手だけど、頑張って作ってみたんだ」


普段は口数が多い方ではない滝壺が心情を吐露する。
それほど熱心に作ったし、垣根に吟味してもらいたいのだ。
千鳥格子の中は白と黒、そのほかの生地がピンクだ。


「ほら…ていとく能力使うと結構激しい運動するから…仕事が終わってすぐジュース買えるようにって思って小銭いれにしてみたんだけど…」


「まずその発想ががヤバイ。普通にかわいい」


「へ?///」


「これは絶対肌身離さず持ち歩くわ。財布捨てて小銭入れだけ使うわ」

それはちょっと無理だぞ、垣根。カードとかもろもろ全部入る訳ねーだろ。
ともあれ、滝壺のハンドメイドの小銭入れは垣根に大いに受けたようだ。

垣根は店内の目も気にせず財布から小銭の移送作業を始めた。
625 :外出ます。 [saga]:2010/11/19(金) 10:52:34.86 ID:NIZXcG.0
夕方に投下できたらします。
ではまた
626 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 16:57:09.52 ID:NIZXcG.0
「じゃ、俺も渡さなきゃダメだな、こりゃ」


「ていとくも何かあるの?」


垣根は足元に置いてあるバックに手を延ばす。


「俺、センスないから…わりぃ、何かったらいいかわからなかった…こんなんで満足するかわからねーけど…理后ちゃん、はい!」


がばっと滝壺に差し出すそれはラッピングされていてわからない。
しかも未元物質のラッピングなのでキラキラ七色に光っている。


「ていとく…これ学園都市外でやったらまずいんじゃ…?」


「かまわねーよ、こんくらい」


滝壺が平気かな?と首を傾げつつ垣根から未元物質で輝く箱のような物を受け取る。

さわるとフッ…と光が消えていく。滝壺の両手には気付けば黒ベースの綺麗な懐中時計が。


カチコチと時を刻む音が聞こえてくる。
627 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 17:02:43.10 ID:NIZXcG.0
「動力と素材は未元物質で作ったわ。俺が死ななきゃ壊れねぇ代物だ、よけりゃ受け取ってくれ!」


がばっと頭を下げる垣根。
時刻を表す文字盤はピンク、緑、青、赤…と計十二色で彩られており、フェイスの一部がスケルトン使用に。そこを覗くと未元物質がひゅんひゅんと旋回している。


「…きれい」


フェイスの蓋をぱかりと閉めると滝壺のイニシャルの『R.T』の文字が小さくふちに彫られている。


「理后ちゃん、気に入ってくれたかな?」


「大事に使うね。ていとく、すごい…」


滝壺はもう一度蓋をカチと外し、ハンドメイドの懐中時計にまじまじと魅入っている。

フェイスから延びているチェーンは大き過ぎず、小さすぎずといった感じでどんなシーンにもしっくりくる。
色は時計本体と同じクローム系の黒。店内のライトと光を合わせるときらきらひかっている。綺麗だ。

(あー、魅入ってる姿がまじやばい。かわいい。あぁー未元物質が出ちまいそーだ。メルヘン姿になりたい)
628 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 17:04:37.91 ID:NIZXcG.0
「大変お待たせしましたぁー」


バーのマスターの様な品の良い店員がクリスマス限定のセットメニューを次々とカウンターテーブルに置いていく。
気づけば垣根達の前のカウンターテーブルは料理でいっぱいだ。


お互いプレゼントをしまい、ナイフとフォークを手にとる。


「うわー、美味しそう!」
「へへへ、理后ちゃんにそう言って貰えると嬉しいぜ」


別に垣根が作ったわけではないけれど、ちょっと嬉しい。


「「いただきまーす!」」


じゅわーと鉄板にのせられたステーキ、湯気を立てている温かそうなポタージュスープ。

その他諸々のご飯を一瞥し二人はクリスマスイブのディナーを楽しむ。
629 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 17:08:30.36 ID:NIZXcG.0

「あぁー、帰るか」


「そうねー、フレンダ達も待ってるだろーし。ほらパーティーするって言ってたじゃない」


ちょうど垣根達が美味しく夕飯をいただいている時、麦野達はラブホテルで時間ぎりぎりまで雑談を楽しんでいた。


しかし、時間は有限。そろそろチエックアウトだ。
二人は荷物をまとめて最後にドアの手前で長いキスを交わしてアジトへ向かう。


ホテルを出て暫く歩き、上野の雑踏の一部になった二人。
二人は一路学園都市と東京の境界である武蔵境まで電車で向かい、そこから浜面の購入した中古セダン「アリスト」でアジトへ向かう。


「さみーなー。沈利、手つなごーぜ」

「うん☆」

二人は今日一日楽しんだ上野の猥雑な通りにさよならを告げると駅へと向かっていく。


駅の喧噪に二人は消えていった。
630 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 17:19:45.49 ID:NIZXcG.0
『武蔵境ー、武蔵境ー、学園都市へ向かう方は警備員のセキュリティチェックを受けた後、反対ホームの車両にご乗車下さい』


終点に到着したが浜面と麦野は爆睡。
残業で疲れたリーマンの様にすやすや寝ている。起きる気配はない。


「全く…クリスマスだからといってこの二人は何をしてたんだか…大増員でかり出される風紀委員の身にもなってほしいものですの」


クリスマスから年末までの一連の一週間、学園都市から実家に帰省したり、デートとか遊び云々でこの時期の電車は異様に混み合う。
そこで教員だけで構成うる警備員だけでは足りず、猫の手も借りたい状態になった警備員はやむなく学園都市の風紀委員を狩り出したと言うわけだ。

その狩り出されたうちの一人である白井黒子。
彼女はさながら映画カサブランカのような、バーバリーのベージュのオーバーコートを着て、警備とは名ばかりの終点駅で寝ている客や酔いつぶれている人の介護業務を泣く泣くこなしていた。

ツインテールのつややかな髪の少女はコートの腕の部分に風紀委員の腕章をはめている。
下には常盤台中学の冬服を着ている。


「ほら、おきてくださいましー」
(お姉様はあの類人猿とどこかへ行ってしまいましたし、朝から警備員の手伝いとは…とほほですの)


心身ともにホントにけだるそうにその常盤台の風紀委員は浜面と麦野に声をかける。


電車のドアは開いているため、外気がそのまま入ってくる。常盤台の風紀委員、もとい白井黒子の口からため息と同時に白い息が吐き出される。


(ほんっとにこんなに寄り添って仲良く爆睡なんて…どんだけ疲れてるんですかね、この二人は)

風紀委員の少女は改めて爆睡している二人をみる。すると男の方が呻きはじめた。
631 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 17:24:15.94 ID:NIZXcG.0
「うーん…あれ?さっきまで新宿?あれれ?」


浜面が眠気眼をこすり起きる。程なくして麦野も起きる。


「浜面ー、まだ寝たいー、ってかさむっ!」


「沈利、もう武蔵境着いたっぽいぞ?」


「えー」


そんな二人の茶番劇を目の前で見ていた白井はわざとらしくはぁ、とため息をつく。


「どなたか存じませんが、もう武蔵境ですの、この電車は回送になりますので下車の準備をはやくお願いしますの」


白井はクリスマスという事もあり苛立っていたのだろう、憮然としたトーンで話す。

浜面は、あ、すいませんと言いバックをもち降りようとする。

反対に自分より年下だと判断した麦野はいたずら心が働いたのだろう、降りようとした浜面の腕につかまる。

「まってにゃーん☆」

「ったく、なんなんだよ?沈利?」
「うまくあるけないにゃーん><」

どーってことはないただの情事。
しかし、今日はクリスマス。独り身の常盤台の風紀委員にとっては目の前でこれをやられると正直腹が立つ。


(この二人のバカップルぶりはなんなんですの?朝からお姉様の電撃を喰らいかけるし、寮官には叱られますし、警備員の業務補助に狩り出されますし…不幸ですの…)
632 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 17:26:55.56 ID:NIZXcG.0

「お勤めごくろーさまー☆」
(がんばってねー、常盤台の女の子☆)


麦野がひらひらと手を振り彼氏の浜面とかいうやつと仲良く下車していく。
はぁ、もう一度白いため息をつき白井は次の寝ている客を起こすために次の車輌へと移動していく。


「ほらーお客さーん、起きてくださいましー」
(今日は帰ったらひそかに買った梅酒を飲み干してやるんですの!)


何時に上がれるのだろうか。時計はちょうど22時を指していた。年端のいかない子供を働かせていい時間はそろそろ終わりだ。

けれど彼女は一向に上がれそうにない。


「はぁ…初春ー!早くこっちにきなさーい!嘔吐した乗車客がいますのー!」
(聖夜に吐くなんて…この人も哀れな人ですの…)


「はいはーい!今そっちにいきまーす!こら!アホ毛ちゃん!モヤシ!おきてー!」

とある風紀委員の電車警備(パトロール)の夜は長い。
633 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 17:34:50.53 ID:NIZXcG.0
同じ頃、横浜から各駅停車町田行に乗車した垣根達はお喋りしながら取りあえず町田駅に向かっていった。

かなりの乗車数だ。何せ横浜から学園都市の町田方面、即ち学園都市の北端へと向かう列車はこの横浜線しかないからだ。

目が死んだリーマンや和気藹々のカップル、その他諸々で車内は温暖化だ。
そんな車両の端っこに滝壺と垣根の二人はいた。


「ほら、あそこ!理后ちゃん!夜景きれいだね!」


「うん、あれどこ?」


たしかー…ベイブリッジだったか?東神奈川駅から大口駅へ向かう一瞬、みる事ができた景色。
それらがまたすぐ無機質な高層ビル郡に消えていく。


「ねぇ、ていとく。私眠いかも…」
「…俺もねみぃ…ただ、立ち乗りは厳しくないか?」


「………zzz」

(おいおい?理后ちゃん?)


滝壺は立ったまま寝ていた。垣根の胸元に深く沈み、懐中時計を大事に持っている。

左手で吊り革を掴み、右手で滝壺を抱く。

(町田まで約30分か…んでそっから乗り換えだからまだまだかかるなー)

適当に考え事に思考を巡らせるが垣根も立ったままうとうとしてきて、最終的に睡魔におそわれ、眠りにおちていった。

634 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 17:48:15.71 ID:NIZXcG.0
「第七学区ー、立川駅ー。お降りのお客様は気をつけてお降り下さいー」


「ふぁぁ…理后ちゃん、ついたよ!第七学区だぜ?」

立川から二人は眠すぎたので二人で割りカンにしてタクシーに乗り込む。

横浜を出てから二時間半ほどたち、滝壺達は第七学区の共同アジトに到着していた。

フレンダと絹旗の提案で今日の夜はパーティーだとか。


「ありがとうございましたー」


二人は聖夜も変わらず働き続けるタクシーのドライバーに向かって律儀にお礼をし、アジトの目の前で降りた。
既に浜面は達は到着しているようで、彼のセダン「アリスト」が共同アジトの前にどうどうと止まっていた。


滝壺はIDカードを通し、アイテム最大の共同アジトのドアをこんこんとノックする。
635 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 17:53:22.56 ID:NIZXcG.0
「おーい、みんなぁー」


ガチャリとドアがあく。ドアを内側からあけたのはフレンダ。いつも私服にエプロン姿。ベレー帽は被っていない。

奥のリビングからは甘い香りが漂ってくる。


「おそーい!二人とも!ささ、手あらって!クリスマスパーティーって訳よ!」
「お、フレンダ、気が利くじゃねーか」


「だろー?ってあんたの何なんだ私はー!」


フレンダと垣根の会話のやり取りをしている最中に滝壺はコンバースのスニーカーを脱ぐ。
ふと下を向くといつもよりも沢山の靴が。

瀟洒なイタリアの白革靴、豪快な長靴、ナイキのエアフォースの日彰プリントモデル、シンプルな黒の革靴。普段浜面がはかない様な男ものの靴が綺麗に置いてあった。
また、少しサイズは小さいが茶色のミネトンカのブーツが一つ。これも普段あまりみかけない。

「あれ?誰かきてるの?フレンダ」


「にしし…なんと今日はあの人たちが着てるのよ!」


「あの人たち?」

滝壺は首をかしげる。自分にこんなに多くの知り合いはいただろうか?はて?
636 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 17:56:11.94 ID:NIZXcG.0
「ったく誰読んだんだよ…フレンダ。お前こんなに男の知り合いいたっけ?ってかこのミネトンカ誰のだよ」

「にしし、リビングに行ってみなさい。結局、あんたが知ってる人って事よ、ね絹旗?」

「はい、その臭そうなブーツさっさと脱いで足洗ってリビングに来て下さい」

「は?くさくねーよ!ほら!ほら!」

「ひえー!超マジデ止めて下さい!」

そんなくだらない会話はリビングに聞こえたようで、扉越しに垣根達を呼ぶ声が聞こえてくる。


「垣根か!はやくこっちにこい」

「全く。女を連れ回してやっと帰宅か。冷蔵庫上がりが」

「おー、垣根、今日はゲレンデはバイト達に任せてうちらがきてやったぞー!」

「根性ねぇ声がきこえたぞー!!!」


声の主はアウレオルス、闇咲、牛深、削板だ。
さらに御坂女将がゲレンデ御坂シスターズを代表してアイテムの共同アジトにきていた。
ミネトンカのブーツを履いていた女性の正体はどうやら彼女のようだ。
637 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 18:00:46.46 ID:NIZXcG.0
「この人達から一緒にクリスマスパーティーやろうって言われてひそかに超計画してたんですよ」


なんで秘密にするのかは謎だが、垣根にとってはサプライズパーティーになった。

「じゃ、超お腹減ったんでいっぱい食べましょう。浜面達もまってますよ?」

「はいよ」 「うん」


「おーい、かきねー!どーだったよ?滝壺とは付き合えたのかよー?」


浜面が唐突に垣根に質問する。
垣根と滝壺に集まる一同の視線。顔が赤くなる二人。


「つきあったよ。わたしとていとく」


おー!上がる歓声。
ってか垣根なんか言え。赤面すんな。


「むぎのたちは?」
「自然、そちらもどうなったか聞いてみたいな」

滝壺とアウレオルスが麦野達にふりむくとやはり同じように二人に視線は集中する。

「麦野の事だからどーせ愛してるーとか言って甘えまくったに違いないですよ」

「ばっ!こら!きぬはたぁ///」

今度は滝壺の返す刀の質問に矢継ぎ早に質問攻めに会う浜麦カップル。
638 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 18:02:31.55 ID:NIZXcG.0
「ま、夜は長い事ですし、そこらへんはこれからたっぷり聞き出しましょう、とミサカはキムチ鍋を突きながら提案します」

「結局、夜は長いからねぇ…朝からずっと仕込みしてた私と絹旗の事を思えばどんな質問にも答えてくれるって信じる訳よ!」


「だー!わーった!答える答えるって!」


「では、自然、乾杯を交わそうではないか、『アイテム』のリーダー麦野沈利よ」

げっばれてる?そう思い麦野は辺りを見回す。するとフレンダが舌をぺろりと出している。


「ふ・れ・ん・だー!おしおきかくていね」



麦野は冗談混じりに言うと、缶チューハイのタブをキュポンと開ける。

御坂女将が注ぎますよ、と言い手ちかにあるジョッキを麦野に持たせて並々缶チューハイを注ぐ。


「ほら、ハリーハリーハリー!アイテムのリーダーお願いしますよとミサカは乾杯の音頭を催促します」


「ったく、あの忌ま忌ましいクモ女モドキのクローンと親睦を深めるなんて思いもしなかったわ」


「あー、オリジナルですか、他は知りませんが私はあんまりあーゆー馴れ合いみたいなの気に入らないんで。ほら、みんなこちらをみてますよ」


思えばここ数週間で色々な事があった。趣味の幅が広がり、恋人も出来たし、こうして新たな知り合いもできた。
アイテムのメンバーも増えた。



それらを思い返しぐっと麦野はジョッキを持ち上げる。




皆麦野のカンパイコールを待っている。
639 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 18:05:51.09 ID:NIZXcG.0
「おほん。では、カンパーイ!!」




           カンパーイ!!!!!!





カチーン!と勢いよく鳴るジョッキ、徳利、缶。

夜はこれからだ。これからもアイテムは存続するだろう。


カップルはさらに親睦を深める。

白馬『あうれおるす』の面々ともさらに仲良くなるだろう。


この後一同暴露大会や、浜面のテクニックはうまいかとか、アウレオルスがロリコンかどうかとか、フレンダと絹旗は今日一日ホントは何をしていたかとか…

今日は夜が更けるまでそれらを色々語り尽くしていくコトになる。けれどそれはまた別のお話。




これらの人の出会いに最高の感謝を込めてここらで物語りの筆をおきたい。




おしまい。
640 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 18:06:46.04 ID:NIZXcG.0
最後ぐだぐだになっちまったけど、これでおわりです。

つまんなくてごめん。

意見待ってます。

初SS緊張した…。
641 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/19(金) 19:08:36.70 ID:gOYtQkUo
  /: : : : : /: : : : : : :./: : /: : : /:;イ: : : : : : : : : : : :.!
  |: : : : :/: : : : : : :./: /: : :_:彡 '"/: :/: : : : : : :.|: : : !
  |: : : : :| : : : : : :/,斗-‐ "\  /: :.! : : : : : : :|: : : |
  |: : l: : |: : : : : : /,,ィ==ミ、  \ i!:/:|: |: : |: :.| : |: : : !
  |: : |i! :| : : : /:/.{ ハ;;;ヒ. ヾヽ  `|:|: |!: !: :.!: :i: :/ : : i
  |: /.|!: | : : : :/ \;ソ 〃   |'|:.|.{: i :.i: :.!:/: : :j
  |/: :|!: |: :/:./             |:| ヽ乂: :.!': : : :/     
 ,从/:i| :|: |:/           ,ィ;r‐ォ .〉:|: :|: : : /
ヽ .// |:/|: !:!          ,イツ,/ィ:乂从: :./              超乙です♪
::::.}  |' .|:.|:!            〉 ` /: : : : :/:./
:::::|  / .|;|:| ヽ  r "~>     ∧: : : ://::/
:::::|   /ハi:::::|ヽ、__  _  イ: : : :/,/ " 
:::::|ヽ  -‐/::::::|  ヽ  |: /: : /: :./
::l::|ミ、__ ,ノ:::::::/ |  ! |/: : /"´
::l::ト  -‐!:::::/ /,  | | レ'
::l::|   i!:::/ 〃   |        r.、     /)
::l::|   /:://-   |         | .|     //./)
::l:i  /::::|!     ノ|         / '、,,_/.///
::li /:::::i |― ‐ ' ~ イ      /   !  `'_ィ'____
:::レ'::::::::::! ゝ―‐ ~  |      |    ハ.   ,.―― '゛
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642 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/19(金) 19:18:25.28 ID:49Aa0zso
乙だ
甘ったるくてこれは当分甘いものはいらないな
面白かった
643 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/20(土) 00:21:30.37 ID:faPNezco
乙だぜ

また甘いのかいてくれよな!!!

番外通行希望
644 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/20(土) 00:25:42.83 ID:adVnBGU0
乙!
645 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/20(土) 01:26:15.73 ID:VJnff9Ao
乙ー

このお話の中じゃあないことだけど
ていとくんのプレゼントって死亡フラグがビンビンだよねぇ…
646 :むぎのんだいすき [saga sage]:2010/11/20(土) 10:57:13.63 ID:tvxnbHU0
うわぁ!
皆様コメントありがとう。嬉しいです。

>>643
俺でよければ書いてみましょう。


ではまたどこかでお会いしましょう。

647 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/20(土) 15:00:16.90 ID:vBiEk6U0
遅ればせながら乙!!!

ていとくんと滝壺のカップリングよかった!!
648 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/21(日) 19:29:33.36 ID:zKVhWcDO
>>1すっごい良かったよ!乙!
649 :作者 [sage]:2010/11/21(日) 20:06:17.48 ID:bptkqH60
自分の立てたスレッド見に来てしまいました。

>>647 ありがとう。

>>648 そう言って貰えると本当に嬉しいです。


今番外通行書いてますのでまた諸兄達とお会いできたら嬉しいです
650 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/22(月) 00:36:42.52 ID:njDJbLAo
番外通行で純愛エロとか


インスリンを下さい
651 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/22(月) 16:43:31.00 ID:k0zH5DYo
乙!
たっぷりの糖分をありがとう・・・!

ここの>>1の上琴やステインとかも見てみたいな
652 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/24(水) 02:27:26.28 ID:eMCuKXko
ちょ、終わりなの?糖分が不足で倒れるよ

とにかく乙だよ。また書きたくなったら甘いの頼む
653 :作者 [sage]:2010/11/24(水) 12:10:48.27 ID:EfPOqD60
>>652
今番外通行書いてるんですが、それ終わったら考えてみます。
結婚式とか書いてみようかな…。
654 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/01(水) 02:33:16.48 ID:GZSri8.o
ここhtml依頼出さないといけないんじゃない?
現行の番外通行あるしねー
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