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唯「まじーん、ごー!」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 15:15:30.08 ID:MHLJUp.0
 第一話

 宇宙世紀0079――人口爆発した地球人類はその大半が幾多のスペースコロニーに移住して数十年が経過していた。

地球 桜ヶ丘高校

唯「はう〜、やっぱりムギちゃんのケーキはおいしいねぇ〜」

紬「うふふ、どうもありがとう、唯ちゃん」

梓「うぅぅ〜、今日も結局練習できなさそうです……」

律「もう諦めろって、あずさぁ〜」

梓「澪先輩はこれでいいんですかっ!」

澪「そ、それはやっぱり……その」

律「おやおやぁ、澪ちゃんはケーキがいらないみたいですなぁ?」

澪「なっ、何するんだよ、律っ!」

律「ほほほ、つかまえて御覧なさい、み〜おちゃ〜ん」

澪「りつぅ〜!」

唯「ムギちゃぁ〜ん、おいふぃよぉ〜!」

紬「うふふ」

梓「ああぁ〜……」

 律が奪ったケーキを追いかけて澪が立ち上がったとき、

 ドゴォォォォォォォン!
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
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いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
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【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
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こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
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アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
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エルヴィン「ボーナスを支給する!」 @ 2024/04/14(日) 11:41:07.59 ID:o/ZidldvO
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2 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 15:19:36.81 ID:MHLJUp.0
 轟音と地震が桜ヶ丘高校を襲った。

 ドゴォォォォォォォン!

澪「うわぁぁぁっ!」

律「み、澪!」

 自分の軽いからだが浮き上がるほどの強い揺れに何とか踏ん張って耐えた律が転びそうになる澪を支える。

唯「ひょえ〜! な、なになに〜!」

 テーブルに顔をぶつけてクリームまみれの唯。その唯にがっしりと掴まった梓。

梓「も、もしかして、またジオン軍のコロニー落としですかっ!」

唯「えぇぇ〜! いやだよぅ! ギー太ぁ〜!」

紬「いいえ、たとえ連邦政府がコロニー落としを秘匿していたとしても、私の家の人工衛星から連絡が入るはずだから、それはないみたい」

 携帯を見ながら紬が言う。

梓「む、ムギ先輩の家って、人工衛星まであるんですか……?」

律「そ、そんなことより、コロニー落としじゃなければ、これはなんなんだよ!」

 怯えまくっている澪の肩を抱いたままの律が叫ぶ。それに応えるように窓の外から再び大音量が響いた。
3 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 15:20:12.64 ID:MHLJUp.0
 ギャオォォォォォォォォォン!

澪「こっ、今度はなに! 鳴き声!?」

 唯と紬が窓のほうへ向いた。

唯「な、なにあれ……」

紬「怪獣……?」

 二人が見たのは、髑髏のような頭に鎌のような耳を持った巨大な怪物が町を破壊している光景だった。

あしゅら男爵「いけぇぇぇい、機械獣ガラダK7! この地にあるという光子力研究所を見つけ出すのだ!」

ガラダK7「ぎゃおぉぉぉぉぉん!」

 怪物の肩に乗っている左が男、右が女の顔をしたそいつが杖を振りかざして命令する。怪物は唸り声をあげて町を破壊し始めた。

唯「あぁぁ! 町が壊されていく!」

梓「ひどい……」

律「二人とも! ぼーっと見てる場合かよ! 早くシェルターに避難するぞ! 澪、立てるか?」

澪「う、うん」

 澪が律の肩を借りて起き上がっているとき、携帯を耳にあててどこかに電話していた紬の顔が恐怖ではない色に染まっていた。

紬「ど、どうして……光子力研究所のことを……」

梓「ムギ先輩! 早く逃げましょう!」

紬「え、えぇ」

 五人は急いで荷物を持った。
4 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 15:20:51.64 ID:MHLJUp.0
唯「あずにゃん!」

梓「なんですか、唯先輩!」

唯「むったんを忘れちゃダメだよ!」

梓「い、命をまず大事にしてください、唯先輩!」

唯「ダメだよ! むったんはあずにゃんの大事な相棒じゃない!」

梓「でも……!」

律「そうだ、梓、むったんを持っていってやれ」

梓「り、律先輩……」

 梓は律が肩に担いでいる澪のベースを見て気づいた。

 律のドラムセットを持っていくことはできない。

梓「……えいっ!」

 梓は自分のカバンをその場に投げ落とした。

律「あ、あずさ……?」

 梓は両腕をぐるぐると回して自分のギターを担いだ後、その手でスネアドラムを持ち上げた。

梓「にゃ―――――――――っ!!!!」

 梓が猛ダッシュで部室を出ていった。それを見ていた紬と唯も自らのカバンを投げ捨て、ドラムセットを可能な限り持つ。

唯「さぁ行こう、りっちゃん!」

律「ぐすっ……あぁ!」
5 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 15:22:15.47 ID:MHLJUp.0
 桜ヶ丘高校は地下が緊急時のシェルターになっている。五人はそこに逃げた。

さわ子「あ、唯ちゃんたち。無事だったのね」

律「はい、澪がまだ腰抜けてますけど」

澪「すみません……」

さわ子「いいのよ、いきなりだったものね」

唯「……さわちゃん、憂は?」

さわ子「憂ちゃんは……まだ避難が確認されていないわ。たぶん、もうお家に帰っているのだと思うけど……ゆ、唯ちゃん、どこに行くの!」

唯「私……憂を迎えに行きます!」

律「何言ってるんだ、唯!」

さわ子「そうよ! 外ではもう連邦軍の戦闘が始まっているのよ!」

唯「で、でも、憂はきっとおばあちゃんと一緒に避難しようとするはずです!」

梓「おばあちゃんって、唯先輩の近所の……」

唯「うん、憂は絶対におばあちゃんと一緒だよ。私が憂の立場ならそうするもん!」

さわ子「唯ちゃん……」

唯「でも、憂でもおばあちゃんと一緒じゃここまで逃げられないかもしれないから、私が迎えに行って助けてあげないと!」

さわ子「唯ちゃん……わかったわ」

唯「さわちゃん、いいの?」

さわ子「ただし、私も一緒に行くわ。私の車に乗せていってあげる」

唯「さわちゃん……ありがとう!」
6 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 15:23:15.15 ID:MHLJUp.0
 唯の家の近所

ガラダK7「ぎゃおぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!」

憂「おばあちゃん、だいじょうぶ?」

おばあちゃん「私はだいじょうぶだから、憂ちゃんは先にお逃げ」

憂「いやだよ! そんなことできない!」

 おばあちゃんに肩を貸す憂のおよそ一〇〇メートル後ろでは機械獣が大きな足で建物を破壊していく。その周囲では戦闘機が飛んでミサイルを撃っているが、まるで歯が立たない。

憂「おばあちゃん、はやく逃げよう!」

おばあちゃん「駄目だよ、私は、ここを守らなくちゃいけないんだ……」

憂「何を言ってるの! 家より命のほうが大事だよ!」

おばあちゃん「違うんだよ、憂ちゃんこのお家はただのお家じゃないんだよ」

憂「えっ……?」

おばあちゃん「私は、唯ちゃんを待たなくちゃいけないんだよ。おじいさんのためにも」

憂「おじいさん……お姉ちゃんがいったい……」

唯「うい―――――っ!」

 唯が飛び込んできた。
7 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 15:23:46.82 ID:MHLJUp.0
憂「お姉ちゃん! どうして!」

唯「憂とおばあちゃんを迎えに来たんだよ!」

おばあちゃん「おぉ、唯ちゃん、よく来てくれたねぇ」

唯「おばあちゃん、早く逃げよう! さわちゃんが車で待ってるから!」

さわ子「おばあちゃん、早く避難しましょう」

おばあちゃん「待って、少しだけ待ってちょうだい、唯ちゃん」

 そう言って、おばあちゃんは仏壇のほうへ歩いていった。

唯「おばあちゃん……?」

 唯と憂とさわ子が不安そうに見つめている背中が仏壇の奥にあるスィッチを押すと、機械獣が起こしたのとは違う揺れが四人を包んだ。

憂「な、何が……」

唯「ふおっ! 畳が動いてる!」

さわ子「……階段?」

おばあちゃん「唯ちゃん……この下におじいさんが待っているの……」

唯「おじいさん? おじいさんって、発明好きの十蔵おじいちゃん?」

憂「でも、おばあちゃん、十蔵おじいちゃんは何年も前に行方不明になったんじゃ……」

おばあちゃん「いいえ、おじいちゃんはとある発明のせいで悪い人に追われるようになったから、この地下で密かに研究を続けていたんだよ」
8 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 15:24:52.21 ID:MHLJUp.0
さわ子「悪い人って、もしかして今外で暴れている……」

おばあちゃん「それはわからない……でも、この町に危険が迫ったとき、唯ちゃんを研究所に案内しろと私は言われたんだよ」

唯「私を、おじいちゃんが……?」

おばあちゃん「もしかしたら、すごく危険なことかもしれない……でも、おじいさんは唯ちゃんにそれを託そうと思っていたのよ」

さわ子「待ちなさい、生徒を危険な目にあわせるわけにはいかないわ」

憂「さわ子先生……」

さわ子「早く逃げましょう。今ならまだ――」

 さわ子がおばあちゃんの肩を持とうとしたその瞬間だった。

 キィィィィィィ……チュドォォォォォォン!

憂「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 ガラダK7に落とされた戦闘機が家の近くに落ちたのだ。

 縁側にいた憂が爆発の衝撃波に吹き飛ばされ、倒れた。

さわ子「憂ちゃん!」

唯「憂!」

憂「う、おねえちゃん……」

唯「…………憂、血が……」

 唯はこめかみから血を流す妹を見て、今まで感じたことがない熱が体の芯に滾っていくのがわかった。

唯「さわちゃん、私、おじいちゃんのところに行くよ」

さわ子「唯ちゃん……!」

唯「なんにも悪いことなんてしてない憂が傷つくのはいやだよ……」

憂「おねえちゃん……」

唯「私が、おじいちゃんを信じて憂が、みんなが助かるなら……」

さわ子「……わかったわ、今から逃げるよりは、ここから地下に入ったほうが安全かもしれないしね」
9 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 15:25:20.44 ID:MHLJUp.0
 唯が憂を、さわ子がおばあちゃんを助け起こして、四人は地下への階段を下りていく。

唯「憂、だいじょうぶ?」

憂「うん……頭が少しぼーっとするけど、平気だよ」

 階段は三十段くらいで、広い空間に出た。

唯「真っ暗……」

 唯が呟いた直後、ばん! と強い音をたてて広い空間をたくさんのライトが照らした。

「よく来たな! 唯!」

唯「この声、おじいちゃん!?」

「残念だが、今のワシの声は録音したものだ。ワシが一方的に喋るだけだ」

唯「えぇ〜、返事して損した〜」

「さて、目が慣れてきたところで、早速今お前の目の前にあるものを見てくれ!」

 眩しさに目が慣れた唯の目に飛び込んできたのは、

唯「ろ、ロボット……?」

 黒いボディ、鎧兜の如き顔面、胸の赤いブイの字形――

「これこそが! ワシが発見し、研究した究極の鉱石ジャパニウムから生まれた超合金Z! 光子力エネルギー! そして!」

唯「そ、そして……?」

 ごくりと唾を飲む。

「無敵の装甲に最強のエネルギー! 人類を守る鉄の城!! その名も!」

唯「その名も!?」

「その名も!」

唯「その名も!?」

「その名も!」

「マジンガーZ!!!!」

唯「マジンガーZ!!!!」
10 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 15:27:51.45 ID:MHLJUp.0
「さぁ唯! マジンガーZの頭部のパイルダーに乗り込むのだ!」

唯「……憂、ちょっと行ってくるね」

憂「うん、気をつけてね、お姉ちゃん」

 唯は眩しいライトの中を歩いていく。

 鉄骨造りの階段を上り、黒い巨体の全身をよく眺めてパイルダーに乗り込んだ。

 それまで天井から聞こえてきた十蔵の声が今度はパイルダーの中から聞こえた。

「唯! マジンガーZはそのあまりにも強大すぎるパワーにより、乗る者を神にも悪魔にもしてしまう!」

唯「神にも、悪魔にも……」

「だが唯、お前の優しさはワシはよく知っている。だからこそ、ワシはお前にマジンガーZを託すのだ」

唯「おじいちゃん……」

「お前がマジンガーZに乗っておるということは、この地球に危機が迫っているということ」

唯「……」

「そして、地球を脅かす者達の名を、ワシは一つ知っておる」

唯「誰なの、おじいちゃん?」

「その名はドクター・ヘル! ワシと同じように光子力の研究をしていた男じゃ!」

唯「ドクター・ヘル……」

「やつは必ずやミケーネ帝国の機械獣を引き連れて地球を征服する!」

さわ子「機械獣……あの怪獣の肩に乗っていた怪人が言っていたわ……」

「今、お前を襲っているものが何者かはワシは知らぬ。だが、これだけは言っておく」

唯「な、なに……?」

「ドクター・ヘルを倒さぬ限り、地球の平和は無い! 人類に逃げ場無し!」

唯「人類に……逃げ場……無し……」
11 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 15:28:16.61 ID:MHLJUp.0
「さぁ、唯、マジンガーZを出撃させるぞ!」

唯「う、うん!」

 汗ばむ手で唯は操縦桿を握りしめた。

「起動にはお前の声でパイルダー・オンと叫ぶのじゃ!」

唯「わかったよ、おじいちゃん!」

 唯の手は力を入れすぎて痛くなってきている。怖い。これから起こる全てのことが怖い。

 だが、唯は叫んだ。

唯「パイルダァァァァァァ・オーン!」

 マジンガーZの目が赤く光る! 頭上の天井が開く!

唯「マジィィィィィン・ゴォォォォォォォ!」

あしゅら男爵「ぬうっ! なんだあのロボットは!」

唯「やいっ、機械獣め! このおじいちゃんの造ったマジンガーZでやっつけてやる!」

あしゅら男爵「なに! マジンガーZだと!? それならばあれがドクター・ヘル様が仰っていた光子力エネルギーのロボット!」

唯「さぁ、どこからでもかかってこい!」
12 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 15:31:13.23 ID:MHLJUp.0
あしゅら男爵「くくく……ふははははははは! ドクター・ヘル様が唯一恐れるというロボットがどんなものかと思えば、馬鹿なガキが一人乗っているだけではないか!」

唯「なにおう! 変な声のやつめ!」

あしゅら男爵 「くくく……いいだろう、このあしゅら男爵が相手をしてやる! ゆけぃ! ガラダK7!」

 あしゅら男爵が杖を振りかざすと、機械獣は顔の横についている鎌を手に持った。

ガラダK7「ぎゃおぉぉぉぉぉぉぉん!」

唯「よし、来い! ……って、どうやって戦えばいいの?」

ガラダK7「ぎゃおぉぉぉぉぉぉん!」

 機械獣がすぐそこまで迫っている!

唯「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ!」

 思わず唯は顔をかばう。機械獣の鎌がマジンガーZの肩に振り下ろされる!

 ガキィン!

あしゅら男爵「なんだと!」

唯「あ、あれ、なんともない……?」

あしゅら男爵「む、無傷だと……! 機械獣はどんな金属よりも硬いスーパー鋼鉄で出来ているというのに!」

唯「本当に、おじいちゃんが造った超合金Zは無敵なんだ!」

あしゅら男爵「ぬうぅぅぅ! 超合金Zだとぉぉぉ! えぇい、ガラダK7! 体当たりでパイロットを倒してしまえ!」
13 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 15:32:36.10 ID:MHLJUp.0
ガラダK7「ぎゃおぉぉぉぉぉぉん!」

唯「うわぁぁぁ! ぐらぐら揺れるぅ! おじいちゃん、どうしたらいいのぉ!?」

 機械獣がマジンガーZに張り付いて前後に揺さぶる。頭をぶつけないように腕を広げた唯の指がコクピット内のボタンをいくつか押した。

あしゅら男爵「なんだ!? マジンガーZの口が!」

 マジンガーZの口が開き、そこから酸の風ルストハリケーンが噴き出した!

 ブュオォォォォォォ! ザザァァァァァァァ!

ガラダK7「ぎゃおぉぉぉぉぉぉ! ……おぉ、ぉぉぉぉん……」

あしゅら男爵「ど、どうしたことだ、ガラダK7!」

唯「ほ、ほえぇぇぇ……」

 ルストハリケーンによってガラダK7の体は一瞬で錆びてぼろぼろになってしまった。更にあしゅら男爵にも少し当たっていた。

あしゅら男爵「ぐうぅぅぅ! これでは戦えん! マジンガーZ、勝負は預けるぞ!」

唯「二度と来るなー! この平沢唯さまとマジンガーZがいる限り、町に手は出させないぜー!」
14 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 15:34:30.02 ID:MHLJUp.0
 あしゅら男爵がいなくなった後の桜ヶ丘高校

律「唯! 無事だったか!」

唯「あ、りっちゃーん!」

律「も、もしかしてお前がこのロボットに乗っていたのか!?」

唯「うん、おじいちゃんのマジンガーZだよ」

梓「……かっこいい」

唯「でしょでしょー! あずにゃんは違いがわかる子だねぇー!」

梓「はにゃー! くっつかないでください!」

紬「マジンガーZ……もしかして、兜十蔵博士の……」

唯「え? ムギちゃんおじいちゃんのこと知ってるの?」

紬「その……直接の面識はないのだけれど……そうね、みんなになら教えてもいいかな……」

澪「ムギ? 何のことだ?」

 ちょうどそのとき、ムギの前に黒塗りの高級車が停まり、紬の執事の斉藤が現れた。

斉藤「お嬢様、お迎えに上がりました」

紬「えぇ、ありがとう、斉藤さん。さぁ、みんな乗って」

さわ子「乗ってって、どこに連れて行くの?」

紬「……光子力研究所です」
15 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 15:35:57.05 ID:MHLJUp.0
 斉藤執事が運転する車に乗った唯、澪、律、紬、梓、さわ子、憂の七人が降りたのは、一見するとだだっ広いだけの更地だった。

さわ子「ここって、ムギちゃん家の土地だったのね」

律「でも、研究所どころか何も見えないぜ」

紬「光子力はまだ試験段階のエネルギーだけど、非常に強力かつ生産効率の高いエネルギーだから、悪用されないよう極秘裏に研究していたの」

 紬は斉藤にお願いしますと言ってから、続けた。

紬「だけど、あのあしゅら男爵という人は少なくとも光子力研究所がこの町にあることを知っていたわ」

梓「そういえば、最初にそんなことを言ってましたね」

紬「あんなやり方をされてはこの町が破壊されてしまう。だから先ほど連邦政府と話をして、光子力研究所を公開することに決定したの」

唯「えっ、えっ? どういうこと?」

憂「下手に町を壊されてしまうよりは、あらかじめ見せて注意を引こうということですか?」

紬「えぇ、そうよ、憂ちゃん……始まるわ」

 直後、ウウゥゥゥゥゥゥゥゥという耳に痛いサイレンが鳴り響いた。

 そのサイレンの端々でガコン、ガコンと大きな杭を打つような音が聞こえていた。

澪「地面が、開いてる……」

 砂の地面に擬装された更地の下で機械の扉があちこちで開き始めた。そこから色々な形の物がせり上がってくる。

唯「すごい……建物が地面から生えている……」

 唯たちから見て右手側からは二五メートルのプールがまるで最初からそこにあったかのように見えていた。

 最後に桜ヶ丘高校の校舎がすっぽり入りそうなくらいの穴が空き、最も巨大な建築物が唯たちの前に立ち上がった。

梓「これが……」

唯「光子力研究所……」

紬「そうよ、地球人類最後のエネルギーを開発する機関よ」
16 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 15:38:53.02 ID:MHLJUp.0
 光子力研究所 内部

紬「光子力研究所は地球連邦極東支部の臨時司令室も兼ねているの」

 廊下を先頭で歩く紬が詳しく説明しながら歩き、唯たちはその後ろに続いていく。

澪「第一支部は東京に、第二支部は佐世保にあるんだよな」

律「へー、そうなのか」

梓「律先輩……常識ですよ……」

さわ子「連邦軍の基地に、私たちを案内してもいいのかしら……?」

紬「司令部になるといっても、あくまでも臨時になるときのものだし、研究所自体はウチの父の会社が保有しているものだから、連邦軍の影響はあまりないんです。それに……」

唯「それに?」

紬「みんなもあまり無関係というわけじゃないんですよ」

律「どういうことだよ、ムギ」

紬「司令室に行けば、わかるわ」

 会話をしているうちに七人は司令室まで来ていた。

紬「紬です。みんなを連れてきました」

 司令室の扉が開く。司令室というわりにはこざっぱりとしていて、何人かの研究員らしき人がいるだけだったが、その真ん中で紬たちを待ち構えていた人物を見たとき、澪と律が同時に驚きの声をあげた。

澪「パパ!?」

律「み、澪ん家のおじさん!?」
17 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 15:40:02.82 ID:MHLJUp.0
梓「えっ!? あのちょっとダンディな人が澪先輩のお父さん!?」

紬「えぇ、光子力研究所の所長でもある秋山弦之助教授よ」

秋山「どうも、お久しぶりです。紬お嬢様」

紬「お嬢様はよしてください、教授」

澪「えっ、えっ! どうしてムギとパパが知り合いなの!? っていうか何でパパがこんなところにいるの!?」

秋山「私はここの研究所の所長で、琴吹財閥が研究所のスポンサーだからだよ、澪」

紬「ごめんなさい、澪ちゃん、隠すつもりはなかったのだけど……」

澪「い、いや、別に怒っているわけじゃないけど……」

律「ちょ、ちょっと待ってくれ、いや、ください、おじさん」

秋山「なんだい、律くん?」

律「私の記憶じゃ、ウチのお父さんは確かおじさんの同僚って言ってた気がするんだけど……」

 律がおでこに指をあてて眉間にしわを寄せていると、再び扉が開いた。

田井中「おぉ! もう来ていたのか、律!」

律「げぇっ! クソオヤジ!」

唯「えーっ! あの丸っこいツルピカのおじさんがりっちゃんのお父さん!?」

律「人の親父をツルピカ呼ばわりするな!」
18 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 15:42:16.45 ID:MHLJUp.0
田井中「はははは、君が兜十蔵博士が話していた平沢唯くんかい? 娘がいつも世話になっているね」

唯「いやぁ、それほどでも〜」

律「世話された覚えないんだけど! つうか何でオヤジがこんな立派な研究所で働いてんだよ! 土木作業員かと思ってたよ!」

秋山「ははは、ひどい言われようだな、こう見えても彼は七つの博士号を持っているのだよ」

律「マジで!? 澪、それって偉いのか!?」

澪「めちゃくちゃ偉いよ!」

律「マジかよ! もっと自慢しろよ、バカオヤジ!」

田井中「いやあ、能ある鷹は爪を隠すと言うじゃないか。敵を騙すにはまず味方からとか」

秋山「さて、そろそろ本題に移ろうか」

 秋山教授がこほんと咳払いすると、みんなは静かになった。

秋山「この光子力研究所では日本でのみ採掘されるジャパニウムという鉱石と、それから作ることが出来る光子力エネルギーと超合金Zについて研究している」

田井中「今では弦乃助が所長をしているが、元々ジャパニウムを発見し研究していたのは兜十蔵博士だったんだ」

唯「おじいちゃんが……」

秋山「だが、兜博士はある日突然研究所から姿を消してしまった。連邦政府も世界中を探したのだが、見つからなかった」

憂「でも、おじいちゃんは実はすぐ近くの地下に潜んでいたんですね」

田井中「そうだ、灯台下暗しとはまさにこのことだ」
19 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 15:44:24.15 ID:MHLJUp.0
秋山「兜博士のいなくなった研究所で古株だった私と田井中が研究所の責任者として跡を継ぎ、最近になってようやく採掘用巨大人型ロボットの試作機が完成したのだが……」

さわ子「それをどこからか聞きつけて、あのあしゅら男爵という人が来たのね」

田井中「その通りだ。あしゅら男爵のバックにいるのがドクター・ヘル。彼は兜博士のライバルとも言える人物で、とても優秀な科学者だったのだが、研究の最終目的は究極の戦闘兵器を開発することだったんだ」

秋山「おそらく彼は超合金Zが優れた金属であることを知って、あの機械獣という怪物に応用しようとしているのだろう」

紬「研究所が地下に隠されていたとはいえ、あのままあしゅら男爵が破壊を続けていれば、今ごろはこの研究所はドクター・ヘルに奪われていたわ」

田井中「そうしたら、半年も経たないうちに地球はドクター・ヘルに征服されていただろう」

秋山「それを救ってくれたのが……」

唯「おじいちゃんのマジンガーZ……」

秋山「その通りだ。きっと兜博士はこうなることをあらかじめ予測していたんだろう」

田井中「だからいきなり姿を消して、対抗するための兵器としてマジンガーZを密かに建造していたのだろう」

律「えっ? なんで秘密にするんだよ。ちゃんとバラしとけばそのドクター・ヘルってやつに狙われなくても済んだかもしれないだろ」

澪「今の連邦政府はジオン公国とか反発的なコロニーに対して強硬的な態度を取ってるから、真っ先に取り上げられちゃうよ」

秋山「うむ、そうしたらドクター・ヘルの侵略に対して対抗できる手段がなくなってしまう」

律「でもさ、連邦がちゃんとマジンガーZを持っていれば、イギリスにコロニーが落ちることはなかったかもしれないだろ」

澪「そ、それは……」

唯「おじいちゃんが言ってた……」

律「唯……?」

唯「マジンガーZは、その強大すぎる力ゆえに、乗る者を神にも悪魔にもしてしまうって……」

憂「お姉ちゃん……」
20 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 15:48:00.38 ID:MHLJUp.0
唯「おじいちゃんは、マジンガーZを悪用されたくなかったんじゃないかな……」

律「悪用ったって、連邦政府なんだからさ」

田井中「律、ちょっと」

律「何だよ」

田井中「平沢くん、一つ質問してもいいかな?」

唯「は、はい」

田井中「マジンガーZを悪用すると言ったけど、君が悪用するならどんな風にマジンガーZを使う?」

唯「えっ? ど、どうやってって、そんなこと言われても……新幹線を止めちゃうとか?」

梓「唯先輩……」

律「確かに悪用だけどさぁ……」

唯「だ、だって、急に悪いことしろなんて言われても、わかんないよぅ」

田井中「それがたぶん、兜博士が君にマジンガーZを託した理由だよ」

唯「えっ、どういうこと?」

田井中「兜博士は、君ならマジンガーZを悪いことに使わないだろうと信用したんだよ」

唯「へ、へぇー、そうなんだー……」

梓「唯先輩、よくわかってないでしょ……」

唯「えへへ……」

憂「お姉ちゃんが優しい人だから、おじいちゃんはお姉ちゃんにマジンガーZをくれたんだよ」

唯「おぉ、そういうことなら自信あるよ私は。優しさ大臣だよ」

憂「お姉ちゃん、かっこいい」
21 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 15:49:55.43 ID:MHLJUp.0
秋山「うむ、そこで平沢くんにお願いがあるのだが……」

唯「何ですか?」

秋山「今日のようにドクター・ヘルは様々な手段で光子力研究所を襲うだろう」

田井中「君とマジンガーZでこの町を守ってくれないだろうか?」

唯「はい、わかりました!」

律「はやっ!」

澪「もうちょっと悩めよ!」

唯「だって、よく考えてもわからないし……それでもあのドクター・ヘルがこの町にやってくるんでしょ?」

紬「そうね……」

唯「そしたらこの町がなくなっちゃうんだよ! 私、戦うよ!」

さわ子「唯ちゃん……」

唯「あ、さわちゃん……やっぱりさわちゃんは反対……?」

さわ子「当然よ、生徒が危険な目にあうなんて……でも、もうやるって決められちゃったのよね……」

唯「さわちゃん……」

さわ子「だったら、せめてご両親にはちゃんと報告しなさい」

唯「は、はいっ! さわちゃん、ありがとう!」

 第一話 驚異のロボット誕生! 完
22 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 15:57:23.02 ID:MHLJUp.0
 宇宙 サイド7 コロニー内

なのは「みなさん、こんにちは。高町なのはです。私ちょっといろいろとありまして、今は魔法少女をしています。この子はパートナーのレイジングハート」

レイジングハート「nice to meet you」

なのは「レイジングハートが言うには、このあたりの宇宙にジュエルシードという大変なものがいくつも散らばってしまい、それを集める役目を私がお手伝いしているんです」

レイジングハート「sorry my master」

なのは「うぅん、レイジングハートは悪くないよ。それで、今はジュエルシードを三つ集めたところで残りは二十個くらい。しかもいくつかは他のコロニー宙域にもあるみたいで、なのはの初めての宇宙旅行はどうやら生身になりそうです」

アリサ「なのはぁ〜」

すずか「なのはちゃ〜ん」

ハロ「ハロハロ、ナノハ、ガッコウ、ハヤクシロ」

なのは「あっ、今の声はアリサちゃんとすずかちゃんです。いつも一緒に学校に行っている仲良しさんで、なのはとも仲良し! アリサちゃんは気が強いけれど本当はやさしくて、すずかちゃんは大人しいけれどとっても機械について詳しくて、ハロちゃんはすずかちゃんが作ったんだって!」

 宇宙 サイド7付近の暗礁空域

ジーン「デニム曹長、サイド7、コロニーへの侵入に成功しました」

デニム「うむ、ワシも続いている。この後はギガノス軍と連携して連邦のV作戦の調査を開始する」

ジーン「はっ!」

デニム「よし、ギガノス軍も配置に着いた。作戦開始だ。ジーン」

ジーン「了解!」
23 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 15:59:40.74 ID:MHLJUp.0
 サイド7 コロニー内

アリサ「それでね、連邦のそのV作戦っていうのが、どうやらこのサイド7で極秘に行われているんだって!」

なのは「へぇー、でもそしたらもしかしてここがジオンの人に狙われちゃうんじゃないかなぁ……」

アリサ「げっ、それは確かに大変だわね……それで、すずかはV作戦のモビルスーツについて何か知らないの? すずかのお姉さんって開発部門で働いてるんでしょ?」

すずか「うーん、前にそれっぽい設計図を見せてもらったことはあるけど……」

アリサ「ほーら! きっとそれよ!」

 ズドォォォォォォォン!

すずか「きゃあぁぁぁ!」

アリサ「な、なによ、なんなのよ!」

なのは「あ、あれっ!」

 なのはが指さした先にはジオン公国のモビルスーツ、ザクがいた。 

アリサ「じ、ジオンのモビルスーツ!?」

すずか「は、はやく避難しないと!」

 三人はシェルターのほうへ走り出す。

なのは「レイジングハート! 魔法でモビルスーツと戦える?」

レイジングハート「(可能です。ただし、有効なダメージは与えられません。非殺傷を解除すれば別ですが)」

なのは「それは却下だよ。でも、みんなが助かる可能性が上がるなら……」

レイジングハート「alllight my master(ちっ)」

アリサ「あ、ちょっとなのは! どこに行くのよ!」

なのは「ごめん、二人は先に行ってて!」

すずか「なのはちゃん!?」
24 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 16:00:34.62 ID:MHLJUp.0

なのは「ここならいいよね、レイジングハート」

レイジングハート「alllight my master」

なのは「我、使命を受けし者なり……契約の下、その力を解き放て……風は空に、星は天に……不屈の心はこの胸に!」

レイジングハート「stand by ready set up」

なのは「この手に魔法を! レイジングハート、セーット・アーップ!」

ジーン「な、なんだあれは!? ガキが空を飛んでいやがる!」

なのは「どなたかは存じませんが、せめてみんなが避難するのを待ってはくれませんか!?」

ジーン「少佐のような力を持っている奴か!? あれが連邦の新兵器か!?」

 ジーンのザクの手がヒートホークを持った。

ジーン「ガキだろうが関係ないぜ! ハエみたいに叩き落してやる!」

デニム「ジーン、よせっ! 一度ひいて様子を見るんだ!」

ジーン「少佐だって、戦場の戦いで勝って、出世したんだ!」

レイジングハート「protection」

 ジーンのヒートホークがなのはを襲う。しかしなのはの魔法は単純な物理攻撃では破ることはできない。

ジーン「ちぃっ! なんて硬さだ!」

 ジーンはヒートホークをめったやたらに振り回すが、十分の一以下の大きさであるなのはには簡単には当てられない。

なのは「なんとか時間は稼げるかな……」
25 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 16:01:58.96 ID:MHLJUp.0
 なのはとジーンが戦っている頃、すずかはデニムの威嚇射撃の影響でアリサと離れ離れになってしまっていた。

すずか「もしかしてこれは……連邦の新型モビルスーツ……?」

 周囲の連邦兵は皆倒れてしまっている。すずかは辺りを見渡したが、ここからシェルターへの脱出は不可能に近い。そして彼女の手にはRX−78−2ガンダムのマニュアルが握られていた。

 ここからシェルターへ走って逃げるよりは、このモビルスーツの中に入ったほうが危険は少ない。すずかはそう思ってガンダムによじ登った。そのとき、すずかは空を飛ぶなのはの姿を見た。

すずか「なのはちゃん!?」

 だが、不幸なことにデニム機のモノアイが白いモビルスーツを見てしまっていた。

デニム「あれはモビルスーツ! V作戦の要の一機か!」

 すずかは急いでマニュアルを頼りにハッチを開け、コアファイターの中に潜り込んだ。すぐにでも動かせるようにしていたのか、エンジンのアイドリングは済んでいた。すずかはまずメインカメラを点けようとコンソールパネルに手を伸ばし、いくつものメモを発見した。かなり癖のある機体らしい。

 機械好きとモビルスーツ開発に携わっていた姉の影響もあって、ザクタイプのモビルスーツならば操縦できる程度の技量は持っていたすずかは多少の違いに戸惑いながらもマニュアルを見てガンダムの左右のペダルを踏み込んだ。

 確かな震動がすずかの小さな臀部に伝わった。

すずか「この子……動く……!」
26 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 16:02:54.13 ID:MHLJUp.0
 サイド7 B地区

スズ「会長、この辺りにもう人はいないみたいです」

シノ「よし、我々もこのビーチクから早いところ逃げよう」

アリア「それにしても、さすがシノちゃんね。市民の脱出を先導するなんて」

シノ「我々は桜才学園生徒会として、生徒とその家族を守る使命がある」

スズ「こんなにまともな会長、初めて見ました」

シノ「しかし、問題がある」

アリア「何かしら?」

シノ「既に、我々のすぐ後ろにはギガノス帝国のメタルアーマーがいる」

スズ・アリア「な、なんだってー」

ギガノス兵「そこの女生徒三人! 貴様らに危害を加えるつもりはない! 早々に脱出せよ!」

スズ「中指立てたいところですけど、言うとおりにしましょう、会長」

シノ「ああ、代わりに人差し指と中指の間に親指を挟んでおこう」

スズ「ノーコメントです」

アリア「待って! あそこ、人が倒れているわ!」

 アリアが指さした先は連邦の拠点基地だ。

シノ「助けに行くぞ」

スズ「基地内ですよ、危険です!」

シノ「これくらいのことで危険だと行っていては、桜才学園の生徒会長は務まらないさ」
27 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 16:06:48.30 ID:MHLJUp.0
シノ「君! 大丈夫か!」

連邦兵「ぐぐ……君たちは……」

シノ「我々は桜才学園生徒会の者です。肩を貸します。逃げましょう」

連邦兵「ぐ……私のことよりも、これを……」

スズ「これは、鍵……」

連邦兵「桜才学園の生徒なら……一通りの講習は受けているだろう……頼む。D兵器を……あれを……ギガノスの手に渡っては……」

シノ「っ! しっかりしてください!」

アリア「シノちゃん、もう……」

スズ「D兵器って、何のことでしょう……この鍵と関係が……?」

アリア「スズちゃん、そのキーのタグに何か書いてあるわ」

スズ「本当だ。ア……イ……ダホ?」

シノ「連邦の輸送船アイダホのことじゃないか? ちょうどあそこに停泊している」

 三人はアイダホの開いていた後部格納庫に入った。そこには三つの機動兵器が立っていた。

シノ「D兵器とは、この機動兵器のことだったのか。鍵もちょうど三つある」

アリア「確かに必修科目で講習は受けているけれど……」

スズ「私たちでこいつを動かして、移動させろってことですか?」

シノ「……私は乗るぞ」

アリア「シノちゃん!?」

スズ「会長!?」

シノ「ここには遅かれ早かれギガノス軍が来る。我々はあの連邦兵からこのD兵器を頼まれたんだ」

スズ「無茶です! 正義感も行き過ぎれば自殺行為です!」

アリア「私はシノちゃんに賛成かな」

スズ「七条先輩!?」

アリア「これが、ギガノス軍の言う紳士的な革命だとしたら、私は連邦軍のほうがまだ好きだもの」

シノ「スズ、私も無理にとは言わない。その身長では操縦するのも難しいだろうしな……ぷ」

スズ「ムカっ、やりますよ! やってみせればいいんでしょう!」
28 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 16:07:18.41 ID:MHLJUp.0

シノ「ドラグナー1型というのか、この機体は」

アリア「私のはドラグナー2型ね。砲撃主体みたい」

スズ「私のはドラグナー3型です。これは、EWAC搭載の電子戦用機みたいです」

シノ「なんだ、そのいーわっくというのは?」

スズ「Early Warning And Controlで早期警戒管制のことです。要するに他のユニットより目がいいということです」

シノ「そうか、うん? 認識番号? 1234567っと……」

スズ「か、会長! そんな適当な!」

アリア「私は貞操帯の暗証番号にしたわ」

シノ「アリアは偉い!」

スズ(もう降りたい……)

シノ「よし、↑←↑、ドラグナー1型、発進!」

ギガノス兵「うん? なんだあれは、あれが連邦のD兵器か!?」

スズ「ギガノス兵、こちらに気づいたようです」

シノ「我々の目的はドラグナーの確保だ。無理に戦う必要はない」

アリア「あちらのほうは逃がしてくれそうもないけれど……」

シノ「逃げ回れば死にはしないさ」

スズ「ここから近い脱出ルートをマギーで探します。私についてきてください」

シノ「何だ、マギーというのは?」

スズ「3型のコンピュータをコミュニケート式にした際の名前です。お二人の機体にもあるはずです」

シノ「本当だ。こっちはクララというらしいな」

アリア「私のはソニアちゃん」

シノ「へへへ、クララちゃん、お姉さんの言うとおりにしてね……」

スズ(降りたい……)
29 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 16:11:28.94 ID:MHLJUp.0

 ドラグナー三機が向かっていく先ではなのはとすずかが乗るガンダム、そしてジーンとデニムのザクがいた。

すずか「なのはちゃん、大丈夫!?」

なのは「この声……すずかちゃん!?」

デニム「何だと!? あのモビルスーツには子どもが乗っているのか!?」

ジーン「隊長! そいつが連邦のモビルスーツですか!?」

デニム「ジーン、一度退くぞ! 起動してしまった以上、どれほどのパワーがあるかわからん上に、子どもが乗っている!」

ジーン「またガキかよ! だったらむしろ好都合だ! 敵を叩くには早いほうがいいってね」

 ジーンのザクがヒートホークから140mmマシンガンに持ち替えた。

ジーン「さぁ、まずはその生意気に細っちろいアキレス腱を撃ち抜いてやるぜ」

すずか「く、来る!」

 銃口が火を噴く直前にガンダムは右に倒れこむように動いた。

すずか「ザクのシミュレーターよりずっと重い!」

デニム「な、なんだあの動きは!? す、すぐに起き上がるのか!?」

すずか「戦争……モビルスーツの戦い……怖い……」

 そのとき、ドラグナーが彼女たちの視界に入った。

デニム「何だあれは!? D兵器か!」

シノ「ジオン軍のモビルスーツ!?」

アリア「そばの白い機体……識別信号が出ているわ……」

スズ「ガンダム……味方機が交戦しているみたいです」

シノ「しかも、女の子が空を飛んでいるぞ」

スズ「ジオンの赤い彗星と似たようなものでしょうか?」
30 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/24(日) 16:14:01.29 ID:fR9olMAO
お前が来るのを待っていたぁー

最初から読んでたぜ
31 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 16:14:20.87 ID:MHLJUp.0

アリア「どうするの、シノちゃん?」

シノ「味方機を見捨てるわけにはいかない、戦闘しかない」

スズ「前にはザクが二機、後ろにはギガノスのゲルフが二機迫っています」

アリア「私が後ろのを相手するわ」

シノ「アリア!? 大丈夫なのか?」

アリア「2型は動きが遅い代わりに火力が魅力みたいなの、足を止めて当てるわ」

シノ「わかった。私とスズでガンダムを救出する!」

スズ「はい!」

なのは「新しいのが近づいてくる……」

レイジングハート「(どうやら味方のようです)」

シノ「クララちゃん、何か武器を!」

 ドラグナー1型の手にレーザーソードが握られる。

ジーン「やっ、やる気かよ!」

 ザクのマシンガンが1型を捉える。

ジーン「喰らえっ!」

スズ「させないっ!」

 ズダダダダダッ!
32 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 16:15:21.25 ID:MHLJUp.0
 3型のハンドレールガンがジーンのザクマシンガンを撃ち落した!

デニム「な、なんて正確な射撃だ! ジーン、退けぇ!」

ジーン「う、うおぉぉぉぉ!」

シノ「いけぇー!」

 ズシャァッ! シノの攻撃は緊急回避したザクの左腕をもぎ取っただけで終わった。

ジーン「ち、ちくしょう!」

デニム「速くて強い! ジーン、早く逃げるぞ!」

ジーン「くっそぉ、了解!」

 ザク二機は肩のハンドグレネードをばらまきながら後退していく。

シノ「どうやら諦めてくれたみたいだな。素人の私たちでよくできたものだ」

スズ「それほど、この機体がすごいってことですね」

シノ「アリアのほうはどうだ?」

アリア「こっちも諦めてくれたみたい」

シノ「よし、そこの君、大丈夫か?」

なのは「は、はい、なんとか……それより、すずかちゃんをお願いします。あの中に乗っているんです!」

シノ「わかった。スズ、ガンダムのほうは頼む」

スズ「わかりました」

すずか「あ……」

スズ「子ども……? もう大丈夫よ」

すずか「はい……ありがとうございます」

アリア「シノちゃん、あそこに戦艦が……」

シノン「そこのモビルスーツ及びモビルアーマー三機、こちらは連邦の戦艦、ホワイトベース士官、香月シノンよ。動けるならこちらに移動してきてください」
33 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 16:17:31.11 ID:MHLJUp.0
>>30 ありがたいことです。とりあえずは前回分の再投下になります。


 ホワイトベース ブリッジ

シノン「パオロ艦長、収容完了しました」

パオロ「うむ……すぐに発進させろ……ジオン・ギガノスが諦めるわけがない。早くコロニーを出るのだ」

シノン「了解しました。お怪我は平気ですか?」

パオロ「……この調子では、月までもたないだろう」

シノン「そんな……」

パオロ「万一の時は、君が指揮を執ってくれ」

シノン「む、無理です、私にはそんなこと」

パオロ「避難民の収容からブリッジの統率について私は見ていた。君にはその能力がある」

シノン「わ、私は艦長の言葉に従って事を進めただけです」

 ホワイトベース 格納庫

アリサ「なのは! すずか!」

なのは「アリサちゃん……」

アリサ「何やってるのよ、バカ! あんな無茶しちゃってぇ!」

なのは「ごめん、アリサちゃん……」

アリサ「ほんとに……えぐっ、バカなんだからぁ……ぐすっ」

ハロ「ハロハロ、スズカ、バカ、スズカ、ハロハロ」

すずか「ごめんね、アリサちゃん……」
34 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 16:25:26.71 ID:MHLJUp.0
 ドラグナー1型 コクピット内

シノ「やっぱり、無理ですか、リュウさん?」

リュウ・ホセイ「あぁ、やっぱりお前さんのデータでロックがかかっちまったらしい。つまり、お前にしか動かせねえ機体になっちまったのさ」

シノ「そうですか……」

スズ「私たちのほうも同じみたいです」

シノ「そうか……やはり不用意に動かすべきではなかったかな……」

リュウ「いや、あそこで動かしてくれなかったら、D兵器は奴らに奪われていた。それにいつまでもパイロット登録が解除できないわけじゃあない。ちゃんとした施設に行けば解除できる」

アリア「じゃあ、それまでは私たちでこの子たちを動かさなくちゃいけないんですか?」

リュウ「そうだな、まあ、お前さんたちの操縦技術は初めてにしちゃ上出来だったから、いきなりとんでもないのと戦わなけりゃ、何とかなるだろ。連邦の新型なんだからな」

シノ「とんでもないのとは……?」

リュウ「ギガノスの蒼き鷹とかジオンの赤い彗星とかだな」

35 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 16:26:43.29 ID:MHLJUp.0
 サイド7付近 ジオン軍 ムサイ級巡洋艦ファルメル ブリッジ

赤い彗星「それで、連邦軍の新型は戦艦一隻とモビルスーツ一機にモビルアーマー三機、そして私のような奴が一人というわけね」

デニム「はい、帰還の途中にジーンのザクが暴発し、失ってしまいました。申し訳ありません」

赤い彗星「別にいいわ。ザク一機の損失でそれだけの情報が得られたのだから、安いものよ」

デニム「はっ。それで少佐、これからどうするおつもりで?」

赤い彗星「連邦の戦艦を攻撃するわ。可能ならば、新型も奪取する」

デニム「しかし、戦力が足りないかと……」

赤い彗星「心配要らないわ。ギガノスから援軍が来ているから」

デニム「援軍……ですか?」

赤い彗星「そうよ、ギガノスの蒼き鷹よ」

デニム「あ、蒼き鷹……! ギガノス決起の際に連邦の戦艦を七隻落としたという……」

蒼き鷹「それほど、V作戦の価値は高いということよ。連邦にとっても私たちにとっても」

赤い彗星「なに、いつの間に来てたの?」

蒼き鷹「あんたたちが呼んだんじゃない」

赤い彗星「そう、それじゃさっそく出てもらおうかしら。狙いは連邦の新造戦艦の破壊と新型機の奪取よ」

蒼き鷹「良い作戦があるんだけど、聞きたくない?」

赤い彗星「……聞くだけなら聞いてあげるわよ」
36 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 16:28:47.92 ID:MHLJUp.0
 ホワイトベース ブリッジ

オペレーター「……! レーダーに反応! ジオンのムサイ級戦艦が接近!」

シノン「なんですって! 距離は!?」

オペレーター「どうやら戦闘距離ギリギリのところを航行しているみたいです」

シノン「パオロ艦長、どうしますか?」

パオロ「……こちらのメガ粒子砲の射程内か?」

オペレーター「射程内ではありますが、命中率はかなり低いです」

パオロ「かまわん……撃て……!」

オペレーター「了解!」

 ファルメル ブリッジ

オペレーター「敵艦から射撃翌来ます!」

赤い彗星「この距離よ、どうせ当たりはしないわ」

蒼き鷹「それでもこの距離まで有効な砲撃とはね、さすがは連邦の新造戦艦といったところかしら」

赤い彗星「敵の索敵圏を行き来して疲弊させるのはわかるけど、こんな調子じゃ月の基地に着かれちゃうわよ」

蒼き鷹「あんた、ギガノス帝国がどこにあるかわかってるの?」

赤い彗星「……なるほどね」
37 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 16:29:52.24 ID:MHLJUp.0
 ホワイトベース ブリッジ

シノン「アリサちゃん、ごめんなさいね、通信士なんてやらせちゃって」

アリサ「いいんです。なのはやすずかが戦ったのに、私だけ何もしないなんて嫌ですから」

シノン「(こんな子どもを使わざるを得ない戦争なんて……)」

アリサ「レビル将軍から通信はいりました。回線を開きます」

レビル「ホワイトベース隊、残念な知らせがある」

シノン「残念な知らせ……?」

レビル「君たちの着艦の準備をしていた月基地だが、ギガノス軍の動きが活発になり、君たちを受け入れる体勢を整えられない」

シノン「そんな……」

レビル「すまない、補給船を一隻出すので精一杯だった。幸いホワイトベースは大気圏を突破することが出来る。地球に降りてどこかの基地へ降りてほしい」

パオロ「……了解しました。レビル将軍」

レビル「君たちの健闘を祈る」

アリサ「……なによ、あれ! えっらそうにしちゃって!」

パオロ「……あれでもレビル将軍は行動をしてくれた。彼でなかったら補給船の一隻どころか見捨てられていた可能性すらある」

アリサ「なによ、今の連邦はそれくらい腑抜けてるってこと!?」

シノン「気になるのは、さっきからつかず離れずのムサイよ。たぶん、月基地の警戒が強まったのも、私たちが月基地に行くと思われたから」

パオロ「大気圏突入時を狙われていると……」
38 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 16:32:21.81 ID:MHLJUp.0
シノン「でも、やらなければどのみちやられてしまいます。補給を受けられない戦艦なんてまな板の上の鯉みたいものですから」

パオロ「……戦力の確認と、協力してくれる民間人を選出してくれ」

シノン「了解しました」

 シノンはホワイトベース内に通達を出した。

シノン「正規のパイロットはリュウさんだけなんですね……」

リュウ「そうだが、あのガンダムを動かすなら、俺よりお嬢さんのほうが上手だ」

すずか「で、でも私……戦争なんて……」

なのは「すずかちゃん……」

シノン「そうね、無理にとは言わないわ。そして、三機のD兵器のパイロットはあなたたち桜才学園生徒会の方たちでいいんですか?」

シノ「あぁ、私は1型のパイロット、天草シノという」

シノン「シノさんね、私の名前はシノンというのよ」

シノ「そうか、間違えないように気をつけねばな。先ほど話だが、ドラグナーにはパイロットの認証登録があって、充分な基地施設がないと登録を解除できない」

アリア「でも、月の基地には行けないから地球に降りなくちゃ解除できなくなっちゃったのよね」

シノン「そうです。できればそれまではあなたたちにパイロットを続けてほしいのだけど……」

シノ「我々はかまわない。ここで投げ出しては迷惑がかかってしまうからな」

シノン「ありがとう。それで、なのはちゃんは連邦の作戦とは関係がないのよね?」

なのは「はい、私はレイジングハートと一緒にジュエルシードというこの宝石みたいなのを集めるお手伝いをしているんです」

レイジングハート「yes put out」

シノン「これがジュエルシードなのね……じゃあ、なのはちゃんはこのジュエルシードを集めることが第一目標なのね」

なのは「そうですけれど、やっぱり私にもこちらのお手伝いさせてください」

シノン「いいの? きっと、とても大変なことよ」

なのは「でも、私に出来ることがあるならやりたいんです。お願いします」

シノン「こっちがお願いしたい立場なのに、逆転しちゃったわね。よろしいですか、艦長?」

パオロ「あぁ……お願いするよ、高町君、天草君、萩村君、七條君」

シノ「はい!」

すずか「…………」
39 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 16:33:17.38 ID:MHLJUp.0

オペレーター「大気圏突入準備できました」

シノン「よろしいですか、艦長?」

パオロ「あぁ、頼む……」

シノン「大気圏突入を開始!」

オペレーター「……! レーダーに反応! 四機、接近してきます!」

シノン「なに!?」

オペレーター「し、識別でました! メタルアーマー、ファルゲン・マッフです!!」

パオロ「ファルゲン・マッフだと……! ギガノスの蒼き鷹……ハルヒ・スズミヤ・プラートか!」

オペレーター「別方向からも高速接近してきます。し、識別、アラストール!」

パオロ「あ、赤い彗星だ……炎髪灼眼、フレイムヘイズのシャナだ! に、逃げろ……!」
40 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 16:40:48.18 ID:MHLJUp.0
シャナ「連邦の新兵器がなんだろうと関係ないわ、作戦行動が限られる大気圏を背にした今、木馬を切る!」

 シャナは生身のまま刀を手に宇宙を駆ける。燃え上がる刀身と長い髪が彼女にジオンの赤い彗星というあだ名をつけさせた。

ハルヒ「恨みはないけれど、悪く思わないでよね」

 ハルヒが乗るギガノスの最新鋭メタルアーマー、ファルゲン・マッフ。暗い藍色のカラーリングがギガノスの蒼き鷹と呼ばれる所以だ。

 ファルゲン・マッフの後ろにはプラート直属の親衛隊、プラクティーズの三機が続く。

キョン「ハルヒ! 急ぎすぎだぞ! 俺達の機体じゃ追いつけん!」

ハルヒ「だったら後からついてきなさいよ! 赤い彗星に沈められたら私たちの功績として認められないわよ!」

キョン「くっ……!」

古泉「情報によれば、今の木馬は正規の軍人が少ないようです。ここは涼宮さんを先行させたほうが奇襲として効果が高いでしょう」

長門「…………通信、参謀本部から」

ハルヒ「なによ、この大事なときに!」 

ドルチェノフ「ふふん、幸先はいいようだな、プラート君」

ハルヒ「ドルチェノフ……何よ! 作戦中にアンタの顔なんか見たくないわよ!」

ドルチェノフ「反抗的な貴様に釘を刺してやるのだ」

ハルヒ「わかってるわよ! もしもみくるちゃんに手を出したら承知しないわよ!」

ドルチェノフ「ふん、貴様の態度しだいだ。まずはD兵器を手に入れて見せろ」

ハルヒ「バカなこと言ってるんじゃないわよ! 大気圏のすぐ近くでそんなこと考えて戦闘できるわけないでしょ!」

ドルチェノフ「できるかできないかの話ではない。やれと言っているんだ。裏切り者のプラート博士の娘」

ハルヒ「……絶対に殺してやる」

 ハルヒは口の中で呟いていた。
41 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 16:45:29.57 ID:MHLJUp.0
 ホワイトベース 格納庫

リュウ「ガンダムが動かせないだと!?」

整備士「は、はい! モーターの調子がうまくいかなくて……」

リュウ「えぇい、俺はコア・ファイターで出る!」

なのは「私が……あの赤い彗星と……」

シノン「いきなりこんなことを任せてごめんなさい。だけど、今の私たちでは生身の人間である赤い彗星を捉えきれないの」

シノ「私たちもあの蒼き鷹とまともに戦えるかわからないが、頑張ってみせる」

リュウ「高町は俺がフォローする! とにかく出撃するぞ!」

なのは「……はい!」

シャナ「出てきたわね……あれが私と同じ能力の持ち主!」

なのは「目的は大気圏突入までの時間を稼ぐこと……ディバイン・シューター!」

 なのはの周囲に三つ光りの弾が生まれ、それがシャナに向かって飛ぶ。

シャナ「その程度!」

 シャナが刀を振るうと光球は三つとも弾けて消えてしまった。

シャナ「はあぁ!」

なのは「……っ!」

レイジングハート「protection」

 レイジングハートが緊急展開した魔法障壁がシャナの燃える刀身を受け止めた。だが、

シャナ「切り裂く!」

 ピッ……パリィィィィン!

なのは「障壁がっ!」

シャナ「もらった!」

リュウ「やらせるかぁっ!」

 シャナが再び刀を振り上げると同時に、コア・ファイターが突っ込んできた。シャナがそちらへ敵意を向けた直後にリュウは操縦桿を思いっきり倒して急角度で上昇した。その隙になのははシャナから距離を取ることに成功した。

シャナ「ちっ、邪魔をする!」
42 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 16:47:02.03 ID:MHLJUp.0

ハルヒ「D兵器が出てきた! 好都合ね」

 受け取ったデータ通りの機体を三機、目視したハルヒは目を細めハンドレールガンの照準を合わせた。

ハルヒ「リフターを破壊すれば……っ!」

 違和感に気づいたとき、ハルヒは機体を急下降させた。

ハルヒ「照準線がぶれる……この距離で……強いジャミングを受けているというの……?」

 先頭を走っている敵のD兵器は停止していた。罠にかかるのを待っているとハルヒは気づいた。

ハルヒ「虎穴にいらずんば……行ってやるわ!」

 ハンドレールガンを左手に持ち替え、右手にレーザーソードを握ったファルゲン・マッフがドラグナー1型に接近する。やはり照準がぶれる。

ハルヒ「弾は嫌いなようね……ならば!」

 ハルヒはそのままハンドレールガンを撃った。乱射と呼んだほうが適切な射撃で弾倉を空にするとすぐに銃を捨てて左手にもレーザーソードを持った。

シノ「あれがギガノスの蒼き鷹……速い!」

 宇宙空間を走る実弾は速度を落とすことなく半永久的に飛び続ける。ファルゲンの銃弾の雨でシノたちは付け焼刃の隊列を乱されてしまっていた。

 そして、目の前には既に蒼き鷹が迫っていた。

ハルヒ「何も考えずに戦場に出てくるなぁ!」

 右手のレーザーソードが1型のハンドレールガンを叩き落したかと思ったときには、左手のソードが切っ先をまっすぐこちらに向けて突き出されていた。ほんの一瞬の間に1型の右肩のリフターが破壊された。

シノ「くうっ!」

アリア「シノちゃん!」

 1型の後ろにいるアリアが撃てばシノに当たる可能性がある。後ろに回り込もうとしたが、そこにはキョン専用ゲルフ・マッフと長門専用レビ・ゲルフ・マッフが待ち構えていた。

キョン「そんな素人じみた戦法が役に立つか!」
43 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 16:49:28.78 ID:MHLJUp.0
 ホワイトベース 格納庫

すずか「…………」

ランコ「失礼。あなたが月村すずかさんですね」

すずか「……そうですけど、あなたは……?」

ランコ「私、桜才学園新聞部の畑ランコと申します。すずかさんがガンダムを動かしたと聞いて少しお話をと思いまして」

すずか「は、話すことなんて……」

ランコ「ごく簡単なことですので、どうしてガンダムの動かし方を知っていたのですか?」

すずか「お、お姉ちゃんが開発部門で、あと、マニュアルが落ちていたからです……」

ランコ「なるほど……それでは、どうしてガンダムに乗ろうと思ったんでしょうか?」

すずか「そ、それはなのはちゃんが……!!」

ランコ「どうしました、すずかさん?」

すずか「は、畑さん、そのお話また後でいいですか!?」

ランコ「はい、私は構いませんよ。私は今や戦艦に乗る美少女たちを撮影する戦場カメラマンですから」

すずか「ありがとうございます。ごめんね、なのはちゃん……」

ランコ「戦いに向かう美少女……シャッターチャンスムッハー」カシャカシャ

すずか「そ、そんなに撮らないでくださいぃぃ」
44 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 16:55:35.87 ID:MHLJUp.0
デニム「少佐! お助けにあがりました!」

シャナ「いいタイミングよ、曹長! あのハエをやっちゃって!」

デニム「了解!」

リュウ「ちぃっ!」

シャナ「さぁ、連邦の白いの、覚悟しなさい!」

なのは「あ、赤い彗星さん! どうしてこんなことを!?」

シャナ「どうして? 私たちは戦争をやってるのよ!」

なのは「戦争だからって、こんな……!」

 魔法を断ち切るシャナの刀になのは飛びながらシューターを撃って時間を稼ぐが、戦闘経験の差は歴然である。

シャナ「私には、やらなくちゃいけないことがあるのよ! そのためにはまずあんたたちが邪魔なのよ!」

 フラッシュムーブで高速移動したなのは。しかし半秒後にはシャナが肉薄していた。読まれていたのだ。

シャナ「落ちろぉ!」

 ズォッ! 燃える刀身がなのはのバリアジャケットに食い込んだ。

なのは「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ!」
45 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 16:57:34.79 ID:MHLJUp.0

 悲鳴は痛みではなく、レイジングハートの緊急回避になのはがびっくりしたものだ。シャナは開いた距離を埋めようと刀を腰に引いた。

 そのとき、一条のビーム光がシャナの前を通り過ぎ、彼女の動きを止めさせた。

すずか「なのはちゃん!」

 ホワイトベースのカタパルトにガンダムが立っていた。手のビームライフルをすずかは今度はザクに向かって撃った。

デニム「メガ粒子砲!? うおぉ!!」

シャナ「デニム曹長! 連邦はビームライフルの実用化に成功していたのか!」

 ビームライフルの直撃を受けたデニムのザクは一瞬で塵と化してしまった。

シャナ「贄殿遮那(にえとののしゃな)じゃ、化学兵器であるビームは切れない……三対一でまぐれ当たりなんかしたくないわ」

なのは「あ、あの……」

 シャナはマントの内側に自分の体を包み込み、上に跳んだと思ったら見えなくなっていた。

なのは「あ……」

すずか「なのはちゃん……」

なのは「すずかちゃん……いいの、ガンダムに乗って……?」

すずか「うん、なのはちゃんが頑張っているのに私だけなんていやだから……」
46 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 16:58:36.68 ID:MHLJUp.0

 一方、ドラグナーチームは経験も数的有利もなく、苦戦していた。

 ズシャァァァァァ!

シノ「くっ、もう片方のリフターもやられた!」

ハルヒ「終わりにしてやるわ! てぇぇい!」

 ハルヒはレーザーソードを腰に引いた。機動力を失った今、最後の一突きで頭部を破壊すれば、何も出来なくなるはずだ。

???「コズモワインダービーム!」

キョン「っ! ハルヒ!」

 全くの死角から飛んできたビームをハルヒが避ける術はなかった。ビームとハルヒを結ぶ線の上にキョンのゲルフ・マッフが割り込んだ。

キョン「ぐっ!」

ハルヒ「キョン!? くっ、何者よ!?」

 ハルヒを撃ったのは、真紅の手足に鎧のような装甲を持つ巨大なロボットだった。全長はドラグナーの倍はあるだろう。

 それをモニタ越しに視認したとき、宇宙空間に声が轟いた。

こなた「夜空の星が輝く陰で!」

かがみ「ワルの笑いがこだまする!」

つかさ「星から星に泣く人の!」

みゆき「涙背負って宇宙の始末!」

かがみ「銀河旋風ブライガー! お呼びとあらば即参上!」

こなた・つかさ・みゆき「イェーイ!」

ハルヒ
「銀河旋風ブライガー!? まさか、コズモレンジャー・J9!」
47 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 17:01:12.70 ID:MHLJUp.0
 ホワイトベース ブリッジ

シノン「コズモレンジャー・J9……どうしてこんなところに……?」

アリサ「通信が入ります。J9、カガミ・ヒイラギからです」

かがみ「ホワイトベース隊の皆さん。J9の柊です。艦長はどなたでしょう?」

パオロ「私だが……既に指揮権は香月シノンにある」

シノン「香月シノンは私です」

かがみ「シノンさん、よろしくお願いします。私たちは連邦政府から仕事を依頼されて来ました。内容はホワイトベースの大気圏突破の手伝い。という訳で援護させていただきます」

シノン「了解しました。協力感謝します。レビル将軍はなぜ教えてくれなかったのでしょうか……?」

パオロ「おそらく、極秘に要請していたのだろう……スペースノイド蔑視の中、それよりも外宇宙の者に手を借りるのだから」

シノン「そうですね……」

かがみ「さて、ギガノスの蒼き鷹さん。ここから先は私たちJ9が相手になるけど、参考までに教えておくと、赤い彗星のほうは既に撤退しているわよ」

ハルヒ「……撤退よ」

キョン「ハルヒ!?」

ハルヒ「これ以上時間を喰っては大気圏に巻き込まれるわ」

こなた「そーれが正しーい選択だねぇ〜」

ハルヒ「あんた……なんかむかつくわね」

こなた「そーかな? 私はなんだか他人に思えないけど」

ハルヒ「勝負は預けるわ、D兵器。次からは落とすつもりでいくわよ」

シノ「やはり手加減してくれたのか……私には君が悪い人には思えない」

ハルヒ「そうね、弱くてもあなたの太刀筋は綺麗だったわ。別の形で逢えたら良かったわね」

 ファルゲン・マッフは青色の機体を翻して去っていった。その後ろにプラクティーズの三機も従って消えた。

シノ「……しまった」

スズ「どうしたんですか、会長」

シノ「彼女の名前は知っていたから失念していた。私は名乗っていない」

こなた「また会いましょうって言ってたんだーから、いーつでも名乗れるとおーもうよー」

シノ「そうだな……」
48 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 17:02:40.99 ID:MHLJUp.0
 ホワイトベース ブリッジ

かがみ「来て早々ですが、大気圏突入を見届けたら、私たちは離脱させていただきます」

シノン「そうですか、出来ればこれから先も協力してもらいたいのですが」

かがみ「それは私たちもですが、次の依頼が入っています」

シノン「わかりました。ご協力感謝します」

みゆき「もしかしたら、近いうちにまたお会いするかもしれませんよ」

つかさ「どういうこと、ゆきちゃん?」

みゆき「次の依頼は、外宇宙から地球までの護衛みたいですから」

こなた「わーお、今度こそ降りられたらいいねー、聖地アキバを見て回りたいよー」

かがみ「はいはい。それじゃ、失礼します」

こなた・つかさ・みゆき「イェーイ!」

アリサ「通信、切れました」

シノン「独特な人たちでしたね」

パオロ「あぁ……彼女たちのようなものを受け入れていくことが、地球連邦の新しい未来かもしれない」

シノン「はい。機体の収容も完了しましたし、大気圏突入を開始します」

アリサ「大気圏突入開始! ……5、4、3、2、1、大気圏、入りました」

 ヴーヴーヴー! 誰もがほっとしていたとき、警戒音がブリッジに鳴り響いた。

オペレーター「は、反応が! あ、アラストールです!」

パオロ「なんだと!?」

シノン「赤い彗星……まさか、大気圏をも越えるというの……!?」
49 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 17:08:24.69 ID:MHLJUp.0
 大気圏中

シャナ「ふふふ……ここなら厄介者は一人しか出てこないわ。皆殺しにしてあげる!」

 ホワイトベースの砲口が彼女に向けられるが、こんなものに当たるくらいなら、少佐の階級章は与えられていない。シャナは刀を上段に構え、一息にブリッジに突進した。

シャナ「落ちろぉーっ! ッ!!」

 だが、刃がホワイトベースに触れる寸前、シャナはブリッジにいる少女に目を見開いた。

シャナ「あ、アルテイシア……?」

 通信機の前にいる金髪の少女と目が合ったとき、思わず彼女はそう口にしていた。

アリサ「きゃ、キャスバル姉さん……!?」

 シャナの声が聞こえるはずがない。アリサもまた目を合わせたとき、彼女が、あの赤い彗星が自分の姉であることを知った。

シャナ「アルテイシアがいるなんて……くっ」

 いつまでも攻撃がこないことにシノンたちが覚悟したはずの生を再確認したとき、既に赤い彗星はいなくなっていた。

 第二話 連邦、V作戦始動! 完

 とりあえずここまでにします。
 改めて参戦作品
 「マジンガーZ×けいおん!」「機動戦士ガンダム×魔法少女リリカルなのは、灼眼のシャナ」
 「機甲戦記ドラグナー×生徒会役員共、涼宮ハルヒの憂鬱」「銀河旋風ブライガー×らきすた」
 なお、ホワイトベース士官の香月シノンはスターシップ・オペレーターズの主人公です。
 いくらブライトさんでも、女の子を修正はできませんので
50 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/24(日) 18:09:55.12 ID:Yy7pPtUo
乙!こっちでやってたのか
これから、楽しみにしてる
51 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/25(月) 14:16:43.74 ID:cjSStsAO
乙、早く前の続き読みたいな
52 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/25(月) 14:33:02.56 ID:MRbhpaY0
再開です

 第三話

 光子力研究所

紬「澪ちゃん、アフロダイAの調子はどうかしら?」

澪「あぁ、なんとか慣れてきたよ」

唯「それにしても、光子力研究所の試作型ロボットのパイロットが澪ちゃんだなんて、びっくりだよ〜」

紬「だって、アフロダイのスタイルは澪ちゃんを参考にしたんだもの」

梓「あの、二晩も泊っておいてから言うのもなんなんですが、何もしてない私や憂までここにいていいんでしょうか……?」

紬「あら、梓ちゃんや憂ちゃんはご飯を作ってくれているんだから、むしろお礼を言わなくちゃいけないわ」

さわ子「熱ぅ〜い〜、憂ちゃんジュース〜」

憂「は〜い」

梓「…………」

紬「あら? ところでりっちゃんはどこに行っちゃったのかしら?」

梓「そう言えば姿が見えないですね」

憂「なんだか、昨日の晩からおじさんと一緒に何かを作っているみたいでしたけど」


「すっごいヤな予感がします」

紬「あら? 格納庫のシャッターが開いているわ」

律「じゃんじゃじゃ〜ん!」

澪「な、なんだあの丸いの……?」

唯「かわいい〜」
53 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/25(月) 14:34:06.20 ID:MRbhpaY0

律「へっへ〜ん、どうだ! 律様のボスロボットは!?」

田井中「やれやれ……うちの娘も困ったもんだ……」

紬「もしかして、田井中博士が……?」

澪「こらっ、律、なにやらせてるんだよ!」

律「だってぇ〜! 澪や唯ばっかりロボットに乗ってずりぃじゃ〜ん!」

梓「あのロボット……顔の表情が変わっている気がするんですが……」

律「いっくぞ〜! 勝負だ、澪!」

 律のボスロボットが腕を回しながら澪に向かって走っていく。

澪「ちょっと、律、なにするんだよ!」

律「喰らえぇ〜! スペシャルボスロボットパ〜ンチ!」

 どんがらがっしゃぁぁぁぁぁん! べんべん

紬「すごい! 一撃でバラバラになっちゃったわ!」

梓「律先輩のロボットのほうがね」

唯「あはははは! りっちゃんおもしろ〜い!」

律「なんだよ、オヤジ〜! こんなポンコツ作りやがって〜! これじゃボスボロットだぜ〜!」

田井中「そりゃあ、超合金と光子力を練成した後のジャパニウムのスクラップで作ったからなぁ」
54 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/25(月) 14:34:51.40 ID:MRbhpaY0

 訓練の後、全員は司令室に集まった。

紬「それでね、超電磁研究所というところが、57メートルのスーパーロボットの実用実験を行うことになったの。それに光子力研究所からもマジンガーZとアフロダイAも参加することにしたの」

律「おい、私のボロットは数に入ってないのかよ」

梓「入ってると思ってるんですか……?」

唯「ほえ〜、57メートルって、マジンガーZの三倍くらいあるね〜」

紬「あと、早乙女研究所というところから、ゲッターロボというのが参加するんですって」

澪「早乙女研究所って、宇宙放射能のゲッター線を研究してるところか?」

憂「あ、私も聞いたことあります。宇宙開発用の三人乗りのロボットなんですよね」

紬「そう、だけどドクター・ヘルに対抗するためにスーパーロボットが必要なの、だから戦闘用に改造されたんですって」

唯「平和のためのロボットも戦争の道具にされちゃうんだね……」

澪「唯……」

紬「そうね、でも平和のために戦ってくれるのだから、私たちは共に手を組んでいかなくちゃ。ゲッターロボのパイロットは早乙女博士のお嬢さんとその友達で、私たちとも同年代らしいわ。きっといいお友達になれるはずよ」

唯「そうなんだ、じゃあ楽しみだね」

梓「超電磁研究所のほうはわからないんですか?」

紬「それは何も聞いてないわ。超電磁エネルギーを応用したロボットだとは聞いているけれど……」

律「よぅーし、何はともあれ行かなくちゃ始まらないんだ。さっさと行こうぜ!」

唯・紬「おーっ!」
55 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/25(月) 14:36:55.93 ID:MRbhpaY0

 バードス島 ドクター・ヘル本拠地

ドクター・ヘル「なるほど、兜十蔵が作ったマジンガーZと平沢唯という小娘にやられてワシが与えてやった機械獣も失ったと申すのか」

あしゅら男爵「も、申し訳ありませぬ、ドクター・ヘル様〜!」

ドクター・ヘル「よもや兜十蔵が生きていようとは……頭を上げよ、あしゅら男爵。これはワシの見通しが甘かったことが原因だ」

あしゅら男爵「ははぁ〜! ドクター・ヘル様の寛大なお心にあしゅらはこの身の全てを捧げことを誓います!」

ドクター・ヘル「うむ! 先日、キャンベル星人などという異星人から使者がやってきおった。奴らによると、超電磁研究所なるところにマジンガーZが現れるらしい」

あしゅら男爵「異星人の手を借りるのですか?」

ドクター・ヘル「ふん、せいぜい利用してやるまでだ。行ってくれるな、あしゅら男爵!」

あしゅら男爵「はっ! 必ずやマジンガーZを打ち倒し、ドクター・ヘル様に地球征服の達成をお届けしましょうぞ!」

ドクター・ヘル「うむ! 貴様に新たな機械獣ダブラスM2を授けよう! 見事マジンガーZの首を取ってくるのだ!」
56 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/25(月) 14:40:17.63 ID:MRbhpaY0

 超電磁研究所

JUM「超電磁研究所所長の桜田JUM(43)です。よろしく」

秋山「あぁ、どうも、ところで……あの小さな子たちがコン・バトラーVのパイロットなのですか?」

唯「憂ぃぃぃぃぃ! この子たち超かわいいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

翠星石「離すですぅ、人間! 汚い手で翠星石に触れるなですぅ!」

蒼星石「あー、服がしわになっちゃうー」

澪「……ぎゅ」

雛苺「お姉ちゃんのだっこ気持ちいいなのー」

真紅「不本意なのだわ」

金糸雀「かしらー」

紬「はあはあ」

秋山「に、人形……? ローゼンメイデン……ですか?」

JUM「えぇ、本人たちが言うには鏡の扉から飛んできたらしいですが、彼女たちが持つローザ・ミスティカによって超電磁エネルギーのコンバインに成功したんです」

秋山「なるほど……彼女たちがいなければ、コン・バトラーは動かせなかったのですか」

JUM「その通りです。話を聞けば、ローゼンメイデンは全部で七体、残り二体とは敵対しているようです」

秋山「その二体もどこかの世界から飛ばされていると……?」

JUM「えぇ、水銀燈と雪華綺晶と言うらしいです。水銀燈は一度見ましたが、雪華綺晶のほうはまだ見ていません」

秋山「そうですか……ではそろそろ始めましょうか」
57 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/25(月) 14:42:32.94 ID:MRbhpaY0

唯「パイルダー・オーン! マジーン・ゴー!」

澪「アフロダイA、ゴー!」

律「ボスボロット、参上だっぜ〜!」

澪・梓「お前は邪魔」

律「ひでぇ」

JUM「バトルマシン、発進せよ!」

ドールズ「了解! レェェェッツ・コンバイィィィィィン!」

 五つのバトルマシン――バトルジェット、バトルタンク、バトルクラッシャー、バトルクラフト、バトルマリンのパイロット脳波が同調することで初めて合体の許可が下りる。ジェットは頭に、タンクは胴体に、クラッシャーは両腕に、クラフトは左足に、マリンは右足となって超電磁の磁力によって繋がれ、コン・バトラーVとなる!

 ギュオォォォォガシイイィィィギュイーングワァァァバッシィィィーン!

翠星石「コン・バトラーV! ですぅ!」

真紅「不本意だわ。どうして私が腕にならなければならないのだわ」

翠星石「ふっふーん、真紅がじゃんけんで負けたのが悪いんですぅ」

真紅「こういうのは主人公補正というのがあるんじゃなくて?」

翠星石「作った奴の趣味ですぅ」

真紅「(ギロッ)」

JUM「ぼ、ぼくじゃないぞ!」

雛苺「真紅こわいこわいなのー」

金糸雀「かしらー、ヒナとカナは足でがまんしてるのかしらー」

蒼星石「ぼくは別にどこでも……」

JUM「(こいつらに脳がなくてよかった)」
58 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/25(月) 14:44:03.82 ID:MRbhpaY0

唯「ほえぇぇ、かっこいい〜」

律「よーし、私たちもあんなふうに合体しようぜ、ムギ!」

紬「そうね〜、考えて見ましょう」

澪「ボロットは無理だろう……」

 ドッガァァァァァァン!

梓「きゃあぁぁぁ!」

紬「な、なに!?」

あしゅら男爵「わーはっはっはっは! 今日は倒してやるぞ、マジンガーZ!」

唯「機械獣!? あしゅら男爵!」

あしゅら「くくく、あれが超電磁ロボとかいう奴か。でかいだけで貧相な形だな」

翠星石「なんですってぇ! JUMが作ったものをバカにすんなですぅ!」

雛苺「なのー!」

金糸雀「私たちであのヘンテコをやっつけるのかしらー!」

あしゅら「くくく、貴様らの相手をするのは我々ではないわ。さぁ、お膳立てはしてやったぞ、キャンベル星人の将軍ガルーダよ!」

 あしゅらが天空に杖をかざすと、超電磁研究所の付近が暗くなった。

雛苺「うゆ? 真っ暗になっちゃったのー」

翠星石「いったい、何事ですぅ!?」

蒼星石「上だ、翠星石!」

 蒼星石の声に全員が空を見上げた。そこには四方八方に支柱を突き出した巨大な飛行物体があった。

ガルーダ「コン・バトラーVよ! 我はキャンベル星人の将軍ガルーダだ! この地球を侵略するために貴様たちを叩き潰す! 空中戦艦グレイドンよ、マグマ獣を出せぃ!」
59 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/25(月) 14:50:15.39 ID:MRbhpaY0
澪「キャンベル星人だと!?」

唯「なんだか、甘そうな名前だね」

律「つうか、趣味の悪い戦艦だな、グレイドンだってよ」

澪「(……私がまじめすぎるのか?)」

 ズドォォォォォォォォン!

 グレイドンから落ちてきたのは二体のマグマ獣、デモンとガルムスだ。

デモン「ぎゅわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」ガルムス「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!」

あしゅら「さぁ、ゆけぃ! ドクター・ヘル様の機械獣ダブラスM2よ!」

ダブラス「ぎしゃあぁぁぁぁぁぁぁ!」

 二つの首を持つ恐竜のような機械獣、ダブラスM2がマジンガーZに向かって突進してきた!

唯「よぉ〜し! やるぞぉ、マジンガーZ!」

憂「お姉ちゃん、がんばって!」

紬「澪ちゃん、アフロダイAはあくまでも実験機であって、戦闘用ではないから、無理はしないでね」

澪「あぁ、わかっている、ムギ」

梓「律先輩、唯先輩と澪先輩の邪魔しちゃダメですよ」

律「私だけ扱い酷くね!? ちっくしょ〜! 見てろよ、でやぁぁぁぁ!」

 ズダダダダダダ!

 突進してくる機械獣に律のボスボロットが腕を回しながら猛然と走っていく!

梓「律先輩、何やってるんですか!」

あしゅら「なんだそのポンコツは! ダブラス、ミサイルをお見舞いしてやれ!」

ダブラス「ぎゃおぉぉぉぉぉぉぉぉん!」

 ボシュッ、ボシュッ! 機械獣の口からミサイルが発射される!

律「げげっ! どっひゃぁ〜!」

 慌てふためく律は回れ右をしてミサイルから逃げようとするが、ミサイルが地面に着くほうが速かった。

 チュドォォォォォォォン! ドォォォォォォン! 爆発でボスボロットが地面を跳ね回る。

律「ぎゃーっ! オシリが二つに割れちゃうだわさ〜!」
60 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/25(月) 14:53:53.42 ID:MRbhpaY0
翠星石「さぁ、コン・バトラーVの実力を見せてやるですぅ!」

 ヤギのような形のデモンとハリネズミみたいなガルムスを前にコン・バトラーは力強く構えた。

翠星石「まずは受け取れですぅ! ロックファイター!」

 シュボボボボボッ! コン・バトラーの右手の指からミサイルが発射され、デモンに命中する。

ガルーダ「ふはははははは! そんな攻撃でキャンベル星人のマグマ獣がやられるものか! やれ、ガルムス!」

ガルムス「ぐおぉぉぉぉぉん!」

 ガルムスのとげとげの甲羅が前に向かって閉じ、ガルムスはとげとげのボールみたいになって転がってくる。

金糸雀「わわわ! あんなのが研究所の敷地に入ってきたら穴ぼこだらけになるかしら!?」

蒼星石「翠星石! 超電磁クレーンを使うんだ!」

翠星石「了解ですよ、蒼星石! 超電磁クレーン!」

 コン・バトラーの両手首がくっつき、手がトゲつきのハンマーになり、撃ち出される!

 ガッキュイィィィィィィン! ハンマーにぶつかってガルムスの動きが止まった。しかし、その上にはデモンが剣を持って飛んで来ていた。

デモン「ぎゅおぉぉぉぉぉぉん!」

翠星石「えぇいですぅ、バトルリターン!」
  
 円盤を投げつけ、デモンの動きが少し止まる間にコン・バトラーは一気に距離を詰める!

翠星石「コン・バトラーの馬力を思い知れですぅ! バトルパーンチ!」

 バキィッ! ボールのままのガルムスをぶん殴る。

翠星石「バトルキーック! ですぅ!」

 ドガッ! 蹴られたガルムスが転がっていく。

翠星石「とどめですぅ!」

蒼星石「いけない、翠星石!」

翠星石「へ?」

ガルーダ「グレイドン! 破壊光線を発射しろ!」

 ギュビィィッィィィィ! ズドォォォォォォォォッ!
 
翠星石「きゃあぁぁぁぁぁ!」

雛苺「びえぇぇぇぇぇぇ!」
61 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/25(月) 14:56:05.79 ID:MRbhpaY0
唯「喰らえ! りっちゃんの仇! 光子力ビーム!」

ダブラス「ぎゃおぉぉぉぉぉぉん!」

あしゅら「ちっ! ダブラス! 火炎放射で焼き払ってしまえ!」

 ボボオォォォォォォォ! 炎の先には律のボスボロットがいる。

律「わぁぁぁぁぁぁぁ! りっちゃんは焼いても美味しく召し上がれないのよ〜!」

澪「律!」

 澪はアフロダイを全速力で走らせ、律の楯となって炎を浴びた。

澪「くうぅっ!」

唯「澪ちゃん! 冷凍ビームだ、マジンガーZ!」

 マジンガーZの耳のツノから冷凍ビームが発射されて炎を鎮めていく。だが、同時に大量の水蒸気が視界を覆った。

あしゅら「ふははははははは! 迂闊なり平沢唯!」

 高笑いしたあしゅらが杖をかざすと、先端についた水晶から電撃が迸った。

 ズババババババババババババ!

唯「きゃあぁぁぁぁぁ!」

律「うわぁぁぁぁぁぁ!」

澪「あぁぁぁぁぁぁ!」

翠星石「ひいぃぃぃぃぃぃ!」

 電撃は唯たちマジンガーチームだけではなく、コン・バトラーVにまで届いていた。
62 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/25(月) 14:59:40.85 ID:MRbhpaY0
雛苺「びりびりするなの〜」

金糸雀「かしら〜」

ガルーダ「余計な真似をしてくれた、あしゅら男爵! だが、これは好機だ! とどめを差せ、グレイドン!」

真紅「大ピンチなのだわ」

翠星石「早く動くですよぉ、コン・バトラーV!」

 グレイドンの支柱についた砲口がコン・バトラーVを向く。

ガルーダ「とどめだ、コン・バトラーV!」

 ギュビィィィィィィィィ! 無防備なコン・バトラーに強力な破壊光線が襲い掛かる!

翠星石「ひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

???「トマホゥゥゥゥゥゥゥク・ブーメラン!」

 バッシャァァアァァァァァ! 突如投げられた巨大な手斧に破壊光線が当たり、コン・バトラーは助かった!

ガルーダ「な、なにやつ!」

 ガルーダが声を張り上げた先には、一体のロボットが空を飛んでいた。

綾瀬夕映「ゲッターロボ! ここに見参です!」

翠星石「み、味方ですか……?」

紬「あれが早乙女研究所のゲッターロボ……」

ガルーダ「ぬうぅ、邪魔者め! 破壊光線を喰らえ!」

 ギュビィィィィィィ!

夕映「オープンゲェット! 緊急回避です!」

ガルーダ「なにぃ! 分離して三つの戦闘機に!?」

のどか「チェーンジ! ゲッター2!」

 分離した三つのゲットマシンが地面の上で重なった瞬間、ガルーダたちはその影を見失ってしまった。

ガルーダ「ど、どこに消えた!? あ、穴が空いている!?」
63 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/25(月) 15:02:25.43 ID:MRbhpaY0
 ガルーダが地面にあいた大きな穴を発見したとき、マグマ獣ガルムスの下の土が大きく盛り上がった。

宮崎のどか「ゲッタードリルアーム!」

 ギュイィィィィィィィィィィィガガガガガガガガガガガ! ガルムスの体が白い流線型に変形したゲッター2のドリルに穿たれていく!

ガルムス「がぴぴぴぴぴぴぴぴ!」

ガルーダ「が、ガルムス!?」

翠星石「今ですぅ! 超電磁ヨーヨー!」

 コン・バトラーVのバトルリターンが合体し、ヨーヨーになった。超電磁の糸で繋がったヨーヨーを投げつけ、マグマ獣デモンにぶつける!

 ズギャイィィィィィィ!

デモン「ぎゅぎぎぎぎぎ!」

ガルーダ「で、デモンまで! おのれコン・バトラー! ゲッターロボ!」

早乙女ハルナ「おっと、まだ終わりにはしないわよ! オープンゲット! チェンジ・ゲッター3!」

 再び分離したゲットマシンが合体してキャタピラが足になった戦車のようなゲッター3になった。

 ゲッター3は倒れた二体のマグマ獣を大きな手でまとめて持ち上げた。

ハルナ「うおりゃーっ! 大・雪・山おろしーっ!」

 ゲッター3はマグマ獣を持ったままぐるぐると回り、遠心力を利用してグレイドンのほうへ思い切りぶん投げた。

ガルーダ「よ、避けろ、グレイドン! うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

 ドガァァァッ! マグマ獣がグレイドンの中心部に直撃した。ぐらぐらと揺れる空中戦艦にコン・バトラーの頭部が光った。

翠星石「見せてやるですぅ! 勝利のVサイン!」

 Vの字のマークが赤く輝く!

翠星石「Vレーザー!」

 ズドォォォォォォォォォッ!

ガルーダ「くっ、こんなはずでは……撤退するしかないのか」

あしゅら男爵「何だと、ガルーダ! ドクター・ヘル様に逆らうのか!?」

ガルーダ「私が従うのはオレアナ様だ! 貴様でもドクター・ヘルでもないわ!」
64 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/25(月) 15:05:39.31 ID:MRbhpaY0
あしゅら「お、おのれぇ〜! おのれおのれおのれぇぇぇぇ!」

唯「さぁ、次はお前の番だ、あしゅら男爵!」

あしゅら「なめるでないわ! ダブラス! 辺り一面を焼き尽くしてしまえ!」

ダブラス「だぶっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 ゴォォォォォォォ! 地面が飲まれるように炎に包まれた。

あしゅら「ふははははは! これで近づくことはできまい、マジンガーZ!」

唯「むむむ……こうなったら奥の手だぁ!」

 マジンガーZが片膝をついてくろがねの右手を前に突き出した。

あしゅら「何の真似だ、マジンガーZ!?」

唯「これでも喰らえーっ! ロケットパーンチ!」

 ドシュウッ! マジンガーZの右腕の肘から先が射出された! それは凄まじい勢いで機械獣ダブラスに向かって飛んでいく!

あしゅら「な、なんだとぉーっ!」

 ドガァァァァッ! ダブラスの腹に大きな穴が空いた。

あしゅら「な、なんということだ! こんなバカな! お許しくださいドクター・ヘル様ぁぁぁぁ!」

 断末魔の叫びと共にあしゅらの姿が消えていく。

唯「二度と来るなぁーっ! ふんす!」
65 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/25(月) 15:38:13.87 ID:MRbhpaY0
 超電磁研究所内

JUM「どうもありがとうございます。ゲッターチームの皆さん」

ハルナ「いやいや、遅れてしまってすみませんねぇ」

夕映「自己紹介をします。私はゲッターチームでゲッター1のパイロットの綾瀬夕映です」

のどか「わ、私は……ゲッター2のパイロットの宮崎のどかですー……」

ハルナ「そして、私がゲッター3のパイロットの早乙女ハルナです」

紬「それじゃあ、あなたが早乙女博士のお嬢さんだったんですか」

唯「よろしくねー、私は平沢唯! マジンガーZのパイロットだよ!」

翠星石「翠星石ですぅ。翠星石がコン・バトラーVを動かしているですよぅ」

真紅「不本意だわ」

紬「しかし、研究所を襲ってきたキャンベル星人のガルーダとはいったい……?」

JUM「それは僕にもわかりません。ですが、彼らの会話から察するにドクター・ヘルとキャンベル星人は共闘関係にあるようですね」

律「まったく、ジオンだなんだって時に出てきやがって、空気を読めっての」

澪「違うだろ。地球がコロニーの独立で混乱しているから、ドクター・ヘルたちは行動を開始したんだろ」

紬「そうね、特に極東支部の戦力はあまり重要視されていなかったから……」

律「お偉いさん方は、自分達がいる場所だけ守れればいいんだからな、やれやれだぜ」

66 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/25(月) 15:38:47.09 ID:MRbhpaY0
夕映「ですが、今日本には三体のスーパーロボットがいるです」

翠星石「そうですぅ、ドクター・ヘルだろうとキャンベル星人だろうと翠星石とコン・バトラーVでけちょんけちょんですぅ」

真紅「あなただけでコン・バトラーが動いているのではないのだわ」

JUM「そうだな、宇宙では連邦のV作戦が始まったというから、僕たちはドクター・ヘルたちの侵攻を食い止めよう」

雛苺「なのー」金糸雀「かしらー」

紬「父から聞いた話によると、佐世保の基地にそのV作戦の戦艦が降りるみたいです。先ほど大気圏を突破してきたらしくて」

JUM「佐世保に? たしか佐世保基地には先に開発されたパーソナルトルーパーというユニットが配備されると聞いたが……」

唯「それじゃあさ、みんなで佐世保に行こうよ」

梓「唯先輩?」

唯「連邦の人にドクター・ヘルとキャンベル星人について話をすれば、何とかなるんじゃないかな?」

紬「そうね……一応、報告の資料は提出してあるけど、直接話をしたほうがいいかもしれないし」

律「よーし、それじゃ、みんなで佐世保に行こーぜ!」

全員「おーっ!

唯「ところであずにゃん」

梓「なんですか?」

唯「佐世保ってどこ?」

梓「…………」
67 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/26(火) 17:09:56.06 ID:fhYn4LY0
再開

 第四話

「目覚めよ……勇者……目覚めよ……勇者!」

 佐世保 とある中学校

一橋ゆりえ「あのね、光恵ちゃん、怒らないで聞いてほしいんだけど……」

四条光恵「なに、どうしたの、ゆりえ?」

ゆりえ「私、神様になっちゃったみたい……」

光恵「はぁ!? 神様って何の神様よ」

ゆりえ「それはわからないんだけど……ずっと声が聞こえるんだ……目覚めよ……とか、神に……とか」

光恵「それは普通に幻聴じゃない? 病院行ったほうがいいわよ」

ゆりえ「そうかなぁ……?」

三枝祀「いいえ、それは一橋さん、それは本当にあなたが神様になったのよ!」

ゆりえ「わっ!?」

光恵「さ、三枝さん、どうしたの、いきなり……?」

祀「一橋さん、私が来福神社の巫女だってことは知ってるわよね」

ゆりえ「う、うん」

祀「その私が言うんだから間違いないわ! あなたは神様になったのよ! 神様ゆりえちゃんよ!」
68 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/26(火) 17:10:42.22 ID:fhYn4LY0
 中学校 屋上

ゆりえ「やっぱり無理だよぉ。神様なんて……」

祀「まあまあ、とりあえずやってみてよ。本当にゆりえちゃんが神様になったんなら、これで洗礼を受けられるはずだから」

ゆりえ「うぅ〜ん、でも神様を呼ぶなんて、どうすればいいの……?」

祀「えっとね、とりあえず神様としての言葉を決めてくれればいいかな。もし成功すれば何かしらの形で答えてもらえるから」

ゆりえ「神様としての言葉ってどんなの……」

祀「う〜ん、適当って言っちゃおかしいけど、まあ、神様としてのゆりえを象徴するような言葉かな」

ゆりえ「私を象徴するような言葉って……私、勉強も運動もできるわけじゃないし……」

光恵「だったら、中学生の神様でかみちゅでいいじゃない」

祀「いいわね、それ!」

光恵「結構、適当に言ったんだけどね……」

祀「いいじゃない。中学生の神様でかみちゅ! うんうん、これで我が神社は安泰ね」

ゆりえ「うぅ〜……」

祀「さぁさぁ、ゆりえちゃん、思い切って言っちゃいなさい」

ゆりえ「う、うん……」

 ゆりえは目を閉じた。空の音がよく聞こえる。そして、それに混じって声がゆりえの耳に届いた。

「勇者よ……神を……呼ぶのだ……目覚めよ、勇者!」

ゆりえ「(この声……あなたは誰……私に呼びかける声……)

「妖魔帝国が来る……目覚めよ……勇者……目覚めよ……」

ゆりえ「か〜み〜ちゅ〜っ!」

「ラァァァァァァァァァイディィィィィィィィィィィィィィィン!」
69 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/26(火) 17:12:43.20 ID:fhYn4LY0
「ラァァァァァァァァァイディィィィィィィィィィィィィィィン!」

光恵「な、なに!? 今のでかい声!」

祀「あ、あっち、海のほう!」

 祀が指差した沖には巨大な渦が巻いていた。

ゆりえ「え、えぇぇ〜!」

「勇者よ……ライディーンは目覚めた。フェード・インするのだ」

ゆりえ「ふぇ、フェード・イン……?」

「妖魔帝国はすぐそこまで迫っている……ライディーンとフェード・インしてラ・ムーの星を守るのだ……」

ゆりえ「て、手が光って……」

祀「な、なにか来るわ!」

 海に出来た渦のさらに向こう側、二本の触手を生やした奇妙な飛行物体がいくつもこちらに向かってくる。

「フェード・インするのだ。勇者!」

ゆりえ「ら、ライディーン! フェェェェェェド・イン!」

 唱えた直後、ゆりえの体が屋上から消えた。

光恵「ゆりえ!?」

祀「ど、どこに行っちゃったの?」
70 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/26(火) 17:13:10.22 ID:fhYn4LY0
 ライディーンの中

ゆりえ「こ、ここは……」

「勇者よ……妖魔帝国と戦うのだ……」

ゆりえ「よ、妖魔帝国って……きゃぁぁぁぁ!」

 ここが海に出来た渦の中だと気づいたとき、飛行物体がビームを撃ってきたのだ。

ゆりえ「ら、ライディーン? ここはライディーン、あなたの中なの?」

 ビュィィィィィィィ! どうやらこの無数の飛行物体はゆりえが乗るライディーンを狙ってきているようだ。

ゆりえ「きゃあぁぁぁぁぁ! ライディーン、私はどうすればいいのぉ!?」

「ゴッドブレイカーを使うのだ……唱えるのだ」

ゆりえ「ゴォォォォッド・ブレイカァァァァァァ!」

 ライディーンの右腕の装甲が伸び、剣となる。

「飛ぶのだ……勇者」

ゆりえ「と、とぉーっ!」

 ゆりえが渦の中から飛び出したことで、ライディーンの姿が日の下に晒された。そして近くにいた飛行物体、妖魔帝国の戦闘機ドローメにぶつかった。

ゆりえ「えーいっ!」

 ズバァッ! ゴッド・ブレイカーの一撃でドローメは砕け散った!

ゆりえ「ラァァァァイディィィィィィィィン!」
71 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/26(火) 17:14:15.55 ID:fhYn4LY0
 佐世保 此花学園

 突如海に現れた渦と飛行物体に男子禁制の女子校も落ち着きをなくしていた。

天使ヒカル「早く、急ぐんだ! 春風、蛍、氷柱!」

立夏「早く早く! うっひゃぁ、マジヤヴァイ!」

春風「ちょ、ちょっと……ヒカルちゃん、立夏ちゃん、足速すぎ……」

蛍「はぁはぁ……」

氷柱「ホタ姉、大丈夫?」

蛍「う、うん、なんとか……」

 遠く離れたところでは、ゆりえの乗ったライディーンが戦っているが、この天使家十九人姉妹の三女から七女の五人はもちろんそんなことは知らない。

 ただ、いきなり発令された警報にランチを中止して一斉に生徒会室に向かって走ったのだ。

ヒカル「はぁはぁ……霙姉は何かあったらここに来いって言っていたけれど……」

春風「ひ、ヒカルちゃん、これ、通信機が光ってる」

 生徒会長の机の隣にある通信機。ヒカルは躊躇うことなくそれを手にした。

霙『やぁ、ようやく取ってくれたか。春風か、それともヒカルか?』

ヒカル「ひ、ヒカルです。霙姉」

霙『そうか、まあそんなことは宇宙の塵のようにどうでもいいことだが、これから話すことは大事なことだ』

ヒカル「な、なんですか?」

霙『うむ、とりあえずは生徒会長の机の引き出しの一段目と三段目を取り出してくれ』

 この緊急時にいったい何をと思いながら言われたとおりにヒカルは姉妹に引き出しを出させた。

 ごごぉん……! すると、地鳴りがして、応接用のテーブルの下に階段が出てきた。

立夏「何コレ!? 隠し階段ってやつ!? ヤヴァイッ!」

霙『どうやらちゃんと作動したらしいな。その後は簡単な話だ。その下にある二つのものに乗って、此花学園を守ってくれ。そうだな、ヒカルと立夏がいいだろう。今日は氷柱はツライだろうからな。洒落じゃないぞ』

 ちらりと氷柱の方を見ると、お腹を抱えてソファに青い顔で座っていた。一緒に住んでいるとはいえ、何で霙姉はそんなことを知っていたのだろうかとか考える余裕はなかった。
72 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/26(火) 17:16:07.93 ID:fhYn4LY0
霙『私と海晴もそっちに向かっている。たぶん、海晴のほうが早く着く。まあ、それまでは頑張ってくれ』

ヒカル「ちょ、ちょっと、霙姉!? ……切れた」

立夏「お、お姉ちゃん、ヤヴァイッ!」

 勝手に階段を下りていた立夏の声が聞こえてきた。急いでヒカルが後を追うと、そこは格納庫のようだった。

ヒカル「こ、これは……」

 そこには二体のロボットが立っていた。先鋭的なフォルムで黒いカラーリングが施されている。

立夏「お姉ちゃん、これゲシュペンストだよ! 連邦の新兵器のパーソナルトルーパー!」

ヒカル「まさか、霙姉はこれに乗れと言ってたのか……ってこら立夏!」

 ヒカルが姉の真意を確認したときには立夏はツインテールを振ってエレベーターに乗っていた。いや、既にゲシュペンストのコクピットにもぐりこんでいた。

立夏「ヨーシッ! 立夏がゲシュペンストで悪者をやっつけてやる。この星の明日のためのスクランブルだー!」

ヒカル「あ、あのバカ!」

 急いでヒカルももう一体のゲシュペンストのエレベーターに乗った。

ヒカル「立夏! せめて私が乗るまで待ってろ!」

立夏「えぇーっ!」

ヒカル「じゃなきゃ今日のおやつは抜きにするぞ! 春風の特製ホットケーキをちびたちにやってしまうぞ!」

立夏「げげっ! それはイヤーッ!」

 おやつ抜きが効いたのか、立夏はおとなしくヒカルが乗り込むのを待った。

ヒカル「いいか、立夏。霙姉と海晴姉が来るまで時間を稼げばいいんだからな」

立夏「わかってるってばー!」

 此花学園でも必修ではないが、機動兵器の講習がある。電源の入れ方からカメラの点け方、操縦の仕方までまるっきり習ったとおりだったため、二人ともすぐにゲシュペンストを動かすことが出来た。

ヒカル「よし、立夏。順番に出るぞ」

立夏「オーッ!」

 ゲシュペンスト頭上の天井が開く。ヒカルは家族を守る強い男役になりたかった。それが出来ることがうれしかった。

ヒカル「ゲシュペンスト、発進!」

立夏「ゲシュペンスト! エヴリウェイユゴー!」

 勢いよく二機のゲシュペンストが空に飛んだ。力強い太陽の光りが待っていたように感じられた。
73 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/26(火) 17:17:10.31 ID:fhYn4LY0

ヒカル「しかし、此花を守ると言われても、どうしたらいいのやら……」

立夏「お姉ちゃん、あっち、あっちのほうで何かやってる!」

 言いながら立夏はゲシュペンストのブースターを噴かしていた。その先にはライディーンに乗ったゆりえと無数のドローメが戦っている。

立夏「ホラホラ、オネーチャン! どう見ても悪者の戦闘機だよ。悪者とウルトラマンが戦っているよ」

ヒカル「いや、どう見てもウルトラマンじゃないだろう……」

ゆりえ「ゴォォォォッド・アロォォォォォォ!」

 ライディーンの手から矢が投げられ、ドローメが落ちていく。

ヒカル「よし、とにかく、あのロボットを助けよう!」

立夏「リョーカイ! スプリットミサイル、発射ーっ! チャオ!」

 ギュボボボボボボ! ヒカルと立夏が二機で発射したスプリットミサイルがドローメに命中して落としていく。

ゆりえ「あ、連邦の味方さんだ。うーっ、助かったぁ〜……」

ヒカル「プラズマカッターで接近戦を仕掛ける!」

 ヒカルがゲシュペンストにプラズマカッターを持たせてドローメを次々と落としていく。後ろから続いてくる立夏も面白いように落としていく。

立夏「にゃはははは! どんどん行くよーっ!」

ヒカル「立夏、あまり調子に乗るな。見ろ、まだたくさんいるぞ」

立夏「げげっ! ひーふーみー……うひゃー、数えランナイ! ヤヴァイ!」

ヒカル「立夏! 後ろ!」

立夏「へ?」

 立夏の後ろには撃ち洩らしたドローメが集まっていた。
74 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/26(火) 17:17:49.72 ID:fhYn4LY0
ここからが前の続きになっていきます

 ギュビィィィィィィィィィィィィィ! 一斉にドローメがビームを撃った。

立夏「うぎゃーっ!」

ヒカル「立夏! ……ッ!」

 ふらふらと落下しそうになる立夏のゲシュペンストを支えたヒカルが辺りを見ると、百を超えるドローメが二機のゲシュペンストと一機のライディーンを取り囲んでいた。

ヒカル「くっ……」

ゆりえ「あわわわ……」

 ドローメが一斉にこちらに触手を向け、発光し始めた。ヒカルはここまでかと目をつぶった。

 だがそのとき、ヒカルのゲシュペンストに声が届いた。

海晴「オクスタンランチャーのEモード〜、ウチのかわいい妹をいぢめてくれちゃったお礼よん」

 ギュォオッ! ズバババババババババ! ゲシュペンストのレーダー外から強力なエネルギービームが飛来し、ドローメを一瞬にして蒸発させていった。

ヒカル「い、今の声は……み、海晴姉!?」

海晴「はろ〜、ヒカルちゃん、立夏ちゃん。ここから先は私とヴァイスちゃんにお任せあれ〜」

 天使家の長女海晴が駆る白銀のヴァイスリッターが戦闘機にも勝る速度でゲシュペンストの頭上を越えていった。そして大きく円を描くように急上昇してから急降下。ドローメを真下に捉えていた。

海晴「天に凶星。地に精星〜あら、これってネタバレかしら? 落ちる花は流れる水に身を任せて〜ビームキャノンもあ〜めあられ〜あ〜れぇ〜」

 テスラ・ドライブ搭載で限界まで軽量化されたゲシュペンストの改良機ヴァイスリッターが垂直落下しながら左腕部のビームキャノンを乱射する。無茶苦茶な機動ながら三人には当たらないのは海晴の腕だろうか。

ヒカル「す、すごい……」

立夏「むむむ……立夏も海晴オネーチャンに負けてランナイ!」

ヒカル「あっ、おい、立夏!」

 機体自体はそれほど損耗していなかったため、立夏のゲシュペンストがヒカルの手から離れてまた勝手に飛び回ってはスプリットミサイルやニュートロンビームを撒き散らしていった。

ゆりえ「わ、私も頑張ります。ライディーン、ゴォォォォッド・ブウゥゥゥゥメラン!」

 ライディーンのゴッドブレイカーが投げられて、ドローメを潰していく。

 その光景を湾岸で赤い機体が眺めていた。

霙「フッ、私とアルトの出番は無さそうだな……ん、なんだ、あの空の翳りは?」
75 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/26(火) 17:20:01.82 ID:fhYn4LY0
 佐世保郊外 天使家

観月「あ、あぁ……あ」

小雨「どうしたの、観月ちゃん?」

 天使家の十九人姉妹の小学生以下の子たちは全員家にいた。この中の一番の年長者として麗と協力してみんなを見ていた小雨の傍で観月が目を見開いて震えだした。

観月「く、来る……開いてしまう……」

小雨「どうしたの、観月ちゃん、何が来るの?」

 観月はまだ四才の十五女だが、九尾の狐が守護霊についており、そのために霊感が非常に強く大人びている。その観月がここまで怯えているのは、何かとてもよくないことが起きる。以前のコロニー落としのときも観月は遠い土地のことを強く感じてしまい、寝込んでしまった。

小雨「観月ちゃん、落ち着いて……」

観月「あぁ……開く……魂の扉が……よくないものが来てしまう……!」

さくら「小雨ちゃん、お空が変なの、怖い色してるの!」

 十六女で泣き虫のさくらに抱きつかれた小雨が窓の外を見ると、暗い虹色の渦巻きが出来ていた。

 佐世保 沖

 あらかたのドローメを倒した海晴もまた、空の変化に気づいた。

海晴「なに、あの空……気味の悪い色……」

ヒカル「あれはいったい……」

立夏「うえぇ、おいしくなさそーな色……」

ゆりえ「ライディーン……と何か関係があるのかな……?」

 渦巻きは台風みたいにどんどん大きくなっている。その中心がきらきらと輝きだした。蝶の鱗粉にも似た輝きの粒は数を増していき、渦の中心が完全に覆われたとき、点滅するホログラムが浮かび上がるかのように巨大な戦艦が二隻とそれに追従しているらしい無数の飛行物体が現れた。

立夏「なにアレェ!? ヤッヴァイ! とにかくヤヴァイヨ!」

海晴「あんな戦艦、見たことも聞いたこともないわ……いったい何が起こっているの……?」

 突如佐世保上空に現れた謎の軍団は互いに争っているようだったが、その中で一際強い光りを放つ二機の姿があった。

76 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/26(火) 17:26:01.15 ID:fhYn4LY0

チャム「タマキ! なんか変なところに出てきちゃったよ!? ここどこ!? 地面が灰色よ!?」

川添珠姫「ここは……もしかして連邦基地!? 地上!?」

トッド・ギネス「なんだとォ? バイストン・ウェルから出てきたっていうのかよ!」

珠姫「トッドさん! 戦いを止めさせてください! 地上の人たちをバイストン・ウェルの争いに巻き込むわけにはいきません!」

トッド「それならまずお前が止めて見せろよ! ゴラオンの軍勢どもを!」

珠姫「くっ……!」

 バイストン・ウェルの聖戦士、川添珠姫はオーラバトラー、ダンバインを戦艦ゴラオンに向けた。

ドレイク兵「おっと、行かせるかよ! ダンバイン!」

チャム「あぁん、邪魔をしないでよぉ!」

珠姫「……!」

 テントウムシに似たオーラバトラー、ドラムロが行く手を遮り、ダンバインは手に持った剣を上段に構えた。

チャム「やっちゃえぇぇぇ! オーラ斬りだぁ!」

珠姫「南無三!」

 ズギャイィィィン! オーラ力(ちから)を纏った剣が一瞬でドラムロを真っ二つにした。

 デデデデッデデデデッ デーデーデ
 テーレーレーレーレーテーレレー テーレーレーレーレーレレー
 オーォラロードーガー ヒラカーレター キラメクヒカリオーレーヲーウツー
 オーォラノーチーカラータクワーエテー ヒライタツバサテーンニートブー
77 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/26(火) 17:26:59.56 ID:fhYn4LY0

珠姫「エレ様! 戦いを、戦いを止めさせてください! ここは地上です!」

エレ「先ほどから、ドレイク軍の戦艦、ウィル・ウィブスと交信を求めていますが、返事がありません」

チャム「なによ! こんな状況でも戦うっていうの!?」

珠姫「それなら、とにかくこちらは全軍を撤退させてください! 地上で争ってはいけません!」

エレ「わかりました。全機を帰還させなさい」

エイブ「はっ!」

 ドレイク軍旗艦 ウィル・ウィブス

ドレイク「ゴラオンの軍勢が退いていくか……」

ショット「おそらく、タマキがそう言ったのでしょう」

ドレイク「ここは地上だというのは本当なのか?」

ショット「はい、まず間違いありません」

ドレイク「しかし、ここでゴラオンを逃がす手はあるまい。きゃつらさえ黙らせておけば、地上の軍とは後はどうとでもなる」

ショット「正しいご判断です」

ミュージィ「ショット様! 空から別の戦艦が降りてきます!」

ショット「なんだと!?」

ドレイク「地上の軍と鉢合わせてしまったのだろうな」

 大気圏を抜けたホワイトベースは、偶然にも佐世保の上空に来ていた。

シノン「あの巨大な戦艦はいったい……」

パオロ「…………」

シノン「艦長? パオロ艦長!?」

 返事のないパオロにシノンは慌てて駆け寄った。だが、パオロの顔からは既に血の気が失せていた。何度揺さぶって声をかけても、彼は返事をしなかった。

シノン「そんな……艦長……」

 ブリッジにいる者は皆沈痛に目を塞いだ。やがてシノンはポケットから白いハンカチを出すと、パオロの顔に乗せてから、ことさらに大きな声を張り上げた。

シノン「総員、第一種戦闘配置! まずは味方と思われるゲシュペンストの援護をするわよ!」
78 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/26(火) 17:28:33.36 ID:fhYn4LY0

 佐世保 海上

海晴「あれは……ホワイトベース」

シノン「ヴァイスリッターの天使海晴少尉ですね。私はホワイトベース艦長代理の香月シノンです」

海晴「はいはい、こちらヴァイスリッターですよ。艦長さんはどうしましたの?」

シノン「パオロ艦長は……大怪我で臥せっておられましたが、先ほどの大気圏突入時のショックで……」

海晴「あぁ、ごめんなさい。それでは、今ホワイトベースの指揮はあなたが?」

シノン「はいっ! 半年ほど前から士官候補生としてサイド3に配属されていました」

海晴「そんなにかしこまらなくていいのよ。とりあえず、そちらの部隊に合流させてもらっていいかしら?」

シノン「それはこちらもお願いしたいところですが、あの巨大な戦艦はいったい何でしょう?」

海晴「それがわからないから、私たちも困っているのよねぇ。とりあえず合流しましょ」

シノン「了解しました」

海晴「さてさて、ヒカルちゃんと立夏ちゃん、話はわかったかしら?」

ヒカル「は、はい。ところで、あのロボットはどうするんですか? 敵ではないみたいですけれど……」

海晴「敵じゃないなら味方でしょう? じゃあ大丈夫よ」

立夏「わーい、お姉ちゃん、タンジュンメイカーイ!」

ゆりえ「私、どうすればいいんだろ……」

79 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/26(火) 17:29:27.46 ID:fhYn4LY0
 ウィル・ウィブス ブリッジ

ドレイク「どうする、ショットよ」

ショット「いきなり地上の軍と争うのは得策ではありません。しかし、ここで我々が退いてはゴラオンに地球軍を接収される恐れがあります」

ドレイク「そんなことはわかっておる。そこから先の意見を聞いておるのだ」

ショット「それならば申し上げます。ゴラオンとともにこの一帯を破壊しつくすのです」

ドレイク「ふん……故郷を捨てる選択を出来る男だったとはな」

ショット「私の故郷はここより遥か東にあります。そしてその東の国は地上で最大の権力を持っています。ゴラオンを潰し、全ての証拠をなくしてゴラオンに罪をなすりつければよいのです」

ドレイク「可能なのか?」

ショット「まずはここを。交渉は必ずや成し遂げてみせましょう」

ドレイク「よし、攻撃を再開させよ」

ミュージィ「かしこまりました!」

ショット(地上に出て不安になっているな、ドレイク。それでも気高き野心を燃やしている。うまくすれば、利用できるな)

80 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/26(火) 17:30:52.28 ID:fhYn4LY0
 ゴラオン

エレ「ウィル・ウィブスを渦巻くオーラ力が邪悪なものに変化してきます。攻撃されてしまいます!」

紀梨乃「うーん、やな予感がするねー。地上に戻ってこれたのはよかったけど……」

チャム「キリノ! タマキが、タマキが倒れちゃったよ!」

紀梨乃「にゃんだってぇ!?」

チャム「ゴラオンについたらすぐにばったりしちゃったの! 目が覚めないの! 死んじゃったの!?」

エレ「おそらく、オーラロードを開くために珠姫様のオーラ力を大量に消費してしまったのでしょう」

エイブ「エレ様! ウィル・ウィブスのオーラバトラーが攻撃を再開しました! 地上の軍にも向かっておるようです!」

エレ「ただちにオーラバトラー隊を出して防衛しなさい。地上への攻撃も許してはなりません!」

紀梨乃「わ、私もタマちゃんのダンバインで出るよ!」

エレ「いいえ、紀梨乃様は地上の戦艦へ向かってください」

紀梨乃「ほえ?」

エレ「グラン・ガランがいなくなり、珠姫様が倒れてしまった今、地上の方とお話ができるのは紀梨乃様だけです。どうか彼らに私たちバイストン・ウェルのことと、ドレイク・ルフトの野望をお伝えしてください」

紀梨乃「そうだね……うん、わかったよ!」


 佐世保湾岸

 佐世保上空の海晴たちはホワイトベースと合流をする前にドレイク軍の猛攻に遭っていた。

 霙とアルトアイゼンが立つ基地のほうにもオーラバトラーは仕掛けてきていた。

霙「ちっ、いきなりこちらにも攻撃を仕掛けてくるとは……空を飛んでいる上に小さくて機動性も高い」

ドレイク兵「あんなでかい寸胴の兵器、ドラムロで!」

霙「見た目どおりの重さだとは思わないことだ」
81 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/26(火) 17:33:17.14 ID:fhYn4LY0

 アルトアイゼンの赤い角が光る。膝がぐっと下がった瞬間、強襲用試作型パーソナルトルーパー、アルトアイゼンは驚異的な瞬間爆発力をフルに発動して跳躍した。

ドレイク兵「な、なんだ、うわぁぁぁぁ!」

霙「フッ、伊達や酔狂でこんな頭をしている訳ではないぞ」

 ズバァッ! 灼熱のヒートホーンがドラムロを一瞬で切り裂いた。ヴァイスリッターのように長い間の飛行と湾曲な機動力は持たないが、直線での瞬発力は他の追随を許さないアルトアイゼンは加速上昇の過程で三体のドラムロを葬った。

霙「私たちは共に等しく宇宙の塵だ。塵は塵らしくぶつかり合って散ろうではないか」

 霙は終末主義者でこの世の終わりの前には全ての者が等しく宇宙を漂う無数の塵のように無価値であると思っている。
 でも、そんな塵同士が小さな箱の中で電子のように激しくぶつかりあうのを見るのはなかなか好きなのだった。

 時代錯誤な設計思想ゆえに無価値な古い屑鉄と名づけられたアルトアイゼンは彼女にとっては興味深い箱舟だった。

霙「スクエア・クレイモア――当たるも八卦、当たらぬも八卦だ」

 ズ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ドドッ! アルトアイゼンの両肩が開き、四十もの砲口から一倉で八発の鋼鉄ベアリング弾を秒速で全て発射する――合計で三百二十発の鉄球が扇形にばら撒かれ、装甲の薄いドラムロの羽に穴が空き、ボトボトと海へ墜落していった。

霙「おや、意外とやわいな。まあ、胴体を貫通はしていないようだし、パイロットが乗っていても生きてはいるだろう」

 地面に着地したアルトアイゼンの傍にゲシュペンストが一機飛んでくる。

立夏「霙オネーチャン!」

霙「おや、立夏じゃないか」

立夏「海晴オネーチャンに霙オネーチャンのほうに行けって言われちゃった。やっぱりリッカじゃオネーチャンたちの足手まといなのかな?」

霙「そういうわけじゃないだろう。あいつらは陸上にも攻撃を仕掛けているからな。私と一緒に陸を守れということさ」

立夏「うん、わかったよ、オネーチャン」

霙「それに、本州のほうの各研究所からスーパーロボットが来るらしい。歓迎の出迎えは多いほうがいいだろう?」

立夏「ワオ! ウワサのマジンガーZに会えちゃうの!? コン・バトラーVとゲッターロボも!?」

ドレイク兵「うおぉ! もらったぁぁぁ!」

 ガシュイィィィィン! 立夏の後ろを取ったドラムロがリボルビング・ステークの一撃で粉砕された。

霙「あぁ、きちんと迎えるためにも、舞台は綺麗に掃除しておかないとな」

立夏「ウンッ!」

 今日はここまでになります。新規参戦作品は
「勇者ライディーン×かみちゅ!」「バンプレストオリジナル×Baby-princess」「聖戦士ダンバイン×バンブーブレード」
82 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/26(火) 17:34:28.71 ID:fhYn4LY0

 アルトアイゼンの赤い角が光る。膝がぐっと下がった瞬間、強襲用試作型パーソナルトルーパー、アルトアイゼンは驚異的な瞬間爆発力をフルに発動して跳躍した。

ドレイク兵「な、なんだ、うわぁぁぁぁ!」

霙「フッ、伊達や酔狂でこんな頭をしている訳ではないぞ」

 ズバァッ! 灼熱のヒートホーンがドラムロを一瞬で切り裂いた。ヴァイスリッターのように長い間の飛行と湾曲な機動力は持たないが、直線での瞬発力は他の追随を許さないアルトアイゼンは加速上昇の過程で三体のドラムロを葬った。

霙「私たちは共に等しく宇宙の塵だ。塵は塵らしくぶつかり合って散ろうではないか」

 霙は終末主義者でこの世の終わりの前には全ての者が等しく宇宙を漂う無数の塵のように無価値であると思っている。
 でも、そんな塵同士が小さな箱の中で電子のように激しくぶつかりあうのを見るのはなかなか好きなのだった。

 時代錯誤な設計思想ゆえに無価値な古い屑鉄と名づけられたアルトアイゼンは彼女にとっては興味深い箱舟だった。

霙「スクエア・クレイモア――当たるも八卦、当たらぬも八卦だ」

 ズ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ッ! アルトアイゼンの両肩が開き、四十もの砲口から一倉で八発の鋼鉄ベアリング弾を秒速で全て発射する――合計で三百二十発の鉄球が扇形にばら撒かれ、装甲の薄いドラムロの羽に穴が空き、ボトボトと海へ墜落していった。

霙「おや、意外とやわいな。まあ、胴体を貫通はしていないようだし、パイロットが乗っていても生きてはいるだろう」

 地面に着地したアルトアイゼンの傍にゲシュペンストが一機飛んでくる。

立夏「霙オネーチャン!」

霙「おや、立夏じゃないか」

立夏「海晴オネーチャンに霙オネーチャンのほうに行けって言われちゃった。やっぱりリッカじゃオネーチャンたちの足手まといなのかな?」

霙「そういうわけじゃないだろう。あいつらは陸上にも攻撃を仕掛けているからな。私と一緒に陸を守れということさ」

立夏「うん、わかったよ、オネーチャン」

霙「それに、本州のほうの各研究所からスーパーロボットが来るらしい。歓迎の出迎えは多いほうがいいだろう?」

立夏「ワオ! ウワサのマジンガーZに会えちゃうの!? コン・バトラーVとゲッターロボも!?」

ドレイク兵「うおぉ! もらったぁぁぁ!」

 ガシュイィィィィン! 立夏の後ろを取ったドラムロがリボルビング・ステークの一撃で粉砕された。

霙「あぁ、きちんと迎えるためにも、舞台は綺麗に掃除しておかないとな」

立夏「ウンッ!」

 擬音がおかしかったので再投下してみました。
83 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/26(火) 18:56:53.89 ID:PaiBaIAO
続き来たか待ってた
アルトも出んのか
84 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/26(火) 23:04:08.21 ID:i6/CHMAO
支援
85 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/27(水) 15:37:32.03 ID:DuY1Ruo0
いつもどおり、5時くらいから再開します。
86 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/27(水) 17:17:35.60 ID:DuY1Ruo0
 ホワイトベースからはドラグナー1型と3型となのはが出撃し、飛行能力のないガンダムと砲撃戦主体のドラグナー2型は艦上からドラムロと戦っている。

シノ「必殺! ドラグナー三枚おろし!」

ドラムロ兵「う、動きが速い!? うわぁぁぁ!」

なのは「ディバイーン・シューター!」

ドラムロ兵「あ、あんなガキに……!」

 ウィル・ウィブス

ドレイク「地上の軍はやるようだな。ハイパーオーラキャノンの準備を急がせろ!」

ミュージィ「ダンバインが出てきました! 地上の戦艦に接触する模様です」

ショット「ダンバインはトッドに任せろ!」

 ホワイトベース

シノン「一機、こちらに向かってくる!?」

オペレーター「白旗を持っています。攻撃の意思はないようです」

シノン「受け入れましょう。ガンダムと2型で援護して」

 戦闘空域を紀梨乃とチャムの乗った白旗を持ったダンバインが一直線に飛んでいく

紀梨乃「よかったー、どうやら受け入れてもらえそうだね」

チャム「大丈夫かなぁ、キリノ、だまし討ちとかされるんじゃない?」

紀梨乃「それはあちらさんを信じるしかないよー」

チャム「……っ! キリノ! 下から来るよ! ダンバインだぁ!」

トッド「行かせるかよぉ、ダンバイン!」
87 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/27(水) 17:19:07.05 ID:DuY1Ruo0

 ガキィィィンッ! 二体のダンバインの剣が空中でぶつかりあう。しかし、機体の性能は同じでも紀梨乃オーラ力ではトッドのものには劣ってしまう。

トッド「ここでケリをつけてやるぜ、ジャップ!」

チャム「正面!? 当たっちゃうぅ!」

紀梨乃「耳元で怒鳴るにゃー!」

 ガッ、ガキィンッ! トッドの剣が何度も紀梨乃に叩きつけられる。どうにか受け止めるが、トッドの強いオーラ力が紀梨乃のダンバインに負担をかける。

トッド「このオーラ力、タマキじゃねえな! ならば雑魚に用はねぇ! 沈みやがれ!」

 パキィィィィン! ついに紀梨乃の剣が折れてしまった。

紀梨乃「にゃんとーっ!」

チャム「だめぇ! やられちゃうぅ!」

 トッドが剣を大きく振り上げた。だが、

アリア「どすこーい!」

 ドドォン! ドラグナー2型の肩部にあるキャノン砲が火を噴いた。

トッド「ちぃっ! 邪魔をしやがって!」

ショット「トッド、戻れ!」

トッド「何だとォ! ダンバインをやれるんだぜ!?」

ショット「ハイパーオーラキャノンを撃つ。ゴラオンと地上の戦艦をまとめて沈める。死にたければそこにいろ」

トッド「ちぃっ、運が良かったな、ダンバイン!」

紀梨乃「あれ、下がっていく?」

チャム「ち。違うよ、キリノ……」

紀梨乃「どうしたの、チャムちゃん?」

チャム「来るよ……大きな強い、憎しみを生む力が……!」
88 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/27(水) 17:20:50.14 ID:DuY1Ruo0

 ゴラオン

エレ「き、来ます……ドレイクの悪しきオーラ力が……!」

エイブ「エレ様!?」

珠姫「は、早く逃げて……っ!」

エイブ「タマキ殿!? まだ動いては!」

エレ「ここからでは間に合いません……避けられたとしても、後ろにある地上の戦艦に当たってしまいます」

珠姫「くっ……」

エレ「私の霊力で、可能な限り軽減させてみせます。皆の者は後方へ避難せよ」

エイブ「そ、そんなことをしては、エレ様が!」

エレ「しかし、これしか方法がありません」

 ゴラオン付近の空

レイジングハート「(前方の暫定敵戦艦の主砲に魔翌力と思しき力が凝縮されています)」

なのは「えっ、どうなっちゃうの?」

レイジングハート「(十二秒後、強力な砲撃がホワイトベース及びもう一隻の戦艦に当たります。一撃で両艦共に撃墜されるでしょう)」

なのは「そんな、どうすればいいの?」

レイジングハート「(あなたの魔翌力を可能な限り引き出させていただきますが、よろしいですか?)」

なのは「うん、オッケーだよ、レイジングハート!」

レイジングハート「alllight my muster」

 なのはは一気に上昇してゴラオンとウィル・ウィブスの間に割って入った。射線上にいきなり白い少女が現れたことで、二隻の艦長は当然驚いた。

エレ「地上の方!? 危険です、お下がりください!」

ミュージィ「いかがいたしますか、ドレイク様?」

ドレイク「ここは戦場だ。ハイパーオーラキャノン、撃て!」

なのは「レイジングハート、全力全開!」

レイジングハート「wide aria protection」
89 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/27(水) 17:21:19.61 ID:DuY1Ruo0

 ギュオォォォォォォォォッ! ウィル・ウィプスの主砲、ハイパーオーラキャノンが発射された。ウィル・ウィプスに取り付いていたオーラバトラーなどが全て焼き消されていく。そして熱き塊りがゴラオンに迫るが、ゴラオンを大きく包み込むほどの魔翌力の壁がハイパーオーラキャノンを受け止めていた。

なのは「くっ、くぅぅぅぅぅ!」

エレ「地上の方が私たちのゴラオンを守ってくれている……」

ドレイク「何なのだ、あの小娘の力は……オーラ力ではない……おのれ」

 拡散され無力化していくハイパーオーラキャノンだが、ドレイクの強い野心がオーラ力を増幅させていく。

なのは「ち、力が……強くなっている……!? でも、逃げちゃダメ……!」

エレ「あの方の力はとても善き波動を持っている……私の霊力を重ねることができれば……」

 エレは指を組み、自分の霊力で新たな壁を作った。それを少しずつ広げていき、なのはの魔法と合わさった。

なのは「これは……あの戦艦の中の人から?」

エレ「地上の方……力をお貸しします。私はエレ・ハンム、バイストン・ウェルのラウの国の女王です」

なのは「ば、ばいすとん……うぇる?」

エレ「詳しいお話は、あのドレイク・ルフトを退けてからいたしましょう。彼はこの地上をも脅かす危険な存在です」

なのは「はい、わかりました!」

ドレイク「な、なんだ……小娘の力が……これは、エレ・ハンムか!?」

エレ「悪しきオーラ力よ……ドレイク・ルフト、去りなさい!」

なのは「えぇぇぇぇい!」

 シュパァァァァッ! なのはの魔翌力とエレの霊力が合わさり、ハイパーオーラキャノンはかき消された。

ドレイク「むぅぅ、地上の軍がこれほどとは……」

ショット「申し訳ありませぬ、ドレイク様。私が知っていたときよりも地上の軍は変わっていたようです」

ドレイク「だが、物量ではまだ勝っている。どうやら小娘もエレ・ハンムも先ほどと同じ力を引き出すことは出来まい。再びハイパーオーラキャノンを撃つ時間を稼ぐことができれば、勝機はワシらにある」

ショット「かしこまりました。第三陣、発進用意をさせよ!」
90 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/27(水) 17:22:36.06 ID:DuY1Ruo0

 佐世保 陸地

立夏「霙オネーチャン! またいっぱい出てきたヨ! ヤヴァイ!」

霙「口を動かす暇があったら機体を動かせ、立夏。性能差ではこちらは負けん」

立夏「うん、オネーチャン! ニュートロンビームッ!」

 マシンキャノンとスプリットミサイルをガンガン発射していく霙、その足下の海面には落としたドラムロが大量に浮かんでいる。

霙(とはいえ、この数はさすがに不利というか、カバーしきれないな、弾数も少なくなってきた)

 だが、そのときドラムロとは違うオーラバトラーが立夏のゲシュペンストに接近してきた。

バーン「地上人よ、遊びはここまでだ。バーン・バニングスとレプラカーンが相手をしよう!」

 黄褐色のオーラバトラーはその速度はドラムロとは一線を画していた。実戦経験に乏しく、単調な戦闘をしていた立夏の目には全く止まらなかった。

霙「立夏!」

立夏「げげっ!?」

 ズバァッ! 一刀の下に立夏のゲシュペンストは左肘と左踝を切られてしまった。

立夏「キャァァッ! バランスが崩れるぅ〜!」

バーン「とどめだ! 地上人!」

霙「それ以上、立夏には近づかせん!」

 急発進したアルトアイゼンがリボルビング・ステークをレプラカーンに突きつけた。だが、まるで幻想を掴むかのようにレプラカーンは消えてしまっていた。

バーン「貴様の動きは既に見切っている!」

 ドッ、ドシュッ! レプラカーンの左腕のフレイボムが発射される。それらをヒートホーンで叩き落すと、剣を掲げたレプラカーンが目の前に来ていた。

バーン「落ちろっ!」

 ガキィィンッ! 刃を受け止めたステークが断ち切られてしまった。

霙「くうっ!」
91 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/27(水) 17:23:22.49 ID:DuY1Ruo0

バーン「ここで私の一撃をかわすとはな、だがそれまでだ!」

唯「光子力ビーム!」

 ビィィッ! バーンがとどめの剣を振り下ろそうとした瞬間、アルトアイゼンの後ろから飛んできた光が剣を弾き落した。

バーン「ぬうっ、地上の援軍か!」

唯「悪者めー! マジンガーZが来たからにはもう好きにはやらせないぜー! ふんす!」

バーン「ドラムロ隊よ、奴らを始末してしまえ!」

夕映「ゲッタァァァァァ・ビィィィィィィィム!」

翠星石「超電磁・スパァァァァァク!」

 湾岸にはいつの間にかゲッターロボとコン・バトラーVもいた。それぞれ得意の攻撃で上陸しようとしていたドラムロを撃破していく。

バーン「ぬぬぬ……地上人どもめ……っ!?」

 握りこぶしを震わせていたバーンにひやりとした悪寒がよぎった。レプラカーンの肩に何者かが接触していた。

海晴「オクスタンランチャーのBモード。かなり痛いわよん?」

 そして、バーンの正面にはヒカルのゲシュペンストがプラズマカッターを構えていた。

ヒカル「私の家族を傷つけた罪は重いぞ」

バーン「ぐ、ぐぐっ……舐めるなよ。地上人ども! このバーン・バニングス、貴様らに与する舌など持たん!」

 バーン・バニングスは激情で自らのオーラ力を増幅させ、一気に外へ解き放った。その目に見えない力は確かな質量を伴って彼を取り囲む機体を吹き飛ばした。

海晴「きゃっ!」

ヒカル「な、なんだ!?」

 自由になったレプラカーンはすぐに身を翻してウィル・ウィプスへと戻っていった。

バーン「地上人どもよ! 我らは誇り高きバイストン・ウェルの戦士だ。身は引いても志までは退かぬ! 次こそは打ち倒してみせようぞ!」
92 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/27(水) 17:23:56.30 ID:DuY1Ruo0

 ウィル・ウィプス

ドレイク「第三陣が五分ともたずに潰滅か……」

ショット「よもやあのような兵器が開発されていようとは……」

 ショットはオーストラリアで重労働に課せられていたときにジオン軍のブリティッシュ作戦で落ちてきたコロニーの衝撃でバイストン・ウェルへ飛ばされていたため、一週間戦争、ルウム戦役などの連邦とジオンの争いを知らない。

ショット「ドレイク様、ここは退いて我が故郷へ向かいましょう」

ドレイク「ふむ」

ショット「我らにはトッドもいます。彼は元々は我が故郷の兵士でした。交渉は成功します」

ドレイク「よし、全機帰還させよ。ウィル・ウィプスはショットの故郷へ向かう」

ミュージィ「はっ!」

トッド(おふくろ……俺はバイストン・ウェルから帰ってきたぜ。ジオンの連中にやられてないだろうな)
93 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/27(水) 19:53:12.94 ID:weOT7UAO
乙スタン・ライフル
94 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/28(木) 00:58:46.96 ID:LfLJccAO
それもわたshienだ
95 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 00:32:01.30 ID:aS.zwAAO
携帯から失礼

これから投下の再開をします

今日は付き合いで行ったスロットで高設定をひいてカヲルくん覚醒モード突入したため、遅れました

まあ、読んでる人少ないと思いますが、再開します
96 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 00:38:07.51 ID:UR.DRVQ0
 ドレイク軍が佐世保から去っていった後、連邦基地に少女達は集まった。

シノン「とりあえず集まってもらったけど、改めて一人ずつ自己紹介してもらいましょう」

唯「はーい、桜ヶ丘高校軽音部、平沢唯! マジンガーZに乗ってます」

澪「同じく桜高軽音部、秋山澪です。アフロダイAに乗ってます」

律「軽音部部長、田井中律だぜ、ボスボロットに乗って大活躍中だわさ」

梓「戦闘に間に合ってすらいないじゃないですか……」

紬「琴吹紬です。光子力研究所のスポンサーをしています」

憂「平沢憂です。お姉ちゃんのお世話をしています」

梓「あれ、私は何でここにいるんだろう?」

唯「もちろん、私たちを癒すためだよ、あずにゃん〜」

梓「ふにゃあぁぁぁぁぁ!」

ハルナ「それじゃあ、次は私たちね、三人でゲッターロボのパイロットをやっているわ、私は早乙女ハルナ、気軽にパルでいいわよ」

夕映「ゲッター1のパイロット、綾瀬夕映です」

のどか「ゲッター2のパイロットのー……宮崎のどかですー……」

翠星石「それじゃあ、コン・バトラーVですぅ。翠星石は翠星石ですよぅ。コン・バトラーVは翠星石と蒼星石その家来どもが操っているですぅ」

真紅「その口を縫い付けてやるのだわ」

雛苺「なのー」

金糸雀「かしらー」

蒼星石「えっと……僕らはローゼンメイデンっていう人形で……かくかくしかじか」
97 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 00:39:04.16 ID:UR.DRVQ0

なのは「高町なのはです。えっと、いろいろ事情がありまして……魔法使いをしています」

立夏「ワオ! ホンモノの魔法使い!?」

ヒカル「夕凪が見たらどう反応するか……」

リュウ「リュウ・ホセイだ。コア・ファイターに乗っている」

すずか「つ、月村すずかです。ガンダムに乗っています」

アリサ「アリサ・バニングスよ。今はホワイトベースの通信士をやっています」

紬「あら、ひょっとしてバニングス家の方ですか?」

アリサ「そうですよ、琴吹家のことは私も知っています」

紬「父が一度コンタクトを取りたいと言ってましたのよ」

唯「おおぅ、なんだかすごくレベルの高い会話が!」

シノ「次はD兵器の私たちだな。天草シノ、ドラグナー1型のパイロットだ」

アリア「七条アリアよ、2型のパイロットをしています」

スズ「萩村スズです。3型のパイロット。高校生です! IQ180あります! 16歳です!」

シノ「そんなに力説しなくても……我々は三人とも桜才学園の生徒会役員だ」

ランコ「畑ランコと申します。元桜才学園の写真部。今は天才扇情カメラマンですムッハー」パシャパシャ

澪「ひえっ、と、撮らないで〜……」

ランコ「ムッハー、美少女ぞろいですがとびっきりムッハー」パシャパシャ

紬「あらあら、七条家の人まで……」

アリサ「なかなかカオスね……」
98 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 00:40:15.33 ID:UR.DRVQ0

ゆりえ「えっと、一橋ゆりえです。ライディーンに乗せられちゃいました……?」

律「なんで疑問系……」

ゆりえ「わ、私もよくわからないんです……ライディーンに呼ばれる声がして、気がついたら……」

シノン「よくわからないって言ったら、こっちの人たちもそうだからね……」

エレ「申し訳ありません、地上の方々、私たちが混乱を招いてしまったようで……」

シノン「いえ、そう責めている訳ではないんです。バイストン・ウェル……でしたっけ?」

エレ「はい、海と大地の狭間にある魂の故郷、それがバイストン・ウェルです」

エイブ「我々は地上の聖戦士と呼ばれる強いオーラ力を持つ者を使って世界を我が物にしようとするドレイク・ルフトの野望を阻止しようとしていたのです。こちらのキリノ殿とタマキ殿はドレイク軍から我らに力を貸してくれた方たちです」

紀梨乃「私とタマちゃんは剣道部だったんだけど、他にも部員が三人、たぶんバイストン・ウェルに残っているんだ」

チャム「今はナの国のシーラ・ラパーナ様と一緒のグラン・ガランに乗ってクの国と戦っているのよ」

シノン「あの、こちらの小さい方は、人形ではなく……?」

チャム「私は人形じゃないわよ! ミ・フェラリオなんだから!」

シノン「ご、ごめんなさい」

澪(……かわいい)

ヒカル「やはり川添さんだったのか」

珠姫「えっ?」

ヒカル「覚えてないか、一度剣道の試合をさせてもらったことがあるのだが……」
99 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 00:41:17.99 ID:UR.DRVQ0

珠姫「あっ、えっと……あれ???」

ヒカル「……覚えてないのか」

珠姫「すみません」

ヒカル「いや、いいんだ」

霙「フッ、私たちはしょせん誌上企画にすぎないのだからな、知っている人が少ないのも無理はない」

立夏「霙オネーチャン、何のことを言ってるの? またウチュウのハナシ?」

霙「フフッ、そうだな、宇宙の外の話だ。私たちには到底どうしようもできない世界の力の話だ」

海晴「はいはい、アブない話はそこまでね、霙ちゃん。それじゃ私たちの番ね。連邦軍所属、プロジェクトATXチームでヴァイスリッターのテストパイロットをしています。天使海晴少尉です」

霙「天使霙曹長だ。アルトアイゼンのテストパイロットをしている」

ヒカル「あの、海晴姉、私と立夏はどうすれば……」

海晴「うんとね、出来れば、このままあのゲシュペンストに乗ってくれるとうれしいんだけど……」

立夏「ホントに!? ヤッター!」

ヒカル「し、しかし、正規の連邦兵器に私たちが乗るなんて……」

海晴「あら? あのゲシュペンストが連邦の兵器なんて誰が言ったの?」

ヒカル「えっ?」

霙「あれはママが個人的に所有している物だ。正確には、ママがATX計画の初期段階で造らせた新型パーソナルトルーパーの実験機だ」

立夏「ワオ! 霙オネーチャンがママって言うの初めて聞いたヨ!」

霙「そ、それはこの家のルールだからだな……じゃなくて、あの二機を元にアルトアイゼンとヴァイスリッターが造られたんだ」

海晴「ヒカルちゃんが乗ったのが強襲型タイプSの実験機で、立夏ちゃんが乗ったのが砲撃戦型タイプRの実験機。だからそれぞれ微妙に使い勝手が違うのよ」

ヒカル「確かに、立夏が使っていたビーム兵器は私のほうにはなかったな」

霙「代わりにプラズマカッターの出力が高く、ジェットマグナムという接近兵器を搭載している。さらに、私が考案した究極のアタッカー・モーションがある」

立夏「何ソレ! なんかヒカルオネーチャンのほうズルイ!」

海晴「あら、私のゲシュちゃんにもちゃんとついてるから、大丈夫よ、立夏ちゃん」

立夏「ホントに? ワーイ!」
100 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 00:42:47.53 ID:UR.DRVQ0

律「しっかし、モビルスーツにメタルアーマーにパーソナルトルーパーって、連邦軍内で統一できてないんだな」

シノ「そうだな、この佐世保基地はパーソナルトルーパー中心の基地だから、D兵器の登録解除はできないと言われてしまった」

紬「たしか……連邦が惑星探査・コロニー自警用に開発されたのがPTゲシュペンストだったわね」

スズ「そうですね、ただし、ゲシュペンストは重力上での活動が前提にされていたので、無重力化ではその性能の半分も発揮できません。それに対してジオン公国は戦術使用を目的としたモビルスーツ・ザクを開発。ミノフスキー粒子の発見でゲシュペンストを含めた従来のレーダーはまるで役に立たなくなったところを一週間戦争でやられてしまった訳ですね」

シノ「おぉ、スズが賢く見えるな」

スズ「当然です。私はIQ180なんですから!」

唯「おぉ〜」

スズ「そして、ジオン公国に密かに資金援助をして、代わり技術支援を受けたギルトール将軍がメタルアーマーを開発して、ギガノス帝国を打ち立てた。メタルアーマーは航空兵器としての特性を強く残し、人型による汎用性を追及したモビルスーツとはまた違う機動兵器として、ギガノス軍の主力になっています」

海晴「それに対抗して連邦軍が取り組んだのが、「PT・MS・MA開発と運用を前提とした新造戦艦の開発」それが「V作戦」よ」

霙「そして生まれたのが、モビルスーツ・ガンダム、メタルアーマー・ドラグナー、そしてゲシュペンストの改良機であるアルトアイゼンとヴァイスリッター、戦艦ホワイトベースだ」

シノン「そして、先ほどレビル将軍からホワイトベース宛に指令が届いたわ」

アリア「あら、何かしら?」

シノン「『ホワイトベース隊は第13独立部隊として地上においてジオン・ギガノス連合軍基地に対して陽動作戦を展開し、ジャブロー本部への注意を逸らすように』とのことです」

アリサ「何よそれ! 要はオトリってことじゃない!」

シノン「そうね、紛れも無くこれは囮作戦だわ。それに、補給は極東支部での民間施設より行えとあるわ」

紬「それは大方に言えば私の実家や、各スーパーロボット研究所でっていうことかしら」

霙「レビル将軍がこのようなずさんな指令を出すとは思えないな。確かにジャブローは連邦最大の基地ではあるが、その防衛能力は堅牢でむしろ引きつけさせてジオンを攻めさせる作戦を取ったほうがいい。臨機応変に打って出れば他の基地と連携して挟み撃ちにできる」

梓「ジャブローのモグラ……ですね」

唯「なにそれ、あずにゃん?」

紬「ジャブローには連邦のエリート高官がたくさんいるんだけど、彼らが表に出てくることはほとんどない。ジオンのザビ家はそんな彼らをジャブローのモグラと軽蔑したの」

海晴「一応、軍法会議ものになっちゃうから、連邦軍の中ではあまり言わないでね」
101 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 00:44:10.95 ID:UR.DRVQ0

霙「この指令は暗にジャブローに敵を近づけさせるなということだ。レビル将軍が前線で指揮をしてヨーロッパ方面を戦う間にアジア、北米方面を我々に引きつけさせ、ジャブロー高官の私兵と化した戦力を温存しようというのだろう」

律「ホントに気にくわねーなお偉いさんの考えることは」

シノン「それでも、命令ならば私たちは従うしかないわ。ただ、民間のスーパーロボットなどはこの限りではないから、無理に私たちについてくる必要はありません」

夕映「いえ、私たちは何か手伝えることがないかと思ってここまで来たのです」

リュウ「そう言ってくれるのはありがたいがな、この日本だってドクター・ヘルやキャンベル星人なんていうやつらに狙われているんだろう?」

ハルナ「だからといって、あまり戦力を集中させても危険なのよね。極東支部自体の防衛力はそんなに高くはないのだから」

シノン「都合のいい話ではあるけれど、あなたがたスーパーロボットは民間協力者として極東支部管理下の都市を防衛してもらいつつ、必要に応じて臨機に私たちの作戦に参加してもらう。ということでよろしいかしら?」

唯「お〜け〜でーす」

澪「ノリが軽い……」

ハルナ「私たちもオーケーよ」

翠星石「しゃーねーですから、翠星石もオッケーしてやるですよぅ」

真紅「不本意だわ」

蒼星石「真紅、そろそろKYだよ」

ゆりえ「私は……う〜、学校の成績が下がったらどうしよう〜」

律「いいじゃな〜いの、この緊急時に学校なんてあってないようなもんだぜ〜」

ゆりえ「そ、そんなこと言われたって〜、私、神様になっちゃったし……なんかそのお仕事もあるって祀ちゃんに言われたし……」

律「なに、神様って?」

ゆりえ「あ、私、神様になったみたいなんです」

律「ロボットが戦って、魔法少女が出てきて、異世界の扉が開いて、おまけに神様かよ。随分ダッシュな話だな、おい」
102 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 00:45:21.60 ID:UR.DRVQ0

エレ「気になるのはドレイクの動きです。あの後、どこへ行ったのか……」

シノン「ドレイク・ルフトとウィル・ウィプスね……たしか、地上の人も乗っているのよね」

紀梨乃「そうだね、ショット・ウェポンとトッド・ギネス。他にも何人かの地上人がドレイクに従っているよ」

珠姫「二人はアメリカ人なので、きっと北米大陸に向かったんじゃないでしょうか?」

シノン「たしかに北米大陸へ針路を取っていたわね。まずいわね……北米大陸にはジオンの地上部隊の主力が集結しているわ。もしもドレイクとジオン軍が手を組んだらジャブロー方面の圧力は強くなるわ」

律「いいんじゃねーの、そうすりゃお偉いさん方も少しはわかってくれるだろーし」

霙「たしかにジャブローの連中を刺激する意味ではいいかもしれないが、オーラバトラーはモビルスーツの半分程度の大きさで小回りもきく上に数も多い。下手をすると電撃作戦でジャブローを落とされてしまう可能性がある」

紬「ジャブローが落とされてしまうと、地上戦の形勢は一気にジオン・ギガノスに傾いてしまいますね……やはりドレイク軍の動きはほうっておけませんね」

リュウ「だが、アジア大陸のほうも今は厄介だ。資源採掘地帯はほとんどジオン・ギガノス連合に占拠されちまっている。奴らもほうっておくとどんどん資源を宇宙に運び出しちまう」

ヒカル「なんだか、大変な役回りばかりやらされているな……」

海晴「そうね。でもアジア方面に行けばレビル将軍の部隊もいるし、太平洋を渡るよりはやりやすいと思うわ」

シノン「はい。幸いこちらには戦艦がホワイトベースとゴラオンの二つあります。どちらかを牽制している間にもう一方をスーパーロボットを投入して叩くことができれば、戦力差はカバーできると思います」

エレ「それならば、我がラウの国のゴラオンでドレイク軍を引きつける役をやらせてはもらえませんか、ドレイク軍は私たちバイストン・ウェルの人々の責任でもありますし、ゴラオンならばある程度多くの物資を積むことが出来ます」

シノン「私もそれがいいと思っていました。それではエレ様、お願いできますか?」

エレ「お引き受けしましょう」
103 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 00:46:23.25 ID:UR.DRVQ0

シノン「それと、なのはちゃんとすずかちゃん」

なのは「はい、なんでしょう?」

すずか「なんですか?」

シノン「二人はゴラオンのほうに移ってもらっていいかしら。ジオンとギガノスはガンダムとD兵器の両方を狙っているみたいだから、二つにわけたほうが敵の戦力も分散することができると思うの」

なのは「はい、私は大丈夫です」

すずか「わ、私も大丈夫です」

シノン「そう、ありがとう、二人とも――」

アリサ「ちょっと待ってください。二人が移るなら、私も行かせてください!」

なのは「アリサちゃん……」

シノン「そうね、アリサちゃん、二人のこと、お願いするわ」

アリサ「はい! まかせてください!」

すずか「ふふ、ありがとう、アリサちゃん」

シノン「リュウさんも、ゴラオンのほうにお願いできますか?」

リュウ「了解だ」

シノン「それでは、改めて指令を出します。スーパーロボット各機は極東支部の都市防衛をお願いします」

唯・他「ラジャー!」

シノン「ダンバインを初めとするオーラバトラーとなのはちゃん、すずかちゃん、アリサちゃんはゴラオンに搭乗し、北米大陸の向けて陽動作戦を行ってください」

エレ「わかりました」

シノン「D兵器の三機、パーソナルトルーパー四機はホワイトベース隊として、アジア大陸の基地を攻撃、制圧します。最初の目標は上海で連邦軍と合流しギガノス軍に占領された重慶基地です」

シノ・他「了解!」

シノン「皆さん、ここにいる理由は様々だと思います。自分の意思で軍に在籍する人。数奇な運命でパイロットに選ばれた人。自分の家族や世界を守りたいと思うゆえに戦うことを選んだ人。立場や故郷は違えど、私はここに集った皆さんを頼もしく思います。私たちは力を合わせ、この戦争を一刻も早く終わらせることができるよう、戦いましょう」

 第四話 目覚めよ、勇者 開け、魂の扉 完
104 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 00:57:36.34 ID:UR.DRVQ0

 インターミッション

唯「さん!」

和「に」

憂「いち!」

唯・憂「どか〜ん!」和「どかーん」

唯「おーいみんな〜、集まれ〜!」

和「あつまれー」

憂「なぜなになでしこの時間だよ〜」

唯「え、なぜなになでしこって何かって?」

憂「それは『スーパーロボット大戦のことなんて何も知らないよ!』って人に和ちゃんが簡単に説明をしてくれる番組だよ」

和「ちなみに『なぜなになでしこ』の元ネタは『機動戦艦ナデシコ』からよ」

唯「ちなみにこのコーナーを用意した真の理由は、和ちゃんが本編で活躍するスペースを作れなかったからだよ」

和「そうなんだ。じゃあ私、生徒会行くね」

憂「あぁ、和ちゃんいじけないで〜」

唯「いじけないでぇ〜」

和「冗談よ」
105 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 01:05:15.28 ID:UR.DRVQ0

唯「和先生! 今日の授業はなんですか!」

和「今日はこのSSの基本である『スーパーロボット大戦』について説明するわ。略してスパロボと言うんだけど、二人ともプレイしたことはないわよね」

唯「うん、ウチはゲームはパズルとか二人でも出来るRPGばっかりで、シミュレーションゲームはなんだかよくわかんなくて買わないんだ」

憂「スパロボも、いろんなロボットが出てるってことはわかるけど、あまりロボットは詳しくないから……」

和「そうね。一応、ゲームとしての知名度はあるのに売り上げが伸びないゲームの代表格がスパロボだからね。その一番の理由は『ゲームを始めるために必要な予備知識が多すぎる』点が挙げられるわ」

憂「ただでさえシミュレーションゲームは複雑で覚えることが多い上にいろんな参戦作品があるからね」

唯「はい、先生! もう訳がわかりません!」

和「簡単に言うと、『スーパーロボット大戦とは、マジンガーZ、機動戦士ガンダムなどに代表される様々なロボットアニメ作品に登場するロボットやキャラクターが一つの世界観の下に集まって戦う戦略シミュレーションゲームである』ね」

唯「ウィキペディアから転載したね、和ちゃん」

和「そうなんだ。じゃあ私、生徒会行くね」

唯「ごめんなさいぃ〜、ムギちゃんのお菓子あげるからぁ〜」

憂「あ、あーっ、よく見るとwikipediaとは微妙に違うね〜!」
106 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 01:09:02.38 ID:UR.DRVQ0

和「まったく……じゃ、続けるわよ」

唯「イエッサー!」

和「最大の魅力は『ガンダムのシャア・アズナブルと戦うマジンガーZ』や『エヴァンゲリオンの使途とガチンコで殴りあうゲッターロボ』といった『普通ではありえない作品の枠を超えたシナリオ演出の熱さとそれを彩る戦闘アニメーションのかっこよさ』にあるわ」

唯「ほほ〜う」

和「特に、戦闘アニメーションはゲーム機の進化に伴って、常に『ゲーム機本体が持つスペックの限界』を引き出しているわ。プレイステーションなど次世代ハードが出てからは『戦闘シーンのフルボイス化』が採用されて、アムロ・レイの声優の古谷徹が『僕もマジンガーZのブレストファイヤーのように必殺技を叫びたい!』という要望を出し、『複数の敵か……そこだ! フィン・ファンネル!』という原作にはないセリフが追加されたという逸話もあるの」

唯「おぉ〜、和ちゃんかっこいい〜、私も何か叫びたいな〜」

憂「私も〜」

和「残念だけど……私たちの中の人はまだロボット作品に出たことがないから、あと数年は待たなきゃいけないわね」

唯「なんだ〜、ざんね〜ん」

和「まあ、バンプレストオリジナルに選ばれれば、即出演ということになるけれど……」

唯「えっ、ホント!? なにそのなんとかオリジナルっていうのは!?」

和「バンプレストオリジナルは、スパロボ開発会社のバンプレストが『各参戦作品のシナリオを再現する際にどうしても生じてしまう矛盾などを調整するためにスパロボオリジナルのキャラクターやロボットを作って、最終的に全ての黒幕はコイツだったのだ! という流れに持っていく』ためのものよ。現在のスパロボではほとんど採用されていて、そのたびに主人公やヒロイン、敵キャラクターが新たに作られるから、新規に声優のオーディションをするの。傾向的にも、芸歴が若手から中堅の人が選ばれやすいわね」
107 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 01:15:53.33 ID:UR.DRVQ0

唯「それじゃあ、それに受かれば、私もスパロボに出られるの!?」

和「まあ、可能性はあるわね(若手でも既に人気の高い声優は選ばれにくい傾向もあるけど……)」

憂「がんばってね、お姉ちゃん(所属事務所がロボット関係の仕事あまり取ってないけど……)」

和「ちなみに、バンプレストオリジナルは、誕生したキャラクターとロボットの多さと人気の高さから、『スーパーロボット大戦OG オリジナルジェネレーション』というバンプレストオリジナルのみで作ったスパロボもあって、そのアニメ化作品の第二部が2010年10月1日からスタートしているわ。正直、初見じゃ話が全然わからないと思うけど、このSSにも出てくるアルトアイゼンとヴァイスリッターが主役のアニメだから、是非観てほしいわ」

憂「もしも興味がわいたら、電撃コミックスの『スーパーロボット大戦OG ディバイン・ウォーズ』がアニメ第一部の話をまるまる収録しているから、読んでみてね。メカニックも細かく描かれているし、六巻のランページゴーストはかっこいいよ」

和「という感じで、今回のなぜなになでしこは終わりね」

唯「うぅ〜ん、私もスパロボやってみたくなっちゃったよ〜」

和「そう言うと思って、既に用意してあるわよ、唯」

唯「おぉ〜! これがスパロボですかぁ〜」

和「次回からは、バンプレストが初心者向けと謳っているこの『スーパーロボット大戦IMPACT』をプレイしながらゲームの内容と参戦作品について紹介していくわ」

憂「それじゃあ、またね〜」

唯・憂「ばいば〜い!」

 このとき、唯と憂は気づいていなかった。プレステ2にディスクをセットしている和の顔が悪魔の微笑みを浮かべているのを……

 第一部 大集結! 無敵のスーパーロボット軍団! 完

 やっぱり無理してでも禁書とか出したほうがいいのかなぁ……
108 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 01:31:53.07 ID:QT4gm4go
乙!第2部も楽しみにしてるぜ。
ところで、第2部はまだ執筆途中?
109 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 01:57:32.99 ID:UR.DRVQ0
プロットは立ってるけどまだ書いてないです。

基本的に昼間ちょこちょこ書いて五時投下をメインにしているので

一応、第二部はガンダム一年戦争地上編を中心に他作品が絡んでいく感じです。

なるべく、スレタイの通りにけいおんメンバーを活躍させる予定です。

分岐なんかもやりたいんですが、人がいないので、保留になりますね

念のため、改めて現段階での参戦作品
「マジンガーZ×けいおん!」
「ゲッターロボ×魔法先生ネギま!」
「超電磁ロボ コン・バトラーV×ローゼンメイデン」
「勇者ライディーン×かみちゅ!」
「銀河旋風ブライガー×らきすた」
「機動戦士ガンダム×魔法少女リリカルなのは、灼眼のシャナ」
「機甲戦記ドラグナー×生徒会役員共、涼宮ハルヒの憂鬱」
「聖戦士ダンバイン×バンブーブレード」
「バンプレストオリジナル×Baby-princess」
他2作品参戦予定です。

110 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 17:30:13.26 ID:UR.DRVQ0
 再開 

 第5話

 光子力研究所

唯「あずにゃん、あずにゃん!」

梓「なんですか、唯先輩、ムギ先輩まで」

唯「私たち、マジンガーZの歌を作ったよ!」

梓「ズコー!」

紬「久しぶりにはりきっちゃったわ〜」

唯「澪ちゃんとりっちゃんにももう譜面渡してあるから、あずにゃんも練習しようよ!」

梓「この戦時下でこの人たちは……」

唯「なんだよー、あずにゃんはいつも練習しましょうって言うくせに、私がやる気出すと怒るんだもん」

梓「怒ってはいませんよ。ただ、もうちょっと時と場合というのを考えてほしくてですね……」

唯「あずにゃん、落ち着いてー、ぎゅー」

梓「はうっ、はにゃーん……」

紬「はあはあ」
111 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 17:30:47.42 ID:UR.DRVQ0

律「いくぜー、ワン、ツー、スリー!」

唯「そーらにー、そびえるー、くろがねのーしろー、スーパーロボットー、マジンガーゼットー」

 中略

唯「いまだー、だすんだー、ルストハリケーン、まじんごー、まじんごー、マジンガーゼーェット!」

 ジャーン!

憂「お姉ちゃんかっこいいー」パチパチ

梓「これはひどい。とても宇宙世紀の歌とは思えない」

さわ子「新しい路線を開拓したわね、唯ちゃん」

澪「ふわふわ時間のあとにこれを歌うのが想像できないな……」

律「なんか今までで一番リズム取るの大変だったぜ……」

紬「楽しかったわー、唯ちゃん。素敵」

唯「でへへー、もっとほめてー」

 ズガァァァァァァァァン!

憂「きゃあぁ!」

唯「ふおぉー、なにごとー!」

秋山「みんな、急いで出撃してくれ! また機械獣が現れた!」

律「なんだってー! 懲りない奴らだぜ!」

唯「あーん、この後ムギちゃんのおやつが待ってるのにー!」

澪「戦いが終わってから食べろ!」
112 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 17:32:12.12 ID:UR.DRVQ0

 光子力研究所 近郊

唯「パイルダー、オーン! マジーン、ゴー!」

澪「アフロダイA、ゴー!」

律「じゃんじゃじゃ〜ん! ボスボロットも参上だわさ〜!」

 マジンガーZからだいたい250メートルほど離れた場所にあしゅら男爵と機械獣ガラダK7とダブラスM2がいた。

あしゅら「平沢唯、マジンガーZ! 今日こそは貴様たちを叩きのめし、光子力研究所を奪い取ってやるわ!」

唯「なにをー! 前に負けた機械獣を使いまわしてマジンガーZに勝てるわけ無いじゃん!」

あしゅら「ワハハハハハ! 当然、貴様に勝てるようにパワーアップしているわ!」

紬「各地のスーパーロボットがすぐに救援に駆けつけてくれるわ。それまでは無理をしないでね」

唯「よーし、見ていろ、あしゅら男爵! すぐに倒してやるー!」

 紬の言葉は馬耳東風。唯はマジンガーZをあしゅら男爵に向かって走らせた!

澪「唯! だから勝手な動きをするなって言われたばっかりだろ!」

唯「平気だよ、澪ちゃん! マジンガーZは無敵なんだから!」

律「よ〜しっ! 私も唯に負けてられないぜ! ボスボロット、いっくぜぇ〜!」

 がしゃがしゃがらがら! ボスボロットもマジンガーの後ろにくっついて走り出した。

澪「律まで! あぁ、もう!」

 慌てて澪も二人を追いかけ始める。

紬「…………」

梓「ムギ先輩、さすがに怒ってもいいと思いますよ……」
113 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 17:33:30.42 ID:UR.DRVQ0

唯「どりゃ〜! このままぶつかってバラバラになっちゃえ〜!」

 ドカドカドカドカ! マジンガーZが地面を踏み鳴らしてあしゅら男爵に向かって突進していく!

あしゅら「ふふふ、こい、平沢唯!」

唯「マジンガータックルー!」

 ドガァッ! 機械獣ガラダにマジンガーの黒い体がぶつかった!

 だが、唯の目は次の瞬間、驚きに引ん剥かれることになる。

唯「えぇ!?」

 なんと、マジンガーZにタックルされた機械獣ガラダK7の体は中身が空洞のハリボテだったのだ! 隣のダブラスM2も全く動かない

ことから、こいつもハリボテなのだろう。

 そして、ダブラスの肩に乗っていたあしゅら男爵の姿がいつの間にか消えていた。

唯「ど、どういうこと!? あしゅら男爵はどこにいったの!?」

あしゅら「ワーッハッハッハッハッハ! まんまと引っかかったな、平沢唯!」

 ズズーン! 唯の位置から右斜め前200メートル先くらいからあしゅら男爵の高笑いとともに何かが地面のなかから出てきた!

あしゅら「くくくく、ゆけぃ! 機械獣アブドラU2、破壊光線だ!」

アブドラ「ぎゃおおおおおおおおおおん!」

 ギュビィィィィィィィィ! 超射程の破壊光線がマジンガーZに直撃した!

唯「うわぁぁぁぁぁ!」

あしゅら「フハハハハハハ! この距離ならば、さすがのマジンガーZといえども攻撃できまい! さぁ、ゆけぃ! 我があしゅら男爵直

属のあしゅら軍団よ! マジンガーZたちが離れた光子力研究所を制圧するのだ!」

あしゅら兵「イエッサー!」

 今日はここまでです。書き溜めがなくなった今日からは毎日このちょこちょこペースで続けたいと思います。
114 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/29(金) 18:07:16.06 ID:hWd/SoAO
乙、OG攻略本に声優の主な配役一覧あったが
アラドだけは余りのアレさに目もあてられなかったわ
パートナーは全国民の大半が裸見たことある人なのに可哀想過ぎんぞ
115 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/30(土) 03:07:13.93 ID:8KNc.cAO
支援ブォビュー
116 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/30(土) 17:50:44.11 ID:2Y2MpSM0
 再開

 あちこちの山林からタイツとマスクのあしゅら男爵の兵士が現れ、一斉に光子力研究所に向かって走り出した。

澪「くっ、光子力研究所が狙いだったのか!」

律「だけど、このままじゃ唯もやられちまう!」

唯「あばばばばば……!」

紬「大丈夫よ、澪ちゃん、りっちゃん、光子力研究所は対人防衛機能も備えているから、少しの間ならなんとかなるわ」

律「そ、そうなのか?」

紬「えぇ、安心して。斎藤、やりなさい」

斎藤「かしこまりました、紬お嬢様」

 その合図一つで光子力研究所からも武装した黒服のSPや装甲車がたくさん出てきた。

梓「ムギ先輩マジパネェ。ぶっちゃけ連邦の兵士より強い気がします」

憂「っていうか、今まであの人たちどこにいたんだろう……五日間も寝泊りしているけど、全然見なかったよ」

 あしゅら兵「でりゃー!」琴吹家SP「はあぁぁ! ほあたーっ!」

紬「だから、澪ちゃんたちは唯ちゃんを助けて」

澪「あ、あぁ……」

律「よ〜し、澪、アフロダイのおっぱいミサイルをお見舞いしてやれ!」

澪「お、おっぱいミサイルって言うなよ……!」

唯「うんたたたたうんたたうんたん!」

律「早くしろ、澪! 唯の叫び声がだんだんやばくなってるぞ!」

澪「わかったよ! ミサイル発射!」
117 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/30(土) 17:52:20.21 ID:2Y2MpSM0

 ボシュッ! ボシュッ! アフロダイAの胸部から二発のミサイルがアブドラU2に向かって飛んでいく。

あしゅら「むっ! えぇい、こざかしい!」

 アブドラU2の肩に乗っていたあしゅら男爵が陽炎のように消え、アフロダイのミサイルの上に現れた。

あしゅら「これでどうだ!」

 グサッ! あしゅら男爵の杖がミサイルに刺さり、そこに電撃が迸った。

あしゅら「ふはははははは! どうせならミサイルも超合金Zで包んでおくんだったな! 爆発しなくなるかもしれんがな! ふはははははは!」

 ドカーン! 二つのミサイルはアブドラU2に当たる前に爆発してしまった。その間も破壊光線はマジンガーZと唯に浴びせられている。

唯「わわたたたたしししははひひらららさささわわゆゆいいだだだだだだ」

憂「お、お姉ちゃんが死んじゃう〜!」

律「ちくしょう、唯! バルタン星人の真似みたいなことしてる場合じゃねーぞ!」

澪「いったい、どうすれば……」

あしゅら「むむむ、あしゅら軍団め、まだ光子力研究所に侵入できんのか!」

律「むむむ! りっちゃん、閃いちゃったぞ!」

澪「どうするんだ、律!?」

律(閃き)「澪! アフロダイでボスボロットを思いっきりぶん投げろ!」

澪「な、なんだって! そんなことをしてどうするんだよ!?」

律(閃き)「こんなときのため、ボスボロットには試作型の光子力爆弾があるのだ! その威力は澪のおっぱいミサイルの三十倍だ! その威力ならたとえ直撃できなくてもあいつを吹っ飛ばして唯を助けるぐらいはできるはずだ!」
118 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/30(土) 17:52:58.90 ID:2Y2MpSM0

澪「だけど、そんなことをしたら律が!」

 そう言いながら、ボスボロットは座り込んで手足をたたんで丸くなっていた。

律(閃き)「なぁに、ちゃんと脱出しておくよ! っていうかもうしてるぜ!」

 ボスボロットの傍では米粒みたいな律がおでこを輝かせて手を振っていた。

澪「よし、わかった、やるぞ!」

 アフロダイは屈んでボスボロットを両手で頭上高く持ち上げて一気に走り出す!

あしゅら「むっ、何をするつもりだ!?」

 あしゅら男爵が杖を突き出して電撃を放とうとする。しかし、それよりも先に澪のアフロダイAはサッカーのスローインのようなモーションに入っていた。

澪「いっけぇぇーっ!」

 ぶん! アフロダイAの手からボスボロットが投げられた! これにはさすがのあしゅら男爵もおったまげた。

あしゅら「な、なんだとーっ! えぇい!」

 ズバババ! あしゅら男爵の杖から電撃が放たれ、ボスボロットは空中、アブドラU2のおよそ20メートルほど手前で静止していた。

律(閃き)「喰らえぇーっ! スペシャルデラックスボロットパーンチ! カチッとな」

 ドドドカァーン!  律の手中のスイッチが押されると、ボスボロットが大爆発した!

あしゅら「ぐ、ぐわぁーっ!」

 ズズーン……! 機械獣の体が倒れて、破壊光線が止まった。マジンガーZが解放されたのだ。
119 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/30(土) 17:53:38.01 ID:2Y2MpSM0

唯「あぶぶぅ〜、びおぢゃん、びっぢゃんんばりがと〜」

律「いやぁ、礼はムギのケーキ一個で手を打ってやるぜ」

澪「律! はやくアフロダイに乗れ!」

あしゅら「ぐぐぐ……おのれ、マジンガーZ以外は雑魚と思っていたが……先に貴様から始末してやるわ!」

 立ち上がったアブドラU2が破壊光線の目標をアフロダイAに向けた。

 ズバババババ! 破壊光線が今度は澪に発射された!

澪「うわぁぁぁぁぁぁ!」

律「わぁぁぁぁぁぁあぁぁ!」

唯「澪ちゃん、りっちゃん!?」

 二人の悲鳴が唯の鼓膜を突き抜けて、直接頭をガンガン叩いている。

 その瞬間、唯の視界が真っ赤に染まった。彼女の心の奥底に眠る何者かが意識を支配した。

あしゅら「くくく、手こずらせおって……バラバラにしてやる!」

唯「あしゅら男爵ーっ!」

 ズズン! 獣のような咆哮とともにマジンガーZがアフロダイAの前に出て、破壊光線を再び喰らった!

あしゅら「ワーハッハッハッハ! さっきの二の舞ではないか! ……む、な、なんだ…!?」

唯「あしゅら男爵……よくも澪ちゃんとりっちゃんを……許さないぞ!」

あしゅら「う、動いている……何故だ! どういうことだ!?」

 ズン……! ズン……! 破壊光線を全身に浴びながら、マジンガーZはアブドラU2に向かって確かに近づいている。
120 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/30(土) 17:55:04.18 ID:2Y2MpSM0

 ズン! ズン!! ズドン!!! 赤い光線に包まれながら眼を光子力の金色に光らせ、大地に強く踏みつけるマジンガーZの姿はまさに地獄の魔人であった。

唯「許すものか……絶対に……あしゅら男爵!」

澪「ゆ、唯……?」

律「どうしちまったんだ……?」

憂「お、お姉ちゃん……?」

 今や、マジンガーZはあしゅら男爵とアブドラU2の目の前に来ていた。

あしゅら「く、来るな! なんだというのだ、平沢唯! 来るなぁぁぁぁぁぁぁ!」

唯「うわあああああああああああああ!!」

 ズガァッ! マジンガーZの手が機械獣の両腕を掴み、持ち上げた。

あしゅら「お、お許しください、ドクター・ヘル様! このあしゅら男爵! これ以上、作戦を続けることはできませぬ! ただ、このマジンガーZの恐ろしさをお伝えするために、それだけのために、アブドラU2を放棄いたします!」

 あしゅら男爵が機械獣の肩から姿を消すのと、マジンガーZの胸が赤く光ったのは、ほぼ同時であった。

唯「ブレストファイヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 怒りの魔人の業火、ブレストファイヤーが機械獣の体を直撃した。スーパー鋼鉄がまるで海のヘドロのように溶けてしまい、マジンガーZが持っていた腕だけを残して地面に広がっていく。
121 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/30(土) 17:56:31.41 ID:2Y2MpSM0

紬「た、倒した……の?」

 基地から見ていた紬もこの異様な勝利に戸惑っていた。溶解した鉄から出てくる蒸気を纏うマジンガーZはアブドラU2のものであった両腕を指から離して高熱に灯った大地に落とした。

 だが、真に異様な光景はこの直後だった。

 ゴゴゴォ……! マジンガーZは両肘を直角に曲げた腕を頭部の左右に置いた。本来ならば、これが正しいブレストファイヤーを撃つための動きである。

 全員が不安に唾を飲み込んだとき、マジンガーZは再びブレストファイヤーを撃った!

澪「なっ!?」

梓「何をしてるんですか、唯先輩!?」

 ゴォォォォォォォォ! マジンガーZから放出される30000度の灼熱が周囲の大地をところかまわず滅茶苦茶に燃やし始めたのだ。

憂「お姉ちゃん! お姉ちゃん、何をしてるの!? もう敵は倒したんだよ! だからやめてぇ!」

 憂が紬を押しのけてマイクの前に立ち、必死に呼びかけるが、マジンガーZから唯の声は返ってこなかった。

紬「な、何が起きているの……?」

秋山「これは、まさか光子力エネルギーが暴走しているのか……?」

梓「暴走? そんなことあるんですか!?」

田井中「光子力エネルギーはその資源であるジャパニウム鉱石からしてまだ解明されきっていない力なのだ。だからアフロダイAを用いてその制御できる限界を我々は計測していたのだ。アフロダイAでもまだ全体の30%ほどしか超合金Zや光子力エネルギーを使用していない」
122 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/30(土) 17:59:51.98 ID:2Y2MpSM0

秋山「だが、マジンガーZは全身のほとんどが超合金Zと光子力エネルギーで出来ている。我々の知らない光子力の何かが戦闘中に反応して暴走してしまった可能性が高い」

田井中「引き金はおそらく唯くんの怒り……だろうか……兜博士は言っていた。光子力は人間の心と引き合うと。だとしたら、唯くんの心は今、光子力とともに暴走しているかもしれない」

憂「なんとか……なんとかならないんですか!? お姉ちゃんを助けてください!」

秋山「とにかく唯くんをマジンガーZから降ろすしかないが、どうやらこちらのコントロールも受け付けなくなっているらしい。無理に引き剥がすにしても、あの状態ではとても……」

憂「そんな……お姉ちゃん、お姉ちゃん!」

 憂の体が膝からくずおれて、指令テーブルにしがみつくように肩を震わせて泣き出した。

紬「私たちは……ここから見ていることしかできないの……?」

 破壊を振り撒く鉄の城。その金色の光る双眸が光子力研究所を捉えた。上体が胸部を差し出し、両肘を直角に曲げた腕を頭部の左右に置いた。ブレストファイヤーの合図だ。

梓「ダメ……ダメです……唯せんぱぁぁぁぁぁぁい!」

 ゴバァァァァァッ! 梓の響きも虚しく、マジンガーZはブレストファイヤーを発射した。直撃を受ければ、光子力研究所は中にいる人間もろとも消し去ってしまうだろう。

夕映「ゲッタァァァァァァァァァビィィィィィィィィィィィム!!!!」

 ズバァァァァァァァァァァァァ!! 風前の灯であった光子力研究所の真上から降り注いだ光線がブレストファイヤーとぶつかり、その全てを相殺させた!

紬「これは……もしかして」

夕映「ゲッターロボ! ここに見参! です!」



 今日はここまでです。なんか話をすごい方向に持っていってしまった気がする。
 あと、演出として律(閃き)と精神コマンドを表示してみたり。ただ、やってみてシリアスなシーンがぼけるなぁ……
123 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/30(土) 18:15:51.75 ID:W2CbSq6P
しえん
124 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/30(土) 19:53:30.81 ID:aVZ9CYAO

元ネタがボスだからな、大して違和感は感じんよ
125 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 16:39:00.88 ID:hB.RJRQ0
また五時くらいに再開ですの

>>124 ちょっと言い方悪かったみたい。例えば、

唯<鉄壁>「許すものか……絶対に……あしゅら男爵!」

あしゅら「く、来るなぁぁぁぁぁ!」

唯<鉄壁熱血必中>「ブレストファイァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

みたいに、シリアスなシーンでやるとぼけるなぁと思ったわけでありますのよ。
126 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 17:27:04.66 ID:hB.RJRQ0
 再開


ハルナ「さて、けっこうヤバイ事態みたいね」

秋山「今の唯くんは怒りに我を忘れてしまい、その意識をマジンガーZに取り込まれてしまった可能性がある。それを止める方法は一つ。唯くんがいる頭部のパイルダーを無理にでも引き剥がすしかない」

のどか「ち、超電磁研究所でもー……キャンベル星人が現れたみたいで……ライディーンと一緒に戦ってこちらの救援には来れないみたいですー……」

田井中「アフロダイも先ほどの破壊光線で戦闘の継続はできない……」

夕映「私たちだけでやるしかないわけですね」

ハルナ「いいじゃない。マジンガーZ対ゲッターロボ。燃えてきたわぁ〜」

 グォォォォォォ! マジンガーZが唸りをあげてゲッターロボのほうを向いた。

 ブォォォォォォ! いきなり、ルストハリケーンがゲッター1に襲い掛かる!

夕映「ここからでは研究所が! ゲッター1! フルスピードです!」

 ゲッター1が全速力でマジンガーZに向かって飛んでいく。酸の風はゲッター1を追いかけて研究所から離れていく。

 ゲッター1はマジンガーZの頭上まできた。マジンガーZの頭部にはパイルダーがあり、その中には唯の姿があった。

夕映「超合金Zがどれほどのものか、こちらもゲッター線合金です! トマホゥゥゥゥゥク・ブゥメラン!」

 ぶぅん! 風を乱暴に切り裂いてゲッタートマホークがマジンガーZの首をめがけて飛んでいく! 頭部を分離させれば、マジンガーZの動きも止まり、唯を救出させるのもやりやすいかもしれない。

 ガシィッ! しかし、トマホークはマジンガーZの首に僅かに食い込んだだけで止まってしまった。

 さらに、マジンガーZはトマホークを抜き取り、振りかぶってそれをゲッター1に投げつけてきた。

夕映「くっ、ゲッタァァァ・レザァァァァァ!」
127 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 17:28:11.70 ID:hB.RJRQ0

 ガキィン! ゲッター1の手首についている刃でトマホークを弾いた。だが、マジンガーZはフォロースルーの姿勢から顔を上げて光子力ビームを放った。

のどか「ゆえっ! 危ない! オープンゲットして!」

夕映「オープンゲェット!」

 バシュッ! ゲッターロボを形成する三機のゲットマシンに分離して光子力ビームを避けた。

ハルナ「ここはゲッター3の出番ね。チェーンジ! ゲッター3!」

 ガシィン! ゲットマシンがベアー号、イーグル号、ジャガー号の順に合体して最大のパワーを持つゲッター3にチェンジした。その下半身は無限軌道のキャタピラとなり、全長もゲッター1の半分近くになるが、それでもマジンガーZよりも大きい20メートルだ。

ハルナ「どりゃーっ! ゲッター3の100万馬力を喰らいなさい!」

 ドガァッ! マジンガーZは体重20トン、対するゲッターロボは200トンもある。その差は単純な体当たりでもはっきりと現れ、あっけなくマジンガーZは地面にしりもちをついてしまった。

ハルナ「このまま押さえつけてふんじばってやるわ!」

 ゲッター3の腕が倒れたマジンガーZの腕を掴もうと伸びる。

 ゴゴォッ! しかし、今マジンガーZを動かしているのは何者なのか――まるで生身の人間であるかのように鉄の城は不安定な体勢から正確に両手を伸ばし、ゲッター3の手と組み合った。

ハルナ「なっ!?」

 ズゴゴゴゴゴ……! マジンガーZは腰を地面につけている状態からゲッター3の腕を押し返して立ち上がろうとしている!

のどか「そんな……ゲッター3の最大パワーよりも強いなんて……」

夕映「まずいですよ! ブレストファイヤーが来るです!」

 夕映の言ったとおり、マジンガーZの胸の赤いVの字が光りを放っている。

ハルナ「オープン・ゲットするわよ!」
128 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 17:28:56.90 ID:hB.RJRQ0

 バシュッ! 再びゲットマシンが分離して、今度はゲッター1になった。

夕映「ゲッターパーンチ!」

 ドカッ! ブレストファイヤー発射の直前にゲッター1のパンチがマジンガーZに当たり、ブレストファイヤーは空の彼方へ消えていった。

紬「ゲッターチーム、マジンガーZをうつ伏せに倒して! そうすれば武装のほとんどが使えなくなるわ!」

夕映「わかったです! ゲッターウィング!」

 反重力マントを背中に出してゲッター1は大きくマジンガーZを翻弄しながら背中に回った。

夕映「ゲッター・ダブルドロップキーック! です!」

 どがっ! 猛スピードで落下しつつ足を揃えたゲッター1のキックでマジンガーZは吹っ飛んで膝から倒れた。

夕映「オープン・ゲェット!」

のどか「チェーンジ! ゲッター2!」

 ガシィッ! 今度は白い流線型のスピード形態、ゲッター2にチェンジしたゲッターロボは、マッハ3にも迫る最大加速で一投足の動きでマジンガーZの前に現れ、右手のゲッターアームでコクピットのパイルダーを挟んだ。

のどか「抜けろ、抜けろ〜……!」

 パイルダーとマジンガーZを繋いでいるのも超合金Zである。押しても引いてもびくともしない。

ハルナ「のどか、ゲッターアームを回すのよ!」

のどか「う、うん」

 ぎり、ぎり……ゲッターアームを回して接合部をねじ切ろうとするが、ほんの僅かずつしか動いていかない。それでもねじっているのは確かなので、のどかはゲッター2のエネルギーをフルパワーにした。

 グオォォォォォォ……! マジンガーZが地面に手をつけて立ち上がろうとする。ゲッター3ほどのパワーがないゲッター2ではマジンガーZに腕を掴まれたらおしまいだ。
129 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 17:29:37.82 ID:hB.RJRQ0

のどか「ゲッター・ドリール!」

 ギュイィィィィィィ! のどかは左手のドリルを回して地面を掘り、地中に潜っていった。パイルダーを掴むゲッタードリルも手首まで埋まる。

ハルナ「おぉ! のどか、ナイスアイディア!」

夕映「これならマジンガーZからすぐに攻撃を受けることはないですね」

 だが、地上にいるマジンガーZは両肘を折り曲げて断面からドリルミサイルを連続発射した!

 ドドォン! ドドォン! 先端がドリルになっているドリルミサイルは地面を抉り進みながら爆発する。

ハルナ「な、なんか来てるわよ! やばそうな感じね」

 ぎり……ぎりり……ゲッターアームがパイルダーをねじ切ろうとする。

 ドォン! ドゴォン! ドリルミサイルが地面に穴を空けてゲッター2を攻撃しようする。

のどか「も、もうちょっと〜……!」

ハルナ「がんばりなさい、のどか!」

夕映「ゲッターの力を信じるです!!」

 ぎぎぎぎぎぎぎ……!!

夕映・のどか・ハルナ「ゲッタァァァァァァァァ・スパァァァァァァァァァクゥゥゥゥゥ!!」

 ガキュィィィィンッ!!

ハルナ「やったわ!」

夕映「マジンガーZからパイルダーを外すことに成功したです!」

のどか「よ、よかった〜……」

 パイルダー奪取の勢いでゲッター2は地中1000メートルくらいまで進んでから、再び地上に戻ってきた。

 マジンガーZは、正座するような格好で沈黙していた。

のどか「止まったみたいだねー……」

夕映「任務完了です。光子力研究所に戻るですよ」
130 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 18:11:18.84 ID:hB.RJRQ0

 光子力研究所

紬「ありがとうございます。ゲッターチームの皆さん。本当にありがとうございます」

 司令室で紬は夕映、のどか、ハルナの三人に深く頭を下げた。他のメンバーと憂は医務室に運ばれた唯たちのところにいる。

ハルナ「いやいや、大事にならなくてよかったよ、本当に」

紬「いえ、あのままだったら光子力研究所は破壊されて町にも被害が出てしまう可能性がありました。本当にありがとうございます」

 紬は謝りながらも視線はちらちらと別のほうへ向いていた。目の前で話しをしている三人がそれに気づかないわけがない。

夕映「唯さんが気になるなら、私たちのことはおかまいなく、行ってもいいですよ」

紬「あ、いえ、せっかく助けていただいたのに……」

のどか「わ、私たちもー……気になりますからー……」

紬「……ありがとうございます」

ハルナ「四回目だねぇ、私たちは仲間なんだから、助け合うのは当然でしょ。私たちの迷惑なんて気にしなくてもいいのよ」

夕映「ハルナ、あなたは年上に対しての口の聞き方を気をつけるべきです」
131 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 18:13:21.59 ID:hB.RJRQ0

 医務室

 唯はパイルダーの中で気絶していた。すぐに医務室に運ばれて検査と治療を受けたが、打ち身など以外、異常はほとんど見られなかった

。現在は気絶というよりは寝ているという状態でベッドで横になっていた。

憂「お姉ちゃん……」

梓「唯先輩……」

 ずっと唯にしがみついて呼びかけていた憂は泣き疲れたみたいで、唯のお腹に頬をくっつけて眠っていた。信じるように唯の手を握りし

めている。

 梓も似たような状態だった。憂とは唯を挟んで反対側に座り込んで手を握っていた。

 少し離れたところには澪と律が立っていた。二人とも体のあちこちに包帯を巻いているが、苦い痛みの原因は眠っている唯だ。

律「唯のやつ……どうしちまったんだ……」

 律がベッドのほうには聞こえないようにぽつりと呟いた。澪は左腕の包帯を右手でさすって首を横に振った。

澪「私もわからないよ……でも、あの瞬間、唯がすごく怒っていたのはわかる」

律「唯が怒る……か、見たことなかったな、私たち」

澪「このまま唯が目を覚まさなかったら……うっ、ひぐっ……」

律「澪……やめろよ、そんなこと言うの……」

澪「だって……うぅっ……」

律「泣くなよ……私まで……涙、出ちゃうだろ……」
132 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 18:14:52.49 ID:hB.RJRQ0

 眠っている唯は夢の世界にいた。

唯「ここは……?」

 辺り一面は荒野だった。そして巨大な影が唯を覆っていた。

唯「マジンガーZ……うっ!」

 マジンガーZを見た途端、唯は自分とマジンガーZが何をしたのかを思い出した。

 真っ赤に染まった世界。あしゅら男爵の断末魔。どろどろになった機械獣。

唯「うっ、あうぅ……!」

 溶けた大地。尚も放たれるブレストファイヤー。憂の声――

唯「う、い……ういっ……!」

 傾く視界。光子力研究所。そして――

唯「あ……あず……にゃんの……わた、し……みんなを……」

 自分がしたことを、しようとしていたことが網膜に焼きついて離れない。顔を覆う唯のお腹が痛くなる。キリキリと痛い。

唯「マジンガーZの……ばか……ばかばかばかぁっ!」

 唯はマジンガーZの黒い足を叩いた。目から涙が、鼻水も垂らしてマジンガーZを叩いた。

唯「ばか……ばかぁ……」

 鉄の城は何も言わなかった。口を聞いたのは別のものだった。

???「これは……どういったことだ……?」
133 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 18:17:14.38 ID:hB.RJRQ0

 何かが唯の後ろ、マジンガーZの正面に立ったようだった。とても大きい、マントがはためく音も聞こえた。

???「これはいったいなんだ……?」

唯「……だれ?」

 声に唯は振り返った。涙と鼻水でぐずぐずになった唯と目を合わしたのは、金色の鎧を身に纏ったとても大きな、マジンガーZと同じく

らいの大きさの人だった。

 いや、似ているのは背丈だけではない。似ているのは――

???「少女よ、これは何だ。この巨像……まるで、私の似姿ではないか?」

唯「……この子は、マジンガーZだよ」

???「マジンガーZ……マジンガーZというのか……少女よ、なぜ泣いている?」

唯「私は……ぐすっ、私、酷いことした……澪ちゃんやりっちゃん、ムギちゃんとあずにゃん……憂に酷いことをした……」

???「……そうか。だが、少女よ、お前は泣いている。涙が出るのは、お前が優しいからだ……」

唯「そんなことない……! 私は酷いんだよ……! ともだちを傷つけたんだ……!」

???「泣いてはならぬ……お前が泣きたいのは、自分のあやまちを償いたいからであろう……?」

唯「……でも、謝っても、許されないことを、私は……」
134 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 18:18:21.70 ID:hB.RJRQ0

???「友達ならば、お前はその者たちをよく知っているのだろう……? 本当に、許してはくれない者たちなのか……?」

唯「……それは…………」

???「お前の優しさも、友達はよく知っているはずだ……きっと、許してくれるだろう」

唯「……ありがとう、おじさん」

???「お、おじさん!? 私はそういうものではないのだが……」

唯「でも、声がおじさんだもん」

???「むうぅ……」

唯「じゃあ、あなたは誰なの?」

???「そうだな、教えよう」

 そう頷いたとき、荒野の世界が光りを放った。黄金色の粒子が唯の周囲を包み込み、唯と彼の距離がどんどん離れていった。

???「わた……えは……だ」

唯「あれ、ねぇ、よく聞こえないよ、ねぇったら!?」

???「私の名前は……だ」
135 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 18:19:58.55 ID:hB.RJRQ0

 次に唯が目を覚ましたとき、そこに映ったのは白い天井と蛍光灯だった。

唯「……あり?」

 なんだか下半身が重い。ついでに言うと、ここは布団の中みたいだ。肘をついて胸から上を少し起こすと、唯は目を丸くした。

唯「憂……? あずにゃん? 澪ちゃん? りっちゃん? ムギちゃん? みんな何してるの?」

 全員、唯の布団にしがみついて眠っていた。唯が起きたことにもまったく気づかない。見事な爆睡っぷりだった。

憂「……おねえちゃん」

梓「唯先輩……」

澪「ゆい……」

紬「唯ちゃん……」

律「ゆ〜い〜……」

 自然と、唯の口から笑みがこぼれた。

唯「そっか……みんな、私を待っててくれたんだね……」

 今すぐみんなに抱きつきたかった。でも、みんな疲れているんだろうなと思って、唯は一番近くにいる憂の頭を撫でた。

唯「いつも、助けられてばっかりだね、わたし……今度は、私がみんなを助けなくっちゃね」

 そのために、マジンガーZに乗ることは、もう怖くはなかった。

 第五話 暴走! マジンガーZ対ゲッターロボ!



 とりあえず、本編の更新はここまでです。
 次はゴラオンルートかホワイトベースルートか……
136 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/31(日) 20:44:40.00 ID:PMGB6oAO
乙、いわゆる伏線てやつか
精神コマンド使うときは心理描写や前振りちゃんと書けば大丈夫なんじゃないかね
書かないと意味不やら超展開になっちまうがww
137 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 22:31:09.75 ID:Nli47jg0

両方かいちゃえば良いじゃん
138 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/01(月) 16:41:49.14 ID:Q.Izes.0
 予告なく再開


 インターミッション

唯「さん!」

和「に」

憂「いち!」

唯・憂「どか〜ん!」和「どかーん」

唯「おーいみんな〜、集まれ〜!」

和「あつまれー」

憂「なぜなになでしこの時間だよ〜」

唯「え、なぜなになでしこって何かって?」

憂「それは『スーパーロボット大戦のことなんて何も知らないよ!』って人に和ちゃんが簡単に説明をしてくれる番組だよ」

和「今日は第二回『スーパーロボット大戦をプレイしてみよう』よ」

唯「和ちゃんが持ってきてくれたこれが、スーパーロボット大戦IMPACTなんだよね?」

和「そうよ、唯。頼むからパッケージにキスしないで」

憂「製作2002年だって、すごい昔だねぇ〜。私がまだ小学校に入ったばっかりの頃だよ」

唯「うい〜、その発言は見てる人を落ち込ませるよ〜」

和「プレイステーション2が発売されて始めてのスパロボよ。現在のスパロボのシステムが確立したのが、だいたいこの頃だからチョイスしたわ。ついでに言うと私(スレ主)が最近プレイしたからでもあるわ」

唯「ほいでは始めましょうか」カチッウィーンシュージョーン

和「とりあえずニューゲームをしてちょうだい」

139 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/01(月) 16:42:24.57 ID:Q.Izes.0

 地上激動編

唯「わっ、なんかいっぱい字が流れてきたよ。プロローグ?」

和「要するに、この世界では今までこんなことがありましたという説明ね。初心者は何を言っているのかわからないだろうし、慣れている人も『ああ、いつもどおり地球が大変だったんだな』という程度の認識だから、気にしなくてもいいわ」

葉月『コンピュータ、ロック・オフ。プログラムナンバーTHX139』

唯「おぉ、いきなり声が聞こえたよ」

憂「あれ、でもその後は声がないね?」

和「スパロボでは最近のRPGに多いシナリオ上でのフルボイス化はされていないけれど、重要な場面ではボイスを出すの。これを『DVE』と言うわ。フルボイス化されない理由は簡単よ。声優さんのギャラがかかりすぎるから」

 第1話 飛竜乗雲

唯「おぉ? なんかいっぱい出てきたよ」

和「味方と敵のそれぞれのユニットがマップ上に配置されるわ。ゲームのルールは自分のターンに味方のユニットを碁盤目のマップ上で動かして敵を攻撃して撃破。その後に相手のターンの行動があって、また自分のターンでユニットを動かす。この攻防を繰り返して敵を全滅させれば勝ちよ」

憂「普通の将棋とかにも似てるね」

和「そうね。ただ、駒であるユニットが持つ能力というのは一つとして同じものはないから、それぞれの得意不得意を見極めて戦う必要があるの。これは戦略シミュレーションゲームの基本であり極意ね」

唯「ふ〜ん」カチカチ

和「ねぇ、唯。全然シナリオテキスト読んでないでしょ」

唯「だって、よくわかんないんだもん」カチカチ

和「はぁ、まあいいわ。とりあえずマップ全体を見てみましょう。十字キーか左スティックを適当に動かして。あと、右スティックで視点も動かせるわ」

唯「ほ〜い」スィ〜

憂「……真ん中に集まっているのが、味方だよね?」

和「えぇそうよ」ニヤニヤ

憂「ものの見事に囲まれているよね」

和「ついでに言うと、周りは湖ね」ニヤニヤ

唯「う〜ん、なんだか、せんりゃく! って感じがするゲーム画面だね」
140 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/01(月) 16:45:31.49 ID:Q.Izes.0

和「じゃあ、唯。真ん中の味方ユニットのどれかにカーソルをあてて、×ボタンを押して」

唯「ほ〜い、あ、画面が変わった。アルトアイゼン?」

和「ユニットに×ボタンでユニットの説明と能力を見ることができるわ。さらにパイロット、武装を見ることもできるわ」

唯「ほへほへ。キョウスケ・ナンブさん、イケメンだねぇ〜」

憂「つまり、アルトアイゼンには今、キョウスケさんが乗ってるってことなんだね」

和「えぇ、そうよ。ユニットやパイロット能力の詳しい説明は次回にするとして、唯、次はマップ上の何もないところで○ボタンを押して、部隊表を出して」

唯「ほいな」

和「これが今、出撃している味方のユニットの全部よ。それで、ダンクーガを選択して」

唯「うん。おぉ〜、男前な顔ですなぁ」

和「パイロットを表示して」

唯「こ、これは!? もしかして四人もパイロットが乗っているんですか!?」

和「そうよ、ダンクーガは四つのユニットが合体して出来るスーパーロボットだから、パイロットもちゃんと四人乗っているの。この四人のパイロット全員が個別に精神コマンドを持っているのが、複数人乗りのスーパーロボット最大の特徴ね」

憂「精神コマンドってなに?」

和「パイロットが持つ特殊な能力のことよ。一回で移動できる距離を増やす『加速』、一度に与える最大ダメージを増やす『熱血』、1ターンの間、攻撃が必ず命中する『必中』などの精神コマンドをパイロットが持っている精神ポイント(SP)の範囲内で上手に使っていくの。精神ポイントは基本的に1ステージ内で回復することはないから、計画的に使わないといけないわ」

唯「ほうほう、さっぱりわかりませんなぁ」
141 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/01(月) 16:46:23.08 ID:Q.Izes.0

和「まあ、前置きはこれくらいにしておいて、攻撃してみましょうか、唯」

唯「ふんす!」

和「せっかくだから、精神コマンドも使ってみましょう。部隊表からEz−8を選んで」

唯「わかりましたであります! 和ちゃん隊長!」

和「ユニット上で○ボタンを押すと、そのユニットでできる行動が見られるわ。精神を選んで」

唯「愛と突撃、これがシローさんの使える精神コマンド?」

和「そうよ、突撃を使って」

唯「うん」シュイーン

和「移動させて、右上の敵がいるほうに」ニヤニヤ

唯「うんうん、これで攻撃を選ぶんだね」

和「そうよ、武器にもいろいろなものがあるからよく考えてね。ちなみに、突撃の効果は『1ターンの間、マップ兵器以外の全ての武器を移動後に使用できるようになる』よ。EZ−8の武器の180ミリキャノンと全弾発射は本来は移動後には使用できないんだけど、突撃の効果で使えるようになっているの」ニヤニヤ

憂「でも、全弾発射のほうは暗くなってて使えないみたいだよ?」

和「それは、Ez−8と敵のゴッグとの距離が離れすぎていて射程に入ってないからよ。180ミリキャノンは8マス先まで攻撃できるけど、全弾発射は3マスまでなのよ、しかも本来は移動後に攻撃できないし使えるのは一回きり。その代わり、攻撃翌力を見てわかるように絶対的な攻撃翌力を持っているわ」ニヤニヤ

憂「和ちゃん、なんだかずっとにやにやしてて気持ち悪いよ?」

和「そうかしら? そんなつもりはないんだけど」ニヤニヤ

唯「よーし、180ミリキャノンだ! いっけー!」

和「あらしのーなかでかがやいーてそのーゆーめをーあきらめないーでー」ニヤニヤ

憂「戦闘中は主題歌が流れるんだね!」

シロー『銃身が焼きつくまで撃ち続けてやる!』ドォン! ドォン!

ジオン兵『さすがゴッグだ! なんともないぜ!』786のダメージ!

唯「786……」

憂「HP3800のうちの786……」

和「ぷふっ」
142 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/01(月) 16:49:50.49 ID:Q.Izes.0

ジオン兵『邪魔なんだよ!』ブォビュー! 

シロー『落ち着け……落ち着けよ、シロー……!』1257のダメージ!

唯「えぇぇ!?」

憂「なんでこっちのほうがダメージが大きいの!?」

和「ぶふぅっ!! ぷすぷす」

唯「和ちゃん……?」

憂「和ちゃん……? わかってたね?」

和「ぷっ、くっ、くふふ、ふふふふ……」

憂「和ちゃんは私たちをバカにするためにこれをやらせたの?」

和「そ、そんなことないわよ……安心して、私も通った道だもの……くっぷぷ」

唯「和ちゃん、笑いすぎてキャラ変わっちゃってるよ……」

和「私も最初にこれを律にやられたときは怒ったけど、今ではいい思い出よ」

唯「和ちゃんとりっちゃん、一緒にゲームするんだ……」

憂「想像できない……律×和とは、なんというマイナー路線」

和「あんまり律がバカにするから、私もムキになって勢いで全部クリアしてやったわ。ちょっと前に学校を休んだのは、ラストシナリオを一気にクリアするためだったのよ」

唯「皆勤賞だった和ちゃんが学校をサボってゲームだなんて……」ホロリ

憂「学校終わってからお見舞いいったとき、妙に顔色が晴れやかだったのはそのせいだったんだね」
143 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/01(月) 16:50:51.13 ID:Q.Izes.0

和「あれは感動して泣いた後にシャワーを浴びた後だったのよ」

唯「和ちゃんのシャワータイム……」ゴクリ

和「律以外に見せる気は無いわよ。実はあのとき律も一緒だったの。一緒にサボってたのよ」

憂「なんという澪先輩涙目な話」

唯「それにしても、これどうしよう?」

憂「さっきからずっと『嵐の中で輝いて』が流れっぱなしだね」

和「それじゃあ、伝えることは伝えたから、私、生徒会行ってくるね」

唯「えっ!? 本当にこれどうするの!?」

和「明日また来るから、がんばって1話だけでもクリアしてみて。二人にはたっぷり『さすがゴッグだ! なんともないぜ!』を味わってほしいわ。ちなみに目標ターンは5だから」

唯「行っちゃった……」

憂「どうする、お姉ちゃん?」

唯「私たちはプレイするしかないんだよ、憂……」

憂「そうだね、それが私たちの使命だもんね、お姉ちゃん……」

唯・憂「なにより……」

唯・憂「このままバカにされて終われるか!!」ゴォォォォ!!

唯「やるよ、憂! 熱血レベルマックスだよ!」

憂「うん、お姉ちゃん!」
144 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/01(月) 16:57:16.90 ID:Q.Izes.0

バーニィ『ザクだからってなめるな!』

ジオン兵『さすがゴッグだ! なんともないぜ!』

クリス『これで!』

ジオン兵『さすがゴッグだ! なんともないぜ!』

キョウスケ『射撃は苦手なんだがな……』

ジオン兵『さすがゴッグだ! なんともないぜ!』

憂「お姉ちゃん……?」

唯「このっ、このっ」

忍『亮! 格闘戦はお前に任せたぜ!』

ジオン兵『さすがゴッグだ! なんともないぜ!』

唯「もう、動かせるユニットがない……」

 敵ターン

ブォビュー! ブォビュー! ブォビュー! ブォビュー!  

唯「……」

憂「お姉ちゃん、一度私に貸して……?」

唯「うん……」
145 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/01(月) 16:58:14.52 ID:Q.Izes.0

憂「えぇっと……味方のユニット能力と精神コマンドを確認して……とりあえず、『味方全員のHPを全回復する』シローさんの愛かな」

 キュピィンキュピィンキュピィンキュピィン

唯「おぉ、回復しとりますなぁ」

憂「すごいね、さすが愛だよ」

唯「愛だね」

憂「ラブアンドピースだね」

唯「じゃあ、この戦争もシローさんの愛で終わらせてくれればいいのに」

憂「シローさん一人の愛で戦争が終わったら苦労しないよ」

唯「そうだね、マイケルでも無理だったんだもんね」

憂「えっと、他には……あれ、地形?」ピッピッ

唯「ふわぁ……」

憂「あっ、すごい! 基地や森の上に乗れば防御と回避が上がるんだ! って、お姉ちゃん?」

唯「んあー?」

憂「なにしてるの?」

唯「眠くなっちゃったー……」

憂「お姉ちゃん、かわいいっ!」

唯「むぎゅっ」

憂「お姉ちゃんあったかくてきもちいいー……」

唯「憂もきもちいいよー……それじゃあ、二人で一緒に嵐の中で輝きますか」

憂「うん!」
146 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/01(月) 17:01:56.69 ID:Q.Izes.0

 二時間後!

唯「に、20ターンもかかってるのに終わらない……」

憂「ずっと基地や森の上で敵が上陸するのを待ってたからね」

唯「でも、このザクを倒せばあとはもうノリスさんのグフを倒すだけだよ」

憂「こっちはファちゃんとクリスちゃん落とされちゃってるけど……」

バーニィ『うおおおぉ!』ドシュッ!

唯「それにしても……」

ジオン兵『い、いや、母さん……!』チュドーン!

ジオン兵『寒い……俺は……死ぬのか……?』チュドーン!

唯・憂(後味が悪いなぁ……)

憂「こっちが悪者みたいだよ……」

唯「よし、ここまで取っておいたシローさんの全弾発射だよ! ふんす!」

憂(命中率27%の文字が見えた……)

シロー『倍返しだぁーっ!』ずだだだだだだ!

ノリス『素人が!』

唯「……」

憂「お姉ちゃん、キョウスケさんのクレイモアがあるよ!」

唯「それより、切り札を使ったほうが絶対倒せるよ! なんてったって切り札なんだから!」

憂「でも、切り札の命中率絶対低いよ! クレイモアは+50%がついてるんだからクレイモアのほうがいいって!」

唯「ぜったいいけるもん!」

キョウスケ『俺もジョーカーを切らせてもらうぞ!』ジャキン!

ノリス『ふわぁっはっはっはっはっは!』

憂「ほらー! ぜったいクレイモアのほうがよかったって!」

唯「ぶーっ! 憂のおたんこなすー!」
147 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/01(月) 17:04:07.88 ID:Q.Izes.0

 さらに数時間後、夜

和「結局、二人ともダンクーガが四人乗りであることを忘れていて、雅人の必中を使えば楽に勝てたところを、さらに5ターンを費やして第1話をクリアしましたとさ」

唯「和ちゃん、これで本当に初心者がスパロボを始めてくれると思ったの……?」

和「さぁ? それはわからないわ。でも、本当にスパロボを初心者が始めるなら、PSPで出てるMXとAをおすすめするけど。いつでもやめられるし、DS版と違って戦闘フルボイスだし、シナリオも充実してるし。据え置きならXO、NEO、Zが各ハードの最新作よ」

憂「最初からそれを持ってきてよ……」

和「次回は、スパロボの基本、『スーパーロボットとリアルロボットの違い』について紹介していくわ」

憂「それじゃあ、またね〜」

唯・憂「ばいば〜い!」

和「ふふふ……第1話で25ターンで5時間ということは、全101話までに2000ターンと500時間はかかるわね……憔悴していく二人を見るのが楽しみね」
148 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/01(月) 18:17:21.19 ID:0tZ76AAO
IMPACTはほんと大変だし面倒だよな
どこが初心者向け何だって感じだわ
升使ってももう一度やる気には成らんだろうな
149 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/01(月) 20:30:55.49 ID:pWEtSAAO
嵐の中で輝いて支援
150 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/03(水) 17:13:08.30 ID:3lC6kdE0
再開します
151 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/03(水) 17:14:06.12 ID:3lC6kdE0
 第六話

 バイストン・ウェルのラウの国の戦艦ゴラオンはアの国の戦艦ウィル・ウィプスを追って太平洋を横断していた。その第一目標はアの国王ドレイク・ルフトと北米大陸を占領しているジオン公国軍の接触を防ぐことだ。ゴラオンが非公式とはいえ地球連邦軍に加担してしまった以上、ドレイク軍はジオン軍と繋がる可能性が高い。

エレ「エイブ艦長、ウィル・ウィプスには追いつけそうですか?」

エイブ「難しいでしょうな、ゴラオンとウィル・ウィプスの速度はそれほど差がありません。わずかに我がほうが上回っているようですが、先ほどリュウ殿が連絡を取ったハワイの通信基地の情報によれば、4時間前にドレイク軍が通過したようですから、先にアメリカ大陸に到着されてしまいます」

リュウ「問題は、ジオン軍の司令官がどこにいるかだな。北米大陸は広いから、東部のほうにいればまだ追いつけるかもしれん」

珠姫「あの、でしたら私がダンバインでウィル・ウィプスを追いかけましょうか?」

エイブ「珠姫殿、ダンバインの調整は終わったのですか?」

珠姫「はい、すぐにでも出られます。紀梨乃部長のボチューンも」

エイブ「そうですな、少しはプレッシャーになるかもしれません」

エレ「しかし、ドレイク軍に数で攻められては逃げられない可能性がありませんか……?」

リュウ「それなら、俺と高町もついていこう。高町の魔法を使えば逃げやすくもなるだろう」

エレ「リュウ様、よろしいのですか?」

リュウ「あぁ、高町も大丈夫だと思う」

エイブ「それでは、お願いできますか?」

リュウ「了解した」
152 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/03(水) 17:17:04.42 ID:3lC6kdE0

 ゴラオン 格納庫

 アリサはすずかとなのはに手伝ってもらいながら、コア・ファイターの操縦を勉強していた。近くにはチャム・ファウがうろちょろと飛びまわっている。

アリサ「えぇっと、それで、これが着艦用のワイヤー射出なのよね」

すずか「うん、そうだよ。とりあえず、発進と旋回と着艦の流れを掴まないと帰ってこれなくなっちゃうからね」

チャム「ふーん、地上の機械もバイストン・ウェルのものとあまり変わらないのね」

すずか「チャムちゃんの着ているのって、パイロットスーツなの?」

チャム「そうよ、私がちゃーんと自分で作ったんだから」

すずか「わぁ、チャムちゃんお洋服も作れるんだ、すごーい」

アリサ「うーん、ホワイトベースにあったシミュレーターが恋しいわ」

なのは「大丈夫だよ、アリサちゃん。いざというときは私が魔法で助けてあげるから」

アリサ「それって、私が墜落することを前提で話してるわよね、なのは」

なのは「あぅっ、だってアリサちゃん、シミュレーターだって二回しかやってないし、二回とも落ちてたし……」

アリサ「……ま、否定はしないわ」

なのは「でも、今日は私がちゃんと傍についてあげるから、安心して飛んでね、アリサちゃん」

アリサ「わかったわ。ありがとう、なのは」

 アリサがいざヘルメットのサンバイザーを下ろそうとした時に、リュウが大声でやってきた。
153 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/03(水) 17:18:25.60 ID:3lC6kdE0

リュウ「高町はいるか!?」

なのは「は、はい! います!」

リュウ「ん、何やってるんだ、コア・ファイターに集まって?」

すずか「アリサちゃんが操縦の勉強をしたいって言ったので教えてました」

リュウ「アリサが? なんだってそんな急に」

アリサ「だって……ゴラオンは人手不足じゃないから、私のすることがなくなっちゃったんだもん。私だけじっとしている訳にもいかないし」

リュウ「そうか、うーむ、そうだな。だが、少しコア・ファイターを貸してくれ。これからダンバインと俺と高町でウィル・ウィプスを追撃する」

アリサ「はーい。じゃ、ガンダムのコア・ファイターでおさらいだけしましょ、すずか」

すずか「うん、アリサちゃん」

チャム「じゃあ、私はタマキのダンバインに乗ってようっと」

紀梨乃「あれー? さっきから私ってば空気じゃにゃーい?」
154 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/03(水) 17:19:22.76 ID:3lC6kdE0

 ゴラオンから珠姫、なのは、リュウが出撃した頃、ドレイク軍のウィル・ウィプスでも似たような命令が出されていた。

ショット「それでは、私とトッドは先にアメリカへ向かいます」

ドレイク「うむ、任せたぞ」

トッド「はっ!」

 トッド・ギネスとショット・ウェポンの二人がブリッジから出て行くのを、軍団長バーン・バニングスは苦い顔で見ていた。

バーン「ドレイク様、二人だけで行かせてよかったのでしょうか?」

ドレイク「我らの中から行っても、話しが通じない可能性はあるだろう。余計に混乱させるだけかもしれん」

 バーンは、その言い回しがまるきりショットの弁であることを知っていたため、心中で舌打ちした。それは、ドレイクが今ショット以外に頼りに出来るものがいないという現われでもあったからだ。

バーン「ドレイク様! お言葉ではありますが、ドレイク様はショット・ウェポンを信頼しすぎであります。彼の者は元はといえばこの地上の男! それを我らバイストン・ウェルが呼び寄せた末にドレイク様に忠誠を誓ったに過ぎませぬ!」

ドレイク「バーン・バニングスよ」

バーン「は、はっ!」

 ドレイクの声調が重くなるのは、叱責を受けるときである。バイストン・ウェルに地上人が召喚されるようになってから、何度バーンはドレイクのこの低い声を聞き、肝を冷やしたことだろうか。

ドレイク「ならば貴様が地上の軍との交渉を行えるというのか?」

バーン「……っ!」

 バーンは答えることができなかった。彼はバイストン・ウェルいちの戦士であるが、珠姫、紀梨乃といったオーラ力に優れた地上の聖戦士との戦いに幾度も敗れているため、ドレイクの信頼は失墜し、反比例するようにショットやトッドの権威は上昇していた。

ドレイク「バーン、貴様を行かせなかったのにはもちろん理由はある」

バーン「はっ、なんでございましょうか?」

ドレイク「ゴラオンの軍勢が我らを追ってきたとき、貴様にはこのウィル・ウィプスを守ってもらわなくてはならぬ。失敗続きとはいえ、我が兵はまだ貴様に付き従おうとしている。これはショットにもトッドにもないものだ」

バーン「ははっ、ありがたきお言葉であります」

ドレイク「貴様は我が軍の軍団長だ。まずはそのことを自覚せよ」

バーン「ははぁっ! かしこまりました!」

 その会話を聞いていた女士官のミュージィ・ポゥはあらためてバーン・バニングスを単純な男だと思った。そして次の瞬間には、出撃したショット・ウェポンの身の上を案じていた。
155 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/03(水) 17:26:55.78 ID:3lC6kdE0

 雲間に隠れながら、リュウの乗るコア・ファイターと珠姫、チャムの乗るダンバインはドレイク軍を追撃していた。

 雲中飛行は敵から極めて発見されにくいが、方角を見失いやすく、味方同士の衝突の可能性もあるが、一人で先行していたなのはがナビゲーションしてくれるため、航行を誤ることはなかった。

なのは「レイジングハート、高町なのは、ウィル・ウィプスを確認しました」

リュウ「了解」

珠姫「了解です」

 生身の人間であるなのははレイジングハートを使って識別信号を出すことができるが、それを意図的に消せば、敵に発見される可能性はほぼゼロに近くなる。

チャム「ナノハってすごいわね! ミ・フェラリオじゃないのに羽が生えて飛べるんだもの!」

珠姫「そうだね」

チャム「タマキは空を飛ぶことはできないの?」

珠姫「できないよ」

チャム「ふ〜ん、でも、タマキにはダンバインがあるからね!」

珠姫「うん」

 コア・ファイターとダンバインは一度雲の上に出た。そして、なのはの指示でウィル・ウィプスのちょうど真上で平行に飛んだ。

リュウ「よし、それじゃあ、高町は一直線にドレイク軍の中を急降下してくれ。攻撃もしなくていい。驚かせてくれればいいんだ」

なのは「はいっ」

レイジングハート「protection」

 なのはは杖をぎゅっと握って魔法の障壁を自分の周りに展開した。

なのは「いっくよー、レイジングハート」

レイジングハート「alllight my master」

 なのははリュウの言ったとおりに、ドレイク軍の中に急降下していった。ピンク色の魔法光に包まれているので、目視でもかなり目立つはずだ。
156 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/03(水) 18:05:25.29 ID:7gO6psAO
空飛ぶ可愛い幼女は敵さんの精神衛生上にすこぶる悪そうだww
157 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/03(水) 18:21:12.26 ID:3lC6kdE0

 ウィル・ウィプス

ミュージィ「何かがウィル・ウィプスの上から落ちてきます! かなりの速度です!」

バーン「なんだと!? まさかダンバインか!」

ミュージィ「違います! かなり小さいようです」

バーン「ドレイク様! 私はレプラカーンで出ます!」

ドレイク「うむ、功を焦るなよ。バーン・バニングス」

バーン「はっ!」

 ドレイク軍は突如頭上から現れたピンク色の光りにかなり驚いたようだった。また、これが敵の砲弾の類であったらと思い、接近しようというものはいなかった。

なのは「ディバイン・シューター!」

 オーラバトラーの多くがなのはを注目しているのがわかった。そして、ウィル・ウィプスの目の前で止まり、三つの光りの球をドレイクに向けて放った。

ドレイク「くっ! あの小娘か!」

 光球はブリッジのガラスに当たる直前に散開してそれぞればらばらにオーラバトラー隊のほうへ飛んでいった。なのは魔法を物理ダメージにセットしていたが、その威力はせいぜい機体を揺らす程度だ。しかし、ディバイン・シューターはなのはの意思で自由自在に動く。敵機に当たるギリギリに方向転換させる。

ドレイク兵「う、うわぁっ!」

ドレイク兵「こ、こっちに来るなっ!」

なのは「もう三つ! いけぇぇーっ!」

 さらに三つの光球がなのはの手元から放たれた。この摩訶不思議な弾丸の威力や効果がわからないオーラバトラーは、あっという間に隊列を崩されてしまった。
158 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/03(水) 18:22:22.82 ID:3lC6kdE0

なのは「今です! リュウさん! 珠姫さん!」

リュウ「おう!」

珠姫「いきます!」

 なのはの合図で雲上に隠れていたコア・ファイターとダンバインが落下してきた。

ミュージィ「ダンバイン! 頭上より接近してきます! さらに戦闘機と思しきものが一機、追従しています!」

ドレイク「ジェリル、フェイ、アレンに向かわせろ! バーンの出撃を急がせい! 敵は数がいる訳ではない、ウィル・ウィプスの足止めが狙いだ。最大艦速で進め!」

ミュージィ「はっ!」

 ジェリル・クチビ、フェイ・チェンカ、アレン・ブレディは、珠姫やトッドより後にバイストン・ウェルに召喚された地上人だ。それぞれ、レプラカーンが与えられているが、アレンだけはその旧式機であるビランビーに乗っている。

アレン「ドレイクから命令だ。ダンバインをやれだとよ」

ジェリル「アレン、そんなので大丈夫なのかい? ダンバインのオーラ力は上がっているんだろ」

アレン「ふん、俺にはこれくらいがちょうどいいのさ。レプラカーンは好かねぇ」

フェイ「行こうぜ、もう来ている」





 とりあえずここまでです。やっぱりリアル系は作戦とかがあるから面倒くさいですね。スーパー系は敵が侵略→出撃→何かイベント→終了で簡単なんですがね。
 ガンダムとかのSSの人はそういうところもうまくてすごいですね。
159 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/03(水) 19:34:44.95 ID:7gO6psAO

やり合ってるのが規格違いの作品達だからな
ガンダムの単品SSなら作品観てりゃ自ずと状況分かるが
良い感じなんだし自信持ちなや
160 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/04(木) 16:40:11.43 ID:Vm2bjAk0
今日も五時から再開します。
161 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/04(木) 16:45:01.57 ID:WVHZn2DO
期待、俺はいい戦法だと思うぞ。
162 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/04(木) 17:00:12.53 ID:Vm2bjAk0

珠姫「来たっ!」

リュウ「三機か! ドラムロってやつじゃない!」

チャム「レプラカーンとビランビー! 地上人の聖戦士よ!」

アレン「フェイは戦闘機をやれ! ジェリルは俺とダンバインをやるぞ!」

フェイ「おう!」

アレン「注意しろよ、戦闘機でも、オーラバトラーと同じくらいの大きさはある」

フェイ「わかっている!」

珠姫「はあぁっ!」

 ガキィンッ! 珠姫とジェリルの剣がぶつかって火花を散らす!

ジェリル「死になっ! ダンバイン!」

アレン「俺だって、オーラ力は上がっているんだぜ」

 ガッ! ガッキィンッ! 二体のオーラバトラーが交互に仕掛けてくる。

チャム「右!? 左よ! あぁん! だめぇーっ!」

珠姫「耳元で怒鳴らないで! 胴ーっ!」

 ギィィィンッ! 横殴りの一撃でアレンの剣を弾いた直後、ダンバインは左腕のオーラショットでビランビーの右腕を破壊した。

アレン「チッ!」

ジェリル「言わんこっちゃない! 喰らいな!」

珠姫「くっ! この人、強いオーラ力を持っている!」
163 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/04(木) 17:01:01.01 ID:Vm2bjAk0

 ガガッ! ガツィンッ! ジェリルの畳み掛けるような攻撃に、手負いで冷静になったアレンがサポートを加えてくる。

チャム「タマキィ! 左よぉ!」

珠姫「――ッ!」

 ズバァッ! アレンの剣がダンバインのオーラショットを切り落とした。

リュウ「まずい! 高町は、無理か……」

 フェイとリュウは追いかけあいをしていた。なのはは無数のドレイク軍を撹乱することに集中している。何千といるオーラマシンを一人で相手取っているのだから、敵にとっては恐ろしい存在になるだろう。

リュウ「ならば!」

 リュウは操縦桿を強く握って引いた。コア・ファイターが上昇し、強い負荷が体にかかる。地球の重力はリュウにとっては敵よりも注意しなければならないものだから、乱暴な運転はあまりしたくなかったのだが、既に撤退時だ。

フェイ「逃げるのかぁ? ならば[ピーーー]よ!」

 コア・ファイターは大きな軌道で旋回する。フェイのレプラカーンが後ろからフレイボムを連発している。

リュウ「そうだ、ついてこい……ここだぁ!」

フェイ「落ちろぉ!」

アレン「フェイ! 来るなぁ!」

フェイ「なにっ!?」

 リュウの向かう先にはダンバインとレプラカーンがいた。少し離れたところにいたアレンはリュウの狙いに気づいたが、既に遅かった。

リュウ「うおおおぉっ!」

 ババババババババババ! コア・ファイターはバルカンを撃ちながらレプラカーンに突っ込んでいった。

ジェリル「チィッ!」

 ジェリルはバーニアを一気に噴射させて上昇した。吐き出されるオーラ力のきらめきの中をリュウのコア・ファイターが通り抜けていく。

アレン「ジェリル、速く逃げろ!」

 ダンバインはバーニアの反動で機体が静止したレプラカーンに接近していた。

チャム「必殺のオーラ斬りだぁあ!」

ジェリル「くっ、このぉぉぉぉ!」
164 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/04(木) 17:02:41.92 ID:Vm2bjAk0
saga忘れてた


 ガガッ! ガツィンッ! ジェリルの畳み掛けるような攻撃に、手負いで冷静になったアレンがサポートを加えてくる。

チャム「タマキィ! 左よぉ!」

珠姫「――ッ!」

 ズバァッ! アレンの剣がダンバインのオーラショットを切り落とした。

リュウ「まずい! 高町は、無理か……」

 フェイとリュウは追いかけあいをしていた。なのはは無数のドレイク軍を撹乱することに集中している。何千といるオーラマシンを一人で相手取っているのだから、敵にとっては恐ろしい存在になるだろう。

リュウ「ならば!」

 リュウは操縦桿を強く握って引いた。コア・ファイターが上昇し、強い負荷が体にかかる。地球の重力はリュウにとっては敵よりも注意しなければならないものだから、乱暴な運転はあまりしたくなかったのだが、既に撤退時だ。

フェイ「逃げるのかぁ? ならば死ねよ!」

 コア・ファイターは大きな軌道で旋回する。フェイのレプラカーンが後ろからフレイボムを連発している。

リュウ「そうだ、ついてこい……ここだぁ!」

フェイ「落ちろぉ!」

アレン「フェイ! 来るなぁ!」

フェイ「なにっ!?」

 リュウの向かう先にはダンバインとレプラカーンがいた。少し離れたところにいたアレンはリュウの狙いに気づいたが、既に遅かった。

リュウ「うおおおぉっ!」

 ババババババババババ! コア・ファイターはバルカンを撃ちながらレプラカーンに突っ込んでいった。

ジェリル「チィッ!」

 ジェリルはバーニアを一気に噴射させて上昇した。吐き出されるオーラ力のきらめきの中をリュウのコア・ファイターが通り抜けていく。

アレン「ジェリル、速く逃げろ!」

 ダンバインはバーニアの反動で機体が静止したレプラカーンに接近していた。

チャム「必殺のオーラ斬りだぁあ!」

ジェリル「くっ、このぉぉぉぉ!」
165 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/04(木) 17:05:50.39 ID:Vm2bjAk0

 ザシュッ! レプラカーンの翼が落ちた!

珠姫「頭部を狙ったのに!」

チャム「オーラ力で逸らされちゃったのよ!」

ジェリル「ちきしょう! フェイの下手糞が!」

フェイ「なんだと! 二人がかりで倒せなかったくせに!」

ジェリル「お前が邪魔をしなけりゃよかったんだよ!」

アレン「二人とも、よせ!」

バーン「馬鹿者どもが! 下がれ!」

 バーンのレプラカーンが現れた。しかしダンバインとコア・ファイターは帰還体勢に入っていた。

バーン「ここまで好きにやられて、見逃してたまるか!」

 ここでダンバインを逃がしてはそれこそ己の沽券に関わる。そして追撃を始めるからには、ただで戻ることはできない。

 ただ、ドレイク・ルフトがバーンに求めていた能力は戦士として敵と戦うことよりも、兵士を指揮し、戦争に勝つ軍団長の力だ。ドレイクはダンバインの動きが陽動の類であると見抜いていた。ここでダンバインを逃がしても、彼の評価は変わらなかっただろう。

 しかし、バーン・バニングスは高潔な騎士であるがゆえに、ダンバインを落とせぬことを誰よりも恥じて、自ら退路を見失ってしまったのだ。

珠姫「このオーラの波動……バーン・バニングス!」

チャム「やだぁ! 追っかけてくるのぉ!?」

リュウ「高町! 聞こえているか!?」

なのは「は、はいっ!」
166 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/04(木) 17:06:35.02 ID:Vm2bjAk0

 なのははドレイク軍のど真ん中で戦っていたため、珠姫とリュウより遅く撤退を始めていた。つまり、位置としてはバーンの後方にいるのだ。

リュウ「ドレイク軍から追撃の部隊は出ているか?」

なのは「い、いえ、誰も追っかけてきません」

リュウ「なら……!」

 レプラカーンがダンバインの姿を捉えた。バーンはこれまでの屈辱を思い出し、眼光を鋭くさせつつ、ようやくそれを晴らすことができる喜びに口元を歪めさせていた。

バーン「ダンバイン! タマキ! 今日こそ貴様を仕留めてみせる!」

 ダンバインが振り返った。逃げる選択をしない敵にバーンは己の騎士道精神を滾らせた。

バーン「我が血がふつふつと沸き立ってきた。この瞬間を私は待っていた!」

 もしもバーンの声が珠姫に届いていたのなら、この戦いは彼の望みどおりになっていただろう。

 たとえ、ダンバインに討たれて死のうとも、彼は本望だったはずだ。

 だが――

バーン「ッ! なにっ!?」

 あと数秒で剣が届くかという時、ダンバインはわずかに上昇した。その向こうに見えた空からコア・ファイターが飛んできた。
167 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/04(木) 17:09:22.01 ID:Vm2bjAk0

バーン「タマキ! 正々堂々とあいまみえよ!」

 コア・ファイターの翼にダンバインが掴まった。コア・ファイターはマッハ3を計測していた。オーラバトラーの速度は最高で300リルで時速1200キロ、ぎりぎりでマッハ数にいけるかどうかがせいぜいだ。いかにバーンがバイストン・ウェル最高の戦士といえども、反応できる速度ではなかった。

バーン「タマキィィィィィィィィ!!」

 急いで剣を構えた。しかし、それまでだった。

チャム「お前なんか、いっちゃぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 ザンッ!! レプラカーンの首が切り捨てられた!

バーン「そんな……バカな……私が……ただの一太刀も交わすことなく、負けた……?」

 ふらふらとレプラカーンが墜落し始めた。コクピットで呆然としていたバーンは、特別なレンズ素材で外が見える外壁越しにダンバインがコア・ファイターに乗って去っていくのを見た。

バーン「ダンバイン……タマキ……くぅぉおっ!」

 騎士としての戦いさえ踏み躙られた。彼の内に宿った魂は既にバーン・バニングスのものではなかった。

バーン「我が精神を冒したのは貴様だ……タマキ」

 全てを失った。地位も、名誉も、誇りも……残ったものは、憎悪のみ。

バーン「もはや、自分などいらぬ……バーン・バニングスという男は、ここで死ぬのだ」

 タマキを殺す。

 それだけが、望み。

???「それなら、私にちょうだぁい」

バーン「……なんだと?」

 いつの間にか、海面を漂っていたレプラカーンのハッチが開いている。

 そこに座っていたのは、人間より小さく、ミ・フェラリオよりも大きい、精巧な顔に恐ろしい微笑みを浮かべた女だった。

バーン「なんだ……貴様は?」

水銀燈「命がいらないなら、水銀燈にぜんぶちょうだぁい。そうしたら、あなたの望みを叶えてあげる」

 黒い天使が、バーン・バニングスだった男に手を差し伸べていた。


 第六話 追走! 太平洋上の戦い 完

 今日はここまでです。
168 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/05(金) 03:08:41.16 ID:srj8QgAO
オーラ支援斬り
169 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/05(金) 17:58:26.82 ID:kC/n/4M0
再開です

 インターミッション

唯「さん!」

和「に」

憂「いち!」

唯・憂「どか〜ん!」和「どかーん」

唯「おーいみんな〜、集まれ〜!」

和「あつまれー」

憂「なぜなになでしこの時間だよ〜」

唯「え、なぜなになでしこって何かって?」

憂「それは『スーパーロボット大戦のことなんて何も知らないよ!』って人に和ちゃんが簡単に説明をしてくれる番組だよ」

和「今日は第三回『スーパーロボットとリアルロボットの違い』についてよ」

唯「おー!」

憂「わー!」

和「とりあえず二人とも、IMPACTは4話まで終わったのね」

憂「うん、マジンガーZとグレートマジンガー、ゲッターロボが仲間になったよ」

唯「一つのステージで10ターンくらいで終わらせられるようになったよ!」

和「うん、とりあえずIMPACTは1ステージで5ターン以内のクリアが目標なんだけどね」

唯「ほえぇ!? まだ半分も縮めるのぉ!?」

憂「前回も同じこと言ってたけどそれってどうしてなの?」

和「また後で詳しく説明するけど、IMPACTではステージクリア後に特殊能力を得られるんだけど、短いターンでクリアすればより強力な特殊能力が獲得できるの。一番強い能力が5ターン以内にクリアだから、IMPACTは全てのステージで5ターンクリアを目標としているわ。これは他のスパロボにはない特別なシステムだから、これがIMPACTの面白さでもあるわね」

憂「へぇ〜」
170 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/05(金) 17:59:00.25 ID:kC/n/4M0

和「それじゃあ、今日の授業を始めるわ。まずはロボットが持つ能力値について説明するわ。唯、ユニットの能力について分かる範囲でいいから言ってみて」

唯「えっとぉ、HPでしょ、EN、運動性、装甲、あと限界?」

和「そうね、それに移動力、機体サイズ、地形適応、パーツスロットを加えたものがIMPACTでのユニットの基本能力となるわ」

憂「ENはエネルギー量のことだよね?」

和「そうよ、機体に内蔵されているエネルギー量の最大値を表しているわ。エネルギーを消費する武器などを使うと減っていくものよ。他の能力値の説明もまとめて表にしたから、見てほしいわ」

HP ヒットポイントを表す。攻撃を喰らうと減り、ゼロになると戦闘不能となる。
EN エネルギー量を表す。空を飛んだり、エネルギー消費型の攻撃をすると減る。ゼロになっても戦闘不能にはならない。
運動性 機動性を表す。この数値が高いほど、ユニットの回避率が上がる。
装甲 いわゆる防御力を表す。この数値が高いほど、敵から受けるダメージを軽減することができる。
限界 ユニットの稼動限界値を表す。近年では採用されるケースは少ないため、割愛。
移動力 マップ上で一度に移動できるマスの数。多ければやはり便利である。
サイズ ユニットの大きさを表す。SからLLまである。
パーツ そのユニットに強化パーツ(装備アイテム)をいくつつけられるかを表す。基本的に強いユニットは少なく、弱いユニットは多くつけられる傾向にある。
適応 ユニットが行動をする際に、どれだけ地形の恩恵を受けられるかを表す。陸・海・空・宇宙が基本で(高い)S〜E(低い)があり、−(マイナス)となっているものは全く適応していないことになる。回避、装甲、攻撃力などあらゆる要素に影響がある。

唯「おぉ〜、頭の悪い私でもわかりやすいですなぁ〜」

和「この中で一番難しいのが地形適応ね。だけど一番重要でもあるわ。これを説明するのに一番良い例がゲッターロボよ」

憂「あ、たしかステージで説明されたよ。ゲッター1は空戦用、ゲッター2は陸戦用、ゲッター3は水中戦用だって」
171 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/05(金) 18:00:01.42 ID:kC/n/4M0

和「その通りよ、憂。これも表で見るとわかりやすいと思うわ」

陸 空 海 宇宙 地中
ゲッター1 B S C A  −
ゲッター2 S − C A  A
ゲッター3 S − S B  −

和「となっているわ。ゲッター3はスパロボでは水中戦の機会が少ないから、陸の適応も高いことが多いわ。原作でも陸上でパワーを活かすことも多かったしね」

唯「和先生! 地中とはなんですか!?」

和「良い質問ね、唯。ゲッター2は原作では地中を潜って敵に奇襲を仕掛けることが多かったことを再現して、地中に潜ることができるのよ。地中に潜ることで敵から全く攻撃を受けなくなるの。一応、システム上は敵も地中に潜れば攻撃されるんだけど、そういう敵が現れたことはないわ。クリアできなくなる可能性があるからね」

唯「ひょえぇ〜、便利な世の中だねぇ〜」

和「ここからが重要なんだけど、地形適応は『ユニットの装甲値、運動性、武器の攻撃力に直接修正をかける』の」

憂「つまり、地形適応が低いと、ユニットの能力が充分に活かせなくなっちゃうんだね」

和「その通りよ。Sで1.2倍、Aで1倍、Bで0.8倍、Cで0.6倍とどんどん下がっていくわ。例を挙げると、ゲッター2を陸上で使用すれば、運動性、装甲、武器攻撃力がそれぞれ1.2倍されるけど、海では0.6倍に、つまり2/3程度の能力になってしまうの。そして、空には全く適応していないため、空中にいる敵には手も足もでなくなってしまうの」

唯「なるほど、そういう時はゲッター1に変形して空の敵に攻撃するんだね!」

和「そうよ、唯もわかってきじゃない」

唯「でへへ〜」
172 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/05(金) 18:01:06.49 ID:kC/n/4M0

憂「和ちゃん、割愛されちゃった限界って何なの?」

和「せっかくだから説明するわ。正確には『パイロットの反応速度に対して機体が正確に稼動する限界値』で、ガンダムの原作で『ニュータイプとして覚醒していくアムロの機体運用テクニックの速さにガンダムの動きが追いつかなくなってしまった』ことを再現した能力値だったの。スパロボはパイロットの回避能力+ユニットの運動性が総合的な回避能力になるんだけど、この数値が限界値を上回ってしまうと『パイロットに機体が追いつかなくて、回避能力が発揮できない状態』になってしまうの。例を挙げるわ」

パイロット(回避値) ユニット(運動性) 総合回避力
アムロ(200) ガンダム(100)=300

和「となるんだけど、ガンダムの限界値が280だった場合、本来は300になるはずの回避力が280で頭打ちになってしまうの。このことを『ユニットの限界を振りきっている状態』と呼ぶのよ」

唯「」プスプス

憂「和ちゃん! お姉ちゃんがショートしちゃってる! 私もさっぱりわからない!」

和「えぇ、説明してる私もよくわからなくなるわ。だから最近のスパロボではこの限界値自体を設定していないわ。もしもこの限界反応という概念を正確に表すとなると、以下のような式になるわ」

パイロット(回避)+パイロット(反応)+ユニット(運動性)の合計値がユニットの限界値を上回る、もしくは下回る場合、その上回った(下回った)分の値を最終的な回避、命中の値に差分として加える。ただし、この差分はパイロットの技量値で軽減することが出来る。

和「という感じだと思うんだけど、これを採用するとなると、データ数値の設定とプログラミングが非常に複雑なものとなるから、採用されることはないと思うわ。ちなみに、私(スレ主)はGジェネ、ギレンの野望などはプレイしたことがないので、そのあたりはあしからずでおねがいします」

唯「和先生! もうわからないので次の説明をお願いします!」

和「そうね、私も頭が痛くなってきたわ。あとは機体サイズとパーツスロットかしらね」

憂「機体サイズはS、M、L、LLまであるんだね」

和「えぇ、Sが5〜9メートル、Mが10〜29メートル、Lが30〜99メートル、LLが100メートル以上となるわ。これも結構重要なシステムなんだけど、サイズが大きいユニットは小さいユニットに対して攻撃が当たりにくくなるわ。また、最近ではサイズが小さいユニットが大きいユニットに与えるダメージが減少されるわ。たまにSSサイズといって人間とほぼ同等の大きさのユニットも存在するわ。有名な例がGガンダムのドモン・カッシュと東方不敗ね、この二人は原作でも素手でモビルスーツを破壊する能力を持っているから。スパロボでもイベント専用ユニットとして出たりするわ、完全にギャグの領域よ」

唯「流派! 東方不敗は!」ズバババババババ!

憂「王者の風よぉ〜!」ズバババババババ!
173 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/05(金) 18:03:59.90 ID:kC/n/4M0

和「次はパーツスロットだけど、RPGでの装備アイテムにあたる強化パーツをいくつつけられるかという数字なんだけど、基本的に強いユニットはスロットが少なく、弱いユニットは多い傾向にあるわ」

唯「それはどうしてなの? 強いユニットのほうがいっぱいつけられそうだけど」

和「たしかにその通りだと思うけど、スパロボには『弱くてもお気に入りのユニットを使うことに意味がある』という意義もあるわ。つまり、原作ではガンダムにまるで歯が立たないザクが大好きな人はたくさんいるわ。もちろん、スパロボでもそれは再現されていて、ザクは基本性能だけではガンダムやマジンガーZにはまるで歯が立たないユニットなの」

憂「そうか! だからその性能差を強化パーツスロットの差で補うんだね!」

和「大正解、憂。もちろん、補いきれない差はあるけれど、ザクやアフロダイのような一見役に立たないユニットだけでクリアしたり、獲得資金を使用せず強化パーツだけでクリアする楽しみ方もあるから、そういう時はパーツスロットの多いユニットが役に立つ場合もあるのよ」

唯「へぇ〜、ユニットだけのことを聞くだけでこんなにも奥が深いんだね」

和「あら、もうこんな時間ね。結局ユニット能力の説明だけで終わってしまったわ」

憂「スーパー系とリアル系の違いはまた今度だね!」

和「えぇ、まあ、憂はもうわかってると思うけど」

唯「私のために、是非!」

和「わかってるわ、唯」

憂「それじゃあ、またね」

唯・憂「ばいば〜い」

和「それじゃあ私、生徒会行くね」

唯「ここで言った!?」

今日はここまでです。次回はホワイトベースルート(ドラグナー×生徒会の一存、バンプレストオリジナル×Baby princess、ライディーン×かみちゅ)です。
ガンダムの乗ってないホワイトベースなんてっ!!
174 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/05(金) 20:28:08.69 ID:YtW8LYAO
乙、俺もGジェネやったことないな
175 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/06(土) 17:13:34.01 ID:7MiPauE0
再開します。

 第七話

和「絶望した! TABが反映されてなくて絶望した!」

唯「ど、どうしたの、和ちゃん? 本編に出られないんじゃなかったの?」

和「なぜなになでしこ出張版よ、唯」

唯「な、なんたってー!?」

和「前回に掲載した表が乱れていたから、ここに修正版を載せるわ」

唯「まずはユニットの基本能力説明だね!」


HP  ヒットポイントを表す。攻撃を喰らうと減り、ゼロになると戦闘不能となる。
EN  エネルギー量を表す。空を飛んだり、エネルギー消費型の攻撃をすると減る。ゼロになっても戦闘不能にはならない。
運動性 機動性を表す。この数値が高いほど、ユニットの回避率が上がる。
装甲  いわゆる防御力を表す。この数値が高いほど、敵から受けるダメージを軽減することができる。
限界  ユニットの稼動限界値を表す。近年では採用されるケースは少ないため、割愛。
移動力 マップ上で一度に移動できるマスの数。多ければやはり便利である。
サイズ ユニットの大きさを表す。SからLLまである。
パーツ そのユニットに強化パーツ(装備アイテム)をいくつつけられるかを表す。基本的に強いユニットは少なく、弱いユニットは多くつけられる傾向にある。
適応  ユニットが行動をする際に、どれだけ地形の恩恵を受けられるかを表す。陸・海・空・宇宙が基本で(高い)S〜E(低い)があり、−(マイナス)となっているものは全く適応していないことになる。回避、装甲、攻撃力などあらゆる要素に影響がある。

和「次は地形適応の説明のゲッターロボの表よ!」


        陸 空 海 宇宙 地中
ゲッター1   B S C A  −
ゲッター2   S − C A  A
ゲッター3   S − S B  −

純「最後は限界反応説明の表だよ!」

パイロット(回避値)  ユニット(運動性) 総合回避力
アムロ(200)    ガンダム(100)=300

純「ふ〜、なんとかなりましたね、先輩!」

唯・和「……誰?」

純「言うと思ったーっ!」
176 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/06(土) 17:24:42.80 ID:7MiPauE0

 重慶 元連邦軍基地

 この基地を占領したギガノス軍はハルヒ・スズミヤ・プラートとその親衛隊のプラクティーズを迎えていた。

 そして、その着任早々にハルヒはモニター越しの月にいるドルチェノフ中将と会話をしている。

ドルチェノフ『それで、まんまと上海上陸を許してしまったというわけだな、プラート少佐』

ハルヒ「アンタたちが艦をケチってくれたおかげでね」

ドルチェノフ『言い訳は聞いておらん。貴様らの任務は即座にD兵器を取り戻すことだ』

ハルヒ「…………」

ドルチェノフ『その反抗的な目は止めたほうがいいと何度も忠告したはずだぞ、プラート少佐!』

ハルヒ「それは失礼。生まれつき、ドルチェノフ殿の前に出ると自然とこういう目つきになってしまうんです」

ドルチェノフ『貴様がそういう態度で出てくるなら、こちらにも考えはあるぞ……おい!』

みくる『涼宮さぁん!』

ハルヒ「みくるちゃん!?」

 モニターの前に連れてこられたのは首輪に鎖で繋がれた朝比奈みくるだった。目の端に涙をためるみくるを見てハルヒは憤りを露わにした。
177 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/06(土) 17:35:28.47 ID:7MiPauE0

ハルヒ「ドルチェノフ……! この卑怯者!」

ドルチェノフ『口の聞き方に気をつけろといったぞ、プラート!』

みくる『あぅっ!』

 ドルチェノフが鎖を引っぱり、みくるが苦しそうに呻いた。

ドルチェノフ『本来ならば、裏切り者の娘など即座に牢獄行きなのだぞ! その汚名を晴らす機会を与えてやっているのは誰だと思っている!』

ハルヒ「くっ……」

みくる『す、涼宮さん、私のことは……心配要らないですから……うっ』

ドルチェノフ『誰が喋っていいと言ったか!』

みくる『えほっ、えほっ』

ハルヒ「ドルチェノフ……ッ!」

 カメラに映らないところでハルヒの拳が震えている。もしこの部屋にキョンがいれば、既にモニターに殴りかかっていたかもしれない。既にハルヒの脳内でドルチェノフは絞殺されている。

ドルチェノフ『貴様はD兵器を取り戻すことを考えていればよいのだ。わかったか!』

ハルヒ「わかってるわよ……!」
178 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/06(土) 17:53:31.28 ID:7MiPauE0

ドルチェノフ『ならばよろしい。期待しているぞ、プラート少佐』

 モニターがブラックアウトした。その瞬間、ハルヒは卓を思いっきり蹴りつけた。

ハルヒ「ドルチェノフの屑ごときに!」

 ハルヒは技術の名門プラート家に生まれたが、その出自に似合わない大胆な性格で地球連邦のスペースコロニーに対する傲慢な態度に反発したメサイア・ギルトールの下につき、専用のカスタム機ファルゲン・マッフを駆り独立戦争で戦果を挙げたが、思わぬところで世界は転がってしまった。

 ハルヒの父親でありギガノス帝国の技術者としてメタルアーマー開発の第一人者のラング・プラートが、突如D兵器の前身であるD計画の開始直前にあらゆるデータを廃棄して連邦軍に亡命したのだ。
 結果、ギガノス軍の兵器開発は停滞してしまった。そのためにギガノス軍は総力をあげてラング・プラートの身柄の確保、もしくは連邦で開発されたD兵器の奪還を行っていた。

 ドルチェノフは連邦軍に個人的な私怨を持ち、ギガノス軍の中でも特に過激な思想を持つ男で、ラング・プラートが逃亡した直後にハルヒの反逆を懸念して友人と見られる朝比奈みくるを軟禁して逆に私兵化していた。

ハルヒ「今、ドルチェノフを誅することはできない……その上、このままD兵器奪還が遅れれば、マスドライバーの使用を強行されてしまう」

 ギルトール元帥の信頼篤く、軍内のエースとしてカリスマ性もあるハルヒがD兵器奪還のために月から離れ、尚且つ任務に失敗し続けることにドルチェノフは跳梁跋扈して軍制改革を図っているだろう。その狙いは、地球上に直接打撃を与えることが出来るマスドライバーキャノンの使用だ。
179 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/06(土) 17:58:54.30 ID:7MiPauE0

 メサイア・ギルトールは元々、スペースノイドを蔑視する連邦への杭打ちのつもりで決起したため、全面攻撃による連邦潰滅は望んではいない。国力差を埋めるためと牽制の目的でマスドライバーを有しているだけに過ぎない。
 その理想は、あくまでも地球環境の保護と、それを貪る連邦政府の腐敗部分の払拭なのだ。

 しかし、ドルチェノフは違った。彼は己の私怨のために連邦に勝利することを望んでいる。マスドライバーキャノンを使用すれば戦争を有利に進めることができる。そのためにハルヒの存在はじゃまだったのだ。
 ラング・プラートの逃亡から瞬時に朝比奈みくるを軟禁してハルヒを私兵化した狡猾さは、ギガノスの思想とはかけ離れたものだとハルヒは確信した。

ハルヒ「早くD兵器を取り戻さないと、ギルトール元帥と私の理想が……」

 ハルヒは部屋を出た。そこにはキョン、古泉、長門が待っていた。

キョン「ハルヒ、ドルチェノフが何だって?」

ハルヒ「いつも同じよ、さっさとD兵器を捕らえろって」

古泉「D兵器を搭載した戦艦ホワイトベースは上海から連邦軍に合流したようです。新型パーソナルトルーパーも含めて、近いうちに作戦が展開されるでしょう」

ハルヒ「だったら先に仕掛けるわ。機動兵器の数ならまだ私たちのほうが多いから少しでも戦力を削ぐわよ」

キョン「しかし、もう何十日も働きづめじゃないか、ハルヒ! いくらお前でもぶっ倒れちまうぞ」

ハルヒ「私には! 一秒たりとも止めていられる時間なんてないのよ!」

キョン「だがな――」

ハルヒ「黙りなさい!」

 ぴしゃりと一喝したハルヒの眼差しは正面に立つキョンを捉えてはいなかった。もちろん、その後ろにいる古泉でも長門でもなかった。

ハルヒ「一刻も早くD兵器を倒して、みくるちゃんをあの外道から取り戻さなくちゃいけないのよ! 休んでも休まらないわよ!」

キョン「ハルヒ……」

 突き飛ばすようにしてハルヒはキョンの横を通り抜けた。あっという間にその後姿は小さくなるが、それ以上に疲労のオーラが見えていた。
 キョンのやや下に長門が進んできた。彼女はキョンを見上げている。

長門「彼女は出撃を取り消さない。なら、早いほうがいい」

キョン「長門……」

古泉「幸い、戦局は実際に我々に有利です。後は涼宮さんの負担を僕たちのサポートで減らすことです」

キョン「あぁ、わかったよ……」

 古泉と長門は急ぎ足でハルヒの後を追っていった。キョンは己の無能を呪った。

 今日はここまでです。
180 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/07(日) 19:22:32.61 ID:gMLllUAO
支援
181 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/08(月) 17:09:02.71 ID:.hdXSK20
再開です


 ホワイトベース 格納庫

 シミュレーションを終えたヒカルと立夏、シノとアリアとスズがハッチから出てきた。

立夏「あーん! また負けちゃったよー、オネーチャーン!」

 開口一番、天使家の七女の立夏が隣の三つ上の四女ヒカルに泣きついた。六女の氷柱と同じくらいの負けず嫌いに加えてまだ十二歳のハッスル少女は爆発してくる感情を抑えることを知らない。

ヒカル「三対二だからしょうがないさ、立夏。それでも戦績は確実によくなっているんだから、落ち込むことじゃないぞ」

 ヒカルの言うとおりだった。シミュレーションを開始した当初はすぐに調子に乗って突っ込んでいって撃墜されてしまう立夏だったが、泣いて反省会を重ねるにつれて跳ねるような抑揚のある動きを上手にコントロールしてドラグナーチームを翻弄していくようになった。たった今だって、2型と3型を撃墜するにまで至ったのだ。

ヒカル(むしろ、成長していないのは私じゃないのか……?)

 胸に顔を埋める妹の頭を撫でながら、ヒカルは不安を抱いた。元々、何事も堅実にこなしていく彼女は自分の成長を実感しにくいタイプでもある。それでも剣道やボクシングなどは倒せない相手を倒したりすることでレベルアップを確認していたのだが、ヒカルが相手をしているシノとはチームとしてだけではなく、パイロットの技量でも差があるようだった。何度やってもその脇を抜くことが出来ない。
 つまり、ヒカルがシノを前に二の足を踏み続けている間に、立夏は一人で二機を落とすにまで達したのだ。

海晴「おつかれさま〜、ヒカルちゃん立夏ちゃん」

ヒカル「わっ」

立夏「うぎゅ」

 教導官代わりをしている海晴がヒカルと立夏にまとめて抱きついてきた。立夏の鼻が強く胸を刺激して、ヒカルは赤くなった。
 霙はドラグナーチームのほうへ行って指摘をしている。

海晴「ヒカルちゃんも立夏ちゃんも最初に比べてうんと操縦が上手になったわね。もう私が言うことなんてないかも」

ヒカル「……!」

 姉の優しい腕の中でヒカルは慄いた。一度も勝つことができなかった彼女には、海晴の言葉をネガティブなイメージに捉えてしまう。
182 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/08(月) 17:09:52.01 ID:.hdXSK20

立夏「ホント、海晴オネーチャン?」

海晴「うん、立夏ちゃんなら、ヴァイスリッターに乗るだけならいいかな」

立夏「ホントに!? ウッワァーイッ!」

海晴「先に行って待っててね。私も準備していくから」

立夏「ハーイッ!」

 立夏がダッシュで格納庫を走っていく。それをヒカルは唖然と見つめている。
 触ることさえ許されなかった海晴のヴァイスリッター。それを許された立夏。
 ヒカルにとってはお前は役立たずだと言われたようだった。

ヒカル「…………」

海晴「あら、ヒカルちゃん、どうしたの?」

ヒカル「海晴姉、私は……」

 ――必要なのですか?
 問おうとしたが、それはできなかった。ヒカルの顔が海晴の胸元に寄せられたからだ。先ほど、ヒカルが立夏にしていたみたいに――

海晴「ヒカルちゃん、おうちのみんなが心配?」

ヒカル「えっ……?」

 急に何の話をするのだろうか――? そう思ったが、家族のことはすぐに頭に思い浮かんだ。
 0歳から18歳までの十九人姉妹。奇跡のような家族。そして、ヒカルが命に代えても護りたいと想う大切な家族。
 今はヒカルたち四人を除いて十五人で日本の家にいる。
 初め、ホワイトベースに乗っていくと言った時、天使家は大騒ぎになった。
183 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/08(月) 17:10:26.25 ID:.hdXSK20

麗「どうして海晴姉さまたちが戦争なんかに行かなくちゃいけないわけ!? そんな汚らわしい男たちが勝手に始めたことに私たちが巻き込まれなくちゃいけないわけ!?」

氷柱「そうよ! だいたいママも何考えてるのよ! 実の娘達を戦場に送り込むなんてどういう神経してんのよ!?」

 家族の中でも極度の男嫌いで『小学校はみんな公立!』のルールを曲げて私立の女子校に通っている九女の麗や特進クラスに通って戦争なんて愚かしくてくだらないこととわかっている氷柱の二人がやっぱり大反発した。

さくら「お姉ちゃんたち、遠くに行っちゃうの? もう海晴お姉ちゃんのおいしいプリンも食べれなくなっちゃうの? さくら、そんなのさみしくなっちゃうの……うわぁーん!」

綿雪「ユキも……せっかく病気が治って、家族みんなで暮らせるはずなのに……」

小雨「さくらちゃん、ユキちゃん、泣かないで……ね」

 真璃や虹子、青空もつられて泣き出す。年少組の彼女たちは戦争はよくわからないが、『大好きなおねえちゃんがいなくなる』ことが嫌なのだ。小学生で少しは物事がわかるようになっている星花や夕凪、吹雪も普段の元気をなくしてしまっている。それを見てヒカルは酷く胸が締め付けられる思いだった。

あさひ「ばぁぶ! だばっぶ! ぶっぶー!」

 赤ん坊のあさひも怒っているように見える。それを声援のようにして氷柱はまた机を叩いて声を荒げた。

氷柱「ホラ見なさいよ、あさひだって大反対よ! それでも姉様たちは行くっていうの!? 立夏まで連れて!」

立夏「氷柱オネーチャン! 立夏はイヤイヤ行くんじゃないよ!」

氷柱「だから! そういう考えが甘いって言ってんのよ! どうしてウチの家族ってばこうもお人よしばかりなのかしら!」

 バンッ! と一際大きい音で机を叩く。それにシンクロしたように咳き込む声が聞こえた。

観月「げほっ、う、うぅ……」

蛍「あぁ、氷柱ちゃん、大声出しちゃだめよ……観月ちゃんに響いちゃう」

氷柱「あ、ご、ごめんなさい、ホタ姉様……」
184 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/08(月) 17:11:49.33 ID:.hdXSK20

 九尾の狐の守護霊を持つ観月は人一倍霊感に鋭く、その影響を受けやすい。人の魂の行き着く場所とされているバイストン・ウェルからやってきたオーラ力にあてられてしまったのである。
 気が強いが、それ以上に家族の身を心配するゆえに熱くなる氷柱だが、乱れた呼吸を繰り返す観月にさすがにクールダウンした。それを見計らって蛍と一緒に観月を看ていた三女の春風が優しく声をかけた。

春風「ねぇ、氷柱ちゃん。氷柱ちゃんがすごくみんなのことを想ってくれているのはとてもよくわかるわ。海晴お姉ちゃんに霙ちゃん、ヒカルちゃんと立夏ちゃん……春風だってすごく心配だもの……いなくなっちゃうのはイヤ……でも、ママがもっと心配したのは、みんなが本当の意味でばらばらになっちゃうことなの……」

氷柱「は、春風姉様……」

 春風の言いたいことが、氷柱にはわかった。現在は歴史が大きく動こうとしている時代なのだ。その世界で、ただそこにあるだけで奇跡のような十九人姉妹が、いつ引き裂かれるのかわからない。
 だから、彼女たちのママは――

霙「私たちはなにも死ににいく訳じゃないさ、氷柱」

氷柱「霙姉様……」

 ここまでずっと一言も喋ることがなかった霙の声音は、この場で最も意味のあるものとなった。

霙「とどのつまりは、ここに帰ってくるために、少し長く家を空けるだけさ」

氷柱「そ、そんなこと言ったって……か、かえっ」

 それ以上は氷柱の喉から出てこなかった。そこから先のことを想像するだけで心臓が張り裂けそうになる。

海晴「氷柱ちゃん」

 端正な顔がぐしゃぐしゃになるのを必死で止める妹を、長女の海晴がそっと抱きしめた。何度こうして抱擁されたことだろう。そして、これから何度こうしていられるのだろう……

氷柱「海晴姉様……」

海晴「私たちが出かけるのは遠い場所かもしれない。でも、帰るおうちがないと、私たちもがんばれないわ。だから、氷柱ちゃんはここでみんなを守ってね。春風ちゃんと蛍ちゃんだけじゃ、ちょっと頼りないからね」

氷柱「……はい」

 氷柱がその夜、何年ぶりかの大泣きをしたのをヒカルは知っていた。午前三時、こっそりと家を出ようとしたヒカルたちを家族全員が起きてきて盛大に見送られた。そのために、氷柱が全員をたたき起こして自分の部屋に集めていたこともすぐに気づいた。
185 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/08(月) 17:12:32.99 ID:.hdXSK20

海晴「ヒカルちゃんは、みんなにとって頼りになるお姉ちゃんよね。私も霙ちゃんもすごく頼りにしているのよ」

ヒカル「だけど、私は……」

霙「やあ、こんなところでいつまでひっついているんだ、ヒカル?」

ヒカル「えっ、霙姉……?」

 黒髪のショートボブにグレーのパイロットスーツを着た霙が近くまでやってきていた。上からマントを羽織っているが、霙がパイロットスーツを着用するのは出撃するときだけだ。それ以外では断固として着用しようとしない。いったいどうしたとうのか?

霙「ぼうっとしている時間はないぞ、ヒカル。早くアルトの速度に慣れて次のステップに進んでもらわないといけないんだからな」

ヒカル「えっ、えっ? 霙姉、それはどういう……?」

 やや困惑した面持ちで二人の姉を交互に見るヒカルに霙は少し非難するような目を海晴に向けた。

霙「なんだ、まだ言ってないのか? 我々の時間は無限ではないのだから、やるべきことは早く済ませるべきだろう」

海晴「あら、姉妹のコミュニケーションは決して無駄なことじゃないわよ。霙ちゃんもどうかしら?」

霙「フッ、海晴との接触は厄介な反応を起こしてしまう。私は先に待っているぞ、ヒカル」

ヒカル「あ、あの、いったい何のことを……」

海晴「ウフフ、合格は立夏ちゃんだけじゃないのよ」

ヒカル「えぇっ?」
186 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/08(月) 17:13:07.23 ID:.hdXSK20

海晴「ヒカルちゃんはこれから霙ちゃんといっしょにアルトアイゼンに乗ってもらうのよ」

ヒカル「で、でも私は全然――」

海晴「ヒカルちゃん。ヒカルちゃんはさっきの訓練で何分、シノちゃんと戦っていたのか知ってる?」

ヒカル「え、い、いえ……」

 戦闘中に時間のことなど全く入ってこない。少しでも目を切ればやられてしまうし、終わったあとは負けの喪失感でそれどころではないのだ。

海晴「ウフフ、ヒカルちゃんは目の前のことに集中するのはいいけど、もう少し視野を広くするのが新しい課題ね。三十分以上も戦っていたのよ」

ヒカル「そ、そんなに……?」

海晴「初めの頃は立夏ちゃんに振り回されるのもあったけど、一分でバッサリだったのが、今じゃすっかりシノちゃんを釘付けにしているのよ。だから立夏ちゃんもアリアちゃんとスズちゃんに追いつけるようになったのよ」

 ヒカルは面映い気持ちになった。その背中を押すようにして格納庫を歩きながら海晴はヒカルをベタ褒めしていた。

海晴「本当に、いつも色んなスポーツをしているかしら。ピカ一の集中力だと思うわ。霙ちゃんも言っていたわ。これならアルトアイゼンの加速にも対応できるだろうなって」

 十九人姉妹の長女だけあって、あっという間にヒカルの沈んでいた心を持ち上げてしまった。
 やっぱり、海晴姉にはかなわないな、とヒカルは口元を綻ばせていた。

 しかし、意気揚々と姉の愛機に乗り込んだヒカルと立夏の二人だったが、アルトアイゼンの爆発的な加速力と急停止したときの反動にヒカルは胃が飛び出ると錯覚し、立夏はヴァイスリッターの戦闘機よりも激しいアクロバティックな飛行に目を回して、仲良く医務室送りとなってしまった。

立夏「うへぇぇぇ〜、気持ちワルイぃ〜……たこ焼きとシュークリームとたいやきとアイスクリームとポップコーンとハンバーガーをいっぺんに食べた後みたい〜……」

ヒカル「やめろ、立夏……食べ物の話をするな……こっちはそれらを全部吐き出した後みたいなんだから……」

 幸い、ハルヒたちギガノス軍が攻め込んでくるのは、この十時間後だった。
187 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/08(月) 17:31:13.63 ID:.hdXSK20

 ホワイトベース ブリッジ

オペレーター「敵機接近! 数は十六! 先頭はファルゲン・マッフです!」

シノン「蒼き鷹、ハルヒさんね!」

オペレーター「陸上二個中隊も接近! 混成部隊です!」

シノン「そちらは連邦の既成部隊に任せましょう。私たちは敵機動兵器を狙います! ドラグナーチーム、パーソナルトルーパー部隊、発進!」

シノ「了解! ドラグナー1、出るぞ!」

 中国の上空に天草シノが乗るドラグナー1型が走る。そのときには既にハルヒたちギガノス機動部隊は戦闘配置についたばかりの連邦軍の基地に向けてミサイル攻撃を開始していた。

ハルヒ「米粒一つ、弾薬一グラムたりとも残してやらないわよ、燃えなさい!」

 シュボッ、ドドォンッ! デュアルミサイルを連発し、あちこちに火柱をあげていく。出遅れた連邦兵士が物資と一緒に吹っ飛んでいくのも見えた。それほどハルヒは地上と近い位置を飛行していたのだ。

 ファルゲンの前方で何かが上がってきた。残った煙の細さから対空砲の種類であることはすぐにわかった。

ハルヒ「腐った連邦に与するゴミ虫の分際で、私に歯向かおうって言うの!?」

キョン「ハルヒ!?」

ハルヒ「やってやろうじゃないの!!」

 ファルゲンが急に旋回して、対空高射砲部隊と思しきポイントにマッフ・ユニットにつけられた三連マルチディスチャージャーを放った。すぐに一際大きい火柱が上がり、ハルヒは「それ見たことか!」と鼻で笑った。

キョン「バカやろう! 動きを止めやがって!」

 キョンの怒鳴り声がスピーカー越しに響くが、自動音量調節が働いて、警告程度にしかハルヒには聞こえていない。
 だが、今回の奇襲作戦は開始してから敵機動兵器の追撃がギリギリで届かない範囲での爆撃を行うものだ。当然、その緻密な計算は長門有希が導いたものだ。つまり、それ以外の行動は絶対にしてはいけないのだ。

 今日はここまでです。
188 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/08(月) 22:22:17.42 ID:MjUbp2AO
続き気になんな
189 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/10(水) 18:22:08.22 ID:TBmftWA0

ハルヒ「どうせファルゲンには追いつけないわよ!」

 やはり焦っている。キョンが戻るべきか逡巡しているうちに、長門はレーダーに反応していた。

長門「D兵器、三機接近」

古泉「来ましたか、予想より速かったですね」

キョン「ハルヒ! 早く戻って来い!」

ハルヒ「わかってるわよ!」

長門「降下加速を利用している。追いつかれる」

アリア「いくわよぉ……轟けぇっ!」

 ドォン! 連邦軍基地から離れるとすぐにドラグナー2型のレールキャノンが四機に襲い掛かった。その火線に隠れるようにして1型と3型は接近していった。

スズ「行きます、会長!」

シノ「ああ、頼んだぞ、スズ」

 合図で3型から対レーダーミサイルが発射される。佐世保基地を出発してから数度の小競り合いをしてきた中で、長門の乗るヤクト・ゲルフ・マッフが、プラート隊の行動の全体をサポートする機体であることがわかったため、先にその動きを制限する対レーダーミサイルがスズの3型に搭載されたのだ。

長門「私を狙ってくる? 無駄」

 レビ・ゲルフのジャミング能力に誘導ミサイルは無効化される。特定周波数に反応してコントロールを自動で決定している。それをジャマーで乱されて対レーダーミサイルはあさっての方向へふらふらと落ちていってしまった。

 ガガガガガガガガ! 

長門「……!!?」

 機体が大きく振動して長門有希はその人形めいた顔に一瞬だけ狼狽の色を浮かべた。サブモニターが装甲の損耗率を知らせた。

長門「遠距離射撃……レールガトリングガン?」
190 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/10(水) 18:23:21.63 ID:TBmftWA0

 新しい武器を備えていたのは3型だけではなかった。レールキャノンを撃った後の2型が二連装式レールガンをレーダーミサイルから反秒遅れて使用したのだ。シミュレータで何度も訓練したフォーメーション攻撃の一つで、その要はやはり高機動、接近戦用機体のドラグナー1型だ。

シノ「はああぁっ!」

ハルヒ「ちっ、またD兵器、邪魔をするな!」

 とにかくシノがハルヒのファルゲンの動きを抑えなければならない。この一対一の戦闘にヒカルとのシミュレータ戦闘を活かすのだ。

ハルヒ「動きがよくなっている……D−1のパイロット。もう素人じゃない!」

 ズギャアァッ! ドラグナーとファルゲン、二機のレーザーソードが重なった瞬間、ハルヒは自分のソードを手からわざと離して加速、一気に離脱しようとした。

シノ「くっ!」

 手放す際に若干の捻りを加えられたハルヒのレーザーソードが跳ねるように空中を舞った。それにシノが翻弄される間に濃い蒼色の機体は全速を出していた。

シノ「しまった! 逃げられてしまう」

 すぐにミサイルポッドを放出するが、完全に手遅れだったらしい。既にモニターには航跡だけしか映っていなかった。
191 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/10(水) 18:24:15.48 ID:TBmftWA0

 結局、ギガノス軍の作戦は大成功に終わっていた。ほんの五分にも満たない戦闘時間だが、身体が感じる疲労は工場のライン作業のフルタイムにも匹敵する。
 ハルヒはシートにもたれかかって深く息を吐いた。手が震えている。初陣以来だった。

ハルヒ「……各機、損傷は?」

キョン「長門が軽微だが攻撃を受けた。他はメタルアーマーが二機撃墜された」

古泉「代わりに、陸上部隊が将校を捕らえました」

ハルヒ「そう、少しは交渉に使えるかしらね。有希、大丈夫?」

長門「へいき」

 無機質な声に安堵する。目の前が霞んで見える。戻ったらさすがに休んだほうがいいかなとハルヒが考えたとき――

長門「高速接近――攻撃――二秒――ッ!」

 ギュボォッ! エネルギー光が編隊を貫いた。そして――

キョン「なっ、長門ぉーっ!」

 手足の焼け爛れたレビ・ゲルフが暴発する飛行用フォルグ・ユニットに攫われて連邦軍領域に墜落していく。白煙に混じるオレンジ色の光りはエンジンの火が粉塵に干渉しているものだ。

ハルヒ「ゆ、有希……?」

 有希が、落とされた? あの有希が? 無表情で、必要なこと以外は全然喋らないけど、本当は心配性でいつもみんなの身を案じて、みんながちゃんと帰ってこれるように周囲に目を配っている有希が――……

ハルヒ「私が……せいで……?」

 「離せ、古泉!」「いけません! あなたまで行っては――!」通信の声が遠く聞こえる。ぼやける視界は徐々に暗闇に閉ざされている。

ハルヒ「ごめんね……有希……」

 計器が滲んで見え、ハルヒは意識を手放した。
192 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/10(水) 18:28:57.97 ID:TBmftWA0

有希「…………」

 どうやら木がクッションになってくれたらしい。破壊されたのは手足とフォルグ・ユニットで、胴体は装甲の半分がもっていかれたが内部にダメージは少ない。どうやら手加減をしてくれたらしい。ビーム兵器は出力調整で実弾兵器よりも多用途に扱えるのだが、ギガノス帝国では資源の関係で弾丸やミサイルのほうが生産しやすいため、研究は遅れている。

有希「ハッチも、開かない」

 手動で開けるために立ち上がろうと試みたが、落下の負荷にまだ下半身が落ち着きを取り戻していないようだ。

 ここはどこだろう。少なくとも自軍の領域ではないようだ。落下時間から僚機到着までの時間を計算する。ハッチが開くとき、誰がいるのだろう。救出されるなら――

有希「…………」

 そこで思考を止めた。外部操作でコクピットが強制排出される音だ。
 しかし、眩しい太陽を背に受ける影は想像していたものではなかった。

霙「動かないでもらえるとありがたい。悪いが身柄を拘束させてもらおう。大人しく着いてきてくれればぞんざいには扱わないと約束する」

 第七話 焦燥! 小さくて、大きすぎる誤算 完

 全体的にハルヒ回とはいえ、IMはべびプリで戦闘は生徒会役員が活躍。自分でも納得できねーが戦争に結果以外のシナリオなんてねーのさ。
 そして戦闘シーンがすくねーのさ。反省。
193 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/10(水) 21:54:30.18 ID:cg1n0YAO
乙、読んでて思ったが
○話□□□□
は最初の方に書いた方が雰囲気出んじゃないかね
194 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/13(土) 18:33:24.12 ID:z4yoZuM0
再開です


 インターミッション

唯「さん!」

和「に」

憂「いち!」

唯・憂「どか〜ん!」和「どかーん」

唯「おーいみんな〜、集まれ〜!」

和「あつまれー」

憂「なぜなになでしこの時間だよ〜」

唯「え、なぜなになでしこって何かって?」

憂「それは『スーパーロボット大戦のことなんて何も知らないよ!』って人に和ちゃんが簡単に説明をしてくれる番組だよ」

和「今日は第四回『スーパーロボットとリアルロボットの違い その2』についてよ」

唯「前回はユニットの能力の説明だけで終わっちゃったもんね」

和「時間もないことだし、さっそくはじめましょう」
195 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/13(土) 18:34:58.69 ID:z4yoZuM0

和「スパロボでは、登場するロボットは大きく分けて『スーパー系』と『リアル系』に分けられるわ」

唯「ふむふむ」

和「それじゃあ、憂。IMPACTが四話まで終わった段階で集まったユニットをスーパー系とリアル系に分けてもらえるかしら」

憂「うん。え〜っと、こんな感じかな?」

 スーパー系
 ダンクーガ、マジンガーZ、ダイアナンA、ボスボロット、ゲッターロボ、グレートマジンガー、ビューナスA

 リアル系
 アルトアイゼン、ザク改、EZ-8、メタス、NT-1アレックス

和「大正解よ、憂。わかりやすく言うと、『スーパー系は耐久力に優れて攻撃力が高い』『リアル系は回避力が高くて移動力や武器の性能など汎用性に優れている』の二つに分かれるわ」

唯「作品で言うと、マジンガーZやゲッターロボがスーパーロボット、ガンダムがリアルロボットなんだね」

和「そうね、ただゲーム内でこれが明確に示されているわけではないの。例えば、ガンダムの原作は宇宙戦争をリアルに描いたリアルロボットの先駆け作品と言われているけれど、アニメ本編での前半の内容はどちらかというとスーパーロボットアニメのようにガンダム一機の活躍が中心だったからね」

憂「和ちゃん、ガンダム観てたんだ」

和「小学生のときに再放送で観たのよ。とりあえず、原作者やファンの意向があるから公式にスーパー、リアルという分類はされていないの。ただ、参考までにスパロボのプロデューサーである寺田貴信氏は『劇中において、一般的となっているエネルギーを使用していればリアル系、そうでなければスーパー系という風に考えている』と語っているわ。もちろん、あくまでも基準の一例ではあるけれど」

唯「マジンガーの光子力やゲッターのゲッター線はまだ研究中だって言ってたね」

憂「ガンダムは核融合エンジンだから、リアル系になるんだね」

和「本当に細かい話をすると『ダンバインはリアル系扱いされているけれど原動力はオーラ力だ』とかいろいろと面倒な議論が発生するから、スーパーとリアルの定義づけはこのへんにしましょうか。大事なのは、スパロボでユニットを運用する上でのスーパーとリアルの違いだからね」

唯「そうだね。何を言われているのかさっぱりだよ!」

憂「いばれることじゃあないよ……」
196 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/13(土) 18:37:18.16 ID:z4yoZuM0

和「まずはスーパーロボットから説明するわ。スーパーロボットは『厚い重装甲で敵の攻撃を正面から受け止め、大迫力の必殺技を叩き込む』というのがだいたいのコンセプトよ」

唯「マジンガーのブレストファイヤーやゲッターのゲッタービームは本当にド迫力だよね」

和「そして、スパロボにおいては、スーパー系の中でもさらに『単体等身大型スーパーロボット』『合体型』『変形型』『自律型』と分けられるようになるわ」

憂「合体型っていうのは、ゲッターロボとダンクーガのことだよね」

和「そうよ。ただ、スパロボにおいては、『複数のユニットなどが合体して一つのユニットになるもの』が合体系として扱われるから、初めから一つのユニットとして登場するその二体は合体系としては扱わないわ。そして、ゲッターは1、2、3と変形するから、変形型として扱われるの」

唯「ほうほう、それじゃあマジンガーZは?」

和「マジンガーは単体等身大型に分類されるわ。初めから一つのロボットとして変形もしないし合体もしないから。また表を用意したから、見てほしいわ」

 単体型 マジンガーのように変形も合体もしないロボット。ただ、そういったギミックに設計思想が囚われないのを反映して、装甲は分類中でもナンバー1。また、一人乗りを考慮して精神ポイントが高く設定されている。撃墜されたときの修理費も安め。

 合体型 コン・バトラーやグラヴィオンのように複数のユニットが合体してできるロボット。一体で複数パイロットの精神コマンドを使うことができる上に、非常に強力な必殺技を持っているため、爆発力は随一。ただし、装甲が薄めだったり合体が解除されることがある。

 変形型 ゲッターやダイターンのように別の性能のユニットに変形できるロボット。基本の人型形態では単体系と同じだが、移動力が上がる戦闘機や長距離攻撃が出来る戦車形態などに変形して、状況に応じた戦い方ができる。

 特殊型 イデオンやエヴァンゲリオンのように分類や定義づけが難しいユニット。大抵は超次元的な力を持つが、撃墜されると暴走して敵ユニットになったり修理費が異常に高かったりする諸刃の剣のようなユニット。また、作風的にスパロボでも重要な役割を担ったりする。

唯「表の形を変えたね。ズレ対策?」

和「そうよ、本当にへこんだからね。ちなみに、分類はされていてもみんなスーパーロボットであることに変わりはないから、重装甲と大威力という基本は同じよ」

憂「特殊型っていうのは、IMPACTにもいるの?」

和「そうね、明確にこれというのはいないけれど、マシンロボという作品が特殊型に入らなくもないわ。ロムが操るケンリュウはリアル系なんだけど、ステージ上で『合身』のコマンドを使用することでバイカンフーというスーパー系のユニットに変形するの」

唯「どんな夜にも必ず終わりは来る。闇が解け、朝が世界に満ちるもの……人、それを『黎明』という」

憂「何者だ!?」

唯「お前たちに名乗る名前はない!」シャキーン

和「あなたたち、本当にスパロボ初心者……?」

唯「なんか、舞い降りてきたんだよ」
197 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/13(土) 18:39:03.56 ID:z4yoZuM0

和「次はリアルロボットね。基本のコンセプトは『高い機動性で敵の攻撃を避け、確実にダメージを与える』となるわ」

唯「でもねー、和ちゃん、アルトアイゼンはあんまり避けてくれなかったよ」

憂「うん、ガンダムのユニットはザクでも40%ぐらいだけど、アルトだけは70%ばっかりだよ」

和「そうね、それを説明するために、私がした定義づけが『汎用型』と『特化型』よ。あくまでも今日の説明をわかりやすくするためのものだからね」

 汎用型 高い運動性を持ち、あらゆる場面でも対応できるバランスのいい武装を持つ。

 特化型 特殊な状況下に対応するために作られたユニット。リアル系としての最低限の能力を維持しつつ、限定的な爆発力を持つ。

唯「ガンダム系が汎用型でアルトアイゼンが特化型ってこと?」

和「そうよ、アルトアイゼンはリアル系としては運動性が低いけど、代わりにスーパー系に匹敵する強力な武器を持ってるし、ビームコートでゴッグのメガ粒子砲をほとんど無効化できるわ」

憂「そうだね、アルトがいなかったら一話クリアできなかったよ……」

唯「苦い思い出だね……」
198 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/13(土) 18:42:48.30 ID:z4yoZuM0

和「そういうユニットはリアルな戦争を描くリアルロボットで多く作られていくのよ。代表的な例がドラグナーね。接近戦、砲撃戦、電子戦の三つのデータを取るためにそれぞれに特化した1型、2型、3型が試験体で作られたの。作品ごとに見たほうが早いと思うから、代表的なのをリストアップするわ」

 ガンダム  リアル系の代表。ほとんどは汎用型だが、キュベレイやダブルゼータガンダムのように通常の兵装を捨てて長距離兵器や強力なマップ兵器を持つ機体もある。

 Gガンダム 近接戦闘最強と言われるゴッドガンダムを始め、モビルファイターという多種多様なユニットが登場するため、ガンダムとしては珍しい特化型ばかりの作品。その破壊力はスーパー系も舌を巻くほど。

 ドラグナー 接近戦の1型、砲撃戦の2型、電子戦の3型とユニットの特性がはっきりとわかれている。原作ではこの三つのいいとこどりをした量産機の完成で戦況が大逆転する。

 ダンバイン ゴッドガンダムに並ぶ近接戦闘最強のリアル系。主武装が剣のみ、サイズがSで装甲も極端に薄く被弾=撃墜という危うい男らしさも持っているため、人気が高い。

 エルガイム ガンダム以上に汎用性がありながら、特化した能力も持つリアル系。切り払い、シールド、ビームコートにマップ兵器も所有するいいところずくめだが、味方より敵のほうが強いという恐ろしさもある。

 ナデシコ  特に限定的な性能で有名。母艦の近くにいればエネルギーが無限に回復するが、離れるとすぐにガス欠して無防備になってしまう。代わりにDフィールドという強力なバリアと長短対応可能な優秀な武装を持つ。

 魔装機神  バンプレストオリジナルから独立した人気作品。主役機であるサイバスターを始め、反則的な性能のマップ兵器を持つ機体が多い。ただ、パイロットが弱くてよく落ちる。

和「スパロボは『厚い重装甲で敵の攻撃を正面から受け止め、大迫力の必殺技を叩き込むスーパーロボット』と『高い機動性で敵の攻撃を避け、確実にダメージを与えるリアルロボット』が敵味方に集まって戦場で入り乱れることで戦略性が高まるのよ」

唯「おぉう、知れば知るほど奥が深いですなぁ」

憂「すごいねぇ」

和「これで今日は終了ね。次回は『ストーリーを盛り上げる魅力的なパイロットたち』について説明するわ」

憂「それじゃあ、またね」

唯・憂「ばいば〜い」

和「それじゃあ私、生徒会行くね」

唯「もはや挨拶みたいなものだね」

 今日はここまでです。
199 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/14(日) 17:58:30.60 ID:vNFv3kM0
再開

 第八話

 佐世保 とある中学校

ゆりえ「えっと……ですので、だいじょうぶです」

女の子「ホントですか、神様!? 本当に私の恋は叶うんですね!?」

ゆりえ「あ、あくまでも祈願をするだけですから……そのぅ」

女の子「わかりました。とにかくありがとうございます、神様!」

 ショートカットの利発そうな女の子は、陸上部らしく日に焼けた顔に満面の笑みを浮かべて赤幕の向こうへ去っていった。
 代わりに祀と光恵が入ってきた。

祀「おつかれさま、ゆりえちゃん。今日はもう終わりよ」

ゆりえ「ふえぇ〜、神さまの仕事も大変だよぉ〜」

光恵「さっきの人、陸上部の金子先輩よね。ああいう人もこういうことするのね」

祀「案外、ああいうタイプの人のほうがお願い事とか占いとか好きなのよ」

光恵「ふーん……ゆりえ、今日は天使さん家のほうに行くんでしょ?」

ゆりえ「あ、うん、光恵ちゃんも来る?」

光恵「うん、一緒に行くわ」

ゆりえ「祀ちゃんは?」

祀「残念、神社にいなきゃ」

ゆりえ「そっかぁ」

祀「いいじゃない、アレ誘えば」

ゆりえ「二宮君は……えっと……しょの……」

光恵「あんな女の子ばっかの家に連れて行ったら、気が気じゃないわよね」

祀「あの朴念仁にそんなもんがあるとは思えないけど……」
200 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/14(日) 18:00:27.32 ID:vNFv3kM0

 天使家

虹子「あーっ、ゆりえちゃんだ! わーいっ!」

 おしゃまな二歳児の虹子が目ざとくゆりえを見つけて飛びついてきた。

ゆりえ「わっ、わっ」

 虹子はゆりえがお気に入りらしく、腰のあたりに抱きついてぶらさがる。

夕凪「ゆりえちゃん、光恵ちゃん、いらっしゃーい」

星花「こんにちわー」

 虹子といっしょにシャボン玉で遊んでいた十女の星花と十一女の夕凪もやってくる。

光恵「こんにちわ」

青空「にじたん、ずるいー、そらも、そらもおんぶっぶー」

 いつの間にか一歳児の青空までゆりえにひっついていた。くらくらとしながらゆりえは光恵に引っぱられて家の中へ入っていく。

星花「ゆりえお姉さん、来ましたーっ」

律「おーっ、来たかーっ」

翠星石「待ちくたびれておしりに穴が空きそーだったですよぅ」

ハルナ「この辺すいてるわよーっ」

 天使家の大きな部屋――ホワイトルームには光子力研究所、早乙女研究所、超電磁研究所のメンバーに天使家の姉妹がみんな集まっていた。奥の大きな窓を背にしているのは、けいおん部の五人だ。
 それをぐるりと半円状に座っている少女は二十人以上はいる。
 普段は小さい子たちが集まって騒いでも大丈夫なホワイトルームも、これだけ揃うとぎゅうぎゅう詰めだ。
201 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/14(日) 18:01:21.48 ID:vNFv3kM0

 親睦会。お姉ちゃんたちがいきなり四人もいなくなった天使家の幼い妹たちのために春風と氷柱が提案したのだ。
 急な集まりにも関わらず、こうして全員が来てくれたのはすごいなとホステスを務める蛍はたくさんのご飯を作れる嬉しさに飛び跳ねていた。

 そのすみっこには、天使家十九人姉妹の母親、美夜が他の研究所の所長と固まって、小雨の持ってきたトレーからカップを取って談笑していたが、真ん中にきて手を叩いて注目させた。

美夜「はいはい。みんな集まったところで始めましょうか」

 その姿は十九人姉妹の母親でありながら海晴になお劣らない華麗さを持っている。ルージュのばっちり決まった大人のスマイルで部屋を見渡して満足そうにうなずく。

美夜「うーん、こうしてあらためて見るとみんなカワイイ子ぞろいねー。とても軍事機密の集いとは思えないわ。もしも将来就職に困ったら、私の事務所で引き取ってア・ゲ・ル」

 腰に手をあててポーズをとる。その仕草は本当に海晴の母といったところだ。

美夜「それじゃ、あまり時間もないことだし、乾杯しちゃいましょーか。かんぱーいっ」

「かんぱーい!」

律「よーし、それじゃ、まずは放課後ティータイムからやるぜ!」

澪「な、なんか学園祭のライブとは違う緊張感があるな……」

紬「すごく近いからね、きっと」

梓「っていうか、最近はまともに練習時間が取れてないからヤバイかもです」

唯「だいじょうぶだよ、きっと!」

澪「その自信はいったいどこから出てくるんだ……」

律「とにかくやっちまおーぜ、ワン、ツー、スリー!」

 ジャジャーン!
202 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/14(日) 18:10:57.13 ID:vNFv3kM0

 演奏のセットリストは以下のように進んでいった。

 ふわふわ時間 マジンガーZ ゲッターロボ!
 カレーのちライス コン・バトラーVのテーマ
 わたしの恋はホッチキス 勇者ライディーン

唯・虹子「ゆけ〜、ゆけ〜、ゆうしゃ〜、ライディーンライディーン」

 パッパラー パッパラッパー、パッパラーパッラッパッパー

 歌の好きな虹子も途中から歌詞を見て唯のとなりで歌っていた。

虹子「らぁいでぃーん♪」

 ホワイトルームでHTTの演奏が行われている間に、天使美夜と桜田ジュン(43)、秋山弦之助の三人は別の部屋に移動していた。

美夜「やっぱり、早乙女博士は忙しくて電話にも出られないのですか?」

秋山「えぇ、いまの研究が相当いいところに来ているから集中したいとお嬢さんが言ってましたので」

美夜「新たなゲッターロボ……宇宙開発作業用ではなく、初めから戦闘を目的としたゲッター線の利用……」

JUM「こうやって集まれる機会もそうはないでしょうから、早乙女博士の意見も聞きたかったのですが……」

秋山「それでも、研究の資料だけでもいただけたことはよかったでしょう」

JUM「早乙女博士は、とくに変わり者でしたからね」

秋山「ともかく、我々はここに集まった。その理由は、いまの地球圏を脅かしている者たちの野望を食い止めるために」

JUM「連邦の作戦範囲内だけでこの脅威を食い止めることはできない。我々民間の研究者もことに当たらなければならないときが来たのです」

美夜「対侵略勢力反攻計画……選ばれてしまったのはかわいい娘たちばかりなのは悲しいけれど」

 美夜は束になった書類をドンと机の上に置いた。続いて、秋山、桜田もカバンに入れていた書類の束を重ねていった。
 早乙女ハルナから預かった書類もそこに置かれて、その高さは隣においてある花びんと同じぐらいになった。
 ここに彼女たちが研究した全てが記されているのだ。全てが共有の財産であり、切り札となる。

美夜「Space Guardian Girl's Project――G's-プロジェクトを、ここに始めます」

 三人が頷きあったとき、部屋の扉が開かれた。
 そこにいたのは、冷たい顔に炎の瞳を携えた、この家の六女だった。

氷柱「その話、私にも詳しく聞かせてよ」



 今日はここまでです。
203 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/14(日) 21:04:59.38 ID:8JU49EAO
次に集合の時に部隊名決めイベントありそうだな
誰が愉快な仲間達推すんだろ
204 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/14(日) 22:09:30.18 ID:.KhtLEAO
唯以外に誰がいるんだと言いたいが、誰が言ってもおかしくなさそうだ

つうか、参戦がメジャーなのかマイナーなのかわからんな
205 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/17(水) 17:11:20.81 ID:r1XwxLE0
再開


北米大陸 ジオン軍基地

 ここには、ザビ家の四男、若き大佐ガルマ・ザビが駐屯していた。
 連邦の大基地ジャブローに近いこの地はジオン軍地球方面軍として重要な位置にあるが、実質的な指揮権は姉のキシリア・ザビにあるため、ガルマはまだ己を認められていないと思っている。
 しかし、ジオンの崇高な目的は地球にあり、自分はその地球にいる。姉ではなく、自分が。

ガルマ「私の役目は地球を善き状態で差し出すことなのだ」

 生まれ持った美貌の白面と脆くも見える寛容な胸襟で占領軍の浮き足立つのを抑えて軍規を維持させ、コロニー落としの強い憎悪を持っていた現地人の心を和らげ掌握するに至ったガルマの才覚は、父デギンに言わせれば軍の将としては優しすぎるというものだった。

 そのガルマの許には今、士官学校を主席次席を競った赤い彗星がいた。

シャナ「残念だけど、その名は返上しなければならないわ」

 不機嫌そうにシャナは言った。相変わらずだとガルマは笑う。

ガルマ「何を言う、シャナ。君を迎えることで我等の士気は高まっているのだ。それに、これからドレイク・ルフトと会う。君にも是非出席してもらいたい」

 シャナが来る少し前にショット・ウェポンがガルマを訊ねた。報告には聞いていた異世界の軍隊。共闘という言葉を交わしていたが、連邦を片付けた後の支配権を奪取する為には、初めから威力を見せておくべきだ。

シャナ「まあ、いいわ。オーラバトラーというのにも興味はあるし」

ガルマ「ほう、珍しいな。君が機体に興味を持つとは」
206 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/17(水) 17:11:50.08 ID:r1XwxLE0

 実際のところ、シャナはオーラバトラーに興味などなかった。本当に興味があるのは、そのパイロットが持つオーラ力というものだ。

シャナ「そういうこともあるわよ」

ガルマ「ふふん、君らしいな」

 追求しないガルマを見て、シャナはこの青年の思考が変わっていないこと知って苦笑した。
 およそ、人を疑うことを知らないのである。
 地球に降りて現地人と社交している間に人間というものを少しは知るかと思っていたが、何も学んではいないようである。
 そう、目の前でシャナが苦笑しても、ガルマはなんとも思わないのである。

イセリア「ガルマ様。ドレイク様が参られました」

 部屋に入ってきたのはイセリア――地球に降下したガルマがこの地で恋仲になった女性だ。

ガルマ「あぁ、わかった。イセリア。さぁ、行こうシャナ」

 シャナはチェアから下りる。その前でガルマははばかることなくイセリアの腰をとって部屋を出て行く。

ガルマ「イセリアも来てくれるな」

イセリア「ですが、異世界の方とは……」

ガルマ「なぁに、違いはないさ」

 部屋で一人になったシャナはあざ笑うように言った。

シャナ「交渉の場に女を連れていくのか……つくづく甘い男ね」
207 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/17(水) 17:13:04.98 ID:r1XwxLE0

 中国 ホワイトベース

長門「…………」

ヒカル「……なぁ、そろそろ、少しは話してくれてもいいじゃないか?」

スズ「せめて、名前くらいは教えてください」

長門「…………」

ヒカル・スズ「はぁ……」

 ヒカルとスズのため息を別室のカメラとマイク越しに見ていた天使霙、天草シノ、そしてホワイトベース艦長代理の香月シノンも疲れた表情を隠さなかった。
 捕虜にしたときの身分証から長門有希という名前はわかっていたが、それを自分の口で言ってもらうことで、会話のきっかけにもなる。

シノ「もう、二十八時間が経過か」

霙「捕らえてからここまで、一言も喋りもしなければ眠りもしない。もちろん、体力が落ちているような顔色もない」

シノン「ある意味、理想の軍人ね」

シノ「まさかとは思いますが、強化人間というものでしょうか?」

 桜才学園生徒会長も、この面子に入れば年少である。緊張の中、一種のタブーに触れたシノの背中に汗が流れる。
 
霙「よく知っているな。コロニーは情報規制が強いはずだが」

シノ「アングラの出版物です」

霙「ほう、コロニーにもアングラはあるのか。人の口に戸は立てられないということか」

 霙が愉快だという具合に喉を鳴らす。この会話だけでも下手をすれば処罰ものである。つい先日まで民間人だったシノにそれを笑う度胸はなかった。
208 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/17(水) 17:32:57.72 ID:r1XwxLE0

霙「だが、ギガノスに強化人間の実験をする機関はないはずだ。元々、強化人間といっても肉体の外科的手術をするわけではない。薬物の投与などによって認識能力を高めたり、精神を不安定にして他人がコントロールしやすくするものだ」

シノン「人によっては鬱状態になることもあるらしいけれど、この子にその気配は見られないわね。検査でも正常値だし、血色もいいわ」

霙「むしろ私は、作り物のような印象を感じたな」

シノ「作り物……ですか?」

霙「あぁ、ウチには吹雪っていう無口なやつがいてな。立夏はロボットみたいと茶化すこともあったが、それでも彼女ほどではない。そうだな、人形といってもいいかもしれないな」

シノン「クローン人間……の可能性もあるかもしれないわね」

 この手の噂はどこでも耳にするものだ。例えば、ジオン独立宣言からアングラで支持を集めている話題が『ジオン・ズム・ダイクンのニュータイプ発言』である。

 「人類は本来、宇宙に進出する資質を持って地球に生まれたのであり、スペースコロニーは、地球の代替品ではなく、人類がさらに進化する新たな大地である」
 これがジオン・ズム・ダイクンの主張するところであり、進化した人類を『ニュータイプ』と呼んだ。

 また、ジオン公国には密かに建造されたニュータイプの可能性があるものを集めて教育を施す『学園都市』と呼ばれるコロニーがあるなど、情報の信憑性など二の次三の次であるアングラはありきたりに飽いたコロニー民にとっては一種の娯楽である。
 学園都市の噂にも多くのものがある。
『あの中ではニュータイプだけではなく、超能力者を使う開発行為が行われている』
『時間の流れが遅く、外の一年が中では七年である』
『クローンの研究も盛んで、二万体の妹達≠ニいう兵隊が生産されている』

 これらの技術がジオンにあるはずはないというのがもっぱらのレスポンスだが、時折ジオンの元研究者を名乗るものが証拠画像を出したりと、その度にコロニー民は強い熱を発していた。
 そして、その度に警邏が弾圧行為を行っていることも、隠れた常識であった。

霙「どちらにせよ、彼女を上層部に報告するのはよしたほうがいいだろうな。戦局がジオン・ギガノス寄りな現在、南極条約はあってないようなものだからな」

長門「…………」
209 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/17(水) 17:33:54.54 ID:r1XwxLE0

長門「…………」

 目の前にいる自分と同年代だという二人の顔に疲労がたまっているのがわかる。
 それでも集中しているのは、ただの人間としてはやるようだった。

 長門有希は、もう72534回目になる情報統合思念体とのアクセスを試みていた。
 答えは――NEGATIVE――彼女の体感時間で392日の間、創造主とのコンタクトが取れなくなってしまっていた。
 392日前――それまで彼女は確かに地球の高等学校に通っていた。
 暦は西暦だった。人類は月に小さな建物を作るのがやっとという文明レベル。

 だが、ある朝、彼女が目を覚ました場所は月だった。完成されたテラフォーミング都市。
 すぐに情報統合思念体とのアクセスを試みた。しかし、遮断されていて何も出来なかった。
 次に自分の能力についてスキャンした。思念体と直結している時に可能な能力以外は全て使用できる。

 部屋を出て、見知った顔に出会えたことにまず安心した。
 ただ、それは今までの記憶を持った人たちではなかった。まるで、この世界に最初から住んでいたような……
 そして、驚愕はそれだけではなかった。

 涼宮ハルヒの能力もほとんどが失われてしまっていた。

 また、周囲の人間たちも涼宮ハルヒの力について言及することはなかった。
 思念体にアクセスできない以上、自分で推測するしかない。自分だけが移動したのか、時空自体が変わってしまったのか。
 結局、確認する術がなかった彼女は、本来の任務にしたがって行動することにした。
 守るべき人を守る。それだけ。

長門「私には、他に何もないから」

 ぽつりと呟いた言葉は、誰の耳にも届いてはいなかった。
210 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/17(水) 17:34:52.32 ID:r1XwxLE0

 部屋の扉が開いた。短い黒髪にパイロットスーツの上から漆黒のマントを羽織った女。自分を捕らえた女だ。

霙「君の隊長からの提案だ。こちらのマチルダ・アジャン中尉との捕虜交換だ」

長門「……そう」

 小鳥の囀りのような返事をすると、ヒカルとスズがぐったりと肩の緊張を解いた。

ヒカル「結局、何も話してはくれなかったな。君の部隊は我々と同年代だと聞いていたから、話を聞きたかったのだが」

長門「…………」

スズ「ちょっとー! うんとかすんとかくらい言ったらどうなの!?」

長門「……そう」

 とうとう耐えかねて両手を振りかざしたスズの襟を長門が掴んで引き寄せた。

スズ「ちょ、ちょっ……何よ……」

長門「黙って」

 銅色の瞳がスズを正面から捉えている。浮いた経験の皆無なスズは脈拍の上昇を押さえつけていると、長門はすっと襟から手を放した。

長門「私は監視されている」

 スズとヒカルに背を向けた長門は霙に連れられてすたすたと部屋を出て行った。
 呆然としていたスズを窺っていたヒカルが何かに気づいて指さした。

ヒカル「スズ、襟に何かついている」

スズ「えっ?」

 グレーを基調にした連邦服の襟が黒ずんでいた。いや、何かが書かれているようだ。

ヒカル「こ、これは……っ!」

スズ「な、何よ!?」

 胸元に顔を近づけたヒカルの真剣な顔つきが恥ずかしくなって、スズは慌てて制服を脱いだ。
 机の上に広げると、そこにはこう書いてあった。

『涼宮ハルヒは脅迫されている』
211 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/17(水) 18:23:37.48 ID:r1XwxLE0

 月 ギガノス帝国

ドルチェノフ「プラート少佐は敵の将校を捕まえておきながら一切の尋問もすることなく、総帥に許可を取ることもなく、勝手に部下との交換を敵に申し入れました! これは立派な軍法違反ですぞ!」

 玉座を前に声を荒げているのはドルチェノフ中将だ。その前で沈黙を保っているのは、このギガノス帝国の主メサイア・ギルトールである。

ドルチェノフ「一兵士である子飼いの部下の命を優先させるのは手駒の確保! 敵と交渉するのは内通の可能性があります! 今すぐプラート少佐を引き戻し、査問にかけねば、反逆の恐れがありますぞ!」

ギルトール「…………」

ドルチェノフ「今、連邦は我らに対する反攻の措置を着々と進めております! この上でプラート少佐が寝返るとなれば、我がギガノス帝国は大打撃を受けますぞ!」

 ギルトールは頬杖をつき、目を瞑ったまま一言も発しなかった。明らかなハルヒ擁護の構えであることが見て取れるため、ドルチェノフは歯噛みした。

ドルチェノフ「ギルトール元帥! もはや地球制圧に一刻の猶予もござらぬ! ただちにプラート少佐を呼び戻し、マスドライバーによる攻撃を許可をくだされ! さすればこのドルチェノフ、速やかなる勝利を元帥にお約束致します!」

ギルトール「ドルチェノフ……」

ドルチェノフ「はっ!」

ギルトール「我らギガノスの理想は、衰退を続ける地球環境を保全することにある。プラート少佐の喚問はともかく、マスドライバーの攻撃は認められん」

ドルチェノフ「何を甘いことを仰られますか! 今こうしている間にもギガノスは棺桶に片足を浸けようとしているのですぞ!」

ギルトール「マスドライバーはコロニー落としほどではないものの、地球の環境を大きく破壊していまう。ましてや、最後の自然と言われているジャブローへの攻撃は我らの理想を大きく揺るがしてしまうのだ」

ドルチェノフ「(ワシが総帥ならば、ただちにマスドライバーを発射したものを!)」

 これ以上の進言はドルチェノフを不利にする可能性があった。不遇をかこわれた連邦を抜け出して、ここまできたのだ。この地位を失うわけにはいかない。

 ドルチェノフは、渋々とその場を引き下がらざるを得なかった。その軍靴の音が、絨毯越しにもよく響いた。

ギルトール「プラート君……我らの理想は、もはや夢幻となってしまったのか……?」

 メサイア・ギルトールは、かつての親友とその娘の姿を暗い天井に思い浮かべた。

 第八話 曲折! 交わされる言葉の強さ 完

 初めて戦闘しない話が出てきた。これ本当にスパロボか? 今日はここまでです。
212 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/17(水) 20:35:03.84 ID:A05uvsAO
スパロボは途中からインターミッションの会話長くなるからな、しょうがないさ

学園都市出て来たな、スパロボでよくある非参戦作品に対するメタ発言かそれともフラグか
213 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 17:13:23.01 ID:g.TI4rs0
再開です

 第九話

ドクター・ヘル「あしゅらよ! あしゅらはおるか!」

あしゅら「はっ! あしゅら男爵、ただいま参上いたしました!」

ドクター・ヘル「うむ! 貴様の幾度の失敗を帳消しにするチャンスをくれてやる!」

あしゅら「ははぁーっ! あしゅら男爵、ドクター・ヘル様の寛大なお心に感涙の極みにございます!」

ドクター・ヘル「貴様が幾度となくマジンガーZと戦ったことで、ついに奴の決定的な弱点を見つけたのだ!」

あしゅら「なな、なんと! 決定的な弱点!?」

ドクター・ヘル「そうだ! そのための機械獣も完成した! マジンガーZだけではない! 光子力研究所をも破壊する力を持つ機械獣ジェノサイダーF9!」

あしゅら「ジェノサイダーF9! さすがはドクター・ヘル様!」

ドクター・ヘル「さぁ、ゆけぃ! あしゅら男爵!」

あしゅら「ははぁっ! 必ずやこのあしゅら男爵、ドクター・ヘル様のために平沢唯を打ち倒し、マジンガーZと光子力研究所を手に入れて見せましょうぞ!」

ドクター・ヘル「はぁーっはっはっはっはっは!」
214 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 17:16:11.05 ID:g.TI4rs0

 ドクター・ヘルとあしゅら男爵が意気揚々としている時、光子力研究所では……


唯「ぼへぇーっ……」ぐだー

律「らへぇーっ……」ぐだー

梓「せんぱーいっ! なにぼへっとしてるですかーっ!」プンプン

唯「らぁってぇー……」でろー

律「こないだの天使ん家で限界振り切ったっていうかー……」でろー

唯「帰ってくる途中の新幹線の冷房のダメージが残ってるっていうかー……」だらー

梓「う、ううぅ〜っ!」プルプル

紬「唯ちゃ〜ん、お菓子と紅茶持ってきたわよ〜」ぱたぱた

憂「お姉ちゃ〜ん、アイスもあるよ〜っ」ぱたぱた

唯「はーいっ!」シャキーン

律「よっしゃーっ!」シャキーン

梓「あああぁぁぁぁぁ! 本当にこんな人たちに地球の命運がかかっているのかぁぁぁぁぁ!?」ガシガシ
215 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 17:19:05.29 ID:g.TI4rs0

律「あれー、そういや澪はどこに行ったんだ?」もぐもぐ

唯「ホントだー、いないねー……はい、憂、あーん」ごくごく

憂「ありがとー、あーん」ぱくぱく

紬「澪ちゃんなら、今は新型の実験をしてもらっているわ」ほくほく

梓「なに澪先輩を普通にハブってんですか私たち……」ごくごく

律「梓だっておいしそうに食べちゃってるくせにー」うりうり

梓「あぁぁ〜……」ぐしぐし

紬「澪ちゃんは……あれなのよ」はぁ

唯「ん?」もぎゅもぎゅ

紬「天使さん家で……いっぱい食べちゃったから」はぁ

律「なーるほどねー、確かにロボットの操縦ってすごい汗かくからなー」うんうん

唯「そーだねぇー、私もいつもびしょびしょだよー」うむうむ

憂「び、びしょびしょなの? お姉ちゃん……?」どきどき

唯「そりゃあもう! おしりからふともものくらいまでぐっしょぐしょ!」ばーん

紬「ぐしょぐ……」ぶふっ

梓「……」どきどき

律「しっかし、澪もちょっと気にしすぎだよなー。私から見たらあれでもうらやましいくらいだぜ」へらへら

梓「それは律先輩が偏平な身体をしているから……」ぼそっ

律「なんか言ったかしらぁ、あずさちゅわぁーん?」ぴきぴき

梓「いーえー」ずずずー
216 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 17:23:57.59 ID:g.TI4rs0

唯「ねーねー、私気になってたんだけどー?」くりくり

紬「なぁに、唯ちゃん?」ことこと

唯「ムギちゃんと澪ちゃんって、どっちがおっぱい大きいの?」てんてん

律・梓「ぶっ!」ばしゃっ

唯「アフロダイAって、澪ちゃんをモデルにしたんでしょ?」もぐもぐ

紬「えぇ、だから私は澪ちゃんのおっぱいの大きさもわかるわ」ほうっ

唯「教えて教えてー」ふりふり

紬「えぇ、私と澪ちゃんのおっぱいは――」

澪「や、やめろ、ムギーッ!」がばっ

紬「むぎゅっ」もごもご

律「あ、澪、おかえり」ごくごく

唯「澪ちゃんおかえりー」けらけら
217 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 17:32:11.57 ID:g.TI4rs0

唯「澪ちゃんおかえりー」けらけら

憂「澪さん、お茶は何にしますか?」いそいそ

澪「い、いや、私は……その……無糖で……」かぁっ

律「さすがに気にしすぎだろ……」ぱくぱく

梓「律先輩は食べておっきくしませんとね」にっこり

律「さっきから言ってくれるじゃない、あずさ〜」めらめら

唯「ねーねー、新型ってどんなのなの?」

澪「それは……えっと、は、恥ずかしい……」

唯「恥ずかしいの!?」

紬「えっと、新型のダイアナンAは実験機のアフロダイAのデータを下敷きに、初めから戦闘用として建造されたものよ」

唯「へぇ〜」

紬「アフロダイでは三割程度だった超合金の含有率を6〜7割に上げたから、強度も大幅にアップしているし、ミサイルも小型に改良した光子力爆弾を新たに搭載したの」

憂「それじゃあ、本当にパワーアップしたアフロダイって感じなんですね」

紬「そうね、あとは――」

 ズドォォォォォォォォォォォォンッ! 紬の説明を轟音がかき消した。

澪「機械獣!?」

律「ちっくしょー! こっちは休憩してんのによーっ!」

唯「いくよぉ! りっちゃん、澪ちゃん!」

澪・律「あぁ!」

憂「お姉ちゃん、がんばってね!」

唯「うん! あ、あずにゃん!」

梓「な、なんですか!?」

唯「あずにゃん分補給〜っ!」ぎゅぅ〜

梓「さっさと出動してください!」
218 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/19(金) 17:40:21.41 ID:g.TI4rs0
今日はここまでです。
219 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/19(金) 21:38:59.30 ID:S7LuBcAO
乙、関係ないが真マジンガーのあしゅら敵ながら天晴れな死に様だったな
220 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/22(月) 14:52:36.11 ID:Y175b6AO
支援wwwwwwww
221 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 18:32:47.61 ID:IcGbipk0
 再開です


唯「よぉーし、やるぞぉ、マジンガーZ!」

紬「準備オーケーよ、唯ちゃん」

唯「パイルダー、オーン! マジーン、ゴー!」

澪「ダイアナンA、ゴー!」

律「じゃんじゃじゃ〜ん! ボスボロットだわさ〜」

梓「律先輩も懲りない人ですね……」

唯「機械獣はど〜こだぁ〜」

澪「なまはげかっ!」

紬「唯ちゃん、上よっ!」

唯「へ?」

 チュドォォォォォォン! 見上げた空から無数の爆弾が落ちてきた。

唯「うひょえぇぇぇ!」
 
 ドドォーン!

澪「う、うわっ! うわわわっ!」

 ズガァァァァァン!

律「うおぉぉぉぉっ!」

 シュシュボォーン!
222 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 18:33:28.27 ID:IcGbipk0

澪「こらっ、律! くっつくなよ、動きづらいだろ!」

律「んなこと言ったってよ! うわぁぁぁ!」

 あちこちで爆弾が爆発する。まるで熱砂に裸足でいるようにマジンガーZはそこら中を跳ねまわっていた。

唯「わっ、ひゃっ、おおうっ!」

 ズドドォォォォォォン! 一際大きい爆弾がマジンガーZの目の前で爆発し、爆風にくろがねの城もたまらずしりもちをついた。

憂「お、おねえちゃ〜ん」

 憂がハラハラしてみていると、上空から大きな声が光子力研究所に届いた。

あしゅら「わーっはっはっはっは! どうだ、マジンガーZ!」

唯「あ、あしゅら男爵の声!?」

律「ど、どこにいやがるんだ!?」

紬「じょ、上空1000メートルに機械獣を確認!」

澪「せ、1000メートル!?」

 見上げた空には、確かに黒い影が旋回しながら爆弾を落としているのが見えた。

あしゅら「どうだ! これがドクター・ヘル様の開発したジェノサイダーF9だ!」

唯「このぉ、光子力ビーム!」

 ビビーッ! マジンガーZの目から光子力ビームが発射されるが、鳥のように空を舞うジェノサイダーF9はこれを悠々と避けてしまう。

あしゅら「はーっはっはっはっはっはっは! ドクター・ヘル様の見つけたマジンガーZの弱点は真実だったようだな!」

唯「ま、マジンガーZの弱点!? うわぁっ!」

 ドゴォォォォン!
223 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 18:34:17.67 ID:IcGbipk0

秋山「くっ、ドクター・ヘルめ、気づいたか……」

 爆弾から逃げ惑うマジンガーZを見ながら、秋山は苦虫を噛み潰したような顔になった。

紬「所長、マジンガーZの弱点って何ですか!?」

秋山「見ればわかるだろう……マジンガーZは、空を飛ぶことができないんだ!」

紬「そ、空!?」

 紬が戦場に目を戻すと、マジンガーZは搭乗者の心を表しているかのようにオロオロと動いていた。ダイアナンAもボスボロットもすっかり蚊帳の外へ出されてしまっていた。

唯「当たれぇ! ドリルミサーイル!」

 ボシュッ! ボシュッ!

唯「ブレストファイヤー!」

 ズバァァァァァァァッ! ミサイルも30000度の熱光線も、全て空の彼方へ消えてしまった。

あしゅら「無駄だ、無駄だぁ! ジェノサイダーF9よ、光子力研究所にも爆弾をお見舞いしてやれぃ!」

ジェノサイダーF9「ズギャァァァァァン!」

 ヒュォォォォォォ! 爆弾が光子力研究所の真上に落とされた!

梓「きゃぁぁぁぁぁっ!」

秋山「まずい!」

田井中「安心しろ! あれは完成している!」

秋山「頼むぞ、田井中博士!」

田井中「光子力バリアーッ!」

 カチッ 田井中の指がスイッチを押すと、光子力の光りが研究所の周囲を覆った。

あしゅら「なにぃっ!?」

 ドドォォン! 光子力バリアに阻まれて、爆弾は研究所に到達する前に爆発してしまった。
224 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 18:34:55.00 ID:IcGbipk0

紬「こ、光子力バリアー……?」

田井中「そうだ、光子力エネルギーのちょっとした応用だ」

秋山「まだ試作段階だから、そう長くはもたんだろうが……」

あしゅら「ぬうぅ! こしゃくなねずみどもめ! ジェノサイダーF9! どうせマジンガーZは何もできん! 一気にケリをつけてしまえ!」

 ドドゴォォォン! ズドォォン! ドガァァァァン!

憂「きゃあぁぁぁっ!」

梓「わぁぁぁぁぁっ!」

唯「憂っ! あずにゃん!」

あしゅら「わははははは! 今日こそ引導を渡してやるぞ、平沢唯!」

秋山「唯君! ロケットパンチを使うんだ!」

唯「ろ、ロケットパンチを!? それでもまた避けられちゃいますよ!?」

秋山「ロケットパンチは改良した! ターゲットをロックオンして自動追尾してくれる!」

唯「よ、よくわかんないけど、行くよ! ロケットパーンチ!」

 ドシュゥッ! マジンガーZから射出された右腕がジェノサイダーF9に向かって飛んでいく!

唯「いっけぇーっ!」

あしゅら「むっ! 我らを追ってくる! だが、そんなものにやられるあしゅら男爵ではないぞ!」

 ズバババババババババッ! あしゅら男爵の電撃がロケットパンチを撃ち落としてしまった!

唯「そ、そんなぁ!」
225 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 18:35:37.43 ID:IcGbipk0

あしゅら「ふはははははは! 空を飛ぶ機械獣の前にさしものマジンガーZといえど手も足も出まい!」

秋山「くっ、ゲッターロボやライディーンは来られないのか!?」

田井中「ダメです! 同じように機械獣と戦っています!」

紬「ど、どうすれば……」

『ガッ……ガガッ……ピガー……』

梓「む、ムギ先輩……通信がどこからか……!」

『……子力……所……聞こえ……るか……光子力研究所……!』

紬「い、いったい、どこから……?」

 慌てて紬はマイクを取った。その間にも、爆弾は光子力研究所に降り注いでいる。

紬「こちら光子力研究所! 聞こえています! 応答を!」

『よか……た……つながっ……光子力……所……!』

紬「そちらはどなたですか!?」

 爆発の地響きに耐えながら紬が問うが、相手は別の答えを出してきた。

『我わ……マジン……トの……ばさを……』

紬「マジンガーZ!? マジンガーZのなんですか!?」

『マジンガーZの……翼を……送る!』

紬「マジンガーZの翼!?」
226 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 18:36:10.27 ID:IcGbipk0

『紅の翼……ジェットスクランダーを送……!』

紬「ジェットスクランダー!?」

 キュゴォォォォォォォォォォォォーッ! 風を切る戦闘機のような音が、紬の耳に飛び込んできた!

紬「あ、あれは!?」

あしゅら「な、なんだあれは!?」

 驚きはあしゅら男爵もだった。
 空を巨大な紅の翼が滑るように飛んでいるのだ!

あしゅら「よ、避けろ、ジェノサイダーF9!」

ジェノサイダーF9「ギュオォォォォォン!」

 ガガガッ! 左に動いたジェノサイダーF9の腹に紅の翼の片翼がかすめていった。

あしゅら「ぬおぉぉぉぉ!」

 慌ててしがみつくあしゅらの目の前で紅の翼は大きく旋回していく。

あしゅら「な、なんなのだあれは!?」

唯「つ、つばさ……?」

紬「唯ちゃん、聞こえる!?」

唯「ムギちゃん!? あれはなに!?」

紬「あれはマジンガーZの翼、ジェットスクランダーよ!」

唯「ジェットスクランダー!?」

 ジェットスクランダーは大空を舞ってジェノサイダーF9を牽制する。
 紅の翼は、まるで唯を待っているように見えた。
227 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 18:37:07.71 ID:IcGbipk0

紬「唯ちゃん、ジェットスクランダーとスクランダークロスするのよ!」

唯「よぉーし、スクランダー、ゴー!」

 ギュオォォォォォォッ! 唯の命令でジェットスクランダーがまた大きく旋回してマジンガーZの後ろに飛んできた。
 同時にマジンガーZも走り出す。超合金の足で強く地面を踏みしめて、唯はスクランダーとの呼吸とリズムを揃えていった。

あしゅら「させるか、マジンガーZ!」

澪「それはこっちの台詞だ! スカーレットビーム!」

 あしゅら男爵とジェノサイダーF9がマジンガーZに突撃する動きを読んだ澪がダイアナンAのスカーレットビームを撃つ!

あしゅら「ぬおっ!」

 ドガァッ! スカーレットビームの直撃を受けたジェノサイダーF9が大きく揺れる!

 そして、マジンガーZとジェットスクランダーの距離が交差するとき――

唯「スクランダー! クロォース!」

 ジャキィ――ンッ! マジンガーZの胴体部にジェットスクランダーが装着され、マジンガーZは強く空へ飛び出した!

あしゅら「な、なんだとぉーっ!?」
228 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 18:38:08.57 ID:IcGbipk0

唯「いけぇぇぇーっ! マジンガーZ!」

 ギュオォォォォォッ! 空を飛ぶマジンガーZはぴったりとジェノサイダーF9の後ろを取った!

あしゅら「えぇーいっ! 飛ぶくらいがなんだ! やれぃ、ジェノサイダーF9!」

ジェノサイダーF9「ガオォォォォォン!」

 ズドドドドッ! ボシュッボシュッ! ガガガガッ!
 手当たり次第にジェノサイダーF9からミサイルや爆弾が発射される!

唯「冷凍ビーム!」

 ビィィィィィパッキィィィン!
 マジンガーZの耳にあたる角から、一瞬にして対象を0℃以下にしてしまう冷凍ビームが全ての火器を凍らせて機能不全にする!

唯「スクランダー・カッター!」

 バッギャァァァァァァァァァン!
 マッハ3にも迫る全速力マジンガーZの紅の翼がソニックブームを纏ってジェノサイダーF9を縦一直線に両断した!

あしゅら「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 申し訳ありませぬ! ドクター・ヘル様ぁぁぁぁぁ!!」
229 :今日はここまでです [saga]:2010/11/22(月) 18:39:15.84 ID:IcGbipk0

 光子力研究所 格納庫

律「唯!」

紬「唯ちゃん!」

澪「大丈夫か、唯!?」

唯「うぷっ……よ、酔っちゃった……」

憂「お、おねえちゃーん!」

澪「いきなり、マッハ3だもんなぁ……」

律「ゲッターチームって、けっこう凄いやつらだったんだな……」

澪「それにしても、いったい誰がジェットスクランダーを運んできてくれたんだ……?」

律「そう! 私も思ってたよ! いったい誰なんだ、ムギ?」

紬「それが、全然わからないの……向こうは光子力研究所のことを知っていたみたいだけど……」

澪「そうか……」

律「ま、なんにせよ、これでマジンガーZも空を飛べて、弱点克服ってことだよな!」

 律がマジンガーZの足をバンバン叩く。
 その様子を、輪に加わることなく見ている影があった。

梓「…………」

 梓は悔しそうに歯噛みしている様子で、律たちを見ていたが、やがて身を翻して格納庫から去っていった。

 第九話 飛翔! 空を飛べ、マジンガーZ!
230 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/22(月) 19:04:45.24 ID:r9Je0kAO
乙、梓が偉大なる勇者かな
231 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/22(月) 19:55:16.29 ID:qThGA.DO
他に誰が居る
232 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/23(火) 23:02:13.43 ID:fnuK6MAO
純ちゃんがいるぞ!
233 :再開です :2010/11/26(金) 19:41:33.09 ID:TIUFPTI0
 第十話

 北米大陸 ゴラオン

アリサ「アリサ・バニングス、コア・ファイター、哨戒任務に出ます!」

 ゴラオンの開け放しになっている格納庫から、戦闘機コア・ファイターが飛び出した。
 それを見送るなのはとすずかは不安の残る表情で見送った。

なのは「アリサちゃん、最近はよく出るね」

すずか「うん、早く操縦をマスターしたいのもあると思うけど……」

ハロ「ハロハロ」

なのは「もしかしたら、あの放送が関係あるのかな……」

すずか「そうかもしれないけど……アリサちゃん、何も話してくれなかったから……」

 四日前、ちょうどゴラオンが北米大陸に到着した頃に、ある放送がジオン側から流れた。

 ジオン公国のガルマ・ザビとバイストン・ウェルのアの国の国王ドレイク・ルフトが会談し、互いに軍事同盟を結ぶことで同意したと。

 その時の映像はゴラオンにも届いた。
 映像には、ガルマとドレイクが手を握り合っている姿が映っていた。
 その脇を固めていたのが、ショット・ウェポン、トッド・ギネス、イセリナ・エッシェンバッハ、そして、赤い彗星フレイムヘイズのシ

ャナである。
 アリサはその映像を食い入るように見ていた。

なのは「もしかしたら、アリサちゃんにしかわからない何かが、あの放送にあったのかもしれないね……」

すずか「アリサちゃん、思い込んじゃうところがあるから……」

チャム「そこまでわかってるなら、追いかければいいじゃない!」

なのは「あ、チャムちゃん」
234 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/26(金) 19:42:25.41 ID:TIUFPTI0

すずか「どうしたの?」

チャム「ダンバインの整備を手伝おうとしたら、タマキに邪魔だって追い出されちゃったの!」

なのは「にゃはは、チャムちゃんらしいね〜」

ハロ「ハロハロ、チャムハロ」

チャム「私のことより、どうしてアリサを追っかけてってあげないの!?」

なのは「う〜ん、なんでだろ……?」

すずか「なんだか、アリサちゃんが聞いてほしくなさそうだから……かなぁ?」

チャム「なぁにそれ? そんなことわかるの?」

なのは「まあ、二年も一緒にだからね」

すずか「たぶん、アリサちゃんは、話したくないというより、話すのが怖いのかも……」

なのは「うん、そうだね。私もそう思う」

チャム「ふぅーん……なんだかよくわかんない!」

すずか「ふふふ」

なのは「にゃはは」
235 :おかしかったので修正 :2010/11/26(金) 19:44:24.34 ID:TIUFPTI0
 第十話

 北米大陸 ゴラオン

アリサ「アリサ・バニングス、コア・ファイター、哨戒任務に出ます!」

 ゴラオンの開け放しになっている格納庫から、戦闘機コア・ファイターが飛び出した。
 それを見送るなのはとすずかは不安の残る表情で見送った。

なのは「アリサちゃん、最近はよく出るね」

すずか「うん、早く操縦をマスターしたいのもあると思うけど……」

ハロ「ハロハロ」

なのは「もしかしたら、あの放送が関係あるのかな……」

すずか「そうかもしれないけど……アリサちゃん、何も話してくれなかったから……」

 四日前、ちょうどゴラオンが北米大陸に到着した頃に、ある放送がジオン側から流れた。

 ジオン公国のガルマ・ザビとバイストン・ウェルのアの国の国王ドレイク・ルフトが会談し、互いに軍事同盟を結ぶことで同意したと。

 その時の映像はゴラオンにも届いた。
 映像には、ガルマとドレイクが手を握り合っている姿が映っていた。
 その脇を固めていたのが、ショット・ウェポン、トッド・ギネス、イセリナ・エッシェンバッハ、そして、赤い彗星フレイムヘイズのシャナである。
 アリサはその映像を食い入るように見ていた。

なのは「もしかしたら、アリサちゃんにしかわからない何かが、あの放送にあったのかもしれないね……」

すずか「アリサちゃん、思い込んじゃうところがあるから……」

チャム「そこまでわかってるなら、追いかければいいじゃない!」

なのは「あ、チャムちゃん」
236 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 00:16:42.44 ID:Q8rQ0kAO
なんかあったか、まあ気長に待つさね
後近いうちにファミ通でロボゲー特集やるからそん時OGの新作の話が出るって噂があるな
237 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/28(日) 19:42:17.22 ID:FzntPiw0
なんかよくわからないことが起きて、ネットにつなげられなかったりしましたが、休日で助かりました。

再開します。
238 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/28(日) 19:45:26.98 ID:FzntPiw0
 第十話

 北米大陸 ゴラオン

アリサ「アリサ・バニングス、コア・ファイター、哨戒任務に出ます!」

 ゴラオンの開け放しになっている格納庫から、戦闘機コア・ファイターが飛び出した。
 それを見送るなのはとすずかは不安の残る表情で見送った。

なのは「アリサちゃん、最近はよく出るね」

すずか「うん、早く操縦をマスターしたいのもあると思うけど……」

ハロ「ハロハロ」

なのは「もしかしたら、あの放送が関係あるのかな……」

すずか「そうかもしれないけど……アリサちゃん、何も話してくれなかったから……」

 四日前、ちょうどゴラオンが北米大陸に到着した頃に、ある放送がジオン側から流れた。

 ジオン公国のガルマ・ザビとバイストン・ウェルのアの国の国王ドレイク・ルフトが会談し、互いに軍事同盟を結ぶことで同意したと。

 その時の映像はゴラオンにも届いた。
 映像には、ガルマとドレイクが手を握り合っている姿が映っていた。
 その脇を固めていたのが、ショット・ウェポン、トッド・ギネス、イセリナ・エッシェンバッハ、そして、赤い彗星フレイムヘイズのシャナである。
 アリサはその映像を食い入るように見ていた。

なのは「もしかしたら、アリサちゃんにしかわからない何かが、あの放送にあったのかもしれないね……」

すずか「アリサちゃん、思い込んじゃうところがあるから……」

チャム「そこまでわかってるなら、追いかければいいじゃない!」

なのは「あ、チャムちゃん」
239 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/28(日) 19:47:23.07 ID:FzntPiw0

すずか「どうしたの?」

チャム「ダンバインの整備を手伝おうとしたら、タマキに邪魔だって追い出されちゃったの!」

なのは「にゃはは、チャムちゃんらしいね〜」

ハロ「ハロハロ、チャムハロ」

チャム「私のことより、どうしてアリサを追っかけてってあげないの!?」

なのは「う〜ん、なんでだろ……?」

すずか「なんだか、アリサちゃんが聞いてほしくなさそうだから……かなぁ?」

チャム「なぁにそれ? そんなことわかるの?」

なのは「まあ、二年も一緒にだからね」

すずか「たぶん、アリサちゃんは、話したくないというより、話すのが怖いのかも……」

なのは「うん、そうだね。私もそう思う」

チャム「ふぅーん……なんだかよくわかんない!」

すずか「ふふふ」

なのは「にゃはは」

ハロ「ハロハロ、ニャハハ、ハロハロ」
240 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/28(日) 19:53:26.75 ID:FzntPiw0

アリサ「…………」

 コア・ファイターの操縦席でアリサは考え事をしている。
 というより、考え事をしたいときに、アリサはコア・ファイターで出撃していた。

 なのはとすずかが思っているとおり、アリサは迷っていた。
 二人は親友だ。それは間違いなくそう言える。
 だけど、言うべきことか、黙っているべきことなのか、アリサには判断がつかないことだ。

アリサ「まだしばらくは……黙っていたほうがいいのかもしれない」

 アリサは今年十一歳になるが、ジオンの赤い彗星シャナとは姉妹であったのだ。
 そして、彼女の父親はあのジオン・ダイクンなのである。
 ジオン亡き後、姉妹はジンバ・ラル夫妻に守られて地球に移り住んできた。
 ジンバ・ラルは用意していた莫大な資産で地球の名家バニングス家の名前を買った。
 父との記憶はないが、姉との記憶はある。一番強い記憶はアリサが四歳の時、シャナがジオン入国を決めた時のものだ。

シャナ「私の父はジオンのザビ家に殺された。私は父殺しの仇ザビ家を討つべきだと思う」

 まだ幼かったアリサにその言葉の意味はわからなかったが、姉のいない家にアリサが留まる価値はなかった。
 出会った親友たち、なのはとすずか。ジオンの娘であるアリサにとって、二人は眩しすぎた。
 そして、姉のシャナが地球を離れた理由がわかるようになると、それはアリサにとって嫌悪すべきものとなった。

アリサ「父が、子どもの不幸を喜ぶものか」

 何よりアリサはジオンの娘となることで、なのはとすずかを失いたくなかった。
 だから、二人が戦うことを選んだとき、民間人としてホワイトベースを降りることもできたのに、乗員として残ったのだ。
 誤算はあった。いつでも人間の周りを飛び回っているそれが舞い降りたのは、大気圏突入時だ。

アリサ「……ツッ!」

 操縦桿を握りしめながら、アリサは頭痛を堪えた。
 あのとき現れた赤い彗星フレイムヘイズのシャナを見たときから、姉のことを思い出すたびに、額からこめかみのあたりを電気のような痛みが走るのだ。
 それはあのジオン・ドレイクの同盟会見の映像を見たとき、ピークに達した。
241 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/28(日) 19:54:53.90 ID:FzntPiw0

アリサ「違う……何かが違うのよ」

 アリサはこの頭痛を違和感だと思っていた。
 何かが、違うのである。それは姉のことを思い出して、常に感じることである。
 姉の名はシャナ。それはジオン入国の際に偽名として名乗ったものだ。
 だが、彼女のファミリーネームは誰も知らない。バニングス家の名は捨てているはず。しかし、誰もが彼女のことを『赤い彗星フレイムヘイズのシャナ』としか呼ばないのだ。それはルウム戦役でついたあだ名なのだから、それまでに名乗っていたファミリーネームがあるはずだった。

 それに、アリサの知っている姉の名前はあと二つある。覚えてはいるが、それが違和感の正体であることにアリサはまだ気づいてない。
 キャスバル・レム・ダイクンとエドワゥ・バニングス――前者はジオン・ダイクンの子としての名前、後者はバニングス家としての名前である。

 キャスバルとエドワゥ――この名は、主に男子につけられる名前なのだ。

アリサ「シャナ――姉さんに会えば何かわかるはず……」

 あの映像にシャナが映ったということは、北米大陸にまだ駐留している可能性が高い。
 ゴラオンに乗り続けていれば、会うことはできるだろう。

 そのとき、レーダーが質量を捉えた。四つ、ドレイク軍のドラムロだ。

アリサ「すぐに戻らないと……!」

 敵もこちらに気づいたようだった。
 急いで機首を返す。戻りきれるだろうか?
242 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/28(日) 19:55:56.04 ID:FzntPiw0

 ゴラオン 格納庫

ゴラオン兵士「聖戦士様! 哨戒のアリサ様が敵機に捕捉されました! 救援をお願いします!」

珠姫「はいっ!」

紀梨乃「タマちゃん、私もボチューンで出るよ!」

チャム「私もいくぅーっ」

 珠姫とチャムがダンバインに、紀梨乃がボチューンに乗り込む。

珠姫「ダンバイン、行きます!」

紀梨乃「ボチューン、いっくよぉーっ!」

 オーラ力の光りをブースターから噴きながらオーラバトラーが発進していく。

なのは「アリサちゃん、大丈夫かな……」

すずか「コア・ファイターの速さならそう簡単に追いつかれないと思うけど……」

ハロ「ハロハロ、アリサハロハロ」
243 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/28(日) 19:57:38.80 ID:FzntPiw0

 北米大陸 ジオン軍攻撃空母 ガウ

ガルマ「ゴラオンの偵察機を発見したか!」

ジオン兵「はっ! ただいまドレイク軍のウィル・ウィプスが追撃体制に入りました!」

シャナ「手柄を横取りされるのを見ている手はないわね」

ガルマ「うむ! ガウの発進準備をさせろ!」

ジオン兵「はっ!」

 部屋からジオン兵が出て行く。

シャナ「私は一足先に出て、モビルスーツと白服のやつを捜すわ」

ガルマ「行ってくれるのか?」

シャナ「今の私はお前の部下よ」

ガルマ「そうだが、元々はドズル兄さんの直属だ。私がガウでやろう」

シャナ「私にも、プライドというものはあるのよ」

 刀を抱えて睨みつける親友≠ノ、ガルマは目にかかる前髪を弄って笑った。

ガルマ「やられっぱなしにはいられないということか、フフフ」

シャナ「発見したら、通信くらいはいれてあげるわよ」

ガルマ「頼んだぞ、シャナ」

シャナ「勝利の栄光を君に」
244 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/28(日) 19:59:44.40 ID:FzntPiw0

 ウィル・ウィプスの艦隊に混じってジオンのガウが発進した頃、アリサはドラムロから逃げ回っていた。

アリサ「しつっこいわね!」
 
 ドレイク軍のドラムロは九体にまで増えていた。雁行型の編隊を組んで、オーラショットを撃ち続けている。

アリサ「こんのぉっ!」

 ぎゅぅんっ! 操縦桿を力いっぱいに倒して降下する。頭上を抜けていくオーラショットの威圧にぶわっと汗が吹き出る。

 だが、レーダーが新たな敵の到来を報せていた。
 どうやら、考え事をしている最中に深く敵陣に入り込んでしまっていたらしい。
 通信が繋がっていただけでも幸運だ。

 ビランビーやバストールまでいる新たな部隊はアリサを取り囲むように展開している。

アリサ「さ、さすがのアリサちゃんも大ピンチ……?」

 とはいえ、コア・ファイターとオーラバトラーの大きさはほぼ同じである。
 直線移動の速さでは勝っているし、武装の30ミリバルカンもなめし皮であるオーラバトラーの装甲にも立ち向かえる。

アリサ「な、なのはやすずかにばっかりいい格好させてらんないわよね!」

 ぐおぉんっ! 機体を持ち上げて正面のビランビーに向けてバルカン砲を撃つ。

アリサ「どきなさいったらーっ!」

ドレイク兵「う、うおぉぉっ!? こ、コンバーターがぁ!」

 ガガガガガガッ! バルカンにやられるドレイク兵。

アリサ「へへーんだ!」

 ビランビーを墜落してできた編隊の穴からアリサのコア・ファイターが抜け出る。
 だが――

トッド「好きにやらせるかよ!」

アリサ「キャアァァァッ!」

 トッド・ギネスがレプラカーンとともにコア・ファイターの上に乗っかっていた。
245 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/28(日) 20:05:04.50 ID:FzntPiw0

 逆手に持った剣がコクピットに切っ先を向けるのを見上げて、アリサは真っ青になった。

アリサ「ちょ、ちょっと……冗談でしょ……?」

トッド「冗談で戦争ができるかよ!」

 剣がコクピット目がけて振り下ろされる!

アリサ「死んだっ!?」

 ぎゅっと目を瞑ったアリサ。だが、いくら待っても手配済みの死は訪れなかった。

トッド「ちっ!」

 舌打ちの後、ぐんと機体が軽くなった。何があったかわからないが、レプラカーンが離れていく。

珠姫「トッドさん!」

トッド「現れやがったなぁ、ダンバイン!」

 オーラショットから煙を吐きながらダンバインが急速に接近してきた。
 剣が刺さる直前に撃って助けてくれたのだ。

 ダンバインとレプラカーンは機体の姿勢を整えると、すぐに剣をぶつけあった。
 
トッド「ノコノコと出てきやがって! やっぱりオマエも地上で戦うってのかよ、タマキ!」

珠姫「そんな風に憎しみを人に圧しつけて!」

 ガキィンッ! ダンバインの横払いの一撃を縦に構えた刃の柄で絡みとる。
 ガッ! バキッ! 剣を受け流したレプラカーンが左拳を固めて下顎を殴りつけた!

珠姫「うぐっ!」
246 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/28(日) 20:05:48.96 ID:FzntPiw0
 呻く珠姫にトッドが吠える。

トッド「アメリカは俺のホームだ! てめぇらジャップに踏み荒らされてたまるかよ!」

珠姫「バイストン・ウェルやジオンの人達が壊しているのはどうするの!?」

 バシュッ! ワイヤークローがレプラカーンの首にくくりつき、一挙に距離を縮め、
 ガシュィッ! ダンバインの鋭い太刀筋がレプラカーンの右肩の鎧を掠め取る!

トッド「奴らはアメリカをこれ以上荒らさないと約束してくれたよ! ガルマもお坊ちゃんだがいい奴だぜ!」

珠姫「そうやって打算ばかり受け取って! オーラバトラーがバイストン・ウェルから浮上した理由を考えないの!?」

トッド「おふくろに心配かけただけ、無駄だったってことさ!」

珠姫「また打算! あなたはーっ!」

チャム「タマキぃ!」

 ガッ! ガガガッ! バキッ! ドドシュゥッ!
 剣戟の火花が舞い、機体をぶつけあい、オーラショットを撃ち合っていく。

トッド「所詮、オマエとはこうなる運命だったのさ! ジャップ!」

珠姫「あなたが戦いをやめないから!」

チャム「なんだか恐いよぉ、タマキぃ!?」

 チャムが恐怖するのも無理からぬこと。
 珠姫の形相は凄まじい剣幕で、普段の彼女からは想像も出来ないぐらいに声を枯らしているのだ。
 
 ダンバインを通してオーラ力が目に見えるくらいに溢れている。

トッド「なめるなよ! 俺だってオーラ力は上がっているんだぜ!」

 呼応するようにレプラカーンからもオーラの光りが溢れて機体を包み込んでいく。

 二人はまた激しく打ち合う。その度にオーラが弾けて消える。
247 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/28(日) 20:07:04.36 ID:FzntPiw0

 一方、ゴラオンはウィル・ウィプス艦隊と遭遇して、これと交戦していた。

 互いにオーラマシンを出し合い、高度での戦闘を繰り広げながら、地上ではジオン陸上部隊と戦車部隊が戦っている。

なのは「シュートッ!」

ジオン兵「ぐおおぉっ!?」

 なのははゴラオンから出た戦車と歩兵部隊に混じって魔法で敵を牽制させている。

すずか「当たって!」

 ドウッ! すずかが乗るガンダムもゴラオンの直俺に回りつつ、大型車両などを破壊していく。
 ゴラオンは浮上の機会を逃して、大地に鎮座している。

エレ「エイブ艦長、このままでは地上の被害が大きくなってしまいます。どうにかなりませんか」

エイブ「しかし、敵が取り付いている今、上昇しては迎撃にあたっている乗務員に影響が出ます」

エレ「それなら……あの山陰に入ってはどうでしょう。オーラバリアも上からの攻撃に集中させることができます」

エイブ「わかりました。ゴラオンを発進させろ!」

 ゴラオンが動きはじめたとき、後方のガウから先行してきたシャナがガンダムを捉えた。

シャナ「見つけたわ、連邦の白いヤツ!」

 シャナは炎を身に纏い、ガンダムに突撃していった。

すずか「炎が迫ってくる!?」

なのは「あれは、シャナちゃん!?」

シャナ「たぁーっ!」

レイジングハート「protection」

 シャナの刀がなのはに当たる直前、レイジングハートが防御魔法を発動させる。
 贄殿遮那がそれをすぐに粉砕させるが、刀の行き先はわずかにブレてバリアジャケットを切るだけに終わった。

なのは「シャナちゃん、やめて!」

シャナ「うるさい! 気安く私の名前を呼ぶな!!」

なのは「くっ……ディバイーン・シューター!」

 なのはの背中から光りの球が三つ放たれる。湾曲して空を飛ぶ光球がシャナに向かっていく。
248 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/28(日) 20:13:05.04 ID:FzntPiw0

シャナ「遅い!」

 シュパァッ! 刀の二振りでディバイン・シューターは三つともかき消えていった。

シャナ「連邦の新兵器の力はそんなものか!?」

なのは「きゃあっ!」

すずか「なのはちゃん!」

 ガンダムの頭部をシャナのほうへ上げてバルカン砲を撃つ。
 少女程度の大きさのものなどまともにレーダーで映すことなどできやしないが、ばらまくように撃ちまくった。
 リュウが乗るコア・ファイターは上空でオーラマシンと戦っている。その支援が受けられない。

シャナ「モビルスーツの性能差が、戦力の決定的な違いではないことを教えてやるわっ!」

すずか「こ、こっちに来る!?」

シャナ「落ちろぉーっ!」

アリサ「させるもんですかぁーっ!」

 ガンダムとシャナの間にコア・ファイターが割って入ってきた。
 帰還してきたアリサがそのまま突撃してきたのだ。

シャナ「ちっ……あれは!?」

 忌々しげにコア・ファイターを見やったシャナの目が大きく見開かれる。

シャナ「アルテイシアが……くぅっ!」

 コア・ファイターのコクピットに座っているアリサを発見した途端、シャナは頭が痛くなった。

なのは「シャナちゃんの動きが……それなら!」

 それを確認したなのはがディバイン・シューターを撃つ。

シャナ「くぅぅっ!」

 頭を抱えるシャナは、それでもシューターを回避して空へ距離をとった。
 ゴラオンが移動していくのを見て、ガウへ通信を入れた。

ガルマ「シャナか?」
249 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/28(日) 20:20:27.15 ID:FzntPiw0

シャナ「ゴラオンを発見したわ。私たちに背を向けて山間へ逃げていくわ」

ガルマ「そうか!」

 ガルマの弾む声にシャナは内心でほくそえんだ。
 実際はゴラオンは回頭せずに後進している。

シャナ「私がモビルスーツとオーラバトラーをひきつける」

ガルマ「わかった。我々がゴラオンを沈める」

シャナ「逃さないでよ。十字勲章ものの相手よ」

ガルマ「へまはしないさ。イセリアの前だ」

 シャナはそれ以上は聞かずに交信を切った。

シャナ「利用させてもらうわ」

なのは「シャナちゃん!」

 ひゅおんっ! シャナを追いかけて上昇してきたなのはの光球を鮮やかに回避する。

シャナ「ちょろちょろと!」

 白服のヤツとは相性が悪い。こっちの攻撃は逸らされるし奔放な軌道の球がイヤだ。

シャナ「馴れ馴れしいのよ!」

 シュパァッ! 水平に構えた鞘から抜き放つ。

なのは「きゃっ!?」

 相手がひるんだ隙に脇を通り抜けて、加速。進む先にいる敵オーラバトラーに刃を向けた。

ゴラオン兵「な、なんだ!?」

シャナ「沈めぇっ!」

 ズバッ! シャナの一閃の前に、ゴラオン量産型オーラバトラー、ボチューンの首が飛ぶ。
250 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/28(日) 20:21:40.45 ID:FzntPiw0

アリサ「やめなさいよっ!」

 コア・ファイターのアリサがバルカンと共にシャナを追ってきた。

シャナ「またっ……アルテイシア……ッ!」

 その声をマイク越しに拾ったアリサは思わず叫んだ。

アリサ「やっぱり……アンタは……いや、あなたは私の――」

シャナ「言うなっ! ここは戦場だ!!」

すずか「アリサちゃぁん!」

 ギュオッ! コア・ファイターが落とされると思ったすずかがビーム・ライフルをシャナに向けて撃った。
 それをシャナは大きく円を描く動きで避ける。

なのは「シュートッ!」

 ディバイン・シューターが飛び掛かる。
 シャナは戦場の端で列を成しているガウとドップを見つけた。

シャナ「頃合いね」

 光球を叩き落すと、最大速度を出して戦線から離脱していった。

アリサ「ちょっと、待ちなさいよ!」

すずか「アリサちゃん、ダメだよ! もう燃料もないでしょう!?」

アリサ「うぅっ……」

 たしかに、コア・ファイターの計器はいずれも臨界に達しかかっていた。
 仕方なく、速度を緩めてガンダムの近くに着陸していく。
 シャナの姿はもう見えない。また、ふたりは離れ離れになっていく。
251 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/28(日) 20:22:34.84 ID:FzntPiw0

 ガルマ・ザビが率いるジオン飛行部隊は、ゴラオンが隠れている山間に近づいていた。

ガルマ「ビーム砲を開け、全機、攻撃スタンバイ」

 彼の予想では、ゴラオンは尻を向けているはずだ。800メートル級の巨大戦艦でも、後ろを取ればまともな反撃はできまい。

エイブ「エレ様、敵艦隊が接近してきます」

エレ「副砲、その他使える砲門は射撃体勢を整えよ」

 だが、ゴラオンはガウの針路に対して正面を向いていた。主砲のオーラノバ砲は使えないとはいえ、その威力は70メートル級のガウでは相手になるまい。

 それを、ガルマは接触する瞬間まで、まるで考えていなかった。
 ゴラオンが背を向けていると情報を流したのは、他ならぬ彼の親友だったからだ。

シャナ「ガルマ、聞こえている?」

ガルマ「シャナか。これからゴラオンを落とす。君も見に来るといい」

シャナ「残念だけど、それはできないわ」

ガルマ「そうか」

シャナ「アンタに、ゴラオンは落とせないから」

ガルマ「なんだと!?」

ジオン兵「が、ガルマ様!」

 驚愕するガルマをオペレーターの裏返った声が遮った。

ジオン兵「ゴラオンの艦首が、こちらを向いています!!」

ガルマ「なにっ!?」
252 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/28(日) 20:23:37.98 ID:FzntPiw0

エレ「全砲門、撃て!」

 ガルマがシャナから戦場に目を移したとき、ゴラオンの砲口が火を噴いた。

ガルマ「うわーっ!!」

 チュドォッ! ズドドドドドドオン!!

ガルマ「じょ、上昇だ! 上昇しろ!」

ジオン兵「む、無理です!」

ガルマ「シャナ! これはどういうことだ!?」

 ガルマの怒号に、モニターの中のシャナは愉快そうに笑っていた。

シャナ「ふふふ……ガルマ、聞こえていたら、自分の生まれの不幸を呪うがいい」

ガルマ「なにっ、不幸だと!?」

シャナ「そう、これは不幸なことなのだよ」

ガルマ「謀ったな、シャナ!」

イセリナ「ガルマ様!」

 白磁の美貌からさらに血の気を落とすガルマの背中に、イセリナがしがみついてきた。

ガルマ「い、イセリナ!?」

イセリナ「ガルマさま!」

シャナ「フフフ……イセリナ様には悪いことをしてしまったな。まあ、君の家族もいずれ君たちの許へ向かう。式はそこで挙げてくれたまえ」

 ガルマは何か背筋がぞっとする思いがした。

ガルマ「シャナ! お前は何者だ!? お前はシャナではない!」

 そう言われたシャナは虚を突かれたように目を見開いたが、すぐに余裕の表情を浮かべた。

シャナ「……君はいい友人だったが、君の父上がいけないのだよ。フフフフ……ハハハハハハハハハ」
253 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/28(日) 20:24:56.26 ID:FzntPiw0

ガルマ「シャナ! ち、違う、貴様は……っ!?」

 ブリッジのすぐ下に、オーラキャノンが直撃した。
 衝撃で映像が途切れた。だが、まだ音声は繋がっているようで、高笑いが聞こえている。

イセリナ「ガルマ様!」

ガルマ「イセリナ、君は逃げてくれ」

イセリナ「ガルマ様は!?」

ガルマ「私とて、ザビ家の男だ。無駄死にはしない」

イセリナ「イヤ! 私もガルマ様と共に!」

シャナ「いよいよ、君たちはめでたいな。ハハハハハハハハ」

ガルマ「黙れ! うわっ!」

 大きな爆発がブリッジを巻き込んだ。辺りが炎に包まれる。もはや撃墜は免れぬだろう。
 ガルマは傍らのイセリナを強く抱きしめた。
 オーラキャノンが目の前に迫ってきているのをみて、彼は叫んだ。

ガルマ「ジオン公国に、栄光あれーっ!」

 その言葉を最後に、ジオン飛行部隊は全滅した。

シャナ「お坊ちゃんらしいよ」

 ただ、遺言としては最もふさわしいものだと思った。本国に伝えてやるぐらいはしてやろう。
 シャナはドレイク・ルフトに回線を開いた。

ドレイク「何用か?」

シャナ「我らが司令官ガルマ・ザビ大佐が撃墜されました。兵をお引きください」

ドレイク「……よかろう」
254 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/28(日) 20:26:57.82 ID:FzntPiw0

 撤退命令が出たにも関わらず、トッドはレプラカーンを後退させなかった。
 それが、余計に珠姫の癪に障った。

珠姫「まだ戦うというのなら!」

トッド「どうするってんだよ! 甘ちゃんのジャップが!!」

珠姫「そこから引き摺り下ろしてみせる!!」

 ズオオオォォォォォォッ――……珠姫の強力に膨れ上がったオーラ力がダンバインの剣に収束していく。

トッド「な、なんだッ!? ダンバインの剣が巨大に!?」

 幻覚ではなかった。ダンバインの剣は確かにその長さを増し、全長の三倍ほどになっていた。

チャム「タマキぃ!? タマキが恐いよぉ!」

紀梨乃「どうしちゃったの、タマちゃん!?」

珠姫「はあぁぁぁぁっ!!」

トッド「ちきしょうっ! そんな虚仮おどしにやられるかよぉ!」

 防御の型に剣を構えるレプラカーン。
 ダンバインは長大になったオーラソードを両手に握り、鳩尾に柄頭を置いた。
 そして、切っ先は真っ直ぐ、正面に向けられる。

トッド「なんだ……っ!」
255 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/28(日) 20:32:54.84 ID:FzntPiw0

 こめかみから流れる汗が目尻に入り、まばたきをした一瞬、ダンバインの姿は消失していた。

トッド「どこに――ッ!?」

珠姫「突きィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!」

 晴天を切り裂かんばかりの雄叫びと共に現れたダンバインのオーラソードがレプラカーンの首に突き刺さった!

 ザシュゥッ! 既に半ばまで貫いているオーラソードの音が遅れてトッドの耳に聞こえてきた。

トッド「ば、バカなっ……!?」

珠姫「ぜぇ、ぜぇ……」

 オーラソードが、砂のようにきらめきを散らして小さくなっていく。
 同時に、レプラカーンは墜落を始め、珠姫の瞳が濁りを湛えていった。

チャム「た、タマキ! ダンバインのコントロールがぁ!? 落ちちゃうぅ〜!」

紀梨乃「タマちゃん!」

 ふらふらとレプラカーンに続こうとしたダンバインを、紀梨乃のボチューンが支える。

紀梨乃「タマちゃん、大丈夫!?」

珠姫「は、はい……ありがとう、ございます……」

 だが、チャムが異変に気づいた。

チャム「ねぇ、あそこを見て……」

 珠姫がチャムの指さしたほうを見ると、散らばっていたきらめきが滝のような流れを作っていた。

チャム「オーラの光りが集まってるよ……?」

 オーラの光りは、珠姫が放ったものだけではなく、戦場に広がっていた全てのオーラ力を束ねて大地に降り注いでいる。

紀梨乃「な、何が起きてんのさ?」
256 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/28(日) 20:34:02.95 ID:FzntPiw0

 上昇したゴラオンから見ていたエレは、慄いていた。

エレ「悪意のオーラが……あそこに集まっていきます」

 そして、一番早く気づいたのは、高町なのはだった。

なのは「魔力反応……もしかして!」

レイジングハート「Yes.That,s a juelseed g]」

 回答は、現象の発現と同時だった。

 バキバキバキバキバキッ!!

すずか「きゃあぁっ!」

アリサ「な、何よ、アレは!?」

 ジャックとマメの木みたいだった。
 ツインタワービルと同じくらいの巨大な樹が、戦場の荒野に突如出現したのだ。

なのは「ジュエルシード……地球にも!?」

 オーラ力で覚醒したジュエルシードの膨大な魔力で暴走した枝葉が、近くのオーラマシンを巻き込んでいく。

珠姫「うあぁっ!」

紀梨乃「にゃあぁぁっ!」

なのは「み、みんなが……ここからじゃ間に合わない……!」

 どうにかしなければ……しかし、ジュエルシードが見えない。

なのは「私にできること……」

 ジュエルシードの暴走を止めるに、魔法による直撃鹵獲で封印するしかない。

 だが、そのジュエルシードに近づけないのでは……

なのは「どうすれば……どうすればいいの……?」

 凶悪な大樹は枝と根で、あたり一面を埋め尽くしていく。
 すずかやアリサ、ゴラオンにまで近づいていく。

なのは「私に……教えて! レイジングハート!」
257 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/28(日) 20:35:12.83 ID:FzntPiw0

レイジングハート「Alllight my muster」

なのは「!」

 なのはの呼びかけに、杖が応えた。

レイジングハート「shooting mode」

なのは「レイジングハート……?」

 赤光を放つ杖の形状が変化していく。
 円形の先端が、槍の穂先に、 
 薄桃色の魔力翼が広がる。
 左手の前に、トリガーが出現し、なのはは小さな手で強く握りしめた。

レイジングハート「Divine buster.Stand by」

なのは「レイジングハート……いいの?」

レイジングハート「I believe in my muster」

なのは「……うんっ!」

レイジングハート「Let's shoot it, Divine buster」

なのは「いくよ、レイジングハート!」

レイジングハート「Alllight my muster」

 大きな魔法陣がなのはの足元に描かれる。
 魔力光のリングが形成され、レイジングハートの先端に薄桃色の粒子が収束していく。

なのは「ディバイン――」

レイジングハート「Divine buster」

なのは「バスタァーッ!!」

 細いの先行放出が大樹の幹を捉えた。

 次の瞬間、先行した一条をレールにした大威力の魔力砲がなのはの小さな体を媒体にした帯状魔法陣から発射される!
258 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/28(日) 20:37:20.80 ID:FzntPiw0

エイブ「エレ様!?」

エレ「安心なさい、エイブ艦長。あの方の、善き力が……悪しきオーラ力を和らげてくれます」

 ゴラオンのハイパーオーラキャノンにも匹敵する質量の砲撃が、巨樹を包み込んでいく。

レイジングハート「seeling mode」

なのは「リリカル・マジカル――ジュエルシード・シリアル]!」

レイジングハート「seeling」

なのは「封印!」
259 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/28(日) 20:46:06.28 ID:FzntPiw0

 なのはの一声で一瞬、巨樹が大きく膨らみ、爆散した!

 ジュエルシードの力を失った樹は、跡形もなく消え去っていた。

なのは「ふぅ……」

レイジングハート「Mission complete.Thank you my muster」

なのは「……いろんな人に、迷惑かけちゃったね……」

レイジングハート「Sorry. This fault is mine」

なのは「レイジングハートのせいじゃないよ……私も……私、ジュエルシードのこと……忘れちゃってたんだ」

 バリアジャケットを解いて、なのははガンダムとコア・ファイターを見上げた。

なのは「すずかちゃんとアリサちゃんに、魔法のひみつ打ち明けることができて……それで誰かの役に立てるってわかって、嬉しくって、忘れちゃってたんだよ……」

 コクピットから降りてくる小さな影。とっても大切で、守りたいもの。

なのは「でも……私にこの力をくれたレイジングハートのことを忘れちゃってたんだ……ごめんね、一番大事にしなくちゃいけないことなのに……」

レイジングハート「It,s so」

なのは「……」

レイジングハート「But.There is something that it is necessary to evaluate it from it」

なのは「レイジングハート……?」

レイジングハート「――Friendship」

なのは「……ありがとう、レイジングハート」



 第十話 衝突! それは、忘れることの出来ない想いなの
260 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/28(日) 20:52:39.19 ID:FzntPiw0
今日はここまで。

たぶん、LANケーブルの接続が悪い。

イベント詰め込みすぎた。まだ三連星とかいるのに喋らせすぎた。
261 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/29(月) 00:52:20.56 ID:8k8aKEAO

そういえばロストギア回収の途中なんだよな、悪しきオーラ云々でスーパー化でもすんのかと思ったわ
262 :再開です。 [saga]:2010/12/02(木) 18:54:11.68 ID:9uKuhnc0
 中国 重慶基地郊外の上空 

 連邦軍の戦艦、ホワイトベースに巨大な鳥が降りた。
 全長にして50メートルにもなる巨鳥の正体は、ライディーンが変形したゴッドバードだ。

ゆりえ「一橋ゆりえ、到着しましたー」

 不慣れな敬礼は戦艦にあって似合わないものだが、格納庫まで出迎えた司令官は誠実に姿勢を正した。

シノン「ご協力感謝します。これより、ホワイトベース艦長代理、香月シノン少尉がゆりえさんの身を預からせていただきます」

ゆりえ「よろしくお願いします」

立夏「ヤッター、ゆりえちゃん来るの待ってたんダヨー!」

ゆりえ「わっ、わわわっ」

立夏「ホラホラ、リッカが案内してあげるヨー」

霙「召集がかかったら、早く戻ってくるんだぞ」

立夏「りょうかーいッチャオ」

 ツインテールと一緒にぴょんぴょん飛び跳ねる立夏が、あっという間にゆりえを連れて行ってしまった。
 それを遠目に見ながら、ヒカルがやれやれといった風に苦笑した。

ヒカル「久しぶりに年が近い相手だからな、立夏もはしゃいでる」

スズ「一橋さんのほうが一応、一個上なんだけどね」

霙「ゲッターチームの三人にも来てほしかったんだが、早乙女研究所で機体の調整があるらしいからな」
263 :再開です。 [saga]:2010/12/02(木) 18:58:10.66 ID:9uKuhnc0

シノン「ともかく、これで海晴中尉とシノさんが抜けた穴はカバーできると思います」

アリア「だけど、シノちゃんは大丈夫かしら……長門さんを連れているとはいえ、敵の基地の中なんて……」

 現在、天使海晴と天草シノは捕虜の長門有希を連れて、ギガノス軍に捕らえられているマチルダ・アジャン中尉との交換に向かっていた。

シノン「基地の中に入るわけではないから、何かあったとしたら私たちにもわかるわ」

スズ「何かあってからじゃ遅いと思いますけど」

ヒカル「しかし、彼女たちは罠を張るような人間には思えないが。長門さんは私たちに助けを求めてきたのだから」

スズ「はぁ……ヒカルはもう少し周りを疑うことを知ったほうがいいわね」

ヒカル「どういうことだ、スズ?」

霙「ギガノス帝国にはドルチェノフという好戦的な指揮官がいる。そして蒼き鷹の涼宮ハルヒは今、そいつの直属になっている」

シノン「下士官パイロット一人と補給船指揮の中尉では捕虜交換のうまみがギガノス側にはないわ。なのにそれをあちら側から提案してきたということは、この交換は彼女の独断である可能性が高い」

霙「当然、ドルチェノフがそんなことを容認するつもりはない。女性士官<ウェーブ>の捕虜は政治交渉のカードにも利用できるからな」

スズ「つまり、何かしらの妨害行為が予想されるということよ」

ヒカル「そ、そうなのか……」

霙「まあ、ヒカルは自分を鍛えること以外にすることがない脳筋だからな。そこまで考えが至らんだろうさ」

ヒカル「み、霙姉!? そんなひどい!」

霙「ははは、せめてミノフスキー物理学の基礎くらいは身につけてほしいものだな」

ヒカル「う、うぅ……はい」
264 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/02(木) 18:58:51.30 ID:9uKuhnc0

 重慶ギガノス軍基地 近郊

 見晴らしのいい平原で海晴とハルヒが向かい合っていた。
 五歩ほどの距離。話をするには充分で、掴みかかるには遠い位置で、強く瞳孔を光らせるハルヒが先に口を開いた。

ハルヒ「連邦軍の天使中尉と天草三等空士ね」

海晴「えぇ、ギガノス軍涼宮大尉と……」

ハルヒ「こいつは部下のキョン。気にしなくていいわ」

キョン「おいてめぇ」

ハルヒ「こっちはマチルダ・アジャン中尉を連れてきたわ。有希はどこ?」

 やや後方でギガノス兵に拘束されたマチルダがいる。それを確認して海晴はドラグナー1型で控えているシノに連絡をした。
 シノはD−1のハッチを開けた。そこには電磁ロックをかけた長門がいた。

キョン「長門!」

 コクピットから降りてくる長門を見て、ハルヒは安堵の息を吐いた。

海晴「それじゃあ、互いに一歩ずつ」

ハルヒ「えぇ」

 ギガノス兵が連れてきたマチルダ中尉をキョンが受けとる。
 シノとキョンは二人とも短銃を持って捕虜の横に侍り、海晴とハルヒが合図を出すごとに一歩ずつ前に進んだ。

 長門とシノが海晴の横を、キョンとマチルダがハルヒの横を通り過ぎる。

 四人の影が直線に並んだとき、キョンとシノが銃を下ろし、拘束を解いた。
 
265 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/02(木) 18:59:54.54 ID:9uKuhnc0

 そして、マチルダと長門はお互いの陣営に到達した。

ハルヒ「有希っ!」

 長門の小柄な体をハルヒがしっかりと抱きとめた。

キョン「長門、大丈夫だったか?」

長門「大丈夫。何もされてない」

 相変わらずの無表情だったが、むしろそれが二人にとって安心できた。

ハルヒ「よかった……本当に……」

 短く切られた髪をくしゃくしゃにして顔を埋めるハルヒに、シノはどうしても蒼き鷹ファルゲン・マッフの姿を重ねることはできなかった。

シノ「少し……訊いてもいいか……?」

ハルヒ「何よ」

 素早く顔を上げたハルヒの目は既に敵意を灯していた。
 それを見てシノは、この機会を逃したら、こうして顔を合わせることができなくなるだろうと確信した。

シノ「その、君は……何のために戦っているんだ……?」

ハルヒ「…………」

シノ「……応えてはくれないのか?」

ハルヒ「アンタが、あのD兵器のパイロット?」

シノ「そうだが……」

ハルヒ「きっと、アンタと同じ理由よ」

シノ「同じ……理由?」

ハルヒ「私は、私が信じるもののために戦っているのよ」

シノ「信じるもののため……」

キョン「ハ、ハルヒ! ヤバイぞ!」

 ハルヒたちから離れて後方に控えている古泉と通信をしていたキョンが二人の会話を中断させた。
266 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/02(木) 19:00:53.37 ID:9uKuhnc0

ハルヒ「何よ、キョン」

キョン「しょ、所属不明のメタルアーマーがこっちに急接近している!」

ハルヒ「何ですって!?」

 驚愕はシノよりもハルヒのほうが大きかった。
 それを見たシノは、もしもこれが演技だとしたら、女優賞ものだと思った。

海晴「シノちゃん! こっちに戻ってきて!」

 海晴のほうにもホワイトベースから不明機の情報が入っていたらしい。
 シノが踵を返したとき、長門が目を大きく開いて空を見上げた。

長門「来る……!」

 彼女が向いたほうをその場の全員が見上げると、高速で接近してくる物体があった。

ハルヒ「全員! 逃げ……伏せなさいっ!」

 ババババババババババババッ! 飛行物体が両手に持っていた巨大なハンドレールガンが火を噴いた!
 ハルヒの声で姿勢を下げたシノの十数センチ先にいくつもの穴が空いた。
 もしも、彼女の声に従わずに動いていたら、今ごろは血だらけで伏せることになっていただろう。

 未確認機が頭上を通り過ぎた。一瞬翳った大空に再び太陽が差したとき、黒い斑点が二つ見えた。

キョン「手榴弾っ!?」

 キョンの声に全員が戦慄する。手榴弾といってもただの手榴弾ではない。
 メタルアーマーが使う手榴弾だ。その真下にいる人間が避難して助かる威力ではない。

キョン「くっ!」

 持ちっぱなしになっていた短銃を空に構えるが、太陽の光りが強くて目が眩む。
 それでもとにかく撃とうと引き金に指の力を込めようとしたとき、横から何者かが短銃に手を伸ばし、ひったくった。

キョン「な、長門!?」
267 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/02(木) 19:01:50.65 ID:9uKuhnc0

 とても小柄な少女から出たとは思えない強い力にキョンが面食らっている間に、片膝を立てて短銃の照準に目線を重ねた長門有希は小さな唇から僅かに聞こえる程度の声で呟いた。

長門「パーソナルセキュリティーエリアを拡大――敵対物質捕捉――誤差修正――」

ハルヒ「有希! 何をしてるの!? 早く逃げなさい!」

長門「――風向――弾道予測完了――命中率100%――発射」

 ドゥッ! パァンッ! 教本に載るような隙のない姿勢から、発砲音が二つ響いた。そして――
268 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/02(木) 19:02:44.92 ID:9uKuhnc0

 ドゴォォォォォォォォォォォォンッ!! 轟音と爆風が辺り一面を覆いつくした。

キョン「な、長門……」

ハルヒ「有希……」

 シノや海晴だけでなく、味方である二人でさえ、呆然としてしまった。
 長門の情報収集と分析能力、さらに正確無比な射撃の技術は知っていたが、数百メートル離れた上空から落下してくる爆発物を二つ、瞬時に捕捉して短銃で撃ち抜くなど、まさに神業としか言いようがないだろう。

長門「任務、完了――ッ!?」

 短銃を下ろした直後、その首にまたハルヒの腕が抱きついてきた。

ハルヒ「すごいじゃない、有希! まるでシモ・ヘイヘよ! さすがSOS団の秘蔵っ子だわ!」

キョン「そうだ、すごいじゃないか、長門。あんな人間離れした技をやっちまうなんて」

 耳元できゃんきゃん声を弾ませるハルヒの肩越しに安堵の息を吐くキョンを見る。
 涼宮ハルヒはもとより、彼もこの世界では普通の人間である。

 長門が情報統合思念体が作り出した対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェースであることなど知らない。

長門「私は――」

 古泉一樹も、朝比奈みくるも超能力者や未来人ではない普通の人間。
 おそらく、ここに長門有希が来る前にいた、この世界本来の長門有希も普通の人間だったのだろう。
 それを乗っ取ってしまったことに、彼女は罪悪感を募らせていた。
 こうして涼宮ハルヒに触れられているべきなのは自分ではないことに――

 だから、彼女はこう口にした。

長門「私は人〈マン〉ではなく、機械〈マシーン〉だから」
269 :今日はここまでです [saga]:2010/12/02(木) 19:03:17.33 ID:9uKuhnc0

 それを聞いたキョンとハルヒは、少しぽかんとして顔を見合わせ、やれやれといった風に肩をすくめた。

キョン「久しぶりに聞いたな、それ」

ハルヒ「えぇ、有希の決まり文句」

 この世界に来てから、長門は自分のことを常にそう言うようにしていた。
 在るべきではない存在の自分が、どう存在していくべきか――

 選択したことは、優先順位を変えないこと。
 そのために、自分を機械のように律した。

 だけど、その言葉はキョン達をいたく怒らせた。自分のことを機械として見る『安さ』が、彼らは気に喰わなかった。

ハルヒ『だったら、この言葉を付け加えなさい! あなたが本当に、機械のように生きるっていうのなら、絶対にこの言葉と一緒よ!』

 その場で思いついたとは信じられない言葉を、ハルヒは考えた。
 長門はその指示に従っている。何よりも高い優先順位をつけて――

長門「今はまだ、機械〈マシーン〉だから」

 閉ざされたと思っていた未来を、開けることができる言葉だから。
270 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/03(金) 01:04:31.77 ID:/S68XAAO
271 :再開です [saga]:2010/12/03(金) 20:40:02.98 ID:bjJF4nA0

 未確認機の報告を受けたホワイトベースはすぐにドラグナーとゲシュペンストを出撃させた。

ヒカル「天使ヒカル、ゲシュペンストタイプS、発進する!」

立夏「天使立夏! ゲシュペンストタイプR、発進、ゴーッ!」

スズ「萩村スズ、ドラグナー2、出ます!」

アリア「七条アリア、ドラグナー3、いきます!」

 シュパァッ! 四機の機動兵器が、出て行く、

ゆりえ「あの、私は……」

霙「私と君は待機だ。敵は一機だから、どこかに隠れているのかもしれない」

ゆりえ「わ、わかりました」

霙「ふむ、待機の間はヒマだからな、ライディーンについて聞きたいことがある。いいかな?」

ゆりえ「は、はひ!」
272 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/03(金) 20:40:56.93 ID:bjJF4nA0

 マチルダ中尉を軍用車輌に乗せた後、海晴は同乗し、ユニットで来たシノはドラグナー1型に搭乗した。

海晴「それじゃあ、無理はしちゃダメよ、シノちゃん」

シノ「はい、わかっています」

 D−1を浮上させる。不明機は方向を修正して、またこちらに向かってきている。

シノ「何者かは知らないが……」

 同じ高さまで来て、シノは始めて見る機体を再確認した。
 それまで戦ってきたメタルアーマーを一回り分厚くしたような外観に蛇のようなカラーリング。
 何よりも威圧的だったのは、巨大なハンドレールガンと肩がけされた給弾ベルト、背中に背負った大型の青竜刀だ。

 新型のメタルアーマーがハンドレールガンを構える。
 その照準が、ドラグナーに向けられていないことに、シノが気づく。

シノ「ま、まさか――!」

 急いでシノは下降してシールドを持った。
 その下には、まだ基地に戻る道を軍用車輌で走るハルヒたちがいた。

 バババババババババババッ! 弾雨がシノに降り注ぐ。もしも彼女が動かなければ、弾丸は車輌を貫いていただろう。

シノ「み、味方を撃つのか……?」

 邪魔をされたことに気づいた。新型機は、ハンドレールガンから背中の青竜刀に持ち替えた。
 ぎらりと陽光を反射する青竜刀は、禍々しい存在感を持っていた。

シノ「く、来るのかっ!?」
273 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/03(金) 20:41:27.33 ID:bjJF4nA0

 シノは右手にレーザーソードを持った。
 シールドで受け止めては切り落とされる可能性がある。実体剣が相手なら、レーザーソードで切ることが出来るはずだ。

シノ「はああぁっ!」

 新型機は青竜刀を大きく振りかぶった。まっすぐに切り下ろすつもりだろう。
 シノはレーザーソードを両手で構えてパワー負けしないように受け止めるつもりだ。

「うん、それ無理」

シノ「えっ――なッ!?」

 いかつい機体の外観からはとても似合わない晴れやかな声が聞こえたとき、レーザーソードと青竜刀がぶつかりあった。

 バキィンッ! 砕かれたのは、レーザーソードのほうだった。

 数週間のシミュレータで植え込まれた感覚がバーニアの逆噴射を命じていなければ、返す刃でD−1は両断されていただろう。

「逃げちゃダメだよ。涼宮さんたち、死んじゃうよ」

シノ「き、君はいったい!?」

 いったい、どんな材質で出来ているのか、レーザーソードを弾いた青竜刀を構えなおした新型機のパイロットは、いかにも気だるそうに名乗った。

朝倉涼子「ギガノス帝国機動F別働隊・朝倉涼子。ゲイザムのテスト中だったんだけど、命令が来ちゃったのね。面倒くさいからそのまま来たの」
274 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/03(金) 20:42:01.56 ID:bjJF4nA0

 ゲイザムとは、おそらくこの新型メタルアーマーのことだろう。
 テスト中の機体でたった一人で乗り込んでくるほどの能力は、彼女がエース級だということだ。

朝倉「あなたがD兵器のパイロットなのね。でも、今はそんなことに興味はないから、邪魔しないでくれたら見逃してあげてもいいわ」

 口調はあくまで穏やかで、まるで夕飯のメニューを決めるような軽さだ。

シノ「だが、君の命令はもしや……」

 つと汗が伝うシノに、まるでステップを踏むかのように朝倉涼子は応えた。

朝倉「涼宮ハルヒの抹殺よ」

シノ「み、味方を殺すのか!?」

朝倉「仕方ないじゃない。彼女は邪魔なのよ」

シノ「ど、どういうことだ!?」

朝倉「ねぇ、『やらなくて後悔するより、やって後悔したほうがいい』って言うよね」

シノ「えっ……?」

朝倉「現状を維持するままではジリ貧になることはわかってるんだけど、どうすれば良い方向に向かうことが出来るのか解らないとき、あなたならどうする?」

シノ「な、何の話だ?」

朝倉「とりあえず、何でもいいから変えてみようとは思わない? だけど、上の人は急な変化は望んでないの。でも、現場はそうは言っていられない」

 ゲイザムがまた青竜刀を振りかぶった。
 シノは反射的に身構える。

朝倉「このままじゃ、どんどん良くない方向に転がっちゃう。だったら、もう現場の独断で強硬に変革を進めちゃってもいいわよね」

 ゲイザムが瞬時にD−1の懐に青竜刀がうねりをあげて襲い掛かる!

シノ「うわぁっ!?」
275 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/03(金) 20:42:34.29 ID:bjJF4nA0

朝倉「そんなもので私の打ち込みが止められると思う!?」

 ガッ! ギィッ! バキッ!

シノ「うっ、ぐっ、うわっ!?」

 強化コーティングの刃が精密な角度でシノに攻めかかる。一撃でも通せば重大な損傷は免れないだろう。
 重い連続攻撃でドラグナーのモーターに負担がかかり、動きが止まる。

朝倉「そこっ!」

 バキィッ! 堅牢な装甲から繰り出されるショルダータックルに吹っ飛ばされるドラグナー。

シノ「ぐあっ!」

 衝撃で緊急姿勢制御が発動する。その反動で前後に大きく揺さぶられたシノの目の前がぐらつく。

シノ「ぐっ、うぅ……」

朝倉「じゃあ、死んでね。さようなら」

 ぼやける視界で、メインモニターにゲイザムの黒い姿が映る。

シノ「ぐ……うあぁ……」

 大きく青竜刀を持ち上げる威容に、シノは震えた。
 あれが振り下ろされれば死ぬ。心臓が鷲掴みされたように痛む。
 両手の震えが止まらない。震えは極度に緊張する体を弛緩させるために発生するもの。
 その緊張は、紛うことなく――恐怖。

シノ「――ひっ!?」

 青竜刀が落ちてくる! 声にならない悲鳴が体内で共鳴し、局所的に弛緩した部位を刺激する。

 その時――

立夏「ちょえぇぇぇいっ!」
276 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/03(金) 20:43:01.45 ID:bjJF4nA0

 回線が拾ったのは、夏の強い日差しのような明るい声だが、ドラグナーの前に割り込んできたのは黒い影だった。

朝倉「なに!?」

 ガキィッ! ゲシュペンストが横からゲイザムにぶつかった!

立夏「ニュートロンビーム!」

 横殴りを喰らってバランスを崩したゲイザムにゲシュペンストが光り、中性子ビームがその脇を掠め、給弾ベルトが切れて荒野に落ちていった。

朝倉「ふーん」

 さしたる感想も持たずに、朝倉は青竜刀を肩に乗せた。
 すぐに攻撃を再開しなかったのは、さらに三機が迫っていたからだ。

立夏「サァ! ここまでだよ! 五対一じゃかないっこないんだから!」

朝倉「そうかしら、おチビさん」

立夏「プンプーンッ! 立夏はチビッコじゃないモン!」

ヒカル「立夏! ふざけている場合じゃないぞ!」

 ヒカルのゲシュペンストが立夏の隣につく。後方にドラグナー2型と3型が支援の配置についている。

ヒカル「さぁ、ここから退いてはくれないか。腕に自信があるといっても、この数を一機で相手にはできないだろう」

朝倉「そうね、私も五機はちょっと大変ね」

 あっさりとした言い方にヒカルは少し拍子抜けしたが、無意味な戦闘が回避できるなら、それは望ましいことだ。
 だが、次に朝倉が口にしたのは、死神の言葉だった。

朝倉「でも、役立たずが一人いる状態じゃ、それもどうかしらね」
277 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/03(金) 20:44:17.39 ID:bjJF4nA0

ヒカル「なに?」

朝倉「そこのD−1のパイロットに聞いてみたらどう?」

 機動兵器に乗ってなどいなければ、いち学校の優等生にしか思えないような声に先ほどから沈黙しているドラグナー1型に接触して回線を開いた。

シノ「…………」

ヒカル「天草先輩? どうかしましたか?」

シノ「ぅ……ぁ……」

ヒカル「天草先輩!? 天草先輩!」

 いくら呼びかけてもシノは応えなかった。微かに揺らしてみても、反応はなかった。

朝倉「いくら呼んでも無駄よ。その子は今、砕けちゃってるから」

ヒカル「――ッ!?」

立夏「ヒカルオネーチャンッ!?」

 いつの間に移動したのか、ゲイザムがヒカルのゲシュペンストの肩に手をかけて寄り添っていた。
 怖気に急発進させたゲシュペンストに弾かれたドラグナー1型がバーニアの制御を失い、落下する。

立夏「あぁっ! シノオネーチャンが!」

 ガシッ! ゲシュペンストの手がドラグナーの手を取る。

朝倉「ダメよ。乱暴にしちゃあ」

立夏「ヒッ! リッカにもキタ!?」

 冷たい手で背中をなぞられるような気色悪さに立夏もまたシノの手を落とすところだったが――

ヒカル「立夏に、手を出すなぁーっ!」

 ガガッ! 姿勢を取り直したヒカルがジェットマグナムで突撃する! しかし、すんでのところでゲイザムはひらりと避けた。

朝倉「あら、素敵ね。熱い気持ち、笑えるわ」

 ゲイザムの青竜刀が振り下ろされる。それをかろうじて避けながら、ヒカルもプラズマカッターで突く。
278 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/03(金) 20:45:12.91 ID:bjJF4nA0

 両機が競り合って上昇していく。その下で立夏はサブモニターに映ったコクピットで沈黙しているパイロットに呼びかけた。

立夏「シノオネーチャン! オネーチャンってば!」

シノ「ぅぅ……」

 揺らしてもさすってもシノは反応しない。

立夏「むむむ〜っ……!」

 小学生を卒業したばかりの立夏が痺れを切らすのは早かった。

立夏「シノオネェーーーーーーチャンッてばぁーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」

シノ「うわっ!?」

 バイザーの中のスピーカーが音量を調節するが、立夏の大音声はそのラインを振り切って音割れしてしまった。
 その衝撃でシノがびっくりして目覚めた。

立夏「シノおねーちゃん、起きた!?」

シノ「り、立夏ちゃんか……鼓膜がやぶけるかと思った……」

立夏「シノおねーちゃん、ダイジョブ?」

シノ「あ、あぁ……っ!?」

 自分が何をしているのか思い出したシノの顔が真っ赤に染まった。
 両足をもじもじさせ始めたシノに立夏がかくんと首をかしげた。

立夏「おねーちゃん、どうしたの?」

シノ「その……も、漏らしてしまったみたいだ……」

 上半身の妙な解放感とぐっしょりと濡れた下半身の生温かさにシノはもう操縦するどころではなくなっていた。
 機動兵器のパイロットはノーマルスーツを着用する。シートの内部には排泄用のタンクがあり、パイロットはそこに用を足せばいいのだが、ノーマルスーツの排泄プラグをシートのプラグと繋げて始めてタンクに通るホールが開くのだ。
 今回のように、突発的なことになってしまうと、全てノーマルスーツ内に残ってしまう。プラグを繋げばあらかた落とすことは出来るが、スーツ内に残る温もりは最悪といってもいいものだ。

シノ「こ、こんなところでス××ロプレイだなんて……」
279 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/03(金) 20:46:37.59 ID:bjJF4nA0

 シノが呟いた言葉の意味は小学生を卒業したばかりの立夏にはわからなかったが、シノが漏らしてしまったのは自分のせいじゃないかと思って、慌てた。

立夏「もも、もしかして、立夏のせい?」

シノ「い、いや、立夏ちゃんのせいじゃないよ……それより、私はいいからヒカル君を助けに行ってやってくれ」

立夏「わ、わかったヨ、おねーちゃん!」

 ゲシュペンストの接触が解け、ドラグナーと外界を繋ぐものがなくなったとき、シノの肩が大きく跳ねた。

シノ「ぅぐっ……! あぁぁ……!!」

 全身を駆け巡る寒気は下半身を包む残滓の影響だけではない。
 ガチガチと歯が鳴る。脳裏に焼きついた青竜刀の映像が何度も襲い掛かってくる。
 出すものを出したはずの尿道がまたひくついた。震えは治まらず、計器の残像がはっきり目に映る。

シノ「はは、はっははは……」

 無理やりに笑みを浮かべてシノは恐怖を遠ざけようとした。
 誰かが接触して回線を開けば、サブモニタには顔面神経痛のような醜い顔つきの少女が映ったことだろう。
280 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/04(土) 13:30:13.58 ID:3x1KlMAO
進め
281 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/04(土) 16:19:50.30 ID:g09lNADO
進め
282 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/05(日) 19:49:36.09 ID:zsuEkIAO
進め!
283 :再開です [saga]:2010/12/06(月) 16:51:36.76 ID:1IAYp320

 重慶基地

 基地に到着したハルヒたちに古泉がすぐに駆けつけてくる。

古泉「涼宮さん! ご無事でしたか!?」

ハルヒ「えぇ、有希のおかげで」

キョン「古泉、あの機体は何なんだ!? あいつが全部をぶち壊しにしやがったんだぞ!」

古泉「あれについて、ドルチェノフ中将の指令があります」

ハルヒ「何よ?」

古泉「新型機ゲイザムを援護し、D兵器を奪取せよ。それが果たされぬ場合はハルヒ・スズミヤ・プラートの少尉格を剥奪し、本国へ強制送還するものである、と」

キョン「だがな! あいつは俺たち諸共殺そうとしていたぞ!」

ハルヒ「つまり、どっちにしてもあたしを殺すつもりね、ドルチェノフは」

古泉「本国に戻ったとしても、よくて勾留の後に軍事裁判でしょうね」

 ハルヒは爪を噛んだ。元を正せば父であるラング・プラート博士の裏切りで殺されてもおかしくない立場だった。
 それをドルチェノフの下につき、尖兵として屈辱に耐えてきたのは、監禁されたみくるを救けることと、父の友であったメサイア・ギルトールの理想を叶えるためである。

 だが、ドルチェノフはついにハルヒを抹殺することを決意したらしい。これは二つの大きな意味を持つ。
 一つはドルチェノフが議会を制する用意ができたということ。蒼き鷹の名でカリスマのあるハルヒとギルトールを始末すれば、ギガノスはドルチェノフの支配に陥るということだ。
 そして、もう一つはドルチェノフの思想がギルトールの持つそれとは大きくかけ離れたところにあるということだ。

ハルヒ「……私たちの理想にあまりに遠い隔たりがある。高い美空の星のように、高いところで光っている」
284 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/06(月) 16:52:31.02 ID:1IAYp320

キョン「ハルヒ……」

 ハルヒは爪を噛ませていた手を空にかざし、今激しく打ち合っている機動兵器に眩しそうに見る。
 斜めに影を残す背中にかける言葉が見つからないキョンの袖が、不意に引っぱられた。

キョン「……長門?」

 ともすれば見失ってしまいそうなくらい存在感の希薄な少女のアプローチに視線を下ろすと、薄い唇がはっきりと言った。

長門「方法はある」

キョン「な、長門、そりゃ本当か!?」

 藁にもすがる思いの声にハルヒと古泉も振り返る。
 三つの視線を集めてから、長門は右腕を上げた。

ハルヒ「えっ……?」

キョン「お、おい、長門。それはどういうことだ?」

 長門の右手が握っている物は、先ほど彼女を救った短銃だ。しかし、今度はその銃口がぴたりとハルヒの胸に向けられている。

ハルヒ「ゆ、有希……?」

 突然のことにハルヒ後ずさりするのを燻した銀のような瞳で追った長門の指に力が込められるのをキョンは見た。

キョン「なが――」

 乾いた音が基地内に響いた。
285 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/06(月) 16:53:08.91 ID:1IAYp320

 重慶基地 上空

朝倉「あら?」

 ゲイザムの殺人的に狭いコクピット内で朝倉涼子は携帯端末の点灯に首をかしげた。

朝倉「涼宮さん、死んじゃった?」

 その点灯は緑のはずが、今は赤に変わっている。
 これは、涼宮ハルヒの心臓とリンクしている。ドルチェノフが反逆防止のために彼女の体に埋め込んだもので、これが赤ということはつまりハルヒの心臓が停止したということだ。

朝倉「さっきのかな? 意外とあっけなかったわね」

 達成感はなかったが、とりあえず目的は達成できた。D−1は戦線を離脱したようだが。

朝倉「それじゃあ、遊びの時間は終わりね」

 先ほどからまとわりついてくる二機のゲシュペンストとそれを支援しているD−2とD−3。
 そこそこのセンスはあるようだが、彼女からすれば経験値が低すぎる。
 生かしておく理由もないので、ここで完全に破壊する。パイロットごと。

朝倉「ちょっとは楽しかったよ。ばいばい」

 両手を押し込むようにして、ぐんと機体の高度を下げた。機体の頭上で立夏のゲシュペンストがプラズマカッターを空振りするのを確認することもなく、朝倉は前方に速度を増した。

スズ「!」

朝倉「まず、あなたが邪魔なのね」

 目障りなことをするD−3にゲイザムが迫る。
 向こう側のパイロットが息を詰まらせるのがはっきりとわかった。
 
朝倉「さよなら」

 ゲイザムの捕食圏内に捉えたD−3に青竜刀が鈍く光った。そして――

 ズドォォォォォォォォォッ!!

朝倉「!?」

 今にも巨大な刃がD−3の胴を切り落とそうとしたとき、大気が大きく爆動した。
 煽りを受けて機体のバランスが崩れ、D−3は辛うじて大蛇の顎から逃れることができた。
286 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/06(月) 16:53:35.44 ID:1IAYp320

スズ「な、なにが起こったの……?」

 九死に一生を得たスズがアリアの傍まで駆け寄ると、EWACが襲撃を警戒していた。

スズ「敵!? どこから……母艦の後ろ!?」

立夏「えぇっ!?」

ヒカル「くっ……こんなときに……」

アリア「でも、ホワイトベースには霙さんやゆりえちゃんもいるわ。どうにか持ちこたえられるはずよ」

スズ「識別は、あのドローメという戦闘機が多数と、その母艦と思しき巨大飛行物体です」

 それ以上の会話の時間は与えられなかった。

朝倉「よそ見しちゃダメだよ」

 ブゥンッ! 体勢を立て直したゲイザムが青竜刀を四機の中に振り下ろした。

ヒカル「くっ……私たちはこいつに集中だ!」

スズ「それじゃあホワイトベースが!」

ヒカル「……信じるしかない。まだ海晴姉がいる」

 海晴はマチルダの護送の最中だ。連邦基地にヴァイスリッターが下ろしてあるので、直接乗り込むはずだ。

ヒカル「それまで、こいつは私たちが食い止めるんだ!」

 ゲイザムの横薙ぎを上昇して回避したヒカルのゲシュペンストが、プラズマカッターを両手に構えた。
287 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/06(月) 16:54:44.57 ID:1IAYp320

 一方で、ホワイトベースは騒然としていた。
 突如レーダーに侵入してきた無数のドローメに、香月シノンは矢継ぎ早に指示を出して乗組員達に行動させている。
 まだ少女の域を脱し切れていない彼女の指揮能力も、度重なる実戦の中で確実に培われていた。

シノン「ゆりえさん、出られますか!?」

ゆりえ「はい! ライディーン、いけます!」

シノン「ライディーン、発進!!」

 ゴッドバード形態のライディーンが飛び出し、空中でライディーンに変形する。

ゆりえ「ラァァァイディィィィィィン!」

シノン「ホワイトベースは敵との接触を避け、ヒカルさんたちの救援に向かいます。アルトアイゼンは直援に回ってください」

霙「了解した。アルトアイゼン、出る」

 空になった格納庫を見て、シノンはオペレーターのほうを見た。

シノン「それで、先ほどのアレはわかりましたか?」

連邦兵「はい、どうやら敵の戦艦のようです」

シノン「まあ、そうでしょうね……ドローメが出てきたということは、妖魔帝国のものでしょう」

 改めてモニターに映し出されたそれを、シノンはやはり疑わざるを得なかった。

 戦艦と判断したものは、巨大な人間の手にしか見えないのだから。
288 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/06(月) 16:55:47.30 ID:1IAYp320

ゆりえ「ゴォォォォッド・ミサァァァイル!」

 地鳴りのするような声がライディーンの口から発せられ、羽のあるミサイルが近くのドローメを落とす。

ゆりえ「ゴォォォォォッド・ブゥゥゥゥゥメラァァン!」

 左手の楯が弓状に変形し、それを投げつける。雑草を刈り取るかのようにドローメが爆発して墜落していく。

 それを妖魔帝国岩石戦艦・大魔竜ガンテの中から見ている影が笑った。

シャーキン「フフフ、あれがライディーン……一万二千年前に我々妖魔帝国を地の底に沈めた忌まわしき巨神か」

 均整の取れた青白い体にぴったりと軍服を着込んだ妖魔帝国のプリンス・シャーキンは細い顎に手を当てて顔の上半分を多い隠す仮面の目をキラリと光らせた。

シャーキン「よかろう、バラオ大帝復活を前に、奴を血祭りに上げよう。化石獣バストドンを出せ!」

ゆりえ「な、何か出てくる!?」

 ガンテから出てきたのは真っ青な巨人、化石獣バストドンだ。

シャーキン「やれ、バストドン!」

バストドン「ぐおぉぉぉぉぉぉ!」

 ドドォンッ! 化石獣の体当たりでライディーンが倒される。

ゆりえ「きゃあぁぁっ!!」

バストドン「がおおぉぉぉぉぐ!」

ゆりえ「やられちゃうっ!? やりかえさなきゃ!」

 つかみ掛かってくるバストドンにゆりえは左腕を上げた。

ゆりえ「ゴォォォォォッド・ブレイカァァァァァ!」

 ズバァッ! 弓状に変形した楯で円を描くように切り付けると、バストドンの両腕が落とされる!

ゆりえ「や、やったぁ……!」

シャーキン「やるな、ライディーン。だが、バストドンはその程度ではない!」

バストドン「がおぉぉおぉっ!」

 ぞるっ。まっさらな切り口を見せるバストドンの両手首から剣が出現した!

ゆりえ「そんなぁっ! ずるいよぅ!」
289 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/06(月) 16:57:23.91 ID:1IAYp320

 ガキッ! ガァンッ!

立夏「うひゃぁっ!」

ヒカル「くあぁっ!」

朝倉「ほらほら、もうぼろぼろじゃない。そんなので私を止められると思ってるの?」

 ゲイザムの猛攻にヒカルのプラズマカッターは折れ、ジェットマグナムも失っていた。
 立夏もミサイルと弾丸を撃ちつくし、右足を半壊されている。

アリア「スズちゃん!」

スズ「いけます! やってください!」

アリア「ごんぶと! いっけぇぇぇ!」

 ドォンッ! ドォンッ! 2型の280ミリキャノンが3型の誘導支援を受けて放たれる。

朝倉「きゃっ、やっぱりあの子をやっておくべきだったわね」

 体重のあるゲイザムでもひらりと避ける。この敵味方入り混じる状況で砲撃すれば味方に当たる可能性もあったが、やはりD−3の電子戦能力が強力にサポートしているのだろう。

ヒカル「たあぁぁーっ!」

 キィンッ! 右肩の死角からプラズマカッターが舞い込むが、人間ならばありえない角度に曲がったゲイザムの手首がそれを防いだ。

朝倉「機械と人間は違うのよ。それを教えてあげる」

 接触回線で拾った嘲笑の後、ゲイザムの右肩の一部がパージされた。そこからハンドグレネードが飛び出し、ゲシュペンストの右腕に接触し、爆発する。

 ドドォンッ!

ヒカル「うわぁぁっ!」

 ゲシュペンストの右肘から先が消し飛んだ。残り一本のプラズマカッターが黒い煙のどこかに消えていった。
290 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/06(月) 16:58:04.37 ID:1IAYp320

立夏「オネーチャン! このぉっ!」

 ギュァッ! ニュートロンビームでゲイザムをヒカルから遠ざけることに成功したが、代わりに立夏のメインモニターがアラームを発した。

立夏「ウッソォ!? 弾切れ!?」

 立夏のゲシュペンストは全ての攻撃兵装を使い切ってしまっていた。
 プラズマカッターもとっくに切り払われている。文字通りのデクノボウだ。

ヒカル「立夏! くっ……どうすれば……」

 ヒカルのゲシュペンストもほとんどの武器を失っている。後はもう取り付くぐらいしか手段がない。

ヒカル「――ッ! 待てよ……」

 迫り来るゲイザムを前にヒカルはあることを思い出した。
 霙からゲシュペンストを受け取ったときの言葉。

霙『ヒカルのゲシュペンストには、私が考案した究極のアタッカー・モーションがある。いざという時はそれを使え。ただし、修理屋泣かせの一度きりの大技だ』

 敵は青竜刀を振りかぶっている。反撃の手段はない! 追い込まれれば終わる!

ヒカル「コード・UGK!」

 躊躇うことなくヒカルは唱えた。
 瞬間、ゲシュペンストは宙を蹴るように大きく上昇し、元いた場所をゲイザムの青竜刀が切った。

ヒカル「ドライブ・オン!」
291 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/06(月) 16:59:30.87 ID:1IAYp320

ヒカル「アタッカー・フルドライブ!」

朝倉「何をする気!?」

ヒカル「この技は、叫ぶのがお決まりらしくてな……」

 バシュッ! 体勢を整えたゲシュペンストが更に空中で後方に宙返りする。

ヒカル「だが、ここで叫ぶのはやぶさかではない!」

 ゴオォッ! ヒカルの精神が燃え上がる!

 ギシ、ガシィンッ! ゲシュペンストの全駆動が軋みを上げている。まるで格闘家が全身の筋肉を興奮させているようだった。

ヒカル<熱血>「ゆくぞっ!」

 バシュィィンッ! 右足首が垂直に下を向く。ゲシュペンストの背部の噴出口が全て開放される!

ヒカル<熱血必中努力>「究極ゥ! ゲシュペントォ!! キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィック!!!!」

朝倉「なにごと!?」

 ズガァァァァァァァァァァンッ!! 渾身の一撃がゲイザムの頭部を直撃した!

朝倉「うぐっ……! やられちゃった。まあ、いいか。データは充分取れてるし、命令はクリアできたし」

 コクピットが狭くて助かるということもあるのだと朝倉は思った。
 もしもあと数センチずれていたら、コクピットは潰れていた。

 脱出ポッドの中で朝倉は言う。

朝倉「涼宮さんは殺せた。D兵器のパイロットはもう使い物にならない。まあ、基地は取られちゃうかもしれないけど、そんなのは関係ないものね」
292 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/06(月) 17:01:18.92 ID:1IAYp320

バストドン「ぎゃおぉぉぉぉぉんっ!」

ゆりえ「きゃあぁぁぁっ!」

 バストドンの剣がライディーンにぶつかる。

ゆりえ「うぅぅ〜、どうすれば……」

「勇者よ……!」

ゆりえ「! この声……また」

「勇者よ……声を聞け……!」

ゆりえ「聞いてますよぉ、どなたなんですか!?」

「ゴッド・ゴーガン……」

ゆりえ「ゴッド……ゴーガン……?」

 ゆりえの呟きにライディーンの目が光りを放った。

ゆりえ「ゴッド・ゴーガン……うん、やってみる!」

バストドン「ぎゃおぉぉぉぉぉん!」

ゆりえ「ゴォォォォォッド・ブロォォォォォック!」

 バストドンの攻撃を受け止めたゆりえはゴッド・ブレイカーで弾き飛ばす。
293 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/06(月) 17:02:20.04 ID:1IAYp320

 そして、ゴッド・ブレイカーの両辺をさらに長く伸ばし、光りの弦に矢を引いた。

ゆりえ「ゴォォォォォッド・ゴォォォォォガォォン!」

 パシュゥッ! 光りを纏った矢がバストドンに突き刺さる!

バストドン「ぎゃおぉぉぉぉぉぉぉ!」

シャーキン「むっ、バストドン!?」

ゆりえ「ゴォォォォォッド・プレッシャァァァァァ! ラァァァァァイ!」

 ドゴォォォォォォン! ライディーンの体当たりでバストドンが爆散した!

シャーキン「むっ、やるな、ライディーン。いや、一橋ゆりえ!」

ゆりえ「ど、どうして私の名前を?」

シャーキン「その胸の奥に訊ねてみるがよい! 撤退だ!」

 シャーキンの号令でドローメは大魔竜ガンテに戻り、ガンテも背を向けて退却していった。

ゆりえ「やっぱり……妖魔帝国とライディーン……そして、私も関係あるのかな……」

シノン「ゆりえさん、聞こえますか?」

ゆりえ「は、はい!」

シノン「妖魔帝国が撤退するのを確認したら、戻ってきてください」

ゆりえ「わ、わかりました」
294 :今日はここまでです。 [saga]:2010/12/06(月) 17:03:04.97 ID:1IAYp320

 ホワイトベース

シノン「そう、やっぱりギガノス軍は重慶基地から撤退しつつあるのね」

連邦兵「はい、蒼き鷹の親衛隊の機影も確認しています」

シノン「どういうことなのかしら……」

連邦兵「香月少尉、天使少尉から通信が入っております」

シノン「繋いで」

海晴「こちら天使海晴少尉です。聞こえていますか?」

シノン「通じています」

海晴「よかった……マチルダ中尉は無事に戻ることができたわ。私はもう少しここで様子を見ます」

シノン「許可します。ところで、重慶基地からギガノス軍が撤退したそうですが、何かわかりますか?」

海晴「それは……ちょっとわからないわね」

シノン「そうですか……」

 この通信で、気付けというほうが難しかっただろう。
 あるいは、海晴の姉妹であるヒカルや霙、立夏ならば何かを掴んだかもしれない。

 海晴の声と喉元が、僅かに震えているのを……



 第十一話 強襲! 毒蛇の女と悪魔の王子 完
295 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/06(月) 20:07:36.81 ID:8fZqXAAO
乙、そういえばライディーン35周年らしいな
296 :再開です。 [saga]:2010/12/07(火) 18:22:37.24 ID:c1zkf.g0

 インターミッション

唯「さん!」

和「に」

憂「いち!」

唯・憂「どか〜ん!」和「どかーん」

唯「おーいみんな〜、集まれ〜!」

和「あつまれー」

憂「なぜなになでしこの時間だよ〜」

唯「え、なぜなになでしこって何かって?」

憂「それは『スーパーロボット大戦のことなんて何も知らないよ!』って人に和ちゃんが簡単に説明をしてくれる番組だよ」

和「随分、久しぶりね。四話ぶりぐらいかしら?」

唯「日数なら、四週間ぶりぐらいだね!」

和「まあ、箱プロが完成したから、ネタの矛盾点に困ることがなくなって、時間を稼ぐ必要がなくなったからね」

憂「それじゃあ、なんでまた再開したの?」

和「一応、けいおんがメインのssだから、けいおんキャラの登場しない話が続く合間にけいおん分を補給するのよ」

唯「ねーねー、箱プロってなーに? ダンボール箱のプロなの? スネークなの?」

憂「まあ、似たようなものだよね」

和「ぜんぜん違うわよ。どうして平気で嘘をつくのよ」

憂「騙されるお姉ちゃんってかわいいよね」

唯「うぇへへ〜、騙されちゃいました〜」
297 :再開です。 [saga]:2010/12/07(火) 18:23:26.29 ID:c1zkf.g0

和「まったく……箱プロはあれよ、箱書きとプロットを合わせた超マイナーなシナリオ用語よ。基本は箱書きっぽく書きながらところどころプロットのような説明を混ぜていくのよ。作る人が箱書きと言えば箱書きで、プロットといえばプロットとも呼べてしまう存在自体が曖昧な用語よ」

憂「じゃあ、どうしてそんな言葉を使ったの?」

和「本当に箱書きかプロットか曖昧なものになったからよ。ググっても出てこなかったから、もしかしたら身内でしか使っていない言葉なのかもしれないわ」

唯「身元ばれない?」

和「知ったこっちゃないわ。ともかく、シナリオのストーリーラインが決定したのよ。とんでもないわ、四十話ぐらいになっちゃった」

唯「さすがに大作すぎてドン引きだよ」

憂「普通に販売されてるスパロボ並みの話数だよね」

和「参戦作品が十いくつで重要なイベントだけを抜き出したというのに、どうしてこうなったのかしらね」

憂「そもそもまともにアニメを見た作品のほうが少ないのにね」

唯「ゲッターロボの恐竜帝国なんて出てすらいないのにね」

和「現在十一話で300近いレスを消費してるから、この時間も入れていけば確実に次スレ行くわね」

唯「ごめんなさいしないといけないよね」

和「ごめんなさい。軽い気持ちで初めてごめんなさい」

憂「しかも、息抜きって言う姿勢は貫くんだよね」

和「さすがに生活の一部にはできないわ」
298 :再開です。 [saga]:2010/12/07(火) 18:24:08.83 ID:c1zkf.g0

憂「それじゃあ、今回は『パイロットについて』だね!」

和「えぇ。唯、IMPACTのパイロット能力を開いてちょうだい」

唯「ほーい」

憂「ちなみに、9話まで終わってるよ」

和「見事にV-UPユニット(W)を取り逃しているところが哀愁漂うわ。まあ、私も取り逃したけど」

和「とりあえず一番上のバーニィを選んで」

憂「レベルが一番高いパイロットの順に並んでるからね」

唯「憂がガメついから、強運持ちのバーニィでばっかり敵を倒すから……」

憂「そんなこと言わないでよ! バーニィは奇襲も持ってるから撤退するボスも倒せるんだから!」

唯「だからってシローさんのEZ-8まで取り上げちゃうなんて酷いよね」

憂「シローに返したせいでブッチャー倒せなかったんだから!」

和「憂は、グレートマジンガーを宇宙に上げちゃったけどね」ボソ

和「さて、バーニィの能力画面ね。パイロットの能力には大きく分けて『戦闘能力』『特殊技能』『精神コマンド』の三つがあるわ」

唯「『戦闘能力』は格闘、射撃、命中、回避、技量、防御の六つでRPGでいう普通のステータスだよね」
299 :再開です。 [saga]:2010/12/07(火) 18:24:58.21 ID:c1zkf.g0

和「そうよ。例によって表を出すわ。当たり前のことだけど、数値が高いほど効果が高いわ。気力と性格も加えておくわ」

 格闘 武器の属性が『格闘』『格射』の攻撃力に関わる。ユニットの体で直接打撃するような武器が格闘、格射扱いになる。
 射撃 武器の属性が『射撃』の攻撃力に関わる。ビームライフルなど、間接的な武器が射撃扱いになる。
 命中 攻撃の命中率に関わる。
 回避 敵の攻撃を回避する能力値。
 技量 この数値が高いほど、「クリティカル(ダメージが1.2倍)」が出やすくなる。
 防御 ユニットの防御力に関わる。
 性格 パイロットの性格。気力の増減に関わる。
 気力 ステージ開始時に100に固定され、敵や味方の撃墜などで常に増減していく。気力が高いほど攻撃力や防御力が上昇し、強力な必殺技が使えるようになる。

憂「格射ってなに?」

和「たとえば、ロケットパンチなどの武器が格射扱いね。体の一部を飛ばして攻撃するから、『格闘能力に依存した射撃武器』ということよ」

唯「性格ってどんなのがあるの?」

和「基本は普通、強気、超強気、弱気の4つよ。例えば、味方が撃墜されたとき、超強気なら気力が+2だけど、弱気だと−1されてしまうの」

憂「気力もスパロボならではのステータスだよね」

和「えぇ、他の戦略ゲームにもこれに近いシステム(三国志における士気/練度)があるけど、スパロボにおいて気力は最も重要な要素の一つよ」

唯「ダンクーガも気力が上がるとダメージがすごいことになるもんね!」

和「そうよ、これは特殊技能の話でもあるのだけど、ダンクーガのパイロットが持つ『野生化』という技能は『気力130以上でダメージが1.2倍』という強力なものよ」

憂「スーパーロボットの必殺技もたいていは気力130以上で使えるようになるよね」

和「そう、だからボスを倒すためには気力を上げていかないと攻撃がほとんど喰らわないという状況もありうるのよ」


憂「次は『特殊技能』だよね。バーニィは『強運』『防御レベル2』『援護攻撃』『援護防御』を持ってるね」

和「特殊技能はパイロットたちが持つ個性を特徴づける重要な能力よ。例えばバーニィは原作では戦死しているけれど、スパロボでは、玉砕覚悟で機体が大破するほどの戦闘をしたが、戦死することなく生き延びることが出来たという設定から、強運という特殊技能がついたのよ」

唯「でも、強運の効果は『敵撃墜時の獲得資金が1.5倍』だよね。戦死とかあまり関係なくない?」

和「スパロボでは、戦死は元より味方機が撃墜することは少ないから、精神コマンドの幸運(敵撃墜時の獲得資金が2倍)に関連付けて強運も資金に関する設定になったのよ」

憂「お姉ちゃんはいっぱい撃墜されてるけどね」

唯「何か言った?」
300 :再開です。 [saga]:2010/12/07(火) 18:25:44.68 ID:c1zkf.g0

和「特殊技能で有名なものは、ガンダムのニュータイプパイロットが持つ『ニュータイプ』とスーパー系パイロットの多くが所有する『底力』ね。やっぱり表よ」

 ニュータイプ ガンダムシリーズに登場する新人類の概念だが、「抜群な認識能力により、敵の気配を感じることが出来る能力」として、『パイロットの命中/回避を上昇させ、ニュータイプ専用武器を扱えるようになる』

 底力 スーパーロボットアニメにおなじみの「火事場の馬鹿力」を再現した能力。『HPの減少に応じて命中/回避/防御/技量が上昇する』

 聖戦士 ダンバインのパイロット、聖戦士が持つ技能。『回避/防御が上昇し、必殺技のハイパーオーラ切りの威力が上がる』

 シンクロ率 エヴァンゲリオンのパイロットが持つ技能。『50%を基準に全能力が上昇するが、ATフィールドを破られたり撃墜されると大幅に下がる』

 インファイト 格闘家などが持つ技能。『格闘武器の威力と移動力が上がる』 射撃能力が上昇するガンファイトも存在する。

 シールド防御 シールドを持つユニットに乗ったとき、攻撃を受けた際にダメージを軽減する。

 切り払い ミサイルや剣などの武器を切り払う。発動するとかっこいい。

 
和「以上のような技能が、パイロットの先天的な技能よ。レベルが上がるごとに技能も成長して強力なものになるわ」

憂「バーニィの防御レベル2は?」

和「防御レベルはIMPACT独自の技能でもあって、切り払いとシールド防御を兼ねているわ。IMPACTは技能が4つまでしかつけられないから、このようにまとめられたと考えられるわ」

唯「ふむふむ」

和「次は気力上昇で発動する技能よ。一定の気力に達すると効果を発揮する、強力な技能よ」

 野生化 気力130以上でダメージが1.2倍になる。ダンクーガが登場しない作品では『アタッカー』となる。

 ガード 気力130以上で被ダメージが80%になる。スーパー系が持つと無敵に。

 がんばり屋 気力120以上で毎ターン精神コマンド『努力』が発動する。

 明鏡止水 気力130以上で全能力が上昇。爆熱!ゴッドフィンガーが使用できるようになる。ドモン・カッシュ専用能力。

 予知能力 気力110以上で毎ターン精神コマンド『ひらめき』が発動する。

 奏者   気力130以上で全能力が上昇し、専用ユニットのラーゼフォンが『真理の目』状態になる。神名綾人専用能力。

 SEED ガンダムSEEDのパイロットが持つ技能。俗に言う『種割れ』で気力120以上で全能力が上昇し、顔グラが変化。

 IFS  エステバリスを動かす生体ナノマシンを体内に埋め込む。気力に応じて全能力が上昇。
301 :再開です。 [saga]:2010/12/07(火) 18:26:21.38 ID:c1zkf.g0

和「他にもこんな技能があるわね。どれもパイロットの個性を引き立たせるものね」

 勇者 隣接した味方の攻撃力が上昇する。勇者王ガオガイガーなどが所持。

 リフテクニック エウレカセブンのパイロットが持つ技能。命中/回避が上昇。低確率で攻撃を完全回避する。

 リベンジ 反撃時に攻撃力が上昇する。EVAのアスカやカミーユ・ビダンなどキレやすいパイロットが持つ。

 ガッツ  トップをねらえ!のタカヤノリコが持つ。精神コマンド『努力』と『根性』の消費が減る。イベントを経て『スーパーガッツ』を取得。

 天才  レベルが早く上がるようになり、全能力が上昇。トップをねらえ!のユング・フロイトなどが持つ。

 逆恨み 特定のパイロットがステージにいると攻撃力が大幅に上昇。敵専用能力で、ジェリド・メサやギル・バーグなどが所持。

 ネゴシエイター 交渉人のこと。攻撃した敵の気力を下げる。ビッグ・オーのロジャー・スミスが所持。

唯「本当にいっぱいあるんだね」

憂「パイロットの数だけ人生があって、得意なことも違ってくるからね」

和「ガンダムやゲッターロボなんかはゲームが出て二十年近く経っているのにまだ再現されていない能力があるらしいわね」

憂「でも、そういうことをすると専用技能ばかりが増えちゃうんだよね」

唯「困ったことだねぇ」

和「それじゃあ、いよいよスパロボをゲームとして引き立たせた最大の要素である『精神コマンド』ね」

唯「うんうん、精神コマンドがないとスパロボとは呼べないよ」
302 :再開です。 [saga]:2010/12/07(火) 18:28:03.78 ID:c1zkf.g0

和「一般には精神コマンドは「通常のRPGにおける魔法のようなもの」と説明されるわね」

唯「でも、直接敵を攻撃したりするものじゃなくて、味方の能力をばーんって上げる感じのものばっかりだよね」

憂「ドラクエなんかに例えるとメラやギラじゃなくて、バイキルトやメダパニなんかのサポートだよね」

和「えぇ、Wikiからの引用だけど『スーパーロボット大戦シリーズのパイロットは、個別に設定された精神ポイント(略称はSP)というリソースを消費し「機体のHP回復」「攻撃力上昇」「命中率や回避率の修正」「獲得経験値や資金の増加」といった様々な特殊効果を得ることができる』というものよ」

唯「パイロットによって覚えるコマンドも違ってくるんだよね」

和「そう、例えば主人公キャラクターは自分で攻撃力を上昇させたり、HPを回復するけど、原作でサポートに回ることが多いキャラクターは敵を弱体化させたり、味方ユニットの気力を上昇させたりすることができるわ」

憂「こんなところでもパイロットの個性って出てくるんだね」

和「えぇ。さらに、精神コマンドの大きな特徴として、『どれだけ使用しても行動終了にならない』という利点があるわ。一度のターンで複数の精神コマンドを重ねて使用することで、展開を一気に有利にすることだってできるの」

唯「熱血と必中で強敵に確実に大ダメージを出したり」

憂「撹乱と集中で敵からの反撃をほとんど回避できたりするもんね」

和「スパロボ=精神コマンドというのは切っても切り離せない関係になっていて、スパロボ関係の作品では必ずといっても言いほど精神コマンドが出てくるわ。ここで代表的なものをまた表にするわ」
303 :再開です。 [saga]:2010/12/07(火) 18:28:31.36 ID:c1zkf.g0

 熱血 一度だけ、敵に与えるダメージが2倍。

 必中 1ターンの間、敵への命中率が常に100%になる。

 閃き 一度だけ、敵からの攻撃を完全回避する。閃き>必中である。

 鉄壁 1ターンの間、ユニットの装甲を2倍にする。

 集中 1ターンの間、命中と回避を30%上昇させる。

 根性 自ユニットのHPを最大値の30%回復する。完全回復するド根性もある。

 信頼 指定した味方ユニットのHPを最大値の30%回復する。

 気合 自分の気力を10上昇する。強化版の気迫も存在する。

 激励 指定した味方ユニットの気力を10上昇する。

 脱力 指定したユニットの気力を10減少させる。

 幸運 1度だけ、次の戦闘で得られる資金が2倍になる。使ったときに敵が倒せないと泣くことになる。

 努力 1度だけ、次の戦闘で得られる経験地が2倍になる。

 加速 1度だけ、移動力が3増える。

 撹乱 1ターンの間、敵の命中率が半分になる。

 覚醒 1ターンの行動回数が1増える。

 自爆 自ユニットを自爆させてHP分のダメージを与える。自爆したユニットは撃墜扱い。

 魂  1度だけ、敵に与えるダメージが3倍。熱血との併用は不可。

 愛  全ての味方ユニットのHPを完全回復させる。

 勇気 加速、熱血、必中、不屈、気合、直撃が同時にかかる。

 奇跡 加速、必中、閃き、気迫、ド根性、努力、幸運、魂が同時に発動する。

和「一応、今のスパロボにほぼ出ている主要な精神コマンドがこんなところね。ただ、最近では愛の効果が奇跡の縮小版として出ていることもあるわ」

唯「これでもまだ半分ぐらいなんだね」

和「基本的に、精神コマンドが使えるのは味方だけだけど、一部の敵パイロットがイベントや特殊技能などで使用することもあるわ。代表的な例が技能の予知能力ね。閃きが発動することで、こちらの攻撃が必中でも当たらなくなるわ」
304 :今日はここまでです :2010/12/07(火) 18:29:12.06 ID:c1zkf.g0

和「今回はこんなところね。スパロボには300人近いパイロットがいて、ユニットと同じように同じ能力のパイロットはほとんどいないわ」

唯「ちょっとはいたりするの?」

和「『ほとんど同じ能力』のパイロットはいるわ。例えば、双子や兄弟のキャラクターはやはり似た能力になってくるわね。いい加減にプルツーをプルの亡霊から切り離して戦闘型にしてほしいわ。魂つけろよ」

憂「和ちゃん、口調が違う……」

和「ごめんなさい、本音が出たわ。プルツー大好きなのよ愛してるマジ一緒に住みたい」

唯「どうしよう、和ちゃんがやばいよ」

和「あぁ、力を使いきってぐったりしてるプルツーを医務室で看護したいわ」

憂「指組んでトリップし始めたよ。こんな和ちゃん見たことない」

唯「和ちゃん、そろそろ番組終わりだよ」

和「そうなんだ。じゃあ私アクシズ落としてくるね」

憂「あっ、うん」

唯「行っちゃった……」

憂「どうしよう、和ちゃん宇宙に上がっちゃうよ。この番組どうするの?」

唯「とりあえず私たちはスパロボIMPACTを続けようか」

憂「そうだね」

唯「それじゃあ、みんな、またね〜」

唯・憂「ばいば〜い」
305 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/08(水) 21:03:00.22 ID:LRPsfgUo
何これ面白い
306 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/09(木) 00:26:54.65 ID:r7YZSEAO
支援
307 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/09(木) 00:32:24.84 ID:dyNhQMAO
あぁ来てたのか、乙
今のスパロボのご時世じゃプルツーに魂は無理だな
魂はホントに別格の主役クラスの特権だから
308 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/09(木) 15:29:03.44 ID:D8XWCwQo
Fなら魂あるよ。リアル系のほとんどが持ってたけどな。
309 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/11(土) 12:31:32.35 ID:gfGgOEAO
まあ、ニルファ、サルファ、MXでプルともども精神コマンドが全く変わらなかったから文句を言いたい気持ちもわかる
310 :こんなにレスあったの初めて。再開です。 :2010/12/11(土) 15:48:57.98 ID:jdVNikc0

 第十二話

「シャロ……起きて、シャロ」

 頬を叩かれる痛みの中で、少女は目を覚ました。

「う、うん……なにー?」

「起きた、シャロ?」

「どうしたの、コーデリア?」

 シャーロック・シェリンフォードを起こしていたのは、コーデリア・グラウカ。ミルキィホームズのメンバーで青色のチェックワンピースを着ている。

「おい、エリーも起きたぜ」

「ネロ、ここはどこなの?」

 黄色のハーフパンツの譲崎ネロの横で緑の帽子のエルキュール・バートンが不安げにきょろきょろしているのにならって、シャロも首を動かす。

シャロ「なに、ここ……研究所?」

 四人がいるのは、見慣れた探偵学園の寮ではなかった。薄暗い灰色の壁の部屋のいたるところに機械が置かれてところどころ光りを発している。

コーデリア「ねぇ、シャロ、エリー。あなた、寝る前までのことは覚えてる?」

シャロ「普通にご飯食べて、お風呂に入って、ポッキー食べて寝てたー!」

エリー「シャロに同じく!」

ネロ「ボクらもそこまではちゃんと覚えてんだよ。じゃあ、寝ている間にまとめてここに連れてこられたってことだよな」

「その通りだ!」

 バン! 部屋のドアと思しき場所にライトが当たり、そこに白衣を着た男といかついボディスーツの金髪の男が立っていた。
311 :こんなにレスあったの初めて。再開です。 :2010/12/11(土) 15:49:43.89 ID:jdVNikc0

シャロ・ネロ・エリー・コーデリア「だれ!?」

ターサン「ワシの名はターサン。ターサン博士と呼んでくれて構わない」

コーデリア「ターサン博士?」

シャロ「そんなことよりここはどこなの!?」

エリー「そうよ! 朝食のパンとミルクはどこ!?」

ネロ「カリカリのベーコンと黄身が二つの目玉焼きは!?」

シャロ・ネロ・エリー・コーデリア「めーし! めーし!」

ターサン「えぇい、うるさい奴らだのう!」

ギル「博士。このギル・バーグが黙らせましょうか?」

ターサン「いい。お前たち、飯を食わせてやるからこっちについてこい」

シャロ・ネロ・エリー・コーデリア「やったー!」

 四人はターサンとギルの後について研究所の中を歩いていった。

ターサン「おぬしたち、惑星ラテシアの者たちは『トイズ』と呼ばれる不思議な力があるそうだのう」

コーデリア「えぇ、その力を使って私たちミルキィホームズは怪盗帝国の様々な難事件を解決しているのよ」

シャロ「私は念動力!」

エリー「私は筋力強化!」

ネロ「ボクは電子制御!」

コーデリア「私は五感強化!」

シャロ・ネロ・エリー・コーデリア「私たちミルキィホームズ!!」

ターサン「えぇい、うるさいと言っておろう! ポーズをとるな!」

ギル「博士……本当にこんなやつらが……」

ターサン「ふふん、トイズを使用するとき、強力なエネルギーソースが得られることは調査済み。こやつらは中でも指折りのトイズの持ち主じゃ」

 ギル・バーグは僅かに歯軋りした。
312 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/11(土) 15:50:46.64 ID:jdVNikc0

ターサン「飯を食わせる前に、見せたいものがある」

シャロ・ネロ・エリー・コーデリア「えぇ〜!」

ネロ「ご飯は〜!?」

エリー「お腹すきました〜」

シャロ「ケーキ食べた〜い」

コーデリア「除湿機ほし〜い」

ターサン「えぇい! 口々に本当にうるさい奴らだのう!」

 そして、四人が連れて行かれたのは、先ほどの部屋の十倍はありそうな大きな部屋だった。

シャロ「ここにご飯があるの?」

ターサン「だから飯は後だと言っとろう!」

ギル「貴様らが見るものはこれだ」

 ライトアップされたのは、四機の戦闘機だった。

ターサン「これがワシの最高傑作、ダン・メカニックじゃ!」

シャロ「ださ〜い」

ネロ「どうでもいい〜」

エリー「ごはん〜」

コーデリア「ケーキ〜」

ターサン「こ、こやつらは〜……!」
313 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/11(土) 15:51:49.23 ID:jdVNikc0

ギル「貴様ら、飯を食いたければ俺の言うことを聞け!」

 ギル・バーグが一歩進み出て声を張った。

シャロ「絶対イヤです〜!」

ネロ「パワハラだー!」

エリー「裁判ですー!」

コーデリア「賠償金よー!」

 非難ゴウゴウの四人にギルは青筋を立てて怒鳴った。

ギル「貴様らに文句を言う権利はない! 大人しく言うことを聞け! さもなくばぶっ殺すぞ!」

ターサン「こ、これギル!」

ギル「博士、こういう奴らは一度きつく躾けるべきです」

 ボキボキッ! ギルが指の骨を鳴らすのを見て、ミルキィホームズは叫んだ。

シャロ・ネロ・エリー・コーデリア「キャ〜ッ!」

シャロ「暴力よ〜!」

ネロ「DVだよ〜!」

エリー「変態よ〜!」

コーデリア「ロリコンよ〜!」

ギル「グダグダとうるさい! 黙らせてやる!」

 ぶぅん! ギルの拳がうねりをあげた!

ギル(ここでこやつらを始末すれば再び俺が最強の戦士として立てるのだ!)

コーデリア「――ッ! エリー、左よ!」

エリー「はい!」

ギル「なに!?」
314 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/11(土) 15:52:35.34 ID:jdVNikc0

 コーデリアの鋭い指示にギルの拳がエリーの小さなてのひらで止まってしまった。

シャロ「えぃっ!」

 シャロのトイズでギルの大きな体が床から離れた。

ギル「う、うおぉっ!?」

 どすん! ギルは情けなくしりもちをついた。

ギル「ぐっ……体がぁ……っ!」

ネロ「そりゃ!」

 ネロが鉄のへらを近くのコンピュータに突き刺した。

 ヴーッ! ヴーッ! 途端に研究所内に警報が鳴り響いた。

ターサン「な、なんじゃ!?」

 さらに、戦闘機ダン・メカニックのコクピットハッチが開く。

ネロ「みんな! 戦闘機で逃げよう!」

シャロ・エリー・コーデリア「おーっ!!」

 四人は軽やかな動きでダン・メカニックに乗り込み、あらかじめネロが開いておいたカタパルトから一斉に発進した。

ターサン「な、ななななななんとぉー!?」

シャロ・ネロ・エリー・コーデリア「ばいば〜い!」
315 :今日はここまでです。 [saga]:2010/12/11(土) 15:54:16.33 ID:jdVNikc0

 ターサン博士の研究所から飛び出た四機のダン・メカニックは、小惑星郡の帯域を駆けていく。

シャロ「これからどうしましょうか〜?」

ネロ「とりあえずラテシアに帰ろうよ。ボクお腹ぺこぺこだもん」

エリー「でも、ここからラテシアは相当遠いみたいですよ」

シャロ・ネロ「えぇ〜っ!? 遠いってどれくらい?」

エリー「だいたい七ヶ月ぐらいかな」

シャロ・ネロ「げぇ〜っ! 餓死しちゃうよ〜!」

コーデリア「ここから一番近い惑星系列ですと、およそ二日で到着しますわ」

シャロ「追いつかれたらどうしよう?」

コーデリア「その太陽系には、第三惑星・地球を中心とした連邦組織があるみたいです。そちらに救援を要請しましょう」

ネロ「コーデリアあったまいい〜!」

コーデリア「えへん」

シャロ「それじゃあ、地球に行きましょう!」

シャロ・ネロ・エリー・コーデリア「お〜っ!」

 その頃、ターサン研究所では

ターサン「あぁぁ〜! ガリモス大船長様に捧げる最高傑作が飛んでいってしまったぁ〜!」

ギル「博士、今すぐ奴らを追いかけましょう」

ターサン「馬鹿者! この研究所にはダン・メカニックに追いつけるマシンなどないわ!」

ギル「ならば、バンカーへ赴き、マシンを借り受けましょう」

ターサン「しかし、ガリモス大船長には、最高の兵器を用意するという名目で援助を受けておるのじゃ……」

ギル「ならば博士! 今こそこの俺を最高のサイボーグに仕立て上げ、バンカーに捧げればよろしい」

ターサン「むむむ……よし、わかった」

ギル(あのクソガキどもが……この礼は必ずしてやる!)

 ターサン博士が去った後の暗い部屋でギル・バーグは笑いのこみ上げる喉を宇宙に向けた。

ギル「待っていろ……ミルキィホームズ……最強のサイボーグと化した俺が貴様らを叩き潰し、臓物を抉り出してやるわ……ククク……フハハハハハハハ!」
316 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/11(土) 16:16:24.37 ID:uOAseRMo
317 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/11(土) 17:14:23.06 ID:jbfoAcDO
元ネタわかんねえwwww
続きを楽しみにしてるぜ!
318 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/11(土) 18:13:13.53 ID:eULVb6AO
続編含めて未完のダンガイオー来たか

最後はSS以外の愚痴やらなんかで〆るとレスつきやすいんでない
319 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/11(土) 22:50:36.28 ID:kR041kDO
ダンガイオーキターー!!
ところで>>1はスパロボL買ったの?
320 :再開です。 [saga]:2010/12/12(日) 16:53:47.46 ID:n/nyjPA0

 ミルキィホームズがターサン研究所から脱出して27時間後……

ガリモス大船長「すると、貴様はその逃げた裏切り者を捕らえるために、ワシに兵器を貸せと言うのか?」

ターサン「は、ははぁ〜っ! まさしくその通りでございまして、ワタクシは恐縮の限りにございます〜っ」

ガリモス「して、貴様がターサンの用意した最強のサイボーグか?」

ギル「はっ! ギル・バーグと申します。ガリモス大船長様」

ガリモス大船長「いいだろう。貴様に我がブラッディTを貸してやろう。必ずやそやつらをとっ捕まえて来い」

ギル「ははっ!」

ガリモス大船長「だが! わかっておるな、ギル・バーグ」

ギル「承知しております。宇宙海賊バンカーを前に、失敗と裏切りは、死をもって償うべしと」

ガリモス大船長「ならばゆけぃ! ギル・バーグ!」

ギル「ははぁっ!」

ギル(待っていろ……ミルキィホームズ!)
321 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/12(日) 16:55:12.74 ID:n/nyjPA0

 太陽系の端。

シャロ「あっ! あれが冥王星!?」

 モニターに小さく映った歪な形の矮小惑星を指したシャロにエリーが頷いた。

エリー「そうです。地球連邦では、2009年から冥王星を系列惑星に入れるかどうかで議論しているみたい」

ネロ「これで太陽系に到着だね。もう簡易食料食べつくしちゃったよ」

コーデリア「通信では、天王星付近が合流ポイントですわ」

ネロ「ところでみんな、ちょっと聞いてほしいんだけど」

シャロ「なになに?」

エリー「ひょっとして、おいしいキノコでも見つけたんですか?」

コーデリア「それとも、ゼンマイとか?」

ネロ「食べ物じゃなくて、えっとね、このダン・メカニックを一日調べてたんだけど……」

シャロ「うんうん」

ネロ「どうやら、四機が変形して――」

 ギュボォッ! ネロの言葉はビーム光で遮られた。

エリー「きゃあぁぁぁっ!」

 ビームに一番近かったエリーが煽られて機体が傾く。

コーデリア「何が起きたの!?」

シャロ「う、後ろに何かいるよ!」

 ダン・メカニックのレーダーが捉えていたのは、血を被ったように真っ赤なブラッディTだった。

ギル「クククク……追いついたぞ、ミルキィホームズの小娘ども!」
322 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/12(日) 16:55:55.77 ID:n/nyjPA0

ネロ「この声、アイツだよ!」

エリー「ロリコンでDVで変態な上にストーカーですか!?」

シャロ「いや〜っ!」

 四人はいっぺんにスピードを上げてブラッディTから距離を取って逃げ始めた。

ギル「ククク……逃げられると思うなよ、喰らえぃ!」

 ボシュッ! ボシュゥッ! ブラッディTからミサイルが発射される!

コーデリア「――ッ! シャロ、右! エリーは下! ネロはそのまままっすぐよ!」

 五感強化のトイズで常識外の空間把握能力を持つコーデリアの指示で四人は最小限の動きでミサイルを避けきった。

ギル「ちぃ! ならば直接叩き込んでやるわ!」

 ブラッディTが加速してエリーのダン・メカニックへ接近する。

ギル「ぶち殺してやる!」

エリー「いやぁーっ!」

 ぐぉんっ! ブラッディTの巨大な腕がエリーに襲い掛かる!

「コズモワインダービーム!」

 ズガァァッ! どこからかビームが飛んできて、ブラッディTの腕に直撃した!

ギル「なにぃ!? どこのどいつだ!」

 ギルを撃ったのは、真紅の手足に鎧のような装甲を持つ巨大なロボットだった。

 それをモニタ越しに視認したとき、宇宙空間に声が轟いた。

こなた「夜空の星が輝く陰で!」

かがみ「ワルの笑いがこだまする!」

つかさ「星から星に泣く人の!」

みゆき「涙背負って宇宙の始末!」

かがみ「銀河旋風ブライガー! お呼びとあらば即参上!」

こなた・つかさ・みゆき「イェーイ!」
323 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/12(日) 16:56:39.92 ID:n/nyjPA0

ギル「な、なんだこいつらはぁ!?」

こなた「悪党に名乗る名前などないわー!」

ギル「ぐぐぐ……! ふざけた奴らめが、ならば殺してやる!」

 ブラッディTの腹部が開き、砲口が顔を出した。

ギル「プラズマキャノン砲だ! 死ねぇぇぇい!」

つかさ「こなちゃん! ブライソードだよ!」

こなた「イェーイ! ブライソードビーム!」

 ズバババババ! ブライガーが装備した剣から発するビームでプラズマキャノンを相殺する。

ギル「おのれぃ! 死ね! 死ねぇ!」

 ギュアァッ! プラズマキャノンが連続で発射される。

かがみ「うっ、この威力が連射されるのはさすがにツライわね」

ギル「このまま押し切ってやる……!」

シャロ「あわわ、あれじゃやられちゃうよ〜」

エリー「あの人たちが地球連邦からの救援の人たちですよね?」

コーデリア「そうみたいだけど……」

ネロ「ねぇ、みんな! ボクの話を聞いて!」

シャロ「なぁに、ネロ?」

ネロ「さっきは話の途中になっちゃったけど、この戦闘機にはある秘密が隠されているんだ!」

エリー「秘密ですか!?」

コーデリア「何かしら?」

ネロ「この戦闘機は四機が合体することで、戦闘ロボットになるんだ!」

シャロ・エリー・コーデリア「な、なんだってぇ〜!?」
324 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/12(日) 16:59:34.42 ID:n/nyjPA0

ネロ「ボクたちが合体すれば、アイツを追っ払えるよ、きっと!」

シャロ「よ〜し、やろうよ!」

エリー「はい!」

コーデリア「やりましょう!」

ネロ「うん! じゃあ、いくよ! 一斉に言うんだ!」

 四人のコクピットに文字が浮かび上がる。合体コードだ。

シャロ・ネロ・エリー・コーデリア「クロォォォォス・ファイトッ! ダン! ガイ! オー!!」

 その言葉に、四つのダン・メカニックが光りを放ち、宇宙空間に統制された動きで軌道を描き出した!

ギル「な、なんだっ!?」

 驚愕に目を見張るギルの前で、四つのダン・メカニックは重なり合い、一つの白金のロボットとなる!

シャロ・ネロ・エリー・コーデリア「ダンガイオー! 見参!」

 テテッテテッテテンテテーレテーレテーテテー テーテレッテーレテテテー
 クロースファーイト クロスファイッ!(クロスファイッ!
 ジャストクロスフォラァーブ!
 アーツークアーツークアーツークタータカエー ダンガイオー!!
325 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/12(日) 17:00:20.53 ID:n/nyjPA0

ギル「だ、ダンガイオーだとォ!? ターサンめ、そんな話は聞いてないぞ!」

こなた「ほっほーぅ、あーちらさんもやるよーうだにぇー」

ギル「ぐぉぉ……おのれぇぇ! ブラッディTで踏み潰してやるわ!」

 ブラッディTがプラズマキャノンを連射しながら、猛スピードでダンガイオーの許へ飛んでいく。

コーデリア「来るわよ、ネロ!」

ネロ「わかってるよ、コーデリア!」

 ダンガイオーが軽快な動きでブラッディTの突撃をかわす。

 ターサン博士が開発したダンガイオーの秘密とは、パイロットのトイズをシンクロさせることである。
 つまり、コーデリアの研ぎ澄まされた五感がそっくりそのままコントロール役のネロにも流れ込んでくるのだ。

ネロ「いくよぉ、エリー!」

エリー「ちょ、ちょっとまって……」

ネロ「ブーストナックル!」

 ドシュゥッ! ダンガイオーの右腕が射出される!

エリー「きゃぁーっ! 勝手に飛ばさないでぇ!」

 右腕にはエリーが乗っているのである。そのエリーのパワーがダンガイオーの人造筋肉とも重なり、強力なパンチがブラッディTを揺らした。

ギル「ぐおぉぉ! おのれぇ……小娘どもがぁ!」

こなた「わーたしたちを忘れーてもらっちゃーぁ、困るーよー」

みゆき「ブライスピアー!」

こなた「イェーイ!」

 ズシャァ! ブライガーの巨大な三つ又槍がブラッディTの左脚を貫いた!
326 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/12(日) 17:01:34.11 ID:n/nyjPA0

ギル「しまった! バランスが取れん!」

ネロ「サンキュー! シャロ! キミの出番だよ!」

シャロ「うん! サイキック・ウェィィィィィィィィブ!」

 グォォォ! ダンガイオーの右腕が突き出され、そこからシャロの拡大された念動力が放出され、ブラッディTを覆い始める。

ギル「な、なんだ……絞めつけられる……機体が動かん!」

 ギャシュインッ! 念動力の波がブラッディTを捕縛した!

ギル「ぐおぉ! 動け! 動けぇ!」

 どれだけもがいても、もはやブラッディTはぴくりとも動こうとはしない。

シャロ「ネロ! やっちゃって!」

ネロ「うん! 破邪の剣!」

 ダンガイオーの両腕の間に一振りの剣が出現し、それをエリーがいる右手が掴む!

コーデリア「サイキック・斬でおしまいよ!」

 バッ! ダンガイオーが宇宙で蹴り跳び、破邪の剣を両手で頭上に振りかぶる!

 コーデリアの感覚で捉えた狙いはブラッディTだ!

シャロ・ネロ・エリー・コーデリア「サイキック・ざぁーんっ!!」

 ズバァァッ!! 強固な宇宙海賊装甲のブラッディTが交錯したダンガイオーとミルキィホームズの後ろで一刀両断された!

ギル「馬鹿な……っ! この……この俺ぐぁぁぁぁぁぁっ!!」

 ドガァァァァァァァァァンッ!! 大爆発を起こしたブラッディTがモニターの彼方へ飛んでいく。
327 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/12(日) 17:18:09.77 ID:n/nyjPA0

ギル「み、ミルキィホームズ! 貴様らは俺が……っ!」

 ギル・バーグの断末魔の叫びが次第に小さくなっていき、聞こえなくなった。

みゆき「敵機体は冥王星の重力に囚われたみたいですね」

かがみ「それなら、しばらくは追ってこれないわね」

こなた「そーの前にー、生ーきてるかどーうかも怪しーいねー」

つかさ「とりあえず、セカンドミッションまで完了だね」

こなた・かがみ・みゆき・つかさ「イェーイ!」

コーデリア「あのー、たしか、ブライガーさん……でしたっけ?」

 親指を出すグーサインで画面を四分割していたブライガーの回線に割って入ったコーデリアにかがみが咳払いする。

かがみ「はい。正確には私たちはコズモレンジャー・J9。木星圏のアステロイドベルト付近を拠点に活動する宇宙の何でも屋といったところです。そして、この機体の名前がブライガーです」

コーデリア「そうでしたか、危ないところをありがとうございました。あなたたちが地球連邦からの救援でよろしいでしょうか?」

みゆき「はい。正しくは連邦政府からあなたたちの救出を依頼されてきたのです」

ネロ「とりあえず味方なんだよね!」

シャロ「よかったぁ〜、これでご飯が食べられる〜」

エリー「お風呂にも入れます〜」

こなた「うんうん、とーりあえず諸くーんらをわーたしたちのアージトまで案なーいするからー、つーいてきたまーえ」

シャロ・ネロ・エリー・コーデリア「はーいっ!」

 こうして、地球を目指す少女たちが宇宙を揺るがせる戦いに加わろうとしていた。
328 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/12(日) 17:20:32.99 ID:n/nyjPA0

 アステロイドベルトに向かう途中のブライサンダーにて。

こなた「ねーねー、かがみかがみ」

かがみ「なによ、こなた?」

こなた「さっきのダンガイオーのサイキック・斬なんだけどね……何かに似てるなーって気になるんだよね」

かがみ「はぁ? いや、まあ……あんな大雑把な必殺技に似ているものなんてたくさんあると思うけど」

こなた「いや、なんか本当に一つのイメージにぴったりなんだよねー……こう、ダイナミーックって感じで」

かがみ「アンタ……もう答えが何か分かってて言ってるでしょ」

こなた「まっさかー、誰も蒸着なんて言ってないよー」

かがみ「分かってるじゃない!」


 第十二話 蒸着! ギャバンダイナミック! 完
329 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/12(日) 17:49:17.27 ID:n/nyjPA0
今日はここまでです。

新規参戦は「破邪大星ダンガイオー」×「探偵オペラ ミルキィホームズ」でした。

ただ、当初の予定では、ダンガイオーに乗るのはらきすたの後輩四人組(ゆたか、みなみ、ひより、パティ)の予定でした。

とはいえ、二つのロボに一つの作品から参戦というのはちょっとアレだなと思っていたのです。

そこに降ってわいた彗星がミルキィホームズでした。

製作期間に余裕があったのでそれなりの期待はしていたのですが、まさかの神アニメでしかもダンガイオーと同じ四人組。

ダンガイオーの原作の超能力をトイズに置き換えてみた訳ですが、これが思いの外に大ハマりで書いててビックリしました。

FでのEVAやαVでのSEEDを参戦させたスタッフの気分が少し分かりました。まあ、FとαVのほうは成功かはわかりませんが。

ちなみに自分は最新作のスパロボLは買っていません。DS持ってないし声なしプルツーなしはやる気ないです。ただ、主人公機はかっこいいと思いました。

PSP派なのでACERは期待しています。あと、これで参戦キャラはほとんど出揃ったので、声優表を作ります。桑谷夏子さんが多いのは趣味です。

それでは、表が完成し次第また。

330 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/12(日) 17:58:52.94 ID:kj/UogUo
331 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/12(日) 18:39:07.73 ID:nSVYTsDO
乙です
どんだけプルツーが好きなんだアンタはwwwwww
声が無いからって言っても携帯機が面白く無い訳じゃ無いんだけどな…
据置機じゃ出来ない事も簡単に出来るし、西川生存とか超改変とか
332 :表投下 エクセルで組んだものなので、絶対おかしくなると思いますが。 [saga]:2010/12/12(日) 19:07:16.07 ID:n/nyjPA0

けいおん!                 ネギま!
平沢唯     豊崎愛生           綾瀬夕映    桑谷夏子
秋山澪     日笠陽子           早乙女ハルナ  石毛佐和
田井中律    佐藤聡美     宮崎のどか 能登麻美子
琴吹紬     寿美菜子
中野梓     竹達彩奈     生徒会役員共
山中さわ子 真田アサミ     天草シノ 日笠陽子
平沢憂     米沢円         七条アリア 佐藤聡美
真鍋和     藤東知夏     萩村スズ 矢作紗友里
             畑ランコ 新井里美

リリカルなのは           Rozen Maiden
高町なのは     田村ゆかり 真紅     沢城みゆき
フェイト・テスタロッサ  水樹奈々 翠星石      桑谷夏子
アルフ          桑谷夏子 蒼星石      森永理科
月村すずか       清水愛 雛苺     野川さくら
アリサ・バニングス  釘宮理恵 金糸雀      志村由美
            水銀燈      田中理恵
灼眼のシャナ         JUM     真田アサミ
シャナ          釘宮理恵

涼宮ハルヒの憂鬱     らきすた
涼宮ハルヒ 平野綾         泉こなた   平野綾
キョン     杉田智和     柊かがみ 加藤英美里
古泉一樹 小野大輔     柊つかさ  福原香織
朝比奈みくる 後藤邑子     高良みゆき   遠藤綾
長門有希 茅原実里
              各原作作品登場キャラ
かみちゅ!         リュウ・ホセイ  飯塚昭三
一橋ゆりえ   MAKO     アムロ・レイ   古屋徹
四条光恵  峯香織     シャア・アズナブル 池田秀一
三枝祀     森永理科     ドルチェノフ  飯塚昭三
            ギルトール  大木正司
BAMBOO BLADE         ドクター・ヘル  富田耕生
千葉紀梨乃 豊口めぐみ あしゅら男爵 柴田秀和 北浜晴子
川添珠姫   広橋涼 プリンス・シャーキン    市川治
宮崎都      桑島法子 ガルーダ       市川治
桑原鞘子  小島幸子 トッド・ギネス      逢坂秀実
東聡莉      佐藤利奈 バーン・バニングス   速水奨
        アレン・ブレディ  若本規夫
ミルキィホームズ ドレイク・ルフト  大木正司
シャロ      三森すずこ ショット・ウェポン  田中正彦
ネロ       徳井青空 ミュージィ・ボー  横尾まり
エリー      佐々木未来 エレ・ハンム     佐々木るん
コーデリア  橘田いずみ チャム・ファウ     川村万梨阿
        ギル・バーグ       千葉繁
333 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/12(日) 19:15:02.41 ID:n/nyjPA0
やっぱりおかしくなった。

今日はもう作業の気力が尽きたので、これで終了です。
もしも表を治してくれる方がいたら嬉しいです。

テキストかワードに落としてTABをスペースに変換していくだけでいいと思うので。

見た限り女性声優飽食時代だけあって被りは少ないですね。ちなみに出演最多は桑谷夏子さんで4キャラ。

桑谷さん自身はスパロボに出たことないけどね! ムゲフロに出演しましたが逆輸入も難しそうだし。
そのためだけにムゲフロを買おうと思ったぐらい、僕は桑谷さんが大好きです。
334 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/12(日) 19:38:51.04 ID:kj/UogUo
けいおん!                ネギま!
平沢唯    豊崎愛生         綾瀬夕映     桑谷夏子
秋山澪    日笠陽子         早乙女ハルナ   石毛佐和
田井中律   佐藤聡美         宮崎のどか    能登麻美子
琴吹紬    寿美菜子
中野梓    竹達彩奈         生徒会役員共
山中さわ子  真田アサミ        天草シノ      日笠陽子
平沢憂    米沢円          七条アリア     佐藤聡美
真鍋和    藤東知夏         萩村スズ       矢作紗友里
                       畑ランコ        新井里美

リリカルなのは              Rozen Maiden
高町なのは       田村ゆかり    真紅    沢城みゆき
フェイト・テスタロッサ 水樹奈々     翠星石   桑谷夏子
アルフ          桑谷夏子    蒼星石   森永理科
月村すずか      清水愛      雛苺     野川さくら
アリサ・バニングス  釘宮理恵    金糸雀   志村由美
                       水銀燈   田中理恵
灼眼のシャナ               JUM    真田アサミ
シャナ         釘宮理恵

涼宮ハルヒの憂鬱            らきすた
涼宮ハルヒ     平野綾       泉こなた    平野綾
キョン         杉田智和      柊かがみ    加藤英美里
古泉一樹      小野大輔        柊つかさ     福原香織
朝比奈みくる     後藤邑子       高翌良みゆき  遠藤綾
長門有希      茅原実里
                       各原作作品登場キャラ
かみちゅ!                リュウ・ホセイ       飯塚昭三
一橋ゆりえ     MAKO        アムロ・レイ        古屋徹
四条光恵       峯香織       シャア・アズナブル    池田秀一
三枝祀       森永理科      ドルチェノフ        飯塚昭三
                       ギルトール         大木正司
BAMBOO BLADE            ドクター・ヘル        富田耕生
千葉紀梨乃    豊口めぐみ     あしゅら男爵       柴田秀和 北浜晴子
川添珠姫      広橋涼        プリンス・シャーキン    市川治
宮崎都       桑島法子      ガルーダ         市川治
桑原鞘子      小島幸子      トッド・ギネス       逢坂秀実
東聡莉       佐藤利奈      バーン・バニングス   速水奨
                       アレン・ブレディ      若本規夫
ミルキィホームズ             ドレイク・ルフト       大木正司
シャロ     三森すずこ        ショット・ウェポン     田中正彦
ネロ      徳井青空          ミュージィ・ボー      横尾まり
エリー     佐々木未来       エレ・ハンム        佐々木るん
コーデリア 橘田いずみ          チャム・ファウ       川村万梨阿
                        ギル・バーグ       千葉繁

見にくいかもしれないけど即席
335 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/12(日) 19:51:43.80 ID:Hj7Z1cDO
336 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/12(日) 20:17:25.15 ID:CrAYxEAO
乙、ムゲフロはよく喋るよなDSの割に
337 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/13(月) 17:33:51.15 ID:0to756AO
ヘンネ「支援してやろうじゃないか」
338 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/14(火) 21:26:20.90 ID:L3CV.oAO
携帯からスレ主です

表を直してくれた方、誠にありがとうございます

声優表を作った理由を書き忘れてましたが、スパロボユーザーならばわかると思いますが、声優ネタをやるためです

最近の声優さんに詳しくない自分がどれほどカバーできるのかはわかりませんが、あれば戦闘前会話がかなり楽になるので、「誰々と誰々は一緒の作品に出てるよ!」とかあったら教えていただきたいです

とりあえず本屋に「あなた最低です」を言わせられるよう考えてます

他には唯がいきなり愛って書かれたバカでかいハンマーを持ってきて、さわちゃんが「グラーフアイゼン!?」とか言っちゃうとか
さとりんに「お姉様」とか言っちゃうランコさんとか
澪に下ネタ連発するシノ会長とか

他にもストーリーに絡みそうな声優ネタも掘ればけっこう出てきますね

残念だったのが、ますみん、うりょっち、ほっちゃん、かなっちというなっちゃん絡み四天王が一人もいなかったこと、一人でもいれば楽しいのに!

まあ、今はボチボチとコンV話を書いてるので、明日にでも投下します

339 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 22:41:58.52 ID:nglU3IAO
中の人ネタか、声は聞き分けられるが名前チンプンカンプンなんだよな
投下の最後になんのパロかちょっと書いてくれると助かりやす
340 :再開です。 [saga]:2010/12/15(水) 18:36:15.82 ID:NeQhwDU0

 第十三話

 海底火山の空洞にあるキャンベル星人基地

オレアナ「ガルーダ! ガルーダはおるか!?」

ガルーダ「はっ、母上、ガルーダはここに!」

オレアナ「ガルーダよ、地上制圧はどうなっておるか?」

ガルーダ「はっ……コン・バトラーVを初めとする地球人の抵抗が厳しく……」

オレアナ「そんな報告は聞いておらぬわ! 制圧の完了したものだけを答えぃ!」

ガルーダ「それが……未だ為し得ず……」

オレアナ「なんだと!? 既に我々が地上に出て一ヶ月が経過している! その間に何をしていたのですかお前は!」

ガルーダ「も、申し訳ありませぬ!」

オレアナ「……もうよい。やはりお前は私の息子とはいえ、優しすぎる。機械のような心は持てぬのだな」

ガルーダ「そ、そのようなことは決して!」

オレアナ「ならば、これが最後のチャンスだと思いなさい。我が息子、大将軍ガルーダ」

ガルーダ「ははぁっ!」

 深く頭を垂れ、ガルーダは意気揚々とオレアナの前から姿を消した。
 その後ろ姿に女帝オレアナは呟いた。

オレアナ「ふん、愚かなものよ」
341 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/15(水) 18:37:53.61 ID:NeQhwDU0

 キャンベル星人基地内 休息区

ミーア「まあ、それでは、次の作戦が失敗してしまっては、ガルーダ様は将軍をお辞めに?」

ガルーダ「そうだ」

 休息区の司令官、ミーアは美しい人魚のような女性だが、それは上半身だけであり、本来あるはずの下半身は壁と同化している。
 彼女はガルーダのためにオレアナが作った慰労サイボーグなのだ。

ミーア「おかわいそうなガルーダ様……ミーアはせめて戦いに向かわれるガルーダ様のお心をお助けする音曲を奏でましょう……」

ガルーダ「やめよ、ミーア!」

 ぱしぃっ。 ミーアの手が伸びてくるのをガルーダは厭わしげに払った。

ガルーダ「余は誇り高きキャンベル星人の女帝オレアナ様の子だ。汝がごとき作り物の命に慰められとうはない!」

ミーア「ガルーダ様、申し訳ありませぬ……ミーアが……ミーアが正しくキャンベル星人の女であればよいのに……おぉぉ」

ガルーダ「やめよと言うている! それも全て機械で計算された物腰のありよう! 虫唾が走るわ!」

ミーア「しかし……ガルーダ様をお慰み、助けることがミーアのお役目……それが望めぬのは……」

ガルーダ「余は大将軍ガルーダ! 女に慰められるような生を受けてはおらぬ! それがまして、母上の作られた機械の女になぞ!」

ミーア「ならば……ならばガルーダ様! ミーアを機械としてお傍に置いてくださりませ!」

ガルーダ「なんだと!?」

ミーア「ミーアの回路を通してマグマ獣を操ることができます! ガルーダ様のお望みどおりに動かすことができまする!」

ガルーダ「しかし、そんなことをしてはそなたの体が……」

ミーア「ガルーダ様のお役に立てないのならば、死んだほうがマシでございます!」

ガルーダ「わかった……余も母上のお力を借りてコン・バトラーVを倒す新兵器を完成させたのだ」

ミーア「それではガルーダ様!」

ガルーダ「あぁ、今度こそ、コン・バトラーVを打ちのめし、地上制圧の足がかりとしてやるわ!」
342 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/15(水) 18:39:04.20 ID:NeQhwDU0

 超電磁研究所

翠星石「うらぁー、早く翠星石に紅茶を持ってくるですよぉー」

紬「はぁーい」

真紅「あら、美味しいスコーンね」

憂「えへへ、ありがとうございます」

雛苺「なのー」

金糸雀「かしらー」

翠星石「まぁーったく、この世界のJUMは研究ばっかりでちっともお茶に付き合わんですよぅ」

律「へー、前の世界のはどんな奴だったんだ?」

翠星石「引きこもりですぅ」

真紅「引きこもりだわね」

蒼星石「引きこもりだったね」

雛苺「なのー」

金糸雀「かしらー」

澪「そ、そうなんだ……」

翠星石「まぁーこの世界のJUMも研究室に引きこもりっぱなしなのでぇーその点じゃ大して変わりないーですがー酷いときは翠星石のことをガン無視しやがるんですよぅ」

唯「ういー、おかわりー」

憂「はいはーい」

澪「ちょっとは会話に参加しろ」

 ズドォォォォォォォンッ!

律「またかよ!」

梓「いい加減、読めてきましたよね」
343 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/15(水) 18:42:33.66 ID:NeQhwDU0

 超電磁研究所 郊外

ドールズ「レェェェェッツ・コンバイィィィィン!」

唯「マジーン、ゴー!」

澪「ダイアナンA、ゴー!」

律「ボ〜スボロットだっぜ〜!」

 コン・バトラーVほか三機が大地に立つと、その真上にはキャンベル星人の空中戦艦グレイドンがあった。

ガルーダ「よく出てきたな、コン・バトラーV!」

翠星石「うるせーですぅ! まーた性懲りもなく来やがりやがってですぅ!」

ガルーダ「今日の我らは今までと思うなよ! 余が直々に相手をしてやるわ!」

 ズドォーン! グレイドンのカタパルトが開き、そこから巨大なロボットが降下してきた!

真紅「あれはっ!?」

 コン・バトラーVの前に立ったのは、ガルーダを模して作られた巨大兵器だった。

ガルーダ「見たか! これこそが余の切り札、ビッグ・ガルーダだ!」

翠星石「ふん! そんなのはどうせこけおどしですぅ! バトルリターン!」

ガルーダ「バカめ! ウィングソードで弾き飛ばしてやる!」

 ガキィンッ! ビッグガルーダが手に持った巨大な剣で、攻撃円盤を叩き落した!

ガルーダ「ゆくぞっ、コン・バトラーV!」
344 :今日はここまです。 [saga]:2010/12/15(水) 18:43:36.23 ID:NeQhwDU0

澪「唯! 私たちも援護するぞ!」

唯「うん! 必殺のー、ロケットパーンチ!」

ミーア「やらせぬわ!」

 マジンガーZの右腕が射出される直前、そこにミサイルの雨が降り注ぎ、爆炎を上げた!

唯「わぁぁ!」

律「うひゃー!」

 ドガァァンッ! ミサイルから身を守る唯たちの前に現れたのは、二体のマグマ獣デモンだった。

ミーア「私はガルーダ将軍様の配下、ミーアである! ガルーダ様とコン・バトラーVの戦いを邪魔させはせぬ! 私が相手をしよう!」

 ドガガガッ! 二体のマグマ獣が大きな刀を振り上げてマジンガーZに切りかかる!

唯「あいたぁーっ!」

澪「唯! 当たれ! スカーレットビーム!」

 ダイアナンAの目から赤いビームが発射される。
 以前の戦闘データから、敵の回避運動の速度を計算して機械がロック・オンして放つため、直撃するはずだ。

デモン「ぐおぉぉぉぉんっ!」

 だが、データを裏切る素早い動きのデモンにあっさりと避けられてしまった。

澪「そんな! 動きが全然違うぞ!」

紬「改造されているわ! 澪ちゃん、気をつけて!」

ミーア「ホーッホッホッホッホ! 頭の悪い地球人には簡単なこともわからないのかしら!?」

唯「このっ、ルストハリケーン!」

デモン「ぐおぉぉぉぉんっ!」
345 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/15(水) 18:56:20.91 ID:GsOmlsAO
スパロボは上しか写らんからミーアの下半身ないの初めて知ったわ
オレアナマジ外道
346 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/15(水) 20:05:53.29 ID:sYENLZoo
どうしたんだ?
347 :再開です。 :2010/12/16(木) 18:00:01.76 ID:8wHtbtg0

ガルーダ「コン・バトラーV! 正々堂々と勝負だ!」

翠星石「かーかってきやがれですぅ!」

ガルーダ「喰らえぇぇぇーっ!」

翠星石「マァグネクロー! ですぅ!」

 ガッツィィンッ! ビッグガルーダのウィングソードとコン・バトラーVの手首のクローがガッシリ噛み合った!

翠星石「くうぅぅぅぅぅ!」

ガルーダ「ぬぬぬぬ……やるな! コン・バトラーV! それでこそ、余が全力を尽くすに相応しい相手だ!」

翠星石「それでも、てめぇなんぞに負けねぇですよーっ! 真紅ぅ!」

真紅「不本意だけど、了解なのだわ」

 ガコン! コン・バトラーVのマグネクローが引っ込み、ノズルが飛び出した!

ガルーダ「なにっ!?」

翠星石「アトミック・バーナー!」

 ゴォォォォォッ! ノズルから炎が放射され、ビッグガルーダの胴部を焼き焦がす!

ガルーダ「う、うおぉぉぉっ! おのれっ!」

 負けじとガルーダは内蔵されていたミサイルの発射口を開いた。

翠星石「げげぇっ!」

蒼星石「こんな至近距離で!?」

真紅「逃げるのよ!」

ガルーダ「逃がすか! 喰らえ!」

 チュドォォォォンッ! もがくコン・バトラーVに二其のミサイルが破裂した!

翠星石「ぎぇぇーっ!」

ガルーダ「うおぉぉぉぉっ!」
348 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/16(木) 18:00:45.06 ID:8wHtbtg0

 互いにボディの前半分を黒くくすぶらせて、両機はようやく離れた。

ガルーダ「さすがはコン・バトラーVだ! ミサイルを受けても倒れぬ威容!」

翠星石「おめぇも侵略者としては似合わねーほど律儀な奴ですねぇ!」

真紅「水銀燈もこんな性格ならもう少しまともにやりあえたでしょうね」

ガルーダ「余は貴様らとおしゃべりをするためにやってきたのではない! 余の剣捌き、受けてみよ!」

翠星石「やってやるです! ツインランサー!」

 コン・バトラーVの両肩からそれぞれ手槍が出て、片方ずつ手に握る。

ガルーダ「勝負だ! コン・バトラーV!」

翠星石「とぉりゃぁーっ! ですぅ!」

 ガキンッ! ガンッ! ガガンッキィンッ! 激しい剣戟に火花が散り、巨躯の動きに大気が震える。

 ギャリィッ! 左の手槍がビッグガルーダの角を折った!

ガルーダ「まだだっ!」

 ドガッ! 出過ぎたコン・バトラーVの頭部にガルーダの左拳が殴打する。

翠星石「くうっ!」

ガルーダ「そこだぁっ!」

 バキィンッ! 強く振り切った剣にツインランサーは二つまとめて落とされてしまった。

ガルーダ「やれる! 今日が貴様の最後の日だ! コン・バトラーV!」

 ダッ! ビッグガルーダは大きく後ろに跳び、コン・バトラーVとの距離を取ると、巨体に見合った大きな弓を構えた。
349 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/16(木) 18:02:17.04 ID:8wHtbtg0

ガルーダ「この巨大ミサイルアローでとどめだ!」

 先端が強力な爆薬になっている矢を番えて放った!

 ドガァァァァァァッ! ミサイルアローがコン・バトラーVの足元で爆発した。

雛苺「びえぇぇぇぇっ!」

真紅「雛苺! うるさいわよ、泣くんじゃない!」

ガルーダ「照準どおりには行かぬか……まだまだ行くぞ!」

 ヒュン、ヒュン! 腰の矢立から次々と矢を抜いては射る!

翠星石「なんのですよぅ! 数で来るならこっちもですぅ! ビッグブラストとロックファイターですぅ!」

 コン・バトラーVのみぞおちが開き、大きなミサイルが、右手の指先から小型ミサイルが飛んでミサイルアローと相打ちに誘爆する。

蒼星石「ダメだ、翠星石! 煙で見えなくなる!」

ガルーダ「バカめ! もう遅いわ!」

 蒼星石が注意を促したときには、巻き上がった煙を突き破って、ミサイルアローが飛んできた!

真紅「避けるのよ!」

翠星石「やってるですぅ! 無理ですぅ!」

 ズガァァァァァンッ! ミサイルアローがコン・バトラーVに直撃する!

翠星石「きゃあぁぁぁぁっ!」

蒼星石「わぁぁぁぁぁぁっ!」

真紅「うあぁぁっ!」

雛苺「ひやぁぁぁぁぁ!」

金糸雀「きゃあぁぁぁっ!」
350 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/16(木) 18:03:07.85 ID:8wHtbtg0

 ガガッ……バキィンッ!

真紅「いけないわ、翠星石! 合体が解けかかってる!」

翠星石「うぐぐ……こうなったらイチかバチかですぅ!」

蒼星石「まさか、アレをやるの!?」

翠星石「もうそれしかねーですぅ!」

蒼星石「だけど、途中で攻撃されたら……」

金糸雀「失敗したらもう後はないかしらー!」

翠星石「だからイチかバチかなんですぅ!」

真紅「非効率的だわ」

翠星石「でも、やるしかねーですぅ!」

律<加速>「そういうことなら、アタシに任しとけ〜っ!」

 がしゃがしゃがしゃがしゃ! コン・バトラーVの横から走り出てきたのは、ボスボロットだった。

律<加速>「唯と澪が頑張っちゃってるからアタシの出番がないのさ〜!」

真紅「どう見ても無茶なのだわ」

律<加速>「いっけぇぇ〜! ボ〜スボロットパ〜ンチ!」

 ガコン! ボスボロットの鉄拳がビッグガルーダに当たり、スチール缶が転がるような音がした。

ガルーダ「むぅっ! なんだこのポンコツは!」

律<加速>「うりゃうりゃ〜っ!」

 ポンカンポンカン まるで十円玉を投げつけられているような攻撃にガルーダが気を取られている間にコン・バトラーVは体勢を整えていた。

翠星石「隙だらけでありやがんのですよぅ! 超電磁・タ・ツ・マ・キィ〜!」

ガルーダ「しまった! オトリか!」

 バリバリバリバリ! コン・バトラーVの頭にある二つの電極から電磁の嵐が腕に乗せられて放出される。
351 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/16(木) 18:04:21.09 ID:8wHtbtg0

 超電磁タツマキに絡め取られたビッグガルーダはプラスとマイナスの反発に巻き込まれ、身動きが取れなくなってしまうのだ。

ガルーダ「な、なんだ……! 動かないぞ!」

翠星石「こいつでとどめですぅ!」

 コン・バトラーVの両手が重なり、手首から先が変形し超電磁ギムレットの刃が光った。

 僅かに体を浮上したコン・バトラーVはギムレットを軸に高速で回転し始める。

 そして、空高く飛び上がったコン・バトラーVは回転しながら一直線にビッグガルーダに落下していった!

翠星石<熱血>「超電磁・スピィィィィィィィィィン!!」

 ズギャァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!! ビッグガルーダの装甲のど真ん中に大きな穴が空いた!

ガルーダ「馬鹿な! 余のビッグガルーダが!」

ミーア「ガルーダ様ぁ! 撃て、グレイドン! 撃ちまくってガルーダ様を助けなさい!」

 ドドォンッ! ドォンッ! 砲撃に怯んだ隙に唯たちと戦っていたマグマ獣デモンが半壊したビッグガルーダを持ち上げてグレイドンへ回収していく。

ガルーダ「ぐぐっ……ミーア……余を降ろせ! こうなればコン・バトラーVと相討ちになってみせようぞ!」

ミーア「いけません、ガルーダ様! ここはもはや退くしかありませぬ!」
352 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/16(木) 18:07:01.99 ID:8wHtbtg0

ガルーダ「うおぉぉ……離せぇ!」

 ビッグガルーダはもはやぼろぼろで、下手な動かし方をすれば即座に爆発しかねない。
 それでもガルーダはビッグガルーダから出ようとはしない。
 地上にいるコン・バトラーVもまた、装甲の大部分を損耗した上に超電磁スピンでエネルギーが尽きているのだ。

ミーア「司令の立場を失おうとも、まだ挽回することはできます! ガルーダ様が生きておられる限りは!」

ガルーダ「余は更迭など恐れてはおらぬ! だが、この手でコン・バトラーVを倒せぬのならば余の命に価値などない!」

ミーア「くっ……グレイドン! 冷凍ビームでビッグガルーダを凍らせなさい!」

グレイドン「ごぉぉぉぉぉぉん!」

 ビュオォォォォォォッ! グレイドンから冷凍ビームが照射される。

ガルーダ「み、ミーア……貴様!」

ミーア「申し訳ありませぬ、ガルーダ様……」

 搭乗しているガルーダのいるところまでは至らない程度にビッグガルーダを凍結させた後、ミーアはグレイドンに回収させた。

ミーア「覚えておきなさい、地球人ども! 次こそはやっつけて差し上げます!」

 グレイドンは超電磁研究所から飛び立っていく。

 それを膝をついたコン・バトラーVのコクピットで見送っていたドールズは高々と手を掲げることができなかった。

翠星石「なんか……手放しで喜ばねーですぅ」

蒼星石「そうだね……彼らにも理由があって戦っているのかもしれないよ」

律「だけどよ、あっちが攻めてくんだから、こっちは迎え撃つしかないじゃんよ」

真紅「確かにその通りだわ。彼らは話し合う余地を与えてはくれないのだから」

翠星石「ですぅ……」


 第十三話 炸裂! コン・バトラーV 超電磁スピン! 完
353 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/16(木) 18:27:05.14 ID:8wHtbtg0
今日はここまでです。
一話を二回に分けて投下するのは、戦闘シーンにかけては直すところが後で出てきたりするからです。
たとえば、律の加速は昨日の時点ではなく、ついさっき付け加えたものです。こういうの、忘れがちです。

また、運転免許の習得を始めましたので、ペースが遅くなるかもしれません。
ここから先はより一話が長くなると思います。どうなるかわかりません。

次回予告『アジア戦線のマチルダ・アジャン中尉から、ガンダムのパワーアップパーツがゴラオンに輸送されてきた。
     だが、その換装作業の最中にジオン・ドレイク連合軍はマ・クベ大佐の弔い合戦を挑んできた。
     赤い三騎士がダンバインに襲い掛かる。援護に出るなのはたちには素早く、黒き者たちが迫ってくる!
     君は、生き延びることが出来るか!?』

354 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/16(木) 18:45:55.46 ID:8wHtbtg0
マ違えました。マさんはマだ死んでマせん。
ガルマです。ガルマ。どうして死んだかって?

坊やだからさ。

355 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/16(木) 19:56:54.51 ID:ugXHqOgo
マ・クベが弔い合戦しに来るのかと思った
356 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/16(木) 21:19:05.13 ID:ufkWLYAO
自信満々に書いてもらったところすまないが、赤い三騎士はビショットの配下じゃなかったか?
三騎士はガラミティ、ニェット、ダーでアレン、フェイ、ジェリルとは違うぞ
357 :再開です。 [saga]:2010/12/21(火) 18:49:17.92 ID:mFjspvM0
勘違いをしていました。確かにアレンたちは三騎士じゃなかったです。
アレンたちが出てきますが三騎士ではないですね。申し訳ありません。
そして、ほぼ書き終わってから、ドムの前にグフ及びランバ・ラルが先だと気付きました。
ランバ・ラルはドラグナールートで出てくる予定です。
ドムが先というよりもほぼ同時間での出来事だと思ってくださればありがたいです。
やっぱり次回予告なんてするもんじゃないですね。タイトルは各話最後だからあまり意味ないし。
それでは投下します。
358 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/21(火) 18:56:32.00 ID:mFjspvM0

 第十四話

ギレン「ジオン公国の栄誉たる国民一人ひとりに問いたい!」

 演壇に立った痩躯の男は重いバリトンで吼えた。

ギレン「諸君らの父が、友人が、恋人たちが死してすでに幾月が流れたか、思い起こすことを忘れたわけではないと信ずる。しかし、ルウム戦役以後、諸君らはあまりにも自堕落に時を過ごしてはいないだろうか? 地球連邦軍の物量と強権の前に、屈服も良し、とする心根が芽生えてはいないだろうか? なぜ、そのように思うのか? 選ばれた国民であるはずの、諸君らが、なぜに地球連邦軍の軟弱に屈服しようとするのか?我、ジオンの創業の闘士、ジオン・ズム・ダイクンは、我らに言い残したではないか!」

 右手で固い拳を握る高貴な装いのギレン・ザビの頭上に陰影を落とすのは、つい二日前に訃報が届いた貴公子の肖像だった。

 ガルマ・ザビ――連邦軍と戦い、壮絶な戦死を遂げた彼をジオン公国の首都ズムシティは悲しみに泣いていた。

 五日前に届いたビデオレターで彼はこう言った。

『親の七光りで将軍だ、元帥だと国民に笑われたくはありませんからね。父上もご辛抱ください。必ずや、大きな戦果を私自身の手で収め、将軍として立って見せます』

 ザービ! ザービ! ザァービ! ザーァービ!!

 ガルマの死を、家族の死と重ねたジオン国民のコールを思い出す。ここにいるだけでも二十万。コロニー全体ならば二千万人はいたはずだ。

デギン(この世論があれば、ギレンを倒せたのではないか……?)

 公王として玉座に座るデギン・ソド・ザビが演壇で拳を震わせる背中に鈍く目を光らせた。
 デギンを玉座の奥に追いやり、実質的な独裁政治の頂点に立ったギレンを抑えるには、ガルマの存在は必要不可欠だった。
 国民の人気を一身に受け止め、父想いの彼ならばギレン以上の、いやジオン100年を繁栄させる男になっていたことだろう。

ギレン「宇宙の民が地球を見守り、その地球を人間発祥の地とすべき時代に、地球を離れることを阻む旧世代が、宇宙の民たる我らを管理支配しようとする。宇宙の広大無比なるものは、人類の認識域を拡大して、我らは旧世代との決別を教えられた。その新しき民である我らが、旧世代の管理下におかれて、何を全うしようというのか? 我らこそ、旧世代を排除し、地球を聖地として守り、人類の繁栄を永遠に導かねばならないのだ。銀河辺地にあるこの太陽系にあっても、文明という灯を守り続けなければならない。これが、ジオンの創業の志であったことは、周知である。にもかかわらず、諸君らは、肉親の死と生活の苦しさに、旧世代に屈服しようとしている。ジオン創業の時代を思い起こしたまえ! 地球よりもっとも離れたこの新天地、サイド3こそ、諸君らの父母が選んだ、真に選ばれた人類の発祥の地であることを思い起こせ! ジオン・ズム・ダイクンのあの烈々たる演説『新人類たちへ』を知らない者はいない! 思い起こせよ! 我らジオン公国の国民こそ、人類を永遠に守り伝える真の人類である……!」

 だが、現実としてガルマは死に、聴衆はギレンの演説に心酔している。弟の死は悲しむべきだが、それすらも陰謀と化すギレンは大きく右手で聴衆に手を広げる最中であくまでもさりげなく、デギンを睨んだ。
 ギレンにとって、父デギンはもはや汚物にも等しい存在なのだった。むしろ人間であるからこそ厄介である。聞けばダルシア首相と密談を交わしているという。
 今日がガルマではなく、デギンの葬式であれば、事はもっと容易にギレンの好むほうに転んでいたはずだ。

ギレン「何の洞察力も持たない地球連邦の旧世代に人類の未来を委ねては、人類の存続はあり得ないのである。ただただ絶対民主主義、絶対議会主義による統治が、人類の平和と幸福を生むという不定見! その結果が、凡百の無能者と人口の増大だけを生み出してゆくのである。その帰結する処は何か? 無能な種族の無尽蔵な増加は、自然を破壊し宇宙を汚すだけで、何ら文明の英知を生み出しはしない! 種族の数が巨大になり、自然の体系の中で異常と認められるに至ったときは、鼠であろうと蝗であろうと集団自殺をして自然淘汰に身を任せてゆく本能を持ち合わせている。これは、生物が自然界に対して示すことのできる唯一の美徳である」
359 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/21(火) 18:57:21.87 ID:mFjspvM0

キシリア「兄上もよくやる……」

 デギンとギレンの水面下のせめぎあいは知るものにはよく知られていた。
 キシリア・ザビ少将が専用の冠に似たヘルメットを脇に抱えて言うのを聞いて、ドズル・ザビ中将は堪忍袋の緒に鋏を差した。

ドスル「シャナは姉上が引きとると聞いたが……」

 毒づくドズルにキシリアはぬけぬけと返す。

キシリア「シャナは軍籍を剥奪されたのでしょう? なら、その後をどうしようと私の勝手。法的には何の問題もありません」

ドズル「シャナはガルマを守りきれなかった……! 他の部下への見せしめに左遷したのだ。それをないがしろにしてはガルマも報われぬ……!」

キシリア「シャナは有能です。使ってあげたほうが、親友であったガルマのためにもなるでしょう」

 冷たい言葉に200センチを超える巨漢のドズルは溢れる涙を止められなかった。

ドズル「ガルマこそ、将帥となってワシを使うはずの男だったのだ……この口惜しさはわかるまい! 兄上も姉上も政治家だ、陰謀家だ! だが、ガルマは違った……奴は真にジオンの救世主たるに相応しい男だったのだ……!」

キシリア「率直だな。ガルマにいい手向けになる」

 演説は続いていた。ドズルの涙は滾る熱気に蒸発してしまった。
 
ギレン「それがどうだ! 知恵がある故に、人類は自然に対して傲然として傲慢である。自然に対して怠惰である。ジオンは、諸君らの総意をもって、諸君らの深い洞察力ある判断をもって、自らに鉄槌を下したのである。人類が自然に対して示すことのできる贖罪を成したのである。時すでに八ヶ月余り! ここに至って諸君らが、初心を忘れたとはいわせない!」
360 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/21(火) 18:58:35.27 ID:mFjspvM0

ギレン『思い起こせよ! 我、ジオンの栄光ある国民よ! 諸君らの肉親の死を追って、我、愛するガルマが死んだ! なぜか!』
 
シャナ「坊やだからさ」

 軍用ジープの中でその嘲笑は、フルボリュームのラジオにかき消されていた。

ギレン『ガルマは、闘いに疲れた我らに鞭うつために死んだのである! 同胞の死を無駄にするなと叫んで死んだのである! 彼は……! 諸君の愛してくれたガルマは、ジオン公国に栄光あれと絶叫して死んだ! なぜか! ジオンの、いや、諸君ら、英知を持った人類による人類の世界こそ、真の人類のあるべき姿と知るからこそ叫べたのである。ジオン公国に栄光あれ、と! 起てよ! 国民! 今こそ、我らの総意をもって地球の軟弱を討つ刻である! ジークジオン!』

 ジークジオン! ジークジオン! ジークジオン! ジークジオン!

 ギレンの憤激を受けたジオン国民が解放した熱にシャナは頭が痛くなった。
 いや、頭痛の原因は耳障りなラジオではない。軍籍を失ったシャナを慰労館へ連れて行く部下の気遣いのせいでもない。

アラストール「大丈夫か、シャナ?」

シャナ「またよ……また……」

アラストール「しかし、我にも気がつかぬこととは、誠なのか?」

シャナ「…………」

 天上の劫火の問いにシャナは応えなかった。
 ギレンの演説が終わり、ラジオのスィッチが落とされたからである。

ジオン兵「着きましたぜ、少佐」

 荒野の貧民街の外れにある瀟洒な建物。三階建てだが、一階の喧騒に比して二階三階は隙間なくカーテンが閉められている。
 一階の酒屋で指名を受けた娼婦が上の階で客の相手をする典型的な娼館だが、手前上あくまでも慰労館である。

 もちろん、女であるシャナにこんな場所は無意味である。
 なのに、彼女はここに来ることを選んでいた。
361 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/21(火) 18:59:35.61 ID:mFjspvM0

 膝までの長い髪を乾いた風になびかせるシャナの前を行くジオン兵がウェスタンドアを開いて酒屋に入る。
 アルコールとタバコと硝煙――それとドラッグの匂い。ジオンの高官が来ているというのに、場は怒号と交渉で個々に盛り上がっていた。

シャナ「――ッ!?」

 見られている――いや、このざらついた感覚はそう、見透かされているようだ。

 シャナはその視線を探す。いた。一番端のカウンター。
 浅黒いインド系の肌の女だ。年齢はよく十代であることは確かだが、一にも見えるし九にも見える。

 目が合ったとき、薄く微笑んだ。それは娼婦が客を取るための媚びたものではない。

シャナ「お前、何を見た?」

 まっすぐにその女の許へ行き、シャナが訊ねる。

「あなたたちの後ろにあるもの……奪ったものかしら」

 シャナは驚愕した。この女には、正しいものが見えている。
 女の額でヒンドゥー教徒のビンディーがつぶらに光る。

シャナ「お前……名前は?」

「……ララァ。ララァ・スン」
362 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/21(火) 19:00:37.58 ID:mFjspvM0

 北米大陸 テキサス州 ゴラオン

 ジオン軍のガルマ・ザビを撃破したゴラオンは南米大陸のジャブロー基地との連携を取るために、大陸南端部に乗り出してきていた。

マチルダ「ガンダム及びコア・ファイターのパワーアップパーツ及び、オーラバトラーにも搭載が可能と思われる部品とその他の補給物資をお持ちしました。こちらがリストになります」

エレ「お預かりします。ありがとうございます」

マチルダ「報告の参考までにお訊ねしますが、これからエレ女王はどうなされるおつもりでしょうか?」

エレ「そこまでかしこまらなくてもよろしいですよ。我らは異邦の者ですから」

マチルダ「は。了解しました」

エレ「ゴラオンはこのまま南下して、ジャブローにある連邦基地との連絡を交換したいと思っております。必要ならば、エイブ艦長に言って航空地図をお渡ししましょう」

マチルダ「これは……あくまでも私の独り言として受け止めてくださるとありがたいです」

エレ「……なんでしょう?」

マチルダ「ジャブローとは連絡を取らないほうがよろしいかと思います」

エレ「どういうことですか?」

マチルダ「ジャブローは協力を取り付けるどころか、あべこべにゴラオンの戦力を接収しようとするでしょう。そしてそれを拒否したとき、ジオンを倒した後の標的が新たに増える可能性が非常に高いです」

アリサ「なぁに、それ!? ジャブローっていうのはそんなにヤなオヤヂの集まりな訳!?」

 ブリッジに入り込んできたのは、アリサ、すずか、なのはだ。
 声高な少女を見て、マチルダはやや驚いたようだったが、すぐに思い出す。
363 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/21(火) 19:01:22.47 ID:mFjspvM0

マチルダ「あなたたちが、ガンダムのパイロットなのね。はじめまして」

すずか「は、はじめまして」

マチルダ「あなたが月村すずかさんね」

すずか「どうして私の名前を……?」

マチルダ「あなたのお姉さんの忍さんとはお知り合いなの。心配していましたよ、あなたがガンダムに乗っていると聞いて」

すずか「ご、ごめんなさい……」

マチルダ「ふふ、伝えておくわ。でも、こうも言っていたわよ。あの子なら、うまく扱えるでしょうって」

すずか「そ、そんなことは……」

アリサ「そーんなことあるんですよ! すずかは本当にガンダムをこの中で一番うまく扱えてるんです! ねぇ、なのは?」

なのは「はいっ! すずかちゃんがいなかったら大変なことがいっぱいです」

 三人の応酬にマチルダは穏やかな笑みを浮かべていた。
 短くまとめられた髪、きゅっと引かれたルージュ、メリハリのきいたボディラインと女性士官の軍服。
 マチルダ・アジャン中尉にすずかたちは大人の女性の美しさを見た。
364 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/21(火) 19:02:29.48 ID:mFjspvM0

 ゴラオンの一室

 先の戦闘でオーラ力を爆発させた珠姫は、起き上がりはするものの体調は明らかに落ちていた。
 今も寝台に半臥した状態でチャムが上げてくれるスプーンで食事を摂っている。

チャム「タマキ、まだ指が開かないの……?」

珠姫「そうだね……まるで指だけが別の人のものみたい」

 トッド・ギネスに突きを入れた後の珠姫の指は、ダンバインの操縦桿を握った形のまま解けなくなっていた。
 それは珠姫の意思だけの現象ではなく、チャムが指を持って引いても押しても、関節はぴくりとも動かないのだ。

珠姫「これもオーラ力が強くなったせいなのかな?」

チャム「でも、オーラ力が高まっているときのタマキは、なんだかタマキじゃないみたいで恐いよ」

珠姫「うん……わかるよ。私も恐い……自分が変わっていくのがわかるんだ……」

紀梨乃「タッマちゃーん、やっほー!」

 部屋の扉が乱暴に開かれていつでも明るい紀梨乃が入ってきた。
 びっくりしてチャムはスプーンを落としてしまった。

チャム「きゃぁっ、こぼしちゃった! もう、キリノったらぁ〜!」

紀梨乃「ややや、ごめんごめんご。タマちゃんはじっとしてていいからね〜」

珠姫「はい、じっとしてます」

チャム「あれ? キリノ、その花……?」
365 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/21(火) 19:03:20.52 ID:mFjspvM0

 こぼれたご飯を拭き取る紀梨乃は左手に数輪の花を持っていた。

紀梨乃「これ? 来る途中に生けてあったからもらってきちゃった。キレイっしょ、タマちゃん?」

珠姫「はい、ありがとうございます」

チャム「でも、キリノ……その花って……」

紀梨乃「そう、これバイストン・ウェルの花なんだよね〜、こっちに来てもまだ咲いてるのも不思議だよね〜」

チャム「その花って、バイストン・ウェルで『結婚の花』って言って、それを誰かに渡すのは『結婚してください』って意味なのよ?」

紀梨乃「へ……?」

珠姫「…………」

 部屋の中に気まずい空気が流れる。

珠姫「ごめんなさい」

紀梨乃「い、いいのよいいのよ、タマちゃん! 気にしちゃダメダメよ〜」

チャム「ふーん、地上って女の子同士でも結婚できるのね」

紀梨乃・珠姫「…………」
366 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/21(火) 19:04:03.39 ID:mFjspvM0

 ゴラオン 格納庫

アリサ「へぇー、これが新しい私のコア・ファイターね」

リュウ「お前のものとは決きまっとらんぞ」

アリサ「いいじゃないの! どうせ私たちぐらいしか乗ってないんだから!」

 少し離れたところのすずかとなのははマチルダと一緒の輸送機でやってきた整備兵見習いの少年から説明を受けていた。

すずか「それじゃあ、ガンダムは駆動系を中心にパーツを取り替えていくことになるんですね」

「はい。全体的にマイナーチェンジですけど、アポジモーターは新しく開発されたものなので、運動性は向上しているはずです」

なのは「それで、こっちのパーツがGパーツなんですね?」

「そうです。ガンダムはコア・ファイターとAパーツ、Bパーツの部品が合体して立つわけですけど、Gパーツを使うことで様々な用途に対応して換装させることができるんです。これがマニュアルです」

 まだ14、5の少年から手渡された分厚い紙束がすずかの小さくて柔らかい手にずっしりと乗っかる。
 少年はやや不安げにそれを見て言った。

「あの、今さらですけど、本当にあなたがガンダムのパイロットなんですか?」

すずか「あ、はい。よく言われますけど、そうです」

「失礼しました。僕も乗り方は知っていますけど、実際に動かすなんて、僕には無理そうだなって」

なのは「分かるんですか、ガンダムの動かし方?」

すずか「私が言うのもなんですけど、機密事項のはずじゃあ……」

「僕の父さんも、ガンダムの開発で技術責任者をしていたんです。母さんとケンカして一人で宇宙に上がっていったきり、直接会ったことはないですけど。僕がこの仕事をやれているのも、父さんのコネみたいなものですから」

すずか「そうなんですかぁ。私もお姉ちゃんに会いたいなぁ……」

「会えますよ。きっと」

すずか「ありがとうございます」

 そう言って少年はガンダムから離れていく。
 ナイーブで神経質そうな横顔だが、自分の工具箱を持って歩く様は充分に技術者の後ろ姿だった。
367 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/21(火) 19:05:02.63 ID:mFjspvM0

 ドレイク・ルフトの旗艦ウィル・ウィプスは北米大陸の東部で司令官を失ったジオン軍を接収していた。
 残党兵とはいえ、その90%以上の吸収に成功したショット・ウェポンはやはり大した手腕だと、トッド・ギネスは苦笑していた。

トッド「俺も、ヤキが回ったもんだぜ」

 ボストンの広い町並みの上を偵察用飛行型オーラマシンに乗って、トッドは減速した。
 先の戦闘でオーラ力を拡散し続けて、レプラカーンを破壊した彼は主君ドレイクからしばらくの暇を与えられていた。
 トッドは当然断ったが、トッド用の機体――正確には彼についていける機体――がなくなったことは確かであり、新しいオーラバトラーが完成するまではウィル・ウィプスにいても仕方がなかったため、そのねぎらいを受けた。

トッド「新しいオーラバトラーはたしかズワァースとか言ったか……」

 ジオン軍のほうでは、ガルマ・ザビ大佐の弔い合戦を申し出、ドレイクもアレンたち三人を出すことにしたらしい。
 アレンはトッドの軍人時代の先輩にあたる。下手に軍功を立てられては、今の地位はすぐに取り替えられてしまうことだろう。

トッド「やられてくれるなよ、タマキぃ……」

 民家に降り立って、トッドはその家に入っていった。

トッド「ママァ!? ママはいるかい! トッドが帰ってきたぜ!」
368 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/21(火) 19:08:19.26 ID:mFjspvM0

 ゴラオン 格納庫

すずか「マチルダさんはどうして補給部隊に入ったんですか?」

マチルダ「そうね。戦争という破壊の中でただひとつ、物を作っていく事ができるから、かしらね」

アリサ「物を作る……」

マチルダ「戦いは破壊だけでも、人間ってそれだけでは生きていられないと私には思えたからよ」

すずか「マチルダさんって、すごい人なんですね」

マチルダ「あら、生意気なことを言ってくれるじゃない」

なのは「にゃははは」

 ヴーッ! ヴーッ!

マチルダ「敵襲!?」

ゴラオン兵「二時の方向よりジオン・ドレイク軍です! ウィル・ウィプスは見えていませんが、二機のレプラカーンにビランビーと見たことのない黒いモビルスーツが三機、先頭に立っています!」

アリサ「黒いモビルスーツ、新型なの!?」

すずか「ガンダムで出撃しないと……」

 ガンダムの許へ走ってすずかは悲鳴のような声をあげた。

すずか「こ、コア・ファイターが入ってない!」
369 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/21(火) 19:08:57.04 ID:mFjspvM0

リュウ「す、すまん、月村! Gパーツとの換装組み立てに使っちまってる! ガンダムは出せん!」

すずか「そんな……すぐに戻せないんですか!?」

リュウ「まだ手作業でしか換装ができんから、すぐには無理だ」

すずか「そ、それなら私は二つあるコア・ファイターで……」

アリサ「やめときなさい、すずか。あんたまだちゃんとコア・ファイターで出撃したことないでしょ!」

すずか「で、でも……」

アリサ「たまには、私にいいとこ見せさせなさいよ!」

リュウ「アリサの言う通りでもないが、ガンダムは月村が乗るべきだ。残っていたほうがいい」

すずか「わ、わかりました。お願いします」

リュウ「おう、任せろ!」

 分厚い胸をリュウはどんと叩いた。すずかにはそれがとても頼もしく見えた。

なのは「高町なのは、いきまーす!」

 先に出たなのはを追いかけて、リュウ、アリサのコア・ファイターが続いて発進した。
 すずかはガンダムの換装作業を手伝いに走る。その後ろから大きな声がした。

紀梨乃「タマちゃん、ダメだよぉ! 安静にって言われてるじゃんか!」

チャム「タマキぃ! 降りてきてぇ!」

 ステップの手すりに身を乗り出して嘆願する紀梨乃の横を、ダンバインがオーラの光りを発しながら飛び出していった。
370 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/21(火) 19:09:38.57 ID:mFjspvM0

 ゴラオン ブリッジ

エレ「オーラバトラーは各個に防衛網を維持。長期戦に備えなさい」

エイブ「ジオン軍はガルマ・ザビ大佐の弔い合戦の構えです。そうは退かないでしょう」

エレ「逆に、ドレイク軍には価値の薄い戦いといえます。まずはドレイク軍とは戦線を保ちつつ、ジオン軍を抑えましょう」

ゴラオン兵「エレ様! 反対方向、六時の方向からオーラバトラー、多数接近!」

エイブ「なんだと! 挟撃か!?」

エレ「ゴラオンの砲手をそちらに向けなさい! 進攻を許してはなりません!」

『ヘイ! その必要はアリマッセーン!』

エレ「えっ?」

エイブ「えっ?」

ゴラオン兵「えっ?」
371 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/21(火) 19:18:25.33 ID:mFjspvM0

 回線に何者かが割り込んでいた

『ゴラオンのバックはミーに任セナサーイ!』

エレ「えっ?」

エイブ「えっ?」

ゴラオン兵「えっ?」

 ドスンッ! ゴラオンの後部に突如、巨大なロボットが降り立った。

 いかつい髑髏のような外観にテンガロンハットとマントのようなレインコートで腰にはベルトで銃が吊ってある。

ジャック・キング『HAHAHA!! グレイトなステイツはテキサスマックが守リマース!』

 FU FU FU……YAH!
 OH カレタクサノカタマリガーカゼニフカレテー
 コーウヤヲコロガッテイクゼーオレハーヒトリサー
 OH アイアンザーップヲキメーター ビリーザキッドモー
 SOH タタカウオトコニニアーウー ユウキガアルーゼー
 OH トコガユメヲオイカケルーシンクノガンマンー
 マッカナチシオノキズナデーマタデアオオウゼー FU……
 yeah yeah yeah……wow wow wow……
 HEY! カゼヲキルヨウナオレーサァー ソレデモーキットー
 オーマエトハイッテイレーバー マタアエルダロウー
 マタアエルダロウー マタアエルダロウー FU……
 yeah yeah yeah……wow wow wow……FU……Ah!
372 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/21(火) 19:19:30.25 ID:mFjspvM0

ドレイク兵「なんだ、あのふざけた兵器は!」

ジャック<気合>「ヘイ! カマァーン! カマンカマンカマンカマァーンッ!」

ドレイク兵「うおぉぉぉぉっ!」

 ドウッ! バストールからフレイボムが放たれる!

ジャック<挑発>「そーれがユーのマキシマムですかぁ〜!?」

 ザンッ! ズバァッ! テキサスマックがどこからか抜いた剣でフレイボムを叩き落した!

ドレイク兵「くそっ! 一斉にかかるんだ!」

 ドレイク軍のオーラバトラーが編隊を成して襲い掛かる!

ドレイク兵「喰らえっ!」

 ビシュッ! 剣がテキサスマックに迫る! だが、まるで影を踏むかのような動きで素早く避けた!

ジャック<閃き>「HAHAHA!! ハズレッネ!」

メリー「兄さんヌ! 避けてはダメよ! ゴラオンを守らないと!」

ジャック<脱力>「オォーウ! SHIT!」

 テンガロンハットに乗り込んでいる妹のメリー・キングにたしなめられて、ジャックは剣をどこかにしまい、ホルスターから二丁の拳銃を持ち上げた。

ジャック<必中>「オーケェーイ! アメリキャーをこれ以上好きにはサセマセーン! GO TO HELL!!」

 バキュンッ! バキュン! バキュン! バキュン! 二丁のマックリボルバーが交互に発砲しまくる!

ドレイク兵「うわぁ!」

 全高38メートルのテキサスマックが放つ弾丸は一発が1メートルぐらいはある。
 装甲も薄くサイズも小さいオーラバトラーは次々と落ちていった。
373 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/21(火) 19:20:19.51 ID:mFjspvM0

ドレイク兵「このおぉぉぉぉ!」

 ブゥン! バキューンッ! 渾身の一撃もあっさりとかわされて、弾丸を叩き込まれてしまう。

ジャック<幸運>「ヘイ! ユーアー・HE・TA・KU・SO!! アンダスタァン?」

ドレイク兵「があぁぁぁぁぁっ!」

 ガキンッ! 最後に残っていた一機のバストールがテキサスマックの髑髏顔に剣を突き刺すことに成功した!

ジャック<根性>「オーゥ! ミーを本気にサセタネー?」

 その反撃で作戦失敗の気が晴れたのか、バストールは全速力でテキサスマックから離脱していく。

ジャック<不屈>「ジーザス! 逃げられてシマイマース!」

メリー「兄さんヌ! まじめにやってよ!」

ジャック<加速>「ヘェイ! GO!」

 ドォンッ! テキサスマックは巨体を爆進させてバストールを追っていく。

 その途中、テキサスマックは二丁のマックリボルバーを両手でごちゃまぜにし、気がついたときには一丁のマックライフルになっていた。

ジャック<狙撃>「チッチッチッチ、なってませんネー」

 ジャキンッ! テキサスマックは長いマックライフルを構え、照準をバストールに合わせた。

ジャック<狙撃必中熱血>「オォーイエーアー! ファイアーッ!」

 ドキュゥンッ! ライフル弾が遠く離れたバストールを貫いた!

ジャック<友情>「HAHAHA!! ミーがいるカッギーリ! アメリキャーは渡シマセーンッ!」

 ほんの数秒の間に、テキサスマックは二十機近いオーラバトラーを落としてしまった。

メリー「ブラボォー! さぁすがぁ! 兄さんヌ!」

ジャック「HAHAHAHA!!」

メリー「でもたぶん、登場は今回限りよ。原作でもそうだったし」

ジャック「フッ……アメリカの故郷が守れるなら俺には出番なんていらねぇのさ」キリッ
374 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/21(火) 19:26:56.39 ID:mFjspvM0
今日はここまでです。
これで半分ぐらいです。続きはまた明日以降に。
免許取得のこともSSにしたいなぁなんて下心。
東京MXで凄まじい速度で蒼穹のファフナーが再放送中ですとミサカは宣伝を挟みます。
375 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 19:40:56.50 ID:t07OB1Uo

この2人は原作から登場かwwww
ファフナーは1話見逃して途中から見る気が起きないんだよなあ
376 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/22(水) 03:41:44.78 ID:whP8ZYAO
ゲストにアムロ居やがったww
377 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/22(水) 14:44:16.89 ID:BZOGfIAO
支援
378 :再開です。 [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 15:45:41.00 ID:MY9B1.g0
アムロに気付いてもらえてよかったです。
再開します。
379 :Are you enjoying the time of eve? [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 15:47:59.45 ID:MY9B1.g0

 ゴラオンの前方では、リュウのコア・ブースターを追い抜いてダンバインが先に二機のレプラカーンと一機のビランビーに接触しようしていた。

リュウ「おい、川添! お前は体調がよくないはずだろ! 無理をするんじゃない!」

珠姫「できます! 私はオーラ力を制御しなければならないんです!」

 さっきまで動かなかったはずの彼女の指はダンバインの操縦桿に吸い付いているようだった。

珠姫「レプラカーンとビランビー……トッドじゃない、地上人!」

 アレン・ブレディ、フェイ・チェンカ、ジェリル・クチビの三人だ。

珠姫「はあぁぁぁーっ!」

 ダンバインの剣にオーラ力を乗せ、先頭のレプラカーンと打ち合う。

ジェリル「はん! クソガキが!」

珠姫「こんな戦いに何の意味があるというんですか! 同じ地球人同士で争って!」

ジェリル「少なくとも、アタシにはこっちの生活のほうがマシだねぇ! ジャップの甘ったれ嬢ちゃんにはわからないだろうけどさ!」

珠姫「そうやってあなたは人を見下すことしかできないの!?」

ジェリル「聖人君子のつもりかい! 反吐が出るよ!」

 ギャインッ! 大振りなジェリルの剣に体積で劣るダンバインが押し出され、背後にはアレンとフェイが迫っていた。

アレン「もらった!」

フェイ「喰らいな!」

珠姫「やあぁぁぁぁぁぁっ!!」

 ガンッ! ギキィンッ! 振り向き様の鍔でフェイの剣を打ち上げ、刃をアレンと重ねる!

珠姫「あなたは故郷を守るの!? それとも侵略するつもり!?」
380 :Are you enjoying the time of eve? [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 15:48:43.44 ID:MY9B1.g0

アレン「どっちだっていいことさ。俺の親だってロクなもんじゃねぇ」

珠姫「そんなのは答えになっていない!」

アレン「一握りの金で、人間はやっていけるってことさ」

フェイ「どけっ、アレン!」

 ガッ! ガァンッ! フェイ・チェンカのレプラカーンが両手持ちした剣を打ち込んでくるのを、珠姫は弾き返していく。

珠姫「そんな乱れた太刀筋で!」

フェイ「ダンバインだってガタモンだろうよ! ふらふらしてるぜ!」

珠姫「私は剣を迷わせたりはしない!」

フェイ「迷ったことがないだけだろぉが!」

珠姫「なん――ッ!?」

 ほんの僅かに、フェイのオーラ力が珠姫のそれを上回った。

 バァンッ! 二人の剣が触れ合った場所で爆発が起きたみたいに、剣は反発しあって機体ごと吹っ飛ばしあう!

 それを見定めたジェリルが一気に詰め寄る!

ジェリル「終わりさ! ダンバイン!」

リュウ「させるかーっ!」

 バババババババババッ! コア・ファイターで乱入してきたリュウ・ホセイがバルカンを連射しながらレプラカーンに突っ込んでいく!

ジェリル「ちぃっ! 邪魔が入る!」

紀梨乃「タマちゃん!」

 続いて、紀梨乃のボチューンも追いついてやってきた。チャム・ファウも一緒だ。

チャム「タマキぃ! 大丈夫!? 死んじゃってない!?」
381 :Are you enjoying the time of eve? [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 15:49:10.66 ID:MY9B1.g0

珠姫「はぁっ、はぁっ……」

 接触した珠姫は呼吸を荒くしていた。前回と同様、これほど怒気を露わにしている珠姫に紀梨乃も若干の恐れを抱いた。

紀梨乃「タマちゃん、無理しちゃダメだよ! もうダンバインを戻して!」

珠姫「いえ、まだっ……! せめてあの人たちを遠ざけるまで!」

紀梨乃「……わかったよ、タマちゃん」

チャム「キリノ!?」

珠姫「部長……」

紀梨乃「でも、絶対に死んじゃダメだからね」

珠姫「……はいっ!」

アレン「ボサっとしてる余裕があんのかね!」

 グォーン……! コア・ファイターを振り切ったアレンが剣の切っ先をまっすぐ伸ばして突き進んでくる。

 それをダンバインとボチューンはバラけて避けた。

珠姫「やぁぁぁーっ!」

 ガキィンッ! オーラ力を散らしながら、剣はぶつかりあった。
382 :Are you enjoying the time of eve? [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 15:51:51.40 ID:MY9B1.g0

 地上を走るのは、黒い装甲に十字の中のモノアイ、そして腰部からフレア・スカートのような傘がついたモビルスーツだ。

ガイア「アッハハハハ、このドムというやつはすごいな。つい三日前までザクに乗っていたのが嘘みたいだ」

 黒いスカートつきのモビルスーツ・ドムに乗るミゲル・ガイアは三段階のブロックが組まれたアクセルペダルをいっぱいに踏み込んだ。

オルテガ「こんな速度を出しながらザクより揺れないとは、ジオンの技術者も捨てたものではないな」

 後ろから同じドムでついてくるオルテガの言うとおり、ドムは走行中の揺れというものとは無縁の機体だった。
 なぜなら、スカートに隠れたドムの脚部には熱核ジェットエンジンが取り付けられており、地面と接さないホバー走行が可能となっているのだ。

マッシュ「これなら、連邦の巨大戦艦と白いモビルスーツをやれるかもしれんな」

 また、ザクと比べて武装も進化している。
 ザク・マシンガンと呼ばれる120ミリは給弾速度が格段に上がっているし、360ミリの大口径バズーカに対モビルスーツ用に開発された簡易ロケットランチャー・シュツルムファウストとヒート・サーベルはザク以上に取り回しが容易だ。
 試験搭載されたビーム砲も出力は弱いがそれ故に至近距離で目くらましに使用することが出来る。

マッシュ「隊長、敵の戦艦が視界に入ってきましたぜ」

ガイア「慌てるな、マッシュ。俺たちの任務は連邦の白いヤツだ」

オルテガ「迎撃が出てきたぜ! 戦闘機だ!」

ガイア「報告によれば、シャナ元少佐と同じ力を持ったヤツが一緒のはずだ」

 少佐の前に元をつけることでガイアはシャナを侮蔑したつもりでいる。
 三機はフォーメーションを整えた。
 敵の戦闘機をモニターで確認した瞬間に、ガイアはマシンガンのトリガーを引いた。

ガイア「やはりいる! 白いガキ!」

 コア・ファイターには寄り添うように白く光りを放つものがいた。

オルテガ「奴らを落としゃモビルスーツも出てくる!」

 ダダダダダダダダッ! オルテガ、マッシュもガイアの射線を左右でフォローするようにマシンガンを撃つ。
383 :Are you enjoying the time of eve? [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 15:52:32.29 ID:MY9B1.g0

アリサ「そう簡単にっ!」

 操縦桿を引き込んでアリサは上昇し回避する。
 連日のように哨戒に出撃し、リュウというコア・ファイター乗りのライバルがいることで負けず嫌いのアリサもコア・ファイターの操縦をほぼ自分のものにしていた。

なのは「ディバイン・シューター!」

 一方で、アリサと分かれて下へ避けたなのはは黒い新型に近づき、十字の中で蠢くモノアイに畏怖していた。
 黒の中で紫や赤に明滅するドムのモノアイは大きく、少女の背丈とそうは変わらない。
 暗い夜中に幽霊にでも出遭ったかのような気分になるのだ。

ガイア「ガキは相手にするな! ヤツはちょこまかと動くだけだ!」

 何度もの交戦でジオン軍でもなのはのことは有名になっていた。
 同時に、一機も敵を落としていないというデータも既に知れ渡っている。

 ババババババババババッ! 三機のドムはなのはのディバイン・シューターには部屋に紛れ込んだ小さな虫ていどに注意し、執拗にアリサを狙い撃った。

アリサ「ちょっとちょっとぉ! なんで私ばっかり狙うのよ! 人気者は大変ね!」

 機体を回転させながらアリサはそれでもつかず離れずの距離を保ってドムの集中砲火をしのぐ。
 そして、それを見ていたなのは一旦、間を空けて杖を頭上で回す。

なのは「アリサちゃんを狙うなら!」

レイジングハート「Divine buster」

 薄桃色の魔力を伴って構えた杖の先にリングが形成される。
 封印効果を付加させなければ、ディバイン・バスターは比較的速いタイミングで撃つことができる。
 威力も物理的損傷は与えずに衝撃だけを機体に伝えさせる。なのはの思いにレイジングハートが応えた結果だ。

なのは「シュートッ!」

ガイア「来るぞ、散開!」

 ドシューッ! 圧縮された魔力砲が発射される直前に三機のドムは攻撃を中止して各々の方向に逃げた。

なのは「速い! あのスカートの中!」

 なのははドムの回避運動の速さがスカートのジェットエンジンであることに気付いた。

なのは「レイジングハート! あのスカートの動き、ちゃんと覚えておいてね」

レイジングハート「Alllight my muster」

なのは「すずかちゃん、早く来てね……」
384 :Are you enjoying the time of eve? [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 15:53:11.87 ID:MY9B1.g0

マチルダ「ミデアを上げなさい! 輸送船だって、ミサイルぐらいはあるのよ!」

 女性にしては盛り上がる声に部隊の全員は文句一つなく従った。

 旗色は決して悪い訳ではない。
 だが、一番目立つダンバインは三機のオーラバトラーに攻撃され、近づこうとする味方は真っ先に別機により落とされている。
 そこにミデアで割り込んでいくのである。敵の列を乱すことぐらいはできるはずだ。

マチルダ「私たちだって、戦場を飛びまわっているのよ」

 彼女の口癖だった。女性士官<ウェーブ>で輸送部隊。付け入ってくる人間をそうあしらってきたのだ。

珠姫「何か近づいてくる! 輸送船!?」

リュウ「マチルダ中尉!?」

マチルダ「撃ちなさい!」

 ミデアが一機のレプラカーンに機銃を撃つ。

ジェリル「ちぃぃ! 邪魔をするなよ!」

 横槍を入れられたジェリドは激怒して攻撃の対象をミデアに変更した。
 それだけで充分な隙だった。

紀梨乃「やぁーっ!」

 バキィンッ! 直線的な動きのレプラカーンの左肩にボチューンの剣が突き刺さった!

ジェリル「うぐぁ!」

アレン「馬鹿が! 助けんぞ!」

 シンプルな侮辱をしてアレンはフェイと打ち合っているダンバインへと飛んだ。

マチルダ「そこっ!」

 その後ろにぴったりとミデアが張り付いていた。
385 :Are you enjoying the time of eve? [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 15:55:04.14 ID:MY9B1.g0

マチルダ「ミサイル発射!」

 ドシュゥッ! ミデアの備え付けられたミサイルが二基、ビランビーに向かっていく。

アレン「そう来るかい、なら相手してやるぜ!」

 バシュッ! バシュッ! ひらりとミサイルを回避したアレンは返す手のオーラショットでミデアの右翼を折った!

マチルダ「あああああっ! 全員! 備えろ!」

アレン「馬鹿めが、とどめだ!」

 ビランビーが剣を振り上げてミデアに迫る。
 だが、そこにリュウのコア・ファイターがバルカン砲と共に突っ込んでくる。

リュウ「やらせるかーっ!」

アレン「ふん、無駄死にはしないさ」

 ひょいとアレンは停止してリュウをやりすごした。
 煙を上げながらミデアは墜落していく。

アレン「まあ、いい。奴らにくれてやるさ」

 すぐにアレンは本来の目的へと身を翻した。
386 :Are you enjoying the time of eve? [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 15:55:46.38 ID:MY9B1.g0

 ズズズゥーン……! 黒煙を噴きながらミデアは荒野に胴体着陸した。

マチルダ「くっ……損害を知らせなさい! ミデアは動けるか!?」

連邦兵「ダメです! 右翼はおじゃんで左もキレてます!」

マチルダ「各自、白兵戦の用意をし、すぐにミデアを出ろ!」

連邦兵「ちゅ、中尉! 敵が来ます! 黒いモビルスーツ!」

マチルダ「なんですって!?」

 言った通り、割れたミデアのフロント板越しに黒い十字のモノアイが走りながらジャイアントバズを構えているのがわかった。

マチルダ「ここまで……!?」

マッシュ「モビルスーツの前にお宝いただきだ!」

 ドシュゥッ! バズーカ砲が煙を残して弾頭を射出した。火を噴出しているミデアなら一発で終わるだろう。

 なのはが間に入らなければの話だったが――

なのは「やらせないよ!」

レイジングハート「Protection」

 ドガァァッ! なのはの魔法障壁の前で砲弾が炸裂する。風も熱もこないが、巻き起こる粉塵と火の摩擦の火花が網膜に痛かった。

なのは「な、なんとか――っ!?」

 ミデアの防衛に成功し、ほっと息を吐いたなのはだったが、ドムは速度を緩めてはいなかった。

マッシュ「やってやる!」

 直進してバズーカの残りかすを切り裂いたドムはヒートサーベルを握っていた。
 熱は出していないが、障壁があるとはいえ直撃すればなのはの小さな体は充分に痛めつけられるだろう。

マッシュ「死ねぇぇ!」

なのは「だ、ダメぇっ……!」

 避けられない――固く縮こまって悲鳴を上げるなのはをヒートサーベルが叩きつけられる!
387 :Are you enjoying the time of eve? [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 15:57:18.25 ID:MY9B1.g0

リュウ「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

マッシュ「な、なんだと!?」

 ドゴォッ! 精悍な雄叫びと共にドムに追突したのはリュウ・ホセイだった。

なのは「リュウさん!? きゃあぁぁぁっ!」

 コア・ファイターのくちばしがドムのヒートサーベルを持つ右手にぶつかり、なのはは強い風に吹き飛ばされて、止まったときにはリュウのコア・ファイターは三十メートルほど先に不時着していた。

リュウ「ぐっ、う……」

 翼の先端から地面に突っ込んだコア・ファイターはそのまま人間の側方倒立回転のように転がり、中のリュウは頭を左右から連続ではたかれたような気持ち悪さに前後が不自由になる。

 ガンダムが出てこないことに苛立ちを覚えていたドムの三人――黒い三連星はこの闖入者を鬱憤を晴らす矛先に選んでいた。

ガイア「マッシュ、大丈夫か!?」

マッシュ「あぁ! 右腕が飛んだがいける!」

ガイア「あの野郎を叩き潰すぞ!」

オルテガ「おう!」

 三機のドムはそれぞれバズーカ砲を抱えてコア・ファイターへ殺到した。

アリサ「ちょっと! やめなさい!」

ガイア「撃てーっ!!」

 ドドゥッ! ボシュッ! ドシュゥッ! 扇型に囲ったガイア、オルテガ、マッシュは一斉にバズーカをコア・ファイターに、リュウ・ホセイに叩き込んだ。

 ドゴォンッ! ドゴォッ! ドドォッ……!

リュウ「ぐおぉ! うあぁぁっ!」
388 :Are you enjoying the time of eve? [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 16:00:14.71 ID:MY9B1.g0

アリサ「やめてったらぁーっ!」

 悲痛なアリサの声も虚しく、ドムはマシンガンを手に、再び銃火を爆炎の中のコア・ファイターに撃ち続けた。

 バババババッ! ババババババババババッ!

なのは「あ、あぁ……リュウさん!」

レイジングハート「Divine buster」

 主の命を待たずに、杖はリングを形成する。

なのは「レイジングハート……シュートォッ!」

 当たってくれ――願いを込めた収束砲がガイア機の背後を襲う。

ガイア「はははははっ! なめてもらっては困るな!」

 ホバー移動するドムが滑るように横に移動し、ディバインバスターは討つべき敵を見失ってしまう。

 ババババババババババッ! その間にもドムはマシンガンの弾を爆炎の中へ送り続けていた。

アリサ「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 ババババババッ! 死んでしまう。死なせてなるものか。堪えきれずにアリサはドムにバルカンを掃射するが、三機は円を描くように横移動を続け、コア・ファイターの装甲を喰らっていく。

リュウ「…………」

 コクピットの中のリュウ・ホセイは弾丸の音と機械が爆ぜる音。 そして、少女たちの声を聞く以外には何もしなかった。

 何もできなかったと言っていい。バズーカ砲の直撃で肉厚な彼の喉はヘルメットとシートの圧迫で潰れていた。

リュウ「俺には何かが残せたのか……?」

 音声器官としての役割を失くした喉で彼は言う。口腔内にどろりとしたものが溢れ、鉄錆の臭いが鼻の中に充満して、胃が蠕動した。
 出撃直前にマチルダ・アジャン中尉が少女たちに語ったことを思い出していた。
 戦場で、何かを生むことが出来るのか……装甲板をノックする音が変化するのを感じながら、リュウ・ホセイが最後に考えたのはそれだった。

 チュドォォォォォォォォッ! 煙と電気はついに一柱の炎となった。

なのは「リュウさぁぁぁぁん!」

アリサ「嘘でしょ……リュウ……違うでしょ!」

 いくら呼んでも、返事はない。
 コア・ファイターだった物はその搭乗者を伴ってまた爆発した。
389 :Are you enjoying the time of eve? [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 16:02:47.38 ID:MY9B1.g0

 ドムは破壊されたコア・ファイターにはそれ以上の興味を示さなかった。
 なぜなら、彼らのレーダー圏内に侵入してきた機体があるからだ。

ガイア「オルテガ、マッシュ! 来たぞ、連邦のモビルスーツだ」

 丘になっている箇所に佇立するガンダムは荒野の風の中、太陽の光りを全面に浴びていた。

すずか「あれが……ジオンの新型……」

なのは「すずかちゃん!」

すずか「なのはちゃん、ごめんね、遅くなっちゃって」

 ガンダムの中にいるすずかは、撃破されたのがリュウだとはまだ知らないようだった。
 なのはは少し悩んだ末、そのことを伝えるのはやめた。

なのは「レイジングハート、すずかちゃんにデータを転送して」

レイジングハート「Alllight my muster」

 記録していた敵機の情報がレイジングハートからガンダムへ送られる。

すずか「ありがとう、これならなんとかできると思う」

なのは「うん……私もサポートするからね……」

 その間にもフォーメーションを組みなおした三機のドムがガンダムとの距離を縮めてきていた。

ガイア「ガンダムをやる! オルテガ、マッシュ! ジェットストリームアタックだ!」

オルテガ「わかった!」

マッシュ「了解!」

 シュイィィィィィ……! 地面を滑るドムはガンダムとの接触距離直前に縦一列に並んだ。
390 :Are you enjoying the time of eve? [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 16:03:33.44 ID:MY9B1.g0

すずか「う、後ろが見えない……!」

ガイア「ジェットストリームアタックだ!」

 ブオッ! ヒートサーベルを手にガイア機がすずかに斬りかかる。

すずか「く、来る!」

 データにはない攻撃と状況に戸惑いながらも、すずかはビームサーベルで最小の動きの突きを繰り出す。
 二つが交差する寸前、ガイアはヒートサーベルを出すことなく、ジェットノズルを噴かして跳んだ。

すずか「上!? いや、前!?」

 ドムの後ろにもう一機のドム――マッシュ機がシュツルムファウストを発射した。
 ドガァァッ! この対モビルスーツ用ミサイル兵器をすずかは辛うじてシールドで防御することに成功する。

すずか「うぅぅっ! まだ来る!」

 マッシュ機が左に避けていく。そしてその奥からオルテガがバズーカ砲を撃つ!

すずか「わぁーっ!」

 シールドを捨ててガンダムはバーニアを全開にして大きくジャンプした。
 弾頭はその足の下を通っていった。

マッシュ「避けた!?」

 ガンダムの性能は充分検討していたが、ここまでの動きは予想外だ。
 三人は一様に驚き、ガンダムが着地すると同時に集結し、隊列を組みなおした。

ガイア「思った以上の動きだ。だが、いけるぞ、もう一度ジェットストリームアタックだ!」

マッシュ「おう!」

オルテガ「いくぞ!」

 シュイィィィィィ……! 再びドムは振り返ったガンダムに対して縦一列に並ぶ。
391 :Are you enjoying the time of eve? [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 16:05:09.55 ID:MY9B1.g0

ガイア「喰らえ!」

すずか「また来る――きゃっ!」

 肩にバズーカを担いだガイアのドムが、胸部のビームを拡散させた。
 目くらましをされたガンダムの動きが鈍るのを確認しながらガイアはバズーカ砲を撃つ!

なのは「そこっ! ディバイーン・バスターッ!」

 バシューッ! ドォン! なのはのディバインバスターがバズーカを吹き飛ばした!

ガイア「なんだと!?」

すずか「わぁぁぁぁぁ!」

 爆煙の中ですずかは学習コンピュータが予測した敵の動きにあわせてペダルを踏み込み、また大きくジャンプした。

 ガシッ! ガンダムの左足がドムの右肩に乗り、ガンダムはさらにそこを蹴って推進する。

ガイア「俺を踏み台にした!?」

マッシュ「おあぁっ!?」

 ガイアとマッシュの声はほぼ同じタイミングだった。
 先頭のドムの肩をステップボードにした白い機体は抜いていたビームサーベルを後ろでシュツルムファウストを構えていたマッシュ機のモノアイに突き刺した!

 ガシュッ! ビームサーベルの右手首ががくんと直角に曲がり、ドムの首を引き裂く!

マッシュ「うおぉぉぉぉぉぉぉ!」

 ボンッ! ドムの首から上が爆発した!
392 :Are you enjoying the time of eve? [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 16:07:05.91 ID:MY9B1.g0

オルテガ「このヤロォ!」

 ザシュッ! ヒートサーベルを構えたオルテガがガンダムの肩を袈裟切りにする!

すずか「あぁぁぁっ!」

なのは「シュートッ!」

 ドドゥッ……! 負傷したガンダムが倒れこみ、なのはの魔力収束砲がオルテガ機に当たる。

オルテガ「ぐおぉっ!」

ガイア「オルテガ、マッシュ! 無事か!?」

マッシュ「なんとか脱出した。拾ってくれ」

オルテガ「こっちもなんとか無事だぜ」

ガイア「マッシュのドムがやられ、武器もない。仕方ない、撤退するぞ!」

オルテガ「了解!」

 滑るガイア機がマッシュの脱出ポッドを回収し、オルテガ機がホバーは続けているマッシュ機を牽引して一挙に引き上げていった。
393 :Are you enjoying the time of eve? [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 16:07:33.31 ID:MY9B1.g0

すずか「お、追い払えたんだね……」

なのは「うん……」

すずか「あれ、アリサちゃんは?」

なのは「えっ……あ、あれ?」

 アリサのコア・ファイターが見当たらなくて、なのはが探す。

なのは「あ……」

 すぐに見つけることができたが、そこでなのは声を失ってしまった。

 アリサのいる場所は、あの破壊されたコア・ファイターのすぐ近くだったのだ。

すずか「な、なのはちゃん……あれ、もしかして……」

 アリサはコア・ファイターに積まれている消化剤をありったけぶちまけていた。
 その度にもうもうと立ち込める白い煙にすずかは声を震わせる。

すずか「コア・ファイター……そんな……まさか、リュウさん……」

アリサ「まだ……模擬戦で一度も抜いたことがないのに……どうしてよ……」

すずか「私が……もっと早くガンダムで出ていけたら……」

アリサ「……くぅっ!」

 ガァン! 消化剤の容器を叩きつける音が、銃火の下で響いた。
394 :Are you enjoying the time of eve? [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 16:08:44.74 ID:MY9B1.g0

紀梨乃「やぁーっ!」

 ザシュッ! 上空で戦うボチューンの剣がレプラカーンの翼を穿った!

フェイ「チッ!」

珠姫「――ふっ! そこっ!」

 ガギィンッ! 珠姫の剣もまた、ジェリルの剣を弾き飛ばす!

ジェリル「このっ、つけ上がるんじゃないよ!」

 バァンッ!激情を増加させたジェリルがオーラ力を飛ばし、ダンバインを尻ごみさせた。

珠姫「くっ……憎しみのこもったオーラ力が!」

 負けじと珠姫もオーラ力を高めていく。

珠姫「――うぅっ……!」

 だが、集中するほどに珠姫の額に脂汗が滲み出て、体の骨が少しずつ削ぎ落とされていくような痛みが走る。

アレン「どうしたダンバイン! 動きが鈍いぞ!」

 ガキンッ! ガン! ガキィンッ! アレン、ジェリルが二人がかりでダンバインに攻撃を仕掛ける。

珠姫「うあぁぁぁぁぁぁーっ!」

 対抗する力――珠姫はオーラ力の力場をイメージし、拡大させた!

アレン「ぐっ……!?」

ジェリル「なんだ……!?」

珠姫「落ちろぉ!」

 ザンッ! ズバァッ! 強大なオーラ力に圧倒され、動きを止めてしまったレプラカーンとビランビーを、珠姫は一瞬で斬り捨てた!
395 :Are you enjoying the time of eve? [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 16:09:33.52 ID:MY9B1.g0

アレン「馬鹿な……っ!」

ジェリル「ちぃぃっ! 憎たらしいよ!」

紀梨乃「たぁーっ!」

チャム「いっけぇぇぇぇっ!」

 ズシュッ! ボチューンの突きもフェイの右肩に入り込んだ!

フェイ「くっそぉ……!」

 落ち着かない動きで三機は珠姫たちから距離を取る。

珠姫「まだ戦うと言うの!?」

ジェリル「その横柄な態度が崩れるのが見てみたいのさ!」

珠姫「どっちが!」

紀梨乃「タマちゃん、聞いちゃダメ!」

チャム「キリノぉ、やっぱりタマキが変だよ! 怖いよぅ」

アレン「ジェリル、フェイ! ダメージリポートをしろ!」

ジェリル「行けるさ! あのいけ好かない小娘をやらなきゃ帰れないね!」

フェイ「その通りだ!」

珠姫「これ以上、無駄な争いを続けるなら!」

 パァンッ! 剣を構えた珠姫が先ほどと同じように、オーラ力を球状に発した!
396 :Are you enjoying the time of eve? [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 16:10:59.15 ID:MY9B1.g0

珠姫「ウッ――!」

 だが、オーラ力の波がアレンたちに差しかかる寸前、珠姫の頭の中でぴんと張られていた糸がぷつりと切れた気がした。

珠姫「あ……っ」

紀梨乃「タマちゃん!?」

チャム「いやぁ! タマキぃ!」

 度重なるオーラ力の発現は珠姫の体力、精神をすり減らしていた。
 それが、ついに限界を迎えたのだ。
 オーラバトラーのエンジン部であるオーラコンバーターにオーラ力が届かなくなり、ダンバインは揚力を失って降下していく。

アレン「ジェリル、フェイ、やるぞ!」

ジェリル「あぁ!」

フェイ「おう!」

 当然、それをアレンたちが見逃すはずがなかった。
 パワーをなくしたダンバインを彼らは包囲にかかる。

チャム「キリノぉ! 奴らやってくるよぉ!」

紀梨乃「こんなときにーっ!」

珠姫「くっ……そんなこと……」

 霞む視界の中でこちらに来るビランビーを見据えて、珠姫は唇を噛んだ。

珠姫「そんなこと、させないっ!!」

 切れた糸を無理に繋ぐように、珠姫は脳幹を発奮させた。
397 :Are you enjoying the time of eve? [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 16:11:35.79 ID:MY9B1.g0

珠姫「くあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 ズァァァァァァァァァッ! ダンバインからオーラ力が放出され、レプラカーンとビランビーに取りついた!

アレン「ぐっ!」

珠姫「うあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 ボシュッ! ボンッ! ドンッ! アレンたちの三機から突如煙が噴き出す!

アレン「な、なんだと!?」

ジェリル「なにが起きてるんだい!?」

フェイ「き、機体が故障した!?」

 誰も知りようの無いことだが、珠姫のオーラ力がアレンたちのオーラバトラーのコンバーターに干渉してオーラ力を増幅させ、その限界点を振り切らせたのだ。
 レプラカーンやビランビーでは、オーラ力に耐えられる限界は14から17程度である。
 これを破壊するためには実に20以上ものオーラ力が計測される必要があるだろう。

 そして、それほどの力が戦場の片隅にまで余波を行き渡らせたとき――

 キィン――!

なのは「!」

 確かな魔力の感触になのはが空を見上げたとき、青色の小さな宝石が光りを放っていた。

なのは「ジュエルシード!?」
398 :Are you enjoying the time of eve? [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 16:12:09.84 ID:MY9B1.g0

 こんなところにも落ちていたのか――急いでレイジングハートをシーリングモードに変形させる。

なのは「いくよ、レイジングハート!」

レイジングハート「Yes.Flier fin」

 まだ発動する前である。
 それならば、直接触れて回収したほうがいい。

なのは「アリサちゃん、すずかちゃん、ごめんね、行かなくちゃ!」

アリサ「うん、わかってるからさっさと行ってきなさい!」

すずか「気をつけてね、なのはちゃん」

 まだリュウのコア・ファイターは燻ぶっている。
 ジュエルシードは願いを叶えてくれるが、死者を蘇らせてはくれない。
 魔法は万能ではないのだ。
 なのに、ジュエルシードのような過去の遺失物というものは人間が神だの悪魔だのを目指して造ったものだから、なまじ願望を叶えようとして力を与えてしまう。

 いつでも、力を求める人間はいる。

レイジングハート「caution.above」

なのは「え――ッ!?」

 進路に捉えたジュエルシードよりも更に上に、もう一人の少女がいた。

レイジングハート「A magic reaction」

なのは「魔力!?」

 陽光の下で目の覚めるような輝きを反射させている金色の髪の少女は手に同じく金色のコアを持つ斧を持っていた。
399 :Are you enjoying the time of eve? [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 16:13:24.86 ID:MY9B1.g0

「いくよ、アルフ」

 その少女が何かを呟いたのをなのはが遠目で気付いたとき、白い袖が左右で引っ張られた。

なのは「な、なに!?」

 動揺している間に両足首も引っ張られ、まるで磔にされたみたいになのはの体は動かなくなってしまった。
 唯一動かせる首をめいっぱい回すと、両手足に赤い鎖のようなものが巻きついていた。

なのは「なんなの、これ!? レイジングハート?」

レイジングハート「Chain bind.This is a magic chain」

なのは「チェ、チェイン・バインド?」

「そうさ、魔法の鎖さ。かかったら最後、すぐに脱出はできないよ」

 レイジングハートの分析に親切な解説をいれたのは、なのはの背後に現れた女だった。
 背が高く、肉付きのいい体をショートパンツに大胆なバストアップのベストにマントを羽織った娘だが、橙色の髪から犬のような耳が生えているのが、なのはの目に残った。

なのは「あ、あなたは……どちら様ですか!?」

「悪いけど、教えてあげる義理はないねぇ。ま、大人しくしていてくれたら、見逃してあげないこともないけど」

 金髪の少女が黒い斧の先に魔力を集めてジュエルシードを近づいていく。
 雷光の煌めきの如く美しく力強い――そして同時に儚さも感じ取れる魔力光だ。

「――Seeling mode get set」

なのは「ジュエルシードを封印!? どうするの! あれはとっても危険なものなんです!」

「さっきも言っただろう。教える義理はないって。おいたがすぎるとガブッ! っと言っちゃうわよ」

 犬歯にしては長すぎる輝きがなのはの真横で音を鳴らした。
400 :Are you enjoying the time of eve? [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 16:14:23.52 ID:MY9B1.g0

「Seeling」

 ジュエルシードは既に少女の斧に回収されてしまった。

「…………」

 回収によるジュエルシードのプログラム書き換えを瞬時に完了させた斧が冷却の煙を吐く。
 金髪の少女はじっとなのはに目を向けた。

 視線を交わした時、なのはは思う。
 真っ暗な瞳――静かで、怖いけれど……とても、寂しそう。

なのは「あ、あなたはいったい……誰なの?」

「……君も魔導師だね。こんなところに魔導師がいるとは思わなかった」

 なのはの質問に少女は答えなかった。
 代わりに、斧の先端に雷の魔力を集めた。

なのは「!?」

「私たちはジュエルシードを集めてる。君もジュエルシードを集めているなら、私たちは敵同士っていうことになる」

なのは「そ、そんな……!」

「Foton luncer」

 黒い斧が低い声で告げる。
 その直後の射手たる少女の呟きを確かになのはは聞いた。

「……ごめんね」

 ズバァッ! 雷の矢がなのはの体を貫く! その一撃だけでなのはの全身には強力な電撃が走り、気絶に追いやった。

「……行こう」

「は〜いはい」

 静かな声が先に消え、陽気な返事が後に姿を消した。
401 :今日はここまでです。 [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 16:15:43.30 ID:MY9B1.g0

 戦いは既に終局していた。
 ガルマ・ザビを弔うジオン公国軍は夥しい数の犠牲を出して、まともな撤退命令も出ないままに個別に戦い、逃げる者は逃げ、果てる者は果てていった。
 玉砕戦ゆえの皮肉だが、ゴラオンはバイストン・ウェルに端を発した開戦以後最大の損害を出した。
 
エレ「この地平に果てた者たちの魂が、海と大地の狭間、命の帰る地バイストン・ウェルで浄化されることを……」

 墓標に祈りを終えた後、ラウの国の女王エレ・ハンムは付き添っていたマチルダ・アジャン中尉と向き合う。

エレ「それでは、ドレイク軍との戦いは私たちが引き受けます。聖戦士たちをどうかお願いします」

マチルダ「了解しました。新たな艦を用意していただき、ありがとうございます」

 敵の先陣を退け、奮迅の働きを見せた少女たちは今や満身創痍だった。
 彼女たちを仲間の元へ――荷物を増やした大きなとんぼ返りをマチルダは引き受ける。

 今、広大な宇宙で最も価値のあるものを運び、疲れた心を補給させる。
 彼女は、この名誉を一生の誇りとすることだろう。


 第十四話 宿命! いくつもの出逢いと別れなの 完
402 :Are you enjoying the time of eve? [sage]:2010/12/24(クリスマスイブ) 17:49:24.87 ID:tKONfDEo
403 :Are you enjoying the time of eve? :2010/12/24(クリスマスイブ) 21:13:29.14 ID:F.R1qsAO
やっぱりリュウは死ぬのか……

>>402
IDがけいおんだな
404 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/26(日) 14:47:27.20 ID:nOz2I2AO
お彼女も来たのか
405 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/31(金) 21:31:20.59 ID:BRm1iwAO
年末アニマックスガンダムage
406 :携帯からスレ主です :2011/01/01(正月) 01:53:50.36 ID:1/LoVAAO
新年あけましておめでとうございます

今年も頑張って更新して、完結できるように脳みそ搾ります

はぁぁぁぁぁっぴぃにゅぅにゃぁぁぁぁぁぁ!!


また、Baby-princessがホームページのほうで3Dアニメとなることが決定しました。
私のSSは読んでいなくとも、是非ともご一覧いただき、興味を持っていただければ幸いです。
407 :再開というか宣伝です。 [saga]:2011/01/05(水) 15:54:25.84 ID:Zk8zA560

 インターミッション

唯「うんたん♪ うんたん♪」

和「楽しそうね、唯」

唯「だってぇ、第2次Zだよぉ〜」

和「ふぅん、それで、いつ発売なの?」

唯「あれ?」

憂「PSP用ソフト、第2次スーパーロボット大戦Z 破界篇は、2011年4月14日発売だよ、お姉ちゃん」

唯「おほ〜ぅ」
408 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/05(水) 15:55:03.79 ID:Zk8zA560
CM TAKE2


唯「うんたん♪ うんたん♪」

和「楽しそうね、唯」

唯「だってぇ、第2次Zだよぉ〜」

和「ふぅん、それで、第一次Zはやったの?」

唯「あれ?」

憂「PS2用ソフト、スーパーロボット大戦Zは、全国のゲームショップで発売中だよ、お姉ちゃん」

唯「おほ〜ぅ」
409 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/05(水) 15:55:32.49 ID:Zk8zA560
CM TAKE2


唯「うんたん♪ うんたん♪」

和「楽しそうね、唯」

唯「だってぇ、ダブルオー初参戦だよぉ〜」

和「ふぅん、それで、ダブルオーは観たの?」

唯「あれ?」

憂「第二次スーパーロボット大戦Z 破壊篇に参戦決定の機動戦士ガンダムOOは、TOKYO MX TVで22:30から再放送中だよ、お姉ちゃん」

唯「おほ〜ぅ」
410 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/05(水) 15:56:04.18 ID:Zk8zA560
CM TAKE4

唯「突然ですが、第二次Zが発売することになりました!」

和「へぇ、それで、第二次ZとこのSSの関連性は?」

唯「ほえ?」

憂「すごいよ、お姉ちゃん! 参戦している作品がひとつも被ってない!」

唯「マジンガーも新作の衝撃Z編だし、ゲッターもチェンゲだもんね……バンプレはさすがに除くよ」

和「何が怖いかって、プロが涙目になることね。衝撃編じゃ死んでるから」

唯「ZZも出てないから、和ちゃんは既に涙目だよね……」

和「あぁぁぁぁぁぁぁ! ぷるつぅぅぅぅぅぅぅ!!」

憂「和ちゃんが壊れちゃった」

唯「仕方ないよ、私たちは1月13日発売のAnother Century's Episode Portableを楽しみにしようよ」

憂「うん、A.C.E.Pなら、このSSにもいるドラグナーとダンバインが常連参戦だからね」

唯「そして例の如く桑谷夏子さんの参戦はないね。Zの主軸である多元世界でムゲフロの世界とクロスすれば可能性はありそうだけど」

憂「なんていったって、ロボットに乗った回数が今まででたぶん一回だよ」

唯「まあ、その唯一が異世界の聖機師物語のメインヒロインだから、最近の無茶振り参戦多発で希望は見えてきたよ」

憂「是非とも新劇場版エヴァのビーストモードと共演してほしいね」

唯「まあ、まだちゃんと本編見てないんだけどね。ZZ見たいから」

憂「それじゃあ、次の更新がいつになるかはわからないけど」

唯・憂「ばいば〜い!」

和「ぷるつぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
411 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/05(水) 16:33:06.69 ID:3eON5IAO
参戦リスト見たが
あぁコラね、と思っちまうヤツらばっかしだったなww
412 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/05(水) 18:43:02.93 ID:MN24JxIo
ついにグレンラガン、ギアス来たわ・・・
413 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/06(木) 00:10:34.21 ID:5fW8sgDO
ヌルヌル動くボトムズ…!
声付き真ゲッター…!
まさかのダイ・ガード&ゴッドマーズ…!
ナイスな展開じゃないか!
414 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/07(金) 13:40:15.48 ID:SmhhmgAO
アーカイブズ配信、A.C.E.P、ZUとPSP派にとっては狂気乱舞の年だよな
415 :携帯からスレ主です。 :2011/01/14(金) 09:19:26.53 ID:LAToAbXAO
新製作に移動をお願いしました

その際、スレタイを『唯「第一次!」なのは「スーパー!」夕映「ロボット」シャロ「大戦です!」』に変更してもらえるような申請しました

検索の際は注意してください
SS・小説スレは移転しました
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/ Mobile http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/

416 :真真真・スレッドムーバー :移転
この度この板に移転することになりますた。よろしくおながいします。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/19(水) 13:05:01.60 ID:nAIMXjNAO
名前変わってないな
とりあえず続き期待
418 :再開します [saga]:2011/01/27(木) 15:52:39.59 ID:yzZtb6Ov0

 第十五話

 中央アジア オデッサのジオン軍基地

マ・クベ「シャナ少佐が、ドズル中将が左遷したシャナがキシリア様の配下になるという」

 ジオン軍突撃機動軍大佐マ・クベは卓上に置いた北宋の陶磁器を指で弾いた。

マ「しかも、ニュータイプ部隊の選出、指揮を任されるという。気に入らんな」

 端的に言うほど、マ・クベはシャナが気に喰わなかった。

マ「あやつは人に気にかけさせる才を持っている。ドズル中将の次にキシリア様だ。まるで娼婦ではないか」

 シャナはいずれ、自分の出世にケチをつける相手になる。
 芽は早いうちに摘んでおきたいところだ。

マ「キシリア様もご酔狂でいらっしゃる。いまだにニュータイプの存在が証明されたわけではないというのに、莫大な研究費をつぎ込まれるのだからな」

 政治家肌のマ・クベからすれば、ザビ家台頭から続いているにも関わらず一向に成果の上がらない研究などやめて、ザクの改良機であるドムとグフを早く量産体制に仕上げたほうが良いと考えていたし、本国の監査もようやくそのつもりになっていたところだった。

マ「だいたい、フラナガンという男が信用ならんところにシャナだ。奴がどうやって炎髪灼眼になるのかさえ、まったくわかっていないではないか」

ウラガン「マ・クベ大佐!」

 陶磁器に自分の顔を写していたマ・クベの許に現れたのは、副官のウラガン中尉だった。

マ「どうした?」

ウラガン「ランバ・ラル大尉がお見えになられました」

マ「そうか」

ウラガン「お出迎えにならないのですか?」

マ「奴は職業軍人なのだよ。やることだけをやらせればいいのだ。そのほうが奴にとっても都合がいいだろう」
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 15:57:24.95 ID:yzZtb6Ov0

ランバ・ラル「了解した。このまま木馬に向かわせてもらう」

 通信を終えたランバ・ラル大尉の傍に妙齢の女性がやってくる。

ハモン「出立なさるので?」

ラル「うむ。オアシスを通過する際に小休止をとることにしよう」

ハモン「そのほうが部下たちにもよいでしょう」

ラル「念のため、モビルスーツはいつでも出せるようにして、トレーラーに積んでおけ」

ハモン「わかりました」

ラル「さて、久しぶりの地上だ。直接ではないが、ガルマ大佐の仇討ちといこうか」
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 16:11:59.93 ID:yzZtb6Ov0


 天草シノは暗い道を走り続けていた。

シノ「いったい、ここは……」

 周囲には明かりもなく、目指すべきものも見えない。
 だがシノは走らなければならない予感に駆られ懸命に足を前に運んでいく。

シノ「私は、何を……」

 何も見えない。わからない。聞こえない。
 自分が走っている感覚さえなくなってくる。

シノ「うぅぅっ……」

 次第に足が重くなってきた。
 まるで、泥の中を進んでいるようだ。
 いや、違った。

シノ「あ、あぁぁ……」

 沈んでいた。
 シノの足が、もうくるぶしから先が見えなかった。
 だんだんとシノの体が闇に包まれていく。
 膝、腿、腰……まるで泳ぐように上半身を動かしてシノは前に進もうとする。

 だが――

『ダメだよ。もう捕まっちゃったんだから』

シノ「えっ!?」

 突如、頭上から聞こえた声に顔を上げると、そこにはギラリと鈍い光りがあった。

『死ぬのってイヤ?』

シノ「い、いやだ……やめてくれ……」

『うん、それ無理』

 その輝きが巨大な青龍刀だと気付いたときには、もう振り下ろされていた。

シノ「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 16:12:44.49 ID:yzZtb6Ov0

シノ「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 乱暴に起き上がり、今までの奈落がもう何度も見た悪夢だと知った。

シノ「はぁ……はぁ……」

 蒼白な自分の頬を撫で、次にしっかりと首が胴とくっついていることを確かめる。

シノ「またか……」

 毛布をまくりあげてため息を吐く。
 夜中に水分を摂ることを避け、就寝前にしっかりとトイレに行っていたおかげか、充分に処理できる許容内だ。

 シノはみじめな気分で尻の下に敷いていたタオルと木の板をベッドから下ろして、自分は滲みてしまった下着とズボンを脱ぐ。

シノ「このままではもうドラグナーに乗れないな……」

 こんなことはもう四日目である。
 原因は、四日前に遭遇したギガノス帝国の最新鋭機だ。
 いや、あの機体だけが原因ではない。シノに精神的負担を強いるのは、パイロットであった。

 ダメだよ。死んじゃうよ?――

 うん、それ無理――

 そんなもので私の打ち込みが止められると思う?――

 じゃあ、死んでね。さようなら――

シノ「う、うぁぁ……」

 あの毒蛇が絡みつくような声を忘れることができないのだ。
 戦闘の翌日では、コクピットに座ることもできずに吐いてしまった。

 それでも、一日ずつ、一時間ずつでも近づいていこうとする彼女に身体は応えてくれたようで、昨日はシミュレーションを行うことができた。

 だが、やり過ごしたはずの恐怖のツケは夜中に回ってくるようだった。
 夢は毎日酷くなっていく。
 恐怖が毎晩更新されていくのだ。その度に彼女の下半身は大量の不純物でベッドを濡らしていた。

 ドラグナーに乗るという使命がなければ、シノの精神はとうに破壊されていたかもしれない。
 そのドラグナーこそが、彼女を追い詰めた原因でもあるのだが……
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 16:18:53.89 ID:yzZtb6Ov0

スズ「あ、会長、だいじょうぶですか?」

 ルームを出たところで萩村スズと鉢合わせた。彼女は青ざめたシノを気遣う声をかける。

シノ「あぁ、今日は哨戒に出ようと思う」

スズ「へ、平気なんですか?」

 無理に笑顔をこしらえてシノはスズの頭と胸を撫でた。

スズ「なんで私の胸を触るんですか!」

シノ「いやぁ、子どもの成長は毎日確かめなくちゃいけないだろ?」

スズ「ムキーッ!」
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 16:19:20.01 ID:yzZtb6Ov0

 ホワイトベース 食堂

ヒカル「それじゃあ、海晴姉はまだしばらく療養が必要なのか……?」

霙「そうだ。傷口が砂塵に晒されてウィルスが入り込んだんだ」

立夏「海晴おねーちゃん……えぅぅぅ……」

霙「そう悲観するな。もう抗体物質は注射してあるから、その作用で熱が出ているだけだ。命に別状はない」

 ホワイトベースから降りてマチルダ中尉と長門有希の捕虜交換に立ち会った天使海晴は、ヴァイスリッターに乗った直後、何者かに攻撃された。

 海晴本人が言うには『メインモニターを映したら、急に片目が白い薔薇の女の子が現れて、茨で刺された』という実に信じがたい話だった。
 薔薇という単語に引っかかった霙が日本の超電磁研究所にいるローゼンメイデンに訊ねると、雪華綺晶という七体目のドールである可能性が高いという。

 それが、六体のローゼンメイデンを一斉に手玉に取り、追い詰めた非常に危険なドールだということも……

霙「まあ、あと二、三日眠っていればよくなる。幸い、ギガノス軍は東アジア区域から撤退し始めている。蒼き鷹が戦死したことの影響が大きかったようだ」

ヒカル「やはり……涼宮ハルヒは……」

霙「あのギガノスの新型――ゲイザムの地上掃射にやられてしまったらしい。ファルゲンも解体されているところが発見された。親衛隊も宇宙に上がるらしい」

ヒカル「それじゃあ後はオデッサのジオン軍基地を落とせば……」

霙「あぁ、我々の任務は達成される。既にヨーロッパ方面からレビル将軍が軍勢を集結させてオデッサの包囲網を完成させつつあるし、こちらからはゲッターチームとライディーンが派遣されている。私たちはここで待機しつつジオン軍が隠れ潜んでいないか注意していればいい」

立夏「うぅぅ〜、お菓子食べた〜い〜」

 愚図りだした立夏の陽気さに姉妹は笑って、お見舞いに何を持っていこうかと相談を始めた。
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 16:34:01.38 ID:yzZtb6Ov0

 ホワイトベース 格納庫

シノン「シノさん、本当に大丈夫なんですか?」

 待機中の戦艦ほど艦長にとって暇なものはない。
 今日に至るまでの多忙さを失って代わりに手に入った余暇を使って艦内を直接見回っているところに、哨戒任務に出るDチームに出くわした。

シノ「はい、行けます。待機中とはいえ、機体にも乗れないのではしょうがないですから」

スズ「私もついていますから、何かあればすぐに戻らせます」

シノン「わかったわ。くれぐれも無理はしないでね」

シノ「了解です」

 ぴりっとした敬礼からは精神的な脆弱は消え失せていた。
 若くして最新鋭戦艦の艦長となったシノンの目にその通りに見えたのは仕方ないことである。

 要するに、大きな間違いだったということだ。

シノ「システム良好。エンジン始動――天草シノ、ドラグナー1型、出ます!」

 ドシュゥーッ! カタパルトから白い尾を引いて触覚のような二本のアンテナの機甲兵が射出される。

シノ「――ッ!」

 だが、空に出た彼女の視界は一瞬で歪んだ。
 まるでスプーンでかき混ぜたコーヒーにクリームを入れたみたいに空の青と雲の白、明滅する計器が渦になって溶け合い、シノの方へ向かってくるのだ。

シノ「うあぁ……! うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 次にシノが幻視したのはあの青龍刀の新型である。
 夢で何度も味わった絶望感が現実の感覚としてシノに襲い掛かってくる。

 伊藤カイジが急所々々で兵藤和尊の顔を錯覚するものと同じなのだ。
 だが、シノが見ているそれは王の警告ではなく、全身を恐怖で支配する毒蛇の呪いである。

スズ「会長!?」

 スズの声が届く暇もなく、ドラグナー1型はバーニアを最大パワーで噴かしてホワイトベースから離れて空の霞に消えていった。

シノン「そんな……」

スズ「い、急いで捜索に当たります!」

 暴風に巻かれてへたり込んでしまったシノンの横でD−3が発進していく。
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 16:35:02.05 ID:yzZtb6Ov0

シノ「あああああああああああああああああああっ!!」

 重慶基地から数百キロを経て尚、シノは幻覚に錯乱していた。
 全く制御が利かない手足の操作に機体が忠実に従った結果、ドラグナーはきりもみ回転をしながら墜落し始める。

シノ「わあああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 ドシュアァッ! もしも地面が砂漠ではなかったら、墜落の衝撃でドラグナーが爆破していたかもしれない。

シノ「あぁっ! あああ! ぁぜぇっ! えふっ! げほ! ぜぇ、ぜぇ……」

 反動で滅茶苦茶に跳ねるシートにむせ返って、ようやくシノは意識を取り戻した。

シノ「あぅぅ……こ、ここは……?」

 ほとんど呂律の回っていなかったにも関わらず対話型コンピュータ『クララ』は主の質問に答えた。

シノ「オデッサと重慶の間の砂漠地帯か……こんなところまで来てしまったのか……」

 リフターを起動させようとしたが、無理だった。
 身体が震えている。拒絶反応を起こしているのだ。

シノ「みっともないな……私は」

 大見得を張って飛び出してきた結果がこの醜態たが、もはや自嘲する余裕もなかった。
 何故なら、この太陽直下のど真ん中にシノは水も持たないでやってきてしまったのだ。

シノ「スズが探しに来てくれるだろうが、人がいる場所を見つけないとな……」

 『クララ』に検索させて、見つけたのはオアシスだった。
 ただ、シノのいる位置から300メートルほど離れている。
 隆起の複雑な砂漠で300メートルは1キロ以上の体力を要求される上に一度方向を見失ってしまえば、二度と回帰することはできない。

シノ「ドラグナーで行くしかないか……」

 戦々恐々とフットペダルに足を乗せて、リフターの回路は遮断していく。

シノ「操縦をマニュアルに……エンジンは弱く……」

 飛ぶことはできないことを自覚したシノは一つ一つの機体の動作を確実にこなすことでリハビリをすることにした。
 リフターは物理的に接続を切り離し、放置する。発信機はつけてあるから、後で戻ってくるときに頼りにできる。

シノ「一歩ずつ……一歩ずつだ……」

 不必要なパーツを落として四分の一ほどは軽くなった機体の足をゆっくりと上げて下ろす。
 確かに前進したのを見て、シノは安堵の息を吐いた。

シノ「これなら、なんとかオアシスまでは行けるな……」
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 16:35:59.10 ID:yzZtb6Ov0

 人間の十倍の大きさのある機動兵器ならば、一歩で十メートル弱進むことができる。
 慎重に足を前に出し続けて、二十五歩。そこでシノは止まってドラグナーを降りた。

シノ「あれがオアシスか……」

 コロニー住まいのシノには、砂漠もオアシスも初体験である。
 灼熱を長い黒髪が吸収して火傷しそうだと思う。
 シノは備蓄されている擬装の服とフードのついた外套を被り、ドラグナーには機体を隠す保護シートを被せて砂漠を歩いてオアシスに向かった。

シノ「よかった……人が何人がいるみたいだな」

 途中、何度も足を取られてシノは平坦な道を踏むことができた。
 今まで最も長い300メートルだった。

シノ「あの、すみません」

 看板の下がっている建物に入った。
 オアシスを訪れる旅人を癒す酒場のようだったが、戦争の影響か、中には店主以外の誰もいない。

店主「あいよ。こんな時間に客とは珍しいね」

シノ「あの、水をいただけませんか?」

店主「あいよ」

 返事をしたが、店主はカウンターにある水のサーバーに向かおうとはせず、シノに手のひらを上向かせて差し出した。

シノ「えっ……?」

店主「お金だよ、お金。払ってもらわなくちゃ。今じゃ水でさえ貴重なんだ」

シノ「で、でも、ここはオアシスで水があるんじゃ……」

 店主はギロリと目を光らせた。シノがびくっと肩を震わせると、店主は低い声で言った。

店主「あんた、地球の人じゃないね。コロニーの人だ」

シノ「ど、どうしてそんなこと……」

店主「そんな白い肌と喋り方じゃ、地球生まれだって言われても無理だよ。教えてあげるよ。オアシスの水は戦争のせいで生じゃ飲めなくなっちまったんだ。一度、オデッサに預けて浄水してもらってるんだ。それも法外な値段でね」

シノ「そうだったんですか……申し訳ありません」

店主「まあ、いいさ。一杯、ごちそうしてあげるよ」

シノ「い、いえ、ちゃんとお金は払います。少しですけど、持ってますから」

 服と一緒に僅かだが金はある。それを取り出そうとする間にも店主は穏やかな口調になって、サーバーから水を汲む。

店主「わかったよ。そこに置いておいてくれ」
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 16:36:51.51 ID:yzZtb6Ov0

 コップの一杯の水に貨幣を出して、ちまちまと呑んでいると、にわかに外が騒がしくなっていた。

ラル「こう熱いとさすがにかなわんな。おい、親父! 水をくれ! うまいやつをだ!」

 突然の来客に店主が返事をする間もなく、次々と兵隊が入ってきた。
 
シノ(あ、あれはジオン兵……)

ラル「親父、13人だ。すまんな、サグレ、マイル、見張りだ。交代は急がせる」

サグレド「は、ランバ・ラル大尉」

シノ(ランバ・ラル……大尉ということは、エース級か)

ラル「すまんな、ハモン。砂漠はきつかろう」

ハモン「自然の脅威です。星を見ているよりはずっと面白い」

ラル「ハハハハッ。みんな、座れ座れ、何を食ってもいいぞ。作戦前の最後の食事だ」

店主「あの、ここは中立地帯でございますので、戦争は……」

ラル「他でやる。心配するな」

ハモン「何もないのね。できる物を14人分ね」

店主「か、かしこまりました」

ラル「ン……? 一人多いぞ、ハモン」

ハモン「あの子にも」

 そう言って、ハモンが指したのはカウンターの端で耳をそば立たせていた少女だった。

シノ「わ、私……ですか?」

ラル「あんな娘がほしいのか、ハモン」

ハモン「フフ、そうね」

シノ「あ、あの……」

 立ち上がってシノはハモンと呼ばれる貴婦人の前に立った。
 美しい女性で、とても砂漠の酒屋には似つかわしくないが、纏っている雰囲気は潔癖な軍人のそれである。
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 16:38:08.04 ID:yzZtb6Ov0

シノ「ご厚意は嬉しいのですけど……」

ハモン「あら、どうしてかしら?」

シノ「見ず知らずの方に、物を恵んでもらう理由がありません」

 この返答にハモンだけでなく、ランバ・ラルも少し驚き、大きな声で笑った。

ラル「フハハハハハハハッ。ハモン、一本やられたな、こんな若い娘に」

ハモン「私が、あなたを気に入ったからなんだけど。それじゃご不満かしら?」

シノ「私は……飢えている訳でもお金がない訳でもありませんから」

ラル「ホゥ、気に入ったぞ、お嬢さん。それだけはっきりと物を言うとは」

 そう言ってランバ・ラルは立ち上がり、シノの肩を軽く叩いた。
 彼はこうやって、人と接する人柄で、部下達もそんな彼に惚れてこの部隊についてきているのだろう。

ラル「ワシからもおごらせてもらおう。あまり大人の面子を潰させるものじゃないぞ」

シノ「い、いえ、でも……」

サグレド「隊長! 怪しい奴を捕まえました!」

 席に着かざるを得ないような流れにシノが戸惑っていると、外に待機していたジオン兵が中に入ってきた。

ラル「どうした?」

マイル「この女が辺りをウロウロしていました」

スズ「あうっ!」

シノ「す、スズ……!」

 突き出された少女にうっかり洩らしてしまった名前にハモンが目を光らせた。

ハモン「あなたのお友達ね?」

シノ「は、はい」

サグレド「こいつが着ているのは連邦軍の制服です」

ラル「そうかな、ちょっと違うぞ」

マイル「間違いありません、機動兵器でこの近くに停止しました」
429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 16:40:26.93 ID:yzZtb6Ov0

ハモン「そうらしいわよ。この子の友達ですって」

ラル「ほう」

スズ「か、会長……」

ラル「君たちはパイロットだったのか」

シノ「え、えぇ……」

 少しの間、ランバ・ラル、ハモン、シノの間で視線が交錯した。

ラル「放してやれ」

マイル「は、しかし」

ラル「いいから」

 バッ! ランバ・ラルはシノに詰め寄り、外套を掴んで捲り上げる。

シノ「!」

ラル「いい度胸だ」

 外套の下のシノの手では短銃が握られていた。
 スズに何かあれば、すぐに撃つ構えだったことがうかがえる。

ラル「ここが中立地帯で良かったな。名前は?」

シノ「あ、天草シノです」

ラル「そうか、戦場で会ったら、こうはいかんぞ。頑張れよ、シノ君」

シノ「あ、ありがとうございます……」

スズ「会長!」

シノ「助けに来てくれてありがとう。行こう、スズ」

 シノとスズが酒屋を出て行く。
 そしてランバ・ラルは職業軍人の顔をして、部下を呼んだ。

ラル「あの娘達を追いかけろ。さっきの話し振りからすれば、何らかのトラブルで不時着したようだ。あんな若い娘が乗る連邦の機動兵器など、D兵器かゲシュペンストだ」

ゼイガン「はっ!」

ハモン「出陣なされるおつもりですか?」

ラル「うまくいけば木馬を誘き出せる。グフの用意をしろ」
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 16:42:49.63 ID:yzZtb6Ov0
今日はここまでです。仮免許を取得して、色々とやりたいことがあって遅れました。
今日から去年の調子をとりおどせると思うので、よろしくおねがいします。
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 18:37:08.20 ID:k4naK+DDO
おかえり!!
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 18:50:09.64 ID:9Mn5lNopo
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 02:27:29.61 ID:pyjKJ/gAO
来てたのか、乙
434 :再開です。 [saga]:2011/01/30(日) 12:11:27.70 ID:K/z37YVs0

シノ「すまなかったな、スズ」

スズ「いえ、D−3のレーダー能力のおかげですぐに見つけることができました」

シノ「そうか、捜索はスズだけか?」

スズ「ヒカルと立夏ちゃんもいます」

シノ「すぐに二人を呼んできてくれ」

スズ「どうしたんですか?」

シノ「ランバ・ラル大尉が攻撃してくるはずだ」

スズ「ランバ・ラルって、さっきの人ですか?」

シノ「そうだ」

スズ「そ、それなら早く逃げたほうが……」

シノ「ダメなんだ。私のドラグナーはリフターを外してしまっている。放置するわけにもいかないから、私が足止めをしている間にスズは二人を呼んできてくれ」

スズ「わ、わかりました」
435 :再開です。 [saga]:2011/01/30(日) 12:12:26.54 ID:K/z37YVs0

クランプ「ゼイガンから通信。D兵器と思しきメタルアーマーが飛び立ちました。天草シノも同乗しているようです」

ラル「よし、すぐに追撃するぞ」

ハモン「ご武運を」

ラル「うむ、ザンジバルは待機させておけ。D兵器をやったら一時戻ってくる」

ハモン「かしこまりました」

 パイロットスーツを着たランバ・ラルとハモンは短い口付けを交わし、ランバ・ラルは高速陸戦艇ギャロップに乗って発進した。

ラル「D兵器、速いな」

 航空機の延長をイメージしたメタルアーマーとリフターの構造はモビルスーツを寄せ付けない速度を生み出している。

ラル「――が、弾丸が当たりさえすればよい」

 ギャロップの上に立ち、青い新型モビルスーツ・グフでランバ・ラルはジャイアント・バズを構える。

ラル「よし、いくぞ!」

「「「おう!」」」

 だが、ランバ・ラルの気勢が部隊に伝播した瞬間、突如として砂漠が盛り上がった!

ラル「なんだ!?」

シノ「これ以上先には進ませないぞ!」

 砂柱を割って現れたのは、D−1だった。
 スズと一緒にD−3に乗った後、D−1が隠してあった地点に降ろしてもらい、乗り潜んでいたのだ。

ラル「別のD兵器か! こしゃくな真似を!」
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/30(日) 12:13:42.69 ID:K/z37YVs0

シノ「ジオンの新型のモビルスーツか……あれにラル大尉が乗っているだろうか……」

 ドラグナー1型はハンドレールガンを右手に、シールドを左手に持つと、ギャロップから飛び降りた二体のザクUとザクを一回り大きくして青い塗装にしたようなモビルスーツ・グフと対峙した。

 空を飛ばなければ機体を動かすことはできるのは、先ほど示したばかりだ。
 次の問題は、迫りくる敵と戦うことができるか――

ラル「我々はD兵器回収が目的ではない。木馬の撃破が目的だ。パイロットが死なぬ程度に破壊するぞ!」

アコース・コズン「了解!」

 二機のザクが左右に散開していくのを見て、ラルは独りごちた。

ラル「あれにシノ君が乗っているのか……?」

シノ「う、撃つぞ!」

 ババババババババ! ハンドレールガンが火を噴く。

ラル「正確な射撃だ――が、それゆえ、コンピューターには予想もしやすい」

 僅かに半歩分、ジグザグに動くだけで、ドラグナーの弾が外されてしまう。

シノ「ま、まともに避けもしない!」

 三方向から囲もうとしているのが判ったシノは、砂漠に足を取られるのを恐れてバーニアだけを使って後方に跳んだ。

シノ「……私の目的は時間を稼ぐことだ」

ラル「ホゥ、なかなかの推進力だ。攻めさせてもらうぞ!」

 包囲することは容易でないことを瞬時に判断したランバ・ラルは大胆に前進してマシンガンを撃っていく。

 ダダダダガガガガガガガッ! ドラグナー1型のシールドは表面をルナ・チタニウム合金が使用されているため、ザクマシンガンは簡単に弾くことができる。

ラル「硬いな。ヒートロッドを使う! アコース、コズン! 支援しろ!」

アコース・コズン「了解!」
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/30(日) 12:15:25.66 ID:K/z37YVs0

 ザクUが二方向からD−1を十字放火にする。
 ランバ・ラルのグフはマシンガンを敵の足下に撃って、砂を巻き上げた。

シノ「し、視界がっ!」

 アコースとコズンもそれに倣って砂を撃ち、ドラグナーは完全に砂煙に覆われてしまった。

シノ「う、うごけない……っ!」

 全身にばちばちと火花が当たっているような気分――この砂煙からどこに出て行ってもやられる!

 シノは機体に片膝を着かせ、砂が晴れるまでひたすら防御の構えに徹する。

シノ「どこから来る……」

 いつでも跳べるようにバーニアのフットペダルはやや踏みにしている。
 だが、敵は真正面から突如として現れた!

ラル「縮こまっては生き残れんぞ!」

 ガァンッ! グフの強烈なショルダータックルにシノは誤ってペダルを踏み、不恰好にしりもちをついてしまった。

シノ「うわぁっ!」

ラル「ザクとは違うのだよ! ザクとは!」

 ひゅおんっ! 青い巨星が放つ電磁鞭のヒートロッドがドラグナーの左手首に絡みつく!

ラル「受けてみろ! ヒートロッドォ!」

 ズバババババババババ! ヒ−トロッドから発せられる電撃がドラグナーの左手を電子回路から破壊し、シールドを落とした!

シノ「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 さらに、ヒートロッドの電撃は機体を通してパイロットにまで伝わる。

ラル「やれ! 奴の足を叩き斬れ!」
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/30(日) 12:16:14.43 ID:K/z37YVs0

 ランバ・ラルの合図で左右に待機していたザクがヒートホークを持って近づいてくる。

シノ「ぐっ、うぅぅ……ここまでか……」

 だが、まだ神はシノに味方をするらしかった。

ヒカル「スプリットミサイル!」

立夏「ニュートロンビーム!」

 ズボボォンッ! ギュオッ! 飛来してきたビームとミサイルがそれぞれザクを急襲していく。

ラル「なにっ! 救援が来たか、速すぎる!」

 シノを探しに来ていたとはいえ、まだ数分と経っていない。
 しかしそこまで考えてランバ・ラルは三体開発されたD兵器の一つが電子戦仕様であることを思い出した。

ラル「ギャロップ、前に出て来い! 物量差で押してやれ!」

 グフのヒートロッドを一度回収して、後退する。

シノ「くっ、左腕は使えないか……」

ヒカル「シノ先輩、だいじょうぶですか!?」

シノ「あぁ、だが動きは鈍くなっている」

ヒカル「スズがリフターを回収してくれています。早く脱出しましょう」

シノ「いや、ランバ・ラル大尉が逃がしてはくれない」

 その時、砂塵を巻き上げてギャロップが追いついてきた。
 三機のモビルスーツも対小隊相手の錐型陣形を取り、大きな足で駆け出してくる。
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/30(日) 12:17:07.63 ID:K/z37YVs0

立夏「にゅーっ! リッカが追っ払っちゃうかんネーッ!」

 ゲシュペンストの頭部が光り、ニュートロンビームが発射される準備が整う。

ラル「狙いが甘いのだよ」

 先頭に立つランバ・ラルがヒートホークを投げつけて、立夏のゲシュペンストの肩に当てた!

立夏「ぎぎゅわぁぁぁぁぁんゅぅぅぅー!」

 およそ悲鳴とは思えない声をあげて立夏のゲシュペンストが倒れる。
 グフはヒートサーベルを構え、更なる追撃にかかる!

ラル「さぁ、倒れるがいい!」

ヒカル「させるか! ジェットマグナム!」

 ジュアァァァァァ! ヒカルのゲシュペンストの腕が高熱を宿し、グフに突撃していく!

ラル「浅い動きよ」

 グフに装備されたシールドにゲシュペンストの腕が当たった直後、ランバ・ラルが僅かに腕を動かすことで、ゲシュペンストは進行方向を逸らされてしまった。

ヒカル「くっ、立夏!」

コズン「待ちな!」

アコース「行かせるかよ!」

 急停止して、機体をターンさせるがグフとの間には二機のザクが割り込んでいた。
 さらに、ギャロップからの砲撃が立夏を襲う!

立夏「イヤーッ!」

ラル「喰らえっ!」

 ぶぉんっ! ヒートサーベルが姿勢制御中のゲシュペンストに振り下ろされる!

シノ「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/30(日) 12:18:03.82 ID:K/z37YVs0

 グァッ! ヒートサーベルがゲシュペンストの顔を貫く直前、シノは裂帛の気合と共に飛び出し、レーザーソードを突き出した!

 バシャァッ! 二つの機体の剣が交じり合い、熱量が重なる。ドラグナーの加速は止まらず、グフを組み伏せた。

ラル「ちっ! やるっ!」

シノ<気合>「もう、足を引っ張ってはいられないんだ!」

 グフが砂漠に埋もれていく。交錯の一瞬でレーザーソードが切り裂いたわき腹部に砂が入り込み、左足のモーターを不調にした。

ラル「立てぬか!」

シノ<気合>「このぉぉぉぉ!」

 ジャァァァァァッ! 逆手にしたレーザーソードがグフの胴体目がけて振り下ろされる!

ラル<不屈>「させん!」

 固い地面ではなく、無数の砂粒の上に寝るランバ・ラルはあえてさがることで、レーザーソードの直撃を避けた。

 同時にヒートサーベルを翻し、ドラグナーを襲わせる。
 だが、これは無理な機動が祟り、装甲をかすめるに終わった。

シノ「!」

 ドラグナーとグフは互いにコクピットを引き裂かれて対峙していた。

ラル「やはり、君か。天草シノ!」

シノ「ら、ランバ・ラル大尉……!」

ラル「本当に君のような子どもがパイロットをやっているとはな。時代は変わったものだ」

 ランバ・ラルはパイロットスーツの手で焦熱に溶けるグフの装甲を押し退けている。
 その闘志の塊りとでも言うべき姿に、シノは恐怖以外のものを胸にざわつかせた。

シノ「あ、あなたは戦いをやめないつもりですか!?」

 思わずシノは問うた。無意識の問いである。サンバイザー越しにほくそえんでいるランバ・ラルに喉の奥から競り上がってきたのだった。
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/30(日) 12:19:08.38 ID:K/z37YVs0

ラル「ワシは戦いを生業としている! ランバ・ラルが戦いをやめるとき、本当に文字通りやめるときは、この命が尽きるときだ!」

 力づくで広げた装甲の合間から抜け出てきたランバ・ラルはワイヤー銃をドラグナーの胴体に撃ち、身を投げた。

ラル「見事な戦いだったぞ、シノ君! だが、それは貴様の腕ではない! そのメタルアーマーの性能のおかげだということを、忘れるな!」

シノ「負け惜しみを……!」

ラル「命があれば宇宙<そら>で会おう! その時は、ランバ・ラルの戦いを見せてやろう!」

 ランバ・ラルはグフから足を離し、ブランコのようにワイヤーにぶらさがってドラグナーの股下を潜り抜けると、砂漠に身を隠す。

ラル「アコース、コズン、ギャロップ、撤退しろ! ワシは夜を待って戻る!」

 隊長からの最後の通信を受けて、ランバ・ラル隊は撤退を始めた。

シノ「…………」

 無言でシノは装甲の隙間から動けなくなったグフを見つめていた。
 完全に拾わせてもらった勝利だった。例えば、もっと距離を取ってヒートロッドでいたぶるようなしつこい戦い方をされていれば、立夏かシノのどちらかは撃墜されていただろう。
 愚直な性格なのか、あるいは何かを背に抱えていたようにも見えた。
 最後の捨て台詞――つまり、今日のランバ・ラルは正面切って戦う理由があったのだ。

シノ「手加減……されたのか……?」

 まただ、とシノは思う。
 地球に降下する前も、涼宮ハルヒに手加減をされた。
 敵に生かされ、ぼろぼろにされ、また生かされる。

シノ「私は……ドラグナーに相応しくはないのか……?」

 交戦の損傷か、対話型コンピュータ『クララ』は返事をしなかった。
 独り取り残されるコクピットの中で、シノは拳を打ちつけた。

 何も考えずに戦場に出てくるな!――

 やらなくて後悔するよりも、やって後悔したほうがいいって言うよね――

 ランバ・ラルが戦いをやめるとき、本当に文字通りやめるときは、この命が尽きるときだ!――

 それは貴様の腕ではない! そのメタルアーマーの性能のおかげだということを、忘れるな!――

 私は、私が信じるもののために戦っているのよ――
 
シノ「相応しくなってみせる……私なりの、戦う理由に……」

 目蓋に描かれる敵の言葉が蘇る。そして、開いた瞳に熱い炎を点して、シノは決然と言った。

シノ「私は、あの人に――勝ちたい」


 強襲! 熱砂のランバ・ラル 完!
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 13:02:17.60 ID:6oEDs8/4o
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 14:16:17.39 ID:TFq00WLAO
乙、輝きのタクトみたいに青春全開なのも良いがやっぱりロボット物は主人公の挫折と成長だよな
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/31(月) 12:11:53.96 ID:OM/gJY6AO
最近はランバ・ラルに匹敵するキャラがいないよなぁ
445 :再会です。外伝的な感じです。 [saga]:2011/02/01(火) 18:14:57.15 ID:hAuVOUmt0

 第十六話

ミケーレ「私が、諸君らゲッターチームを預かることとなった。機械化独立混成第44旅団大隊司令のミケーレ・コレマッタ大尉である!



 軍用車両から降りもせず、砂塵防止用のゴーグルをつけたまま、居丈高にミケーレ大尉が唾を吐いた。

夕映「極東方面臨時司令部早乙女研究所所属ゲッターチーム、綾瀬夕映、到着しました」

のどか「お、同じく極と――」

 砂に咳き込みそうなのを我慢して言おうとしたのどかとハルナの台詞は怒号で永久に奪われる。

ミケーレ「面倒なことはいい! 俺は貴様らに寝る場所を用意するだけだ! 貴様らのことは貴様らで勝手にやれ!」

夕映「りょ、了解!」

 オデッサは連日の乾燥と戦闘で酷い砂埃だった。
 行き交う軍人の全てがいきり立っては声を枯らして足りないパーツや武器をどこにいるともわからない技師に注文している。

 ミケーレは夕映たちの返事も聞かずに車両にもぐりこんでいた。

夕映「わぷっ」

 タイヤが回り始め、三人に砂がかかる。
 それに全く遠慮をすることなく車両が発進する――が、すぐにまた急停止することになる。

ミケーレ「畜生! どこの馬鹿だ! でかい図体でのこのこと!」

 叫ぶミケーレの前に止まっていたのは三角キャタピラにコンテナのような上体を乗せた砲撃戦用モビルスーツRTX-440 陸戦強襲用ガン

タンクだった。

アリーヌ「ここかい! 次々と兵士が死んじまう死神の44連隊ってのは!」

 三機のガンタンクから出てきた兵士がしゃがれていながらもよく通る高い声で叫ぶ。

ミケーレ「ようやく到着か! 囚人兵ども! 後一日遅れていれば監獄に逆戻りだったぞ!」
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/01(火) 18:15:42.66 ID:hAuVOUmt0

ドロバ「ヨーロッパからくんだりそこら中ひきずりまわされたんだ! 来てもらっただけ良かったと思え!」

ミケーレ「仮釈放の身分でほざくな! 黙って命令に従えばいいのだ!」

ルイス「なんだと!」

アリーヌ「よしな!」

 それから、しばらく罵詈雑言をかけあってから、車両はガンタンクを避けて過ぎていき、ガンタンクの三人はキャタピラの近くで待機し

ていた従兵に整備を命じてから、こちらへ歩いてきた。

アリーヌ「ん、なんだいアンタたちは? こんな子どもがどうして最前戦にいるんだ?」

 ヘルメットを取ったアリーヌ・ネイズン技術中尉が細い金髪の流れる美女だということにきづいて、夕映とのどかが圧倒されている脇か

ら、ハルナがぬっと出て握手を求めた。

ハルナ「極東方面のゲッターチームよ。オデッサ基地攻略の助太刀に来たの」

アリーヌ「あぁ、アンタたちがスーパーロボットってやつか。私はアリーヌ・ネイズン技術中尉。こっちは部下のドロバとルイス」

 六人はそれぞれ握手を交わす。
 だが、一通りのことを終えると、アリーヌはそれきり関心を失ったように背を向けた。

アリーヌ「ま、アタシたちのことは覚えてくれなくていいよ。どうせここが最後になるんだからさ」

夕映「最後……?」

 意味深な台詞に夕映が訝しがるが、アリーヌは手を振るだけで応えず、ガンタンクと砂嵐に隠されて見えなくなった。

ハルナ「ふぅん、アレが連邦が量産するモビルスーツって訳ねぇ」

のどか「でもー、ガンダムとはぜんぜん違うねー……」

ハルナ「ま、試作機がハデで量産機が地味ってのはよくあることよね」

のどか「そういう問題じゃあ、ないと思うんだけどー……」

夕映「……それより二人とも、あのモビルスーツが格納されるのは私たちの倉庫ですよ」

のどか「えぇっ!?」

ハルナ「ナヌぅ!?」

夕映「急いで入れないと私たちのスペースがなくなるですよ」

 ゲットマシンは一台でモビルスーツ並みの大きさがある。
 プレハブみたいな仮設倉庫でガンタンクとゲットマシンを六機も入れるとなると、格納前から入念にスペース計算をしなくてはならない


 この灼熱の砂嵐に置いていては機体の溝や関節に砂が詰まり、熱が溜まって動作不良を起こす可能性が高いのだ。
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/01(火) 18:16:53.90 ID:hAuVOUmt0

ハルナ「ヤバイヤバイ! さっさと入れなきゃ!」

のどか「あぅぅ〜」

夕映「私が先に行って話してくるですから、二人はゲットマシンを頼むです」

ハルナ「はいよ!」

 息を切らして走って夕映は大きな声でアリーヌを呼んだ。

夕映「ま、待ってください!」

アリーヌ「あん? なんだい?」

夕映「その、ここには私たちの機体も入りますので……少し待っていただけないでしょうか?」

 とはいえ、所属が違う部隊がかち合ってしまうと、衝突は避けられない。
 こういった場合は行動が速いほうが絶対的な優先権を持つことになる。

 だが、アリーヌは少し考えた後に驚くようなことを言う。

アリーヌ「みんな! アタシらは外だ! この嬢ちゃんたちにハコは空けてやんな!」

ドロバ「了解!」

夕映「えっ!? い、いえ、そこまでしていただかなくとも……」

アリーヌ「いいのさ、アタシたちのは布被せときゃどうにでもなる」

夕映「それなら、せめて寝る場所ぐらいは……」

アリーヌ「今日は徹夜で作業だよ。そしてすぐに出る」

夕映「で、ですが……」

アリーヌ「アタシたちは、こういうのには慣れてんのさ。アンタたちとは違ってね」

 そう言って笑うアリーヌは兵士とは思えない綺麗な並びの白い歯を見せた。
 だが、夕映にはまるで何かを諦めた女の笑顔に見えた。
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/01(火) 18:17:22.83 ID:hAuVOUmt0

 夜を待ってアリーヌの小隊へ夕映は出て行った。

アリーヌ「どうしたんだい、こんな夜中に。女の一人歩きは危ないよ」

夕映「こ、こんばんはです。アリーヌさん」

 不意に空から声をかけられて見上げると、アリーヌ・ネイズンがガンタンクの頭部から顔を覗かせていた。

アリーヌ「アタシに何か用かい?」

夕映「と、特に用というワケではないですが、気になったので」

アリーヌ「えぇ? 聞こえないよ、上ってきなよ」

 彼女は自分の座っているガンタンクの頭部を叩いた。降りてくる気はないらしい。

アリーヌ「そう、そこだよ。そこ上ったら右手にちょっと行くと梯子があるだろ」

 指示通りに夕映はガンタンクのツギハギのような装甲板を上っていく。

アリーヌ「見てごらん、あそこがジオンの司令部だよ。何て言ったかな……マ・ヌケだったっけ?」

夕映「マ・クベですよ」

 全高13.7メートルのガンタンクから見渡す世界はゲットマシンのガラスごしに見る世界とはまるで違って見えた。

夕映「それで、昼間のことなんですが……」

アリーヌ「このガンタンクは全高13.7、全幅10.9の半人型と突撃砲形態への変形が可能なモビルスーツでね」

夕映「えっ……?」
449 :今日はここまでです。あんなに速い戦車見たことない! [saga]:2011/02/01(火) 18:19:05.77 ID:hAuVOUmt0


アリーヌ「見ての通り、ガンダムとかジムみたいなモビルスーツとはまるで違う。それは、この機体が開発段階で一度計画から抹消されちまったからさ」

 夕映が呆然とアリーヌの横顔を見ている間にも、彼女は夜空を見上げたまま続けた。

アリーヌ「連邦の新兵器開発計画にはじめ、ガンダム、ガンタンク、ガンキャノンの三つのモビルスーツが作られる予定だった。それが、ギガノスのメタルアーマー開発者が亡命してきたってんで、砲撃と支援のモビルスーツは試験機を一つ作ってお蔵入りになったのさ」

夕映「それが、どうしてここに……?」

アリーヌ「一人の技術中尉が喰らいついたのさ。この機体の開発は絶対に連邦軍の技術継承に必要だからってね。そして、当初の計画通りとはいかないまでも、この三機が完成した」

夕映「それじゃあ、その人がいなかったら、アリーヌさんはこの機体には乗っていなかったんですね」

アリーヌ「あぁ、こんな忌々しいものに乗らなくて済んだんだよ」

夕映「えっ?」

 けっ、とアリーヌは舌打ちをした。夕映が引き気味になっていると、彼女は呪詛のように呟いた。

アリーヌ「こいつを作った奴はその情報と丸ごと持ってジオンに寝返ったんだよ。この機体は即封印され、一緒にいたアタシは軍法で終身刑、ありがたくも戦時特別手当で仮釈放されてこいつに乗せられる羽目になった。この呪いの機体と一緒にね」

夕映「それじゃあ、あなたが最後と言ったのは……」

アリーヌ「ここに奴がいるのさ。アタシたちを売ったクライド・ベタニーがね」

 復讐。アリーヌ・ネイズンを戦争にたたせるシンプルな理由に、夕映は言葉をみつけることができなかった。
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/01(火) 18:43:34.63 ID:KehPpfvDO
乙、まさかイグルーとは。
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/01(火) 21:50:23.87 ID:iidHU90fo
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/02(水) 00:31:07.10 ID:8t+oelTAO
453 :再会です。 [saga]:2011/02/04(金) 20:03:30.07 ID:+wVdkKfg0

 攻撃は日が昇ると同時に開始された。

ミケーレ「いいかぁ! 他の戦線は既に優位になっている! 今日ここで俺たちが奴らを叩けなければ全員死ぬと思え!」

 大尉の罵声が砂漠に轟くと、進軍速度が上がる。

夕映「私たちは、飛行艇を攻撃して制空権を奪うですよ」

のどか「うん!」

ハルナ「オーケイよ!」

 ヘルメットを被り、コクピットに座った三人は勢いよくゲットマシンを出撃させて叫ぶ。

夕映「チェェェェンジゲッタァァァァァァ! スィッチ・オーン!」

 ガシィッ! 三機のゲットマシンが重なり、赤いマントを備えたゲッター1となって大空へ飛び立った。

夕映「ゲッターワン! トマホゥゥゥゥゥク・ブゥメラン!」

 ぶぅん! 背中から巨大な手斧を出して一番近くにいるドップを二隻まとめて落とした!

ジオン兵「な、なんだあのでかい化け物は!?」

ジオン兵「あれも連邦のモビルスーツなのか!?」

 突如現れた巨大な機影に恐れ戦くジオン軍を夕映はゲッタートマホークで次々と落としていく。

ハルナ「あぁ〜ん、なんか夕映ばっかり活躍してつまんない感じよねぇ、のどか」

のどか「仕方ないと思うけど〜……」
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/04(金) 20:04:25.20 ID:+wVdkKfg0

夕映「トマホゥゥゥゥク! 二段斬りぃ!」

 ドガァ! ズバッ!

ジオン兵「う、うわぁぁぁぁぁぁ!」

夕映「愚かな戦争を続けるなら、骨の髄にまで叩きつけてやるです! ゲッターの恐ろしさを!」

ハルナ「あぁ〜、ダメだこりゃ。中の人スイッチ入っちゃったわ」

 説明しよう! 綾瀬夕映はゲッターロボ搭乗時にテンションが上がり、気力が一定値を超えると『中の人』が入れ替わるのである!!

 『中の人』が入れ替わった綾瀬夕映はいわばゲッターの中の人と同じなのである!!

 だが! 安心してほしい! 石川版ではないことは確かである!!

夕映<熱血>「喰らえぇ! ゲッタァァァァァビィィィィィィィィム!!」

 ビィィィィィィィィィ! 強襲揚陸艇ファルメルのメインエンジン部にゲッタービームが直撃した!

ジオン兵「ど、動力部……いや、船底部分がほぼ全壊しました! 墜落します! 脱出をぉ!」

のどか「ゆえ! 基地から何か来るよ……め、メタルアーマー!」

 目視でも充分捉えられる範囲にそれらは来ていた。
 飛行用のマッフユニットを着けたゲバイやダインに加え、砲撃用のドーラまで出てきている。

マ「ふふふ……ギガノスが地球を飛び立つ際に払い下げてやったものだよ。スーパーロボットといえども、これだけの数を相手にできるか

な」

 メタルアーマーは二十から三十はいる。
 だが、夕映はギラと目を吊り上げて吼えた。

夕映「それだけの数でゲッターロボを叩けるとでも思ったですか、浅はかな!!」

ギガノス親衛隊兵「プラート大尉の為に!」

ギガノス親衛隊兵「行くぞぉ!」

 ダダダダダダダッ! 先頭のゲバイ、ダインが機関銃を構えて撃つが――

夕映「ゲッター線で進化した装甲の前にそんなもの!」

 ギキン! キン、キン! 無情にも弾はゲッターロボのダメージにならずに跳ね返されてしまう。
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/04(金) 20:04:57.03 ID:+wVdkKfg0

ギガノス親衛隊兵「ダメだ! 接近戦で落とすぞ!」

夕映「ゲッターに格闘戦を挑むですか!」

 八機のメタルアーマーがゲッターロボを取り囲む。

夕映「いくですよ! のどか! ハルナ!」

のどか・ハルナ「了解!」

夕映「ゲッタァァァァァァレザァァァァァァァァァァ!」

 ゲッター1の手首からノコギリ刃が飛び出し、一気に前方へ飛び出した!

ギガノス親衛隊兵「く、来る!」

ギガノス親衛隊兵「迎撃だ!」

 敬愛すべき上官の血路を開くために彼らはシャトルに乗ることを諦め、ジャブロー戦線を停滞させることを選んだのである。
 機体の体格差ですでに倍以上あるゲッターロボに挑む兵士達の蛮勇は讃えられるべきであろう。

夕映「ゲッタァァァァァトマホゥゥゥゥゥク! レザァァァァァ!」

 ズガァッ! ギャシュィィィィィ!

ギガノス親衛隊兵「うわぁぁぁぁぁ!」

ギガノス親衛隊兵「このぉぉぉぉぉぉぉ!」

夕映「そんな動きで!」

 バキャッ! 握り固めた拳がダインの顔面を砕く!

ギガノス親衛隊兵「よし、捉えた! 当たれ!」

 ドゥッ! ドゥンッ! レールキャノンを備えたドーラの砲撃がゲッターに当たる!

夕映「ぐっ! 遠いところからの攻撃ですか!」

のどか「ダメージはたいしたことないよ、ゆえ」
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/04(金) 20:06:16.15 ID:+wVdkKfg0

 イーグル号、ジャガー号、ベアー号はオープンゲットの上昇を利用して包囲網の外へ周り、バルカンやビーム、ミサイルを発射していく!

ギガノス親衛隊兵「ど、どうすれば……うおぉぉぉ!」

ギガノス親衛隊兵「わぁぁぁぁぁっ、父さ――ッ!」

夕映「殺しはしませんよ。おとなしくおうちに帰りなさい!」

のどか「ゆえっ! あそこにジオンのふね!」

 のどかが示した先にはジオン軍の攻撃空母ガウが浮遊している。

夕映「一気におとすですよ! チェンジ・ゲッター1! スィッチ・オォーン!」

 ぐぉぉーん、ガッシュイィィィィン!

ギガノス親衛隊兵「ぐぐ、行かせるものか!」

夕映「邪魔をするなです!」

 ぶぉんっ! ゲッタートマホークの一振りでしぶとく残っていたメタルアーマーが煽られていった。

ジオン兵「げ、ゲッターロボが来ます!」

ジオン仕官「撃てぇ! 撃ち落とせ!」

 ビュゥッ! ドシューッ! 連装メガ粒子砲がゲッターに当たる。

夕映「うっ! むっ、ゲッターはこんなものでは!」

ジオン兵「だ、ダメです!」

ジオン仕官「諦めるな!」

ジオン兵「高熱源反応ぉ!」

夕映<熱血幸運>「ゲッタァァァァァァァァビィィィィィィィィィィィィム!!」

ジオン仕官「退避ぃぃぃぃぃ!」

 ズギャァァァァァァァァァ! ッズゴォォォォォォォン!

ジオン兵「うわぁぁぁぁぁ!」

夕映「ゲッターの前に、敵はないですッ!」

『……ピ、ガガッ……やめ、ろ……! アリーヌ・ネイズン! 攻撃するな!』
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/04(金) 20:06:57.00 ID:+wVdkKfg0

 突然、全回線でミケーレ・コレマッタ大尉の怒号がコクピット内に響いた。

夕映「アリーヌさん……?」

『何だと! ふざけるんじゃないよ!』

『やめろ! これは司令部命令だ! ダブデに攻撃はするな!』

『奴を目の前にしていながら……! なっ、なんだ!? お前……なんだ!?』

夕映「アリーヌさん、何を言っているですか!?」

 いや、誰と話しているのか――! アリーヌはまだ精神病患者のようなうわごとを呟いている。

『奴が……クライドがそこにいるのかぁ!』

『待てっ! アリー……!』

 アリーヌの回線が強制的に断ち切られた。
 同時に、地上から大きな爆音が轟いた。

『アリーヌ! 応答しろ、おい!』

ハルナ「アリーヌって、昨日のガンタンクの……」

 夕映は迷っていた。アリーヌはおそらく仇を見つけ、そこに突撃を仕掛けている。
 彼女を止めるべきだろうか――だが、復讐をやめさせる権利など、夕映にはありはしない。
 ならば手助けをするべきか? いや、そんなことをして喜ぶような女性には見えなかった。

 ま、アタシたちのことは覚えてくれなくていいよ。どうせここが最後になるんだからさ――

夕映「あ、アリーヌさんはまさか!」

のどか「ゆ、ゆえ?」

夕映「くっ!」

 青褪めた顔を瞬時に赤く滾らせて、夕映はゲッター1をフルスピードで降下させ始めた。
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/04(金) 20:07:44.08 ID:+wVdkKfg0

ハルナ「ちょ、ちょっと夕映、何してんの!」

夕映「アリーヌさんを止めなければ!」

 その時、まだ開き放しだった回線から聞いた事のある声がした。

『ゲッターチーム、聞こえるか、ゲッターチーム!』

ハルナ「レビル将軍!?」

『ジオンのダブデに向かっているガンタンクを止めてほしい。あれは自爆をするつもりだ!』

ハルナ「なんですって!?」

夕映「くっ! アリーヌさん!」

『あれにはクライド技術中尉が乗っている……彼は……彼は二重間諜<ダブルスパイ>だ!』

夕映「!」

のどか「スパイってことは……」

夕映「飛ばしますよ、二人とも!」

 速度計がマッハのレッドラインを振り切る。
 ゲッター1が流星のようになって雲を抜けたとき、黄土色の戦場が視界に映る。

 どこで何が起きているのかもわからない点と点のぶつかり合いの中、夕映ははっきりとダブデとそこに猛進する戦車を見つけた。

 戦車――突撃形態となったRTX-440陸戦強襲型ガンタンクはホバー移動するドムがジャイアント・バズを構えた直後に俊敏な動きで足下に潜り込み、30ミリ機銃と大型火炎放射器で薙ぎ払っていく。

夕映「早まったことなど、止めなくては!」

 直行するゲッターの目の前で、阻むものを全て排除したガンタンクはダブデの右ホバー部にぶつかろうとする。
 だが、衝突の寸前にダブデは急停止し、機対艇はメートル未満の距離で睨みあう事になった。

『まさか、君は……アリーヌ!? アリーヌなのか!?』

『この声は……クライド!』

 ダブデのスピーカーからの声にアリーヌが再び回線を開いた。
459 :今日はここまでです。十七歳かわいいよ十七歳。 [saga]:2011/02/04(金) 20:09:58.22 ID:+wVdkKfg0

『やはり、アリーヌ……まさか君が生きていたとは……』

『死んでいなくてがっかりしたか! アタシはお前を殺すために恥辱を噛み締めてきたんだ!』

『待ってくれ! アリーヌ、君は誤解をしている!』

『今さら何を言う!』

 ヴィーッ! ヴィーッ! EMERGENCY MODE! 発動! パイロットは直ちに脱出を――

『何の音だ、アリーヌ……やめろ! 僕は君を愛している!』

『愛だと……? ははは! そう言ってまたアタシを辱めるつもりか! あの時のように!!』

 7、6、5、4……カウントダウンが落ちていく……

夕映「アリーヌさぁぁぁぁぁん!」

 ゲッター1が手を伸ばす。ゲッターの膂力ならば、コクピットだけを掴み無理やりに引き千切ることが可能なはずだ――が……

 2、1……

 もはや、手遅れであった。

のどか「ゆえっ! だめぇぇぇぇ!」

 転瞬――緊急停止させられたゲッター1の見下ろす大地が紅く燃え上がった。

夕映「あ、あぁぁ……」

『間に合わなかったか……』

 ガンタンクには自爆装置に加えてハイパーナパームが積み込まれていたらしい。
 周囲一帯を焼き尽くす業火にまみれてダブデはまずホバークラフトを失い、動力部が爆発し、乗員が脱出する暇もなく炎に包まれていく。

 砂漠を染め上げる色の濃い炎と黒い煙は、死神が地獄の門を開いたかにも見えた。

『すまない……私がジャブローの決定を止められなかったばかりに……』

 レビル将軍は、アリーヌを初めとするクライド技術中尉の同僚たちに出奔の真相を報せようとしていた。
 だが、リアリティの追求をするジャブローの司令部が、それを許可せず無情な仕打ちを行ったのだ。

 皮肉にも、この焦熱を機に苦戦を続けていた第44旅団は中核を失ったジオン防衛ラインを突破することに成功し、連邦軍のジャブロー攻略の大きな楔を打つこととなる。

 元終身刑の非正規兵ゆえに公式記録にはないが、アリーヌ・ネイズン技術中尉が率いたRTX-440ガンタンク小隊の戦闘記録はダブデ級2隻、モビルスーツ二十数機、戦車十数輌、塹壕突破2溝――熟練兵の少ない連邦機動兵器の戦果としては最大級のものであった。

「そんな……クライドが……クラ、イ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 ゲッターロボが飛び去り、陸上戦艦第4打撃部隊の砲撃が始まる直前の絶叫は、誰の耳にも届いてはいなかった――……」


 第十六話 戦線! 死に神の燃ゆるオデッサ! 完!
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/04(金) 20:22:54.00 ID:+wVdkKfg0
訂正。

 皮肉にも、この焦熱を機に苦戦を続けていた第44旅団は中核を失ったジオン防衛ラインを突破することに成功し、連邦軍のジャブロー攻略の大きな楔を打つこととなる。

上の文中のジャブローはオデッサです。
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/04(金) 21:53:28.15 ID:4I3ZOLjAO

読んでて興味出たな、DVD借りるか
タイトル正式にはなんつうの今回メインのは
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/04(金) 22:02:05.87 ID:hVusNO/AO
ガンダムのOVA作品
モビルスーツイグルーの「重力戦線」です

色々やってしまって評価が低いですが、スピード感があってレンタルで観る分には面白かったです
463 :再会です。 [saga]:2011/02/06(日) 16:29:12.07 ID:LgOdm9Bg0

 第十七話

 キャンベル星人の前線基地 海底城

ガルーダ「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! ぐっ、がぁぁぁぁぁっ!」

 手術の後遺症治療のために、強力な電撃を浴びせられていた。

ミーア「もう、おやめくださいませ、オレアナ様! ガルーダ様が死んでしまいます!」

オレアナ「これしきで死ぬような息子に育ててはおらぬ。これは罰も兼ねておるのだ。コン・バトラーを倒せぬガルーダへの」

ガルーダ「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! ぐっ、母上……ガルーダはまだ耐えられます……早くこの体の傷を治し、コン・バトラーVを倒して見せます……うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

オレアナ「頼みますよ、ガルーダ。早く身体を直しなさい」

ガルーダ「か、かしこまりました……ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

ミーア「ガルーダ様!」

オレアナ「……ミーア、今から私の許に来なさい」

ミーア「お、オレアナ様! ですがガルーダ様のお傍に……」

ガルーダ「構わぬ……ミーアよ、母上の許へゆけ……わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

ミーア「わかりました、ガルーダ様……どうかご無事で……」

オレアナ「耐えるのですよ、ガルーダ」

ガルーダ「は、はい母上……こ、この体の痛みは私が生身のキャンベル星人である証し……うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 断末魔の如き叫びには関心を払わず、オレアナはモニターとの接続を切った。

オレアナ「ふふふふ、生身の体か……馬鹿なガルーダ!」
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 16:30:02.32 ID:LgOdm9Bg0

ミーア「オレアナ様……いったいどのような御用でしょうか?」

オレアナ「身体を直したらガルーダに伝えよ。お前は司令官をクビになったと」

 突然の指示にミーアは卒倒せんばかりに蒼白になり、食って掛かった。

ミーア「なっ……! どういうことですか、オレアナ様!?」

オレアナ「ガルーダは司令官としてはやさしすぎるのです。地上では地球人同士の小競り合いが収束し、コン・バトラーVの周りに新たな戦力が加わろうとしています。そうなってはもう、ガルーダには指揮を任せてはいられません」

ミーア「で、では何故、今ガルーダ様は苦痛に耐えておいでなのですか! 再びコン・バトラーと相まみえるためではないのですか!?」

オレアナ「ガルーダはキャンベル星へ送還します。そのためには傷のある身体では宇宙船の走行に耐えられません。そのために身体を直しているのです」

ミーア(そんな……そんな事になっては、誇り高いガルーダ様のこと……おそらく生きておいでになりますまい……)

 ハーフロイドが決心を固めた顔になるのを、オレアナは生体コンピューターの感情回路の中でほくそえんだ。

ミーア「お願いがございます、オレアナ様! わたくしにマグマ獣の指揮を執らせてください! 必ずやコン・バトラーVを打ち倒して見せましょう!」

オレアナ「ほう、お前がか……?」

ミーア「その代わり、見事コン・バトラーを倒したあかつきには……」

オレアナ「ガルーダの更迭を取り消せ、というのですね? いいでしょう、お前に任せます」

ミーア「ありがとうございます、オレアナ様!」

 意気揚々とミーアはオレアナの許を去っていく。

オレアナ「ふふふふ……部下が愚か者ばかりというのは、楽なものよ……」
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 16:31:06.89 ID:LgOdm9Bg0

 超電磁研究所

唯「ひと〜のぉ〜ず〜のうを〜く〜わ〜えた〜ときぃに〜まじんがーずぇーっと! まじんがーずぇーっと! お〜まえこ〜そみ〜ら〜いを〜も〜たら〜す〜」

梓「う〜ん、練習してくれるのはいいんですけれど……こんなところに来てまでしなくても……」

唯「だって、もうすぐそこに文化祭が迫っているなんて知らなかったんだもん」

梓「そうはいっても、こんな時ですからどうせ中止になると思いますけど……」

唯「ダメだよあずにゃん! 文化祭がなくても私たちは歌うことができるんだよ!」

梓「唯先輩はどうしていつも変な方向に意欲が向いちゃうんだろう……」

憂「お姉ちゃ〜ん、紅茶とお菓子だよ〜」

雛苺「うっにゅう〜、うっにゅう〜」

金糸雀「ホットケーキかしら〜」

唯「わーい、う〜い〜、あいす〜」

梓「練習やめるの早っ!」
466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 16:31:55.81 ID:LgOdm9Bg0

 超電磁研究所 研究室

紬「う〜ん、やっぱりコン・バトラーVの装甲を超合金Zでコーティングすることはできないみたいですね……」

JUM「そうですね、有効な厚みを持たせると、重量で超電磁エネルギーが十分な力を発揮できなくなってしまいます」

紬「サーメット装甲のコン・バトラーVは防御力に不安があるようでしたから、技術提供をと思いましたが……すみません」

翠星石「まーったく! たくあん人間が言うから期待したですのに、とんだ皮算用ですぅ!」

律「しっかし、ムギが図面引いてるのって似合わねーよなー」

紬「ふふ、なんだか作曲をしているのと同じで、楽しいの」

澪「ま、律じゃ一生かかってもできそうにないな」

律「私はこーいう細かい作業は苦手なんだよー」

真紅「あら、そんなことでロボットの操縦ができるの?」

律「ボロットはゲーセンのレースゲームと同じ感覚で操縦できるようになってんだよ」

澪「本当に技術の無駄遣いだよ……動かすたびに壊れてるんだから」

蒼星石「そんなロボットでよく今まで生きてこられたね……」

 ヴィーッ! ヴィーッ!

蒼星石「警報が!」

JUM「ドールズ、出撃準備だ!」

「「「「「了解!」」」」」
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 16:32:30.43 ID:LgOdm9Bg0

 南原コネクション 郊外

ミーア「ガルーダ様……ミーアがお守り致します……」

 キャンベル星人の臨時司令官となったミーアがマグマ獣デモンに乗り、マグマ獣ガルムスを二体率いてやってくる。

翠星石「レェェェッツ・コンバイィィィィィン!」

唯「マジーン、ゴー!」

澪「ダイアナンA、ゴー!」

律「ボ〜スボロットだわよ〜」

ミーア「出ましたね、コン・バトラーV!」

翠星石「その声はこないだの戦艦の奴ですねぇ!」

ミーア「私の名はミーア! キャンベル星人の誇りを守るために、いざ尋常に勝負!」

翠星石「よぉし、やってやるですぅ!」

唯「私たちがマグマ獣の相手をするよ!」

蒼星石「気をつけて、翠星石。なんだかすごい覚悟の念を感じるよ」

翠星石「わかってるですぅ、翠星石! 超電磁ヨーヨー!」

 ズバァァァァァァン!!
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 16:33:04.58 ID:LgOdm9Bg0

 海底城

ガルーダ「ぐっ、うぅ……」

 電撃浴を終えたガルーダは、よろめきながらも居住区へと歩いていた。

ガルーダ「ミーアの奴め……余の不在中に無茶をしたりはしていないだろうか……?」

 ハーフロイドで思考がコントロールされている娘が辛い目にあっているガルーダのためにと思って何かをしていないかと不安になるのだ。

ガルーダ「ふ……誇り高きキャンベル星人である余が、ミーアのようなハーフロイドの身を案ずるとはな……それも、あのコン・バトラーのドールズのせいか」

 同時に思い出すのは、コン・バトラーVに乗る少女の形を人形たちであった。
 以前出撃したときに初めてその姿を見たが、まさか、魂を持った人形が自分のライバルだったとは思っていなく、ショックを受けた。
 だが、彼女たちは自分の意思を明確に持ち、運命を決めていた。

ガルーダ「ミーアとて、プログラムの人格とはいえ、自分で決めていることなのだろうか……?」

 半壊した体を癒している間、ガルーダはそのことをミーアに訊ねてみようと思っていた。
 少しは、ハーフロイド、アンドロイドに対する考え方を変えてみてもいいかもしれん……キャンベル星では、それらの類は全て奴隷として扱われる。
 彼ら、彼女らにも人権があるとしたら、キャンベル政権が支配している星の住民と同じように、健やかにその生をまっとうさせるべきだろう。

ガルーダ「ミーア、ミーアはどこだ……ミーア! どこにいる、ミーア!」

 居住区の慰安室――ミーアがいるべき場所には何もおらず、ガルーダは壁を叩いてあの優しき声を思い起こした。

ガルーダ「ミーア、まさか……くっ!」
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 16:33:51.45 ID:LgOdm9Bg0

翠星石「マグネチョーップ! ですぅ!」

 ガキィン! コン・バトラーVの手刀に、マグマ獣デモンの右腕が落ちた!

ミーア「うあぁっ! が、ガルーダ様のために……ガルーダ様のために!」

翠星石「ま、まだ来るですかぁ! もうボロボロのくせにぃ!」

 両腕と右前足を失っても尚、ミーアのデモンは止まらなかった。
 切断面からどす黒い循環剤を噴き出しながらも、いななくように上体をそらし、コン・バトラーVに突撃を仕掛ける。

翠星石「な、何ですこいつぅ! 捨て身で飛びかかってくるですぅ!」

ミーア「ガルーダ様のためにも……ミーアが刺し違えてでもコン・バトラーを倒します!」

 既に二体のガルムスは完全に沈黙している。
 コン・バトラーVは両手を突き出してミーアの突進を押さえつける。

翠星石「もう勝負はついているですぅ! さっさと帰るですよぅ!」

ミーア「ガルーダ様! ミーアは……! ミーアは!」

 デモンの目が赤く光りを放った。
 同時に、あばらにあたる部位からワイヤーが飛び出し、コン・バトラーVに絡みついた!

翠星石「な、何をするつもりですぅ!」

ミーア「ふ、ふふふ……コン・バトラーV! この状況でデモンの動力部を暴走させればどうかしら!」

蒼星石「ま、まさか、自爆するつもり!?」

真紅「何ですって!?」
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 16:34:32.68 ID:LgOdm9Bg0

翠星石「こ、こいつ、最初からそのつもりだったですかぁ!?」

ミーア「ガルーダ様……お役に立てず、申し訳ありません……せめて、ミーアのこの命でもって、コン・バトラーVに傷だけでも!」

翠星石「やめるですぅ! 離れるですぅ!」

 自由な右腕でデモンを殴りつけるが、ワイヤーは強固で剥がれることがない。

唯「すーせーせきちゃん!」

澪「今助けるぞ!」

律「このぉ、離れやがれ〜!」

 マジンガーZ、ダイアナンA、ボスボロットがそれぞれデモンの足を引っ張るが、ぴくりとも動かない。
 その間にもデモンの体は熱暴走でだんだんと赤くなっている。

真紅「コクピットが熱くなってきたのだわ」

 胴体にいる真紅が感じないはずの熱に手で扇ぐふりをする。

 その時、研究所の司令室では、新たな接近を察知していた。

JUM「みんな! キャンベル星人の戦艦が急速に接近してきている! 気をつけろ!」

翠星石「こ、こんなときにガルーダの野郎ですか!」

ミーア「が、ガルーダ様が……あぁ、しかしもう間に合いますまい」

 デモンの装甲が膨れ上がってきている。もう爆発は秒読みだ。
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 16:35:39.12 ID:LgOdm9Bg0

ガルーダ「ミーアァァァァァ!」

ミーア「ガルーダ様……御武運を!」

 どぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん! 戦艦グレイドンが戦域に突入するのと、デモンが爆ぜるのはほぼ同時であった。

ガルーダ「ミーアァァァァァァァァ!」

 球状に炎が広がり、その中から、装甲の半分以上が溶けたコン・バトラーVががしゃんと音を立ててくずおれる様など、ガルーダは見てはいなかった。

ガルーダ「遅かったか! すまぬ、ミーアよ……安らかに眠ってれ……むっ!」

 最も忠実であった部下に、哀悼の念を送っていると、爆発からやや離れた地面で蠢いている何かを発見した。

ガルーダ「み、ミーア、生きていたのか! 今助けるぞ!」

 ガルーダは迷わずグレイドンを上半身だけのハーフロイドの真上へやり、自ら回収に降り立った。

ミーア「う……ガルーダさま……ミーアは」

ガルーダ「喋るな、ミーア!」

 以前は毛嫌いしていた紫色の皮下循環剤に塗れた女の上半身を貴公子は抱き上げた。
 損傷は大きいが、冷凍して修理すれば直るはずだ。ガルーダはロープに捕まってグレイドンを発進させるよう命じる。

ガルーダ「ミーアよ……俺はとんでもないあやまちを犯してしまったようだ……許せ……」

 目の前では、爆発の衝撃からコン・バトラーVが起き上がりつつあった。

翠星石「が、ガルーダ……きやがったですね……しょ、勝負なら、受けてたつですよ……」

 強がって言うものの、コン・バトラーVのサーメット装甲は本来のツヤをすっかり失っている。
 おそらく、内蔵武器のほとんどが使い物にならない上に、得意の超電磁エネルギーの攻撃にも耐えられない状態だろう。
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 16:36:49.56 ID:LgOdm9Bg0

 戦えば、間違いなく勝てるはず――だが、ガルーダは勇敢な声で告げた。

ガルーダ「コン・バトラーVよ! 今日のところは勝負はお預けだ!」

翠星石「逃げる気ですかぁ、ガルーダ! 待ちやがれですぅ!」

ガルーダ「グレイドン、急ぎ離脱せよ!」

翠星石「ぐぐっ、待つですぅ、ガルーダ!」

真紅「ホーリエ!」

蒼星石「レンピカ!」

 凄まじい速度で去っていくグレイドンには到底追いつけないが、その航路を二つの光りが追いかけていく。

真紅「私と蒼星石の人工精霊が、あの戦艦の後をつけてくれるわ」

翠星石「何度もnのフィールドに行って人工精霊を探してたのはこのためだったですか」

蒼星石「というより、人工精霊がいなくてもいいみたいに思っていたほうが変だよ、翠星石。スィドリームがいなかったら君は如雨露をだせないんだから」

翠星石「たしかに、そうだったですねぇ……」

真紅「あとは、あの子たちがキャンベル星人の秘密基地を探してくれるのを待つだけだわ。ツムギ、紅茶の準備をお願いね」

紬「はーい」
473 :今日はここまでです。くくく、やつは市川治四天王の中でも最弱……。 [saga]:2011/02/06(日) 16:38:46.38 ID:LgOdm9Bg0

 海底城

ガルーダ「ミーア! 後しばらく耐えよ! すぐに治療してやるからな!」

ミーア「…………」

 冷凍状態のミーアの冷たい体を抱きかかえてガルーダは基地の中を走り、ミーアをアンドロイドの調整室へ運び込んだ。

ガルーダ「よし、ここならミーアを治療することができる……すぐに元に戻してやるからな、ミーアよ」

 ミーアの体をケーブルに繋ぎ、カプセルに寝かせると、すぐに冷凍を解除させて処置を開始した。
 十分ほどで、ガルーダがすべき作業は終わる。

ガルーダ「ふう、これで後はパーツが交換されるのを待つだけだ……うん? なんだこの部屋は……?」

 めったにこの調整室に入ることのないガルーダだが、記憶力には自信があったため、見慣れぬ扉を不審に思い、そこへ入っていく。

ガルーダ「あ、あぁっ!」

 そこでガルーダは恐るべき真実を知るのだった――


 第十七話 献身! ミーア 涙の特攻! 完!
474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/06(日) 18:11:45.50 ID:05nB5sWFo
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/06(日) 22:57:14.90 ID:p5beiVYAO
乙、インパクトだとアインストの実験素体にされてたんだよな
476 :再開です。 [saga]:2011/02/09(水) 17:19:49.80 ID:MeAupfQU0

 第十八話

 半壊したミーアを治療するために、ガルーダはめったに来ない調整室に入る。
 そこで彼は、恐るべき秘密を知ってしまった――

ガルーダ「こ、これは……いったいどういうことだ!?」

 その部屋は、巨大なシリンダーがいくつも並んだ部屋だった。
 内部は既にその機能のほとんどを停止してしまっているらしい。
 だが、ガルーダはそのシリンダーを一つずつ見ていって、驚愕に目を見開いた。

ガルーダ「お、俺はいったいどこに来たというのだ!? 俺の姿をしたロボットが……こんなに……」

 そう、シリンダーの中にはガルーダと全く同じ形をしたロボットが浮いていたのだ。
 一つだけではない。次も、次も、次も、次も……どれを見ても、全てのシリンダーには大将軍ガルーダが生のない姿で浮かんでいた。

ガルーダ「ここはいったいなんだ……なんなのだ!」

 一番奥にあったコンピュータを起動させた。
 すると、とあるメモリが強制再生される。

『ガルーダ1号、記憶回路に異常。失敗、廃棄』

ガルーダ「なん、だと……」

『ガルーダ2号、人格造形に歪みあり。失敗、廃棄。ガルーダ3号、感情回路に異常。失敗、廃棄』

ガルーダ「ま……さか……そんな……そんなことが……う、うそだ……うそだ……」

『ガルーダ4号、人工筋肉に異常。失敗、廃棄。ガルーダ5号、自走機能に異常。失敗、廃棄』

ガルーダ「や、やめろ……やめろ! やめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 17:20:24.85 ID:MeAupfQU0

『ガルーダ6号、右腕部の神経伝達に異常。失敗、廃棄。ガルーダ7号、消化機能に異常。失敗、廃棄』

 叫んでも、声はやまなかった。
 ガルーダは拳を振り上げ、己が身体の勇敢な腕でコンピュータを破壊し、嗚咽した。

ガルーダ「おぉ……おぉぉ……あんまりだ……あんまりだ母上……私まで……私まで母上の作ったロボットだったというのですか!?」

 全ては仕組まれていたこと。
 治療と称して行われるガルーダの手術。
 その後の電撃浴。全てはオレアナが一からプログラムした人格――

ガルーダ「感情を与えられ、自分をキャンベル星人だと思い込んでいた滑稽な機械人形……それがこの俺……大将軍ガルーダだったというのか……」

 それでは、自分が今までしてきたことは何だったのか?
 キャンベル星人の将軍として、我が物顔に振る舞い、弱者を虐げ、アンドロイドを――ミーアを傷つけていた自分が――

ガルーダ「フ……フフ……フハハハハハ……ミーアよ、笑ってくれ……私はお前と同じロボット……母上の操り人形だったのだ……ハハハハ……ハハハハ……」

 むせび泣くこの涙も、全ては作り物――ガルーダが感情を荒げるたびにオレアナはそれを肴に楽しんでいたのだ。

ガルーダ「クククク……許さん……許さんぞ、オレアナ! よくもこの俺をたばかってくれたな!」
478 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 17:22:39.02 ID:MeAupfQU0

 超電磁研究所

 久しぶりの快晴で屋外にパラソルを置いてティータイムを満喫していた真紅たちのところへ二つのチカチカと光りがやってきた。

真紅「おかえりなさい、ホーリエ、レンピカ。キャンベル星人の基地は見つかったのね?」

 肯定するように光りが強く明滅する。

真紅「そう、海底に……わかったわ、ご苦労さま」

律「キャンベル星人の基地が見つかったのか!?」

蒼星石「はい、南太平洋のソロモン諸島のあたりです」

紬「ソロモン諸島といえば、以前のコロニー落としの影響で連邦の管理外地域に指定されたところですね」

翠星石「隠れて基地を建設するにはもってこいの場所って訳ですかぁ」

唯「それなら早速行こうよ! 最近はドクター・ヘルの機械獣も来なくなってるし」

梓「でも、ひょっとしたらキャンベル星人を追って日本を離れたときを狙っているかもしれませんよ」

澪「そうだな、今はゲッターロボもライディーンもオデッサに行ってしまっているから、日本の守りが手薄になってしまっている」

紬「明日にはダンバインとガンダムが、明後日にはホワイトベースが日本に戻ってくるから、それを待ってからでも遅くはないと思うわ」

律「でもよぉ、こっちがうだうだしてる間にまた奴らが攻めてくるかもしれねーんだぜ」

翠星石「そうですぅ! 先手必勝で奴らのそっ首切り落としてやるですぅ!」

 そこにコン・バトラーの修理を終えた桜田博士がやってきた。

JUM「連邦基地に空輸船の派遣を申請したよ。今日中には届くはずだ」

紬「桜田博士!?」

JUM「ひとまず、コン・バトラーVを先に送り出して、ホワイトベースが戻ってからあらためて増援を送ればいいだろう」

翠星石「さっすがチビ人間ですぅ! チビなりに役に立つですぅ!」

JUM「チビは余計だ」
479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 17:26:08.82 ID:MeAupfQU0

 南太平洋 上空

 空輸艇の窓から見下ろす海原には、火山島があった。

真紅「あそこが敵のアジトのようね」

蒼星石「海底の地形や隆起から考えても、あそこに火山島があるのは不自然だ。たぶん、人工の島だろう」

翠星石「なんでもいいですぅ! さっさと行くですよぅ!」

真紅「まあ、待ちなさい、翠星石」

翠星石「ぐぇ。襟を引っ張るなですぅ、真紅!」

真紅「もう午後の紅茶の時間よ。まずは落ち着いて、鋭気を養うことが大切よ」

翠星石「うぅぅ、こんな時まで真紅はー!」

雛苺「しんくはー!」

真紅「イギリスでは紅茶の栽培が困難になるという理由から核戦争の無益さを説いたとも言われているわ。人は皆、自分たちの生活の習慣や日常の文化を守るために戦うのだわ。私たちもそうあるべきなのだわ」

蒼星石「真紅は……今はアリスゲームのことはどう思っているんだい?」

真紅「今はアリスゲームをするべき時ではない――そう思っているわ。あなたが再び動いているのが、その証しだもの」

金糸雀「真紅……」

蒼星石「そうかも、しれないね……」

真紅「さぁ、温かい紅茶をいただいて、キャンベル星人のアジトへ乗り込むわよ」

「「「「おーっ! ですぅ! なのー! かしらー!」」」」


 デレッテレッテーテテテデレテレッテッテテー
 ブイブイブイ ビクトリー
 コーンバイーン ワンツースリー フォーファーイブ シュツゲキダー
 ダイチヲユルガスチョーデンジロボ
 セイギノセンシダコーンバトラーブイー ブイ ブイ ブイ
480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 17:27:24.10 ID:MeAupfQU0

 海底城 内部

オレアナ「コン・バトラーVが攻めてきただと! えぇい、ガルーダめ、後をつけられたか!」

 拡声器の音量を目一杯にするのと同時に、城が大きく揺れた。

オレアナ「くっ! マグマ獣をありったけ出せ! くくく、この城に来たが最後、コン・バトラーVを返り討ちにしてくれるわ!」

ガルーダ「その必要はない、オレアナ」

 暗闇からの声に、オレアナは一瞬、我を失った。
 聞き慣れた声から聞き慣れぬ言葉が発せられたのだ。

オレアナ「おぉ、ガルーダ、どうしましたか、早くコン・バトラーVを迎え撃つのです!」

ガルーダ「黙れ! オレアナ、覚悟!!」

 ビッグガルーダを呼び出し、ガルーダはウィングソードで切りかかった!

 ズシャァッ! ウィングソードの刃が真っ直ぐにオレアナの肩に突き刺さる!

オレアナ「うぐっ! が、ガルーダ、何をするのです……! 私はお前の母なのですよ……」

ガルーダ「うるさいっ!! もはや騙されはせん!」

オレアナ「ガルーダ、血迷ったか!?」

ガルーダ「ロボットでも、血迷うことがあるのかな、オレアナ!」

オレアナ「な、なにを馬鹿なことを……!?」

翠星石「どっせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇいですぅぅぅ!!」

 ドガァンッ! ガルーダとオレアナがじりじりと距離を取る玉座にけたたましい音をたてて、コン・バトラーVが突入してきた。
481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 17:30:52.19 ID:MeAupfQU0

オレアナ「こ、コン・バトラーV!?」

ガルーダ「ふっ……さすがはコン・バトラー……もう来たか」

翠星石「やいやいやいやいですぅ! キャンベル星人のべらぼうどもめ! いざ尋常に勝負ですよぅ!」

真紅「待ちなさい、翠星石。様子が変よ」

翠星石「ほえ?」

蒼星石「もしかして……仲間割れ?」

オレアナ「が、ガルーダ……今ならまだ許して差し上げます! コン・バトラーVを倒しなさい!」

ガルーダ「黙れ、ペテン師め!!」

 ズシャァッ! 大きく振りかぶった剣でオレアナを切り裂く!

オレアナ「ぐわぁぁぁぁぁぁっ!!」

ガルーダ「俺は貴様を倒す! そして、ミーアを失った悲しみと俺を含めたこの世界の全てのロボットの誇りを賭けて、コン・バトラーVと戦う!!」

翠星石「あ、アイツ、ロボットだったですか!?」

オレアナ「愚かなガルーダ!! それが産みの親に対する仕打ちか!?」

ガルーダ「その愚か者の剣で貴様は死ぬのだ、オレアナ!!」

 ビッグガルーダが両手に持った剣を頭上に構えると、オレアナは初めて狼狽を声に出した。

オレアナ「ま、待ちなさい、ガルーダ! 頼む、待ってくれ!!」

ガルーダ<魂>「それが貴様の本性か!? 機械の俺にも劣る醜い魂を抱いて地獄に堕ちろ、オレアナァァァァァァァァ!!」

 ズギャァァァァァッ!! 真一文字に振り下ろされたウィングソードがオレアナを唐竹割りにした!!

オレアナ「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 ドゴォォォォォォォォォン!!  渾身の斬撃で真っ二つになったオレアナは爆散する。
482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 17:32:42.15 ID:MeAupfQU0

ガルーダ「仇は取ったぞ……ミーア……俺がもっと早く、自分がロボットだと知っていれば、そなたの愛に報いたであろうに……」

翠星石「ガルーダ……おめぇ……」

 呆然と佇んでいたコン・バトラーVにビッグガルーダが振り返った。

ガルーダ「コン・バトラーVよ、オレアナは死んだ!」

 威風堂々とした声だった。敵でなければ非常に頼もしく思えただろう。

翠星石「ガルーダ……本当におめぇと戦わなくちゃならねぇですか……?」

ガルーダ「俺は俺自身を弄んだオレアナを俺自身の意志で倒した」

翠星石「そうですよぅ、ガルーダはもう操り人形じゃないですぅ!」

ガルーダ「なればこそ! キャンベル星人の将軍である余は、正々堂々と貴様達と戦うぞ! コン・バトラーV!!」

 ビッグガルーダはウィングソードを腰だめに構えて、コン・バトラーVに突進してきた!

翠星石「ガルーダ!? 馬鹿野郎ですぅ!」

真紅「ビッグブラストなのだわ!」

 コン・バトラーVは腰を落とし、みぞおち部位に格納された大型ミサイルを発射した。

ガルーダ「ぬおぉ!」

 ドォォォォォン! 強力な爆撃を受けて、ビッグガルーダの猛進は止められる。

ガルーダ「くくく……言い忘れたがコン・バトラーV」

翠星石「な、何ですぅ、ガルーダ?」

ガルーダ「この基地の管制システムは全てメインコンピュータでもあるオレアナが支配していた。自爆システムもな!」

翠星石「な、なんですってぇ!?」

蒼星石「それじゃあ、まさか!」

 言うやいなや、大きな地震が玉座に起こった。
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 17:34:00.58 ID:MeAupfQU0

金糸雀「ひぇぇぇっ!」

雛苺「やーっ!」

ガルーダ「あと十分でこの島は海底に沈む! 貴様達をここに足止めにすれば、余の勝ちということだ!!」

翠星石「馬鹿を言うなですぅ! 死んじまったら元も子もねぇですぅ!」

ガルーダ「貴様達を生かしておいては、我らキャンベル星人の地球侵略の大きな仇となる! 余の命と引き換えに、将来の禍根を絶つ!!」

 ドガァッ! 地震でバランスを崩していたコン・バトラーVにビッグガルーダが体当たりをして倒した。

翠星石「痛ぇですぅ!」

蒼星石「君はキャンベル星人に騙されていたのに……それでも戦うというの!?」

ガルーダ「余には記憶がある。キャンベル星人の大将軍ガルーダとして戦っていた記憶が!」

 ツインランサーを出したコン・バトラーVにウィングソードで切りかかりながら、ガルーダは声を張る。

ガルーダ「余の身体は作られた機械なれど、魂と記憶は実在のキャンベル星人の者! 高潔な武人の誇りは、我が母星キャンベルの為にある!!」

 ガキンッ! 鋭い太刀筋にコン・バトラーVの急造の装甲が剥がされていく。

ガルーダ「これで終わりだ! コン・バトラァァァァァァァァァァァァァ!!」

翠星石<ド根性>「こうなったら一か八かですぅ! 超電磁タツマキィ!!」

 早口で唱えられた呪文で、コン・バトラーVの二つの電極から電磁の嵐が飛び、腕ではなく直接ビッグガルーダに当たった!

ガルーダ「しまった! そんなに早く出せるのか!」

翠星石「ガルーダ! 今ならまだ間に合うですぅ! 翠星石たちと一緒に脱出するですよぅ!!」

ガルーダ「言ったはずだ! 余は誇り高きキャンベル星人の将軍ガルーダなるぞ! なんじょうそなたら下賎な地球人と手を取り合おうか!!」

 ギギギギ……! 超電磁タツマキに捕らわれながら、ガルーダはビッグガルーダの駆動をフルパワーにさせ、右腕を動かし始めた。

真紅「翠星石……もう……!」

翠星石「わかっているですよぅ! 真紅のあほーっ!」

 大きな声で翠星石は無念を叫び、超電磁ギムレットを出現させた。
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 17:35:16.86 ID:MeAupfQU0

 僅かに浮上したコン・バトラーVはギムレットを軸に高速で回転し始める。

ガルーダ「さらばだ、コン・バトラーV!  貴様達と戦えた事を誇りに想う!!」

 そして、空高く飛び上がったコン・バトラーVは回転しながら一直線にビッグガルーダに落下していった!

翠星石<熱血>「超電磁・スピィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!」

 ズギャァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!

ガルーダ「ぐっ……がはっ! くくく……真だ……余の身体は……機械だ」

 超電磁スピンがコクピットの下部を掠めていったらしい。
 ガルーダは失った下半身を見て、自嘲気味に笑った。

 漏電する人造筋肉とバランサー、滴り落ちる皮下循環剤――全てミーアと同じものだ。

翠星石「ガルーダ!」

 停止したコン・バトラーVから降りて翠星石は横たわるビッグガルーダへ登ってきた。

ガルーダ「貴様は……コン・バトラーの……翠星石と言ったか……」

 腰から上だけだというのに、視界は全く霞むことなくクリアだ。
 皮下循環剤が流れ尽きたとき、最も容量の多いデータ――記憶素子から消去され、修復を求めて最後の最後まで最優先事項へと動力を供給する。
 それも出来なくなったとき、最優先事項の生命維持装置が活動を停止する。
 つまり、死ぬということだ。

ガルーダ「余は……貴様達と同じ人形であった……全てはプログラムされた人格……この苦しみも誇りも用意されたものに過ぎなかったのだ……」

翠星石「……スィドリーム…………」

 胸の前で器を作った翠星石の手から、小さな光りが宙に飛んだ。
485 :今日はここまでです。 [saga]:2011/02/09(水) 17:36:53.40 ID:MeAupfQU0

ガルーダ「何をしている……翠星石……早く脱出せねば、貴様達も……」

翠星石「ガルーダ……今の翠星石にしてやれることは、これくらいしかねぇですぅ……」

ガルーダ「な、なんだ……いったいこれは……?」

 視界を囲うアラートフレームを排除するガルーダの目の前が淡い色の渦を巻いていく。

翠星石「夢の扉ですぅ……」

ガルーダ「ゆ、夢の……?」

 幻想を見ている気分――夢心地のガルーダに甘やかな声が聞こえてくる。

翠星石「夢は、記憶の整理と言われるですけど、そんなの愚かな人間が決めつけた世迷言ですぅ。夢は世界樹を伝っていのちの意識を繋ぐ心の橋ですぅ」

ガルーダ「お、おぉぉ……ミーア……ミーアが……」

翠星石「いのちのない、心がない機械が夢を見るはずはないですぅ。ガルーダ……」

ガルーダ「…………」

 確かにそこに存在しているガルーダにしか見えない夢の扉に伸ばしていた手が、静かに落ちていた。

翠星石「ガルーダ……」

 ズズゥン……! 沈黙した身体に瞑目していると、また大きな地震が翠星石を揺らした。

真紅「翠星石、早く戻ってきなさい!」

蒼星石「脱出するよ!」

翠星石「わかってるですぅ、今行くですよぅ!」

 ドレスの裾を翻し、翠星石はビッグガルーダから飛び降りた。
 すぐさまコンバトラーVに乗り込み、崩壊するキャンベル星人基地から脱出する。

翠星石「あばよですぅ、ガルーダ……」


 第十九話 高潔! 大将軍ガルーダの悲劇! 完
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 17:49:50.82 ID:oXD5hoIGo
487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 21:02:17.47 ID:/5FzVHYAO
乙、気高き将軍は安らかな眠りについたか
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 11:25:24.50 ID:GjFv6hCAO
ガルーダ……
489 :スレ主です [saga]:2011/02/13(日) 18:47:06.76 ID:K5cdHef+0
ただいまジャブロー編を書いていますが、超長くなるので、書いている間にこれまでの分を推敲して再投下します。序盤の主題歌とか削ってしまった部分もあったので。精神コマンドとかも全部乗っけることにします。
全部あわせてたぶん、400レスほどなので、ジャブローと合わせて第二部をそこで終了し、次スレに持ち込もうと思います。
なるべく一日一話ずつ投下していく予定なので、いつも読んでいてくださる3,4名のありがたい方々は20日ほどご辛抱ください。
そしてすごい今さら言いますが、アリーヌを入れてしまったせいでガルーダ戦死がすごい薄れた気がしないでもないです。そもそもゲッター無双がやりたいだけだったからオデッサ入れたのに……
490 :AA投下実験です [saga]:2011/02/13(日) 19:07:02.87 ID:K5cdHef+0
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       /     /::/  ,rー 、:::/   /:/ /7了:::::::/  /::::/  イT7 ,.イ /
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          /  / 了 /|  | / // /__,  ___/::::::::::/   ̄∠  、__/ ' ' /  i´
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     // ヽ |:/__l:::::::|_|__┬::::l_/::::7___//_/:::/ / ヽ |l__// 人/
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491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/14(月) 17:22:01.91 ID:iXDKA6B20

 第一話

 宇宙世紀0079――人口爆発した地球人類はその大半が幾多のスペースコロニーに移住して数十年が経過していた。

地球 桜ヶ丘高校

唯「はう〜、やっぱりムギちゃんのケーキはおいしいねぇ〜」

紬「うふふ、どうもありがとう、唯ちゃん」

梓「うぅぅ〜、今日も結局練習できなさそうです……」

律「もう諦めろって、あずさぁ〜」

梓「澪先輩はこれでいいんですかっ!」

澪「そ、それはやっぱり……その」

律「おやおやぁ、澪ちゃんはケーキがいらないみたいですなぁ?」

澪「なっ、何するんだよ、律っ!」

律「ほほほ、つかまえて御覧なさい、み〜おちゃ〜ん」

澪「りつぅ〜!」

唯「ムギちゃぁ〜ん、おいふぃよぉ〜!」

紬「うふふ」

梓「ああぁ〜……」

 律が奪ったケーキを追いかけて澪が立ち上がったとき、

 ドゴォォォォォォォン!
492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/14(月) 17:24:44.02 ID:iXDKA6B20

 轟音と地震が桜ヶ丘高校を襲い、テーブルに紅茶が零れた。

 ドゴォォォォォォォン!

澪「うわぁぁぁっ!」

律「み、澪!」

 自分の軽いからだが浮き上がるほどの強い揺れに何とか踏ん張って耐えた律が転びそうになる澪を支える。

唯「ひょえ〜! な、なになに〜!」

 テーブルに顔をぶつけてクリームまみれの唯。その唯にがっしりと掴まる梓が悲鳴をあげる。

梓「も、もしかして、またジオン軍のコロニー落としですかっ!」

唯「えぇぇ〜! いやだよぅ! ギー太ぁ〜!」

紬「いいえ、たとえ連邦政府がコロニー落としを秘匿していたとしても、私の家の人工衛星から連絡が入るはずだから、それはないみたい」

 携帯を見ながら紬が言う。

梓「む、ムギ先輩の家って、人工衛星まであるんですか……?」

律「そ、そんなことより、コロニー落としじゃなければ、これはなんなんだよ!」

 怯えまくっている澪の肩を抱いたままの律が叫ぶ。それに応えるように窓の外から再び大音量が響いた。

 ギャオォォォォォォォォォン!

澪「こっ、今度はなに! 鳴き声!?」

 唯と紬が窓のほうへ向いた。

唯「な、なにあれ……」

紬「怪獣……?」

 二人が見たのは、髑髏のような頭に鎌のような耳を持った巨大な怪物が町を破壊している光景だった。

あしゅら男爵「いけぇぇぇい、機械獣ガラダK7! この地にあるという光子力研究所を見つけ出すのだ!」

ガラダK7「ぎゃおぉぉぉぉぉん!」

 怪物の肩に乗っている左が男、右が女の顔をしたそいつが杖を振りかざして命令する。怪物は唸り声をあげて町を破壊し始めた。

唯「あぁぁ! 町が壊されていく!」

梓「ひどい……」

律「二人とも! ぼーっと見てる場合かよ! 早くシェルターに避難するぞ! 澪、立てるか?」

澪「う、うん」

 澪が律の肩を借りて起き上がっているとき、携帯を耳にあててどこかに電話していた紬の顔が恐怖ではない色に染まっていた。

紬「ど、どうして……光子力研究所のことを……」

梓「ムギ先輩! 早く逃げましょう!」

紬「え、えぇ」

 五人は急いで荷物を持った。
493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/14(月) 17:25:38.67 ID:iXDKA6B20

唯「あずにゃん!」

梓「なんですか、唯先輩!」

唯「むったんを忘れちゃダメだよ!」

梓「い、命をまず大事にしてください、唯先輩!」

唯「ダメだよ! むったんはあずにゃんの大事な相棒じゃない!」

梓「でも……!」

律「そうだ、梓、むったんを持っていってやれ」

梓「り、律先輩……」

 梓は律が肩に担いでいる澪のベースを見て気づいた。

 律のドラムセットを持っていくことはできない。

梓「……えいっ!」

 梓は自分のカバンをその場に投げ落とした。

律「あ、あずさ……?」

 梓は両腕をぐるぐると回して自分のギターを担いだ後、その手でスネアドラムを持ち上げた。

梓「にゃ―――――――――っ!!!!」

 梓が猛ダッシュで部室を出ていった。それを見ていた紬と唯も自らのカバンを投げ捨て、ドラムセットを可能な限り持つ。

唯「さぁ行こう、りっちゃん!」

律「ぐすっ……あぁ!」

 桜ヶ丘高校は地下が緊急時のシェルターになっている。五人はそこに逃げた。

さわ子「あ、唯ちゃんたち。無事だったのね」

律「はい、澪がまだ腰抜けてますけど」

澪「すみません……」

さわ子「いいのよ、いきなりだったものね」

唯「……さわちゃん、憂は?」

さわ子「憂ちゃんは……まだ避難が確認されていないわ。たぶん、もうお家に帰っているのだと思うけど……ゆ、唯ちゃん、どこに行くの!」

唯「私……憂を迎えに行きます!」

律「何言ってるんだ、唯!」

さわ子「そうよ! 外ではもう連邦軍の戦闘が始まっているのよ!」

唯「で、でも、憂はきっとおばあちゃんと一緒に避難しようとするはずです!」

梓「おばあちゃんって、唯先輩の近所の……」

唯「うん、憂は絶対におばあちゃんと一緒だよ。私が憂の立場ならそうするもん!」

さわ子「唯ちゃん……」

唯「でも、憂でもおばあちゃんと一緒じゃここまで逃げられないかもしれないから、私が迎えに行って助けてあげないと!」

さわ子「唯ちゃん……わかったわ」

唯「さわちゃん、いいの?」

さわ子「ただし、私も一緒に行くわ。私の車に乗せていってあげる」

唯「ありがとう、さわちゃん!」
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/14(月) 17:27:17.39 ID:iXDKA6B20

 唯の家の近所

ガラダK7「ぎゃおぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!」

憂「おばあちゃん、だいじょうぶ?」

おばあちゃん「私はだいじょうぶだから、憂ちゃんは先にお逃げ」

憂「いやだよ! そんなことできない!」

 おばあちゃんに肩を貸す憂のおよそ一〇〇メートル後ろでは機械獣が大きな足で建物を破壊していく。その周囲では戦闘機が飛んでミサイルを撃っているが、まるで歯が立たない。

憂「おばあちゃん、はやく逃げよう!」

おばあちゃん「駄目だよ、私は、ここを守らなくちゃいけないんだ……」

憂「何を言ってるの! 家より命のほうが大事だよ!」

おばあちゃん「違うんだよ、憂ちゃんこのお家はただのお家じゃないんだよ」

憂「えっ……?」

おばあちゃん「私は、唯ちゃんを待たなくちゃいけないんだよ。おじいさんのためにも」

憂「おじいさん……お姉ちゃんがいったい……」

唯「うい―――――っ!」

 不可解な文句に憂が眉をひそめると、唯が飛び込んできた。

憂「お姉ちゃん! どうして!」

唯「憂とおばあちゃんを迎えに来たんだよ!」

おばあちゃん「おぉ、唯ちゃん、よく来てくれたねぇ」

唯「おばあちゃん、早く逃げよう! さわちゃんが車を用意してるから!」

さわ子「おばあちゃん、早く避難しましょう」

おばあちゃん「待って、少しだけ待ってちょうだい、唯ちゃん」

 そう言って、おばあちゃんは仏壇のほうへ歩いていく。

唯「おばあちゃん……?」

 唯と憂とさわ子が不安そうに見つめている背中が仏壇の奥にあるスィッチを押すと、機械獣が起こしたのとは違う揺れが四人を包んだ。

憂「な、何が……」

唯「ふおっ! 畳が動いてる!」

さわ子「……階段?」

おばあちゃん「唯ちゃん……この下におじいさんが待っているの……」

唯「おじいさん? おじいさんって、発明好きの十蔵おじいちゃん?」

憂「でも、おばあちゃん、十蔵おじいちゃんは何年も前に行方不明になったんじゃ……」

おばあちゃん「いいえ、おじいちゃんはとある発明のせいで悪い人に追われるようになったから、この地下で密かに研究を続けていたんだよ」
495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/14(月) 17:28:15.17 ID:iXDKA6B20

さわ子「悪い人って、もしかして今外で暴れている……」

おばあちゃん「それはわからないよ……でも、この町に危険が迫ったとき、唯ちゃんを研究所に案内しろと私は言われたんだよ」

唯「私を、おじいちゃんが……?」

おばあちゃん「もしかしたら、すごく危険なことかもしれない……でも、おじいさんは唯ちゃんにそれを託そうと思っていたのよ」

さわ子「待ちなさい、生徒を危険な目にあわせるわけにはいかないわ」

憂「さわ子先生……」

さわ子「早く逃げましょう。今ならまだ――」

 さわ子がおばあちゃんの肩を持とうとしたその瞬間だった。

 キィィィィィィ……チュドォォォォォォン!

憂「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 ガラダK7に落とされた戦闘機が家の近くに落ちたのだ。

 縁側にいた憂が爆発の衝撃波に吹き飛ばされ、倒れた。

さわ子「憂ちゃん!」

唯「憂!」

憂「う、おねえちゃん……」

唯「…………う、憂、血がでてるよ!」

 こめかみから血を流す妹を見て、唯は今まで感じたことがない熱が体の芯に滾っていくのがわかった。

唯「さわちゃん、私、おじいちゃんのところに行くよ」

さわ子「唯ちゃん……!」

唯「なんにも悪いことなんてしてない憂が傷つくのはいやだよ……」

憂「おねえちゃん……」

唯「私が、おじいちゃんを信じて憂が、みんなが助かるなら……」

さわ子「……わかったわ、今から逃げるよりは、ここから地下に入ったほうが安全かもしれないしね」

 唯が憂を、さわ子がおばあちゃんを助け起こして、四人は地下への階段を下りていく。

唯「憂、だいじょうぶ?」

憂「うん……頭が少しぼーっとするけど、平気だよ」

 階段は三十段くらいで、広い空間に出た。

唯「真っ暗……」

 唯が呟いた直後、ばん! と強い音をたてて広い空間をたくさんのライトが照らした。

「よく来たな! 唯!」
496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/14(月) 17:35:00.72 ID:iXDKA6B20

 大きな声は唯がよく知っているものであった。

唯「この声、おじいちゃん!?」

「残念だが、今のワシの声は録音したものだ。ワシが一方的に喋るだけだ」

唯「えぇ〜、返事して損した〜」

「さて、目が慣れてきたところで、早速今お前の目の前にあるものを見てくれ!」

 眩しさに目が慣れた唯の目に飛び込んできたのは、

唯「ろ、ロボット……?」

 黒いボディ、鎧兜の如き顔面、胸の赤いブイの字形――

「これこそが! ワシが発見し、研究した究極の鉱石ジャパニウムから生まれた超合金Z! 光子力エネルギー! そして!」

唯「そ、そして……?」

 ごくりと唾を飲む。

「無敵の装甲に最強のエネルギー! 人類を守る鉄の城!! その名も!」

唯「その名も!?」

「その名も!」

唯「その名も!?」

「マジンガーZ!!!!」

唯「マジンガーZ!!!!」

 大きく開いた目と口で鋼鉄の魔人と対面した唯は、同時に外で暴れている機械の獣を思い浮かべた。
 途轍もない敵と戦う途轍もないロボットがいま、唯の手に届いたのだ。
 澪の、律の、紬の、梓の顔が浮かび、背中の憂の穏やかな笑みに唯は目を瞑った。

唯「おじいちゃん……」
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/14(月) 17:35:44.22 ID:iXDKA6B20

「さぁ唯! マジンガーZの頭部のパイルダーに乗り込むのだ!」

唯「……憂、ちょっと行ってくるね」

憂「うん、気をつけてね、お姉ちゃん」

 唯は眩しいライトの中を歩いていく。

 鉄骨造りの階段を上り、黒い巨体の全身をよく眺めてパイルダーに乗り込んだ。

 それまで天井から聞こえてきた十蔵の声が今度はパイルダーの中から聞こえた。

「唯! マジンガーZはそのあまりにも強大すぎるパワーにより、乗る者を神にも悪魔にもしてしまう!」

唯「神にも、悪魔にも……」

「だが唯、お前の優しさはワシはよく知っている。だからこそ、ワシはお前にマジンガーZを託すのだ」

唯「おじいちゃん……」

「お前がマジンガーZに乗っておるということは、この地球に危機が迫っているということ」

唯「……」

「そして、地球を脅かす者達の名を、ワシは一つ知っておる」

唯「誰なの、おじいちゃん?」

「その名はドクター・ヘル! ワシと同じように光子力の研究をしていた男じゃ!」

唯「ドクター・ヘル……?」

「やつは必ずやミケーネ帝国の機械獣を引き連れて地球を征服する!」

さわ子「機械獣……あの怪獣の肩に乗っていた怪人が言っていたわ……」

「今、お前を襲っているものが何者かはワシは知らぬ。だが、これだけは言っておく」

唯「な、なに……?」

「ドクター・ヘルを倒さぬ限り、地球の平和は無い! 人類に逃げ場無し!」

唯「人類に……逃げ場……無し……」
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/14(月) 17:36:22.23 ID:iXDKA6B20

「さぁ、唯、マジンガーZを出撃させるぞ!」

唯「う、うん!」

 汗ばむ手で唯は操縦桿を握りしめた。

「起動にはお前の声でパイルダー・オンと叫ぶのじゃ!」

唯「わかったよ、おじいちゃん!」

 唯の手は力を入れすぎて痛くなってきている。怖い。これから起こる全てのことが怖い。

 だが、唯は叫んだ。

唯「パイルダァァァァァァ・オーン!」

 マジンガーZの目が赤く光る! 頭上の天井が開く!

唯「マジィィィィィン・ゴォォォォォォォ!」


 デデッデ デデッデ デデッデ デデッデ
 デデッデーデデレデレデレ デッデ デッデ デデッデ
 ソーラニーソビエルークロガネノーシロー
 スーパーロボットーマジンガーゼットー
 ムテキノチカラハボクラノタメーニー ヘイワノココロヲーパイルダーオォーン!
 トバーセーテッケンーロケットパンチー
 イマダーダスンダーブレストファイヤァッー
 マジンゴー マジンゴー マジンガーゼェェーット!
499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/14(月) 17:38:06.05 ID:iXDKA6B20

ガラダK7「ぎゃおぉぉぉぉぉぉん!」

 ガラダK7と共に破壊を振り撒いていたあしゅら男爵の前に、マジンガーZが立った。

あしゅら男爵「ぬうっ! なんだあのロボットは!」

唯「やいっ、機械獣め! このおじいちゃんの造ったマジンガーZでやっつけてやる!」

あしゅら男爵「なに! マジンガーZだと!? それならばあれがドクター・ヘル様が仰っていた光子力エネルギーのロボット!」

唯「さぁ、どこからでもかかってこい!」

 だが、あしゅら男爵は人生最大の笑い事に出会ったとばかりに腹をよじらせた。

あしゅら男爵「くくく……ふははははははは! ドクター・ヘル様が唯一恐れるというロボットがどんなものかと思えば、馬鹿なガキが一人乗っているだけではないか!」

唯「なにおう! 変な声のやつめ!」

あしゅら男爵 「くくく……いいだろう、このあしゅら男爵が相手をしてやる! ゆけぃ! ガラダK7!」

 あしゅら男爵が杖を振りかざすと、機械獣は顔の横についている鎌を手に持った。

ガラダK7「ぎゃおぉぉぉぉぉぉぉん!」

唯「よし、来い! ……って、どうやって戦えばいいの?」

ガラダK7「ぎゃおぉぉぉぉぉぉん!」

 無意味にコクピットの中でファイティングポーズをとる唯へ、機械獣がすぐそこまで迫っている!

唯「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ!」

 思わず唯は顔をかばう。機械獣の鎌がマジンガーZの肩に振り下ろされる!

 ガキィン!

あしゅら男爵「なんだと!」

唯「あ、あれ、なんともない……?」

あしゅら男爵「む、無傷だと……! 機械獣はどんな金属よりも硬いスーパー鋼鉄で出来ているというのに!」

唯「本当に、おじいちゃんが造った超合金Zは無敵なんだ!」

あしゅら男爵「ぬうぅぅぅ! 超合金Zだとぉぉぉ! えぇい、ガラダK7! 体当たりでパイロットを倒してしまえ!」
500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/14(月) 17:40:39.97 ID:iXDKA6B20

ガラダK7「ぎゃおぉぉぉぉぉぉん!」

唯「うわぁぁぁ! ぐらぐら揺れるぅ! おじいちゃん、どうしたらいいのぉ!?」

 機械獣がマジンガーZに張り付いて前後に揺さぶる。頭をぶつけないように腕を広げた唯の指がコクピット内のボタンをいくつか押した。

あしゅら男爵「なんだ!? マジンガーZの口が!」

 マジンガーZの口が開き、そこから酸の風ルストハリケーンが噴き出した!

 ブュオォォォォォォ! ザザァァァァァァァ!

ガラダK7「ぎゃおぉぉぉぉぉぉ! ……おぉ、ぉぉぉぉん……」

あしゅら男爵「ど、どうしたことだ、ガラダK7!」

唯「ほ、ほえぇぇぇ……」

 ルストハリケーンによってガラダK7の体は一瞬で錆びてぼろぼろになってしまった。更にあしゅら男爵にも少し当たっていた。

唯「た、倒しちゃったの……?」

あしゅら男爵「ぐうぅぅぅ! これでは戦えん! マジンガーZ、勝負は預けるぞ!」

唯「二度と来るなー! この平沢唯さまとマジンガーZがいる限り、町に手は出させないぜー!」
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/14(月) 17:41:43.46 ID:iXDKA6B20

 あしゅら男爵がいなくなった後の桜ヶ丘高校

律「唯! 無事だったか!」

唯「あ、りっちゃーん!」

律「も、もしかしてお前がこのロボットに乗っていたのか!?」

唯「うん、おじいちゃんのマジンガーZだよ」

梓「……かっこいい」

唯「でしょでしょー! あずにゃんは違いがわかる子だねぇー!」

梓「はにゃー! くっつかないでください!」

紬「マジンガーZ……もしかして、兜十蔵博士の……」

唯「え? ムギちゃんおじいちゃんのこと知ってるの?」

紬「その……直接の面識はないのだけれど……そうね、みんなになら教えてもいいかな……」

澪「ムギ? 何のことだ?」

 ちょうどそのとき、ムギの前に黒塗りの高級車が停まり、紬の執事の斉藤が現れた。

斉藤「お嬢様、お迎えに上がりました」

紬「えぇ、ありがとう、斉藤さん。さぁ、みんな乗って」

さわ子「乗ってって、どこに連れて行くの?」

紬「……光子力研究所です」

 斉藤執事が運転する車に乗った唯、澪、律、紬、梓、さわ子、憂の七人が降りたのは、一見するとだだっ広いだけの更地だった。

さわ子「ここって、ムギちゃん家の土地だったのね」

律「でも、研究所どころか何も見えないぜ」

紬「光子力はまだ試験段階のエネルギーだけど、非常に強力かつ生産効率の高いエネルギーだから、悪用されないよう極秘裏に研究していたの」

 紬は斉藤にお願いしますと言ってから、続けた。

紬「だけど、あのあしゅら男爵という人は少なくとも光子力研究所がこの町にあることを知っていたわ」

梓「そういえば、最初にそんなことを言ってましたね」

紬「あんなやり方をされてはこの町が破壊されてしまう。だから先ほど連邦政府と話をして、光子力研究所を公開することに決定したの」

唯「えっ、えっ? どういうこと?」

憂「下手に町を壊されてしまうよりは、あらかじめ見せて注意を引こうということですか?」

紬「えぇ、そうよ、憂ちゃん……始まるわ」

 直後、ウウゥゥゥゥゥゥゥゥという耳に痛いサイレンが鳴り響いた。

 そのサイレンの端々でガコン、ガコンと大きな杭を打つような音が聞こえていた。

澪「地面が、開いてる……」

 砂の地面に擬装された更地の下で機械の扉があちこちで開き始めた。そこから色々な形の物がせり上がってくる。

唯「すごい……建物が地面から生えている……」

 唯たちから見て右手側からは二五メートルのプールがまるで最初からそこにあったかのように見えていた。

 最後に桜ヶ丘高校の校舎がすっぽり入りそうなくらいの穴が空き、最も巨大な建築物が唯たちの前に立ち上がった。

梓「これが……」

唯「光子力研究所……」

紬「そうよ、地球人類最後のエネルギーを開発する機関よ」
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/14(月) 17:42:34.97 ID:iXDKA6B20

 光子力研究所 内部

紬「光子力研究所は地球連邦極東支部の臨時司令室も兼ねているの」

 廊下を先頭で歩く紬が詳しく説明しながら歩き、唯たちはその後ろに続いていく。

澪「第一支部は東京に、第二支部は佐世保にあるんだよな」

律「へー、そうなのか」

梓「律先輩……常識ですよ……」

さわ子「連邦軍の基地に、私たちを案内してもいいのかしら……?」

紬「司令部になるといっても、あくまでも臨時になるときのものだし、研究所自体はウチの父の会社が保有しているものだから、連邦軍の影響はあまりないんです。それに……」

唯「それに?」

紬「みんなもあまり無関係というわけじゃないのよ」

律「どういうことだよ、ムギ」

紬「司令室に行けば、わかるわ」

 会話をしているうちに七人は司令室まで来ていた。

紬「紬です。みんなを連れてきました」

 司令室の扉が開く。司令室というわりにはこざっぱりとしていて、何人かの研究員らしき人がいるだけだったが、その真ん中で紬たちを待ち構えていた人物を見たとき、澪と律が同時に驚きの声をあげた。

澪「パパ!?」

律「み、澪ん家のおじさん!?」

梓「えっ!? あのちょっとダンディな人が澪先輩のお父さん!?」

紬「えぇ、光子力研究所の所長でもある秋山弦之助教授よ」

秋山「どうも、お久しぶりです。紬お嬢様」

紬「お嬢様はよしてください、教授」

澪「えっ、えっ! どうしてムギとパパが知り合いなの!? っていうか何でパパがこんなところにいるの!?」

秋山「私はここの研究所の所長で、琴吹財閥が研究所のスポンサーだからだよ、澪」

紬「ごめんなさい、澪ちゃん、隠すつもりはなかったのだけど……」

澪「い、いや、別に怒っているわけじゃないけど……」

律「ちょ、ちょっと待ってくれ、いや、ください、おじさん」

秋山「なんだい、律くん?」

律「私の記憶じゃ、ウチのお父さんは確かおじさんの同僚って言ってた気がするんだけど……」

 律がおでこに指をあてて眉間にしわを寄せていると、再び扉が開いた。

田井中「おぉ! もう来ていたのか、律!」

律「げぇっ! クソオヤジ!」

唯「えーっ! あの丸っこいツルピカのおじさんがりっちゃんのお父さん!?」

律「人の親父をツルピカ呼ばわりするな!」
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/14(月) 17:43:51.39 ID:iXDKA6B20

田井中「はははは、君が兜十蔵博士が話していた平沢唯くんかい? 娘がいつも世話になっているね」

唯「いやぁ、それほどでも〜」

律「世話された覚えないんだけど! つうか何でオヤジがこんな立派な研究所で働いてんだよ! 土木作業員かと思ってたよ!」

秋山「ははは、ひどい言われようだな、こう見えても彼は七つの博士号を持っているのだよ」

律「マジで!? 澪、それって偉いのか!?」

澪「めちゃくちゃ偉いよ!」

律「マジかよ! もっと自慢しろよ、バカオヤジ!」

田井中「いやあ、能ある鷹は爪を隠すと言うじゃないか。敵を騙すにはまず味方からとか」

律「娘を騙すなよ!」

秋山「さて、そろそろ本題に移ろうか」

 秋山教授がこほんと咳払いすると、みんなは静かになった。

秋山「この光子力研究所では日本でのみ採掘されるジャパニウムという鉱石と、それから作ることが出来る光子力エネルギーと超合金Zについて研究している」

田井中「今では弦乃助が所長をしているが、元々ジャパニウムを発見し研究していたのは兜十蔵博士だったんだ」

唯「おじいちゃんが……」

秋山「だが、兜博士はある日突然研究所から姿を消してしまった。連邦政府も世界中を探したのだが、見つからなかった」

憂「でも、おじいちゃんは実はすぐ近くの地下に潜んでいたんですね」

田井中「そうだ、灯台下暗しとはまさにこのことだ」

秋山「兜博士のいなくなった研究所で古株だった私と田井中が研究所の責任者として跡を継ぎ、最近になってようやく採掘用巨大人型ロボットの試作機が完成したのだが……」

さわ子「それをどこからか聞きつけて、あのあしゅら男爵という人が来たのね」

田井中「その通りだ。あしゅら男爵のバックにいるのがドクター・ヘル。彼は兜博士のライバルとも言える人物で、とても優秀な科学者だったのだが、研究の最終目的は究極の戦闘兵器を開発することだったんだ」

秋山「おそらく彼は超合金Zが優れた金属であることを知って、あの機械獣という怪物に応用しようとしているのだろう」

紬「研究所が地下に隠されていたとはいえ、あのままあしゅら男爵が破壊を続けていれば、今ごろはこの研究所はドクター・ヘルに奪われていたわ」

田井中「そうしたら、半年も経たないうちに地球はドクター・ヘルに征服されていただろう」

秋山「それを救ってくれたのが……」

唯「おじいちゃんのマジンガーZ……」

秋山「その通りだ。きっと兜博士はこうなることをあらかじめ予測していたんだろう」

田井中「だからいきなり姿を消して、対抗するための兵器としてマジンガーZを密かに建造していたのだろう」

律「えっ? なんで秘密にするんだよ。ちゃんとバラしとけばそのドクター・ヘルってやつに狙われなくても済んだかもしれないだろ」

澪「今の連邦政府はジオン公国とか反発的なコロニーに対して強硬的な態度を取ってるから、真っ先に取り上げられちゃうよ」

秋山「うむ、そうしたらドクター・ヘルの侵略に対して対抗できる手段がなくなってしまう」

律「でもさ、連邦がちゃんとマジンガーZを持っていれば、イギリスにコロニーが落ちることはなかったかもしれないだろ」

澪「そ、それは……」

唯「おじいちゃんが言ってた……」

律「唯……?」

唯「マジンガーZは、その強大すぎる力ゆえに、乗る者を神にも悪魔にもしてしまうって……」

憂「お姉ちゃん……」
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/14(月) 17:45:04.57 ID:iXDKA6B20

唯「おじいちゃんは、マジンガーZを悪用されたくなかったんじゃないかな……」

律「悪用ったって、連邦政府なんだからさ」

田井中「律、ちょっと」

律「何だよ」

田井中「平沢くん、一つ質問してもいいかな?」

唯「は、はい」

田井中「マジンガーZを悪用すると言ったけど、君が悪用するならどんな風にマジンガーZを使う?」

唯「えっ? ど、どうやってって、そんなこと言われても……新幹線を止めちゃうとか?」

梓「唯先輩……」

律「確かに悪用だけどさぁ……」

唯「だ、だって、急に悪いことしろなんて言われても、わかんないよぅ」

田井中「それがたぶん、兜博士が君にマジンガーZを託した理由だよ」

唯「えっ、どういうこと?」

田井中「兜博士は、君ならマジンガーZを悪いことに使わないだろうと信用したんだよ」

唯「へ、へぇー、そうなんだー……」

梓「唯先輩、よくわかってないでしょ……」

唯「えへへ……」

憂「お姉ちゃんが優しい人だから、おじいちゃんはお姉ちゃんにマジンガーZをくれたんだよ」

唯「おぉ、そういうことなら自信あるよ私は。優しさ大臣だよ」

憂「お姉ちゃん、かっこいい!」

梓「ダメだ、この姉妹……」

秋山「うむ、そこで平沢くんにお願いがあるのだが……」

唯「何ですか?」

秋山「今日のようにドクター・ヘルは様々な手段で光子力研究所を襲うだろう」

田井中「君とマジンガーZでこの町を守ってくれないだろうか?」

唯「はい、わかりました!」

律「はやっ!」

澪「もうちょっと悩めよ!」

唯「だって、よく考えてもわからないし……それでもあのドクター・ヘルがこの町にやってくるんでしょ?」

紬「そうね……」

唯「そしたらこの町がなくなっちゃうんだよ! 私、戦うよ!」

さわ子「唯ちゃん……」

唯「あ、さわちゃん……やっぱりさわちゃんは反対……?」

さわ子「当然よ、生徒が危険な目にあうなんて……でも、もうやるって決められちゃったのよね……」

唯「さわちゃん……」

さわ子「だったら、せめてご両親にはちゃんと報告しなさい」

唯「は、はいっ! さわちゃん、ありがとう!」


 第一話 誕生! 驚異のスーパーロボット! 完
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/14(月) 17:49:11.13 ID:9WMOosq8o
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 17:30:22.27 ID:ohhIZC8s0

 第二話

 宇宙 サイド7 コロニー内

なのは「みなさん、こんにちは。高町なのはです。私ちょっといろいろとありまして、今は魔法少女をしています。この子はパートナーのレイジングハート」

レイジングハート「nice to meet you」

なのは「レイジングハートが言うには、このあたりの宇宙にジュエルシードという大変なものがいくつも散らばってしまい、それを集める役目を私がお手伝いしているんです」

レイジングハート「sorry my master」

なのは「うぅん、レイジングハートは悪くないよ。それで、今はジュエルシードを三つ集めたところで残りは二十個くらい。しかもいくつかは他のコロニー宙域にもあるみたいで、なのはの初めての宇宙旅行はどうやら生身になりそうです」

アリサ「なのはぁ〜」

すずか「なのはちゃ〜ん」

ハロ「ハロハロ、ナノハ、ガッコウ、ハヤクシロ」

なのは「あっ、今の声はアリサちゃんとすずかちゃんです。いつも一緒に学校に行っている仲良しさんで、なのはとも仲良し! アリサちゃんは気が強いけれど本当はやさしくて、すずかちゃんは大人しいけれどとっても機械について詳しくて、ハロちゃんはすずかちゃんが作ったんだって!」


 宇宙 サイド7付近の暗礁空域

ジーン「デニム曹長、サイド7、コロニーへの侵入に成功しました」

デニム「うむ、ワシも続いている。この後はギガノス軍と連携して連邦のV作戦の調査を開始する」

ジーン「はっ!」

デニム「よし、ギガノス軍も配置に着いた。作戦開始だ。ジーン」

ジーン「了解!」
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 17:32:39.20 ID:ohhIZC8s0

 サイド7 コロニー内

アリサ「それでね、連邦のそのV作戦っていうのが、どうやらこのサイド7で極秘に行われているんだって!」

なのは「へぇー、でもそしたらもしかしてここがジオンの人に狙われちゃうんじゃないかなぁ……」

アリサ「げっ、それは確かに大変だわね……それで、すずかはV作戦のモビルスーツについて何か知らないの? すずかのお姉さんって開発部門で働いてるんでしょ?」

すずか「うーん、前にそれっぽい設計図を見せてもらったことはあるけど……」

アリサ「ほーら! きっとそれよ!」

 ズドォォォォォォォン!

すずか「きゃあぁぁぁ!」

アリサ「な、なによ、なんなのよ!」

なのは「あ、あれっ!」

 なのはが指さした先にはジオン公国のモビルスーツ、ザクがいた。 

アリサ「じ、ジオンのモビルスーツ!?」

すずか「は、はやく避難しないと!」

 二人はシェルターのほうへ走り出す。
 やや遅れてなのはも走り、思念通話でレイジングハートとコンタクトを開始した。

なのは「レイジングハート! 魔法でモビルスーツと戦える?」

レイジングハート「(可能です。ただし、有効なダメージは与えられません。非殺傷を解除すれば別ですが)」

なのは「それはダメだよ。でも、みんなが助かる可能性が上がるなら……」

レイジングハート「alllight my master」

アリサ「あ、ちょっとなのは! どこに行くのよ!」

なのは「ごめん、二人は先に行ってて!」

すずか「なのはちゃん!?」

 アリサとすずかから離れてなのはは細い路地へと入っていき、抜けた広い住宅街で一つの家の中に身を隠した。

なのは「ここならいいよね、レイジングハート」

レイジングハート「alllight my master」

なのは「我、使命を受けし者なり……契約の下、その力を解き放て……風は空に、星は天に……不屈の心はこの胸に!」

レイジングハート「stand by ready set up」

なのは「この手に魔法を! レイジングハート、セーット・アーップ!」

 テレテテンテテーンテーテーテー テレテテンテテーンテーテーテー
 ヒザヲカカエテーヘーヤノカタスミー イツモフアンデフールエーテタ
 ホントウヲシルコトガーコワクテー トビラーヲートジタ
 ヤサシイウソニーイバショーミツケテー ユメノナカニニゲコンダ
 ダレモシラナイー コドクーノウミヲー フカイアオニソメーテク
 サビシサーカクスー イチーズナーオモイ キミノーココロヲーキズツケーテイル 
508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 17:35:59.41 ID:ohhIZC8s0

ジーン「な、なんだあれは!? ガキが空を飛んでいやがる!」

 仰天しているザクのパイロットの正面にフライ・アーフィンで寄って、なのはは大きな声を出す。

なのは「あの! どなたかは存じませんが、せめてみんなが避難するのを待ってはくれませんか!?」

ジーン「少佐のような力を持っている奴か!? あれが連邦の新兵器なのか!?」

 ヒートホークを持つザクの手が高く振り上げられる。

ジーン「ガキだろうが関係ないぜ! ハエみたいに叩き落してやる!」

デニム「ジーン、よせっ! 一度ひいて様子を見るんだ!」

ジーン「少佐だって、戦場の戦いで勝って、出世したんだ!」

レイジングハート「protection」

 ぶぅん! ジーンのヒートホークがなのはを襲う。しかしなのはの魔法は単純な物理攻撃では破ることはできない。

ジーン「ちぃっ! なんて硬さだ!」

 ザクはヒートホークをめったやたらに振り回すが、十分の一以下の大きさであるなのはには簡単には当てられない。

ジーン「くっ! このっ! ちょこまかと……うおぉ!?」

 ずずぅん……! 無理な駆動がたたって勢い余ったザクは横転してしまった。

なのは「なんとか時間は稼げるかな……」
509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 17:36:53.56 ID:ohhIZC8s0

 なのはとジーンが戦っている頃、すずかはデニムの威嚇射撃の影響でアリサと離れ離れになってしまっていた。

すずか「もしかしてこれは……連邦の新型モビルスーツ……?」

 周囲の連邦兵は皆倒れてしまっている。すずかは辺りを見渡したが、ここからシェルターへの脱出は不可能に近い。
 そして彼女の手には連邦兵が落としたRX−78−2ガンダムのマニュアルが握られていた。

 ここからシェルターへ走って逃げるよりは、このモビルスーツの中に入ったほうが危険は少ない。すずかはそう思ってガンダムによじ登った。
 そのとき、すずかは空を飛ぶなのはの姿を見た。

すずか「なのはちゃん!?」

 だが、不幸なことにデニム機のモノアイが白いモビルスーツを見てしまっていた。

デニム「あれはモビルスーツ! V作戦の要の一機か!」

 すずかは急いでマニュアルを頼りにハッチを開け、コアファイターの中に潜り込んだ。
 すぐにでも動かせるようにしていたのか、エンジンのアイドリングは済んでいた。
 すずかはまずメインカメラを点けようとコンソールパネルに手を伸ばし、いくつものメモを発見した。かなり癖のある機体らしい。

 機械好きとモビルスーツ開発に携わっていた姉の影響もあって、ザクタイプのモビルスーツならば操縦できる程度の技量はすずかは持っていた。
 多少の違いに戸惑いながらもマニュアルを見てガンダムの左右のペダルを踏み込んだ。

 ずずん……! 確かな震動がすずかの小さな臀部に伝わった。

すずか「この子……動く……!」

 デッ デッ デッ デッ デデデンデデデンデデデデデン
 モエアガーレー モエアガーレー モエアガーレーガンダムー
 キミヨーハシレー マダイカリニーモーエルートウシガーアルーナラー
 キョダイナーテキヲー ウテヨ ウテヨ ウテヨー
 セイギノーイカリヲーブツケロー ガンダームー
 キドウーセーンシー ガンダムー ガンダム
510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 17:38:37.14 ID:ohhIZC8s0

 サイド7 B地区

スズ「会長、この辺りにもう人はいないみたいです」

シノ「よし、我々もこのビーチクから早いところ逃げよう」

アリア「それにしても、さすがシノちゃんね。市民の脱出を先導するなんて」

シノ「我々は桜才学園生徒会として、生徒とその家族を守る使命がある」

スズ「こんなにまともな会長、初めて見ました」

シノ「しかし、問題がある」

アリア「何かしら?」

シノ「既に、我々のすぐ後ろにはギガノス帝国のメタルアーマーがいる」

スズ・アリア「な、なんだってー」

ギガノス兵「そこの女生徒三人! 貴様らに危害を加えるつもりはない! 早々に脱出せよ!」

スズ「中指立てたいところですけど、言うとおりにしましょう、会長」

シノ「ああ、代わりに人差し指と中指の間に親指を挟んでおこう」

スズ「ノーコメントです」

アリア「待って! あそこ、人が倒れているわ!」

 アリアが指さした先は連邦の拠点基地だ。

シノ「助けに行くぞ」

スズ「基地内ですよ、危険です!」

シノ「これくらいのことで危険だと行っていては、桜才学園の生徒会長は務まらないさ」

 制止する声をやんわりと受け流して、シノは基地へ駆け込み、呻いている兵士の上半身を助け起こした。

シノ「君! 大丈夫か!」

連邦兵「ぐぐ……君たちは……」

シノ「我々は桜才学園生徒会の者です。肩を貸します。逃げましょう」

連邦兵「ぐ……私のことよりも、これを……」

スズ「これは、鍵……」

連邦兵「桜才学園の生徒なら……一通りの講習は受けているだろう……頼む。D兵器を……あれを……ギガノスの手に渡っては……」

シノ「っ! しっかりしてください!」

アリア「シノちゃん、もう……」

スズ「D兵器って、何のことでしょう……この鍵と関係が……?」

アリア「スズちゃん、そのキーのタグに何か書いてあるわ」

スズ「本当だ。ア……イ……ダホ?」

シノ「連邦の輸送船アイダホのことじゃないか? ちょうどあそこに停泊している」

 三人はアイダホの開いていた後部格納庫に入った。そこには三つの機動兵器が立っていた。
511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 17:43:12.60 ID:ohhIZC8s0

シノ「D兵器とは、この機動兵器のことだったのか。鍵もちょうど三つある」

アリア「確かに必修科目で講習は受けているけれど……」

スズ「私たちでこいつを動かして、移動させろってことですか?」

シノ「……私は乗るぞ」

アリア「シノちゃん!?」

スズ「会長!?」

シノ「ここには遅かれ早かれギガノス軍が来る。我々はあの連邦兵からこのD兵器を頼まれたんだ」

スズ「無茶です! 正義感も行き過ぎれば自殺行為です!」

アリア「私はシノちゃんに賛成かな」

スズ「七条先輩!?」

アリア「これが、ギガノス軍の言う紳士的な革命だとしたら、私は連邦軍のほうがまだ好きだもの」

シノ「スズ、私も無理にとは言わない。その身長では操縦するのも難しいだろうしな……ぷ」

スズ「ムカっ、やりますよ! やってみせればいいんでしょう!」

 憤慨した足取りでスズは一番奥の、まるでパンケーキを重ねたような胴体を持つ白い機体へ乗り込んでいった。
 続いてアリアが一つ手前の青紫色の肩に大きな砲身を持つ機体へ、
 一番近くにある二本の黄色いアンテナが立っている細いシルエットの機体に、シノが座ってキーを差し込んで電源を入れた。

シノ「ドラグナー1型というのか、この機体は」

アリア「私のはドラグナー2型ね。砲撃主体みたい」

スズ「私のはドラグナー3型です。これは、EWAC搭載の電子戦用機みたいです」

シノ「なんだ、そのいーわっくというのは?」

スズ「Early Warning And Controlで早期警戒管制のことです。要するに他のユニットより目がいいということです」

シノ「そうか、うん? 認識番号? 1234567っと……」

スズ「か、会長! そんな適当な!」

アリア「私は貞操帯の暗証番号にしたわ」

シノ「アリアは偉い!」

スズ(もう降りたい……)

シノ「よし、↑←↑、ドラグナー1型、発進!」

 パパラパッパーパラパパーパー ジャストデッドヒート!
 パッパーパラパパーパー ジャストデッドヒート!
 キヲーツケテーダレカーダウォッチングユー
 セナーカカラキミヲオイツメーテルー
 フーリームイタラーマケサー
 キメラレターミチヲー タダアルクーヨリモー
 エランダジユウニー キズツクホウガイイー
 タオレールマデーハシルークライーアツクーイキテイータイーカラー
 バーニンハート バーニンハート ユーメーダーケハー
 フライハーイ フライーハーイ ワーターセーナイー
 アツクーモエルーチーヘーイセンー
 キミニーカケターデッドヒートノー I LOVE YOU!
512 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 17:48:45.28 ID:ohhIZC8s0

 初起動ということで、対話型コンピュータが講習で習ったとおりのことを実地でおさらいしてくれた。
 三人はよどみなく機体を歩かせることが出来るのを待ってから、格納庫から出て、ギガノス軍のメタルアーマーと対峙した。

ギガノス兵「うん? なんだあれは、あれが連邦のD兵器か!?」

スズ「ギガノス軍、こちらに気づいたようです」

シノ「我々の目的はドラグナーの確保だ。無理に戦う必要はない」

アリア「あちらのほうは逃がしてくれそうもないけれど……」

シノ「逃げ回れば死にはしないさ」

スズ「ここから近い脱出ルートをマギーで探します。私についてきてください」

シノ「何だ、マギーというのは?」

スズ「3型のコンピュータをコミュニケート式にした際の名前です。お二人の機体にもあるはずです」

シノ「本当だ。こっちはクララというらしいな」

アリア「私のはソニアちゃん」

シノ「へへへ、クララちゃん、お姉さんの言うとおりにしてね……」

スズ(降りたい……)

 ドラグナー三機が向かっていく先ではなのはとすずかが乗るガンダム、そしてジーンとデニムのザクがいた。

すずか「なのはちゃん、大丈夫!?」

なのは「この声……すずかちゃん!?」

デニム「何だと!? あのモビルスーツには子どもが乗っているのか!?」

ジーン「隊長! そいつが連邦のモビルスーツですか!?」

デニム「ジーン、一度退くぞ! 起動してしまった以上、どれほどのパワーがあるかわからん上に、子どもが乗っている!」

ジーン「またガキかよ! だったらむしろ好都合だ! 敵を叩くには早いほうがいいってね」

 ジーンのザクがヒートホークから140mmマシンガンに持ち替えた。

ジーン「さぁ、まずはその生意気に細っちろいアキレス腱を撃ち抜いてやるぜ」

すずか「く、来る!」

 銃口が火を噴く直前にガンダムは右に倒れこむように動いた。

すずか「ザクのシミュレーターよりずっと重い!」

デニム「な、なんだあの動きは!? す、すぐに起き上がるのか!?」

すずか「戦争……モビルスーツの戦い……怖い……」

 パイロットスーツも着ていないすずかにガンダム起動の凶暴な震動が襲い掛かる。
 小さな肩がぶるっと震えた。どうしてこんなものに乗っているのか……今さらすずかは自分がしている事の重大さを実感してしまうのだ。
 そのとき、ドラグナーが彼女たちの視界に入った。

デニム「何だあれは!? D兵器か!」

シノ「ジオン軍のモビルスーツ!?」

アリア「そばの白い機体……識別信号が出ているわ……」

スズ「ガンダム……味方機が交戦しているみたいです」

シノ「しかも、女の子が空を飛んでいるぞ」

スズ「ジオンの赤い彗星と似たようなものでしょうか?」
513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 18:04:10.00 ID:ohhIZC8s0

アリア「どうするの、シノちゃん?」

シノ「味方機を見捨てるわけにはいかない、戦闘しかない」

スズ「前にはザクが二機、後ろにはギガノスのゲルフが二機迫っています」

アリア「私が後ろのを相手するわ」

シノ「アリア!? 大丈夫なのか?」

アリア「2型は動きが遅い代わりに火力が魅力みたいなの、足を止めて当てるわ」

シノ「わかった。私とスズでガンダムを救出する!」

スズ「はい!」

なのは「新しいのが近づいてくる……」

レイジングハート「It seems that that is a friendly plane」

なのは「味方……?」

シノ「クララちゃん、何か武器を!」

 ドラグナー1型の手にレーザーソードが握られる。

ジーン「やっ、やる気かよ!」

 ザクのマシンガンが1型を捉える。

ジーン「喰らえっ!」

スズ「させないっ!」

 ズダダダダダッ! 3型のハンドレールガンがジーンのザクマシンガンを撃ち落した!

デニム「な、なんて正確な射撃だ! ジーン、退けぇ!」

ジーン「う、うおぉぉぉぉ!」

シノ「いけぇー!」

 ズシャァッ! シノの攻撃は緊急回避したザクの左腕をもぎ取っただけで終わった。

ジーン「ち、ちくしょう!」

デニム「速くて強い! ジーン、早く逃げるぞ!」

ジーン「くっそぉ、了解!」

 ザク二機は肩のハンドグレネードをばらまきながら後退していく。

シノ「どうやら諦めてくれたみたいだな。素人の私たちでよくできたものだ」

スズ「それほど、この機体がすごいってことですね」

シノ「アリアのほうはどうだ?」

アリア「こっちも諦めてくれたみたい」

シノ「よし、そこの君、大丈夫か?」

なのは「は、はい、なんとか……それより、すずかちゃんをお願いします。あの中に乗っているんです!」

シノ「わかった。スズ、ガンダムのほうは頼む」

スズ「わかりました」

すずか「あ……」

スズ「子ども……? もう大丈夫よ」

すずか「はい……ありがとうございます」

アリア「シノちゃん、あそこに戦艦が……」

シノン「そこのモビルスーツ及びモビルアーマー三機、こちらは連邦の戦艦、ホワイトベース士官、香月シノンよ。動けるならこちらに移動してきてください」
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 18:05:17.01 ID:ohhIZC8s0

 ホワイトベース ブリッジ

シノン「パオロ艦長、収容完了しました」

パオロ「うむ……すぐに発進させろ……ジオン・ギガノスが諦めるわけがない。早くコロニーを出るのだ」

シノン「了解しました。お怪我は平気ですか?」

パオロ「……この調子では、月までもたないだろう」

シノン「そんな……」

パオロ「万一の時は、君が指揮を執ってくれ」

シノン「む、無理です、私にはそんなこと」

パオロ「避難民の収容からブリッジの統率について私は見ていた。君にはその能力がある」

シノン「わ、私は艦長の言葉に従って事を進めただけです」

 ホワイトベース 格納庫

アリサ「なのは! すずか!」

なのは「アリサちゃん……」

アリサ「何やってるのよ、バカ! あんな無茶しちゃってぇ!」

なのは「ごめん、アリサちゃん……」

アリサ「ほんとに……えぐっ、バカなんだからぁ……ぐすっ」

ハロ「ハロハロ、スズカ、バカ、スズカ、ハロハロ」

すずか「ごめんね、アリサちゃん……」


 ホワイトベース 格納庫 ドラグナー1型 コクピット内

シノ「やっぱり、無理ですか、リュウさん?」

リュウ・ホセイ「あぁ、やっぱりお前さんのデータでロックがかかっちまったらしい。つまり、お前にしか動かせねえ機体になっちまったのさ」

シノ「そうですか……」

スズ「私たちのほうも同じみたいです」

シノ「そうか……やはり不用意に動かすべきではなかったかな……」

リュウ「いや、あそこで動かしてくれなかったら、D兵器は奴らに奪われていた。それにいつまでもパイロット登録が解除できないわけじゃあない。ちゃんとした施設に行けば解除できる」

アリア「じゃあ、それまでは私たちでこの子たちを動かさなくちゃいけないんですか?」

リュウ「そうだな、まあ、お前さんたちの操縦技術は初めてにしちゃ上出来だったから、いきなりとんでもないのと戦わなけりゃ、何とかなるだろ。連邦の新型なんだからな」

シノ「とんでもないのとは……?」

リュウ「ギガノスの蒼き鷹とかジオンの赤い彗星とかだな」
515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 18:09:17.49 ID:ohhIZC8s0

 サイド7付近 ジオン軍 ムサイ級巡洋艦ファルメル ブリッジ

赤い彗星「それで、連邦軍の新型は戦艦一隻とモビルスーツ一機にメタルアーマー三機、そして私のような奴が一人というわけね」

デニム「はい、帰還の途中にジーンのザクが暴発し、失ってしまいました。申し訳ありません」

赤い彗星「別にいいわ。ザク一機の損失でそれだけの情報が得られたのだから、安いものよ」

デニム「はっ。それで少佐、これからどうするおつもりで?」

赤い彗星「連邦の戦艦を攻撃するわ。可能ならば、新型も奪取する」

デニム「しかし、戦力が足りないかと……」

赤い彗星「心配要らないわ。ギガノスから援軍が来ているから」

デニム「援軍……ですか?」

赤い彗星「そうよ、ギガノスの蒼き鷹よ」

デニム「あ、蒼き鷹……! ギガノス決起の際に連邦の戦艦を七隻落としたという……」

 取ったばかりのヘルメットの下の顔をひきつらせるデニムの後ろで、ブリッジの扉が開き、ギガノスの女性制服が靴音を鳴らした。

蒼き鷹「それほど、V作戦の価値は高いということよ。連邦にとっても私たちにとっても」

赤い彗星「なに、いつの間に来てたの?」

蒼き鷹「あんたたちが呼んだんじゃない」

赤い彗星「そう、それじゃさっそく出てもらおうかしら。狙いは連邦の新造戦艦の破壊と新型機の奪取よ」

蒼き鷹「良い作戦があるんだけど、聞きたくない?」

赤い彗星「……聞くだけなら聞いてあげるわよ」
516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 18:09:43.03 ID:ohhIZC8s0

 ホワイトベース ブリッジ

オペレーター「……! レーダーに反応! ジオンのムサイ級戦艦が接近!」

シノン「なんですって! 距離は!?」

オペレーター「どうやら戦闘距離ギリギリのところを航行しているみたいです」

シノン「パオロ艦長、どうしますか?」

パオロ「……こちらのメガ粒子砲の射程内か?」

オペレーター「射程内ではありますが、命中率はかなり低いです」

パオロ「かまわん……撃て……!」

オペレーター「了解!」


 ファルメル ブリッジ

オペレーター「敵艦から射撃翌来ます!」

赤い彗星「この距離よ、どうせ当たりはしないわ」

蒼き鷹「それでもこの距離まで有効な砲撃とはね、さすがは連邦の新造戦艦といったところかしら」

赤い彗星「敵の索敵圏を行き来して疲弊させるのはわかるけど、こんな調子じゃ月の基地に着かれちゃうわよ」

蒼き鷹「あんた、ギガノス帝国がどこにあるかわかってるの?」

赤い彗星「……なるほどね」
517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 18:15:25.17 ID:ohhIZC8s0

 ホワイトベース ブリッジ

シノン「アリサちゃん、ごめんなさいね、通信士なんてやらせちゃって」

アリサ「いいんです。なのはやすずかが戦ったのに、私だけ何もしないなんて嫌ですから」

シノン「(こんな子どもを使わざるを得ない戦争なんて……)」

アリサ「レビル将軍から通信はいりました。回線を開きます」

レビル「ホワイトベース隊、残念な知らせがある」

シノン「残念な知らせ……?」

レビル「君たちの着艦の準備をしていた月基地だが、ギガノス軍の動きが活発になり、君たちを受け入れる体勢を整えられない」

シノン「そんな……」

レビル「すまない、補給船を一隻出すので精一杯だった。幸いホワイトベースは大気圏を突破することが出来る。地球に降りてどこかの基地へ降りてほしい」

パオロ「……了解しました。レビル将軍」

レビル「君たちの健闘を祈る」

アリサ「……なによ、あれ! えっらそうにしちゃって!」

パオロ「……あれでもレビル将軍は行動をしてくれた。彼でなかったら補給船の一隻どころか見捨てられていた可能性すらある」

アリサ「なによ、今の連邦はそれくらい腑抜けてるってこと!?」

シノン「気になるのは、さっきからつかず離れずのムサイね。たぶん、月基地の警戒が強まったのも、私たちが月基地に行くと思われたから」

パオロ「大気圏突入時を狙われていると……」

シノン「でも、やらなければどのみちやられてしまいます。補給を受けられない戦艦なんてまな板の上の鯉みたいものですから」

パオロ「……戦力の確認と、協力してくれる民間人を選出してくれ」

シノン「了解しました」
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 18:16:42.09 ID:ohhIZC8s0

 シノンはホワイトベース内に通達を出す。
 十分後には二十人あまりがブリッジに集結していた。

シノン「正規のパイロットはリュウさんだけなんですね……」

リュウ「そうだが、あのガンダムを動かすなら、俺よりお嬢さんのほうが上手だ」

すずか「で、でも私……戦争なんて……」

なのは「すずかちゃん……」

シノン「そうね、無理にとは言わないわ。そして、三機のD兵器のパイロットはあなたたち桜才学園生徒会の方たちでいいんですか?」

シノ「あぁ、私は1型のパイロット、天草シノという」

シノン「シノさんね、私の名前はシノンというのよ」

シノ「そうか、間違えないように気をつけねばな。先ほど話だが、ドラグナーにはパイロットの認証登録があって、充分な基地施設がないと登録を解除できない」

アリア「でも、月の基地には行けないから地球に降りなくちゃ解除できなくなっちゃったのよね」

シノン「そうです。できればそれまではあなたたちにパイロットを続けてほしいのだけど……」

シノ「我々はかまわない。ここで投げ出しては迷惑がかかってしまうからな」

シノン「ありがとう。それで、なのはちゃんは連邦の作戦とは関係がないのよね?」

なのは「はい、私はレイジングハートと一緒にジュエルシードというこの宝石みたいなのを集めるお手伝いをしているんです」

レイジングハート「yes put out」

シノン「これがジュエルシードなのね……じゃあ、なのはちゃんはこのジュエルシードを集めることが第一目標なのね」

なのは「そうですけれど、やっぱり私にもこちらのお手伝いさせてください」

シノン「いいの? きっと、とても大変なことよ」

なのは「でも、私に出来ることがあるならやりたいんです。お願いします」

シノン「こっちがお願いしたい立場なのに、逆転しちゃったわね。よろしいですか、艦長?」

パオロ「あぁ……お願いするよ、高町君、天草君、萩村君、七條君」

シノ「はい!」

すずか「……」

 凛とした返事が響く。その横からややあぶれたように俯いているすずかを、物陰からの光りが捉えていた。
519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 18:17:59.50 ID:ohhIZC8s0

オペレーター「大気圏突入準備できました」

シノン「よろしいですか、艦長?」

パオロ「あぁ、頼む……」

シノン「大気圏突入を開始!」

オペレーター「……! レーダーに反応! 四機、接近してきます!」

シノン「なに!?」

オペレーター「し、識別でました! メタルアーマー、ファルゲン・マッフです!!」

パオロ「ファルゲン・マッフだと……! ギガノスの蒼き鷹……ハルヒ・スズミヤ・プラートか!」

オペレーター「別方向からも高速接近してきます。し、識別、アラストール!」

パオロ「あ、赤い彗星だ……炎髪灼眼、フレイムヘイズのシャナだ! に、逃げろ……!」
520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 18:18:33.95 ID:ohhIZC8s0

シャナ「連邦の新兵器がなんだろうと関係ないわ、作戦行動が限られる大気圏を背にした今、木馬を切る!」

 ジオン軍少佐、シャナは生身のまま刀を手に宇宙を駆ける。燃え上がる刀身と長い髪が彼女にジオンの赤い彗星というあだ名をつけさせた。

ハルヒ「恨みはないけれど、悪く思わないでよね」

 ギガノス軍大尉、ハルヒ・スズミヤ・プラートが乗るギガノスの最新鋭メタルアーマー、ファルゲン・マッフ。暗い藍色のカラーリングがギガノスの蒼き鷹と呼ばれる所以だ。

 ファルゲン・マッフの後ろにはプラート直属の親衛隊、プラクティーズの三機が続く。

キョン「ハルヒ! 急ぎすぎだぞ! 俺達の機体じゃ追いつけん!」

ハルヒ「だったら後からついてきなさいよ! 赤い彗星に沈められたら私たちの功績として認められないわよ!」

キョン「くっ……!」

古泉「情報によれば、今の木馬は正規の軍人が少ないようです。ここは涼宮さんを先行させたほうが奇襲として効果が高いでしょう」

長門「…………通信、参謀本部から」

ハルヒ「なによ、この大事なときに!」 

ドルチェノフ「ふふん、幸先はいいようだな、プラート君」

ハルヒ「ドルチェノフ……何よ! 作戦中にアンタの顔なんか見たくないわよ!」

ドルチェノフ「反抗的な貴様に釘を刺してやるのだ」

ハルヒ「わかってるわよ! もしもみくるちゃんに手を出したら承知しないわよ!」

ドルチェノフ「ふん、貴様の態度しだいだ。まずはD兵器を手に入れて見せろ」

ハルヒ「バカなこと言ってるんじゃないわよ! 大気圏のすぐ近くでそんなこと考えて戦闘できるわけないでしょ!」

ドルチェノフ「できるかできないかの話ではない。やれと言っているんだ。裏切り者のプラート博士の娘」

ハルヒ「……絶対に殺してやる」

 ハルヒは口の中で呟いていた。
521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 18:19:00.51 ID:ohhIZC8s0

 ホワイトベース 格納庫

リュウ「ガンダムが動かせないだと!?」

整備士「は、はい! モーターの調子がうまくいかなくて……」

リュウ「えぇい、俺はコア・ファイターで出る!」

なのは「私が……あの赤い彗星と……」

シノン「いきなりこんなことを任せてごめんなさい。だけど、今の私たちでは生身の人間である赤い彗星を捉えきれないの」

シノ「私たちもあの蒼き鷹とまともに戦えるかわからないが、頑張ってみせる」

リュウ「高町は俺がフォローする! とにかく出撃するぞ!」

なのは「……はい!」

 バリアジャケットを纏ったなのはの目の前でカタパルトが開く。
 無重力空間の吸い込まれる感覚がなのはを引っ張る。
 フライ・アーフィンを出して、飛び出すと、小さく燃え盛る炎が目に映った。

シャナ「出てきたわね……あれが私と同じ能力の持ち主!」

なのは「目的は大気圏突入までの時間を稼ぐこと……ディバイン・シューター!」

 なのはの周囲に三つ光りの弾が生まれ、それがシャナに向かって飛ぶ。

シャナ「その程度!」

 シャナが刀を振るうと光球は三つとも弾けて消えてしまった。

シャナ「はあぁ!」

なのは「……っ!」

レイジングハート「protection」

 レイジングハートが緊急展開した魔法障壁がシャナの燃える刀身を受け止めた。だが、

シャナ「切り裂く!」

 ピッ……パリィィィィン!

なのは「障壁がっ!」

シャナ「もらった!」

リュウ「やらせるかぁっ!」

 シャナが再び刀を振り上げると同時に、コア・ファイターが突っ込んできた。シャナがそちらへ敵意を向けた直後にリュウは操縦桿を思いっきり倒して急角度で上昇した。その隙になのははシャナから距離を取ることに成功した。

シャナ「ちっ、邪魔をする!」
522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 18:21:45.51 ID:ohhIZC8s0

 ジオン軍とは別方向から攻め上がるメタルアーマーへドラグナーが降りていく。

ハルヒ「D兵器が出てきた! 好都合ね」

 受け取ったデータ通りの機体を三機、目視したハルヒは目を細めハンドレールガンの照準を合わせた。

ハルヒ「関節を破壊すれば……っ!」

 違和感に気づいたとき、ハルヒは機体を急下降させた。

ハルヒ「照準線がぶれる……この距離で……強いジャミングを受けているというの……?」

 先頭を走っている敵のD兵器は停止していた。罠にかかるのを待っているとハルヒは気づいた。

ハルヒ「虎穴にいらずんば……行ってやるわ!」

 ハンドレールガンを左手に持ち替え、右手にレーザーソードを握ったファルゲン・マッフがドラグナー1型に接近する。やはり照準がぶれる。

ハルヒ「弾は嫌いなようね……ならば!」

 ハルヒはそのままハンドレールガンを撃った。乱射と呼んだほうが適切な射撃で弾倉を空にするとすぐに銃を捨てて左手にもレーザーソードを持った。

シノ「あれがギガノスの蒼き鷹……速い!」

 宇宙空間を走る実弾は速度を落とすことなく半永久的に飛び続ける。ファルゲンの銃弾の雨でシノたちは付け焼刃の隊列を乱されてしまっていた。

 そして、目の前には既に蒼き鷹が迫っていた。

ハルヒ「何も考えずに戦場に出てくるなぁ!」

 右手のレーザーソードが1型のハンドレールガンを叩き落したかと思ったときには、左手のソードが切っ先をまっすぐこちらに向けて突き出されていた。ほんの一瞬の間に1型の右肩が破壊された。

シノ「くうっ!」

アリア「シノちゃん!」

 1型の後ろにいるアリアが撃てばシノに当たる可能性がある。後ろに回り込もうとしたが、そこにはキョン専用ゲルフ・マッフと長門専用レビ・ゲルフ・マッフが待ち構えていた。

キョン「そんな素人じみた戦法が役に立つか!」

 二つ並んだハンドレールガンが同時に火を噴いた。
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 18:22:14.63 ID:ohhIZC8s0

 ホワイトベース 格納庫

すずか「…………」

ランコ「失礼。あなたが月村すずかさんですね」

すずか「……そうですけど、あなたは……?」

ランコ「私、桜才学園新聞部の畑ランコと申します。すずかさんがガンダムを動かしたと聞いて少しお話をと思いまして」

すずか「は、話すことなんて……」

ランコ「ごく簡単なことですので、どうしてガンダムの動かし方を知っていたのですか?」

すずか「お、お姉ちゃんが開発部門で、あと、マニュアルが落ちていたからです……」

ランコ「なるほど……それでは、どうしてガンダムに乗ろうと思ったんでしょうか?」

すずか「そ、それはなのはちゃんが……!!」

ランコ「どうしました、すずかさん?」

すずか「は、畑さん、そのお話また後でいいですか!?」

ランコ「はい、私は構いませんよ。私は今や戦艦に乗る美少女たちを撮影する戦場カメラマンですから」

すずか「ありがとうございます。ごめんね、なのはちゃん……」

ランコ「戦いに向かう美少女……シャッターチャンスムッハー」カシャカシャ

すずか「そ、そんなに撮らないでくださいぃぃ」
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 18:25:15.09 ID:ohhIZC8s0

 桜色の魔力。紅く燃える刀。そしてコア・ファイターがドッグファイトを繰り広げる宙域に新たな客がやってくる。

デニム「少佐! お助けにあがりました!」

シャナ「いいタイミングよ、曹長! あのハエをやっちゃって!」

デニム「了解!」

リュウ「ちぃっ!」

シャナ「さぁ、連邦の白いの、覚悟しなさい!」

なのは「あ、赤い彗星さん! どうしてこんなことを!?」

シャナ「どうして? 私たちは戦争をやってるのよ!」

なのは「戦争だからって、こんな……!」

 魔法を断ち切るシャナの刀になのは飛びながらシューターを撃って時間を稼ぐが、戦闘経験の差は歴然である。

シャナ「私には、やらなくちゃいけないことがあるのよ! そのためにはまずあんたたちが邪魔なのよ!」

 フラッシュムーブで高速移動するなのは。しかし半秒後にはシャナが肉薄していた。読まれていたのだ。

シャナ「落ちろぉ!」

 ズォッ! 燃える刀身がなのはのバリアジャケットに食い込んだ。

なのは「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ!」

 悲鳴は痛みではなく、レイジングハートの緊急回避になのはがびっくりしたものだ。
 シャナは開いた距離を埋めようと刀を腰に引いた。

シャナ「とどめ――ッ!?」

 ズギュゥーン! そのとき、一条のビーム光がシャナの前を通り過ぎ、彼女は動きをぐっと我慢して止めた。

すずか「なのはちゃん!」

 ホワイトベースのカタパルトにガンダムが立っていた。手のビームライフルをすずかは今度はザクに向かって撃った。

デニム「メガ粒子砲!? うおぉ!!」

シャナ「デニム曹長! 連邦はビームライフルの実用化に成功していたのか!」

 ビームライフルの直撃を受けたデニムのザクは一瞬で塵と化してしまった。

シャナ「贄殿遮那(にえとののしゃな)じゃ、化学兵器であるビームは切れない……三対一でまぐれ当たりなんかしたくないわ」

なのは「あ、あの……」

 シャナはマントの内側に自分の体を包み込み、上に跳んだと思ったら見えなくなっていた。

なのは「あ……」

すずか「なのはちゃん……」

なのは「すずかちゃん……いいの、ガンダムに乗って……?」

すずか「うん、なのはちゃんが頑張っているのに私だけなんていやだから……」
525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 18:30:31.80 ID:ohhIZC8s0

 一方、ドラグナーチームは経験も数的有利もなく、苦戦していた。

 ズシャァァァァァ!

シノ「くっ、もう左肩もやられた!」

ハルヒ「終わりにしてやるわ! てぇぇい!」

 ハルヒはレーザーソードを腰に引いた。機動力を失った今、最後の一突きで頭部を破壊すれば、何も出来なくなるはずだ。

 だが――

???「コズモワインダービーム!」

キョン「っ! ハルヒ!」

 全くの死角から飛んできたビームをハルヒが避ける術はなかった。
 ビームとハルヒを結ぶ線の上にキョンのゲルフ・マッフが割り込んだ。

キョン「ぐっ!」

ハルヒ「キョン!? くっ、何者よ!?」

 ハルヒを撃ったのは、真紅の手足に鎧のような装甲を持つ巨大なロボットだった。全長はドラグナーの倍はあるだろう。

 それをモニタ越しに視認したとき、宇宙空間に声が轟いた。

こなた「夜空の星が輝く陰で!」

かがみ「ワルの笑いがこだまする!」

つかさ「星から星に泣く人の!」

みゆき「涙背負って宇宙の始末!」

かがみ「銀河旋風ブライガー! お呼びとあらば即参上!」

こなた・つかさ・みゆき「イェーイ!」

ハルヒ「銀河旋風ブライガー!? まさか、コズモレンジャー・J9!」

 ジェイナインジェイナイン ナサケームヨウ
 アステーロイドーベルトノー
 アウトーローモーフルエーダスー
 コズモレンジャージェイナイン!
 ウチュウクウカンーツッパシルノサー ブライサンダー! ブライサンダー!
 ジュウマンコウネンーホシノキラメキー トビカウー ブライスター!
 ヒロガルプラズマ! ウッー! ウッー! ウルフノーマァーク
 アッー! アッー! アイツハー ギンガセンプウー
 ギーンガーセンプウー ブライガー ブライガー! ブライガー!
526 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 18:31:48.79 ID:ohhIZC8s0

 ホワイトベース ブリッジ

シノン「コズモレンジャー・J9……どうしてこんなところに……?」

アリサ「通信が入ります。J9、カガミ・ヒイラギからです」

かがみ「ホワイトベース隊の皆さん。J9の柊です。艦長はどなたでしょう?」

パオロ「私だが……既に指揮権は香月シノンにある」

シノン「香月シノンは私です」

かがみ「シノンさん、よろしくお願いします。私たちは連邦政府から仕事を依頼されて来ました。内容はホワイトベースの大気圏突破の手伝い。という訳で援護させていただきます」

シノン「了解しました。協力感謝します。レビル将軍はなぜ教えてくれなかったのでしょうか……?」

パオロ「おそらく、極秘に要請していたのだろう……スペースノイド蔑視の中、それよりも外宇宙の者に手を借りるのだから」

シノン「そうですね……」

かがみ「さて、ギガノスの蒼き鷹さん。ここから先は私たちJ9が相手になるけど、参考までに教えておくと、赤い彗星のほうは既に撤退しているわよ」

ハルヒ「……撤退よ」

キョン「ハルヒ!?」

ハルヒ「これ以上時間を喰っては大気圏に巻き込まれるわ」

こなた「そーれが正しーい選択だねぇ〜」

ハルヒ「あんた……なんかむかつくわね」

こなた「そーかな? 私はなんだか他人に思えないけど」

ハルヒ「勝負は預けるわ、D兵器。次からは落とすつもりでいくわよ」

シノ「やはり手加減してくれたのか……私には君が悪い人には思えない」

ハルヒ「そうね、弱くてもあなたの太刀筋は綺麗だったわ。別の形で逢えたら良かったわね」

 ファルゲン・マッフは青色の機体を翻して去っていった。その後ろにプラクティーズの三機も従って消えた。

シノ「……しまった」

スズ「どうしたんですか、会長」

シノ「彼女の名前は知っていたから失念していた。私は名乗っていない」

こなた「まーた会いましょうって言ってたんだーから、いーつでも名乗れるとおーもうよー」

シノ「そうだな……」
527 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 18:33:13.24 ID:ohhIZC8s0

 ホワイトベース ブリッジ

かがみ「来て早々ですが、大気圏突入を見届けたら、私たちは離脱させていただきます」

シノン「そうですか、出来ればこれから先も協力してもらいたいのですが」

かがみ「それは私たちもですが、次の依頼が入っています」

シノン「わかりました。ご協力感謝します」

みゆき「もしかしたら、近いうちにまたお会いするかもしれませんよ」

つかさ「どういうこと、ゆきちゃん?」

みゆき「次の依頼は、外宇宙から地球までの護衛みたいですから」

こなた「わーお、今度こそ降りられたらいいねー、聖地アキバを見て回りたいよー」

かがみ「はいはい。それじゃ、失礼します」

こなた・つかさ・みゆき「イェーイ!」

アリサ「通信、切れました」

シノン「独特な人たちでしたね」

パオロ「あぁ……彼女たちのようなものを受け入れていくことが、地球連邦には必要なのかもしれない」

シノン「はい。機体の収容も完了しましたし、大気圏突入を開始します」

アリサ「大気圏突入開始! ……5、4、3、2、1、大気圏、入りました」

 ヴーヴーヴー! 誰もがほっとしていたとき、警戒音がブリッジに鳴り響いた。

オペレーター「は、反応が! あ、アラストールです!」

パオロ「なんだと!?」
528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 18:33:52.07 ID:ohhIZC8s0

 ホワイトベース ブリッジ

かがみ「来て早々ですが、大気圏突入を見届けたら、私たちは離脱させていただきます」

シノン「そうですか、出来ればこれから先も協力してもらいたいのですが」

かがみ「それは私たちもですが、次の依頼が入っています」

シノン「わかりました。ご協力感謝します」

みゆき「もしかしたら、近いうちにまたお会いするかもしれませんよ」

つかさ「どういうこと、ゆきちゃん?」

みゆき「次の依頼は、外宇宙から地球までの護衛みたいですから」

こなた「わーお、今度こそ降りられたらいいねー、聖地アキバを見て回りたいよー」

かがみ「はいはい。それじゃ、失礼します」

こなた・つかさ・みゆき「イェーイ!」

アリサ「通信、切れました」

シノン「独特な人たちでしたね」

パオロ「あぁ……彼女たちのようなものを受け入れていくことが、地球連邦には必要なのかもしれない」

シノン「はい。機体の収容も完了しましたし、大気圏突入を開始します」

アリサ「大気圏突入開始! ……5、4、3、2、1、大気圏、入りました」

 ヴーヴーヴー! 誰もがほっとしていたとき、警戒音がブリッジに鳴り響いた。

オペレーター「は、反応が! あ、アラストールです!」

パオロ「なんだと!?」

シノン「赤い彗星……まさか、大気圏をも越えるというの……!?」
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 18:34:41.04 ID:ohhIZC8s0

 大気圏中

シャナ「ふふふ……ここなら厄介者は一人しか出てこないわ。皆殺しにしてあげる!」

 ホワイトベースの砲口が彼女に向けられるが、こんなものに当たるくらいなら、少佐の階級章は与えられていない。シャナは刀を上段に構え、一息にブリッジに突進した。

シャナ「落ちろぉーっ! ッ!!」

 だが、刃がホワイトベースに触れる寸前、シャナはブリッジにいる少女に目を見開いた。

シャナ「あ、アルテイシア……?」

 通信機の前にいる金髪の少女と目が合ったとき、思わず彼女はそう口にしていた。

アリサ「きゃ、キャスバル姉さん……!?」

 シャナの声が聞こえるはずがない。アリサもまた目を合わせたとき、彼女が、あの赤い彗星が自分の姉であることを知った。

シャナ「アルテイシアがいるなんて……くっ」

 いつまでも攻撃がこないことにシノンたちが覚悟したはずの生を再確認したとき、既に赤い彗星はいなくなっていた。


 第二話 始動! 連邦、V作戦! 完
530 :テスト [saga sage]:2011/02/16(水) 16:47:32.24 ID:+EdLTGcq0
ズドドドドドドドドッ! 
531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/16(水) 17:18:01.05 ID:+EdLTGcq0

 第三話

 光子力研究所

紬「澪ちゃん、アフロダイAの調子はどうかしら?」

澪「あぁ、なんとか慣れてきたよ」

唯「それにしても、光子力研究所の試作型ロボットのパイロットが澪ちゃんだなんて、びっくりだよ〜」

紬「だって、アフロダイのスタイルは澪ちゃんを参考にしたんだもの」

梓「あの、二晩も泊っておいてから言うのもなんなんですが、何もしてない私や憂までここにいていいんでしょうか……?」

紬「あら、梓ちゃんや憂ちゃんはご飯を作ってくれているんだから、むしろお礼を言わなくちゃいけないわ」

さわ子「熱ぅ〜い〜、憂ちゃんジュース〜」

憂「は〜い」

梓「…………」

紬「あら? ところでりっちゃんはどこに行っちゃったのかしら?」

梓「そう言えば姿が見えないですね」

憂「なんだか、昨日の晩からおじさんと一緒に何かを作っているみたいでしたけど」

梓「すっごいヤな予感がします」

紬「あら? 格納庫のシャッターが開いているわ」

律「じゃんじゃじゃ〜ん!」

澪「な、なんだあの丸いの……?」

唯「かわいい〜」

律「へっへ〜ん、どうだ! 律様のボスロボットは!?」

田井中「やれやれ……うちの娘も困ったもんだ……」

紬「もしかして、田井中博士が……?」

澪「こらっ、律、なにやらせてるんだよ!」

律「だってぇ〜! 澪や唯ばっかりロボットに乗ってずりぃじゃ〜ん!」

梓「あのロボット……顔の表情が変わっている気がするんですが……」

律「いっくぞ〜! 勝負だ、澪!」

 律のボスロボットが腕を回しながら澪に向かって走っていく。

澪「ちょっと、律、なにするんだよ!」

律「喰らえぇ〜! スペシャルボスロボットパ〜ンチ!」

 どんがらがっしゃぁぁぁぁぁん! べんべん

紬「すごい! 一撃でバラバラになっちゃったわ!」

梓「律先輩のロボットのほうがね」

唯「あはははは! りっちゃんおもしろ〜い!」

律「なんだよ、オヤジ〜! こんなポンコツ作りやがって〜! これじゃボスボロットだぜ〜!」

田井中「そりゃあ、超合金と光子力を練成した後のジャパニウムのスクラップで作ったからなぁ」
532 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/16(水) 17:20:44.34 ID:+EdLTGcq0

 訓練の後、全員は司令室に集まった。

紬「それでね、超電磁研究所というところが、57メートルのスーパーロボットの実用実験を行うことになったの。それに光子力研究所からもマジンガーZとアフロダイAも参加することにしたの」

律「おい、私のボロットは数に入ってないのかよ」

梓「入ってると思ってるんですか……?」

唯「ほえ〜、57メートルって、マジンガーZの三倍くらいあるね〜」

紬「あと、早乙女研究所というところから、ゲッターロボというのが参加するんですって」

澪「早乙女研究所って、宇宙放射能のゲッター線を研究してるところか?」

憂「あ、私も聞いたことあります。宇宙開発用の三人乗りのロボットなんですよね」

紬「そう、だけどドクター・ヘルに対抗するためにスーパーロボットが必要なの、だから戦闘用に改造されたんですって」

唯「平和のためのロボットも戦争の道具にされちゃうんだね……」

澪「唯……」

紬「そうね、でも平和のために戦ってくれるのだから、私たちは共に手を組んでいかなくちゃ。ゲッターロボのパイロットは早乙女博士のお嬢さんとその友達で、私たちとも同年代らしいわ。きっといいお友達になれるはずよ」

唯「そうなんだ、じゃあ楽しみだね」

梓「超電磁研究所のほうはわからないんですか?」

紬「それは何も聞いてないわ。超電磁エネルギーを応用したロボットだとは聞いているけれど……」

律「よぅーし、何はともあれ行かなくちゃ始まらないんだ。さっさと行こうぜ!」

唯・紬「おーっ!」



 バードス島 ドクター・ヘル本拠地

ドクター・ヘル「なるほど、兜十蔵が作ったマジンガーZと平沢唯という小娘にやられてワシが与えてやった機械獣も失ったと申すのか」

あしゅら男爵「も、申し訳ありませぬ、ドクター・ヘル様〜!」

ドクター・ヘル「よもや兜十蔵が生きていようとは……頭を上げよ、あしゅら男爵。これはワシの見通しが甘かったことが原因だ」

あしゅら男爵「ははぁ〜! ドクター・ヘル様の寛大なお心にあしゅらはこの身の全てを捧げことを誓います!」

ドクター・ヘル「うむ! 先日、キャンベル星人などという異星人から使者がやってきおった。奴らによると、超電磁研究所なるところにマジンガーZが現れるらしい」

あしゅら男爵「異星人の手を借りるのですか?」

ドクター・ヘル「ふん、せいぜい利用してやるまでだ。行ってくれるな、あしゅら男爵!」

あしゅら男爵「はっ! 必ずやマジンガーZを打ち倒し、ドクター・ヘル様に地球征服の達成をお届けしましょうぞ!」

ドクター・ヘル「うむ! 貴様に新たな機械獣ダブラスM2を授けよう! 見事マジンガーZの首を取ってくるのだ!」

ヘル・あしゅら男爵「わ〜っはっはっはっはっはっは!」
533 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/16(水) 17:22:02.34 ID:+EdLTGcq0

 超電磁研究所

JUM「超電磁研究所所長の桜田JUM(43)です。よろしく」

秋山「あぁ、どうも、ところで……あの小さな子たちがコン・バトラーVのパイロットなのですか?」

唯「憂ぃぃぃぃぃ! この子たち超かわいいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

翠星石「離すですぅ、人間! 汚い手で翠星石に触れるなですぅ!」

蒼星石「あー、服がしわになっちゃうー」

澪「……ぎゅ」

雛苺「お姉ちゃんのだっこ気持ちいいなのー」

真紅「不本意なのだわ」

金糸雀「かしらー」

紬「はあはあ」

秋山「に、人形……? ローゼンメイデン……ですか?」

JUM「えぇ、本人たちが言うには鏡の扉から飛んできたらしいですが、彼女たちが持つローザ・ミスティカによって超電磁エネルギーのコンバインに成功したんです」

秋山「なるほど……彼女たちがいなければ、コン・バトラーは動かせなかったのですか」

JUM「その通りです。話を聞けば、ローゼンメイデンは全部で七体、残り二体とは敵対しているようです」

秋山「その二体もどこかの世界から飛ばされていると……?」

JUM「えぇ、水銀燈と雪華綺晶と言うらしいです。水銀燈は一度見ましたが、雪華綺晶のほうはまだ見ていません」

秋山「そうですか……ではそろそろ始めましょうか」

 唯たちは前もって研究所の外へ運ばせておいたロボットたちに乗り込む。

唯「パイルダー・オーン! マジーン・ゴー!」

澪「アフロダイA、ゴー!」

律「ボスボロット、参上だっぜ〜!」

澪・梓「お前は邪魔」

律「ひでぇ」

JUM「バトルマシン、発進せよ!」

「「「「「了解! レェェェッツ・コンバイィィィィィン!」」」」」

 五つのバトルマシン――バトルジェット、バトルタンク、バトルクラッシャー、バトルクラフト、バトルマリンのパイロット脳波が同調することで初めて合体の許可が下りる。ジェットは頭に、タンクは胴体に、クラッシャーは両腕に、クラフトは左足に、マリンは右足となって超電磁の磁力によって繋がれ、コン・バトラーVとなる!

 ギュオォォォォガシイイィィィギュイーングワァァァバッシィィィーン!

翠星石「コン・バトラーV! ですぅ!」

 デレッテレッテーテテテデレテレッテッテテー
 ブイブイブイ! ビクトリー!
 コーンバイーン ワントゥースリー フォーファーイブ シュツゲキダー
 ダイチヲユルガスチョーデンジロボ!
 セイギノセンシダコーンバトラーブイー ブイ! ブイ! ブイ!
 チョーデンジヨー!ヨー! チョーデンジタツマキー!
 チョウ! デンジスピーン!
 ミターカデンジノヒッサツノワザ イカリヲコメテアラシヲヨブゼーェー!
 ワレーラノー ワレーラノー コーンバトラーブイ!
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/16(水) 17:22:40.47 ID:+EdLTGcq0

真紅「不本意だわ。どうして私が腕にならなければならないのだわ」

翠星石「ふっふーん、真紅がじゃんけんで負けたのが悪いんですぅ」

真紅「こういうのは主人公補正というのがあるんじゃなくて?」

翠星石「作った奴の趣味ですぅ」

真紅「(ギロッ)」

JUM「ぼ、ぼくじゃないぞ!」

雛苺「真紅こわいこわいなのー」

金糸雀「かしらー、ヒナとカナは足でがまんしてるのかしらー」

蒼星石「ぼくは別にどこでも……」

JUM「(こいつらに脳がなくてよかった)」

唯「ほえぇぇ、かっこいい〜」

律「よーし、私たちもあんなふうに合体しようぜ、ムギ!」

紬「そうね〜、考えて見ましょう」

澪「ボロットは無理だろう……」

 ドッガァァァァァァン!

梓「きゃあぁぁぁ!」

紬「な、なに!?」

あしゅら男爵「わーはっはっはっは! 今日は倒してやるぞ、マジンガーZ!」

唯「機械獣!? あしゅら男爵!」

あしゅら「くくく、あれが超電磁ロボとかいう奴か。でかいだけで貧相な形だな」

翠星石「なんですってぇ! JUMが作ったものをバカにすんなですぅ!」

雛苺「なのー!」

金糸雀「私たちであのヘンテコをやっつけるのかしらー!」

あしゅら「くくく、貴様らの相手をするのは我々ではないわ。さぁ、お膳立てはしてやったぞ、キャンベル星人の将軍ガルーダよ!」

 あしゅらが天空に杖をかざすと、超電磁研究所の付近が暗くなった。

雛苺「うゆ? 真っ暗になっちゃったのー」

翠星石「いったい、何事ですぅ!?」

蒼星石「上だ、翠星石!」

 蒼星石の声に全員が空を見上げた。そこには四方八方に支柱を突き出した巨大な飛行物体があった。

ガルーダ「コン・バトラーVよ! 我はキャンベル星人の将軍ガルーダだ! この地球を侵略するために貴様たちを叩き潰す! 空中戦艦グレイドンよ、マグマ獣を出せぃ!」
535 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/16(水) 17:23:14.12 ID:+EdLTGcq0

澪「キャンベル星人だと!?」

唯「なんだか、甘そうな名前だね」

律「つうか、趣味の悪い戦艦だな、グレイドンだってよ」

澪「(……私がまじめすぎるのか?)」

 ズドォォォォォォォォン!

 グレイドンから落ちてきたのは二体のマグマ獣、デモンとガルムスだ。

デモン「ぎゅわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」ガルムス「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!」

あしゅら「さぁ、ゆけぃ! ドクター・ヘル様の機械獣ダブラスM2よ!」

ダブラス「ぎしゃあぁぁぁぁぁぁぁ!」

 二つの首を持つ恐竜のような機械獣、ダブラスM2がマジンガーZに向かって突進してきた!

唯「よぉ〜し! やるぞぉ、マジンガーZ!」

憂「お姉ちゃん、がんばって!」

紬「澪ちゃん、アフロダイAはあくまでも実験機であって、戦闘用ではないから、無理はしないでね」

澪「あぁ、わかっている、ムギ」

梓「律先輩、唯先輩と澪先輩の邪魔しちゃダメですから、とっとと避難してくださいね」

律「私だけ扱い酷くね!? ちっくしょ〜! 見てろよ、でやぁぁぁぁ!」

 ズダダダダダダ!

 突進してくる機械獣に律のボスボロットが腕を回しながら猛然と走っていく!

梓「律先輩、何やってるんですか!」

あしゅら「なんだそのポンコツは! ダブラス、ミサイルをお見舞いしてやれ!」

ダブラス「ぎゃおぉぉぉぉぉぉぉぉん!」

 ボシュッ、ボシュッ! 機械獣の口からミサイルが発射される!

律「げげっ! どっひゃぁ〜!」

 慌てふためく律は回れ右をしてミサイルから逃げようとするが、ミサイルが地面に着くほうが速かった。

 チュドォォォォォォォン! ドォォォォォォン! 爆発でボスボロットが地面を跳ね回る。

律「ぎゃーっ! オシリが二つに割れちゃうだわさ〜!」
536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/16(水) 17:24:05.10 ID:+EdLTGcq0

翠星石「さぁ、コン・バトラーVの実力を見せてやるですぅ!」

 ヤギのような形のデモンとハリネズミみたいなガルムスを前にコン・バトラーは力強く構えた。

翠星石「まずは受け取れですぅ! ロックファイター!」

 シュボボボボボッ! コン・バトラーの右手の指からミサイルが発射され、デモンに命中する。

ガルーダ「ふはははははは! そんな攻撃でキャンベル星人のマグマ獣がやられるものか! やれ、ガルムス!」

ガルムス「ぐおぉぉぉぉぉん!」

 ガルムスのとげとげの甲羅が前に向かって閉じ、ガルムスはとげとげのボールみたいになって転がってくる。

金糸雀「わわわ! あんなのが研究所に入ってきたら穴ぼこだらけになるかしら!?」

蒼星石「翠星石! 超電磁クレーンを使うんだ!」

翠星石「了解ですよ、蒼星石! 超電磁クレーン!」

 コン・バトラーの両手首がくっつき、手がトゲつきのハンマーになり、撃ち出される!

 ガッキュイィィィィィィン! ハンマーにぶつかってガルムスの動きが止まった。しかし、その上にはデモンが剣を持って飛んで来ていた。

デモン「ぎゅおぉぉぉぉぉぉん!」

翠星石「えぇいですぅ、バトルリターン!」
  
 円盤を投げつけ、デモンの動きが少し止まる間にコン・バトラーは一気に距離を詰める!

翠星石「コン・バトラーの馬力を思い知れですぅ! バトルパーンチ!」

 バキィッ! ボールのままのガルムスをぶん殴る。

翠星石「バトルキーック! ですぅ!」

 ドガッ! 蹴られたガルムスが転がっていく。

翠星石「とどめですぅ!」

蒼星石「いけない、翠星石!」

翠星石「へ?」

ガルーダ「今だ! グレイドン! 破壊光線を発射しろ!」

 ギュビィィッィィィィ! ズドォォォォォォォォッ!
 
翠星石「きゃあぁぁぁぁぁ!」

雛苺「びえぇぇぇぇぇぇ!」
537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/16(水) 17:24:56.78 ID:+EdLTGcq0

唯「たぁっ! りっちゃんの仇! 光子力ビーム!」

ダブラス「ぎゃおぉぉぉぉぉぉん!」

あしゅら「ちっ! ダブラス! 火炎放射で焼き払ってしまえ!」

 ボボオォォォォォォォ! 炎の先には律のボスボロットがいる。

律「わぁぁぁぁぁぁぁ! りっちゃんは焼いても美味しく召し上がれないのよ〜!」

澪「律!」

 澪はアフロダイを全速力で走らせ、律の楯となって炎を浴びた。

澪「くうぅっ!」

唯「澪ちゃん! 冷凍ビームだ、マジンガーZ!」

 マジンガーZの耳のツノから冷凍ビームが発射されて炎を鎮めていく。だが、同時に大量の水蒸気が視界を覆った。

あしゅら「ふははははははは! 迂闊なり平沢唯!」

 高笑いしたあしゅらが杖をかざすと、先端についた水晶から電撃が迸った。

 ズババババババババババババ!

唯「きゃあぁぁぁぁぁ!」

律「うわぁぁぁぁぁぁ!」

澪「あぁぁぁぁぁぁ!」

翠星石「ひいぃぃぃぃぃぃ!」

 電撃は唯たちマジンガーチームだけではなく、コン・バトラーVにまで届いていた。

雛苺「びりびりするなの〜」

金糸雀「かしら〜」

ガルーダ「余計な真似をしてくれた、あしゅら男爵! だが、これは好機だ! とどめを差せ、グレイドン!」

真紅「大ピンチなのだわ」

翠星石「早く動くですよぉ、コン・バトラーV!」

 グレイドンの支柱についた砲口がコン・バトラーVを向く。

ガルーダ「とどめだ、コン・バトラーV!」

 ギュビィィィィィィィィ! 無防備なコン・バトラーに強力な破壊光線が襲い掛かる!

翠星石「ひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

???「トマホゥゥゥゥゥゥゥク・ブーメラン!」

 バッシャァァアァァァァァ! 突如投げられた巨大な手斧に破壊光線が当たり、コン・バトラーは助かった!

ガルーダ「な、なにやつ!」

 ガルーダが声を張り上げた先には、一体の真っ赤なロボットがマントをはためかせて空を飛んでいた。

綾瀬夕映「ゲッターロボ! ここに見参です!」

 ダダダダッダーダダダ ダダダダッダーダダダ ダダダダッダーダダダ ダダダダッダーダダダ
 ダッダダーダダダ ダッダダーダダダ ダッダダーダダダ ガン!ガン!ガン!ガン!
 ワカイイノチガマッカニモエーテー ゲッタースパークー ソーラータカーク
 ミータカー ガッタイー ゲッターロボダー
 ガッツ! ガッツ! ゲッターガッツ!
 ミッツーノコーコローガーヒトツニナレーバー
 ヒートツーノーユウキハー ヒャクマンパワーァ
 アークーヲユルースナー ゲッターパンチ!
 ゲット! ゲット! ゲッター! ゲッターロボ!
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/16(水) 17:26:05.99 ID:+EdLTGcq0

翠星石「み、味方ですかぁ……?」

紬「あれが早乙女研究所のゲッターロボ……」

ガルーダ「ぬうぅ、邪魔者め! 破壊光線を喰らえ!」

 ギュビィィィィィィ!

夕映「オープンゲェット! 緊急回避です!」

ガルーダ「なにぃ! 分離して三つの戦闘機に!?」

のどか「チェーンジ! ゲッター2!」

 分離した三つのゲットマシンが地面の上で重なった瞬間、ガルーダたちはその影を見失ってしまった。

ガルーダ「ど、どこに消えた!? あ、穴が空いている!?」

 地面にあいた大きな穴をガルーダが発見したとき、マグマ獣ガルムスの下の土が大きく盛り上がった。

宮崎のどか「ゲッタードリルアーム!」

 ギュイィィィィィィィィィィィガガガガガガガガガガガ! ガルムスの体が白い流線型に変形したゲッター2のドリルに穿たれていく!

ガルムス「がぴぴぴぴぴぴぴぴ!」

ガルーダ「が、ガルムス!?」

翠星石「今ですぅ! 超電磁ヨーヨー!」

 コン・バトラーVのバトルリターンが合体し、ヨーヨーになった。超電磁の糸で繋がったヨーヨーを投げつけ、マグマ獣デモンにぶつける!

 ズギャイィィィィィィ!

デモン「ぎゅぎぎぎぎぎ!」

ガルーダ「で、デモンまで! おのれコン・バトラー! ゲッターロボ!」

早乙女ハルナ「おっと、まだ終わりにはしないわよ! オープンゲット! チェンジ・ゲッター3!」

 再び分離したゲットマシンが合体してキャタピラが足になった戦車のようなゲッター3になった。

 ゲッター3は倒れた二体のマグマ獣を大きな手でまとめて持ち上げた。

ハルナ「うおりゃーっ! 大・雪・山おろしーっ!」

 ゲッター3はマグマ獣を持ったままぐるぐると回り、遠心力を利用してグレイドンのほうへ思い切りぶん投げた。

ガルーダ「よ、避けろ、グレイドン! うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

 ドガァァァッ! マグマ獣がグレイドンの中心部に直撃した。ぐらぐらと揺れる空中戦艦にコン・バトラーの頭部が光った。

翠星石「見せてやるですぅ! 勝利のVサイン!」

 Vの字のマークが赤く輝く!

翠星石「Vレーザー!」

 ズドォォォォォォォォォッ!

ガルーダ「くっ、こんなはずでは……撤退するしかないのか」

539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/16(水) 17:26:47.70 ID:+EdLTGcq0

あしゅら男爵「何だと、ガルーダ! ドクター・ヘル様に逆らうのか!?」

ガルーダ「私が従うのはオレアナ様だ! 貴様でもドクター・ヘルでもないわ!」

あしゅら「お、おのれぇ〜! おのれおのれおのれぇぇぇぇ!」

唯「さぁ、次はお前の番だ、あしゅら男爵!」

あしゅら「なめるでないわ! ダブラス! 辺り一面を焼き尽くしてしまえ!」

ダブラス「だぶっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 ゴォォォォォォォ! 地面が飲まれるように炎に包まれた。

あしゅら「ふははははは! これで近づくことはできまい、マジンガーZ!」

唯「むむむ……こうなったら奥の手だぁ!」

 マジンガーZが片膝をついてくろがねの右手を前に突き出した。

あしゅら「何の真似だ、マジンガーZ!?」

唯「これでも喰らえーっ! ロケットパーンチ!」

 ドシュウッ! マジンガーZの右腕の肘から先が射出された! それは凄まじい勢いで機械獣ダブラスに向かって飛んでいく!

あしゅら「な、なんだとぉーっ!」

 ドガァァァァッ! ダブラスの腹に大きな穴が空いた。

あしゅら「な、なんということだ! こんなバカな! お許しくださいドクター・ヘル様ぁぁぁぁ!」

 断末魔の叫びと共にあしゅらの姿が消えていく。

唯「二度と来るなぁーっ! ふんす!」
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/16(水) 17:28:58.80 ID:+EdLTGcq0

 超電磁研究所内

JUM「どうもありがとうございます。ゲッターチームの皆さん」

ハルナ「いやいや、遅れてしまってすみませんねぇ」

夕映「自己紹介をします。私はゲッターチームでゲッター1のパイロットの綾瀬夕映です」

のどか「わ、私は……ゲッター2のパイロットの宮崎のどかですー……」

ハルナ「そして、私がゲッター3のパイロットの早乙女ハルナです」

紬「それじゃあ、あなたが早乙女博士のお嬢さんだったんですか」

唯「よろしくねー、私は平沢唯! マジンガーZのパイロットだよ!」

翠星石「翠星石ですぅ。翠星石がコン・バトラーVを動かしているですよぅ」

真紅「不本意だわ」

紬「しかし、研究所を襲ってきたキャンベル星人のガルーダとはいったい……?」

JUM「それは僕にもわかりません。ですが、彼らの会話から察するにドクター・ヘルとキャンベル星人は共闘関係にあるようですね」

律「まったく、ジオンだなんだって時に出てきやがって、空気を読めっての」

澪「違うだろ。地球がコロニーの独立で混乱しているから、ドクター・ヘルたちは行動を開始したんだろ」

紬「そうね、特に極東支部の戦力はあまり重要視されていなかったから……」

律「お偉いさん方は、自分達がいる場所だけ守れればいいんだからな、やれやれだぜ」

夕映「ですが、今日本には三体のスーパーロボットがいるです」

翠星石「そうですぅ、ドクター・ヘルだろうとキャンベル星人だろうと翠星石とコン・バトラーVでけちょんけちょんですぅ」

真紅「あなただけでコン・バトラーが動いているのではないのだわ」

JUM「そうだな、宇宙では連邦のV作戦が始まったというから、僕たちはドクター・ヘルたちの侵攻を食い止めよう」

雛苺「なのー」金糸雀「かしらー」

紬「父から聞いた話によると、佐世保の基地にそのV作戦の戦艦が降りるみたいです。先ほど大気圏を突破してきたらしくて」

JUM「佐世保に? たしか佐世保基地には先に開発されたパーソナルトルーパーというユニットが配備されると聞いたが……」

唯「それじゃあさ、みんなで佐世保に行こうよ」

梓「唯先輩?」

唯「連邦の人にドクター・ヘルとキャンベル星人について話をすれば、何とかなるんじゃないかな?」

紬「そうね……一応、報告の資料は提出してあるけど、直接話をしたほうがいいかもしれないし」

律「よーし、それじゃ、みんなで佐世保に行こーぜ!」

全員「おーっ!

唯「ところであずにゃん」

梓「なんですか?」

唯「佐世保ってどこ?」

梓「…………」


 第三話 登場! 二体の合体ロボット! 完
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/18(金) 19:07:25.80 ID:iMG0wGKN0

 第四話

『目覚めよ……勇者……目覚めよ……勇者!』

 佐世保 とある中学校

一橋ゆりえ「あのね、光恵ちゃん、怒らないで聞いてほしいんだけど……」

四条光恵「なに、どうしたの、ゆりえ?」

ゆりえ「私、神様になっちゃったみたい……」

光恵「はぁ!? 神様って何の神様よ」

ゆりえ「それはわからないんだけど……ずっと声が聞こえるんだ……目覚めよ……とか、神に……とか」

光恵「それは普通に幻聴じゃない? 病院行ったほうがいいわよ」

ゆりえ「そうかなぁ……?」

三枝祀「いいえ、それは一橋さん、それは本当にあなたが神様になったのよ!」

ゆりえ「わっ!?」

光恵「さ、三枝さん、どうしたの、いきなり……?」

祀「一橋さん、私が来福神社の巫女だってことは知ってるわよね」

ゆりえ「う、うん」

祀「その私が言うんだから間違いないわ! あなたは神様になったのよ! 神様ゆりえちゃんよ!」

 ゆりえと光恵は昼休みに学校の屋上に行って、祀が儀式の準備をしているのを待つ。

ゆりえ「やっぱり無理だよぉ。神様なんて……」

祀「まあまあ、とりあえずやってみてよ。本当にゆりえちゃんが神様になったんなら、これで洗礼を受けられるはずだから」

ゆりえ「うぅ〜ん、でも神様を呼ぶなんて、どうすればいいの……?」

祀「えっとね、とりあえず神様としての言葉を決めてくれればいいかな。もし成功すれば何かしらの形で答えてもらえるから」

ゆりえ「神様としての言葉ってどんなの……」

祀「う〜ん、適当って言っちゃおかしいけど、まあ、神様としてのゆりえを象徴するような言葉かな」

ゆりえ「私を象徴するような言葉って……私、勉強も運動もできるわけじゃないし……」

光恵「だったら、中学生の神様でかみちゅでいいじゃない」

祀「いいわね、それ!」

光恵「結構、適当に言ったんだけどね……」

祀「いいじゃない。中学生の神様でかみちゅ! うんうん、これで我が神社は安泰ね」

ゆりえ「うぅ〜……」

祀「さぁさぁ、ゆりえちゃん、思い切って言っちゃいなさい」

ゆりえ「う、うん……」

 ゆりえは目を閉じた。空の音がよく聞こえる。そして、それに混じって声がゆりえの耳に届いた。

『勇者よ……神を……呼ぶのだ……目覚めよ、勇者!』

ゆりえ「(この声……あなたは誰……私に呼びかける声……)

『妖魔帝国が来る……目覚めよ……勇者……目覚めよ……』

ゆりえ「か〜み〜ちゅ〜っ!」

『ラァァァァァァァァァイディィィィィィィィィィィィィィィン!!』
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/18(金) 19:10:14.84 ID:iMG0wGKN0

『ラァァァァァァァァァイディィィィィィィィィィィィィィィン!!』

光恵「な、なに!? 今のでかい声!」

祀「あ、あっち、海のほう!」

 祀が指差した沖には巨大な渦が巻いていた。

ゆりえ「え、えぇぇ〜!」

『勇者よ……ライディーンは目覚めた。フェード・インするのだ』

ゆりえ「ふぇ、フェード・イン……?」

『「妖魔帝国はすぐそこまで迫っている……ライディーンとフェード・インしてラ・ムーの星を守るのだ……』

ゆりえ「て、手が光って……」

祀「な、なにか来るわ!」

 海に出来た渦のさらに向こう側、二本の触手を生やした奇妙な飛行物体がいくつもこちらに向かってくる。

『フェード・インするのだ……勇者!』

ゆりえ「ら、ライディーン! フェェェェェェド・イン!」

 唱えた直後、ゆりえの体が屋上から消えた。

光恵「ゆりえ!?」

祀「ど、どこに行っちゃったの?」
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/18(金) 19:11:17.19 ID:iMG0wGKN0

 謎の光りに包まれたゆりえはライディーンの内部に転送されていた。

ゆりえ「こ、ここは……」

『勇者よ……妖魔帝国と戦うのだ……』

ゆりえ「よ、妖魔帝国って……きゃぁぁぁぁ!」

 ここが海に出来た渦の中だと気づいたとき、飛行物体がビームを撃ってきたのだ。

ゆりえ「ら、ライディーン? ここはライディーン、あなたの中なの?」

 ビュィィィィィィィ! どうやらこの無数の飛行物体はゆりえが乗るライディーンを狙ってきているようだ。

ゆりえ「きゃあぁぁぁぁぁ! ライディーン、私はどうすればいいのぉ!?」

『ゴッドブレイカーを使うのだ……唱えるのだ』

ゆりえ『ゴォォォォッド・ブレイカァァァァァァ!』

 ライディーンの右腕の装甲が伸び、剣となる。

『飛ぶのだ……勇者』

ゆりえ「と、とぉーっ!」

 ゆりえが渦の中から飛び出したことで、ライディーンの姿が日の下に晒された。そして近くにいた飛行物体、妖魔帝国の戦闘機ドローメにぶつかった。

ゆりえ「えーいっ!」

 ズバァッ! ゴッド・ブレイカーの一撃でドローメは砕け散った!

ゆりえ『ラァァァァイディィィィィィィィン!』
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/18(金) 19:11:55.33 ID:iMG0wGKN0

 佐世保 此花学園

 突如海に現れた渦と飛行物体に男子禁制の女子校も落ち着きをなくしていた。

天使ヒカル「早く、急ぐんだ! 春風、蛍、氷柱!」

立夏「早く早く! うっひゃぁ、マジヤヴァイ!」

春風「ちょ、ちょっと……ヒカルちゃん、立夏ちゃん、足速すぎ……」

蛍「はぁはぁ……」

氷柱「ホタ姉、大丈夫?」

蛍「う、うん、なんとか……」

 遠く離れたところでは、ゆりえの乗ったライディーンが戦っているが、この天使家十九人姉妹の三女から七女の五人はもちろんそんなことは知らない。
 ただ、いきなり発令された警報にランチを中止して一斉に生徒会室に向かって走ったのだ。

ヒカル「はぁはぁ……霙姉は何かあったらここに来いって言っていたけれど……」

春風「ひ、ヒカルちゃん、これ、通信機が光ってる」

 生徒会長の机の隣にある通信機。ヒカルは躊躇うことなくそれを手にした。

霙『やぁ、ようやく取ってくれたか。春風か、それともヒカルか?』

ヒカル「ひ、ヒカルです。霙姉」

霙『そうか、まあそんなことは宇宙の塵のようにどうでもいいことだが、これから話すことは大事なことだ』

ヒカル「な、なんですか?」

霙『うむ、とりあえずは生徒会長の机の引き出しの一段目と三段目を取り出してくれ』

 この緊急時にいったい何をと思いながら言われたとおりにヒカルは姉妹に引き出しを出させた。

 ごごぉん……! すると、地鳴りがして、応接用のテーブルの下に階段が出てきた。

立夏「何コレ!? 隠し階段ってやつ!? ヤヴァイッ!」

霙『どうやらちゃんと作動したらしいな。その後は簡単な話だ。その下にある二つのものに乗って、此花学園を守ってくれ。そうだな、ヒカルと立夏がいいだろう。今日は氷柱はツライだろうからな。洒落じゃないぞ』

 ちらりと氷柱の方を見ると、お腹を抱えてソファに青い顔で座っていた。
 一緒に住んでいるとはいえ、何で霙姉はそんなことを知っていたのだろうかとか考える余裕はなかった。

霙『私と海晴もそっちに向かっている。たぶん、海晴のほうが早く着く。まあ、それまでは頑張ってくれ』

ヒカル「ちょ、ちょっと、霙姉!? ……切れた」

立夏「お、お姉ちゃん、ヤヴァイッ!」

 勝手に階段を下りていた立夏の声が聞こえてきた。急いでヒカルが後を追うと、そこは格納庫のようだった。
545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/18(金) 19:12:24.26 ID:iMG0wGKN0

ヒカル「こ、これは……」

 そこには二体のロボットが立っていた。先鋭的なフォルムで黒いカラーリングが施されている。

立夏「お姉ちゃん、これゲシュペンストだよ! 連邦の新兵器のパーソナルトルーパー!」

ヒカル「まさか、霙姉はこれに乗れと言ってたのか……ってこら立夏!」

 ヒカルが姉の真意を確認したときには立夏はツインテールを振ってエレベーターに乗っていた。
 いや、既にゲシュペンストのコクピットにもぐりこんでいた。

立夏「ヨーシッ! 立夏がゲシュペンストで悪者をやっつけてやる。この星の明日のためのスクランブルだー!」

ヒカル「あ、あのバカ!」

 急いでヒカルももう一体のゲシュペンストのエレベーターに乗った。

ヒカル「立夏! せめて私が乗るまで待ってろ!」

立夏「えぇーっ!」

ヒカル「じゃなきゃ今日のおやつは抜きにするぞ! 春風の特製ホットケーキをちびたちにやってしまうぞ!」

立夏「げげっ! それはイヤーッ!」

 おやつ抜きが効いたのか、立夏はおとなしくヒカルが乗り込むのを待った。

ヒカル「いいか、立夏。霙姉と海晴姉が来るまで時間を稼げばいいんだからな」

立夏「わかってるってばー!」

 此花学園でも必修ではないが、機動兵器の講習がある。
 電源の入れ方からカメラの点け方、操縦の仕方までまるっきり習ったとおりだったため、二人ともすぐにゲシュペンストを動かすことが出来た。

ヒカル「よし、立夏。順番に出るぞ」

立夏「オーッ!」

 ゲシュペンスト頭上の天井が開く。ヒカルは家族を守る強い男役になりたかった。それが出来ることがうれしかった。

ヒカル「ゲシュペンスト、発進!」

立夏「ゲシュペンスト! エヴリウェイユゴー!」

 勢いよく二機のゲシュペンストが空に飛んだ。力強い太陽の光りが待っていたように感じられた。

 コノホシノーアシタノタメノースクランブルダー
 マモレトモヲ タオセテキヲ シュツゲキスーパーロボットタイセンダー
 ココロモヤシテータチムカーエバー ヤミヲキーリサーイテーカガヤケールゼー
 ホコリタカーキー ハガネノキョタイー キボウノセテトベヨニジノカナーター ダダッダッシュ 
 パワーサクレツファイトォーッ! ネッケツヒッチュウダー
 ソノテデツカメショウリー シュツゲキ! スーパーロボットタイセンダーッ!
546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/18(金) 19:13:45.75 ID:iMG0wGKN0

ヒカル「しかし、此花を守ると言われても、どうしたらいいのやら……」

立夏「お姉ちゃん、あっち、あっちのほうで何かやってる!」

 言いながら立夏はゲシュペンストのブースターを噴かしていた。その先にはライディーンに乗ったゆりえと無数のドローメが戦っている。

立夏「ホラホラ、オネーチャン! どう見ても悪者の戦闘機だよ。悪者とウルトラマンが戦っているよ」

ヒカル「いや、どう見てもウルトラマンじゃないだろう……」

ゆりえ『ゴォォォォッド・アロォォォォォォ!』

 ライディーンの手から矢が投げられ、ドローメが落ちていく。

ヒカル「よし、とにかく、あのロボットを助けよう!」

立夏「リョーカイ! スプリットミサイル、発射ーっ! チャオ!」

 ギュボボボボボボ! ヒカルと立夏が二機で発射したスプリットミサイルがドローメに命中して落としていく。

ゆりえ「あ、連邦の味方さんだ。うーっ、助かったぁ〜……」

ヒカル「プラズマカッターで接近戦を仕掛ける!」

 ヒカルがゲシュペンストにプラズマカッターを持たせてドローメを次々と落としていく。
 後ろから続いてくる立夏も面白いように落としていく。

立夏「にゃはははは! どんどん行くよーっ!」

ヒカル「立夏、あまり調子に乗るな。見ろ、まだたくさんいるぞ」

立夏「げげっ! ひーふーみー……うひゃー、数えランナイ! ヤヴァイ!」

ヒカル「立夏! 後ろ!」

立夏「へ?」

 立夏の後ろには撃ち洩らしたドローメが集まっていた。

 ギュビィィィィィィィィィィィィィ! 一斉にドローメがビームを撃った。

立夏「うぎゃーっ!」

ヒカル「立夏! ……ッ!」

 ふらふらと落下しそうになる立夏のゲシュペンストを支えたヒカルが辺りを見ると、百を超えるドローメが二機のゲシュペンストと一機のライディーンを取り囲んでいた。
547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/18(金) 19:14:30.09 ID:iMG0wGKN0

ヒカル「くっ……」

ゆりえ「あわわわ……」

 ドローメが一斉にこちらに触手を向け、発光し始めた。ヒカルはここまでかとぎゅっと目をつぶる。

 だがそのとき、ヒカルのゲシュペンストに声が届いた。

海晴「オクスタンランチャーのEモード〜、ウチのかわいい妹をいぢめてくれちゃったお礼よん」

 ギュォオッ! ズバババババババババ! ゲシュペンストのレーダー外から強力なエネルギービームが飛来し、ドローメを一瞬にして蒸発させていった。

ヒカル「い、今の声は……み、海晴姉!?」

海晴「はろ〜、ヒカルちゃん、立夏ちゃん。ここから先は私とヴァイスちゃんにお任せあれ〜」

 天使家の長女海晴が駆る白銀のヴァイスリッターが戦闘機にも勝る速度でゲシュペンストの頭上を越えていった。
 そして大きく円を描くように急上昇してから急降下。ドローメを真下に捉えていた。

海晴「天に凶星。地に精星〜あら、これってネタバレかしら? 落ちる花は流れる水に身を任せて〜ビームキャノンもあ〜めあられ〜あ〜れぇ〜」

 テスラ・ドライブ搭載で限界まで軽量化されたゲシュペンストの改良機ヴァイスリッターが垂直落下しながら左腕部のビームキャノンを乱射する。
 無茶苦茶な機動ながら三人には当たらないのは海晴の腕だろうか。

ヒカル「す、すごい……」

立夏「むむむ……立夏も海晴オネーチャンに負けてランナイ!」

ヒカル「あっ、おい、立夏!」

 機体自体はそれほど損耗していなかったため、立夏のゲシュペンストがヒカルの手から離れてまた勝手に飛び回ってはスプリットミサイルやニュートロンビームを撒き散らしていった。

ゆりえ『わ、私も頑張ります。ライディーン、ゴォォォォッド・ブウゥゥゥゥメラン!』

 ライディーンのゴッドブレイカーが投げられて、ドローメを潰していく。

 その光景を湾岸で赤い機体が眺めていた。

霙「フッ、私とアルトの出番は無さそうだな……ん、なんだ、あの空の翳りは?」


 佐世保郊外 天使家

観月「あ、あぁ……あ」

小雨「どうしたの、観月ちゃん?」

 天使家の十九人姉妹の小学生以下の子たちは全員家にいた。
 この中の一番の年長者として麗と協力してみんなを見ていた小雨の傍で観月が目を見開いて震えだした。

観月「く、来る……開いてしまう……」

小雨「どうしたの、観月ちゃん、何が来るの?」

 観月はまだ四才の十五女だが、九尾の狐が守護霊についており、そのために霊感が非常に強く大人びている。
 その観月がここまで怯えているのは、何かとてもよくないことが起きる。
 以前のコロニー落としのときも観月は遠い土地のことを強く感じてしまい、寝込んでしまった。

小雨「観月ちゃん、落ち着いて……」

観月「あぁ……開く……魂の扉が……よくないものが来てしまう……!」

さくら「小雨ちゃん、お空が変なの、怖い色してるの!」

 十六女で泣き虫のさくらに抱きつかれた小雨が窓の外を見ると、暗い虹色の渦巻きが出来ていた。
548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/18(金) 19:15:14.33 ID:iMG0wGKN0

 佐世保 沖

 あらかたのドローメを倒した海晴もまた、空の変化に気づいた。

海晴「なに、あの空……気味の悪い色……」

ヒカル「あれはいったい……」

立夏「うえぇ、おいしくなさそーな色……」

ゆりえ「ライディーン……と何か関係があるのかな……?」

 渦巻きは台風みたいにどんどん大きくなっている。その中心がきらきらと輝きだした。
 蝶の鱗粉にも似た輝きの粒は数を増していき、渦の中心が完全に覆われたとき、点滅するホログラムが浮かび上がるかのように巨大な戦艦が二隻とそれに追従しているらしい無数の飛行物体が現れた。

立夏「なにアレェ!? ヤッヴァイ! とにかくヤヴァイヨ!」

海晴「あんな戦艦、見たことも聞いたこともないわ……いったい何が起こっているの……?」

 突如佐世保上空に現れた謎の軍団は互いに争っているようだったが、その中で一際強い光りを放つ二機の姿があった。

チャム・ファウ「タマキ! なんか変なところに出てきちゃったよ!? ここどこ!? 地面が灰色よ!?」

川添珠姫「ここは……もしかして連邦基地!? 地上!?」

トッド・ギネス「なんだとォ? バイストン・ウェルから出てきたっていうのかよ!」

珠姫「トッドさん! 戦いを止めさせてください! 地上の人たちをバイストン・ウェルの争いに巻き込むわけにはいきません!」

トッド「それならまずお前が止めて見せろよ! ゴラオンの軍勢どもを!」

珠姫「くっ……!」

 バイストン・ウェルの聖戦士、川添珠姫はオーラバトラー、ダンバインを戦艦ゴラオンに向けた。

ドレイク兵「おっと、行かせるかよ! ダンバイン!」

チャム「あぁん、邪魔をしないでよぉ!」

珠姫「……!」

 テントウムシに似たオーラバトラー、ドラムロが行く手を遮り、ダンバインは手に持った剣を上段に構えた。

チャム「やっちゃえぇぇぇ! オーラ斬りだぁ!」

珠姫「南無三!」

 ズギャイィィィン! オーラ力(ちから)を纏った剣が一瞬でドラムロを真っ二つにした。

 デデデデッデデデデッ デーデーデ
 テーレーレーレーレーレーテーレレー テーレーレーレーレーレーレレー ォーラー
 オーォラロードーガー ヒラカーレター キラメクヒカリオーレーヲーウツー
 オーォラノーチーカラータクワーエテー ヒライタツバサテーンニートブー
 オソレルナーオレノコーコロー カナシムナーオレノトウシーィー
 ノォービールホーノオガー セーイギニナーレトーォー
 イカズチーハネテーソォドガハシルー ォォォーォォー
 ウミトダイチヲー ツラヌイタトキーィー
 オーラバトラー! ダンバイン!
 オーラシュートー! ダンバイン! 
 アタック!アタック!アタック! オレハセンシー!
549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/18(金) 19:16:32.62 ID:iMG0wGKN0

 バイストン・ウェルに召喚され聖戦士となり、また地上に戻ってきた川添珠姫は、ラウの国の巨大戦艦ゴラオンのブリッジ正面にダンバインで出た。

珠姫「エレ様! 戦いを、戦いを止めさせてください! ここは地上です!」

エレ「先ほどから、ドレイク軍の戦艦、ウィル・ウィブスと交信を求めていますが、返事がありません」

チャム「なによ! こんな状況でも戦うっていうの!?」

珠姫「それなら、とにかくこちらは全軍を撤退させてください! 地上で争ってはいけません!」

エレ「わかりました。全機を帰還させなさい」

エイブ「はっ!」


 ドレイク軍旗艦 ウィル・ウィブス

ドレイク「ゴラオンの軍勢が退いていくか……」

ショット「おそらく、タマキがそう言ったのでしょう」

ドレイク「ここは地上だというのは本当なのか?」

ショット「はい、まず間違いありません」

ドレイク「しかし、ここでゴラオンを逃がす手はあるまい。きゃつらさえ黙らせておけば、地上の軍とはどうとでもなる」

ショット「正しいご判断です」

ミュージィ「ショット様! 空から別の戦艦が降りてきます!」

ショット「なんだと!?」

ドレイク「地上の軍と鉢合わせてしまったのだろうな」


 大気圏を抜けたホワイトベースは、偶然にも佐世保の上空に来ていた。

シノン「あの巨大な戦艦はいったい……」

パオロ「…………」

シノン「艦長? パオロ艦長!?」

 返事のないパオロにシノンは慌てて駆け寄った。だが、パオロの顔からは既に血の気が失せていた。
 何度揺さぶって声をかけても、彼は返事をしない。大気圏突入の衝撃に傷ついた体が耐えられなかったのだ。

シノン「そんな……艦長……」

 ブリッジにいる者は皆沈痛に目を塞いだ。
 やがてシノンはポケットから白いハンカチを出すと、パオロの顔に乗せてから、ことさらに大きな声を張り上げた。

シノン「総員、第一種戦闘配置! まずは味方と思われるゲシュペンストの援護をするわよ!」
550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/18(金) 19:17:28.91 ID:iMG0wGKN0

 佐世保 海上

海晴「あれは……ホワイトベース」

シノン「ヴァイスリッターの天使海晴少尉ですね。私はホワイトベース艦長代理の香月シノンです」

海晴「はいはい、こちらヴァイスリッターですよ。艦長さんはどうしましたの?」

シノン「パオロ艦長は……大怪我で臥せっておられましたが、先ほどの大気圏突入時のショックで……」

海晴「あぁ、ごめんなさい。それでは、今ホワイトベースの指揮はあなたが?」

シノン「はいっ! 半年ほど前から士官候補生としてサイド3に配属されていました」

海晴「そんなにかしこまらなくていいのよ。とりあえず、そちらの部隊に合流させてもらっていいかしら?」

シノン「それはこちらもお願いしたいところですが、あの巨大な戦艦はいったい何でしょう?」

海晴「それがわからないから、私たちも困っているのよねぇ。とりあえず合流しましょ」

シノン「了解しました」

海晴「さてさて、ヒカルちゃんと立夏ちゃん、話はわかったかしら?」

ヒカル「は、はい。ところで、あのロボットはどうするんですか? 敵ではないみたいですけれど……」

海晴「敵じゃないなら味方でしょう? じゃあ大丈夫よ」

立夏「わーい、お姉ちゃん、タンジュンメイカーイ!」

ゆりえ「私、どうすればいいんだろ……」


 ウィル・ウィブス ブリッジ

ドレイク「どうする、ショットよ」

ショット「いきなり地上の軍と争うのは得策ではありません。しかし、ここで我々が退いてはゴラオンに地球軍を接収される恐れがあります」

ドレイク「そんなことはわかっておる。そこから先の意見を聞いておるのだ」

ショット「それならば申し上げます。ゴラオンとともにこの一帯を破壊しつくすのです」

ドレイク「ふん……故郷を捨てる選択を出来る男だったとはな」

ショット「私の故郷はここより遥か東にあります。そしてその東の国は地上で最大の権力を持っています。ゴラオンを潰し、全ての証拠をなくしてゴラオンに罪をなすりつければよいのです」

ドレイク「可能なのか?」

ショット「まずはここを。交渉は必ずや成し遂げてみせましょう」

ドレイク「よし、攻撃を再開させよ」

ミュージィ「かしこまりました!」

ショット(地上に出て不安になっているな、ドレイク。それでも気高き野心を燃やしている。うまくすれば、利用できるな)
551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/18(金) 19:18:41.29 ID:iMG0wGKN0

 ゴラオン

エレ「ウィル・ウィブスを渦巻くオーラ力が邪悪なものに変化してきます。攻撃されてしまいます!」

紀梨乃「うーん、やな予感がするねー。地上に戻ってこれたのはよかったけど……」

チャム「キリノ! タマキが、タマキが倒れちゃったよ!」

紀梨乃「にゃんだってぇ!?」

チャム「ゴラオンについたらすぐにばったりしちゃったの! 目が覚めないの! 死んじゃったの!?」

エレ「おそらく、オーラロードを開くために珠姫様のオーラ力を大量に消費してしまったのでしょう」

エイブ「エレ様! ウィル・ウィブスのオーラバトラーが攻撃を再開しました! 地上の軍にも向かっておるようです!」

エレ「ただちにオーラバトラー隊を出して防衛しなさい。地上への攻撃も許してはなりません!」

紀梨乃「わ、私もタマちゃんのダンバインで出るよ!」

エレ「いいえ、紀梨乃様は地上の戦艦へ向かってください」

紀梨乃「ほえ?」

エレ「グラン・ガランがいなくなり、珠姫様が倒れてしまった今、地上の方とお話ができるのは紀梨乃様だけです。どうか彼らに私たちバイストン・ウェルのことと、ドレイク・ルフトの野望をお伝えしてください」

紀梨乃「そうだね……うん、わかったよ!」
552 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/18(金) 19:19:17.16 ID:iMG0wGKN0

 佐世保湾岸

 佐世保上空の海晴たちはホワイトベースと合流をする前にドレイク軍の猛攻に遭っていた。

 天使家次女、霙とアルトアイゼンが立つ基地のほうにもオーラバトラーは仕掛けてきていた。

霙「ちっ、いきなりこちらにも攻撃を仕掛けてくるとは……空を飛んでいる上に小さくて機動性も高い」

ドレイク兵「あんなでかい寸胴の兵器、ドラムロで!」

霙「見た目どおりの重さだとは思わないことだ」

 アルトアイゼンの赤い角が光る。
 膝がぐっと下がった瞬間、強襲用試作型パーソナルトルーパー、アルトアイゼンは驚異的な瞬間爆発力をフルに発動して跳躍した。

ドレイク兵「な、なんだ、うわぁぁぁぁ!」

霙「フッ、伊達や酔狂でこんな頭をしている訳ではないぞ」

 ズバァッ! 灼熱のヒートホーンがドラムロを一瞬で切り裂く!
 ヴァイスリッターのように長い間の飛行と湾曲な機動力は持たないが、直線での瞬発力は他の追随を許さないアルトアイゼンは加速上昇の過程で三体のドラムロを葬った。

霙「私たちは共に等しく宇宙の塵だ。塵は塵らしくぶつかり合って散ろうではないか」

 霙は終末主義者でこの世の終わりの前には全ての者が等しく宇宙を漂う無数の塵のように無価値であると思っている。
 でも、そんな塵同士が小さな箱の中で電子のように激しくぶつかりあうのを見るのはなかなか好きなのだった。

 時代錯誤な設計思想ゆえに無価値な古い屑鉄と名づけられたアルトアイゼンは彼女にとっては興味深い箱舟だった。

霙「スクエア・クレイモア――当たるも八卦、当たらぬも八卦だ」

 ズドドドドドドドドッ! アルトアイゼンの両肩が開き、四十もの砲口から一倉で八発の鋼鉄ベアリング弾を秒速で全て発射する――合計で三百二十発の鉄球が扇形にばら撒かれ、装甲の薄いドラムロの羽に穴が空き、ボトボトと海へ墜落していった。

霙「おや、意外とやわいな。まあ、胴体を貫通はしていないようだし、パイロットが乗っていても生きてはいるだろう」

 地面に着地したアルトアイゼンの傍にゲシュペンストが一機飛んでくる。

立夏「霙オネーチャン!」

霙「おや、立夏じゃないか」

立夏「海晴オネーチャンに霙オネーチャンのほうに行けって言われちゃった。やっぱりリッカじゃオネーチャンたちの足手まといなのかな?」

霙「そういうわけじゃないだろう。あいつらは陸上にも攻撃を仕掛けているからな。私と一緒に陸を守れということさ」

立夏「うん、わかったよ、オネーチャン」

霙「それに、本州のほうの各研究所からスーパーロボットが来るらしい。歓迎の出迎えは多いほうがいいだろう?」

立夏「ワオ! ウワサのマジンガーZに会えちゃうの!? コン・バトラーVとゲッターロボも!?」

ドレイク兵「うおぉ! もらったぁぁぁ!」

 ガシュイィィィィン! 立夏の後ろを取ったドラムロがリボルビング・ステークの一撃で粉砕された。

霙「あぁ、きちんと迎えるためにも、舞台は綺麗に掃除しておかないとな」

立夏「ウンッ!」
553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/18(金) 19:20:27.64 ID:iMG0wGKN0

 ホワイトベースからはドラグナー1型と3型となのはが出撃し、飛行能力のないガンダムと砲撃戦主体のドラグナー2型は艦上からドラムロと戦っている。

シノ「必殺! ドラグナー三枚おろし!」

ドラムロ兵「う、動きが速い!? うわぁぁぁ!」

なのは「ディバイーン・シューター!」

ドラムロ兵「あ、あんなガキに……!」

 ウィル・ウィプス

ドレイク「地上の軍はやるようだな。ハイパーオーラキャノンの準備を急がせろ!」

ミュージィ「ダンバインが出てきました! 地上の戦艦に接触する模様です」

ショット「ダンバインはトッドに任せろ!」

 ホワイトベース

シノン「一機、こちらに向かってくる!?」

オペレーター「白旗を持っています。攻撃の意思はないようです」

シノン「受け入れましょう。ガンダムと2型で援護して」

 戦闘空域を紀梨乃とチャムの乗った白旗を持ったダンバインが一直線に飛んでいく

紀梨乃「よかったー、どうやら受け入れてもらえそうだね」

チャム「大丈夫かなぁ、キリノ、だまし討ちとかされるんじゃない?」

紀梨乃「それはあちらさんを信じるしかないよー」

チャム「……っ! キリノ! 下から来るよ! ダンバインだぁ!」

トッド「行かせるかよぉ、ダンバイン!」

 ガキィィィンッ! 二体のダンバインの剣が空中でぶつかりあう。しかし、機体の性能は同じでも紀梨乃オーラ力ではトッドのものには劣ってしまう。

トッド「ここでケリをつけてやるぜ、ジャップ!」

チャム「正面!? 当たっちゃうぅ!」

紀梨乃「耳元で怒鳴るにゃー!」

 ガッ、ガキィンッ! トッドの剣が何度も紀梨乃に叩きつけられる。どうにか受け止めるが、トッドの強いオーラ力が紀梨乃のダンバインに負担をかける。

トッド「このオーラ力、タマキじゃねえな! ならば雑魚に用はねぇ! 沈みやがれ!」

 パキィィィィン! ついに紀梨乃の剣が折れてしまった。

紀梨乃「にゃんとーっ!」

チャム「だめぇ! やられちゃうぅ!」

 トッドが剣を大きく振り上げた。だが、

アリア「どすこーい!」

 ドドォン! ドラグナー2型の肩部にあるキャノン砲が火を噴いた。

トッド「ちぃっ! 邪魔をしやがって!」

ショット「トッド、戻れ!」

トッド「何だとォ! ダンバインをやれるんだぜ!?」

ショット「ハイパーオーラキャノンを撃つ。ゴラオンと地上の戦艦をまとめて沈める。死にたければそこにいろ」

トッド「ちぃっ、運が良かったな、ダンバイン!」

紀梨乃「あれ、下がっていく?」

チャム「ち。違うよ、キリノ……」

紀梨乃「どうしたの、チャムちゃん?」

チャム「来るよ……大きな強い、憎しみを生む力が……!」
554 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/18(金) 19:22:15.80 ID:iMG0wGKN0

 ゴラオン

エレ「き、来ます……ドレイクの悪しきオーラ力が……!」

エイブ「エレ様!?」

珠姫「は、早く逃げて……っ!」

エイブ「タマキ殿!? まだ動いては!」

エレ「ここからでは間に合いません……避けられたとしても、後ろにある地上の戦艦に当たってしまいます」

珠姫「くっ……」

エレ「私の霊力で、可能な限り軽減させてみせます。皆の者は後方へ避難せよ」

エイブ「そ、そんなことをしては、エレ様が!」

エレ「しかし、これしか方法がありません」

 その頃、ゴラオン付近の空を飛行していたなのはの愛器もまた、異様な力を捉えていた。

レイジングハート「(前方の暫定敵戦艦の主砲に魔力と思しき力が凝縮されています)」

なのは「えっ、どうなっちゃうの?」

レイジングハート「(十二秒後、強力な砲撃がホワイトベース及びもう一隻の戦艦に当たります。一撃で両艦共に撃墜されるでしょう)」

なのは「そんな、どうすればいいの?」

レイジングハート「(あなたの魔力を可能な限り引き出させていただきますが、よろしいですか?)」

なのは「うん、オッケーだよ、レイジングハート!」

レイジングハート「alllight my muster」

 なのはは一気に上昇してゴラオンとウィル・ウィブスの間に割って入った。
 射線上にいきなり白い少女が現れたことで、二隻の艦長は当然驚いた。

エレ「地上の方!? 危険です、お下がりください!」

ミュージィ「いかがいたしますか、ドレイク様?」

ドレイク「ここは戦場だ。ハイパーオーラキャノン、撃て!」

なのは「レイジングハート、全力全開!」

レイジングハート「wide aria protection」

 ギュオォォォォォォォォッ! ウィル・ウィプスの主砲、ハイパーオーラキャノンが発射された。
 ウィル・ウィプスに取り付いていたオーラバトラーなどが全て焼き消されていく。
 そして熱き塊りがゴラオンに迫るが、ゴラオンを大きく包み込むほどの魔力の壁がハイパーオーラキャノンを受け止めていた。

なのは「くっ、くぅぅぅぅぅ!」

エレ「地上の方が私たちのゴラオンを守ってくれている……」
555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/18(金) 19:22:52.66 ID:iMG0wGKN0

ドレイク「何なのだ、あの小娘の力は……オーラ力ではない……おのれ」

 拡散され無力化していくハイパーオーラキャノンだが、ドレイクの強い野心がオーラ力を増幅させていく。

なのは「ち、力が……強くなっている……!? でも、逃げちゃダメ……!」

エレ「あの方の力はとても善き波動を持っている……私の霊力を重ねることができれば……」

 エレは指を組み、自分の霊力で新たな壁を作った。それを少しずつ広げていき、なのはの魔法と合わせていく。

なのは「これは……あの戦艦の中の人から?」

エレ「地上の方……力をお貸しします。私はエレ・ハンム、バイストン・ウェルのラウの国の女王です」

なのは「ば、ばいすとん……うぇる?」

エレ「詳しいお話は、あのドレイク・ルフトを退けてからいたしましょう。彼はこの地上をも脅かす危険な存在です」

なのは「はい、わかりました!」

ドレイク「な、なんだ……小娘の力が……これは、エレ・ハンムか!?」

エレ「悪しきオーラ力よ……ドレイク・ルフト、去りなさい!」

なのは「えぇぇぇぇい!」

 シュパァァァァッ! なのはの魔力とエレの霊力が合わさり、ハイパーオーラキャノンはかき消された。

ドレイク「むぅぅ、地上の軍がこれほどとは……」

ショット「申し訳ありませぬ、ドレイク様。私が知っていたときよりも地上の軍は変わっていたようです」

ドレイク「だが、物量ではまだ勝っている。どうやら小娘もエレ・ハンムも先ほどと同じ力を引き出すことは出来まい。再びハイパーオーラキャノンを撃つ時間を稼ぐことができれば、勝機はワシらにある」

ショット「かしこまりました。第三陣、発進用意をせよ!」
556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/18(金) 19:23:25.17 ID:iMG0wGKN0

 佐世保 陸地

立夏「霙オネーチャン! またいっぱい出てきたヨ! ヤヴァイ!」

霙「口を動かす暇があったら機体を動かせ、立夏。性能差ではこちらは負けん」

立夏「うん、オネーチャン! ニュートロンビームッ!」

 マシンキャノンとスプリットミサイルをガンガン発射していく霙、その足下の海面には落としたドラムロが大量に浮かんでいる。

霙(とはいえ、この数はさすがに不利というか、カバーしきれないな、弾数も少なくなってきた)

 だが、そのときドラムロとは違うオーラバトラーが立夏のゲシュペンストに接近してきた。

バーン「地上人よ、遊びはここまでだ。バーン・バニングスとレプラカーンが相手をしよう!」

 黄褐色のオーラバトラーはその速度はドラムロとは一線を画していた。
 実戦経験に乏しく、単調な戦闘をしていた立夏の目には全く止まらなかった。

霙「立夏!」

立夏「げげっ!?」

 ズバァッ! 一刀の下に立夏のゲシュペンストは左肘と左踝を切られてしまった。

立夏「キャァァッ! バランスが崩れるぅ〜!」

バーン「とどめだ! 地上人!」

霙「それ以上、立夏には近づかせん!」

 急発進したアルトアイゼンがリボルビング・ステークをレプラカーンに突きつけた。
 だが、まるで幻想を掴むかのようにレプラカーンは消えてしまっている。

バーン「貴様の動きは既に見切っている!」

 ドッ、ドシュッ! レプラカーンの左腕のフレイボムが発射される。
 それらをヒートホーンで叩き落すと、剣を掲げたレプラカーンが目の前に来ていた。

バーン「落ちろっ!」

 ガキィィンッ! 刃を受け止めたステークが断ち切られてしまった。

霙「くうっ!」

バーン「ここで私の一撃をかわすとはな、だがそれまでだ!」

唯「光子力ビーム!」

 ビィィッ! バーンがとどめの剣を振り下ろそうとした瞬間、アルトアイゼンの後ろから飛んできた光線が剣を弾き落した。

バーン「ぬうっ、地上の援軍か!」
557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/18(金) 19:24:38.08 ID:iMG0wGKN0

 佐世保の湾岸には、輸送機から直接降下してきたマジンガーZがコンクリートにヒビをつけて立っていた。

唯「悪者めー! マジンガーZが来たからにはもう好きにはやらせないぜー! ふんす!」

バーン「ドラムロ隊よ、奴らを始末してしまえ!」

夕映「ゲッタァァァァァ・ビィィィィィィィム!」

翠星石「超電磁・スパァァァァァク!」

 湾岸にはいつの間にかゲッターロボとコン・バトラーVもいた。
 それぞれ得意の攻撃で上陸しようとしていたドラムロを撃破していく。

バーン「ぬぬぬ……地上人どもめ……っ!?」

 握りこぶしを震わせていたバーンにひやりとした悪寒がよぎった。
 レプラカーンの肩に何者かが接触していた。

海晴「オクスタンランチャーのBモード。かなり痛いわよん?」

 そして、バーンの正面にはヒカルのゲシュペンストがプラズマカッターを構えていた。

ヒカル「私の家族を傷つけた罪は重いぞ」

バーン「ぐ、ぐぐっ……舐めるなよ。地上人ども! このバーン・バニングス、貴様らに与する舌など持たん!」

 バーン・バニングスは激情で自らのオーラ力を増幅させ、一気に外へ解き放った。
 その目に見えない力は確かな質量を伴って彼を取り囲む機体を吹き飛ばした。

海晴「きゃっ!」

ヒカル「な、なんだ!?」

 自由になったレプラカーンはすぐに身を翻してウィル・ウィプスへと戻っていく。

バーン「地上人どもよ! 我らは誇り高きバイストン・ウェルの戦士だ。身は引いても志までは退かぬ! 次こそは打ち倒してみせようぞ!」
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/18(金) 19:25:33.30 ID:iMG0wGKN0

 ウィル・ウィプス

ドレイク「第三陣が五分ともたずに潰滅か……」

ショット「よもやあのような兵器が開発されていようとは……」

 ショットはオーストラリアで重労働に課せられていたときにジオン軍のブリティッシュ作戦で落ちてきたコロニーの衝撃でバイストン・ウェルへ飛ばされていたため、一週間戦争、ルウム戦役などの連邦とジオンの争いを知らない。

ショット「ドレイク様、ここは退いて我が故郷へ向かいましょう」

ドレイク「ふむ」

ショット「我らにはトッドもいます。彼は元々は我が故郷の兵士でした。交渉は成功します」

ドレイク「よし、全機帰還させよ。ウィル・ウィプスはショットの故郷へ向かう」

ミュージィ「はっ!」

トッド(おふくろ……俺はバイストン・ウェルから帰ってきたぜ。ジオンの連中にやられてないだろうな)
559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/18(金) 19:26:09.03 ID:iMG0wGKN0

 ドレイク軍が佐世保から去っていった後、連邦基地に少女達は集まった。

シノン「とりあえず集まってもらったけど、改めて一人ずつ自己紹介してもらいましょう」

唯「はーい、桜ヶ丘高校軽音部、平沢唯! マジンガーZに乗ってます」

澪「同じく桜高軽音部、秋山澪です。アフロダイAに乗ってます」

律「軽音部部長、田井中律だぜ、ボスボロットに乗って大活躍中だわさ」

梓「戦闘に間に合ってすらいないじゃないですか……」

紬「琴吹紬です。光子力研究所のスポンサーをしています」

憂「平沢憂です。お姉ちゃんのお世話をしています」

梓「あれ、私は何でここにいるんだろう?」

唯「もちろん、私たちを癒すためだよ、あずにゃん〜」

梓「ふにゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

ハルナ「それじゃあ、次は私たちね、三人でゲッターロボのパイロットをやっているわ、私は早乙女ハルナ、気軽にパルでいいわよ」

夕映「ゲッター1のパイロット、綾瀬夕映です」

のどか「ゲッター2のパイロットの……宮崎のどかですー……」

翠星石「それじゃあ、コン・バトラーVですぅ。翠星石は翠星石ですよぅ。コン・バトラーVは翠星石と蒼星石と家来どもが操っているですぅ」

真紅「その口を縫い付けてやるのだわ」

雛苺「なのー」

金糸雀「かしらー」

蒼星石「えっと……僕らはローゼンメイデンっていう人形で……かくかくしかじか」

なのは「高町なのはです。えっと、いろいろ事情がありまして……魔法使いをしています」

立夏「ワオ! ホンモノの魔法使い!?」

ヒカル「夕凪が見たらどう反応するか……」

リュウ「リュウ・ホセイだ。コア・ファイターに乗っている」

すずか「つ、月村すずかです。ガンダムに乗っています」

アリサ「アリサ・バニングスよ。今はホワイトベースの通信士をやっています」

紬「あら、ひょっとしてバニングス家の方ですか?」

アリサ「そうですよ、琴吹家のことは私も知っています」

紬「父が一度コンタクトを取りたいと言ってましたのよ」

唯「おおぅ、なんだかすごくレベルの高い会話が!」
560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/18(金) 19:35:54.37 ID:iMG0wGKN0

シノ「次はD兵器の私たちだな。天草シノ、ドラグナー1型のパイロットだ」

アリア「七条アリアよ、2型のパイロットをしています」

スズ「萩村スズです。3型のパイロット。高校生です! IQ180あります! 16歳です!」

シノ「そんなに力説しなくても……我々は三人とも桜才学園の生徒会役員だ」

ランコ「畑ランコと申します。元桜才学園の写真部。今は天才扇情カメラマンですムッハー」パシャパシャ

澪「ひえっ、と、撮らないで〜……」

ランコ「ムッハー、美少女ぞろいですがとびっきりムッハー」パシャパシャ

紬「あらあら、七条家の人まで……」

アリサ「なかなかカオスね……」

ゆりえ「えっと、一橋ゆりえです。ライディーンに乗せられちゃいました……?」

律「なんで疑問系……」

ゆりえ「わ、私もよくわからないんです……ライディーンに呼ばれる声がして、気がついたら……」

シノン「よくわからないって言ったら、こっちの人たちもそうだからね……」

エレ「申し訳ありません、地上の方々、私たちが混乱を招いてしまったようで……」

シノン「いえ、そう責めている訳ではないんです。バイストン・ウェル……でしたっけ?」

エレ「はい、海と大地の狭間にある魂の故郷、それがバイストン・ウェルです」

エイブ「我々は地上の聖戦士と呼ばれる強いオーラ力を持つ者を使って世界を我が物にしようとするドレイク・ルフトの野望を阻止しようとしていたのです。こちらのキリノ殿とタマキ殿はドレイク軍から我らに力を貸してくれた方たちです」

紀梨乃「私とタマちゃんは剣道部だったんだけど、他にも部員が三人、たぶんバイストン・ウェルに残っているんだ」

チャム「今はナの国のシーラ・ラパーナ様と一緒のグラン・ガランに乗ってクの国と戦っているのよ」

シノン「あの、こちらの小さい方は、人形ではなく……?」

チャム「私は人形じゃないわよ! ミ・フェラリオなんだから!」

シノン「ご、ごめんなさい」

澪(……かわいい)

ヒカル「やはり川添さんだったのか」

珠姫「えっ?」

ヒカル「覚えてないか、一度剣道の試合をさせてもらったことがあるのだが……」

珠姫「あっ、えっと……あれ???」

ヒカル「……覚えてないのか」

珠姫「すみません」

ヒカル「いや、いいんだ」

霙「フッ、私たちはしょせん誌上企画にすぎないのだからな、知っている人が少ないのも無理はない」

立夏「霙オネーチャン、何のことを言ってるの? またウチュウのハナシ?」

霙「フフッ、そうだな、宇宙の外の話だ。私たちには到底どうしようもできない世界の力の話だ」

海晴「はいはい、アブない話はそこまでね、霙ちゃん。それじゃ私たちの番ね。連邦軍所属、プロジェクトATXチームでヴァイスリッターのテストパイロットをしています。天使海晴少尉です」
561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/18(金) 19:36:29.07 ID:iMG0wGKN0

霙「天使霙曹長だ。アルトアイゼンのテストパイロットをしている」

ヒカル「あの、海晴姉、私と立夏はどうすれば……」

海晴「うんとね、出来れば、このままあのゲシュペンストに乗ってくれるとうれしいんだけど……」

立夏「ホントに!? ヤッター!」

ヒカル「し、しかし、正規の連邦兵器に私たちが乗るなんて……」

海晴「あら? あのゲシュペンストが連邦の兵器なんて誰が言ったの?」

ヒカル「えっ?」

霙「あれはママが個人的に所有している物だ。正確には、ママがATX計画の初期段階で造らせた新型パーソナルトルーパーの実験機だ」

立夏「ワオ! 霙オネーチャンがママって言うの初めて聞いたヨ!」

霙「それはこの家のルールだからだな……じゃなくて、あの二機を元にアルトアイゼンとヴァイスリッターが造られたんだ」

海晴「ヒカルちゃんが乗ったのが強襲型タイプSの実験機で、立夏ちゃんが乗ったのが砲撃戦型タイプRの実験機。だからそれぞれ微妙に使い勝手が違うのよ」

ヒカル「確かに、立夏が使っていたビーム兵器は私のほうにはなかったな」

霙「代わりにタイプSはプラズマカッターの出力が高く、ジェットマグナムという接近兵器を搭載している。さらに、私が考案した究極のアタッカー・モーションがある」

立夏「何ソレ! なんかヒカルオネーチャンのほうズルイ!」

海晴「あら、私のゲシュちゃんにもちゃんとついてるから、大丈夫よ、立夏ちゃん」

立夏「ホントに? ワーイ!」

律「しっかし、モビルスーツにメタルアーマーにパーソナルトルーパーって、連邦軍内で統一できてないんだな」

シノ「そうだな、この佐世保基地はパーソナルトルーパー中心の基地だから、D兵器の登録解除はできないと言われてしまった」

紬「たしか……連邦が惑星探査・コロニー自警用に開発されたのがPTゲシュペンストだったわね」

スズ「そうですね、ただし、ゲシュペンストは重力上での活動が前提にされていたので、無重力化ではその性能の半分も発揮できません。それに対してジオン公国は戦術使用を目的としたモビルスーツ・ザクを開発。ミノフスキー粒子の発見でゲシュペンストを含めた従来のレーダーはまるで役に立たなくなったところを一週間戦争でやられてしまった訳ですね」

シノ「おぉ、スズが賢く見えるな」

スズ「当然です。私はIQ180なんですから!」

唯「おぉ〜」

スズ「そして、ジオン公国に密かに資金援助をして、代わり技術支援を受けたギルトール将軍がメタルアーマーを開発して、ギガノス帝国を打ち立てた。メタルアーマーは航空兵器としての特性を強く残し、人型による汎用性を追及したモビルスーツとはまた違う機動兵器として、ギガノス軍の主力になっています」

海晴「それに対抗して連邦軍が取り組んだのが、PT・MS・MA開発と運用を前提とした新造戦艦の開発≠サれがV作戦≠諱v

霙「そして生まれたのが、モビルスーツ・ガンダム、メタルアーマー・ドラグナー、そしてゲシュペンストの改良機であるアルトアイゼンとヴァイスリッター、戦艦ホワイトベースだ」

シノン「そして、先ほどレビル将軍からホワイトベース宛に指令が届いたわ」

アリア「あら、何かしら?」

シノン「『ホワイトベース隊は第13独立部隊として地上においてジオン・ギガノス連合軍基地に対して陽動作戦を展開し、ジャブロー本部への注意を逸らすように』とのことです」

アリサ「何よそれ! 要はオトリってことじゃない!」

シノン「そうね、紛れも無くこれは囮作戦だわ。それに、補給は極東支部での民間施設より行えとあるわ」

紬「それは大方に言えば私の実家や、各スーパーロボット研究所でっていうことかしら」
562 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/18(金) 19:37:15.61 ID:iMG0wGKN0

霙「レビル将軍がこのようなずさんな指令を出すとは思えないな。確かにジャブローは連邦最大の基地ではあるが、その防衛能力は堅牢でむしろ引きつけさせてジオンを攻めさせる作戦を取ったほうがいい。臨機応変に打って出れば他の基地と連携して挟み撃ちにできる」

梓「ジャブローのモグラ……ですね」

唯「なにそれ、あずにゃん?」

紬「ジャブローには連邦のエリート高官がたくさんいるんだけど、彼らが表に出てくることはほとんどない。ジオンのザビ家はそんな彼らをジャブローのモグラと軽蔑したの」

海晴「一応、軍法会議ものになっちゃうから、連邦軍の中ではあまり言わないでね」

霙「この指令は暗にジャブローに敵を近づけさせるなということだ。レビル将軍が前線で指揮をしてヨーロッパ方面を戦う間にアジア、北米方面を我々に引きつけさせ、ジャブロー高官の私兵と化した戦力を温存しようというのだろう」

律「ホントに気にくわねーなお偉いさんの考えることは」

シノン「それでも、命令ならば私たちは従うしかないわ。ただ、民間のスーパーロボットなどはこの限りではないから、無理に私たちについてくる必要はありません」

夕映「いえ、私たちは何か手伝えることがないかと思ってここまで来たのです」

リュウ「そう言ってくれるのはありがたいがな、この日本だってドクター・ヘルやキャンベル星人なんていうやつらに狙われているんだろう?」

ハルナ「だからといって、あまり戦力を集中させても危険なのよね。極東支部自体の防衛力はそんなに高くはないんだから」

シノン「都合のいい話ではあるけれど、あなたがたスーパーロボットは民間協力者として極東支部管理下の都市を防衛してもらいつつ、必要に応じて臨機に私たちの作戦に参加してもらう。ということでよろしいかしら?」

唯「お〜け〜でーす」

澪「ノリが軽い……」

ハルナ「私たちもオーケーよ」

翠星石「しゃーねーですから、翠星石もオッケーしてやるですよぅ」

真紅「不本意だわ」

蒼星石「真紅、そろそろKYだよ」

ゆりえ「私は……う〜、学校の成績が下がったらどうしよう〜」

律「いいじゃな〜いの、この緊急時に学校なんてあってないようなもんだぜ〜」

ゆりえ「そ、そんなこと言われたって〜、私、神様になっちゃったし……なんかそのお仕事もあるって祀ちゃんに言われたし……」

律「なに、神様って?」

ゆりえ「あ、私、神様になったみたいなんです」

律「ロボットが戦って、魔法少女が出てきて、異世界の扉が開いて、おまけに神様かよ。随分ダッシュな話だな、おい」

エレ「気になるのはドレイクの動きです。あの後、どこへ行ったのか……」

シノン「ドレイク・ルフトとウィル・ウィプスね……たしか、地上の人も乗っているのよね」

紀梨乃「そうだね、ショット・ウェポンとトッド・ギネス。他にも何人かの地上人がドレイクに従っているよ」

珠姫「二人はアメリカ人なので、きっと北米大陸に向かったんじゃないでしょうか?」

シノン「たしかに北米大陸へ針路を取っていたわね。まずいわね……北米大陸にはジオンの地上部隊の主力が集結しているわ。もしもドレイクとジオン軍が手を組んだらジャブロー方面の圧力は強くなるわ」

律「いいんじゃねーの、そうすりゃお偉いさん方も少しはわかってくれるだろーし」

霙「たしかにジャブローの連中を刺激する意味ではいいかもしれないが、オーラバトラーはモビルスーツの半分程度の大きさで小回りもきく上に数も多い。下手をすると電撃作戦でジャブローを落とされてしまう可能性がある」
563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/18(金) 19:38:05.29 ID:iMG0wGKN0

紬「ジャブローが落とされてしまうと、地上戦の形勢は一気にジオン・ギガノスに傾いてしまいますね……やはりドレイク軍の動きはほうっておけませんね」

リュウ「だが、アジア大陸のほうも今は厄介だ。資源採掘地帯はほとんどジオン・ギガノス連合に占拠されちまっている。奴らもほうっておくとどんどん資源を宇宙に運び出しちまう」

ヒカル「なんだか、大変な役回りばかりやらされているな……」

海晴「そうね。でもアジア方面に行けばレビル将軍の部隊もいるし、太平洋を渡るよりはやりやすいと思うわ」

シノン「はい。幸いこちらには戦艦がホワイトベースとゴラオンの二つあります。どちらかを牽制している間にもう一方をスーパーロボットを投入して叩くことができれば、戦力差はカバーできると思います」

エレ「それならば、我がラウの国のゴラオンでドレイク軍を引きつける役をやらせてはもらえませんか、ドレイク軍は私たちバイストン・ウェルの人々の責任でもありますし、ゴラオンならばある程度多くの物資を積むことが出来ます」

シノン「私もそれがいいと思っていました。それではエレ様、お願いできますか?」

エレ「お引き受けしましょう」

シノン「それと、なのはちゃんとすずかちゃん」

なのは「はい、なんでしょう?」

すずか「なんですか?」

シノン「二人はゴラオンのほうに移ってもらっていいかしら。ジオンとギガノスはガンダムとD兵器の両方を狙っているみたいだから、二つにわけたほうが敵の戦力も分散することができると思うの」

なのは「はい、私は大丈夫です」

すずか「わ、私も大丈夫です」

シノン「そう、ありがとう、二人とも――」

アリサ「ちょっと待ってください。二人が移るなら、私も行かせてください!」

なのは「アリサちゃん……」

シノン「そうね、アリサちゃん、二人のこと、お願いするわ」

アリサ「はい! まかせてください!」

すずか「ふふ、ありがとう、アリサちゃん」

シノン「リュウさんも、ゴラオンのほうにお願いできますか?」

リュウ「了解だ」

シノン「それでは、改めて指令を出します。スーパーロボット各機は極東支部の都市防衛をお願いします」

唯・他「ラジャー!」

シノン「ダンバインを初めとするオーラバトラーとなのはちゃん、すずかちゃん、アリサちゃんはゴラオンに搭乗し、北米大陸の向けて陽動作戦を行ってください」

エレ「わかりました」

シノン「D兵器の三機、パーソナルトルーパー四機はホワイトベース隊として、アジア大陸の基地を攻撃、制圧します。最初の目標は上海で連邦軍と合流しギガノス軍に占領された重慶基地です」

シノ・他「了解!」

シノン「皆さん、ここにいる理由は様々だと思います。自分の意思で軍に在籍する人。数奇な運命でパイロットに選ばれた人。自分の家族や世界を守りたいと思うゆえに戦うことを選んだ人。立場や故郷は違えど、私はここに集った皆さんを頼もしく思います。私たちは力を合わせ、この戦争を一刻も早く終わらせることができるよう、戦いましょう」


 第四話 邂逅! 目覚めよ、勇者 開け、魂の扉 完

 第一部 大集結! 無敵のスーパーロボット軍団! 完
564 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/18(金) 19:45:38.27 ID:iMG0wGKN0

 謎の光りに包まれたゆりえはライディーンの内部に転送されていた。

ゆりえ「こ、ここは……」

『勇者よ……妖魔帝国と戦うのだ……』

ゆりえ「よ、妖魔帝国って……きゃぁぁぁぁ!」

 ここが海に出来た渦の中だと気づいたとき、飛行物体がビームを撃ってきたのだ。

ゆりえ「ら、ライディーン? ここはライディーン、あなたの中なの?」

 ビュィィィィィィィ! どうやらこの無数の飛行物体はゆりえが乗るライディーンを狙ってきているようだ。

ゆりえ「きゃあぁぁぁぁぁ! ライディーン、私はどうすればいいのぉ!?」

『ゴッドブレイカーを使うのだ……唱えるのだ』

ゆりえ『ゴォォォォッド・ブレイカァァァァァァ!』

 ライディーンの右腕の装甲が伸び、剣となる。

『飛ぶのだ……勇者』

ゆりえ「と、とぉーっ!」

 ゆりえが渦の中から飛び出したことで、ライディーンの姿が日の下に晒された。そして近くにいた飛行物体、妖魔帝国の戦闘機ドローメにぶつかった。

ゆりえ「えーいっ!」

 ズバァッ! ゴッド・ブレイカーの一撃でドローメは砕け散った!

ゆりえ『ラァァァァイディィィィィィィィン!』

 パッパラーパララパッパパー パララパッパパー パララパッパラパー
 ラララーランララー ライディーン ライディーン
 マブシイソラヲー カガヤクウミヲー 
 ワタセルモンカー アクマノテニハー
 ミンナノネガイー カラダニウケテー
 サーァー ヨミガーエーレー ライディーン ライディーン
 フェードイーン フェードイィーン タチマチアフレルシンピノチカラー
 ユケーユケー ユウシャー ライディーン ライディーン
 ラァァイディィィィィィィィン!

565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/18(金) 23:30:06.77 ID:1qHqZ1zAO
566 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/21(月) 17:18:57.65 ID:Wsw2B+7L0

 第5話

 光子力研究所

唯「あずにゃん、あずにゃん!」

梓「なんですか、唯先輩、ムギ先輩まで」

唯「私たち、マジンガーZの歌を作ったよ!」

梓「ズコー!」

紬「久しぶりにはりきっちゃったわ〜」

唯「澪ちゃんとりっちゃんにももう譜面渡してあるから、あずにゃんも練習しようよ!」

梓「この戦時下でこの人たちは……」

唯「なんだよー、あずにゃんはいつも練習しましょうって言うくせに、私がやる気出すと怒るんだもん」

梓「怒ってはいませんよ。ただ、もうちょっと時と場合というのを考えてほしくてですね……」

唯「あずにゃん、落ち着いてー、ぎゅー」

梓「はうっ、はにゃーん……」

紬「はあはあ」

 スタジオは光子力研究所に紬が用意していてくれた。
 合宿の別荘で使った時の様な広い部屋に新品の機材がたくさん並んでいる。

律「いくぜー、ワン、ツー、スリー!」

唯「そーらにー、そびえるー、くろがねのーしろー、スーパーロボットー、マジンガーゼットー」

 中略

唯「いまだー、だすんだー、ルストハリケーン、まじんごー、まじんごー、マジンガーゼーェット!」

 ジャーン!

憂「お姉ちゃんかっこいいー」パチパチ

梓「これはひどい。とても宇宙世紀の歌とは思えない」

さわ子「新しい路線を開拓したわね、唯ちゃん。いや、むしろ発掘かしら?」

澪「ふわふわ時間のあとにこれを歌うのが想像できないな……」

律「なんか今までで一番リズム取るの大変だったぜ……」

紬「楽しかったわー、唯ちゃん。素敵」

唯「でへへー、もっとほめてー」

 ズガァァァァァァァァン!

憂「きゃあぁ!」

唯「ふおぉー、なにごとー!」

秋山「みんな、急いで出撃してくれ! また機械獣が現れた!」

律「なんだってー! 懲りない奴らだぜ!」

唯「あーん、この後ムギちゃんのおやつが待ってるのにー!」

澪「戦いが終わってから食べろ!」
567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/21(月) 17:19:59.18 ID:Wsw2B+7L0

 光子力研究所 近郊

唯「パイルダー、オーン! マジーン、ゴー!」

澪「アフロダイA、ゴー!」

律「じゃんじゃじゃ〜ん! ボスボロットも参上だわさ〜!」

 マジンガーZからだいたい250メートルほど離れた場所にあしゅら男爵と以前に倒した機械獣ガラダK7とダブラスM2がいた。

あしゅら「平沢唯、マジンガーZ! 今日こそは貴様たちを叩きのめし、光子力研究所を奪い取ってやるわ!」

唯「なにをー! 前に負けた機械獣を使いまわしてマジンガーZに勝てるわけ無いじゃん!」

あしゅら「ワハハハハハ! 当然、貴様に勝てるようにパワーアップしているわ!」

紬「各地のスーパーロボットがすぐに救援に駆けつけてくれるわ。それまでは無理をしないでね」

唯「よーし、見ていろ、あしゅら男爵! すぐに倒してやるー!」

 紬の言葉は馬耳東風。唯はマジンガーZをあしゅら男爵に向かって走らせた!

澪「唯! だから勝手な動きをするなって言われたばっかりだろ!」

唯「平気だよ、澪ちゃん! マジンガーZは無敵なんだから!」

律「よ〜しっ! 私も唯に負けてられないぜ! ボスボロット、いっくぜぇ〜!」

 がしゃがしゃがらがら! ボスボロットもマジンガーの後ろにくっついて走り出した。

澪「律まで! あぁ、もう!」

 慌てて澪も二人を追いかけ始める。

紬「…………」

梓「ムギ先輩、さすがに怒ってもいいと思いますよ……」

唯「どりゃ〜! このままぶつかってバラバラになっちゃえ〜!」

 ドカドカドカドカ! マジンガーZが地面を踏み鳴らしてあしゅら男爵に向かって突進していく!

あしゅら「ふふふ、こい、平沢唯!」

唯「マジンガータックルー!」

 ドガァッ! 機械獣ガラダにマジンガーの黒い体がぶつかった!

 だが、唯の目は次の瞬間、驚きに引ん剥かれることになる。

唯「えぇ!?」

 なんと、マジンガーZにタックルされた機械獣ガラダK7の体は中身が空洞のハリボテだったのだ! 隣のダブラスM2も全く動かないことから、こいつもハリボテなのだろう。

 そして、ダブラスの肩に乗っていたあしゅら男爵の姿がいつの間にか消えていた。
568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/21(月) 17:21:06.82 ID:Wsw2B+7L0

唯「ど、どういうこと!? あしゅら男爵はどこにいったの!?」

あしゅら「ワーッハッハッハッハッハ! まんまと引っかかりおったな、平沢唯!」

 ズズーン! 唯の位置から右斜め前200メートル先くらいからあしゅら男爵の高笑いとともに何かが地面のなかから出てきた!

あしゅら「くくくく、ゆけぃ! 機械獣アブドラU2、破壊光線だ!」

アブドラ「ぎゃおおおおおおおおおおん!」

 ギュビィィィィィィィィ! 超射程の破壊光線がマジンガーZに直撃した!

唯「うわぁぁぁぁぁ!」

あしゅら「フハハハハハハ! この距離ならば、さすがのマジンガーZといえども攻撃できまい! さぁ、ゆけぃ! 我があしゅら男爵直属のあしゅら軍団よ! マジンガーZたちが離れた光子力研究所を制圧するのだ!」

あしゅら兵「イエッサー!」

 あちこちの山林からタイツとマスクのあしゅら男爵の兵士が現れ、一斉に光子力研究所に向かって走り出した。

澪「くっ、光子力研究所が狙いだったのか!」

律「だけど、このままじゃ唯もやられちまう!」

唯「あばばばばば……!」

紬「大丈夫よ、澪ちゃん、りっちゃん、光子力研究所は対人防衛機能も備えているから、少しの間ならなんとかなるわ」

律「そ、そうなのか?」

紬「えぇ、安心して。斎藤、やりなさい」

斎藤「かしこまりました、紬お嬢様」

 その合図一つで光子力研究所からも武装した黒服のSPや装甲車がたくさん出てきた。

梓「ムギ先輩マジパネェです。ぶっちゃけ連邦の兵士より強い気がします」

憂「っていうか、今まであの人たちどこにいたんだろう……五日間も寝泊りしているけど、全然見なかったよ」

 あしゅら兵「でりゃー!」琴吹家SP「はあぁぁ! ほあたーっ!」

紬「だから、澪ちゃんたちは唯ちゃんを助けて」

澪「あ、あぁ……」

律「よ〜し、澪、アフロダイのおっぱいミサイルをお見舞いしてやれ!」

澪「お、おっぱいミサイルって言うなよ……!」

唯「うんたたたたうんたたうんたん!」

律「早くしろ、澪! 唯の叫び声がだんだんやばくなってるぞ!」

澪「わかったよ! ミサイル発射!」

 ボシュッ! ボシュッ! アフロダイAの胸部から二発のミサイルがアブドラU2に向かって飛んでいく。
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/21(月) 17:24:34.55 ID:Wsw2B+7L0

あしゅら「むっ! えぇい、こざかしい!」

 アブドラU2の肩に乗っていたあしゅら男爵が陽炎のように消え、アフロダイのミサイルの上に現れた。

あしゅら「これでどうだ!」

 グサッ! あしゅら男爵の杖がミサイルに刺さり、そこに電撃が迸った。

あしゅら「ふはははははは! どうせならミサイルも超合金Zで包んでおくんだったな! 爆発しなくなるかもしれんがな! ふはははははは!」

 ドカーン! 二つのミサイルはアブドラU2に当たる前に爆発してしまった。その間も破壊光線はマジンガーZと唯に浴びせられている。

唯「わわたたたたしししははひひらららさささわわゆゆいいだだだだだだ」

憂「お、お姉ちゃんが死んじゃう〜!」

律「ちくしょう、唯! バルタン星人の真似みたいなことしてる場合じゃねーぞ!」

澪「いったい、どうすれば……」

あしゅら「むむむ、あしゅら軍団め、まだ光子力研究所に侵入できんのか!」

律「むむむ! りっちゃん、閃いちゃったぞ!」

澪「どうするんだ、律!?」

律<閃き>「澪! アフロダイでボスボロットを思いっきりぶん投げろ!」

澪「な、なんだって! そんなことをしてどうするんだよ!?」

律<閃き>「こんなときのため、ボスボロットには試作型の光子力爆弾があるのだ! その威力は澪のおっぱいミサイルの三十倍だ! その威力ならたとえ直撃できなくてもあいつを吹っ飛ばして唯を助けるぐらいはできるはずだ!」

澪「おっぱい言うな! それに、そんなことをしたら律が!」

 そう言いながら、ボスボロットは座り込んで手足をたたんで丸くなっていた。

律<閃き>「なぁに、ちゃんと脱出しておくよ! っていうかもうしてるぜ!」

 ボスボロットの傍では米粒みたいな律がおでこを輝かせて手を振っていた。

澪「よし、わかった、やるぞ!」

 アフロダイは屈んでボスボロットを両手で頭上高く持ち上げて一気に走り出す!

あしゅら「むっ、何をするつもりだ!?」

 あしゅら男爵が杖を突き出して電撃を放とうとする。しかし、それよりも先に澪のアフロダイAはサッカーのスローインのようなモーションに入っていた。

澪<熱血>「いっけぇぇーっ!」

 ぶん! アフロダイAの手からボスボロットが投げられた! これにはさすがのあしゅら男爵もおったまげた。

あしゅら「な、なんだとーっ! えぇい!」

 ズバババ! あしゅら男爵の杖から電撃が放たれ、ボスボロットは空中、アブドラU2のおよそ20メートルほど手前で静止していた。

律<熱血閃き>「喰らえぇーっ! スペシャルデラックスボロットパーンチ! カチッとな」

 ドドドカァーン!  律の手中のスイッチが押されると、ボスボロットが大爆発した!

あしゅら「ぐ、ぐわぁーっ!」

 ズズーン……! 機械獣の体が倒れて、破壊光線が止まった。マジンガーZが解放されたのだ。
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/21(月) 17:26:53.51 ID:Wsw2B+7L0

唯「あぶぶぅ〜、びおぢゃん、びっぢゃんんばりがと〜」

律「いやぁ、礼はムギのケーキ一個で手を打ってやるぜ」

澪「律! はやくアフロダイに乗れ!」

あしゅら「ぐぐぐ……おのれ、マジンガーZ以外は雑魚と思っていたが……先に貴様から始末してやるわ!」

 立ち上がったアブドラU2が破壊光線の目標をアフロダイAに向けた。

 ズバババババ! 破壊光線が今度はアフロダイAに直撃した!

澪「うわぁぁぁぁぁぁ!」

律「わぁぁぁぁぁぁあぁぁ!」

唯「澪ちゃん、りっちゃん!?」

あしゅら「くくく、手こずらせおって……バラバラにしてやる!」

 杖から電撃を迸らせるあしゅら男爵は狙いをアフロダイAの四肢に集中させた。

あしゅら「このあしゅら男爵を怒らせると、こういうことになるのだ!」

 ガガガガガガガガガガガガガガガ!! 電撃がさらに強くなり、アフロダイAの肩と足の付け根が抉れていく。
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/21(月) 17:29:11.18 ID:Wsw2B+7L0

澪「うぐっ……あぁぁぁぁぁぁ!」

律「うあぁぁぁぁぁ!」

 千切れていくとアフロダイAと二人の悲鳴が唯の鼓膜を突き抜けて、まるで澪と律が拷問台に掛けられている様を幻視して、頭をガンガン叩いている。

あしゅら「生意気なガキどもめが! 思い知れぃ!!」

澪「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

唯「やめてぇーっ!」

 バキャァッン! アフロダイAの細い四肢がバラバラに引き裂かれた!

唯「澪ちゃん、りっちゃん!?」

 咽喉が切れそうなくらいに声帯を震わせる唯の前で、赤茶色の液体がぼとぼとと落ちる。
 その瞬間、唯の視界が真っ赤に染まり、彼女の心の奥底に眠る何者かが意識を支配した。

あしゅら「くくく……とどめを刺してやる!」

 ズバババババババババ! 胴体から地面に落ちたアフロダイAに再び破壊光線が牙を剥く!

唯「あしゅら男爵ーっ!」

 ズズン! 獣のような咆哮とともにマジンガーZがアフロダイAの前に出て、破壊光線を再び喰らった!
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/21(月) 17:30:36.18 ID:Wsw2B+7L0

あしゅら「ワーハッハッハッハ! さっきの二の舞ではないか!」

 バババババババババババババッ!! あしゅら男爵は破壊光線の出力を上げて高笑いする。

 だが、破壊光線を身構えて受け止める鉄の城がゆっくりと足を上げた。

あしゅら「……む、な、なんだ…!?」

 ドスン! マジンガーZの巨大な足が地面に大きな穴を空ける。

あしゅら「ぬ、ぬぉっ!?」

唯「あしゅら男爵……よくも澪ちゃんとりっちゃんを……許さないぞ!」

あしゅら「う、動いている……何故だ! どういうことだ!?」

 ズン……! ズン……! 破壊光線を全身に浴びながら、マジンガーZはアブドラU2に向かって確かに近づいている。

 ズン! ズン!! ズドン!!! 赤い光線に包まれながら眼を光子力の金色に光らせ、大地に強く踏みつけるマジンガーZの姿はまさに地獄の魔人であった。

唯「許すものか……絶対に……あしゅら男爵!」

澪「ゆ、唯……?」

律「どうしちまったんだ……?」
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/21(月) 17:31:35.89 ID:Wsw2B+7L0

憂「お、お姉ちゃん……?」

 今や、マジンガーZはあしゅら男爵とアブドラU2の目の前に来ていた。

あしゅら「く、来るな! なんだというのだ、平沢唯! 来るなぁぁぁぁぁぁぁ!」

唯「うわあああああああああああああ!!」

 ズガァッ! マジンガーZの手が機械獣の両腕を掴み、持ち上げた。

あしゅら「な、何をする、貴様!? やめろ! 降ろせぇ!」

唯「このおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

あしゅら「お、お許しください、ドクター・ヘル様! このあしゅら男爵! これ以上、作戦を続けることはできませぬ! ただ、このマジンガーZの恐ろしさをお伝えするために、それだけのために、アブドラU2を放棄いたします!」

 あしゅら男爵が機械獣の肩から姿を消すのと、マジンガーZの胸が赤く光ったのは、ほぼ同時であった。

唯「ブレストファイヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 ゴバァァァァァァァァァァァッ!! 怒りの魔人の業火、ブレストファイヤーが機械獣の体を直撃した。
 スーパー鋼鉄がまるで海のヘドロのように溶けてしまい、マジンガーZが持っていた腕だけを残して地面に広がっていく。
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/21(月) 17:32:18.74 ID:Wsw2B+7L0

紬「た、倒した……の?」

 基地から見ていた紬もこの異様な勝利に戸惑っていた。
 溶解した鉄から出てくる蒸気を纏うマジンガーZはアブドラU2のものであった両腕を指から離して高熱に灯った大地に落とした。

 だが、真に異様な光景はこの直後だった。

 ゴゴゴォ……! マジンガーZは両肘を直角に曲げた腕を頭部の左右に置いた。
 本来ならば、これが正しいブレストファイヤーを撃つための動きである。

 全員が不安に唾を飲み込んだとき、マジンガーZは再びブレストファイヤーを撃った!

澪「なっ!?」

梓「何をしてるんですか、唯先輩!?」

 ゴォォォォォォォォ! マジンガーZから放出される30000度の灼熱が周囲の大地をところかまわず滅茶苦茶に燃やし始めたのだ。

憂「お姉ちゃん! お姉ちゃん、何をしてるの!? もう敵は倒したんだよ! だからやめてぇ!」

 憂が紬を押しのけてマイクの前に立ち、必死に呼びかけるが、マジンガーZから唯の声は返ってこなかった。

紬「な、何が起きているの……?」

秋山「これは、まさか光子力エネルギーが暴走しているのか……?」

梓「暴走? そんなことあるんですか!?」

田井中「光子力エネルギーはその資源であるジャパニウム鉱石からしてまだ解明されきっていない力なのだ。だからアフロダイAを用いてその制御できる限界を我々は計測していたのだ。アフロダイAでもまだ全体の30%ほどしか超合金Zや光子力エネルギーを使用していない」

秋山「だが、マジンガーZは全身のほとんどが超合金Zと光子力エネルギーで出来ている。我々の知らない光子力の何かが戦闘中に反応して暴走してしまった可能性が高い」

田井中「引き金はおそらく唯くんの怒り……だろうか……兜博士は言っていた。光子力は人間の心と引き合うと。だとしたら、唯くんの心は今、光子力とともに暴走しているかもしれない」

憂「なんとか……なんとかならないんですか!? お姉ちゃんを助けてください!」

秋山「とにかく唯くんをマジンガーZから降ろすしかないが、どうやらこちらのコントロールも受け付けなくなっているらしい。無理に引き剥がすにしても、あの状態ではとても……」

憂「そんな……お姉ちゃん、お姉ちゃん!」

 憂の体が膝からくずおれて、指令テーブルにしがみつくように肩を震わせて泣き出した。

紬「私たちは……ここから見ていることしかできないの……?」

 破壊を振り撒く鉄の城。その金色の光る双眸が光子力研究所を捉えた。
 上体が胸部を突き出し、両肘を直角に曲げた腕を頭部の左右に置いた。ブレストファイヤーの合図だ。

梓「ダメ……ダメです……唯せんぱぁぁぁぁぁぁい!」

 ゴバァァァァァッ! 梓の響きも虚しく、マジンガーZはブレストファイヤーを発射した。
 直撃を受ければ、光子力研究所は中にいる人間もろとも消し去ってしまうだろう。

夕映「ゲッタァァァァァァァァァビィィィィィィィィィィィム!!!!」

 ズバァァァァァァァァァァァァ!! 風前の灯であった光子力研究所の真上から降り注いだ光線がブレストファイヤーとぶつかり、その全てを相殺させた!

紬「これは……もしかして」

夕映「ゲッターロボ! 見参です!」
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/21(月) 17:33:23.34 ID:Wsw2B+7L0

ハルナ「さて、けっこうヤバイ事態みたいね」

秋山「今の唯くんは怒りに我を忘れてしまい、その意識をマジンガーZに取り込まれてしまった可能性がある。それを止める方法は一つ。唯くんがいる頭部のパイルダーを無理にでも引き剥がすしかない」

のどか「ち、超電磁研究所でもー……キャンベル星人が現れたみたいで……ライディーンと一緒に戦ってこちらの救援には来れないみたいですー……」

田井中「アフロダイも先ほどの破壊光線で戦闘の継続はできない……」

夕映「私たちだけでやるしかないわけですね」

ハルナ「いいじゃない。マジンガーZ対ゲッターロボ。燃えてきたわぁ〜」

 グォォォォォォ! マジンガーZが唸りをあげてゲッターロボのほうを向いた。

 ブォォォォォォ! いきなり、ルストハリケーンがゲッター1に襲い掛かる!

夕映「ここからでは研究所が! ゲッター1! フルスピードです!」

 ゲッター1が全速力でマジンガーZに向かって飛んでいく。
 酸の風はゲッター1を追いかけて研究所から離れていく。

 ゲッター1はマジンガーZの頭上まできた。
 マジンガーZの頭部にはパイルダーがあり、その中には唯の姿があった。

夕映「超合金Zがどれほどのものか、こちらもゲッター線合金です! トマホゥゥゥゥゥク・ブゥメラン!」

 ぶぅん! 風を乱暴に切り裂いてゲッタートマホークがマジンガーZの首をめがけて飛んでいく!
 頭部を分離させれば、マジンガーZの動きも止まり、唯を救出させるのもやりやすいかもしれない。

 ガシィッ! しかし、トマホークはマジンガーZの首に僅かに食い込んだだけで止まってしまった。

 さらに、マジンガーZはトマホークを抜き取り、振りかぶってそれをゲッター1に投げつけてきた。

夕映「くっ、ゲッタァァァ・レザァァァァァ!」

 ガキィン! ゲッター1の手首についている刃でトマホークを弾いた。
 だが、マジンガーZはフォロースルーの姿勢から顔を上げて光子力ビームを放つ。

のどか「ゆえっ! 危ない! オープンゲットして!」

夕映「オープンゲェット!」

 バシュッ! ゲッターロボを形成する三機のゲットマシンに分離して光子力ビームを避けた。
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/21(月) 17:34:47.88 ID:Wsw2B+7L0

ハルナ「ここはゲッター3の出番ね。チェーンジ! ゲッター3!」

 ガシィン! ゲットマシンがベアー号、イーグル号、ジャガー号の順に合体して最大のパワーを持つゲッター3にチェンジした。
 その下半身は無限軌道のキャタピラとなり、全長もゲッター1の半分近くになるが、それでもマジンガーZよりも大きい20メートルだ。

ハルナ「どりゃーっ! ゲッター3の100万馬力を喰らいなさい!」

 ドガァッ! マジンガーZは体重20トン、対するゲッターロボは200トンもある。
 その差は単純な体当たりでもはっきりと現れ、あっけなくマジンガーZは地面にしりもちをついた。

ハルナ「このまま押さえつけてふんじばってやるわ!」

 ゲッター3の腕が倒れたマジンガーZの腕を掴もうと伸びる。

 ゴゴォッ! しかし、今マジンガーZを動かしているのは何者なのか――まるで生身の人間であるかのように鉄の城は不安定な体勢から正確に両手を伸ばし、ゲッター3の手と組み合った。

ハルナ「なっ!?」

 ズゴゴゴゴゴ……! マジンガーZは腰を地面につけている状態からゲッター3の腕を押し返して立ち上がろうとしている!

のどか「そんな……ゲッター3の最大パワーよりも強いなんて……」

夕映「まずいですよ! ブレストファイヤーが来るです!」

 夕映の言ったとおり、マジンガーZの胸の赤いVの字が光りを放っている。

ハルナ「オープン・ゲットするわよ!」

 バシュッ! 再びゲットマシンが分離して、今度はゲッター1になった。

夕映「ゲッターパーンチ!」

 ドカッ! ブレストファイヤー発射の直前にゲッター1のパンチがマジンガーZに当たり、ブレストファイヤーは空の彼方へ消えていった。

紬「ゲッターチーム、マジンガーZをうつ伏せに倒して! そうすれば武装のほとんどが使えなくなるわ!」

夕映「わかったです! ゲッターウィング!」

 反重力マントを背中に出してゲッター1は大きくマジンガーZを翻弄しながら背中に回った。

夕映「ゲッター・ダブルドロップキーック! です!」

 どがっ! 猛スピードで落下しつつ足を揃えたゲッター1のキックでマジンガーZは吹っ飛んで膝から倒れた。

夕映「オープン・ゲェット!」
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/21(月) 17:36:07.98 ID:Wsw2B+7L0

のどか「チェーンジ! ゲッター2!」

 ガシィッ! 今度は白い流線型のスピード形態、ゲッター2にチェンジしたゲッターロボは、マッハ3にも迫る最大加速で一投足の動きでマジンガーZの前に現れ、右手のゲッターアームでコクピットのパイルダーを挟んだ。

のどか「抜けろ、抜けろ〜……!」

 パイルダーとマジンガーZを繋いでいるのも超合金Zである。押しても引いてもびくともしない。

ハルナ「のどか、ゲッターアームを回すのよ!」

のどか「う、うん」

 ぎり、ぎり……ゲッターアームを回して接合部をねじ切ろうとするが、ほんの僅かずつしか動いていかない。
 それでもねじっているのは確かなので、のどかはゲッター2のエネルギーをフルパワーにした。

 グオォォォォォォ……! マジンガーZが地面に手をつけて立ち上がろうとする。
 ゲッター3ほどのパワーがないゲッター2ではマジンガーZに腕を掴まれたらおしまいだ。

のどか「ゲッター・ドリール!」

 ギュイィィィィィィ! のどかは左手のドリルを回して地面を掘り、地中に潜っていった。パイルダーを掴むゲッタードリルも手首まで埋まる。

ハルナ「おぉ! のどか、ナイスアイディア!」

夕映「これならマジンガーZからすぐに攻撃を受けることはないですね」

 だが、地上にいるマジンガーZは両肘を折り曲げて断面からドリルミサイルを連続発射した!

 ドドォン! ドドォン! 先端がドリルになっているドリルミサイルは地面を抉り進みながら爆発する。

ハルナ「な、なんか来てるわよ! やばそうな感じね」

 ぎり……ぎりり……ゲッターアームがパイルダーをねじ切ろうとする。

 ドォン! ドゴォン! ドリルミサイルが地面に穴を空けてゲッター2を攻撃しようする。

のどか「も、もうちょっと〜……!」

ハルナ「がんばりなさい、のどか!」

夕映「ゲッターの力を信じるです!!」

 ぎぎぎぎぎぎぎ……!!

夕映・のどか・ハルナ「ゲッタァァァァァァァァ・スパァァァァァァァァァクゥゥゥゥゥ!!」

 ガキュィィィィンッ!!

ハルナ「やったわ!」

夕映「マジンガーZからパイルダーを外すことに成功したです!」

のどか「よ、よかった〜……」

 パイルダー奪取の勢いでゲッター2は地中1000メートルくらいまで進んでから、再び地上に戻ってきた。

 マジンガーZは、正座するような格好で沈黙していた。

のどか「止まったみたいだねー……」

夕映「任務完了です。光子力研究所に戻るですよ」
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/21(月) 17:36:49.58 ID:Wsw2B+7L0

 光子力研究所

紬「ありがとうございます。ゲッターチームの皆さん。本当にありがとうございます」

 司令室で紬は夕映、のどか、ハルナの三人に深く頭を下げた。他のメンバーと憂は医務室に運ばれた唯たちのところにいる。

ハルナ「いやいや、大事にならなくてよかったわよ、本当に」

紬「いえ、あのままだったら光子力研究所は破壊されて町にも被害が出てしまう可能性がありました。本当にありがとうございます」

 謝りながらも紬は視線はちらちらと別のほうへ向いていた。目の前で話しをしている三人がそれに気づかないわけがない。

夕映「唯さんが気になるなら、私たちのことはおかまいなく、行ってもいいですよ」

紬「あ、いえ、せっかく助けていただいたのに……」

のどか「わ、私たちもー……気になりますからー……」

紬「……ありがとうございます」

ハルナ「四回目だねぇ、私たちは仲間なんだから、助け合うのは当然でしょ。私たちの迷惑なんて気にしなくてもいいのよ」

夕映「ハルナ、あなたは年上に対しての口の聞き方を気をつけるべきです」

 医務室

 唯はパイルダーの中で気絶していた。すぐに医務室に運ばれて検査と治療を受けたが、打ち身など以外、異常はほとんど見られなかった。
 現在は気絶というよりは寝ているという状態でベッドで横になっていた。

憂「お姉ちゃん……」

梓「唯先輩……」

 ずっと唯にしがみついて呼びかけていた憂は泣き疲れたみたいで、唯のお腹に頬をくっつけて眠っていた。信じるように唯の手を握りしめている。

 梓も似たような状態だった。憂とは唯を挟んで反対側に座り込んで手を握っている。

 少し離れたところには澪と律が立っている。二人とも体のあちこちに包帯を巻いているが、苦い痛みの原因は眠っている唯だ。

律「唯のやつ……どうしちまったんだ……」

 律がベッドのほうには聞こえないようにぽつりと呟いた。澪は左腕の包帯を右手でさすって首を横に振った。

澪「私もわからないよ……でも、あの瞬間、唯がすごく怒っていたのはわかる」

律「唯が怒る……か、見たことなかったな、私たち」

澪「このまま唯が目を覚まさなかったら……うっ、ひぐっ……」

律「澪……やめろよ、そんなこと言うの……」

澪「だって……うぅっ……」

律「泣くなよ……私まで……涙、出ちゃうだろ……」
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/21(月) 17:45:05.81 ID:Wsw2B+7L0

 眠っている唯は夢の世界にいた。

唯「ここは……?」

 辺り一面は荒野だった。そして巨大な影が唯を覆っていた。

唯「マジンガーZ……うっ!」

 マジンガーZを見た途端、唯は自分とマジンガーZが何をしたのかを思い出した。

 真っ赤に染まった世界。あしゅら男爵の断末魔。どろどろになった機械獣。

唯「うっ、あうぅ……!」

 溶けた大地。尚も放たれる魔人の炎。憂の声――

唯「う、い……ういっ……!」

 傾く視界。光子力研究所。そして――

唯「あ……あず……にゃんの……わた、し……みんなを……」

 自分がしたことを、しようとしていたことが網膜に焼きついて離れない。顔を覆う唯のお腹が痛くなる。キリキリと痛い。

唯「マジンガーZの……ばか……ばかばかばかぁっ!」

 唯はマジンガーZの黒い足を叩いた。目から涙が、鼻水も垂らしてマジンガーZを叩いた。

唯「ばか……ばかぁ……」

 鉄の城は何も言わなかった。代わりに、別の何かが口を聞いた。

???「これは……どういったことだ……?」
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/21(月) 17:45:33.87 ID:Wsw2B+7L0

 何かが唯の後ろ、マジンガーZの正面に立ったようだった。とても大きい、マントがはためく音も聞こえた。

???「これはいったいなんだ……?」

唯「……だれ?」

 声に唯は振り返った。
 涙と鼻水でぐずぐずになった唯と目を合わしたのは、金色の鎧を身に纏ったとても大きな、マジンガーZと同じくらいの大きさの人だった。

 いや、似ているのは背丈だけではない。似ているのは――

???「少女よ、これは何だ。この巨像……まるで、私の似姿ではないか?」

唯「……この子は、マジンガーZだよ」

???「マジンガーZ……マジンガーZというのか……少女よ、なぜ泣いている?」

唯「私は……ぐすっ、私、酷いことした……澪ちゃんやりっちゃん、ムギちゃんとあずにゃん……憂に酷いことをした……」

???「……そうか。だが、少女よ、お前は泣いている。涙が出るのは、お前が優しいからだ……」

唯「そんなことない……! 私は酷いんだよ……! ともだちを傷つけたんだ……!」

???「泣いてはならぬ……お前が泣きたいのは、自分のあやまちを償いたいからであろう……?」

唯「……でも、謝っても、許されないことを、私は……」

???「友達ならば、お前はその者たちをよく知っているのだろう……? 本当に、許してはくれない者たちなのか……?」

唯「……それは…………」

???「お前の優しさも、友達はよく知っているはずだ……きっと、許してくれるだろう」

唯「……ありがとう、おじさん」

???「お、おじさん!? 私はそういうものではないのだが……」

唯「でも、声がおじさんだもん」

???「むうぅ……」

唯「じゃあ、あなたは誰なの?」

???「そうだな、教えよう」

 そう頷いたとき、荒野の世界が光りを放った。黄金色の粒子が唯の周囲を包み込み、唯と彼の距離がどんどん離れていった。

???「わた……えは……だ」

唯「あれ、ねぇ、よく聞こえないよ、ねぇったら!?」

???「私の名前は……だ」
581 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/21(月) 17:46:22.24 ID:Wsw2B+7L0

 次に唯が目を覚ましたとき、そこに映ったのは白い天井と蛍光灯だった。

唯「……あり?」

 なんだか下半身が重い。ついでに言うと、ここは布団の中みたいだ。肘をついて胸から上を少し起こすと、唯は目を丸くした。

唯「憂……? あずにゃん? 澪ちゃん? りっちゃん? ムギちゃん? みんな何してるの?」

 全員、唯の布団にしがみついて眠っていた。唯が起きたことにもまったく気づかない。見事な爆睡っぷりだった。

憂「……おねえちゃん」

梓「唯先輩……」

澪「ゆい……」

紬「唯ちゃん……」

律「ゆ〜い〜……」

 自然と、唯の口から笑みがこぼれた。

唯「そっか……みんな、私を待っててくれたんだね……」

 今すぐみんなに抱きつきたかった。でも、みんな疲れているんだろうなと思って、唯は一番近くにいる憂の頭を撫でた。

唯「いつも、助けられてばっかりだね、わたし……今度は、私がみんなを助けなくっちゃね」

 そのために、マジンガーZに乗ることは、もう怖くはなかった。

 第五話 暴走! マジンガーZ対ゲッターロボ!
582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/22(火) 17:21:44.89 ID:xJY2Sm7X0

 第六話

 バイストン・ウェルのラウの国の戦艦ゴラオンはアの国の戦艦ウィル・ウィプスを追って太平洋を横断していた。
 その第一目標はアの国王ドレイク・ルフトと北米大陸を占領しているジオン公国軍の接触を防ぐことだ。
 ゴラオンが非公式とはいえ地球連邦軍に加担してしまった以上、ドレイク軍はジオン軍と繋がる可能性が高い。

エレ「エイブ艦長、ウィル・ウィプスには追いつけそうですか?」

エイブ「難しいでしょうな、ゴラオンとウィル・ウィプスの速度はそれほど差がありません。わずかに我がほうが上回っているようですが

、先ほどリュウ殿が連絡を取ったハワイの通信基地の情報によれば、4時間前にドレイク軍が通過したようですから、先にアメリカ大陸に

到着されてしまいます」

リュウ「問題は、ジオン軍の司令官がどこにいるかだな。北米大陸は広いから、東部のほうにいればまだ追いつけるかもしれん」

珠姫「あの、でしたら私がダンバインでウィル・ウィプスを追いかけましょうか?」

エイブ「珠姫殿、ダンバインの調整は終わったのですか?」

珠姫「はい、すぐにでも出られます。紀梨乃部長のボチューンも」

エイブ「そうですな、少しはプレッシャーになるかもしれません」

エレ「しかし、ドレイク軍に数で攻められては逃げられない可能性がありませんか……?」

リュウ「それなら、俺と高町もついていこう。高町の魔法を使えば逃げやすくもなるだろう」

エレ「リュウ様、よろしいのですか?」

リュウ「あぁ、高町も大丈夫だと思う」

エイブ「それでは、お願いできますか?」

リュウ「了解した」
583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/22(火) 17:22:46.56 ID:xJY2Sm7X0

 第六話

 バイストン・ウェルのラウの国の戦艦ゴラオンはアの国の戦艦ウィル・ウィプスを追って太平洋を横断していた。
 その第一目標はアの国王ドレイク・ルフトと北米大陸を占領しているジオン公国軍の接触を防ぐことだ。
 ゴラオンが非公式とはいえ地球連邦軍に加担してしまった以上、ドレイク軍はジオン軍と繋がる可能性が高い。

エレ「エイブ艦長、ウィル・ウィプスには追いつけそうですか?」

エイブ「難しいでしょうな、ゴラオンとウィル・ウィプスの速度はそれほど差がありません。わずかに我がほうが上回っているようですが、先ほどリュウ殿が連絡を取ったハワイの通信基地の情報によれば、4時間前にドレイク軍が通過したようですから、先にアメリカ大陸に到着されてしまいます」

リュウ「問題は、ジオン軍の司令官がどこにいるかだな。北米大陸は広いから、東部のほうにいればまだ追いつけるかもしれん」

珠姫「あの、でしたら私がダンバインでウィル・ウィプスを追いかけましょうか?」

エイブ「珠姫殿、ダンバインの調整は終わったのですか?」

珠姫「はい、すぐにでも出られます。紀梨乃部長のボチューンも」

エイブ「そうですな、少しはプレッシャーになるかもしれません」

エレ「しかし、ドレイク軍に数で攻められては逃げられない可能性がありませんか……?」

リュウ「それなら、俺と高町もついていこう。高町の魔法を使えば逃げやすくもなるだろう」

エレ「リュウ様、よろしいのですか?」

リュウ「あぁ、高町も大丈夫だと思う」

エイブ「それでは、お願いできますか?」

リュウ「了解した」
584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/22(火) 17:23:50.89 ID:xJY2Sm7X0

 ゴラオン 格納庫

 アリサはすずかとなのはに手伝ってもらいながら、コア・ファイターの操縦を勉強していた。
 近くにはチャム・ファウがうろちょろと飛びまわっている。

アリサ「えぇっと、それで、これが着艦用のワイヤー射出なのよね」

すずか「うん、そうだよ。とりあえず、発進と旋回と着艦の流れを掴まないと帰ってこれなくなっちゃうからね」

チャム「ふーん、地上の機械もバイストン・ウェルのものとあまり変わらないのね」

すずか「チャムちゃんの着ているのって、パイロットスーツなの?」

チャム「そうよ、私がちゃーんと自分で作ったんだから」

すずか「わぁ、チャムちゃんお洋服も作れるんだ、すごーい」

アリサ「うーん、ホワイトベースにあったシミュレーターが恋しいわ」

なのは「大丈夫だよ、アリサちゃん。いざというときは私が魔法で助けてあげるから」

アリサ「それって、私が墜落することを前提で話してるわよね、なのは」

なのは「あぅっ、だってアリサちゃん、シミュレーターだって二回しかやってないし、二回とも落ちてたし……」

アリサ「……ま、否定はしないわ」

なのは「でも、今日は私がちゃんと傍についてあげるから、安心して飛んでね、アリサちゃん」

アリサ「わかったわ。ありがとう、なのは」

 アリサがいざヘルメットのサンバイザーを下ろそうとした時に、リュウが大声でやってきた。

リュウ「高町はいるか!?」

なのは「は、はい! います!」

リュウ「ん、何やってるんだ、コア・ファイターに集まって?」

すずか「アリサちゃんが操縦の勉強をしたいって言ったので教えてました」

リュウ「アリサが? なんだってそんな急に」

アリサ「だって……ゴラオンは人手不足じゃないから、私のすることがなくなっちゃったんだもん。私だけじっとしている訳にもいかないし」

リュウ「そうか、うーむ、そうだな。だが、少しコア・ファイターを貸してくれ。これからダンバインと俺と高町でウィル・ウィプスを追撃する」

アリサ「はーい。じゃ、ガンダムのコア・ファイターでおさらいだけしましょ、すずか」

すずか「うん、アリサちゃん」

チャム「じゃあ、私はタマキのダンバインに乗ってようっと」

紀梨乃「あれー? さっきから私ってば空気じゃにゃーい?」
585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/22(火) 17:25:00.90 ID:xJY2Sm7X0

 ゴラオンから珠姫、なのは、リュウが出撃した頃、ドレイク軍のウィル・ウィプスでも似たような命令が出されていた。

ショット「それでは、私とトッドは先にアメリカへ向かいます」

ドレイク「うむ、任せたぞ」

トッド「はっ!」

 トッド・ギネスとショット・ウェポンの二人がブリッジから出て行くのを、軍団長バーン・バニングスは苦い顔で見ていた。

バーン「ドレイク様、二人だけで行かせてよかったのでしょうか?」

ドレイク「我らの中から行っても、話しが通じない可能性はあるだろう。余計に混乱させるだけかもしれん」

 バーンは、その言い回しがまるきりショットの弁であることを知っていたため、心中で舌打ちした。
 それは、ドレイクが今ショット以外に頼りに出来るものがいないという現われでもあったからだ。

バーン「ドレイク様! お言葉ではありますが、ドレイク様はショット・ウェポンを信頼しすぎであります。彼の者は元はといえばこの地上の男! それを我らバイストン・ウェルが呼び寄せた末にドレイク様に忠誠を誓ったに過ぎませぬ!」

ドレイク「バーン・バニングスよ」

バーン「は、はっ!」

 ドレイクの声調が重くなるのは、叱責を受けるときである。
 バイストン・ウェルに地上人が召喚されるようになってから、何度バーンはドレイクのこの低い声を聞き、肝を冷やしたことだろうか。

ドレイク「ならば貴様が地上の軍との交渉を行えるというのか?」

バーン「……っ!」

 バーンは答えることができなかった。
 彼はバイストン・ウェルいちの戦士であるが、珠姫、紀梨乃といったオーラ力に優れた地上の聖戦士との戦いに幾度も敗れているため、ドレイクの信頼は失墜し、反比例するようにショットやトッドの権威は上昇していた。

ドレイク「バーン、貴様を行かせなかったのにはもちろん理由はある」

バーン「はっ、なんでございましょうか?」

ドレイク「ゴラオンの軍勢が我らを追ってきたとき、貴様にはこのウィル・ウィプスを守ってもらわなくてはならぬ。失敗続きとはいえ、我が兵はまだ貴様に付き従おうとしている。これはショットにもトッドにもないものだ」

バーン「ははっ、ありがたきお言葉であります」

ドレイク「貴様は我が軍の軍団長だ。まずはそのことを自覚せよ」

バーン「ははぁっ! かしこまりました!」

 その会話を聞いていた女士官のミュージィ・ポゥはあらためてバーン・バニングスを単純な男だと思った。
 そしてすぐに、出撃したショット・ウェポンの身の上を案じていた。
586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/22(火) 17:26:47.96 ID:xJY2Sm7X0

 太平洋上

 雲間に隠れながら、リュウの乗るコア・ファイターと珠姫、チャムの乗るダンバインはドレイク軍を追撃していた。

 雲中飛行は敵から極めて発見されにくいが、方角を見失いやすく、味方同士の衝突の可能性もあるが、一人で先行していたなのはがナビゲーションしてくれるため、航行を誤ることはなかった。

なのは「レイジングハート、高町なのは、ウィル・ウィプスを確認しました」

リュウ「了解」

珠姫「了解です」

 生身の人間であるなのはもレイジングハートを使って識別信号を出すことができるが、それを意図的に消せば、敵に発見される可能性はほぼゼロに近くなる。

チャム「ナノハってすごいわね! ミ・フェラリオじゃないのに羽が生えて飛べるんだもの!」

珠姫「そうだね」

チャム「タマキは空を飛ぶことはできないの?」

珠姫「できないよ」

チャム「ふ〜ん、でも、タマキにはダンバインがあるからね!」

珠姫「うん」

 コア・ファイターとダンバインは一度雲の上に出た。
 そして、なのはの指示でウィル・ウィプスのちょうど真上で平行に飛んだ。

リュウ「よし、それじゃあ、高町は一直線にドレイク軍の中を急降下してくれ。攻撃もしなくていい。驚かせてくれればいいんだ」

なのは「はいっ」

 ぎゅっと杖を握って魔法の障壁を自分の周りに展開する。

なのは「いっくよー、レイジングハート」

レイジングハート「alllight my master」

 なのははリュウの言ったとおりに、ドレイク軍の中に急降下していった。
 ピンク色の魔法光に包まれているので、目視でもかなり目立つはずだ。


 ウィル・ウィプス

ミュージィ「何かがウィル・ウィプスの上から落ちてきます! かなりの速度です!」

バーン「なんだと!? まさかダンバインか!」

ミュージィ「違います! かなり小さいようです」

バーン「ドレイク様! 私はレプラカーンで出ます!」

ドレイク「うむ、功を焦るなよ。バーン・バニングス」

バーン「はっ!」

 ドレイク軍は突如頭上から現れたピンク色の光りにかなり驚いたようだった。
 また、これが敵の砲弾の類であったらと思い、接近しようというものはいなかった。

なのは「ディバイン・シューター!」

 オーラバトラーの多くがなのはを注目しているのがわかった。
 そして、ウィル・ウィプスの目の前で止まり、三つの光りの球をドレイクに向けて放った。

ドレイク「くっ! あの小娘か!」

 光球はブリッジのガラスに当たる直前に散開してそれぞればらばらにオーラバトラー隊のほうへ飛んでいった。
 なのは魔法を物理ダメージにセットしていたが、その威力はせいぜい機体を揺らす程度だ。
 しかし、ディバイン・シューターはなのはの意思で自由自在に動くので、敵機に当たるギリギリに方向転換させる。

ドレイク兵「う、うわぁっ!」

ドレイク兵「こ、こっちに来るなっ!」

なのは「もう三つ! いけぇぇーっ!」

 さらに三つの光球がなのはの手元から放たれた。
 この摩訶不思議な弾丸の威力や効果がわからないオーラバトラーは、あっという間に隊列を崩されてしまった。
587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/22(火) 17:28:00.85 ID:xJY2Sm7X0

なのは「今です! リュウさん! 珠姫さん!」

リュウ「おう!」

珠姫「いきます!」

 なのはの合図で雲上に隠れていたコア・ファイターとダンバインが落下してきた。

ミュージィ「ダンバイン! 頭上より接近してきます! さらに戦闘機と思しきものが一機、追従しています!」

ドレイク「ジェリル、フェイ、アレンに向かわせろ! バーンの出撃を急がせい! 敵は数がいる訳ではない、ウィル・ウィプスの足止めが狙いだ。最大艦速で進め!」

ミュージィ「はっ!」

 ジェリル・クチビ、フェイ・チェンカ、アレン・ブレディは、珠姫やトッドより後にバイストン・ウェルに召喚された地上人だ。
 それぞれ、レプラカーンが与えられているが、アレンだけはその旧式機であるビランビーに乗っている。

アレン「ドレイクから命令だ。ダンバインをやれだとよ」

ジェリル「アレン、そんなので大丈夫なのかい? ダンバインのオーラ力は上がっているんだろ」

アレン「ふん、俺にはこれくらいがちょうどいいのさ。レプラカーンは好かねぇ」

フェイ「行こうぜ、もう来ている」


珠姫「来たっ!」

リュウ「三機か! ドラムロってやつじゃない!」

チャム「レプラカーンとビランビー! 地上人の聖戦士よ!」

アレン「フェイは戦闘機をやれ! ジェリルは俺とダンバインをやるぞ!」

フェイ「おう!」

アレン「注意しろよ、戦闘機でも、オーラバトラーと同じくらいの大きさはある」

フェイ「わかっている!」

珠姫「はあぁっ!」

 ガキィンッ! 珠姫とジェリルの剣がぶつかって火花を散らす!

ジェリル「死になっ! ダンバイン!」

アレン「俺だって、オーラ力は上がっているんだぜ」

 ガッ! ガッキィンッ! 二体のオーラバトラーが交互に仕掛けてくる。

チャム「右!? 左よ! あぁん! だめぇーっ!」

珠姫「耳元で怒鳴らないで! 胴ーっ!」

 ギィィィンッ! 横殴りの一撃でアレンの剣を弾いた直後、ダンバインは左腕のオーラショットでビランビーの右腕を破壊した。

アレン「チッ!」
588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/22(火) 17:29:13.88 ID:xJY2Sm7X0

ジェリル「言わんこっちゃない! 喰らいな!」

珠姫「くっ! この人、強いオーラ力を持っている!」

 ガガッ! ガツィンッ! ジェリルの畳み掛けるような攻撃に、手負いで冷静になったアレンがサポートを加えてくる。

チャム「タマキィ! 左よぉ!」

珠姫「――ッ!」

 ズバァッ! アレンの剣がダンバインのオーラショットを切り落とした。

リュウ「まずい! 高町は、無理か……」

 フェイとリュウは追いかけあいをしていた。なのはは無数のドレイク軍を撹乱することに集中している。
 何千といるオーラマシンを一人で相手取っているのだから、敵にとっては恐ろしい存在になるだろう。

リュウ「ならば!」

 リュウは操縦桿を強く握って引いた。コア・ファイターが上昇し、強い負荷が体にかかる。
 地球の重力はリュウにとっては敵よりも注意しなければならないものだから、乱暴な運転はあまりしたくなかったのだが、既に撤退時だ。

フェイ「逃げるのかぁ? ならば死ねよ!」

 コア・ファイターは大きな軌道で旋回する。フェイのレプラカーンが後ろからフレイボムを連発している。

リュウ「そうだ、ついてこい……ここだぁ!」

フェイ「落ちろぉ!」

アレン「フェイ! 来るなぁ!」

フェイ「なにっ!?」

 リュウの向かう先にはダンバインとレプラカーンがいた。
 少し離れたところにいたアレンはリュウの狙いに気づいたが、既に遅かった。

リュウ「うおおおぉっ!」

 ババババババババババ! コア・ファイターはバルカンを撃ちながらレプラカーンに突っ込んでいった。

ジェリル「チィッ!」

 ジェリルはバーニアを一気に噴射させて上昇した。
 吐き出されるオーラ力のきらめきの中をリュウのコア・ファイターが通り抜けていく。

アレン「ジェリル、速く逃げろ!」

 ダンバインはバーニアの反動で機体が静止したレプラカーンに接近していた。

チャム「必殺のオーラ斬りだぁあ!」

ジェリル「くっ、このぉぉぉぉ!」

 ザシュッ! レプラカーンの翼が落ちた!

珠姫「頭部を狙ったのに!」

チャム「オーラ力で逸らされちゃったのよ!」

ジェリル「ちきしょう! フェイの下手糞が!」

フェイ「なんだと! 二人がかりで倒せなかったくせに!」

ジェリル「お前が邪魔をしなけりゃよかったんだよ!」

アレン「二人とも、よせ!」

バーン「馬鹿者どもが! 下がれ!」
589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/22(火) 17:32:53.41 ID:xJY2Sm7X0

 バーンのレプラカーンが現れた。しかしダンバインとコア・ファイターは帰還体勢に入っている。

バーン「ここまで好きにやられて、見逃るものか!」

 ここでダンバインを逃がしてはそれこそ己の沽券に関わる。そして追撃を始めるからには、ただで戻ることはできない。

 ただ、ドレイク・ルフトがバーンに求めていた能力は戦士として敵と戦うことよりも、兵士を指揮し、戦争に勝つ軍団長の力だ。
 ドレイクはダンバインの動きが陽動の類であると見抜いていた。ここでダンバインを逃がしても、彼の評価は変わらなかっただろう。

 しかし、バーン・バニングスは高潔な騎士であるがゆえに、ダンバインを落とせぬことを誰よりも恥じて、自ら退路を見失ってしまったのだ。

珠姫「このオーラの波動……バーン・バニングス!」

チャム「やだぁ! 追っかけてくるのぉ!?」

リュウ「高町! 聞こえているか!?」

なのは「は、はいっ!」

 なのははドレイク軍のど真ん中で戦っていたため、珠姫とリュウより遅く撤退を始めていた。
 つまり、位置としてはバーンの後方にいるのだ。

リュウ「ドレイク軍から追撃の部隊は出ているか?」

なのは「い、いえ、誰も追っかけてきません」

リュウ「なら……!」

 レプラカーンがダンバインの姿を捉えた。
 バーンはこれまでの屈辱を思い出し、眼光を鋭くさせつつ、ようやくそれを晴らすことができる喜びに口元を歪めさせていた。

バーン「ダンバイン! タマキ! 今日こそ貴様を仕留めてみせる!」

 ダンバインが振り返った。逃げる選択をしない敵にバーンは己の騎士道精神を滾らせた。

バーン「我が血がふつふつと沸き立ってきた。この瞬間を私は待っていた!」

 もしもバーンの声が珠姫に届いていたのなら、この戦いは彼の望みどおりになっていただろう。

 たとえ、ダンバインに討たれて死のうとも、彼は本望だったはずだ。

 だが――

バーン「ッ! なにっ!?」

 あと数秒で剣が届くかという時、ダンバインはわずかに上昇した。

 その向こうに見えた空からコア・ファイターが飛んできた。
590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/22(火) 17:34:16.42 ID:xJY2Sm7X0

バーン「タマキ! 正々堂々とあいまみえよ!」

 コア・ファイターの翼にダンバインが掴まった。コア・ファイターはマッハ3を計測していた。
 オーラバトラーの速度は最高で300リルで時速1200キロ、ぎりぎりでマッハ数にいけるかどうかがせいぜいだ。
 いかにバーンがバイストン・ウェル最高の戦士といえども、反応できる速度ではなかった。

バーン「タマキィィィィィィィィ!!」

 急いで剣を構えた。しかし、それまでだった。

チャム「お前なんか、いっちゃぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 ザンッ!! レプラカーンの首が切り捨てられた!

バーン「そんな……バカな……私が……ただの一太刀も交わすことなく、負けた……?」

 ふらふらとレプラカーンが墜落し始めた。
 コクピットで呆然としていたバーンは、特別なレンズ素材で外が見える外壁越しにダンバインがコア・ファイターに乗って去っていくのを見た。

バーン「ダンバイン……タマキ……くぅぉおっ!」

 騎士としての戦いさえ踏み躙られた。彼の内に宿った魂は既にバーン・バニングスのものではなかった。

バーン「我が精神を冒したのは貴様だ……タマキ」

 全てを失った。地位も、名誉も、誇りも……残ったものは、憎悪のみ。

バーン「もはや、自分などいらぬ……バーン・バニングスという男は、ここで死ぬのだ」

 タマキを殺す。

 それだけが、望み。

???「それなら、私にちょうだぁい」

バーン「……なんだと?」

 いつの間にか、海面を漂っていたレプラカーンのハッチが開いている。

 そこに座っていたのは、人間より小さく、ミ・フェラリオよりも大きい、精巧な顔に恐ろしい微笑みを浮かべた女だった。

バーン「なんだ……貴様は?」

水銀燈「命がいらないなら、水銀燈にぜんぶちょうだぁい。そうしたら、あなたの望みを叶えてあげる」

 黒い天使が、バーン・バニングスだった男に手を差し伸べていた。


 第六話 追走! 太平洋上の戦い 完
591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/22(火) 18:49:12.20 ID:mepwn6Kho
地の文に擬音書くのはやめた方がいいと思う
なんか幼稚っぽくみえるし
592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/23(水) 17:09:24.79 ID:dusS23yA0

 第七話

 重慶 元連邦軍基地

 この基地を占領したギガノス軍はハルヒ・スズミヤ・プラートとその親衛隊のプラクティーズを迎えていた。

 そして、その着任早々にハルヒはモニター越しの月にいるドルチェノフ中将と会話をしている。

ドルチェノフ『それで、まんまと上海上陸を許してしまったというわけだな、プラート少佐』

ハルヒ「アンタたちが艦をケチってくれたおかげでね」

ドルチェノフ『言い訳は聞いておらん。貴様らの任務は即座にD兵器を取り戻すことだ』

ハルヒ「…………」

ドルチェノフ『その反抗的な目は止めたほうがいいと何度も忠告したはずだぞ、プラート少佐!』

ハルヒ「それは失礼。生まれつき、ドルチェノフ殿の前に出ると自然とこういう目つきになってしまうんです」

ドルチェノフ『貴様がそういう態度で出てくるなら、こちらにも考えはあるぞ……おい!』

みくる『涼宮さぁん!』

ハルヒ「みくるちゃん!?」

 モニターの前に連れてこられたのは首輪に鎖で繋がれた朝比奈みくるだった。
 目の端に涙をためるみくるを見てハルヒは憤りを露わにした。

ハルヒ「ドルチェノフ……! この卑怯者!」

ドルチェノフ『口の聞き方に気をつけろといったぞ、プラート!』

みくる『あぅっ!』

 ドルチェノフが鎖を引っぱり、みくるが苦しそうに呻いた。

ドルチェノフ『本来ならば、裏切り者の娘など即座に牢獄行きなのだぞ! その汚名を晴らす機会を与えてやっているのは誰だと思っている!』

ハルヒ「くっ……」

みくる『す、涼宮さん、私のことは……心配要らないですから……うっ』

ドルチェノフ『誰が喋っていいと言ったか!』

みくる『えほっ、えほっ』

ハルヒ「ドルチェノフ……ッ!」

 カメラに映らないところでハルヒの拳が震えている。
もしこの部屋にキョンがいれば、既にモニターに殴りかかっていたかもしれない。既にハルヒの脳内でドルチェノフは絞殺されている。

ドルチェノフ『貴様はD兵器を取り戻すことを考えていればよいのだ。わかったか!』

ハルヒ「わかってるわよ……!」
593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/23(水) 17:10:43.59 ID:dusS23yA0

ドルチェノフ『ならばよろしい。期待しているぞ、プラート少佐』

 モニターがブラックアウトした。ハルヒは卓を思いっきり蹴りつける。

ハルヒ「ドルチェノフの屑ごときに!」

 ハルヒは技術の名門プラート家に生まれたが、その出自に似合わない大胆な性格で地球連邦のスペースコロニーに対する傲慢な態度に反発したメサイア・ギルトールの下につき、専用のカスタム機ファルゲン・マッフを駆り独立戦争で戦果を挙げたが、思わぬところで世界は転がってしまった。

 ハルヒの父親でありギガノス帝国の技術者としてメタルアーマー開発の第一人者のラング・プラートが、突如D兵器の前身であるD計画の開始直前にあらゆるデータを廃棄して連邦軍に亡命したのだ。
 結果、ギガノス軍の兵器開発は停滞してしまっている。そのためにギガノス軍は総力をあげてラング・プラートの身柄の確保、もしくは連邦で開発されたD兵器の奪還を行っていた。

 ドルチェノフは連邦軍に個人的な私怨を持ち、ギガノス軍の中でも特に過激な思想を持つ男で、ラング・プラートが逃亡した直後にハルヒの反逆を懸念して友人と見られる朝比奈みくるを軟禁して逆に私兵化していた。

ハルヒ「今、ドルチェノフを誅することはできない……その上、このままD兵器奪還が遅れれば、マスドライバーの使用を強行されてしまう」

 ギルトール元帥の信頼篤く、軍内のエースとしてカリスマ性もあるハルヒがD兵器奪還のために月から離れ、尚且つ任務に失敗し続けることにドルチェノフは跳梁跋扈して軍制改革を図っているだろう。
 その狙いは、地球上に直接打撃を与えることが出来るマスドライバーキャノンの使用だ。

 メサイア・ギルトールは元々、スペースノイドを蔑視する連邦への杭打ちのつもりで決起したため、全面攻撃による連邦潰滅は望んではいない。
 国力差を埋めるためと牽制の目的でマスドライバーを有しているだけに過ぎない。
 その理想は、あくまでも地球環境の保護と、それを貪る連邦政府の腐敗部分の払拭なのだ。

 しかし、ドルチェノフは違った。彼は己の私怨のために連邦に勝利することを望んでいる。
 マスドライバーキャノンを使用すれば戦争を有利に進めることができる。そのためにハルヒの存在はじゃまだったのだ。
 ラング・プラートの逃亡から瞬時に朝比奈みくるを軟禁してハルヒを私兵化した狡猾さは、ギガノスの思想とはかけ離れたものだとハルヒは確信した。

ハルヒ「早くD兵器を取り戻さないと、ギルトール小父と私の理想が……」

 ハルヒは部屋を出た。そこにはキョン、古泉、長門が待っていた。

キョン「ハルヒ、ドルチェノフが何だって?」

ハルヒ「いつも同じよ、さっさとD兵器を捕らえろって」

古泉「D兵器を搭載した戦艦ホワイトベースは上海から連邦軍に合流したようです。新型パーソナルトルーパーも含めて、近いうちに作戦が展開されるでしょう」

ハルヒ「だったら先に仕掛けるわ。機動兵器の数ならまだ私たちのほうが多いから少しでも戦力を削ぐわよ」

キョン「しかし、もう何十日も働きづめじゃないか、ハルヒ! いくらお前でもぶっ倒れちまうぞ」

ハルヒ「私には! 一秒たりとも止めていられる時間なんてないのよ!」

キョン「だがな――」

ハルヒ「黙りなさい!」

 ぴしゃりと一喝したハルヒの眼差しは正面に立つキョンを捉えてはいなかった。
 もちろん、その後ろにいる古泉でも長門でもなかった。

ハルヒ「一刻も早くD兵器を倒して、みくるちゃんをあの外道から取り戻さなくちゃいけないのよ! 休んでも休まらないわよ!」

キョン「ハルヒ……」

 突き飛ばすようにしてハルヒはキョンの横を通り抜けた。
 あっという間にその後姿は小さくなるが、それ以上に疲労のオーラが見えていた。
 キョンのやや下に長門が進んできた。彼女はキョンを見上げている。

長門「彼女は出撃を取り消さない。なら、早いほうがいい」

キョン「長門……」

古泉「幸い、戦局は実際に我々に有利です。後は涼宮さんの負担を僕たちのサポートで減らすことです」

キョン「あぁ、わかったよ……」

 古泉と長門は急ぎ足でハルヒの後を追っていった。キョンは己の無能を呪った。
594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/23(水) 17:11:15.61 ID:dusS23yA0

 ホワイトベース 格納庫

 シミュレーションを終えたヒカルと立夏、シノとアリアとスズがハッチから出てきた。

立夏「あーん! また負けちゃったよー、オネーチャーン!」

 開口一番、天使家の七女の立夏が隣の三つ上の四女ヒカルに泣きついた。
 六女の氷柱と同じくらいの負けず嫌いに加えてまだ十二歳のハッスル少女は爆発してくる感情を抑えることを知らない。

ヒカル「三対二だからしょうがないさ、立夏。それでも戦績は確実によくなっているんだから、落ち込むことじゃないぞ」

 ヒカルの言うとおりだった。シミュレーションを開始した当初はすぐに調子に乗って突っ込んでいって撃墜されてしまう立夏だったが、泣いて反省会を重ねるにつれて跳ねるような抑揚のある動きを上手にコントロールしてドラグナーチームを翻弄していくようになった。
 たった今だって、2型と3型を撃墜するにまで至ったのだ。

ヒカル(むしろ、成長していないのは私じゃないのか……?)

 胸に顔を埋める妹の頭を撫でながら、ヒカルは不安を抱いた。
 元々、何事も堅実にこなしていく彼女は自分の成長を実感しにくいタイプでもある。
 それでも剣道やボクシングなどは倒せない相手を倒したりすることでレベルアップを確認していたのだが、ヒカルが相手をしているシノとはチームとしてだけではなく、パイロットの技量でも差があるようだった。何度やってもその脇を抜くことが出来ない。
 つまり、ヒカルがシノを前に二の足を踏み続けている間に、立夏は一人で二機を落とすにまで達したのだ。

海晴「おつかれさま〜、ヒカルちゃん立夏ちゃん」

ヒカル「わっ」

立夏「うぎゅ」

 教導官代わりをしている海晴がヒカルと立夏にまとめて抱きついてきた。立夏の鼻が強く胸を刺激して、ヒカルは赤くなった。
 霙はドラグナーチームのほうへ行って指摘をしている。

海晴「ヒカルちゃんも立夏ちゃんも最初に比べてうんと操縦が上手になったわね。もう私が言うことなんてないかも」

ヒカル「……!」

 姉の優しい腕の中でヒカルは慄いた。
 一度も勝つことができなかった彼女には、海晴の言葉をネガティブなイメージに捉えてしまう。

立夏「ホント、海晴オネーチャン?」

海晴「うん、立夏ちゃんなら、ヴァイスリッターに乗るだけならいいかな」

立夏「ホントに!? ウッワァーイッ!」

海晴「先に行って待っててね。私も準備していくから」

立夏「ハーイッ!」

 立夏がダッシュで格納庫を走っていく。それをヒカルは唖然と見つめている。
 触ることさえ許されなかった海晴のヴァイスリッター。それを許された立夏。
 ヒカルにとってはお前は役立たずだと言われたようだった。

ヒカル「…………」

海晴「あら、ヒカルちゃん、どうしたの?」

ヒカル「海晴姉、私は……」

 ――必要なのですか?
 問おうとしたが、それはできなかった。
 ヒカルの顔が海晴の胸元に寄せられたからだ。先ほど、ヒカルが立夏にしていたみたいに――

海晴「ヒカルちゃん、おうちのみんなが心配?」

ヒカル「えっ……?」

 急に何の話をするのだろうか――? そう思ったが、家族のことはすぐに頭に思い浮かんだ。
 0歳から18歳までの十九人姉妹。奇跡のような家族。そして、ヒカルが命に代えても護りたいと想う大切な家族。
 今はヒカルたち四人を除いて十五人で日本の家にいる。
 初め、ホワイトベースに乗っていくと言った時、天使家は大騒ぎになった。
595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/23(水) 17:12:27.35 ID:dusS23yA0

麗「どうして海晴姉さまたちが戦争なんかに行かなくちゃいけないわけ!? そんな汚らわしい男たちが勝手に始めたことに私たちが巻き込まれなくちゃいけないわけ!?」

氷柱「そうよ! だいたいママも何考えてるのよ! 実の娘達を戦場に送り込むなんてどういう神経してんのよ!?」

 家族の中でも極度の男嫌いで『小学校はみんな公立!』のルールを曲げて私立の女子校に通っている九女の麗や特進クラスに通って戦争なんて愚かしくてくだらないこととわかっている氷柱の二人がやっぱり大反発した。

さくら「お姉ちゃんたち、遠くに行っちゃうの? もう海晴お姉ちゃんのおいしいプリンも食べれなくなっちゃうの? さくら、そんなのさみしくなっちゃうの……うわぁーん!」

綿雪「ユキも……せっかく病気が治って、家族みんなで暮らせるはずなのに……」

小雨「さくらちゃん、ユキちゃん、泣かないで……ね」

 真璃や虹子、青空もつられて泣き出す。年少組の彼女たちは戦争はよくわからないが、『大好きなおねえちゃんがいなくなる』ことが嫌なのだ。
 小学生で少しは物事がわかるようになっている星花や夕凪、吹雪も普段の元気をなくしてしまっている。
 それを見てヒカルは酷く胸が締め付けられる思いだった。

あさひ「ばぁぶ! だばっぶ! ぶっぶー!」

 赤ん坊のあさひも怒っているように見える。それを声援のようにして氷柱はまた机を叩いて声を荒げた。

氷柱「ホラ見なさいよ、あさひだって大反対よ! それでも姉様たちは行くっていうの!? 立夏まで連れて!」

立夏「氷柱オネーチャン! 立夏はイヤイヤ行くんじゃないよ!」

氷柱「だから! そういう考えが甘いって言ってんのよ! どうしてウチの家族ってばこうもお人よしばかりなのかしら!」

 バンッ! と一際大きい音で机を叩く。それにシンクロしたように咳き込む声が聞こえた。

観月「げほっ、う、うぅ……」

蛍「あぁ、氷柱ちゃん、大声出しちゃだめよ……観月ちゃんに響いちゃう」

氷柱「あ、ご、ごめんなさい、ホタ姉様……」

 九尾の狐の守護霊を持つ観月は人一倍霊感に鋭く、その影響を受けやすい。
 人の魂の行き着く場所とされているバイストン・ウェルからやってきたオーラ力にあてられてしまったのである。
 気が強いが、それ以上に家族の身を心配するゆえに熱くなる氷柱だが、乱れた呼吸を繰り返す観月にさすがにクールダウンした。
 それを見計らって蛍と一緒に観月を看ていた三女の春風が優しく声をかけた。

春風「ねぇ、氷柱ちゃん。氷柱ちゃんがすごくみんなのことを想ってくれているのはとてもよくわかるわ。海晴お姉ちゃんに霙ちゃん、ヒカルちゃんと立夏ちゃん……春風だってすごく心配だもの……いなくなっちゃうのはイヤ……でも、ママがもっと心配したのは、みんなが本当の意味でばらばらになっちゃうことなの……」

氷柱「は、春風姉様……」

 春風の言いたいことが、氷柱にはわかった。現在は歴史が大きく動こうとしている時代なのだ。
 その世界で、ただそこにあるだけで奇跡のような十九人姉妹が、いつ引き裂かれるのかわからない。
 だから、彼女たちのママは――

霙「私たちはなにも死ににいく訳じゃないさ、氷柱」

氷柱「霙姉様……」

 ここまでずっと一言も喋ることがなかった霙の声音は、この場で最も意味のあるものとなった。

霙「とどのつまりは、ここに帰ってくるために、少し長く家を空けるだけさ」

氷柱「そ、そんなこと言ったって……か、かえっ」

 それ以上は氷柱の喉から出てこなかった。そこから先のことを想像するだけで心臓が張り裂けそうになる。

海晴「氷柱ちゃん」

 端正な顔がぐしゃぐしゃになるのを必死で止める妹を、長女の海晴がそっと抱きしめた。
 何度こうして抱擁されたことだろう。そして、これから何度こうしていられるのだろう……

氷柱「海晴姉様……」

海晴「私たちが出かけるのは遠い場所かもしれない。でも、帰るおうちがないと、私たちもがんばれないわ。だから、氷柱ちゃんはここでみんなを守ってね。春風ちゃんと蛍ちゃんだけじゃ、ちょっと頼りないからね」

氷柱「……はい」

 氷柱がその夜、何年ぶりかの大泣きをしたのをヒカルは知っていた。
 午前三時、こっそりと家を出ようとしたヒカルたちを家族全員が起きてきて盛大に見送られた。
 そのために、氷柱が全員をたたき起こして自分の部屋に集めていたこともすぐに気づいた。
596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/23(水) 17:13:07.06 ID:dusS23yA0

海晴「ヒカルちゃんは、みんなにとって頼りになるお姉ちゃんよね。私も霙ちゃんもすごく頼りにしているのよ」

ヒカル「だけど、私は……」

霙「やあ、こんなところでいつまでひっついているんだ、ヒカル?」

ヒカル「えっ、霙姉……?」

 黒髪のショートボブにグレーのパイロットスーツを着た霙が近くまでやってきていた。
 上からマントを羽織っているが、霙がパイロットスーツを着用するのは出撃するときだけだ。
 それ以外では断固として着用しようとしない。いったいどうしたというのか?

霙「ぼうっとしている時間はないぞ、ヒカル。早くアルトの速度に慣れて次のステップに進んでもらわないといけないんだからな」

ヒカル「えっ、えっ? 霙姉、それはどういう……?」

 やや困惑した面持ちで二人の姉を交互に見るヒカルに霙は少し非難するような目を海晴に向けた。

霙「なんだ、まだ言ってないのか? 我々の時間は無限ではないのだから、やるべきことは早く済ませるべきだろう」

海晴「あら、姉妹のコミュニケーションは決して無駄なことじゃないわよ。霙ちゃんもどうかしら?」

霙「フッ、海晴との接触は厄介な反応を起こしてしまう。私は先に待っているぞ、ヒカル」

ヒカル「あ、あの、いったい何のことを……」

海晴「ウフフ、合格は立夏ちゃんだけじゃないのよ」

ヒカル「えぇっ?」

海晴「ヒカルちゃんはこれから霙ちゃんといっしょにアルトアイゼンに乗ってもらうのよ」

ヒカル「で、でも私は全然――」

海晴「ヒカルちゃん。ヒカルちゃんはさっきの訓練で何分、シノちゃんと戦っていたのか知ってる?」

ヒカル「え、い、いえ……」

 戦闘中に時間のことなど全く入ってこない。
 少しでも目を切ればやられてしまうし、終わったあとは負けの喪失感でそれどころではないのだ。

海晴「ウフフ、ヒカルちゃんは目の前のことに集中するのはいいけど、もう少し視野を広くするのが新しい課題ね。三十分以上も戦っていたのよ」

ヒカル「そ、そんなに……?」

海晴「初めの頃は立夏ちゃんに振り回されるのもあったけど、一分でバッサリだったのが、今じゃすっかりシノちゃんを釘付けにしているのよ。だから立夏ちゃんもアリアちゃんとスズちゃんに追いつけるようになったのよ」

 ヒカルは面映い気持ちになった。その背中を押すようにして格納庫を歩きながら海晴はヒカルをベタ褒めしていく。

海晴「本当に、いつも色んなスポーツをしているかしら。ピカ一の集中力だと思うわ。霙ちゃんも言っていたわ。これならアルトアイゼンの加速にも対応できるだろうなって」

 十九人姉妹の長女だけあって、あっという間にヒカルの沈んでいた心を持ち上げてしまった。
 やっぱり、海晴姉にはかなわないな、とヒカルは口元を綻ばせる。

 しかし、意気揚々と姉の愛機に乗り込んだヒカルと立夏の二人だったが、アルトアイゼンの爆発的な加速力と急停止したときの反動にヒカルは胃が飛び出ると錯覚し、立夏はヴァイスリッターの戦闘機よりも激しいアクロバティックな飛行に目を回して、仲良く医務室送りとなってしまった。

立夏「うへぇぇぇ〜、気持ちワルイぃ〜……たこ焼きとシュークリームとたいやきとアイスクリームとポップコーンとハンバーガーをいっぺんに食べた後みたい〜……」

ヒカル「やめろ、立夏……食べ物の話をするな……こっちはそれらを全部吐き出した後みたいなんだから……」

 幸い、ハルヒたちギガノス軍が攻め込んでくるのは、この十時間後だった。
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/23(水) 17:16:04.36 ID:dusS23yA0

 ホワイトベース ブリッジ

オペレーター「敵機接近! 数は十六! 先頭はファルゲン・マッフです!」

シノン「蒼き鷹、ハルヒさんね!」

オペレーター「陸上二個中隊も接近! 混成部隊です!」

シノン「そちらは連邦の既成部隊に任せましょう。私たちは敵機動兵器を狙います! ドラグナーチーム、パーソナルトルーパー部隊、発進!」

シノ「了解! ドラグナー1、出るぞ!」

 中国の上空に天草シノが乗るドラグナー1型が駆ける。
 そのときには既にハルヒたちギガノス機動部隊は戦闘配置についたばかりの連邦軍の基地に向けてミサイル攻撃を開始していた。

ハルヒ「米粒一つ、弾薬一グラムたりとも残してやらないわよ、燃えなさい!」

 シュボッ、ドドォンッ! デュアルミサイルを連発し、あちこちに火柱をあげていく。出遅れた連邦兵士が物資と一緒に吹っ飛んでいくのも見えた。それほどハルヒは地上と近い位置を飛行していたのだ。

 ファルゲンの前方で何かが上がってきた。残った煙の細さから対空砲の種類であることはすぐにわかった。

ハルヒ「腐った連邦に与するゴミ虫の分際で、私に歯向かおうって言うの!?」

キョン「ハルヒ!?」

ハルヒ「やってやろうじゃないの!!」

 ファルゲンが急に旋回して、対空高射砲部隊と思しきポイントにマッフ・ユニットにつけられた三連マルチディスチャージャーを放つ。
 すぐに一際大きい火柱が上がり、ハルヒは「それ見たことか!」と鼻で笑った。

キョン「バカやろう! 動きを止めやがって!」

 キョンの怒鳴り声がスピーカー越しに響くが、自動音量調節が働いて、警告程度にしかハルヒには聞こえていない。
 だが、今回の奇襲作戦は開始してから敵機動兵器の追撃がギリギリで届かない範囲での爆撃を行うものだ。
 当然、その緻密な計算は長門有希が導いたものである。つまり、それ以外の行動は絶対にしてはいけないのだ。

ハルヒ「どうせファルゲンには追いつけないわよ!」

 やはり焦っている。キョンが戻るべきか逡巡しているうちに、長門はレーダーに反応していた。

長門「D兵器、三機接近」

古泉「来ましたか、予想より速かったですね」

キョン「ハルヒ! 早く戻って来い!」

ハルヒ「わかってるわよ!」

長門「降下加速を利用している。追いつかれる」

アリア「いくわよぉ……轟けぇっ!」

 ドォン! 連邦軍基地から離れるとすぐにドラグナー2型のレールキャノンが四機に襲い掛かった。
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/23(水) 17:16:33.54 ID:dusS23yA0

 その火線に隠れるようにして1型と3型は接近していった。

スズ「行きます、会長!」

シノ「ああ、頼んだぞ、スズ」

 合図で3型から対レーダーミサイルが発射される。
 佐世保基地を出発してから数度の小競り合いをしてきた中で、長門の乗るヤクト・ゲルフ・マッフが、プラート隊の行動の全体をサポートする機体であることがわかったため、先にその動きを制限する対レーダーミサイルがスズの3型に搭載されたのだ。

長門「私を狙ってくる? 無駄」

 レビ・ゲルフのジャミング能力に誘導ミサイルは無効化される。
 誘導弾は特定周波数に反応してコントロールを自動で決定している。
 それをジャマーで乱されて対レーダーミサイルはあさっての方向へふらふらと落ちていってしまった。

 ガガガガガガガガ! 

長門「……!!?」

 機体が大きく振動して長門有希はその人形めいた顔に一瞬だけ狼狽の色を浮かべた。サブモニターが装甲の損耗率を知らせた。

長門「遠距離射撃……レールガトリングガン?」

 新しい武器を備えていたのは3型だけではなかった。レールキャノンを撃った後の2型が二連装式レールガンをレーダーミサイルから反秒遅れて使用したのだ。
 シミュレータで何度も訓練したフォーメーション攻撃の一つで、その要はやはり高機動、接近戦用機体のドラグナー1型だ。

シノ「はああぁっ!」

ハルヒ「ちっ、またD兵器、邪魔をするな!」

 とにかくシノがハルヒのファルゲンの動きを抑えなければならない。この一対一の戦闘にヒカルとのシミュレータ戦闘を活かすのだ。

ハルヒ「動きがよくなっている……D−1のパイロット。もう素人じゃない!」

 ズギャアァッ! ドラグナーとファルゲン、二機のレーザーソードが重なった瞬間、ハルヒは自分のソードを手からわざと離して加速、一気に離脱しようとした。

シノ「くっ!」

 手放す際に若干の捻りを加えられたハルヒのレーザーソードが跳ねるように空中を舞う。
 それにシノが翻弄される間に濃い蒼色の機体は全速を出していた。

シノ「しまった! 逃げられてしまう」

 すぐにミサイルポッドを放出するが、完全に手遅れだったらしい。既にモニターには航跡だけしか映っていなかった。
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/23(水) 17:16:59.87 ID:dusS23yA0

 結局、ギガノス軍の作戦は大成功に終わっていた。
 ほんの五分にも満たない戦闘時間だが、身体が感じる疲労は工場のライン作業のフルタイムにも匹敵する。
 ハルヒはシートにもたれかかって深く息を吐いた。手が震えている。初陣以来だった。

ハルヒ「……各機、損傷は?」

キョン「長門が軽微だが攻撃を受けた。他はメタルアーマーが二機撃墜された」

古泉「代わりに、陸上部隊が将校を捕らえました」

ハルヒ「そう、少しは交渉に使えるかしらね。有希、大丈夫?」

長門「へいき」

 無機質な声に安堵する。目の前が霞んで見える。戻ったらさすがに休んだほうがいいかなとハルヒが考えたとき――

長門「高速接近――攻撃――二秒――ッ!」

 ギュボォッ! ハルヒの左端をエネルギー光が編隊を貫いた。そして――

キョン「なっ、長門ぉーっ!」

 手足の焼け爛れたレビ・ゲルフが暴発する飛行用フォルグ・ユニットに攫われて連邦軍領域に墜落していく。
 白煙に混じるオレンジ色の光りはエンジンの火が粉塵に干渉しているものだ。

ハルヒ「ゆ、有希……?」

 有希が、落とされた? あの有希が? 無表情で、必要なこと以外は全然喋らないけど、本当は心配性でいつもみんなの身を案じて、みんながちゃんと帰ってこれるように周囲に目を配っている有希が――……

ハルヒ「私が……せいで……?」

 「離せ、古泉!」「いけません! あなたまで行っては――!」通信の声が遠く聞こえる。ぼやける視界は徐々に暗闇に閉ざされている。

ハルヒ「ごめんね……有希……」

 計器が滲んで見え、ハルヒは意識を手放した。
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/23(水) 17:17:39.95 ID:dusS23yA0

長門「…………」

 木がクッションになってくれたらしく、破壊されたのは手足とフォルグ・ユニットで、胴体は装甲の半分がもっていかれたが内部にダメージは少ない。
 どうやら手加減をしてくれたらしい。ビーム兵器は出力調整で実弾兵器よりも多用途に扱えるのだが、ギガノス帝国では資源の関係で弾丸やミサイルのほうが生産しやすいため、研究は遅れている。

長門「ハッチも、開かない」

 手動で開けるために立ち上がろうと試みたが、落下の負荷にまだ下半身が落ち着きを取り戻していないようだ。

 ここはどこだろう。少なくとも自軍の領域ではないようだ。落下時間から僚機到着までの時間を計算する。
 ハッチが開くとき、誰がいるのだろう。救出されるなら――

長門「…………」

 そこで思考を止めた。外部操作でコクピットが強制排出される音だ。
 しかし、眩しい太陽を背に受ける影は想像していたものではなかった。

霙「動かないでもらえるとありがたい。悪いが身柄を拘束させてもらおう。大人しく着いてきてくれればぞんざいには扱わないと約束する」


 第七話 焦燥! 小さくて、大きすぎる誤算 完
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/23(水) 17:31:21.21 ID:dusS23yA0
>>591
スパロボは効果音があってこそ!
と、思って擬音はつけています。
なるべくスーパー系はダイナミックに、リアル系は逆に少なく端的にしているつもりではあります。
また、私は性格上、文章が必要以上に固くなる癖があるので、擬音で頭の負担を軽減しています。

602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 18:30:03.19 ID:Li68PeD/0

 第八話

 佐世保 とある中学校

ゆりえ「えっと……ですので、だいじょうぶです」

女の子「ホントですか、神様!? 本当に私の恋は叶うんですね!?」

ゆりえ「あ、あくまでも祈願をするだけですから……そのぅ」

女の子「わかりました。とにかくありがとうございます、神様!」

 ショートカットの利発そうな上級生は、陸上部らしく日に焼けた顔に満面の笑みを浮かべて赤幕の向こうへ去っていった。
 代わりに祀と光恵が入ってきた。

祀「おつかれさま、ゆりえちゃん。今日はもう終わりよ」

ゆりえ「ふえぇ〜、神さまの仕事も大変だよぉ〜」

光恵「さっきの人、陸上部の金子先輩よね。ああいう人もこういうことするのね」

祀「案外、ああいうタイプの人のほうがお願い事とか占いとか好きなのよ」

光恵「ふーん……ゆりえ、今日は天使さん家のほうに行くんでしょ?」

ゆりえ「あ、うん、光恵ちゃんも来る?」

光恵「うん、一緒に行くわ」

ゆりえ「祀ちゃんは?」

祀「残念、神社にいなきゃ」

ゆりえ「そっかぁ」

祀「いいじゃない、アレ誘えば」

ゆりえ「二宮君は……えっと……しょの……」

光恵「ま、あんな女の子ばっかの家に連れて行ったら、気が気じゃないわよね」

祀「あの朴念仁にそんなもんがあるとは思えないけど……」
603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 18:30:41.44 ID:Li68PeD/0

 天使家

虹子「あーっ、ゆりえちゃんだ! わーいっ!」

 おしゃまな二歳児の虹子が目ざとくゆりえを見つけて飛びついてきた。

ゆりえ「わっ、わっ」

 虹子はゆりえがお気に入りらしく、腰のあたりに抱きついてぶらさがる。

夕凪「ゆりえちゃん、光恵ちゃん、いらっしゃーい」

星花「こんにちわー」

 虹子といっしょにシャボン玉で遊んでいた十女の星花と十一女の夕凪もやってくる。

光恵「こんにちわ」

青空「にじたん、ずるいー、そらも、そらもおんぶっぶー」

 いつの間にか一歳児の青空までゆりえにひっついていた。くらくらとしながらゆりえは光恵に引っぱられて家の中へ入っていく。

星花「ゆりえお姉さん、来ましたーっ」

律「おーっ、来たかーっ」

翠星石「待ちくたびれておしりに穴が空きそーだったですよぅ」

ハルナ「この辺すいてるわよーっ」

 天使家の大きな部屋――ホワイトルームには光子力研究所、早乙女研究所、超電磁研究所のメンバーに天使家の姉妹がみんな集まっていた。奥の大きな窓を背にしているのは、けいおん部の五人だ。
 それをぐるりと半円状に座っている少女は二十人以上はいる。
 普段は小さい子たちが集まって騒いでも大丈夫なホワイトルームも、これだけ揃うとぎゅうぎゅう詰めだ。

 親睦会。お姉ちゃんたちがいきなり四人もいなくなった天使家の幼い妹たちのために春風と氷柱が提案したのだ。
 急な集まりにも関わらず、こうして全員が来てくれたのはすごいなとホステスを務める蛍はたくさんのご飯を作れる嬉しさに飛び跳ねていた。

 そのすみっこには、天使家十九人姉妹の母親、美夜が他の研究所の所長と固まって、小雨の持ってきたトレーからカップを取って談笑していたが、真ん中にきて手を叩いて注目させた。

美夜「はいはい。みんな集まったところで始めましょうか」

 その姿は十九人姉妹の母親でありながら海晴になお劣らない華麗さを持っている。ルージュのばっちり決まった大人のスマイルで部屋を見渡して満足そうにうなずく。

美夜「うーん、こうしてあらためて見るとみんなカワイイ子ぞろいねー。とても軍事機密の集いとは思えないわ。もしも将来就職に困ったら、私の事務所で引き取ってア・ゲ・ル」

 腰に手をあててポーズをとる。その仕草は本当に海晴の母といったところだ。

美夜「それじゃ、あまり時間もないことだし、乾杯しちゃいましょーか。かんぱーいっ」

「かんぱーい!」

律「よーし、それじゃ、まずは放課後ティータイムからやるぜ!」

澪「な、なんか学園祭のライブとは違う緊張感があるな……」

紬「すごく近いからね、きっと」

梓「っていうか、最近はまともに練習時間が取れてないからヤバイかもです」

唯「だいじょうぶだよ、きっと!」

澪「その自信はいったいどこから出てくるんだ……」

律「とにかくやっちまおーぜ、ワン、ツー、スリー!」

 ジャジャーン!
604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 18:31:34.44 ID:Li68PeD/0

唯・虹子「ゆけ〜、ゆけ〜、ゆうしゃ〜、ライディーンライディーン」

 パッパラー パッパラッパー、パッパラーパッラッパッパー

 歌の好きな虹子も途中から歌詞を見て唯のとなりで歌っていた。

虹子「らぁいでぃーん♪」

 ホワイトルームでHTTの演奏が行われている間に、天使美夜と桜田ジュン(43)、秋山弦之助の三人は別の部屋に移動していた。

美夜「やっぱり、早乙女博士は忙しくて電話にも出られないのですか?」

秋山「えぇ、いまの研究が相当いいところに来ているから集中したいとお嬢さんが言ってましたので」

美夜「新たなゲッターロボ……宇宙開発作業用ではなく、初めから戦闘を目的としたゲッター線の利用……」

JUM「こうやって集まれる機会もそうはないでしょうから、早乙女博士の意見も聞きたかったのですが……」

秋山「それでも、研究の資料だけでもいただけたことはよかったでしょう」

JUM「早乙女博士は、とくに変わり者でしたからね」

秋山「ともかく、我々はここに集まった。その理由は、いまの地球圏を脅かしている者たちの野望を食い止めるために」

JUM「連邦の作戦範囲内だけでこの脅威を食い止めることはできない。我々民間の研究者もことに当たらなければならないときが来たのです」

美夜「対侵略勢力反攻計画……選ばれてしまったのはかわいい娘たちばかりなのは悲しいけれど」

 美夜は束になった書類をドンと机の上に置いた。続いて、秋山、桜田もカバンに入れていた書類の束を重ねていった。
 早乙女ハルナから預かった書類もそこに置かれて、その高さは隣においてある花びんと同じぐらいになった。
 ここに彼女たちが研究した全てが記されているのだ。全てが共有の財産であり、切り札となる。

美夜「Space Guardian Girl's Project――G's-プロジェクトを、ここに始めます」

 三人が頷きあったとき、部屋の扉が開かれた。
 そこにいたのは、冷たい顔に炎の瞳を携えた、この家の六女だった。

氷柱「その話、私にも詳しく聞かせてよ」
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 18:32:07.81 ID:Li68PeD/0

 北米大陸 ジオン軍基地

 ここには、ザビ家の四男、若き大佐ガルマ・ザビが駐屯していた。
 連邦の大基地ジャブローに近いこの地はジオン軍地球方面軍として重要な位置にあるが、実質的な指揮権は姉のキシリア・ザビにあるため、ガルマはまだ己を認められていないと思っている。
 しかし、ジオンの崇高な目的は地球にあり、自分はその地球にいる。姉ではなく、自分が。

ガルマ「私の役目は地球を善き状態で差し出すことなのだ」

 生まれ持った美貌の白面と脆くも見える寛容な胸襟で占領軍の浮き足立つのを抑えて軍規を維持させ、コロニー落としの強い憎悪を持っていた現地人の心を和らげ掌握するに至ったガルマの才覚は、父デギンに言わせれば軍の将としては優しすぎるというものだった。

 そのガルマの許には今、士官学校を主席次席を競った赤い彗星がいた。

シャナ「残念だけど、その名は返上しなければならないわ」

 不機嫌そうにシャナは言った。相変わらずだとガルマは笑う。

ガルマ「何を言う、シャナ。君を迎えることで我等の士気は高まっているのだ。それに、これからドレイク・ルフトと会う。君にも是非出席してもらいたい」

 シャナが来る少し前にショット・ウェポンがガルマを訊ねた。報告には聞いていた異世界の軍隊。
 共闘という言葉を交わしていたが、連邦を片付けた後の支配権を奪取する為には、初めから威力を見せておくべきだ。

シャナ「まあ、いいわ。オーラバトラーというのにも興味はあるし」

ガルマ「ほう、珍しいな。君が機体に興味を持つとは」

 実際のところ、シャナはオーラバトラーに興味などなかった。本当に興味があるのは、そのパイロットが持つオーラ力というものだ。

シャナ「そういうこともあるわよ」

ガルマ「ふふん、君らしいな」

 追求しないガルマを見て、シャナはこの青年の思考が変わっていないこと知って苦笑した。
 およそ、人を疑うことを知らないのである。
 地球に降りて現地人と社交している間に人間というものを少しは知るかと思っていたが、何も学んではいないようだ。
 そう、目の前でシャナが苦笑しても、ガルマはなんとも思わないのである。

イセリア「ガルマ様。ドレイク様が参られました」

 部屋に入ってきたのはイセリア――地球に降下したガルマがこの地で恋仲になった女性だ。

ガルマ「あぁ、わかった。イセリア。さぁ、行こうシャナ」

 シャナはチェアから下りる。その前でガルマははばかることなくイセリアの腰をとって部屋を出て行く。

ガルマ「イセリアも来てくれるな」

イセリア「ですが、異世界の方とは……」

ガルマ「なぁに、違いはないさ」

 部屋で一人になったシャナはあざ笑うように言った。

シャナ「交渉の場に女を連れていくのか……つくづく甘い男ね」
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 18:32:53.12 ID:Li68PeD/0

 中国 ホワイトベース

長門「…………」

ヒカル「……なぁ、そろそろ、少しは話してくれてもいいじゃないか?」

スズ「せめて、名前くらいは教えてください」

長門「…………」

ヒカル・スズ「はぁ……」

 ヒカルとスズのため息を別室のカメラとマイク越しに見ていた天使霙、天草シノ、そしてホワイトベース艦長代理の香月シノンも疲れた表情を隠さなかった。
 捕虜にしたときの身分証から長門有希という名前はわかっていたが、それを自分の口で言ってもらうことで、会話のきっかけにもなる。

シノ「もう、二十八時間が経過か」

霙「捕らえてからここまで、一言も喋りもしなければ眠りもしない。もちろん、体力が落ちているような顔色もない」

シノン「ある意味、理想の軍人ね」

シノ「まさかとは思いますが、強化人間というものでしょうか?」

 桜才学園生徒会長も、この面子に入れば年少である。緊張の中、一種のタブーに触れたシノの背中に汗が流れる。
 
霙「よく知っているな。コロニーは情報規制が強いはずだが」

シノ「アングラの出版物です」

霙「ほう、コロニーにもアングラはあるのか。人の口に戸は立てられないということか」

 霙が愉快だという具合に喉を鳴らす。この会話だけでも下手をすれば処罰ものである。
 つい先日まで民間人だったシノにそれを笑う度胸はなかった。

霙「だが、ギガノスに強化人間の実験をする機関はないはずだ。元々、強化人間といっても肉体の外科的手術をするわけではない。薬物の投与などによって認識能力を高めたり、精神を不安定にして他人がコントロールしやすくするものだ」

シノン「人によっては鬱状態になることもあるらしいけれど、この子にその気配は見られないわね。検査でも正常値だし、血色もいいわ」

霙「むしろ私は、作り物のような印象を感じたな」

シノ「作り物……ですか?」

霙「あぁ、ウチには吹雪っていう無口なやつがいてな。立夏はロボットみたいと茶化すこともあったが、それでも彼女ほどではない。そうだな、人形といってもいいかもしれないな」

シノン「クローン人間……の可能性もあるかもしれないわね」

 この手の噂はどこでも耳にするものだ。例えば、ジオン独立宣言からアングラで支持を集めている話題が『ジオン・ズム・ダイクンのニュータイプ発言』である。

 「人類は本来、宇宙に進出する資質を持って地球に生まれたのであり、スペースコロニーは、地球の代替品ではなく、人類がさらに進化する新たな大地である」
 これがジオン・ズム・ダイクンの主張するところであり、進化した人類を『ニュータイプ』と呼んだ。

 また、ジオン公国には密かに建造されたニュータイプの可能性があるものを集めて教育を施す『学園都市』と呼ばれるコロニーがあるなど、情報の信憑性など二の次三の次であるアングラはありきたりに飽いたコロニー民にとっては一種の娯楽である。
 学園都市の噂にも多くのものがある。
『あの中ではニュータイプだけではなく、超能力者を使う開発行為が行われている』
『時間の流れが遅く、外の一年が中では七年である』
『クローンの研究も盛んで、二万体の妹達≠ニいう兵隊が生産されている』

 これらの技術がジオンにあるはずはないというのがもっぱらのレスポンスだが、時折ジオンの元研究者を名乗るものが証拠画像を出したりと、その度にコロニー民は強い熱を発していた。
 そして、その度に警邏が弾圧行為を行っていることも、隠れた常識であった。

霙「どちらにせよ、彼女を上層部に報告するのはよしたほうがいいだろうな。戦局がジオン・ギガノス寄りな現在、南極条約はあってないようなものだからな」

長門「…………」
607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 18:33:46.77 ID:Li68PeD/0

長門「…………」

 目の前にいる自分と同年代だという二人の顔に疲労がたまっているのがわかる。
 それでも集中しているのは、ただの人間としてはやるようだった。

 長門有希は、もう72534回目になる情報統合思念体とのアクセスを試みていた。
 答えは――NEGATIVE――彼女の体感時間で392日の間、創造主とのコンタクトが取れなくなってしまっていた。
 392日前――それまで彼女は確かに地球の高等学校に通っていた。
 暦は西暦だった。人類は月に小さな建物を作るのがやっとという文明レベル。

 だが、ある朝、彼女が目を覚ました場所は月だった。完成されたテラフォーミング都市。
 すぐに情報統合思念体とのアクセスを試みた。しかし、遮断されていて何も出来なかった。
 次に自分の能力についてスキャンした。思念体と直結している時に可能な能力以外は全て使用できる。

 部屋を出て、見知った顔に出会えたことにまず安心した。
 ただ、それは今までの記憶を持った人たちではなかった。まるで、この世界に最初から住んでいたような……
 そして、驚愕はそれだけではなかった。

 涼宮ハルヒの能力もほとんどが失われてしまっていた。

 また、周囲の人間たちも涼宮ハルヒの力について言及することはなかった。
 思念体にアクセスできない以上、自分で推測するしかない。自分だけが移動したのか、時空自体が変わってしまったのか。
 結局、確認する術がなかった彼女は、本来の任務にしたがって行動することにした。
 守るべき人を守る。それだけ。

長門「私には、他に何もないから」

 ぽつりと呟いた言葉は、誰の耳にも届いてはいなかった。

 部屋の扉が開いた。短い黒髪にパイロットスーツの上から漆黒のマントを羽織った女。自分を捕らえた女だ。

霙「君の隊長からの提案だ。こちらのマチルダ・アジャン中尉との捕虜交換だ」

長門「……そう」

 小鳥の囀りのような返事をすると、ヒカルとスズがぐったりと肩の緊張を解いた。

ヒカル「結局、何も話してはくれなかったな。君の部隊は我々と同年代だと聞いていたから、話を聞きたかったのだが」

長門「…………」

スズ「ちょっとー! うんとかすんとかくらい言ったらどうなの!?」

長門「……そう」

 とうとう耐えかねて両手を振りかざしたスズの襟を長門が掴んで引き寄せた。

スズ「ちょ、ちょっ……何よ……」

長門「黙って」

 銅色の瞳がスズを正面から捉えている。浮いた経験の皆無なスズは脈拍の上昇を押さえつけていると、長門はすっと襟から手を放した。

長門「私は監視されている」

 スズとヒカルに背を向けた長門は霙に連れられてすたすたと部屋を出て行った。
 呆然としていたスズを窺っていたヒカルが何かに気づいて指さした。

ヒカル「スズ、襟に何かついている」

スズ「えっ?」

 グレーを基調にした連邦服の襟が黒ずんでいた。いや、何かが書かれているようだ。

ヒカル「こ、これは……っ!」

スズ「な、何よ!?」

 胸元に顔を近づけたヒカルの真剣な顔つきが恥ずかしくなって、スズは慌てて制服を脱いだ。
 机の上に広げると、そこにはこう書いてあった。

『涼宮ハルヒは脅迫されている』
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 18:34:57.30 ID:Li68PeD/0

 月 ギガノス帝国

ドルチェノフ「プラート少佐は敵の将校を捕まえておきながら一切の尋問もすることなく、総帥に許可を取ることもなく、勝手に部下との交換を敵に申し入れました! これは立派な軍法違反ですぞ!」

 玉座を前に声を荒げているのはドルチェノフ中将だ。その前で沈黙を保っているのは、このギガノス帝国の主メサイア・ギルトールである。

ドルチェノフ「一兵士である子飼いの部下の命を優先させるのは手駒の確保! 敵と交渉するのは内通の可能性があります! 今すぐプラート少佐を引き戻し、査問にかけねば、反逆の恐れがありますぞ!」

ギルトール「…………」

ドルチェノフ「今、連邦は我らに対する反攻の措置を着々と進めております! この上でプラート少佐が寝返るとなれば、我がギガノス帝国は大打撃を受けますぞ!」

 ギルトールは頬杖をつき、目を瞑ったまま一言も発しなかった。明らかなハルヒ擁護の構えであることが見て取れるため、ドルチェノフは歯噛みした。

ドルチェノフ「ギルトール元帥! もはや地球制圧に一刻の猶予もござらぬ! ただちにプラート少佐を呼び戻し、マスドライバーによる攻撃を許可をくだされ! さすればこのドルチェノフ、速やかなる勝利を元帥にお約束致します!」

ギルトール「ドルチェノフ……」

ドルチェノフ「はっ!」

ギルトール「我らギガノスの理想は、衰退を続ける地球環境を保全することにある。プラート少佐の喚問はともかく、マスドライバーの攻撃は認められん」

ドルチェノフ「何を甘いことを仰られますか! 今こうしている間にもギガノスは棺桶に片足を浸けようとしているのですぞ!」

ギルトール「マスドライバーはコロニー落としほどではないものの、地球の環境を大きく破壊していまう。ましてや、最後の自然と言われているジャブローへの攻撃は我らの理想を大きく揺るがしてしまうのだ」

ドルチェノフ(ワシが総帥ならば、ただちにマスドライバーを発射したものを!)

 これ以上の進言はドルチェノフを不利にする可能性があった。不遇をかこわれた連邦を抜け出して、ここまできたのだ。この地位を失うわけにはいかない。

 ドルチェノフは、渋々とその場を引き下がらざるを得なかった。その軍靴の音が、絨毯越しにもよく響いた。

ギルトール「プラート君……我らの理想は、もはや夢幻となってしまったのか……?」

 メサイア・ギルトールは、かつての親友とその娘の姿を暗い天井に思い浮かべた。


 第八話 曲折! 交わされる言葉の強さ 完
609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 17:06:23.54 ID:uyn+k69f0

 第九話

ドクター・ヘル「あしゅらよ! あしゅらはおるか!」

あしゅら「はっ! あしゅら男爵、ただいま参上いたしました!」

ドクター・ヘル「うむ! 貴様の幾度の失敗を帳消しにするチャンスをくれてやる!」

あしゅら「ははぁーっ! あしゅら男爵、ドクター・ヘル様の寛大なお心に感涙の極みにございます!」

ドクター・ヘル「貴様が幾度となくマジンガーZと戦ったことで、ついに奴の決定的な弱点を見つけたのだ!」

あしゅら「なな、なんと! 決定的な弱点!?」

ドクター・ヘル「そうだ! そのための機械獣も完成した! マジンガーZだけではない! 光子力研究所をも破壊する力を持つ機械獣ジェノサイダーF9!」

あしゅら「ジェノサイダーF9! さすがはドクター・ヘル様!」

ドクター・ヘル「さぁ、ゆけぃ! あしゅら男爵!」

あしゅら「ははぁっ! 必ずやこのあしゅら男爵、ドクター・ヘル様のために平沢唯を打ち倒し、マジンガーZと光子力研究所を手に入れて見せましょうぞ!」

ドクター・ヘル「はぁーっはっはっはっはっは!」
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 17:08:21.88 ID:uyn+k69f0

 ドクター・ヘルとあしゅら男爵が意気揚々としている時、光子力研究所では……

唯「ぼへぇーっ……」ぐだー

律「らへぇーっ……」ぐだー

梓「せんぱーいっ! なにぼへっとしてるですかーっ!」プンプン

唯「らぁってぇー……」でろー

律「こないだの天使ん家で限界振り切ったっていうかー……」でろー

唯「帰ってくる途中の新幹線の冷房のダメージが残ってるっていうかー……」だらー

梓「う、ううぅ〜っ!」プルプル

紬「唯ちゃ〜ん、お菓子と紅茶持ってきたわよ〜」ぱたぱた

憂「お姉ちゃ〜ん、アイスもあるよ〜っ」ぱたぱた

唯「はーいっ!」シャキーン

律「よっしゃーっ!」シャキーン

梓「あああぁぁぁぁぁ! 本当にこんな人たちに地球の命運がかかっているのかぁぁぁぁぁ!?」ガシガシ

律「あれー、そういや澪はどこに行ったんだ?」もぐもぐ

唯「ホントだー、いないねー……はい、憂、あーん」ごくごく

憂「ありがとー、あーん」ぱくぱく

紬「澪ちゃんなら、今は新型の実験をしてもらっているわ」ほくほく

梓「なに澪先輩を普通にハブってんですか私たち……」ごくごく

律「梓だっておいしそうに食べちゃってるくせにー」うりうり

梓「あぁぁ〜……」ぐしぐし

紬「澪ちゃんは……あれなのよ」はぁ

唯「ん?」もぎゅもぎゅ

紬「天使さん家で……いっぱい食べちゃったから」はぁ

律「なーるほどねー、確かにロボットの操縦ってすごい汗かくからなー」うんうん

唯「そーだねぇー、私もいつもびしょびしょだよー」うむうむ

憂「び、びしょびしょなの? お姉ちゃん……?」どきどき

唯「そりゃあもう! おしりからふともものくらいまでぐっしょぐしょ!」ばーん

紬「ぐしょぐ……」ぶふっ

梓「……」どきどき

律「しっかし、澪もちょっと気にしすぎだよなー。私から見たらあれでもうらやましいくらいだぜ」へらへら

梓「それは律先輩が偏平な身体をしているから……」ぼそっ

律「なんか言ったかしらぁ、あずさちゅわぁーん?」ぴきぴき

梓「いーえー」ずずずー
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 17:09:52.62 ID:uyn+k69f0

唯「ねーねー、私気になってたんだけどー?」くりくり

紬「なぁに、唯ちゃん?」ことこと

唯「ムギちゃんと澪ちゃんって、どっちがおっぱい大きいの?」てんてん

律・梓「ぶっ!」ばしゃっ

唯「アフロダイAって、澪ちゃんをモデルにしたんでしょ?」もぐもぐ

紬「えぇ、だから私は澪ちゃんのおっぱいの大きさもわかるわ」ほうっ

唯「教えて教えてー」ふりふり

紬「えぇ、私と澪ちゃんのおっぱいは――」

澪「や、やめろ、ムギーッ!」がばっ

紬「むぎゅっ」もごもご

律「あ、澪、おかえり」ごくごく

唯「澪ちゃんおかえりー」けらけら

憂「澪さん、お茶は何にしますか?」いそいそ

澪「い、いや、私は……その……無糖で……」かぁっ

律「さすがに気にしすぎだろ……」ぱくぱく

梓「律先輩は食べておっきくしませんとね」にっこり

律「さっきから言ってくれるじゃない、あずさ〜」めらめら

唯「ねーねー、新型ってどんなのなの?」

澪「それは……えっと、は、恥ずかしい……」

唯「恥ずかしいの!?」

紬「えっと、新型のダイアナンAは実験機のアフロダイAのデータを下敷きに、初めから戦闘用として建造されたものよ」

唯「へぇ〜」

紬「アフロダイでは三割程度だった超合金の含有率を6〜7割に上げたから、強度も大幅にアップしているし、ミサイルも小型に改良した光子力爆弾を新たに搭載したの」

憂「それじゃあ、本当にパワーアップしたアフロダイって感じなんですね」

紬「そうね、あとは――」

 ズドォォォォォォォォォォォォンッ! 紬の説明を轟音がかき消した。

澪「機械獣!?」

律「ちっくしょー! こっちは休憩してんのによーっ!」

唯「いくよぉ! りっちゃん、澪ちゃん!」

澪・律「あぁ!」

憂「お姉ちゃん、がんばってね!」

唯「うん! あ、あずにゃん!」

梓「な、なんですか!?」

唯「あずにゃん分補給〜っ!」ぎゅぅ〜

梓「さっさと出動してください!」
612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 17:10:36.15 ID:uyn+k69f0

唯「よぉーし、やるぞぉ、マジンガーZ! 光子力エネルギーにあずにゃんパワーだ!」

梓「そんなのはありません!」

紬「準備オーケーよ、唯ちゃん」

唯「パイルダー、オーン! マジーン、ゴー!」

澪「ダイアナンA、ゴー!」

律「じゃんじゃじゃ〜ん! ボスボロットだわさ〜」

梓「律先輩も懲りない人ですね……」

唯「機械獣はど〜こだぁ〜」

澪「なまはげかっ!」

紬「唯ちゃん、上よっ!」

唯「へ?」

 チュドォォォォォォン! 見上げた空から無数の爆弾が落ちてきた。

唯「うひょえぇぇぇ!」
 
 ドドォーン!

澪「う、うわっ! うわわわっ!」

 ズガァァァァァン!

律「うおぉぉぉぉっ!」

 シュシュボォーン!

澪「こらっ、律! くっつくなよ、動きづらいだろ!」

律「んなこと言ったってよ! うわぁぁぁ!」

 あちこちで爆弾が爆発する。まるで熱砂に裸足でいるようにマジンガーZはそこら中を跳ねまわっていた。

唯「わっ、ひゃっ、おおうっ!」

 ズドドォォォォォォン! 一際大きい爆弾がマジンガーZの目の前で爆発し、爆風にくろがねの城もたまらずしりもちをついた。

憂「お、おねえちゃ〜ん」

 憂がハラハラしてみていると、上空から大きな声が光子力研究所に届いた。

あしゅら「わーっはっはっはっは! どうだ、マジンガーZ!」

唯「あ、あしゅら男爵の声!?」

律「ど、どこにいやがるんだ!?」

紬「じょ、上空1000メートルに機械獣を確認!」

澪「せ、1000メートル!?」

 見上げた空には、確かに黒い影が旋回しながら爆弾を落としているのが見えた。
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 17:12:02.53 ID:uyn+k69f0

あしゅら「どうだ! これがドクター・ヘル様の開発したジェノサイダーF9だ!」

唯「このぉ、光子力ビーム!」

 ビビーッ! マジンガーZの目から光子力ビームが発射されるが、鳥のように空を舞うジェノサイダーF9はこれを悠々と避けてしまう。

あしゅら「はーっはっはっはっはっはっは! ドクター・ヘル様の見つけたマジンガーZの弱点は真実だったようだな!」

唯「ま、マジンガーZの弱点!? うわぁっ!」

 ドゴォォォォン!

秋山「くっ、ドクター・ヘルめ、気づいたか……」

 爆弾から逃げ惑うマジンガーZを見ながら、秋山は苦虫を噛み潰したような顔になった。

紬「所長、マジンガーZの弱点って何ですか!?」

秋山「見ればわかるだろう……マジンガーZは、空を飛ぶことができないんだ!」

紬「そ、空!?」

 紬が戦場に目を戻すと、マジンガーZは搭乗者の心を表しているかのようにオロオロと動いていた。
 ダイアナンAもボスボロットもすっかり蚊帳の外へ出されてしまっている。

唯「当たれぇ! ドリルミサーイル!」

 ボシュッ! ボシュッ!

唯「ブレストファイヤー!」

 ズバァァァァァァァッ! ミサイルも30000度の熱光線も、全て空の彼方へ消えてしまった。

あしゅら「無駄だ、無駄だぁ! ジェノサイダーF9よ、光子力研究所にも爆弾をお見舞いしてやれぃ!」

ジェノサイダーF9「ズギャァァァァァン!」

 ヒュォォォォォォ! 爆弾が光子力研究所の真上に落とされた!

梓「きゃぁぁぁぁぁっ!」

秋山「まずい!」

田井中「安心しろ! あれは完成している!」

秋山「頼むぞ、田井中博士!」

田井中「光子力バリアーッ!」

 カチッ 田井中の指がスイッチを押すと、光子力の光りが研究所の周囲を覆った。

あしゅら「なにぃっ!?」

 ドドォォン! 光子力バリアに阻まれて、爆弾は研究所に到達する前に爆発してしまった。
614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 17:13:54.99 ID:uyn+k69f0

紬「こ、光子力バリアー……?」

田井中「そうだ、光子力エネルギーのちょっとした応用だ」

秋山「まだ試作段階だから、そう長くはもたんだろうが……」

あしゅら「ぬうぅ! こしゃくなねずみどもめ! ジェノサイダーF9! どうせマジンガーZは何もできん! 一気にケリをつけてしまえ!」

 ドドゴォォォン! ズドォォン! ドガァァァァン!

憂「きゃあぁぁぁっ!」

梓「わぁぁぁぁぁっ!」

唯「憂っ! あずにゃん!」

あしゅら「わははははは! 今日こそ引導を渡してやるぞ、平沢唯!」

秋山「唯君! ロケットパンチを使うんだ!」

唯「ろ、ロケットパンチを!? それでもまた避けられちゃいますよ!?」

秋山「ロケットパンチは改良した! ターゲットをロックオンして自動追尾してくれる!」

唯「よ、よくわかんないけど、行くよ! ロケットパーンチ!」

 ドシュゥッ! マジンガーZから射出された右腕がジェノサイダーF9に向かって飛んでいく!

唯「いっけぇーっ!」

あしゅら「むっ! 我らを追ってくる! だが、そんなものにやられるあしゅら男爵ではないぞ!」

 ズバババババババババッ! あしゅら男爵の電撃がロケットパンチを撃ち落としてしまった!

唯「そ、そんなぁ!」

あしゅら「ふはははははは! 空を飛ぶ機械獣の前にさしものマジンガーZといえど手も足も出まい!」

秋山「くっ、ゲッターロボやライディーンは来られないのか!?」

田井中「ダメです! 同じように機械獣と戦っています!」

紬「ど、どうすれば……」

『ガッ……ガガッ……ピガー……』
615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 17:14:26.52 ID:uyn+k69f0

梓「む、ムギ先輩……通信がどこからか……!」

『……子力……所……聞こえ……るか……光子力研究所……!』

紬「い、いったい、どこから……?」

 慌てて紬はマイクを取った。その間にも、爆弾は光子力研究所に降り注いでいる。

紬「こちら光子力研究所! 聞こえています! 応答を!」

『よか……た……つながっ……光子力……所……!』

紬「そちらはどなたですか!?」

 爆発の地響きに耐えながら紬が問うが、相手は別の答えを出してきた。

『我わ……マジン……トの……ばさを……』

紬「マジンガーZ!? マジンガーZのなんですか!?」

『マジンガーZの……翼を……送る!』

紬「マジンガーZの翼!?」

『紅の翼……ジェットスクランダーを送……!』

紬「ジェットスクランダー!?」

 キュゴォォォォォォォォォォォォーッ! 風を切る戦闘機のような音が、紬の耳に飛び込んできた!

紬「あ、あれは!?」

あしゅら「な、なんだあれは!?」

 驚きはあしゅら男爵もだった。
 空を巨大な紅の翼が滑るように飛んでいるのだ!

あしゅら「よ、避けろ、ジェノサイダーF9!」

ジェノサイダーF9「ギュオォォォォォン!」

 ガガガッ! 左に動いたジェノサイダーF9の腹に紅の翼の片翼がかすめていった。

あしゅら「ぬおぉぉぉぉ!」

 慌ててしがみつくあしゅらの目の前で紅の翼は大きく旋回していく。
616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 17:15:59.88 ID:uyn+k69f0

あしゅら「な、なんなのだあれは!?」

唯「つ、つばさ……?」

紬「唯ちゃん、聞こえる!?」

唯「ムギちゃん!? あれはなに!?」

紬「あれはマジンガーZの翼、ジェットスクランダーよ!」

唯「ジェットスクランダー!?」

 ジェットスクランダーは大空を舞ってジェノサイダーF9を牽制する。
 紅の翼は、まるで唯を待っているように見えた。

紬「唯ちゃん、ジェットスクランダーとスクランダークロスするのよ!」

唯「よぉーし、スクランダー、ゴー!」

 ギュオォォォォォォッ! 唯の命令でジェットスクランダーがまた大きく旋回してマジンガーZの後ろに飛んできた。
 同時にマジンガーZも走り出す。超合金の足で強く地面を踏みしめて、唯はスクランダーとの呼吸とリズムを揃えていった。

あしゅら「させるか、マジンガーZ!」

澪「それはこっちの台詞だ! スカーレットビーム!」

 あしゅら男爵とジェノサイダーF9がマジンガーZに突撃する動きを読んだ澪がダイアナンAのスカーレットビームを撃つ!

あしゅら「ぬおっ!」

 ドガァッ! スカーレットビームの直撃を受けたジェノサイダーF9が大きく揺れる!

 そして、マジンガーZとジェットスクランダーの距離が交差するとき――

唯「スクランダー! クロォース!」

 ジャキィ――ンッ! マジンガーZの胴体部にジェットスクランダーが装着され、マジンガーZは強く空へ飛び出した!

あしゅら「な、なんだとぉーっ!?」

唯「いけぇぇぇーっ! マジンガーZ!」

 ギュオォォォォォッ! 空を飛ぶマジンガーZはぴったりとジェノサイダーF9の後ろを取った!

あしゅら「えぇーいっ! 飛ぶくらいがなんだ! やれぃ、ジェノサイダーF9!」

ジェノサイダーF9「ガオォォォォォン!」

 ズドドドドッ! ボシュッボシュッ! ガガガガッ!
 手当たり次第にジェノサイダーF9からミサイルや爆弾が発射される!

唯「冷凍ビーム!」

 ビィィィィィパッキィィィン!
 マジンガーZの耳にあたる角から、一瞬にして対象を0℃以下にしてしまう冷凍ビームが全ての火器を凍らせて機能不全にする!

唯「スクランダー・カッター!」

 バッギャァァァァァァァァァン!
 マッハ3にも迫る全速力マジンガーZの紅の翼がソニックブームを纏ってジェノサイダーF9を縦一直線に両断した!

あしゅら「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 申し訳ありませぬ! ドクター・ヘル様ぁぁぁぁぁ!!」
617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 17:17:09.81 ID:uyn+k69f0

 光子力研究所 格納庫

律「唯!」

紬「唯ちゃん!」

澪「大丈夫か、唯!?」

唯「うぷっ……よ、酔っちゃった……」

憂「お、おねえちゃーん!」

澪「いきなり、マッハ3だもんなぁ……」

律「ゲッターチームって、けっこう凄いやつらだったんだな……」

澪「それにしても、いったい誰がジェットスクランダーを運んできてくれたんだ……?」

律「そう! 私も思ってたよ! いったい誰なんだ、ムギ?」

紬「それが、全然わからないの……向こうは光子力研究所のことを知っていたみたいだけど……」

澪「そうか……」

律「ま、なんにせよ、これでマジンガーZも空を飛べて、弱点克服ってことだよな!」

 律がマジンガーZの足をバンバン叩く。
 その様子を、輪に加わることなく見ている影があった。

梓「…………」

 梓は悔しそうに歯噛みしている様子で、律たちを見ていたが、やがて身を翻して格納庫から去っていった。


 第九話 飛翔! 空を飛べ、マジンガーZ!
618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/26(土) 18:57:55.32 ID:B80XsZte0

 第十話

 北米大陸 ゴラオン

アリサ「アリサ・バニングス、コア・ファイター、哨戒任務に出ます!」

 ゴラオンの開け放しになっている格納庫から、戦闘機コア・ファイターが飛び出した。
 それを見送るなのはとすずかは不安の残る表情で見送った。

なのは「アリサちゃん、最近はよく出るね」

すずか「うん、早く操縦をマスターしたいのもあると思うけど……」

ハロ「ハロハロ」

なのは「もしかしたら、あの放送が関係あるのかな……」

すずか「そうかもしれないけど……アリサちゃん、何も話してくれなかったから……」

 四日前、ちょうどゴラオンが北米大陸に到着した頃に、ある放送がジオン側から流れた。

 ジオン公国のガルマ・ザビとバイストン・ウェルのアの国の国王ドレイク・ルフトが会談し、互いに軍事同盟を結ぶことで同意したと。

 その時の映像はゴラオンにも届いた。
 映像には、ガルマとドレイクが手を握り合っている姿が映っていた。
 その脇を固めていたのが、ショット・ウェポン、トッド・ギネス、イセリナ・エッシェンバッハ、そして、赤い彗星フレイムヘイズのシャナである。
 アリサはその映像を食い入るように見ていた。

なのは「もしかしたら、アリサちゃんにしかわからない何かが、あの放送にあったのかもしれないね……」

すずか「アリサちゃん、思い込んじゃうところがあるから……」

チャム「そこまでわかってるなら、追いかければいいじゃない!」

なのは「あ、チャムちゃん」

すずか「どうしたの?」

チャム「ダンバインの整備を手伝おうとしたら、タマキに邪魔だって追い出されちゃったの!」

なのは「にゃはは、チャムちゃんらしいね〜」

ハロ「ハロハロ、チャムハロ」

チャム「私のことより、どうしてアリサを追っかけてってあげないの!?」

なのは「う〜ん、なんでだろ……?」

すずか「なんだか、アリサちゃんが聞いてほしくなさそうだから……かなぁ?」

チャム「なぁにそれ? そんなことわかるの?」

なのは「まあ、二年も一緒にだからね」

すずか「たぶん、アリサちゃんは、話したくないというより、話すのが怖いのかも……」

なのは「うん、そうだね。私もそう思う」

チャム「ふぅーん……なんだかよくわかんない!」

すずか「ふふふ」

なのは「にゃはは」

ハロ「ハロハロ、ニャハハ、ハロハロ」
619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/26(土) 18:59:07.88 ID:B80XsZte0

アリサ「…………」

 コア・ファイターの操縦席でアリサは考え事をしている。
 というより、考え事をしたいときに、アリサはコア・ファイターで出撃していた。

 なのはとすずかが思っているとおり、アリサは迷っていた。
 二人は親友だ。それは間違いなくそう言える。
 だけど、言うべきことか、黙っているべきことなのか、アリサには判断がつかないことだ。

アリサ「まだしばらくは……黙っていたほうがいいのかもしれない」

 アリサは今年十一歳になるが、ジオンの赤い彗星シャナとは姉妹であったのだ。
 そして、彼女の父親はあのジオン・ダイクンなのである。
 ジオン亡き後、姉妹はジンバ・ラル夫妻に守られて地球に移り住んできた。
 ジンバ・ラルは用意していた莫大な資産で地球の名家バニングス家の名前を買った。
 父との記憶はないが、姉との記憶はある。一番強い記憶はアリサが四歳の時、シャナがジオン入国を決めた時のものだ。

シャナ『私の父はジオンのザビ家に殺された。私は父殺しの仇ザビ家を討つべきだと思う』

 まだ幼かったアリサにその言葉の意味はわからなかったが、姉のいない家にアリサが留まる価値はなかった。
 そして出会った親友たち、なのはとすずか。ジオンの娘であるアリサにとって、二人は眩しすぎた。
 そして、姉のシャナが地球を離れた理由がわかるようになると、それはアリサにとって嫌悪すべきものとなった。

アリサ「父が、子どもの不幸を喜ぶものか」

 何よりアリサはジオンの娘となることで、なのはとすずかを失いたくなかった。
 だから、二人が戦うことを選んだとき、民間人としてホワイトベースを降りることもできたのに、乗員として残ったのだ。
 誤算はあった。いつでも人間の周りを飛び回っているそれが舞い降りたのは、大気圏突入時だ。

アリサ「……ツッ!」

 操縦桿を握りしめながら、アリサは頭痛を堪えた。
 あのとき現れた赤い彗星フレイムヘイズのシャナを見たときから、姉のことを思い出すたびに、額からこめかみのあたりを電気のような痛みが走るのだ。
 それはあのジオン・ドレイクの同盟会見の映像を見たとき、ピークに達した。

アリサ「違う……何かが違うのよ」

 アリサはこの頭痛を違和感だと思っていた。
 何かが、違うのである。それは姉のことを思い出すて、常に感じることである。
 姉の名はシャナ。それはジオン入国の際に偽名として名乗ったものだ。
 だが、彼女のファミリーネームは誰も知らない。バニングス家の名は捨てているはず。
 しかし、誰もが彼女のことを『赤い彗星フレイムヘイズのシャナ』としか呼ばないのだ。
 それはルウム戦役でついたあだ名なのだから、それまでに名乗っていたファミリーネームがあるはずだった。

 それに、アリサの知っている姉の名前はあと二つある。覚えてはいるが、それが違和感の正体であることにアリサはまだ気づいてない。
 キャスバル・レム・ダイクンとエドワゥ・バニングス――前者はジオン・ダイクンの子としての名前、後者はバニングス家としての名前である。

 キャスバルとエドワゥ――この名は、主に男子につけられる名前なのだ。

アリサ「シャナ――姉さんに会えば何かわかるはず……」

 あの映像にシャナが映ったということは、北米大陸にまだ駐留している可能性が高い。
 ゴラオンに乗り続けていれば、会うことはできるだろう。

 そのとき、レーダーが質量を捉えた。四つ、ドレイク軍のドラムロだ。

アリサ「すぐに戻らないと……!」

 敵もこちらに気づいたようだった。
 急いで機首を返す。戻りきれるだろうか?
620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/26(土) 19:00:41.60 ID:B80XsZte0

 ゴラオン 格納庫

ゴラオン兵士「聖戦士様! 哨戒のアリサ様が敵機に捕捉されました! 救援をお願いします!」

珠姫「はいっ!」

紀梨乃「タマちゃん、私もボチューンで出るよ!」

チャム「私もいくぅーっ」

 珠姫とチャムがダンバインに、紀梨乃がボチューンに乗り込む。

珠姫「ダンバイン、行きます!」

紀梨乃「ボチューン、いっくよぉーっ!」

 オーラ力の光りをブースターから噴きながらオーラバトラーが発進していく。

なのは「アリサちゃん、大丈夫かな……」

すずか「コア・ファイターの速さならそう簡単に追いつかれないと思うけど……」

ハロ「ハロハロ、アリサハロハロ」



 北米大陸 ジオン軍攻撃空母 ガウ

ガルマ「ゴラオンの偵察機を発見したか!」

ジオン兵「はっ! ただいまドレイク軍のウィル・ウィプスが追撃体制に入りました!」

シャナ「手柄を横取りされるのを見ている手はないわね」

ガルマ「うむ! ガウの発進準備をさせろ!」

ジオン兵「はっ!」

 部屋からジオン兵が出て行く。

シャナ「私は一足先に出て、モビルスーツと白服のやつを捜すわ」

ガルマ「行ってくれるのか?」

シャナ「今の私はお前の部下よ」

ガルマ「そうだが、元々はドズル兄さんの直属だ。私がガウでやろう」

シャナ「私にも、プライドというものはあるのよ」

 刀を抱えて睨みつける親友≠ノ、ガルマは目にかかる前髪を弄って笑った。

ガルマ「やられっぱなしにはいられないということか、フフフ」

シャナ「発見したら、通信くらいはいれてあげるわよ」

ガルマ「頼んだぞ、シャナ」

シャナ「勝利の栄光を君に」
621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/26(土) 19:01:25.72 ID:B80XsZte0

 ウィル・ウィプスの艦隊に混じってジオンのガウが発進した頃、アリサはドラムロから逃げ回っていた。

アリサ「しつっこいわね!」
 
 ドレイク軍のドラムロは九体にまで増えていた。雁行型の編隊を組んで、オーラショットを撃ち続けている。

アリサ「こんのぉっ!」

 ぎゅぅんっ! 操縦桿を力いっぱいに倒して降下する。頭上を抜けていくオーラショットの威圧にぶわっと汗が吹き出る。

 だが、レーダーが新たな敵の到来を報せていた。
 どうやら、考え事をしている最中に深く敵陣に入り込んでしまっていたらしい。
 通信が繋がっていただけでも幸運だ。

 ビランビーやバストールまでいる新たな部隊はアリサを取り囲むように展開している。

アリサ「さ、さすがのアリサちゃんも大ピンチ……?」

 とはいえ、コア・ファイターとオーラバトラーの大きさはほぼ同じである。
 直線移動の速さでは勝っているし、武装の30ミリバルカンもなめし皮であるオーラバトラーの装甲にも立ち向かえる。

アリサ「な、なのはやすずかにばっかりいい格好させてらんないわよね!」

 ぐおぉんっ! 機体を持ち上げて正面のビランビーに向けてバルカン砲を撃つ。

アリサ「どきなさいったらーっ!」

ドレイク兵「う、うおぉぉっ!? こ、コンバーターがぁ!」

 ガガガガガガッ! バルカンにやられるドレイク兵。

アリサ「へへーんだ!」

 ビランビーを墜落してできた編隊の穴からアリサのコア・ファイターが抜け出る。
 だが――

トッド「好きにやらせるかよ!」

アリサ「キャアァァァッ!」

 トッド・ギネスがレプラカーンとともにコア・ファイターの上に乗っかっていた。

 逆手に持った剣がコクピットに切っ先を向けるのを見上げて、アリサは真っ青になった。

アリサ「ちょ、ちょっと……冗談でしょ……?」

トッド「冗談で戦争ができるかよ!」

 剣がコクピット目がけて振り下ろされる!

アリサ「死んだっ!?」

 ぎゅっと目を瞑ったアリサ。だが、いくら待っても手配済みの死は訪れなかった。

トッド「ちっ!」

 舌打ちの後、ぐんと機体が軽くなった。何があったかわからないが、レプラカーンが離れていく。

珠姫「トッドさん!」

トッド「現れやがったなぁ、ダンバイン!」

 オーラショットから煙を吐きながらダンバインが急速に接近してきた。
 剣が刺さる直前に撃って助けてくれたのだ。

 ダンバインとレプラカーンは機体の姿勢を整えると、すぐに剣をぶつけあった。
 
トッド「ノコノコと出てきやがって! やっぱりオマエも地上で戦うってのかよ、タマキ!」

珠姫「そんな風に憎しみを人に圧しつけて!」

 ガキィンッ! ダンバインの横払いの一撃を縦に構えた刃の柄で絡みとる。
 ガッ! バキッ! 剣を受け流したレプラカーンが左拳を固めて下顎を殴りつけた!

珠姫「うぐっ!」
622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/26(土) 19:02:19.59 ID:B80XsZte0

 呻く珠姫にトッドが吠える。

トッド「アメリカは俺のホームだ! てめぇらジャップに踏み荒らされてたまるかよ!」

珠姫「バイストン・ウェルやジオンの人達が破壊しているのはどうするの!?」

 バシュッ! ワイヤークローがレプラカーンの首にくくりつき、一挙に距離を縮め、
 ガシュィッ! ダンバインの鋭い太刀筋がレプラカーンの右肩の鎧を掠め取る!

トッド「奴らはアメリカをこれ以上荒らさないと約束してくれたよ! ガルマもお坊ちゃんだがいい奴だぜ!」

珠姫「そうやって打算ばかり受け取って! オーラマシンがバイストン・ウェルから浮上した理由を考えないの!?」

トッド「おふくろに心配かけただけ、無駄だったってことさ!」

珠姫「また打算! あなたはーっ!」

チャム「タマキぃ!」

 ガッ! ガガガッ! バキッ! ドドシュゥッ!
 剣戟の火花が舞い、機体をぶつけあい、オーラショットを撃ち合っていく。

トッド「所詮、オマエとはこうなる運命だったのさ! ジャップ!」

珠姫「あなたが戦いをやめないから!」

チャム「なんだか恐いよぉ、タマキぃ!?」

 チャムが恐怖するのも無理からぬこと。
 珠姫の形相は凄まじい剣幕で、普段の彼女からは想像も出来ないぐらいに声を枯らしているのだ。
 
 ダンバインを通してオーラ力が目に見えるくらいに溢れている。

トッド「なめるなよ! 俺だってオーラ力は上がっているんだぜ!」

 呼応するようにレプラカーンからもオーラの光りが溢れて機体を包み込んでいく。

 二人はまた激しく打ち合う。その度にオーラが弾けて消える。
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/26(土) 19:05:17.87 ID:B80XsZte0

 一方、ゴラオンはウィル・ウィプス艦隊と遭遇して、これと交戦していた。

 互いにオーラマシンを出し合い、高度での戦闘を繰り広げながら、地上ではジオン陸上部隊と戦車部隊が戦っている。

なのは「シュートッ!」

ジオン兵「ぐおおぉっ!?」

 なのははゴラオンから出た戦車と歩兵部隊に混じって魔法で敵を牽制させている。

すずか「当たって!」

 ドウッ! すずかが乗るガンダムもゴラオンの直俺に回りつつ、大型車両などを破壊していく。
 ゴラオンは浮上の機会を逃して、大地に鎮座している。

エレ「エイブ艦長、このままでは地上の被害が大きくなってしまいます。どうにかなりませんか」

エイブ「しかし、敵が取り付いている今、上昇しては迎撃にあたっている乗務員に影響が出ます」

エレ「それなら……あの山陰に入ってはどうでしょう。オーラバリアも上からの攻撃に集中させることができます」

エイブ「わかりました。ゴラオンを発進させろ!」

 ゴラオンが動きはじめたとき、後方のガウから先行してきたシャナがガンダムを捉えた。

シャナ「見つけたわ、連邦の白いヤツ!」

 シャナは炎を身に纏い、ガンダムに突撃していった。

すずか「炎が迫ってくる!?」

なのは「あれは、シャナちゃん!?」

シャナ「たぁーっ!」

レイジングハート「protection」

 シャナの刀がなのはに当たる直前、レイジングハートが防御魔法を発動させる。
 贄殿遮那がそれをすぐに粉砕させるが、刀の行き先はわずかにブレてバリアジャケットを切るだけに終わった。

なのは「シャナちゃん、やめて!」

シャナ「うるさい! 気安く私の名前を呼ぶな!!」

なのは「くっ……ディバイーン・シューター!」

 なのはの背中から光りの球が三つ放たれる。湾曲して空を飛ぶ光球がシャナに向かっていく。

シャナ「遅い!」
624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/26(土) 19:05:50.50 ID:B80XsZte0

 シュパァッ! 刀の二振りでディバイン・シューターは三つともかき消えていった。

シャナ「連邦の新兵器の力はそんなものか!?」

なのは「きゃあっ!」

すずか「なのはちゃん!」

 ガンダムの頭部をシャナのほうへ上げてバルカン砲を撃つ。
 少女程度の大きさのものなどまともにレーダーで映すことなどできやしないが、ばらまくように撃ちまくった。
 リュウが乗るコア・ファイターは上空でオーラマシンと戦っている。その支援が受けられない。

シャナ「モビルスーツの性能差が、戦力の決定的な違いではないことを教えてやるわっ!」

すずか「こ、こっちに来る!?」

シャナ「落ちろぉーっ!」

アリサ「させるもんですかぁーっ!」

 ガンダムとシャナの間にコア・ファイターが割って入ってきた。
 帰還してきたアリサがそのまま突撃してきたのだ。

シャナ「ちっ……あれは!?」

 忌々しげにコア・ファイターを見やったシャナの目が大きく見開かれる。

シャナ「アルテイシアが……くぅっ!」

 コア・ファイターのコクピットに座っているアリサを発見した途端、シャナは頭が痛くなった。

なのは「シャナちゃんの動きが……それなら!」

 それを確認したなのはがディバイン・シューターを撃つ。

シャナ「くぅぅっ!」

 頭を抱えるシャナは、それでもシューターを回避して空へ距離をとった。
 ゴラオンが移動していくのを見て、ガウへ通信を入れた。

ガルマ「シャナか?」
625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/26(土) 19:07:43.00 ID:B80XsZte0

シャナ「ゴラオンを発見したわ。私たちに背を向けて山間へ逃げていくわ」

ガルマ「そうか!」

 ガルマの弾む声にシャナは内心でほくそえんだ。
 実際はゴラオンは回頭せずに後進している。

シャナ「私がモビルスーツとオーラバトラーをひきつける」

ガルマ「わかった。我々がゴラオンを沈める」

シャナ「逃さないでよ。十字勲章ものの相手よ」

ガルマ「へまはしないさ。イセリアの前だ」

 シャナはそれ以上は聞かずに交信を切った。

シャナ「利用させてもらうわ」

なのは「シャナちゃん!」

 ひゅおんっ! シャナを追いかけて上昇してきたなのはの光球を鮮やかに回避する。

シャナ「ちょろちょろと!」

 白服のヤツとは相性が悪い。こっちの攻撃は逸らされるし奔放な軌道の球がイヤだ。

シャナ「馴れ馴れしいのよ!」

 シュパァッ! 水平に構えた鞘から抜き放つ。

なのは「きゃっ!?」

 相手がひるんだ隙に脇を通り抜けて、加速。進む先にいる敵オーラバトラーに刃を向けた。

ゴラオン兵「な、なんだ!?」

シャナ「沈めぇっ!」

 ズバッ! シャナの一閃の前に、ゴラオン量産型オーラバトラー、ボチューンの首が飛ぶ。

アリサ「やめなさいよっ!」

 コア・ファイターのアリサがバルカンと共にシャナを追ってきた。

シャナ「またっ……アルテイシア……ッ!」

 その声をマイク越しに拾ったアリサは思わず叫んだ。

アリサ「やっぱり……アンタは……いや、あなたは私の――」

シャナ「言うなっ! ここは戦場だ!!」

すずか「アリサちゃぁん!」

 ギュオッ! コア・ファイターが落とされると思ったすずかがビーム・ライフルをシャナに向けて撃った。
 それをシャナは大きく円を描く動きで避ける。

なのは「シュートッ!」

 ディバイン・シューターが飛び掛かる。
 シャナは戦場の端で列を成しているガウとドップを見つけた。

シャナ「頃合いね」

 光球を叩き落すと、最大速度を出して戦線から離脱していった。

アリサ「ちょっと、待ちなさいよ!」

すずか「アリサちゃん、ダメだよ! もう燃料もないでしょう!?」

アリサ「うぅっ……」

 たしかに、コア・ファイターの計器はいずれも臨界に達しかかっていた。
 仕方なく、速度を緩めてガンダムの近くに着陸していく。
 シャナの姿はもう見えない。また、ふたりは離れ離れになっていく。
626 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/26(土) 19:09:27.42 ID:B80XsZte0

 ガルマ・ザビが率いるジオン飛行部隊は、ゴラオンが隠れている山間に近づいていた。

ガルマ「ビーム砲を開け、全機、攻撃スタンバイ」

 彼の予想では、ゴラオンは尻を向けているはずだ。800メートル級の巨大戦艦でも、後ろを取ればまともな反撃はできまい。

エイブ「エレ様、敵艦隊が接近してきます」

エレ「副砲、その他使える砲門は射撃体勢を整えよ」

 だが、ゴラオンはガウの針路に対して正面を向いていた。
 主砲のオーラノバ砲は使えないとはいえ、その威力は70メートル級のガウでは相手になるまい。

 それを、ガルマは接触する瞬間まで、まるで考えていなかった。
 ゴラオンが背を向けていると情報を流したのは、他ならぬ彼の親友だったからだ。

シャナ「ガルマ、聞こえている?」

ガルマ「シャナか。これからゴラオンを落とす。君も見に来るといい」

シャナ「残念だけど、それはできないわ」

ガルマ「そうか」

シャナ「アンタに、ゴラオンは落とせないから」

ガルマ「なんだと!?」

ジオン兵「が、ガルマ様!」

 驚愕するガルマをオペレーターの裏返った声が遮った。

ジオン兵「ゴラオンの艦首が、こちらを向いています!!」

ガルマ「なにっ!?」
627 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/26(土) 19:10:25.51 ID:B80XsZte0

エレ「全砲門、撃て!」

 ガルマがシャナから戦場に目を移したとき、ゴラオンの砲口が火を噴いた。

ガルマ「うわーっ!!」

 チュドォッ! ズドドドドドドオン!!

ガルマ「じょ、上昇だ! 上昇しろ!」

ジオン兵「む、無理です!」

ガルマ「シャナ! これはどういうことだ!?」

 ガルマの怒号に、モニターの中のシャナは愉快そうに笑っていた。

シャナ「ふふふ……ガルマ、聞こえていたら、自分の生まれの不幸を呪うがいい」

ガルマ「なにっ、不幸だと!?」

シャナ「そう、これは不幸なことなのだよ」

ガルマ「謀ったな、シャナ!」

イセリナ「ガルマ様!」

 白磁の美貌からさらに血の気を落とすガルマの背中に、イセリナがしがみついてきた。

ガルマ「い、イセリナ!?」

イセリナ「ガルマさま!」

シャナ「フフフ……イセリナ様には悪いことをしてしまったな。まあ、君の家族もいずれ君たちの許へ向かう。式はそこで挙げてくれたまえ」

 ガルマは何か背筋がぞっとする思いがした。

ガルマ「シャナ! お前は何者だ!? お前はシャナではない!」

 そう言われたシャナは虚を突かれたように目を見開いたが、すぐに余裕の表情を浮かべた。

シャナ「……君はいい友人だったが、君の父上がいけないのだよ。フフフフ……ハハハハハハハハハ」
628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/26(土) 19:15:28.73 ID:B80XsZte0

ガルマ「シャナ! ち、違う、貴様は……っ!?」

 ブリッジのすぐ下に、オーラキャノンが直撃した。
 衝撃で映像が途切れた。だが、まだ音声は繋がっているようで、高笑いが聞こえている。

イセリナ「ガルマ様!」

ガルマ「イセリナ、君は逃げてくれ」

イセリナ「ガルマ様は!?」

ガルマ「私とて、ザビ家の男だ。無駄死にはしない」

イセリナ「イヤ! 私もガルマ様と共に!」

シャナ「いよいよ、君たちはめでたいな。ハハハハハハハハ」

ガルマ「黙れ! うわっ!」

 大きな爆発がブリッジを巻き込んだ。辺りが炎に包まれる。もはや撃墜は免れぬだろう。
 ガルマは傍らのイセリナを強く抱きしめた。
 オーラキャノンが目の前に迫ってきているのをみて、彼は叫んだ。

ガルマ「ジオン公国に、栄光あれーっ!」

 その言葉を最後に、ジオン飛行部隊は全滅した。

シャナ「フフン、お坊ちゃんらしいよ」

 ただ、遺言としては最もふさわしいものだと思った。本国に伝えてやるぐらいはしてやろう。
 シャナはドレイク・ルフトに回線を開いた。

ドレイク「何用か?」

シャナ「我らが司令官ガルマ・ザビ大佐が撃墜されました。兵をお引きください」

ドレイク「……よかろう」

 ドレイク・ルフトは何か言いたげだったが、問うても仕方のないことだと思ったらしく、口を閉じた。
629 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/26(土) 19:18:10.59 ID:B80XsZte0

 撤退命令が出たにも関わらず、トッドはレプラカーンを後退させなかった。
 それが、余計に珠姫の癪に障った。

珠姫「まだ戦うというのなら!」

トッド「どうするってんだよ! 甘ちゃんのジャップが!!」

珠姫「そこから引き摺り下ろしてみせる!!」

 ズオオオォォォォォォッ――……珠姫の強力に膨れ上がったオーラ力がダンバインの剣に収束していく。

トッド「な、なんだッ!? ダンバインの剣が巨大に!?」

 幻覚ではなかった。ダンバインの剣は確かにその長さを増し、全長の三倍ほどになっていた。

チャム「タマキぃ!? タマキが恐いよぉ!」

紀梨乃「どうしちゃったの、タマちゃん!?」

珠姫<気合>「はあぁぁぁぁっ!!」

トッド「ちきしょうっ! そんな虚仮おどしにやられるかよぉ!」

 防御の型に剣を構えるレプラカーン。
 ダンバインは長大になったオーラソードを両手に握り、鳩尾に柄頭を置いた。
 そして、切っ先は真っ直ぐ、正面に向けられる。

トッド「なんだ……っ!」

 こめかみから流れる汗が目尻に入り、まばたきをした一瞬、ダンバインの姿は消失していた。

トッド「どこに――ッ!?」

珠姫「突きィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!」
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/26(土) 19:20:08.59 ID:B80XsZte0

 晴天を切り裂かんばかりの雄叫びと共に現れたダンバインのオーラソードがレプラカーンの首に突き刺さった!

 ザシュゥッ! 既に半ばまで貫いているオーラソードの音が遅れてトッドの耳に聞こえてきた。

トッド「ば、バカなっ……!?」

珠姫「ぜぇ、ぜぇ……」

 オーラソードが、砂のようにきらめきを散らして小さくなっていく。
 同時に、レプラカーンは墜落を始め、珠姫の瞳が濁りを湛えていった。

チャム「た、タマキ! ダンバインのコントロールがぁ!? 落ちちゃうぅ〜!」

紀梨乃「タマちゃん!」

 ふらふらとレプラカーンに続こうとしたダンバインを、紀梨乃のボチューンが支える。

紀梨乃「タマちゃん、大丈夫!?」

珠姫「は、はい……ありがとう、ございます……」

 だが、チャムが異変に気づいた。

チャム「ねぇ、あそこを見て……」

 珠姫がチャムの指さしたほうを見ると、散らばっていたきらめきが滝のような流れを作っていた。

チャム「オーラの光りが集まってるよ……?」

 オーラの光りは、珠姫が放ったものだけではなく、戦場に広がっていた全てのオーラ力を束ねて大地に降り注いでいる。

紀梨乃「な、何が起きてんのさ?」
631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/26(土) 19:21:12.91 ID:B80XsZte0

 上昇したゴラオンから見ていたエレは、慄いていた。

エレ「悪意のオーラが……あそこに集まっていきます」

 そして、一番早く気づいたのは、高町なのはだった。

なのは「魔力反応……もしかして!」

レイジングハート「Yes.That,s a juelseed g]」

 回答は、発現と同時だった。

 バキバキバキバキバキッ!!

すずか「きゃあぁっ!」

アリサ「な、何よ、アレは!?」

 ジャックとマメの木みたいだった。
 ツインタワービルと同じくらいの巨大な樹が、戦場の荒野に突如出現したのだ。

なのは「ジュエルシード……地球にも!?」

 オーラ力で覚醒したジュエルシードの膨大な魔力で暴走した枝葉が、近くのオーラマシンを巻き込んでいく。

珠姫「うあぁっ!」

紀梨乃「にゃあぁぁっ!」

なのは「み、みんなが……ここからじゃ間に合わない……!」

 どうにかしなければ……しかし、ジュエルシードが見えない。

なのは「私にできること……」

 ジュエルシードの暴走を止めるに、魔法による直撃鹵獲で封印するしかない。

 だが、そのジュエルシードに近づけないのでは……

なのは「どうすれば……どうすればいいの……?」

 凶悪な大樹は枝と根で、あたり一面を埋め尽くしていく。
 すずかやアリサ、ゴラオンにまで近づいていく。

なのは「私に……教えて! レイジングハート!」

レイジングハート「Alllight my muster」

なのは「!」
632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/26(土) 19:21:47.26 ID:B80XsZte0

 なのはの呼びかけに、杖が応えた。

レイジングハート「shooting mode」

なのは「レイジングハート……?」

 赤光を放つ杖の形状が変化していく。
 円形の先端が、槍の穂先に、 
 薄桃色の魔力翼が広がる。
 左手の前に、トリガーが出現し、なのはは小さな手で強く握りしめた。

レイジングハート「Divine buster.Stand by」

なのは「レイジングハート……いいの?」

レイジングハート「I believe in my muster」

なのは「……うんっ!」

レイジングハート「Let's shoot it, Divine buster」

なのは「いくよ、レイジングハート!」

レイジングハート「Alllight my muster」

 大きな魔法陣がなのはの足元に描かれる。
 魔力光のリングが形成され、レイジングハートの先端に薄桃色の粒子が収束していく。

なのは「ディバイン――」

レイジングハート「Divine buster」

なのは「バスタァーッ!!」

 細いの先行放出が大樹の幹を捉えた。

 次の瞬間、先行した一条をレールにした大威力の魔力砲がなのはの小さな体を媒体にした帯状魔法陣から発射される!

258 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/28(日) 20:37:20.80 ID:FzntPiw0

エイブ「エレ様!?」

エレ「安心なさい、エイブ艦長。あの方の、善き力が……悪しきオーラ力を和らげてくれます」

 ゴラオンのハイパーオーラキャノンにも匹敵する質量の砲撃が、巨樹を包み込んでいく。

レイジングハート「seeling mode」

なのは「リリカル・マジカル――ジュエルシード・シリアル]!」

レイジングハート「seeling」

なのは「封印!」

 なのはの一声で一瞬、巨樹が大きく膨らみ、爆散した!
633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/26(土) 19:22:14.21 ID:B80XsZte0

 ジュエルシードの力を失った樹は、跡形もなく消え去っていく。

なのは「ふぅ……」

レイジングハート「Mission complete.Thank you my muster」

なのは「……いろんな人に、迷惑かけちゃったね……」

レイジングハート「Sorry. This fault is mine」

なのは「レイジングハートのせいじゃないよ……私も……私、ジュエルシードのこと……忘れちゃってたんだ」

 バリアジャケットを解いて、なのははガンダムとコア・ファイターを見上げた。

なのは「すずかちゃんとアリサちゃんに、魔法のひみつを打ち明けることができて……それで誰かの役に立てるってわかって、嬉しくって、忘れちゃってたんだよ……」

 コクピットから降りてくる小さな影。とっても大切で、守りたいもの。

なのは「でも……私にこの力をくれたレイジングハートのことを忘れちゃってたんだ……ごめんね、一番大事にしなくちゃいけないことなのに……」

レイジングハート「It,s so」

なのは「……」

レイジングハート「But.There is something that it is necessary to evaluate it from it」

なのは「レイジングハート……?」

レイジングハート「――Friendship」

なのは「……ありがとう、レイジングハート」


 第十話 衝突! それは、忘れることの出来ない想いなの
634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/26(土) 19:24:41.88 ID:B80XsZte0

 なのはの呼びかけに、杖が応えた。

レイジングハート「shooting mode」

なのは「レイジングハート……?」

 赤光を放つ杖の形状が変化していく。
 円形の先端が、槍の穂先に、 
 薄桃色の魔力翼が広がる。
 左手の前に、トリガーが出現し、なのはは小さな手で強く握りしめた。

レイジングハート「Divine buster.Stand by」

なのは「レイジングハート……いいの?」

レイジングハート「I believe in my muster」

なのは「……うんっ!」

レイジングハート「Let's shoot it, Divine buster」

なのは「いくよ、レイジングハート!」

レイジングハート「Alllight my muster」

 大きな魔法陣がなのはの足元に描かれる。
 魔力光のリングが形成され、レイジングハートの先端に薄桃色の粒子が収束していく。

なのは「ディバイン――」

レイジングハート「Divine buster」

なのは「バスタァーッ!!」

 細いの先行放出が大樹の幹を捉えた。

 次の瞬間、先行した一条をレールにした大威力の魔力砲がなのはの小さな体を媒体にした帯状魔法陣から発射される!

エイブ「エレ様!?」

エレ「安心なさい、エイブ艦長。あの方の、善き力が……悪しきオーラ力を和らげてくれます」

 ゴラオンのハイパーオーラキャノンにも匹敵する質量の砲撃が、巨樹を包み込んでいく。

レイジングハート「seeling mode」

なのは「リリカル・マジカル――ジュエルシード・シリアル]!」

レイジングハート「seeling」

なのは「封印!」

 なのはの一声で一瞬、巨樹が大きく膨らみ、爆散した!
 
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/26(土) 19:25:27.50 ID:B80XsZte0

 ジュエルシードの力を失った樹は、跡形もなく消え去っていく。

なのは「ふぅ……」

レイジングハート「Mission complete.Thank you my muster」

なのは「……いろんな人に、迷惑かけちゃったね……」

レイジングハート「Sorry. This fault is mine」

なのは「レイジングハートのせいじゃないよ……私も……私、ジュエルシードのこと……忘れちゃってたんだ」

 バリアジャケットを解いて、なのははガンダムとコア・ファイターを見上げた。

なのは「すずかちゃんとアリサちゃんに、魔法のひみつを打ち明けることができて……それで誰かの役に立てるってわかって、嬉しくって、忘れちゃってたんだよ……」

 コクピットから降りてくる小さな影。とっても大切で、守りたいもの。

なのは「でも……私にこの力をくれたレイジングハートのことを忘れちゃってたんだ……ごめんね、一番大事にしなくちゃいけないことなのに……」

レイジングハート「It,s so」

なのは「……」

レイジングハート「But.There is something that it is necessary to evaluate it from it」

なのは「レイジングハート……?」

レイジングハート「――Friendship」

なのは「……ありがとう、レイジングハート」


 第十話 衝突! それは、忘れることの出来ない想いなの 第十一話
636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/26(土) 19:26:18.38 ID:B80XsZte0

 ジュエルシードの力を失った樹は、跡形もなく消え去っていく。

なのは「ふぅ……」

レイジングハート「Mission complete.Thank you my muster」

なのは「……いろんな人に、迷惑かけちゃったね……」

レイジングハート「Sorry. This fault is mine」

なのは「レイジングハートのせいじゃないよ……私も……私、ジュエルシードのこと……忘れちゃってたんだ」

 バリアジャケットを解いて、なのははガンダムとコア・ファイターを見上げた。

なのは「すずかちゃんとアリサちゃんに、魔法のひみつを打ち明けることができて……それで誰かの役に立てるってわかって、嬉しくって、忘れちゃってたんだよ……」

 コクピットから降りてくる小さな影。とっても大切で、守りたいもの。

なのは「でも……私にこの力をくれたレイジングハートのことを忘れちゃってたんだ……ごめんね、一番大事にしなくちゃいけないことなのに……」

レイジングハート「It,s so」

なのは「……」

レイジングハート「But.There is something that it is necessary to evaluate it from it」

なのは「レイジングハート……?」

レイジングハート「――Friendship」

なのは「……ありがとう、レイジングハート」


 第十話 衝突! それは、忘れることの出来ない想いなの
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 20:38:21.41 ID:E/oe9OoAO
乙、二次Zの主人公公開されたね
天秤座のスフィアかな
638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/27(日) 17:34:58.79 ID:xzchfqAl0

 第十一話

 中国 重慶基地郊外の上空 

 連邦軍の戦艦、ホワイトベースに巨大な鳥が降りた。
 全長にして50メートルにもなる巨鳥の正体は、ライディーンが変形したゴッドバードだ。

ゆりえ「一橋ゆりえ、到着しましたー」

 不慣れな敬礼は戦艦にあって似合わないものだが、格納庫まで出迎えた司令官は誠実に姿勢を正した。

シノン「ご協力感謝します。これより、ホワイトベース艦長代理、香月シノン少尉がゆりえさんの身を預からせていただきます」

ゆりえ「よろしくお願いします」

立夏「ヤッター、ゆりえちゃん来るの待ってたんダヨー!」

ゆりえ「わっ、わわわっ」

立夏「ホラホラ、リッカが案内してあげるヨー」

霙「召集がかかったら、早く戻ってくるんだぞ」

立夏「りょうかーいッチャオ」

 ツインテールと一緒にぴょんぴょん飛び跳ねる立夏が、あっという間にゆりえを連れて行ってしまった。
 それを遠目に見ながら、ヒカルがやれやれといった風に苦笑する。

ヒカル「久しぶりに年が近い相手だからな、立夏もはしゃいでる」

スズ「一橋さんのほうが一応、一個上なんだけどね」

霙「ゲッターチームの三人にも来てほしかったんだが、早乙女研究所で機体の調整があるらしいからな」

シノン「ともかく、これで海晴中尉とシノさんが抜けた穴はカバーできると思います」

アリア「だけど、シノちゃんは大丈夫かしら……長門さんを連れているとはいえ、敵の基地の中なんて……」

 現在、天使海晴と天草シノは捕虜の長門有希を連れて、ギガノス軍に捕らえられているマチルダ・アジャン中尉との交換に向かっていた。

シノン「基地の中に入るわけではないから、何かあったとしたら私たちにもわかるわ」

スズ「何かあってからじゃ遅いと思いますけど」

ヒカル「しかし、彼女たちは罠を張るような人間には思えないが。長門さんは私たちに助けを求めてきたのだから」

スズ「はぁ……ヒカルはもう少し周りを疑うことを知ったほうがいいわね」

ヒカル「どういうことだ、スズ?」

霙「ギガノス帝国にはドルチェノフという好戦的な指揮官がいる。そして蒼き鷹の涼宮ハルヒは今、そいつの直属になっている」

シノン「下士官パイロット一人と補給船指揮の中尉では捕虜交換のうまみがギガノス側にはないわ。なのにそれをあちら側から提案してきたということは、この交換は彼女の独断である可能性が高い」

霙「当然、ドルチェノフがそんなことを容認するつもりはない。女性士官<ウェーブ>の捕虜は政治交渉のカードにも利用できるからな」

スズ「つまり、何かしらの妨害行為が予想されるということよ」

ヒカル「そ、そうなのか……」

霙「まあ、ヒカルは自分を鍛えること以外にすることがない脳筋だからな。そこまで考えが至らんだろうさ」

ヒカル「み、霙姉!? そんなひどい!」

霙「ははは、せめて材料工学の基礎くらいは身につけてほしいものだな」

ヒカル「う、うぅ……はい」
639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/27(日) 17:35:25.93 ID:xzchfqAl0

 重慶ギガノス軍基地 近郊

 見晴らしのいい平原で海晴とハルヒが向かい合っていた。
 大股五歩ほどの距離。話をするには充分で、掴みかかるには遠い位置で、強く瞳孔を光らせるハルヒが先に口を開いた。

ハルヒ「連邦軍の天使中尉と天草三等空士ね」

海晴「えぇ、ギガノス軍涼宮大尉と……」

ハルヒ「こいつは部下のキョン。気にしなくていいわ」

キョン「おいてめぇ」

ハルヒ「こっちはマチルダ・アジャン中尉を連れてきたわ。有希はどこ?」

 やや後方でギガノス兵に拘束されたマチルダがいる。それを確認して海晴はドラグナー1型で控えているシノに連絡をした。
 シノはD−1のハッチを開けた。そこには電磁ロックをかけた長門有希がいた。

キョン「長門!」

 コクピットから降りてくる長門を見て、ハルヒは安堵の息を吐いた。

海晴「それじゃあ、互いに一歩ずつ」

ハルヒ「えぇ」

 ギガノス兵が連れてきたマチルダ中尉をキョンが受けとる。
 シノとキョンは二人とも短銃を持って捕虜の横に侍り、海晴とハルヒが合図を出すごとに一歩ずつ前に進んだ。

 長門とシノが海晴の横を、キョンとマチルダがハルヒの横を通り過ぎる。

 四人の影が直線に並んだとき、キョンとシノが銃を下ろし、拘束を解いた。

 そして、マチルダと長門はお互いの陣営に到達する。

ハルヒ「有希っ!」

 長門の小柄な体をハルヒがしっかりと抱きとめた。

キョン「長門、大丈夫だったか?」

長門「大丈夫。何もされてない」

 相変わらずの無表情だったが、むしろそれが二人にとって安心できた。

ハルヒ「よかった……本当に……」

 短く切られた髪をくしゃくしゃにして顔を埋めるハルヒに、シノはどうしても蒼き鷹ファルゲン・マッフの姿を重ねることはできなかった。

シノ「少し……訊いてもいいか……?」

ハルヒ「何よ」

 素早く顔を上げたハルヒの目は既に敵意を灯していた。
 それを見てシノは、この機会を逃したら、こうして顔を合わせることができなくなるだろうと確信した。

シノ「その、君は……何のために戦っているんだ……?」

ハルヒ「…………」

シノ「……応えてはくれないのか?」

ハルヒ「アンタが、あのD兵器のパイロット?」

シノ「そうだが……」

ハルヒ「きっと、アンタと同じ理由よ」

シノ「同じ……理由?」

ハルヒ「私は、私が信じるもののために戦っているのよ」

シノ「信じるもののため……」

キョン「ハ、ハルヒ! ヤバイぞ!」

 ハルヒたちから離れて後方に控えている古泉と通信をしていたキョンが二人の会話を中断させた。
640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/27(日) 17:38:26.58 ID:xzchfqAl0

ハルヒ「何よ、キョン」

キョン「しょ、所属不明のメタルアーマーがこっちに急接近している!」

ハルヒ「何ですって!?」

 驚愕はシノよりもハルヒのほうが大きかった。
 それを見たシノは、もしもこれが演技だとしたら、女優賞ものだと思った。

海晴「シノちゃん! こっちに戻ってきて!」

 海晴のほうにもホワイトベースから不明機の情報が入っていたらしい。
 シノが踵を返したとき、長門が目を大きく開いて空を見上げた。

長門「来る……!」

 彼女が向いたほうをその場の全員が見上げると、高速で接近してくる物体があった。

ハルヒ「全員! 逃げ……伏せなさいっ!」

 ババババババババババババッ! 飛行物体が両手に持っていた巨大なハンドレールガンが火を噴いた!
 ハルヒの声で姿勢を下げたシノの十数センチ先にいくつもの穴が空いた。
 もしも、彼女の声に従わずに動いていたら、今ごろは血だらけで伏せることになっていただろう。

 未確認機が頭上を通り過ぎた。一瞬翳った大空に再び太陽が差したとき、黒い斑点が二つ見えた。

キョン「手榴弾っ!?」

 キョンの声に全員が戦慄する。手榴弾といってもただの手榴弾ではない。
 メタルアーマーが使う手榴弾だ。その真下にいる人間が避難して助かる威力ではない。

キョン「くっ!」

 持ちっぱなしになっていた短銃を空に構えるが、太陽の光りが強くて目が眩む。
 それでもとにかく撃とうと引き金に指の力を込めようとしたとき、横から何者かが短銃に手を伸ばし、ひったくった。

キョン「な、長門!?」

 とても小柄な少女から出たとは思えない強い力にキョンが面食らっている間に、片膝を立てて短銃の照準に目線を重ねた長門有希は小さな唇から僅かに聞こえる程度の声で呟いた。

長門「パーソナルセキュリティーエリアを拡大――敵対物質捕捉――誤差修正――」

ハルヒ「有希! 何をしてるの!? 早く逃げなさい!」

長門「――風向――弾道予測完了――命中率100%――発射」

 ドゥッ! パァンッ! 教本に載るような隙のない姿勢から、発砲音が二つ響いた。そして――

 ドゴォォォォォォォォォォォォンッ!! 轟音と爆風が辺り一面を覆いつくした。
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/27(日) 17:39:04.70 ID:xzchfqAl0

キョン「な、長門……」

ハルヒ「有希……」

 シノや海晴だけでなく、味方である二人でさえ、呆然としてしまった。
 長門の情報収集と分析能力、さらに正確無比な射撃の技術は知っていたが、数百メートル離れた上空から落下してくる爆発物を二つ、瞬時に捕捉して短銃で撃ち抜くなど、まさに神業としか言いようがないだろう。

長門「任務、完了――ッ!?」

 短銃を下ろした直後、その首にまたハルヒの腕が抱きついてきた。

ハルヒ「すごいじゃない、有希! まるでシモ・ヘイヘよ! さすがSOS団の秘蔵っ子だわ!」

キョン「そうだ、すごいじゃないか、長門。あんな人間離れした技をやっちまうなんて」

 耳元できゃんきゃん声を弾ませるハルヒの肩越しに安堵の息を吐くキョンを見る。
 涼宮ハルヒはもとより、彼もこの世界では普通の人間である。

 長門が情報統合思念体が作り出した対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェースであることなど知らない。

長門「私は――」

 古泉一樹も、朝比奈みくるも超能力者や未来人ではない普通の人間。
 おそらく、ここに長門有希が来る前にいた、この世界本来の長門有希も普通の人間だったのだろう。
 それを乗っ取ってしまったことに、彼女は罪悪感を募らせていた。
 こうして涼宮ハルヒに触れられているべきなのは自分ではないことに――

 だから、彼女はこう口にした。

長門「私は人〈マン〉ではなく、機械〈マシーン〉だから」

 それを聞いたキョンとハルヒは、少しぽかんとして顔を見合わせ、やれやれといった風に肩をすくめた。

キョン「久しぶりに聞いたな、それ」

ハルヒ「えぇ、有希の決まり文句」

 この世界に来てから、長門は自分のことを常にそう言うようにしていた。
 在るべきではない存在の自分が、どう存在していくべきか――

 選択したことは、優先順位を変えないこと。
 そのために、自分を機械のように律した。

 だけど、その言葉はキョン達をいたく怒らせた。自分のことを機械として見る『安さ』が、彼らは気に喰わなかった。

ハルヒ『だったら、この言葉を付け加えなさい! あなたが本当に、機械のように生きるっていうのなら、絶対にこの言葉と一緒よ!』

 その場で思いついたとは信じられない言葉を、ハルヒは考えた。
 長門はその指示に従っている。何よりも高い優先順位をつけて――

長門「今はまだ、機械〈マシーン〉だから」

 閉ざされたと思っていた未来を、開けることができる言葉だから。
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/27(日) 17:40:17.20 ID:xzchfqAl0

 ホワイトベース

 未確認機の報告を受けたホワイトベースはすぐにドラグナーとゲシュペンストを出撃させた。

ヒカル「天使ヒカル、ゲシュペンストタイプS、発進する!」

立夏「天使立夏! ゲシュペンストタイプR、発進、ゴーッ!」

スズ「萩村スズ、ドラグナー2、出ます!」

アリア「七条アリア、ドラグナー3、いきます!」

 シュパァッ! 四機の機動兵器が、出て行く、

ゆりえ「あの、私は……」

霙「私と君は待機だ。敵は一機だから、どこかに隠れているのかもしれない」

ゆりえ「わ、わかりました」

霙「ふむ、待機の間はヒマだからな、ライディーンについて聞きたいことがある。いいかな?」

ゆりえ「は、はひ!」


 地上 連邦軍幕営

 マチルダ中尉を軍用車輌に乗せた後、海晴は同乗し、ユニットで来たシノはドラグナー1型に搭乗した。

海晴「それじゃあ、無理はしちゃダメよ、シノちゃん」

シノ「はい、わかっています」

 D−1を浮上させる。不明機は方向を修正して、またこちらに向かってきている。

シノ「何者かは知らないが……」

 同じ高さまで来て、シノは始めて見る機体を再確認した。
 それまで戦ってきたメタルアーマーを一回り分厚くしたような外観に蛇のようなカラーリング。
 何よりも威圧的だったのは、巨大なハンドレールガンと肩がけされた給弾ベルト、背中に背負った大型の青竜刀だ。

 新型のメタルアーマーがハンドレールガンを構える。
 その照準が、ドラグナーに向けられていないことに、シノが気づく。

シノ「ま、まさか――!」

 急いでシノは下降してシールドを持った。
 その下には、まだ基地に戻る道を軍用車輌で走るハルヒたちがいた。

 バババババババババババッ! 弾雨がシノに降り注ぐ。もしも彼女が動かなければ、弾丸は車輌を貫いていただろう。

シノ「み、味方を撃つのか……?」

 邪魔をされたことに気づいた。新型機は、ハンドレールガンから背中の青竜刀に持ち替えた。
 ぎらりと陽光を反射する青竜刀は、禍々しい存在感を持っていた。

シノ「く、来るのかっ!?」
643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/27(日) 17:40:49.76 ID:xzchfqAl0

 シノは右手にレーザーソードを持った。
 シールドで受け止めては切り落とされる可能性がある。実体剣が相手なら、レーザーソードで切ることが出来るはずだ。

シノ「はああぁっ!」

 新型機は青竜刀を大きく振りかぶった。まっすぐに切り下ろすつもりだろう。
 シノはレーザーソードを両手で構えてパワー負けしないように受け止めるつもりだ。

「うん、それ無理」

シノ「えっ――なッ!?」

 いかつい機体の外観からはとても似合わない晴れやかな声が聞こえたとき、レーザーソードと青竜刀がぶつかりあった。

 バキィンッ! 砕かれたのは、レーザーソードのほうだった。

 数週間のシミュレータで植え込まれた感覚がバーニアの逆噴射を命じていなければ、返す刃でD−1は両断されていただろう。

「逃げちゃダメだよ。涼宮さんたち、死んじゃうよ」

シノ「き、君はいったい!?」

 いったい、どんな材質で出来ているのか、レーザーソードを弾いた青竜刀を構えなおした新型機のパイロットは、いかにも気だるそうに名乗った。

朝倉涼子「ギガノス帝国機動F別働隊・朝倉涼子。ゲイザムのテスト中だったんだけど、命令が来ちゃったのね。面倒くさいからそのまま来たの」
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/27(日) 17:41:17.15 ID:xzchfqAl0

 ゲイザムとは、おそらくこの新型メタルアーマーのことだろう。
 テスト中の機体でたった一人で乗り込んでくるほどの能力は、彼女がエース級だということだ。

朝倉「あなたがD兵器のパイロットなのね。でも、今はそんなことに興味はないから、邪魔しないでくれたら見逃してあげてもいいわ」

 口調はあくまで穏やかで、まるで夕飯のメニューを決めるような軽さだ。

シノ「だが、君の命令はもしや……」

 つと汗が伝うシノに、まるでステップを踏むかのように朝倉涼子は応える。

朝倉「涼宮ハルヒの抹殺よ」

シノ「み、味方を殺すのか!?」

朝倉「仕方ないじゃない。彼女は邪魔なのよ」

シノ「ど、どういうことだ!?」

朝倉「ねぇ、『やらなくて後悔するより、やって後悔したほうがいい』って言うよね」

シノ「えっ……?」

朝倉「現状を維持するままではジリ貧になることはわかってるんだけど、どうすれば良い方向に向かうことが出来るのか解らないとき、あなたならどうする?」

シノ「な、何の話だ?」

朝倉「とりあえず、何でもいいから変えてみようとは思わない? だけど、上の人は急な変化は望んでないの。でも、現場はそうは言っていられない」

 ゲイザムがまた青竜刀を振りかぶった。
 シノは反射的に身構える。

朝倉「このままじゃ、どんどん良くない方向に転がっちゃう。だったら、もう現場の独断で強硬に変革を進めちゃってもいいわよね」

 ゲイザムが瞬時にD−1の懐に青竜刀がうねりをあげて襲い掛かる!

シノ「うわぁっ!?」

朝倉「そんなもので私の打ち込みが止められると思う!?」

 ガッ! ギィッ! バキッ!

シノ「うっ、ぐっ、うわっ!?」

 強化コーティングの刃が精密な角度でシノに攻めかかる。一撃でも通せば重大な損傷は免れないだろう。
 重い連続攻撃でドラグナーのモーターに負担がかかり、動きが止まる。

朝倉「そこっ!」

 バキィッ! 堅牢な装甲から繰り出されるショルダータックルに吹っ飛ばされるドラグナー。

シノ「ぐあっ!」

 衝撃で緊急姿勢制御が発動する。その反動で前後に大きく揺さぶられたシノの目の前がぐらつく。

シノ「ぐっ、うぅ……」

朝倉「じゃあ、死んでね。さようなら」

 ぼやける視界で、メインモニターにゲイザムの黒い姿が映る。

シノ「ぐ……うあぁ……」

 大きく青竜刀を持ち上げる威容に、シノは震えた。
 あれが振り下ろされれば死ぬ。心臓が鷲掴みされたように痛む。
 両手の震えが止まらない。震えは極度に緊張する体を弛緩させるために発生するもの。
 その緊張は、紛うことなく――恐怖。

シノ「――ひっ!?」

 青竜刀が落ちてくる! 声にならない悲鳴が体内で共鳴し、局所的に弛緩した部位を刺激する。

 その時――

立夏「ちょえぇぇぇいっ!」
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/27(日) 17:41:45.68 ID:xzchfqAl0

 回線が拾ったのは、夏の強い日差しのような明るい声だが、ドラグナーの前に割り込んできたのは黒い影だった。

朝倉「なに!?」

 ガキィッ! ゲシュペンストが横からゲイザムにぶつかった!

立夏「ニュートロンビーム!」

 横殴りを喰らってバランスを崩したゲイザムにゲシュペンストが光り、中性子ビームがその脇を掠め、給弾ベルトが切れて荒野に落ちていった。

朝倉「ふーん」

 さしたる感想も持たずに、朝倉は青竜刀を肩に乗せた。
 すぐに攻撃を再開しなかったのは、さらに三機が迫っていたからだ。

立夏「サァ! ここまでだよ! 五対一じゃかないっこないんだから!」

朝倉「そうかしら、おチビさん」

立夏「プンプーンッ! 立夏はチビッコじゃないモン!」

ヒカル「立夏! ふざけている場合じゃないぞ!」

 ヒカルのゲシュペンストが立夏の隣につく。後方にドラグナー2型と3型が支援の配置についている。

ヒカル「さぁ、ここから退いてはくれないか。腕に自信があるといっても、この数を一機で相手にはできないだろう」

朝倉「そうね、私も五機はちょっと大変ね」

 あっさりとした言い方にヒカルは少し拍子抜けしたが、無意味な戦闘が回避できるなら、それは望ましいことだ。
 だが、次に朝倉が口にしたのは、死神の言葉だった。

朝倉「でも、役立たずが一人いる状態じゃ、それもどうかしらね」

ヒカル「なに?」

朝倉「そこのD−1のパイロットに聞いてみたらどう?」

 機動兵器に乗ってなどいなければ、いち学校の優等生にしか思えないような声に先ほどから沈黙しているドラグナー1型に接触して回線を開いた。

シノ「…………」

ヒカル「天草先輩? どうかしましたか?」

シノ「ぅ……ぁ……」

ヒカル「天草先輩!? 天草先輩!」

 いくら呼びかけてもシノは応えなかった。微かに揺らしてみても、反応はなかった。

朝倉「いくら呼んでも無駄よ。その子は今、砕けちゃってるから」

ヒカル「――ッ!?」

立夏「ヒカルオネーチャンッ!?」

 いつの間に移動したのか、ゲイザムがヒカルのゲシュペンストの肩に手をかけて寄り添っていた。
 怖気に急発進させたゲシュペンストに弾かれたドラグナー1型がバーニアの制御を失い、落下する。

立夏「あぁっ! シノオネーチャンが!」

 ガシッ! ゲシュペンストの手がドラグナーの手を取る。

朝倉「ダメよ。乱暴にしちゃあ」

立夏「ヒッ! リッカにもキタ!?」

 冷たい手で背中をなぞられるような気色悪さに立夏もまたシノの手を落とすところだったが――

ヒカル「立夏に、手を出すなぁーっ!」

 ガガッ! 姿勢を取り直したヒカルがジェットマグナムで突撃する! しかし、すんでのところでゲイザムはひらりと避けた。

朝倉「あら、素敵ね。熱い気持ち、笑えるわ」

 ゲイザムの青竜刀が振り下ろされる。それをかろうじて避けながら、ヒカルもプラズマカッターで突く。
646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/27(日) 17:42:12.87 ID:xzchfqAl0

 両機が競り合って上昇していく。その下で立夏はサブモニターに映ったコクピットで沈黙しているパイロットに呼びかけた。

立夏「シノオネーチャン! オネーチャンってば!」

シノ「ぅぅ……」

 揺らしてもさすってもシノは反応しない。

立夏「むむむ〜っ……!」

 小学生を卒業したばかりの立夏が痺れを切らすのは早かった。

立夏「シノオネェーーーーーーチャンッてばぁーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」

シノ「うわっ!?」

 バイザーの中のスピーカーが音量を調節するが、立夏の大音声はそのラインを振り切って音割れしてしまった。
 その衝撃でシノがびっくりして目覚めた。

立夏「シノおねーちゃん、起きた!?」

シノ「り、立夏ちゃんか……鼓膜がやぶけるかと思った……」

立夏「シノおねーちゃん、ダイジョブ?」

シノ「あ、あぁ……っ!?」

 自分が何をしているのか思い出したシノの顔が真っ赤に染まった。
 両足をもじもじさせ始めたシノに立夏がかくんと首をかしげた。

立夏「おねーちゃん、どうしたの?」

シノ「その……も、漏らしてしまったみたいだ……」

 上半身の妙な解放感とぐっしょりと濡れた下半身の生温かさにシノはもう操縦するどころではなくなっていた。
 機動兵器のパイロットはノーマルスーツを着用する。シートの内部には排泄用のタンクがあり、パイロットはそこに用を足せばいいのだが、ノーマルスーツの排泄プラグをシートのプラグと繋げて始めてタンクに通るホールが開くのだ。
 今回のように、突発的なことになってしまうと、全てノーマルスーツ内に残ってしまう。プラグを繋げばあらかた落とすことは出来るが、スーツ内に残る温もりは最悪といってもいいものだ。

シノ「こ、こんなところでス××ロプレイだなんて……」

 シノが呟いた言葉の意味は小学生を卒業したばかりの立夏にはわからなかったが、シノが漏らしてしまったのは自分のせいじゃないかと思って、慌てた。

立夏「もも、もしかして、立夏のせい?」

シノ「い、いや、立夏ちゃんのせいじゃないよ……それより、私はいいからヒカル君を助けに行ってやってくれ」

立夏「わ、わかったヨ、おねーちゃん!」

 ゲシュペンストの接触が解け、ドラグナーと外界を繋ぐものがなくなったとき、シノの肩が大きく跳ねた。

シノ「ぅぐっ……! あぁぁ……!!」

 全身を駆け巡る寒気は下半身を包む残滓の影響だけではない。
 ガチガチと歯が鳴る。脳裏に焼きついた青竜刀の映像が何度も襲い掛かってくる。
 出すものを出したはずの尿道がまたひくついた。震えは治まらず、計器の残像がはっきり目に映る。

シノ「はは、はっははは……」

 無理やりに笑みを浮かべてシノは恐怖を遠ざけようとした。
 誰かが接触して回線を開けば、サブモニタには顔面神経痛のような醜い顔つきの少女が映ったことだろう。
647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/27(日) 17:42:47.58 ID:xzchfqAl0

 重慶基地

 基地に到着したハルヒたちに古泉がすぐに駆けつけてくる。

古泉「涼宮さん! ご無事でしたか!?」

ハルヒ「えぇ、有希のおかげで」

キョン「古泉、あの機体は何なんだ!? あいつが全部をぶち壊しにしやがったんだぞ!」

古泉「あれについて、ドルチェノフ中将の指令があります」

ハルヒ「何よ?」

古泉「新型機ゲイザムを援護し、D兵器を奪取せよ。それが果たされぬ場合はハルヒ・スズミヤ・プラートの少尉格を剥奪し、本国へ強制送還するものである、と」

キョン「だがな! あいつは俺たち諸共殺そうとしていたぞ!」

ハルヒ「つまり、どっちにしてもあたしを殺すつもりね、ドルチェノフは」

古泉「本国に戻ったとしても、よくて勾留の後に軍事裁判でしょうね」

 ハルヒは爪を噛んだ。元を正せば父であるラング・プラート博士の裏切りで殺されてもおかしくない立場だった。
 それをドルチェノフの下につき、尖兵として屈辱に耐えてきたのは、監禁されたみくるを救けることと、父の友であったメサイア・ギルトールの理想を叶えるためである。

 だが、ドルチェノフはついにハルヒを抹殺することを決意したらしい。これは二つの大きな意味を持つ。
 一つはドルチェノフが議会を制する用意ができたということ。蒼き鷹の名でカリスマのあるハルヒとギルトールを始末すれば、ギガノスはドルチェノフの支配に陥るということだ。
 そして、もう一つはドルチェノフの思想がギルトールの持つそれとは大きくかけ離れたところにあるということだ。

ハルヒ「……私たちの理想にあまりに遠い隔たりがある。高い美空の星のように、高いところで光っている」

キョン「ハルヒ……」

 ハルヒは爪を噛ませていた手を空にかざし、今激しく打ち合っている機動兵器に眩しそうに見る。
 斜めに影を残す背中にかける言葉が見つからないキョンの袖が、不意に引っぱられた。

キョン「……長門?」

 ともすれば見失ってしまいそうなくらい存在感の希薄な少女のアプローチに視線を下ろすと、薄い唇がはっきりと言った。

長門「方法はある」

キョン「な、長門、そりゃ本当か!?」

 藁にもすがる思いの声にハルヒと古泉も振り返る。
 三つの視線を集めてから、長門は右腕を上げた。

ハルヒ「えっ……?」

キョン「お、おい、長門。それはどういうことだ?」

 長門の右手が握っている物は、先ほど彼女を救った短銃だ。しかし、今度はその銃口がぴたりとハルヒの胸に向けられている。

ハルヒ「ゆ、有希……?」

 突然のことにハルヒ後ずさりするのを燻した銀のような瞳で追った長門の指に力が込められるのをキョンは見た。

キョン「なが――」

 乾いた音が基地内に響いた。
648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/27(日) 17:45:22.41 ID:xzchfqAl0

 重慶基地 上空

朝倉「あら?」

 ゲイザムの殺人的に狭いコクピット内で朝倉涼子は携帯端末の点灯に首をかしげた。

朝倉「涼宮さん、死んじゃった?」

 その点灯は緑のはずが、今は赤に変わっている。これは、涼宮ハルヒの心臓とリンクしている。
 ドルチェノフが反逆防止のために彼女の体に埋め込んだもので、これが赤ということはつまりハルヒの心臓が停止したということだ。

朝倉「さっきのかな? 意外とあっけなかったわね」

 達成感はなかったが、とりあえず目的は達成できた。D−1は戦線を離脱したようだが。

朝倉「それじゃあ、遊びの時間は終わりね」

 先ほどからまとわりついてくる二機のゲシュペンストとそれを支援しているD−2とD−3。
 そこそこのセンスはあるようだが、彼女からすれば経験値が低すぎる。
 生かしておく理由もないので、ここで完全に破壊する。パイロットごと。

朝倉「ちょっとは楽しかったよ。ばいばい」

 両手を押し込むようにして、ぐんと機体の高度を下げた。
 機体の頭上で立夏のゲシュペンストがプラズマカッターを空振りするのを確認することもなく、朝倉は前方に速度を増した。

スズ「!」

朝倉「まず、あなたが邪魔なのね」

 目障りなことをするD−3にゲイザムが迫る。
 向こう側のパイロットが息を詰まらせるのがはっきりとわかった。
 
朝倉「さよなら」

 ゲイザムの捕食圏内に捉えたD−3に青竜刀が鈍く光った。そして――

 ズドォォォォォォォォォッ!!

朝倉「!?」

 今にも巨大な刃がD−3の胴を切り落とそうとしたとき、大気が大きく爆動した。
 煽りを受けて機体のバランスが崩れ、D−3は辛うじて大蛇の顎から逃れることができた。

スズ「な、なにが起こったの……?」

 九死に一生を得たスズがアリアの傍まで駆け寄ると、EWACが襲撃を警戒していた。

スズ「敵!? どこから……母艦の後ろ!?」

立夏「えぇっ!?」

ヒカル「くっ……こんなときに……」

アリア「でも、ホワイトベースには霙さんやゆりえちゃんもいるわ。どうにか持ちこたえられるはずよ」

スズ「識別は、あのドローメという戦闘機が多数と、その母艦と思しき巨大飛行物体です」

 それ以上の会話の時間は与えられなかった。

朝倉「よそ見しちゃダメだよ」

 ブゥンッ! 体勢を立て直したゲイザムが青竜刀を四機の中に振り下ろした。

ヒカル「くっ……私たちはこいつに集中だ!」

スズ「それじゃあホワイトベースが!」

ヒカル「……信じるしかない。まだ海晴姉がいる」

 海晴はマチルダの護送の最中だ。連邦基地にヴァイスリッターが下ろしてあるので、直接乗り込むはずだ。

ヒカル「それまで、こいつは私たちが食い止めるんだ!」

 ゲイザムの横薙ぎを上昇して回避したヒカルのゲシュペンストが、プラズマカッターを両手に構えた。
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/27(日) 17:45:52.83 ID:xzchfqAl0

 一方で、ホワイトベースは騒然としていた。
 突如レーダーに侵入してきた無数のドローメに、香月シノンは矢継ぎ早に指示を出して乗組員達に行動させている。
 まだ少女の域を脱し切れていない彼女の指揮能力も、度重なる実戦の中で確実に培われていた。

シノン「ゆりえさん、出られますか!?」

ゆりえ「はい! ライディーン、いけます!」

シノン「ライディーン、発進!!」

 ゴッドバード形態のライディーンが飛び出し、空中でライディーンに変形する。

ゆりえ『ラァァァイディィィィィィン!』

シノン「ホワイトベースは敵との接触を避け、ヒカルさんたちの救援に向かいます。アルトアイゼンは直援に回ってください」

霙「了解した。アルトアイゼン、出る」

 空になった格納庫を見て、シノンはオペレーターのほうを見た。

シノン「それで、先ほどのアレはわかりましたか?」

連邦兵「はい、どうやら敵の戦艦のようです」

シノン「まあ、そうでしょうね……ドローメが出てきたということは、妖魔帝国のものでしょう」

 改めてモニターに映し出されたそれを、シノンはやはり疑わざるを得なかった。

 戦艦と判断したものは、巨大な人間の手にしか見えないのだから。

ゆりえ『ゴォォォォッド・ミサァァァイル!』

 地鳴りのするような声がライディーンの口から発せられ、羽のあるミサイルが近くのドローメを落とす。

ゆりえ『ゴォォォォォッド・ブゥゥゥゥゥメラァァン!』

 左手の楯が弓状に変形し、それを投げつける。雑草を刈り取るかのようにドローメが爆発して墜落していく。

 それを妖魔帝国岩石戦艦・大魔竜ガンテの中から見ている影が笑った。

シャーキン「フフフ、あれがライディーン……一万二千年前に我々妖魔帝国を地の底に沈めた忌まわしき巨神か」

 均整の取れた青白い体にぴったりと軍服を着込んだ妖魔帝国のプリンス・シャーキンは細い顎に手を当てて顔の上半分を多い隠す仮面の目をキラリと光らせた。

シャーキン「よかろう、バラオ大帝復活を前に、奴を血祭りに上げよう。化石獣バストドンを出せ!」

ゆりえ『な、何か出てくる!?』

 ガンテから出てきたのは真っ青な巨人、化石獣バストドンだ。

シャーキン「やれ、バストドン!」

バストドン「ぐおぉぉぉぉぉぉ!」

 ドドォンッ! 化石獣の体当たりでライディーンが倒される。

ゆりえ『きゃあぁぁっ!!』

バストドン「がおおぉぉぉぉぐ!」

ゆりえ『やられちゃうっ!? やりかえさなきゃ!』

 つかみ掛かってくるバストドンにゆりえは左腕を上げた。

ゆりえ『ゴォォォォォッド・ブレイカァァァァァ!』

 ズバァッ! 弓状に変形した楯で円を描くように切り付けると、バストドンの両腕が落とされる!

ゆりえ『や、やったぁ……!』

シャーキン「やるな、ライディーン。だが、バストドンはその程度ではない!」

バストドン「がおぉぉおぉっ!」

 ぞるっ。まっさらな切り口を見せるバストドンの両手首から剣が出現した!

ゆりえ『そんなぁっ! ずるいよぅ!』
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/27(日) 17:46:31.25 ID:xzchfqAl0

 ガキッ! ガァンッ!

立夏「うひゃぁっ!」

ヒカル「くあぁっ!」

朝倉「ほらほら、もうぼろぼろじゃない。そんなので私を止められると思ってるの?」

 ゲイザムの猛攻にヒカルのプラズマカッターは折れ、ジェットマグナムも失っていた。
 立夏もミサイルと弾丸を撃ちつくし、右足を半壊されている。

アリア「スズちゃん!」

スズ「いけます! やってください!」

アリア「ごんぶと! いっけぇぇぇ!」

 ドォンッ! ドォンッ! 2型の280ミリキャノンが3型の誘導支援を受けて放たれる。

朝倉「きゃっ、やっぱりあの子をやっておくべきだったわね」

 体重のあるゲイザムでもひらりと避ける。この敵味方入り混じる状況で砲撃すれば味方に当たる可能性もあったが、やはりD−3の電子戦能力が強力にサポートしているのだろう。

ヒカル「たあぁぁーっ!」

 キィンッ! 右肩の死角からプラズマカッターが舞い込むが、人間ならばありえない角度に曲がったゲイザムの手首がそれを防いだ。

朝倉「機械と人間は違うのよ。それを教えてあげる」

 接触回線で拾った嘲笑の後、ゲイザムの右肩の一部がパージされた。
 そこからハンドグレネードが飛び出し、ゲシュペンストの右腕に接触し、爆発する。

 ドドォンッ!

ヒカル「うわぁぁっ!」

 ゲシュペンストの右肘から先が消し飛んだ。残り一本のプラズマカッターが黒い煙のどこかに消えていった。

立夏「オネーチャン! このぉっ!」

 ギュァッ! ニュートロンビームでゲイザムをヒカルから遠ざけることに成功したが、代わりに立夏のメインモニターがアラームを発した。

立夏「ウッソォ!? 弾切れ!?」

 立夏のゲシュペンストは全ての攻撃兵装を使い切ってしまっていた。
 プラズマカッターもとっくに切り払われている。文字通りのデクノボウだ。

ヒカル「立夏! くっ……どうすれば……」

 ヒカルのゲシュペンストもほとんどの武器を失っている。後はもう取り付くぐらいしか手段がない。

ヒカル「――ッ! 待てよ……」

 迫り来るゲイザムを前にヒカルはあることを思い出した。
 霙からゲシュペンストを受け取ったときの言葉。

霙『ヒカルのゲシュペンストには、私が考案した究極のアタッカー・モーションがある。いざという時はそれを使え。ただし、修理屋泣かせの一度きりの大技だ』

 敵は青竜刀を振りかぶっている。反撃の手段はない! 追い込まれれば終わる!

ヒカル「コード・UGK!」

 躊躇うことなくヒカルは唱えた。
 瞬間、ゲシュペンストは宙を蹴るように大きく上昇し、元いた場所をゲイザムの青竜刀が切った。

ヒカル「ドライブ・オン!」
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/27(日) 17:47:36.47 ID:xzchfqAl0

ヒカル「アタッカー・フルドライブ!」

朝倉「何をする気!?」

ヒカル「この技は、叫ぶのがお決まりらしくてな……」

 バシュッ! 体勢を整えたゲシュペンストが更に空中で後方に宙返りする。

ヒカル「だが、ここで叫ぶのはやぶさかではない!」

 ゴオォッ! ヒカルの精神が燃え上がる!

 ギシ、ガシィンッ! ゲシュペンストの全駆動が軋みを上げている。まるで格闘家が全身の筋肉を興奮させているようだった。

ヒカル<熱血>「ゆくぞっ!」

 バシュィィンッ! 右足首が垂直に下を向く。ゲシュペンストの背部の噴出口が全て開放される!

ヒカル<熱血必中努力>「究極ゥ! ゲシュペントォ!! キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィック!!!!」

朝倉「なにごと!?」

 ズガァァァァァァァァァァンッ!! 渾身の一撃がゲイザムの頭部を直撃した!

朝倉「うぐっ……! やられちゃった。まあ、いいか。データは充分取れてるし、命令はクリアできたし」

 コクピットが狭くて助かるということもあるのだと朝倉は思った。
 もしもあと数センチずれていたら、コクピットは潰れていた。

 脱出ポッドの中で朝倉は言う。

朝倉「涼宮さんは殺せた。D兵器のパイロットはもう使い物にならない。まあ、基地は取られちゃうかもしれないけど、そんなのは関係ないものね」
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/27(日) 17:48:33.84 ID:xzchfqAl0

バストドン「ぎゃおぉぉぉぉぉんっ!」

ゆりえ『きゃあぁぁぁっ!』

 バストドンの剣がライディーンにぶつかる。

ゆりえ『うぅぅ〜、どうすれば……』

「勇者よ……!」

ゆりえ『! この声……また』

「勇者よ……声を聞け……!」

ゆりえ『聞いてますよぉ、どなたなんですか!?』

「ゴッド・ゴーガン……」

ゆりえ『ゴッド……ゴーガン……?』

 ゆりえの呟きにライディーンの目が光りを放った。

ゆりえ『ゴッド・ゴーガン……うん、やってみる!』

バストドン「ぎゃおぉぉぉぉぉん!」

ゆりえ『ゴォォォォォッド・ブロォォォォォック!』

 バストドンの攻撃を受け止めたゆりえはゴッド・ブレイカーで弾き飛ばす。

 そして、ゴッド・ブレイカーの両辺をさらに長く伸ばし、光りの弦に矢を引いた。

ゆりえ『ゴォォォォォッド・ゴォォォォォガォォン!』

 パシュゥッ! 光りを纏った矢がバストドンに突き刺さる!

バストドン「ぎゃおぉぉぉぉぉぉぉ!」

シャーキン「むっ、バストドン!?」

ゆりえ『ゴォォォォォッド・プレッシャァァァァァ! ラァァァァァイ!』

 ドゴォォォォォォン! ライディーンの体当たりでバストドンが爆散した!

シャーキン「むっ、やるな、ライディーン。いや、一橋ゆりえ!」

ゆりえ「ど、どうして私の名前を?」

シャーキン「その胸の奥に訊ねてみるがよい! 撤退だ!」

 シャーキンの号令でドローメは大魔竜ガンテに戻り、ガンテも背を向けて退却していった。

ゆりえ「やっぱり……妖魔帝国とライディーン……そして、私も関係あるのかな……」

シノン「ゆりえさん、聞こえますか?」

ゆりえ「は、はい!」

シノン「妖魔帝国が撤退するのを確認したら、戻ってきてください」

ゆりえ「わ、わかりました」
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/27(日) 17:52:48.46 ID:xzchfqAl0

 ホワイトベース

シノン「そう、やっぱりギガノス軍は重慶基地から撤退しつつあるのね」

連邦兵「はい、蒼き鷹の親衛隊の機影も確認しています」

シノン「どういうことなのかしら……」

連邦兵「香月少尉、天使少尉から通信が入っております」

シノン「繋いで」

海晴「こちら天使海晴少尉です。聞こえていますか?」

シノン「通じています」

海晴「よかった……マチルダ中尉は無事に戻ることができたわ。私はもう少しここで様子を見ます」

シノン「許可します。ところで、重慶基地からギガノス軍が撤退したそうですが、何かわかりますか?」

海晴「それは……ちょっとわからないわね」

シノン「そうですか……」

 この通信で、気付けというほうが難しかっただろう。
 あるいは、海晴の姉妹であるヒカルや霙、立夏ならば何かを感じているのかもしれない。

 海晴の声と喉元が、僅かに震えているのを……


 第十一話 強襲! 毒蛇の女と悪魔の王子 完
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/28(月) 20:53:51.80 ID:kwOVewEw0

 第十二話

 海底火山の空洞にあるキャンベル星人基地

オレアナ「ガルーダ! ガルーダはおるか!?」

ガルーダ「はっ、母上、ガルーダはここに!」

オレアナ「ガルーダよ、地上制圧はどうなっておるか?」

ガルーダ「はっ……コン・バトラーVを初めとする地球人の抵抗が厳しく……」

オレアナ「そんな報告は聞いておらぬわ! 制圧の完了したものだけを答えぃ!」

ガルーダ「それが……未だ為し得ず……」

オレアナ「なんだと!? 既に我々が地上に出て一ヶ月が経過している! その間に何をしていたのですかお前は!」

ガルーダ「も、申し訳ありませぬ!」

オレアナ「……もうよい。やはりお前は私の息子とはいえ、優しすぎる。機械のような心は持てぬのだな」

ガルーダ「そ、そのようなことは決して!」

オレアナ「ならば、これが最後のチャンスだと思いなさい。我が息子、大将軍ガルーダ」

ガルーダ「ははぁっ!」

オレアナ「頼みますよ、ガルーダ……母は地球制圧のためにこの身を機械に変えて長く海底城にいたのです。その母の悲願をどうか叶えてください」

ガルーダ「母上……わかりました! このガルーダ、必ずや母に代わって地球を制圧してみせます!」

 深く頭を垂れ、ガルーダは意気揚々とオレアナの前から姿を消した。
 その後ろ姿に女帝オレアナは呟いた。

オレアナ「ふん、愚かななガルーダ!」
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/28(月) 20:54:18.10 ID:kwOVewEw0

 キャンベル星人基地内 休息区

ミーア「まあ、それでは、次の作戦が失敗してしまっては、ガルーダ様は将軍をお辞めに?」

ガルーダ「そうだ」

 休息区の司令官、ミーアは美しい人魚のような女性だが、それは上半身だけであり、本来あるはずの下半身は壁と同化している。
 彼女はガルーダのためにオレアナが作った慰労サイボーグなのだ。

ミーア「おかわいそうなガルーダ様……ミーアはせめて戦いに向かわれるガルーダ様のお心をお助けする音曲を奏でましょう……」

ガルーダ「やめよ、ミーア!」

 ぱしぃっ。 ミーアの手が伸びてくるのをガルーダは厭わしげに払った。

ガルーダ「余は誇り高きキャンベル星人の女帝オレアナ様の子だ。汝がごとき作り物の命に慰められとうはない!」

ミーア「ガルーダ様、申し訳ありませぬ……ミーアが……ミーアが正しくキャンベル星人の女であればよいのに……おぉぉ」

ガルーダ「やめよと言うている! それも全て機械で計算された物腰のありよう! 虫唾が走るわ!」

ミーア「しかし……ガルーダ様をお慰み、助けることがミーアのお役目……それが望めぬのは……」

ガルーダ「余は大将軍ガルーダ! 女に慰められるような生を受けてはおらぬ! それがまして、母上の作られた機械の女になぞ!」

ミーア「ならば……ならばガルーダ様! ミーアを機械としてお傍に置いてくださりませ!」

ガルーダ「なんだと!?」

ミーア「ミーアの回路を通してマグマ獣を操ることができます! ガルーダ様のお望みどおりに動かすことができまする!」

ガルーダ「しかし、そんなことをしてはそなたの体が……」

ミーア「ガルーダ様のお役に立てないのならば、死んだほうがマシでございます!」

ガルーダ「わかった……余も母上のお力を借りてコン・バトラーVを倒す新兵器を完成させたのだ」

ミーア「それではガルーダ様!」

ガルーダ「あぁ、今度こそ、コン・バトラーVを打ちのめし、地上制圧の足がかりとしてやるわ!」
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/28(月) 20:55:01.62 ID:kwOVewEw0

 超電磁研究所

翠星石「うらぁー、早く翠星石に紅茶を持ってくるですよぉー」

紬「はぁーい」

真紅「あら、美味しいスコーンね」

憂「えへへ、ありがとうございます」

雛苺「なのー」

金糸雀「かしらー」

翠星石「まぁーったく、この世界のJUMは研究ばっかりでちっともお茶に付き合わんですよぅ」

律「へー、前の世界のはどんな奴だったんだ?」

翠星石「引きこもりですぅ」

真紅「引きこもりだわね」

蒼星石「引きこもりだったね」

雛苺「なのー」

金糸雀「かしらー」

澪「そ、そうなんだ……」

翠星石「まぁーこの世界のJUMも研究室に引きこもりっぱなしなのでぇーその点じゃ大して変わりないーですがー酷いときは翠星石のことをガン無視しやがるんですよぅ」

唯「ういー、おかわりー」

憂「はいはーい」

澪「ちょっとは会話に参加しろ」

 ズドォォォォォォォンッ!

律「またかよ!」

梓「いい加減、読めてきましたよね」
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/28(月) 20:56:12.86 ID:kwOVewEw0

 超電磁研究所 郊外

ドールズ「「「「「レェェェェッツ・コンバイィィィィン!」」」」」

唯「マジーン、ゴー!」

澪「ダイアナンA、ゴー!」

律「ボ〜スボロットだっぜ〜!」

 コン・バトラーVほか三機が大地に立つと、その真上にはキャンベル星人の空中戦艦グレイドンがあった。

ガルーダ「よく出てきたな、コン・バトラーV!」

翠星石「うるせーですぅ! まーた性懲りもなく来やがりやがってですぅ!」

ガルーダ「今日の我らは今までと思うなよ! 余が直々に相手をしてやるわ!」

 ズドォーン! グレイドンのカタパルトが開き、そこから巨大なロボットが降下してきた!

真紅「あれはっ!?」

 コン・バトラーVの前に立ったのは、ガルーダを模して作られた巨大兵器だった。

ガルーダ「見たか! これこそが余の切り札、ビッグ・ガルーダだ!」

翠星石「ふん! そんなのはどうせこけおどしですぅ! バトルリターン!」

ガルーダ「バカめ! ウィングソードで弾き飛ばしてやる!」

 ガキィンッ! ビッグガルーダが手に持った巨大な剣で、攻撃円盤を叩き落した!

ガルーダ「ゆくぞっ、コン・バトラーV!」

澪「唯! 私たちも援護するぞ!」

唯「うん! 必殺のー、ロケットパーンチ!」

ミーア「やらせぬわ!」

 マジンガーZの右腕が射出される直前、そこにミサイルの雨が降り注ぎ、爆炎を上げた!

唯「わぁぁ!」

律「うひゃー!」

 ドガァァンッ! ミサイルから身を守る唯たちの前に現れたのは、二体のマグマ獣デモンだった。

ミーア「私はガルーダ将軍様の配下、ミーアである! ガルーダ様とコン・バトラーVの戦いを邪魔させはせぬ! 私が相手をしよう!」

 ドガガガッ! 二体のマグマ獣が大きな刀を振り上げてマジンガーZに切りかかる!

唯「あいたぁーっ!」

澪「唯! 当たれ、スカーレットビーム!」

 ビビィッ! ダイアナンAの目から赤いビームが発射される。
 以前の戦闘データから、敵の回避運動の速度を計算して機械がロック・オンして放つため、直撃するはずだ。

デモン「ぐおぉぉぉぉんっ!」

 だが、データを裏切る素早い動きのデモンにあっさりと避けられてしまった。

澪「そんな! 動きが全然違うぞ!」

紬「改造されているわ! 澪ちゃん、気をつけて!」

ミーア「ホーッホッホッホッホ! 頭の悪い地球人には簡単なこともわからないのかしら!?」

唯「このっ、ルストハリケーン!」

デモン「ぐおぉぉぉぉんっ!」
658 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/28(月) 20:57:17.09 ID:kwOVewEw0

ガルーダ「コン・バトラーV! 正々堂々と勝負だ!」

翠星石「かーかってきやがれですぅ!」

ガルーダ「喰らえぇぇぇーっ!」

翠星石「マァグネクロー! ですぅ!」

 ガッツィィンッ! ビッグガルーダのウィングソードとコン・バトラーVの手首のクローがガッシリ噛み合った!

翠星石「くうぅぅぅぅぅ!」

ガルーダ「ぬぬぬぬ……やるな! コン・バトラーV! それでこそ、余が全力を尽くすに相応しい相手だ!」

翠星石「それでも、てめぇなんぞに負けねぇですよーっ! 真紅ぅ!」

真紅「不本意だけど、了解なのだわ」

 ガコン! コン・バトラーVのマグネクローが引っ込み、ノズルが飛び出した!

ガルーダ「なにっ!?」

翠星石「アトミック・バーナー!」

 ゴォォォォォッ! ノズルから炎が放射され、ビッグガルーダの胴部を焼き焦がす!

ガルーダ「う、うおぉぉぉっ! おのれっ!」

 負けじとガルーダは内蔵されていたミサイルの発射口を開いた。

翠星石「げげぇっ!」

蒼星石「こんな至近距離で!?」

真紅「逃げるのよ!」

ガルーダ「逃がすか! 喰らえ!」

 チュドォォォォンッ! もがくコン・バトラーVに二其のミサイルが破裂した!

翠星石「ぎぇぇーっ!」

ガルーダ「うおぉぉぉぉっ!」

 互いにボディの前半分を黒くくすぶらせて、両機はようやく離れた。

ガルーダ「さすがはコン・バトラーVだ! ミサイルを受けても倒れぬ威容!」

翠星石「おめぇも侵略者としては似合わねーほど律儀な奴ですねぇ!」

真紅「水銀燈もこんな性格ならもう少しまともにやりあえたでしょうね」

ガルーダ「余は貴様らとおしゃべりをするためにやってきたのではない! 余の剣捌き、受けてみよ!」

翠星石「やってやるです! ツインランサー!」

 コン・バトラーVの両肩からそれぞれ手槍が出て、片方ずつ手に握る。

ガルーダ「勝負だ! コン・バトラーV!」

翠星石「とぉりゃぁーっ! ですぅ!」

 ガキンッ! ガンッ! ガガンッキィンッ! 激しい剣戟に火花が散り、巨躯の動きに大気が震える。

 ギャリィッ! 左の手槍がビッグガルーダの角を折った!

ガルーダ「まだだっ!」

 ドガッ! 出過ぎたコン・バトラーVの頭部にガルーダの左拳が殴打する。

翠星石「くうっ!」

ガルーダ「そこだぁっ!」

 バキィンッ! 強く振り切った剣にツインランサーは二つまとめて落とされてしまった。

ガルーダ「やれる! 今日が貴様の最後の日だ! コン・バトラーV!」

 ダッ! ビッグガルーダは大きく後ろに跳び、コン・バトラーVとの距離を取ると、巨体に見合った大きな弓を構えた。
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/28(月) 20:59:06.54 ID:kwOVewEw0

ガルーダ「この巨大ミサイルアローでとどめだ!」

 先端が強力な爆薬になっている矢を番えて放った!

 ドガァァァァァァッ! ミサイルアローがコン・バトラーVの足元で爆発した。

雛苺「びえぇぇぇぇっ!」

真紅「雛苺! うるさいわよ、泣くんじゃない!」

ガルーダ「照準どおりには行かぬか……まだまだ行くぞ!」

 ヒュン、ヒュン! 腰の矢立から次々と矢を抜いては射る!

翠星石「なんのですよぅ! 数で来るならこっちもですぅ! ビッグブラストとロックファイターですぅ!」

 コン・バトラーVのみぞおちが開き、大きなミサイルが、右手の指先から小型ミサイルが飛んでミサイルアローと相打ちに誘爆する。

蒼星石「ダメだ、翠星石! 煙で見えなくなる!」

ガルーダ「バカめ! もう遅いわ!」

 蒼星石が注意を促したときには、巻き上がった煙を突き破って、ミサイルアローが飛んできた!

真紅「避けるのよ!」

翠星石「やってるですぅ! 無理ですぅ!」

 ズガァァァァァンッ! ミサイルアローがコン・バトラーVに直撃する!

翠星石「きゃあぁぁぁぁっ!」

蒼星石「わぁぁぁぁぁぁっ!」

真紅「うあぁぁっ!」

雛苺「ひやぁぁぁぁぁ!」

金糸雀「きゃあぁぁぁっ!」

 ガガッ……バキィンッ!

真紅「いけないわ、翠星石! 合体が解けかかってる!」

翠星石「うぐぐ……こうなったらイチかバチかですぅ!」

蒼星石「まさか、アレをやるの!?」

翠星石「もうそれしかねーですぅ!」

蒼星石「だけど、途中で攻撃されたら……」

金糸雀「失敗したらもう後はないかしらー!」

翠星石「だからイチかバチかなんですぅ!」

真紅「非効率的だわ」

翠星石「でも、やるしかねーですぅ!」

律<加速>「そういうことなら、アタシに任しとけ〜っ!」

 がしゃがしゃがしゃがしゃ! コン・バトラーVの横から走り出てきたのは、ボスボロットだった。

律<加速>「唯と澪が頑張っちゃってるからアタシの出番がないのさ〜!」

真紅「どう見ても無茶なのだわ」

律<加速>「いっけぇぇ〜! ボ〜スボロットパ〜ンチ!」

 ガコン! ボスボロットの鉄拳がビッグガルーダに当たり、スチール缶が転がるような音がした。

ガルーダ「むぅっ! なんだこのポンコツは!」

律<加速>「うりゃうりゃ〜っ!」

 ポンカンポンカン まるで十円玉を投げつけられているような攻撃にガルーダが気を取られている間にコン・バトラーVは体勢を整えていた。

翠星石「隙だらけでありやがんのですよぅ! 超電磁・タ・ツ・マ・キィ〜!」
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/28(月) 20:59:31.16 ID:kwOVewEw0

ガルーダ「しまった! オトリか!」

 バリバリバリバリ! コン・バトラーVの頭にある二つの電極から電磁の嵐が腕に乗せられて放出される。

 超電磁タツマキに絡め取られたビッグガルーダはプラスとマイナスの反発に巻き込まれ、身動きが取れなくなってしまうのだ。

ガルーダ「な、なんだ……! 動かないぞ!」

翠星石「こいつでとどめですぅ!」

 コン・バトラーVの両手が重なり、手首から先が変形し超電磁ギムレットの刃が光った。

 僅かに体を浮上したコン・バトラーVはギムレットを軸に高速で回転し始める。

 そして、空高く飛び上がったコン・バトラーVは回転しながら一直線にビッグガルーダに落下していった!

翠星石<熱血>「超電磁・スピィィィィィィィィィン!!」

 ズギャァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!! ビッグガルーダの装甲のど真ん中に大きな穴が空いた!

ガルーダ「馬鹿な! 余のビッグガルーダが!」

ミーア「ガルーダ様ぁ! 撃て、グレイドン! 撃ちまくってガルーダ様を助けなさい!」

 ドドォンッ! ドォンッ! 砲撃に怯んだ隙に唯たちと戦っていたマグマ獣デモンが半壊したビッグガルーダを持ち上げてグレイドンへ回収していく。

ガルーダ「ぐぐっ……ミーア……余を降ろせ! こうなればコン・バトラーVと相討ちになってみせようぞ!」

ミーア「いけません、ガルーダ様! ここはもはや退くしかありませぬ!」
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/28(月) 21:00:06.68 ID:kwOVewEw0

ガルーダ「うおぉぉ……離せぇ!」

 ビッグガルーダはもはやぼろぼろで、下手な動かし方をすれば即座に爆発しかねない。
 それでもガルーダはビッグガルーダから出ようとはしない。
 地上にいるコン・バトラーVもまた、装甲の大部分を損耗した上に超電磁スピンでエネルギーが尽きているのだ。

ミーア「司令の立場を失おうとも、まだ挽回することはできます! ガルーダ様が生きておられる限りは!」

ガルーダ「余は更迭など恐れてはおらぬ! だが、この手でコン・バトラーVを倒せぬのならば余の命に価値などない!」

ミーア「くっ……グレイドン! 冷凍ビームでビッグガルーダを凍らせなさい!」

グレイドン「ごぉぉぉぉぉぉん!」

 ビュオォォォォォォッ! グレイドンから冷凍ビームが照射される。

ガルーダ「み、ミーア……貴様!」

ミーア「申し訳ありませぬ、ガルーダ様……」

 搭乗しているガルーダのいるところまでは至らない程度にビッグガルーダを凍結させた後、ミーアはグレイドンに回収させた。

ミーア「覚えておきなさい、地球人ども! 次こそはやっつけて差し上げます!」

 グレイドンは超電磁研究所から飛び立っていく。

 それを膝をついたコン・バトラーVのコクピットで見送っていたドールズは高々と手を掲げることができなかった。

翠星石「なんか……手放しで喜ばねーですぅ」

蒼星石「そうだね……彼らにも理由があって戦っているのかもしれないよ」

律「だけどよ、あっちが攻めてくんだから、こっちは迎え撃つしかないじゃんよ」

真紅「確かにその通りだわ。彼らは話し合う余地を与えてはくれないのだから」

翠星石「ですぅ……」


 第十二話 炸裂! コン・バトラーV 超電磁スピン! 完
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 21:15:40.45 ID:xsffrJ6AO
ついでに今日はスロット行ったので報告

グラヴィオンでビッグボーナス引きました
他にも結婚式2回、サーフィンにリィル、メイドボーナス
レギュラーボーナス7回中5回が77G
エィナはずっと眼鏡無し
V字合身2回
ジークとサンドマン一騎打ちイベント

高確率で設定有りなのに1000枚

さすがは2011年クソスロオブジイヤー候補

まあ、既にサクラ大戦が殿堂入りしてるからなぁ

663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 15:44:59.71 ID:mnu8E9pc0

 第十三話

 中央アジア オデッサのジオン軍基地

マ・クベ「シャナ少佐が、ドズル中将が左遷したシャナがキシリア様の配下になるという」

 ジオン軍突撃機動軍大佐マ・クベは卓上に置いた北宋の陶磁器を指で弾いた。

マ「しかも、ニュータイプ部隊の選出、指揮を任されるという。気に入らんな」

 端的に言うほど、マ・クベはシャナが気に喰わなかった。

マ「あやつは人に気にかけさせる才を持っている。ドズル中将の次にキシリア様だ。まるで娼婦ではないか」

 シャナはいずれ、自分の出世にケチをつける相手になる。
 芽は早いうちに摘んでおきたいところだ。

マ「キシリア様もご酔狂でいらっしゃる。いまだにニュータイプの存在が証明されたわけではないというのに、莫大な研究費をつぎ込まれるのだからな」

 政治家肌のマ・クベからすれば、ザビ家台頭から続いているにも関わらず一向に成果の上がらない研究などやめて、ザクの改良機であるドムとグフを早く量産体制に仕上げたほうが良いと考えていたし、本国の監査もようやくそのつもりになっていたところだった。

マ「だいたい、フラナガンという男が信用ならんところにシャナだ。奴がどうやって炎髪灼眼になるのかさえ、まったくわかっていないではないか」

ウラガン「マ・クベ大佐!」

 陶磁器に自分の顔を写していたマ・クベの許に現れたのは、副官のウラガン中尉だった。

マ「どうした?」

ウラガン「ランバ・ラル大尉がお見えになられました」

マ「そうか」

ウラガン「お出迎えにならないのですか?」

マ「奴は職業軍人なのだよ。やることだけをやらせればいいのだ。そのほうが奴にとっても都合がいいだろう」
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 15:45:44.60 ID:mnu8E9pc0

ランバ・ラル「了解した。このまま木馬に向かわせてもらう」

 通信を終えたランバ・ラル大尉の傍に妙齢の女性がやってくる。

ハモン「出立なさるので?」

ラル「うむ。オアシスを通過する際に小休止をとることにしよう」

ハモン「そのほうが部下たちにもよいでしょう」

ラル「念のため、モビルスーツはいつでも出せるようにして、トレーラーに積んでおけ」

ハモン「わかりました」

ラル「さて、久しぶりの地上だ。直接ではないが、ガルマ大佐の仇討ちといこうか」
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 15:46:30.10 ID:mnu8E9pc0

 天草シノは暗い道を走り続けていた。

シノ「いったい、ここは……」

 周囲には明かりもなく、目指すべきものも見えない。
 だがシノは走らなければならない予感に駆られ懸命に足を前に運んでいく。

シノ「私は、何を……」

 何も見えない。わからない。聞こえない。
 自分が走っている感覚さえなくなってくる。

シノ「うぅぅっ……」

 次第に足が重くなってきた。
 まるで、泥の中を進んでいるようだ。
 いや、違った。

シノ「あ、あぁぁ……」

 沈んでいた。
 シノの足が、もうくるぶしから先が見えなかった。
 だんだんとシノの体が闇に包まれていく。
 膝、腿、腰……まるで泳ぐように上半身を動かしてシノは前に進もうとする。

 だが――

『ダメだよ。もう捕まっちゃったんだから』

シノ「えっ!?」

 突如、頭上から聞こえた声に顔を上げると、そこにはギラリと鈍い光りがあった。

『死ぬのってイヤ?』

シノ「い、いやだ……やめてくれ……」

『うん、それ無理』

 その輝きが巨大な青龍刀だと気付いたときには、もう振り下ろされていた。

シノ「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 15:47:06.60 ID:mnu8E9pc0

シノ「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 乱暴に起き上がり、今までの奈落がもう何度も見た悪夢だと知った。

シノ「はぁ……はぁ……」

 蒼白な自分の頬を撫で、次にしっかりと首が胴とくっついていることを確かめる。

シノ「またか……」

 毛布をまくりあげてため息を吐く。
 夜中に水分を摂ることを避け、就寝前にしっかりとトイレに行っていたおかげか、充分に処理できる許容内だ。

 シノはみじめな気分で尻の下に敷いていたタオルと木の板をベッドから下ろして、自分は滲みてしまった下着とズボンを脱ぐ。

シノ「このままではもうドラグナーに乗れないな……」

 こんなことはもう四日目である。
 原因は、四日前に遭遇したギガノス帝国の最新鋭機だ。
 いや、あの機体だけが原因ではない。シノに精神的負担を強いるのは、パイロットであった。

 ダメだよ。死んじゃうよ?――

 うん、それ無理――

 そんなもので私の打ち込みが止められると思う?――

 じゃあ、死んでね。さようなら――

シノ「う、うぁぁ……」

 あの毒蛇が絡みつくような声を忘れることができないのだ。
 戦闘の翌日では、コクピットに座ることもできずに吐いてしまった。

 それでも、一日ずつ、一時間ずつでも近づいていこうとする彼女に身体は応えてくれたようで、昨日はシミュレーションを行うことができた。

 だが、やり過ごしたはずの恐怖のツケは夜中に回ってくるようだった。
 夢は毎日酷くなっていく。
 恐怖が毎晩更新されていくのだ。その度に彼女の下半身は大量の不純物でベッドを濡らしていた。

 ドラグナーに乗るという使命がなければ、シノの精神はとうに破壊されていたかもしれない。
 そのドラグナーこそが、彼女を追い詰めた原因でもあるのだが……

スズ「あ、会長、だいじょうぶですか?」

 ルームを出たところで萩村スズと鉢合わせた。彼女は青ざめたシノを気遣う声をかける。

シノ「あぁ、今日は哨戒に出ようと思う」

スズ「へ、平気なんですか?」

 無理に笑顔をこしらえてシノはスズの頭と胸を撫でた。

スズ「なんで私の胸を触るんですか!」

シノ「いやぁ、子どもの成長は毎日確かめなくちゃいけないだろ?」

スズ「ムキーッ!」
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 15:47:34.52 ID:mnu8E9pc0

 ホワイトベース 食堂

ヒカル「それじゃあ、海晴姉はまだしばらく療養が必要なのか……?」

霙「そうだ。傷口が砂塵に晒されてウィルスが入り込んだんだ」

立夏「海晴おねーちゃん……えぅぅぅ……」

霙「そう悲観するな。もう抗体物質は注射してあるから、その作用で熱が出ているだけだ。命に別状はない」

 ホワイトベースから降りてマチルダ中尉と長門有希の捕虜交換に立ち会った天使海晴は、ヴァイスリッターに乗った直後、何者かに攻撃された。

 海晴本人が言うには『メインモニターを映したら、急に片目が白い薔薇の女の子が現れて、茨で刺された』という実に信じがたい話だった。
 薔薇という単語に引っかかった霙が日本の超電磁研究所にいるローゼンメイデンに訊ねると、雪華綺晶という七体目のドールである可能性が高いという。

 それが、六体のローゼンメイデンを一斉に手玉に取り、追い詰めた非常に危険なドールだということも……

霙「まあ、あと二、三日眠っていればよくなる。幸い、ギガノス軍は東アジア区域から撤退し始めている。蒼き鷹が戦死したことの影響が大きかったようだ」

ヒカル「やはり……涼宮ハルヒは……」

霙「あのギガノスの新型――ゲイザムの地上掃射にやられてしまったらしい。ファルゲンも解体されているところが発見された。親衛隊も宇宙に上がるらしい」

ヒカル「それじゃあ後はオデッサのジオン軍基地を落とせば……」

霙「あぁ、我々の任務は達成される。既にヨーロッパ方面からレビル将軍が軍勢を集結させてオデッサの包囲網を完成させつつあるし、こちらからはゲッターチームとライディーンが派遣されている。私たちはここで待機しつつジオン軍が隠れ潜んでいないか注意していればいい」

立夏「うぅぅ〜、お菓子食べた〜い〜」

 愚図りだした立夏の陽気さに姉妹は笑って、お見舞いに何を持っていこうかと相談を始めた。
668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 15:48:21.86 ID:mnu8E9pc0

 ホワイトベース 格納庫

シノン「シノさん、本当に大丈夫なんですか?」

 待機中の戦艦ほど艦長にとって暇なものはない。
 今日に至るまでの多忙さを失って代わりに手に入った余暇を使って艦内を直接見回っているところに、哨戒任務に出るシノとスズに出くわした。
 アリアは先に哨戒任務に出ていて、シノと入れ替わりに戻ってくる。

シノ「はい、行けます。待機中とはいえ、機体にも乗れないのではしょうがないですから」

スズ「私もついていますから、何かあればすぐに戻らせます」

シノン「わかったわ。くれぐれも無理はしないでね」

シノ「了解です」

 ぴりっとした敬礼からは精神的な脆弱は消え失せていた。
 若くして最新鋭戦艦の艦長となったシノンの目にその通りに見えたのは仕方ないことである。

 要するに、大きな間違いだったということだ。

シノ「システム良好。エンジン始動――天草シノ、ドラグナー1型、出ます!」

 ドシュゥーッ! カタパルトから白い尾を引いて触覚のような二本のアンテナの機甲兵が射出される。

シノ「――ッ!」

 だが、空に出た彼女の視界は一瞬で歪んだ。
 まるでスプーンでかき混ぜたコーヒーにクリームを入れたみたいに空の青と雲の白、明滅する計器が渦になって溶け合い、シノの方へ向かってくるのだ。

シノ「うあぁ……! うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 次にシノが幻視したのはあの青龍刀の新型である。
 夢で何度も味わった絶望感が現実の感覚としてシノに襲い掛かってくる。

 伊藤カイジが急所々々で兵藤和尊の顔を錯覚するものと同じなのだ。
 だが、シノが見ているそれは王の警告ではなく、全身を恐怖で支配する毒蛇の呪いである。

スズ「会長!?」

 スズの声が届く暇もなく、ドラグナー1型はバーニアを最大パワーで噴かしてホワイトベースから離れて空の霞に消えていった。

シノン「そんな……」

スズ「い、急いで捜索に当たります!」

 暴風に巻かれてへたり込んでしまったシノンの横でD−3が発進していく。
669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 15:51:00.66 ID:mnu8E9pc0

シノ「あああああああああああああああああああっ!!」

 重慶基地から数百キロを経て尚、シノは幻覚に錯乱していた。
 全く制御が利かない手足の操作に機体が忠実に従った結果、ドラグナーはきりもみ回転をしながら墜落し始める。

シノ「わあああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 ドシュアァッ! もしも地面が砂漠ではなかったら、墜落の衝撃でドラグナーは爆破していたかもしれない。

シノ「あぁっ! あああ! ぁぜぇっ! えふっ! げほ! ぜぇ、ぜぇ……」

 反動で滅茶苦茶に跳ねるシートにむせ返って、ようやくシノは意識を取り戻した。

シノ「あぅぅ……こ、ここは……?」

 ほとんど呂律の回っていなかったにも関わらず対話型コンピュータ『クララ』は主の質問に答えた。

シノ「オデッサと重慶の間の砂漠地帯か……こんなところまで来てしまったのか……」

 リフターを起動させようとしたが、無理だった。
 身体が震えている。拒絶反応を起こしているのだ。

シノ「みっともないな……私は」

 大見得を張って飛び出してきた結果がこの醜態たが、もはや自嘲する余裕もなかった。
 何故なら、この太陽直下のど真ん中にシノは水も持たないでやってきてしまったのだ。

シノ「スズが探しに来てくれるだろうが、人がいる場所を見つけないとな……」

 『クララ』に検索させて、見つけたのはオアシスだった。
 ただ、シノのいる位置から300メートルほど離れている。
 隆起の複雑な砂漠で300メートルは1キロ以上の体力を要求される上に一度方向を見失ってしまえば、二度と回帰することはできない。

シノ「ドラグナーで行くしかないか……」

 戦々恐々とフットペダルに足を乗せて、リフターの回路は遮断していく。

シノ「操縦をマニュアルに……エンジンは弱く……」

 飛ぶことはできないことを自覚したシノは一つ一つの機体の動作を確実にこなすことでリハビリをすることにした。
 リフターは物理的に接続を切り離し、放置する。発信機はつけてあるから、後で戻ってくるときに頼りにできる。

シノ「一歩ずつ……一歩ずつだ……」

 不必要なパーツを落として四分の一ほどは軽くなった機体の足をゆっくりと上げて下ろす。
 確かに前進したのを見て、シノは安堵の息を吐いた。

シノ「これなら、なんとかオアシスまでは行けるな……」
670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 15:51:49.61 ID:mnu8E9pc0

 人間の十倍の大きさのある機動兵器ならば、一歩で十メートル弱進むことができる。
 慎重に足を前に出し続けて、二十五歩。そこでシノは止まってドラグナーを降りた。

シノ「あれがオアシスか……」

 コロニー住まいのシノには、砂漠もオアシスも初体験である。
 灼熱を長い黒髪が吸収して火傷しそうだと思う。
 シノは備蓄されている擬装の服とフードのついた外套を被り、ドラグナーには機体を隠す保護シートを被せて砂漠を歩いてオアシスに向かった。

シノ「よかった……人が何人がいるみたいだな」

 途中、何度も足を取られてシノは平坦な道を踏むことができた。
 今まで最も長い300メートルだった。

シノ「あの、すみません」

 看板の下がっている建物に入った。
 オアシスを訪れる旅人を癒す酒場のようだったが、戦争の影響か、中には店主以外の誰もいない。

店主「あいよ。こんな時間に客とは珍しいね」

シノ「あの、水をいただけませんか?」

店主「あいよ」

 返事をしたが、店主はカウンターにある水のサーバーに向かおうとはせず、シノに手のひらを上向かせて差し出した。

シノ「えっ……?」

店主「お金だよ、お金。払ってもらわなくちゃ。今じゃ水でさえ貴重なんだ」

シノ「で、でも、ここはオアシスで水があるんじゃ……」

 店主はギロリと目を光らせた。シノがびくっと肩を震わせると、店主は低い声で言った。

店主「あんた、地球の人じゃないね。コロニーの人だ」

シノ「ど、どうしてそんなこと……」

店主「そんな白い肌と喋り方じゃ、地球生まれだって言われても無理だよ。教えてあげるよ。オアシスの水は戦争のせいで生じゃ飲めなくなっちまったんだ。一度、オデッサに預けて浄水してもらってるんだ。それも法外な値段でね」

シノ「そうだったんですか……申し訳ありません」

店主「まあ、いいさ。一杯、ごちそうしてあげるよ」

シノ「い、いえ、ちゃんとお金は払います。少しですけど、持ってますから」

 服と一緒に僅かだが金はある。それを取り出そうとする間にも店主は穏やかな口調になって、サーバーから水を汲む。

店主「わかったよ。そこに置いておいてくれ」
671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 15:52:47.33 ID:mnu8E9pc0

 コップ一杯の水に貨幣を出して、ちまちまと呑んでいると、にわかに外が騒がしくなっていた。

ラル「こう熱いとさすがにかなわんな。おい、親父! 水をくれ! うまいやつをだ!」

 突然の来客に店主が返事をする間もなく、次々と兵隊が入ってきた。
 
シノ(あ、あれはジオン兵……)

ラル「親父、13人だ。すまんな、サグレ、マイル、見張りだ。交代は急がせる」

サグレド「は、ランバ・ラル大尉」

シノ(ランバ・ラル……大尉ということは、エース級か)

 すっかりシノにも軍人癖がいくつか染みていた。

ラル「すまんな、ハモン。砂漠はきつかろう」

ハモン「自然の脅威です。星を見ているよりはずっと面白い」

ラル「ハハハハッ。みんな、座れ座れ、何を食ってもいいぞ。作戦前の最後の食事だ」

店主「あの、ここは中立地帯でございますので、戦争は……」

ラル「他でやる。心配するな」

ハモン「何もないのね。できる物を14人分ね」

店主「か、かしこまりました」

ラル「ン……? 一人多いぞ、ハモン」

ハモン「あの子にも」

 そう言って、ハモンが指したのはカウンターの端で耳をそば立たせていた少女だった。

シノ「わ、私……ですか?」

ラル「あんな娘がほしいのか、ハモン」

ハモン「フフ、そうね」
672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 15:53:14.07 ID:mnu8E9pc0

シノ「あ、あの……」

 立ち上がってシノはハモンと呼ばれる貴婦人の前に立った。
 美しい女性で、とても砂漠の酒屋には似つかわしくないが、纏っている雰囲気は潔癖な軍人のそれである。

シノ「ご厚意は嬉しいのですけど……」

ハモン「あら、どうしてかしら?」

シノ「見ず知らずの方に、物を恵んでもらう理由がありません」

 この返答にハモンだけでなく、ランバ・ラルも少し驚き、大きな声で笑った。

ラル「フハハハハハハハッ。ハモン、一本やられたな、こんな若い娘に」

ハモン「私が、あなたを気に入ったからなんだけど。それじゃご不満かしら?」

シノ「私は……飢えている訳でもお金がない訳でもありませんから」

ラル「ホゥ、気に入ったぞ、お嬢さん。それだけはっきりと物を言うとは」

 そう言ってランバ・ラルは立ち上がり、シノの肩を軽く叩いた。
 彼はこうやって、人と接する人柄で、部下達もそんな彼に惚れてこの部隊についてきているのだろう。

ラル「ワシからもおごらせてもらおう。あまり大人の面子を潰させるものじゃないぞ」

シノ「い、いえ、でも……」

サグレド「隊長! 怪しい奴を捕まえました!」

 席に着かざるを得ないような流れにシノが戸惑っていると、外に待機していたジオン兵が中に入ってきた。

ラル「どうした?」

マイル「この女が辺りをウロウロしていました」

スズ「あうっ!」

シノ「す、スズ……!」

 突き出された少女にうっかり洩らしてしまった名前にハモンが目を光らせた。

ハモン「あなたのお友達ね?」

シノ「は、はい」

サグレド「こいつが着ているのは連邦軍の制服です」

ラル「そうかな、ちょっと違うぞ」

マイル「間違いありません、機動兵器でこの近くに停止しました」
673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 15:53:41.58 ID:mnu8E9pc0

ハモン「そうらしいわよ。この子の友達ですって」

ラル「ほう」

スズ「か、会長……」

ラル「君たちはパイロットだったのか」

シノ「え、えぇ……」

 少しの間、ランバ・ラル、ハモン、シノの間で視線が交錯した。

ラル「放してやれ」

マイル「は、しかし」

ラル「いいから」

 バッ! ランバ・ラルはシノに詰め寄り、外套を掴んで捲り上げる。

シノ「!」

ラル「いい度胸だ」

 外套の下のシノの手では短銃が握られていた。
 スズに何かあれば、すぐに撃つ構えだったことがうかがえる。

ラル「ここが中立地帯で良かったな。名前は?」

シノ「あ、天草シノです」

ラル「そうか、戦場で会ったら、こうはいかんぞ。頑張れよ、シノ君」

シノ「あ、ありがとうございます……」

スズ「会長!」

シノ「助けに来てくれてありがとう。行こう、スズ」

 シノとスズが酒屋を出て行く。
 そしてランバ・ラルは職業軍人の顔をして、部下を呼んだ。

ラル「あの娘達を追いかけろ。さっきの話し振りからすれば、何らかのトラブルで不時着したようだ。あんな若い娘が乗る連邦の機動兵器など、D兵器かゲシュペンストだ」

ゼイガン「はっ!」

ハモン「出陣なされるおつもりですか?」

ラル「うまくいけば木馬を誘き出せる。グフの用意をしろ」
674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 15:54:07.42 ID:mnu8E9pc0

シノ「すまなかったな、スズ」

スズ「いえ、D−3のレーダー能力のおかげですぐに見つけることができました」

シノ「そうか、捜索はスズだけか?」

スズ「ヒカルと立夏ちゃんもいます」

シノ「すぐに二人を呼んできてくれ」

スズ「どうしたんですか?」

シノ「ランバ・ラル大尉が攻撃してくるはずだ」

スズ「ランバ・ラルって、さっきの人ですか?」

シノ「そうだ」

スズ「そ、それなら早く逃げたほうが……」

シノ「ダメなんだ。私のドラグナーはリフターを外してしまっている。放置するわけにもいかないから、私が足止めをしている間にスズは二人を呼んできてくれ」

スズ「わ、わかりました」
675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 15:54:48.54 ID:mnu8E9pc0

クランプ「ゼイガンから通信。D兵器と思しきメタルアーマーが飛び立ちました。天草シノも同乗しているようです」

ラル「よし、すぐに追撃するぞ」

ハモン「ご武運を」

ラル「うむ、ザンジバルは待機させておけ。D兵器をやったら一時戻ってくる」

ハモン「かしこまりました」

 パイロットスーツを着たランバ・ラルとハモンは短い口付けを交わし、ランバ・ラルは高速陸戦艇ギャロップに乗って発進した。

ラル「D兵器、速いな」

 航空機の延長をイメージしたメタルアーマーとリフターの構造はモビルスーツを寄せ付けない速度を生み出している。

ラル「――が、弾丸が当たりさえすればよい」

 ギャロップの上に立ち、青い新型モビルスーツ・グフでランバ・ラルはジャイアント・バズを構える。

ラル「よし、いくぞ!」

「「「おう!」」」

 だが、ランバ・ラルの気勢が部隊に伝播した瞬間、突如として砂漠が盛り上がった!

ラル「なんだ!?」

シノ「これ以上先には進ませないぞ!」

 砂柱を割って現れたのは、D−1だった。
 スズと一緒にD−3に乗った後、D−1が隠してあった地点に降ろしてもらい、乗り潜んでいたのだ。

ラル「別のD兵器か! こしゃくな真似を!」

 ドラグナー1型はハンドレールガンを右手に、シールドを左手に持つと、ギャロップから飛び降りた二体のザクUとザクを一回り大きくして青い塗装にしたようなモビルスーツ・グフと対峙した。

シノ「ジオンの新型のモビルスーツか……あれにラル大尉が乗っているだろうか……」

 空を飛ばなければ機体を動かすことはできるのは、先ほど示したばかりだ。
 次の問題は、迫りくる敵と戦うことができるか――

ラル「我々はD兵器回収が目的ではない。木馬の撃破が目的だ。パイロットが死なぬ程度に破壊するぞ!」

アコース・コズン「「了解!」」

 二機のザクが左右に散開していくのを見て、ラルは独りごちた。

ラル「あれにシノ君が乗っているのか……?」

シノ「う、撃つぞ!」

 ババババババババ! ハンドレールガンが火を噴く。

ラル「正確な射撃だ――が、それゆえ、コンピューターには予想もしやすい」

 僅かに半歩分、ジグザグに動くだけで、ドラグナーの弾が外されてしまう。

シノ「ま、まともに避けもしない!」

 三方向から囲もうとしているのが判ったシノは、砂漠に足を取られるのを恐れてバーニアだけを使って後方に跳んだ。

シノ「……私の目的は時間を稼ぐことだ」

ラル「ホゥ、なかなかの推進力だ。攻めさせてもらうぞ!」

 包囲することは容易でないことを瞬時に判断したランバ・ラルは大胆に前進してマシンガンを撃っていく。

 ダダダダガガガガガガガッ! ドラグナー1型のシールドは表面をルナ・チタニウム合金が使用されているため、ザクマシンガンは簡単に弾くことができる。

ラル「硬いな。ヒートロッドを使う! アコース、コズン! 支援しろ!」

アコース・コズン「「了解!」」
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 15:55:16.33 ID:mnu8E9pc0

 ザクUが二方向からD−1を十字放火にする。
 ランバ・ラルのグフはマシンガンを敵の足下に撃って、砂を巻き上げた。

シノ「し、視界がっ!」

 アコースとコズンもそれに倣って砂を撃ち、ドラグナーは完全に砂煙に覆われてしまった。

シノ「う、うごけない……っ!」

 全身にばちばちと火花が当たっているような気分――この砂煙からどこに出て行ってもやられる!

 シノは機体に片膝を着かせ、砂が晴れるまでひたすら防御の構えに徹する。

シノ「どこから来る……」

 いつでも跳べるようにバーニアのフットペダルはやや踏みにしている。
 だが、敵は真正面から突如として現れた!

ラル「縮こまっては生き残れんぞ!」

 ガァンッ! グフの強烈なショルダータックルにシノは誤ってペダルを踏み、不恰好にしりもちをついてしまった。

シノ「うわぁっ!」

ラル「ザクとは違うのだよ! ザクとは!」

 ひゅおんっ! 青い巨星が放つ電磁鞭のヒートロッドがドラグナーの左手首に絡みつく!

ラル「受けてみろ! ヒートロッドォ!」

 ズバババババババババ! ヒ−トロッドから発せられる電撃がドラグナーの左手を電子回路から破壊し、シールドを落とした!

シノ「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 さらに、ヒートロッドの電撃は機体を通してパイロットにまで伝わる。

ラル「やれ! 奴の足を叩き斬れ!」

 ランバ・ラルの合図で左右に待機していたザクがヒートホークを持って近づいてくる。

シノ「ぐっ、うぅぅ……ここまでか……」

 だが、まだ神はシノに味方をするらしかった。

ヒカル「スプリットミサイル!」

立夏「ニュートロンビーム!」

 ズボボォンッ! ギュオッ! 飛来してきたビームとミサイルがそれぞれザクを急襲していく。

ラル「なにっ! 救援が来たか、速すぎる!」

 シノを探しに来ていたとはいえ、まだ数分と経っていない。
 しかしそこまで考えてランバ・ラルは三体開発されたD兵器の一つが電子戦仕様であることを思い出した。

ラル「ギャロップ、前に出て来い! 物量差で押してやれ!」

 グフのヒートロッドを一度回収して、後退する。

シノ「くっ、左腕は使えないか……」

ヒカル「シノ先輩、だいじょうぶですか!?」

シノ「あぁ、だが動きは鈍くなっている」

ヒカル「スズがリフターを回収してくれています。早く脱出しましょう」

シノ「いや、ランバ・ラル大尉が逃がしてはくれない」

 その時、砂塵を巻き上げてギャロップが追いついてきた。
 三機のモビルスーツも対小隊相手の錐型陣形を取り、大きな足で駆け出してくる。
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 15:55:47.07 ID:mnu8E9pc0

立夏「にゅーっ! リッカが追っ払っちゃうかんネーッ!」

 ゲシュペンストの頭部が光り、ニュートロンビームが発射される準備が整う。

ラル「狙いが甘いのだよ」

 先頭に立つランバ・ラルがヒートホークを投げつけて、立夏のゲシュペンストの肩に当てた!

立夏「ぎぎゅわぁぁぁぁぁんゅぅぅぅー!」

 およそ悲鳴とは思えない声をあげて立夏のゲシュペンストが倒れる。
 グフはヒートサーベルを構え、更なる追撃にかかる!

ラル「さぁ、倒れるがいい!」

ヒカル「させるか! ジェットマグナム!」

 ジュアァァァァァ! ヒカルのゲシュペンストの腕が高熱を宿し、グフに突撃していく!

ラル「浅い動きよ」

 グフに装備されたシールドにゲシュペンストの腕が当たった直後、ランバ・ラルが僅かに腕を動かすことで、ゲシュペンストは進行方向を逸らされてしまった。

ヒカル「くっ、立夏!」

コズン「待ちな!」

アコース「行かせるかよ!」

 急停止して、機体をターンさせるがグフとの間には二機のザクが割り込んでいた。
 さらに、ギャロップからの砲撃が立夏を襲う!

立夏「イヤーッ!」

ラル「喰らえっ!」

 ぶぉんっ! ヒートサーベルが姿勢制御中のゲシュペンストに振り下ろされる!

シノ「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 グァッ! ヒートサーベルがゲシュペンストの顔を貫く直前、シノは裂帛の気合と共に飛び出し、レーザーソードを突き出した!

 バシャァッ! 二つの機体の剣が交じり合い、熱量が重なる。ドラグナーの加速は止まらず、グフを組み伏せた。

ラル「ちっ! やるっ!」

シノ<気合>「もう、足を引っ張ってはいられないんだ!」

 グフが砂漠に埋もれていく。交錯の一瞬でレーザーソードが切り裂いたわき腹部に砂が入り込み、左足のモーターを不調にした。

ラル「立てぬか!」

シノ<気合>「このぉぉぉぉ!」

 ジャァァァァァッ! 逆手にしたレーザーソードがグフの胴体目がけて振り下ろされる!

ラル<不屈>「させん!」

 固い地面ではなく、無数の砂粒の上に寝るランバ・ラルはあえてさがることで、レーザーソードの直撃を避けた。

 同時にヒートサーベルを翻し、ドラグナーを襲わせる。
 だが、これは無理な機動が祟り、装甲をかすめるに終わった。

シノ「!」

 ドラグナーとグフは互いにコクピットを引き裂かれて対峙していた。

ラル「やはり、君か。天草シノ!」

シノ「ら、ランバ・ラル大尉……!」

ラル「本当に君のような子どもがパイロットをやっているとはな。時代は変わったものだ」

 ランバ・ラルはパイロットスーツの手で焦熱に溶けるグフの装甲を押し退けている。
 その闘志の塊りとでも言うべき姿に、シノは恐怖以外のものを胸にざわつかせた。

シノ「あ、あなたは戦いをやめないつもりですか!?」

 思わずシノは問うた。無意識の問いである。サンバイザー越しにほくそえんでいるランバ・ラルに喉の奥から競り上がってきたのだった。
678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 15:56:15.54 ID:mnu8E9pc0

ラル「ワシは戦いを生業としている! ランバ・ラルが戦いをやめるとき、本当に文字通りやめるときは、この命が尽きるときだ!」

 力づくで広げた装甲の合間から抜け出てきたランバ・ラルはワイヤー銃をドラグナーの胴体に撃ち、身を投げた。

ラル「見事な戦いだったぞ、シノ君! だが、それは貴様の腕ではない! そのメタルアーマーの性能のおかげだということを、忘れるな!」

シノ「負け惜しみを……!」

ラル「命があれば宇宙<そら>で会おう! その時は、ランバ・ラルの戦いを見せてやろう!」

 ランバ・ラルはグフから足を離し、ブランコのようにワイヤーにぶらさがってドラグナーの股下を潜り抜けると、砂漠に身を隠す。

ラル「アコース、コズン、ギャロップ、撤退しろ! ワシは夜を待って戻る!」

 隊長からの最後の通信を受けて、ランバ・ラル隊は撤退を始めた。

シノ「…………」

 無言でシノは装甲の隙間から動けなくなったグフを見つめていた。
 完全に拾わせてもらった勝利だった。例えば、もっと距離を取ってヒートロッドでいたぶるようなしつこい戦い方をされていれば、立夏かシノのどちらかは撃墜されていただろう。
 愚直な性格なのか、あるいは何かを背に抱えていたようにも見えた。
 最後の捨て台詞――つまり、今日のランバ・ラルは正面切って戦う理由があったのだ。

シノ「手加減……されたのか……?」

 まただ、とシノは思う。
 地球に降下する前も、涼宮ハルヒに手加減をされた。
 敵に生かされ、ぼろぼろにされ、また生かされる。

シノ「私は……ドラグナーに相応しくはないのか……?」

 交戦の損傷か、対話型コンピュータ『クララ』は返事をしなかった。
 独り取り残されるコクピットの中で、シノは拳を打ちつけた。

 何も考えずに戦場に出てくるな!――

 やらなくて後悔するよりも、やって後悔したほうがいいって言うよね――

 ランバ・ラルが戦いをやめるとき、本当に文字通りやめるときは、この命が尽きるときだ!――

 それは貴様の腕ではない! そのメタルアーマーの性能のおかげだということを、忘れるな!――

 私は、私が信じるもののために戦っているのよ――
 
シノ「相応しくなってみせる……私なりの、戦う理由に……」

 目蓋に描かれる敵の言葉が蘇る。そして、開いた瞳に熱い炎を点して、シノは決然と言った。

シノ「私は、あの人に――勝ちたい」


 第十三話 強襲! 熱砂のランバ・ラル 完!
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/04(金) 10:20:41.62 ID:Pc0vZ9DFo
支援
680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/06(日) 18:06:57.65 ID:vFt0CWIc0

 第十四話

ギレン「ジオン公国の栄誉たる国民一人ひとりに問いたい!」

 演壇に立った痩躯の男は重いバリトンで吼えた。

ギレン「諸君らの父が、友人が、恋人たちが死してすでに幾月が流れたか、思い起こすことを忘れたわけではないと信ずる。しかし、ルウム戦役以後、諸君らはあまりにも自堕落に時を過ごしてはいないだろうか? 地球連邦軍の物量と強権の前に、屈服も良し、とする心根が芽生えてはいないだろうか? なぜ、そのように思うのか? 選ばれた国民であるはずの、諸君らが、なぜに地球連邦軍の軟弱に屈服しようとするのか?我、ジオンの創業の闘士、ジオン・ズム・ダイクンは、我らに言い残したではないか!」

 右手で固い拳を握る高貴な装いのギレン・ザビの頭上に陰影を落とすのは、つい二日前に訃報が届いた貴公子の肖像だった。

 ガルマ・ザビ――連邦軍と戦い、壮絶な戦死を遂げた彼をジオン公国の首都ズムシティは悲しみに泣いていた。

 五日前に届いたビデオレターで彼はこう言った。

『親の七光りで将軍だ、元帥だと国民に笑われたくはありませんからね。父上もご辛抱ください。必ずや、大きな戦果を私自身の手で収め、将軍として立って見せます』

 ザービ! ザービ! ザァービ! ザーァービ!!

 ガルマの死を、家族の死と重ねたジオン国民のコールを思い出す。
ここにいるだけでも二十万。コロニー全体ならば二千万人はいたはずだ。

デギン(この世論があれば、ギレンを倒せたのではないか……?)

 公王として玉座に座るデギン・ソド・ザビが演壇で拳を震わせる背中に鈍く目を光らせた。
 デギンを玉座の奥に追いやり、実質的な独裁政治の頂点に立ったギレンを抑えるには、ガルマの存在は必要不可欠だった。
 国民の人気を一身に受け止め、父想いの彼ならばギレン以上の、いやジオン100年を繁栄させる男になっていたことだろう。

ギレン「宇宙の民が地球を見守り、その地球を人間発祥の地とすべき時代に、地球を離れることを阻む旧世代が、宇宙の民たる我らを管理支配しようとする。宇宙の広大無比なるものは、人類の認識域を拡大して、我らは旧世代との決別を教えられた。その新しき民である我らが、旧世代の管理下におかれて、何を全うしようというのか? 我らこそ、旧世代を排除し、地球を聖地として守り、人類の繁栄を永遠に導かねばならないのだ。銀河辺地にあるこの太陽系にあっても、文明という灯を守り続けなければならない。これが、ジオンの創業の志であったことは、周知である。にもかかわらず、諸君らは、肉親の死と生活の苦しさに、旧世代に屈服しようとしている。ジオン創業の時代を思い起こしたまえ! 地球よりもっとも離れたこの新天地、サイド3こそ、諸君らの父母が選んだ、真に選ばれた人類の発祥の地であることを思い起こせ! ジオン・ズム・ダイクンのあの烈々たる演説『新人類たちへ』を知らない者はいない! 思い起こせよ! 我らジオン公国の国民こそ、人類を永遠に守り伝える真の人類である……!」

 だが、現実としてガルマは死に、聴衆はギレンの演説に心酔している。
弟の死は悲しむべきだが、それすらも陰謀と化すギレンは大きく右手で聴衆に手を広げる最中であくまでもさりげなく、デギンを睨んだ。
 ギレンにとって、父デギンはもはや汚物にも等しい存在なのだった。
むしろ人間であるからこそ厄介である。聞けばダルシア首相と密談を交わしているという。
 今日がガルマではなく、デギンの葬式であれば、事はもっと容易にギレンの好むほうに転んでいたはずだ。

ギレン「何の洞察力も持たない地球連邦の旧世代に人類の未来を委ねては、人類の存続はあり得ないのである。ただただ絶対民主主義、絶対議会主義による統治が、人類の平和と幸福を生むという不定見! その結果が、凡百の無能者と人口の増大だけを生み出してゆくのである。その帰結する処は何か? 無能な種族の無尽蔵な増加は、自然を破壊し宇宙を汚すだけで、何ら文明の英知を生み出しはしない! 種族の数が巨大になり、自然の体系の中で異常と認められるに至ったときは、鼠であろうと蝗であろうと集団自殺をして自然淘汰に身を任せてゆく本能を持ち合わせている。これは、生物が自然界に対して示すことのできる唯一の美徳である」
681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/06(日) 18:11:44.26 ID:vFt0CWIc0

キシリア「兄上もよくやる……」

 デギンとギレンの水面下のせめぎあいは知るものにはよく知られていた。
 キシリア・ザビ少将が専用の冠に似たヘルメットを脇に抱えて言うのを聞いて、ドズル・ザビ中将は堪忍袋の緒に鋏を差した。

ドスル「シャナは姉上が引きとると聞いたが……」

 毒づくドズルにキシリアはぬけぬけと返す。

キシリア「シャナは軍籍を剥奪されたのでしょう? なら、その後をどうしようと私の勝手。法的には何の問題もありません」

ドズル「シャナはガルマを守りきれなかった……! 他の部下への見せしめに左遷したのだ。それをないがしろにしてはガルマも報われぬ……!」

キシリア「シャナは有能です。使ってあげたほうが、親友であったガルマのためにもなるでしょう」

 冷たい言葉に200センチを超える巨漢のドズルは溢れる涙を止められなかった。

ドズル「ガルマこそ、将帥となってワシを使うはずの男だったのだ……この口惜しさはわかるまい! 兄上も姉上も政治家だ、陰謀家だ! だが、ガルマは違った……奴は真にジオンの救世主たるに相応しい男だったのだ……!」

キシリア「率直だな。ガルマにいい手向けになる」

 演説は続いていた。ドズルの涙は滾る熱気に蒸発してしまった。
 
ギレン「それがどうだ! 知恵がある故に、人類は自然に対して傲然として傲慢である。自然に対して怠惰である。ジオンは、諸君らの総意をもって、諸君らの深い洞察力ある判断をもって、自らに鉄槌を下したのである。人類が自然に対して示すことのできる贖罪を成したのである。時すでに八ヶ月余り! ここに至って諸君らが、初心を忘れたとはいわせない!」
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/06(日) 18:12:36.75 ID:vFt0CWIc0

ギレン『思い起こせよ! 我、ジオンの栄光ある国民よ! 諸君らの肉親の死を追って、我、愛するガルマが死んだ! なぜか!』
 
シャナ「坊やだからさ」

 軍用ジープの中でその嘲笑は、フルボリュームのラジオにかき消されていた。

ギレン『ガルマは、闘いに疲れた我らに鞭うつために死んだのである! 同胞の死を無駄にするなと叫んで死んだのである! 彼は……! 諸君の愛してくれたガルマは、ジオン公国に栄光あれと絶叫して死んだ! なぜか! ジオンの、いや、諸君ら、英知を持った人類による人類の世界こそ、真の人類のあるべき姿と知るからこそ叫べたのである。ジオン公国に栄光あれ、と! 起てよ! 国民! 今こそ、我らの総意をもって地球の軟弱を討つ刻である! ジークジオン!』

 ジークジオン! ジークジオン! ジークジオン! ジークジオン!

 ギレンの憤激を受けたジオン国民が解放した熱にシャナは頭が痛くなった。
 いや、頭痛の原因は耳障りなラジオではない。軍籍を失ったシャナを慰労館へ連れて行く部下の気遣いのせいでもない。

アラストール「大丈夫か、シャナ?」

シャナ「またよ……また……」

アラストール「しかし、我にも気がつかぬこととは、誠なのか?」

シャナ「…………」

 天上の劫火の問いにシャナは応えなかった。
 ギレンの演説が終わり、ラジオのスィッチが落とされたからである。

ジオン兵「着きましたぜ、少佐」

 荒野の貧民街の外れにある瀟洒な建物。三階建てだが、一階の喧騒に比して二階三階は隙間なくカーテンが閉められている。
 一階の酒屋で指名を受けた娼婦が上の階で客の相手をする典型的な娼館だが、手前上あくまでも慰労館である。

 もちろん、女であるシャナにこんな場所は無意味である。
 なのに、彼女はここに来ることを選んでいた。

 膝までの長い髪を乾いた風になびかせるシャナの前を行くジオン兵がウェスタンドアを開いて酒屋に入る。
 アルコールとタバコと硝煙――それとドラッグの匂い。ジオンの高官が来ているというのに、場は怒号と交渉で個々に盛り上がっていた。

シャナ「――ッ!?」

 見られている――いや、このざらついた感覚はそう、見透かされているようだ。

 シャナはその視線を探す。いた。一番端のカウンター。
 浅黒いインド系の肌の女だ。年齢はよく十代であることは確かだが、一にも見えるし九にも見える。

 目が合ったとき、薄く微笑んだ。それは娼婦が客を取るための媚びたものではない。

シャナ「お前、何を見た?」

 まっすぐにその女の許へ行き、シャナが訊ねる。

「あなたたちの後ろにあるもの……奪ったものかしら」

 シャナは驚愕した。この女には、正しいものが見えている。
 女の額でヒンドゥー教徒のビンディーがつぶらに光る。

シャナ「お前……名前は?」

「……ララァ。ララァ・スン」
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/06(日) 18:13:34.30 ID:vFt0CWIc0

 北米大陸 テキサス州 ゴラオン

 ジオン軍のガルマ・ザビを撃破したゴラオンは南米大陸のジャブロー基地との連携を取るために、大陸南端部に乗り出してきていた。

マチルダ「ガンダム及びコア・ファイターのパワーアップパーツ及び、オーラバトラーにも搭載が可能と思われる部品とその他の補給物資をお持ちしました。こちらがリストになります」

エレ「お預かりします。ありがとうございます」

マチルダ「報告の参考までにお訊ねしますが、これからエレ女王はどうなされるおつもりでしょうか?」

エレ「そこまでかしこまらなくてもよろしいですよ。我らは異邦の者ですから」

マチルダ「は。了解しました」

エレ「ゴラオンはこのまま南下して、ジャブローにある連邦基地との連絡を交換したいと思っております。必要ならば、エイブ艦長に言って航空地図をお渡ししましょう」

マチルダ「これは……あくまでも私の独り言として受け止めてくださるとありがたいです」

エレ「……なんでしょう?」

マチルダ「ジャブローとは連絡を取らないほうがよろしいかと思います」

エレ「どういうことですか?」

マチルダ「ジャブローは協力を取り付けるどころか、あべこべにゴラオンの戦力を接収しようとするでしょう。そしてそれを拒否したとき、ジオンを倒した後の標的が新たに増える可能性が非常に高いです」

アリサ「なぁに、それ!? ジャブローっていうのはそんなにヤなオヤヂの集まりな訳!?」

 ブリッジに入り込んできたのは、アリサ、すずか、なのはだ。
 声高な少女を見て、マチルダはやや驚いたようだったが、すぐに思い出す。

マチルダ「あなたたちが、ガンダムのパイロットなのね。はじめまして」

すずか「は、はじめまして」

マチルダ「あなたが月村すずかさんね」

すずか「どうして私の名前を……?」

マチルダ「あなたのお姉さんの忍さんとはお知り合いなの。心配していましたよ、あなたがガンダムに乗っていると聞いて」

すずか「ご、ごめんなさい……」

マチルダ「ふふ、伝えておくわ。でも、こうも言っていたわよ。あの子なら、うまく扱えるでしょうって」

すずか「そ、そんなことは……」

アリサ「そーんなことあるんですよ! すずかは本当にガンダムをこの中で一番うまく扱えてるんです! ねぇ、なのは?」

なのは「はいっ! すずかちゃんがいなかったら大変なことがいっぱいです」

 三人の応酬にマチルダは穏やかな笑みを浮かべていた。
 短くまとめられた髪、きゅっと引かれたルージュ、メリハリのきいたボディラインと女性士官の軍服。
 マチルダ・アジャン中尉にすずかたちは大人の女性の美しさを見た。
684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/06(日) 18:14:25.90 ID:vFt0CWIc0

 ゴラオンの一室

 先の戦闘でオーラ力を爆発させた珠姫は、起き上がりはするものの体力は明らかに落ちていた。
 今も寝台に半臥した状態でチャムが上げてくれるスプーンで食事を摂っている。

チャム「タマキ、まだ指が開かないの……?」

珠姫「そうだね……まるで指だけが別の人のものみたい」

 トッド・ギネスに突きを入れた後の珠姫の指は、ダンバインの操縦桿を握った形のまま解けなくなっていた。
 それは珠姫の意思だけの現象ではなく、チャムが指を持って引いても押しても、関節はぴくりとも動かないのだ。

珠姫「これもオーラ力が強くなったせいなのかな?」

チャム「でも、オーラ力が高まっているときのタマキは、なんだかタマキじゃないみたいで恐いよ」

珠姫「うん……わかるよ。私も恐い……自分が変わっていくのがわかるんだ……」

紀梨乃「タッマちゃーん、やっほー!」

 部屋の扉が乱暴に開かれていつでも明るい紀梨乃が入ってきた。
 びっくりしてチャムはスプーンを落としてしまった。

チャム「きゃぁっ、こぼしちゃった! もう、キリノったらぁ〜!」

紀梨乃「ややや、ごめんごめんご。タマちゃんはじっとしてていいからね〜」

珠姫「はい、じっとしてます」

チャム「あれ? キリノ、その花……?」

 こぼれたご飯を拭き取る紀梨乃は左手に数輪の花を持っていた。

紀梨乃「これ? 来る途中に生けてあったからもらってきちゃった。キレイっしょ、タマちゃん?」

珠姫「はい、ありがとうございます」

チャム「でも、キリノ……その花って……」

紀梨乃「そう、これバイストン・ウェルの花なんだよね〜、こっちに来てもまだ咲いてるのも不思議だよね〜」

チャム「その花って、バイストン・ウェルで『結婚の花』って言って、それを誰かに渡すのは『結婚してください』って意味なのよ?」

紀梨乃「へ……?」

珠姫「…………」

 部屋の中に気まずい空気が流れる。

珠姫「ごめんなさい」

紀梨乃「い、いいのよいいのよ、タマちゃん! 気にしちゃダメダメよ〜」

チャム「ふーん、地上って女の子同士でも結婚できるのね」

紀梨乃・珠姫「…………」
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/06(日) 18:15:36.43 ID:vFt0CWIc0

 ゴラオン 格納庫

アリサ「へぇー、これが新しい私のコア・ファイターね」

リュウ「お前のものとは決きまっとらんぞ」

アリサ「いいじゃないの! どうせ私たちぐらいしか乗ってないんだから!」

 少し離れたところのすずかとなのははマチルダと一緒の輸送機でやってきた整備兵見習いの少年から説明を受けていた。

すずか「それじゃあ、ガンダムは駆動系を中心にパーツを取り替えていくことになるんですね」

「はい。全体的にマイナーチェンジですけど、アポジモーターは新しく開発されたものなので、運動性は向上しているはずです」

なのは「それで、こっちのパーツがGパーツなんですね?」

「そうです。ガンダムはコア・ファイターとAパーツ、Bパーツの部品が合体して立つわけですけど、Gパーツを使うことで様々な用途に対応して換装させることができるんです。これがマニュアルです」

 まだ14、5の少年から手渡された分厚い紙束がすずかの小さくて柔らかい手にずっしりと乗っかる。
 少年はやや不安げにそれを見て言った。

「あの、今さらですけど、本当にあなたがガンダムのパイロットなんですか?」

すずか「あ、はい。よく言われますけど、そうです」

「失礼しました。僕も乗り方は知っていますけど、実際に動かすなんて、僕には無理そうだなって」

なのは「分かるんですか、ガンダムの動かし方?」

すずか「私が言うのもなんですけど、機密事項のはずじゃあ……」

「僕の父さんも、ガンダムの開発で技術責任者をしていたんです。母さんとケンカして一人で宇宙に上がっていったきり、直接会ったことはないですけど。僕がこの仕事をやれているのも、父さんのコネみたいなものですから」

すずか「そうなんですかぁ。私もお姉ちゃんに会いたいなぁ……」

「会えますよ。きっと」

すずか「ありがとうございます」

 そう言って少年はガンダムから離れていく。
 ナイーブで神経質そうな横顔だが、自分の工具箱を持って歩く様は充分に技術者の後ろ姿だった。
686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/06(日) 18:17:01.04 ID:vFt0CWIc0

 ドレイク・ルフトの旗艦ウィル・ウィプスは北米大陸の東部で司令官を失ったジオン軍を接収していた。
 残党兵とはいえ、その90%以上の吸収に成功したショット・ウェポンはやはり大した手腕だと、トッド・ギネスは苦笑していた。

トッド「俺も、ヤキが回ったもんだぜ」

 ボストンの広い町並みの上を偵察用飛行型オーラマシンに乗って、トッドは減速した。
 先の戦闘でオーラ力を拡散し続けて、レプラカーンを破壊した彼は主君ドレイクからしばらくの暇を与えられていた。
 トッドは当然断ったが、トッド用の機体――正確には彼についていける機体――がなくなったことは確かであり、新しいオーラバトラーが完成するまではウィル・ウィプスにいても仕方がなかったため、そのねぎらいを受けた。

トッド「新しいオーラバトラーはたしかズワァースとか言ったか……」

 ジオン軍のほうでは、ガルマ・ザビ大佐の弔い合戦を申し出、ドレイクもアレンたち三人を出すことにしたらしい。
 アレンはトッドの軍人時代の先輩にあたる。下手に軍功を立てられては、今の地位はすぐに取り替えられてしまうことだろう。

トッド「やられてくれるなよ、タマキぃ……」

 民家に降り立って、トッドはその家に入っていった。

トッド「ママァ!? ママはいるかい! トッドが帰ってきたぜ!」
687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/06(日) 18:19:56.11 ID:vFt0CWIc0

 ゴラオン 格納庫

すずか「マチルダさんはどうして補給部隊に入ったんですか?」

マチルダ「そうね。戦争という破壊の中でただひとつ、物を作っていく事ができるから、かしらね」

アリサ「物を作る……」

マチルダ「戦いは破壊だけでも、人間ってそれだけでは生きていられないと私には思えたからよ」

すずか「マチルダさんって、すごい人なんですね」

マチルダ「あら、生意気なことを言ってくれるじゃない」

なのは「にゃははは」

 ヴーッ! ヴーッ!

マチルダ「敵襲!?」

ゴラオン兵「二時の方向よりジオン・ドレイク軍です! ウィル・ウィプスは見えていませんが、二機のレプラカーンにビランビーと見たことのない黒いモビルスーツが三機、先頭に立っています!」

アリサ「黒いモビルスーツ、新型なの!?」

すずか「ガンダムで出撃しないと……」

 ガンダムの許へ走ってすずかは悲鳴のような声をあげた。

すずか「こ、コア・ファイターが入ってない!」

リュウ「す、すまん、月村! Gパーツとの換装組み立てに使っちまってる! ガンダムは出せん!」

すずか「そんな……すぐに戻せないんですか!?」

リュウ「まだ手作業でしか換装ができんから、すぐには無理だ」

すずか「そ、それなら私は二つあるコア・ファイターで……」

アリサ「やめときなさい、すずか。あんたまだちゃんとコア・ファイターで出撃したことないでしょ!」

すずか「で、でも……」

アリサ「たまには、私にいいとこ見せさせなさいよ!」

リュウ「アリサの言う通りでもないが、ガンダムは月村が乗るべきだ。残っていたほうがいい」

すずか「わ、わかりました。お願いします」

リュウ「おう、任せろ!」

 分厚い胸をリュウはどんと叩いた。すずかにはそれがとても頼もしく見えた。

なのは「高町なのは、いきまーす!」

 先に出たなのはを追いかけて、リュウ、アリサのコア・ファイターが続いて発進した。
 すずかはガンダムの換装作業を手伝いに走る。その後ろから大きな声がした。

紀梨乃「タマちゃん、ダメだよぉ! 安静にって言われてるじゃんか!」

チャム「タマキぃ! 降りてきてぇ!」

 ステップの手すりに身を乗り出して嘆願する紀梨乃の横を、ダンバインがオーラの光りを発しながら飛び出していった。
688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/06(日) 18:20:37.11 ID:vFt0CWIc0

 ゴラオン ブリッジ

エレ「オーラバトラーは各個に防衛網を維持。長期戦に備えなさい」

エイブ「ジオン軍はガルマ・ザビ大佐の弔い合戦の構えです。そうは退かないでしょう」

エレ「逆に、ドレイク軍には価値の薄い戦いといえます。まずはドレイク軍とは戦線を保ちつつ、ジオン軍を抑えましょう」

ゴラオン兵「エレ様! 反対方向、六時の方向からオーラバトラー、多数接近!」

エイブ「なんだと! 挟撃か!?」

エレ「ゴラオンの砲手をそちらに向けなさい! 進攻を許してはなりません!」

『ヘイ! その必要はアリマッセーン!』

エレ「えっ?」

エイブ「えっ?」

ゴラオン兵「えっ?」

 回線に何者かが割り込んでいた

『ゴラオンのバックはミーに任セナサーイ!』

エレ「えっ?」

エイブ「えっ?」

ゴラオン兵「えっ?」

 ドスンッ! ゴラオンの後部に突如、巨大なロボットが降り立った。

 いかつい髑髏のような外観にテンガロンハットとマントのようなレインコートで腰にはベルトで銃が吊ってある。

ジャック・キング『HAHAHA!! グレイトなステイツはテキサスマックが守リマース!』

 FU FU FU……YAH!
 OH カレタクサノカタマリガーカゼニフカレテー
 コーウヤヲコロガッテイクゼーオレハーヒトリサー
 OH アイアンザーップヲキメーター ビリーザキッドモー
 SOH タタカウオトコニニアーウー ユウキガアルーゼー
 OH トコガユメヲオイカケルーシンクノガンマンー
 マッカナチシオノキズナデーマタデアオオウゼー FU……
 yeah yeah yeah……wow wow wow……
 HEY! カゼヲキルヨウナオレーサァー ソレデモーキットー
 オーマエトハイッテイレーバー マタアエルダロウー
 マタアエルダロウー マタアエルダロウー FU……
 yeah yeah yeah……wow wow wow……FU……Ah!
689 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/06(日) 18:23:16.33 ID:vFt0CWIc0

ドレイク兵「なんだ、あのふざけた兵器は!」

ジャック<気合>「ヘイ! カマァーン! カマンカマンカマンカマァーンッ!」

ドレイク兵「うおぉぉぉぉっ!」

 ドウッ! バストールからフレイボムが放たれる!

ジャック<挑発>「そーれがユーのマキシマムですかぁ〜!?」

 ザンッ! ズバァッ! テキサスマックがどこからか抜いた剣でフレイボムを叩き落した!

ドレイク兵「くそっ! 一斉にかかるんだ!」

 ドレイク軍のオーラバトラーが編隊を成して襲い掛かる!

ドレイク兵「喰らえっ!」

 ビシュッ! 剣がテキサスマックに迫る! だが、まるで影を踏むかのような動きで素早く避けた!

ジャック<閃き>「HAHAHA!! ハズレッネ!」

メリー「兄さんヌ! 避けてはダメよ! ゴラオンを守らないと!」

ジャック<脱力>「オォーウ! SHIT!」

 テンガロンハットに乗り込んでいる妹のメリー・キングにたしなめられて、ジャックは剣をどこかにしまい、ホルスターから二丁の拳銃を持ち上げた。

ジャック<必中>「オーケェーイ! アメリキャーをこれ以上好きにはサセマセーン! GO TO HELL!!」

 バキュンッ! バキュン! バキュン! バキュン! 二丁のマックリボルバーが交互に発砲しまくる!

ドレイク兵「うわぁ!」

 全高38メートルのテキサスマックが放つ弾丸は一発が1メートルぐらいはある。
 装甲も薄くサイズも小さいオーラバトラーは次々と落ちていった。

ドレイク兵「このおぉぉぉぉ!」

 ブゥン! バキューンッ! 渾身の一撃もあっさりとかわされて、弾丸を叩き込まれてしまう。

ジャック<幸運>「ヘイ! ユーアー・HE・TA・KU・SO!! アンダスタァン?」

ドレイク兵「があぁぁぁぁぁっ!」

 ガキンッ! 最後に残っていた一機のバストールがテキサスマックの髑髏顔に剣を突き刺すことに成功した!

ジャック<根性>「オーゥ! ミーを本気にサセタネー?」

 その反撃で作戦失敗の気が晴れたのか、バストールは全速力でテキサスマックから離脱していく。

ジャック<不屈>「ジーザス! 逃げられてシマイマース!」

メリー「兄さんヌ! まじめにやってよ!」

ジャック<加速>「ヘェイ! GO!」

 ドォンッ! テキサスマックは巨体を爆進させてバストールを追っていく。

 その途中、テキサスマックは二丁のマックリボルバーを両手でごちゃまぜにし、気がついたときには一丁のマックライフルになっていた。

ジャック<狙撃>「チッチッチッチ、なってませんネー」

 ジャキンッ! テキサスマックは長いマックライフルを構え、照準をバストールに合わせた。

ジャック<狙撃必中熱血>「オォーイエーアー! ファイアーッ!」

 ドキュゥンッ! ライフル弾が遠く離れたバストールを貫いた!

ジャック<友情>「HAHAHA!! ミーがいるカッギーリ! アメリキャーは渡シマセーンッ!」

 ほんの数秒の間に、テキサスマックは二十機近いオーラバトラーを落としてしまった。

メリー「ブラボォー! さぁすがぁ! 兄さんヌ!」

ジャック「HAHAHAHA!!」

メリー「でもたぶん、登場は今回限りよ。原作でもそうだったし」

ジャック「フッ……アメリカの故郷が守れるなら俺には出番なんていらねぇのさ」キリッ
690 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/06(日) 18:24:37.76 ID:vFt0CWIc0

 ゴラオンの前方では、リュウのコア・ブースターを追い抜いてダンバインが先に二機のレプラカーンと一機のビランビーに接触しようしていた。

リュウ「おい、川添! お前は体調がよくないはずだろ! 無理をするんじゃない!」

珠姫「できます! 私はオーラ力を制御しなければならないんです!」

 さっきまで動かなかったはずの彼女の指はダンバインの操縦桿に吸い付いているようだった。

珠姫「レプラカーンとビランビー……トッドじゃない、地上人!」

 アレン・ブレディ、フェイ・チェンカ、ジェリル・クチビの三人だ。

珠姫「はあぁぁぁーっ!」

 ダンバインの剣にオーラ力を乗せ、先頭のレプラカーンと打ち合う。

ジェリル「はん! クソガキが!」

珠姫「こんな戦いに何の意味があるというんですか! 同じ地球人同士で争って!」

ジェリル「少なくとも、アタシにはこっちの生活のほうがマシだねぇ! ジャップの甘ったれ嬢ちゃんにはわからないだろうけどさ!」

珠姫「そうやってあなたは人を見下すことしかできないの!?」

ジェリル「聖人君子のつもりかい! 反吐が出るよ!」

 ギャインッ! 大振りなジェリルの剣に体積で劣るダンバインが押し出され、背後にはアレンとフェイが迫っていた。

アレン「もらった!」

フェイ「喰らいな!」

珠姫「やあぁぁぁぁぁぁっ!!」

 ガンッ! ギキィンッ! 振り向き様の鍔でフェイの剣を打ち上げ、刃をアレンと重ねる!

珠姫「あなたは故郷を守るの!? それとも侵略するつもり!?」

アレン「どっちだっていいことさ。俺の親だってロクなもんじゃねぇ」

珠姫「そんなのは答えになっていない!」

アレン「一握りの金で、人間はやっていけるってことさ」

フェイ「どけっ、アレン!」

 ガッ! ガァンッ! フェイ・チェンカのレプラカーンが両手持ちした剣を打ち込んでくるのを、珠姫は弾き返していく。

珠姫「そんな乱れた太刀筋で!」

フェイ「ダンバインだってガタモンだろうよ! ふらふらしてるぜ!」

珠姫「私は剣を迷わせたりはしない!」

フェイ「迷ったことがないだけだろぉが!」

珠姫「なん――ッ!?」

 ほんの僅かに、フェイのオーラ力が珠姫のそれを上回った。

 バァンッ! 二人の剣が触れ合った場所で爆発が起きたみたいに、剣は反発しあって機体ごと吹っ飛ばしあう!

 それを見定めたジェリルが一気に詰め寄る!

ジェリル「終わりさ! ダンバイン!」

リュウ「させるかーっ!」

 バババババババババッ! コア・ファイターで乱入してきたリュウ・ホセイがバルカンを連射しながらレプラカーンに突っ込んでいく!

ジェリル「ちぃっ! 邪魔が入る!」

紀梨乃「タマちゃん!」

 続いて、紀梨乃のボチューンも追いついてやってきた。チャム・ファウも一緒だ。

チャム「タマキぃ! 大丈夫!? 死んじゃってない!?」
691 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/06(日) 18:28:16.79 ID:vFt0CWIc0

珠姫「はぁっ、はぁっ……」

 接触した珠姫は呼吸を荒くしていた。前回と同様、これほど怒気を露わにしている珠姫に紀梨乃も若干の恐れを抱いた。

紀梨乃「タマちゃん、無理しちゃダメだよ! もうダンバインを戻して!」

珠姫「いえ、まだっ……! せめてあの人たちを遠ざけるまで!」

紀梨乃「……わかったよ、タマちゃん」

チャム「キリノ!?」

珠姫「部長……」

紀梨乃「でも、絶対に死んじゃダメだからね」

珠姫「……はいっ!」

アレン「ボサっとしてる余裕があんのかね!」

 グォーン……! コア・ファイターを振り切ったアレンが剣の切っ先をまっすぐ伸ばして突き進んでくる。

 それをダンバインとボチューンはバラけて避けた。

珠姫「やぁぁぁーっ!」

 ガキィンッ! オーラ力を散らしながら、剣はぶつかりあった。



 オーラバトラーが空中で火花を散らす一方で、地上を走るのは、黒い装甲に十字の中のモノアイ、そして腰部からフレア・スカートのような傘がついたモビルスーツだ。

ガイア「アッハハハハ、このドムというやつはすごいな。つい三日前までザクに乗っていたのが嘘みたいだ」

 黒いスカートつきのモビルスーツ・ドムに乗るミゲル・ガイアは三段階のブロックが組まれたアクセルペダルをいっぱいに踏み込んだ。

オルテガ「こんな速度を出しながらザクより揺れないとは、ジオンの技術者も捨てたものではないな」

 後ろから同じドムでついてくるオルテガの言うとおり、ドムは走行中の揺れというものとは無縁の機体だった。
 なぜなら、スカートに隠れたドムの脚部には熱核ジェットエンジンが取り付けられており、地面と接さないホバー走行が可能となっているのだ。

マッシュ「これなら、連邦の巨大戦艦と白いモビルスーツをやれるかもしれんな」

 また、ザクと比べて武装も進化している。
 ザク・マシンガンと呼ばれる120ミリは給弾速度が格段に上がっているし、360ミリの大口径バズーカに対モビルスーツ用に開発された簡易ロケットランチャー・シュツルムファウストとヒート・サーベルはザク以上に取り回しが容易だ。
 試験搭載されたビーム砲も出力は弱いがそれ故に至近距離で目くらましに使用することが出来る。

マッシュ「隊長、敵の戦艦が視界に入ってきましたぜ」

ガイア「慌てるな、マッシュ。俺たちの任務は連邦の白いヤツだ」

オルテガ「迎撃が出てきたぜ! 戦闘機だ!」

ガイア「報告によれば、シャナ元少佐と同じ力を持ったヤツが一緒のはずだ」

 少佐の前に元をつけることでガイアはシャナを侮蔑したつもりでいる。
 三機はフォーメーションを整えた。
 敵の戦闘機をモニターで確認した瞬間に、ガイアはマシンガンのトリガーを引いた。

ガイア「やはりいる! 白いガキ!」

 コア・ファイターには寄り添うように白く光りを放つものがいた。

オルテガ「奴らを落としゃモビルスーツも出てくる!」

 ダダダダダダダダッ! オルテガ、マッシュもガイアの射線を左右でフォローするようにマシンガンを撃つ。
692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/06(日) 18:29:02.93 ID:vFt0CWIc0

アリサ「そう簡単にっ!」

 操縦桿を引き込んでアリサは上昇し回避する。
 連日のように哨戒に出撃し、リュウというコア・ファイター乗りのライバルがいることで負けず嫌いのアリサもコア・ファイターの操縦をほぼ自分のものにしていた。

なのは「ディバイン・シューター!」

 一方で、アリサと分かれて下へ避けたなのはは黒い新型に近づき、十字の中で蠢くモノアイに畏怖していた。
 黒の中で紫や赤に明滅するドムのモノアイは大きく、少女の背丈とそうは変わらない。
 暗い夜中に幽霊にでも出遭ったかのような気分になるのだ。

ガイア「ガキは相手にするな! ヤツはちょこまかと動くだけだ!」

 何度もの交戦でジオン軍でもなのはのことは有名になっていた。
 同時に、一機も敵を落としていないというデータも既に知れ渡っている。

 ババババババババババッ! 三機のドムはなのはのディバイン・シューターには部屋に紛れ込んだ小さな虫ていどに注意し、執拗にアリサを狙い撃った。

アリサ「ちょっとちょっとぉ! なんで私ばっかり狙うのよ! 人気者は大変ね!」

 機体を回転させながらアリサはそれでもつかず離れずの距離を保ってドムの集中砲火をしのぐ。
 そして、それを見ていたなのは一旦、間を空けて杖を頭上で回す。

なのは「アリサちゃんを狙うなら!」

レイジングハート「Divine buster」

 薄桃色の魔力を伴って構えた杖の先にリングが形成される。
 封印効果を付加させなければ、ディバイン・バスターは比較的速いタイミングで撃つことができる。
 威力も物理的損傷は与えずに衝撃だけを機体に伝えさせる。なのはの思いにレイジングハートが応えた結果だ。

なのは「シュートッ!」

ガイア「来るぞ、散開!」

 ドシューッ! 圧縮された魔力砲が発射される直前に三機のドムは攻撃を中止して各々の方向に逃げた。

なのは「速い! あのスカートの中!」

 ドムの回避運動の速さがスカートのジェットエンジンであることになのはは気付いた。

なのは「レイジングハート! あのスカートの動き、ちゃんと覚えておいてね」

レイジングハート「Alllight my muster」

なのは「すずかちゃん、早く来てね……」
693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/06(日) 18:31:43.05 ID:vFt0CWIc0

マチルダ「ミデアを上げなさい! 輸送船だって、ミサイルぐらいはあるのよ!」

 女性にしては盛り上がる声に部隊の全員は文句一つなく従った。

 旗色は決して悪い訳ではない。
 だが、一番目立つダンバインは三機のオーラバトラーに攻撃され、近づこうとする味方は真っ先に別機により落とされている。
 そこにミデアで割り込んでいくのである。敵の列を乱すことぐらいはできるはずだ。

マチルダ「私たちだって、戦場を飛びまわっているのよ」

 彼女の口癖だった。女性士官<ウェーブ>で輸送部隊。付け入ってくる人間をそうあしらってきたのだ。

珠姫「何か近づいてくる! 輸送船!?」

リュウ「マチルダ中尉!?」

マチルダ「撃ちなさい!」

 ミデアが一機のレプラカーンに機銃を撃つ。

ジェリル「ちぃぃ! 邪魔をするなよ!」

 横槍を入れられたジェリドは激怒して攻撃の対象をミデアに変更した。
 それだけで充分な隙だった。

紀梨乃「やぁーっ!」

 バキィンッ! 直線的な動きのレプラカーンの左肩にボチューンの剣が突き刺さった!

ジェリル「うぐぁ!」

アレン「馬鹿が! 助けんぞ!」

 シンプルな侮辱をしてアレンはフェイと打ち合っているダンバインへと飛んだ。

マチルダ「そこっ!」

 その後ろにぴったりとミデアが張り付いていた。

マチルダ「ミサイル発射!」

 ドシュゥッ! ミデアの備え付けられたミサイルが二基、ビランビーに向かっていく。

アレン「そう来るかい、なら相手してやるぜ!」

 バシュッ! バシュッ! ひらりとミサイルを回避したアレンは返す手のオーラショットでミデアの右翼を折った!

マチルダ「あああっ! 全員! 備えろ!」

アレン「馬鹿めが、とどめだ!」

 ビランビーが剣を振り上げてミデアに迫る。
 だが、そこにリュウのコア・ファイターがバルカン砲と共に突っ込んでくる。

リュウ「やらせるかーっ!」

アレン「ふん、無駄死にはしないさ」

 ひょいとアレンは停止してリュウをやりすごした。
 煙を上げながらミデアは墜落していく。

アレン「まあ、いい。奴らにくれてやるさ」

 すぐにアレンは本来の目的へと身を翻した。
694 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/06(日) 18:35:23.08 ID:vFt0CWIc0

 ズズズゥーン……! 黒煙を噴きながらミデアは荒野に胴体着陸した。

マチルダ「くっ……損害を知らせなさい! ミデアは動けるか!?」

連邦兵「ダメです! 右翼はおじゃんで左もキレてます!」

マチルダ「各自、白兵戦の用意をし、すぐにミデアを出ろ!」

連邦兵「ちゅ、中尉! 敵が来ます! 黒いモビルスーツ!」

マチルダ「なんですって!?」

 言った通り、割れたミデアのフロント板越しに黒い十字のモノアイが走りながらジャイアントバズを構えているのがわかった。

マチルダ「ここまで……!?」

マッシュ「モビルスーツの前にお宝いただきだ!」

 ドシュゥッ! バズーカ砲が煙を残して弾頭を射出した。火を噴出しているミデアなら一発で終わるだろう。

 なのはが間に入らなければの話だったが――

なのは「やらせないよ!」

レイジングハート「Protection」

 ドガァァッ! なのはの魔法障壁の前で砲弾が炸裂する。風も熱もこないが、巻き起こる粉塵と火の摩擦の火花が網膜に痛かった。

なのは「な、なんとか――っ!?」

 ミデアの防衛に成功し、ほっと息を吐いたなのはだったが、ドムは速度を緩めてはいなかった。

マッシュ「やってやる!」

 直進してバズーカの残りかすを切り裂いたドムはヒートサーベルを握っていた。
 熱は出していないが、障壁があるとはいえ直撃すればなのはの小さな体は充分に痛めつけられるだろう。

マッシュ「死ねぇぇ!」

なのは「だ、ダメぇっ……!」

 避けられない――固く縮こまって悲鳴を上げるなのはをヒートサーベルが叩きつけられる!

リュウ「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

マッシュ「な、なんだと!?」

 ドゴォッ! 精悍な雄叫びと共にドムに追突したのはリュウ・ホセイだった。

なのは「リュウさん!? きゃあぁぁぁっ!」

 コア・ファイターのくちばしがドムのヒートサーベルを持つ右手にぶつかり、なのはは強い風に吹き飛ばされて、止まったときにはリュウのコア・ファイターは三十メートルほど先に不時着していた。

リュウ「ぐっ、う……」

 翼の先端から地面に突っ込んだコア・ファイターはそのまま人間の側方倒立回転のように転がり、中のリュウは頭を左右から連続ではたかれたような気持ち悪さに前後が不自由になる。

 ガンダムが出てこないことに苛立ちを覚えていたドムの三人――黒い三連星はこの闖入者を鬱憤を晴らす矛先に選んでいた。

ガイア「マッシュ、大丈夫か!?」

マッシュ「あぁ! 右腕が飛んだがいける!」

ガイア「あの野郎を叩き潰すぞ!」

オルテガ「おう!」

 三機のドムはそれぞれバズーカ砲を抱えてコア・ファイターへ殺到した。

アリサ「ちょっと! やめなさい!」

ガイア「撃てーっ!!」

 ドドゥッ! ボシュッ! ドシュゥッ! 扇型に囲ったガイア、オルテガ、マッシュは一斉にバズーカをコア・ファイターに、リュウ・ホセイに叩き込んだ。

 ドゴォンッ! ドゴォッ! ドドォッ……!

リュウ「ぐおぉ! うあぁぁっ!」
695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/06(日) 18:37:24.85 ID:vFt0CWIc0

アリサ「やめてったらぁーっ!」

 悲痛なアリサの声も虚しく、ドムはマシンガンを手に、再び銃火を爆炎の中のコア・ファイターに撃ち続けた。

 バババババッ! ババババババババババッ!

なのは「あ、あぁ……リュウさん!」

レイジングハート「Divine buster」

 主の命を待たずに、杖はリングを形成する。

なのは「レイジングハート……シュートォッ!」

 当たってくれ――願いを込めた収束砲がガイア機の背後を襲う。

ガイア「はははははっ! なめてもらっては困るな!」

 ホバー移動するドムが滑るように横に移動し、ディバインバスターは討つべき敵を見失ってしまう。

 ババババババババババッ! その間にもドムはマシンガンの弾を爆炎の中へ送り続けていた。

アリサ「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 ババババババッ! 死んでしまう。死なせてなるものか。堪えきれずにアリサはドムにバルカンを掃射するが、三機は円を描くように横移動を続け、コア・ファイターの装甲を喰らっていく。

リュウ「…………」

 コクピットの中のリュウ・ホセイは弾丸の音と機械が爆ぜる音。 そして、少女たちの声を聞く以外には何もしなかった。

 何もできなかったと言っていい。バズーカ砲の直撃で肉厚な彼の喉はヘルメットとシートの圧迫で潰れていた。

リュウ「俺には何かが残せたのか……?」

 音声器官としての役割を失くした喉で彼は言う。口腔内にどろりとしたものが溢れ、鉄錆の臭いが鼻の中に充満して、胃が蠕動した。
 出撃直前にマチルダ・アジャン中尉が少女たちに語ったことを思い出していた。
 戦場で、何かを生むことが出来るのか……装甲板をノックする音が変化するのを感じながら、リュウ・ホセイが最後に考えたのはそれだった。

 チュドォッ! 煙と電気はついに一柱の炎となった。

なのは「リュウさぁぁぁぁん!」

アリサ「嘘でしょ……リュウ……違うでしょ!」

 いくら呼んでも、返事はない。
 コア・ファイターだった物はその搭乗者を伴ってまた爆発した。
696 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/06(日) 18:40:06.99 ID:vFt0CWIc0

 ドムは破壊されたコア・ファイターにはそれ以上の興味を示さなかった。
 なぜなら、彼らのレーダー圏内に侵入してきた機体があるからだ。

ガイア「オルテガ、マッシュ! 来たぞ、連邦のモビルスーツだ」

 丘になっている箇所に佇立するガンダムは荒野の風の中、太陽の光りを全面に浴びていた。

すずか「あれが……ジオンの新型……」

なのは「すずかちゃん!」

すずか「なのはちゃん、ごめんね、遅くなっちゃって」

 ガンダムの中にいるすずかは、撃破されたのがリュウだとはまだ知らないようだった。
 なのはは少し悩んだ末、そのことを伝えるのはやめた。

なのは「レイジングハート、すずかちゃんにデータを転送して」

レイジングハート「Alllight my muster」

 記録していた敵機の情報がレイジングハートからガンダムへ送られる。

すずか「ありがとう、これならなんとかできると思う」

なのは「うん……私もサポートするからね……」

 その間にもフォーメーションを組みなおした三機のドムがガンダムとの距離を縮めてきていた。

ガイア「ガンダムをやる! オルテガ、マッシュ! ジェットストリームアタックだ!」

オルテガ「わかった!」

マッシュ「了解!」

 シュイィィィィィ……! 地面を滑るドムはガンダムとの接触距離直前に縦一列に並んだ。

すずか「う、後ろが見えない……!」

ガイア「ジェットストリームアタックだ!」

 ブオッ! ヒートサーベルを手にガイア機がすずかに斬りかかる。

すずか「く、来る!」

 データにはない攻撃と状況に戸惑いながらも、すずかはビームサーベルで最小の動きの突きを繰り出す。
 二つが交差する寸前、ガイアはヒートサーベルを出すことなく、ジェットノズルを噴かして跳んだ。

すずか「上!? いや、前!?」

 ドムの後ろにもう一機のドム――マッシュ機がシュツルムファウストを発射した。
 ドガァァッ! この対モビルスーツ用ミサイル兵器をすずかは辛うじてシールドで防御することに成功する。

すずか「うぅぅっ! まだ来る!」

 マッシュ機が左に避けていく。そしてその奥からオルテガがバズーカ砲を撃つ!

すずか「わぁーっ!」

 シールドを捨ててガンダムはバーニアを全開にして大きくジャンプした。
 弾頭はその足の下を通っていった。

マッシュ「避けた!?」

 ガンダムの性能は充分検討していたが、ここまでの動きは予想外だ。
 三人は一様に驚き、ガンダムが着地すると同時に集結し、隊列を組みなおした。

ガイア「思った以上の動きだ。だが、いけるぞ、もう一度ジェットストリームアタックだ!」

マッシュ「おう!」

オルテガ「いくぞ!」

 シュイィィィィィ……! 再びドムは振り返ったガンダムに対して縦一列に並ぶ。
697 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/06(日) 18:41:31.09 ID:vFt0CWIc0

ガイア「喰らえ!」

すずか「また来る――きゃっ!」

 肩にバズーカを担いだガイアのドムが、胸部のビームを拡散させた。
 目くらましをされたガンダムの動きが鈍るのを確認しながらガイアはバズーカ砲を撃つ!

なのは「そこっ! ディバイーン・バスターッ!」

 バシューッ! ドォン! なのはのディバインバスターがバズーカを吹き飛ばした!

ガイア「なんだと!?」

すずか「わぁぁぁぁぁ!」

 爆煙の中ですずかは学習コンピュータが予測した敵の動きにあわせてペダルを踏み込み、また大きくジャンプした。

 ガシッ! ガンダムの左足がドムの右肩に乗り、ガンダムはさらにそこを蹴って推進する。

ガイア「俺を踏み台にした!?」

マッシュ「おあぁっ!?」

 ガイアとマッシュの声はほぼ同じタイミングだった。
 先頭のドムの肩をステップボードにした白い機体は抜いていたビームサーベルを後ろでシュツルムファウストを構えていたマッシュ機のモノアイに突き刺した!

 ガシュッ! ビームサーベルの右手首ががくんと直角に曲がり、ドムの首を引き裂く!

マッシュ「うおぉぉぉぉぉぉぉ!」

 ボンッ! ドムの首から上が爆発した!

オルテガ「このヤロォ!」

 ザシュッ! ヒートサーベルを構えたオルテガがガンダムの肩を袈裟切りにする!

すずか「あぁぁぁっ!」

なのは「シュートッ!」

 ドドゥッ……! 負傷したガンダムが倒れこみ、なのはの魔力収束砲がオルテガ機に当たる。

オルテガ「ぐおぉっ!」

ガイア「オルテガ、マッシュ! 無事か!?」

マッシュ「なんとか脱出した。拾ってくれ」

オルテガ「こっちもなんとか無事だぜ」

ガイア「マッシュのドムがやられ、武器もない。仕方ない、撤退するぞ!」

オルテガ「了解!」

 滑るガイア機がマッシュの脱出ポッドを回収し、オルテガ機がホバーは続けているマッシュ機を牽引して一挙に引き上げていった。
698 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/06(日) 18:42:55.86 ID:vFt0CWIc0

すずか「お、追い払えたんだね……」

なのは「うん……」

すずか「あれ、アリサちゃんは?」

なのは「えっ……あ、あれ?」

 アリサのコア・ファイターが見当たらなくて、なのはが探す。

なのは「あ……」

 すぐに見つけることができたが、そこでなのは声を失ってしまった。

 アリサのいる場所は、あの破壊されたコア・ファイターのすぐ近くだったのだ。

すずか「な、なのはちゃん……あれ、もしかして……」

 アリサはコア・ファイターに積まれている消化剤をありったけぶちまけていた。
 その度にもうもうと立ち込める白い煙にすずかは声を震わせる。

すずか「コア・ファイター……そんな……まさか、リュウさん……」

アリサ「まだ……模擬戦で一度も抜いたことがないのに……どうしてよ……」

すずか「私が……もっと早くガンダムで出ていけたら……」

アリサ「……くぅっ!」

 ガァン! 消化剤の容器を叩きつける音が、銃火の下で響いた。
699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/06(日) 18:45:08.76 ID:vFt0CWIc0

紀梨乃「やぁーっ!」

 ザシュッ! 上空で戦うボチューンの剣がレプラカーンの翼を穿った!

フェイ「チッ!」

珠姫「――ふっ! そこっ!」

 ガギィンッ! 珠姫の剣もまた、ジェリルの剣を弾き飛ばす!

ジェリル「このっ、つけ上がるんじゃないよ!」

 バァンッ!激情を増加させたジェリルがオーラ力を飛ばし、ダンバインを尻ごみさせた。

珠姫「くっ……憎しみのこもったオーラ力が!」

 負けじと珠姫もオーラ力を高めていく。

珠姫「――うぅっ……!」

 だが、集中するほどに珠姫の額に脂汗が滲み出て、体の骨が少しずつ削ぎ落とされていくような痛みが走る。

アレン「どうしたダンバイン! 動きが鈍いぞ!」

 ガキンッ! ガン! ガキィンッ! アレン、ジェリルが二人がかりでダンバインに攻撃を仕掛ける。

珠姫「うあぁぁぁぁぁぁーっ!」

 対抗する力――珠姫はオーラ力の力場をイメージし、拡大させた!

アレン「ぐっ……!?」

ジェリル「なんだ……!?」

珠姫「落ちろぉ!」

 ザンッ! ズバァッ! 強大なオーラ力に圧倒され、動きを止めてしまったレプラカーンとビランビーを、珠姫は一瞬で斬り捨てた!

アレン「馬鹿な……っ!」

ジェリル「ちぃぃっ! 憎たらしいよ!」

紀梨乃「たぁーっ!」

チャム「いっけぇぇぇぇっ!」

 ズシュッ! ボチューンの突きもフェイの右肩に入り込んだ!

フェイ「くっそぉ……!」

 落ち着かない動きで三機は珠姫たちから距離を取る。

珠姫「まだ戦うと言うの!?」

ジェリル「その横柄な態度が崩れるのが見てみたいのさ!」

珠姫「どっちが!」

紀梨乃「タマちゃん、聞いちゃダメ!」

チャム「キリノぉ、やっぱりタマキが変だよ! 怖いよぅ」

アレン「ジェリル、フェイ! ダメージリポートをしろ!」

ジェリル「行けるさ! あのいけ好かない小娘をやらなきゃ帰れないね!」

フェイ「その通りだ!」

珠姫「これ以上、無駄な争いを続けるなら!」

 パァンッ! 剣を構えた珠姫が先ほどと同じように、オーラ力を球状に発した!
700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/06(日) 18:46:22.56 ID:vFt0CWIc0

珠姫「ウッ――!」

 だが、オーラ力の波がアレンたちに差しかかる寸前、珠姫の頭の中でぴんと張られていた糸がぷつりと切れた気がした。

珠姫「あ……っ」

紀梨乃「タマちゃん!?」

チャム「いやぁ! タマキぃ!」

 度重なるオーラ力の発現は珠姫の体力、精神をすり減らしていた。
 それが、ついに限界を迎えたのだ。
 オーラバトラーのエンジン部であるオーラコンバーターにオーラ力が届かなくなり、ダンバインは揚力を失って降下していく。

アレン「ジェリル、フェイ、やるぞ!」

ジェリル「あぁ!」

フェイ「おう!」

 当然、それをアレンたちが見逃すはずがなかった。
 パワーをなくしたダンバインを彼らは包囲にかかる。

チャム「キリノぉ! 奴らやってくるよぉ!」

紀梨乃「こんなときにーっ!」

珠姫「くっ……そんなこと……」

 霞む視界の中でこちらに来るビランビーを見据えて、珠姫は唇を噛んだ。

珠姫「そんなこと、させないっ!!」

 切れた糸を無理に繋ぐように、珠姫は脳幹を発奮させた。

珠姫「くあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 ズァァァァァァァァッ! ダンバインからオーラ力が放出され、レプラカーンとビランビーに取りついた!

アレン「ぐっ!」

珠姫「うあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 ボシュッ! ボンッ! ドンッ! アレンたちの三機から突如煙が噴き出す!

アレン「な、なんだと!?」

ジェリル「なにが起きてるんだい!?」

フェイ「き、機体が故障した!?」

 誰も知りようの無いことだが、珠姫のオーラ力がアレンたちのオーラバトラーのコンバーターに干渉してオーラ力を増幅させ、その限界点を振り切らせたのだ。
 レプラカーンやビランビーでは、オーラ力に耐えられる限界は14から17程度である。
 これを破壊するためには実に20以上ものオーラ力が計測される必要があるだろう。

 そして、それほどの力が戦場の片隅にまで余波を行き渡らせたとき――

 キィン――!

なのは「!」

 確かな魔力の感触になのはが空を見上げたとき、青色の小さな宝石が光りを放っていた。

なのは「ジュエルシード!?」
701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/06(日) 18:47:53.34 ID:vFt0CWIc0

 こんなところにも落ちていたのか――急いでレイジングハートをシーリングモードに変形させる。

なのは「いくよ、レイジングハート!」

レイジングハート「Yes.Flier fin」

 まだ発動する前である。
 それならば、直接触れて回収したほうがいい。

なのは「アリサちゃん、すずかちゃん、ごめんね、行かなくちゃ!」

アリサ「うん、わかってるからさっさと行ってきなさい!」

すずか「気をつけてね、なのはちゃん」

 まだリュウのコア・ファイターは燻ぶっている。
 ジュエルシードは願いを叶えてくれるが、死者を蘇らせてはくれない。
 魔法は万能ではないのだ。
 なのに、ジュエルシードのような過去の遺失物というものは人間が神だの悪魔だのを目指して造ったものだから、なまじ願望を叶えようとして力を与えてしまう。

 いつでも、力を求める人間はいる。

レイジングハート「caution.above」

なのは「え――ッ!?」

 進路に捉えたジュエルシードよりも更に上に、もう一人の少女がいた。

レイジングハート「A magic reaction」

なのは「魔力!?」

 陽光の下で目の覚めるような輝きを反射させている金色の髪の少女は手に同じく金色のコアを持つ斧を持っていた。

「いくよ、アルフ」

 その少女が何かを呟いたのをなのはが遠目で気付いたとき、白い袖が左右で引っ張られた。

なのは「な、なに!?」

 動揺している間に両足首も引っ張られ、まるで磔にされたみたいになのはの体は動かなくなってしまった。
 唯一動かせる首をめいっぱい回すと、両手足に赤い鎖のようなものが巻きついていた。

なのは「なんなの、これ!? レイジングハート?」

レイジングハート「Chain bind.This is a magic chain」

なのは「チェ、チェイン・バインド?」

「そうさ、魔法の鎖さ。かかったら最後、すぐに脱出はできないよ」

 レイジングハートの分析に親切な解説をいれたのは、なのはの背後に現れた女だった。
 背が高く、肉付きのいい体をショートパンツに大胆なバストアップのベストにマントを羽織った娘だが、橙色の髪から犬のような耳が生えているのが、なのはの目に残った。

なのは「あ、あなたは……どちら様ですか!?」

「悪いけど、教えてあげる義理はないねぇ。ま、大人しくしていてくれたら、見逃してあげないこともないけど」

 金髪の少女が黒い斧の先に魔力を集めてジュエルシードを近づいていく。
 雷光の煌めきの如く美しく力強い――そして同時に儚さも感じ取れる魔力光だ。

「――Seeling mode get set」

なのは「ジュエルシードを封印!? どうするの! あれはとっても危険なものなんです!」

「さっきも言っただろう。教える義理はないって。おいたがすぎるとガブッ! っと言っちゃうわよ」

 犬歯にしては長すぎる輝きがなのはの真横で音を鳴らした。
702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/06(日) 18:49:05.06 ID:vFt0CWIc0

「Seeling」

 ジュエルシードは既に少女の斧に回収されてしまった。

「…………」

 回収によるジュエルシードのプログラム書き換えを瞬時に完了させた斧が冷却の煙を吐く。
 金髪の少女はじっとなのはに目を向けた。

 視線を交わした時、なのはは思う。
 真っ暗な瞳――静かで、怖いけれど……とても、寂しそう。

なのは「あ、あなたはいったい……誰なの?」

「……君も魔導師だね。こんなところに魔導師がいるとは思わなかった」

 なのはの質問に少女は答えなかった。
 代わりに、斧の先端に雷の魔力を集めた。

なのは「!?」

「私たちはジュエルシードを集めてる。君もジュエルシードを集めているなら、私たちは敵同士っていうことになる」

なのは「そ、そんな……!」

「Foton luncer」

 黒い斧が低い声で告げる。
 その直後の射手たる少女の呟きを確かになのはは聞いた。

「……ごめんね」

 ズバァッ!

なのは「きゃぁぁぁーっ!」

 雷の矢がなのはの体を貫く! その一撃だけでなのはの全身には強力な電撃が走り、気絶に追いやった。

「……行こう」

「は〜いはい」

 静かな声が先に消え、陽気な返事が後に姿を消した。
703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/06(日) 18:50:21.67 ID:vFt0CWIc0

 戦いは既に終局していた。
 ガルマ・ザビを弔うジオン公国軍は夥しい数の犠牲を出して、まともな撤退命令も出ないままに個別に戦い、逃げる者は逃げ、果てる者は果てていった。
 玉砕戦ゆえの皮肉だが、ゴラオンはバイストン・ウェルに端を発した開戦以後最大の損害を出した。
 
エレ「この地平に果てた者たちの魂が、海と大地の狭間、命の帰る地バイストン・ウェルで浄化されることを……」

 墓標に祈りを終えた後、ラウの国の女王エレ・ハンムは付き添っていたマチルダ・アジャン中尉と向き合う。

エレ「それでは、ドレイク軍との戦いは私たちが引き受けます。聖戦士たちをどうかお願いします」

マチルダ「了解しました。新たな艦を用意していただき、ありがとうございます」

 敵の先陣を退け、奮迅の働きを見せた少女たちは今や満身創痍だった。
 彼女たちを仲間の元へ――荷物を増やした大きなとんぼ返りをマチルダは引き受ける。

 今、広大な宇宙で最も価値のあるものを運び、疲れた心を補給させる。
 彼女は、この名誉を一生の誇りとすることだろう。


 第十四話 宿命! いくつもの出逢いと別れなの 完
704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 19:35:57.55 ID:tjG59DGAO
705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/08(火) 18:10:25.62 ID:odrAhK6G0

 第十五話

ミケーレ「私が、諸君らゲッターチームを預かることとなった。機械化独立混成第44旅団大隊司令のミケーレ・コレマッタ大尉である! 」

 軍用車両から降りもせず、砂塵防止用のゴーグルをつけたまま、居丈高にミケーレ大尉が唾を吐いた。

夕映「極東方面臨時司令部早乙女研究所所属ゲッターチーム、綾瀬夕映、到着しました」

のどか「お、同じく極と――」

 砂に咳き込みそうなのを我慢して言おうとしたのどかとハルナの台詞は怒号で永久に奪われる。

ミケーレ「面倒なことはいい! 俺は貴様らに寝る場所を用意するだけだ! 貴様らのことは貴様らで勝手にやれ!」

夕映「りょ、了解!」

 オデッサは連日の乾燥と戦闘で酷い砂埃だった。
 行き交う軍人の全てがいきり立っては声を枯らして足りないパーツや武器をどこにいるともわからない技師に注文している。

 ミケーレは夕映たちの返事も聞かずに車両にもぐりこんでいた。

夕映「わぷっ」

 タイヤが回り始め、三人に砂がかかる。
 それに全く遠慮をすることなく車両が発進する――が、すぐにまた急停止することになる。

ミケーレ「畜生! どこの馬鹿だ! でかい図体でのこのこと!」

 叫ぶミケーレの前に止まっていたのは三角キャタピラにコンテナのような上体を乗せた砲撃戦用モビルスーツRTX-440 陸戦強襲用ガンタンクだった。

アリーヌ「ここかい! 次々と兵士が死んじまう死神の44連隊ってのは!」

 三機のガンタンクから出てきた兵士がしゃがれていながらもよく通る高い声で叫ぶ。

ミケーレ「ようやく到着か! 囚人兵ども! 後一日遅れていれば監獄に逆戻りだったぞ!」

ドロバ「ヨーロッパからくんだりそこら中ひきずりまわされたんだ! 来てもらっただけ良かったと思え!」

ミケーレ「仮釈放の身分でほざくな! 黙って命令に従えばいいのだ!」

ルイス「なんだと!」

アリーヌ「よしな!」

 それから、しばらく罵詈雑言をかけあってから、車両はガンタンクを避けて過ぎていき、ガンタンクの三人はキャタピラの近くで待機していた従兵に整備を命じてから、こちらへ歩いてきた。

アリーヌ「ん、なんだいアンタたちは? こんな子どもがどうして最前戦にいるんだ?」

 ヘルメットを取ったアリーヌ・ネイズン技術中尉が細い金髪の流れる美女だということにきづいて、夕映とのどかが圧倒されている脇から、ハルナがぬっと出て握手を求めた。

ハルナ「極東方面のゲッターチームよ。オデッサ基地攻略の助太刀に来たの」

アリーヌ「あぁ、アンタたちがスーパーロボットってやつか。私はアリーヌ・ネイズン技術中尉。こっちは部下のドロバとルイス」

 六人はそれぞれ握手を交わす。
 だが、一通りのことを終えると、アリーヌはそれきり関心を失ったように背を向けた。

アリーヌ「ま、アタシたちのことは覚えてくれなくていいよ。どうせここが最後になるんだからさ」

夕映「最後……?」
706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/08(火) 18:12:01.64 ID:odrAhK6G0

 意味深な台詞に夕映が訝しがるが、アリーヌは手を振るだけで応えず、ガンタンクと砂嵐に隠されて見えなくなった。

ハルナ「ふぅん、アレが連邦が量産するモビルスーツって訳ねぇ」

のどか「でもー、ガンダムとはぜんぜん違うねー……」

ハルナ「ま、試作機がハデで量産機が地味ってのはよくあることよね」

のどか「そういう問題じゃあ、ないと思うんだけどー……」

夕映「……それより二人とも、あのモビルスーツが格納されるのは私たちの倉庫ですよ」

のどか「えぇっ!?」

ハルナ「ナヌぅ!?」

夕映「急いで入れないと私たちのスペースがなくなるですよ」

 ゲットマシンは一台でモビルスーツ並みの大きさがある。
 プレハブみたいな仮設倉庫でガンタンクとゲットマシンを六機も入れるとなると、格納前から入念にスペース計算をしなくてはならない 。
 この灼熱の砂嵐に置いていては機体の溝や関節に砂が詰まり、熱が溜まって動作不良を起こす可能性が高いのだ。

ハルナ「ヤバイヤバイ! さっさと入れなきゃ!」

のどか「あぅぅ〜」

夕映「私が先に行って話してくるですから、二人はゲットマシンを頼むです」

ハルナ「はいよ!」

 息を切らして走って夕映は大きな声でアリーヌを呼んだ。

夕映「ま、待ってください!」

アリーヌ「あん? なんだい?」

夕映「その、ここには私たちの機体も入りますので……少し待っていただけないでしょうか?」

 とはいえ、所属が違う部隊がかち合ってしまうと、衝突は避けられない。
 こういった場合は行動が速いほうが絶対的な優先権を持つことになる。

 だが、アリーヌは少し考えた後に驚くようなことを言う。

アリーヌ「みんな! アタシらは外だ! この嬢ちゃんたちにハコは空けてやんな!」

ドロバ「了解!」

夕映「えっ!? い、いえ、そこまでしていただかなくとも……」

アリーヌ「いいのさ、アタシたちのは布被せときゃどうにでもなる」

夕映「それなら、せめて寝る場所ぐらいは……」

アリーヌ「今日は徹夜で作業だよ。そしてすぐに出る」

夕映「で、ですが……」

アリーヌ「アタシたちは、こういうのには慣れてんのさ。アンタたちとは違ってね」

 そう言って笑うアリーヌは兵士とは思えない綺麗な並びの白い歯を見せた。
 だが、夕映にはまるで何かを諦めた女の笑顔に見えた。
707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/08(火) 18:13:14.70 ID:odrAhK6G0

 夜を待ってアリーヌの小隊へ夕映は出て行った。

アリーヌ「どうしたんだい、こんな夜中に。女の一人歩きは危ないよ」

夕映「こ、こんばんはです。アリーヌさん」

 不意に空から声をかけられて見上げると、アリーヌ・ネイズンがガンタンクの頭部から顔を覗かせていた。

アリーヌ「アタシに何か用かい?」

夕映「と、特に用というワケではないですが、気になったので」

アリーヌ「えぇ? 聞こえないよ、上ってきなよ」

 彼女は自分の座っているガンタンクの頭部を叩いた。降りてくる気はないらしい。

アリーヌ「そう、そこだよ。そこ上ったら右手にちょっと行くと梯子があるだろ」

 指示通りに夕映はガンタンクのツギハギのような装甲板を上っていく。

アリーヌ「見てごらん、あそこがジオンの司令部だよ。何て言ったかな……マ・ヌケだったっけ?」

夕映「マ・クベですよ」

 全高13.7メートルのガンタンクから見渡す世界はゲットマシンのガラスごしに見る世界とはまるで違って見えた。

夕映「それで、昼間のことなんですが……」

アリーヌ「このガンタンクは全高13.7、全幅10.9の半人型と突撃砲形態への変形が可能なモビルスーツでね」

夕映「えっ……?」

アリーヌ「見ての通り、ガンダムとかジムみたいなモビルスーツとはまるで違う。それは、この機体が開発段階で一度計画から抹消されちまったからさ」

 夕映が呆然とアリーヌの横顔を見ている間にも、彼女は夜空を見上げたまま続けた。

アリーヌ「連邦の新兵器開発計画にはじめ、ガンダム、ガンタンク、ガンキャノンの三つのモビルスーツが作られる予定だった。それが、ギガノスのメタルアーマー開発者が亡命してきたってんで、砲撃と支援のモビルスーツは試験機を一つ作ってお蔵入りになったのさ」

夕映「それが、どうしてここに……?」

アリーヌ「一人の技術中尉が喰らいついたのさ。この機体の開発は絶対に連邦軍の技術継承に必要だからってね。そして、当初の計画通りとはいかないまでも、この三機が完成した」

夕映「それじゃあ、その人がいなかったら、アリーヌさんはこの機体には乗っていなかったんですね」

アリーヌ「あぁ、こんな忌々しいものに乗らなくて済んだんだよ」

夕映「えっ?」

 けっ、とアリーヌは舌打ちをした。夕映が引き気味になっていると、彼女は呪詛のように呟いた。

アリーヌ「こいつを作った奴はその情報と丸ごと持ってジオンに寝返ったんだよ。この機体は即封印され、一緒にいたアタシは軍法で終身刑、ありがたくも戦時特別手当で仮釈放されてこいつに乗せられる羽目になった。この呪いの機体と一緒にね」

夕映「それじゃあ、あなたが最後と言ったのは……」

アリーヌ「ここに奴がいるのさ。アタシたちを売ったクライド・ベタニーがね」

 復讐。アリーヌ・ネイズンを戦争にたたせるシンプルな理由に、夕映は言葉をみつけることができなかった。
708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/08(火) 18:13:45.75 ID:odrAhK6G0

 攻撃は日が昇ると同時に開始された。

ミケーレ「いいかぁ! 他の戦線は既に優位になっている! 今日ここで俺たちが奴らを叩けなければ全員死ぬと思え!」

 大尉の罵声が砂漠に轟くと、進軍速度が上がる。

夕映「私たちは、飛行艇を攻撃して制空権を奪うですよ」

のどか「うん!」

ハルナ「オーケイよ!」

 ヘルメットを被り、コクピットに座った三人は勢いよくゲットマシンを出撃させて叫ぶ。

夕映「チェェェェンジゲッタァァァァァァ! スィッチ・オーン!」

 ガシィッ! 三機のゲットマシンが重なり、赤いマントを備えたゲッター1となって大空へ飛び立った。

夕映「ゲッターワン! トマホゥゥゥゥゥク・ブゥメラン!」

 ぶぅん! 背中から巨大な手斧を出して一番近くにいるドップを二隻まとめて落とした!

ジオン兵「な、なんだあのでかい化け物は!?」

ジオン兵「あれも連邦のモビルスーツなのか!?」

 突如現れた巨大な機影に恐れ戦くジオン軍を夕映はゲッタートマホークで次々と落としていく。

ハルナ「あぁ〜ん、なんか夕映ばっかり活躍してつまんない感じよねぇ、のどか」

のどか「仕方ないと思うけど〜……」

夕映「トマホゥゥゥゥク! 二段斬りぃ!」

 ドガァ! ズバッ!

ジオン兵「う、うわぁぁぁぁぁぁ!」

夕映「愚かな戦争を続けるなら、骨の髄にまで叩きつけてやるです! ゲッターの恐ろしさを!」

ハルナ「あぁ〜、ダメだこりゃ。中の人スイッチ入っちゃったわ」

 説明しよう! 綾瀬夕映はゲッターロボ搭乗時にテンションが上がり、気力が一定値を超えると『中の人』が入れ替わるのである!!

 『中の人』が入れ替わった綾瀬夕映はいわばゲッターの中の人と同じなのである!!

 だが! 安心してほしい! 石川版ではないことは確かである!!

夕映<熱血>「喰らえぇ! ゲッタァァァァァビィィィィィィィィム!!」

 ビィィィィィィィィィ! 強襲揚陸艇ファルメルのメインエンジン部にゲッタービームが直撃した!

ジオン兵「ど、動力部……いや、船底部分がほぼ全壊しました! 墜落します! 脱出をぉ!」

のどか「ゆえ! 基地から何か来るよ……め、メタルアーマー!」

 目視でも充分捉えられる範囲にそれらは来ていた。
 飛行用のマッフユニットを着けたゲバイやダインに加え、砲撃用のドーラまで出てきている。

マ「ふふふ……ギガノスが地球を飛び立つ際に払い下げてやったものだよ。スーパーロボットといえども、これだけの数を相手にできるかな」

 メタルアーマーは二十から三十はいる。
 だが、夕映はギラと目を吊り上げて吼えた。

夕映「それだけの数でゲッターロボを叩けるとでも思ったですか、浅はかな!!」

ギガノス親衛隊兵「プラート大尉の為に!」

ギガノス親衛隊兵「行くぞぉ!」

 ダダダダダダダッ! 先頭のゲバイ、ダインが機関銃を構えて撃つが――

夕映「ゲッター線で進化した装甲の前にそんなもの!」

 ギキン! キン、キン! 無情にも弾はゲッターロボのダメージにならずに跳ね返されてしまう。
709 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/08(火) 18:15:39.36 ID:odrAhK6G0

ギガノス親衛隊兵「ダメだ! 接近戦で落とすぞ!」

夕映「ゲッターに格闘戦を挑むですか!」

 八機のメタルアーマーがゲッターロボを取り囲む。

夕映「いくですよ! のどか! ハルナ!」

のどか・ハルナ「了解!」

夕映「ゲッタァァァァァァレザァァァァァァァァァァ!」

 ゲッター1の手首からノコギリ刃が飛び出し、一気に前方へ飛び出した!

ギガノス親衛隊兵「く、来る!」

ギガノス親衛隊兵「迎撃だ!」

 敬愛すべき上官の血路を開くために彼らはシャトルに乗ることを諦め、ジャブロー戦線を停滞させることを選んだのである。
 機体の体格差ですでに倍以上あるゲッターロボに挑む兵士達の蛮勇は讃えられるべきであろう。

夕映「ゲッタァァァァァトマホゥゥゥゥゥク! レザァァァァァ!」

 ズガァッ! ギャシュィィィィィ!

ギガノス親衛隊兵「うわぁぁぁぁぁ!」

ギガノス親衛隊兵「このぉぉぉぉぉぉぉ!」

夕映「そんな動きで!」

 バキャッ! 握り固めた拳がダインの顔面を砕く!

ギガノス親衛隊兵「よし、捉えた! 当たれ!」

 ドゥッ! ドゥンッ! レールキャノンを備えたドーラの砲撃がゲッターに当たる!

夕映「ぐっ! 遠いところからの攻撃ですか!」

のどか「ダメージはたいしたことないよ、ゆえ」

 イーグル号、ジャガー号、ベアー号はオープンゲットの上昇を利用して包囲網の外へ周り、バルカンやビーム、ミサイルを発射していく!

ギガノス親衛隊兵「ど、どうすれば……うおぉぉぉ!」

ギガノス親衛隊兵「わぁぁぁぁぁっ、父さ――ッ!」

夕映「殺しはしませんよ。おとなしくおうちに帰りなさい!」

のどか「ゆえっ! あそこにジオンのふね!」

 のどかが示した先にはジオン軍の攻撃空母ガウが浮遊している。

夕映「一気におとすですよ! チェンジ・ゲッター1! スィッチ・オォーン!」

 ぐぉぉーん、ガッシュイィィィィン!

ギガノス親衛隊兵「ぐぐ、行かせるものか!」

夕映「邪魔をするなです!」

 ぶぉんっ! ゲッタートマホークの一振りでしぶとく残っていたメタルアーマーが煽られていった。
710 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/08(火) 18:19:39.27 ID:odrAhK6G0

ジオン兵「げ、ゲッターロボが来ます!」

ジオン仕官「撃てぇ! 撃ち落とせ!」

 ビュゥッ! ドシューッ! 連装メガ粒子砲がゲッターに当たる。

夕映「うっ! むっ、ゲッターはこんなものでは!」

ジオン兵「だ、ダメです!」

ジオン仕官「諦めるな!」

ジオン兵「高熱源反応ぉ!」

夕映<熱血幸運>「ゲッタァァァァァァァァビィィィィィィィィィィィィム!!」

ジオン仕官「退避ぃぃぃぃぃ!」

 ズギャァァァァァァァァァ! ッズゴォォォォォォォン!

ジオン兵「うわぁぁぁぁぁ!」

夕映「ゲッターの前に、敵はないですッ!」

『……ピ、ガガッ……やめ、ろ……! アリーヌ・ネイズン! 攻撃するな!』

 突然、全回線でミケーレ・コレマッタ大尉の怒号がコクピット内に響いた。

夕映「アリーヌさん……?」

『何だと! ふざけるんじゃないよ!』

『やめろ! これは司令部命令だ! ダブデに攻撃はするな!』

『奴を目の前にしていながら……! なっ、なんだ!? お前……なんだ!?』

夕映「アリーヌさん、何を言っているですか!?」

 いや、誰と話しているのか――! アリーヌはまだ精神病患者のようなうわごとを呟いている。

『奴が……クライドがそこにいるのかぁ!』

『待てっ! アリー……!』

 アリーヌの回線が強制的に断ち切られた。
 同時に、地上から大きな爆音が轟いた。

『アリーヌ! 応答しろ、おい!』

ハルナ「アリーヌって、昨日のガンタンクの……」

 夕映は迷っていた。アリーヌはおそらく仇を見つけ、そこに突撃を仕掛けている。
 彼女を止めるべきだろうか――だが、復讐をやめさせる権利など、夕映にはありはしない。
 ならば手助けをするべきか? いや、そんなことをして喜ぶような女性には見えなかった。

 ま、アタシたちのことは覚えてくれなくていいよ。どうせここが最後になるんだからさ――

夕映「あ、アリーヌさんはまさか!」

のどか「ゆ、ゆえ?」

夕映「くっ!」

 青褪めた顔を瞬時に赤く滾らせて、夕映はゲッター1をフルスピードで降下させ始めた。
711 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/08(火) 18:20:56.32 ID:odrAhK6G0

ハルナ「ちょ、ちょっと夕映、何してんの!」

夕映「アリーヌさんを止めなければ!」

 その時、まだ開き放しだった回線から聞いた事のある声がした。

『ゲッターチーム、聞こえるか、ゲッターチーム!』

ハルナ「レビル将軍!?」

『ジオンのダブデに向かっているガンタンクを止めてほしい。あれは自爆をするつもりだ!』

ハルナ「なんですって!?」

夕映「くっ! アリーヌさん!」

『あれにはクライド技術中尉が乗っている……彼は……彼は二重間諜<ダブルスパイ>だ!』

夕映「!」

のどか「スパイってことは……」

夕映「飛ばしますよ、二人とも!」

 速度計がマッハのレッドラインを振り切る。
 ゲッター1が流星のようになって雲を抜けたとき、黄土色の戦場が視界に映る。

 どこで何が起きているのかもわからない点と点のぶつかり合いの中、夕映ははっきりとダブデとそこに猛進する戦車を見つけた。

 戦車――突撃形態となったRTX-440陸戦強襲型ガンタンクはホバー移動するドムがジャイアント・バズを構えた直後に俊敏な動きで足下に潜り込み、30ミリ機銃と大型火炎放射器で薙ぎ払っていく。

夕映「早まったことなど、止めなくては!」

 直行するゲッターの目の前で、阻むものを全て排除したガンタンクはダブデの右ホバー部にぶつかろうとする。
 だが、衝突の寸前にダブデは急停止し、機対艇はメートル未満の距離で睨みあう事になった。

『まさか、君は……アリーヌ!? アリーヌなのか!?』

『この声は……クライド!』

 ダブデのスピーカーからの声にアリーヌが再び回線を開いた。
712 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/03/08(火) 18:22:24.20 ID:odrAhK6G0

『やはり、アリーヌ……まさか君が生きていたとは……』

『死んでいなくてがっかりしたか! アタシはお前を殺すために恥辱を噛み締めてきたんだ!』

『待ってくれ! アリーヌ、君は誤解をしている!』

『今さら何を言う!』

 ヴィーッ! ヴィーッ! EMERGENCY MODE! 発動! パイロットは直ちに脱出を――

『何の音だ、アリーヌ……やめろ! 僕は君を愛している!』

『愛だと……? ははは! そう言ってまたアタシを辱めるつもりか! あの時のように!!』

 7、6、5、4……カウントダウンが落ちていく……

夕映「アリーヌさぁぁぁぁぁん!」

 ゲッター1が手を伸ばす。ゲッターの膂力ならば、コクピットだけを掴み無理やりに引き千切ることが可能なはずだ――が……

 2、1……

 もはや、手遅れであった。

のどか「ゆえっ! だめぇぇぇぇ!」

 転瞬――緊急停止させられたゲッター1の見下ろす大地が紅く燃え上がった。

夕映「あ、あぁぁ……」

『間に合わなかったか……』

 ガンタンクには自爆装置に加えてハイパーナパームが積み込まれていたらしい。
 周囲一帯を焼き尽くす業火にまみれてダブデはまずホバークラフトを失い、動力部が爆発し、乗員が脱出する暇もなく炎に包まれていく。

 砂漠を染め上げる色の濃い炎と黒い煙は、死神が地獄の門を開いたかにも見えた。

『すまない……私がジャブローの決定を止められなかったばかりに……』

 レビル将軍は、アリーヌを初めとするクライド技術中尉の同僚たちに出奔の真相を報せようとしていた。
 だが、リアリティの追求をするジャブローの司令部が、それを許可せず無情な仕打ちを行ったのだ。

 皮肉にも、この焦熱を機に苦戦を続けていた第44旅団は中核を失ったジオン防衛ラインを突破することに成功し、連邦軍のオデッサ攻略の大きな楔を打つこととなる。

 元終身刑の非正規兵ゆえに公式記録にはないが、アリーヌ・ネイズン技術中尉が率いたRTX-440ガンタンク小隊の戦闘記録はダブデ級2隻、モビルスーツ二十数機、戦車十数輌、塹壕突破2溝――熟練兵の少ない連邦機動兵器の戦果としては最大級のものであった。

「そんな……クライドが……クラ、イ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 ゲッターロボが飛び去り、陸上戦艦第4打撃部隊の砲撃が始まる直前の絶叫は、誰の耳にも届いてはいなかった――……」


 第十五話 戦線! 死に神の燃ゆるオデッサ! 完!
713 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 20:34:00.79 ID:ciGFDt/AO
714 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/16(水) 17:29:20.60 ID:AfBoYm140

 第十六話

「シャロ……起きて、シャロ」

 頬を叩かれる痛みの中で、少女は目を覚ました。

「う、うん……なにー?」

「起きた、シャロ?」

「どうしたの、コーデリア?」

 シャーロック・シェリンフォードを起こしていたのは、コーデリア・グラウカ。ミルキィホームズのメンバーで青色のチェックワンピースを着ている。

「おい、エリーも起きたぜ」

「ネロ、ここはどこなの?」

 黄色のハーフパンツの譲崎ネロの横で緑の帽子のエルキュール・バートンが不安げにきょろきょろしているのにならって、シャロも首を動かす。

シャロ「なに、ここ……研究所?」

 四人がいるのは、見慣れた探偵学園の寮ではなかった。薄暗い灰色の壁の部屋のいたるところに機械が置かれてところどころ光りを発している。

コーデリア「ねぇ、シャロ、エリー。あなた、寝る前までのことは覚えてる?」

シャロ「普通にご飯食べて、お風呂に入って、ポッキー食べて寝てたー!」

エリー「シャロに同じく!」

ネロ「ボクらもそこまではちゃんと覚えてんだよ。じゃあ、寝ている間にまとめてここに連れてこられたってことだよな」

「その通りだ!」

 バン! 部屋のドアと思しき場所にライトが当たり、そこに白衣を着た男といかついボディスーツの金髪の男が立っていた。

シャロ・ネロ・エリー・コーデリア「だれ!?」

ターサン「ワシの名はターサン。ターサン博士と呼んでくれて構わない」

コーデリア「ターサン博士?」

シャロ「そんなことよりここはどこなの!?」

エリー「そうよ! 朝食のパンとミルクはどこ!?」

ネロ「カリカリのベーコンと黄身が二つの目玉焼きは!?」

シャロ・ネロ・エリー・コーデリア「めーし! めーし!」

ターサン「えぇい、うるさい奴らだのう!」

ギル「博士。このギル・バーグが黙らせましょうか?」

ターサン「いい。お前たち、飯を食わせてやるからこっちについてこい」

シャロ・ネロ・エリー・コーデリア「やったー!」

 四人はターサンとギルの後について研究所の中を歩いていく。

ターサン「おぬしたち、惑星ラテシアの者たちは『トイズ』と呼ばれる不思議な力があるそうだのう」

コーデリア「えぇ、その力を使って私たちミルキィホームズは怪盗帝国の様々な難事件を解決しているのよ」

シャロ「私は念動力!」

エリー「私は筋力強化!」

ネロ「ボクは電子制御!」

コーデリア「私は五感強化!」

シャロ・ネロ・エリー・コーデリア「私たちミルキィホームズ!!」

ターサン「えぇい、うるさいと言っておろう! ポーズをとるな!」

ギル「博士……本当にこんなやつらが……」

ターサン「ふふん、トイズを使用するとき、強力なエネルギーソースが得られることは調査済み。こやつらは中でも指折りのトイズの持ち主じゃ」
715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/16(水) 17:30:05.83 ID:AfBoYm140

ターサン「飯を食わせる前に、見せたいものがある」

シャロ・ネロ・エリー・コーデリア「えぇ〜!」

ネロ「ご飯は〜!?」

エリー「お腹すきました〜」

シャロ「ケーキ食べた〜い」

コーデリア「除湿機ほし〜い」

ターサン「えぇい! 口々に本当にうるさい奴らだのう!」

 そして、四人が連れて行かれたのは、先ほどの部屋の十倍はありそうな大きな部屋だった。

シャロ「ここにご飯があるの?」

ターサン「だから飯は後だと言っとろう!」

ギル「貴様らが見るものはこれだ」

 ライトアップされたのは、四機の戦闘機だった。

ターサン「これがワシの最高傑作、ダン・メカニックじゃ!」

シャロ「ださ〜い」

ネロ「どうでもいい〜」

エリー「ごはん〜」

コーデリア「ケーキ〜」

ターサン「こ、こやつらは〜……!」

ギル「貴様ら、飯を食いたければ俺の言うことを聞け!」

 ギル・バーグが一歩進み出て声を張った。

シャロ「絶対イヤです〜!」

ネロ「パワハラだー!」

エリー「裁判ですー!」

コーデリア「賠償金よー!」

 非難ゴウゴウの四人にギルは青筋を立てて怒鳴った。

ギル「貴様らに文句を言う権利はない! 大人しく言うことを聞け! さもなくばぶっ殺すぞ!」

ターサン「こ、これギル!」

ギル「博士、こういう奴らは一度きつく躾けるべきです」

 ボキボキッ! ギルが指の骨を鳴らすのを見て、ミルキィホームズは叫んだ。

シャロ・ネロ・エリー・コーデリア「キャ〜ッ!」

シャロ「暴力よ〜!」

ネロ「DVだよ〜!」

エリー「変態よ〜!」

コーデリア「ロリコンよ〜!」

ギル「グダグダとうるさい! 黙らせてやる!」

 ぶぅん! ギルの拳がうねりをあげた!

ギル(ここでこやつらを始末すれば再び俺が最強の戦士として立てるのだ!)

コーデリア「――ッ! エリー、左よ!」

エリー「はい!」

ギル「なに!?」
716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/16(水) 17:43:13.88 ID:AfBoYm140

 コーデリアの鋭い指示にギルの拳がエリーの小さなてのひらで止まってしまった。

シャロ「えぃっ!」

 シャロのトイズでギルの大きな体が床から離れた。

ギル「う、うおぉっ!?」

 どすん! ギルは情けなくしりもちをついた。

ギル「ぐっ……体がぁ……っ!」

ネロ「そりゃ!」

 ネロが鉄のへらを近くのコンピュータに突き刺した。

 ヴーッ! ヴーッ! 途端に研究所内に警報が鳴り響いた。

ターサン「な、なんじゃ!?」

 さらに、戦闘機ダン・メカニックのコクピットハッチが開く。

ネロ「みんな! 戦闘機で逃げよう!」

シャロ・エリー・コーデリア「おーっ!!」

 四人は軽やかな動きでダン・メカニックに乗り込み、あらかじめネロが開いておいたカタパルトから一斉に発進した。

ターサン「な、ななななななんとぉー!?」

シャロ・ネロ・エリー・コーデリア「ばいば〜い!」
717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/16(水) 17:43:58.72 ID:AfBoYm140

 ターサン博士の研究所から飛び出た四機のダン・メカニックは、小惑星郡の帯域を駆けていく。

シャロ「これからどうしましょうか〜?」

ネロ「とりあえずラテシアに帰ろうよ。ボクお腹ぺこぺこだもん」

エリー「でも、ここからラテシアは相当遠いみたいですよ」

シャロ・ネロ「えぇ〜っ!? 遠いってどれくらい?」

エリー「だいたい七ヶ月ぐらいかな」

シャロ・ネロ「げぇ〜っ! 餓死しちゃうよ〜!」

コーデリア「ここから一番近い惑星系列ですと、およそ二日で到着しますわ」

シャロ「追いつかれたらどうしよう?」

コーデリア「その太陽系には、第三惑星・地球を中心とした連邦組織があるみたいです。そちらに救援を要請しましょう」

ネロ「コーデリアあったまいい〜!」

コーデリア「えへん」

シャロ「それじゃあ、地球に行きましょう!」

シャロ・ネロ・エリー・コーデリア「お〜っ!」


 その頃、ターサン研究所では――

ターサン「あぁぁ〜! ガリモス大船長様に捧げる最高傑作が飛んでいってしまったぁ〜!」

ギル「博士、今すぐ奴らを追いかけましょう」

ターサン「馬鹿者! この研究所にはダン・メカニックに追いつけるマシンなどないわ!」

ギル「ならば、バンカーへ赴き、マシンを借り受けましょう」

ターサン「しかし、ガリモス大船長には、最高の兵器を用意するという名目で援助を受けておるのじゃ……」

ギル「ならば博士! 今こそこの俺を最高のサイボーグに仕立て上げ、バンカーに捧げればよろしい」

ターサン「むむむ……よし、わかった」

ギル(あのクソガキどもが……この礼は必ずしてやる!)

 ターサン博士が去った後の暗い部屋でギル・バーグは笑いのこみ上げる喉を宇宙に向けた。

ギル「待っていろ……ミルキィホームズ……最強のサイボーグと化した俺が貴様らを叩き潰し、臓物を抉り出してやるわ……ククク……フハハハハハハハ!」
718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/16(水) 17:45:13.53 ID:AfBoYm140

 ミルキィホームズがターサン研究所から脱出して27時間後……

ガリモス大船長「すると、貴様はその逃げた裏切り者を捕らえるために、ワシに兵器を貸せと言うのか?」

ターサン「は、ははぁ〜っ! まさしくその通りでございまして、ワタクシは恐縮の限りにございます〜っ」

ガリモス「して、貴様がターサンの用意した最強のサイボーグか?」

ギル「はっ! ギル・バーグと申します。ガリモス大船長様」

ガリモス大船長「いいだろう。貴様に我がブラッディTを貸してやろう。必ずやそやつらをとっ捕まえて来い」

ギル「ははっ!」

ガリモス大船長「だが! わかっておるな、ギル・バーグ」

ギル「承知しております。宇宙海賊バンカーを前に、失敗と裏切りは、死をもって償うべしと」

ガリモス大船長「ならばゆけぃ! ギル・バーグ!」

ギル「ははぁっ! くくく……待っていろ、ミルキィホームズ!」
719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/16(水) 17:49:36.22 ID:AfBoYm140

 太陽系の端。

シャロ「あっ! あれが冥王星!?」

 モニターに小さく映った歪な形の矮小惑星を指したシャロにエリーが頷いた。

エリー「そうです。地球連邦では、2009年から冥王星を系列惑星に入れるかどうかで議論しているみたい」

ネロ「これで太陽系に到着だね。もう簡易食料食べつくしちゃったよ」

コーデリア「通信では、天王星付近が合流ポイントですわ」

ネロ「ところでみんな、ちょっと聞いてほしいんだけど」

シャロ「なになに?」

エリー「ひょっとして、おいしいキノコでも見つけたんですか?」

コーデリア「それとも、ゼンマイとか?」

ネロ「食べ物じゃなくて、えっとね、このダン・メカニックを一日調べてたんだけど……」

シャロ「うんうん」

ネロ「どうやら、四機が変形して――」

 ギュボォッ! ネロの言葉はビーム光で遮られた。

エリー「きゃあぁぁぁっ!」

 ビームに一番近かったエリーが煽られて機体が傾く。

コーデリア「何が起きたの!?」

シャロ「う、後ろに何かいるよ!」

 ダン・メカニックのレーダーが捉えていたのは、血を被ったように真っ赤なブラッディTだった。

ギル「クククク……追いついたぞ、ミルキィホームズの小娘ども!」
720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/16(水) 17:51:31.80 ID:AfBoYm140

ネロ「この声、アイツだよ!」

エリー「ロリコンでDVで変態な上にストーカーですか!?」

シャロ「いや〜っ!」

 四人はいっぺんにスピードを上げてブラッディTから距離を取って逃げ始めた。

ギル「ククク……逃げられると思うなよ、喰らえぃ!」

 ボシュッ! ボシュゥッ! ブラッディTからミサイルが発射される!

コーデリア「――ッ! シャロ、右! エリーは下! ネロはそのまままっすぐよ!」

 五感強化のトイズで常識外の空間把握能力を持つコーデリアの指示で四人は最小限の動きでミサイルを避けきった。

ギル「ちぃ! ならば直接叩き込んでやるわ!」

 ブラッディTが加速してエリーのダン・メカニックへ接近する。

ギル「ぶち殺してやる!」

エリー「いやぁーっ!」

 ぐぉんっ! ブラッディTの巨大な腕がエリーに襲い掛かる!

「コズモワインダービーム!」

 ズガァァッ! どこからかビームが飛んできて、ブラッディTの腕に直撃した!

ギル「なにぃ!? どこのどいつだ!」

 ギルを撃ったのは、真紅の手足に鎧のような装甲を持つ巨大なロボットだった。

 それをモニタ越しに視認したとき、宇宙空間に声が轟いた。

こなた「夜空の星が輝く陰で!」

かがみ「ワルの笑いがこだまする!」

つかさ「星から星に泣く人の!」

みゆき「涙背負って宇宙の始末!」

かがみ「銀河旋風ブライガー! お呼びとあらば即参上!」

こなた・つかさ・みゆき「イェーイ!」


 ジェイナインジェイナイン ナサケームヨウ
 アステーロイドーベルトノー
 アウトーローモーフルエーダスー
 コズモレンジャージェイナイン!
721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/16(水) 17:54:40.17 ID:AfBoYm140

ギル「な、なんだこいつらはぁ!?」

こなた「悪党に名乗る名前などないわー!」

ギル「ぐぐぐ……! ふざけた奴らめが、ならば殺してやる!」

 ブラッディTの腹部が開き、砲口が顔を出した。

ギル「プラズマキャノン砲だ! 死ねぇぇぇい!」

つかさ「こなちゃん! ブライソードだよ!」

こなた「イェーイ! ブライソードビーム!」

 ズバババババ! ブライガーが装備した剣から発するビームでプラズマキャノンを相殺する。

ギル「おのれぃ! 死ね! 死ねぇ!」

 ギュアァッ! ギュボォッ! プラズマキャノンが連続で発射される。

かがみ「うっ、この威力が連射されるのはさすがにツライわね」

ギル「このまま押し切ってやる……!」

シャロ「あわわ、あれじゃやられちゃうよ〜」

エリー「あの人たちが地球連邦からの救援の人たちですよね?」

コーデリア「そうみたいだけど……」

ネロ「ねぇ、みんな! ボクの話を聞いて!」

シャロ「なぁに、ネロ?」

ネロ「さっきは話の途中になっちゃったけど、この戦闘機にはある秘密が隠されているんだ!」

エリー「秘密ですか!?」

ネロ「この戦闘機は四機が合体することで、戦闘ロボットになるんだ!」

シャロ・エリー・コーデリア「「「な、なんだってぇ〜!?」」」

 衝撃が走るチームメイトたちにネロがガッツポーズを作る。

ネロ「ボクたちが合体すれば、アイツを追っ払えるよ、きっと!」

シャロ「よ〜し、やろうよ!」

エリー「はい!」

コーデリア「やりましょう!」

ネロ「うん! じゃあ、いくよ! 一斉に言うんだ!」

 四人のコクピットに文字が浮かび上がる。合体コードだ。

シャロ・ネロ・エリー・コーデリア「「「「クロォォォォス・ファイトッ! ダン! ガイ! オー!!」」」」

 その言葉に、四つのダン・メカニックが光りを放ち、宇宙空間に統制された動きで軌道を描き出した!

ギル「な、なんだっ!?」

 驚愕に目を見張るギルの前で、四つのダン・メカニックは重なり合い、一つの白金のロボットとなる!

シャロ・ネロ・エリー・コーデリア「「「「ダンガイオー! 見参!」」」」

 テテッテテッテテンテテーレテーレテーテテー テーテレッテーレテテテー
 クロースファーイト クロスファイッ!(クロスファイッ!
 ジャストクロスフォラァーブ!
 アーツークアーツークアーツークタータカエー ダンガイオー!!
 ヒトツノタマシイムスンダ ヨニンノセンシヨ モエツクセ
 マゴコロサマヨウ プラネットー ホノオノイローォニー ソメテー
 ナゾメイーター カナシミーヲー ヤキクダーケー ジュウモンジニー
 クロースファーイト クロスファイッ!(クロスファイッ!
 ジャストクロスユアドリーム!
 マバタクヒカリノ ダンガイオー!!
 クロースファーイト クロスファイッ!(クロスファイッ!
 ジャストクロスフォラァーブ!
 アーツークアーツークアーツークタータカエー ダンガイオー!!
722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/16(水) 17:55:16.23 ID:AfBoYm140

ギル「だ、ダンガイオーだとォ!? ターサンめ、そんな話は聞いてないぞ!」

こなた「ほっほーぅ、あーちらさんもやるよーうだにぇー」

ギル「ぐぉぉ……おのれぇぇ! ブラッディTで踏み潰してやるわ!」

 ブラッディTがプラズマキャノンを連射しながら、猛スピードでダンガイオーの許へ飛んでいく。

コーデリア「来るわよ、ネロ!」

ネロ「わかってるよ、コーデリア!」

 ダンガイオーが軽快な動きでブラッディTの突撃をかわす。

 ターサン博士が開発したダンガイオーの秘密とは、パイロットのトイズをシンクロさせることである。
 つまり、コーデリアの研ぎ澄まされた五感がそっくりそのままコントロール役のネロにも流れ込んでくるのだ。

ネロ「いくよぉ、エリー!」

エリー「ちょ、ちょっとまって……」

ネロ「ブーストナックル!」

 ドシュゥッ! ダンガイオーの右腕が射出される!

エリー「きゃぁーっ! 勝手に飛ばさないでぇ!」

 右腕にはエリーが乗っているのである。
 そのエリーのパワーがダンガイオーの人造筋肉とも重なり、強力なパンチがブラッディTを揺らした。

ギル「ぐおぉぉ! おのれぇ……小娘どもがぁ!」

こなた「わーたしたちを忘れーてもらっちゃーぁ、困るーよー」
723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/16(水) 17:55:42.91 ID:AfBoYm140

みゆき「ブライスピアー!」

こなた「イェーイ!」

 ズシャァ! ブライガーの巨大な三つ又槍がブラッディTの左脚を貫いた!

ギル「しまった! バランスが取れん!」

ネロ「サンキュー! シャロ! キミの出番だよ!」

シャロ「うん! サイキック・ウェィィィィィィィィブ!」

 グォォォ! ダンガイオーの右腕が突き出され、そこからシャロの拡大された念動力が放出され、ブラッディTを覆い始める。

ギル「な、なんだ……絞めつけられる……機体が動かん!」

 ギャシュインッ! 念動力の波がブラッディTを捕縛した!

ギル「ぐおぉ! 動け! 動けぇ!」

 どれだけもがいても、もはやブラッディTはぴくりとも動こうとはしない。

シャロ「ネロ! やっちゃって!」

ネロ「うん! 破邪の剣!」

 ダンガイオーの両腕の間に一振りの剣が出現し、それをエリーがいる右手が掴む!

コーデリア「サイキック・斬でおしまいよ!」

 バッ! ダンガイオーが宇宙で蹴り跳び、破邪の剣を両手で頭上に振りかぶる!

 コーデリアの感覚で捉えた狙いはブラッディTだ!

シャロ・ネロ・エリー・コーデリア「サイキック・ざぁーんっ!!」

 ズバァァッ!! 強固な宇宙海賊装甲のブラッディTが交錯したダンガイオーとミルキィホームズの後ろで一刀両断された!

ギル「馬鹿な……っ! この……この俺ぐぁぁぁぁぁぁっ!!」

 ドガァァァァァァァァァンッ!! 大爆発を起こしたブラッディTがモニターの彼方へ飛んでいく。
724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/16(水) 17:56:10.55 ID:AfBoYm140

ギル「み、ミルキィホームズ! 貴様らは俺が……っ!」

 ギル・バーグの断末魔の叫びが次第に小さくなっていき、聞こえなくなった。

みゆき「敵機体は冥王星の重力に囚われたみたいですね」

かがみ「それなら、しばらくは追ってこれないわね」

こなた「そーの前にー、生ーきてるかどーうかも怪しーいねー」

つかさ「とりあえず、セカンドミッションまで完了だね」

こなた・かがみ・みゆき・つかさ「イェーイ!」

コーデリア「あのー、たしか、ブライガーさん……でしたっけ?」

 親指を出すグーサインで画面を四分割していたブライガーの回線に割って入ったコーデリアにかがみが咳払いする。

かがみ「はい。正確には私たちはコズモレンジャー・J9。木星圏のアステロイドベルト付近を拠点に活動する宇宙の何でも屋といったところです。そして、この機体の名前がブライガーです」

コーデリア「そうでしたか、危ないところをありがとうございました。あなたたちが地球連邦からの救援でよろしいでしょうか?」

みゆき「はい。正しくは連邦政府からあなたたちの救出を依頼されてきたのです」

ネロ「とりあえず味方なんだよね!」

シャロ「よかったぁ〜、これでご飯が食べられる〜」

エリー「お風呂にも入れます〜」

こなた「うんうん、とーりあえず諸くーんらをわーたしたちのアージトまで案なーいするからー、つーいてきたまーえ」

シャロ・ネロ・エリー・コーデリア「はーいっ!」

 こうして、地球を目指す少女たちが宇宙を揺るがせる戦いに加わろうとしていた。

 アステロイドベルトに向かう途中のブライサンダーにて。

こなた「ねーねー、かがみかがみ」

かがみ「なによ、こなた?」

こなた「さっきのダンガイオーのサイキック・斬なんだけどね……何かに似てるなーって気になるんだよね」

かがみ「はぁ? いや、まあ……あんな大雑把な必殺技に似ているものなんてたくさんあると思うけど」

こなた「いや、なんか本当に一つのイメージにぴったりなんだよねー……こう、ダイナミーックって感じで」

かがみ「アンタ……もう答えが何か分かってて言ってるでしょ」

こなた「まっさかー、誰も蒸着なんて言ってないよー」

かがみ「分かってるじゃない!」


 第十六話 蒸着! ギャバンダイナミック! 完
725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/03/16(水) 21:38:03.23 ID:QKPAjYhKo
726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/20(日) 17:50:30.97 ID:LXOChzrJ0

 第十七話

 キャンベル星人の前線基地 海底城

ガルーダ「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! ぐっ、がぁぁぁぁぁっ!」

 手術の後遺症治療のために、強力な電撃を浴びせられていた。

ミーア「もう、おやめくださいませ、オレアナ様! ガルーダ様が死んでしまいます!」

オレアナ「これしきで死ぬような息子に育ててはおらぬ。これは罰も兼ねておるのだ。コン・バトラーを倒せぬガルーダへの」

ガルーダ「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! ぐっ、母上……ガルーダはまだ耐えられます……早くこの体の傷を治し、コン・バトラーVを倒して見せます……うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

オレアナ「頼みますよ、ガルーダ。早く身体を直しなさい」

ガルーダ「か、かしこまりました……ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

ミーア「ガルーダ様!」

オレアナ「……ミーア、今から私の許に来なさい」

ミーア「お、オレアナ様! ですがガルーダ様のお傍に……」

ガルーダ「構わぬ……ミーアよ、母上の許へゆけ……わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

ミーア「わかりました、ガルーダ様……どうかご無事で……」

オレアナ「耐えるのですよ、ガルーダ」

ガルーダ「は、はい母上……こ、この体の痛みは私が生身のキャンベル星人である証し……うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 断末魔の如き叫びには関心を払わず、オレアナはモニターとの接続を切った。

オレアナ「ふふふふ、生身の体か……馬鹿なガルーダ!」
727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/20(日) 17:51:06.02 ID:LXOChzrJ0

ミーア「オレアナ様……いったいどのような御用でしょうか?」

オレアナ「身体を直したらガルーダに伝えよ。お前は司令官をクビになったと」

ミーア「なっ……! どういうことですか、オレアナ様!?」

 突然の指示にミーアは卒倒せんばかりに蒼白になり、食って掛かった。

オレアナ「ガルーダは司令官としてはやさしすぎるのです。地上では地球人同士の小競り合いが収束し、コン・バトラーVの周りに新たな戦力が加わろうとしています。そうなってはもう、ガルーダには指揮を任せてはいられません」

ミーア「で、では何故、今ガルーダ様は苦痛に耐えておいでなのですか! 再びコン・バトラーと相まみえるためではないのですか!?」

オレアナ「ガルーダはキャンベル星へ送還します。そのためには傷のある身体では宇宙船の走行に耐えられません。そのために身体を直しているのです」

ミーア(そんな……そんな事になっては、誇り高いガルーダ様のこと……おそらく生きておいでになりますまい……)

 ハーフロイドが決心を固めた顔になるのを、オレアナは生体コンピューターの感情回路の中でほくそえんだ。

ミーア「お願いがございます、オレアナ様! わたくしにマグマ獣の指揮を執らせてください! 必ずやコン・バトラーVを打ち倒して見せましょう!」

オレアナ「ほう、お前がか……?」

ミーア「その代わり、見事コン・バトラーを倒したあかつきには……」

オレアナ「ガルーダの更迭を取り消せ、というのですね? いいでしょう、お前に任せます」

ミーア「ありがとうございます、オレアナ様!」

 意気揚々とミーアはオレアナの許を去っていく。

オレアナ「ふふふふ……部下が愚か者ばかりというのは、楽なものよ……」
728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/20(日) 17:51:36.95 ID:LXOChzrJ0

 超電磁研究所

唯「ひと〜のぉ〜ず〜のうを〜く〜わ〜えた〜ときぃに〜まじんがーずぇーっと! まじんがーずぇーっと! お〜まえこ〜そみ〜ら〜いを〜も〜たら〜す〜」

梓「う〜ん、練習してくれるのはいいんですけれど……こんなところに来てまでしなくても……」

唯「だって、もうすぐそこに文化祭が迫っているなんて知らなかったんだもん」

梓「そうはいっても、こんな時ですからどうせ中止になると思いますけど……」

唯「ダメだよあずにゃん! 文化祭がなくても私たちは歌うことができるんだよ!」

梓「唯先輩はどうしていつも変な方向に意欲が向いちゃうんだろう……」

憂「お姉ちゃ〜ん、紅茶とお菓子だよ〜」

雛苺「うっにゅう〜、うっにゅう〜」

金糸雀「ホットケーキかしら〜」

唯「わーい、う〜い〜、あいす〜」

梓「切り替え早っ!」
729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/20(日) 17:52:03.10 ID:LXOChzrJ0

 超電磁研究所 研究室

紬「う〜ん、やっぱりコン・バトラーVの装甲を超合金Zでコーティングすることはできないみたいですね……」

JUM「そうですね、有効な厚みを持たせると、重量で超電磁エネルギーが十分な力を発揮できなくなってしまいます」

紬「サーメット装甲のコン・バトラーVは防御力に不安があるようでしたから、技術提供をと思いましたが……すみません」

翠星石「まーったく! たくあん人間が言うから期待したですのに、とんだ青だぬきの皮算用ですぅ!」

律「しっかし、ムギが図面引いてるのって似合わねーよなー」

紬「ふふ、なんだか作曲をしているのと同じで、楽しいの」

澪「ま、律じゃ一生かかってもできそうにないな」

律「私はこーいう細かい作業は苦手なんだよー」

真紅「あら、そんなことでロボットの操縦ができるの?」

律「ボロットはゲーセンのレースゲームと同じ感覚で操縦できるようになってんだよ」

澪「本当に技術の無駄遣いだよ……動かすたびに壊れてるんだから」

蒼星石「そんなロボットでよく今まで生きてこられたね……」

 ヴィーッ! ヴィーッ!

蒼星石「警報が!」

JUM「ドールズ、出撃準備だ!」

「「「「「了解!」」」」」
730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/20(日) 17:52:28.48 ID:LXOChzrJ0

 南原コネクション 郊外

ミーア「ガルーダ様……ミーアがお守り致します……」

 キャンベル星人の臨時司令官となったミーアがマグマ獣デモンに乗り、マグマ獣ガルムスを二体率いてやってくる。

翠星石「レェェェッツ・コンバイィィィィィン!」

唯「マジーン、ゴー!」

澪「ダイアナンA、ゴー!」

律「ボ〜スボロットだわよ〜」

ミーア「出ましたね、コン・バトラーV!」

翠星石「その声はこないだの戦艦の奴ですねぇ!」

ミーア「私の名はミーア! キャンベル星人の誇りを守るために、いざ尋常に勝負!」

翠星石「よぉし、やってやるですぅ!」

唯「私たちがマグマ獣の相手をするよ!」

蒼星石「気をつけて、翠星石。なんだかすごい覚悟の念を感じるよ」

翠星石「わかってるですぅ、翠星石! 超電磁ヨーヨー!」

 ズバァァァァァァン!!
731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/20(日) 17:52:58.89 ID:LXOChzrJ0

 海底城

ガルーダ「ぐっ、うぅ……」

 電撃浴を終えたガルーダは、よろめきながらも居住区へと歩いていた。

ガルーダ「ミーアの奴め……余の不在中に無茶をしたりはしていないだろうか……?」

 ハーフロイドで思考がコントロールされている娘が辛い目にあっているガルーダのためにと思って何かをしていないかと不安になるのだ。

ガルーダ「ふ……誇り高きキャンベル星人である余が、ミーアのようなハーフロイドの身を案ずるとはな……それも、あのコン・バトラーのドールズのせいか」

 同時に思い出すのは、コン・バトラーVに乗る少女の形を人形たちであった。
 以前出撃したときに初めてその姿を見たが、まさか、魂を持った人形が自分のライバルだったとは思っていなく、ショックを受けた。
 だが、彼女たちは自分の意思を明確に持ち、運命を決めていた。

ガルーダ「ミーアとて、プログラムの人格とはいえ、自分で決めていることなのだろうか……?」

 半壊した体を癒している間、ガルーダはそのことをミーアに訊ねてみようと思っていた。
 少しは、ハーフロイド、アンドロイドに対する考え方を変えてみてもいいかもしれん……キャンベル星では、それらの類は全て奴隷として扱われる。
 彼ら、彼女らにも人権があるとしたら、キャンベル政権が支配している星の住民と同じように、健やかにその生をまっとうさせるべきだろう。

ガルーダ「ミーア、ミーアはどこだ……ミーア! どこにいる、ミーア!」

 居住区の慰安室――ミーアがいるべき場所には何もおらず、ガルーダは壁を叩いてあの優しき声を思い起こした。

ガルーダ「ミーア、まさか……くっ!」
732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/20(日) 17:53:34.72 ID:LXOChzrJ0

翠星石「マグネチョーップ! ですぅ!」

 ガキィン! コン・バトラーVの手刀に、マグマ獣デモンの右腕が落ちた!

ミーア「うあぁっ! が、ガルーダ様のために……ガルーダ様のために!」

翠星石「ま、まだ来るですかぁ! もうボロボロのくせにぃ!」

 両腕と右前足を失っても尚、ミーアのデモンは止まらなかった。
 切断面からどす黒い循環剤を噴き出しながらも、いななくように上体をそらし、コン・バトラーVに突撃を仕掛ける。

翠星石「な、何ですこいつぅ! 捨て身で飛びかかってくるですぅ!」

ミーア「ガルーダ様のためにも……ミーアが刺し違えてでもコン・バトラーを倒します!」

 既に二体のガルムスは完全に沈黙している。
 コン・バトラーVは両手を突き出してミーアの突進を押さえつける。

翠星石「もう勝負はついているですぅ! さっさと帰るですよぅ!」

ミーア「ガルーダ様! ミーアは……! ミーアは!」

 デモンの目が赤く光りを放った。
 同時に、あばらにあたる部位からワイヤーが飛び出し、コン・バトラーVに絡みついた!

翠星石「な、何をするつもりですぅ!」

ミーア「ふ、ふふふ……コン・バトラーV! この状況でデモンの動力部を暴走させればどうかしら!」

蒼星石「ま、まさか、自爆するつもり!?」

真紅「何ですって!?」

翠星石「こ、こいつ、最初からそのつもりだったですかぁ!?」

ミーア「ガルーダ様……お役に立てず、申し訳ありません……せめて、ミーアのこの命でもって、コン・バトラーVに傷だけでも!」

翠星石「やめるですぅ! 離れるですぅ!」

 自由な右腕でデモンを殴りつけるが、ワイヤーは強固で剥がれることがない。

唯「すーせーせきちゃん!」

澪「今助けるぞ!」

律「このぉ、離れやがれ〜!」

 マジンガーZ、ダイアナンA、ボスボロットがそれぞれデモンの足を引っ張るが、ぴくりとも動かない。
 その間にもデモンの体は熱暴走でだんだんと赤くなっている。

真紅「コクピットが熱くなってきたのだわ」

 胴体にいる真紅が感じないはずの熱に手で扇ぐふりをする。

 その時、研究所の司令室では、新たな接近を察知していた。

JUM「みんな! キャンベル星人の戦艦が急速に接近してきている! 気をつけろ!」

翠星石「こ、こんなときにガルーダの野郎ですか!」

ミーア「が、ガルーダ様が……あぁ、しかしもう間に合いますまい」

 デモンの装甲が膨れ上がってきている。もう爆発は秒読みだ。
733 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/20(日) 17:54:09.50 ID:LXOChzrJ0

ガルーダ「ミーアァァァァァ!」

ミーア「ガルーダ様……御武運を!」

 ぐん、と真っ赤なデモンが一回り膨らんだ。

 どぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん! 戦艦グレイドンが戦域に突入するのと、デモンが爆ぜるのはほぼ同時であった。

ガルーダ「ミーアァァァァァァァァ!」

 球状に炎が広がり、その中から、装甲の半分以上が溶けたコン・バトラーVががしゃんと音を立ててくずおれる様など、ガルーダは見てはいなかった。

ガルーダ「遅かったか! すまぬ、ミーアよ…………むっ!」

 最も忠実であった部下に、哀悼の念を送っていると、爆発からやや離れた地面で蠢いている何かを発見した。

ガルーダ「み、ミーア、生きていたのか! 今助けるぞ!」

 ガルーダは迷わずグレイドンを上半身だけのハーフロイドの真上へやり、自ら回収に降り立った。

ミーア「う……ガルーダさま……ミーアは」

ガルーダ「喋るな、ミーア!」

 以前は毛嫌いしていた紫色の皮下循環剤に塗れた女の上半身を貴公子は抱き上げた。
 損傷は大きいが、冷凍して修理すれば直るはずだ。ガルーダはロープに捕まってグレイドンを発進させるよう命じる。

ガルーダ「ミーアよ……俺はとんでもないあやまちを犯してしまったようだ……許せ……」

 目の前では、爆発の衝撃からコン・バトラーVが起き上がりつつあった。

翠星石「が、ガルーダ……きやがったですね……しょ、勝負なら、受けてたつですよ……」

 強がって言うものの、コン・バトラーVのサーメット装甲は本来のツヤをすっかり失っている。
 おそらく、内蔵武器のほとんどが使い物にならない上に、得意の超電磁エネルギーの攻撃にも耐えられない状態だろう。

 戦えば、間違いなく勝てるはず――だが、ガルーダは勇敢な声で告げた。

ガルーダ「コン・バトラーVよ! 今日のところは勝負はお預けだ!」

翠星石「逃げる気ですかぁ、ガルーダ! 待ちやがれですぅ!」

ガルーダ「グレイドン、急ぎ離脱せよ!」

翠星石「ぐぐっ、待つですぅ、ガルーダ!」

真紅「ホーリエ!」

蒼星石「レンピカ!」

 凄まじい速度で去っていくグレイドンには到底追いつけないが、その航路を二つの光りが追いかけていく。

真紅「私と蒼星石の人工精霊が、あの戦艦の後をつけてくれるわ」

翠星石「何度もnのフィールドに行って人工精霊を探してたのはこのためだったですか」

蒼星石「というより、人工精霊がいなくてもいいみたいに思っていたほうが変だよ、翠星石。スィドリームがいなかったら君は如雨露をだせないんだから」

翠星石「たしかに、そうだったですねぇ……」

真紅「あとは、あの子たちがキャンベル星人の秘密基地を探してくれるのを待つだけだわ。ツムギ、紅茶の準備をお願いね」

紬「はーい」
734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/20(日) 17:54:39.60 ID:LXOChzrJ0

 海底城

ガルーダ「ミーア! 後しばらく耐えよ! すぐに治療してやるからな!」

ミーア「…………」

 冷凍状態のミーアの冷たい体を抱きかかえてガルーダは基地の中を走り、ミーアをアンドロイドの調整室へ運び込んだ。

ガルーダ「よし、ここならミーアを治療することができる……すぐに元に戻してやるからな、ミーアよ」

 ミーアの体をケーブルに繋ぎ、カプセルに寝かせると、すぐに冷凍を解除させて処置を開始した。
 十分ほどで、ガルーダがすべき作業は終わる。

ガルーダ「ふう、これで後はパーツが交換されるのを待つだけだ……うん? なんだこの部屋は……?」

 めったにこの調整室に入ることのないガルーダだが、記憶力には自信があったため、見慣れぬ扉を不審に思い、そこへ入っていく。

ガルーダ「あ、あぁっ!」

 そこでガルーダは恐るべき真実を知るのだった――


 第十七話 献身! ミーア 涙の特攻! 完
735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/20(日) 17:55:10.02 ID:LXOChzrJ0

 第十八話

 半壊したミーアを治療するために、ガルーダはめったに来ない調整室に入る。
 そこで彼は、恐るべき秘密を知ってしまった――

ガルーダ「こ、これは……いったいどういうことだ!?」

 その部屋は、巨大なシリンダーがいくつも並んだ部屋だった。
 内部は既にその機能のほとんどを停止してしまっているらしい。
 だが、ガルーダはそのシリンダーを一つずつ見ていって、驚愕に目を見開いた。

ガルーダ「お、俺はいったいどこに来たというのだ!? 俺の姿をしたロボットが……こんなに……」

 そう、シリンダーの中にはガルーダと全く同じ形をしたロボットが浮いていたのだ。
 一つだけではない。次も、次も、次も、次も……どれを見ても、全てのシリンダーには大将軍ガルーダが生のない姿で浮かんでいた。

ガルーダ「ここはいったいなんだ……なんなのだ!」

 一番奥にあったコンピュータを起動させた。
 すると、とあるメモリが強制再生される。

『ガルーダ1号、記憶回路に異常。失敗、廃棄』

ガルーダ「なん、だと……」

『ガルーダ2号、人格造形に歪みあり。失敗、廃棄。ガルーダ3号、感情回路に異常。失敗、廃棄』

ガルーダ「ま……さか……そんな……そんなことが……う、うそだ……うそだ……」

 感情のない音声が無情理にただ、記録だけを重ねていく。

『ガルーダ4号、人工筋肉に異常。失敗、廃棄。ガルーダ5号、自走機能に異常。失敗、廃棄』

ガルーダ「や、やめろ……やめろ! やめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
736 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/20(日) 17:55:45.35 ID:LXOChzrJ0

『ガルーダ6号、右腕部の神経伝達に異常。失敗、廃棄。ガルーダ7号、消化機能に異常。失敗、廃棄』

 叫んでも、声はやまなかった。
 ガルーダは拳を振り上げ、己が身体の勇敢な腕でコンピュータを破壊し、嗚咽した。

ガルーダ「おぉ……おぉぉ……あんまりだ……あんまりだ母上……私まで……私まで母上の作ったロボットだったというのですか!?」

 全ては仕組まれていたこと。
 治療と称して行われるガルーダの手術。
 その後の電撃浴。全てはオレアナが一からプログラムした人格――

ガルーダ「感情を与えられ、自分をキャンベル星人だと思い込んでいた滑稽な機械人形……それがこの俺……大将軍ガルーダだったというのか……」

 それでは、自分が今までしてきたことは何だったのか?
 キャンベル星人の将軍として、我が物顔に振る舞い、弱者を虐げ、アンドロイドを――ミーアを傷つけていた自分が――

ガルーダ「フ……フフ……フハハハハハ……ミーアよ、笑ってくれ……私はお前と同じロボット……母上の操り人形だったのだ……ハハハハ……ハハハハ……」

 むせび泣くこの涙も、全ては作り物――ガルーダが感情を荒げるたびにオレアナはそれを肴に楽しんでいたのだ。

ガルーダ「クククク……許さん……許さんぞ、オレアナ! よくもこの俺をたばかってくれたな!」
737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/20(日) 17:56:17.79 ID:LXOChzrJ0

 超電磁研究所

 久しぶりの快晴で屋外にパラソルを置いてティータイムを満喫していた真紅たちのところへ二つのチカチカと光りがやってきた。

真紅「おかえりなさい、ホーリエ、レンピカ。キャンベル星人の基地は見つかったのね?」

 肯定するように光りが強く明滅する。

真紅「そう、海底に……わかったわ、ご苦労さま」

律「キャンベル星人の基地が見つかったのか!?」

蒼星石「はい、南太平洋のソロモン諸島のあたりです」

紬「ソロモン諸島といえば、以前のコロニー落としの影響で連邦の管理外地域に指定されたところですね」

翠星石「隠れて基地を建設するにはもってこいの場所って訳ですかぁ」

唯「それなら早速行こうよ! 最近はドクター・ヘルの機械獣も来なくなってるし」

梓「でも、ひょっとしたらキャンベル星人を追って日本を離れたときを狙っているかもしれませんよ」

澪「そうだな、今はゲッターロボもライディーンもオデッサに行ってしまっているから、日本の守りが手薄になってしまっている」

紬「明日にはダンバインとガンダムが、明後日にはホワイトベースが日本に戻ってくるから、それを待ってからでも遅くはないと思うわ」

律「でもよぉ、こっちがうだうだしてる間にまた奴らが攻めてくるかもしれねーんだぜ」

翠星石「そうですぅ! 先手必勝で奴らのそっ首切り落としてやるですぅ!」

 そこにコン・バトラーの修理を終えた桜田博士がやってきた。

JUM「連邦基地に空輸船の派遣を申請したよ。今日中には届くはずだ」

紬「桜田博士!?」

JUM「ひとまず、コン・バトラーVを先に送り出して、ホワイトベースが戻ってからあらためて増援を送ればいいだろう」

翠星石「さっすがチビ人間ですぅ! チビなりに役に立つですぅ!」

JUM「チビは余計だ」
738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/20(日) 17:56:44.16 ID:LXOChzrJ0

 南太平洋 上空

 空輸艇の窓から見下ろす海原には、火山島があった。

真紅「あそこが敵のアジトのようね」

蒼星石「海底の地形や隆起から考えても、あそこに火山島があるのは不自然だ。たぶん、人工の島だろう」

翠星石「なんでもいいですぅ! さっさと行くですよぅ!」

真紅「まあ、待ちなさい、翠星石」

翠星石「ぐぇ。襟を引っ張るなですぅ、真紅!」

真紅「もう午後の紅茶の時間よ。まずは落ち着いて、鋭気を養うことが大切よ」

翠星石「うぅぅ、こんな時まで真紅はー!」

雛苺「しんくはー!」

真紅「イギリスでは紅茶の栽培が困難になるという理由から核戦争の無益さを説いたとも言われているわ。人は皆、自分たちの生活の習慣や日常の文化を守るために戦うのだわ。私たちもそうあるべきでしょう」

蒼星石「真紅は……今はアリスゲームのことはどう思っているんだい?」

真紅「今はアリスゲームをするべき時ではない――そう思っているわ。蒼星石、あなたが再び動いているのが、その証しだもの」

金糸雀「真紅……」

蒼星石「そうかも、しれないね……」

真紅「さぁ、温かい紅茶をいただいて、キャンベル星人のアジトへ乗り込むわよ」

「「「「おーっ! ですぅ! なのー! かしらー!」」」」


 デレッテレッテーテテテデレテレッテッテテー
 ブイブイブイ ビクトリー
 コーンバイーン ワンツースリー フォーファーイブ シュツゲキダー
 ダイチヲユルガスチョーデンジロボ
 セイギノセンシダコーンバトラーブイー ブイ ブイ ブイ
739 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/20(日) 17:57:24.86 ID:LXOChzrJ0

 海底城 内部

オレアナ「コン・バトラーVが攻めてきただと! えぇい、ガルーダめ、後をつけられたか!」

 拡声器の音量を目一杯にするのと同時に、城が大きく揺れた。

オレアナ「くっ! マグマ獣をありったけ出せ! くくく、この城に来たが最後、コン・バトラーVを返り討ちにしてくれるわ!」

ガルーダ「その必要はない、オレアナ」

 暗闇からの声に、オレアナは一瞬、我を失った。
 聞き慣れた声から聞き慣れぬ言葉が発せられたのだ。

オレアナ「おぉ、ガルーダ、どうしましたか、早くコン・バトラーVを迎え撃つのです!」

ガルーダ「黙れ! オレアナ、覚悟!!」

 ビッグガルーダを呼び出し、ガルーダはウィングソードで切りかかった!

 ズシャァッ! ウィングソードの刃が真っ直ぐにオレアナの肩に突き刺さる!

オレアナ「うぐっ! が、ガルーダ、何をするのです……! 私はお前の母なのですよ……」

ガルーダ「うるさいっ!! もはや騙されはせん!」

オレアナ「ガルーダ、血迷ったか!?」

ガルーダ「ロボットでも、血迷うことがあるのかな、オレアナ!」

オレアナ「な、なにを馬鹿なことを……!?」

翠星石「どっせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇいですぅぅぅ!!」

 ドガァンッ! ガルーダとオレアナがじりじりと距離を取る玉座にけたたましい音をたてて、コン・バトラーVが突入してきた。
740 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/20(日) 17:58:05.07 ID:LXOChzrJ0

オレアナ「こ、コン・バトラーV!?」

ガルーダ「ふっ……さすがはコン・バトラー……もう来たか」

翠星石「やいやいやいやいですぅ! キャンベル星人のべらぼうどもめ! いざ尋常に勝負ですよぅ!」

真紅「待ちなさい、翠星石。様子が変よ」

翠星石「ほえ?」

蒼星石「もしかして……仲間割れ?」

オレアナ「が、ガルーダ……今ならまだ許して差し上げます! コン・バトラーVを倒しなさい!」

ガルーダ「黙れ、ペテン師め!!」

 ズシャァッ! 大きく振りかぶった剣でオレアナを切り裂く!

オレアナ「ぐわぁぁぁぁぁぁっ!!」

ガルーダ「俺は貴様を倒す! そして、ミーアを失った悲しみと俺を含めたこの世界の全てのロボットの誇りを賭けて、コン・バトラーVと戦う!!」

翠星石「あ、アイツ、ロボットだったですか!?」

オレアナ「愚かなガルーダ!! それが産みの親に対する仕打ちか!?」

ガルーダ「その愚か者の剣で貴様は死ぬのだ、オレアナ!!」

 ビッグガルーダが両手に持った剣を頭上に構えると、オレアナは初めて狼狽を声に出した。

オレアナ「ま、待ちなさい、ガルーダ! 頼む、待ってくれ!!」

ガルーダ<魂>「それが貴様の本性か!? 機械の俺にも劣る醜い魂を抱いて地獄に堕ちろ、オレアナァァァァァァァァ!!」

 ズギャァァァァァッ!! 真一文字に振り下ろされたウィングソードがオレアナを唐竹割りにした!!

オレアナ「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 ドゴォォォォォォォォォン!!  渾身の斬撃で真っ二つになったオレアナは爆散する。
741 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/20(日) 17:59:42.25 ID:LXOChzrJ0

ガルーダ「仇は取ったぞ……ミーア……俺がもっと早く、自分がロボットだと知っていれば、そなたの愛に報いたであろうに……」

翠星石「ガルーダ……おめぇ……」

 呆然と佇んでいたコン・バトラーVにビッグガルーダが振り返った。

ガルーダ「コン・バトラーVよ、オレアナは死んだ!」

 威風堂々とした声だった。敵でなければ非常に頼もしく思えただろう。

翠星石「ガルーダ……本当におめぇと戦わなくちゃならねぇですか……?」

ガルーダ「俺は俺自身を弄んだオレアナを俺自身の意志で倒した」

翠星石「そうですよぅ、ガルーダはもう操り人形じゃないですぅ!」

ガルーダ「なればこそ! キャンベル星人の将軍である余は、正々堂々と貴様達と戦うぞ! コン・バトラーV!!」

 ビッグガルーダはウィングソードを腰だめに構えて、コン・バトラーVに突進してきた!

翠星石「ガルーダ!? 馬鹿野郎ですぅ!」

真紅「ビッグブラストなのだわ!」

 コン・バトラーVは腰を落とし、みぞおち部位に格納された大型ミサイルを発射した。

ガルーダ「ぬおぉ!」

 ドォォォォォン! 強力な爆撃を受けて、ビッグガルーダの猛進は止められる。

ガルーダ「くくく……言い忘れたがコン・バトラーV」

翠星石「な、何ですぅ、ガルーダ?」

ガルーダ「この基地の管制システムは全てメインコンピュータでもあるオレアナが支配していた。自爆システムもな!」

翠星石「な、なんですってぇ!?」
742 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/20(日) 18:00:12.81 ID:LXOChzrJ0

蒼星石「それじゃあ、まさか!」

 言うやいなや、大きな地震が玉座に起こった。

金糸雀「ひぇぇぇっ!」

雛苺「やーっ!」

ガルーダ「あと十分でこの島は海底に沈む! 貴様達をここに足止めにすれば、余の勝ちということだ!!」

翠星石「馬鹿を言うなですぅ! 死んじまったら元も子もねぇですぅ!」

ガルーダ「貴様達を生かしておいては、我らキャンベル星人の地球侵略の大きな仇となる! 余の命と引き換えに、将来の禍根を絶つ!!」

 ドガァッ! 地震でバランスを崩していたコン・バトラーVにビッグガルーダが体当たりをして倒した。

翠星石「痛ぇですぅ!」

蒼星石「君はキャンベル星人に騙されていたのに……それでも戦うというの!?」

ガルーダ「余には記憶がある。キャンベル星人の大将軍ガルーダとして戦っていた記憶が!」

 ツインランサーを出したコン・バトラーVにウィングソードで切りかかりながら、ガルーダは声を張る。

ガルーダ「余の身体は作られた機械なれど、魂と記憶は実在のキャンベル星人の者! 高潔な武人の誇りは、我が母星キャンベルの為にある!!」

 ガキンッ! 鋭い太刀筋にコン・バトラーVの急造の装甲が剥がされていく。

ガルーダ「これで終わりだ! コン・バトラァァァァァァァァァァァァァ!!」

翠星石<ド根性>「こうなったら一か八かですぅ! 超電磁タツマキィ!!」

 早口で唱えられた呪文で、コン・バトラーVの二つの電極から電磁の嵐が飛び、腕ではなく直接ビッグガルーダに当たった!

ガルーダ「しまった! そんなに早く出せるのか!」

翠星石「ガルーダ! 今ならまだ間に合うですぅ! 翠星石たちと一緒に脱出するですよぅ!!」

ガルーダ「言ったはずだ! 余は誇り高きキャンベル星人の将軍ガルーダなるぞ! なんじょうそなたら下賎な地球人と手を取り合おうか!!」

 ギギギギ……! 超電磁タツマキに捕らわれながら、ガルーダはビッグガルーダの駆動をフルパワーにさせ、右腕を動かし始めた。

真紅「翠星石……もう……!」

翠星石「わかっているですよぅ! 真紅のあほーっ!」

 大きな声で翠星石は無念を叫び、超電磁ギムレットを出現させた。
743 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/20(日) 18:00:39.44 ID:LXOChzrJ0

 僅かに浮上したコン・バトラーVはギムレットを軸に高速で回転し始める。

ガルーダ「さらばだ、コン・バトラーV!  貴様達と戦えた事を誇りに想う!!」

 そして、空高く飛び上がったコン・バトラーVは回転しながら一直線にビッグガルーダに落下していった!

翠星石<熱血必中>「超電磁・スピィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!」

 ズギャァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!

ガルーダ「ぐっ……がはっ! くくく……真だ……余の身体は……機械だ」

 超電磁スピンがコクピットの下部を掠めていったらしい。
 ガルーダは失った下半身を見て、自嘲気味に笑った。

 漏電する人造筋肉とバランサー、滴り落ちる皮下循環剤――全て愛するものと同じものだ。

翠星石「ガルーダ!」

 停止したコン・バトラーVから降りて翠星石は横たわるビッグガルーダへ登ってきた。

ガルーダ「貴様は……コン・バトラーの……翠星石と言ったか……」

 腰から上だけだというのに、視界は全く霞むことなくクリアだ。
 皮下循環剤が流れ尽きたとき、最も容量の多いデータ――記憶素子から消去され、修復を求めて最後の最後まで最優先事項へと動力を供給する。
 それも出来なくなったとき、最優先事項の生命維持装置が活動を停止する。
 つまり、死ぬということだ。

ガルーダ「余は……貴様達と同じ人形であった……全てはプログラムされた人格……この苦しみも誇りも用意されたものに過ぎなかったのだ……」

翠星石「……スィドリーム…………」

 胸の前で器を作った翠星石の手から、小さな光りが宙に飛んだ。

ガルーダ「何をしている……翠星石……早く脱出せねば、貴様達も……」

翠星石「ガルーダ……今の翠星石にしてやれることは、これくらいしかねぇですぅ……」

ガルーダ「な、なんだ……いったいこれは……?」

 視界を囲うアラートフレームを排除するガルーダの目の前が淡い色の渦を巻いていく。

翠星石「夢の扉ですぅ……」

ガルーダ「ゆ、夢の……?」

 幻想を見ている気分――夢心地のガルーダに甘やかな声が聞こえてくる。

翠星石「夢は、記憶の整理と言われるですけど、そんなの愚かな人間が決めつけた世迷言ですぅ。夢は世界樹を伝っていのちの意識を繋ぐ心の橋ですぅ」

ガルーダ「お、おぉぉ……ミーア……ミーアが……」

翠星石「いのちのない、心がない機械が夢を見るはずはないですぅ。ガルーダ……」

ガルーダ「…………」

 確かにそこに存在しているガルーダにしか見えない夢の扉に伸びていた手が、静かに落ちていった。

翠星石「ガルーダ……」

 ズズゥン……! 沈黙した身体に瞑目していると、また大きな地震が翠星石を揺らした。

真紅「翠星石、早く戻ってきなさい!」

蒼星石「脱出するよ!」

翠星石「わかってるですぅ、今行くですよぅ!」

 ドレスの裾を翻し、翠星石はビッグガルーダから飛び降りた。
 すぐさまコンバトラーVに乗り込み、崩壊するキャンベル星人基地から脱出する。

翠星石「あばよですぅ、ガルーダ……」


 第十八話 高潔! 大将軍ガルーダの悲劇! 完
744 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/20(日) 18:19:51.69 ID:LXOChzrJ0

とうとう推敲再投下が終わりました。
包み隠さずに申しますと、ジャブロー防衛戦になる第十九話はようやく戦闘が始まったばかりです。
十幾つもの参戦作品に加えて、いろいろと出し惜しみしたくなかった部分があったので、設定を整えるのに尋常ではない時間を費やしてしまいました。
その間にまたいろいろと始めました。

ssスレッドをwikiでまとめようプロジェクトに参加しました。
http://ss.vip2ch.com/ss/%E5%94%AF%E3%80%8C%E3%81%BE%E3%81%98%E3%83%BC%E3%82%93%E3%80%81%E3%81%94%E3%83%BC%EF%BC%81%E3%80%8D

深夜十時ぐらいからこちらをやっております。自己脳内設定では、このSSの平行世界だったりしないでもない。そんなこと言い始めたら全てのSSは平行世界だけど。
美琴「最近、黒子で遊んでないから安価する」黒子「えっ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1299676840/

黒子かわいいよ黒子

それとは別の創作も一段落着いたので、四月までにはジャブロー編を投下できるように頑張りたいです。

これから第一話から読まれる方は>>490からが推敲再投下なので、こちらから読むことをおすすめします。


745 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/20(日) 18:22:07.33 ID:NZAdQZCTo
746 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/03/20(日) 18:25:20.77 ID:HypeHADAO
やっと新しいの読めそうだな
推敲したやつ読んでないが文章変わっただけで設定自体は変わってないよな
747 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/03/20(日) 18:43:45.35 ID:LXOChzrJ0
十話以降の順番が入れ替わっていたりと、地味に変わっていたりしますが、だいたいは設定の矛盾みたいなものを直したぐらいです。
ぶっちゃけ読んでいなくてもそれほど問題はありませんwwドルチェノフが昇降格してますが、些細な問題です。
ちなみに今の段階で一番の矛盾点はMAとゲシュはムーバブルフレームなのにガンダムは(ryですが、それらはジャブロー編前半で無理やり説明付けます。
XOでは放置してたけどね!

あと、何回か書いたと思いますが、なのはたちは九歳ではなく十一歳という設定にしています。それでも無茶って言えば無茶なんだけどね……
他にも、魔女が出る作品をスポット参戦させる予定です。
748 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/24(木) 01:48:49.94 ID:kxY7xw200

 第十九話

 ジャブロー付近の海中

ジオン兵「木馬の反応、消えました」

シャナ「ふふ、そこがジャブローの出入り口よ。徹底的に探しなさい」

 短く指示を出してからシャナは長い黒髪を赤く染めた。
 赤い彗星としての姿でパイプを通じて緑が生い茂る鍾乳洞に入る。

シャナ『待たせたわね。近日中にナプどもは追い払うわ』

原住民族長『本当に……ナプの災厄を振り払っていただけますのですか、火の神様?」

 コロニー生まれには到底理解できようはずもない言語を操りながら、灼眼の少女は頷いた。

シャナ『私たちの目的はあなたたちの侵略者を滅ぼすことよ。宇宙の民はあなたたちと同じように迫害されている』

原住民族長『お願いいたします。機械の巨人を滅ぼしてください……』

シャナ『約束するわ。もちろん、その後の自治も保障する』

原住民族長『おぉぉ……火の神様……』

 またパイプを伝って潜水艇に戻ったシャナに全身を特殊ウェットスーツに包んだ赤鼻の男が感心したようにぼやいた。

アカハナ「さすが大佐殿ですなぁ、まさか原住民族の言葉に堪能だったとは」

シャナ「原住民族が、ジャブロー建設に反対していたことを聞いていたからよ。それよりも、用意は出来ていて、赤鼻?」

アカハナ「は、あの赤い彗星と作戦を共に出来るとは、工作員もやっているものです」

シャナ「期待しているわ」
749 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/24(木) 01:49:37.09 ID:kxY7xw200

 ジャブロー 連邦軍基地

シノン「ホワイトベース隊、香月シノン少尉以下ガンダム、D兵器、ゲシュペンスト、オーラバトラーのパイロット十三名および他二十二名、ジャブローに着任しました」

ウッディ「ホワイトベースの修理責任者となりましたウッディ・マルデン技術大尉です」

シノン「よろしくお願いします」

ウッディ「……本当に若い子たちばかりですな」

シノン「はい」

ウッディ「隊員の方たちはDブロックでまず身体検査を受けていただきます。そこからはそれぞれ指示を仰いでください」

シノン「了解しました。みんな、行きましょう」

 先頭のシノン、海晴、霙に引き連れられてまばらに歩いていく。
 指示されたDブロックに入ると、女性士官が多くなった。どうやらそのためのエリアらしい。

シノン「ホワイトベース隊、香月シノン中尉です」

 自動扉を開いて白い清潔な部屋に入ると、まずヒカルと立夏が驚きの声をあげた。

ヒカル・立夏「ママ!?」

美夜「はぁい、みんなよく来てくれたわね」

 立派な机と椅子に座っていたのは、天使十九人姉妹の母親、天使美夜だった。

ヒカル「な、なんでママがここに……っていうか、日本にいたはずよね!?」

美夜「ウフフ、かわいい子のためならママは何でもできちゃうのよ」

ヒカル「え、えぇぇ……?」

海晴「ハイハイ、ヒカルちゃん。とりあえず身体検査だから、脱ぎ脱ぎしましょうね」

ヒカル「って!? ちょっと海晴姉……あ、そんな……!」

海晴「まあ、ヒカルちゃんったら、ちょっとおっぱい大きくなったんじゃない?」

ヒカル「きゃぁ!」

美夜「みんな身体検査をしたら、それぞれユニットごとに精密な検査があるからね」

アリサ「は、はい……」

美夜「あ、なのはちゃんと珠姫ちゃん、あと紀梨乃ちゃんとチャムちゃんはCブロックのこっちに行ってね。君たちはト・ク・ベ・ツ授業よ」

なのは「と、トクベツ授業……?」

珠姫「???」

美夜「大丈夫よ、取って食べられちゃったりはしないから」

紀梨乃「というより、こっちのほうが食べられちゃうような気が……」

霙「まったく、いい年して女同士でハダカになるのが恥ずかしいのかオマエは」

ヒカル「そ、そういうことじゃなくて、霙姉と海晴姉が一緒になってなんて――わぁぁ!」

立夏「オネーチャンたちずるーい! リッカもーっ!」

ヒカル「うわぁ、こらー、立夏ー!」
750 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/24(木) 01:51:31.22 ID:kxY7xw200

 身体検査を終えて、それぞれは指定された場所へ行くことになった。

 ジャブロー基地 ドラグーン工場

ラング「やぁ、君たちがD兵器に乗ってくれた娘さんたちか。すまなかったね、こんなことを押し付けてしまって」

シノ「天草シノ二等空士以下二名、到着を報告します」

 天草シノ、萩村スズ、七条アリアの三人は量産型ドラグナーであるドラグーンの開発工場にて、開発者であるラング・プラートに会っていた。

ラング「かしこまらなくてもいいよ。楽にしてくれたまえ」

 作業場の中央には既にドラグナーが1型、2型、3型と並べられていた。

ラング「君たちが間に合ってくれてよかったよ。これでドラグーンに戦闘データを入れることができる」

 ドラグナーの開発目的はドラグーンの戦闘データ、すまり経験値を与えるために作られたものだ。

ラング「同時にパイロット登録も解除しよう。これで君たちは晴れて任期満了だ」

アリア「任期満了ということは……」

ラング「あぁ、君たちはもう連邦軍に縛られることはない。大事なデータを取得してくれた褒賞もあるだろう」

スズ「とりあえず、命を落とさずに済んでよかったですよ。ねぇ、会長?」

シノ「え? あ、あぁ、そうだな……」

スズ「会長? どうしたんですか、浮かない顔をして」

 ぼんやりとD−1を見つめているシノをスズが心配げに見上げていると、ラング博士は顎の下で指を組み、声を落とした。

ラング「ところで……君たちはギガノスの蒼き鷹と交戦したそうだが……」

アリア「はい、そうですけど……」

ラング「蒼き鷹は戦死したと聞いたが……それは確かかい?」

 蒼き鷹、ハルヒ・スズミヤ・プラートはラング・プラートの娘である。
 父と娘で互いに袂を分かった二人は絶縁したはずだが、やはり父親。敵とはいえその動向は気になるはずだ。

アリア「申し訳ありません。私たちでも確認ができませんでした」

ラング「そうか……頑固な娘に育ててしまった……」

シノ「あの……ハルヒ、さんはどんな人だったんですか?」

ラング「……強い娘だよ。そして、人の痛みのわかる子だった……だからこそ、地球を蝕む連邦を排斥するギルトールの理想に心酔して、ああなってしまった」

シノ「あくまでも、私の考えですが……」

 空に散ってしまった娘を悼んで胸を詰まらせているラング・プラートに、シノは思い切って言った。

シノ「ハルヒさんはまだ生きていると思います」

ラング「本当か?」

シノ「確信があるわけではありませんが、一番近くで見て戦ったのが私です。彼女があの場面で簡単に死ぬとは思えません。どこかで、私を睨みつけているような……そんな気がします」

ラング「そうか……君がそういうのなら、まだ信じよう」
751 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/24(木) 01:53:33.47 ID:kxY7xw200

シノ「あの……それで、お訊ねしたいのですけど……」

ラング「何だ?」

シノ「D兵器……ドラグナーはこの後、どうなるのですか?」

スズ「か、会長?」

アリア「シノちゃん?」

ラング「ドラグナーは……もうその役目を終えた。解体されることになるよ」

スズ「そ、そうなんですか!?」

ラング「ドラグーンは三種のD兵器の全てをフルスペックで上回る機体だ。ドラグナーは解体して破損などを詳しく調べてドラグーンの更なる糧になるのだ」

シノ「失礼を承知で言います。ラング・プラート博士」

ラング「言いたまえ」

シノ「私を、またドラグナーに乗せてはいただけないでしょうか」

スズ「会長!?」

 馬鹿なことを――スズの顔にはそう書いてあるが、隣りのアリアはやっぱりといった風ににこにこしている。

ラング「君たちは軍籍を排除される代わりに褒賞を得ることになっている。つまり、ドラグナーに乗るということは、軍に残り、褒賞を辞退するということだぞ」

シノ「構いません。私はまだ、ドラグナーに乗っていたい。あの子と戦場で見てきたものに、私はまだ答えを出してはいないんです。それに……」

 胸に手をあてて、シノは自分の声を聞くようにして頷き、まっすぐにラング博士を、その奥にいるドラグナーを、そして更に向こうにいる誰かを見つめる。

シノ「宇宙には、私を待っている人がいる。その人たちに作ったたくさんの借りを返せないようでは、才色兼備の桜才学園の生徒会長などやっていられません」

アリア「シノちゃん、素敵ね……濡れちゃうわ」

スズ「……ノーコメントです」

シノ「二人とも、これは私が勝手に決めたことだ。二人までついてくる必要はないぞ」

アリア「ダメよ、シノちゃん」

スズ「乗りかかった船です。褒章のために乗ったんじゃないですから」

シノ「……ありがとう」

 穏やかな笑みを浮かべて、シノはラングへ振り返った。
752 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/24(木) 01:54:09.16 ID:kxY7xw200

シノ「お聞きの通りです。ドラグナーの解体はもうしばらく待ってください」

ラング「……解体は既に決まっていることだよ。ドラグーンのため、連邦の勝利には必要なことだ」

スズ「プラート博士!」

ラング「だが、その後、どう処分されるかは指示されていない」

シノ「えっ?」

ラング「ドラグナーの活躍は既に連邦の全員の知るところであり、ガンダムやマジンガーZと並んで平和の旗印としての役割を担っているはずだ」

シノ「そ、それじゃあ……」

ラング「ドラグーンに使われている新しい装甲で大幅な改造を行うことにしよう」

シノ「ホントですか!? ありがとうございます!」

ラング「あぁ、約束しよう」

スズ「でも、装甲を取り替えるなんて、すごく時間がかかるんじゃないんですか?」

ラング「心配には及ばない。ドラグナーに使われているムーバブルフレーム機構は連邦にはなかったギガノスの技術で、機体の骨格のみで自重を支える設計であるため、装甲や武装の取替えが従来と比べて非常に容易になっている」

シノ「あの、もう少しわかりやすくお願いします……」

スズ「まったく、会長のくせにダメですね」

アリア「スズちゃんはわかったの?」

スズ「当然です! 私はIQ180なんですから」

シノ「教えてくれ、スズ先生」

スズ「要するに、メタルアーマーに使われているムーバブルフレーム構造は、基本となる骨格を作って、その上に装甲や武装を服を着せるみたいに重ねていくんですよ。確かにこの方法なら、装甲パーツに予備があればそれを取り替えるのに一時間とかからないでしょうね」

シノ「ガンダムやゲシュペンストにはなかった設計なのか?」

スズ「ガンダムやゲシュペンストは、部位ごとに独立したパーツを作って箱を乗せていくようにして組み上げたモノコック構造です。ガンダムは見ればわかりますが、ドラグナーに近い形のゲシュペンストも設計自体が古いですから、モノコック構造ですね。最近のような駆動をするようになったのは天使博士の技術によるところが大きいんです」

ラング「天使博士が取り組んでいるのは、コクピットブロックを中心に内部駆動を軽く速く動かす開発だ。彼女が設計した脱出ポッドは生存率99%以上――南極条約でジオン・ギガノスにもこの技術は提供されている」

シノ「ああ見えて実はすごい研究をしていたんですね」
753 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/24(木) 01:55:01.04 ID:kxY7xw200

 Dブロックの廊下

美夜「へっぷしょん!」

立夏「ワォ! どうしたの、ママ?」

 熱帯のジャブローで思う存分ハラダシツインテールミニスカルックをしている立夏がぴょんと飛び跳ねて驚いた。

美夜「風邪かしら……? もしかして、誰かが私のウワサをしているのかも」

ヒカル「それにしても、私たちだけをどこに連れて行くの、ママ?」

美夜「ウフフ、いいところよ」

ヒカル「……」

海晴「いやん、ヒカルちゃん、怖い顔しちゃダメよ」

霙「それに、さっき言っていたじゃないか。ユニットごとの精密検査があると」

ヒカル「あぁ……」

霙「まったく、考えが頭に回らないのは糖分を摂っていない証拠だ。どれ、私のポケットにあんこがある。食べるか?」

ヒカル「なんで和紙にあんこが直接くるまってるの!?」

霙「いらないのか? もったいない」

 団子状にされた暗褐色の塊りを口の中に入れる霙にさすがの立夏も唖然としている。

立夏「見てるだけで甘ったるいよぉ……」

 そうこうしているうちに、美夜は一つの部屋へ娘たちを招きいれた。
 そこでヒカルは予想していたいくつかのサプライズよりもびっくりさせられた。

氷柱「遅かったわね、ママ」

吹雪「いえ。むしろ予定より六分ほど早いです。氷柱姉」

ヒカル「氷柱!? それに吹雪まで!」

 テーブルの設計図と睨めっこしていたのは、ヒカルの大切な家族の二人だったのだ。

 立夏と同じくらいの長さなのに冷たい柱のように落ち着いたツインテールの七女、氷柱。
 放熱板のように広がりを持ったショートカットにアンテナを三本立てている十二女、吹雪。

 天使家が誇る二大クール&スマートな二人に白衣はバッチリ似合っていて、何をしているのかは明白であった。

美夜「ウフフ、氷柱ちゃんと吹雪ちゃんには、私の研究のお手伝いをしてもらってるのよ」

ヒカル「そ、そうだったんだ……」

氷柱「ま、私は飛び入りなんだけどね。ここじゃ吹雪のほうが私より先輩だわ」

吹雪「はい。私は二年前からママの研究の手伝いをしています」

 相変わらず小学生離れした無表情でこくりと頷く吹雪は、どこか家にいるときより生気に満ちているように見える。
754 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/24(木) 01:56:38.01 ID:kxY7xw200

霙「氷柱、オマエ、綿雪のことはいいのか?」

 霙の指摘に氷柱がうっと言葉に詰まった。
 病弱な十三女の綿雪、物心ついた頃に生まれた妹ということもあって氷柱は綿雪のことをとても大切に想って心配している。
 しかも、病気が小康状態になったかと思えば、コロニー落としで汚れた大気の影響をもろに受けて観月と一緒に寝込んでしまっている。
 入院していたときはいつも学校帰りにお見舞いに行っていた氷柱はもう気が触れんばかりになって連邦政府とジオン、後になってギガノスまでまとめて糾弾しまくっていた。

 だが、その氷柱が綿雪のいる家を出て遠い南米のジャブローに来ている。

氷柱「だって……綿雪が行ってって言ったんだもの……」

 さみしそうに氷柱が言う。
 戦争なんて、綿雪の関係ないところでやりなさいよ!
 それが口癖になっていた氷柱が、一番大切な綿雪に行ってほしいと言われたのである。
 早くこのくだらない戦争を終わらせることが、小さな妹の願い。

 ぎゅう、っと氷柱を海晴が抱きしめていた。

海晴「氷柱ちゃんは本当にいい子ね」

 よしよし、と小さな頭を撫でる。

海晴「今もとってもかわいいけど、昔は今よりもっとちっちゃくてかわいくておしとやかな女の子でわんぱくな立夏ちゃんにオヤツを横取りされて泣いたりしてたのに……」

氷柱「ちょ、もう! 小さい頃の話は反則よ、海晴姉様!」

 立夏がえへへと舌を出している。
 その隣りで美夜が懐中時計を見て、軽く手を叩いた。

美夜「さてさて、立夏ちゃんたちはT−LINKの精密検査をしなくちゃね」

ヒカル「T−LINK?」

美夜「ウフフ、詳しい説明は検査をしながらするから、おいでおいで」

 怪しい手つきについていって、ゲシュペンストが収められたエリアへ行くと、ヒカルと立夏は変わった形のヘルメットを被ってそれぞれのコクピットに座る。
755 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/24(木) 01:57:07.59 ID:kxY7xw200

美夜「T−LINKっていうのは、まあ、言ってみれば人が持っている当たり前の力のことよ」

 マイク越しにヘルメットから伸びるケーブルを計器につけるように指示をしながら、美夜が説明を開始した。

美夜「すごく簡単にまとめちゃうと、家族の絆ってとこね。大切な家族を守りたいって想いが時にすごいパワーを呼ぶことってあるじゃない」

ヒカル「あるじゃないって、そんな投げやりに言われても……」

霙「フ、ヒカルが一番わかりやすいじゃないか」

ヒカル「えっ?」

霙「オマエが自分を鍛えているのは、女ばかりの家庭を守りたいって思ったからだろう? その気持ちが継続する力を生んでいて、私たちにも伝わってくる。本心がリンクしているんだ」

 真面目な声で言われると照れてしまう。

美夜「特にウチは十九人も女の子ばかり集まっちゃってるから、そのリンクが他の人よりも強く育まれちゃってるのよね。うぅ〜ん、子どももいっぱい産んでみるものね」

立夏「ムツカシイ話わかんない……そのなんとかカントカが何の関係があるの?」

美夜「T−LINKを上手に引き出すことができれば、離れていても意志の疎通ができるの。虫の知らせみたいなものかしらね。相手がどこにいて、どんなことを考えているのかがわかる」

ヒカル「それって……ニュータイプってこと?」

美夜「そうね、似てるわね。人と人同士がわかりあえる人類の美しい在り方……でも、血の繋がりのある家族同士ですらそれができていない。ママはあなたたちのような娘を持って幸せよ」

立夏「えへへ」

美夜「それと、ニュータイプっていうのは、宇宙に出た人類は感覚が鋭敏になって新たな知覚を発揮するっていう考え方だから、T−LINKとはまた別の能力になるのよ。T−LINKはそうねぇ……火事場の馬鹿力みたいなものかしら?」

霙「フッ、脳筋のヒカルにピッタリじゃないか」

ヒカル「み、霙姉!」

美夜「わぉ! やっぱり立夏ちゃんもヒカルちゃんも活発でかわいい脳波をしているわね。きゅんきゅんしちゃう」

海晴「こういうママを見ると、やっぱり私たちのママなんだぁってわかるわ……」

美夜「ウフフ、立夏ちゃんなら、もうアレを扱えるかもしれないわね」

立夏「アレってなに、ママ?」

美夜「吹雪ちゃんが非常に高性能な脱出機能のコクピットを開発してくれるおかげで、技術がインフレしちゃってるのよね」

吹雪「どんな状況でも人命が最優先事項ですから。耐久性を保ちつつ小型化。軽量化をするべきです」

立夏「ねねねぇねぇ、アレってなぁにぃ〜?」
756 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/24(木) 01:58:56.51 ID:kxY7xw200

 Cブロック

アリサ「あっ! アレが宮藤って博士のラボじゃない?」

 性格的に先頭に立ってしまうアリサの指す表札には『Special defensive team witches CKO:宮藤一郎』と書いてあった。

紀梨乃「ん〜……特別防衛隊……魔女?」

 witchという単語の意味に、紀梨乃、珠姫、アリサ、すずか、チャムが一様になのはを見た。

なのは「ふぇ? わ、私は知らないよ」

チャム「しーけーおーって何だろ?」

紀梨乃「チャムちゃん、アルファベット読めたんだね」

チャム「失礼ね!」

アリサ「Chief knowledge officer――最高知識責任者。組織内で必要な知識や情報を扱う、まあ要するに一番頭がいい人よ」

 ここぞとばかりに父親の仕事上で仕入れた知識を披露している間に、ドアの前に来ていた。

紀梨乃「千葉紀梨乃と、あとえっと、いちにいさんよん……六名、到着しました」

 一応、年長である紀梨乃がやや緊張気味にインターフォンに報告をすると、ドアが横に開いた。

宮藤「やぁ、よく来てくれたね」

 温和そうな人物が椅子から立ち上がって六人を出迎えた。

宮藤「僕は宮藤一郎。ジャブローである特殊な研究をしているんだ。なんとなくもう想像できているとは思うけどね」

アリサ「魔力とオーラ力ですか?」

宮藤「その通りだよ。実は魔力や魔法というのは、昔から認識されている割りとポピュラーな能力だったのだけど、発現はごく限られた人だけで、混乱を避けるために政府などに情報を規制されていたんだけど、既に全世界の人達が充分に認知できる状況になっている。わかるね」

なのは「わ、私のせいですか……?」

宮藤「いや、それよりも先に、ジオンの赤い彗星がいる」

なのは「あ、そっか……」

宮藤「ともかく、連邦軍はジャブローの守備にウィッチを使うことを決定し、既に配属も決まっている。百聞は一見に如かず、見てほしい」

 部屋のカーテンがスライドして、鍾乳洞を切り拓いて作られた機動兵器の実験スペース。
 一方に取り付けられているのは、人一人分は入れそうな砲口だ。

宮藤「あれは量産型モビルスーツ・ジムに取り付けられるビームライフルと同威力のメガ粒子砲が出る。少尉、用意をしてくれたまえ」

 マイクに向かって呼びかけると、砲口の正面に建てられた鉄の櫓に一人の女性士官が上がっていった。
 肩までの黒髪を後ろで一まとめにしていて、右目に眼帯を付けて背中には日本刀を背負っている。

 六人が胡乱げに女性士官と宮藤博士を見比べていると、彼は驚くべきことを口走る。

宮藤「よし、メガ粒子砲、撃て」
757 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/24(木) 01:59:29.47 ID:kxY7xw200

 誰かが何かを言う間もなく、砲口に粒子が集まり、ビームが発射される。

『はあぁぁぁぁぁっ!』

 女性士官はビームが当たる直前に背中の日本刀を抜いた。
 スピーカー越しにも伝わる気迫の刹那、女性士官の前に半透明の青い、なのはの魔法障壁に似た盾が出現してメガ粒子砲は全て堰き止められた。

すずか「今のは、なのはちゃんの……」

宮藤「私たちはシールドと呼んでいる。物理兵器はもちろん、ビーム、レーザーまでほぼ全ての攻撃を跳ね返すウィッチの能力だ」

 役目を終えた女性士官は刀を鞘に戻して櫓を降りていく。

宮藤「このように、ウィッチはこと防衛能力に関してはジャブローの隔壁三百枚分に匹敵する」

アリサ「すごいじゃない。これがあれば各地に援軍を送ることも出来たはずよね」

 彼女にしては珍しいイヤミな言い方に、宮藤博士は参ったとばかりに頭を掻いた。

宮藤「問題なのは、ウィッチの数の少なさなんだ。ウィッチ一人で展開できるシールドの面積は50から200メートルがやっとだけど、ジャブロー、連邦政府にいるウィッチはたったの五人なんだ」

チャム「本当に少ないのね。地上はバイストン・ウェルより広いのに、聖戦士より少ないわ」

宮藤「ウィッチは素質があっても自覚がないと魔力を使うことは出来ない上に検査方法もないため、発見が極めて困難なんだ。ジャブローにいる五人のうち四人は遺伝的に魔力資質がある家系の生まれだ。残りの一人は基地内でウィッチたちと接しているうちに資質が確認されたんだ」

すずか「あ、もしかして、Dブロックが女の人ばかりだったのって……」

宮藤「そうだ。隠れた資質のある女性同士が交流することで、発現のきっかけになればと思っていたのだけれど、君たちの到着でまた別の方法を研究することができそうなんだ」

アリサ「ふぅん、もったいぶっているけど、要はなのはを実験体にしたいって言うんじゃないの?」

宮藤「これは参ったな……だけど、安心してほしい。私が重要だと思っているのは、高町くんもそうだけど、君が持っている魔法の杖のほうなんだ」

なのは「え、レイジングハートですか?」

 思わぬ指名に、なのはが首にかけたレイジングハートを出すと、赤い宝石は自己主張をするように光りを放った。

宮藤「機械による魔力の制御が可能になる技術を研究して流用すれば、魔力資質を検査する手段が発見できるかもしれない。そのために、君のそのレイジングハートを預けてもらいたいんだ」

なのは「えっと、いいのかな、レイジングハート?」

レイジングハート「Alllight my muster」

宮藤「そして、千葉さんと川添さんにも、オーラ力について話を聞かせてもらいたい。いいかな?」

紀梨乃「はーい」

珠姫「わかりました」

 快い返事の後に、インターフォンが鳴った。

『宮藤博士、坂本と宮藤、入ります』

 開いたドアの向こうに立っていたのは、先ほどメガ粒子砲を受け止めて見せた眼帯の女性士官と、それより頭一つ分背の低い少女だった。

宮藤「お疲れ様でした、坂本少尉。紹介しましょう。こちらが坂本美緒少尉で、こちらは私の娘の芳佳と言います」

美緒「坂本美緒少尉だ。このジャブローにいる間、君たちの世話役を頼まれた。よろしく頼む」

芳佳「わ、私はえっと、宮藤芳佳軍曹です。主にお父さんのお手伝いと兵隊さんたちの治療をしています」
758 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/24(木) 02:00:52.81 ID:kxY7xw200
という訳で、リアル系の着任イベントを先に投下しました。
これからアニマックスで勇者王ガオガイガーですね。
ガガガッ! ガガガッ! ガオガイガー!
759 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/03/24(木) 12:52:33.18 ID:u7AYBjVAO
僕らの勇者王も参戦か、乙
760 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2011/03/24(木) 14:51:05.53 ID:jsmM5wVY0
乙ガイガー
>>744そういえばhttp://kannki.blog39.fc2.com/blog-category-105.htmlでもまとめられてる
761 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/29(火) 20:22:50.91 ID:H14cuRFu0

 ホワイトベース着任の二日後にマジンガーZ、ゲッターロボなどの戦時特殊措置民間機――スーパーロボットとそのパイロット達がマチルダの乗るミデアでジャブローに到着した。

唯「熱い! なんべーが熱いよ、りっちゃん!」

律「うおーっ! アマゾンがあたしを呼んでるぜーっ!」

唯・紬「「ぜーっ!」」

梓「ムギ先輩まで……」

澪「本当に熱いな……ていうか蒸すな……」

梓「もう十二月になるっていうのに、さすが南半球ですね……」

真紅「ドールにこの気候は敵なのだわ」

雛苺「うゆー、髪がじめじめしてくるのよー」

翠星石「蒼星石は短くていいですねぇ」

蒼星石「帽子が……ね」

金糸雀「カナは日傘があるからバッチリなのかしらー」

夕映「日差しと湿気は関係ないと思うですよ」

金糸雀「はうっ!?」

翠星石「金糸雀はおーばかやろうさんですぅ」

夕映「いけませんよ、翠星石さん。指摘と罵倒は別のものです。過ちは罵ることなく訂正してあげなくては」

翠星石「なるほどですぅ。金糸雀のボケ頭を翠星石が矯正してやるですぅ」

金糸雀「ひぃぃー、ステレオしないでほしいかしらー!」

ゆりえ「うーん、熱いよー」

光恵「まったくもう、変温動物なんだから」

マチルダ「フフフ、ジャブローの中は空調が効いてるから、もう少しの辛抱ね」

唯「私、クーラーダメなんですけど……」

憂「大丈夫だよ、お姉ちゃんのためにいっぱいアイス持ってきたから!」

唯「わーい」
762 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/29(火) 20:24:27.54 ID:H14cuRFu0

 Dブロック 畳の間

アリサ「うっ……ふっ、く……」

澪「あっ、あう……」

スズ「う、うぅぅ……」

のどか「はうぅ……」

唯「うず……うず……」

立夏「うゆゆ……もうヤダーッ!」

バルクホルン「立つなぁっ!」

 パシーンッ! 正座から立ち上がった立夏の尻にゲルトルート・バルクホルン准尉が振るう警策が当たった。

立夏「いったぁーい!」

バルクホルン「貴様、これで三度目だぞ! 日本人のくせに我慢が足りないな!」

立夏「も、もうオシリがびりびりで座れないよぅ……」

バルクホルン「そんなことで連邦軍人が務まるか! この後まだザゼンがあるんだからな!」

立夏「イヤーッ! 助けてオネーチャーン!」

ヒカル「わっ、バカ! こっちくるな!」

 ドシーン! 静かに精神を統一していたヒカルは立夏に飛びつかれて一緒に倒れる。

氷柱「やっ! ヒカル姉様、どこ触って……!」

 伸びたヒカルの手が氷柱の脇を掴んで氷柱は飛び上がり、勢い余って隣りによろける。

霙「むっ……!」

氷柱「きゃうっ! み、霙姉様、ごめんなさい!」

海晴「あらあら……氷柱ちゃん、そんなにお姉ちゃんのおっぱいが恋しかったのなら私がいつでも貸してあげるのに」

氷柱「い、いらないわよ!」

バルクホルン「喝ぁーつ!」パシーン!

氷柱「痛ったぁ! なんで私が!?」

 今さら言うまでもないことだが、全員揃ったところでいきなりやらされているのは正座である。
 もちろん、集合した始めは基地内での簡単な講習などだったが、あまりにも奔放な少女――特に立夏や律――たちに、教育係のバルクホルンが怒ったのだ。

バルクホルン「このバルクホルンの目が黒いうちは基地内で勝手な真似は許さないぞ!」

 生粋のジャーマンミリタール・スピリトは一度火が点くと止めることは容易ではない。

バルクホルン「知らなかったのなら教えてやる。規律とは、縛るためにあるのではない。兵士達を守るためにあるのだ。これを守ることによって兵士としての生活にけじめがつき、体調も整えることが出来、連帯意識によって仲間を想う心が生まれ、友を大事にする軍人としての高潔が養われるのだ。いいか、たった一人の兵士の勝手が一軍を滅ぼしてしまった例を教えてやろう。それはかの中国の三国時代に起こった出来事で――」

 ピリリリリリリリリ! バルクホルンの手首のウォッチが畳の間に響いた。

バルクホルン「なんだ、もう十分が経ってしまったのか」

 燃え始めた炎を鎮めたのは、自らを律する時計の音だった。

バルクホルン「よし、全員、休め!」

 号令でほとんどの者が一斉に足を崩してため息を吐いた。

澪「あ、足が痺れた……ひゃうっ!」

律「うひひ〜」

澪「り、律、やめろバカ!」
763 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/29(火) 20:31:23.18 ID:H14cuRFu0

スズ「正座十分なんて、旧世代の精神論です……馬鹿げてます。正座を長時間すると成長を妨げたりO脚の原因になるんですから」

バルクホルン「だが、これで暴れる元気もなくなっただろ。よし、休憩時間終わり! ザゼンに入れ!」

唯「えぇ〜っ! 早すぎるよぉ〜!」

アリサ「まだ一分ぐらいしか経ってないわよ!」

バルクホルン「一分も休めば充分だ! 早くザゼンを組め!」

 不満たらたらの少女たちだが、バルクホルンが警策を振り回すのを見て、渋々座禅を組み始める。

バルクホルン「ザゼンは過去の自分の過ちを振り返り、反省するためにある。よく集中して精神を統一しろ」

 しん……と静かな時間が流れ始める。
 さて、今度は何分もつのかとバルクホルンが肩を回しながら座禅の間を縫うように見回っていくと、穏やかでいて張り詰めた空気を出している四人を見つけた。

シノ「…………」

なのは「…………」

珠姫「…………」

ヒカル「…………」

 バルクホルンはふむ、と唸った。
 もちろん、他にも静かに座禅を組んでいる者はいるが、この四人は何か持っているものが違うと感じたのだ。
 バルクホルンはその四人の肩を叩く。

バルクホルン「来い」

 短く言い、疑問符を浮かべている四人を連れて、バルクホルンは畳の間から出て別の部屋に通した。

美緒「四人か、お前にしては多いな」

バルクホルン「あぁ、私はすぐに戻る。他のはてんでダメだ」

シノ「あの、我々はどうして……」

 バルクホルンが去った後、おずおずとシノが訊くと、先ほどより二回りは小さい畳の部屋の真ん中に立って書類を読んでいた坂本少尉がにやりと笑った。

美緒「楽にしていてていいぞ、今のところはな」

 そんな言われ方では全然楽に出来ない。

美緒「わかりやすい言い方をすれば、お前たちはバルクホルンに合格を貰ったということだ」

なのは「合格……?」

美緒「あぁ見えてバルクホルンは結構人を見る目がある。

ヒカル「それだったら海晴姉や霙姉まで残っているのは……」

美緒「彼女らは勝手にあそこにいるだけだ」

ヒカル「……あ、そうですか」

美緒「うむ、お前たちには一つ違う特訓を受けてもらおうと思う」

珠姫「特訓、ですか……」

 ちょっとだけ珠姫が目を光らせた。

美緒「わかっているとは思うが、戦いは一瞬の隙が命取りとなる。敵の隙を突き、自らの隙は見せず――また、それを誘い出すためにわざと隙を作ることもある」

 シノはランバ・ラルとの攻防を思い出した。あの青い巨星の悠然とした佇み、飛び込めばやられる恐怖。

美緒「特に、機動兵器での戦闘はパイロットが反応していても操縦、駆動のタイムラグが発生する。敵が動き出してから反応してもせいぜい避けるか防御するかぐらいしかできない」

 背負った日本刀を鞘から抜く美緒。鋭い輝きが反射する。

美緒「それを事前に察知し、攻撃を見極めることができれば、最小の動きで敵の隙を突くことが可能だ」

なのは「も、もしかして……」

 たらりと冷や汗を流すなのは。他の三人も気付いているようである。
764 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/29(火) 20:33:36.50 ID:H14cuRFu0

美緒「お前たちには、私の剣をかわしてもらう」

なのは「死んじゃいますよ!」

美緒「安心しろ、使うのは模擬刀だ。防具を付けてもいいし、私も寸止めするように心がける」

なのは「そ、そう言われましてもー……」

 闘志ビンビンの美緒に不安になって、年上の三人に同意を求めようと顔を上げると、

ヒカル「特訓か、なるほど……己を鍛えるにはやはり特訓だな」

シノ「うむ、ドラグナーを強くしても、私が乗れなくては仕方がないからな」

珠姫「その通りです」コクコク

なのは(ノ、ノリノリだぁ……)

美緒「よし! さっそく防具を身に付けるんだ!」

なのは(ふえぇ……お父さんたちがやってたみたいなことするのかなぁ……)

 月のフォン・ブラウン市にいる家族たちを思い出しながら剣道の防具を着る。

美緒「よし、一人ずつやるぞ。まずは誰からやる?」

珠姫「私が」

 素早く挙手をしたのは珠姫だった。傍から見てわくわくしているのがよくわかる。

美緒「私の打ち込みを竹刀で受け止めることが出来れば合格だ。いくぞ!」

珠姫「はいっ!」

 剣道の実力で言えば有段者である珠姫だったが、いざ美緒の正面に対峙すると、勝手が違った。

珠姫「――ッ!?」

 切っ先から伝わる気迫に珠姫の足がまるで接着したみたいに動かなくなった。
765 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/29(火) 20:34:21.08 ID:H14cuRFu0

 美緒は一歩も動いていないのに、くっ、と模擬刀が揺れるだけで珠姫は背中に冷や汗を溜めた。

珠姫「……っ!」

 顔を引きつらせる珠姫に鋭い叱責が飛ぶ。

美緒「集中しろ! 攻撃には必ず気配がある。それを探るんだ」

珠姫「くっ……」

 一度大きく息を吸い込み、珠姫は気を吐いた。

珠姫「キヤァァァァァァァァァァァァッ!!」

美緒「ほぉ、良い気炎だ」

珠姫(落ち着いた……私にはオーラ力がある。坂本少尉の気配をオーラ力で観るんだ……)

 意識を澄ませて自分のオーラ力を制御していく。

珠姫(私の……オーラ力……)

 拡大していくオーラ力を自分の内に鎮めていく。自分の目がずっと落ち着いていくのが実感できる。

美緒「はぁっ!」

 気が充実していくのを待って美緒は模造刀を右肩に振り下ろす。

珠姫「ふっ――!」

 パシィンッ! 傍から見ていたシノやヒカルの目にも映らぬ速度で、模造刀と竹刀が打ち合った。

美緒「さすがは高名な川添先生のお孫さんだ。先ほどまでまるで乱れていた気が淀みを静めている」

珠姫「私は……自分のオーラ力を暴走させません。そう決めましたから」

美緒「フッ……次は本気で掛かるとしようか?」

 ニヤリと笑んでから、美緒は刀を引いて鞘に戻した。

美緒「さぁ、次は誰がやる?」

シノ「……」

ヒカル「……」

なのは「……」

 三人は綺麗に揃って首を横に振った。
766 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/29(火) 20:36:03.42 ID:H14cuRFu0

 ジャブロー連邦軍基地 Oブロック 作戦会議室
 
 レビル将軍を含む連邦高官が五人居並ぶ机を前で琴吹紬は青ざめていた。

紬「う、憂ちゃんを、停戦協定の人質に出すと……?」

連邦高官A「人質ではない。和平の為の大使に選ばれたのだ」

紬「お、同じことです! どうして憂ちゃんなんですか、彼女は民間人なんですよ!」

連邦高官B「平沢憂は半官半民の特機部隊にありながら大した役職にも就いていないが、資料を読む限りは教養もあり、大使として不可分な人格を持っている」

連邦高官C「連邦の民間人の代表に選ばれるのは大変名誉なことなのだよ。そこのところをよく理解しておいてくれたまえ」

紬「そんな……」

 救いを求めるように紬は中央に座するレビルを見るが、彼は組んだ指の上にある白髪の顔を力なく振ることしかしなかった。
 代わりに、レビルの左に座っているゴップが同情するような口ぶりで言う。

ゴップ「大使には、レビル将軍の艦隊に搭乗する予定である。危険な目に遭うことはないはずだ」

紬「……了解しました」

 そう応えるしかなかった。うなだれる紬が目線を再び上げるまでの間に、レビルとゴップ以外の連邦高官たちは肩を回しながら作戦会議室を去っていく。

レビル「……和平協定も、実質的にはジオンへの無条件降伏を迫る内容だ」

 額を手で拭いながらレビルが最初に言ったのがそれだった。

レビル「まず、直近の脅威であるギガノスを潰滅させ、その威信でもってジオン、ドレイク軍を降伏させるのが、参謀本部での決定となった」

ゴップ「ジオンのギレン・ザビ、バイストン・ウェルのドレイク・ルフトが降伏などするはずないというのに……」

紬「それなら、どうして大使なんて……」

ゴップ「勧告が必要である、という判断をしたからだ」

紬「どうして……どうして憂ちゃんなんですか!?」

レビル「すまない……」

 悲痛な問いに対する答えをレビルは見つけることができなかった。
 紬もまた、それ以上レビルを問い詰めることができない。
 何故なら、憂が選出された原因は彼女にもあるからだ。
 ジャブローへの入港の際、憂の身分証明に明確かつ重要な役職を用意しなかったのは、紬たちの落ち度である。
 さらに紬の胃を締め付けるのは、憂と同じ立場の人間がもう一人いることだ。

紬「あ、梓ちゃんは……」

レビル「中野梓君については、別の資料が用意されていた」

紬「えっ……?」

 レビルから差し出されたクリップボードを受け取った紬は驚愕に目を見開いた。

紬「そ、そんなことが……!」
767 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/29(火) 20:39:44.05 ID:H14cuRFu0

 熱帯の青空の下に婚礼の鐘が鳴り響く。

 連邦の権力の粋を結して造り上げられたジャブローには、礼拝堂もあり、結婚式を行うことが出来る。
 宇宙世紀に突入して幾十年――ジャブローに生まれて、ジャブローで育ち、ジャブローで家庭を持ってジャブローで死ぬ――ジャブロー三世と呼ばれる世代が現れるほど、ジャブロー連邦基地は巨大な大陸国家と化している。
 単純な勢力彼我を見ても、ジャブローだけでもジオンやギガノスのそれを遥かに上回っているのだ。

 今、ジャブロー中の祝福を受けているのは、ウッディ・マルデンとマチルダ・アジャンの二人である。
 元々はオデッサ作戦終了後、ジャブローに到着し次第、挙式の予定だったが、マチルダの要望で今まで伸ばされていたのだ。

 礼拝堂の最前列、連邦高官たちよりも優先されてその席に着いているのは、桜高軽音楽部や天使家、桜才学園などの少女たちで、幸福なマチルダの美しい表情に感動しきっていた。
 普段からメルヘンな夢を抱いている澪やのどかなどは指を組んで瞳を煌めかせているし、オトコなんてクダラナイと決めつけている氷柱や恋愛などとは無縁な脳ミソをしているヒカルや律でさえ、マチルダから溢れる眩ゆさに目を奪われている。

 数少ない例外といえば、カメラを構える畑ランコや普段から何を考えているのかよくわからない霙や吹雪ぐらいだ。

 儀式はつつがなく終了して、披露宴の運びとなる。

澪「こらっ、動くな律! ファスナー上げられないだろ!」

律「んなこと言ったってよぉ、これキツくて動きづらくて……アタタタ!」

憂「はい、お姉ちゃんうーってして」

唯「うーっ」

 余興に出演する放課後ティータイムは控え室で着替えている。
 半月ほど前に本来学園祭がある日に学校でゲリラライブを敢行したが、練習時間をあまりとれなかったので、実に散々な演奏をしてしまった。
 それから、この日に備えて五人はリベンジと称して猛練習してきた。新曲も書き下ろし、結婚式の曲をカバーソングにして準備万端だ。
 だが、意気上がる控え室の中で、紬だけは暗い顔をしていた。

梓「どうしたんですか、ムギ先輩?」

紬「えっ? あぁ、うん……ちょっと、ね……」

律「むぅ〜ぎ〜! 澪がいじめるよ〜!」

澪「誰がいじめてるんだ、誰が!」

紬「ふふふ、私がしてあげるわ、りっちゃん」

 あっという間に紬は穏やかな微笑みになって律の衣装を手伝う。

梓「ムギ先輩、何かあったのかな……?」

 昨日、作戦本部に一人で呼ばれて戻ってきたときから、何か落ち込んでいるようだったが、結局梓はそれを確かめる方法を知らなかった。

 会場には既に楽器がセットされており、五人を待っていた。
 それぞれがポジションについて確認しあうと、リーダーの律がスティックを頭上に上げる。

律「いくぜー、ワン、ツー、スリー!」

 ジャジャーン!

唯「かいていきーちはーぼくらーのへいわーまもってくれるーみらいのとりーでー」

律「緊急!」 紬「召集!」 澪「スクランブルだ!」 梓「発進!」

唯「はいてくだ〜いよ〜うさ〜い!」

梓(またこんな歌を……)

 ジャッジャーン!
768 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/29(火) 20:40:58.85 ID:H14cuRFu0

唯「てんいやーずあふたーじゅうねんごのーあなーたーをみつめてみたいー」

澪「STAY TOGETHER その時ーきっとーそばでー微笑んでいたいー」

 ジャジャーン……!

 ワァァァァァァァァァァァァ……!

 猛練習の甲斐あってか、演奏は大成功で、会場は万雷の拍手に包まれた。

マチルダ「フフ、素敵な演奏だったわ、ありがとう」

澪「あ、ありがとうございます!」

 マチルダは惜しみなく手を叩いて、放課後ティータイムの一人一人と握手をしていく。
 続いてウッディも握手をして、席に戻ってもまだ拍手はやまない。
 立夏がアンコール、アンコールと飛び跳ねて、会場もそんな空気になっているので、五人はどうしようかと相談する。

唯「アンコールだよ、アンコール!」

紬「私、アンコールされるのが夢だったの〜」

律「やるか、もう一曲ぐらい!?」

梓「いや、待ってくださいよ、他の曲全然練習してませんよ。しかも残ってるのカレーのちライスとかふでペン〜ボールペン〜とかですし……」

澪「だ、ダメなのか!?」

梓「ダメというか、結婚式に合わないというか……」

澪「あ、合ってないのか!?」

律「合ってると思ってたのかよ……」

唯「あれ? 君だれ?」

 きょとんと唯が見たのは、いつの間にかステージに立っていた一人の少年だった。
 背は澪と同じくらいで、白い髪に地味なスラックスとワイシャツを着て、ポケットに手を入れたまま悠然と立っている。

「僕も、一曲いいかな?」

 まるで夢の中の登場人物みたいに存在感のおぼろな少年はキーボードに手を乗せる。
 知り合いじゃなかったが、不思議な笑顔に唯は頷いた。

唯「うん、いいよ」

 少年は、まるでこの世の善と悪を全て溶かして無色にしてしまったような微笑みのまま、キーボードに両手を乗せた。

唯「あ、ムギちゃんに――」

 ことわらないとダメだよ――そう言おうと後ろを見たが、そこに紬はおろか澪も律も梓もいなかった。

唯「えっ?」

 慌てて周囲を見渡すと、自分と少年と、ギターとキーボードしかないことに気づいた。
769 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/29(火) 20:43:32.89 ID:H14cuRFu0

 ポロン――……キーボードが旋律を紡ぎ始めた。

唯「わぁ……」

 少年が刻む優しくて切なく、希望に満ちた旋律に唯は心惹かれた。

「歌はいいねぇ。歌は心を潤わしてくれる……リリンの生み出した文化の極みだよ……」

 旋律の途中で少年は呟いた。奇妙な言い回しにも唯は何一つ疑問を持たずに頷いた。

唯「そうだよねぇ、歌はいいよねぇ。ねぇねぇ、それは何て曲なの?」

「名前は知らないよ。なんとなく、覚えていたんだ」

唯「そっかぁ……ふふふふふんふふんふーん……ふふふふふふふんふふんふーん……」

「僕たちはどこでも、どこにいても音楽を奏でることができる。それこそ、宇宙の果てにいようとも、歌は誰かの心に届く」

 少年は演奏をやめると、唯が持っているギターの弦を爪弾いて色のない笑みのまま、滲んでいった。

唯「あれ、えっ?」

「君の歌をまた聴ける時を僕は待っているよ」

 白い髪の少年は消えていく。

律「おいっ、唯!」

唯「ひょえ?」

 肩を強く掴まれて、唯は結婚式場にいる自分を思い出した。

律「どうしたんだよ、急にぼーっとしちまって」

唯「あれ? えっと……」

梓「唯先輩、本番が終わったからってだらけてちゃダメですよ!」

 プンプンと梓がツインテールを揺らしている。
 紬と澪も、どうしたのかという面持ちで唯を見ている。

唯「で、でへへぇ〜、ちょっと暑くてぇ……」

 慌てて唯は衣装を濡らしている汗を言い訳に使った。自分が体験したのは白昼夢のようなものだと結論付ける。

唯(でも、はくちゅうむって、これでいいのかな?)

 あの少年と曲は何だったのだろう? そう考えている間に、アンコール曲が決まった。

唯「えっとぉ……それじゃ、もう一回、ふわふわ時間やります!」

 わぁっ、と拍手が起きる。五人はそれぞれ自分のポジションに着いて楽器に指を掛ける。

律「いくぜー、ワン、ツー、スリー!」

 前奏の途中、それとなくあの少年を探してみたが、会場のどこにもいなかった。

澪「唯! 歌えぇー!」

唯「ハッ! わすれてた!」
770 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/29(火) 20:46:53.62 ID:H14cuRFu0

 その日、ジャブローを空襲するジオン・ギガノス部隊は定刻を知らせるように爆撃を開始した。

唯「あっ、揺れた」

連邦士官「定時爆撃か。ま、心配する必要はない。。それで、ホワイトベースの編成は現行のままで所属はティアンム艦隊の第13独立部隊と決まった。……次に、各員に階級を申し渡す。香月シノン中尉」

シノン「はい」

連邦士官「天使海晴中尉」

海晴「はい」

連邦士官「天使霙少尉」

霙「はっ」

連邦士官「天草シノ以下Dチームは准尉に任命される」

シノ「はい」

 次々と辞令が読み上げられていく。
 ヒカルは伍長と立夏となのはたちは上等兵に任命されている。

連邦士官「尚、民間特機のパイロットは、一律して特尉に任命される」

すずか(私たち、いつの間にか軍人になっている……あくまで民間協力者だったのに……)

アリサ(いつかは軍事に関わらなくちゃならないとは思っていたけれど、まさか小学校を卒業する前に受け取ることになるとはね……こんなもの貰って何の役に立つのかしらね)

連邦士官「オホン、尚、貴重な補給部隊を護るために名誉の戦死を遂げられたリュウ・ホセイ曹長は二階級特進、少尉に任命された。他の戦死者達にも二階級特進が与えられる。以上である」

アリサ「……は?」

連邦士官「なんだ?」

アリサ「二階級? 二階級特進ってなに?」

なのは「あ、アリサちゃん……」

連邦士官「戦死者には一律して二階級特進が与えられる。それがどうした」

アリサ「戦っているときには何もしないで、報告だけで人の価値を決めつけて、それで送るのが階級章だけで……アンタはリュウがどう戦死したか知っているっていうの!?」

シノン「アリサちゃん、ダメ!」

連邦士官「きっさまぁ……! 子どもだと思って黙って聞いていれば……!」

 蛸みたいな顔を真っ赤にして連邦士官は平手打ちをアリサにぶつけ――ようとしたが、ひらりとアリサは避ける。

シノン「アリサちゃん!」

連邦士官「貴様! 何故よけるかぁ!」

アリサ「その前に答えなさいよ! アタシたちがどんな気持ちでここに来たのか!」

シノン「ダメよ、アリサちゃん! ……申し訳ありません」
771 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/29(火) 20:47:39.91 ID:H14cuRFu0

 後半はカンカンに茹で上がっている連邦士官に向けてシノンはアリサを庇って立つ。
 当然、士官は自分が侮辱されたわけでもないのに、怒りを押さえられず、また手を振り上げる。

連邦士官「香月シノン! 隊長として貴様が修正を受けろ!」

 乾いた音がして、後ろにいたアリサは自分の代わりにシノンが頬を打たれたのを知った。

アリサ「何してんのよ――もがっ!」

 とっさに霙が口を塞がなければこの場は堂々巡りになっていただろう。

連邦士官「あのスケベ親父の姪だけあるな! 威勢の良さだけは一人前だ!」

 そう吐き捨てて士官は去っていった。

すずか「アリサちゃん……ダメだよ、あんなこと言っちゃ……」

アリサ「だって……だってアイツがリュウの事を……」

 まるで押しくるめられたように狭苦しい部屋に集められた少女たちの中心で、アリサはかっと熱くなる頭と多くの同意同情する視線を浴びる恥ずかしさに、目の端を滲ませた。

アリサ「悔しいのよ! あんな奴にこんな風に扱われて! ジオンよりもギガノスより腹が立つのよ!」

律「だよな、こんな紙切れ一枚であたし達を縛りつけようとしてんだぜ」

シノン「だけど……反発しても私たちが反逆者扱いされてしまうわ」

霙「往々にして、軍隊、巨大な組織というのは、こういうものだ。世渡りというのも重要なスキルだ」

なのは「あっ、アリサちゃん、どこに行くの……?」

アリサ「気晴らしよ! ジャブローん中散歩してやるわ!」

すずか「それなら、私たちも……」

アリサ「いいわよ、ついてこないで!」

 あんまり大きな声を出してしまったことに自分自身びっくりして、アリサはばつ悪げにうなずいた。

アリサ「平気よ……ごめんなさい、シノン……」

シノン「気にしないで、ゆっくりするといいわ」

アリサ「ありがとう……ございます」

 普段の活気をなくして、アリサは部屋を出て行った。
772 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/29(火) 20:48:31.42 ID:H14cuRFu0

 ジャブロー 兵器工場

アカハナ「これは……メタルアーマーでしょうか……?」

シャナ「量産機ね。連邦もここまでこぎつけたということね」

アカハナ「やりますか、大佐?」

シャナ「勿論よ」

ラジム「大佐、隣りの工場はゲシュペンストのようです」

シャナ「当然、そっちもやるわ。モビルスーツはないのかしら?」

アカハナ「所詮、ここも連邦の生産の一部分なのでしょう」

シャナ「木馬の場所はわかっているわね」

アカハナ「はっ」

シャナ「なら、アカハナはアッガイを出しなさい」

アカハナ「了解!」


 同じ時間、アリサは基地の中をとぼとぼと歩いて、環状道路に出ていた。
 ジャブローの基地は鍾乳洞を切り開いて作られたもので、いまだ建設中であり、さながら宇宙世紀のサグラダ・ファミリアである。
 
アリサ「アタシは、どうすればいいの……姉さん……?」

 こんな時に限って、頭をよぎるのは行方不明の姉であった。

アリサ「なんとなくだけど……近くに姉さんがいる気がする……」

 ただ、実際に会いたいかどうかは、わからなかった。
 もしも赤い彗星フレイムヘイズのシャナがアリサの姉だとして、それがこんなところで出くわしたとして、どうすればいいのだろう。
 昔を懐かしむほど、二人の立場は気安いものではない。
 だからといって、銃を向けることが正しいのかも判らない。
 そもそも、銃を向けたところで、即座に叩き落されるのがオチだろう。

アリサ「それでも……確かめるだけでも……」

 運命は、まさしく奇妙に人々を結びつけるのであった。
773 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/29(火) 20:49:59.12 ID:H14cuRFu0

シャナ「用意はできたわね」

ラジム「はっ、いつでも爆破できます」

シャナ「いいわ、一時退避しなさい。爆破と同時に私とアッガイで内部を攻めるわ」

ラジム「了解!」

 力のある敬礼で、ラジムとその一派は離れていく。
 二人の再会に報告するべき原因があるとすれば、その時、彼らの動く足音の気配を一方が感じ取ったからだろう。
 でなければ、何か、霊的な力が引き合わせたのだとしか思えない。

アリサ「ね、姉さん……?」

シャナ「アルテイシア……?」

 二人は、視線を交錯させたまま硬直してしまった。
 だが、次の瞬間、アリサは理由もなく銃を抜いていた。

アリサ「何故……! 何故こんなところにいるの、姉さんが!?」

シャナ「それは私も同じことだ、アルテイシア。優しかったお前が、どうして連邦の制服などを着ている?」

アリサ「そ、それは……」

 黒髪をくるぶしまで垂らした少女は、妹の銃口が震えるのを見て、大胆に一歩前に出て、手を差し伸べた。

シャナ「いや、私はわかっている。友達のためだろう?」

 笑いかける姉の表情はまさしくアルテイシアが幼い頃に見ていたものとおなじだった。とても、戦場の恐ろしい仮面の姿ではない。

シャナ「それをわかっていて、あえて私は頼む。軍から身を引いてくれないか、アルテイシア」

アリサ「勝手なことを……! 地球を征服して、何を楽しむつもりなの!?」

シャナ「私の目的は、地球ではない。賢いアルテイシアなら、わかってくれるだろう?」

アリサ「近づかないで!」

シャナ「アルテイシア。お前がいてくれれば、これほど心強いことはない。私の許に来るつもりはないか?」

アリサ「今の私の大事は、なのはとすずかなんだからぁーっ!」

 ズギュゥッ! アリサの手の中の銃がシャナの左の空間を貫いた。

シャナ「……強くなったな、アルテイシア」

 はらりと数本の髪を舞い散らしたシャナは、手の中のスイッチを高く掲げた。

シャナ「ならば、私もやるべきことをやらせてもらおう!」

 指がスイッチを押すと、幾重にも重なった爆音と強震が、ジャブロー中に轟いた。

アリサ「これは……っ!」

 揺れる世界の真っ只中で、シャナは身を翻していた。

シャナ「いいな、軍から離れてくれよ、アルテイシア」
                  
アリサ「あっ……待って! 待って……兄さん=I」

 遮二無二に追おうとしたアリサだったが、彼女がいる場所は一人で降りるには高く、肝心の背中は既にもうもうと立ち込める白と黒の煙に隠されてしまった。

アリサ「あ、あぁ……あぁぁ……」

 必死に抑えつけてきた涙が、ついに堰を切って溢れ出てきた。
774 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/29(火) 20:59:01.62 ID:H14cuRFu0

ついに始まるジオン、ギガノスによるジャブロー総攻撃。
真実に気付いたアリサに対して、赤い彗星は無情な作戦を開始する。
完成した連邦の新兵器、ドラグーンの威力とは。
終わりのない猛攻撃の最中、次々と現れる乱入者たちに、少女たちはいかにして立ち向かうのか。
そして、駆けつけてくる仲間たちの姿がすぐそこに――

次回、スーパーロボット大戦 第19話 後半
『雷撃! 少女たちの防衛戦』

 君は、生き延びることができるか――?
775 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/29(火) 21:18:50.30 ID:oBkdtsjoo
776 :推敲した第一話は>>490からです [sage]:2011/03/29(火) 21:33:06.04 ID:sSAJhqUAO

だぁぁぁーっ! また大事なところ間違えた!

正しくは『雷撃! 少女たちの防衛線』なんですね、はい

あと、挿入しようと思っているのにまた入れ忘れました

初めて読まれる方は>>490から推敲されてますので、そちらからお読みください

それと、まとめていただいているサイトは存じていました
まだ完結してもいないものを一話ずつ拾っていただいて嬉しい限りです。変な箇所で拍手があるのが気になりますけど^^;

他にもここが納得いかない!みたいな質問などがあればお答えしますので、どうかもっとレスを!

黒子安価のほうもよろしくお願い致します(_ _)

カズ△

777 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/03/29(火) 23:37:42.65 ID:pbuk5u4AO
カオル君まで来るとは、乙
778 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2011/03/30(水) 01:14:51.02 ID:s+FI5Unw0
残りのドールは出るか否か
あんま質問するとネタバレなるしなー
779 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/31(木) 18:02:22.52 ID:Ew4Uc/i40

シノン「こ、この地震は……!」

 突如、ジャブローを襲った地震に、一堂に会していた少女たちはすぐさま、自分たちの為すべき事を悟った。

『警報。警報。基地内にて原因不明の爆発事故が発生した。詳細を調査するまで、各員、落ち着いて待機せよ。繰りかえす……』

シノン「私たちの待機場所はホワイトベース、もしくは各ユニットの中よ!」

 鋭い指示に、了解の声が重なり、全員が部屋を飛び出した。
 それなりに場数を踏んできた香月シノン以下、二十数名の少女たちは定時爆撃の後のタイミングの良すぎる爆発事故に、空気中に含んだ違和感を嗅ぎ取っていた。

 それが、如何に哀しい嗅覚であるか、筆舌に難くない。


 テンテレンテレレテンテレンテレレテンテレンテレレレレレレレレレ
 アイーフルエルーアイー ソレハーワカレーウター
 ヒロウホネモーモエツーキーテー ヌレルハダモーツチニーカエルー
 コウヤヲーハシルー シニガミノレーツー
 クロクユガンデー マーァッカーニモーエールー


なのは「すずかちゃん、アリサちゃんを探しにいかないと!」

すずか「うん!」

 なのはは魔法を起動して足にフライヤーフィンですずかを抱えて基地内を滑るように飛んでいった。

なのは「レイジングハート!」

レイジングハート「Yes」

なのは「アリサちゃんを探して!」

レイジングハート「Alllight,my muster」


 アイーイノチノーアイー チノイロハーダイチニステテー
 アラタナートキヲーヒラクカー イキノコルーアイセンシタチー
 コウヤヲーハシルー シニガミノレーツー
 クロクユガンデー マーァッカーニモーエールー


なのは「行くよ、すずかちゃん!」

すずか「アリサちゃんの傍に!」


 シニーユクーオートコタチハー マモールベキーオーンナタチニー
 シニーユクーオーンナタチハー アーイスールオトーコターチヘー
 ナニヲカケルノカー ナニヲノコスノカー 
 I play, play to bring near the new day...
780 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/31(木) 18:03:26.30 ID:Ew4Uc/i40

 ジオン・ギガノス連合軍のジャブロー前線基地総攻撃部隊は、シャナの工場爆発に端を発して五分としないうちに戦線に到達した。

 それを最初に察知したのは、遠隔操作からドラグナー3型のEWACの情報を見たスズだった。

スズ「ジャブロー沿岸に多数の敵機を確認! 既に大隊、連隊規模が集結、降下作戦を開始しています!」

シノン「くっ……出撃体勢を整えた者からすぐに迎撃に移りなさい!」

スズ「ま、待ってください……別ヶ所にも不明の識別があります!」

シノン「なんですって!?」

スズ「こ、これは……地下です! 敵がジャブロー内部に潜入しています!」

シノ「そ、そんなことがあり得るのか!?」

霙「可能性としては充分にあり得る。ジャブローは密林だ。隠れる場所も発見されていない通路も無数にある」

シノン「何機か、そちらに回した方がいいわね……」

唯「それなら、私が行くよ!」

シノン「平沢さん……そうね、マジンガーZならばモビルスーツと同程度の大きさだから、鍾乳洞内でも充分に動けるわね」

律「それなら、アタシたちも中だな、澪」

澪「あぁ」

シノン「本当はD兵器も回したところだけど、メタルアーマーとは貴重な航空戦力だから……立夏ちゃんと霙少尉、内部の巡回をお願いします」

霙「了解したぞ」

立夏「チャ〜オッ!」

シノン「オーラバトラー、メタルアーマー、ヴァイスリッターとヒカルさんはホワイトベース及びゴラオン直掩に回り、敵を撃退します!」

ヒカル「わかりました!」

珠姫「了解です!」

シノン「ゲッターチームとバトラーチーム、ゆりえちゃんは各自に降下部隊を撃退しつつ、臨機に変形して行動してください!」

夕映「了解です!」

翠星石「合点承知ですぅ!」

ゆりえ「わかりましたぁ!」

シノン「この攻撃は定時爆撃ではなく、明らかなジャブロー攻略作戦よ。決してジャブローを明け渡してはいけないわ!」
781 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/31(木) 18:03:57.09 ID:Ew4Uc/i40

 赤い彗星を取り逃がしたアリサ・バニングスは、急いでモビルスーツ・ドッグへ向かっていた。
 Gファイターに乗るためである。

 また、そんなアリサの動きを見つけていたなのはとすずかも、ほぼ同じタイミングでドッグに入った。

なのは「アリサちゃん!」

アリサ「なのは、すずか!」

すずか「大丈夫だった、アリサちゃん?」

アリサ「えぇ、私は平気よ。それより、赤い彗星を見つけたわ」

なのは「えぇ!?」

すずか「本当!?」

アリサ「本当よ。アイツらが基地の中を爆破したのよ」

なのは「アリサちゃん、場所はわかるの!?」

 言いながら既になのははバリアジャケットを装着している。

アリサ「Fブロックの39エリアよ」

なのは「わかった。先に行ってる!」

アリサ「私とすずかもすぐに行くからね!」

 手を振るアリサに、すずかは不安げに問いかけた。

すずか「アリサちゃん……だいじょうぶなの?」

アリサ「うん、もう大丈夫よ」

すずか「でも、ムリしてない?」

 重ねて訊くと、さすがにガッツポーズを小さくした。

アリサ「平気よ……それより今はしなくちゃいけないことがあるでしょ?」

すずか「うん……そうだね。わかった」

 アリサとすずかはガンダムとGファイターに向かって走った。
 整備をしていたのは、マチルダの部隊にいたあのナイーブそうな少年で、Gファイターを戦車形態であるGブルに換装していた。

「出撃ですね、頑張ってください」

すずか「はい、ありがとうございます」

 少年は不安を隠せない面持ちだが、それ以上にすずかとガンダムを信頼しているようで、新しい機能について簡単に説明してくれた。

「特に、ビームジャベリンとガンダムハンマーは狭い鍾乳洞内でも効果を発揮するはずです」

 また、ガンダムの上部Aパーツとコア・ブロック、GファイターのBパーツを組み合わせた重戦車形態Gブルについても説明をしてくれた。

「実験では、砲身以外はビーム・ライフルの直撃にも耐えられます。ただ、ビーム・キャノンは威力が高いので気をつけてください」

アリサ「わかったわ、行くわよ、すずか!」

すずか「うん!」

 二人は実によく慣れた動きでコクピットに乗り込んだ。
 自分より三、四つ年下なのに戦場に向かう恐怖を受け止めている彼女に、少年アムロ・レイはめったにしない敬礼をした。
782 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/31(木) 18:04:40.44 ID:Ew4Uc/i40

 フライヤーフィンはなのはの単独飛行ならば、戦闘機にも迫る速度を出すことも出来る。

なのは「ここだね」

 黒煙があがるのは工場だろうか、既に何人かの連邦兵が集って消火作業を始め――ること時間は永遠に奪われていた。

なのは「そ、そんな……」

 レイジングハートが咄嗟になのはの視覚域にフィルタリングをしなければ、十歳の少女は現実の光景に耐えられなかっただろう。
 連邦兵たちは皆、一刀の下に赤黒い切り口を見せて倒れていた。ほとんど即死だろう。

レイジングハート「Time sift protection.」

 凄惨な光景を主に見せまいと、レイジングハートは独自思考で空間を切り取った。
 倒れた兵士の姿が見えなくなった時、ゆらりと炎に立つ影があった。

なのは「シャナちゃん!」

シャナ「またお前か!」

 赤い彗星フレイムヘイズのシャナは桜色の光りに包まれた高町なのはに猛然と斬りかかった。

レイジングハート「protection.」

 バキンッ! プログラムされていた自動防衛システムがシャナの一撃を逸らし、なのはを間合いの外へ離脱させる。

なのは「ディバイン・シューター!」

 三つの光球が警戒線を引くようにシャナの周囲を飛ぶ。
 シャナの動きが止まるのを見て、なのはは問いかけた。

なのは「シャナちゃんが、こんなことをしたの……?」

シャナ「そうだとしたら、何だっていうのよ?」

なのは「どうしてこんなことをするの!? 戦争なんて……」

シャナ「この戦争は、お前たち連邦が引き起こしたものだ!」

 問い掛けにシャナは糾弾で返した。

シャナ「連邦の蛆虫どもはコロニー政策を人口調整の一つとしてしか考えていない! それだけならまだいい! だが、地球に住む人間こそが優良種だと勘違いし、コロニーに住む人間を家畜のようにコントロールしている! お前も同じコロニーの市民なら、知らないはずはないだろう!」

 突き付けられた切っ先を見据えるには、なのははまだ幼すぎる。

なのは「それは……確かに連邦はコロニーのことをコントロールしているかもしれないけど、それだからって……」

シャナ「そうか……お前はサイド7の人間だったわね……準特権階級の出身にはわからないことね……地球から最も遠いサイド3がどんなところだったのかを……!」

なのは「ど、どういうことなの!?」

シャナ「所詮、お前も連邦の犬ということよ! 生まれた時から檻の中で飼い馴らされて自分が家畜だって事にも気付いていないのよ!」

 ズァァッ! 光球を切り払ってシャナは滑るようになのはの懐へ潜り込み、必殺の刃を振るった。

なのは「やめて、シャナちゃん!」

 危ういところで回避して、なのはは魔法を組み立てていく。
 襲い掛かる斬撃を何重にも重ねた防御障壁で受け止める。
 飛び散る桜色の魔力は破られるたびに小さい障壁を生み出しているからだ。

なのは「戦争なんて方法は間違っているから! 地球まで来て、どうして話し合おうとしないの!?」

シャナ「その言葉、そっくりそのままレビルに言ってやれ!」

 じりじりと刀を押し込んでいくシャナの背中がぴり、と痺れた。
 なのはの背中から出て大きく迂回してきたディバイン・シューターが既にシャナ目がけて飛来していた。

シャナ「ちぃっ!」

 ここで引いたら追撃を喰らう。怪我を承知で光球を受ける覚悟をしたシャナの背後に、ビーム光が走った。

なのは「!」

シャナ「アカハナね、良いタイミングだわ!」
783 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/31(木) 18:05:18.02 ID:Ew4Uc/i40

 驚きに目を見開くなのはから瞬時に身を離して、シャナは広く距離を取った。
 赤い髪の少女の後ろには、赤い塗装が施されたモノアイの丸っこいフォルムのモビルスーツが立っていた。
 そこから更に同系統のモビルスーツが三機現れる。

すずか「なのはちゃん!」

アリサ「なのは!」

 また、同時になのはの後ろからガンダムとGブルがやってくる。

すずか「ジオンの新型!?」

アリサ「はん! マヌケなデザインね!」

シャナ「アカハナ、私は白いのを地上に誘き寄せる。ガンダムとあの戦車みたいなのは任せたわよ」

アカハナ「了解!」

 シャナは赤い髪を振るようにして四機のアッガイの後ろへ逃げていく。

なのは「シャナちゃん!」

アリサ「いいわ、なのは、行きなさい! 赤い彗星をひっとらえなさい!」

すずか「ここは、私たちが喰い止めるから……」

なのは「うん。ありがとう、アリサちゃん、すずかちゃん!」

 フライヤーフィンを起動して、なのははシャナの後を追う。
 アッガイの大きな手が迫るが、易々とかわして鍾乳洞の中を進んでいく。

なのは「シャナちゃん!」

シャナ「追ってきたわね……やりなさい!」

 台詞の後半は共通語ではない言語であった。
 次の瞬間、なのはの前に何人もの赤い顔の、一目見て未開民族であるとわかる集団が、不釣合いな火器を持って現れた。

なのは「なに!? この人たち!?」

族長『我等の地から出てゆけ! 白い悪魔!!』

 バババババババ! ライフルがなのはを狙うが、全て障壁で跳ね返される。だが、そこで生まれた隙は大きなものだった。

シャナ「落ちろ!」

なのは「!」

 バキィンッ! 刃を上に向けたシャナの突撃に障壁は全て貫通された。

なのは「あうぅっ!」

 それでも贄殿遮那がわき腹をかすめた程度で済んだのは幸運である。

シャナ「チィッ! まだよ!」

 ヒュオッ! シャナはすぐさま刀を返して第二撃を打ち込むが、レイジングハートの障壁と回避行動で避けられる。

族長『火の神様を助けろ!』

 シャナから離れたなのはに集中砲火が浴びせられる。

なのは「ど、どうしよう、レイジングハート!?」

レイジングハート「Temporary Withdrawal.」

なのは「撤退……でも!」

レイジングハート「Or――」

なのは「えっ?」

レイジングハート「Going forward might be also good. 」

なのは「……行こう、レイジングハート」

レイジングハート「Alllight. Have a tactical rout.」
784 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/31(木) 18:06:00.68 ID:Ew4Uc/i40

 割り出されたルートにレイジングハートはチェックポイントを置いた。
 なのはが前進したことにシャナはやや驚いたようだった。

シャナ「向かってくるというの、この状況で!?」

 奇麗事を並べるようや奴なら、原住民の被害を避けるためにも撤退するはずだ。
 だが、回避に専念したなのはならば、昨日今日与えられた武器の腕前で当たるはずがないのだ。

シャナ「チッ、付け焼刃じゃ何の役にも立たないわね」

 迫り来るなのはにシャナは贄殿遮那を抜いた。

シャナ「いいわ、今度こそ落としてやるわ!」

なのは「レイジングハート!」

レイジングハート「Flash move.」

シャナ「見えてるわよ、そこっ!」

レイジングハート「Acceleration.」

シャナ「なにっ!?」

 完全に間合いに入っていたはずの影が、止まらずにむしろ加速した。
 張り付く敵意に反応したときには、なのはは魔力を溜めた杖を大振りにしていた。

なのは「えぇーい!」

 ドカッ! 杖の先端がシャナの背中に当たる。

シャナ「ぐっ……! よくもやったわね!」

なのは「まだっ!」

 直接打撃はダメージが目的ではない。
 先端の宝石にセットしていた魔法を起動させるためだ。

シャナ「な、なにっ!?」

 キン、という音がして、シャナは身体の自由が奪われたのがわかった。

レイジングハート「Experimental bind.」

 以前に突如現れてジュエルシードを攫っていった少女に対抗するために、レイジングハートと二人で開発していた魔法が赤い彗星を捕まえた。

なのは「あまり長い時間は捕らえられないから……まず撃墜するからね!」

レイジングハート「Divin buster.」

シャナ「くっ……このぉ!」

 贄殿遮那で無効化するとはいえ、シャナ自身に魔法を打ち消す能力はない。
 原住民たちは二人を追いかけてくるので手一杯だ。
 桜色の光りが、形成された魔法陣に収束されていく。
785 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/31(木) 18:06:27.70 ID:Ew4Uc/i40

なのは「いくよっ! シュートッ――」

 声を張り上げたが、トリガーを引くことはできなかった。

「シャナ大佐ぁっ!」

 ダダダダダダダダダダダダダッ! 鍾乳洞内の河を割って現れたザクUがマシンガンを撃った。

レイジングハート「Protection.」

なのは「きゃぁぁぁぁっ!」

 自律で稼動していないユニットであったら今ごろ蜂の巣にされていただろう。
 それほど、このザクUの浮上位置とタイミングは完璧であった。
 マシンガンも完全に挙動を抑えた撃ち方で、シャナの周囲一メートルに弾が行くことがないことからも、搭乗者の技量が覗えるだろう。

「ジオンの理想を妨げる連邦の魔女に、正義の鉄槌を!」

 潜水艇に立つツノつきのザクUはヒートホークを手に跳躍した。
 その狂信的とも言える気迫はスピーカー越しでもなのはを戦慄させた。

レイジングハート「Flash move.」

 なのはがいた場所を燃える斧で切り裂いたザクUは、河に流されることなく、丸っこい指を身体の一部のように繊細に操って、バインドに囚われたシャナを確保した。

「大佐、ご無事ですか!?」

シャナ「平気よ。お前、名前は?」

「は! アナベル・ガトー少尉であります! 元はソロモンでドズル中将の警護隊におりました!」

シャナ「特警出身ね。よくやったわ」

ガトー「は! 光栄であります!」

 その時、シャナを拘束していたバインドが時間経過によって外れた。

シャナ「少尉、お前は中に入って先行部隊を援護しなさい。ガンダムが敵よ」

ガトー「は! 了解しました!」

 シャナを離したガトー少尉は一度の跳躍で河から陸へ出て見せた。
 その後の、既に上陸していたザクUを率いて走る姿も猪突猛進だったが、整った動きで、あれはエースになるなとシャナは感じていた。

シャナ「さぁ、仕切り直しよ」

 贄殿遮那が鞘走り、なのはは杖を強く握った。
786 :第一話は>>490から推敲されています。 [saga]:2011/03/31(木) 18:20:30.60 ID:Ew4Uc/i40
第一話は>>490から推敲されています。

ジャブロー開戦です。
まだ若い頃(それでも20前だけど)の悪夢が登場しました。
正史ではソロモン近辺で連邦宇宙軍と戦っているところですが、VIPの時に0083を期待された方がいたので。
一説では、0083での故事成語連発はデラーズの影響(デラーズと行動を共にするのはソロモン脱出後)だとありますが、こっちのほうがキャラが立つので、そのようにしました。
立ちすぎてめっちゃ目立つけどねwww

質問の答えですが、ローゼンメイデンのほかのドールは以下の通り登場しています。
水銀燈 バーン・バニングスに接触。
雪華綺晶 海晴のコクピットに出現。
薔薇水晶 検討中(雪華綺晶と被るし、漫画版準拠なので)

 水銀燈と雪華綺晶は乗る機体も既に決定しています。

そしてたった今、少尉ならザクUよりもっといい機体に乗ってるんじゃね?とか思いましたが、もうどうしようもありません。
でも、ノイエ見てジオンの精神が〜とか言ってるからザクのデザインと色彩が大好きなのかもしれない。
巻き込まれる部下はかわいそうだけどwww
787 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) :2011/03/31(木) 18:28:51.85 ID:H4TvO1TAO

スパロボでの正史は「参考資料」だ
788 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/31(木) 19:43:31.29 ID:At+Qd2vQo
789 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/03/31(木) 20:48:25.18 ID:lefpWscAO
790 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/31(木) 21:28:20.81 ID:aLW2vjDDO
>>1大丈夫、確かこの時期ガトーは06R1Aの専用機に乗ってたらしいよ。
791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2011/04/02(土) 13:23:59.51 ID:IaARUkQy0
>>688
FU FU FU……YAH!
 OH カレタクサノカタマリガーカゼニフカレテー
 コーウヤヲコロガッテイクゼーオレハーヒトリサー
 OH アイアンザーップヲキメーター ビリーザキッドモー
 SOH タタカウオトコニニアーウー ユウキガアルーゼー
 OH トコガユメヲオイカケルーシンクノガンマンー
 マッカナチシオノキズナデーマタデアオオウゼー FU……
 yeah yeah yeah……wow wow wow……
 HEY! カゼヲキルヨウナオレーサァー ソレデモーキットー
 オーマエトハイッテイレーバー マタアエルダロウー
 マタアエルダロウー マタアエルダロウー FU……
 yeah yeah yeah……wow wow wow……FU……Ah!

って何?
792 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/06(水) 18:05:23.94 ID:xOYON//h0

 ジャブロー Dブロック格納庫

立夏「エェェ〜ッ! 何でリッカのゲシュペンに氷柱オネーチャンが乗るのぉ〜!?」

氷柱「さっき言ったでしょ! 立夏には新型が用意してあるから、私がタイプRに乗るって!」

立夏「え? そだっけ?」

氷柱「はぁ……こんなのが私の一歳違いだなんて……」

立夏「ネネネ、どこにあるの!? リッカのシンガタ!」

吹雪「申し訳ありませんが、まだ微調整が済んでいないので、立夏姉には待機してもらいます」

立夏「エェェ〜ッ!! それじゃあ氷柱オネーチャンにシンガタ上げるから、立夏にゲシュペン乗らせてよぉ〜っ!」

氷柱「バカ言ってんじゃないわよ、バカ! ちょうどいい機会だから、T−LINKシステムの正しい使い方、見せてあげるわ!」

 自信満々な笑みを浮かべて氷柱はヘルメットを被る。

立夏「T−LINKの……正しい使い方?」

氷柱「ま。そこで見てなさい……霙姉様! 行くわよ!」

 拳を振り上げる氷柱に、アルトアイゼンの目が光った。

霙『わかったわかった、氷柱のおしめはキチンととりかえてやるさ』

氷柱「やめて! 大きな声で言わないで!」
793 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/06(水) 18:06:45.40 ID:xOYON//h0

 ジャブロー地表 ゴラオン

珠姫「川添珠姫、ダンバイン、行きます!」

 ゴラオンからオーラ力の光りを散らして、ダンバインが空へ出た。
 既に戦線の火蓋は切って落とされ、ジオン・ギガノスの降下部隊がパラシュートを使って落下している。

 だが、ある程度ジオン軍のモビルスーツが下りてくるとジャブローの密林にカモフラージュされた砲台が一斉に上を向き、対空砲火を開始した。

チャム「すごい……どんどん落ちていくわ」

 連邦軍の本拠地というだけのことはある。
 まるでハエにスプレーをかけているかのように、モビルスーツの大半は着地前に破壊されてしまう。

珠姫「私たちは、海に出るよ」

 ジャブローは基地というよりも巨大な戦艦であると思ったほうがいい。
 のろのろと降下してくるモビルスーツよりも、海上を滑空してくるメタルアーマーのほうが脅威なのだ。

 そのギガノス軍を前線指揮しているのは、プラクティーズの三人である。

キョン「ハルヒがいない今、俺たちがギガノス地上軍の先頭に立つんだ、行くぞ! 古泉、長門!」

古泉「了解しました」

長門「状況、開始」

 海上戦の幕は、珠姫とキョンによって上げられた。

キョン「オーラバトラー、落ちろ!」

珠姫「あなたたちを、近づけさせはしない!」

 ガキィンッ! レーザーソードと、オーラ力に包まれた剣がぶつかり合う。

キョン「チッ! データよりも速い! 長門!」

長門「データ修正、転送」

古泉「いきますよ……ふんもっふ!」

 ドゥッ! ヤクト・ゲルフ・マッフのレールキャノンがダンバインの肩をかすめていった。

珠姫「くっ!」

古泉「セカンドレイド!」

 ドゥッ! ドォンッ! ギリギリで回避するが、風圧が羽を打ってダンバインはバランスを崩される。

キョン「そこだっ!!」

 ズサァッ! レーザーソードがオーラ力の弱まった剣の刃を肉に包丁を通すかのように削ぎ落とされた。

チャム「ダメよッ!」

 ガンッ!

キョン「チッ!」

 突き出された脚にゲルフ・マッフが蹴られる。

長門「……目標捕捉、攻撃を開始する」

 レビ・ゲルフのマッフユニットから落とされた五連ミサイルがダンバインに襲い掛かるが――

紀梨乃「タマちゃん!」

 ガガガガガガガガガッ! 割り込んできたボチューンがオーラバルカンを斉射され、雷管に当てられたミサイルが爆発して残りのミサイルを誘爆させた。

キョン「ちぃっ! 仲間が増えたか!」

長門「まだ来る」
794 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/06(水) 18:07:49.88 ID:xOYON//h0

 ギガノスきっての索敵能力を有する長門が警戒した先には、濃紺と白銀の二機が戦線に到達しようとしていた――いや、既に一機は姿勢を制御している。

海晴「オクスタンランチャーのEモード〜」

長門「来る――長距離射撃」

キョン「散開しろ!」

 命令より先に長門がプログラムしていた予測回避システムが稼動して三機はばらけて離れ、彼らがいた位置をビーム光が貫いていく。

ヒカル「そこだ、見逃さない!」

 編隊を戻したプラクティーズの後方にいるヤクト・ゲルフへ、ゲシュペンストTYPE−Sが瞬発力を活かしてジェットマグナムを打つ。

古泉「――くッ!」

 ガァンッ! ヤクト・ゲルフの腰部装甲が溶解されるが、すぐにパージされて大事には至らない。

キョン「古泉! くそっ!」

 レーザーソードが鋭い光りを発するのを見て、ヒカルもプラズマカッターを抜いた。

キョン「喰らえっ!」

ヒカル「型が堅いっ!」

 ギャインッ! キョンの一振りは、身を沈めたゲシュペンストの剣先だけで流される。

キョン「なにっ!? ぐおぉっ!」

 驚いている暇もなく、ゲルフ・マッフに拳骨で殴られたような衝撃が加えられる。

海晴「オクスタンランチャーのBモード、当たると痛いわよん」

キョン「もう当たってるっての!」

 長門の情報処理で中距離回線を拾ったキョンが機体の向きを変え、海に向かってハンドレールガンをばらまく。
 飛沫に紛れて距離を取る間に、仲間の様子を探ると、ギガノス海上部隊はとてつもない劣勢となっている事を知った。

キョン「何だこの彼我戦力差は!? これが連邦の航空部隊だというのか!」

 長門が予想された戦線の範囲が既に40%失われている。
 ものの数分の間にだ。その異常性の正体が今、キョンの前に現れた。

連邦兵「見つけたぞ、親衛隊だ!」

キョン「こいつは……D兵器!?」

 その驚愕は容易に知られるだろう。
 彼らを痛めつけたメタルアーマーが、三機どころか五機、六機と旋回しているのだ。

キョン「そうか、量産型D兵器か! 古泉、長門、下がれ!」

古泉「既に退避を始めています。長門さんが情報を収集しています」

長門「もう終わってる。転送を」

キョン「そんなもの、見ているヒマあるか!」

 ゲルフ・マッフを浮上させながら敵機の背後に回らせてレーザーソードを突き出す。
 量産型など、親衛隊のカスタム機に勝てる筈がない。隊長以外にかわすことの出来なかった攻撃で貫く。

キョン「何っ!?」

連邦兵「馬鹿めっ! ローテクと一緒にするな!」

 一撃必殺の刺突は僅かに機体の脇をかすめただけであった。

連邦兵「このドラグーンを舐めるなよ!」

 ダダダダダダダダダッ! 至近距離でハンドレールガンを浴びてしまった。

キョン「くっ……D兵器以上の動きだ!」
795 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/06(水) 18:08:52.37 ID:xOYON//h0

 右腕が潰されて、キョンはひたすらに逃げた。

キョン「こんなことがあってたまるか! ハルヒ!」

 親衛隊の名誉などどうでもいい。技術や経験の差では埋められない程の性能差が、ゲルフとドラグーンの間にはあった。

キョン「長門……長門のデータは!?」

 転送途中のファイルを開いて、愕然とした。
 全ての数値が、これまで戦ってきた三種のD兵器を超えている。
 つまり、連邦の量産型メタルアーマーに敵う機動兵器を、ギガノス軍は失ってしまったのだ。

キョン「クソッ! 俺たちは戦争に負けたのか!!」

朝倉「それなら、死ねばいいと思うよ」

キョン「!」

 ずばぁっ――認識する間もなく、ゲルフ・マッフの首が飛んだ。

朝倉「役立たずの親衛隊なんて、税金の無駄遣いだもんね」

 ゲルフ・マッフがいた場所に、鎧武者めいた造形の金色の機動兵器が浮いていた。

古泉「うおおおおおおおおっ!!」

 ゲルフ・マッフが落ちた水柱に滴る機体に、ヤクト・ゲルフが体当たりした。

古泉<熱血>「貴方は! とんでもないことを!!」

 仰々しいいでたちの肩を掴み、古泉はレールキャノンをありったけぶちこむ!

 ドゴォッ! ドドォンッ! ヤクト・ゲルフもダメージを受けるが、新型であろうとこの距離で220ミリの砲弾を喰らってまともに済むはずがない。

 だが、それは弱者の望みであった。

朝倉「教えてあげる。この機体の名前……ギルガザムネって言うのよ」

 どぉんっ! 青龍刀が重くのしかかり、ヤクト・ゲルフもまた首をずたずたにされてしまった。

 墜落した二機にレビ・ゲルフがまるで親を殺された子犬のように這い回る。
 パイロットの回収をしているのだろうが、朝倉涼子にはどうでもいいことだった。

朝倉「地上部隊なんて、もう役に立たないのよね。囮として使ってあげたのだから、感謝してね」

 このメタルアーマーともかけ離れたギルガザムネの異常な行動に、連邦軍も困惑しているようだった。
 いや、レールキャノンを何発も喰らって平然としている装甲にどう攻撃を仕掛ければいいのか悩んでいるようである。

チャム「だめ……っ、珠姫! 逃げてぇ!」
796 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/06(水) 18:11:32.60 ID:xOYON//h0

 ギルガザムネから発せられる不愉快な空気の流れを敏感に感じ取ったチャム・ファウが珠姫の顔を揺さぶる間に、ギルガザムネは洋上から浮上していた。

朝倉「さぁ、何もかもを巻き込んで壊しましょう」

 金色の装甲の肩部が開いた。そこに蜂の巣のように詰め込まれた弾頭に連邦ドラグーン部隊が気付いたときには、辺り一面は爆炎に包まれていた。

ヒカル「そ、そんな……」

紀梨乃「ドラグーンが……あっという間に……」

 ドラグーンにもD−3と同じようにジャミング能力があるが、無数に吐き出されたミサイル弾幕が相手では意味を持たない。
 余波を受けて機体が震動し、バランスを崩したところに新たな爆弾を喰らうのだ。

海晴「味方まで巻き込むなんてね……普通の軍組織では考えられないわ」

朝倉「さぁ、道を空けてあげたわよ。ジャブローを制圧するのはジオンでもギガノスでもないわ……」

珠姫「この波動……オーラ力!」

 いち早く勘付いた珠姫の頭上を、巨大な砲撃が過ぎていった。

紀梨乃「ハイパーオーラキャノン!?」

チャム「来る! 来るよ、悪しきオーラが!」

珠姫「ドレイク・ルフト……!」

 ギガノス軍に代わって空を埋め尽くしたのは、オーラマシンだった。

夕映「チェイィィンジ・ゲッター1! スイッチ・オーン!!」

 ガシィン! 地上でジオン降下部隊を相手取っていたゲッターロボがハイパーオーラキャノンを見て駆けつけてきた。
 コン・バトラーVとライディーンの二機はジャブロー基地で激しい対空戦をしている。

夕映「まさかドレイク軍が……」

ハルナ「ギガノスとの共闘体勢はないと思っていたら、まさか強制排除してくるとはね……」

夕映「ジオンの差し金でしょうね……裏取引でドレイク軍とギガノス軍を戦わせて、漁夫の利を取るつもりでしょう」

のどか「これでジオンがまだ部隊を隠していたらー……」

ヒカル「私たちがここでドレイク軍を食い止めなければ、ジャブローは二局面から攻撃を受けることになる……!」

 居並ぶ機体の前に、あの金色のメタルアーマーが現れた。

朝倉「私のこと、忘れちゃいやだよ」

 ぶぅん! 青龍刀がうねりをあげて、空間を切り裂いた。

海晴「そこよ!」

 ギュボォッ! オクスタンランチャーがEモードでギルガザムネに直撃するが、その威容を削ることは出来なかった。
797 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/06(水) 18:13:18.18 ID:xOYON//h0

海晴「もしかして……対ビームコーティング……?」

朝倉「綺麗な蝶々ね。羽を毟り取ってあげるわ」

 圧倒的な機体の差に気をよくしているのか、朝倉涼子は海晴の挑発に乗ってくれた。

 バババババババババババ! ギルガザムネが巨体に見合ったハンドレールガンを連射するが、高い運動性のヴァイスリッターは曲芸飛行のように避ける。

 その過程で海晴はオクスタンランチャーを実弾に切り替えて撃ち、脚部の付け根に当てたが、やはり対したダメージは与えられない。

海晴<集中>「さぁ、いらっしゃい。本当の龍騎兵が待っているわ」

 回避重視の軌道に朝倉も罠に誘われている事に気付いた。

朝倉「いいわ。それなら、本を絶ってあげる」

 ギルガザムネの腹部が開いた。そこに格納されていたのは、都市破壊用の大型巡航ミサイルだ。

 ぼしゅぅっ! ミサイルが発射される。ジャブローの一区画ぐらいは吹き飛ばせるほどの威力だ。

海晴<集中>「くっ……Eモード……ッ!」

朝倉「させないわよ」

 ぶん! 青龍刀がヴァイスリッターの左脚を抉った!

海晴<集中>「あうっ! もう、ヴァイスちゃん装甲薄いんだからやめてよね!」

朝倉「何をたくらんでいるかは知らないけど、吹き飛ばしちゃえばどうにもならないよね」

シノ「そうでもないぞ!」

朝倉「なに!?」

 大きな声を捉えたレーダーには、沿岸部に立つ三機の機体、D−1、D−2、D−3の識別がくっきりと浮かんでいた。

シノ「朝倉涼子! 君にも私は貸しがある! まずはそれを返させてもらうぞ!」

朝倉「あの時のパイロットね。よくまた乗れたものね」

シノ「私はドラグナーに乗るさ、何度でも。私の答えを出すために!」

アリア「光子バズーカ、チャージ完了よ」

スズ「照準、いつでも行けます!」

シノ「よし! 一斉射撃だ! Dフォーメーション・アタック!」

 沿岸部に並んだ三機のドラグナーはそれぞれ手に大きな円柱状のものを持っていた。
 光子力エネルギーをビームにして撃ち出す新兵器のバズーカ砲が、彼女たちの新たな力だ。

シノ<指揮>「撃てぇーっ!」

 バシューッ! 三つの光りが交じり合って虹色になって巡航ミサイルに直撃、大きな炎の塊りが空に咲いて、後には何も残らなくなった。

朝倉「ふぅん」

 ミサイルが撃ち落とされたことに朝倉涼子は大した感想は持たないようだった。
 代わりに、愉しそうに鼻を鳴らしてギルガザムネの右手に青龍刀を持たせた。
798 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/06(水) 18:14:06.59 ID:xOYON//h0

 ウィル・ウィプス 艦橋

ドレイク「ゴラオンが来るまでにどれほどの時間がある?」

 禿げ上がった頭部を傾けてアの国の王は、地上人に訊ねた。

ショット「は、あと数分でしんがりの包囲を破るかと」

ドレイク「ハイパーオーラキャノンのチャージには?」

ショット「は、200秒ほどでしょう」

ドレイク「よし、ウィル・ウィプスを全速させい。戦力を惜しむことなく、ジャブローへ到達し、ハイパーオーラキャノンを発射する」

ショット「既に、聖戦士たちはスタンバイしております」

ドレイク「うむ」
799 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/06(水) 18:16:02.89 ID:xOYON//h0

 ジャブロー 洋上

珠姫「――来るっ!」

 感じ知ったオーラの波動に珠姫は鋭く視線を上げた。
 その先には、黒と濃緑の新型オーラバトラー、ズワァースが鎌のように折れ曲がった刃の剣を構えて飛んできていた。

珠姫「トッド・ギネス――!」

トッド「ダンバイン!」

 それ以外の言葉はなかった。
 チャム・ファウが喋る暇なく両者は剣を弾かせている。

珠姫「新型!? でも遅いっ!」

 威圧的な様相だが、鈍重な動きのオーラバトラーに珠姫は籠手打ちを繰り出したが、ガンという音がして刃は跳ね返されていた。

珠姫「えぇっ!?」

トッド「ショットにも、意地があるんだとよ、タマキ!」

 ガギンッ! 曲剣が肩口に切りかかるが、どうにか返した剣で受け止めることに成功した。

 その間にも、戦場には他の聖戦士が現れていた。

アレン「邪魔なんだよ!」

フェイ「落ちちまいな!」

紀梨乃「くうぅっ……!」

 ガンッ! キィンッ! ビランビーとレプラカーンが紀梨乃のボチューンに襲い掛かり――

ジェリル「はっ! ガキがしゃしゃり出てくるんじゃないよ!」

ヒカル「うくっ、速い!」

 ジェリルとヒカルがオーラソードとプラズマカッターを打ち合っていた。
 ドレイク軍は、地上に来たことでオーラ力が世界に充満していることを知り、オーラコンバーターの大々的な改造を行っていた。
 結果、これまで伸び悩んでいた量産機のレプラカーンやビランビーでさえも、その運動性が格段に上昇している。

 また、トッド・ギネスが乗る新型ズワァースは、ジオン軍残党から接収した金属に含ませたことで、熱量兵器にもある程度耐えうる装甲を得ている。
 開発したショット・ウェポンは、これを自らが信頼するトッド・ギネスとんもう一人、バイストン・ウェルのコモンでありながら高いオーラ力を計測したミュージィ・ポゥに与えた。

夕映「トマホゥゥゥゥゥゥク・ブゥゥゥメラン!!」

ミュージィ「見えている!」

 マシンと同じほどの大きさがある手斧を避け、白いカラーリングのズワァースの股間に取り付けられた連装オーラキャノンを発射する。

夕映「これしき!」

 ズドォンッ! ゲッター合金を貫通には至らせないが、想像以上の損傷があった。

のどか「データと威力が違っているよー……」

ハルナ「大きな戦闘はしていなかったっていうからね」

夕映「これならどうですか、ゲッタァァァァァァビィィィィィム!!」

 ギュィィィィィィィ!! 光線がズワァースを捉えるが、瞬前で避けられ、またオーラキャノンを喰らった。

ミュージィ「ショット様の作られたズワァースだ!」

のどか「う、ウィル・ウィプスが……!」

 最前線にまで乗り出してきたアの国の巨大戦艦にはゲッターロボといえども簡単に相手取れない。
 それでなくともミュージィ・ポゥが立ちはだかるのだ。

ミュージィ「おとなしくその首を渡せ!」

夕映「オーラ力の攻撃を受けるわけには!」

 ガキィンッ! トマホークと曲剣。全く大きさが違うというのに、打ち合いは互角であった。
800 :第一話は>>490から推敲されています。 [saga]:2011/04/06(水) 18:48:55.68 ID:xOYON//h0
第一話は>>490から推敲されています。

今日はここまでです。
このジャブロー防衛戦は実際のスパロボでステージを作ったら鬼畜ステージと言われるぐらい詰め込んでいます。
既に名前有りユニットが十人ぐらい出ている上にAB勢は聖戦士、MSは海適性S。
そして鬼MAP持ちのギルガザムネとウィル・ウィプスが雑魚ユニットの経験値泥棒をします。
対して増援のゴラオンに味方キャラは乗っていない上にウィル・ウィプスの後ろに出現、落とされたら当然ゲームオーバーです。
トッドと朝倉あたりはもう二回行動しているかもしれません。
長門を放置しているとEWACで周囲2マスの命中・回避30%アップです。
基地と密林の地形をうまく活かして戦うべきでしょうが、こちらはD兵器以外の後継機はナシ。
ゲッターも柔らかいまま。マジンガーは攻撃が当たらない。

これでもまだ半分いってません。がんばれ、地球。

あと、レスもいただけるようになりましたので、人気投票みたいなこともやってみようと思います。
やり方は単純で、レスをする際にキャラ又はユニット名を入れていただければ、それが撃墜数として換算されます。
撃墜数が多いエースはシナリオ上で何らかの形で優遇されることでしょう。
登場したキャラクターについては>>334にだいたい載っています。敵キャラクターに投票していただいてもいいです。
当たり前ですが、死亡したキャラクターを復活させることはできません。ガルーダ魂覚えてるから使いたいけど……とかナシです。

そして最大に悩んでいるのがシノさんがすっかりまじめでやさしい熱血漢になってしまって下ネタ挟めないこと。
原作のドラグナーは終盤でも結構ポップにやってたんだけどなぁ。

という訳ですっかり不定期更新になってしまっていますが、就職が決まらない限りは完結させますのでよろしくおねがいします。

>>791の歌は『真・ゲッターVSネオゲッター』の最終巻のEDで遠藤正明さんの『Yeah Yeah Yeah』です。
ちなみに私は遠藤正明さんが一番大好きです。
だけどこの人が歌うと大抵OP詐欺になってしまうのが辛いです。

ガトーがザクに載っていたという話は初耳でした。Gジェネとかの設定でしょうか?
このSS内のガトーが載っているザクが青か緑色かは皆様の想像にお任せすることにします。
そんなガトーさんは次回の更新でガンダムと戦います。

それでは、すっかり不定期更新になってしまっていますが、職が決まらない限りは完結させますので、これからもよろしくお願いします。
801 :朝倉 :2011/04/06(水) 18:55:14.65 ID:unvua+DG0

こんな感じかな

最近本家にゲッター出ないねー
802 :シノ :2011/04/06(水) 19:43:46.28 ID:WRpL+frlo
とりあえず就職を先に頑張った方がいいぜ!

二回行動とか懐かしいなぁ
803 : [sage]:2011/04/06(水) 20:10:56.50 ID:8kipqRvDO
乙、スレタイが唯なのでもう少し活躍して欲しい所です、ガトー専用R1Aのソースはだいぶ前のホビージャパンですよ、
最後にそろそろフェイトちゃんを…
804 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/04/06(水) 20:24:53.10 ID:sOz+MILAO
携帯からスレ主です

なにも名前欄でなくてもいいですよ^^;

これから先ずっと名前欄に誰かしらの名前が出てくるとなかなかカオスになってしまうと思うので

805 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/04/06(水) 21:20:25.59 ID:3iYIdnAAO
乙、やっぱスパロボのオリ機体に活躍してほしいから
立夏とまだ見ぬ新型に一票
806 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/06(水) 23:10:35.77 ID:iCqQu73yo
ブライガーにダンガイオーは宇宙行ってからかな
唯を覚醒させてやってください!
807 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/07(木) 23:14:45.28 ID:UdZBXunDO
なのは、ところでガンキャと元旦は何処へ…。
808 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/08(金) 17:36:20.27 ID:OgOe422M0

 ジャブロー 鍾乳洞内

唯「すずかちゃん、アリサちゃん、助けに来たよ!」

すずか「唯さん!」

アカハナ「ちっ、増援が来たか! だが、ズゴックとアッガイなら行ける!」

律「おぉっと、そいつはどうかな?」

 マジンガーZとガンダムが並ぶ。後ろにはダイアナンAとボスボロット、Gブルがいる。

アカハナ「やってみなければわからんぜ。ゲリラ部隊が鉄の城と白いモビルスーツを相手に出来るんだ。しかも、大佐の作戦を手伝ってな」

 戦闘は、合図もなく始まった。

唯「光子力ビーム!」

澪「スカーレットビーム!」

 二つの光線が交じり合い、ズゴックに迫るが、丸っこい身体に似合わぬ俊敏な動きで避ける。

ジオン兵「ぐわっ!」

 ずどぉんっ! だが、その後ろにいたアッガイに当たり、いきなりモニターが破壊されてもんどりうった。

アカハナ「ちっ!」

 ズゴックは回避の最中で一番近いガンダムへ向かった。

すずか「内蔵武器があるようには見えない……!」

 少女の判断は速かった。突き出される右腕を膝を落として頭部をかすめさせると、バルカンを撃つ。

アカハナ「おらぁっ!」

 ガァンッ! ズゴックの左腕が思いきり振り下ろされるが、シールドで防いだ。

すずか「ビームサーベルで!」

アカハナ「おぉっと!」

 敵機の膝に向けてビームを伸ばそうとするが、攻撃の反動を利用されて避けられた。

アカハナ「やってやるぜ!」

 ズゴックの手がガンダムの前で黒い穴を見せた。
 直後に計測した僅かな粒子にすずかの顔色が変わった。

すずか「メガ粒子砲!?」

 戦艦を一撃で落とす兵器を、ジオン軍も本格的に実用化したのだ!

アリサ「すずかーっ!」

 ビシューッ! 後方に控えて危機に素早く反応したアリサがビームキャノンを発射し、ズゴックの腕に直撃させることに成功した。

アカハナ「くぅっ! へへっ、やるなぁ……」
809 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/08(金) 17:37:45.18 ID:OgOe422M0

唯「マジンガーパーンチ!」

 ぶぉん! 重いパンチを出すが、アッガイは容易く避けて、アイアンネイルのパンチを繰り出した。

 ガァンッ! しかし、超合金Zはびくともしない。

アッガイ兵A「ちくしょう! 何て硬い装甲なんだ!」

唯「このっ! ちょこまかして!」

 ぶん! ぶん! めったやたらに腕を振るがやはり当たらず、鍾乳洞の天井を破壊するばかりだ。

澪「唯! あんまり壊すと地盤沈下するぞ!」

唯「そんなこと言ってもぉ! ならこうだぁ!」

 マジンガーZが大きく両手を広げた。

唯「マジンガークロスチョーップ!」

 ががぁんっ! まるで抱きつくように両手を刀にしてアッガイにぶつけた。

アッガイ兵A「うわぁぁぁっ!」

 アッガイの太い足がひしゃげてしりもちをつく。

律「よぉ〜し、トドメは律様とボスボロットがやってやるぜ!」

澪「律、ダメだ! まだいるぞ!」

 忠告は遅かった。鍾乳洞の奥から生まれでた影がモノアイを光らせていた。

ガトー「何と忌まわしいなりか! 主義も主張も見られぬ!」

 シュボッ――ドゴォンッ! ザクバズーカがボスボロットの体で爆発し、あっという間に手足がふっ飛んだ。

律「ぎょえぇーっ! こんなのってアリナシ? ナシじゃ〜ん!」

澪「律ーっ!」

ガトー「させるかぁ!」

 シュボッ! 岩に立った指揮官用ザクUが再びバズーカを発射するが、顔を腕で覆ったダイアナンAの装甲は砕けなかった。

ガトー「鉄の屑ではないようだ。腰を据えさせてもらう!」

 もう三発目のバズーカを撃って、アナベル・ガトーはヒートホークを握らせた。

澪「このーっ!」

ガトー「浅い!」

 大仰に構えたのは最初だけだった。
 ダイアナンAの腕が真っ直ぐ伸びてくると見抜くや、ガトーはまるでホバークラフトでも使っているかのようにザクUの脚を滑らせてダイアナンAの後ろを取ると、ヒートホークの柄に左手を添えて刃をダイアナンAの膝に押し付けた。

澪「わぁぁぁ!」

 膝が折れ、ダイアナンAが転ぶ。

ガトー「他愛もない! スーパーロボットといえど、我らジオンの志には勝てぬ!」

唯「澪ちゃん! きゃぁっ!」

アッガイ兵A「へっ、こっちはまだ動けるぜ!」

ザク兵A「よし、今だ!」

 アッガイの体当たりにマジンガーZもしりもちをついた。
 その隙を突いて、ガトーの後についてきたザクUがバズーカを撃つ。

唯「くぅぅ〜、超合金Zが、このくらいでやられるものか〜!」
810 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/08(金) 17:38:48.53 ID:OgOe422M0

 ガトーは既にスーパーロボットから離れていた。
 ガンダムと一進一退の戦いをしているズゴックを援護するためだ。

ガトー「ジオンの理想を達成するために!」

 ガガガガガガガガガガ! ザクマシンガンでガンダムの脇を狙い撃った。

すずか「きゃぁぁ!」

 動きが鈍ったガンダムとズゴックの間にザクUを割り込ませる。

ガトー「特務少尉! ご無事でありますか!?」

アカハナ「おう! まさかザクに助けられるとは思っていなかったぜ!」

ガトー「は!」

 共に少尉であるが、ガトーはアカハナの任務の特殊性に一目置いていた。

ガトー「連邦の白き悪魔よ。アナベル・ガトー、特務少尉の道を切り開くため、まかり通る!」

 トゲのついた左肩を前に出して、ガトーはガンダムへ突進した。

すずか「来るっ! きゃぁっ!」

 ガァンッ! シールドの上からガンダムにぶつかり、ガトーはもう一撃、二撃と重ねていった。

アリサ「邪魔するんじゃないわよ!」

 バシュゥッ! Gブルがビームキャノンを放つが、ガトーにもアカハナにも当たらない。

アカハナ「へへっ、いい加減、うざったいぜ」

 そうこうしているうちにアカハナは自分のターゲットを重戦車に変えた。
 ズゴックで高く跳躍して天井を少し削りながら、Gブルへ落下した。

アリサ「そんなの!」

 ギュルルルルッ! アリサは急バックでズゴックのボディプレスを避けるが、アカハナは更に小さく跳んでGブルの脇についた。

アカハナ「オシャカにしてやる!」

 グォォッ! アカハナがズゴックの太い腕を振り下ろした。Gブルの頭頂部に当たれば、主兵装は役立たずになるだろう。

アリサ「えぇーい!」

 バックを続けていれば砲口に腕が上がっていただろうが、アリサはあえて前に戻って、硬い尻に当てさせることができた。

アカハナ「ちっ! それならこいつを喰らわせてやるぜ!」

 ズゴックの手先についたメガ粒子砲が光りを集め始めた。
 基地破壊用に設計されているために威力が高く作られていて、発射までに数秒のタイムラグがある。
 それがアリサを救った。横から飛んできた弾丸がズゴックの腕を打ち、狙いを逸らさせたのだ。

アカハナ「何だとォ!」

ガトー「特務少尉!」
811 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/08(金) 17:39:56.44 ID:OgOe422M0

 ガトーが体当たりでズゴックをどかしていなければ、迫り来る鉄の杭を避けることはできなかっただろう。
 ザクUから小さな爆発が起こったのは、敵手に潰されたクラッカーが暴発したのだ。

霙<加速>「ふむ、捉えたと思ったのだがな」

アカハナ「パーソナルトルーパー!?」

氷柱「一機じゃないわよ」

 突如現れたアルトアイゼンに驚く間にも、高台に立っているゲシュペンストTYPE−Rの周囲には、小さな円盤が二つ宙に浮いている。

氷柱<集中>「スラッシュリッパー、行きなさい!」

 ビシュッ! 円盤から三枚の刃が輝き、ザクUに向けて放たれた。

ガトー「ぬぅっ! 連邦の小細工か!」

 カァンッ! ガトーは一つをヒートホークで叩き落すことに成功したが、もう一つを左肩に喰らってトゲのついたショルダーガードを失った。

霙「ヒートホーン」

 短く呟いたアルトアイゼンの角が白く光った。狙いを定めた目はザクUの首に向けられている。

ガトー「おのれぇ!」

 ドォンッ! 爆発的瞬発力にガトーは負けなかった。

霙「むっ!」

 ザクUの両手が張り手のように突き出され、アルトアイゼンの顔を覆った。
 ヒートホーンとの差を僅か十数センチにされながらザクUは後退を続け、岩壁にぶち当たっても尚、手は離れなかった。

ガトー「ジャブローのモグラ如きに!」

霙「それは不愉快だ。一緒にしてほしくはないな」

ガトー<信念>「黙れ! 怠忽にスペースノイドを弾圧するだけの愚か者どもが!」

 咆哮にザクUの脚部が開いた。
 そこに収納されていたミサイルポッドが、自機誘爆の警告を無視して発射される。

 ドドォンッ! アルトアイゼンとザクUが爆炎に包まれた。

氷柱「霙姉様!?」

霙「心配するな、氷柱。私は無事だ」

 全身火薬庫のようなアルトアイゼンは、特に正面の装甲が厚く作られている。
 多少の損傷はあるが、問題はザクUのほうである。無事で済むとは思えない。

霙「!」

 センサーを確認していた霙が表情を変えた。
 黒煙の中、敵機のハッチが開いていたのだ。

霙「この爆発の中を逃げるのか?」
812 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/08(金) 17:40:43.04 ID:OgOe422M0

ガトー「私は倒れん! ジャブローの魔窟を滅ぼすまで!」

 マイクが拾った音声は確かにあのパイロットだった。
 アナベル・ガトーは、燻るザクUのコクピットブロックから持ち出したバズーカをアルトアイゼンに撃った。

 ドゴォッ!

霙「ぐっ! バランサーが……!」

 関節を狙い撃たれ、相撲取りのような体系をしているアルトアイゼンは自重を支えきれずに膝を着いた。

アカハナ「アナベル少尉! 作戦はもうダメだ! 撤退しろ!」

ガトー「特務少尉! ……了解しました。アナベル・ガトー、撤退します!」

 敬礼をしてバズーカを捨てたガトーは、ひらりとザクUから飛び降りて、鍾乳洞のごつごつした岩場に隠れ逃げていく。
 アカハナもまた、ズゴックを翻して高く跳躍して鍾乳洞の天井にアイアンネイルを突き刺し、ターザンのように撤退を開始していた。

アカハナ「アッガイ三機、ザクU三機も全滅か……!」

 酷い有様だった。まさか、こんな場所に素早く七機もの機動兵器が現れるとは思っていなかった。
 この七機が全て同じ部隊だとしたら、指揮官はおそらく名将になるだろう。アカハナの考える背後で、急速に接近してくる物体があった。

アカハナ「なにっ!?」

氷柱「逃がさないわよ……!」

 あの奇妙な飛び道具を使うゲシュペンストだ。
 機動力も開戦時に戦っていたものとは全く違う。

アカハナ「畜生! たかだかガキ一匹に手間取っていられるか!」

氷柱「私にはアンタたちの思想なんて興味ないわ。ただね、ユキの未来を食い潰そうっていうのなら!」

 コンソールの端にガラスで守られている黄色いスイッチを、氷柱は押した。
 海晴が封印したプログラムが発動し、ディスプレイに文字が浮かび上がり、氷柱は叫んだ。

氷柱「コード・VGP!」
 瞬間、飛行するゲシュペンストはぐるんと前方へ回旋して全身の挙動を張り詰めさせた。

氷柱「ドライブ・オン! アタッカー・フルドライブ!」

 バシュッ! 体勢を整えたゲシュペンストが拳を握り固めて胸を張る。

氷柱「必殺!」

 ドゴォンッ! 姿勢を低くしてゲシュペンストはロケットスタートのようなブースターの爆発力に自分の怒りを重ねた。

氷柱<熱血直撃努力>「ゲシュペンスト! パァァァァァンチ!!」

アカハナ「なにぃぃぃぃぃぃ!?」

 ドゴォォォォォォォォォォォォォォォンッ!! 全霊の一撃がズゴックの腹を直撃した!

 元の形がわからなくなるほど破壊された機体は、鍾乳洞の中を通る河に溺れて流れていく。

氷柱「この技……本当に叫ばなくちゃいけないのかしら……?」

 地面に下りた氷柱がそんなことを呟いたのは、始めての実戦を終えた緊張をほぐすためだった。

氷柱「助からないわよね……でも、お互い様よ……」

 思いの外、実感は薄かった。覚悟は相当に積んでいたはずだ。
 何より、やらなくてはならないという気持ちが、氷柱を支えている。
 どうせいつか血で汚れる手だ。救える命と救えない命を、天秤にかけることはできない。
 あの小さな妹は、氷柱よりもずっと前に、あの暗い病院の中で知っていたのだ。

氷柱「ユキ……これで私も……」

 呟きは、損傷箇所の報告に紛れて聞こえなかった。
813 :第一話は>>490から推敲されています。 [saga]:2011/04/08(金) 18:01:09.26 ID:OgOe422M0
第一話は>>490から推敲されています。

本日はここまでです。
投票は依然として継続しますので、同じキャラに投票しても別のキャラにしても構いません。
二回行動は私は未経験なので、ZUの連続行動は楽しみな反面敵は発動しないんだろうなぁとがっかりしてます。
ZUは多分、マップ兵器ゲーになると思います。移動後攻撃で撃破→ツインサテライトとか螺旋→螺旋とか。
ATの杭打ち込んでぐるぐる回ってマシンガン乱射もマップ兵器になるといいな。マックリボルバー並みの威力で。
ホビージャパンは面白いけど高いですよね。あと、すてっち! というラノベが好きです。

ガンタンク、ガンキャノンは、以下の通りです。
タンク 開発されたが実戦投入はなかった。量産型はオデッサ作戦で全て廃棄。
キャノン D―2の開発により、計画段階から廃止。

就職は頑張っています。運転免許を取得してから。
814 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/04/08(金) 18:34:40.35 ID:v+PkisSAO
ボトムズはキリコの能力が最高格で機体が最低格らしいね
815 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2011/04/08(金) 18:49:01.05 ID:P59J8sxi0

ドラグーンあれば事足りるしな…
816 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/04/08(金) 19:26:35.36 ID:AimLD3k4o

PSPででるのか…買うどうか悩むな。MAP兵器は使用制限かかるんじゃね?

唯に一票で
817 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/08(金) 20:31:32.61 ID:eBRkcSRgo

唯頑張れ!唯を魔神にしてあげてください
818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/08(金) 22:47:46.68 ID:JrH5DyGDO
>>1成る程、元旦とキャノンはD-2に統合された訳ですな、そして赤鼻の蟹はアガイやゾゴみたいに腕が伸びるジャブロー攻略用の試作型と言う事なんですね、二次ではWのソードカラミティみたいに火力の有る機体が買えるといいな。
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/09(土) 02:22:13.19 ID:VPxdRh1DO
そろそろなのはのストーリーをだな……。
820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/09(土) 16:59:42.17 ID:EN+BHoiu0
 
 ジャブロー 洋上

 連邦、ギガノス、ドレイク軍が入り乱れるジャブローの防衛ラインは、一層の混迷を極めていた。

 ドレイク軍の後ろを、ゴラオンが追撃してきたのである。
 800メートルにもなる戦艦は到着と同時にドレイク軍にぶつかっていき、オーラノバ砲を発射した。

エレ「ドレイク軍の様子はどうなっていますか?」

エイブ「主砲で範囲内のほぼ半分を撃墜しました。次の戦力投入までは有利になりましょう」

エレ「わかりました。各隊、攻撃を開始してください」

 ラウの国の技術を結集したオーラノバ砲の威力はオーラ力の充満した地上世界にて更なる威力を発揮し、ジャブローにまで届いた。

トッド「ちぃっ!」

 その勢いに煽られたズワァースは打ち合っていたダンバインともども体勢を崩していた。

チャム「タマキ! 落っこっちゃうわよ!」

トッド「そこだ! もらったぜぇ!」

 ドシュゥッ! オーラキャノンがダンバインをかすめていく。

珠姫「くっ……ダンバイン!」

 ガキィンッ! 即座に迫り来るズワァースの曲剣を辛うじて受け止める。

トッド「今日こそやってやるぜぇ、タマキぃ!」

珠姫「あなたみたいな人が――っ!」

 ギン! ギィッン――! 二機のオーラバトラーが激しく打ち合う。

トッド「お前にやられてから、オレのオーラが疼くんだよ!」

珠姫「オーラ力に憎しみを込めてはいけない!」

トッド「お前がオレにやられちまえばいいんだよ!」

珠姫「聖戦士なんてやめればいい!」

トッド「今さら遅ぇんだよぉ!」

 ギャリィィンッ! 火花が散る。
821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/09(土) 17:01:12.99 ID:EN+BHoiu0

トッド「わかるか、タマキ? 一度やりあっちまったら、後は食うか食われるかなんだよ!」

珠姫「そうやって自分を狭くしていくの!?」

チャム「タマキ! ダメだよ、憎しみの力を強くしちゃダメぇ!」

 必死の呼びかけが戦闘だけを見ていた珠姫の意識を揺さぶった。

珠姫「チャム……」

チャム「タマキ! アイツと話しちゃダメ! タマキが呑みこまれちゃう!」

珠姫「そうだ……憎しみはオーラ力を強くするけど……!」

トッド<気合>「タマキィィィィィ!!」

 ガギィィィィンッ! 加速してゆくオーラ力を制御する瞬間に、ズワァースの曲剣がダンバインの剣を弾き飛ばした。

 だが、それは思わぬ結果を招いてしまう。

フェイ「何だと!?」

 ダンバインの剣がレプラカーンの肩にぐっさりと刺さったのだ。
 突然、機体の四分の一を失ったフェイ・チェンカが事態を確認するより先に、ヒカルはネオ・プラズマカッターを振り下ろした。

ヒカル「やぁぁぁぁっ!」

 ズバァッ!! 出力が強化されたプラズマカッターはレプラカーンを左肩から股関節までを袈裟切りにした。

フェイ「ちきしょうめ! この俺がこんなところでぇっ……!」

アレン「ふん、自分の不運を呪うんだな、フェイ・チェンカ」

 墜落していく友軍機の上を飛ぶビランビーは剣にオーラソードを纏わせてゲシュペンストに向けていく。

 一方で、剣を失ったダンバインと、新たな剣を出させないように攻め立てるズワァースの間では尚、激しく戦いのオーラが渦巻いていた。

珠姫「わかった!? 貴方のオーラ力が味方まで巻き込んだ!」

トッド「違うな! お前も聖戦士ならわかるだろぉ!? 大気中のオーラ力の流れが! それを探ればあの程度避けられたはずだぜ!」

珠姫「それが傲慢だって何故気付かないの!?」

チャム「タマキ! ダメだってばぁ!」

珠姫「わかってる!」

 大きく前へ出て行ったダンバインが身を翻してズワァースと対峙した。
 珠姫は自分のイメージとダンバインを重ねる。
 あの畳の部屋で、坂本美緒少尉の剣を受け止めたときの自分の心を強くイメージする。
 オーラの流れを自分のものとして、それを手と剣のように発揮する!

珠姫「オーラ力だけをやってみる!」

 両手両足を広げたダンバインのオーラ力がズワァースを覆っていく。

トッド「チィ! 動かなくなる!? 舐めるなよぉ!」

 グアァ――トッドもまた、オーラ力を膜状に展開してバリアのようなものを発生させた。

トッド「どうだ、タマキ! お前だけがオーラ力を操れると思うなよ!」

珠姫「人間がオーラの力をこんな風に使っては世界を歪めるだけなのに! どうしてそれがわからないの!?」

トッド「言葉だけでわかった気になれるのも、人間だからだよ、タマキ!」

 やはり、憎しみの力はオーラを強くするのか――次の瞬間、トッドのオーラ力は珠姫のオーラを爆散させた。
822 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/09(土) 17:02:22.25 ID:EN+BHoiu0

トッド「所詮、ジャップのイモにはわからねぇのさ、東部の落ちこぼれのことはなぁ!!」

 ズワァースが両手に曲剣を持った。
 確実にダンバインを仕留める腹づもりだ。

チャム「ダメよぉ、タマキィ!」

トッド「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇ! タマキィィィィィィィィィィ!!」

珠姫「くぅっ……!」

夕映「ゲッタァァァァァァァァァ!!」

 だが、二者の間に割り込んだ赤い影が、その痛みを引き取った。

トッド「ちきしょったれめぇ! デカブツがでしゃばるんじゃねぇ!」

夕映「ゲッターロボは世のため人のためにあるです! それを破壊するものに、私たちは容赦しません!」

のどか「いけるよ、ゆえ!」

夕映「ゲッタァァァァァァァァビィィィィィィィィィム!!」

 ズバァァァァァァァ!! 量子レベルで溶かしつくす光線にたまらずズワァースは離れた。

トッド「ミュージィ、どこにいやがる!?」

 ゲッターロボの相手はミュージィがしていたはずだ。トッドが回線に怒鳴り散らすと、逼迫した声が返ってきた。

ミュージィ「申し訳ありません。別の敵が……くっ!」

 白いカラーリングのミュージィのズワァースは、同じく白い機体のヴァイスリッターと曲芸飛行の如き空中戦を展開していたのだ。

海晴「アラアラ、まだ私の実力は見せてないわよん」

 尾の長いビーム光がトッドにも視認できた。ヴァイスリッターの白線が綺麗な螺旋を描き、ミュージィを追い詰めている。
 戦局そのものは長い間膠着しているが、この空域はフェイ・チェンカが落とされたことにより、アレンとジェリルが苦戦を強いられている。
 ショットが交渉していたギルガザムネとかいうのも、メタルアーマーとやらに阻まれている。

トッド「連中に任せていたら、日が暮れちまう!」

 元々、今回のドレイク軍の作戦はあくまでもジオン軍降下部隊のサポートである。
 そのジオン軍は、ジャブローの対空防御に苦戦している。
 ドレイク軍が陸に近づき、少しでも多くの防衛機能を割かせなければ、帰る道のないジオン軍の勝利は絶望的なのである。

ヒカル<熱血必中努力>「メガブラスタァァァキャノォン!!」

 ズドォォォォッ!! ゲシュペンストの胸部から発射された高エネルギー砲がジェリルのレプラカーンの背中に直撃した!

ジェリル「このぉぉぉぉぉぉ!!」

トッド「ジェリルか! 引き揚げ時か!?」

 ダンバインは既に新しい剣を抜いている。
 トッド自身も先ほどのオーラの放出で疲労している。
 一時後退して、戦線を立て直させるか――
823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/09(土) 17:03:32.61 ID:EN+BHoiu0

 ずぁっ――

トッド「!?」

珠姫「なに!? この……」

エレ「邪悪な……悪意が……」

 オーラに敏感な者達が先に気付くと、それに怯えたオーラが戦場に伝播していく。

ドレイク「風が……変わった……か……?」

チャム「危険だよぉ……タマキ!」

紀梨乃「これは……いったい……?」

ミュージィ「何かが……来る!?」

 圧し掛かるような威圧感の正体は、最も高いところにいる白銀の天使に標的を定めていた。

海晴「どうしたの……みんな……ッ!?」

 快晴の空を引き裂く一撃が、ヴァイスリッターの軽い機体を吹き飛ばした。

 水しぶきが柱の如く立ち上がる。

チャム「あれだよ……恐ろしいオーラの持ち主は!」

珠姫「あれは……レプラカーン……?」

 一帯が固唾を呑む中に浮かび上がってきたのは、染めたように漆黒のレプラカーンであった。
 だが、レプラカーンがあれほどの速度を出すはずがない。
 そして、ただの人間があれほどの強烈なオーラ力を出すはずがない。

 黒いレプラカーンで特に異様であったのは、バイストン・ウェルのものとは大きく異なる細身の剣であった。
 金色の翼を模した柄の剣は、昆虫類に似るオーラバトラーとはとても見合う物ではないが、邪悪なオーラ力とは波長が合うようで、禍々しく光っていた。

 黒いレプラカーンはダンバインを探し、見つけると細剣を構えた。

「カワゾエ・タマキ……」

珠姫「……何でしょうか?」

 隠し切れない嫌悪感を舌に乗せて応じる珠姫に、黒いレプラカーンは動じることなく名乗った。

「我は黒騎士。貴様とダンバインに尋常の勝負を挑む!」

チャム「タマキ……アイツ変だよ……恐いよ!」

珠姫「うん……でも、敵である以上は……!」

 ダンバインが剣を構えたとき、レプラカーンは既に剣を振り上げ斬りかかってきていた。

黒騎士「カワゾエ・タマキ、いざ勝負!!」
824 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/09(土) 17:04:21.13 ID:EN+BHoiu0
 
 ジャブロー連邦基地 第三高射砲拠点

美緒「砲口の修正は済んでいるか?」

 管制塔の屋上で眼帯に隠された魔眼を光らせながら、特別防衛魔女部隊坂本美緒少尉は、真下にいる管制官に問うた。

連邦兵「はっ! いつでも迎撃可能であります!」

美緒「よし、約四秒後だ。三、二、一、撃て!」

 最後の指示だけは管制官と重なる。
 途端に、無数の爆音がして、青空に花火が上がった。

美緒「命中、十七か……私もまだまだだな」

 たった一度の指令で降下するモビルスーツ大隊を潰滅させたウィッチは眉をひそめた。

美緒「次は空母、ガウを狙うぞ。第一小隊から……」

 再び魔眼を光らせながら、美緒は高射砲の角度を細かく指示していった。
 管制室にいる拠点部隊長は「これは本当に戦争なのか」と疑った。

 降下してくるモビルスーツは着地の直前にバーニアを噴射すればよいため、降下は自重で垂直に落下してくる。
 要するに、位置、高さ、速度が、従来の戦闘機を追うタイプの高射装置では縦の落下に対応しきれないのだ。
 そのため、モビルスーツ降下作戦が行われると、高射砲部隊の仕事はないと言われていたのだ。
 だが、魔眼を持つ坂本美緒少尉が立つと、状況は一変した。

 元々、ジャブロー防衛部隊の兵士たちは彼女らウィッチなどという存在を理解していなかった。
 いわゆる虎の子として本営直属にされていたのだ。
 それが今回のジオン・ギガノス総攻撃に対して突然、最前線に現れて「私が指示を出す」と言い出したのだ。

 実際に引力を真に受けて降下するモビルスーツを捕捉できていなかった高射砲部隊は面白がって従った。
 第一に、少尉が美人だったからだ。
 ようやく大人の域に到達したばかりのサムライ・ガールの異様に細かい指示に、戸惑いながらも言うとおりにする。

 結果、彼らはジャブロー防衛において、現時点で最大の戦果を挙げたのだ。

美緒「……よし、撃ち方用意……」

 遥か上空に浮かぶ攻撃空母ガウを見据えて、美緒は抜いた刀を空へ向ける。

美緒「撃て!」

 即座に砲弾が射出される。
 だが、それらの一つとして、ガウに当たることはなかった。

シャナ「はあぁぁぁぁぁ!!」

 陽炎のように表れた燃え上がる炎のように赤い少女が、刀を振ると、見えない網に引っかかったように砲弾は全て落ちてしまった。

美緒「なにっ!? そうか……あれが赤い彗星か!」

 刀を握りなおした美緒をシャナ大佐が見下ろす。

シャナ「あれがジャブローの魔女ね……第二波まであと140秒……それまでに落とす!」

 急降下するシャナは火を纏うため、燃え盛る流星のように見える。

美緒「私と刃を交えるつもりか……面白い」

シャナ「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

美緒「せぃやぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 ぎゃりぃぃぃぃぃぃぃっ!! 裂帛の気合が鍔迫あう。

美緒「なるほど! 赤い彗星、凄まじい!」

シャナ「連邦に私の剣を受け止める奴がいるとはね!」

 二人は立ち位置をほとんど変えることなく、数十合を打ち合った。

シャナ「燃えろ! 贄殿遮那!」

美緒「吼えろ! 烈風丸!」

 巨大な魔力と炎がぶつかりあい、波動にジャブローの密林が薙ぎ倒されていった。
825 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/09(土) 17:05:31.71 ID:EN+BHoiu0

 ジャブロー 洋上

 ギルガザムネと黒いレプラカーンが戦場に混沌の渦を作り上げている。

朝倉「あはははっ! 邪魔だよ! 邪魔ぁ!」

 青龍刀の一太刀でドラグーンを二機叩き落とし、その爆炎の中から大口径のハンドレールガンを乱射する。

黒騎士「どけっ! 斬り伏せるぞ!」

 予測も追いつかないほどの高機動性でダンバインを執拗に狙い、道中を遮る機体を敵味方問わず黒騎士は破壊した。

珠姫「こんな……っ! 憎しみの力で!」

チャム「タマキぃ! 危ない!」

 切っ先でレプラカーンの細剣をかわす珠姫の背中に何者かが張り付いた。

トッド「お前は俺が倒すんだよ!」

 ズワァースの斬撃を上昇して避けたダンバインはさかさまになって、黒いレプラカーンに剣を突き出した。

珠姫「このぉ!」

黒騎士「まだだ!」

 ガキィンッ! ダンバインの両手で握った剣がレプラカーンの片手に持たれた細剣に逸らされた。

珠姫「スピードだけじゃない! パワーも違う!?」

黒騎士「私は、貴様を倒すために、悪魔に魂を売り渡したのだ!」

 オーラが波紋になって周囲の機体を巻き込みながら、二人をぶつけさせた。

黒騎士「私のオーラ力で、今日こそ貴様を倒す! ダンバイン!」

珠姫「これがオーラ力!? こんな禍々しい力で!」

紀梨乃「タマちゃん、危ない!」

 にじり寄っていたビランビーにボチューンが突っ込む。

アレン「チッ、邪魔をするんじゃねぇよ!」

紀梨乃「寄ってたかってタマちゃんをいじめるんじゃない!」

海晴「紀梨乃ちゃん!」

 戦場の高いところにいるヴァイスリッターから援護砲撃がビランビーに当たる。

アレン「うおっ!」

紀梨乃「やぁぁぁぁっ!」

 ズバァッ! ビランビーの背中が鮮やかな切り口を見せて飛行能力を失った。

アレン「くそぉ……!」

朝倉「やっぱり、アナタが一番邪魔なようね」

 チームでも最年長になる海晴へ、ギルガザムネが走る。

海晴「ヒカルちゃん!」

ヒカル「あぁ!」

 その動きを予期していた海晴の合図で、ゲシュペンストが飛び込んでくる。

ヒカル「ジェットマグナム!」

朝倉「同じ手は喰らわないわ!」

 巨体に似合わぬ素早さをギルガザムネは見せた。
 その場で停止して独楽のように旋回し、重い刃でゲシュペンストの腕を拉ぎ取る。

ヒカル「ぐっ……!」

海晴「サンキュウよ、ヒカルちゃん。その動きも計算どおり!」
826 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/09(土) 17:06:22.19 ID:EN+BHoiu0

 ちょうど九十度回ったヴァイスリッターは、ギルガザムネのハンドレールガンにオクスタンランチャーを向けた。

海晴「蝶のように舞い、蜂のように刺すのよ」

 ドゥッ! ドゥンッ! 威力抜群の実弾が鎧武者の右手に当たる――はずだった。

朝倉「ダメよ」

 ガァンッ! ギルガザムネの肩当てが不自然に浮かび上がり、弾丸を弾いてしまった。

海晴「副腕<マニピュレーター>!?」

朝倉「このために近づいちゃったね」

 ジャキ――射程内のハンドレールガンが海晴に火を噴く!

シノ「そうはさせるかぁ!」

 ガガガガガガガガガガガガガガッ!! 両者の間に割って入ったドラグナー1型カスタム機がルナ・チタニウム製のシールドで、ヴァイスリッターを守った!

朝倉「あら? ふーん……」

 カチ、カチ――弾薬の切れた銃を朝倉涼子は海に捨てた。それが海面に着くより早く彼女は動き出した。

朝倉「楽しませてね」

 ぶぉん! 青龍刀が唸りをあげてシノに襲い掛かる!

シノ「――!」

 その瞬間、シノは数週間前の恐怖をフラッシュバックした。
 尻から膝までが竦んで、現実感がなくなる。

アリア「シノちゃん!」

 控えていたドラグナー2型カスタム機が640ミリと人間の顔よりも巨大な砲丸をギルガザムネの前に飛ばした。
 その風圧にシートを締めたドラグナー1型のメインコンピュータ<クララ>が対応を求め、シノは意識を戻した。

シノ「今こそ……打ち勝つ時!」

 コクピットの中で集中する。
 坂本美緒の剣を受けたあの澄んだ空気が甦ると、今度ははっきりとギルガザムネの邪悪な気配が読み取れた。

シノ「そこだっ!」

 バキィンッ! 左肩をやや沈ませたD−1が振り上げた右手には抜き放たれたレーザーソードがある。

朝倉「……へぇ」

 切断された左手を確認して、朝倉涼子は笑った。頭上に飛ばされた青龍刀を右手でキャッチして、肩に担ぐ。

朝倉「簡単に壊せると思ったら、簡単に直っちゃった。人間って、面白いよ――ねっ!」

 遅れて落ちてきた左手をまるでテニスのレシーブのように青龍刀の腹で打った。

シノ「くっ!」
827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/09(土) 17:08:07.49 ID:EN+BHoiu0

 シールドで防ぐと、目の前には既に金色の巨体が迫っていた。

シノ「まだいける!」

 へばりつく恐怖に立ち向かうように改良されたバーニアを噴かし、突進する。
 D−1カスタムの肩とギルガザムネの脚がぶつかり、傾くが、そのおかげでギルガザムネは孤立してバランスを崩すことになった。

朝倉「うくっ……」

シノ「今だ! 二人とも!」

アリア「ソニアちゃん、速攻でチャージ!」

スズ「光子バズーカ、スタンバイ!」

 高く躍り出た二機のドラグナーがギルガザムネを十字砲火に捉えた!

スズ<熱血>「懺悔はセルフサービスよ!」

アリア「轟けぇーっ!」

朝倉「一次装甲!」

 ドシューッ! 強力な光子ビーム砲の交差点に曝されたギルガザムネだったが、副腕で盛り上がる肩当てを外すことにより、衝撃を二次的なものにすることに成功した。

 実弾ならば、それで本体は無傷だが、実体を持たないビーム兵器はそうはいかない。
 圧倒的な熱量で鎧の装甲をじりじりと溶かしていく。

朝倉「あーぁ……何か変だなぁ……レーダーが追いついてないのかしら……」

 機体損耗率が危険域に達したことを報せるアラームを聞き流して、朝倉涼子はコンソールに指を這わせる。

朝倉「あら、これって……」

 今回の戦闘のデータのバックアップしていく最中、彼女は索敵システムの動作に違和感を見つけた。

朝倉「ふぅーん……」

 指先を形のいい唇にあててしばらく考え事をした後、彼女は自爆の命令を出して脱出ポッドを作動させた。

スズ「これは……七条先輩! 会長! 早く離脱を!」

アリア「スズちゃん!?」

シノ「離脱するぞ、アリア!」

 ドドォッ……! ドラグナーの背に爆風が当たる。
828 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/09(土) 17:09:09.54 ID:EN+BHoiu0

チャム「いっけぇぇぇぇ! 必殺のオーラ斬りだぁっ!」

珠姫「はぁぁぁっ!」

 ズバァッ! ミュージィ・ポゥのズワァースが両腕を斬り落とされた。

ミュージィ「ショ、ショットさまっ……!」

 この報せが入った瞬間、ドレイク・ルフトは攻撃をやめることにした。
 もともとは、リョウコ・アサクラとかいうギガノス帝国の使者の甘言に乗せられていただけだと自覚していたのだから、彼女が墜落し、聖戦士もトッド・ギネスだけになってしまっては、ドレイク側にはもはや旨みはない。

ドレイク「地上の軍隊、城というものは、かくも恐ろしきものであったか」

 彼もまだ、王としては若い。それに事実上、北アメリカは彼の領土と化している。
 地上で戦える力を蓄える必要がある。幸い奴らは内乱を起こしている。

トッド「チッ……黒いレプラカーンが邪魔したせいで熱が冷めちまったぜ」

 負け惜しみという訳でもないが、曲剣を投げつけてボチューンに当ててやった。
 これで少なくともアレンにでかい顔をされることはない。
 素早くトッドは戦域から離脱した。

 よって、残ったのは黒いレプラカーンに乗る黒騎士だけとなった。

黒騎士「貴様らに告ぐ。私の目的はカワゾエ・タマキならびにダンバインとの決着をつけることだ」

海晴「あら、正々堂々の勝負ってことかしら?」

ヒカル「どうする、川添さん?」

珠姫「……やります」

チャム「タマキって、こういうの好きよね」

スズ「会長、私たちはジャブローを攻撃する別部隊へ向かいましょう」

シノ「うむ、わかった」

夕映「私たちも行きますよ」

ハルナ「えぇぇ〜」

夕映「あからさまに嫌な顔をしないでくださいです」

のどか「あ、赤い彗星の介入でー……ジオンの降下部隊が続々下りてきてるみたいー……」
829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/09(土) 17:10:24.44 ID:EN+BHoiu0

 ドラグナーとゲッターロボが身を返す後ろで、ダンバインと黒いレプラカーンはお互いの剣を構えていた。

 真剣勝負――互いに一切の隙を見せず緊張する時間が両者の間に流れた。

珠姫「…………」

黒騎士「…………」

 二人とも、相手のオーラを読んでいる。それは槍先にも似て、その切っ先から出方を察することができるのだ。
 ヒカル、海晴、紀梨乃はどちらが先に仕掛けるのか……固唾を呑んで見守るが、結局、干戈が交わることはなかった。

あしゅら男爵「ゆけぇぇぇぇぇぇい!! 海底要塞サルード!!」

 ざばぁぁぁあぁっ! いきなり海面が盛り上がり、太い塔の頂上と土台に岩をくっつけたような物体が珠姫と黒騎士の間に現れたのだ!

黒騎士「なにっ!?」

珠姫「これは!」

あしゅら「わぁ〜っはっはっはっはっは! 愚かな地球人どもめが! 仲間割れをしている貴様らの基地、我があしゅら軍団が制圧してくれるわ!!」

ヒカル「あしゅら男爵!?」

海晴「最近おとなしくしていたと思ったら、こういうことだったのね」

あしゅら「ゆけぃ! ドクター・ヘル様の機械獣軍団! ジャブローへの上陸地点を確保するのだ!」

 ぎゃおぉぉぉぉぉぉぉん!! 杖を高く振り上げる号令で、浮上した要塞の上部分からダブラスM2、ガラダK7、アブドラU2、ジェノサイダーF9が飛び出した。

ヒカル「機械獣が四体も!」

海晴「機械獣が相手じゃジャブローの防衛システムも危ないわね」

黒騎士「ククク……何者かは知らぬが邪魔が入らなくなるならば好都合! ダンバイン、いざ勝負!」

 黒いレプラカーンがサルードを飛び越えてダンバインに斬りかかった!

チャム「正面! 当たっちゃうぅ!」

珠姫「やらせない!」

 ギィィッ――! 剣と剣が正面からぶつかりあい、火花がオーラ力に混じる。

黒騎士「そうだ! これだ! 血沸き、肉躍る! 我が尊厳を取り戻す時が今!」

珠姫「強い……! 憎しみの力が、オーラを充満させている!」

 まるで接着したように両者の剣が長く鍔迫り合いを始めた。
830 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/09(土) 17:26:38.14 ID:EN+BHoiu0

 ジャブロー 鍾乳洞

 ジオン軍の特殊工作部隊の攻撃を退けたマジンガーZ、ガンダム、Gブル、ゲシュペンストTYPE−R、アルトアイゼンと合流したなのはは、鍾乳洞の河を溯っていく。
 損壊したダイアナンAとボスボロットはホワイトベースへ戻り、修理後直掩に回る。

唯「地上では戦いが激しくなっているんだよね」

氷柱「報告だと、ギルガザムネというギガノス軍の新型が連邦のドラグーン部隊を潰滅させたみたい」

霙「私たちはこの鍾乳洞を出た先に潜伏していると思われるジオンの工作部隊を倒す……むっ」

 ガトーに潰されたアルトアイゼンの膝関節部は既に交換してある。
 重力下で巨体を支える重要な部位であるため、予備パーツを格納しているのだ。

『我等の土地から出て行け!』

 先頭を走る赤い巨体に石がぶつけられた。
 続いて歩兵用のアサルトライフル、なのはの邪魔をした原住民族たちである。

なのは「あの人たちは、シャナちゃんを火の神さまとして味方しているみたいなんです」

 レイジングハートが解析した言語をそのまま伝えると、霙はやれやれと首を振った。

霙「ジャブローの開発は原住民たちに何のことわりもなく行われた。以来、彼らは何代にも渡って抗議活動を続けている」

すずか「わかってもらうことはできないのでしょうか……」

霙「いったい何をわからせると言うんだ? そもそもジャブローがなければジオンは攻めてこなかったんだぞ。連邦中枢において、コロニーへの移住はいわばゴミ出しと一緒なのさ。地球が窮屈になったから、余計なものを放り出そうということだ」

なのは「シャナちゃんは、サイド3は家畜のようにされているって言ってました……」

霙「移住がゴミ出しなのだとしたら、コロニーは焼却炉さ。都市から一番遠い焼却炉が一番粗悪な物を燃やす。そして使えなくなれば打ち捨てるだけだ」

氷柱「地上なら地続きでどうにかなるけど、コロニーは宇宙に漂っているわ。人工栽培物以外の物資は地球に依存しなければならない」

霙「結果として、コロニー側は連邦政府に対して圧倒的に隷属させられる運命にある訳だ。それを実際に見て確かめたレビル将軍はジオンに兵なしと言った訳だ」

唯「あっ、知ってるよ。何度もニュースに出てたもんね」

氷柱「言っておくけどね、生放送時以外の将軍の演説は大きく歪曲させられているわよ。将軍はジオンと同時に連邦の腐敗した中枢部もまた敵だと言ったのに、以後の放送ではその箇所はまるきりカットされているんだからね」

アリサ「本ッ当にどうしようもないわね……」
831 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/09(土) 17:27:20.70 ID:EN+BHoiu0

 鍾乳洞を出て、彼女たちは驚いた。
 そこは予想していた戦場ではなかったのだ。

唯「機械獣だ!」

 最初に反応したのは唯だった。彼女が倒した機械獣がジャブローに上陸して防衛部隊を蹂躙している。

唯「くっそー! あしゅら男爵め!」

 マジンガーZを走らせて機械獣に突進していく。

あしゅら「出てきおったな、マジンガーZ! 喰らえぃ!」

 ボシュッ! ボシューッ! サルードからミサイルが発射されて、マジンガーZに当たった。

唯「うわぁっ! あしゅら男爵め、そこにいるのかー!」

 ぐっと腰を下ろして、マジンガーZを飛翔させた。

 ぐぉーん……ジェットスクランダーから光子力ジェットエンジンで海中に沈み始めているサルードへ向かって飛ぶ。

唯「ドリルミサーイル!!」

 シュボボッ! ドォォンッ! マジンガーZの肘から発射されるミサイルがサルードに命中する。

 唯は機械獣が射出されて開き放しにされているサルードの登頂部に飛び込んでいく。

あしゅら「ぬうぅ! 早く海の中に入れぃ!」

唯「ふおぉぉぉぉぉーっ!!」

 サルードの口が閉じるよりも、ジェットスクランダーのほうが速い!

あしゅら「やれぃ! 水中機械獣グロッサムX2!!」

グロッサム「ぐおぉぉぉぉん!!」

 ざばぁっ! 今しもマジンガーZがサルードの入り口に乗り込もうかという瞬間、波を割って巨大なハサミを頭部に持つ機械獣が体当たりをして海に叩き落した。

唯「う、うわぁっ!」

グロッサム「ぐおぉぉぉぉん!!」

あしゅら「くくく……グロッサムX2よ、お前は水中でしか戦えぬが、水中でのお前の力は素晴らしい! 水中で自由の利かないマジンガーZを叩き潰してしまえ!」
832 :第一話は>>490から推敲されています。 [saga]:2011/04/09(土) 17:46:54.25 ID:EN+BHoiu0
第一話は>>490から推敲されています。

今日はここまでです。
とうとうストックがなくなりました。虹キタ→パリン→青玉並みの絶望感が漂います。
別スレで割りといっていますが、何故か近くのレンタル店で異世界の聖機師物語が大人気なので、ボトムズも三巻ほど観てます。
そのボトムズさえ貸し出されていてZUに向けてキングゲイナーを借りました。
実はZやってません。出たときはお金がなくて、今は中古で買うにはまだ高いみたいにやっている間にZU発売になりました。
そしてうだうだATの免許取っている間に五日後発売ですよ、お兄さん!
とりあえず、プルツーがいないので代わりにキリコとブラスタとシンがウチのエースになるでしょう。
こう書いているとリアル派と思われるかもしれませんが、エースの二、三機以外はほとんどスーパー系で固めています。
ついでに言うと私は数少ないロザミィ派です。
833 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/09(土) 18:00:41.82 ID:Y4j4zkbjo

やっぱりライラ大尉だね
唯に一票
834 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2011/04/09(土) 19:09:48.47 ID:aj3PYvxD0

あしゅらに死亡フラグ
835 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/04/09(土) 20:28:41.01 ID:RjNDYQBAO
836 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/10(日) 01:22:56.90 ID:3XkgZWODO
乙、ここクリアしたら新型か隠しユニットの一つも欲しいところだな、投票はすずかで。
837 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/14(木) 11:39:56.06 ID:+MTRWc200

グロッサム「ぐおぉぉぉぉぉぉん!!」

 海中を凄まじいスピードで進んでグロッサムX2は巨大なハサミをマジンガーZに開いた。

唯「速い、すごく速いよ!」

 ガチィンッ! ハサミがマジンガーZの腹に噛み付いた!

唯「うくっ……! 超合金Zが、こんなのに負けるかーっ!」

 海底の砂に脚をとられながら、マジンガーZは頭上で拳を固めて振り下ろす。

グロッサム「ぐおぉぉぉぉぉぉん!!」

唯「このっ、この!」

 がしっ! がしっ! 何度も叩くが、水の抵抗で威力が半減されている。

唯「それなら、ルストハリケーンだ!」

 ぶおぉぉぉぉぉぉ! 檻のような口からルストハリケーンが噴き出す!

 海の中では酸は効果を失うが、強力な風がグロッサムX2を襲う。

グロッサム「ぐおぉぉぉぉぉぉん!!」

唯「これなら、何とかなるかも……」

あしゅら「そうはさせんぞ、平沢唯!」

 ぐおぉぉ……! グロッサムX2のピンチにあしゅら男爵は海底要塞サルードをぶつけにきた。

 ドカァッ! 直撃を喰らってマジンガーZは海中を流される!

唯「うわぁぁぁ!」

ハルナ「唯ちゃん!」

 がしっ! マジンガーZを捕まえたのは、ゲッター3であった。

唯「ふぃ〜、ありがと〜」

夕映「どういたしましてです」

のどか「こ、ここはゲッターにまかせて、ゆいさんは地上の機械獣をお願いしますー……」

唯「うん、わかったよ! 海の中じゃマジンガーのパワーが発揮できなくて大変だよ!」

ハルナ「あとはこのパル様とゲッター3にまっかせなさい!」
838 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/14(木) 11:41:59.44 ID:+MTRWc200

 ジェットスクランダーから光子力エンジンを燃やしてマジンガーZは浮上し始める。

あしゅら「むっ、マジンガーZが逃げるぞ、グロッサムX2!」

ハルナ「おおっと、やらせないわよ」

 唯を狙う水中機械獣の前に、ゲッター3が立ちはだかった。

あしゅら「ぬぅぅ! 邪魔をするならやってしまえぃ、グロッサムX2!」

グロッサム「ぐおぉぉぉぉぉぉん!!」

ハルナ「ふふふ……ここんぼところ活躍しているのはほとんど夕映ばかりで鬱憤が溜まってたのよ」

のどか「ぱ、ぱるが不気味……」

 ガッチィン! 無限軌道の戦車のようなゲッター3が腕を伸ばしてグロッサムX2のハサミを掴んだ。

ハルナ「おんどりゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

 ドゴォン! バックしながら右に回り、機械獣を岩に叩き付けた!

あしゅら「ええぃ! 何をやっておるか! グロッサムX2を援護せい!」

 ボシューッ! ボシューッ! サルードからミサイルが発射される。

ハルナ「甘っちょろいわよん! ゲッターミサイル!」

 迎え撃つハルナもミサイルを発射して、ミサイル同士を命中させた。
 爆発が起きて、視界が泡で見えなくなった。

グロッサム「ぐおぉぉぉぉぉぉん!!」

 泥煙に紛れてグロッサムX2がゲッター3の首に喰らいつく!

ハルナ「遊びはここまでよ! 機械獣ちゃん!」

 がしっとハルナはゲッター3の手でグロッサムX2の刃を掴み、無理やりにこじ開ける。

あしゅら「むぅぅ! ゲッターロボめ!」

ハルナ<気合>「月まで届かせるわよ! 大・雪・山おろしぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 グロッサムX2を掴んだゲッター3がその場でぐるぐる回り、遠心力を利用して高くぶん投げた!

 そしてなんという幸運か、その真上には黒いレプラカーンがいたのだ。
839 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/14(木) 11:43:19.04 ID:+MTRWc200

黒騎士「なにっ!?」

 どがぁぁぁんっ! 突如下から機械獣をぶつけられた黒いレプラカーンは大きくバランスを崩す。

 それは当然、対峙していた相手に大きな好機を与える。

珠姫「今しかない!」

チャム「やっちゃぇぇぇぇ!」

 ダンバインを上昇させ、剣を高く掲げた。
 その剣にオーラ力を宿して、振り下ろす!

珠姫<熱血>「邪悪なオーラ力なんか!」

チャム<幸運>「いっちゃぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 ズバンッ! 黒いレプラカーンが一刀両断された!!

黒騎士「くぉぉっ……! こんなことでっ!!」

珠姫「憎しみのオーラは、憎しみしか生まない……!」

黒騎士「ククク……莫迦を言うなタマキ!」

珠姫「負け惜しみを!」

黒騎士<ド根性>「こんなことで、この私が終わるはずはないのだ!」

 ぞるっ――肩から腰までを切り離された黒いレプラカーンの傷口から、茨が這い出て絡まり、繋ぎ合った。

紀梨乃「な、何が!?」

チャム「いやぁっ!」

黒騎士「私は悪魔に魂を売り渡したのだ! 我が手で貴様を討つために!!」

珠姫「バーン・バニングス!! あなたという人は!」

 再生を果たした黒いレプラカーンは細身の剣に禍々しいオーラ力を纏わせる。

黒騎士「我が剣を受けよ! タマキィィィィィィィィィィィィィ!!」

 剣から発せられたオーラ力がダンバインに巻きつき、捕縛した。

紀梨乃「タマちゃん!」

珠姫「う、動かない!」

チャム「だめぇ! やられちゃうぅぅ!」

黒騎士「ハァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

「「「「ブライスピアーッ!!」」」」
840 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/14(木) 11:43:48.24 ID:+MTRWc200

黒騎士「なんだと!?」

 ズシャァァァッ! 上空から投げられた巨大な槍に、黒いレプラカーンの剣が弾かれていった。

 黒騎士を撃ったのは、真紅の手足に鎧のような装甲を持つ巨大なロボットだった。全長はオーラバトラーの四倍はあるだろう。

 それを巨獣のレンズ越しに視認したとき、ジャブロー全域に声が轟いた。

こなた「夜空の星が輝く陰で!」

かがみ「ワルの笑いがこだまする!」

つかさ「星から星に泣く人の!」

みゆき「涙背負って宇宙の始末!」

かがみ「銀河旋風ブライガー! お呼びとあらば即参上!」

こなた・つかさ・みゆき「「「イェーイ!」」」

 ジェイナインジェイナイン ナサケームヨウ
 アステーロイドーベルトノー
 アウトーローモーフルエーダスー
 コズモレンジャージェイナイン!

黒騎士「ぞ、増援か、敵の!」

「「「「クロォォォォス・ファイトッ! ダン! ガイ! オー!!」」」」

黒騎士「なっ! そこにもか!?」

 反対方向を見上げた黒騎士の目の前で、白金のロボットが現れた!

シャロ・ネロ・エリー・コーデリア「「「「ダンガイオー! 見参!!」」」」

 クロースファーイト クロスファイッ!(クロスファイッ!
 ジャストクロスフォラァーブ!
 アーツークアーツークアーツークタータカエー ダンガイオー!!

黒騎士「いったい、どうなっているというのだ!? 空からスーパーロボットが!」

かがみ「私たちはコズモレンジャー・J9。今回は連邦政府からの依頼を受けて彼女たちを地球まで連れてきただけよ」

ネロ「なんだよー、地球でも戦争やってるのかよ!」

エリー「あぅぅ、トラブルの予感がするぅ……」

こなた「あーきらめるしかなーいねー」

黒騎士「おのれ……まさか地上人がこのような切り札を用意していたとは……」

かがみ「私たちはこの戦争と直接関係はないけれど、それでも依頼人がいなくなるのは困るわ」

シャロ「戦うというのなら、私たちミルキィホームズがお相手します!」

ネロ「勝手に決めんな!」

シャロ「えぇ! ここはそう言う場面じゃない!」

黒騎士「くうぅ……!」
841 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/14(木) 11:44:22.06 ID:+MTRWc200

 更に、ジャブローから向かってくるスーパーロボットがあった。

黒騎士「あやつはコン・バトラーVとかいうやつ!」

蒼星石「真紅、アイツだ!」

真紅「あの悪趣味な様相……やはりあの子の仕業ね……」

 コン・バトラーVである。

翠星石「やいやいやいやい! 隠れているなら出てきやがれですぅ、水銀燈!」

雛苺「なのー!」

金糸雀「かしらー!」

黒騎士「そうか……奴らが水銀燈の言っていたドールズか……」

真紅「あなたには訊きたい事があるわ」

黒騎士「私に答えることなどないッ!」

翠星石「ならば力づくでも訊いてやるですぅ!」

 コン・バトラーVが手のひらを出し、指先からミサイルを出した。

翠星石「ロックファイターですぅ!」

黒騎士「なめるなっ!」

 水平に払った剣に五つのミサイルは打ち落とされた。

黒騎士「私が望むはダンバインとの決着! それが果たされぬ今、ここに居座る理由はない!」

 そう吐き捨て、黒騎士は乗機を包む邪悪なオーラを解除した。

黒騎士「カワゾエ・タマキ! 次こそは貴様を討ち取ってみせよう!!」

 高く飛翔し、黒いレプラカーンは身を固めたかと思いきや、全身から無数の黒い羽根を放射した!

珠姫「うっ!」

紀梨乃「タマちゃん!」

翠星石「あぶねーですぅ!」

真紅「ホーリエ!」

つかさ「こなちゃん!」

こなた「わーかってるぽー」

コーデリア「シャロ! 上よ!」

シャロ「はいっ!」

 各々が回避をとる間に、黒いレプラカーンは影も形もいなくなってしまっていた。
842 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/14(木) 11:45:03.19 ID:+MTRWc200

 ジャブロー 沿岸部

ゆりえ『ゴォォォォッド・アロォォォォォォォ!』

 バシュッ! ライディーンの手から矢が投げられて、機械獣ダブラスM2の片方の頭に刺さった。

ダブラス「ぎゃおぉぉぉん!」

ゆりえ『ゴォォォォッド・ブロック・スピィィィィン!』

 シャイィィィィィ……! もう片方の頭部に手首の盾から伸びた刃を回転させてぶつける。

ジェノサイダー「」

 チュドォォォォォン! 空を飛ぶジェノサイダーF9が直前でミサイルを落とし、邪魔をした。

ゆりえ「きゃあぁぁぁっ!」

霙「いかん、リボルビングステーク!」

 ドォンッ! 後を追うように突進したアルトアイゼンの杭打ち機がダブラスM2の腹に突き刺さった!

霙「さすが機械獣、硬いな。全弾、打ち込んでやる」

 ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! 

ダブラス「ぎゅぉぉぉぉぉぉぉん!」

あしゅら「むっ、やられたのか、ダブラス!?」

 潜望鏡から地上を見ていたあしゅらの目の前で、ダブラスM2が崩れ落ちていく。

あしゅら「ぐぐぐ! やれぃ、ガラダK7! ダブラスの仇をとるのだ!!」

ガラダ「あぎゃぁぁぁぁん!」

 頭の二つの鎌を飛ばしながら、ガラダK7は朋友を討ったアルトアイゼンに突撃する。

霙「さぁ、受け取れ。スクエア・クレイモアだ」

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!! 誘いこまれたガラダK7に無数の鉄球が打ち込まれ、蜂の巣となり、倒れた。

ガラダ「がおぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!」
843 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/14(木) 11:46:31.93 ID:+MTRWc200

あしゅら「おぉぉ! ガラダK7まで……許せん! このあしゅら自らが奴を叩きのめしてくれようぞ!」

夕映「逃がさないですよ、あしゅら男爵!」

あしゅら「えぇい、うるさいハエめが! ミサイルをお見舞いしてやれ!」

 ドドォンッ! サルードからミサイルが発射され、泥煙を起こし、ゲッターロボの視界を奪った。

ハルナ「くっ、まずいわね……」

のどか「ハルナ、オープンゲットだよ!」

ハルナ「今そう思ってたところよ、オ−プンゲット!」

 バシュッ! 三つのゲットマシンに分離して海上に出た三人の前では既にサルードがジャブローに接岸していた。

夕映「チェィィィンジ・ゲッタァァァァァ1! スイッチ・オォーン!」

シャナ<加速>「そこだっ!」

 ズバァッ! 合体直後の腕が、贄殿遮那によって絶ち斬られた!

のどか「きゃぁぁぁっ!」

ハルナ「くうぅっ!」

夕映「まさか、合体の瞬間を狙うとは……!」

シャナ<再攻撃>「とどめだ!」

 ズシャァァッ! 燃える刀身にゲッターロボの首から左腕まで落とされた!

夕映「り、離脱するです!」

 操縦系の回路を失ったゲッターロボは分離することも出来ずに海へ戻っていってしまった。

なのは「シャナちゃぁぁぁぁぁぁん!!」

 ガキィンッ! 真下から突き上げられるようにレイジングハートが贄殿遮那の鍔にぶつかった!

シャナ「何だと!?」

なのは<突撃>「零距離!」

レイジングハート「Divine buster.」

なのは「シュートッ!」

 ドゴォンッ!! 

シャナ「うああぁっ!」

 非殺傷だが、そのダメージは途轍もない。
 ゲッターロボを追うように海へ墜落していくシャナを捕らえようとなのはが下方を向いた時、咆哮が響いた。

アルフ<熱血>「でりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
844 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/14(木) 11:47:16.73 ID:+MTRWc200

なのは「――ッ!?」

 バキィッ! 橙色の長髪を振りかざした女が握りしめた拳で殴り、なのはを障壁ごとふっ飛ばした。

なのは「あなたは、あの時の――!」

「Foton luncer get set.」

レイジングハート「Protection.」

 ギィンッ! ギィンッ! 右方から飛来した雷の矢をレイジングハートが自動で展開した新しい障壁で防いだ。

なのは「この雷……!」

 矢が来たほうへ振り向くと、あの雷光の如き輝きを湛える少女が佇んでいた。

「君は……また会ったね」

 声音から、少しだけ相手も驚いているようだとなのはは思った。
 だが、決して友好的な態度ではないのはわかる。

なのは「もしかして、ここにジュエルシードが……?」

 少女はこくりと頷いた。そして黒い斧の形をした杖を構えた。

「私たちは争いに来たわけじゃない。目的を、ジュエルシードを回収したらすぐにいなくなるから……邪魔をしないで」

なのは「そんなこと……お願い! 理由を教えて! ジュエルシードを集めてどうするの!? あれは、とても危険なものなんだって、知っているはずだよ!」

 彼女は少しためらっているようだった。やがてぽつりと口を開こうとする。

「私は……」

アルフ「フェイト! あんなやつに教えてやることはないよ!」

 牙を剥く女に止められて、再び黙るが、なのはは他に問い質したいことがあった。

なのは「フェイト。それがあなたの名前なの?」

アルフ「答える必要なんかないよ!」

 暗くて、大きな瞳が揺れて、静かに告げる。

「フェイト……フェイト・テスタロッサ」
845 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/14(木) 11:48:09.97 ID:+MTRWc200

アルフ「フェイトぉ!」

 それ以上、誰かが何かを言う前に、アルフは猛撃した。

アルフ「こんなやつの! こんなやつの言う事なんか聞かなくていい!!」

なのは「あなたは……! あなたはアルフさん!」

 バキャッ! 正面から展開した障壁に、アルフの拳が止まる。

アルフ「お前に……名前を呼ばれる筋合いなんてないッ!!」

 ぎゃりりぃっ! アルフが娘の姿から狼に変身し、ぎらりと光る爪を立て、障壁を乱暴に引き千切った!

アルフ「アンタみたいに! 幸せ面でのんきなバカガキに! フェイトの邪魔はさせないッ!」

 ドガッ! アルフはなのはの腹に体当たりする。

なのは「あぅっ!」

アリサ「なのはーっ!」

 Gアーマーに合体したアリサが墜落するなのはを助けた。

アルフ「フェイト! 早くジュエルシードを!」

フェイト「うん、アルフ……いくよ、バルディッシュ」

バルディッシュ「Yes sir. Thunder fole get set.」

 黒い斧が掲げられると、ジャブロー上空に暗雲が起ち込め、雷鳴がした。

フェイト「サンダー・フォール!」

 ガシャァァァァァンンッ! 雷が海に落ち、次に青白い光りが空に浮かび上がってきた。

フェイト「ジュエルシード……シリアル]T……」

なのは「ディバイーン――」

フェイト「えっ……!」

 不吉な響きに振り返った彼女の先で桜色の光りが収束していた。
846 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/14(木) 11:49:07.59 ID:+MTRWc200

なのは「バスタァァーッ!!」

 ズドォォーッ! Gアーマーに乗ったまま発射された収束砲はフェイトを狙っていたが、それを彼女が避けると、延長線上にあったジュエルシードを巻き込んだ。

フェイト「しまった!」

なのは「ジュエルシード! シリアル]T!」

レイジングハート「Seeling.」

なのは「封印!」

アリサ「どーよ! アタシたちを出し抜こうなんて二億万年速いのよ!」

アルフ<憤怒>「かぁぁぁえええええせぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 空を駆ける狼がなのはに襲い掛かる。
 だが、その牙と爪がGアーマーに届くことはなかった。

アルフ<憤怒>「――ッ!」

 Gアーマーの前にゲシュペンストとヴァイスリッターが二人を守るように立ち塞がっているのだ。

アルフ<憤怒>「ぐぅぅぅぅるぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 それでもアルフは止まらない。ヴァイスリッターの腹に突進していく。

海晴「おいたはダメよ、わんちゃん」

 バキャァッ! 楯代わりにしたオクスタンランチャーが破壊されるが、ヒカルのジェットマグナムが既にスタンバイしていた。

ヒカル「はぁぁぁぁぁぁっ!」

 ズガァンッ! 身長ほどもある拳に殴られ、アルフは苦鳴をあげた。

アルフ「ぐぅっ!!」

フェイト「アルフ!」

バルディッシュ「Size srash get set.」

 斧がの先端が変形し、魔力の鎌が生まれた。

フェイト「はあぁーっ!」

 振り下ろすと、刃が飛び、アルフを捉えようとするロボットを牽制する。
 その隙にフェイトはアルフを助けた。

なのは「フェイトちゃん!」

 アルフの容態を確かめていたフェイトにGアーマーからなのはが呼びかけた。

フェイト「もう、私たちに構わないで……お願いだから」

なのは「フェイトちゃん!」

 もう一度名前を呼ぶが、少女は背中を向けて飛び立とうとしている。

なのは「わたし……なのは! 高町なのは!」

アリサ「何のんきなことやってんのよ! えぇい、私はアリサ・バニングスよ!」

フェイト「…………」

 何言か呟いたようだったが、誰も聞き取れなかった。
 そして、フェイト・テスタロッサは飛び去っていってしまった。
847 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/14(木) 11:50:02.61 ID:+MTRWc200

唯<必中>「ブレストファイヤー!」

 ゴバァァァァァァァァァァァァァァ!! 空を飛ぶマジンガーZの30000度の熱光線がジェノサイダーF9を直撃した。

ジェノサイダー「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉん!」

あしゅら「ジェノサイダー!?」

ゆりえ『ゴォォォォッド・ゴーガンンンン!!』

 キュィィィン……ズギャンッ! ライディーンから放たれた矢がアブドラU2を貫く!

あしゅら「アブドラ! お前まで! 奴らはもう疲弊しているというのに!」

唯「はぁ、はぁ……あとはおまえだけだぞ、あしゅら男爵ぅ……」

 あしゅら男爵の言うとおり、ジャブロー防衛軍は止む事のない戦闘に消耗しきっていた。
 シャナに撃墜されたゲッターロボ以外に、ガンダムは装甲を損耗しドラグナーやゲシュペンストはエネルギー不足に陥っている。
 だが、既にジオン軍の攻撃空母も総員撤退し、ジャブローに取り付く敵はあしゅら男爵の海底要塞サルードだけとなっていた。

あしゅら「えぇい、戦力を出し惜しみしている場合ではない! こうなれば最後の切り札を出すまでだ!」

唯「き、きりふだ……?」

霙「まだ隠し玉があったか……」

あしゅら「まずはゆけぃ! 機械獣ストロンガーT4!」

 ずずん……! ズゴックに似たサルードから落とされる。その胸部には巨大な送風機が取り付けられている。

唯「へん! そんな機械獣をいくら出したって……!」

あしゅら「くくく……こやつはジャブローを破壊するだけ……貴様らの相手はこのミネルバXがする!」

紬「ミネルバXですって!?」

 驚きの声を出したのは、基地にいた紬だった。
 直後、ストロンガーT4の隣りに落とされたロボットを見て、唯も驚いた。

唯「ま、マジンガーZにそっくり!?」

 ミネルバXはマジンガーZを女性型にしたような形状をしていた。

唯「あしゅら男爵め! マジンガーZのニセモノを作ったな!」

あしゅら「ふはははははは! 平沢唯、これはドクター・ヘル様が作ったものではないわ!」

唯「な、なにぃ!?」

紬「そのとおりよ……唯ちゃん……」

唯「ムギちゃん!?」

あしゅら「くくく……琴吹紬か……お前のところの研究者は兜十蔵に匹敵する発明家のようだな!」

紬「いいえ……それを設計したのは亡き十蔵博士よ……」

唯「ムギちゃん、どういうこと!?」

あしゅら「教えてやろう、平沢唯! このミネルバXは光子力研究所で開発されていたマジンガーZのパートナーロボットだ!」

唯「え! えぇぇぇ!?」
848 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/14(木) 11:50:59.25 ID:+MTRWc200

あしゅら「さらにコクピットを見ろ!」

 ミネルバXの腹部が開いた。そこに座らされているのは、唯が最もよく見知っている姿だった。

唯「の、のどかちゃん!」

紬「そんな……和ちゃんが……」

あしゅら「わぁ〜っはっはっはっはっは! わかったか、平沢唯! お前が少しでも妙な動きをすれば、この娘の命はないぞ!」

唯「うぅぅぅ……汚いぞ! あしゅら男爵!」

あしゅら「ふはははははははははは! 何とでも言うがよい! ドクター・ヘル様の望みのためならば、あしゅらは悪魔にもなろうぞ!」

唯「ぐぅぅ〜……!」

あしゅら「さぁ! ミネルバXよ! マジンガーZを叩きのめしてしまえぃ!」

ミネルバX「ぐぉぉぉぉ!」

 ぶぉん! 真鍋和を乗せたまま、ミネルバXはマジンガーZにパンチを繰り出した。

唯「きゃぁっ!」

 為す術もなく、マジンガーZはパンチを喰らって倒れる。

あしゅら「さぁ、ストロンガーT4よ! 連邦基地を吹き飛ばしてしまえぃ!」

ストロンガー「がしゅぉぉぉぉぉぉぉん!」

 ぶぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……! 送風機が回り始め、強い風がジャブローの木々を押し始める。

霙「まずいな……ジャブローは人質など気にせず攻撃するぞ」

ゆりえ「そ、それじゃあ……」

霙「我々が機械獣を止めねば!」

あしゅら「そう簡単にこのあしゅら男爵がやらせるとでも思ったか!」

 ズババババババババババババッ! あしゅら男爵が振りかざした杖から電撃が飛び、ストロンガーT4を止めようとする機体に振りそそいだ!

霙「くぅっ!」

ゆりえ「きゃぁぁぁっ!」
849 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/14(木) 11:51:45.11 ID:+MTRWc200

ミネルバX「ぎゅおぉぉぉぉ!」

 がきん! がん! その間にも、ミネルバXは執拗にマジンガーZを殴り続けていた。

唯「う、うぅ……和ちゃんが……どうすれば……」

ネロ「そういうことなら、ボクたちに任せてよ!」

 飛んできたのは、ダンガイオーだった。

紬「あ、あなたたちは!?」

シャロ「私たちはミルキィホームズ! あなたたちのお世話になります!」

 ババッ! ダンガイオーの右手がミネルバXにかざされる。

シャロ<集中>「サイキック・ウェィィィィィィブ!!」

ミネルバX「…………!!」

 ダンガイオーの掌から出る念波動がミネルバXを捉え、宙に浮き上がらせた。

かがみ「彼女たちが持つ不思議な力、トイズはいわばサイコキネシスに似たものです。きっと人質を救い出せるでしょう」

シノン「じ、J9……どうしてここに……」

かがみ「依頼です。私たちが彼女たちをここへ連れてきました」

紬「そうですか……ありがとうございます……」

 だが、その時、地の獄を抜け出てきたような声が轟いた。

「見つけたぞ……ミルキィホームズぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

コーデリア「こ、この声は!?」

ネロ「ギル・バーグ!?」

 ズァァァァァァァァァァァァァァァッ!! ダンガイオーの真上に巨大なプラズマが落下してきた!

ネロ「破邪の剣!」

シャロ「やぁぁーっ!」

エリー「やめてぇぇぇぇぇぇ!」

 ズバァンッ! 泣き叫ぶエリーのいる手が持つ剣でプラズマを打ち砕いた!
850 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/14(木) 11:52:38.65 ID:+MTRWc200

ギル「ミルキィホームズ……! ダンガイオォォォォォアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 ズギャァッ! 赤黒い影がプラズマの奥からダンガイオーに飛びかかった!

シャロ「ギル・バーグ! 生きてたんですか!」

ネロ「しつこいやつだぜ!」

ギル「しくじった者は死あるのみ! 貴様らを殺すまではぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 ガキンッ! ガカッ! ギィンッ! 重い装甲を全て脱ぎ捨てたブラッディUが腕から伸びる剣でダンガイオーと打ち合う!

つかさ「こなちゃん!」

こなた「いっくーよー! ブライソード!」

 ブライガーが剣を持ち、ブラッディUの背後をとるが――

ギル「馬鹿めが!」

 剣を振り下ろした瞬間、ブラッディUは陽炎のようにいなくなっていた。

かがみ「なっ!」

みゆき「あぶないっ!」

エリー「ひゃぁぁぁっ!」

 カキンッ! ブライソードと破邪の剣がぶつかる。

ギル「ククク……ブラッディTと一緒にするな!」

 ブラッディUは異常な俊敏性でブライガーの背後をとり、強く蹴りつけた。

つかさ「ひゃあぁっ!」

シャロ「はわわっ!」

 ズズーン……! 抱き合う形になってブライガーとダンガイオーは倒れてしまった。

ギル「ククククク……追い詰めたぞ……ミルキィホームズ!!」

あしゅら「くくく……何奴かは知らぬが、これは好機! ゆけぃ、ミネルバX! ストロンガーT4!」


     「待てぃ!」

 
851 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/14(木) 11:53:14.77 ID:+MTRWc200


 声は天上から響いていた。

ギル「なにっ!?」

「弱肉強食の獣でも、殺す事のみを楽しみにはしない。悪の道に落ちた者だけがそれをするのだ――」

 陽光を背に、その人物は天に立っていた。

「しかし、キサマらの邪悪な心を、天は許しはせぬ。大いなる天の怒り……人それを『雷』と云う」

あしゅら「何者だ、貴様!」

「お前たちに名乗る名前は無い!」

 シャキーン! ボディアーマーに身を包んだような人物の口元が、マスクに覆われた。

「剣狼よ! 勇気の雷鳴を呼べ!!」

 パラパラッパーパラパラッパー
  光りのエネルギーが
 パラパラッパーパラパッパラパッパララッパッパー
  頂点に達するとき、
 ドウダオモイシッタカ! オォレタチノーソコヂカラー
  剣狼は、次元の壁を超えて
 キョウモドウドウショウリノー ダーイコウシンー
  ケンリュウを呼び寄せるのである。
 ソーラーヲコガシターマッカーナタイヨウー
  カミジョウ・トウマは
 セーイギーヲマーモルーカーガーリビーダー
  ケンリュウと合身することにより、
 ヨーワイアイィテーハーモーォゥーアキーター
  その力を数十倍にまで
 ツーヨイアイィテーハードーコーニイルー
  高めることができるのである!
 ワレラサイキョウ! ワレラサイキョウ!
 サイキョウマシーンロボ!
 ワレラサイキョウ! ワレラサイキョウ!
 サイキョウマシーンローボォー!

上条当麻「闇あるところ光りあり……悪あるところ正義あり! 天空よりの使者、ケンリュウ! ここに見参!!」
852 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/14(木) 11:54:53.42 ID:+MTRWc200

当麻「天空真剣・奥義! 爆裂空転!」

 ズギュァァァァァァァァ! 剣狼を突き出した当麻の手から竜巻型の光りが発せられ、ミネルバXの腹を撃ち抜く!

ミネルバX「ぎゃぉぉぉぉぉ……!」

唯「和ちゃんが!」

当麻「心配はいらない! とあぁーっ!」

 跳躍し、ミネルバXと交錯したケンリュウの手に和が収まっていた。

あしゅら「な、なにぃ!?」

当麻「さぁ、早く安全なところに!」

唯「は、はい……!」

 マジンガーZのコクピットに下ろされた和は、気を失っているが外傷なないようだった。

唯「和ちゃん……」

あしゅら「おのれぇぇぇぇぇぇ! 邪魔をしくさりおって! 喰らえぃ!」

 ズババババババババババババババ! 電撃がケンリュウに襲い掛かる!

当麻「無駄だ!」

 キュイン! だが、電撃は突き出された右手に触れた瞬間、霧散してしまった。

あしゅら「なんだと!」

当麻「俺の右手の幻想殺しは、あらゆる異能の力を打ち消す!」

あしゅら「ぐぐぐ……ストロンガーT4! パワー全開で全て吹き飛ばしてしまえ!」

ストロンガー「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉん!」
853 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/14(木) 11:55:46.79 ID:+MTRWc200

 ぶぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……! 猛烈な風がケンリュウやマジンガーZ、ライディーンまで巻き込む!

唯「わわわっ!」

ゆりえ「ひえぇぇ……」

当麻「くっ……この風は……!」

あしゅら「そこの貴様! 奴らにとどめを刺せぃ!」

ギル「ちぃ! 俺に命令をするな!」

 ダンガイオー、ブライガーと取っ組み合っていたブラッディUだが、持ち前の俊敏性で影も残さない程の速度でストロンガーT4を跳び越えてきた。

ネロ「ヤバイ!」

かがみ「ここからじゃ……!」

ギル「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!」

立夏「チャーーーーーーーオーーーーーーーッ!!」

 シュバァンッ――ブラッディUの脇を流星のようなシルエットがかすめていった!

ギル「ぐぉっ! まだ邪魔が入るか!!」

霙「フッ……遅かったじゃないか……」

立夏「イックヨーッ! RIKKA−Only−Oneアターック!!」

 ガシュッ、バシュインッ!

 ブラッディUの後ろに出た戦闘機の各部位が開き、滑り、閉じて、人型のパーソナルトルーパーに変形した!


 テッテッテッテーステテテ テッテッテッテーレステテテ 
 テッテッテッテーステテテ テッテッテッテーレステテテ 
 GO! GO! GO! GO! GO! GO! デデデデッデン
 ソビエターツーメノマーエノカベー ムネヲウーツータカマールコードウ
 ヒトツヅーツーノリコーエテーユケー ソノサキーガータトエヤーミーデモー
 トーオーイユメートーアーキーラーメールーナー
 ホラフーリームカズーニー アシタヘー
 Every where you go! Keep on fighting R-1!
 オレノォトーウシヲーカァーテニィ!
 Every where you go! サーアタチアーガレェ!
 テンカァムーテキノーセーンシ!
 Every where you go! Keep on shoutng R-1!
 クダケェコークウノーシーシャヲ!
 Every wahere you go! シーンジタコトヲ!
 ワスーレーズニィ! タチムーカーエェェェ!
854 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/14(木) 11:57:15.52 ID:+MTRWc200

霙「立夏、赤い奴より機械獣を狙え!」

立夏「リョウカーイッチャオッ!」

 ジャキンッ! 新型パーソナルトルーパーは両手でリボルバー銃を構え、ストロンガーT4の背中に狙いを定める。

立夏<直感>「ハートを狙い撃ち! ばっきゅーん! ばっきゅーん!」

 ガァン! ガン! ガン! ガン! ガン! ガンッ! 六発全てが命中した!

ストロンガーT4「ぎゃおぉぉぉぉぉん!」

あしゅら「ストロンガーT4! おのれぇぇぇぇぇぇ!!」

 杖の柄が折れんばかりに歯軋りするあしゅら男爵。
 だが、そうしていたのも短い間で、半男半女の使いは激しい憤りを飲み下した。

あしゅら「申し訳ありませぬ、ドクター・ヘル様! ここで……ここでサルードを失うわけには参りませぬ!」

 振り上げた杖に、屈辱の撤退命令を込める。

あしゅら「全軍! 退却せよ!」

 号令から海底要塞サルードはありったけのミサイルをばらまいて煙幕をつくり、その隙に波の中へ消えていった。

当麻「さぁ、後はお前だけだ。ギル・バーグ!」

 取り残されたブラッディUに当麻は剣狼を突きつけた。
855 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/14(木) 11:58:02.19 ID:+MTRWc200

当麻「もはやお前の勝機は潰えた。さっさと手を退け!」

ギル「ふざけるな……! 元から俺は一人だ!」

 ブラッディUが唸りをあげて地面を踏む。ギル・バーグの殺気は欠片ほども消えてはいなかった。

ギル「俺は……俺をコケにしたミルキィホームズを……ダンガイオーをこの手でグチャグチャに引き裂き! 骨も残らぬほど粉々にしてやらねば気が済まんのだ!!」

ネロ「なんだよ! まだやるつもりだってのかよ!」

 臨戦態勢に入るダンガイオーを、当麻の手が制した。

当麻「いいぜ、ギル・バーグ……ここまで譲ってやってもまだ、お前が復讐なんていう幻想に取り憑かれているのなら……」

 ケンリュウの――上条当麻の右手が強く、強く握りしめられる。


当麻「まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!!」


 その時! 剣狼が眩い光りを放った!

当麻<気迫>「パァァァァァァイルフォォォォォォォォォォォメイショォォォォォン!!」

 ムーネニ エガーイター ヘイーワノホーシガー
 イーツカ キーット ヤサシクホホエム
  トウマの意思を受け
 チーカラ アワーセルーナーカマトトーモニー
  剣狼が空中で光りとなると、
 セイギ ヒトスジ メザシテスースメー 
  時を超え、次元を超え、
 オマエーノミーチハーハーテーシーナーイー
  パイルフォーメーションは完成する。
 ツーラーイキーセーツーヲーコエテーイケー
  バイカンフーは
 タタカーイハマーダーオーワーラーナーイー
  地上全てのエネルギーとシンクロし、
 ミーンナーオーマーエーヲーミーツーメーテルー
  自然現象さえも
 バイ、バイカンフー! バイカンフー!
  変えるパワーを出す事が
 タタカエ、タタカエ、バイカンフー!
  可能となるのだ!
 マシーンロボ! マシーンロボ!
 モエールグンダン マシーンロボ!
856 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/14(木) 11:58:51.44 ID:+MTRWc200

当麻「天よ地よ……火よ水よ……我に力を与えたまえ!」

 ガカァンッ! 天から雷を掌に受け止め、バイカンフーが跳ぶ!

当麻「サンダー! ボルトスクリュー!!」

 ズドォッ! 天空から当麻自身が急転直下し、ブラッディUに蹴りを叩き込む!

ギル「ぐおぉぉっ!!」

当麻「とあぁぁーっ!!」

 ドカッ! バキッ! ドドドドドドドドド! 目にも留まらぬ速度の連撃がギルをラッシュ! ラッシュ! ラッシュ!!

当麻<魂>「天空宙心拳奥義! ゴッドハァァンド! スマァァァァァーッシュ!!」

 ズガァァッ!! 全身全霊、渾身の右手がブラッディUを握り抉る!!

ギル「ぐふっ!」

当麻<勇気>「成敗ッ!!」

 ドゴォォォォォォォォォォォォォォン!!

ギル「ぐあああああああああああああああああああああっ!!」
857 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/14(木) 12:01:09.20 ID:+MTRWc200

 爆散したブラッディUとギル・バーグを最後にジャブローの脅威は全て去った。

唯「あ、あのぅ……」

 パイルダーのキャノピーを開け、唯は幼なじみの恩人にお礼をする。

唯「和ちゃんを……ありがとうございます」

当麻「……本当は、まだ出る予定ではなかった」

唯「えっ?」

当麻「だが、剣狼の導きは全ての非道を見逃さない」

 バイカンフーから合身を解いた上条当麻はマジンガーZの肩に立った。

当麻「そして、いかなる悪の幻想を、俺は許さない」

唯「いったい、何者ですか……?」

当麻「君たちの心に、愛と正義がある限り、いつか巡り合うことが出来るはずだ」

唯「愛と正義……」

当麻「そうだ。また出逢う時まで……とあぁーっ!」

 掛け声と共に剣狼を掲げ上条当麻は光りに包まれて消えた。

唯「行っちゃった……」

律「なんつーか……最初から最後までヒーローみたいな奴だったな」

海晴「うぅーん、ヒーローというよりも兄さん≠チて感じよね」
858 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/14(木) 12:01:57.67 ID:+MTRWc200

 激戦の翌日。ぐっすり眠った唯たちは再び作戦室に集められた。

シノン「予定通り、翌々日にホワイトベースは宇宙へ出発します。それまで各員は待機状態です」

紬「あの……よろしいですか……?」

シノン「何かしら?」

紬「私たちは、光子力研究所をドクター・ヘルに襲われて、ミネルバXを奪われています。一度、日本へ戻ってもよろしいでしょうか?」

シノン「そうね……確かに日本をそのままにしては不安が残るわね」

律「だけどよ、そうするとアタシら宇宙に行けなくなっちゃうぜ」

紬「それは心配いらないわ。自家用のHLVがあるから」

唯「さすがムギちゃん!」

澪「唯! 和はいいのか?」

唯「うん! 全然平気みたいだし、今は憂がついているもん」

澪「そうか……怪我とかしてないのか?」

唯「それも全然平気! 眠らされてただけみたい」

梓「よかったですね、唯先輩」

唯「うん!」

シノン「コホン、話を戻してもよろしいかしら?」

唯「あわわ、ごめんなさい。何の話だったんですか?」

澪「ムギが一度光子力研究所に戻ろうと言ったんだ」

唯「そっか、ドクター・ヘルに襲われちゃったんだもんね」

翠星石「それなら、翠星石たちだって研究所が気になるですよぅ」

真紅「結局、あの場に水銀燈が現れなかったから、余計にね」

蒼星石「ジュン君が心配ならそう言えばいいのに……」

雛苺「なのー」

金糸雀「かしらー」

ゆりえ「私は……宇宙に行くことも話しておいたから、大丈夫かな……」

夕映「私たちもこのまま宇宙に直行予定です」

シノン「あ、ゲッターチームは早乙女研究所から帰還命令が出ています」

ハルナ「え、そなの?」

シノン「はい。ですので、紬さんたちと一緒に日本へ戻ってください」

のどか「そういうことならしかたないねー……」

夕映「しかし、いったい何の理由なんでしょうか……」
859 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/14(木) 12:03:02.38 ID:+MTRWc200

シノン「モビルスーツ部隊、ドラグナー部隊はホワイトベースの乗員として宇宙に出てもらいます」

すずか「わかりました」

シノ「了解です」

アリア「宇宙に戻るの、久しぶりね」

スズ「そうですね」

アリサ「ということは、なのはも一緒ね」

なのは「うん」

アリサ「なのは……やっぱりあのフェイトとかいう子のこと、気にしてるの?」

なのは「ふぇ?」

アリサ「ふん、顔に書いてあるわよ」

なのは「うん……そうだね。まだちゃんと、お話聞けてないから……」

シノン「J9の皆さんは彼女たちについてはわかりますか?」

かがみ「いえ、あの女の子たちは私たちもまるで知らない子たちです」

こなた「そーもそもー、ジューエルシードのことだってはーつみみだもんにぇー」

つかさ「ゆきちゃんも知らないんだもんね」

みゆき「えぇ……お役に立てなくて申し訳ありません」

シノン「ミルキィホームズの皆さんも……」

シャロ「ぜんぜん知りません!」

エリー「いばれることじゃない〜……」

ネロ「第一、ボクたちの星はここからうーんとうーんと遠いところだもん!」

シノン「惑星ラテシアと宇宙海賊バンカー……J9はこちらの情報はいかがでしょう?」

かがみ「ラテシアはわかりませんが、バンカーについては、流れ者の噂を聞いたことがあります」

みゆき「狙った獲物は決して逃がさない。宇宙の果てまで追いかけて必ず捕まえるという恐ろしい組織で、一つの銀河団を制するほどの力を持っていると言われています」

コーデリア「わ、私たちはそんなのから狙われているの!?」

律「おいおいやめてくれよー……ただでさえ大変なときなのにそんなのに来られたら……」

澪「こらっ、律!」

ネロ「まー、仕方ないよ。ボクらは完全な漂流者みたいなもんだしね」

コーデリア「ひとまず、ここからアステロイドベルトへ戻り、そこから元の星に帰る準備をしたいと思います」
860 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/14(木) 12:03:33.23 ID:+MTRWc200

シノン「それが……少し難しそうなんです」

シャロ「えっ! 何で!?」

霙「今回の作戦失敗で、ジオン・ギガノス連合は地球制圧の機会を失ったから、これからは防衛対策を厳しくすることになるだろう」

エリー「ということは……」

シノン「地球圏から出ることはいかにダンガイオーというロボットでも至難でしょう」

ネロ「そんなー!」

かがみ「私たちも協力してあげたいけど……ジオンを正面から敵に回してしまうと、アジトのほうが不安になるから……」

シャロ「じゃあ、私たちは一生ここで過ごすの!?」

シノン「一生って訳じゃあないと思うけど……」

コーデリア「大丈夫よ、シャロ。どんなところでも、心を強くもっていればそこはおはなばたけぇ〜」

海晴「そんなアナタタチに魅力的な提案があるんだけどっ」

ネロ「へ? なに?」

シノン「正直、連邦はこれからジオン・ギガノスに対して大規模な反攻作戦を開始する予定なんですが、優秀な戦力はいくらあっても足らない状況です」

ネロ「ボクたちに協力しろってこと?」

霙「そのとおりだ。ま、速い話が、さっさとジオンを倒してしまえば安心して地球圏を出られるということだ」

ネロ「どーするぅ?」

シャロ「っていうかその方法しかないです!」

ネロ「だよねー。コーデリアとエリーは?」

エリー「わ、私もいいです……」

コーデリア「おはなばたけぇ〜」

ネロ「じゃ、オッケーです」

シノン「そ、そう……助かるわ。J9の皆さんは……」

かがみ「先ほど新しい依頼を受けたわ。ホワイトベース隊の一員としてギガノス帝国を倒してほしいとね」

シノン「それでは、お願いします。次はゴラオンとオーラバトラーですが……」

エレ「わたくしたちは、現状のまま、ドレイク軍を追討しようと思います。ですが……」

シノン「何でしょう?」

エレ「タマキ様とキリノ様の二人は、そちらで預かっていただいてもよろしいでしょうか?」

珠姫「エレ様!?」

シノン「それはこちらとしてもありがたいのですが……理由をうかがってもよろしいですか?」

エレ「あの黒いレプラカーンが気になるのです」

紀梨乃「黒騎士とかいうのが乗っていた奴だね?」

エレ「はい。あの禍々しいオーラ力は、聖戦士の二人には害悪となるでしょう。今はまだ戦ってはいけない……私はそう感じています」

珠姫「私が……オーラ力を上手に扱いきれてないから……」

チャム「タマキ! そんなことないよ!」

エレ「チャム・ファウの言うとおりです。タマキ様。ですが、万が一にも黒騎士のオーラ力に感化されてしまい、タマキ様がオーラ力に憎しみの力を込めてしまうと……とても恐ろしいことが起こってしまうかもしれないのです」

霙「なるほど、とどのつまりは、宇宙でゆっくりとオーラ力を開花させて、黒騎士に臨んでほしいということですね」

エレ「はい、その通りです」

珠姫「わかりました……川添珠姫、がんばります」

紀梨乃「うん、タマちゃん、その意気だよ」

チャム「タマキー、ファイトー、オーッ」
861 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/14(木) 12:04:03.24 ID:+MTRWc200

シノン「それでは、あらためて編成をまとめます」

霙「フッ、ちゃんとメモにまとめておいたほうがいいぞ」

立夏「オネーチャン、何言ってるの?」

霙「お約束だ」

シノン「宇宙に上がるホワイトベース隊はMS、MA、ライディーン、ダンガイオー、ブライガーに高町さん、川添さん、千葉さん。部隊長は天使海晴中尉です」

海晴「了解よん」

チャム「私もタマキと一緒に行くわよ!」

シノン「地球に残るのは光子力研究所、早乙女研究所、超電磁研究所の各チームにゴラオン艦隊です」

エレ「かしこまりました」

紬「安全が確認できれば、宇宙に上がります」

シノン「また、帰還組には、監督として天使霙少尉についていってもらいます」

霙「あぁ」

氷柱「それなら、私も家に帰ってユキの顔が見たいわ」

海晴「立夏ちゃんは私と一緒に宇宙でR−1の練習ね」

立夏「ハーイ!」

ヒカル「あの……私は……?」

海晴「実はね……ヒカルちゃんについてはママが迷ってるの」

ヒカル「ママが?」

海晴「うん。ヒカルちゃんにも専用機を用意したいらしいんだけど……宇宙戦闘のデータと地上戦闘のデータ。どっちも欲しいんだって」

ヒカル「それは確かに、どっちかしかないな」

海晴「だから、ヒカルちゃんが決めてって、ママの伝言」

ヒカル「わ、私が!?」

海晴「うん。地球に残るか、宇宙に上がるか……ヒカルちゃんの好きにしていいわ」

ヒカル「好きにしろって言われても……」

霙「フッ、出発まで二日はあるんだ。ゆっくり考えればいいさ」

ヒカル「うん……それでいいですか、香月中尉?」

シノン「えぇ、決まったら私に報せてね」

ヒカル「ありがとうございます」

シノン「それでは皆さん、まだ戦いは長く、これから険しいものとなります。ですが、全ての戦いに無意味なものはありません。私たちの平和を、暮らしを守るために、誰一人欠けることなく、戦争を終結へと導きましょう」


 第十九話 雷撃! 少女たちの防衛線 完

 第二部 激動乱! 地球戦線異常アリ! 完
862 :第一話は>>490から推敲されています。 [saga]:2011/04/14(木) 12:28:13.86 ID:+MTRWc200
第一話は>>490から推敲されています。

スパロボZU買ったので、集中して楽しむために一挙投下で第二部地上編を終わらせました。
全体的に駆け足気味でしたけど、読み返してみると逆にインパクトが出てよかったんじゃないかと勝手に思ってます。
なお、兄さんは完全なスポット参戦です。これからも出ることはまずないでしょう。
今作でとある系は出さないつもりでした。
超電磁砲しか知らないので、どうしようと思っていたんです。
ですが、第二期を見てピコーンと閃いて、そしたらもう止まらなくなって、やってしまいました。
反省はしています。あそこ、本来は立夏の出番でした。ごめん、立夏……

そして、重要なパーソンとして、ヒカルが宇宙に行くか、地上に行くか――
スパロボのお楽しみポイント、ルート分岐です。レスの数で決めます。
実際には、それぞれ一話ずつ消化した後に地上組みが宇宙に上がって合流します。
つまり、この選択は隠しユニットに関わります。これは一応、始めた頃から考えていたことです。
あと2,3回、このような分岐があるでしょう。

あらかじめ言っておきますが、ヒカルは既に専用機が決まっているので、隠し要素には関係ありません。

まあ、容易に想像できるとは思いますが、地上へ行けばスーパー系が、宇宙へ行けばリアル系の隠しユニットが手に入ります。
ただし、即入手というワケではありません。ユニットではなく、武器追加ということもありえます。また例外も多少あります。
そして、たとえどちらを選んだとしても、撃墜数を稼いでいけば特別に出現する可能性もあります。

また、スレタイを飾っている効果か、唯の人気が高いことは既に効果が出ています。

和ちゃん、参戦します。ミネルバXで。

これは直前まで本当に考えていませんでした。
ただ、人気が高いから唯を活躍させてあげたいなぁ、と思っていたら、和ちゃんがミネルバに乗せられていました。
まあ、助けたのは別の人ですが。

このスレは次スレを立てるまではこのままにしておきます。四月中にはたてるつもりです。
各種投票はHTML依頼を出すその時まで有効です。
運営様には、迷惑をおかけして申し訳ありません。

 それでは皆さん、今は現実に日本が大変な時ですが、頑張りましょう!

 とことで!


863 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/14(木) 20:27:22.54 ID:chcCTIPlo
乙!
当麻兄さんの出番もっと欲しいんだが・・・
それでヒカルは宇宙でらき☆すたチームに1票!
864 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/04/14(木) 21:09:49.32 ID:docEW8jAO
上条さんがロム兄さんに人格食われててワロタw
破界篇で近接選んだから地上で
865 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/04/15(金) 13:55:23.21 ID:1BzfhN3AO
宇宙だな。リアル系の後継機が見たい
そして夜間迷彩も見たいからタマちゃんに一票
866 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/04/16(土) 06:11:10.10 ID:ADLBQ+Yjo
宇宙で、ミルキィに一票
できればだれも死なないでスパイラルナックルがほしいところだが・・・
867 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/16(土) 10:34:41.05 ID:8OYcIbGDO
乙、上條さんはスパロボだとシナリオまでぶち殺してしまう(AB、ニュータイプ、魔装機、アインストその他諸々涙目)からな、
投票は宇宙ルートのSOS団で、
後そろそろユーノを喋らせてあげて。
868 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2011/04/19(火) 11:30:40.59 ID:GerJ2gV70

地上で

ところでこれは何の奴?

 テッテッテッテーステテテ テッテッテッテーレステテテ 
 テッテッテッテーステテテ テッテッテッテーレステテテ 
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 Every wahere you go! シーンジタコトヲ!
 ワスーレーズニィ! タチムーカーエェェェ!
869 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/04/19(火) 12:13:14.64 ID:zP79bIzho
乙ー
もちろんここは宇宙で

シノをシノを宜しくお願いします!


>>868
http://www.youtube.com/watch?v=zLhiBNAd2V0&playnext=1&list=PL82A2BC5C3FBACB20

『EVERYWHERE YOU GO』
ドラマCD『スーパーロボット大戦α ORIGINAL SCORE 2〜大地の章〜』R-1のテーマソング。
遠藤本人の楽曲。


らしい
870 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/19(火) 20:04:33.58 ID:83xHIqDDO
R-1って言うかリュウセイの曲、
無印α迄はオリジナル勢の曲にも歌詞があった、
微妙なやつが多かったがな。
871 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/25(月) 00:44:51.77 ID:baVHE26v0
良くも悪くもウィンキー時代って感じだったなあ<歌詞
あの頃のノリは今でも好きだけど思い出補正がでかすぎるのは否めない
872 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/04/25(月) 02:45:39.38 ID:fT3djhEAO
新スレ立てました
http://s.s2ch.net/test/-/ex14.vip2ch.com/news4ssnip/1303652569/

こちらは依頼を出しましたのでよろしくお願いします
873 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/04/25(月) 02:52:27.13 ID:JZFpj1eSo
>>872 は携帯用かな?

ブラウザは下のURLでいいはず
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1303652569/
1196.01 KB   
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