このスレッドは製作速報VIP(クリエイター)の過去ログ倉庫に格納されています。もう書き込みできません。。
もし、このスレッドをネット上以外の媒体で転載や引用をされる場合は管理人までご一報ください。
またネット上での引用掲載、またはまとめサイトなどでの紹介をされる際はこのページへのリンクを必ず掲載してください。

唯「さわちゃん!」爽子「………はい」 - 製作速報VIP(クリエイター) 過去ログ倉庫

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/26(火) 01:19:05.40 ID:iX2rqV60
唯「はぁ…はぁ…迷った…」

四月。桜が散り始めた頃。
平沢唯は今年入学する高校へと急いでいた。

今日は入学式。
寝坊した彼女は、玄関を飛び出し、その途中で迷子。

唯「どうしよう…たしかこっちだと思ったんだけど…」

立ち止まり道を思い出そうとするが、思い出せず立ち往生している。

唯「えーとぉ…」

二手に別れた道。運命の分かれ道だ。どちらが正解か…。

唯「もういいや!こっち!」

彼女は、自分の勘を信じて、右への道を選択したーその時。

【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】

ごめんなさい、この製作速報VIP(クリエイター)板のスレッドは1000に到達したか、若しくは著しい過疎のため、お役を果たし過去ログ倉庫へご隠居されました。
このスレッドを閲覧することはできますが書き込むことはできませんです。
もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。

ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713522243/

旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713353246/

木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1713351945/

いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713279251/

【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713277692/

こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713183168/

【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713091115/

アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713089503/

2 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/26(火) 01:25:13.28 ID:iX2rqV60
「あの〜…」

平沢唯、彼女の後ろから、声が聞こえてきた。
突然だったので、びっくりして振り向くと、そこには同じ制服を来た女子学生が立っていた。

「桜ヶ丘高校に行くなら、左の道です…」

その女子学生はゆっくりと、腕をあげながら、左を指差した。

唯「あ、ありがとうございますっ!」

唯は大きく頭を下げてお辞儀をした。

「いえ…」

ゆい
3 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/26(火) 01:31:09.45 ID:iX2rqV60
>>2
ミスった

唯は顔を上げて、女子学生の顔を見た。
その女子学生は、綺麗な笑顔をしていた。

一瞬その顔に見惚れてしまった。
が、自分が遅刻していることを思い出し、再度頭を下げて、左の道を
走り出した。

プロローグ〜出会い〜終


こんな感じで書いてきます。
君に届けの黒沼爽子です。



4 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/26(火) 01:38:45.34 ID:EayKEKIo
なんという意外な組み合わせ
そして俺得
5 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/26(火) 01:42:51.33 ID:iX2rqV60
唯「いや〜、まいったまいった」

ホームルーム。
席に着いた唯はそうつぶやいた。
なんと、彼女は遅刻と勘違いし、入学式開始時間の30分前に到着していたのである。

ホームルームでは、自己紹介が始まった。
唯はキョロキョロと辺りを見渡す。
その様子に気づいたのか、まえの座席に座っている、幼なじみの真鍋和は唯を諭す。

和「唯。キョロキョロしすぎよ。」

唯「ごめん。和ちゃん。」

優等生の彼女に諭され、唯はキョロキョロすることをやめると、和に向かって、話しかけた。

唯「和ちゃん。長い黒髪で、少し背の高い、すらっとした女の子知らない?」

和「知らないわよ。ほら、他の子の自己紹介をちゃんと、聞きなさい。」

唯「はーい」

唯は、おしゃべりを中断され、自己紹介に耳を傾けることにした。

その時ー。

6 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/26(火) 02:06:50.68 ID:iX2rqV60
唯「あー!」

1人の女子学生が自己紹介を始めようと立ち上がった。
と、同時に唯が声を上げて、立ち上がった。

唯「和ちゃん!あの子だよぉ!」

和「ちょ、ちょっと、唯!」

突然立ち上がった唯に、周りから笑いが広がった。

先生「どうした…え〜…平沢?」

唯「あ、えへへ…何でもないです。はい。」

先生「全く、突然声を出すな!寿命が縮んでしまうだろ!」

先生の安い冗談に少々の笑いが起こると、先生はそれを静止した。
そして、自己紹介のために立ち上がった女子学生に、自己紹介をするように促した。

「んん"!あ"〜…すいません…今ちょっとはらったので…あ、く、黒沼さ、爽子です。」

ど低音の声…何ともいいがたい声に、周りから囁き声が広がる。

「す、すごい声…」
「はらったって何を…?」
「私、あの子のこと聞いたけど、霊感あるらしいよ…」
「え?じゃあ、はらったって、霊的な何かを…?」
「こ、こわー!」

周りのささやきは、緊張で聞こえていないのだろう。
爽子は続ける。

爽子「あの…家近いので…何かあったら、言ってください…」

「な、何かあったらって…」
「いるの⁈霊的な何かがいるから、何か起こるの⁈」

しばらく、ざわめきが止まなかったが、先生がそれを諭すと、自己紹介はたんたんと進んで行った。

唯「平沢唯です!」え、えとー趣味は…あ!寝ることです!」

唯の天然が、場の笑いを誘う。
唯は照れながら、座席に座ると、爽子の姿を確認する。

唯(あの子だ…あの子に間違いないよ!)

改めて姿を確認し、確信すると、先生が出て行った後、唯は爽子へと近付こうとした。
7 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/26(火) 02:24:48.06 ID:iX2rqV60
しかし、声をかけようとした時、爽子は突然立ち上がり、教室を出て行ってしまった。

唯「あー…」

追いかけようとしたその時、別の女子学生から、声をかけられる。

「平沢さん!今、黒沼さんに声かけようとした!?

唯「う、うん。」

「やめといた方が、良いよ!霊に気に入られちゃうよ!?」

唯「お、大げさだよー」

「大げさなんかじゃないんだよ!私、知ってるんだって!」

唯「え…あ、ま、また今度教えてね!」

唯は直感的に、あまり関わりたくないなぁと、感じると、会話を中断し、自分の席へ戻った。

和「どうしたの?唯。」

唯「爽子ちゃんに話しかけようと、思ったんだけど、どっかいっちゃったー。」

和「クラスメイトなんだから、いつでも話しかけられるじゃない。」

唯「そうだよねー。次、何の教科だっけ??」







8 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/26(火) 02:26:49.96 ID:iX2rqV60
しかし、爽子に声をかけるのは、大変だった。
爽子自身、授業が終わると、教室をマッハで出て行ってしまうし、話しかけようにも、周りの女子学生がそれを阻止してくるのである。

唯「むむむ…なかなか話せない…」
最後の授業の前、座席に着いた唯は、腕を組んで唸っていた。

和「何唸ってるのよ、唯。」

唯「和ちゃん!なかなか爽子ちゃんに話しかけられません!」

和「え!?まだ、話しかけてなかったの!?」

唯「え、えぇぇ〜!だって〜。」
9 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/26(火) 02:31:53.93 ID:iX2rqV60
唯はこれまでの経緯を和に話した。

和「そう…それは話しかけるのが大変ね…」

唯「そうなんだぁ〜…どうしよう、和ちゃ〜ん。」
ため息をつきながら、机に突っ伏すと、授業開始のチャイムが鳴り響いた。

和「この話はまた後で。帰り道でしましょう?」

唯「うん!」



とりあえず、書き溜めなしでここまで…。

眠いので寝ます…。
結末は考えてないですが、とりあえず、律、澪、紬とは絡ませたいです。

失礼しますー。
10 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/26(火) 02:36:43.28 ID:EayKEKIo
今後彼女らがどう絡むのか期待して待ってます
11 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/26(火) 22:43:31.41 ID:3Li1hXoo
これは期待
12 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/30(土) 23:35:16.66 ID:j9K1Z3A0
和「それで?黒沼さん?とは、いつ知り合ったの?」

自宅までの帰り道。和が唯に聞いた。

唯「あれ?黒沼さんだったっけ?黒水じゃなかった?」

和「もう!話しかけたい子の名前くらいちゃんと覚えて!」

唯「ごめんごめん〜」

唯はテヘヘと頭を掻いた。

和「で?どこで知り合ったの?」

唯「えと〜…今日、道を間違えそうになった時、
教えてくれたんだ〜。」

和「間違えそうって…唯のために憂が地図を書いてくれたんじゃなかった?」


唯「忘れました!」
唯はフンスっと胸を張って言う。

和「もう…威張ることじゃないわよ。」



13 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 11:29:00.46 ID:fqu79720
和「じゃあ、黒沼さんも家が近いんじゃない?」

唯「あ!そっか〜!さすが、和ちゃん!」
唯は顔をぱっと明るくさせて、和の方へ笑顔を見せた。

和「間違えそうになった道で、待ち伏せすれば、また会えるわよ。」

唯「そうだよね!よ〜し!」
唯はガッツポーズをして、和に「バイバイ!」と、手を降ると、うちの中へ入って行った。

和は一つため息を、ついて唯の姿を見送ると、自宅へと歩き始めた。

14 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/31(日) 13:51:43.66 ID:fU9JtHoo
期待支援
15 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/02(火) 18:25:00.06 ID:vvyTt4Qo
まだかな まだかな
16 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/09(火) 01:38:52.44 ID:CrHR5aU0
age
17 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/09(火) 01:47:04.17 ID:mjyGJ9I0
−三日後−

和は珍しく机に向かって唸っている幼馴染−唯に話しかけた。

和「そういえば・・・黒沼さんとは話せたの?」

唯は、はっとして顔を上げ、頭をかくと「まだです・・・。」と、つぶやいた。

和「えぇ?!もうあれから三日も経ってるわよ?!」

和は思わず、唯の机に身を乗り出してしまった。
その威圧に押され、後ろにのけぞりながら、言う。

唯「だって〜・・・朝起きれなくてぇ・・・。」テヘヘ

和「まったく・・・。明日、私が起こしに行ってあげるから。憂にも話をしておいて。」

唯「ほんと?!ありがとう、和ちゃん!」

唯は顔を明るくして、立ち上がって、鞄を持つと、「和ちゃん!帰ろう!」と、言った。

18 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/09(火) 01:57:28.01 ID:mjyGJ9I0
校舎を出たすぐの広場の掲示板で、唯は足をとめた。

和「そういえば、さっきなんで唸ってたのよ?」

唯「部活をしようと思いまして!」フンスッ

和「部活?唯が?」

唯「ひどいよ〜和ちゃぁん!」

和「ごめん、ごめん。てっきり、帰宅部になるのかと思ってたから。」

唯「高校生になったんだもん!私は変わるよ、和ちゃん!」フンスッ

唯はそう言うと、掲示板に貼られた部活勧誘のポスターをきょろきょろと見始めた。

和「ポスターより、体験入部してみた方が良いんじゃないかしら?」

唯「そうはいっても、やっぱりびびっとくるものがないとさ〜」

和「そんなんじゃ、また帰宅部に決まるんじゃない?」

唯「の、和ちゃん・・・しどいっ!」

唯はポスターの一部始終を見ると、「はぁ。」と、ため息をついた。

和「どう?どれかに決まりそう?」

唯「う〜ん・・・。」

和「とにかく、部活動するなら今月中に入部届けを提出しないと、部活動はできないわよ?」
19 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/09(火) 02:02:46.76 ID:mjyGJ9I0
唯「そっか〜・・・。和ちゃんはどうするの?」

和「私は生徒会に入ろうと思ってるから。」

唯「えぇ〜?!一緒に部活入ろうよ〜」

和「無理よ。もう、生徒会に入ることを先生に伝えてるし、かけもちはできないわ。」

唯「そっか〜。残念だな〜。」

その後、他愛のない話に花を咲かせていると、唯の自宅前へ到着した。

和「明日、忘れないでよ。黒沼さんに会う約束!」

唯「っは!だ、大丈夫だよ!」アセアセ

和「・・・今、忘れてたでしょう?」

唯「い、今から目覚ましセットしとくから、大丈夫!」

そう言って、唯は逃げるように自宅へ入って行った。

和「あ!憂にもちゃんと話しておいてよ!」

和は、ため息をついて、自分の自宅へと向かった。
20 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/09(火) 02:06:16.37 ID:mjyGJ9I0
−翌日−

憂「お姉ちゃん・・・?和ちゃんとの約束の時間だよ?」

唯「・・・えぇ〜・・・今何時?」

憂「今起きれば、間に合うから、起きて?お姉ちゃん。」

唯「まだ7時じゃあん・・・あと、一時間は寝れるよ〜・・・。」

憂「だめ!和ちゃんに怒られるよ!」

唯「う〜ん・・・あっ!そうだ!約束!」ガバッ

憂「よかった。思いだしたんだね!」

唯「えへへ・・・。」
21 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/09(火) 02:09:52.49 ID:mjyGJ9I0
和「おはよう。唯。」

唯「おふぁあぁあよう・・・。和ちゃん。」

唯は眼をこすり、あくびをしながら返事をした。

和「眠そうね・・・。」

唯「だって、いつもより、一時間早く起きてるよー。」ファアア

また、ひとつ大きなあくびをして、言った。

和「もう!唯のためなんだがら、少しはしゃっきりしなさい!」

唯「ほーい。わかってるよぉ。」
22 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/09(火) 02:13:35.04 ID:mjyGJ9I0
少し歩くと、二人は唯と爽子が出会った場所に到着した。

和「ここね?」

唯「うん。ここだよ!」

近くにあった石垣に腰掛け、二人は爽子を待つ。

唯「あ!来たよ!」

唯は、爽子を確認すると、元気よく石垣から飛び出し、爽子に声をかけた。

唯「おはよう!」

しかし、爽子は、返事をせず、すたすたと先へ行ってしまう。

23 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/09(火) 02:18:31.92 ID:mjyGJ9I0
爽子(え・・・?今の私に声を掛けてくれたのかな?今のって同じクラスの平沢さんだよね?)

爽子は後ろをチラ見して、二人の姿を確認する。

爽子(あ、確かもう一人は同じクラスの真鍋さん・・・。そっか、二人で待ち合わせをしてたんだ・・・。良いなー。私も・・・。)

(唯『ごきげんよう!黒沼さん。』キラキラ)

(爽子『ご機嫌麗しゅう。平沢さん。真鍋さん』キラキラ)



24 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/09(火) 02:26:23.08 ID:mjyGJ9I0
爽子(良いな〜・・・。)

爽子は、頭で妄想を繰り広げ、唯の呼びかけに気付かない。

唯「ぜ、全然反応してくれないよ!」

和「ほ、本当に黒沼さんと話したの、唯!」

二人は爽子の歩くスピードに追い付くのがやっとである。

もう少しで校門につくというところで、唯が爽子の肩に手をかけた。

唯「く、黒沼さん!」ゼェゼェ

爽子「・・・え?」

唯「やっと、気づいてくれた〜・・・。」

唯と和はその場にうなだれ、息を整える。

爽子(え・・・?わ、私に声をかけてくれた・・・?)

唯「わ、私のこと覚えてる?」ニコ

爽子(・・・えぇ〜・・・?!め、面識あったかな〜…?!)

和「ねぇ、人違いなんじゃないの?黒沼さん、困ってるじゃない・・・。」

唯「そんなことないよ!」フンスッ

爽子「あ・・・あの〜・・・。」

25 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/09(火) 02:33:21.07 ID:mjyGJ9I0
唯「あ!思いだしてくれた?!」

唯は、顔をほころばせて、爽子の手を握った。

爽子「・・・えっとぉ〜・・・。」

唯「」ニコニコ

唯は満面の笑みで爽子を見つめている。

爽子(い、言えない・・・。覚えてないなんて・・・。)

和「こら、唯!黒沼さん、困ってるじゃない。」

和は満面の笑みをしている唯をさえぎって、「ごめんなさい。」と、謝った。

爽子(えぇ〜・・・。謝らなきゃいけないのは、こっちのほうなのに・・・。)

和「ほら、唯。手も放して!何も道端でずっと話すことないじゃない。クラスで話しましょう。」

爽子の頭の中で、この後クラスで話す→このまま一緒に登校の構図が出来上がっていた。

爽子(う、うそ〜・・・。夢が叶っちゃうよ〜・・・!)

26 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/09(火) 02:37:50.40 ID:mjyGJ9I0
爽子は、知らずのうちに涙を流していた。

和「え?!」

唯「く、黒沼さん?!」

涙を流す爽子に気付き、二人は驚きの声を上げた。

爽子「あっ・・・!ごめんなさいごめんなさい!」

爽子は慌てて涙をぬぐうとうつむいた。

唯「ご、ごめんね?いきなり声かけたからかな?」アセアセ

和「だ、大丈夫?ハンカチならあるから!」アセアセ

爽子(ふ、二人とも優しい・・・。)

爽子は二人の優しさに感動して、また涙を流すのであった。
27 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/09(火) 02:43:52.48 ID:mjyGJ9I0
−教室−

唯「そっか〜。びっくりしちゃったよ〜!」

唯は爽子が泣いた理由を聞いて、言った。

爽子「ご、ごめんなさい・・・。」

唯「とんでもないよ!これからは、毎日一緒に登校しようよ!」

和「唯と一緒に登校したら、毎日遅刻と戦わなきゃいけないじゃない。」

唯「ひ、ひどいよ!和ちゃん!」

爽子(ま、毎日・・・?!)

爽子が、驚いた表情をしていると、唯が悲しそうに言った。

唯「そ、そんなにいや・・・?」ウルウル

爽子「っち、ちがうの!むしろ迷惑じゃないかなって・・・。」

唯「迷惑なわけないよぉ〜。」

和「黒沼さんが良いなら良いと思うわ。けど、大変よ?」クスッ

28 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/09(火) 02:50:15.65 ID:mjyGJ9I0
爽子(平沢さんを遅刻させないようにする・・・!)

爽子は、まるで使命かのように燃えていた。

唯「でも、覚えてないとは思わなかったなぁ〜。」

唯は、道を教えてもらったことを話題に切り出した。

爽子「か、重ねがさねごめんなさい・・・。」

爽子は、深々と頭を下げた。

唯「そ、そんなに頭を下げないでよ〜。全然気にしてないから!」

和「唯の方こそ、記憶力ないしね。」

唯「あ、また和ちゃんたら〜!」

あははと、二人の笑い声が重なる。その時、爽子から自然に笑みがこぼれた。

唯「あ!その笑顔!」

唯は爽子の顔を指差して、声を上げた。と、同時に爽子はいつもの表情へと戻ってしまった。
29 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/09(火) 02:54:07.26 ID:mjyGJ9I0
唯「私が見た、笑顔だよ〜!」

和「うそ!見逃しちゃった。」

爽子「・・・え?・・・え?」

爽子が困惑していると、唯がにっこりと笑って言った。

唯「あの笑顔のさわちゃんは、すごいかわいいよ〜。」

爽子(か、かわいい??)

爽子は、言われた意味がわからないといった表情になる。
30 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/09(火) 03:00:47.10 ID:mjyGJ9I0
唯「あ〜!和ちゃんにも見せてあげたいのに〜。」

和「これから、また見せてもらうわよ。」

爽子「ひ、平沢さん?あの〜?」

話の意図が分かっておらず、爽子は混乱している様子だ。

唯「あ、私は唯で良いよ!さわちゃん!」フンスッ

和「私も。和で良いわ。爽子。」

爽子(な、名前で呼び合う・・・夢が叶い過ぎちゃうよ〜・・・!)

爽子「・・・うん!」



31 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/09(火) 03:07:12.40 ID:mjyGJ9I0
−昼休み−

唯「おひるだよー!」

唯は、大きく伸びをして言った。

和「爽子を誘うの?」

唯「お!和ちゃん、名案ですな!」

唯は立ち上がって、爽子の席を確認すると、爽子はすでに席をはずしていた。

唯「い、いない!」

和「え?!どこに行ったのかしら・・・。」

唯は反射的に窓の外を眺めた。すると、窓の下。花壇に腰掛けて、弁当を広げている爽子を発見した。

唯「いたよ!和ちゃん!」

和「本当!行動が早いのね・・・。」

唯と和は、急いで教室を出ると、爽子の場所へ向かった。

32 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/09(火) 03:13:42.73 ID:mjyGJ9I0
−爽子自宅−

爽子(夢が一気に叶い過ぎるよ・・・!)

爽子は、食事中に、今日起きた出来事を頭で再生していた。

爽子父「どうした、爽子。箸が止まってるぞ!」

父にそう言われて、我に返ると、爽子は箸を素早く動かし、残っていたご飯を食べ終えた。

爽子「ごちそうさま。食器は私が洗うから、そのままで良いからね?」

爽子は、顔をほころばせたまま言った。

爽子母「学校で良いことあったわね?」

爽子「・・・うん!」

爽子はうなずくと、自分の部屋へと向かった。

爽子父「あんなに生き生きしている爽子を見るなんて・・・。」

爽子母「うふふ・・・。よかったですね、お父さん。」

33 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/09(火) 03:25:14.86 ID:mjyGJ9I0
爽子は、ベッドに入って、明日のことを考えていた。

爽子(明日は唯ちゃんを迎えに行かなきゃ・・・。)

爽子(どうしたら良いかな・・・。唯ちゃんはいつも何時に登校するんだろう・・・。私と同じ時間かな・・・。)

爽子(も、もし違ってたらどうしよう・・・。早すぎても迷惑だし・・・。遅すぎたら、先に行っちゃうかも・・・。)

爽子(お弁当どうしよう・・・!あんまり時間をかけてたら、遅くなっちゃうし・・・。)

時間は刻一刻と過ぎて行った。爽子は、いつの間にか眠りに就いていた。

深い眠りに就いた爽子は、夢を見た。

唯と自分のほかに三人いて、海辺で楽しく遊んでいる夢・・・。

爽子「唯・・・ちゃん。」

爽子は、今まで感じ、見たことのない幸せな夢に包まれていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

遅筆ですいません。とりあえず、今度ここまでで。
次から、りっちゃんと澪とムギちゃんをからませていきたいと思います。

おやすみなさい。

あと、唯の爽子の呼び方が途中、間違ってます。すいません。
最初から爽子ちゃんて呼ばせてましたね・・・。

34 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/09(火) 07:21:38.33 ID:BartdZso
面白い
次も期待
35 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/09(火) 10:57:10.82 ID:p4hvAMSO
風早だしたら評価してやる

女キャラだけ出したご都合物語なら[ピーーー]
36 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/09(火) 12:43:12.32 ID:lqlGZfMo
待ってた!
続きもゆっくり待ってる!

唯も和も爽子もかわいいよ
37 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/09(火) 13:57:54.68 ID:lu7RhSk0
>>35
素直に出してくれたら嬉しいとか言えないもんなんかね…

俺は男キャラはいらないけどプロットで既に出す予定だったら遠慮なく進めてくれ
38 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/09(火) 14:53:06.36 ID:kGL6H6AO
内容とはあまり関係ないけど爽ママはもっと気さくな喋り方だよ
39 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/10(水) 01:11:21.34 ID:pDjYmuk0
>>35
風早は無理…かも…女子高ですしね…

>>38
自分の中ではこんな感じだった…申し訳ない

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

−翌日−

爽子は前日教えてもらっていた平沢家の門の前で佇んでいた。

爽子(・・・勝手に入って良いかな・・・)

門の留め具に手をつけようかつけまいか、爽子が迷っている時、憂は一階の居間のカーテンを開け、愕然とした。
40 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/10(水) 01:17:35.31 ID:pDjYmuk0
憂(も、門の前に・・・!)

見てはいけないものを見てしまった・・・憂はそんな恐怖からか、その場からかけだし、姉のもとへ向かう。

憂「お、お姉ちゃん!」

唯「ほぇ?ど、どうしたの?憂・・・。」

憂の剣幕に驚いた唯は、寝起きにもかかわらず、瞬時に目が覚めた。

憂「わ、私・・・見ちゃった・・・。」ガクブル

唯「み、見たって何を?!」

憂は何も言わずに、窓を指差した。唯はそれに従って、その窓から外を見降ろすと、門の外でそわそわしている爽子を確認した。

唯「さわちゃん!」

憂「・・・え?」

唯「さわちゃんだよ〜!学校でお友達になったんだぁ〜。」

憂「ゆ、幽霊じゃないの?!」

唯「違うよぉ〜!」

唯は怒った表情で、憂を見た途端、はっとして急いでベッドを飛び降りた。

唯「約束してたんだった!早く着替えなきゃ〜!」アセアセ

41 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/10(水) 01:24:18.13 ID:pDjYmuk0
憂「ごめんね!お姉ちゃん!」

憂は着替えを終えた唯に対して頭を下げた。

唯「も〜!今度間違えたら、もっと怒るよ!」フンスッ

憂(怒ったお姉ちゃんもかわいい!!)

唯は憂の作ってくれた弁当を受け取ると、元気よく玄関を飛び出していった。

唯「おはよう!さわちゃん!」

爽子「あっ・・・お、おはよ〜・・・ゆ、唯・・・ちゃん。」

唯「えへへ・・・ごめんね!待たせちゃったかな?」

爽子「・・・ううん!い、今来たところだから!」(ゆ、夢のセリフが言えた〜!)

爽子が感動に浸っていると、先に進んでいた唯が心配そうにこちらを振り返った。




42 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/10(水) 01:30:22.94 ID:pDjYmuk0
唯「大丈夫?さわちゃん・・・?」

爽子「・・・あっ、ごめんなさい!大丈夫です!」

唯「さわちゃん!敬語は使わなくて良いよ〜。」

爽子「・・・ご、ごめんなさい・・・こういうのになれなk・・・。」ッハ

爽子は引きつった表情になると、言葉を詰まらせた。

爽子(こ、こんなこと言ったらただでさえ暗いのに、もっと暗く思われちゃう・・・!)

唯「?どうしたの?」

爽子「な、なんでもないでs・・・ないの!」アセアセ

唯「?」

唯が首をかしげていると、和がやってきた。

和「あら?唯がもういるなんて、めずらしい。」クスッ

唯「また和ちゃんたら!めっ!」プンプン

爽子「・・・お、おはよ〜、の、和ちゃん・・・。」

43 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/10(水) 01:35:00.25 ID:pDjYmuk0
和「おはよう、爽子。」ニコ

爽子(・・・あ〜良いなぁ・・・私も和ちゃんみたいに微笑みたい・・・!)

和「ど、どうしたの?爽子?」

また立ち止まってしまった爽子に、今度は和が心配して声をかける。

爽子「な、なんでもないでs・・・なんでもないの!」アセアセ

和「そう。じゃあ、行きましょう?」

爽子「・・・うん!」



44 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/10(水) 01:42:27.94 ID:pDjYmuk0
爽子(・・・ちゃんと二人の輪の中に入れてるかな・・・。)

登校途中に爽子はふと、思った。

爽子(・・・今の私なら、みんなに声をかけても大丈夫かな・・・。)

隣にいる二人は、他愛のない話で盛り上がっている。

爽子(・・・わ、私も加わりたい・・・!)

爽子は、意を決して、二人の会話に加わろうと、話しかけた。

爽子「あ、あの〜・・・。」ボソッ

唯「でね〜、そこでさぁ!」

和「ちょっと待って、唯。爽子、どうしたの?」

爽子(・・・ふ、二人の会話を邪魔しちゃった・・・!)

唯「さわちゃん?」

爽子は唯に声を掛けられ、びくっと体を震わすと、顔をうつむかせてしまった。

45 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/10(水) 01:43:39.44 ID:2em7DQDO
桜高祭に風早が来れば何とかなるんじゃ
風早は桜高の女子にも知られてる隣町の高校のイケメンって感じで

んでライブの唯に一目惚れとか爽子と絡んで気になっちゃうとか

その後風早は高校でも野球部で試合観に来てーとか

よかったら参考にしてくれ
46 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/10(水) 01:47:02.70 ID:pDjYmuk0
爽子「・・・ご、ごめんなさい!」

爽子は突然頭を下げると、こう続けた。

爽子「ふ、二人の会話を邪魔しようとしたわけじゃないの!そ、その・・・。」

和「さ、爽子!落ち着いて!大丈夫よ。」

和が、頭を下げたままの爽子の肩を持って、起こしてあげた。

唯「私たち、邪魔されたなんて思ってないよ〜。むしろ、爽子ちゃんを無視して二人で会話しちゃってたよ!ごめんね。」

唯が頭を下げる。と、和も続いて頭を下げた。

和「そうね。私がもっと気遣うべきだったわ。ごめんなさい。」

そう言われた爽子は、驚いた表情を見せた後、二人の優しさにまた涙を流してしまったのだった・・・。
47 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/10(水) 01:53:21.40 ID:pDjYmuk0
−校舎前の広場−

律「これでよしっと・・・。」

澪「勝手に貼って良いのか?ばれたら部活動を認めてもらえないかも・・・。」

律「だ〜いじょうぶだって!これだけ貼ってあるんだから、ばれやしないよ!」フンスッ

紬「いっぱい来てくれるといいわね〜。」

律「そうだな〜。」

澪「何とかあと一人そろえば、部として認められるからな。」

校舎前の掲示板に、ポスターを貼りに来た三人は軽音楽部の面々である。

紬「オカルト研究会・・・こんなのもあるのね。」

宇宙人やUFOといった独特の絵が描かれたポスターを見つけた紬がつぶやいた。

それを聞いた律は、いたずらな顔をして澪に話しかけた。

律「澪〜・・・こんな話知ってるか・・・?」



48 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/10(水) 01:59:58.01 ID:pDjYmuk0
澪「な、なんだよ律・・・突然・・・。」

澪は声のトーンの変わった律に身じろぎながら言った。

律「実はさ〜・・・うちの学年にゆうr―」

律が「うちの学年に幽霊がいる」と言い終わらないうちに澪は耳をふさぎ、縮こまってしまった。

澪「ミエナイキコエナイ、ミエナイキコエナイ・・・。」

律「ほら・・・。あそこ・・・。眼鏡の女の子と茶髪の女の子の二人の間にいる・・・。」

律は、校門あたりにいる三人組を指差すと、おどろおどろしく澪に話しかけた。

澪「いや〜!!」ダッ

澪は律を突き飛ばすと、校舎の中へと猛ダッシュで駆けて行った。

49 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/10(水) 02:23:15.40 ID:pDjYmuk0
紬「もう!」

律「へへへ・・・。」

諭す紬に対して、律がいたずらな笑みを返した時、ちょうど三人組が横を歩いて行った。

律「あの子・・・。」

紬「知ってる子なの?」

律「うん。幽霊みたいって怖がられて噂されてた子・・・。」

紬「今の子が?偶然ね。」

律「そう。・・・なぁ〜んだ、全然幽霊みたくないじゃんか。」

紬「うん。生き生きしてたわ〜。」

二人はその三人組が校舎の中へと入って行くのを見届けると、自分たちも校舎へと向かったのである。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今回はここまでで・・・。

書き込んでしまったので、いまさら直せなかったのですが、むぎちゃんの口調がおかしい気がする・・・。
まだ澪とりっちゃんには、敬語を使ってましたっけ?
だとしたら、すいません・・・。

では、失礼いたします。
話が浮かんでるので、明日また時間があれば書きたいです。

おやすみなさい。
50 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/10(水) 02:26:27.59 ID:pDjYmuk0
>>49
うわ・・・りっちゃん、誰のこと話してんだよ・・・。

律「あの子・・・。」→律「今の真ん中にいた子・・・。」

に脳内変換してください。すいません。

あんまり変わらないですかね、行き当たりばったりでかくとこうなりますね。
気をつけます。
51 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/10(水) 12:07:00.54 ID:LDn.qcwo
キテタ!
他けいおんメンバーも本格的に登場してきてwktk
52 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/11(木) 00:34:31.57 ID:HJF1dJw0
−下駄箱−

爽子は、上履きに履き替えると、階段のすぐ脇に縮こまっている黒髪の女の子を見つけた。

爽子(・・・ど、どうしたんだろう・・・?)

動かない爽子に気付いた唯が声をかける。

唯「さわちゃん、どうしたの?」

爽子「あ、あの子・・・。」

爽子が指差す先には先ほどの女の子がいる。

唯「どうしたんだろう?もしかしたら、具合が悪いのかも!」

その言葉にいち早く反応した爽子は、彼女そばへ駆け寄った。唯と和もそれに続く。

53 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/11(木) 00:43:47.18 ID:HJF1dJw0
爽子「あ、あの〜・・・・・・。」

爽子に声をかけられた女の子は、ゆっくりと振り返ると、この世のものではないものを見たような愕然とした顔をした次の瞬間―。

澪「ぎゃあ〜!!!!!!!!!!!」

校舎全体が飛び上がるような叫び声をあげたかと思うと、目にも止まらぬスピードで階段を駆け上がっていってしまった。

爽子(・・・ひどいよ〜・・・。)

過去にもこんなことのあった爽子だが、あんなにも全速力で逃げられたことはなかったので、肩を落とし、落ち込んでしまう。

唯「い、今の子、なんだったんだろう・・・すごい元気だよ〜!」

唯はそんなことは気付かずに階段の上を見上げた。

和「唯・・・。爽子と会話するには、耐性が必要みたいね・・・。」

爽子(・・・ショックだな〜・・・。)

爽子は肩を落としたまま、二人に構わず、階段をのぼりはじめてしまった。
54 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/11(木) 00:47:00.56 ID:MnxFbPIo
しえン
君届は今でこそ恋愛メインだけど
2巻までの友情話も大好きだ
55 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/11(木) 00:54:22.23 ID:HJF1dJw0
−教室−

相変わらず、爽子の周りには、何か得体の知れないものでもいるかのような空間が、クラスメイトによって作られていた。

爽子にあいさつされるが、青ざめてしまう子。近寄らないように避ける子など、様々居た。

これくらいのことには爽子は慣れてしまっていた。

すべては自分の責任。明るく振る舞えない、微笑むことができない・・・。

爽子(でも、こんな私を友達にしてくれた・・・!)

爽子は、机に着席すると、唯と和の方を見た。二人はなぜか輝いて見えた。

爽子(・・・私もあんな風に輝いて見えるようになるかな・・・。)

そうやって、ぼーっとしていると、どこからともなく心ないささやきが聞こえてくる。

「あっちに何かいるのかな・・・。」

「平沢さんの席の方を見てる!」

「平沢さんに何か憑いてるんじゃない?!」
56 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/11(木) 01:01:45.41 ID:HJF1dJw0
ささやき合いの中には、笑い声がこだましている。

その心ないささやきに気付いたのは、唯だった。

唯(さわちゃんは、普通の女の子だよ・・・!どうしてあんなこと言うんだろう・・・。)

唯(勘違いなんだよ・・・。さわちゃんだって、みんなと仲良くしたいんだ・・・!)

しかし、唯はあと一歩が踏み出せないまま、担任の先生がやってきて、ホームルームが始まってしまった。

57 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/11(木) 01:10:21.47 ID:HJF1dJw0
−昼休み−

爽子たちは、爽子の希望でまた校庭の花壇に腰掛け、昼食を食べていた。

唯「お弁当を持ってるなら、教室で食べれば良いのに〜。」

爽子「・・・いいの、外で食べるのが好きだし・・・それに・・・。」

和「それに?」

爽子「・・・教室に私がいたら、みんなが楽しく食べられないでしょう・・・?」

爽子は、暗い雰囲気を全開に出して、ため息交じりに言った。

唯「気にすることないよ!」

唯は、花壇から突然立ち上がって言った。

和「唯・・・。」

爽子「唯・・・ちゃん?」

二人の驚きの反応に、気を揉んだ唯は、あたふたしながら言った。

唯「さ、さわちゃんは・・・気にし過ぎだよ!もっと明るく元気にいこうよ!」バチーンッ

唯は大げさなふりで、大げさなウィンクをして見せた。

58 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/11(木) 01:16:37.75 ID:HJF1dJw0
和「・・・っぷ・・・唯・・・。あはははは!」

和は大声で笑う一方、爽子は笑うまいと、プルプルと身を震わせながら耐えていた。

−昼休み・校舎−

澪「律のせいで、ひどい目にあったんだからな!」

律「なんだよ〜!最後まで人の話を聞かないからいけないんだろ〜!」

購買からの帰り道、完全に復活した澪に、律は本当のことを話した。

澪「あの子に悪いことしちゃったな・・・。」

律「いや〜、嘘のようなグッドタイミングってやつ〜?」ニヤニヤ

いたずらな笑みを浮かべた律を横目で見た澪は、げんこつを作って、律の頭へお見舞いした。

澪「馬鹿律!」

律「いってぇ〜!」

その律の頭には、特大のたんこぶができたのだった。


59 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/11(木) 01:23:25.15 ID:HJF1dJw0
−放課後−

和「そういえば、唯。部活は決めたの?」

唯「まだだよ〜!良いのがなくて〜・・・。」

和「だから!選り好みしてたら、決まらないって言ったでしょ?!今月中は、体験入部できるんだから、いろいろな部にしてみなさいよ!」

唯「だから、やっぱりびびっとくるやつがないとさ〜。」

そんな話をしていると、爽子が帰り支度を終え、さっさと教室を出てしまう。

唯「あ!待って〜さわちゃーん!」

唯が慌てて教室を飛び出そうとすると、先ほど心ないささやきをしていたグループに行く手を阻まれた。
60 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/11(木) 01:31:59.28 ID:HJF1dJw0

「一緒にいるのやめた方がよいよ?」

「そうそう。平沢さん、とり殺されちゃうよ〜。」

唯は、なんとかやり過ごそうと思案するが、思いつかずにたじろいでしまう。

「平沢さんもわかってるでしょ?あの子が浮いてるの。」

「あんな子といても楽しくないでしょ?だから―」

和「私は楽しいわ。」

グループの一人が何かを言い終わるのを待たずに、和が口をはさんだ。

唯「和ちゃん・・・。」

和「あなたたちこそ、爽子のことを知りもしないで、よくそんなことができるわね。」

グループは和の威圧にたじろぐと、目をそらしてしまう。

和「爽子はあなたたちとは違うわ。一生懸命、みんなのことを考えてる。」

和は、そのグループの前に凛として立つ。

和「あれが爽子の個性なの。少し目立つからって、逆に孤立させたら、もっと目立つじゃない。」

「ゆ、幽霊が見えるって噂は本当よ!貞子ってあだ名がある―」

和「それがどうかしたの?」
61 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/11(木) 01:38:03.88 ID:HJF1dJw0
和はグループの一人の発言を切り捨てると、続けて言う。

和「噂は噂じゃない。見えるから何なの?爽子は私の友達よ。ほら、唯。行くわよ。」

和は、唯の方を確認すると、教室を出て行った。

唯は、和の威圧に自らもたじろいでいることに気付き、体制を立て直す。

唯「ごめんね!私もさわちゃんの友達だから!」

唯にはにっこり笑うと、その場から駆けだした。

教室内は少しどよめいた後、爽子のことを擁護する雰囲気が生まれた。

「そうだよね・・・。私もなんかかってに怖がってた。」

「そういえば、この前朝一番に来て、窓ガラスをふいてたのを見たなぁ・・・。」

「ほんとに?!黒沼さんって、えらいね〜。」

爽子を嘲笑していたグループは居心地悪くなったのか、そそくさと教室を出て行った。
62 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/11(木) 01:49:37.91 ID:HJF1dJw0
校舎を出たところで、校門あたりに爽子がいるのを確認すると、唯と和は歩をさらに速めた。

唯「和ちゃんかっこよかった〜!」キラキラ

唯が羨望のまなざしで和を見る。

和「やめてよ!私たちは爽子の友達なんだから。当然でしょ。」

唯「えへへ・・・。そうだよね。」

唯と和は顔を合せて笑った。

唯「さわちゃん!」

爽子「・・・・・・・・・はい。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

とりあえず、第一章完結。と、いうことで・・・。なんか展開強引ですが・・・。
次回から、けいおんぶへ入部編です。
こんなつもりじゃなかったけど・・・。ひとまず一区切りにしたいと思います。

>>45
風早って、そんな積極的なキャラじゃないので、そうやってやるのは厳しいかなっと思ったのですが・・・。ケント君ならいけそうだけどwwwwww
でも、好きな子には積極的なんだろうか・・・。うーむ。

>>54
わかります・・・。
自分は付き合うまでの二人の距離感がよかったな、なんて思います。
爽子の過去編とかあるんですかね。ないですか、そうですか。

では、失礼いたします。
おやすみなさい。


63 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/11(木) 01:57:21.65 ID:MnxFbPIo

この心がほっこりとなるような君届の雰囲気とけいおんのまったり感が融合した感じがいいね
ゆっくりと続き待ってるよ
64 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/11(木) 21:26:35.17 ID:W2pdMeU0
乙です
風早だけでなく他の男キャラも出さなくていいと思うよ
出すならモブがいいな
65 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/15(月) 03:17:18.75 ID:s4spvYAO
続きはまだか
66 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/19(金) 15:03:28.61 ID:UYG/I4U0
唯「む〜…」

現在は、授業の間の休み時間中。
唯は、シャーペンを頭に当てながら、悩ましげに唸った。

和「唯。どうしたのよ、そんなに唸って…。」

唯「部活、どこにしようかと悩んでて…」

と、唯が言うか言わないかで、和が迫って来た。

和「まだ提出してなかったの⁈提出期限まで、後一週間よ⁈」

唯「だ、だって〜…」

和「そんなこと言って、選り好みしてたら、ニートまっしぐらよ⁈」
67 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/19(金) 15:12:21.66 ID:UYG/I4U0
爽子「どうしたの…?」

騒ぎを聞きつけてか、爽子が心配そうに駆けつけた。

和「それがね…唯が…」

唯「さわちゃんは、部活入るの⁈」

爽子「私は、お家の手伝いとかあるので…」

唯「えー⁈やろうよ!部活〜!」

爽子「で、でも、私なんかがはいれる部活は…」

と、爽子は俯いてしまう。

唯が「そんなことないよ〜。一緒に探そうよ!」

唯は席から立ち上がり、爽子の両手を握った。

和「もう!他人を巻き込まないで!爽子も迷惑でしょう?」

爽子は、首を物凄い速さで座右に振ると、ほほを染めた。

爽子「わ、私が唯ちゃんの役に立つなら…!」

唯「じゃあ、一緒に探そう!」

唯が「おー」と、拳を上げると、爽子もおずおずとそれに倣った。
和が、その様子にため息をついたとき、授業開始のチャイムが鳴った。
68 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/19(金) 15:20:30.16 ID:UYG/I4U0
〜放課後〜
唯「これは…!」

唯が一つのポスターの前で立ち止まった。
それは、ギターの絵がかかれた可愛らしいポスターだ。

唯「さわちゃん!さわちゃん!これ、どうかなぁ?」

唯は他のポスターを見ていた爽子を呼ぶと、件のポスターを指差した。

爽子「…良いとおもう!」

爽子は、唯の言うことに従おうと思っていたので、なんの反対もなく、OKを出した。

唯「よーし!じゃあ、ここに決定だね!」

あれだけ悩んでいた唯だったが、爽子のOKもあってか、躊躇も自分の考えもなく、ペンを取り出した。
そして、ボスターの張り出されている掲示板を使って、提出用紙に書き始めた。
69 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/19(金) 15:30:35.20 ID:UYG/I4U0
爽子も慌てて、唯に続いて書き始めたが、そのポスターに書いてある募集事項に気づいた。

爽子「ギタリスト…?」

そこには、ギタリスト募集‼と、小さく書かれていたのである。

唯はそれに気づいているのか知らないが、せっせと記入しているようだ。

爽子(唯ちゃん…ギターを弾けるのかな…?)

ふと、湧いた疑問を唯に尋ねようとする。
と、唯は記入し終えたらしく、唯の方から話しかけて来た。

唯「書き終わった⁈」

唯に突然声をかけられ、話しかけようとしたことより、記入に意識がいき、続きを書いた。

爽子「書けたよ…。」

唯「私が出してきてあげる!」

唯は爽子の用紙をひったくるように、取るとひったくるように、走って校舎へ入って行った。

爽子「…ゆい…ちゃん…」

爽子は、嫌な予感を覚えながら、唯の名前を呟いた。
70 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/19(金) 15:32:50.77 ID:UYG/I4U0
iPhoneからです。

やりづらいので、途中までです。
すいません。

明日パソコンから、書き込もうと思います。

わずかながら、見てくださってる方、ありがとうございます。
71 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/19(金) 15:34:34.94 ID:cZM08Woo
きてた!
ゆっくりでいいから待ってるよ!
爽ちゃんがけいおん部でどういう立ち位置になるか楽しみだなぁ
72 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/19(金) 16:47:53.05 ID:SD7LzQAO
?がHに見える……。
73 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/19(金) 20:56:11.92 ID:7b5OFrgo
乙!
これからどんな流れになるか楽しみだ
74 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/21(日) 00:55:19.57 ID:mDp4TYU0
―翌日―

放課後、唯と爽子は音楽準備室の前に佇んでいた。

唯「どうしよう〜・・・。」

唯がため息交じりに言う。

爽子「ちゃんと言えば・・・わかってくれるよ・・・。」

爽子は、多分と言いかけてやめた。悩んでいる唯をこれ以上悩ませてはいけない。

唯・爽子「はぁ〜〜〜〜〜〜。」

二人が大きなため息をついた時、ちょうど律が階段を上がってくるところだった。
新入部員が入ると、先生から聞き、上機嫌で鼻歌を歌っている。

律「〜♪お!音楽室前に人か・・・げ?!」

律はマイナスオーラを放つ二人、いや、正確には強烈なマイナスオーラを放つ、片方の長い黒髪の生徒に驚いた。
75 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/21(日) 00:56:05.02 ID:mDp4TYU0

律(あ、あれって・・・。噂の・・・!)

律は、思わず階段を上る歩を止めた。すると、それに気付いた爽子が、ゆっくりとこちらを向く。

律(ひ、ひえ=!こないだの雰囲気が全くないな・・・。)

あからさまにひきつった顔をした律を見た爽子は、驚愕の表情を律に見せた。

律「っひ!」

その表情に恐怖した律は、思わず声をあげてしまった。その声で隣にいた唯も振り向く。
爽子ほどではないが、唯もものすごい驚愕の表情で律を見る。
数秒間、その状態が続いた後、律が我に返り、二人に質問を投げかけた。

律「し、新入部員になってくれる・・・お二人?」
76 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/21(日) 01:07:32.57 ID:mDp4TYU0
音楽室内には、異様な空気が漂っていた。

必要以上に緊張、そしてマイナスオーラを放つ唯と爽子。
爽子の圧倒的なマイナスオーラに驚く紬、怯える澪。
そして、律は、この空気をどうしたものかと腕を組んで考えにふけっていた。

紬「と、とりあえず、お茶を出しますね。」

紬はこの空気から逃げ出したいとばかり、そう言うとお茶を淹れるために立ち上がった。

澪は爽子のマイナスの妖気にあてられて、ガタガタ震え始めた。
そんな空気の中、爽子が口を開く。

爽子「あ、あの〜・・・。ん゛っ!」

緊張する中、突然話し始めたので、喉が絡んだ爽子は、一度咳払いをする。
その行動に、さらに怯える澪。ついに、椅子から滑り降り、縮こまってしまった。

77 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/21(日) 01:08:24.28 ID:mDp4TYU0
律「ど、どうしたの・・・えっと・・・黒沼さん?」

爽子「どうして私の名前を・・・?」

律「え?あー!えーと・・・せ、先生に名前を聞いてたからさ!」アセアセ

本当のことを言えない・・・。律は、機転を利かせて、しゃべったが、焦りと動揺で冷や汗が出た。

律(なんでこんなことになってるんだ・・・?新入部員が来るって聞いて、うきうきしてたのに・・・。)ハァー

律は、横目で澪を見ながらため息をつきながら思った。
78 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/21(日) 01:14:04.10 ID:mDp4TYU0
爽子が、改めて話そうと口を開いたとき、紬が戻ってきて、二人に紅茶を振る舞う。

紬「ど、どうぞ〜。」

話そうとしていた爽子は、突然の紅茶の振る舞いに、話すことをやめてしまった。
律は、紬を引っ張り、二人に背を向け、こそこそと紬を咎めた。

律「こ、こら〜!」コソコソ

紬「え?だ、だめだった?」ヒソヒソ

律「今、黒沼さんが、話そうとしてたんだよ!」コソコソ

紬「そ、そうだったの?」ヒソヒソ

79 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/21(日) 01:18:14.38 ID:mDp4TYU0
爽子「す、すいません〜・・・。」

ようやく爽子が、話そうとしたその時―。

唯「ごめんなさい!」

唯が突然、目に涙をためながら立ちあがって、頭を下げた。

律・紬「え・・・?」

突然の唯の行動に、目を点にする律と紬。ぽかーんとしていると、衝撃的な言葉が二人をさらに、驚かせた。

唯「わ、私たち、入部をやめに来たんです〜!」グスッ



80 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/21(日) 01:28:23.36 ID:mDp4TYU0
律・紬・澪「えぇ〜?!」ガタッ

予想だにしない言葉に、怯えていた澪でさえも、立ち上がって驚いた。

律「ちょ、ちょっと待ってくれよ!」

律は机を乗り出して、言う。

律「まだ、体験もしてないのに、辞めるなんて!」

紬「そ、そうですよ!まだ、お茶の一杯も飲んでないでしょう?!」

紬は、紅茶をさらに二人の前に押して、薦める。

澪「わ、私がひ、必要以上に怖がったから?!」

律「それは関係ない・・・多分」

81 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/21(日) 01:29:37.39 ID:mDp4TYU0
唯と爽子は、三人の剣幕に押され、薦められたお茶を一口すする。

と、二人のマイナスオーラは途端に消え、きらきらとしたオーラが二人を包んだ。

唯・爽子「・・・お、おいし〜・・・!」

二人は、残りの紅茶を飲み干すと、満足した表情で、感想をそれぞれ口にした。

唯「こんなおいしい紅茶、はじめて!」

爽子「本当・・・!おいしい・・・。」

紬は、いつの間にかケーキを乗せた皿を運んできて、二人の前へ置いた。

紬「ケーキもあるの!こちらもおいしいから、召し上がって!」

82 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/21(日) 01:36:14.29 ID:mDp4TYU0
唯と爽子の二人は、顔を見合わせると、二人同時にフォークを持って、ケーキを口運んだ。
二人の表情は、先ほどよりもほころんで、至福のオーラが二人を包む。

唯・爽子「お、おいひー!」ガタッ

二人は、あまりのおいしさからか、席を立ちあがった。
二人の反応を確認して、律・紬・澪の三人は、顔を見合わせると、大きくうなずいた。

律・紬・澪(これでいける・・・!)

三人の意見は、このケーキ作戦で二人を釣るという考えで一致していたが、唯と爽子の話す理由に、また驚くことになるのだった・・・。
83 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/21(日) 01:42:31.96 ID:mDp4TYU0
律「ひ、弾けないの?!」

律が二人の入部辞退の理由を聞いて驚きの声を上げた。
唯と爽子の二人のマイナスオーラは戻ってしまっていた。

澪「お、音楽経験は・・・?」

その問いに、唯と爽子は、首を振った。
律・紬・澪の三人は言葉を失ったが、部の存続には四人以上が必要であるという条件があることを忘れたわけではなかった。

律「で、でも、入部はしてほしいんだよ!」

澪「四人以上そろわなきゃ、部活活動を認めてもらえないんだ!」

いつの間にか、澪は爽子に気にせず、話しかけていた。

84 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/21(日) 01:49:10.27 ID:mDp4TYU0
唯「で、でも・・・ギターって難しくないですか?」

爽子「・・・わ、私に至っては音楽が苦手で・・・。」

二人とも、難色を示している。唯はいくらかましになった。
が、爽子のオーラは氷点下を超えそうだ。

澪「大丈夫だよ!たいへんなところもあるけど・・・。」

紬「そうだ!」

紬が突然立ち上がり、明るい顔を見せると、律と澪に提案した。

紬「私たちの演奏を聴いてもらいましょう!そうしたら、軽音楽雰囲気とかわかってもらえるんじゃないかしら?」

澪「それ良いな!」

律「そうしよう!」

唯と爽子を残して、三人は立ち上がると、入口付近の黒板前へ向かった。
そこには、ドラムセットとキーボードにベースが用意されている。
85 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/21(日) 01:53:50.55 ID:mDp4TYU0
律「二人とも、そこのベンチへどうぞ!」

三者三様に準備を終えたことを見計らって、律が二人へ呼びかけた。
五人が話をしていた机と椅子の手前、部屋のちょうど中間地点に木製のベンチが据えられている。
律の呼びかけに答え、唯と爽子は、そこに腰掛ける。

律「準備おっけー?」

腕まくりをした律は二人に問いかける。
紬と澪は、それに答えてうなずいた。

律「ワン、ツー!」

律の掛け声とともに、演奏が始まる。
86 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/21(日) 01:59:50.57 ID:mDp4TYU0
三人の奏でる音楽に、聞き入る唯と爽子。
唯は体が自然に反応するのを感じていた。
爽子は、ただただ感動するばかり。

唯(わ〜・・・!)

爽子(三人ともすごいな〜・・・。)

三人の演奏が進むにつれ、爽子は自分の劣等感に押しつぶされそうになった。

爽子(私には無理だ・・・。みんな楽しそうに演奏してる・・・。)

三人の楽しそうな笑顔。真剣なまなざし。自分にはない、センス。
爽子は、唯の横顔をちらりと見た。その顔は輝き、楽しさに満ちている。


87 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/21(日) 02:08:11.17 ID:mDp4TYU0
唯と同じような顔ができない。

爽子(私には、無理だ。)

爽子は、今度は、しっかりと、自分に言い聞かせるように思い返した。

律「どうだった?!」

額の汗をぬぐうこともせずに、律は二人に感想を求めた。
唯はその問いかけに、即座に立ち上がり、大きな拍手で三人をたたえる。
爽子も、少し遅れたが、それに倣った。

澪「今日は、結構合ってたな!」

紬「うん!良い感じだったわ〜!」

澪と紬は、演奏のできを讃えあう。はじめてもらった他人の、唯と爽子の拍手に喜びを隠せない。
88 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/21(日) 02:14:20.70 ID:mDp4TYU0
唯「はいります!!」バッ

唯は、拍手をやめると、右手を振り上げて、言った。

律「ほ、ほんとか〜?!」パァァ

律は、スティックをドラムに置いて立ち上がった。その顔は嬉しさに満ちている。

澪「やったな!律!」

紬「あの・・・えっと・・・。黒沼さん?」

紬は、またさっきのようなマイナスオーラを抱えた爽子を見て戸惑っている。
紬の問いかけにはっとした爽子は、顔をあげ、拍手する。

爽子「・・・すごく感動いたしました・・・!」

演奏をした三人は安どの表情を浮かべる。しかし、次の爽子の言葉に、唯も含め、表情は曇ってしまった。

爽子「でも・・・やっぱり、私は入部を辞退したいです・・・。」
89 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/21(日) 02:19:00.61 ID:mDp4TYU0
律「え・・・?」

澪「お、音楽が苦手って言ってたけど、気にすることないy―。」

澪が言い切るのを待たずに、爽子は首を振る。

爽子「・・・そ、そういうことじゃないんです・・・。」

私には合わない。唯ちゃんみたいに楽しそうにできないので。
そう言えば良いのに、言葉にできない。

爽子「ごめんなさい・・・。」

爽子は、そう言うと、来たときのようなマイナスオーラをまといながら、部室を後にしてしまった。

90 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/21(日) 02:23:19.14 ID:mDp4TYU0
呆然とする音楽準備室に残された四人。

唯「さ、さわちゃん!」

唯が慌てて後を追う。その後をほかの三人も追いかけた。
しかし、爽子持ち前の早歩きに、追いつくことができない。
唯が窓の外を見ると、爽子はすでに校門あたりを歩いていた。

唯「さ、さわちゃ〜ん。」

唯は届くはずのない声をあげると、その場で肩を落とした。
その姿を見た三人は、たがいに困惑した顔を見合わせた。


91 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/21(日) 02:27:29.15 ID:mDp4TYU0
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今回はここまでで・・・。
書き込むのが、次の日になってしまいました。すいません。

待っててくださる方には申し訳ないですが、今、展開は正直ノリで書いてます。
なので、誤字脱字も多いと思います、すいません。

明日、また書きたいと思います。おやすみなので・・・。

では、おやすみなさい。
読んでくださっている方、ありがとうございます。


92 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/21(日) 08:56:56.94 ID:uiERtLMo
おつにゃん
93 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/22(月) 21:02:42.76 ID:k0zH5DYo
むむむ、このネガモードからいかにしてけいおんメンバーが引き上げてくれるのか・・・
楽しみだなァ
94 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/23(火) 00:59:29.52 ID:GlYMIX60
爽子(やっちゃったよ〜・・・。)

音楽準備室を出た時のマイナスオーラをまとったままの爽子は、公園のベンチでうなだれていた。

爽子(私の馬鹿!ちゃんと、理由も話さずになんで出てきちゃったんだろ〜・・・。)

爽子の目に涙がたまる。
こぼすまいと、顔を上げると、公園の外を同い年くらいの女子高生二人組が歩いているのが目に入った。
二人とも茶髪にカーディガンを来た『今風』の女子高生だ。

「わかってないな〜やのちんは!」

「だって、前にちづの紹介できたときは、醤油ラーメンを頼んだじゃん。」

「あそこは、醤油ラーメンがうまいの!」

「あたしはほかのも食べてみたかったんだよ!別にちづのおごりで食べるわけじゃないんだから、良いでしょ?!」

95 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/23(火) 01:01:35.37 ID:GlYMIX60
その二人組は、公園に入ってきた。どうやら、この公園を入るのが二人の自宅への近道らしい。

「ね、ねぇ・・・やのちん・・・。あ、あれ・・・。」

『ちづ』と、呼ばれていた女子高生の一人が、爽子に気付いた。
その顔は、爽子独特のオーラを見て、青ざめている。

「な、なによ。変な顔して・・・。」

指差された方向を『やのちん』と呼ばれた女子高生が振り向く。その顔も同じように青ざめている。

「ひぃ!」ダッ

二人とも同時に悲鳴を上げると、その公園を全速力で出て行った。
96 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/23(火) 01:10:24.44 ID:GlYMIX60
爽子(良いな〜・・・。私も唯ちゃんや和ちゃんと・・・。)

もうできないかもな。そんな思いが爽子を支配してしまう。
さっきの二人組を見て、忘れていた涙がまた込み上げてきた。
泣くまいと必死になればなるほど、すごい形相をする爽子には、なぜかカラスが集まっていた。

憂「あ・・・あの人・・・。」

憂は中学校の帰り際、公園のベンチに一人座っている爽子を発見した。
尋常じゃないカラスの集まり方に、少し恐怖を覚えたが、
その中心にいるのは、間違いなく姉である唯がと朝、いつも待ち合わせをしている『さわちゃん』である。

憂(ど、どうしたんだろう・・・。)

なにかあったのだろうか。
姉の唯が一緒にいないことも不思議に思ったので、憂は声をかけようと、公園へ入った。



97 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/23(火) 01:19:12.67 ID:GlYMIX60
憂「あ、あの〜・・・。」

憂が声をかけると同時に、爽子は突然立ち上がり、振り返った。
その顔は、世にも恐ろしい眼光でこちらを睨んでいた。

憂「ひ、ひぃ!!」ドサ

腰が抜けて、その場に倒れこんでしまった憂は、今度は恐怖に震えだした。

爽子(誰かに似てる・・・。)

憂の顔に見覚えがあるような気がした爽子は、涙を我慢するのを忘れ、憂の顔をじぃっと観察した。
蛇に睨まれた蛙のように、憂は動かなくなる。
が、憂いはそのほほを伝った涙を見て、はっとした表情を見せた。

憂「どうして、泣いているんですか?」

憂に泣いていることを指摘され、我に返った爽子は、驚いた顔を見せると、その場から立ち去ってしまった。
その行動を憂は、ただ呆然と見ることしかできなかった。
98 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/23(火) 01:25:04.48 ID:GlYMIX60
―平沢家―

夕食時になって、憂は放課後に爽子に会ったことを思い出し、唯に尋ねた。

憂「お姉ちゃん、『さわちゃん』って人が、公園で泣いてたよ?」

唯「えぇ?!い、いつ?!」

唯は、口に入ったご飯を飛ばしながら、言った。

憂「お姉ちゃん、ご飯はちゃんと食べてから話さなきゃ。」

唯「えへへ・・・ごめんね、憂。で、いつ?」

憂「放課後だよ〜。あの公園のベンチに座ってたよ?」

唯「そ、そっか〜・・・。さわちゃん・・・。」

唯は、そうつぶやくと、暗い顔になり、箸の進める手を止めてしまった。
憂は、二人に何かあったのかと、唯に問いかけたが、
唯は「ううん。」と、首を振って、明るい顔に戻ると、食事を再開した。
 
99 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/23(火) 01:34:22.55 ID:GlYMIX60
―翌日・沢家・玄関門―

唯はめずらしく朝早く目を覚ますと、素早く準備をして、外へ出ていた。
爽子が来るよりも早い時間である。
しばらく待っていると、やってきたのは爽子ではなく、和であった。

唯「和ちゃん・・・。」

和「唯?!爽子はどうしたの?」

唯「まだ来てない・・・というか、今日は来ないかも・・・。」

元気印の唯が、あからさまに元気がないことに気付いていた和は、その原因が爽子であることにも気付いた。

和「どうしたのよ?爽子と何かあった?」

唯「実は・・・かくかくしかじかでさ〜・・・。」
100 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/23(火) 01:36:28.71 ID:GlYMIX60
唯から事情を聴くと、和は歩き出そうとした。

唯「さ、さわちゃんを待たないの?」

和「待っても、今日は来ないわよ。きっと、先に行ってるわ。」

唯「あ、あとちょっと待とうよ〜!」

和「学校にいるわよ。間違いないわ。」

唯「で、でも〜・・・。」

和「今まで、爽子が遅れたことがあった?」

唯「・・・ないね。」



101 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/23(火) 01:39:41.45 ID:GlYMIX60
和「でしょう?だから、学校にいるわよ。」

唯「・・・そうだね。」

唯は少し元気を取り戻したように、歩き出した。

唯「ちゃんと、事情を聞かなきゃ!」フンス

和「きっと、嫌で飛び出したんじゃないはずよ。ちゃんと、理由を聞いてあげなきゃね。」

唯「うん!そして、けいおん部に入ってもらわなきゃ!」フンス

和「・・・え?結局勧誘するの?」
102 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/23(火) 01:42:32.30 ID:GlYMIX60
唯「さわちゃんと一緒に入ろうと思ってたんだもん!」

和「・・・それに関しては無理なんじゃない?」

唯「ど、どうして〜?!」

和「唯、あなたを嫌がったわけじゃないのは確実よ。でも、軽音楽部が嫌だったのは確かよ。」

唯「・・・。しょ、しょんな〜・・・。」ショボーン

和「だったら、突然飛び出したりしないでしょう?」

唯「う〜ん・・・。」
103 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/23(火) 01:54:25.65 ID:GlYMIX60
和「・・・どうしても一緒に部活をやる考えをしてるわね?」

唯「・・・よくわかったね!和ちゃん!」

和「無理やりはよくないわよ?」

唯「でも、一緒に部活やりたいよ!田井中さんと、秋山さんと琴吹さんも、良い人だし、友達になってくれるよ〜。」

和「まあ、爽子に友達が増えるのは賛成だけど、爽子の気持ちm―。」

和がしゃべるのを制して、唯が前方を指差した。
その指差す方向には、爽子が一人歩いていた。

唯「まさか、途中で会えるなんて!」ダッ

と、言うが早いか唯は爽子に向かって、走っていた。
和はため息をつくと、幼馴染の後を追った。
104 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/23(火) 01:59:33.60 ID:GlYMIX60
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今回はここまでで。
読んでいただいている方、ありがとうございます。
次書くのは、また遅れてしまうかもしれません。ご了承ください。

今回強引ですが、あやねちゃんと、ちづちゃんを出してみました。
あやねちゃんって、ピンとふらぐたってません?立ってないか。
こんな感じで、風早とか龍とかジョーとかくるみちゃんとか出してみたいと思います。

では、失礼します。
おやすみなさい。
105 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/23(火) 02:02:05.72 ID:UDd420Uo
ちづとちやのちんはもっと絡んでほしいなあ 乙!
106 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/23(火) 09:04:42.69 ID:.xgnM2SO
乙!
まさか風早を出してくれるなんて…
まさに俺得
107 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/24(水) 15:59:40.91 ID:uiu6sEDO
最近、君に届けが放送開始したから俺得すぎる。
108 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/26(金) 15:39:29.88 ID:n2772IAO
一月から二期も始まるしな
109 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/26(金) 20:37:15.25 ID:H4jlUZ60
ほほう・・・2期も決まってるのかー
110 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/30(火) 17:06:53.83 ID:zGXmeUAO
早く届かないかな(笑)
111 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/30(火) 18:58:21.75 ID:YIozR0E0
ミスチルの364日が君の届けっぽいww
112 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/30(火) 19:30:23.54 ID:kUuinpQo
唯と爽子の相性は抜群だな。
113 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/01(水) 00:39:33.38 ID:Rm0Kni.0
何者かがこちらに向かってくる気配に気づいた爽子は、後ろを振り向いて、驚愕した。

爽子(・・・唯ちゃん!)

昨日、何も言わずに帰ってしまった負い目が、爽子に『逃げる』という選択肢を与える。
脱兎のごとく、爽子は逃げだした。

唯「さ、さわちゃん!待って〜!」

唯はさらにスピードを上げようとした瞬間、つまづいた。
野球のヘッドスライディングのように、見事に地面に滑り込む。
114 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/01(水) 00:46:54.85 ID:Rm0Kni.0

和「ゆ、唯!だ、大丈夫?!」

少し後ろを走っていた和が、心配してしゃがみこむ。

唯「だ、大丈夫〜・・・。」エヘヘ

後ろの和の声に、気になった爽子は、後ろを振り向く。
そこには、座りこんでしまった唯がいた。
膝をすりむいている。どうやら転んだらしい。
爽子の中で、『逃げる』という選択肢が吹き飛び、唯のもとへ駆け寄った。

爽子「だ、大丈夫?!唯ちゃん!」

唯「さわちゃん!」

和「爽子・・・。」

唯は、駆け寄ってきた爽子の足をつかんで、涙目でにこっと笑った。

唯「さわちゃん、捕まえたよ〜。」
115 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/01(水) 00:57:49.17 ID:Rm0Kni.0
爽子は、はっとした表情を見せた後、またマイナスオーラをまとってしまう。

爽子「ご、ごめんなさい!!」

すごい勢いで、爽子は頭を下げた。
その行動に、きょとんとする唯。
そのままの時間が過ぎること数秒。爽子が、頭を下げた姿勢のまましゃべりはじめた。

爽子「き、昨日、勝手に帰っちゃって・・・。」

唯「気にしてないよぉ。」

唯は、笑顔を絶やさずに爽子に語りかける。
しかし、爽子は、その姿勢をやめない。

爽子「わたし・・・わたし・・・!」

唯「うん。」

116 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/01(水) 01:16:01.44 ID:Rm0Kni.0
爽子は、体を震わせている。涙があふれ出し、爽子の革靴を濡らす。
それに気づいた唯は、立ち上がり、爽子の肩を抱きながら、起き上がらせる。

唯「さわちゃん・・・。泣かなくても良いよ。私は嫌いになったりしてないよ。」

唯はまた、微笑む。その笑顔は、爽子の心を救うのに、十分すぎる笑顔だった。
爽子は、和の方を向いた。
和も微笑む。その笑顔は、爽子を安心させる。
爽子は、大粒の涙を流しいた。それに気付いた唯が、爽子を抱き締める。

唯「大丈夫、大丈夫。」ヨシヨシ

爽子(・・・もう、一人はいやだよ・・・!)

大切な友達ができた。

和「私は、爽子を嫌う理由が見つからないわ。」

爽子(唯ちゃん・・・和ちゃん・・・。)

失う怖さを知ってしまった。
117 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/01(水) 01:20:50.22 ID:Rm0Kni.0
チャイムが鳴っているのが聞こえる。遅刻ギリギリのチャイムだ。

和「唯!早くしないと、遅刻になっちゃう!」ダッ

和が先に走り出す。

唯「わわ!早く早く!」

爽子「・・・うん!」

唯も爽子の右手を取って、走り出した。
爽子は、手を引っ張られながらも、左手で涙をぬぐうと、笑顔を取り戻した。
その笑顔は、二人には見えなかったが、自然な笑顔だった。

118 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/01(水) 01:28:15.26 ID:Rm0Kni.0
〜放課後・軽音楽部、部室〜

爽子「ごめんなさい!」

爽子は、朝登校中、唯に見せたように頭を下げた。
その綺麗さに、唯を除く三人は驚いていた。

爽子「なんか、私やっぱり音楽はだめというか、みなさんの演奏を聴いて痛感したというか・・・!」

律「そ、そんな必死にならなくても大丈夫だよ。」アセアセ

澪「そ、そうだよ!」アセアセ

紬「と、とりあえず、お茶を飲まない?ね、唯ちゃん。」アセアセ

思った以上の爽子の反省ぶりに、唯以外の三人は圧倒されている。

唯「おぉ!そうしよう!」

唯はそう言うと、爽子の手を取って、椅子へと案内する。

爽子(・・・すごいな、唯ちゃん・・・。もう皆さんと仲良くなってる・・・。)


119 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/01(水) 01:33:18.28 ID:Rm0Kni.0
爽子は強引に着席させられ、お茶を振る舞われた。
しかし、そのお茶に手をつけようとしない。

紬「は、ハーブティは嫌いだった?」

なかなかお茶を飲んでくれない爽子を気遣う紬。
その優しさに、爽子の涙腺が刺激されてしまう。

爽子(こ、ここで泣いちゃダメ・・・!)クワッ

爽子は、泣くのを我慢しようと、力を入れる。

澪「っひ!」ガタッ

その恐ろしい形相に、澪が思わず席を立つ。
律はのけぞりはしたものの、声を出すのはこらえた。

律「む、無理するなよ?」

爽子「だ、大丈夫です・・・。」フルフル

爽子の涙腺ダムは決壊寸前だ。

120 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/01(水) 01:38:50.43 ID:Rm0Kni.0
唯「っぷはぁー!おいしい!もう一杯!」ニヤリ

唯が、某有名青汁CMの物まねで、紬におかわりを要求した。
みんなの意識が唯に集中する。

唯「・・・え?」

爽子「・・・・っ。」フルフル

律「ゆ、唯・・・おまえ・・・。っく。」

澪「く、空気、読め!・・・ぷぷ!」

紬「え?え?なんで、皆笑いをこらえてるの?」

紬だけ、CMの元ネタが分からず、困惑している。
121 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/01(水) 01:43:08.19 ID:Rm0Kni.0
爽子「っくっふふふふふ・・・!」

爽子が、耐えきれなくなって、笑いだした。
唯が一目ぼれ(?)した、笑顔があふれる。

律「く、黒沼さん!」

澪「・・・・・・!」

紬「わぁ・・・!」

唯「さわちゃん!」

四人が、その笑顔に、気づき、驚いた。

律・紬・澪(こんな笑顔ができるんだ・・・!)

四人の反応に気付き、爽子は、笑いをとめてしまう。

122 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/01(水) 01:48:40.42 ID:Rm0Kni.0
爽子(ぜ、全員が私に注目している・・・。)

爽子が、全員を見渡す。

爽子(まさか、お昼に食べた海苔のお弁当の海苔が歯に?!)

爽子は、顔を下げて、耳まで真っ赤になってしまった。

唯「さわちゃん?」

律「どうした?黒沼さん。」

爽子は、真っ赤にした顔を上げると、突然ハーブティを口にした。

澪「ど、どうした?」

紬「良かった〜。ハーブティ、嫌いじゃなかったのね?」ニコニコ
123 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/01(水) 01:54:08.05 ID:Rm0Kni.0
律「そこかよ・・・。」

律が、すかさず突っ込みを入れた。
爽子は、唯の肩をたたくと、他の三人に顔を見せないように後ろを向く。

爽子「唯ちゃん・・・。」コソコソ

唯「何、さわちゃん?」コソコソ

爽子「歯に何かついてる?」ニッ

爽子は、唯に歯を見せる。
他の三人は顔を見合わせた。

唯「なにも付いてないよ〜。」
124 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/01(水) 02:00:14.10 ID:Rm0Kni.0
それを聞いた爽子は、姿勢を整えると、また頭を下げて、「ごめんなさい!」と言った。

律・澪「振り出しに戻るんかい!」

律と澪が幼馴染の息の良さを見せて、二人で突っ込みを入れる。

唯「おぉ〜!息がぴったりですな!」

紬「ぴったりですな〜。」

唯が、二人を茶化すと、紬も続いて、いつも以上にうれしそうに言った。

律「私たち、気にしてないよ。黒沼さん。」

澪「わ、私こそ、怖がってごめん・・・。」

紬「そうよ〜。気にしてないわ。」

三人が、微笑む。
125 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/01(水) 02:05:39.76 ID:Rm0Kni.0
爽子「み、みなさん・・・!ありがとうございます!」

爽子は、また頭を下げた。
律はため息をついて言う。

律「その、敬語もやめ!私たち、同い年だろ?」

澪「うん。普通に話してほしいな。」

爽子が驚いた表情で、顔を上げる。

爽子「い、いいんですか・・・?」

紬「あ!敬語!」

紬が、得意げになって、爽子の敬語を指摘すると、また笑いの渦が生まれた。

律「あははは!何、得意げにしてんだよ〜!」

紬「えへへ。」

澪「ふふ。」

唯「あはは。ムギちゃん、かわいい!」


126 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/01(水) 02:08:04.94 ID:0TuVE4ko
いいよいいよー
127 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/01(水) 02:10:23.21 ID:Rm0Kni.0
和やかな雰囲気が、部室に生まれた。
その一員でいるということに、爽子は喜びを感じている。

爽子(いいなぁ・・・ここにいたいなぁ・・・。)

爽子が、そう思うと、律が腕を組んで、厳かな雰囲気を出して、口を開いた。

律「部長命令で、黒沼さんを我が部のマスコット、兼マネージャーにする!」

澪「え?」

紬「マスコット?」

唯「りっちゃん!」

爽子「・・・・・・え?」

128 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/01(水) 02:14:03.66 ID:Rm0Kni.0
律「楽器も無理、音楽的知識もないとしたら、このポジションしかないだろ!」

律は、腕を組んで、威張った態度のまま話す。

爽子「あ、あの・・・。」

律「敬語禁止!」ビシッ

律が、しゃべろうとした爽子を指差して、言う。

澪「マスコット、兼マネージャーって・・・。」

紬「運動部じゃないから、マネージャーはいらないんじゃないの?」

129 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/01(水) 02:23:34.14 ID:Rm0Kni.0
律「そ、そりゃ・・・これから考えるとしてだな・・・。皆。唯にお願いされただろ?」

唯は爽子に見られて、舌を出し、えへへと笑っている。

澪「そうだけど・・・黒沼さんの、意志もちゃんと聞け!」ゴチン

律「いたっ!殴ることないだろー!」

澪「しかも、してもらうことも何も考えずに!」

紬「黒沼さん・・・どうかな?」

また皆の視線が、爽子に集中する。
爽子は、全員の顔を見渡す。皆、笑顔で爽子の返事を待っている。

唯「さわちゃん。一緒に部活やろ?」

爽子(私は・・・この場にいたい・・・。でも・・・。)

130 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/01(水) 02:28:15.95 ID:Rm0Kni.0
迷惑がかかってしまうかも・・・。と、爽子が思うより先に、律が言う。

律「迷惑だーとか、考えんなよー?」

澪「そうだよ。そんなこと、全然ないからな?」

紬「一緒に、お茶しましょう?」

三者三様、爽子を引き入れるために爽子へ声をかける。
爽子の心は温かいものでいっぱいになった。

爽子「ありがとうございます・・・!私!」

唯・律・澪・紬「敬語禁止!!」

爽子を除いて、四人全員が同じことを言うと、また笑いが生まれる。
その笑いには、爽子も加わっていた。
純粋に楽しいという思いが、爽子を包み込んでいた。
131 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/01(水) 02:36:32.14 ID:Rm0Kni.0
爽子「こんな私でよければ・・・。よろしくお願いします・・・!」

爽子が、また頭を下げると、唯が手を握る。

唯「ほんと?!やったぁ!」

律「よーし!黒沼さん!下の名前は?」

爽子「さ、さわこ・・・です。」

律「よろしく!爽子!」

澪「よろしくな、爽子。」

紬「爽子ちゃん、よろしくね。」

皆が、爽子に笑いかける。その笑顔一つ一つが、爽子の宝物になっていた。

爽子「・・・・・・・・・はい!」

爽子は最高の笑顔で、受け返した。


132 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/01(水) 02:41:50.31 ID:Rm0Kni.0
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第二章、完。
ということでした。

あと、一つ二つエピソードが思い浮かべば書いて、最終回にしたいと思います。
だらだらと、続けておりますけども、読んでくださっている方、ありがとうございます。

ミスチルの曲は、『365日』じゃなかったでしょうか?
曲の最後に君に届けってフレーズがあって、それっぽいですね。

さっき、お願いランキングのエンディングかなんかで、
清き場うんたらだったか?が、君に届けって歌ってました。はやってんですかね?

では、後少し書いて、寝たいと思います。
失礼しました。
133 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/01(水) 02:47:27.84 ID:Rm0Kni.0
―番外編・tea time―

〜軽音楽部、部室〜

爽子「あの〜・・・皆さんお名前は・・・?」

まだ敬語が抜けきれない爽子が、お茶会の最中、発言した。

律「あ、そういえば、自己紹介してなかったっけ?」モグモグ

澪「食べながらしゃべるな。」

律「細かいなー!澪は!」モゴモゴ

唯「今、物を口に入れながらしゃべってるのが、田井中律ちゃんで、叱ってるのがしっかり者の秋山澪ちゃん!」

唯が、二人に代わって、紹介を始めた。

律「唯・・・紹介に悪意が感じられるんだが・・・。」

134 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/01(水) 02:57:12.27 ID:Rm0Kni.0
お茶のお代わりを持ってきた紬が、爽子のカップへ、ハーブティを注ぐ。

唯「で、お茶を注いでくれたのが、琴吹紬ちゃん!・・・ありがとー。」

唯の分を注いでくれたので、お礼をしながら、紬の紹介をする。

爽子「田井中さんに、秋山さんに、琴吹さん・・・。」

自分の口で、復讐するように名字をつぶやく。
すると、それに気付いた唯が、言う。

唯「だめだめ!それじゃあ、敬語が抜けないよ〜。」

律「そうだな〜。下の名前でよいよ。私の苗字、長いしさ。と、いうか、唯と同じように呼んでくれ!」

紬「私は、皆からムギって呼ばれてるから、そう呼んでほしいわ!」

澪「そうそう。名前で呼んでほしいな。」

135 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/01(水) 03:00:07.86 ID:Rm0Kni.0
三人が、また爽子に注目する。名前を呼ばないと、注目を外してくれそうもない。
爽子は、また顔を真っ赤にさせてうつむいてしまったが、しっかりと聞こえるように声を出した。

爽子「り、りっちゃん・・・!」

律「おう!」

爽子「・・・ムギちゃん・・・!」

紬「はい!」

爽子「みおちゃん・・・!」

澪「うん。」

律「よし!乾杯だな!」カチャッ

律は、勢いよく椅子から立ちあがって言った。



136 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/01(水) 03:04:55.07 ID:Rm0Kni.0
澪「ティーカップでか?」

唯「やろうやろう!」カチャ

唯は、澪の疑問を気にせず、ティーカップを持ち上げて、立ち上がる。
紬も目を輝かせて、ティーカップを持って立ち上がった。
そして、澪より先に爽子が立ち上がる。

爽子(友達と乾杯・・・!!)

澪「爽子・・・。」

律「澪だけだぞ〜?」ニヤニヤ

仲間はずれは嫌だと言わんばかりに、すぐに澪は立ち上がった。
137 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/01(水) 03:09:51.12 ID:Rm0Kni.0
律「よし!じゃあ、けいおん部、正式結成を記念して・・・!かんぱ〜い!!」

唯・爽子・澪・紬「かんぱーい!」

お茶会は部活動の期限ぎりぎりまで続けられた。

〜帰り道〜

爽子「唯ちゃん、ありがとう。」

唯「どうしたの?さわちゃん。」

部活動後の帰り道、唯と二人きりになった爽子が、突然話し始めた。

爽子「唯ちゃんがいなかったら、こんな素敵な出会いはなかったと思う・・・。」
138 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/01(水) 03:14:08.75 ID:Rm0Kni.0
唯「良いよ〜。私こそ、強引に誘ったのに、一緒に部活してくれてありがとうだよぉ。」

爽子「唯ちゃん・・・。」

どうして、こんなに優しいのだろう。本当に出会えてよかった・・・。
唯の家の前まで来ると、唯は爽子に向きあって言った。

唯「これからは、一緒に部活頑張ろうね!さわちゃん!」

唯が、手を差し伸べる。
その手を見て、爽子は、両手で唯の手を包み、にっこりほほ笑んで、うなずいたのだった。
139 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/01(水) 03:21:23.53 ID:Rm0Kni.0
〜夜・爽子の家・爽子の部屋〜

爽子「そういえば・・・結局仕事内容を教えてもらってない・・・。」

爽子は、自分の机で自習中にその事実に気付いた。

爽子(明日から何をすればよいのかな・・・。)

悩んでも仕方がないと、授業の予習を再開しようとした瞬間、ある考えが生まれる。

爽子(これは・・・私の自主性が試されているんじゃ・・・!)

結局、爽子は、その考えに支配され、予習もそこそこに、寝不足になってしまったのだった。

―番外編・tea time― 完

140 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/01(水) 15:43:08.40 ID:eJugVLko
爽子スマイルええなぁ
輪の中に無事入れたみたいでなによりだ・・・
141 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/01(水) 19:17:42.91 ID:0TuVE4ko
いいよいいよー
142 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/03(金) 21:22:54.03 ID:SPfM/7I0
〜翌日、放課後・軽音楽部、部室〜

澪「結局、爽子には何をしてもらうんだ?」

部室に到着して、椅子に座ってすぐに、澪が律に問うた。

律「う〜ん・・・。まぁ、いろいろ手伝いとか?」

澪「・・・何も考えてないんだな?」

律「・・・ってへ!」ペロ

澪「ってへ!・・・じゃない!」ゴチン

律「っいたー!そ、そういう澪は何か考えてきたのかよー!」サスサス

143 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/03(金) 21:31:09.44 ID:SPfM/7I0
殴られた頭をさすりながら律が文句を言うと同時に、紬がお茶を運んできた。

紬「今日は、緑茶にしてみたの!」

律「ありがとう!・・・緑茶?」ゴク

澪「なんか、珍しいな。」ゴク

二人は出されたお茶を同時に口にした。

律・澪「うまい!!」

律「どう、うまいかは言えないけど・・・!」

澪「なんかうまいと言っておかなければいけない気がする・・・!」

紬「よかったわ〜。」ニコニコ
144 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/03(金) 21:36:59.93 ID:SPfM/7I0
律「で?澪は考えたのか〜?」

澪「やっぱり、私的には、音楽をやってほしいんだ。」

紬「でも、爽子ちゃんは、音楽は無理って・・・。」

澪「でも、唯も初心者だろ?やってみなきゃわからないんじゃないか?」

律「う〜ん・・・でも、演奏聴いて逃げ出したんだぜ?」

澪「そ、それは、私たちの雰囲気にのまれてだろ?」

爽子が逃げ出してしまった理由は、のちのお茶会で聞かされていた。
皆の音楽に対する思い。そして、音楽を楽しんでいる空気。
それに共感できない自分が嫌で、逃げ出してしまった。そういう理由だった。

律「現実的なこと考えたら、音楽ができないときの仕事を考えてあげた方が良いだろ?」

145 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/03(金) 21:41:38.97 ID:SPfM/7I0
紬「はい!」ッサ

紬が、突然元気よく手を挙げた。

律「はい!琴吹紬さん!」ビシッ

授業中の先生のように、手を挙げた紬を律は指差した。

紬「爽子ちゃんには、私がお茶を運んだりすることを手伝ってほしいわ。」

律「お茶運びか・・・。」

澪「雑用をやってもらうってことか?」

紬「何かをしてもらうってことより、一緒にいることが良いんじゃないかしら?」


146 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/03(金) 21:47:33.97 ID:SPfM/7I0
爽子が逃げ出してしまった後。律・澪・紬の三人は唯から爽子の事情を聴いた。
クラスで孤立してしまったこと。でも、悪い子じゃない。
爽子の友達になってほしい。一緒に部活をしたい。

律「そうだな・・・。無理に何かさせるより、一緒にいて、話したりの方が良いのかな。」

澪「うん。私も無理に音楽に関わらせようとしないよ。」

紬「爽子ちゃんにとっても、それが一番だと思うの!」

紬がそう言うと、全員顔を見合わせてうなずいた。
すると、部室のドアが開き、唯と爽子の二人が入ってきた。
噂をすれば、なんとやらだ。

唯「遅くなってごっめ〜ん!」

爽子「ご、ごめんなさい・・・!」
147 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/03(金) 21:58:52.48 ID:SPfM/7I0
律「何してたんだ?掃除当番か?」

唯「ぶっぶ〜!違います!」エッヘン

なぜか唯が威張って言う。

澪「なんで威張ってるんだよ、唯」

唯「花壇の手入れです!」フンス

唯は鞄をベンチに置くと、それに爽子も倣った。

律「花壇の手入れ〜?!」

紬「花壇なんてあったのね〜。」

148 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/03(金) 22:04:39.76 ID:SPfM/7I0
唯「うん!さわちゃんが使われてない花壇を見つけててさ〜。」

唯と、爽子が着席すると、紬が席を立った。お茶の準備をしに行くためだ。

澪「何か育ててるのか?爽子。」

爽子は、突然話しかけられ、びくっと反応すると、うつむきがちに話しだした。

爽子「や、薬草を・・・。」

澪「へ、へぇぇぇぇ・・・。」

その雰囲気が、魔女のそれをだぶって、澪は少しおびえたように言う。

149 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/03(金) 22:09:12.58 ID:SPfM/7I0
律「薬草って・・・。何か薬でも作る気かよ!魔女みたいだな!」

律が澪の思ったことを感じ取ったかのように、代弁する。

澪「こら!人が言いづらかったことを!」

爽子「ハーブも育ててるから、お茶もできるし・・・皆のお茶会に役立つかなって・・・。」

唯「りっちゃん!澪ちゃん!魔女はひどいよ!」プンプン

律・澪「ご、ごめんなさい・・・。」


150 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/03(金) 22:13:41.91 ID:SPfM/7I0
二人が謝ったのと同時に、紬がお茶と茶菓子を運んできた。
唯の目が輝いている。

紬「今日は緑茶だから、おはぎで〜す。」

唯「おはぎ!おはぎ!」

唯のテンションは上がりきっている。ほかの三人の目も輝いている。
紬を除く全員が、目の前のおはぎをほおばると、より一層目の輝きを増した。

律・澪「うまい!」

唯「おいしい!」

紬「よかったわ〜。・・・爽子ちゃんはどお?」ニコニコ

151 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/03(金) 22:21:22.38 ID:SPfM/7I0
爽子は、また突然自分に振られたので、何か良いことを言おうと、唸っている。

紬「おいしい?」

紬に促されて、すごい勢いでうなずく。
慌てて話しだそうとしたので、おはぎをのどに詰まらせたらしい。
焦ってお茶で飲み下すと、爽子は堰を切って、話出した。

爽子「ひ、非常に上品なお味でなんというか、気品にあふれているというか・・・。」

紬「おいしいってこと?」

爽子「とってもおいしいです・・・!」

紬「よかった〜。」ニコニコ

爽子は、笑顔を見て、心が救われるような気がした。
なんて素敵な笑顔を見せるんだろう・・・。

爽子(私もこんな笑顔をしてみたいな・・・。)
152 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/03(金) 22:27:09.62 ID:SPfM/7I0
爽子はいつの間にか、紬に見とれていたらしい。
それに気付いた紬が、少し顔を赤らめて言う。

紬「やだ!何か顔についてる?」

爽子は、はっと我に返って、顔を横にブンブンと振った。

紬「どうしたの?爽子ちゃん?」

爽子「なんでもないの・・・!」

二人の会話が途絶えたと同時に、他の三人がおはぎを食べ終えた。

律「爽子には、何かしらしてほしいことをしてもらうことにした!」

澪「漠然としててごめんな?でも、音楽に関することを無理やりやってもらうことはしないよ。」

唯「皆とお茶飲んで、おしゃべりするだけでも、楽しいもんね!」
153 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/03(金) 22:36:20.12 ID:SPfM/7I0
澪「唯・・・私たちは軽音楽部だぞ?」

唯の天然のボケに澪からするどい突っ込みが飛ぶ。

唯「あ・・・あははは・・・。」

律「唯は、ギターを準備しないと、どうしようもないな〜。」

紬「もってないのよね?ギター。」

唯は申し訳なさそうに頭をかいて言う。

唯「うん・・・。だから、今日はお茶を飲むだけで―。」

154 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/03(金) 22:42:51.52 ID:SPfM/7I0
唯が言い終わるや否や、澪が突然立ち上がり、唯を指差して言った。

澪「ギターを見に行こう!」ビシッ

唯「えぇ〜?!」

律「また突然だな〜。」

澪「これじゃあ、練習もできないしな。値段とかも唯には見てほしいし・・・。」

唯「ま、また今度にしない?休みの日でも・・・。」

爽子は和から言われたことを思い出していた。
唯が席を外したお昼休みの時のことである。
155 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/03(金) 22:47:18.59 ID:SPfM/7I0
和『唯を甘やかしちゃだめよ?』

爽子『・・・え?』

唯がいなくなると、和が突然眉をひそめて話しだしたので、爽子は驚いた。

和『甘やかすと、だらしないのよ、唯は。だから、一番近くにいる爽子が叱ってあげて?』

爽子『し、しかるの?』

和『そう。親心よ。』

爽子『お、親心・・・。』

和『唯って、どこか抜けてるし、にくめないけど・・・。』

和の言葉に、爽子は深くうなずく。

和『たまにはびしっと言ってあげないと。けいおん部の皆には迷惑かけると思うわ。』
156 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/03(金) 22:51:15.79 ID:SPfM/7I0
和は爽子に向き直り、目を見つめて言った。

和『唯をお願いね?』

爽子は唯に対する心のこもった思いを受け取って、しっかりとうなずいた。

唯『あ〜!何の話〜?』

唯が戻ってきた。二人は同時に唯の方へ向いて言った。

爽子『なんでもないの!』和『なんでもないわ。』

唯『おおぅ・・・二人ともいつの間にかすごく仲好くなったね・・・。』
157 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/03(金) 22:56:10.32 ID:SPfM/7I0
場面は戻って、放課後の軽音楽部、部室。
唯が、澪のギターを見に行こうという提案を受け流したところだ。

唯「さ、さわちゃんもお茶もっと飲みたいよねぇ?」

唯は、援軍を呼ぶべく爽子へ声をかけた。しかし、爽子は援軍にはならなかった。

爽子(いまこそ、和ちゃんとの約束を果たすべき時・・・!)

爽子は、大きくうなずくと、唯へ向きなおり、言った。

唯「ほら!さわちゃんも、お茶を飲みt―。」

唯が勘違いで言うのをさえぎって、爽子が言う。
158 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/03(金) 22:59:10.80 ID:SPfM/7I0
爽子「唯ちゃん!ギターを見に行こう!」

思わぬ提案に、シーンとなるほか四人。

爽子(・・・え?)

予想だにしない他四人の反応に、戸惑ってしまった爽子は、さっと青ざめた。

爽子(い、今のは、唯ちゃんに乗るのが正解だったの・・・?!)

爽子が、謝ろうと、席を立ち、頭を下げようとしたその時、澪が言った。

澪「ほら!爽子の方がわかってくれてるみたいだぞ?」

159 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/03(金) 23:02:56.25 ID:SPfM/7I0
律「お!爽子は行く気満々みたいだな!」

爽子が急に立ち上がったのを、ギターを見に行くことへのやる気の表れだと勘違いした律は、それを見て立ち上がった。

紬「善は急げね!」

そう言って、紬も立ち上がる。

唯「さわちゃんまで、そういうなら・・・。」

と、唯も渋々立ち上がった。

160 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/03(金) 23:11:02.67 ID:SPfM/7I0
律「よーし!じゃあ、楽器店まで皆で行くぞ!おー!」

律が拳を上げて掛け声を出すと、全員がそれに倣って、おー!と言った。
爽子も遅れて小さく手を挙げ、小さくおーと言った。

律「爽子!声が小さい!」

律に指摘され、びくっとすると、爽子が大きく、おー!と、言いなおした。

爽子(これは・・・友達とショッピングをするのと同じ・・・!)

爽子は思わぬ夢の実現に、内心飛び上るほど喜んでいたのである。
しかし、楽器店に着いた唯と紬と爽子の三人は、ギターの思った以上の高額に、驚くのであった。

161 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/03(金) 23:13:19.78 ID:SPfM/7I0
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今回はここまでで。
読んでくださっている方、ありがとうございます。

次回は、君に届けの設定にはない設定を、爽パパに足してしまいます。
話をスムーズに進めたいので、ご了承を。

では、おやすみなさい。
失礼します。
162 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/09(木) 00:46:21.20 ID:ltDbYcAO
まだか
163 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/13(月) 08:22:57.63 ID:FMNp/cAO
ねぇまだ?
164 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/13(月) 10:29:58.37 ID:vqR0jfwo
まあ焦るなここは製速
165 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/14(火) 12:36:52.13 ID:8gfHHoAO
もう十日だぜ?
いくらなんでも放置しすぎ
166 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 23:47:25.89 ID:A/Xohfs0
おまたせしてすいませんでした・・・

用事が立て込んで、書き込む時間がありませんでした・・・

ほんとに、申し訳ないです・・・
167 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/15(水) 23:52:10.05 ID:J/O3GbYo
ゆっくり待ってるから平気よ!
このSSのほのぼの平和空間が大好きだし
168 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 23:59:43.98 ID:A/Xohfs0
〜夜、爽子家〜

爽子「はぁ〜・・・・・・・・。」

爽子は、食卓について、少し食を進めた後、大きなため息をついた。
今まで以上に大きなため息に、爽子の両親は顔を見合わせた。

爽子父「ど、どうした?爽子。」

心配して父が声をかける。
その声にハッとした爽子は、顔をあげて平静を装う。

爽子「なんでもないの・・・!」

爽子父「家族に隠し事をしちゃだめだ!言いなさい。」

爽子は、うつむいて、言うか言うまいか考えているようだ。
169 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 00:10:35.61 ID:Saj.QZg0
爽子母「お父さん!無理に言わせることはないわよ。」

爽子父「しかし・・・家族で解決できるなら、それに越したことはないだろう?」

爽子母「そうだけど・・・。」

二人の会話が途切れたところを見計らってか、爽子が顔を上げた。
どうやら、言うことを決意したらしい。

爽子「実は・・・。」

爽子は、友達がギターを欲しがっていること。
しかし、そのギターが高く、手が出ない価格であること。

爽子母「ギターってそんな値段するのね!」

爽子「うん・・・。」

爽子母「アルバイトしたらどうかしら?」

170 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 00:16:11.85 ID:Saj.QZg0
爽子「そうなんだけど・・・。」

律が「バイトをして、稼ごう!」と、提案したのだが、唯はその提案を断った。
そして、「おこずかいを前借して、こっちの安い方を買うよ〜。」と、唯は言った。

爽子母「安いのもあるのね。その子はかわいそうだけど、その値段は学生には手が出ないわ〜。」

爽子「うん・・・。」

爽子(唯ちゃんは最後の最後まで、高い方のギターを気に入ってた・・・。)

爽子父は、いつの間にか、食事を終えて、箸をテーブルへ置いていた。
爽子をじっと見つめて言った。

爽子父「そのギター、どんなギターだった?」

171 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 00:30:52.22 ID:Saj.QZg0
爽子「えっと・・・赤い色が基調だったような・・・。」

それを聞いた父は、席を外して、リビングを出て行った。

爽子と、爽子母は突然の行動に、顔を見合わせてしまう。

爽子母「どうしたのかしら・・・突然・・・。」

爽子母がそうつぶやくと、父が部屋へ戻ってきた。
黒い革製のギターケースを手に抱えていた。

爽子母「あら?それって・・・。」

父は、そのギターケースからギターを取り出しながら言った。

爽子父「実は僕も昔、バンドをやろうとしててね。このギターを知り合いからゆずってもらっていたんだ。」

爽子母「・・・・・・。」ニコニコ

母は、微笑んだまま父を見ている。
父はギターを持ち上げて、爽子に見えるようにすると、言った。

爽子父「こんなギターじゃなかったかい?」

爽子は、そのギターを見た瞬間、目を輝かせて、立ち上がったのだった。
172 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 00:36:14.91 ID:Saj.QZg0
〜翌日、朝・通学路〜

唯「ほ、本当にもらって良いの?!」

唯は眼を輝かせて、爽子の両手をぶんぶんと上下させながら言った。

爽子「うん・・・。お父さんも使わないからって。」

そう。爽子の父が持っていたのは、唯が最初にほしいと言ったギターだった。
唯は、受け取ったケースを大事そうに抱え、満面の笑みを見せている。

唯「早く触ってあげたいよ〜」

爽子「良かった・・・。喜んでもらえたみたいで・・・。」

唯「すっごく嬉しいよ!ありがとうね、さわちゃん!」ニコ

唯の思った以上の喜んだ顔に、爽子の顔が自然に和らいだ。

173 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 00:39:55.15 ID:Saj.QZg0
和「唯・・・その大きなケースは何?」

和が唯の自宅前にやってきて、唯の持っている黒いケースに興味を示した。

唯「ふっふっふ・・・。」ニヤ

唯はほほを釣り上げるような笑みを見せて言う。

唯「ひ・み・つ」ウフッ

唯がウィンクしながら言うと、和はため息をつくと、首を振って言う。

和「別に、教えてくれないならいいわ。爽子、いきましょう。」スタスタ

和は唯のボケにも動じず、先に歩きだしてしまう。
174 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 00:43:57.60 ID:Saj.QZg0
唯「の、和ちゃんひどい!」グスッ

唯は涙目になりながら、和の後を追った。
爽子は、ノリが分からず、おろおろしていまう。

和「ほら。唯が余計なことするから、爽子が困ってるわ。」

唯「え、えぇ〜?!わたしのせい?!」

爽子は、猛スピードで首を左右に振る。

爽子「ち、ちがうの!」

唯「そうだよ〜!悪いのは和ちゃんだよ〜」ブーブー

唯が爽子の解釈を都合よくとって、和へ反論する。
175 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 00:48:04.43 ID:Saj.QZg0
爽子「え?!いや、あの・・・。」

爽子はさらにおろおろする。

和「こーら!唯、悪乗りしすぎよ。」

唯「えへへ。ごめんごめん。」

爽子は結局、ノリをとらえきれぬまま、二人の調子はいつもどおりに戻った。

和「今のは唯にボケを『無視する』っていうことでね・・・。」

和がまじめに解説をし始めようとすると、唯が戒めた。

唯「それは解説することじゃないよ〜。」

しかし、爽子は真剣そのもので、まじめにこう切り返した。

爽子「つ、続きをお願いします!」
176 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 00:52:50.91 ID:Saj.QZg0
〜放課後、軽音楽部・部室〜

律「唯〜、よかったなぁ!」

ギターを大事そうに抱えている唯に向かって、律が言った。
放課後。例のごとく集まった五人は、お茶会を始めようとしていた。

唯は皆が集まると同時に、早速ギターを取り出して、ギターを愛でていた。

唯「うん!ギ―太ぁ」ナデナデ

澪「ギターに名前を付けたのか・・・?」

唯「そうだよぉ。」エヘヘ

律「澪はベースにつけてないのか?」

澪「つ、つける必要ないだろ!」
177 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 00:57:39.67 ID:Saj.QZg0
その頃。爽子と紬はお茶を淹れる準備を二人でしていた。

紬「こうやって少し蒸らすことが重要なの!」

爽子「なるほど・・・。」

紬は爽子に紅茶の淹れ方をレクチャーしている。
紬が優雅にカップへお茶を注ぐ。
爽子は、その姿に見とれていると、紬がそれに気付いて言う。

紬「そんな見つめられたら、はずかしいわ。」カァァ

爽子「ご、ごめんなさい!」ハッ

爽子は慌てて顔をそむけて言う。

爽子「あまりにも、様になってたから、つい・・・。」

紬「本当?うれしいわ〜。」
178 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 01:01:03.90 ID:Saj.QZg0
律「はぁ〜・・・。やっぱり、ムギが入れるお茶はうまいなぁ・・・。」

律は紅茶をいっぱい口入れ、飲み下してからつぶやいた。

紬「ありがとう、りっちゃん。」

唯「そういえば、今日お菓子は・・・。」

唯が、現金なことを言ったと同時に、紬が頭を下げた。

紬「ごめんね!今日はおいしそうなものが手に入らなかったの!」

唯「あ!き、気にしなくて良いよ!」アセアセ

澪「唯〜。ここはお菓子を食べるところじゃないんだからな〜。」

唯「えへへ・・・。つい・・・。」
179 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 01:08:11.26 ID:Saj.QZg0
爽子(お菓子か・・・クッキーとかなら、前日に作っておけるかも・・・。)

唯「は〜・・・。やっぱり、お茶ができるって良いねぇ・・・。」

律「このために学校来てる感じだよな・・・。」

律と唯の二人が、シンクロしてため息をついて、テーブルへ突っ伏した。

澪「さ!お茶の時間も終わったし、練習だな!」

唯・律「えぇ〜!?」

二人は声も体を起こす動作もシンクロさせていた。

爽子(すごい・・・この二人・・・。)

澪「とくに唯!ギターの練習は積み重ねが大事なんだぞ!」

唯「は〜い・・・。」

澪「さ!練習しよう!」

唯「澪ちゃんって結構熱い人だったんだね・・・。」
180 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 01:13:02.18 ID:Saj.QZg0
唯たちがそれぞれの練習をしている間、爽子はクッキーを作る計画を立てたり、授業の予習を片づけていた。
唯は、指がつるっと悲鳴を上げたり、指が痛いと言ったり、騒がしく時間が過ぎて行った。
爽子は、その姿を遠目に見守りながら、微笑んでいた。

日が暮れ、すっかり夕焼けに包まれた頃、下校時間のチャイムが鳴る。

律「おっと・・・。今日はここまでだな!」

唯「ううう・・・。もうめちゃくちゃ指を動かしたよ・・・。」

澪「ちゃんと、家で復讐して、覚えてくれないとな。」

唯「がんばります!」フンス

紬「唯ちゃん!頑張って!」
181 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 01:22:45.66 ID:Saj.QZg0
唯「さわちゃん、おまたせ〜!」

律「ごめんな〜。毎回こんな感じになっちゃうけど・・・。」

爽子「ううん。大丈夫。私、皆の練習を見てるだけでも楽しいから・・・!」

律「そっか。なら良いんだどな〜。退屈してたら、どうしようかと思ってさ。」

それぞれが鞄を持つと、全員は校門へと向かった。

唯「ぎ、ギ―太重い・・・。」

澪「そのケースだと、持ちづらいだろ?」

唯「う、うん・・・。」

律「じゃあ、澪と同じようなケースがあるか、今日は見に行ってみるか!」

紬「行こう行こう!」

この後、一行は楽器屋に向った。
しかし、目当てのケースは見つけたのだが、唯の所持金では足りず、結局唯は皆から借りて、ケースを手に入れたのだった。


182 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 01:31:40.66 ID:Saj.QZg0
―番外編・guitar with Yui―

唯「ギー太ぁ・・・♪」

憂「よかったね、お姉ちゃん。」

自宅に帰った唯は、憂に早速爽子からもらったギターを披露していた。

憂「そういえば、ちゃんとお礼を言ったの?」

唯「あ・・・。そういえば・・・。」

憂「その・・・さわちゃんって人は、音楽をしないんだよね?」

唯「そうそう!・・・誰のギターなんだろう・・・そういえば。」

憂「今度、ちゃんとギターの持ち主の人にお礼を言わなきゃね!」
183 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 01:36:07.49 ID:Saj.QZg0
唯「さわちゃんに連r―あー!」

唯は、携帯を取り出して、こう言って、突然顔を上げた。

憂「どうしたの、お姉ちゃん?」

台所に居た憂は、唯が突然声を出したので、慌てて唯のもとへ戻ってきた。

唯「メアドとか聞いてなかった・・・。」

憂「えぇ〜?!」

唯「明日、ちゃんと聞かなきゃ!よし、練習練習!」ジャカジャカ

憂「も〜・・・。」(ギターを弾くお姉ちゃんもかわいい!)
184 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 01:41:25.79 ID:Saj.QZg0
〜夜、爽子宅〜

夕食を終えると、爽子父はギターのことを爽子へ聞いた。

父「友達は喜んでたかい?」

爽子「うん・・・!すっごく喜んでた!」

爽子の顔にぱっと明るさが宿る。
その顔を見るだけで、父は嬉しくなったようで、上機嫌で言う。

父「そうかそうか!」

しかし、爽子はここで爽子の父からのプレゼントであることを言っていないことを思い出した。

爽子(忘れてた・・・。)

父「はっはっはっは!」

父の満足げな笑い声が、黒沼家に響いていた。

―番外編・guitar with Yui― 完
185 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 01:46:04.78 ID:Saj.QZg0
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

本当に、長らくお待たせしてすいませんでした。

忙しくて、パソコンに触れる時間が全くなかったので、書けませんでした。

読んでくださっている皆さんには、ご迷惑おかけしました。

こんどは今週の金曜から〜土曜の夜に必ず続きを書いて、一気に加速して、終幕にさせていただきたいと思います。

>>167
ありがとうございます。雰囲気壊さないように頑張ります。

では、しつれいします。
おやすみなさい。
186 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/16(木) 01:58:17.79 ID:BsfKCRgo
おつおつ
さわこパパの使い方そう来たかって感じだwwww
次回も楽しみにしてる!
187 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/16(木) 11:59:03.94 ID:UfXh5eUo
おつ!
爽子のけいおん世界への溶け込み具合は異常
188 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/18(土) 22:55:15.67 ID:tR2QesE0
〜朝、爽子家〜

爽子は、目覚ましの音とともに、目を覚ました。
時間はいつもより1時間くらい早い。
彼女は昨日計画したクッキー作りをしようというのである。
二人を起こさないように、階下へ向かう。
どんなクッキーにするかは、昨日寝る前に決めた。
学校で爽子が栽培しているハーブを使ったクッキーだ。

爽子(・・・よし!)

爽子は、両手でガッツポーズをしながら、自分に気合を入れた。

昨日の夜、用意しておいたクッキーの種を爽子らしく、丁寧に鉄板へ均等に並べていく。
爽子はお菓子作りには少し自信があった。

爽子(皆が気に入ってくれるとよいな・・・。)

爽子はそんなことを考えながら、作業を進めた。
189 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/18(土) 23:01:19.86 ID:tR2QesE0
〜朝、通学路〜

今日も唯、和、爽子の三人は一緒に登校している。

唯「やっぱり、ギー太は重い・・・。」

和「そんなに重いの?」

唯「和ちゃんも持ってみる?」

唯は、担いでいたギターをおろして、和に渡そうとする。

和「いいわよ!私に持たせようとしないでよ!」

唯「え〜、持ってみようよぉ〜。」

和はそっぽを向いて、持とうとしない。
唯のわがままの矛先は、爽子に向いた。
190 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/18(土) 23:09:20.65 ID:tR2QesE0
唯「さ・わ・ちゃん!持ってみませんか?今ならタダですぜ・・・。」

爽子(私も持ってるとき重かったし、少しだけなら、持ってあげよう・・・。)

爽子はそう思いながら、唯のギターを受け取ろうとした時、和の言葉が脳裏に浮かんだ。

和『今のは唯のボケを「無視する」ことでね―』

爽子(無言の突っ込みという笑いを生む・・・!)

爽子は、受け取ろうとした手をさっと後ろに隠すと、唯を無視して先に歩いて行ってしまう。


191 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/18(土) 23:12:40.85 ID:tR2QesE0
唯「さ、さわちゃん?!」

和「爽子・・・っぷ」

和は何かを思い出したらしく、最初は驚いた顔をしていたが、噴き出した。

唯「和ちゃん・・・?」

和「爽子も成長したわね・・・。」ニコニコ

唯は、和の意図が分からず、首をかしげた。

和「唯、早くしないと遅れるわよ!」

唯「あ、ま、待って〜!」アセアセ

二人は、ずいぶん遠くへ行っていた爽子に追い付くべく、爽子の下へ急いだ。
192 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/18(土) 23:19:23.18 ID:tR2QesE0
〜放課後、軽音楽部部室〜

紬「今日は、紅茶で〜す。」

紬が、爽子とともにお茶を運びながら言った。
運ぶ爽子の目は真剣そのものだった。

爽子(お、落としたら大変なことになる・・・。)

爽子は、お茶を運ぶ数分前、紬の手伝いをしているときに、カップの綺麗さに思わずつぶやいた。

爽子「このカップ、すごいきれい・・・。」

紬「そうかしら?昔から家にあって、一番安いから持ってきたの」

爽子「そうなんだ・・・。お、おいくらなの?」

193 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/18(土) 23:24:03.53 ID:tR2QesE0
爽子(い、意識すればするほど・・・。)

爽子は、値段を聞いたことを後悔しながらも、なんとか皆の待つテーブルへ到着した。

紬「爽子ちゃんが、手伝ってくれて、助かるわ〜。」

爽子はそう言われて、顔を赤らめて照れている。

唯「照れてるさわちゃん、かわいい〜。」

唯が、その姿を茶化すと、さらに顔を真っ赤にして、手を突き出して否定した。

爽子「そ、それはありえないよ・・・!!」

澪「唯!あんまり、爽子を困らせるなよ。」

唯「えへへ。かわいくて、つい。」
194 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/18(土) 23:32:54.47 ID:tR2QesE0
律「でも、爽子って良く見たら、かわいいよなぁ。」

澪「良く見たら、は余計だろ!」ゴン

律「あいた!」

紬「でも、爽子ちゃんが、幽霊だなんて―」

紬の失言をごまかそうと、律が必死に口を塞いだが、間に合わなかった。
幽霊―その部分はしっかりと、聞こえてしまった。

唯「幽霊・・・?」

爽子「・・・・・・・・。」

気まずい雰囲気が、けいおん部内に流れる。
195 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/18(土) 23:39:46.55 ID:tR2QesE0
紬「ご、ごめんなさい・・・!言っちゃいけなかったよね・・・。」

紬が、先陣を切って謝る。

律「わ、私が悪いんだ!紬に前、そういう風に言われてるって言ったんだ!」アセアセ

澪「り、律!」

唯と爽子を除く三人は慌てて、失言を取り消そうとしている。

唯「みんな・・・。」

唯は、ショックを受けたように呆然とする。
しかし、爽子は違った。

196 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/18(土) 23:52:29.29 ID:tR2QesE0
爽子「大丈夫だよ、唯ちゃん・・・!」

爽子は、笑顔を見せて言う。

爽子「幽霊と言われてたのは・・・私のせいでもあるの・・・。」

爽子「でも、そんなことも関係なく、皆は私と・・・友達になってくれた。」

全員が、爽子に注目する。
爽子は、また自然な笑顔を皆に見せた。

爽子「だから・・・。そんなに、謝らなくて良いの。」

唯「うん・・・。そうだよね。皆は友達だもん!」

律「そう・・・。そうだよな。笑い話にしたっていいよな。」

澪「そうやって、開き直るなよ!」ゴン

律「あいた!また殴った!」

197 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/18(土) 23:57:42.00 ID:tR2QesE0
紬「でも、軽率に口にして、本当にごめんなさい・・・。」

爽子「気にしてないから・・・!」

紬は、自分の鞄へ向かうと、何かを取り出して、皆のいるテーブルへ戻ってきた。

紬「場を悪くしてしまった。お詫びです!」

紬の手に握られていたのは、高級そうな包みに入れられたクッキーであった。
爽子は、そのクッキーを見て、驚愕の顔を見せると、皆に見られぬように、顔を背ける。

爽子(かぶった・・・!)

唯「わーい!おいしそうなクッキーだね!」

唯が、テーブルの中心におかれたクッキーの袋に、いち早く手をつけた。

律「相変わらず、手が早いな!」

と、言いながら、律も手を伸ばす。

澪「いつも、ありがとうな、ムギ。」

そう言って、澪も手を伸ばした。

198 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 00:02:29.41 ID:hZ63cio0
爽子は、ショックを受けたまま、立ち尽くしていた。

唯「さわちゃん?どうしたの?」

唯が、不審に思って、爽子に問いかける。
爽子は、唯に声を掛けられて、我に返って、取り繕う。

爽子「な、なんでもないの・・・!」

爽子は素早く着席すると、クッキーを口にする。

爽子(お、おいしい・・・!)

自分と比べ物にならないくらいのおいしさに、びっくりすると同時に、自分のクッキーを出さずによかったと、爽子は安堵したのだった。
199 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 00:17:31.38 ID:hZ63cio0
爽子にとって、友達と登下校し、一緒に遊ぶことが、何よりも幸せだった。
いつの間にか、彼女は、自然な笑顔を皆にふつうに見せることができるようになっていた。
楽しいときは、どんどん過ぎて行った。
夏、合宿。友達との初めての泊りがけの旅行に、爽子は集合の前日に寝ることができずに、初めて『遅刻』した。

そして、秋。
けいおん部にとっても、初めての経験がライブが幕を開けようとしていた。
200 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 00:26:04.14 ID:hZ63cio0
―最終章―


時は少しさかのぼって、夏休みの終わり。

爽子は、夜、寝苦しさから目を覚まし、下で何か飲もうと部屋を出た。
階段の中盤に差し掛かり、リビングから光が漏れていることに気付いた。

爽子(まだ、お父さんとお母さん、起きてたんだ・・・。)

二人は室内で何か話し合っているらしい。話の断片が聞こえてくる。

爽父「―ってくれるみたいなんだ。」

爽母「そうなの?良かったじゃない!」

爽父「うん・・・。せっかく友達ができた、爽子には悪いが・・・。」
201 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 00:29:39.53 ID:hZ63cio0
爽子(私に悪い・・・?)

爽子は、嫌な予感がして、眠気が覚めてしまった。
リビングに入ろうかためらっていると、話の続きが聞こえてくる。

爽父「一人暮らしをさせるわけにはいかないなからね。」

爽母「そうね・・・心配だものね・・・。」

爽父「わかってくれるかな、爽子は・・・。」

爽母「大丈夫。わかってくれるわ。」

すると、突然廊下へと続く、ドアが開いた。もちろんそこには、爽子がいた。

202 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 00:36:46.16 ID:hZ63cio0
爽父「爽子!」

爽子「私に悪いって、どういうこと?お父さん。」

爽父は顔をそむけてしまう。爽母は、その姿にため息をついて言った。

爽母「爽子には、本当に悪いけど、また引っ越すわ。」

爽子「・・・え?」

爽父「今度は、同じ一軒家でも違うぞ!庭が付いているから、ガーデニングもできるんだ!」

爽母「悪いことじゃないの。お父さん、出世したのよ。」

次々と爽子に、言葉が浴びせられる。
しかし、爽子の頭には入ってこなかった。
彼女を支配していたのは、また引っ越すという事実。

203 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 00:44:43.22 ID:hZ63cio0
爽子「が、学校は・・・?」

爽父「転校・・・になる・・・。」

爽父は苦しげに言う。爽子のつらさが分かるからこそだ。

爽母「突然決まったんだけど、今回住む家も知り合いの方がゆずってくれるって・・・。」

爽母は、うつむいている爽子の目線に合わせるように、屈んで言う。

爽母「こんな良いことないの。本当に。」

爽子は、爽母に目を合わせると、我に返り、爽母の声が頭に入る。
呆然とした顔のまま、爽子は何とか声を発する。

爽子「うん・・・。」

爽父「突然で、本当にすまない・・・。」

爽子「ううん・・・。」

爽子は、力なく首を振る。

爽子「引っ越しはいつなの?できれば、文化祭まで待ってほしい・・・。」

その言葉に爽父は、微笑むと、大きくうなずいた。
204 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 00:57:13.65 ID:hZ63cio0
〜文化祭一か月前、軽音楽部部室〜

唯「引っ越す・・・?」

爽子の口から語られたことに、唯は驚きながら言った。

律「そ、そんな・・・。」

澪「いつ引っ越すんだ?」

爽子「文化祭が終わったら引っ越すの・・・。」

紬「もう一ヶ月しかないわ!」

唯「突然過ぎるよぉ!」

唯が、涙目で、爽子を見る。
爽子はその顔を見て、笑顔を見せる。どこかぎこちない笑顔だ。

爽子「お父さんが、出世して・・・都心の方へ行かなきゃいけないの・・・。」

澪「そっか・・・良いことなんだな・・・。」
205 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 01:10:21.96 ID:hZ63cio0
律「よし!爽子のためにも、文化祭は最高のものにしないとな!」ガタッ

律は席から立ち上がりながら言う。

律「練習だ!練習!」

律はそう言うと、先陣を切って、ドラムセットへと向かう。
涙目の唯と紬も、目元をぬぐって、律へと続く。澪もその姿を見て、後に倣った。

爽子は、その姿に安堵した。私が原因で、皆の気分が落ち込んでしまったら・・・。

爽子(私のために、皆明るく、前向きに・・・そして私のために、行動してくれてる。)

爽子は、気付かれないように小さくガッツポーズをした。

爽子(私も頑張らなきゃ・・・!)

そう思いながら、爽子は、けいおん部の紹介をする練習を黙々と始めた。
206 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 01:17:48.19 ID:hZ63cio0
〜下校時、澪と律〜

二人は、爽子の突然の告白のショックからか、皆と別れた後、何も言わずに並んで歩いていた。
二人の家へのわかれ道へ近づいたとき、澪が口を開いた。

澪「爽子のために、曲をかけないかな?」

律「え?」

澪「まだ一カ月あるし、なんとかならないかな?」

律「まぁ、演奏する曲は形にはなってるけど・・・。」

澪「一曲削って、爽子のために曲を入れたいな・・・。」
207 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 01:24:21.12 ID:hZ63cio0
律「私は賛成だけど、他の二人にも聞いてみよう!」

澪「律・・・!ありがとう!」

律「へへっ。じゃあ、私の家に集まれるかメールしてみるか!」

律は携帯を取り出すと、皆へのメールを打つ。

律「そういえば・・・爽子のアドレスって、聞いてないな・・・。」

澪「唯なら知ってるんじゃないか?」

律「あ〜。確かになぁ。」

その場でそんな話をしていると、二人から返信があったようで、携帯が震える。

律「お、二人ともこれるらしいぞ。」

澪「良かった!」

律「澪は先に私のうちにいてくれよ。私は二人を迎えに行ってくる。」

律はそう言うと、澪に鞄を預けて、メールを打ちながら、歩き始めた。
208 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 01:40:33.26 ID:hZ63cio0
〜文化祭一週間前、軽音楽部部室〜

律「うん・・・良いんじゃないか?」

澪「なんとか間に合ったな!」

唯「さわちゃん、喜んでくれるかなぁ?」

紬「喜んでくれるはずよ!」

爽子を除く四人は爽子には、今日は練習は休みだと嘘をつき、爽子のための曲をみっちり練習していたのである。

律「いやーなんとかなるもんだなー!」

澪「まぁ、ほとんどもともとあった曲に少し手を加えただけどな。」

唯「でも新しくしてたら、間に合わなかったよねぇ。」

紬「りっちゃん、名案だったわ〜。」

律「なんの、なんの!」
209 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 01:46:55.34 ID:hZ63cio0
澪「よし!じゃあ、この調子でほかの曲も練s―」

練習しようと、澪が言いかけると、唯と律がこぞって反対する。

唯「え〜!休憩しようよぉ〜!」ブーブー

律「そうだ、そうだー!お茶しようぜぇ!」ブーブー

澪「お、お前らなぁ!」

と、澪が二人を説き伏せようとした時、紬が手を挙げて言う。

紬「私もお茶が飲みたいで〜す。」

紬の賛成に、澪は何も言うことができない。

澪「まったく・・・休憩したら、また練習するからな!」

ほか三人は元気よく「はーい!」と、返事をすると、唯と律はテーブルへ、紬はお茶の準備へと向かったのだった。
210 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 01:57:16.68 ID:hZ63cio0
〜文化祭前日、夜、爽子宅〜

爽子の部屋はすでに、ダンボールで埋め尽くされていた。
何もない部屋に、机と椅子、テーブルにベッドだけが、味気なく残っている。

爽子は、今まで澪が撮ってくれた写真を見返していた。
思い出が、爽子の心を包み込んでいる。
温かい気持ちが爽子の胸を支配すればするほど、彼女たちとの別れがつらくなる。

爽子(泣いちゃダメ・・・笑って・・・笑って、皆とお別れするの・・・。)

爽子は、溢れそうになる涙をぐっとこらえて、写真をそばにあったダンボールへしまう。

爽子(そうだ、明日は皆に、今度こそ手作りを食べてもらおう。)

爽子は結局、紬のクッキーとかぶってしまって以来、手作りを皆に振る舞うことを委縮してしまったのである。

爽子「・・・よし!」

爽子は声に出して、気合を入れると、部屋を後にして、クッキー作りに取り掛かったのだった。
211 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 02:07:18.83 ID:hZ63cio0
〜文化祭当日、軽音楽部ライブ1時間前〜

爽子は文化祭で大活躍していた。
普段の料理好きが功を奏し、彼女の作る焼きそばは好評を得ていた。
爽子と唯と協力して、一生懸命に作っていると、澪が教室にやってきた。

唯「あ、澪ちゃん!」

唯が気づいて、声を上げる。
爽子は焼きそばに一所懸命で気付かないようだ。

爽子「い、いらっしゃいませ〜!」

爽子は、初対面の人にはいつも通り(?)ぎこちない笑顔で応対する。
その笑顔は、どうも人を凍りつかせてしまう。
澪は、久しぶりの爽子の本領発揮(?)に思わず飛び退く。

澪「っひ!」

唯「澪ちゃ〜ん!」プンプン

澪「ご、ごめん・・・どうもなれなくて・・・。」

爽子「あ・・・!澪ちゃん。」

知り合いだと気付いた爽子は、いつもの表情に戻って、言った。

212 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 02:12:58.06 ID:hZ63cio0
澪「なぁ、軽くでいいから、合わせないか?」

澪は自分のクラスに無理を言って、抜け出してきたのである。

唯「でも、私たちもこの持ち場がまだ少しあるから・・・。」

と、唯が言うと、それを聞いていた唯のクラスメイトが「代わってあげるから、行ってきなよ。」と、言ってくれた。

唯「本当に?!ありがとう!」

爽子「あ、ありがとう・・・!」

「ライブ、見に行くから、頑張ってね!」

クラスメイトはそう言うと、彼女たちに代わってくれた。
唯はギターを担いで、爽子と澪と共に教室を後にした。

213 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 02:18:07.46 ID:hZ63cio0
唯「りっちゃんとムギちゃんは?」

部室へ向かう途中、澪と一緒にいないことを疑問に思い、唯が聞いた。

澪「ふ、二人はお、お化け屋敷にいて・・・。」

どうやら、お化け屋敷で怖い思いをしたらしい。

爽子「私が、見てこようか・・・?」

澪「た、頼む!」

爽子は二人と別れて、律と紬のいるクラスへと向かった。

爽子「りっちゃん!」

律「おー爽子!」

律は受付と書かれた型紙が付けられた机の椅子に座っていた。

 
214 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 02:23:30.70 ID:hZ63cio0
爽子「澪ちゃんが―」

律「あー、知ってる。澪が練習したいいって言うんだろ?」

爽子は、こくんとうなずいた。

律「でも、私は受け付けの時間がまだあるんだ。でも、後少しだからさ。」

爽子「そうなんだ・・・。」

律「あ、ついでに入ってけば?」

爽子「良いの?」

律「お客さん、入らなくてさー。暇してるから、入ってくれよ!」

爽子はそう言われて、むげにできず、中に入って行った。
215 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 02:30:48.39 ID:hZ63cio0
中に入ると、おどろおどろしい、お化け屋敷らしいBGMが流れている。
高校生の文化祭にしては、緻密に作られていて、雰囲気が出ている。

爽子(お化け屋敷なんて、小学生の時、お父さんと入って以来だな・・・。)

そんなことを考えながら、道を進む。
道にある小物のレベルも、怖さを盛り上げるくらいに精巧に作られている。
道中の最後、ミイラが棺桶に収まっている。
それに注目していた爽子は、横からの気配に気づかない。
横から突然現れたもう一体のミイラに、爽子はびくっと体を震わせてゆっくりと、振り向いた。
その顔は、リングの貞子を彷彿とさせる。

ミイラ「ぎゃー!!!!!!!!」

ミイラの方が、大声をあげて逃げてしまった。
爽子は、呆然としていたが、自分の姿を見て逃げ出したことに気付いて、ショックを受けながら、お化け屋敷を出たのだった。
216 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 02:36:35.67 ID:hZ63cio0
〜ライブ数十分前、軽音楽部部室〜

律「よし・・・!準備は良いな!」

律がそう言うと、全員が大きくうなずいた。
しかし、澪と爽子は顔面蒼白である。

唯「二人とも大丈夫・・・?」

唯がそう尋ねると、二人とも同時に唯の方を向いて、うなずいた。
力ないうなずきに、紬も心配する。

紬「大丈夫よ、澪ちゃん、爽子ちゃん!ちゃんと、練習してきたじゃない!」

唯「そうだよぉ。大丈夫、大丈夫!」

律「初めてのライブなんだし、失敗したってしょうがないだろ?元気出せって!」

澪と爽子は、目を合わせると、少し顔色を戻して、皆に顔を向けてうなずいた。

律「じゃあ、いくぞ!」オー

唯・紬・澪・爽子「おー!」
217 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 02:43:11.38 ID:hZ63cio0
〜舞台袖〜

爽子の心臓は今にも飛び出そうなほど、高鳴っていた。
体が小刻みに震えている。
しかし、爽子の役目は最初に前に出て唯たちの紹介をするだけ。
ほんの数分なのだが、人前に出ることのなかった爽子にとっては、その数分が大役のように感じられる。

律「さーわこ!大丈夫だよ。」

律が震えている爽子に優しく声をかける。
爽子はうなずくが、震えは止まらない。

唯「さわちゃん、頑張って!」

紬「爽子ちゃんも、練習通りやれば大丈夫!」

澪「わ、私も頑張るからな!」ガタガタ

218 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 02:47:39.94 ID:hZ63cio0
皆に声を掛けられ、いくらか楽になったのか、爽子は笑みを見せた。

和「では、次は軽音楽部の皆さんです。」

和のアナウンスが流れる。

律「さぁ、スタンバイだ!」

律の掛け声とともに、全員が配置につく。
爽子は最初、マイクを持って、緞帳が上がる前のステージに立つ。

和「頑張って。爽子なら、できるわ。」

反対側の舞台袖にいた和が声をかける。
その応援に、なんとかうなずきで爽子は返した。
219 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 02:52:54.87 ID:hZ63cio0
緞帳が上がりきると、暗いステージの上の爽子だけにスポットライトが当たる。

「え・・・?あれって・・・。」
「貞子だ・・・。」
「軽音楽部のライブじゃないの・・・?」
「のっとられたじゃない?霊能力で!」

ざわめきが広がっていく、爽子はなかなか話しだせない。

律「爽子!」

唯「さわちゃん!」

紬「爽子ちゃん!」

澪「爽子・・・。」

爽子(皆の声が聞こえる・・・。うん、私には皆がいる・・・。)

一人じゃない、そう思いながら、爽子はけいおん部の紹介を始める。
220 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 03:02:17.07 ID:hZ63cio0
爽子「み、みなさん初めまして!軽音楽部のマネージャー兼マスコットの黒沼爽子です!」

静まり返る場内。
「マスコット・・・・?」
「え・・・?」

誰かのつぶやきが場内に漏れる。
くすくすと笑い声も響いている。

爽子「私は最初、なかなかクラスに溶け込めなくて、何とか溶け込もうと、努力していました。」

空回りしてしまう過去の自分が爽子には思い出されていた。

爽子「でも、うまく溶け込めなくて・・・でも、そんなときに声をかけてくれたのが、このけいおん部にいる、平沢唯さんです!」

爽子の紹介とともに、唯にスポットライトが当てられる。唯は頭をかいて照れている。

爽子「彼女は、唯ちゃんは初心者でありながら、ギターとボーカルを猛練習して、今じゃ、ものすごくうまくなりました!」

唯はその紹介にさらに照れている。

爽子「そして、こんな不器用な私を、部活に入れようと決意してくれたのが、部長の田井中律さんです!」

律にもスポットライトが当たる。律は爽子を優しく微笑みながら見ている。

爽子「りっちゃんは、類稀なるドラムセンスと、リーダーシップで、皆を引っ張ってくれます。」

律は少し誇張された紹介に、恥ずかしかったのか、うつむいてしまう。
221 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 03:14:11.79 ID:hZ63cio0
爽子「こんな私にも音楽をしようと進めてくれたのが、秋山澪さんです。」

澪は緊張を忘れたらしく、爽子を見て微笑んでいる。

爽子「澪ちゃんは、ベーシストらしく皆を支えてくれて、誰よりも音楽に対して熱心でした。」

澪はうんうんと、うなずいている。

爽子「最後に、こんな私に優しく接して、お茶の淹れ方を教えてくれたのが、琴吹紬さんです。」

紬は紹介に手を振って答えた。

爽子「普段はおっとりしてますが、キーボードを弾く姿は機敏で優雅で、美しささえ感じます。」

紬は満面の笑顔を見せている。

爽子「もう一人、けいおん部じゃないのですが、紹介したい人がいます。」

爽子は舞台袖にいる和を見つめる。
和は「え?私?」と、驚いた様子で、自分を指差す。
222 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 03:26:02.28 ID:hZ63cio0
爽子「それは、真鍋和さんです。」

舞台袖の緞帳にスポットライトが当たる。

爽子「唯ちゃんと一緒に私を救ってくれた・・・何も言わない私の代わりに、言ってくれて本当にありがとう。」

爽子「皆、私の友達です。本当に、この学校に来て、良かったです。みなさんも、こんな素晴らしい友達、仲間を作ってください!」

爽子はいつの間にか、笑顔を見せていた。
その笑顔は、唯と初めて会った時見せた、自然な笑顔。
始めてみる爽子の綺麗な笑顔に、講堂に集まった生徒は心が温かくなるのを感じた。
貞子と呼ばれた噂の女子学生は、そんな噂を感じさせない綺麗な笑顔を持っていた。

爽子「では、皆さん、けいおん部の演奏を聞いてください!」

爽子が、そう言うと同時にけいおん部の皆に当っていたスポットライトの電気が消える。
律のカウントを取るドラムスティックが鳴り響き、けいおん部のライブがスタートした。
223 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 03:34:59.14 ID:hZ63cio0
ライブは何の滞りもなく進んだ。

爽子(目立つようなミスもなさそうだし・・・皆すごいな。)

爽子はそう思うと同時に、寂しさが込み上げてきた。

爽子(次の曲で最後だ・・・。)

ちょうど、最後の一曲の前の演奏が終わる。

唯「次が最後の曲になります!」

客席からは「えー!?」という声が返ってくる。
彼女たちはたった一度のライブで、ファンをつけてしまったようだ。

唯「次の曲は、我がマスコット、さわちゃん、あ、黒沼爽子ちゃんのために作りました。」

爽子は突然の発表に驚きを隠せない。
爽子が呆然としたまま、唯のMCは続いた。

唯「爽子ちゃんは、最初、学校の道に迷った私にあの笑顔で正しい道を教えてくれました。」

唯「でも、学校ではなかなか皆に溶け込めずにいるシャイな女の子でした。」

唯「話しかけたくても、休み時間には姿が居なくなっててぇ〜仲良くなるのが、大変でした!」

笑いが会場内に広がる。
その笑い声で、爽子は我に返った。

唯「やっと、仲良くなれて、一緒にこれからいろいろ思い出を作れると思ったのに、彼女は遠くへ引っ越しをしてしまいます。」

会場内が静寂に包まれる。

唯「そんなさわちゃんを、送り出そうと思って、書いた曲です。聞いてください!」
224 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 03:45:36.31 ID:hZ63cio0
唯は、澪を、紬を、そして、律を見る。全員が、唯にうなずき返した。

唯「君に届け!」

律のドラムスティックのカウントとともに、演奏が始まった―。

演奏が、音楽が、唯の歌声が、爽子を包んでいく。

爽子(唯ちゃんたちはこういう風に音楽を感じていたんだ。)

爽子の目からは、自然と涙が流れていく。

爽子(私のための歌・・・。私を励ましてくれる歌・・・。)

爽子はあふれ出る涙をぬぐう。演奏が終わるまでに涙を止めなきゃ。

爽子(ありがとう・・・。)

爽子は、音楽を感じながら目を閉じて、そう思ったのだった。
225 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 03:50:29.25 ID:hZ63cio0
〜引っ越し当日、爽子宅前〜

爽子の家の前にはけいおん部が勢ぞろいしていた。
しかし、涙を流す者はいない。皆笑顔だ。

爽子「皆、ありがとうね。」

唯「うん。向こうでも頑張ってね、さわちゃん!」

律「病気するなよ!それと、無理するなよ!えっと、あと〜」

澪「向こうに行っても、友達、作れるように頑張ってな。」

紬「その笑顔があれば、友達100人できるわ!」

紬の天然ボケに、皆が笑う。
226 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 03:55:21.92 ID:hZ63cio0
爽子「私、あの私のために作ってくれた歌のように、皆と笑顔で別れることができて良かった。」

唯「あっと!わすれるところだったよ〜!」

唯は、鞄の中からテープと一枚の便箋を取り出した。

唯「ほんとは色紙の方が良かったんだけど・・・練習に忙しくて、忘れてて・・・。」エヘヘ

律「寄せ書きと、皆のアドレス!爽子が携帯持ったら、すぐ連絡取れるように!」

澪「テープには、爽子のために歌った曲が入ってる。」

紬「元気出したいときとか、それを聞いてね!」

爽子は思わぬプレゼントに、涙があふれる。
227 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 04:00:23.88 ID:hZ63cio0
唯「さわちゃん・・・。」

泣きそうな爽子を、唯が抱き締めると、皆も爽子を抱きしめる。

唯「また会おうね!歌詞にも書いたけど、約束だよ!」

唯は抱きしめた爽子を優しく引き離し、顔を見て言った。
唯もこらえきれず、涙を流している。
皆が泣きじゃくる中、爽父が「そろそろ行くよ。」と、声をかける。

爽子「じゃあ・・・、またね!」

爽子があの笑顔を見せて言う。

唯「うん!またね!」

唯も、律も、澪も、紬も、その笑顔に答えるような笑みで、言葉を返す。
車に乗り込んだ爽子が、見えなくなるまで、四人は爽子へ手を振っていたのだった・・・。

〜Fin〜
228 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 04:12:09.81 ID:hZ63cio0
―番外編・after story―

桜が舞う。
季節は入学式の季節。

爽子は、舞い散る桜を見て、唯と出会った時のことを思い出していた。

爽子(早く会いに行きたいな・・・。)

桜を見ながらゆっくり歩いていると、黒髪の男子生徒が、辺りをきょろきょろしながら佇んでいた。

爽子(そういえば、唯ちゃんもきょろきょろしていたな・・・。)

爽子が引っ越して通うことになったのは、男女共学の高校だった。
高校のパンフレットに、女子生徒の制服と共に男子生徒の制服も載っていたので、目の前の制服に見覚えがある。

爽子(きっと、新入生で道に迷ったのかな?)

そう思った爽子は、間違った道に進もうとした彼を呼びとめた。

爽子「あの〜・・・北幌高校だとしたら、こっちですけど・・・。」

―番外編・after story― 完
229 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 04:19:54.40 ID:hZ63cio0
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ほんとに、だらだら長い間書いてしまいました。
遅筆で本当に読んでくださった方にはご迷惑おかけしました。

最後、駆け足になりましたが、実際こんな長く書くのは初めてでした。
誤字脱字、さらに矛盾まで出てきちゃって、申し訳ございません。

とくに、最後の方はお父さんからのギターだって言ってるのに、番外編で言ってないことになってたり・・・。

くるみちゃんとか龍とかを出したかったんですが、どうだそうか悩んだ挙句、思い浮かばなかったので、出しませんでした。出すとか言って、すいません。

最後の番外編は、ちょっと年齢がおかしくなってしまいましたが、あのシーンです。伝説のww

「君に届け」ですが、フランプールの曲をイメージしてません。
彼女たちが書いた全くのオリジナルということにしてください。
詩を書こうと思ったけど、センスないので、やめましたww

最後まで見てくださかった方、途中感想を書いてくださった方、本当にありがとうございます。
誤字脱字、矛盾ありますが、楽しんでいただけたら、幸いです。

では、また何か書けたら書きたいと思います。
失礼します。
230 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/19(日) 12:48:29.83 ID:lg0BRSwo
乙乙!
こっそり仕事場で読んでたらさわちゃんのメンバー紹介の所でうるうる来た
転校しても一生離れない、大切な友達になれたんだろうな
本当にいい話でした
みんなみんな幸せになれ!
231 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 08:59:56.82 ID:3twfPgq3o
これは乙。こまけぇことは(ry
122.76 KB   

スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)