他の閲覧方法【
専用ブラウザ
ガラケー版リーダー
スマホ版リーダー
DAT
】
↓
VIP Service
製作速報VIP(クリエイター)
製作速報VIP(クリエイター) 過去ログ倉庫
検索
すべて
本文
タイトル
投稿者
ID
このスレッドは
製作速報VIP(クリエイター)の過去ログ倉庫
に格納されています。もう書き込みできません。。
もし、このスレッドをネット上以外の媒体で転載や引用をされる場合は
管理人までご一報
ください。
またネット上での引用掲載、またはまとめサイトなどでの紹介をされる際はこのページへのリンクを必ず掲載してください。
オルソラ「この気持ちに、嘘はございませんのよ」 -
製作速報VIP(クリエイター) 過去ログ倉庫
Check
Tweet
1 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
:2010/11/17(水) 00:22:31.06 ID:hCRsnQAO
※注意
・オルソラ×シェリーの百合話です
・がっつり魔術サイドを予定してます。科学サイドは話題程度になりそうです
・幾つかの魔術に対して書き手の独自解釈が混ざる可能性があります
・原作で絡みのなかったキャラが、普通に仲良しになってる可能性もあります
・エリスは男の設定ですが、台詞など“キャラ付け”になりそうな部分は極力減らしていこうと思っています
・書き溜めはありませんが、最後までいけるように頑張りたいです
・
>>1
は総合スレなどで何回か投下していますが、もしもしなのでPCからの見栄えがよくわかりません。見にくいなどの点は突っ込んでくれるとありがたいです
では、はじめます
1.5 :
荒巻@管理人★
(お知らせ)
[
Twitter
]: ID:???
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】
ごめんなさい、この製作速報VIP(クリエイター)板のスレッドは1000に到達したか、若しくは著しい過疎のため、お役を果たし過去ログ倉庫へご隠居されました。
このスレッドを閲覧することはできますが書き込むことはできませんです。
もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。
君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/
笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/
【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/
トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713798788/
【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713788018/
ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/
【安価】少女だらけのゾンビパニック @ 2024/04/20(土) 20:42:14.43 ID:wSnpVNpyo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713613334/
ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713522243/
2 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/11/17(水) 00:24:46.83 ID:DIg9U0oo
この組み合わせは予想外
3 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[saga]:2010/11/17(水) 00:25:41.88 ID:hCRsnQAO
00
そのとき――黎明の天へと駆けのぼって壮々と舞いあがる鳥達の翼が、女性に影を落としていった。
精緻な宗教画を描きつけた高い天蓋に覆われ、神々の息吹に満ちたような礼拝堂は静謐な冬特有の澄んだ空気を纏っている。
彼女は此処に、懺悔しにきていた。
シスターらしからぬ豊満な肢体を修道服で包み、口紅や香水に縁のない美貌を俯かせて、祈る。
自分の罪状の名など気にならなかったし、行おうとしている罰当たりな行為が許されるとは思っていないが、
それでも――彼女には、オルソラ・アクィナスには、どうしてもそれが必要な行為だった。
(申し訳ございません。――“エリス”さん)
4 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/11/17(水) 00:25:57.23 ID:hCRsnQAO
極上のチョコレートを蕩けさせたような肌をした、けれどもその本性は全然甘くない彼女が、
普段よりも言葉少なく、心の中にある大切なものを選ぶようにそっと、
この世にはもういない親友の事を教えてくれたのはいつの日だったか。
それは、無数の信念を持ち、数多の意見を理解して、野良猫のように行動する彼女の“根幹”を作りあげた人の名前。
二十年経った今もあの方を縛り付ける鎖が、それなのだと見せ付けられた。
(わたくしは――……)
これから行おうとすることは、死者に対してどれほどの冒涜になるだろうか。
そして、宝物のように親友を想い続ける彼女にとって、どれくらいの侮辱になるだろうか。
申し訳なさで伏せた目蓋の奥にある暗闇、オルソラは彼女がそれを喜ぶことなど決してないことを理解していた。
けれどあの人は、喜びはしなくとも此方の感情を理解してくれるという事だけは分かっていた。だからこそ、行動に移す。
卑怯と罵られようが構わない。
最初からこれは、勝ち目の薄い戦いだ。
5 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/11/17(水) 00:27:29.25 ID:hCRsnQAO
ちかり、消える羽の残像を追いかけて鮮烈に閃いた光は、朝靄の中で街並みを真横に裂き、瞬く内に昏き宵の帳を払拭した。
丘の下に広がる街では、優しい夢が人々を包みこんで厳しい現実から遠ざけたまま、瞼の裏に有る平和を堪能させている。
生活の不規則な彼女の枕元にも、安息の翼は訪れているだろうか――?
そう考えてから、ふふふ、と微笑んで、オルソラは心の中で死者へと宣告した。
(貴方様からシェリーさんを、奪わせてもらうのでございますよ)
かくして修道女は、恋心の為に堕ちる。
---
6 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/11/17(水) 00:28:07.72 ID:hCRsnQAO
01
ここ最近で一番苛立ったことは、今まで自堕落気味だった自分の生活サイクルを突然現れた他人が現在進行形で掻き回している事実だと、
シェリーはそう考えながら布団を頭で引き上げた状態で狸寝入りを決め込んでいた。
寝台に潜り込んだのは少なくとも日付変更線を跨いだ後だったと記憶している。
殺風景な部屋に置かれた時計は午前7時半を示していたが、扉のメトロノームみたいなノックの音は数分前から一度として途切れてくれなかった。
「シェリーさん。朝でございますのよ」
あぁ知ってるよとか思いながらどうするかと考えるも、具体的な撃退方法は数日前から見付からない。
のんびりとした声と同じ、歯車の噛み合わない思考の持ち主であるオルソラはシェリーの天敵でもあった。
話が出来ない、流されてしまう、何故か強く出れないの三拍子。苛々とはするが、何故だか嫌だと思いきれないのも不思議だ。
7 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[saga sage]:2010/11/17(水) 00:28:55.12 ID:hCRsnQAO
「シェリーさん。今日は雲一つない晴天なのですよ。酷く綺麗でございます。さぁ、起きましょう?」
朝食が始まるのは45分から。
あと15分耐え抜けばと耐久合戦をはじめたシェリーの耳朶を、ふと懐かしい声が駆ける。
昔から定時に起きるのが苦手だった自分を、幼い頃に嫌な顔ひとつせずに起こしてくれた親友――起きろと扉を叩く音が、一つ増えたような錯覚がした。
「……くそっ」
また、負けた。
布団を隅に押しやると、寝台からおりたその脚で扉を開くシェリーの表情は歪んでいたが、それでもやはり――嫌気だけは、見受けられなかったのだ。
---
8 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[saga sage]:2010/11/17(水) 00:30:33.47 ID:hCRsnQAO
思ったより書き溜めがなかった……
シェリー可愛いよシェリーと、魔術サイドの少なさにスレ立てしました
地の文中心に、スローペースに深夜更新で行きたいと思います
じゃ、もう少し書いてくる
9 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/11/17(水) 01:07:50.67 ID:j8UqUbIo
期待するのである
10 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/11/17(水) 04:59:12.28 ID:NLRMLoSO
俺得スレ発見
11 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[saga sage]:2010/11/17(水) 10:10:05.43 ID:hCRsnQAO
クリームたんまり増量クレープ、カフェドショコラ、お手製の焼きたてマフィン、玉ねぎとパセリのコンソメ、青林檎とヨーグルトの蜂蜜がけ、そして今日の食事当番はアンジェレネ。
美味しそうでは有るが精々メタボれとでも言いたげな高カロリーな朝食を前にして、
あらあらうふふと笑ったのがオルソラ。珈琲を手に欠伸したのがシェリー。そして胸焼けを起こしたのはほぼ全員だった。
女子寮に住む奴らを豚にしたいのかと頸を傾げたりするシェリーの近くでは食事休憩の合間からルチアによるアンジェレネ公開処刑が行われていたりしたが、
日常茶飯事の為に割愛。他の女性陣から漂う覇気で普段よりも熱が入っていた気もするが、さて。
最近はオルソラの活動によって朝食時の食堂に姿を現す頻度が高まった彼女だが、
身体の方はそのサイクルに未だ慣れないのか紅茶や珈琲などの飲み物で場を濁すのが殆どだった。
オルソラはさっきから人の隣でひなたぼっこしてる猫に似た表情を見せているので構う必要もないかと放置している。
そんなでこぼこコンビの正面に座った神裂が何やら頸を傾げたりしていて、ついに突っ込まれる日が来たかと思ったのだが、コイツの性格上は有り得ない事だった。
それに、自分ですらこの組み合わせは奇怪だと感じているのだから、周囲の違和感は半端ないものだろう。
とはいえ、肝心のシェリーにだってオルソラが急に目覚まし時計係を勤めはじめた理由は分からないのだが。
「あの、シェリー。少し見てもらいたいものがあるのですが、本日の予定は?」
12 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[saga sage]:2010/11/17(水) 10:10:43.28 ID:hCRsnQAO
そう神裂が問い掛ける。
なんだ仕事の話かと思いながらも、僅かに眠い頭では仕事など勤まらないだろうから今からすぐの用件ならば別の奴にしてほしい。
「とりあえず寝直したいところだけど、急用かしら。違うなら後回しにしてくれ」
「そう……ですね。さほど急用な訳でもないですし、それにごく個人的な用件です。あとで自室の方にお邪魔させてもらえますか?」
「あぁ、なんだ。それなら適当な時間に来てくれれば、やっておくわよ。……因みに、絵画か何か?」
「写真です。少し、あの……気になるところがありますので」
「――二度寝は身体によくないのでございますのよ、シェリーさん」
いきなり真横から声が割り込んできた。
神裂はやや苦笑いを浮かべて視線を動かすも、こっちは面倒の一言でしかない。
自分の金髪を指先で掻き乱してから、なんだよと言いたげに視線を降ろす。
今にも人の腕に懐いてきそうな具合で身体を揺らす天然シスターは、
その淡い色をした瞳を笑みの形に細めると頸を傾げてみせた。
「お買い物へ、行きましょう」
「……はぁ」
「二度寝は身体によくないのでございますよ?」
「それはさっきも聞いた」
「シェリーさんの服は、少し煤けすぎだと思うのでございます。新しいものを買いましょう。わたくしは、今日は休みなのでございます」
「…………」
「――でぇと、でございますね」
うふふ、と笑ったオルソラの発言に神裂が一瞬だけ硬直した。
……必要悪の教会という閉鎖的な環境のせいか、この女子寮にも“そっち側”に属する女性がいない訳じゃないのは、
いかに周囲に無関心なシェリーでも知らない訳じゃない。二十代後半という女子寮メンバーの中では年上、
かつ自分に懐いてくる人間に対しては幾許かの面倒見のよさ(※当社比)を垣間見せたりする彼女は、
いわゆる“姐御肌”としてコアな人気があったりするのだけれどもそれはまた別のお話。
神裂がほんの数秒だけ過剰反応したのもそれが原因だろうと目星をつけてから、
普段はパステルを奮う指先をオルソラの額に近付けて弾いてやる。
――パチンッ。いい音がした。
13 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[saga sage]:2010/11/17(水) 10:11:33.46 ID:hCRsnQAO
「……痛いでございますのよ」
「アンタが急に馬鹿なこと言うからよ。で、なに。買い物?」
「お昼ご飯は、外で食べるのもいいかもしれないですね。ケーキなども」
「ケーキ!? け、ケーキって言いましたかシスター・オルソラっ! お、お土産、お土産を希望します!」
「シスター・アンジェレネ、貴方はまだそんなことを言うんですか?」
「ま、まぁ落ち着いてください、ルチア。アンジェレネも、食器洗いがまだでしょう? ほら、ささっと済ませてしまいましょう」
「シェリーさんにはやはり黒が似合いますが、でもあんなに擦り切れたものばかり着ていては勿体ないのでございますのよ」
「………………。」
女が三つで姦しいと言ったのはジャパニーズだったか。
あそこの言葉はやはり象形文字なのだろうと、以前思ったことを再確認しながらも面倒なので傍観を決め込んでみたりする。
日常茶飯事ではあるのだがこういった出来事は基本的に外から眺める立場だったので、立ち位置が把握できずに困惑しているのも間違いではなかった。
助けを求めるように視線を泳がすが、誰とも噛み合わない。
事態を収拾させるのは自分には出来ないと把握してから溜息を吐くと、とりあえずもう一度だけ渋々というように頭を掻き、椅子を引いて立ち上がった。
隣のオルソラが僅かに頸を傾げる。
「シェリーさん?」
「……行くんでしょ、買い物。流石にこの格好で外に出たら捕まるから、準備してくるわよ。ちょっと待ってなさい」
やはり、どうにもコイツは苦手だ。
無理して自分の意見を押し通すくらいなら、はいはいと適度に付き合ってやる方が楽に思えてしまう。
それは多分、オルソラが自分に向ける感情が少なくとも害意を孕んでいないものだからというのも、理由のひとつに成り得た。
ほんのりと眼を見開いてから、ありがとうございますと微笑する彼女を見たくなくて視線を逸らすとそのまま食堂を後にする。
頭の中で今日の授業は何時からだったかと記憶の頁を捲りながら、くぅっと猫のように伸びをして自室へと向けた脚の歩幅は、普段よりも少しだけ大きく、早かった。
---
14 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/11/17(水) 10:13:07.92 ID:hCRsnQAO
>>9
-
>>10
適度に頑張るので宜しくお願いします
ところでこの二人以外で出したいと思ってるカップリングとか書いた方がいいかな?
15 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/11/17(水) 14:35:42.23 ID:80zMM6DO
>>14
個人的にはオルシェリだけで十分だけど
>>1
が書きたいなら書いてもいいんじゃない?
16 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/11/17(水) 21:01:24.58 ID:cB42Ip2o
我が身の全ては
>>1
乙のために
今見つけたんだよ!シェリーかわいいよシェリー!
小ネタスレでサラっと流れてしまってなんと勿体無いおのれ魔術師と思ってたら本当に立った!全力で支援!
17 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[saga sage]:2010/11/17(水) 21:38:04.69 ID:hCRsnQAO
>>15
そっか
まぁ魔術サイドは科学みたいに組み合わせにこだわる人は少なそうだし別にいっかな
>>16
支援ありがとう、全ては小ネタスレでスレ立て進めてくれた奴のおかげだぜ……
続きをちょっとだけ投下。
18 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[saga sage]:2010/11/17(水) 21:43:21.41 ID:hCRsnQAO
幕間
どうしようもないほど絶対に、今すぐ求めていた訳じゃ無いけれど、でも、ほんの少しだけ、そうだったのかもしれない。
「……神裂じゃないか、おはよう。こんな朝早くに、あぁもしかして最大主教に何か用事か?
あの女はまだ朝の湯浴みをしてるところだ、会話するなら少し待つ必要があるな」
いやだがしかしやっぱり早計だったかも。
幾許かの後悔を胸にしながら、神裂火織はとりあえずの愛想笑いを、
長年の相方であるステイル・マグナスに浮かべてみせたりした。
胸中には後悔しかないというか、もう逃げ出したい気持ちでいっぱいだったりする。
そして彼なら、少しの嘘を混ぜた言葉を使ってもさほど難しくなく後で誤解を解けるだろうからこそ、神裂は逃げ場を無す。
嘘はつきたくないけど、やっぱりプライベートのお誘いをしようとなると、緊張するのだ。仕方がない。
「……神裂?」
「あっ、いえ、その、最大主教は別にどうでもいいんです。湯浴みで溺れようが、今は特に関係ありません」
「………………。」
ちょっとだけ眉を寄せられた。
やばい何を失敗したんだとか狼狽しはじめる聖人の前で、
咥えていた煙草をゆっくりと唇から離して灰を落としながら、彼は僅かに笑った。
それから、あぁ確かにどうでもいいなそんなこと、と同調してくれる、
ほんの少しだけ掠れ気味の聞き慣れた低音に神裂はそっと胸を撫で下ろした。
ありがとう最大主教、貴方を馬鹿にすれば話題が繋がるかもと、よく分からない感謝までする始末。
それほど切羽詰まってしまうくらいに、神裂火織は、ずっと前からステイル・マグナスに恋をしていた。
いつからなのかは分からない。ただ、気付いた時には好きだった。
彼の愛用する煙草の銘柄や、些細な仕種まで、全て脳裏に思い描いては布団の上でもだもだしてしまう程に好きだとは自覚している。
19 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[saga sage]:2010/11/17(水) 21:45:14.29 ID:hCRsnQAO
「……時に、あの、ステイル。今日、その、何か予定などあったりしますか?」
「ん……いや、別にこれといった用事はないな。なんでだい?」
あぁよかった。障害はひとつ減った。
安堵しながら次に言うつもりだった台詞を頭で繰り返し、閉じた咥内の舌の上で転がして、覚悟を決める。
少しだけ卑怯な気もするし、自分の恋心も痛むけど、大丈夫だ。この誘い方なら、大丈夫。恋は戦争だ。
「その、学園都市のインデックスに何かプレゼントでも送ろうと思うのですが、一緒に見繕いにいきませんか?」
「……あぁ、それは……いいね」
ステイル・マグナスは、インデックスに恋い焦がれている。
そして神裂は、その一途なところを含めて彼が好きで――だからこそ、報われてほしいと思っていた。
そこに自己犠牲や魔法名など関係なく、ただそれが自分にとっても幸せな絵だと理解していたからだ。
ゆえに、彼が記憶を失ってしまったインデックスと再び親しくなれるような協力は惜しまないし、辛いとも思わない。
(……嘘。少しだけ、辛いですね)
出来ることならば彼の背中を守るだけでなく、彼の心の支えにもなりたいと思う。
インデックスに羨望を覚える日は多々あるが、それでも共にしてきた時間の長さならば此方が勝ってるとか、なんとか。
無害なところでおかしな具合に張り合ったりするのは、せめてもの意地だったりするのだろう。きっと。
ステイルの恋が成就して幸せになってほしいという願いと、自分が彼を支えてあげたいという願い。
相反する二つの感情が、混ざり合う事なく優しい気持ちのままで胸に残っていられるのが、神裂火織という女性の人柄だった。
20 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[saga sage]:2010/11/17(水) 21:45:40.01 ID:hCRsnQAO
「じゃあ少し待っててくれるかい。外出の準備をしてくるから」
「煙草の補充ですか?」
「……神裂には適わないな」
そう苦笑して、一度自室へと戻る彼。
とりあえず。
待っててくれと、言われたから。
自分のお誘いのミッションは終了したのだと、漸く頭が理解しはじめてからは酷かった。乙女回路がフルスロットルで回りはじめる。
二人っきりでのお出かけは、デートなのか。なら、私と彼はこれからデートをするのか。
ショップの店員さんとかにカップルさんにはセールとかやってるんですよって言われたりして。
二人ではにかんだりする絵を無駄な現実味と共に妄想しはじめた頭を咄嗟に左右に打ちふるって頬を覆う。一人芝居なら演技派の神裂だった。
「……でぇと」
そういえば――あの面白い組み合わせな二人は、楽しんでいるのだろうか?
---
21 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/11/17(水) 23:22:12.39 ID:cB42Ip2o
>>17
小ネタスレでシェリーと聞いてはしゃいでたのは俺だwwよくやった俺。
ねーちんの相手がステイル……なんというガチ魔術サイド。わっふるわっふる
22 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/11/18(木) 05:08:17.15 ID:3dnb3sAO
ありそうでなかった俺得なわけよ
年相応に見えない四歳差の二人がかわいい
23 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[saga sage]:2010/11/18(木) 16:24:03.65 ID:KStrRIAO
>>21
なんだと……びっくりだ
科学サイドは他のスレに行けば満足出来るので、ここでは必要最低限しか出てきません。ステイルくんはマジイケメンだと思う
>>22
ありがとう、俺得でもある
そうか……そういや四歳差なのか……
少しだけ投下
24 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[saga sage]:2010/11/18(木) 16:24:31.54 ID:KStrRIAO
03
愛しい人と二人っきりでのお出かけが齎す喜びとかそういった感情は素晴らしいもので、
その興奮からついうっかりと出会う人々に自慢したりしてしまった自分はそこまで悪くないと思うのだけども、
どうしてだか酷く怒られてしまったのでその理由に頸を傾げているオルソラだった。
価値観の違いだろうか。
「なんでそうなるのよ……」
疲労感に襲われたのはシェリーだ。
自室から玄関までの道程でシスター・オルソラがご機嫌でしたよと六人に報告され、
ここのお店がいいわよとオススメを三人に教えられ、貴方たち付き合うことになったのと五人に尋ねられた。
物珍しそうだが同情的な視線を向けてきた女子寮メンバーの人数なんか、分かったものじゃない。
どういうことだと慌てて玄関まで行った先でほんわかと微笑みながら、帰宅したところを捕まったらしいアニェーゼ相手に、
「今日はシェリーさんとデートでございますのよ」と報告しているオルソラを見た時には、思わず実力行使(でこぴん2回)に出てしまった。
多分非はない、筈だ。
25 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[saga sage]:2010/11/18(木) 16:25:49.27 ID:KStrRIAO
「へぇ、デートですか」
「下手なこと言ったら怒るわよ、アニェーゼ」
「痛いのでございますよ……」
涙目で額を摩ってる馬鹿はほっといて、わざとらしく白い眼で此方を見てくる少女には釘を刺しておく。
分かってますよと笑いながら掌をひらひらさせるアニェーゼはどうやら徹夜だったらしく、
大きめな瞳の下にはうっすらとした隈が出来ていて眠そうだった。
昨晩の食堂で彼女が神裂から梅干しを分けてもらう姿を見たから、外出はそれ以降なのだろう。
不良シスターとは言うまい。“それ”を仕事とするのが必要悪の教会だから。
「あぁなんだ、夜に出てたのか」
「えぇ、ちょっと野暮用ですけど……呼び出されちまいまして」
「……お怪我などはなさいませんでしたか?」
復活したオルソラがアニェーゼの頬に触れる。
体調が悪ければ魔術を行使しようかというような心配の色を燈していたが、
アニェーゼの表情を見るかぎりでは本当に寝不足なだけの様子。
ならさっさと解放してやるのが一番だろうと、オルソラの頸根っこを掴んでアニェーゼから引き離してやった。
「眠いんだろう。ほら、さっさと部屋に戻って寝るといいわ」
「そうですね。あんまりシスター・オルソラを独占してると、シェリーに嫉妬されちまいますし」
「シェリーさんは嫉妬してるのでございますか?」
「ややこしくなるようなことを……!」
26 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[saga sage]:2010/11/18(木) 16:26:42.70 ID:KStrRIAO
んじゃ、楽しんできてくださいねー。
その一言だけなら可愛げがあるのに最後の言葉が物凄く余計だった。
小さくなっていくアニェーゼの背中に同性同士で嫉妬なんかする訳ないだろと思いつつも、
視線を自分よりもやや身長の低いオルソラに向けたらきらっきらした瞳で迎えうたれたので早々に戦線離脱した。
……なんなんだ、この反応は。嫉妬してほしいのか。そうだとしたら、何故。
彼女は神に仕えるシスターで、だからつまり、“そういうこと”はご法度の筈だ。
……いやいや、まさか。
「シェリーさん」
やんわりと掌を握られる。
それを、思わず払いのけた。
オルソラの瞳が丸くなり、それから宙を掻いた自分の手をそっと戻して、
けれども彼女は悲哀の含有される表情など浮かべる事はなかった。
そのことが、はからずともシェリーの罪悪感などを救い上げる。
気にしないでというような柔らかな微笑みはどうしても自分に向けられるには不釣り合いな感じがして気恥ずかしい。
思わず舌打ちしてから、オルソラと居るとき限定の癖になってしまったように指先で自分の髪の毛を掻き回す。
考えすぎだろう。そう解釈するのが、今後の付き合いを考えても一番平和だ。
「あー……悪いわね」
「いえいえ、此方こそ申し訳ないのでございますのよ。いきなり手を握ろうなんてして」
「少しびっくりしただけだ。だから、」
「さぁシェリーさん、お買い物に参りましょうか。
わたくしで宜しければ、シェリーさんのお洋服を見立てたいのでございますのよ」
「あぁもう、……好きにしなさい」
……いやいやいや、まさかね。
その言葉をもう一度だけ繰り返して、歓談の堪えない大通りへと向かう。
---
27 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/11/18(木) 17:25:01.84 ID:KStrRIAO
03じゃなくて02に訂正です、すいません
28 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/11/20(土) 14:18:04.25 ID:kpgnWUAo
未だかつてない俺得スレ。魔術サイドもっと流行れ。
29 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/11/21(日) 19:09:16.79 ID:Uj6l4W.o
超期待支援
30 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/11/21(日) 21:27:38.38 ID:PGRX/AQo
> ステイル・マグナス マグヌスだからな
続き待ってるからな
31 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[saga]:2010/11/22(月) 10:45:32.45 ID:1R7MOAAO
支援ありがとうございます
>>30
うわぁ……申し訳ないです
誤字とかあればどんどん突っ込んで下さい、お願いします
32 :
ageちゃったよ……
[saga sage]:2010/11/22(月) 10:50:51.36 ID:1R7MOAAO
キラキラとした過剰な装飾。近付く祭に浮かれる人々と、どことなく甘ったるい匂いを纏うショーウインド。
普段のゴスロリにコートを羽織ったシェリーとシスター服に暖かそうなケープを合わせたオルソラの組み合わせですら、
クリスマスの飾りで彩られた街の中で特別目立つという訳ではなかった。
この二人が人目を気にするのかという疑問はさておき、
ご機嫌な様子で魚のように人波を泳いでいくオルソラを見失わないように追いかけながら、シェリーはクリスマスの季節に街へと出向くのは何年振りかと思考していた。
基本的には面倒事が嫌いなシェリーだ。混雑に極力巻き込まれたくなくて、イベント時期は寮に篭りがちになる。
「シェリーさん、大きなツリーでございますのよ。綺麗でございますね……」
「あーそうね。電気代が掛かりそうだ」
「お正月には神裂さんにキモノを着せて頂こうと話していたのでございます」
「ふーん。あれは確か、胸が小さい方が映える衣服だったわね。チビっ子ども大歓喜ってことか」
「今年のツリーは何か“えこ”らしいのでございます。テレビで話してました」
「あぁ……たしか、あの都市の風力発電システムを借りたんだろ」
「あら、もしかしてキモノは胸が大きいと着れない衣服なのでございますか?」
「そしたら神裂が着れないだろ、って往来で自分の胸を揉むのはやめなさい!」
「まだ、学園都市は憎いですか?」
のらりくらりとオルソラの独特なテンポについていったシェリーだったが、唐突なその問い掛けには流石に息を呑んだ。
思わず視線を向ければ、自分よりも金貨二枚分ほど下の方にある彼女の瞳がまっすぐに此方を射抜いてくる。
普段のほんの少しだけ眠そうな優しさを含む双眸は、今はただ何かを見極めようとするかの如くだった。
33 :
ageちゃったよ……
[saga sage]:2010/11/22(月) 10:51:41.69 ID:1R7MOAAO
どうだろうか。憎くないといえば嘘だ。
親友を見殺しにした都市も、ついでにいえば彼を直接手にかけた騎士団のことも、いまだに憎んでいるし恨んでいる。
その感情は癒えないだろうと、二十年前の騒動の際に刻まれた古傷がじくりと疼くように存在を主張した気がした。
「……そう、だな」
ただその心の矛を再び学園都市に向けることは、今はない気がした。
少なくとも、あのツンツン頭の少年が奔走することだけは分かっている。
またアイツの相手をするのは嫌だし、彼が叫んだ言葉は自分の心を揺さぶるには強すぎるものだった。
そして、それ以上あの騒動で見てしまった光景が離れられなかったから。
魔術側の親友を助けようとして圧倒的な暴力へと立ち向かった、科学の少女。
風斬氷華の姿を。
「二十年前の奴らは憎いが、今の奴らは――まぁ、違うのかしら」
もし機会があれば風斬氷華と話してみたいなんて、いまさらながらに思う。
彼女の親友が無知だった頃の自分でなく魔術に博識な禁書目録であったことも、今思えば安心出来る要素だった。
博識な彼女なら、たとえ風斬が魔術に興味を惹かれたところで絶対に止めてくれるはずだ。
自分達が行きつけなかった未来に、彼女達は行くことが出来るかもしれない。
エリスの犠牲を、教訓にして―――
34 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[saga sage]:2010/11/22(月) 10:54:51.76 ID:1R7MOAAO
「――シェリーさん」
唐突にオルソラが名前を呼ぶ声がした。
気付いた時には少しだけあった互いの距離を彼女に詰められ、オルソラの両手が羽織るだけだった私のコートを掻き寄せた。
冷たい空気に晒されていた身体がほんわりと暖かくなる。それはどこか、抱擁に似ていた。
「大丈夫で、ございますか?」
言葉数少なく、囁くように尋ねられる。
彼女が誘導してくれていたのか、気付けば通りから少し外れた路地裏の入口のような場所に立っていた。
本当に此方を心配するような、あまつさえ問い掛けた自分を責めるような後悔の色を濃くみせる彼女の表情に、ほんの一瞬だけ抱いた業火が燻っていく。
「あぁ……もう、大丈夫よ」
無意識に手を伸ばし、オルソラに触れてみた。
ふと、彼女は自分にとって何だろうと考える。親友というにはまだ少し遠く、知人と呼ぶには広げた掌一個分ほどは近い。
だから先程、身勝手に振りほどいてしまったはずの掌がいとも容易く届くのだろう。
「……、……そうでございますか」
「うん」
「じゃあ、とりあえず、広場にでも行きましょうか。楽しみでございます」
「何処に行くのかとか、明確なのは決まってないのね……」
「それなら、神裂さんのキモノは特殊なものだったりするのでしょうか?」
「どこまで話戻してるんだよ」
抱き合うよりも遠く、指切りよりも少しだけ近い。多分その距離を、友人と呼ぶ。
---
35 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/11/22(月) 18:59:24.66 ID:FTRIIQAO
oh…なんという俺得スレ。
オルソラは絶対に攻め。異論は認める
36 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/11/22(月) 20:40:24.93 ID:0jYq9h.o
>>35
お前何言ってんだ……?
異論なんてある訳ねぇだろ。オルソラは攻め。
しかし会話のテンポが独特でいいなww続き待ってる頑張れ
>>1
37 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/11/24(水) 02:50:53.61 ID:V3lw0gAO
オルソラがヤンデレ化したら実は禁書の中で一番怖い気がする。
昔読んだ小説の「観念の怪物」「母性の化け物」みたいなフレーズが浮かぶ。
38 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/11/24(水) 04:10:26.25 ID:bNMeks6o
>>37
「母性の化け物」
何その鬼子母神
39 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/11/28(日) 16:17:58.93 ID:SwgvzOIo
私待つわ〜
40 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/11/29(月) 01:35:16.03 ID:ybReUQAO
すまん……どうしても次が書き終わらなくて、
>>37
のヤンデレオルソラネタとかに逃避してたらこんなに時間が空いてしまった
ぶっちゃけヤンデレオルソラも書きたいけど、まぁ話からかなり逸れるしネタとして暖めておくことにするぜー
少なくとも今週中には書き上がるといいなぁとか
>>39
も待っててくれてありがとな、オレがんばる超がんばる
41 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/11/29(月) 02:18:32.96 ID:4fUwwOgo
がんばれ
超がんばれ
42 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/11/30(火) 19:32:03.23 ID:8D.sTkgo
ヤンデレオルソラも見てみたいな。言われてみれば禁書イチ似合う気がする。
息抜きに超短編投下したってオッケーでございますのよ。
43 :
◆28XZZEZfUc
[sage]:2010/12/03(金) 13:32:33.00 ID:sdeXkIAO
支援ありがとー
やっぱり宣言した方が焦りが出て書く速度が増す気がすんな
あと取り敢えず酉とか付けてみた、これで大丈夫だよなー?
取り敢えず投下
44 :
◆28XZZEZfUc
[sage]:2010/12/03(金) 13:33:28.48 ID:sdeXkIAO
赤と緑で溢れた広場に脚を踏み入れると、沢山の幸福そうな人々の笑顔があった。
それだけで幸せだけれど、今日ばかりはこの人にも笑ってほしい――そう思いながらオルソラ自身の幸せ度数は絶好調だ。
多分この場にいる全ての人より勝ってると確信しながら、その理由である彼女の方へと大輪の笑顔を向けてみせる。
シェリーは少しだけ呆れたような表情を浮かべてから、息をついた。
勿論、そのジェスチャーの真意をオルソラが理解する事はなかったが。
(本気で嫌がらないシェリーさんが、悪いのでございますよ)
それが全てという訳でもないが、なんだかんだと文句を言いつつも付き合ってくれる彼女に甘えて、我が儘を言うのが楽しいのも本心だ。
幸せすぎて頬が緩み、いつもとは違う方向性でニコニコしてしまうのが分かる。
困らせたい訳ではないけれど、ほんの少しだけ引っ張り回したい。それがオルソラのちょっとした欲望だった。
「そういえばシェリーさんは、朝食はまだでございましたよね?」
「あぁ。確かにそろそろ、少しくらい何か食べてぇな」
「クレープとかはいかがでしょうか。物凄くキラキラしているのでございます」
「学園都市から出張って……あの変な缶ジュースとかもか……?」
以前の出来事に何か関係があるのか、ややゾッとした表情を浮かべる彼女の腕を引いて屋台に近付いていく。
普通のものからゲテモノまで沢山のメニューが書かれた紙から視線をそっと向けてみれば、彼女は少しだけ気難しそうな表情をしていた。
野菜などを挟む軽食としてのクレープもあるのでちょうどいいと思ったが、気に食わないだろうかと問い掛けようとして。
45 :
◆28XZZEZfUc
[sage]:2010/12/03(金) 13:34:25.39 ID:sdeXkIAO
「私はコレにするけど、アンタは?」
どうやら割と真剣に悩んでいただけだったらしい。
どちらにしようかなとでも言うように指先が二つの間で軽く彷徨ってから、
最終的にレタスにハムとチーズのクレープへと決めたようだった。
「えっ、ぁ……ではこの、スペシャル苺デラックスにしましょうか」
「……ちゃんと一人で全部食べろよ」
そうぼやいたのは、オルソラの指差した写真のクレープがなかなかヘビィなものだったからだ。
さっさと注文しだす彼女に、それなりにお腹が減っていたのだろうと考えながら暇潰し程度にメニューを見ていると、ふと視線がひとつの飲み物を捉える。
なんだろう、分からないけど物凄く惹かれる。
ワクワクしながら顔を近付かせると、それは三文字+三文字の単語が組み合わせられた言葉の缶ジュースだった。
普通では考えられないような組み合わせ、しかし料理好きなオルソラにとっては興味を擽られるだけだったらしい。
「……あ、スペシャル苺デラックスと、そのいちごおでんという飲み物を、ひとつずつ頂きたいのでございますのよ」
+
46 :
◆28XZZEZfUc
[sage]:2010/12/03(金) 13:36:37.22 ID:sdeXkIAO
スペシャルなのかデラックスなのかはっきりしないイチゴクレープと爆弾のような飲み物を受け取ったオルソラは、シェリーが先に座っているベンチの隣に腰掛けた。
少し距離が近いのは寒いからということにして、無心でクレープを食べている彼女を観察してみると、
ライオンのような風貌とは裏腹に割と行儀良く食べていたりして、ちょっとだけ可愛らしい。
どうやらチーズが伸びるのが少しだけ食べにくいようだとか思っていたら、
視線に気付いたのか彼女の瞳が不思議そうに此方を見詰めてから、
暖を取るために両手で包んでいた缶ジュースを発見して唇の端を引き攣らせた。
「学園都市には面白い食べ物があるのでございますね」
「いや、それはレベルが違うでしょ……飲み切れるの?」
「大丈夫でございますよ」
安請け合いしながら生クリームと苺がたっぷりのクレープに端っこから齧り付く。
修道女としてはあまり褒められたことではないかもしれないが、久々に外で食べた甘味は至福の一言だった。
学園都市製の器具が凄いのか、クレープ生地だけでも充分に美味しくて満足してしまう。
自分でもこの味が出せたらいいのになと思うのは、お菓子作りも好きだからに違いない。
「美味しいですねぇ」
思わずそんな感想を呟くと、隣で普通の紅茶片手にクレープを食べていた彼女が少しだけ眉を寄せた。
同意はしてくれないようで、唸りながら頸を傾げたりしている。
47 :
◆28XZZEZfUc
[sage]:2010/12/03(金) 13:37:16.14 ID:sdeXkIAO
「あらあら、もしかしてシェリーさんは気に入りませんでしたか?」
「いや……ねぇ、アンタのそれも一口くれない?」
「暖かくて甘くて、面白い味なのでございますのよ。さぁどうぞ」
「違う、クレープの方よ。だからこの不味そうな缶ジュースは引っ込めなさい」
言いながらシェリーは此方に顔を近付けて、僅かに唇を開く。
自分のクレープと飲み物で手が塞がっているので、食べさせてほしいようだ。
けれどオルソラはしばし硬直する。
僅かに上目遣いで口を開きながら自分を見詰めてくる想い人に対して、ドキッとしてしまうのは普通のことだろう。
いや、想い人が同性な時点で微妙に普通から逸れてしまうのだが、オルソラの心拍数は此処にきて高まりつつあった。
そんな彼女に対してシェリーは頸を傾げたり、「まだ?」と尋ねてきたり、いつもより幼気な反応で此方を窺ってくる。
(嗚呼、もしかしたら、シェリーさんは――)
返事が出来ないまま、ぎこちなく彼女の口許へとクレープを近付けた。
シェリーは此方の狼狽になんか気付かないではむりとクレープを食べると、
生クリームや苺の甘みを咀嚼して飲み込んでから、なんだと呟く。
そしてオルソラは確信した。
「オルソラが作ったクレープの方が美味しいじゃない。期待ハズレだな」
(――わたくしをドキドキさせて、殺そうとしてるのかもしれません)
だって彼女の一言で、こんなにも胸が痛くて苦しくなるのだから。
---
48 :
◆28XZZEZfUc
[sage]:2010/12/03(金) 13:39:27.89 ID:sdeXkIAO
今日はここまで
このスレはオルソラと一緒にシェリーにドキドキしたり愛でたりする為にあります
あと全く筋に関係ない短編とか投下しても大丈夫なら、いつかやるかもとか
他にも色々出したいキャラが多いけど魔術サイドの人は多過ぎるから、短編で出したりとかな
見てる奴らがネタとか呟いてくれたら全力で拾うかもしんないし、遠慮なく言ってくれ
んじゃ、最低でも来週以内にー
49 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/12/03(金) 19:40:04.32 ID:ZLwmoYMo
乙!
>>1
は俺をwwktkさせて殺そうとしてるのかもしれません
原作で救われぬシェリーさんに救いの手を、的な大義の下にオルソラと一緒にシェリーにハァハァするのが本編だとして、
ヤンデレ・アクィナス とか、ドSオルソラ(エロ)とか、猫耳シェリーとか、学園パラレルとか、ロミオとジュリエットパラレルとか、新婚旅行After(エロ)とか、
そんな短編が繰り広げられるんですね、分かります
50 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/12/06(月) 03:48:13.96 ID:dJa4i/.o
きてたー!シェリーエロいよシェリー!続きも期待してるんだよ!
51 :
◆28XZZEZfUc
[sage saga]:2010/12/06(月) 14:20:18.69 ID:V5nmo.AO
>>49
がエロを所望しているらしいことが分かったから麦琴を読み込んできたぜら、やっぱりあの人は凄いってことが分かった
金髪褐色ババァとかエロくない訳がねーよな、皆もっとシェリー書けばいいと思うよ
とりあえず今回は本編に全然関係ない短編を投下。本当に何も関係ないから、別にこれは読まなくても大丈夫。俺の趣味
52 :
きみにしかきこえない
◆28XZZEZfUc
[sage saga]:2010/12/06(月) 14:22:21.17 ID:V5nmo.AO
一日目の真夜中、識らない街の淋しい匂いがする部屋で孤独に眼を醒ました。
それからすぐ二日目の朝と一緒に犯人が登場して、両腕と頸筋の枷の具合をチェックしながら、
貴方を監禁させていただきますので服を脱いでくださいと悪びれもせずほざいた。
更に三日目の午後に、殊勝に欲しいものは有りませんかとリクエストを訊くので、
鑿や鉛筆などは武器になるので不可だろうと最初から決め付けて適当に雑誌と答えたら、
四日目を迎える頃には風俗から経済専門までよりどりみどりの紙の束がベッドの横に積みあがっていて、
その中に混じっていた料理本に啓発されたらしく、五日目はおやつにホットケーキまで焼いたりしていた。
六日目に雨が強かに降って、寝具しか与えられてなかった私は喉を傷めて噎せた。
件の誘拐犯が漢方だと二粒の錠剤を手渡してきたのは―――だからきっと、七日目の事だったのだろう。
馬鹿みたいに素直に薬物を飲みこんで横になった瞬間、たちまち瞼の裏で脳味噌がぐるぐると踊りだした。
あ、と、呻く暇もなく私は、どうなったんだか、後はもう記憶の密度もただ淡い。
ごめんなさいという言葉と、こちらの掌に遠慮の仕草で絡まってきた指と、
その両方が猥雑に震えていたのも夢現の境界線が見せた錯覚かもしれなかった。
しかし、唐突に闇雲に始まった失墜感で叫びだしそうになった唇を、真上から獣のように熱烈に舌で掻きまわされたとき、
リアルな快美が凄味を伴い脳天までズクリと抜けていった。
この刹那の恐怖を誰と共有しえるだろう。
危険すぎて鳥肌がたち、深刻な眩暈の増長させていく中で、鎖を短く調節しようとする掌は殆ど宣告的だった。
奥行きの狂ったような視界が偶然に、現在進行形で床に修道着を投げ捨てて、
性急な様子で肌を露にさせていく元聖職者で現犯罪者な容貌に焦点を絞る。
こんなときも金髪のその顔は美麗さより愛嬌と慈母の印象の方が濃くて、
アンタにこういう薄暗ぇ犯罪は似合わねぇよと茶化してやったら、酸欠の影響で息があがった。
53 :
きみにしかきこえない
◆28XZZEZfUc
[sage saga]:2010/12/06(月) 14:23:12.67 ID:V5nmo.AO
「は、く……ぅ……」
どろっどろになるまで、耳を、肌を、皮膚を、谷間を、なでられてなめられて。
「シェリーさん。わたくし、ちゃんと貴方を気持ちよくできていますか?」
その上で怖々と耳朶に吐かれたこの台詞は、流石に失笑してしまった。
「……嬲ってくれるわね」
「そんなつもりはございませんのよ。
ただ、経験がないので口で言っていただかないと分からないのでございます……
それにこれは、コミュニケーションの一環というか……分かりませんか?」
「わかんねぇよ」
「そうですよねぇ」
私につっぱねられてちょっと眉を下げる年相応な表情は随分と幼いのに、
一方で胸や下腹部を弄りたおす両手の素行には可愛げなどカケラもない。
内腿やら頭やらが刺激に犯されて反応している現状は皮肉な程に認識できているが、
募りつづける生理的な欲ばかりはどうしようもなかった。臍を咬まれてとうとう眦に涙までが滲む。
「あ、ご、ごめんなさい、もしかして痛かったですか……?」
「馬鹿」
咄嗟に彼女の脇腹を軽く膝で蹴りとばした。
衝撃で腰骨が熱く痺れるのはやりすごして、それなりに濡れてきてしまっている事実を瞳が被った涙の膜の向こう側に見る。何だか全てが諦めの境地だった。
54 :
きみにしかきこえない
◆28XZZEZfUc
[sage saga]:2010/12/06(月) 14:25:36.86 ID:V5nmo.AO
「正直……悪くない」
「……よかった」
「どうしてはにかむんだよ。オルソラも、大概おかしな趣味だな。
私なんか誘拐して、玩具代わりにして、何が面白いんだか」
それはずっと形を変えて、婉曲に直裁に、この七日の猶予の間にぶつけてきた核心的な問だ。
「……答えないなら、もう二度と訊かないわよ」
ふつり、と、予想した通り沈黙するも年下の加害者の口は重い。
何を。
腹に―――溜め込んでいるのか。
「ラストだ。私を、どうしたいの」
「……」
見詰める私の視線の端で一度だけゆっくりと瞳が瞬き、それでも、望みや希みが都合よくその唇から零れることは無かった。
ただ私は、物哀しいキスをされた。
熱っぽい心臓の裏側を、理解したようでもあり、決別したようでもあり、
二人の距離が元に戻ってみれば、其処には一つ既視感めいた疼きが残った。
「……好きにしなさい」
結局のところ、彼女は。
甘えたいだけなのかもしれなかった。
---
55 :
◆28XZZEZfUc
[sage saga]:2010/12/06(月) 14:28:16.23 ID:V5nmo.AO
でもあれだ、エロって難しいよな
オルソラって18歳でシェリーって20代後半なんだよなぁっていう妄想。あんまり年の差とか気にならないけど、突き詰めてみるとなんかムラムラしてきてやった
あ、ヤンデレはもうちょっと待ってね。
因みにタイトルは乙一から。かなり前に読んだこともあるような気がしたけど、内容は全然違うからまぁいいかと
あの人の本のタイトルが、なんか好きだ
んじゃ、最低でも一週間くらい後にまた
56 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/12/08(水) 23:00:24.27 ID:QlgvGR6o
追いついたー。乙。
あんま人いないのか?俺は見てるぞ!
57 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/12/12(日) 14:56:22.15 ID:4AJtabAo
乙
無理に難しい言葉使わなくてもいいよ
58 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/12/14(火) 00:27:08.07 ID:VoSqD2ko
今日明日あたりに来ないかなー
59 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/12/16(木) 00:36:01.61 ID:NKuiNZ6o
>>57
官能はどストレートな表現より無駄に難しい表現使ったほうがいいと思わないか?
60 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/12/16(木) 00:44:55.85 ID:RRb7rOUo
>>59
識る→知るでいいんじゃね?
ってことが言いたいんだと思う
61 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/12/16(木) 01:19:16.82 ID:bi8dJXAo
特に無理して使ってるとは思わなかったけどなー
わざと"重く"するためにというかなんというか「そういう表現」なんだし
俺得カプ補正を差し引いてもこういう書き方の文章は割りと好き
あーでも例えば黒子×美琴でこの雰囲気のを読みたいかと言われれば違うかもしんない
何が言いたいかっていうと、あれ何が言いたいのか分からないごめん
62 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/12/19(日) 22:22:57.01 ID:NSMsjCAo
>>1
はきっとノロかなんかで寝込んでるだけなんだ。きっとそうだ。
63 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/12/21(火) 01:33:22.14 ID:dxE1dnAo
シェリーかわいいよシェリー
64 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/12/31(金) 21:54:38.12 ID:B03vuJwo
来年もずっと舞ってる
65 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2011/01/15(土) 21:22:24.81 ID:Dv8OncYIo
今年も舞ってる
SS・小説スレは移転しました
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/
Mobile
http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/
66 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2011/01/15(土) 21:24:53.34 ID:rcDPbzzRo
俺も舞ってる
生存報告と移転だけでも頼むよ
>>1
SS・小説スレは移転しました
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/
Mobile
http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/
67 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2011/02/14(月) 13:01:50.03 ID:WFLDVBDIO
俺はまだ待ってるんだけどな、このままHTMLと化してしまうんだろうか…
68 :
lain.
★
[sage]:2011/02/19(土) 00:52:24.34 ID:???
SSスレッドは、SS速報VIP【
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/
】へ移転することになりました。
それに伴いこちらのスレッドをHTML化させて頂きます。
スレッドを立て直す際はSS速報VIPへお願いします。
41.13 KB
[ Aramaki★
クオリティの高いサービスを貴方に
VIPService!]
スポンサードリンク
Check
Tweet
荒巻@中の人 ★
VIP(Powered By VIP Service)
read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By
http://www.toshinari.net/
@Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)