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浜面「俺は、どんな事してもお前を助けるって誓ったんだよ。インデックス」<br> - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/13(木) 08:22:48.00 ID:ffo/1SgAO
人の噂はなんとやら〜とはよく言ったもので、それは時にありえない程に大きく膨らむ。

都市伝説。それはあるかないかもわからないあやふやなものなのに、都市伝説というモノは確かにどこにでもあるもんだ。ここ、学園都市にしたってそれは例外じゃない。

巷で噂の能力のレベルを引き上げる詳細不明の能力増幅装置【幻想御手】
学園都市の裏の世界で暗躍する【謎の組織】
いきなり路上で脱ぎ出す女【脱ぎ女】
どんな能力も効かない能力を持つ【無能力者】
レベルに限らず能力を持つ者ならどんな者も無力化できる【謎の音響装置】
軍事目的に何万体も量産されたレベル5の【クローン人間】

そして、ああ、そうだ

禁書「ごはんたべさせてくれるとうれしいなぁ」

浜面「……はぁ?」

扉を開けるといきなり現れた【謎の銀髪シスター】なんていうのも、

浜面「はぁぁぁぁぁ!?」

新しい都市伝説に加えてもいいかもしれない。
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
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【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/

2 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/13(木) 08:24:48.72 ID:ffo/1SgAO
浜面「……ん?」

真夜中に声が聞こえた。

「ーー!!」

確かに聞こえる、自分を呼ぶ声。振り向き、探す。

浜面「……げっ」

そして後悔。

浜面「あー……この声は」

絹旗「やっと見つけましたよ浜面ぁ!超探したかいがありました!!」

浜面「テメェか絹旗ぁぁぁぁうぉう!!い、いきなり殴りかかってくんじゃねぇよ!!!」

絹旗最愛。常盤台中学に所属する大能力者の少女。浜面を執拗に付け狙っている、少し小柄な女の子。

浜面「っだー!!毎度毎度なんでテメェは一々俺に絡んでくるんだぁぁぁあ!?」

絹旗「私と超付き合って貰うためだからに決まってるでしょう!!」

3 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 08:26:11.84 ID:ffo/1SgAO
浜面「超語弊のある言い方してんじゃねぇぇぇぇなんでテメェの映画鑑賞に付き合わなきゃいけねぇんだよぉぉぉ!?」

絹旗「ハッ!私と映画館内で超意気投合してしまったのが運の尽きぃ!!」

浜面「うぉぉぉぉ!!!」

確かに、それは自分の今まで生きてきた中で人生最悪のミスで人生最愛のミスだったかも知れない。

だって自分は想像しなかった、映画館内で絡まれていた女子中学生を助けて、感謝されこそすれ、こんな風に日々付け回される事になるなんて微塵も想像していなかったから
4 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 08:26:45.01 ID:ffo/1SgAO
浜面「お、俺じゃなくて他の奴誘えばいいじゃねぇか!!」

絹旗「うッ……」ピタッ

浜面「映画見に行く友達くらい腐る程いるんじゃねぇのかよ!!」

絹旗「ぐぅっ……」グサッ

浜面「…………」

絹旗「…………」

浜面「あー……お前まさか、」

絹旗「……こ、」

浜面「友達いねぇの?」

絹旗「浜面コロスッ!」ダッ

浜面「うおおぁぁぁぁぁぁ!!す、すまん!今のは超悪かったぁぁぁ!!」

絹旗「う、うるさぁぁぁぁい!!」

真夜中深夜。学園都市のど真ん中での2人の掛け合いは続く。

かのように見えた。
5 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 08:27:44.24 ID:ffo/1SgAO

絹旗「ひゃあっ!!」

轟音。耳を貫く強烈な雷鳴が学園都市を襲う。

浜面「な、なんだぁ!?」

絹旗「ひゃああああああ!!」

雷はその後数十秒続き、静寂。

浜面「…………」

絹旗「…………」

それをぶち壊したのは、

絹旗「超捕まえました」グイッ

浜面「げッ……」

絹旗「今日もちょっと付き合って貰いたい映画があるんです」

満面の笑みを浮かべる絹旗。どうやら先程禁句らしい言葉に触れた事はなかった事になったらしい

浜面「はぁ……出来れば短いの頼むわ。俺、明日も早いんだよ」
6 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 08:29:06.36 ID:ffo/1SgAO
絹旗「ちゃんと朝までには帰しますよ」

浜面「はぁ……」

どうやら朝まで帰してくれそうにないらしい。

絹旗「あ、そういや浜面」

浜面「あぁ?」

絹旗「どうやったのか知りませんが最近常盤台の超電磁砲とよく一緒にいるらしいですね。超噂になってますが」

浜面「なぁんで無能力者の俺がレベル5の超能力者様と関わり持てんだよ。俺といんのは妹の方だ」

絹旗「妹……?はぁ、なるほど」

興味なさげに相槌を打ち、そのうちによく回る舌で映画の話をし始める絹旗。

楽しそうに話してはいるが、どれもこれも浜面にはよくわからない単語ばかりだった。

浜面「はぁ……」

真夜中深夜、浜面と絹旗は歩く。

静かすぎる学園都市を

無防備となった学園都市を

本来いるべきではないモノが入り込んだ学園都市を、

2人で

7 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 08:31:01.64 ID:ffo/1SgAO
―1―

それは朝の出来事だ。

浜面「え、は?」

浜面「……は?」

禁書「あれ、通じてない?日本の人だよね?」

浜面「お、おお……」

なんなんだろう、と浜面は働かない頭を使い考える。


結局、絹旗に付き合わされた映画鑑賞は朝まで行われ、帰ってこれたのはついさっき。

部屋に入ると付けっぱなしだったパソコンやら電化製品やらは止まっていた。昨日の落雷が原因だろう。まぁそれはいい。

そのお陰で蒸し風呂と化していた部屋の空気を入れ替えよう、そう思い窓の扉を開けた。そうだ、すると――

禁書「ねぇ、きいてる?私の声届いてるのかな?」

浜面(布団じゃねぇよな……どうみても)

白い女の子が引っかかっていた。

浜面(なんだこいつ……シスターさん?)
8 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 08:32:08.91 ID:ffo/1SgAO
禁書「こんなかわいい女の子が今にも飢え死にしそうで苦しんでいるのになんなのかなその顔は」

浜面「いやいやいやよく考えなくても、ってそもそもなんで女の子がベランダで行き倒れてんだよ!!」

禁書「それはおいおい話すとしてまずはおいしいごはんを食べさせて欲しいかも」

浜面「夏は変なのがよく湧くがお前も脳内お花畑かちんちくりんシスター」

禁書「ごーはーんーっ!」

浜面「だーっ!!朝からうるせぇー!!」

禁書「」ムッ

浜面「あぁ!?」
9 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 08:32:39.91 ID:ffo/1SgAO

浜面「…………」

禁書「…………」グギュ~グルルグルルルリル

浜面「…………」

禁書「…………」グギュ~グルルグルルルリルギュルルルルルグルグル

浜面「…………」

浜面「はぁ……わかったよ。ほら、はいれ」

とは言ったが食わすつもりは毛頭無し。このシスターにはどこか遠いところで幸せになってもらおう。そう思い浜面は目の前に干されたシスターに手を伸ばす。

そのときだった。

禁書「あっ」ズルッ

浜面「ばッ!!」

禁書「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

落ちた。
10 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 08:33:18.93 ID:ffo/1SgAO
浜面(うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?)

あまりに唐突な事で体が動かない。理解出来たのは本当に少女が遠いところへいってしまったという事実、それと

ドサッ

なにか、重い物が落ちたような音。

浜面(嘘だろ……)

浜面(これ、もしかして俺のせいか……?)

浜面「…………」

この高さだ、きっと助かりはしない。そして原因は多分きっと自分の過失になる。あの少女と一緒に自分の無様で惨めな人生の幕も今日で降りるのだろう。

浜面「……不幸だ」

そう思った。この時は

11 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 08:39:10.65 ID:ffo/1SgAO
どうも。浜面禁書のお話になります。
時系列はかなりいじって一部の設定に俺理論混じってますが基本的に浜面禁書なスタイルです。多分

地の文慣れてないんで見苦しいとこあるかもしれないですけど。読んでくれたら嬉しいっす。

では、長い(お話の)付き合いになるかもしれませんがよろしくお願いします。
12 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 08:43:44.40 ID:ohzY4twKo

インデックスさんがヒロインと考えて良いのかな?
だとしたら期待するぜ
13 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 08:45:43.21 ID:U/1ffc190
乙!

最近浜面のSSが少なくて寂しかったんだよ。
14 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 09:14:27.64 ID:xHisjJRy0
<br>があるってことはもしかして…?
15 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 11:41:23.41 ID:+jhM+JZDo
改行がしたかったんだろ
16 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 11:47:46.09 ID:qng+MaHDO
スレタイに改行、これで人来ると思ってるやつは(ryのコピペ思い出した
17 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 11:48:20.59 ID:UzgJCCPVo
竜王の殺息を歩く協会で防ぐとかありませんように†o(・・;) アーメン
18 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 12:07:51.70 ID:Jh4l/gGs0
>>17
木原くンディスってんじゃねーぞ
19 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/13(木) 15:47:06.48 ID:ffo/1SgAO
浜面「…………」

ガツガツガツムシャムシャパクパク

浜面「……ありえねぇ」

ガツガツムシャムシャゴクリッ

禁書「ぷはぁ〜おいしくはなかったけどなかなか満足出来たんだよ」

浜面(いや、つかなんで生きてんの?普通死ぬよな?なんで生きてんの?死ぬの?)

冷蔵庫の中身がほぼ空になるまで食べられたにも関わらず、浜面にはそれを突っ込む余裕すらなかった。

浜面(た、確かに落ちたよな……)

白い少女が生きていた。それに驚いたのは、眠気も飛び、全速力で一階まで駆け降り、少女を見つけた浜面だ。

20 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 15:48:43.92 ID:ffo/1SgAO

そして何もなかったようにその少女は浜面を見つめ、

禁書「おなかすいた」

と、そう言い放った。

浜面「なっ……はぁ?」

辺りを見渡したが、クッションになるようなものは何もなくい。

足元に広がっていたのはアスファルトではなく土、だが足から伝わる感触からして、少なくとも高所から落下して平気でいれるような柔らかさではない。

それに、

浜面「……マジかよ」

立ち上がりぱっぱと土汚れを払う少女が立つすぐそばには、何かが落下した跡がはっきりと残っていた。
21 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 15:50:01.04 ID:ffo/1SgAO
浜面「はぁ……」

浜面(もしかしたらすげぇ面倒な事に巻き込まれたんじゃないか俺)

今更ながら浜面は何か満たされた表情をしている白い少女を見て直感的にそう思う。

禁書「まずは自己紹介しなきゃだね」

そして、彼の直感は当たっていたわけだが、今はそんな事を知る由もない。

禁書「私の名前はね、インデックスっていうんだよ」

浜面「…………」

浜面(嘘くせぇ。なにインデックスって。目次?)

禁書「……そこはかとなく疑ってるね?」

浜面「いや、まぁ外人さんみたいだし、うーん……そんな名前もあるんだろ」

浜面「で、なんでお前は――」

浜面「…………」

禁書「……?」

言葉に詰まる。浜面にはこの得体の知れない、インデックスと名乗った少女に何を聞けばいいのか分からなかった。

どうしてベランダから落ちたのに生きていたのか?

どうしてベランダにひっかかっていたのか?

浜面「……うーん」

禁書「……?」
22 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 15:50:32.25 ID:ffo/1SgAO
浜面「…………」

禁書「むー……」

禁書「ねぇ、とりあえずあなたの名前を教えて欲しいかも」

浜面「あ、あぁ、名前?……浜面だ。浜面仕上」

禁書「はまづら……しあげ?なんだか変な名前だね」

浜面「目次にいわれたくねぇよ」

むう、と。そう頬を膨らましインデックスと名乗った少女は浜面をジト目で見つめる。

その姿にどこも怪我をしているようには見えないし、ましてや怪我を隠して無理をしている風にも見えない。

本当に、無傷。

23 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 15:52:05.06 ID:ffo/1SgAO
浜面「なぁ……お前なんで無事だったんだ?」

禁書「えっ?」

浜面「落ちただろが。ベランダから」

結局、浜面がまず聞いたのはその疑問。本当に少女が無事なのか、無理をしていないか。

いくら元気に冷蔵庫の中身を食べきるその様を見ても、無傷だというのはやはり信じられなかった。

禁書「ん、それはこれのおかげなんだよ」

浜面「……どれだ?」

禁書「こ〜れ!!この服!!」

禁書「これは歩く教会って言ってね?教会における必要最低限の機能を抽出した『服の形をした教会』で極上の防御結界なんだよ!」

浜面「……は?えー……え?」
禁書「完璧に計算しつくされた刺繍や縫い方は魔術的意味を持ち、その結界の防御力は法王級!
トリノ聖骸布を正確にコピーした物で、その強度は絶対であり
物理 魔術を問わず一つの例外もなくどんな効果でも受け流して吸収しちゃうというすごい霊装なんだから!それに」

浜面「あ〜〜っ!!わかったっ!わかったって!要はその服のおかげなんだろ?」
24 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 15:53:26.31 ID:ffo/1SgAO
禁書「ほんとにわかったのかな?」

浜面「わかった……いや、やっぱよくわかんねぇ」

浜面は無能力者と言えど仮にも学園都市の住人だ。当然ながらこの街の"ありえなさそう"な技術にも多少は精通している。

しかし、その自分にも一枚の布だけで高所の落下からの衝撃を全て打ち消すなどという魔法のような技術の存在は、知らない。

知らないが、

浜面「でもよ、その服がどういう理屈で出来てんのかはさっぱりだけど、ベランダから落ちたのに無事だったってのはマジなんだ。信じるさ」

禁書「むう……それはいいけど、はまづらはやっぱり何もわかってないかも」

浜面「あぁ、それとよ、なんでお前ベランダに干されてたんだ?」

禁書「ついでみたいにいうんだね」

禁書「本当は屋上から屋上に飛び移ろうとしたんだよ。でも、失敗しちゃって」

浜面「はぁぁぁぁぁ!?」

禁書「うわっ!びっくりしたんだよ。急に叫ばないでくれるかな?」

浜面「いや、つか、なんでんな危ない遊びやってんだよ!死んだら――」

そこまで言って、この少女には言う必要のない言葉だという事を思いだす。

なんせ目の前で落ちても死ななかったのだから。
25 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 15:54:36.11 ID:ffo/1SgAO
禁書「大丈夫。それに、追われてたからね」

浜面「……!!」

スキルアウト。浜面が真っ先に思い浮かんだのは自身も属する荒くれ者の集団、路地裏の支配者。

浜面(……ないか。ここら辺のスキルアウトは駒場さんが仕切ってるし、んなことさせる奴じゃねぇ)

浜面「……誰に追われてたんだ?」

禁書「魔術結社。魔術師でもいいかも」

浜面「…………」

浜面「……ごめん、なんだって?」

禁書「……?マジックだよ。マジックキャバル」

浜面「あー……?」

禁書「俗にいう魔法使いだね」
浜面「……つまりお前も?」

禁書「魔法使いだね」

浜面「…………」

26 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 15:56:21.51 ID:DlpMDB4DO
お前か
期待してるよ
前スレは最高だった
27 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 15:58:24.93 ID:ffo/1SgAO
>>14
改行したかったわけじゃないよ(^O^)/

>>17
その予定だったんだけどね。木原君スレで被った時は本気でびびった。なんか他のも被りそうで怖いから急ぎで書いてる
28 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 18:58:49.22 ID:wTqBGUUDo
面白そうだ
29 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 19:13:59.20 ID:ufu2ldsAO
麦のんを出してくれるなら完結まで全力で支援する
30 :真・スレッドムーバー :移転
この度この板に移転することになりますた。よろしくおながいします。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 22:22:22.46 ID:1M8k/lOAO
わほーい無事に飛んだ?

まだまだ序の序盤ですけどよろしくすー

32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/13(木) 23:55:21.56 ID:1M8k/lOAO

――んなバカな。とは言えない。浜面は見たのだ。自分の目で、魔法のような現実を。

浜面「……じゃあ、その服も」

禁書「むう。やっぱりわかってないんだよ。さっきも言った通りこれは歩く教会っていう防御結界で――」

浜面「ストップストップ!!それはいい!もういいって!」

禁書「ダメなんだよ!見ての通り私はシスターさんなんだから迷える子羊はちゃんと正しい生き方に導いてあげないと!」

浜面「だぁぁぁぁぁぁさりげなく俺の人生否定してんじゃねぇぇぇ!!」

禁書「む?じゃあ君はちゃんと真面目に生活しているのかな?世間一般じゃ確かもう学校とかいうものが始まっている時間みたいだし、なにより……」

浜面「ぐっ、確かに補習はサボっちまったが……なにより、なんだよ」

禁書「なによりすごく悪人面かも」

浜面「うるせぇぇぇぇ!悪人面で悪かったな!!生まれつきこんな顔なんだよ!!」

禁書「はまづらじゃなくてあくにんづらの方がしっくりくるね。言いにくいからわるづら?」

浜面「くだらねぇ事言って……!!ああ、もういいや、なんか疲れた」
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/13(木) 23:56:47.71 ID:1M8k/lOAO
浜面「わかった。わかったよ。まだ半信半疑だけど……とりあえずお前は魔法使いで」

禁書「正確には魔術師なんだよ。魔法名はdedicatus545だね」

浜面「あーはいはい。魔術師で……」

浜面「あれ、なんでお前は同じ魔術師に追われてんだよ」

禁書「うん、多分私の持ってる10万3千冊の魔導書が狙いなんだと思う」

浜面「10ま……え?何が何冊?」
禁書「10万3千冊の魔導書……む、何かな?その何言ってんだこいつ〜みたいな顔」

浜面「何言ってんだお前」

禁書「あ〜!!口にだしたね!?本当だもん!ちゃんと持ってきてるんだから!!」

浜面「あ〜はいはい。で、結局なんで追われてたんだよ」

禁書「む〜〜〜!!」

浜面「え、何?何で歯ぎしりして今にも噛みつきそうな勢」

禁書「」ガブ!!

浜面「いってぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/13(木) 23:57:27.77 ID:1M8k/lOAO
浜面「いてぇ」

禁書「自業自得なんだよ」

浜面(理不尽だ……)

浜面「くっそ、腕に噛み跡が……なんか指先もヒリヒリするしよ。ったく」

禁書「自業自得なんだよ」

浜面「それはさっき聞いたっつうの」

禁書「ふんっ」

浜面「はぁぁぁぁ……で、どこにあるんだよその10万何千の本は」

禁書「だからちゃんと持ってきてるの!」

浜面「はぁ……?」

どうやらそれ以上話す気はないらしい。インデックスはぷいっと顔を背け浜面の方をみようとはしなかった。

35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 23:57:58.77 ID:1M8k/lOAO
浜面「……はぁ」

まぁいいか、10万3000冊の本なんて持ち歩けるわけないのだ。そう思い、浜面はまた別の疑問をインデックスに振る。

浜面「なぁ、とりあえずさ、これからどうすんだよお前」

禁書「えっ?」

浜面「よく分かんねえけど追われてんだろ?なんならここにいてもいいけど……」

そこまで言い掛け浜面は今自分が言った言葉を反芻、吟味し、

浜面(……はぁ、すっかり巻き込まれる気マンマンじゃねぇか、俺)

自分がどれだけお人好しな発言をしたか再確認し、言い掛けた言葉の続きを

浜面「――ッ」

言えなかった。

36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 00:00:56.48 ID:XFpD83OAO
禁書「…………」

それは、少女があまりにもぽかんと、何を言ってるのか理解出来ないと言う目でこちらを見つめ、

禁書「……ううん。遠慮しとくんだよ」

理解出来たかと思えば顔を伏せ、消え入るような声でそう呟いたから。

浜面「……あ」

浜面「いやいやいや!だって危険なんだろ!?現にお前屋上から落ちそうな羽目になったじゃ……」

浜面「……いや、落ちたけどよ」

そんな奴を目の前で――と、そこまで言って、インデックスはやはりその言葉にも首を振った。

37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 00:01:35.79 ID:XFpD83OAO
浜面「なんでだよ」

禁書「巻き込みたくないの」

浜面「いや、だからって……」

禁書「いいんだよ」

そう言ってインデックスは立ち上がり玄関に向かう、浜面はその後を追い、インデックスがドアを開け出て行こうとするのを見ている事しか出来なかった。

禁書「私のせいで誰かが傷つくのも嫌だし、それにきっと迷惑がかかるんだよ」

浜面「…………」

禁書「じゃあね、ごはんおいしかった!」

浜面「……お前うまくなかったっつってたろ」

禁書「う……そ、それでもお腹は膨れたんだよ!」ギュルルルルルグルグル

浜面「…………」

禁書「……う」

38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 00:03:26.86 ID:XFpD83OAO
浜面「お前さぁ、やっぱここにいろよ」

つい、その言葉が出たのはきっと何かきっかけが欲しかったのだろう。

何かが変わるきっかけを

禁書「……ダメだよ。きっと巻き込むだけじゃすまなくなる」

浜面「もう巻き込んでんだろ。冷蔵庫全部空っぽにしやがって」

禁書「……あはは」

インデックスが笑う。

浜面「ははっ」

浜面も笑う。

そしてインデックスはこう言った。

禁書「なら私と一緒に地獄の底までついてきてくれる?」

浜面「――ッ」

とても笑みとは言えないような笑みを浮かべ、そう言った。

玉になった汗が頬に伝う。浜面は言葉を発する事が出来なかった。

さっきまでは、巻き込まれるつもりだった。何かが変われるかもしれないと、軽い気持ちで。それをインデックスは優しい言葉に包んで浜面にこう言ったのだ。

こっちにくんな。

迷惑だ。
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/14(金) 00:04:26.12 ID:XFpD83OAO
浜面「…………」

禁書「……やっぱり遠慮しとく」

浜面「いや、あ……」

何か言おう。咄嗟にそう思う。何か言って、この子を引き止めなければ――

浜面「おい――」

口を開いた時、そこにはもうインデックスはいなかった。

浜面「…………」

目の前で開かれたドアはゆっくりと閉まる。

ガチャリと

それは浜面が経験したほんの少しの非現実が終わりを告げた音にも聞こえた。
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 00:06:06.45 ID:XFpD83OAO
書いてきまー
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 00:24:46.90 ID:AwVFqTfDO
一旦おつ
正座して待ってるぜ
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/14(金) 00:37:29.25 ID:HIya+4pDO
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 00:38:56.72 ID:7sZZRDVio
お?前作面白かったから今作も期待
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 09:48:48.80 ID:buB/oZCro
前作についてkwwsk
おもしろい
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/14(金) 09:55:22.66 ID:XFpD83OAO
浜面「はぁ……」

ベッドに寝転がり、考える。インデックスという少女の事を、彼女はこれからどうするのだろう、どうなるのだろう。そんな事ばかりが頭に浮かぶ。

浜面「腹減ったらどうすんだよ……」

浜面「…………」

浜面「魔術、か」

プルルル

考えようとした途端に携帯がなった。部屋に鳴り響く音が浜面の思考を阻害する。

どうせ、考えても纏められない事だけど。

浜面「もしもしぃ」

半蔵「よぉ浜面!お寝坊さんかよ。高校生なんだからそろそろ自分で起きれるようになんないと」

浜面「寝てねえっつの……って、げ。もうこんな時間かよ!?」

半蔵「ゴホン。ちょっと朝の処理が長いんじゃないのかね浜面く」

浜面「っな、ばーか!すまん、すぐ行く」

半蔵「おう。あー、そうだ。昨日の夜アジトにイタズラされちまったみたいでさー」

浜面「はぁ?イタズラ……?」

半蔵「いや、まぁあとで話せばいいか。とりあえずさっさと来いよ」

服部半蔵。

浜面と共にスキルアウトに所属しているその少年からの電話で、自分がどれだけあの少女と接していたか自覚する。
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 09:57:43.02 ID:XFpD83OAO
浜面「…………」

考えても仕方のない事を考える。多分あの少女と自分はもうどんな関わりも持つ事はないだろう。

ただ、考えてしまう。

あの時、インデックスが出て行く時に、彼女の手を掴んでいたらどうなったんだろう、と。

何かが変わったのだろうか。

浜面「……行くか」

しかしそれももう叶わない話だ。現実、浜面はインデックスが出て行く時に見ている事しか出来なかったし、本気で止めるような事もしなかった。

47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 09:58:57.58 ID:XFpD83OAO
結局は、彼女の言った言葉に気圧され、彼女に巻き込まれる事を良しとしなかったのだ。

それに、何かをしようとしても、

浜面「無能力者の俺が出来る事なんて、何もねぇよな……」

そう、結局は何も変わらない。

無能力者の自分には、誰かを助けてあげられる力なんてないのだから。

浜面「…………」

無理やりにでもそう思い、浜面は先ほどの少女を頭の隅に追いやった。

浜面「あー……そうだ。パソコン」

タンタン

浜面「…………」

タンタン

浜面「つかねぇ……あーくそっ、やっぱ昨日の雷か」

浜面「ちくしょう、やり直しかよ……」

あまりゆっくりしている余裕は……まぁあるだろうが半蔵達に悪いだろう。昨夜まで作業中だったパソコンの事は諦め、手近にあった携帯と音楽プレイヤーをもって浜面は家を出る。

インデックスの事を頭の隅に残したまま、彼は仲間の元へと駆けていく。

48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/14(金) 10:05:10.54 ID:XFpD83OAO
―2―

昨夜の落雷で起きた大規模停電はさり気なくこの街にかなりの被害をもたしていたらしい。

浜面がそれを知ったのは学園都市空中に常時浮かんでいる情報中継点となる飛行船からだ。

それによるとセキリュティシステムや都市機能の一部、果ては学校の端末までダウンしており復旧には時間がかかる。

――と、個人的にはあまり興味のないニュースは存外、街に住む学生の話題を集めているようで。

浜面「っと……明日は雨か」

飛行船を見上げそう呟く。予報とは名ばかりの天気予知によれば明日の夕方からは雨が降る。

浜面「まぁ出かける予定なんてないけど……ん?」

誰かに呼ばれた。

真夜中のような事を想像するが、その可能性は排除。流石に彼女も付き合った翌朝から自分を追い掛ける程暇な生活は送っていまい。

「――、――は」

それにこの抑揚のない声は聞き覚えがある。

浜面「っと、やっぱお前かよ。声かける時はもうちょっとでかい声で頼むわ」

ミサカ「申し訳ありません。とミサカは懇切丁寧に謝ります」

その華奢な体に似合わない無骨なゴーグルを装備し、自分の事ををミサカと呼んだ少女は抑揚のない、無表情な声でそう言った。
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/14(金) 21:21:06.50 ID:XFpD83OAO
常盤台。

誰が聞いてもそれがどういう所か答えらる知名度100%のお嬢様校。

その制服に身を包んだ少女と、どこからどうみても不良にしか見えない少年が会話している姿は他人から見たら違和感を拭えないだろう。

ミサカ「お元気ですか。と、ミサカはあなたに問いかけます」

浜面「え?おぉ、俺は元気だけど……」

ミサカ「…………」

浜面「……?」

ミサカ「…………」

浜面「……あぁ、猫か」

ミサカ「はい」

猫。そう、スキルアウトの浜面と常盤台の少女。出会いは一匹の猫だった。

浜面が住む寮の前に居着いた猫に、通りがかった少女が餌をやろうかどうか迷っている所を――などという、単にそれだけの話なのだが。
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/14(金) 21:21:38.45 ID:XFpD83OAO
浜面「そういや今日は見てない……か?」

ミサカ「…………」

浜面「あー……すまん。帰ったの朝方だったから確認してねぇや」

ミサカ「ならばミサカが確認するほかありませんね。とミサカは実験の後処理を他のミサカに任せて寮に向かう事にしましょう」

浜面「他の……?っつうか街中で会うのは初めてか。何やってんだ?」

ミサカ「ミサカ達が行っているのは機密行為ですのでお教えする事は出来かねます。とミサカは仄かに匂わせつつ質問にお答えします」

浜面「あー……常盤台だもんな。色々あんのか」

ミサカ「えぇ、では」
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 21:22:12.37 ID:XFpD83OAO
そう言ってミサカは足早に浜面が来た道を歩いて行った。

浜面「…………」

ミサカ。浜面があの少女に名前を聞いた時に教えられた言葉。たったの三文字。その後ろに何故か数字のような言葉を聞いた気がするが、はっきりと覚えてはいない。

ミサカ。聞き覚えがない訳ではない。御坂美琴。常盤台の超電磁砲と言えばその名は有名だ。

浜面(妹って聞いた時は驚いたよなぁ……)

妹。ミサカはあの御坂美琴の妹らしい。本当かどうかは怪しいところだったが、絹旗が言っていた通りの噂があるのなら、あの子は本当に妹なのだろう。

ただ、気になるといえば少し気に点もある。

学校に行っている様子がない事や、あの軍用ゴーグル。それに……

浜面「動物が好き……なのは別に普通か」

52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 21:23:41.65 ID:XFpD83OAO
浜面「猫の面倒はアイツが見てるようなもんだしな」

ある程度の付き合いがあるにもかかわらず、浜面がミサカという少女について知っている事は少ない。

常盤台に所属していて、御坂美琴の妹、謎が多く動物好き。その程度。

それにはやはり浜面自身が壁を感じてしまっている事が理由でもあった。

スキルアウトで無能力者の自分と、超能力者の妹であり常盤台の能力者。その壁を。

浜面(馬鹿らしい。現に絹旗とはバッチリ馬が合っているじゃねぇか)。

壁を感じようとする暇がないと言った方がこの場合は正しいが。

自分次第。それはわかっているのだ。ただ、冷静に目を凝らすとその壁は浜面の前に高く高く、常にそびえ立っている。

浜面「……くそ」

浜面には、その壁を越えていける気がしない。
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 21:25:01.84 ID:XFpD83OAO
地、地の文って難しい……( ^O^)

書いてきま。
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/15(土) 00:03:30.90 ID:Ck0222Aqo
舞ってる

前作は
上条「あれ、一方通行?」<br>
ですたい
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/15(土) 09:48:11.46 ID:uMy7Kt6bo
>>54
ありがとう、読んできた
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/15(土) 19:24:29.60 ID:EREalo2AO
少年漫画とかだと大抵悪役や不良の溜まり場というのは路地裏の奥にある暗い倉庫、と相場が決まっている。
外より何十年も科学技術が進んだ学園都市といえどもそこは変わりないようだ。

浜面は今自分達がアジトに使っている路地裏奥の廃工場にいた。

半蔵「よぉ、浜面。ちょっち遅くね?」

浜面「すまん。来るときに知り合いがいてさ」

半蔵「ん、まぁいいさ。駒場のリーダーが待ってる。行こうぜ」

浜面「おぉ」

浜面「…………」

昔は鉄鋼関連の製粉工場だったらしいそこは、あちこちの柱や階段が錆び付いてはいるが、中がとにかく入り組んでいて、そして広い。

名残となっている機材や、材料が多く残っているため少し狭く感じるが、それでも自分達が根城に使うには丁度いい居場所だった。

半蔵「そういや浜面。お前の部屋に運んだ試作の試作品はどうなったよ」

浜面「アホか。どうもこうもあんなん使い道ねぇよ。ったくどうでもいいもん運びこみやがって」

半蔵「カカッ、じゃんけんで負けたお前が悪いんだって。引き取り手がいないとまずいんだからさー。まぁしっかり管理してくれ」

浜面「へいへー。貧乏くじ引いちまったわ」
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/15(土) 19:26:09.61 ID:EREalo2AO
半蔵「なぁ、浜面。結局、あの作戦はどうなるんだろうな」

浜面「ん?あぁ……報復、か」

現在、リーダー駒場利徳率いる第七学区のスキルアウトはその総力を挙げて以前からとある計画を準備していた。

細かく見ていけばそこまで大規模な計画でもない。むしろ小規模と呼ぶのにも値せず、悪戯レベルだとも言えるだろう。

少量の火薬を使い、何ヶ所かで小火騒ぎを起こすだけだ。

ただし、事前に設置した、非常時に機械がエラーと判断する悪戯という名の『爆弾』二万件と同時に。

それによって通信網の中継局サーバーをダウンさせるのがこの計画の一つの狙い、なのだが

浜面「昨日の落雷で学園都市の機能ほぼ麻痺してんじゃねーの?」

半蔵「だよなー!っつってもやっぱダメージ受けてんのは一部みたいだわ。普通にアンチスキルいたし」

浜面「じゃあ追い討ちって形になんのか」

半蔵「だな」

もう一つの狙いは、能力者への報復。
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/15(土) 19:26:48.74 ID:EREalo2AO
スキルアウト。世間一般から見ればそれは無能力者の武装集団だ。あくまで世間一般からみれば、だが。

イメージだけが先行してそう思われがちだがスキルアウトとして自分達がスキルアウトとはなんなのか、と聞かれるとそれはまた違う答えになる。

駒場「俺達は元々、強者から一方的に攻撃されるのを恐れて組織された無能力者の集団だ……」

リーダーの駒場利徳はそう言う。今回の計画のターゲットはその強者。

無差別に無能力達を襲って自分達を能力の捌け口にしているクズな能力者達への報復だった。

59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/15(土) 19:27:16.90 ID:EREalo2AO
半蔵「っつーこたぁよ、駒場のリーダー。計画は予定通り行うって事でいいんだな?」

駒場「……ああ」

コピー用紙を吐き出すようにそう返事をした大男は、その手に持つ演算銃器<スマートウェポン>に意識を戻した。

半蔵「え、つかリーダーの持ってるその武器って噂のトンデモ兵器じゃね?」

駒場「……あぁ、あのMARからの置き土産だ……」

半蔵「はぁーいいよなー。後で俺にも触らせてくれよ。めっちゃ改造しようぜ!超電磁砲みたいなの撃てるくらいにさー!」

浜面「お前三点バーストのマグナム作って撃てなかった事忘れてんだろ」
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/15(土) 19:27:53.52 ID:EREalo2AO
浜面「んで駒場。その計画はいつ実行に移すんだよ」

駒場「……一週間前後だと考えている。そのぐらい経つ頃には今の学園都市の機能も少しは回復しているだろう……追い討つならその隙だ」

駒場「……第一発火地点は、分かるな?」

浜面「……ああ」

能力者への報復。駒場にとってはそれは弱者を守るため、自分達無能力者が安全に暮らしていくため。そのための計画なのだろう。

駒場はその外見からは想像も出来ない程の優しい心の持ち主だ。

そんな陳腐な言葉で表現出来てしまうほどの心を、駒場は持っている。

だからスキルアウトなんていう荒くれ者をまとめられるし、人が着いてくるし、こんな規模の計画を実行に移す事もできる。誰かの為に。他人の為に。
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/15(土) 19:28:51.26 ID:EREalo2AO
浜面「俺は……」

対して自分はどうだろう。浜面がこの計画に参加したのは、駒場利徳に着いていったというのが表向きだが、実際はただの憂さ晴らし、八つ当たりに近い

能力を振るいそれが存在意義だと当然のように言い張る能力者達への、制裁。

自分達は無価値だとレッテルを貼るクズ達への、報復。

その権利は当然自分にある。

だって自分は無能力者で、奴らは能力者なのだから。

浜面「…………」

浜面(……ハハッ、こんなんじゃ、確かに女の子一人も助けられねぇわけだ)

62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/15(土) 19:30:52.94 ID:EREalo2AO
今朝、インデックスを引き止める事すら出来なかったた自分を思い出す。

今の自分は誰かを偉そうにクズ呼ばわり出来る人間じゃなかった。

能力者共が無能力者を貶めるクズなら、自分は小さな女の子一人助けようとしないクズだ。

人としてもっともなりたくないクズに、浜面はなっていた。

もう一度あの場にいたらと、そう思う。

浜面「…………」

例えありえない事だとしても、それぐらいの幻想は抱きたかった。

半蔵「浜面ー?おっかない顔してんじゃねーぞおい」

浜面「ん、ああ……」

半蔵「着いてこいよ。さっき言ってたの見せてやる」

浜面「さっき……?」

半蔵「イタズラ、だよ」
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/15(土) 19:32:09.14 ID:EREalo2AO
半蔵「そういやお前さー」

浜面「んー?」

半蔵「補習とか行ってる?」

浜面「アホか。いくわけねぇだろ」

半蔵「だよな」

浜面「え、お前まさか行ってんの?」

半蔵「おう。今日の朝行ってきた」

浜面「つーことはサボったんだな」

半蔵「いやー何やるかと思って行ってみたら無能力者対象の初期開発でさー」

浜面「……あぁ!俺達が一番始めにやった奴」

半蔵「そうそう。暗示かけて電気通して薬投与する初期開発。あれで受けて能力に目覚めるかどうか決まるんだっけ。2回目とか意味ねーよな」

浜面「多分それ3〜4日後うちの学校もやるっぽい。昨日ロリ先生から電話かかってきたし」

半蔵「行く?」

浜面「ばーか」

半蔵「…………」

浜面「…………」

浜面「で、なんだよこれ」

半蔵「イタズラ」

浜面「…………」

足元が白い紙で埋め尽くされていた。足元だけではない。遠くに見える壁。15メートル程の高さがある天井にも、メモサイズの紙が何枚、何百枚、何千枚も貼られてある。

浜面「いや、イタズラってレベルじゃねぇだろ!!昨日はなかったじゃねぇか」

64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/15(土) 19:33:44.72 ID:EREalo2AO
半蔵「どうやって貼ったんだ?天井とかよ。あの高さから落ちたらギリギリ死ぬか助かるかどっちかじゃね?」

半蔵が足元に貼ってあった紙の一枚を剥がす。

半蔵「それになんだろうな、このマーク」

そう言って浜面に手渡した。

浜面「…………」

紙の中心に文字のようなマークが書かれてある。おそらくの水性ペンでかかれたのだろう。

よく見れば床や壁に貼られた紙一枚一枚に同じようなマークが書かれていた。

浜面「…………」

半蔵「それなんっかに似てるよな。ほら、あれだよ。あー……ゲームとかに出てくるさ」

魔法の呪文。

浜面「――――」

頭の隅に追いやったばかりの少女との事が蘇る。

床、壁、天井。一晩のうちに四方に貼られていた呪文のようなものが書かれた何千枚、もしかしたら何万もの紙。

浜面「……ありえねぇ」

ありえない事は、今日2度目だ。
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/15(土) 19:35:02.95 ID:EREalo2AO
書いてきまふ。

なかなか進まん……
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/15(土) 20:17:55.53 ID:EREalo2AO
他の読んでて思ったけど地の分に無駄な描写とか多すぎんのかな。初めてだからよく分からん。

読んでる人からしたらどんなもんすかー?読み辛い?
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/15(土) 20:29:10.21 ID:myBbq3jIo
読み辛さは別に。
行間にもう少しメリハリが合ってもいいのかなぁと思ったり思わなかったり?
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/15(土) 20:29:34.95 ID:1GSHoniO0
やべえなにこれおもしろい
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/15(土) 20:35:04.28 ID:UxUfWRvro
自分は地の文はこれくらいが読みやすい
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/15(土) 22:03:59.44 ID:EREalo2AO
うしゃーい。ありがとう。ちょっと推敲とか頑張ってみるよ。

まだまだ序盤で盛り上がらないけど長い目で見て付き合ってくれると嬉しいっすーよろすんすん。

書いてきまー
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/16(日) 00:21:39.85 ID:6Y8lI/910
乙です
面白いですよ

上条さんはどうなることやら
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 06:01:08.46 ID:I4KFAdXQo
雷が落ちたってことは上条さんもどっかで元気にやってんだよな
初代のまま
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/16(日) 22:18:08.55 ID:VJ1TupNAO
浜面「――ハァッ――ハァッ」

呼吸が乱れる。

浜面「――づぁっ!!」

足がもつれた。肩から衝撃が全身に伝わり、口の中に土が混じる。

浜面は待つ。まだか、まだかと。

気付くと眼前には敵が立っていた。忌むべき敵だ。

そいつは自分を見下して唇を釣り上げている。その手には能力で作りだした炎が燃え盛っていた。

浜面は待つ。

浜面(ちくしょう、まだかよ――)


74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/16(日) 22:18:42.55 ID:VJ1TupNAO
敵が腕を振り上げたその時にそれは来た。

キィィィィィィィン

煩わしく、耳障りで、不快で、嫌いで、少しうるさい音。

ただ、少しうるさい。それだけの音だが、相手には違う伝わり方をしているようだ。

眼前にいた敵は頭を抱え苦しそうに呻いていた。能力はいつの間にか消えており、そのうちに膝が沈んだ。

先程とは立場が逆転していた。浜面は自分を見下していた敵を見おろし、唇を吊り上げる。

ズボンのベルトの間から伸縮性の警棒を取り出し、真横に降った。

シュンッ

と、警棒は一瞬で伸び、丁度いい獲物になる。

相変わらずうるさい音は辺りに響いているが、目の前の敵をこうも情けない状態にするならそれも我慢しよう。

なんて事はない。超能力なんて使えようが使えまいが相手はただの人間だ。殴ったら痛いし、高い所から落ちたら何も出来ない。

浜面は腕を振りかぶる。目掛けるのは相手の頭だ。

そして――
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/16(日) 22:19:45.72 ID:VJ1TupNAO
不自然に能力者達の力が上がってきている。

そう呟いたのは、浜面が運転する車の後部座席に窮屈そうに座る駒場利徳だ。

浜面「はっ?何?なんだって?」

半蔵「最近能力者共の質が上がって来てんだとよ!」

浜面「はぁ!?」

半蔵「……まぁ確かにさっきの奴らはレベル3から4ぐらいの勢いあった臭いけど」

浜面「…………」

浜面達が大量の貼り紙という、全く意味があるのか分からないイタズラをどうすべきか決めかねていた時に、外に出ていた仲間達から連絡が入った。

能力者に襲われていると。


それに黙っていないのが駒場利徳だ。連絡が入るや否や対能力者用の装備をし、仲間の元へ向かう。足の確保は浜面が行い、半蔵がサポート。

そして先程までアンチスキルが駆けつける程のどんちゃん騒ぎだ。当然無傷ではすんでいない。

76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 22:20:49.27 ID:VJ1TupNAO
浜面「いっつ……」

半蔵「大丈夫かよ浜面。頼むから事故んなよ?積み荷が壊れたら向こうも色々うるさいんだからさー」

んー。と生返事を返し運転に集中する。ハンドルを握る手は血や土で汚れており、指先が少し火傷していた。

浜面「でさぁ、質が上がってきたってどゆこと?」

駒場「……言った通りだ。……俺達に敵対している多く能力者のレベルが底上げされている……」

浜面「……どういう事だよ。レベルってんな短時間で上がるもんじゃねぇだろ。それも一気に」

そう、実際その能力開発に挫折した集まりが自分達スキルアウトなのだ。能力がそんなほいほいと簡単に上がるような物なら自分達はここにいない。

駒場「……可能性があるとすれば、だが。もしかして」

半蔵「幻想御手<レベルアッパー>」

浜面「…………」

半蔵「それじゃねぇの?駒場のリーダー」

駒場「……ああ。それだ」

77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 22:22:06.11 ID:VJ1TupNAO
幻想御手。いわゆる都市伝説の一つとしてインターネット上に広まっている噂の一つで、能力のレベルを簡単に引き上げてくれる代物だという。

浜面「……んなもん本当にあんのかよ」

半蔵「確かに存在はするらしいぜ?使用者の書き込みも度々みるしさー」

駒場「……何より最近の能力者共が幻想御手の存在を裏付けている……」

浜面「…………」

それは浜面も感じていた事だ。現に今日だって危ない所まで追い詰められた。

浜面「……もしさ、そんなもんが手にはいったなら」

レベルが簡単に上がる。それは自分達無能力からしたら夢のような道具だろう。
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 22:23:00.34 ID:VJ1TupNAO

もし、もし本当にそんなものを手にしたら、自分は――

半蔵「まぁ、んなもんあったって使うわけにはいかねぇけどなっ!なぁ駒場のリーダー」

駒場「……ああ、俺達はスキルアウトだ。そんな物を使った時点で、そいつはスキルアウトじゃなくなる」

浜面「…………」

駒場「……能力に溺れてしまうなら、ソイツはもうスキルアウトじゃない」

駒場「……能力なんて無くても、守れるモノはいくらでもある」

駒場「それがスキルアウトだ」

浜面「…………」

浜面(……まぁ、お前ならそうだろうな)
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 22:23:28.85 ID:VJ1TupNAO
半蔵「だいたいさー。何より、俺達だってもってるじゃねぇか。都市伝説の代物って奴」

能力者になっちまったら逆にあれ使えなくね?と、半蔵がケタケタと笑う。

都市伝説の代物。今浜面が運転している車の荷台に積んでいるそれの正式名称はキャパシティダウン。

ネット上では、能力者を無力化する音響装置だという噂が広まっているようだが、誰が広めたのか、それは全て正しい情報だった。

この装置が手に入って以来、スキルアウトによる対能力者戦の優位性が格段に増している。裏技と呼んでも差し支えない程に。

駒場「……まぁ、これがあれば、どの能力者が相手でも確実に俺達が有利だ……例えレベル5が相手でもな……」

半蔵「そうそう、駒場のリーダーの言う通り、幻想御手なんざカンケーないってね」

浜面「いやっ、つかレベル5は流石に無理だろ!?」

80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 22:24:24.67 ID:VJ1TupNAO
半蔵「難点は持ち運びに時間かかるぐらい?まぁそれもかなりマシになったけどさー」

駒場「……小型化には成功しているらしい……あの女が言っていた」

浜面「あの女って」

半蔵「巨乳のねーちゃんか!」

キャパシティダウンは元々スキルアウトのモノではない。MARという組織から実験データ採取の為に提供された代物だ。

有り難く使わせてもらってはいるが、そこの責任者である木原という女には少々きな臭い所も感じていた。

浜面「でもよ、もしも――」

半蔵「――!?浜面ッ!前だッ!!」

浜面「え? んなぁッ!?」

81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 22:25:05.75 ID:VJ1TupNAO
キキィィィィィィ

反射的にブレーキを踏む。丁度よく着いたアジトの前で響き渡るコンクリートとタイヤの擦れる音は、キャパシティダウンよりもうるさいくて不快感を感じる音だった。

浜面「っぶねぇぇぇぇぇ!!!誰だよ急に飛び出してき、た……の……」

浜面「……お前」

それは見覚えのある姿。忘れるはずがない。見たのは今朝で、頭の隅にはまだその姿が鮮明に思い出せる程記憶に残っている。

禁書「あ……」

浜面「インデックス……」

白い少女が、そこにいた。

82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 22:25:33.26 ID:VJ1TupNAO
車を降り、インデックスに駆け寄る。半蔵と駒場利徳もそれに続いた。

浜面「おまっ!……なんでこんなところに、怪我は?」

禁書「……ッ!」

インデックスはぽかんとした顔でこちらを見て、何かを思い出したように慌てて、迷うように叫ぶ。

禁書「こ、ここにいちゃダメなんだよ!早く逃げてッ!」

浜面「あ!ちょ、なんだよいきなり!」

半蔵「浜面、なんだよその」

駒場「なんだその女の子は……?」

半蔵「本当ちっさい女の子すきだよなリーダー。で、なんなのコイツ?」
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 22:26:07.34 ID:VJ1TupNAO

駒場「……浜面、知り合いか?」

浜面「ああ」

禁書「そ、そんなのんきにお話してる場合じゃないかも……早く逃げないときちゃうんだよ!」

浜面「はぁ……? あ」

禁書『追われてるからね』

浜面(って、まさかッ!?)

駒場「……来る?」

誰が――と、言ったのは半蔵だったか、駒場だったかは分からない。

どちらにせよ、そのあとの言葉は背後の爆発音にかき消されて聞こえなかった。


浜面「――な」

半蔵「ん――」

駒場「……!?」

禁書「きゃぁぁぁっ!」

84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 22:27:22.01 ID:VJ1TupNAO
浜面「う、おおおおおおッ!!?」

その爆発の衝撃は浜面達の体を軽く吹き飛ばす。体を地に叩きつけられ、痛みが全身を走った。

駒場「……ぐ、う……なにが……」

現状を理解出来たのは、熱風と爆風に体を包まれながら振り返った時だ。


爆発したのは、浜面達が先程乗っていた車。

その車は車体の前半分が消し炭と化しており、既に車としての形を保ってはいなかった。

半蔵「なんだよ、これ……いったい何が、誰がこんな」

禁書「お、遅かったかも……」

何がどうしてこうなったのかが理解出来ず、呆然と立ち尽くす。

そんな浜面達三人の硬直を解いたのは、いつの間にか車を挟んだ向かい側に立っていた一人の男だった。

燃え盛る炎と同じ色の髪を流し、タバコをくわえたその男は浜面達に、少しの苛立ちを込めた声でこう言い放つ。

「うん? 僕たち、魔術師だけど」

85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 22:28:32.23 ID:VJ1TupNAO
男を中心に炎が広がる。爆発的に展開された炎は狂ったように周囲のビル壁を駆け、浜面達の視界の全てを炎が覆った。

唯一の異物は、漆黒の修道服を纏った魔術師と名乗った男。

ステイル「ふう……とりあえずその子をひき殺そうとした馬鹿はどいつなのかな?消し炭にしてやるから前にでてくれると助かるのだが」

半蔵「な、なん……!?」

駒場「…………」

浜面「……なんだよこれ」

空にのぼるかのように踊り狂い、一面を火の海にしていくかの如く広がるその炎が織りなす光景は一つの言葉を連想させる

――地獄。

浜面「ハ、ハハッ……」

もはや乾いた笑いしかでない。

禁書『じゃあ、私と一緒に地獄の底までついてきてくれる?』

ついて行くまでもなかったのだから。

今、浜面が少女と一緒にいるこの場所は、まさに地獄の底だった。
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 22:32:22.87 ID:VJ1TupNAO
支援してくれる人ありがとー嬉しいっす!
モチベーションあがりますんすん(^O^)

って言った傍からなんなんだけど明日から忙しいんでちょっと投下量落ちるかもしれません。
出来るだけ毎日投下できたらと思ってますが書けない日があったらごめんなさい。


かいてきまー
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 22:39:57.19 ID:QMS6SuZBo
ステイルさん登場ktkr
インデックスを上条さん以外が保護するSSは他にもあるけど
他よりも何万倍も強敵に思える不思議wwww
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/16(日) 23:36:09.19 ID:6Y8lI/910
真の無能力者vs魔術師って今まであった?
すげー燃える展開だ!
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/17(月) 00:58:27.24 ID:KR7jjJrDO
1乙、無理しないでー
ステイルVS浜面とは胸熱
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/17(月) 02:17:53.66 ID:qLfm4Eoxo
いやあ、原作を見てもどのSSを見ても思うが、
上条(このスレでは浜面)と邂逅するシーンのステイルはほんっとに理不尽だなww

浜面は、そしてスキルアウト達はステイルにどうやって勝つのか?
ていうかむしろ勝てるのか!?
燃えるぜ
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/17(月) 08:06:33.12 ID:ZBx0ictHo
>ステイル「ふう……とりあえずその子をひき殺そうとした馬鹿はどいつなのかな?消し炭にしてやるから前にでてくれると助かるのだが」
腹抱えてワラタww
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/17(月) 12:23:33.85 ID:vpXoLtte0
とにかく駒場さんに生き残ってもらいたい。
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/17(月) 15:34:18.93 ID:pKCQqgVAO
相手が誰でもステイルが勝つとは思えない 不思議
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/19(水) 02:42:37.10 ID:TYAc3BrDO
相手より弱い力で泥臭く勝利する展開って燃えるよねー。続きを楽しみにしています。
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 00:05:35.58 ID:qmYMcjnAO
追いついたよ!!

支援!
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/20(木) 09:18:43.11 ID:EpUIXfKAO
学園都市の総人口は230万と少し程いる。この街に住む学生は全て、能力開発という特殊な教育を受けた人間だ。

しかし、その6割はなんの能力も持たない無能力者。つまり外に住む人間となんらかわらない、ただの学生。

そのただの学生達は夏の補習の真っ最中のようで、長期休暇中なのにも関わらず、ここ学園都市はいつも通り学校へ向かう学生達で溢れかえっている。

その溢れかえる学生達を一望に見下ろせるビルの屋上。路地裏の一角にあるそのビルの屋上に、男はいた。

「ハッ、情けねぇよなぁ」

転落防止用に作られた手すりの外側に佇み、一歩踏み外せば落ちてしまうかも知れないその場所で、男は言う。

「外より技術が数十年もぶっ飛んでる学園都市でも、災害には勝てねぇってよ。笑わせやがる」

97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/20(木) 09:21:34.18 ID:EpUIXfKAO
軽薄さが籠もるその言葉に返事をしたのは手すりにもたれかかる若い女。その表情は軟らかい。

「でもあなたはその災害がきっかけで学園都市に出来た隙を突けて以前からの計画を行動に移せた」

「違いねぇ」

「あの落雷がなかったら、実行に移せたのはいつだったかしらね」

女はそう言い放ち、静かに笑った。

「さぁな、だがいずれにせよ学園都市にはでけぇ穴が空いた。そこを狙わない道理はねぇ」

「そう言い切るって事は……何かわかったのかしら」

「あぁ、しっかりブツは手に入れた。雑な警備に機能しないセキュリティ。楽勝だった」
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/20(木) 09:22:53.82 ID:EpUIXfKAO
「それで、収穫は?」

そう聞くと、男は手にした情報をすらすらと並べていく。既に全て頭の中に入っているようだ。

「……メンバー、アイテム、ブロックの暗部組織詳細、量産型能力者計画に……絶対能力進化だっけか?ハッ、なかなか愉快な実験してやがんなあの糞第一位」

「それに訳のわからねぇ機密コード。多分、暗号か何かだ。……今のところ決め手になるような情報は何もねぇな。俺達下っ端でも知っているような事ばかりだ」

「……そう」

明らかに落胆を含んだ表情。密かに期待していていたのだろうか。男はそう感じ、慌てて補足する。

「あー、ただ、使いようによっちゃ、上手く事態を転がせるかもしれねぇ情報はいくつかあるな」

「……へぇ」
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 09:24:37.47 ID:EpUIXfKAO

「特にこのスキルアウト共が準備してやがる計画。コイツと、昨日の落雷、だな」

「落雷……?」

なんの事かわからない。とでもいいたげな女の声と表情に思わず呆れる。

「あぁ?……おいテメーよ。まさかマジであれが自然的に発生した雷で偶然起こった災害とでも思ってんじゃねぇだろうな」

「……ニュースではそう放送してあるけど」

「ばーか」

「…………」

不機嫌そうな目をして女は男の背中を睨みつけている。それに気付かない振りをし、男は構わず言葉を並べていった。

「あれは能力だ。第三位のな」
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 09:25:48.84 ID:EpUIXfKAO

「超電磁砲の……?」

「おぉ、しかも理由が……ハッ、笑えねぇな。常盤台のレベル5もなかなか愉快な奴を相手にしてやがる」

「でも……学園都市の機能を一部とはいえ停止させたのよ?それもかなりの範囲を。そんな無茶苦茶な雷なんていくらレベル5でも――」

「ありえねぇ、な。……まぁ、よっぽどぶちキレる事でもあったんだろ」

「……そう。それで、結局私達はこれからどう動けばいいのかしら」

「まずは、そうだな……確実な決め手がねぇ以上、学園都市の都市機能を本格的に麻痺させる必要がある」

「……そんな事」

「出来るさ、手に入れた情報を上手く利用出来ればな」

「多分、まだ予想に過ぎねぇが近い内、一週間前後にもう一度落雷が起こる。俺の想像通りに行けば昨日の比じゃねぇ規模のだ」

「…………」

「俺達が本格的に動くのは、その瞬間」

男が顔を上げる。その眼は、遠くにそびえ立つ窓のないビルに真っ直ぐ向かっていた。

「その時までは、まだ裏舞台で甘んじてやるさ」

誰に対してかそう宣言し、視線を逸らす。
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 09:27:04.97 ID:EpUIXfKAO
「……あら?」

気付いたのは女だった。

「あれ……なにかしら」

「ん?」

「燃えているわ」

周囲を見渡す。確かに向こうに見える街の一角が燃えていた。

「……あぁ?」

感じる違和感。余りにも自然法則を無視して不規則に広がる強大な炎に、それに全く気付いている様子のない住民達。

「……この街にあれだけの炎を扱える発火能力者なんざ存在しない」

つまりそれは何を指しているのか。

男は思い出す。滞空回線に記録されていた莫大な量の情報の中に隠れるように混じっていた詳細不明の機密コード。
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 09:29:00.92 ID:EpUIXfKAO

理解するには情報が足りず、決め手になるかもわからない、一言だけ書かれたそれを、

「……なるほど、確かに常識が通用しねぇ」

男は眼下で起こっている些細な情報を整理し、一瞬で理解した。

不思議そうな顔をした女を尻目に言葉を投げる。

「見つけたぞ心理定規。直接交渉権への糸口だ」

自然に燃え広がっているわけでもなく、超能力でもないその炎を、男は見下ろす。

「ハッ、てっきり何かの暗号か何かだと思ったが、こう来るとあながち間違いでもねぇみたいだな」

誰かが地獄の底の様だと表現したその炎を遙か高みの位置から見下ろし、

垣根「――魔術師さんよぉ」

垣根帝督は不敵に笑った。

103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 09:31:21.32 ID:EpUIXfKAO
強大な炎を展開した魔術師と名乗った男を目の前にして浜面達が取った行動は至極単純だった。

ステイル「……はぁ」

その行動に魔術師は思わず溜め息を吐く。面倒だと言わんばかりに。

ステイル「なるほどね、余程愉快な消し炭になりたいようだ」

それは、

禁書「ちょ、おろしてほしいかもっ!」

浜面「うるせぇぇぇぇぇぇ!いいからさっさと逃げるんだよッ!!」

逃亡。

あんなレベル5級の炎を扱う似非神父なんぞ相手にしてられるか。と、インデックスを抱え全速力で走る浜面は、心の中でそう叫ぶ。

それは並んで走る二人も同じのようだ。
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 09:32:23.17 ID:EpUIXfKAO

駒場「……浜面、あいつは」

半蔵「まずは逃げんのが先だって駒場のリーダー!!半端じゃないぞあれっ!」

まずは目の前の男から、炎から逃げるのが最優先、しかし周囲をいくら見渡しても逃げ道になるような通路がない。

浜面「くそっ……」

路地裏奥の一角はすでに魔術師が放った炎に包まれ、浜面達の退路となるべき道を全て防いでいた。

半蔵「浜面!アジトだっ!」

言葉に従い、振り返る。工場の入り口は開いており、逃げる場所と言われたらもはやそこしかない。
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 09:33:43.13 ID:EpUIXfKAO
浜面「ぐッ……!」

しかし、それは下手をすれば追い詰められるという事も意味していた。

一瞬の迷い。

禁書「ねぇ。きみ」

その隙に、腕に抱えているインデックスの言葉が入り込んだ。

禁書「おろしてくれるとうれしいな」

去り際に言った時とよく似た調子で、インデックスは言葉を投げかける。

禁書「私がおとなしく捕まれば少なくともきみと他の二人は助かるかもしれないんだよ」

だから、おろしてほしいかも。

そう言ったインデックスの表情はとても穏やかだった。

まるで、自分の全てを諦めているかのようで、自分以外の全てを拒んでいるような、そんな表情。

その目はこう言っている。

お前には無理だ。

浜面「――ッ!」

一瞬の、迷い。

何を?
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 09:35:25.36 ID:EpUIXfKAO

浜面「…………」

魔術師は余裕なのだろう。追い詰めてくる様子もなく煙草を取り出している。

浜面「……く」

クソが。奥歯を噛み締め、心の中でそう叫ぶ。今確信した。自分は本当にクズだ。

元々わかってはいた。能力者共をクズ呼ばわりしている自分という人間も多分、相当のクズなのだろうと。

他人の為に動こうとせず、能力者を僻み、八つ当たりして満足感を得ていた自分は、ろくでもない人間なんだと。

でも浜面はなんとなく、根拠もなく思っていた。

もし目の前に困っている人間がいたら自分は手を差し伸べられる。きっと助ける事が出来る。

それぐらいは、人として当然の事ぐらい出来るだろうと、根拠もなくそう思っていたのだ。
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 09:39:12.83 ID:EpUIXfKAO
それがどうだ。

禁書「?」

浜面は腕に抱える小さな少女をあろうことか見捨てようか迷った。

殺そうとした。

禁書「……私の事なら気にしなくていいんだよ?」

そう言った少女は気丈に振る舞っている訳ではない。多分、本当に誰も巻き込みたくないのだろう。

ここで言うとおりあの男に少女を渡すとしよう。もしかすると魔術師は案外あっさりと炎を引っ込めて自分達は助かるかもしれない。

それでも意地を張って、少女を助けようとするとしよう。男は全力で自分達を殺しにかかるだろう。案外守ろうとする事さえできず、自分達は焼かれるかもしれない。

どちらかが賢いかなんて、クズでもわかる。

浜面は抱えていたインデックスをそっとその場に降ろす。
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 09:40:27.46 ID:EpUIXfKAO
禁書「……ごめんね。でも、もう大丈夫なんだよ」

ありがとう、さようなら。と、そう呟いてインデックスは魔術師のほうに向かってゆっくりと歩いて、

禁書「……え?」

行くことは出来なかった。

浜面「…………」

インデックスの手を掴む浜面の大きな手が、それをさせなかった。

禁書「手、離してほし――」

浜面「インデックス」

名前を呼ばれたインデックスがポカンと浜面の顔を見る。何をするつもり?と言いたげな顔。

浜面はインデックスの手を握る手に力を込め、

浜面「インデックス……お前その服重いんだよ」

禁書「へっ?」

浜面「いいからテメェも走りやがれッ!!!」

禁書「え? ひゃあああ!!」

全速力で走り出した。
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 09:41:42.10 ID:EpUIXfKAO
確かに自分はクズだ。スキルアウトで、盗みやカツアゲ、無免許運転なんて犯罪行為に手を染め、能力者に当たり散らして自分に溜まった鬱憤を晴らす日々。

ろくな人間じゃねぇな。と、自分でもそう思う。

ただ、やはり自分はなりたくなかった。

例えクズでも、こんな小さな女の子一人すら助けようとしない、助ける事ができないクズなんかには、なりたくなかった。

浜面(やってやる。俺がどこまで出来るかなんてわかんねぇけど、コイツと一緒に地獄の底から這い出てやる!!)

今朝は出来なかった。こうやって、手を掴む事すら出来なかった。

今度こそ――

110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 09:42:27.67 ID:EpUIXfKAO
ステイル「…………」

その光景を見ていた魔術師は不愉快そうに煙草の火を靴底でもみ消した。思わず溜め息を吐く

ステイル「ふぅ……」

面倒だ。と、今度は口に出してそう言った。

一歩を踏み出す。インデックス達が逃げた廃工場に向かって。

急ぐような真似はしない。急がなくても逃げる事はできないし、何より目の前に立つ、浜面達がアジトと呼んでいた建物は既に自分のテリトリーだ。

魔術師は歩を進める。

一歩一歩、獲物を追い詰めるように。

111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/20(木) 09:45:19.63 ID:EpUIXfKAO
ここまでーおそくなってごめんちい。2月中旬までちょっと忙しいんでペース落ちます。

ちょくちょく空いた時間に書くんで書きためたらまたきまー
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 11:23:22.44 ID:2G1RL5pgo
乙なんだよ!
なんかいろいろ原作と変えてるみたいですげーwwktkするなあ
浜面がんばれ
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/20(木) 16:40:51.11 ID:B2Z+cX2S0
すげー面白い!
上条さん→地獄から引っ張り上げる
浜面→地獄から一緒に出る

こういう上条さんと違う行動すると期待感が高まるな
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 17:53:15.17 ID:fjtaVZF9o
>>113
関係ないが一方さんは地獄をぶっ壊すなんだろうなと思った
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 19:47:07.87 ID:zuitFLqJ0
神裂さんじゅうはっさいどうなるやら…
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 22:31:14.56 ID:9CaUvKhoo
なぁに、俺らの一人へヴィーオブジェクト浜面は聖人だろうとやってくれるさ
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 23:36:34.74 ID:YACHI1hBo
>>115
べつに上条さん勝ったわけじゃないからな
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/23(日) 18:18:25.79 ID:8NhjMR5AO
半蔵「おせぇよ浜面ッ!」

インデックスの手を引きアジトに駆け込むと、飛んできたのは半蔵の怒声だった。

駒場「ぬぅん!」

二人が入った事を確認し駒場が入り口の分厚く重い扉を閉じる。あんな炎を扱う能力者には気休めにもならないが、足止め程度にはなるだろう。

禁書「あ、あの……」

浜面「走るぞっ!」

足止めをしたと言っても入り口辺りで落ち着くわけにもいかず、インデックスの手を引く浜面のかけ声と共に再び3人は走り出す。

機材やコンテナが積まれた隙間を駆けていく浜面達が、入り口の分厚く重い扉が破壊される音を聞いたのはその数分後だ。
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/23(日) 18:19:00.34 ID:8NhjMR5AO

半蔵「くっそ!足止めにもなってないじゃん!!なんなんだよあれっ!」

駒場「……能力者だろう、しかし、規格外だ。俺達では対処しきれん」

半蔵「じゃあどうすんだ!これじゃ逃げる事も出来ねぇしさ!」

浜面「とりあえずバラけんぞッ!固まってても全員焼かれるだけだ!!」

その声と同時にそれぞれ3方向に走り出す3人。しかし、それが何の解決にもならない事ぐらい浜面には分かっている。ただ、あの魔術師の目的はインデックスだ。分散させる事で少なくとも他の2人からは狙い逸らす事が出来る。

出来るとは思う、が。
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/23(日) 18:20:16.70 ID:8NhjMR5AO
浜面(……どっちみちあのロン毛を倒さねえと、同じ事か)

インデックスを助けると決めたものの、浜面にはその手段が全くと言っていい程なかった。

無能力者。レベル0、落ちこぼれ。つまるところ浜面は何の能力も持たないただの、少し体が鍛えられた一般人に過ぎない。

その一般人があの強大な炎を操る能力者、この場合は魔術師を倒すなどと、果たして出来るのだろうか。あんな化け物を丸腰で倒す事など。

浜面(ちくしょう、考えれば考える程不可能に思えてくる……)

禁書「あ、あの……」

浜面「ん? ……どうした、インデックス」
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/23(日) 18:20:47.73 ID:8NhjMR5AO

禁書「手、痛いんだよ……」

そういえば先程からずっとインデックスの小さな手を握り締めていた事に気付く。

慌てて離したインデックスの手は真っ赤になっており、インデックスは握られていた手を労るようにもう片方の手でそっと包んだ。

浜面「わりぃ……痛かったか?」

禁書「うん、痛かったんだよ。 でも……」

浜面「……でも、なんだ?」

禁書「痛くない痛みって、初めてかも」

どんな表情をすればいいのかもわからないといいたげなインデックスのその言葉は浜面の胸に突き刺さる。

痛くない痛み。言葉としてはおかしいのだろうが、その意味は分かる。
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/23(日) 18:21:54.53 ID:8NhjMR5AO
多分、インデックスは長い間逃げていたのだろう。自分を追ってくる魔術師からも、自分を助けようとする人間からも、まるで今朝のように、ずっと、一人で。

浜面「不可能だとか言ってられねぇな……」

そう、不可能などとは言ってられない。絶対にインデックスを助け、全員で生き延びる。

ステイル「しかし君には無理さ。それを助ける事も、生き残る事もね」

その声が聞こえたのは、浜面がそう決意した瞬間だった。

浜面「なッ!! もう追いつかれ――」

ステイル「Fortis931」

振り返る浜面を目の前に、魔術師は唇の端を歪め笑う。

123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/23(日) 18:22:23.72 ID:8NhjMR5AO


ステイル「ステイル=マグヌス。と名乗りたい所だが、個人的に君はさっさと殺してしまいたいんだ」

ステイル「炎よ」

両の手を広げた魔術師が呟いた瞬間、掌から伸びたオレンジ色のラインが爆発し、一直線に炎の剣が生み出される。

浜面「な……」

逃げなければ、と冷静に考える半面、突然すぎる事態の展開に身体がついて行かない。

いくら決意を込めたところで、強大な力の前には足が竦む。

だって、やはり相手は能力者で、自分は無能力者なのだから。
ステイル「巨人に苦痛の贈り物をぉッ!!」

炎が、迫る。
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/23(日) 18:23:12.64 ID:8NhjMR5AO
浜面「――――」

しかし、その炎の剣が浜面を焼き尽くす事はなかった。

ステイル「……ッ」

浜面「……お、まえ」

禁書「…………」

インデックスが両手を広げ、魔術師の前に立ちふさがっていた。

魔術師がその手に持つ炎剣はインデックスを焼き尽くす寸前の位置でピタリと止められている。

禁書「……やめて、魔術師」

ステイル「…………」

禁書「この人を傷つけないで」

その瞬間、魔術師の表情が微かに歪んだ。何かを諦めたような、物凄く辛そうな、そんな風に瞳が揺れ、そして、

ステイル「…………」

禁書「!!」

インデックスを焼き尽くそうと炎を纏った腕を再び振り上げる。
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/23(日) 18:24:55.22 ID:8NhjMR5AO
浜面「お……ッおおぉぉ!!」

とっさにインデックス目掛けて足に力を込め、飛ぶ。

禁書「きゃあっ」

一瞬の灼熱が浜面のわき腹を掠った。

浜面「ぐううううっ!」

だがそんな事は気にしていられない。

インデックスは守ろうとしてくれた、こんな自分を、まだ手を掴んでしかいない自分を、守ろうと身を盾にした。

ステイル「……君にこれを助ける義理はないはずだが?」

ステイル「それにその子――それが着ている服は歩く教会と言って」

浜面「これやらその子やらうるせぇよ。こいつの名前はインデックスだ……」

それに、例え全ての攻撃を無効にする歩く教会がなかったとしても、インデックスは魔術師の前に立ちふさがっていただろう。

126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/23(日) 18:26:28.08 ID:8NhjMR5AO
浜面(そうさ、能力とか無能力とか関係ねぇ……こんな小さなガキだって出来る事じゃねえか)

駒場『……能力なんて無くても、守れるモノはいくらでもある』

駒場の言葉を思い出す。もう、足が竦むような事はない。

この瞬間。浜面の何かが、確かに変わった。

今朝の自分ならこんな事を考えさえもしなかったろう。したとしても、止めていた。だって、自分は無能力者だから。そんな事を考えるのはお門違いだと。

無能力者の自分には、誰かを助けてあげられる力なんてない――

違う。

浜面「けど助けたいと思ったんだ。悪いかロン毛野郎」

そうさ、助けるんだ。能力なんざなくても、使えるものをなんでも使って、何を利用してでもコイツを倒す。

不様でもいい、這ってでもいい、情けなくてもいい。

駒場『それが――』

浜面「それがスキルアウトだ糞ったれぇッ!」

127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/23(日) 18:28:11.19 ID:8NhjMR5AO
ここまで。

余裕があれば今夜中にもう一回投下します。

今夜中に投下できなければ多分2月中に投下します。

かいてきまー( ^O^)
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/23(日) 18:31:43.08 ID:8NhjMR5AO
間違えた2月までにだ!かいてきま!
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/23(日) 18:44:26.38 ID:M9R7K76AO
おつおつ!
でも浜面大変だよなー。
能力はないし、インデックスの記憶のことに気づけるかどうか。
とはいえ泥臭い戦い方は大好きなので頑張ってくれ!
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/23(日) 22:08:23.29 ID:oobMJnUOo
>>129
授業で一回ぐらいは聞いたことあるだろうが・・・気づくビジョンがみえねえww
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/23(日) 22:44:01.97 ID:63VqlXB70
>>130
半蔵さんとか駒場さんならわかりそう
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/23(日) 23:26:07.80 ID:8Tp5qiSwo
くそおおお、浜面熱いぜえええええ
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/24(月) 03:18:38.10 ID:bTON20LAO
浜面が吠える。

それを、

ステイル「……ふぅ。まぁ何を言おうがそれは回収するんだけどね」

ステイル=マグヌスは斬って捨てる。

ステイル「それが持つ10万3千の魔導書は危険なんだ」

浜面「またその話かよ。んなもんどこにあるってんだ」

ステイル「あるさ、それの頭の中にね」

完全記憶能力。そう呟いたステイルに、それ以上説明する気はないらしい。

手を大きく広げ、浜面を今度こそ焼き尽くす為にステイルは呪文を唱える。

ステイル「灰は灰に――」

両の手に炎が灯る。

ステイル「塵は塵に――」

そして、

ステイル「吸血殺しの紅じゅう――」

禁書「両腕を交差、右足を半回転、左足を後方へ!」

ステイル「――な!?」

魔術師は盛大にずっこけた。

禁書「こっちっ!」

そう叫んだインデックスが浜面の手を取り走りだす、まるでさっきとは逆の立場だ。浜面の手を握るインデックスの顔は、不安が籠もりつつも、何故か嬉しそうだった。

浜面「お、おまっ!何したんだよ!?」

禁書「強制詠唱、呪文を妨害する魔術の一種なんだよ!」

浜面「今のも魔術!?俺にも使えそうじゃねぇか!」

禁書「これは使えるかもしれないけど魔術は無理だよ!!君達と私達じゃ回路がちがひゃぁっ」
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/24(月) 03:19:40.92 ID:bTON20LAO
何かに足を引っ掛けたインデックスが体勢を崩す、こけそうなインデックスを抱きかかえ、物陰に身を潜める。

禁書「いたた……なんでこんな所にロープが……」

浜面「工場だからな、機材包む縄ぐらいあるさ……」

荒い息を整え、それを潜める。耳を澄ますとカツコツ、カツコツと魔術師の靴音がすぐ近くまで響いていた。

浜面「くそっ……」

禁書「……本当によかったの?」

浜面「あぁ?」

禁書「私の手を取って、その……助けるって」

浜面「……あのよぉ」

ビクッとインデックスの肩が震えた。浜面はフード越しにインデックスの頭に手を置き、ゴシゴシと撫でる。

禁書「わっ、わっ……痛いんだよっ」

浜面「俺が助けたいって思ったんだ。いいに決まってんだろ」

禁書「――っ」

その言葉は、多分インデックスの心に刺さったのだろう。目にはうっすらと涙が浮かび、表情も崩れかけている。ふえっ、などという緊張感の欠片もない言葉も飛び出てきた。

だが、

浜面「泣くのはあとだ、インデックス」

禁書「……えっ?」

浜面「教えてくれ。どうやったらアイツを倒せる」

インデックスの震える肩に手を置き、そう訪ねる。

インデックスは一瞬ポカンとした後、歩く教会の袖で崩れた表情をゴシゴシとこすった。

浜面と再び向き合ったその顔は、魔術師のそれだ。
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/24(月) 03:20:49.36 ID:bTON20LAO
禁書「ルーン」

禁書「あの魔術師はルーンっていう刻印の力を借りて魔術を生み出しているんだよ」

禁書「多分、あれだけの炎を展開出来るって事は相当のルーンをこの建物に刻んでると思う。始めから私をここに追い込むつもりだったのかも……」

浜面「じゃあ、そのルーンって奴を消せば……」

禁書「うん、この場合はルーンを消したり、術者の意識を奪う事で魔術は消える」

でも……と、インデックスは浜面から顔を逸らす。

禁書「ナイフとかでルーンを刻んでたら消せないし、私と君だけじゃあの魔術師には太刀打ち出来ないかも」

浜面「お前は……あんな炎みたいな魔術って奴は使えないのか?」

禁書「私には魔力がないから……魔力を使用するような魔術は使えないんだよ」

シン……とした空気が場を支配する。まさしく打つ手なし、だった。

浜面「それでも、」

それでも、倒さなければならない。何をしてでも。

136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/24(月) 03:22:00.91 ID:bTON20LAO
浜面は考える。何をすればいいのか、どうすればいいのか、何を利用して、何を使えばいいのか。

浜面(考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ)

使えるものはどこかにあるはずだ。今日は何があった?絹旗に追い掛けられ、雷が起こり、インデックスに出会い、ミサカに出会い、アジトに来て、イタズラを――

イタズラ。

浜面「――インデックス。ルーンてのは紙に書いて貼り付けるだけでも効果があんのか」

禁書「え……うん。何に刻もうがそれは確かにルーンだし、ルーンの多さが魔術の強さだから……」

チッ。と浜面は舌打ちをする。

足元を埋め尽くしていた呪文のような文字が書かれた白い紙を思い出す。壁や天井にも床程じゃないにしろ何百何千と貼られていた。

浜面(くそッ……あれがルーンだったのかよ)

素材はコピー用紙に水性ペンだったか……魔術と言ってもずいぶんチンケなもんで出来てるものだ。

とは言っても、ルーンの正体が分かった所で解決にはなりはしない。大量の水でもあれば一気に潰せるかも知れないが、

浜面「雨が降るのは明日だったな……」

結局、何から何までタイミングが悪い。

浜面(くそッ、後は能力者倒してインデックスをひきそうになってそれにブチ切れたあの魔術師が現れたところで現在に至って――)

浜面「――――」

違和感。なんだ、何かがおかしい。今、何を考えた。

浜面(なんだ、この……)

もう少しで何かが掴める、その瞬間。

ステイル「こんな所に隠れていたのか」
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/24(月) 03:23:03.38 ID:bTON20LAO
浜面「!?」

ステイル「吸血鬼殺しの紅十字!!」

灼熱の炎が目の前を覆う

浜面「おおおおおッ!!」

それを避けれたのは奇跡だった。少なくとも、先程の浜面では避ける以前に体が動かず焼かれていただろう。

ステイル「もういい加減にしてくれないかな?一年も追い掛け回してやっと出来たチャンスなんだ。そろそろ僕もそれを回収したいんだよ」

浜面「…………」

浜面「……ははっ」

魔術師のその声を、遠くに聞いて浜面は笑う。

浜面(そうかよ……1年か)

1年も、1年もインデックスはこんな生活を送っていたのか か。泣き言も言えず、助けも求めず、1年間も、こんな――

浜面「――あ」

ふいに、先程の思考が繋がった。そうか、違和感の正体は、『それ』だったんだ。

138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/24(月) 03:24:17.32 ID:bTON20LAO
倒れた体を起こし、天井を見上げる。

高い天井、貼り付けられたコピー用紙が何枚か見える。

矢継ぎ早に浜面の思考が展開されていく。イタズラ、能力者、キャパシティダウン、魔術師、インデックス、10万3千、炎、ルーン、天井、そして……

浜面「…………」

手元には、先程インデックスの足に引っかかった長めのロープがあった。

浜面(……いける、か?)

浜面が行き着いた思考の果ては、危険な賭け。

あまりにもばかばかしい程の賭け。

それでも、

浜面「…………」

隣にいるインデックスは弱々しく浜面の腕を掴んでいる。

浜面「…………」

それでも、浜面仕上は逃げるわけにはいかない。

浜面(やるしかねぇ……!)

その為にクリアしなければいけない課題は2つ。

浜面「インデックス……」

禁書「えっ?」

浜面「……ごめんな」

そう呟き、浜面は魔術師の前に立ちふさがる。
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/24(月) 03:25:02.10 ID:bTON20LAO

ステイル「そろそろを引き渡してくれる気になったのかな?」

浜面「すげーよなアンタ。あんな炎を操ってよ、太刀打ちできねぇよ。俺みたいな一般人じゃ」

ステイル「……?」

ステイルが眉を潜める。突然何を言い出したんだコイツは、という風に

浜面「それでもやっぱわかんねぇ事があってさ」

ステイル「……なにかな?」

浜面「どうしてそんなすげぇ魔術師のお前が一年もかけてこんな女の子一人捕まえられないんだ?」

ステイル「…………」

浜面「いや、アンタがすげぇ魔術師だってのはさっき言った通り分かる。あんな炎、学園都市のレベル5でも展開出来るかわかんねぇよ。つまりさ――」

その言葉を口に出すのを躊躇うわけにはいけない。しかし、それを言うのはやはり浜面には心が痛んだ

浜面「インデックスがあんたよりとてつもなくすげぇ『バケモノ』って事だよな?」

禁書「!!」

ステイル「――貴様ッ!!」

轟!!

恐るべき勢いでステイルの周囲に灼熱が展開される。その熱は床を焦がし、周辺の機材を溶かす。

自分に死をもたらす業火を前に、浜面は薄く、本当に薄く笑っていた。

魔術師は、それに気付かない。
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/24(月) 03:25:53.39 ID:bTON20LAO
ステイル「イノケンティウスッ!!」

灼熱が収縮。一つの業火球になったかと思えば、それは勢いよく弾け、浜面達の視界を炎に染める。

浜面「…………!!」

まるで業火の卵から生まれたそれは人の形をしていた。

重油のようにドロドロとしたモノを芯とした質量のある炎。

ステイル「魔女狩りの王――イノケンティウス。3000度の炎は鋼鉄さえ溶かし標的を焼き尽くす。その名の意味は『必ず殺す』だ」

ステイル「貴様を許すわけにはいかない」

魔術師の顔には、怒り。それが何に対する怒りかは、クズでも分かる。

浜面「……ははっ」

炎の巨神を前に、浜面はやはり笑っていた。

なんせ、一気に課題が片付いたのだから。

体が震える。それは恐怖によるものか、はたまた――

ステイル「殺せ」

その言葉が発せられた瞬間、浜面は体を翻し、素早く駆け出す。足元に落ちていたロープを拾い、呆然としたインデックスの手を取って、そのままステイルの前から逃走。

力の無いインデックスの手を引っ張り、浜面は走る。イノケンティウスの追撃に追われながら、浜面は駆ける。
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/24(月) 03:26:37.69 ID:bTON20LAO
浜面「……クス! ……インデックス!!」

禁書「……ふぇ?」

浜面「悪かったな」

禁書「……えっ?」

浜面「あんな事言っちまってよ。あとで噛み付いたって何したって構わねえ。許してくれ」

禁書「…………」

少しの沈黙。その場に響くのは二人分の足音と、その二人を追ってくる一体の巨神の叫び声。

禁書「いいんだよ」

禁書「でもね、私はちょっとお腹がすいたかも」

浜面「…………」

浜面「……はぁ」

浜面「アイツ倒したら腹一杯うまいもん食わせてやるよっ!!」

禁書「うんっ!」

二人は走る。この地獄から這い出る為に。

142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/24(月) 03:28:20.96 ID:bTON20LAO
半蔵「浜面!……ってうぉぉぉなんだあれ!?」

横から飛び出してきた半蔵がイノケンティウスを見て叫ぶ。

浜面「あのロン毛の能力だよっ!」

半蔵「くっそう何でもありかあのロン毛!どうせ追いかけられるなら巨乳のねーちゃんがいいのにさー!!」

浜面「こんな時にアホな事いってんじゃねぇぇぇぇ!!」

半蔵「んで浜面っ!なんとかなんないのかよこれ!!」

浜面「今からなんとかすんだよ!!」

半蔵「はぁぁぁ!?」

まさかそんな返事が返ってくるとは思わなかったのだろう。半蔵は驚きの声をあげ、浜面の顔を見つめる。

半蔵「……本気か」

茶化すような事は言わない。それは浜面がどれだけ本気なのかを半蔵も感じとったからだろう。

浜面「半蔵、頼みがあるんだ」

半蔵「あぁ?」

浜面「あのよ――」

その頼みはあの魔術師を倒すには必要不可欠な事だった。浜面はそれを口頭で、出来るだけ分かりやすく伝える

半蔵「……まじで言ってんの?」

浜面「あぁ」

走りながら半蔵は溜め息をつく。

半蔵「……本当に、それだけでいいんだな?」

浜面「あぁ」

分かった。と、走りながら半蔵はそう呟いた。

半蔵「ったく!まぁ仕方ねぇか。死ぬんじゃねぇぞ浜面とそこのチビ!」

浜面「おぉ!!」

禁書「ち、チビじゃないんだよ!!」

そう言って浜面達は左へ、半蔵はまた別の方向へ、再び二手に別れ走りだす。炎と共に叫び声をあげるイノケンティウスは、思った通り浜面達の背後をぴったりと着いてきた。

143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/24(月) 03:29:26.22 ID:bTON20LAO
禁書「そ、それでこれからどうするんだよ!」

浜面「まずは上に出るぞ!!」

禁書「上?」

浜面「屋上だよ!!」

浜面達が魔術師から逃げ、行き着いた先は鉄製の薄い階段。それは随分錆び付いていて、登れるかも分からないほど酷く脆い。

浜面「いくぞっ!」

禁書「ふぇっ!?」

それを2人は駆け上がる。インデックスの手を引き、力を込めて、上へ上へ、駆け上ぼる。

その後ろを執拗に付けてくるのは、一体の業火の塊。

しかし――

イノケンティウスは浜面達の後を追う事が出来なかった。

浜面「よう、バケモノ。階段登んのは苦手か?」

浜面は魔術師の言葉を思い出す。イノケンティウスは3000度の炎の塊、鋼鉄さえ溶かして標的を焼き尽くす。

そう、鋼鉄さえ溶かしてしまう、炎の塊。

浜面「なら鉄で出来た足場に登れるわけねぇよなぁ!!」

イノケンティウスは足場を挟んだ浜面の足下でもがき、叫ぶ。辺りの機材を掴み、ところ構わず投げては見るが、浜面達には届かない。

浜面「いくぞインデックス!!」

禁書「う、うん!」

インデックスの手を取り、そのまま金網が敷かれた通路をガシャガシャと音を立てて駆け抜ける。

足下を見るとまだイノケンティウスは追いかけようと必死にもがいており、それを使役する魔術師は浜面を怒りを込めた目で睨み付けていた。

まるで大事なモノを傷つけられたような、そんな目で。

浜面「…………」
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/24(月) 03:30:46.04 ID:bTON20LAO
通路の奥にある扉を勢いよく開け放つ。

その屋上は平坦で、転落防止用の手すりはなかった。

浜面はいそいで屋上の端まで駆け寄ろうと――

浜面「んなぁっ!!」

突如、屋上を駆ける浜面の足元が爆発した。爆風は浜面を吹き飛ばし、無理やり屋上の端まで追いやられる。

浜面「痛ッ……」

危うく落ちそうになる浜面の体を包んだのは下から押し上がった熱風。見渡すと、未だに工場周辺は地獄の業火のように燃え盛っており、その勢いは衰えてはいない。

浜面「くそ……なんだ今の」

禁書「多分、天井に貼り付けたルーンを爆発させたんだと思う」

インデックスが駆け寄り、浜面の体を起こす。爆風が消し飛んだそこを見てみると、大きが穴をあけていた。

浜面「…………」

屋上の中央にあいた、大きな穴。それはさながら死の穴だ。落ちたら、もう戻れない。

浜面「……よし」

浜面は覚悟を決める。後は魔術師が屋上にのぼってくる前に、

禁書「……どうしたの?」

浜面「あのさ、インデックス」

いつになく(と言っても会って間もないが)真剣な浜面の表情にインデックスがたじろぐ。

禁書「な、なんなのかな……?」

浜面「また先に謝っとく。すまん」

禁書「……へっ?」

145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/24(月) 03:33:17.89 ID:bTON20LAO
天井が爆発した事を確認し、何も落ちてこない事も確認したステイルは静かに舌打ちをした。

ステイル「くそっ」

未だにもがくイノケンティウスはもう役に立たない。まさかあんな弱点を突かれるとは、流石に百戦錬磨の魔術師を自負するステイルでも想像していなかった。

鋼鉄をも溶かす魔女狩りの王は鋼鉄の足場では戦えない。考えればそれは簡単にわかる事だが、こんな極限状態の中思い付くなんて……

ステイル「何者かは知らないが、ずば抜けた戦闘センスだね……噂の能力者という奴かな?」

半蔵「アイツはただのスキルアウトさ」

背後に立つ気配。振り返えるとそこにいたのは、インデックスの手を取った少年の仲間の一人。

半蔵「あぁ、ちなみに屋上には向かいの階段を使えば行けるぜ?」

ステイル「それはいい事を教えてもらった……君には感謝するべきなのかな?」

半蔵「あぁ、してもいいさ。どうせお前は屋上に行く事ができない」

腕を振る。袖口から飛び出てきたのは矢の様な形をした道具。半蔵はそれを掴み、構えを取る。

ステイル「…………」

ふざけているのか?

半蔵の構えを見て抱いたステイルの感想は、それだった。

146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/24(月) 03:33:53.10 ID:bTON20LAO
先程から自分が展開させてきた炎の術式は既に見た通りだろう。それを見て、なおも細い槍一本で自分に向かってくる少年をステイルは理解できない。

だから

ステイル「イノケンティウス」

そう呼んだ瞬間、人型の業火が半蔵の前に立ちふさがる。

半蔵「ひゅー。何度見てもすげーな」

ステイル「僕は一足先に行かせてもらうよ。止めるつもりならそれを倒してみる事だ」

無理だろうがね、とステイルは心の中で付け加える。

魔術師はそのまま少年を一瞥する事もなく、屋上へ続く階段へと向かっていった。


その場に残されたのは、一人の少年と一体の炎の化身。

向かい合う半蔵は、ステイルが階段へ向かった事を確認し、余裕を繕っていた表情を崩す。

半蔵「言う通りにしたぞ浜面……あとは」

目の前の炎を見上げる。燃える十字架を手にする灼熱は半蔵を見据え、今にも焼き尽くそうとジリジリと近寄ってくる。

半蔵「後はコイツをなんとかするだけか……うまくやってくれよ〜駒場のリーダー」

そう言うと半蔵は手に持つ打ち根を袖に戻し、身を翻して走りだした。

半蔵「あ、そうだ」

追撃を開始する魔女狩りの王に思い出したように言葉をなげる。

半蔵「服部半蔵、推して参る」

半蔵「…………」

なんてな、と半蔵は自虐の笑みを浮かべ、足に力を込めて本気で走りだす。

忍者と魔神の短い間の鬼ごっこが開始された瞬間だった。
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/24(月) 03:35:01.82 ID:bTON20LAO
カツカツと階段をのぼり、ガシャガシャと金網の通路を歩いていたステイルの頭の中は浜面が放った言葉に対しての苛立ちで埋め尽くされていた。

それはインデックスを侮蔑し、貶した言葉。いくら彼女の敵という立場にいても許せないその言葉。

だから、屋上へ続く扉を開けた瞬間目に入ってきたその光景はステイルの怒りを爆発させた。

信じられず、許し難い、その光景。

浜面が嫌がるインデックスを屋上から突き落とすその瞬間を目の当たりにした時、ステイルは思わず叫んだ。

ステイル「お、おおおおおおおッ!!!」

地面を踏み砕く勢いでそこから駆け出す。呆けた面をしている少年に灼熱の獄炎を食らわせてやろう。そう思い力を込める。

インデックスは常人なら落ちたら死ぬかもしれないこの高さから落ちても死なない、怪我すらしない。

だからと言って、この少年が、インデックスの手を掴んだこの少年が、たったいまインデックスにした事を許せるわけがなかった。

かつて、その場にいた自分としては、絶対に許せなるわけなかった。
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/24(月) 03:37:04.79 ID:bTON20LAO
ステイル「巨人に苦痛の贈り物をぉぉぉぉぉッ!!!」

急ぎ唱えたからだろう。先程より威力が落ちたその炎を、ステイルは構わず浜面目掛けて思い切り放つ。

炎は浜面を掠め、大きく体勢を崩し、

浜面「な、ああぁぁぁぁッ!!」

そのまま屋上から姿を消した。

ステイル「くそッ……落としたかッ!!」

急いでステイルは端に駆け寄る。今の一撃じゃ足りない、まだ足りない。さっきインデックスを貶した分にもならない。例え死体になっていようが。教皇級の灼熱を叩き込んでやる。

そう思い勢いよく屋上から地上を覗き込んだステイルの目に映ったのは、自らが展開した工場全体を覆う炎、吹き飛ばした車。そして――

浜面「捕まえたぜ」

突然、素早く伸びた手がステイルの足を掴む。

ステイル「な、な……!?」

微かな凹凸に手をかけ、地上に落ちる事なく、片腕だけでそこに留まっていた浜面仕上が、魔術師の足を強く掴んでいた。

浜面「能力者と渡り合う為にはそれなりの体作りが必要だ」

しかし、対策はばっちりしているようで、その体には命綱のようにロープが巻かれ、屋上の出っ張りにしっかりと巻き付けられれている。

よく見ればインデックスも同じように命綱をつけていたらしい。ゆらゆらと白い塊が吊れ下がり、揺れてるのがステイルの視界に入った。

ステイル「その子を、突き落としたんじゃ……」

浜面「テメェを取り乱させる為の演技だよ」

ステイル「演、技……?」

ステイルの瞳が揺れる。

先程浜面が感じた違和感の正体、それがこれだ。

ステイルの言葉の節々に散らばるインデックスへの距離感。
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/24(月) 03:38:33.66 ID:bTON20LAO
浜面「まず始めから全ておかしかったんだ」

初めて登場した際、この魔術師はインデックスの事をその子と呼んだ。あまつさえその時の標的はインデックスに危害を加えかけた浜面達だ。

そして続く会話にはそれ、これ、あの子。全てに置いてインデックスを指す言葉が安定しなかった

浜面「それにお前は歩く教会の事を知っていながらインデックスを斬るのを躊躇った」

極め付けは思い出したくもないあの発言。

浜面「あそこで確信したんだ。テメェはただの『敵』じゃねえってなぁ!」

そして、浜面は魔術師のそこにつけ込んだ。魔術師の心を煽り、追い込み、取り乱させた。

浜面「アイツには悪い事しちまった。いくらテメェを倒す為だからって、俺はアイツを利用したんだ」

ステイル「――くッ」

ステイル「イノケンティウス!!」

魔術師は叫ぶ。それでも足元の男を振り払おうとしなかったのは、自らの手でこの男を焼き殺したかったから、インデックスを利用した、自分の心の隙をつけ込んだこの男を――

ステイル「………?」

炎が、展開されない。

ステイル「イ、イノケンティウス!!」

魔術師は吠える。何度呼んでも、炎の巨神は顕現しない。

キィ……

扉の開く音。まさか、扉からやってきたのか!?と勘違いした魔術師は、すでに精神的に相当追い込まれていたのだろう。

そこにいたのは、炎によってあちこちが焼け焦げた服を着た駒場利得と服部半蔵。

半蔵「いよぉ、ロン毛の兄ちゃん。言われた通り倒して来たぜ?」

ステイル「なっ……!!」
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/24(月) 03:39:52.00 ID:bTON20LAO
その言葉に、魔術師は驚きを驚隠せない。理解が出来ない。意味がわからないとでも言う風に。

ステイル「ば、かな……!! 自動追尾のイノケンティウスをどうやって!?」

半蔵「いやー浜面の言った通りでさー。まじであのちっさい貼り紙ほとんど潰したら消えてなくなっちまったよ」

ステイル「な、何万も仕込んだルーンだぞ!? 一体……!!」

半蔵「はぁ?お前は人のアジトに何ペタペタ貼ってくれちゃってるわけ?コピー用紙に水性ペンで書いた落書きとか地味に迷惑なんだけどよー」

ステイル「な……ま、まさか、水でインクを溶かしてッ」

半蔵「んなめんどい事するかよ。あのさー、お前は一体なんの能力者なんだよ」

その言葉で魔術師はようやく気付く。何故この少年達が生きているのか、なぜイノケンティウスが倒されたのか、どうやって何万枚ものルーンが潰されたのか――

自分がどこに何万枚ものルーンを仕掛けたのか。

半蔵「紙って燃えるんだぜ?知らなかったのかよばーか」

浜面が屋上にのぼる直前にした半蔵への頼み事は二つ。

まず一つは魔術師を上手く屋上へ誘導すること。

そして二つ目は、炎の巨神から足元に埋め尽くされた紙の上を逃げる事。

151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/24(月) 03:42:09.05 ID:bTON20LAO
ステイル「……あ、あ」

ルーンの多さが魔術の強さ。インデックスが言っていたその言葉を思い出す。

浜面「この工場広いからよ。四方に貼るの大変だったろ?場所が偏っても仕方ねぇよ」

浜面はステイルの足を掴む手に力を込める。

浜面が吊り下がっているその遙か下の地上は、勢いが収まったと言え、未だに灼熱が燃え広がっていた。まるで地獄の底のように。

ステイル「は、灰は灰に――」

魔術師がか細い声で呪文を唱える。炎は灯らない

ステイル「ち、塵は塵にぃ――」

灯らない。

浜面「テメェにどんな事情があるのかしらねえがよ」

ステイル「吸血殺しの――」

浜面「それでもテメェには地獄の底がお似合いだッ!!」

魔術師を掴む手を、思い切り引きずり降ろす。

そうさ、なんて事はない。とてつもない炎を扱う魔術師と言えども結局のところただの人間だ。殴ったら痛いし、高い所から落ちたら何も出来ない。

ステイル「の、能力者がぁッ!!」

体勢を崩し、落ちていくステイルがそう呟くのと、浜面がまるで這い上がように屋上に手をかけ、それを言ったのは、同時だった。

浜面「わるいがこちとら無能力者でね」

そして、立ち上がる。

ドサッと、何か落ちる音が聞こえた。

浜面「楽勝だ、魔術師」

そう呟き、振り返る。工場を覆っていた炎は全て消え失せていた。

浜面「安心しろよ。この高さから落ちてもギリギリ死ぬか助かるかどっちからしいぞ」

あとやるべき事は、一つだけ。

禁書「……あの」

浜面「ほら、インデックス」

吊り下がったインデックスに、手を差し伸べる。

152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/24(月) 03:43:35.03 ID:bTON20LAO
禁書「…………」

どうもおずおずとしたインデックスはこの後に及んで自分の手を掴むのに抵抗があるらしい。

浜面「……飯はいいのか?」

禁書「うっ……」

浜面「それに俺が引き上げないとお前そのままだけど」

禁書「うぅ……」

やはり、おずおずと手を伸ばすインデックスの小さな手を浜面は掴みとる。

禁書「ひゃあっ」

浜面「うっ……」

そしてそのまま引きずり上げようとした――が、どうも無理をしすぎたらしい。格好を付けたものの、ずっと屋上に吊り下がっていた浜面の腕はそろそろ限界に近かった。

浜面「わりぃ……やっぱ自分で上がって?」

禁書「……もう」

かっこつかないんだよ。そう小さく呟いたインデックスは、自分の腕を伸ばして屋上の端を掴み、這い上がる。

先程の浜面と同じように。

地獄の底から、二人一緒に。

浜面「あ゛ー疲れた」

ドサッと、屋上に倒れこむ。疲れた。本当の本当に。

禁書「しあげは無茶しすぎなんだよ?」

その顔をインデックスが覗き込む。その顔には、今朝のような悲しそうな笑顔じゃなく、本当に、どこか安心して、嬉しそうな笑顔。

153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/24(月) 03:44:41.37 ID:bTON20LAO
浜面(…………)

この笑顔が見れたなら、まあいいか。と、浜面はそう思う。

それより

浜面「あ、今俺の名前呼んだか?」

禁書「えっ?」

浜面「呼んだよな。俺の名前」

禁書「う、うん……な、何!? 私がしあげって呼んだらわるいの?」

悪くねぇさ。と、浜面はポンとフード越しにインデックスの頭をごしごしと撫でる。

禁書「わ、わわっ」

浜面「インデックス。さっきの続きだ」

禁書「……え?」

浜面「…………」

禁書「…………」

禁書「わ……私の手を取っちゃったら、迷惑がかかるんだよ」

浜面「おかげで冷蔵庫の中身は空っぽだな」

禁書「いっぱい怪我しちゃうんだよ?」

浜面「今日は路地裏で喧嘩してきたからな」

禁書「ほ、本当によかったの?私の手を取って、助け――」

浜面「俺が助けたいって思ったんだ」

その言葉は、やっぱり少女のどこかに突き刺さったようだ。

浜面「いいに決まってんだろ」
禁書「ふぇ……」

禁書「ふぇぇぇぇぇん……」

インデックスはくしゃくしゃになった顔を浜面の胸に押し付ける。

誰にも関われなかった、誰にも接する事が出来なかったこの一年間の想いを、インデックスは今日初めて吐き出した。

浜面の硬くて暖かい胸の中で、長い長い、嗚咽と共に。
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 03:52:27.75 ID:2fMCuo6Po
ボスと忍者が見てるんだよなコレwwwwww
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 03:53:30.73 ID:bTON20LAO
よっしステイル戦終わりっ!なんとか今日中?に書き終えれた。

えーといつもレスありがとうございます。かなり活力になってるんで支援とか貰えるとすげー嬉しいです。

忙しいとか言ってる割になんかめっちゃ書いたんですけどマジで忙しくなりそうなんでペースは維持できるかわかんないっす!取り上げ2月中旬までは安定しないっす!

それでもちょくちょく書き溜めたらきます。まだまだ長くなりそうで文章も拙いけどよろしくすー

かいてきまー( ^O^)
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 03:57:32.70 ID:2fMCuo6Po
乙、マイペースでいいんじゃね?
期待して舞ってる
>>154でからかわれる仕上目録見たいってのはわがままですね
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 04:18:45.63 ID:qqkPYbFDO
乙!浜面カッコえーなー

ところでVS上条さんから薄々思ってたけど今回で確信した
ステイル、アンタの魔術問題だらけだ
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/24(月) 08:24:44.04 ID:tQANp1+AO

期待以上の泥臭い戦い方、すごく良かった!
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/24(月) 08:36:29.12 ID:kMqL44Jt0
浜面さん、マジかっけえええええ!!
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 10:07:13.99 ID:k628QS+DO
これは>>1乙と言わざるをえない
おもしろすぎる
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 12:55:43.82 ID:JJ24pEhKo
浜面△
どんだけ頭キレるんだアンタはwwwwww
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 13:36:03.22 ID:ucwELucAO
浜面やべェェェェェ!

だが、アイテムとの絡みが出るのだろうか?
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 14:04:16.64 ID:0YWWiXEx0
>>157
別にこれに文句があるわけじゃないが、ステイルの名誉の為言っとくけどな、
ルーンのカードは魔術の炎じゃ燃えない可能性だってあるんだからな!
自分は燃えないし火災報知機を避けるくらいの命令は出せるみたいだし!

まあそれはそうと乙。
やっぱ浜面はこういう泥臭い戦い方がいいな。
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/24(月) 14:33:53.17 ID:q9vu8TpP0
乙!
これ読んでたら上条さんより浜面の方が正義ってか
正しい助け方したよなって思った
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 23:01:09.34 ID:2MUcljT90
本編15巻と同じぐらい鳥肌たったよ。乙
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 01:52:32.89 ID:e7En8ho0o
でも幻想殺し使えないからペンデックス編はどうなるんだ
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/25(火) 02:33:45.93 ID:JECSaQspo
誰か半蔵黄泉川書かねーかなー(チラッ
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/25(火) 10:10:50.00 ID:CBCBNWPAO
ここで言うなよks
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 12:23:58.39 ID:8qrVgwhAO
ペンデックスが見物ですね
楽しみです

浜面ならやってくれる
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/25(火) 14:48:40.98 ID:ZhTHicm10
浜面△すぎて鳥肌がやばい
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/25(火) 15:46:45.55 ID:5luy7vZp0
某スレの木原くンが用意周到なら、こっちの浜面は臨機応変って感じだな
最近面白いスレが増えて嬉しい
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/30(日) 15:29:31.06 ID:Gb6Z5X5AO
―3―

禁書「うわぁ! すごく高いんだよ!」

と、感嘆の声をあげるのは、スキルアウトのリーダーである大男の肩に乗り、いつもと違う視点から世界を楽しむインデックスだ。

その少女を乗せる大男、駒場利得は「こまばはおっきいね」なんて笑顔で言われ、その顔に似合わず(本当に似合わない)頬を綻ばせにやにやと笑っている。

そして、その駒場に背負われてる不良少年、浜面仕上も

禁書「しあげしあげー」

なんて、頭上で楽しそうに笑う少女に名前を呼ばれ、まんざらでもない笑みを浮かべていた。

半蔵「……つかさー。よく無事に生きて帰れたよな、俺ら」

そう呟いたのは浜面を背負い、インデックスを乗せた駒場の後ろを歩く半蔵だ。その彼の着ている服は所々が焼け焦げている。

駒場「……ああ、今回ばかりはダメかと思った」

そう言葉を吐き出す駒場利得も、同じように服が焼け焦げており、その背に背負っている浜面に至っては体の至る所に火傷の痕が見え隠れしている。

浜面「……まぁ、そうだな」

その3人のボロボロの姿は、先程繰り広げた戦いの激しさを物語っていた。

浜面「でもお前らがいなきゃ確実に死んでたよ」
禁書「本当なんだよ。まさかあの魔術師を倒しちゃうなんて正直まだ信じられないくらいかも」

半蔵「つっても俺は逃げてただけだしさー」

半蔵「駒場のリーダーに至っては壁の紙ビリビリ剥がしてるだけだし」

駒場「……それは、お前の言うとおりにしただけだが」

浜面「あーまぁ助かったんだしいいじゃねぇの?」

インデックスも守りきった事だし、というのは口には出さない。

浜面(だってなぁ……ちくしょう)
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/30(日) 15:30:23.19 ID:Gb6Z5X5AO
魔術師を撃破し、インデックスに泣きつかれたあの後、事態から置いてけぼりを食らった半蔵と駒場に説明を求められるのは、まぁ自然の流れとも言えなくもない。

しかし考えてもみると、2人の目に映るのは小さな少女に抱きつかれた大の男だ。嗚咽を漏らし涙を流す少女に胸を貸し、頭を撫でている大の男だ。

禁書『うっ……ひっく……うぅぅぅ』

駒場『……浜面』

浜面『あ、いや……これは』

半蔵『お前も駒場のリーダーと同類だったのか』

浜面『ちげぇよ!?』

駒場『……浜面』

浜面『テメェもなんか優しい目で見てんじゃねぇぇぇぇぇぇ!!』

半蔵『ろr』

浜面『やめてぇぇぇぇ!!? 俺の好みはむちむちのお姉ちゃんだからそれ以上言わないでぇぇぇぇ!?』

禁書『……しあげ?』

浜面『うっ……な、なんだよインデックス、さん?』

禁書『仮にも抱きついてる女の子の目の前でそういう事いうのもどうかと思うんだよ』

浜面『へっ? いやいやお前一体俺に何を期待してんうぎゃあああああああああああ』

禁書『ぐるるるるるる』

駒場『……浜面』

半蔵『やっぱろr』

浜面『だから言うなぁぁぁぁぁぁってあっちぃぃぃぃもうなんか痛いし熱いから噛むのもやめろぉぉぉぉぉ!!?』

と、当然そんな事になり(噛まれたのは予想外だったが)浜面は、インデックスの事情を説明する前に、まず自分の今の事態を解決する事になった。

174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/30(日) 15:31:48.27 ID:Gb6Z5X5AO
それが数十分の出来事だ。

今現在、浜面は自分の住む寮に向かっている。帰っている、という方が正しいか。

駒場に背負われているのは、あまりにもその体がズタボロだった為、それと

半蔵「やっぱ信じられねー」

駒場「……魔術師、か」

事情の説明。

浜面「事実だよ。さっきの炎みたろ。超能力じゃ説明がつかない事もあった」

禁書「…………」

インデックスは嫌な顔をしたが、この2人にはある程度の事情は説明した。魔術、魔術師の存在。それに追われるインデックス。

本来なら、なんとか誤魔化して巻き込む事を避けたいところだが、浜面はそうしなかった。

先程の魔術師と対峙した事で嫌と言うほど身に染みた事だが、インデックスを追う魔術師という存在はあまりにも強大だ。

今日、インデックスを守りきり、魔術師を倒せたのは浜面が強かったわけでもステイルと名乗った魔術師が弱かったわけでもない。ただ、運がよかった。それだけ。

だから、これからの事を考えるとどうしても必要になってくる。

浜面「で、そういう訳で俺はそいつを助けた」

もし自分が倒れた時に、インデックスを助けてくれるような、インデックスが頼れるような人間が。
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/30(日) 15:32:23.07 ID:Gb6Z5X5AO

半蔵「そういう事って朝ばったり会ったって事ぐらいしか接点なくね?どんだけだよお前」

浜面「うっせぇ」

駒場「……それで、この子はこれからどうするんだ……?」

浜面「…………」

禁書「わ、わたしは」

浜面「俺が匿う」

禁書「!!」

インデックスが聞いてないと言いたげな目でこちらを見つめる。どうせ本人的にはこのあとおさらばするつもりだったんだろうが、そうはいかない。

駒場「……浜面」

駒場が重たい声を吐く。背中越しに響くその声は、続け様にこういった。

駒場「……お前がその子を助けようと思った理由はなんだ?」

浜面「…………」

駒場「……死ぬかもしれないのに、どうして助けた」

浜面「…………」

それは、もう何度も何度も浜面自身が繰り返した問いだった。インデックスを助けようと思った理由。助けた理由。体を張って守った理由。

浜面「…………」

浜面「……スキルアウトだからな」

ぼそりと、駒場にしか、自分達のリーダーにしか聞こえないようにそう呟く。

その一言で浜面の言いたい事はちゃんと伝わったようで、駒場は何かを決めたような笑みを浮かべ

駒場「そうか」

と、笑った。
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/30(日) 15:33:07.04 ID:Gb6Z5X5AO

半蔵「そういやさ。インデックス、だっけ?」

半蔵「お前どうやってこの学園都市に入りこんだんだ?」

ふぇっ?、と駒場の頭に張り付くインデックスが半蔵の方に振り向く。

禁書「私がここにたどり着いた時はおっきい門が開きっぱなしだったんだよ」

半蔵「はぁ?ったくどうなってんのさここのセキュリティー……って、そうか、昨日の落雷か」

浜面「あぁ、すげぇ雷だったもんな」

深夜の逃走劇中に落ちた雷。そういえばあの時、絹旗がとてつもなく面白い悲鳴をあげていた事を思い出す。

浜面(……今度あったらからかおう)

と、そう決意したのと駒場が呟いたのは同時だった。

駒場「……おかしい」

半蔵「はっ?なんか言ったか?」

駒場「……落雷による被害が大きすぎる」

半蔵「つーってもセキュリティーやら都市機能の麻痺、ぐらいじゃなかったっけか?」

駒場「……落雷程度でメインゲートに関するセキュリティーまで……被害が及ぶわけがない……学園都市は機密の塊だぞ」

駒場「……もしかしたら、俺達が思っている以上に……今の学園都市には大穴が空いているかもしれない」

半蔵「…………」

浜面「…………」

インデックスが不思議そうに3人の顔を見回していくなか、神妙な空気が流れていく。
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/30(日) 15:34:44.49 ID:Gb6Z5X5AO
その空気をぶち壊したのはグギュルギュギュギュルルルル〜という動物の呻き声のような音。それは浜面の頭上から聞こえる、

禁書「おなかすいた」

インデックスの腹が空腹を訴える音だった。

半蔵「……締まんねー」

浜面「はははっ、こんなもんだろ?昔ATM掻払った時とかよ」

駒場「……あの巨乳か」

半蔵「あ〜黄泉川さん何してんのかな〜」

禁書「おなかぺこぺこなんだよ……」

と、なかなか経験のない和やかな雰囲気が4人を包んだところで、そろそろ浜面が住む学生寮に近付いて来た。背負われていた浜面がここからは歩いて帰るといい、背中から降りる。

浜面「いつつ」

着いた足から全身の至る所に静電気が走るような痛み。それはインデックスが残した肘の下辺りの噛み跡にも伝わった。

浜面(腕丸呑みしやがって……)

半蔵「大丈夫かよ浜面、やっぱ駒場のリーダーに背負って貰ったほうがよくね?」

浜面「いいっての、もう近いしさ。歩いて帰るよ」

駒場「……無理はするなよ」

ああ、と返事をした所で半蔵が思い出したように口を開く。

半蔵「あー……そういやキャパシティダウンぶっこわされちまったんだった」

浜面「あぁ……車吹っ飛ばされたな」

駒場「……もう一台、初期の試作品があったはずだが」

駒場「……当分は、抜きでやっていくしかないな」

半蔵「まじかよー……なぁやっぱ演算銃器改造しようぜー超電磁砲撃てるくらいにさー」

駒場「……しつこい」

ではな。解散の合図となるその言葉と共に、駒場と半蔵は去っていく。
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/30(日) 15:36:53.56 ID:Gb6Z5X5AO
浜面「帰るぞ、インデックス」

禁書「……うん」

浜面「…………」

コツン、とインデックスの頭を軽く殴った。理由はその表情。未だに迷っている顔をした、その表情。

禁書「いたいんだよ?」

浜面「痛いんだよ。じゃねーよ。こっちはお前に噛まれたり火傷と打撲で痛いどころじゃねーんですけど?」

禁書「……ごめ」

浜面「あー!あー!違う違う。俺が言いたいことはそういう事じゃなくてだな!!?」

禁書「むー……じゃあなんなのかな?」

浜面「…………」

今更なんだよ。と、浜面は心の中でそう思う。謝るのも、そんな顔するのも、自分にとっちゃ今更だ。

浜面「寮に着いたら教えてやるよ」

そして、こんな事を口に出すのも、きっと今更だ。

禁書「な、なんなのかな!?そんな事言われたら気になっちゃうかもー!!」

浜面「ハッハーじゃあ着いてこい!!つか歩くの手伝え!正直つれぇ!!」

禁書「……本当に格好つかないんだよ」

そう言って、インデックスは浜面の手を引き、先へ先へと歩き出す。

浜面「ちょっ!もっとゆっくり歩けよ!!つかお前寮の場所なんてわかんのか!?」

禁書「舐めないで欲しいかも。ここら辺の地理ぐらいなら完璧に頭に叩き込んでいるんだよ」

浜面「マジですか……」

そういえばあのステイルと名乗った魔術師が完全記憶能力がどうたらと呟いていた気がする。どうやらそれは本当のようで……

本当のようだが、

浜面「ちょっ!まてこらぁインデックスッ!ゆっくり歩けって言ってんだろうが!!」

なぜかとてつもなく嬉しそうに笑顔で走りだしたインデックスを見ていたら、そんな事はどうでもよくなった。

浜面「だぁーっ!!マジでいてぇ!!いてぇんだよーッ!!」

今は、体中に伝わる痛みと、手にこもる小さな温もりだけを気にしておこう。

179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 15:39:08.18 ID:lzpSCHpRo
きてれぅ
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 15:44:19.30 ID:Gb6Z5X5AO
sage忘れてたoh……
とりあえずここまでー進まねー
こっからお話は一気に佳境になったりはしなくて日常パート。VS神崎もきっちりやりまっせー( ^O^)

てなわけで書いてきまー

ステイル戦読み直したら文章ボロボロすぎてくっそ恥ずかしい…
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 15:53:23.70 ID:kEFeXnBAO
>>180
ねーちんは崎じゃなくて裂だぞー

次回も楽しみにしてる!
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 19:06:08.22 ID:EbeA9NVIO
乙!
そういえば絹旗はここでは常盤台の知り合いなんだったな
魔術側のヒロインー禁書
科学側のヒロインー絹旗or御坂妹
みたいになるなら超胸熱
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 20:50:27.45 ID:5RoUpSM9o
さすが浜面、一人へヴィーオブジェクトと言われただけはあるなwwww
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 22:09:05.73 ID:qA6HIRLNo
なんかテンションあがってきた
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/31(月) 11:09:13.05 ID:5sQCIfgAO
寮の前まで着いたインデックスと浜面を出迎えてくれたのは、一匹の猫だった。

禁書「む、むむむ!?」

猫「にゃー」

見つめあう猫と猫のように体を丸めたインデックス。どこか通じ合う所でもあったのだろう。

禁書「し、しあげ!!この猫がなんだかすごく潤んだ目でこっちを見てるんだよ!」

と、猫を拾いあげ、何かを期待するような声で浜面の方を振り返る。

禁書「是非この子は教会で保護……しあげ?」

浜面「…………」

禁書「しあげ?……生きてる?」

浜面「……死んでマス」

そうか細い声でつぶやくのは地面に倒れ伏す浜面。

ただでさえ魔術師との一戦で体力も底を尽きていたというのに、先程からインデックスに引っ張られまくりの走らされまくりだった浜面は既に足で立つ力さえも残っていなかった。

禁書「しあげは本当に格好がつかないね?」

浜面「テメェちょっと遠慮なさすぎだろう……」

まったく何が嬉しくてあんなに走りまわったんだか。

溜め息を吐き、なんとか起き上がる。立つのも辛いので、その場で腰を下ろした。

186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/31(月) 11:09:59.03 ID:5sQCIfgAO

浜面「で、猫がなんだって?」

禁書「うちで保護したいんだよ!!」

浜面「本当に遠慮ねぇなテメェ!!」

インデックスと抱きかかえられた猫が浜面を見下ろす。そのインデックスの顔は先程魔術師から助けた時のような満面の笑みだった。

しかし

浜面「ダメだ」

禁書「な、なんでなのかな!?」

浜面「その猫にはもう飼い主がいるんだよ」

脳裏に浮かぶのは常盤台の少女。御坂美琴の妹。

朝はいなかった(かどうかは覚えてないが)この猫が寮にいるという事はあの後ミサカがここに来たのだろう。

もしかしたらいない猫を探してさっきまで歩き回っていたのかもしれない。

浜面「とにかくダメなもんは」

ミサカ「ミサカは別にこの猫の飼い主ではありませんが。とミサカはあなたの認識を改めます」

浜面「うおおおおお!?」

後ろから降ってきた声に驚きズザザァァァと横に滑り込む。擦り傷が増えた。

ミサカ「なかなか大げさな反応ですね。とミサカは芸人も真っ青な……おや」

187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/31(月) 11:10:53.43 ID:5sQCIfgAO

ミサカ「……ずいぶんボロボロですね。と、ミサカは先程のあなたの姿と目の前のあなたを思い比べます」

浜面「お、おぅ……ちょっと色々あってな」

禁書「そ、それより! えー……と、どちらさまかな?」

ミサカ「ミサカはミサカですが。とミサカはうさんくさいシスターに自己紹介をします」

禁書「む、むっきー! 誰がうさんくさいんだよ!!」

ミサカ「一度自分の姿を鏡で見たほうがいいかも知れませんね。とミサカは暗にその格好が場違いである事を諭します」

お前の軍用ゴーグルも充分場違いだ。という言葉を浜面はぐっと飲み込む。とりあえずこの二人を止めないと延々と続きそうだ。

浜面「あー!あー!でよ、ミサカ。猫はいたのか?」

インデックスと向き合っていたミサカの注意をこちらにそらす。相変わらず波のない、無表情で感情を感じさせない眼が浜面を捉えた。

ミサカ「ああ、そうです。その事でお話がありました。とミサカは本来の目的を思い出します」

浜面「はい?」

ミサカ「このシスターが抱いている猫の飼い主になってくれませんか。とミサカはあなたに頭をさげて頼みます」

浜面「…………」

ちなみに頭は下げていない。視界の端では、猫を高く持ち上げたインデックスの眩しい笑顔が輝いている。

188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/31(月) 11:12:10.18 ID:5sQCIfgAO

浜面「……あー、ちなみに理由は?」

そういうと同時にミサカは平坦な声でペラペラと喋りだす。先程ミサカが寮にきた時、やはり猫はいなかったという事、
先程まで猫を探し回っていた事。見知らぬ人が手伝ってくれた事、路地裏にいるのを見つけてなんとか連れ帰った事、
こういう事が今後起こらないように対策を考えていた事。

ミサカ「そこであなたの顔が思い浮かびました。とミサカは」

浜面「いやいやいやそれ別に俺じゃなくてもよくね!?」

ミサカ「ミサカの住む場所はとても猫が住んで行ける環境ではありませんし、
ミサカの体からは微弱な電磁波が常に出ていて動物に触れる事が出来ません。
とミサカは己の境遇を呪います。ああ恨めしい」

浜面「ぐぎぎ」

その顔はとても恨めしいなどと思っている表情ではない。むしろ見ようによっては口角が少し上がっている感じもした。視界の端では猫一緒に戯れるもう一匹の白い猫が見える。一生戯れていて欲しいものだ。

その一匹の白猫がむくりと起き上がり、とてとてとこちらに向かってくる。

禁書「しあげ?」

浜面「……なんだよ」

禁書「私が着ているこの服はね?歩く教会って言うんだよ」

浜面「そんで……?」

禁書「教会は迷える子羊を保護する務めがあります」

浜面「チェンジでぇ」
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/31(月) 11:13:21.74 ID:5sQCIfgAO
禁書「むむっ!しあげは私を助けたいと思ってどうしてスフィンクスは助けてあげられないのかな!?」

浜面「さりげなく名前まで決めてんじゃねぇぇぇ!!」

ミサカ「ミサカもその壊滅的な名前は承伏しかねます。とミサカは猛反論します」

ミサカ「そもそも飼う事は認めても世話をしていたのはミサカです。命名権はミサカにあります。と、ミサカは自分の権利を主張します」

禁書「じゃあクールビューティはスフィンクス以上に立派な名前があるとでもいうのかな?あれば言ってみるといいかも!」

ミサカ「そうですね……ならば」

禁書「…………」

ミサカ「いぬ、というのはどうでしょう。ミサカは提案します」

禁書「ス、スフィンクスは猫なんだよ!?」

ミサカ「猫なのに犬……ふふふ」

禁書「き、聞いてないんだよ……」

ダメだこいつら。と、既に止めようともしない浜面は溜め息を吐く。この分じゃどう転んでも飼うのは免れないだろう。

浜面(一気に同居人が増えたな……)

禁書「もっと立派な名前がいいかも!」

ミサカ「ならば徳川家康というのはどうでしょう」

禁書「誰なんだよ……」

どちらにしろ、このままでは終わりがみえない。日が暮れるまで延々とやってそうだ。

浜面「おい、お前ら……ん?」

そろそろ止めに入ろうかと思った浜面が、ミサカとインデックスの方に歩いてくる女性に気付いたのはその時だった。
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/31(月) 11:15:39.47 ID:5sQCIfgAO
「ダメだな、やはり見つからない」

女性は浜面の少し隣に立ち止まり、頭を掻き困った顔でそう呟く。

ミサカ「やはり見つかりませんでしたか。ミサカに付き合っていただいたばかりに、申し訳ございません。とミサカは頭をさげて謝ります」

名付け抗争は一度休戦になったらしい。先程と違いしっかり頭を下げているミサカの横では、インデックスが不満そうな顔をして猫を抱いている。

「いや、いいんだ。気にする事はない。それより、君が言ってた飼い主は……あのシスターさんかい?」

女性が何故だか訝しむ眼でインデックスを見つめる。気持ちは分からなくはないが。

ミサカ「いえ、ミサカが言っていたのはそこで尻餅をついている悪人面の男です。と、ミサカは密かにあなたをバカにしてみます」

浜面「テメェ……」

言い返そうとしたところでこちらを向いた女性と目が合う。印象としてはまだ若い。が、眼の下に大きな隈を作り、どこか疲れている感じのするその女性は、気だるそうに口角を吊りあげ浜面にむかってこう言った。

木山「やぁ……こんにちは。私の名前は木山春生という」

191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/31(月) 11:18:00.77 ID:5sQCIfgAO
ここまでー書いてきまー

書きためたらまたきまー

192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/31(月) 12:10:07.34 ID:6CfEei+Do

なにしてんの、木山センセww
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/31(月) 12:28:58.98 ID:mUPcESAy0

ペンデックス編が終わったらどうなるんだろうなwwwwwwww
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/31(月) 22:05:27.34 ID:7k6dyecw0
面白い
期待
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/31(月) 22:52:36.91 ID:rxhvQ1Zdo
インデックス編に木山が介入してくるとは予想外
どうなっちゃうのかマジで先が読めん・・・!
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/01(火) 00:15:40.46 ID:YcDcJJMAO
確かに浜面じゃペンデックス召喚できないもんな
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/01(火) 11:33:18.56 ID:M2Cgk/IAO

今の所介入してるのって絹旗、御坂妹、ていとくン、木山センセーぐらいか?

再構成物なのに展開がわからんぞwwwwww
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/01(火) 12:08:40.66 ID:fkGc3+vAO
面白そうしえん
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/03(木) 21:43:27.50 ID:eV2Bci5AO
ミサカ「この方が先程ミサカの猫を探すのを手伝っていただきました。とミサカは木山春生があの猫の恩人だと言うことを証明します」

「にゃー」

木山「ふふ……」

ミサカ曰わく、この木山春生という女性と知り合ったのは、猫を探して街を歩いている最中、どうしたんだ。と声をかけられたのがきっかけだそうだ。

そして事情を説明し、わざわざスフィンクス(確定かどうかはしらないが)を探すのを手伝ってもらった。

ただ、木山春生としては若干意図が違ったようで、

木山「最初は御坂美琴さんだと思って声をかけたんだが……」

ミサカ「…………」

木山「どうやら妹さんだったようでね」

木山「しかし、困っている学生を見捨てるのも忍びないし……彼女の姉には少し世話にもなっているから、手伝ったというわけさ」

そう言った木山春生は、猫を抱くインデックスを見て、何かを懐かしむように微笑んだ。

ミサカ「が、少しトラブルも発生してしまいました。と、ミサカは次なる問題に頭を抱えます」

浜面「問題?猫は見つかったんじゃ……」

ミサカ「いえ、猫は見つかったのですが……」

そう呟き、先を促すような視線をミサカに向けられた木山春生は「あー……」やら「ふむ……」やらと、中々要領を得ない呻き声を出す。

そしてまいったと言わんばかりに両の手を肩の位置まで持ち上げこう言った。

木山「車をどこに停めたか忘れてしまってね」
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/03(木) 21:45:05.14 ID:eV2Bci5AO
困っているんだよ。と、そう呟いた木山春生は肩を落とし、溜めた疲れと一緒に深く息を吐く。

どうやら猫を探し終えた後に自分の車も探し回っていたのだろう、彼女が着る白いシャツは汗で張り付き、見えたのはうっすらうつると肌の色と、肩にかかる黒いライン。

浜面「あー……」

なんとなく、目を逸らす。どうやらミサカとインデックスは自分の今の挙動不審に動く目には気付いていないらしい、心の中でホッと胸をなで下ろし、木山春生に言葉を投げかける。

浜面「まったく覚えてないのかよ。つかミサカはどこで声をかけられたか覚えてないのか?」

どうせ声をかけた時には車に乗っていたのだから、そこを把握できていれば探すのも楽だろう。と、考えたのだが、

ミサカ「いえ、ミサカが声をかけられた時は木山春生は徒歩でした。と、ミサカは数時間前の出来事を遡ります」

どうやら読みは外れたようだ。

浜面「お前に声をかける前から車探してたのかよ……」

木山「どうやらそうらしい」

額に幾筋かの汗を流し、既に気だるさを隠そうとしない木山春生は、熱を照らす太陽を恨むようかのように空を仰ぎ、シャツのボタンに手をかける。胸元を少し広げ「暑いな……」と呟いた彼女の手は何故か止まら

浜面「ってぶふぉっ!!」

禁書「な、なんでいきなり脱いでるのかな!!?」

目を逸らしていたはずの浜面が吹き出し(つまりばっちり見ていた)会話に参加する素振りさえ見せず猫とゴロゴロしていたインデックスが飛び起きた。

ボタンを外す彼女の手は何故だか止まらず、あまつさえそのシャツを脱ぎ捨て下着一枚になろうとしている。全力で目を逸らす振りをしながらも、浜面の網膜には先程うっすらと見えた肩からかかる黒のラインや起伏に乏しい胸部を包む小さなフリルの付いた――

浜面「へっ?」

ガブッと。頭に何かが噛みついた。

201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/03(木) 21:45:47.54 ID:eV2Bci5AO
目の前にはダウンジャケットを来た自分よりは少し年上だろう、少年が立っていた。

死角移動「おやおや、困りました」

フレンダ「……結局、あんたどちらさま?」

死角移動「いえいえ、命令が出てましてね」

死角移動「レベル6シフト計画を阻害する組織『アイテム』を潰せ……と命令が」

フレンダ「……暗部の人間って訳ね」

瞬時にそう理解したフレンダは買い物袋を投げ捨て戦闘体勢に入る。

フレンダ「!?」

はずだった。

死角移動「でも僕は嫌なんですよね」

背後からの声。そして後頭部に突き付けられている冷たい人殺しの道具。

死角移動「あなたみたいなかわいい人を[ピーーー]のは、ね」

フレンダ「テレポーター……」

どうこの状況を乗り切るか?フレンダは考える。何故自分が狙われているのか、何故自分達の組織が邪魔だと判断されたのか、今は後ろにいる男が言ったレベル6シフト計画とは?……さっぱりわからないが、今はそんな事を考えている余裕がないのは確かだ。

相手は空間移動能力。自身を移動出来るという事は恐らくレベル4だろう。対して自分はレベル3、しかも能力の相性が微妙に悪い。
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/03(木) 21:47:17.83 ID:eV2Bci5AO
>>201
ぶっふぉぉぉぉぉぉ貼る奴間違えたあああああああああああああああ
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/03(木) 21:49:43.77 ID:eV2Bci5AO
浜面「いだぁぁぁぁぁぁ何すんだてめぇぇぇぇ!!!」

禁書「ひぃあげはみひゃだめなんらひょ〜!!」

言葉になっていない。

噛みついているのだから当たり前だろう、インデックスの言った事を理解する間もなく、浜面は噛みつかれたままゴロゴロと、まるで先程猫と戯れていたインデックスの様に、砂埃をたて地面を転げ回る。ただし、戯れているのは猫ではない。白いシスターだ。

浜面「離せてめぇぇぇぇこれ以上俺に傷増やすんじゃ」

禁書「やっはぁりひぃあげはおふぇしゃんのひょうがしゅひなにょかにゃ〜〜!!」

浜面「口にモノいれたまま喋んじゃねぇぇぇぇ!!」

視界の端では地面と交互に、ミサカと木山春生が映り、ミサカが服を着る事、男性の前では服を脱がないほうがいい、などの事をやんわりと促している。

浜面(ちくしょうっ!)

浜面が何故だかそう心の中で叫びたくなったのは、誰にも責められやしないだろう。

204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/03(木) 21:50:07.74 ID:DyFRUg9so
だいじょうぶ、わたはそんな>>1のストーリー構築能力を信じてる
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/03(木) 21:52:10.34 ID:eV2Bci5AO

禁書「その車なら見覚えがあるんだよ。場所もはっきりわかるかも」

事態を収束させたのは、インデックスのその一言だった。

地面を転げ回り、更にボロボロになった浜面は既に座ろうともせず、仰向けになり寝転がっている。決して先程偶然チラリと見えたミサカのスカートの奥の小さな逆三角形を覗き見る為ではない。決してない。

木山「本当かい?車の特徴を言っただけなんだが……」

禁書「うん。らんぼるぎーに? っていうのはよくわからないんだけど、きやまの言った青い二人乗りの車なら逃げてる時にそっくりなのを見たんだよ」

木山「…………」

木山春生が困惑という言葉がぴったりの表情を作り、浜面を見下ろす。説明を求めているのであろう事を察した浜面は、誰に言われるでもなく口を開いた。

浜面「完全記憶能力ってのがあるらしいんだ。ソイツ」

それがどういうモノなのかはよく知らないけど、と口にだす前に木山春生は「なるほど」と呟き、インデックスに目線を合わせ向かい合う。

木山「なら、君は……私の車の場所がわかるのか?」

禁書「それぐらい楽勝かも。見てないモノはわからないけど、一度みたモノなら忘れる事なんてないんだよ!」

そう言い切り、ない胸を張るインデックスに対して木山春生は優しく笑う。浜面の通う学校の担任がよく浮かべる、まるで生徒を見守る先生のような笑みだった。

206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/03(木) 21:53:44.87 ID:eV2Bci5AO
木山「ならさっそく案内をして……いや、今日はやめておこう」

木山「彼もボロボロのようだしね、明日なんてどうだい?」

わかったんだよ!と安請け合いするインデックスはきっとついさっきまで魔術師に追われていた事なんて忘れているに違いない。

と、言いつつ、実際浜面も心のどこかでは炎の魔術師を倒した事で安心していた。インデックスは無事に助けだしたし、あの魔術師も15m程の高さから引きずり落としただけだが、生身の人間にとっては重傷だろう。当分は追ってこれないはずだ。

浜面(……まぁいいか)

仰向けに倒れている浜面の視界には空が広がってる。

明日は雨が降るらしいその夏空には雲が緩やかに流れており、その雲の隙間から降ってくる目を焼く程の太陽光が浜面の体に熱を持たせる。

あまりの眩しさに目を瞑った。

ふっ、と自身の体を影が覆った事に気付き、瞼を開く。

視界に映ったのは、太陽でも空でもなく。それを背景にしたミサカ。一様でない風がミサカの髪とスカートを揺らしており、ついつい目線が揺らいでしまう。

ミサカ「これを」

と、言ったミサカが差し出してきた手に握られていたのは、いくつかの封筒。浜面は腕を伸ばして、それを受け取る。かすかに触れた手の感触は、ゴツゴツした自分の手とは違い、温かく、柔らかい女の子の肌。

浜面「なんだよこれ」

ミサカ「最近巷を騒がしているマネーカードというものです。と、ミサカは無知なあなたに説明します」
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/03(木) 21:55:12.44 ID:eV2Bci5AO
猫を探している時に路地裏でいくつか見つけたらしいその封筒の中には多すぎると言える程の現金。そう言えば都市伝説か何かでそんなものがあった気がする。

浜面(脱ぎ女ってのもあったけど……まさかな)

今もインデックスと楽しそうに話をしている木山春生の奇行を思い出す。うすらぼんやりと黒い下着を思い浮かべ、少し口角がつり上がってる浜面をよそにミサカは言葉を続けた。

ミサカ「猫の餌にでも使ってください、とミサカはその封筒をあなたに託します」

浜面「お、おお。でもいいのかよ?お前が見つけたんだろ?」

ミサカ「…………」

どうせミサカが持っていても使い道はありませんから。

浜面「…………」

今、ミサカが少し寂しそうに感じたのは、多分そのぽつりと呟いた言葉のせいだろう。

向かい合うミサカは、いつも通りの無表情、いつも通り抑揚のない声、いつも通り(かは知らないが)の青と白のストライプの下着。

いつも通り。

浜面(……何言ってんだ俺は)

いつも通りのミサカなんて、自分は知らない。超能力者の妹という立場にいるミサカの事を、浜面仕上は何一つ知らない。

知っているのは、

浜面「なぁ、結局猫の名前はどうするんだよ」

ミサカ「そうですね……シュレディンガーというのは」

浜面「……それは猫に対して禁句だ」

どうやら動物が好きなのかも怪しくなってきた。

208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/03(木) 21:57:12.41 ID:eV2Bci5AO
そういえば、と呟いたミサカによって話題が変わる。視線は木山春生と楽しそうに話すインデックスに向いていた。

ミサカ「あの少女とシスターのコスプレはあなたの趣味ですか?ミサカは一歩引きつつあなたの歪んだ性癖を確かめます」

浜面「ねぇよ」

別に誘拐してきたわけでもないからな。と、釘を刺す。

ミサカ「そうですか」

ミサカ「……なら用の済んだミサカはそろそろ帰るとしましょう。と、ミサカは今後の予定が詰まっている事を思い出します」

浜面「ん……たまには猫の様子も見にこいよ」

禁書「ん? くーるびゅーてぃは帰るのかな?」

雰囲気を察したのだろう、シュレディンガー(もうどうにでもなれ)を抱いたインデックスがミサカの側に寄ってくる。

ミサカ「はい、いぬの事はよろしくお願いします。と、ミサカは頑なにシスターが付けた名前を否定します」

禁書「むむ!スフィンクスはスフィンクスなんだよ!」

どうやら名付け抗争はまだつづくらしい。インデックスの後ろでは木山春生がどこか懐かしいものを見る目で微笑んでいた。

ミサカ「今日は手伝っていただきありがとうございました。と、ミサカは頭を下げます」

木山「いや、いいんだよ……」

それに、と木山春生が続ける。

   ・・
木山「妹達にも興味があったからね」


209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/03(木) 21:58:56.77 ID:eV2Bci5AO
ピクリとミサカの肩が震えたのは、その場にいた誰も気付かなかった。横たわる浜面仕上も、猫を抱くインデックスも、木山春生とミサカを覆う雰囲気がガラリと変わった事には、気付かない。

木山春生の表情は浜面やインデックスが知らない本職のそれになっていたし、ミサカの表情も――

ミサカ「関係者ですか、とミサカは義務としてコード提示を促します」

木山「いや、私は関わっていないよ。ただ」

御坂美琴や君達の存在はたくさんのヒントをくれたんだ。

そう言った木山春生の口元は、インデックスと向かいあっていた時のものとは明らかに違う。

木山「しかし驚いたよ。話かけてみたものの……まさか猫探しとはね」

ミサカ「ミサカが猫を探していたら、おかしいですか?」

木山「いや……そういう事じゃないんだ。噂では人形のように感情もないと聞いていたからね」

小さく呟いて進むその会話は、浜面達には聞こえない。聞こえたとしても理解できない類いの会話だ。

木山「猫を探し、名付けに必死になる君はまるで人間のようだったよ」

まるで何かを否定するかのような言葉が。静かに投げかけられる。

ミサカ「……ミサカは」

木山「ああ、そうだ」

ふと、本当にそれはなんとでもないと言う風に木山春生は目の前の何かに訪ねた。

木山「君の番はいつなんだい?」

ミサカ「…………」

ミサカの虚ろな目が揺れる事はない。それはまっすぐ木山春生に向かっている。

会話のない、視線の応酬にようやく違和感を感じた浜面が体を起こした。インデックスもぼんやりとミサカを見つめている。

ミサカ「……失礼します。とミサカは足早にこの場を去ります」

浜面「あ、おい………いっちまった」
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/03(木) 22:00:13.53 ID:eV2Bci5AO
木山「……私も帰るとしよう。明日の昼にでもまたくるよ」

ミサカがこの場から去ったのを不思議そう見つめていた木山春生も、続いて歩き出す。

浜面「つうか車ないのに帰れんのか?」

そもそもの疑問だ。探していた車がない以上、どうやって帰るのか。

木山「ああ、電車でも使うさ……車も明日戻ってくれば充分間に合う」

では、また会おう。そう言って木山春生も寮を去る。残ったのは、二人と一匹。

浜面「はぁ……」

なんだか魔術師との一戦より、家に帰るまでがどっと疲れた気がする。さっさと部屋に戻りたいところだが、こうボロボロになってはたどり着けるかどうかも怪しい。

浜面「…………」

禁書「……しあげ? どうしたの?」

浜面「……あ、いや」

ふと、感じた違和感を頭の隅に追いやる。とにかく今は部屋に戻ろう。

禁書「しあげ。はい、手」

浜面「……ん」

当たり前のように差し出されたインデックスの小さな手を握り、立ち上がる。引っ張ってしまわないように足に力を込め、

浜面「おっとと……」

よろけた。

禁書「しあげは本当にかっこつかないんだよ」

浜面「お前にガジガジ噛まれたからな。たっく、手を丸ごと飲むなよ」

禁書「それはしあげのじごーじとく!」

朝にも聞いた。というのは言わないでおこう。ああいえばこういいそうだ。

今はとにかく、

浜面「帰るか」

禁書「うん!」

「にゃー」

211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/03(木) 22:05:44.58 ID:eV2Bci5AO
>>204これは流石に……/(^O^)/なんたるミス

とりあえず今日はここまでーたまに背伸びして文章書くとこれだよ!なんか表現くどかったかすいますん

なかなか進まんすー神裂戦まで結構かかりそう。とりあえず次もキリのいいところまで書けたらきます!かいてきまー!

>>201はあまり突っ込まないでやってくらはい……いつか書く奴です
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/02/03(木) 22:08:14.16 ID:fUXfEUlp0
>>200
>>起伏に乏しい胸部を包む小さなフリルの付いた――

一番のツッコミところは間違いなくここだと思うんだ。
間違いなくここだと思うんだ。
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/03(木) 22:37:11.00 ID:EgDM5dxho
>>212
小さなフリルですね 分かります
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/02/03(木) 22:56:26.11 ID:fUXfEUlp0
>>213
そこじゃねえんだよ!そこもだけどそこじゃねえんだよぉぉぉォォォ!!
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/03(木) 23:13:14.44 ID:5Zp/a8hAO
木山センセはそんなにスタイル悪くないと思います!
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/03(木) 23:40:58.79 ID:eV2Bci5AO
いや、ほら、超電磁砲で本人も起伏云々言ってるしさ……ね?
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/04(金) 00:17:32.19 ID:MyfYF8gAO
さすがに一方通行は上条さんが倒すのかな?
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/04(金) 08:27:04.00 ID:p0kx8BaAO
ていうか一方さんでるのか?むしろ上条さんでるのか?
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/04(金) 08:57:52.22 ID:MyfYF8gAO
妹達出るなら少なくとも一方通行は出るかなーって思って…
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/04(金) 09:00:06.37 ID:FUrLx46F0
一方さんが例の計画を進めているのはまちがいなさそうだな。
浜面の性格的に介入するかはわからんが、反射をぬける手段がない以上
勝てるビジョンが思いつかん。
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/04(金) 09:03:04.03 ID:UzzZgj8oo
しかし浜面の主人公補正は全キャラ中最強だしな
どんなご都合主義な勝ち方でも「浜面ならしかたないか・・・」になる
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/04(金) 09:06:06.81 ID:yFsp8+9DO
主人公補正(笑)とか言っちゃう人ってまだいるんだ
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/04(金) 09:13:00.11 ID:Z6hkTcZg0
他に適当な言葉ないからなぁ。
「絶対幸運」とか付けちゃう?
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/04(金) 09:54:19.98 ID:FUrLx46F0
個人的に麦野との一戦目とダークマター物質使用兵士戦は実力だと思う。
ここのステイル戦も実力で面白かったからできればこの二次創作では
あまりご都合主義は使わないでほしいな。ある程度は必要だろうけど。
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/04(金) 16:41:35.00 ID:oF9SKPdAO
>>224
言いたい事を言ってくれた
さて、待とう
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/06(日) 23:44:26.95 ID:rJ8RummAO
基本的にあまり露骨なご都合主義はいれないつもり。
だけど一部分だけはちょっと趣味でやりまくる。はまぁ半お楽しみって事で。基本的にここの浜面は根性と実力と発想力で頑張るよ!

今日はたくさん書けたーって事で投下。
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/06(日) 23:45:21.18 ID:rJ8RummAO
禁書「汚いんだよ……」

と遠慮もなく言い放ったインデックスの目の前に広がるのは、洗い終わっていない食器や脱ぎ散らかした服、魔術側の自分には用途がわからない機械類や書物が積み重なっている――つまりは汚い一人暮らしの、つまりは浜面仕上の部屋だ。

朝の時点ではすぐに出て行くつもりだった故にあまりそこら辺は気にしなかった(食べ物ももらったし)インデックスだが、戻ってきて、なおかつ(図々しい話だが)居座るとなると話は別になってくる。

やれ魔導図書館や10万3000冊などと言われようが、インデックスは年頃の女の子なのだ。気にしたとして、それは何の違和感もない。

禁書「汚いんだよ……」

浜面「聞こえてるっつうの……」

禁書「〜しあげ!! これは驚異の汚さなんだよ!? もしかしたらこの散らかりっぷりのせいでなんらかの魔術的要素が重なって大魔術が発動しちゃったらどうするつもりなのかな!?」

浜面「安心しろ。今年は虫が湧いてない」

そ、掃除すべきかもっー!と喚くインデックスをはいはいとあしらって腰を落ち着ける。一人暮らしの寮生活などこんなものだ。どうしたって散らかってしまう。

禁書「あっ、スフィンクス!」

「にゃー」

と、インデックスの懐を飛び出した猫(結局名前は決まっていない)は部屋中を彷徨いて安住の地を定めたようで、今はベッドで丸くなっている。主人(暫定)に似てなかなか図々しいようだ。

禁書「ダメなんだよスフィンクス! そんなところで寝たらしあげの臭いが移っちゃうかも!」

浜面「おい」

「にゃー」

強情な所はどっちに似ているのだろう。猫は布団の上から動こうとせず、ゴロゴロと喉を鳴らしていた。

浜面(なんかすげー平和……)

今日1日の事が過ぎ去った台風のように思えるぐらいに、のほほんとした日常が部屋を覆っていた。実際問題それは過ぎ去っておらず、言うならば今は台風の目の中にいるという状態なのだが、それに気付かない浜面はほんのささやかな気持ちに浸りながら、服を

禁書「ってひゃぁぁぁ!? な、なんでしあげまで脱いでるのかな!? ま、まさかきやまのあれが移ったのかも!?」

浜面「ばーか、傷の手当するんだよ。お前も手伝え」
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/06(日) 23:46:52.50 ID:rJ8RummAO
禁書「うぅ……」

ついさっき、もろに下着が丸見えだった木山春生をさりげなく凝視しようとしていた自分の事を思い出す。あの時の自分は目の前にいるインデックスと同じ様にチラチラと目を動かしていたのだろうか。

浜面(……なんで俺噛みつかれたんだ?)

ぼんやりとした頭で考えつつ手を動かす、ベッドの下に突っ込んでいた薬箱の中から取り出したのは、霧吹き消毒液、ガーゼに包帯。

禁書「しあげ……なんだかふらふらしてるのかな?」

浜面「ん、あぁ……そうか? わりぃ――ふわぁぁあ」

消毒液をインデックスに渡し、そう言いかけた所で出る欠伸。そういえば、絹旗に付き合わされたおかげで、昨日から一睡もしていない事を今思い出した。

浜面(ほんと、こんな状態でよく倒せた――ッ!?)

浜面「ッいってぇぇぇぇぇぇ!!!」

走る激痛、消し飛ぶ眠気、響いた声に跳び驚く猫と、浜面の端できょとんとしているインデックス、その手に持つのは霧吹きタイプの消毒液。ちなみに薄めてガーゼに当てて使う学園都市製。

浜面「ばッッッッかかテメェェェいきなり原液吹きかけてんじゃねぇぇぇ!」

禁書「む、むむ!? いきなりこんなもの渡されちゃったら勢い余っても仕方ないんだよ」

浜面「わかんねぇもん人に向けて吹きかけんなぁ!!」

やいややいやと、猫の鳴き声を挟みながら一気に騒がしくなる学生寮の一室。こんなのもいいかもな、とふと思った浜面が静かになったのはインデックスが投げた消毒液が傷を直撃したせい。中身が飛び出さなかっただけ上等だろう、と思う事にする。が、

浜面「[ピーーー]気かテメェェェ……」

恨み事の一つは吐いておく。流石のインデックスもピクピクとうずくまる浜面には、申し訳ないと感じたようで一言「ごめんなんだよ」と呟き、数分後には傷の手当を手伝ってもらう浜面、傷の手当を手伝うインデックス、二人の姿がそこにあった。

229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/06(日) 23:47:53.57 ID:rJ8RummAO
浜面「にしてもさ……いや、勘違いかもしれないんだけどよ」

手当を終え、比喩でもなく指先から体の至る所まで包帯を巻いた浜面がそう呟いたのは、手当の際に感じた違和感が原因だった。考えてみれば今日1日違和感だらけだな、と心の中で苦くわらう。

禁書「んー?なんなのかな?」

浜面「能力で生み出した炎と魔術で生み出した炎ってのは違いみたいなのはあるのか?」

禁書「ん……私はここでの能力っていうのがどういうものなのか知らないから厳密には答えられないかも」

浜面「あー……そうだな」

本当に今更ながらの説明、この学園都市がどういう場所でどんな場所なのか、学生の頭を開発している事、230万の能力者がいてその6割が無能力者だという事、開発をする事で発現する能力、自分だけの現実、思い込む事で異能の力を発現させる事、それら順を追って説明していく。

浜面「まぁそんなとこか」

禁書「ふぅん……つまり、ここでの能力っていうのは全部が全部科学で説明できちゃうわけなんだね?」

浜面「そういうこった」

まぁ、こんな事は学園都市に住む自分には常識であって、常識であるにも関わらず関係の無いことだ。

禁書「あ、しあげはどんな能力があるの?」

浜面「…………」

無能力者の自分には関係ない。
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 23:49:38.72 ID:rJ8RummAO

禁書「ま、まさかなんの能力もないのに魔術師を倒しちゃったなんて馬鹿げた事はいわないんだよね!?」

浜面「おぉ。あんな奴能力なんざ無くても楽勝だったぜ?」

能力なんてなくても、自分は、この少女をたすける事が出来たんだから。

禁書「…………」

インデックスのその顔は驚きのそれ、気のせいか猫も目を見開いて同じ表情をしている。やはり主人に似るようだ。

す、すごいんだよ……とインデックスが小さく呟いたのは数十秒後、信じられないんだよ、バケモノ?などと猫とひそひそ話をしているあたりどうやら自分はよほど凄い事を成し遂げたらしい。

浜面「まぁすげー奴なんていくらでもいるけどさ、この街の頂点に立つlevel5とか」

禁書「れべる……ふぁいぶ?それってすごいのかな?」

浜面「すげーなんてもんじゃねぇさ、なんせ38万分の1の天才だからな」

禁書「……?」

浜面「ようはそう何人もいないんだよ……っていうか科学側の話はどうでもよくてだな。」

話を戻す。

禁書「う、ん……魔術っていうのは簡単に言うと、異世界の法則を無理矢理この世界に適用して能力を発現するんだよ」

浜面「…………」

全然わからねぇ、とは言わずに黙って聞いていたのだが、どうやら顔に出たらしい。
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 23:50:27.45 ID:rJ8RummAO
禁書「つまり、炎は炎でもそれを発現するまでの道筋が違うっていうのかな?」

禁書「同じような炎でもこの現実世界で作れる炎とは全くプロセスや基が違うんだよ」

浜面「あー……つまり魔術で創られた炎と燃焼の原理で燃える炎は同じ炎でも全く違う炎……ってわけでいいのか?」

禁書「ちょっと違うけどまぁ間違ってはないかも……けどどうして?」

浜面「…………」

違和感。

指先から体まで、至る所に包帯を巻かれた浜面の体は、違和感を感じていた。

浜面は今日炎の魔術師と対峙した。辛くも勝利を収めたが、その傷は体中に残っている。服はボロボロだし、髪の一部は焼け焦げた。頬や、炎が掠った脇腹は裂傷や火傷の痕が痛々しい。

しかし、傷はそれだけではない。浜面は魔術師と邂逅するほんの数時間前にも、別の能力者と戦っていた。

炎を操る能力者と。

浜面「なんつうかさ、違うんだよな。超能力の炎で受けた傷と、魔術の炎で受けた傷のさ、感触っていうか」

じわじわする。とでも言えば正しいか、とても奇妙な感覚が浜面を襲っていた。

それは今まで自分が路地裏の喧嘩と言えど能力者達と泥臭い戦いを繰り広げ、傷を負ってきた経験があってこその感覚。

気持ち悪い。

禁書「な――ッ」

浜面「へっ?」

しまった。口に出していた。と、気付いた時にはもう遅い。
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 23:51:13.00 ID:rJ8RummAO
禁書「い、いいいくらしあげでも今のは聞き捨てならないかも!!!仮にも魔導書の禁書目録である私を目の前にして気持ち悪いとかどういう事なんだよ!!?」

見たことのないような剣幕、先程じゃれてた時のそれとは違い、本気でインデックスの底の底にある何かに触れてしまったのだろう。そう思うくらいの怒鳴りっぷり。

浜面「い、いやいやいや魔術を否定してるわけじゃなくてだなッ!!!」

禁書「な、なに!? 超能力ってそんな万能なの? 超能力は黄金練成みたいに世界を歪め、御使堕しみたいに世界を壊し、天体制御みたいに世界を滅ぼす力があるっていうのかな!?」

浜面「い……いや、そんなすごい力は聞いた事ないけど」

ていうかそんな事できんのかよ魔術。すげーな魔術。

禁書「歩く教会みたいに物理、魔術……きっと超能力だって触れたら吸収して無効化しちゃう霊装や、世界に20人もいない聖人を一撃で殺しちゃう霊装や、対象の魔力を糧にして条件付け束縛なんて呪いのよう事ができる霊装だって! 超能力なんかでなんとかなったりするっていうのかな!?」


浜面「い、いや……」

禁書「そんなッ!!」

と、インデックスの言葉が止まる。まさに噛みつかれる瞬間、と思い身構えていた浜面は

浜面(……あれ、なにもこない)

うっすらと目を開け――

浜面「…………」

目の前にいたのはインデックスだった。

自分が必死に助けようとした、助けてくれようとしたインデックスだった。

今にも泣きそうなのを堪え、唇を噛み締めるインデックスだった。

浜面「……おまえ」

禁書「そんな魔術を……10万3000の魔術を抱える私にたいして……しあげは」

ひっ……ひっうぅ

ほんの数時間前に聞いた嗚咽とはまったく違う種類のその声が、インデックスの小さな体から漏れる。同じように歩く教会の袖で涙をゴシゴシとこするこの少女の姿は、あまりにも小さい。

浜面「……わりぃ」

向かい合っていたインデックスの肩に腕を回し、引き寄せる。

浜面「別に魔術がどうこう言いたいわけじゃないんだ。その……なんつうのかな」

禁書「……ひっ、うぅ」

嗚咽は止まらない。腕に抱く少女は嗚咽を少しでも堪えようと俯き、肩を揺らす。

浜面「すまねぇ」

233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 23:52:28.59 ID:rJ8RummAO

考えてみれば浜面はインデックスの事情を何も知らなかった。知っている事と言えば、魔術師なんてオカルトな連中に追われ、頭の中にある10万3000の魔導書を狙われ、大食らいで、図々しい、そして、

禁書『私の名前はね、インデックスって言うんだよ』

名前ぐらいだ。

知らなかったとは言え、浜面はそんな少女のタブーに触れた。多分、心の中を土足で入った。

浜面(テメーは馬鹿か浜面仕上。助けようと思ったんじゃねぇのかよ)

この腕に抱く少女を、自分みたいなクズを、自分みたいな無能力者を助けようとしてくれたこの少女を、当たり前のように手を差し出してくれたこの少女を、

浜面「――ッ」

まだ足りなかったんだ。と、浜面は思い直す。たかが魔術師一人相手にして、何かが変わった気になっただけじゃ、全然足りない。

この少女を助けようとするなら、なんとなくじゃだめだ。抱えようとするなら曖昧じゃだめだ。

浜面「なぁ」

禁書「っひ……ふぇ?」

顔をあげたインデックスの瞳はとても濡れていて、鼻も赤い。

浜面「おまえが抱えてるもん俺にも寄越せ」

禁書「……え?」



そこから先は、インデックスの独白。

魔術師を倒した時には吐き足りなかったらしい、溜めに溜まったその言葉と嗚咽は、まるで自分の罪を告白するかのように、まるで自分を吐き出すように、淡々と、そして延々と続く。

一年前からの記憶がない事、イギリス清教、必要悪の教会、魔術、汚れ、魔導図書館の存在理由、インデックスを追う魔術師の目的、魔神。そして

浜面「チョップ」

禁書「あうっ」

痛いんだよ……と頭をさするインデックスに浜面は言う。

浜面「おまえの事情は大体わかった」

禁書「むー……じゃあ今のチョップはなんなのかな?」

浜面「あほ、言う事聞かなかった罰だ」

きょとんと、何をいってるんだろうこいつはと、そんな顔。魔導図書館とか謳いながらもやはりまだまだガキのようで、言葉の意味もよく理解できてないらしいと判断した浜面は、もう一度、まっすぐに濡れた瞳を見て言い放つ。

浜面「おまえの抱えてるものを俺にも寄越せ」

禁書「…………」

浜面「…………」

禁書「ひっ……ぅ」

またも、嗚咽。比べものにならない程小さな声で呟いたのは、一言。

禁書「こわかったよ」
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 23:53:37.74 ID:rJ8RummAO
路地裏で目を覚まして、自分のこともわからなくて、にげなくちゃって、昨日の晩御飯も思い出せなくて、なんで記憶がないのかもわからないし、なのに魔術師とか禁書目録とか必要悪の教会とかそんな知識がぐるぐる回って、変な2人組に何度も何度も何度も襲われて、ずっとずっと、ひとりで逃げて、逃げて逃げて逃げて、味方なんて誰もいない毎日ひとりで走って走って走って、なんどもなんどもなんどもなんどもなんどもなんども

禁書「こわかったよぉ!!」

その叫びは少女のこの一年間だった。浜面に出会った今日までの、一年間の全てだった。

そう叫んで涙を流す小さな少女をそっと腕に包む。言葉はいらない。インデックスの吐いた荷物は全てとまでは行かないが自分も抱える事ができた。

この少女の背にのしかかっているとんでもない量の何かを少しでも肩代わりできただけで。今はそれだけで充分かな、なんて

浜面「…………」

そう思った。



235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 23:54:58.35 ID:rJ8RummAO
ピンポーン。

浜面「……ん?」

チャイムが鳴ったのは、泣き疲れたインデックスが眠りについた後だった。どうやら今は空腹より睡眠が優先されたらしい。

頬に涙の流れた後が残っているも、どこか幸せそうな顔で眠るインデックスに布団をかけ、立ち上がる。

ピンポーン。

と、またチャイムが鳴った。

浜面「へいへーい」

ドアに向かい扉を開ける。

「ったく、遅い! 一度チャイムを鳴らしたらさっさと出なさい浜面仕上!」

開けたそばから飛んできたのは、甲高い女の怒声。

浜面「あー……」

目の前の女には見覚えがある。着ている制服は浜面が通う学校指定の制服だし、クラスも同じだ。
どこの学校にも絶対にいるムードメーカー的存在、たしかデルタフォースなんて呼ばれている3バカとやたら連んでいる女委員長。名前は――

浜面「あー……吹寄、だっけ?なにしにきたの?」

236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 23:56:52.18 ID:rJ8RummAO
吹寄「〜〜ッ!」

浜面「うおっと」

ドサッ、と腕に押し付けられたのプリント類。どうやら長らくサボっていた補習やなんやらで溜まったプリントを届けてくれたようで、腰に手を当てた吹寄は「どうしてあたしがこんな事を……」などと、ぶつぶつ呟いている。

吹寄「大体、貴様もサボってばかりではなくて補習ぐらいきなさい!」

浜面「あー……すまんです」

浜面は武装無能力集団などと呼ばれている組織に属してはいるが、そもそもスキルアウトと呼ばれる者の多くは、寮に住んではいるが学校には通わない者や、学校には通っているが夜になると行動を開始する者が大半だ。

浜面もその一人で(学校はサボリがちだが)簡単に言えば不良やチンピラという表現が近い。
吹寄「本当に、小萌先生も嘆いているわよ。貴様が来ないせいでクラス全員が揃わないとね」

浜面「それはちょっとキツいな。良心的に」

なんとなく流しつつ渡されたプリントを捲っていく。AIM拡散力場やらパーソナルリアリティ等げんなりする単語ばかりのプリントに早くも頭痛がしてきた。

浜面「発火能力専攻の補習プリント……燃焼の原理なんて中学でならっただろ」

吹寄「あら、貴様は中学レベルの教養すらないと思ってたけど。見た目からして」

浜面「どんだけ下に見てんだテメェ!!!」

よく見ると火の危険性や爆発の原理まで載っている。どう見ても化学のプリントだ。

吹寄「まぁ小萌先生は発火能力専攻だから、その補習課題をクリアしたら単位はくれるわよ」
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 23:57:57.89 ID:rJ8RummAO
せいぜい頑張りなさい、と終始高圧的な委員長様が背を向ける。

吹寄「あ、そうだ」

浜面「あぁ?」

吹寄「3日後の補習の話は聞いているかしら」

補習、補習、と頭を巡らせ半蔵との会話を思い出す。そういえば数日前にもロリ先生、もとい小萌先生から連絡があった。

浜面「あぁ……そういえば」

吹寄「その補習は来なさいよ。私達無能力者は強制参加だから」

ちなみに学校のセキュリティー端末が落雷の影響で壊れているので個人用のIDカードを持って来ること、らしいが行くつもりはない。意味のない補習なんて行ってたまるか。

吹寄「来なさいよ?」

浜面「へいへーい」

と、またもや軽く流し、今度こそ帰るのかと思いきや、

吹寄「ねぇ」

浜面「ん? まだなんかあんのかよ」

吹寄「どうして貴様はそんなにボロボロで包帯ぐるぐるなのかしら」

浜面「ん、あー……ちょっと喧嘩してな」

吹寄「……まったく。あまり危ない事はやめなさい浜面仕上! あたしも小萌先生もクラスメイトが減る事を望んでいないわ」

そう言った委員長は手に持つ鞄をごそごそとかき回し、小さな布袋を投げつけた。

浜面「と、重たッ!? なんだよこれ。……もってるだけで傷の治りが早くなる魔法の鉄塊?」

鉄から出る謎の電波は疲労や肩凝りにも効くらしい。胡散臭さの塊という言葉がぴったりすぎる鉄塊が入った袋だった。

浜面「……なにこれ」

吹寄「貴様は字も読めないの?中学以下の教養しかないみたいね」

浜面「…………」

こんな怪しさ100点満点の商品を買うような女に中学以下と言われても悔しさの欠片も感じない浜面である。

238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 23:58:42.05 ID:rJ8RummAO
浜面「つうか何?おまえこういう怪しい商品好き好んで買っちゃう人?レベルアッパーとかに手だしてねぇだろうな」

その言葉を聞いてのけぞる吹寄制理を見る限り、自分は相当露骨に胡散臭さを見るような顔をしていたらしい。

吹寄「そ、それは都市伝説でしょう!?」

ちょっとは興味があるけど……なんてぼそぼそと囁く声が聞こえる。おい。

吹寄「な、何よ。あたしの部屋が怪しいアイデア調理器具や埃が被った通販商品でいっぱいになってようが貴様には何も関係ないじゃない!」

とにかくそれはあげるから! さっさと傷を治して補習は来なさい!!

と、顔を赤くしてそう叫んだ吹寄はやっとの事帰っていった。

いつもは固いと噂されるあの女の取り乱した姿が見れた事でも儲け者か、と。そう思い、ズシリと質量を感じる鉄塊を握りしめる。

浜面「まぁ、貰えるんなら貰っとくか」

補習は行かないけど。

239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 23:59:08.88 ID:rJ8RummAO
浜面「つうか何?おまえこういう怪しい商品好き好んで買っちゃう人?レベルアッパーとかに手だしてねぇだろうな」

その言葉を聞いてのけぞる吹寄制理を見る限り、自分は相当露骨に胡散臭さを見るような顔をしていたらしい。

吹寄「そ、それは都市伝説でしょう!?」

ちょっとは興味があるけど……なんてぼそぼそと囁く声が聞こえる。おい。

吹寄「な、何よ。あたしの部屋が怪しいアイデア調理器具や埃が被った通販商品でいっぱいになってようが貴様には何も関係ないじゃない!」

とにかくそれはあげるから! さっさと傷を治して補習は来なさい!!

と、顔を赤くしてそう叫んだ吹寄はやっとの事帰っていった。

いつもは固いと噂されるあの女の取り乱した姿が見れた事でも儲け者か、と。そう思い、ズシリと質量を感じる鉄塊を握りしめる。

浜面「まぁ、貰えるんなら貰っとくか」

補習は行かないけど。

240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/06(日) 23:59:53.84 ID:rJ8RummAO
間違えた。ピー音も入っちゃうしなちくせう。

続けます
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/07(月) 00:01:28.38 ID:prPtU0lAO
受け取ったプリント類と通販商品(多分)をもって部屋に戻る。先ほどより落ち着いたインデックスと、その側には猫が丸くなって静かに寝ていた。

結果、がら空きになったベッドに体を沈め、目を瞑る。やっと落ち着けた気がした。

浜面「……ん」

と、同時に襲いかかる眠気。

密度の濃い今日1日の事を振り返り、この部屋に戻る前に浜面の頭に浮かんだ違和感の正体に気付いたのはその瞬間。

浜面「あー……」

浜面(俺、あいつと普通に喋ってた、よな?)

ミサカ。常盤台の能力者で、超能力者の妹。

対して自分はレベル0で、スキルアウトのおちこぼれ。

ずっと感じていた壁は――

浜面「…………」

顔を横に動かし、猫のように丸まって眠るインデックスを見つめる。

浜面「…………」

禁書『ダメなんだよ!見ての通り私はシスターさんなんだから迷える子羊はちゃんと正しい生き方に導いてあげないと!』

浜面「……ははっ」

この少女と出会いは、この謎の銀髪シスターとの出会いは、どうやら1日も経たないうちに自分の根本的な部分を変えてしまったらしい。

浜面はそれをうすらぼんやりと理解する。

浜面「すげぇな……ほんと」

ただ、それを理解しても、浜面仕上はわかっていなかった。

この少女と関わる事でこの先自分の何が変わるのか、どう自分が変わらなければならないのかを

浜面「……明日起きたら掃除するか」

この少女に魔術の世界に引き込まれ、この少女を科学の世界にねじ込む事が何を意味するのか、浜面仕上は気付かない。

浜面(……せめて、顔の側に脱ぎ散らかしたパンツが落ちてる事態は避けたい。くせぇ)

微睡みの中では、気付けない。

浜面「ふわぁあ……」

浜面「……おやすみぃ」

242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/07(月) 00:03:27.84 ID:prPtU0lAO
目が覚めた頃には既に空には星がのぼっていた。

ステイル「…………」

意識を取り戻した魔術師、ステイル=マグヌスは、自分が負けた事、足を掴まれ引きずり落とされた事、今まで気絶していた事、そして

ステイル「……また、無様に負けたものだね」

生きている事を再確認して、夜に融けるような漆黒の修道服に包まれた体を起こした。

ステイル「――ッ」

全身に走る痛み。当然だ、あんな高い位置から落ちて無事なわけがない。ステイルは魔術師であってバケモノでも人外でもない。普通の人間なのだから。

ステイル「ふ、ふふふ」

体が小刻みに揺れる。

ステイルの脳裏に浮かんだのは、自身の必殺を打ち砕き、引きずり落としたあの少年の言葉。
『テメェにどんな事情があるのかしらねえがよ』

『それでもテメェには地獄の底がお似合いだッ!!』

それが、頭の中で何度も何度も反芻される。

ステイル「……ふふ、確かにね」

ステイル「――――」

それは、独白。

星空の下での罪の告白。

ステイル「何度も何度もあの子の記憶を殺し尽くしてきた僕らには、地獄こそ相応しい」

そして、誓い。

ステイル「しかし僕は決めたのさ」

ステイル「彼女の為に、生きて死ぬとね」

無数の星が輝く空を仰ぐ。

その独白であり、罪の告白であり、誓いを聞いていた星空はそれを優しく、静かに、すんなりと受け入れ、


垣根「ハッ、なんだそりゃあ。自己満に浸ってんじゃねえぞコラ」


垣根帝督は斬って捨てた。
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/07(月) 00:06:03.39 ID:prPtU0lAO



ステイル「……どちらさまかな?」

幾つもの死線をくぐり抜けてきた魔術師のその鋭い眼光が、軽薄そうに笑う少年を捉えた。

垣根「それはこっちの台詞だコスプレ野郎。一応確認の為に聞いとくが、テメェは何者だ?」

しかし、幾つもの地獄と闇を抱えた少年は、その魔術師に恐れすら抱かず向かい合う。

ステイル「答える義理は――」

垣根「魔術師」

ステイル「――ッ」

僅かにステイルの眉が動く。

垣根「……くっくっくっ」

それだけで十分だとでも言うかのように、垣根が笑った。

ステイル「まいったね。これで君を生きて帰す事はできなくなった」

垣根「ムカつくな。誰に口聞いてんだ噛ませ犬」

構えるステイルに対して、垣根は微動だにもしない。笑っていた顔を不機嫌そうにしかめ、そこに立つ。

ステイルの手に炎が灯る。

ステイル「灰は灰に――」

目の前に立つ少年が何者なのかを、ステイルは知らない。

ステイル「塵は塵に――」

230万人の頂点に立つ38万分の1の天才、そしてその天才の更に頂点、他の能力者の追随を一切許さず、決して超えられず、越えられない双璧に立つ学園都市の第2位。

それが未元物質。

それが垣根帝督。

ステイル「吸血殺しの紅十字ぃッ!!」

魔術師が切った十字の炎が真っ直ぐその少年に向かい――

垣根「魔術、ね……さてどんなモンかな」

少年は微動だにせずそれを掻き消した。

ステイル「なッ!?」

魔術師の顔には、今日2度目の驚愕。垣根はやはりそこを動いておらず、何も動かしてはいない。

掻き消したのは純白。垣根の背から広がる、純白の翼。


ステイル「なん……だと……!?」
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/07(月) 00:07:27.83 ID:prPtU0lAO
ステイルの驚愕に対し、垣根は眉を潜め何かを思案する。噛み締めるように、味わうように、自身が今掻き消した『魔術』というモノを、逆算し、反芻し――

垣根「ふぅん……これが魔術、か」

解析した。

ステイル「…………」

その天使を想像させる少年の前に、魔術師は言葉もでない。

ステイル「!!」

ステイルの視界を覆ったのは、白。

垣根の翼が捉えられない程の速さで漆黒を纏うステイルを白く塗り潰した。振り払い、撃ち貫く。

ステイル「かッ……はッ!!」

無様にも地に膝をつき、這いつくばるステイルが、目の前にいる少年をようやく桁違いだと気付いた時には最悪だった。

この場に仕掛けていた何万枚ものルーンは自身で焼き払ってしまい、既に千枚も残っていないだろう。全身に痛みが走り、思い通りにも動けない。

ステイル「こんな状況で……勝てるわけが」

しかし、例えこの場に何億枚のルーンがあったとしても、例え魔術師の体が万全であったとしても、決して勝敗は揺るぎ得ない。

垣根「どう足掻いてもテメェじゃ勝てねぇよ。そういう風に出来ちまってるんだ」

ザッ、と、魔術師の眼前に立った垣根帝督は不敵に笑い、這いつくばるステイル=マグヌスに言い放つ。

垣根「俺の未元物質に常識は通用しねぇ」

245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/07(月) 00:10:35.03 ID:prPtU0lAO
垣根「さぁて、吐いて貰うぜ魔術師さんよ。テメェら一体何が目的でこの学園都市に入り込んだ」

降ってくる言葉に、しかし這いつくばるステイルはそれには答えない。

答えは沈黙。

垣根「…………」

ステイル「ぶッ、ぐぁ!!」

蹴り上げた垣根の靴が這いつくばる魔術師の顔面を貫く。派手に吹き飛び、鼻や口からは夜の月明かりに照らされる赤。

垣根「もう一度聞くぞ。何が目的でこの学園都市に入り込んだ」

ステイル「…………」

回答は、先ほどと同じ沈黙。

垣根「そうかよ」

垣根が何かを諦めたようにため息をつく、仕方ねぇなと夜空を見上げ、

垣根「じゃああのガキに聞く事にするわ」

ステイル「――ッ!!」

明らかな動揺。それを誘いだし『何も知らない』垣根は心の中で静かに笑う。

246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/07(月) 00:12:52.42 ID:prPtU0lAO
そう、垣根は何もしらない。ステイルの目的も、何と戦っていたのかも、どうしてここに倒れていたのかも、何も知らない。

昼の時点で魔術師を存在を確認した垣根が、星空が輝く夜にこの場所に立っているのにはいるのには事情があった。

垣根(仲間がいる、子供。学園都市なら当たり前か。目的は……物、者、どっちだ)

掴みは良好。あとはどう情報を引き出すか。

垣根「そうだな、テメェらが相手していたあのガキ狙う方が手間も省ける」

ステイル「待てッ……あの子には」

垣根(否定しない、つまり敵。目的はガキか。それに『あの子』ね……)

学園都市第2位を誇る頭脳が回転する、少しずつ、かつ高速に可能性を振り分け、潰し、詰めていく。

垣根(あの子、つまり親密、魔術関連、目的はガキ。守る? 違うな、追っていた。仲間を? 理由はなんだ、モノじゃねぇな。それ以外……情報?)

垣根「とにかく逃げてったそのガキ捕まえて……そうだな。学習装置でも使って頭の中を覗くか」

ステイル「……なッ!?」

相手の反応を、表情を観察し、言葉を捉え、必要な情報を取り出し、整理。

垣根(この反応。やっぱ狙ってんのは『魔術の情報』。目的はそれを掴む事か、消す事か? いや『何度も殺した』って事は定期的に接触していて……)

垣根(まて、コイツらは定期的に何の記憶を消してるんだ?)

垣根帝督が、登り詰める。物語の馬鹿らしいまでの解答に。

垣根「……当たり前だろうが、こちとら急いでんだ」

垣根「うかうかしてるとテメェがガキの記憶を『全部』消しちまうんだろう?」

ステイル「…………」

魔術師の顔が歪んだ。辻褄が合ってないとでもいいたげな、そんな顔。

垣根「…………」

ああ、そういう事か。

と、結論を導き出した垣根帝督は静かに理解する。

垣根(コイツらの目的は追っかけている対象の記憶を消す事。魔術の情報とは別の記憶を)

垣根(大方、消さなきゃ死ぬみたいな誓約でもつけられてんのか。ハッ、万能だな。魔術ってのは)

魔術以外の記憶を消して自分達の事も忘れた対象が逃げ、それを追い掛け、ここまでやってきた。

そんなところだろう、と結論付けた垣根帝督のその解は、全てが全て一致していた。

247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/07(月) 00:15:21.07 ID:prPtU0lAO

垣根「なかなかえげつねぇじゃねえか。そちら側もよ」

そう呟いた垣根は、ステイルに背を向ける。

ステイル「なっ……行かせて――ッ!!」

ステイルが吠える。行かせてなるものか、と。

自ら誓いをたてた少女を守るためにも、行かせるものか。

しかし、垣根にしてはもはやこの魔術師に用なんてなかった。目的があるなら好きにすればいい。

垣根(ただし、その後はどうなろうがしったこっちゃねぇがな)

垣根のその醜悪な笑みは、魔術師には映らない。

垣根「ああ、そうだ」

ステイル「……ッ」

垣根「テメェもしかしてその追い掛けてるガキにやられたの?」

その言葉は、挑発。

垣根「ならソイツはとんでもねぇ『バケモノ』だな」

ステイル「――ッ!!」

最後の情報を引き出す為の、安い挑発。

ステイルが立ち上がり、再び構える。黒衣の魔術師の周辺に熱が走ったかと思えば、爆発。

炎と共に揺れる魔術師の顔には怒り。

決して鎮まる事のない炎のような、怒り。

ステイル「インデックスを……あの子を、バケモノと呼んだのは君が今日2人目だよ」

垣根「そうかよ。ごくろーさん」

瞬間。怒りに染まった魔術師の顎を翼が打ち抜いた。

ステイル「――――」

一撃で意識を刈られた魔術師が、膝から崩れ落ちる。相変わらず垣根は背を向けたまま。その背から広がる一対の純白の翼だけが闇の中で輝きを放っていた。

垣根「ふぅん……インデックス、ね。目次? 変な名前だな」

ドサッと、地に倒れた魔術師の音だけがその場に響く。

垣根「あ、2人目ってどういうこった。他に誰かいたのか……?」

一瞥すらせず、垣根帝督はその場を去った。

248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/07(月) 00:17:01.40 ID:A1Sg5aOBo
未元物質が出てくるとか面白い
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/07(月) 00:17:28.60 ID:prPtU0lAO
心理定規「それで、収穫はあったのかしら」

昼間にもその言葉を聞いた気がする。そう思い出し、垣根は電話から聞こえてくるその声に「おぉ」と返事をした。

垣根「テメェの方こそちゃんと撒けたのかよ」

心理定規「えぇ、爆弾使って車ぶっ飛ばしてみたり、色々やってみた結果なんとかね。これで少しは保てばいいけど」

垣根「ああそう。で、今どこよ」

心理定規「ホテル」

垣根「…………」

心理定規「…………」

垣根「……あー、事後?」

心理定規「このやり取りも飽きたわね」

緊張感のない会話に、溜め息と少しの安心感。しかしこうもしてはいられない。

垣根「で、どいつが動いてんだ」

現在、垣根帝督率いる暗部組織『スクール』は学園都市から離反、つまり理事会を裏切り、逃走を続けていた。

そして学園都市の闇は、裏切り者を許さない。

追っ手は当然やってくる。

垣根「昼間は散々追いかけ回されたしな」

予想外だったのはこの学園都市の情報伝達方法。まさか滞空回線なんて物で死角を埋め尽くしているのは想像もつかず、学園都市の隙を突いたかと思えばこちらが追われる有り様だ。

ただし、それももうすぐ終わる。

垣根「まぁ一週間の我慢だ。7日間逃げ切ったら――」


垣根「学園都市は死ぬ」


心理定規「…………」

電話口の向こうから聞こえるのは、小さな溜め息。

心理定規「一体その根拠はなんなのかしら」

垣根「……樹系図の設計者ってのはよ。地球上に存在する分子一つ一つを計算して次の動きを予想してるんだ」

心理定規「…………」

垣根「それと同じ事だ。小さな情報一つ一つを計算して、次の動きを予想する」

垣根「まぁ不確定因子が心配なんだけどな。そう簡単には起こらねえ」

心理定規「……そう、第二位のあなたがそう言うなら信用するわ」

心理定規「それで私達を追いかけている組織なんだけど――」
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/07(月) 00:18:59.19 ID:prPtU0lAO
心理定規との電話を終える。必要な情報は揃えた。

後は自身の練ったプラン通りに動くだけだ。

垣根「さて、と……」

携帯を直し、歩き出す。

垣根「待ってろよアレイスター」

目的までの鍵は手に入れた。だがまだ早い、今動くのはまだ早い。

せめて、馬鹿なスキルアウト共が自分達の計画を完遂するまで。

せめて、あの炎の魔術師がインデックスと呼ばれる少女の記憶を消し去るまで。

せめて、この学園都市が死に絶えるまで。


垣根「それまでは遊んでやるよ『アイテム』」


誰にでもなく呟き、垣根帝督は不敵に笑う。
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/07(月) 00:22:28.03 ID:prPtU0lAO
ここまでー!ちょっとは進んだ……かな?

行間なげー文章安定しねー読むの疲れたらごめんです。

せめて次の投下で神裂戦までいきたい。

かいてきま!あ、そういや吹寄って委員長じゃないんだっけ……まあいいか
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/07(月) 01:20:01.77 ID:lHfxI2Noo
おつ
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/07(月) 03:23:45.21 ID:ZFhLQ+96o
進んだ所か、かっ飛んでってるよ
まさか原作1巻の段階で暗部の面子が出張ってくるとは思わんかった
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/07(月) 07:52:24.67 ID:wtHE7wIAO
乙!!
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/07(月) 13:17:49.30 ID:3JEoWo/e0
面白い、どんどん続けたまえ
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/07(月) 15:00:50.43 ID:dEmy5TBDO
素晴らしい
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/08(火) 18:28:20.83 ID:cg5D7bbAO
酸化反応が短い時間内に連鎖的に起こり、急に温度があがって体積が急膨張する。
それがいわゆる爆発の原理だそうだ。

浜面「インデックス。これそこに捨てといてくれ」

そんな初歩的な事が書かれた化学のプリントをあくせくと動くインデックスに手渡す。
昨日吹寄が届けてくれたプリントはこれで全てゴミ袋の中に消えていったわけで、

浜面「これは……そもそも燃えるゴミじゃないな」

手のひら大の魔法の鉄塊は捨てようもないので放置。
これの側で一夜を過ごしたが、当然の如く浜面の体に刻まれた傷は変わりない。

浜面(……まぁ、部屋は随分綺麗になったか)

現在、掃除中。

慣れない片付けは、インデックスがいるおかげもあってはかどるようで、実はそんなにもはかどっていない。

インデックスいわく「よくわからないものが多いんだよ!」だそうだ。

禁書「ほ、ふわぁ!! ひ、紐の先から音が聞こえるんだよっ!!」

浜面(平和だなぁ……)

ちなみに今インデックスが手に持ってるのは音楽プレイヤー。
先程何を思ったのかゴミ袋の中に捨ててやがったので問いただしてみると、こんなモノ見るのは初めてだそうで

禁書「ひゃうっ! ど、どうやったら音が小さくなるのかな!?」

まぁいわゆる重度の機械音痴だった。

浜面「あー、そこにホイールがあるだろ。それ回してみ」

禁書「ほいーる?」

くるくる回る奴。

これ?

おう。

ひゃ、ひゃああいッ!!

あ、馬鹿! 逆だ逆!

浜面「……平和だよなぁ」

つくづくそう思う。まるで昨日切り抜けた魔術師との地獄のような戦いが嘘みたいに。

禁書「全然平和じゃないんだよ……変な音のせいで耳がガンガンするかも」

浜面「お前本当に機械弱いのな」

禁書「本には強いんだよ!!」

浜面「そいつは知ってる」

なんせ自分が起きるまで暇だから、と言って開発術の教科書を読んでたぐらいだ。
多分今のコイツの頭には10万3000冊の魔導書と5冊ぐらいの教科書が入っている。
笑っていいのか微妙なところだ。

禁書「む〜とりあえず必要なモノと不必要なモノを教えて欲しいかも」

インデックスが床に落ちてた携帯を拾って困り顔。
どうやら捨てるべきかそうでないか迷ってるようで、

浜面「……ちなみに携帯電話って何か分かるか?」

禁書「……?」

決定。掃除より先に携帯の使い方を教えておこう。
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/08(火) 18:29:02.90 ID:cg5D7bbAO
禁書「私はこれいらないかも……心臓と耳に悪いんだよ」

一通り使い方を教え、部屋にある電話を使って実際に練習してみた結果だが、
どうやら、げんなりした顔でそう呟くインデックスには携帯電話は相性が悪かったらしい。

着信の音にいちいち肩を震わす姿は、見る者によってば愛くるしさが感じられるかもだが、
浜面からしてみれば微笑ましさ以上のものは感じなかった。

浜面「平和だ……」

今日何度目になるかわからないその言葉を呟いた。


禁書「……そこはかとなく馬鹿にしてるね?」

浜面「へッ、まぁ携帯も扱えないようじゃな」

今の時代、携帯電話の使い方すら分からない人間を見ていると一挙一動が逆に新鮮に感じもので、
どうせ他機能の事も知らないであろうインデックスに、浜面はちょっとしたイタズラを思い付く。

浜面「インデックスーちょっとフード脱いでこっち向いてみ」

禁書「へっ?なんで?」

浜面「いいから」

禁書「む〜……わかったんだよ。これで

パシャッ

と、声を遮るフラッシュの光と共に、シャッターを模した機械音。

浜面の持つ携帯の画面にはぽかんとしたインデックスの顔。

携帯の画面とまったく同じく、浜面の目の前でぽかんとしているインデックスは、

禁書「……ひゃ、」

ひゃわあああぁぁぁぁぁ!?

と、今日一番の悲鳴をあげた。
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/08(火) 18:30:10.33 ID:cg5D7bbAO
禁書「し、ししししあげはいま何をしたのかな!? か、カメラは駄目なんだよ!?
人に向けて撮っちゃ寿命とかそこらが駄目なんだよ!?」

浜面「ぶはははははははッ!! どんだけアナログなんだよテメェはッ!!」

禁書「む、むぅ〜!!!」

悲鳴と、爆笑。撮られて取り乱すインデックスと、撮って笑う二人の声が学生寮の一室から響きわたる。

その悲鳴が止み、続く笑いが叫び声に変わったのはその数秒後の事だった。

浜面「すんませんインデックスさん調子乗りましたごめんなさい」

平身低頭。と言ってもその頭に未だ噛みついているのは他ならぬインデックスだが。

浜面「いやそろそろやめてッ!? 本当痛いッ!! マジ痛い!!」

禁書「ふんっ」

しあげのばーか。
と、そう言ってぷいっとそっぽを向き頬を膨らますインデックスは、しかし本気で怒ってるようには見えない。

浜面「悪かったよインデックス。拗ねんなって」

禁書「ふんっ」

浜面「携帯買ってやるから」

禁書「い、いらないんだよ!!」

浜面「はははっ! にしてもお前本当にこの手の機械類ダメなんだな。テレビって何かわかるか?」

禁書「なッ!! いくらなんでもそれくらいわかるんだよ!! 馬鹿にしないで欲しいかも!!」

浜面「じゃあパソコンは?」

禁書「……ぐぎぎ」

わからないようだ。悔しそうに唇を噛む姿はなんだか小動物を見ているようで笑えてくる。

禁書「ふ、ふんっ!! いいんだよ! か、科学の力に頼るだけじゃ人間どんどん堕落していくだけなんだからね!」

浜面「はぁ〜? 文明に着いていけない奴はどこからも置いてけぼりくらうんだよ。それとも魔術が携帯の代わりにでもなるってか?」

禁書「むっー! 確かに私は魔翌力がないし、しあげはこの街の学生だから魔翌力を引き出す事は出来ないけど、魔術だってその、け……けいたい? の代わりにぐらいなるもん!」

浜面「インチキ紛いの超能力者みたいな事言ってんじゃねぇぇぇぇ!!!」

とは言え、魔術の存在自体は認めるけどさ。
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/08(火) 18:31:52.52 ID:cg5D7bbAO
閑話休題。言い争い(と言えば大袈裟だが)も終わった所で掃除の続き。

禁書「しあげー、これは捨てちゃっていいのかな?」

浜面「おー、それ捨てるなら今後一切飯食えないと思えよ」

禁書「そ、それは困るんだよっ!!」

ちなみにインデックスがゴミ袋に持って行こうとしていたのは通帳だったり。

禁書「しあげー、この変な色の布はー?」

浜面「……それは洗濯機だ」

禁書「――――」

脱ぎ散らかしてほうっておいた下着だったり。

禁書「しあげー、このベッドの下に落ちてる……ッ!?」

浜面「んー? ッて、うぉぉぉぉい!! 男のベッドの下を買ってにいじんなぁぁぁぁぁ!!」

レースクイーンが表紙のエロ本だったり(ちなみに捨てられた。インデックスの持ってる記憶能力の事を考えると仕方ない気もする)


浜面「まぁ……部屋は綺麗になったな」

すっかり見違えた自分の城を見渡し、そう呟く。なんだか色々と無くした気もするが。

禁書「私のおかげなんだよっ!」

ふんすっ! と鼻息を荒げ無い胸を突き出すインデックスを横目にはいはいと投げやりな返事。
まぁ、確かに脱ぎ散らかした服やら、散らばった機械類やら棚に戻してなかった本やらは、
綺麗に整理され、生活するにあたって快適と言える環境になった。
きっかけをくれたインデックスのおかげとも言ってそれは差し支えないだろう。

浜面(あのエロ本、気にいってたんだけどなぁ……)
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/08(火) 18:32:46.63 ID:cg5D7bbAO
禁書「ねーしあげ。あれはあのままでいいのかな?」

そう言ってインデックスが指を指したのは部屋の一部をかなり占拠している、大型の箱。

浜面「あぁ、あれは駒場からの預かりもんだ。そのうち取りにくるからいいんだよ」

まぁジャンケンで負けて物置小屋よろしくと放置されているだけだが。

禁書「むー、すごく邪魔なんだよ。だいたいこれなんなのかな?」

浜面「あー……お前に言ってもわかんねぇか。オーディオみたいなもんだよ」

禁書「おーでぃお?」

浜面「音が鳴る機械。リモコン押すなよー。さっきのイヤホンとは比べものになんないからな」

禁書「うっ……よくわからないけどそれは嫌かも」

あ、しあげ。それより、とインデックスが思い出したかのように呟いた言葉をチャイムの音が遮断する。

浜面「あー……木山さん。だっけ? もう来ちまったのか」

壁にかけられた時計を見る。そうは言っても時間は既に昼前で、随分長い間掃除をしていたらしい。

玄関を開けると、昨日と変わらない姿で木山春生が立っていた。相変わらず目の下の隈のせいでその顔は疲れているようにも見えた。

木山「やぁ、昨日ぶりだね」

浜面「おぉ、やっぱり車は……」

木山「見つからないさ」

そう言って苦笑する木山春生は浜面の肩越しに、何故か不機嫌な顔をしているインデックスに挨拶し、話かける。

木山「やぁお嬢さん。案内は頼めるかい?」

禁書「む……それはいいんだけど」

木山「……?」

もうお腹減って動けないかも。と、インデックスがぱたりと床に沈む。

浜面「あー……」

そういえば自分も昨日から何も食べてない事を思い出す。意識したら自分まで腹が減ってきた。
大食らいなインデックスもよく今まで言い出さなかったものだ。我慢してたのか、忘れてたのか、とにかく

浜面「すまん。先にファミレス行っていいか?」

先にコイツと自分の腹を満たそう。

浜面の言葉に少し目を丸くした木山春生は、僅かに口元を綻ばせ

木山「いいとも」

と、笑った。
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/08(火) 18:33:52.92 ID:cg5D7bbAO
木山「元々私は教師をしていてね」

と、インデックスを見つめる木山春生の口からそんな言葉がポツリと漏れる。

木山「まぁ、今は研究職に就いているが」

浜面(あぁ、だからか)

そう合点がいったのは、昨日の木山春生とインデックスの会話の様子。
かつての自分の生徒とインデックスを重ねていたのだろうか。そう勝手な推測を頭の中で想像し、
目の前の皿に盛られたハンバーグを口に放りこむ。熱を逃がさない為のアルミホイルに包まれていたハンバーグは、柔らかく、とても熱い。

木山「しかし」

ガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャ

木山「ここまで大食らいな生徒はいなかったね」

浜面「はは……だろうな」

隣に座る呆れと驚きが混じった木山の視線など一切気にせず、次々と、
とんでもないスピードで皿の中の料理を胃に詰め込んでいくインデックス。それをみて心底思う。

浜面(バイキング選んでよかった……)

まぁなんにせよ、今現在冷蔵庫の中身は空っぽなわけで……どちらにせよ、食費は切り詰めなければならないようだ。

禁書「ひぃあげ〜、わひゃひもしょれほひぃ〜」

浜面「ああ、もう好きなの頼め。ここじゃ何でも食べ放題だ」

その言葉を聞いて嬉しそうに顔を綻ばし、席を立つインデックス。小動物のようにバイキングコーナーに走っていく姿は見ていて呆れと微笑ましさが混合される。

浜面「まだ食うのかよ……」
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/08(火) 18:35:18.46 ID:cg5D7bbAO
木山「ふふ……なかなかおもしろい同居人だね。彼女は」

くつくつ、と向かいで、夏だというのに熱いコーヒーを啜る木山春生が笑った。

浜面「あぁ、まぁ車の事なら心配しなくていいぞ。記憶力に関しては本物だからさ」

木山「助かるよ……これでなんとか間に合う」

浜面「車でしか行けないところでもあんのか?」

それを聞いた事には大した意図はない、会話を繋ぐためのほんの一言。

木山「ああ、近いうちに23学区に用があってね。あそこは電車では行けないし、歩くにしても遠いのさ」

浜面「あー……空港とかある場所だっけ?海外にでも行くのかよ」

木山「いや、私が行くのは情報受信センターだ。樹系図の設計者のね」

樹系図の設計者。

名前ぐらいは浜面でも知っている。学園都市が誇るスーパーコンピューター。
完全な天気予測という名目で作られたらしいそれは、毎日の天気を学園都市の空に浮かぶ飛行船に伝え、今も衛星軌道上に浮かんでいるらしい。

禁書「ただいまなんだよー!」

インデックスがまたもや大量の食料を皿に盛り、帰ってきた。
凄いな……という木山の視線はインデックスの向こう側に向いている。追うと、そこには半廃墟と貸したバイキングコーナー。
胃を満たす為ではなく、店を潰す為にやってきたのではないかと勘違いさせるような光景だ。店員の視線が痛い。

禁書「ふぅほぉいおいひぃかも〜!」

もはや何も言うまい。

そりゃまたなんで。と、木山に言うはずだった台詞も完璧にタイミングを外してしまったようで、浜面はハンバーグの一切れと一緒にそれを飲み込んだ。
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/08(火) 18:36:12.40 ID:cg5D7bbAO
浜面(ほんと、平和だよなー……)


ぱっと目を離した合間に何が合ったのか、それとも時間が歪んだのか知らないが、インデックスは既に空になった皿を端に寄せ、
浜面が今食べているものと同じ、熱々の包み焼きハンバーグを前に手を合わせている。そして、

浜面「ッて、馬ッ鹿かお前アルミごと食おうとすんなッ!!!」

禁書「ふぇ?」

木山「ふふ……貸してみなさい」

ハイスペックな記憶力を持つ割には頭の作りはロースペックらしいインデックスの持っていたナイフとフォークを受け取り、木山春生が丁寧に包み紙を剥がしていく。

禁書「うわぁ!」

破った包み紙から出てきてのはこもりにこもった熱と肉の焼ける音と香り。それがインデックスの胃を刺激したらしい。

木山「包み焼きハンバーグとはこうやって食べるものだ……このアルミは熱を逃がさない為にあってね」

木山「本来の性質からすれば蒸気で酸化してしまうのだが、これには酸化皮膜というものが張られていて」

禁書「う、う〜!! そんな事より早く食べたいかもっ!」

木山「あぁ……すまない。好きなだけ食べたまえ」

教師として過ごしていた頃でも思い出していたのだろうか、すこし、恥ずかしそうに、
そして懐かしそうにインデックスの食べっぷりを見つめる木山春生は普段より優しい顔をしていた。

浜面「……教師の方が似合ってると思うぜ? 木山センセー」

木山「ははっ……やめてくれ。私はもう先生と呼ばれる柄でもないよ」

それに、やらなければならない事もある。

静かにそう呟いた木山春生の言葉は、インデックスにも浜面にも聞こえない。

禁書「またいってくるんだよ!」

と、空になった皿を携えたインデックスが魔王の如く再びバイキングコーナーに舞い戻ったのは、その数分後の事だった。

265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/08(火) 18:36:38.65 ID:cg5D7bbAO
木山「それにしても完全記憶能力、か」

木山「なかなか酷な能力を持っているね、彼女も」

バイキングに夢中になってるインデックスの背を見つめ、新たに注いできたコーヒーを揺らしながら木山春生がそう呟く。
バイキングコーナーが廃墟と化していく様には突っ込む事を辞めたようだ。

浜面「そうか? 便利そうでいいじゃねえか」

そう、呟いてハンバーグの最後の一切れを口に放りこむ。木山春生の冷めた視線に気付いたのは、それを飲み込んだ後。

木山「君が思う程いいモノじゃないさ」

木山春生が語る超記憶症候群ともいうらしいそれは、記憶の取捨選択が出来ないという立派な病気らしい。
辛い事も悲しかった事も苦しい事も、捨てられない。

木山「誰にでも忘れたい過去というものはある。それを忘れる事が出来ないのがその便利そうな能力だ」

浜面「…………」

完全記憶能力。10万3000冊という図書館レベルの毒を抱えるインデックスにとって、それはどう付き合って、どんな思いで付き合って行く能力なのか、浜面はふと考える。
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/08(火) 18:39:02.70 ID:cg5D7bbAO
例えば、浜面は彼女の目の前で彼女自身の事をバケモノと称した事がある。

そうしなければならなかったという極限の状況下であったには違いないが、多分彼女は傷ついただろう。
その瞬間傷つき、悲しかったはずだ。
イノケンティウスが顕現し、逃げる浜面が手を引っ張っていた時の彼女の目は沈んでいた。

例えば浜面は彼女の目の前で彼女が抱える魔術を気持ち悪いと称した事がある。

そんなつもりはなかったとはいえ、彼女は傷ついただろう。
その瞬間傷つき、苦しかったはずだ。あれほど怒って、悲しそうに嗚咽を漏らした彼女の姿は初めて見た。

例え浜面が謝り、土下座し、それを許して貰ったとしても、
インデックスの中からその『傷ついた瞬間』が消える事は、一生無いのだ。

例えば、インデックスに対して、先程浜面が木山春生に対して言った「便利そうでいいじゃねえか」なんて言葉を投げかけたら、どうなるだろう。

浜面「…………」

自分なら、嫌だ。

自分なら、傷付く。

自分なら忘れてしまうこの瞬間も、彼女は死ぬまで忘れないのだから。

浜面(ちょっと無神経だったか、な……)

少しずつ理解していく。今もバイキングコーナーで料理を選んでいるあの少女を抱える事が、どういう事なのか。
助けるという事がどういう事なの――

浜面「って、ぶっふぉぉぉぉぉ!!何脱いでんだテメェ!!」

木山「ん? いや、ここの空調が壊れているようでね、まぁ落雷の影響で仕方が」

浜面「だからって人が真面目に考え事してる最中に脱いでんじゃねぇぇぇぇぇぇッ!!!」

木山「いやいやしかし」

浜面「しかしじゃなくて!!こっちとしては嬉しいけどしかしじゃなくて!!とにかく服を」

――しあげ?
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/08(火) 18:40:07.82 ID:cg5D7bbAO
横で自分を呼ぶ小さな声が聞こえた。

浜面「…………」

ダラダラと汗が落ちる。

――しあげ?

昨日から何度も何度も自分の事をそう呼んでいるその声の元に、目を向ける。

禁書「…………」

浜面「…………」

バイキングコーナーをどうやら更地にしてきたらしいインデックスがそこに立っていた。

木山「……?」

昨日とは色の違う薄黄色の下着と、それに包まれた慎ましい胸部が視界の端にちらちらと映り、思わず目が動いてしまう。
目の前に立つ少女はそれが更に気にくわなかったらしい。
何故かにっこり笑い、インデックスは名前を呼んだ。

禁書「しあげ?」

浜面「ははは、こやつめ」

噛み付かれたのは言うまでもない。

浜面「だああああああああああああギブギブまじで勘弁んんんん!!!」

禁書「ひぃあげ〜!!ひょんにゃにおひょなのひほがいいにゅかにぁ〜!!?」

浜面「だから口にモノいれてしゃべんなあああああああああああああ!!」

相変わらず店員の視線が痛い中、ふと思う。
辛い記憶を上書き出来るくらい楽しい記憶を彼女と作れれば、
それを糧にできるくらいの記憶をこの少女とつくれれば、この少女の本質的な部分を助ける事に繋がるのかな、と。

ただ、

浜面(俺が下着見て鼻伸ばしてた顔は忘れて欲しい……)

そう思った。

浜面「だぁぁぁぁぁやめてぇぇぇぇぇぇッ!!」

とあるファミレスで少年の悲鳴はその後、数分間止まる事はなかった。
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/08(火) 18:43:44.37 ID:cg5D7bbAO
ここまでー。
長ーい日常パートも後数レスで終わるんで書けたら今日中にでも。

あと猫の存在完璧に忘れた。描写一切なくてごめんスフィンクス(仮)

いつもレスありがとうございます(^O^)
今は一巻でいう半分ぐらいのとこかな?この話はまだまだ続くけどな!!

ではでは。かいてきまー
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/08(火) 18:46:55.22 ID:cg5D7bbAO
あ、あと1レスの投下量とか改行とかで見にくかったりしたら遠慮なく言ってくれると嬉しいです。

ではでは
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/08(火) 19:05:25.56 ID:7fgj3h7DO
乙なんだよ!
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/08(火) 20:05:06.12 ID:qSVzqMnfo
何も問題はない
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/08(火) 20:15:08.27 ID:H5QE7FPD0
乙!超面白い
本編で誰もそう呼ばないからってのもあるけど
「しあげ」呼びは可愛いなー
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 10:42:40.23 ID:o4hsBp1AO
案外簡単に終わるかと思っていた木山春生の車は探しは意外と難航した。

理由は簡単。同じような車がこの学園都市に何台もあったかららしい。
インデックスが覚えていた同じタイプの車の数は実に6台。既に夕暮れが近い。時間もかかるわけだ。

木山「助かったよお嬢さん。ありがとう」

禁書「どういたしましてかも!」

まぁちゃんと見つかったわけで何よりだが

木山「本当に助かったよ。この車が見つからなければ何もかもが手遅れになっていた所さ」

浜面「んな大袈裟な」

いや、そうでもない。そう呟いた木山春生は鍵を取り出し、運転席に乗り込む。辺りに車のエンジン音が響いた。

木山「それなら私はもう帰るが……そうだな」

運転席から顔を出した木山春生は一枚のカードを取り出し、浜面に手渡す。

浜面「……名刺?」

それは水穂機構病院、木山春生とだけ書かれたシンプルな名刺だった。裏には携帯の番号。

木山「私の連絡先だ。困った事があれば連絡するといい……そうだな、一度くらいなら無理も聞いてあげよう」

と、言われても正直困りものだった。スキルアウトであり、ただの一学生である浜面が研究職の人間に相談する事なんて……まぁ無いわけで、

浜面「あー、じゃ早速で悪いんだけどコイツを寮まで送って行ってくれないか?」

禁書「ふぇっ?」

浜面「もうじき雨が降るみたいだしさ、今日中に食料とか買いだめしときたいんだ」

と、駄々をこねられる前にいかにもまともな理由、まぁ半分は本当だが。

木山「それぐらいなら喜んでするさ……お嬢さん、こっちだ」

ガタンと、助手席のドアが開く。インデックスの方はどうやら困惑しているらしい。残るべきか乗るべきか。

浜面「大丈夫だって。すぐ帰るよインデックス」

禁書「……ほんと?」

浜面「おぉ、それとも車に乗るのがこわいのか?」

少し意地悪な顔でそう言ってみる。むっと顔を膨らましたインデックスが、馬鹿にしないで欲しいんだよ。とぶつぶつ呟き、車に乗り込んだ。

浜面「じゃーなインデックス。いい子にして待っとけよ」

禁書「……そこはかとなく馬鹿にしてるね?」

答える前に車は発車。木山春生の愛車は結構な暴れ馬のようで、うるさいエンジン音を鳴らしあっという間に見えなくなった。

見えなくなるまで、インデックスが助手席の窓から身を乗り出してこちらに向かって手を振っていたのは、ちゃんと見えてたけど。

274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 10:43:12.51 ID:o4hsBp1AO
浜面「懐かれたもんだよなー……ははっ、駒場のリーダーかっつうの」

実際、懐いているのは自分の方かもしれないが。

浜面「さってと、手近にいい車は……」

体のいい言い方をすれば移動手段の確立。身も蓋もない言い方をすればピッキング。浜面が今からしようとしている事は、ただの盗みだ。

浜面「出来ればさっきのランボルギーニみたいな暴れ馬も乗ってみたいんだよなー……あれ、スーパーカーって普通免許で乗れたっけ?」

まぁどの道、免許証なんて持っていないが。必要なのはカードじゃなく、技術だというのが浜面の持論。おかげである程度の重機まで操作できる。

適当に当てを付けた車のドアに手を伸ばし、

浜面「…………」

伸ばし、そっと引っ込めた。今日は辞めだ。辞めにしておこう。そう思い、踵を返す。

別に盗みを働こうとした時にインデックスの顔が頭に浮かんだとかそんなんじゃない。きっとない。

浜面「なんっか……調子狂うよなー」

何かが変わった。

たった1日で。

それは浜面にもわかってる。具体的になんだ、と言われたら困るが、今までの浜面仕上を構成していた何かだ。それは違いない。

浜面「はぁあ……」

難しい事を考えるのは辞めだ。
自分の事は自分が一番よくわかってる、なんて台詞を吐く奴は沢山いるが、実際に一番よく理解しているのは身近にいる他人だったりする。

浜面「今度半蔵か駒場にでも聞いてみっかな……」

気恥ずかしいが、とは口に出さず歩きだす。先程まで木山春生の車探しで散々歩いた。今更少しあるくくらい構わない。

ありがたい事に目的の場所は目に見える範囲にあるようで、車を使わなくてもすぐだ。
帰りの事は後で考えよう。それこそ昨日の木山春生のように電車でも使えばいい。

少し歩き、スモークの張った黒いバンの横を通り過ぎる。もう着いた。
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 10:44:30.14 ID:o4hsBp1AO
浜面「さて、と。どんな携帯買ってやるかな」

浜面が入った店は携帯ショップ。インデックスを先に帰らせた理由がこれだ。別にサプライズのつもりはない、あくまで今後の事を考えて、だ。

店内には数人の女性客に、馬鹿みたいな(そのままの意味で)機能のついた格安の携帯がズラリ。

浜面「探すのは限りなく普通の携帯……全然ねぇな。三つ折り携帯なんざ誰が買うんだよ」

しかも三つ折りだけではなく三つに分割でき、尚且つ単体が携帯として機能するらしい。どんな携帯だ。

浜面「つってもちゃんとした携帯は高いしな……」

学園都市に限った話になるが、どこの店も試験運用のモニタリングというものがあって、学生が開発したようなモノは格安で売ってたりする。今回はそれを狙って入ったのだが……

浜面「赤外線で幅と高さを計算して自分のいる部屋の体積が計れます……携帯じゃなくていいだろこれ」

どうでもいい機能ばかりだ。逆にどうでもよすぎて選べない。

浜面「アンテナを沈めるとアルコール率が測れる携帯……学園都市だって事忘れてるだろこれ」

本当に、どうでもよすぎて、

絹旗「おや、浜面じゃないですか」

浜面「あぁ、今忙しいから後でなロリロリ中学生」

後ろから投げかけられた声にすら投げやりになる。

浜面(……ん?)

反射的に言葉を返して、再確認。後ろを振り返ると、立っていたのは絹旗最愛。フードで隠れていてもなぜかこめかみが動いたのが分かった。

絹旗「取りあえず超ぶん殴りますね」

浜面「よう絹旗っとぉぉぉぉぉッ!?」

瞬間、腹があった位置に絹旗の蹴りが突き抜ける。短パンからスラリと伸びるその細い脚のどこにそれだけの力があるのやら、ブンッ、と空気の擦れる音が浜面の耳にも届いた。
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 10:45:08.81 ID:o4hsBp1AO
絹旗「ちっ。超避けやがりましたか。なかなかやりますね浜面」

浜面「ちっ。じゃねぇよ馬鹿かテメェッ! レベル4がこんなとこで本気で殴んな!!つか殴ってねぇしな!?蹴ってるしな!?」

絹旗「うっさいですねぇ。そもそも私が超本気だしたらさっさとガラス突き破って車に引かれてますよ」

浜面「……ぐう」

反射的に避けれたのは偶然だが、浜面には絹旗の蹴りは見えなかった。あれでも手を抜いていたらしい。恐るべし大能力者。

絹旗「で、浜面はテストモデルのハズレ商品見て何を超ぶつぶつ言ってるんです?」

まさかそれを買いに来たわけじゃないでしょう?と、平然な顔で尋ねてくる絹旗に対して目を逸らす事しか出来ない。

目を逸らしただけで充分だったようで、

絹旗「ぷっ」

浜面「あー笑え笑え。少ない奨学金暮らしの俺には課税されまくりの携帯買う金なんざないんだよ」

絹旗「超哀れですねッ!」

浜面「ぶん殴るぞテメェ……」

閑話休題。再び携帯漁りに精を出す。隣には曰わくテストモデルのハズレ商品が入ったワゴンに持たれかかる絹旗最愛。暇そうだ。

浜面「で、お前はこんなとこでなにしてんだよ。暇そうだけど」

絹旗「携帯買いに来たんですよ。昨日車ごとぶっ飛んじゃいまして……と言っても私はもう買ったので超付き添いですが」

どうやら先程いた数人の女性客はコイツとその連れらしい。
視線の先を追ってみるとTシャツにピンク色のジャージをはいた女の子が携帯をじっと見つめていた。後ろ姿からで顔は見えないがスタイルは良さそうだ。

絹旗「鼻の下が超伸びてますよ馬鹿面」

浜面「……お前は完全記憶能力とかあったりしないよな?」

絹旗「はぁ?」

こっちの話だ、と会話を切る。
ダメだ。普通の携帯に近い携帯すら見つからない。あまり変な機能がついていたらインデックスも扱えないだろうし、

浜面「どうしたも

絹旗「浜面ー携帯なら買ってあげましょうか?」

浜面「っておおぅ!? マジか」

絹旗「超マジです。その代わり今度の映画に付き合って下さい。ついでに奢れ」

浜面「ぐっ……買ってもらえるかも知れない反面、高圧的な態度に反抗できない」

絹旗「ふっふっふーさぁどうします?」

浜面「くっ……しかし俺にもプライドってもんがある!! こんな安い手に乗ってたまるかぁぁぁぁぁ!!!」

結局、買ってもらう事になった。
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 10:46:23.89 ID:o4hsBp1AO
絹旗「本当に超安い奴でいいんですか浜面。私結構お金持ってますけど」

浜面「いいんだよ。どうせ俺が使う携帯じゃないし」

絹旗「ほう……というと?」

浜面「昨日何故か義理の妹が出来てな」

絹旗「超柄にでもなく警備員に通報したくなったのは初めてですね」

受付にIDカードの提示を促され財布からカードを出す。見たくもないとぼけた顔が写ってる写真を絹旗に見られたりなんだかんだりしたが、まともにまともすぎる携帯電話をゲットした。

浜面「悪いな」

絹旗「いえ、まぁいつも超付き合って貰ってる礼という奴でお願いします」

浜面「付き合わせてる自覚あんのかよ……」

絹旗「なければいつも超探したりしませんよ……あ、番号とアドレスも教えといてくれます?」

浜面「ん」

普段自分が使っている携帯に絹旗のアドレスを登録する。よくよく考えてみると女子のアドレスが入る事は久々かもしれない。

「きぬはたー、むぎのが呼んでるよ。そろそろ行こう」

入り口辺りで絹旗を呼ぶ声。ピンクのジャージは多分、コイツの連れだろう。前髪が揃ったその女の子はほわっとしたかわいらしい顔立ちをしていた。

絹旗「すいません滝壺さん!今行きますー!」

では浜面、また超メールしますね。そう行って小走りで滝壺と呼んだ少女の元へ駆けていく。

浜面「ああ、そうだ絹旗」

絹旗「はい?」

浜面「お前友達いたんだ

な」は、今度こそ見えない速さで繰り出されたグーが顎を打ち抜いたので言えなかった。

すいません。滝壺さん。

きぬはた、彼氏……?

な、なななな違いますよ!!

私があんな超不良かぶれと付き合うわけないでしょう!!

ただの……その、そう! 友人ですッ!!

きぬはた……

はい……?

友達、いたんだね。

ぐっ……!!

遠くから聞こえるそんな少女達の会話はいつの間にか聞こえなくなっていた。

278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 10:47:26.09 ID:o4hsBp1AO

痛む顎さすり、店を出る。そろそろ夕方に近付き、辺りには誰もいない。さて、どうやって帰ろうか。

浜面「ん……?ここって……ああ、アジトの近くか」

余り使う道ではないので気付かなかったが、どうも昨日魔術師と一戦交えた工場の付近らしい。ここからならまぁ歩いて帰れるだろう。

ぴぴぴ、ぴぴぴ

と、携帯の着信音がなったのはそんな時。ディスプレイに表示されていたのは、なんて事はない。リーダーの四文字。

歩きだし、電話に出る。

浜面「よっす駒場。なんか用か?」

駒場「……あぁ、いや、そうだな」

駒場「……お前に預けてるモノを……近々取りにいこうと思う」

電話口から聞こえてくるのは、コピー用紙を吐き出すかのような低い声。

浜面「ああ、やっと持っていってくれんのか」

預かり物、部屋の一角を占有しているあれだろう。インデックスも邪魔に感じてたようだし、持っていってくれるなら大助かりだ。

駒場「……あれなしではこの先やっていけんからな、それと」

駒場「……あの子、インデックスとは……どうだ?」

浜面「どうって……いや、普通だけど」

駒場「……うまくやっていけそうか」

浜面「…………」

浜面「あのさ、駒場」

それを聞こうと思ったのは、やっぱりよくわからなかったからだ。何が変わったのか、自分がどんな奴なのか。

浜面「俺って変わったかな」

駒場「…………」

駒場「……そうだな」

駒場「……あの魔術師に立ち向かっているお前は……どこか吹っ切れたように見えた」

浜面「…………」

なんだか気恥ずかしくなり、空を仰ぐ。情報媒体となり飛行船が、ふわふわと頭上を泳いでいた。

浜面「そうかぁ?必死だっただけだろ」

駒場「……あの子の為に、だろう?」

浜面「あー……」

飛行船には次々とニュースメッセージが表示されていってる。今日雨が降る正確な時間、落雷の被害が未だに深刻な事、おかげで遺伝子系の研究所がいくつか閉鎖に追いやられたらしい。

駒場「……浜面」

浜面「ん?」

駒場「……俺にもしもの事があったら、次のリーダーはお前だ」

浜面「…………」

浜面「……は?」

279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 10:48:50.49 ID:o4hsBp1AO


スキルアウトはお前に任せる。

その言葉で駒場との会話は終わった。
電話を切り、ポケットに戻す。空にはやはりふわふわと飛行船が泳いでいる。どうやら最近他学区で地震が頻発しているらしく、注意を呼びかけていた。

浜面「……はぁ」

辺りは静かだった。雲の流れる音が聞こえるかと錯覚するくらいの、静けさ。

浜面「平和だよな……」

今日何度目になるかわからないその言葉をつぶやく。

浜面(駒場の野郎……あれを言うためだけに電話かけて来やがったな)

勘弁してほしい。あれじゃまるで死亡フラグだ。もしアイツが死んだら、

浜面「死んだら……インデックスも悲しむだろうな」

あの少女は、きっと泣くだろう。接した時間は少なくても、あの瞬間の少女の記憶は永遠に残――

――あれ?

浜面(なんで――)

疑問はたくさん浮かんだ。なぜインデックスの記憶がなくなっているのか、とか。
あの少女をどうやって魔術師の手から遠ざけるか、とか。駒場はどういうつもりであんな事を言ったのか、とか。

とにかくたくさん浮かんだけど、今の所の疑問は一つ。

浜面が歩いている場所は、大通りだ。路地裏に入れば多分すぐ昨日の工場に尽くし、その周りには無人のビルが立ち並んでいる。

でもここは大通りだ。車が走る道もあるし、コンビニもデパートも携帯ショップもある、なのに

浜面「なんで、こんなに」

――静かなんだ。

平和と感じていたその静けさは、一気に前兆へと変わる。そして――

「ステイルが人払いのルーンを刻んでいるだけですよ」


――そして前兆は、確信へ変わった。

280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 10:49:48.25 ID:o4hsBp1AO
目の前に女が立っていた。Tシャツに片方だけ大胆に破ったジーンズと、まだ昨日の魔術師よりは常識的な格好をしているが、
その腰にぶら下げた2メートル以上もの日本刀と、その死線とも呼ぶべき視線は、昨日の魔術師とは比べ物にならない。

ただ、そこに立っているだけなのに、かつて魔女狩りの王と対峙した時のような威圧感。

ただ、そこに立っているだけなのに、極大の炎が視界を飲み込んだ時のような絶望感。

コイツはヤバい。

携帯が入っている袋を掴む手が汗ばんでいるのがわかる。

体が震えているのもわかった。

恐怖、畏怖、絶望。どれもが今浜面の心に襲いかかっている事も、自覚した。

口火を切ったのは、女。

「率直に言って」

そう告げた――その声は、背後から聞こえた。

浜面「な――!?」

振り向き、距離を取る。後ろに下がり、背に固いモノに当たった。

多分、それは鞘。女が持っていた日本刀の、鞘だろう。

目の前には、誰もいない。

浜面「嘘、だろ――」

振り向いて、確かに女の姿を視認した。まばたきすらしていない。なのに――

「彼女を保護したいのですが」

背中に当てられた鞘に貫かれたかと、そう錯覚する程の鋭い声。

今度こそ、浜面は自覚する。自覚せざるをえなかった。嵐の前の前兆、台風の目の中、言い方なんてどうでもいい。

「あぁ、そうだ……名を名乗っていませんでしたね」

とにかく、自分が今日一日浸かっていた場所は、平和なんて生ぬるい場所じゃなかった事を――

「神裂火織と申します」

まだ、這い出せてなんていなかった。

浜面が今立っているその場所は、まだ、昨日立っていた所よりも更に深く、深い――正しく地獄の底だった。
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/09(水) 10:58:42.90 ID:o4hsBp1AO
ここまでー!うひゃーやっと神裂戦までこぎ着けた!
日常パート長くてごめーんでも絹旗は書いてて楽しい!

まだ全然序盤なんだけどボツ案とか小ネタとかたくさんあったり。完結した時に語れると嬉しいなー

いつもレスありがとうございます!すんげーモチベーション的な奴があれです。助かってます。

文章的にあれで読みにくかったりしたらごめんなさい。地の文って難しい……かまちー文章下手とか言ってごめん。
色々拙い所や粗もあるけどそれでも読んでもらえると嬉しいです。まだまだ続きますけどよろしくすー

次の投下は神裂戦丸ごとか区切るかで少し迷ってます……出来れば一週間内には投下したいと思ってる。

ではでは、書いてきまー

282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 11:52:57.96 ID:17chMFiAO

しかし浜/面になるところしか浮かばない
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 11:59:28.84 ID:XRYyBiv8o
おつ!
浜面だと一段と神裂の超人っぷりを感じるな
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 12:05:54.01 ID:cUzQe5cH0
乙!幻想殺しがないから右手で防ごうとしないし浜面の戦い方からして
上条さんよりは相性がよさそうだな。それでも勝てる気がしないが。
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 13:09:59.38 ID:Y0VpzaNb0
どこまで助っ人なしで行けるんだろ。わくわく。

いずれは能力者の誰かが絡むと思うんだが。第一候補・絹旗
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 14:06:00.51 ID:uZ5YkAkho
早速木山先生に電話して無理なお願い1を使用だ!

浜面「もしもし? 浜面だけど目に見えないくらい素早く動いて
日本刀とワイヤー振り回す痴女を倒してくれー!!」
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 14:28:39.50 ID:XKtp7D4IO
友達がいない最愛ちゃんもかわいいよーちゅっちゅ
それはそうとステイルさんは今どうなってんだろうな。確かていとくんにボコられてたけど自動書記対峙までに再起は可能なのか?
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/09(水) 16:53:22.90 ID:Z8QCgJTI0
乙、アイテムktkr
いったいどんなフラグたつのやら……
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 17:20:21.33 ID:JRyfy5ljo

凡人対超人って燃える展開だと思うの
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 18:01:11.81 ID:iE16sN8qo
シ /兵
/面
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 21:40:06.19 ID:XdJRtlY10
キテター!!乙
一体どうやって切り抜けるのか・・・それか普通にボコられるのか
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 23:45:36.67 ID:PIOASuXx0
SS速報禁書sswikiに収録させていただきました↓
http://www35.atwiki.jp/seisoku-index/pages/756.html
>>1さん続き楽しみにしてます!
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/09(水) 23:51:48.38 ID:o4hsBp1AO
神裂「もう一度言います。あの子を保護したいのですが」

背に鞘を突きつけた神裂火織の刃物のように鋭く、冷たい声が真後ろから飛んでくる。

対する浜面は、何も言えない、動かせない。まるで靴と地面が縫い付けられたかのように、動けない。

浜面「……はっ……はっ」

震える呼吸の音が鮮明に聞こえた。

ドクン、ドクンと、自分の心臓の音がこれでもかと言うほどうるさかった。

それほどまでに、静寂が支配するこの大通りで神裂火織が放つ言葉は、

神裂「死にますよ?」

ゾッと、浜面の心臓を凍らせる。

浜面「――ッ!!」

思わず、駆け出した、駆け出せた。背に当てられていた鞘が離れる。それだけで、こののしかかる威圧感から解放されたように感じた。

神裂「七閃」

それは、ただの錯覚だった訳だが。

浜面「なぁッ!?」

空気が裂けたようにしか思えない。そんな斬激が大地を、空を、壁を走った。

何か柔らかいものが頬に触れる。

浜面「……!!」

茶色の髪。斬激は浜面自身を掠めていたのだ。

辺りに刻まれた刀傷は、七本。それが何十メートルも続いている。

神裂「もう一度言います」

チン、と刀を鞘に戻した神裂火織が言い放つ。

神裂「あの子を、保護したいのですが」

浜面「ッ!!」

格が違う。あの魔術師とは、格が違った。攻撃手段、手際よさ、冷静さ、全てが違う。

294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/09(水) 23:53:18.12 ID:o4hsBp1AO
そもそもこうまで無防備を晒した時点で甘かったのだと、今更気付いた。魔術師は二人組だと、そうインデックスも漏らしていたはずなのに。

驕りもあった。無能力者の自分が、あんな強大な魔術師を倒したという驕り、変われたきっかけ。

浜面「ちくしょう……」

甘い。浜面仕上は、まだまだ甘い。所詮はスキルアウト、所詮は路地裏の喧嘩、殺し殺される世界など、浜面は知らないのだから――

浜面(ってちげぇだろ俺ッ!! そうじゃねぇ……そうじゃない!)

汗で濡れた拳を強く握る。震えが肩まで伝わった。

刀を構える魔術師に対するは携帯が入った袋を握りしめる男。笑える構図だ。

浜面(勝てるか勝てないか。違う、勝つしかない)

昨日だって絶望的な状況から這い上がった。あの状況と今の状況は、なにも変わりはない。

浜面「…………」

決定的な違いは、助言をくれたインデックスが、手伝ってくれた仲間がこの場にいない事だ。

浜面(コイツを一人で、倒せるのかよ……)

インデックスを狙うコイツを、自身の命を狙う神裂火織を、たった1人で倒せるのか……?

神裂「七閃」

また、響く。静かな空間に刀と鞘が擦れる金属音、同時に七本の斬激。

浜面「うおぉぉぉぉッ!?」

大地を切り刻み、土煙が浜面を覆う。丁度足元を中心に円を描くように地面に刀傷が這っていた。一歩でも動いていたら、間違いなく下半身の一部が飛んでいただろう。

神裂「知りませんよ? 私から注意を逸らせば、辿る道は絶命のみです」

浜面「く……ぐぅ……!?」

295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/09(水) 23:54:28.40 ID:o4hsBp1AO
斬激。それがあの女の魔術だろう。どういう原理かは知らないが、たった一度の斬激を増幅させ、引き延ばす。そんな魔術があるのだろう。

神裂「退いてはくれませんか、少年」

それを知ったからと言って下手に動く事は出来ない。丸腰の浜面は斬激を防ぐ手段なんてもっていないし、歩く教会のような防御結界も備えていない。

出来る事と言えば、

浜面「テメェを相手に……降参する理由なんかねえだろ」

時間を稼ぐ事。

誰かが助けにくるまでの、なんてご都合主義を期待しているわけじゃない。考える時間、思考時間を稼ぐ事に、意味がある。

浜面(どうする)

神裂「私の――」

浜面(どうすれば、この女を倒せるのかを――考えろ)

魔術師と言えど人間だ。昨日のステイルと同じ、変わりないはず。ならそこを突けばいい。
高所まで誘いだして突き落せばいいし、どうにか魔術を無効にして殴るでもなんでもすればいい。

神裂「七天七刀が織りなす『七閃』の――」

格が違う。浜面は神裂火織を見てそう判断を下したが、考えても見るとそれは早計だ。

だって浜面はまだこの女とろくな会話すらしていない。出合い頭に『魔術で翻弄』され、斬激に圧倒されただけだ。
冷静さは認める、攻撃手段も認める、でも手際よさはどうだ?

神裂「一瞬と呼ばれる時間に七度[ピーーー]レベルです。人はこれを――」

浜面(現に俺はまだ生きているじゃねぇか)

そう、大地を簡単に割るような斬激を一太刀浴びせれば、この女にとっては浜面仕上は終了のはずだ。なのに浜面は生きている、そして、命を奪われず『脅かされている』だけ。

神裂「瞬殺と呼びます。あるいは必殺でも――」

浜面(そこに付け入る隙がある……!!)

殺し合いの素人と呼べる浜面仕上が、この極限状態でそこまで冷静に思考できたのは、やはり昨日の戦いが大きく影響していた。

そう、大きく影響していた。

昨日のステイルとの戦いをこなしたせいで、そう思考出来てしまった。

それが後に、大きなツケとなって帰って来ることに、浜面はまだ気付かない。

浜面(まずは、どうにかしてここを離れねぇと……俺みたいな無能力者でも張り合えるステージに、コイツを引きずり込む!!)

そのために、会話を繋ぐ。

296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/09(水) 23:57:12.08 ID:o4hsBp1AO
神裂「間違いではありませんが」

神裂「これを聞いても、退く気はありませんか?」

浜面「……退かないっていっ――」

最後まで言葉を発する事は出来なかった。

頬に触れる固い感触と、柔らかく感じる風圧、少し視線を横にずらすとそこにあるのは黒光りした鞘。神裂火織の持つ、2メートルを越える日本刀だ

予備動作すら見えなかった。残像すら見えなかった。

神裂「殺します」

浜面「……ッ」

落ち着け、と自分に言い聞かせる。体の底からじわじわと這い上がってくる死の感覚を抑えつけ、動揺を隠す。

そう、ここまできても、コイツはまだ殺しにこない。

昨日といいコイツといい、魔術師は、余裕だ。その余裕を利用しろ、逆手にとれ浜面仕上。

神裂「だから、」

浜面「出来るかよ」

神裂の目を睨み付ける、震えは現れてないか、目は揺れてないか、考える暇は、ない。

浜面「テメェも、あいつの頭の中身を狙ってんだろ。魔術結社なんてあぶねぇ組織にほいほい渡せるわけねぇだろうが」

神裂「…………」

不愉快。

その神裂の表情を言葉にして表すなら、不愉快と言うほか表現のしようがなかった。

頬に向けられた鞘を手に戻し、構える。

また、牽制か、ハッタリか――
神裂「七閃」

短い金属音。

浜面「!?」

衝撃。小刻みの衝撃が、七度体に走った。地面が遠くなり、地から足が離れる。

浜面「か……ぐぁッぁぁぁあ!?」

飛ばされたのは、数メートルか、それ以上か。ビル壁に叩きつけられ、全身が悲鳴をあげる

浜面(体は……繋がってるか、ちくしょう)

不思議な事に服と包帯がかすかに刻まれた程度だった。傷はあるものの、重傷じゃない。

まだいける。笑える事にまだ携帯電話の袋がしっかりと握られていた。

浜面「ぐ、うぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

よろめき、立ちあがる。僅かに刻まれた傷を抑え、呻くように言葉を吐き出した。
叩きつけられた壁にもたれ、肩をすり付ける。如何にも重傷だという風に、如何にも手負いだと見える風に。

距離を測る。おおよそ、十メートル。あの女と対峙している時点でその距離は0に等しいかもしれないが、近付いているよりはマシだ。

神裂「あの子から何を聞いたのかは問いません」
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/09(水) 23:58:15.71 ID:o4hsBp1AO
神裂「彼女を保護させてもらえませんか?」

浜面「…………」

浜面の頬に流れるのは、冷や汗。神裂に対する恐怖……それもある。あの魔術師が本来通りに殺しにかかったら浜面は間違いなく一瞬で8つ程の肉の塊に分断されるだろう。

だが、今それ以上に大切なのは、タイミングだ。

浜面「……へっ」

浜面がジリジリと壁に擦りながら、足を引きずりながら這う。少しでも、道に近づくために。少しでも、可能性を引き上げるために。

浜面「いやだね」

神裂「そうですか」

柄を握り、刀を構えたその瞬間ッ――

浜面「お、おおおぉぉぉぉぉぉッ!!!」

浜面が、駆けた。一瞬で体勢を整え筋肉を引きちぎる勢いで、駆けた。

神裂「…………」

路地裏へ。

遠くで少年の吠える声が聞こえる。それは段々と離れていき、ああ、転けたようだ。

神裂は刀を収め、溜め息を吐く。

神裂「はぁ……これは、退いたうちにははいらないのでしょうね」

その気になれば自身の『脚力』で一瞬で詰められる距離を、敢えて神裂火織は歩く。

それは、ある意味での余裕だった。

結末を知る者の、余裕。

どうせあの少年は魔術師である自分には勝てないし、インデックスを救う事も出来はしない。

昨日1日のあの2人を遠くから観察し、そしてその結末をわかってるからこその余裕。

あの無能力者の少年は知らないのだから、インデックスの脳を占める10万3000冊がどれほど脳容量を圧迫するかを、
あの無能力者の少年は知らないのだから、3日後に彼女の記憶を消さなれば、その命は尽きてしまう事を、

神裂火織は路地裏を歩く。その自身の名刀『七天七刀』を腰に吊り下げ、暗い余裕を胸に秘め、

自分には勝てず、インデックスも救えない。そんな憐れみをも込めた少年に、胸に秘めた暗い幻想を打ち砕かれるとも知らず

神裂火織は歩みを進める。
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/09(水) 23:59:34.63 ID:o4hsBp1AO
一週間内とか言ってその日に来た。反省してる。


次の投下は前日かその日の朝くらいに予告します。ではではかいてきまー

あとWiki収録あざっす
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/02/10(木) 00:29:53.03 ID:d205/q5n0
>>295斬撃じゃねぇの
300 :>>1 [sage]:2011/02/10(木) 00:32:46.46 ID:NxU8QRrAO
よく見たら全部斬激になってた。しにたい
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/10(木) 00:48:07.03 ID:COATEsA00
上条さんの説教スキルがないはまづらはいかにして神裂さんに打ち勝つというのか楽しみで仕方ない
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/10(木) 01:16:41.98 ID:kqUBxc5Ro
乙閃
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/10(木) 01:56:41.53 ID:S2E7eOIt0
乙ー
どうやら勝つらしいが、どうやるんだww
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/10(木) 08:22:10.04 ID:UTndmg/Bo
反省する必要はない。もっとだ

おつ!
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/10(木) 09:19:29.11 ID:PtVFlEbSO
うーん、やっぱインデックスは上条さんにじゃないとなんか嫌だなぁ
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/10(木) 09:40:05.86 ID:eidGg3j1o
>>305
何故そんなことわざわざ書くの、馬鹿なの?
嫌ならスレ開くなよ
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/10(木) 10:33:50.48 ID:UHj/odlm0
>>305
面白くなければ同意見だが俺は完全な無能力者が
魔術師を倒すこの設定が好きだから読んでて
ステイル戦のクオリティが高いおかげで日常パートも好きになった。
設定になにかしらの魅力を感じられないなら読まないほうがいいだろうな
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/10(木) 12:16:31.96 ID:aIJ1Y2bv0
このSSを読んではまづらがもっと好きになったぜ
はまづららしさを出すのが上手いなぁ
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/02/10(木) 13:09:56.61 ID:d205/q5n0
ペンデックスはどうなるんだろ?
戦闘以前に首輪を破壊できるのか?
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/10(木) 14:02:35.97 ID:yGfA5m1Qo
むしろ俺は一方禁書も美琴禁書も浜面禁書もどれもインデックスとの絡みが素晴らしいと感じたんだが
インデックスの包容力とポテンシャルは無限大
311 :>>1 :2011/02/10(木) 21:45:11.98 ID:NxU8QRrAO
明日の22時に神裂戦中盤もしくは終盤まで一気に投下する。
って言っても10〜20レスだと思うけど。
リアルタイムで追うのってまた別のハラハラ感があると思うからよろしければって事で。

一応朝にもまたレスします

ではでは。
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/10(木) 23:46:40.64 ID:7oo78wPno
期待して待ってる

あと上条さんには御坂とかビリビリとか第三位とか超電磁砲とかがいるでしょうが
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 00:21:41.25 ID:eZkY+eOB0
メチャ楽しみにしてる!できれば決着まで読ませてくれww
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 09:16:54.40 ID:aXP0u4sAO
というわけで今日の22時にでも。
推敲ちゃんとできたら決着まで

ではでは
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 21:58:34.62 ID:aXP0u4sAO
さて2分まえ。

一応決着まで書けた。めっさ長くなった。携帯ぽちりすぎて手首いてぇ

4つに区切る。1区切りど5分小休止挟む

てなわけで。いきます
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:00:25.54 ID:aXP0u4sAO
空が橙色に染まり始め、もう夕暮れにさしかかかるというその時間帯。

浜面仕上は全速力で路地裏を駆けていた。

転んで膝を擦りむいたのは大した問題じゃない。今はこの路地裏を一瞬でも早く駆け抜ける事が最優先。

浜面(あんなバケモノと真っ向から戦っても勝てるわけねぇ……!!)

そう、相手は魔術師。自分は無能力者。相手を煽り、ブラフを駆使し、使えるモノは全て利用する。

それが無能力者の……スキルアウトの戦い方だ。

浜面(そうさ、やってる。あんな奴らにインデックスを渡してたまるかよ……!!)

保護だなんて、いかにもな言葉を使う奴らに、彼女は渡せない。そう決意し、浜面仕上は駆け抜ける。

浜面「はぁッ……はぁッ……!!」

たどり着いた先は、無人のビルに囲まれた自分達のアジト。とっくに使い捨てられた廃工場。

その周辺のビル壁には炎で焦げた痕や匂いが漂っている。昨日インデックスと再び出会い、魔術師との殺し合いを繰り広げたその戦場。

息を整え、一刻も早く対策を練らなければならないその頭にふと浮かんだのは、あの炎の魔術師の末路。

浜面「あいつ……死んだのかな」

空を仰ぐ。目の前に立つアジトは結構な高さだ。

15メートルから20メートル。その程度だろう。そこから落ちた魔術師は、生きているのだろうか。

例え人を殴った事はあっても、盗みを働いた事があっても、殺した事は、浜面にはない。当たり前だ。浜面はスキルアウト、ただの不良で一学生。路地裏の世界と、闇の世界は違う。

例え殺されかかったとしても、人を殺したかもしれないという事実は、浜面の心をキュッと絞める。

317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:01:39.98 ID:aXP0u4sAO
カツカツ、と小さな足音が後ろから響いた。

浜面「……く、そッ!!」

考えている暇はなく、再び駆け出し、同時に思考を働かす。接近戦は仕掛けるだけ無駄だ。その通り八つ裂きにされるか、それ以上か。
距離をとっても一瞬で詰められる。今こうやって逃げ回っていられるのは相手が油断しているせいだ。所詮自分には何も出来ない。そんな、余裕。

浜面「へっ……ムカつくなちくしょう」

ならどうする。接近戦も無理、中距離は論外、遠距離になると攻撃手段がない。銃なんて魔術かなにかで避けられて終わりだろう。

最悪だ。使えるモノは利用すると謳いながら利用できるモノが無さ過ぎる。他に何がある?アイツに対抗出来るか、もしくは揺さぶる事が出来るようなモノが――

一つだけあった。

浜面「…………」

インデックス。

頭に浮かんだのはあの少女の笑顔。

昨日、自分が何をして魔術師を倒せたか、何をして魔術師の油断を誘ったか、思い出す。

ステイル=マグヌスにとってインデックスはただの敵じゃなかった。浜面が突いたのは紛れもなく『そこ』だ。

ただの標的なら、あそこまで動揺しないし、隙も見せない。

あの魔術師と彼女の間には何かがあって、浜面はそこを利用した。

……神裂火織には?

浜面(ダメだ……あんな事もう出来ねぇ)

一瞬でもインデックスに連絡を取る事を視野にいれた自分を殴りたくなる。昨日はあの状況、あの瞬間だったからこそ行動。

なんでも利用するなんて言っても、あの少女の心に一生残る傷を付けてまで、勝ちを取りいくのは嫌だ。

318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:02:45.71 ID:aXP0u4sAO
そうなってくると浮かんでくる別の疑問。

アイツらは本当にインデックスの敵なのか?

浜面(いや、敵に決まってる。現にインデックスはそう言ってたし、アイツらはこうやって俺やインデックスを狙ってるじゃねえか)

ようやく入り口に回り込み、立ち止まる。目の前には、昨日の魔術師の仕業だろう、飴のように溶けて大穴が空いた本来なら強固な鉄の扉。
後ろには前半分が吹き飛んでボロボロになった車が転がっていた。

頭の中で神裂火織の対抗策とは別の考えがぽんぽんと浮かんでくる。くそッ今は自分の事だけ考えろ浜面仕上。

浜面「――――」

ふっと両足が地面を離れた。後方に引き寄せられ、衝撃。

浜面「が……ッはぁぁぁぁ」

どうやら背にぶつかったのは車だったモノらしい。勢いは止まらず、そのまま車と一緒にぶっ飛ぶ。

何が起こったのかはわからないが原因はわかる。神裂火織だ。

一瞬遅れて吹き飛んだ車が地面と衝突する音が響いた。荷台から何かが豪快に転がり落ち、浜面の腹にのしかかる。

浜面(あぁ、ちくしょう……まだ生きてる。)

生きて……地面に這いつくばっていた。のしかかった何かを腕で払い、起き上がろうとした浜面の視界の半分を占めていたのは、赤、朱、紅。

それが自分の血だということに気付いたのは数秒考えたあと。

腹の傷を抑えた手、手に巻いていた包帯も血に染まっている。

浜面「生きてても……これは、まずい、か」

声が震える。

死ぬ。

これは、死ぬ。

目に見える死が浜面仕上を飲み込もうとしていた。

319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:03:37.06 ID:aXP0u4sAO

神裂「もういいでしょう。少年」


そしてその死を確実に届けようと、死神が持つ巨大な鎌のような日本刀を携え、神裂火織が目の前に立っていた。

神裂「あなたが彼女にそこまでする理由はないはずです」

浜面「……、」

辺りを探り、見つけたのは先程までは存在しなかった可能性。魔術師に通用する『かも』しれない、たった一つの可能性。

飛びそうになる意識の中で、浜面は賭けに出る。

レートは腕一本か、命かは、あの女次第だが。

浜面「は……はは」

理由。インデックスを庇い、助け、救おうとする理由。

今から発する言葉はただの隠れ蓑だ。

多分本質はもっと深いところにある。

こんなところではとても言い出せるようなモノではないが、それはいつか、どこかの教会でシスターさんにでも告白しよう。

浜面「わかってねぇな……お前」

神裂が、眉を潜める。腕を持ち上げる浜面を警戒し、刀を構えた。

浜面「スキルアウトってのはよ……」

それは本来自分の言葉ではない。自分達を率いる駒場の言葉だ。昨日までの自分はそんな事欠片も思っていなかったし、言う資格もないと思っていた。

浜面(まだリーダーじゃないけどいいよな、駒場)

浜面「……本来テメェらみたいのに追われる弱い奴らを守る為に結成されたんだよぉッ!!!!」

腕を、振り下ろす。

辺りに響いたのは音。刀と鞘がこすれる金属音ではなく、

煩わしく、耳障りで、不快で、嫌いで、少しうるさい音。

320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:05:09.73 ID:aXP0u4sAO
キィィィィィィィィィン

それは車から転がり落ちたキャパシティダウン、車が吹き飛んでもまだ動いた、『能力者』を無効化するうるさい音。

浜面(どうだ……ッ!?)

ただ、少しうるさい。それだけの音だが、いつも相手取る『能力者』には違う伝わり方をしていた。

その音は、

神裂「…………」

『魔術師』には伝わっていなかった。

平然と、なんのつもりですか?と言いたげな神裂の冷たい目線に、言葉もでない。

浜面「……く、ぐ!!」

これは浜面にとって、その場しのぎではあるが一つの賭けだった。能力者の行動を阻害し無力化するキャパシティダウン。魔術師と言えど異能を使う能力者なら――そう考えたが

『超能力』と『魔術』

そこには浜面の知らない決定的な違いがあるらしい。

浜面「……やっぱ、魔術と超能力ってのは本質からして違うのかよ」


その呟きを聞いたのか、神裂火織がああ、とそういう事ですか。と、一人で納得する

神裂「私達とあなた達は決定的に違うのですよ……その音はこの学園都市で開発をされた者にのみ効果を発するのでしょう」

それは、やはり魔術と超能力の違い。

神裂「私達魔術師は身体に循環する魔力を練って術を使います」

神裂が、刀を構える。

未だに浜面のすぐそばで煩わしい音を出すそのキャパシティダウンは、

神裂「七閃」

その一言と短い金属音で無数の、何も鳴らない塊になった。

浜面「な……」

神裂「そして能力の有無に関わらず、脳を開発をしてしまった人間は魔力を引き出す事が出来ません」

その声が聞こえたのは、後ろ。
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:06:12.13 ID:aXP0u4sAO
浜面「――ッ」

振り向く前に、空気の焼ける音が聞こえた気がした。

上半身と下半身が切断されるんじゃないかって程の蹴りが直撃。その衝撃でまたも、体が浮き上がる。落ちない、地面に落ちず

浜面「お、おぉぉぉぉぉ!!!」

浜面の体はそのまま一直線に廃工場の中突っ込んだ。

何秒浮いて、そもそもそれは浮いていたと言えるのかはわからない。

浜面が気付いた時には、冷たい地面に這いつくばっていた。サラサラとした何かが、浜面の頬に落ちる。

浜面「あ……う……」

なんとか、仰向けになる。工場の中まで吹き飛びぶち当たったのは土嚢のように詰まれた密閉性の高い布袋の山だったらしい。
Lと印字されたそれは、破れた箇所から白い砂のようなものが流れ出ている。

浜面「…………」

あの速度で工場の扉にでも直撃していたら、死んでいただろう。昨日の魔術師が大穴を空けていたおかげで命拾いだ。こんな極限状態でも、運は自分に味方しているらしい。

まぁ、命の危機には変わりないが。

322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:07:19.51 ID:aXP0u4sAO
浜面「あー……まだ握ってやがった」

携帯。絹旗に買って貰った携帯電話の袋。ボロボロだが、中身はちゃんと入っている。

浜面「インデックスへの土産……だもんな」

震える手で箱から携帯を、電話機能しかついてないような真っ白でシンプルな携帯電話を、ポケットにいれ、

浜面「う……」

立てなかった。

力が、入らない。あれだけの衝撃を腹部に受けて、骨は折れてないか。内蔵の位置は正しいか……

浜面「くそ……」

そう呟いて見渡す天井に、面白いモノも、打開策になるようなモノも何もない。昨日の魔術師が空けていった大穴ぐらいだ。あれじゃもう雨を防ぐ事も出来やしないだろう。

アジトは、放棄だな。なんて、唇を吊り上げる。

カツ、カツ、と、古びた廃工場に足音が響く。それはだんだんと浜面の元へ近づき、耳元で止まった。

浜面「…………」

まずい。これは、まずい。

323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:08:23.10 ID:aXP0u4sAO
神裂「まだ、抵抗する気がありますか?」

浜面「……あ、たり、ま」

あたりまえ、その言葉を言い切る前に神裂火織の持つ鞘が浜面の腹部に叩きつけられた。

浜面「か、ごッ……!!」

逆流する胃液、口から吐き出したのは言葉ではなく吐瀉物。
昼に食べた包み焼きハンバーグだ。胃酸のキツい臭いと一緒にそれは浜面の鼻孔を突く。

浜面「がはッ……ヴゥゥ!!」

神裂「最後に問います。少年」

最終通告。

魔術師によって用意された、助かるかもしれない最後の道。

神裂「彼女を保護したいのですが」

浜面「…………」

こんな時、誰かが来てくれたらなぁ……なんてご都合主義をつい考えてしまう。
半蔵がいたら、駒場がいたら、絹旗でも結構いい線いくかもしれない、ミサカだって超能力者の妹だ。きっと強いんだろう。

浜面「…………」

インデックスがいたら。

浜面「…………」

浜面「…………」

助けは来ない。
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:09:35.26 ID:aXP0u4sAO

当たり前だ。殺し合いの世界がどんな場所かは知らないが、そんな都合のいい展開で溢れてたりはしないだろう。

それに、コイツはきっと、甘いだけで手際はいい。そんなご都合展開なんて、起こさせない。

この女魔術師が目の前に現れた時、ステイルが人払いどうのこうの言っていた。多分そういう魔術でも刻んでるのだろう

浜面(あぁ、て事はあいつ生きてんのかよ……ちくしょう)

ホッとした反面、憎らしい。

神裂「助けを待とうとしても無駄ですよ」

内心を見透かされたような、そんな言葉。

神裂「先程も言いましたがステイルが人払いのルーンを刻みました。今度は紙ではなくちゃんと刃物で、です」

神裂「この工場を基点にして刻んだだけですが、それでも周囲500メートルは誰も近寄れません。工場ごと吹き飛ばさない限り誰も来ませんよ」

それは、工場ごと吹き飛ばせば誰か来ると言うことか、なんて無駄な思考に―――

浜面「…………」

浜面「そりゃまた……ずいぶんちゃちい、な」

その言葉が気に食わなかったのか、神裂の靴底が腕を潰す。

325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:10:51.17 ID:aXP0u4sAO
浜面「ぐ、あぁぁぁぁぁぁ!!」

神裂「あなたがステイルを倒してしまいましたからね。重傷ですよ。無理をさせましたがあと2日は安静です」

それは仲間がやられたからだろう、怒りが込められたとても熱く冷たい声。

コイツを今ここで倒せば、2日は逃れられるという事かな……と朦朧とした頭で考えたが。どちらにせよ、この状況をどうにかしなくては。考えろ浜面仕上。ヒントは沢山あっただろ?

神裂「もういいでしょう、少年。ロンドンでも十指に入る魔術師を相手にこんなにも長い間生き残れれば上等です」


それだけやれば、彼女もあなたを責める事はしないでしょう。

浜面「…………」

そりゃそうだ。と、浜面は思う。

インデックスが自分を責めたりするはずがない。きっと辛い気持ちを我慢して、一人で耐えるだろう。

でも、その辛い気持ちは、比喩でもなく一生あいつの心に残って、それでもあいつは笑うんだ。

初めて会った時のように。

『じゃあね、ごはんおいしかったよ!』

2度目に会った時のように。

『ありがとう、さよなら』

浜面「…………」

それは、いやだ。
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:11:39.80 ID:aXP0u4sAO

浜面「あ、ぁぁぁぁぁ!!」

ガタガタの体を動かし、起き上がる。胃液混じりに吐き出した言葉は、強がりでも煽りでも決意でもなんでもない。

浜面「なぁ……」

それは

浜面「……あんたら一体なんなんだ」

疑問。

それは、頭の中をずっとぐるぐる回る疑問。

浜面「一体テメェらはアイツのなんなんだ!!」

全てに納得がいかなかった。インデックスに剣を向けて顔を歪めたステイルにも、何度も何度も自分を殺せたはずなのに未だに目の前に立つ神裂にも、10万3000冊を狙う癖に執拗にインデックスに固執する理由も、なにもかも。

こいつらはただの敵じゃない。
浜面「答えろよ魔術師ぃッ!!」

神裂「――――」

浜面「…………」

浜面「……は?」
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:13:16.90 ID:aXP0u4sAO
這いつくばり、目を見開く浜面にはその単語の意味がわからなかった。
体はもうガタガタで、吐瀉物が散乱し、少ない血溜まりも出来ている。

それでも、単語の意味がわからなかった。

浜面「いま、なんて」

神裂「私達が属する組織は必要悪の教会、あの子と同じ組織であって」

神裂「あの子の仲間で、親友です」

浜面の頭の中でぐるぐる回っていた疑問は、全部吹っ飛んだ。

解決したわけではない。それ以上に衝撃がでかかったからだ。
神裂火織が放った言葉は、今まで浜面を襲ったどんな攻撃よりも重くて、重い衝撃だった。

浜面「何を言ってんだテメェは」

思わず、そんな言葉がでる。

浜面「あんなガキを一年も追いかけておいて……ッ!!」

神裂「あなたは、あの子が一年前からの記憶がない事をご存知ですか」

浜面「……それが」

神裂「何も覚えてないんですよ」

私達が仲間なのも、自分が追われている本当の理由も、覚えてないから自分で判断するしかなくなった。私達は魔術結社、目的10万3000冊。
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:14:34.73 ID:aXP0u4sAO
そう言って這いつくばる浜面を見下ろす神裂の目は、どこか冷たく、押し殺した声。

浜面「ちょっと待てよ……あいつには」

完全記憶能力。それを持つインデックスが、なんで記憶を失う。矛盾だ。道理が通らな……

神裂「私達が消しました」

神裂「そうしなければ死んでしまうんですよ。インデックスは」

浜面「――――」

浜面「は、はは……」

つい、笑ってしまう。

ぽた、ぽた、と、刻まれた傷から滴る血液が、氷のように冷たくなる感じた。

神裂のいう完全記憶能力。
インデックスの頭の中にある図書館レベルのそれは、その『能力』を使って実に脳の85%も使って記憶しているらしい。

故に彼女は常人の15%しか脳を使えず。どんどん貯まっていくゴミのような記憶がインデックスの脳を圧迫して、死に至らしめる。

浜面「は、ははは……」

まだ、笑いは止まらない。

無数の傷に刻まれ、血と汚物にまみれ、とうとうおかしくなったのだろうと、神裂火織がもぞもぞとうずくまる浜面に憐れみの視線を向けた。

浜面「くく……」

浜面は――

浜面「…………」

浜面は――

神裂「…………」

浜面「…………」
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:15:44.06 ID:aXP0u4sAO
刺さる程の沈黙を切ったのは、神裂火織。

神裂「少年、あの子を保護させて下さい……あと3日しか時間がないんです」

3日後。丁度その日の決まった時間に記憶を消さなければ、死んでしまう。

インデックスが、死んでしまう。

神裂「私達に彼女を傷つける意思はありません」

浜面「…………」

神裂「私達でなければ彼女を救う事はできない」

浜面「…………」

神裂「引き渡してくれませんか、少年。あの子の悲しむ姿は見たくありません」

浜面「…………」

神裂「少ね」

浜面「おい魔術師」

もぞもぞと、うずくまっていた浜面が突然声を発し、つい言葉が途切れた。

浜面「2つ……質問がある」

神裂「なんでしょう」

うずくまっているから神裂には浜面がどんな表情をしているかはわからない。絶望に打ちひしがれているのか、それとも――

そう察したつもりになった神裂火織は、だからこそ、浜面から飛び出した予想外の質問に眉を潜めた。

浜面「お前、携帯の使い方はわかるか」

神裂「……は?」
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:17:09.78 ID:aXP0u4sAO
浜面「いいから答えろ」

神裂「……あるてい」

浜面「パソコンは?」

神裂「…………」

その無言を返事と受け取り。そうか、と呟いた浜面は立ち上がった。

その顔は、

浜面「もうすぐよ、インデックスから電話がかかってくるんだ」

神裂「……それがな」

浜面「2つめの……質問だ」

その顔は、怒り。

浜面「テメェらはなんで事情も説明せずにアイツを追いかけまわしてんだ」

浜面は苛立っていた。苛立ちを隠せなかった。

コイツらにも事情があった。それは充分理解した。

仲間として親友として笑い合い喧嘩して涙を流しながら春夏秋冬をインデックスと過ごしてきたんだろう。
何度も何度も幸せな思い出を重ねては消していって、それの繰り返し。しかも自分達で奪わなくてはいけないなんて想像できないししたくない。

コイツらにも事情があった。

それは充分理解した。

けど、

けどもしも

コイツらが耐えきれなくて、思い出を重ね記憶を消す事が耐えられなくなって、

だからわざわざ敵を名乗って、自分も辛いなんて内心思い、それでもインデックスの為なんて抜かしてをしてこんな事をしているなら――
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:17:52.94 ID:aXP0u4sAO







浜面仕上はそれが許せない。








332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 22:18:19.36 ID:QKjHk3m2o
かっこよすぎる
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:20:15.04 ID:aXP0u4sAO


そんな事をしておきながら『彼女を傷つける意思がない』なんて言うこの女が、



そんな事をしておきながら『彼女を救いたい』なんていうこの魔術師が、



そんな事をしておきながら『彼女の悲しむ姿は見たくない』なんていう神裂火織が、



334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:21:00.60 ID:aXP0u4sAO





「許せねえ」





335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:22:13.65 ID:aXP0u4sAO
コイツらが、この魔術師共が、

たった一度でも完全記憶能力ともいうその『記憶の取捨選択が出来ないだけの病気』をパソコンでもなんでも使って調べてさえいれば――

浜面「……ッ!!」

浜面の脳裏に浮かぶのは、インデックスだ。


『こわかった』と肩を震わせ、嗚咽を漏らし、涙を流したインデックスだ。


浜面「あ、ああああああああああああああああああああああああ!!!!」

浜面仕上は許せない。

忘れてしまうから

辛すぎるから

だから自分達もインデックスも不幸のまま終わらそうだなんて、

そんなのはコイツらの都合だ。インデックスの事は一瞬たりとも考えていない、魔術師側の都合だ。

すぐ手を伸ばせば。どこにでもある、すぐ近くにある物に手を伸ばせばこんな事にならなかったかもしれないのに

それを怠ったのはコイツらだ。

コイツらが今も傷付いているのは言ってしまえば自業自得だ。

ただ、インデックスを『諦めきれなくて』こんな事をしているだけなら、

そんなのが、コイツらのガキみたいなわがままでインデックスが一年間も苦しんで、泣いていい理由になるわけがない。

そんな事はクズでも分かる

だから――

336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:24:33.95 ID:aXP0u4sAO


浜面「だからテメェはここで倒すッ!!無理にでも退いてもらうぜ神裂火織ッ!!!インデックスは渡さねぇし記憶も消させてたまるかよッ!!」

浜面「いつまでも聖人気取ってこんな事してるなら、それでも救うって言うんならテメェはあの赤毛と指加えて黙って見てろッ!!!」

浜面は吠える。そのボロボロの体で、立っているのもやっとのその体で、

浜面「アイツは俺が助ける!!どんな事をしてもだッ!!神様にでもなんにでも誓ってやるよ!!邪魔するってんならしてみやがれ、テメェを地獄に突き落としでも俺はアイツと一緒にこの地獄から這い上がるぞッ!!!!」

ロンドンでも十指に入るその魔術師に真っ向から戦線布告した。
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:25:28.77 ID:aXP0u4sAO


神裂「…………」

神裂「……そうですか」

その意思を聞いた神裂火織は静かにその刀に腕を伸ばす。

何の力も持たない浜面仕上に対し、腰に吊り下げた己の刀、七天七刀を構え、



「Salvere000」



どこまでも静かにそう呟いた。
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 22:26:18.82 ID:aXP0u4sAO
ほい一区切り。次は31分に
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 22:28:32.48 ID:QKjHk3m2o
熱い
上条さんや一方さんより熱いぜ浜面
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 22:28:44.65 ID:fT9cA/Zd0
すげえ面白い、何が面白いってもう
全部面白いです
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:31:33.02 ID:aXP0u4sAO
次の瞬間、浜面は再び吹き飛ばされた。

吹き飛んだ場所は先程と同じ、土嚢のように詰まれた密閉性の高い袋の山。それが崩れ、床に落ちる。裂けた袋から流れ出たのは、白い砂のようなもの

浜面「ぐッ……」

痛みを堪え、浜面は目の前を見据えた。激突した衝撃で砂のような物が空中に舞い散り、視界を大きく遮る。

ぼんやり、と砂煙の中、七天七刀を構える神裂火織のシルエットが浮かんだ。

その鬼神と呼ぶべき気迫をさらけ出し、最早殺気を隠そうともしない。

姿が見えなくても伝わる、死線。

姿が見えない、今なら――

浜面はそっと仕掛ける。気付かれないように、いや、すでに気付いているかもしれないが、それでもそこに残していく。

たった一つの可能性を。

神裂「私は何度も何度も言いましたよ。少年」

浜面「……そこが、聖人気取りだっつってんだよ」

342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:32:26.66 ID:aXP0u4sAO
布袋の山にもたれながらも、威勢よく吐き出そうと思ったその言葉は、途切れ途切れになり弱々しい。

口の中で唾液と胃液と血の味が混じった。気持ち悪さに思わず吐き出す。

浜面「……ぺっ」

吐き出し、笑う。

浜面(ここまでは『計画』通り……)

計画、なんて大それた言い方をしたが、彼の思惑を知った者はその杜撰な考えを笑うだろう。無理だ。成功するはずがないと

浜面(ちがう、やるしかねぇんだ)

ずっと、考えた。あの魔術師が浜面を見下ろしてインデックスについて語ってる間も、うずくまりながら仕掛けて、必死に考えた。

神裂「殺します。少年」

コイツを倒す。いや――殺す方法を。

もう手段は選んでられない。昨日の魔術師のように生かしたらきっとまたコイツらはインデックスを狙いにくる。

だから、殺す。

だから、賭ける

それは昨日戦った魔術師との賭けなんかよりもよっぽど危険な……多分、これから生きていく人生の中で二度と経験する事ない賭けだ。

一つの必然といくつもの大きな賭けを成功させたうえで成り立つ、更に大きな賭け。

浜面(生きて、帰るんだ)

一番重要な伏線は、もう張った。

あとは――

浜面「…………」

天井の大穴、その先を見上げる。空はだんだんと夕暮れに染まってきた。

そう、あとは

浜面「やってみろ」

時間との勝負。

343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:33:52.57 ID:aXP0u4sAO
その言葉を吐いた直後駆け出す。どこでもいい、とにかく神裂火織から距離を開ける事。

瞬間、浜面が立っていた場所に刀傷が刻まれた。七閃は学園都市性の密閉性が高い布袋を紙のように裂き、中に詰まっていた砂のようものが勢いよく落ちて、舞い上がる。

神裂「チッ……」

砂煙に徐々に視界が遮られていく中、神裂は浜面の足音を頼りに、七閃の正体、その刀の影に隠した鋼線を操り、斬撃を飛ばす。

神裂「…………」

斬った感触は、ない。

本気を出せば一撃で決められる。

『唯閃』を発動すれば、この工場ごと文字通り横一線、あの少年もろとも真っ二つに――

神裂「七閃」

金属音と共に斬撃が走る。

344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:34:29.61 ID:aXP0u4sAO
それでも、神裂火織があくまで『必殺』を使わなかったはやはり魔術師としての余裕か、強者としての気まぐれか、聖人としての憐れみか。

神裂「…………」

それともインデックスの親友としての、躊躇いか。


しかし賽は投げられた。あの少年は何としてでも自分を殺しにくるだろう。

ならこちらも、やるしかない。

どちらにせよもう自分は魔法名を名乗ってしまったのだから。

神裂「七閃」

鋼線による斬撃が建物内を縦横無尽に駆けた。

同時に発生した七本の刃は、壁を、天井を、機材を、袋の山を、床を、少年を、斬り刻む為にラインとなって走っていく。

人を斬った感触は、ない。

少年の足音はまだ聞こえる。

走っている。
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:35:39.21 ID:aXP0u4sAO

浜面「――はっ――はっ」

呼吸が辛い。吐いた息がこもり、頬に生暖かい蒸気が溜まる。

足を一歩動かす事に全身に刻まれた傷が徐々に開く。打撲、刀傷、火傷の痕、もうどこが痛いのかすら分からない。今にも倒れたいぐらいだ。

浜面(けどッ!!)

鞭をうつ。浜面の耳に届くのは、飛んでくる斬撃が周辺を切り刻む音、小刻みに吐かれる呼吸、心臓の音。

浜面(けどッ!)

浜面仕上は走っていた。物陰に潜み、姿が見えないように。

先程から飛んでくる斬撃からして、神裂火織はこちらの位置を把握してきている。

浜面「……痛ッ」

しかし、浜面側からしたら、見えるか見えないかなんて関係がない。ただ、

浜面「――ッ」

走るだけ。斬撃が自身を切り刻まない事を祈って、走るッ!

346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:36:39.02 ID:aXP0u4sAO
その直後、浜面が遮蔽物にしていた、土豪のように詰まれた密閉性の高い布袋が爆裂。

浜面「ッ!!」

切り刻まれた布袋と、中身が舞う。一歩でも遅れていたら、自分も同じように中身が飛び出していただろう。

また、走る。次々と飛んでくる一太刀が必殺の斬撃に未だ当たっていないのは、奇跡としか言いようがなかった。

奇跡か、それとも、余裕か。はたまた、気まぐれかはわからない。

しかし、今浜面にはそれぐらいしか縋るものがない。

天井を見上げる。舞い上がった砂煙が視界を覆い、空は見えない。

浜面(いいさ、そっちのが好都合だ)

浜面は走りながら再び考える

浜面「――ッ――ッ」

あの魔術師を倒すために組んだ道筋を、

そもそも、そもそも浜面がなんの為に『このアジトまで神裂を誘いこんだか』を、

ここはどこだ?なんの為の工場で、誰の為の工場で、ここには何が置いてあるか?

浜面(考えろッ!!)

347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:37:40.57 ID:aXP0u4sAO

再び物陰に潜み、背を預け、息を吐く。また生暖かい呼吸が頬に跳ね返った。

浜面「はぁ……はぁ……」

目の前に無造作に置かれているあるものを見つめる

浜面「はぁ……はぁ……」

その目の前に置いてあるのは駒場がいつも使ってる道具だ。スキルアウトのリーダーとして先陣を斬り、敵を潰す為に使っていた、それを

そうだ浜面仕上。『ここはどこだ?』

浜面「……わりぃ駒場。借りるぞ」

その発条包帯<ハードテーピング>を握りしめ、

浜面「はぁ……後は――ッ」

斬撃。

土豪、この場合塹壕代わりにしていた、Aと印字された布袋がまた吹き飛び、何度もみた白い砂のような物が舞った。

浜面(く、そ……)

肩を掠った斬撃は、そのまま自分の体を越して壁に大きな刀傷を刻む。

今のがすこしでもズレていたら、腕が飛んでいた。

浜面(くそぉ……ッ!!)

浜面は再び息を止め走り出す。発条包帯を脚部に巻きつけ、

浜面「―――ッ!?」

関節部分に熱がこもり、途端に一歩の歩幅が大きく開く、駆動鎧のスピードを手に入れた代償は、肉離れのよう痛み。

浜面「く、ぐぅ!?」

肉が裂けるような痛みが下半身を襲う。生きる確立を上げる為とはいえ、我慢したくない痛みだ。

でも今は、とにかく走れ――

後ろを追いかけくるのは、魔術師ではなく、斬撃。

止まると追いつくのは斬撃ではなく、確実な死だ

走れッ!!
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 22:40:23.80 ID:aXP0u4sAO
神裂火織が立つ位置は先程と変わりがないなら、この廃工場の丁度中央。昨日ステイルが開けた大穴の真下。

浜面はその神裂火織を中心にし、物陰に身を潜めながら半時計周りに壁沿いを走る。

神裂「逃げるだけですか!!」

と、神裂の怒声が飛んでくる。また、物陰に身を潜め、様子を伺う。砂煙が舞い上がりすぎて、既に神裂の姿は視認出来ない。

浜面「…………」

浜面「う、るせぇッ!!逃げてるのはテメェらだろうが!!」

斬撃。

物陰が破裂。砂煙が舞う。

そう、逃げてるのはアイツらだ。傷つく事から、インデックスから。

また走り出す。そろそろ半周走った。残り半周、入り口に着いたら、そこで詰みだ。

浜面「……ッ」

どちらが詰むのかは、賭けでしかないか。

浜面「ち、くしょぉがッ!!」
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:41:58.26 ID:aXP0u4sAO
斬撃の苛烈さが増す。肩を、腹を、脚を、頬を、神裂の怒号と共に飛んでくるそれは徐々に浜面にかすりだした。

既に七つの斬撃どころじゃない。それ以上の斬撃が無差別に、鎌鼬のように全てを斬る。

浜面の体には既に数十の刀傷。致命傷はないとはいえ、これ以上は――いや、既に限界は越えていた。

浜面が駆けた痕には、幾つもの斬撃によって分解された原形を留めないモノが転がり、それを遮るかのように砂煙が広がっている。

追いかけて来るのは先程と変わらない斬撃に加え、それは悲痛な叫び。

神裂「あなたに何がわかるんですが!!」

神裂「なんの能力も持たないあなたに!何が出来るんですか!!」

その叫びに、心の中で返事を返す。叫び返す余裕は、ない。

いや、ここで叫ぶわけにはいかない。

神裂「何の力も持たない無能力者の癖に!!」

ああ、確かにそうだ。

神裂「偉そうな事言って何も出来ない癖に!!」

けど、やってやるさ

神裂「魔術の知識すらないド素人が、あの子を助けられわけないでしょうが!!」

浜面「――ッ――ッ」

350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:44:50.58 ID:aXP0u4sAO
走りながら、斬撃にまみれながらふと考える。

その考えが既にインデックスを殺してると言うことに、コイツは気付いているのだろうか。

浜面(タイミングは、ここッ!!)

浜面「じゃあテメェは助けられたのかよッ!!」

コイツはきっと気付いてない。多分、心のどこかで科学側〈俺たち〉を否定している事に。

コイツの世界は、インデックスを助けようとするには狭すぎる。

叫び返すなら、今だ。

神裂「私達だって頑張った!!頑張ったんですよ!?」

悲痛な怒号が飛び交い、次の瞬間命が刈られるかもしれないそんな非常時に、携帯を取り出す。

目線だけで辺りを見渡し、準備は万端。これだけ暴れまわってくれれば十分だ。

入り口につく。半周走り終えるまで、後数十秒。

タイムリミットまでは、後ニ分。

なんにせよ――

浜面「テメェらの頑張りなんて知った事かッ!!現にインデックスは俺にしがみついて泣いたんだよ!!その事実は変わんねぇだろうがぁッ!!」

神裂「あ、ああああああああああああああああああ!!」



挑発は、これで最後。



浜面「俺が何も出来ねぇってならさっさとそれを証明してみろッ!!」

浜面は叫ぶ。限界を振り絞って、最後の賭けを。

浜面「ちまちま斬撃飛ばしてないでそのでっけぇ刀で俺のハラァ貫いてみろよッ!!」

入り口に、着いた。


351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:46:36.92 ID:aXP0u4sAO
浜面(――――!?)

その瞬間。

神裂「ああああああああああああああああああッ!!」

絶叫が、刃と共に飛んできた。

中心点とも言うべき場所からたった一歩、一直線に砂煙を突っ切り、悲しみと怒りとやりきれなさが混じった形相、刺突の構えで現れた神裂火織。

浜面(ま、ず――)



その切っ先は、浜面に向いた七天七刀の切っ先はまず浜面の着ている服を貫いた。



浜面「あ――」

そして包帯、次に肉に食い込み、それも貫く。

次に貫いたのは浜面の背の肉。それを内側から、包帯、服の順にまた貫く。

浜面「――――」

その冷たく、するどい異物はズブズブと浜面の中を進んで、進んで――

浜面「…………」

神裂「…………」

浜面「…………」

神裂「…………」

先程まで怒号と剣戟の音が飛び交っていたそこに、張り詰めているのは静寂。

数秒にも満たないその時間は、何分にも長く感じた。

352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:47:03.73 ID:aXP0u4sAO




神裂の七天七刀は、完璧に、完全に浜面を貫いた。




353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:47:47.10 ID:aXP0u4sAO



小さく、ほんの小さく呟いたのは、神裂ではなく少年。

浜面「……くそ」

浜面は、賭けに――



354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 22:48:37.52 ID:y3/8+FWto
wktk
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:49:52.78 ID:aXP0u4sAO

神裂「はっ――はっ――」

神裂から見た浜面仕上は、少し奇妙な格好をしていた。

その姿は、ボロボロだ。血に濡れていない場所を探すのが困難な程に、傷にまみれている。

破れた服の隙間から見える本来白いであろう包帯の色は、赤。

しかしそこじゃない。

その少年の顔を隠しているのは無骨なマスクだ。

そのせいか、表情は見えない。
目を見開いて血を流しているか、呆然と神裂を見つめているのか。

でも、もうどうでもいい。

浜面「……ご、はっ」

そんな呻き声と共に、刀に貫かれた浜面仕上の体が揺れる。何の為につけていたのかは分からないそのマスクからは血が漏れた。

神裂「…………」

ゆっくりとそれを引き抜く。ズブズブと嫌な音をたてて、少年の血にまみれた七天七刀を引き抜き終わったと同時に、少年も倒れた。

少しの水音と共にドサッと倒れて、その少年は動かない。

神裂「……内臓は外しました。せめて、そのまま安らかに」

356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:51:20.37 ID:aXP0u4sAO
刀を振る。空気が焼ける音と同時に、刀についた血も飛んだ。
刀を鞘に戻し、

神裂「…………」

頭の中で反芻するのは目の前で倒れている、まだ微かに息のある少年の言葉。それが一区切りずつ頭の中で響く。

響く。

浜面『テメェらの頑張りなんて知った事かッ!!』

彼女を傷付けない最善の方法だと思った。

浜面『現にインデックスは俺にしがみついて泣いたんだよ!!』

だから、自分達は敵となって彼女を追いかけた。

浜面『その事実は変わんねぇだろうがぁッ!!』

それは――

ぴぴぴ、ぴぴぴ

神裂「……?」

知らずに血が流れる程唇を噛み締めた神裂火織が、音に気付いたのはその時だった。

誰もが聞いてもわかるだろうそれは、携帯の音。

少年のではない。倒れた少年は『携帯を持っていない』

それは工場の奥の方から聞こえる。ちょうど、『自分が先程まで立っていた』場所から。

神裂「――――」

いつもの神裂なら、無視した。どうせこの少年が落とした携帯電話だろう、と。

この少年の携帯に誰がかけてこようが自分には関係ないと。

神裂「…………」

しかし、先程少年はこう言っていた。

『もうすぐよ、インデックスから電話がかかってくるんだ』
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:52:26.78 ID:aXP0u4sAO

その電話だとしたら?

神裂「……インデックス?」

今かかってきて、あそこで音を鳴らしている携帯が『紛れもなくインデックスからかかってきているのだとしたら?』

あの少年に『嘘をつく必要性』なんてない。あの電話を鳴らしているのはインデックスだ。

神裂「…………」

そう考えると、神裂の足は自然に動いた。

電話にでて、何を話すかなんて考えていない。考えられない。

ただ、声を聞きたかっただけだ。

今も、今も自分が守ろう、助けようと、救おうとしている少女の声を、聞きたかっただけだ。

神裂「……インデックス」

何年も季節を過ごし、思い出を重ね辛い別れをしてきた、最愛の親友の声を聞きたかっただけだ。

神裂火織は歩く。先程自分がいた場所へと、斬撃をこれでもかと振りまいた場所へと。

358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:54:17.68 ID:aXP0u4sAO
神裂火織は追い詰められていた。


インデックスを守ろうとした自分に、同じくインデックスを守ろうとした少年が、何の力もない少年がぶつけてきた感情に、神裂火織は追い詰められていた。

違う、自分は正しいはずだ、あれがインデックスの為だったんだ。そう自分に言い聞かせ

一歩、また一歩と近づく。

奥に行くにつれて、砂煙がまるで濃霧のように舞っていた。視界が白に染まり、自分の周囲1メートルにすら何があるか視認できない。
天井、もしくは工場全体を多い尽くしているその砂煙は、それほど自分が我を忘れて暴れたという事だろう。

音を頼りに、歩く。

神裂「…………」

その時点で神裂は気付いていた。その超人的な聴覚で、倒れたはずの浜面仕上が起き上がり、ゆっくりと歩いていた事に、気付いていた。

それを無視したのは、既に何も出来ないと判断したからだ。あの傷では、もう何も出来ない。何も出来ず、死ぬ。

だから放っておけばいい。

そう判断してしまった。

ぴぴぴ、ぴぴぴ

もう音はかなり近い。

そこは、自分がぶっ飛ばした少年が激突した布袋の山。土豪のように積み上げられていたその布袋の山は、全てが切り刻まれ、中身が飛散していた。

邪魔な、『密閉性が高かった布を』、重なる布を一枚一枚退けていき、携帯を探す。

359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:55:20.10 ID:aXP0u4sAO








神裂火織は気付かない。








360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 22:57:15.62 ID:aXP0u4sAO
その超人的な視力や聴力や身体能力をもっていようが、決して気付けない。


あの時、自らの刀であの少年を指し貫いた時、マスクの下で少年が『薄く笑っていた』事を


今、自分が一枚一枚どけている布に印字されている『AL』という表記の意味を。


『al』という『元素記号』が何を表しているのか、それがどういう『性質』をもっているのかも、


そして辺りに舞っているのは『砂煙』ではなく『粉塵』だという事にも、


ここがもともとスキルアウトのアジトでもなく、自分達がルーンを刻んだステージでもなく、『鉄鋼系の製粉工場』だという事も


ぴぴぴ、ぴぴぴ――ぴ

そして、

神裂「……イン、デックス?」


手に持つ『真っ白でシンプルな携帯』は浜面仕上がインデックスの為に買った携帯だという事にも、


現時点、その携帯電話の番号を知りうる人間が『一人しか存在』しない事を



神裂火織は気付けない。



その手に持つ携帯電話から聞こえきた言葉の意味にすら。

361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 22:58:00.08 ID:QKjHk3m2o
おおおおおお
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 22:58:00.10 ID:aXP0u4sAO







浜面『……よう、魔術師。粉塵爆発ってしってるか?』







363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 22:59:39.33 ID:aXP0u4sAO
神裂「……は?」

酸化反応が短い時間内に連鎖的に起こり、急に温度があがって体積が急膨張する。それが爆発の原理だ。

当然、神裂火織がそんな事を知るわけがない。

唯一気付いた事は、やはりその超人的聴力が捉えた音。

天井にあたった、雨の音。

『昨日の朝から降ることが予定されていた雨』

ゆっくりと、天井を仰ぐ。

ステイルが少年を殺そうとし、その結果『大きな穴が出来た天井』を

神裂「あ――」

神裂の目が捉えたのは、雨粒ではなく、閃光。

天井の穴から入り込んだ雨に触れて『酸化』した、アルミニウム粉末の輝き。

閃光が、爆発的に広がる。その広がりの一から十まで全てを目で追えたのは、その超人的な視力故か、

神裂「――――ッ」

そこで神裂火織はようやく全てに気付いた。一瞬で理解した。

364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 23:00:09.92 ID:aXP0u4sAO









全てが浜面仕上の計算だった事に。










365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 23:01:55.09 ID:aXP0u4sAO


『インデックスから電話がかかってくる』とさり気なく言ったその言葉は、自分を再びここに立たせる為のブラフだった事に


あの少年が『この場にあるモノ。神裂火織、ステイルとの戦闘、そして自分の命すらも、全てを利用して』この状況を作り上げた事に。


『腹を貫いてみろ』と言ったあの台詞も『自分が急所を全て外す』事を見越して、『斬り伏せられないよう、傷口を最小限に抑えて行動する』為だけに言い放った事に。



気付いた時には遅すぎた。


その脚力を最大限に利用したら逃げられたかもしれないその空間には閃光。

神裂火織の周囲360度を囲む、閃光。

すでに逃げ場は存在しない。

神裂が手に持つ真っ白でシンプルな電話から最後に聞こえた言葉は、当然インデックスの、最愛の親友の声などではない。

366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 23:02:24.36 ID:eZkY+eOB0
面白すぎワロタ
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 23:02:46.99 ID:aXP0u4sAO









浜面「これがテメェの言う『無能力者』だ――地獄に落ちても忘れるな」









368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 23:03:21.91 ID:aXP0u4sAO




それはまぎれもなく、浜面仕上の勝利宣言だった。




369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 23:03:25.21 ID:fT9cA/Zd0
この浜面はもげない
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 23:03:35.31 ID:QKjHk3m2o
かっけえええええええええ!!!!!!!
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 23:03:58.48 ID:aXP0u4sAO


瞬間。


連鎖的に起こった閃光が神裂火織を包んだその瞬間。


一つの建物が第七学区の地図上から消えた。


天井の穴から火柱が立ち。建物の耐久性が限界になりまで、弾けるまで先程戦場だったそこは業火が荒れ狂い、建物が一つの強大な爆弾のようになった。
工場の支柱が溶け、支えがなくる。耐えようがなくなったその建造物が辿る道は、爆散。

そこには何も残らなかった。

轟々とした地獄しか残らなかった。

つまり、そういう事だった。


372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 23:04:24.45 ID:aXP0u4sAO
ほい一区切り。次は10分な!!
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 23:05:01.98 ID:QKjHk3m2o
浜面に惚れるwwwwww
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 23:05:27.72 ID:lzktMp59o
浜面って駒場のこと呼び捨てなの?
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 23:06:02.54 ID:lmGImH87o
マジか……浜面△!
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 23:07:27.47 ID:SrPfVkrB0
禁書浜面なんて・・・と思っていたが
かっこよすぎるwwwwwwwwwwwwいいぞもっとやれwwwwwwwwwwwwwwww
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 23:08:05.43 ID:aXP0u4sAO
>>374

SS1巻じゃ呼び捨て。

19巻じゃリーダー付け。

半蔵との差別化で呼び捨てにさせた
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 23:10:38.68 ID:aXP0u4sAO
浜面(…………)

浜面(……あ)

浜面(…………)

浜面(……生きて、る?)

倒れていた。暗い、暗い場所に、浜面は倒れていた。その体を打つのは雨。

夕方から降る、雨。

降る時間はぴったりだった。

駒場と電話している時に見た、『飛行船に表示されていた降水時間』と、ぴったり同じに雨は降った。

何が起こったのかは……分かる。自分が起こした爆発だ。

ただ、信じられない。

目が潰れる程のとてつもない閃光、襲いかかる爆風に熱風、体に刺さる破片に烈風、それらを全て凌ぎきってた事が、まだ自分が生きている事も、信じられない。

とにかく走った。発条包帯を巻いたその足で、とにかく、走った。

浜面(ははっ……これが、なかったら……自分も、巻き込まれてたな)

379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 23:12:04.72 ID:aXP0u4sAO
浜面(ここは……路地、裏?)

視界が、くらい。何も見えないのは……ああ、そうだ。

浜面は潰れた虫のように震える手を動かし、ずっと付けていた『防塵マスク』をはがして、放りなげた。

新鮮な空気が肌に染みる。

カラン、カランと、水音と一緒に血にまみれたそれが落ちる。

浜面「…………」

首を動かす。この路地裏を抜けたら、大通りだ。そしたら助かる。

後ろでは地獄が広がっているだろう。

この雨のせいで、業火はさらに燃え上がる。

アルミニウムに水をかけちゃいけない事ぐらい、浜面だってしっている。

木山春生だって言っていた。アルミホイルは酸化皮膜を張っているだけだと、蒸気に当てると酸化してしまうと。

浜面(神裂は……)

生きてはいないだろう。普通の人間なら、肉片があるかも怪しい。それ程の大爆発だった。

浜面「…………」

賭けに、勝った。

380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 23:14:05.97 ID:aXP0u4sAO
雨が降ると言う必然と、沢山の賭け。

ぼんやりとこれを思いついたのは、神裂火織の一言。

『工場ごと吹き飛ばさない限り誰も来ませんよ』

それを元に、ヒントを集めた。
浜面(はは……今誰か来ても、もう遅いか)

あの工場に吹き飛ばされて激突した時。ALと印字されたそれと、雨も防げない天井、最後のきっかけは、吐き出した包み焼きハンバーグ。

それが木山春生とインデックスのやりとり、夕方に降る雨、吹寄が持ってきたプリントを連鎖的に思い出させ、全てを繋げた。

近距離も中距離も遠距離もダメなら、これしかない。そう思った。

防げない程の、圧倒的な火力。

浜面(まさか、ここまでとは思わなかったけどな……)
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 23:15:32.92 ID:aXP0u4sAO
決めた後は早かった。

考える時間は十分稼いだ。

会話する事で、稼いだ。

神裂がインデックスの記憶について語っているその瞬間、もぞもぞとうずくまりながら気付かれないように携帯番号を覚えて、神裂にブラフを張った。

インデックスと同じく携帯が扱えるかも不安だったが、質問に神裂は答えた。

吹き飛ばされた時に粉末の中に携帯を埋め込み、工場を一周するように走りまわりながら、神裂に工場にあるモノ全てを破壊させ、粉塵を作りだした。

斬撃が致命傷にならなかったのも賭けだったし、神裂のそばにおいていた携帯が無事だったのも賭けだった。

うまく挑発に乗って自分を貫くかも賭けだったし、致命傷を避けてくれるかも賭けだった。その場で意識を保ってられるかも、アイツが警戒を緩めてくれるかも、携帯に興味を示すかも、何もかも全てが賭けだった。


そして浜面は、賭けに勝った。
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 23:17:08.42 ID:aXP0u4sAO

自分にも聞こえないような、小さな声で呟く

浜面「勝ったぞ……インデックス」

今帰るから……遅くなってごめんな……結局飯も買えなかったし、お前の携帯もぶっこわしちまった。

浜面「……ごめんな」

体が動かない。腕も、首も、足も。

浜面「…………」

自分がぬるい水溜まりの中に沈んでいる事に気付いた。

浜面「…………あ」

赤い、水溜まり。

浜面「……いん、でっくす」

あぁ、ちくしょう……絹旗にも怒れちまう。奢り損かぁ……

浜面「…………」

お前の記憶もどうにかしなきゃなぁ……アイツら馬鹿だからよ。きっと助けられないよ。だから、

浜面「俺が……た、す」

浜面「――――」

浜面「…………」

動かない。

雨が、痛かった。

浜面「…………」

動かない。

浜面「…………」

浜面「…………」

浜面「…………」

狭く暗い路地裏で、血溜まりの中に倒れた浜面仕上がそのまま起き上がる事はなかった。

383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 23:17:42.12 ID:aXP0u4sAO
よし一区切り。短いけど次で最後
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 23:18:02.85 ID:QKjHk3m2o
ヒーローーーーーーッ!!!
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 23:22:43.74 ID:aXP0u4sAO
「…………」

その路地裏に立っていたのは、浜面仕上ではなかった。

その少年は、目の前で血溜まりの中に沈んでいる。

「…………」

足元に倒れ伏す少年の命は、既に消え去ろうとした。

神裂「…………」

地獄の中で燃やし尽くされ、髪も服もボロボロになった神裂火織が、その自分よりボロボロの少年を見て何を思ったのかはわからない。

粗雑で、しかし綿密に練られた浜面仕上の計画にあった唯一の誤算。

それは神裂火織を普通の『人間』として定義してしまった事だ。

386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 23:23:48.87 ID:aXP0u4sAO
神裂火織が様々な事を気付けず、知らなかったのと同じように、浜面仕上にも気付けず、知らなかった事があった。

それは、神裂火織のその超人的な身体能力が『魔術』によるものだと思い込んでしまった事と、
神裂火織がロンドンでも十指に入る魔術師であると共に、世界に二十人と存在しない『聖人』だった事だ。

例えばステイル=マグヌス。

彼は天才と呼ばれた魔術師だが。あくまで人間だ。『人外』でも『バケモノ』でもない。

殴って当たり所が悪ければ死ぬし、高い所から落ちたら何もできない。

しかし、神裂は違う。

神裂火織は違った。

彼女は間違いなく『人外』で『バケモノ』だった。

殴っても死にはしない、高い所から落ちても対処できる。

あの程度の爆発では、死なない。

彼女を殺すには『刺殺』しなければいけない事を、浜面は知らなかった。


それが、敗因。


387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 23:25:13.39 ID:aXP0u4sAO
神裂「…………」


血溜まりの中に倒れる少年の、敗因。


神裂「…………」


必死にバケモノに打ち勝とうとした少年の、敗因。


神裂「…………」


大事なモノを守ろうと命を賭けた少年の――


神裂「――ッ」

神裂「あなたの勝ちです。少年」

388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 23:26:43.60 ID:aXP0u4sAO
その言葉は、浜面仕上には届かない。

だから、神裂火織がどんな表情をしているかなんてわからない。

神裂「躊躇いがあったとは言え、私は間違いなくあなたを殺すつもりで刀を抜きました」

神裂「…………」

神裂「あなたの勝ちです」

言葉は、届かない。

神裂はその手に握る七天七刀を、全力で振った。

バキィッと、路地裏の壁に鞘が深くめり込む。

抜き身の日本刀が、雨に濡れて暗い路地裏で微かに光った。


神裂「しかし、インデックスは私達が救います」


あなたはもう休みなさい。

そう呟やき、神裂火織は七天七刀を大きく振り上げた。

もう致命傷を避けようとは思わない。今度こそ、殺す。

一瞬で、痛みなく。

神裂「――ふッ!!」

そして――

389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 23:27:43.65 ID:aXP0u4sAO








「なァ」








390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 23:30:22.23 ID:aXP0u4sAO


そこに――



「この場合、実験ってのはどうなンだろォなァ?」



人払いのルーンが効力を失ったその路地裏に――



「昨日ォの超電磁砲といい、最近邪魔ばかりはいってンじゃねェのォ?」



聖人と謳われた神裂火織の背後に――



「でェ、テメェは一体どこの誰なンですかァ?」


――――最強が立っていた。


391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 23:32:02.18 ID:aXP0u4sAO


神裂「……ッ」



この日、神裂火織は――この最強によって完膚なきまでに叩きのめされ、完膚なきまでの敗北を味わう事になる。



それは、ここで語る話ではない

392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 23:32:04.81 ID:SrPfVkrB0
えええええどうなるの?!
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 23:33:00.95 ID:aXP0u4sAO
ここまで!

あとがきかいてくる!
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 23:37:43.89 ID:aXP0u4sAO
ここまでー!うひゃー!
くっそ長くなった!神裂戦どうでしたでしょう。
神裂ちょっとレベル下がってるくさいのは勘弁してくれ。聖人フルパワーも考えたんだけどタイマンで発条包帯だけじゃどうしても勝てんかった。

いつもレスありがとうございます。なんとかここまで書けてすっげ嬉しいです。

やっと序盤の文章からちょこちょこ紛れさせた夕方から降る雨とステイルが天井に空けた穴のとこ回収出来てほっとした感じ。
序盤からアルミニウムとか入れると察し付くかと思ったから製粉工場にしたけど逆に無理矢理な感じになっちった。反省。

さて、次はまた日常パートです。浜面の生死は今のとこ不明です。

次の日常パートはあまり長くならない予定です。VSペンデックスもしっかりやりまっせー( ^O^)

あと浜面がミサカからマネーカード渡されたの素で忘れてたちくしょう。
本来あれで携帯買わすつもりだったのに……

えーと、個人的にはここまで結構なハイペースで来たんですけど、次から少しゆったり行きます。手首いたいです。

あと地の分はやっぱり難しいですね。読みにくいと感じた方はすいません。読みにくい見にくいなどは意見くださると嬉しいです。

ではでは!

あ、あと日常パートは普通に投下するけどペンデックス戦は予告します。そのときにはまたよろしくっす!
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 23:37:51.97 ID:lzktMp59o
ここでまさかの一方さん登場
wwktk

全盛期だから魔術使われない限り絶対負けないな
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 23:39:13.69 ID:lmGImH87o
あああああ、続きが待ち遠しすぎる
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 23:42:43.96 ID:SrPfVkrB0
乙!!!!!
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 00:00:01.01 ID:5hO9LVSn0
ふばしかwwwwwwww
計算しすぎだろ>>1・・・乙!
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 00:05:19.66 ID:s325i+PAO
面白くなってまいりました
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 00:08:47.58 ID:dW1kzP5DO

これからどうなるんだ
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 00:10:26.45 ID:iZmWrcAio
テンション振り切れたわwwwwww
おつ
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 00:12:35.86 ID:KV85TDQ40
乙です!!!
面白すぎて泣けてきた
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 00:13:13.19 ID:MPRHFDZ20
初めにインデックスが落ちた後から地獄から一緒に出る発言とか
初めから読み直すと日常パートから自然な伏線がかなり出ていて面白いな
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 00:17:18.79 ID:EJDF/pqr0
いやーおもしろい
いずれ一方さんとも戦う展開になるのか?まあ分からんが、神裂戦は素晴らしかったww乙
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 00:26:59.42 ID:ySD/3XBQ0
ペンデックスといえば竜王の殺息だけどあれって自動書記が組んだ対そげぶ用魔術だからこの話では出てこないのかね?
406 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 00:28:24.15 ID:MbYVrr230
これは面白すぎるwwww
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 00:32:32.82 ID:jYWNsDB3o
マジで!?マジで!!?まじで!!!?
やべえ面白すぎるwwwwww
浜面の戦いだけでも熱いのに一方さんが出てくる展開wwwwwwktkがやばいwwwwww
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 00:35:28.36 ID:IvAIBM0Ro
細けえ事は
乙でいいんだよ
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/12(土) 01:30:57.13 ID:VAE0fyTu0
まさかの一方さん登場でワクワクがとまらないwwww
410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 03:51:41.17 ID:hpJwU6Q2o
ペンデックスは相手に合わせて最善の魔術を組んでくれる
逆に言えば無能力者の浜面にはイージーモードの塵みたいな魔術しか組んでくれないはず
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/12(土) 05:00:37.77 ID:RzPnv+i10
くそ、すっげー面白いじゃないか!
ねーちん&ステイルが遭遇した能力者が酷過ぎる。
上条さんばりの不幸だなwwwwww

>>浜面「これがテメェの言う『無能力者』だ――地獄に落ちても忘れるな」
浜面は某学園の教師に化けてる殺し屋が好きなのかー!?
412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 05:15:03.41 ID:hpJwU6Q2o
いやこれは原作のこじわの再現だろ
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 10:00:08.21 ID:BBnby+9DO
一方さんのセリフからして上条さんの介入はなかったのかな?
実験続いてるってことは御坂妹は死んだのか
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 10:42:09.08 ID:s325i+PAO
御坂が1回目の介入した後だろ

とある科学のほう
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/02/12(土) 12:33:53.93 ID:jQTiOUR00
最高に面白いもんを発見した苦しみを書いて償ってください
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/12(土) 14:49:33.21 ID:QV/TuuXAO
原作一巻の冒頭で御坂が上条さんに切れて発生した雷はここの冒頭では一方さんに切れて発生した雷だったのか……

読み返してみたら序盤でていとくんがさらりとそれに触れてるし……ただの再構成じゃなかったなにこれすごい。
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/12(土) 16:55:54.38 ID:8qsjkDFQ0
浜面△
グループ出るのかな?
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/14(月) 03:11:53.35 ID:MkPYygMuo
浜面って幻想殺しもベクトルももってないのにどうやってインデックスさんをペンデックスさんにするんだろう
某SSで一方さんとか心理掌握のがやってて全部ベクトルをいじくったり頭の中をいじくったりして辻褄を合わせてるけど浜面は本当に無能力者だからな…
御坂妹と知り合ってるからMNWでも使うんだろうか?
でもそれじゃあまだ一方さん撃破前だから辻褄が合わなくなってるし…
てか浜面って一方さんどうやって倒すんだろうか?
そういえばインデックスの記憶をなんとかできるのって上条さんの他に
一方さんだったらベクトルでなんかできるし
ていとくんは俺の未元物質に常識は(ry
御坂はMNWだし
心理掌握は頭の中いじくれるし
ぐらいしかいないんじゃないか
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/14(月) 03:29:08.24 ID:2PXjDQVZo
「根性ォォォォォ!!!!!」
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/14(月) 07:52:15.74 ID:+vzHjO5vo
>>418
展開予想やめれ
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/14(月) 10:35:30.77 ID:rUUto2mO0
再構成モノだとねーちんはやたら一方さんにやられるなwww

にしても>>1凄いな
伏線とかで言えば今まで見た中でダントツ
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/14(月) 12:10:56.68 ID:Ko2HDEfO0
ここの浜面は拳銃とかもってるのか?
せめてなんやかしら武器がほしいところだよね
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/02/14(月) 14:51:51.83 ID:hBJx5kWJ0
極乙!
>>367でパソコンから離れて叫んだ
ふばし!ふばし!!ってやってた
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/14(月) 15:46:13.96 ID:KyjNNigd0
やべえwwwwwwwwwwwwwwww
これおもしろすぎるwwwwwwwwwwwwwwwwww

今日から貼りつかさせていただきます
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/14(月) 16:15:47.05 ID:h7ltR9klo
無能力者だがおつむはジョセフ・ジョースター級 素晴らしい
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/14(月) 16:59:41.25 ID:sdnND1MDO
確かに頭使って戦うとこはジョゼフっぽいな。伝家の宝刀が「逃げる」 なとことか。
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/14(月) 17:01:05.21 ID:sdnND1MDO
すみませんsage忘れましたorz
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/14(月) 17:17:34.66 ID:VM1gynD70
学園都市のセキュリティーを騙すピッキングにID偽造
無能力者であることを利用して相手の心理を見抜いて逆手に取れるしたたかさ
圧倒的な実力の差に追い詰められながら冷静に周囲をみて勝機を探せる


作中ではアホ扱いだが頭かなりいいし実はかなりのチート



429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/14(月) 19:15:42.14 ID:WstZL8aAO
浜面は、たまにクラスにいる勉強が出来ないが、頭は良いタイプじゃね

ATM強奪の時とか、なんか色々知ってたから、必要ない事やどうでもいい事ばっかり覚えて、その知識を活用してる気がする

とりあえず、スキルアウトのリーダーになっても、誰も文句は言わねぇ、って半蔵が言うからには何かあんだろ

…………多分
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 00:52:43.19 ID:sqh1rHnIO
浜面さんマジジョンコナー
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 01:40:16.29 ID:VhjroV2m0
浜面△
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 16:47:44.67 ID:qaw6mSlAo
のび太とかも意外と頭が回るタイプだしな
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 19:07:08.11 ID:XHERkn0X0
ここの浜面はアイテムに行くのだろうか?
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 21:13:53.10 ID:FV74EVSAO
―4―

その日、無能力者の少年と魔術師が激突し、最強が聖人を叩き潰したその日の夜。

それは雨が上がった夜だった。

そのラフな格好をした、しかし、体中が傷にまみれた少女はとある建物の屋上から学園都市を見渡していた。

低い手すりに足をかけ、運動靴の紐をキュッと結ぶ。

とんとん、と履き心地を確かめるように地面を叩いた。

「昨日の落雷はあなたの仕業かしら?」

と、そう後ろから声をかけたのは制服の上に白衣を纏った少女。夜の色と同じ、ウェーブのかかった髪が風に揺れている。

「あぁ……アンタか」

ラフな少女が呟いた。疲れきっているのか、その表情は沈み、目は虚ろんで大きな隈が出来ている。

「……布束、なんだっけ?」

布束「布束砥信よ」

「あぁ、そ」

布束「…………」

「…………」

二人の少女の間に流れるのは、沈黙。

布束「but いったい何をすればあんな雷を引き起こせるのかしら……? 各地の研究所設備やセキュリティーは悲惨な事になっているけど」

「…………」

布束「ニュースにもなっていたわ。様々な研究所も被害を受けたって、噂によれば体晶なんて怪しいモノを作ってる研究所も――」

「何がいいたいの」
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 21:14:56.68 ID:FV74EVSAO
パリッ、と、少女の体から静電気のような青白い雷が走り、布束は流暢に動かしていた口を噤んだ。その背中はこれ以上喋るなといっているようで、

布束「どんな事をしてもあなたじゃ一方通行には勝てない」

「――――ッ」

少女の肩が揺れる。体中に帯電していた静電気のように小さかった雷は稲妻になりバチバチと音を鳴らして空気中を駆ける。その稲妻の一線は、布束砥信の頬を掠った。

布束「三度目の正直って言葉もあるし、次挑めば死ぬかもしれ――」

「アイツは私が殺すわ」

雷撃のように鋭い声が、布束砥信の言葉を遮る。

布束「…………」

「どんな……どんな事をしてでもッ!! アイツは、私が殺す。殺すのッ!!!」

雷撃のように激しい叫びが、布束砥信を黙らせた。

布束「…………」

布束砥信には分からない。背を向けた少女が今どんな表情で、どんな眼をしているのか、何を思っているのか、何を考えているのか。

布束「…………」

しかしそれは容易に察しが付く。少女の震えた肩を、固く握られた拳を、ラフな服装から見え隠れしている沢山の傷の痕を、留めておけない程纏っている雷を、それを見れば察するのは簡単だ。
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 21:14:56.95 ID:7dL4rzaZo
ktkr
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 21:15:35.55 ID:FV74EVSAO
布束「……どうするつもり?」

「…………」

布束「…………」

「…………」

布束「…………」

沈黙が続いた。返ってこない返事をそれでも待っていた布束に聞こえたのは、バチバチと帯電する電撃にかき消されそうになった少女の呟き。

それは、

「樹系図の設計者を潰す」

布束「――――ッ!?」

ぽそりと呟かれた言葉は、布束砥信の予想を大きく上回っていた。

ある程度は予想していた。この少女ではあの最強には勝てない。勝ち得ない。それは彼女が呟いた『樹系図の設計者』の超演算が弾き出した答えだ。

彼女の力で出来る行動は限られている。

それは、

布束「……研究所の破壊は出来ても、それは無理よ」

夕方のニュースにもなっていた、遺伝子系の研究所を閉鎖に追い込んだり、施設を破壊したり、だ。

布束「無理よ」

その言葉を聞いてずっと背を向けていたその少女が振り返った。振り返って、呟いた。

「私を誰だと思ってるの?」

438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 21:16:21.74 ID:FV74EVSAO
汚い泥のように淀んだ眼が、まっすぐに向けられる。それだけで布束砥信は言葉を発する事が出来なくなった。

「あんたは今まで通りマネーカードでもバラまいていなさい」

私はやる。

その呟きは布束砥信には発せらてはいなかった。その死体のように濁った眼は布束砥信を見ていなかった。

布束「……学園都市の闇は深い。これ以上は暗部が出てくる」

「上等じゃない」

布束「…………」

ここで、ようやく布束砥信は気付いた。

439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 21:17:27.31 ID:FV74EVSAO
「殺す」

「殺す。アイツは絶対に殺す」

「私はやるの、やって見せる。だから殺す。どんな事をしても殺す殺すコロス」

「誰でもコロス、何でも壊す。許せない許せない許せ許壊す殺す殺す殺す」

それは精神医学の権威である自分でなくても、ただの一般人が見ても、誰だって気付くだろう。

布束「…………」

目の前の少女が壊れていっている事に。

布束砥信には分からない。彼女があの最強と初めて邂逅した『一昨日の夜』に何があったのか、

布束砥信には分からない。彼女があの最強に挑んだ『昨日の朝』に何があったのか、

きっと想像も付かない程の地獄を見たのだろう。

14歳の少女には、とても耐えられないような、決して這い出せないような地獄を。

だから壊れた。

布束「…………」

この少女は最強には勝てない、殺せない。樹系図の設計者も潰せない。

出来るのは、

布束「私は行くわ……この研究所に私は関わっていない。好きにすればいい」

そう言い残して布束砥信はその場を後にし、建物の中へ戻っていく。

ふと立ち止まって、振り返る。既にこちらを見ていないその少女は、今も体に稲妻を纏わせ、何かブツブツと呟いている。

返ってこないとはわかっていたが、布束は問いかけた。

布束「……その首にかけているのは、何の為のものかしら?」

答えは返って来ない。布束砥信は建物の中へ戻っていった。

440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 21:20:38.07 ID:FV74EVSAO
とある建物の屋上にぽつんと残ったのは、一人の少女。

「…………」

佇み、見渡す。

そこはかつて自分が自分でいられる最高の場所だった。

最高の場所、だった。

「…………」

今見渡しているのは、地獄だ。

深すぎる地獄、這い出せない地獄、

「…………」

誰も助けてくれない、地獄。

「…………」

胸に手を当てる。その手に握られているのは、ただの鉄クズだ。元が何だったかも分からないほどぐちゃぐちゃになっており、それは赤黒い何かがこびりついている。

「…………」

これはただの鉄クズだ。

元はカエルのキャラクターを模様して作られたバッチで、今はただの鉄クズだ。

「……あ」

耳を塞ぐ。聞こえてきたのは、ききたくもなかった音に、風の音、人々の喧騒、街の声、地獄の声。

「……あ、ぁ」

頭の中で繰り返えされる、最強<サイアク>の声

「ぁ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!」

少女は叫ぶ。その声をかき消すように、その声を振り払うように、その声から逃げるかのように、

「    」

少女は声に出さずそう呟いた。

「    」

少女は唇だけを動かしてそう呟いた。

「    」

少女はそう呟いて――

「たすけて」

御坂美琴はそう呟いて、屋上から身を投げた。

「    」

御坂美琴は落ちていく。まっさかさまに、堕ちていく。

「    」

堕ちていく。

「    」

学園都市の深い闇へ。
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 21:22:49.75 ID:FV74EVSAO
今日はここまで、短くてすめん。

えーと、なんかすげー沢山レスありがとうございます。びびりました。ありがとうございます。

相変わらず至らないとこだらけですけど楽しんで貰えてるならすげー嬉しいっす!

ちょっと遅いのはすいません。忙しい時期乗り気ったら多分またハイペースです。

ではでは、かいてきまー
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 21:32:41.70 ID:48kp4wrfo
御坂が暗部落ちか…
続きに期待
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 21:45:46.29 ID:RUhA69mK0
も、もしやここで浜面か!?
浜面さんが、フラグたてんのか!? 
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 21:56:07.11 ID:ii4JZjbAO
なんかもうね、
流石の一言
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 22:17:33.20 ID:EvWJqUNIO
落雷は夫婦喧嘩じゃなかったのか…
美琴がここまで精神やられるとかこの頃の一方さんマジ鬼畜
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/02/15(火) 22:28:20.34 ID:hd8+Hh8H0
上条さんは助けられなかったのか?

再構成物って面白い作品多いような気がする
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 23:35:29.62 ID:4jtaMjtI0
もともと上条さんが居ない世界か。
美琴がこんな状況だし、ここから浜面にフラグたてても納得できるな
448 :>>1 :2011/02/15(火) 23:59:19.79 ID:FV74EVSAO
うーん、ちょっとわかんにくいかもしれないから補足だけしとく。

>>11に書いている通り時系列は結構……かなりいじってる。

まぁここまで書けたから言うけど今の所は原作一巻+超電磁砲妹編が並行してる感じ。つまり御坂の時系列は妹編準拠だけど上条さんは一巻準拠。
簡単に言うと今のところ1巻+3巻。ちなみに上条さんはちゃんと存在します。

だからここでの落雷の原因は上条さんじゃあないし、原作一巻じゃ絡まない奴もたくさん絡んできてる。

>>72みたいにミスリード狙う為にってのもあったし、再構成のつもりだけど全く別物と思ってくれても構わないです。

ただ、あくまで自分は浜面仕上再構成のつもりで書いてる。だから結構長く続くけどまだまだよろしくっす

というわけで、でわでわ
449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 00:46:59.46 ID:4NnXAxeF0
長いの大歓迎です
お仕事がんばってください!!
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/16(水) 07:59:26.30 ID:IFCkKAiAO
>布束砥信には分からない。彼女があの最強と初めて邂逅した『一昨日の夜』に何があったのか、
>布束砥信には分からない。彼女があの最強に挑んだ『昨日の朝』に何があったのか、

結局落雷の原因は一方さんじゃなかったのか??
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/16(水) 16:41:55.61 ID:V2Dogwg40
>>450
多分、9982号の件で御坂がぶちきれたときのだと思う
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 18:52:44.59 ID:IFCkKAiAO
>>451
布束さん初登場の台詞読む限り多分違うと思う。

ミスか?気になる……
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 19:17:58.44 ID:CTpuAyijo
雷を降らしたことじゃなく、御坂が壊れていくようなことがどんなものだったか想像できないって意味じゃないか?
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 20:36:03.01 ID:I7O1ukZU0
『アイテム』は逃げたほうがいい
麦野より上の序列の内2人に蹂躙されるぞ……
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/16(水) 23:58:12.49 ID:oh7UyU3M0
■■「やっぱり。この物語では。私は空気」
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/17(木) 00:33:08.91 ID:g9uS0HsDO
「も」だろ?
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/17(木) 11:04:55.78 ID:JEayiJUAO
>>455
大丈夫、俺のssならヒロインだよ
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/17(木) 14:09:46.24 ID:G9f8cD+O0
>>457
宣伝乙
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/17(木) 16:47:59.44 ID:NFlHfTAt0
>>457
題名詳しく
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/18(金) 01:39:33.55 ID:RgESZLRIO
おそらく
上条「もてた」
かと
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/18(金) 06:07:42.38 ID:cefA4hkAO
浜面カッケー
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 02:20:41.77 ID:chH+u7Q00
更新まだか
まぁ気長に待つか
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 04:30:23.66 ID:NLGvAPUAO
>>450

そうすなー美琴が初遭遇が一昨日の夜。夕方の方がわかりやすかったかな。で雷が次の日の深夜、ちょうど冒頭。2度目遭遇がその日の朝。ちょうどミサカ初登場の時ぐらい。実験云々言ってるのはそれ

つまり雷は色々まだ含みがあるよって書きたかったんだけど色々とわかりにくいみたいですません。深夜っていうのを冒頭から昨日の夜って表現しすぎてすげー矛盾があーばば。

投下
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 04:31:58.46 ID:NLGvAPUAO
あの世っていうのは案外馴染みの深い場所らしい。

浜面「いや、つか……」

浜面「俺の部屋、じゃん」

それが自分の部屋で目を覚ました浜面仕上の第一声だった。

目に映るのは見慣れた天井。どうやら今自分は横たわっていて、ベッドで寝ているらしい。

浜面「…………」

生きている。

浜面「……生きてる」

それが一体どれほどの偶然が重なりあって、どれほど大きな奇跡なのかは浜面には分からない。今の虚ろな頭では、考える余裕もない。

ただ、生きてる。

それは体に残る数十の傷跡から感じる鈍い痛みが教えてくれた。

浜面「助かっ、た……のか?」

掠れた声を絞り出して、霞みがかった記憶を辿る。

確か神裂火織を巻き添えに廃工場を粉々に吹き飛ばし、

浜面「…………」

吹き飛ばした後どうなった?

浜面「……えぇ、と? なんで俺ここにいるんだ?」

分からない。路地裏まで逃げたはずだが、そこから先が思い出せなかった。最後に見たのは、赤い――

浜面「……ッ」

自覚した途端鋭い痛みが押し寄せる。神裂火織が持っていた2メートルを超える刀で腹部を刺し貫かれたあの光景が脳裏に蘇った。

浜面「……ほんと、よく生きてたな」

この場合、よく動けたという方が正解だろう。体の中を冷たい異物がズブズブと侵入し、内側から肉を貫くあの感触、その入口と出口から広がる灼熱、喉の奥からせり上がってくる温かい血。

二度と経験したくない。

465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 04:33:43.59 ID:NLGvAPUAO
浜面「いッ……」

ゆっくり、耐えるように手を動かす。

……痛い。

体はまだ当たり前だが自由には動いてはくれない。顔だけを動かして、辺りを見回す。確かにそこは自分の部屋だ。

いつも汚かった部屋は、若干まだ散らかりが見えるが、それでも綺麗だ。どうやら本当に夢でも天国でもないらしい。

浜面「…………」

自分が行けるとしたら天国か地獄か真剣に考え、すぐ辞めた。どちらにしろ目が覚める前まで地獄の底で這いつくばっていた身だ。きっと死んでたらそのまま地獄だし、

浜面「……ようインデックス。風邪ひくぞ」

ベッドにもたれかかって寝息を立てているこの白いシスターと一緒に這い上がらなければ、意味なんてない。

「にゃあー」

浜面「……お前も来るか?」

その呟きを聞いたのか、はたまた無視したのかは分からないが、猫は喉を鳴らし丸くなる。

すやすやと、浜面はベッドの脇で寝息をたてているインデックスの頭を、フード越しにポフン、と撫でる。

禁書「ぅ〜……しあ、げ」

浜面「ん……?」

禁書「腕……まずぃんだょ〜」

浜面「……夢までそれかよ」

大丈夫。まだ、コイツと一緒に抜け出せる

466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 04:34:51.72 ID:NLGvAPUAO
仮に、仮に一人で抜け出してしまっても、インデックスがそこにいるならきっと浜面仕上は地獄の底まで迎えに行ってしまうだろう。

それほどに、今の浜面にとってインデックスの存在は大きな物になっていた。

会って数日しか経たない女の子の為にこんなにも必死になってしまうなんて、自分でも笑ってしまう。

浜面「…………」

けど、この今も寝息をたてている白い女の子は自分を変えた。

ただの――

浜面「………ん?」

インデックスの頭に置いた自分の手、ふと気になったのは指の先まで、多分全身にまで綺麗に巻いてある白い包帯。肌は殆ど隠れて、これじゃあまるでミイラ男だ。

浜面「誰が、巻いたんだ……?」

包帯はまるで医師の処置でも受けたかのように丁寧に巻かれていている。所詮応急処置程度の知識しかない浜面や、そもそも治療の概念が根本的なところから違うインデックスには、

禁書「ぅ……?」

そんな事を考えているうちに、インデックスが目を覚ました。ぼんやりとした目をこすり、気の抜けた第一声は、

禁書「うー……しあげ?おなかすいたんだよ」

浜面「お前はこの状態の俺になんか他に言うことはないのか」

そんなところ。やはりインデックスはいつものインデックスのようで、なんだかこちらも気が抜け――

禁書「んー……ふ、ふぇ!? しあげ……え、起きたの!? だ、大丈夫なの!!?」

たのだが、インデックスはというとどうもいつもの調子じゃないらしい、まるで夢から覚めたかのように目を見開き、慌てふためいている。

467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 04:36:59.32 ID:NLGvAPUAO
浜面「よー……どうしたよ」

禁書「だっ、だってしあげ……呼んでも全然反応しな、いし……ふ、うぅ……怪我も、ひど」

そこまで言って、インデックスの言葉はそこで終わった。

禁書「ひっ……うぅ……」

その顔はくしゃくしゃだ。さっきまで微睡んでいた碧眼には、ほんの小さなきっかけで今にも溢れ出してしまいそうなほど涙が溜まっている。

そしてそのきっかけは意外でもなく、すぐにきた。

禁書「ひっ……わ、私知らなかった」

禁書「すぐに帰ってくるって言葉に安心して、しあげが魔術師と戦ってるなんて、これっぽっちも考えてなかった!!」

ついに涙を流しながら吐き出したその声は、嗚咽ではなく断罪。まるで自分自信を切り刻むかのような、憤り。

禁書「しあげ、路地裏で血を流して倒れてたってくーるびゅーてぃが言ってた。その頃、私は1人でしあげを待ってた。ボロボロになったしあげを担いでここまで連れてきたのもくーるびゅーてぃだった」

禁書「しあげが死にそうだっていうのも知らないで、あの紐から音の出る機械を聴いたり、しあげの学校の本を沢山読んで呑気にしあげの帰りをまってた。待ってるだけだったッ!!」

インデックスの言葉がピタリと止まる。

浜面「……インデックス」

名前を読んで、続きはでない。

その前にインデックスが決定的な一言を告げた。

禁書「私は、しあげを助けられなかった」
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 04:37:10.07 ID:o/wpOitUo
インデックスさんが天使すぎて生きるのが幸福
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 04:38:13.71 ID:NLGvAPUAO
浜面「…………」

インデックスの小さな肩は震えていた。下唇をギュッと噛み締め、静かに涙を流してその小さな体を震わせていた。

きっとインデックスは安心したんだろう。ボロボロになった浜面を見て初めは気が気ではなかったはずだ。きっと死んでいてもおかしくはなかった。

多分、ずっとベッドの横で浜面が起きるのを一番に祈っていたのはインデックスだ。だから、起き上がって、生きていて嬉しくないわけがない。

でも、それ以上にインデックスは許せないのだ。

自分自身を、許せない。

勝手に巻き込んでしまった浜面仕上を、初めて自分の手をとってくれた浜面仕上を、自分のせいで死の淵まで追いやってしまった事が、許せない。

だから嬉しさの涙を流して、憤りに身を震えている。

喜びに心が震えて、でも心から血を流している。

浜面「……ちげぇよ」

だから浜面仕上はそう言った。
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 04:42:58.06 ID:NLGvAPUAO
浜面「ちげぇよインデックス」

それは違うんだ、と。

禁書「……え?」

そんな声が聞こえた。多分、インデックスはぽかんと顔をあげて、自分の事を見つめているはずだ。

だが浜面にはそれは見えない。痛む腕で顔を覆った自分には、今インデックスがどんな顔をしているかわからない。

浜面「お前は俺を助けてくれたんだよ」

言葉の意味は、多分インデックスには伝わらない。

この少女は、数日前までの自分を知らないから。

浜面「お前は俺を助けてくれたんだ」

ただの路地裏のチンピラで、クズみたいな毎日を送っていた自分をこの少女は知らない。

浜面「助けてくれたんだ」

暴力の理由を無理やりに正当化して、憂さ晴らしに人を傷付けていた自分をこの少女は知らない。

浜面「助けて、くれたんだよ」

そんな毎日も自分も何もかもを卑下して諦めていた自分をこの少女は知らない。

浜面「お前が変えてくれたんだよ」

そんな自分を変えてくれたのが紛れもなく少女だという事を、この少女は知らない。
能力なんてなくても人を守れると、能力なんてなくても手をとってくれる人がいると、こんな路地裏のチンピラでも誰かを救う事出来ると、まだ手遅れじゃないと、教えてくれた。

浜面「……だから、俺もお前を助けたいんだ」

それが理由。ただそれだけ。

禁書「…………」

471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 04:45:51.05 ID:NLGvAPUAO
浜面「…………」

禁書「…………」

沈黙の中、なにかがもぞもぞと動く音が聞こえた。多分それは猫じゃなくて、インデックス。ギシッ、とベッドのスプリングの軋む音がやけに大きく響き、不思議な感触の布が包帯越しの腹部に触れる。

浜面「あー……イン、デックス?」

何をやってんだ、そう言おうとした唇に、風にでも流れてしまいそうな柔らかい髪が触れ、それは不可能となった。

腕で顔を覆っているから、目の前がどうなってるかは見えない。見たらなんだか駄目な気がする。

禁書「……しあげ?」

インデックスの声がやけに大きく聞こえた。多分それは距離の問題。

禁書「そのまま聞いてほしいんだよ」

浜面「……なんだ?」

禁書「…………」

一瞬の、間が空く。それは息を吸い込む僅かな時間。

その一瞬の間に浜面が思い出したのはあのファミレスでぼんやりと思い浮かべた、あやふやな答え。

472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 04:47:49.83 ID:NLGvAPUAO
辛い記憶を上書き出来るくらい楽しい記憶を彼女と作れれば、それを糧にできるくらいの記憶をこの少女とつくれれば、この少女の本質的な部分を助ける事に繋がるか、なんて、あやふやな考え。

つまりそれはどういう事か。

簡単な事だ、守ればいい。

たった一つ、守りきればいい。

浜面がそのあやふやを確固たるモノにした時、一瞬が終わった。




禁書「私ね――」




そこから先は、インデックスの告白。懺悔でも独白でも自白でもなんでもない、ただの告白。

ただただインデックスの心を口からだして、言葉に表した。そんな告白。

それは恥ずかしいものでもあって、くすぐったいものでもあって、罪悪感を感じるものであって、照れくさいものでもあったそれの締めは、




禁書「――だから、次は絶対に、どんな事をしても私がしあげを守るんだよ」




一つの誓い。

助けるではなく、守る。

その言葉を聞いた時には、もう腕はどけてインデックスの顔をまっすぐに見ていた。身も蓋もない言い方をすれば、馬乗り。それが今のインデックスの体勢で、垂れた銀色の髪が顔に触れ、くすぐったい。

浜面「…………」

禁書「約束する。天に召します我らが神様にだって、何にだって誓うんだよ」

インデックスは、笑ってそう言った。

いつかどこかで浜面仕上が言ったような事と同じ言葉を。
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 04:50:59.55 ID:NLGvAPUAO
禁書「……あ、でも」

そう言った後少し考えるような素振りを見せて、またインデックスは言葉を紡ぐ。

禁書「ううん。これはやっぱり、神様に誓うのはやめかも」

浜面「切り替えし速くね? それでいいのかシスターさん……」

禁書「うん、これは私が決めた事だから、やっぱり私に誓うんだよ」

こんなの初めてかも。と、インデックスはまるで悪戯をした子供のように無邪気に微笑む。

浜面「……おぉ、じゃあ頼むな」

その笑顔に、浜面は応える。

禁書「うんっ!」

その言葉に、インデックスは笑顔で応えた。

浜面「…………」



なら、俺も誓うよインデックス。

どんな事をしてもお前を助ける。

誓うよ。

他の誰にでもない、お前に。



浜面「あのさ」

禁書「ん?」

浜面「そろそろ降りてくれません?」

禁書「……ッ」

今、浜面仕上はベッドに横たわっている。無理にでも体を動かそうと思えば出来るだろうが、多分絶対安静だ。だから横たわっている。

そしてインデックスの顔は真正面に捉えている。相変わらず銀色の細い髪は浜面の頬を掠り、くすぐったい。

禁書「…………」

浜面「…………」

今はインデックスは浜面に馬乗りになっている。

なんというかそれは非常にいやらしい。

禁書「ぐぁぶっ!!」

実は浜面仕上、この少女に出会ってからの数日間。噛みつかれなかった日はないという。

つまりそういう事だった。
474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 04:54:08.69 ID:NLGvAPUAO
浜面「うぎゃああああああああああああッ!!!!! ばっ、馬鹿かテメェこのミイラっぷりが見えねぇのか!! 馬鹿か!!?」

禁書「う、うるさいんだよッ!! べべべ別にこれはしあげとちゃんと正面から向き合いたかっただけで、わ……わざとこんな体勢になったわけじゃないんだもん!!!」

浜面「……それはそれでなんか」

禁書「ぐぁっぶッ!!!」

浜面「んおおおおお傷が開くッ!? 傷が開くし痛いしなんか熱いから噛みつくなああああああああ!!!」

絶叫が響く中ふと思ったのは、やはりインデックスの事だった。

浜面は、ついさっき自分が手にした答えをもう一度反芻する。

一生忘れることの出来ない辛い記憶を上書き出来るくらい楽しい記憶を作るということがどういう事なのか。

それを糧にできるくらいの一生忘れることのない記憶を作るということはどういう事なのか。

少女の本質的な部分を助けるには、どうしたらいいか。

簡単だ。

たった一つ、守り抜けばいい。

無様でも情けなくても構わない。自分が出来うる精一杯で、この少女の笑顔を守り抜こう。

それがインデックスを助ける事になるのなら。

どんな事をしてでも、助けると誓ったのだから。

浜面「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!! 死ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」

そんな思いと叫びと共に、制限時間は刻一刻と迫ってきていた。

残った日数はこの日をいれて3日間。

既に72時間を切っていた。
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 05:03:29.23 ID:NLGvAPUAO
というわけでここまで。ちょっと遅れ気味です。なかなか思うように進まない。
美琴関連はなんか色々あやふやになってすません。え、これどーなってんの的な質問は差し支えない程度なら答えられるんで良ければ。

さて、多分ペンデックスさんまでは最低後3回、もしくは4回ぐらい投下後になりそうな予感。新約でるまでに区切りつけたい。
一週間内には投下します。とりあえず次は、ははっお前この流れはねーよ。的な展開あるかもしれないけど笑わないでやってください。

ではでは、書いてきまー
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 05:11:55.32 ID:o/wpOitUo
乙!
インデックスは浜面の嫁
だから俺はクールビューティーをもらう
477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 07:00:07.65 ID:oRBCi5dAO

はぁーまづらぁ
478 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 08:50:00.58 ID:D8Ft3WFn0
おつー
ところで>>1は絹旗以外のアイテム勢は登場の機会あったりする?
479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/02/20(日) 12:51:25.63 ID:2VMqbPpc0
アイテムって結成されてるの?
480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 13:14:28.50 ID:o/wpOitUo
アイテムあっても絹旗は流石にはいってなさそう
常盤台だし
481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 17:53:37.92 ID:1Zw5RanX0
>>277
482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 21:16:00.51 ID:oRBCi5dAO
アイテムもスクールも動いているってことは
アイツが来るのか
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 22:27:02.10 ID:1Zw5RanX0
アイテムが味方になるのか敵になるのかが重要だな
敵なら絹旗との絡みに期待
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 22:31:48.27 ID:JnxCasKBo
1巻の話だけで終わるかどうかで暗部云々が重要かそうでないかに分かれる
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 23:14:52.70 ID:1Zw5RanX0
初めから読み返して情報を整理すると
御坂が実験を止めようとし落雷、
セキュリティーが甘い隙に冷蔵庫がハックしメンバー、アイテム、ブロックの暗部組織詳細、
量産型能力者計画、絶対能力進化、スキルアウトの計画、魔術師という単語を知り
ステイルから魔術師について詳しく聞き出す。
口ぶりから察すると次の落雷で学園都市の機能が麻痺しスキルアウトが暴れだしてから
記憶が消えたインデックスに接触しアレイスターとの交渉権を得ようとしている。
>>250で冷蔵庫はハックした情報からアイテムが命令されて動き出すと予想し
>>277でアイテムが動き出す。今現在スクールとアイテムが交戦中の可能性が高い。
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 23:44:08.49 ID:SzpfgIJeo
最後二行は完全な想像であって情報ではない件について
487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 23:57:12.06 ID:1Zw5RanX0
>>486
>>250は冷蔵庫が言ってたことだが下一行が妄想になってたスマン
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 00:11:58.96 ID:wWJcv3lP0
>>487
いいたいことは分かるがおちつけって。
言いたいことは>>250じゃなくて下から二行目だし
冷蔵庫はハックした情報から、アイテムが命令されて動き出すと言いたかったんだろ。
ハックした情報からアイテムが動き出すみたいな書き方をしたのが悪い。
それ以外はいい考えだとおもうぜ
489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 00:41:48.02 ID:SeU1d+rAO
>>249を見る限り浜面対ステイルの時点で既にアイテムに追われてたんじゃないのか?

読み返すまで気付かなかったけど>>249の心理定規の台詞と>>276の絹旗の台詞がリンクしてるし。

490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 10:52:58.86 ID:wWJcv3lP0
爆弾で車吹っ飛ばすの件だな

もう交戦中ってのもあながちまちがいじゃないかもしれんが
いずれ追われると先を見越して心理定規がアイテムに先手をうったとも考えられるな。
学園都市は今非常に危険な状態だが
とりあえずペンデックス編が終わるまでは
垣根が接触してこないから今は浜面には関係なさそうだ。

491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/22(火) 23:21:15.34 ID:tvThGvJq0
くっ……まだ来てなかったか
492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 09:42:49.26 ID:Mppz2wf/0
>>1はまだみたいだな

くくく、いいだろう 
いつまでも待ち続けてやろう
493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:08:28.25 ID:YnUT//0AO
インデックスがむすっとしていた。

禁書「…………」

浜面「……あの」

禁書「……なんなのかな」

浜面「いや……」

先程この少女の笑顔を守ると決めたばかりの浜面にとってはなかなか面目のない様でもある。どうやら女の子1人の笑顔を守るというのは並大抵の事ではないらしい。

浜面「はぁ……」

小さくため息を吐きベッドに身を沈める。
あの後、流石に気が遠くなりかけてインデックスも噛みつくのをやめたのだが、その後の雰囲気がすこぶる悪い。
あらぬ体勢になったからか、あのよくよく考えてみれば恥ずかしい誓いをたてたからか、インデックスは背を向け猫と戯れていた。

浜面「…………」

考えたのはどうやってインデックスの機嫌を伺うかではなく、情報の整理。現状の把握。何故ここにいるのか、あれからどうなったのか、何日経ったのか。

浜面「あー……で、さ。ここにはミサカが運んで来てくれたのか?」

禁書「……うん。昨日すっごい爆発音がして、雨が止んでおっきい地震が起きた後かな? 少し時間が経ってからしあげを担いだくーるびゅーてぃが来たんだよ」

禁書「ほんとにびっくりしたんだから……ねースフィンクス?」

「にゃー」
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:09:20.76 ID:YnUT//0AO

浜面「へぇ……」

爆発音、というとあれだろう。ここまで聞こえたという事は相当派手に吹き飛んだらしい。

浜面(本当に……よく生きてたもんだな)

浜面「この包帯は?」

禁書「くーるびゅーてぃに担がれてきた時にはもうしてあったよ? それで、」

そこまで言ってインデックスの声が小さくなる。

禁書「路地裏で見つけて、すぐ……手当て、したって……それから」

続けた言葉の語尾はだんだんと弱くなっていった。

「にゃー?」

部屋に響いた猫の鳴き声はまるで主人をを気遣うかのようなそれだった。

小さな背中がふるふると震える。

浜面「……イン」

禁書「それからやっぱりスフィンクスの名前を鼻で笑って帰っていっちゃったんだよ!!」

浜面「…………」
495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:10:22.92 ID:YnUT//0AO
禁書「まったく!飼い主は私だって言うのにいつになったら認めるのかな!!」

飼い主は俺だ。なんて無粋な突っ込みは多分しても無駄だろう。

背中しか見えないがぐぎぎーとインデックスが奥歯を噛み締めている様がこちらにも伝わってきた。腕に抱く猫はみゃーみゃーとインデックスに呼応するかのように鳴き声をあげている。

浜面「はぁ……」

もう一度溜め息。推測も混ぜると、話を聞く限りでは昨日偶然通りかかったミサカが手当てをしてくれて運んでくれた、というところだろうか。もしそうならミサカが見つけてくれなかったと思うとゾッと――

浜面「……なぁ、それって昨日の話なのか?」

禁書「え……うん。そうだけど」

振り向いたインデックスから返ってきたのはそんな言葉。

……たった1日しか経っていない?

浜面「…………」

違和感。

今、ベッドに沈んでいる浜面仕上の体には全身に包帯が巻かれている。全ての傷を覆い隠すかのように巻かれているそれは、つまりそれだけ浜面仕上が傷を負ったという事だ。

火傷、裂傷、打撲、擦傷、この数日間で浜面仕上の体は限界まで痛めつけられ、挙げ句の果てには体まで刺し貫かれた。

浜面(なのに……なんでだ?)

なんでこんなにも傷を負って、たった1日で意識を取り戻す事が出来たのか。

496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:11:20.53 ID:YnUT//0AO
浜面「…………」

ゆっくりと、腹部を押さえる。

浜面「……ッ」

その動作だけで体中に伝わる激痛。

倒れ伏す路地裏で、雨に打たれながら最後に見たのは赤い水溜まり。

禁書「しあげ……大丈夫?」

浜面「ん、おぉ……」

常日頃から能力者との戦いを繰り広げていたといっても、意識を3日以上も手放す程の大怪我なんてした事はない。

したことはないが、この現状はどう考えても重傷だろう。失血死してもおかしくないぐらいに血も流れたはずだ。

浜面「…………」

体にはきっちりと傷の処置が施されている。

消毒し、傷を押さえ、包帯を巻いただけの応急処置が。

浜面「……なんで」

輸血した訳でもない、手術したわけでもない、話を聞いた限りではそもそも病院にすら行っていない。

数十もの斬撃を浴びて、とんでもない力で地面や壁に叩きつけられて、腹に穴まで空けられた。大量に血も流して、雨にも打たれていたはずだ。

浜面「なんで、生きてるんだ?」

神裂火織との戦いはステイル=マグヌスの時とは訳が違った。レベルが違った。

たかが応急処置だけで、どうしてこうやって目が覚めて、生きていられたのだろう。自分を見つけたミサカはいったいどうやって命を繋ぎとめてくれたのだろう。

そんな疑問が頭にぐるぐると浮かび回る。

禁書「そんなこといわないでほしいんだよ」
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:12:11.23 ID:YnUT//0AO

疑問を消し去った、いや、忘れさせたのはいつの間にかベッドの側まで寄ってきたインデックスのその言葉。

禁書「そんなこと、言わないでほしい」

泣きそうな顔をした、インデックスの言葉。

浜面「あー……そんな顔すんなってインデックス。誰も死んじゃいねーぞ?」

思わず心の中で自分自身を罵倒する。本当にどこまでもダメな奴だ。ついさっき決めた事すら守ろうとしない。

ぽふ、とインデックスの頭をフード越しに撫でる。

禁書「うぅ……」

その仕草にまんざらでもなさそうな顔をしながらも、インデックスは唇を尖らせた。

禁書「むぅ……子供扱いしすぎかも」

浜面「いや、つってもお前ガキだろ?いくつだよ」

禁書「13歳から14歳……ぐらいかな?」

浜面「……で、本当の歳は?」

禁書「そこはかとなく馬鹿にしてるね?」

どうやら悪かった機嫌はどこかへ飛んだらしい、飛んだはいいが、今のインデックスの表情は喜怒哀楽でいう所の哀。浜面仕上としては出来る限り少女にそんな顔はしてほしくないわけで、

浜面(でも鼻毛も銀色なんだなとーとかいう度胸もないしな……いかにも死亡フラグな気がする)
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:12:51.70 ID:YnUT//0AO

浜面「……痛ッ」

激痛。

騒ぎすぎたのか、刺された腹部を中心にじわじわと体中に痛みが広がる。それは別の傷口に伝わり、更に伝播する。

禁書「し、しあげ!? 大丈夫?」

浜面「……おぉ」

どこか痛いかすらわからないようになるまでさほど時間はかからなかった。

浜面「……ッ」

歯を食いしばる。

しあげ、とインデックスの呼ぶ声が遠く聞こえた。

浜面「あー……大丈夫だっつうの。これぐらい」

禁書「でも……」

大丈夫大丈夫。そう言って目を瞑る。

運よく生きてた。それはいい。しかし結局浜面が数十もの斬撃を浴びて、とんでもない力で地面や壁に叩きつけられて、腹に穴まで空けられた。その事実には変わりない。

浜面(そりゃあ……痛いのは当たり前か)

瞼を閉じた暗い世界で刺すような、殴るような、痺れるような痛みが体を襲う。

魔術師に襲われ、炎や斬撃に襲われ、痛みに襲われ、ここ数日襲われてばかりの、そんな浜面が聴いたのは当たり前だがインデックスの声。

浜面「……ん」

だが、ぼんやりと遠くから聞こえたそれは自分を呼ぶ声でも、身を案じるような言葉でもなかった。

禁書「       〜♪」

歌。
499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:13:51.80 ID:YnUT//0AO

聴覚を柔らかく刺激したのは、ソプラノの声が奏でる歌。

浜面「…………?」

うっすらと瞼を開く。

視覚を優しく占領したのは白。握った手を胸に重ね、祈るような姿で歌うインデックス。

浜面「……シスターさんみたいだな」

後から考えると相当に失礼なこの一言は、痛みと歌と白に包まれた今の浜面仕上の本音だった。

禁書「……くすっ」

普段なら噛みつきにでも来るだろう、その言葉もインデックスは笑って受け流す。

浜面「何の歌だ……これ」

禁書「お祈りなんだよ。しあげの痛みが和らぎますようにって」

そう言ってまたインデックスは手を胸に重ね歌いだした。祈りを捧げるように、音を紡ぐ。

禁書「      〜♪」

浜面「…………」

禁書「      〜♪」

別に、これを聴いたからといって体の痛みが引くわけじゃない。本音を言うと今すぐにでも叫び悶え苦しみたい。それ程の激痛が体を包んでいる。

浜面「祈り、ねぇ……」

けど、この小さな部屋に響くインデックスの歌は何故だか体が浮くかのように心地よかった。
500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:14:43.25 ID:YnUT//0AO

禁書「うん、祈り。それを歌に込めてるの。回復魔術を使えない私には、これぐらいの事しか出来ないから」

浜面「それでなんで歌なんだ?」

禁書「歌は単純な言葉や思いよりも伝わりやすいんだよ。子守歌を想像してくれたらいいかも」

浜面「……俺はガキじゃねーぞ」

禁書「別に子守歌のつもりで歌ってるんじゃないんだよ?」

そうかよ。と言ったものの、インデックスの言う事も間違ってはいない。音は脳を刺激する重大な要素の1つだ。

その中でも歌、ないし音楽が脳に与える影響は時にとんでもないモノもある、なんせ超能力開発に欠かせない要素が音でもあるのだ。

リズムや音程を使って共感覚的に脳を刺激させ直接的に作用し、感情のやり取りができる。それが音楽。それに高い周波数の音、インデックスのようなソプラノの高い声、特に肉声には癒やしの効果もあるらしい。

最も素晴らしい楽器は人間だ。なんて言った音楽家もいるそうだ。

……まぁ脳開発の授業で培った知識の受け売りだが。
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:15:36.87 ID:YnUT//0AO

禁書「一時間の説教を受けたって泣かない人も一分間の歌で涙を流す。そんな覚えがしあげにもあるんじゃないかな?」

浜面「……まぁな」

その言葉を聞いてインデックスはにっこりと笑う。自身が守っていくと決めたその笑顔で、

禁書「だから祈りは届くよ。私たちシスターはそうやって教えを広めたんだから」

はにかむようにインデックスはそう言った。

浜面「…………」

浜面「……ん、なら聴かせてもらいますか」

そう呟いて、目を瞑る。

暗闇の中、一拍の間を置いて始まったのは優しい音色。

体を包む激痛を更に包み込んだのは、柔らかい旋律。

全身が痛いはずなのに心地よさが頭から離れない。

浜面(案外、馬鹿に出来ねぇなぁ……)

浜面「歌、上手いな……」

思わずそう呟く。少し途切れて、えへへっという声が聞こえた。

インデックスがどんな顔をしたのかはわからないが、きっと今笑ったのだろう。嬉しかったに違いない。

その嬉しいと思った感情は、一生インデックスの心に残り、消え去る事はない。

そう思うと、ベッドに身を沈める浜面仕上もどこか不思議と嬉しくなった。

そう、忘れる事は――

浜面「……ッ!!」
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:16:26.63 ID:YnUT//0AO

それを思い出し、痛みを忘れ勢いよく起き上がったのとと、インデックスが「ひゃうっ」という声をあげて肩を震わせたのは同時だった。

浜面「〜〜〜〜ッ」

浜面仕上が痛みを体をうずめたのも。

先程まで部屋に溢れていた旋律は途切れ、丸まっていた猫が不思議そうに鳴き声をあげる。

新たに溢れてきたのは、ピピピという機械音。

禁書「し、しあげ? け、けいたい……?が呼んでるんだよ」

浜面「痛ッ〜……それぐらいでビクビクすんなよ。すまんとってくれ」

おそるおそる手渡されたボロボロの携帯電話の画面には絹旗最愛という4文字。

浜面「あー……」

そういえば、コイツに買ってもらった携帯電話が1日も経たずに爆散したのも思いだした。

ある意味交換条件で買ってもらったものだが、なんだか悪い気もする。

浜面「…………」

ピッ、とキーから機械音が聞こえ着信に応じる。

浜面「もしも」

「もっしもーし!! えっと、絹旗の彼氏さんでいい訳?」

聞こえて来たのはやたら甲高い女の声。車が走る音に、後ろのほうでは誰かがもがもが言っている……これは多分絹旗だろうか。それと「私にもかわんなさいよ」と言う声。

ボソっと「応援してる」なんて声も聞こえた。何をだ。
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:19:10.97 ID:YnUT//0AO

浜面「あー……えー、と。どちら様?」

「あ、私らー……あーん、ねー麦野、なんて言えばいい? あ、うん」

「あー、私ら絹旗の仕事仲間の女の子達って訳よ!」

浜面「そうか、切るぞ。絹旗によろしく言っといてくれ」

「ちょ、ちょちょちょい待った! け、結局ホントに絹旗の彼氏な訳!?」

浜面「あー……」

絹旗「ちょ、超いい加減にしてくださいぃぃぃぃぃぃぃッ!!」

解放されたのだろうか。絹旗のそんな声と共にドタンバタンと車が揺れる音。電話口からはひー、きゃー、わーなど、悲鳴が聞こえてくる。

絹旗「浜面ぁぁぁぁッ!!」

浜面「おぉうッ!? よう、なんか騒がしいな」

絹旗「はぁっ……はぁ……ッ、すいません。この前会った時に超伝え損ねた事がありまして」

浜面「んー?」

伝え損ねた事、と言われてこちらも落雷の件をからかうのを忘れていた事を思い出す。携帯電話の件も含めていつ言おう。

絹旗「あーっ、もう! 麦野ーッ、超やめてください」

「新しい仕事も増えてこのくっそ忙しい時に彼氏に電話なんていい度胸だにゃーん?」

絹旗「だから、ちが、ひゃああああああっ!!」

浜面「……おーい」

「地震に巻き込まれるわあのクソ野郎にも逃げられるわでどんだけ今が忙しいのかわかってんのかしら絹旗ぁぁぁぁ?」

絹旗「ちょ、ちょぉぉぉ、はっ浜面!!また超かけ直しますうぅぅぅ!!」

その叫びを最後にブツリ、という音が聞こえ、通話は終わった。

504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:20:16.72 ID:YnUT//0AO
浜面「…………」

絹旗もなかなか姦しい友人を持ったらしい。手に持つボロボロの携帯を適当に放り投げ、ため息をつく。

禁書「…………」

浜面「…………」

横目で見るとインデックスがむすッとしていた。先程の笑顔はどこかへ飛んでいったらしい。ちくしょう。

禁書「しあげ、今の女の人の声だよね? 誰なのかな?」

と思ったら顔が笑っている。ただし目は笑っていない。笑顔は戻ったようだが機嫌は飛んでいったままのようだった。ちくしょう。

浜面「あー……彼女とかじゃないから安心していいぞ」

禁書「……ふーん」

歌を中断されたからだろうか、それとも他に不満でもあったのだろうか。ツーンと唇を尖らせたインデックスがジリジリとこちら側に寄ってくる。

浜面「……噛むなよ?流石に今までみたいに腕丸飲みすんなよ?絶対すんなよ?」

別に振りをしてわけではない。

禁書「ふんっ」

しあげのばーか。そう呟いてインデックスはぷいっと頬を明後日の方向へ、そのまま背を向け手近にあった音楽プレーヤーに手を伸ばす。

禁書「いーもんこれで遊んどくから!」

浜面「…………」

携帯電話は未だに苦手なのにソレは大丈夫らしい。慣れた手付きでイヤホンを耳につけ、音楽を聴いているそのシスターの姿は似合わなさすぎてなんとも言えない。
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:21:03.33 ID:YnUT//0AO

禁書「スフィンクスもおいでー」

「にゃー」

浜面「…………」

猫を抱きかかえ三角座りで音楽プレーヤー片手にシスターの格好をしている少女という光景もそうそう拝めないだろう。

浜面「パソコンの使い方も教えてやろうか?」

禁書「へっ? ぱ、ぱそこん……?」

頭に?を3つ4つ浮かべるインデックスを余所に、はぁ……となんだかんだで吐き出すのはため息。別にこの状況を不快に思ってるわけじゃなく、平和すぎて、ただ単に緊迫感の無さとそれを受け入れそうになった自分に呆れただけだ。

浜面「……ッ」

ベッドから降りる。

禁書「し、しあげっ!!寝てなきゃだめなんだよ!?」

浜面「痛ッ……」

体が少しの動作で悲鳴をあげる。床に付いた脚から全身へ伝わる激痛。体重を支えきれず膝が折れる。

506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:22:22.64 ID:YnUT//0AO
禁書「だ、だめなんだよ……ベッドに戻って」

浜面「大丈夫だって、さっきよりはだいぶ楽になった」

音楽プレーヤーを放り投げ、駆け寄ってきたインデックスを包帯だらけ手で制止する。

禁書「そ、それでも……」

とりあえず今放り投げたのは一体誰のだと思っているのか、なんていう余裕は無く。苦痛が表情に出ていないか、それだけに集中し会話を続けた。

浜面「大丈夫だ」

禁書「…………」

浜面「お前が歌ってくれたおかげでだいぶ楽になったよ」

禁書「……むぅ」

ほんと?と、インデックスが少しの不安を抱えた表情で聞いてくる。

浜面「おぉ」

禁書「嘘はいやかも」

浜面「嘘じゃねーよ」
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:22:49.00 ID:YnUT//0AO

嘘じゃない。インデックスの歌は思いのほか心地良く、痛みが癒えるとまではいかなくても、ほんの少し和らいだ気がしていた。

禁書「う、嘘ついたら、つき返されてもしょうがないんだよ!?」

浜面「だぁぁかぁぁら、嘘じゃないって」

そう返してなんとか立ち上がり、パソコンの前まで体を引きずるように動かし座り込む。

浜面「…………」

じわりと、腹部から熱い何かが広がった気がした。

インデックスの歌は心地よかった。それは嘘じゃない。

でも本当に体は大丈夫なのか、と聞かれれば

浜面(ちょっとキツい……か)

多分嘘になるのだろう。チクりと胸に針がささったような罪悪感。

508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:23:54.16 ID:YnUT//0AO
振り返ると、インデックスは安心したのか先ほど放り投げたソレを拾い、再び猫を抱いて音楽の世界に入り込んでいる。

浜面「…………」

パソコンを起動する。一昨日には電気は通ってなかったが今はどうなんだろうと、若干不安になったが、大丈夫のようだ。

立ち上がったパソコンのディスプレイに表示されていたのは、雷が落ちるその瞬間まで開いていたとあるホームページ。

浜面「――――ッ」

それはインデックスに出会う前の浜面仕上が残した置き土産。

浜面「……もうこれはいらない、か」

完了しましたと文字が表示されてあるそのホームページから目を逸らし、素早くウィンドウを閉じる。自分の汚点は残しておきたくはない。

カチカチっとマウスの操作する音が小気味よく聞こえ、表示されたのは適当な検索サイト。キーボードを淡々と打ち込み、

浜面「……やっぱあいつらただのバカじゃねぇか」

打ち込んだ単語は『完全記憶能力』

それを詳細に解説しているページには、記憶のしすぎで死ぬなんて言葉はどこにも書いていない。
509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:25:23.88 ID:YnUT//0AO
神裂火織の言葉を思い出す。

完全記憶能力。インデックスの頭の中にある図書館レベルのそれは、脳の85%も使って記憶しており、故に彼女は常人の15%しか脳を使えず。どんどん貯まっていくゴミのような記憶がインデックスの脳を圧迫して、死に至らしめる。

浜面(くっそ、何が記憶のし過ぎで死ぬだ。知識を貯める意味記憶に思い出を貯めるエピソード記憶、それも細分化されていて……そもそも人間には140年分の記憶が可能だって書いてんじゃねぇかッ!!)

こんな事も知らないで、調べもしないでインデックスの脳の容量やらとほざいて一年も追いかけまわし記憶を消していたのかと思うと、また沸々と怒りが吹き出してくる。

浜面「…………ッ」

感情に反応するかのように体中の傷が悲鳴を上げる。激痛。

浜面(落ち着け……今はあいつらにどうこう言うよりインデックスの事の方が大事だ)

510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:26:50.75 ID:YnUT//0AO

落ち着いて、息を吐く……問題はまだ終わってはいない。完全記憶能力は死に至る能力ではない。じゃあなんで魔術師達は仲間であるインデックスの記憶を消さなければならないと断言したのか。

神裂『そうしなければ死んでしまうんですよ。インデックスは』

浜面(記憶のしすぎで人はしなない……なら、なんだ?)

記憶のしすぎ以外で記憶を消さなければ死んでしまう理由があった?

浜面(そんな病気……はあるわけねぇ。そもそもアイツらは記憶のしすぎで死ぬって断言してた)

それはどうやって知り得たんだ?

浜面(85%や15%なんて数字は誰がはじき出した?……脳の知識が無いあいつらには絶対に無理だ。他に誰が――)

神裂『私達が属する組織は必要悪の教会、あの子と同じ組織であって』

浜面「……必要悪の教会」

禁書「え、なに?なにか言ったのかな?」

浜面「いや、何でもねー」

「にゃー」

一転、平和な雰囲気に飲まれそうになる。

浜面(あぶねぇ……ちょっと待てよ俺。今何を考えた?)
511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:28:03.13 ID:YnUT//0AO
そうだ、インデックスや神裂達は同じ組織に属している。逃亡したインデックスを追いかけてアイツらはここまで来たんだから。

浜面(なら……組織のトップか?)

そいつが神裂達に記憶を消さなければ死ぬと吹き込み、一年単位で記憶を消さした。

浜面(でもアイツらがそう簡単に記憶を消すなんて思えない。なんで……)

……記憶を消さざるを得ない状況下にあった?

浜面(どんな状況下……いや、アイツらも言ってたな)

神裂『私達が消しました』

神裂『そうしなければ死んでしまうんですよ。インデックスは』

そう、多分、推測に過ぎないが実際に追い込まれたのだ。記憶を消さなければ死んでしまう寸前まで。

浜面(記憶のしすぎで人は死なねぇ……記憶を消さなければ死んでしまう病気もねえ)

なら、おのずと結論は導き出せる。

ここまで考えれば、こんな答えはクズでも分かった。

インデックスを死に至らしめる、病気でも能力でもなんでもない、それは――

浜面「……魔術」

禁書「えっ?なぁに?」

「にゃー」

浜面「いや、なんでもないって。大丈夫大丈夫」

またもや一転、平和な雰囲気に飲まれそうになる。今はそんな場合ではない

浜面(あー……なんだっけ、そう、魔術だ)

512 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:29:15.08 ID:YnUT//0AO
そうとしか考えられなかった。理由はわかりきっている。ステイル=マグヌスや、インデックス本人ですら言っていた。

浜面(……10万3000冊の魔導書、か)

魔神。実感は沸かないが、ステイル=マグヌスの炎、あの規模の術が10万3000通りあると考えればいいのだろうか。

浜面(……世界が滅びちまうな)

想像もしたくない。ただでさえ世界を滅ぼすだか歪める魔術かなにかがあったはずだ……当然、誰も野放しにはしないだろう。

浜面(だからってこんな……まるで呪いじゃねぇかッ!!)

一年周期で記憶を消さなければ死に至る。そんな呪いのような魔術をかけられて、それを知らされずインデックスや魔術師は出会いと別れを繰り返したのか。

何度も、何度も、
513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:30:19.00 ID:YnUT//0AO
禁書「ひゃ、ひゃわぁぁぁ」

「にゃーッ」

後ろでそんな声(と鳴き声)が聞こえた。振り向くと、どうやら音楽プレイヤーの音量を勢いよく上げすぎたらしい、

「うぅ〜」と唸りながら耳を押さえたインデックスと、イヤホンの先からはっきり聞き取れる程音漏れした聞き覚えのない音楽に、それを威嚇する猫。

浜面「……なにやってんだ」

平和な一場面。しかし、その平和の中には爆弾が仕掛けられている。

『少年、あの子を保護させて下さい……あと3日しか時間がないんです』

今日を入れて3日。丁度その日の決まった時間に記憶を消さなければ、インデックスが死んでしまう。

浜面(俺に……どうにか出来るのかよ)

どんな事をしても助けると誓った。

しかし無能力者の自分に、インデックスに仕掛けられた魔術を……どうにかする事ができるのか?

禁書「しあげ?」

浜面「あ、ん?どうした?」

禁書「それはこっちのセリフかも。どうかしたのかな?」

表情で何かを察したのか、不安そうな瞳でこちらを見つめるインデックスに

浜面「……いんや、なんでもねぇ」

嘘をついた。
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:31:40.43 ID:YnUT//0AO
浜面「あれはもういいのかよ」

禁書「うっ……もう充分かも。おんなじ音ばっかり聴いてても頭くらくらしちゃうだけなんだよ」

浜面「あぁ?……あ」

そういえばインデックスには音量の上げ下げしか教えてなかった気がする、という事は……

浜面「え、はぁ!? お前今までずっと同じ曲しか聴いてなかったのか?」

禁書「え? うん。それしか流れてこなかったから……」

でも楽しかったかも……文明の利器って言うのも悪くないね、とはにかんで笑うインデックスにまた溜め息。

浜面「はぁ……こっちこい。ちゃんと使い方教えてやるよ。確か150曲ジャスト入ってたはずだし」

禁書「むぅ……楽しかったけど音はもういいかも。それならさっきしあげが言ってたぱそこんって言うの教えてほしいんだよ」

浜面「あー……まぁお前なら大丈夫か」

マウスの使い方やキーボードの配置なんて覚えるのは簡単だろう。

こっちこいよ、そう言ってインデックスがパソコンの前に座る。マウスや画面にキーボード、簡単な説明をして、相槌をうちそれを要領よく理解していくインデックス。

浜面(……こんな事、してる場合じゃないんだよな)

そう、今もこうやってパソコンの知識を理解していくインデックスの体には、魔術という名の爆弾が仕掛けられている。

515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:34:47.35 ID:YnUT//0AO
禁書「ふぅん……だいたい分かったんだよ」

浜面「じゃあ練習程度に……そうだな、適当な掲示板でいいか」

カチカチ、とインデックスの手に重ねてマウスを動かす。開かれたウィンドウには、

禁書「……としでんせつ?」

浜面「ん、学園都市の都市伝説を集めたホームページだよ。まぁ胡散臭さいけど、暇つぶしになるし誰でも書き込めるしな」

画面には幻想御手やキャパシティダウンなんて聞き覚えのあるものから

禁書「……脱ぎ女?」

浜面「……どっかで会った気がしないでもないな」

他にも学園都市の裏の世界で暗躍する謎の組織、どんな能力も効かない能力を持つ無能力者なんて如何にも嘘の書き込み。

浜面「軍事目的に何万体も量産されたレベル5のクローン人間ねぇ……相変わらずすげぇ胡散臭さ」

禁書「えーと……ここをくりっくしたらきーぼーどを打つの?」

浜面「お、そうそう」

禁書「んー……どんな事を書けばいいのかな」

浜面「何でもいいさ、まぁこんな事あり得ねーって事でもいいんじゃねぇか?」

魔術がある、なんてそれっぽくていいと思うが、なんて言うと怒るだろうか。

禁書「んー……」

分かったんだよ、と楽しそうに言い画面を見ながらタンタンとリズム良くキーボードを叩ける辺りインデックスは既にブラインドタッチを獲得したらしい。

浜面(本当に……こんな事してる場合じゃ)

10万3000冊もの魔術を抱えて、更に記憶を消さなければ死に至る魔術を仕掛けられたインデックスは――――

浜面「…………」

待て。

待てよ?

浜面「…………」

浜面(……何で、インデックスはそれに気付かないんだ?)

516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:36:27.18 ID:YnUT//0AO

インデックスが抱えているのは10万3000の魔術だ。言わばエキスパート。魔術の知識に関しては右に出る者は世界に1人としていないだろう。

そのインデックスが、どうして魔術を仕掛けられてそれに気付かない。

……気付けない?

浜面(待て……どういう事だ)

相変わらずリズム良くキーボードを打つ、その白い修道服を纏ったインデックスは、いつもと変わらない。死に至る魔術を仕掛けられているとは、とても思えない。

白い修道服、歩く教会。インデックスが言うには絶対防御、物理も魔術も、超能力すら触れたら無効化してしまう反則のような……

浜面(インデックスに魔術は通じない)

……つまり魔術じゃない?

浜面(くそっ、待て待て待て。そうなると前提が狂ってくる。コイツに仕掛けられているのは魔術だ)

……本当に?

浜面「…………」

517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:37:39.40 ID:YnUT//0AO
浜面仕上は無能力者と言えど仮にも学園都市の住人だ。当然ながらこの街の"ありえなさそう"な技術にも多少は精通している。

しかし、浜面仕上には目の前の少女を蝕んでいるはずのありえない何かは分からない。

魔術の知識なんて少ししかない浜面仕上には、インデックスを苦しめているのが魔術だという確証もない。

浜面(……ちくしょう)

神裂火織の言葉が蘇る。

違う。と、言いたかった。

そんな事はない。と、声を張り上げたかった。

『魔術の知識すらないド素人が、あの子を助けられわけないでしょうが!!』

浜面「…………ッ」

その通りだった。

518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:39:04.17 ID:YnUT//0AO
禁書「ねーしあげ」

唐突に呼ばれたその声に、とっさに反応出来ない。

禁書「……しあげ?」

浜面「ん?あ、あぁ悪い。なんだ?」

禁書「これ、いくら打っても日本語にならないんだよ」

浜面「……スペースの隣に変換キーってのあるだろ」

禁書「スペース?」

浜面「……一番下の長いキーの隣だ」

禁書「あ、変わったんだよ」

浜面「あぁ、消すのはそこのな」

禁書「おぉ、す、凄いんだよ……ぱそこんって文書よりよっぽど便利なんだね」

浜面「おぉ」

そうはにかんで笑うインデックスには、爆弾が仕掛けられている。

浜面仕上にはどこに仕掛けてあるのか、何なのかすら分からない爆弾が。

浜面(無理なのかよ、俺には)

やはり、自分のような無能力者はこんな小さな女の子すら救う力もないのか。助ける事は出来ないのか。

浜面「…………」

手のひらを見つめる。インデックスが何の躊躇いもなく繋いでくれたその手はボロボロだ。

比喩でもなく指先から隅々まで巻かれたその包帯は、どれだけ自身に傷を負ったかを表している。

519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:41:08.23 ID:YnUT//0AO
浜面「…………」

ボロボロの手のひらを見つめる浜面仕上を襲っていたのは、喪失、恐怖、焦燥。

掬った砂が流れていくかのような喪失感。

それは二度と掬う事の出来ない恐怖感。

防げど防げど流れは止まらない焦燥感。

インデックスを救うのに、魔術師は頼れない。炎の魔術師は突き落としたし、神裂火織は殺してしまった。

このまま何も出来ずに3日が経てば――

浜面「…………」

浜面「……?」

絶望感に蝕まれた浜面仕上の視界にあるのは、手だ。

自分の、ボロボロの手。

指先までしっかりと包帯が巻かれている。

浜面「…………」

『指先』まで、しっかりと包帯が巻かれている。

別に、何の不思議もない。自分は連日魔術師なんて化け物と戦っていたのだ。包帯が巻かれていてもなんの不思議もない。

浜面「…………」

それでも浜面がその手に巻かれた包帯を解きにかかったのは、違和感を感じたからだ。

奇妙な違和感。じわじわする、とでも言うような。

浜面「…………」

解いた包帯の下には擦り傷と、切り傷と、火傷の痕。

指先には火傷の痕があった。

『指先だけ』火傷していた。
520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:42:33.19 ID:YnUT//0AO
浜面「…………?」

こんな火傷いつしたっけ。と、なんとなく、振り返る。

ステイル=マグヌスとの戦いが終わった後には確か指先にまで包帯を巻いていた。

ならステイルとの戦いの最中?

浜面「……違う、か」

手のひらを見つめ、ぼそりと呟く。インデックスがキーボードを打つ音をBGMに、思考は続く。

浜面「…………」

ステイル==マグヌスの炎はレベル5級の業火だった。それと相対して火傷の痕が指先しか残っていないのは、考えられない。上手く掠ったとしても手全体が火傷しているだろう。

浜面「…………」

振り返る。

ステイルと戦う直前、半蔵と駒場を乗せて車を運転している時、その指先には既に『火傷の痕』があった。

ならその前、そう。炎の能力者と戦った。

浜面「なら、その時か……」

――いや、違う。

521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:43:24.07 ID:YnUT//0AO
納得しかけた浜面にそう思わせたのは、火傷の傷痕。指先だけではない、体中の傷から感じる『奇妙な違和感』

浜面「…………」

一昨日、インデックスに向かってなんて言ったのかを、思い出す。

『なんつうかさ、違うんだよな。超能力の炎で受けた傷と、魔術の炎で受けた傷のさ、感触っていうか』

超能力とで受けた傷と魔術で受けた傷の些細な誤差。

なんと言ってインデックスの怒りを買ったのかを、思い出す。

指先の火傷の痕を見て、感じて、浜面が率直に思った言葉はそれと同じ。



『気持ち悪い』



浜面「――――!?」
522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:44:23.91 ID:YnUT//0AO
浜面(待て、よ?つまりどういう事だ?)

路地裏で能力者と戦う前から既に魔術による傷が指先にあった?

つまりこれはどういう事だ?ステイルと戦うそれ以前に戦った魔術師なんて覚えが――

浜面「…………」

浜面「…………」

浜面「…………」

1人、いた。



そいつは今、自分のすぐ隣でパソコンに向かいキーボードを打っている。



523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 01:44:57.28 ID:r8INJ4wNo
ふんふん
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:45:33.48 ID:YnUT//0AO
浜面(イン、デックス……?)

振り返る。振り返れ。

インデックスと初めて出会って何があった。

屋上に引っかかっていたアイツが落ちて

拾って

飯を食わせて

自己紹介して

魔術がどうのこうの訳の分からない説明をうけて

それを馬鹿にして

それから――

浜面「…………」

噛まれた。

浜面「…………」

腕を、丸ごと。

浜面「――――」

あの時の会話を、振り返る。


『いてぇ』

『自業自得なんだよ』

『くっそ、腕に噛み跡が……なんか指先もヒリヒリするしよ。ったく』

『自業自得なんだよ』

『それはさっき聞いたっつうの』

『ふんっ』



浜面「――――」




525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:46:29.95 ID:YnUT//0AO





『くっそ、腕に噛み跡が……なんか『指先』もヒリヒリするしよ。ったく』





526 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 01:46:58.54 ID:r8INJ4wNo
なるほどなー
でもそのあとどうするかだな
527 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:47:16.46 ID:YnUT//0AO
浜面「……インデックス」

ぼそりと、呟く。

隣にいたインデックスが振り向いた。

禁書「なぁに?」

白い修道服に包まれたその少女、

白い修道服、歩く教会。インデックスが言うには絶対防御、物理も魔術も、超能力すら触れたら無効化してしまう反則のような……確か、そう、『霊装』

しかし、聞こえはいいが、結局の所ただの服だ。

なぜそんな簡単な事に気付かなかったのか、自分で自分を殴りたくなる。

それを着ていなかったら、絶対防御だろうが反則だろうがチートだろうが、意味なんて無いじゃないか。

浜面「ちょっと口開けてみてくれ」

禁書「…………」

禁書「……へっ?」

浜面「はやく」

なぜ、インデックスが自身に仕掛けられた魔術……もとい霊装に気付かなかったのか、簡単だ。やはりそれは気付けなかったから。

528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:48:00.68 ID:YnUT//0AO

禁書「え、でも……ふぇ?」

浜面「はやくしろ」

恐る恐る、インデックスが口を広げる。

禁書「ひょ、ひょう……?」

浜面「もっとだ」

広げて、広げて、広げた先に見えたのは、ぼんやりと浮かぶ不気味なマーク。

ただ一文字喉に刻まれた。熱を帯びた不気味な紋章。

浜面(……気付けないのも当たり前か)

まさか自分の身体の中にこんなモノが仕掛けられていたなんて、インデックスもあの魔術師達も思いもしないだろう。

それは呪い、それは爆弾、それは首輪、しかしそれは魔術ではなく『霊装』

あくまで推測でしかないが、これはインデックスに確認を取ればいい。

禁書「み、みょう、ひい……?」

浜面「あ、ああ、悪い」

禁書「ひゅ、ふぅ〜」

口を閉じたインデックスは説明を求めるかのように頬を膨らましている。いったい何のつもりなのかな、とでも言いたげだ。

浜面「…………」

ぼんやりと黒い光を放っていた、インデックスに刻まれた首輪を思い出す。

インデックスを蝕んでいたその光は、浜面にとっては唯一の光明。

魔術の知識なんて『少し』しかない浜面仕上でも、答えに導いてくれるたった一つの道。

浜面「なぁ、インデックス」

口を、開く。
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/24(木) 01:48:34.80 ID:YnUT//0AO





開いた瞬間、既に浜面の頭の中にはインデックスをこのふざけた地獄から救う算段が立っていた。





530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/24(木) 01:53:18.85 ID:YnUT//0AO
はい、ここまで。待たせてさーすん。

ははっ、お前この流れはねーよ編でした。実は上条さん右手食われたら幻想殺し発動しちゃうじゃねとか本気で思ってます。

某レベル5勢再構成みて自分のアホさ加減に気付いた。うわわー(^o^)

と、いうわけでいつもレスありがとうございます!だいぶ伏線とプロットの消化率もいい感じに進んで嬉しい限りです。浜面が噛まれる度に熱い熱い言ってたあれです。
とりあえずペンデックス戦までもうすぐですね!

ではでは書いてきまー
531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 02:02:01.35 ID:r8INJ4wNo
なん・・・だと・・・?乙
532 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 02:33:23.13 ID:YnUT//0AO
>>528のぼんやりと黒い光を放っていた〜の下りで普通に首輪って書いちゃった。正しくは紋章です。
533 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 03:06:10.26 ID:1DeDsYzgo

やはりgoogle先生は偉大だった
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 03:49:36.22 ID:bteu2sBWo
やっべwwwwwwやっべwwwwww
テンション上がってきたwwwwww
乙wwwwww
535 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/24(木) 06:56:39.33 ID:j6xWrc4j0
すげぇ、この伏線は気づかんかったよorz
536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 08:54:41.28 ID:hfbJRN5ko
少し時間が経ってからしあげを担いだくーるびゅーてぃ 
が、少し時間が経ってからあげを担いだくーるびゅーてぃに見えた
カラッと揚がった浜面ェ…
537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 09:28:22.88 ID:rr0t9Szc0
ペンデックスをどうやって起動するかだな

とりあえず>>1乙
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/24(木) 14:56:56.68 ID:BA/HjX450
どこまでも>>1乙
あとアイテムに弄られまくりの絹旗がかわいすぎて困る。
539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 16:14:29.89 ID:zaLX+tHV0
いやーすげーな
次も期待してる
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 18:15:25.26 ID:EKF15AaU0
あいかわらず面白い
>>1
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 18:19:36.92 ID:3XVRaKiAO
ヤッバイおもしろい

浜面の出血とか諸々助けたのって一方さんだよね?
自分の能力で人を助けて一方さんは何を思ってるんだろ
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 22:03:40.63 ID:6Q3zkaTAo
>>133あたりなんだが、なんで人間を操作できんだよ、ゴーレムが動かせたから人間も出来るって?ww
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 22:05:49.41 ID:6Q3zkaTAo
ゴーレムは元々操作するもんだから割り込めたのなんで人間の意志割り込めてんだよ
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 22:29:45.62 ID:0nQIZMg/0
>>543
そりゃお前ステイルは深層心理に愛しい愛しいインデックスにいいように操縦されたいという鬱屈し屈折した感情と情動と衝動を抱え込んでいるからだよ。踊るよ。舌先で、掌の上で。
545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 22:38:47.13 ID:T6cr3TO/0
確かに強制詠唱や魔滅の声で妨害できても操れないな
546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/02/24(木) 22:46:24.57 ID:5M2B2Fx10
そこで操作できなかったら恥をかくのはインデックスだからな。
ステイルさんの思いやりだよ。
547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 23:54:30.36 ID:+Of6HRvBo
みんな「あれ?」って思ったりしたけど「まあいいや」で流したんだよ
548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 00:03:17.93 ID:WYx3AGMp0
も、もちろん俺も気づいてたぜ。
当たり前じゃないか、はははは。
549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 10:22:44.06 ID:DLe+/9f7o
なんか流してた。
550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 11:25:50.49 ID:cmuM2ThDo
おおお俺だって気づいたし!気付いたし!
551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 15:39:59.08 ID:ZDiarYTc0
ステイルの『炎を操る』って術式を
『術者(ステイル)の体を動かす』って術式に書き換えたんじゃねーの?
・・・いや気づいてなかったけど
552 :>>1 [sage]:2011/02/25(金) 16:53:40.26 ID:Sf79vOEAO
普通に操れると思ってたなんて言えない雰囲気になってた
553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 17:13:06.53 ID:ZT3xrILOo
イタリアで人相手に使ってるけどww>インターセプト
554 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 22:01:46.73 ID:YyR95SYAO
あれってアンジェレネの時みたく霊装に割り込んだんじゃね?
555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 22:30:45.86 ID:eTicWTrMo
インデックス「無理からやってみたらなんかできたんだよ」
これでおk
556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 00:05:06.73 ID:fGOZit6b0
まあ、そろそろこの話題も〆ようぜ
>>1が操れると思ってたんならこのスレじゃそれでOKにしよう
インさんかっこいい

話はかわるが発条包帯浜面に燃えた
かっこいいよな発条包帯。ついバネホータイと読んでしまうぜ
557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 00:09:05.16 ID:0PdlAVOro
発情包帯がなんだって?
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 00:24:14.93 ID:Ucx13OZto
発情包茎だって?
559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 00:35:14.16 ID:fGOZit6b0
発情包茎…だと…?
ルビはおそらくハードラッピングだな!
560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 00:54:14.16 ID:Ojv3hmxAO
追いついた
やばい何コレ伏線とか本当にもう凄すぎるとしかいえない
>>1あんた素晴らしいよ支援
561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 08:35:30.99 ID:BX0M51vj0
駒場がもってる演算鉄器 スマートウェポン ってどんな形状なの?

P90みたいな形を想像してたけど
562 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/26(土) 14:10:04.41 ID:1NKwqYqi0
>>541 ニヤニヤしてるんじゃね?
563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 16:20:33.64 ID:TyxaFDSR0
ようやく追いついた
応援してるぜ
564 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 22:53:43.54 ID:NqY1r2lgo
俺が無能力者助けた?それどこ情報?どこ情報よー?
565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/27(日) 20:18:01.32 ID:nnnK9qcAO
禁書「……じゃあ、このままだと私は2日後には死んじゃうのかな」

ポツリと小さく呟かれたその声は、部屋に充満する重苦しい空気に溶けていった。

浜面「…………」

「うん、そうだよね。普通に考えて教会がずっと私に接触してこないのがそもそもおかしかったんだよ」

ずっと、私のすぐそばにいたんだね。

そう言ってうなだれたインデックスの次の言葉は、

禁書「…………」

沈黙。表情はフードで隠れていて、インデックスが今何を思っているのは分からない。

浜面「…………」

そう、インデックスの味方であるはずで、味方だったはずの魔術師はすぐ隣にいた。

一年間もずっと、隣にいた。

アイツらにも事情はあった。インデックスにとっても、アイツらにとっても、決まった終わりに向かって一から始め続けるのは死よりも辛い事だったのかも知れない。

自分達にとっても、インデックスにとっても、幸せで残酷で死よりも辛い別れより、ただ辛いままの別れを与えた方が幸せだ。

そう決意して、そう覚悟しての一年だったに違いない。

566 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/27(日) 20:18:59.11 ID:nnnK9qcAO

それでも、

禁書「こんな一年欲しくなかった」

それでも、

禁書「こんな一年いらなかった」

それでも、

禁書「辛かったよ」

それがインデックスの答えだった。

禁書「こわかった」

唇を噛み締めて肩を震わすインデックスの答えだった。

567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 20:19:35.01 ID:nnnK9qcAO
ぐしぐし、と歩く教会の裾で涙を拭い、ごめんねと呟いたインデックスの額を軽く小突く。

数秒きょとんとしたインデックスは、むっとした顔になり歩く教会の余った袖を振り、ぺしんと叩いた。

歩く教会。絶対防御。インデックスを優しく覆う物理も魔術も無効化するその歩く教会は汚れの一つもない、綺麗なままだ。

しかしそれを纏う、10万3000冊を包みこむインデックスはボロボロだった。自ら抱える毒に脳を蝕まれ、記憶を奪われ、死の淵まで追い詰められている。

毒を喰らわば皿までとはよく言った言葉だ。魔導書という毒を食らってしまったインデックスは、生涯を魔導書図書館として過ごし、その首には鎖を繋がれる。例え首輪を外す事が出来ても、その役割は変わらない。

浜面「なぁ……やっぱりさ」

声が弱くなる。その先の言葉は出てこない。

568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 20:20:47.91 ID:nnnK9qcAO
禁書「……うん、これの仕組みは大体わかるよ。相手を都合のいい体質にする事が出来ちゃう代物だね」

仕掛けた対象が生成する魔力で動くタイプだから私に魔力がないっていうのも、納得かも。そう呟きインデックスは自嘲するかのように薄く笑う。

これ、とはつまりインデックスを繋ぐ鎖。まさしく『首輪』そのもの。

浜面「じゃあ……」

禁書「無理なんだよ。私の10万3000冊には……これをどうにか出来るような記述はのっていないから」

浜面「……そうか」

それはつまり、魔術師がいない現時点、インデックスを蝕む首輪を外す事は出来ないと言うことだ。

それはつまり、魔術師がいない現時点インデックスに仕掛けられたその呪いを消し去る事は出来ないと言うことだ。

浜面「……なぁ、インデックス」

なら、もうする事は決まっていた。

浜面「さっきも言った事なんだけどよ」

インデックスの為に出来る事は、もう一つしかない。

浜面「……お」

禁書「ごめんなさい」
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 20:22:05.84 ID:nnnK9qcAO
浜面「…………」

言葉を遮ったのは、インデックス。

また顔を伏せ、肩を落としたインデックス。

禁書「少し、時間が欲しいんだよ」

浜面「……そっか」

禁書「…………」

浜面「…………」

少し、外に出てくるよ。そう言って立ち上がる。体に刻みつけられた痛みは気にならなかった。立ってられない程の痛みは、気にならない。

「にゃー」

甘い猫の鳴き声が、どんよりとした雰囲気の中ふわふわと浮き上がり、溶けていく。

禁書「……しあげ、傷は」

浜面「大丈夫」

嘘。また嘘を吐く。そう、と呟いたインデックスの表情はわからない。わかるのは、インデックスに寄り添っている猫だけだ。
浜面「食いもんも無いしさ。ついでに買ってくる」

そう言い残し、寮をでる。ドアを閉じる瞬間、猫の甘い声が聞こえた。それに応じるインデックスの声。

浜面「…………」

ドアを閉じ、壁に体重を預けながら歩きだす。

どこかに行く当てはない。適当にふらついて、帰るだけだ。

あの空間の中でインデックスといる事は、今は避けたかった。

570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 20:22:54.71 ID:nnnK9qcAO

浜面「……今日は徹夜、かな」

体を引きずりながら、自分がインデックスに向かって何を言ったか振り返る。ステイル=マグヌスや神裂火織の本当の目的、必要悪の教会の嘘、喉に刻まれていた紋章に、それの――

浜面「…………」

当然だったが、インデックスはそれらを聞いて酷く狼狽していた。時には呆然とし、肩を落とし、泣きそうになり、唇を噛み締めた。

これを伝えた事は間違っていない、はずだ。

それでもそれは、見るに耐えなかった。

浜面「……ッ」

膝が折れ、そのまま地面に座りこむ。日差しに焼かれたアスファルトは服を越えて浜面の体に直接熱と痛みを与える。

空に浮かんだ飛行船は昨日と変わらず、いつものように情報を発信している。よくよく考えて見れば、あれがなかったら神裂火織には勝てていなかった。そう思うとゾッとする話だ。

飛行船には昨日とはあまり変わらないニュースが写し出されている。相変わらず落雷の影響で更に研究所が閉鎖に追い込まれ、地震は規模を大きくしていっているそうだ。

浜面「……あ」

その中に新しく混じっていたニュースがあった。
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 20:23:40.38 ID:nnnK9qcAO

爆発。

昨日使われていない廃工場が大爆発を引き起こしたと表示されていたその画面には、見たことのないような炎の海が広がっていた。

周囲の建物も吹き飛ばしたが、不思議な事に人的被害は一切なかったと書かれたそれをみて胸を撫でおろす。

監視衛星からの通信施設は落雷の影響で使い物にならず、原因や犯人もわかっていないらしい。

とにかく、誰も巻き込んではいない。

浜面「…………」

神裂火織を除いて。

アスファルトの熱に耐えきれず、立ち上がる。また、当てもなく歩き出す。

思い浮かんだのは、神裂火織。

人を殺した。敵であり、魔術師であり、人間である神裂火織を殺した。

しかし、ステイル=マグヌスの末路を考えた際に感じた、人を殺した罪悪感は、今はない。

多分、置いてきてしまったのだろう、今は劫火に焼かれたあの場所に、神裂火織に宣誓布告したあの時に。

どんな事をしても助けると誓った。何を利用しても、何を犠牲にしても、何を捨てる事になっても。

浜面「……、」

痛みが声になるのを堪え、下唇をギュッと噛む。脚が揺れ、悲鳴をあげる。

572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 20:25:20.38 ID:nnnK9qcAO
思考に耽っている間に結構歩いたらしい、歩道を真っ直ぐに歩くと、昨日寄った携帯ショップがある。新たに新規加入のキャンペーンを始めたらしく、広告のための旗が風に揺れていた。

浜面「…………」

気になったのは、その揺れている、猫のキャラクターが描かれた旗ではなくそれに見え隠れする大型車両。

辺りを見渡す。歩いている時は気付かなかったが、通行人に混じってアンチスキルやジャッジメントの数がやたらと多い。駆動鎧までちらはらと見えた。

理由は……昨日の爆発だろう。被害はないと言っても鎮火作業やら瓦礫の除去など、やる事は山ほどある筈だ。

足を前に進める、携帯ショップを通り過ぎ、突き当たりに止まっている大型車両の横を通り過ぎた。

その時、

「あら」

声が聞こえた。

「そこのあなた、止まりなさい」

その声は女の物だった。インデックスや絹旗のように少女特有の高い声ではなく、冷たい、神裂火織のような落ち着いた声。

振り返る。

「へぇ……てっきり死んだかと思ったのに」

573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 20:26:35.31 ID:nnnK9qcAO
通り過ぎた大型車両、

側面に『MAR』と大きく書かれたその車両から茶色の髪を揺らし降りてきたのは、メガネをかけ紫のスーツに身を包んだ女。

浜面「……テメェは」

その女には見覚えがあった。確か、そう、昨日までアジトだった廃工場に二回程訪ねてきた事があるはずだ。

名前は、木原。



テレスティーナ=木原=ライフライン。



テレスティーナ「もしかしてアナタのボスの大男もまだ生きてるのかしら?」

かつてスキルアウトにキャパシティダウンを持ち込んできた女だった。


574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/27(日) 20:29:35.91 ID:nnnK9qcAO
ここまで、今日明日中に出来たらもう一度投下したい。

それを含めてあと二回で区切りいいところまで終わらせる予定です。
ではでは。
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 20:50:14.84 ID:9OqkJM61o
乙乙

頑張ってくれ いつも楽しみにしてる
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 20:57:00.89 ID:bE6QzVvB0
乙 
>>1は原作一巻以降の話もかくの?

書くのならぜひかいてほしい
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 21:26:05.59 ID:geGDlGBS0
フラグ大盛りな駒場さんが心配だな

駒場浜面半蔵のトリオが好きすぎるのでなんとか生き延びてもらいたい。
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 21:46:32.38 ID:B4qEaQcgo
テレス、キターww
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 01:00:45.22 ID:+JmdBalAO
>>577
世の中には、死亡フラグを立てすぎると、逆に生存フラグになるという法則があってじゃの…
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 02:18:25.13 ID:TZUFaDq90
>>579
いやいや一周まわって死亡フラグ乱立で生まれた生存フラグを裏切る形で死亡
なんてのも結構見る気がするぜ!リーダー頼む!生き延びてくれ

半蔵は半蔵でしれっと終盤まで生き残りつつ
強敵から浜面を守るためとか身内に裏切られてとかであっさり死んじゃいそうで怖い。



581 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 15:51:53.76 ID:G3da+wIM0
いまの所は魔術師とスキルアウトの物語で
初めから主人公に協力している状態だから大丈夫と信じたいな。
初めからいる主人公の親友や悪友が死ぬのは序盤か終盤だからgkbr。

582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/01(火) 22:34:07.35 ID:siR8N0JAO
テレス「てっきりあの工場と一緒に吹き飛んだのかと思ったのだけど」

柔らかそうな表情の中に、確かな悪意を含めたその女はゆっくりと浜面に近寄りそう呟く。

浜面「…………」

テレス「あら、ごめんなさい。私何かいけない事言ったかしら」

浜面「なにか用か」

テレス「ええ、おもちゃを手に入れて調子に乗ってるクズ共がどんな面しているか見ようと思って」

浜面「――ッ」

涼しげな顔でそう言うテレスティーナはどこか見下した視線で言葉を続ける。

テレス「でもあなた達クズ共のお陰でいいデータも取れた訳だし……あら、けどせっかくの置き土産も全部吹っ飛んじゃったのかしら?」

置き土産、キャパシティダウンの事だろう。正確には刻まれたのだが、使い物にならなくなったのには変わりはない。

浜面「…………」

テレス「それにしても不思議ねぇ、どうして誰もあの爆発に巻き込まれなかったのやら」

その言い方は、まるで予定では誰かが巻き込まれているはずだったと言う風に聞こえる。

テレス「私としてもモルモット共が死んでくれたと思ったからしょうがなくこの作業を手伝っているのだけれど」

浜面「――テメェッ!」

583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/01(火) 22:34:40.71 ID:siR8N0JAO
フラつく体で掴みかかろうと手を伸ばし、暗転。背に衝撃が走り、今度こそ傷が開く。

浜面「ごッ……かはぁッ」

目の前にいた女に投げられた事を自覚し、血が広がる怖気に耐える。

テレス「触んじゃねえよゴミが」

明らかに口調が変わったその女は最早外面を取り繕うのは辞めたらしい。生き物以外を見つめるような眼で浜面を見下ろし、次々と侮蔑の言葉を吐いていく。

テレス「テメエら誰のおかげでこの街に住み着いてられると思ってんだよ。あぁ、おい?」

テレス「こちとら誰も得のしねぇテメェらゴミを有効活用してやってんだよ。聞いてんのかコラ」

テレス「ったく、それでいて私達アンチスキルに楯突くつもりでいるっていうんだからよお、本当にムカつくわ」

浜面「……ッ」

言いたい事は粗方吐いたらしいその女は周囲に人が集まってくるのを察し、コホンと咳払いをする。どうやらそれがスイッチのようで、先ほどとは打って変わって柔和な笑みを浮かべた、しかし冷たいままの目線でその女は笑う。

笑いながら、毒を撒き散らす。

584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/01(火) 22:35:37.77 ID:siR8N0JAO
テレス「役に立たない街のゴミ、誰にも必要とされない嫌われ者、それがあなた達スキルアウト」

テレス「私達アンチスキルとしてはゴミは掃除して、嫌われ者は排除しないといけないわね」

テレス「この街の為に」

テレス「ああ、でも私は何もしないわよ。あなた達がどうなろうが知った事ではないし……誰かが代わりにやってくれるわよ」

隊長、と女の後ろから声をかけてきた駆動鎧は多分MARの隊員だろう。会話の内容は倒れ伏す浜面には聞こえない。

テレス「侵入者ぁ!?ちゃんと捕まえたんだろうなおぃぃぃ」

そう叫び途端に女の表情が険しくなる。感情の切り替わりが激しい女だ。

テレス「チッ……落雷の隙をつかれたのかクソが。おい、グリーンマーブルは残って爆発地域の調査と瓦礫除去。イエローマーブルは私と一緒に研究所へ戻れ、被害状況を報告しろ」

既にこちらには興味がないらしいその女は浜面を一瞥する事もなく去っていく。
585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/01(火) 22:36:16.18 ID:siR8N0JAO
熱のこもるアスファルトに倒れる浜面だけがそこに残された。視界に見えるのは空、その夏空はどこか淀んで見える。

淀んだ空から降ってくるのは雨ではなく、言葉だ。

役立たず

誰にも必要とされない

ゴミ、嫌われ物

浜面「…………」

言われ慣れていたはずのその言葉が、何故か重くのしかかかる。

日差しが体を焼く。通り過ぎる通行人達は倒れる浜面を見て手を貸しはしない。手を取ってはくれない。

浜面「……ちくしょう」

通り過ぎる人間は、どいつもこいつも笑って見えた。浜面を一瞥して、ああスキルアウトだ。ゴミが落ちてる。そんな風に笑って見えた。

インデックスの笑顔とは、全然違う。

浜面「……ちくしょう」

586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/01(火) 22:36:44.96 ID:siR8N0JAO
沸いて出て来る言葉に混じるのは、数日前を境にどこかへ消えた浜面仕上。

自分達を馬鹿にし、侮蔑し、軽蔑する。そんな奴らにまるで八つ当たりのように暴力を震っていた浜面仕上。

その浜面仕上は心の底でこう叫ぶ。

『俺は魔術師を倒したんだ、あんな小さな女の子を助けた!!これから助ける!!テメェらに何か出来んのかよ!魔術師なんて倒せんのか?刺されてまで助けようと思うのかよ!?』

確かに、数日前の自分ならそう叫んだだろう。でもそれは、そう叫ぶという事は少女を助けた事に対して優越感に浸り、それを誇示し、どこかで見返りを求める、自慰的なそれだ。

浜面「…………」

まさしくクズだった。あの魔術師達のしている事が何万倍もマシに見えてくるほどの、インデックスをダシに使って自己満足に浸りたいだけの最悪のクズだ。

浜面「ちくしょう」

そんなのはイヤだ。

浜面はそう思う。ステイルや神裂に立ち向かったあの時あの瞬間、少女を助けようと思ったその心に嘘はない。

嘘はない。だからこそ浜面は必死だったのだ。
587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/01(火) 22:37:20.13 ID:siR8N0JAO
薄汚れた自分が少女を助けたいと、どんな事をしてでも守りたいと心から思った。

一瞬を忘れられない少女が向けてくれた笑顔や温もりを、ただあの少女の為だけに守りたい。

そこに打算と見返りが混じったら

それは、浜面が断罪したあの魔術師達と同じだ。

そんなのはイヤだ。

浜面仕上はそう思う。

しかし

浜面「ちくしょう」

様々な言葉が、視線が、感情が降りかかる。

役立たず、街のゴミ、人間のクズ、無能力者、[ピーーー]、消えてしまえ。

そんな悪意と敵意がのしかかかる。

浜面「ちくしょう」

今の浜面はそれに耐え切れそうにない。

588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/01(火) 22:41:40.89 ID:siR8N0JAO




寮へ帰るとインデックスがパソコンに噛みついていた。




589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/01(火) 22:42:31.31 ID:siR8N0JAO
浜面「…………」

浜面「っていや何やってんだテメェェェッ!!!」

パソコンに噛み付く白い修道服姿の女の子の絵というのもなかなか笑えるものだが、シュールだ。なんて感想を口に出す間もなく思いっきり叫んだ。

禁書「むっ、かきこみをした後どこをくりっくしてもこの画面が前のに戻らないんだよ!!」

どうやら前のページに戻りたいらしいんだが、戻り方がわからなかったらしい。それでパソコンに噛み付くか普通。

浜面「たっく……一応精密機械なんだから気をつけやがれ」

と言っても伊達に学園都市製ではない。落雷には負けるがたかが噛み付いた程度じゃ壊れないだろう。

禁書「あぁ、ここをこうすれば良かったんだね」

すっきりしたんだよ。そう呟いて再びパソコンに向かうインデックスは、浜面が外に出る時まで感じていた憂いさを纏っていない。

浜面「…………」
590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/01(火) 22:44:13.80 ID:siR8N0JAO



すっきりしたんだよ。



ポツリと、インデックスが呟いた。

浜面「……え?」

その顔は、やはりフードに隠れてよく見えない。

禁書「スフィンクスに話したらね、すっきりしたんだよ」

「にゃー」

小慣れた手付きでマウスを操作するインデックスの言葉に応えるように猫の鳴き声が聞こえた。

浜面「……そっか」

小さく、先を促すかのようにそう答える。

禁書「ねーしあげ、一昨日私に向かって言った事覚えてるかな?」

一昨日……インデックスと初めて出会った日。そう意識すると、驚くのがまだ顔を合わせてから3日しか経っていないという事実。

浜面「あー……あ、脳内お花畑シスター?」

禁書「ちんちくりんが抜けてるんだよ」

浜面「…………」

一瞬で返された。恐るべし完全記憶能力。

なんだっけ、と思案する様を見てインデックス溜め息をつく。

禁書「正直ね、私もちょっと思ってたんだよ」

浜面「……なにが?」

パソコンと向かいあっていたインデックスが振り返る。フードで隠れていた表情は、本人の言うようにどこかすっきりしたような顔で、

禁書「この服重い」

……かも。暑いし動きにくいし。

すっきりしたような顔で愚痴を吐く。

591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/01(火) 22:46:52.51 ID:siR8N0JAO
浜面「……あぁ、あのロン毛に絡まれた時な」

そういえばコイツの手を引っ張る時にそんな事を言った気がする。

確かにインデックスが纏う修道服はその身体には少しサイズが大きいだろう。絶対防御、その響き的にも通気性は悪そうだ。

禁書「どうせなら制服っていうのが着てみたいんだよ。涼しそうだし」

浜面「…………!」

禁書「あ、でも着るならくーるびゅーてぃのがいいかも。

浜面「……そっか」

浜面「っていや、常盤台は流石に無茶だろ!? あそこの条件ってかなり厳しいぞ」

その言葉を待っていた、と言わんばかりにインデックスが口角を吊り上げ、ふっふっふーんと不敵に笑う。

禁書「しあげはもしかして私をただの馬鹿だと思ってないかな?」

よく分かったな。なんていったら次こそ死にそうなんで黙っておく。

禁書「実はしあげの部屋にある機械の本やら学校の本やらは全て読破して私の頭の中にばっちり入っているんだよ!」

だから今の私はしあげより頭がいいし分からない事なんてないんだからね!

そう言ってインデックスはない胸を突き出して得意気に笑った。どうやら先ほど自分がパソコンに噛み付いていたのは忘却の彼方へ飛んだらしい。笑える冗談だ。

592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/01(火) 22:48:33.86 ID:siR8N0JAO
まぁそうは言ってもコイツならなんだかんだで大丈夫な気がする。勉強に関しては(癪だが)飲み込みは早いし、基のポテンシャルも高そうだ。

浜面「…………ならさ、」

海なんてどうだ?

海?

おう、水着とかな。

…………

何むっとしてんだよ。

……むむっ

あー心配するなってだれもお前の水着姿に見惚れ……おっと、それ以上口を開いて近付くな。

……ふんっ、その傷が治るまでは噛み付くのは遠慮してあげるんだんよ。

ほっ。あー……そうだな、とりあえず怪我治るまでは海は行けないか。なら色々案内してやるよ。

案内?

おー学園都市には色々あるぞ。お前が驚くようなものが沢山な。

へぇ……

なんならここに住むか?お前の……それもなんとかなったらさ、

…………

もう、お前を追っかけてくる魔術師もいないしさ。また来てもなんとかするよ、だからさ――

浜面「――――」

そこまで言って、そこで終わった。
593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/01(火) 22:50:08.33 ID:siR8N0JAO
銀色の髪が揺れた。真っ白なフードに覆われた小さな頭が、ぽふんと浜面の腹に当たる。

傷だらけの身体を気遣うように、そっと腕が回される。




禁書「こわいよ」




そう呟いたインデックスの表情は見えない。

肩を震わすインデックスの表情は、分からない。

禁書「私は、しあげの事忘れたくない」

けど、やっぱりこわいかも。

浜面「…………」

禁書「…………」

594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/01(火) 22:51:07.32 ID:siR8N0JAO
ねぇ、しあげ。

……ん?

思い出、たくさん作れるかな。

……ばーか、作るんだよ。

……ん。

忘れちゃやだよ?

忘れないよ。忘れてても覚えてる。

……それ、忘れてるんだよ。

忘れてない。

……むぅ、じゃあもししあげが忘れちゃったらどこが覚えてるの?

そりゃ……お前。

……?

心に、じゃないのかな?

…………

……なんだよ。

……ぷっ。

お前な……

くすくす。

おい、なんか恥ずかしいだろうが。

ふふっ……

ったく

……私も、覚えてられるかな。

忘れさせない。

……ん。

んでよ、それでさ……

なにかな?

そろそろ離してくれないか?

……ッ

浜面「ば、お前馬鹿ッ、さっき傷治るまで噛まないって言ったばかりだろッ」

禁書「忘れたんだよ」

浜面「嘘つけぇッ!!」

595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/01(火) 22:51:50.55 ID:siR8N0JAO

その日は、ずっと話をしながら夜を明かした。

浜面はパソコンに向かいながら、インデックスはその隣に、猫を抱いてそっと寄り添いながら、笑いあい、不安を紛らわすように、ずっと、ずっと。

この地獄を這い上がった先に待っているのは、安らぎと平穏、二人で笑いあえる日常だと信じて、ずっと。

そうやって1日が終わった。

タイムリミットは残り2日。48時間。
596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/01(火) 22:52:31.93 ID:siR8N0JAO
次の日、二人は街へ繰り出した。




この日が二人にとって最後の思い出作りになった。




597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/01(火) 22:59:25.35 ID:siR8N0JAO
1日遅れたけどやっとここまでこれたあああああああ!!!

いつもレスあざっす!すんげーモチベーション助かってる!!慣れない地の文でここまで続けられてるのも読んでくれる人のおかげだぁぁ

さて、ここまで来ました。
取りあえずこの話は次で一区切りつけます。一気にいきます。
というわけで神裂戦と同じように次は投下するときは前日とその日の朝に予告します。一週間以内には必ず。

勘のいい人は次の展開予想できるかもしれんけど出来れば待っていてくれると嬉しいっす。ではでは!
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 23:10:45.59 ID:GOEzBq9AO
うおおお乙ーーーーーー!!!!!!!
投下に立ち会ったの初めてだ嬉しいぜ!!
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 23:52:41.23 ID:a8wI4OHSO
乙!
仕上とインデックスの交流がすばらしすぎてなんか胸にきた
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 23:53:21.32 ID:yPfYNfd/o
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 02:54:44.00 ID:OvGEdqif0
浜面の抱えるコンプレックスの描写がいい

上条さんのように「レベルなんて関係ない」とは思えず
佐天さんより学園都市の闇に近いところにいる
駒場や半蔵ほどまっすぐにスキルアウトを肯定できない

そんな浜面だから、ヒーローになって欲しい
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/05(土) 02:07:06.71 ID:1Sc3FE1AO
明日(今日)の23時に投下予定。ただ少し予定があって来れるか微妙です。
確定なら22時にレスする。曖昧ですまそん
603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 03:09:22.68 ID:JttJ5FyV0
>>602
超期待
とりあえず第1巻が完結か?
604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/05(土) 11:23:30.71 ID:Q4jY3XOm0
さて、どうやってペンデックスに持ち込むのやら。今の所予想出来んな。
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 12:06:26.20 ID:dqxKjD1Fo
ペンデックスに勝つことよりペンデックスに相手にされるかどうかを
掲載開始時から読者に心配されつづける浜面カワイソス。
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/05(土) 14:18:07.01 ID:lo1YIwxd0
真っ当にいけば初撃で即死するかもしれないからなぁ。
607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 14:40:04.21 ID:Fa8PjHQh0
主人公的にはパワーバランスはじゃんけんだからな

かまちーもあとがきに

上条はアクセラレータに勝つ
アクセラレータは浜面に勝つ
浜面は上条に勝つ(←スキルアウトの時代ではなく滝壺を救おうとする浜面のみだが)

っていってるしなぁ 

アイテムのチームワークとかがなきゃ一人の力はほとんど無力だしな、浜面
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 16:20:40.25 ID:uhPxm+GDO
そういやどっかでスキルアウト時代の浜面は上条さんに心を殴られたって意見を見たけど、なるほどなーと思った
609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 16:24:06.97 ID:Nvnsv5yzo
心殴られたら夢と言う名の幻想が見れなくなりそうだな
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 16:58:28.13 ID:H9cq+T/go
カミやん病の正体見たり
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/05(土) 21:36:23.03 ID:1Sc3FE1AO
ちょっと早いけど多分確定。23時、遅れても23時30分には来れる。一応投下10分前にレスします。
612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:04:55.32 ID:1Sc3FE1AO
おっくれたーすめん。10分後投下。

日常入れてペンデックス行きます。正直神裂編より長いんで途中で大きい休憩一回いれます。投下中のレスは別に気にしない。というわけでまたあとで
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 23:09:54.54 ID:8/3CWNhN0
待ってたぜwktk
614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:13:50.31 ID:1Sc3FE1AO





上条当麻が来ない。





615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:14:37.09 ID:1Sc3FE1AO
朝っぱらからそんな愚痴で始まった吹寄制理の言葉はその後延々と止まる事はなかった。

上条当麻、誰だったか。確かクラスメートの中にそんな名前があった気がする。あまり学校に行くことのない浜面仕上には馴染みのない名前だ。

吹寄「せっかく貴様が学校に来たと思えば上条当麻がサボり。小萌先生が嘆くわね」

そーかい。と適当に返事を返して眠気に捕らわれた瞼を擦る。どうであろうが徹夜明けの自分には関係のない事だ。

浜面「まー……そのうち来るだろ」


616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:15:52.46 ID:1Sc3FE1AO
無能力者絶対参加と銘打った今日の補習は水穂機構病院という研究所も兼ねたその機関が監修、先導しているらしい。

参加者にはチェックを付けるようで補習会場の入り口では白衣を着た研究員(多分学校の先生ではない)がIDを提示した学生の名前を手に持つ名簿と見比べ、適当にチェックを付ける様が伺える。セキュリティーも何もあったもんじゃない。ずいぶんアナログな方法だ。

吹寄「だから落雷の影響でセキュリティーが壊れてるのよ。学校の端末もほぼ使えないわ」

ちなみにちゃんとIDは持って来たんでしょうね。とギラリと睨まれて財布の中に入っているぽかんとした顔写真が写ったIDカードを思い浮かべる。ちゃんと朝入れてきた。

浜面「あー、それでさ。お前補習はもう終わったの?」

吹寄「えぇ、早くに来てさっさとね。あんなのする意味があるのかわからないけど」

浜面「……ふーん」

吹寄「貴様はまだなのかしら?」

受ける気なんてねぇよ。なんて言ったら強制的に引っ張られていきそうなので返事を濁す。今連れて行かれるのは非常にマズい。色々な意味で。

617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:16:20.55 ID:1Sc3FE1AO
浜面「あー……」

あのさ、とそこで言葉が詰まった浜面仕上に、少し不審そうな顔をする吹寄。多分次の言葉を発すると殴られるかもしれない。

浜面「制服貸してくれね?」

吹寄「……は?」

思わず顔が引きつっているあたりかなりの嫌悪感を感じているらしい。少し心が痛いが、多分このままでは犯罪者呼ばわりされて終わりだろう。何か決め手が欲しいところだ、

浜面「いいものやるからさ」

だからここは一つ、自分が残していった置き土産でも使わせて貰おう。

618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:18:38.37 ID:1Sc3FE1AO
浜面「ふぁ〜あ」

眠気が瞼に絡みつく。意識を持って行こうとするそれを浜面は瞼を擦る事で追い払った。

ちょうど真上に昇った太陽は学園都市に夏を感じさせる熱々とした光を照らしている、照らされた頭に熱がこもり、アスファルトからは熱がのぼる。

インデックスのフードのように帽子でも被れば良かったか、と着慣れない学生服に纏い、既に痛みさえ感じなくなってきた身体を動かし、落ち着きなく校門前をぐるぐると回っている浜面の足を止めたのは着信音。

そこには半蔵の2文字が表示されていて、浜面は大して迷いもせずに通話ボタンを押した。

半蔵『おーっす』

浜面「よう、どうした」

半蔵『よーどうしたー?じゃねえって!ニュースみたかよ。アジト。木っ端微塵になっちゃってんだけどさー』

う、と声が漏れる。そういえば半蔵や駒場に何も事情を知らせてなかった。

浜面(流石にアジト爆破したって言ったら怒られるかな……)

半蔵『あーまあいいや、それでさ、前々から練ってた計画あんじゃん?駒場のリーダーと話してさーちょっと早めるかって』

浜面「…………」

前々から練ってた計画、それは能力者に対する報復。虐げられている者を守る為の報復。無能力者からの反逆。

浜面「あー……いいんじゃねえのか。別に」

計画の準備は出来ている。後はタイミングを見計らってスイッチを押すだけだ。
619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:19:43.53 ID:1Sc3FE1AO

そのスイッチを押すのは自身の役目でもある。一度押せば連鎖的に発生する三万件のゴミのような小さな問題が特定の情報回線をパンクさせ、ただでさえ落雷の影響で制限されているジャッジメントやアンチスキルの活動を停止に追い込めるはずだ。

そうなれば、自分達は好きに動ける。後は駒場が指示するターゲットを順次襲って行けばいい。それでこの計画は、完遂。後は――

浜面「…………」

後は――?

半蔵『おーい、浜面ー?』

浜面「あ、おぉ、悪い」

半蔵『まぁ早めるきっかけっていうのも最近……つうかここ2〜3日でスキルアウトが襲撃されるってのが増えててさ』

浜面「……! まさか、アンチスキルとかにかッ?」

言うや否や、はぁ? という声が返ってきた。

半蔵『なーんでアンチスキルが俺らを襲うんだよ。能力者に決まってるだろ』

浜面「…………」
620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:20:35.95 ID:1Sc3FE1AO
昨日散々毒を巻いていったあの女の言葉を思い出す。思わせぶりな事を言っていたのでまさかとは思ったが、どうやら読みはハズれたらしい。

半蔵『じゃ、そういう事で、また連絡するわ』

浜面「おぉ……あー、ちょっと待て半蔵」

半蔵『ん?』

浜面「駒場にさ、荷物はまだ取りにこなくていいって言っといてくれないか?」

半蔵『荷物って……あぁ、あれな。使う機会なんかあんのか?』

浜面「ちょっとな。とにかく頼んだ」

半蔵『おぉー、あ、そうだスマ』

と、そこまで言い掛けた所で電話が切れる。話を終わらした勢いでつい切ってしまったが……急ぎの用でもないだろう。

621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:21:20.95 ID:1Sc3FE1AO
禁書「しあげー」

再び電話をかけるか迷っていた所で最早聞き慣れた声、携帯を閉じ、ポケットに戻す。

走ってきたのだろう、インデックスが息を切らして駆け寄ってきた。揺れる銀髪が日光に照らされて輝きを増す、透き通る宝石を見たような錯覚を覚えた浜面を前に、ふぅーと軽く息を整えて、まったかな?なんて聞いてくるその姿は端からみたらただの学生だ。

そう、ただの学生。

浜面「ん、いんや……どうだった?」

禁書「……うん、ばっちり、なんだよ」

いつも着ている真っ白い修道服ではなく、他人の、だが明らかに女子の制服を纏うインデックスのその姿はどこからどう見ても学生そのものだ。

622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:21:58.72 ID:1Sc3FE1AO
清潔さを感じさせるその白のセーラー服から伸びる日焼けの一切ない腕や脚はガラス細工のように脆いイメージを抱いてしまう。

常に一切の露出がない修道服姿だったからだろう、それがいきなりセーラー服となると、こちらとしてもなんだか緊張する。

浜面「あー……つかやっぱでかかったな。サイズ」

胸の辺り。なんて、口が裂けても言えないが。

禁書「む、そんな事ないんだよ! そのうち丁度よくなるんだから」

浜面「何年先の話だよ」

しかも明後日には返さないとだしな。

むっー、と頬を膨らますインデックスが横に並び、歩き出すのをうずうずと待っている。

浜面「…………」

禁書「どうしたのかな?」

浜面「……いや」

並んでみるとこれまた変だ、今自分は着慣れない学生服、インデックスは他人のとはいえセーラー服。端からみたらどう見えるのやら。あまり知り合いに会いたくない。

木山「やぁ……何をしているんだい?」

と思ったのだが、そう甘くはないらしい。

浜面「あ、え?……えぇ?」

623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:22:34.24 ID:1Sc3FE1AO
けだるそうに後ろから声をかけて来たのは数日前、車を共に探す羽目になった木山春生。以前と同じように着崩したスーツ姿で、額の汗を拭ってる。ただ、そこにそぐわないのは肩にかけたたなびく白衣だ。

木山「やぁ、お嬢さん。2日振りかい?その節はありがとう」

禁書「どういたしましてかも」

また車をなくしたのかな?と、暗にまた頼っていいんだよ、なんて遠回しに言うインデックスに対し、木山春生は柔らかい物腰で笑みを浮かべる。子供に対すると雰囲気が変わるらしい。学校の教師をしていた、というファミレスで聞いた話を思い出す。

浜面「って、あれ?今学校から出てきたのか?」

木山「ん? ああ、仕事でね。一応責任者という立場だからこういう場所にも顔を出さなければいけないのさ……」

出来れば学校なんて場所には来たくないんだがね……という木山春生の言葉に対してなんの事か、という疑問はすぐに解けた。

水穂機構病院、どこか聞き覚えがあると思ったが木山春生に貰った名刺に書かれていた機関の名前だ。

浜面「つー事はあんたらのおかげで俺らは今日補習に来たわけか」

補習は受けてないが、とは口に出さない。

木山「ははは、そう言われると申し訳ないね……」
624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:23:38.08 ID:1Sc3FE1AO
木山「しかし、ここの生徒は優秀だ。名前が書かれた名簿を見る限りサボりが1人しかいない。」

そう言われギクリと肩を揺らす。まるで遠回しに自分の事を言われているようで、思わず目を背けた。

木山春生はそれにはたいして言及しないようで、顎に手を置き何かを考える素振りを見せる。

木山「それにしても、君達が恋人同士だったとはね」

禁書「ふぇっ!?」

浜面「は、はぁぁぁぁッ!?」

おや、違うのかい。とでも言いたげな視線を送る木山春生。その半目の眼を思いっきり開かせてもう一度よく見て貰いたい。

木山「それでなくても、そのお嬢さんがこの学校の生徒だった事に驚いてるよ」

浜面「まぁ、それは否定しないな」

禁書「むっ」

木山「まぁ……この学校にはもっと非常識な教師もいた事だしね。その程度で驚いていては学園都市では過ごしていけないか」

独り言のように呟かれたその言葉に思いあたるのは浜面の担任。吹寄の言う小萌先生。確かにあれは非常識だ。

木山「ああ、私はそろそろ行くよ。先日は本当に助かったよ。ありがとう」

今日は車は近くに停めてあるらしい。
625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:25:03.39 ID:1Sc3FE1AO
浜面「……あー、そういや今日は脱がなかったな。あの人」

禁書「……期待してたのかな?」

まさか、そう呟いて歩きだす。ととと、と着いてくるようにインデックスが横へ並んだ。

やる事も済ましたし、これからどこに行こうか、なんて日常のような話をする分、やはり木山が言ったような関係に見えるのだろうかとふと考える。

浜面(……ただのロリコンだな)

浜面「あー、そうだ。かき氷でも食いにいくか?」

少し傾きかけた太陽から照ってくる日差しが眩しく、そして暑い。こんな時期なら公園にでも屋台があると見込み、提案。隣にいる少女はかき氷なんていう日本文化の食べ物を知っているのだろうか、と不意に沸く疑問。聞いてみると、

禁書「む。しあげって時々ほんとうに私の事バカだと思ってるんじゃないかって思うかも」

と頬を膨らませて言ってくるあたり、どうやら知っているらしい。バカだと思ってるなんていつ口に出したっけと、浜面は考える。

禁書「じゃあしあげはかき氷って名前の由来はしってるのかな?」
626 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:25:41.10 ID:1Sc3FE1AO
拗ねたインデックスの口から逆に浜面に対する疑問が飛び出してくる。考え事を切り替え、かき氷の由来……知るわけがない。比較的どこかで役に立ちそうな無駄な知識ならかなり持ち合わせている方だと自負のある浜面だが、そんな小マメよりも小さくて使い所のない知識は持ち合わせていなかった。

ふふんと少女が得意気な顔になる。

禁書「かき氷って言うのは元々は欠けた氷って書くんだよ。砕いた氷を食べている訳だからね。でも欠き氷じゃ欠陥商品みたいだから、かき氷って名前になったんだよ」

最後に食べた事はないけど。と付け加える辺りどうやら知識一辺倒らしい。情報元は広辞苑辺りだろうか。どうでもいい。

浜面「で、結局食うの?食わねえの?」

禁書「食べる!」

3つ返事で決まり、行き先も決まった事だし、さあ行くか。と目的を持たず動かしていた足を踏み出したその瞬間。

「あ、うわぁっ!」

禁書「きゃうっ!!」

627 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:26:38.85 ID:1Sc3FE1AO
路地裏から飛び出してきた小柄な影、飛び出したそれの勢いは止まる事がなく、インデックスにぶつかる事で勢いを殺した影は反対方向に倒れ込み、

浜面「あっぶないッ!」

インデックスは浜面が肩を支え倒れるのを防ぐ。今のインデックスはただの制服姿、歩く教会は着ていない。絶対防御を剥がさせた手前、怪我をさせる訳にはいかなかった。

禁書「あ、ありがとうかも……」

浜面「おぉ……それで、」

あたたたたた……と尻をさすり倒れているのは頭に花の髪飾りを付けた黒髪の少女、どこかの、浜面には見覚えのない制服を着ている(あったらそれはそれで恐いが)見た目はインデックスと同じくらい……という事は多分中学生くらいだろう。

その少女はハッとした顔でキョロキョロと辺りを見回し、理由は一番身近にいたからだろう、浜面とインデックスに向かって、

「た、たす……助けてくださいッ!」

と、大声でそう言った。


628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:27:41.98 ID:1Sc3FE1AO
禁書「あ、頭が痛いんだよ……」

浜面が座っているベンチの横、丁度中央を陣取ったインデックスからそんな噛み締めるような声が聞こえる。

浜面「かき氷の名前の由来は知っていても食べたらどうなるかは知らなかったみたいだな」

原因はその手に抱えるバケツサイズのかき氷だろう。もともと大食らいなのは知っていたが、現実誰も頼まないようなメニューを即決で頼んでしまう辺り、呆れてしまう。財布とか。

「あ、あの……」

と、小さく呟くのは先ほどインデックスにぶつかってきた少女。その手にもかき氷を持っている。バケツサイズに比べると大した額にもならないのでついでに買ってしまったものだ。

浜面「あー、別に遠慮しなくていいぞ」

顔を後ろに傾かせ少女の顔が見えるようにそう呟く。前屈みになっているとかき氷が邪魔で少女がよく見えなかった。

「なんかすみません……いきなりぶつかった挙げ句、かき氷まで」

禁書「別にいいんだよ。しあげはこんな風に見えてもすっごい優しいからね!遠慮しなくても大丈夫かも!!」

浜面「…………」

優しいと言われて少し嬉しい気持ちも湧かないでもないが同時にすごく失礼な事も言われた気がしてあまり喜べない。どう反応をとっていいかもわからないので、あはは、と苦く笑う少女に話かける。

浜面「えー、と……名前、なにさんだっけ」

「あ、佐天です」



佐天「佐天涙子って言います」



629 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/05(土) 23:29:51.53 ID:1Sc3FE1AO
禁書「しあげはもの覚えが悪いかも。人の名前ぐらい一発で覚えないと」

浜面「お前じゃないんだから……」

完全記憶なんて持っている奴に言われるとなんだか釈然としないが、そこには触れない。便利とは言い難いそれを口で捌けるほど、浜面は語彙が豊富でもなかった。

浜面「あー、それで佐天……さんか。俺は浜面仕上、こっちはインデックスって言うんだ」

一瞬、佐天ちゃんと言うか迷ったがそれは流石にないか、と思い封印。幸いそれには突っ込まず、インデックスという名前に疑問を抱いているらしい。

禁書「よろしくね、るいこ」

佐天「えっと……よろしくお願いします。インデックス、さん?」

インデックスでいいんだよ。と、年齢もわりかし近い二人は馴染むのも早いらしい。インデックスの性格もその要因の一つだろう。

浜面「どうでもいいけど溶けてるぞ、かき氷」

禁書「はっ!!」

浜面「あ、あ、ばかっ!そんな勢いよく食べると……」

禁書「〜〜〜〜ッ!!」

浜面「あーあ、言わんこっちゃない」

そんなやりとりを見てくすくす、と少女が笑う。

佐天「仲いいんですね。お二人共」

木山春生から見たら恋人に見えたらしいが、この少女から見たらどう見えるのだろう、とふと浮かぶ疑問。地雷にしかなりそうにない。

浜面「で、なんであんな急いでたんだ」

口に出した疑問はもっと根本的な所、邂逅した理由。
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:31:24.01 ID:1Sc3FE1AO

佐天「……えっと」

つらつらと、少女が経緯を語りだす。

浜面「…………」

正直に言って、浜面仕上にはこの少女を助ける義理は欠片もない。普段の浜面、言ってしまえば今日だってインデックスが隣にいなければさっさと放ってどこかへ行っていただろう。

いや、インデックスがいても、かもしれない。

現に少女がここにいるのはインデックスが半ば無理やり引っ張ってきたというのもある。

浜面(優しい……か)

インデックスが言ったその言葉は間違っていると、浜面はそう思う。

浜面仕上の優しさ。そう呼べるモノに触れたのは、多分インデックスだけだ。

そして、これから先、それがあるのならば、それに触れられるのも、多分インデックスだけだ。

少女の為にない勇気を出した。

能力なんてなくても、人を救えると知った。

クズな自分は変われた。

浜面(…………)


……本当に?


631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:32:12.30 ID:1Sc3FE1AO

浜面(…………)

少女の為以外に勇気は出せるか?

浜面(……出せない)

能力なんてなくても人を救えると思うか?

浜面(……わからない)

本当に自分は変わったのか?

浜面(……変わったさ)

本当に?

浜面(…………)

禁書「……しあげ?」

浜面「ッ!!」

佐天「あの……大丈夫ですか?」

気付くと少女達が浜面を見つめていた。インデックスの抱えていたバケツサイズのかき氷は既に空になっている。

浜面「あ、あぁ……わりぃ、暑さで意識飛んでた」

えっと……と呟く浜面に対して、しょうがないなぁ。と言う風にインデックスがこほんと咳払いをする。

禁書「えっと、るいこが補習から帰ってたら友達がスキルアウトって言うのに絡まれてたんだって」
632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:33:26.90 ID:1Sc3FE1AO

浜面「……へぇ、そりゃあ」

大変だったな。なんて白々しい言葉が出てくる。

禁書「それでその友達を助けようとしたら路地裏に連れ込まれて、襲われそうになった所をつんつんのウニ頭の人が助けてくれ……しあげ?どうしたのかな?」

浜面「……いや、なんでも、ねぇ」

佐天「え、と……でも数が多くて追いかけられてずっと逃げてたんですよ」

いつの間にか撒いてたみたいですけど……という佐天の呟きは浜面の頭の中には入らない。

浜面「…………」

今自分はどんな顔をしているのだろう。

禁書「でもるいこが無事でよかったんだよ、怪我はないのかな?」

佐天「うん、大丈夫。あはは、でも似合わない事するもんじゃないよね」

私みたいな無能力者がさ。

浜面「…………」

どこかで聞いた事のある言葉が聞こえたきがした。

禁書「……? るいこはレベル0なのかな?」
633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:35:13.90 ID:1Sc3FE1AO
真正面からそう聞かれ、少女の顔が少し曇る。笑顔が自虐的なものに変わった瞬間を浜面は見た気がした。

佐天「ずいぶん直球だねーインデックス……うん、そ。レベル0の無能力者」

せめてレベル3くらいならスキルアウトになんて追われなくて済むのになー、なんて笑う少女はインデックスを見ていない、自分の足元をじっと見て顔を伏せている。表情はわからない。

佐天「うーん、私……才能とかそういうのないんだよね、きっと」

佐天「超能力に憧れてこの街に来たのにさー、始めて脳開発してから1日〜2日で結果が出るって言われて、3日後のシステムスキャンであなたには能力なんてないですよーって言われて」

佐天「無能力者のレッテル貼られて比べられて、お前には価値なんてないんだぞーって言われてるみたいでさ」

嫌になっちゃう。

浜面「…………」

この学園都市に住む人間は能力というモノを一つのアイデンティティとして、そしてコンプレックスとして捉えている節がある。そして少女も、自分も後者であった。

禁書「うーん……」

そして、この街のそういう実態を知らない少女は無邪気に言う。

禁書「そうなのかな?」
634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:36:28.43 ID:1Sc3FE1AO
佐天「……え?」

禁書「私はこの街に来てまだ日は全然経ってないから、るいこがどうしてそんなに悩んでるのかはわかんない、けど思うんだよ」

超能力がなくたって関係ない。

禁書「だってそんなのなくてもしあげは私を助けてくれたよ?何の能力も持たないのに私の為に命がけで魔術師から守ってくれた」

佐天「まじゅつ……?」

禁書「るいこだって、友達を助ける為に一人で『悪い人達』に向かって行ったでしょ?」

浜面「…………」

禁書「本当に価値のない人っていうのはそんな事、絶対にしないんだよ。誰かの為に何か出来るるいこは決して価値のない人間なんかじゃないかも」

にっこり笑ってそう締めたインデックスの言葉、その笑顔を向けられた佐天の顔には戸惑い。

浜面「なぁインデックス……」

禁書「え?」

インデックスの言葉は正しい。どこからどこまでも正しいモノだ。それ故に究極に間違っている。

ここは能力で優劣を付ける街だ。それは学園都市に数える程しかいないレベル5の序列でさえ変わらない。

学園都市という能力の研究をする街にとって無能力者というレッテルを貼られた人間は文字通り無価値なのだ。
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:37:46.72 ID:1Sc3FE1AO
浜面「ゴミ、捨ててこいよ。ゴミ箱向こうにあったから」

禁書「……わかったかも?」

ベンチから立ちバケツを抱え小走りに駆けていく。そんなインデックスの背中を見つめながらふと呟く。

浜面「ごめんな……悪気はないんだ。あんま気にしないでくれ」

佐天「いや……あはは、ごめんなさい。制服着てるって事はお二人共……その、私気付かなくて」

浜面「いや、いいんだよ……俺はサボったから」

ははは、と乾いた笑い、そして沈黙。何を話していいかわからない、そんな所だろうか。

そんな沈黙を埋めたのは少女の独白。

佐天「私……やっぱり価値ないみたいです」

浜面「…………」

佐天「あの子は私の事、誰かの為に何か出来る人間って言ったんですけど……私本当は助けた人の事なんてどうでもよかったんですよね」

浜面「…………」

佐天「何も出来ない自分が嫌で、誰かを助けたって事実で自分を慰められる事ができればー……なんて思ったり」

浜面「…………」

佐天「……あはは、すいません。初対面の人に何言ってるんだろ、私」

浜面「いや……」

佐天「…………」

言葉の続きは出てこない。

インデックスの言葉が蘇る。

しあげは私を助けてくれたよ?何の能力も持たないのに『私の為』に命がけで魔術師から守ってくれた

浜面「…………」



本当に?



636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:39:04.97 ID:1Sc3FE1AO
浜面「…………」

「佐天さん!」

と、隣にいる少女を呼ぶ声が響いたのはそんな時だった。インデックスが駆けていった方から別の少女が駆けてくる。佐天とは同年代、頭に大きな花飾りをつけている。

佐天「初春……」

そうよばれた少女は佐天の元へ着くなり、息を切らしてへたぁと座り込む。よほど急いでたらしい、汗を流しながら肩を上下させ、途切れ途切れに言葉を発する。

初春「ぜぇ……も、もう……さ、ぜぇ、佐天さんがスキルアウトに襲われたって……ぜぇ、連絡入った時は驚きましたよ〜」

佐天「あはは、ごめんごめん。はいかき氷食べなー」

初春「ひゃあっ! ちょ、そこおでこです。口じゃありません〜!!」

途端に先程までの重苦しい空気が変わる、何故か自分が酷く場違いな気がして仕方なかった。言葉にすると居辛い。

初春「あ、えっと……佐天さん、そちらの方は?」
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:40:21.57 ID:1Sc3FE1AO
佐天の横に座る不良みたいな学生に気付いた少女が、少し読み取れる程度の警戒心を出して問いかける。インデックスが居たことでなんとかなっていたが、浜面の第一印象はそれほどよくない、端からみたらスキルアウトそのものだ。

佐天「あ、駄目だよ初春そんな態度とっちゃ、私の事助けてくれたんだから」

これも奢ってくれたんだよーとほとんど溶けかけのかき氷を少女に見せ付ける。

浜面「……いや、俺は何もしてねぇよ」

そう言って立ち上がる。この場を去る必要性はあまりないのだが、少女の腕に通されている緑の腕章、それはこの街の治安を維持する為の風紀委員の証、スキルアウトである浜面仕上にとっては警備員の次に天敵と言える存在だ。

それに、

禁書「あれ、1人増えてるんだよ」

考えてみると時間も余りない。

なんか変わった花飾りがいるかも……と少女の頭に興味津々なインデックスに行くぞ、と声をかけ、その場を離れる。

後ろからまたねーと挨拶を交わすインデックスと佐天涙子の声。

また、なんてあるのだろうか。
638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:41:53.71 ID:1Sc3FE1AO
浜面「…………」

後ろを付いてくるインデックスに変わった様子はない。

このまま何も起きなければ、

浜面「…………」

何も起きなければ――

浜面「なぁ、インデックス」

禁書「なぁに?」

浜面「かき氷、どうだった?」

禁書「おいしかったんだよ!……けどまだ頭が痛いかも」

浜面「バケツごと食うからだよ」

禁書「あ、でも新しい友達が出来たのは嬉しかったんだよ」

くーるびゅーてぃは相変わらず私のスフィンクスの事を認めないけどね。っと歯を噛み締めて唸るインデックス。何度も言うようだが飼い主は自分だ。

新しい友達、佐天涙子の事だろう。

そうは言っても向こうはインデックスの事をどう思っているのやら。インデックスの言葉は、多分少女に傷を付けて、何かを自覚させた。

浜面「…………」

インデックスは、この街の事を知らない。知らなさすぎる。本来教える事のできる立場にいた浜面仕上は、ほんの少しだけそれを後悔した。

もうどうにもならない事だが、後悔せざるを得ない。

もしかして自分は、少女にとんでもない事をしでかしてしまったのかもしれないのだから。
639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:42:19.73 ID:1Sc3FE1AO





浜面「……行くか」

禁書「うんっ!」





640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:43:46.94 ID:1Sc3FE1AO




その日の夜。インデックスが倒れた。



浜面仕上には何も出来ない。祈る事しかできない。



倒れ伏すインデックスの命が尽きるまで、もう24時間もなかった。




641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:47:03.29 ID:1Sc3FE1AO



「おや……超浜面じゃないですか」



その日の夕方、スーパーで買い物をしている最中、後ろから声をかけてきたのは絹旗最愛だった。

その立ち振る舞いには以前会った時のような活発さはなく、表情には疲れが見える、

浜面「ああ、お前か……」

ただ、それは今の自分に言えた事では無いが。

絹旗「ちょうどいいです浜面。そこの鯖缶とってください」

背が届かないらしい、軽く腕を持ち上げ、絹旗が指を指し示す缶詰めをいくつか取ってカゴにいれる。

浜面「……ん」

絹旗「どうも」

浜面「…………」

絹旗「…………」

会話が続かず、沈黙を保ちながら横並びに歩く。どうやら回る食品コーナーも同じで、疲れているのも同じらしい。

浜面「どうしたんだよ……元気ないな」

642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:49:06.19 ID:1Sc3FE1AO
絹旗「最近、いえこの後もですが、仕事……バイトが超立て込んでまして。車も壊れて雑用係も死……いないんで私がこうやって買い出しに来てるんですよ」

へぇ、なんてまるで興味がないような返事にも応対する気力がないらしい、絹旗は適当にそこら辺の弁当、主に鮭が入った物を次々とカゴに入れていく。

そういえば、と呟いたのは絹旗。

絹旗「携帯、どうでしたか」

浜面「あぁ……あれな。買ったその日に吹き飛んだ」

へぇ、なんてまるで興味がないような返事が返ってくる。追求されると思ったがどうでもいいらしい。

絹旗「私も、浜面に電話かけたその日に携帯が超吹き飛んでしまいました……」

また買いにいきますか。との誘いをおぉ、と適当に返しておく。今やどんなバイトなのか、常盤台の学校はバイト禁止だろとかなんて突っ込みをいれる気力もない。

全てがどうでも良かった。

643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:50:29.34 ID:1Sc3FE1AO

今、ここで絹旗と会話している間にも家には死にかけのインデックスが横たわっている。

なのに自分は何をしているんだろう。

なんで何も出来ないんだろう。

浜面「…………」

既に何百何千と繰り返しした思考の渦に飲まれそうになる。

掬ったのは、絹旗。

絹旗「そういえば、電話でも言いましたが、超言い損ねた事がありました」

今言って大丈夫ですか?と、一応は気遣ってくれたのだろう。無言で先を促す。

絹旗「……友人に聞いたんですが、」

644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:51:35.92 ID:1Sc3FE1AO







絹旗「常盤台の超電磁砲に妹はいません」






645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:52:57.07 ID:1Sc3FE1AO

浜面「――――」

浜面「……へぇ」

友人なんていたんだな、なんて言う前にそんな言葉が出た。

絹旗いわく、御坂美琴のルームメイト伝に聞いたらしい。

絹旗「そもそも、学園都市にも数える程しかいない、38万分の1の超天才ですよ。その超能力者の妹なら有名人確定です」



浜面、一体だれと連んでるんですか?



そんなB級ホラーの核心シーンの様な台詞を吐き出すこの少女はきっと映画の見過ぎだろう。そんなのは自分が聞きたいくらいだ。

よく考えてみれば、自分はあの少女の名前さえ知らない。ミサカ、御坂、みさか、

浜面「……幽霊だったりしてな」

非現実的ですね、と呟く絹旗に知らねーよ、と小さく返す。

魔術があるんだ。幽霊だっているだろう。
どうでもよかった。



早く帰ろう。



646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:57:30.93 ID:1Sc3FE1AO
部屋に入って目についた物は数日前に吹寄が置いていった魔法の鉄塊。変な電波が出している(らしい)括弧と笑いを常につけていたいその通販商品は、傷を癒やす効果があるらしい。

片付けたはずの机の上にはカード類が散らばっていて、部屋の一角を大きいな機器が占有していた。

以前自分が寝ていたベッドには今はインデックスが苦しげに眠っている。そのそばには以前工場から突き落としたはずのステイル=マグヌス。

そして、

神裂「……結局、何も出来なかったようですね」

殺したはずの神裂火織までもが、インデックスのそばに寄り添うかのように立っていた。

647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/05(土) 23:58:47.68 ID:1Sc3FE1AO
ドサッと、足下で音が聞こえた。自分の持っていた買い物袋だと気付くまで、ほんの数秒。目の前の光景が理解できない。

浜面「テ、メェ……ら」

神裂「そろそろ、時間ですよ」

顔を伏せ、そう呟く、よく見れば傷だらけの神裂の視線の先にあるのはインデックスだ。いつも通り、歩く教会を身に纏い、だが、そのインデックスはいつもの様子とは違う。

顔は苦痛に歪み、息は荒い。その下がらない高熱はインデックスの体を着々と壊していた。

神裂「私達の監視から完璧に逃れていた一日で決心はつきましたか?」

その言葉に黒衣のステイル=マグヌスが小さく舌打ちをする。その頬には絆創膏、多分かなりの傷があるのだろう、動きが鈍い。

傷が酷く2日は安静、そう言っていた神裂火織の言葉を思いだす。昨日の丸一日と一切邪魔が入らなかったのはそこの赤毛と自身の治療。そう言う訳か。

648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:00:08.09 ID:AKpqOuKAO
ステイルが何かを取り出す。インデックスに翳したそれは十字架。何の為に使う物かは想像は付いた。

浜面「ちょ……ちょっと待てよ!」

待ってくれ、まだそいつの記憶を消さないでくれ。

浜面「……ッ」

その言葉が出ない。今にも止まってしまいそうな程浅い息を繰り返し、苦しそうに呻くインデックスをそばに、そんな言葉が出てくれない。

神裂「正直に言って、」

神裂が顔を上げる。

神裂「アナタなら本当になんとかしてしまいそうだと、そんな幻想を抱いていました」

私達の気持ちが、わかりましたか?

浜面「――――ッ!!」

拳を握り、神裂火織の元へ詰め寄る。その白いシャツの襟元を掴み上げて勢いよく壁に押し付けた。

浜面「ふざけろよ……テメェの無能を棚にあげて好き勝手言いやがって」

神裂「…………」

神裂火織は何も言わない、ただ、まっすぐに浜面を見つめ、その目は諦めろと言っているようで、

浜面「〜〜ッ!!」

手を、離す。
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:01:09.56 ID:AKpqOuKAO
ステイル「…………」

神裂「…………」

浜面「…………」

誰も、一言も発する事のない、そこは奇妙な空間と化していた。聞こえてくるのは命の尽きかけたインデックスのか細い呼吸に、寄り添う猫の鳴き声。

足の力が入らず、敗北したかのように崩れ落ちる。そんな浜面に魔術師達は何も言わない。ただ、待っている。

インデックスの記憶を消し去る、その瞬間を。見計らい、じっと待つ。

数分経ったか、数十分経ったか、それとも何時間も経ったのかはわからない。

「なぁ……」

呟いたのは、浜面仕上。

浜面「もう出来る事はないのかよ」

誰に言うでもない、その呟きに答えたのは、

ステイル「この子の完全記憶能力をなんとか出来るなら遠の昔にやっているさ、君に出会う、僕達が3人一緒だったずっと前からね」

ステイル=マグヌス。その魔術師がまるで懐かしむようにインデックスの髪に触れる。愛おしむように、慈しむように。

浜面「……はっ」

思わず、笑いが込み上げる。その縋るような行為に、何も知らないコイツらに。

浜面「お前ら……まだ気付いてないのか」
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:02:07.14 ID:AKpqOuKAO
魔術師が殺気を発し、4つの目玉がギロリと浜面の背を捉えた。

神裂が先を促すかのように視線を向けた。流石にここまで馬鹿だと乾いた笑いが止まらない

浜面「……記憶のしすぎで人が死ぬと本気で思ってんのかよ。お前ら、騙されてたんだよ、教会に」

ソイツの喉にな、仕掛けられてるんだよ。爆弾が。

目を見開く様を見るに一応は驚きを隠せないらしい、魔術師達が素早く目配せし、ステイルがインデックスの喉に触れる。

まるで宝石にでも触るように丁寧に、精密作業をするかのようにインデックスに触れ、口腔内を観察、結果はすぐに現れた。

ステイル「……そん、な」

神裂「ステイル……?」

ステイル「…………」

言葉も出ない魔術師に対し、問いかける。

浜面「もう一度聞くけどさ」

出来る事はないのか、お前ら魔術師に。

ステイル「…………」

神裂「…………」

答えは、すぐに返ってきた。

浜面「そうかよ」

651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:03:17.59 ID:AKpqOuKAO
ステイル「ふ、ふふ……あの女狐のしそうな事だ。まさか、僕達に嘘をついて、何年も何年も」

くっくっくっ、とまるで自虐的に笑うステイル=マグヌスの目は焦点が合ってない。それ程衝撃的で、それ程絶望的な現実だったらしい。

浜面「…………」

結局、コイツらでさえ何も出来ない。

浜面「…………」

インデックスを救えない。

なら、

神裂「――少年」

浜面「なんだよ」

神裂「……原因が何であれ、もう私達にはどうする事も出来ません。あの子の記憶は私達が消して、私達が殺します」

浜面「……テメェはそれ以外になんか言う事ないのか」

神裂「強いて言うなら、……そうですね」

ありがとうございました。

あの子を助けようとしてくれて

あの子の鎖として役にたってくれて

私達にたった一筋の可能性を教えてくれて

ありがとう。

652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:03:46.85 ID:AKpqOuKAO
ステイル「――神裂ッ!」

その言葉にステイル=マグヌスが声を荒げる。ふざけるな、とでも言う風に。

浜面「……ふざけるな」

こっちの台詞だ。

言うにもかいてありがとう、感謝、コイツは馬鹿にしてるのか。

どいつもこいつも見下してやがる。やはりこんな奴には何も出来ない、女の子1人救う事も出来ないと。

こんな奴らに。


ちくしょう。

浜面「…………」

でも実際、どうだ?助ける事は出来たか?

ステイル「……時間だ」

そう呟いて黒衣の魔術師が立ち上がる。顔付きは浜面と初めて相対した時のモノと同じ、人殺しの顔にかわっていた。

653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:04:57.02 ID:AKpqOuKAO
浜面「――――ッ」

現実、浜面にも策はあった。少ない知識の中で、限定された条件の中で、インデックスを救う事ができる、考え得る中でたった一つの策があったのだ。

そして浜面は既にその策を実行に移していた。

その策に対する『保険』まで用意していた。

神裂「最後に、彼女に伝える事はありますか」

浜面「……ッ」

結果がこれだ。

敗因は、たった一つ。

浜面「なぁ……魔術師、」

その策が芽吹くには、圧倒的に時間が足りなかった事。

圧倒的に、時間と、運が足りなかった。

またもや、賭けだったのだ。既に魔術師に頼るという退路を自ら絶っていた浜面仕上には、無能力者の自分がインデックスを救うにはこの方法しかなかった。

浜面「俺に……出来る事は」

その決断を自分に、インデックスに迫るのに、どれだけ覚悟がいった事だろう。そんなのはわからない。浜面は自身を乗り越えて全てを受け入れなければならなかったし、インデックスには全てを捨てさせる事になった。

神裂「ありません。別れを惜しむだけです」

浜面「…………」

ゆっくりと、立ち上がる。さながら幽鬼のように、一歩、また一歩、インデックスのそばに近付いた。

654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:05:45.95 ID:AKpqOuKAO
今の自分はひどい顔をしているだろう。しかし今自分が覗き込んでいる少女はそれ以上に酷い。悲劇に苦痛、死の恐怖、それを一身に受けたその表情は、彼女には一番似合わない。少女の笑顔を知ってる人間ならそう思うだろ。

禁書「しあ……げ」

消え失せそうな声が聞こえた。

浜面「喋んな……インデックス」

青ざめて震える唇を必死に動かし、言葉を紡ぐ……インデックスに、浜面は何も言えない。

何て言えばいいんだ。

禁書「手……にぎ、て」

残っていない体力を振り絞って持ち上げられた手を強く握りしめる。それはまるで氷の様に冷たくて、

浜面「は、はは……インデックス。かき氷でも食べたのかよ……すっげぇ、冷たい」

禁書「……え、へへ」

思えばあれが兆候、あの頭痛が兆候だったのだろう。それに気付いていたとしても、何も出来なかったとは思う。

しかし気づけなかった事に凄まじい自責の念が生じた。

ちくしょう

禁書「しあ、げ……」

ごめんね。

浜面「…………」

浜面「……なんで、お前があやまるんだよ」

ごめん。背負わせちゃうね。

浜面「…………あ」

ごめん、ね。

浜面「……は、はは」

655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:07:01.55 ID:AKpqOuKAO

ちくしょう。

そんな言葉が、心を埋める。

ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうう

自分にもっと力さえあれば、神様のシステムさえ打ち消せる特別な何かがあればこんな事にはならなかったのに。

無能力でも誰かを救える?

救えてないじゃないか。

たった1人の女の子すら助けられず手を握っている事しか出来ない。

何も変わってないじゃないか。

インデックスに出会う前と、何も。

ちくしょう。

浜面「あ、ああ……」

声が震える。

浜面「ああああああああああああああああああああああッ!!!!」

握る手に力を込めた。ぎゅっと、思いっきり。ここにいると言わんばかりに。

応えるように、小さく指が動いた。

656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 00:07:42.38 ID:4fPAykQIo
本当の無能力者の苦悩・・・
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:08:36.69 ID:AKpqOuKAO
浜面「ッ……ちくしょうッ!! 何でだ! なんで俺はいつもいつも、やっと誰かを、お前を助けられると思ったのにッ!!」

神裂「…………」

ステイル「…………」

叫ぶ。インデックスの手を握りしめながら、心の底から。

浜面「起きろよ幸運!! 手柄ならくれてやる!やっとこんなチャンスが来たんだッ!! クズみたいな俺じゃなくて、俺自身が助けられるチャンスが来たんじゃねぇか!!!」

助けるって誓ったのに。

どんな事をしても、

例え――――

浜面「頼むよ……」

神様なんて信じない。けど願わずにはいられなかった。この小さな手を離したくなかった。

奇跡というものを信じたかった。

浜面「…………」

何も起きない。この現実は優しくない。

都合よく『能力が発現』したりしないし、自分に力が宿る訳でもない。

658 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/06(日) 00:11:18.19 ID:AKpqOuKAO
浜面「……け、から」

祈るようにインデックスの手を握り、口から出たのはそんな言葉。

浜面「助けてやるから」

絶対に、何をしてでも。何を捨ててでも、何を拾おうが、誰を犠牲にしようが、誰を利用しようが、きっと、

浜面「きっとお前を助けるから」

死の運命からも、10万3000冊なんて魔導書も、何もかも、全部、一つ残らずぶっ潰して救ってみせる。

浜面「だから――」

だから、

浜面「……なぁ、インデックス」

流れていたのは、血か、涙か。

蒼白になったインデックスの頬に水滴が落ちた。

浜面仕上は強くない。偽善を振りかざせるほど、浜面仕上は強くない。

禁書「……め」

聞き取れない程の小さな声で、死の間際に、呟いたインデックス言葉は

659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:12:26.42 ID:AKpqOuKAO


だめだよ、しあげ。

しあげは私が守るんだから、

無理しちゃやだやよ



けど、



660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 00:13:04.54 ID:AKpqOuKAO






「まってるね」






661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 00:13:34.66 ID:AKpqOuKAO
浜面「――――」

そんな最後の言葉が聞こえて、インデックスの腕がパタリと、力なく落ちた。

浜面の握りしめる手をするりと抜けて、事切れたように、落ちた

浜面「……イン、デックス?」

返事はない。

浜面「え……?」

いつの間にか汗が引いている。表情も安らかで呼吸も、

浜面「…………」

呼吸を、していない。

背後にいた神裂火織やステイル=マグヌスが予想外の出来事に息を飲む様子が手に取るようにわかった。

もう一度呼ぶ。

返事は、ない。

浜面「インデックス?」

662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:14:08.37 ID:AKpqOuKAO






インデックス?






663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:15:29.62 ID:AKpqOuKAO



呼ばれた名前に呼応するかのようにインデックスの体がピクリと動いた。



寄り添っていた猫が、何かを察知したのか素早く逃げる


ゆっくりと、目が開かれる。




浜面「――――え?」


瞳が、浜面を捉えた。


宝石のような碧眼だったハズのその瞳はあかく赤く紅く朱く、どこまでも深い血の色に塗りつぶされていた。


664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:17:08.27 ID:AKpqOuKAO
空気を裂く音が聞こえた。

浜面「ッ……!!?」

何が起こったのか分からなかった。分かったのは、衝撃。とてつもない力に吹き飛ばされた。吹き飛ばされた?

背に壁が激突し、肺の中の息が無理矢理に逃げていく。

なんだこれは、という炎の魔術師の声が聞こえた。

浜面「――――ッ」

顔をあげる。

そこに存在していたのはインデックスだ。いんでっくす、インデックス、禁書目録――

いや、違う。

その瞳は目ではなく眼ではない。紅に塗りつぶされたその大きな瞳には魔法陣のようなものが浮かび上がり、それは人間のものではない。インデックスの瞳ではない。

どこまでも無表情なそれはインデックスじゃない。

「――警告、」

それは、インデックスだった何かが、インデックスの声で機械的に紡ぐ言葉。

665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:17:51.84 ID:AKpqOuKAO





「第三章第二節。Index-Librorum-Prohibitorum――禁書目録の『首輪』、第一から第三まで全結界の『停止』を確認」




「原因を逆算……成功。動作に必要な魔力の『遮断』を確認。魔力生成……可能。生成準備……停止。禁書目録の生命力を著しく消費してしまう危険性があるため生成は不可能と判断」




「禁書目録の安全を最優先し『首輪』の全活動を停止します」



666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:18:44.28 ID:AKpqOuKAO
瞬間。インデックスだったそいつを中心にまたもや竜巻のような烈風が吹き荒れた。

それはステイル=マグヌスの、神裂火織の、浜面仕上の体を持ち上げ、吹き飛ばす。
ステイルはガラス戸を突き破りベランダに、浜面仕上は部屋の一角を占有する大きなオーディオ器機に吹き飛ばされ、神裂火織は持ち合わせる力の全てを用いてそこに踏みとどまる。

神裂「くッ……!?」

意味が分からなかった。

神裂には目の前の光景が理解出来なかった。

インデックスが魔力を開放し、そして魔術を行使している。

『そこ』じゃない

インデックスに魔力は元々あった。教会はインデックスの魔力を引き出して首輪を仕掛けていたのだ。だから、インデックスが魔術を使おうがどこにも矛盾はない。矛盾はもっと根本的な所だ。

なぜ首輪が『停止』したのか。

自分達は何もしてな、いむしろ何も出来なかった。だから少女の記憶を殺しつくそうとしたのだ。

魔術側は首輪に『干渉』していない。

なら、あの少年?

浜面仕上は無能力者だ。先程まで己の無力を嘆いていた。あの少年にも、『今更』何も出来ない。

なら、誰が――――――?

『何』が首輪に干渉したのか――――――――


667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:19:23.29 ID:AKpqOuKAO






神裂火織は知り得ない。






668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 00:19:25.81 ID:4fPAykQIo
おお!?
669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:19:49.14 ID:AKpqOuKAO


学園都市が誇る38万分の1の天才。

超能力者、レベル5。

そう、『38万分の1』の天才。


670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:20:18.77 ID:AKpqOuKAO






学園都市に数える程しかいないたった『6人』の超能力者。





671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 00:21:06.26 ID:SVwrU1qD0
このタイミングであいつが来るのか
672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:21:25.35 ID:AKpqOuKAO
その双璧に叩き潰された魔術師達は、決定的な事を知り得なかった。

それは、空白の1日。

自分達が動けなかった、昨日。

今から全てを遡る。

673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 00:21:57.17 ID:AKpqOuKAO


神裂火織は知らない。

インデックスに佐天涙子という友人が出来た事を

674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 00:22:00.52 ID:4fPAykQIo
おおおお
675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 00:22:16.64 ID:AKpqOuKAO

神裂火織は知らない。

インデックスがバケツサイズのかき氷を食べていた事を

676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 00:22:43.28 ID:AKpqOuKAO
神裂火織は知らない。

インデックスが路地裏で佐天涙子とぶつかりこけそうになった事を

677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 00:23:13.73 ID:AKpqOuKAO
神裂火織は知らない。

インデックスがその日歩く教会ではなく『とある高校』の制服に身を包んでいたことを

678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 00:24:02.99 ID:AKpqOuKAO
神裂火織は知らない。




落雷の影響で、とある高校のセキュリティーが非常に脆くなっていた事を。

その日、とある高校で全学区で行われている無能力者対象の『脳開発』補習があった事を

その補習に『浜面仕上がでていない』事を
その補習で『1人だけ欠席』した人物がいた事を


679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 00:24:21.89 ID:aoP1Wt3IO
え、え?佐天さんって、え?
680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:24:35.35 ID:AKpqOuKAO




神裂火織も、それはこの場にいる誰も知らい。




その欠席者は『上条当麻』という、この悲劇と喜劇が入り乱れた物語には、どこまでも関わりのもたない少年だという事を。




681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:25:42.23 ID:AKpqOuKAO
風にとばされて。神裂火織の足元に一枚のIDが吹き飛ばされてきた。『見覚えのある顔』に気付き、ふと目をやる。

そこには浜面仕上と書かれており、ぽかんとした顔写真が写っている。

神裂「……は?」

徹夜で作られたその『偽造ID』には『ぽかんとしたインデックスの顔写真』が写っていた。

神裂「―――――」


まさか、


まさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさか


682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:26:57.50 ID:AKpqOuKAO

思考が駆ける。

神裂火織は、まだ知らない。

浜面仕上に『魔術の知識』があった事を。
それは世界を歪める黄金練成であり、世界を壊す御使堕しであり、世界を滅ぼす天体制御であり、

それは物理、魔術、超能力ですら触れた途端に吸収して無効化してしまう歩く教会であり、世界に20人もいない聖人を一撃で殺す事の出来る霊装であり

『対象の魔力を糧にして』

条件付け束縛という呪いのよう事ができる霊装であり、


声が、震える。

神裂「あ、あぁ……」
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:27:50.63 ID:AKpqOuKAO

神裂火織は気付いてしまった。

あの瞬間、工場の外で少年を追いつめていたあのときに、自分が何を言ってしまったのか

『何を言ってしまったのか』


684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/06(日) 00:27:52.34 ID:HdK5bSrAO
まさか…!
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:28:19.29 ID:AKpqOuKAO





―――そして能力の有無に関わらず、脳を開発をしてしまった人間は魔力を引き出す事が出来ません―――





686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:28:46.47 ID:AKpqOuKAO





『脳を開発をしてしまった人間は魔力を引き出す事が出来ません』





687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:29:21.78 ID:AKpqOuKAO



神裂火織は気付いてしまった。



目の前で倒れる少年が、何をしたのか。


何をしてしまったのか


あの時と同じように『薄く笑いながら』立ち上がる少年が、インデックスを助ける為に何をしてしまったのか。


神裂「あ、あぁ……


絶叫が響く。


神裂「あ、あぁああぁあぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」

688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:30:41.99 ID:AKpqOuKAO


その最中、不意に声が漏れた。

それは誰に言うでもない独り言、

それは自分に言い聞かせる為の独白、

それは、少女の為だけにたてた、誓い。


689 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:31:24.09 ID:AKpqOuKAO






浜面「俺は、どんな事してもお前を助けるって誓ったんだよ。インデックス」






690 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 00:31:42.23 ID:4fPAykQIo
うおおおおおおおおお!!!!
691 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 00:32:47.70 ID:SVwrU1qD0
絶対言うと思ったwwwwww熱すぎるwwwwwwwwwwww
692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:32:52.96 ID:AKpqOuKAO

例え、お前が能力者になっちまっても




だから――
693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:34:35.86 ID:AKpqOuKAO
その続きは、最後まで聞き取れなかった。誰に聞こえない程の小さな独り言、独白、誓いは烈風と、

「――現状」

機械的な感情の籠もっていない声――いや、宣告によってかき消される。



「10万3000冊の『書庫』の保護の為、非常時に置ける活動用に生成、供給されていた『自動書記』が有する残存魔力を全開放」



694 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:35:41.55 ID:AKpqOuKAO
「保有魔力残量から限界活動時間を逆算。成功。限界活動時間3000秒内に侵入者の迎撃を開始」




「なお、今後『首輪』『自動書記』作動に必要な禁書目録の魔力生成、供給が不可能の為、それに伴い2999秒経過後は『自動書記』は永久休眠に入ります」





「それにより侵入者対象を周囲40000Km圏内に拡大、範囲内にいる生命体を『書庫』の保護の為――――」



「殲滅します」


695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:36:13.29 ID:AKpqOuKAO
それはインデックス――いや、


10万3000冊を操る『魔神』の、

全人類に対する死刑宣告に他ならなかった。

696 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 00:36:20.63 ID:4fPAykQIo
ちょ
697 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:37:28.81 ID:AKpqOuKAO
天才のステイル=マグヌスが絶望し、

聖人である神裂火織が体を震わせて恐怖した。

静寂が包むその寮の一室で、世界の終わりが近付いたその瞬間。

「―――――」

呟いたのは、少年。

「――――――――」

薄く笑ったのは魔術師でも能力者でもない少年。

「――――――――――――――」

『少女』に真っ向から立ち向かったのは、なんの力も持たない無能力者の少年。

その少年が抱えていたモノは恐怖でも絶望でもない、

たった1人、その少女に向かって言葉を紡ぐ。

初めて守りたいと思った少女に対して言葉を紡ぐ。


浜面「だから、さ。インデックス」


魔術師達が何も出来ず、静止する中、浜面仕上は静かに腕を掲げる。

浜面「ごめんな」

ちょっとだけ、我慢してくれ。

腕を、振り下ろす。

部屋の一角を占有する『オーディオ機器』に向かって。



次の瞬間、部屋に鳴り響いたのは音。



外に届く程大音量の、煩わしい音。

じゃんけんで負け無理やり預けられたそれはこの為の『保険』


駒場に預けられたそれはキャパシティダウン。

木原とかいう女が『初めて』来たときに置いていった『試作品の試作品』

698 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 00:38:05.40 ID:4fPAykQIo
ここで・・・!
699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 00:38:45.71 ID:frmcbBIno
ちょっと関心したわww
700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:39:20.09 ID:AKpqOuKAO
それは神裂火織やステイル、『魔術師』にはなんの効果もないただの少し煩い音。

しかし『能力者』には、耐えられないその音は――

浜面「……やっぱりさ『基のポテンシャル』は高そうだと思ったんだよ」

常盤台も夢じゃないかもな、インデックス。

ステイル「……そんな、バカな」

神裂「音が……効いている?」

「―――――――――」

インデックスだったソイツが苦しみ、のた打ち回る、白い少女の体が白く染まり、部屋が閃光に埋もれていく。視界が白に潰れる、脳まで届くと錯覚する程のその光量は頭の中にまで入り込み、浜面仕上を白く染めた。

その閃光に紛れ聞こえるのは声。

「――――警、こく。終、……章。第、―――『禁書、目録』 異、常……脳……ーン、不可……自、書記……う眠……」

ブツンと、全ての声が消えた。

閃光が晴れていく。

701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:41:50.01 ID:AKpqOuKAO
そこにいたのは倒れ伏すインデックス。顔色は悪そうだが息はしているし、先程までの汗や苦痛も引いているようだ。

浜面「ハッ――ハッ――」

一気に息を吐き出し。体中の力が抜ける。全身から汗が吹き出した。

壁に背を預け座り込む。

心臓が未だに震えているのが手に取るようにわかった。

浜面「……おわっ、た?」

何が起こったのかは分からない。はっきり言って、キャパシティダウンを起動させた後は何も考えていなかった。

3000秒。インデックスの声であれはそう言っていた。そんなに時間は経っていない。
けど、

浜面「は、ははは……」

そんな事はどうでもよかった。

浜面「はははははははは」

助かった。インデックスも自分も、助かったんだ。

浜面「やった……」

代償は、大きい。インデックスを能力者にしてしまったという事の問題の大きさは、浜面にはよく分からない。後処理はきっと大変だろう。処罰も受けるかもしれない。けどきっと、なんとかなる。

そうさ、なんとか――
702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:42:52.42 ID:AKpqOuKAO
浜面「……なんだよ、お前ら」

部屋は、静かだ。猫の鳴き声に、インデックスの呼吸の音、生きている証。

そして、

浜面「なんだよ、その顔」

笑っていたのは、浜面仕上だけだった。

神裂は倒れ伏すインデックスを見つめながら、呆然としているし、ステイルはその怒りを隠せてはいない。

神裂「あなたは……なんという事を」

口火を切ったのは、神裂火織。

神裂「なんて事をしてくれたんですかッ!!」

怒号、そう呼んでも差し支えない程声を張り上げ、神裂火織は叫ぶ。

703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 00:45:10.24 ID:AKpqOuKAO
浜面「……え?」

浜面仕上は学園都市の人間だ。魔術なんてものとは関わった事のない。関わってまだ一週間も経っていない、魔術の素人。

だから理解していなかった。



自分が何をしでかしてしまったのかを。



事の重大さを、理解出来ていなかった。

わざとらしい靴音をたて、ステイル=マグヌスが浜面の前に立つ。胸元を引きずり上げ勢いよく壁に押し付けた。

浜面「かッ……」

ステイル「ふ、ふふ……君はあの子の存在をよく理解していなかったようだね。本当に、やってくれたなこの野郎ッ!!」

手に力が込められる。

なんだよ、こいつらはなんでこんなに怒っている。嬉しくないのか、インデックスが助かったのに、嬉しくないのか、

何も出来なかった癖に、

浜面「じゃあ……」

704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:47:14.47 ID:AKpqOuKAO
浜面「じゃあお前らはアイツの為に何か出来たのかよ。助ける事が出来たってか? あぁ!?」

一瞬の躊躇い、その隙にステイルの腕を掴み、力尽くで振り払う。

浜面「散々何も出来なかった癖に偉そうに言いやがって……テメェら聞いた事ねぇんだろ。アイツが泣きながら怖かったって、辛かったって、」

浜面「こんな一年欲しくなかったって、言ってたのを知らないんだろうがッ!!」

神裂「!!」

ステイル「……ッ」

その言葉は、一体どれほどの衝撃を目の前の二人に与えたのだろう。

分からない。神裂火織は言葉を発さずに唇を噛み締め、ステイルは呆けたような顔をして一歩、後退りした。

浜面「はぁっ……はぁっ……」

また、壁もたれる。もう体はボロボロだ。立ってはいられなかった。また、座り込む。

浜面「……なにかしたいって言うんなら、インデックスを病院にでも連れていって、俺らの目の前から消えてくれ」

顔を俯かせ、そう呟く。

ステイル「…………」

神裂「…………」

魔術師達は応えない。コイツらは今どんな顔をしているんだろう。

浜面「さっさと行けよ」

そして自分は今どんな顔をしているんだろう。

わからない
705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:49:12.91 ID:AKpqOuKAO
浜面「じゃあお前らはアイツの為に何か出来たのかよ。助ける事が出来たってか? あぁ!?」

一瞬の躊躇い、その隙にステイルの腕を掴み、力尽くで振り払う。

浜面「散々何も出来なかった癖に偉そうに言いやがって……テメェら聞いた事ねぇんだろ。アイツが泣きながら怖かったって、辛かったって、」

浜面「こんな一年欲しくなかったって、言ってたのを知らないんだろうがッ!!」

神裂「!!」

ステイル「……ッ」

その言葉は、一体どれほどの衝撃を目の前の二人に与えたのだろう。

分からない。神裂火織は言葉を発さずに唇を噛み締め、ステイルは呆けたような顔をして一歩、後退りした。

浜面「はぁっ……はぁっ……」

また、壁もたれる。もう体はボロボロだ。立ってはいられなかった。また、座り込む。

浜面「……なにかしたいって言うんなら、インデックスを病院にでも連れていって、俺らの目の前から消えてくれ」

顔を俯かせ、そう呟く。

ステイル「…………」

神裂「…………」

魔術師達は応えない。コイツらは今どんな顔をしているんだろう。

浜面「さっさと行けよ」

そして自分は今どんな顔をしているんだろう。

わからない
706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:51:39.48 ID:AKpqOuKAO
数分後、そこには誰もいなかった。

魔術師達は声を発する事なくインデックスを抱え、病院に連れて行った……ハズだ。もう記憶を奪う心配もないし、学園都市の外にはもう出せない。

助けてしまったんだから。

自分が、浜面仕上が、インデックスを救ってしまったから

浜面「は……はは」

思わず笑う。

笑わずにはいられなかった。

浜面「あはははははは」

助けた。助ける事が出来た。自分が、インデックスを。

浜面「ははははははははははッ」

だから、つい呟いた。
707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:52:18.08 ID:AKpqOuKAO
数分後、そこには誰もいなかった。

魔術師達は声を発する事なくインデックスを抱え、病院に連れて行った……ハズだ。もう記憶を奪う心配もないし、学園都市の外にはもう出せない。

助けてしまったんだから。

自分が、浜面仕上が、インデックスを救ってしまったから

浜面「は……はは」

思わず笑う。

笑わずにはいられなかった。

浜面「あはははははは」

助けた。助ける事が出来た。自分が、インデックスを。

浜面「ははははははははははッ」

だから、つい呟いた。
708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:52:49.22 ID:AKpqOuKAO
数分後、そこには誰もいなかった。

魔術師達は声を発する事なくインデックスを抱え、病院に連れて行った……ハズだ。もう記憶を奪う心配もないし、学園都市の外にはもう出せない。

助けてしまったんだから。

自分が、浜面仕上が、インデックスを救ってしまったから

浜面「は……はは」

思わず笑う。

笑わずにはいられなかった。

浜面「あはははははは」

助けた。助ける事が出来た。自分が、インデックスを。

浜面「ははははははははははッ」

だから、つい呟いた。
709 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/06(日) 00:53:25.92 ID:AKpqOuKAO
浜面「ざまぁみろ」
710 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/06(日) 00:53:46.80 ID:HdK5bSrAO
なにがあった
711 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 00:53:46.82 ID:yXSbFJ+wo
どうしたんだ?急に
712 :もしもし調子わるい。すめん :2011/03/06(日) 00:55:22.90 ID:AKpqOuKAO
浜面「……はは、は?」

少女を助けた浜面仕上の口から出たのはそんな言葉だった。

浜面「ざまぁみろ」

ざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろ

あはは、助けた。俺が、こんな俺がインデックスを助ける事が出来た。

ははは、どうだよ。あの魔術師達の顔なんて本当になかった、あははは、あははははははは

浜面「……あれ?」

なんで自分はこんなに笑っているんだ。

そんな疑問。違うだろ浜面仕上、ここは喜ぶところだろ。インデックスが助かって、助かったんだから。

ここで喜ばなかったら……一体、

浜面「はは、は……」

乾いた笑いが、途切れた。

あれ?

浜面「なんで俺……」

一体何に満足しているんだろう。

浜面「…………」

浜面「……あれ?」

何の為にインデックスを助けたんだっけ?
713 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:56:58.99 ID:AKpqOuKAO
決まってる。インデックスの為だろ?

あれ、じゃあなんで、

なんであいつらを見返してスッキリしてるんだろう。

なんでインデックスを助けた喜びよりアイツらを見返せた事が嬉しいんだ?あれ?

浜面「……あれ?」

何の為、何の為に――

浜面「――――」

脳裏に蘇ったのはある少女の、佐天涙子の言葉だ。

『あの子は私の事、誰かの為に何か出来る人間って言ったんですけど……私本当は助けた人の事なんてどうでもよかったんですよね』

浜面「……違う」


……本当に?


714 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:58:26.85 ID:AKpqOuKAO
浜面仕上の動く理由。浜面仕上の原動力。何かと言われればそれは何か、答えは明白だ。

インデックス。

浜面仕上の目的、全ての根幹にいるのはインデックスの存在だ。


『何も出来ない自分が嫌で、誰かを助けたって事実で自分を慰められる事ができればー……なんて思ったり』

浜面「…………」

なぁ、浜面仕上。

……お前はなんでインデックスを助けたんだ?

浜面「…………」

じゃあ、仮定の話。

もし、インデックスを助けられなかったら、自分はどうなっていたんだ?

戻っていたのか。

卑下して見下されて八つ当たりするそんな自分に。

浜面(……イヤだ)

それは、イヤだ。

浜面「……ああ、そっか」

結局はそう、それだった。全ての行動理由は結局の所それに尽きる。それだけだ。

715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 00:59:45.54 ID:AKpqOuKAO
浜面仕上は気付いてしまう。気付いてしまった。

出会った瞬間とは言わない、あの炎の魔術師と邂逅し突破したその瞬間。そこからだろう、既に言葉と心に打算と見返りが混じっていた事に。

誰も救えず卑下し見下され八つ当たりする自分が、イヤでイヤでたまらない。耐えられない。

だから求めた。心の安定を。

それがインデックス、白色の少女。

一瞬を記憶するあの少女を守る事で、助ける事で、笑顔にする事で助ける事が出来たと、自覚する。そして自分の欠けた心を埋めていった。いまも、そうか。

浜面「…………」

なんだ、とまた心の中で薄く笑う。

結局はあの少女をダシに使う事を否定していた自分はとっくの昔から自慰行為に走っていたのか。

あの魔術師達となんら代わりないのか。

自己嫌悪の波が襲いかかる。心臓が波に攫われ重さを感じる。

その錯覚が、それの答え。

716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 01:01:11.59 ID:AKpqOuKAO
浜面仕上は怖かった。

インデックスを助けられない事よりも、

インデックスを失う事よりも、

あの頃の日常だけになってしまうのが何よりも怖かった。

インデックスを失う事が恐ろしかった、だからインデックスを助けた。

違う。

インデックスを失ってインデックスに出会う前の日常に戻ってしまうのが嫌で嫌でたまらなかった。だからインデックスを助けた。

浜面「……はは」

本心は、そんなものだった。

弱い者を助けるスキルアウトだから助けた。それは隠れ蓑だった。

自分を変えてくれたインデックスを助けたかった。それすらも隠れ蓑だった。

浜面(……ちくしょう)

矢継ぎ早に繋がる思考はそう結論付けた。それが間違っていようがいまいが、浜面仕上は未熟な自己判断でそう分析してしまう。

『自分の事は自分が一番よくわかってる、なんて台詞を吐く奴は沢山いるが、実際に一番よく理解しているのは身近にいる他人だったりする』

かつての自分の言葉を、浜面仕上は思い出せない。嫌悪感からか、不安からか、それとも巻き付く悪意や敵意か、それらが燃料となり、浜面仕上を内側から満たしていく。


717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 01:03:01.44 ID:AKpqOuKAO
気付いてしまった小さな差違が自己嫌悪という名の炎になって浜面仕上を焼き殺す。

どれだけ体を鍛えようが、いくら魔術師を倒そうが、少女を救おうが、浜面仕上はこの学園都市の学生で、やはりまだ子供だった。

心の対処の仕方を、浜面仕上は知らない。

それを正してくれるヒーローも、捌け口になってくれる大人も、優しく包んでくれるインデックスも、浜面仕上の周りにはいない。

浜面「……なんだよ、それ」

今になって、なんでいきなりこんな事……

浜面「…………」

忘れよう。浜面仕上の達した結論は、それ。

もう何にせよ。インデックスは救ったんだー

地獄は、二人で一緒に抜け出した。

これからは日常が待っている、二人で笑い会える日常が。

だから―――



718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/06(日) 01:03:36.55 ID:AKpqOuKAO





ピンポーン





719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/06(日) 01:04:21.68 ID:AKpqOuKAO
それは、唐突にやってきた。

ゆっくり顔を上げ、ドアを見る。魔術師達はちゃんと閉めていったらしい。

720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/06(日) 01:04:47.82 ID:AKpqOuKAO






ピンポーン






721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/06(日) 01:05:57.21 ID:AKpqOuKAO

また、チャイムの音。

ピンポーン

また、チャイムの音。


ピンポーン ピンポーン ピンポーン ピンポーン ピンポーン ピンポーン


722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/06(日) 01:06:57.62 ID:AKpqOuKAO
ガチャリ


止まって、数秒、ドアが開いた。カツコツと足音をたて、部屋に入ってきたそれは、

浜面「半、蔵……?」

半蔵「…………」



半蔵「駒場が死んだ」



それは、闇からの招待状。


723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/06(日) 01:09:23.26 ID:AKpqOuKAO
ここで大休憩。実はあと数レスあるんだけどまだできてないから書いてくる。

とりあえずペンデックスまで書けてすっきりしたわー。偽造ID以外は全部仕込みあるから探すのも面白いかもめーでは後ほど
724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 01:11:18.04 ID:Zj4LOo1AO
凄すぎるただただ脱帽する
>>1に激しく乙!!!!!!
725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 01:13:33.07 ID:J1UUNcvE0
インデックスを無理やり能力者にしたのか
なるほど

脳が焼き切れちゃうからペンデックスは強制終了するわな
726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 01:16:33.45 ID:Wd5rqwv90
GJ!

このアイディアは思いつかなかったな
727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 01:18:02.37 ID:4BB6IZhao
インデックス「ご飯を食べるだけの能力?」
728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 01:30:48.73 ID:J1UUNcvE0
>>727
ただの大食いシスターだな

新しい能力か
729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 01:32:25.81 ID:56MJ+Szt0
この展開は予想してなかった
魔滅の声とか強制詠唱は能力者になっても使えるだろうし何の問題もないな
730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 01:46:24.71 ID:lhTlUaWRo
>>729
一方通行は歌っただけで血まみれになった件
インデックスが歌うとどうなるかって確信は無いけど
731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/06(日) 02:00:29.07 ID:AKpqOuKAO
>>725
書き始めは構想ぼんやりだったから初期の複製ちょう微妙。もっと頑張ればよかった……

いやはやペンデックスにはまだ秘密があるんだなー。



2時30分ぐらいに投下出来ると思う。できたらいいな。まぁ何はともあれ次でラスト
732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 02:09:11.83 ID:vxEM1qJIO
>>731
はは、もうラストとか寝ぼけるにはちと早いぜ


えと…それは1巻分でのラストって意味ですよね…?
733 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 02:10:40.59 ID:yFiWqnRr0
>>731
期待
御坂妹の伏線もあるから超電磁砲・一方通行編もやってくれるのか?
734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 02:26:14.14 ID:VBGjgYoXo
寝ようと思っていたが、寝ないことに決めた
735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/06(日) 02:27:39.92 ID:AKpqOuKAO
そう決め手くれたところ大変申し訳ないんだけどもう少しだけ待ってね。待ってください
736 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 02:32:39.98 ID:kQPAWkQAO
面白すぎるだろ、これは殿堂入りだわ
これで主人公ズ×禁書が揃った希ガス
737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 02:36:37.01 ID:TiuV+HiAO
うん……あれだ
これスゴすぎるわ
本当にそうとしか言えない
738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/06(日) 02:45:59.88 ID:AKpqOuKAO
できた。投下しますん
739 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 02:47:18.87 ID:AKpqOuKAO
浜面「はっ――はっ――」

走る。

浜面は夜の学園都市を走っていた。

体がボロボロだろうが、血を流していようがそんな事は関係なかった。

駒場が死んだ。

駒場、駒場利徳。俺達の指導者、リーダー。

「駒場利徳が殺された」

虚ろな眼をした半蔵はそう呟いた。

それが、数分前の話だ。

740 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 02:48:40.59 ID:AKpqOuKAO
浜面「……は?」

駒場が……死んだ?

あのゴリラが?死んでもしなないようなアイツが?

浜面「ウソだ」

半蔵「ウソじゃねえよ」

この眼で死体も見てきた。

そう呟いた半蔵の眼に、いつもの光はない。

半蔵「これ、駒場のリーダーの形見」

ゴトン、と床に放り投げたのは、駒場が手にしていた演算銃器。銃身には血糊がべったりと付いていた。

半蔵「設計図とか色々盗んでまじで超電磁砲撃てるくらいに改造したんだぜ……?まぁ、結局撃ったら銃が保たないから使えないみたいだけどさ」

そんな言葉は、耳に入らない。

741 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 02:50:53.27 ID:AKpqOuKAO
浜面「……なんで」

半蔵「計画、バレてたんだよ」

浜面「…………」

木原。

そうだ、アイツ。数日前の……あの時

あの女……確かなんて言っていた?

『もしかしてアナタのボスの大男もまだ生きてるのかしら?』

『ったく、それでいて私達アンチスキルに楯突くつもりでいるっていうんだからよお、本当にムカつくわ』

浜面「あの、女ッ!!」

座り込んでいた体を起こす、体中が軋むような錯覚を覚えた。

痛い。

だから、なんだ。駒場が死んだんだぞ。

浜面「――――」

一歩を踏み出す。手を伸ばし制止するのは半蔵。

半蔵「どこいくんだよ」

浜面「……計画、まだ終わってないだろ」

半蔵「駒場はもういないぞ?」

スキルアウトは解散だ。

そんな声が、ボロボロの部屋に響いた。
742 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 02:54:04.07 ID:AKpqOuKAO
浜面「…………」

最後に駒場と話をしたのはいつだったか。確か、3日程前だろうか。

その時の言葉を、思い出す。

『……俺にもしもの事があったら、次のリーダーはお前だ』

『スキルアウトはお前に任せる』

浜面「…………」

正直、自分はリーダーなんて柄じゃない。そう思う。

どこまでもクズで、結局初めから最後までクズだった自分には、駒場利徳の代わりは務まらない。

けど……

浜面「解散なんてしねぇよ。次のリーダーは俺だ」

その言葉に意外そうな顔をした半蔵は、少しだけなにか考えるような素振りをして薄く笑う

半蔵「あぁ……そう。なら止めねぇよ」

じゃあこれももってけ。そう言って半蔵が小さな筒のようなモノを投げて寄越す。

小さな円筒型のそれは中央に宝石のようなモノが埋め込まれていた。
743 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 02:56:26.78 ID:AKpqOuKAO
浜面「……なんだよこれ」

半蔵「戦利品」

何につかうかもわかんねぇから俺には使い道ねぇし、もっとけよ。

半蔵「第一発火点。まだバレてないと思うから早く行け」

浜面「……行ってくる」

そう呟いて、走り出した。寮を飛び出し、夜の学園都市をボロボロの体で駆け抜ける。

自分にリーダーは務まらない。けど

浜面「――――」

今ならきっと、なんでも出来る気がした。

魔術師を倒した自分なら。

魔術師を倒した自分なら。

少女を救えた自分なら。

自分の為に、なんでもできた自分なら。

浜面「…………」

唇を吊り上げ、自嘲気味に笑う。

やっぱり自分はクズらしい。どこまでも自分を慰めたいようだ。

心の中で、駒場に謝る。

そして――


744 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 03:00:58.84 ID:AKpqOuKAO
浜面「…………」

目の前では轟々とした炎が燃え盛っていた。第一発火点、そう呼ばれた場所で、浜面は引き金を引いた。

これでアンチスキルやジャッジメントの活動が大幅に制限されるだろう。

それは駒場を殺したアンチスキルの部隊も同義だ。

浜面「…………」

けど、

浜面「……一体それが、何になるって言うんだ」

全体を指揮していた駒場はもういない。

これからは、自分が指揮する立場だ。

浜面「はは……何を、どうすればいいんだろうな」

燃え盛る炎に照らされた浜面は、呆然とそれを見つめる。

燃え盛るそれを見つめる。

浜面「…………」


ふと、木原。あの女の言葉を思いだす。


――ああ、でも私は何もしないわよ。あなた達がどうなろうが知った事ではないし……誰かが変わりにやってくれるわよ――

『誰かが変わりにやってくれるわよ』


浜面「…………」


誰が?
745 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/06(日) 03:02:26.27 ID:AKpqOuKAO






浜面仕上は気付かない。






746 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/06(日) 03:04:27.25 ID:AKpqOuKAO


『何も終わってなどいない』事に、気付かない。


自分の『何が変わって』これからどう変わってしまうのかに、気付かない。


ほんのきっかけでついてしまった『小さな嘘』が、なにを意味するかに、気付かない。


少女を科学の世界にねじ込んでしまったことが何を意味するかに、気付かない。


747 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/06(日) 03:07:03.62 ID:AKpqOuKAO
浜面仕上は気付かない。

少女を助けられて事に

救ってもいない事に

守る事さえできなかった事に

それどころか、少女を置き去りに、たった1人で自分だけ地獄から這い上がってきてしまった事に、気付かない。

そして、少女を更に深い、もはや浜面仕上という人間にはどうしようも出来ない程の地獄へと突き落としてしまった事に、気付かない。

748 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 03:09:14.39 ID:AKpqOuKAO
チッ

そんな舌打ちが聞こえた。

浜面「――ッ!?」

振り向き、声の主を探す。

……見えない。

周りは、夜の闇に包まれていて、何も見えない。

「はぁぁ、あ」

またも、闇の中から声がした。

それは少女、キツそうな、少女の声。

「たくっよぉ」

浜面「――――ッ」

カツカツ、とヒールが地面を叩く、それは足音。

「スクールの追撃で休みなく働いてるっつぅーのに、スキルアウト掃討なんてゴミ掃除までやらされて」

闇の中から姿を表したのは、ひとりの少女。

749 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 03:11:06.59 ID:AKpqOuKAO
「挙げ句の果てには任務は失敗?」

浜面仕上はその少女が誰なのかを知らない。

「こいつはさぁ……テメェをぶち殺せば気が晴れんのか、あぁぁあッ!!?」


学園都市の第4位。

『原子崩し』

麦野沈利を、浜面は知らない。

浜面「な―――――

言葉を発する前に、目の前を閃光が覆った。

絶対的な死もたらすその閃光は浜面を撃ち抜く為だけに、向かってくる。

750 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/06(日) 03:12:04.38 ID:AKpqOuKAO
浜面仕上は気付かない。




地獄から這い出した自分に待っていたものは、二人で笑い会える日常でもなんでもなかった事に。




浜面「――――



751 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/06(日) 03:12:42.00 ID:AKpqOuKAO


それは、闇。



地獄より質の悪い。



堕ちたら最後、二度と這い出す事の許されない学園都市の深い闇


752 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 03:14:08.92 ID:AKpqOuKAO
「―、――、―!!」

誰かが自分を呼ぶ声が聞こえた。あの落雷が落ちた日の様に

誰かは、わからない。

閃光は、もう目の前に迫っている

浜面「――――

少年が最後に呟いた少女の名前は、誰も聞き取れなかった。

753 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 03:16:58.76 ID:AKpqOuKAO




この日、ひとりの少年が全てを失った。




日常も、生活も、友人も、仲間も、良心も、

たった1人、守りたかったはずの大切な少女さえも。


命以外の全てを失って、少年は闇に堕ちた。









浜面「俺は、どんな事してもお前を助けるって誓ったんだよ。インデックス」<br>   了


To Be Continued.....
754 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/06(日) 03:17:48.76 ID:AKpqOuKAO
というわけで完結。あとがき書いてくる
755 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 03:21:12.37 ID:zR18BJayo
756 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 03:23:11.09 ID:yFiWqnRr0


これはBADENDなのか?

とりあえずお疲れさま!
757 :実は結構前から書いてあった建て前含むあとがき1 [saga]:2011/03/06(日) 03:23:59.16 ID:AKpqOuKAO
さて、約2ヶ月のお付き合いありがとうございました。

楽しんでいただけましたでしょうか?正直ここまで書ききれるとは思ってなかったです。自分としてはこんな早いペースで書けたのも読んでくれる人や感想とかレスくれる人のお陰です。ありがとうございます。
さて、ペンデックス1戦目を終え、浜面が暗部に堕ちたところで前編、というか序章である

浜面「俺は、どんな事してもお前を助けるって誓ったんだよ。インデックス」<br>

はここで終わりです。なっがいプロローグだくそ。

結構スレ余っちゃって勿体無いですが、勝手ながら続きはタイトルを変えた次スレでやります。多分見たら一発で分かるんでスレタイはまた後々。

風呂敷は5割くらい広げました。次のスレでは全部広げて一気に畳みます。

えーと、これは浜面仕上再構成です。浜面仕上一巻再構成です。

一巻、まだ再構成出来てない一番重要なシーンがありますよね。次スレではそこへ向かって浜面仕上や色んな思惑を持った奴らが動いていきます。

実験を続ける一方通行
徐々に壊れる御坂美琴
垣根達を追うアイテム
裏で暗躍する垣根帝督
何かを抱える木山春生
価値を求める佐天涙子
暗部に堕ちた浜面仕上
突如消失した自動書記
日常を過ごす上条当麻
役目を終えた魔術師達



そして能力者となったインデックス



科学と魔術も無事に交差した事ですし、次からの本編も今までと同じように読んで貰えると非常に嬉しいです。

不慣れな地の文、情景や心理描写ながらありがとうございました。浜面がブレまくりで見ていて不快になられたら申し訳ないです。ちゃんと理由ありますよぐへへ
次からは登場人物が二倍三倍と増えるんでくっそ長くなります。まだまだよろしくお願いします。

次スレじゃもうちょい細かく話分割しないとな……まとめとかWikiみたらボロボロだった。

それじゃまた近いうちに、構成自体は終わってるんでプロットが完成したらすぐにでも

完結するまでこのスレも置いておこうと思っています。

ではでは書いてきまー

758 :本音 :2011/03/06(日) 03:27:36.39 ID:AKpqOuKAO
おわったああああああああああああああああああああ!!


うっしゃああああああああ長編初めてだけど頑張ったあああああああ

あ、でもなんだかんだここまで書けたのはよんでくれてる人のおかげ。ありがとうまじ感謝すげー嬉しい。

badendっす。まぁ次回どうなるかだよね……
759 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 03:28:21.87 ID:JrjBVGmQo
超プロローグ発言頂きましたーーー!
760 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 03:43:18.05 ID:VBGjgYoXo
お疲れさまでした
能力者になったインデックスという発想は斬新すぎて先が全く予想できませんね

つまりこの物語は全然終わってねぇ、始まってすらいねぇ、と。何というかすごく先は長そうですね…
とりあえず<br>でスレタイ検索しながら待ってます
761 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 03:46:30.58 ID:AKpqOuKAO
プロローグだねー
一応続きの構成は終わってるけどアホみたいに長いから終わり見えねぇ

はい、という訳で次回から本格的に一方さんやら美琴やらが絡んできます。麦野やアイテム勢なんて特に

えー……と、お付き合いありがとうございました。皆さんのレスすごいモチベーションの燃料になりました。

色々至らないところが沢山あると思うんですけど、最後まで読んでくれた方はもう一度、さらりと初めから目を通して貰えるとちょっとした発見があるかもしれません。
自分で言うのもあれですが、くそ細かい伏線がちょくちょくあったりします。自分でも忘れるくらいの。

ではでは、ありがとうございました。

762 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/06(日) 03:47:13.89 ID:jr94vigr0
まあインデックスを能力者にしたら下手すりゃ科学と魔術の全面戦争勃発しちゃう気もするしねぇ

ともあれ乙。続きも期待してるぜ。
763 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 03:47:50.24 ID:dqVklkKIO
よかった…続くとわかって本当によかった…!

そして長いプロローグ大変乙でした!
次話もマジ期待しております!!
764 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/06(日) 04:51:35.23 ID:8bI+nW3DO
お疲れ様です
ここまでがプロローグだとは…
765 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 07:48:09.89 ID:OOTqoHJDO
超面白かった…
次も期待してます
乙っした
766 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 08:19:41.06 ID:SVwrU1qD0
乙でした
これからも超期待
767 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/06(日) 09:26:42.56 ID:jyMwgYrK0
乙でした。超楽しみにしてます。
次回以降、フラグを回収しまわるんですね浜面さん!!
768 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 10:35:28.14 ID:nf6AyUYP0
このインデックスって上条のときと違って首輪消したわけじゃないから1年周期で苦しむんじゃね?
769 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 11:55:26.23 ID:SSSC4gpLo
おつ この発想はなかった。
しかしこの浜面味方が全くいない。
770 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 13:30:31.90 ID:UKwc1ZKno
>>768
永久休止+キャパダウで深刻ダメージなんでどうなったか不明じゃね
つか、カエル医者にでもみせんと命やばいようなww>インデックス
771 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 13:52:13.95 ID:AKpqOuKAO
>>768

インデックスに魔翌力はない×
首輪と自動書記維持に魔翌力が使われていた。

浜面「あれ、じゃあ魔翌力生成できなくすりゃいいんじゃね。神裂もなんか言ってたし」

脳開発

自動書記「ちょ、なんか魔翌力生成したらインデックス反動でヤバいから首輪と自動書記止めるわ」

自動書記「でも書庫の守りがなくなるのもヤバいからインデックスの魔翌力は生成しないで自動書記に溜め込まれていた魔翌力全開放して3000秒で世界潰すね」


さらっと書くとこんな感じ。上条さんは首輪破壊したけど浜面は停止に持ち込んだっていう。つかどう考えても超設定作らない限り浜面じゃ破壊出来ねぇ……

772 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 14:30:55.93 ID:PQ0MfUHM0
おおおお
終わってた
凄い面白かった、盛り上がるとこ最高に熱い
作者さんお疲れ様、続きも期待してます。
773 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 14:58:12.40 ID:5oHTiO1ko
3000秒分使い果たすまで毎年

自動書記「ちょ、なんか魔翌翌翌力生成したらインデックス反動でヤバいから首輪と自動書記止めるわ」

を繰り返して
インデックスがビクンビクンッってするって思ったんじゃね?
俺はそう思った
ペンデックスさんがそれを自動回避するなら別だけども
774 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/06(日) 19:03:51.38 ID:jr94vigr0
喉の奥のアレ霊装だから下手すりゃ能力開発受けた瞬間にアウトかもしれないけどね。
まああんまり細かいこと言うのは野暮だわな。プロローグだし。
775 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/07(月) 15:42:08.36 ID:DJPrwuUAO
乙。めんどいから誰かどこに伏線張ってどこで回収してるか抽出していってくれ。
776 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 21:48:20.06 ID:t+Z2PIoM0
>>775
お前のためだけにそんなことをするのはめんどいから嫌。
777 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 22:20:29.61 ID:aD7oN/1b0
ともあれ乙
リーダー死んじゃったか……ざんねん
吹寄とかも心配だな
778 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 23:51:33.41 ID:D6rDdEJIO
>>777
原作から大分逸れたベクトルへ向かって再構成されてるから、復活の可能性はあるかもって、駒場は駒場はさりげに無茶振りしてみたり!
779 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 01:04:44.19 ID:dFRyQSLy0
駒場は生きてるよ!
皆の心の中で生きてるよ!

そして、いずれ成長して
皆を食い破って出てくるんだ
780 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 08:45:14.21 ID:ANjwoOaAO
じゃあどっかの場面で

――そこに駒場利徳が立っていた。なんて展開あり得るのかwwwwwwwwww


でもこれ話の流れ的にSS1の再構成含んでるよね。リーダー……
781 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 15:28:04.70 ID:mmN43zQ00
改造人間コマバリトク登場フラグか
782 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 17:48:54.49 ID:7moXvfFZo
スキルアウト駒場利徳は改造人間である!
彼を改造した学園都市は良からぬことを企む悪の秘密結社である!
駒場利徳はスキルアウトの自由のために能力者と戦うのだ!
783 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 20:53:12.63 ID:g+FMN33O0
>>782ただでさえフランケンぽいんだから

駒場はロリコンだから一方通行と仲良くなれるはず
784 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/10(木) 21:13:26.58 ID:VvPu1QJi0
>>1次スレまだー?
785 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 21:27:24.92 ID:qzIQ7GVAO
あえて言わせろ
ageんなks
786 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 21:32:35.31 ID:HtAVCVQSo
コマバ20001「まだまだ出番はある、ってコマバはコマバは健在をアピールしてみる」
787 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 22:35:13.20 ID:VvPu1QJi0
>>785
ごめん
sage忘れてた
788 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 22:35:28.92 ID:5BF1qq5AO
駒場さん大人気だなwwwwwwwwwwww

次スレどうなんのかなーすごく楽しみ。上条さんとか関わって来るのだろうか。

とりあえずこれで浜面がアイテム加入だから冷蔵庫も混じって次は15巻再構成?木山先生、テレスティーナ、幻想御手も絡んでるから超電磁砲編再構成もあるのか?物語が絡み過ぎてて先が全然見えない……

789 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 00:44:20.86 ID:/u9/VP1+0
この状態の浜面がアイテム入るとどうなるかなー
原作アイテム加入時点とは経験値も覚悟も絶望も喪ったものも桁違い
絹旗とは気まずそうだし、滝壺とはくっつかなそうだし、むぎのんにはブチ抜かれてるし、フレンダはサバ缶だし

そして確実にアイテムと病坂ぶつかるよなー
790 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 04:40:24.10 ID:VWZ8y3sio
むしろスクール辺りに加入してアイテムとは最後まで敵対したまま仲間にならない気がしてきた

>>786
グループの空間移動能力者がアップを始めたようです
791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 05:38:55.11 ID:jBkqKoBAO
とりあえずさらっと読み返して全体の流れ整理してみた。



御坂が落雷。

魔術師侵入→浜面がインデックスと邂逅
ミサカ→スキルアウト合流。計画は一週間後、キャパシティダウン云々→ステイル邂逅

垣根が落雷の隙を突いてピンセット入手?
魔術師その他の情報ゲット→一週間後学園都市は死ぬ。

浜面vsステイル戦

その日の晩に垣根がステイルぼっこにしてインデックスの情報入手。この時点でアイテムと鬼ごっこが始まっている?

二日目

木山→アイテム邂逅。スクール追撃中?

浜面vs神裂戦

一方通行登場、神裂ぼっこ。浜面の傷を治療する?

研究所破壊しまくりで絶賛壊れかけのや御坂登場。真の目的は樹系図の設計図を潰す事?

3日目

アイテム電話「別の仕事」←スキルアウト掃討?

首輪の存在知りインデックスに脳開発を持ちかけた?

テレスティーナ遭遇。台詞からしてアイテムと何らかの関係あり?

徹夜で偽造ID作り

4日目

インデックス脳開発→半蔵「スキルアウト襲撃されてる」→卑屈な佐天さんと初春邂逅

5日目

絹旗遭遇。スキルアウト掃討中?「御坂美琴に妹はいない」

(ここら辺で駒場死亡?)

浜面vsペンデックス戦

計画実行→麦野邂逅。暗部堕ち?



こんなものか。日数にすると本編並に展開速いなwwwwww

読み返してわかる事がマジで多い。冷蔵庫が言う学園都市の死ってのが気になるな。あと2日しかないぞはまづらぁ……
792 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 13:27:22.70 ID:Brb9AZnw0
>>1
新スレはまだか
地震にあったとかじゃねぇだろうなぁ?
793 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 20:44:31.57 ID:tCRfW7CA0
>>790
意外とスクールのメンツと相性よさそうだよなここの浜面

その流れでグループin浜面を妄想
禁書目録を能力者に貶めた浜面仕上を監視下に置かんとする土御門
「へェ…あの時の三下じゃねェか」とかなんとか見知らぬ第一位と再会したり

学園都市の闇に囚われた禁書目録、どんなことをしてでも助けると誓った彼女
その譲れぬたった一つの願いの為に、『グループ』第五の男・浜面仕上が闇より這い上がる……!

ここまで考えて上条さんがいないと一方通行もエツァリも結標も暗部に転ばねえことに気づいて死にたい
794 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/03/15(火) 22:15:07.89 ID:tGm9G5tAO
次スレ


「――――心に、じゃないのかな?」<br>
http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/1300193705/l20


795 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/03/15(火) 22:17:39.80 ID:6ZZ0iVGeo
mreadのmぐらい削ってくれ…
そのアドレスは携帯用だ…
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1300193705/l20

796 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/03/15(火) 22:25:34.12 ID:tGm9G5tAO
>>795

oh…すまん。PCないから勝手がわからんのよ……
797 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) :2011/03/16(水) 11:46:45.76 ID:asCXElMAO
『アイテム』

原子崩し<メルトダウナー>

学園都市序列4位の超能力者――麦野沈利。

ソイツが率いる暗部組織『アイテム』に昼夜を問わずに追われ、その追撃をかいくぐり、逃げる生活。

その生活があとどれ程続くかと言えば、

垣根「もうアイテムからの追撃はない」

垣根帝督は街に視線を戻し、そう断言した。

笑みを崩し、意外そうな顔をしたのは心理定規だ。仰向けに倒していた体を起こし、垣根の横顔を見つめる。

心理定規「なぜ?」

柔らかいベッドに手を尽き、上半身を持ち上げ疑問を投げかけた心理定規の姿は窓ガラスに反射して垣根の視界に映り込む。

髪を下ろしたからだろう、雰囲気はいつもと違って見えた。一動と共に揺れる肩にかかる程の、少しクセの出来た金髪がガラス越しに街を眺めていた垣根の視線を誘う。

垣根「ん、あぁ……アイツらには足がないんだ。俺らを追い掛ける足がな。昨日は襲撃がなかったろ」

心理定規「……確かに車は何度も吹き飛ばしたけど」

垣根「ばーか」

798 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/03/16(水) 11:50:48.90 ID:asCXElMAO
あれ、誤爆……?
799 : [sage]:2011/03/18(金) 16:01:22.43 ID:aSwND5LAO
>>794>>795
のスレは途中で落としました。



次スレ
「――――心に、じゃないのかな?」<br>
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1300428329/l20#foot

800 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/19(土) 13:03:56.72 ID:HPolsj/IO
何これすげぇおもしろい
801 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/04/16(土) 13:56:08.19 ID:qHbvyFYao
ところでタイトルの後のbrってなに?
802 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/04/16(土) 14:12:43.39 ID:R8LtzuK6o
目印
803 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) :2011/05/14(土) 19:48:47.48 ID:2D+0wXsAO
>>1
>>1
804 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/05/14(土) 19:50:41.68 ID:2D+0wXsAO
誤爆
805 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/05/15(日) 00:26:14.52 ID:UngwePbC0
何故ここに誤爆したwwwww
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