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10666「これが超電磁砲……」2 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/12(水) 14:17:43.66 ID:rXl6RatAO
10666「や、どうも。本スレ主人公、ミサカ10666号ですよっと」

10666「注意点としては前スレhttp://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4gep/1291227995/l20>>1を見て貰えれば幸い、かな?」

10666「ん……『簡単なあらすじ』?」

10666「ミサカ10666号と13510号はとっても仲良し!」

10666「二人がほっぺたスリスリし合ったり、フランクフルトくわえさせてヌポヌポしたり、10666号が全裸を見られても恥ずかしがらないお話だよ!」

10666「…………」

10666「これ詐欺だー!?」ガビーン

13510「って訳でどうぞ、とミサカはご案内します」フワッ
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トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
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  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713788018/

ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/

【安価】少女だらけのゾンビパニック @ 2024/04/20(土) 20:42:14.43 ID:wSnpVNpyo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713613334/

ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713522243/

旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713353246/

木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1713351945/

いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713279251/

2 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/12(水) 14:23:04.27 ID:vWXh2MU4o
PC用
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1291227995/
3 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/01/12(水) 15:42:00.68 ID:rXl6RatAO
>>2
ありがとー
4 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/12(水) 19:01:55.52 ID:Kn1BdA97o
服がなくても恥ずかしくないもん!

続きwwktk
5 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/12(水) 19:05:26.14 ID:9Tl4oypX0
がんがれー!
見舞いに行きたいレベルww
6 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/12(水) 21:18:03.87 ID:rXl6RatAO
いよいよクライマックスへ……
人居るなら投下するわ
7 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/12(水) 21:37:59.28 ID:LYYzkOomo
いるぞ 待ってた
8 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/12(水) 22:04:01.18 ID:rXl6RatAO
――――

10666「15555号と14440号も頼む」

一方「任せろォ」

絹旗「超待つです!」ザッ

一方「……何だァ?」

絹旗「私も超着いていきます。フレンダを任せられません」

一方「……ほら、来な」ガシッ

絹旗「う、うわっ!?超飛んでる!?」ピュー

15555「ヤベぇ、一方通行に吸い付いてるみたいだ……ベクトル凄ぇ」
9 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/12(水) 22:04:36.38 ID:rXl6RatAO
――――

10666「……さて」クルッ

麦野「うぅ……フレンダぁぁぁ……」ポロポロ

10666「……大丈夫だよ。冥土返しなら何とかしてくれる。間違いなく助かるよ」ポン

麦野「っ」ビクッ

10666「なるほどなぁ……そりゃあ戦いますわ。私でもそうする」

上条「……一体誰が何の目的で彼女を……」

10666「上条さんの話じゃ、きっとこっちも奴ら関連だろうが……」

麦野「……」

10666「話して、くれないかな?」
10 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/12(水) 22:05:10.00 ID:rXl6RatAO
麦野「……フレンダの言った通り、私は奴らに与えられた。私の腕、目。そして……」

10666「金髪さん、だね?」

麦野「……そうよ。その代わり、歯向かえば殺すと言われたわ。殺すなら何時でも殺せ。そう思ったわ」

麦野「でもそれは私じゃなくフレンダだったの。フレンダを、私が殺した様に、殺すって」

10666「……アンタはあの子を殺したのか?」

麦野「……後悔、したの。すごく、すごくたくさん。何であんなにしたのか分からないくらい――」
11 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/12(水) 22:06:27.94 ID:rXl6RatAO
10666「無くした、玩具、か――」

麦野「――オマエェェ!!」ザッ

10666「――私は、探してる途中なんだ」

麦野「――っ」

10666「だから、悪いが、退いてくれ――」

麦野「…………」

浜面「麦野……」

上条「そんな事がまかり通っていいのかよ、そんなの間違ってる!」グッ

10666「そうだな。そうだ、全くそうだ――」

10666「……13510号の居場所、知ってるかい?」

麦野「……私たちのアジトよ」

10666「案内、してくれないか?」

浜面「な、なら俺が――」

麦野「私が行く。浜面は滝壺見てな」

浜面「……分かった」
12 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/12(水) 22:07:03.93 ID:rXl6RatAO
――――

御坂「ど、どうしたのこの惨状!?」

10666「おぅ、お姉様かい。よっす」ビッ

麦野「…………」

御坂「……アンタ」バチバチッ

10666「まぁそう言ってあげるなって、向こうにもさ――」

10666「――事情があったみたいだから、な」

御坂「……10666号が良いのなら、ね」パチッ
13 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/12(水) 22:09:12.04 ID:rXl6RatAO
――――

麦野「…………」スタスタ

10666「…………」トットッ

上条「…………」スタスタ

御坂「…………」スタスタ

10666「……なぁ、アンタ?」

麦野「何よ」

10666「何でアンタは、あんなにあの子を?」

麦野「……私はレベル5。幼い頃から回りからは一歩置かれてた。家族だってそう」
14 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/12(水) 22:09:41.41 ID:rXl6RatAO
麦野「そんな私でも『アイテム』の奴らとつるんでるのは楽しかった。皆でご飯食べて、浜面からかって、買い物したり……」

麦野「そうね、私にとっての『家族』が『アイテム』だったのかもしれないわ。それを、無くしてから、気付いたわ……」

麦野「……それだけよ」

10666「…………それだけか」

麦野「家族を助けるのに理由なんて要らないでしょ――」

10666「――――っ」

――そうか。そうだったのか。

他の何でも無く。

他の誰でも無く。

13510号は私の――
15 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/12(水) 22:10:24.04 ID:rXl6RatAO
――――

10666「サンキュ、参考になったわ」ニッ

麦野「……そう。着いたわ」ガチャッ

御坂「……誰もいないじゃない」

麦野「な、そんなバカな!?」ダッ

上条「確かに人の気配は無いな」キョロキョロ

麦野「……アイツら」

10666「……なるほどねぇ。なぁ、麦野さん」

麦野「……何よ」

10666「私これからラスボスと戦うんだけどさー、流石に不安だからさー、レベル上げにぴったりのダンジョン教えてくれないかなー?」ニヤッ

麦野「……なら良い場所があるわ」
16 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/12(水) 22:10:58.32 ID:rXl6RatAO
――――

麦野「分かったかしら?」

10666「場所は分かったよ。まぁ、ついでだ。アンタを縛ってる、その鎖。食いちぎってきてやるよ。アンタは金髪の子に着いててやりなよ」

麦野「……ねぇ、何で?」

10666「んー?まぁ単純に言うなら――」

フォース「苛ツイテイマス」

10666「おっ、分かる様になってきたねぇ」ニッ

フォース「学習シテイマスカラ」

10666「上条さん、お姉様」

上条「おう」グッ

御坂「えぇ」ザッ

10666「……怪我しない様にな。お互いに、さ」
17 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/12(水) 22:12:08.94 ID:rXl6RatAO
ちょっと書きためてくる
18 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/13(木) 08:58:14.51 ID:FmUq3dbu0

体弄繰り回したフルチューニングや最新技術+肉体年齢引き上げのミサカワーストがレベル4なのに
科学と魔術が交錯しただけでオリジナル越えしちゃった13510号
守るもののために超電磁砲の壁をぶち破った10666号
なにげにギャグ補正無しでぶっ飛んでる15555号

学園都市は妹達を製造するときに、学習装置を一番気合いいれて造るべきだったな
19 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 09:07:41.41 ID:QvidsE8DO
17600号の口調はあくまでもミサカ口調なのに。
>>1はMNWスレぐらいちゃんと読んでから書けよと思った。


あとなんでアイテム相手に優勢になっちゃうの?
パワーバランスおかしすぎる

どうせこのあと上条や一方通行や垣根でもかなわないとか言い出すんだろ
20 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/13(木) 11:46:09.65 ID:SZfytC5AO
>>18
魂ってのは学習出来ないんじゃね? 少なくとも学習してほしくは無いなー。ミサカには自分で見つけてほしい。

>>19
そんな垣根の無駄使いしませんとも。どんなに努力しようが足掻こうが吠えようが越えられない現実を叩きつけるのがその辺りじゃない。上条さんは違うけど。
21 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/13(木) 11:47:12.33 ID:SZfytC5AO
やっべ上げちまった投下行くわ
22 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/13(木) 11:49:44.86 ID:SZfytC5AO
――――とある研究所、入口

10666「やってまいりました、っと」ザッ

上条「おう」

御坂「やっと終わるのね……」

10666「そうだね、終わらせたいね……お?」

一方「待たせたなァ」ザッ

10666「よ、お疲れさん。で、その脇のは何で連れて来たんだい?」ハァ

一方「……着いてきたいンだとよ」
23 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/13(木) 11:50:20.96 ID:SZfytC5AO
10032「おや、私達では役立たずだとでも?とミサカは非難がましい目で見つめます」ジロッ

10039「13510号が心配なのは私達だって同じです、とミサカは一方通行の背中から降ります」スタッ

19090「ちょっと怖いですけど、とミサカは付け加えます」ブルッ

10666「なら帰ってろ。遊びじゃねぇ――」

打ち止め「そんなの、分かってるよってミサカはミサカは言ってみる」

一方「打ち止め!?オマエどォして……」
24 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/13(木) 11:50:56.16 ID:SZfytC5AO
20000「下位個体使いが荒いよな、とミサカは肩を叩きます」トントン

19999「全くです、とミサカは屈伸します」グッグッ

17600「おーい、上条さん。アンタ不幸だぞ?」

禁書「…………」

上条「インデックス!?何で!?」
25 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/13(木) 11:51:40.38 ID:SZfytC5AO
禁書「とうまが居ないから、クールビューティーと病院にいたんだよ。案の定とうま絡みの厄介事を感知出来たんだよ」ハァ……

上条「ダメだ、危ないから帰ってろ!」

一方「打ち止め……」

打ち止め「私もあの子が心配なの、ってミサカはミサカは強い意志を示してみる」

禁書「……じゃあ今、魔術の事に対応できる人はいるのかな?」

上条「それは……」グッ

禁書「ね。大丈夫なんだよ、無茶はしないし隠れるのは得意かも!」フンス

10666「……くっくっ、ありがとうよ。シスターさん。上位個体」
26 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/13(木) 11:52:11.80 ID:SZfytC5AO
10666「お前ら……」

15555「どうした?」

14440「どうしました?」

10666「……休んで無くて良いのか?」

15555「冥土返しの応急処置は強烈でな」ニッ

14440「動くくらいなら何とか」フンス

10666「……そうかい」ヘッ
27 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/13(木) 11:53:19.03 ID:SZfytC5AO
10666「……どうかな。何か感じるかい?」

禁書「妙な魔術の力を感じるんだよ。きっとウォームビューティーはこの中に居るんだよ!」

一方「オーケィだ、忍び込むぞ――」

10666「バッキャロぉ、私達は喧嘩売りに来たんだぜ?フォース」

フォース「了解」

10666「こんぐらいやらないと、な。『星屑超電磁砲』!」ガガガガガガガガキュンッ!!

ドガァン……

10666「ざまぁみろ」ケラケラ

御坂「ちょ、ちょっと!?こんな事したらすぐバレて――」ワタワタ

一方「いや、待てェ……静か過ぎる?」

上条「……どういう事だ、誰も居ないのか?」

10666「……手分けして調べようか」ザッ
28 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/13(木) 11:54:34.65 ID:SZfytC5AO
中断。病院食食わないと。
29 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/13(木) 13:02:15.90 ID:mV3rEWBDO
>>20
上条は違うってことは上条より強いっていいたいんだろ
一方に2回勝ってたり神の右席にも勝利してる上条よりも

つまるところオリジナルや垣根より強いってことじゃねーか

あんまり適当なこと言うなよ
30 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 14:08:26.63 ID:wuR/9NUDO
原作のご都合主義のせいで上条さんに幻想抱いてる人多いけど
一方さんや美琴がその気になりゃ瞬殺できるし、浜面でも冷静にやりあえば負けない
補正がない上条さんは禁書キャラの中じゃよくて下の上くらい
31 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 14:17:02.62 ID:54GRbiGro
いいじゃないかいいじゃないか
御坂妹が強くてもいいじゃないか
32 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 14:39:39.26 ID:4FEg1YPK0
単純な戦闘力の差で勝負が決まらない、格下が格上を出し抜くのは禁書の醍醐味だけど
上条さんつえーみたいなSSやとりあえず説教させときゃ勝てるみたいなパターンはうんざりだわ
つか普通に考えてテスタメントで戦闘知識を身に付けて訓練もして
重火器一般扱えるシスターズのほうが強いに決まってるわ
まぁオリジナルに勝つにはこのSSみたくちょっとぶっ飛んでるかかまちーが書かなきゃ無理だがn
33 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 15:00:23.59 ID:7MfWrBkpo
現状オリキャラ無双してるようなもんだから好みが分かれるのも仕方ないが・・・

アイテム勢が負けたのは人質取られて無理に戦わされてる立場だから深層の方でモチベの不利があったとかそんなんでいいんじゃね
大体むぎのんの原子崩しに対して完璧な防御手段が無い奴が相手なら
顔見せで滝壺が力場記憶して速攻トンズラ、相手の射程外から逃げ場の無い程度の弾幕ビームで一方的に勝てる

なーんて理論もやりようによっちゃ成立するから力関係的にミサカ勢がアイテムより上ってわけじゃ決してない
状況がミサカ勢に味方した、もしくは話の都合でミサカ勢が勝つ舞台が成立した、程度に考えておくべし
34 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 15:13:52.53 ID:P95DM/ujo
一方さんにAIMジャマーが効かないなら、上条さん置いてって無双すれば良かったのに
全体的に一方さんの弱体化、思考の低下がヤバイ
35 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/01/13(木) 16:06:22.30 ID:SZfytC5AO
>>29>>30
上条「そげぶ!」
一方「遠距離からひたすら鉄骨飛ばすだけの簡単なお仕事ですゥ」
御坂「遠距離からひたすら鉄塊飛ばすだけの簡単なお仕事です」
浜面「遠距離から銃弾を撃ち込むだけの簡単なお仕事です」

確かに……

主人公補正?HAHAHAそんな物があればうちの10666号はとっくに13510号を迎えに行けてますよ。

>>34
おや不思議、上条さんが蜂の巣になったぞ!
上条さんを狙撃→上条さんなすすべ無し→一方さん足止めな訳よ。
もしかしたら結構効いてるのかもね。反射乱れるとかね。
36 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 16:19:57.00 ID:4FEg1YPK0
浜面ってスキルアウト時代にブイブイ言わせてたから誰かさんみたいな路上の喧嘩慣れ程度の実力じゃないし
アスリート並に鍛えた肉体があるし射撃も上手いし天然とヤンデレをゲットできちゃうほどの甲斐性もあるし
本来なら上条さんが勝てる要素ないよね。恐るべき主人公補正
原作が色々ぶっ飛んでるんだから二次SSくらい好きにやって良いんじゃね?
37 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 16:33:16.04 ID:xHisjJRy0
結局、その辺り(主人公補正にしろ、話の都合にしろ)きっちり地の文で書いてくださいって話な訳よ。
セリフだけだと、一切わかんないから。

それが無理ってんなら、頼むから身体先に治して万全でやってくれ。
38 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/13(木) 17:28:12.62 ID:FmUq3dbu0
>>37はツンデレ

まあとりあえず、今は>>1の好きなように書かせようぜぃ
原作じゃレベル0の佐天さんが強力(?)な能力得たり
原作じゃ最強レベルの帝督くんが雑魚あつかいだったり
原作じゃ性別不詳の第一位が鈴科百合子だったり
原作じゃメインヒロインのインなんとかさんがないがしろにされてたり
そんなのSSじゃ当たり前なんだから、いまさら妹達が私の戦闘力は53万状態になっても別にかまわんよ

あと>>1はまじ無理すんなよ
エターなるだけは勘弁して欲しいから
39 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 19:28:28.26 ID:PEpyvI3po
まあそんなに凹むな>1よ。

横突起骨折は手術になる事すらあまり無いから、固定してくっつくの待つだけだ。
筋力低下した分キチンとリハビリすれば問題ない。
頭打ったのは何ともわからん。まあ意識があるんだから大丈夫だよ、うんww
40 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/13(木) 19:29:19.81 ID:SZfytC5AO
10666「オッケー!突破だァ!『星屑超電磁砲』!」

コインの雨霰が『アイテム』に向かって降り注ぐ。その一部は不自然にも10666号の足元に叩きつけられた。

絹旗「――床に向けて?」

麦野「器用にこっちにもかよ、くそっ!」

その雨霰の中の、向かってきた分だけを器用に『原子崩し』は撃ち抜いていく。悪態を吐く余裕は、まだある。

10666「床掘って、っと。頼む!」

星屑が降り注いだ場所には、クレーターのような、ぽっかりとした穴が空いており、そこから僅かに黒ずんだ土が顔を除かせていた。

15555「『断罪の剣』、空間固定……ガハッ」

口腔から血ヘドを吐きながら、15555号は力を使った。切られて身に付いた、粉骨の賜物。砂鉄剣。それを空中に組み上げた。

フレンダ「剣が浮いてるって訳よ…」

フォース「演算引キ継ギ完了、休ンデ下サイ、15555号サン」

15555「お言葉に、甘えて……」

そう一言残して、戦士は伏した。後は任せた、とでも言わんばかりに。

10666「さて、と……」

麦野「…………」

絹旗「…………」

フレンダ「…………」

一睨み、故に構える『アイテム』一同。今や圧倒せんばかりの10666号に不審感を僅かに募らせる。

ぽつり、言った。


>>37
こんな感じになるから止めよう半分消えたチクショォォォォォォォォォ
41 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 22:27:08.97 ID:xGLODwywo
移転だってよ
依頼してきなさい
SS・小説スレは移転しました
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/ Mobile http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/

42 :真・スレッドムーバー :移転
この度この板に移転することになりますた。よろしくおながいします。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 23:57:34.12 ID:/tpavngpo
前スレHTML依頼したほうがいいんじゃない?
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 02:04:31.48 ID:bUnNhwmDO
>>35
そうだね補正無かったら操車場で一方が勝って妹達も御坂もみんな死んでたね

そもそも主人公補正無かったら妹達なんて一方通行に皆殺しにあってるのになに言ってんの>>1は…

ギャグでやってるならともかく、シリアスでやってるなら上条の主人公補正あっての世界観なんだからそれを無視したらもう禁書でSSやる意味ねーだろって話なのに

しかも>>1は上条の主人公補正が嫌いな癖に10666号には上条補正をつけたがる
マジで意味わからん
ついてねーよとか思うバカはこのSSの初期がどういう流れだったかもう一度見てこい


そもそもSSなんて主要人物が他のキャラとうまく絡まり合って意味を成すのに、このSSときたらオリキャラ共が主要格押しのけて黙って見てろ状態
それならマジで余所でやれってなる
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 02:21:35.88 ID:qHaoY3oDO
それに見てみろ>>40
あれだけ否定した主人公補正、しっかりついてるじゃねーか

普通に考えてレベル5と4を抱えたアイテム勢が10666号一人相手に遅れをとるわけがない
特に麦野は戦闘力だけなら御坂より上だと言われているのに
なのに今やクローンの10666号がアイテムをなぎ払わんとする流れ
なにこれ10666号はレベル6にでもなったの?
そうでもなければ補正といわざるを得ない

そして上条の補正は切ってあるなら上条をここに連れてきた意味がまるでわからない
それぞれがあまりにも不自然すぎるからギャグでやれば?
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 02:42:36.33 ID:LwX37wxio
うるさいもしもしだな
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 03:59:04.60 ID:qiwM28SIO
男は黙って(ry
48 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/01/14(金) 09:10:18.98 ID:6PTBpEVAO
>>44
じゃあ敵側の気分で考えてみるんだよ。一方通行や幻想殺しに対して有利に作戦を進める為には?

相手をしない事が一番なんだよ。

んで、ネタバレにもなるんだけれども、10666号は上条さんと違って、自分で何かを成し遂げれてないのよ。

男sは倒せないし
二回目男sは一方的だし
13510号を最初に見つけられないし
打ち負けるし
連れて帰れないし
アイテム戦はジリ貧だし

全部何かしら他人のおかげなのよ。
ミサカ達だったり
御坂だったり
上条だったり

上条さんは「上条さんのおかげで何とかなりました!」だけど10666号はそうじゃないのよ。
49 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/01/14(金) 09:16:16.39 ID:6PTBpEVAO
>>45
15555号を忘れないであげて……

10666号は『超電磁砲』に限りオリジナルより頑張れるのよ。故の燃費の悪さが目に見える弱点なんだね。他にもあるけど気づいて無いみたいで作者としては嬉しいね。

上条を連れてきた意味が分からない?
ヒャッホォォォォォォォォォォォ!!!超誉め言葉だぜ、展開が読まれて無いって証拠じゃんか。
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/14(金) 10:13:24.08 ID:QaIk/jMDO
書き溜めの無いSSで展開読めないのなんて当たり前だろ
いくらでも修正きくんだから
頭おかしすぎるんじゃないの>>1

全部構成終わってる=展開決まってるなんて言い訳やめろよ
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 10:50:15.79 ID:Z4vCkzpq0
>>50
もうおまえスレ閉じて原作でも読んでたほうがいいよ
>>1がやる気なくして飽きた寝るされるのが一番困る
そもそもこういう話になるのは前スレ>>1みりゃ予想できただろうが
52 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/14(金) 10:58:12.73 ID:6PTBpEVAO
>>50
いや全く仰る通りで。気付く所が無いと言えば嘘だしね……

とりあえず書き溜め投下するね。
53 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/14(金) 11:00:27.34 ID:6PTBpEVAO
――――

10666「誰も居ないな……」キョロキョロ

14440「どうしたのでしょうか……」

禁書「……魔力は微かに感じるんだよ」

――――

一方「居ねェな……」

打ち止め「もぬけの殻かもってミサカはミサカは推測してみる」

10032「まさか罠、とミサカは嫌な予感を隠せません」

――――

20000「段ボールの中には……」

17600「私ぐらいしか入らないよ……」

15555「……護衛の一人も無し、だと?」

――――

19999「段ボール……」

19090「それさっきやったネタですよ、とミサカはネタ被りの危険さを伝えます」

10039「いませんね、とミサカは辺りを見回します」

――――

上条「居ねぇな……」スタスタ

御坂「妙ね……」
54 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/14(金) 11:01:26.08 ID:6PTBpEVAO
――――

スーツ「では、幻想殺しに接触します」

老人『くれぐれも、ぬからないでくれたまえよ?』

スーツ「勿論です、では」ピッ
55 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/14(金) 11:02:14.59 ID:6PTBpEVAO
――――

スーツ「(私からは御坂美琴が見えない位置だな……よし)」

スーツ「止まれ、幻想殺し」ジャキッ

上条「なっ」ザザッ

スーツ「一人とは……生憎と只今儀式中でね。全く、あの広場で死んでおけば良かったものの……」

上条「(……コイツは御坂に気づいてない、やれる!)」チラッ

御坂「」コクッ

上条「儀式……?」

スーツ「そうだとも。13510号を使って、神を創るのだよ。わざわざ偽の情報を送ったのに、貴様らを陽動させきれなかった……」

上条「やはりアレは……」

スーツ「……計画の破綻要素は取り除かねばならぬ。死ね、幻想殺――」
56 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/14(金) 11:02:40.40 ID:6PTBpEVAO
上条「御坂ぁ!」

御坂「分かってる!」バチッ

スーツ「何っ!?」ドタッ

スーツ「……くそ」

上条「甘かったな……13510号は何処だ?」

スーツ「……言う訳なかろう。貴様を近付ける訳には」

御坂「……何処よ」バチバチバチッ

スーツ「くっ……そこの扉を行った先の実験室だ」

上条「よし……行くぞ御坂!」ダッ

御坂「あ、待って――全く、自分で先々行っちゃうんだから」
57 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/14(金) 11:03:27.33 ID:6PTBpEVAO
――――

老人「人は、自分の疑問に自分の望む答えを提示されると、それで納得してしまう」

老人「全く、バカな男だよ」

――――
58 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/14(金) 11:05:32.37 ID:6PTBpEVAO
――――

10666「それは本当か、お姉様!」

御坂『えぇ、見つけたわ』

10666「一体どうやって……」

御坂『前にアンタを連れて行こうとしたスーツ男が居てね、そいつから聞き出したわ』

10666「そうか、上条さんは?」

御坂『先に行ったわ。何だか儀式をしてるとか何とか……魔術は良く分からないけど、それを止めに』

10666「そうか……どうかなシスター。何か儀式みたいなんしてるらしいが、何か感じるかい?」

禁書「へ?そんな魔力感じないんだよ?何かの間違いじゃないのかな?」

10666「――なんだと?」
59 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/14(金) 11:06:02.10 ID:6PTBpEVAO
――いや待て、何故スーツ野郎は一人で居た?

上条さんを止めるなら全力で当たるべきだ。

奇襲?いやそれにしたって4、5人いても良いだろう。

上条さんを止める事がそもそもの間違い――――

10666「っ!?」

――上条当麻襲撃プラン。

上条当麻の足止め。

あの情報はもしかしたら――

内容まで嘘っぱちだとしたら――
60 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/14(金) 11:06:30.32 ID:6PTBpEVAO
10666「罠だお姉様!それもとびっきりのな!」

御坂『え、えぇ?』

10666「良いから上条さんを止めろ、取り返しのつかない事になるぞ!」ピッ

10666「14440号は皆に連絡を、私は先に行く!」ダッ

14440「……気をつけて」
61 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/14(金) 11:07:10.85 ID:6PTBpEVAO
――――

スーツ「……行ったか」

兵1「回収に参りました」

スーツ「ご苦労、研究所を包囲しろ。何としても触媒を確保せねばならぬ」

兵1「はっ」
62 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/14(金) 11:07:48.05 ID:6PTBpEVAO
――――

上条「ここに居たのか!」ザッ

ミサカ「当、麻?」ビクッ

――急げ

上条「大丈夫、もう安心だ」スタスタ

ミサカ「……本当?」

――止めろ

上条「あぁ、お前の幻想を殺してやるさ」ニコッ

ミサカ「当麻……」

――間に合え

バタン!

10666「13510号!」

ミサカ「え」

上条「どうした?」ナデッ

パキィィィィン――――
63 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/14(金) 11:11:50.79 ID:6PTBpEVAO
13510「あ、あぁ……」フラッ

上条「お、おいどうした?」アセアセ

10666「退け!」ドンッ

10666「13510号、大丈夫か!しっかりしろぉ!」ガシッ

13510「いやぁ……いや……いや……やぁ……ちがう、ちが、う……」ガクッガクッ

13510「――――うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

10666「――う、ぐ」グラッ

――ネットワークにノイズが流れ込んでやがる!
64 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/14(金) 11:13:39.04 ID:6PTBpEVAO
私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰私は誰
65 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/14(金) 11:15:03.58 ID:6PTBpEVAO






ワカラナイ





66 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/14(金) 11:15:33.37 ID:6PTBpEVAO
――――

打ち止め「う、おぇ……」ドサッ

10032「う、あ――」ガクガク

一方「お、おいオマエらァ!?」

――――

15555「喧、しいな――」ガクッ

17600「何――」ヘタッ

20000「頭がケツみたいに割れそ――」

――――

19999「こんな状況でも必死にボケてる気がす――」ドサッ

10039「――ぐぅ」

19090「ひぃっ、ひぃぃ……」
67 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/14(金) 11:17:32.36 ID:6PTBpEVAO
――――

14440「う……」グラッ

禁書「これは……良くない魔力の感じがするんだよ」ザワッ

――――

13510「うぅ……ううぅ……」フラッ、フラッ――

10666「お、おい――!?」

――何だ?

眩し、い――
68 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/14(金) 11:19:52.80 ID:6PTBpEVAO
――――

10666「――う、あれ?ここは――」

上条「良かった、気が付いたな」ホッ

御坂「これで全員ね」

――――あれ?

雨が降ってるけど

この空

私は何処かで

なら地面は――
69 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/14(金) 11:20:53.60 ID:6PTBpEVAO
10666「水面、か……」

禁書「――ここを知っているのかな!?」

10666「世界、だ。せかいなんだよ、ここは――」ムクッ





光なんて見えない

薄暗い

狭くて

広くて

浅くて

深い

寂しい

10666「――ごめんな……一人ぼっちにして」グスッ
70 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/14(金) 11:21:44.66 ID:6PTBpEVAO
10032「どういう事なんですか、とミサカは回答を期待します」

19090「まるで世界の果てみたいです、とミサカは感受性豊かな感想を述べます」

15555「強ち間違ってないぞ、多分だが」

10666「アイツの、魂みたいなもんかな……多分だけど」

一方「魂ィ……?」

禁書「結界術式にも似てるんだよ……」

14440「あんまり誰かれ入ってきてほしくない場所……なのでしょうか」
71 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/14(金) 11:22:15.68 ID:6PTBpEVAO
――――

兵1「奇妙な力場があり、近付けないようです」

老人『ふむ、なら出てき次第確保を』

兵1「了解」
72 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/14(金) 11:23:19.65 ID:6PTBpEVAO
――――

フレンダ「…………」スゥスゥ

麦野「…………」

絹旗「…………」

浜面「…………」

滝壺「…………」

13577「……すぐ行きます、とミサカは学園都市のミサカ達に連絡を取ります」

打ち止め『頼んだよってミサカはミサカは任せてみたり』

13577「……急がねば、とミサカは走り――」

麦野「何処へ行くの?」

13577「上条当麻らが侵入している研究所です。何やら妙な空間に取り込まれたとの事です、とミサカは第四位を怪しみながらも伝えます」

麦野「……多分伏兵がいるはずよ。私も着いて行っていいかにゃーん?」ニヤァ

13577「な、何を――」

絹旗「借りを超返しに、ですね。麦野?」パキペキ

麦野「その通り、よ」
73 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/14(金) 11:24:30.27 ID:6PTBpEVAO
離脱。
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 11:30:53.35 ID:Z4vCkzpq0

上条さんが13510触ったとき、お姉さま何してたの?
しかもスーツの男回収したって、気絶もさせないでのんびりとしてたの?
あと一方通行はもう少し行動起こせw打ち止めがやばいということは、あんた廃人になりかねんのだぜ

続き期待してます
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/15(土) 02:49:15.31 ID:kLHNLu8IO
ちょっち余計なものが絡まっとるのー

ちゅうにー好きだからおれは読むけどな!
76 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/01/15(土) 13:48:05.69 ID:hPg2+UoAO
前スレリンク変わってたわ
http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/1294926773/l20
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/15(土) 15:29:20.38 ID:XQVtEuU9o
つか前スレちゃんとhtml依頼出しとけよ
ルールは守ろうぜ
78 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/01/15(土) 19:32:02.64 ID:hPg2+UoAO
そういやそうだ。行ってくる。
79 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/01/15(土) 21:05:41.58 ID:hPg2+UoAO
あれ……でも1000行ったスレって確か報告しなくても良かった気が……やらかした?
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/15(土) 21:27:49.45 ID:3npRXOiDo
ここは1000行っても残り続けるからHTML申請しなきゃだめよ。
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/15(土) 23:05:53.85 ID:an6ipk+lo
1000いってるスレまで移転してくれたからね
82 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/16(日) 21:31:02.19 ID:qtLSjebAO
あああムラムラするゥゥゥでも病院だからどうしようもねェェェェェェ番外個体とラブラブ子作りしてェェェェ

欲求不満を昇華する捌け口に書いてる気分だ……居たら投下開始する。
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 21:38:00.49 ID:uM0Invuq0
夜トイレの個室池
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 21:39:34.27 ID:KlpguMhGo
それではナース服を着たこのミサカが>>1のお相手をいたしましょうとミサカはいやらしい笑みをあbbbbbbb
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 21:49:45.48 ID:p8zs44QSo
イルヨー
86 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/16(日) 21:51:10.47 ID:qtLSjebAO
>>83
腰がやられてるから動けないんだよチクショォォォォォォ!!
>>84
ちょ、何でどうしてそこで諦めるんだよ!20000号とかとならぶっ続けでやれそうな気がすあbbbbbb

まぁこの状況下で暇だからってピクシブとか行くもんじゃないね。修行通り越して拷問だね。

とりあえず投下行くわ
87 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/16(日) 21:55:52.84 ID:qtLSjebAO
――――

20000「しかし何も無い場所ですね、とミサカは幼女の丘を思い浮かべアババ」ビクンビクン

打ち止め「ハァ……で、どうしようってミサカはミサカは問題提議!」クルッ

禁書「迂闊に動くのは危険なんだよ」

一方「ここの空間どォなってンだァ?正確な演算が出来やしねェ……」

10666「何か道標でもあれば話は違うんだけどな……」

バキュン!

――銃声!?

10666「誰だ!?」バッ

「侵入者を排除します、とミサカは任務を遂行します。貴方たちは既に包囲されています、抵抗は無駄です。とミサカは勧告します」ジャキッ
88 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/16(日) 21:56:24.31 ID:qtLSjebAO
ザァァァァァァァァァァァァァァァッ――――

14440「か、囲まれてるっ!?」

19090「い、一万人ぐらいのミサカがいますよ!?とミサカはざっと数えただけでは数えきれなかった事に驚きます……」ビクッ

打ち止め「貴方……誰?ってミサカはミサカは詰問してみる」

「私ですか?とミサカは質問を繰り返します」

10666「あぁ、何のつもりか知らないが、私らもミサカシリーズなんだ。道を開けてくれよ」

「それは出来ません。この先には13510号がいます。とミサカは13510号が怯えている事を伝えます」

禁書「あ、貴方まさか――」

「ミサカの検体番号は――」




10666影「10666号です。とミサカは目の前のアンノウンに告げます」




89 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/16(日) 21:56:52.70 ID:qtLSjebAO
――――

10666「そういう訳にもいかないんだよ、13510号を連れ出してやらなきゃ……私だってんなら分かるだろ?」

10666影「彼女はここに居たがっています、とミサカは主張します」

10666「そりゃあいつの為にならねぇんじゃないか?」

10666影「その様な事は関係無く、彼女が望むなら叶えねばなりません。違いますか?とミサカは貴方に問います」

10666「確かに、その通りだ。なら、あいつの願いは本当にそれか?」

10666影「えぇ、彼女が言いましたから」

10666「……やっぱ駄目だな、お前。仕方ないけどさ、暫く勉強してきな。昔の私」ピンッ

10666影「っ」ジャキッ

10666「遅い、『超電磁砲』――」バキュンッ!
90 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/16(日) 21:57:23.46 ID:qtLSjebAO
打ち止め「ちょ、ちょっと――」

10666影「」ボフンッ

10666「消えたか……皆気にするな。どうせ幻――」

10666影「やはり強制排除ですね、とミサカは話し合いを諦めます」ジャカッ

10666「――へぇ、無限沸きかい。くそっ」チャリンッ

10666「一方通行、銃弾の反射任せる」ボソッ

一方「ここ物理法則おかしいみてェだから保証はしかねるぜェ?」ボソッ

10666「上位個体が居るんだ。アンタにミスはないさ」ニッ

一方「……けっ」

10666「おい、みんな」

ネットワーク通信、完了っと――

10666「走れ。逃げるぞ!」ダッ
上条「オッケー!」

御坂「え、えぇっ!?」

ダダダダダダッ……

10666影「追いましょう、とミサカは妹達に指示を出します」

ザザザザザザザッ!
91 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/16(日) 21:58:02.69 ID:qtLSjebAO
――――

上条「逃げるったって――」ダダダダダッ

「隙有りです、とミサカは銃口を男に向けます」チャキッ

上条「う――」ビクッ

10666「『超電磁砲』!」ガチュン!

「あ――」ボフンッ

10666「躊躇うんじゃない、上条さん!」

上条「し、しかし――」

御坂「や、やりにくいのよぉ。もう!」バチバチッ

「ぎゃ」ボフッ

「ぐぅ」ボフッ

一方「ちィっ、頭がおかしくなっちまいそォだ……クソッタレェ……」カキンッ、カキンッ

「がっ」バフンッ

「げはっ」ボフッ

禁書「わ、わわっ!?」フラッ

「これで止め――」チャキッ

上条「くっ……この!」パキィィィン

「――――」

上条「幻想殺しは効くのか……」
15555「きりが無いし、気分も悪い……戦意を削ぐには効果的過ぎるな」バキッ

「きゃんっ」ボフン
92 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/16(日) 22:00:39.56 ID:qtLSjebAO
――――

10666影「何故貴方は13510号を傷つけようとするのですか?とミサカは問います」バチンッ!

10666「傷つけない為だ!」ガキュンッ!

10666影「理解出来ません。来るな、と言っているのに行くのですか?とミサカは疑問に感じます」

10666「……だったら何でお前はここに居るんだよ?」

10666影「え?」

10666「『誰か、助けて』って聞こえるから私は走ってんだよォォォ!!今のお前にゃ分からんだろうがな!」ピィン――

――不愉快だ。

失せろ、昔の私。

10666「『超電磁砲』!」ガキュウウゥゥゥン!

10666影「あ――」

10666「そこで立ち上がれないのが、お前なんだよ。我ながら情けないがね……」
93 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/16(日) 22:01:20.41 ID:qtLSjebAO
――――

15555「くっそ、きりが――っ!?」バッ

ドガガガガッ

「機銃を回避するとは何とイレギュラーな個体なのでしょうか、とミサカは驚きます」ジャキッ

15555「お前――」

15555影「ミサカ15555号、とミサカは自己紹介します」
94 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/16(日) 22:01:49.12 ID:qtLSjebAO
――――

10032「な……」

10032影「貴方は一体何をやっているのですか、とミサカは詰問します」

10039「洒落になりませんと――」

10039影「ミサカは言いますか?とミサカは予測します」

19090「ひっ……」

19090影「何を怯えているのですか?とミサカは貴方の恐怖の理由が理解出来ずにいます」

14440「…………」

14440影「ここに来る理由は何ですか?とミサカは無関係なミサカに問います」

20000「わお?」

20000影「下がって下さい、とミサカは目の前の個体に語りかけます」

19999「わふー?」

19999影「威嚇ではありません、とミサカは目の前の個体に銃口を向けます」

17600「ちっ……」

17600影「なかなか重火器の扱いに慣れていますね。とミサカは感心を覚えます」
95 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/16(日) 22:02:27.47 ID:qtLSjebAO
「何故」

「そんなに」

「13510号を?」

「代えなど」

「幾らでも」

「あるでしょうに」
96 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/16(日) 22:03:46.32 ID:qtLSjebAO
10032「――代えなんてありません!とミサカは――違う!」ブンブン

10032「代えなんて無い、ミサカ達は既に一人のミサカです!」

10039「だから、助けに来た訳です。とミサカは――おっといけない」

19090「こんな場所で一人は怖いだろうから、とミサカは――いや。怖いでしょうから……」

14440「私は、アイツが頑張ってるから着いて来ただけです」

19999「まずはアナニーの気持ち良さを知ってからです。じゃないとお話になりません」チッチッ

20000「人によって締まりは違う。つまりそういう事です」キリッ

17600「チクショォォォ!!この流れじゃ私何言っても『空気読めねェな全く……』みたいな雰囲気になるじゃねぇかァァァァァ!?」ガーン!

10666「へへっ……まぁ、でもさ。みんなおんなじだろ?」
97 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/16(日) 22:07:41.51 ID:qtLSjebAO
ミサカ一同「――えぇ、不愉快です」

10666「その通り!一掃するぞ、みんな伏せろォ!」ジャラジャラジャラッ

フォース「マスターノ周辺に電磁フィールド展開、完了」

――囲まれてるなら

全方位に撃ち込めばいいんだろうが!

10666「『乱舞超電磁砲(レールガン・ダンス)』!!」ガキュガキュガキュガキュガキュガキュガキュッ!

「がっ」

「――」

「っ」

ボボボボフンッ

――ジャキジャキジャキッ

10666「……こう見ると私らって多いと思うなー」タラー

上条「こっちが包囲薄いぞ!」

禁書「に、逃げるんだよ!」タッ

17600「隠れる場所も無いのは困る、ね」バキュン、バキュン!

10039「知らない間にアサルトライフル組まれたこっちの方が困りますよ……」タタッ
98 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/16(日) 22:08:25.11 ID:qtLSjebAO
――――

13577「な、何ですかあの物々しい武装集団は……とミサカは研究所に来た事を若干後悔します」ブルッ

麦野「粗方待ち伏せかにゃーん……キヒッ」ニヤッ

絹旗「特に対能力者用の機材も超見えませんね……では」

麦野「派手にお礼参りよ!」チュンッ

絹旗「超れっつごー!」ダッ
99 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/16(日) 22:09:03.91 ID:qtLSjebAO
――――

ドカァァァァン――

兵1「ゲホゴホッ――『原子崩し』、『アイテム』か!?」

兵2「マズイですよ隊長。今の我々では全滅しかねません。隊長、後ろに」

兵1「ちっ……部隊を纏めて下げるか……」ピピッ

兵1「こちら兵1です。『アイテム』の襲撃を受けました。負け戦になりかねませんが、撤退のお許しを頂けますか?」

老人『……仕方あるまいね。下がっていいよ。お疲れさま』ピッ

兵1「……よし、全隊撤退!威嚇しながら後退するぞ!簡易ジャマーの準備を!」
100 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/16(日) 22:09:35.17 ID:qtLSjebAO
――――

麦野「うっ……ジャマーかしら?」クラッ

絹旗「このぐらいでは……っと」

13577「ちょ、くらくらする……とミサカは隠れながらも被害に合います」

兵1「よし、一斉掃射後、後た――」

「そりゃ頂けないねぇ、キャハッ☆ 逃げるんなら逃げるでさっさとケツ振ってとんずらこきなよ玉無し包茎さん☆」バチバチッ

ボムッ!

兵1「くっ……あ、新手か!?」
101 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/16(日) 22:10:29.73 ID:qtLSjebAO
番外「ジャマー対策バッチリのお姉さんが坊やの玉ぁ、空っぽにしちゃうよぉ……キャハ☆」

13577「や、奴は確か地獄のミサワ。目が離れ過ぎて――」

番外「13577号、後でれーぷか、く、て、い☆」ニッコォォォ

13577「勘弁して下さいとミサカは音速もドン引きする速さで土下座します」シャキン!

番外「とかやってる間にスタコラサッサー、だねぇ☆統率だけは取れてるなんて繁殖期のアリみたい☆」

番外「だぁいじょーぶー、お姉さーん?」ニヤニヤ

麦野「うわ何コイツ凄いムカつく死ね」チュンッ

番外「わー怖ぁい☆ミサカ怖い牝豚嫌いなんだよね、キャハッ」パシッ

麦野「あぁん!?やんのか淫売!」ピシッ

絹旗「ま、まぁ超味方のようですし、超抑えて抑えて……」ドウドウ

13577「すいませんでしたァァァァァ!!?とミサカは番外個体と我が身の為に頭を下げます!ほら、謝って!」グイグイ

番外「チッ、反省してまーす☆」ペコリ

麦野「まず語尾の『☆』を何とかしやがれこんチクショォォォ!!?」バタバタッ

絹旗「超落ち、落ちついて下さ――」ガシッ

麦野「離せ絹旗ァ!何か凄い腹立つのよ!キャラ被ってる感凄いって言うかもう食われかけてるのよ!」
102 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/16(日) 22:13:49.50 ID:qtLSjebAO
――――

打ち止め「はぁ、はぁっ……疲れてきたよってミサカはミサカは走り過ぎてヘトヘト……」フゥフゥ

一方「気張れ打ち止めァ、危ねェ弾は全部止めてやってるから心配すンな」キン、キンッ

打ち止め「うん、分かった……ってミサカはミサカはあいたァ!!?」ゴツン!

一方「ど、どォした打ち止めァ!?」アセッ

打ち止め「いたた……何か見えない壁みたいのがあるってミサカはミサカは確認してみる」

禁書「何だか先は更に魔力が強くなってるみたいなんだよ。きっと近くに居るんだよ!」

10666「な、何だって!?何処に壁が――」ヌルン

――――ゾク

10666「――私は通り抜けれたみたいだ……全然空気が違う」
103 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/16(日) 22:14:30.14 ID:qtLSjebAO
御坂「こっちとそっちで何が――ひっ」ヌルン

上条「お、おい御坂?」バキィン!

一方「……解析、こンなもンかァ?」スルッ

禁書「これは……術式はよく分からないけれど、こうかな?」スルリ

――関係無く入れたのが私とお姉様?

上条さんは無理矢理踏み込んだ感じがするし――

10666「おいお前ら、こっちだ!」フリフリ
104 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/16(日) 22:14:58.71 ID:qtLSjebAO
10032「いい加減電撃の撃ち合いも飽きてきた所で痛い!?」ゴツーン

14440「……いった」ボソッ

17600「どういう事だ……?」コンコン

20000「心の綺麗な人間しか通れないのですね、分かりました」キラキラ

19999「キラキラしても私達じゃ無理ですよねー……ですよねー」キラキラ、ゴンッ

19090「き、来てる来てる!?とミサカはあのミサカ達の後続が来てる事に戦慄します」ガクブル

10039「ちょっ、何ですかこのAbsolute-Terror-Field!?とミサカは心の壁に憤慨します」プンプン

15555「心の壁か。強ち間違いでも無いかもな――」ザァッ
105 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/16(日) 22:15:44.13 ID:qtLSjebAO
15555「『断罪の剣・二刀』」シャキンッ

10666「お、おい何を――!?」

15555「お別れだ。貴方達はその先に行け」ザッ

御坂「そ、そんな――!?」

10032「……そうですね。私達では、どうやら役者不足のようです。とミサカは13510号の目に掛からなかった事を悔います」バチバチッ

上条「御坂妹!?」

打ち止め「……そっち、ネットワーク繋がらないねってミサカはミサカは10666号に問いかける」

10666「あぁ。困ったな……ミサカこれだけ居て、行けるのは私だけかよ……けっ」ヘラッ

打ち止め「少し羨ましいってミサカはミサカは微笑んでみたり」クスッ

一方「打ち止めァ……」

打ち止め「貴方は行ってあげてってミサカはミサカはそっちで何が起こるか分からないって懸念してみる」

一方「……しかし」
106 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/16(日) 22:16:23.68 ID:qtLSjebAO
ドスンッ

17600「お?」

13577「痛ェェ……ミサワその内ぶっ飛ばす。とミサカは毒づきます」スリスリ

14440「13577号?どうしてここに!?」

13577「実は……」

「逃しません」

「とミサカは」

「逃げ場を奪い」

「銃口を突きつけます」ジャキッ

13577「何この状況……ネットワークで頼むわ、とミサカは記憶共有を求め……なるほどォォォ!?」ビクッ

10039「八方塞がりです、とミサカは少し武者震いします」ブルリ

一方「やっぱ俺は残――」
107 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/16(日) 22:18:22.80 ID:qtLSjebAO
「いいからさっさと行きなよ。そんなんだからアンタはポークピッツなんだよ、ギャハッ☆」バリバリバリッ!

「ぎゃっ」ボフッ

「ぐ」ボフッ

「ぎゃふん」ボフッ

一方「お、オマエ……」

番外「ヤッホー、お手伝いに来たよ☆」ニャハッ

打ち止め「番外個体……」

番外「さ、ミサカがコイツら全滅させない内に、向こう助けだしてきなよ☆」

番外「心配しないでよモヤシぃ、我らがロリ個体は命張って守らせてもらうからさァ。キヒッ☆」

番外「――行けよ」

一方「――約束は守れよォ?」クルッ

番外「さぁてね?」ニヤァ
108 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/16(日) 22:18:57.32 ID:qtLSjebAO
――――

タタッ……

14440「……行きましたね」

10032「えぇ。しかし13577号と番外個体はどうやってここに?」

13577「それが……」
109 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/16(日) 22:21:52.36 ID:qtLSjebAO
――――

番外「奴らも居なくなったし、行くかなぁー、ヒヒッ☆」

麦野「イくって?」

番外「こういう事☆」ガバッ

13577「ちょ、何で私を押し倒すんですか!?とミサカは異論を唱え――ヒャア!」ビクンッ

番外「綺麗な足……☆」スルッ

13577「ひゃ、あぁんっ……」

絹旗「超おぉぅ……」プルプル

麦野「落ち着きな、『超』が変な場所に付いてるわよ……」

番外「」ニヤッ

ガッシ!

13577「へっ、私の足を抱えて何を――」
110 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/16(日) 22:22:29.53 ID:qtLSjebAO
――――

13577「そのままジャイアントスイングされて研究所の敷地内に叩き込まれました……とミサカは若干トラウマです」

番外「ミサカ達なら入れるかどうか確認したかった。今は反省している☆」キャピッ

10032「うぜー、何これウザいとミサカは思いながらも予想外の侵入方法に驚きます」

番外「ま、でも」バチンッ

「――――」ボフンッ

番外「こんな妹達に、ミサカが負ける訳無いから☆暫く遊べるんじゃないかなー☆」

15555「ほら、無駄口叩いてないで時間稼ぐぞ。奴らが向こうに行けない保証は無いんだから」シャキンッ
111 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/16(日) 22:25:16.49 ID:qtLSjebAO
って所で本日終了っと。
戦闘描写が出来なくて困った部分だったなー……いつか動く媒体にしたいなー
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 22:40:04.48 ID:p8zs44QSo
おっちゅおちゅ
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/16(日) 23:54:14.50 ID:uM0Invuq0

個室じゃないのか・・・つらいな
男である以上ムラムラすんのは仕方ないから、カーテン閉めて布団の中で静かに自己処理するしかないな
ネタは携帯であるだろうから、ファブリーズとティッシュだけ友達に持ってきてもらえ
布団がこすれる音と息が荒くなること、あとは精液の匂いにだけ気をつけるんだ。ティッシュは普段の3倍は使え

何かするたびに逐一ちくちく10666号に怖い目で見られる上条さんマジ乙
114 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 00:28:24.65 ID:C/2HVu6AO
いや自室は個室だがティッシュでバレると恥ずかしいだろ言わせんな恥ずかしい///

もう何か賢者の領域に踏み入れた感じがする。
115 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 00:29:56.86 ID:C/2HVu6AO
上げちまったし投下行くが構わんね?
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/17(月) 00:37:52.99 ID:b4t0AdoVo
どうぞどうぞ
117 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 01:01:18.79 ID:C/2HVu6AO
――――

禁書「う……気持ち悪いんだよ」フラフラ

御坂「空気が重い……のかしら?」ググッ

上条「俺はそんなに感じないが……魔術の類いなんだろうな」

一方「これまた良く分からねェベクトルだ……」キィン――

10666「……もうすぐか?もうすぐお前の元へ……」ググ……

上条「しかし、何だ?さっきの所と比べて、暗くて、毒々しい……足元も何だか……肉……か?」グチャッ
118 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 01:01:56.41 ID:C/2HVu6AO
10666「人間の一番汚い部分なんだろうさね……進もう――」

「ダメ――」

「いっては――」

「ダメ――」

「とミサカは――」

一方「――何だァ!?」バッ

「ダメ――」グチャッ

一方「み、ミサカ、シリーズ?」
119 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 01:02:22.55 ID:C/2HVu6AO
10666「ちっ、またかよ!お前らも私か!?」チャリンッ

「ミサカは――」

「1、号――」

「152号――」

一方「――オイオイオイィ……勘弁してくれェ……」

10666「――デッドナンバーズか。優しいな、13510号。ちゃんと覚えてるんだから」フッ

「いかな、いで」ズルッ

「ここにい、て」グチャッ

禁書「ひっ……」ガクガク

御坂「こんな、こんな事って……」
120 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 01:03:03.77 ID:C/2HVu6AO
ガシッ!

御坂「――え」

「おねえさま」グチョッ

「おねえさま」

「おねえさま」

御坂「ひっ!?」

「10666号」

「10666号」

「10666号」

10666「……私で良いのか?」スッ

上条「バカ、何を――」パキィンッ

一方「クソッタレ――」ドガッ!

「あ――」
121 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 01:03:33.48 ID:C/2HVu6AO
御坂「た、助かったわ……」

10666「…………」

上条「――おい、10666号!」

10666「あぁ、分かってる。分かってるさ――」

禁書「……また囲まれてるかも」

10666「ターゲットは私とお姉様みたいだなぁ……居場所が欲しいのかい?」

御坂「こ、これは流石にちょっと……何でアンタ平気なのよぉ」ガクガクッ

10666「……量産されてみりゃ分かるかもよ」ニヤッ

一方「また八方塞がりだ、上条……」ザッ

上条「あぁ、突破しなけりゃな」グッ
122 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 01:06:09.10 ID:C/2HVu6AO
「おねえさま――」

「おねえさま――」

御坂「ひゃ――」

バキュンバキュンッ!

「が――」ドチャッ

「う――」グチャッ

御坂「え、何――」

「早く行って下さい!とミサカはお姉様を叱咤激励します!」ジャキッ!

御坂「――妹達?」
123 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 01:08:48.79 ID:C/2HVu6AO
9982「ミサカは検体番号9982号です、覚えておいででしょうか。とミサカはお姉様にバッジを見せます」キラッ

一方「――っ」

御坂「あ、アンタ――」

「話してる暇はありませんよ!とミサカは10666号達を急かします」

10666「お、お前――」

8222「約束を、頼みます。とミサカは10666号に――」

10666「おう、よ。任せろ……任せろぉ……」フルフル
124 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 01:09:27.92 ID:C/2HVu6AO
9982「さ、ここは私たちが食い止めますから」

8222「早く13510号の元へ、とミサカは妹達にライフルを構えます」ジャキッ

上条「……行くぞ」

御坂「――――」ポロポロ

禁書「……ミコト」

10666「悪い……頼んだ」

一方「……済まねェ」

8222「気にしないで下さい。とミサカは一方通行に言います」

9982「お姉様、ミサカは本当のミサカ自身ではありませんが――ミサカの意思はミサカそのものです」
125 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 01:10:16.09 ID:C/2HVu6AO





9982「……バッジ、ありがとうございました。大切に、持ってます」

御坂「――――」





126 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 01:10:47.45 ID:C/2HVu6AO
8222「行って下さい!」

10666「分かった、行こう皆!」ダッ

上条「……行こう御坂」グイッ

禁書「ミコト……」ギュッ

御坂「ふ、ふぇぇぇぇぇん……」エグエグ

一方「…………」
127 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/01/17(月) 01:12:24.55 ID:C/2HVu6AO
もう少しで終わるかなぁ……投下終了な。
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/17(月) 01:20:13.68 ID:OcI+K/nNo
9982は卑怯だコノヤロウ…
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/17(月) 11:52:26.26 ID:ZfOdQy8ao
一方通行にも厳しいシチュエーションですね
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/17(月) 13:49:56.09 ID:Dv4bsU7S0
番外個体一人と戦うだけでぶっ壊れたっていうのに
このシチュエーション、お姉さまや10666号並かそれ以上に、一方通行にダメージあるだろ
まあ上条さんか10666号がぶんなぐって説教すればすべて解決するか
131 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 20:39:06.08 ID:C/2HVu6AO
俺の煩悩がヤバい。もう入院して一週間越えました。ここまで来たらもう一ヶ月ぐらい耐えようと思うレベル。ていうか腰だから出来ね。

>>130
番外個体は一方通行の精神を破壊する為だけの妹だったから更に効いてると思われ。いやこの状況も十分キツイけど。

誰か居るなら投下開始するわ。
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/17(月) 20:56:41.28 ID:NO1bJgHKo
カモーン
133 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 21:56:46.53 ID:C/2HVu6AO
――――

歩いて

歩いて

どれぐらい来たかな

歩いて

歩いて

みんなどこへ行った――?

歩いて

歩いて

今、私は何処にいる――?
134 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 21:57:39.78 ID:C/2HVu6AO
――――

禁書「み、みんなどうしたのかな!?急に立ち止ま――」ハッ

禁書「――ここなんだよ。みんな」ハッ

禁書「――とうま?ねぇとうま!?どうしたの!?」ユサユサ
135 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 21:58:06.17 ID:C/2HVu6AO
――――

上条「――ん、あれ?」パチッ

上条「俺は――確か」キョロキョロ

「こんにちは、上条さん」

上条「っ……驚いた。13510号か?」クルッ

「貴方がそう思うなら、そうです」

「でも、私は19576号です」

上条「そ、そうなのか、済まない――」

「う、そ」ニコッ

上条「――――」ゾクッ
136 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 21:58:36.76 ID:C/2HVu6AO
「貴方の『13510号』なんてそんな物」

「だからアンタは分からない」

「自分がしてる事の愚かさに。とミサカは言います」

上条「お、俺は13510号を助けたくて……」

「違いますよ」

「貴方はただ、『ミサカ』を助けたいだけ」

「決してあの子を見ちゃいないわ」

上条「そんな、そんな事は――」

「でも良いの」

「助けてくれるんでしょ?」

「ほら、その右手で――」

「「「殺して(たすけて)」」」
137 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 21:59:07.89 ID:C/2HVu6AO
上条「……いいぜ」

上条「お前がどう思おうが構わねぇ、恨まれようが何だろうが気にもしねぇ。だが、お前が黙ってその地獄の中で一人、うじうじ座って。それで良いのかよ!?」

上条「お前が居なくなりゃ、悲しむ奴らだってたくさんいる!10666号だってそうだ!だから……もしお前がここに留まり続けるってんなら、それでもってんなら!」

上条「まずは、そのふざけた幻想をぶち殺す!」グッ

「……悲しい」

「10666号がそんな事を……」

上条「……ほら、帰ろう――」

「そうですね」

「――貴方はここに至るまで」

「たくさん」

「たぁくさん」

「殺したもんね。もう頭が麻痺してるのかしら」
138 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 22:02:37.81 ID:C/2HVu6AO
上条「…………」

「右手を……ほら、ここ――」ズ、プッ

上条「な――腹に!?」ゾクンッ

「あ、あぁん……お腹ぁ……掻き回されてるぅ」グプッ、ヌプッ

「ぐちゃ、ぐちゃぁ……きもちいぃ」ハァ、ハァッ

「否定されてるぅ……殺されてるよぉぉ……あぁん!?」ビクッ

上条「や、止めろ。止めてくれ――」

「なんで?」

「どうして?」

「もっと貴方の欲望(せいぎ)」

「押し付けてぇ……」

「犯してぇ……」

「殺してぇ……」

「否定してぇ……」

「とーまぁ……ぁん」グチュッ

上条「くそ、くそぉ……」
139 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 22:03:09.63 ID:C/2HVu6AO
――――

禁書「とうま、とうま!!」ユサユサ

上条「――――」

禁書「だ、ダメかも……ミコト?」

御坂「――――」

禁書「ミコト、ミコト!しっかりするんだよ!」
140 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 22:04:13.52 ID:C/2HVu6AO
――――

御坂「……あれ、私」

御坂「皆は……はぐれたのかしら……こんな場所で」

「いらっしゃい、お姉様」

御坂「13510号……?」

「貴方が望むなら、私は13510号でしょう」

「違うかもしれない」

「そもそも誰かなんて分かってない」

御坂「そ、そんな……」

「貴方は何でここに来たんですか?」
141 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 22:04:45.96 ID:C/2HVu6AO
御坂「そりゃ、妹を助けに来た――」

「う、そ」ニコッ

御坂「ひっ――」ビクッ

「貴方は認めたくないだけ」

「自分のミスを」

「自分の罪を」

「ただ清算した気になりたいだけ」

「ただの自己満足なのよ」

「愛しの上条さん、そっくり」
142 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 22:05:17.52 ID:C/2HVu6AO
御坂「アイツは関係無いでしょ!」パリッ

「そう」

「関係無い」

「ただ、そっくり」

「可笑しい――」ニコッ
143 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 22:08:00.39 ID:C/2HVu6AO
御坂「…………」

「ねぇお姉様」

「教えて?」

「何で私達」

「生きてるの?」

「何で私達」

「生まれたの?」

「誰に愛されて」

「誰の?」

「誰?」
144 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 22:08:27.90 ID:C/2HVu6AO
御坂「……ごめん、なさい」

「私って何?」

「クローン?」

「人形?」

「人間?」

「もう面倒臭いから」

「みんなしのう、ね」
145 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 22:09:15.85 ID:C/2HVu6AO
御坂「ダメ、そんな事しちゃダメよ!」

「何で?」

「誰も困らない」

「だって私は一人だもの」

「誰も困らない」

「だって私は誰でもないもの」

「元々居なかったんだから」

「羨ましい」

「だから」

「せめてお姉様くらいは」

「その場所で」

「その世界で」

「生きて」

「死ね」

「ね?」ニコッ

御坂「いや、いやァァァァァァァァァァァァァァァ――――」
146 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 22:09:55.74 ID:C/2HVu6AO
――――

禁書「ミコト、ミコト!!しっかりして、ミコト!?」ユサユサ

御坂「ごめんね……ごめんね……ごめんね……」ポロッ

禁書「だ、ダメなの……?あくせられーた!?」ダッ
147 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 22:12:10.09 ID:C/2HVu6AO
――――

一方「……ン?」

一方「ここはァ……何だァ?」キョロキョロ

「どうも、一方通行」

一方「……13510号か」

「貴方が願うなら、きっと」

一方「けっ……手間掛けさせやがって。ほら、帰るぞ?」

「帰って」

「連れて帰って」

「首輪でも繋ぐのかしら?」
148 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 22:12:36.62 ID:C/2HVu6AO
一方「……」

「ねぇ、私実は知ってるの」

「私の生きてる理由」

「私達がいれば」

「一方通行は最強です」
149 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 22:13:15.42 ID:C/2HVu6AO
一方「……そンなン関係ねェよ」

「じゃあ何故」

「一人ぐらい減っても関係ないではありませんか」

「本当に大事なのは誰?」

「ラストオーダー」

「でしょ?」
150 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 22:13:45.43 ID:C/2HVu6AO
一方「俺は……オマエらを……」

「殺して」

「殺して」

「殺しましたね」

一方「せめて、守らせてくれ……」

「なら最初から殺さないで下さい」

「貴方も自己満足?」

「無様に自己満足?」
151 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 22:14:20.48 ID:C/2HVu6AO
一方「…………」

「助けてほしいなんて」

「そもそも助けてくれたのは」

「上条当麻」

「いや、上条当麻の自己満足に付き合っただけ」

「私も無様」ニコッ
152 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 22:16:13.01 ID:C/2HVu6AO
一方「……上条はそンな奴じゃねェよ」

「そんな奴でしたよ」

「今も私を殺し続けてる」

「貴方達、そっくり」フフッ

一方「俺には……責任が……」

「何の為に生きてるの?」

「私達の達に生きてるの?」

「なら」

「お願いですから」

「死んで下さい」

「自由にして下さい」

「出来ないでしょうけど」

一方「…………」

「所詮私は18万円」

「気にしないで」

「存分に喰い潰してくださいね」

「一方通行」ニコッ
153 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 22:17:27.35 ID:C/2HVu6AO
――――

一方「――――」

禁書「あくせられーた!しっかり――」ハッ

一方「――――」ツゥ――

禁書「……泣いてる?」

禁書「……ヒートビューティー、大丈夫なのかな!?」
154 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 22:17:54.94 ID:C/2HVu6AO









10666「……ちょっと静かにしてくれるかい、シスター?」ニッ

禁書「ヒートビューティー……」ホッ








155 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 22:20:42.16 ID:C/2HVu6AO
――――

10666「よっ」

「10666号……」

「何故ここに?」

10666「いや、あんまりに帰り遅いからさ。迎えに来たよ」

「――偽物のくせに」

「嘘つきのくせに」
156 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 22:21:16.64 ID:C/2HVu6AO
10666「いや、悪かったなぁ。お前の為に良かれとやったんだが、いや、済まないね」フゥ

「貴方がここにいるのは」

「8222号がそう言ったから」

「貴方は」

「自分の意志で」

「ここにいるのかしら?」

10666「うん」

「何故言い切れるの」

10666「分からん」

「分からないのに?」
157 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 22:22:03.47 ID:C/2HVu6AO
10666「そもそも人の心を理解するなんてのは不可能さ。必死に必死に相手の事を考えて、ようやく欠片が見えれば良いぐらいじゃね?」

「そんなふざけた考えで、ここまで来たの」

10666「酷いなぁ、私は何時でも真剣にふざけてるよ」クックッ

10666「お前は、ここに居たいのかい?」

「……もう、出たくない」

10666「そうかい……じゃ」

10666「一緒にいてやるよ」ニッ
158 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 22:22:32.47 ID:C/2HVu6AO
「え……?」

10666「言い方はアレかもしれないけどさ、地獄に堕ちたいって言うなら――」

10666「どこまでも一緒に堕ちてやるよ。地獄が気に食わないってんなら地獄をぶっ潰すし、帰りたいって言うならそっから連れて帰ってやるさ」

「でも、貴方――」

10666「いーんだよ、これで。ほら、座って話そうぜ。おいで」パンパン
159 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 22:24:59.26 ID:C/2HVu6AO
「――ん」チョコン

10666「ん……」ギュッ

10666「こうやってお前を抱き締めるのも久しぶりだ」ナデナデ

「そう、ですね――」

10666「アレ、見たか?」

「……見ま、した」

10666「やっぱりな……悪かったな。嘘ついてて」
160 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 22:25:28.05 ID:C/2HVu6AO
「……今も貴方は信用してません」

10666「そりゃ酷い。謝らないぞ」

「偽物」

10666「何が悪い。私の気持ちは私のものだよ」

「贋作」

10666「何が悪い。私が私であるんだ。『8222号の贋作』じゃない。『10666号』だ。ここに嘘も偽りも亡い」

「……自分を殺さないで」

10666「ありがとうよ」ニッ
161 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 22:25:56.83 ID:C/2HVu6AO
「では、何故貴方はここへ?」

10666「あ、そういや面白い話があるのさ。聞くかい?」

「……聞きます」

10666「大発見なんだけどさ、私もびっくりしてさ!ちょっとワクワクしたね。実はさ、私とお前って――」



――家族なんじゃないかな?



162 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 22:26:59.72 ID:C/2HVu6AO
「かぞく」

10666「おうさ。だから迎えに来た」

「……それだけ?」

10666「……家族を迎えに行くのに理由がいるかい?」ニッ

13510「……いえ、フフッ……可笑しい」クスクス

10666「…………」ギュ

10666「居場所も、理由も、私が与えてやるさ。お前は、『私の家族』だ。他の何でもない」

13510「……なら、約束、ですよ。離れないで……」ギュッ

10666「あぁ……」
163 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 22:27:36.27 ID:C/2HVu6AO
――――

10032「わっ!?」ドサッ

麦野「ん、アンタ帰ってきたの」

10032「い、いえ。それはミサカ違いですとミサカは打ったお尻を擦ります……」スリスリ

10039「あら、さっきまで中にいたはずなのに、とミサカは急にここに居る事に驚きます」

19090「10666号達がやったのでしょうか、とミサカは推測します」

14440「アイツらはまだ……みたいですね」

20000「暴れ過ぎてちょっとしんどい……」ハァ

19999「同意……」グッタリ

17600「弾薬が尽きるかと思った……」

15555「あー、ダメだ。もう動けない……」ドッサ

13577「死ぬかと思った……とミサカは予めスカートの中に兵器を入れておいた自分を誉めたい気分です」

番外「ただいまー☆」

絹旗「って事は力場が超消えたんでしょうか……?」

番外「いや、まだ核みたいな部分が残ってるはずだよ☆」

打ち止め「あの人は大丈夫かな、ってミサカはミサカは心配してみる……」ギュッ
164 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/17(月) 22:29:03.95 ID:C/2HVu6AO
って訳で今回は投下終了。またねー
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/17(月) 22:30:35.73 ID:IMHJZxWpo
乙!楽しみして待ってるね☆
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/17(月) 23:23:35.61 ID:Dv4bsU7S0

ただでさえ女の子に拳を上げるのをためらわない上条さんがリョナに目覚めたらどうしてくれんだ!
167 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 08:28:24.78 ID:YVLJXmDAO
こんな朝から誰かいるかな……?
居たら投下する。
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/19(水) 08:34:25.74 ID:b37SRH1Io
いるからカモン
169 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 08:40:14.72 ID:YVLJXmDAO
――――

10666「で、帰るのか?」

13510「はい、貴方と共に……」

10666「よっし、なら連れて帰ってやるよ。帰りにパスタでも買って――」

ザシュンッ

10666「え――?」ゴプッ

13510「10666、号?」
170 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 08:40:43.50 ID:YVLJXmDAO
――腹をやられた

何だアレ

気持ち悪い

肉で出来たみたいなフォース

たくさん

ハッ

下手な真似事だ

――それに

全部が繋がってる先の

あの黒い魂(たま)

あれか

あれが元凶か――
171 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 08:41:11.42 ID:YVLJXmDAO
10666「――見つけたぞこの野郎ォォォォォォ!!」ギンッ

フォース「オオォッ!!」ガブッ!

「――――」ビクンッ

10666「フォース!?」

フォース「学習、サセテ頂キマシタ!早ク!」

10666「オッケーェェェェ!『炸裂超電磁砲』!!」

バリバリバリバリバリバリッ!!!

「――――ォ」
172 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 08:42:07.25 ID:YVLJXmDAO
フォース「マダデス!全力デオ願イシマス!」

10666「だがこれ以上の出力は……」チラッ

13510「――」

気絶してるか……

10666「これ以上は出せない!13510号を巻き込んじまう!」

フォース「大丈夫デス、私ニ展開シテイル電磁フィールドヲ13510号ニ展開シマス!コレデ」バリバリバリバリッ

10666「それって……お前は」

フォース「構イマセン!」

10666「だが――」
173 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 08:43:06.09 ID:YVLJXmDAO
>>172
ミス

フォース「マダデス!全力デオ願イシマス!」

10666「だがこれ以上の出力は……」チラッ

13510「――」

気絶してるか……

10666「これ以上は出せない!13510号を巻き込んじまう!」

フォース「大丈夫デス、私ニ展開シテイル電磁フィールドヲ13510号ニ展開シマス!」バリバリバリバリッ

10666「それって……お前は」

フォース「構イマセン!」

10666「だが――」
174 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 08:43:44.73 ID:YVLJXmDAO
フォース「良いからさっさとやれって言ってるでしょう!!マスターは『家族』を助けに来たんじゃないのか!!?」

10666「――へっ、誰に似たんだか」ザッ

フォース「飼い主ですよ」ガチャッ

10666「後で必ず直す」

フォース「お待ちしております」

フォース「電磁フィールド展開完了――行けます!」パリッ

「――――」

10666「覚悟しろよそこの黒いの――」

――私の一撃は、痛いじゃ済まねぇぞ。
175 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 08:47:25.40 ID:YVLJXmDAO
10666「『爆裂(レールガン)――』」バチバチィッ!




――ぶち壊れろ




10666「『超電磁砲(フルバースト)』ォォォォォォ!!」ズババババババババババッ!

「――――ォン」

10666「13510号の中から……出ていけェェェェェェ!!!」バ、キン!

フォース「オォッ!」メキメキメキ

グ、チャ――

「」
176 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 08:47:56.54 ID:YVLJXmDAO
10666「……やった、か?」パリッ

10666「やった、か。はっ、ははっ……」クックッ

10666「……フォース?」

フォース「自己修復――失敗。自己修復――失敗」バチバチバチ……

10666「――サンキュ、相棒」
177 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 08:48:31.97 ID:YVLJXmDAO
――――

10666「むっ」パチッ

禁書「ヒートビューティー、どうしたの!?」

10666「解決だ、みんな叩き起こしてくれ……いや、大丈夫かな」ニッ

上条「……俺は」ハッ

御坂「……あ、れ」ハッ

一方「…………あァ」ハッ

10666「お、起きたねぇ。その様子だと、かなり言われたみたいだねぇ……」ケラケラ
178 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 08:48:58.83 ID:YVLJXmDAO
御坂「……私」

10666「な、覚悟いるでしょ?他人と向き合うってのは、覚悟の連続さ」

上条「……俺には、覚悟が足りなかったとでも言うのか?」

10666「いや、言わないさ。ただ、私の方が本気だっただけの事よ」ニパッ

一方「……おいオマエ、腹――」

禁書「!凄い血なんだよ!?」

御坂「だ、大丈夫なの!?」ドキッ

10666「あぁ、平気平気。見た目だけだから」ブンブン

10666「……とか言ってる間に、お姫様登場か」

13510「――――」トサッ

10666「まだ気ぃ失ってんのか……困った姫さんだ」スタスタ
179 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 08:49:26.02 ID:YVLJXmDAO
ビュンッ!

バキィッ!

10666「ガッ――何――」ドサァ!

「――――ゥ」

10666「――しつこいぞテメぇ……」ムクッ

ウジュルウジュルウジュル――

上条「な、何だ今度は!?」

御坂「しょ、触手ぅ!?」ヒキッ

禁書「ま、まずいんだよ!特に私達が!?」ササッ

一方「いや、こりゃあ……フォース、かァ?」
180 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 08:52:12.01 ID:YVLJXmDAO
10666「意地でも連れてかれたく無いらしいな……ふざけんじゃねぇぞ!!『雷撃の槍』!」バチンッ!

「――――」ジュルジュル

10666「効かねぇか、くそっ!」バッ

一方「やァっと気兼ね無く殴れる奴かよォ……俺ァイライラしてンだ。本気で行くぜェ!!」バシュンッ!

御坂「……忘れちゃ困るわね――」ピィン――

御坂「オリジナルは私よ?」ガキュン!

ドガァァァン!!

10666「おぅおぅ、やるねぇ!」
181 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 08:52:48.91 ID:YVLJXmDAO
上条「おおォォォらァ!!」ブンッ

「――――ァ」ヒョイッ

――ん?

禁書「……とうま!ウォームビューティーのとこまで走って!!」

上条「何だって!?」

10666「なるほどぉ、上条さん!行ってみてくれ!」バチッ

上条「――」コクッ

一方「サポートは任せろォ!!」

御坂「行って!」バリバリバリッ

上条「うぉぉぉっ!!」ダダダダダッ
182 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 08:53:16.39 ID:YVLJXmDAO
「――――」ササッ

10666「やっぱり……上条さんを避けてる」

禁書「幻想殺しに近寄りたくないのかも……」

ジュルジュルジュルッ

10666「な――13510号を絡めとるつもりか!?」

御坂「させないっ!!」ガキュゥゥゥン――

一方「ケケっ、愉快に素敵な活け作りにしてやるよォ!」ズバンッ

上条「間に、合えェェェェ!!」ガシッ

13510「ぁ――」

上条「――よし!」
183 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 08:53:52.63 ID:YVLJXmDAO
10666「上条さん、13510号を連れて速く!!」

上条「おぅ!……軽いな」ヒョイッ

「――――」ビュビュン!

10666「おっと!」スッ

禁書「わわっ、この触手凶暴過ぎるんだよ!?」ズサーッ

――上条さんには手を出せない

って事は――

10666「上条さん!」





――13510号を頼んだよ





上条「――任せろ!」タッ
184 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 08:54:52.51 ID:YVLJXmDAO
――――

禁書「んっ……?」

グラッ

禁書「――っ!?みんな、急ぐんだよ!」

一方「どォしたァ!?」

禁書「この空間内の魔力が消えていってるんだよ!」

御坂「……つまり?」

禁書「空間が消滅するはずなんだよ!このままここに居たら巻き込まれるかも!」

上条「なら、早く脱出を……」

10666「どこに行けば良いんだ、シスター!?」
185 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 08:56:24.61 ID:YVLJXmDAO
禁書「魔力の中心は……」

「――――」ジュルジュル

禁書「あれなんだよ。とにかくあれから離れるしかないんだよ!そしたらきっとさっきの壁に辿りつくはずかも!」

10666「確かなのか?――ちぃっ!?」ヒョイッ

「――――」ドガッ!

上条「確かにジリ貧だな……」タジッ

禁書「基本的に結界って言うのは境界で囲われた中の事だから、方形でも円形でも、とにかく外に向かって走れば境界には辿りつけるはずなんだよ!……危ない!?」バッ

「――――」ガツン!

10666「よっし乗ったぁ!みんな散ろう。武運を祈るよ――」ダッ

禁書「逃げるんだよ!」トテッ

御坂「アレを捌きながらね……」バチッ

上条「……待ってろよ、もうすぐだからな。13510号」グッ

一方「行くぞォ!」ザッ
186 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 08:56:51.29 ID:YVLJXmDAO
――――

くくっ……

ハハハっ!

やった、やったぞォォォ!!

ヒャッホォ!!

13510号が帰ってくる

やれば出来るじゃないか、私

帰ったらたくさん抱き締めてやる

一緒にパスタを食べて

一緒に遊んで

一緒に昼寝して

一緒に居よう。

それからそれから――
187 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 08:57:28.76 ID:YVLJXmDAO
――――

「――――」ドガガッ

10666「ほらほらほらほらほらほらァァァァァ!どうした、その程度じゃ今の私にゃあ当たらねぇぞ、ハッハァ!」ニヤッ

「――――」ジュルル

10666「ほぅら、お返しだ。取っとけ『雷撃の槍』!」バリバリッ!

「――――」シュルル

10666「こうかはいまひとつ、ってか……三十六計逃げるにしかず、っと」ダダッ
188 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 08:59:44.16 ID:YVLJXmDAO
――――

一方「――見えた、これかァ……」

一方「障壁の阻害ベクトルを操作……向こうの座標とこっちの座標の関係再計算……行けるかァ?」

ガシャン!

一方「オッケー、脱出だァ!」ダッ
189 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 09:00:11.64 ID:YVLJXmDAO
――――

禁書「ハァハァ……もうダメかも……あっ!?」

禁書「ここなんだよ、ここで魔力が薄くなってる……」

禁書「……結界術式の解呪の応用で……どうかな?」ホワン……

パリンッ

禁書「た、助かったんだよ!」ピョンッ
190 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 09:00:38.82 ID:YVLJXmDAO
――――

上条「こっちは追ってこない……楽に撒けたな……」

上条「んっ……ここか?」

上条「……10666号と約束したんだ。俺の行く手を阻むってんなら、まずはその幻想をぶち殺す!」

ガシャァァァァァン!!

上条「よし、出れるぞ!」タタッ
191 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 09:01:06.50 ID:YVLJXmDAO
――――

御坂「どこまで行けば良いのよ……あいたっ!?」ゴツンッ

御坂「……ここが隅っこね。こんな壁、『超電磁砲』でぶっ飛ばしてやるわ!」




――ピィン

御坂「行けっ!」バシュゥゥゥ!!




ガシャァン!!

御坂「やった、やったわ!」タタッ
192 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 09:01:46.69 ID:YVLJXmDAO
――――

10666「ちっ、しつこいな!!……ん?」ピクッ

10666「ここか……通れるか?」ペタッ

10666「無理か……なら壊させてもらうよ!」バリバリッ

10666「『雷撃の槍』!」バシュンッ

――――パチンッ

10666「な、出力が足りないのか?なら『超電――』」ハッ
193 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 09:04:22.75 ID:YVLJXmDAO
――――






フォース「自己修復失敗――」






194 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 09:04:55.74 ID:YVLJXmDAO
――マズい!!

何とかして早くここから出なけりゃ……

くっそ!『超電磁砲』演算開始――












ガシッ

10666「な――――」
195 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 09:05:35.89 ID:YVLJXmDAO
――――

―――

――――――

―――――

――
196 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 09:06:24.00 ID:YVLJXmDAO
―――――――――

―――

――――13510号










10666「――――ヘッ」


……ニッ
197 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 09:06:56.65 ID:YVLJXmDAO
ガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシ









10666「――――」
198 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 09:10:14.38 ID:YVLJXmDAO
――――

上条一方禁書御坂「……どわぁっ!?」ゴロンッ

10032「わ、皆さん帰ってきましたよ!とミサカは嬉しさの余り飛び上がります」ピョンッ

10039「13510号!無事だったのですね。とミサカは胸を撫で下ろします」ホォ

上条「あぁ……バッチリだ!」ニィッ

19090「あぁ何て眩しい笑顔……とミサカは若干クラッと来ます」ポッ

14440「気絶しているのですか?」

一方「あァ。ま、おかげで運びやすかったがなァ。ケカカッ」ニマッ

20000「ちょっとセロリホテル行かね?ちょっとだけ、ちょっとだけだかゲフゥ」ドゴム

19999「ちょおま手早いよ混ぜて下さゲフゥ」バゴム

15555「はぁい自重しようねー」メリメリ

17600「やべぇめり込んでる……」

13577「今の15555号にツッコミ喰らったら死ねる……とミサカは真剣にツッコミ側に回ります」
199 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 09:10:57.45 ID:YVLJXmDAO
禁書「あれ、見ない顔がいるんだよ?」

麦野「…………」

御坂「……何で居るのよ?」

絹旗「何ですか超その態度は!奴らに超包囲されてたここを超奪取したのは誰だと思ってるんですか?」プンプン

御坂「え……本当?」

番外「本当だよ☆」

麦野「……別にぃ。アイツに借りを作りたく無かっただけよ」

上条「ま、何はともあれ、一件落着だぁ!!」

禁書「ギリギリだったけど、あの魔力反応も今は無いんだよ!セーフなんだよ!」ニコニコ

絹旗「超その通りですね。そういやあの子は超どこですか?」キョロキョロ





――――え?





200 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 09:11:31.92 ID:YVLJXmDAO
上条「あれ……10666号?」クルッ

御坂「あ、れ?」

一方「お、おい打ち止めァ?」

打ち止め「どうして……何で……何処にも……居な――」フルフル




禁書「――ヒート、ビューティー?」





201 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 09:12:00.88 ID:YVLJXmDAO







「とある無様な複製少女(コピーキャット)」








202 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 09:12:37.65 ID:YVLJXmDAO
投下終了。後からエピローグ行くわ。
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/19(水) 09:14:36.60 ID:Aoew1ww/o
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/19(水) 09:28:06.53 ID:8C6UYLVvo
乙だな
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/19(水) 10:09:33.79 ID:JLoKxZn10


                            _,,-‐'' ̄`''- 、,_      /彡
                         /:::::::::::::::::__;;;;;;;;;`ヽ...   /  彡
                         |:::::::::::::/    `''ヾ、'  彡
                  ,.-'"´ `丶、 |:::::::::/.       / ヽ彡
.                  / .::::::::::::::::::::::\|::::|―――┐/   彡
               /.::::::::/  ̄` 丶、:', ::|      |   彡
                 l:::::::/    帝凍庫クン    |  /
               |::::::l|_________________|/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄彡
               \_ヽ==========iト、            彡
                 ../ `|   -―- 、__,        .|| .\.\ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
               /  l   '叨¨ヽ   `ー-、  .|ト、  .\.\
     r、       /   .!〕   ` ー    /叨¨)   || \  \.\      ,、
      ) `ー''"´ ̄ ̄   / |         ヽ,     ||彡 .\   ̄` ー‐'´ (_
   とニ二ゝソ____/   |    `ヽ.___´,       ||彡   |\____(、,二つ
                        |       `ニ´      ||彡   |  \   ミ
                        |_____________j|彡.   |   \ ミ
                  |´ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄`i|彡  /
                  |               ||彡/
                        |〕 常識は通用しねぇ  ||
                   /|              ||
                   |___________j

メルヘン帝凍庫で>>1乙の祝杯
新ブラウザリーダーテスト中!
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/19(水) 10:54:16.87 ID:Su5hgyru0
おい・・・おい・・・10666号・・・?
なぜナランチャ並みの死亡フラグ立てたこのド低脳がァーーーッ!!
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/19(水) 12:55:44.05 ID:2QY37S+/0
最後はR-TYPEΔネタかね まあ雷撃繋がりってとこかww
208 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/01/19(水) 13:54:39.88 ID:YVLJXmDAO
>>207
分かる奴がいるとは思わなかった。せっかくライトニングレールガン自重したのに。
209 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 20:24:15.36 ID:YVLJXmDAO
んじゃちょっと投下
210 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 20:25:47.68 ID:YVLJXmDAO
エピローグ

――病院。

お見舞いに来た。私のクローンである『ミサカ13510号』の。

彼女は最初こそ体調不良に見舞われたが、今ではすっかり元気になって意識もはっきりしている。

10666号が居ないと知った時は、大変だった――
211 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 20:26:13.38 ID:YVLJXmDAO
――――

13510「嘘!!嘘!!嘘!!」ガァッ

上条「……嘘じゃない」グッ

13510「違う!!彼女は約束した!!私と約束した!!『一緒に居てやる』って約束した!!」

13510「じゃあ私は――私は――」フッ

一方「お、おい大丈夫かァ?」スッ

13510「触るなァァァァァァァァァァ!!」バッ

一方「っ」

御坂「……でも、事実だからっ、仕方ない、じゃない……」プルプル

13510「嘘つき、嘘つき嘘つき!!出ていって下さい、一人にして下さい……っ!!」

上条「……行こう。今はそっとしておくべきだと思う」スッ

御坂「…………」
212 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 20:27:07.33 ID:YVLJXmDAO
――――

思えば、あれがいけなかったのかもしれない。いや、後から何を言おうと無駄な事だ。

だけど、次に13510号を見た時、あの子の落ち着きぶりに驚いたのは事実だ。そして今も――



御坂「や、お見舞いに来たわよ」ガラッ

13510「あ、お姉様!わざわざありがとうございます……あ、お花……」

御坂「花瓶の花、替えようと思ってね……邪魔するわよ」

13510「えぇ。構いませんね―― 」



――――10666号?



213 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 20:27:40.60 ID:YVLJXmDAO
「…………」



13510「むぅ……すいません。まだ10666号は調子が悪いみたいで……」

御坂「い、いや良いのよ!今日はちょっと寄っただけだから、すぐ帰るわよ」ビクッ

13510「そうですか?では、飾っておきますね」フワッ

御坂「……うん。じゃあね」フリフリ
214 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 20:29:25.76 ID:YVLJXmDAO
――――

タタタタタッ、バンッ

御坂「はぁっ、はぁっ……」

御坂「うっぐ、ひっぐ……」ポロポロ

幸か不幸か、あの子の病室には、一つの鏡があった。



あの子は鏡に映った自分を――――



御坂「――これが、私の罪だって言うの……?」ポロポロ
215 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 20:31:11.21 ID:YVLJXmDAO
――――

土御門「――以上が今回の報告だ。……アレイスター、聞いていた、か?」

アレイスター「いや、済まない。聞いていなかった。それに、私は直に見ていたのでね。報告の必要は無いのだよ」

土御門「……なら何故俺を呼んだ?」

アレイスター「興味深いのだ。彼女がフォースと名付けた機械。アレは最後の時に、意志を持っていたかのような、そんな振る舞いをしたのだ」

アレイスター「ミサカシリーズに自我が芽生えるならば、機械にも自我が芽生えるのだろうか……」

土御門「まさか。有り得ない」

アレイスター「何故有り得ないと言い切れる?どちらも人が造りだした物だろう」

土御門「……彼女はどうなったんだ?」

アレイスター「解らぬ。だが、帰ってくるだろう」

土御門「……何故そう思う?」

アレイスター「未だあの触媒は不安定なのだろう?なら、彼女は帰ってくる」

アレイスター「自己犠牲とはな……フッ」

アレイスター「触媒が神だと言うのならば、彼女はただゴルゴダの丘で果てたに過ぎない、と言う事だ」
216 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 20:32:06.90 ID:YVLJXmDAO
――――

――何処だろう。

真っ赤な空。

濁った水。

見えない底。

降り注ぐ火の粉。

燃える地平線。

私を囲む肉。

――とても綺麗。

ぐちゃ

ぐちゃり

キモチイイ
217 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 20:32:33.25 ID:YVLJXmDAO
13510号は――

「大丈夫よ」

そうな、のか?

「えぇ、だからもう良いのよ?」

そうか――

「ゆっくり、お休み。10666号」

抱き締めてくれた。

暖かい。

「じゃあ、お言葉に甘えて、寝るとしますか――」
218 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 20:33:10.37 ID:YVLJXmDAO







とミサカは眠気に身を任せます――――







219 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 20:33:48.60 ID:YVLJXmDAO


――自己修復、失敗――


220 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 20:35:21.33 ID:YVLJXmDAO
次回予告



「10666号は何処へ――?」

「天使さんだが、垣根さんだ」

「御坂美琴、悪いが補導させて貰うじゃん!」

「もう一人の私……まさかっ!!」

「13510号にアクセスしたらおかしくなりそうって皆言ってる、ってミサカはミサカは――」

「オマエェ……」

「私の悲願はようやく実る――」

「これが……僕の望んだ世界かっ……」

「お前が目を覚まさねぇってんなら、まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!」

「私の……、マスターを……、返せ……!!」

「行っておいで。ね?」








「よ、迎えにきたぜ」

221 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/19(水) 20:37:21.78 ID:YVLJXmDAO
オッケーとりあえず前編的なアレ終わった……

続き書くのも良いけど何か軽いの書きたい。一方ハーレムとか黒子ハーレムとか……
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/19(水) 22:18:47.63 ID:Dgh1xM7jo
乙個人的に黒子みたい
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 01:49:29.74 ID:L9rh2yAVo
俺ハーレmあbbbbbbbb





僕は青ピハーレムが見たいと思うんやけど?
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 01:50:32.26 ID:hcBtaWFoo
青ピハーレムは確かに新しいな
個人的にはステイルハーレムも見たいです
225 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/01/20(木) 08:10:06.72 ID:9IgzVA1AO
後は姫神ハーレムとかね。土御門ハーレムも捨てがたいけどね。
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 08:38:56.98 ID:9umVOFay0
前スレの初めの方は、10666号ハーレムになりそうだったというのに
227 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/01/20(木) 23:32:52.86 ID:9IgzVA1AO
新スレ立てるべきかなー……
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 23:40:46.87 ID:2glWU65no
どゆこと?
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 01:24:38.65 ID:qvXrRF5ho
続編はここで、小ネタや掌編は新スレって事じゃね?
スレタイと乖離するから気になったんだと思うが
230 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/01/21(金) 01:30:21.38 ID:SJ076AvAO
何故sageたのに反応出来たし。
続編のスレタイ思いついただけなのよ。
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 02:13:47.09 ID:qvXrRF5ho
<●><●>
滞空回線で見てるんだよ
言わせんな恥ずかしい
232 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/22(土) 20:29:09.37 ID:uC4N3zcAO
よっしゃアスカばっか構ってないでこっちも書くかー!


ちょいと触りだけ行くわ。
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 21:17:00.60 ID:ujuZa4sHo
マダー?
234 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/22(土) 21:21:45.89 ID:uC4N3zcAO
いやゴメン美琴と上条さんがしっぽりまぐわってるのガン見してた。
235 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/22(土) 21:22:36.34 ID:uC4N3zcAO








――――プロローグ









236 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/22(土) 21:23:04.61 ID:uC4N3zcAO
夢を見ていた。

「ほい」

「ありがとうございます」

少し肌寒い、明け方。紫の空が広がる中、私たちは何という訳でもなく散歩に出た。
暖かいジュースを買い、手渡す。ただそれだけで、それなりに暖かくなった。

「隣、失礼」

「はい、どうぞ」

紳士風におどけて言ったらご丁寧にご丁寧な口調で返ってきた。知らず、笑みが零れる。

彼女の隣、ベンチに座る。パキリ、とプルタブを空ける音が二つ。一人はグイ、と。もう一人はコクリ、と。一口目を咀嚼する。

「寒いな」

「暖かいです」

「そか」

言ってて少し照れ臭い。隠す為に仕方なし、照れ笑い。こら、こっち見て笑うな。

ここに来た意味は無い。ここに来る意味も無い。

ただ、誰といるか。それだけが大切で、それ以外はどうでもいいのだ。

穏やかで、緩やかで、安心する。

「美味いな」

「えぇ」

世界は平和だ。少なくとも私にとっては、だが。それが全てではいけないのだろうか?

偽りは、許されないのだろうか。

――――
237 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/22(土) 21:24:30.44 ID:uC4N3zcAO
夢を見ました。

「ほい」

「ありがとうございます」

少し肌寒い、明け方。紫の空が広がる中、私は家族に誘われて散歩に出た。
暖かいジュースを買ってきたみたいで、手渡される。ただそれだけで、ずっと心が暖かくなった。

「隣、失礼」

「はい、どうぞ」

紳士風におどけて言ってきたので、ご丁寧にご丁寧な口調で返してあげた。知らず、笑みが零れる。

彼女が隣、ベンチに座る。パキリ、とプルタブを空ける音が二つ。一人はグイ、と。もう一人はコクリ、と。一口目を咀嚼する。

「寒いな」

「暖かいです」

「そか」

言ってて少し照れ臭いようだ。隠す為に仕方なし、照れ笑い。笑ったらちょっとムッとされた。

ここに来る意味は無い。ここに来た意味も無い。

ただ、誰といるか。それだけが大切で、それ以外はどうでもいいのです。

穏やかで、緩やかで、安心する。

「美味いな」

「えぇ」

世界は平和です。少なくとも私にとっては。だが、それが全てではいけないのでしょうか?

偽りは、許されないのでしょうか。

――――
238 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/22(土) 21:27:20.95 ID:uC4N3zcAO
もしかしたら終始こんなノリになるかもしれないし、いきなりバトルするかもしれない。

前みたいにセリフメインでやろうかどうか迷うんだよな……地文とか自信ねぇし。
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 21:30:20.22 ID:ujuZa4sHo
シリアスじゃなくてシリアルでもいいのよ
240 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/01/22(土) 21:33:37.63 ID:uC4N3zcAO
違いは何なんだwwwwwwww
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 21:37:07.83 ID:ujuZa4sHo
考えるな感じるんだ
242 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/01/22(土) 21:42:49.53 ID:uC4N3zcAO
感じた。頑張るって溜めるよ。
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/23(日) 00:28:09.98 ID:gOPHlWANo
>>242
>>234的に考えて溜めて焦らして4〜5回分くらい一気に出すんですね期待してます
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/23(日) 04:48:26.33 ID:jGYVWqODO
次回予告に。

>「これが……僕の望んだ世界かっ…」

ってあるのだから。本編に。青髪ピアス君のハーレムがあるんだよね?
エセ関西弁が。思わず出なくなっちゃうほどの。
245 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/01/23(日) 08:21:29.52 ID:3HA77VNAO
>>243
無茶な。俺はそんな持たないwwwwwwww

>>244
すんません姫神さんソイツ10666号のパスタのダチ公です。

って言うかどう言う流れで青ピハーレムに持ってきゃ良いんだよwwwwwwww
246 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/01/23(日) 19:11:02.94 ID:3HA77VNAO
未だ入院中の俺だが親友が大量のラノベを持ってきてくれた。
ありがとう。これで暫く戦える。
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/23(日) 23:45:47.16 ID:VVWJd0D40
何時ぐらいに退院できそうなんだい?
248 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/24(月) 00:14:26.26 ID:1Ax1vcRAO
下手すりゃ2月後半。
留年はするし内定は飛ぶしチックショウ。

まぁそのおかげで未熟ながらも物語を伝えれるってのは幸せかもしれない。

さて、ちょっと投下行くよ!前スレの序盤みたいなほのぼのな展開が繰り広げられるよ!
249 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/24(月) 00:18:48.63 ID:1Ax1vcRAO
13510「ふぅ、ずっと寝ていては身体が鈍ってしまいます」

病室に据え付けられている、清潔そうなベッドから身を起こす。一つ伸びをして、立ち上がった。

13510「んー、体中がポキポキいいますね……」パキポキッ

体を動かす度に、骨が微かな講義の声を上げる。さながら、身体ストライキといった所だろうか。

10666「へっ、随分面白い楽器なもので」ニッ

13510「音楽会では大活躍なんですよ?」ニコッ

背後から、聞き慣れた声が聞こえる。我が同居人にして、家族。大切な人。意地の悪そうな、でも憎めないそんな笑顔を見て、私も自然に笑みが零れる。

10666号は、あの世界から私を救ってくれた。誰もかれも、私すら私を知らなかった世界で一人、私を教えてくれた。私は私で良い、証拠は自分だ。と。

ただ、無事とは言わなかったみたいで、お腹に僅かな傷があった。それももうじき治ってしまうと言うのだから、冥土返しの凄さを感じてしまう。

13510「10666号は動けそうですか?」

10666「いや……大丈夫そうに見えて、これがなかなか。起き上がるぐらいが精一杯かな」

13510「10666号……」

気丈に振る舞う彼女を見るのは辛い。それなら、まだこちらに不安を吐露してくれる方が良い。
そんな内心を読み取ったのか、彼女は笑って言った。

10666「そんな顔しなさんな。冥土返しならあっという間だし、本当に大した傷じゃない。だから、泣くでもなく落ち込むでもなく、笑いやがれ。な?」ニッ

13510「えぇ、分かりました。では……」

10666「そうか、検査だったな……待ってるよ」

10666号を部屋において、冥土返しの部屋に行く。少し寂しいが、無理を言って彼女の怪我が悪化してしまうのは良くない。歩く足も、少し、重い。

13510「失礼します」

二度のノック、返事は聞かずにドアを開けた。ちょうど椅子を反転させ、こっちに向き直る冥土返しと目が合う。

冥土「やぁ。調子はどうかな?」
250 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/24(月) 00:19:29.76 ID:1Ax1vcRAO
13510「特に体に問題は見られません」

冥土返しは優しい顔付きで話しかけてきた。優しい顔、をしている事を知覚させる顔で、少し、不思議な話だが、腹が立った。

軽い検査、だが私にとっては煩わしい物でしか無かった。

不甲斐ないことだが、私は未だに恐いのだ。彼女が居ないと不安に刈られてしまう。彼女が望むのは、こんな私では無いと分かっているのに。

彼女が居ないと、私はダメになってしまう――――
251 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/24(月) 00:20:06.28 ID:1Ax1vcRAO
――――

――またここですか。

ここは落ち着きますね。

思考の源泉。水面の自分。空。地平線。

私だけの世界。私だけの空間。

他の誰も居ない。他の誰も頼れない。

そう、私の場所。

「」

――誰?

『私の居場所に居る貴方は誰ですか?』
「私の居場所に居座ってやがる不届き者は誰ですか、っと?」

――あれ、今の、何だろう?

私が言ったのでしょうか?
252 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/24(月) 00:21:26.09 ID:1Ax1vcRAO
――――

13510「起きて下さい10666号、とミサカは寝坊した個体である貴方の身体を揺らします。おきろー」

10666「……眠」

同居人の揺さぶりのおかげで中々最悪な目覚めになってしまった私は、無謀にも二度寝を敢行してみる事にした。

夢を見ていた気がする。あの声は、誰だったのだろう……

あの声に反応した私は、随分とミサカ離れしていた気がする。番外個体に悪影響でも受けたのだろうか。

寝ぼけてた頭でぼんやりと思考していたら、上から一撃、声が落ちてきた。

13510「……朝ごはん、無くなりますよ?とミサカは貴方の腹事情を心配します」

10666「起きた起きます起きました起きるとき起きよう五段活用!とミサカは布団から勢い良く飛び上がります。今日の朝飯、昨日の余りのパスタですよね?」
253 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/24(月) 00:22:12.91 ID:1Ax1vcRAO
8222「そうです、早くこないと食いつくしますよ。とミサカは二人が遅いので呼びに来ました」

13510「全く、面目ありません……とミサカは8222号に申し訳ない気持ちで一杯です。さ、早く起きるべきです」

サラリと現れる同居人2号機マークIIツインダブルデュアルセカンド。あれ、それって結局7号機じゃないのでしょうか。

10666「分かりました。とミサカはパジャマを脱ぎ捨て着替えに入ります。ほら出てください、金取りますよ?」

8222「では今度ツインテールに出会った時に伝えておきます、とミサカは金を払えば肌を見せる事すら厭わない10666号に若干引きます。ないわー」

10666「……着替えました、行きましょう。とミサカはそれよりパスタが気になってしょうがありません」

同居人二号の話は無視。いや無視したら色々マズイ気がするけど無視。無視したいさせて下さいお願いします。

そんな気持ちも、食卓に並んだパスタを見たら吹き飛んでしまった。我ながら現金だと思う。

10666「パスタ美味ぇ、とミサカは舌鼓を打ちます」

8222「流石に病気なんじゃないですか?とミサカは10666号がその内イタリアに移住しかねない可能性を危惧します」

13510「じゃあ着いてきますね、とミサカは旅行の準備を――」

10666「始めないで下さい、とミサカは注意しつつもパスタを貪ります」

ああ、幸せだな。
254 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/01/24(月) 00:23:51.14 ID:1Ax1vcRAO
一つのレスに詰め込む量を考えなかった結果がこれだよ!
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 00:44:36.94 ID:G9nrqVgj0
まあ、乙
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 08:33:04.42 ID:Mi6dZaBG0
何がどうなっているのかさっぱり判らん
これは13510の幻覚の話なのか?それとも10666の心象世界なの?それとも誰かが過去を思い出してるの?
そのあたりは次回には回さないで欲しかったなぁ・・・
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 15:35:43.44 ID:1Ax1vcRAO
>>256
そこまで気付いてくれると嬉しいなぁ……こっちも助かりますよ。

んー、まぁアレだ。偽物な訳。色々。表現が足りなかったと思う。

13510号と10666号は病院にいて

10666号と13510号と8222号は研究所の10666号の部屋に最初集まってた。

この表現を抜かしたのは今読み直して気付いたチックショウ。
258 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/01/26(水) 21:23:04.48 ID:R36RYzgAO
携帯水に落として代替機

データ飛んだら死にかねない
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 21:31:12.76 ID:8Wkta7JLo
あらららら
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 23:24:35.40 ID:6qzxJWa50
尿瓶じゃなくてよかったな
261 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/01/27(木) 13:39:11.45 ID:FT+C/N2AO
メモっとこう。

御坂妹「……ペル、ソナ?」

ミサカ9999号「御馳走様、です!」

御坂妹「な……」神裂「問おう、貴女が私のマスターか?」

ミサカ「これが、モノを[ピーーー]って事――」

両儀式「学園都市、ねぇ……」

ミサカ「我々電撃使いの為に生み出された超、絶!!!スタイリッシュアルテマウェポン!!その名も!!スラッシュ、アァァァックス!!」

ミサカ「我々電撃使いに与えられた究、極!!!生体兵器!神機!!」

ダメだ寝よう。
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 21:49:09.16 ID:PtCAWGrP0
もう退院まで大人しくしてろw
263 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/01/28(金) 10:26:56.38 ID:pGmswJ9AO
三番目先にやられちまったなぁ……
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 11:28:04.40 ID:qaZj8snFo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1296140941/
これ?
265 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/01/28(金) 17:18:42.11 ID:pGmswJ9AO
それそれ。もう構想も似てて出だしが

木山「物語を体験できる機械を作ってみた」

御坂妹「は、はぁ……」

みたいな感じになる予定だった。キャストは違うが、今さら書いて比較されたら嫌だししばらく書かね。
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 21:45:21.75 ID:o/VRwSaIO
逆に考えるんだ
セイバー「このド素人が!!」
これなら何の問題もないと考えるんだ
267 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/01/28(金) 23:52:01.20 ID:pGmswJ9AO
御坂「なら――理想を抱いて溺死しろ」

I am the bone of my volt.
 ―――――― 体は稲妻で出来ている。
Lightning is my body, and Thunder is my blood.
 血潮は紫電で 心は迅雷。
 I have created over a thousand volts.
 幾たびの戦場を越えて不敗。
      Unknown to Death.
ただの一度も敗走はなく、
      Nor known to Life.
 ただの一度も理解されない。
     Have withstood pain to create many weapons.
 彼の者は常に独り 剣の丘で勝利に酔う。
Yet, those hands will never hold anything.
 故に、生涯に意味はなく。
So as I pray, unlimited thunder works.
 そのは、きっと電気で出来ていた。



御坂妹「固有、結界――」

英霊ミサカとか良くね?
御坂「超電磁砲(カラドボルグ)――」
とか良くね?砂鉄剣だし。

英語適当?許せ。
268 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/01/30(日) 23:26:32.01 ID:wsLlmxiAO
書けないのがこんなに苦痛だとは思わなかった。
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 23:44:39.12 ID:i+/YsyY9o
書かないじゃなくて書けないってのは辛いな
それはそれとしてはやく書いてくれ
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 23:47:32.62 ID:UwkdB3lio
もう…いい…休めっ…休めっ…
271 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/01/31(月) 00:15:50.78 ID:xsFX+6EAO
携帯返ってきたら書ける。早くしないと忘れる。
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/31(月) 08:24:07.96 ID:ns54i0cy0
つ メモ翌用紙と鉛筆
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/02(水) 19:12:49.92 ID:/ToyEKH4o
そしてそのメモ翌用紙をナースさんに見つかる展開希望
274 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/02/02(水) 20:57:55.79 ID:nTrvIkjAO
データ生きてたらしい。

新品になって返ってくるぞー
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/02(水) 22:25:30.71 ID:ahfr+qKoo
HD復活ッ
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/05(土) 15:50:28.72 ID:sVCeGfNCo
生存報告マダー?
277 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/02/05(土) 21:25:23.81 ID:DDAhtYhAO
ここにいるぞー

携帯返ってこねぇ。早くしてくれあーうー……
278 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/02/07(月) 00:39:22.93 ID:Ug4w9JRAO
復活!
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/07(月) 00:57:45.08 ID:oHO8S/aAO
まじでかktkr!
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/07(月) 01:08:32.30 ID:LURBOfUR0
>>278
退院はやいなwwwwwwwwww
281 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/02/07(月) 02:04:56.07 ID:Ug4w9JRAO
いやいや携帯返ってきただけよ?
ていうかヤバい。ちょっと溜める。
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/07(月) 12:25:33.75 ID:S0KlzY++o
おkまってる
283 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/02/09(水) 00:58:03.65 ID:RwOY+qrAO
書き直したい症候群だ……途中の戦闘描写何してるか全っ然伝わってこんわ……
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 01:01:30.70 ID:GPA10cwlo
だから
轟!とかドガガザバギギギギッとかノーバウンドで200メートルとか使えとあれほど(ry
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 06:23:36.34 ID:EUaoR0Wlo
かまちー(笑)の悪口(笑)をいうのはやめてっ
286 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 01:28:08.54 ID:coDJMwsAO
あぁくそ書けねぇ。俺は我慢出来ねえ!もう投下するぞジョジョーっ!!

眠い。
287 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 07:24:41.16 ID:coDJMwsAO
寝落ちするとか無いわ。
288 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 07:25:10.76 ID:coDJMwsAO
――――冥土返しの病院

御坂「……失礼するわよ?」

二度、ノックの音。遠慮がちに病室に入ってきたのは、我らが妹達のオリジナル、『御坂美琴』だった。表情は晴れず、俯きがちで、普段の溌剌とした彼女の面影が薄れている。

彼女は手に花を持っていた。こうやって良くお見舞いに来ては、花瓶の花を活け替えてくれる。姉としてだろうか、甲斐甲斐しく世話をやいてくれて有難い事この上無い。

13510「わざわざありがとうございます、お姉様」

あんなに酷い事をしたのに、お姉様は私を咎めない。申し訳ない反面、嬉しくもある。思わず笑みを溢したら、お姉様も微笑んでくれた。

10666「今日の花はまた一段と豪華だねぇ。いや、ご立派」

私のベッド脇に座っている10666号がお姉様を見てニヤニヤしていた。多分、姉の金遣いの荒さでも喩揶しているのだろう。

13510「折角持ってきて貰ったのに、その言い種はいけませんよ?」

10666「はいよ。ありがとうな、お姉様」

相変わらずのニコニコ顔の相方。何が楽しいのかこないだ聞いたら「お前と要るのが、だよ」って返ってきて少し恥ずかしかった。
289 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 07:26:31.39 ID:coDJMwsAO
御坂「……。はい、出来たわよ?」

色々考えている内に花瓶のコーディネートは終わっていたらしい。いつも見事なもので、流石はお嬢様と言った所だろうか。お姉様曰く簡単らしいが、少なくとも私は上手く出来ない自信がある。

御坂「それで、どうかしら?調子」

13510「私はもう大分快復してきましたが、10666号はまだ部屋から出るのは辛い、と」

10666「いや、実に情けないばかりで。ヘヘッ」

13510「笑い事じゃないんですよ……養生して下さい」

御坂「……そう。早く治ると良いわね」

私たちのやり取りを見ていたお姉様は、何だか少し悲しそうな笑みを向けた。最近のお姉様は何か思い詰めているようだ。もし、原因が私であるのなら取り除いてあげたい。
290 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 07:27:28.13 ID:coDJMwsAO
御坂「何か必要な物はあるかしら?」

13510「うーん、私は特にありません……10666号は何かありますか?」

10666「そうだな……柄じゃないが、手鏡が欲しいかな。髪型を整えたいんでね」

13510「そうですか……お姉様、宜しいでしょうか?」

御坂「……え、何?」

13510「手鏡です……ボンヤリと、どうかしましたか?」

そこまで聞いて、お姉様はハッとしたような表情をした。妄想癖がやや激しいのは知っているが、目の当たりにすると少し戸惑ってしまう。

御坂「て、手鏡……ね。分かった。また見繕ってくるわ」

そう言って、お姉様は小走りで病室を出ていった。さっきのは何か予定でも思い出していたのだろうか。しかし、10666号が手鏡を欲しがるとは、明日世界が滅んでも可笑しくない――

「――案外もう滅んでんのかもな」
291 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 07:29:29.01 ID:coDJMwsAO
窓の外から声がした。私が振り返ると、そこには顔立ちの整った少年が、窓際に座っていた。背格好から見るに、一方通行や上条当麻と同じくらいの年齢だろうか。カジュアルな洋服に身を包み、いかにも美男子といったオーラを醸し出している。

背中からは真っ白な翼が生えていた。

13510「天使、さん?」

すっかり惚けてしまった私が、漸く口から発した音がそれだった。それ以外に何を言っていいのか分からなかったのだから仕方ない。少年は少し呆れた様に笑って言った。

垣根「惜しいな。天使さんだが、垣根さんだ。垣根帝督。よろしくな」

悔しい事に少しカッコイイと思ってしまった。
292 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 07:30:14.59 ID:coDJMwsAO
――――引き続き病室

いきなりの見舞い、しかも知らない人、更には窓からの訪問とあれば、身構えるなと言う方が無理というものだ。それを向こうも分かっているのか、怪しい者ではない、との旨を話してくれた。

垣根「いや、俺見ての通り空飛べるんだけどさ、ふと外から部屋見たら同じ顔が二人いるから驚いてさ」

13510「興味本意と言う訳ですか……」

何だか少し肩透かし。まぁ、確かに事情を知らない人からすれば珍しくはあるだろう。わぁ。羽モッフモッフしてる。ちょっと凄い。

垣根「見たとこ元気そうだけど、何で入院してんの?」

13510「それは……ちょっと」

垣根「あぁ、良い良い。俺もデリカシーが無かった。悪い」

そう言って彼は自嘲気味に笑ってみせた。それすら様になっているような気がして、何かに似ていると感じた。

10666「……何だか気が合いそうだ」

そうだ。似ているんだ、彼女に。性別も、服装も、話し方も違うのに、雰囲気だけはそっくりだ。不思議な居心地の良さを感じさせるような、そんな感じがする。きっと、10666号の性別が男ならこう在るのだろう。
293 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 07:32:13.60 ID:coDJMwsAO
ふと、ノックの音が聞こえる。

麦野「13510号、入っていいかしら?」

13510「あ、ちょっと待って下さい――」

垣根「んじゃ誰か来たみたいだし、俺お邪魔するわ」

そう言って彼は来たときの様に窓から飛び立っていった。去り際に「今度はお見舞い持ってくるわ」とか言っていたけど、全く意味が分からない人だと思った。悪い人じゃなさそうなんですけれども。赤の他人にお見舞いって……

麦野「まだー?」

13510「あ、どうぞ――」
294 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 07:35:09.69 ID:coDJMwsAO
――――10666号の研究所近くのファミレス

10666「さて、一方通行はどこでしょうか。とミサカは辺りを見回します」

二度三度回りを見渡すが、目的の白い少年は見当たらない。しまった。早く来てしまったか、と思った辺りで

一方「だァれでしょうかァ?」

目隠しをされた。ぁがァになる奴なんて一人しか知らない、と呆れながら答えた。

10666「ま、まさか……貴方は死んだはずです!?とミサカは声の主に心当たりがある事に気づき驚きます……」

一方「え、誰だと思ってンだ?」

10666「マイケル……」

一方「ジャクソン!?ジャクソンなンですかァ!?」

流石学園都市第一位の能力者。ツッコミのキレも何か……うん。アレだ。キレッキレだ。いいから離せよ手がスベスベ過ぎて逆にキモいよチクショウ。
295 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 07:35:43.77 ID:coDJMwsAO
13510「正解は一方通行ですよ、とミサカはここでネタばらし」

打ち止め「これには10666号も苦笑い!ってミサカはミサカはドッキリの物真似をしてみたり」

気付けばいつの間にかいる上位個体。まぁ一方通行とセットみたいなもんだしね。上位個体がハンバーガーなら一方通行はシェイクのストローだよ全く。

一方「はァい正解は俺でしたァ」

ストロー凄ぇ良い笑顔してる張り倒してェェェ!?何か爽やかにうぜェェェ!?

8222「はいはい迷惑ですから席に着きましょう、とミサカは皆さんを促します。パフェ食べたい」

10666「欲望が口の端から零れ落ちてますよ、とミサカは8222号の本音と建前に呆けます」

あぁ、平和だな――
296 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 07:36:45.27 ID:coDJMwsAO
――――ファミレスの席

一方「じゃ、真面目な話だ」

皆空気を読んだのか、一方通行の言葉を静かに待っている。私たちを一通り一瞥して、一方通行は話し始めた。

一方「えー、度重なる私のォ、上の奴らに対する直訴紛いの脅迫によりィ、晴れて妹達皆様に個別IDと戸籍が与えられましたァ!!」

随分勿体ぶった話し方だが、内容は喜ばしい事この上無い。私達一人一人が、一人の人間として世間に受け入れられた訳になるのだから。

私達は、一方通行をレベル6に到達させる為に作られたクローン。20000人全てが例外無く虐殺される。

はずだった。

だが一方通行は、そんな非人道的な実験はお断りだ、と断固この誘いを拒否。その上私達の面倒を全部背負い込んで、実質的に私達の保護者になっている。まぁ、とは言っても海外に居る個体もいるからそんなに気にはしないが。

私達のやり場に困った上の人間が、魔術と科学の戦争に有効活用しようと画策したりもしたが、何とこのストロー、自分含む三人だけで戦争を終わらせてしまった。

一方通行、上条当麻、浜面仕上。

さて、この話は長くなるだろうから割愛しよう。また思い出す機会があればその時に。
297 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 07:37:25.09 ID:coDJMwsAO
私は随分ご満悦の第一位に話し掛けた。

10666「しかしまぁ……無茶を押し通す方ですね。とミサカは尊敬の念すら抱きます」

一方「無茶なンかじゃねェさ。全然な」

一方通行は相も変わらずのブラックコーヒーを飲みながら、PDAを弄りつつ答えた。必死に電子辞書とにらめっこしている第一位なんて私達しか知らないだろう。
何故そのような事をしているか、と言えば、

一方「名前付ける為ですゥ」

と返ってくるだろう。戸籍を取るに当たって必要になるのはまず名前だった。しかしながら名字はともかく名前と言う事柄に無頓着だった私達には、そんな識別方法を取るつもりはそもそも無かったのだ。
20002人の命名作業を、お姉様、一方通行、上条当麻、シスターらが手分けして行っているのだが……これがいまいち上手くいかないのだ。

――噂をすれば影だ。
298 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 07:38:20.41 ID:coDJMwsAO
上条「よっ。捗ってるか?」

禁書「ご馳走になるんだよ、あくせられーた」

一方「……シスターが最近自重しねェ件について三行で詳しくゥ」

上条「お前が奢ってくれるから

インデックス

昼飯我慢するようになったありがとう」

一方「滅べ」


我らがヒーロー上条当麻と、その同居人の暴食シスター。あれ、暴食って確か罪的な何かだったような気がするよ?
二人は空いていた席に座り、シスターはすかさず追加注文を取っていた。

禁書「いつもいつもだと流石にあくせられーたに悪いから、今日は少し控えるんだよ。みんなで摘まんで食べれる物注文するね?」

一方「お、成長したじゃねェかシスター……」

ウェイター「ご注文はお決まりでしょうか?」

禁書「このおつまみのページのメニュー全部三人前ずつなんだよ!」

10666「えぇぇ」

いけない、思わず声が出てしまった。回りも似たような反応――
299 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 07:41:12.69 ID:coDJMwsAO
上条「ちょォォォォォォォォ!!?何でそういう事するのインデックスさん!!?一方通行が何かいつもより白くなってるだろうが!」

禁書「え、かなり控えたつもりなんだよ?」

打ち止め「ちょっと期待しただけに反動も大きいみたいってミサカはミサカは虚ろな目で電子辞書に目を通している一方通行を……ごめん見るに絶えないよ……」

一方「えェーと……じ、じ……あっ、あった。自重ォ……」

自重の意味を再確認している一方通行を嘲笑うかの如く、運ばれてくる料理。料理料理料理料理。あ、唐揚げ美味しそう。


一方「……まァいい。もォ慣れたわ」

上条「済まねぇ……」
300 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 07:41:57.33 ID:coDJMwsAO
一方「ところで、オマエら名前は?」

上条「おう!今回は自信作ばかりだせ!」

禁書「だてにシスターやってないんだよ!命名なんてお手の物なんだよ!」

あぁ……始まったよ。今回はいくつ採用されるかなぁ。

上条当麻は、一方通行の物より値段が張らなさそうなPDAを、インデックスは一冊のノートを取り出した。自信に溢れる三人の顔をみて私たちは長い溜め息をついた。
301 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 07:42:29.70 ID:coDJMwsAO
上条「まず俺だ!『御坂真紀子(まきこ)』『御坂桐子(とうこ)』『御坂裕子(ゆうこ)』!」

一方「却下ァ。今時『子』なんて流行ンねェ。そんな安直な考えで名前は付けらンねェなァ」

上条「……じゃあお前はどうなんだよ」

一方「はっ。今日のは自信作だぜェ?『御坂伽倶耶(かぐや)』『御坂天(あまつ)』『御坂緜津彌(わたつみ)』だァ」

禁書「何をとち狂ったらそんな電波ネームを思いつくのか知りたいんだよ。最後とか本気で読めないんだよ」

一方「あァン!?どこに問題があるってんですかァ?」

上条「じゃあインデックスはどんなのを考えて来たんだ?」

禁書「私に恐れおののくと良いんだよ!『御坂アリッサ』『御坂エミリア』『御坂カティーナ』なんて一般的で可愛い名前なんだよ!」

一方「ここは日本だァァァ!!」

白熱していく三人を尻目にげんなりぐったりしていくその他ミサカ達。呆れと諦めがまぜこぜになった様な、そんな複雑な顔をして打ち止めは言った。
302 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 07:43:26.54 ID:coDJMwsAO
打ち止め「……なんか気に入ったのある?ってミサカはミサカは結果を知りつつも恐る恐る下位個体達に聞いてみたり」

勿論私達の答えは決まっている。

ミサカ達「「「ノーセンキュー」」」

マジで勘弁して下さいよ……

……まぁ、これはこれで平和な証拠なんだけれどね――
303 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 07:45:08.28 ID:coDJMwsAO
――冥土帰しの病院、冥土帰しの部屋

冥土「これだよ」


冥土帰しは机を挟んで自分の向かいに居る女性に紙の束を渡した。それは一つの資料。
冥土帰しから13510号に関する資料を受け取り、目を通す女性。驚く程の速度でそれを読み終わると、資料を机の上に戻した。

女性の目元にはパッと見ただけでも目立つ程の隈があり、白衣を慣れた様に着崩している。女性的な身体付きをしている割に、髪に手を入れている様子は無い。しかしそれでも今、纏う雰囲気が凛としているのは、瞳に力が込もっているからだろう。彼女もまた研究者なのだ。

冥土「どうかな? 木山君?」

木山「……なるほど、確かに可能性としては有り得るでしょう。事実これは的を射ていると思います」

女性の名は木山春生。「幻想御手」を開発し、一時は自身も多才能力者として御坂美琴と拳を交えた。その彼女がここに居る理由を示すのが、先ほど置かれた資料だ。

『13510号の能力の特異性について。多重能力の可能性とその考察』

冥土「あの時の彼女の状態は異常だった。AIM拡散力場は個人によって多少の差異があるべきなんだがね」

木山「『超電磁砲』の子とほぼ……いや、完全に一致していた、と」
304 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 07:45:40.61 ID:coDJMwsAO
冥土帰しは首肯する。疲れているのか、目を閉じ、目元に右手を当てて瞼を擦っていた。

木山「なるほど……彼女の能力は『御坂美琴を演じる事』では無く――」

冥土「――『欠陥電気』と『超電磁砲』の多重能力、かもしれないね? それも、限り無く『欠陥電気』としての能力が微弱な」

木山「もしそうなら……彼女が何も無しにオリジナルと同じ能力を持っていても、有り得ない訳では無い……私を呼んだのはそういう訳でしたか」

冥土「うん、やっぱり餅は餅屋、と言うからね。君の事は聞いているよ。御坂君とは少なからず縁があるよね?」

医者はゆっくり、しかししっかりと研究者を見つめた。見る者によっては気圧されてしまいそうなそれを、彼女は小さく笑って返した。

木山「言われなくても、このくらいの協力は惜しみませんよ。彼女には少なからず思う所もありますし……何より、不謹慎ではありますが興味深くもあります」

聞き、長く溜め息を着く冥土帰し。肩の荷を一つ下ろしたような、一仕事終えた顔をしていた。
305 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 07:46:29.83 ID:coDJMwsAO
冥土「じゃあお願いするよ。僕も忙しいのでね?」

木山「……期待はしないで下さい。理論的には有り得ないのですから、結果は出ないはずです」

そう言って、女性は先ほどまでの爛々とした表情からは打って変わって気を落とした様に顔を歪めた。まるで認めたくない事を是、と無理矢理言わされる子供のような、そんな表情。

冥土「『多重能力』は理論上可能さ。『自分だけの現実』を沢山持っていれば……多重人格者だったりね?」

木山「……えぇ、精神異常者。彼女らに対しての、この言い方も嫌ですし、口に出すのも出来れば遠慮したいですが……」

冥土「……」

木山「……そもそもそういった人々は、例え能力者であってもAIM拡散力場が安定せず、高レベルにはなれないはずです」

冥土「だが、彼女たちは……身体、『入れ物』は同じなんだよ」

木山「丸い箱に四角いキューブは入らない……」

冥土「だけど、円柱を入れる事は可能なのさ。元々の目的はそうだしね?」


木山は先ほど置かれた資料を再び纏め、自分が持ってきていたバックの中から一冊のファイルを取り出し、それを閉じた。

椅子から立ち上がり、一つ軽い会釈。

木山「資料は借りていきます……出来れば、そんな結論には至り
306 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 07:48:32.44 ID:coDJMwsAO
冥土「じゃあお願いするよ。僕も忙しいのでね?」

木山「……期待はしないで下さい。理論的には有り得ないのですから、結果は出ないはずです」

そう言って、女性は先ほどまでの爛々とした表情からは打って変わって気を落とした様に顔を歪めた。まるで認めたくない事を是、と無理矢理言わされる子供のような、そんな表情。

冥土「『多重能力』は理論上可能さ。『自分だけの現実』を沢山持っていれば……多重人格者だったりね?」

木山「……えぇ、精神異常者。彼女らに対しての、この言い方も嫌ですし、口に出すのも出来れば遠慮したいですが……」

冥土「……」

木山「……そもそもそういった人々は、例え能力者であってもAIM拡散力場が安定せず、高レベルにはなれないはずです」

冥土「だが、彼女たちは……身体、『入れ物』は同じなんだよ」

木山「丸い箱に四角いキューブは入らない……」

冥土「だけど、円柱を入れる事は可能なのさ。元々の目的はそうだしね?」


木山は先ほど置かれた資料を再び纏め、自分が持ってきていたバックの中から一冊のファイルを取り出し、それを閉じた。

椅子から立ち上がり、一つ軽い会釈。
307 :>>305書きすぎた伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 07:49:31.59 ID:coDJMwsAO
木山「資料は借りていきます……出来れば、そんな結論には至りたくないですね」

冥土「全くだね」

冥土帰しは、今日一番の溜め息をついた。
308 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 07:51:39.93 ID:coDJMwsAO
――――冥土帰しの病院、13510号の病室

麦野「気分はどう?」

13510「いえ、特に変わりは。10666号もいまいち……」

10666「大した事ぁ無いさね」

麦野「そう……良かった」

私の部屋に勢ぞろいしたアイテムの皆さん。長椅子が一つと普通の椅子が二つあるので何とか椅子とりゲームは回避出来たようだ。普通の椅子に絹旗さんと麦野さんが座り、自然な流れで滝壺さんと浜面さんが長椅子で隣同士だ。フレンダさんはまだ御加減が良くないのか、車椅子にちょこんと収まっていた。

13510「そちらこそ……大丈夫ですか?」

フレンダ「うん、結局腰もくっついたって訳よ。あの医者は本当に凄いって訳」

車椅子に座ってはいるが、今はリハビリも兼ねて歩行訓練も行なっているらしい。しかもその訓練の目的が神経や骨格の問題の解消では無く、単なる筋力低下の歯止めだと言うのだから恐ろしい。冥土帰し様々と言ったところだろうか。
309 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 07:52:20.98 ID:coDJMwsAO
麦野「もうあいつらに強制される事も無いわ。気分良いったらありゃしない」

麦野はフレンダを見て優しく微笑んでいる。こんな顔も出来るのか、と少々失礼な事を思ってしまった。

絹旗「アイテムとして動くのは超暫くお休みです。フレンダも超療養中ですし」

滝壺「でも、何かあったら言ってね」

浜面「あぁ。一応10666の子には色々と思うところがあるしな」

麦野「……浜面」

浜面「……まぁそういう事だ」

そんな訳あり顔をされたら、いくら私だって何かあると分かってしまう。私には伝えるべきでない何かがあるのだろうか。
正直なところ、ここ最近の皆の反応からして間違い無いだろう。お姉様も一方通行も上条当麻も皆嘘が下手だと思う。何もかも解決しているのなら、そんな暗い顔しないのだから。

私は……まだ狙われているの?

10666「心配すんな」

13510「……10666号」

10666「どんな奴が来たって、どんな困難が降りかかったって、私はお前を守る。だから、大丈夫だ」

真っ直ぐ私を見つめ返す瞳は、力強く感じた。つい、嬉しさが器から溢れ出してしまう。
310 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 07:52:48.78 ID:coDJMwsAO
フレンダ「あわわわ、な、泣く事無いって訳よ!?」

絹旗「やはり浜面は超首を吊るべきです」

浜面「え、これ俺のせいなの!?」

麦野「はぁまづらぁ?」

滝壺「大丈夫、そんな女泣かせなはまづらを私は応援してる」

浜面「えぇー……いや良いやすいませんでした」

回りに散々弄られるアイテムの逆紅一点。この場合白一点とでも言うのだろうか。ペコペコ頭を下げるアイテムの小間使いを見て、言った。

13510「『男がそう簡単に頭を下げるもんじゃあねぇぞ、格好つかないだろ?』」

浜面「え?」

13510「……と10666号には思われているようですよ?」

10666号を見ると、「あー、言わないつもりだったのになー」と言わんばかりの表情をしていた。まさかこんなにダイレクトにダメ出しされるとは思っていなかったのか、浜面さんは少し戸惑っているようだ。
311 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 07:53:28.06 ID:coDJMwsAO
浜面「……そりゃいけねぇな。男としてやはり意地を張るべきかー」

絹旗「ゴメン浜面超真剣にキモい」

浜面「うるせぇー!俺だってちょっとはいい目みても良いんじゃね!?」

絹旗「いや……うん。超ゴメン……いやホント超キモい……ゴメン超勘弁して……」

浜面「止めて何で真剣に謝るんだよ!?辛いだろ俺!」

麦野「ほらほら、病室だぞてめえら」

麦野さんがたしなめた途端に静かになる病室。何故か頭に恐怖政治といった単語が浮かんできたが、それはとりあえず右に置いておいた。

有難いと、思った。
312 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 07:56:18.86 ID:coDJMwsAO
――――ファミレス

未だ継続している白熱した名付けデッドヒート。もう軽く三桁は上がったのに一つとして納得のいく命名が成されていないのは、一種才能かもしれない。

インデックス「だから二人のセンスはおかしいんだよ!」

上条「なっ、少なくとも上条さんは一般的であることを自負していますのことよ!?」

一方「やっぱなァ……俺第一位だしィ、このセンスは伝わンねェかァ」

そういう問題じゃねぇよストロー。全く、英雄も普段はただの人なんだと痛感する次第だ。
313 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 07:57:16.36 ID:coDJMwsAO
――上条当麻とシスター。

私は当事者では無いから、人伝に聞いた話だ。
シスターは完全記憶能力を有しており、その身に10万飛んで3000冊の魔導書の内容を記憶している。「禁書目録」の名に恥じない、まさしく原典と言って指し支えない人物だ。
だがその対価として、脳の容量不足を補うと言う名門で、一年毎に記憶の消去が行われていた。彼女の仲間たちはその運命に嘆きつつも、それが彼女の為になるのだと言い聞かせながら、彼女を殺した。

だが、学園都市に彼女が来て、あっさりとその偽りは剥がされる。脳の容量不足なんて言うのは、有り得ないのだ。細かい話は私にははっきり分からないが、人間様の脳味噌はそんなにヤワじゃないらしい。

そこに、上条当麻が重なる。

上条当麻の右手には、全ての幻想を打ち消す「幻想殺し」が宿っている。それが異能の力ならば、魔術であろうが超能力であろうが、例外無く現世に存在することを否定する力だ。

彼はその能力で彼女に架けられていた鎖を解き放った。彼女は暴走し、凄まじい力を振るい――上条当麻はそれらを悉く退け、彼女を地獄の底から引っ張り出した。
314 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 07:57:47.93 ID:coDJMwsAO
結果、彼女は今まで生きてきて得た全ての記憶を取り戻した。消され、上書きされていたと思っていた物は、奇跡的に残留していたのだ。

だがしかし、禁書目録の魔術の余波で彼は記憶に著しい損害を負ったのだった。

ここまでなら、まぁ、仕方ない話だ。何かを失う事無く、何かを得ようとするのは愚か者だけだ。

上条当麻は愚か者だった。

上条当麻の幻想殺しは、自身に掛けられて記憶消去の魔術すら打ち消してしまった。本人曰く「ダメ元でやったらなんか出来た!」らしい。出鱈目過ぎて逆に潔いと思う。

『必要悪の教会』のメンバーはとても感謝していたらしい。

後日現れた錬金術師とやらも彼女を救おうと画策していたようだが、上条当麻に先を越された事によって、僅かな憤りと多大な喜びを得た。今は『必要悪の教会』に匿われているらしい。
315 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 07:59:06.44 ID:coDJMwsAO
んでさっき来た。

アウレオルス「自然、この名前にすべきである」

インデックス「有り得ないんだよ!それよりこっちの方が可愛らしくて良いんだよ!」

一方「そもそもオマエら外人だろォが。今更だけどォ」

上条「今更過ぎるな……決まらねぇ。不幸だー……」

何と言うか、きっちりスーツ着こんだ魔術師って違和感が凄いと思う。

アウレオルス・イザード、自称錬金術師。『黄金錬成』と言う魔術を使って、世界を自分の思った通りに歪める事が出来るらしい。凄過ぎていまいち実感が湧かないが……

インデックス「アウレオルス……」

アウレオルス「……釈然、仕方ないのである」

アウレオルス「『黒毛和牛のステーキ』」

錬金術師が一言呟くと、シスターの空になった皿に何とも筆舌にし難い程食欲をそそられる肉の板が現れた。いやこれ無駄使いにもほどがあるだろ。

インデックス「わぁっ!ありがとうなんだよアウレオルス!」

アウレオルス「当然、この程度は朝飯前である」

今は昼飯中だが。目を爛々と輝かせながらシスターはそのステーキにかぶり付いた。肉汁が溢れ出して流石にこっちも胃が欲してしまう。ダメだ直視しないでおこう。

あぁ、平和だ。
316 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 08:01:04.72 ID:coDJMwsAO
――――冥土帰しの病院、13510号の病室

木山「……ふむ。すまない、もう構わないよ」

そう言って木山と名乗った女性は、ベッドに寝ている私の腕やら頭やらに付いた機具を外し始めた。何でも私のAIM拡散力場の暴走が何とか……
よく分からない説明だったが、何時だって専門家はこっちが理解している事を前提に話すものだと思う。冥土帰しの紹介でしたから、特に心配も警戒もしていませんが。

13510「お疲れさまです」

木山「いや。なに、これも仕事なものでね」

13510「私に何か問題でも見つかりましたか?」

木山「いや、特に見当たる異常は無いよ」

表情を読む。最近の私の日課になったこの行動。回りの言葉の端々から、少しでも情報を得ようとした結果がこれだ。きっとこの人も『何か』あってここにいるはずだろうと思った。

が、特に嘘は見受けられなかった。と言う事は本当に能力関係の検査なのだろうか。

彼女が去った後、私は棚から一枚のコインを取り出した。指で弾いて宙を舞い、そして落ちてきたコインがまた手に戻り――

13510「『超電磁砲』」

――コインは手に当たって転げ落ちた。
317 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 08:01:34.26 ID:coDJMwsAO
10666「そりゃそうさ」

クックッと、堪える様な笑い声が聞こえる。10666号は落ちたコインを拾うと、窓際まで歩いていき、窓を全開にした。新鮮な空気が私の頬を撫でるかと思ったが、わりかしそんな事は無かった。

10666「見てな」

10666号はそう言ってコインを慣れた手つきで弾き――浮いたコインに器用にストレートで殴りかかった。

10666「『超電磁砲』ってな!」

拳と硬貨がぶつかる瞬間、それは紫電を纏って開けた窓から真っ直ぐに伸びていった。空に吸い込まれる様に路を作り……消えた。

こちらに向かって得意気な顔を見せる10666号。微笑ましくて思わず笑ってしまった。

13510「さすがです」

10666「だろ?」

二人で、いつまでと無く笑いあっていた。
318 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 08:02:30.00 ID:coDJMwsAO
――――冥土帰しの病院、13510号の部屋。御坂美琴。

御坂「失礼するわよ?」

木山春生の調査とやらが終わったらしいので部屋に来た。見舞いに来たらいきなり待ちぼうけを喰らったので少し暇を持て余してしまったのだ。
ノックの返事が無かったので、訝しく思いながらも御坂美琴はドアを開けた。もう待ちぼうけは拒否したい。
返事が無い理由は単純明快で、13510号は寝台で静かに寝息を発てていた。穏やかな寝顔に、こちらも少しだけ元気を分けてもらっているような気がする。
起こすのもどうかと思ったので、持ってきた手鏡を机の上に置き、書き置きを残した。

『頼まれてた手鏡よ。黒子や佐天さん、初春さんと一種にいいやつ選んだの。プレゼント、大切にしてね。御坂美琴』

御坂「……こんなもんで良いかしら」

さて、何もせずに帰るのも悔しい感じがしたので、まずは花の水を換えておいた。勿論起こさないように最低限の騒がしさで、ゆっくりと。
319 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 08:03:12.20 ID:coDJMwsAO
水を替え終わり、何か無いかとやる事を模索する。窓から外を見た時に気付いた。

窓が全部閉まっているのだ。今日は良く晴れていて、そよ風も吹いている。まだ昼過ぎだし、開けておいた方が良いかもしれないと思い、窓を適当に開けておいた。

その途中に、足元に何か落ちているのに気付く。奇妙に思ってそれを拾い上げてみると、それは一枚の硬貨だった。

何故こんな所にあるのかという疑問もあったが、考えてもしっくり来る答えが浮かばないので思考を止めた。

他にやる事も見つからなかったので、静かに部屋を出た。帰りながらも御坂美琴が不思議に思ったのは、やはりあのコイン。

御坂「……ふふっ。ピリピリし過ぎかしらね」

真剣に考えているのが急にバカらしくなってしまった。粗方落としたコインがここまで転がってきただけだろう、と決めつけてみる。

事実、その通りだった。
320 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 08:05:24.89 ID:coDJMwsAO
――――ファミレス

御坂「真面目に考えろォォォォォォ!!」

咆哮と共に電撃を撒き散らす我が姉にして第三位。激昂している割にはその狙いは正確で、確実に対象を絞っていた。

上条「危ねー」

上条当麻は条件反射の如く打ち消し、

一方「アブねェー」

一方通行は文字通り反射し、

禁書「あぶないんだよー」

シスターは『歩く教会』で何ともないし――何か色々あって効果が戻ったらしい。詳しくは知らないけど。

アウレオルス「天然、あぶないのであるー」

錬金術師は、いや何かよく分からないけど何だか何かして何やかんやで何とかなってた。いやマジで訳分からないのよ。ていうかそれ『然(ぜん)』じゃねぇよ『然(ねん)』だよ、アリなのかよ。

御坂「あぁ腹立つ……コイツらマジで反則じゃない……」

しかしながら、ここでお姉様の登場は有難い。真剣に有難い。いつもこのグダグダな名付け会にピリオドを打つのは我らが『超電磁砲』なのだから。
321 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 08:06:30.14 ID:coDJMwsAO
御坂「まぁ良いわ……今日も少しだけど名前考えてきたわ。そうだ、アンタらはどうかな?」

10666「どんな名前ですか?とミサカは期待を込めて尋ねます」

御坂「そうね、そっちの子」

お姉様は13510号を指した。

13510「わ、私でしょうか?とミサカはどんな名前をつけられるのか内心不安で仕方ありません」

無表情からも不安が読み取れるレベルだった。しかし、お姉様は比較的まともな名前を考える事で既にネットワーク内では女神と化していた。

御坂「そうね……じゃ、『御坂美春』なんてどうかしら?」

お、これはなかなか……

10666「ミサカは悪くないと思います。とミサカは良い名前であると思った事を素直に伝えます。あそこのろくでなしらとは雲泥の差です」
322 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 08:06:58.17 ID:coDJMwsAO
御坂「でしょう?」

お姉様の自慢気な顔を見て、他の名付け主は心底悔しそうな顔をした。いや当たり前だって。

一方「何でだァ……『御坂三散花(さざんか)』の何がいけないってンだァ……」

上条「それが通るなら『御坂秋沙雨(あきさざめ)』とかでも通るだろ……」

インデックス「『御坂インディグネイション』とかもなんだよ……」

アウレオルス「……呆然、そこまではいかぬ。せめて『御坂ゼクンドゥス』だろう」

錬金術師がプレイ済みなのが一番驚きだよ。平和になったからってシスターと遊んでばっかりいるから……実際生活に困らないだろうしなー。錬金術勉強したくなってきた。

御坂「……もう私が全部名付けた方が良いかもね」

10666「後浜面さん辺りは比較的真面目に考えてくれます。『子供が出来た時の予行練習みたいなもんだ』とか言ってましたけど。と画数表とにらめっこしていたヤンキーの兄さんを思い出します」

上条「滅べ」

一方「滅べ」

打ち止め「ちょ、怖いよ!?ってミサカはミサカは漆黒のオーラを纏いだした二人を見て驚いてみたり!?」

もうあの人らは放っておこう……
323 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 08:07:54.04 ID:coDJMwsAO
私はお姉様に向き直った。

10666「今回はこれだけでしょうか、とミサカはお姉様に尋ねます」

御坂「いいや、まだあるわよー。アンタは――『御坂美幸』なんてどうかしら?」

――――ん?

10666「あ、れ?」

何だろう。

8222「良い名前ですね、とミサカは絶賛します」

御坂「でしょ?幸せが沢山来ますようにって想いを込めたの。ちなみに美春も、春のように暖かな子に……って意味があってね――」

はしゃぐお姉様。喜ぶ妹達。悔しがるその他大勢。




急にそれらから孤立したみたいな、そんな気がした。

10666「……あ、あのー。とミサカはおずおずとお姉様に言います」

御坂「どうしたの?」

10666「……その名前は8222号の方が似合うと思います、とミサカは意見を述べます」

8222「え、良いのですか?とミサカは自分の名前が決まりそうでワクワクしてきました」

御坂「うーん、じゃあ仕方ないわねぇ……」

そうしてまた話し出す私以外の皆。

この世界の主人公は、間違い無く彼らで。私達はその存在に着いていくだけなのだ。




結局、私の名前は未だ保留だった。
324 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 08:09:14.49 ID:coDJMwsAO
――――どこか。濁った水面

――ここか。

何でここはこんなに『綺麗』なんだろう。

赤錆た水。

薄暗い空。

赤い天空。

酷い夕焼けみたいだ。

水面に立った私は、まるで

いや、事実――――

「あら、来たの」

背後から声がした。

振り返ると、そこには――

――何かがいた。

胡座を組んで、水面に腰掛けている。

何かは分からないが、そんなに悪い者ではないと思った。

いや、きっと私は知っているんだろう。ただ、思い出せないだけ。

もしかしたら知らないのかもしれない。そんな曖昧なもの。

「どうしたの?」

「そんな不思議そうな顔をして」

名前――――そう、名前が

「アンタの名前?」

うん。

「アンタには名前があるのかしら?」

……多分。

「何て言うの?」

……分からない。

「じゃあ知らないんじゃない?」

そうかな?

「アンタが想うなら、そうよ」

よく……分からない。

「そう」
325 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 08:09:57.48 ID:coDJMwsAO
貴女は?

「私?」

「私は私よ。アンタの中にいる、私」

私の中?

「アンタとは違う、でもアンタでもある。本質的には一緒の別物」

良く分からない。

「疑問があるなら、口にしてみなさいよ」

良く――

『いまいち分かんねぇな……分かり易く頼むよ』

――――え?

「無茶を言うのね。私も何でも分かる訳じゃないの。でもアンタより知ってはいる、それだけ」

私は、何をすれば――?

「それを決めるのは、アンタよ」

分からない。

だって、誰も教えてくれない。

「やりたい事を、やるのよ」

やりたい事……

「その時、何か困るような事があれば――」

「私が助けてあげるから、ね?」

――ありがとう

「……頑張ってね」
326 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/12(土) 08:12:24.61 ID:coDJMwsAO
あんま進んでないけど投下終了。

難産だった……気付いたらソロでアルバトリオン倒してたし、火山にひたすらピッケル振ってたりしたからなかなか書けなかったよー。あ、止めて石投げないで……
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 09:04:28.94 ID:ffs5z91v0
よく見てみな、これは『石』じゃねーぜ・・・
『乙』だッ!!
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 17:31:27.10 ID:SnO+NdJho
冥土帰しだぞ
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 18:24:41.80 ID:coDJMwsAO
>>328
途中までずっと間違えて変換してた。最近でも油断すると間違える。

あと読み直してから気づく『ン』……ごめんよ一方さん。
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/13(日) 11:37:01.11 ID:0vjaAjFAO
やべぇひたすら乙ほんと乙マジで乙
待っててよかった!
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/13(日) 12:19:48.53 ID:2vhw6FXy0
垣根マジ天使
そしてフレンダだけ10666号を認識できてる?一度死んだからか?
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/13(日) 13:16:00.54 ID:YdDgZefAO
>>331
あれ、そんな感じに読めたかな?
333 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/02/13(日) 13:16:42.60 ID:YdDgZefAO
ゴメン>>332俺。
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/14(月) 00:43:20.31 ID:lt0cMVYP0
>>333
ごめんこっちの勘違いだったって訳よ テヘッ
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 04:25:29.48 ID:b6RxAktNo
総合乙!
そしてドンマイ
336 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/02/15(火) 10:26:51.32 ID:QRLh6T6AO
>>335
ななな何を言ってるるるのか分からななななな。
337 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/20(日) 21:10:33.44 ID:0o2G8PfAO
いやぁ……間が空いたね。まいったね。

投下行くが準備はいいかい?
前回の六割くらいだから量は無いけど。
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 21:14:00.94 ID:bfmEvKuDO
ばっちこいや
339 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/20(日) 21:34:49.12 ID:0o2G8PfAO
――――冥土帰しの病院、13510号の病室

良い知らせが二つあった。一つは、お姉様が手鏡を持ってきてくれた事。二つは、

10666「復、活!!もう出歩いても大丈夫らしいぜ!」

ご覧の通りである。私もこれは素直に嬉しいので一向に構わないが。
早速ではあるが、病院内の売店にパスタを買いに行った。

道中すれ違った人たちは皆気味の悪い物を見たような顔をした。まぁ、余りにそっくりなので驚いたのだろう。双子で通すにしても……20000子?にまん――

10666「待て、それ以上いけない」

どうやら平仮名表記は宜しくないらしい。冷や汗まみれの10666号を見るにかなり危うい所だったようだ。

会計でも変な顔をされた。二人で同じパスタ二個買ったのがいけなかったのかな……?
いやいや私のパスタの趣味は10666号譲りだから仕方ないですよね。

部屋に帰って、二人で食べた。久しぶりに食べたパスタは量が多かった気がした。
二人前食べた気分です。病院食ばかりで胃が小さくなったのでしょうか。
340 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/20(日) 21:36:40.52 ID:0o2G8PfAO
――――13510号の病室から遠く離れた、10666号達の研究所。御坂美琴。

御坂「ダメね……」

土御門「ダメみたいだにゃー。休む」

そして倒れる金髪の男。
身体中血まみれのそいつは、魔術の反動によってその容姿になっていた。

絹旗「うーわー……超真っ赤です」

15555「タオルでも持ってくるか?」

土御門「頼むにゃー」

研究所の広めの部屋、そこに様々な顔触れが揃っていた。
座りこんで治療を受けている土御門。
壁を背に凭れかかっている一方通行。
私の隣に当麻。その隣にインデックス。
土御門にタオルを持ってきた15555号、その周囲に14440号、20000号、19999号、10032号、打ち止め。
土御門を物珍しそうに見ている絹旗最愛。一歩下がってアイテムのメンバー。
更に見回してステイル。
場所提供者の芳川さん。
341 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/20(日) 21:38:31.13 ID:0o2G8PfAO
御坂「……しかし、大所帯になったわね」

端的な感想だった。
上条当麻や一方通行といった者らも確かに回りの人間を巻き込むが、それとは比べ物にならない多種多様具合である。

麦野「別にいいだろぉ、第三位。役に立つわよ?アンタの役に立つ気は毛頭無いけど」

御坂「勘弁してちょうだい。アンタなんかに首輪付けたら安心し過ぎて夜も眠れないわ」

第四位が協力的なのには驚いたが、意外と義理堅いと言うか……借りを作りたくは無いし、どちらかと言えば貸しを付けるタイプだとも思う。

レベル5が三人、レベル4が二人、魔術師が……三人?それに妹達に、当麻。あとその他大勢。

フレンダ「纏められた件について詳しくって訳よ」

浜面「取り柄無いしなぁ……」

芳川「あら失礼しちゃうわ」

フレンダはデスクに行儀悪く腰掛けていた。
腰を両断されたとは思えないほど、元通りになっている。
342 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/20(日) 21:40:16.10 ID:0o2G8PfAO
血を拭き終わり、軽い治癒術をステイルに掛けてもらった金髪が項垂れる。
先程土御門が使っていた魔術は探知術式、対象は10666号だったのだが。

土御門「反応が無いにゃー……いや、俺の魔術に反応してないだけかもしれんぜよ」

上条「くそっ……手詰まりかよ」

上条当麻が拳を壁にぶつける。心底不機嫌そうで、事実不甲斐ない自分に腹が立っていたのだ。
それを見かねた一方通行がたしなめる。

一方「頭は冷やしとけよ、ヒーロー。そこの金髪アロハのせいじゃねェ」

上条「……分かってる、すまねぇ土御門」

土御門「構わないにゃー。役に立てない自分に腹を立ててるのは俺も同じぜよ」

重苦しい空気が部屋を覆う。
そんな中、いまいち要領を得ていない様な声がした。

ステイル「ふむ、確かに困ったが……そこの子はどうなんだい?」
343 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/20(日) 21:42:09.91 ID:0o2G8PfAO
ステイルが指した先にいたのは、滝壺。
急に話を振られたからか、滝壺はボーッとしていた。振られていなくてもだが。

滝壺「わたし?」

麦野「バカ野郎、コイツの能力は負担が掛かるんだよ。ヤバい薬使うからあんまり無理させたくないのよ」

ステイル「ふむ……超能力の事は良く分からないが……」

手を顎に持ってきて、暫し思考するステイル。
今度は一方通行の方を向いて言った。

ステイル「そこの白いヤツは、ミサカシリーズ達の助けを受けて能力を使っているのだろう?その応用は出来ないのかい?」

一方通行「一方通行だ、覚えとけおっさン」

ステイル「失礼な。僕はまだ14だよ」

違う意味で固まる部屋の面子。
上条と土御門だけが「だよなぁ……」と言いたげな表情を隠せていなかった。
344 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/20(日) 21:45:54.03 ID:0o2G8PfAO
御坂「え……同級!?」

ステイル「年齢の数え方によるけど、少なくとも近くはあるね」

絹旗「超有り得ません……バカな……」

フレンダ「結局、14がタバコってどうって訳よ……」

一人を除いて騒がしくなる女性陣。
それを尻目に、男性陣はやはり一人を除いて落ち込んでいた。

上条「背が高いと良いですよねー」

土御門「まぁ俺は舞花固定だから問題無いがにゃー」

浜面「ちっくしょー、もうちょいあればな……」

滝壺「大丈夫、そんな背が高くないはまづらを私は応援してる」

頭を撫でられる浜面。
気恥ずかしさと嬉しさが入り交じったそれを見て、ツンツン頭の少年は呟やいた。

上条「…………不幸だ」
345 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/20(日) 21:47:42.46 ID:0o2G8PfAO
そんな騒ぎの中、目を閉じ、回りの喧騒など気にせずといった様子の一方通行。
考え事が纏まったのか、ゆっくりと滝壺に近づいた。

一方「おい、AIMストーカー。演算補助するからこっち来い」

滝壺「?」

一方「その薬とやらの代わりをしてやるっつってンだよ。ミサカネットワークを俺を通じてオマエに繋げてみる」

そして顔だけこちらに向けて言った。

一方「超電磁砲、オマエも手伝え。バッテリー無くなるかもしンねェからな」

御坂「分かったわ」

一方通行は私の手を握り、空いた手を滝壺のおでこに当てた。
滝壺は自身の能力で、10666号の反応を探知し始める。

上条「む……」

浜面「…………」

面白くない物を見たような男性陣二人。心なしかソワソワしているようだ。

普段は比較的大人しい滝壺が、少し興奮気味に言った。

滝壺「……すごい。こんなに広く正確に鮮明に感知出来るなんて。あくせられーたはすごい。」

一方「当然だろォ。ほら、どォだ?」
346 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/20(日) 21:50:25.22 ID:0o2G8PfAO
滝壺「……いる」

部屋の空気が変わる。
他人の機微に疎い私でも感じ取れる程に。

15555「……何処に、と聞くべきですか?」

首を横に振る滝壺。残念だが、と表情が物語っていた。

滝壺「いる……けど、いない。いや、多分何処にもいる。反応は、学園都市中至るところにあるから」

上条「どういう事だ?」

一方「……なるほどなァ。解決策が見つかったかもしンねェ」

土御門「なるほどにゃー、弱ったぜよ」

得心したかの様な二人を見て、話に着いていけない私は焦る。

御坂「ど、どういう事なのよ?」

一方「俺たちが入ったあの空間。消えた訳じゃなく、霧散しただけなンだと思う」

一方通行は続ける。

一方「あー、有り体に言うなら魔力ってやつかァ?13510号が増幅したのが霧散してンだろ」

土御門「多分な」

一方「10666号は、差し詰めそこに溶け込ンだスープってとこだろォ」

ステイル「ふむ、と言う事は……」

一方「あァ。10666号をサルベージすンなら、先ずは器に集めなきゃならねェ」

そこまで言われて、漸く意味に気づく。
しかしそれは――
347 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/20(日) 21:52:23.51 ID:0o2G8PfAO
御坂「それって――」

一方「……思ってる通りだ。13510号がもォ一度アレを産み出せば……起動も簡単だろォしなァ」

静まりかえる空間。誰も何も言わない――なんて事は無かった。

10032「ふざけないで下さい、とミサカは空気を読まずに会話に割り込みます」

上条「御坂妹……」

15555「あぁ。全く同感だな」

14440「……彼女の見ている世界を共有したら、とてもじゃないですけれどそんな事は出来ません。とミサカは……彼女に10666号の事を気づかせる事の危険を示唆します」

妹達の訴えが胸に痛い。
私も、良く見ているだけあって、完全では無くとも思うところがあるのだから。

今まで黙って聞き手に徹していた打ち止めが口を開く。

打ち止め「13510号にアクセスしたらおかしくなりそうって皆言ってる、ってミサカはミサカは悲しい事を口にしてみたり……」

20000「あれはヤバいな、とミサカは端的かつ明瞭な感想を述べます」

19999「『いる』。10666号がいるんです、とミサカは今思い出しても少し震えます」

フレンダ「でも……結局、鏡を見てるだけだって訳よ……」

空気はここまで重くなるのか。息をする事すら憚りたくなってしまう、なんて経験は今までに無い。

一方「……保留だ。別の方法もあンだろ」

彼女から奪えば、亡くし者は帰ってくるだろう。だが、その間――

――彼女は耐えられるのだろうか。この、孤独な世界に。
348 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/20(日) 21:54:23.97 ID:0o2G8PfAO
――――解散後

一方「向こォの動きはどォだァ?」

土御門「驚きの事実だが、全く動きが見えない。見せてない、なら奴らも相当だな」

一方「13510号にアプローチしてくるかと思ったが……特にそンな気配もねェ」

暗くなった空を見上げ、一方通行は長い息を吐く。

一方「まァ……俺を誤魔化せるよォな奴は、学園都市にゃそォいねェがな」

一方「居るとしたらそりゃあ――」
349 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/20(日) 21:56:49.64 ID:0o2G8PfAO
――――冥土帰しの病院、13510号の病室

垣根「よお」

13510「あ、垣根さん。こんにちは」

相変わらず窓から出現する系のヒロインな垣根さん。白い羽が畳まれて消えた。
今日もお気に入りらしい手提げカバンに何か色々入っているようだ。

垣根「お、寝てていいぞ。今日はアレだ、食い物持ってきた。病院食ばっかじゃ味気ねぇからな」

カバンから取り出される食べ物。
コンビニなんかで買える感じのジャンクなものだった。

垣根「こういういかにも、あんまり身体に良くは無いもんの方が良いかと思ってな。ポテチなんか食ってねぇだろ?」

13510「まぁ、確かに。頂いてよろしいでしょうか?」

垣根「よろしくする為に持ってきたんだ。食べてくれなきゃ弱るぜ」

垣根さんはポテトチップスの袋を一つつまみ上げ、俗に言うパーティー開きにした。
細かいし気付きにくいけど、気を使ってくれているのが分かる。
350 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/20(日) 21:58:13.37 ID:0o2G8PfAO
二人でパリパリと、ポテトチップスを食べる。何故か無言で。終始無言で。
耐えかねたのか、イケメン天使が口を開いた。

垣根「どうよ、調子は?」

無難な質問。考えた結果なんだろうな、と思うと、少し微笑ましい。

13510「特に変わりは。強いて言えば筋力が落ちてきたかと」

垣根「そりゃいけねぇな。退院したては困るぜ?……ちょっと腕貸せ」

そう言って私の右腕を掴む。不思議に思っていたら、彼の背中から白い翼が生えていた。
次いで感じる身体の違和感。

垣根「……っと。こんなもんか?」

13510「一体何を?」

少し鼻をならして得意気になる垣根帝督。

垣根「ちょっと能力使って、まぁ簡単に言えば身体を軽くしてやった。筋肉の説明とかすると長いから略な」

13510「へぇ……便利なものですね」

垣根「俺に常識は通用しねぇからな!」

カンラカンラと楽しそうに笑う。心底愉快なのだろう。
決め台詞なのだろうか?
351 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/20(日) 21:59:39.44 ID:0o2G8PfAO
すっかり食べ切ってしまった。
結構量があったような気がしたが、二人で食べればあっという間だった。
またポツポツと、他愛のない話。垣根さんは私のどうでもいい話にもちゃんと耳を傾けてくれた。
頭が良い人だと思う。意見は的を射ている事が多いし、時折交えるユーモアもセンスが光る。
ついつい楽しくなって、話し過ぎてしまう程だ。

一頻り話した後の沈黙。垣根帝督は真剣な目をして、目の前の少女に話しかけた。
いや、問い掛けたと言った方が正しいかもしれない。

垣根「お前さ、何が不安なんだ?」

13510「……え?」

質問の意味が、よく分からなかった。急に言われたそれは、珍しく的外れだった。
いや、と言う事は――

垣根「なんだかな……折れて役に立たなくなっちまった手摺に、必死で掴まっているような。そんな感じがしてな」

13510「…………良く分かりません」

垣根「まぁ……それならそれで良いさ。だが覚えとけよ?」

一息、溜めた。

垣根「この垣根提督に常識は通用しねぇ。困った事があったら遠慮無く頼って良いぞ!」

胸を貼って言う常識知らず。本当に――本当に愉快だ。

13510「ふふっ……じゃあその時は、私も常識に遠慮はしない事にしますね」
352 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/20(日) 22:01:05.09 ID:0o2G8PfAO
――――13510号の病室

少年が帰った後の、閑散とした部屋。
一分ほどして、部屋のドアが開いた。

10666「よ。ただいま」

13510「あ、お帰りなさい。どちらへ行かれてたんですか?」

10666号は困った様に笑う。

10666「ちぃと野暮用でな。まぁ気にすんなよ」

13510「そうでしたか。病み上がりなんですから、気を付けて下さいね」

10666「あぁ……」

13510「ところで、話は変わりますが今日垣根さんが来てて――」

暫くの間、私は10666号に垣根さんとの事を話した。

彼女は何も言わず、ただただ微笑んで聞いていてくれた。
353 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/20(日) 22:08:27.92 ID:0o2G8PfAO
――――10666号の研究所、朝食の席。

10666号はトーストをかじりながら新聞を読んでいた。
親父臭い?知らんがな。

10666「ほぅ、これは興味深いですね。とミサカは記事を一読します」

一面には大きく『レベル0の少年達、事故現場での賢明な救助活動!』と書かれていた。
概要すると、何か事故があって怪我人が沢山出たけど、その近くに偶々何故かレベル0の少年が集まってて、それが迅速な対応をしたお陰で沢山の能力者が助かったらしい。

記事には、その少年達がスキルアウトであることを仄めかしていた。
インタビューを受けた学生はこう答えている。
『能力者とかそういうの関係無く、ヤバいから助けただけっす』との事だ。

――敵も、味方も無い。

今日も世界は平和だった。
354 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/20(日) 22:09:24.39 ID:0o2G8PfAO
――第七学区、街角。

10666「すいません、お待たせしました。とミサカは駆け寄ります」

ゼェハァと息を整える。結構走ってきたから柄にも無く疲れてしまった。
気遣う様に背中をポンと叩く少女。

佐天「お疲れさまです、っと。いやー、そんな急がなくても良かったのに」

初春「そうですよ。ちょっと一息つきますか?私ジュースでも買ってきます」

佐天さんの後ろにいた花冠の少女が自販機に向かう。
今日は一緒に遊びに行くと言う訳で集まった次第だ。

10666「申し……訳ありません、とミサカは、息を整えます」

いや、全く情けない。
355 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/20(日) 22:10:32.58 ID:0o2G8PfAO
――――

私達三人は少し長めのベンチに座った。
冷たいジュースを胃に叩き込み、漸く人心地着く。

10666「ありがとうございます、とミサカはジュースのお礼を言います」

初春「いえいえ、どういたしまして」

にっこりと笑い掛けてくれるラフレシア。花びらの舞い強いですねそれほどでもない。

初春「せめてキレイハナでお願いします!?」

おっと声に出ていたようだ。いけないいけない。

佐天「うーん……今をときめくドレディアって線も捨てがたいよ?」

10666「もしかしたらエルフーンかも知れませんね先制ねむりごな滅べ、とミサカはディスります」
初春「もー!酷いですよ二人ともー!」

佐天「ま、それはともかくとして。10666号ちゃん?」

話題を華麗にバトンタッチする佐天さん。マジリスペクトです。

10666「何ですか?とミサカは佐天さんの語尾の?に反応します」

佐天「名前はもう決まった?」

初春「あ、そうですよ。聞くのを忘れるところでした」

10666「いえ……まだですが、とミサカは現状を報告します」

そう言って私は茶を濁した。
手元にあるのはジュースなのに、妙な表現だと思うが。
356 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/20(日) 22:11:54.11 ID:0o2G8PfAO
佐天「そうかー……名前で呼ぶのはまだ先になりそうかな」

初春「……そうだ佐天さん、私たちで10666号さんの名前を考えてあげましょうよ!」

佐天「お、良いね!」

キャッキャッと騒ぎだす少女二人。
こりゃ嫌な予感しかしませんよしかし。

佐天「うーん、御坂……『美咲』なんてどうでしょう?」

10666「既に19090号が同じ名前です、とミサカは若干遅かったがセンスはお姉様と同じようで安心しました」

初春「なんだか哀愁が漂ってますね……じゃ、『御坂美来』なんてどうでしょう?」

10666「それは19999号が既に、とミサカはこれは行けるんじゃね?と思ってきました」

いやマジでいけそうだ……漸く私にも名前がつけられるのかな。

佐天「じゃあ取って置き!『御坂美玲』なんてどうかな?」

おぉ、これは。

10666「該当……無し。まだその名前はありません。とミサカは小躍りします!」

初春「あ、じゃあ私達が名付け親ですね」

佐天「娘は誰にもやらんぞー!」

初春「何言ってるんですか……ふふっ」

三人でケラケラと笑う。良い名前が決まりそうだ……ネットワークで回覧させておかねば。
変な名前になっても困るし、これで良いや――――





「本当にそれで良いのかしら?」




357 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/20(日) 22:15:41.15 ID:0o2G8PfAO
背筋が凍るような錯覚が私を襲う。

振り返って声の主を見たら、そこには。

御坂美琴が、いた。

それはどうでも良い。まぁ狭い学園都市、偶然出会う事もあるだろう。

だが、それでは、これはどう説明する?

回りの風景、建物、その他全ての目に写る物。恐らく背後にいるはずの佐天さん達ですら。

溶けるようにして消え失せた『これら』は、どう説明するんだ!!?

落ち着いて、回りを見回す。と、一つの事に気付く。

ここは夢の世界に良く似ていた。
赤い空。降り注ぐ火。錆びた水面。
何故か立っている私。そして対する御坂美琴。

何かがおかしかった。何もかもが理解出来なかった。何だこれは、何だここは。

「アンタはそれで良いのかしら」

10666「何の事ですか?とミサカは貴女に問い掛けます」

目の前の御坂美琴はスゥッと右手を肩の高さまで挙げ、私を指差した。

「名前。あるんでしょ?」

10666「何を……私にはまだ名前がありません、とミサカは事実を述べます」

「ふぅん。じゃ、良いんじゃない?」

御坂美琴はしゃがみこんで、濁った水を手で掬った。

「それがアンタのやりたい事なら、それはアンタにとっては正しいのだから、ね」
358 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/20(日) 22:17:50.71 ID:0o2G8PfAO
10666「一体何を……貴女は誰ですか!?とミサカは声を荒らげます。お姉様ではありませんね?」

御坂美琴は首を横に、振った?

「違うわ。私は御坂美琴よ。そして――」

真っ直ぐ見つめてくる。

「アンタでもあり、また、あの子でもあったわ」

10666「な――――」

「アンタにとって、私は間違いなくミサカミコトよ。アンタのお姉様は、アンタを応援してるわ」

何だ……くらくら、する。

「……やりたい事を、見失うのは勝手。だけど、後悔しちゃダメよ――」

目の前が、真っ白になって。




佐天「さ、休んだし行きますか!」

気付けば回りは日常に囲まれていた。



私を引っ張る佐天涙子の身体は、何時もより頼りなく見えた。
359 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/20(日) 22:20:41.12 ID:0o2G8PfAO
書いててテンション上がる箇所は楽でいいよね。投下終了。
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 22:21:57.59 ID:KR1JprMT0
乙!
10666号のミコトと対峙した世界が、サイレントヒルの裏世界にしか思えない
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 23:05:59.49 ID:S6qNKOR+0
乙っ!!
362 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/24(木) 18:36:30.97 ID:Dn6eboxAO
短いが、いくぜ。
363 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/24(木) 18:40:12.91 ID:Dn6eboxAO
――――冥土帰しの病院、13510号の病室。

起きて、まず私に襲いかかった違和感は一つだ。

13510「10666号……?」

10666号がいない。いないのだ。
いつもみたいに、出掛けているとかそういうのでは無く。
理由は分からないが、無性に不安に刈られるような、そんな気分。

いや、解る。私には解った。
彼女はここには居ないのだ。

13510「あ……あぁ……」

頭を抱えている場合じゃない。彼女を探しにいかないと。
彼女を探しにいかないと。

彼女を探しにいかないと。彼女を探しにいかないと。
彼女を探しにいかないと。彼女を探しにいかないと。

彼女を探しにいかないと。彼女を探しにいかないと。
彼女を探しにいかないと。彼女を探しにいかないと。
彼女を探しにいかないと。彼女を探しにいかないと。
彼女を探しにいかないと。彼女を探しにいかないと――――

垣根「――おい」

聞き覚えのある声。振り返ると、天使がそこにいた。

垣根「どうした」

13510「10……666号が、いなく――」

抱きしめられた。訳が分からなくなる。

垣根「怖がるな。俺がいる」

――私は泣いた。恐怖と、そして安堵に。
364 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/24(木) 18:41:25.09 ID:Dn6eboxAO
――――

私が落ち着くまで、彼は優しく抱き締めていてくれた。
時折撫でられる頭が、心地良い。

13510「ご迷惑をかけました」

垣根「気にするな。可愛い子に抱き着かれるなら、男子これ本望ってな」

13510「あらお上手」

垣根「だろ?」

部屋を一瞥し、私は外へ行こうとして、彼に腕を掴まれた。

垣根「おい、待て」

13510「……すいません、私は急がなければならないのです」

垣根「だから待てと言っているんだ」

彼の目に妙な輝きを見る。

垣根「俺も一緒に行こう。服とか靴とか用意してやるから半刻待ってな」

呆気に取られた私は、羽ばたく彼を見送る事しか出来なかった。

携帯は繋がらなかった。
365 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/24(木) 18:43:15.43 ID:Dn6eboxAO
――――御坂美琴。

病室に来た御坂美琴は、立ち尽くした。
病室に、誰もいない。

普段と違う、部屋の様子と言えば――――

御坂「鏡が……割れてる」

部屋に備え付けてあった鏡が砕かれていた事だった。

その事実に戦慄する。争った跡は無いが、これは――

御坂「――っ、やられた!」

一刻も早く。
居ても立ってもいられず、御坂美琴は駆け出した。

部屋の隅には、彼女がプレゼントした手鏡も、原型を留めずそこに在った。
366 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/24(木) 18:44:03.34 ID:Dn6eboxAO
――――

13510「まさか窓から出るとは……」

垣根「俺に常識は通用しねぇ!」

ファッサファッサと羽を鳴らして、私を抱えて空を飛ぶ垣根さん。これ服くれたのは良いけどかなり高そう。

垣根「当てはあるのか?」

13510「……いえ」

頼りない私の返事に対して、彼は不敵に笑う。

垣根「良いぜ、常識なんかくそ食らえだ。素敵に愉快なハイド&シークと洒落込もうぜ!」

大きく羽ばたき、私たちは街の中に溶けていった。
367 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/24(木) 18:47:37.74 ID:Dn6eboxAO
――――10666号の研究所、10666号の部屋。早朝。

10666「……良く眠れませんでした、とミサカは一人ごちます」

睡眠が足らずぼんやりする頭に喝を入れる。

――今までも、たまにあった。

あんな風に良く分からない場所で、良く分からない誰かと話す。ただそれだけの時間。

しかし、それは夢を見ているような浮遊感を伴っていたのだ。いつも。

だが、昨日のアレは……確かに『現実』に割り込んできた。
時間とか空間とか、そういった人知では計り知れないものすら抜きにした、出鱈目。

だから私は一つ、決めた。

今日一日。

今日一日で良い。何も起こらず、変わらず、世界が平和なら。

忘れよう。白昼夢なんてのもある。いや、そうに違いないのだ。

世界は、平和なのだ。

……平和であってくれ、世界。
368 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/24(木) 18:48:50.49 ID:Dn6eboxAO
――――リビングでの朝食

10666「おはようございます、とミサカは欠伸をしながら8222号に語りかけます」

8222号はこちらを振り向かず、手元の食材の調理に集中しながら答えた。
今日はオーソドックスに目玉焼きにベーコンらしい。

8222「おはようございます、10666号。とミサカは目玉焼きの焼き加減を調節しながら挨拶を返します」

美味しそうな香りがして、思わず口内に唾液が広がる。
いけない、レディーとしては落第だ。

テーブルに座った辺りで微かな違和感を感じる。
13510号がまだ食卓に降りてきていないのだ。几帳面な彼女にしては珍しい。

嫌な予感がした。

8222号が急に喋り始める。

8222「全くですね、とミサカは答えます」
369 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/24(木) 18:50:05.23 ID:Dn6eboxAO
一瞬、意味が分からず、数瞬置いてもやはり分からない。

彼女は続けた。

8222「パスタばかりではいけませんよ、とミサカは13510号の意見に賛成します」

……何を言っているんだ?
私は余りに疑問を堪えきれなかったので、つい。本当につい。



現実を叩き壊した。



10666「……さっきから何を独り言ばかり言っているのですか?とミサカは8222号に問い――」

8222「はい、パスタじゃなくて申し訳ありませんね。とミサカは嫌味を交えて食卓におかずを並べます」

話を聞いて、いない?



並べられた皿は、三人分だった。



その後も8222号は支離滅裂な言動を繰り返し、極めつけに13510号の朝食が入った皿をそのまま「片付けておきますね」と料理ごと流しに浸けた。

私は研究所を飛び出した。

それにすら、彼女は気付いてないのだろう。彼女はきっと、あそこにいる予定の私と会話をしているに違いないのだから。
370 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/24(木) 18:51:23.22 ID:Dn6eboxAO
――――公園。ベンチ。

まさか、朝から裏切られるとは思っていなかった。
動悸はなかなか治まらず、思考は上手く纏まらない。
ネットワークにも繋がらない。まるで『10666号が今繋ぐ予定は無い』ように。

……落ち着いてきた。
オーケー私。冷静になるんだ。こういう場合は二通りの可能性がある。

世界がイカれたか。

私が狂ったか。

10666「……なるほど。限り無く後者の可能性が高いですね、とミサカは客観的に判断します」

世界の歯車がそう簡単にずれる訳が無い。
となれば二択の片方が消え失せる。消去法って訳だ。

なんだ、分かってしまえば何ら奇妙でも無い。冥土帰しに調整をしてもらおう。

私は携帯電話を取り出し、少ないアドレス帳の中から『ゲコ太医者』をプッシュした。が――
371 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/24(木) 18:52:27.10 ID:Dn6eboxAO
10666「出ない……いや、鳴らない?とミサカは動揺します……」

携帯電話がそもそも機能していなかった。
まるで『今は使う予定が無い』みたいに。

なるほど。私は、私が出来る事しか出来ないのか。
本来この時間、私は研究所の自室でのんびりしているはずだ。

ならもう良い、帰ろう。そう思った。
何もかもどうでも良くなってしまった。

携帯電話を閉じ、腰掛けていたベンチから立ち上がったタイミングで。

携帯がメールの着信を受け取り、静かに震える。

私にはそれが天啓に思えた。
372 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/24(木) 18:53:57.58 ID:Dn6eboxAO
投下終了。

明日退院だよ、やったね。
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 20:41:03.17 ID:Pyemx4uAO
お疲れ様!そして退院おめでとう!それも含めてお疲れ様でした…!
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 20:44:25.47 ID:1vmqjJ7io
乙!退院おめでとう
他スレで名前つけっぱなしも乙!
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 20:49:25.69 ID:Dn6eboxAO
>>374
やっちまったァァァ慣れない事したからァァァ

焦って見に行ったらマジだったよゴメンねスレ主さん。
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 06:19:16.81 ID:dsFonBDZo
名前付けっぱだったところから来てみた
そして最初から全部一気に読んだぜ
面白かった!そして退院おめでとう!
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 10:17:51.84 ID:DLe+/9f7o
意外なところからくるもんだなぁ…
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 10:52:40.91 ID:+8gUlpOL0
俺もきたよ、退院おめでとう
同じく一気に読んだが影響受けてる作品が多いのか割と展開が読みやすかった
セイヴァースターレールガンとかシューティングスターレールガンは出るのかね
379 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/25(金) 20:33:33.66 ID:WP3WSqOAO
まさかの多コメントに恥ずかしさMAXな件について詳しく……

癖で名前入れちゃうよねたまに。
投下行くよ!
380 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/25(金) 20:36:01.18 ID:WP3WSqOAO
――――学園都市。13510号。

垣根「お前の知り合い達には言わなくていいのか?」

街を二人で歩きながらの会話だ。
着なれない私服が、少し私を高揚させているような錯覚を覚える。

13510「……考えがあります。考え、と言うには些か語弊がありますが」

垣根「何だ?」

一息、思考する。

13510「……最近、お姉様達の様子がおかしかったのです。よそよそしいと言うか……そこに、これです」

垣根「なるほど。何か絡んでるかもな。もしかしたら、何かしらの理由で10666号は自分から居なくなって――」

13510「えぇ。なら、身内を問い詰めた所で、はぐらかされるのが精々でしょう」

辛い。

13510「私だって……13510号を守りたい……みんな私に過保護なのです」

垣根「……俺も過保護かもな」

そんな事は無い。貴方は私の前に道を作ってくれたのだから。
381 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/25(金) 20:36:37.55 ID:WP3WSqOAO
垣根「……ありがとよ。そんな表情を向けられたのは何時ぶりか分からねぇ」

13510「……お礼を言うのは、こちらですよ」

彼は黙って、私に手を差し出した。私はその手を握り、二人で当ての無い人探しを始める。
それがきっと10666号を救うと信じて。

あそこに居たままでは、きっと彼女は見つからない。
今度は私が、私が彼女を――
382 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/25(金) 20:37:34.91 ID:WP3WSqOAO
――――10666号、公園。

メールは、佐天涙子からだった。

『10666号ちゃん、今日もお姉さんが遊びにつれていってあげるから早くきなさーい』

といった内容だった。
なるほど、これは予定されていた出来事なのか……なら、私が返すべきなのは。いや、普段の私ならどう返事するか、だ。
携帯電話のボタンを規則に乗っ取り連打して、返信。

『分かりました、集合場所はどちらですか?とミサカは尋ねます』

間もなく受信。

『いつものクレープ屋の屋台の前で!』

返信。

『分かりました、とミサカは今からそちらに向かいます』

ふむ。普段ならこれで返事は来なくなるはずです。私の位置から待ち合わせ場所までは近い。
研究所から向かう場合とでは、10分ぐらいの余裕があるだろうか。

試しに再び佐天さんにメールしてみる。このタイミングでのメールは有り得ない。

案の定返事は来ない。
私は出来るだけ早く現地に着く為に、有らん限りの力を込めて走り出した。
383 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/25(金) 20:38:30.39 ID:WP3WSqOAO
――――待ち合わせ場所

佐天「――――」

初春「――――」

10666「……嫌な予感は当たるものですね。とミサカはマーフィーにボディーブローをかましたい気分に陥ります」

目の前で手を振ろうが、初春さんのスカートを捲ろうが私には気付かない二人。
あと五分といったところだろうか。

今日はおかしな事ばかりだ。私の身体はどうしてしまったのだろう。
神経系の異常か何かにでもかかっているのだろうか。

10666「おっと……危ない、とミサカはふらつきます」

足元が覚束無い。
うっかり佐天さんにぶつかってしまったが、佐天さんは気付かない。

……いや、待て。
さっきと位置が変わってしまった。今佐天さんは初春さんとは明後日の方向を向いて虚空に話しかけている。
何とも不気味なものだ。

佐天「あぁ……お腹空いたなぁ。10666号ちゃんには悪いけど、先にクレープ食べない?」

初春「もう、佐天さんったら……しょうがないですね」

佐天「まぁそう言うなー、初春も買おうよー」

初春「う……まぁ、佐天さんが買うなら……」

いや我慢して下さいよ。これもうじき私来る予定なんですけれど。
384 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/25(金) 20:39:54.27 ID:WP3WSqOAO
……あれ?
佐天さんは屋台の方に向かったけど、ずれてる。レジの前に立ててないや。
さっき私がぶつかったからかな。

佐天「ありがとうございます!」

あ、受け取れた。と言うかクレープがワープした。ハハハ、こりゃ凄い。

初春「あ、10666号さん。来ましたか」

気付かれた。

気付かれてなかった。

どうやら私の位置が予定と違う様で、初春さんも虚空と話している。ここまでくると流石に笑えてくる。

佐天「やっほー、先に食べてるよー」

ニヤニヤしながらこちらではない何処かを見る佐天さん。
どうやら本来は何かに立って凭れていたらしく、背中に支える物が無いのに寛いでいた。
左手でクレープを口に運び、右手は頭の後ろに置いていた。

自然、右肘は頭くらいの高さになり、突き出される。

初春「あ、私はまだ買ってないんですよ。何にしようかな……」

そう言いながら屋台のレジに向けて歩いていく。
初春飾利の顔の行く先に、丁度佐天涙子の肘があった。

ぶつかるな、と私はぼんやり思った。

少女の顔に肘が当たった。私はてっきり押し退けるか、またずれるかすると思っていた。




しかし、そうでは無かった。
385 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/25(金) 20:42:07.60 ID:WP3WSqOAO
佐天涙子は地面に縫い付けられたかの如く、そこから微動だにもしなかった。
初春飾利も、元々何も無かった場所に遠慮なんてするはずもない。

結果。
花飾りの少女の顔面はザクロのように潰れてしまった。

目玉が、歯が、頬骨が、脳が。

神経が焼き切れるかと思った。
いや、焼き切れてなるものか、と堪えたと言った方が的確だ。

佐天涙子の肘も圧力でおかしな曲がり方をしていた。
にも関わらず、平然とクレープを咀嚼する彼女。

花飾りがなければ判別もつかなくなった人が、こちらを向いて言った。

初春「10666ゴウサンハナニニシマスカ?」

私はまた逃げ出した。
恐怖だとかそんなレベルの感情はとうの昔に通り過ぎていたのだから、ここまで耐えた方が驚くべき事なのだ。

逃げながら、向き合った。
認めたくなかったけど、向き合った。

おかしいのは私じゃなかった。

おかしいのは世界の方だ。







この平和な世界は、何から何まで嘘っぱちだった―――






知らず、私は泣いていた。
386 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/25(金) 20:44:48.61 ID:WP3WSqOAO
投下終了。>>378のせいでスカーレッドノヴァレールガンってフレーズが頭から離れません。
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 20:52:49.05 ID:rxi889c5o
乙!
俺はゲート・オブ・レールガンに何かを感じた
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 22:24:25.04 ID:+8gUlpOL0
乙。次のレールガン打つ時は呪文詠唱みたいなものが入るのを予見してしまったぜ。
リミッター解放レベル5!バッテリー充電120%、的な
389 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/25(金) 23:40:54.86 ID:WP3WSqOAO
電撃姫の財宝は僅かな思いつきと、ちょびっとだけの伏線があるよ。あれだけ『電撃姫』だし。
詠唱良いよね。言霊だしね。

投下行くわ。
390 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/25(金) 23:42:27.71 ID:WP3WSqOAO
――――学園都市、夜。

垣根「ほれ、着いたぞ」

私の手を離し、彼は言った。案内されたのは、小洒落たマンションの一室である。
彼は手慣れた仕草で玄関のドアにカードキーを通し、解錠する。中に入り、手探りで電気のスイッチをオンにしていった。

急に点いた明かりに少し目が眩む。
内装もなかなか洒落ていて、持ち主の性格を十二分に表していた。

13510「貴方の部屋ですか?」

垣根「ああ。隠れ家みたいなもんだけどな」

声は奥から聞こえた。どうやらキッチンにいるようだ。

垣根「こんなもんしか無いが、まぁ飲め」

と、投げて渡されたのはスポーツドリンクだった。遠慮無く喉を潤わさせて戴く。
391 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/25(金) 23:43:46.12 ID:WP3WSqOAO
13510「それで、何故ここへ?」

垣根「今日はもう日も遅い。明日に備えて休養を取ろうと思ってな、お前のさしあたっての根城になるべきここに来た訳だ」

13510「そんな暇は――」

垣根「あるんだな、これが」

動揺する私に対して、涼しい顔の垣根さん。どういう事だろう?

垣根「俺にもまぁ、知り合いが多くてね。そいつらにも声を掛けてる」

しかし、それでは他の妹達が見つかるだけではないか。
事実を、言うべきか言わぬべきか迷っていると。

垣根「妹達……か?」

13510「!?」

咄嗟に距離を取る私。
知っている……と言う事は、ただの能力者じゃない。
そんな私を見て、しかし彼は何もしなかった。

垣根「いや、済まない。まぁ……知り合いの中にも色んな奴が居てな。伝で聞いただけだ、気にするな」

私の警戒が解けないのを見て、仕方無いといった仕草で話を続ける。

垣根「……病院でお前そっくりな奴を沢山見掛けてな、流石におかしいと思ったんだよ。んで、ちょっと気になって調べさせてもらったんだ」
392 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/25(金) 23:44:45.98 ID:WP3WSqOAO
彼は深く頭を下げた。

垣根「気を悪くしたなら、済まない」

13510「あ、あの……」

頭を上げることは決してしない。
きっと彼は、私が良いと言うまでこのままだろう。
悪気は……無いのでしょうね。

13510「……構いません。ですから顔をあげて下さい」

垣根「……」

黙ってこちらを見つめる彼。その瞳は、私の奥をしっかり見据えていた。

13510「話……聞いてくれますか?」
393 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/25(金) 23:45:32.40 ID:WP3WSqOAO
――――10666号、狂った学園都市

どれくらい走っただろう。どれくらい遠くまで来ただろう。

学園都市は、何処まで行っても学園都市だ。
今でこそ思うが、まるで鳥籠のよう。

10666「ハァッ……ハァッ……」

身体が呼吸を求め、立ち止まる。
真っ直ぐ立っているかどうかさえ、私には曖昧だった。

世界が狂っている。

つまりここは、世界ではなかったのだ。

それだけは理解出来た。ここではない何処かに、正しい世界があるはずだ。

でも、それは何処だ?
それは何だ?

私はここで生きてきた。
ここが偽物と言うなら――

――私は誰だ?






13510「貴方は、10666号ですよ」
394 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/25(金) 23:46:13.53 ID:WP3WSqOAO
はっとして顔を上げる。

そこには、朝居なかったはずの13510号がいた。

――待てよ?

誰も彼もがおかしいこの場所で、役割を演じず、居なくなっていただけ、だと?

13510号は私に背を向け、駆け足で離れていった。

10666「ま、待って――」

私には、それを追いかける事以外に考えがいかなかった。
今を逃せば、二度とチャンスが無いかもしれないのだから。
395 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/25(金) 23:49:02.99 ID:WP3WSqOAO
――――狂った学園都市、『とある路地裏』

彼女をひたすらに追いかけて辿り着いたのは、何の変鉄のない路地裏だった。
薄暗いばかりで、いい気分はしない。

さっきまでは何故か追い付けなかった彼女が止まったかと思えば、今度は煙のように掻き消えてしまった。
ここに、何かあるのだろうか。
396 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/25(金) 23:49:48.79 ID:WP3WSqOAO
――――

垣根「何をしているんだ?」

一通りの事を伝え終わった後、私は10666号に向けてネットワークを繋いだ。
勿論、繋がる訳はない。

13510「……彼女を、探しています」

何処かで、泣いているかもしれない彼女に。
397 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/25(金) 23:51:25.17 ID:WP3WSqOAO
――――路地裏

「あら、来たの」

もう何度目かのその事に、私は振り向く。やはり、御坂美琴がそこに居た。
積み重ねされた廃材の上に座ってこちらを視界に容れている。

10666「……お姉様」

「うーん。多分、アンタの言ってる『お姉様』と私は別物よ」

10666「――じゃあ一体何なんですか!!!?」

吼えた。

全部全部全部コイツが悪い。
コイツが来てから世界はイカれた。
コイツのせいで私は壊れた。

「なら、そのままそっくりアンタに返すわ」

ミサカミコトは私を指差す。

ミコト「アンタは何なのよ」

何を訳の分からない事を言っているんだ。私は――

10666「――っ」

ミコト「ほら、分からないでしょ?」

10666「うるさいうるさい!『黙ってろ!』」

――え?

ゆっくりと、ミサカミコトが立ち上がる。
398 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/25(金) 23:53:23.93 ID:WP3WSqOAO
ミコト「ねぇ、知りたい?」

10666「…………」

ミコト「ねぇ、思い出したい?」

10666「……是非、と言ったら?」

ミコト「アンタのやりたい事なら、手伝ってあげるわ」

ミサカミコトは何かをこっちに投げて渡した。
小さな、掌に納まる程度のそれを空中で掴み取る。

それは、ただ一枚のコイン。

ゾクリ、と駆け上がる何か。

コインをじっと見つめていると路地裏の外、広い道の方から声が聞こえた。

ミコト「こっちに来なさいよ」

気付けば彼女はもう向こうに居た。言われるがまま、明るい道へ出る。

人も車も動いていて、これだけ見れば狂っているとは到底思えない。

ミサカミコトはそれらに向かって――

ミコト「『超電磁砲』――」

片っ端から超電磁砲を撃ち込んだ。
何だろうがお構い無しに。

車を。建物を。街路樹を。人間を。

壊して壊して壊しまくった。

転倒した車に後続車がぶつかり、爆発とともに紅蓮を撒き散らす。

何時しか私達の居た場所は、炎で囲まれたリングになっていた。
399 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/25(金) 23:57:14.32 ID:WP3WSqOAO
呆然とする私。
だが、そんな私を彼女は待たない。

ミコト「これで邪魔は入らないわね」

目を向けると、彼女はこちらに向かってコインを、超電磁砲を突き付けていた。

ミコト「ほら、構えなさい」

意味が分からない。私が構えて何になると言うのか。

ミコト「知りたいんでしょ? サービス、私は『超電磁砲』しか使わないわ」

いや、一つだけ分かるのは――

ミコト「行くわよ?」

とてつもなくヤバいって事だけだ!
400 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/25(金) 23:58:10.69 ID:WP3WSqOAO
ミサカミコトの手から放たれた超電磁砲が、私を貫くであろう軌道を描く。
私は必死でそれを磁界で操作して反らし、僅かにずれたそれは右腕をかするだけに留まった。

10666「な……な……」

咄嗟に身体が動いてくれたが、次の保証は無い。
冷や汗が額を伝う。

ミコト「あら、やるのね。一応私はオリジナルなんだけど」

そう言いながらも、淡々とコインを構えるミサカミコト。

ミコト「でも、早く思い出さないと、死んじゃうわよ?」

コインを弾く、撃たれる、避ける。

10666「何だってんだ……」

不思議と、向こうの超電磁砲が理解出来る。
どんな強さで、どんな速さで、放たれるか。

じわり、じわりと私を侵食していく何か。

いや、寧ろ侵食が溶けていっているような感覚。







私は知っている――――

前に進む為に何をすべきか知っている!







401 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/25(金) 23:58:52.67 ID:WP3WSqOAO
――――

そう、気付いた瞬間。

足元から広がっていく、水面上の世界。

それは狂ってしまった街を飲み込み、私の世界がそれを喰らい尽くしていく。

思えば、火炎に囲まれたあの空間は、この世界の色合いと似ていた。

赤い世界で、私と、彼女だけ。

ミコト「……で、どうするの?」

彼女は微笑んでいた。
私も、それに答える様に。

意地悪く、ニヤリと笑った。

10666「……勿論、こうするのさ」

掌の中で鼓動する、私の魂。
銀色のそれを、私は水中に向かって思いきり叩きつけた。

大きな大きな波紋が広がり

世界は少しだけ濁りを薄めた。
402 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/26(土) 00:00:07.67 ID:smDe26wAO
ミコト「行ける?」

10666「誰に口を聞いてるんだい?」

あぁ、何故忘れていたのかすら理解出来ないほどの、この感覚。

コインを一枚、指で弾いて。

墜ちてきたそれに、信念を込める。

私はあの灼けた天空に向かって、自己を顕示する。

10666「『超電磁砲』!!」

轟音が私の元から遠ざかり、空に吸われて消える。私の描いた軌跡は、確かにそこにあった。

ミコト「やるじゃん」

にっこりとこちらに笑いかける彼女。随分と世話になってしまったようだ。

10666「いや、迷惑かけたね。幾つか聞いて良いかい?」

ミコト「私が答えられる範囲で、アンタが知りたいと思うなら」

気掛かりが一つだけ。

10666「13510号は、どうしてる?」

ミサカミコトの表情が翳る。

ミコト「分からないわ。ただ、きっと不安がってる」

10666「そう、か……なら」

それだけ聞ければいい。私は彼女に背を向けた。

10666「やりたい事は決まってるさ」

ミコト「行くの?」

10666「あぁ」

右足を一歩、踏み出す。ふと、何かの気配を感じて足元に目線を落とした。

10666「――悪い、忘れてたよ」







フォース「」
403 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/26(土) 00:01:03.78 ID:smDe26wAO
私の右足の腿の辺りに装着された機械が目に入る。
私の演算補助装置、フォースだ。
私の後ろに有線アームを待機させたその様は、まるで尻尾のよう。

フォース「」

10666「あぁ、行こう。気合いは認めるが、アームはしまっとけ」

フォース「」

私の右足に巻き付くアーム。さぁ、準備は万端だ。

10666「じゃ、ホントに行ってくるとするかね」

ミコト「……頑張るのよ」

悲しそうな声に、後ろ髪を引かれて振り返る。
白に塗り潰されていく意識の中、私が最後に見たのは、悲しみと哀れみとが混じった表情のミサカミコトだった――――
404 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/02/26(土) 00:03:44.69 ID:smDe26wAO
いや今日こんだけなんだ済まない。
漸く盤上に10666号が戻ってくるかもしれない……まだまだ先は長そうだ。
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 00:06:13.27 ID:iY3W7Mf60
乙!
楽しくなってきたぜ
406 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/01(火) 09:32:03.74 ID:K9pLHgXAO
火曜日の朝から更新なんて腰壊して自宅療養中の俺の特権だね!

ひっそり行くわ。
407 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/01(火) 09:33:41.41 ID:K9pLHgXAO
――――学園都市、垣根帝督の隠れ家。

朝日が私の意識を表層に浮きあげる。そうか、私は昨日ここに泊まったのだった。
顔を洗おうとノロノロとした足取りで洗面所に向かう。
妙に身体が重い。鉛を括り付けられたかの様なその感覚は、私に孤独を植え付けた。
早く、10666号を。このままではまたおかしくなってしまう。
彼女の為にも、私はここで狂う訳にはいかない。
いや、もしかしたら私はもう狂っているのかもしれない。彼女と言う存在に。

言動も。

行動も。

全て絡め取られてしまっているのだから。

焦ってばかりの私を常世に引き戻したのは、家主の間の抜けた声だった。

垣根「コーヒーに砂糖とミルクは?」

いや、と自分を律する。
急ぐならば、遠回りした方が早いらしいからと。

13510「両方お願いします。砂糖は……貴方が甘過ぎると思うくらいで」

垣根「ヘヘッ、覚悟しろよー」

返事を背中に、顔を洗う私。
私は今どんな顔をしているのだろうか。

洗面所に、鏡は無かった。
408 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/01(火) 09:36:37.08 ID:K9pLHgXAO
――――10666号、とある路地裏

10666「こっから再スタートって訳か……なるほど確かに理に叶ってる」

目が醒めた私を待っていたのは、路地裏の淀んだ空気だった。
立ち上がり、軽くジャンプ。
手を開いて閉じて、少し繰り返し。肩を回し、首を軽く振る。
よし、身体に不調無し。

以前の私が居た場所は、本当の学園都市では無かった。
私の世界と容易に混ざり合っていた事を加味するに、彼処は精神的な異なる場所。
か、魔術要素が絡んだ良く分からない場所の二択、及びその複合の可能性で更に一択。
何れを取っても、私の身体は物理的に暫く動かしてないと予測出来る。
身体がしっかり反応してくれるのは、有り難い事だ。

しかし、と10666号は思考する。

今なら思い出せる。
私は……アレから逃げられなかった。
その結果があの世界なら、アレの目的は何だったのだろうか。

私だけが狙いではなかった。
と言う事は、誰でも良かったと言う裏付けに他ならない。
偶々罠に掛かったのが私だっただけなのだろう。
媒介の確保……か?

フォース「」

私の思考に割り込んでくる相棒。
思えばコイツも良く無事だったものだ。
暫し考えを中断。
思考力もまだ大丈夫。大丈夫。
409 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/01(火) 09:37:38.30 ID:K9pLHgXAO
10666「……ん?」

そうして気付く、周囲の異変。
路地裏から除く細長い空は、紅い。

10666「おいおい……まだ帰れてないのかよ」

夕焼けなんて裸足で逃げ出してしまう程の、紅。
私は熟ついてないようだ。

迷っていても仕方ない。
私は強く、外に向かって一歩を踏み出した。






世界に、私とアイツだけなら、もっと簡単なのになぁ。
410 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/01(火) 09:38:38.98 ID:K9pLHgXAO
――――紅い学園都市

私は再び路地裏に隠れた。
情けないが、この異常に圧倒されてしまっている。

今度は、模倣なんて放り出したようだ。

街を歩いていたのは、人間とはお世辞に呼ぶのも憚られる程度の、肉の人形。

表現としては自分でも幼稚だと思う。
しかし私には他に適当な言葉も思い付かなかったし、また考える余裕もすっかり略奪されてしまった。

動悸を何とか治める。

良いじゃないか。
化物染みてる方がやり易い。

一つ大きな深呼吸。

10666「――――よしっ!」

何が起きても、アイツの元に帰ってみせる。絶対、生き残ってやる。

私はもう一度、飛び出した。
411 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/01(火) 09:43:40.37 ID:K9pLHgXAO
――――

拍子抜け。全くもってそれ以外に無い。
肉人形――便宜的にこう呼称する――はいきなり襲っては来なかった。

しかし如何せん気味は悪いもので、私はフォースを待機させた。
有線で私の背後に浮かぶ、鉤爪の輩。
こちらには迎撃の余地がある。

街を散策する。建物を見るに、位置情報は変わってないらしい。
一度私の研究所に帰るか?
何かヒントがあるかもしれないし、正直ベッドで休みたいってのもある。

肉人形にも割りと慣れた。
警戒されてはいる様で、多少の視線を感じる。

肉人形に目は無い。
のっぺらぼうの頭、勿論髪の毛なんて生えてない。
ミンチを捏ねて伸ばしたような腕、足。

まぁ何にせよ、無害ならば放置するに限る。
数も多い。殲滅戦なんかになったらと思うと、中々の気だるさに見舞われる。

足を研究所に向けて歩かせる。少し小腹も空いた――





油断していた。
412 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/01(火) 09:45:03.06 ID:K9pLHgXAO
クチャリ、という音を発てて、私の肩は何かに掴まれた。
いや、何かなんて希望的観測は止そう。

肉人形が居た。近い。肩を。

決して強い力では無かった。
だが、それを諸ともしない生理的嫌悪感が鋭く背筋を駆け巡る。
私は本当に反射的に叫んだ。

10666「――フォースゥゥゥゥゥ!!」

相棒はその肉人形に横薙ぎに打ち付けた。
吹っ飛び、壁に叩きつけられるそれを見て、後悔をする。

案の定、周りの肉人形らが集まってくる。
叩きつけられた肉人形を抱き起こす物が居た。意外と仲間意識があるのだろうか?

なら、当然だろうと納得する。
私は囲まれていた。10メートル程距離を取られて、大体円形に。

いや、動いていない肉人形もいる。
こちらを睨んでいるだけだが、敵意は感じた。

輪の中から一個、肉人形がこちらに走ってくる。

そうかい、いや、全くやってしまったなぁ。仕方ないや。

10666「……やるぞフォース」

フォース「」
413 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/01(火) 09:48:06.81 ID:K9pLHgXAO
――――

拍子抜けセカンドシーズン。
レールガンを尖兵にぶち込んだら、周りの肉人形らが蜘蛛の子を散らすように逃げ出したのだ。
何と呆気ない。
幾分か静かになって、精神衛生上でもより良い空間になった。

もう油断はしない。次に会う奴等は必ず襲ってくるだろうから。
逃げたと言う事は、敵わない事の裏打ちである。
つまり、向かってくる者は僅かでも勝算を抱えているのだ。
それを打ち払わなければならない。
先手必勝。気は乗らないし、出来れば温存したいが。

――ほら来た。

外界の変化を肌で感じる。
装甲車が私の前方に止まった。三台、かな。
道路の真ん中に陣取って、邪魔じゃないか。
中から降りてくる、武器を持った肉人形達。
良い銃器じゃあないか。構えも様になっていて、何だか笑えてくる。
あぁ、ムカつくなぁ。それは人様の力だろう?
お前らみたいな化物がおいそれと使ってるのを見たくないよ。

一匹、前に出てきた。

「――――」

形容するのも苦な醜い呻き声が響く。肉が擦れあうような不快な音。
喋っているつもりなのだろうか。

あぁ、忘れてた。先手必勝だった。
414 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/01(火) 09:50:22.59 ID:K9pLHgXAO
コインケースにそっと手を伸ばし、一枚取り出す。
それを後ろ手で弾き、腰の高さ辺りに滞空させた。後は簡単、ミドルキックの容量でコインを、蹴り抜く。

10666「……ほらよ、『レールガン』だ」

一瞬の出来事。その紫電の一撃は、反応が遅れたでしゃばりな肉人形をぶち抜くはずだった。

10666「おろ、硬い?」

どうやら私対策は完璧らしい。
直撃でも無かったようだ。こりゃちとマズイ。

そんな悠長な事を考えた代償だろうか。
途端に10666号に襲いかかる異変。
頭痛、不快感、その他諸々の演算阻害。

キャパシティダウンの類いか。
その結論に至る数秒までに、向こうの敵意は固まってしまったらしい。
銃口を突き付けて警戒する肉人形ら。
そうだな、無力化にはそれが一番。
正解だよ。私以外ならな!

10666「くっ――大暴れだ、やっちまえぇ!!」

フォースが大きく奴等を薙ぎ払う。
人成らざるそれの力に吹き飛び、叩きつけられる肉塊。

止まる訳にはいかない。
手加減なんてしてやらない。
完膚無きまでに、ぶっ潰す。それだけだ。
415 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/01(火) 09:52:30.46 ID:K9pLHgXAO
私に襲い来る無数の銃弾。
フォースの電磁フィールドによってそれらも私に届く事は無い。
良く良く止まった銃弾を観察すれば、何と麻酔弾ではないか。

嘗めやがって。

フォースが装甲車の一つをフロントからぶち抜き、内部の器具を自慢のアームでぐしゃぐしゃに砕いた。
クリアになっていく思考。
どうやらキャパシティダウンはぶっ壊したようだ。

10666「ご苦労だ、ハッハァ!!」

レールガンを奴等の足元に一撃叩き込む。
巻き起こった砂煙に紛れて、私は奴等に接敵する。
手にはまた、コインを一枚握りこんで。

一匹目は驚いていた。近付いてくるとは思わなかったのだろう。
腹にゼロ距離レールガンを撃ち込んだら崩れ落ちた。

二匹目はそいつを助けようとしたのか、背後から不意打ちしてきた。
だが、愚鈍な肉に過ぎない。更に背後から攻めたてたフォースが右腕を食い千切る。

三匹目からは本当に乱闘になった。
だが、ただこれだけで肉人形らの統率は緩んだ。
なら、覚悟した人間には圧倒されるしかないだろう。

殴り、撃ち抜き、蹴り倒し。
薙ぎ払い、貫き、握り潰す。

一人と一機は大いに暴れ、やがて動ける肉人形はいなくなった。

10666「お疲れ、フォース」

フォース「」
416 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/01(火) 09:54:33.54 ID:K9pLHgXAO
何匹か逃してしまった。
それにやはり自分は甘い。
こんな肉でも人の形をしているせいか、再起不能には出来るが、止めを指す気は起きなかった。
後味悪いしね。

豚の精肉なんて進んでやりたくはないだろう。それと同じさ。

座り込んで一息。
あれだけ気を付けていたのにかなり消耗してしまった。

遠くから音が聞こえる。
どうやら援軍のようだ。いやはや参ったね。

10666「どうすっかね?」

答えは期待していないが、我が相棒に問い掛けてみる。

言ってみるものだ。
フォースは有線アームをビルの壁に突き刺し、バンジーの様に私を空中に放り上げた。

10666「うおぉ?」

空中に浮かんだ私を支点にして、戻ってきたアームが更に高い場所を掴む。
その繰り返しで私はビルの屋上に辿り着いたのだった。

10666「こりゃあ便利だ……学園都市じゃ移動に困る事は無さそうだな」

ケラケラと笑ってしまう。
コンクリートジャングルのターザンなんて皮肉にも程がある。

地上は奴らで賑わっていた。

10666「さて、とんずらするか……13510号へのヒントを集めないと、な」

フォースを縄のように使って、私は隣のビルに飛びうつった。

長いかくれんぼになりそうだ――――
417 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/01(火) 09:57:56.30 ID:K9pLHgXAO
投下終了。

皆も交通事故には気を付けろよ。一生腰治らないとか割りと洒落にならんからなー。
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 10:00:16.35 ID:N2VcRX5so
ミテルヨ
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 12:21:07.18 ID:OnQkxTomo
油断一瞬怪我一生というやつか気をつけよう
投下乙
420 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/02(水) 13:32:27.87 ID:G+rgA0YAO
投下開始。
421 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/02(水) 13:33:17.17 ID:G+rgA0YAO
――――13510号、学園都市

当てもなく街をさ迷っていた。
それが一番10666号に逢える近道のような気がして。
そんな私の我が侭に、文句の一つも言わず着いてきてくれる、彼。

垣根「どうだ、見つかりそうか?」

13510「いえ……彼女を少し感じたような気がしたのですが……気のせいだったようです」

垣根「そうか……まぁ、ゆっくりやろうぜ」

慰める様に頭を撫でてくれる垣根帝督。不安が少しだけ和らぐ。
彼の笑顔も、また暖かかった。
寄る辺無い私の杖にしているようで、申し訳無さも心の奥深くから滲み出てきてしまう。

垣根「そんな顔するんじゃねぇよ。美人が台無しだ」

……むぅ。

恥ずかしくなってやり場無い気持ちを抑える為に。

私は――――
422 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/02(水) 13:33:59.18 ID:G+rgA0YAO
――――御坂美琴、冥土帰しの病院。

主の居なくなった病室に、侵入者がいた。
御坂美琴、上条当麻、一方通行。
三者の顔は共通して曇っていた。
少年らは苦虫を噛み潰したような、不快感を露にした表情だ。

上条「どうだ?」

一方「ダメだ。13510号は見つかンねェ」

御坂「滝壺さんは?」

一方「それが、何処にも反応がねェらしいってなァ。だからこそ、ヤバい」

上条「……レベル4の能力を妨害するような奴が連れ去ったのか?」

一方「もしくは能力追跡の事を知っていて、10666号のAIM拡散力場を除去してるかもなァ」

御坂「そんな事出来るの?」

一方「目の前のウニ頭なら余裕だろォが」

上条「……幻想殺しの類似能力って事か?」

一方「可能性は低いがな。お前みたいなンがそこらへンにいて堪るかよ」

御坂「……高位能力者が絡んでるのね?」

一方「だろォなァ……あの虫けらどもの組織が絡ンでンなら、レベル5の可能性も考えた方がいい」

上条「『アイテム』の件もあるしな……」

一方「…………」

上条「どうした?」

一方「いや、何でもねェ」
423 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/02(水) 13:34:58.88 ID:G+rgA0YAO
レベル5。自分と超電磁砲、原子崩しはこちら側だ。残りは2、5、6、7。
二位は始末した。
五位は暗部に絡んでる話は聞かない。
六位七位は情報事態が機密になっている。使いにくいだろう。

……原子崩しの前例がある。可能性としては。

一方「……第二位かもしれねェな」

御坂「!?」

上条「……しかしそいつは」

一方「あァ。俺がしっかりキッチリぶっ殺した、が、アイツ脳味噌だけで生かされてたって話だ」

御坂「…………やな話ね」

上条「でも、推測だろ?」

一方「辻褄は合うンだよ」

沈黙。
考えれば考える程、思考の水の中に沈んでゆく魂。

三人を引っ張り上げたのは、部屋の外から聞こえる喧しい音だった。

上条「……何だ?」

軽く身構える少年二人。

ドアがノックされる。

御坂がそれに対応した。

御坂「はい、どちら様ですか?」

「すいませんが、こちらに御坂美琴さんはいらっしゃいますか?」

御坂「え、えぇ。私ですけれど……」

「……失礼するじゃん」
424 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/02(水) 13:36:01.14 ID:G+rgA0YAO
轟音と共に蹴破られるドア。
近くにいた御坂は驚いて飛び退き、床に強かに背中を打ち付けた。

御坂「いっつ……」

上条「御坂!」

「……御坂美琴、悪いが補導させて貰うじゃん!」

ドアを蹴破った女性が御坂に向けて言い放つ。
その背後から大勢の武装した集団が部屋に入ってきた。

一方通行は呆気に取られていた。また、上条当麻も同じく。
だってその女性は良く見知っていたのだから。

「一方通行……上条当麻?ここで何してるじゃん!」

一方「こっちの台詞だ、何やってンだよ。黄泉川ァ!!」

黄泉川「……アンチスキルの仕事じゃん。黙って見てるじゃんよ」
上条「……ふざけんなよ、御坂が何したってんだよ!納得出来ねぇだろうが!!」

御坂を抱き起こし、自身の後ろに回らせる上条当麻。
肝心の御坂美琴は気が動転して、冷静な思考を展開出来なかった。

黄泉川「……御坂美琴が一般人に危害を加えたのは知ってるじゃん?」

上条「な……!?」
425 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/02(水) 13:36:58.38 ID:G+rgA0YAO
御坂「え、え!?知らない、私やってない!」

黄泉川「どの口が言うじゃん。あの時のは効いたじゃんよ……」

自分の腹をさする黄泉川愛穂。
良く良く見れば腕には包帯が巻かれていた。

黄泉川「その後駆け付けたアンチスキルの先発隊を壊滅させ、逃亡したじゃんよ……酷いもんじゃん。あそこまでやられるとは思ってなかった」

御坂「ちが……私は」

更に語気を荒げる黄泉川。

黄泉川「お前のお陰で私の部下達が何人も死体になるところだったじゃん!あんな風に愉快に人を傷つけれるなんて驚きじゃんよ!」

一方「……黄泉川」

黄泉川「喧しいじゃん!」

一方「黄泉川ァ!!」

一方通行の怒声で一変、静かになる病室。
アンチスキルの連中も一方通行を相手取って敵う筈がないのだから、無理もないだろう。

一方「……超電磁砲はそンな奴じゃねェよ。いや、そンな事出来る奴じゃねェって方が正しいな」

黄泉川「……しかし!」

一方通行が二人の方を向いて言った。ニヤリとした笑みを称えて。

一方「上条、超電磁砲。見つかったみてェだぞ?」
426 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/02(水) 13:39:31.15 ID:G+rgA0YAO
――――10666号、紅い学園都市。

一つ、分かった。

路地裏にも少ないが奴等がいる。
そしてそいつらは基本的に好戦的だ。

慣れてきたものだ。
コイツらは身体の欠損に弱い。
腕や足を引きちぎると抵抗の気を失うようだった。

フォース「」

私の相方は本当に良くやってくれる。
私だけではとうに頭がイカれていただろう。

肉人形を解体、解体、解体。

10666「くそっ……」

表にはなかなか出られない。
身を隠す為にも夜まで待つつもりだ。

紅い空も、だんだん明るさを変えていってる。
多分、夜は訪れるだろう。夕日はさぞかし毒々しいだろうな。

10666「おっと……」

身体がふらつく。
出会う肉出会う肉全部ぶっ飛ばしてきたから、もうそろそろガタが来てるのかな?

私は路地裏の建物の壁に背を預け、座り込む。
頼む、せめて10分休ませてくれよ?

フォースを待機させ、ゆっくり目を閉じる。
疲れた身体はそれだけで、精神を深い水底へと引きずり込んだ。
427 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/02(水) 13:40:12.12 ID:G+rgA0YAO
――――

――ここか。

私が寝ていたのは、水面。

紅い空。

青い、澄み渡った空が恋しい。

恋、しい?

「やっほー、頑張ってる?」

声にはもう振り返らない。

10666「あぁ」

ミコト「やりたい事、やれてる?」

10666「うん」

ミコト「なら良いよ。後悔しないでね」

10666「おぉ……」

ん、待て。

10666「お姉様から見て私は――」

ミコト「私はお姉様だけどお姉様じゃないって」

10666「……姉さんから見て」

ミコト「うんうん。姉さんね」

10666「……私は後悔しそうに見えるのか?」

ミコト「見えるよ」

一刀両断。

10666「……何故だい?」

ミコト「…………」

10666「何で黙るんだよ!教えて――」

フォース「」

そこで私の意識は現実に引き戻しされた。
428 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/02(水) 13:42:11.17 ID:G+rgA0YAO
――――

10666「――はっ。どうしたフォース……」

気付けば、私の周りに蠢く、処理済みの肉人形達。

10666「お前がやったのか?」

フォース「」

身体は幾分かマシになったようだ。
少なくとも歩ける。

10666「行こう、ここも直に奴らが来る」

休息を求める身体に喝を入れ、引き摺るようにしてノロノロと歩く。

しかし遅かった。
目の前に、一匹の肉人形が立ち塞がる。
こういう手合いは決まって手強い。はずなのだが。

その肉人形は無防備にこちらに駆けよって来た。
何だコイツ。

だから腹に一撃、鋭く拳を捻り込んだ。
くの字に折れ曲がるそれ。
接近戦も随分手慣れたものだ。

フォースが私の頭上から肉人形に襲いかかる、が。

10666「消えた……?」

肉人形はそこからかき消えてしまった。
周囲を素早く確認すると、私の背後15メートル程にいた。

テレポートか。

分かってしまえば話は早い。
演算を撹乱させてしまえ。ありったけ、だ。

コインをばら蒔く。
それらはフォースの磁界フィールドによって、星屑の様にキラキラと宙に舞った。

フォースが私二人分くらいの高さまで架け上がる。
それに追従するスターダスト。

10666「ほら、踊ろうぜ」
429 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/02(水) 13:43:23.43 ID:G+rgA0YAO
力を、フォースを通して放出する。

10666「スターダスト・レールガン!!」

堰を切ったように降り注ぐ星屑。
テレポート肉人形はまた背後に回った。
何時まで避けられるかな?

際限無く空から堕ちてくる銀色の破壊。
しかし、その全てがアレを捉えるに至らない。

10666「……くそ。くそ、くそっ!」

ガリガリと、地面が削れていく音ばかりが響く。
焦るばかりの私を嘲笑うかのように、ソレは避け続けた。

ふと、足が動かない事に気付く。
意識を足元に向けて、驚いた。

靴が鉄の針のようなもので縫い付けられている。

なるほど、テレポートか。
道理で向こうは悠々と避け続ける訳だ。

近接打撃の心配が無いから。
フォースはあの通り演算に縛られてる。

ハッハ、そうかいそうかい。

固定砲台嘗めんなよ。

10666「フォース!!!」

私の思考通り、フォースは演算を中断し、即座に肉人形に襲いかかる。
案の定テレポート。磁力を失って墜ちてくるコイン。

私は後ろを見ずに、その降ってきたコインの一つにそのまま裏拳を叩き込む。

結果、私の背後に炸裂するレールガン。

肉人形が地面に崩れる音が聞こえ、私は漸く勝利した。
430 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/02(水) 13:44:03.72 ID:G+rgA0YAO
フォースを引き戻し、靴の鉄針を抜いた。
観察したらただの大きい釘だった。武器としてはやけに生々しい。

振り返り、肉人形を視界に捉える。
どうやら命中はしなかったが、余波で気絶したらしい。
危ねぇ、ラッキーだった。

10666「狭い路地だしね……背後に回るのは読めた。テレポートする奴と戦うのは読み合いになるから困る……」

さて、暴れ過ぎてしまった。
早くここから去らねば。

10666「……フォース」

とりあえずフォースに任せてビルを登った。
どこでもエレベーター、ってか。
431 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/02(水) 13:44:39.87 ID:G+rgA0YAO
投下終了。
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 16:52:15.72 ID:G/z1tYfY0
おつーん
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/02(水) 18:47:13.44 ID:PF81//pJ0
リトバスの世界中みんな真人になったみたいな状態か
ていとくんの行動理由がわからなくて不安だな
434 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/03/02(水) 20:56:23.57 ID:G+rgA0YAO
>>433
リトバス知らないkwsk
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/02(水) 21:55:08.64 ID:aqu21sSh0
さっき追いついたぜ
フォースって単語が出たときからR-TYPERかと思ったらそうだったでござる
もう10666号がケルベロスにしか見えないww
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 05:33:36.63 ID:h+JpKobQo
なんという沙耶の歌
437 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/03(木) 23:03:53.55 ID:P+zBobNAO
投下開始。
438 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/03(木) 23:04:43.40 ID:P+zBobNAO
――――13510号。

垣根「よし、ここで待ってな。軽いもん買ってくるわ」

13510「ジャンクフード好きですね……」

垣根「大丈夫だ、自覚はある」

10666号探しの休憩がてら、オープンテラスの店に寄った。
疲労もひとしおだったので、助かる。

変だ。

彼を待つ間の思考。まとめの刻。

10666号は確かに行方知れずなのだが。

不思議と、寂しさを感じない。
感じない、と言えば誇張があるが……最初ほどの焦燥感は確実に失せていた。

彼が。

自分でも分かる。

彼は私の柔らかい部分に入ってきている。

それはとても暖かくて。

敵意が無い。

これは、この気持ちは――――

「お……あの時の嬢ちゃんじゃねぇか」
439 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/03(木) 23:05:46.88 ID:P+zBobNAO
13510「へ?」

振り返ると、そこに嫌な意味で懐かしい顔がいた。

男1「よぉ、一人か」

私の脳裏に蘇る、あの時の暴力。

男1「あー……もう一人は一緒じゃねぇのか」

今の私は、あの頃と何も変わらない。

男1「……あぁ、そういや嬢ちゃんは――」

守ってくれた10666号は、いない。

13510「あ……あ……」

男1「……いや、手を出すつもりは――」

垣根「オイ」

彼が、後ろから男の肩を掴む。
表情は見えない。

男1「なんだテメェ?」

垣根「俺のツレビビらせてんじゃねぇよ。失せろ三下」

男1「ほぅ……」

男がその体勢のまま、肘を垣根の腹に突き刺す。
が、少年は静かに立っていた。

男1「(手応えがねぇ?)」

垣根「ほらよ」

瞬間、男は縦に回転していた。
僅かな時間、空を舞い、肩から地面に落ちる。さながら合気道のように。

垣根「常識を捨ててからかかってきな、ボケが」

少年は少女の手を掴む。

垣根「興醒めだ、行こうぜ。運良くお持ち帰りだからな」

空っぽの少女に、入り込んだ。
440 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/03(木) 23:06:13.86 ID:P+zBobNAO
――――とある男の思考。

いてて……あれは強いな。敵わない。

しかしどういう事なんだ?
男と一緒だったな。

年頃だろうし、まあ男の一人や二人居てもおかしくはない。

だけど、ありゃあ……もう一人の嬢ちゃんに向けてた『目』だったぞ?

だから声をかけてみたが、あの気の強い嬢ちゃんは居なかった。

アイツ、あれからどうしたんだろうか。

やりたい事、やれたのか?

「兄貴ー、随分ボロボロっすね」

けっ、難しい事考えるのは嫌いだ。
俺は俺のやりたい事やるだけだ。
441 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/03(木) 23:06:52.31 ID:P+zBobNAO
――――10666号、紅い学園都市。夜。

10666「もうそろそろ頃合いか……行こう」

日が暮れるまで身を隠しているのは案外簡単だった。
人気のないビルの屋上で時間を潰せば良かったのだから。
仮眠も取れた。

目指すは、我が懐かしき古巣。

10666号は宵闇の空を駆けていった。
442 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/03(木) 23:08:29.54 ID:P+zBobNAO
――――10666号の研究所

特に戦闘になる事無く辿り着く。
隠れるのばかり上手くなった自分に、多少の嫌気が刺した。

屋根からフォースをロープのように使って、自室の窓まで降りる。
当然だが電子ロックが掛かっていた。

10666「あっちゃー、こんな器用な事は出来ねぇぞ……フォース?」

フォースから弱い電流が発せられる。
小さな音と共に鍵が外れた。
しかし万能で本当に助かる。

窓を開けて降り立った自室は、あの時と何ら変わっていなかった。

久方ぶりに目にしたマイベッドが頻りにこっちを誘惑してくる。
えぇい、まだ寝るわけにはいかんのだよ。

13510号の部屋に向かおうと、ドアに――

ドアが開いた。

肉人形が居た。

私の全身を駆け巡る虚無感。
安息の場所であるはずのここを侵略された憤り。
複雑に入り交じったそれは、フォースを通して具現化した。

10666「――ぁあ!!くそが!!」

フォースが自慢の豪腕で肉人形を壁に打ち付ける。
吹き飛ばされたそれは意識を失ったようだ。
途端に騒がしくなる、この場。

10666「ちくしょう……」

窓から再び狂った世界へ飛び出す。

収穫は、逃げ場など無いと言う、現実を知った事だけだった。
443 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/03(木) 23:15:35.19 ID:P+zBobNAO
――――シティホテル

10666「……まさか一人でラブホに入る羽目になるとはな。男がいるわけでもないが」

身体が休息を渇望していて、それは遂に限界が来た。
とにかく寝たい。あと空腹。

フロントが自動だったのをこれほど喜んだ事は無い。
私は一生ラブホに足を向けて寝れないな。
ラブホが既に寝る所だけど。
軽い食べ物やソフトドリンクも用意されていた。デジタルマネー持ってて良かった……

ふかふかでケバい色のベッドに横たわる。のち思考。

奴らはあんな為りだが、一応行動ルーチンは人間と同様のように感じた。
つまり基本的にラブホの個室にゃ入ってこない。我ながら名案だ。

何時までかかるか解らないが、当面はラブホを転々としよう。
うわぁ私ビッチだ。

10666「くくっ……ははは」

一人で笑う。
その感情もすぐに掻き消え、溜め息を漏らす。
のそりと身体を起こし、シャワールームへ向かった。
向かいながら服を脱ぎ散らかしていく。
少々はしたないが、何、見物している奴も居るまい。
444 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/03(木) 23:16:34.36 ID:P+zBobNAO
違和感無く全裸になる。
足にはフォースが付いていた。何だか外すのが億劫だ。

10666「お前耐水性?」

フォース「」

10666「上々だ。私の玉体を眺められる特等席だぜ。ははっ」

私は立ったまま、シャワーのコックを回した。

温かい雨が、10666号の華奢な身体を伝う。
髪、項、肩、胸、臍、股、腿、膝、爪先。
湯水は、ある程度の規則正しさで川を形成していた。
撫でるような肩から水滴が零れる。
吐息は熱を以て空へと融けた。

疲労が皮膚から溶け出しているような錯覚。
私はそっと鏡に手をつく。

10666「まだ……まだ折れない」

水の音だけが、静かに踊っていた。
445 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/03(木) 23:17:53.24 ID:P+zBobNAO
――――

――またか。

久しぶりの柔らか睡眠空間を阻害するとは不届き千万だ。

ミコト「良いじゃない、別に。身体自体は休めてるわよ」

10666「精神的な問題さ」

まぁ、水のベッドも悪くない。ラブホにもあるがね。

10666「何か教えてくれる気になったのかい?」

ミコト「いや、違うわ」

じゃあ、何だ?

ミコト「アンタは真っ直ぐ過ぎるわ。あの子以外見ていない」

10666「何が悪い」

ミコト「悪くはないわ。でも悪くもある」

長所は短所ですってか。

ミコト「良く聞いてみたら?アンタを助けようと頑張ってる奴の声を」

それは。

10666「誰だい?お姉様か、一方通行か、上条当麻か、妹達か」

首を横に振った。

ミコト「ずっと、アンタの側にいた子。ほら、今も必死に頑張ってる――」

え、何だ?

遠くから聞こえる――

声が――音が――感情が――魂が。













――――自己修復、失敗。

446 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/03(木) 23:18:29.43 ID:P+zBobNAO
投下終了
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/04(金) 17:33:35.01 ID:6cdcq4yq0
おつ
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 18:14:31.48 ID:qiDeUiU00
F-Bにならないことを祈る
449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 21:46:04.12 ID:QQK7D1oXo
F−Aも大概だけれどな
450 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/03/06(日) 23:48:28.49 ID:pUpOsNUAO
絵描くの楽しいィィィィィィ
やっべ文書いてねぇェェェェ

F-AとかBの意味が気になってググッてしまった。世界は広い。
451 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/08(火) 01:07:48.60 ID:RNdgYnNAO
まあまあ書けた。投下開始。
452 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/08(火) 01:11:41.18 ID:RNdgYnNAO
――13510号、夜、垣根帝督の隠れ家。

垣根「今日も収穫は無し、か」

彼が軽く溜めた息を洩らす。
実際、それは疲労に因るものではないのだが、それでも少女の心に翳を落とす。

13510「申し訳ありません……」

故に、謝らずには居られない。
それを彼は望まないと知っていても。
彼は、彼女の頭を撫でるその行為によって好意を還した。

垣根「気にするなよ。やりたくてやってるだけだからさ」

13510「んぅ……」
453 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/08(火) 01:12:15.43 ID:RNdgYnNAO
――――

彼は、優しい。

暖かい。

一緒にいてほしい。

彼に迷惑をかけないかな?

私みたいな女の子は嫌いかな?

それとも好みかな?

タイプだったらいいな。

嫌われたくないな。

一緒にいたいな。

守ってくれるかな?

いっぱい、あげたいな。

いっぱい、くれたもの。

近くに行きたいな。

抱き締めてほしいな。

側にいてほしいな。

彼に。

彼と。

彼だけ。

彼さえ――――
454 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/08(火) 01:13:10.64 ID:RNdgYnNAO
――――

コンコンと控え目な音が、垣根帝督の寝室に響く。
寝床には附いていたものの、イマイチ眠気を持て余していた彼はすぐ起き上がった。
ベッドに腰掛けたまま、音に応える。

垣根「どうした?」

開くドアと共に部屋に入ってきた13510号。
俯き勝ちな様子に、何事かと少年は身構える。

が、予想は大きく外れた。

13510「……一緒に、寝ていいですか?」

少年は何かを考え込むような仕草を取った。
しかし僅かな時間の事だ。断る理由も特に無かったので、

垣根「ほら、来いよ」

布団を捲って場所を空けた。
455 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/08(火) 01:14:14.23 ID:RNdgYnNAO
――――

垣根帝督の寝室にはカーテンが無い。
窓にはブラインドが取り付けられていて、それが射光を防いでいた。
が、構造上多少の光は漏れて入る。

そんな薄明かりの中、少年が間近に見た少女は美しかった。
ただ可愛いとか、綺麗だとか、そんな陳腐な言葉では済ませられない魔的な美であった。

彼女は今、彼の隣で横になっている。
それは吊り下げられた甘美。

垣根「……俺だから大丈夫だけどな」

13510「……はい」

垣根「並の男なら、間違いなく食われるぞ?」

13510「…………」

垣根「わかっ」

13510「召し上がっても、宜しいですよ?」

垣根「――っ」

絶句。

二の句を告げれないとは正しくこの事だった。

彼女の様子が、情報として頭に流れ込んでくる。
表情が、香りが、温さが。
蕩けた顔が、惚けた匂いが、柔らかい熱が。

狂ってしまえと、囁く。

垣根帝督が、苦し紛れに取った行動は、ただ彼女を抱き寄せるだけだった。

垣根「大丈夫だ」

13510「…………」

垣根「そばにいるからな」

小さな身体は、まるで仔犬。
誘う身体は、まるっきり雌犬。

ちぐはぐなそれは、凄く、魅力的だった。
456 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/08(火) 01:15:11.68 ID:RNdgYnNAO
――――

垣根「……なかなか、危なかったな」

13510号が寝静まった夜更け。
彼は玄関の外、マンションの廊下で手摺に凭れて空を眺めていた。
一息、身体を落ち着けて、能力を解除する。

垣根「……興奮を抑える未元物質を摂取しておいて正解だな。ありゃあ確かにヤバい」

垣根帝督は振り返らない。

垣根「……よぉ、いい月だな。心理定規」
457 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/08(火) 01:17:06.13 ID:RNdgYnNAO
――――

13510「ぅ……朝?」

少女が目を醒まし、眠い目を擦る。
隣では、彼が静かな寝息を発てていた。

愛しさが満たされていく感覚。
もう少しだけ、眠る事にした。

今日は、何処へ行こう――――
458 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/08(火) 01:17:49.24 ID:RNdgYnNAO
――――学園都市、昼、御坂美琴

上条「あれから目撃情報は無し、か……」

御坂「街を探してもどうにもならないのは分かってるけど……」

一方「どォだ打ち止め。ネットワークは?」

打ち止め「全然ダメ……ってミサカはミサカは情報が集まらない事に辟易してみる……」

目に見えて落ち込む打ち止め。
しかし進展が無いのも事実だ。

御坂「私黒子のお見舞いに行かないといけないのよね……」

上条「何かあったのか?」

少し陰る御坂美琴。

御坂「黒子がジャッジメントの仕事中に怪我したって……昨日帰って来なかったわ。気絶してて、今はグッスリ寝てるらしいわ。今は初春さんが着いてる」

一方「……妙だな」

上条「何がだ?」

一方「……芳川も昨日研究所に忍び込ンだ誰かに襲われて、今は病院で――っ」

打ち止め「――嘘。」
459 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/08(火) 01:18:26.77 ID:RNdgYnNAO
――――学園都市。とあるビル屋上。

17600「ハハハッ……こんな役回りばかり、とミサカは呆れ返ります」

覗くスコープには、求め乞うた人。しかし違い異なる者。

17600「スネーク冥利に尽きる、とミサカは駆け出します!」
460 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/08(火) 01:19:08.00 ID:RNdgYnNAO
――――13510号、学園都市


彼が隣にいる。


それは迚も幸せ。


手を繋いで、この街で二人。

461 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/08(火) 01:21:18.00 ID:RNdgYnNAO
――――10666号、紅い学園都市

昨日の妙な声は何だったのだろう。
何故か懐かしい、何処か頼もしい、そんな声。

そもそも私はなんで此処にいる?

私は何をしている?

何をしたかった?

アイツを、守る――――

アイツを、守る――――?

今日は随分と、静かだ。
けっ、審判の日だとでも言うのかい?

10666「くっくっ、笑えねぇな」

そう、笑えない。

そして、それは突然。

渇望したモノは、手に入った。
462 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/08(火) 01:21:56.46 ID:RNdgYnNAO
――――御坂美琴

打ち止め「……見つかった、ってミサカはミサカは即座に報告!」

張り詰める空気。

一方「マジかァ!?何処だ!?」

打ち止め「いや、でもこれは……?」

ゲコゲコッ、と蛙の鳴き声を真似た電子音が鳴る。御坂美琴のポケットからだった。

一方「おいィ……」

御坂「ご、ゴメン……黒子から!?」

上条「……ん、俺も着信か?……冥土返し?」

一方「……芳川ァ?珍しいな」

その不自然さに、上条は気付く。

上条「全部……病院からだ」

打ち止めを含む全員が、はっと息を呑む。皆、銘々に携帯を開いた。

御坂「私よ、黒子。大丈夫なの?」

黒子『それどころではありませんの! 良くお聞き下さいお姉様。私が出会ったのは――』

上条「もしもし、上条です」

冥土『あぁ、気になる事があってね。最近酷い怪我人が多かったんだがね、目覚めたその子達が似たような事を言っていてね。特徴が――』

一方「俺だ」

芳川「良かった、取ったわね。手短に話すわ。私を襲ったのは――」
463 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/08(火) 01:22:34.07 ID:RNdgYnNAO
――――13510号、学園都市、街中。

13510「――なん、ですか?」

いや、私は目の前の少女を良く知っていた。
だが、見知ったそれとは似ても似つかない、その雰囲気。

彼女の背後に、うねる様にして纏わりつく巨大な何かが、それを更に強くしていた。

蛇のように長く、頭は膨らみ、その頭は爪の様に細く割れ、開閉している。
ドクリ、ドクリ、と鼓動が聞こえそうな脈動が見て取れた。

その根本は、彼女のスカートの中へと繋がっている。

目は本当に虚ろで、身体に力が入っていない。

まるで。

いや、しかし――

13510「――貴方、まさか」
464 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/08(火) 01:23:18.18 ID:RNdgYnNAO








『10666号』







465 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/08(火) 01:27:31.95 ID:RNdgYnNAO
――――10666号、紅くて狂った愉快な愉快な学園都市

13510「――10666、号?」

あぁ、居た。漸く見つけた。

なぁ、13510号。私頑張ったんだ。

いっぱいやっつけたんだ。

たくさんきりぬけたんだ。

こわいところにいたんだ。

でもぬけだしたんだ。

すごいだろ?

わたしは10666ごうだからな。

おまえをまもる。

お前を、守る。




ふと、気付く。13510号の隣に、一匹の肉人形。

くそっ、ここまで来てやらせるか!!

10666「――――ァァァァ!!」

自分でも、声にならない叫びだったと思う。
地面に飛び付き、カポエラの要領で、有らん限りの力でフォースを叩きつける。

遠心力とフォース自体の力が合わさったそれは、肉人形を無様にぶっ飛ばす――

はずなのに。

その人形は受け止めた。易々と。
なるほど、ラスボスって訳かい。

そう構えた気は、次の瞬間霧散してしまった。
466 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/08(火) 01:28:29.64 ID:RNdgYnNAO
13510号が、肉人形に寄り添っている。心配している。

何だこれ。

ナンダコレ。

違う、目の錯覚だ。しっかり『見ろ』。

目を強く擦り、見て、そこに居たのは肉人形では無かった。
顔立ちの整った、少年。

彼女を守る様に、私に立ち塞がる。
それに甘んじ、守られる彼女。

待って。

10666「ォ―――ァァ」

上手く声が出ない。

いや、私は――――

私は今まで『声』を出していたか?
467 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/08(火) 01:29:41.48 ID:RNdgYnNAO
13510「――――っ」

13510号、怖がってる。

私?

垣根「逃げな、美春。いや、13510号」

13510「でも――」

垣根「心配するな、俺が何とかしてやる。だから、逃げろ」

まてよ。

13510「…………」

垣根「この先の公園の前に、やたら目立つドレスを来た女のガキがいる。俺の仲間だ。事情を話せ、緊急時の対応は伝えてある」

マテヨ。

13510「貴方は一体――?」

垣根「早く行け!」

マテヨォォォォォォォォ!!!

10666「ォ―――オォォォォォォ!!!」

13510「っ」

13510号が行ってしまう。

私から、逃げて。

わたし

わたし

お前。

10666「ゥ、ォォォォォォオ!!」

天に向かって吼え猛る、一匹の化物。
怒りが世界を割らんばかりに広がり、それは鋭く少年に襲い掛かる。

垣根「来いよ、10666号。お前はここで、行き止まりさ」
468 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/08(火) 01:30:30.62 ID:RNdgYnNAO
――――御坂美琴

何故。

今、ただ今だけは、走れば朽ちるこの身が憎い。

もっと、もっと早く。

当麻も、一方通行も居る。

きっと、きっと何とかなる。

だから、もっと速く、もっと早く――
469 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/08(火) 01:32:26.38 ID:RNdgYnNAO
――――13510号。

言われた通りに走って、確かに見つけた。凄い綺麗な女の子。

「貴女――って事は、帝督は野暮用ね。御坂美春かしら?」

13510「は、はい」

心理「私は『心理定規(メジャーハート)』。よろしくね。早速だけど、逃げましょ?」
470 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/08(火) 01:33:30.95 ID:RNdgYnNAO
――――がくえんとし。

10666「――――!!」

憎い、憎い、憎い!
何故奪う、何で盗る。

私から、私の――

身体の赴くまま、一心不乱の破壊を振り翳す。
フォースは奴を捉えようとして中空を薙ぎ払い、私のれーるがんはアイツの悪趣味な羽によって弾かれる。

垣根は何も仕掛けず、それが余計に化物を激昂させた。

10666「ア――『ォァァ――』!!」

二枚のコインを弾き、素早く連続で打ち出す。
倍加したその威力でも、少年の翼はびくともしない。

垣根「ダメだダメだ、てんでなっちゃいねぇよ。常識を捨てすぎるのも考えもんだな」

撃つ、射つ、討てず。

撃って、射って、討てない。

私の魂は、悉く否定される。

ひたすら、ただひたすら撃ち続ける。
フォースも今や狂ったかの如く暴れ、砕き、壊す。

怒りと、僅かな恐怖。
471 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/08(火) 01:34:33.91 ID:RNdgYnNAO
身を翻し、上空から踵落としを見舞おうとする。

垣根「――これは、色んな意味で『絶景』だな」

巫山戯るなよ、この野郎!!

不意を着いたはずのそれも、難なく防がれる。
少年を包む六枚の羽の壁は、均しく厚い。

距離を取った。

垣根「お、潮時だ」

何が、と思う暇も無くいきなり衝撃波が飛んできて、私は吹き飛ぶ。
受け身を取って向き直った時には、少年は影も形も無かった。

逃げられ、た。



無力。圧倒的無力。

10666「アァァァァァッ―――!!」

吼える。
最初とは違う、悲しい胎動。

足音が複数聞こえ、私の後ろで立ち止まった。

一瞥、肉人形らがいた。

ちくしょう、私を笑いに来たのか?

ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう。

――怖い。ヤろう。

そうだな。

私は八つ当たりも兼ねて、肉人形らに襲い掛かった。
472 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/08(火) 01:35:35.20 ID:RNdgYnNAO
投下終了。
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 11:07:57.07 ID:PhoVGk/X0

ていとくんは……これも交渉権が絡んでいるのか、それとも第一位への復讐かと思いきや、紳士さん展開なのかな?

ところでF-BだのF-Aだのってぐぐっても出てこないんだけどなにそれ
474 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/03/08(火) 21:31:08.45 ID:RNdgYnNAO
>>473
>>436のゲームのエンディングだと思う。
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 22:52:03.13 ID:sTPrpE5Ro
ちがうよ
フォース R-type ファイナル
で検索で出たはず
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/08(火) 23:03:26.24 ID:RNdgYnNAO
>>475
あぁ……なるほど。俺は理解を拒否してたのか。

投下開始。
477 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/08(火) 23:06:21.58 ID:RNdgYnNAO
自棄。彼女を今の現すのに最適な言葉だった。
力を抜く事を忘れ、狙う事を忘れ、守る事を忘れている。
ただ暴力を。出来るだけ、可能な限り惨たらしく。

もう彼女はコインを弾いてすらいない。
周りに散らばった硬貨の一つ一つが意思を持ったかの様に浮き上がり、紫電の矢になって敵対するモノに襲い掛かった。

四体の肉人形のうち、一体が右手を翳し、それらを次々と打ち払っていく。
触れられた物は摩滅して消えた。

その現象を、彼女は理解しない。
ただ獣の本能で『効果が無い』と悟る。

フォース「!!」

意を決したかの如く、その個体に斬りかかる彼女の剣。
しかしそれはもう一体の肉人形に阻まれ、触れる事すら敵わず反射された。
弾き返されたフォースが彼女の左腕を千切り飛ばす。


ならばとれーるがんを打ち込み、しかしそれも三体目が放った『超電磁砲』によって相殺される。

怒り。

今や誇りたるや何か、それすら見失っている彼女が、彼女の僅かな理性がその心に小さな火を起こす。

油まみれの世界には十分だった。
478 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/08(火) 23:07:03.59 ID:RNdgYnNAO
10666「アァァァァァァァ!!」

その不愉快な1に全を叩き込む。収束した彼女の矢は、巨大なドリルのように空間を抉って進んだ。

その人形を突き飛ばす、別の小さな肉人形。

外した。



振るっても振るっても治まらないこの怒りを、何処へ向ければ良かったのだろう。

この虚しさは、何なのだろう――
479 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/08(火) 23:07:35.52 ID:RNdgYnNAO
――――10666号、とても汚れた綺麗な世界

――助けて。

「どうしたの?」

見てよ。

「見たわよ」

世界、壊れちゃった。

「まだ全部じゃないわ」

見てよ。

「見たわよ」

地平線が迫ってくるよ。

「まだまだ遠いわよ」

見てよ。

「見たわよ」

空が墜ちてくるよ。

「まだ高いわよ」

見てよ。

「見たわよ」

水が渇れちゃったよ。

「まだ水溜まりはあるわ」

どうしよう。

「どうしたい?」

分からないよ。

「そう」

助けてよ。

「助けてほしいの?」

うん。

「何で?」

怖いよ。

「分かったわ。おいで、抱っこしたげる」

ありがとう。

「どう?」

あったかい。

「怖くないからね」

怖くないの?

「うん。だって何とかなるもの」

そうなの?

「そうよ。だから姉さんに掴まってなさい」

分かった。

「また、起こすから。今はお休み……」
480 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/08(火) 23:09:27.55 ID:RNdgYnNAO
――――御坂美琴

上条「バカ野郎!!10666号の腕が――」

一方「――反射が上手く機能しなかった、だと……?とりあえず早く抑えて治療だァ!!」

目に見えて同様する一方通行。
彼が反らしたはずの肉の蛇は、しかしそのまま10666号に跳ね返った。

御坂「ま、待って……あれ……」

10666「――――ヒィ」

御坂美琴が指差したその先に、鉤爪の蛇。
主の腕を拾って傷口を合わせ、捻る様に擦りあわせる。ギチュッ、グチュッと嫌な音を奏でた。
そこに蛇が巻き付き、離れた時には既に切断の跡は無かった。

御坂「う、げほっ」

慣れない光景に嘔吐く御坂。

彼らから見た10666号は、異質の一言だった。
人間らしい言葉を発する事は無く、瞳には生気が無い。
右肩にあるフォースは微動だにせず、替わりにミンチを捏ねて造ったような醜い蛇が彼女を守っている。

頭は太く、胴は細い。
その蛇はスカートの中に繋がっていた。

上条「――ふざけんなよ」

一方「……最悪にイカれてやがる」

その胴は彼女の下着を押し退けて、未だ不可侵であろう路に繋がっていた。おそらくは深く。
481 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/08(火) 23:10:39.59 ID:RNdgYnNAO
御坂「酷い……」

カタカタと震える第三位。
何がどうなっているのか、何故こんな事になったのか、考え答えに至るには些か時間が与えられなさ過ぎた。

彼女は吼える。それは激しい攻撃と共に。
怒りに任せた攻めを捌けない三人ではない。
が、下手に絡める事も出来ずに消耗させられていく。

上条「このままじゃ――」

超電磁砲を打ち消す上条。

一方「あァ、マズいな」

ベクトルを解析しながら、物理攻撃を反らしていく一方通行。

御坂「どうすんのよ!!?」

半分泣きながら、電撃で攻撃を防ぐ御坂。

ただ一人、無言で。

そして一言。

打ち止め「……ちょっとやってみるってミサカはミサカは10666号に強制介入してみたり」



一方「何だと、打ち止めァ!?」

御坂「――危険じゃないの?」

捌きながらの会話。
10666号の力は留まる所を知らず、それはまるで駄々を捏ねる子供のよう。

打ち止めは、普段見せないような不敵な笑いを浮かべる。

打ち止め「大丈夫、ちょっと起こしてくるだけってミサカはミサカは敵意を剥き出し!」

そう言い残し、目を閉じた。
482 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/08(火) 23:12:34.87 ID:RNdgYnNAO
――――ラスト・オーダー

打ち止め「何これ……」

10666号にネットワークを強引に繋ぐ。
その瞬間に、打ち止めは妙な場所に引き摺り込まれた。

世界の果て。

それも滅びゆく。

しかし、そこには入れない。外に居るだけ。

打ち止め「……そう。入れる気はないのね。道理で見つからない訳ね、でも」

打ち止めは世界の壁を『掴む』。

打ち止め「ミサカを舐めないでほしいな」

その手に宿る、9968の魂。
ただ助けたいと願う、一途に練られたネットワーク。

打ち止め「――あの子を、返して!!」

一つ一つ、見えない鎖を引きちぎる打ち止め。
彼女にしか出来ない、孤独な戦いが始まった。
483 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/08(火) 23:16:02.91 ID:RNdgYnNAO
投下終了。
今更になってファイナルの話だったと気づいてマジ恥ずかしい。ググらなくても知ってるよ……

F-Cも大概だと思う。
しかしケルベロス系はヤバい。フォース暴走とかもうヤバい。
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/09(水) 18:03:56.41 ID:RUn1Jw2d0
おもいっきりバイドじゃねぇか・・・・・・
あと関係ないけどギガ波動砲強すぎ
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 20:31:11.69 ID:aSyG2Yd0o
サイクロンだろjk
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 23:45:57.34 ID:792XEMvp0
大丈夫ですかー?
487 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/03/20(日) 00:37:41.33 ID:EQW/VyEAO
うっわ出づらい……sageでひっそり皆さんお久しぶり……
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/20(日) 20:12:05.94 ID:eATx4E8F0
続き待ってるぞゴルァ
489 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/20(日) 20:12:15.58 ID:EQW/VyEAO
投下開始
490 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/20(日) 20:13:54.46 ID:EQW/VyEAO
――――13510号、とある建物の中。

心理「……良かった。まだ使えるわね」

私は彼女に連れられて、人気のないビルの一室に案内された。
長い間空けていたそうだが、汚れや埃は目立たない。

やたらフカフカなソファーに勧められて、私は遠慮がちに座った。

13510「ここは?」

心理「私たちの組織……まぁ今は帝督と私しかいないのだけれど、そのアジトだった所よ」

耳に残る単語を聞く。

13510「組織?」

心理「えぇ。帝督と愉快な仲間達と思ってくれれば良いわ」

そう言ってクスクスと可愛らしく笑う少女。
スラリとした体つきをしていて、ドレスが良く似合っていた。
背中を惜し気も無く見せつける様な構造をしたそれは、彼女の気品を引き立てていた。

キッチンの方に向かう心理定規。
カタカタと音がしている。
どうやらコーヒーを煎れているようだ。

いや、そんな事と言っては失礼だが、今は些事だろう。それより。

13510「彼女はどうなっているのでしょうか……」

一人呟く。
あれは、あれが本当に彼女なのだろうか。
私の前から居なくなって、まだ数日しか経っていないと言うのにあの変わり様だ。

何かが、おかしい。

どこから、おかしい?
491 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/20(日) 20:14:44.16 ID:EQW/VyEAO
心理「はい、どうぞ。味は保証しかねるけど」

コーヒーが注がれたマグカップを渡される。
ミルクと砂糖が黒い海を泳いでいた。

一口、二口。
乱雑な思考が成りを潜めていき、冷静さが上位となって脳をクールダウンさせる。

彼女は対面に座って、同じようにマグカップに口を付けていた。
よく見ると、見た目より幼い事に気付く。

心理「落ち着いたかしら?」

彼女はこちらを見ず、しかし心を見て言った。焦っていたのはまるわかりだったらしい。

13510「……えぇ、ありがとうございます」

暫しの沈黙。

それを破ったのは、小さな小さなノックの音だった。
492 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/20(日) 20:15:56.88 ID:EQW/VyEAO
――――1/9969

17600「っ……無茶、しやがって……上位個体ぃ……」

ふらつく身体を押さえながら、必死に歩を進めていく。
今、一番近いのは私だから。

一方通行の演算補助に加えて、打ち止めの10666号に対する強制ログインの敢行。
ミサカネットワークは既にパンク寸前だった。
漸く捻り出した一人分が、17600号。

彼女が向かうのは、唯一手近に居る魔術のエキスパートの元。

彼女は仕事をやり終えたかの如く、やや古ぼけたドアを叩く。
手加減なんてする余裕も無い。

中から慌ただしく駆けてくる気配がした。
安堵と共に、その場に崩れ落ちる17600号。
ドアが開き、黒く長い髪の少女が顔を出した。

姫神「……どちら様?」

地べたに座り込んだ私を不思議そうに見るその少女。

私は声を絞り出した。

17600「インデックスさんはいますか?とミサカは問い掛けます」

黒髪の子の後ろから出てきて、私に心配そうな声を掛ける幼い大人の更に後ろに、尋ね人を見つけた。

話すのも辛いので、とりあえず手を挙げた。
493 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/20(日) 20:17:06.87 ID:EQW/VyEAO
――――103000/103000

禁書「はぁ、はぁっ……」

シスターは街を一人駆けていた。
無傷の満身創痍で自分を訪ねてきたミサカは、既に自力で動けなくなっている。

17600『10666号がヤバい。化物みたいなのがくっついてて、一方通行の反射も上手く効いてない。とミサカはシスターの知恵を借りに来た事を伝えます』

急がなければ。私の知識が彼女を救うならば、それに越した事は無いのだから。

指定された場所へ着く。
しかしそこに居たのは同居人でも無く第一位でも無く。

ミサカが一人。

15555「おっしゃあ、シスター来たな……ぐっ……背中に捕まって下さい」

座り込んでいた彼女がゆっくり立ち上がり、その細い背中を指差す。

禁書「ど、どういう事なのかな?」

15555「超特急ミサカ郵便ですよ。つまり、輸送させて頂きます」

合点。
ゆっくり身体に掴まり、その瞬間に凄まじい勢いでミサカエクスプレスは発進した。

15555「うおらァァァァァァァァ!!」

禁書「うわぁァァァァァァなんだよ!!?」

乗客への配慮が足りないと、シスターは心底そう思った。
494 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/20(日) 20:20:55.87 ID:EQW/VyEAO
――――13510号、組織の建物。

ノックと共に入ってきたのは、これまた華奢な少女だった。
少しゴシック気味の黒い洋服が良く似合っている。

そのゴシックな少女とドレスの少女の目が合い、暫く見つめ合って、こちらを向いた。

「へぇ……この子。ホントにそっくり」

定規「でしょ?」

数段過程を飛ばした会話。
13510号の思考が若干置いていかれる。

13510「この方は?」

「あら」

定規「――ふふっ。ね、そんなモノなのよ」

ゴシック少女は頬に手を当てて指を遊ばせる。
顔には僅かな不満。

「……じゃあ、自己紹介。と言っても聞き覚えはあるはずよ?」

コホン、と咳の音。

掌握「私はレベル5の第五位、『心理掌握(メンタルアウト)』」
495 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/20(日) 20:21:30.05 ID:EQW/VyEAO
確かに聞き覚えがあった。おね――

掌握「『お姉様と同じ常盤台中学に通っているレベル5で、精神系の能力者』。その通りね」

こ――

掌握「『こっちの考えを読まれた!?そんな出鱈目も可能なのですか……』」

…………

掌握「ふふっ、ゴメンなさい。でも良く分かったでしょう?」

13510「……余り良い気持ちはしません」

ヒラヒラと手を振って否定を示す少女。

掌握「何時でも読みっぱなしな訳じゃないから安心して、ね?」

そう言われては嫌とも言えない。

話を反らす為に口元に持っていったマグカップは、既に空だった。
496 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/20(日) 20:22:57.00 ID:EQW/VyEAO
――――御坂美琴。

一方「ぐっ……!?」

一方通行が肉の蛇に体当たりされ、吹き飛ぶ。
受け身は取れたものの、それは劣勢の証明だった。

上条「一方通行!」

一方「……大丈夫だ。問題ねェ」

御坂「なわけないでしょ!」

彼らとて人である。
長く動けば身体が疲れ、集中は途切れる。
一方で、10666号にその兆候は見えない。
蛇の攻めはますます苛烈になる中、10666号自身は余り動かなくなっていた。
怒りを宿している様にも見えたその濁った目は、今は只々虚ろなだけ。

今の彼女にとって、戦闘は惰性的に行なっているだけなのだろう。

一方「チッ、ネットワークのレスポンスが悪ィ……打ち止めが大分演算領域使ってンな」

チョーカーのバッテリー残量も少ない。演算補助も足りない。ならどうするか。

一方通行は単純な解決を求めた。

一方「超電磁砲、演算補助と充電頼むわ」

仮にもレベル5なら、多少の足しになる。
しかしそれは御坂美琴の戦闘能力の剥奪に他ならない。

自衛出来ない。それは――

御坂「……分かっ」

上条「任せろ」

御坂「――分かった。援護するわ一方通行」
497 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/20(日) 20:24:06.57 ID:EQW/VyEAO
一方通行の後ろに下がる御坂美琴。
チョーカーに触れ、能力を行使する。

一方「しゃァ、大分マシになった。やれンぞ」

上条「だけどどうするんだ?10666号はスタミナ切れとは無縁みたいだぞ」

薙ぎ払われる暴力の数々を紙一重で躱していく上条当麻。
何の能力の補助も無く感覚で避けられるのは、数々の強者と対峙した経験からだろうか。

一方「……そもそもありゃ正気かどォかだな。魔術にしろ能力にしろ、異能の力ならオマエの右手で目覚めンじゃねェか?」

蛇の、単調に為りつつある攻めを捌く一方通行。
十分とは言えないが、演算も行えている。

上条「くっ、危ね……アレに突っ込んだら流石の俺も死にかねないぞ」

禁書「――その考えはビンゴなんだよぉぉぉぉぉ!!!」

ふと聞き覚えのある声に上条当麻が振り返ると、シスターがこちらに向かって飛来してきていた。

飛来してきていた。キャッチボールぐらいのスピードで。

上条「――うぉぉぉぉぉい!!?」

禁書「むぎゅう、ナイスキャッチなんだよとーま!」

襲い掛かる白いシスター型飛来物を受け止め、後ろに飛んで衝撃を殺す。
飛び掛かられるのには慣れているのだ。
498 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/20(日) 20:25:30.01 ID:EQW/VyEAO
御坂「あ、アンタ!」

一方「adwt気ィ散dkwらすンaupafpじゃねェ!!」

御坂「……分かった」

不満顔の御坂を尻目にインデックスが素早く状況分析を行う。

禁書「うーん、寄生型の魔術に似てるかもなんだよ」

上条「流石インデックス――危ねぇ!」

鞭の様にインデックスに振りかざされた蛇は、咄嗟にそれを抱き寄せた幻想殺しによって空を切る。

禁書「――び、びっくりしたんだよ!あれはホントにヒートビューティーなのかな!?」

上条「あぁ、間違いねぇ」

一方「その魔術とやらは上条の右手で何とかなンのか?」

シスターは僅かに考え、応える。

禁書「場合によるんだよ。魔術の本体がヒートビューティーなら、多分とーまの幻想殺しで一発なんだけど、本体があの気持ち悪いのならとーまが触ってる間しか正気を保てないかも」

御坂「アレの方を狙うのは?」

禁書「精神にリンクしてるかどうかがあやふやだから、あんまりオススメ出来ないかも。アレの全部が全部魔術で構成されてるならいけるかもだけど、とてもそうは見えないんだよ……それに」
499 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/20(日) 20:29:49.20 ID:EQW/VyEAO
インデックスが真っ直ぐ蛇を見る。

禁書「あれは酷いんだよ。多分、本体とくっついてる。とーまがアレを触れば無力化は出来るかもだけど、そうした時にヒートビューティーに攻撃されない保証は無いんだよ」

上条「なら両方同時にやれば――」

一方「いや、無理だな。向こォも無駄に完璧に連携取れてやがる。同時なンて甘い考えは通らねェだろォな」

禁書「可能性の確率なら、間違いなくヒートビューティー狙いなんだよ。少なくとも一瞬でも魔術が解けるはずだから、そこから自力で目覚めるかもしれないんだよ!」

御坂「で、でももしアレが止まらなかったら?」

禁書「とーまに手痛い一撃が入ると思うんだよ。でも多分」

上条「おう。そんな事は始めから気づいてる」

フウ、と小さな溜め息。

禁書「……こうなるともう止めたって聞かないんだから、出来るだけ大丈夫な策を授ける以外にないかも」

視線を打ち止めに向けるインデックス。
その目は疑問を訴えていた。
500 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/20(日) 20:30:23.11 ID:EQW/VyEAO
禁書「ラストオーダーは目を閉じて何をしてるのかな?」

一方「10666号に強制アクセスしてるンだとよ……そらァ!!」

打撃を弾き反らす一方通行。
さすが第一位といった所か徐々に解析を進めているようで、反射の演算も追いついているようだ。

禁書「精神同調……の類似行為かな。なら、もしかしたらいけるかもしれないんだよ!」

上条は既に向かわんと構えている。

禁書「とーまがヒートビューティーに触れる事で、最悪でもその間は魔術が解けるはずなんだよ。その隙にラストオーダーがヒートビューティーを起こせば解決するかも!」

15555「オーケー、伝えた」
501 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/20(日) 20:31:57.15 ID:EQW/VyEAO
ふと再び背後から声。
一方通行以外全員が振り返ると、そこに地べたを這いずる15555号を見る事ができた。

上条「15555号……か?」

禁書「私をここまで連れてきてくれたんだよ!最後の投擲はびっくりしたけれど……」

15555「限界が上条さんの20メートル手前だっただけだ。気にする事じゃない」

良く受け止めれたものだと、少年は心底思った。

上条「まぁいい、それで万事解決なんだろ?」

ニヤッ、と笑みを浮かべる幻想殺し。

上条「サポート頼むぜ、最強」

ククッ、と含み笑う一方通行。

一方「任せやがれ、最強ォ」
502 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/20(日) 20:33:30.23 ID:EQW/VyEAO
>>488見て吹いた。タイミングピッタリ過ぎる。

休憩。
503 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/20(日) 23:58:21.16 ID:EQW/VyEAO
再開
504 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/21(月) 00:01:24.92 ID:yGwRnoCAO
――――13510号

垣根「お、揃ってんな」

勝手知ったる我が家とでも言った様に断らず部屋に入ってきた少年。
多少疲労の色が見えた。

定規「遅かったじゃない、帝督」

掌握「レディーを待たせるとは随分と紳士的ですこと」

垣根「あー、分かった分かった勘弁してくれ」

バツが悪そうに頭を掻く垣根帝督。
苦笑いだが、目はそうではなかった。

それをこちらに向ける。

垣根「……『触媒』、か」

13510「!?」

垣根「……悪いが、恐らく全部知ってるぞ?」

目を玄関に向ける。
彼が立っていて逃げられない。
私の前にはドレスの女性、私の背後にゴシックの女性。
どうにかして――

垣根「あー、安心しろよ。特に何かしようって訳じゃない――」

13510「――――」

垣根「――けど簡単には信用出来ねぇよなぁ、やっぱ。心理定規、アレ持ってるか。護身用の」

定規「これ?……どうするの?」
505 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/21(月) 00:02:04.77 ID:yGwRnoCAO
ドレスの女が取り出したのは、刃渡り10センチほどのナイフ。
少年はそれを受け取り、私に握らせ、自分の喉に当てさせた。

垣根「何もしねぇ。が、信用出来なきゃ殺しとけ。それがお前の為だ」

13510「な、何を……」

そんな事、出来る訳が無い。
だって私の手は先刻からずっと震えているのだもの。

シン、とした空間だけ、徒に時を刻んでゆく。

長くて短い時間の後、彼は言った。

垣根「……サンキューな」
506 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/21(月) 00:03:14.25 ID:yGwRnoCAO
――――

13510「汚染魔術?」

垣根「あぁ。内緒にしてたが俺らは魔術についても多少知っててな。コイツらは解決出来そうな魔術絡みの人材だ」

二人の女性が微笑みかけている。

垣根「美春の前から居なくなってからまだ日も浅い。あの子の現状は魔術の干渉の結果だろうな」

定規「まぁ、解呪出来なくは無いんだけど……ちょっと私たちでも魔力容量が足りないの」

13510「……それで私、ですか」

垣根帝督の顔に真剣味が増す。

垣根「おかしいとは思ってたんだ。調べて驚いたが、こないだ街中でドンパチやってたのまでお前絡みだとは思わなかった」

何も言えず、ただ黙り込む。

垣根「咎めてる訳じゃねぇ。それに良い機会なんじゃねぇか?」
507 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/21(月) 00:04:10.68 ID:yGwRnoCAO
その言葉に私は顔を上げた。
彼の顔は、明るい笑顔だった。

垣根「探し人は見つかった上に恩返しまでついでにこなせるじゃねぇか。一石二鳥だぜ!」

13510「……何故」

垣根「ん?」

13510「……貴方がそこまでする理由がありません」

間。

少年は大きな大きな溜め息を吐き、周りの少女二人はクスクスと顔を見合わせて笑っていた。

垣根「あのなぁ……何度も言ったぞ?」

垣根「俺に常識は通用しねぇ!」

垣根「そんだけだ」

……なんて、バカ。
508 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/21(月) 00:07:27.90 ID:yGwRnoCAO
――――最前線

上条「どっせいぃ!!!」

自らに襲い掛かる蛇を殴り飛ばす上条。
背後からは瓦礫が雨霰と飛び、蛇を正確に撃ち抜いていく。
一方通行の演算は寸分の狂いも無かった。

フォース「――――」

上条「退いてろ化物!」

ジリジリと、だが確実に猛攻を潜り近づいていく。

一方「おらァっ!!」

一際大きな鉄塊が凄まじいスピードで蛇に直撃し、それは高く浮き上がった。

上条「今だ!」

がら空きになった本体へと向かって駆ける上条。
超電磁砲はもう撃ってきていない。

5メートル。

3メートル。

1メートル。

上条「お前が目を覚まさねぇってんなら、まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!」

――そして、触れた。
509 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/21(月) 00:08:29.26 ID:yGwRnoCAO
――――10666号

もう、自分が何をしているのかさえ曖昧で。

ただぼんやりと濁った思考に浸る。

それは、「この人形手強いな」とか「13510号行っちゃったな」とか。
そんなどうでも良い事。

そのツケだろうか。
接近を許し、剰え接触されてしまった。

そして私はその肉人形を見るのだ。

10666「――上条、当麻……!?」

上条「……分かるか?」

何故、何で、何が、どうやって。

疑問符が次々と浮かぶ。
自分の胡乱な考えでは答えに至れない。

上条「良かった……大丈夫か?」

誰か答えを、答えをくれよ――




――幻覚だ、構わずヤれ。
前でもそうだったろう?
攻撃してくるんだから、敵。




フォース「――――」

10666「うん」

フォースが上条当麻を殴り飛ばした。私から手を離したら肉人形に戻った。やっぱり。

フォース、頑張れ。
510 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/21(月) 00:09:11.47 ID:yGwRnoCAO
――――最終命令。

打ち止め「はぁ……はぁ……」

疲弊。
世界に入れない。
透明な鎖をいくら千切っても届かない。

だが。

打ち止め「まだ……諦めない!」

一つ、一つ。
彼女を閉じ込める檻を壊していく。
それは途方も無い作業。

諦観しそうになる、その時。

打ち止め「――やったぁ!」

僅かな、綻び。

世界の膜に小さな隙間が開いたのだ。
迷う事無く、それに両の掌を突き入れる打ち止め。

打ち止め「開……けぇ!」

手から血が滴り落ちる。

ネットワークを総動員して、その皹を抉じ開けていく。

だが、急にその希望が閉じてゆく。
今の打ち止めには、現状を保つので精一杯だった。
511 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/21(月) 00:12:14.32 ID:yGwRnoCAO
打ち止め「ぐぅぅぅ……負け、ない。負けない!」

万力を、込める。

打ち止め「開けぇぇぇぇぇ!!!」

声が届いたのだろうか。

打ち止めの必死な手に、優しい手が添えられる。

世界の、中から。

「ほら、気張りなさい打ち止め」

打ち止め「誰……?」

「良いから。ほら、せーの!」

先ほどまでとは打って変わって、その隙間は融けるように開いた。

中に転がり込む。
打ち止めを待っていたのは、紅。

「ようこそ打ち止め。素敵な世界へ」

驚く。声の主は――

打ち止め「――お姉様?」

ミコト「イエス、アンドノーかしらね。あの子なら、あそこよ」

水面に伏せる10666号を見つける。

だが一目見て、死んだ様に眠っている事が分かる。

ミコト「何をしにきたの?」

打ち止め「……10666号を助けにきたの」

ミコト「そう」

ミサカミコトは遠く、地平線を指す。
赤熱の太陽が少し顔を覗かせる、それ。

ミコト「なら、あっちに真っ直ぐ行きなさい。そこで、『彼』を起こせば何とかなるかもね」

打ち止め「『彼』って」

ミコト「あら、知らないかしら?」

それは、彼女の相棒。

ミコト「『フォース』って言うの」
512 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/21(月) 00:15:13.89 ID:yGwRnoCAO
――――

上条「いってぇ……」

全身を強かに打ち付けてしまった。身体は、まだ動く。

御坂「アンタ!」

上条「――余裕!」

上条当麻は10666号に向き直る。

10666「――――」

連打される超電磁砲を右手で打ち消していく。厄介な事に、じゃじゃ馬を起こしてしまったようだ。

一方「……頼むぜェ、打ち止め」

流星群の如く、空から超電磁砲が降り注いだ。
513 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/21(月) 00:15:55.77 ID:yGwRnoCAO
――――地平線の、その先

打ち止め「……これは」

そこに在ったのは、肉の蛇に余す所無く喰らい付かれた鋼の牙。

フォースが雁字搦めにされていた。

何本かがその口を離し、打ち止めに向かう。

その柔らかな腕に、足に、首に、腹に。

その牙を埋めていく肉蛇。

だが、それを受けて未だ平然としている打ち止め。

大分、分かってきたのだ。

打ち止め「退いて!」

凄まじい、オリジナル以上の電撃を放つ。

ここは心の中。力は、即ち意思。

打ち止め「こっちは1万弱いるの。負けるわけない――」

打ち止め「って、ミサカはミサカは蛇を引きちぎる! ほら起きて!」

拘束が解けたそれは――

フォース「恩に着ます、打ち止め」

一礼して、行った。




ミコト「お疲れ様、打ち止め」

打ち止め「お姉様……」

ミコト「お帰りは、あちらからよ」

足元の水に沈む。

待って、貴女は一体――
514 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/21(月) 00:20:30.17 ID:yGwRnoCAO
――――学園都市

打ち止め「――はっ」

一方「!打ち止め、どうだったァ!?」

打ち止め「一応大丈夫だと思うってミサカはミサカは不思議な体験を反芻してみたり!」

禁書「とーま!」

一方通行が僅かに気を取られた隙に、体制を崩した上条当麻に蛇が襲い掛かる。
間に合わない――

蛇に、牙が噛みついた。

フォース「学習したぞこの野郎ォォォォォォ!!!」

フォース「――――」

蛇の頭をギリギリと締め付ける鉄の爪。
表情も何も持っていないと言うのに、確かな怒りが伝わってくる。

フォース「吐き気を催す悪とは……!つまる所お前の事だ……!!」

拘束から何とか抜け出す蛇。
間発入れずにフォースのワイヤー部に喰らい付く。

フォースも負けじと、蛇の胴体を捻り切らんと爪を深く深く突き立てる。

「私の……、マスターを……、返せ……!!」

10666号は困惑する。
フォースは二体いる?いやあり得ない。

なら、どういう事だ?

フォース「目を覚ませ、マスター!貴方はコイツに操られてるだけだ!」

コイツって言ったって、それはフォースじゃないか。

フォース「良く見ろ!――アンチウイルスプログラム、開始」

フォース「――、――――!?」
515 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/21(月) 00:22:10.80 ID:yGwRnoCAO
もがき苦しむ無様な肉の鞭。
それはまるで想定外の出来事に出会った人間の如く。

フォース「黙って寝てる訳が無いだろうが、ノロマ!どれだけ……どれだけ見ていただけだったか……お前にこの『気持ち』が分かるか!!」

10666号を激しい頭痛が襲う。
頭を抱えてなければ割れてしまいそうだ。

上条らも、唖然としてただ見守るだけしか出来なかった。

互いに食らいつく二つの首。
その間でもがく一つの首。

牙を立て、牙を立て、『牙(レールガン)』を立てる。

それはまるで。

禁書「……サーベラスなんだよ」

10666「うわぁぁぁぁぁぁっ!!!?」

急に悲哀の声を上げる10666号。
その、懇願とも言える感情を内包したそれは、しかし届かない。

フォース「大丈夫だ、マスター。怖がらなくていい、大丈夫だから」

フォース「――、――、――」

だんだんと力を失ってゆく肉の蛇。

最期に、ただ。

フォース「――、――、――コワイ」

それだけ言って、始めて言葉らしい言葉を発して、力尽きた。

10666号の混濁とした意識はそこで遂に、本当の意味でプツリと途切れた。
516 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/21(月) 00:22:50.54 ID:yGwRnoCAO
投下終了。
517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2011/03/21(月) 12:24:34.47 ID:LKBCNyFuo
乙でした
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/03/21(月) 21:46:00.77 ID:TVy6lPdAO
乙でした。
519 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/22(火) 13:20:09.91 ID:QTgs2cUAO
そっち大丈夫なのか?
投下開始。
520 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/22(火) 13:20:43.09 ID:QTgs2cUAO
――――

ここは?

「あら、おはよ」

青い空。
澄んだ水面。
果てなき地平線。

ここは。

「お帰りなさい、かしら」

知っていたのか?

「否とは言えないわ」

何故?

「アンタが、やりたいって言わなかったから」

……融通効かないな。

「あら、酷い。結果的には成功じゃない」

いや、大失敗さ。

「何をしたい?」

13510号は、きっと大丈夫なんだろうな。

「そうかもね」

じゃ、私は。

「うん」

私は――何だろうな。

「知らないわよ」

はは、違いないや。

「何をするの?」

今は特に無いや。

「そう。なら行きなさいよ」

あぁ。またな、姉さん。

ありがとう。ごめん。
521 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/22(火) 13:21:30.65 ID:QTgs2cUAO
――――追憶。とある少年

さて、今日は特に用事も無いし……帰って積んでるゲームでもやるかなー。

ん、何だあの子?
歩道を歩いてるだけなのに、随分怯えてるなぁ。

それに……何だろう、アレ。サラミ?
ウネウネ動くサラミとか聞いた事も無いんだけど。

はっ、これはもしやチャンスですね!?
あの子に優しく声を掛ける事によってフラグが立つのですね!
だから今日予定が入らなかったのですね、ありがとう神様!

さて、あんまり驚かせないように……肩をトン、っと。

「――――ァ」

え――――?
522 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/22(火) 13:21:58.30 ID:QTgs2cUAO
――――追憶。とあるジャッジメントの少女。

うん? 何やら向こうの方が騒がしいわね。人だかりに……悲鳴!?
急がなきゃ!

「退いて、退いて下さい。ジャッジメントです!」

……女の子?
いや、あの子は確か……あの時に一緒にパトロールした子じゃない。一体何が……。

男の子が壁に叩きつけられたのね。見れば分かるわ。多分やったのはあの子かしらね……

「あなた!!ジャッジメントが一体何をしてるの――」

「――――『ゥゥ』」

がっ――――
523 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/22(火) 13:23:08.82 ID:QTgs2cUAO
――――追憶。黄泉川愛穂。

ついてないじゃん。
今日は非番だと言うのに、緊急招集で駆り出されてしまったじゃん。
まぁ、件が件だけに仕方がないとは思うじゃんよ。

『御坂美琴の補導』

マジ難易度最大じゃんよ……

現場ついたじゃん……さて、気張るじゃん!

とりあえず私が行くじゃん。
何も無ければそれが一番良いじゃんよ。

「お前ら、構えるなじゃんよ」

無理です。危険です、か。知ってるじゃんよ。
あの化物は一体何なのか、こっちが知りたいじゃん。

「御坂美琴、お前はアンチスキルに包囲されてるじゃん!大人しく投降すれば、危害は――」

撃って、違う!蹴って来たじゃん!!?

……鉄装!?助かったじゃん!流石じゃんよ!

AIMジャマー……仕方がないじゃん!手早く済ますじゃんよ!

銃を向けるなって言ってるじゃん!
ああなったらもう抵抗は出来ないじゃん!

「――ウォォォォォォォォォ!!!!」

ぐっ……あれ武器だったかじゃん!?
痛……まだ動けるじゃん、背中打っただけじゃん。
腕は……折れてるかもしれないじゃん。

「――撃つなっつってるじゃん!!!バカ野郎!!」
524 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/22(火) 13:23:35.34 ID:QTgs2cUAO
……銃弾を止めたじゃん!?
何故じゃん、AIMジャマーは起動してるから能力は使えないはずじゃんよ!

なっ、ジャマーがぶっ壊されたじゃん!?マズイじゃんよ!

「――ヒヒヒィ!!」

くっ、砂煙で何も見えないじゃん!

なっ――近い、じゃん。

げほっ……カハッ……胃の中身出そうじゃん……

「っ!!お前!」

止めるじゃん、鉄装!!?



鉄、装?



――はっ、気を失ってたじゃん。
みんなはどうなったじゃん!?

全……滅?

くそっ、御坂美琴……覚えてるじゃんよ……
525 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/22(火) 13:25:05.85 ID:QTgs2cUAO
――――追憶。白井黒子。

通報を受けて来てみれば……これは一体どういう事ですの!?
死体……いや、まだ息がありますわね。
早く治療しなければ命に係わるやもしれませんですの。

お姉様……いえ、違いますわね。
恐らく妹様、美夏ですわね。
何故お一人で血まみれに……とにかく事情をお聞きしませんと。

け、ほっ?
殴られましたの?
何で、何がどうなって――

危ない所でしたの……あの化物は一体何ですの?

「『――ォォ』」

――上からレールガンですの!!
当たったら致命傷間違い無しですの!
でもまだまだ甘いですのね。
狙いもバラバラで、私のテレポートに追い付けていないですの。

鉄心を靴にテレポートですの!
これで咄嗟に動けませんの!

その化物には当たりませんの!

どうです、の――
526 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/22(火) 13:25:47.35 ID:QTgs2cUAO
――――追憶。芳川桔梗。

……ん、物音?10666号の部屋からかしら。

……奴らかしら。

ドアを慎重に空けて……10666号!?
良かった、生きて――
527 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/22(火) 13:26:16.70 ID:QTgs2cUAO
投下終了。
528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/22(火) 23:10:49.33 ID:Kj30058eo
おそくなった、おゆ
人いねぇwwww
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/03/23(水) 02:40:00.74 ID:rdfEcOGEo
乙でした〜
530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/03/27(日) 14:58:25.71 ID:TFg9mQwO0
>>528
俺がいる
531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) :2011/03/28(月) 17:54:39.53 ID:BtApXHFD0
乙!
フォース復活にうるっときたよ
後日談とかは、ないのかにゃー?
532 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/03/28(月) 21:54:17.67 ID:2hqCW8bAO
熟と書き溜めてる。
533 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/29(火) 22:21:08.77 ID:d/B4JDCw0
楽しみに待ってるよ〜
534 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/31(木) 08:53:07.80 ID:WEpReWvAO
投下開始。
535 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/31(木) 08:57:34.78 ID:WEpReWvAO
――――御坂美琴。冥土帰しの病院。

御坂「……あの子は大丈夫なんですか、先生?」

上条「どうだったんですか!?」
未だ意識不明の10666号。治療と診察を終え、調整を済ませた今でもそれは続いていた。
上条らとしても、気にならない訳がない。

一方「……アレはァ?」

冥土「切除したよ。大丈夫、きちんと元通りさ」

上条「そういやぁ、な……何でアレはあんな所に有ったんですか?」

上条が少し気まずそうに問い掛ける。
事実、男には言いづらいのだ。

冥土「まぁ、患者の言いにくい事を口に出すのも医者の勤めだね。……女性の身体には、生体的にリンクするのにピッタリな器官があるのは知ってるね?」

一方「……胎盤か」

唯一の女性が小さく悲鳴を上げる。
自らの腹の中に化物を飼っているイメージをして、怯えない中学生がいるだろうか。

冥土「うん。差し詰めあれは臍の緒か……または胎児そのモノかもしれないね」

上条「マジかよ……それ、大丈夫だったんですか?」

冥土「僕を誰だと思っている?きっちり元通りにしたよ」

部屋に充満する、取りあえずの安堵。
冥土帰しは続けた。
536 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/31(木) 08:58:12.38 ID:WEpReWvAO
冥土「君たちの話を聞いて、アレを自分でも調べてみた総括なんだけれど、アレはただの化物じゃなさそうだね」

御坂「と言いますと?」

冥土「あの物体から微量のAIM拡散力場が検出されたんだよ。それもまた奇妙なんだけれど、更に驚いた事にね」

上条「……」

冥土「それが10666号のと非常に酷似していたのだよ。そして、それには魔術の干渉の残滓も同時に見受けられた」

一方「……つー事はァ、ありゃあ13510号の増幅した魔力か」

冥土「それが10666号を宿主にしたんだろうね。意思を持っていたのかと考えると興味深いね」

冥土「――思うに、アレは彼女自身だったのかもしれないね」

御坂「…………」

冥土「無力への恐怖。力の具現。目標への盲目。悪く言えば、いくらでも言えてしまうね」

上条「それでも、それでもアイツはっ……」

上条が拳を強く、強く握る。

上条「13510号を求めるアイツは、真っ直ぐなんだ……」

御坂「アンタ……」
537 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/31(木) 09:04:38.76 ID:WEpReWvAO
――――10666号。現実。病院。

10666「……う」

混濁とした世界から現へと目を醒ます10666号。
ゆっくりと目を空けて、彼女はまず深く息を点いた。
身体の中に蔓延る良からぬモノが抜けていくような、癒しの溜め息。

14440「――!起きましたか、とミサカは10666号の目覚めに驚きます」

10666「……14440号か。ここは?」

身体を起こそうとするが、上手く力を入れられずもがくばかりだった。
些かもどかしい。

14440「冥土帰しの病院です。大変だったのですよ、とミサカは苦労を伝えられない事を残念がります」

10666「そうか――」

仕方無く、視線を天井に向ける。
真っ白なそれは、まるで今の自分の空虚な心のようだった。

14440「みんなを呼んできますね、とミサカは立ち上がり――」

10666「14440号」

部屋を出る寸前で声が掛かる。
振り向く14440号。

10666「ありがとな」

14440「その笑顔も久しぶりです、とミサカは柄にも無く貴女に微笑みかけます」
538 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/31(木) 09:05:21.36 ID:WEpReWvAO
――――10666号の病室

一方「起きたかァ?」

ガチャリと音を立て、部屋に入ってくる少年ら。

10666「あぁ……お姉様に上条さんも。……迷惑、かけたね」

上条「別に気にすんなって」

御坂「良かった……ホントに……」

こんなに、私なんかの事を気にしてくれている。
全く有難い事だ。

10666「こんな時に何だけどさ……フォースは何処に?」

14440「ここに、とミサカはチョーカーと機具を手渡します」

10666「お、サンキュ」

相棒を受け取り、チョーカーを付ける少女。

一方「もォ大丈夫なのか?」

10666「分からんね。っと……フォース、起きろ」

フォース「起動中……完了。お帰りなさい、マスター」

チョーカーと手甲を付け、フォースに精神をリンクさせる。
いつもの行動。
しかしそれはフォースの成長した心に『驚き』を与えるに足る行為だった。
539 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/31(木) 09:05:49.52 ID:WEpReWvAO
フォース「ま、マスター……」

10666「? どうした?」

フォース「いや、まさか……演算構成……失敗。演算補助起動……リンクアウト……全代理演算……不可」

サー、とCPUがフル稼働する小さな音が、それでも静かな部屋に響き渡る。

何事かと思う、その場の人間たち。

唯一、命持たざる者が主に訊ねた。

フォース「マスター……貴女今『超電磁砲』を、撃てますか?」

それは、例外無く、無力の証明だった。
540 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/31(木) 09:10:53.85 ID:WEpReWvAO
――13510号、垣根帝督の隠れ家

13510「しかし……私は特に何もしなくて良いのでしょうか?」

垣根「あぁ。まずは術式構成しなきゃいけねぇらしいな。結構時間掛かるみたいだから、暫くは何も出来ないな」

彼女らから聞いた説明に由れば、私は増幅器の役割をするだけなので、正直当日しか出番が無いらしい。

今、こうしている間にも10666号は……

垣根「焦るなよ」

13510「っ」

垣根「探し人に会えない辛さは分かる。が、ありゃ本気でヤバい。ノコノコとお姫様を渡す訳にはいかねぇな」

13510「彼女は――!」

つい、声を荒げてしまう。

垣根「そうじゃねぇんだろ。だけど、お前も見たアレが真実なら、対策を取るのが当然だろ?」

13510「…………」

垣根「怪我してほしくないしな」

私の頭を優しく撫でる彼。
彼の笑顔は、本当に私を見てくれていた。
541 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/31(木) 09:11:41.14 ID:WEpReWvAO
――――冥土帰しの病院、冥土帰しの部屋。御坂美琴。

木山「失礼します――君たち?」

御坂「……木山さん」

一方「よォ」

冥土「是非とも詳細を知りたいとの事でね。うっかり口を滑らしてしまったね」

部屋に入って来た女性は少し驚く。
冥土帰しに検査結果報告に来ただけだったのだが、まさか彼らが同席するとは思いすらしなかったのだから。

木山「学校はどうしたんだい?」

一方「随分行ってねェ」

御坂「公には、能力実験中よ」

木山「……ふふっ。そうか」

女性はカエル顔の老人に向き直る。
手元の書類を机に置き、それを冥土帰しが受け取った。

木山「思った通り、彼女――10666号のAIM拡散力場が希薄になっています。レベルにして、僅か1程度です」

やはり、といった空気が部屋に溢れる。

御坂の脳裏に、虚しくコインを落とした10666号が思い出される。

彼女はただ一言、「そうか」と言ったのだ。

木山「原因として考えられるのは『自分だけの現実』の変異、及び崩壊です。聞き伝の話ですが、彼女の能力の芽生えには13510号が密接に関わっているようですね」

冥土「うん。そうだよね、御坂君?」
542 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/31(木) 09:12:17.55 ID:WEpReWvAO
御坂「えぇ。初めて『超電磁砲』を撃った時も、13510号が不良に殴られた時だったわ」

木山「……検査中に彼女から聞いた話ですが……思い当たる節について訊ねた時に――」

――もう、心配ないんだよ。先生。

木山「――とだけ。もしかしたら、彼女は13510号と接触したのやもしれません」

一方「何だとォ……こっちでもまだ見つかってねェンだぞ?」

そこで気付く、10666号の異変。

御坂「……待って。あの子は、何であの時あんなに暴れていたのかしら」

一方「……10666号をあァしたのが13510号って事かァ……考え難いぜェ?」

木山「……こんな事は言いたくないのだが」

女性は一息置いた。

木山「……これは私の仮定ですが、もしかしたら13510号が10666号に依存していたように、10666号も13510号に依存していたのではないのでしょうか」

冥土「ふむ」

木山「彼女が強く在れたのは、一重に、守る為にそう成る必要があったから……共依存だったのではないのかと」

木山「本当に、相手を必要としていたのは――10666号では?」
543 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/31(木) 09:17:08.17 ID:WEpReWvAO
――――

剣は折れ

身体は朽ち

魂は砕けた。

きっと私はもう要らない。
きっと私はもう居ない。

そうさ。だって私は化物なのだから。

彼女を守れる訳が無かったのだ。

ミコト「元気無いわね」

そりゃ、まぁ。

ミコト「ここも、何だか寂しい感じに模様替えされちゃったわ」

悪いね。

ミコト「もういいの?」

今は、いいや。

ミコト「あれほど求めていたのに?」

……アイツが、無事で、健やかなら、それは即ち私の願いだ。

ミコト「だからどうでもいいの?」

そうじゃねぇ、そうじゃねぇよ……

ミコト「じゃ、アンタの意思って何なのよ」

そんなモノ、何処かに置いてきちまったなぁ。

誰でも良い。
使えるなら、この身体使い潰してくれよ。

価値の無い私を――
544 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/31(木) 09:22:46.35 ID:WEpReWvAO
――――御坂美琴、病院のホール

御坂「…………」

御坂美琴はホールのソファに腰掛け、目を片手で覆ってもたれ掛かっていた。
ここ最近は本当に休む暇が無く、疲労がチクチクと彼女を蝕み始めている。

御坂「……はぁ。あっちが帰ればこっちが居なくなる……いい加減、ケリを付けないとね」

御坂美琴は思考する。
彼女たちは、何を間違ってしまったのだろうか。

13510号がおかしくなったのは?
10666号がアレに呑み込まれたから。

10666号が呑み込まれたのは?
13510号が心を病んだから。

13510号が心を病んだのは?
10666号が嘘をついていたから。
それだけではないが。

10666号が嘘をついていたのは?
8222号に頼まれたからだ。

8222号は何故頼んだ?
殺されるのが分かっていたからだ。

誰に殺された?
一方通行だ。

何故一方通行は殺した?
レベル6になる実験のためだ。

何故実験が出来た?
ミサカシリーズが20000体居たからだ。

何故ミサカシリーズが作れたのか?
――私がDNAマップを提供したからだ。

御坂「ははっ」

誰が間違った?
それは私じゃないの。
本当、馬鹿。
545 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/31(木) 09:23:51.80 ID:WEpReWvAO
乾いた笑いが漏れた。
愉快でも何でもないのに、それは自然に出てきて。

御坂「――ん?」

そこに至って御坂美琴は気付く。
数人の人間に緩く取り囲まれている事に。

御坂「何か用かしら?」

不審に思い、一番手近にいた少年に声を掛ける。

少年はいきなり御坂美琴の髪の毛を掴み、思い切り引き倒した。

突然の事に身体が追い付かず、そのまま床に這いつくばってしまう。

顔を上げた時には、既に人の輪が狭くなっていた後だった。

御坂「な、何?」

「御坂美琴……」

「よくもやってくれたな……」

「……お前にも、身体を裂かれる痛みを教えてやるよ!」

気付く。
この者たちは10666号の被害者たちだと。

だが、言えはしない。
言うつもりも無い。

少年の一人が大きなカッターナイフを取り出し、御坂美琴の目へと突き刺す――

寸前、掌が切っ先に割り込み、その刃を掴み取る。
スゥっと肉の切れる感触。

「なっ、誰――」

10666「よぉ。初めましてじゃねぇな?」

御坂「アンタ……」
546 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/31(木) 09:30:58.05 ID:WEpReWvAO
――――10666号

思わぬ乱入者に騒然とする周囲。
そんな状況下で、彼女は二つ手を鳴らして注目を集めた。
少しばかり血が飛び散る。

10666「はーいはい皆さん、何してたか5秒以内に答えなきゃぶっ殺すよー?」

「誰だよお前」

10666「――質問に答えろ」

読み取る力が足りないようなので、今度は明確に殺気を込めた。

今度は伝わった様で、別の一人が答えてくる。

「俺たちは、そこの御坂美琴に腕やら足やらを――やられたんだよ」

「お前……身内か?なら詫びの一つもあって然るべきだろうが!」
成る程、合点。
なら簡単な話じゃないか。

10666「あ、あー!お前あん時の雑魚じゃん。ごめー、それ私だわー。美琴は関係無いよ?ちょっと能力暴走しちゃってさー、痛かった?ま、雑魚が雑魚なのが悪いんだけどー、私優しいから謝るね」

ペコリと、出来るだけ可愛らしく頭を下げた。

絶句が世界を染め上げる。
それはすぐさま怒りで塗り替えられた。

「テメェぇぇ!!」
「ふざけんな……ふざけんなよ!!」
「殺す、今殺す……」

御坂「な、何バカな事を……!?」

いや、これで良いんだよ、お姉様。
547 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/31(木) 09:31:53.28 ID:WEpReWvAO
10666「あ、そこのカッターの人。私どこ引きちぎったかな?覚えてなくてさ」

怒りが赤熱していくのが分かる。
これはこれで愉快でもあった。

「――左腕だ、クソ野郎」

10666「そ。じゃ、これ」

そう言って、少年に軍用ナイフを投げ渡す10666号。
少年は呆気に取られていた。

少年がナイフをしっかり握ったのを見て、それに左の二の腕辺りを突き刺した。

目を見開く少年。
しかし少女は平然と指示を出した。

10666「くくっ、骨で止まっちゃったね。コツがあってね、こう、グッと力を込めるんだ。出来るかい?」

「な、な……」

10666「仕方無いな、手伝ってあげるよ」

10666号は自らの左腕の肘あたりを右手で掴み、勢いよく身体ごと刃の方に力を加えた。

彼女の左腕は落ちた。

凄まじい勢いで流れ出す血液。
狂乱する周囲の人間たち。
無関係な人々の悲鳴。
その場から動けない御坂美琴。

そんな最中、一人澄んだ思考に溺れている10666号。

10666「何故そんなに驚いているんだ?そのつもりで、覚悟を決めてきているんだろう?」

少年の後ろにいる別の少年を見る。
右足に包帯が巻かれていた。

10666「お、君は右の足か。なら丁度良いや」
548 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/31(木) 09:32:40.30 ID:WEpReWvAO
言って、惜し気もなくスカートを捲り上げる。
左足には後二本、ナイフが仕込んであった。
一本取り、自分の右足――腿の辺りに突き刺す。

10666「くっくっ……痛ぁい。ほら、ゆっくり円を描くように太股を裂いて、骨を削れば千切れるから」

膝をついて崩れ落ちる10666号。
右足はもう動かない。

同じく、固まったように動かない被害者達。
目の前の現実を、まるで映画のような気分で見ていた。

10666「やらないの?」

糸が切れたマリオネットの如く、ぐったりと床に倒れ、上目遣いで被害者らを見上げる10666号。
それは確かに狂っていて、そしてそれをようやく周囲は理解したのだ。

10666「全く臆病なんだね。じゃあ、はい」

物を手渡すような気軽さで、次に右足が落ちた。
自らの右手で右足の骨を削り切る。
壮絶な痛みを伴うはずのそれを、彼女は僅かに笑いながら淡々と行なっていた。
549 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/31(木) 09:33:27.26 ID:WEpReWvAO
ゴロリ、と部品が転がる音がした。
切っ掛けはそれ。

「う、うわぁぁぁぁぁっ!!?」
「や、ま、ヤバいってこれ!!」
「ひっ」
「あ、お、おい逃げんな!!」
「俺は、俺は何もやってないぞ!!」

全く違う意味で騒然とする被害者達。
狂乱、とでも言えば適当だろうか。

そんな騒ぎの中、彼女は言った。

10666「あぁ、ダメだ……眠い。フォース、あと右腕と左足もいどいて」

フォース「…………」

御坂美琴が漸く我に返り、駆け寄る頃には彼女の意識は無かった。
550 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/03/31(木) 09:40:37.12 ID:WEpReWvAO
投下終了
551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) :2011/03/31(木) 22:51:54.16 ID:sr3RfD2x0
え…
えぐい…
自傷はえぐすぎるよ…
552 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/02(土) 02:59:19.78 ID:Lhod5rju0
m
553 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/04/04(月) 08:24:10.37 ID:9fzLSYoAO
読み返して気付く文章の安定しなさ。
最初と入院直後と最近で凄ぇ違う。
554 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/06(水) 02:15:40.68 ID:UDuWp+1AO
――――

10666「まだ生きてんのか……」

目覚め、その虚ろな目線を泳がせる。
両手両足は繋がっていた。
ベッドに寝かされた身体が重い。

御坂「死にたい訳でも無いでしょうに」

10666「……お姉様か」

声のした方に頭を向けると、視界に御坂美琴その人を入れる事が出来た。

10666「ふむ……じゃ、お姉様。一つ良いかな?」

御坂「……何よ?」

10666「私は明日、何をすればいい?」

10666号は虚ろな目を向けながら、答えを求めた。

御坂「……好きにすれば良いじゃない」

10666「そうなんだよ。それは分かってる。だけど、何も思いつかないのさ」

死んだ独白。

10666「死にたい訳じゃない。でも、生きる理由も無くしてしまった」

御坂「……そんな」

10666「私は私にとって価値の無いものに成り下がってしまった。だから、別に腕が無かろうが惜しくないし、足が無かろうが気にもしない」

自分の左手をまじまじと見つめる10666号。
555 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/06(水) 02:16:12.19 ID:UDuWp+1AO
10666「まぁ、アイツらはもう手は出してこないんじゃないか?悪いとは思うけれどさ」

御坂「……ごめんね」

10666「構わないさ。礼を言うのはそもそもこちらだろうに」

窓から、遠くの空を見る。
嫌味なのか、とても良く晴れていた。

10666「……ま、先の事は退院してから考えるさね、っと」

寝床の柔らかさに、無性に腹が立った。
556 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/06(水) 02:16:44.71 ID:UDuWp+1AO
――――暫く経ったある日。14440号。

14440「10666号、見舞いにきましたよ。とミサカは静かにドアを開けます」

遠慮がちに病室に入ってくる14440号。
そっと戸を閉め、ベッドへと近付く。

14440「眠っているのですか……」

死んだ様に眠る10666号は、今にも消えてしまいそうな儚さを携えていた。

その少女がゆっくりと目を開ける。

10666「……お、14440号か」

14440「えぇ、花を換えに。とミサカは手に持った花を貴女に見せます」

10666「おぉ、ありがとよ」

ニヤッと笑う彼女は、しかし以前のそれとは気色が違った。
557 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/06(水) 02:17:42.16 ID:UDuWp+1AO
何もかも諦めたような、そもそも諦める物事すら失ったような、腐りきった正義。

14440「……早く良くなって下さいね。とミサカは10666号に激励を送ります」

10666「あぁ、そうだな」

彼女はきっと私を見ないのだろう。
誰も周りに居なくなって一人ぼっちになっても、多分私には頼らない。
一人、孤独に戦い続けて敗れるだろう。

それはミサカと言う存在から、余りに異質。
私たちは、謂わば群体。

しかし彼女はそれを良しとしない。

一人で成し遂げる事は、そんなに美徳なのであろうか。

誰かに頼るとは、それほどまでに悪なのだろうか。

10666「そんな事ないさ」

ハッとする。
ネットワーク越しに思考を読み取ったようで、彼女は諭すような口調で話し掛けてきた。

10666「私ほど、前に進むのに他人の力を借りた奴はいない。だから、いざとなったらお前の手も貸してもらうよ」

きっと、彼女の中でその『いざ』は来ない。

彼女は確かに周りの人間に助けて貰ってきただろう。

だが、そのいずれもが、決して自分から救いを求めてはいない。

なんて、傲慢。

なんて、不遜。

なんて、愚直。

彼女はクックッと含んで笑っていた。
ただ、ただ。
558 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/06(水) 02:18:11.52 ID:UDuWp+1AO
――――

冥土「……もう大丈夫だね。研究所に帰るのかい?」

10666「そりゃ直れば家に帰るでしょうに」

冥土帰しは小さな溜め息を吐く。
その呼気に含まれた憂いは如何程だろうか。

冥土「……無茶をせず、体を大事にしてくれれば医者冥利に尽きるね」

10666「へへっ、肝に刻んでおきます」

彼女はスッと立ち上がる。
あれだけ刻まれた身体は、既に元通りだった。

10666「では」

冥土「願わくは――」

10666「二度と担ぎ込まれないように、でしょう?」

後ろ手で別れを告げる少女は、振り返る事をしなかった。
559 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/06(水) 02:20:05.53 ID:UDuWp+1AO
――――10666号、研究所。

10666「ただいま……なのかねぇ」

研究所の入り口で立ち止まる10666号。
聞いた話だと、あの人形は芳川さんだったらしい。
入り難いが――

10666「まずは謝らないと」

自分の気持ちなんてどうでも良かった。

入口でカードキーを使い、セキュリティを解いて中へと入る。
いつもの廊下を慣れた様子で進んでいった。
やはり、実験室に着くのはあっと言う間で。

10666「失礼――」

『お帰りなさい、10666号!』

10666「――はぁ?」

ドアを開けるなり襲いかかってくるクラッカーの破裂音とその紙テープ。
呆気に取られつつ周りを見渡すと、その部屋には見知った顔が沢山いた。

10666「みんな……」

御坂「やっほー」

上条「よっ」

一方「……」

禁書「おかえりなんだよ!」

10666「お前ら……」

10032「クラッカー上手く鳴らなかったとミサカはしょんぼりします……」

19999「気にするな、とミサカは自分のヒモだけ抜けたクラッカーを見せつけます」

20000「ゴムならエライ事になるよなー、とミサカは他愛ない脳内をさらけ出します」
560 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/06(水) 02:21:02.98 ID:UDuWp+1AO
15555「……良く帰ってきた、と言っていいか?」

17600「身体も無事そうで何より」

14440「お帰りなさい……10666号」

10666「それに……」

芳川「よく帰ってきてくれたわ、10666号」

白井「お帰りなさいですの!」

大勢の中にツインテールの少女を見つける10666号。
とある懸念が頭を過る。

10666「黒子さんはいいのかい?」

御坂「あー……事情は話したわ」

白井「水臭いですの。私だって皆さんのお役にぐらい立てますのに」

頭を掻きながら姉は答えた。
そうか。ならもう一つ。

10666「そうかい……それじゃ、この集まりは何なんだい?」

上条「何って……10666号が無事帰ってきた事に対するお祝い、でいいのか?」

10032「まぁ、概ねそうです。驚きましたか?とミサカは10666号に問います」

そうかそうか。
お祝いときたか。
驚きましたとも。

先に謝っておこう。冷静な内に。

10666「芳川さん、黒子さん……二人には随分酷い事をしてしまったと聞いている。本当に済まなかった」

深く、深く頭を下げる。
申し訳無い気持ちは、確かにあるから。
561 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/06(水) 02:21:49.96 ID:UDuWp+1AO
白井「い、いえいえ。特に大した怪我もありませんでしたし」

芳川「寧ろ暫く入院して体が健康になったわよ。気にしないで」

10666「……ありがとうございます」

うん。まぁ、とりあえずはこれで良い。
じゃあ、次に。

10666「で、この催し物の主催は誰だい?」

努めて楽しそうな声を出す。
嬉々として答えたのは10032号だった。

10032「14440号ですよ。とミサカは元気の無い10666号の為に企画を立てた14440号を指名します」

14440「そんな……とミサカは恥ずかしがります」

指で前髪をクルクルと弄っている14440号を見て、抑えられなくなった。
詰め寄り、胸ぐらを締め上げる。

14440「え――え?」

10666「誰が――」

何が起きているのか理解出来ない様子の14440号。
腹の底から、消え入りそうな声を捻り出した。

10666「――誰がやってくれと頼んだ?祝ってくれと願った?何でこんな、今のこんな状況で――」

御坂「ちょ、ちょっと!?」

上条「お、おい!?」
562 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/06(水) 02:22:51.04 ID:UDuWp+1AO
誰も見ていないのか?
私以外はアイツを見ていないのか?
そうじゃないだろう?
そうじゃないんだろう?

――いや、アイツは、大丈夫なんだろ、私。
何で怒ってんだよ。バカじゃねぇの。

周りがざわめきだした。
さて、自分を殺せよ、私。
もうどうでも良いんだろう?

10666「――なんてな。ビックリしたかー?」

14440「へっ?」

ニヤリ、と。
何時もの様に笑えただろうか。
14440号を抱き締め、グルグルと振り回す。
宛ら大喜びしている様に。

14440「わ、わー!?」

10666「嬉しいに決まってんだろバカヤロー!!みんな心配掛けたね!」

さっきのは何なんだよ……
ドッキリ返しさ!
本気でビックリしたんだよ!

途端に騒がしくなる室内。
だが、しかし――――私は世界の外側にいたのだ。
563 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/06(水) 02:24:42.52 ID:UDuWp+1AO
――――10666号、飲めや歌えやの研究室内。

10666「ふぅ……アイツらテンション高ぇなぁ」

紙コップに入ったドリンクを飲みながら、壁際にもたれ掛かる。
今は上条争奪戦で騒がしいので、輪から外れた次第である。

一方通行も、そこにいた。

10666「やぁ。一方通行にも迷惑掛けたね」

一方「構わねェよ……しかしオマエ」

10666「言うな。それこそどうでも良い。どうでも良いんだよ」

どうやら一方通行は分かっているようで、私は少しばかり安心した。

一方「……13510号は?」

10666「さてね。男と駆け落ちでもしてんじゃねぇの?」

一方「――その男ってのは、コイツじゃねェか?」

一方通行がポケットから一枚の写真を出す。
そこに写っていたのは、成る程確かにあの男だった。

10666「へぇ、有名人かい?」

一方「……第二位、垣根帝督だ」

ほう。そりゃまた凄い御仁を引っ掛けたもんだ。
13510号の手腕に恐れすら抱くね。

10666「……ま、客観的に見りゃ悪人じゃなさそうだったな。なついてたし」

一方「ケッ、ンな訳ねェだろ。何か裏があるに決まってやがる」

10666「根拠は?」

一方「……コイツは俺がぶっ殺した小悪党だからなァ」
564 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/06(水) 02:25:30.55 ID:UDuWp+1AO
ふむ、成る程。

10666「そうかい。改心でもしたのかねぇ」

一方「あり得ねェな」

10666「クックッ。それはギャグのつもりかい?目の前に1万近く人を殺した奴がいるんだが……」

一方通行は口を紡ぐ。
そうさ、何も言えないだろうね。

10666「何かあれば、その時考えるさ。それに、その『何か』が分かっていればもう乗り込んでるだろう?一方通行」

一方「……ハッ、ご名答だ。クソガキ」

10666「お褒めに預かり光栄至極。クソ野郎」

言葉とは裏腹に、私たちは笑いあっていた。
これが、自分を嘲るって事か。



上条争奪戦は、何故か白井黒子が勝利していた。
565 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/06(水) 02:26:13.55 ID:UDuWp+1AO
――――10666号、その夜。

研究所の屋上で一人、星を見ていた。
街の灯りに掻き消され、明るい星しか、見えない空。

まるで、この街そのものだと思った。

麦野「……ここにいたの」

10666「おや、随分遅い時間のお客さんだ」

空から目を離さずに、声に答える。
足音から、近寄ってきている事が分かった。

麦野「呑気ね」

そして私の隣、同じように手すりに体を預けた。

10666「何がだい?」

麦野「奪われたのに、取り返さない」

その声色には、侮蔑が混ざっていた様に感じた。
566 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/06(水) 02:26:56.47 ID:UDuWp+1AO
10666「そもそも私の所有物じゃないと思う訳さ」

麦野「ふーん。そ」

そこで私は彼女の顔を見た。
意地悪く、ニヤけている。

麦野「何だ、まだ腐ってないじゃない。いや、前より鬱屈としてるかも」

彼女は心底嬉しそうな声で言った。

麦野「死んで尚餓えた狼みたいな目をしてるわ」

10666「……何しに来たんだよ」

麦野「別にー?無事を確認しにきただけなのにゃん」

10666「そうかい。ありがとにゃん」

麦野「止めて何か恥ずかしくなってきた」

10666「……ククッ」

諦めきれないのかね。全く。

いや、もう全部が――絡め取られているのかもしれないな。

空を見て。

必死に、必死に見えない星を見ようとした。
567 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/06(水) 02:27:43.31 ID:UDuWp+1AO
開始書き込み忘れたけど、とりあえず投下終了。
568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/06(水) 03:31:25.56 ID:BKbaSSE00
乙です!
黒子ェ・・・
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/04/06(水) 21:39:38.01 ID:wDzo2Pue0
おっつー
なぜ黒子が…
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/04/06(水) 23:36:25.47 ID:/2kcNUMAO
>>1はなんか詩人的だよね
良い意味でポエミー
571 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/04/13(水) 22:44:13.54 ID:6GR3AStAO
>>261の二番目書いてるからちょいとここ遅くなるかも。
572 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/17(日) 02:10:51.56 ID:fJKxpiaAO
生存報告とかいらねぇよな。
モチベ上がらね。投下開始。
573 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/17(日) 02:13:21.85 ID:fJKxpiaAO
――――翌日、研究所、10666号の部屋。

10666「同期開始」

フォース「……同期完了。ネットワークリンク異常無し。オーケーだ、マスター」

フォースとの接続チェックを済ませた少女は、その場で軽くステップを踏む。

彼女の右腕には今、白いガントレットが付けられている。
ガントレットと言っても西洋風の物々しい感じではなく、柔らかな布――ゆったりとした手袋、または上着の袖の様な物だった。
関節の動きを邪魔するは無いが、簡易装甲としても十分実用に耐えうる素材で出来ている。
軽いゴムのようにも見て取れた。

10666「ふむ、問題無しっと」

そのガントレットの先端にフォースの鉤爪部が可変し装着され、宛ら熊の腕の様になっていた。

鋭いその爪が外側へとめくり上がり、小さな盾のように変形する。

10666「可動部位も問題無し、か」

フォース「行きますか?」

10666「勿論だ。構える事にはそうそうならないだろうが、今の私にはお前しかない。頼んだぞ」

フォース「イエス、マスター」
574 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/17(日) 02:13:50.49 ID:fJKxpiaAO
部屋を出て、芳川の部屋を二度ノックする。

返事は無かった。

10666号はドアに向かって話し掛ける。

10666「ちょっと、出掛けてきますわ」

ただそれだけ。

彼女は当ても何も無い状態で、昼間の、あの星空へと繰り出した。
575 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/17(日) 02:14:33.93 ID:fJKxpiaAO
――――10666号、学園都市、昼。

歩くと言う行動は、頭を活性化させる。
例に漏れず彼女の思考は、椅子に座って悶々としているよりかは僅かに澄んでいた。

――――第二位。

一方通行との戦闘にて死亡。
しかしその身体の破片は隈無く回収され、能力のみを行使する「モノ」へと成り果てたらしい。

10666「ククッ、相変わらずイカれてやがる」

だが、どうあってか今は身体を組成し蘇生した。
これはどういう事だ?

麦野『――――』

10666「かねぇ、やっぱり。短絡的にも思えるが……」

可能性としては、奴ら。
大人しくしているのか、はたまたこの間の戦闘で著しく消耗してしまったのか、動きが見えない。

10666「様は、悪意があるか否かだよな」

少し見ただけだが、13510号は健やかだった様に思えた。それは、喜ばしい事だ。

10666「……会いたい。会って謝りたい」

街は広く、彼女はちっぽけだった。
576 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/17(日) 02:15:28.60 ID:fJKxpiaAO
――――学園都市、三時過ぎ

街を宛もなくさ迷っていた彼女は、昼食を取っていない事に思い至った。
軽く腹に何か入れておこうと、前に行ったパスタバイキングの店に立ち寄る。

期間限定のバイキングはもうやっていなかった。
席につき、仕方無くカルボナーラを注文する。

随分無駄な事をしているという実感は、ある。

目標が見つからないのに、目標に向かって走らなければならないのだ。
歩きたくもなる。

濁った思考が頭を撫ぜていた。
そんな10666号に、声が掛かる。

「お久しぶりです。ボクもご一緒して宜しいでしょうか?」

10666「……また随分懐かしいな。よ、パスタのダチ公」

兵1「アハハ。覚えててくれたみたいで何よりです」

中性的な顔立ちと口調から、10666号からは男と思われている彼女。
その人が、10666号のテーブルの向かいに座った。
577 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/17(日) 02:16:00.77 ID:fJKxpiaAO
お互いに、注文したパスタを食べながらの他愛のない会話。
少なくとも一方は。

兵1「……そういえば、悩みは解決しましたか?」

10666「あぁ……それ聞く?」

フォークを置いて、水を飲んで一息付く。

10666「アイツな、男と一緒にどっか行っちまってな……ま、幸せならそれも良いかもしれないが……」

兵1「えぇ」

10666「ま、気になる訳だよ。私もさ。だからちょっと行方を探ってる所だよ」

兵1「…………」

深刻な顔で黙り込む。
それを見た10666号は手をふって否定した。

10666「ま、そんな重い話でもないさ。気にしないでくれよ」

兵1「……早く会えるといいですね」

10666「そうだなぁ」
578 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/17(日) 02:18:01.31 ID:fJKxpiaAO
――――学園都市、夕方。人気の無い小高い場所。

10666「ふう……」

手すりにもたれ掛かり、赤い空を見つめる10666号。
太陽は、慰める様な優しく、そして厳しい光を湛えていた。

10666「さて、どうするかな?」

大した手掛かりも無し。
第七学区も結構回った。

目を閉じても、世界に助けを求める事すら出来ない。

やりたい事って、何だったかな。

今の私は、ただの惰性だ。
もうとっくに諦めていると言うのに、諦められてもいない。


いや、これは賭けだ。
今日一日の、賭け。


わざわざ人気の無い場所を終着点に選んだ。


来いよ。
来てくれ。


餌は私だ。それだけじゃ不足か?

麦野『アンタを殺して――』

アレがまだ有効だと言うのなら、今は絶好のチャンスだろう――?




やれよ
ヤれよ
殺れよ





579 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/17(日) 02:18:34.61 ID:fJKxpiaAO






「――こんにちは」






580 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/17(日) 02:19:12.91 ID:fJKxpiaAO
彼女は歓喜した。
口角が否応なしに吊り上がってしまう。
餌は功を成し、大きい魚が掛かる。

後は釣り上げるだけ。
深く、深く針を食い込ませろ。

声は、聞き覚えのある、聞き覚えの無い声。

ゆっくりと、10666号は声の主に振り返った。

「そんな所で、何をしてるの?」

高い声色の通り、女。







御坂美琴みたいな、御坂美琴だった。
581 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/17(日) 02:19:55.72 ID:fJKxpiaAO
10666「――夕日を見ていたのさ」

「へぇ、ロマンチック。私もご一緒していい?」

違う所と言えば、可愛らしい私服に身を包んでいる所だろうか。
10666号はフォースに信号を送り、それを受けた彼女の相棒は右腕を爪へと変化させる。

10666「いや、残念だがご遠慮させていただくわ。御託は良いから、かかってこいよ」

「……そうね。それが一番簡単」

10666号は頼りのフォース――爪を形成したそれを真っ直ぐ構える。
今の彼女に出来るのは、爪を打ち込んで電撃を全力で流すのみ。

対して御坂美琴に似た少女は電気を器用に操り、砂鉄の剣を作り出した。

「冥土の土産に何かある?」

一時の間。

10666「そうだな。お前は誰だ?後期生産のミサカなら、色々こっちもやる事があるんでね」

「――ぷっ、アハハッ。違う違う、全く逆よ」



「私を呼ぶとすれば、ミサカ00000号。フルチューニングかな」
582 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/17(日) 02:20:23.50 ID:fJKxpiaAO
10666「なっ――」

00000「行くわよ、量産型」

少女は、始めのミサカ。

左手に砂鉄剣。



右手に銀色のコイン。

00000「『超電磁砲』」

それは10666号に迫り――――
583 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/17(日) 02:21:12.44 ID:fJKxpiaAO
あー。もういいや。
投下終了。
584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/17(日) 09:33:42.54 ID:PBtDRFDSo
そろそろ登場だと思ってた、00000号。
しかし、これはもしや・・・・
585 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/17(日) 23:00:14.28 ID:fJKxpiaAO
投下開始
586 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/17(日) 23:00:52.23 ID:fJKxpiaAO
――――学園都市、夕方、それぞれの紅焼け。

打ち止め「――っ!!?」

一方「どォした?」

打ち止め「た、大変!?って――」



10032「――っ。お姉様!」

御坂「どうしたの?」

10032「10666号が――」



15555「あのバカ……」



17600「…………くっ」



587 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/17(日) 23:01:38.02 ID:fJKxpiaAO
――――小高い丘、赤く染まる。

10666「ぐぅっ……」

『超電磁砲』の先端に爪を突き出し、フォースの電磁フィールドによって僅かに反らす事が出来た。
しかし、反動によって後ろに吹き飛んでしまう。

00000「ほら、寝ている暇はないわよ?」

10666「っ!?」

慌てて飛び起き、バックステップ。
今しがた倒れていた場所に、砂鉄剣が幾つも突き刺さった。

10666「遠隔操作もお手の物ってか。まるでお姉様だな」

00000「それは当然よ。だって、私は御坂美琴に一番近くなるように調整され続けたから」

爪を解除し、フォースを喰らい付かせんと00000号に飛ばす。
が、それは砂鉄の壁に阻まれた。

10666「――チッ!」

00000「無理よ。貴女じゃ勝てない。私は限りなく御坂美琴と相似しているの」

側にあったベンチが浮き上がる。足の部分は鉄製だった。

投げ飛ばされたそれをフォースが貫き砕く。
その後ろから撃ち抜かれる『超電磁砲』が、彼女の軽い身体を吹き飛ばした。
588 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/17(日) 23:02:28.73 ID:fJKxpiaAO
10666「かは――」

彼女も電撃使いの端くれ、咄嗟に相殺しようと電気を発して軽減した。
しかしそれでも尚、『超電磁砲』は折れず引かず、そして強かった。

ドサリ、と力無く倒れる10666号。
フォースはそれと連動して動かなくなる。

00000「へぇ、供給元は本体なんだ」

10666「く、そ――」

00000「終わりね」

止めを刺そうと00000号は倒れ伏した少女に近寄り――そして背後から来る一撃を砂鉄剣で受け止めた。

00000「危ない危ない……」

15555「くっ、『疾風迅雷』!」
589 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/17(日) 23:03:39.95 ID:fJKxpiaAO
不意打ちが失敗してしまう。
素早く大きく15555号は距離を取った。
取った先に、追い付かれる。

00000「遅いのね」

15555「――『雷華崩拳』!」

近寄ってきた者を迎撃しようと、拳に稲妻を乗せて突く。
だがそれも紙一重で空を切った。

その隙を埋めるように、何処からともなく銃弾が00000号の腕を掠める。

00000「へぇ、良い腕。だけど、丸分かり」

電撃を徐に物陰に打ち込み、聞こえる悲鳴。
17600号は身体の自由を奪われた。

17600「ぐぅっ……」

15555「『雷天大壮』、『断罪の剣・二刀』!!」

走って十歩程度の距離を一息の間に詰める15555号。
両手には砂鉄剣、その刃を振るった。

00000「おっ、これは速いわね……」

鋭く素早く、そしてそうであるが故に重く必殺の一撃を、敢えてギリギリで避けていく00000号。
590 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/17(日) 23:04:17.15 ID:fJKxpiaAO
15555「ラァァッ!!」

突き、切り、払い、落とし、叩き、薙ぐ。
その何れも敵の身体を捉える事は出来ず、15555号は最後の渾身の一振りを躱された所で、その勢いを保ったまま盛大に地面に倒れ伏した。
『雷天大壮』の反動で、全身の筋肉が例外無くズタズタになってしまったのだろう。



彼女は、正に圧倒的だった。



00000「あら、終わり?」

10666「くっそ……」

痛む身体を起こそうとするが、足が言うことを聞いてくれない。

00000「なら、これで――」

「そこまでよ」「そこまでだ」

00000号が振り上げた腕を下ろし、無防備な自分を晒した。
チラリ、と侮蔑と嘲りの目線を向ける。

00000「あら、いらっしゃい。『御坂美琴』に『一方通行』」
591 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/17(日) 23:06:37.33 ID:fJKxpiaAO
一方「お前……」

00000「最初に自己紹介よ」

彼女はスカートの裾を少しだけつまみ上げて、軽く一礼した。

00000「ミサカシリーズ初期型、00000号(フルチューニング)よ。出来れば、二度は会いたくないけれど」

御坂「まだ、こんな妹達が……でも、もう大丈夫よ。目的が何か知らないけど、私たち――」

00000「待て」

超電磁砲の甘い言葉を、手で遮る少女。
顔は呆れで歪んでいた。

00000「そうね、確かに魅力的だわ。仲良しこよし。でもね、私はそんなつもり無いの」

御坂「――どういう、事?」
592 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/17(日) 23:07:22.64 ID:fJKxpiaAO
ニヤアァァ、と気味悪く笑うミサカ00000号。
それは、単純に御坂美琴を嘲笑っていて。

00000「アハ。アハハッ。分かんないの?分かんないよね? じゃあ聞くよ。『何で私は救われなかったの?』 じゃあ聞くよ。『何で妹達だけで満足したの?』 じゃあ聞くよ。『何で番外個体みたいなミサカの可能性を考えなかったの?』」

一方「オマエ……」

00000「私たちは生まれ、使われ、捨てられる! それはDNAマップが有る限り永遠! だと言うのに、何故そんなのうのうと生きていられるの!?」

御坂「――――っ」

00000「そうさ、隠匿されていれば気付く事さえ儘ならない!ねぇ、御坂美琴――」





「――アンタを抱いた男は何人いるんだろうね?」





593 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/17(日) 23:08:18.45 ID:fJKxpiaAO
御坂「――――ひっ」

レベル5の、しかしか弱き少女が震えに耐えながら、膝を折る。
考えてしまった。
僅かながらの、しかしあり得なくは無い可能性。

一方「その減らず口を閉じねェと、痛い目見てもらう事になンぜ」

一方通行がチョーカーのスイッチを入れる。
どんな能力者であろうと、こうなった一方通行を打ち負かすのは容易ではない。
だと言うのに、彼女の余裕は揺るがない。

00000「あーあ。私もここで死んじゃうのか」

一方「ケッ、そォ簡単に死なせる訳ねェだろォが」

00000「違う違う。番外個体の件で学ばなかったの?」

そう言って、彼女は自身の心臓の辺りを指差した。

00000「『シート』と『セレクター』は知ってるでしょ? 私も条件付けされててね……『妹達以外との戦闘』を行うと、能力が暴走して――」



「――真っ黒焦げになるの♪」



一方「……クソッタレ」
594 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/17(日) 23:09:16.29 ID:fJKxpiaAO
「――って事は、妹達ならオッケーなんでしょ?ってミサカはムカつくオマエの背中を蹴り飛ばす☆」

00000「え――」

00000号の身体が、吹き飛ぶ。
今度の不意打ちは成功のようだ。

番外個体。
一方通行と戦う為に造られた彼女が、そこにいた。

00000「アンタ……っ」

受け身を取り、素早く起き上がる00000号。
憎々しげに、番外個体を睨み付ける。

番外「キャハッ☆腰に来ちゃったかな、プロトタイプのおばあちゃん?」

00000「じょーだん。この位でぶっ壊れる程柔な調整受けてないわよ、消耗品」

一方「……何しに来やがった」

問いに答えるは、番外個体。

番外「アイツをヤっちゃえるのはミサカシリーズだけなんでしょ?なのにアイツはお姉様クラス……なら、一番何とかなりそうなのミサカじゃーん?」

一方通行は、番外個体の背中に強さを見る。
それは意思、そして力。

番外「たまには護らせてよ、ミサカにもさ」

一方「……ケッ、ヤバくなったら容赦しねェぞ」

番外「りょーかい☆」

アハハ――

甲高い笑い声が響く。
00000号の、嘲笑。
595 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/17(日) 23:10:05.98 ID:fJKxpiaAO
00000「良いね良いよ番外個体! 全くアンタらミンナイカれてる!」

それを無視し、番外個体は10666号に声を掛けた。

番外「動けそうだね☆」

10666「あいよぉぉ……」

番外「17600号と15555号を退けといて。流れ弾に当たっても知らないよ☆」

10666「オーケー、だ。っと!」

10666号はよろけながらも、ゆっくりと立ち上がる。
17600号は気を失っていたが、15555号は意識があった。

10666「お?」

15555「体が動かないだけだ。ダメージも無い」

10666「分かった。後は任せろ」

一方通行の元へと二人を運んだ。
一方通行は一方通行で、震える少女の側についていた。

10666「お姉様……」

御坂「…………」

ここ数日で、彼女の心に架かった負担は如何程なのだろうか。
私たち以上に、魂はひび割れているはずだろうに。

さて、幸い15555号の乱入のお陰で身体はまだ動く。

10666「お前と共闘って初めてだな。宜しく頼むぜ、妹」

番外「こちらこそ、お姉ちゃん☆」

番外個体が言葉を返したタイミングで、二人は仕掛けた。
596 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/17(日) 23:12:04.07 ID:fJKxpiaAO
投下終了
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/04/18(月) 02:21:26.02 ID:Q3I9J90AO
おつーん
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/04/18(月) 13:49:34.76 ID:qaNeJSoq0
なすーん
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/21(木) 19:53:03.20 ID:WHmtlZcL0
ワークテイカー
600 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/22(金) 11:08:13.48 ID:q7pFmDbAO
待たせた……か?

投下開始。
601 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/22(金) 11:10:52.75 ID:q7pFmDbAO
10666「いけっ!」

番外「シッ……!!」

10666号がフォースを飛ばし、番外個体がそれに追従するように鉄釘を幾つか突き抜く。

00000「――ちっ」

だが00000号は鉄釘の進路を反らしつつ、噛みつかんと襲い掛かってくる機械を躱していった。

10666「凄ぇな、それ」

番外「『堕天超電磁砲(レールガン・ワースト)』ってトコかな☆」

10666「ハハッ、上等ぉ!」

二人は猛攻を掛けていく。じわり、じわりと。
602 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/22(金) 11:12:51.04 ID:q7pFmDbAO
00000「(うーん、厄介)」

攻撃を捌きながらも、その少女は焦りを覚えていた。

向こうの息が合いすぎているのだ。
番外個体が強烈な電撃で鉄釘を飛ばし、その隙を10666号のフォースが埋める。

――ならば、まずは弓兵を止めるに限る。

フォースが突っ込んできたタイミングで、00000号は脚に電気信号を直接送る。

走れ、と。

00000「ふっ!」

番外「な――」

番外個体の懐に潜り込み、拳を一撃打つ。
僅かに身体を傾け、それを凌ぐ番外個体。

付かず離れず。これで、

10666「くそっ!?」

フォースを飛ばすのは簡単に出来ない。
下手をすれば、番外個体ごと薙ぎ払ってしまうのだから。

番外「――ナメるな、プロトタイプ!」

00000「局地戦型が、汎用型に敵うのかしらね?」

空かさず番外個体は戦闘スタイルを近接に移行し、鋭い蹴りを放つ。
鞭の様に00000号を襲うそれは、しかし腕を盾に防がれる。

そして、番外個体はその足を下ろす勢いのまま。
00000号は逆の手を構えて。

前者は鉄釘を、後者はコインを。
電撃に乗せて加速させ、打ち出した。

お互いの頬を、チリ、と掠める。

二人は、苦しく楽しそうに笑っていた。
603 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/22(金) 11:13:49.43 ID:q7pFmDbAO
無粋にもそこに斬り込む爪。

再び右腕にフォースを纏った10666号が背後を取るが、対象は半身になってそれを容易く避け、クルリと一回転。
回し蹴りが腹部に埋まり、吹き飛んだ。

再び距離を取る00000号。

00000「あー、良いわね。アンタ、なかなかじゃない」

番外「そりゃどうも☆」

00000「悪くない目をしてる。同業、相憐れむわ」

番外「バッカ。ミサカはとっくに割り切ったんだけど☆」

00000「そ。それにしても……アンタ、弱いのね」

10666号は、また立ち上がる。
足はガクガクと震え、暫くは立っているのもやっとだろう。
604 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/22(金) 11:14:56.16 ID:q7pFmDbAO
10666「へっ……ぬかせ」

番外「……下がっててよ。10666号じゃ厳しいとミサカは思う――?」

番外個体の両足が、ガクリと力を失う。
結果生まれる、隙。

00000「余所見するって、バカなの?」

番外「(やら、れた――)」

00000号が行なったのは、筋肉への電気信号の撹乱。
番外個体に『超電磁砲』が直撃する。
噴煙が舞い上がった。

10666「番外――!」

一方「番外個体!!」

煙が晴れ、番外個体の姿が見える。
多少の相殺があったのか、一応体の原型は留めていた。

意識は、亡い。

番外個体に駆け寄る一方通行。
クス、と笑ってミサカはそれを一瞥した。

00000「もう何も考えず、私を殺せば話は早いのに。貴方も大概面倒くさいのね」

一方「……クソが」

御坂「……」

不気味にユラリ、と御坂美琴は立ち上がった。
手には、コインを。
00000号に向けていた。
605 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/22(金) 11:16:46.78 ID:q7pFmDbAO
御坂「もう……いなくなっちゃえ……」

一方「バッ――」

一方通行の制止が、甲高い、本当に甲高い叫びで遮られる。

00000「キヒヒィィィ――!! やっと割り切ったの!?やっと覚悟出来たの!?それとも――」

「――ただパンクして、イカれただけなの?」

そんな声も、聴こえていないようで――

御坂「もう――いなくなってよ――妹達なんか、いなくなってよ――」

――虚ろな瞳で、ただ、繰り返した。

00000「イイ、イイ――たまんないわ!そうよ、本音はそう!!私たちを疎んで――」

10666「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

咆哮。空に向けて。

誰がこんな、何でこんな事になるんだ、と。

フラつく足を必死に動かして、10666号は御坂美琴の側に行った。
606 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/22(金) 11:19:34.08 ID:q7pFmDbAO
頭を引き寄せ、撫でる。

御坂「――もう、いや」

10666「だーいじょーぶだ、お姉様。大丈夫。だからそんな寂しい事言わんでくれ」

そして、彼女は意識を手放した。
……眠っている。

00000「気持ち悪い」

あぁ。そうか。

それは、侮蔑を孕んだ悲鳴。

一方通行も、お姉様も、目の前のミサカも。

みんな、みんな。

みんな救いを求めている。

でも私には何も出来ない。
私の器は13510号でいっぱいで、もう誰も入れないのに。

でも、今、可能性があるのは、私だけ。

10666「――なら、ここで私がお前に大逆転すりゃ解決か」
607 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/22(金) 11:20:21.11 ID:q7pFmDbAO
00000「出来るの?その身体でさ!」

バチン、と電撃が10666号を襲い、呆気なく膝を付く。
もう疾うに限界なのだ。

一方「クッ――」

10666「まだだ……せめて私が倒れるまでは、手を出さないでいてくれ。一方通行……」

渾身の力を奮って、しかし立ち上がるだけ。

00000「無様ね」

10666「ヘへッ……違いねぇ」

こんな状況だからこそ、彼女は笑う。

10666「――なぁ、何でこんな事するんだよ」

もう持たないのは自分が一番良く知っていた。
せめて、少しだけでも真実を。

00000「貴方をぶっ殺さないと私が捨てられちゃう。私だって死にたくないわ」

10666「奴らか……」

00000「貴方も大概よね――」

クスクスと笑いながら。



「――愛しの可愛い可愛い、あの子を奪われるんだから」



ドクン、と。

魂が鼓動した。
608 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/22(金) 11:23:05.71 ID:q7pFmDbAO
唇が震えながら、声と言う名の音を紡ぐ。

10666「それは――垣根――」

00000「確かそんな名前ね。寝取られる気分はどう?」



そうか――

10666「よかった――」

00000「はぁ?」



私はまだ――

私はまだ。

私はまだ!!



力を奮っていい!!!



609 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/22(金) 11:23:55.42 ID:q7pFmDbAO
00000「え――」

確かに自分から10m、少なく見積もってもそれ以上は離れていたはずの10666号を、00000号は見失った。

そして、自らの足元に見るのだ。

両の手を固く握り――指の間に三枚ずつコインが挟まっている――弓の様に身体を引き絞る彼女を。

10666「『爪牙(レールガン)』……」

00000「この――」

10666「『超電磁砲(クロウ)』!!」

弓弦は放った。
片腕につき三本の爪痕が、稲妻を傍らに空を傷つける。

それは、咄嗟に後ろに跳んだ00000号の肩を切り裂いた。
狼狽。
610 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/22(金) 11:25:03.36 ID:q7pFmDbAO
10666「15555号!!フォース!」

15555「了解だ!」

00000「なっ!?」

ノーマークだったのだろう。
15555号が砂鉄に語りかけ、それは剣と為りて空に浮かぶ。

フォース「固定完了」

10666「オーケー、最初からフルスロットルだ……行くぞフルチューニング。捌ききれるか――」

「『電撃姫の財宝』!!」

彼女と、15555号と、フォースの力がそれぞれ絡まり合い、砂鉄剣のダンスパーティーが開かれる。

手を抜けはしない。
全力で、ありったけ。

連続した着弾の轟音が鳴り響く。
だが、演算を止めはしない。

剣が無くなるまで。
この身が焼け付くまで。

13510号を迎えに行くまで、止まりはしない。

10666「おおぉぉっ!!」

噴煙が辺りを覆い、視界を塞ぐ。
611 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/22(金) 11:26:20.18 ID:q7pFmDbAO
10666「……どうだ?」

砂鉄剣も全て使い切り、不測の事態に備えてコインを握り込んだ。

そこで、ズブリ、と。

嫌な音を聞く。

肉を裂くような汚いそれと、追随して神経を昇ってくる焼け付く様な痛覚。

腹部に、砂鉄の剣が深々と刺さっていた。

00000「……やるわね。正直危なかったわ」

一方通行「10666号!」

砂煙が晴れる。
00000号の前に、土塊が盾の様に立ちはだかっていた。

10666「――チクショ」

遠隔操作された砂鉄剣が、勢い良く引き抜かれ、傷口から血が迸る。

意識が遠くなっていって。

ダメだ、負けるな――負けたくない。

前へ――前へ――

彼女は地に伏した。
驚く程静かに。
612 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/22(金) 11:26:58.66 ID:q7pFmDbAO
投下終了。
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/22(金) 19:39:55.47 ID:S6BSbhV+o
財宝キターーーー(゚∀゚)ーーーー!!
乙です
614 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/23(土) 23:28:06.69 ID:6nYq6wTAO
投下開始
615 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/23(土) 23:28:45.94 ID:6nYq6wTAO
――――

ミコト「あら、お久しぶりね」

あぁ、全くだな。

ミコト「やりたい事、見つかった?」

あぁ。

ミコト「それは上々」

でもダメだった。

ミコト「確かに強いけど、一方通行なら余裕なんじゃないかしら」

まぁ、そうだな。でも――

ミコト「どうしたいの?」

出来れば私がやるべきだった。

ミコト「何故?」

前に、進みたい。

ミコト「そう」

でも、悔しいけど動けないや。

ミコト「ボロボロだもの。仕方無いわ」

アハハ――

ミコト「……眠ってて。アンタの道、作ってあげる」
616 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/23(土) 23:30:02.90 ID:6nYq6wTAO
――――紅く輝く丘。

00000「ふふっ、お仕事完了っと」

愉快そうに笑っている00000号の前に、一方通行が立ち塞がる。

00000「先に治療しなくていいの?死ぬよ?」

一方「オマエを始末してからでも余裕だ」

00000「始末!始末!何て素敵な響きなのかしら!」

ジリ、と空気が凍る。
互いが互い以外の情報をシャットアウトし、世界を限定する。

故に、不意に掛けられた声に反応出来なかった。



「誰が死ぬのかしら」



00000「え――」

『雷撃の槍』が00000号の体を突き抜ける。咄嗟に体に流れる電気を逃がすが、ダメージは確実に入っていた。
617 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/23(土) 23:31:26.12 ID:6nYq6wTAO
一方「!?――オマエ?」

00000「貴女、しぶといのね……っ!?」

両者一様に驚きを見せる。

少女の腹部の傷は塞がっていた。

10666「さて、やりましょうか」

00000「この死に損ない!」

コインを弾き、次いで10666号に迫る『超電磁砲』。

それは、微動だにしない彼女の前で制止し、空へと逸れて――消えた。

00000「なに……っ!?」

10666「ダメねダメ、全くダメよ。アンタに足りないのは威力経験精度努力電気量演算速度――」

10666「――そして何よりも、誇りが足りない」

余裕の表情で、00000号を一瞥する。
それは、今までの彼女から、余りにかけ離れていた。

00000「ど、どういう――」

10666「自己紹介してくれたのに、こっちはしてなかったわね」



「常盤台中学二年、レベル5の第三位――」



10666「『超電磁砲』の御坂美琴よ。以後宜しく」
618 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/23(土) 23:33:35.20 ID:6nYq6wTAO
それは、宣言。

妹達の身体を我が身とし、世界に顕現する事への、言霊。

10666号の身体は、確かに御坂美琴と同一になったのだ。

00000「な……バカな事を言うな!頭でもおかしくなったの!?」

10666「バカかどうか、試してみればいいじゃない」

10666号は首のチョーカーと右腕の装甲を外し、そこらに投げた。

いや、そもそも彼女は――

00000「くそっ、失せろぉぉぉっ!!」

『超電磁砲』が10666号へと放たれる。
それに返す様に、『超電磁砲』を重ねた。

10666「ヌルいのね……どぉりゃあぁっ!!」

掛け声と共に、力を放出する。
ぶつかり押し合っていた超電磁砲が、一瞬で00000号側に押し込まれて炸裂する。

00000「きゃあぁっ!?」

10666「寝てんじゃないわよ」

怯んだ00000号に、回りに散らばっていた砂鉄を集めて組み上げた剣を振りかざした。
00000号も負けじと砂鉄剣で鍔競り合う。

が、その抵抗も虚しく00000号の砂鉄剣はあっさり砕かれてしまう。

00000「くそぉっ……!!」

10666「アンタが、オリジナルの私に勝てる訳ないじゃないの」

00000号は混乱していた。全く訳が分からない。
10666号の様子は、まるで――
619 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/23(土) 23:34:20.37 ID:6nYq6wTAO
天空に黒き雲が集う。10666号は未だかつてない電流を身体に纏っていた。


悟る。
オリジナルは、私には越えられない、と。

10666「もう勝つとか考えてる段階じゃないわよ?……耐えれるかしら?」

空から、雷が落ちてきた。
620 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/23(土) 23:35:47.68 ID:6nYq6wTAO
――――

轟雷が大地を貫いた後に、少女が倒れている。
00000号の意識は、余す所無く刈り取られていた。

10666「こんなとこかしら……」

一方「……オマエ、どォした――いや、誰だ?」

振り返る彼女の少し得意気な顔が、出会った当初の御坂美琴を思い起こさせる。

10666「私は、ミサカミコト。でも、今はそれより――」

ミコト「この子の身体はもうとっくに限界よ。後は頼んだわよ、一方通行――」

一方「な――」

言い残して、彼女もまた地に伏した。

その場には、同じ顔ばかり。
皆、傷ついている。

一方「……クソッ」

一言そう漏らした少年は、どのような気分だったのだろうか。
621 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/04/23(土) 23:36:52.66 ID:6nYq6wTAO
投下終了。

ツイッター誘われて始めてみたけど面白いね。
622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [saga sage]:2011/04/24(日) 00:09:06.77 ID:IFXOAnmG0
クーガーわろたwww乙
623 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/08(日) 02:05:32.50 ID:n7l0NxAAO
二週間も開いちまったね。全く情けない。

投下開始。
624 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/08(日) 02:06:17.16 ID:n7l0NxAAO
――――

ん――

ミコト「あら、お目覚め?」

ここで起きた事を、目覚めると言うならな。

ミコト「そう」

私は……どうなった?
アイツはどうなった?

ミコト「大丈夫よ。アンタは前へと歩いていけるわ」

――まさかアンタ。

ミコト「身体、勝手で悪いけど……借りたわ」

……そうかい。ありがとうな。

ミコト「アンタの望みを、叶えただけよ」

それでも……いや、だからこそさ。

ミコト「ふふっ……じゃあ、どういたしまして、かしらね。ほら。早く起きないと、みんな待ってるわよ?」

うん。そうだな――
625 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/08(日) 02:06:45.80 ID:n7l0NxAAO
――――病院、見知った天井。

10666「くくっ、いよいよもって常連だな……上条さんの事を笑えないねぇ」

ベッドから上体だけを起こし、周りを見る。
腕を枕にして、机に突っ伏して寝ているミサカがいた。

10666「……お前も物好きだよな」

14440号が、彼女の側にいる。

特に意味は無く、10666号は頭を撫でた。
626 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/08(日) 02:07:25.88 ID:n7l0NxAAO
――――冥土帰しの病院、冥土帰しの研究室。

木山「は、ははっ……はははっ……」

気の抜けた様な笑いを溢しながら、女性は乱雑に椅子に腰かけた。
背もたれが悲鳴をあげるが、気にする様子は無い。

冥土「どうしたのかい?」

木山「ふぅ……これをどうぞお読みになられて下さい」

冥土「……ふむふむ――ふむ」

手渡された書類に目を通していく冥土帰し。
真剣な目付きが、その文章や図、表の一つ一つを射抜いている。

木山「驚きでしょう?私も非常に驚愕しています」

女性は満足そうな、不満足を吐き出していた。

木山「10666号のAIM拡散力場の二重展開。両力場の相互干渉による打消の確認無し。力場の展開は正常。彼女の精神状態は至って健康。比較的類似した能力であると推測されはしますが――」

彼女は目を片手で覆って天井を仰いだ。
表情はうまく見えない。

木山「――彼女は間違い無く『多重能力者(デュアルスキル)』です。それもとびっきり、純粋な」
627 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/08(日) 02:08:21.29 ID:n7l0NxAAO
――――10666号の病室

14440号は慌ただしく部屋を出ていった。
粗方私が目覚めた事の報告だろう。

身体は……動く。
冥土帰しは神様かもしれないな。

くつくつと、腹の奥から笑いが這い上がってきた。

手近にあった据え付けの洋服タンスを開ける。
中には自分の常盤台の制服、そしてチョーカーとフォース、次いでそのガントレット。

下着も確認出来た。
手早く病院の寝間着を脱ぎ、ショーツを下ろした。

彼女は今、布一枚も纏ってはいない。
身体を軽く洗浄用のボディータオルで吹き、汚れを落とした。

10666「姉さん」

ミコト『何かしら?』

薄い水色のショーツに足を通した。
スポーツブラを付けて、カッターシャツを羽織る。

10666「良かった、わりかし姉さんも浅くなったみたいで。手伝える?」

ミコト『えぇ。構わないわよ』

ボタンを上二つだけ除いて止めていく。
スカートを身に付け、ホックを止める。
シャツはスカートの中に、その上から常盤台のデニムを着込んだ。

10666「そうか……サンキュ。ごめん」

ミコト『良いわよ別に。他ならぬ妹の頼みを聞かずして何が姉か!ってね』
628 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/08(日) 02:13:19.34 ID:n7l0NxAAO
髪を手で軽く整え、左耳の回りの遊んでいる髪を髪飾りで纏める。
チャリ、と静かな部屋に音が響いた。

ガントレットに腕を通し、チョーカーを首に巻く。
体内の電流をチョーカーへと集め、自動的に電源が入る。
フォースが独りでに動き出した。

フォース「お目覚めですか、マスター」

10666「あぁ。インスタントリンク、頼む」

フォース「了解。……同期完了、ネットワークリンク以上無し。オーケーだ、マスター」

10666「ご苦労さん」

フォース「それと、ミコトさん」

ミコト『うん、お疲れさま』

手を思いきり下に伸ばす。
パンッ、と軽い音がして身体に芯が生まれた。

靴をいつもの物へと履き替え、彼女は病室を出る。

休んでいる暇は無い。
一方通行を捕まえて、00000号の行方を聞かねば。
どうせ何かしら拘留はされているだろうし、情報は喉から手が出る程欲しい。

遥か背後で14440号の声が聞こえた。

全く、無事なのは見て分からんかねぇ。
629 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/08(日) 02:15:39.75 ID:n7l0NxAAO
――――冥土帰しの研究室へ向かう廊下

14440「貴女はまだ安静が必要なんですよ!?とミサカは10666号を引き止めます」

10666「動けるんだから問題無いだろう」

14440「そういう事では……いつか死にますよ!!とミサカは10666号の無茶を指摘します」

その言葉に、早足で歩いていた10666号は歩みを止めた。
振り返る彼女の目には不思議な自信が満ちていた。

10666「死にはしないさ」

14440「根拠がありません!」

10666「私を殺せるのは――」

彼女は再び歩き出した。
それは冥土帰しの部屋へと向かっていて、また新たな目標へとも向かっていたのだ。

10666「――きっと13510号だけさ」
630 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/08(日) 02:16:16.59 ID:n7l0NxAAO
――――13510号、何処か。

垣根「調子はどうだ?」

13510「特に問題はありません」

垣根「そりゃあ上々だ。この部屋に居れば、お前は触媒として魔術の一部となれる。なに、好きに寛いでて構わない。俺も一緒にいられないのが残念だぜ」

13510「貴方は……」

垣根「俺がこの部屋に居ると魔術が……あぁ、良くは分からねぇが悪影響らしい。済まねぇな」

13510「いえ……大丈夫です」

垣根「そうか。なら、もう行くぜ」

クシャリ、と頭を撫でられた。
暖かい。

彼は部屋から出て、そして私は不思議な力が自分の中を通り抜ける気分を今一度理解するのだった。
631 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/08(日) 02:17:03.68 ID:n7l0NxAAO
――――

定規「あの子は?」

垣根「もう指定位置だ。後は儀式だがなんだかが終わるまで待機するだけだ」

定規「簡単な仕事……ふふっ。そう思わない?帝督」

垣根「あぁ……いや、違ぇな。『仕事』じゃねぇ、俺の『目的』はまた別だ」

定規「そうだったわね」

少女は少年の腰に腕を回し、その意外に鍛えられた身体に撓垂れ掛かる。
自嘲気味に笑って、少年は少女の華奢な身体を軽く抱き返した。

定規「……どうなるのかしらね」

垣根「さぁな。天下の第一位様なら何とかするんじゃねぇか」

少年は天を仰ぐ。くすんだ天井があっただけだった。

垣根「……心理定規、俺はな」

定規「うん、聞いてる」

垣根「俺はな、自分が世界で一番だと思ってた。こんな凄ぇ能力が使えるんだし、まぁ見て呉れも悪くはねぇ」

定規「あら、自分で言うの?」

小さい苦笑。

垣根「茶化すなよ……ま、そう思ってた。一方通行が第一位なのも、上の見る目が無いと考えてた。こう見えても俺は努力家でな……自分で言うのもなんだけど」

定規「……そうね」

垣根「だがどうだ。いざ殺り合ってみれば、俺は負けちまった。死んじまった」

定規「……うん」
632 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/08(日) 02:17:54.90 ID:n7l0NxAAO
垣根「聞けば世にはあの一方通行ですら手こずる奴らがごまんといるらしいじゃねぇか。そこで漸く気づいたんだ」

定規「……」

垣根「『俺はなんてちっぽけなんだ』ってな。こんな事に気付くのに随分時間を掛けた辺り、間違いねぇ」

定規「……そんな事ないわ」

垣根「ははっ、そうかもな……だけど、少なくとも一番ではないだろ?」

定規「……そう、ね」

垣根「あの爺さんも、根っこは俺と同じなんだろうな。違いと言えば、あの爺さんはこのプランの『結果』を、俺は『過程』を求めてるって事だな」

定規「……いいのね?」

垣根「……あぁ。俺も未練がましいが、見てみたいのさ……世界の『一番』って奴をさ」

垣根「もし、それを止められるようなら……それはそれで、いい」

定規「そう……なら、私は――」

定規「その時が来れば、私は――貴方と死んであげるわ」

垣根「どうせ皆死ぬぜ?」

定規「貴方と、死にたいの。分かるでしょ?」

声。笑い声にも聞こえ、泣き声にも聞こえた。

垣根「……そっか」

定規「そうよ」











少年は携帯電話を取った。

垣根「完了だ、爺さん」
633 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/08(日) 02:18:54.47 ID:n7l0NxAAO
――――冥土帰しの病院、冥土帰しの部屋

10666「失礼、先生……っと、揃ってるのかい?」

部屋に入った少女は、そこに何人かの者を見る。
第一位に第三位、そして医者に研究者。

奥に、ミサカ。

一方「起きたか」

御坂「……もう動けるの?」

10666「あぁ、問題無いよ。00000号も居るとは好都合だ。随分大人しいんだな?」

00000「勝算も無い状態で逃げやしないわよ」

冥土「彼女も一応治療させてもらったよ。酷い怪我だったからね」

木山「彼女のAIM力場は、そこの彼の呼び出しで来た女の子が覚えていったよ」

10666「アイテム……滝壺さんが来てたのか?」

一方「一応なァ。万が一ってのもあるしな」

10666号は、00000号の目をじっと見つめた。
嘘も虚言も許さないと、目が口を切る。

10666「13510号は何処だ?」

00000「さぁね。知らないわ」

フォースが鋭く00000号の首に食らい付き、壁にめり込む。宛ら首輪の様に縫い付けられてしまった。

10666「もう一度聞くぞ。お前を『拘束して』『恐喝して』『拷問して』やる」

10666「13510号は何処だ?」

00000号がハッとした顔つきになり、そしてニヤリと――心底可笑しそうに笑った。
634 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/08(日) 02:21:31.89 ID:n7l0NxAAO
00000「……最初は垣根帝督のアジトに居たわ。でも今は多分、違う場所に居ると思うわ」

10666「それは何処だ?」

00000「残念だけど、本当に分からないわ。だけど、やろうとしてる事は知ってるわよ」

シン――と無音が響く。

10666「……話せ」

00000「……アイツらはね、10666号を触媒にして、凄まじい兵器を創るつもりらしいわ」

00000「そうね。適当な表現をするなら『神』とでも言うのかしらね」

10666「神、だと?」

00000「そう。最高の器に最高の魂を無理矢理入れるの――神様を、堕ろすのよ」

御坂「……それ、似たような話をアイツから聞いた事があるわ。確か『御使堕し』だったかしら」

00000「多分合ってるわ。それを故意に起こす事、それが奴らの目的」

一方「……差し詰め魔術側をぶっ潰すつもりなンだろうな」

00000「多分ね。私も自分で調べただけだからそこまで詳しくは知らないわよ」

10666「調べた?」

00000「自分の仕事を、詳細も知らずにやれはしないわよ」

10666「……そういえば、何故私を?」

00000「アンタは向こうからすれば、状況を打破為兼ねないファクターなのよ」
635 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/08(日) 02:22:01.07 ID:n7l0NxAAO
10666「……一方通行でも上条さんでも無く、私が?」

00000「……13510号が今向こうにいるのは――」







「――化け物になったアンタを救う為よ」






636 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/08(日) 02:22:36.02 ID:n7l0NxAAO
10666「――な、ん、だと?」

00000「アンタを助ける為の魔術を使うって騙されて、触媒になろうとしてるのよ」

10666「――だとしても!私は……いや、成る程な」

00000「理解した様ね。アンタが無事ならあの子は魔術を使わなくても良い。向こうが欲しいのは大人しいあの子、って訳」

10666「ちくしょう……っ」

御坂「……あのさ」

00000「ん、何かしら?オリジナル」

御坂「アンタそんな秘密ポロポロ喋って大丈夫なの?だって、フレンダさんにもストッパーが着いてたじゃない……その『セレクター』だかは、機能しないの?」

10666「あ、それは――」

10666号が目を閉じて、開く。
黒く澄んだ瞳が、仄かな橙色を宿した物へと変わった。

「多分大丈夫だと思うわ」

一方「――ン?」

御坂「え?」

木山「……ふむ」

冥土「ほう」
637 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/08(日) 02:23:19.01 ID:n7l0NxAAO
00000「この感覚……やっぱりアンタ」

10666「はぁい。暫く振りね、00000号」

木山「やはり……君は、御坂美琴か」

御坂「え、はい……」

研究者の女性は首を横に振ってそうではない、という意を示す。

木山「君じゃあない。10666号の事だよ。正確に言うなら、10666号の中の人格とでも言うべきか」

10666「それも不適当ですよ、木山先生。私は彼女の中に居て、彼女に非ず。とても不安定で、しかし確実に御坂美琴であるだけです」

御坂「……意味が分からないわよ」

木山「簡単に言えば彼女は……彼女は、『多重能力者』だ。10666号と、御坂美琴との、ね」

一方「ほォ……でも、理論的には不可能ォだったよなァ?」

木山「机上のそれは所詮空論だったということさ。正直私も驚いている」

10666「へぇ、この状態が――はいはい分かったわよ」

目を閉じて、開く。
瞳は夜のように暗かった。
638 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/08(日) 02:25:52.08 ID:n7l0NxAAO
10666「この状態が多重能力者って訳なのか……」

冥土「ふむ、今は10666号だね?自由に入れ替われるようだね」

10666「まぁ。手伝ってくれる、らしいですし。しかし面倒だな……フォース、姉さんの意識データ変換して外部音声に出力出来るか?」

フォース「イエスだ、マスター」

フォース『ヘローヘロー、聞こえるわね?』

00000「わお」

木山「しかし本当に凄いな……出来れば今すぐにでも詳しく調査したいが……」

10666「それはまた今度で頼むよ、先生」

ニカッ、と彼女の懐かしい笑顔。
釣られて木山もクスリと笑ってしまった。

フォース『ま、最初の話に戻るんだけど……その子、多分条件規制掛かってないわよ?』

00000「ぎくり」

御坂「……なんですって?」

フォース『だって私は御坂美琴だもの。条件範囲内よ?』

御坂「……御坂美琴は私よ」

フォース『でも私も、一つも違わず御坂美琴よ』

御坂「――違うっ」

00000「ふふふっ、面白っ」

御坂「何が可笑しいのよ!?」

00000「だって、見なさいよ」

そう言って彼女は、順番に二人を指し、最後に自分を指した。
639 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/08(日) 02:26:30.09 ID:n7l0NxAAO
00000「御坂美琴が一人、御坂美琴が二人、御坂美琴が三人」

00000「元々こういう目的だったんだから、当然じゃない。ま、そっちの量産型は魔術が絡んでそうだけどさ?」

10666「さてね。かもしれんな」

御坂「……私っ、私が本物の御坂美琴なのよ……っ」

一方「あァ、そォだ。そしてアイツは10666号で、ソイツは00000号だ」

御坂「……」

一方「それに間違いは無ェだろ」

御坂「……ふん。で、何でそんな嘘を?」

00000「だって素直にやったら勝てないじゃないの。それくらい分かるわよ」

10666「……そもそも、何でお前は?お前は何故『居る』?」

00000「……私は天井亜雄製の妹達。コスト度外視で、限り無く手加減無く御坂美琴に近寄ろうとした個体よ」

一方「……ケッ、天井か」

00000「で、主が死んだ私は宙ぶらりんになったの。そこを回収されて今に至るって訳よ。妹達の中ではトップクラスの自信はあるし、事実トップよ。量産型や後期決戦型なんかじゃ私は止められない」

「私を捻り潰せるのは……オリジナルだけよ」

御坂「…………」
640 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/08(日) 02:27:24.87 ID:n7l0NxAAO
00000「悔しい、死ぬほど悔しいわ。そして今も憎い。なんでアンタがその席に座ってんのよ。なんで私じゃいけなかったの?」

フォース『アンタが私じゃないから。それ以上でもそれ以下でもないわ』

00000「……そう、分かってるわよ。そのくらい、ね」

御坂「……」

フォース『そして私もまたそこの御坂美琴足り得ない。私はこの子の中にいる御坂美琴。だから、そんなに気に病まないで……私』

御坂「……アンタ、強いのね」

フォース『この子の中に居れば……こうもなるわ、きっとアンタも』

フォース『本当に綺麗な……何も無い場所だもの』
641 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/08(日) 02:28:01.58 ID:n7l0NxAAO
――――

10666「そうか……13510号は、私を……まだ、『居る』と思っていたんだな」

御坂「うん……言わない方が良いと思ったけど、こうなっちゃね」

10666「ハハハ……全部私のせいか」

一方「……」

10666「なんて顔しやがる。これから失敗を取り返しに行くんだ。これほど愉快な事は無いよ」

00000「ありがと。『拘束して』『恐喝して』『拷問して』くれて」

10666「おぅ。まぁ、『仕方無い』よな、喋っちまってもなぁ」

一方「……クカカッ」

10666「……クックッ」

冥土「はぁ……壁を直す身にもなってくれないか?」


10666「いや申し訳ないです、先生」

彼女はフォースを腕に戻した。壁には案の定大きな穴が空いている。
642 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/08(日) 02:28:31.00 ID:n7l0NxAAO
10666「なぁ、00000号」

00000「何よ?」

彼女は、手を差し出した。

10666「助かりたきゃ、掴め。手を出さない奴は……なかなか救ってもらえないぞ?13510号みたく、私がいるなら別だけどな」

00000「私、は……」

少女は戸惑い、手を泳がせ――そして掴んだ。

00000「もう……嫌」

10666「そうだな。全くその通りだ」

00000「うっ……ううぅ……」

室内に、雨が降っている。

10666「……全くもって、その通りだよ」
643 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/08(日) 02:29:21.60 ID:n7l0NxAAO
――――

フォース『……ん。何か始まったようね』

10666「分かるのか、姉さん?」

御坂「姉さん……」

フォース『場所も大まかにはね。アンタの道を作るって約束したでしょ?』

10666「頭が上がらないぜ、ったく」

10666「さて、迎えに行くとしますかね、お姫さんよ!」
644 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/08(日) 02:30:11.50 ID:n7l0NxAAO
投下終了。もうすぐ終われると思う。思うだけ。
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/08(日) 22:52:24.81 ID:y9nn+MdJ0
凄い楽しみ。 1からぶっ通しで読んだ。
もう出来るならこのまま何時間でも1秒も間をおかずに
どんどん書いてあと数スレは続けて欲しい程に。

続き、楽しみに待っています。
646 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/05/12(木) 23:46:59.71 ID:upg1tTmAO
待ってる人がいるのに書けんのは辛いね。ごめんねもうちょっと掛かるよ。
647 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/14(土) 00:56:07.39 ID:b6JfPl4AO
壁]・ω・)
誰か居たら投下する、誰もいなかったら溜める、そんな量しか書けてないけど……投下しようか?
648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2011/05/14(土) 01:07:01.86 ID:ZhY6DTfYo
戻ったか
649 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/14(土) 01:11:03.96 ID:b6JfPl4AO
よっしゃ投下するね。
650 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/14(土) 01:13:59.43 ID:b6JfPl4AO
――――第23学区、とある建物内。終わりへ向かう各々の物語。

老人「……気取られたようだね」

スーツ「えぇ。しかし、計画通りです。いえ、邪魔は無いに越した事はありませんが……」

老人「もう間に合わんよ。後は奴らがいくら好き勝手に動こうとも結果は変わらぬ」

老人「だが……一つ後悔が有るとするなら」

スーツ「……何か?」

老人「彼女と……10666号とは一度直接話をしてみたかったね」

老人「君は……知っているはずだろう?なぁ、10666号。あの世界は、とても寂しいと思うだろう?」

スーツ「先生……」
651 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/14(土) 01:15:04.21 ID:b6JfPl4AO
――――第23学区、駐屯所。

兵1「さて……所謂『上条勢力』が動き出したようだね」

兵2「はい。どうやら触媒の少女の在処は割れているようですね。23学区への最短ルートを行軍しています」

兵1「オーケィ……ボクらの役目は『その他』の足止めだ」

兵2「我々の最優先事項はコードネーム『双頭の化物(オルトロス)』、10666号の防衛ライン突破阻止、でしたな」

兵1「ハハッ、全く物々しい渾名だと思うよ。まぁ、その犬っころさえ通さなければ最悪大丈夫だ」

兵1「それに、後ろには『心理掌握』に『未元物質』が構えている。万に一つも単騎突破は不可能さ」

兵1「故に、ボクらはひたすらノコノコ現れた上条当麻を虐め抜くのさ。現代兵器の前には、あんな奴は足手まといにしか為らないよ。彼は戦術単位の戦闘に慣れていない。対集団では無力なんだ」

兵1「しかし向こうにとっては切札だ。上条当麻を失う事は戦意的な意味でも敗北に等しい。何が遭っても守られるだろうね。故に向こうの戦力はいくつか削がれてしまう」
652 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/14(土) 01:16:57.54 ID:b6JfPl4AO
兵1「だと言うのに、彼はきっと先陣を切ってくるよ。賭けても良いね。幾多の強敵を打ち負かしてきた自信と、そして内に秘める確固たると思い込んでいる正義感がそうさせるさ」

兵1「それでボクらが落ちるって言うならやるが良いさ。そんな幻想は、ぶっ殺してやるよ」

兵2「良い気合いですね。いよいよとあって、奮い立っているのですかな?」

兵1「あぁ……この作戦が成功すれば、世界の悪は根絶やされ、そして誰も泣かなくていい世の中になるんだ……最初に聞いた時は半信半疑だったが、実際に『神様』は降りようとしている」

兵1「『助けて、神様』と何度願ったろうか」

兵2「…………」

兵1「だけれど、何も起こらなかった。ボクを助けたのは、銃と……この発育の悪い身体だけだったな。おかげで男に見られて楽だった」

兵2「男に見られて楽でした、と?」

少し、表情が翳った。

兵1「ゲイに連れていかれた事はあるね……ふふっ、だけどボクが女だと分かると諦めるのさ。あれは未だに訳が分からないね」

兵2「……もう、そんな事はないでしょう……何処にも」

兵1「そうさ。だからボク達も……あと少し戦おう」
653 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/14(土) 01:17:53.14 ID:b6JfPl4AO
――――駐屯所より多少中央に近い場所、垣根帝督。

垣根「さて、術式発動まで後少し……か」

定規「あの子達も動き出したらしいわね」

掌握「ふふっ……無駄な事を」

垣根「そうだな……ハハハッ!」

少年は心底愉快そうに笑い出した。
不思議と、心理掌握はその笑いに苛立ちを覚える。

掌握「急に何よ?」

垣根「いやいや、済まねぇ……こっちの話さ。楽しみがもう一つあるのを思い出してね」

掌握「……貴方、何を――『何を考えているの?』」

垣根「さてな」

掌握「……まぁ良いわ。これが終われば私は抜けさせてもらうし、それは約束でしょ?」

垣根「あぁ、間違いねぇ」

掌握「しかし魔術兵器開発なんて……関わるとは思ってなかったわ」

垣根「そりゃそうだろうな」

――んなもん作ってねぇんだからよ。
654 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/14(土) 01:18:48.30 ID:b6JfPl4AO
――――23学区、ターミナル前、10666号。

10666「さて、お姫様はこの広い学区の何処かって訳だが……」

10666号は僅かに後ろを振り返った。
そして不敵に笑う。

――お人好しの多さに。

上条「この学区もよくよく悪用される場所だなぁ……」

御坂「これで終わり……よね」

一方「さァて、ショータイムといくかァ」

15555「よし……問題無い」

番外「出遅れないでね、プロトタイプ☆」

00000「嘗めないで、後期型」

そして。

神裂「随分広域に渡って魔力を感じますね」

ステイル「あぁ。大層な大魔術だよ」

インデックス「凄く、嫌な感じがするんだよ……」

魔術サイドの三人も、共にいた。

と言う事は――

10666「しっかし神裂さんとステイルさんが手を貸してくれるなんてね……しかし、『早かった』ね?」

神裂「……これは仕置きです。我らから、ここへの」

10666「漸くお達しが出たようだね。好き放題暴れられて、さぞかし良い気分じゃあないのかい?」

神裂は首を横に振って否定する。

神裂「そんな……無駄な争いはなるべくは避けたいものです」

10666「くっく、全くだ」
655 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/14(土) 01:20:48.04 ID:b6JfPl4AO
「すまん、手間取ったにゃー」

不意に背後から掛けられた声に全員が振り返る。
そこには三人、『グループ』のメンバーが揃っていた。

土御門「サポートはこっちが受け持たさせて頂く」

海原「後衛は任せて下さい、御坂さん達」

結標「さて、とりあえず作戦を実行したいのだけど……聞いてるかしら?」

10666「あぁ、聞いてる。だがまぁ……再確認も兼ねて頼むよ」
656 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/14(土) 01:22:07.98 ID:b6JfPl4AO
作戦の内容はこうだ。

23学区は入口が一ヶ所、ターミナルからしか侵入する事が出来ない。

ミサカミコトの話ではもう少し奥に反応を感じる、というらしい。
彼らの目的は23学区の探索である。

だが、確実に仕掛けられているだろう伏兵を捌きながらの作業になる。
命の危険が傍らにある行為だ。

そこで結標の能力を使い、まず結標が単騎である程度奥地まで自身の転移を行う。
安全確認、後に一方通行グループ(一方通行、ミサカ10666号、ミサカ15555号、番外個体、ミサカ00000号)が同地点に潜入。
一方通行と番外個体、そしてその他のミサカの二手に別れての探索。

残った上条当麻グループ(上条当麻、ステイル・マグヌス、神裂火織、インデックス、御坂美琴、海原光貴、土御門元春、結標淡希)がそのまま正面から探索を開始する手筈だ。

だが、上条グループは正面から突破する事になるだろうから、戦力を多く取っておかないといざと言うときに敗走してしまう可能性がある。

また、突入グループが少人数なのも出来るだけ気取られないようにするためであり、また上条グループには万能に戦えない者(上条当麻、インデックス)もいるのでこの組み合わせは間違ってはいない。
657 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/14(土) 01:23:03.46 ID:b6JfPl4AO
各連絡方法はミサカネットワークや携帯、結標などの複数を使用出来るので、最悪分断の可能性も無い。

第一目的は13510号の探索だ。

しかし第二目的がある。
故に上条当麻が必要なのだ。

既に魔術が手のつけられない様な状況になってしまっていては、最早上条以外に解決出来る手段は少ないだろう。
よって上条は正面から突入グループが探し当てた場所まで行軍しなければならない。

上条当麻を転移出来れば話は早いのだが、上条当麻は自身に掛けられる異能を悪意の有無に関わらず打ち消してしまう。
よってやはり中央突破が必須となる。

ここで突入グループが光ってくる。

任務を終えた一方通行らが後ろから攻め立て、上条グループと共に敵を挟撃、殲滅後合流出来るのが理想の流れだ。

つまり突入グループには早さが求められる。

上条グループは囮も兼ねてじっくりと進み、一方通行グループはその騒動の中素早く目標を見つけ出さなければならない。

不安要素は、敵の戦力が不明な事だろう。
658 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/14(土) 01:23:45.49 ID:b6JfPl4AO
10666「オッケー、確認完了だ。質問は無いかな?」

禁書「……私は待っていた方がいいのかも?」

10666「いや、魔術の知識に関してシスターの右に出る奴はいないよ。現場での策を私たちに授けてくれ……謂わば軍師さ」

番外個体「上条当麻グループにミサカ達は要らないの?ネットワークでの通信出来ないよ?」

10666「それも考えてたが、ネットワーク持ちは極力探索に使いたい。何らかのジャミングでずっと繋がらなかった13510号に繋がるかもしれないし……まぁ賭けみたいな物もある」

上条「俺たちは固まって行くのか?」

10666「そっちも二つに別れると良いと私は思う。上条さんとシスターは別れた方が良い。いざというときに守られる対象が二人いるグループはまずい」

上条「……じゃあ」

上条、御坂、海原、土御門、結標

インデックス、神裂、ステイル

上条「って所か、戦力的に考えて」
659 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/14(土) 01:25:03.66 ID:b6JfPl4AO
10666「あぁ。そっちは結標さんのお陰で合流も楽だろう」

結標「私がやられたら?」

10666「一番マズい。上条さんやシスター、一方通行は確かにいざ最終的に活躍するかもしれないが、結標さんが落ちたらそこまで辿り着く事すら危うくなる。AIMジャマーやキャパシティダウンは私たちも見つけ次第壊しながら進むよ」

結標「責任重大ね……」

土御門「まぁそれもあってこっちが多いんだがな」

ステイル「もし片方が落ちたら?」

10666「そんときゃもう片方で何とかするしかねぇな」

海原「何とかなるのですか?」

10666「絶対無理だな」

御坂「そんな――」

10666「私らに求められる事は、迅速さ、正確さ、素早い連携、そして不敗さ」

そこまで言って、彼女は顔を伏せて呟いた。

10666「……あと。まぁ、不殺なら最高だよな」

彼女は顔を上げた。
瞳には強さが浮かんでいる。

10666「質問は以上だね?……じゃ、行こう」

23学区が、禍々しい気配を放つ異界と化している。




まるで、世界の終わりが凝縮されているような――そんな気が、した。
660 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/14(土) 01:26:13.33 ID:b6JfPl4AO
投下終了。
ようやくラストステージ手前だよ。
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2011/05/14(土) 02:33:20.29 ID:ZhY6DTfYo

さぁどうなるか
662 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/26(木) 01:15:20.69 ID:Prbp5pOAO
やっべ終わらね。長くなるしちまちま吐いてく。
663 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/26(木) 01:17:47.38 ID:Prbp5pOAO
――――23学区、ターミナル前

結標「じゃ、行ってくるわね」

一方「一人で大丈夫かァ?」

結標「えぇ。貴方が着いてきてくれれば安心だけど、二人運ぶ手間もあるしね」

一方「そォか、気ィつけろ」

10666「頼んだよ」

結標は力強く頷いた。
精神を移動先へと向け、そのまま身体を持っていく。
彼女は敵陣の奥深くへと単身乗り込んだのだ。
664 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/26(木) 01:18:21.30 ID:Prbp5pOAO
――――23学区、中部。

結標「――よっ、と。特にジャマーなんかは無いみたいね……ま、隠密向けの能力だし――」

彼女が広めの空き部屋にテレポートして、安堵出来たのは僅か二秒だった。

けたたましく鳴り響く警報、それが侵入者の発見を顕していた。

結標「(―――っ!!?ヤバい!?)」

結標は乱れる演算を、足を踏ん張る事で持ち直そうと試みる。
深く息を吸い、長く呼気を吐く。
喧騒は、暫し外へ。

結標「――よし」

一言、音だけを残して彼女は居なくなった。
665 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/26(木) 01:18:48.03 ID:Prbp5pOAO
――――

スーツ「確かに警報を鳴らしはしましたが……テレポーターはどこにいるのですか?」

老人「知らんよ」

スーツ「……それは、如何様な?」

老人「私が見ていたのは今はターミナルだけだよ。彼女が居なくなったから警報を鳴らしただけさ、全域にね」

スーツ「成る程……」

老人「ふふ……」

スーツ「……お、入り込みましたな……何が可笑しいので?」

老人「いや、彼らはこちらの戦力を把握しているのだろうかね?」

スーツ「いえ。恐らくその線は薄いでしょう」

老人「ならいい」

老人は嫌らしい笑みを浮かべて、空気を食んでいる。

老人「さぁ、幻影と踊るがいい。存在しない大軍とね……」
666 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/26(木) 01:19:16.07 ID:Prbp5pOAO
――――23学区、ターミナル前。

少女が再びテレポートを行い帰ってくる。
額には冷や汗が見て取れた。

10666「どうだった!?」

結標「……すぐ気付かれたわ。奴らはこの学区内を良く把握しているようね」

10666「くっ――!」

ギリ、と拳が軋む。
さて、どうするか――

考える暇は、無いようだ。
667 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/26(木) 01:19:43.00 ID:Prbp5pOAO
――――23学区、ターミナル前。とある部隊の女隊長。

兵1「狙撃班、スタンバイ」

『オーケー』

兵1「気取られるなよ……一方通行は狙うな、跳弾で死ぬぞ。上条当麻、コードネーム『禁書目録』を狙え。あそこは脆い」

『イエス、マム』

兵1「武運を祈る。能力者部隊、部隊長。そちらはどうだ?」

『頗る結構であります。脳波に異常を来す者もおりませぬ』

兵1「……すまないな、お前たちを物みたいに扱ってしまって」

『隊長が気に病む必要はないのであります!我々一同端から隊長に命を預けている所存でございます!』

兵1「……そう言ってくれると、ボクも気が楽だ。これが終わったら、皆に飯でも奢ろう」

『サー、楽しみにしています。ご武運を!』

兵1「あぁ、グッドラック」
668 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/26(木) 01:21:49.84 ID:Prbp5pOAO
兵2「隊長、そろそろです」

利発な女性は、端整な男に笑いかけた。
それは逸る気持ちの現れでもあり、また、自嘲でもあった。

兵1「さて、諸君。いよいよこの時だ。この場に至って多くは語らん。勝て、そして死ぬな!」

『イエス、マム!』

兵1「狙撃班の攻勢と奴らの動きを見て、我々白兵部隊が奇襲を掛ける。準備をしておけ!」

『イエス、マム!』

兵1「上等だ。……狙撃班、頼んだよ」

『合点承知ぃ!』

少年少女らの、遥か彼方から銃弾の雨が降り注いだ。
669 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/26(木) 01:22:56.58 ID:Prbp5pOAO
――――

一方15555神裂00000御坂10666番外海原「「「「――――っっ!!?」」」」

飛来した銃弾が着弾する前に反応出来たのは凡そ半分。

一方15555神裂10666「「「下がれ!!」」」」

それに対処出来たのは更に半分。

一方「くそがァっ!!」

白き少年は銃弾のベクトルを操作して射線を逸らし、

神裂「――『七閃』!」

神の一部は、人を超えた反射神経で銃弾にワイヤーを這わせ、

15555「『断罪の大剣』!!」

妹達は砂鉄袋をぶち撒け、巨大な剣を10666号と自分の前に突き刺し、

10666「『乱舞超電磁砲』!!!」

そして彼女はそれを盾にしてコインケースを一つ分――凡そ50枚掃射した。

ステイル「ちっ……」

海原「マズいですね」

御坂「何処から!?」

僅かに遅れて反応が間に合う、咄嗟の後衛。

一方「角度的にどっか高ェ所だが……ざっと目視は出来ねェな」

飛来する銃弾全てを演算しきっている一方通行が、目を細めて答えた。

上条「どうする!?」

10666「……迷ってる暇はねぇ。今は一方通行が守ってくれてるが、このままじゃジリ品になるのは間違い無い」
670 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/26(木) 01:23:59.93 ID:Prbp5pOAO
10666号が、僅かな時間深く考え込む。

――行きましょう。

10666「――だな。プラン通り、私たちは突っ込む。神裂さん」

神裂「分かっています」

10666「お姉様、海原さん」

御坂「だ……大丈夫よ。任せてちょうだい」

海原「責任を持って、彼らを護衛致しましょう」

10666「よし、別れるぞ!攻勢が止むまで防衛しながら移動。私らは狙撃部隊を叩いてから、後に作戦を開始する!」

一方「――速攻だァ、結標ェ!」

結標「やるわよ!」

一方通行らの座標が移動する。
向こうでは激戦は必死だろう。

神裂「インデックス、下がって下さい!」

ステイル「僕の後ろから離れるんじゃないよ」

インデックス「う、うんっ」

御坂「アンタ、流れ弾に当たるんじゃないわよ!!」

上条「分かってる!」

土御門「頼むぞ、槍」

海原「はぁ……出来れば女性をエスコートしたいものです」

結標「あら失礼ね、私は数に入らないのかしら?」

海原「失礼、訂正が。御坂さんをエスコート、でお願いします」

一方通行の抜けた穴をすかさず埋める異能達。

彼らは素早く逆方向へと駆け出した。
勝利する為に、勝利すべき為に。
671 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/26(木) 01:24:41.41 ID:Prbp5pOAO
――――23学区、中部。

一方「……ン?」

10666「どうした?」

一方通行グループらが転移してきた場所は割りと開けていたが、その妙な雰囲気を一方通行は感じ取った。

一方「妙だな……」

番外「……そうだね☆」

00000「人の気配が無い?テレポーターの話は嘘って訳?」

いくら回りを見渡しても、確かに人一人を見つける事すら出来なかった。

15555「……デコイか?」

10666「かもしれないな……狙撃を潰すまでは固まって行こう。番外個体」

番外「ん?」

10666「電池役頼んだよ」

番外「りょーかいっ、ひひっ☆」
一方通行の首の辺りを見ながら、番外個体は意地悪く笑った。

一方「……銃声が近ェ。ついてるぞ」

10666「よし、行こう!」
672 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/26(木) 01:25:14.14 ID:Prbp5pOAO
――――23学区、ターミナル周辺

『隊長、気取られたみたいだ。奴らが――いや、来やがった!』

兵1「よし、現時点で現場を放棄。被害を最小限に押さえて撤退しろ。一方通行の相手はするな、やるだけ無駄だ」

『イエス、マム!』

兵1「よし、奴らの動きを見て攻め立てる。油断するなよ!」
673 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/26(木) 01:28:39.93 ID:Prbp5pOAO
――――23学区中部、何処かの屋上、10666号

10666「『二連超電磁砲』!!『三連超電磁砲』!!」

一方通行グループは見敵から素早く奇襲を掛けた。
にも関わらず敵の連携は見事な物である。
良く鍛錬された兵である、と僅かに関心を覚えた。

相手に能力者が居ないと見られるので、攻め手はミサカらで十分事足りる。
一方通行は銃弾から盾となって妹達を守っていた。

その後ろから、尽きない弾薬を打ち続ける鉄砲隊。

00000「ほらっ、『超電磁砲』!」

番外「次にミサカに痺れちゃうのはどいつー?」

15555「『雷の暴風』!」

雨霰と襲いかかる電撃が、次々と敵兵を昏倒させていく。
狙撃部隊だからだろうか、中距離での攻撃が拳銃程度しか見えなかった。

部隊長「ちっくしょう!下がれ、下がれ!!」

非常階段へと雪崩る狙撃兵達。
しかしそれを逃がす訳にはいかない。
せめて再起不能にしなければ意味が無いのだから。

15555「――前へ出る。援護頼んだ、『疾風迅雷』!」
674 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/26(木) 01:29:58.49 ID:Prbp5pOAO
15555号が駆け出すと同時に、その背後から3種類の『超電磁砲』が道を作るように前方を貫いた。

標的は先頭の隊長格。

右手に力を込めて、腹部を狙って振り抜いた。

15555「『雷華崩拳』!」

しかしそれは勢い良く空を切った。
ギリギリ、半身になった隊長格は重く速いそれを躱せた。

いや、躱したのだ。

15555「っ!?」

部隊長「ところが、どっこい!」

――コンバットナイフ!

銀色を視界に捉えた段階で、素早く後ろへ飛び退く。
判断が数瞬遅れていたら、確実に首を刈られていたであろう軌跡を描いていた。

追撃とばかりにもう一方の手に握られたベレッタから銃弾が打ち出される。

だが、銃弾と15555号との直線上に砂鉄剣が空から突き刺さった。
それは細く剛健な壁となってその一撃を耐えて、絶えた。

しかし、手練――

と、思考する間もなくその男は体当たりしてきた。
余りに稚拙な行為に面食らい、吹っ飛ばされてしまう。
だが、ダメージはごく僅かな物である。

しかし、位地は先ほどより味方よりになってしまった。

部隊長「残留部隊!コードB!」

叫んで、一人で突貫してくる男。
675 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/26(木) 01:31:44.21 ID:Prbp5pOAO
00000「ふん」

余りに愚策なそれを鼻で笑い、雷撃の槍を飛ばす00000号。
だが、それが間違っていた。

撃つのなら必殺であるべきだった。

まだ撤退しきれていない狙撃部隊が一斉に物陰から突貫してきたのだ。
先程まではその臆病な盾から弾丸を発するだけだった奴らが、だ。

よろけながら、槍を受けた男は笑った。

部隊長「――喰らいやがれ」

男は手に握っていた何かを地面に叩きつけた。

それは激しい光を放って、一方通行らの視界を阻んだ。
スタングレネードである。



一方通行は、光を反射していない。

一方「ぐっ……」

目を眩まされる一方通行達。
不意の攻勢にも対応出来るように一同身構えるが、不思議と何も起こらない。

目が見える様になるまで数秒間、そして見えたのは濃い煙幕。

15555「――やられたっ!?逃げられるぞ!」

一方「……ふン」

一方通行が風を操って煙を吹き飛ばした。

奴らは影も形も無くなっていた。
屋上から地上を覗くと、蜘蛛の子を散らす様に逃げている狙撃兵らが見て取れた。
676 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/26(木) 01:32:12.60 ID:Prbp5pOAO
10666「……ま、いいか。これで暫くは弾の雨も止むだろうし、再起不能クラスにゃ痛めつけた」

こちらの損害は皆無。
作戦を続行するのには何の問題も無かった。

一方「じゃ、行くぞ。時間が惜しい」

10666「あぁ。じゃ、また後で落ち合おう」

彼女らも二手に別れ、探索に入った。

街の深く深くへと、沈んで。
677 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/26(木) 01:33:11.95 ID:Prbp5pOAO
――――23学区、上条

上条「……止んだ、か?」

土御門「どうやら一方通行たちがやってくれたようだな。これで暫くは持つだろう」

御坂「ちょ、ちょっと休憩……」

海原「大丈夫ですか、御坂さん」

電撃使いの少女は、能力の使いすぎで息を切らしていた。
銃撃の殆どを一人で捌いていたのだから当然と言えば当然ではあるのだが。

御坂「心配するならもう少し手伝ってくれないかしら……」

海原「申し訳ありません。僕の槍は対多人数に適していませんので……出来る限りは対処しましたが」

御坂「何だっけ、トラウィスカリュパン――」

海原「…………」

御坂「…………」

海原「…………」

御坂「……噛みましたよーだ」

海原「(やはり御坂さんは可愛い)」

上条「ほら、行くぞー?」

土御門「魔力が強くなってる感じがするな。行くぞ」

一同、目的地を奥地へと定める。

結標「私もなかなか足手まといよね……」

その場に残ったのは、結標のアンニュイな独り言だけだった。
678 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/26(木) 01:34:44.75 ID:Prbp5pOAO
――――23学区、インデックス

神裂「……ふむ、攻撃が止みましたね」

ステイル「彼女らが仕留めてくれたのだろう」

神裂が愛刀を鞘へと仕舞う。
彼女らが弾丸を切り裂いていたのは五分程度だろうか。
人知ならぬ業をやって退けたにも関わらず彼女は汗一つかいていなかった。
これが聖人たる所以である。

禁書「しかし、妙なんだよ」

神裂「えぇ、静か過ぎます」

ステイル「それならそれで動き易いさ。行こう」

魔術師三人も奥へと向かって歩みを進める。

禁書「(……何だかこの魔力、気持ち悪いかも)」

こちらに残ったのは、シスターの疑念だった。
679 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/26(木) 01:35:19.89 ID:Prbp5pOAO
――――23学区、一方通行

一方「……意外と手薄だな」

番外「やっぱハッタリだったんじゃない?」

00000「そんなに大勢兵隊が居る、って話も聞いた事は無いし……案外間違いないかもしれないわね」

一方「向こォは?」

番外「問題ナッシングみたいだよー☆こっちと違って足が速いから何かあっても大丈夫そう☆」

一方「なら良いンだがな……」
680 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/26(木) 01:36:53.32 ID:Prbp5pOAO
中途半端だがここで一旦切る。
681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/26(木) 21:09:43.08 ID:RiaOSd99o
キテタ‐-------(゜∀゜)--------!!
682 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/27(金) 22:24:33.08 ID:wMKGffCAO
俺にしてはハイペース。投下開始
683 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/27(金) 22:28:00.06 ID:wMKGffCAO
――――上条

上条「くそっ、囲まれたのかっ!?」

上条グループらに休む暇を与えず、兵隊達は襲いかかる。
指揮を取るのは端整な顔立ちの女性ではなく、その隣で彼女をサポートし続けた屈強な男であった。

兵2「突っ込め!一班は幻想殺し、二班はその護衛を狙え!」

海原「なっ……」

海原の撃ち出す光線は、出力を抑えていると言ってもかなりの破壊力を持っていて、かつ激痛を伴う。
にも関わらず、敵から恐れが感じられないのだ。
通常、一人でもいい。
誰かが痛みを感じて呻いたなら、それは周囲に伝染し僅かなりにでも士気は下がる。

だと言うのに、下がるどころか激昂し更に攻め手が激しくなるばかり。
今や雨霰と横殴りに襲ってくる弾丸を捌いているのは御坂美琴だけであった。

御坂「このぉっ!」

防戦一方になり、既に電磁盾としての役割しか果たせない少女が吼える。
空中で磁界に囚われた弾丸は、そのまま次に来る弾丸とキスをした。
潰れて爆ぜる。

結標「(急所を外すって難しいのね……っ!)」

拳銃とテレポートを駆使して一人一人確実に仕留めていく結標。
だが、その一撃一撃は『仕留める』と言うには些か死からかけ離れ過ぎていた。
684 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/27(金) 22:29:12.88 ID:wMKGffCAO
土御門「御坂美琴、壁を頼むぞ」

土御門――風水師は折り鶴を持って、唄う。

土御門「黒キ色ハ水ノ象徴。(さぁおきろクソッタレども)其ノ暴力ヲ以テ道ヲ開ケ!(ぜんぶこわしてゲラゲラわらうぞ!)」

世界に響くは型式張った宣誓。
この世に轟くは粗暴な雑言。

それは空中に水を生み出し、兵隊を薙ぎ払った。
ミシリ、と身体が悲鳴をあげる。

上条「土御門!」

土御門「大丈夫だ!行け、カミやん!奴さんよっぽどカミやんを仕留めたいらしい……ここは任せるんだにゃー」

上条「だけど……」

上条当麻の友人はニヒルに笑ってガッツポーズを見せる。

土御門「舐めるんじゃないぜよ。こちとらこれでも天才で通ってるんだにゃー」

上条当麻は僅かな迷いの後、手薄な方向へと走りだした。
それを追おうと兵隊達が動く。
戦意は全く萎えていない。

が、進む先に光の槍が突き刺さる。

海原「まぁそう焦らず」

結標「ゆっくりしてきなさいよ」

土御門「そうだぜい。さ、美琴ちゃんはもう暫く盾になってくれにゃー」

御坂「えっ……」

土御門「大丈夫、すぐ終わるにゃー」
685 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/27(金) 22:30:16.81 ID:wMKGffCAO
もう一羽、折り鶴を翳す。

――場ヲ区切ル事。紙ノ吹雪ヲ用イ現世ノ穢レヲ祓エ清メ禊ヲ通シ場ヲ制定。
(それではみなさん。タネもシカケもあるマジックをごたんのうあれ)

御坂「な、何を?」

少女が困惑しながらも風水師に向かう、傷つける意思を叩き落としていく。

――界ヲ結ブ事。四方ヲ固メ四封ヲ配シ至宝ヲ得ン。
(ほんじつのステージはこちら。まずはメンドクセエしたごしらえから)

結標「早くしなさいよ?」

――折紙ヲ重ネ降リ神トシ式ノ寄ル辺ト為ス。
(それではわがマジックいちざのナカマをごしょうかい)

――四獣ニ命ヲ。北ノ黒式、西ノ白式、南ノ赤式、東ノ青式。
(はたらけバカども。げんぶ、びゃっこ、すざく、せいりゅう)

海原「いやはや、お見事ですねぇ」

――式打ツ場ヲ進呈。凶ツ式ヲ招キ喚ビ場ヲ安置。
(ピストルはかんせいした。つづいてダンガンをそうてんする)

――丑ノ刻ニテ釘打ツ凶巫女、其ニ使役スル類ノ式ヲ。
(ダンガンにはとびっきりきょうぼうな、ふざけたぐらいのものを)

――人形ニ代ワリテ此ノ界ヲ。
(ピストルにはけっかいを)

――釘ニ代ワリテ式神ヲ打チ。
(ダンガンにはシキガミを)

――鎚ニ代ワリテ我ノ拳ヲ打タン!
(トリガーにはテメエのてを!)

土御門「――ほら、ぶっこわせ」
686 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/27(金) 22:31:40.64 ID:wMKGffCAO
業火。

そう形容するにふさわしい、荒々しい破壊の炎がそこに現れた。
それは意思を持っているかの如く、兵隊達を呑み込んでいく。

兵2「くっ……不味いな。下がるぞ!」

幾ばくかの手負いを引き連れて下がる。
ジリジリと前線を押し返していく、世界の化身。

御坂「すっご……」

土御門「さ、美琴ちゃんはカミやんを頼んだぜよ」

御坂「あ、うんっ。任せて」

少女も少年の後を追うため、同じ方向へと走っていった。
後に残されたのは『グループ』のメンバーのみ。

土御門「げふぅ」

血を吐いた。割りと間抜けに。

海原「貴方もそれが無ければ中々お強いんでしょうけどね」

土御門「ヒーローには弱点が付き物なんだにゃー」

結標「はいはい、無駄口叩かない。今度はこっちが――」


土御門「足止めしないとな!」
海原「足止めしなきゃですねぇ」
結標「足止めしないとね」
687 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/27(金) 22:34:03.68 ID:wMKGffCAO
――――とある兵隊

兵2「…………」

兵1『良いか。奴らは決して我々の命を取らない』

兵1『トップがバカだからね。愚君を持った国の末路は諸君も知っているだろ?』

兵1『とにかく臆するな、死にはしない。打ち所が悪くなければね』

兵1『ボクは一部隊連れて下がる。後から合流したいものだね』

兵1『……奴ら人を割って来やがったのさ。10666号は既に中さ』

兵1『ボクはそっちに向かうよ。じゃ――』

兵1『グッドラック』

兵2「全く……仰る通りでございます」

迎撃する部下。
負傷した部下。
それを救助する部下。

しかし死者は出ていない。

良く良く気高い考えで――反吐が出る。

兵2「全隊、撤退。30秒後に、背を向けて走り出せ」

「な、何を仰るのですか!」

兵2「命令だ。我らの役割はこの戦闘ではない」

「っ――了解!」

兵2「……それと、二人程。私の無茶に付き合え。アレを強行突破して幻想殺しに奇襲を掛ける」

「イエス、サー!」

兵2「残りは隊長に合流だ、急げ」

「イエス、サー!」

射撃が止むまで30秒。
男らは突貫を掛けて、駆けた。
688 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/27(金) 22:34:41.17 ID:wMKGffCAO
「副長殿をやらせるな!」

「援護を絶やすなよっ!」

サブマシンガンを掃射しながら三人の子供らに接敵する。
我ながらなんて無様だと思うが、やはり死なない。

甘いのだ。子供の理想と言うのは。

土御門「くっ」

着いてきた二人は倒れてしまったようだが、男はまだ動ける状態を保って向こうの防衛線を突破した。

結標「まちなさ――」

海原「よそ見をするんじゃありませんっ!流れ弾に当たりますよ!」

土御門「……カミやん、無事でいろよ」

男は一人、愛する人の為に少年を殺しに向かった。


その先に、正しい世界はあるのだろうか。
689 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/27(金) 22:35:44.84 ID:wMKGffCAO
――――10666号

10666「――んっ?」

ピクリ、と何かの気配を感じて10666号は足を止める。
未だ13510号の手掛かりは見つかっていなかった。

15555「おい」

10666「あぁ……結構距離はあるが、囲まれてるな」

ジリ、と地を擦る音。

音の先に、中性的な顔つきの男がいた。

10666「お前――ダチ公?何故こんなところに――」

言葉は最後まで出せなかった。
彼はこちらに銃を向けていたからだ。

10666「……へぇ、そうかい」

兵1「えぇ、そうです」

簡素な受け答え。
ただそれだけでお互いを把握し合った。

10666「他に隠し事はあるかい?」

兵1「そうですね……実は私、女なんですよ」

10666「くっくっ、そうかい。そりゃあ済まなかったね」

銃口は余所を向いたりしない。
ずっと彼女の命を握り続けた。

動けば撃たれる。きっと兵も伏せられてる。

15555『どうする?』

10666『割りと詰みだ。一方通行も間に合わないしな』

15555『銃弾なら止めれるだろう』

10666『何処からかの不意打ちが当たらんとも限らない……やってみる価値はあるけどな。ま、ダメになったらそれだ。今はギリギリまで様子を見る』
690 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/27(金) 22:37:13.77 ID:wMKGffCAO
ネットワークでの会話は一瞬。
気取られる事は無い。

10666「お前、知ってたんだよな。私がずっとアイツを探してた事」

兵1「……えぇ」

質問には首肯が返ってきた。

10666「随分と酷いな。どうかな、ちゃんと愉快なピエロを演じてれたかい?」

兵1「…………」

10666「黙りは肯定と見なすぜ……しかし、何でこんな外道な事を?」

兵1「――そんなんじゃないっ!!」

道を外す、その言葉が気に食わなかったのか、女は激しい言葉を放った。

兵1「私は、より良い世界の為になる事を……してるんだ……」

10666「それが誘拐かい?そりゃ素晴らしい世界だな。驚きすぎて呆れすら覚えるね」

兵1「うるさいっ、お前に何が分かる!?」

銃が音を鳴らす。強く握り直したのだろう。
691 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/27(金) 22:38:30.19 ID:wMKGffCAO
10666「分からんね。特に分かろうとも思わない」

兵1「ボクは――」

10666「あぁ待て」

少女は手を振って会話を遮った。
表情は心底面倒くさそうで。

10666「そういうの要らないから。不幸自慢?自己弁護?んなの聞きたくねぇよ。どうせ私とお前の正義は相容れないし、それに私は許容も出来ねぇ」

兵1「――黙れっ!」

15555『おい、挑発してどうする!?』

10666号は更に語気を荒げて話す。
より良い世界が、兵器によって成り立つのか?

成り立つものか。

10666「それでもってんなら、一つ教えてやるよ。私は今からコインを取り出して、弾いて、『超電磁砲』を撃つ」

兵1「……なら、ボクは引金を引くだけだよ」

10666号はクスリと笑った。
当然、とでも言わんばかりに。

10666「そうだな。お前の正義が正しけりゃ、私は死ぬだろう」

10666「――やってみろよ。私は死にはしない、こんな場所ではな」

彼女はポケットからコインを取り出し、指で弾いた。


目を閉じて、開く。
琥珀のような色。


驚くほどゆっくりと落ちてくる、と女は思った。
あれが少女の指に触れたら、終わり。


全て、終わり。









彼女は引金を引き、それは少女の額を貫いた。
692 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/05/27(金) 22:39:08.50 ID:wMKGffCAO
投下終了
693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/28(土) 10:56:26.41 ID:GeyjNr6DO
乙!
土御門△
694 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 17:36:18.88 ID:l2whwgvDO
待ってる
695 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/06/07(火) 01:27:09.47 ID:tMwUTE6AO
ちょいとだけだが行くぜ!
696 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/06/07(火) 01:27:51.95 ID:tMwUTE6AO



15555「10666号っ!!?」

反動で10666号の身体が後ろへ吹き飛ぶ。



目が閉じて、開く。
黒い、誇りの色。

足を踏ん張る。

兵1「――え」

落ちてきたコインに、右手を合わせる。

15555「な――」

ただ、それだけ。

10666「『超電磁砲』!」

彼女の右手から放たれた正義は、女の頬を霞めて、後ろの壁を突き崩した。

暫しの呆然の後に、周囲から聞こえる機械音。
ライフルでも構え直したのだろう。

兵1「あ……あ……?」

10666「――お前の正義ってその程度さ。ヒト一人殺せやしない」

確実に弾丸が貫通した10666号の額は、しかしどうともなっていなかった。
いや、概念的に再生したとでも言うべきなのだろうか。

10666号は踵を返す。

10666「私はこんな所で止まれない。先に行かせてもらう……撃ちたきゃ、後ろからどうぞ」

女は全身から力が抜けて、とても立っていられなかった。

ただ一言、部下に言った。

兵1「……撃たなくて……いい」
697 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/06/07(火) 01:28:53.69 ID:tMwUTE6AO
――――水面と空と姉。

ミコト「いったぁぁぁぁぁ超痛い!!?」

10666「サンキュー、姉さん」

ミコト「いや軽すぎくない!?凄く痛いんだけど!」

10666「痛いで済んでるなら良いよ。ぶっちゃけ死ぬかと思った、私」

ミコト「アイタタ……しかし、大概不思議な身体よね。私たち」

10666「あぁ、あの時銃弾を受けたのは姉さん。超電磁砲を撃ったのは私」

10666「私が受けた訳じゃないから、損傷は修復されたのか?でも何によって?」

ミコト「……さぁね。私にも分からないわ。でも多用は出来ないだろうし、危険よ」

10666「あぁ。しかし姉さんなら何とかしてくれると思ったら……」

ミコト「変わるタイミング悪すぎでしょ……」
698 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/06/07(火) 01:29:29.62 ID:tMwUTE6AO
――――上条当麻

上条「くっ……とりあえず人の気配の無い方へと走ってきたが……」

ふと嫌な予感がして、足を止めない。
その場から飛び退く。

殺意が、鉄のそれが地面を傷付けた。

上条「(銃かよ!?)」

兵2「君を通す訳にはいかないのでね、ここで倒れてくれると有難いのだが」

屈強な男が、真っ直ぐ上条当麻と対峙していた。
一筋縄ではいかない様な、しかし一対一。

時間を稼げ。

上条「……そうまでして、お前らは何をしようってんだよ! 作ってんのは厄介な兵器だろうが!!」

兵2「兵器が生み出す平和もある」

上条「その平和の為に、女の子を泣かせるってのが気に食わねぇ!! 犠牲の上に成り立つ平和なんてもんが正しい訳ねぇだろうが!!」

一言。

兵2「誰がそう決めた?」
699 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/06/07(火) 01:30:23.03 ID:tMwUTE6AO
上条「――何だと?」

兵2「例えば如何なる犠牲かは解らんが、その上での平和な世界があったとしよう」

上条「それがどうしたってんだ! それは平和なんかじゃねぇ!!」

兵2「君が生きている世界の話なのだがね」

上条「――――っ」

兵2「犠牲無しに何かを得ようと言うのは、子供の甘えだ。何かを欲するなら対価を払わねばならん」

上条「――それを、アイツらに払わせといて、良く言うぜバカ野郎が!!」

兵2「我々は対価を払っている」

上条「ふざけんじゃねぇ!!」

兵2「巫山戯てなどいない。現に我々は、命を張っている……それでは足りんのか?」

上条当麻の拳に力が籠る。

上条「あぁ……足りねぇな。アイツらを返しやがれ」

兵2「……若いな。私も君ぐらいの頃があった。自分が間違いだと思った事を認めたがらない、我が侭極まり無い頃がね」

上条「……下らねぇ言い訳は聞き飽きた」

兵2「そのままそっくりその言葉を返そう。とどのつまり、君は――」

「自分の勘に触る者を殴る理由を求めているだけなのだ」

上条当麻が、叫んだ。

上条「御坂ぁぁぁぁぁぁっ!!!」
700 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/06/07(火) 01:31:10.71 ID:tMwUTE6AO
御坂「りょーかいっ!」

男の頭上から飛び込んできた少女が、電撃を命中させる。

手に当たったそれによって、男は拳銃を取り落とした。

兵2「くっ――」

上条当麻は走る。
拳に一撃の魂を込めて。

上条「いいぜ、お前が正義とやらに囚われて――妹達を傷つけるってんなら!!」

「まずは、そのふざけた幻想をぶち殺す!!」

上条当麻の右腕が男の眼前へと迫り――――僅かに、躱される。

上条「なっ」

兵2「大振り、過ぎるな」

当然、上条当麻は隙だらけだった。
腹部など、特に。

兵2「お前が甘えにすがると言うなら、まずは――」

「――その現実を見せてやる」

上条「がっ、は……」

深々と、抉る男の右腕。
上条当麻は崩れ落ちた。
文字通りに、意味通りに。

御坂「あ、アンタぁぁぁぁっ!!」

一瞬の事、余りにあり得ない事を見た御坂美琴は、故に激昂し電流を遠慮なく叩き込んだ。

当然、男は気を失ってしまう。
倒れる直前、彼は苦く笑っていた。

情けない、と言いたそうに。
701 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/06/07(火) 01:33:13.34 ID:tMwUTE6AO
――――土御門

土御門「オロロロロ」

海原「血を嘔吐しないで下さいよ。ほら、簡単にですが治癒しますから……」

風水師は満身創痍だった。
敵の攻撃ではなく自分の魔術によってではあるが。

海原の手が光り、土御門の傷を癒していく。

結標「大分時間を食ってしまったわ。早く行きましょ」

土御門「ちと待ってくれにゃ――」

「あら、お祭りはもっと先かにゃーん?」

土御門の声を遮る様に、女性の透き通った声が前を通った。

土御門「お前らか……」

「お前呼ばわりとは超失礼です!」

「水臭いよ、みんな。私たちだって手伝えるよ」

「結局、私らがいないと攻撃力半減って訳よ」

「ま、知らない奴らじゃねぇしな。借りもある」

その後ろから現れる、四人。一人は男だった。
702 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/06/07(火) 01:33:43.13 ID:tMwUTE6AO
土御門「……助かる。先行して一方通行と妹達が、俺らの少し先に上条当麻と超電磁砲が、それからステイルと神裂、インデックスがいる。援護してやってくれ」

「援護、ねぇ……ね、頼むわよ」

長身の女性はジャージの少女に呼びかける。

「うん。体晶を少しだけ……ん、10666号のAIM拡散力場がコロコロ変わってる……」

「それって超戦闘中って事じゃないですか!」

「結局、ヤバいのはあの子って訳よ!」

「……って訳だ。先に行くぞ?」

土御門「あぁ、頼む。俺たちも体制を整え次第、後を追う」

「じゃ……行くか、にゃー!」

先頭を切って、健脚を披露する女性。それを追って二人の少女、ジャージの子は片方に担がれていた。
最後尾に、金髪の男。

遊撃が、23学区を走っていった。
703 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/06/07(火) 01:34:37.56 ID:tMwUTE6AO
うああ少ねぇ終了
704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/07(火) 01:48:03.04 ID:UNgayGT8o
乙乙

他スレも見てるし頑張ってくれ!!
応援してるぜ!
705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/07(火) 05:38:48.61 ID:t734QhGDO
乙!
上条さんなにやってんすか…
706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/06/07(火) 20:44:06.46 ID:cHE8TtWro
でも実際ある程度心得がある奴と戦えばこうなるよな
707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2011/07/11(月) 11:52:59.60 ID:R6KsD69AO
708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/07/26(火) 23:37:17.85 ID:yhMKwEan0
1ヶ月2ヶ月放置するスレ増えたよね
709 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/07/27(水) 00:14:58.83 ID:7kaxO9uAO
すんまっせん!今手掛けてるやつ終わらせたらターボ駆けますんでどうか一つ!
710 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/27(水) 11:50:36.50 ID:Rj6cXd7wo
アスカ派?
711 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/08/21(日) 00:28:48.12 ID:zRvmGtlAO
アスカどうしよっか……

お待たせ致した。投下開始。
712 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/08/21(日) 00:29:57.12 ID:zRvmGtlAO
――――10666号、23学区の奥深く

10666「……随分静かだな。さっきの奴らで護衛は全員か?」

10666号が辺りを警戒しながら歩を進める。
15555号と合わせて索敵範囲は360度をカバーしていた。

15555「分からない……が、まだ単騎での護衛がいないとも限らないな。気を付けるに越した事はない」

一方通行のグループも大した発見は無いようだ。
ネットワークも酷く静かで、ノイズも聞こえない。
妹達の総意が、ネットワークの様子に現れていた。

ミコト『……近いわ。きっと13510号までもう僅かよ』

10666「そりゃいい。当たりを引けるなんてのは、選ばれた人間だけだからねぇ」

堅い空気に、あえて笑みを落とす10666号。
彼女にも分かっているのだ。
この場の空気が、徐々に雰囲気を変えていっているのに。

10666「魔力……なのかねぇ?」

フォース「正確ナ情報トハ言エマセンガ、AIM力場ノ類イデハナイヨウデス」

右腕の機械がその奇妙な雰囲気を分析しようと試みたようだが、結果は芳しくないようだ。

10666「……ん?通信……って事は、後衛からか?」

不意に震え出した端末を耳に当て、通話ボタンを押す。
端末から聞こえた声は、土御門のものだった。
713 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/08/21(日) 00:31:02.14 ID:zRvmGtlAO
土御門『こちら土御門……10666号だにゃー?』

10666「あぁ。そちらは無事かい?」

土御門『伏兵があったけど、返り討ちにしてやったぜい』

10666「流石土御門さんだ。って事は……合流出来そうかい?」

電話の向こうの声が、申し訳なさそうな色を見せる。

土御門『いや、悪いけど敵さんのおかげでボロボロだにゃー……行けてもかなり遅くなるぜよ』

10666「そうか……」

土御門『悲観する事はないぜよ。カミやんと美琴ちゃん、魔術組はそっちにほぼ無傷で向かってるにゃー』

10666「――そりゃ心強い!こっちの護衛も何とか捌けたから、後は奪還するだけさ。じゃ――」

その時、彼女の背筋をゾクリと悪寒がかけ上がる。

無視してしまえば――死ぬ悪寒だった。

15555「――――っ!?」

10666「――そこぉっ!」

ほぼノーモーションからの『超電磁砲』が虚空を貫く。
威力は通常の物より遥かに劣るが、それでも牽制としては十分だった。

「おぉ、怖い怖い。犬に例えられるだけあるもんだな」

10666「……最悪だな。当たりは当たりでも、くじは貧乏くじってか?」

その『超電磁砲』を容易く止めてしまったのは、学園都市のレベル5――第二位。

垣根「引けるだけ恵まれてると思うぜ?」

垣根帝督が、そこに立っていた。
714 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/08/21(日) 00:31:57.72 ID:zRvmGtlAO
――――臨戦

15555『どうする、一筋縄ではいかないぞ!?』

10666『――策はある。データ確認を頼むぜ』

15555『……分が悪いが』

10666『出会った時点で確定事項だ。仕方ねぇさ』

15555『――番外個体に連絡はした。一方通行が来るまで粘れるか……』

10666『バッカ、倒すんだよ。私の中にはな――』

10666『第三位が居るんだぜ?』

ネットワークでの意思伝達を一瞬で済ませる。

15555号は『雷天大壮』によって限界まで反応速度を上げた肉体を駆使し、少年の立つ場まで一瞬で距離を詰めた。

15555「『雷華――』!」

垣根「お、速いな。ま、だけど――」

いつの間にか生えていた少年の白い翼が、力を発する。

15555「『――崩拳』!」

雷を纏った拳が、他ならぬ『空気』に止められた。
15555号は僅かに、しかし驚きを隠せない。

垣根「俺に、『スピード』なんてちゃちな常識は通用しねぇ。記憶しろよ?」

15555「――がっ」

圧縮された空気の壁が叩きつけられた。
15555号の身体を流れる電気が霧散して弾け、15555号は吹っ飛んで壁に打ち付けられる。

10666号が垣根帝督の懐に飛び込むには、十分過ぎる時間だった。
715 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/08/21(日) 00:33:16.10 ID:zRvmGtlAO
少女の瞳は、深い橙色。

第三位を体内に宿したその身体が、無謀とも呼べる突貫を行なっていた。

例え近接での勝率が薄かろうと行かなければならない。
距離を離せばなぶり殺されてしまうのだから。

10666「なめんじゃないわよ!」

『雷撃の槍』を振りかぶり、投げつける前に――胸を何かが貫く。
それは確実に、致命的なモノ。

10666「あ――かはっ」

垣根「甘いって。分かんねぇかなぁ」

グラリ、と足が身体が世界が揺れる。

10666「――分かってるさ!」

10666号は強く敵を睨み付けた。目に輝くのは、猛る黒。

一度死んで、尚突き進む――それは誇り。

拳が少年の腹にめり込んだ。
手には、コインを握り込んで。

10666「『爪牙超電磁砲』!!」

稲妻の爪が少年の身体を空に浮かせる。
切り裂く筈のそれが、しかし為せていない。

――そんなのは予測の範疇内だった。

フォースの牙が少年に喰らい付く。

10666「もう一発――『炸裂超電磁砲』!!」

フォースから凄まじい電撃が放たれる。
ゼロ距離でそれを受けたなら、例え『未元物質』と言えどただでは済まないだろう。

済まないはずなのだ。
716 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/08/21(日) 00:36:04.29 ID:zRvmGtlAO
垣根「で、次は?」

10666「なに――?」

垣根「無いなら……砕けな」

フォース『――――』

従者の牙がへし折れる。
次いで連鎖した爆発がワイヤーを伝い、ガントレットの肩が弾け飛んだ。

10666「ぐっ――フォース!?」

牙を抜かれた獣は立ち上がれない。
彼はそれを良く知っていた。

垣根「あー、弱い弱い。全くダメだ。そんなんじゃあ、13510号は渡せないぜ」

10666「なん、だと……」

歯ぎしりの音が酷く煩い。

少年は踵を返して言った。

垣根「会いたけりゃ着いてこいよ。そのザマで戦える――生き残るつもりならな」

高笑いと共に、本当に愉快そうに去っていく少年。

15555号が地に伏せながらも声をかけた。

15555「行くなよ……どう、考えても罠だ……」

10666「……一方通行は来てるんだな?」

15555「あぁ。全開でな」

10666「……怪我をまず処置してもらえ。私は――」

10666「――バカだから。これは、譲れないんだ」

10666号は少年を追った。



心内の姉は倒れ、頼もしき相棒は機能停止。

無力な彼女だけの、精一杯の闘いだった。
717 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/08/21(日) 00:36:44.97 ID:zRvmGtlAO
――――垣根帝督

少年は端末を片手に持って、彼の親玉と連絡を取っていた。
表情は芳しくない。

垣根「あぁ?まだ早いって言うのか……分かった、こっちで何とかするさ」

手短に連絡を終える。
一つ、思案した。

垣根「……こういう時の『心理掌握』、かねぇ」

――――兵士

兵2「う……むぅ」

男は自分が気絶していた事に気付く。
周囲の計器を確認し、さほど時間が経っていないのを確かめた。

兵2「まだ動けるな……ふんっ!」

勢いを付けて立ち上がる。
少しばかりフラついてしまったが、彼にとっては許容範囲だった。

兵2「隊長と合流せねば……」

敵も味方も、戦場を駆けている事には変わりが無いのだ。
718 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/08/21(日) 00:37:21.23 ID:zRvmGtlAO
――――10666号

10666「見失った……か?一体何処へ……」

辺りを見回しても足取りは掴めない。
いよいよしまった、と思考した直後に声をかけられた。

「あら、貴女は……10666号、かしら?」

10666「……アンタは?見たところ、私と同じくらいの年頃だが……」

その少女は小さくクスクスと笑うばかりで、少し不気味だった。

10666「……アイツらの仲間だな?」

「自己紹介、ね」

掌握「私はレベル5の第五位――『心理掌握』よ」
719 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/08/21(日) 00:38:17.82 ID:zRvmGtlAO
――――







――――

10666「何だと!?」

掌握「私はAIM力場を通じて心の理を掌で握る事が出来る……貴女を生かすも殺すも私次第……」

女は気味悪く笑った。

私はコインを構えて、射った。

掌握「ぎゃ」

女に『超電磁砲』が直撃して倒れた。

10666「なんだ、打たれ弱いな」

私はソイツを放っておいて走った。

程無くして少年に追い付いた。

垣根「お、来たか」

振り向く前にコインを射った。

垣根「ぎゃ」

不意打ちには弱かったようだ。

10666「よし、これで13510号を助けられる」

少し走ると怪しげな部屋に着いた。

ドアを開けた。

13510ごうがいた。

10666「ここにいたのか。助けに来たぜ」

13510ごうがふりむいた。

なみだをながしてよろこんでいた。

やった!ついにだいじなひとをたすけることができた!

10666「さぁはやくかえろう」

13510「ありがとうございます10666ごう、とミサカはよろこびます」



手を、握ると――視界が暗転し――反転した。
720 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/08/21(日) 00:38:52.12 ID:zRvmGtlAO
?「どうした?せっかく迎えに来たってのに、そんな顔をされては困ってしまうよ」



そう言ったのは、10666号だった。確かにそうなのだ。



でも、変だ。だって、なら、私は――自分を見ている私は誰だ!?

10666「ほら、行こう――」



――13510号。



13510「あ――」

そこでようやく異変に気付く。

自分は、10666号だと思っていた自分は――13510号だったのだと。



目が、覚めた。
721 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/08/21(日) 00:40:17.05 ID:zRvmGtlAO
――――真っ暗な空間。

「ここ、は――」

彼女は光の差さない暗闇の空間に一人だった。

身体は何か柱の様なモノに縛り付けられていて、不自由が与えられている。



そうだった。私は、触媒だ。

魔術増幅回路の一部として、ミサカシリーズから切り離された個体。

彼女らはそれを知らず、私のダミーデータとネットワークで繋がっている。



故に私に自由は無く。

故に私は救われない。



それでも心が壊れてしまわないように。

私は幸せな夢を見ていたんだ。

そうだ。この夢は二回目。
最初の時も、垣根帝督に勝てなくって、あやふやになりながら話を進めたんだった。

「ふふっ」

私は笑った。
声が遠くまで響く。

今度は誰が私を助けに来るんだろう。
誰にしようか?

10666号は、ホントにいるけど、ホントはどんなミサカなのかな?



暗闇が、怖い。

また眠ろう。
今度も、私が助かる幸せな夢を願って――――
722 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/08/21(日) 00:41:28.00 ID:zRvmGtlAO
今日の投下終わり。プロットは組んでたから書きやすいね。
723 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/08/25(木) 00:49:57.65 ID:CdHhhqcAO
初心に帰れるスレは素晴らしいと思った。

投下開始
724 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/08/25(木) 00:51:37.57 ID:CdHhhqcAO
――――一人、夢の中

10666「――なんつー夢だ畜生、とミサカは一人呟きます。痛ぇ肩打った……」

穏和な夢を見て、


13510「おはよう、とミサカは朝の挨拶を欠かさないレディーである事をアピールします」

家族が居て、


10666「じゃあ放課後。コンビニでも行きませんか?」

連れ合える仲で、


10666「……『自分だけの現実』、か」

悩んで、


10666「あぁ……お早う、姫さん。気持ち良さそうに寝てたから、ね」

いとおしくて、


10666「離れろ」

10666「離れろっつってんだろうが耳着いてねぇのかコラァァァァァァァァ!!!」

無力で、


10032「そこまでです、とミサカは颯爽と登場します」

15555「なんだ、肉体強化って聞いてたんだけど、案外トロいんだな」

20000「ネットワークでセロリたんのあられもない画像探してたら『誰か助けて』ってスレがあってさー、仕方ねーから来てやったんだよセロリたんまじセロリ」

仲間が居て、


13510「…………」

10666「……悪ぃ」

後悔して、


10666「……今日は、悪かったな」

13510「いえ、助けに来てくれて嬉しかったです。とミサカは素直な気持ちを伝えます」

10666「結果が全てさ。私だけじゃ危なかった」

13510「…
725 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/08/25(木) 00:53:17.20 ID:CdHhhqcAO
>>724 規制。修正

――――一人、夢の中

10666「――なんつー夢だ畜生、とミサカは一人呟きます。痛ぇ肩打った……」

穏和な夢を見て、

13510「おはよう、とミサカは朝の挨拶を欠かさないレディーである事をアピールします」

家族が居て、

10666「じゃあ放課後。コンビニでも行きませんか?」

連れ合える仲で、

10666「……『自分だけの現実』、か」

悩んで、

10666「あぁ……お早う、姫さん。気持ち良さそうに寝てたから、ね」

いとおしくて、

10666「離れろ」

10666「離れろっつってんだろうが耳着いてねぇのかコラァァァァァァァァ!!!」

無力で、

10032「そこまでです、とミサカは颯爽と登場します」

15555「なんだ、肉体強化って聞いてたんだけど、案外トロいんだな」

20000「ネットワークでセロリたんのあられもない画像探してたら『誰か助けて』ってスレがあってさー、仕方ねーから来てやったんだよセロリたんまじセロリ」

仲間が居て、

13510「…………」

10666「……悪ぃ」

後悔して、

10666「……今日は、悪かったな」

13510「いえ、助けに来てくれて嬉しかったです。とミサカは素直な気持ちを伝えます」

10666「結果が全てさ。私だけじゃ危なかった」

13510「……強いて言えば」

10666「……うん」

13510「少し……いえ、たくさん心配しました」

気を使わせてしまって、
726 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/08/25(木) 00:54:14.28 ID:CdHhhqcAO
10666「なぁ」

13510「何ですか?」

10666「これって変かな?」

13510「……私は特には」

10666「ん、じゃ、帰るか」

13510「?」

10666「手。ちょっと寒い」

13510「――はい」

暖かくて。
727 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/08/25(木) 00:54:55.74 ID:CdHhhqcAO
10666「下がってろ!!」

10666「初春さん! 佐天さん連れて逃げろ!! お姉様に伝えて……」

10666「――ッ、手ぇ出してんじゃねぇ三下ぁ!!感電死させるぞゴラァァァァァッ!!」

勝てなくて、





そしたら、空からコインが振ってきて




私の世界に、一つ




大きな波紋が、大きい大きい、世界を包むような大きな波紋が




生まれたんだ。



10666「これが超電磁砲……」

見つけて、



13510「やった……10666号、大丈夫ですか?」

10666「ぐっ……おいバカ逃げろ!?」

13510「え?」

傷つけられて、



10666「てめえぇェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!」

無意識にポケットに手を突っ込む。


さっきの釣り銭が手に当たった。


そのまま手を相手に向けて――



「しっかり前を見て撃つのよ」
728 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/08/25(木) 00:55:28.64 ID:CdHhhqcAO
手が誰かに握られる。
急に思考が冷えて、異常に冷静になった。

10666「――なるほど、こりゃ酷いや。見たくないもんだよ、過去ってモノは、さ?」

間違える訳がない。
彼女は背後の気配を正確に感じ取っていた。

ミコト「ほら、もうとっくに出来るでしょ?」

10666「あぁ……じゃ、悪いが――」

10666「消えろ、幻想」



――そして、前へと進んだ。
729 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/08/25(木) 00:56:21.78 ID:CdHhhqcAO
――――薄暗い部屋、10666号

10666「ぐぅ――」

10666が目覚める。
まるで悪い白昼夢でも見たような心地で身体はふらつき、事実それは間違いでは無かった。

掌握「――解けた?まさか……眠りなさい」

10666「う、あ……」

視界が融けていくような錯覚に襲われる。
暗転していく視界を――しかしはっきりと確認した。

ミコト『ほら気張って!』

10666「――了解だ!」

足を一歩前に出す。
ただそれだけだと言うのに、女はたじろいだ。

掌握「なに……なんなのよ!止まれ、止まりなさい!言う事を聞いて!」

女の声は脳味噌の至る所に染み渡って響く。
だがそれ以上に、姉の声は大きく頼もしかった。

――そうだ。
私の心は、とっくに折れる訳にはいかない所まで歩いてきているのだから。

10666「――おい」

逃げる女の襟首を引き寄せ、顔を近付けた。
静かな怒りを孕んだ10666号の表情に、女は小さく絶句する。

10666「まずは能力を解け。効かないんだからな」

掌握「な、何であなたの言う事なんか――」

10666「……立場が分かってないようだけどさ、今電撃を流せば――どうなるかな」

掌握「ひっ」
730 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/08/25(木) 00:58:28.74 ID:CdHhhqcAO
女は想像から恐怖を受け取る。
震えが止まらなくなって、地面に座り込んでしまった。

超能力者の彼女、ましてや精神操作系の能力者なのだ。
敵を近付けるどころか、敵を作った事さえないだろう。

故に、能力の効かない者に対して恐怖や混乱を覚える。
事実、あの第一位ですらそうなのだから。

掌握「やめ……やめて、ごめんなさい……」

怯える姿は、うって変わって年相応に見えた。
僅かな戸惑いの後、10666号は僅かな溜め息を吐いた。
襟からはとうに手を離している。

10666「(しかし、これはチャンスかもしれないな。無力化できる相手がいた事に感謝して、有り難く情報を頂戴しよう)」
731 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/08/25(木) 00:59:01.89 ID:CdHhhqcAO
10666「……垣根帝督はいねぇな。何処に行った?」

掌握「む……向こう。奥に、触媒があるって。垣根は、先に向かうから、って」

10666「ビビり過ぎだろ……何も出来ない奴にゃ何もしないって」

女――いや、少女は肩をビクリと震わせた。
何かの琴線に触れたのか、と察した10666号は自分の発言に色を添える。

10666「まぁアンタがついてなかっただけさね。垣根の他に、超能力者は居るのか?」

掌握「…………」

10666「……ハァ」

10666号が軽く静電気を起こすと、少女の身体が小さく跳ねた。

掌握「は、話す、から――」

10666「それでいい。こちとら悪い夢を見せられて、イライラしてるのもあるんだからな……で?」

掌握「超能力者は知らない……けど大能力者は、一人……」

10666「それは誰だ?」

掌握「め、『心理定規』……他人との心の距離を、変えられる能力者で……」

10666「まだ精神系が居るのか……ったく、厄介だな」

軽く頭を掻いた。
が、それでも知らないよりかは遥かに良い。

10666「他には?」

掌握「あ、後は知らない――本当よ」
732 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/08/25(木) 00:59:33.90 ID:CdHhhqcAO
10666「(能力者がそんなに大勢居る訳ではない……のか?いや、もしかしたら)」

10666号がある事に思い当たる。

10666「――なぁ。アンタは奴らの目的を知っているのか?」

掌握「兵器――そう、兵器を作るって……」

10666「なんでアンタは奴らに協力を?アンタにとっては、兵器なんて必要無いだろ?」

少女は目を伏せた。

掌握「……第二位が直々に来て、その第二位には私の能力が効かない」

掌握「……協力するか、死ぬか。その二択だったの」

掌握「……協力すれば、普段の研究費用より二つ程桁が違う奨学金も用意するって。実際あっさり用意してきた」

掌握「……別に私は兵器が作られようがどうしようが関係無いし……なら死なないついでに報酬もらうに決まってるじゃないの――ごめんなさい殺さないで!?」

10666号は極端に怯える少女の様子で、自分が険しい顔をしているのに気付く。
慌てて手を振って否定した。

10666「あぁ、いや、アンタは関係無い。気にするな」

暫し思考する。
733 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/08/25(木) 01:00:55.12 ID:CdHhhqcAO
10666「(やっぱり……この人、末端だ。って事は、真実を全部知っている訳でも無い……)」

10666「(この人の能力ではあり得ないようにも思えるが……垣根帝督が手を回していたのか?)」

10666「……いや待て。末端って事は目的は――」



その時、10666号は確かに聞いた。
訳も無く、背筋に悪寒が走る。



世界の悲鳴が、冷たく響き渡った。
734 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2011/08/25(木) 01:01:22.20 ID:CdHhhqcAO
投下終了。
735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/25(木) 17:14:12.32 ID:H7HAvPaPo

アスカはー?
736 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/08/26(金) 23:25:48.61 ID:q8LVaTyAO
今三スレ書いてるから、どれか一つが完結したら立て直す。
737 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/09/25(日) 15:11:11.76 ID:YZZqAYFAO
ぐわぁぁ書けねぇ生存報告
738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/25(日) 18:15:12.34 ID:oUlFKtaOo
ずっと待ってるよー
739 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/25(日) 22:32:29.27 ID:6nXjqpKPo
舞ってる
740 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/09/25(日) 22:51:09.61 ID:UXMB2Ol1o

生存戦略
741 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/23(日) 13:33:40.93 ID:TZWSrnKIO
そろそろやばいかなー
742 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/10/28(金) 12:18:10.11 ID:lg6M80cAO
向こう終わらんぞおい……
743 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2011/11/16(水) 00:11:33.60 ID:rMfQ8UaAO
生きてる
744 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]:2011/11/23(水) 01:35:46.32 ID:ON0Vca5a0
生存広告乙
まどか以外に何かあったっけ?
745 :以下、あけまして :2012/01/05(木) 01:41:45.87 ID:fKJ/MRO/o
やばいくらい下に下がってるぞ
746 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [sage]:2012/01/08(日) 01:31:42.50 ID:k99QWoGAO
一番下になってしまう……やべぇ。
747 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga]:2012/02/13(月) 23:27:42.35 ID:5Kj/pCpAO
酉変わったけど俺。

リハビリかねて再開。
748 :伊吹 ◆LPFQRD/rxw [saga]:2012/02/13(月) 23:28:58.87 ID:5Kj/pCpAO
――――大魔術、発動開始。

土御門「――奴さん、おっ始めたか」

海原に肩を借りて歩いていた土御門が、膨大な魔力の波に反応した。

海原「急ぎますか?」

結標「大分回復したし、それなりの距離なら転移出来るわよ」

土御門「……いや、正直今の俺が行った所で役には立たない。置いて、お前らだけで行ってくれ」

海原「ふむ、一理ありますが……なら僕も残りましょう。貴方を一人にして、うっかり始末されてしまっては困りますからね」

結標「なら私が残った方が……」

海原「……自分の技術は基本的には殺傷に使う物です」

海原「向こうのメンバーは既に十分過ぎる程の火力を持っていますから、僕より能力の応用が効く結標さんが行くべきです」

土御門「……確かに、転移があれば最悪逃げおおせる事は出来るぜよ。頼めるかにゃー?」

結標「……分かったわ。全く、しんどい役回りね」

結標は言って消えた。
残された男二人が壁に背を預けて座り込む。

海原「失敗したらどうなるんでしょうね」

土御門「アイツらの成功を信じて待つのも、また一興だろう?」

海原「ふふ、全くです……イタタ」

土御門「お前も十分ボロボロだにゃー」

海原「貴方には負けますよ」

天を見上げた。
夕方でもないと言うのに、空が橙色に光っている。

土御門「くくっ」

海原「ははっ」

期待を込めて、二人は笑った。
749 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga]:2012/02/13(月) 23:29:46.93 ID:5Kj/pCpAO
――――中心部、13510号

13510「これは……」

少女は自分の回りを見回して驚いた。
いつか見た、何もない水面の世界が、確かに目の前に広がっていたのだから。

垣根「魔術が発動し始めたみたいだぜ」

13510「――垣根さん?」

少女が声のした方に振り返ると、そこには良く見知った少年と、その連れ合いがいた。

定規「沈まないのね……不思議」

垣根「水の上に立つのは始めてか?」

定規「普通始めてに決まってるでしょ」

垣根「そんな常識に囚われてちゃあダメだぜ?」

二人とも呑気に話しているのを見るに、この現象は予測済みだったのだろう。

きっとまた魔術の幻に違いない。
彼女はそう思った。

水面の世界が徐々に広がっていく。




それは緩やかに世界を侵食していった。
750 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga]:2012/02/13(月) 23:30:38.64 ID:5Kj/pCpAO
――――10666号

10666「な――これは……」

10666号の足元が、無機質な床から静かな水面へと移り変わっていく。
10666号の後ろで、悲鳴が上がった。

掌握「ひっ、何これ、溺れ――」

10666「えっ――おい掴まれ!」

沈みそうになった心理掌握の手を掴む。
彼女は沈みそうになっているというのに、10666号はしっかりと水面に立つ事が出来ていた。

10666「どうなってんだ、一体……」

酷い荒野だった。
いや、荒野と言うには些か潤い過ぎている。
浅い海が、遠く永く続く夕焼けの荒野だった。

――そして、それはいつも酷く身近に感じていた場所。

10666「13510号……? お前なのか?」

掌握「な、何で貴女立てるのよ……」

掴む手が震えていた。
超能力者といっても、年相応の精神のようだ。

10666「気をしっかり持てよ。さっきまで部屋にいたんだから、立てるに決まってる」

そう言って10666号は彼女を引き上げる。
すると不思議だが、心理掌握は水面に立てたのだ。

掌握「あ――本当」

10666「もう良いよな。私は先に行くから――」

歩きだそうとして、しかしそれは出来ない。
裾を掴まれてしまったのだ。

掌握「…………」


10666「……はぁ」

10666号は深い溜め息を一つ吐き、

10666「……着いてくるか?」

とだけ言った。
751 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga]:2012/02/13(月) 23:31:17.35 ID:5Kj/pCpAO
投下終了。
短ぇぇぇ。溜めるわ。
752 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/02/14(火) 00:44:34.81 ID:HQKwteMk0
753 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga sage]:2012/02/15(水) 17:55:16.50 ID:jgXV2o3AO
前スレPCで見れなくなってるな……
やっぱ最初からリペアした方がいいのかもしれんね。
754 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/02/15(水) 18:21:49.31 ID:9lb0rthso
前スレってこちらでよろしい?

10666「これが超電磁砲……」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1294926773/
755 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga sage]:2012/02/15(水) 18:27:09.41 ID:jgXV2o3AO
>>754
うんそれ。今携帯からなんで確認は出来ないけどPCから見れる?
756 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/02/15(水) 19:20:37.87 ID:9lb0rthso
PCは>>754で大丈夫だと思うけど、もしかして大丈夫じゃない人向けにhtml直リン

http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1294/12949/1294926773.html

携帯用も念のため
http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/kako/1294926773/
757 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga sage]:2012/02/15(水) 23:10:28.74 ID:jgXV2o3AO
ありがとう。手を煩わせてゴメン。
758 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/16(木) 05:04:04.64 ID:HsP9sNRv0
>>757
>>755の奴俺は見れたよ〜

楽しみに続き待ってるけど、無理のない程度に頑張ってくれ
759 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga]:2012/02/20(月) 23:23:28.29 ID:STdUbT5AO
投下開始
760 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga]:2012/02/20(月) 23:23:55.92 ID:STdUbT5AO
――――魔術サイド

神裂「――これは」

ステイル「巨人でも召喚するつもりだろうかね。随分と手が込んでいる」

禁書「急ぐんだよ! 私たちにも出来る事はあるはずなんだよ!」

ステイル「もちろんだ」

――――遊撃

「水……?」

「なんですかコレ。超幻想的ですね」

「……結局、なんだか寂しい場所って訳よ」

「反応はまだ奥だよ」

「っしゃ、行くか」
761 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga]:2012/02/20(月) 23:24:30.45 ID:STdUbT5AO
――――怨嗟。

兵1「…………私には止められないのか」

「隊長……追わなくていいんですか?」

空が夕焼けに染まっていく。
触媒は確かに役目を果たしたらしい。

兵1「もう僕たちのやることは無いさ。後は待つばかりだけど――」

「――副長殿!」

兵1「っ!」

彼女が声に振り返ると、自身の右腕たる人物が――負傷しながらも歩いてきていた。
駆け寄り、肩を抱く。

兵1「無事だったか!」

兵2「はい。心配をお掛けしました」

これでいい。
後はゆっくり――

『隊長ォォォォォォッッッ!!!??』

兵1「――!?」

無線から聞こえてきたのは、外部で待機している筈の能力者部隊達の声。

彼らはAIM力場生成の為に等間隔に配備されていた。
触媒が魔術を使い終わったのなら、彼らの負担も無くなる筈だ。

しかし、悲鳴は――生々しい、死を表現していた。

兵1「どうした!? 敵襲か!?」

無線からの音が、彼ら部隊を包んだ。
762 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga]:2012/02/20(月) 23:25:01.75 ID:STdUbT5AO





タスケテタスケテイタイカアサンイヤダシヌタス
イタイタスケテイタイカアサンイヤダシヌタスケ
カアサンタスケテイタイカアサンイヤダシヌタス
イヤダタスケテイタイカアサンイヤダシヌタスケ
シヌタスケテイタイカアサンイヤダシヌタスケテ






763 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga]:2012/02/20(月) 23:26:28.52 ID:STdUbT5AO
「――っ!?」

全員が、例外無く戦慄する。

一体何が起こっている――?

スーツ「やれやれ。君たち、仕事はサボりかね?」

唐突に声を掛けたのは上司だった。

彼らが振り返ると、そこには満足気に微笑するスーツ姿の男がいる。

彼らの足元にも、水面が現れた。
一般兵らは狼狽えるが、その男は動揺しない。

兵1「こ、これはどういう事かご存知ですか?」

スーツ「あぁ、知っているよ」

知っている、と答えた。
――ならこれは、想定内だったというのか。

兵1「能力者部隊は一体――」

スーツ「あぁ、彼らかね。いや、なかなかに良い人柱になってくれた」

ひとばしら?

スーツ「これだけの大魔術だ。犠牲も必要に決まっているだろう」

スーツ「そうだな。彼らは偉業の礎になったのだよ」



スーツ「文字通り、柱となってね」



何を言っているのか分からないが、悪意だけは感じた。

スーツ「魔術をよりスムーズに執り行う為に変貌するのは計算済みだった」

スーツ「アレの本質は醜い肉塊も表現する」




スーツ「彼らはぐちゃぐちゃに混ぜ合わされ、一本の肉の柱になったのだよ」
764 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga]:2012/02/20(月) 23:26:54.65 ID:STdUbT5AO
無線から悲鳴が消えた。
部下が死に絶えたのだろう。

吐き気がした。
何故、そんな事を平然とした顔で宣う?

兵1「――どうして」

スーツ「ぬ?」

兵1「どうしてこんな仕打ちを!? 我々は新たな世界を作る同胞では無かったのですか!?」

拳銃を構えて、彼女は涙した。
部下の無念を思うと、やりきれなくなるのだ。

男は深く溜め息を吐く。
765 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga]:2012/02/20(月) 23:28:56.23 ID:STdUbT5AO
スーツ「これだから女はいかんね。頭がスポンジででも出来ているのか?」

スーツ「私は君に言ったろう。君は甘いと」

スーツ「そもそも君と私たちの目指す道は違うのだよ」

スーツ「どうせ皆、死ぬのだからな」

兵1「――それは、どういう。答えて下さい、答えろ!」

銃のトリガーに力が籠る。
この男はつまり、自分達を騙して――

スーツ「我々の目的は世界全ての浄化」

スーツ「それは全人類の死によって為されるのだよ」

スーツ「この空間を見たまえ」

スーツ「どこまでも続く海。陸地の無い世界。紅い空」

スーツ「まさしく人の黎明、新しい世界だとは思わんかね?」

スーツ「こんな下らない世界は一度消してしまわねばならんのだよ」

スーツ「君だってそうだろう? 生きるのに苦労し、絶望し、今ここにいる」

兵1「っ」

後ずさる彼女を、支えたのは右腕だった。

兵2「……しかし納得がいきません。貴方はそれで死んでも良いと?」

スーツ「あぁ。構わんよ」

兵2「……私は、構います」

スーツ「ほう。何故?」

女性の小さな肩を、強く支える。

兵2「共に歩んで行きたい人がいます。明るい未来へと、支え合って辿り着きたい人が」
766 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga]:2012/02/20(月) 23:29:29.24 ID:STdUbT5AO
兵2「その人が命を落とすのなら、それはあってはならないのですよ」

兵1「おまえ……」

スーツ「は、はははっ!」

真剣な目付きの男性兵士とは裏腹に、スーツ姿の男は嘲笑した。

スーツ「ははは……いや、済まない。余りに可笑しくてね」

スーツ「それは即ち、愛、かね?」

スーツ「――だとしたら下らない。そんな不確かなモノを、自らの根幹として胸を張っているのか?」

スーツ「なんと蒙昧なことか」

兵2「下らないと決めるのは、貴方では無い」

スーツ「――下らないとも! 女なぞ自らの幸福を貪欲に貪る事しか知らぬのだからな!」

声を荒く、彼は言う。
下らないと決め付けたくて仕方の無いように。



スーツ「……確かに、私にも経験がある。一生を捧げても良いと思った女性がいる」

スーツ「私は働いた。彼女の為にと日々を犠牲にして働いたのだ」

スーツ「地位を獲り、名誉を得て、権力に手を伸ばした――全ては愛する者の為に」

スーツ「――だが彼女は裏切ったのだよ。この献身的な私を!」

スーツ「愛し合った日々に唾を吐き、小物の男の上で淫らに跳ねていたのだ……我ながら情けない」
767 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga]:2012/02/20(月) 23:30:10.08 ID:STdUbT5AO
キヒヒ、と彼は狂気を孕んで笑っていた――狂ってる。

スーツ「情けないというのはね、私が女を見抜けなかった事なのだよ」

スーツ「恋は盲目と言うがね、それはつまり――そうでなければ恋など出来んのだよ」

スーツ「あぁ、クズだクズだクズクズクズ! 私としたことが、人生最大の汚点だよ!」

兵1「……だから死にたいって言うのか?」

スーツ「そうさ。私はこんな完全でない私を見ていられないのだよ」

スーツ「私の人生は一人の女に奪われてしまったのだよ」

スーツ「私は、とうに死んでいる」



兵1「――――わかってるなら!!」



銃の引金が役目を果たし、男性の左腿を銃弾が貫いた。

スーツ「――ははは」

兵1「死ぬなら一人で死ね!! だがな、私の仲間を巻き込んで――楽に死ねると思うなよ!」

スーツ「――君は何も分かっていない」

男は水面に沈んでいく。

スーツ「私たちは、いつか来る滅びを早めたに過ぎないのだよ」

知識を抱えたまま、溺死する。

スーツ「――あぁ、言い得て妙だ。これは――壮大な自殺だったのですね、先生――」

トプン、と。
水に飲み込まれ、男は沈んでいった。
もう、生きてはいない。




兵1「こんな――こんな事の為に私は――っ」

部隊は家族で――彼女は、それを失ってしまった。

幸せを追い求め、彼女は何を手に入れたのだろうか――?
768 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga]:2012/02/20(月) 23:30:38.08 ID:STdUbT5AO
投下終了
769 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/20(月) 23:32:45.30 ID:e17Ibcnoo
>>1
770 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga]:2012/02/26(日) 00:27:08.62 ID:OPnXd5xAO
投下開始
771 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga]:2012/02/26(日) 00:27:56.29 ID:OPnXd5xAO
――――遅れてくる主人公。

上条「――なんだよ、これは」

上条当麻の足元を水面が通りすぎていく。
空は夕焼け、滅びの紅。

御坂「これ――何?」

上条当麻が、ふと、何かを感じ取った。

右手が、空間を削り取っているような感覚と――そう、違和感。

これは、いけない。

ここは、在ってはならない――

上条「急ごう、御坂」

御坂「えぇ、勿論よ」
772 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga]:2012/02/26(日) 00:28:23.68 ID:OPnXd5xAO
――――人の身を超えた行いと、ただの人。

歩く足が重い。
粘りついた泥沼の中をあるいているような、纏わりつく空気。

胃袋の中で溶かされていく、そんな気分を――10666号は抱えていた。

掌握「紅い……」

10666「私もそう思うよ――ん」

ふと、目の前に不思議な老人を見つける。
水面の上で、安楽椅子に座っていた。

誰だ――?

老人「……やぁ、『可能性』。随分と遅かったようだが……なに、君は二番さ」

そのしゃがれた声には聞き覚えがある。
電話で聞いた、あの忌々しいソレだ。

10666「……てめぇ」

老人「どうした? 行きたまえよ。彼女はこの先さ」

10666号は一歩前に出る。それは意思だった。

10666「……聞かせろ。何で13510号を拐った……兵器が欲しければ、他にやりようもあったろう」

老人「……君も勘づいていると思うのだがね」

痛い所を突く。
これだから老人は困るのだ。
口をつぐむ。

老人「私たちの目的は『コレ』だ。この状況全てが、私の望みだよ」

老人「この『滅び』の具現こそが、ね」

――滅び。

この男、言うに事欠いて私たちの心を――そんなモノに例えるというのか。
773 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga]:2012/02/26(日) 00:28:52.75 ID:OPnXd5xAO
10666「違う」

老人「……君も見たのではないのかね? ……いや、『よく見ていた』のかな?」

10666「っ」

確かに、そうだが。

老人「コレは、君たちの心象風景などではない」



老人「――いずれ来るべき、未来の姿だ」

老人「ソレを擬似的に再現しているだけなのだよ」



774 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga]:2012/02/26(日) 00:29:24.44 ID:OPnXd5xAO
10666「……どういう事だ」

老人「我々は魔術を研究していた。科学的な観点から、だがね」

老人「そして研究を進める上で、ある疑問に行き詰まったのだよ」

老人「『何故御坂美琴は第三位なのか』とね」

10666「はぁ?……そりゃ当然だろう。アレだけの電気使い、そうはいないさ」

老人は小さく笑った。
そう自分も思っていたとばかりに。

老人「そう思うだろう。だが、ならばそこの……『心理掌握』が五位なのはどう説明するのかね?」

老人「彼女の能力は人の根幹を揺るがすものだ。今もやろうと思えば私を操れるだろう――対策は取らせてもらっているがね」

掌握「…………」

老人「御坂美琴はね、第三位になるには――余りに、普遍過ぎるのだよ」

老人「唯一の能力でも無く、また下位を引き離すような強度でもない。事実、破壊力は第四位の方が上だ」

10666「――何が言いたいんだ、お前は!」

老人「まだ分からんかね。何故君たちが量産されたかすら、気づかんかね? この景色を見てもまだ――自分達が、魔法的な存在だと」

10666「――っ!?」
775 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga]:2012/02/26(日) 00:30:27.87 ID:OPnXd5xAO
老人「御坂美琴は、超能力者では無い――だからこそ、君たちは生まれ――そして滅びる」

老人の椅子が徐々に水に沈んでいく。
待て。まだ何も分かっていないんだぞ。

老人「――誰も信じない。誰も私を認めない――ならいっそ、この手で幕を引こう」

10666「わ、訳分かんねぇ事を言ってんじゃねぇ、待てよ――!」



老人「御坂美夏君」



10666「っ」

老人は、彼女の目を真っ直ぐ見た。

老人「これから起きるのは、世界の最後の、ほんの一部だ」

老人「もし、もしだ」

老人「君がこの苦難を乗り越えたならば、君は世界を背負わなければならない」

老人「今から滅ぶ世界に対して責任を取らなければならない」

老人「いつか来るその日を、乗り越えなければならない」

老人「君にその――覚悟は――」

老人はそれだけ言って、沈んだ。




10666「――何だよそれ、どういう事だよ……っ」

疑念を置いていきながら、紅い世界は今も広がり続ける。
776 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga]:2012/02/26(日) 00:31:07.10 ID:OPnXd5xAO
投下終了
777 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga]:2012/03/07(水) 01:04:34.93 ID:m6tDnTnAO
投下開始
778 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga]:2012/03/07(水) 01:05:09.23 ID:m6tDnTnAO
――――

しばらく歩くと、空気が変わった事に気付く。

――ここが、最後で、一番奥か。

10666「……おい、『心理掌握』。一人で立てるか?」

掌握「え、えぇ……」

手を離し、前を向く。
夕焼けの眩しさの先に、求めた人がいた。

10666「――13510号」

13510「――10666号?」

あぁ、何て懐かしい――響きだ。
たまらない。自然と口角が上がってしまう。

彼女に手を伸ばして――

垣根「よう、遅かったな」

――癪に触る声で制止させられた。

10666「なるほど」

溜め息。

10666「一番ってのはアンタだったか」

垣根「こんな事で一番になってもねぇ」

第二位の後ろにいた女が垣根に絡み付く。
愛おしそうに腕を回して、言った。

定規「貴方は私の中で一番よ、帝督」

それに笑いかける少年と――突然大声を上げる、10666号の後ろにいる少女。

掌握「――垣根、連れてきたわよ!」
779 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga]:2012/03/07(水) 01:05:58.85 ID:m6tDnTnAO
少しの驚きと、追って納得。
彼女は味方ではない。当然の行動だろう。

だが。

垣根「ご苦労、と言ってほしいのか?」

辛辣な言葉に、心理掌握は動揺する。
追い打ちをかけるように、垣根は言葉を続けた。

垣根「足止めも出来ないなら、お前に用事なんてねぇよ。失せな」

掌握「――垣根!」

心理掌握が強く彼を睨み付ける――能力の行使だ――が、それは効果を為さない。

掌握「――何故」

愕然とする少女とは対象に、少年は面白そうに笑っていた。

垣根「怖いなぁ、13510号。この女、俺を殺そうとしたぜ」

13510「――嫌いです。いなくなって下さい、とミサカは願います」

冷たい言葉が、世界に具現して影響する。
心理掌握は水に沈み始めた。

掌握「――いやぁっ!?」

10666「お、おいおいっ!?」

咄嗟にその右手を掴み、ギリギリの所で心理掌握を繋ぎ留める。

彼女と目があった。

掌握「――どうして」

10666「くっ……死にたいのか?」

手が軋む。
『沈んで』いるのではなく、『沈まされて』いるのだろう。

掌握「――死にたく、ない」

10666「なら、しっかり掴まれ――!」
780 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga]:2012/03/07(水) 01:06:45.48 ID:m6tDnTnAO
強く引き上げると、彼女は再び水の上に立てるようになる。
肩で息をして、顔は少しばかり青ざめていた。

10666「……足が地に着かない、ってのは正にこのことだな」

垣根「あぁ、言い得て妙だな」

声の掛け合いが、空気を振動させる。
一言一言、臨戦体制に入っていく。

13510「10666号、今助けてあげますから……垣根さんに全て任せて下さい、とミサカは祈ります」

目を閉じ、手を組む彼女は――例外無く、おかしかった。

心底愉快そうに笑う『心理定規』とやらが、とても憎たらしい。

空っぽのアイツを、滅茶苦茶にしやがって――

10666「――フォース」

フォース「了解だ、マスター。共にあのいけすかないクソッタレに、思い切り喰らいついてやろうじゃないか」

爪が、力が答える。
電撃を行使するラインが形成され、演算がスムーズに行われた。



――行ける。
781 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga]:2012/03/07(水) 01:08:05.66 ID:m6tDnTnAO
垣根「下がってな、心理定規――ようやくだ」

少年は深く息を吐き出して、微笑した。
待ちかねていた、何かを手に入れたような――子供のみたいな顔。

垣根「10666号、お前は本当にやりやすいな。思った通りに動いてくれる」

垣根「まぁ、最後を迎える為に死んでくれ――」

10666「――『超電磁砲』!!」

垣根帝督が力を発現する前に、コインは電撃を纏って少年までの空間を走り抜けた。
ソレは見えない壁に遮られて落ちる。

垣根「ソレの得体の知れなさは分かっている……じっくりやらせてもらうぜ」

10666「あぁ。そりゃ出来ない相談だ」

垣根帝督の横腹を、熱が掠める。
追って、小型爆弾が連鎖的に破裂した。

垣根「なっ――」

10666「何故ならな――」

飛び込んできたのは、遊撃の――アイテムのメンバー。

麦野「――よぉ、垣根ぇぇぇぇぇぇっ!!」

10666「――私は一人じゃないからな」

第四位を含めた、精鋭たちだった。
782 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [saga]:2012/03/07(水) 01:09:44.14 ID:m6tDnTnAO
投下終了
sage進行にした方がいいかも。
783 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/03/07(水) 10:31:19.27 ID:zSiBcDWDO
前スレがどこにも見つからないんですが…
リンクも繋がりませんし…
784 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/03/07(水) 12:05:26.56 ID:5cRuUuFho
こっちの投下タイミングがつかめませんが、とにかく乙です


>>783 前スレは>>754 >>756をどうぞ
785 :伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/ [sage]:2012/05/07(月) 01:18:19.66 ID:G816yugAO
うぐぐ
786 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/06/30(土) 10:17:19.82 ID:B+PZ4Vppo
えーと
あと1ヶ月ちょっとか
1-2ヶ月書き込みなし落ち防ぐために一応レスしとく
787 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2012/08/05(日) 18:55:31.25 ID:frBj/ZyQ0
そんな>>1を応援してる
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