このスレッドは製作速報VIP(クリエイター)の過去ログ倉庫に格納されています。もう書き込みできません。。
もし、このスレッドをネット上以外の媒体で転載や引用をされる場合は管理人までご一報ください。
またネット上での引用掲載、またはまとめサイトなどでの紹介をされる際はこのページへのリンクを必ず掲載してください。

レイフォン「……」 トーマ「俺はツェルニを守る」 - 製作速報VIP(クリエイター) 過去ログ倉庫

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:07:10.32 ID:K/Cj93Yo


・レギオス×禁書です
・基本的にはレギオスの世界設定、けど少しイジってたりします、作中でなんとなしに解説していくつもりです、多分
・ご都合主義万歳ですたい
・キャラ崩壊あるかもしれないです、無いように気をつけますが
・レギオスの世界の根幹に関わる方々は出てこないと思います、多分
・禁書の知識はアニメやSS等で得たもの、なのでほとんど無いと言って過言ではないです、申し訳ない。現在勉強中です
・レギオスの方はある程度網羅しています、多分
・オリジナルの技等も場合によっては出てくると思いますし、既存の技の解釈も個人的なものになる可能性があります
・文章力は低レベルです、それはもう低レベル、限りなく低レベルです

ずっぽりまったりしっぽり進めていこうと思います。
気長に待っていただければ、幸いです。なんらかの理由で書けない場合、生存報告はしっかりと行いたいと思います。
長編になる予感、完結はさせる予定、終わりは見えていませんが。プロットもふわ〜っとした仕上がりですし。
勉強の休憩に、相乗効果でモチベーションアップ、と言う狙いでやっていきたいと思います。

まともなSSは初めてですので、お手柔らかに、と言った感じですかね。
よろしくお願いします。
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】

ごめんなさい、この製作速報VIP(クリエイター)板のスレッドは1000に到達したか、若しくは著しい過疎のため、お役を果たし過去ログ倉庫へご隠居されました。
このスレッドを閲覧することはできますが書き込むことはできませんです。
もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713798788/

【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713788018/

ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/

2 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:09:20.81 ID:K/Cj93Yo

 「ここがツェルニ…………」

  ツェルニ。

  学園都市ツェルニ。

  世界を彷徨う自律型移動都市【レギオス】の中には、様々な機能に特化したものがある。
  ここ、ツェルニは教育機関としての機能に特化した学園都市の一つ。

  約六万人の学生と、極少数の就労卒業生が住み、学生独特の活気に溢れている。

  学科は多岐に渡り、一般教養科、武芸科はもちろん、錬金科、養殖科等々、様々なものがある。
  そして、数ある学園都市の中でも、ここ、ツェルニだけに存在する学科がある。

  超能力開発科。
 
  【自分だけの現実】というものを用いて様々な現象を起こす超能力というものを開発、研究し、
 それを利用した戦闘訓練なども行われている学科である。
  この超能力開発科に興味を抱き、ツェルニに来る者も多いという人気の学科だ。

  しかしレイフォンは、そんな超能力開発科を含む多種多様な学科の中から、別段特徴のない一般
 教養科を選んでいた。

  武芸を捨てたレイフォンには、最初から武芸科という選択肢は無かったし、超能力開発科にも戦
 闘に関わるカリキュラムがあると知り、超能力という謎の能力には興味を抱きつつもこれを選ぶこ
 とは無かった。
  さらに、一般教養科は4年になれば専門分野を選択することになる。現段階で、自分の学びたい
 事が明確ではないレイフォンにはこれが丁度良かった。


 (えっと、まずは寮に向かって……その後で入学式会場の大講堂へ…………っと)
3 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:10:14.60 ID:K/Cj93Yo


  今日は入学式当日。

  レイフォンは出身地である槍殻都市グレンダンから放浪バスに乗り、交通都市ヨルテムを経て、
 ツェルニへとやって来た。


  この世界の都市というものは自律型移動都市【レギオス】という形態のものでしか存在しない。

  それは、この世界の全てが汚染物質に汚染され、そしてその大地には汚染獣と呼ばれる化物が徘
 徊しているためである。

  汚染物質は、汚染獣を除くあらゆる動植物に有害な物質。
  例えば、人間が無防備に体を汚染物質が含まれる空気に晒せば、それだけでたちまち皮膚が焼け、
 激痛がその身を襲う。さらに、呼吸をすれば、汚染物質が肺を焼き、内臓を破壊、たちどころに死
 にいたる。
  そして汚染物質は念威以外の全ての通信を妨害する。このため、通信手段も限られる。

  汚染獣は汚染物質に適応した生物。人を襲い、そして喰らう。そのため都市をも襲う。
  武芸者でない普通の人間でなければ、対抗する手段はない。ただ汚染獣という捕食者の餌となる
 しかない。武芸者であったとしても、ある程度の腕が無ければこれもまた、捕食者の餌になること
 だろう。


  そしてこの二つから人間を守るために大昔に作られたのが自律型移動都市だ。

  巨大な円形の土台に生活空間が築かれ、外周には汚染獣を避ける為の移動用の巨大な脚が多数あ
 り、その脚の上端部からは汚染物質の流入を防ぐ為のエアフィルターが展開されている。
  都市の移動を司るのはその都市の意思、電子精霊である。
  電子精霊は仙鶯都市シュナイバルにあるリグザリオ機関で生まれ、成長すると、自分の都市を求
 めて旅立つと言われている。

  都市間同士の交通手段は放浪バスのみ。

  放浪バスはどこの都市へ行くにも、必ず交通都市ヨルテムを経由する。
  これは、ほぼ常に動き回っている自律型移動都市の正確な位置を把握しているのが、ヨルテムだ
 けであるからだ。

  放浪バスは、移動中に汚染獣に襲撃されることもある。また、汚染獣を回避するために迂回した
 り、数日の間停泊することもある。

  レイフォンも、移動中に何度か迂回や停泊を繰り返したため、早めの到着を狙って放浪バスに乗
 ったつもりが、入学式当日の到着となった。
4 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:11:47.89 ID:K/Cj93Yo


  事前に入居申請していた寮の住所に着き、その寮と思われる建物を見上げるレイフォン。
  至って普通の外観。二階建ての建造物。扉はストッパーで止められ、半開きになっている。
  扉を開け、寮へと入る。

 「ん?」

  寮の入り口の横、小さなカウンターの向こうで、椅子に座り、本を読んでいる女性が顔を上げた。

 「新入生かな? 名前は?」

  帳簿に目を落とし、訊ねる女性。

 「あ、新入生のレイフォン・アルセイフです。出身は槍殻都市グレンダン、一般教養科です」

  女性は帳簿を指でなぞり、レイフォンの名前を探す。

 「…………うむ。グレンダン出身の一般教養科、レイフォン・アルセイフ。承っているぞ」

 「よし、じゃあ寮を案内しよう。あぁそうそう、私はここの寮監を務めさせてもらっている。ツェル
  ニの卒業生だ」

 「あ、はい。よろしくお願いします」

 「うむ。じゃあまずはこっちへ」

5 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:12:17.81 ID:K/Cj93Yo

  寮監に寮を案内してもらう。
  ホール、食堂、洗濯室、等々。
 
  途中、寮監から寮の規律について話があった。

 「門限は無い。料理や清掃は当番制。あと、異性も入寮するから、異性間の不純行為も禁止だ」

 「規律を破れば罰則。付近一帯の公衆トイレの掃除を一ヶ月」

 「しかし未だかつて、私の寮では規律に抵触する行為をした者は出ていないからな。お前にも、期
  待しているよ」

  寮監が笑顔でそう言った。
6 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:13:23.33 ID:K/Cj93Yo
  寮の施設の案内が終わり、最後に自室となる部屋へ案内された。

 「広い…………」

  感想を漏らす。

 「ここは二人部屋の部屋だったんだが、余ってしまってな」

  たしかに、備え付けの家具は二人分ある。

 「部屋の物の配置は好きにして構わない。もちろん新しい物を購入して設置してもいい」

 「ただし、壁や床、天井にキズをつけたり、ペンキ等をつけた場合は修繕費を払ってもらう」

 「あぁ、そうそう。君が先に送った荷物はそこに運んであるから、確認しておいてくれ。」

 「それと、その荷物の上に乗っているのが君の制服。サイズは間違いないな? これも確認してお
  いてくれ」

  レイフォンは制服を手に取り、タグを見てサイズを確かめる。
  間違いない。自分の頼んでいたものだ。

 「はい、間違いありません。案内ありがとうございました」

  頭を下げ、礼を述べる。

 「うむ。これから一年間、よろしくな」

  笑顔で握手を求めてくる寮監に、笑顔で応じる。

 「入学式、遅刻しないようにな」

 「はい」

  寮監は笑顔のまま頷き、去っていった。
7 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:15:14.61 ID:K/Cj93Yo

  改めて、部屋を見るレイフォン。
  ここから新しい生活が始まるんだ、と思うと、自然と気が引き締まる。

 「よしっ」

  小さく、しかし強く、決意をその言葉に込め、それを放つ。
  レイフォンはまず荷物を机の上に置き、制服に着替え始めることにした。
8 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:16:12.76 ID:h.WQiiQ0
ついに製速にレギオスSSktkr
期待してるず




レイフォンもげろになるかトーマもげろになるか
9 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:17:13.95 ID:K/Cj93Yo
                      †


 「やっぱり新入生ってのは一目見ただけでわかるもんだなぁ。狙われやすいのも当然か」

  トーマは都市内を巡回していた。
  入学式の警備、これがこの日の都市警察の仕事であった。

  基本的に他の警官は持ち場について、そこから動かないように指示されているのだが、トーマは
 違った。
  都市警察の中でも優秀、さらに武芸者としてそこそこ実力のあるトーマはある程度自由に、臨機
 応変に動いてもらうことになっているためだ。
  トーマは今日、入学式までは街中を巡回、その後会場へと向かうつもりだった。

  ツェルニは、基本的に治安のよい都市ではあるのだが、それでも犯罪というものは存在する。
  この時期だと、右も左もわからないような初々しい新入生を獲物に、カツアゲや詐欺などが起こ
 り易い。

 「初々しいねぇ」

  道行く新入生を見ながら呟くトーマ。

 「ん?おっと、早速だな」

  足を止めるトーマ。路地裏に怪しい影が4つ、それと、その影に対峙している小さな影が1つ。
  シルエットからして小さい方は女生徒だろうか。
10 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:18:33.74 ID:K/Cj93Yo

 「なぁ、おいお嬢ちゃんよぉ。おまえ新入生なんだよなぁ?」

  スキンヘッドの、見るからに下品そうな男。

 「は、はい」

  対して、新品の制服に身を包まれた新入生の女の子。

 「ツェルニに来たらまず先輩に金渡さなきゃいけないってルールがあるんだけどよぉ」

  当然、そんなルールは無い。

 「そ、そんなのあるわけないじゃないですかっ」

 「おいおいおいおい、お嬢ちゃんそんなこと言っちゃっていいのかよ」

 「お兄さんたちは武芸科なんだぜ?」

 「金渡さないんだったらよぉ」

 「どうなるか、わかってるよなぁ?」

  下卑た笑みを浮かべるチンピラ達。
11 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:19:48.33 ID:K/Cj93Yo


 「――――――――どうもならねえし、どうもさせねえよ」

  背後から不意に発せられたその声に振り向くチンピラ達。

 「なんだてめぇ?」

  チンピラの一人が訝しげにその声を発した物の正体を問う。
  しかしすぐさま、別の一人がその正体に気づく。

 「げ! そのツンツン頭! トーマ・カミジョウだ!」

 「都市警のエース、悪魔の右手!【幻想殺し】のトーマ・カミジョウ!!」

  焦るチンピラ達、トーマの名はツェルニ内では知らぬ者は無いほど有名であった。
  名だけが知られているのではない。その実績、その実力、ツンツン頭はトーマのトレードマーク
 として、そして悪魔の右手、【幻想殺し】と呼ばれたその右手の異質の能力も武芸者には恐るべき
 存在として知れ渡っていた。
  【幻想殺し】はあらゆる剄技、超能力を消し去ってしまう力、しかし原理はまったく謎の能力。

 「どうやらそのトーマ・カミジョウなんだが。どうする?やるか?」

  ニヤリ、と笑みを浮かべながら問うトーマ。

 「せ、せっかくですがその提案はお断りさせていただきます……ですよ〜」

 「へ、へへ……。じゃあ俺達はこれで失礼っと」
12 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:20:33.68 ID:K/Cj93Yo

  そそくさと立ち去ろうとするチンピラ達。

 「そうか。だけど残念ながらそういうわけにはいかないんだよなぁ」

  トーマは練金鋼ホルダーから練金鋼を一つ取り出す。

 「―――――レストレーション」

  捕縛用の黒鋼練金鋼である。縄、というよりは鎖に近い形に練金鋼が左手に復元される。

 「逃げろ!」

  慌てて走りだすチンピラ達。

 「まぁ待てよ」

  内力系活剄の変化、旋剄。
  脚力を強化し、あっという間にチンピラ達に追いつくトーマ。

 「ちょ!ちょ、わ、待った!ストップ!」

  いきなり隣に現れたトーマに驚くチンピラ。

 「それがよぉ、待たないんだよなぁ。だいたいさ、俺が悪人を目の前にして、そいつが逃げんのを
  待つと思ってんなら……」

 「―――――まずはその幻想をぶち[ピーーー]!」
13 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:21:12.93 ID:K/Cj93Yo

  その言葉と同時にまずは真横のチンピラの足をひっかけ、倒し、踏みつける。

 「うげぇっ!」

  一人。
14 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:22:16.73 ID:K/Cj93Yo

 「よっと!」

  前を走るチンピラの首に手刀を入れる。

 「おぐぇっ」

  二人。

15 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:22:51.05 ID:K/Cj93Yo

 「おらっ!」

  さらに、前を走るチンピラのさらに前に回りこみ、その鳩尾に肘鉄。

 「ふぐぅっ!」

  三人。

16 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:24:11.40 ID:K/Cj93Yo

 「ラストぉっ!」

  最後に残ったチンピラを追う。

 「くっそぉ!」

  意を決したチンピラが振り返り、トーマと対峙する。

 「くらえぇえ!!」

  チンピラはトーマに向かって衝剄を放つ。

 「残念!!」

  右手をかざす。

  ――――パキィィィィイン!!

  衝剄がなにかの割れるような音と共に消え去る。

 「うらっ!」

  そしてチンピラの顔面を右手で殴り飛ばす。

 「ぐばぶっ!」

  四人。
17 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:26:19.29 ID:K/Cj93Yo

  あっという間にやられてしまったチンピラ達。
  トーマは手早く捕縛用練金鋼で地面に横たわるチンピラ達を縛りあげる。

 「いっちょうあがり……っと」

 「武芸科なんだからもう少し鍛えろよな。ていうか武芸者ならなんでその力をバカみたいなことに
  使うんだよ」

 「カミジョウさんには到底理解しかねますですよっと」

 「説教してやりたいけど、残念ながら説教禁止令でてるしなぁ……まぁ気絶してるやつらにはさす
  がにしませんけど」

  気絶しているチンピラ達を見下ろし、呟くトーマ。

  都市警察に入っていた最初の頃は、こういう事件の後は長々と説教を垂れ流していたのだが、今
 ではあまりのくどさと長さに上司から説教禁止令を出されている。

 「ほんとさ。なんでなんだよ」

 「武芸者の力は、都市を、そしてそこに住む人々を守るためにあるんだろうが…………」

  そう言うトーマの顔には、怒りと呆れが同居した感情が宿っていた。
18 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:27:20.06 ID:K/Cj93Yo

 「大丈夫か?」

  警備本部の念威繰者と連絡をとり終えると、トーマは被害者の新入生に声をかける。

 「は、はい! ありがとうございました! 本当にありがとうございました!」

  しきりに感謝する新入生女生徒。

 「いやいや、カミジョウさんは都市警として当然のことをしたまでですよ」

  満足気に、しかし慢心無く言うトーマ。

 「まぁでも、あいつらが悪いのはもちろんだけど、気をつけなきゃだめだ。特に君みたいなかわい
  い娘は」

  トーマは自然とそんなことを言ってしまう人間である。
  そのセリフに赤面し、トーマをみつめる新入生。

 「?」

  トーマにはなぜその生徒が顔を赤くし、自分に熱視線をぶつけているのかわからない。

 「あ、あの! お名前……トーマ・カミジョウさんって言ってましたけど……」

 「ん?ああ、そうだよ、トーマ・カミジョウ、武芸科3年。都市警察所属だ」

 「トーマさん……あの、その、本当にありがとうございました!」

  トーマの手をとり、しきり頭を下げる女生徒に少し戸惑いながらも、トーマは満更ではない表情
 をしている。

19 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:28:36.44 ID:K/Cj93Yo

 「そ、そこまで言ってもらえると都市警冥利に尽きますですよ」

  と、そこに突然。

20 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:30:00.99 ID:K/Cj93Yo

 「トーマぁあああああああああああああああああああああああああああ!!!」

21 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:31:45.56 ID:K/Cj93Yo

  ごうっ!

  叫び声と共にトーマをめがけて、上から剄の塊が飛んでくる。
  外力系衝剄の変化、針剄。

 「うおっ! あぶねぇ!」

  とっさに女生徒を、所謂お姫様だっこと呼ばれる形で抱え、それを避けるトーマ。

 「きゃっ!」

  唐突に起こったことに驚き、悲鳴をあげる女生徒。

  針剄は、トーマが避ける前まで立っていた地面にクレーターを穿つ。
22 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:35:47.73 ID:K/Cj93Yo

 「な! またそんな破廉恥な!!」

  針剄を放った女が地面に降り立ち、女生徒の声に反応しトーマを睨みつける。その顔は紅潮して
 いる。

 「なにがだよ! カオリ! いきなりあぶねーだろうが!」

  女生徒を降ろしながらそう言うトーマ。

 「インデックスや………わ、わたし…………い、いや、インデックスがいながらあなたと言う男 
  は!」

  練金鋼を振りかぶり迫ってくるカオリ。
23 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:37:09.96 ID:K/Cj93Yo

 「あぶねぇって! レ、レストレーション!」

  キィンッ!

  即座に練金鋼を左手に復元し、その刃を受け止める。
  トーマが復元した練金鋼は、都市警の標準装備である打棒、これも先ほどの捕縛用練金鋼と同様、
 黒鋼練金鋼。

  対する練金鋼は長さ二メルほどの長い刀、令刀。使用者本人によれば七天七刀という名のものな
 のだそうだ。

  基本的に学園都市内では練金鋼には安全装置が掛けられ、刀であれば刃引きされたものになるの
 だが、なぜだかこの七天七刀には刃引きがされておらず、安全装置を掛けられている様子はない。

  七天七刀にリミッターが掛からないのは、これが魔術都市ギリイスの秘奥の物であり、そもそも
 がリミッターを掛けることができないように出来ているからだ。見た目は鋼鉄練金鋼のようである
 が、使用者によれば、どうやら本質は違うようである。

  カオリ・カンザキ、魔術都市ギリイス出身、武芸科3年、トーマの同級生、魔術師。
  長身で黒髪の美女、武芸科の制服を着ているが、露出度が高くなるように着崩している。さらに、
 練金鋼というものの性質により、不必要な存在となった筈の鞘が剣帯によってその腰にぶら下げら
 れている。

  彼女は、ギリイスでは元々とある宗教の女教皇であった。七天七刀はその教皇に代々伝わる練金
 鋼らしい。
24 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:37:51.93 ID:K/Cj93Yo

 「だいたいなんでインデックスが出てくるんだよ! なんなんだ!」

 「今あなたはそこの女性に手を出そうとしていたでしょう!」

  ごうっ!
  衝剄を放つカオリ。

  パキィイイン!
  右手でその衝剄を[ピーーー]トーマ。

 「うお! 勘違いだって! それにそのこととインデックスは関係ないだろう!」

 「っていうか練金鋼の私的使用は校則違反だ!」

  トーマはカオリの攻撃を必死に受け続ける。違反を指摘している辺り、律儀な性格が滲み出てい
 る。

 「言い逃れはできません! この目でみたのですから!」

 「それと! これは女性に手を出そうとしている変質者を成敗するためです! 私的使用ではありま
  せん!」

  カオリは変わらず猛々しく攻め続ける。

25 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:38:23.09 ID:K/Cj93Yo

 「んあぁあぁああ! だから勘違いだって! 俺は都市警の仕事に努めていただけだ! そこの女生
  徒はチンピラに絡まれてたんだよ!」

 「んで! 俺は! その子を! チンピラから! 守ってたんだって!」

 「そんな作り話! 信じられるわけがないでしょう!」

 「がぁあああ! 不幸だ! 不幸だぁああああああああああ!!」


  話が通じないカオリに頭を抱えるトーマ、とはいっても実際に頭を抱えていてはカオリに斬り刻
 まれてしまうため、脳内にて、頭を抱え膝をついている自分をイメージするに止める。
26 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:39:07.63 ID:K/Cj93Yo

  と、そこに突如響く声。

 「あ、あの! と、トーマさんは本当に!」

  トーマに助けられた女生徒である。

 「あ゙ぁぁ!? 黙ってろドシロウトがぁっ!!」

  一瞬での反応、鬼の形相で叫ぶカオリ、完全に頭に血が昇っている。

 「ひっ! し、しつれいしましたぁあああ!!」

  その表情と声に怖じ気づき、女生徒は堪らず逃げ出してしまった。

 「ああぁぁああああ! せめて誤解を解いてからぁあああああ!!」

  逃げ去る女生徒の背中に、トーマの心からの叫びが突き刺さるがそんなことはお構いなし。一目
 散に逃げ去る女生徒の姿はすぐに路地裏からは見えなくなってしまった。

 「ああああああああああああ!! 待ってぇえええええええええ!!」

 「こ、この期に及んでまだ女の尻を追いかけるのですか! 死ぃねぇえええええええ破廉恥トーマ
  ぁああああああ!!」

  カオリの攻撃に一層勢いが増す。

 「ほ、本当に不幸だぁああああああああああああ!!」

  トーマの叫びは路地裏にむなしく響き続けていた。
27 :ポミー ◆0K.wErJEJI :2010/12/21(火) 22:42:30.18 ID:K/Cj93Yo
とりあえず、今日はここまでで

saga忘れてました
なんだかすごい間抜けな文章に……まぁ、まだシリアスじゃないだけよかったです
以降気をつけます

それと
>>17
×都市警察に入っていた最初の頃
○都市警察に入った最初の頃

ですね

あと

メル=メートル
だと思ってください
レギオス世界の距離単位です
28 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 22:48:05.88 ID:K/Cj93Yo
見にくい、こうした方がいい、等々の意見はどしどしお願いしたいです

このキャラクターをこうしてくれ! みたいなのは受け付けないと思いますが
分かりにくいところもあると思うので、その質問も受け付けたいと思います

では、今後よろしくお願いいたします
29 :ポミー ◆0K.wErJEJI [sage saga]:2010/12/22(水) 11:26:03.07 ID:sTwuk1ko

  着替えを終えたレイフォン。

  着心地は悪くない、サイズもぴったり、また、レイフォンは右の腕が左の腕よりも長い、これも
 しっかりと直されている。しかし、まだ着慣れていない感じはする。今までブレザーなんて着たこ
 ともなかったし、当然か、と自分で納得する。

  特に用事も無いので、入学式会場である大講堂へと向かう事にした。

 ――――――――――――

 

 「―――――すごいな」

  思わず感嘆の声が漏れる。

  会場である大講堂、その大きさ、そしてそこに集まっている人数に驚いていた。
  ツェルニの全生徒を収容することが可能である大講堂だ、とてつもなく大きい。
  グレンダンにも学園とよばれるものはあった、しかし規模があまりにも違う。

 「さすが学園都市…………」

  驚きを胸に抱きながら、レイフォンは自分の席を探し、広い会場内からようやく席を見つけ、入
 学式を迎えることにした。
30 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/22(水) 11:27:02.53 ID:sTwuk1ko

  ――――――――――――――――

 「長かった……疲れたな……」

  つい不満が零れる。

 (学科別に入学式をすればいいのに……)

  入学式を終え、レイフォンは会場外へと出ていた。
  外は部活やサークルやバイト、さらには都市警察や様々な組織の勧誘、求人等で賑わっている。

  入学式ではまず、生徒会長からの話があった。生徒会長は銀色の長髪に眼鏡をかけた知的な印象
 を与える人物、話は分かりやすく、短く纏めてあった。
  次に各学科の学科長達の話が続いた、特に超能力開発科の学科長の話は難解な上にとんでもなく
 長かった。
  その後に都市警察の代表から都市内での規則等についての説明があった。

 「ほんと、長すぎよねー」

  不意に、隣からレイフォンの漏らした言葉に同意する声が聞こえた。

 「え?」

  驚き、声のした方に視線を向けると、超能力科の制服を着た女生徒がいた。
  すこし勝気な印象を覚えさせる顔、しかしその中には愛らしさも同居している。
  その女生徒は座りながら寝ていたのだろうか、自分で肩の辺りを揉みながら、くたびれた表情を
 している。

 「え? あぁ、ごめん、同じことを思ってたからつい、ね」

 「い、いや、いいんだけど」

  少し、動揺したが、すぐに応じるレイフォン。

  女生徒は全く遠慮することなく、話かけてくる

 「そう。あんた一般教養科、よね? あたしとは別ねー」

  制服を見て、そう判断したのだろう。

 「うん、君は超能力開発科、だよね」

 「そうそう、超能力開発科」

 「すごいね、頭が良くないと入れないんだよね」

  超能力開発科の入学試験は非常に難易度が高いという。
  なんでも、頭の良さが能力の強さに比例するとかなんとかだそうで、しかし、そこらへんのこと
 はレイフォンにはあまり理解できていなかった。
31 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/22(水) 11:27:31.36 ID:sTwuk1ko

  学力的に、成績優秀とはいえないレイフォン。
  少し、敗北感、というか劣等感というか、微妙な気持ちになる。

 「そうよ。あんた名前は?なんでツェルニに来たの?」

 「名前はレイフォン・アルセイフ。ツェルニには…………今までとは新しい生き方を探しに」

 「レイフォンね。あんたあたしと同い年でしょ? そんな理由で入学だなんて、今までどんな人生
  送ってきたのよ」

  少し驚いたような、呆れたような表情で女生徒が訊ねる。

 「えっと、まぁ別に普通の生活なんだけどね」

  知り合ったばかりの人間に、自身の過去を詳しく話そうとは思えないレイフォン。

 「あ、えーっと。孤児だったから、まぁそれなりの苦労はしてる……のかな」

 「え、あ、あぁ。そうなんだ。大変だね」

  孤児、という言葉に戸惑いを隠しきれていないミコト。

  正直レイフォンは自分が孤児であったことを特に気にしていない。孤児だからと言って他の人と
 は違う、情けをかけられる対象だ、とも思っていなかった。

 「いや、いいんだ。特に気にしていないし、無事に育ったから」

  笑顔を見せる。

 「そ、そう」

  女生徒は安堵の表情を見せる。
32 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/22(水) 11:28:32.39 ID:sTwuk1ko
 「ところで君の名前は? 君はどうしてツェルニに?」

 「あたしはミコト、ミコト・ミサカ。ツェルニには ――――強い力を手に入れに」

  確固たる決意がその表情から滲み出ている。

 「強い力って、どんな?」

  訊ねる。

 「もう誰を傷つけさせないための力。守るための力」

 「汚染獣から、悪人から、害をなす全ての者からあたしの大切なものたちを守る力」

 「――――――― もう二度と何も失わないための力」

  自然と言葉に力が篭り、表情もすこし強張っている。
  彼女の過去に、何らかの事件があったことを、何かで挫折し、そして何かを決意したんだろうか。

 「なんてね! レイフォン、ツェルニに来て、初めて話した同級生なわけだし、仲良くしましょ?」

  笑顔で手を差し出してくるミコト。
  レイフォンもそれに応じ、握手を交わした。

  ミコトは少し照れくさそうな顔をしている。
  レイフォンもまた、少し照れくさかった。
33 :>>32はこちらに差し替えです、すいません [sage saga]:2010/12/22(水) 11:30:27.84 ID:sTwuk1ko
 「ところで君の名前は? 君はどうしてツェルニに?」

 「あたしはミコト、ミコト・ミサカ。ツェルニには ――――強い力を手に入れに」

  確固たる決意がその表情から滲み出ている。

 「強い力って、どんな?」

  訊ねる。

 「もう誰を傷つけさせないための力。守るための力」

 「汚染獣から、悪人から、害をなす全ての者からあたしの大切なものたちを守る力」

 「――――――― もう二度と何も失わないための力」

  自然と言葉に力が篭り、表情もすこし強張っている。
  彼女の過去に、何らかの事件があったことを匂わせている。彼女も何かで挫折し、そして何かを
 決意したのだろうか。

 「なんてね! レイフォン、ツェルニに来て、初めて話した同級生なわけだし、仲良くしましょ?」

  笑顔で手を差し出してくるミコト。
  レイフォンもそれに応じ、握手を交わした。

  ミコトは少し照れくさそうな顔をしている。
  レイフォンもまた、少し照れくさかった。
34 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/22(水) 11:32:03.48 ID:sTwuk1ko
 「――――!!」

 「――! ――――!!」

  そうしていると、少し離れたところから怒号が聞こえてきた。
  言い争いだろうか。

 「ちょっと行ってみましょ!」

 「え、あ、ちょ、ちょっと!!」

  ミコトはウキウキしたような表情をして抗議の声は無視し、レイフォンを引き摺っていく。




 「いいだろう! 俺の力が見たいなら見せてやろう! 後悔するなよ!」

 「ふん! 貴様こそ! 我が由緒ある武芸の血筋を馬鹿にしたこと、後悔するがいい!」

  近くまで来てみると、どうやら武芸者同士の喧嘩らしい。
  今は丁度、武力衝突寸前というところのようだ。

 「なーんだ。しっかしアホよねー」

  隣でミコトが呆れ気味に言う。

 「武芸者の力ってこんなアホらしい私闘に使うもんじゃないでしょうに。レイフォンもそう思わな
  い?」

 「え、あぁ、えっと、そうだね」

  同意。バカらしい上に、こんなに人が居る場所では危険だ。

  二人の武芸者は対峙し、睨み合い、各々構えを取っている。
  周りには野次馬が殺到していて、面白がって喧嘩を促す言葉をかける者もいる。

 「やれー! やっちまえ!」

 「いけー! のしちまえ!!」
35 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/22(水) 11:33:15.03 ID:sTwuk1ko

 「「―――レストレーション!!」」

  二人の武芸者の声が重なる。復元鍵語。それによって、光と共にそれぞれの手に練金鋼が復元さ
 れる。
  青の光と緑の光、青石練金鋼と碧宝練金鋼。両方とも標準的な剣の形、どちらも安全装置がかけ
 られ、刃引きされている。


 (あぁ、危ないな)

  喧騒を無視してレイフォンは二人の力量を測る。構えも甘い、その体から迸る剄も、大したもの
 ではない。
  結論、明らかに二人とも取るに足らない腕であった。

  弱者同士の、しかも両者とも怒りに任せた喧嘩、こんなことでは周りに被害が起きてしまうこと
 など容易に予想できる。
  レイフォンが危ない、としたのはこのためである。ある程度実力のある武芸者なら、コントロー
 ルをして、周囲に危険が及ばないようにもできる。

 「うぉぉぉぉ!」

  片方の武芸者が斬りかかる。

 「―――ふん!」

  もう一方の武芸者はこれを剣で受け止める。

  ぶおっ!

  練金鋼に籠められた剄がぶつかり合い、衝撃波が生まれる。
  衝撃波は風を生み、その風は周囲の野次馬達を襲う。

 「わぷっ」

  ミコトが可愛らしい声を上げ、顔をしかめ、手をかざし、風を防ぐ。

 「大丈夫?」

 「ん、あ、あぁ、大丈夫」

  気遣いの声に、風によって乱れた髪を直しながらミコトが答える。

  レイフォンは武芸者二人を睨み付ける。
36 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/22(水) 11:34:15.75 ID:sTwuk1ko

 「うらぁあ!!」

 「うおぉぉ!!」

  武芸者二人の戦いはどんどん熱を増してゆく。

 (そろそろ本当に危ない)

  レイフォンがそう思っていると、

  ぶわっ!

  青石練金鋼の武芸者が衝剄を放ち、碧宝練金鋼の武芸者がこれを同じく衝剄で迎え撃つ。

  しかし、

  碧宝練金鋼の武芸者が放った迎撃のための衝剄は、
  その進路を違え、標的とは少しずれた方向に飛んでいく。

  青石練金鋼の武芸者が放った攻撃のための衝剄は、
  その進路を突き進み、標的へと真っ直ぐに飛んでいく。

 (あぁ、本当に)

  そう思ったときにはレイフォンの体は動いていた。

  一瞬の移動で二人の武芸者の間に立つ。
  二つの衝剄がレイフォンに迫る。
  腕に剄を収束、振りぬき、剄を解き放つ。

  外力系衝剄の変化、渦剄。

  本来は練金鋼に剄を収束させての技、今は腕での代用のため、威力は低い。
  しかしこれに加えて、レイフォンは手加減をしていた。二人の武芸者、そして周囲への被害を考
 えてのことである。

  大気が渦巻き、二人の武芸者と二つの衝剄を飲み込み、そしてその内部で無数の衝剄が放たれる。
  二人の武芸者が放った衝剄は霧散。二人の武芸者は気を失った。

  後に残ったのは、悠然と立つレイフォンと、地べたに這う武芸者二人。

 (あぁ、本当にもう、なんでこうなるかな)

  レイフォンは、地面の武芸者を見下ろし、そう考えていた。
37 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/22(水) 11:35:25.82 ID:sTwuk1ko
 「レイフォン!」

  ミコトがレイフォンを呼ぶ。
  その声でレイフォンが我に返る。

 「あ、え、えーっと、じゃ、じゃあね!!」

  引き攣った笑顔をミコトに向けて、手を振り、レイフォンは走って逃げ出した。

 「あ、ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!」

  ミコトも走りだし、レイフォンを追う。

  野次馬達は唖然としていた状態から抜け出して、ざわざわと騒ぎ始めていた。
38 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/22(水) 11:38:22.61 ID:sTwuk1ko
昼の投下はこれにて

もうかたくるしいのはやめだ
勉強が進まん
筆も

文章書くって難しい
これを書きながらスキルアップしていければいいな
39 :あぁもう>>31もこちらに差し替えですね……申し訳ない [sage saga]:2010/12/22(水) 11:38:50.11 ID:sTwuk1ko

 「別にすごくはないわよ。努力しただけ」

  サラっと言ってのける女生徒。

 「そ、そうなんだ……」

  学力的に、成績優秀とはいえないレイフォン。
  少し、敗北感、というか劣等感というか、微妙な気持ちになる。

 「そうよ。あんた名前は?なんでツェルニに来たの?」

 「名前はレイフォン・アルセイフ。ツェルニには…………今までとは新しい生き方を探しに」

 「レイフォンね。あんたあたしと同い年でしょ? そんな理由で入学だなんて、今までどんな人生
  送ってきたのよ」

  少し驚いたような、呆れたような表情で女生徒が訊ねる。

 「えっと、まぁ別に普通の生活なんだけどね」

  知り合ったばかりの人間に、自身の過去を詳しく話そうとは思えないレイフォン。

 「あ、えーっと。孤児だったから、まぁそれなりの苦労はしてる……のかな」

 「え、あ、あぁ。そうなんだ。大変だね」

  孤児、という言葉に戸惑いを隠しきれていないミコト。

  正直レイフォンは自分が孤児であったことを特に気にしていない。孤児だからと言って他の人と
 は違う、情けをかけられる対象だ、とも思っていなかった。

 「いや、いいんだ。特に気にしていないし、無事に育ったから」

  笑顔を見せる。

 「そ、そう」

  女生徒は安堵の表情を見せる。
40 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/22(水) 11:40:11.03 ID:sTwuk1ko
コピペミスが多くて死ねる

>>31のままだったら美琴が嫌なやつになってしまう
41 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/22(水) 11:52:55.49 ID:OyVVrMco
みこっちゃんはレイとんと絡むのか
それはそれで新鮮だのぅ
この世界では美琴さんの背景がどうなってるのか気になる所だ
42 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/22(水) 12:20:19.16 ID:.CQ3tUDO
レギオスは世界観がいいからそこら辺はもっと引っ張って説明した方がいいと思う
逆にストーリー序盤から必要になる剄の説明を増やしたらいいかと

期待
43 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/23(木) 00:11:41.03 ID:2jB75AAO
インデックスいらね
44 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/23(木) 00:25:17.76 ID:Oo7fj3ko
インデックスちゃんは…………多分……要る……かな………………?

一応このお話の主役格は
レイフォン
上条
美琴

この3本にしようと思ってるでげす


もう少ししたら投下したいでげす

今下痢でてーへんなことになってるでげす
45 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/23(木) 01:10:03.81 ID:Oo7fj3ko
                      †

 「も、申し訳ありませんでした……」

  平謝りのカオリ。

 「い、いや、わかってくれればいいんだけどさ」

  トーマはボロボロになりつつも、なんとかカオリを宥め、誤解を解くことに成功していた。
  ただそこには先ほどまではいなかった男の姿がある。

 「まったく、このボクがいたからなんとかなったものを。七代先まで感謝したまえよ、トーマ・カ
  ミジョウ」

 「いや、最初から見ていたならもっと早く助け舟をだしてくれるとカミジョウさんとしてはありが
  たかったんですが……」

 「ふん、君が死ぬのを今度こそ見届けてやろうと思ってたんだけどな。あまりのカオリの暴走っぷ
  りについ間に入ってしまった」

  憎まれ口を叩きつつも、トーマを救ったこの男。

  ステイル=マグヌス、武芸科4年、この男もカオリ同様、魔術都市ギリイス出身の魔術師である。
  2メル近い長身に赤色の長髪、耳には大量のピアス、右目の下にはバーコードの刺青、そして常
 にタバコを銜えている男。今、その両手には拳銃が握られている。
  どうやらそれを使ってこの二人を止めたようだ。
46 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/23(木) 01:10:45.26 ID:Oo7fj3ko

 「俺が死んだらインデックスの世話をするのはお前になるんだぞステイル。お前にあの食事の量が
  捌けるか?」

  インデックス。トーマの同居人。大食らい。

 「う、い、いや、もちろんそんなことは容易だ。だからいつでも死んでくれてかまわない」

 「げ、本当にやなヤツだな、お前」

 「褒めていただけて光栄だよ都市警察のエースくん」

 「褒めてねぇぞ」

 「ふん。知っている。いいからさっさと死ぬといい」

  へぇへぇそうですか、と言う様に顔をしかめるトーマ。

  飛び交う言葉だけを聞けば、険悪なようにも聞こえるが、そういうわけでもなく、二人の間に
 火花が散ったりもしていない。

  このトーマとステイル、そしてカオリが一緒にいる時はいつも大体こんな感じなのである。
  これが自然。
  
  トーマが何かを起こしたり、何かに首を突っ込んだり。
  カオリが後からそれに首を突っ込み。
  ステイルはひたすらに毒づきながらも、それを仲裁、助力する。
  
  そしてもう一人、今この場には居ないが、この三人の大事な存在がいる。
  この3人を出会わせ、結束させた存在。

  インデックス。トーマの同居人。大食らい。

  【禁書目録】。
47 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/23(木) 01:12:05.81 ID:Oo7fj3ko
                      †


  インデックス。

  【禁書目録】と呼ばれる銀髪碧眼のシスター。

  魔術都市ギリイスの最大秘奥である人物。

  彼女は完全記憶能力という珍しい能力を持った少女である。
 その脳にはあらゆる剄技やギリイス特有の剄技である剄魔術、その他あらゆる秘技、そしてこの
 世界の根幹に関わる情報が積み込まれている。

  これらの情報は、彼女自身も認識することはできない。それらを記憶している部分を剄魔術で封
 印されているからだ。
  ひとたびこれらの情報が世界に漏れれば、世界を混乱に陥れることになるらしい、それほどの情
 報をインデックスは記憶している。

  トーマとインデックスの出会いは唐突だった。

  ある朝、いつも通り目覚めたトーマは窓のカーテンを開ける。
  愕然、ベランダに引っかかったシスター服の少女――――インデックスがいた。

  インデックスは追われていた。

  追っていたのはカオリとステイル。
  カオリとステイルは彼女に敵意をもっていたわけではなかった。彼女にかけられたとある制約か
 ら彼女の命を守るために彼女を追っていた。
  そのためには仕方なく強硬手段をとることもあった。

  経緯を話すインデックス、禁書目録だの魔術師の秘技だのなんだのと事情は良くわからなかった
 が、兎に角追われていて危険だというインデックスをトーマは匿った。

  しかしインデックスは攫われ、ついにトーマは二人と衝突してしまう。

  死闘の末、二人を打ち破ったトーマだったが、その二人からインデックスにかけられた制約、 
 【首輪】という剄魔術の真実を知る。
48 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/23(木) 01:16:53.78 ID:Oo7fj3ko

  ―――――――――――― 1年毎に、記憶を消去しなければインデックスは死ぬ。

  トーマは憤慨する。

  制約に、そしてギリイス上層部に。

  カオリもステイルも、もともとはインデックスの世話をしていたらしい、思い出もあった。

  しかしその制約は理不尽にもその全てを奪い去る。

  その上、彼女らをインデックスの記憶を消去する、そのためにインデックスを確保する
  ために使う。

  なぜインデックスなのか。

  その記憶力とすこしばかり食欲が旺盛なところを除けば、普通の少女ではないか。

  そんな少女に、こんな重いものを背負わせる必要があるのか。

  そしてその上彼女の記憶を奪い続ける必要があるのか。

  自分にどうにかできないのか、彼女を救えないのか。

  考えたトーマはあることに気づく。

  自分の右手。

  自身の幸せをことごとく奪った異質の右手。

  これであればインデックスの制約、剄魔術【首輪】による制約を消すことができるのではないか。

  世界がどうなろうが、魔術都市がどうなろうが、知ったことではない。

  今、この目の前の存在を、死から、記憶の消滅から、制約から、救う。
49 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/23(木) 01:17:19.82 ID:Oo7fj3ko

  ――――――― 結果は成功だった。


   ―――――――【首輪】を外すことに関しては。

50 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/23(木) 01:17:51.93 ID:Oo7fj3ko



  インデックスのうなじ付近にあった刻印に触れた瞬間、何かが割れるような音がした。
  トーマの右手は、インデックスを縛る恣意的な幻想を殺すことに成功した。

  しかし、何処からか機械的な音声が流れる。

 『【首輪】の消滅を確認。【禁書目録】の保護のため、最大攻撃【竜王殺息】により自動迎撃を 
  展開。』

  唐突だった。

  インデックスが振り向き、トーマと対峙する。しかし、彼女の目に、意識は無く、焦点も定まっ
 ていない。

  インデックスの目の前に、強い剄で構成された竜の顎ようなものが浮かび上がり、その顎の中で
 紫色をした剄が膨れ上がった。
  そしてその剄は圧縮されていく、圧縮、圧縮、圧縮、圧縮。
  
  出来上がった暴虐的な剄の塊が、一瞬のうちにトーマに向かって放たれた。

 「――――!!」
  
  叫び声が聞こえた。
  カオリ、ステイル、どちらだろうか。わからなかった。
  脳はその言葉を受け入れなかった。
  受け入れることができなかった。
  トーマの脳は目の前の危険に対し、思考することを忘れていたのだ。

  しかし、トーマは本能的に右手を構える。
  極自然に、そしてとても素早い動きで。
  右手が独自の生き物であるかのように。

  右手に剄魔術、竜王殺息がぶつかる。
  その右手は確かにその絶対的な剄魔術を抑えようとしている。

  しかし、発動したのは数ある剄魔術の中でも最強クラスの絶大な力を持つ剄魔術。しかもその性
 質は目の前の敵を完全に消し去るために、あらゆる無駄を省き洗練、濃縮された純粋に攻撃的な剄
 が標的のみに向けられるもの。
  トーマの【幻想殺し】でも完全に対処することはできなかった。

  右半身はその異質の右手でなんとか守ることが出来た。

  が、トーマは左半身のほとんどを吹き飛ばされてしまった。
  左腕、左足はその付け根の周りごとごっそりと、胴は左下腹部からその範囲は胸にまで及ぶ。顔
  は本能的に避けることができたようで左耳を持っていかれるだけにとどまった。
51 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/23(木) 01:18:20.28 ID:Oo7fj3ko

  ―――――――どさっ。

  倒れるというよりも糸が切れた操り人形のように崩れ落ちるトーマの右半身。そしてその後はま
 ったく動かない。
  
  気を失っていながらも、剄魔術によって体のコントロールを奪われ、その場に立っていたインデ
 ックスも、その束縛が解かれ、その場に倒れる。

  その場にいたカオリ、そしてステイルは戦慄を抑えられなかった。
  出会って間もない、ただの学生武芸者が、一人の少女のために一つの魔術都市の機密に首を突っ
 込み、そして少女を救い、そのために命を落とした。

  自分達がしたことと言えば、ただ無力に嘆き、彼に負け、彼女を助けてもらい、そして彼を見殺
 しにした。とてつもない後悔と自責の念が二人を貫き、二人の精神を打ち砕く。
52 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/23(木) 01:19:37.35 ID:Oo7fj3ko
  しかし、

 「―――――――ステイル、インデックスを頼みます」

  その言葉を言い終える前にカオリの体が動いていた、優しくトーマを抱え、足に限界まで剄を集
 中、強化し、走った。

   ――――――彼はもう助からない。

  その考えが頭を支配しようとしたが、その時、彼女の体をコントロールしているのは本能だった。

   ―――――――救世主ともいえる彼を必ず助けなければ。

  その本能はカオリの考えなど無視し、体を動かした。
  カオリは特別な生まれの魔術師であり武芸者、その全力、全剄力用いて走ったのだ。あっという 間に病院につく。

  そして叫ぶ。

 「誰か! 誰か助けてください! 誰か! いないのですかっ!!」

  時間はもう深夜になろうとしている頃で、エントランスホールには誰もいなかった。
  カオリの顔が絶望に染まりかけた。

  しかしその時、脇のトイレの入り口から白衣を着たカエル顔の男が顔をだした。

 「なにごとかね!?」

  驚いた様子のその男だったが、叫び声の主の腕に抱かれる不自然な形をしたツンツン頭の人間を
 見るや、顔つきが変わった。

 「えっと!あの、あ、えっと!」

  カオリが状況を説明しようとするが、さっきまで本能に暴力的に支配をされていた脳は上手く機
 能してくれず、言葉が出なかった。
  しかしカエル医師は細かい状況は理解していなくとも、今までの経験から大まかな状況は理解し
 ていた。

 「トーマくん、また君は派手に死にかけているね。剄脈は……ギリギリ無事だね。よし、君! そ
  のまま彼を運んできてくれ! こっちだ!」
53 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/23(木) 01:20:07.36 ID:Oo7fj3ko

  (―――――また?)

  その言葉に少し疑問をもったカオリだったが、再び彼女を本能が支配。
  カエル医師の言葉に従い、トーマを緊急手術室へ運んだ。

 「よし、はじめよう。君は出ていてくれ」

  カオリは言われたとおりに手術室を出て、その入り口に立った、立ち尽くした。

  カオリの表情は形容し難いもので、絶望しているようにも、安堵しているようにも、そして無心
 であるようにも見えた。
  ただひたすらその場に立ち、手術室の扉を見つめた。

  しばらくすると、ステイルがインデックスを抱えてやってきた。

 「あの男――――――」

  ステイルはカオリに声をかけようとしたが、その表情を見て、口から出かけた言葉を飲み込むこ
 とにした。
54 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/23(木) 01:20:44.43 ID:Oo7fj3ko



  ―――――――数時間後、カエル医師が手術室から出てきた。

  優しい笑顔を浮かべていた。

  その表情を見ただけで手術の成功を悟り、カオリは先ほどからの表情から安堵の表情へと一気に
 傾き、そしてそれを通り越し、へたり、とその場に崩れ、涙を流した。

  ステイルも安堵の表情。

  インデックスは椅子に横になって眠っていた。
  気絶からそのまま睡眠に移行したらしい。

 「一応は成功だ、もちろんすでに半身を取り戻したなんて事はないよ?」

 「今はまだ意識を取り戻していないがね? 君がもし、彼のために全力を尽くさなかったら、手遅
  れだったよ」

  事実、手術前にトーマは三途の川を渡りきりかけていた。
  それをカエル医師はその奇跡的で、ある意味暴力的な医療技術で無理やり引き戻した。

 「トーマくんはね。何にでも真っ向からぶつかりにいって、何にでも首を突っ込むイノシシのよう
  な男なんだよ」

 「彼は入学式当日から死にかけているからね、まだ2年生なのに、入院回数はツェルニの全生徒の
  なかでダントツのトップだ」

 「入学式の時は人を助けての負傷だよ。放浪の武芸者が酒を飲んで暴れていてね、巻き込まれそう
  な生徒を助けようとしたら後ろから刺されたらしくてね」

 「もちろん彼が助けようとしたのは見ず知らずの生徒だった。刺された彼だったんだけど、未だ暴
  れる武芸者に立ち向かって行って最終的に武芸者を伸してしまう」

 「運ばれてきたときは驚いたよ、入学当日によくもまぁこんなことになるもんだってね。でも、ど
  ういう経緯かは知らないけど、今回の方が、とんでもない状態だけどね?」

  カエル医師は閉じられている手術室の扉、そしてその向こうに眠っているトーマを見た。
55 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/23(木) 01:23:49.06 ID:Oo7fj3ko

 「――――――彼は、目の前に理不尽なことが起きていたら、その理不尽を取り除こうとする」

 「目の前に消えそうな命があれば、その身を挺してその命を守ろうとする」

 「その腕の届く範囲に、いや、届かない範囲に危険があっても、それを消し去ろうとする」

 「無鉄砲で、我儘とも言えるね、だけど彼はその悉くを成し遂げる」

 「ぼくはそのたびに手を煩わされているんだね、まぁそのおかげで彼は医療技術の発展にも一役買
  っているんだがね?」

  笑いながらそういうカエル医師。


   ―――――――そうか、そうなのか、そういう男なのか。

  見ず知らずの人間にここまでする人などいない。正直バカだとさえ思う。

  何度も死にかけているのに、それでも、今度はインデックスさえも救った。

  あぁ、そうかそういう男に私たちは救われたのか。

  そんなに我儘で、理不尽で、そして底抜けの優しさを持つ男に。

 「入院は七ヶ月ほど、その間ぼくは毎日忙しいことになるね」

 「ぼくも不幸なのかね?」

  あくまで優しい笑顔でそう言うカエル医師にカオリは感謝した。
56 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/23(木) 01:24:54.00 ID:Oo7fj3ko



  トーマの意識は一ヶ月後に回復した。

  目を覚ました時、右手に温かみを、そして体の右側に重みを感じる。
  カオリがトーマの右手を握り、彼の体を枕にして安らかな顔で寝息を立てている。

  まだ左半身はほとんど存在していない。
  よくわからない機械に繋がれ、なんだかすごいことになっている。

  カオリの向こうに視線をやると、インデックスとステイルの姿がある。

  インデックスは怪我も無さそうで、元気な様子だ、トーマの顔を見て嬉しそうな表情をしている。
 ステイルは相変わらず仏頂面だが、心なしか温かい表情で、その口にタバコは銜えられていなかっ
 た。

  インデックスは明るい笑顔で口の前に人指し指を立て、トーマに向けて、

 「しー!なんだよ!」

  そう言った。

  トーマは優しい笑みを浮かべた後、もう一度眠ることにした。
57 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/23(木) 01:26:25.48 ID:Oo7fj3ko



  そしてその六ヶ月後、トーマが退院すると、インデックス、カオリ、ステイルが病院の外で待
 っていた。

 「え!? おまえらその格好!!」

  トーマはその三人の格好に驚きの声を上げた。
  三人とも普段とは違う格好だったためだ。

  ツェルニの制服。

  インデックスは一般教養科、カオリ、ステイルは武芸科の制服を着ていた。

 「そうなんだよ!あたし達は今日からとーまの同級生なんだよ!」

  胸を張ってそう言うインデックス。

 「ぼくは先輩だがね」

  とステイル。

 「ギリイスから連絡がありまして、こちらの都市に編入という形をとり、あなたと共にインデック
  スを守るように、と」

  カオリから説明が入った。
58 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/23(木) 01:28:03.18 ID:Oo7fj3ko

 「いやいや、編入ってそんな簡単に―――――――」

   ―――――――ん?
  説明の中に違和感があることを思い出すトーマ。

 「あなたと共に?」

  その違和感をそのままカオリにたずねる。

 「はい。もうあなたはギリイスの機密にどっぷりと首を突っ込んでしまいましたので、ギリイスか
  らのお達しで」

 「それと、こちらの生徒会長にギリイスからの手紙を渡して、都市のために力を貸すという約束を
  致しましたら簡単に決まりました」

 「拒否権は?」

 「拒否されるのであれば、ギリイスの魔術師があなたを狙うことになりますので、実質無いと同義
  かと」

  その言葉にトーマの顔が引き攣る。

 「ふ、ふこ―――――――!」

  いつもの口癖が零れ出ようとしたが、途中でトーマの考えが変わった。

 「っと。一つの都市の機密、しかも世界を揺るがすもんに手をだしたんだもんな。よく考えればこ
  うなるのも当然か……よし! インデックス! おれが命をかけてお前を守ってやる!」

 「もちろんなんだよ!わたしは【禁書目録】な上に美少女だからね!全力で守るといいんだよ!」

  トーマとインデックスは笑い合い、カオリはそれを見て微笑み、ステイルはまたも相変わらずの
 仏頂面、だがいつもより美味そうにタバコを吸っていた。
59 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/23(木) 01:28:52.28 ID:Oo7fj3ko

 「あ!それと!とーまのつくるご飯はおいしいからね、わたしはとーまの部屋に住まわせてもらう
  んだよ!」

60 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/23(木) 01:31:04.80 ID:Oo7fj3ko

  ―――――――え?

 「まてまてまてまて、どうしてそうなる! 飯を食うだけなら食わしてやる、だけど一緒に住む必
  要はないだろ!?」

  当然の話だ。それだけの理由なら住まいを同じにする必要はない。
  すると、またもカオリから聞きたくない言葉が飛び出た。

 「ギリイスからのお達しで、あなたにはインデックスを監視、保護する任をあたえられています。
  先ほどから言っている通り、最重要機密【禁書目録】に関わったのですから。…………これは仕
  方がありませんよね。えぇ、しかたありません、仕方ないのです」

  心なしかこっちの件に関してはカオリの言葉に怒気が篭っているように聞こえた。

 「もちろん。拒否なさればギリイスの魔術師があなたを殺しにかかります。それと、インデックス
  に手を出すと―――――――私があなたを全力で、あらゆる手段を用いても必ず、漏れなく、絶
  対に殺します」

  怒気が増すカオリ、最後の方は完全に本気だ。むしろ今すぐに殺されそうな気さえする。

 「ふふん!死にたくなければよろしくなんだよ!」

  再び胸を張り快活な笑顔で言うインデックス。
  それを見たトーマの顔はまたも引き攣っている。

 (―――――――あぁインデックス、おまえ、あれだな、おっぱい、無いな。ステイル、何をニヤ
  ついている。ぶっとばすぞ。 カオリ、おまえ制服着崩しすぎだろ、正直性欲をもてあますぞ。
  いやしかしこれはあれだ、もうあれしかない、完全にあれだ。今度こそあの言葉を吐き出してしまおう。
  これは誰にも咎められないし誰にも止めることはできない。そういう法律だ。そんな法律ない?いや、
  おれが決めた。今決めた。もう決めた。文句は言わせねぇ)

  大きく息を吸う。

  すうぅぅぅぅぅぅぅ。

 (さあ言うぞ、いざ言うぞ、全力で言うぞ。世界の果てまで響きやがれおれの魂の叫びよ)

  そして、

 「不幸だぁあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」

  その声には自然と剄が篭り、都市中に響き渡ることとなった。
61 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/23(木) 01:32:19.79 ID:Oo7fj3ko
                      †


 「とにかく、カオリ、いきなり斬りかからずにまず話をしよう、な」

 「はい……。申し訳ありませんでした……」

  トーマの言葉に俯くカオリ。

 「いや、だからそんなに謝らなくていいから、な?」

 「はい……。すいません……」

  さらに俯く。

 「ダメだな。完全にダメなモードになっている。ダメダメだ。それはもうダメダメだ。完膚なきま
  でにダメだな」

  吐き捨てるステイル。

 「うぅっぅぅ、はいぃ……。すいません………」

 「こらステイル!おまえのせいでカオリがより一層ダメになったぞ!」

 「あぁぁあぁ、トーマまでがわたしのことをダメとぉ……うぅ、すいません……。本当にすいませ
  ん……」

 「あぁ!だ、ダメじゃない!誰にでも間違いはある!気にすんな!」

  慌ててフォローに入る、が、

 「いえ…………わたしはダメなんです…………」

  どんどん自分を卑下していくカオリ。
62 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/23(木) 01:33:17.47 ID:Oo7fj3ko

 「ああああもう! す、ステイル! あとは任せた! おれは入学式警備の仕事だから! 会場にいか
  ねばならん! さらば!」

  走り去るトーマ。
  実際、もうそろそろ入学式も終わる頃だ、会場付近が騒がしくなる、問題も起きやすい、早く向
 かわなければならない。

 「あぁ! 君! このぼくに全部放り投げたな! 待て! …………クソが!」

 「トーマが行ってしまうぅぅぅぅあぁああああ…………ステイル、わたしは嫌われたのでしょうか
  ……」

  吼えるステイル。
  落ち込むカオリ。

 「カオリ、あいつは無鉄砲で頭が悪い、致命的に頭が悪い。が、そんなことで人を嫌
  うような人間ではないだろう」
  
  ふぅー、と煙吐いてから、ステイルはカオリに返答する。

 「わかっています……わかっているんです…………でも、あぁ、わたしはトーマに迷惑をかけてば
  かりいる…………」

  カオリは相変わらず項垂れ、周りには黒い靄のようなものさえ見える。

 (元とは言え、これが天草式十字凄教の女教皇の姿か?あぁ、面倒だ。本当に面倒だ。あのバカも
  このバカも、本当に面倒だ)

  ステイルは今吸っているタバコ、未だ半分以上残っているそれを地面に捨て、新たにタバコを取
 り出して火をつけ、煙を肺一杯に満たし、それを大きく吐き出した。
63 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/23(木) 01:34:37.21 ID:Oo7fj3ko




 「いやぁしかし。散々だった……」

  走って会場に向かったトーマ、到着して一息つく。
  まだ新入生は会場から出てきていない。

 「ステイルには悪いが、都市警の仕事はサボれないからな」

 「それにしてもカオリはすこし問題だな……。路地裏とは言え、街中で七天七刀を振り回しやがっ
  て」

 「だいたいあの練金鋼は、特別に携行を認められているものだろうに」

 「けしからん……」

  毒づくトーマ。

 「あとあの格好も……けしからん……じ、実に、実にけしからん」

  トーマの顔が赤くなる。

  カオリの格好は刺激が強すぎる。
  あの格好をすることで剄魔術の術式がどうこうで、剄の流れ、コントロールをサポートするうん
 ぬん、とカオリは言っていたが。
  露出度が高すぎる。正直眼のやり場に困る。

 「はぁ……不幸だ…………眼福ではあるが」

  思わず、いつもの口癖、そして本音が零れる。

  すると会場からぞろぞろと新入生達が出てくる。
  入学式が終わったようだ。

  ―――――――ざわざわざわざわ。

 「ここからが本番だな」

  毎年、この時間に事件が殺到する。
  喧嘩、盗難等々、人が多いとそういった類のものが起きやすい。

 (いやしかし、クラブやらなんやらの勧誘ってのは毎年すげーな。あそこの新入生なんて完全にビ
  ビってるぞ)

  トーマは見回りながらそんなことを考える。
64 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/23(木) 01:35:34.74 ID:Oo7fj3ko
  すると少し遠くで人だかりが出来ているのが見える。

 (なんだ?)

  怪しい雰囲気を感じ取り、そっちへ向かうことにする。

  道行く生徒達の話を小耳に挟む。
  どうやら武芸科の生徒二人が私闘をしているらしい、しかも練金鋼も復元しているそうだ。

 (あーあ。馬鹿だな、下手すりゃ退学だ)

  とりあえず、喧嘩を止め、二人を拘束しようと考え、近づく。

  その時、

  ごうっ!

 (やばいっ!)

  一人の武芸者が放った衝剄のコースが、野次馬に向いていることに気づき、トーマは駆け出 
 した。
  間に合うかどうか、微妙なところだ。
65 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/23(木) 01:36:31.21 ID:Oo7fj3ko

  しかし、

  ぶわっ!!

 (な!)

  二人の武芸者を包むようにして大気が動き、砂埃が舞い上がり、強い風が野次馬、そしてトーマ
 に襲い掛かる。

 (おいおい! なんだよ今の!)

  トーマには一人の男子生徒が――――しかも一般教養科の制服を着た男子生徒が、旋剄どころの
 速度ではない凄まじい速さで駆け、技を放ったのが見えていた。

 (一般教養科の制服…………あれで?)
 
  思考を巡らせていると、やや砂煙が薄れ、二人の武芸者が倒れているのが見えた。

  とにかく、トーマは二人の武芸者を拘束、そして謎の一般教養科男子生徒に話を
 聞こうと、彼らに近づく。

  すると、

 「レイフォン!」

 「あ、え、えーっと、じゃ、じゃあね!!」

  一人の女生徒が声を上げ、その声に反応した男子生徒は逃げ出してしまった。

 「あ、おいっ!! ……っと、その前にこっちか…………」

  トーマは男子生徒を追うことを考えて、そしてすぐにその考えを改め、地べたに這いつくばって
 気絶している武芸者二人を拘束することにした。

  捕縛用練金鋼を復元し、二人の武芸者を縛りあげ、連行する。

 (なんであれで一般教養科なんだ? あんな速さ、あの技、ツェルニの武芸者に出来る人間はそう
  いないだろ)

 (レイフォン、とか呼ばれてたな……名前と顔、覚えておこう)

  トーマは謎の男子生徒の顔を目に焼きつけ、二人の武芸者を引き連れて、いや、引き摺って都市
 警察本部に向かった。
66 :ポミー ◆0K.wErJEJI :2010/12/23(木) 01:39:09.08 ID:Oo7fj3ko
とりあえず
ここまで

見づらい気がする

剄の説明についてはちょっと後になりそうでやんす

今ここでしてもいいんだけども


今したほうがいいかな?
67 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/23(木) 23:12:48.40 ID:.5hMS/Ao
68 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/24(金) 00:02:26.89 ID:sbLIcTUo
レギオスとか俺得杉
レイフォン多めでたの観まっせ
69 :Are you enjoying the time of eve? :2010/12/24(クリスマスイブ) 20:44:31.73 ID:c/CkzIE0
期待している
70 : ◆0K.wErJEJI :2010/12/25(土) 00:29:45.49 ID:ViUS6Bso
メリークリトリス…………

後で投下する……


おれ?
バイトだよ…………


メリー……

クリトリス…………
71 : ◆0K.wErJEJI [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 05:58:58.24 ID:ViUS6Bso

                      †



 「そろそろ食事の時間かな」

  レイフォンは食堂へ向かうことにした。

  騒動の後、ミコトの声で我に返って、追ってくる彼女を一瞬にして撒いた。
  ミコトには突然レイフォンが消えたように見えただろう。
  撒いたかな、と思い、遠くから活剄で視力を強化してミコトの姿を確認、彼女は会場付近で呆然
 と立ち尽くしていた。
  その呆けている顔がレイフォンを安心させた事を思い出す。


  ミコトを撒いた後は、寮に真っ直ぐ向かった。途中、家具屋や雑貨屋に寄ることも考えたが、今
 は持ち合わせもないし、今度にする事にした。

  寮に帰ってからは、自室に閉じこもり、入学式で配布された注意事項を読み返したり、先に送っ
 ていた荷物を整理、そして今に至る。

  この寮は1年生専用の。寮監はいるものの、基本的に寮内での仕事は全て当番制で寮の居住者が
 行う。
  寮自体も大きなものではない、レイフォン以外には5人の居住者が入るのみ。6人の居住者で十
 分カバーできる仕事量だし、いざとなれば寮監もフォローしてくれる。
  最初の一週間は特別で、寮監が全てを担当することになっているそうで、今日の夕食も寮監が担
 当する。

 (寮監はあまり家事とかが得意そうには見えなかったけど)

  座っている姿、寮を案内してくれている時の姿はとても凛としていて、説明も非常に的確、眼鏡
 をかけていて、身なりもきちんとしている。
  そういう人ほど、実は家事が苦手、という風に相場が決まっているものだ。
  そう思っていたが、部屋を出ると、その考えは過ちだったとすぐに改めた。
  二階の廊下にテロナ豚の焼けた、非常に香ばしく胃を刺激する匂いが漂っている。

 (人は見かけによらない、か、これは期待できそうだ)

  自然と顔が綻ぶ。食べることは好きだ、特に美味しいものを食べると幸せを感じる。
72 : ◆0K.wErJEJI [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 06:00:33.05 ID:ViUS6Bso


  孤児院時代、自分が武芸者であるという事が判明する前はとても貧しく、食べるものも貧相な物
 ばかりだった。
  グレンダンはその頃、非常に深刻な食糧危機を迎えていたのだ。
  だから、たまに食べる事ができる美味しい物には特別なものを感じていた。

  武芸者だという事がわかってからは、レイフォンに食事が優先された。都市を守る存在である武
 芸者にはあらゆる物が優先して与えられる。天剣授受者になってからはそれがより顕著になった。

  天剣授受者、グレンダン最高位の武芸者12人に与えられる称号。
  レイフォンはわずか10歳にしてその地位に登り詰めた。

  しかしそれに対して、周りの孤児はどんどん飢えていく。
  汚染獣との戦いで得られる報酬や、天剣授受者に与えられる支給金を孤児達の食費に回したが、
  それでもやはり足りなかった。レイフォンにはこれが耐えられなかった。

  グレンダン中の孤児達の腹を満たしてやるにはもっと金が必要だった。

  だから、賭博試合に手を出した。
  そしてそれがバレ、それをネタに脅迫する者がでた。
  ガハルド・バレーン。天剣授受者を二人輩出している優れた武門、ルッケンス家で武を高めた者。
  彼は、バラされたくなければ、次の天剣を懸けた戦いでわざと負けろ、そして俺に天剣をよこせ、
 とレイフォンを脅した。

  しかし、レイフォンは多くの民衆が見物している天剣試合でその男の腕を切断した、それも圧倒
 的な力で。
  だがレイフォンは元々その男を殺すつもりだった。殺してしまえば事実が漏れることはない、事
 実が漏れなければ今までどおり金が稼げるし、それによって孤児達の腹も満たすころができる。そ
 う考えていたからだ。

  試合後、ガハルド・バレーンはレイフォンを告発し、賭博試合の事実が世間に公にされ、レイフ
 ォンは天剣をその称号と共に剥奪、グレンダンを追放された。

  

  胃を刺激する匂いに心を弾ませ、階段を降りる、食堂のドアは開いている。声が聞こえる、他の
 居住者も既に集まっているようだ。
  心なしか、女性の声が多いように思うが構わず食堂に入る。
73 : ◆0K.wErJEJI [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 06:01:34.42 ID:ViUS6Bso

 「――――!」

 「え? れ、レイフォン!?」

  そこにいたのはミコト、そしてミコトの腕をつかんで頬を擦り付けている茶髪でツインテールの
 普段は品のよさそうな、しかし今は下劣な笑みをうかべている女の子。
  その隣にあきれ顔でその光景を見ている女の子は赤毛の短髪で色黒の勝気そうな顔立ち。
  そしてミコトの向かいには長い黒髪の気の弱そうな女の子が座っている。

 「おねえさま、この男とお知り合いですの?」

  茶髪の女の子がこちらをジト目でみつめながらミコトに尋ねる。

 「え、えぇ、今日友達になったばかり。ってクロコ! あたしはおねえさまじゃないっての! 知り
  合ったばっかりなのに、なんでこんな引っ付いてくるのよ! だいたい同い年でしょ!」

  そこにいたのはミコト、そしてミコトの腕をつかんで頬を擦り付けている茶髪でツインテールの
 普段は品のよさそうな、しかし今は下劣な笑みをうかべている女の子。
  その隣に呆れ顔でその光景を見ている女の子は赤毛の短髪で色黒、男勝りな顔。
  そしてミコトの向かいには長い黒髪の気の弱そうな女の子が座っている。

 「おねえさま、この男とお知り合いですの?」

  茶髪の女の子がこちらをジト目でみつめながらミコトに尋ねる。
  視線が痛い。

 「え、えぇ、今日友達になったばかり。ってクロコ! あたしはおねえさまじゃないっての! 知り
  合ったばっかりなのになんでこんな引っ付いてくるのよ! だいたい同い年でしょ!」

  ミコトはクロコを引き剥がしながらクロコを責めるが、それを物ともせず、クロコはミコトの腕
 にしがみつき、頬を摺り寄せている。

  恍惚の表情を浮かべているクロコ、彼女の脳内は半分ほど、いやそれよりももっと深く、危な
 い世界に足を踏み入れてる様子だ。

 (うわ、なにこの人)

  レイフォンは初めて出会う人種に困惑していた。

 「ほら! レイフォンが困ってんじゃないの! 離れなさい!」

 「つれないおねえさまも素敵ですの!」

  恍惚の表情をさらに深めるクロコ、鼻息が荒く、ふごふごと鳴っている。

  ざっ。レイフォンは一歩だけ、後ずさりをしてしまった。

 「うっとうしい!」

  クロコは一向にミコトから離れようとしない。
74 : ◆0K.wErJEJI [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 06:02:40.55 ID:ViUS6Bso
 (えっと、どうすればいいのかな)

  レイフォンが戸惑っていると、

  ごん!

  赤毛の女の子がクロコにゲンコツを落とした。

 「あでっ! ふみゅう〜……」

  彼女はその一撃で気を失い、テーブルに沈んだ。
  赤毛の女の子が口を開く。

 「ごめんなミコト。あと、レイフォン? だっけ? 君もごめん。クロコが鬱陶しくて」

  申し訳無さそうに、しかし少し笑いながらそういう赤毛の女の子。

 「あたしは別にいいんだけど。っていうかなんでナッキが謝んのよ」

 「いやほら、あたしはクロコの保護者だから」

  そのやり取りを眺めながら、レイフォンはとりあえず空いている席、さっきから戸惑いの表情を
 浮かべている大人しげな女の子の隣の席に座ることにする。

 「隣、いいかな?」

  一言、許可を取る。

 「ひ、え、あ、えと、は、はい」

  しかしその言葉にひどくおびえた様子の女の子。レイフォンはあれ、嫌われたかな? なんかし
 たかな? などと考えるが、特に身に覚えは無い。少し引っかかるが、ひとまず、放っておくこと
 にする。

 「えっと、なんでミコトがここにいるの?」

  とりあえずは最初の疑問から尋ねてみる。

 「そりゃここに住むことになってるからよ」

  当然じゃない、とばかりに淡白に答えるミコト。
  すると、

 「ねぇ、ミコトあたしたちにちゃんと紹介してよ」

  ナッキと呼ばれた赤毛の子がミコトに言う。
75 : ◆0K.wErJEJI [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 06:04:52.45 ID:ViUS6Bso

 「あ、あぁ、えっと、こいつはレイフォン、一般教養科で、入学式の時知り合ったの。っていう 
  か!! あの騒動止めたのがこいつ!! あんたなんであの後逃げたのよ!! あとなんであんた
  みたいに強いのが一般教養科なわけ!?」

  ミコトは勢いよくレイフォンを指差し、大声でまくし立てる。

 「え!? じゃ、じゃあメイシェンを助けたあの男がこの人!?」

  驚き、レイフォンをまじまじ見つめる赤毛の女の子。
  隣の内気そうな少女も口をぽかんと開け、レイフォンの方を見たが、一瞬で顔を赤くして、俯い
 てしまった。

 「え?」

  レイフォンには人助けをした、なんて覚えはない。武芸者の喧嘩を止めただけだ。
  頭上に疑問符を浮かべるレイフォンに、ナッキ、と呼ばれた女が説明する。

 「あ、いや、あの武芸者が迎撃するために放った衝剄がさ、そこのメイシェンに直撃コースだった
  んだけど、それを君が打ち消したっていうことなんだ」

 「あの時は砂埃と角度のせいで君の姿がわかんなかったんだけど……たしかに言われてみればあれ
  は君だったような気もするな……」

  顎に手をあて、思い返す赤毛の女。その姿勢のままニヤリ、と笑みを浮かべる。

 「じゃあ、メイシェンの王子様はレイフォン? だっけ? その、君だったわけか」

  その言葉に、レイフォンの隣で俯いていたメイシェンがビクっ! と反応する。
76 : ◆0K.wErJEJI [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 06:07:06.42 ID:ViUS6Bso

 「お、王子さ、ま、とかじゃなくて! あ、あの、その…………」

  言葉の終わりに近づくにつれて、彼女はどんどん俯いていく。

 「ははっ、ごめんごめん。恩人だったな、ほら、メイシェン、チャンスだぞ、お礼を言いたかった
  んだろ?」

 「え、あ、う、うん」

  メイシェンがレイフォンの方を向く、が、その顔は未だ俯いたままだ。

 「あ、あの、ありがとう、ございました」

  俯いたままの頭を、さらに下げて、礼を述べる。
  しかし、礼をいい終わると、彼女は体を前に戻し、さらに俯いてしまう。

 「あんたなんで逃げたのよ! あとなんであんたは一般教養科なわけ!」

  やり取りが終わったのがわかると、次はあたしの番、とばかりに再びミコトがまくし立てる。

 「い、いや、なんかあのままいたら面倒そうだったし…………武芸は、そんなに興味が無くて」

  レイフォンの表情に、少し暗い影が姿を見せている。本人は、そんな表情をしているつもりはな
 いが、自然と、そうなってしまっていた。

 「そ、そう、ま、まぁいいけど、でも、もったいないわよ……あんな力を持ってて……」

  そのレイフォンの表情を見たミコトは、強く追求する気を殺がれのか、少し俯きながら、語尾を弱
 めていく。
77 : ◆0K.wErJEJI [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 06:08:02.54 ID:ViUS6Bso

 「あ、あの、自己紹介、してもらってもいいかな?」

  レイフォンは、場の空気を変えるため、話を変えた。

 「そ、そうだな。あぁ、あたしはナルキ、ナルキ・ゲルニ。ナッキ、って呼ばれてるけど、まぁ好
  きに呼んでくれ。学科は武芸科、出身はヨルテムで、これはそこの撃沈してるクロコと、レイフ
  ォンの隣のメイシェンも同じ、あたし達三人は小さいときからの幼馴染なんだ」

  クロコの保護者、というのはそういうことか。小さい頃からの仲で、暴走がちなクロコをナルキ
 がコントロールしてきたようだ。と、レイフォンは納得する。

 「め、メイシェン・トリンデン、です、あの、えと一般教養科……です」

  ちらちらとレイフォンの方を見ながらの自己紹介、それが終わると、顔を赤くして俯く。

 「ごめんな、こいつは昔から人見知りが激しくてな」

  おどおどするメイシェンをナルキがフォロー。

 「あぅ…………」

  しかしそのフォローは、メイシェンをさらに俯かせる。
78 : ◆0K.wErJEJI [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 06:08:34.37 ID:ViUS6Bso

  すると突然、

  がばぁっ!
  クロコが飛び起きた。

 「クロコ・シライ! 超能力開発科ですの! おねえさまには指一本触れさせませんわよレイと  
  ん!」

  びしぃっ! とレイフォンを指差され、きりっとした表情でそう告げられた。

 「は、はぁ…………レイ、とん?」
 
  そして不可思議な名前で呼ばれたことに気づき、頭上に疑問符を浮かべる。

 「そうですの! レイフォン、ですから、レイとん。親しみの湧く良いあだ名ですの」

  腕を組み、満足気な笑みを浮かべるクロコ。

 「レイとん、いいな、たしかに」

  うんうん、と頷きながらそう言うナルキ。

 「……レイ…………とん」

  メイシェンにまで。

 「んー、アタシはレイフォン、の方が呼びやすいわね」

  しかしミコトはそのあだ名に違和感を覚えたようで、普通の呼び方をすることに決めたようだ。

  呼ばれなれない不可思議なあだ名に、レイフォンは言葉を失うが、ミコトだけは例外であること
 に少しだけほっとするのであった。
79 : ◆0K.wErJEJI [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 06:10:54.55 ID:ViUS6Bso

                      †


  その後は再び「オネエサマーオネエサマー!!」と暴走したクロコが、今度はミコトに沈められ
  たりしながら、お互いの身の上話に―――レイフォンは当たり障りの無いように話を変えて――
  ―――― 盛り上がり、料理を食べた。
  ミコトはとにかく強く、ナッキは警官に、クロコは出版関係に、メイシェンはお菓子屋に、とそ
 れぞれの夢を語っていた。

  寮監の料理は絶品だった。
  レイフォンは何度もおかわりし、寮監は多めに作ったつもりだったがその全てがレイフォンの胃
 に収まることとなった。

  食事を終え、デザートを食べながら他愛もない話をしていると、不意に寮のドアチャイムが鳴っ
 た。
  寮監が対応しに行く。

 「こんな時間にだれかしら?」

 とミコト。
 すると寮監が戻ってくる。
80 : ◆0K.wErJEJI [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 06:12:58.60 ID:ViUS6Bso

 「レイフォン、お客さんだ」

  寮監の後ろから出てきたのは、武芸科の制服を着た女生徒。
  腰近くまである長い銀髪は艶やかで細く、照明を反射し、一本一本が妖しく輝いている。
  肌は透き通った白、端正な顔立ち、表情は人形のように無表情、伏し目がちの銀の瞳がレイフォ
 ンをみつめている。

  一同はその美しさに言葉を忘れる。

 「レイフォン・アルセイフさんは、あなたですね?」

 「あ、は、はい」

  名前を呼ばれ、我に返るレイフォン。

 「用があります。一緒に来ていただけますか?」

  表情を変えず、そう述べる銀髪の女生徒。

 「 …………はい」

  正直どんな用事なのか疑問だったが、その声、その瞳には逆らう気になれない不思議なものがあ
 り、ただ一言、返事をするだけになってしまった。

  返事を受け取ったその少女はこれもまた無表情にレイフォン達に背を向け、食堂から出ていく。
  レイフォンもその後に続こうとするが、

 「あ、えっと、寮監、行ってきます」

  一応寮監にことわっておく。

 「あぁ、いってらっしゃい」

  寮監は突然の出来事を気にもせずに、堂々とした態度でレイフォンを見送る。
  ミコト達は一言も発さず、呆然とレイフォンを見送る。

  そのままレイフォンは銀髪の少女の後を追った。
81 : ◆0K.wErJEJI [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 06:14:14.11 ID:ViUS6Bso



 「えっと。なんだったのかしら?」

  我に返ったミコトが言う。

 「さ、さあ? でも武芸科の先輩だった、あの制服のラインの色は2年生だ。あと、小隊のバッジを
  つけていたな」

 「バッジ? 銀色の丸いアレですの?」

  クロコが問う。

 「……17って数字があった」

  と、メイシェン。

 「あれは武芸科の中でも特別な、小隊所属者に与えられるバッヂだ」

 「小隊? ってなに?」

  ナルキの言うことにいまいちピンとこないミコト。
  ナルキが詳しく説明する。

 「武芸科の中での幹部候補、みたいなもんで、武芸大会の部隊分けの際に、核となる部隊のことだ。
  司令部の下 に小隊、この時は指揮隊って呼ばれるんだが、その下に大部隊、その下に無所属の
  武芸科生徒……今のあたしなんかが配下に置かれるんだ」

 「へぇ、なんでそんなとこに所属している人が一般教養科の、レイフォン……あ、あの騒動のこと
  かかな」

  ミコトがはっとした顔で言う。

 「かもしれないな。スカウト、とか?」

  ナルキはそう答えた。

 「さて、レイフォンがなんで呼び出されたかを話していても仕方ないだろう。帰ってきたら話てく
  れるだろう。さ、片付けをしよう。手伝ってくれ」

  寮監がそう言うと、釈然としないまま一同が動きだし、片づけが始まった。
82 : ◆0K.wErJEJI [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 06:15:51.51 ID:ViUS6Bso
                      †

  レイフォンが連れて行かれたのは生徒会長室。

 「失礼します。レイフォン・アルセイフさんを連れてきました」

  銀髪の少女の先導で、部屋に入るレイフォン。

 「ありがとう、フェリ。もう家に帰ってていいよ」

  その言葉に返事もせず、フェリ、と呼ばれた少女は扉を閉め、去っていった。

 「うーん。嫌われているね」

  苦笑いでポツリ、と零す生徒会長。

 「さて、レイフォンくん。とりあえず座ったらどうかな」

 「あ、は、はい!」

  呆然と直立していたレイフォンは緊張した声でそう答える、が、座ることが出来ない。

  目の前にいる生徒会長。今朝は入学式会場の壇の上に立ち、演説していた男。今は大きな執務机
 に座っている。先程のフェリと呼ばれた少女に似た髪、似た目をしている眼鏡をかけた秀麗な顔の男。
  レイフォンはその存在に圧倒されてしまっている。
  生徒会長はレイフォンを見つめている。その瞳はレイフォンの奥底までを見透かすようで、その
 視線に耐えられずレイフォンは自身の視線を生徒会長から逃がす。

 「生徒会長のカリアン・ロスだ、6年だよ。」

 「れ、レイフォン・アルセイフです」

  緊張は解けない、それどころかさっきよりも増している。

 「君はなんでこの場に呼ばれたか、わかるかい?」

 「い、いえ」

  武芸者の喧嘩の仲裁の事だろうか、しかし、それぐらいで生徒会長直々の呼び出しがあるものな
 のだろうか、様々な憶測がレイフォンの脳内を駆け巡る。
83 : ◆0K.wErJEJI [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 06:16:26.32 ID:ViUS6Bso
 「レイフォンくん。レイフォン・ヴォルフシュテイン・アルセイフくん」

 「―――――――!」

  レイフォンはそのミドルネームに顔をしかめる。

  ヴォルフシュテイン。
  レイフォンが槍殻都市グレンダンに居た時、女王陛下から賜ったミドルネーム。それはレイフォ
 ンがグレンダンにおいて最も優れた武芸者12人に与えられる称号、天剣を授受していたという証で
 あった。
  そして、今はその称号と共に、その名も剥奪されている。

 「なんのことでしょうか」

 「ふふ、そうだろうな、まあいい。レイフォンくん。単刀直入に言おう。武芸科に転科したまえ」

 「は?」

  突然の申し出に、レイフォンは理解できず、その表情は呆けたものとなった。

 「あぁそうそう、昼は助かったよ、ありがとう。誰にも怪我は無かった。あとあの二人は退学処分
  となったからね。えぇと、ふむ、奨学金のランクはDだったね? よし、それをAにあげよう。」

  わけが分からない。カリアンが呼んだミドルネーム、そして話が勝手に進んでいく事にレイフォ
 ンは困惑を禁じえない。しかし、

 「いえ、あの、ぼくはここに普通の勉強をしにきたんです、武芸には興味ありません」

  はっきりと言う。

 「武芸科だって一般教養も学ぶよ。一般教養科にしても三年後には専門分野を選択する、そう大し
  た違いは無い」

 「いえ、本当にそんなつもりはありません。それに、あの、奨学金をあげていただかなくても、 
  ぼくは就労学生の申請もしています、機関掃除の仕事ですが、ハードだということも知っていま
  す。けれどぼくは自分でできますので」

 「ふむ、それは困ったな、いや、しかし君には武芸科に転科してもらわなければならない。これは
  決定事項だ」

  ちっとも困った表情していないカリアン、それどころか笑みが深まっている。
  そのことに、レイフォンは腹が立ってくる。

 「は? いや、あの、ですから」
84 : ◆0K.wErJEJI [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 06:17:09.28 ID:ViUS6Bso
 「学園都市対抗、武芸大会。知っているかね?」

  カリアンはレイフォンの言葉を遮り、話し始める

 「……いえ」

 「二年ごとに訪れる、縄張り争い、都市の習性だ」

  カリアンは立ち上がり、窓のブラインドを指で広げ、外を眺め、話を続ける。

 「学園都市対抗の武芸大会、などと銘打ってはいるが、実質は戦争だ。学園都市連盟が仕切り、武
  器には安全装置が掛けられていたとしても、その戦いに懸けられているのは都市の命セルニウム、
  その鉱山だ」

  自律型移動都市、その動力源となるのはセルニウムという金属だ。
  カリアンがこちらを向く。

 「ツェルニ所有の鉱山は一つ。負ければ次はない、都市は死ぬ。」

 「すぐに死ぬわけではないがね、都市にも貯蓄されているセルニウムはある」

 「だがそれだけだ、ほんの少し延命されるに過ぎない」

  レイフォンはそれを想像して、恐怖した。
  都市の死はつまり、都市に住む人々の死に直結する。汚染獣の蔓延る汚染された大地に放りださ
 れては、人間達に生きる術はまずない。絶望的だ。
  しかしそれを想像してもなおレイフォンは転科を受け入れることはできなかった。

 「それでも……」

  先程までは笑みを浮かべていたカリアンだったが、その笑みは消え、真剣な表情をしている。
  それを見てレイフォンは息を呑んだ。

 「それだけではない。汚染獣の存在もある。幸運にも、未だツェルニは汚染獣に遭遇していない。
  とは言え、いつ遭遇するかはわからない、そして遭遇してしまえば、この都市は危機にさらされ
  るだろう。その危機を乗り越えるには、やはり力が必要だ。ツェルニの武芸者、超能力者ではど
  こまで対処できるかわからない。」

 「君に力を貸してもらいたい。レイフォン・ヴォルフシュテイン・アルセイフくん。いや、もうそ
  の名では無いのだったね」

  再びカリアンの口から出たその名前に、レイフォンは再び顔をしかめる。
85 : ◆0K.wErJEJI [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 06:18:04.04 ID:ViUS6Bso

 「君がグレンダンの元天剣授受者ということは知っている。そして天剣授受者がどういった存在で
  あるかも知っているよ。君が天剣を剥奪されるという騒動のとき、偶然グレンダンにいたんだ」

 「君の過去にとやかく言うつもりはない。事情があったように思う。しかし今、君の力が必要だ。
  都市を守るために、都市に住む人々を守るために」

 「私は今年で卒業だ、そうすればここに残ることは無いだろう。だがわたしはこのツェルニを愛し
  ている。愛するものをどんな手段を用いても守りたいというのは、誰にだって共通だとは思わな
  いかね?」

 「武芸科に転科、いいね?」

 「……」

  しばらくの後、レイフォンは頷いた。
  彼の脳は全力で頷くことにストップをかけていが、しかし、カリアンの表現できない何かに気圧
 されたレイフォンは、頷かざるを得なかった。

 「ありがとう。それではそれが武芸科の制服だ」

  横の机に置いてあった制服を手に取るレイフォン、タグを見る、自分のサイズに合致している。
  決定事項、か。
  レイフォンが制服を確かめていると、カリアンがどこかに連絡をとりはじめた。

 「あぁ、レイフォンくん。ちょっと待っていてくれ」

  言われたとおりそのまま待つレイフォン。一秒でも早く、この場から立ち去りたいが我慢する。
  カリアンが連絡を取り終える。誰かをこの部屋に呼ぶようだ。その誰かを待つ間、どちらも無言
 で、カリアンはなにやら書類に目を通している。
  緊張感と、頷いてしまったことへの後悔でレイフォンは体中がむずむずしていた。
  しばらくすると生徒会長室の扉がノックされる。
86 : ◆0K.wErJEJI [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 06:18:31.68 ID:ViUS6Bso

 「武芸科三年、トーマ・カミジョウです。失礼します」

  生徒会長室に入ってきた男。
  ツンツン髪の自分と同じくらいの、それより少し高いぐらいの身長の男。武芸科の制服、胸には
 バッジが付いている。
  トーマと名乗った男はレイフォンを一瞥すると、そのまま進み、レイフォンの隣に並び、カリア
 ンと対峙する。

 「うん。では、手早く済ませてしまおう。トーマくん、レイフォンくんに話を」

 「はい」

  トーマがこちらを向く。

 「よう。昼間のアレ、見てたよ」

  先程とは変わって、すこし砕けた表情で話しかけてくる。
  するといきなり、トーマはレイフォンの耳元に顔を近づけ、生徒会長に聞こえないように、囁い
 た。

 (生徒会長、意味わかんない圧力あるよな。おれも苦手だ)

  レイフォンの緊張した面持ちと、先程まで行われていただろうやり取りを想像して、レイフォン
 の緊張をほどこうとしたのか、そう言うトーマ。

 「トーマくん、聞こえているよ。いいから話しをしたまえ、さもなければ、インデックスくんへの
  特別支給金を減らすことになる」

 「げぇっ!そ、それは!それだけは勘弁してください!今だってギリギリなんですよ!」

  その言葉にトーマは露骨に狼狽しだす。

 「冗談だ、いいから早くしたまえ。君達だって早く去りたいだろう、この無駄に威圧感のある生徒
  会長の眼前から」

  不敵な笑みを浮かべてこちらを見てくるカリアンに、レイフォンとトーマは同時に身震いをした。

 「こえぇ……。あー、うん。レイフォン、俺の小隊に入って欲しい。ちょっと前に新しく作った、
  第17小隊だ」

87 : ◆0K.wErJEJI [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 06:19:30.19 ID:ViUS6Bso
  言葉を続けるトーマ。

 「生徒会長から話は聞いたと思う。この都市は今のままでは長く持たない、力が要る」

 「昼間のアレ、どんな技を使ったのかはわからんが、あれほどの技を使える人間はこの都市には多
  くいない」

 「ああ、脅してるわけじゃないし無理強いもしない。あー、えっとな、生徒会長から話は聞いちまっ
  た。お前の昔の話」

  レイフォンはカリアンを睨む。
  カリアンは先程同様不敵な笑みを浮かべている。
  正直腹立たしい、自分は過去捨てたのに、それをほじくりだして、挙句他の人にまで漏らすと 
 は。

 「俺はお前を責めない。俺も孤児だったんだ、俺の場合、常に放浪していたんだけど」

  レイフォンはその言葉に少し反応を見せた。
  トーマが続ける。

 「お前の行為は武芸の誇りを穢したのかも知れん。けど、俺はそんなことはどうでもいい」

 「それによってグレンダンの孤児達はある程度救われていたんだろう、結果として救い切れはしな
  かったんだろうけど」

 「いや、俺が気にしなくてもお前が気にするんだろうけどな。えっととにかく、俺としてはどうで
  もいい。孤児ってのはなんだか仲間意識が湧いちまうよな、お前の行為におれは同じ孤児として
  感謝したいよ」

 「あー、とにかく、今俺は、この都市を守りたい。ここに居る仲間を、人間を守りたい。一人も、
  一つも欠かすことなく。全てを守りたい。欲張りだと思うかもしれないけど」

 「力が要る。他力本願は気に食わない、俺も努力はするよ。でも、お前にも手伝って欲しいんだ」

 「正直な、それだけの力を持っていてなにもしないってのは卑怯だろ」

 「その力を使う使わないはお前の自由だよ、けどな、危機的状況を目前にして、その力から逃げて
  周りの命が消えていくのをお前は黙ってみてるのか?」

 「俺はそんなもん黙ってられない、力が無くともどうにかする。力があればなおさらだ」

 「もしお前がその時になってもなにもしないってんなら、――俺はお前の、そのふざけた幻想をぶ
  ち殺す」

  真剣な表情、言葉をぶつけてくるトーマ。

 「っておいおい、これじゃ脅しみたいだな。えーっとだな、とにかく手伝ってくれ」

 「頼む!」

  そういうとその男は土下座までしてみせた。
88 : ◆0K.wErJEJI [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 06:20:11.09 ID:ViUS6Bso
  突然のその行動に戸惑うレイフォン。

 「えっと、あの、やめてください」

  そこまでされると、断れない。
  自分の優柔不断さを恨む。

 「あの、わかりました」

 「本当か! カミジョウさんは不幸を脱出したのでせうか!?」

  わけのわからないことを言うトーマ。目を輝かせ、歓喜の表情だ。
  黙っていたカリアンが口を開いた。

 「決まったようだね。」

  カリアンは立ち上がってこちらに歩いてくる。
  トーマとレイフォン、二人の前に立ち、二人の手を順に握った。

 「期待している」

 「この都市のために、頑張ってくれ」

  その表情は、さっきまでと変わらないようであったが、少しだけ和らいだ印象があった。
89 : ◆0K.wErJEJI [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 06:20:57.83 ID:ViUS6Bso



 「失礼しました……」

  ばたん。

  トーマとレイフォン、二人同時に部屋から出る。

 「本当に助かったよ、レイフォン。これからよろしく頼む」

  トーマはレイフォンの手を握り、頭を下げる。

 「あ、えっと、はい……」

  戸惑いながら、一応の返事。

 「まだ乗り気じゃないんだろ? 仕方ないよな、けどよ、危機は必ず訪れる。俺たちはそれに立ち
  向かわなくちゃいけない」

 「徐々に覚悟を決めていってくれたらいいんだ。その時に確固たる覚悟を持っていてくれればさ」

  やけに理解のある人間だな、とレイフォンは思う。

 「今日はこの時間だし、なんにも無いからさ。明日の放課後、一年校舎の奥にあるボロっちい会館
  に来てくれ」

 「って、ああ! 自己紹介忘れてたな! 俺はトーマ・カミジョウ、武芸科3年だ。出身は……孤児
  でわかんねぇ」

  慌てて自己紹介をするトーマ
  最後の言葉は笑いながら言う。
  本当に気にしてないんだなこの人は。と思いながら、レイフォンも応じる。
90 : ◆0K.wErJEJI [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 06:21:37.88 ID:ViUS6Bso
 「レイフォン・アルセイフです。いっぱ……武芸科1年です。出身は……既にご存知の通りです」

 「グレンダンな。なぁ、天剣授受者ってそんなに強いのか?」

  好奇心がトーマの顔に完全に露出している。

 「そうですね。強いです。けどぼくは一番下っ端でした……多分。ぼくよりもっと強い人たちが集
  まってると思います」

  謙遜せず言うレイフォン。天剣授受者は強い、そして元天剣授受者の自分も、たいていの武芸者
 では比肩できない強さであろう。
  レイフォンはそれを客観的に認識していた。

 「多分?」

 「はい、天剣同士でぶつかったことがありませんから。けど、汚染獣と戦っているのを見ても、み
  なさんぼくより強かったと思います」

 「そうか……。俺もまだお前の実力ってやつを知らないけど、化物なんだろうな」

 「…………」

 「あ、わるい! その、悪気は無いんだ! あー、すまん!」

 「あ、いえ、気にしていません」

  化物、と言ってしまったことに、申し訳なく思ったのだろうか。が、その表現は的確だ。
  武芸者は誰しもが化物、そして12人の天剣授受者は世界最強にして最凶ともいえる
 化物の集団。レイフォンはそう認識している。
91 : ◆0K.wErJEJI [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 06:22:54.29 ID:ViUS6Bso

  武芸者。

  武芸者とは、剄を用い、都市を守るために戦う者のことを言う。
  剄は内力系活剄と外力系衝剄の二つに大別される。
  内力系活剄、活剄は肉体を直接強化し、外力系衝剄、衝剄はは剄を衝撃波に変え外部に放つもの。
  武芸者はこれらを組み合わせたり、変化させたりしながら戦うのだ。

  しかし、この世界の人間誰しもが剄を持っている。
  だが剄脈を持つのは武芸者のみ。

  剄脈。腰の辺りにある剄を生み出す器官。
  これが武芸者を武芸者たらしめているといっても過言ではない。
  剄脈があるだけでもう武芸者は、人間とは別の生き物だ。器官が一つ多いだけ、そう表現してしまえば
 それまでだが、その器官がもたらす力は、ただの人間とは全く異質で暴力的、人を容易に傷つけ、
 殺すことができる。


 「でも、その天剣授受者たちよりも、女王陛下が一番強いです。束になってかかっても、敵わな 
  い」

  事実として、レイフォンが天剣授受者だった頃、女王暗殺を企てた人間が天剣授受者に協力を求
 め、3人の天剣授受者がそれを受けて女王を襲撃したが一瞬にして倒されてしまった。

 「うっげ、マジかよ。おそるべしだなグレンダン……」

  顔をゆがめ、恐怖の表情のトーマ。

 「えーっと、とりあえず! 今日はありがとな!」

 「また明日!」

 「はい、また……明日」

  やり取りを終えると、トーマは時計を確認しだした。

 「うお! 特売の時間が! やばい! あと10分!」

 「がぁっぁあああ! やっぱり不幸だあああああああああああ!!」

  そう叫びながらトーマは全力で走り去っていった。

 「変な人だな……」

  思っていたことが口から零れる。
92 : ◆0K.wErJEJI [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 06:23:36.60 ID:ViUS6Bso
  すると

 「少し、お時間いいですか?」

  後ろから声をかけられた。
  振り向くと、寮から生徒会長室まで案内してくれた銀髪の少女、フェリが立っている。

 「え、はい。えっとフェリ……さんですよね」

 「はい。フェリ・ロスです、武芸科の二年生です」

  ん?ロス? 聞き覚えのあるその名前に、レイフォンは問いただす。

 「ええっと、間違っていたら申し訳ないんですけど……」

 「はい、生徒会長のカリアンは私の兄です」

 「……そうですか」

  あの生徒会長を思い出し、肩を落とす。

 「兄が憎いですか?」

 「え?」

 「いや、あの、憎いってのはあまりにもあれじゃないですかね」

 「私は憎いです」

 「え?」

  その色の薄く、小さな唇から出た言葉に驚くレイフォン。
  実の兄を憎む、その気持ちがレイフォンにはわからなかった。

 「私は兄に無理やり武芸科に転科させられました。武芸大会に勝つためです。あの人の小隊に入隊
  したのも、ほぼ強制です」

  続けるフェリ。

 「私は、念威繰者です。そしてその才能は人とは違います。驕りや慢心ではなく、客観的事実とし
  て、です」

 「少し、いいですか、ついて来てください」

  レイフォンの返事を待たないまま、フェリは歩き始めた。
93 : ◆0K.wErJEJI [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 06:24:56.74 ID:ViUS6Bso
                      †

  校舎を出て、人通りの少ない道に出る。
  その間は無言。何を話せばいいかわからなかったし、話しをする必要がないように思えた。
  フェリは歩みを止めてレイフォンの方を向く。

 「見ていてください」

  そう言うと、その言葉の前までは無かった現象がフェリの体に起きていた。
  腰のあたりまで伸びた美しい銀髪が青い燐光を纏い、あたりをほのかに照らしている。

  念威。剄がさらに変化した粒子。

  外力系衝剄でもあり内力系活剄でもある、そしてその二つとは全く別のもの。努力や訓練で得ら
 れるものではない、生まれつきの限られた才能。

  情報収集能力に長け、通信、視界のサポート、非常に戦闘において有益であるため、重宝される。

 「これでもまだ制御しています」

  その言葉に驚くレイフォン。
  制御して、これか。その長い髪の先まで余すことなく念威で光らせる。念威の量が尋常ではない
 のだ。
  髪は念威を伝導しやすい、髪の一部を光らせることができる念威繰者はレイフォンも見たことが
 ある。しかし、髪全体を、しかも制御した状態で光らせるなど、普通ではない。

 「私の念威の量は普通ではないそうです」

 「そうでしょうね……」

 「この力のせいで、私は小さいとき、念威繰者になるしかないのだと思っていました。家族も、私
  もそれを疑っていませんでした。私は、この世界の人間誰しもがそれぞれ、その将来は小さいと
  きから決まっているのだと思っていました」

 「でも、ある時、気づいたんです。それは間違いであると。そして自分だけが将来が決まっている、
  その状況に耐えられなくなった」

  フェリの顔、声からは感情が見えない、しかし確実に、その心は揺れている。
  レイフォンはなんでかわからないがそう確信していた。

 「だから家を出て、ここに来ました。でも、ここには兄がいた、そしてその兄は私に念威繰者とし
  ての道を再び強制した」

 「私は兄を恨んでいます」

 「そして、それと同じくらい、念威繰者という運命から逃れられない自分を恨みます」

  レイフォンは、ただ黙ってフェリの独白を聞いていた。
  終始無表情、しかし最後の言葉のその声は彼女の心の悲しみの様相を呈していた。
94 : ◆0K.wErJEJI [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 06:25:29.49 ID:ViUS6Bso
 「あなたは、どうなのですか?」

 「……」

  問われても、答えられない。
  黙っていると、そのままフェリはレイフォンの横を通り過ぎ、去っていってしまった。

 「……ぼくも、恨んでいる?生徒会長を、そして自分を。そうだろうか?」

 (本当に捨てたのか?そもそも捨てる必要があった?いや、確かに捨てたかったし実際に捨てた)

 (でも……)

  呟きを途中から心の中だけのものに変え、一つ、大きくため息をついてから、寮に帰ることにした。
95 : ◆0K.wErJEJI [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 06:26:20.26 ID:ViUS6Bso
 「あなたは、どうなのですか?」

 「……」

  問われても、答えられない。
  黙っていると、そのままフェリはレイフォンの横を通り過ぎ、去っていってしまった。

 「……ぼくも、恨んでいる?生徒会長を、そして自分を。そうだろうか?」

 (本当に捨てたのか?そもそも捨てる必要があった?いや、確かに捨てたかったし実際に捨てた)

 (でも……)

  呟きを途中から心の中だけのものに変え、一つ、大きくため息をついてから、寮に帰ることにした
96 :>>73 ◆0K.wErJEJI [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 06:27:24.16 ID:ViUS6Bso
>>73はこちらに訂正でござる……クリスマスめ……

 「――――!」

 「え? れ、レイフォン!?」

  そこにいたのはミコト、そしてミコトの腕をつかんで頬を擦り付けている茶髪でツインテールの
 普段は品のよさそうな、しかし今は下劣な笑みをうかべている女の子。
  その隣にあきれ顔でその光景を見ている女の子は赤毛の短髪で色黒の勝気そうな顔立ち。
  そしてミコトの向かいには長い黒髪の気の弱そうな女の子が座っている。

 「おねえさま、この男とお知り合いですの?」

  茶髪の女の子がこちらをジト目でみつめながらミコトに尋ねる。
  視線が痛い。

 「え、えぇ、今日友達になったばかり。ってクロコ! あたしはおねえさまじゃないっての! 知り
  合ったばっかりなのになんでこんな引っ付いてくるのよ! だいたい同い年でしょ!」

 「おねえさまはおねえさまですの!! クロコはおねえさまのお姿を見たとき、全身に衝撃が走り
  ましたのぉ!! 一目惚れってやつですのぉぉぉ!!」

  ミコトはクロコを引き剥がしながらクロコを責めるが、それを物ともせず、クロコはミコトの腕
 にしがみつき、頬を摺り寄せている。

  恍惚の表情を浮かべているクロコ、彼女の脳内は半分ほど、いやそれよりももっと深く、危な
 い世界に足を踏み入れてる様子だ。

 (うわ、なにこの人)

  レイフォンは初めて出会う人種に困惑していた。

 「ほら! レイフォンが困ってんじゃないの! 離れなさい!」

 「つれないおねえさまも素敵ですの!」

  恍惚の表情をさらに深めるクロコ、鼻息が荒く、ふごふごと鳴っている。

  ざっ。レイフォンは一歩だけ、後ずさりをしてしまった。

 「うっとうしい!」

  クロコは一向にミコトから離れようとしない。
97 : ◆0K.wErJEJI [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 06:28:35.92 ID:ViUS6Bso
ちくしょおぉぉぉぉぉぉぉ


文章力が乏しいぃぃぃぃx
サンタさん文章力をくれぇぇぇぇぇぇぇ


あと彼女……はいいや、寧々さんいるし


ではおやすみなさひ
メーリークーリトーリース
98 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) :2010/12/25(クリスマス) 06:32:39.42 ID:ViUS6Bso
ちくしょう……サンタさんこねえや……
99 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [sage]:2010/12/25(クリスマス) 08:28:03.40 ID:To73skAO
乙トマス。


ニーナとかはどうなるんだ?

禁書目録組みもどうなるんだ?
100 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [sage]:2010/12/25(クリスマス) 09:20:58.47 ID:ViUS6Bso
ニーナは出ない!
リーリンも!
シャーニッドも!
ダルシェナもディンもシンも出ない!

ツナギの人は出るよ!
ネルアも出るよ!
クララも出るよ!!!!!!

禁書組みは扱いやすいのを出す予定
101 : ◆0K.wErJEJI [sage]:2010/12/25(クリスマス) 19:58:13.67 ID:ViUS6Bso
申し訳ない

ちょっと長期間書き込めそうに無い
ネットのない環境に身をおかなければならなくなってしまった

その間文章も練り直したいんだ
あと、もっと禁書についても勉強してくる

このスレは一旦さよならしようと思う
なるべく早く立て直したい
すまない
102 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/25(クリスマス) 21:41:02.75 ID:J/cbXGAo
おっつー
103 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/25(クリスマス) 21:46:02.25 ID:TcZZEHUo
どんくらいの期間かにもよるけど
一旦落としたいならHTML化依頼スレに依頼しにいくといいよ
そうしない限り残り続けちゃうし
95.98 KB   

スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)