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唯「まるでパンドラボックスだね」 - 製作速報VIP(クリエイター) 過去ログ倉庫

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1 : ◆wr8kfImLno [sage]:2010/11/26(金) 00:19:08.46 ID:KmUCD6DO
ここは現行けいおん雑談(カルーア)スレで行われる企画の投下場所です
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713798788/

【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713788018/

ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/

2 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/26(金) 21:12:02.77 ID:KmUCD6DO
ageときます
3 : ◆HaQe1m0Wgk :2010/11/26(金) 23:57:41.53 ID:2cn/I2DO
日付が変わったら投下はじめます。
4 : ◆HaQe1m0Wgk :2010/11/27(土) 00:01:46.08 ID:jutbt2DO
憂「お姉ちゃんあーん」

唯「あーん!」モグモグ

憂「美味しい?」

唯「おいしーっ!」

憂「みんな帰っちゃったね〜」

唯「うん!お誕生日会楽しかった〜」

憂「私も楽しかったよ!あ、そうだ。みんなから貰った誕生日プレゼント開けよ?」

唯「うん!開けた〜い」

憂「そっかあ〜じゃあ私が開けてあげるね」

唯「えへへ〜ありがとぉ〜」

憂「和ちゃんのプレゼントから開けるね!」
5 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:05:21.48 ID:jutbt2DO
唯「楽しみだな〜」

憂「和ちゃんのプレゼントは……DSだよ!」

唯「DSか……」

憂「あ、箱の中に手紙も入ってるよ!」

唯「よ、読んで?」

憂「うん!えっと。誕生日おめでとう唯、私はもう使わないから唯にこのDSあげるね。だって!よかったね!」

唯「うん……」

憂「次は梓ちゃんのプレゼント開けるね〜」
6 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/27(土) 00:08:09.89 ID:jutbt2DO
唯「あずにゃんのプレゼント何かな〜?」

憂「猫の絵が書かれてるピックだよ〜」

唯「ピック……」

憂「梓ちゃん猫の絵手書きしたのかなあ?上手だね!」

唯「う、うん……次のプレゼント開けて……?」

憂「うん!次は澪さんのプレゼント開けるね〜」
7 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:12:09.55 ID:jutbt2DO
唯「澪ちゃんのプレゼントはなあに?」

憂「シャーペンだよ〜可愛い絵柄のシャーペンだね!」

唯「シャーペンか……そっかシャーペンか……」

憂「これを使って沢山勉強するんだぞって手紙に書いてあるよ。よかったね〜」

唯「…………」

憂「律さんの誕生日プレゼントも開けるね!」

唯「うん……」

憂「わぁ!お姉ちゃん見て!可愛いマグカップだね〜」

唯「本当……可愛いね」
8 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/27(土) 00:15:19.68 ID:jutbt2DO
憂「次は紬さんのプレゼントだよ〜」

唯「…………」

憂「お姉ちゃん!紬さんのプレゼントはブレスレットだよ〜」

唯「綺麗なブレスレットだね……憂、あのね?」

憂「どうしたの?」

唯「私が貰ったプレゼント。全部、憂にあげるよ」

憂「え……そんな。貰えないよ!」

唯「憂にあげる……全部、ぜーんぶ憂にあげるよ」

憂「も、貰えないよっ!あのね私もお姉ちゃんにプレゼントあるんだよ!」

唯「…………」

憂「ほら、手袋!可愛いでしょー?」

唯「……いらない」ウルウル
9 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/27(土) 00:20:56.76 ID:jutbt2DO
憂「……え?」

唯「いらない!今貰ったプレゼント全部いらない!」ウルウル

憂「お姉ちゃん……」

唯「ブレスレットもDSも全部いらない……手袋もいらない!いらないよっ!ううっ……ぐすっ」ポロポロ

憂「…………」

唯「いらないよぉ……私、こんなの使えないよ……」ポロポロ

憂「お姉ちゃん……」

唯「いらない……全部いらないよ。何で……みんな手を使う物ばかりプレゼントするの?私……両手無いんだよ?」ドサッ

唯「痛っ……起き上がれないよ……憂」


END
10 : ◆HaQe1m0Wgk :2010/11/27(土) 00:25:04.77 ID:jutbt2DO
かなり短いですが終わりです。
唯ちゃんお誕生日おめでとう。ありがとうございました。
11 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:25:08.97 ID:OIjLqYAO
一番手乙
12 : ◆ocw3brVKmU [sage]:2010/11/27(土) 00:25:30.74 ID:VQScLS6o
唯ちゃん誕生日おめでとう!
1番手さんおつです。
2番手投下します。
13 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:25:58.55 ID:VQScLS6o
唯「うーいー!」

憂「なに? お姉ちゃん」

唯「ねぇ、明日さあ……」チラッチラッ

憂「明日? 誕生日のこと?」

唯「えへへ……うん」

憂「あはは、誕生日プレゼントなら、もう用意してるよー」

唯「ほんとっ?! やったあ!」

唯「なにかなー……、なにかなーっ……」

憂「ふふ、明日になってからのお楽しみだよー……」
14 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:26:25.29 ID:VQScLS6o
よくじつ!

憂「お姉ちゃん、16歳の誕生日おめでとー!」

唯「ありがとーういーっ!」

憂「よいしょっ……と。これ、誕生日プレゼントだよっ……」


どすんっ!


憂「ふう……」

唯「わ、おっきい箱……」

憂「家の中でこっそり作ってたんだよ」

唯「え? 箱を?」

憂「うん、お姉ちゃんへのプレゼントだから、気合いいれちゃった!」
15 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:26:56.89 ID:VQScLS6o
唯「あ、ありがと……中はなにが入ってるのかな?」

憂「なにも入ってないよ」

唯「へ?」

憂「お姉ちゃん、今日から16歳でしょ?」

唯「うん」

憂「16歳の女の子、つまり……」

唯「ごくり……」
16 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:27:27.98 ID:VQScLS6o
憂「結婚できるんだよ!」

唯「おお!」

憂「それで、わたしはお姉ちゃんが大好きだから、結婚なんて絶対させたくないの」

唯「う、うん。彼氏とかもいないしね」

憂「いちゃいけないよ」

唯「ええー……」

憂「どこの馬の骨かもわからない人に、お姉ちゃんを渡せないよ!」

唯「じゃあ、どんな人ならいいの?」

憂「そりゃあ、料理が上手くて、お姉ちゃんのお世話をしっかりしてくれて、優しい人だよ」

唯「まさにういだね!」
17 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:28:25.36 ID:VQScLS6o
憂「でもわたしたちは結婚できないよ、だって生まれた時から籍いっしょだし」

唯「あれっ、わたしたちもう事実婚状態?」

憂「過言ではないよ」

唯「ういはわたしの妹であり、お嫁さんだったんだね……!」

憂「でね、お姉ちゃんが将来誰かと結婚しちゃったら、籍移さなきゃいけないじゃない」

唯「苗字変わるしね」

憂「そのときがわたしとお姉ちゃんの離婚するときなんだよ」

唯「なんとっ!」
18 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:28:54.17 ID:VQScLS6o
憂「だからお姉ちゃん、お姉ちゃんを箱入りお姉ちゃんにしたいの!」

唯「なるほど、任せてっ! ういっ!」


もぞもぞ……


唯「おぉ……なかなか快適空間ですなぁ……」

憂「お姉ちゃんが入る箱だからね、がんばったんだー」

唯「ういおいでー」

憂「えへへ……」

唯「いいこいいこ」ナデナデ

憂「頑張ったかいがあるよー……えへー」
19 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:29:28.84 ID:VQScLS6o
唯「ねーういー。それで、箱に入ってどうすればいいの?」

憂「うん。閉じ込めるから、ちょっと奥にはいってて」

唯「へ?」

憂「よいしょっと……」ジャキッ

唯「そ、それなに……」

憂「インパクトドライバー」

唯「い、いん……へっ」


バルルルルルルルルッ!!


唯『いやああああこわいいいいっ!!』

憂「ふた閉めるだけだから、大丈夫だよ」
20 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:29:55.39 ID:VQScLS6o
バルルルルルルルルルッ!!!


唯『そ、それもっと優しく出来ないのお!?』

憂「我慢してね……」


バルバルバルバルバルッ!!


唯『ちょ、ちょっと……ほんとに出れないじゃん!』

憂「閉じ込めてるからね」


バルッ!バルバルバルルルルッ!!


憂「……もう終わりだよ、お姉ちゃん」
21 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:30:59.93 ID:VQScLS6o
唯『く、暗いよお……』

憂「今電気つけるね」パチッ

唯『す、すごい……ついた』

憂「LEDだからあんまり熱くならないと思うけど……、暑苦しくなったらいってね」

唯『うん、わかったよ……』

憂「あ、ちゃんとモーターとキャタピラで動けるようになってるから、階段も降りれるし、好きなところにいけるよ?」

唯『えっ、ほんと?』

憂「うん。コントローラーもあるでしょ?」
22 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:31:48.96 ID:VQScLS6o
唯『あ、これかな? ……ゲームのコントローラーみたいだけど、コレで動くの?』

憂「左側のアナログスティックを前に倒してみて」

唯『うん、えいっ』カチャッ


ぐうんっ


唯『わっ』よろっ

憂「いきなりスピード出すと慣性でよろけちゃうから、気をつけてね」
23 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:31:50.15 ID:pOhR37so
バルルて
バオーかよ
24 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:32:25.36 ID:VQScLS6o
唯『すごい!すごいよ!外の様子も画面に映ってるし!』

憂「カメラでね、ボタン押したら録画も出来るんだよー」

唯『えっ、ほんと?! どれどれ……』●REC

唯『すごい!カメラの角度まで変えられるよ!』ウィンウィン

憂「やっ……お姉ちゃんたらどこ撮ってるのっ……///」ばっ

唯『でへへー、いいでわないかー、いいでわないかー』ウィーン

憂「もう///」
25 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:33:24.84 ID:VQScLS6o
こうして平沢唯の箱入り生活が始まった。
妹からプレゼントされた箱は素晴らしい出来で、日常生活に全く支障をきたさなかった。
用を足すときも入浴時も、箱から出ずに苦労なく済ませることが出来るのだ。

平沢唯が箱入り生活を始めて一ヶ月が過ぎた頃。
周りからも「平沢唯は箱入り娘である」という認識が定着しており、驚かれること、奇異の眼を向けられることも少なくなった。

彼女のギターであるギー太は箱の中にあり、部活動もいつも通り続けていた。
そんなある日の部室。


律「よう、唯、遅かったな」

澪「今日もその箱、いい感じだな」

唯『えへへー、憂が作ってくれた世界で一つだけの箱だからねー』

紬「……唯ちゃん、あのね」

唯『なあに? ムギちゃん』

紬「えっと……お父様から教えてもらったことなんだけど……」
26 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:34:30.25 ID:VQScLS6o
「箱入り娘」、広義では、家の中など、極力他人と接触を持たせずに育てられた娘のことである、しかし。
比喩でなく、実際にそれを実施している女子高生がいる。
この驚くべき事実に、メディアが食らいつかないわけがない。

紬は唯にマスコミの魔の手が忍び寄っていることを伝えた。
また、その唯の乗っている箱、通称「唯箱」――平沢唯が搭乗していること、世界に唯一の箱であることから名付けられたらしい――を、商業及び軍事利用できないか、と大企業まで動き出しているらしいのだ。

もちろんその大企業とは……。


紬「あのね、唯ちゃん。残念だけどこれからしばらく、マスコミから避けなくちゃいけないとても辛い日々が待ってると思うの」

唯『えぇ……いやだなぁ……』

紬「だからね、しばらくわたしの家で匿ってあげる!」

唯『ほ、ほんと!?』
27 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:35:05.30 ID:VQScLS6o
こうして唯はしばらくの間、琴吹家にお世話になることになった。
唯箱の開発者、憂も共に琴吹家に滞在することを条件に、それを許した。


唯『ういぃ……不安だねえ……』

憂「大丈夫だよ、紬さんもわたしたちのこと守ってくれるみたいだしね」

紬「……そうよ唯ちゃん、安心して!」

憂「それに、お姉ちゃんの箱に、ちゃんと敵を撃退するためのアタッチメントつけたから……」

紬「っ?!」

唯『うん……怪しい人が近づいたら、目標をセンターに入れてスイッチ……だよね……』
28 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:35:37.35 ID:VQScLS6o
紬「ちょ、ちょっと」

憂「どうしたんですか?紬さん」

紬「その撃退用のアタッチメントって……?」

憂「ちょっとした電気ショックですよ。お姉ちゃん、そこの木に向けてやってみて」


憂は紬のことを警戒していた。
保護すると言って、わたしたちのことを父の企業に売るのではないかと、そう父から命令されているのではないかと疑っていた。
ならば、と牽制することにしたのだ、自分の開発した外敵撃退用装置、神の雷(ラブリーシスター・サンダー)の威力を示すことで。
29 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:36:07.84 ID:VQScLS6o
唯『ほいほい、目標をセンターに入れて、スイッチ!』


唯が操縦桿のトリガーを引いた瞬間、電撃の鞭が耳を裂くようなけたたましい音を立てながら白樺の木に叩きつけられ、炎上した。


紬「えっ……?」

唯『す、すごい……』

憂「あれ……?」


めらめら。
めらめらめらめら。
30 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:36:39.70 ID:VQScLS6o
勢い良く燃える琴吹家の白樺の木。勢い良く火が燃え移っていく琴吹家の私有林。
惨劇、だった。

唯は戸惑った。己が引き金を引いた装置がこんな事態を引き起こすなんて。
憂は驚嘆した。己の開発した装置が、これほどの威力を秘めていたなんて。
紬は焦燥した。己の友人たちが父の土地を焼き払っただなんて、どう説明すればいいのだろう。

紬「とっ、とにかく! 消防車呼ばなきゃ!」

憂「っ!」

唯『だ、ダメだよムギちゃん!わたしがつかまっちゃうよぉ!』

紬「で、でも、全部燃えちゃうっ、このままじゃどんどん燃え広がって――」

紬がそういいながら携帯電話を取り出し、電話帳に登録されているのだろう緊急時用のダイヤルに電話をかけようとした、そのとき――、

紬「きゃあっ!」

――再び、この惨劇を引き起こした雷光が迸った。
31 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:37:31.82 ID:VQScLS6o
紬の持つ携帯電話を掠めるような軌道で放たれた神の雷は、紬の右腕に感電時独特の生々しい電流斑を残し、目標である携帯電話を完膚なきまでに破壊した。

紬「うぅ……いたぃい……」

唯『ふぇ……、どう、どうして……、わたしじゃない……ムギちゃぁん……うえぇん……』

憂「ハァ……ハァ……!! お姉ちゃん……安心して……!!」

そう、神の雷の引き金を再度引いたのは、平沢憂。遠隔操作で彼女にも神の雷を発動させることが出来るのだ。
人に向けて装置……いや、兵器の引き金を引いたことで、明らかに興奮している。

燃え盛る木々を背景に、燃え上がる狂気を押さえつけられずに、彼女はもう一度、引き金を引いた。
目標は琴吹紬、再度彼女に向けて神の雷が襲い掛かる。標的を絶望させるに十分すぎるほどのスピードで、金属製の腕が走る。

そして、地面に垂直に突き刺さった。
32 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:38:17.40 ID:VQScLS6o

電光石火で現れた琴吹家執事長、斉藤が神の雷を叩き落したのである。

斉藤「お待たせしました……。紬お嬢様」

紬「さ、斉藤!」

斉藤「ご安心ください、もう大丈夫でございます」

憂「くっ……」

突然の出来事に焦燥した憂は何度も神の雷を再起動し、斉藤を襲わせた。
しかし彼は絶縁性の分厚い手袋をはめており、雷撃は全て叩き落され、遂にはその怪力で根本から引き千切られてしまった。
33 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:38:59.33 ID:VQScLS6o
唯『あわ、あわわわ……たすけてぇ……』

唯は唯箱の中でひたすら怯えていた。何が起きているのかもわからずに、ただただ操縦桿に触れないように、手を隠していた。
わたしじゃない、わたしじゃない。どうして、どうしてこんなことに。
箱の外の映像を見るためのモニターの電源を落とし、箱の中の照明も切り、目まで瞑った。
光のない暗闇の中で、箱の外から聞こえる破壊音と木々が倒れる振動と周囲を焼き尽くす熱に震え続けた。

唯『し、死んじゃうっ! 死んじゃうよおぉおっ……助けてえ! ういぃいっ……!!』

唯はあまりの恐怖に小便を漏らしていた。無意識か偶然か、普段用を足すタンクに黄金水は溜められていく。
流水の音が聞こえる。音姫――女子トイレの音消し――だ。憂の姉に対する配慮が伺える。
34 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:39:37.27 ID:VQScLS6o
琴吹家執事長、斉藤(齢四十五、独身、童貞)は、女子トイレという空間とは無縁の人生を送ってきた。
小中高と、琴吹家の執事となるべく、男子校でその道の専門知識を身につけてきた。
そう、彼にとって女子トイレという聖地にある装置は全て神聖なものであり、なにものよりも優先されてしかるべきものなのである。
小耳に挟んでいた音姫――果たして本当に存在するのかと疑問にすら思っていた――が今この場で実際に作動している。

彼の身体は考えるよりも先に動いていた。
速く。迅く。疾く。音を置き去りにするようなスピードで唯箱に耳を当てる斉藤。

ジャアー、という流水の音に紛れ、ちょろちょろと雫がはじける音がかすかに聞こえる。

――最高に、気持ちいいな――

斉藤は絶頂に達し、粘土細工を床に叩きつけたかのようなべちゃあっとした笑顔を浮かべたまま――、

ガンッ、べちゃあっ。

――憂のかかと落としを受け、地面に沈んだ。
35 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:41:13.53 ID:VQScLS6o
平沢姉妹は逃避行していた。
人目につかないように行動し、追っ手は全て修理した神の雷で蹴散らして。

マスコミと琴吹家から追われるようになった二人は、頼る身寄りもなかったが、強かに暮らしていた。
窃盗や詐欺など、多くの犯罪を繰り返し、人としてのモラルは捨て切ってしまっていたけれど、二人の姉妹愛は、いや、二人はそれを超えた何かを手に入れていた。

二人は互いのことを想いあい、雨の日も、風の日も片時も離れず乗り越えてきた。
箱の中の唯は、箱の外の憂に触れられず、箱の外の憂は、箱の中の唯に触れられなかったけれど、それでも二人は心と心でしっかりと繋がっていた。
36 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:41:48.85 ID:VQScLS6o
二月二十一日。この地方では珍しく、雪の降る夜のこと。
唯は翌日に迫った憂の誕生日のためにプレゼントを買いに街へ出かけていた。
見知らぬ土地ではあるが、街に出ればどこかしら"いい感じ"の店はあるもので、唯はそこで、小箱に入ったプレゼントを買った。

盗んだ金ではない、唯は、憂のプレゼントを買うために、こっそりとアルバイトをしていたのだ。
幾度となく窃盗を繰り返した唯だが、妹の誕生日プレゼントだけは、綺麗な、真っ当な金で買ってやりたい。そう思って、この数日間辛いアルバイトにも耐えてきたのだ。

唯は余った僅かな給料を自販機に投入し暖かいコーヒーを買い、一人で身体を冷やしているであろう妹のもとへ急ぎ帰る。

唯箱の中は防寒も万全で、寒い冬でも快適だ、もちろん夏も汗一つかかないように設計されているらしい。
自分のことを常に考え、労わってくれる妹。
そんな愛しい憂に、少しでも恩返しがしたかったのだ。
37 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:42:33.03 ID:VQScLS6o
二人での逃避生活は、怖かったけれど、楽しかった。
唯は振り返って、そう思う。
そういえばカメラの録画機能が始まったのは、十一月二十七日の唯の誕生日のことだった。
一テラバイトもあった記録用ハードディスクも、明日辺りには容量が埋まってしまう。それほどたくさんの時間を、思い出を、憂と、この唯箱とともにしてきた。
姉の誕生日に始まり、妹の誕生日に終わる。そんなどこか運命じみた偶然に自然と笑顔がもれた。

これからも憂と二人なら、どこまででもいけると、何テラバイトでも思い出を重ねていけると、そうなんとなく唯は確信していた。

そんなことを考えていると、もう少しで憂のもとにつく頃だ。
唯は唯箱を操作するアナログスティックをいっぱいに倒し、道を急いだ。

赤信号につかまったが、交差点の向こうには既に愛すべき家族、憂が待っている。

手を振る彼女に笑い返し――尤も、箱の中では笑顔を見せることも出来ないのだが――、信号が青になるのを待つ。
38 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:43:23.79 ID:VQScLS6o


その一瞬。


世界が。


スローモーションに。


なった。


巨大な。


鉄の。


塊が。


トラックが。


憂に襲い掛かろうとしていた。

39 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:43:52.06 ID:VQScLS6o
唯『うわああああああッ!!!!』

叫ぶより早く、唯箱は憂を助け出すべく動き出していた。
神の雷でトラックのタイヤを叩き割り、緊急時用のブースターを噴射して、トラックの前に立ちはだかる。
憂の身体を安全圏に突き飛ばし、自らも回避すべく最大出力で動いた。

が。

その努力虚しく唯箱はトラックの車体に巻き込まれ粉微塵に吹き飛び、唯自身も投げ出され数メートル宙を舞った。
思い出の詰まったハードディスクも、小さな暖かいコーヒー缶も一緒に吹き飛んで、砕け散って、ばら撒かれた。

憂はすぐに唯のもとに駆け寄り、声をかける。

憂「お、お姉ちゃんっ!!」

唯「う、……うい…………」

憂「お姉ちゃん!喋らないで!今救急車呼ぶから!」

唯「あはは、大丈夫……、ちょっと、すりむいただけ……。さすがういの作った唯箱だね……」
40 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:44:28.24 ID:VQScLS6o
奇跡的に唯は無事だった。憂を安心させるように、優しい声で言う。

憂「ほ、ほんと?嘘ついてない?」

唯「……うん、憂、憂ならわかるでしょ……?」

憂「で、でも……心配だよう……!」

唯「だいじょうぶだから憂、もっと顔、良く見せて」

三ヶ月。
三ヶ月ぶりに、二人の手と手が触れ合った瞬間であった。

唯箱は、唯と憂の絆を守るための装置である反面、二人を分かつ装置でもあったのだ。

野次馬たちが二人を囲み始めていたが、お構いなしに二人は抱き合った。
お互いの確かな感触を、全身で感じ取りたかった。
41 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:45:38.04 ID:VQScLS6o
唯「やっぱりういは、カメラやモニター越しじゃなくて、自分の目で見たほうが可愛いね」

憂「お姉ちゃんもだよお……!ごめんね、あんな箱に閉じ込めて、ごめんね……!」

唯「いいんだよ、それに、嬉しかった。中に何も入ってないなんてうそじゃん。あの箱には憂の優しさが一杯詰まってたんだよ」

憂「おねえちゃあん……」

唯「……いいこ、いいこ」

いつかのように、憂の頭をなでる唯。慈しむようなその手つきは、唯箱のアームでは出来ない、一人の姉だけのものだった。
そして、懐に大切に入れていた小箱を取り出し、憂にそっと手渡す。
42 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:46:12.33 ID:VQScLS6o
唯「誕生日は明日だけど……、これ、誕生日プレゼント」

憂「え……」

唯「15歳の誕生日おめでとう。憂。大好きだよ」

憂「お、おねえちゃん……」

唯「えへへ……、内緒でアルバイトして買ったんだ……、あけてみて」

憂「これ、指輪……?」
43 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:47:07.43 ID:VQScLS6o
唯「安物でごめんね、えっと、結婚指輪は、給料三か月分が目安だったっけ」

憂「け、けっこん……へ……」

唯「アルバイト数日分のお給料で買ったけど、そこは、三か月分の思い出がつまっていることで許してね……。憂、」

憂「は、はい! ……」

唯「来年、憂が16歳になったら、本当の意味で、私のお嫁さんになってくれる?」

憂「あは……、うん……! もちろんだよっ! お姉ちゃん、大好き!」


降り積もる雪の中、二人は指輪をはめて、気の早い誓いのキスをする。
野次馬たちは状況を理解できていなかったが、示し合わせたかのように二人を祝福していた。

―― 一年後。指輪、交換しようね――

どちらからともなく交わされた約束は、誰かの鳴らしたクラクションに溶け込んだ。


おわり
44 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:47:39.88 ID:VQScLS6o
終わりです
本当にすいませんでした

そしてもう一度。唯ちゃん誕生日おめでとう
45 : ◆7rhEZfb0mk [sage]:2010/11/27(土) 01:01:04.88 ID:h92D5Gg0
乙でした。3番手参ります
46 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:02:09.08 ID:h92D5Gg0

 どん、と大きな箱は、私の前に立ちはだかった。

唯「おおっ!」

 私はちょっと身構えて、床を伝わってきた振動に膝をがくがくさせる。

 私の背丈よりやや高い、リボンにくるまれた白い箱。

唯「おっ父、こいつぁ一体なんだ!」

 お父さんは苦笑しながら、箱の裏から現れた。

 お母さんも一緒だ。楽しげに笑っている。私が変なふうに喋ったせいかは分からない。

 「開けてみなさい」

 言われるまま、手を伸ばした。

唯「……よし!」

 広げた腕よりよっぽど長いリボンをとき、

 前面につけられた取っ手を引っぱり、箱を開ける。

 がっちゃ、と重い音。

唯「……!」

 中を確認して、私は息をのんだ。
47 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:03:13.91 ID:h92D5Gg0

唯「私だ……」

 冷気が頬を撫でてから、私の背中に回る。

 箱にいたのは、目を閉じて直立し、微動だにしない私。

 いや、私そっくりの人形だ。

唯「パパ、ママ、これってもしかして」

 お父さんは頷く。

 「命のスペアだよ」

 ゆっくりゆっくり、私は首を振った。

唯「こんなの、いらない」

 「唯。大事なものよ」

 お母さんが諭す。

 それも聞かずに、私は冷気を吐く箱の蓋を閉じた。

唯「いらないよ! 命は一個だからいいの!」

 ……と、前に和ちゃんが言っていたので、私はそう叫んだ。
48 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:04:13.83 ID:h92D5Gg0

 困ったように、お父さんとお母さんが顔を見合わせる。

 「ごめんなさいね、唯。でも」

 お母さんはしゃがみ、私と目線の高さを合わせてから、私の目尻を親指で拭ってくれた。

 「唯になにかあったら、お母さんたち悲しいから」

唯「でも、いらない……」

 聞き分けのない私は、うつむいてその指をよけた。

 「……わかった。唯がいいって言うまで、抽出はしないであげよう」

 やがて、あきらめたようにお父さんが言った。

 しょうがないわね、とお母さんも頷く。

 白い箱は、ガレージにしまわれていった。

 残された私は「ばか」と呟いた。

 私の背丈を超えるほどの長いリボンを拾い上げて、丸めて壁に投げつける。

唯「せっかく誕生日なのに。……こんなプレゼントってないよ」
49 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:05:18.43 ID:h92D5Gg0

――――

 私は翌日、学校で和ちゃんにその話をした。

和「唯ちゃんのうちって、ほんとにお金持ちなんだね」

 和ちゃんは呆れたような目をして言った。

唯「えーっ、そんなことないよ」

和「あるよ。唯ちゃん、スペア人形がいくらするか知ってるの?」

唯「……5000円くらい?」

和「一番安いのでも、それにゼロが4つつくよ」

唯「へぇ」

 和ちゃんの口ぶりからして、100万円よりも高そうだ。

 そんなに高いものを買うお金がどこにあったというんだろう。

 のび太くんでさえおやつにケーキが出てくるというのに、うちは出ない。

 だからうちは貧乏だ、お金がないんだと思っていたけれど、実はそんなことはないのかもしれない。

和「へぇ、って唯ちゃん」

唯「えへへ……ごめん、わかんないや」
50 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:06:31.04 ID:h92D5Gg0

和「とにかく、それだけ高いものなんだから。いらないなんてだめだよ」

唯「和ちゃんが命なんて二つもいらないって言ったんじゃん」

和「それはそうなんだけど……」

 和ちゃんが困った顔をする。

 私はこの話題を変えようと思った。

唯「それより、それよりさぁ、やっぱり妹がほしかったよ!」

和「妹は誕生日プレゼントにはならないんじゃないかな……」

唯「ねぇ、うちのパパとママの代わりに、和ちゃんが妹つくってよ」

 それは場をしのぐために出たような、ほんの冗談であった。

和「それよ!」

 だけど和ちゃんは、雷にうたれたみたいに目をぐりっと開いて立ち上がった。

 むしろ、私が驚いた。

和「それなら唯ちゃんも納得できるし、人形をむだにもしないで済む!」

唯「ど、どうしたの和ちゃん!?」

和「唯ちゃん、今日家行くね!」
51 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:07:04.68 ID:h92D5Gg0

 和ちゃんの目はぎらぎらと活力に満ちていた。

 一瞬だけ、私はその申し出を断りたくなったけれど、

 光っている瞳を見ては言い出せず、結局こくりと頷いていた。

和「よっし……」

 まだ私には、和ちゃんが何をするつもりなのか分からなかった。

――――

 学校が終わったあと、私は和ちゃんに手を引かれてすぐ家に戻った。

 ガレージに案内して、昨日の箱を和ちゃんに見せる。

和「これがねぇ……」

 じろじろと白い箱を観察しつつ、和ちゃんはぼそりと言う。

唯「ねぇ、和ちゃん。いったいどうするつもりなの?」

 和ちゃんが取っ手に手をかけ、蓋をとる。

 またも私は、箱の中から噴き出してくる以上の寒気を感じた。
52 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:08:06.00 ID:h92D5Gg0

和「ほんとに唯ちゃんそっくりのモデル。それともオーダーメイドかなぁ」

唯「……」

 和ちゃんは、裸の私の人形にぺたぺたと触れてから、私を振り返った。

和「唯ちゃん。妹がほしいんだったよね?」

唯「うん」

 答えると、和ちゃんは胸を叩いてにんまり笑った。

和「私にまかせて。かわいい妹をつくってあげる」

唯「ほんとに!」

 私は和ちゃんに抱きつこうと、ガレージの埃っぽい床を蹴って、

 そのままの姿勢で止まった。

唯「でも、つくるってどうやって?」

 そういえば考えたことがなかった。

 和ちゃんは弟も妹もいるから知ってるんだろうけれど、

 私はどうすれば妹ができるのか、まるで知らない。
53 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:09:04.38 ID:h92D5Gg0

和「これを使うんだよ」

 和ちゃんは、ぽんと私の人形の肩に手を置いた。

唯「……人形? どういうこと?」

 これで妹をつくるというなら、和ちゃんの家には人形を2つ買うだけのお金があったことになる。

 いや、あるいは2つも買ってしまったから、今お金がなくなってしまったのかもしれない。

和「唯ちゃん、命のスペアの仕組みって知ってる?」

唯「ううん、しらない」

 私は首を振った。

和「じゃあ説明するよ。あのね、この人形があるだけだと、唯ちゃんが死んだ時に生き返ることはできないの」

唯「……うん」

和「ちゅうしゅつ、っていうのが必要でね」

和「コンピューターで唯ちゃんの記憶とか性格とかをデータにまとめないといけないの」

 ちょっとずつ理解が追いつかなくなってくる。

和「データにしたあとは、コンピューターが勝手に唯ちゃんの記憶とリンクして、新しいものに変えてってくれる」

和「自動で更新してくれる、ってことだね」
54 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:10:02.22 ID:h92D5Gg0

唯「は、はい……」

和「わかってる?」

唯「なんとか。……それで?」

和「うん。こうなったら後は、いざというときに起動するだけ」

和「今までのデータを頭に入れた人形が、死んだ唯ちゃんに代わって生きることになるの」

唯「……」

 つまり、この目の前の人形が、私になり代わって動きだすということ。

 それを理解しながら、この人形の中へ入るのは、なんともおぞましい気がした。

唯「……なんか、いやだよ」

和「だと思うよ。……それじゃあ」

 2人目の自分なんてものは、どうしても受け入れられる気がしなかった。

和「唯ちゃんは、これが妹になるのはどう思う?」

 和ちゃんは箱の側面をぽんと叩いた。

 少しだけ迷って、私は頷く。

 やっぱり妹は欲しかった。
55 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:11:05.51 ID:h92D5Gg0

和「そう。良いんだね」

 くすりと笑って、和ちゃんは蓋を閉めた。

和「唯ちゃん。私はこれから、唯ちゃんとあんまり遊べなくなりそう」

 短い髪を指先で払って、和ちゃんは言う。

唯「何で!?」

和「勉強をしなきゃ。唯の妹を作るために」

唯「だったら私も手伝うよ。和ちゃんだけに任すのは悪いもん」

 ちっちっ、と和ちゃんは舌を鳴らした。

和「とんでもなく難しい勉強なの。それも、何千万のお金がかかっていて、チャンスは一度きり」

和「失敗するわけにはいかないんだよ。私だけに任せてほしいな、唯ちゃん」

 その目は真剣だった。

 疎外感を感じながらも、私はしぶしぶ頷いた。

唯「わかった……」

和「唯ちゃんは」

 少し、和ちゃんが喉をつまらせた。
56 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:12:05.22 ID:h92D5Gg0

和「唯ちゃんは、どんな妹が欲しい?」

唯「どんな……」

和「うん。私はデータを作るから、唯ちゃんは妹がどんな子か考えて」

唯「うーん……」

 私は顎をなで、考え込む。

唯「……完璧な子がいい」

和「完璧?」

唯「うん。私より頭良くて、器用で、かわいくて優しくて、だけど甘えんぼな妹がいい」

和「……大変な仕事になりそう」

 頭を抱えつつ、和ちゃんは笑った。

和「名前はどうしたい?」

唯「んん……」

 再び考える。

 平沢唯の妹。平沢唯、平沢……。

唯「うい、なんてどうかな」
57 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:13:04.59 ID:h92D5Gg0

和「うい?」

 和ちゃんが訊き返す。

唯「私に似てる名前がいいんだ。うい、平沢ういにしよう!」

和「漢字はどうするの?」

唯「ういなんて読む漢字ないよ。ひらがなで良いんじゃない?」

和「……何か探しておくね」

 なぜか溜め息をつき、和ちゃんはそう言った。

 「うい」と読む漢字をなにか知っているのかもしれない。

 やっぱり和ちゃんの知識はとても豊富なんだと思った。

和「それじゃあ、私は帰って勉強するからね」

和「データを作るには、かなり時間がかかると思うよ。1日とか1週間じゃない」

唯「すごく大変なんだね……」

和「そう。でも唯ちゃんはそれまで、この計画をおじさんおばさんにも内緒にして、妹ちゃんをこのままで守ってね」

 この箱を、ういを守る。ういが生まれるために、それが私に与えられた役目だった。

唯「まっかせて!」
58 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:14:26.25 ID:h92D5Gg0

――――

 数日して、和ちゃんは「憂」という新しい名前を提案してきた。

 これで、ういと読むらしい。

 一文字でばっちり決まっているのも私と一緒だし、その由来も私は気にいった。

 そうして妹の名前は、平沢憂と決定した。

 それからどんどん季節は巡った。

 冬が終わった頃、私は和ちゃんに「まだできないの?」と催促した。

和「まだまだよ」

 和ちゃんは顔色を変えずに言った。

唯「いつまでかかるの? 私、毎日楽しみなんだよ?」

和「ごめんなさい。まだ先が見えないわ」

 目を閉じて、和ちゃんは思考するような顔をした。

和「早くても来年になるわよ。おばさんが妊娠してると思って、気長に待ちなさい」

唯「来年!? ……ぶー」
59 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:15:28.52 ID:h92D5Gg0

 それからも、私は何度となく和ちゃんを急かした。

 一度だけ、そのデータというものを見せてもらったけれど、

 英語のアルファベットや見慣れない記号ばかりでちんぷんかんぷんだった。

唯「ここ、どういう意味?」

和「その辺りは右手の人差指の運動指令ね」

唯「この暗号……にぃ、しぃ……25行、まるまる全部?」

和「暗号じゃなくてプログラム。あ、右利きでよかったわよね?」

唯「う、うん」

 目の痛くなりそうな文字列を見つつ、頷いておく。どっちでもいい。

唯「ねぇねぇ、これ一旦人形に入れて、動かすことはできないの?」

和「できるけれど、人形は一度きりしかデータを受け取れないわ」

和「右腕と顔しか動かない妹でいいの?」

唯「……待ちます」

 こんなことがあってからは、だんだん催促を減らすようにしていった。
60 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:16:04.89 ID:h92D5Gg0

――――

 そしてまた冬が来て、また去っていこうかという時期。

 2月22日のことだった。

 和ちゃんは眼鏡をかけるようになって、顔つきが別人らしくなってきていた。

 だから私は最近の和ちゃんに少し混乱していて、

 かつ久しぶりに満面の笑みを見せられたものだから、最初の一瞬だけそれが和ちゃんだと分からなかった。

和「唯!」

 その笑顔だけで、私には何があったのか理解できた。

唯「できたの!?」

 和ちゃんは輝かしい笑顔のまま、何度も頷いた。

 小学5年生になろうかという冬の日、私はついに妹と会えることになった。

 授業の終わるのが、これほど長い一日もなかった。

 私たちは帰りの会が済むなり、大急ぎでランドセルを背負って家へと向かった。
61 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:17:16.46 ID:h92D5Gg0

 お父さんにもお母さんにも、ずっと秘密にしてきた。

 箱の中の妹なんて存在もしないような態度を貫き通してきた。

 おかげで憂は、たまに霜をとられるくらいで、めったに触れられることはなかった。

 和ちゃんが一度家に戻って、データを保存してあるメディアを持ってきた。

 それをうちのコンピューターに取りこんで、そして、憂の箱に繋げる。

唯「いよいよだね、和ちゃん……」

 和ちゃんは接続端子をじっと見つめながら、「そうね」と短く答える。

 命を供給するにふさわしい重たい音で、コンピューターと白い箱がつながる。

唯「憂……」

 コンピューターの画面に伸びていく青色のバーを見つめながら、妹の名をささやく。

 いま、ちょうど半分が憂の身体に送り込まれたようだ。

唯「今日が、憂の誕生日だよ!」

 60%、70%……。

 みるみるうちに、平沢憂が完成されていく。
62 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:18:04.87 ID:h92D5Gg0

 バーはめいっぱいまで伸び、数字は100%と表示されている。

和「……完了ね」

 和ちゃんは言うと、箱の裏へまわり、かちっと音を立てた。

 白い箱がずっと立てていた、小さな駆動音が止む。

 ガレージは完全に静かになった。

和「開けてやりなさい。おねえさん」

 頷いて、私は箱の取っ手にようやく手をかけた。

 箱の内から、とんとんと振動が伝わってくる。

 生きているんだ。生まれてくるんだ。

唯「……憂。迎えに来たよ」

 おごそかな音とともに、いつぞやのプレゼントボックスの蓋は外された。

唯「……」

 冷たいとは思わなかった。

 冬の寒さがガレージに入りこんでいたから、というだけではない。

 そこにいるのが、もはや私のスペアの人形ではないから。

 待望の妹である憂が、目を開いてそこにいたからだ。
63 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:19:05.26 ID:h92D5Gg0

 睫毛に乗った霜が、まばたきによってぱらぱらと落ちる。

 雪の降り始めるような、美しい光景。

 とうの憂は、目の周りに触れる感覚にくすぐったそうにした。

唯「……う、憂」

 天使のおりたようだと思った。

 私は唾を飲みこみ、決めていた名前を呼ぶ。

憂「……お姉ちゃん」

 憂はくすっと笑って、私を見つめてそう言った。

 その声はじんわりと胸に響いた。

 私は微笑む憂の手をとろうとする。

憂「……」

 瞬間、憂の顔が何かに引っ張られたように歪み、

憂「ふぁっくち!」

 私に盛大なくしゃみをひっかけてくれた。

 これが私と憂の出会いである。
64 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:20:06.75 ID:h92D5Gg0

――――

 両親は驚きこそしたけれど、私の決めたことに文句はつけなかった。

 憂は私の妹として平沢家に居つくことになり、小学校にも私の1学年下で通う事になった。

 最初のうちは、憂がもとは人形だという意識がつきまとうこともあった。

 けれど和ちゃんの作ったデータは全くもって人間らしくて、

 すぐに私は、憂が本当は人形だということを、ただ知っているだけになった。

唯「……」

 憂はほんとうに可愛い妹で、

 やっぱり、それだけなんだと思う。

 必死で自分に言い聞かすように、そんなことを思う。

 その時点で私はもう、言い訳もできなくなっていた。

 どうしてそう思うようになったか、理由すらもわからない。

 思いつくことと言えば、憂は何もかも私の理想を満たしていたこと、だろうか。

 とにかく、想いをずっとずっと我慢して、私たちは高校生になった。

 元から家をあけがちだった両親が、さらに帰ってくる頻度を減らすようになった。
65 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:21:06.08 ID:h92D5Gg0

 夏のある日、私は和ちゃんと会う機会があった。

 和ちゃんは私の行く所よりうんと頭のいい高校に行ってしまって、

 昔より顔を合わせることは減ってしまった。

 それでも私は、和ちゃんがいちばんの友達だと思っている。

 私のために勉強して、憂に命を吹き込んでくれたのだから。

 そのときに結ばれた私たちの絆は、まだ弱まっていないはずだ。

 私はうきうきした気分で、待ち合わせの喫茶店についた。

 和ちゃんはすでに二人掛けの席に座って、コーヒーの匂いをぼーっと楽しんでいた。

唯「ひさしぶり、和ちゃん」

和「あら、唯。もっと遅れてくるかと思ったわ」

 相変わらずのやさしい表情で、和ちゃんは私を迎えた。

唯「和ちゃんが誘ってくれたのに、遅れるわけないよ」

和「……そうね。唯が遅れるのは唯から誘ってきた時だけだったわね」

唯「だから、もうっ」

 私も真似してコーヒーを頼む。

 ただ苦いのは飲めないから、甘いカフェラテを注文した。
66 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:22:08.45 ID:h92D5Gg0

唯「そゆえば、和ちゃんから呼んでくれるなんて久しぶりだね」

 コーヒーが来るまでは他愛のない話をして、

 私はウェイターさんが去ったあと、ちょうど気付いたかのように和ちゃんに言う。

和「言われてみれば、そんな気もするわ」

 和ちゃんは素知らぬふりをした。

唯「憂も呼んであげればいいのに。私と二人きりがいいってこと?」

 話したくないことなら、それでもいい。

 私はくねくね身をよじった。

和「憂……憂ね」

 けれど、和ちゃんはつっこみを飛ばすどころか、深い表情をしてしまう。

 私は腰の動きを止めた。

唯「憂がどうかしたの?」

 なるべく明るい口調で私は尋ねる。
67 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:23:11.65 ID:h92D5Gg0

和「何でもないわよ。……憂のことじゃないわ」

唯「じゃあなに?」

 和ちゃんは窓の外に目を向け、コーヒーを一口飲む。

和「実はね。私の弟が一人暮らしを始めたのよ」

唯「……へえっ?」

 てっきり憂の話をされると思っていた私は、ぬけた声を出してしまった。

 頭がまわらなくなり、私はあわててカフェラテを口にする。

唯「うーん、えっと。確か弟くんって」

和「まだ中3よ。……すごく大事な時期よね」

唯「だよね。どうして一人暮らしなんて?」

和「……」

 和ちゃんはスプーンをカップの中でぐるぐる回す。

和「……唯は、考えたことないわよね」

 からん、と高い音がした。

 思えばそれは、私に対する警告音だったのかもしれない。

和「言葉さえ知らないんじゃないかしら。……近親相姦って」
68 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:24:11.39 ID:h92D5Gg0

唯「……」

 もしかしたら、私の知っている中で一番複雑な言葉かもしれない。

和「ごめんなさい、変なことを言ったわ。忘れて」

唯「……しってるよ」

 私は和ちゃんの言葉を遮った。

 本当は、知らないと言いたかった。

 私がそんな難しい言葉を知っているなんて、憂への気持ちを疑われてもおかしくないから。

 この気持ちは、誰にだって悟られるわけにはいかない。

唯「近親相姦でしょ。知ってる」

 和ちゃんは私の目を覗きこんだ。

 透徹した瞳が、視神経を通して私の脳をさぐっている。

 「なにか」を疑っているのか、それとも私が知ったかぶりをしていると思っているのか。

 やがて、あきらめたように溜め息を吐いて、和ちゃんは顔を上げた。

和「……唯も色んなことを知るようになったのね」

唯「まあ、ね」
69 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:25:20.09 ID:h92D5Gg0

唯「近親相姦かあ……」

 和ちゃんは居たたまれないような顔をしていた。

唯「弟くんが、和ちゃんと?」

和「……違うわ。私はただ、受け入れてただけ」

唯「違うって言うの、それ?」

和「大きな違いよ。……私がどれだけ苦しんでたか分かる?」

唯「分からないな、そんな苦しみなんて」

 私はつい、尖った口調になっていた。

 そのことに素直に苦しめる和ちゃんが、うらやましくて。

唯「どうでもいいじゃん。今はもう別居して、解放されてるわけでしょ?」

和「解放……そうよね。解放されたのよね」

 和ちゃんは横髪を払いのけ、薄く笑う。

和「そのはず、なんだけど」

唯「……」

 喫茶店の冷房はすこし効きすぎている気がした。

 私はカップに口をつけ、熱いカフェラテをぐびぐび飲んだ。
70 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:26:08.32 ID:h92D5Gg0

唯「っふぅ……けどさ」

唯「和ちゃんはさ、どうして弟くんを受け入れたの?」

 俯いたままの和ちゃんに、そんなことを訊いた。

和「……ただ、怖かっただけよ」

和「あの子の姉として、年長者として注意できなかった。拒絶できなかった」

和「そうしなきゃ、距離が離れてしまうような気がして、ね。……子供ながら情けなかったわ」

唯「子供ながら、って……」

和「……」

 私は口をつぐんだ。

 和ちゃんは目を閉じて、静かにカップに口をつけただけだ。

唯「……軽音部の子の話なんだけどね」

和「あら、また何かあったの?」

 何事もなかったかのように、私たちはまったく関係のない話を始めた。

 和ちゃんの心の触れてはいけない部分に触れてしまった気がした。

 けれど私はそんなことをしでかしたにも関わらず、奇妙な高鳴りを感じていた。
71 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:27:07.80 ID:h92D5Gg0

――――

 私は和ちゃんを送った後、すぐに家へ帰った。

 洗濯物を取りこみ終えた憂が、重たそうに衣服の塊を運んでいた。

憂「あ、お姉ちゃんおかえり!」

 家事を任せてほったらかして、自分は友達と遊んでいた私に、憂はにっこり笑って迎えてくれる。

唯「ただいま、憂」

憂「今日暑かったね。のど渇いてない? お茶いれるよ」

 私が後ろめたさを感じながら答えると、憂はまた嬉しそうに笑って、

 抱えていた洗濯物をソファに置いて台所に向かおうとする。

唯「ねぇ、憂」

憂「なあに、お姉ちゃん。あ、和ちゃんどうしてた?」

唯「……憂。お茶はいいよ」

憂「そう?」

 憂は持っていたグラスを戸棚に戻して、私のほうに向きなおった。
72 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:28:02.62 ID:h92D5Gg0

唯「お話があるの。聞いてくれる?」

憂「お話? うん、聞かせて」

 私は憂の前にやってくると、ぐっと体ごと抱き寄せた。

 余計な言葉は言いたくなかった。

憂「お、お姉ちゃん?」

 きつく抱きしめれば、あとは一言だけで伝わるはずだから。

 私は憂の匂いを鼻腔に感じながら、そっと口を開いた。

唯「……すき」

憂「……」

 深い呼吸を一度。

唯「好きだよ、憂」

 そして、また言った。

 憂は小さく震えていた。その震えを止めてあげるように、さらに憂を近くに寄せる。
73 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:29:05.95 ID:h92D5Gg0

唯「お話があるの。聞いてくれる?」

憂「お話? うん、聞かせて」

 私は憂の前にやってくると、ぐっと体ごと抱き寄せた。

 余計な言葉は言いたくなかった。

憂「お、お姉ちゃん?」

 きつく抱きしめれば、あとは一言だけで伝わるはずだから。

 私は憂の匂いを鼻腔に感じながら、そっと口を開いた。

唯「……すき」

憂「……」

 深い呼吸を一度。

唯「好きだよ、憂」

 そして、また言った。

 憂は小さく震えていた。その震えを止めてあげるように、さらに憂を近くに寄せる。
74 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:29:47.06 ID:h92D5Gg0

 そのまましばらく、私たちは無言だった。

 暑い中くっつきあって、触れ合う肌は火傷しそうなほど火照っている。

唯「……」

憂「……」

唯「……うい?」

 その変化に気付いたのは、おそらく私が先だった。

 心臓の音が、少なすぎる。

憂「え……?」

唯「どうしたの……うい、ういっ!?」

 抱きしめていた腕を慌ててゆるめ、憂の顔色を見る。

 ほの赤んでいた頬は、真っ白に血が引けていた。

 そのまま憂の首はぐらぐらと揺れ――折れてしまったかのように、後ろへ倒れた。

唯「うい……し、しっかりしてっ!」

 身体をゆさぶっても、だらりと下がった頭が慣性で動くだけだ。

 憂自身はちっとも動いてくれない。
75 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:30:13.04 ID:h92D5Gg0

唯「な、なんとかしないと、憂が……」

 私は慌てて携帯電話を取り出し、1、1、とプッシュする。

 親指がキーの上を滑り、9の上に乗った。

唯「……」

 そこで、私はふと思い出した。

 和ちゃんが、どうにも憂を案じていたように見えたことを。

 終話ボタンを押し、アドレス帳から和ちゃんにかける。

 そっと座りこみ、憂を膝の上に乗せる。

 胸にも首にも、脈動はない。

 口元に耳を寄せても、空気の動く音はしない。

 とても静かになってしまった憂を見つめる。

和「もしもし、唯?」

 和ちゃんが電話に出た。

唯「……和ちゃん。憂が死んじゃった」

 私の口からは、ただ淡き事実だけが零れおちたのみだった。
76 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:31:02.51 ID:h92D5Gg0

唯「……」

 憂は、幸せそうに眠っているだけのように見えた。

 だけど、そんなはずはない。

 息をしていないのだから。心臓が動いていないのだから。

和『……とにかく、今から唯の家に行くわ』

 しばらく黙った後、和ちゃんは言った。

 私は頷くだけして、電話を切る。

唯「ういー……おやすみ」

 憂の前髪を掻きわけて、おでこを撫でる。

 瞼をおろし、動かない憂はとても綺麗で、私は憂が人形だということを認識させられた。

 人形だから憂は死んだんだろうか。

 私の妹だから憂は死んだんだろうか。

 女の子だから憂は死んだんだろうか。

 でも、そのどれでもなければ憂は生まれていなかった。

 何を嘆けばいいかすら分からないのだ。だから一滴たりとも涙が出ない。
77 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:32:06.90 ID:h92D5Gg0

 呼び鈴も押さずに、和ちゃんがやってきた。

 台所にうずくまっている私たちを見てか、そっと足音が近づいてくる。

唯「……」

 和ちゃんは、私の背後にぼうっと立った。

和「……唯。憂に何をしたの?」

唯「好きだよって言った」

 私はためらいなく答えた。

唯「ぎゅって抱きしめて、好きだって伝えた。憂のこと、愛してたから」

唯「……そしたら、腕の中で動かなくなった」

和「……」

 和ちゃんも床に座って、しばらく何も言えなさそうに呼吸だけしていた。

 私たちの少し速い呼吸が、台所に浮かんで沈み、浮かんで沈む。

和「……それは」

 どれくらいしただろうか。呼吸の隙に、和ちゃんは言った。

和「私のせいよ……」
78 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:33:07.76 ID:h92D5Gg0

唯「……へぇ、和ちゃんの」

 私は憂のほっぺたをつつきながら、口元をゆがめた。

和「特に言うなら、昔の私。小学3年生のね」

唯「憂が生まれる前だね」

 左手は憂を抱えたまま、すこしだけ和ちゃんの方に首を向ける。

和「そのころから、私は弟とそれに近い関係にあったのよ」

唯「弟くん、小1なのに?」

和「まったくね。好奇心って怖いわ」

 くすっ、と和ちゃんは自嘲っぽく笑った。

和「時間が経てば終わるだろうと思ってた。こんなことはおかしいと気付くだろうと思ってた」

和「でも、甘い姉だったわ。弟は新しく知ったことをどんどん私で試した」

唯「止められなかった和ちゃんは、お姉さん失格だね」

和「本当ね。……でも、それだけじゃ済まないの」

唯「ふうん」

 和ちゃんはすっと立ちあがった。

和「唯。パソコン使わせてくれる?」
79 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:34:04.03 ID:h92D5Gg0

唯「私の部屋のならいいよ」

 力なく垂れた憂の体はとても重たかったけれど、

 お姉ちゃんパワーでどうにか抱き上げた。

唯「先に行ってて、和ちゃん」

 和ちゃんは小さく頷くと、階段を上がっていく。

 私は憂をお姫様だっこして、フラフラそのあとを追った。

――――

 私は和ちゃんのそばに立って、パソコンの画面を眺める。

唯「……なにしてるの?」

和「憂のデータを見ようと思って。……ほら、見てこれ」

 和ちゃんは、人差し指で画面に映っている5桁の数字を示した。

和「これ、完成した時はたったの8メガだったのに。自動更新で76メガになってるわ」

唯「……成長したんだね」

和「そうね。命って……ほんとに重い」

 なんだか気恥ずかしくて、私は照れ笑いを浮かべた。
80 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:35:03.96 ID:h92D5Gg0

 和ちゃんがデータをクリックして開く。

 平沢憂を生みだす前から現役のパソコンは、それを表示するのに少し時間をかけた。

唯「これが憂の記憶かぁ」

和「……ここはまだ、私の組んだプログラムよ」

 和ちゃんはしばらく画面をスクロールして、「あった」と呟いて指を止めた。

和「唯……ここよ。これを見て」

 和ちゃんの指差したそれは、やっぱり私には謎の文字列にしか見えない。

唯「……」

 でも、絶対に大事なもののはずだ。

 私は数字と英字の並ぶ画面を食い入るように見つめる。

唯「これは、どういう意味?」

 和ちゃんは、深呼吸をした。

和「……これはね。憂が、唯に恋をしてしまったとき」

和「憂の心臓を強制的に動かなくするプログラムよ」
81 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:36:04.95 ID:h92D5Gg0

唯「……」

 「Page Down」に指を置き、和ちゃんは高速で画面をスクロールさせていく。

和「私は弱かったばかりか、挙げ句には全てを弟のせいに思っていたわ」

和「悪いのは弟、苦しいのは私。……唯には、絶対に同じ思いをさせたくなかったの」

唯「だからって、こんな……」

和「当時はそのくらい毛嫌いしていたのよ。私が作っているのは唯の妹なんだってことを忘れるほどにね」

 暗号が高速で画面を流れていく。

 目がちかちかするだろうに、和ちゃんはじっと暗号の流れを見つめている。

和「もし憂が唯に恋心を抱いたら死ぬようにして……」

和「なんで死んだのかと訊かれたら、人形だからじゃないか、なんて答えるつもりだったわ」

唯「……じゃあ、なんでそう答えないの?」

唯「和ちゃんまで……もう、分かんないよ。誰が悪いの、何がいけないの……」

 洟をすする声に、和ちゃんは画面から目を離した。

和「あの頃の私は間違っていると思うからよ。……もっと根本的な部分での話よ」
82 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 01:37:23.75 ID:h92D5Gg0

 画面は一番最後までスクロールしていた。

 和ちゃんはそれに気付いていないのか、キーを押しっぱなしにしている。

 そこに映っているあっさりとしたデータを見て私は、「和ちゃんはすごいな」と思った。

和「人を死なすプログラムをまぜこんだことじゃないわ」

和「……恋を倫理で縛れる、なんて考えたことよ」

唯「……」

 和ちゃんの目が、画面に戻る。

 キーを押していた指が浮いた。

 emotion,

 "fear=0",

 "happiness=255"

 1

 かたり、と和ちゃんがバックスペースを叩く。

 お姉ちゃんのすすり泣きが、私の耳にしみついている。

 再び、キーを押す音がした。

 0
83 : ◆7rhEZfb0mk [sage]:2010/11/27(土) 01:38:23.12 ID:h92D5Gg0
終わりです。
唯ちゃんお誕生日ごめんなさい。

お次の方どうぞー
84 : ◆7rhEZfb0mk [sage]:2010/11/27(土) 02:05:40.06 ID:h92D5Gg0
言い忘れましたが>>73は重複でミスです。脳内削除で
85 : ◆W3liI16LCQ [sage]:2010/11/27(土) 03:02:24.09 ID:OIjLqYAO

しあわせびっくり箱!
86 : ◆W3liI16LCQ [sage]:2010/11/27(土) 03:03:08.56 ID:OIjLqYAO
ガラッ

憂「……あ、梓ちゃん」

梓「おはよ、憂」

憂「おはよ〜」

梓「今日は遅かったね」

憂「おねえちゃんがなかなか起きてくれなくて……」

梓「ああ……寒くなってきたしね」

憂「うん〜、まあ寝ぼけてるおねえちゃんも可愛いからいいんだけどね」

梓「そ、そう」
87 : ◆W3liI16LCQ [sage]:2010/11/27(土) 03:03:52.73 ID:OIjLqYAO
憂「そういえば、先輩方に聞いてくれた?」

梓「明日の話でしょ?大丈夫だって」

憂「そっか、良かった〜
 おねえちゃんもきっと喜ぶよ」

梓「みんな楽しみにしてたよ
 律先輩なんて度肝を抜くようなプレゼントを用意するって張り切っちゃって……」

憂「あ」

梓「?」

憂「プレゼントまだ決めてないんだった……」

梓「まだ?誕生日明日だよ?」
88 : ◆W3liI16LCQ [sage]:2010/11/27(土) 03:04:26.65 ID:OIjLqYAO
憂「うーん、いいプレゼントが思いつかなくて……」

梓「まさか憂が唯先輩へのプレゼントで悩むなんて……」

憂「普通のプレゼントでもいいんだけど、
 どうせならおねえちゃんをすっごく喜ばせてあげたいな〜って」

梓「それで前日まで決められなかったわけね」

憂「うん……梓ちゃん、なにかいいアイデアないかな?」

梓「唯先輩のことをわたしに聞かないでよ」

憂「うう……」

梓「唯先輩のことは憂が一番わかってるでしょ?」

憂「えへへ、まあね」
89 : ◆W3liI16LCQ [sage]:2010/11/27(土) 03:05:19.39 ID:OIjLqYAO
梓「……とにかく、そんな憂にしか出来ないプレゼントをすればいいんじゃない?」

憂「わたしにしか出来ない?」

梓「うん、唯先輩のことを一番良くわかってる憂にしか」

憂「うーん……良くわかんないけど、今日一日考えてみるよ!
 ありがとう、梓ちゃん」

梓「どういたしまして」

憂「ちなみに、梓ちゃんは何をあげるの?」

梓「秘密」

憂「えー」

梓「明日のお楽しみ、ね?」
90 : ◆W3liI16LCQ [sage]:2010/11/27(土) 03:05:51.82 ID:OIjLqYAO

――――――――
―――――

梓「さて、放課後になったわけですが」

梓「憂、プレゼント決まった?」

憂「えへへ、とってもいいの思いついちゃった〜」

梓「何をあげるの?」

憂「梓ちゃんは教えてくれなかったのに、わたしには聞くんだ?」

梓「うっ……ごめん」

憂「ふふ、冗談だよ」

梓「も、もう……それで、何を?」
91 : ◆W3liI16LCQ [sage]:2010/11/27(土) 03:06:32.43 ID:OIjLqYAO
憂「わたしね、おねえちゃんが欲しい物をあげることにしたの」

梓「うんうん」

憂「えへー」

梓「えへーって……で、つまり何をあげるの?」

憂「え?だから、おねえちゃんが欲しい物」

梓「いや、えっと……それって何?」

憂「うーん……それはおねえちゃんに聞いてみないとね」

梓「唯先輩に欲しい物を聞いて買いにいくの?」

憂「それだと一般的なプレゼントの仕方じゃない」

梓「頭がごちゃごちゃになってきた……」
92 : ◆W3liI16LCQ [sage]:2010/11/27(土) 03:07:07.87 ID:OIjLqYAO
憂「さてと、早く帰ってプレゼントの用意しなきゃ!」

梓「全然意味がわからなかったよ……」

憂「梓ちゃん、ありがとうね」

梓「え?」

憂「プレゼント、梓ちゃんのおかげで閃いたから」

梓「そ、そう、役に立てたなら良かった」

憂「えへへ、それじゃあまた明日!」

梓「うん、ばいばい」
93 : ◆W3liI16LCQ [sage]:2010/11/27(土) 03:08:03.23 ID:OIjLqYAO

――――――――
―――――

憂「えっと、これをこうして……んしょ……」

ガチャ

唯「ただいまー」

憂「あ、おねえちゃんおかえりー」

唯「ん?……おお!なに、その綺麗な箱?!」

憂「ふふっ、秘密だよ〜」

唯「えー?気になる気になる〜」

憂「あとで教えてあげるね?」

唯「ぶーぶー」

憂「ふふ……さ、着替えてご飯食べよ?」
94 : ◆W3liI16LCQ [sage]:2010/11/27(土) 03:08:33.91 ID:OIjLqYAO

――――――――
―――――

唯「……ねえ、うい」

憂「なあに?」

唯「さっきの箱、あれってなんなの?」

憂「……」

唯「あとで教えてくれるって言ったじゃん!そろそろ教えてよ〜」

憂「……」

唯「このままじゃ気になって眠れないよ〜」

憂「ごー」

唯「?」
95 : ◆W3liI16LCQ [sage]:2010/11/27(土) 03:09:33.99 ID:OIjLqYAO
憂「よん」

唯「う、うい?どしたの?」

憂「さん」

憂「にー」

憂「いち」

憂「ぜろ!」

唯「え?な、なになに?」

憂「おねえちゃん、お誕生日おめでとう!」

唯「っ?!」

憂「えへへ……おねえちゃん、たった今11月27日になったよ!」
96 : ◆W3liI16LCQ [sage]:2010/11/27(土) 03:11:25.86 ID:OIjLqYAO
唯「あ……ほ、ほんとだ!やったー!誕生日!」

憂「そして、えと……はい、誕生日プレゼント!」

唯「これ、さっきの箱……誕生日プレゼントだったんだ……!」

憂「えへへ、うん、そうだよ」

唯「ふは〜……キラキラピカピカして、すごく綺麗……
 ね、開けてもいい?」

憂「もちろん!どうぞ〜」

唯「やったー!なんだろな〜なんだろな〜」ゴソゴソ

憂「ふふ」

唯「あれ……?」
97 : ◆W3liI16LCQ [sage]:2010/11/27(土) 03:12:22.20 ID:OIjLqYAO
唯「うい、この箱からっぽだよ?」

憂「えへへ……実はその箱はただの箱じゃないんだ」

唯「え?」

憂「なんと!魔法の箱なんです!」

唯「魔法の箱?!」

憂「そう!ねっ、おねえちゃん、両手を合わせて目をつぶって?」

唯「え?う、うん」ギュ

憂「そして自分が欲しい物を声に出して、箱にお願いするの!」

唯「ほ、欲しい物?ん〜……いきなり言われても〜」
98 : ◆W3liI16LCQ [sage]:2010/11/27(土) 03:13:02.97 ID:OIjLqYAO
憂「なんでもいいんだよ〜」

唯「じゃあ……えと……アイスが欲しいです!」

憂「ふふ、さっき食べたばっかりなのに」

唯「えへへ〜、だって好きなんだもん」

憂「あ、もう目を開けても大丈夫だよ」

唯「ん」パチ

憂「箱、開けてみて?」

唯「どれどれ……おお!」

憂「ふふ」

唯「あ、あ、アイスがたくさん……しかもダッツさんだよ!……しゅ、しゅごい……!」
99 : ◆W3liI16LCQ [sage]:2010/11/27(土) 03:14:49.09 ID:OIjLqYAO
憂「夜遅いけど誕生日だから特別に食べてもいいよ!
 あ、一個だけね?」

唯「ほんと?!やったー!」ゴソゴソ

憂「どう?すごいでしょ、この箱」

唯「すごすぎるよ!お願いした物が出てくるなんて……ほんとに魔法の箱だね!」

憂「えへへ、もっとお願いしてもいいんだよー?」

唯「ほ、ほんとに?!えっと、それじゃあ……」ギュ

憂「」ゴソ

唯「そうだ!寒くなってきたし、新しいマフラーと手ぶくろが欲しいです!お願いします!」パンパン

憂「おねえちゃん、もういいよ〜」

唯「わくわく〜」パチ
100 : ◆W3liI16LCQ [sage]:2010/11/27(土) 03:15:38.28 ID:OIjLqYAO
唯「おお……ほんとに入ってる!しかもこれ、可愛い〜……」

憂「えへへ、喜んでくれたみたいで良かった」

唯「大満足だよ〜、こんな素敵な箱……」

憂「わたしがいるときならいつでもつかっていいからね!」

唯「うん!ねえ、うい」

憂「なあに?」

唯「ういもつかいなよ、この箱!」

憂「え?」
101 : ◆W3liI16LCQ [sage]:2010/11/27(土) 03:16:11.08 ID:OIjLqYAO
唯「だって、ういも欲しい物あるでしょ?」

憂「ま、まあ……あるにはあるけど……」

唯「それじゃあ、一緒につかおうよ!」

憂「で、でもおねえちゃんにプレゼントしたんだし、おねえちゃんがつかってよ!」

唯「だめ!ういもつかって?」

憂「え、えと……」

唯「アイスも嬉しいけど、ういの喜ぶ顔も嬉しいもん!」

憂「おねえちゃん……」

唯「ね?」
102 : ◆W3liI16LCQ [sage]:2010/11/27(土) 03:17:41.92 ID:OIjLqYAO
憂「うん……わかった」

唯「さ、早く早く〜」

憂「ん」ギュ

唯「それじゃあ、お願い事をどーぞ!」

憂「うん!……えと、わたしは」

唯「……」

憂「おねえちゃんが欲しいです!」

唯「え?」

憂「だから、おねえちゃんをください!」

唯「うい……えへっ」

憂「……」
103 : ◆W3liI16LCQ [sage]:2010/11/27(土) 03:18:23.59 ID:OIjLqYAO
唯「えへへ……うい、目を開けてもいいよ」

憂「うん……わっ!」

唯「」ギュッ

憂「ふふ……」

唯「新鮮なおねえちゃんです!どうぞ!」

憂「えへへ……はーい、いただきます」ギュッ

唯「……ういはずるいね」

憂「え?」

唯「人でもいいなら、わたしもういをお願いしてたのに」

憂「……おねえちゃん」

唯「さ、歯みがきして寝よっか?」

憂「……うん!」



おわり
104 : ◆W3liI16LCQ [sage]:2010/11/27(土) 03:19:55.95 ID:OIjLqYAO
終わりです、ありがとうございました
これから投下予定の人達、頑張ってください
105 : ◆Gln3lxvSW. :2010/11/27(土) 10:32:33.94 ID:PxoazXg0
だんだんと寒さを増した11月のある日。

私はムギの誘いを受け、ファーストフード店に来ていた。

窓際の席に陣取ると、ハンバーガーとシェイクを挟んで向かい合う。

律「それで、今日はどうしたんだ?」

紬「実はりっちゃんに相談があるの!」

律「うん?お金ならないぞ?」

紬「うん、知ってる!そうじゃなくて・・・」

まぁ大体の見当はついてる。11月の下旬と言えば・・・

律「唯の誕生日のことだろ?」

紬「すごい!りっちゃんどうしてわかったの?」
106 : ◆Gln3lxvSW. :2010/11/27(土) 10:34:19.47 ID:PxoazXg0
不思議そうに小首を傾げるムギ。

そのおとぼけぶりと可愛らしさに苦笑しながら、私が答えた。

律「この前梓の誕生日プレゼントの相談を受けたばっかりだからな」

紬「えへへ、そうだったね」

ちろっと舌を出してみせるムギを眺めながら、シェイクを啜る。

バニラの香りとしつこい甘ったるさが喉を通り過ぎていく。

コーラにしておくべきだったかな。

ムギが続けて言った。

紬「去年のクリスマス会で、ビックリ箱をプレゼントしてたでしょ?」

律「あぁ、あれは澪を驚かせようと思って」

紬「でも、さわ子先生が当てちゃったのよね」

律「あはは。あの時は参ったよなぁ」

紬「ふふふ。それでね、私も今度の唯ちゃんの誕生日にビックリ箱をプレゼントしようと思うの!」

満面の笑みで紬が言う。

楽しいことを思いついたときのあの顔だ。
107 : ◆Gln3lxvSW. :2010/11/27(土) 10:35:10.23 ID:PxoazXg0
律「唯は鈍感だからなぁ、あれくらいのビックリ箱で驚くかどうか」

紬「そうなの?じゃあもっとすごいビックリ箱を持ってくるわ!」

どうあってもビックリ箱を持ってくるつもりらしい。

こうなったムギを止められる者などいないだろう。

私は突っ込むのをやめて話をあわせることにした。

律「そっか。それは楽しみだな」

紬「それでね、りっちゃんにどんなのがいいか相談したくて」

律「そう言われてもなぁ」

紬「お願いします、りっちゃん先生!」

先生か、悪い気はしないな。

よし、ここはひとつ誰もが驚くビックリ箱の秘訣でも伝授してやるか。
108 : ◆Gln3lxvSW. :2010/11/27(土) 10:35:49.31 ID:PxoazXg0
律「おほん、そうだな・・・まずは」

紬「まずは?」

興味津々、と言った顔で身を乗り出して聞いている。

得意になった私が続ける。

律「まずは空けた瞬間飛び出すこと、これだな!」

紬「ふむふむ、空けた瞬間飛び出す・・・と」

真剣にメモまでとっている。

まぁこの真面目さがかわいいところだったりするんだけどさ。

律「何かなって箱を覗き込む前に飛び出さなきゃ負けだ!」

紬「はい!りっちゃん先生!」

かわいいノートにすらすらとメモをとっていく。

そんなたいしたこと言ってないってば・・・
109 : ◆Gln3lxvSW. :2010/11/27(土) 10:36:48.91 ID:PxoazXg0
律「水が噴き出すビックリ箱なんかもあるんだぞ。鈍感な唯にはピッタリかもな。」

紬「なるほど、水が噴き出す・・・」

律「スミが噴き出して顔中真っ黒、なんてのもいいかもな!」

紬「なるほど!」

ちょっとやりすぎかな?

まぁムギなら笑って許してもらえるよな。

私がやったら確実に澪に殴られる。

たんこぶ何段重ねか・・・想像もしたくない。
110 : ◆Gln3lxvSW. :2010/11/27(土) 10:37:35.67 ID:PxoazXg0
律「最後は何と言っても一生忘れられないようなインパクトだな!」

紬「インパクト?」

律「そう!一番重要なのはインパクト!唯の今後の人生を左右するようなキツいのをお見舞いしてやれ!」

紬「わかったわ!きっついのをお見舞いする!」

鼻息荒く答えるムギの頬が高潮している。

こりゃ本気だな。

し〜らないっと♪

そのあとはいつも通り、くだらない話をして解散。

まぁそのくだらない話のほとんどは私がしたんだけどさ。

唯の誕生日、私は無難に筆記用具でもプレゼントするか!
111 : ◆Gln3lxvSW. :2010/11/27(土) 10:38:33.89 ID:PxoazXg0
今日は待ちに待った日!

そう、私の誕生日なのです!

私の家に集まってお誕生日会。

憂が楽しそうに準備している飾りつけ、ごちそう、それにケーキ!

うぅ、待ちきれないよぅ・・・

唯「憂、なにかお手伝いできることある?」

憂「だめだよ!お姉ちゃんは今日の主役なんだから!」

ちぇ〜っ、あっさり断られちゃった。

いいもん、私にも計画があるんだもんね。

唯「名づけて『お返しプレゼント作戦』だよっ!」

この日のために買った便箋、キラキラのラメ入りペン。

これでみんなにお手紙を書く計画なのです!
112 : ◆Gln3lxvSW. :2010/11/27(土) 10:41:13.69 ID:PxoazXg0
唯「ふふ。早くみんなこないかなぁ」

鼻歌交じりにペンを走らせる。

憂「お姉ちゃん、皆さんきたよー」

あれ?いつの間にか寝てたみたい。

たいへん!お手紙は・・・全員分書いてあるね。

慌てて封筒にしまって、ポケットに入れる。

喜んでくれるといいなぁ。

リビングへ行くと、真っ暗!

唯「憂?真っ暗だよ?」

そろそろと様子を伺った、その時だった。

パァン!

クラッカーの炸裂音が響く。
113 : ◆Gln3lxvSW. :2010/11/27(土) 10:42:29.74 ID:PxoazXg0
律「唯、誕生日おめでとう!」

澪「おめでとう!」

梓「おめでとうございます!」

紬「唯ちゃんおめでとう!」

憂「お誕生日おめでとう、お姉ちゃん!」

続いて、みんなの祝福の声。

うれしくって、涙が出そうだよ。

唯「ありがとー!」

律「おいおい、何涙ぐんでるんだよ。」

澪「ほら、主役はこっち」

促されて着席した私の前にズラリと並ぶごちそう、ケーキ、友人たち。
114 : ◆Gln3lxvSW. :2010/11/27(土) 10:43:46.83 ID:PxoazXg0
ハッピーバースデー!

それからは、夢のようなひと時だった。

おいしいごちそう。みんなの笑顔。

みんないつも以上にはしゃいでいたっけ。

律「唯、誕生日おめでとう!」

そういって取り出したのは可愛い文房具。

唯「わぁ、ありがとう!」

律「結構恥ずかしかったんだぞ?こんなファンシーな物買うの。」

照れたようにそう言ったリっちゃんの顔、かわいかったなぁ。

澪ちゃんからはかわいいぬいぐるみ。

あずにゃんからはロックのCD。

和ちゃんからは佃煮のセットをもらった。

和ちゃん、お中元じゃないってば・・・
115 : ◆Gln3lxvSW. :2010/11/27(土) 10:44:50.63 ID:PxoazXg0
そしてムギちゃんからは・・・

紬「ふふふ、開けてみて?」

唯「わぁ、可愛い箱!何が入ってるのかな?」

ワクワクしながらふたを開ける。

ブシュッ

飛び出してきたのは・・・水?

唯「びっくりばこ?」

・・・なんだか、顔が熱いや。

あれ、みんなどうしたの?

澪「いやぁああああああ!!」

澪ちゃんの悲鳴で、皮膚を灼かれる痛みに気付いた。

私の顔は、箱から飛び出した濃硫酸で溶かされたのだ。
116 : ◆Gln3lxvSW. :2010/11/27(土) 10:46:56.98 ID:PxoazXg0
律「どういうことなんだ、ムギ!」

紬「ち、ちがう、私は・・・」

ビックリ箱は、アイデアを琴吹お抱えの研究所に持ち込んで作らせたものらしい。

依頼内容のメモには



空けた瞬間、液状のものが出る、開けた人の一生を左右するような箱。


117 : ◆Gln3lxvSW. :2010/11/27(土) 10:48:10.06 ID:PxoazXg0
紬「違う・・・違うの・・・こんなはずじゃ・・・」

呆然とするムギちゃんを尻目に、わたしは洗面所の鏡の前へと急ぐ。

溶けていた。

唯「私の・・・私の顔・・・わたし・・・わたしの・・・へへへ」

頭がカァッとなるのと対照に、心が冷えていくのを感じた。

台所に向かい、果物ナイフを取り出す。

ぎゅっと握り締め、リビングルームへ。

青ざめて震えている琴吹へつかつかと歩み寄る。

その場にいる誰も動かなかった。

唯「まぁゆぅげぇええええ!!」

私は、琴吹の髪を引っつかむと、腹部めがけてナイフを突き立てる。

果物ナイフは、かつての親友の白い肌を容赦なく貫いた。

えぐるようにしてそれを引っこ抜く。
118 : ◆Gln3lxvSW. :2010/11/27(土) 10:49:34.18 ID:PxoazXg0
もう一度刺そうとしたとき、私は友人たちに取り押さえられた。

澪「唯、やめろって!」

律「おい、唯!やめるんだ!」

それを振り払うと、玄関のドアを開け、外へと飛び出した。

唯「うるさいブス!顔を溶かされたことがないからそんなことが言えるんだよ!」

律「ブ・・・」

唖然とする律にかまわず、私は続ける。

唯「そこのホルスタイン!怖いだろ?私の顔が怖いか?ん?」

澪は悲しそうな顔を浮かべて何も答えない。その表情は怯えではなかった。
119 : ◆Gln3lxvSW. :2010/11/27(土) 10:50:56.23 ID:PxoazXg0
憂「お姉ちゃん、病院いこ?直して・・・」

唯「じゃあさ、憂の顔ちょうだいよ」

憂「・・・えっ?」

唯「私たちそっくりなんだしさ、憂の顔を私に移植したらいいんだよ」

憂は下唇をかみしめたまま、答えない。

唯「ほらね、何も答えない。自分が一番可愛いんでしょ?そこの生意気チビは眉毛につきっきりだし」

ちらりと見やると、梓はこちらを見て睨んでいた。

どうして、私は何も悪くないのに・・・
120 : ◆Gln3lxvSW. :2010/11/27(土) 10:51:40.38 ID:PxoazXg0
やりきれなくなって、玄関へと駆け出した。

ドアを開けて、外へ飛び出す。

向かった先は学校。

歩く道々、考えていた。

眉毛があんなことをしなければ、私たちは、私は幸せでいられたのに。

もう戻れっこない。

もし仮に私の顔が治って、元通りになったとしても、もうあの頃みたいに笑えないよ。

私たちの幸せは繊細なガラス細工のように脆かったんだ。

ここまで幸せに過ごせただけでも奇跡なんだよ。

もう、戻れない。
121 : ◆Gln3lxvSW. :2010/11/27(土) 10:52:22.53 ID:PxoazXg0
気がつくと、通いなれた校舎の屋上に立っていた。

みんなで夕日を見上げた場所。

ほんの少し前まで、あんなに幸せだったのに

みんなが私の誕生日を祝ってくれて

嬉しくて

楽しくて

なのに今の私の心に湧き上がってくるのはその何倍もの・・・

幸せだったときには、こんな感情気付きもしなかった。

気付きたくなんてなかったよ。

唯「どうしてこんなことになっちゃったんだろうね」

一人呟きながら、上履きを脱ぐ。

唯「ねぇ、人の心ってさ」

―――――――まるでパンドラボックスだね






グチャ


          おしまい
122 : ◆Gln3lxvSW. :2010/11/27(土) 11:01:04.34 ID:PxoazXg0
以上です。
次の方どうぞー
123 : ◆Gln3lxvSW. :2010/11/27(土) 11:02:43.96 ID:PxoazXg0
読み返したら二回飛び出してるwwwwww
>>118
それを振り払うと、玄関のドアを開け、外へと飛び出した。

この部分は忘れてください
124 : ◆HLxYS9HHyE [sage]:2010/11/27(土) 11:55:27.87 ID:wR.Su.AO
12時から投下しますぜ
125 : ◆HLxYS9HHyE [sage]:2010/11/27(土) 12:00:02.32 ID:wR.Su.AO
デパート

唯「これぐらいかなあ?」

唯「お菓子とか色々買ったでしょー……買い過ぎたかな?まあいっか」

唯「今日は誕生日なんだから贅沢しなきゃね!」フンスッ
126 : ◆HLxYS9HHyE [sage]:2010/11/27(土) 12:01:52.14 ID:wR.Su.AO
・・・・・・
唯の家

唯「ただいま〜」

唯「……」

唯「って誰もいないよね」

唯「一人暮らしは寂しいな〜まあ私から言い出したことなんだけどね」
127 : ◆HLxYS9HHyE [sage]:2010/11/27(土) 12:03:31.59 ID:wR.Su.AO
唯「そういえば、憂からケーキ届いてたっけ?ケーキ、ケーキ♪」

『お姉ちゃんへ
そっちに行けなくてごめんね!でも愛情込めて作ったから!召し上がれ 憂』

唯「…はあ、寂しいなー」

唯「みんなでパーティでもしたかったよ」

唯「でも…」
128 : ◆HLxYS9HHyE [sage]:2010/11/27(土) 12:05:14.74 ID:wR.Su.AO
・・・・・・・・
数時間前

ファストフード店

唯「りっちゃん、今日はなんの日か知ってるかい!?」

律「ん?」

唯「ふんふん!」

律「…なんかあったっけ、澪?」

澪「へ!?あ、あー知らないなー…あはは」
129 : ◆HLxYS9HHyE [sage]:2010/11/27(土) 12:07:21.77 ID:wR.Su.AO
律「ムギは?」

紬「な、なんのことかさっぱり〜…」

律「梓」

梓「にゃ!?さ、さあ…?知らないですねー…」

律「…だってよ」

唯「」ガクガク
130 : ◆HLxYS9HHyE [sage]:2010/11/27(土) 12:09:07.88 ID:wR.Su.AO
・・・・・・・・

唯「…結局言い出せず今に至る、はは」

唯「みんななんで知らないの〜…高校生の時は毎年祝ってくれたのにい…うう」

唯「忘れちゃったのかなあ……はあ」

唯「もう、一人じゃつまんないよ〜!」ジタバタ
131 : ◆HLxYS9HHyE [sage]:2010/11/27(土) 12:11:19.54 ID:wR.Su.AO
唯「はあ……」

・・・・・・
唯「……もう夜かあ」

唯「と、とりあえずケーキ食べよう!えと…ローソクをさして…ライターライター」ガサゴソ

シュボッ

唯「あぢっ!」
132 : ◆HLxYS9HHyE [sage]:2010/11/27(土) 12:14:13.11 ID:wR.Su.AO
唯「うんと…唯ちゃん、19歳の誕生日おめでとう!」

唯「ふーっ!」

唯「……あ、歌うたわなきゃね」

唯「きっとみんなこない、ひとりきりのマイバースデー♪Uh Silent night None night…」

唯「なあんて…ははっ」
133 : ◆HLxYS9HHyE [sage]:2010/11/27(土) 12:16:58.76 ID:wR.Su.AO
唯「…うぐっ、やっぱり寂しいよう……」グスッ

唯「なんで…なんでみんな来てくれないの?おめでとうなんて一言も聞いてないよう……」ズビッ

唯「うぐ……あぐ…………ひっ……うう………」

ガタガタッ

唯「!?」ビクッ

唯「な、なに…?泥棒……?」
134 : ◆HLxYS9HHyE [sage]:2010/11/27(土) 12:19:57.01 ID:wR.Su.AO
ピンポーン

唯「!だ、だれだろう…」

タタッ

ガチャッ

唯「!み、澪ちゃんにあずにゃん!?」

梓「こんばんはです」

澪「遅れてごめんな」

唯「へっ?」
135 : ◆HLxYS9HHyE [sage]:2010/11/27(土) 12:23:57.34 ID:wR.Su.AO
律「おーい、澪ー!」

紬「こっちは準備できたわよ〜!」

律「よっと」タッ

紬「」タッ

唯「りっちゃんにムギちゃんも…」

唯「なんで…」
136 : ◆HLxYS9HHyE [sage]:2010/11/27(土) 12:26:08.26 ID:wR.Su.AO
律「なあに言ってんだよ」

澪「そんなに目腫らしちゃって…」

梓「ほら、ムギ先輩」

紬「ライトアッ〜プ♪」ポチッ

ピカッ!

唯「!」

唯「あ……」
137 : ◆HLxYS9HHyE [sage]:2010/11/27(土) 12:27:53.06 ID:wR.Su.AO
律「おおっ!綺麗だな〜!」

澪「うん…」

律「それにしても唯の家がマンションとかじゃなくてよかったぜ〜マンションだったらこんなことできないし?」

梓「ていうか電気代は…」

紬「もちろん私持ちよ!」ビッ

澪「…まあ分かってたけどな」
138 : ◆HLxYS9HHyE [sage]:2010/11/27(土) 12:31:16.89 ID:wR.Su.AO
唯「み、みんなこれ…」

律「…へへっ」

澪「ちょっと遅れちゃったけど」

紬「私達なりの気持ちを込めたわ〜♪」

梓「喜んでくれると嬉しいです!」

律澪紬梓『誕生日おめでとう(ございます)!!』
139 : ◆HLxYS9HHyE [sage]:2010/11/27(土) 12:33:49.96 ID:wR.Su.AO
唯「あ…うう……み、みんなあ〜!!」ダキッ

律「うおう!」

澪「ち、ちょっと唯!?」

紬「キャー♪」

梓「えへへ」

唯「みんな、嬉しいよ〜!!」ギュウウ

みんながくれたプレゼントはきらきらと光る、とても大きい宝箱のようでした

おわり
140 : ◆HLxYS9HHyE [sage]:2010/11/27(土) 12:35:20.91 ID:wR.Su.AO
終わりです
次の方よろしく
141 : ◆WPAs7IEKQY :2010/11/27(土) 12:55:44.67 ID:6WaboMwo
みなさん乙です。
13時から投下します。
142 : ◆WPAs7IEKQY [sage]:2010/11/27(土) 13:00:07.72 ID:6WaboMwo
11月中旬。木々が真っ赤に染まり、少しづつ散り始める季節。
平沢唯は、盛大に悩んでいた。

和「何唸ってるのよ、唯。」

唯「あ、和ちゃん。実はどの高校にしようかまだ決まらなくて。」

和「えっ、まだ決めてなかったの? 受験までもう3ヶ月しかないのよ?」

唯「うん。でも私、和ちゃんみたいに頭よくないし、高校のこともよくわからないし。」

和「はあ…まったく、困った子ね。」

唯「う〜、ゴメン和ちゃん…」
143 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 13:01:18.86 ID:6WaboMwo
和「なんで謝んのよ。で、模試とかはどうだったの?」

唯「え〜っと…あ、あった。はい、こんな感じですっ。」

和「どれどれ…あら、ここB判定出てるじゃない。」

唯「うん、でも……」

和「それで…え? 第1志望、桜ヶ丘?」

唯「えへへ。」

和「えへへ、じゃないわよ。D判定。今の時期にこれじゃつらいんじゃない?」

唯「うん、わかってるけど…」

何か言いたげな唯の様子に和はすぐに気づく。
唯は、自分と同じ高校に行きたがっていると。
144 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 13:02:06.66 ID:6WaboMwo
唯「私、和ちゃんと同じ高校行きたい。」

和「はあ…あのね、唯。気持ちは凄く嬉しいんだけどね。」

和「唯、家でほとんど勉強してないでしょ。憂から聞いて知ってるわよ。」

和「あと、この前の実力テストも名前書くの忘れて0点だったし。」

和「それに、基本的な間違いも多いし記述問題は軒並み不正解だし。」

和「はっきり言って、今のままじゃ…絶対に無理よ?」

唯「う、ヒドイよ和ちゃん。そこまで言わなくても…」

我ながらキツイ物言いだったかもしれない。けど、この脳天気な子にも現実って
ものを知ってもらわないといけない。和は思う。
145 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 13:02:48.21 ID:6WaboMwo
和「とにかく、このB判定出てるところメインにしたら良いと思うわ。」

唯「うん。」

和「そんなに悪い高校じゃないし、今から頑張れば絶対受かるわよ。」

唯「うん。」

和「それと…」

唯と和とは長い付き合いだが、昔からいつもこんな調子だった。
唯がグズグズしてるところを、和が面倒をみる。そんな関係。

唯は私にやたらと助けを求める、そして和はついつい彼女を甘やかす。

和は中学3年になった時に決めた。
こんな関係は、中学3年までにしておこう。唯のためにならないと。
146 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 13:03:40.87 ID:6WaboMwo
和「というわけで、憂からも何とか言ってあげてよ。」

憂「そうなんだ。お姉ちゃん、そんな感じなんだ。」

和「ええ。このままズルズルと迷ってると勉強にも差し支えるし。」

憂「うん。でもお姉ちゃん、絶対に和ちゃんと同じ高校に行くって言ってた。」

和「それは構わないわよ。でも、今のままじゃ確実にダメね。」

憂「手厳しいね、和ちゃん。」

和「唯のためを思って言ってるの。」

憂「うん…わかった。お父さんやお母さんにからも言うように言っとくよ。」

和「よろしくね。」
147 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 13:05:28.58 ID:6WaboMwo
憂「あ、そうだ。もうすぐお姉ちゃんの誕生日なんだけど…」

和「知ってるわよ。もし良いのなら、今年もお邪魔させてもらうわ。」

憂「うん! ありがとう和ちゃん!」

これから唯と別の高校に進むこととなると、今は近くてもいずれは疎遠になって
しまうかもしれない。和はそう思い、出来る限り唯との時間は大切にしている。
多分、和自身も今の時間、関係を名残り惜しく感じているのだろう。

和「大したプレゼントはあげられないかもしれないけどね。」

憂「ううん! 和ちゃんが来るってだけで、お姉ちゃん喜ぶから!」

和「ええ、私も楽しみにしてるわ。」

和「(…今年で最後になるかも知れないしね。)」
148 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 13:06:06.04 ID:6WaboMwo
平沢家

唯「う〜ん…」

憂「お姉ちゃん、どうかしたの?」

唯「うん…ちょっと高校のことでね〜…」

憂「(あ、和ちゃんの言ってたことかな…)」

憂「お姉ちゃん、今日和ちゃんと話したんだけど…」

唯「うん、わかってるよ。私、桜高は諦める。」

憂「お姉ちゃん…」

唯「明日からちゃんと勉強するよ。ごめんねうい〜、心配掛けて〜…」

憂「(今日からじゃないんだ。)」
149 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 13:06:54.07 ID:6WaboMwo
憂「あ、そうだ。和ちゃん、今年の誕生日来てくれるって。」

唯「ホント!?」

憂「うん。今日聞いたら、是非行きたいって。」

唯「そうなんだ〜。えへへ〜、楽しみだなあ。」

憂「ふふ、そうだね…あ。」

憂はここで気付く。このまま別の高校になると、和は自分たちから離れていくんじゃないかと。
縁が切れることはないだろうけど、でも不安になる。

憂「(和ちゃんとお姉ちゃん…離れちゃうんだ。)」

憂「(お姉ちゃん…)」
150 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 13:07:37.21 ID:6WaboMwo
真鍋家

ブーン

和「ん? メール?」

和「憂からだ。」

To 真鍋和 From 平沢憂
 お姉ちゃん、高校決めたみたいです。
 でも、私はお姉ちゃんに桜ヶ丘行って欲しいです。
 和ちゃんと離れることになるかもしれないから。

和「……」

和「まったく…姉妹揃って甘えんぼさんね。」

和「私だって…寂しいわよ。」

唯にはああ言ったものの、出来れば彼女の希望が叶って欲しいという思いもある。

和「どうしたものかしら、ね…」
151 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 13:08:39.43 ID:6WaboMwo
11月27日 誕生日当日 平沢家

和「お邪魔します。」

憂「あ、和ちゃん。いらっしゃい。」

和「ちょっと早く来ちゃったわ。唯は?」

憂「うん、なんか部屋でゴロゴロしてるみた…あ。」

和がきたことを察したのか、いきなり唯が駆けつけてくる。
そしてそのまま和に抱きつきにかかる。

唯「和ちゃーん!! ありがとう!!」

和「ちょっ、唯。離しなさい。」

しかし唯は離さない。

和「はあ、まったくこの子は…」
152 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 13:09:37.70 ID:6WaboMwo
憂「とりあえず、もうちょっとだけ待ってて。すぐケーキの用意するから。」

和「ありがとう。」

唯「ね、ね? 和ちゃん! プレゼント! プレゼントは!?」

和「…唯、ちょっとは慎みってものを知りなさい。」

唯「ぶー、知らないよそんなの。だから、今ちょうだいっ?」

和「はいはい、後でね。それより、なんでこんな日まで変T着てるのよ。着替えてきたら?」

唯「おぉう、そうだった。忘れてたよ。じゃ、ちょっと着替えてくるね!!」

唯は、和から離れバタバタと廊下を駆けていく。
その様を見て、和は笑みをこぼす。

和「まったく、いくつになっても慌ただしいんわね。」
153 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 13:11:07.40 ID:6WaboMwo
一足先に和は居間にあがる。テーブルには既にいくつかの料理が用意されている。

和「気合入ってるわね、相変わらず…ん?」

憂「和ちゃん。とりあえず、そこに座って待ってて。」

和「え、ええ…ねえ、憂。これは?」

憂「何? あ…それは。」

和「…もしかして、唯が?」

憂「うん、ついさっき。踏ん切りつけなきゃって言って。」

和「踏ん切り…ねえ。」

和「(やっぱりこうするしかないか。まったく世話のやける……)」
154 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 13:12:07.06 ID:6WaboMwo
その後、少人数ながらも楽しく誕生会は開かれた。
そして、料理を食べ終わる頃に唯はもう一度催促を始める。

唯「コホン…では改めて。和ちゃん! プレゼント!!」

和「はいはい。これね。唯、15歳のお誕生日おめでとう。」

和はそう言って、少し小さめの包装を差し出す。

唯「ありがとう和ちゃん!! ね? 開けていい!!?」

和「ええ、でもちょって待って。」

唯「ん?」

和「唯、私ね…実は唯に隠してたことがあるの。」

唯「な〜に?」

和「私ね……」



和「少しだけど、未来のことが予知できるの。」
155 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 13:12:49.38 ID:6WaboMwo
憂「(え…和ちゃん、急に何を?)」

唯「えーっと、和ちゃん? 何のこと?」

和「ふっ、思い出せないなら思い出してもらうまでよ。」

和「小学3年の時、図工で発泡スチロール使うの。唯、忘れてきたわよね。」

唯「うん、確かその時多めに持ってきた和ちゃんに分けてもらったっけ。」

和「ええ。実はあの時、唯が忘れてくることを予知してたのよ。」

憂「(なん…だと……)」

和「それだけじゃないわ。小学4年の遠足の時も、中学1年の調理実習の時も。」

和「全部わかってて、私は多めに用意していたの。」
156 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 13:13:35.60 ID:6WaboMwo
憂「(え、何…それってこじつけなんじゃ……)」

唯「…ホント?」

和「ええ。」

唯「和ちゃん…スゴイ。スゴイよ!!」

憂「(信じた!?)」

唯「和ちゃんがそんなにすごかったなんて…私、ビックリだよ!」

和「ええ。そこで、そんなにスゴイ私から、唯にもう一つプレゼントがあるの。」

唯「え、なになに!?」

和「唯…あなたの未来のことよ。」
157 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 13:14:17.71 ID:6WaboMwo
唯「私の未来?」

和「そう、高校生活のことね。唯、高校では部活したいって言ってたわよね?」

唯「う、うん。」

和「何の部活かまではわからなかったけど…でも、唯はそこで新しい仲間に恵まれるわ。」

唯「ホント!?」

和「ええ。人数は…まあ、特に仲良くなるのが3〜4人…いや、まあそんなとこかしら。」

唯「へぇ〜、楽しみだなぁ〜。」

和「それで、高校でも唯は相変わらず私に頼りっぱなし。」

唯「?」

和「怠けたところはしばらく治らないわね。」
158 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 13:15:10.32 ID:6WaboMwo
唯「えーっと、和ちゃん?」

和「ん?」

唯「その未来、すごく嬉しいんだけど。一ついいかな?」

和「どうぞ。」

唯「私と和ちゃん、違う学校行くじゃん。和ちゃんに頼りっぱなしてどういう……」

和「はあ…唯。わかってないわね。」

和「唯、あなたは桜高に進学するのよ。」

唯「!?……ホント?」

和「私が嘘ついたことあったかしら?」

唯「いや、まあ、あの、でも……」

和「ツベコベ言わないで……」

不意に和はテーブルの下から何かを取り出す。
そして、それを勢い良くテーブルに叩きつけるように置く。
159 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 13:15:54.17 ID:6WaboMwo
バァン!!

和「受けなさい。これを拾って。」

テーブルに置かれたもの、それは……

唯「ご、ゴミ箱?」

居間の隅に置いてあったゴミ箱だった。
中には、何かの封筒らしきものがキレイなまま捨てられている。

憂「和ちゃん、それって。」

和「桜高の願書。踏ん切りつけるつもりで捨てたそうだけど、用紙は綺麗なまま。」

和「唯、あなた全然踏ん切りついてないんじゃないの?」

唯「……」

和「でも…当たり前よね。唯は桜高に進学するんだから。」

唯「和ちゃん……」

和「さあ、唯。もう一度これを手に取りなさい。大丈夫よ、唯なら絶対受かるから。」

唯「和ちゃん……うん…! うん!!」

憂「(…つーか、何故ゴミ箱ごと? 中身だけ渡せばいいじゃん…)」
160 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 13:17:08.18 ID:6WaboMwo
唯「ありがとう、和ちゃん。私、頑張るよ!」

和「ええ、これからは一緒に勉強しましょう。」

唯「うん! あ、そうだ。もうひとつのプレゼント。」

和「ああ、それね。」

唯「中身は〜…え、赤本?」

和「ええ。それ使って当面は勉強ね。」

唯「でも和ちゃん。これ、桜高のじゃないよ?」

和「当たり前よ。その程度の問題解けなきゃ桜高なんて夢のまた夢よ。
  とりあえず、それ年内にはある程度解けるようになりなさい。」

唯「ね、年内〜!? キツイよ和ちゃ〜ん!」

和「文句はナシ。今まで勉強してなかった分、みっちり鍛えてあげるから。覚悟なさい。」

唯「ひ、ひえ〜。」
161 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 13:17:34.68 ID:6WaboMwo
後日

憂「和ちゃんっ!」

和「あら、憂。唯はどう? ちゃんと勉強してる?」

憂「うん、最近は和ちゃんが見てないところでもすごく頑張ってるよ。」

和「そう。唯には頑張ってもらわないとね。じゃないと、私が嘘つきになっちゃうわ。」

憂「えっ、嘘つきって…?」

和「……未来なんて見えるわけないじゃない。」

憂「(やっぱりか。)」

和「出まかせでそれっぽいこと言ったはいいけど、この先ちょっと不安だわ。」

憂「はは…あ、でも和ちゃん。いいの? このまま同じ高校入ったら…」

和「…もう少し、あの子の面倒見ることになるかもね。」
162 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 13:18:36.44 ID:6WaboMwo
和「でも、構わないわよ。もう3年くらいは。」

憂「…えへへ〜。」

和「ん? どうしたの憂、くっついて来ちゃって。」

憂「まだ和ちゃんと離れないと思うと嬉しくて。」

和「はいはい、そうね。私も嬉しいわよー。(棒)」

憂「和ちゃん。棒読みすぎっ。」

和「ふふ。」
163 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 13:19:31.81 ID:6WaboMwo
和は思う。

中学3年間で一旦区切りをつけようと思った関係。でも、私自身それを延長したかった
のかも知れないと。この姉妹とのの関係はまだまだ続きそうだ。

この後、唯は見事に和と同じ高校に合格する。
そして、和が言った嘘の未来は(都合よく)現実になっていく。

出まかせで言った未来。
しかし、それが結果として唯の人生にとって最大のプレゼントになったのかもしれない。


おしまい
164 : ◆WPAs7IEKQY :2010/11/27(土) 13:20:15.52 ID:6WaboMwo
以上、終わりです。
次の方、どうぞ。
165 : ◆msoYUqBFAM [sage]:2010/11/27(土) 14:00:41.93 ID:fh36igAO

唯「この日何の日気になる日」

166 : ◆msoYUqBFAM [sage]:2010/11/27(土) 14:01:54.90 ID:fh36igAO

唯「りっちゃんりっちゃん」

律「んー?」

唯「私の名前を……じゃなかった」

唯「今日の日付を言ってみろーぃ!!」

律「日付? えーっと……11月27日だな」

唯「うんうん。だとしたらなにか言うことがあるよね!」

律「へっ? 今日なんかあったっけ?」

唯「!?」
167 : ◆msoYUqBFAM [sage]:2010/11/27(土) 14:02:26.79 ID:fh36igAO

唯「えっ? 覚えてないの?」

律「うーん?」

唯「ほらほら〜今日はあれだよ。めでたい日だよー?」

律「めでたい……?」

律「……あーあー! あれねあれね!」

唯「思い出した!?」

律「ああ。私としたことがすっかり忘れてたよ」

律「ホントおめでたいよなー」

唯「うんうん!」

律「ドリキャスの発売日!」

唯「うん?」
168 : ◆msoYUqBFAM [sage]:2010/11/27(土) 14:03:38.02 ID:fh36igAO

律「いやー懐かしいなぁ。もう12年も前になるのか」

律「コントローラーの形は好きだったんだけどなー」

唯「いやまあ懐かしいけどね……」

唯「ほ、他にももっとあるでしょー!」

律「他? セガサターンは11月22日発売だったけど……」

唯「セガで掘り下げないで!?」

律「おいおい、最近落ち目とはいえセガのゲームは結構面白いんだぞ?」

律「おしゃれ魔女ラブandベリーにはいくらつぎ込んだかわかんないや」ハハハ

唯「知らないよそんなこと!」
169 : ◆msoYUqBFAM [sage]:2010/11/27(土) 14:04:08.07 ID:fh36igAO

律「筐体ゲーの面白さがわからないとは唯もまだまだお子ちゃまでちゅねー」プププ

唯「筐体ゲームなんかどうでもいいよ!」

唯「今日の日付が大事なんだってば!」

律「日付ぇ?」

唯「そうそう! 今日はとっても大事な日でしょー?」

律「大事な日ねぇ…………あっ!」

唯「わかった!?」

律「もちろん! いやー忘れてた忘れてた」

律「今日は誕生日じゃないか!」

唯「!」パアッ!

律「ブルース・リーの!」

唯「」
170 : ◆msoYUqBFAM [sage]:2010/11/27(土) 14:05:18.91 ID:fh36igAO

律「うっひょー危ない危ない。すっかり忘れてた!」

唯「まだ忘れてるよ! 思い出すべきこと他にもあるよ!」

律「ふっふーん♪ 実は私ブルース・リーの大ファンなんだよねー」

唯「へ、へぇー……」

律「毎年リーの誕生日にはTSUTAYAで酔拳を借りて徹夜で見ることにしてるのさ!」

唯「なんで酔拳!? それジャッキーじゃん!」

 「ホントにファンなの!?」

律「考えるな。感じろ」

唯「無茶言わないでよ!」
171 : ◆msoYUqBFAM [sage]:2010/11/27(土) 14:06:08.02 ID:fh36igAO

律「あちょー!」ブンブン

唯「ドラムスティックにタコ糸付けてヌンチャクみたいに振り回すのは止めて!」

律「そういえば」ピタッ

律「タコ糸ってなんでタコ糸なんだろ?」

唯「えっ?」

律「ほら、タコ糸はタコの糸なのに全然オクトパスな要素ないじゃん」

唯「あっ確かに」

律「むむむ……」

唯「むぅ……」

律「……」

唯「……って違うよ! タコ糸全然関係ないよ!」

唯「今は今日が何の日かって話だよう!」

律「んん?」
172 : ◆msoYUqBFAM [sage]:2010/11/27(土) 14:10:19.08 ID:fh36igAO

唯「ほらほら思い出して! 今日は誰かの誕生日だよー?」

律「ん? だからブルース

唯「リー以外で!」

律「えー……うーん」

唯「ほらほら〜案外身近な人のこと忘れてない? 東大下暗しだよー?」

律「身近な……」

律「あ。椎名林g……いやあの人は25日か」

唯「その人ホントに身近!?」

律「身近も身近。大ファンさ」

 「毎年11月25日には東京事変のライブDVDを徹夜で見ることにしてるのさ」

唯「りっちゃんの11月徹夜ばっかりだね!? すごい!!」
173 : ◆msoYUqBFAM [sage]:2010/11/27(土) 14:11:09.46 ID:fh36igAO

律「あ、そういえば今日は小室哲哉の誕生b

唯「違う!」

律「パナソックの松下幸之s

唯「違う!」

律「ギタリストのジミ・ヘンドリッk

唯「違う!」

律「杉田かおr

唯「違うよお!」

律「平沢y

唯「ちーがーうー!!」
174 : ◆msoYUqBFAM [sage]:2010/11/27(土) 14:11:45.15 ID:fh36igAO
唯「ホ、ホントに覚えてないの……?」

律「うーん……考えちゃいるんだけどなぁ」

唯「…………ぅ」ウルッ

律「唯?」

唯「……うわーん! りっちゃんのバカー!!」ポカポカ

律「い、いたっ!いたいいたい」

律「ちょっ唯! 叩いたら思い出すものも思い出せないだろ!」

唯「知らないよバカー!」ポカポカ

唯「本当に痛いのは私の心、あるいはメルヘンクイーンの澪ちゃんだよ!」ガッシポカ

律「澪関係なくない!?」
175 : ◆msoYUqBFAM [sage]:2010/11/27(土) 14:13:11.44 ID:fh36igAO
唯「ヒック……グス……りっちゃんのバカ」

律「ごめんって」

唯「チビ……ハゲ……クリリン」クスン

律「おい待て」

唯「大事な誕生日も覚えてられないりっちゃんなんてパンプット以下だよ!」

律「誰だよパンプット……」

唯「記憶力の足りないりっちゃんには教えてあげないもんね」

唯「べーっ!」

律「まったくもう…………ん。そろそろかな」

唯「?」


バターン!!
176 : ◆msoYUqBFAM [sage]:2010/11/27(土) 14:13:39.26 ID:fh36igAO

梓「遅くなりましたー!」

唯「あ、あずにゃん!?」

紬「ごめんね、唯ちゃん」

澪「律はちゃんとしてたか?」

唯「ムギちゃんそれに澪ちゃん!」

律「ほんじゃま、全員揃ったところで」

セーノッ


「 お 誕 生 日 お め で と う ! 」


唯「……」

唯「!?」
177 : ◆msoYUqBFAM [sage]:2010/11/27(土) 14:14:16.74 ID:fh36igAO
律「せっかくのお祝いなのにキョトンとしちゃってどうしたどうした」

唯「いや、いきなりの展開にちょっとついていけなくて……りっちゃん、今日は何の日?」

律「ん? そりゃ誕生日だろ、唯の」

唯「覚えててててくれたの!?」

梓「てが多いですよ!?」

律「あったりまえじゃんか! むしろ忘れたことがないさ」

唯「で、でもでもさっきまで……」

澪「実は私たち今まで唯のプレゼントを準備してたんだよ」

唯「えっ」

紬「それが予想以上に手間取っちゃって……りっちゃんにはつないでもらってたの」

唯「そうだったんだ……」

唯「……りっちゃん大好き!」ギューッ!

律「よ、よせやい照れるだろ」テレテレ
178 : ◆msoYUqBFAM [sage]:2010/11/27(土) 14:15:17.85 ID:fh36igAO

律「そんじゃっ。プレゼント贈呈といきますか」

梓「そうですね」

律紬「てーんてーんててーんてーん♪ てててててってててーん♪」

澪「はい! 唯、おめでとう!」

唯「ありがとう! あ、開けていいかな!?」

律「どうぞどうぞ」

唯「えいっ」ドキドキ

パカッ

唯「おぉー! これは……」
179 : ◆msoYUqBFAM [sage]:2010/11/27(土) 14:15:53.41 ID:fh36igAO
唯「こいつぁ……」

梓「唯先輩! 中身なんでした?」ニコニコ

唯「いやあの……」

紬「遠慮しないでみんなに教えてあげて」ニコニコ

唯「あ、うん……」

澪「ほらほら。早く早く!」ニコニコ

唯「えーっと……これ、ドリームキャスト?」

梓「はい! 律先輩が11月27日といえばドリキャスだって!」

澪「いやーどの中古屋にも全然置いてなくって探すの大変だったよ」

紬「それでいっぱい遊んでね!」

律「良かったな、唯」

唯「ぎゃふん!」




ちゃんちゃん
180 : ◆msoYUqBFAM [sage]:2010/11/27(土) 14:17:26.22 ID:fh36igAO
おしまい

次の人カモーン
181 : ◆wr8kfImLno [sage]:2010/11/27(土) 18:24:24.60 ID:NK3lWgDO
梓「なんて失態なの……」
182 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 18:25:17.71 ID:NK3lWgDO

――1時限目。

昨日の晩から覚醒していて全然眠れなかった。

だって今日はあの日だよ? マスかかずにはいられないじゃない!

梓(ふっ・・フフフッ…)

梓(この日をどれほど待ちわびたことかぁ・・・)ガタッ

梓(ああ唯センパイ唯センパイ唯センパイ!! 今日は愛しいあなたの誕生日でございます!!!)

\梓/(そんなキリストも鼻糞になるめでたい日にー! わたし中野あずにゃんは大変なぎるてぃーを犯してしまいました!!)

梓「なんで誕生日プレゼントを用意してなあああ゛あ゛あい!!!!」バァン!!

憂「ひゃっ!!?」
純「zzz」

梓「…はっ」
183 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 18:27:03.02 ID:NK3lWgDO


――凍った教室の空気に耐え切れず、保健室で寝ることにした。

ベッドまで冷たい…でも私のハートはいつも DOKI★DOKI !

梓(早く学校終われ終われ! オワっちゃこまるから終われ!!)

梓(プレゼント買わないと! いや作らないと! ああもー早退しよっかなー)

<梓>(ってプレゼントなんにも決めてないじゃああん!!)ゴロゴロ

梓(私の誕生日からどれだけ過ぎたと思ってるのよー! いちゃいちゃしすぎてまったく考えてなかった!!)

梓「どーしよどーしよ!」
184 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 18:27:36.14 ID:NK3lWgDO

梓「はっそうだ!」

梓「よいしょ!」ゼンラ!


梓「わたしをあ・げ・る、ハート♪」ウィンク


梓「いやだめね…合宿の時やったらわたしだけ床下で寝させられたし」

梓「それにありきたりすぎる! マンガじゃないんだからもっと奇抜な方法を!!」

カーテン「ジャアア!!」

梓「…あっ」
185 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 18:28:47.42 ID:NK3lWgDO


――先生公認で早退させてもらったはいいけど

梓「パンツはき忘れたしどうする……」♪〜

梓「できれば他の先輩どもと違うものを渡したい……あっ」♪〜

梓「ああ!」

梓「なら渡すものがわからないと!!」ベキッ!

ムッタン「    」

梓「そうとわかれば唯センパイの教室へGOーーー!!!」ダダダッ!

ドア「ガチャッ」

さわ「あれ梓ちゃん準備しtゲフォォッ!」

梓「いったーいぶつかったぁ…」

梓「どきやがれ!!」ダダッ

ドア「バタンッ!」

梓「あれしきの障害に屈するもんか!」ダッダッ

ドア「アンノクソガキャアアアアア」

梓「待っててください唯センパイ! 夜にでもアズニャシャルプレゼントをお届けにあがるのにゃん!!」ダッダッ
186 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 18:30:16.03 ID:NK3lWgDO

梓「よしっ教室が見えた!」ダッダッ

梓「ソイヤー!!」ガラッ!

和「!」
澪「!!?」
律「あずさ!?」
紬「くけけけけ」
唯「zzzz」

梓「…あっ授業中でしたか……」

和「そうなんだ、じゃあわたし生徒会連れてくね」ガシッ

梓「瞬間移動!!!? はなせー!」ジタバタッ
187 : ◆wr8kfImLno [sage]:2010/11/27(土) 18:31:11.20 ID:NK3lWgDO


――生徒会室の前で和先輩をスタンガンで気絶させたのはいいけど

梓「やっぱり放課後待つしかないのかなー」ゲシゲシッ

梓「でもそれまでコイツ蹴ってろっていうの?」ゲシゲシッ

和「  」

梓「あっ」

梓「そうだ!」ゲシッ

グ和ス「パリィンッ」

梓「憂のプレゼントも調べなきゃいけないし教室戻ろ!」グリグリッ

和顔「■■■」

梓「じゃーね金魚のフン!」ダッ

梓「はははは! しょせん和センパイは唯センパイの飾りでしかないのよ!!」ダッダッ

梓「いや飾りなんて上品じゃない! フケよフケよ!」ダッダッ

梓「はっダメダメダメダメ! 唯センパイのフケだよ?!」ダッダッ

梓「ごほうび以外なんでもない!!」ダッダッ
188 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 18:32:33.44 ID:NK3lWgDO

梓「はああ……帰ってきたわたしの教室…」

放送「キーンコー」梓「ういいい゛い゛い゛い゛!!!!」ドア「バァァァアン!!」

梓「………誰もいない…」

梓「…」チラッ

梓「なんだ今3時限終わったばっかりか」

梓「…」

梓「うっし!」ダッ

梓「憂のバッグにプレゼントが入ってるはず絶対入ってる」ゴソゴソ

梓「あれ、唯先輩のパンツならいっぱい入ってるんだけど」ゴソゴソ

梓「とりあえずパンツは押収するとしてプレゼントがない」

梓「……」

梓「…トイレ行こ」タッタッタッ
189 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 18:33:40.76 ID:NK3lWgDO


――トイレの個室でヒマツブシしてると

梓(おなか空いた……)クチュクチュッ

梓(今何時かな)クチュクチュッ

梓「んッ」ピクッ

梓「ふぅ…」

梓(携帯けいたい)ゴソヌチャッ

AZUフォン「15時29分」

梓「オーイェエエエス!!!」ガタッ

梓「……」ヌルッ

梓「ティッシュでアソコ拭かないと」フキフキ

梓「よしお待たせ!」

梓「唯センパイのパンツ!」

梓「セットイン!」)スチャッ

梓「…」

梓「家の外だし頭にかぶる必要ないね」ズボッ

梓「もったいないけど穿こ」ヨイショッ」
190 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 18:35:11.76 ID:NK3lWgDO

梓「では行ってKOOO!!」ドア「バン!」

純「やっぱり梓か、うるさいよ」

梓「…あ゛」


――純の頭で便器の掃除をしたあと

ドア「ガチャッ」

梓「ゆいせんぱーい!!」ダキッ

唯「ひっ!? 急に抱きつかないでよ!」

梓「ごろにゃーん」ホオスリスリ

唯「ひゃうぅ……」

律「今日は前から抱きあってるよ、仲いいなー」

澪「いまさらすぎる」

唯「いまさらじゃないよぉ…ちょっと前からあずにゃんが壊れたんだよ……」

梓「あずにゃんはあずにゃんですー」ホオ ペロッ

唯「きゃっ!!?」サッ
紬「ひゃひゃひゃひゃひゃ」

梓「こっち向いてくださいよー♪」ペロペロ

唯「ひぃぃ! 今日ははげしすぎないかな!」

律「慣れってこわいな」

\紬/「ひゃあっひゃっひゃっひゃ!」
澪「うん」
191 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 18:36:06.05 ID:NK3lWgDO

律「あ、あと梓だけだぞ」

梓「はにかてふか?」ハムハム

唯「いやぁ…ミミぃ……」プルプル

律「なにってプレゼントだよ」

梓「はっ!」
|ネトォ
唯「うー耳がつめたい…」

梓(あぶないあぶない! 手段が目的になるとこだった)

唯「べとべとするぅ……」

梓「みなさんは何をあげたんですか?」

律「ん? わたしは髪止めだ。ヘアピンとかゴムとか」

梓(ゴム!? …て違うか)

澪「私はポエム」

紬「ぎゃははははは!」

紬つ 黒ネコのぬいぐるみ

梓(ふむ…となると)モミッ

唯「わっ!?」

梓(俗に言うファッション系は候補からつぶれた)モミン モミン

唯「むねもまぁ! …ないでぇ…」
192 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 18:37:28.93 ID:NK3lWgDO

律「で梓はなんだ」

澪「さすがに自分だなんて言わないよな」

紬「いいねええええ!」

梓「そんな使い古されたネタしませんよ」ゴソッ

唯「ちょっとどこさわってんの!」

梓「どこってパンツに決まってます」モゾ

唯「中だけはやめて!!」

梓「…ちぇー」サワサワ

律「おーい話の続きー」
唯「パンツごし…」プルプル

梓「あー…そうでした」サワサワ

梓(ってこうしちゃいられないよ!)ゴソッ

唯「中さわったああ!!///」

梓「今日はもう帰ります!!」ダッ

律「あ、おーい!」
紬「ぐじゅるるるる」
唯「は・・ははは・・・」

やっぱり唯先輩は濡れてた。

ペロッ。
193 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 18:38:51.61 ID:NK3lWgDO


――商店街で復讐の和先輩を一掃したのはいいけど

梓「結局何をプレゼントしよう…」

純「やっと見つけたよ梓!」

梓「あ゛」


――商店街で汚物のモブを一掃したのはいいけど

梓「なんでお金持ってないのかなーあの二人」

着せ替え人形は律先輩が。
愛玩具はムギ先輩が。
ラブレターは澪先輩が。

梓「それ以外となると……」

憂「あっあずさちゃん」

梓「あー、憂か」

憂「残念そうだね」ニコニコ

梓(…そうだった、憂のも知らないと)

梓「そんなことないよ」

憂「そんなわけないよ」

梓「?」

憂「パンツかえせええええ゛え゛!!!」

梓「そうだったッ逃げろー!!」
194 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 18:39:48.99 ID:NK3lWgDO


――十数枚の使用済みパンツを死守して早8時。

梓(まさか金属バットで戦う日が来るとはね……引き分けだし…)ヨロヨロ

ちなみに憂は大鉈。よくもあんな重いもの振り回せるよ。

梓「警察まで鬼ごっこに入らなくても……」

梓「………」

梓「あっ」

梓「結局プレゼントかんがえてない?!!!」

梓「ちょちょちょちょちょっと待って!! あと4時間以内に作れっていうの!!?」

梓「無理に決まってるじゃないの!!!」

梓「憂のばかああああ゛あ゛あ゛!!!!!!」ブン

バット「グワアアアァン!!」

さわ「ガッ    」
195 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 18:40:31.63 ID:NK3lWgDO

梓「ひぃー…ひぃー…」

かんがえろ考えろまだまにあう!

私のオモチャは律先輩が
私の身代わりはムギ先輩が
私達の婚姻届は澪先輩が
その集合から外れるものは

大人の玩具

梓(だめ家に取りに帰ったら監禁される)

梓(ならやっぱりわたしをさしだす)

梓「だからダメだってばあ!」ブン

さわ「■■■」
196 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 18:41:04.23 ID:NK3lWgDO

梓「ええい考えろかんがえろぉ!!!」

梓「
オモチャでもなく身代わりでもなく

あっキスなんてどぉ?
えーいつでもできるよー

わたしのアカは
すくなくすぎるよー

わたしのカミノケは
それだと会ったとき恥ずかしいよー

じゃあ足のユビ
きたるエッチのときに悲しまれるよー

やっぱ唯センパイがダイスキなものをわたそうよ
だねー唯センパイがダイスキなもの
そうすると憂うざいなー
唯センパイは食べるのダイスキだよー

手作りごはんいく?
いいねー
でも材料はー
たぶん家にあるよー



憂「やっと見つけた! お姉ちゃんのパンツコレクションを返して!!」

^<●>^「好ききらいあるかなー
ないよあずにゃんのつくる料理だモーン
やっぱり憂ジャマだよー
じゃあドウシヨウカー

197 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 18:46:38.02 ID:NK3lWgDO


――食材の調達にてまどって平沢邸前。

^<●>^「おじゃましまーす」トコトコ

階段「ドタドタッ」

唯「憂遅いよー……」

^<●>^「あっ台所借りますね」

唯「…えっ…えっ……?」

^<●>^「わたしの誕生日プレゼントは手作り夕ご飯です!」

^<●>^「たぶん11時頃にできると思います」

唯「あずにゃん…体中黒い汚れが……」

^<●>^「それまで受験勉強頑張ってください! 応援してます!」ズルズル

唯「あずにゃん!」

^<●>^「ああすいません、その前にシャワー浴びていいですか?」

唯「うん……」

^<●>^「ではお風呂借ります」トン トン

唯「わたしに汚れつけないでね」

^<●>^「大丈夫です、ほら」トン トン

唯「…お風呂は左手にあるよ……」
198 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 18:46:57.02 ID:NK3lWgDO

^<●>^「あとあの箱は空けないでくださいね、さすがに唯先輩には刺激が強いですから」トコトコ

唯「うっうん……」

^<●>^「中には唯先輩の大好物が入ってます! 絶対よろこんでもらえと思ってます!」トコ

風呂ドア「ガチャッ」

^<●>^「あーつかれたー」

風呂ドア「パタンッ」

^<●>^「あ! 唯先輩の脱いだパンツ!」ゴソッ

ドア「ウイ゛イ゛イ゛イイイ!!!!!!!」

^<●>^「あっ」

^<●>^「もー、開けないで言ったのに」

^<●>^「そんなに楽しみなんですね唯先輩♪」クンクン

END
199 : ◆wr8kfImLno [sage]:2010/11/27(土) 18:47:22.02 ID:NK3lWgDO
終了です
200 : ◆MDdV6fVW9E [sage]:2010/11/27(土) 20:01:15.81 ID:dSZ/mHwo
投下はじめます
201 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 20:01:59.56 ID:dSZ/mHwo
律「もうすぐ誕生日だよな」

梓「ですね。あの人がこの世を去ってから丁度40年か…」

律「早いもんだな」

律「……」

律「ジミヘンじゃねえよ」
202 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 20:02:35.42 ID:dSZ/mHwo
澪「唯の誕生日だろ?」

紬「27日よね」

律「私たちで祝ってやろうぜ」

梓「いいですね」

紬「唯ちゃんのことだからきっと大きなケーキ食べたがるわね!」

澪「プレゼントも考えよう」

律「そこなんだよな」
203 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 20:03:22.31 ID:dSZ/mHwo
律「とりあえず箱だけ用意してみた」

澪「普通中身が先だよね」

律「私流のサプライズや」

梓「かなり大きな箱ですね」

紬「何でも入りそうでいいんじゃない?」

澪「確かに便利だな」
204 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 20:03:59.43 ID:dSZ/mHwo
紬「唯ちゃん、どんなものをあげれば喜ぶのかしら」

梓「ちくわとかどうでしょう」

律「お前は唯に恨みでもあるの?」

梓「年に一度のバースデイに汚い縮れ毛を4本もプレゼントされた身にもなってくださいよ」

澪「そんなことあったっけ?」

紬「さぁ?」

澪「どうせなら食べ物よりも形が残るものをあげたいよな」

紬「そうねー」

梓「じゃあ右ストレートでもプレゼントしましょう!」

律「アザが残るな」
205 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 20:04:50.31 ID:dSZ/mHwo
紬「新しいマフラーとかどう!?」

律「唯の事だから大きな八つ橋と間違えて食べちゃうよ」

澪「CDは?」

律「きっとドーナッツと間違えて食べちゃうよ」

紬「中々決まらないわね…」

澪「あの食いしん坊め」
206 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 20:05:23.90 ID:dSZ/mHwo
律「じゃあ梓がプレゼントってことでいいんだな?」

梓「はい!」

紬「梓ちゃんがいいのなら…」

澪「止めるつもりは無いけど」
207 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 20:06:05.94 ID:dSZ/mHwo
律「よし、梓。お前箱に入れ」

梓「え、入れますかね」

澪「入るんだよ」

梓「分かりました。 …よいしょっと」
208 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 20:06:52.37 ID:dSZ/mHwo
梓「んぐぐぐぐ……」

紬「頑張って梓ちゃん!」

梓「これ以上…体を縮めるのは……!」

澪「上手くサイコガンダムみたいに」

梓「ム゛リ゛です゛〜〜」

律「確かに限界っぽいな」

律「よしムギ!頼んだ!」

紬「はーい♪」
209 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 20:07:46.79 ID:dSZ/mHwo
梓「ちょ…先輩!?何をする気ですか!?」

紬「梓ちゃん、息をゆっくり吐いて」

梓「えっ」

紬「行くわよ!」

梓「えっえっ」

梓「うぎゃああぁぁ!!」
210 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 20:08:22.76 ID:dSZ/mHwo
梓「もごもご」

紬「関節という関節をハズしたわ!」

律「お疲れ」

澪「後は蓋をするだけだな」

律「どうせなら綺麗に舗装しちゃおうか」

澪「唯の奴ビックリするだろうなぁ」
211 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 20:10:03.22 ID:dSZ/mHwo
── 数日後

唯「ごめ〜ん。掃除で遅れちゃった!」

澪「お、主役が来たぞ!」

唯「主役?なんのこと?」

律「今日はお前の誕生日じゃないか」

唯「みんな覚えててくれてたの!?」

律「あったりまえじゃん」

澪「大事な友達の誕生日を忘れるわけないだろ?」

紬「おめでとう唯ちゃん!」

唯「みんなありがとう!とっても嬉しいよ!」
212 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 20:10:51.25 ID:dSZ/mHwo
唯「うわぁ!大きなケーキだねぇ」

紬「みんなで作ったの」

唯「食べよう食べよう!」

唯「あ……」

澪「どうかしたのか?」

唯「さっきからあずにゃんの姿が見えないなーって」

唯「というかここ数日あずにゃんを見てないような…」

律「ふふふ…じゃあそろそろお披露目といこうか」
213 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 20:11:24.40 ID:dSZ/mHwo
紬「私たち3人から唯ちゃんにプレゼントよ」

唯「えっ!?プレゼント?何何?嬉しいなぁ!」

律「これだよん」 ササッ

唯「おお、大きな箱!何が入ってるの!?」
214 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 20:11:52.22 ID:dSZ/mHwo
澪「さあ何だろう」

唯「開けてみてもいい?」

律「いいよいいよ」

スルスル…… パカッ
215 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 20:12:19.17 ID:dSZ/mHwo
唯「う゛」

梓「にゃあ〜!唯先輩おめでとうです!」

唯「」

梓「あ〜〜!フタしないでくd」

かぽっ
216 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 20:12:54.22 ID:dSZ/mHwo
唯「これはどういうことなの?」

澪「どうって」

律「見たまんまだよ」

唯「なんであずにゃんがスルメみたいにグニャグニャなの?」

唯「酷いよ!3人であずにゃんをいじめたんでしょ!?」

紬「そんなことしてないわ」

唯「じゃあなんであずにゃんがこんなになっちゃったの!?」
217 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 20:13:46.52 ID:dSZ/mHwo
梓「違うんです唯先輩!これはヨガなんです!」 ぴょんっ

律「あ、自力で出てきた」

唯「そうなの?」

梓「はい。ヨガパワーで世界の平和を願ってるんです」

澪「そういうことだから落ち着いてくれよ唯」

唯「信じられないよ!急にヨガ始めたなんてウソだよ!」

唯「あずにゃん、本当のこと言って」

梓「……分かりました」
218 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 20:14:43.38 ID:dSZ/mHwo
梓「ずっと隠してたけど私、インド人なんです」

唯「えっ そうだったの?」

梓「はい。そうだったんです」

唯「そっかぁ。それならヨガくらい当たり前だよね」

梓「でも、今日で国に帰らなくちゃいけないんです」

梓「だからお別れです」
219 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 20:15:33.51 ID:dSZ/mHwo
唯「そんなのやだよ!あずにゃんが居なくなっちゃうなんてやだよ!」

梓「ごめんなさい先輩。でも仕方がないんです」

澪「唯、みんな辛いんだよ」

紬「わがまま言っちゃだめよー」

唯「じゃあ私も一緒にインド行く!それならいいでしょ?ね!?」
220 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 20:16:36.48 ID:dSZ/mHwo
── 数年後

梓「唯先輩、随分シタールの演奏上手くなりましたね」

唯「えへへ、ありがと。あずにゃんこそ火を吐けるようになったんだね」

梓「はい。ヨガって凄いです」

唯「久しぶりに、あれ歌おうか」

梓「いいですね!」


『カレーのちナン』 おわり
221 : ◆MDdV6fVW9E [sage]:2010/11/27(土) 20:17:23.22 ID:dSZ/mHwo
お粗末様でした

次の方どうぞよろしく
222 : ◆VKkafi8ECU [sage saga]:2010/11/27(土) 22:00:37.35 ID:mn9DWxo0
さて、それじゃあ始めましょうか
223 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage ota]:2010/11/27(土) 22:01:20.76 ID:mn9DWxo0


     □

224 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage ram]:2010/11/27(土) 22:01:57.32 ID:mn9DWxo0


     □ ミ◇ ミ□ ミ◇ ミ□

225 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage yui]:2010/11/27(土) 22:02:24.71 ID:mn9DWxo0


                   □       ■ミ   ◆ミ  ■ミ
226 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage dai]:2010/11/27(土) 22:02:53.60 ID:mn9DWxo0

                   □  ■
227 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage eku]:2010/11/27(土) 22:03:23.86 ID:mn9DWxo0

                   □  ■
                   □  ■
                   □  ■
228 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage nak]:2010/11/27(土) 22:04:19.39 ID:mn9DWxo0


    □   □   □  □       ■  ■   ■  ■
    □   □   □  □       ■  ■   ■  ■
    □   □   □  □       ■  ■   ■  ■

229 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage tto]:2010/11/27(土) 22:04:58.29 ID:mn9DWxo0
                         ■       ■  ◆◆
     □  □.   .□□□      ■■■■   ■■■
    □   □      □   と   ■  ■    ■■■
    □   □   □□□       ■  ■      ■

      は       こ          か       ぎ
230 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage pai]:2010/11/27(土) 22:05:41.97 ID:mn9DWxo0
皆さん こんにちは、平沢唯です!

今日は私の誕生日に 集まってもらって本当にありがとう!


ところで…

私達の身近にはたくさんの  箱  があります。

筆箱に…クッキーの箱に… ティッシュの箱やゴミ箱だってそう!

それからそれから… パソコンやTVなんかも 箱 だよね…

えっと、とにかく私達の周りにはたくさんの  箱  があるのです!

そして今回、皆が私の誕生日に用意してくれた贈り物もそんな  箱  の中に入っています。

さて ここで問題があって…

この  箱  を開けるにはどうすればいいのか?

蓋をとればいい? うーん…そうなんだけど…

実はこの箱、  カギ  がかかっているのです。


これじゃあ皆からのプレゼントが空けられないよぉ…
231 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage asu]:2010/11/27(土) 22:06:26.51 ID:mn9DWxo0
『 唯が軽音部のみんなからの受け取った誕生日プレゼントは4つ箱

  しかしそのどれも、カギ無しに開けることはできません 


  4つの箱はそれぞれが問題になっていて、対応するカギがヒントになっています

  ヒントを元に問題を解いて、唯が貰ったプレゼントは何か 考えてみてください 』



皆からのプレゼントを受け取るには、

  カギ  を使って、  箱  を開けるんだね!!

よーしっ やっるぞー! ふんすっ!
232 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage med]:2010/11/27(土) 22:07:00.15 ID:mn9DWxo0


部室!


パン! パパン!

律澪紬梓「ハッピーバスデー!唯(ちゃん)(先輩)!」

唯「わあ!」


唯(今日は11月27日!

   そう!私の誕生日!) フンスッ 


律「おめでと、唯!」

紬「唯ちゃん、おめでとう!」

澪「唯、おめでとう!」

梓「唯先輩!おめでとうございます!」


唯(そして、軽音部のみんなが私のためにお誕生日会を開いてくれました!)


唯「みんな!ありがとー!」
233 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage eka]:2010/11/27(土) 22:07:34.31 ID:mn9DWxo0
唯「ぐすっ」 ウルウル

律「おいおい、どうして泣くんだよっ」

唯「だってぇ…ぐすっ 私のために…

  こんなに…素敵な誕生日を…ぐすっ

  私、感動しちゃって…」

紬「はい、唯ちゃん ハンカチ」

唯「ぐすっ…ムギちゃんありがと…」 フキフキ

澪「泣くほど喜んでもらえたならこっちも嬉しいよ」

梓「ええ、準備した甲斐がありました」

唯「うん…!私もすごく嬉しいよ!

  みんな、本当に本当にありがとう!」
234 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage sen]:2010/11/27(土) 22:08:16.75 ID:mn9DWxo0
律「ふふん、お礼を言うのはまだ早いんじゃないか?」

唯「? どういうこと?」

紬「実は…

  皆からプレゼントがあるの!」

唯「えっ!プレゼント?!本当にっ!?」

澪「ああ、1人1つずつ用意してきたんだよ」

唯「なんとっ!4つも!?」

梓「はい!唯先輩への誕生日プレゼントです」

唯「わああ!」


律「と、言うわけだ。 唯、受け取ってくれ!」

唯「うんっ!!」
235 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage ai.]:2010/11/27(土) 22:09:18.56 ID:mn9DWxo0
・ムギのプレゼント


澪「じゃあまず誰から…」

紬「はいはい!!」

律「おお、いつになくやる気だな!ムギ!」

紬「ええ!今回のプレゼントは気合入れてきたから!」

梓「気合の入ったムギ先輩のプレゼント…!」

澪「な、なんか凄そうだな…」

律「ダイヤモンドとかだったりして」

唯「ええっ!? だ、ダイヤモンド?!」

紬「えっと…ごめんなさい!ダイヤモンドじゃないのっ!」

唯「あ…そうだよね〜」

紬「ダイヤモンドの方が良かったかしら…」

唯「そ、そんな事ないよ!ダイヤモンドなんていらないよ!

  それにムギちゃんからのプレゼントならなんだって嬉しいよ!」

紬「ふふっ、ありがとう 唯ちゃん」


紬「私のプレゼントはこれ!

  私、友達の誕生日会に手作りのプレゼントを渡すのが夢だったの〜!」

唯「手作り?」

紬「うん!だから、ちょっと見た目は悪いかもしれないけど…

  でもちゃんと気持ちは篭ってるから!」


紬「唯ちゃん!受け取って!」
236 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage goz]:2010/11/27(土) 22:10:16.87 ID:mn9DWxo0


☆1つめのプレゼント!

□◇◇□□□◆◆◆◆◆□□◇◇◇□□◇□□□□□□□◆□□□◇◇◇◇
◇◇□□◇◇◇■□□□◇◇□◇□◇◇□◇◇□□□□■◇◆◇◇□□□□
◇◇◇□□◇■■◆■■□◇◇◇□□◆◇□◇□□◇■■◆■■◇◇◇□□
◇□◇◇◇◇■□◇□■◇◇□◇□■■■◇◇◇◇■□□◇□◇■◇□□□
□◇◇□□□◆■◆◆◆□□◇◇□□◆□□◇◇□□■■■■◆□◇◇◇◇
◇□◇□□◇■□◇□◆□◇◇□□□□□□□□◇◇■□□◇◆◇◇◇◇◇
□◇□□◇□◆◆◆◆◆□□□□◇◇◇◇□□□□□◆◆◆◆◆□□□□□






唯「うおっ、大きな箱っ!それに何だか甘いにおいがする!」

紬「ふふっ、開けてみて」
237 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage ayo]:2010/11/27(土) 22:11:11.02 ID:mn9DWxo0
唯「うん!

  えっと…あれ?

  ムギちゃん、これどうやって開ければいいのかな?」

紬「あ、ごめんなさい!カギを渡すの忘れちゃった!」


紬「はい、唯ちゃん これが この箱のカギよ」



☆1つめのカギ!

  『ダイヤモンドなんていらないよ!』



唯「これを使って箱を開けるんだね!

  よ〜しっ、さっそく…」
238 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage hit]:2010/11/27(土) 22:11:44.98 ID:mn9DWxo0

カチャリ

パカッ

唯「!!」

唯「お、おいしそ〜!!」

律「これは…!すごいな!」

澪「こ、これムギの手作りなんだよな?」

紬「うん…ど、どうかしら…?」

唯「すっごく美味しそうだよ!!」

紬「本当に?良かった〜!」

唯「ねえねえ早速みんなで食べようよ!」


……


唯「う〜ん!うまいっ!

  甘くておいしいね!」

梓「はい!ムギ先輩凄いです!」

紬「ふふっ、おかわりもあるからどんどん食べてね」

唯「ムギちゃん!ありがとう!!」
239 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage suk]:2010/11/27(土) 22:12:17.53 ID:mn9DWxo0
・律のプレゼント


律「次のプレゼントは私からだ!!」 ババン!

唯「おお〜!りっちゃんのプレゼント〜!」

律「私のプレゼントも気合入ってるんだぞ〜」

唯「もしかしてりっちゃんも手作り?!」

律「いんや違う、でもこのプレゼントは…

  何処かの職人が汗を流して仕上げた物を!

  これまた何処かの運送屋さんが店頭に運んで!

  それを私がお店で選んで、そして店員さんが包んでくれた一品なんだ!」

唯「うおっ!!りっちゃんすごい!」

澪「つまり選んだだけだろ」

律「そうだけど…ま、まあ気持ちは篭ってるし!」

梓「気持ちって言えばいい訳でもないかと…」

紬「まあまあ」


律「と言うわけだから唯、受け取ってくれ!」
240 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage njo]:2010/11/27(土) 22:13:06.83 ID:mn9DWxo0


☆2つめのプレゼント!

   [へ○○○]

■■■○■■■■
■□□□□□○■
■□■□■■■■
■□■□■■■■
■□■■■■■■
■□□○□□■■
■□■■■■■■




唯「わぁ、なんだろ〜!」

律「あけてみるといい!」
241 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage kor]:2010/11/27(土) 22:14:31.43 ID:mn9DWxo0
唯「えっと…」

律「おっと、忘れる所だったな カギ… カギ…」 ゴソゴソ

律「あったあった ほい

  これがこの箱のカギだ!」


☆2つめのカギ!

  『 キーワード
    ↓ 1、私だよん 2、澪!
    → 1、食べ物です 2、りこぴーん! 』
242 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage bio]:2010/11/27(土) 22:15:24.52 ID:mn9DWxo0

カチャリ

パカッ

唯「!! こ、これは!」

紬「あ、可愛い〜」

澪「これ、律が選んだのか?」

律「モチです!」

梓「律先輩っぽくないですね」

澪「確かに」

律「なっ!どう言う意味だっ!わ、私だってなあ…」

紬「まあまあまあまあ」

唯「私さっそく付けてみるよ!」



唯「どうどう?似合うかな?」

紬「似合う似合う!」

澪「ああ、いいんじゃないか」

梓「すごく似合ってます!」

律「うん、可愛い可愛い」

唯「えへへ… りっちゃん、ありがとー!」
243 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage das]:2010/11/27(土) 22:16:07.04 ID:mn9DWxo0
・澪のプレゼント


澪「次は私から…」

唯「わー、澪ちゃんのプレゼント! 一体なんだろ〜!」

澪「うっ…そ、その…

  あ、あんまり期待しない方が…」

律「もう、何言ってるんだよ!

  唯、澪からのプレゼントはそれはそれはスッゴイから

  ものすっごーく期待しててくれていいんだぞ!」

澪「り、律!」

唯「わああ!すごく楽しみだよ〜!」 キラキラキラ

澪「えっ」

唯「澪ちゃん!」

澪「うっ うぅ…」


澪「う、受け取ってくださいっ!!」

律「おーい、緊張しすぎだ…」
244 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage eto]:2010/11/27(土) 22:17:54.41 ID:mn9DWxo0


☆3つめのプレゼント!

[■■■○○ぐ▲▲▲◆◆]

       ○●◎
       □■◇
       ◆△▲
       *☆#




唯「わくわく!何が入ってるのかな!」

澪「…うぅ」 モジモジ
245 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage aim]:2010/11/27(土) 22:18:37.91 ID:mn9DWxo0
律「澪!」

澪「うん…わかってるよ

  唯、これがカギだ」




☆3つめのカギ!
  『 ボタンの位置 』
246 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage ina]:2010/11/27(土) 22:19:09.88 ID:mn9DWxo0

カチャリ

パカッ

唯「おおっ!」

律「澪はこれだったか」

梓「可愛いですね」

紬「とっても澪ちゃんらしいと思うわ〜」

澪「うん、私も可愛いと思ったからコレにしたんだけど…

  唯…ど、どうかな…?」

唯「モコモコしててすっごく可愛いよ!」

澪「そっか、良かった…」


唯「澪ちゃん、私大事にするよ!ありがとう!」
247 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage ozu]:2010/11/27(土) 22:19:49.46 ID:mn9DWxo0
・梓のプレゼント


律「さて、最後は梓だな」

梓「は、はい!」

唯「うふふ、あずにゃんのプレゼント〜♪

  一体何だろう!」

梓「えっと…実は…て、手紙を書いてきたんです!」

唯「手紙?」

梓「はい…その…手紙がプレゼントなんですけど…

  えと…すみません、こんな物しか用意できなくて…その…」

唯「あずにゃん」

梓「…」

唯「ありがとう!」 ニコッ

梓「唯先輩…」

唯「貰ってもいい?」

梓「はい!受け取ってください!」
248 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage kus]:2010/11/27(土) 22:20:48.54 ID:mn9DWxo0


☆4つめのプレゼント!

 「 226 239 246 225 234 230

.   223 240 242 232 244 236 245 231

.   241 233 224 247 229 228 237 248 238 227 243 235

                                  中野 梓より 」




唯「読んでもいい?」

梓「…ど、どうぞ」
249 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 22:21:31.52 ID:mn9DWxo0
唯「えっと…」

梓「あ、この手紙を読むにもカギがいるんです

  唯先輩、受け取ってください」  




☆4つめのカギ!
  『 手紙の箱 』
250 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 22:22:12.04 ID:mn9DWxo0


ピラッ

唯「…」

唯「あずにゃん…」

梓「…」

唯「ありがとおお!!」 ギュッ

梓「にゃっ!ちょ、ちょっと唯先輩いきなり抱きつかないでください!」

唯「よしよ〜し、かわいいかわいい!」 

梓「だああああっ!」 バッ

唯「わあっ」


唯「あ、あずにゃん酷いっ!」 ウルウル

梓「い、いきなり抱きつくからですよっ!もう!」

唯「えへへ…

  でもあずにゃん、お手紙ありがとね!」
251 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 22:22:56.98 ID:mn9DWxo0


唯「今日はみんなありがとう!

  私のためにお誕生会を開いてくれて!

  そしてこんなにたくさん素敵な贈り物をくれて!」

律「いいっていいって、その代わり私の誕生日は倍返しで頼む!」

梓「律先輩…それは…」

澪「て言うか律の誕生日はもう過ぎてるだろ」

律「ぐあっ!そうだった!しまったっ!」

紬「それじゃあ来年みんなの誕生日会も開きましょうか〜」

唯「そうだね!それがいいよ!」

律「さんせ〜い!」
252 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 22:23:36.53 ID:mn9DWxo0
律「それじゃあ、この辺で

  軽音部主催 唯のお誕生日会はお開きにして…


  次は唯の家で二次会だぁああっ!!」

唯「おお!!!憂の料理〜楽しみだよっ!」

梓「先に帰って準備してるって言ってましたね」

澪「和も来るんだよな」

紬「さわ子先生も来れたら来るって!」

唯「楽しみだな〜♪」


律「よし!みんな行くぞー!!」

唯澪梓紬「おおーっ!」



…今年の誕生日はとってもにぎやかで楽しくなりそうです!

 みんなみんな、本当にありがとう!!


おしまいっ
253 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 22:24:19.44 ID:mn9DWxo0




  □ < 以下、回答編



254 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/27(土) 22:24:59.81 ID:mn9DWxo0








律「と、言うわけで間髪容れずに回答編だ!

  問題を解いて、正解かどうか知りたいそこのキミ!

  そして、ぶっちゃけ『問題解くの面倒〜』だとか『問題の意味がわからん』

  と思ったキミは是非見てくれよな!」

梓「回答編みたからと言って納得できるとは限りませんけどね」

澪「一応、私達としては簡単な問題のつもりだけど…」

梓「でも結構めんどくさいですよね」

紬「まあまあまあまあ」


唯「それじゃあ回答編いくよ〜」
255 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 22:25:56.46 ID:mn9DWxo0
紬「まずは私のプレゼントね!」


☆1つめのプレゼント! 回答編

□◇◇□□□◆◆◆◆◆□□◇◇◇□□◇□□□□□□□◆□□□◇◇◇◇
◇◇□□◇◇◇■□□□◇◇□◇□◇◇□◇◇□□□□■◇◆◇◇□□□□
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□◇□□◇□◆◆◆◆◆□□□□◇◇◇◇□□□□□◆◆◆◆◆□□□□□

 カギ 『ダイヤモンドなんていらないよ!』


梓「でかでかと 百・合 って豪快な箱ですね…」

紬「うふふふ〜♪」

唯「ムギちゃん、これはどうすればいいのかな?」

紬「これはね、『ダイヤモンドはいらない』の言葉どおり!

  ◇と◆を取り除けばいいの!」

唯「なるほど! ってことは…

  ここがこうなって… こうだから…」
256 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 22:26:41.12 ID:mn9DWxo0
☆回答

□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□■□□□□□□□□□□■□□□□
□□■■■■□□□□□□■■■■□□
□■□□■□□■■■■□□□■□□□
□□□□■□□□□□□□□■■■■□
□□□■□□□□□□□□□□□■□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□


唯「わーい!!ケーキだ!!

  甘くておいしいよね〜!」

梓「『甘くておいしい』ってだけで何を貰ったのかわかりそうでしたけど…」

紬「今日はお誕生日だから手作りにしてみたの!」

律「かなり凝ってたよな」

澪「ムギは手先が器用だから」

紬「ふふっ」

唯「ムギちゃん!美味しかったよ!ありがとう!」
257 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/27(土) 22:27:10.82 ID:mn9DWxo0
律「つづいて私のプレゼントだっ!」


☆2つめのプレゼント! 回答編!

   [へ○○○]

■■■○■■■■
■□□□□□○■
■□■□■■■■
■□■□■■■■
■□■■■■■■
■□□○□□■■
■□■■■■■■

 カギ 『 キーワード
      ↓ 1、私だよん 2、澪!
      → 1、食べ物です 2、りこぴーん! 』



律「この箱は見ての通り!クロスワードだ!」

梓「矢印の向きがそのままワードの向きですよね」

紬「問題はキーワードがそのまま入るわけじゃないってことよね」

唯「えっと ↓の1 私だよん ってりっちゃんだよね?」

律「ああ!私、こと 『たいなかりつ』 だ!」

澪「縦の6文字が入るとしたら…左側だな」

紬「それじゃあ上側の横の文字列は…『たべものです』がそのまま入るのかしら…?」

澪「それだと ↓の2 の私… たぶん私の名前だと思うけど…それが入らなくなるだろ?」

唯「 た から始まる食べ物…」

澪「『たぬきうどん』…」

唯「それかっ!」

梓「じゃあ ↓の2 の澪! って言うのは澪先輩の苗字! つまり 『あきやま』ですね!」

律「ああ、そして最後 →の2 りこぴーん! は…

  何の捻りもなくそのまま入れるんだ! つまり…」
258 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 22:28:09.84 ID:mn9DWxo0
☆回答

   [へ○○○]

■■■○■■■■.      あ
■□□□□□○■   たぬきうどん
■□■□■■■■   い  や
■□■□■■■■   な.  ま
■□■■■■■■   か
■□□○□□■■   りこぴーん
■□■■■■■■   つ


律「こうなる!!」

澪「○に対応する部分を抜き出したら…

  『あ』 『ん』 『ぴ』 だな」

紬「それらの文字が[へ○○○]の何処かに入るのね」

唯「えっと… へあんぴ… へぴあん… へんあぴ… へあぴん…

  ? へあぴん…? ああっ! ヘアピン!!」

律「正解!」

澪「律がヘアピンなんて買ってくるなんてな」

梓「意外です」

律「私が女らしくないって言いたいのかっ!!」

唯「えへへ、りっちゃんありがとう! どう?似合うかな?」
259 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 22:28:45.07 ID:mn9DWxo0
澪「次は私のプレゼントだな」


☆3つめのプレゼント! 回答編

[■■■○○ぐ▲▲▲◆◆]

       ○●◎
       □■◇
       ◆△▲
       *☆#

 カギ 『 ボタンの位置 』



唯「えっと…[■■■○○ぐ▲▲▲◆◆]って言うのがプレゼントだよね?」

澪「ああ、そしてこの問題を解くには下の3×4の記号の列が重要なんだ」

梓「たしかに上の文字列に使われてる記号は、下の記号の列の中にもありますね」

紬「問題は3×4の記号の意味…」

澪「カギはボタンの位置!それともう1つヒントがあるとすれば、*と#の位置だな」

梓「ボタン……あ、もしかして携帯電話ですか?」

律「それだっ!」

唯「あずにゃん天才!」

澪「そう、下の記号の列は携帯電話のボタンの位置に対応してるんだ」

紬「つまり…[■■■○○ぐ▲▲▲◆◆]って言うのは…

  照らし合わせると… [55511ぐ99977] でいいのかしら」

唯「?」

澪「後はそれをひらがなで打てば…」

唯「えっと…」 ポチポチ
260 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 22:29:34.21 ID:mn9DWxo0
[ぬいぐるみ]


唯「おお! ぬいぐるみ!!」

梓「澪先輩のプレゼントは可愛いクマのぬいぐるみでした」

澪「わ、私のとっておきなんだ…どうかな?」

唯「モコモコしてて可愛いよ〜!

  絶対大事にするからね!澪ちゃん!」

澪「ああ、そうしてくれると嬉しいよ」

唯「えへへ〜、クマ太〜」

律「もう名前付けたのか」


唯「澪ちゃん、ありがと〜!」
261 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 22:30:15.28 ID:mn9DWxo0
梓「最後は私のプレゼントですね」

☆4つめのプレゼント!

 「 226 239 246 225 234 230

.   223 240 242 232 244 236 245 231

.   241 233 224 247 229 228 237 248 238 227 243 235

                                  中野 梓より 」

  カギ 『手紙の箱』


律「数字ばっかりでこれじゃあ読めないな」

唯「えっとカギは…手紙の箱?」

梓「はい、手紙の箱です」

紬「手紙の箱… メールボックス…」

澪「メールボックス… あっ、もしかして!

  メール欄か!」

唯「め、メール欄?!」

梓「はい、既にお気付きでしょうが始まってから私のプレゼントが出てくるまで

  メール欄に"sage"の後に ずっと3文字アルファベット が入ってるんです!」

唯「な、なんだってー!」


唯「ほ、本当だ!!」

紬「つまり… この数字の羅列は…対応するレス番号!!」

澪「じゃあこの数字の羅列と対応するレス番号のメール欄に入ってる3文字の文字列をそのまま置き換えればいいんだな」

梓「その通りです!」

律「となると… この手紙は…」
262 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/27(土) 22:30:58.33 ID:mn9DWxo0
 「 dai suk ina yui sen pai

   ota njo bio med eto goz aim asu

   kor eka ram ozu tto nak ayo kus hit eku das ai. 

                                  中野 梓より 」


律「こうなるな」

澪「えっと だいすきな…」

梓「わ、わわ! よ、読まないでください!」

紬「ふふっ、いい物を見せて貰いました〜♪」

唯「えへへ、あずにゃん!これからも仲良くいようね!」

梓「はい!…ありがとうございます!」

唯「ううん!私もありがとう!あずにゃん!」
263 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 22:31:39.78 ID:mn9DWxo0


澪「回答編はこんなところか」

唯「みんなわかったかな?」

梓「と言うか、解く気になれましたか?」

律「おいおい、それを言ったら…」

紬「まあまあまあ」


唯「ところで…」

澪梓律紬「?」

唯「これ、けいおんSSでやる意味あったの…かな?」

澪梓律紬「…」


今度こそおしまいっ!
264 : ◆VKkafi8ECU [sage]:2010/11/27(土) 22:33:09.97 ID:mn9DWxo0
終わりっす
後は頼んだっす
265 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 22:34:50.84 ID:xlq73.AO
乙でした!

後からゆっくり読ませていただきます

では日付が変わる前に次行きます。
もしかしたらラストかもしれませんね
266 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 22:36:33.22 ID:xlq73.AO
りっちゃんと喧嘩をした。
始まりは些細なことから、それが段々言い合いになって…気がついたら私は部室を飛び出していた。
不意にこぼれる涙を拭いながら家路につく。りっちゃんが悪いわけじゃないんだ。
いつもなら冗談止まりのことを私が真に受けて切り返したのだ。
だからりっちゃんは悪くない。悪いのは私なんだ……。

唯「明日謝らなきゃ……」

そう思うも明日は生憎の土曜日。学校が休みで憂鬱になるなんて思いもしなかった…。

唯「11月27日…」

そう、明日は私の誕生日であり、そしてそれが今日の喧嘩の原因でもあった。
267 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 22:37:22.66 ID:xlq73.AO
それを言い出したのは、ムギちゃんからだった。

紬『これから誕生日はみんなで祝いましょう』

1年、2年の時は誕生日だからといって特別なことをしたことはなかった。その日を迎えたからと言ってそれを進言する気にもなれず、いつも通りの日々を過ごした。
しかし3年になり、これがみんなで過ごす最後の一年と言うこともあって少しでも記念日(思い出)が欲しくなったのだろう。
みんなそれに賛成し、誕生日が来た人をみんなでお祝いしようということになった。

そんな話をしたのが4月中頃、その時に私も誕生日を言った気がする…。
268 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 22:38:20.84 ID:xlq73.AO
7月2日。
その日はムギちゃんの誕生日だった。家である豪勢な誕生日パーティーに呼ばれ、みんなでムギちゃんの誕生日を祝った。
私はプレゼントにムギちゃん専用カップをあげたっけ。今でも大切に使ってくれてる……なのに。

8月21日
次はりっちゃん。その日は猛暑日を記録してて、凄く暑かった。それでもみんなりっちゃんを祝う為に田井中家に集まった。
弟の聡君も巻き込んでのホラー映画観賞会、楽しかったなぁ。
プレゼントにはカチューシャをあげようとしたけど、そこは澪ちゃんに譲ってドラムスティック型シャープペンをプレゼントした。
喜んでくれたかな…?
269 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 22:39:24.98 ID:xlq73.AO
そして、11月11日

その日はみんなの可愛い後輩、あずにゃんの誕生日だった。
あずにゃんの家で純ちゃんや憂も交えてお祝いした。
プレゼントはあずにゃんそっくりの可愛い猫のキーホルダー。探すのに苦労したんだよ?
でも学園祭間近と言うこともあり、あずにゃんが練習しましょう!と意気込んだのもありで休みの日の学校へ行き練習をしたり……。
あずにゃんったらせっかくの誕生日なのに練習だなんて……あずにゃんらしいよね。

そして学園祭も無事終わり、とうとう私の番が明日に控えている……という26日の金曜日。
270 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 22:40:11.29 ID:xlq73.AO
律『澪〜明日新しい喫茶店オープンするらしいぞ! 一緒に行かないか?』

澪『私はいいよ。受験勉強しないと……』

紬『じゃあみんなで行ってそこでやりましょうか』

律『ナイスアイディーアームギ!』

梓『私は純達と約束があるので』

律『ちょっとだけでも来いよ梓〜』

梓『じゃあ…ちょっとだけ』

律『よしじゃあきーまりっ!』

一言も、ただの一言も私の誕生日の話は出なかった。

みんな、忘れてしまっているんだろう。
無理もない。最近は学園祭に受験勉強にと息つく暇もなかったのだ。
271 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 22:42:15.83 ID:xlq73.AO
学園祭が終わり、やりつくした感が漂っていたのは事実だ。
それでも受験という壁が私達を休ませてはくれない。
それに板挟みとなってしまった私の誕生日…。
仕方ない、仕方ないんだよ、私。

だから……ね、いつも通りに振る舞おう?

お願いだから……。

律『唯も行くだろ〜? 受験勉強よりごろごろしてる時間の方が多そうだもんな!』

唯『……ッ! りっちゃんと一緒にしないでよッ!』

我慢…出来なかった。

忘れられてたから怒った?
受験勉強のストレス?

違う…悔しかったんだ……。
272 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 22:43:24.24 ID:xlq73.AO
私がみんなを祝った気持ちが踏みにじられた気がして悔しかった。
プレゼントを考えて、もらう人の笑顔を想像して……ほんとうにおめでとうって思ってた。
でも……他のみんなにとってはただの形だけの思い出作りに過ぎなかったんだ。
誕生日を祝うって決めたから祝う。ただそれだけだったんだ……ッ!

だから学園祭が終わり、受験と言う名の壁が迫って来た時、11月27日と言う日はただの土曜日と成り下がった。
より大事なものに上書きされてしまった。

消えてしまった私のみんなとの誕生日……。
まるで生まれて来たことさえ否定されてしまったみたい。

そう思うと、やっぱり……、涙が止まらなかった。
273 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 22:43:57.37 ID:xlq73.AO
──そして、11月27日の朝がやって来る。

憂「お姉ちゃん早く起きて〜。今日はお天気がいいからお布団干さないと」

唯「んん…後10分〜」

憂「だーめ。布団没収っ」

唯「あ〜っ! 寒い……」

掛布団を見事に奪われ起きるという選択肢しかなくなった。
もそりと起き出すと覚醒を促す為に洗面所で顔を洗う。

唯「つべちっ」

冬の水道水が夏に出ればみんな幸せなのに…なんて思いながら顔をゴシると、ようやく頭がすっきりしてくる。

唯「あ……今日わたしの誕生日だった」
274 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 22:45:01.95 ID:xlq73.AO
憂「〜♪」

唯「憂〜」

憂「ん? なぁにお姉ちゃん?」

唯「えっと……いい天気だね!」

憂「うん。絶好の洗濯日和だね」

唯「じゃなくて!」

憂「ぅん?」

唯「えっ〜と……今日って何日だっけ〜?」

憂「27日だけど……どうかしたの? お姉ちゃん」

唯「べ、別に何でもないよ! 洗濯物干すの手伝うね!」

憂「ありがとうお姉ちゃん」


変だ、毎年祝ってくれている一人(もう一人は和ちゃん)の憂が私の誕生日を忘れるなんてあり得ない!

ってことはもしかして……。

私の誕生日って11月27日じゃない!?
275 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 22:45:43.51 ID:xlq73.AO
そうか、そうだったんだ! 間違ってるのは私だったんだよ!

でも……じゃあ私の誕生日はいつかと聞かれると……やっぱり11月27日しかない。
意を決して最愛の妹に問う。

唯「憂…今日って私のた」

憂「あっ! もうこんな時間! 純ちゃん達と約束してたんだった! ごめんねお姉ちゃん!」

スタタッーとベランダを抜け出して行く憂。

唯「んじょ……」

唯「んじょー」

昔こんな鳴き声の怪獣がいたなと思いながら、綺麗な青空を眺めていた。
276 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 22:48:16.38 ID:xlq73.AO
再び部屋に戻ると、掛布団が連れ去られたベッドにダイブする。

唯「みんな今頃喫茶店かな……」

話の途中で言い合いになって抜け出してしまったので何時にどこに集合なのかもわからず、昨日はそのままふて寝してしまった。

唯「……」

ふと携帯に目をやるも、着信やメールの類いを知らせるランプは一切発光していない。

唯「はあ……」

まるで自分だけがこの世界に取り残されたような感覚が襲ってくる。
何であんなこと言ったんだろう。
いつも通りに「みんな誕生日忘れてるよっ!」と言えば今頃……。
277 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 22:49:44.25 ID:xlq73.AO
ううん、そんな形だけの誕生日会……私はいらない。

唯「誰も祝ってくれなくたっていいもん……もう大人だもん!」

そう言って掛布団のないベッドでまたふて寝を開始しようとした時だった。

ピロリロリーン

唯「はっ! ふっ! ほっ!」

起き上がり、携帯を掬い上げ、開く!

新着メール 1件

そんな簡素な言葉にこれ程興奮してる自分がいる。
誰かからのお誕生おめでとうメールかも! と思うと焦ってwebなんか開いちゃったり。

唯「早く早くぅ〜!」

そして、ようやく開いたメールの内容は

Amazon新着情報
278 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 22:50:31.26 ID:xlq73.AO
唯「ううう……」

無人島でやっと見つけた食料が、腐った食パンだった時ぐらいの衝撃だろう。
力なく携帯を閉じると机に置き、巣(ベッド)へと帰還する。

しかし、その数秒後。
また悪魔のサイレンが鳴る。

ピロリロリーン

唯「つ、釣られないんだからねっ」

チカッ、チカッ、と光る携帯のランプ。

唯「くっ……」

まるで長い船旅を経た後に見る灯台の光のようだ。

唯「く……く……クマちゃん!」

見事に携帯に一本釣りされた唯だったが、今度は内容が違った。

唯「りっちゃんからだ……」
279 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 22:51:35.83 ID:xlq73.AO
緊張したおもごちでメールを開封していくと、そこにはこう書かれていた。

──────────
From田井中 律
件名
本文
近くの公園で待ってる
──────────

たったそれだけだった。
昨日のことも喫茶店のこともなく、ただ、公園で待ってる、と。

唯「……」

しかし、待ってるのなら行かないわけにはいかないだろうと身支度を整える。

唯「昨日のことちゃんと謝らなきゃ……」

手早く準備を済ますと勢いよく階段を駆け降り、玄関を飛び出した。

唯「っと鍵かけなきゃ」
280 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 22:52:27.09 ID:xlq73.AO
律からのメールが来てからおよそ5分ほどで唯は公園に現れた。

律「唯〜こっち」

唯「ごめんりっちゃ〜ん。待った?」

律「わたしも今来たとこ」

唯「……」

律「……」

初めの挨拶まではいつも通りにいったもののお互い昨日を思い出したのか沈黙が二人を襲う。

唯「(駄目だ…ちゃんと謝らなきゃ)」

話の糸口を見つけようと律を観る。

そこで、ふと浮かんできた言葉をそのまま口にする。

唯「……りっちゃん服似合ってるね!」

律「そ、そうか?」

上は黒のブルゾン、下はジーンズと中性的な格好だったが律はそれを上手く着こなしていた。
281 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 22:54:22.16 ID:xlq73.AO
律「ありがと/// 唯も似合ってるぞ!」

唯の本心から出た言葉で再び打ち解け合った二人。

今しかないというタイミングで唯が謝ろうとした時、

唯「りっちゃん昨日ごめ 律「唯! この箱開けてみてくれ!」

唯「……ら?」

昔そんな怪獣いたなと思いながら唯は突き出された箱をまじまじと凝視する。
何の変哲もないただの白い箱だ。

唯「…くれるの?」

律「ん。開けてみ」

誕生日を覚えててくれた、と言う嬉しい気持ちを抑えながら、言われた通りゆっくりとその箱を開けてみる。

すると、

中身は空っぽだった!
282 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 22:55:26.01 ID:xlq73.AO
唯「え゛」

頭の中がこの箱と同じく一瞬真っ白になる。そんな唯を見て、律がすかさず確認を取る。

律「開けたな!? 箱開けたよな!?」

唯「う、うん」

余りの剣幕に何も入ってないことについて言及する前にやりこめられてしまった。

律「じゃあ行くぞ!」

律が唯の手を握り歩き出す。

唯「へ? どこへ?」

律「ひーみーつー♪」

とびっきりの笑顔でそう告げる律を見て、昨日のことがまるで嘘だったかのように思えた。
283 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 22:56:37.91 ID:xlq73.AO
電車に乗ること数十分、

律「やって来ました遊園地!!!」

唯「遊園地!! でもなんで遊園地?」

律「いいからいいから! ささ、中へどうぞ〜」

唯「あ……。でもわたしお金あんまりない……」

律「ふふ、この入場無料券が目に入らぬかーッ!」

唯「ま、眩しい! 眩しいよりっちゃん!」

律「よぉしっじゃあ行くぞ!」

唯「でも…いいの? みんなと喫茶店行くんじゃ…」

律「唯。あの箱を開けたからには今日一日はわたしに従ってもらう! いいな!?」

唯「えっ? えっ?」
284 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 22:57:24.04 ID:xlq73.AO
律「いいからいいから。早く早く〜」

唯「り、りっちゃん?」

腕を引っ掛けられ無理やり入口まで引っ張られて行く。
頭にクエスチョンマークを生やしたまま、二人は入場手続きを済ませ、遊園地内部へと足を踏み入れた。


唯「うわぁ〜人がいっぱいだねぇ!」

さっきまでの不安も吹き飛び、すっかり遊園地の空気に気持ちがタコ躍り気味だった。

律「そうだなー! じゃあはじめは何乗る?」

律が園内のパンフレットを広げながらそう聞いてくる。

唯「ジェットコースター乗りたい!」

律「定番だよなー。じゃ、行くか!」
285 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 22:58:22.90 ID:xlq73.AO
唯「一時間待ちなのです……」

律「人気だもんな〜ジェットコースター。どうする? 他のやつ乗るか?」

唯「ううん、待とうりっちゃん! 乗るまで待とうほととぎすだよ!」

律「まあ話してれば一時間なんてすぐ…か。じゃあ問題です! 唯がさっき言った〜待とう、ホトトギス。これは誰の言葉でしょ〜か?」

唯「……。鳴くよウグイス平安京?」

律「カムバック戦国時代!」

律「じゃなくて人物だよ人物」

唯「……。豊臣乃神秀吉?」

律「誰?」

唯「やだなぁ秀吉だよりっちゃん」

律「あ、いや、秀吉は知ってる」
286 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 22:58:48.82 ID:xlq73.AO
律「正解は徳川家康でした! 唯〜ちゃんと勉強してるか〜?」

律「あっ」

言った後でしまった、という顔をする律。

唯「……」

そんな律の心配を他所に、唯は頬を膨らませていつも通りに答えた。

唯「ちゃんとしてるよぉ! 酷いなぁりっちゃん」

律「だよな! うん……」

再び気まずくなってしまった空気。

唯「あっ! 身長制限だって!」

そんな空気を払うかのように駆け出す。

→ここまで

ない人は乗れませんという立て看板に自分の身長を照らし合わしてみる。うん、乗れそうだ。
287 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 22:59:18.66 ID:xlq73.AO
律「……全く…ふふっ」

唯「りっちゃん乗れるかなぁ?」

律「なにぃぃぃそんなに身長制限高いのかッ!?」

→130cm

律「ゆーいちゃーん?」

唯「乗れるね! やったねりっちゃん!」

律「唯ぃっ! こんにゃろ130cm以下に縮めて乗れなくしてやろうかこのこのっ」

唯「反撃の育ち盛り攻撃!」ミョーン

律「背伸びなしだぞ! 背伸びは!」

こうして楽しく過ごしていると時間はあっという間に過ぎるもので、気がつけば二人の順番になっていた。
288 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 22:59:53.63 ID:xlq73.AO
カンカンカンカン、
と、機械が何かを噛んでいるような音がする。
巻き上げられているのか、自ら登っているのかは最中ではないが、上に向かっていることは間違いない。

いよいよ頂上に差し掛かろうと言う時、ゴクリと誰かが息を飲む。

そして───、

みんな同じ空見上げて───、

ユニゾンで、

律「ああああああああああああアアアアアアアアアアアアア」

唯「さけ〜〜〜〜〜〜ぼ〜〜〜〜〜〜〜〜」

叫び声を捻り出させるようにジェットコースターは更に速度を上げうねりを増して行った。
289 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 23:00:50.75 ID:xlq73.AO
唯「りっちゃん大丈夫?」

律「だびじょぶ…」

唯「ちょっと休む?」

律「ッ! なんの! まだまだッ!」

唯「おおっ! 復活した!」

律「予定が詰まってるからな。こんなところで……」

唯「予定?」

律「いやなんでもないぞーなんでもない」

唯「?」

律「さあどんどん乗るぞ! 唯!」

唯「うんっ」

律「次は何がいいかな〜」

唯「いっぱいあって目移りしちゃうね」

律「とりあえず片っ端から乗ってくか!」

唯「そうだねっ! 迷ってる時間が勿体無いよ!」
290 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 23:02:14.34 ID:xlq73.AO
唯「わあ〜かわいいね〜」

律「あ、プーさん発見」

唯「どこどこ?」

律「ほら、あそこあそこ」

唯「どこ〜?」

律「あっ、あっちにもいた!」

唯「ほんと!?」プに

律「やーい引っ掛かった」

唯「んもぅ!」

二人が今乗っているのは、色々なキャラクターが生活したり遊んだりしているのを写し象った空間を風船のような乗り物で抜けていくというアトラクションだった。

律「唯とクマのプーさんって似てるよな」

唯「似てないよ!? さらっと酷いこと言ったよりっちゃん!?」

律「似てるだろ? 常にハチミツなめそうな顔とか」

唯「りっちゃん!?」
291 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 23:02:57.36 ID:xlq73.AO
唯「あっ! こっちにも! ああっ!」

律「そっちか! 逃がすか! あっちにもいるぞ! 唯!」

次に二人がやっているのはゾンビを光線銃で撃ちながら進んで行くアトラクションだ。
ゾンビについている光のポイントに光線銃のポインターを合わせてトリガーを引くと光が消える、つまり倒したということになる。

律「一つじゃ間に合わないか! ならばっ!」スチャッ

唯「二刀流だね!」フンスッ!

本来四人乗りの乗り物な為、光線銃が余っていたのだ。
292 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 23:03:30.36 ID:xlq73.AO
律「唯! 左よろしく!」

唯「わかったよ!」

ピュンッピュンッ

唯「なかなかうまくあたら……あっ、行っちゃう…」

ゾンビにつけられた光のポイントが過ぎさっって……、

律「させるかっ!」ピュンッ

唯「あっ! また行っちゃ」

律「逃がさんっ!」ピュンッピュンッ

唯「あ(ry」

律「うおおおおおお」ピュンッピュンッピュンッピュンッ

気づけば律が踊るように光線銃を振り回し、左右両方をカバーしていた。

「ゴオオオオオ」

唯「あっ! ボスだよりっちゃん!」

律「いよいよラスボスか! 総攻撃だ! 唯!」
293 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 23:05:01.86 ID:xlq73.AO
唯「わかったよ! りっちゃん!」

二人の光線銃がラスボス目掛けて火を吹く。

律「いけえっ!」
唯「そこだ」

律「くらえええ!」
唯「当たれよ」

律「まだまだァ!」
唯「迂闊なやつめ」

律「ちょっと冷静すぎだろ唯」

「ガアアアアアア」

無数に点灯していたポイントが消え、頭の分のみポイントが浮かび上がる。
しかし、それはかなり小さく、律も懸命に撃つが中々当たらない。

律「駄目だッ! このままじゃ通り過ぎ──」

律は見た──
光線銃をくるりと回転させてから掴み、構える唯を。
294 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 23:05:53.59 ID:xlq73.AO
ポイントとポインターが赤い糸で結ばれてるかのように一直線に重なり、そして、

唯「ラストシューティング…」

ピュンッ──

ズバシャッ!!! テテテー

クリアした時の音楽だろうか、廃坑した街並みには相応しくないポップなメロディが二人を出迎えた。

律「やったな唯! クリアだぞ!」

唯「若さ故の過ちだよ、りっちゃん…」

ふー、とガンマンのように光線銃の銃口を吹き消す。

律「誰だよ」

1位 Y&R 5000000点
295 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 23:06:27.73 ID:xlq73.AO
唯「ふぃ〜いっぱい遊んだらお腹減ったね」

律「じゃあお昼にするか」

唯「そうしよっか。どこのレストランにする?」

休憩場所の簡易机の上にどんっ、置かれた箱。

律「田井中レストランにようこそお嬢さん」

唯「作って来たの!?」

律「これが第二の箱だ」

唯「第二の箱?」

律「まあまあ、気にせず食べた食べた」

箱、というかランチボックスを開くと中には彩り豊かなサンドイッチ達が犇めき合っていた。

唯「わあ〜美味しそうい! いただきます!」

律「たんとお食べ」
296 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 23:07:03.19 ID:xlq73.AO
唯「美味し〜ぃっ! 前のハンバーグもそうだけどりっちゃんって料理上手だよね!」

律「そうかぁ? サンドイッチなんてただ挟むだけだろ? ハンバーグは焼くだけだし」

唯「またまたぁ〜。謙遜しなさんなって。りっちゃんはいいお嫁さんになれるね」

律「大げさだよ、唯は」

二人でニコニコしながらサンドイッチを減らしていく作業はとても幸せな一時だった。
297 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 23:07:40.65 ID:xlq73.AO
少し休憩した後、また乗り物に乗りまくる二人。

唯「放課後ティーカップ! なんちゃって」

律「定番だよな〜コーヒーカップ」

唯「それ〜っ!」

律「おいおいそんなに回すと…」

唯「とりゃ〜っ!」

律「目が……あ……あっ」

唯「りっちゃん目が回るよ〜」

律「唯さん!?」

制御不能となったコーヒーカップの上で二人はしばらく回り続けたそうな。

────

唯「メリーゴーランドに乗るよ!」

律「回る系はしばらく遠慮したい…ってわけでここで見てるよ」

唯「え〜……。しょうがないなぁ」
298 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 23:08:34.88 ID:xlq73.AO
唯「あはは〜りっちゃ〜ん」

外にいる律に手を振る。

律「危ないからちゃんとつかまりなちゃいね〜」

手を振り返す律。


唯「あははは〜りっちゃ〜ん」

手を振る唯。

律「危ないからちゃんとつかまりなちゃいね〜」

振り返す律。


唯「あはははは〜りっちゃ〜ん」

手を振る唯。

律「危ないからちゃんとつかまりなちゃいね〜」


唯「あははははは〜りっちゃ〜ん」

手を振る唯。

律「無限ループって怖いでちゅね〜」

振り返す律。
299 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 23:09:32.02 ID:xlq73.AO
次に二人が乗ったのは、天空サイクリングと言う乗り物だ。
自転車を漕ぐことにより中空にかけられているレールを走ることが出来る。

唯「高いねりっちゃん!」コギコギ

律「ああ…。まさに天空エクサイクリング!」コギコギ

唯「……」

律「……。さっきのはエキサイトとサイクリングを掛けた高度な……」

唯「寒いね…りっちゃん」

律「心も体も冬にしてしまってすまない、唯」

唯「あっ! 後ろから来てるよりっちゃん! 早く行かないとつっかえちゃう!」

律「なにをー!? 追い付かせるものかーっ! ファイトォォッ」コギコギ

唯「いっぱあーつっ」コギコギ
300 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 23:10:00.59 ID:xlq73.AO
唯「わあ〜綺麗だね〜」

律「そうだな〜」

今二人は園内を走る列車に乗っている。そこから園内を眺めながら感慨に浸っていた。

唯「こうやって見るとまた何か違うね」

律「だな」

唯「あっ! 手振ってくれてるよ!」

律「ん? あ、ほんとだ。おーい」

ここのメインキャラクターが二人に向かって手を振ってくれている。

唯「お〜い」

窓から乗りだして大きく手を振る唯。

『危ないですので窓から手は出さないようにお願いします』

唯「あっ、す、すみません」

律「ぷくくっ」

唯「あっ! りっちゃん酷い!」
301 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 23:10:38.01 ID:xlq73.AO
観覧車に乗った時にはすっかり日も落ちかけ、夕焼けが顔を覗かせていた。

唯「ここからだとよく夕日が見えるね」

律「綺麗だな」

唯「……。ねぇ、りっちゃん」

律「ん?」

唯「昨日はごめんね?」

律「気にしてないよ。わたしこそごめんな、唯」

唯「……」

律「……」

唯「えへへ///」
律「にひひ///」

唯「みんな受験勉強で忙しいもんね…わたしの誕生日なんて覚えてられないよね」

律「唯…」

唯「これ終わったら帰ろっか。もう遅いし」

律「……ああ」
302 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 23:11:12.02 ID:xlq73.AO
観覧車を降りた頃にはすっかり日も沈み、園内はライトアップされていた。

唯「今日はありがとうりっちゃん。凄い楽しかったよ。最高の誕生日プレゼントだった!」

律「……」

唯「祝ってくれたのはりっちゃんだけだったけど……それでも今までで一番楽しかった! だから……」

律「唯」

いとおしそうに優しく唯の頭を撫でる。

唯「りっちゃ……。ん……。だから……次はみんなで来よ゛う゛ね゛」

涙に邪魔されて最後まで上手く言えない。

律「大丈夫、まだ箱の魔法は終わってないから」

そう言って、律は携帯に目を遣る。
303 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 23:12:10.67 ID:xlq73.AO
律「よーし、準備完了か。こっちもそろそろ……」

唯「?」

律「唯。お前のその涙を、笑顔に変えてやるよ」

そんな演技がかったセリフを口にし、カウントを始める。

律「5.4.3.2...」

律「1ッ!!!!」

両腕を翼の様に広げる律。
その遥か後方から何かが打ち上がった。
それはみるみる上空へと飛翔して行き……。

バァンッ!!! と派手な音をたてて散った。

唯「わあ…花火……! 花火だよりっちゃん!」

律「花火ぐらいで驚くなよ? 続いてパレード!!」パチンッ!
304 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 23:13:05.49 ID:xlq73.AO
律がパチンと指を鳴らすと、まるで本当に律が指示したかのようなタイミングでキャラクター達が乗った台座カーが出現する。

唯「きれい……」

台座カーに取り付けられたイルミネーションが辺りを幻想の世界へと誘う。

律「もういっちょっ!」

その声に反応したかのように次々とイルミネーションが開花して行く。
園内全体が眩い斑の光に包まれた。

唯「ほんとに魔法使いみたいだねりっちゃん!」


律「ある時はジュリエット、そしてまたある時は魔法使い、そしてまたまたある時は……」パチンッ!

園内にワルツのような曲が流れ始める──、
305 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 23:13:31.71 ID:xlq73.AO
律「ロミオにだってなれる」

学園祭で魅せた演技力は未だ健在のようだった。

律「Shall we Dance?」

そう言いながら差し伸ばしてくれた手を、

唯「Gladly♪」

と言って握り、二人は踊り始めた。

誕生日のワルツを。

その時唯の瞳に涙はなく、笑顔だけが広がっていた。
306 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 23:16:29.68 ID:xlq73.AO
────

唯「すっかり遅くなっちゃったね〜」

律「唯がまだ踊ろうよ〜とか言うから」

唯「ごめんね。楽しかったからついつい」

律「まっ、いいけどさ。わたしは」

唯「あれ? そう言えばりっちゃんの家って向こうじゃ…」

律「……、まだ第三の箱があるからな!」

唯「第三の箱?」

第一は白い何も入ってない箱だった。
第二は美味しいサンドイッチだった。
第三は一体どんな箱なのだろう?
唯は興奮覚めやまぬと言った感じで律にせっつく。

唯「どれどれ?」

律「そう焦るなって。そろそろ見えてくるから」
307 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 23:17:41.85 ID:xlq73.AO
そう言って歩きついた先は、

唯「わたしの家?」

律「これが第三の箱だよ。開けてみて」

唯「う、うん」

自分の家の玄関を恐る恐る開けてみると……、

パァン! パァン! パァン!
一斉にクラッカーが鳴る。

憂「お誕生日おめでとう! お姉ちゃん!」
澪「誕生日おめでとう、唯」
紬「お誕生日おめでとう唯ちゃん」
梓「誕生日おめでとうございます、唯先輩」
和「誕生日おめでとう、唯」
純「誕生日おめでとうございます唯先輩っ!」
さわ子「誕生日おめでとう唯ちゃん」
308 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 23:18:40.75 ID:xlq73.AO
唯「ほ……? へ?」

一体何が起こったのか理解出来ず、律の方へ振り向く。

律「誕生日おめでとう、唯」

その言葉で、ようやく全てを理解した。

唯「みんな……、ズルいよ。忘れたふりなんてさ」

顔を俯ける唯。

澪「ごめんな、唯。律がどうせならサプライズでやろうって言うから」

律「澪も乗る気だったろーっ?」

紬「ほんとは昨日も……、…っ…ぅ…メールしたくて……、したくてぇ」

梓「もう、ムギ先輩鼻水出てますよ」

紬「ありがどう゛あずじゃぢゃん」
309 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 23:19:32.01 ID:xlq73.AO
和「バカね、毎年やってるんだから忘れるわけないじゃない」

憂「律さんにどうしてもって言われてたから……、すやすや眠たそうなお姉ちゃんから掛布団を……、掛布団をっ!!」

純「はいはい落ち着きなよ憂」

さわ子「このツリー持って来るの苦労したんだから」

澪「クリスマスじゃないんですよさわ子先生…」

さわ子「似たようなものじゃない。綺麗だし」

純「まあ綺麗と言えば綺麗ですよね」

梓「すみません唯先輩。色々飾り付けしたりするためにどうしても家を出てもらわなくちゃならなくて…」
310 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 23:23:20.57 ID:xlq73.AO
澪「その役目が律だったってわけだ」

紬「ほんとはみんなで喫茶店に行って……、その後りっちゃんと唯ちゃんを残して用意するつもりだったの」

唯「……じゃあ」

顔をあげ、もう一度律の顔を見ると、

律「唯の誕生日をみんなが忘れるわけないだろ? みんな唯が大好きだよ」

いつか言われたあのセリフ

唯「りっあああああああああちゃん」

私は、嬉しくて、嬉しくて……、りっちゃんに飛び付いた。

律「あぁ〜もぅ泣くな泣くな。これから楽しい楽しい本当のプレゼントが待ってるんだから」

唯「ううん……。もういっぱいもらったよ」
311 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 23:27:44.47 ID:xlq73.AO
流れる涙をこの時ばかりは塞き止めながら、精一杯の笑顔で。

唯「いっぱいプレゼント(思い出)もらったよ」

白い箱から始まり、美味しい箱、そして暖かい箱。
ううん、私の人生って箱には思い出がこんなにもいっぱいで……。

これからもいっぱいいっぱいもらうことになるから……、だから……、

唯「みんな、ありがとう」

精一杯の笑顔でお礼を言うんだ。

生まれた日、誕生日。
生まれて来て、みんなに出会えて、本当に私は幸せだよっ!

おしまい
312 : ◆sIyMU.D1PY [sage]:2010/11/27(土) 23:28:45.76 ID:xlq73.AO
唯ちゃん誕生日おめでとう

こんなに祝われて唯は本当に幸せ者ですね
参加した皆さんお疲れさまでした。
次の方いましたらどうぞ
313 : ◆c.8m/0M/w6 [sage]:2010/11/27(土) 23:32:15.04 ID:kjOJR3o0
唯誕生日おめでとう
構想6時間の大作を受け取れ!!!
314 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 23:32:20.55 ID:ekHDQboo
どうやら俺は良質なSSが集まるスレに迷い込んだようだな
315 : ◆c.8m/0M/w6 [sage]:2010/11/27(土) 23:38:32.42 ID:kjOJR3o0
さわ子「校長の話だ!!!」

校長「11月27日、今日何の日か知ってる人いませんか?」

「盆栽の日ですかー?」

「違うよ錦鯉の日だよ!」

「囲碁の日は1月5日だし・・・」

校長「・・・場っきゃ炉おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

「111?????」

校長「今日は唯ちゃんの誕生日だろうがあああああああああああああああああああ」

唯「ほえ?」

校長「というわけで今日は学校をお休みにします!!!現地解散!!!!!」
316 : ◆c.8m/0M/w6 [sage]:2010/11/27(土) 23:46:12.04 ID:kjOJR3o0
「マジかよ!!」
「校長ぱねえ」
「校長リスペクトするわわたしwwwwwwwwwwwwww」

「校長!」「校長!」「校長!」

校長「うんうん」

唯「わたしの誕生日だろうがああああああああ」ゲシ

校長「うんたんっ」

校長!校長!校長!

その後も校長コールは鳴り止まなかったという・・・

校長「唯ちゃん誕生日おm」

唯「校長しねえええええええええ」げし

校長「わしの入れ歯という名のトイボックスがああああああああああ」

唯「・・・」

校長「・・・いふ?(いる?)」

唯「いるかぼけえええええええええええ」

おしまい
317 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 23:50:44.37 ID:wR.Su.AO
校長wwwwwwwwwwwwwwww
318 : ◆c.8m/0M/w6 [sage]:2010/11/27(土) 23:50:48.90 ID:kjOJR3o0
時間がなかったんだすまない
感想はちゃんと今から読んで書くよ
319 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 23:54:28.40 ID:h92D5Gg0
殺伐としたパンドラボックスに最後の希望が!
320 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 23:55:04.63 ID:h92D5Gg0

 【11月27日 23:52 平沢家1階リビング】

唯「……」ゴロゴロ

唯「みんな帰っちゃったね」

憂「うん。お片づけもしちゃったし、ちょっと寂しいね」

唯「……ういー」

憂「ん?」

唯「私ももう、18歳なんだね」

憂「そうだね。もう大人だよ」

唯「大人かぁ……。ね、憂」

憂「……なあに?」

唯「おいで。誕生日が終わるまで、ぎゅってしてたい」

憂「うん。……よいしょっと」ゴロン

唯「えへへ。ういー」ギュ
321 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 23:55:32.35 ID:h92D5Gg0

唯「……」

憂「……」

唯「うい、あったかいね」

憂「すっかり冬だもんね。お姉ちゃん寒くない?」

唯「大丈夫だよ。憂がいるから」

憂「冷えちゃうよ?」

唯「平気だもーん」ギュウ

憂「……もう」

憂「……」

憂「お姉ちゃん。えっとね」

唯「なんですかな?」

憂「実は、もう一個だけプレゼントがあるの」

唯「えっ? でもさっきも……」
322 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 23:56:03.01 ID:h92D5Gg0

憂「ほんとは、渡すつもりなかったんだけど……」

憂「お姉ちゃんはもう大人なんだもんね?」

唯「うん、18だもん!」

憂「……じゃあ、これ」モゾ

唯「ん?」

憂「あ、ちょっと離れてくれないと取り出せない……」

唯「おっと、ごめんごめん」

憂「ありがと。……ほっ、これこれ」ゴソッ

唯「どうもー……って、これ。この高級感ある紫の小さな箱は」

憂「……」

唯「うい……」

憂「……」

唯「指輪だね! すっごく嬉しいよ!!」ダキッ

憂「た、ただの誕生日プレゼントだから……」
323 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 23:56:33.54 ID:h92D5Gg0

唯「ありがとね、憂」

憂「……うん、どういたしまして」

唯「……けどね、憂。私がこれを受け取るわけにはいかないよ」

憂「そ、そっか。だよね、ごめんね!」サッ

唯「引っ込めてもだめ!」

憂「ひえっ! ご、ごめんなさい、ごめんなさい!」

唯「……うーい」ギュ

憂「……」

唯「よしよし、憂。ふるえないの」

憂「ふ、う、う……」グスッ

唯「ね、憂。時計見てくれる?」

憂「時計……?」
324 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 23:57:01.98 ID:h92D5Gg0

唯「いま、何時何分何秒?」

憂「11時59分……あと10秒で、お姉ちゃんの誕生日終わっちゃうね」

唯「……きゅー、はち、なな」

憂「?」

唯「ろく、ごー、よん、さん」

唯「に、いち、ぜろ」

憂「……お姉ちゃん?」

唯「さぁ、憂。箱開けちゃうね」

憂「え、でも……」

唯「わぁ、かわいい指輪だ。高くなかった?」パカ

憂「高かったけど……お姉ちゃんへのプレゼントだし」

唯「ういー? ……ふふふ、まだまだ子供だねぇ」

憂「そうかも。16だもん」
325 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 23:57:39.99 ID:h92D5Gg0

唯「でもね、憂。憂ももう子供はやめて、素直にならないとね?」

憂「……え?」

唯「うい、これはもうプレゼントにはならないよ。もう私の誕生日は終わったんだから」

唯「憂もそのつもりなんでしょ? プレゼントじゃなくて……結婚指輪」

憂「あ……」

唯「えへへ。安心して、憂。私がお姉ちゃんとして……大人としてがんばるから」

唯「だから……この指輪をはめてくれる?」

憂「……うんっ、わかった!」

 ス…

唯「いつの間にサイズ測ったんだね」

憂「あ、うん。寝てる間に……」

唯「……ぴったりだ。ありがとう、うい」

憂「……えっと」

唯「ずっと大事にするね。この指輪も、憂も」
326 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 23:58:32.79 ID:h92D5Gg0

唯「うい」ギュ

憂「ん……」

唯「憂、大好きだよ。愛してるよ」

憂「うん、お姉ちゃん……私も」

唯「私もって?」

憂「え……だから」

唯「ちゃんと言ってよぉ。憂も、どうなの?」

憂「わ……わたしも、お姉ちゃんのこと大好き。……愛してる」

唯「ふふっ。よく言えました」ナデナデ

憂「うぅ……恥ずかしいよ」

唯「恥ずかしい? それなら、目を閉じるといいよ……」

憂「……うん」

唯「……」

 ちゅっ
327 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 23:59:04.44 ID:h92D5Gg0

憂「……っ」ピク

憂「……お姉ちゃん」

唯「えへ。キスしちゃった」

唯「でももう大人だし、いいよね!」

憂「いいっていうか……」

憂「もっと、してほしいかな」

唯「……あらら。憂も大人だね」

憂「それ、どういう意味なの?」

唯「おやぁ? またとぼけちゃって」

憂「……お姉ちゃん、目が怖い」

唯「ふっふふ。すぐに素直な子にしてあげるからえ……ん」ペロッ

憂「んっ、おね……むぐ」

唯「んふ……」ペロペロ
328 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 23:59:33.55 ID:h92D5Gg0

唯「憂のくちびる、ちょっとだけケーキの味残ってるね?」

憂「そ、そうかな……けっこう時間経ってるけど」

唯「そうだよ。甘くてふわふわ……ん」

憂「んむぅ……お、お姉ちゃんのべろだって、ケーキの味してるもん」

唯「ん? ……そうかなぁ」

憂「うん。お姉ちゃんがぺろってすると、生クリーム舐めてる感じがしたもん」

唯「それおかしいよ。だって、憂は口開けてないんだよ?」

唯「……ちゃんと、憂の舌で確かめてくれないと」

憂「私の……舌で?」

唯「そうだよ。でないと、私は信じられないよ。あんな前に食べたケーキの味が残ってるなんて」

憂「う、うん。わかったお姉ちゃん……確かめてあげる」

唯「よしよし、いい子だようい。お口開けて、舌いっぱい出して?」

憂「……ん」

唯「もっと大きく」

憂「……あーん」
329 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/28(日) 00:00:03.65 ID:Dwbmr4o0

唯「ふふっ、かわいいなぁ憂。ん、はむ」チュッ

憂「っ……」

唯「べろくっつけるよ……」

憂「うん。……ん」

唯「はぁ、んむっ……」ピチャッ

唯「ろう? うい」

憂「ん……やっぱり甘いよ。んぁ」

唯「ほっかぁ。は、ちゅ……」

 ツク… ピチュ

憂「ふ……うぅ」

唯「くるひくない?」

憂「へーきらから……休まないで」

唯「わかった。もうやめないね、憂」

 チュクッ ピチピチャ

憂「ん、ふんんぅ……」
330 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/28(日) 00:00:32.00 ID:Dwbmr4o0

憂「んぐっ……くっ、ふう!」

唯「ういー、ほんとに平気?」

憂「だ、だいじょうぶ……だからっ、キスっ」

唯「えへへ……」

 ピチャン ピチャ

憂「ん、ふっうう……」

唯「……ここはどう?」ツツッ

憂「んむっ!? んあっ、くっ……!!」ビクッ

唯「……いいみたいだね」グッ

 スリッ スリッ…

憂「くんっ、や、ふあぁー!!」

唯「ほら憂、ちゅーだよ」

憂「あっ……んぐっ、ふ、るうっ」
331 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/28(日) 00:01:01.99 ID:Dwbmr4o0

唯「ん、ちゅる……」コスコス

憂「おねっ……はっ、いうっ、ひちゃう!」

唯「! ……はっふ……ん、ううぅ」レロレロ

憂「かっ、は……ふうぅうぅー!!」ビグンッ

唯「ん……」チュッ

憂「ふぁ……んうっ、く……はぁっ、はぁ」

唯「……ういー、平気?」

憂「はっ、はぁ……ふぅ、ふ」コクン

唯「そっか。よかった」ホッ

憂「はぁ、すぅ……はぁ」

唯「……?」

憂「……すぅ、すぅ」

唯「寝ちゃったか」

唯「……」コロン
332 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/28(日) 00:01:31.29 ID:Dwbmr4o0

憂「……くぅ」

唯「……」ナデナデ

 キラッ

唯「……きれいな指輪」

唯「私が買ったのより綺麗だなぁ」

憂「ん……」

唯「……うい、おかえしはもうちょっと待ってほしいな」

唯「今度は、憂の誕生日に……」

唯「……」スゥ

唯「よしっ、がんばるぞ」フンス


 おわら
333 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/28(日) 00:03:35.16 ID:Dwbmr4o0
全力で滑り込んだけどやや間に合ってないね。
最後の人がんばって!
334 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/28(日) 00:28:55.75 ID:OdYBuQAO
飛び入り
◆D8R1/Af/eU 唯和?

終了
◆HaQe1m0Wgk 唯憂 0:00〜0:30 「ブラックジョーク」 >>4-9
◆ocw3brVKmU 唯憂 00:30〜01:00 「箱入りお姉ちゃん」 >>13-43
◆7rhEZfb0mk 唯憂和 1:00〜2:00 「命のスペア」 >>46-82
◆W3liI16LCQ 唯憂 3:00〜4:00 「しあわせびっくり箱!」 >>85-103
◆Gln3lxvSW. 唯紬 10:00〜11:00 「吃驚箱」 >>105-121
◆HLxYS9HHyE 軽音部全員 12:00〜13:00 「さぷらいず!」 >>125-139
◆WPAs7IEKQY 和 13:00〜13:30 「和ちゃん未来予知?」 >>142-163
◆msoYUqBFAM 唯律 14:00〜14:30 「この日何の日気になる日」 >>165-179
◆wr8kfImLno 主催者(梓) 18:00〜19:00 「あずにゃんのプレゼント大作戦(笑)」 >>181-198
◆MDdV6fVW9E 梓除く軽音部 20:00〜20:30 「カレーのちナン」 >>201-220
◆VKkafi8ECU 軽音部全員 22:00〜22:30 「ハコカギ」 >>223-263
◆sIyMU.D1PY 唯律 22:30〜23:30 「三つの箱」 >>266-311
◆c.8m/0M/w6 校長 「もうろく校長」 >>315-316
◆7rhEZfb0mk 唯憂 「おまけ的最後の希望」 >>320-332

読み返したいから貼らせてもらいます
335 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 02:20:43.97 ID:zP23eFko
大変遅くなりました。投下します
336 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 02:21:20.93 ID:zP23eFko

 部室にて

唯「ねぇ。この箱どうやったら開くと思う?」

律「お、唯か。今日は遅かったな」

澪「どうした。部室に入るなり藪から棒に」

唯「なんかね、この箱どうしても開かないから、みんなに見てもらおうと思って」ドッコイショー

梓「箱……ですか? その銀色の」

律「なんかメタリックーって感じがするけど」

澪「どこから持ち出してきたんだ?」

唯「んまあ。積もる話は色々と……」

紬「とりあえず、お茶でも飲みながらにしましょう」

唯「さんせーっ!」
337 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 02:21:54.45 ID:zP23eFko

唯「ずずびずばー」

律「ずずびずばー」

唯「寒い日は日本茶が喉にしみますなぁ」

律「全くですなぁ」

紬「落ち着くわぁ」

梓「って、箱の話はどうしたんですかあっ!」

唯「まぁまぁそんなに焦らんでも。あずばあさんや」

梓「誰がおばあさんですか」

律「そうじゃぞお。生き急いで何になる、若者よ。大器晩成じゃ」

梓「一個しか年違わないのに……」

澪「おいっ。この箱を開ける方法を見つけたいんじゃなかったのか?」

唯「オー、イエス澪ちゃん! そうでした!」

澪「まったく……」
338 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 02:22:50.65 ID:zP23eFko

律「銀色だな。いやシルバーと言ったほうが的を射ているか」

澪「英訳しただけだろ」

律「いやいや、シルバーの方が断然響きが格好良い」

澪「どっちでもいいだろ!」

紬「それにしても……随分綺麗にコーティングされてるのね」

梓「ですね。近くに寄ると顔が映るくらいですし」

唯「そりゃあ、毎日大事に磨いてましたから!」

梓「開ける努力はしなかったんですか……」

紬「唯ちゃん。はじめからこんなにピカピカだったの?」

唯「うん。そうだよ〜。あ、でも一回お醤油こぼしちゃってぇ」

唯「可哀想だからたくさん磨いてあげたんだけど……あんまり変わりませんでした!」

律「食卓に並べてたんかい!」

唯「でへへ」
339 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 02:24:07.94 ID:zP23eFko

梓「大きさは……だいたい三十センチ四方でしょうか」

澪「うん。多分、完全な立方体だよ。試しに測ってみようか」

唯「あっ、澪ちゃん気をつけて。角っこ尖ってるから刺さったら血が出るかも」

澪「そそそういうのは早く言えよおぉ」ビクッ

律「あーっ! っと未知の箱が勝手に澪さんの方向にスライドイーッン!」

澪「本気でやめろ!」ゴチィン

律「あひゃあん!」

紬「う〜ん……。ふ〜む……」

唯「ややっ。ムギちゃんの目つきが眉毛以上に鋭くなっている」

梓「その例え、割と条件緩いですよ」

紬「……分かったわ! はい、謎は全て解けました!」

律「なにぃ!」

澪「ム、ムギ!?」

唯「おおお、果たしてその答えは!」

紬「なにも分からないということが分かりました!」

唯「ドデーッ」
340 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 02:25:14.66 ID:zP23eFko

紬「ごめんね。一度でいいから金田一一の台詞を言ってみたかったの」

澪「ソクラテスも混ざってたけどな……」

唯「二人とも博識だねー」

律「てーことは、ムギと澪が分からないのに私たちに分かるわけがない!」

梓「私まで入ってるんですか……」

律「なんだよ梓ー。文句があるなら何か手がかり一つでも出してみろよー」

梓「……コホン。いいでしょう。分かりました」

梓「とりあえず、取っ手などがない以上、簡単に開けることは難しいでしょう」

梓「しかし、中身がどんな風になっているか、多少なりとも予測することができると思います」

唯「ほむほむ!」

紬「それで、具体的にどうするの?」

梓「ふふふ……。こうです!」シャキーン

律「なんだ、その……中途半端に物握ってるみたいな指具合は」

唯「……あ、分かった! あずにゃん分かったよ!」

梓「やっとこの気持ちを分かってくれましたか! 唯先輩!」

唯「狼牙風風拳でこじ開けるんだね!」

梓「ちがわあい!」
341 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 02:26:09.96 ID:zP23eFko

梓「こうして指先でですね……」コンコンッ

梓「と叩いて、中身が空洞か、それとも詰まってるかを確認するんです」

唯「おおーっ!」

澪「なるほど。空気が入ってれば、それだけ内部に衝撃が響くはずだもんな」

梓「です!」

紬「さすが梓ちゃんっ」

律「ふむ、なるほど。空気が入ってれば……それだけ響く……。中身が……」

唯「りっちゃん、なにブツブツ言ってるの?」

律「んー。……よし、唯。ちょっとおでこ出してみなさい」

唯「え? いいけど……ほい」ペロッ

律「まずは唯にコンコン」コンコンッ

律「そして自分にもコンコン」コンコンッ

律「……む! やっぱり私のほうが詰まってる感じがするぞ!」

唯「な、なんですとーっ!」

唯「ってちょっと酷くない!? 私も確認するぅ!」
342 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 02:27:10.13 ID:zP23eFko

唯「これこれ田井中クン。おでこを出しなさい」

律「ハハッ。しかし教授、既におでこは出ているのであります」

唯「ふむ、実に用意がいいな。流石はド田舎クンだ」

律「教授。田井中です」

唯「ふむ……そんなことより、これよりオペを開始する。近う寄れぇ」

律「ハハーッ」

唯「まずはりつ姫に」コンコンッ

唯「そして自分に」コンコンッ

唯「……ふーむ……」

律「先生! 私、どこか悪いところでもあるんですか!?」

唯「……残念ながら、もう長くはないでしょう……」

律「そっそんなっ!」

梓「そんな小芝居してるから話が進まないんですよ」

唯「ぶーぶー。あずにゃんノリ悪いー」

梓「全く。唯先輩は箱のことが知りたくないんですか?」

唯「……むうぅ」

紬「わ、私もコンコンして欲しいかも!」

梓「えっ!?」

唯「いーよー。そぉれぇ!」コンコンッ

紬「ああっ!」

梓「ムギ先輩までなにやってるんですか……」
343 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 02:28:20.96 ID:zP23eFko

澪「で、箱だけど。確かに空洞みたいだな」コンコンッ

梓「でしたら、中に何か入れる為にあるとは思うのですが……」

梓「試しに、揺さぶってみましょうか」

紬「ゆさぶる?」

唯「まさか……脅迫!? ぼっくちゃんの家族に身代金を!」

梓「……えと、名前、つけてたんですね」

唯「もちろん! あのね、見た目じゃ男の子か女の子か分からないでしょ?」

唯「なら、どっちでも合うように、男の子の「ぼく」と女の子の「ちゃん」を入れたのです!」

唯「ちなみに、これは英語で言うボックスを駄洒落っちゃったりなんちゃったり……」

律「あぁ。なんとなくそんな感じかなーとは思った」

梓「ああもう! いいですか、持って左右に振ってみるんですよ!」

梓「カラカラとかコロコロって音がしたら何か入ってる証拠です」ヨッコラセッ

梓「こうやって……さゆーに……ゆらーし……」プルプル

澪「あ、梓、大丈夫か? 足がぷるぷるしてるけど……」

紬「重いなら代わろっか?」

梓「へっ、へーきです! なんの、こに、しきぃ……ッ!」
344 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 02:29:03.36 ID:zP23eFko

唯「で、結局ムギちゃんがやることになりました」

梓「腕が痛いです……」シュン

律「頑張った。梓は十分に頑張ったぞぉ、うんうん」

梓「むうぅ……」

紬「それじゃあ適当に振ればいいのね〜」ユッサユッサ

 …… ……

紬「……何か聞こえた?」

澪「いや、特に何も」

唯「聞こえなーい」

律「ってことは、合わせて考えると、空洞だけど何も入っていないってことか」

澪「うん……。それで、どこにも開け口が見当たらない」

梓「表面はチタンを思わせる銀ピカのテカテカ……」

紬「一体何のために存在しているのかしら……」

唯「だよねぇ。和ちゃんは何も説明してくれなかったし」

律「えっ!?」

澪「ちょっと唯。今なんて言った?」

唯「ん〜。和ちゃんは、くれたとき何も説明してくれなかった〜って」

梓「それを先に言いましょうよ!」
345 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 02:32:35.31 ID:zP23eFko

律「なーんだ。全部和が真相を知ってるんじゃないか」

澪「全く。私たちに色々考えさせて……」

唯「てへへ。めんごめんご」

紬「でもけっこう楽しかったわぁ」

梓「あの、唯先輩。くれたって言ってましたけど……」

唯「うん。誕生日の夜にね、プレゼントだ〜って持ってきてくれたんだ〜」

律「あぁ。そういえば和は唯の誕生会に来てなかったな」

澪「……なるほどな。説明もなく、夜になってから持ってきた箱か……」

律「みおしゃんみおしゃん。これはきっとお化けの詰まったびっくり箱なんだぞう」

澪「やっ、やめろよ怖いこと言うの……」フルフル

梓「怪しいですね」

澪「梓までっ!?」

梓「いや、お化けのことじゃないですよ。和さんが唯先輩に意地悪するとは考えにくいですが……」

梓「他に何か変わったところとかありませんでした?」

唯「変わったところかぁ、う〜ん……。む〜ん……」

唯「そういえば、今になって考えると、いつもの和ちゃんにしては様子が違ったかも」

梓「できるだけ詳しく思い出してみて下さい!」

唯「そうだなぁ。えっと、確かねぇ――」


 〜 ぽわぽわぽわぁん 〜
346 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 02:35:57.78 ID:zP23eFko
 平沢宅玄関にて

和「ゆいー。誕生日プレゼント持ってきたわよー」

唯「あっ、和ちゃん! わぁい! ばんざーい」

和「ふふ。なにそのはしゃぎ方。全く唯はいつでも子どもなのね」

唯「えー。プレゼントはいつ貰って嬉しいものだよー?」

和「はいはい。その純粋さをいつまでも忘れないでね」

唯「うん……。ねぇ、なんか今日の和ちゃん、いつもと雰囲気違くなあい?」

和「そ、そう!? ただの気のせいよ」

唯「う〜ん。じゃあどうしてマフラーを口元まであげてるの?」

和「それは……外が寒かっただけよ」

和「そんなことよりプレゼントよ。欲しくないの?」

唯「あ、欲しいよ! プレゼントとっても欲しい!」

和「はいはい。では十八歳になった平沢唯さんにはこれを差し上げます」ヨイショ

唯「おおっ? なんかメタリックな箱〜。高価なものが入ってる感じ!」

和「……まぁ、価値があるとは言えるのかもしれないけど」

唯「早速中身見ていい?」

和「……ふふ。いいわよ。頑張って開けてみてね」

唯「よーしっ! ……ってこれどこから開けるの?」

和「それは唯自身が見つけなくちゃいけないのよ。周りの誰かと協力してもいいから」

唯「ほぇ? なにそれ、どいうこと?」

和「ごめんね。あまり説明してる時間はないの」

唯「む〜……。分かった! 和ちゃんがそう言うならその通りにしてみる」

和「その聞き分けの良さがいつまでも続くといいんだけどね」

和「それじゃ……またね」

唯「うんっ。プレゼントありがと〜!」

唯「……和ちゃん。泣いてたように見えたけど……」
347 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 02:37:07.52 ID:zP23eFko

 〜 ぽわぽわぽわぁん 〜

唯「――ってな感じだったんだ」

律「う〜ん。なるほどなるほど……」

澪「微妙に和っぽくない言い回しがあったな」

紬「それに、どこか達観したみたいな言い様ね」

梓「和さん……泣いてたんですか?」

唯「うん。なんかね、涙を止めたくても止まらないって感じだった」

律「……これは、大事かもしれん」

澪「律……。大事って、どういうことだ?」

律「一体その時、どんなことが和に起こっていたかまでは分からん」

律「でもなんていうか、涙とか、言葉の端々から察するに……」

律「まるで、これから死ににいく人の最後の言葉みたいな」

澪「まさか……冗談だろ?」

紬「りっちゃん。それ、本気?」

唯「のののの和ちゃん死んじゃうの!?」

律「まあ待て落ち着けって。ええと……今日は11月29日の月曜日だな」

律「唯の誕生日は二日前だ。仮にその時に死を悟っていたとしたら、もう随分と時間が……」

梓「って! 律先輩! というかみなさん! 今日、和さんは学校に来てたんですか?」

唯「……あ。来てない! 和ちゃん今日は欠席だったよ!」
348 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 02:37:49.20 ID:zP23eFko

唯「どどどどどどうしよううう」

澪「もちつけ! もちつくんだ唯!」

律「お前こそ落ち着け!」

梓「まさか……いやでも、今日休んだのが偶然ってことも有り得ますし」

紬「……だったら、とりあえず和ちゃんに電話してみない?」

律「そうだ、それだ!」

紬「そうね。唯ちゃんがかけるのが一番だと思うけど、できる?」

唯「う、うん。かけてみる。私が箱を貰ったんだもん、私が確かめなきゃだよね」

澪「な、なぁ、和死んじゃったりしてないよな? よな?」ウルウル

律「大丈夫だって。たぶん杞憂だよ。多分だけど」

澪「ほ、ほんとう?」

律「たりめーだ。ばーろー」

唯「ええと和ちゃんの番号……ピポパポペポ」

唯「呼び出しコール、いっかい、にかい、さんかい……あ、繋がった!」
349 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 02:39:13.24 ID:zP23eFko

唯「もしもし和ちゃん!?」

和『あ、唯? どうしたのいきなり大声で』

唯「本当に和ちゃんだよね? 生きてる和ちゃんだよね!?」

和『……何言ってるのよ。人を勝手に殺さないで欲しいわ』

唯「よかった……。ほんとによかったぁ……」

和『ねぇ、状況が全く飲み込めないんだけど』

唯「ううん。こっちの話だから、あんまり気にしないで」

和『……釈然としないわね。まぁいいわ。それで、何か用?』

唯「用? うーん……。あ、箱だよ、箱について!」

和『箱って? 何の?』

唯「和ちゃんがくれた銀ギラギンの箱だよ。ほら、誕生日の夜にくれた」

和『誕生日の夜……? 唯に?』

唯「うんうん!」

和『私、その晩はおろかその日は唯と会ってないわよ?』

唯「……へ?」

和『覚えてないの? 土日は大学の説明会に出ずっぱりだって言ったはずだけど』

唯「あれ? そうだっけ?」

和『まったく。当日は無理だけど、誕生日はちゃんと祝うって言ったでしょう?』

唯「あ、あー、うん。言われたらなんだかそんな気がしてきた」

唯「……あっ、でもでも。なら今日はどうして学校休んだの?」

和『ちょっとした気疲れみたいなものよ。今はもう平気。買い出しに外出れるくらい』

唯「そっかぁ。なんだ、良かったぁ」

和『他になにか聞きたいことは?』

唯「ううん。和ちゃんが無事ならそれでいい!」

和『はいはい。それじゃ、また明日学校でね』
350 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 02:40:29.78 ID:zP23eFko

澪「よ、よかったぁ」シナシナ

律「おい澪! って、まったくこういうのには弱いんだから」

紬「まぁ、和ちゃんがなんともなくて良かったわぁ」

唯「うんうん。やっぱり早とちりだったんだよ、やっぱり」

梓「あの……その、無事でよかったですけど、疑問点は更に増えてしまったような」

律「あ、そうだよな。箱のことだけど……」

唯「うん。和ちゃんは知らないみたいだったよ。しかも、その日は少しも私と会ってないって」

梓「でも唯先輩はあの晩、確かに和さんに会ったんですよね?」

唯「それは間違いないよ! じゃなきゃ誰から箱を貰うのさ?」

律「う〜ん……。謎は深まるばかりだ」

澪「もしかして、和のオバケだったのかもなんて……」

律「とうとう自分から言うようになったんかい」


箱「……」
351 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 02:41:18.34 ID:zP23eFko

 きーんこーんかーんこーん

律「……結局、ろくに議論が進まないまま下校の時間か」

紬「でも、開け方や中身は、明日になって和ちゃんに聞いてみればいいし」

唯「うんうん。電話先の和ちゃんは、とても死んじゃうみたいには聞こえなかったし」

梓「ですね。きっと色々取り越し苦労だったんですよ」

澪「そうだといいんだけど……」

律「お前はまだ引きずってたのか」

澪「だ、だってぇ」

律「怖い夢見た小学生か! ……まったく、ほら、手繋いでやるから」

澪「えっ、い、いいよ。小学生じゃあるまいし」

律「……私が繋ぎたいから繋ぐんだよ。いいだろ?」

澪「……うん。分かった」

紬「微笑ましいわねぇ」

唯「おっ、じゃあじゃあ! 私は右手にムギちゃんを左手にあずにゃんを」

梓「箱。持って帰らないといけないんじゃないですか」

梓「唯先輩が持ってきたんですから、唯先輩自身の手で持って帰って下さいね」

唯「えええぇ。しょんなぁ。こういう時こそ準備室の物置に……」

梓「私物は持って帰るって決めたじゃないですか! ですが、まあ……」

梓「その代わり、途中まで二人で持って帰ってあげてもいいですけど……」

唯「あ、あずにゃん……」

紬「ほう!」
352 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 02:41:57.79 ID:zP23eFko

 その次の日

さわ子「今朝は、みなさんにとっても大変辛い報告から伝えなければなりません。

    昨日の夕方、クラスメイトの真鍋和さんがトラックに轢かれて、この世を去りました。

    真鍋さんは、昨日は体調が悪いと休んでいましたが、その日のうちに回復して、

    晩ご飯の買い出しにスーパーに向かっていたそうです。その帰り道でのできごとでした。

    葬儀の日程などは、詳しく決まり次第伝えられるかと思います。

    今、真鍋さんの親族は、あなたたちと同じくらいか、それ以上に悲しんでいると思うので、

    高校生として良識ある行動をお願いしたいです。私から言えることは以上です。

    授業は、とりあえずしばらく自習になります」
353 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 02:43:31.50 ID:zP23eFko

 それから数日して

律「あれから……どのくらいに経った?」

澪「あれからって、なにからだ?」

律「そんなの決まってるだろ。分かってる癖に」

澪「あ、うん……。ごめん」

紬「今頃、和ちゃんは安らかに眠っているんだよね」

梓「天国で、安らかに……そうであって欲しいです」

唯「…………」

律「唯? ゆい? 大丈夫か?」

唯「あ、うん。ごめん。ちょっと思い出してた」

律「しっかりしろよ。まぁ、無理にとはいえないけど」

唯「ううん。違うよ、違うよりっちゃん。私大丈夫だよ」

澪「唯……そんな気張らなくても」

唯「澪ちゃんまで……私大丈夫だからね。今、今一つのことに集中して考えてるんだ」

梓「一つのこと、というと?」

唯「あの封筒」

紬「それって、和ちゃんが事故に遭う二日前に送ったっていう?」

唯「うん。あれは多分、時間から逆算しても、私に箱を渡した和ちゃんが送ったと思うんだ」

梓「それって……つまりどういうことなんですか?」

唯「ちょっと、頑張って説明してみるね」
354 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 02:44:48.26 ID:zP23eFko

唯「箱を渡して、私に封筒を送った和ちゃんは別人だった」

唯「つまり11月27日に和ちゃんになんらかの変化が起きた」

唯「いくら大学の説明会で忙してくても、夜まで空いてないなんてことはないはず」

唯「いっとき和ちゃんは別人になった。それで封筒を送って箱を持ってきた」

唯「その後、何故かその時の和ちゃんの記憶が消えて……いや、塗り替えられていたのかも」

唯「だから月曜日に電話をしても、箱についてはなにも覚えていなかった」

梓「……でも、あの、唯先輩?」

唯「うんっ?」

梓「それが、その……和さんが死んでしまったこととの関係は?」

唯「わかんない。でも全くの無関係とは思えないよ」

律「なぁ、唯さ。あれこれ考えるのは自由だけど、行き過ぎると陰謀論に」

唯「きっかけは陰謀でもいいよ。でも仮説から証明への積み重ねで、真実は見えてくるものだと思うから」

澪「唯? なんか、今日はいつも以上にいつもと違うような……」

紬「和ちゃんの死の原因を探りたいのね……」

梓「先輩……かっこゆい……」

唯「あ、それからね、もう一つ有力な仮説があるんだ」

律「もう一つの仮説?」

唯「うん。どちらかというと、こっちの方が確率は高いと思う。それはね……」


唯「あの晩。和ちゃんが二人いたっていう可能性」
355 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 02:45:18.67 ID:zP23eFko

 封筒に入っていた手紙


 『 全ての真相は箱が開いたときに分かるのよ 』
356 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 02:46:44.87 ID:zP23eFko

 それからとっても時が流れる

唯「ねぇ、あずにゃん」

梓「なんですか。藪から棒に」

唯「あーずーにゃんっ」

梓「やめて下さいよ。もう年なんですから」

唯「あはは……その言い方は酷いって」

梓「酷いもくそもないですよ。サンプルは採取できましたか?」

唯「うん。問題ないよ」

梓「干渉率は原子レベルで抑えられていますか?」

唯「オールグリーン」

梓「……ほう。まっ、なんだかんだ仕事をこなして物を言うのが唯先輩ですからね」

唯「当たり前でしょ。この研究所の所長なんだから」

梓「そうでしたね。しかし、私が「やめて下さい」って言ったら、いつから本当に手を出さなくなったのでしょうね」

唯「……いつからねぇ。いつからだろう?」

梓「思い出せなくなるくらい年をとったってことですかね。それか、ある意味、唯さんが聞き分けが悪くなったのか」

唯「酷い言い方だなぁ」

梓「私はあんまり変わってないって言いたいんですよ」
357 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 02:47:43.53 ID:zP23eFko

梓「で、どちらから作動させます?」

唯「どちらでも」

梓「……あの、いよいよ大詰めだっていうのにやる気ないんですね」

唯「だって理論上での計算式は完成してるんだもん。失敗しようがないよ?」

梓「まぁ、それはそうなんですけど……。」

梓「箱の秘密がついに明らかになるんですよ。嬉しくないんですか? 和さんにまた会えるんですよ」

唯「だって……これじゃ裏技みたいだもん。ルールに則ってないっていうか」

梓「はいはい。これだから理系頭は……。でも他に方法が無かったじゃないですか」

梓「[たぬき]とキテレツの道具はあらかた作ってみましたけど、箱はどうやっても壊せなかったんですから」


箱「ポツーン」


唯「だからって和ちゃんを生き返らせたり、タイムトンネルを作るのは反則だよ」

梓「その反則に最も熱心に打ち込んでいたのはどこのどなたさんですか?」

唯「はい」

梓「はい、よろしい」

梓「ともかくこれで真実が明らかになるんです。半々世紀かけて科学力を三十倍にした私たちの努力の結晶です」

唯「それはそうなんだけど……」

梓「はぁ。せっかく生き返っても、この反応じゃ和さんがっかりするんじゃないかな……」

梓「んもう、二ついっぺんに作動させちゃいますからね。ぽちい!」
358 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 02:50:11.85 ID:zP23eFko

 ぷしゅー

和「あ、おはよう」

梓「反応軽っ!」

唯「和ちゃん……」

和「唯、久しぶり。梓ちゃんも。ちゃんなんて似合わない年齢になっちゃったみたいだけど」

唯「……久しぶり」

梓「お久しぶりです。和さん」

梓「あの、唯さん? もっと喜んでもいいんですよ?」

唯「喜ぶって、そんな……」

和「どうしたの唯。素直に喜んでもいいのよ」

唯「今でも割と素直なつもりなんだけど……」

和「まったく……。約束を守れなかったことがそんなに残念?」

梓「約束というと、やっぱり」

唯「生き返らせる方法は五年前くらいから知ってた。でもあえてやらなかったんだ」

和「箱を壊して、それから私に会うんだって決めていたとか」

唯「……まぁ、だいたいそんな感じ」

梓「でもそれじゃ埒があかないだろうと思ったから、私が強く勧めて……」
359 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 02:52:20.78 ID:zP23eFko

和「でもね、経緯に些細な違いこそあれど、この展開こそが予定調和だったのよ」

梓「えっ!?」

唯「今、なんて……?」

和「今こそ真実を話してあげましょう。あの箱を開ける方法なんてこの世に一つもないのよ」

唯「…………」

梓「ちょっ、ちょっと待ってください。理解が追いつかな」

和「まぁまぁ聞きなさい。今までの概念をすっぽりと取り去ってね」

和「絶対に到達できないところ、それを象徴しているあの箱は、“向上心”を与える役割を持っているの」

和「届かないから手を伸ばしたくなる。昔の人はよくこんなことを言ったものね」

和「私が死んでる間に、ざっと二十世紀くらい科学力が進んでるみたいだけど……なるほど効果は絶大だったみたいね」

梓「え、あの、ちょっ、ストップ!」

和「……なにかしら?」

梓「まず、まずですね。色々聞きたいことはありますが、どうして和さんがそれを知ってるのですか?」

和「決まってるじゃない。神様仏様に聞いたのよ」

唯「神様……?」

和「そう。死んで天国に行った後で教えてもらったのよ」

梓「天国なんて、そんな非科学的な……」

和「あら。じゃああなたたちのスーパー科学力をもって私の言ってることが間違っているとでも証明できるの?」

梓「それは……どうなんでしょう」
360 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 02:54:32.45 ID:zP23eFko

唯「本当のことだよ」

梓「えっ、ちょっ、唯さん……!」

梓「あなた、ノーベル賞を15個も貰った欲張り者が言っちゃいますか?」

唯「和ちゃんは嘘ついてない。機械がそれを証明してるし」

梓「いつの間に嘘発見器を……!?」

唯「それに機械に頼らなくても、和ちゃんが嘘ついてるかついてないかくらいは分かってるつもり」

和「あら。昔に比べて随分と飲み込みが早くて助かるわ」

梓「えっ!? もしかして今の、科学の権威が地におちた瞬間!?」

唯「あずにゃん! シャラップ!」

梓「ぐうっ」

唯「……はぁ。なんていうかさ……」

唯「ねぇ、和ちゃん。どうしてこんなことになったのかな?」

和「どうして、ねぇ。私に聞かれても困るわ。だって全部神様が指図したことなんだもの」

唯「神様……仏様ね……」

唯「でもさ、それを言う言わないは和ちゃんの自由だったんじゃないかな」

和「……確かにそうね。別に私である必要は」

唯「私は、それを和ちゃんの口から聞かされたことが凄い悲しいな」

和「ゆ、唯……」

梓「唯さん……」
361 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 02:56:19.31 ID:zP23eFko

唯「箱は確かに変わらずに、今でもここにあるし、科学への向上心は少しも落ちてない」

唯「でも和ちゃんを想う気持ちは確実に落ちていってたんだよ」

唯「残念だと思うけど、これは本当のことだから……」

和「……そう。あなたの気持ちが冷めてることは分かったわ」

和「でも、それならどうして生き返らせてくれる気になったの?」

唯「それは……多分……」

唯「足枷、みたいなものかな」

和「ふぅん。足枷ね」

唯「一度決めた目標ってなかなか崩せないものなんだ。私みたいな、一つのことにしか集中できない人は特に」

和「なるほどね。惰性に似てるわね」

唯「でもね……でも」

唯「その足枷とか惰性みたいなものが、ぷっつり消滅しちゃったわけじゃあないんだ」

梓「え……そうなんですか?」

唯「和ちゃんは天国に行って、人間が変わっちゃった」

唯「私も変わったかもしれないけど、和ちゃんのほうがそれ以上に変わっちゃったんだ」

唯「天国なんて非現実なところにいたから……すっかり神様みたいに達観しちゃって……」
362 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 02:57:17.23 ID:zP23eFko

唯「昔の私と昔の和ちゃんは、今はもう測れないけど、きっと同じくらい心が通ってた!」

唯「でも今は、私も冷めちゃったけど、和ちゃんのほうがそれ以上に冷めてる!」

和「唯……。あなたまさか」

唯「つまりこれは! 数十年越しの私の失恋なんだああああああ!」

唯「うわあああああああああああああ!!!!」

梓「ゆ、唯さん、落ち着いて」

唯「梓! タイムトンネルの開閉準備できてるね!」

梓「え、あ、はいっ!」

唯「この、馬鹿みたいにかたい箱と一緒に!」ムンズッ

梓「唯さん、その箱を一体どうする……」

唯「神様に与えられた役目を! さっさと果たしてきなさい! 和ちゃん!」ブンッ

梓「なっ! 唯さんの投げた箱の軌道が、まっすぐ和さんの顔に!」

和「えっ! ちょっ! なにこれ聞いてな……」

和「へぶじッ!」

唯「今だ、梓! タイムトンネルオープン!」

梓「は、はいっ!」


 ぶお〜ん しゅるるるるるるる……


唯「今になって、過去の私に会って! 気持ちが変わったなんて言っても遅いんだからね! あっかんべーっだ!」
363 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 02:58:42.95 ID:zP23eFko

 ひゅー……

和「あいたァ!」ドサッ

和「ううう。やっと生き返ったと思ったら、今度は死ぬほど痛い思いをするなんて」

和「全く唯ったら……こんなものを思い切り投げつけてよこすなんて……」

和「顎が割れそうに痛いわ……って、腫れてる? しょうがないわね、マフラーで隠せばと」

和「ああ、痛い……涙が出るほどだわ」ウルウル

和「ええと、まずは封筒を買って、それから適当な便箋も」

和「そしたらまずこの箱を届けなきゃいけないのよね。全く、疲れるわ……」
364 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 03:01:08.82 ID:zP23eFko

 一方そのころ

梓「あの……唯さん?」

唯「なーにー」

梓「タイムトンネルの経過を観察しなくていいんですか?」

唯「いいよ、別に。そーいうのは全部機械にやらせておけばいいの」

梓「……だからって、私にこんなにくっつかなくても」

唯「いーじゃんいーじゃん。もうすぐ過去から戻ってくる和ちゃんを、とびきり嫉妬させてやるんだから」

梓「あはは。うまいこといけばいいですね〜」

唯「ほんとにね」

梓「…………」

梓「あの、もしかして、もしかしてなんですが」

唯「ううん?」

梓「和さんに失恋したので、私に乗り換えようとか考えてます?」

唯「そうだけど、何か不都合とかある?」

梓「いえ、別に……」

唯「だって梓は私のことがずっと好きだったんでしょ?」

梓「え? あ、まぁ……。好きじゃなかったら、普通ここまで連れ添ったりしないと思いますけど」

梓「……はぁ。もっとロマンチックに告白し合えればと思ってたんだけどな」

唯「まっ、結果的についに一緒になれるんだから、オーライオーライ」

梓「ですね。随分時間かかっちゃいましたけど、これで良しとしますか」

唯「でもさ、年増のビアンカップルって結構きつくない?」

梓「それは言わないでいいです!」


おわり
365 : ◆D8R1/Af/eU [sage]:2010/11/28(日) 03:03:23.81 ID:zP23eFko
唯和に見せかけた唯梓だった
自分のせいで全感の流れを悪くしてしまって、
ホント申し訳ないです
366 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/28(日) 06:41:25.83 ID:OdYBuQAO
勝手に修正 完全版

1番手 ◆HaQe1m0Wgk 唯憂 「ブラックジョーク」 >>4-9
2番手 ◆ocw3brVKmU 唯憂 「箱入りお姉ちゃん」 >>13-43
3番手 ◆7rhEZfb0mk 唯憂和 「命のスペア」 >>46-82
4番手 ◆W3liI16LCQ 唯憂 「しあわせびっくり箱!」 >>85-103
5番手 ◆Gln3lxvSW. 唯紬 「吃驚箱」 >>105-121
6番手 ◆HLxYS9HHyE 軽音部全員 「さぷらいず!」 >>125-139
7番手 ◆WPAs7IEKQY 和 「和ちゃん未来予知?」 >>142-163
8番手 ◆msoYUqBFAM 唯律 「この日何の日気になる日」 >>165-179
9番手 ◆wr8kfImLno 主催者(梓) 「あずにゃんのプレゼント大作戦(笑)」 >>181-198
10番手 ◆MDdV6fVW9E 梓除く軽音部 「カレーのちナン」 >>201-220
11番手 ◆VKkafi8ECU 軽音部全員 「ハコカギ」 >>223-263
12番手 ◆sIyMU.D1PY 唯律 「三つの箱」 >>266-311
13番手 ◆c.8m/0M/w6 校長 「もうろく校長」 >>315-316
14番手 ◆7rhEZfb0mk 唯憂 「おまけ的最後の希望」 >>320-332
15番手 ◆D8R1/Af/eU 唯和? 「」 >>336-364
367 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/28(日) 23:01:20.53 ID:raNboYDO
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