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ハルヒ「なになに、――アクセラレーテッド、ワールド?」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/21(木) 23:43:53.79 ID:4M6rSoIo

刻は17時すぎ、場所は北高旧館二階文芸部部室。
そこで俺は、夕日が差し込む窓際から少し離れた、折りたたみ式長机の上の木盤を眺めてる。

――パチンッ

「………」

「………」

――パチッ、パチンッ

「………」

「………」

「………」

「……投了です…」

ふぅ、やっと終わった。『やっと』と言っても、まだ始めてから10分も経っていないが
目の前には明らかに勝敗のついた碁盤がある。
白と黒の石の数こそ差はないが、白の12目半中押し勝ちだ。
これで今日は5戦5勝、勝率100%。いつも通り。
既にお分かりだろう、やっていたのは囲碁で俺が白だ。

「今回は少し長く持ちましたね。どうやら僕の腕も少しずつ上がっているようです」

「6石も置いてるくせに、勝てないどころか7分足らずで負けてる奴のセリフじゃねぇな」

囲碁を知っているなら分かるだろうが、『6石置く』とはかなりのハンデを与えている。
プレイヤーが交互に石を置いていく囲碁で『6石置く』ことは、相手に6ターン先に打たせると言うことだ。
普通これくらいのハンデを与えてやりゃいくら弱くても同程度のレベルで競えるはずなのだが、
こいつとやってると中押し、つまり途中で勝ちが決まってしまう。
こんな事を言うと俺が強く見えるが、俺はPCの囲碁ソフトの強レベルには未だに勝てない初心者であって
はっきり言うと、こいつが弱すぎるだけだ。
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
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渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

2 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/21(木) 23:44:35.24 ID:ejj2qcAO
さあエビスビールの時間だ
3 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/21(木) 23:53:59.42 ID:4M6rSoIo

ところで、再度言うがここは文芸部である。当然ながら文芸部部室にいるのは文芸部員だろう。
だが俺は文芸部員どころか、どの部にも属していない帰宅部である。
それだけではなく、本を読んだり書いたりすることもなく囲碁をしているのだ、当然疑問に思うだろう。
しかし――

「あ、キョンくん、お茶のお替りはいかがですかぁ?」

天使のような笑顔を向けられ、舌足らずなくりくりボイスを聞いてしまったら、そんな疑問は無くなるだろう、
いや、無くならない訳がない!!(反語)
腰まである栗色のふわふわした髪からはうっすらと甘い香りが漂い、見るものすべてを虜にしそうなその顔には
未だ幼さが残っており庇護欲をそそられる。声を紡ぐ麗しき唇はぷりっっとしていて宝石のように輝いてる。
だが、そんな彼女、朝比奈さんは何故かナース服を着ている。

「すいません、ちょうど飲み切ってしまったのでいただけますか」

「はいっ♪」

彼女は決して、看護士ではないし、人前でコスプレをしだすような趣味の持ち主ではない。
むしろそんな事は出来ないピュアな精神の持ち主である。何時ぞやの映画撮影ではコスプレ姿で歩き回って、
電車まで乗っていたが。
4 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/21(木) 23:58:07.83 ID:4M6rSoIo

――なぜ文芸部にナースがいるのだろう?

当然の疑問である。逆に思わない人はいないだろうし、朝比奈さんを見て忘却していた疑問も思い出すだろう。
もちろん、それらには理由があるわけだが……

「どうやら、あなたには囲碁では勝てないようです。次はチェスでもいかがですか?」

「それと似たようなセリフを先週聞いたぜ。確か囲碁とチェスが入れ替わっていたな」

……と、ここで口を挟んできたのが古泉一樹。
俺と机を挟んで座り、俺に相変わらず明朗快活な笑顔を向けている古泉こそ、俺と今まで碁をさしていた奴だ。
こいつについては特に無い。女受けしそうな顔に細く背の高い体、学年トップの頭脳。目障り。
いちいち言動がきざで、いつもニヤケスマイル面をしている。顔が近い。マジどうでもいい奴。終了!

「そうでしたね、ならば五目並べでもしますか?」

「三連○×ゲームでも勝てないくせに五目並べなんてでき無いだろ」

「それもそうですね」

その『ふっ』って感じの微笑がムカつくんだよ! 何スカした仕草してんだよ!
しかもそれが様になってるのを認めざるをえないのもムカつく!!

「どうやら、あなたとは盤ゲームでは勝てないようですね。その内ドリキャ○でも持ってきましょうか」

「ソ○ックとネ○パチなら負けねぇぞ」

そういう俺は結構なセ○ファンである。
5 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/22(金) 00:04:47.16 ID:m1065S2o

古泉を振り返ったついでに目に入ったのがこの部屋の住人、長門有希。

「………」

こいつについても特に言うことは無い。ただ、一つ追記するなら、こいつは正真正銘唯一の文芸部員だ。
いつも窓から1mほど離れた位置にパイプ椅子を置いて、厚いハードカバーを読んでいる。存在感はほぼない。
唯一と言っているということは、朝比奈さんや古泉も文芸部員では無いということだ。

では何故、俺たちは放課後こんな部屋に集まって囲碁を打ったり、ナースになったりしているのだろうか。
その理由を答えよう。

「ねーよ、んなもん」

俺が古泉と盤ゲーをしてるのもただの暇つぶしだし、朝比奈さんがナース服を着せられてるのは一年前ほどに
ハルヒに「この部屋にいるときはこの服(コスプレ服)を着てなさい!」と言われたからだ。
そんな暴言を素直に守っている朝比奈さんはマゾなのではなく、とても真面目なのである。
いやまて、この人はなんでも言われたことをしてしまうほど愚直だし……
あれ、それってマゾってことじゃないか?
……そういや最近は、最初に着ていたメイド服を着てないな。今度頼んでみよう。

貴重な高校生活の放課後を削ってすることはたくさんあるだろう。
勉強とか、部活とか、恋愛とか、etcとか。
そんな時間を、俺たちがこの部室で潰していることには理由がある、らしい。
そして、その元凶こそ――

「うぅ〜ん……。」

カタカタ

「……、……ん〜。」

カタカタッ、タンッ


――SOS団団長、涼宮ハルヒ。こいつである。
6 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/22(金) 00:13:18.98 ID:m1065S2o

SOS団。それはいったい何なのか。知りたいか?

『世界を、大いに盛り上げるための、涼宮ハルヒの団』

……という名称の略だそうだ。
知ってどうなる物でもないし、まず意味がわからないだろう。俺もわからん。
ちなみに、俺と長門と朝比奈さん、古泉はSOS団団員その1.2.3.4だそうだ。
つまり、この部室は文芸部のものでありながら、SOS団に不法占拠されているのだ。
まさか俺がこんな犯罪のようなことをするとは思わなかった。
高校入学時もこんな訳わからん団体に所属させられるとはまったく考えてもいなかった。

さらに話は変わるが、ハルヒについてだ。
今こいつはパソコンでネットサーフィンなんかをしてたりする。
どうせ廃墟や心霊スポットのHPでも漁ってんだろう。

放課後部室に集まって、囲碁をしたり、朝比奈さんのお茶を飲んだり、パソコンいじったり。
こうやって過ごす。この怠惰な時間こそ、普段のSOS団の、表の活動なのだ。
ま、こんなのほほんとした時間は結構重要で、これこそが『日常』だと俺に再確認させてくれる
数少ないうちの時間のひとつだ。


ちなみに、SOS団は生徒会に承認を受けていない非合法部活動である。
当然部室をいきなり乗っ取っておいて「部活にしろ」って言われて、ハイハイとそうする奴は
いないに決まってる。
意外とこの世界はまともに見える。
7 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/22(金) 00:20:31.03 ID:m1065S2o

『普段の』『表の』活動と言うからには、『特別な』『裏の』活動があるということに
気づく人は少なくないだろう。

まず一つ目、『特別な』活動について。
SOS団の活動目的はだらだらする事じゃなく、世界を大いに盛り上げることらしい。
具体的に言うと、宇宙人と未来人と異世界人と超能力者を探し出すこと、だそうだ。

……意味が分からん。まず前者と後者のロジックに太陽系の端から端ぐらいの飛脚があるし
そんな小学生でも祈らないような夢を叶えようとして部活を作ろうとしたこいつの神経は
明らかに欠陥だらけだ。
しかもそれを実行すべく、俺たちは毎週末には市内探索に駆り出される。
迷惑以外の何者でもない。

他にもいろいろ、野球大会に出たり孤島や雪山に行ったり、部誌を作ったり宝探ししたりしたが
それは今ここで思い返すには時間が足りない。
そういうことがあったんだ。

次に二つ目の『裏の』活動についてなのだが、これはハルヒも知らない、秘密の活動である。
というより、ハルヒに知られないようにすることが活動目的だ。
何を? 宇宙人や未来人、超能力者の存在を、だ。
8 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/22(金) 00:25:56.90 ID:WCe6fcIo
プッチ神父だな!?そうなんだな!?
9 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/22(金) 00:34:39.57 ID:m1065S2o

そんなものいる訳がない。頭狂ってんの?
そう言われてもおかしくないことを俺はこれから言うが、これは決して俺が狂ってんじゃない
世界の方がぶっ壊れてるんだ。

何と、長門が宇宙人で朝比奈さんが未来人、古泉は超能力者なのだ。

………

それだけではなく、何とハルヒに至っては神らしいぜ?

………

はは、笑えないぜ。
もう一度言うが、おかしいのは俺じゃない、こんな現実の方だ。
10 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/22(金) 00:37:36.49 ID:m1065S2o

詳しいことは分からんし、何か説明された気もするが俺は覚えてないし、覚えたくないし。
そんなこと知るよりは赤点を何とかするために数式の一つでも覚えるさ。
ま、どっちもしないんだけどな。
よって、詳細を知りたかったらウィキペディアにでも聞け。
メタるなとか言うな、これが作者の限界なんだ。許してやってくれ。



という訳で、これがSOS団である。以上、説明終了。

俺もずいぶんけったいなことに巻き込まれたもんだ。
だが、これが俺の今の日常には違いない。
日常って言葉を使っていいのかどうかわからないが、そうなっちまったんなら仕方がない。
晴れ時々超常現象って感じの生活にも慣れてきたところだ。
もう大概の事はやり尽くしただろうし、これまでみたいにアタフタすることはないだろう。
まぁ、何が起きようと何とかなるさ、今まで通りに。
11 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/22(金) 00:46:10.25 ID:m1065S2o

「今日はちょっと早いけど、解散!」

えらく上機嫌なハルヒの声が聞こえてきたのは、普段帰る時間の1時間も前だった。
ん、と呟き、長門から借りて読んでいた本からあげた顔の前にはハルヒの顔が。近い近い!

「んじゃキョン、鍵よろしくっ!」

やけにウキウキした様子だ、こういう時には何かある。無いはずがなかった。
そういう疑りもあったが、それ以外に、なんとなく聞いておいたほうがいい気がした。

「ちょっとまて、さすがに早過ぎないか。なんか用でもあんのか?」

「別に……あんたには関係ないわよ」

口調は不機嫌だったが、別に怒っている様子はない。かなり機嫌がいいらしい。
その用とやらがよほど面白い何かなのだろうか? 早退してまで?
またなんとなく、何故かムッと来るものがあった。

「そりゃねえだろ。団長が途中退場するからには重要な事柄なんだよな」

「なによ。ただ本買いに行くのにあんたの許可が必要なの?」

「いや、そんな訳じゃないけど……」

「ならいいじゃない! あたしは団員のプライベートまでは縛ってないつもりだったけど」
12 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/22(金) 00:51:53.66 ID:m1065S2o

十分縛ってるよ。 朝比奈さんとのデート(偽)の後、尋問して何処に行ったか何をしたか
逐一聞きだした癖に。それにそんな意味じゃねぇ。

「近くに大きな本屋がないから早めに行かないと店が閉まっちゃうの、これで良いの!?」

ふんっ、と鼻を鳴らしてハルヒは出て行った。最後のほうは確実に怒ってたな。
古泉はまたバイトなのだろうか、そう思って古泉に視線を向けてみると、

「ふふ、どうやらバイトのほうは大丈夫なようですよ」

視線を読むな、変な笑い声するな、ニヨニヨしてんな、気持ち悪い。
苦笑するような表情をした古泉は、肩をすくめながら、

「最近はこれぐらいの事では閉鎖空間は発生しないようです」

勝手に語りだした。

「涼宮さんの精神状態も安定してますし、以前のように感情を制御しきれない、
 ということはないようです。涼宮さんも成長しているという事です。
 それに、今回涼宮さんが何をしようとしているのか、大体わかりますよ」

そう言って古泉は、ハルヒが使っていたデスクトップ型パソコンに近づいてカタカタしだした
数分後、再起動したらしいパソコンは部室に駆動音を響かせた。

「どうやら、今回はこの本のようですね」

などと言いながら古泉は俺にデスクトップを向けた。
その画面に表示されていたのは、ハルヒの見たサイトの履歴のようだ。
13 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/22(金) 01:01:05.25 ID:m1065S2o

お前らもハルヒじゃねぇんだから、人のプライベートこと考えろよ。
そういや、昔俺について調べたって言ってたよな。
まさかとは思うが、俺の家のネット履歴も見てんじゃねえだろうな?
場合によっては半殺しじゃすまないぞ。

「大丈夫です、随時監視している訳ではありませんよ」

「てことは時々してるってことか!」

「それよりも、今はこれを見てください」

はぐらかして来たが、絶対後で追求してやる。これは俺の夜の生活の生命線だ。
そんなことを思いながら、古泉が示す部分を見てみる。

「『アクセル・ワールド』……? 聞いたことない本だな」
14 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/22(金) 01:06:18.92 ID:m1065S2o

「あなたの趣向から離れた本ですからね、知らなくて当然かもしれません」

なにやら黒い蝶のようなドレスを着た少女が表紙の本だ。『01』と副題にあるし続編もあるのだろう。
どこかマンガめいた絵だ。普通の文庫本とは趣が違う。
レビュを読んでみると、どうやらライトノベルという種類らしい。電撃文庫という出版社も知らないな。

「ライトノベルというのは、文章のほかに挿絵や表紙などを商品価値として売り出している小説のことです。
 電撃文庫はライトノベルの大手の出版社ですよ」
 
こういう時にこいつがいると調べないで済むから便利だな。

「内容はほとんどがフィクションです。ジャンルも学園系、SF系、ミステリー系と多岐に渡ります」

ふ〜ん……って!!

「おい! ハルヒにこういうの読ませたら不味いんじゃないか?
 『この話が現実にならないかな』なんて思わせたら現実になりかねないだろ!」

「それも大丈夫です。前にも言いましたが、涼宮さんはまともな精神の持ち主です。
 現実とフィクションの区別くらい付いていますよ。
 それに、こういった本は以前から読まれていたようです」

「そうか、そこまでハルヒも狂ってはないか。
 だが、何か影響はあったんじゃないか? 文化祭のときみたいに獣人が這い回るとか」

「僕たちが知覚する範囲内で、現実世界にはそういったことは一切起こってはいません。
 しかし、彼女は現実を変えるのではなく、夢においてその世界を具現化しているようです」

夢ね。つまりハルヒは夢の中でその本の世界を楽しんでいるということか。
なるほど合理的だ、俺もハルヒみたいな力はいらないが、好きな夢くらいは見たいな。
15 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/22(金) 01:08:35.60 ID:m1065S2o

「だがどうしてそう思うんだ? お前たちの知らないところで変わっているだけかもしれない」

「もちろんその可能性もありますが、そう判断するいくつかの理由があります。

 第一に、涼宮さんが能力を行使した様子が見られないこと。
 涼宮さんが能力を使ったならば、僕らは知覚できると依然言いましたね。
 僕らは誰一人それを察知していません。

 第二に、彼女の寝言が、その日に読んだ本の内容と一致していることです」

ちょっと待て、なぜお前がハルヒの寝言を知っている。
やはりこいつら、うちにも盗聴器とか仕掛けてんじゃないか?
後で盗聴器発見器でも買って試してみるか。

「彼女は大抵、就寝前に読書をしています。おそらく寝る前に読んだ本の内容を強く意識している
 ために、彼女は本の中の世界の夢を体感しているのではないかと考えられています。
 例えば涼宮さんが『ゼロの使い魔』という本を読んだときは凄かったですよ。
 ひどくうなされた様子で、起きる時には、
 『うっさいわよ!このスカスカちびガキ!!そんなんだからいつまでたってもゼロなのよ!!』
 などと寝言で罵倒していました。もちろん特大の閉鎖空間つきで」

古泉はいつもの得意な薄笑いを浮かべてやがる。
こいつ等の境遇には同情するところがないわけではないが、盗撮や盗聴するような
犯罪者どもに感情移入はできない。
16 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/22(金) 01:11:31.70 ID:m1065S2o

「しかしそれもだいぶ前の話です、多分今は落ちつついているので大丈夫でしょう」

ま、こいつが言うなら大丈夫なんだろ。とりあえずそう信じておこう。
それでも、嫌な予感はしていた。12月19日や、雪山で感じたような、ゾクッとする感じ――

パタン

いつもの部活終了の合図、長門の本を閉じる乾いた音がやけに、静かな部屋に響いた。

「それでは、僕も念のため報告をしなくてはいけないので」

と言い残しさっさと帰った古泉。
俺も鍵に返しに行かなくてはいけないので朝比奈さんと長門には先に帰ってもらった。
普段なら2人を心配して一緒に帰ったのだろうが、その日はなぜかそうしなかった。

何事もなく家に着き、夕食を食べ、風呂に入り、寝た。
いつもと変わらない様子はとても普遍的に、不変的に思えた。
嫌な予感は、もうしなかった。

17 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/22(金) 01:17:37.30 ID:m1065S2o
という訳で、投下してしまった……orz
棲息が復活した喜びのあまりに書きだめ途中でスレ立てしまったよ
そして書き溜めも尽きたという

元ネタ分かる人いるかな?
需要はなさそうなので、基本下げ・かなりマタリマターリな進行で行きます
進度が遅いのは原作が出るのを待つためという事で……
18 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/22(金) 02:04:59.55 ID:oAF2ONQ0
元ネタのタイトルが「アクセル・ワールド」なのにスレタイが「アクセラレーテッド・ワールド」なのはどうなんだろう?
ハルヒファンはともかく、「アクセル・ワールド」のファンには少々不案内なのではと思うのですが。

ちなみに私はアクセラレータの世界なのかと思って「また禁書か」と思った。
19 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/22(金) 03:00:21.07 ID:fP5U3vQo
アクセル・ワールドのファンならわかるんじゃね?
少なくとも読んだことがある俺はスレタイですぐにわかった
一巻の始めのほうに出てくるんだよ

もしかするとファンだけにわかって、却っていいということもあるかもしれん
……いや、ないか
20 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/22(金) 11:20:46.70 ID:qH9nYEAO
アクセル某は知らないけど面白そうだから支援
コレって原作知らなくても読める?
21 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/22(金) 18:45:16.03 ID:1/IGHAI0
>>18
>>19にある通りアクセルの本文の一部です
○○「学園都市?」と同じようなものと思ってください
実は原作の中には『アクセルワールド』って言葉が出てこないので、
それに代わってわかりやすい名前にしたつもりでした
わからなかった方すいません

>>20
一応、出来るだけ本編とは外した形にする予定なので、わかりやすく
解説を入れていくつもりです
それでも分からないところはあると思うので、そういったところは
wikiさんをご利用お願いします
22 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/26(火) 00:08:35.75 ID:sESiQ.AO
期待&催促上げ
23 :少し再開します [sage]:2010/10/26(火) 18:41:39.61 ID:xFy2aj20

俺はあまり寝起きが得意ではない。目覚ましのアラームで起きる時もあるが、大抵の場合は母親に
声を掛けられるか、妹のダイビングセントーンによって起こされる。
本日の場合はいつも通りの後者のパターンだった。

「キョンく〜ん、お〜〜きぃてっ!」ガスッ

「――――!!!?」

ムゴムゴと雲がかったと声にもならないのが、この日の最初の一声。
妹のセントーンは精度が低いためどこに当たるかわからない。よってガードもできない。
今朝はよりにもよって顔に当ててきやがった。

「わぁい! 当たった当たった!」

妹は尻を早々にどかすと俺が叱る前に、「もうご飯出来てるよ〜! にゃはは〜」と言い残して
すたこらと逃げやがった。
百人一首もろくに覚えられないくせに、俺から逃げたりすることとかだけは何故か習得が早い。
ある人が言っていたが、人間の才能というものは伸ばそうとする意志より、その才能の必然性に迫る
シチュエーションにおいて開花するらしい。
そのせいだろうか、妹がいなくなって部屋の中を見渡したとき、俺は意外と冷静だった。


知らない天井が、そこにあった。
24 :少し再開します [sage saga]:2010/10/26(火) 18:46:25.54 ID:xFy2aj20

「……あぁ?」

こういう事だったら前にもあった。
七夕の時や12月のあの日、急に入院していた時や、そして――深夜の学校。
動揺はしていない、むしろ気が落ち着いている。

さて、考えよう。

『この部屋』は俺の部屋とよく似ているレイアウトだ。
だが、異なっている部分が多い。
まず、愛用のコンポがなくなっていた。
カーテンとクローゼットの色が変わっていた。
ベッドが窓際に移動されていた。
そして、枕元に馬のひずめのような、『U』の形の機械がおいてあった。

………

俺はこの部屋で寝ていた。
それを妹がいつものように起こしに来た。
間違いなく、日常の光景だ。
しかし、俺にとっては異常に見える。

「なるほど」

この程度のことなら考えなくてもわかる。ハルヒの仕業だ。
25 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/26(火) 18:56:01.10 ID:xFy2aj20

バシャバシャバシャッ……

洗面所に行き顔を洗ってみたが、目の前の光景が変わる様子は1ビットほどもなかった。
ざっと見た感じだが、家の中は特に変わった様子はない。
俺はそのままいつも食事をするリビングに行き、妹といつも通りな朝食をとった。
玉子焼きと味噌汁とベーコンとご飯と漬物。いたって普通だった。
妹もやはりいつも通り。

食事を済ませ、俺は部屋に戻った。もしかしたらさっきのは俺の見間違いで、実は部屋の
様子なんてぜんぜん変わってなかったりして……なんて思っていたが、やはり俺の部屋だけ
模様替えをしてある。
う〜ん、中間試験も近かったしな、もしかしたら寝ながら模様替えをしてたのかも?
ってそんなことあるか!!

……着替えよう。

何度となく超常現象に巻き込まれてきたという自負が俺にはあった。
「いつも通り何とかなる」という気持ちがこの時、俺を平常心に保たせたが、
だが、俺はそれが驕りであったことに気付かさせられるは、まだ先のことだった。

制服に着替えた俺は玄関に向かった。

「キョンくん!わすれもの〜」

ん? ノートも体操服も持ったし、弁当も持ったはずだが?
それにこいつこんな気が利くやつだったか?

「はいコレ、もう忘れちゃだめだよ?」

なんだコレ?
俺の開いた手のひらの上に、枕元にあったあのU字型の機械をおいていった。
妹は、俺に謎の機械を渡した後すぐにリビングに引っ込んだ。

まあいい、どうせこの機械が何かなんてすぐに分かるんだ。
なぜなら――

「お待ちしておりましたよ、どうぞこちらへ」

――玄関を開け外へ出ると、俺を雲ひとつない青空と冷たい春特有の風と、
年中にこやかスマイル野郎が何時ぞやのように黒いタクシーの扉を開け、
手のひらをタクシー内に向けるジェスチャーをしながら出迎えた。
26 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/26(火) 19:01:52.26 ID:xFy2aj20

「それじゃあ、何が起こっているのか説明してもらおうか?」

それにしてもこの車、走り出したことに気づかないくらい静かだ。どこの車種だろうか。
古泉も左隣で以前のように得意の薄笑いを浮かべていたが、俺に何かを差し出してきた。新聞?

「そうです、今日の朝刊です。とりあえず読んでみてください」

なになに? ソーシャル・カメラ技術が低軌道型宇宙エレベーター『ヘルメス・コード』
への適用が正式に内定……?

「そこではありません、日付欄を見てください」

言われるがままにそこに目を走らせてみる。
そこには、次のように書いてあった。
2047年 4月20日 日曜日

「どうやら僕たちは未来に来たようです」

そう言う古泉は嬉々とした表情だった。なんかムカつく。殺したいな。
27 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/26(火) 19:10:45.06 ID:xFy2aj20

「お前、やけに嬉しそうだな」

「うっふ、そうですね。今僕は結構興奮しています。もちろんいい意味で」

ほんと、気持ち悪いなぁ。
他の意味で興奮しているんだったら俺は運転している車からだって飛び降りてやる。
古泉は、しかし、と続ける。

「しかし、残念ながらまだ厳密に未来に来たと確定したわけではありません」

「そうなのか、なぜだ?」

「反応が薄いですね。未来ですよ? 来たくてもこれるような場所ではありませんよ?」

過去には何度も行ってるしなぁ

「いつもあなたばかり時間遡行など面白いことに巻き込まれて、僕は羨ましがっていたんです。
  ついに僕もタイムトラベルができるなんて」

喜ぶ気持ちはわからないでもない。
だが、時間旅行ってそんな良いもんじゃないってことを俺は知っている。
まずあの『ええじゃないか』に乗ったとき並みの酔いを何とかしないと、もう二度と行きたくない
それに、さっきここが未来じゃないかもしれないって言ってなかったか?

「そうでした。今僕たちはこの現象がいったい何かにまず調べなくてはいけません」

現状確認はストーリーを進める上での基本ですからね、と古泉。
で、どこに向かっているんだ?
それにこの車の運転手は誰だ? 1年前の時は荒川さんみたいだなって思ったんだが。
28 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/26(火) 19:18:33.27 ID:xFy2aj20

「そうですね。まず『どこに向かっているか』ですが、あなたのその手に持っている機械を首に
  装着してみてください」

妹が渡した、牛の鼻輪みたいなやつのことか?
多分、この空いた所から首に通すんだろうな。
通してみると、カシャン、というメカニカルな音と共に『U』の両端が内側にスイングした。
まるで首をロックするようだ。
そういえば、古泉の首にも同じような薄透明な橙色の機械がついている。
古泉は首の機械の側面を指差しながら、

「この辺りに付いている起動ボタンの押してみていだだけますか」

電源を入れてみる。すると、

「おわっ」
                      ・・・
ピポッ、というありきたりな起動音と共に、目の前にアルファベットが出現した。
まるで3D映画を見ているような、四角いロゴマークが手を伸ばせる位置にあるように見える。
手を伸ばしてみるとそれには触覚はなく、その文字の向こうにうっすらと手が透けていた。
そんな驚いている俺を見て古泉は笑っていた。

「僕もつけてみてビックリしました。そのまま少し待ってみてください」

呆けている俺を尻目にウインドウは変わっていく。
しかし、20秒ほどして『Cerebrum direct connection――complete』という文字が現れたら
静かになった。『大脳直接接続』……?
29 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/26(火) 19:25:21.26 ID:xFy2aj20
・・・は「目の前」の上につけたつもりだったのに…


「それにしてもあなたはあまり驚かないんですね。少しがっかりしました」

肩をすくめながら古泉はつぶやいた。
俺も十分驚いている。それにさっきの大脳接続って何だ

「これはいったい何の機械なんだ? 変な英字が浮かび上がってきたぞ?」

「これはニューロリンカーと呼ばれる機械です。脳と量子接続をすることによって……」

古泉の説明は長く分かりづらかったが、どうやらまとめてみると、

@この機械、『ニューロリンカー』は携帯型の機器で、この世界の人々のほとんどが着けている」
Aニューロリンカーは脳の中枢神経を『ハッキング』することで、装着者に仮想の五感を感じさせる、
  例えばさっきみたいに文字やウィンドウが視覚情報として目の前に見えるらしい。
Bこの機能を使うことで、世界中を繋ぐ仮想世界『グローバルネット』に『フルダイブ』することが
  出来るようになる、とのこと。
C他にも、カメラ機能や電話、メールに音楽プレイヤーに様々なアプリケーションやゲームを使ったり
  することが出来る。

他にも何か言っていたが、こいつは俺に分かりやすく説明する気はないらしい。
用は、パソコンとケータイを合体させてかなりすごっくしたものということだ。
ふっと思ったんだが、ケータイとパソコンとウォークマンを一緒にしたら企業の収益が減るんじゃないか?

そんなことはどうでもいいし、5分以上の時間を使い、こいつの演説はやっと終わった。
5分って短く思えるけど、専門用語ずらずら並べられた訳分からん話をされていると10分にも1時間にも
感じるから不思議だよな。
つまり全校朝会の校長の話みたいなもんだ 
30 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/26(火) 19:32:06.66 ID:xFy2aj20

「それで、根本的な話は終わってないな。俺たちはどこに向かってるんだ?」

「おっと、忘れてました。」

そう言いながら古泉は左手で空中の一か所を指して、

「あんたの視界の左端に点滅しているアイコンがあるはずです。それを触ってみてもらえますか?」

なるほど、普段使っていたケータイのメールマークのようなものピコピコしている。
ためしに触ってみると(触感は感じなかった)、目の前にテキストメッセージが表示された。
なになに?『今日朝10時に部室へ集合! 遅れたら死刑だから!』

「これって……?」

「ちゃんと表示されたようですね? それは今朝3時ごろ送られてきた涼宮さんからのメールですよ」

「って事は、ハルヒはこの世界に居るのか?」

「その様です。ただ、僕たちの知っている涼宮さんと同一人物かどうかはわかりませんがね」

今まで色んなことに巻き込まれてきたが、ハルヒ本人がその中に入ってきたのは数えるほどしかない。
終わらない夏休みの時、SOS団が無くなった時、雪山の吹雪の時、そして、閉鎖空間に入った時。
その内2回はハルヒの力ではなかった。今回もそうかも知れないが……

俺も馬鹿じゃない、何か起きるときはきっかけって物があることはこの1年で学んだ。
今のこの状況に何かきっかけがあるのなら、それは昨日以前のことだろう。
そして、昨日ハルヒが普段しなかったことをしていた。
31 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/26(火) 19:37:45.52 ID:xFy2aj20

隣で座っている古泉に目を向けてみる。

「古泉」

「何でしょうか?」

「この変化と昨日ハルヒが見ていた本は関係しているのか?」

「多分……、関係していると思われます」

こいつにしては歯切れの悪い回答だった。

「ただ、断言ができないんです。情報が少なすぎるんです」

なので、と古泉が言葉を区切ると車が止まった。
古泉は車から降りて、俺を外へ誘導する。気持ち悪いな手を取るな。

「とりあえず、彼らと話し合いましょう」

車から降りると、そこは知らない建物の前だった。
体育館やグラウンド、校舎らしいものがあることから、どうやら学校らしい。
築30年強といったところだろう、かなり痛んできた外壁が見える。

「ここは一体どこだ?」

「ここが、僕たちの学校です」
32 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/26(火) 19:40:09.36 ID:xFy2aj20

「この学校は、都立北地区総合学科高等学校といいます」

古泉は続けた。
まて、今古泉はなんて言った?都立……?

「都立北地区総合学科高等学校、通称北高と呼ばれる高校ですよ。
  あなたの思ったとおり、東京都の公立高校です」

東京都? 東京ってあの関東のか? 行ったら最後、シャブ中になって帰ってくるって有名な?
ちょっと待て、俺たちは兵庫県にいたはずだ。それに今までこんな遠くに来た事はねーぞ。
それともハルヒは東京に行きたかったのか? 

「それも込みでお話します。とりあえず入りましょう」
33 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/26(火) 19:43:28.29 ID:xFy2aj20

古泉に引かれてその学校に入ってみる。古泉の話によると、35年前できた学校らしく
(俺たちの時代からではなく、今この時点から、つまり2012年完成ってことだ)、
年相応に、ひびが入ってたり落書きがある壁や少し黒くなった床がある汚い高校だった。
当たり前だが初めて入ったのだが、どこか『俺たちの』北高と似ている気がした。

「歩きながら少し話しましょう」

だったら車の中で話せよ。
校内は何故か人っ子一人もいなかった。そういや今日は日曜ってさっきの新聞にあったな。
にしても、部活動くらいあるだろうに。

「今回のこの異変は間違いなくあの本の影響です。あの本の内容は近未来……2046年頃の日本を」
  舞台にした小説でしたので、その影響を受けているとしたらニューロリンカーなどの機器が
  存在するのもうなずけます」
  
さっき『多分……』って口を濁してたじゃないか、あれは何だったんだよ。

「多分、と言ったのはそれなりの事情があります。それを込みで聞いてください」

まず、僕のこの事態についての見解を説明させていただきます、と古泉は話し出した。
34 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/26(火) 19:46:57.66 ID:xFy2aj20

「先ほどの車内で、僕がここが未来かどうか分からないと言った理由を説明します」

「僕たちがこの世界に来たのは間違いなく涼宮さんの力によるものです。そうとしか考えられませんから。
  しかし、この世界は3つの可能性があります。1つ目は正真正銘の未来に来た、と言う可能性です」

「この可能性は、涼宮さんの力が働いた結果このような未来になり、そこへ僕たちが移送された場合と、
  実は未来があの本そっくりでした、という場合がありますが、正直どっちでも同じことです」

「第二の可能性は、涼宮さんの力により僕たちが別世界――本の中の世界か、それとも涼宮さんによって構築
  された新たな平行世界のようなものか――に飛ばされた可能性です」

「第三の可能性は、涼宮さんによって、僕たちの世界が創りかえられた可能性です」

……ん?こいつはなんと言った?
正直その3つの違いがまったく分からない。てか5つあるし。
それに、どの場合だって同じことだろ?
そういってやると、喜んで解説しだした。なんかムカつく。
35 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/26(火) 19:49:14.84 ID:xFy2aj20

「簡単に図を書いて説明しましょう」

図1
       | ̄ ̄ ̄ ̄↓
―――――……∬……―――――→ t1

図2
      
―――――……∬……―――――→ t1
       ↓
……………――――――――――→ t2

図3

―――――→・========= t1
    

可能性1の場合を図1、可能性2を図2、可能性3を図3が表しているそうだ。

「この横に伸びた矢印が時間軸です。順を追って説明します」


「図1は可能性1、つまり未来に行った場合ですが、この場合、僕たちはタイムトラベルをしたことになります。
  どうやってと聞かれても方法はわかりませんが、この場合重要なのは、『今僕たちのいるこの世界』が、
  『僕たちのいた世界』と地続きであるという事実です。僕はこの可能性であってほしいと願っています」

何故だ?と聞く前に古泉は話を進めた。

「図2の場合は、簡単に言うと『異世界』に迷い込んだ場合です。つまり、涼宮さんの望んでいた異世界人とついに
  ご対面ってことです。時間軸t1と言うのが元の世界、t2が今いる異世界です」

「図3は、長門さんが暴走したときを思い出してください。もしくは1年前ですか。あのようにイメージして
  いただけるとよろしいかと。この現状を鑑みるに次の場合の可能性が一番高いです」

なるほど、あぁ分かった。分からないってことが分かった。
後、こいつが説明する気がないってこともな。
36 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/26(火) 19:52:09.45 ID:xFy2aj20

「おい待てよ、正直どの場合だって現状が変わるわけないだろ? 何でそんなこと考えなくちゃいけないんだ?」

「これは重要なことですよ。なぜなら、これによってもとの世界に帰る方法が分かるのですから」

なんですと!?

「僕が第1の可能性の場合が良いと言ったのは、帰る方法の選択肢が増えるためです。
  第2、3の可能性の場合、僕にもあなたにも朝比奈さんにもどうする事は出来ません。せいぜいおろおろしている
  程度しか出来ません。長門さんは、雪山の謎の山荘の時僕たちに脱出手段を残してくださいましたし、何らかの手を
  打つことは可能かもしれませんが」

いったんそこで区切って、足を止めた。

「しかし、第一の可能性の場合、僕たちがいるこの時間は僕たちのいた時間の延長線上ですので、長門さんのほかに
  朝比奈さんの力による帰還が望める可能性があります」

おお、ついに朝比奈さんが活躍するときが来たのか?
だが、朝比奈さんは時間遡行に制限があるみたいだし。あれの使用は許可制だっけか?

「なので、僕たちはまずこの現状がどのパターンに当てはまるのか確認する必要があります」

そう言いながら古泉はすっと指をさす。
その指の先には『文藝部』という看板がかかっていた
37 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/27(水) 00:01:38.61 ID:bkzUXhMo
川原礫は嫌いだが、このスレには期待している
俺、3巻まで読んで投げちゃったから、解説を入れてくれるのはありがたい
でも本編とは違う展開ならそれで充分かな?
38 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/10/28(木) 03:03:44.05 ID:mdPTEq.o
>>37
期待してもらってるなんて、嬉しいです///
それに応えるよう努力します
このスレはアクセルwの4巻直後から始まっていますが、出来るだけ中のネタばれを避けようと思っています
wikiに書いてある程度のネタばれはありますが……
ハルヒの方は驚愕終了後みたいな。朝倉?誰それ?

メモ帳に書いたのをコピペしてるせいか、鍵括弧内の文が二行目からずれてるorz

そんな感じで、早くても来週、遅かったら沙来週あたりに投下します
それにしても、このスレは過疎ってますね、やはり需要がないみたい
39 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/07(日) 13:13:50.23 ID:VBs8IvU0

『文芸部』、SOS団の根城、俺たちのいつもいた場所。
なんだかんだ言っても俺たちが帰っていった部屋。
けれど、そこには俺たちの知っている薄くて熱や音を逃がし安い木のドアや、ましてや
その看板の下にはあの、ハルヒの書きなぐったような字の『SOS団』の文字はなかった。
つまり、俺たちの知っている文芸部ではない。

「問題は、その朝比奈さんと長門さんがいるかどうかなのですが……」

そう言いながらドアに近づく古泉についていくと――

『ウウゥ―――グスッ、ウェ〜ン――ヒックヒク――』

ああ、そういえば前にもこんな声を聞いたな。確か8月の時か。
あん時はヤバかったな、マジで幽霊が電話を掛けてきたのかと思っちまった。
だが今は昼だし、この人の泣いた時の声なら何度も聞いたから間違えるわけがない。
残念だったな古泉、どうやらお前の望んでいた通りにはなりそうないな。

古泉はそのギョッとする様な声に臆することなく、扉を開けると。

「う〜ん……ヒック――ふぇええ〜ん」

案の定、そこにはワンワン泣いている朝比奈さんがいた。

「困ったものです」

言ってやるなよ……
40 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/07(日) 13:15:42.15 ID:VBs8IvU0
間違い訂正、4月20日は土曜日でした


とりあえず俺と古泉が文藝部室に入ると、朝比奈さんも俺たちの存在に気づいたようだ。
床にペタンッとお尻をつけて俯いていた朝比奈さんがお顔を向けると、普段の麗しい
お姿はどこへやら……いや、泣き腫らて赤い目やぐずって鼻水を垂らしてしまっている
様子もなにか心をくすぐるものが在るな。

「キョンくん……、ふぇえぇぇんギョォォング〜〜ン」」

そんな顔の様子を気にすることなく、朝比奈さんは俺に抱きついてきた。
なんていうか、嬉しさ半分戸惑い半分、って所だ。
俺に最初に助けを求めてくれたって所は嬉しいのだが、幾分鼻水がなあ、
いや朝比奈さん、そんなに俺の制服に顔をスリスリしないでくださいっ。

そんなこと言えるわけねぇ
こうしている間にも俺のブレザーにはどんどん染みが増えていく。
そうこうしている内にやっと朝比奈さんの発する言葉が理解できる程度になった。

「グスッ、キョンくん……み、未来に帰られなくなっちゃいましたぁ」

そこまで言い切るとまた俺に顔をうずめてしまった。
これどうすっかなぁ。
そう思いながら古泉を見ると、「今から購買で代わりの服を買ってきます」と言い残して
出て行った。
41 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/07(日) 13:19:19.93 ID:VBs8IvU0

朝比奈さんが落ち着くのにはさらに10分を要した。
どうにか洗面所に行って顔を洗ってくるように促した後、ちょうど古泉が戻ってきた。
古泉の買ってきた制服(何故か知らないが俺にぴったりなサイズだった)に着替えると
朝比奈さんも戻ってきた。
まだ目も赤く涙の後も残っているが、それでも随分とマシになった。
朝比奈さんも落ち着いたことだし、と俺たち4人は輪になって話し合うことにした。

「……それで、朝いつも通りに起きたんですけど、そうしたら『あれ?おかしいな?』って思って
 周りを見てみたらシーツと布団の柄がいつの間にかに変わってて、けど昨日はテスト勉強の合間に
 模様替えしてたから一緒に変えたのかなって思って――」

テスト期間に模様替えしたくなる気持ちはよく分かります。分かりますが……
そこで気づきましょうよ、とこの人に言うのは酷か。

「――それで顔を洗ったりご飯食べたりしたんですけど、そうしたら8時になって、天気予報見よう
 と思ってテレビをつけたら知らない番組がやってて『あれ?おかしいな?』って思ったんですけど、
 普段見ないチャンネルだったのでそのまま見ていたんですけど――」

いやいや、普通未来のテレビなんて見たら気づくでしょ! 日付とか!
42 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/07(日) 13:21:51.34 ID:VBs8IvU0

「――8時過ぎてもいつもはもう来てる[禁則事項です]が来てなくて『あれ?おかしいな?』って思った
 ので、こっちから[禁則事項です]してみたんですけど、[禁則事項です]が[禁則事項です]で[禁則事項です]な
 ままだったので焦って[禁則事項です]と[禁則事項です]して[禁則事項です]をしてみたんですけど繋がらなくて……」

……うん、何言ってるのかわからないや。
早々に理解を諦めたのは俺だけではなかったようだ。古泉も意味深な表情をしている。
そう言い終わると朝比奈さんは、また少しぐずりだした。
折角顔洗ってきたのに浮腫んでしますよ。

朝比奈さんの話からわかったことは2つだけだ。
1つは古泉の第一の可能性はなくなったこと。
2つ目は、今回も朝比奈さんの出番はなさそうだ、ということ。
俺が首をひねって、これから何て朝比奈さんを慰めようか考えていると古泉が声を掛けた

「まぁ、一応わかりました。問題はこれからどうするかですが、今はまだ9時なので涼宮さん
 がここに来るには時間があります。その間にこの世界についての情報を集めましょう」

朝比奈さんが離れてくれたこともあり、ようやく俺もこの部屋を見回すゆとりができた。
部室の様子は大きく変わっていた。特に目を引くのはハンガーラックが無くなっていた事だ。
朝比奈さんのコスプレコレクションは跡形もなく消え去っていた。
多分部屋の間取りに大差はないのだろうが、普段より大きく感じられる。
こうなってみると、あれがどれだけのスペースを取っていたのかがわかった。
俺の心にもポッカリと穴が開いたような感じだ。
43 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/07(日) 13:24:22.74 ID:VBs8IvU0

意外なことに、型は違うがパソコンだけは残っていた。OSはどうなっているのだろうか?
ニューロ何とかが出回っているのならてっきり無くなっていると思ったのだが。

その他ハルヒが持ち込んだコンロや冷蔵庫は残っていた。
ただし、コンロはIHになっていて、冷蔵庫もワンドアからスリードアにランクアップ
しているようだった。誰がこんなもの持ち込んだんだ?

そして、最も変わっていたのは本棚だ。本棚ごと無くなっていた。
……あれ? ここは文藝部じゃなかったけか。
本がなくちゃ文藝部じゃないだろ。
後から聞いた話だが、電子書籍とニューロリンカーの普及により紙の書籍は発行部数を落とし
価格が高騰、必然的に需要も減少し特定の分野を除きほとんど売られていないそうだ。
木を切って作り劣化しやすい紙よりも、環境にやさしくて半永久的に保存ができる電子書籍
のほうが合理的で、それに電子書籍なら、資料館の奥にある絶版の本や歴史資料も読める。
紙触媒も無くなった訳ではないが、ほとんどが図書館や資料館で保存されているらしい。

何と無く分かっていたことだが、いつも手に取っていた物が無くなるのはこうやって目の前で
見てみるとなんとも遣り切れない思いだ。もう週刊誌の立ち読みもできないのか。

俺がきょろきょろしていると古泉がいきなり喋りだした。

「それでは人も揃いましたし。長門さん、現状について教えてくれませんか?」

へ? 長門?
44 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/07(日) 13:32:41.79 ID:VBs8IvU0
飯食ってきます
45 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/07(日) 13:54:28.31 ID:uciOiWwo
アクセルワールド知らないけど期待
46 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/07(日) 16:59:55.01 ID:VBs8IvU0
すいません問題が発生したので水曜日投下します
47 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/08(月) 01:34:59.20 ID:3.lRZgAO
どうした?
48 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/11/08(月) 01:38:07.64 ID:CxncLaw0
何があった?
49 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/08(月) 18:44:18.21 ID:O46fezM0
>>47-48
すいません。先週の水曜日に自宅のパソコンを壊してしまい、仕方なく図書館のパソコンを
使って書き溜めや投下をしていたのですが、昨日昼食を食べに一旦家に帰ったときにデータ
を保存していたUSBを忘れてしまい、急いで取りに帰ったら誰かに持ってかれていました

何が辛いって、せっかく作った書き溜めをなくしたのも辛いですが、赤の他人に中身を見られて
 「うわwww何こいつwwwww気持ち悪いのかいてやがるwwwwwww」
って思われてると考えると軽く死にたくなる
あと、亡くしたUSBが持っている奴で唯一の最大容量だったのも堪えた

中途半端に終わってしまったので、出来るだけ早く書き溜めを作ってきます
50 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/09(火) 01:14:11.83 ID:JM1hnUAO
あわあわ、それは大変だな
まあ、俺もサイフ取られた(ただの不注意だが)中身以外は帰ってきたから案外 帰ってくるかも…

気長に待ってるんでゆっくりでもいいので完成させて下さい
51 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/11/14(日) 09:39:02.45 ID:bUNqBcY0

「………」

「おわっ! い、いつからいたんだ!」

いつの間にかに長門が俺の隣に座っていた。い、いや気づいていたぞ! ほんとだぞ!

「朝比奈みくるが来る前から」

それって最初からじゃないか。俺は10分近く気が付かなかったのか?
てか古泉!お前いつから知ってたんだよ。
長門もアクション取れよ。そうしないと>>1-17みたいにほとんど台詞無しになるぞ?

「……善処する」

うん? そういえばどうやって長門も朝比奈さんも文藝部にいるのだろうか。
長門はともかく、朝比奈さんがここ(北高)に来ていたのには正直驚いた。
そうしたら古泉もどうやってその情報を知ったのか、疑問だ。

「――それでは話を戻しましょう」

古泉は真顔でそう言った。
52 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/11/14(日) 09:42:43.84 ID:bUNqBcY0
名前欄なんぞwwwwwwwwww
53 :a [sage saga]:2010/11/14(日) 09:43:59.38 ID:bUNqBcY0

こういう状況には慣れたつもりだが、いつになく背筋が伸びる。
朝比奈さんもクラス委員を決めるじゃんけん大会の最終ラウンドにまで残ったような
真剣な表情をしていた。

「長門さん、この世界は一体なんなのですか?」

ハードカバーをめくる様な速度でゆっくりと顔を古泉に向ける長門。

「昨夜、涼宮ハルヒには『アクセル・ワールド』一式を読み終えた直後から新たな情報
 噴出が観測された。それらは今までに観測された情報フレアとは異なり、涼宮ハルヒの
 脳内においてのみ起こった。近似する事例は今までに観測されたが、それらはノイズ
 のような情報が間歇的に噴出し、数時間後にはその現象は終息を迎えていた」

はぁ……?

「しかし、今回の事象は脳内においてのみ情報創造と構築が、以前のような情報の流出を
 伴わずに行われた。情報の噴出そのものはその後すぐに収束したが、情報編成の作業は
 絶え間なく行われた。〜〜〜〜。」

いや、そんな怪電波を受信してヘブライ語にしたのを直訳してみました、的なのを言われても。
朝比奈さんもほら、長門の話の途中で立ち上がってお茶を入れだしたよ。
そして、俺は朝比奈さんが差し出してくれたあったかいお茶を飲む。う〜〜ん、うまい!
相変わらず長門は未だなんか呟いている。
だが、古泉は長門の呪文が理解できるようだ。こういう時こそ解説役・古泉の登場を願おう。
54 :あ、冬コミか [sage saga]:2010/11/14(日) 09:50:39.50 ID:bUNqBcY0

「なるほど、つまり涼宮さんはあの作品を読み、その世界が現実であればいいと願ったが
 ために、この世界が創られたのですね?」

「違う。この世界は《世界》と呼ぶにはとても不安定。構成する情報因子がとても足りていない。
 これは涼宮ハルヒの願望実現能力が彼女の現実認識により阻害されたため。そして世界を構成する
 には圧倒的に情報量が少なかったため。
 しかし、今回は創造が比較的に正確に行われ、このような結果にいたった。」

「つまり彼女の理性が、僕らの世界を改変するのではなく新たに異世界を創り出すことで妥協した
 ということでしょうか。『今回』ということは、以前にも見られていましたか?」

「見られた」

「ふむ、では今までも僕たちはこのような彼女の世界に連れ込まれたことはありましたか?」

「ない。今回が初めて」

「わかりました、御協力感謝します」

「………」

朝比奈さん、話は終わったみたいですよ。
どうやら長門は今日分の会話量を使い切った様に、無表情のままボーとしている。
……で古泉、どういうことだったんだ?

「今長門さんが言われたとおりですよ。まとめると、涼宮さんは願望実現能力により僕たちの世界
 を創り代えようとしたものの、前情報が少なすぎてそれができず、涼宮さんの脳内に存在する
 仮想世界の一つということに落ち着いて、僕たちがそれに招待されたということです」

――ぐはぁ!! そう来たか!
せめて平行世界とか異世界かと思ってたのに、よりにもよってハルヒの頭の中かよ!
……こんなリアクションしか取れない自分が情けない。
朝比奈さんは分かったのか分かっていないのか分からないが、俺の横でうんうんと頷いている。
古泉は未だ疑問があるらしく、しつこく長門に質問している。

「何故僕たちはこの世界に呼ばれたのでしょう?」

「……分からない」

「これは僕たちの知る閉鎖空間とはまた異なるものですか?」

「……異なる」

あまり答える気はないようだ。
55 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/11/14(日) 09:58:42.68 ID:bUNqBcY0

まぁ大体現状は分かった。問題は戻れるかどうかだ。戻れるのか長門?

「……分からない」

分からない? さっきまで古泉の質問には饒舌に答えてたじゃないか。

「この世界に情報統合思念体は存在しないため、元の世界に存在する思念体と情報の送受信を
 行っている。そのため今の私の情報操作にはタイムラグと制限がかかっている」

「先ほど述べたこの世界の情報についても現時点における解析から求められてたもっとも有力な
 仮説から推測された物に過ぎない。元の世界に帰還するための最低条件にこの世界を完全に
 解析を行う必要がある」

「それでそれはいつ終わるんだ」

「推測はできない」

マジかよ! つまり何日何週間、もしかしたら何ヶ月もここに缶詰めってこともあるってことか。
それは困る。学校とかはどうすんだよ。

「それは問題ない。元の世界とこちらでは時間の経過に大きなずれが生じている」

ここでさっきまでなにやら一人で思案していた古泉が顔を上げた。

「涼宮さんが何かを望んでこの世界を構築したのだとすれば、それを満足させればよろしいのでは?」
56 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/11/14(日) 10:07:19.11 ID:bUNqBcY0

なるほど名案だな。よし、そうしよう。さっさとそうして帰ろう。
……で、あいつの望みって何だ?

「わかりません」

おいテメェ、なに自分で言っといて無責任なこと言ってんだ。
ニコニコと開き直ったように笑って済まそうとするな!
そんな憤る俺に向けて古泉は手の平をヒラヒラ。

「ある程度推測はつきますよ。要は『あの本』の内容を体験してみたかったのではないでしょうか」

そのあしらい方はむかつくが、そんなのは向こうの世界で学食一回奢らせて手打ちにしよう。
重要なのはそこではなく、こいつの言ったことだ。
どうやら俺たちはまだ帰れないと決まったわけではないらしい。
なら帰る方法を見つけることが最優先だ。

「その内容ってのはどんなのなんだ?」

「それはともかく、どうしてそんなに元の世界に帰りたいのですか?
 先ほども言いましたが、異世界とはいえ『未来』ですよ、僕たちの知らない技術とかもあるんです。
 仮想現実を使った体感できる新感覚なゲームもあって、僕たちの世界では休載されていた漫画の続き
 とかもあるかもしれません。気になる連載の先がわかるかもしれない。
 もしかしたら、過去の宝くじの番号を調べれば、元の世界で当てることができるかも知れないのですよ」

自分の知らない所っての言うのは落ち着かないものなんだよ。
そしてこいつはバックトゥーザフューチャー知らないのか?
博打のバックナンバーを持って帰ろうとして、マーティーとドクがどんな目にあったのかを。
それに、タイムパラドックスが厄介なのは俺が知っている。
あんな面倒なこと今後一切ごめんだ。

「それに、この世界はハルヒの頭の中なんだろ? それならハルヒの知らないことは出てこないだろ」

「……そうですね。失礼しました、やはり少々浮かれすぎていましたようです」

古泉のテンションはガタ落ちだったが気にする必要はない。
対して俺は、珍しく古泉を言い負かせたことに気分は上々。
俺の言ったことは正しいだろ?
57 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/11/14(日) 10:13:25.62 ID:bUNqBcY0

「それで、いったいどんな内容なんだ?」

「『アクセル・ワールド』は、主人公の少年・ハルユキが黒雪姫と呼ばれているヒロインの少女から
 《ブレインバースト》と呼ばれる謎のゲームを受け取り、そのゲームを通じて主人公の成長する様子を
 描いた小説だそうです」

『だそうです』? 何で伝聞なんだ?

「実は、僕も部活の帰りにライトノベルに詳しい同僚からこの本を借りてきたのですが、忙しかったため
 昨日は読むことができなかったのです。
 なので、僕の知っている情報は同僚から受け取った時のレクチャーだけなんです」

こういった事態に備えるのが機関なんだろ、それなら読んどけよ。
だが、そんなことを言ってたら話が進まないのでとりあえず黙って聞いておこう。

「時代背景は少子・高齢化により子供の数が減り、情報通信システムの発達した西暦2046年。
 仮想ネットワークの普及が現実世界とは別に仮想世界(Virtual Real)を台頭させていったそうです。
 そのVRへの接続する端末がこのニューロリンカーで、これが開発されたことによりVRは
 世界的規模へと急速に拡大していったとのこと。
 VRが拡大するにつれてそれにあわせたゲームなどが出現し、どうやら《ブレインバースト》と
 言うのはその一種のようです」

「あのぅ、ちょっといいですか?」

そう控えめにちんまりと手を上げたのは朝比奈さん。

「その本の話は2046年ですけど、この時代は2047年ですよね。それは一体……?」

「それは多分、小説内で月日が過ぎたのでしょう。涼宮さんは刊行巻全部買っていきましたから、
 もうすべて読み終えたのでは」

なるほど……で、他の情報は?
そう聞くと古泉は、申し訳なさそうな顔しながら、

「これ以上はネタばれになるから自分で読めって言われました……」

俺は役立たずだなぁ、としか思わなかった。
だが、朝比奈さんはそんな古泉を励ましていた。

「落ち込まないでください、古泉くん。何も分らないよりも何するのか分ったほうがいいじゃないですか」

朝比奈さんは、笑顔で古泉にそう言い掛けていた。
58 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/11/14(日) 10:36:35.66 ID:bUNqBcY0

今どういう状況だかも分かった。帰る方法も見つかった。
問題は、この世界に一時的にしろ滞在しなくてはいけないってことだ。
俺らはこの世界のことは、まったく分からないぞ。

「未来とはいえ高々40年程度です、そこまで急速に文化も社会制度も変化することはないでしょう」

ん……? そういえばこいつ、俺の家を知ってたよな?
元の世界では家も知られてたが、こっちの世界では住所が変わっていたんだから知っているわけがない。
またストーキングかこの変態野朗!

「あぁ、あなたを迎えに行けたのは僕のニューロリンカーにあなたのアドレスが入っていたためです。
 この学校に在籍していることも、僕らが『文藝部』に属していることもこれから知りました。
 残念ながら、どうやらこの世界には《機関》が存在しないようなので、タクシーで迎えに行くことに
 なってしまいましたが」

……嫌味な奴。
だが、気になったのは古泉の皮肉ではなく、《機関》が無いという所だ。
正直なところ、俺は長門の力と古泉の《機関》があれば何とかなると考えていた。
しかし現状は長門の力は制限されていて、《機関》の助けは得られない。

「用を足してくる」
59 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/11/14(日) 11:03:59.89 ID:bUNqBcY0

ショロロロロロ……

一時の満足感が俺を包む。

「ふぅ……」


さて、どうすっかな? どうするも何も、部室に戻るという選択肢しかないのだが。
にしても、どうしてこうも代わり映えのしない平々凡々な日々ってものを俺は送ることができないのかね?
何かの陰謀か、はたまた運命か。
どっちにしろハルヒのそばにいる限りこういったことはおき続けるのだろう。
だったらハルヒから離れれば、転校すれば、留学すれば、移住すれば、いっそ死ねば変わるのだろうか?

………。

そんな俺の抵抗なんかじゃどうにもならないだろう、なんて分かりきっている。
ましてや、そんなことをする意思も度胸もないことは俺がよく知ってる。
まるでフィクションのようなことがノンフィクションに起こる世界だ、何をしても、しなくても同じこと。
こんなものを望んでいた子供のころの自分に、今の俺を見してやったらなんて言うか。
少し、気になった。


「戻ろう」
60 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/11/14(日) 13:59:12.30 ID:bUNqBcY0

「おっそいじゃないの! 何処行ってたのよ!」

部室に戻るとハルヒがいた。
週6で顔をつき合わされているんだ、見間違うことはなくハルヒだ。
俺がトイレに行っている間に来たのだろう、PCの前に座っている。

「すまん、便所に行っていた」

「便所って、少しはオブラートに包んだ言い方しなさいよ。花を摘むとか」

それは女子の言い方だろ。確か男が言うときは『雉を打つ』だったか。
ハルヒは猫の交尾を偶然見たような、不快感たらたらな表情をしていた。


「それに、遅刻しないように言っといたはずだけど?」

「まだ9時半前じゃないか、集合は10時だったはずだぞ」

「あたしより遅く来るな……まぁいいわ、もっと大切なことがあるもの」


そういうとハルヒは唐突に目の前の空間を叩き出した。
いや、多分これは俺が車内でやったみたいに、ニューロリンカーの仮想デスクトップを操っているのだろう。
程なくして何かを見ていた目を俺たちに向けて、あぁまさに俺たちの知るハルヒの、100万ドルの笑みを
浮かべながらこう言った。



「《ブレイン・バースト》をやるわよ!!!」


61 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/11/14(日) 14:27:44.93 ID:bUNqBcY0
今日はこれでおしまい! 実は今日で設定の説明とかは終わらせる予定でした
説明編ムジカシす(泣
後一回くらいこういう感じのが続きますが、それを超えたら少しは書くのが楽になるのかな?

ついでに後の話を進めやすくするために先に《ブレイン・バースト》の説明をしたいと思います
解説役はこのssではあまりで番がないであろうアクセルワールド主人公ハルユキと、
もっ先輩こと黒雪姫(G先輩とも言う)が担当するそうです

本当はここで画像をうpしたかったんですが、イメぴたが使えないためできませんでした
画像検索してみてね?
62 :第1回《ブレイン・バースト》解説講座!! [sage saga]:2010/11/14(日) 15:11:33.91 ID:bUNqBcY0

黒雪姫「《ブレイン・バースト》、正式名称《Brain Burst 2039》とはVRゲームの1つではあるが、
     製作者や製作意図、手段まで謎に包まれたアプリだ。むしろ分かっていることのほうが
     少ないだろう。名前にあるとおり、このアプリは2039年から突如普及していった。
     しかも、他の市販のゲームソフトとは異なり、無料で配布されたのだ。
     だが、最も謎なのはこのアプリのもたらす効果、《加速》であろう。」

黒雪姫「《加速》とはニューロリンカーの脳への量子接続という機能の裏をついて使用者の思考を
     1000倍に加速させるという、まさに隠しコマンドだ。
     BB使用者は加速コマンド『バースト・リンク』を唱えることにより《加速》を行える」

黒雪姫「しかし、使用者は《加速》する度に『バーストポイント』(BP)が減っていき、BPが
     0になった者はBBを強制アンインストールされ、二度とBBを入手できなくなるという
     ペナルティーが存在する。
     BB取得時のBPは100で、通常加速に必要なBPは1なので、100回《加速》したら
     強制アンストールとなってしまう」

黒雪姫「もちろん、BPを増やす方法は存在する。しかし通常のネトゲとは異なり現金で買ったり
     できるものではなく、その方法こそ、このアプリ真髄である『対戦』だ!!」


黒雪姫「詰まる所、いわゆる格闘ゲームだ。BBをインストールするとまず最初に使用者専用の
     対戦用アバター《デュエルアバター》が作られる。このアバター同士を戦わせて、
     相手のHPを先に0にした方が勝ち、敗者からBPを奪うことができる」

黒雪姫「我々、BBで対戦する者のことは自らを『バーストリンカー』と自称している」

ハルユキ「先輩先輩、僕が出てくる前に説明終わっちゃいましたよ」

63 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/15(月) 22:50:55.59 ID:i0qpWWgo
いつの間にか来てた乙
64 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/15(月) 22:51:56.47 ID:i0qpWWgo
ごめん上げちゃった
65 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/15(月) 23:48:31.29 ID:m.PazIDO
ハルwwwwwwww

ところで本編にハルともっ先は出てくるん?
66 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/17(水) 18:16:15.64 ID:eSTUPEMo
ちょいちょいサブキャラとして出す予定です
まぁ、SOSのメンツだけだと加速世界の事情とかを解説する役がいなくなってしまうので

言い忘れていましたが、このssにはオリキャラが出て来ます
さっそく次回の投下のときには出て来るかと
考えたらアバターと出るから、絵を書かないとどんなのかわからないかも

という訳で絵を描いてきます!
67 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/20(土) 01:52:07.44 ID:.IQs66ko
お前が描かずとも絵師様(笑)に書いてもらえばいいんじゃないか
68 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/20(土) 19:07:27.54 ID:RhkxDII0
>>67
頭いいな
69 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/11/20(土) 19:41:52.69 ID:339ihKs0
AXEL!
70 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/02(木) 22:49:58.79 ID:IUyHm1co
まだかな?
71 :【緊急】絵師様、募集中!!!【召集】 :2010/12/05(日) 11:37:23.69 ID:TdmG8UY0
>>67 GI
自分の絵の下手さ加減に絶望していたところです
ペイント難しかった……

という訳で、絵師様を募集したいと思います
他のSSではしてないことをするなんておこがましいですが、オリキャラやアバターを出す以上
何らかのビジュアルが必要だと思いました
こんなわがままに付き合ってくれる人を探しています

詳細は今回の投下後に書きたいと思います

ps、今回でもまた説明編が終わりませんでした。本当にごめんなさい
72 :【緊急】絵師様、募集中!!!【召集】 :2010/12/05(日) 11:59:31.36 ID:TdmG8UY0


「あれ? どしたのキョンくん、またそんな呆けちゃって」


そう俺に問いかけてくるのは、俺の左隣に立っている、一人の少女。


「そんなに何を見てるの……って」


俺の目を覗き込むように上目づかいで見上げてくるその少女はとても、それこそテレビの画面や
マンガのこまの中から飛び出してきたかのような現実感を伴わないほどの、美少女だった。
その少女は俺から目線を外すと前方を、風が揺らす少し長い前髪を抑えながら見た。


「あーーー!!! 分かった!
 あの自転車乗ってる女の人のパンツを見てたんでしょ!!
 自転車に乗っているのにスカート抑えてないから、捲れてるの見てたんだぁ!!」


黄色い声をあげるその少女の髪もまた、綺麗で透き通るような金色。
長くて、鶴屋さんほどではないが腰にまで届きそうなほどのストレートの金髪が風になびく。
まさに外人のような金色や、あまり見かけたことのない髪形が(右側は流しているのに、左側は
サイドから集めた髪を後ろのほうで何故か逆さに結わき、逆毛が立っている状態になっている)
さらに俺から現実感を奪う。


「ふぅん、前から思ってたけど、やっぱりキョンくんはムッツリ助平なんだね」


そのニヒヒッと笑いながら振り返るその顔は、ヨーロッパのモデルのように整っていて、
日本人ではあり得ないだろうぐらい大きな青い目に、スリムに引き締まった顔立ち。
大人びているようでいながら、朝比奈さんとはまた異なった可愛らしさがある。


「実はわたしのこともそんな風に見てたりして〜〜! えっち〜〜☆」


近くの人が聞いたら勘違いしそうなことを公道で叫びながら、体――主に胸部と下腹部――に手を
まわして体をくねらせる。
朝比奈さんに負けじ劣らずなのは眉目秀麗だけではなく、朝比奈さんと張り合うほどあるだろう
胸も、白のパフスリーブブラウスに強調されている。
この容姿はもしかしたら、朝比奈さんクラス。いや、朝比奈さん(大)級だろうか。


「まっ、キョンくんがどスケベなのは置いといて、ホント急いで行かないと間に合わないよ?」
73 :【緊急】絵師様、募集中!!!【召集】 :2010/12/05(日) 12:01:03.57 ID:TdmG8UY0

俺が少女を凝視しているのに気付いているのかいないのか、少女はまだしゃべり続ける。


「店長、ああ見えても時間にうるさいし。
 それに今日はキョンくんがお昼を食べてなくて、それに付き合って遅れそうなんだから。
 せめてキョンくんは急いで行こうとするべきだよ」


そう言われても、なんと反応していいのか。俺ってこんなに人見知りだったっけ?
いきなりこんな美人に、こんな至近距離で話すなん初めてのことだからフリーズしてしまった。
そんなコンクリートを体に塗りつけられて半年干されたくらいに固まった俺を見て、


「――ねぇ、ホントに大丈夫? 熱はなかったけど、実は気分が悪かったりするんじゃない?」


「……い、いや。大丈夫…」

ようやく何とか声を絞り出す俺。かすれてこそいなかったが、おっかなびっくりな声になっていた。


「無理しちゃだめだよ。ちゃんと辛い時は辛いって言わないと」


そんな声音を感じ取ったのか、少女の声にさらに心配の色が濃くなる。


「体壊してるときに無理に働いても、この前みたいに大変なことになるだけだよ?
 最悪私だけでも何とかなるし。今日は休んだほうがいいよ?」


気分は悪くないが頭の調子はよくないようだ。
どうも俺の脳はオーバーヒートしたみたいに動かない、考えられない、思い出せない。
いや、知らないものを思い出せるわけがないのだから、俺の脳は正常なのだ。
ただやはり現状について行く事が出来ない。
さっきも聞いた質問をまたしてしまう。

「――てか、御前誰?」


「へ?」


ボケた情けない声を、少女もあげる。そして、その場で見つめ合う俺ら。
いったいこの状況は何なんだ? 誰か助けてくれ……
74 :【緊急】絵師様、募集中!!!【召集】 :2010/12/05(日) 12:07:35.63 ID:TdmG8UY0

時は戻って9時30分頃。

――――――
――――
――


「《ブレイン・バースト》をやるわよ!!!」

ああ、そういうことかぁ。

つまりハルヒは、そのBBなるゲームがしたかったのだろう。
なら、このゲームでハルヒをクリアに導けば終わり、めでたく元の世界に返れるってことだろう?
なるほど分かりやすくて結構だ。



「ふぇ〜?」

いや、朝比奈さん。あなたは何で首を傾げているんですか。
さっきまで俺達と話を聞いてたでしょう?

「そのぅ、皆さんブイアールとかビービーとか専門用語を使っていたので良く分からなかったんです」

そういえばこの人はこういうことにとても疎いんだったな。忘れてた。
この人がVRとかに反応しなかったってことは、本当の未来にはVRはないのだろうか。



「ってあれっ? 反応薄いわねー」

まぁ、話が理解できてなかった朝比奈さんはともかく、俺と古泉と長門は分かってたしな。
だがここで分かってました的雰囲気は良くないだろう、一応反応してみる。

「お前がそういうイベントを持ち込んでくるのに慣れただけだ。それで、そのBBってなんだ?」

そう聞き返してやると、ハルヒは肩透かしを食らったような顔からひまわりみたいな笑顔へ戻った。
よっぽど説明したかったのだろう、椅子から立ち上がり、嬉々としながら俺達に説明しだした。
75 :【緊急】絵師様、募集中!!!【召集】 :2010/12/05(日) 12:08:36.49 ID:TdmG8UY0

「新しいVRゲームよ! この前持って来たやつよりも面白そうなのが手に入ったのよ!!」

『前にも』って事はSOS団でゲームをするのは初めてではないのだろう。
いつの間にSOS団はゲーム研究会になったのだろうか。
いや、俺と古泉もいつもボードゲーム研究会並みに盤ゲーばっかりをしていたが。
                              ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・  ・ ・ ・ ・
「しかもしかもっ! これは買ったんじゃなくて、メールで送られてきたの、あたしに!」

ちょっと待てよ、それ怪しさマックスじゃねぇか!
メールでゲームが送られてくるって何だよ!
そういや、アクセルワールドの主人公も人から貰ったって言ってたっけか。
これがこのアプリのデフォルトなのかもしれない。

「スパムメールとかじゃないのか? ウイルスが仕込まれてたらどうすんだよ」

「うん、そう思って調べてみたんだけどそういうのも無くて、まぁ怪しかったからBBについて
 徹夜でネットでも一応調べてみたの。そしたら、何一つ検索にヒットしなかったのよ!
 おかしいでしょ!! この時代にネットになんの情報もないなんて!
 どんな些細なことでも数件は見つかるはずなのに、そんなものありませんって言わんばかりに
 このBBについては情報が無かったの! お陰で昨日は一睡もできなかったわ!」

にしてはテンション高いな
それに、なんかヤバそうな匂いがプンプンする。

76 :【緊急】絵師様、募集中!!!【召集】 :2010/12/05(日) 12:27:46.30 ID:TdmG8UY0

だが、俺たちがそれをプレイして、こいつを満足させないと元の世界には帰れない。
もうやるしか選択肢はないのだ。
ここはハルヒにさっさと賛成して話を進めよう。
それに、さっき古泉にはああ言ったが、俺もVRとかに興味がないわけではないのだ。
体験できるものはしてから帰りたいしな。

「それで、そのBBってのはどこにあるんだ? ディスクは?」

俺の一言を聞くと、ハルヒはぽかんと口を開けて、呆れていた

「何言ってるのよ、『ディスク』に入れなくちゃ売れないようなゲームがメールで送られてくる訳
 がないじゃない。そんなの容量送られてきたらニューロリンカーが破裂しちゃうわよ」

それにメールで送られてきたって言ったはずよ、とハルヒに付け加えられた。

「こんなバカほっといて、早速みんなでやりましょうよ。もちろんゲームはあたしのフォルダの中にあるわ。
 みんなと一緒にやろうと思ってまだインストールしてないのよ。ありがたいと思いなさい!
 あ! けど一番最初にインストールするのはあたしだからね!!」

そう言うと、カタカタ(もちろん音なんてしてないが)と仮想デスクトップを操作するハルヒ。
俺は、ハルヒが『みんなと一緒にやろう』なんて言ったことに驚いていた。
まさかハルヒの口からこんな言葉が聞けるとは思っても見なかった。


そんな感傷に浸っている間にハルヒはインストールをしていたのだろう。

「あ、終わったみた……キャアッ!!!」


ハルヒを見ると、その顔には驚きと、恐怖の色が滲んでいた。
あまりの何かの衝撃に耐えられなかったのか、膝から椅子へとストン、と落ちる。
椅子に落ちてからも、ハルヒは口を開け、空中の一点を見続けている。


「ハルヒ!!!」

77 :【緊急】絵師様、募集中!!!【召集】 :2010/12/05(日) 12:34:30.81 ID:TdmG8UY0

「ハルヒ!!!」

「涼宮さん!!」

あわてて俺たちがハルヒに駆け寄る。
俺たちに気づいたのか、見えない何かを凝視していた目を俺たちへと逸らした。

まだ目は見開いていたが、それでも、さっきまでの目とは違った。
それでもまだ震えていたハルヒの手を握る。

「キョン……、だ、大丈夫。大丈夫だから。急に目の前に炎が出てきてビックリしただけ……」

炎が出てきた……。当たり前だが部室が燃えているわけではない。
およそハルヒの目には、ニューロリンカーが見せる仮想の火が見えたのだろう。

それから1分とも10分とも、1時間とも感じられるような時間が過ぎた。
次第に手足の震えは止まり、ハルヒは次第に落ち着いていった。
ハルヒは周りにいる俺たちから目を離し、また仮想デスクトップを見た。
すると、ハルヒの目にまたも驚愕が映っていた。

「待って、なんか文字が出てきた!! 英語みたい!!」

そういってハルヒは目を細めて見えない文字を見つめた。

なにこれ……、とハルヒは漏らす。


「……――アクセラレーテッド、ワールド?」

78 :【緊急】絵師様、募集中!!!【召集】 :2010/12/05(日) 12:35:57.82 ID:TdmG8UY0


それから数秒、ハルヒには変化は現れなかった。

「どうやら終わったみたいですね」

古泉はハルヒに体に不調がないか聞いている。
どうやら、ない様子だ。ないようだが――


「………」


――思わずにはいられない、いられなかった。
この、《ブレイン・バースト》というソフトは何なのか。
ハルヒは、調べても一切分からなかったと言っている。情報の一欠けらも無かったと。
俺たちの時代よりもインターネットが普及しているのだろうこの世界で、何一つ分からない。
そんなアプリケーションに不信感を覚えずにはいられなかった。

《Brain Burst》、直訳すると『脳の破裂』。
あまりにも不吉なその言葉を冠するアプリが、ハルヒにさっきの炎を見せたのだろう。
そして、まるで誰かが必死に隠しているかのようなまでの機密性。
謎のメールに添付され、無料で送られてきたゲーム。
とてもではないが、信頼が出来そうにはない。

だが、この世界を終わらせるにはこのゲームをするしかないのも事実だ。
俺たちが何もせずに、長門の解析が終わるのを待つという手もある。
あるが、俺は採りたくはない。

あの冬の日、俺はもう長門にばかりに無理をさせまいと誓ったはずだ。
俺は、俺ですべきことをするとも。


だから――

79 :【緊急】絵師様、募集中!!!【召集】 :2010/12/05(日) 12:37:19.42 ID:TdmG8UY0

「ハルヒ、大丈夫か?」

「え、まぁうん。別に体に不調もないわよ。ただウイルスかと思ってビックリしただけだから」

「そうか。それで、俺たちはどうやってそのソフトをインストールすればいいんだ?」

「へ?」

またさっきとは違った驚いた顔をしていた。ハルヒのこんな顔を見るのは初めてかもしれない。
元の世界でもほとんどこんな表情を見せなかったのにな。
さっきの『新しいVRゲーム〜〜』発言から(俺たちの世界でハルヒがゲームを持ってきたこと
なんて一度もないし、当然VRなんて実現していない)、このハルヒが俺の知っているハルヒとは
まったくの別人だってことは分かるのだが……。
どこまでが『ハルヒ』なのだろうか?

ハルヒは驚いたように、怪訝な声で俺に聞いた。

「反対しないの?」

「何をだ」

「だから、BBをすること。こんな怪しいのをやろうっていたら何か言われるかと思ってたのに」

「別に……、お前はやろうって言い出したら止まんないだろ?」

それを聞くと、ハッとした様な顔をし、それからニヤッと笑った。


「分かってんじゃないの」


ハルヒらしく、笑っていた。
80 :【緊急】絵師様、募集中!!!【召集】 :2010/12/05(日) 12:39:37.45 ID:TdmG8UY0

それから一分もせずに完全復活したのだろうハルヒは椅子から立ち上がり、

「それじゃあ、みくるちゃ〜ん。ちょ〜とこっち来て頂戴」

ハルヒは、何かを明らかに企んでいる狐のような顔をしている。

ハルヒに呼ばれた朝比奈さんは「はぁ〜い?」なんて返事をしながらヒョコヒョコと無防備に
近づいてきた。
ああ、朝比奈さん。あなたはなんてこうも学習能力がゼロなのでしょうか?
そんな顔をしたハルヒが何するかなんてあなたは痛いほど知っているでしょ。


そんな俺の心配をよそにハルヒのすぐそばに寄ってきた朝比奈さん。
ハルヒはというと、自分と朝比奈さんの距離を図るように見ながら椅子から立ち上がると、

「そぉい!!!」

という掛け声とともに瞬間的に朝比奈さんの背後に回りこんで、朝比奈さんに膝カックンを極め、
後ろに崩れ落ちてきた朝比奈さんの受け止めつつ床に転がり、朝比奈さんを後ろから抱え込んだ。

「え? ……ひぇえぇ〜〜ぇええ!!」

じたばたと手足をバタつかせて暴れる朝比奈さんの抵抗もむなしく、ハルヒは左手と足を使って
朝比奈さんの動きを封じてしまった。
というか朝比奈さん、そんなに暴れたせいでスカートがめくれてかわいらしいピンクのパンツが
丸見えですよ? あ、別に直さなくていいです。

「………」

長門も気づいたのだろう、そっと2人に近づくと朝比奈さんのスカートを下ろしてしまった。
ついでにハルヒのスカートも下ろしたようだ。朝比奈さんのパンツに夢中でハルヒのスカートも
めくれていたことに気付かなかった。

81 :【緊急】絵師様、募集中!!!【召集】 :2010/12/05(日) 12:42:02.18 ID:TdmG8UY0

そんな長門に気づくことなく朝比奈さんとハルヒはひたすら扇情的に絡み合っていた。

「大丈夫よみくるちゃん、ちょっと『直結』するだけだから」

なんだ『直結』って!? 2人の様子を見ているとすごく卑猥にしか聞こえないんですけど!!

程なくしてハルヒはどこからともなく取り出した、USBケーブルのような物を自分のクリアな
ニューロリンカーの端に差し込んで、朝比奈さんのニューロリンカーにも差し込んだ。
今気づいたのだが、朝比奈さんも長門もニューロリンカーを首にしていた。
そうした後、ハルヒは朝比奈さんに向かって空中で何かを弾くような動作をした。
するとすぐに朝比奈さんは、

「ひょへ!?」

という鳴き声を出して抵抗するのをやめた。

「あの……涼宮さん、なんか変なのが出てきたんですけど?」

「じゃあその真ん中の『YES』のボタンを押してちょうだい」

そう言いながらハルヒは朝比奈さんからそのケーブルを抜いた。
おそらくそのケーブルを通してハルヒはBBを朝比奈さんに送ったのだろう。
そしてハルヒは朝比奈さんの拘束を解いて立ち上がった。

朝比奈さんはハルヒに言われるがまま空中の仮想パネルをタッチした。
だが……

「あれ?何も現れないですよ?」

そう言いながら床に座りなおす。

「失敗ですかね?」

いつの間にかに俺に近づいてきた古泉が俺にそう問いかける。
だからなんでお前はそう顔を近づけるんだよ!! 
息がかかって気持ち悪い!! さっさと離れろ気色悪い!!!

「んっふ、これは失礼しました。先ほどから空気なので少し目立とうと思いまして」

うっさい! お前は解説することがない限り、出番はない。
82 :【緊急】絵師様、募集中!!!【召集】 :2010/12/05(日) 12:44:48.77 ID:TdmG8UY0

「ふぇあ!!!」

俺が古泉のバカと話している間放置されていた朝比奈さんが奇声をあげた。

「周りにほ、炎がぁ〜〜」

そう言いながら目をぎゅっと瞑って体育座りに縮こまってしまった。
ぎゅっと耐えるように丸くなった朝比奈さんはすぐには起き上がらなかった。
目を必死に瞑り、ひたすらと縮こまり続ける朝比奈さん。
不謹慎だが、小動物チックでかわいかった。
ハルヒが正気に戻るのよりも倍の時間をかけて、何とか仮想の炎を耐え切っただろう朝比奈さんは
ヘロヘロとやっとこさ立ち上がった。

「ううぅ〜〜、怖かったですぅ〜、ヒック」

よっぽど怖かったのか、涙目な朝比奈さんの声も水っぽかった。
目をパチパチとしながらよろよろと俺に近づいてきたので、ひとまず支えて椅子まで誘導する。


そんな朝比奈さんをよそ目に、ハルヒは何をしていたのかというと、長門と『直結』していた。
朝比奈さんみたいに組み伏せずとも、長門は従順にハルヒを受け入れていたようだが、

「あれ? 有希、送れた?」

「……何も受信していない」

どうやら向こうは向こうで問題が発生しているようだ。
だが、何度試してもうまくいかないようで、ハルヒは頭をひねっていた。

ついには長門をまだボロボロの朝比奈さんの傍に連れて来て、

「みくるちゃん、BBを有希に送ってあげて」

まだぽろぽろと涙を流している朝比奈さんにそれは酷だろう、ましては機械音痴な朝比奈さんには。
だが、ハルヒはしつこく朝比奈さんをせっついていたので、俺は止めようかと思ったが、

「だ、大丈夫です。出来ますっ」

と、朝比奈さんはおっしゃった。

83 :【緊急】絵師様、募集中!!!【召集】 :2010/12/05(日) 12:45:41.21 ID:TdmG8UY0

当たり前だが朝比奈さんも長門もケーブルを持っていなかったのでハルヒから借りて『直結』した。
残念なことに、抱きつきも押し倒しもなかった。
朝比奈さんがやっとのことでBBのアイコンを見つけてそれを長門に送る。すると、

「………」

長門の表情に変化はなかったが、目だけはきょろきょろとしていた。
多分仮想の炎が見えているのだろう。
1分程たった頃に長門が小さく呟いた。

「……終わった」

「よかった! それにしてもみくるちゃんには送れたのに有希に遅れなかったのは何でなんでかしら?」

う〜ん、と頭を抱えるハルヒだったが、なんとなく横にいた古泉に目を向けてやる。
ニヤニヤと笑っていた。キメェ。
お前、なんで送れなかったか分かるんじゃないのか?

「まぁ大体検討は付いていますが、あくまでも仮説ですよ」

そう言いながら笑顔のまま古泉は、肩をすくめていた。
84 :【緊急】絵師様、募集中!!!【召集】 :2010/12/05(日) 12:46:55.82 ID:TdmG8UY0

そのままハルヒたちに古泉は近づいていった。そして、

「朝比奈さん、僕にBBを送ってみてくれますか?」

などと言い出した。

なにやらハルヒと言葉を交わしていたが、すぐにハルヒは朝比奈さんと古泉のニューロリンカーを繋げた
なぜか知らないが、すっごい羨ましい光景に見えた。

「……あの、送ったんですけど……?」

「ふむ、なるほど。分かりました、次は長門さんが僕に送って下さいますか?」

「………」

長門は肯定の頷きを返し、朝比奈さんに刺さっていたケーブルを自分のニューロリンカーに刺した。
そして指をすっと滑らせると、

「おっ、来ましたよ」

そう言うと、うれしそうに笑いながら古泉は解説を始めた。

「涼宮さん、多分このソフトはコピーすることが1回しか出来ないようにプログラムされていたのですよ。
 だから涼宮さんは長門さんにコピーできず、朝比奈さんは僕にコピーできなかったのです。」

「ふーん、けち臭いメーカーね。そんなんじゃ全然プレイする人が増えないじゃないの。
 けどそんなのどうでもいいわ。それじゃあ古泉くん、BBを入れたらキョンにも渡してあげて」

「了解しました」

85 :【緊急】絵師様、募集中!!!【召集】 :2010/12/05(日) 12:49:07.95 ID:TdmG8UY0

古泉はスルスルと俺に近づいて来て俺の首のニューロリンカーにコードを挿そうとした。
危うく挿される直前で、古泉からコードをひったくる。

「自分で挿せるわ」

何でだろうか、生理的な気持ち悪さがある。
古泉は、何か言いたげな顔を傾げていたが、素直に自分にもコードを挿した。
すると、仮想デスクトップに『―警告―、ワイヤード・コネクション』なるウインドウが現れる。
それは古泉にも出ているのだろう、それを手の平で払うしぐさをすると、俺に向かって指を弾く。


ピコンッ


いかにもな受信エフェクト。それとともにまた別のダイアログも表示された。
『BB2039.exe を実行しますか? YES / NO 』

なんとなく、この選択は非常に大きな意味を持つような気がした。
それこそ人生を変えてしまうような……
人生なんて語れるほど俺は生きていないのは分かっているが、何故か本能的に身構えさせられた。

だが、もうすでに選択すべきキーは決められている。
ハルヒも朝比奈さんも長門も古泉も、もうすでにインストールしている。
そして帰るためには、そのキーを押さなくてはいけない。

ポップが表示されてから約1秒、俺はそっと YES キーを押した。

――瞬間――

視界の隅々にまで焔が噴き荒れた。
ハルヒや朝比奈さんが言っていたのを聞いて身構えていたが、想像をはるかに超えるほどの焔の濁流に
飲まれて、うろたえてしまった。
何とか足を踏ん張ってそれに耐えると、不意に焔が前方に集約していった。
そして、それは文字を形取り、同時に表示されたインジゲートバーがゆっくりと青色で満たされていく。

バーがマックスまで青色に染まると、そのバーの代わりに先ほどの焔とは異なり、申し訳程度の火花が
さらに小さな英字を刻んでいった。

86 :【緊急】絵師様、募集中!!!【召集】 :2010/12/05(日) 12:50:03.76 ID:TdmG8UY0




―■[ B r a i n  B u r s t ]■―
            2 0 3 9

    ┌────────┐
    │    1 0 0 %      │
    └────────┘
      now install.......OK

Welcome to The Accelerated World....




――それはまさしく、俺たちのSOS団が破壊された瞬間だった――



87 :【緊急】絵師様、募集中!!!【召集】 :2010/12/05(日) 12:51:26.95 ID:TdmG8UY0

――――――
――――
――


「何よこれ!!! せっかく入れたのに起動しないってどういうことよ!!!」


ハルヒは憤慨していた。

「あんなに時間がかかって大掛かりなエフェクトが出るから、すっごいゲームなんだと思ってたら
 うんともすんともしないじゃないの!!!これどうやったら起動すんのよ!!!」

ハルヒが何故こんなに怒鳴り散らしているのかというと、さっきインストールしたBBがいくらタッチ
したりしても、誰も起動させることができないからだ。
全員がBBをインストールし終わったということで、ハルヒが早速やろうと言い出したのだが……

「あのぉ、これって不良品なんじゃないのですかぁ?」

おずおずとハルヒに質問する朝比奈さんは、ついにそのセリフを言ってしまった。
俺もさっきから思っていたのだが、これを言ってしまうとハルヒが暴れだすのが目に見えていたのだが。
朝比奈さん、空気を呼んでくださいよ……。
案の定、ハルヒはガァガァと壊れたスピーカのように騒ぎ出した。

「はぁ!? ふっざけんじゃないわよ!!! こんなに期待させておいてこれは何よ!!!
 せっかく休日返上で学校に来たのにこんなの認めないわ!!!
 いったいどこのメーカーよ!! これを送ってきた所を突き止めて、テレビ局とネットに曝して
 社会的に 抹殺して、ついでにそこの社長も学校の屋上に全裸で磔にしてやるんだから!!!」

言わんこっちゃない、ずいぶんと荒れちまった。
だが、やっぱりハルヒはハルヒだってことが分かった。
こいつはやはりというか絶対に大阪のおばちゃんタイプの人間だ。

「なあハルヒ、そのソフトに取扱説明書って付いてないのか?」

そう聞いてやると、ハルヒは『カキンッ』と音を立てそうなくらいにすばやく凍りついた。
こいつは家電についてくる取説を読まずに使おうとして壊して、メーカーに文句を言いに行くんだろうな。
88 :【緊急】絵師様、募集中!!!【召集】 :2010/12/05(日) 12:52:34.32 ID:TdmG8UY0

その後、『なッ……!? 取説ぅ? ――わ、忘れてるわけないじゃない! 本当だから!!』と顔を赤くし
別の意味で喚いていたハルヒを落ち付かせることに成功して、何とかハルヒに取説を開かせた。


「そういえば、これに『直結でしかコピーインストールできない』って書いてあったのよ」

一度読んでいるのなら忘れるなよ。

その取説はハルヒに送られてきたBBが添付されていたメールに書いてあった。
確かに書いているらしいのだが……

@このソフトウェアはコピーインストールが可能である。
Aこのソフトウェアをコピーする場合、有線直結通信でのみ可能である。
Bこのソフトウェアはインストール翌日からのみ使用が可能である。
Cこのソフトウェアは自身の意思によるアンインストールが可能である。

この4ヵ条しか書かれていないそうだ。
 
『そうだ』というのも、何故かこのメールをハルヒは俺たちに送れなかったからだ。
多分、BBのコピーインストールが制限されていたことと同じなのだろうか。
そのためハルヒからの伝聞という形になったが、ハルヒの表情からしてそれは間違いなさそうだった。

「なんなのよ、これ。ぜんぜん取説っぽくないじゃないの」

不信感よりも呆れているというような感じなハルヒだった。
俺もこんな取説ははじめて見た。というかこれは取説というのか?
しかも、メーカー名も、製作者のスタッフロールすら付いていなかった。
製造元が分かんない、市販されてない、ネットでも引っかからないなんて怪しすぎるだろ。
だが、ハルヒはそんなことを気にしていないのだろうか、

「まあいいわ。とりあえず明日から出来るんでしょ? なら明日また集まりましょうよ」

とのたまった。

「詳細は今日中にメールしておくわ。それじゃあ今日は解散!!!」

いや解散って言われてもよ、帰れないんですけど。
俺、古泉に車で連れてこられたから自分の家知らなし。
そういえば、あの車がすごく静かに走ってたのは未来の技術だったんだなぁ。

そんな風に混乱していた俺に、さらにハルヒは追い討ちをかけるような言葉を掛けた。

                                    ・ ・ ・
「キョン、何ボーっとしてるのよ。今からだと急がないと、バイト、間に合わないわよ」


……ハァ?

89 :【緊急】絵師様、募集中!!!【召集】 :2010/12/05(日) 13:16:51.10 ID:TdmG8UY0

今日はここまでです
説明編が長すぎて長すぎて、本編が説明編になりそうなくらい長いですね←うそですAA略
でも、必ず次回には、次回には終わらせる予定です! 本当ですよ!
多分、一週間後くらいにはこれるかと……

今回から絵師様が見つけてくださるようにageていこうと思います
もしもこのssを見かけたらあげて欲しいです
宜しくお願いいたします


【絵師様へのお願い】
わざわざ来ていただいてありがとうございます
このスレにはオリキャラならびにオリアバターが登場予定です(オリキャラのほうは既出です)
さらに、これらのキャラはとても物語りに関わってきます(特にアバターのほうは戦闘があったりします)
二次製作の場合、それぞれのキャラが分かって楽しめるというのがありますが、オリキャラは
その外見が分からなくなってしまい、話が理解しづらいと思います

そこで、絵師様にどうかオリキャラならびにアバターを書いて欲しいのです
挿絵などおこがましいことは言いません、立絵のようなものでも結構ですので書いていただきたいと思います
本文を参考にしていただき、それを絵にしていただきたいのです

稚拙な本文ではわかりづらいところもあると思います、そこはここで質問していただきたいと思います

絵師様をやってもいい、やってみたいという人がいたらどうかレスをお願いいたします



90 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/05(日) 22:21:25.22 ID:a0OfxoAO
とりあえず乙
絵はいらないと思う
そういうのやると絶対荒れるだろうし、各々の妄想で補完できるだろ
少なくとも俺は要らん
話は良いんだから、変なことはしないで欲しい
91 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/06(月) 19:32:25.03 ID:94OIfKIo

正直アバターとか文字だけじゃわからないところがあるから絵はほしい
92 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/08(水) 01:27:07.75 ID:VK8U2.AO
オリキャラ書いてみた
外人っぽくね〜
しかも鉛筆とか…
今日赤点科目のテストなのに何やってるんだろう、俺

http://imepita.jp/20101208/047270
93 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/08(水) 15:24:35.11 ID:ar6BzE2o
オリキャラはともかく、デュエルアバターは絵がないときつくね?
どれくらいこのssが続くかにもよるけど、それなりに長くなりそうだし
できれば絵はほしい

あとあげ
94 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/13(月) 03:11:41.03 ID:c3T4x5ko
絵師様降臨する神展開期待あげ
95 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/20(月) 14:19:40.65 ID:GFnj/6DO
続きが無いと、絵師様(笑)も降臨しようがないっていうね
96 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/22(水) 00:28:14.06 ID:DQsxd.AO
オリキャラのキャラがたってないし、他の登場人物もキャラ崩してる

ツマラン
97 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/23(木) 00:05:21.17 ID:lfJKMsAO
加速コマンド知らないのにどうやって加速するの?
98 :ちょっとだけ再開 [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 11:41:32.76 ID:4xAzZRE0

【バイト-beit】

アルバイト-Arbeitとも言う。 ドイツ語からきた外来語。
正社員に比べ、短期間かつ低賃金にて雇用される傾向が強い非正規雇用の一体系。
もしくは一定期間の契約に基づいて雇われた労働者の事を指す。
英語で言うところの part-time job にあたるもの。
これが side job とも言われるのは、主に学業や本業の傍らにされるものだからだ。

俺のバイトについての講義、以上終了。


高校生になったら誰もが一度はしてみたいと思うだろうアルバイト。
勿論、俺もしてみたいと思ったことはある。
俺たちの高校は公立だから、一応バイト禁止と校則ではなっているのだが、多くの生徒がバイトをしていて、
高校の教員もそれを知っていながら注意はほとんど無い、つまり事実上の公認なのだ。

そして、バイト関係の話は谷口や国木田との大きな話題のひとつだった。
99 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 12:02:50.47 ID:4xAzZRE0

「駅前のコンビ二は給料がいいし、光陽園学園の女子がたくさん来るんだがよ〜、残念なことに
 店長が最低最悪なクソ爺だったんだよ(しょぼくれる谷口)」


とある日の昼飯時の談笑。


「多分、それはお前と同じ意味で最低な店長なんだろうな(落ち込んだ谷口を励ます俺)」

「どういう意味だよッ!! 多分、というか絶対俺の思ってる理由と違う気がするんだけどッ!!」


「『店に来る女子高生を舌で舐め回すように視姦している』とかかな?(ボタンを押す国木田)」ピンポーン♪

「あれ、当たってんだけど!? なに? つまりお前らは俺もそんなことしてると思ってた訳かッ!!
 あと国木田、そのクイズボタンどっから出したんだよ!!(俺たちの励ましに感激する谷口)」

「谷口はまだそのお店で働いてるの?」

「スルー!! ここでスルーですか!!! スルースキル高すぎだろ!!!
 ……まぁいいや。その店はやめちまったんだよ。
 店に来る客が減ったらしく、そのクソ爺が『俺が客をじっと見てるせい』とか抜かしやがって
 マジむかついたからその場で辞めてきてやったぜ!!(どや顔)」


「かわいそうだな、客が。 カウンターにいる店員と監視カメラを見てる店長のW視姦光線に
 耐えらんなかったんだろうな。これは裁判にしてもいいレベルだ(さり気ないフォローをする俺)」ピポポ

「ねえお願い!!! そんな事いいながらケータイを取り出して110をプッシュしないで!!!
 え、なに? 『別にやましい事がないなら大丈夫だろ』って?
 いや、まぁー、そりゃそうだけど……
 だから! 電話しようとしないでッ!!! 分かった!! 本当のこと言いますッ!!」


「……実は俺もちょ〜〜〜っとだけ見てました! マジでちょっとだけだからな!!
 『ヤベェwwwあの娘、胸主張しすぎwwww マジわがままおっぱいなんですけどwwwwwwwwww』とか
 思ってないからッ!!!」


「………(無言でどこかに電話をしようとする国木田)」ピピポ
 

「だからっ、捕まっちまうから携帯プッシュすんのやめて〜〜〜!!!!」
100 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 12:13:42.56 ID:4xAzZRE0

また別の日の昼休み。

「今働いてる地元のクリーニング屋、時々すんげー美人が来るんだぜ!!
 あんな店辞めてホント正解だったぜ。こっちはやさしくていい店長だしさ。
 はぁ〜〜〜、お近づきになれねぇかな〜〜(ハイテンションすぎて顔がヤバい谷口)」

「谷口の働いてるところって住宅地でしょ? その人っていわゆる人妻じゃないのかな。さすがに
 そっちの方は止めておいたほうが……(狂ってしまった級友を哀れな目で見つめる国木田)」

「むしろ良いね!!! 人妻! 響きが良い!! 
 『いやっ! 夫がいるのに。けどこの気持ちはとめられないの!!』なんて思っちゃう美人新妻最高!!」

「……いや、引くわ。お前に引くわ(薬中以上の異人になってしまった級友を蔑む俺)」

「なんでッ!! そんなこと言ってもキョンだって絶対その人みたらそう思うから!!!」



谷口ほどではないにしても、俺だって下心がないわけではないが、
どちらかというと純粋にお金を稼ぎたかった。
いつもハルヒたちに奢って、万年金欠な現状を考えたら、なおさらしたかった。
だが、そんな俺の思いを打ち砕くのもハルヒであり、

『あんた、SOS団とバイト、どっちが大切なのよ!!!』

と一度怒られたとき以来、俺は一度も切り出せていない。
つまり、現状は小遣いのみが俺の帳簿では唯一のプラス値なのだが、儚い小遣いでは
とてもじゃないが賄いきれるものではなく、まかない切れない奢り代は小・中学校時代の
お年玉貯金を切り崩してしのいでいる、というものだった。
101 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 12:19:08.63 ID:4xAzZRE0

「……バイト?」

だから、俺がバイトをしているなんて信じられなかった。
もちろんこっちの事情はまったく知らないが、ハルヒがいる限り出来ないものだと思ってたから。


「スットボケてんじゃないわよ。あんた土曜日はたくさんシフト入れてるじゃない。確か10時から
 スーパーじゃなかったっけ。それとも休んできたの? 
 けど休みを取れる日は使い切ったって言ってたし、サボるつもり?」

サボるも何も、そのバイト先のスーパーも知らないから行けないんですけど。
ここは何とか凌がないと。

そう思って古泉に目を向けてみるが、


「大丈夫ですよ、こちらは長門さんと協力して分析しておきますので、心置きなく勤労の義務を
 果たしてきてください」


いいから助けろ!!!
102 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 12:27:25.01 ID:4xAzZRE0

だめだ、古泉はこの状況を楽しんでやがる。あいつに何言っても無駄だ。

だが、長門は『我、我関せづ』とでも言わんばかりに、無表情で虚空を見つめているし(文字どおり
宇宙と交信でもしているのだろうか?)朝比奈さんに至っては目線の意味も理解していないのだろう、
何故か朱のさしたほほに手を当ててくねくねしている。意味不明。

それに、これから何時までかは分からないがこっちの世界に滞在する必要があるならこっちでの環境や
生活を把握しておかないと不味いだろう。
それなら、バイトに行っておいたほうがいい。
だが、俺はバイト先の住所なんて知らないし……。

そんな俺の脳内での苦渋の決断(約2秒ほど)の結果、


「……学校から直接行くの初めてだから、道が良く分からないから案内してくれないか?」


『この言い訳は苦しすぎだ……』と思いだしたのは言いながら。
言い終わって残ったのはズーンとした沈黙だけ。

そして、その沈黙を破ったのは、


「いいわよ?」


何を察したのか。返ってきたのはハルヒの、疑問形な肯定の返事だった。

103 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 12:41:12.48 ID:4xAzZRE0

と言うことで、俺はハルヒと二人で大きな通り(明治通りと言うらしい)を歩いている。

綺麗に舗装されているが、俺の知っている道路と同じ、相変わらずのアスファルトの感触。
地面の一般道の上に、コンクリートで出来た巨大な高速道路が影を落とす。

「――……の。」

さすがは東京、地元の道の10倍以上の車が走っているが、排気ガス独特の臭さはなく、
隣を歩くハルヒの呼吸音さえ聞き取れそうなほど静かだった。
未来の世界は電気自動車だらけなのか……

「――ちょ……ぇ。」

道路脇にはファミレスやコンビニなどの一般商店が並び、駐車場もある。
見知ったチェーン店や、マンションの下にある小洒落た喫茶店まで様々なものが混在している。

結局未来の街も、よく漫画である様な、白くてきれいに整頓されたものにはならなかったのか。
あんなにどこまでも進んでいくかのように見えた人類の進歩も、道がちょっと綺麗になって、
車が静かになって、携帯が首にかけられる程度までしか行かなかったのだな――


「ねぇって言ってんのよ!!!」


ゴスッと言う効果音とともに、人間の知性の限界に人類という種の生存価値と見るという大きな
哲学的命題を考察していた俺のみぞおちに、ハルヒの振り回した鞄が突き刺さる。
瞬間、呼吸が止まり、喉から息が強制的に吐き出される。
呼吸とともに止められた思考が回復したのは、道路際でよろめき崩れ、目の前で仁王立ちしている
ハルヒに殴られうずくまっているという原因と現状の確認が済んでから。

いってーな、この野郎ッ!!!


「何度も呼んでるのにシカトしてんじゃないわよ!!」
104 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 12:50:05.15 ID:4xAzZRE0

痛みが少し楽になってから立ち上がる。いてぇ……


「着いてきてあげたんだから、さっさと済ませなさいよ」


――は?


「何を?」

向かい合うハルヒの言った言葉の意味が分からなかった俺は自然と聞き返していた。
するとハルヒも訳が分からんと言うような顔をした。


「何をって、あんた。何か話があったからあたしに着いて来るように言ったんでしょ?」

いや、純粋に道案内を頼みたかったんだが。

「なに言ってんのよ。あんた毎回学校帰りにそのままバイト先に直行してるのに行き方わかんない訳が
 ないじゃない。それに、ニューロリンカーのナビゲーションシステムもあるし。」


「あんたの嘘は下手すぎなのよ。きっと今みんな部室でなんか言われてるわよ」

あぁ……。やっぱりあの言い訳は無理があったか。
しかもなにか変な誤解が生じているらしい。
あと、長門たちはきっとこれからどうするか対策を建ててくれているだろう。そう願いたい。


「それともなに? 本当に道案内させただけ? あんた何時から若年性アルツハイマーなのよ。
 健忘症は学校の授業内容だけにしておきなさい」

ハルヒは呆れ3割、怒り2割、そして何かを待っているような感じが5割な表情だった。
105 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 12:56:49.20 ID:4xAzZRE0

まさしくその通り、道案内させたかっただけなんだが、


『実は僕、"キオクソウシツ"なんだ〜』

『そっか〜じゃあ私が案内してあげる〜』


素直にゲロッても、こうはうまくいきそうにはない。なぜなら、


「そんなくだらない冗談言うわけないわよねぇ。言ったら殺すから」


……とハルヒは凄んでいるから。
ヤバい、目がマジだ。
とりあえず適当に話を振らないと。


まさか『実はこの世界は平行世界で俺は別の世界から来た人です』なんて言えないし。
あんなことの後だ、話のネタといったらこれしかないだろう。

「なぁ、あのBBってソフトなんだけどさ、――」
106 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 13:04:40.85 ID:4xAzZRE0

そう切り出すと、ハルヒの表情がかすかに曇った気がした。

「――、何かおかしくないか? その、そんなアプリを無料で配ってたりとか」

そう俺が尋ねると、ハルヒは返答する。

「何もおかしくはないわよ。無料ゲームなんてそこら中にあるじゃないの」

広告満載だったりアイテム課金だったりするけどね、とハルヒ。

「ただ、メールで送られてきたってのにはビックリしたわ。あんな配布方法は初めてよ」

「そうか……」



……???
あれ? 何かおかしくないか?
107 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 13:09:16.29 ID:4xAzZRE0

「……で、わざわざ連れ出しておいて、そんなことを言いたかったの?」

ハルヒの声音には明らかな不快感が混じっている。

「いや、違う。違うんだ……」



ハルヒのいう言葉に違和感を感じる。ほんの微かな違和感。


ここで会話が途切れたら、多分ハルヒは案内途中で帰ってしまうだろう。それは避けたい。
それに、今あるこの違和感が、気になる。


108 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 13:10:31.63 ID:4xAzZRE0

俺の沈黙をどう捕らえたのか、わからないが、ハルヒは話を続けた。

「今更やらない何て言わせないわよ」

「言わねぇよ」

「それにしても、BBの容量すごく重かったわね。メモリの3分の1は使ってるわよ」



ただ、どこかおかしい。
何かがずれている。俺とハルヒが。それとも俺と世界が?



「ニューロリンカー用≪VRゲーム≫でこんなに重いのは初めてだわ」



……≪VRゲーム≫?


109 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 13:12:48.38 ID:4xAzZRE0


 ――何もおかしくはないわよ。無料≪ゲーム≫なんてそこら中にあるじゃないの――

 ――すっごい≪ゲーム≫なんだと思ってたらうんともすんともしないじゃないの!!!――

 ――早速みんなでやりましょうよ。もちろん≪ゲーム≫はあたしのフォルダの中にあるわ――

 ――新しい≪VRゲーム≫よ。この前持って来たやつよりも面白そうなのが手に入ったのよ――



 ――『アクセル・ワールド』は、主人公の少年・ハルユキが黒雪姫と呼ばれている
     ヒロインの少女から『ブレインバースト』と呼ばれる謎の≪ゲーム≫を受け
     取り、そのゲームを通じて主人公の成長する様子を描いた小説だそうです。――


≪ゲーム≫……。


「なぁ、ハルヒ」

「な、何よ、そんな改まった顔して」


俺が改まった顔をしているのかどうかは鏡がないから分からないが、それでも真剣な表情
をしているだろう、ということは分かる。

対するハルヒは強張っており、何故か少しほほが赤くなっている気がする。

いつの間にかに俺たちは歩道の真ん中で向かい合っていた。
迷惑極まりない行為だということは分かるが、歩行者は俺たち以外ほとんどいなかったし、
俺はどうしてもハルヒに聞かなくてはいけないことがあったんだ。不問にしてくれ。


すぅ〜っと息を吸って、俺はそれを吐き出す。そして、何かを足で踏みつけた。




「どうしてお前は『ブレイン・バースト』が≪ゲーム≫だって知っているんだ?」




110 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 13:15:27.40 ID:4xAzZRE0


ハルヒは、パチパチと目を白黒させている。


俺や長門、古泉や朝比奈さんはそれを知っている。
なぜなら古泉がハルヒが来る事前に説明をしていたからだ。

だから、この違和感に気づかなかった。

ハルヒが俺たちにBBを見せた時。
インストールしている時。
インストールさせてる時。

会ってから、ハルヒはずっとBBを≪ゲーム≫と言い続けた。


「………?」

ハルヒは、まったく訳が分からないという表情をしている。

「何が言いたいのよ?BBが≪VRゲーム≫なのは当り前じゃないの」


「いいや、違うね」

当り前じゃないんだよ。
少なくとも、この世界のお前は。
知っているわけがないんだ。

何故なら――


「誰も、取説にさえも、BBが≪ゲーム≫だなんて言ってないじゃないか」


そう、ハルヒがそれを知りえたはずがない。

ハルヒに送られてきたメール(取説)には、どこにもBBが≪ゲーム≫であるなんて
一言も書かれていない。
それに、その中ではBBが≪ソフトウェア≫としか言われていない。
ハルヒがインストール済みなら分かるかもしれないが、まだしていなかった。

我ながら自分に驚くほどの注意力と記憶力だ。

111 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 13:17:35.76 ID:4xAzZRE0

矛盾している。

先ほどまでの部室での挙動、例えばBBをインストールした時は、BBのことは一切詳しく
は知っていた様子ではなかった。それは今も変わらない。

でも、ハルヒはBBについて知っているかのようなことを言っている。
それもまるで、意識下で、無意識に。
元の世界のハルヒは原作を読んだらしいのでそれを知っている。

……つまり、こっちのハルヒとあっちのハルヒは…?



「―――ッッッ!!?」


ようやく俺の言葉の意味を理解したのだろうか、唐突に鋭い声を上げる。


「……そんな、えっ? ――でも、だって」


「訳が――分からない……!?」



「なんで? 何で!? なんでッ!!!」



「当り前じゃないッ!! どうして!? ――!?」




「まるで、あたしが。 あたしがおかしいみたいじゃないっ!!!」




112 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 13:18:48.29 ID:4xAzZRE0

ヤバいッ!! 

そう思った時にはもう遅かった。
俺は自分が踏んでいるものが地雷だということに気付けず、もうすでに
足を上げてしまっていた。


目の前に立っていたはずのハルヒは、頭を左右に大きく振り、抱えん込んで
その場にしゃがみ込む。


「違うわッ、偶然よ!!! でも、わかんないのぉ……」


ヒステリーを起こしたかのように喚き叫ぶ。



「あたしはおかしくなんかないッ!!!」


「おかしいのは――」

113 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 13:21:27.88 ID:4xAzZRE0

だが、ハルヒはそう言い掛けると、立ちあがった。

「………」

先ほどまで大声を出して喚いていたとは思えないほど、普通に。
その立ち姿はそれまで何もなかったと言わんばかりに、静かに。
ひょろひょろ立ちあがったハルヒの表情を見てみると、無表情。

「………」

「………」

「………」

「……?」

訳が分からないのは俺だった。
暴れだしたハルヒを何とかしようとしていたら、急に元に戻って。
いや、これは元に戻ったのか?


「――帰るわ」


今まで喚いていて、急に閉じたハルヒの口から、そう聞こえた。
その立った一言を言い終えると、今来た道を、歩き出した。

俺は、ハルヒを呼び止めようとし、ハルヒの背に手を伸ばす。


「おいっ、ちょっとハルヒま―――――――









114 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 13:23:20.03 ID:4xAzZRE0

「――あっ!」


そういえば、今何時だっけ?
ヤベっ、ハルヒが教えてくれたバイトの時間に間に合わないかもしれない。


「確か、この道の交差点を二つ通り過ぎたところだったな」

     ・・・・ ・・・
ハルヒの言われたとおりに行ってみると、そこには俺の地元(西宮)では
見かけたことのない、おそらくチェーンだと思うスーパーがあった。

時刻は10時の2分前。
ギリギリセーフ……だと思う。

店に少し入ってみると、スーパーのロゴの入ったエプロンをつけた初老の
男性が声を掛けてきた。
名札を見てみると、店長の肩書がある。

「今日は来ないかと思ってしまったよ」

「すいません、寝坊してしまって……」

適当にありそうな言い訳でやり過ごそう。

「いやいや、時間には間に合っているからいいよ。ただいつもはもっと
 ゆとりを持ってきてくれるから、今日はどうしたんだろうと思ってね」

それじゃ、今日は朝のセールで売れた野菜から陳列して、と店長が言う。

よかった。総菜作り係りだったら、俺の指のソテーが並ぶところだった。
115 :何で、「・」がうまく付かないの(泣) [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 13:24:51.48 ID:4xAzZRE0

それから4時間、4時間も俺は働かされた。

幸いなことに、勝手のわからないレジ係や総菜係ではなかったが、バイト中
ずっと商品の陳列と在庫の整理だった。

しかも陳列係が俺ともう2人しかいないという無茶なシフトのせいで、4時間
ずっとマラソンをしたのかと思うほど疲れてしまった。

どうやらこのあたりは住宅街のすぐ近くらしく、昼時の混雑は兵庫では見られない
程のものだった。



絶え間ない客と、勝手のわからない仕事に疲労困憊だった俺は、自分のシフトが
終わるとすぐに控え室のベンチに仰向きに倒れこんだ。
ついでに、右腕で目を覆い、いつもの昼寝の体勢になる。
ちょっとだけだから。

背中ちょ〜つめたくて、きもちいい〜〜。

もうちょっとこうしていたいな。
116 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 13:26:28.61 ID:4xAzZRE0

はぁーっと息を吐いてみる。

生まれて初めてのバイトは想像以上にきつかったが、かなりの充実感がある。
あと、このバイトを通じて俺はかなりこの世界の技術が進んでいることを知った。


仕入れ品は全てこの店のネットワークに管理されているため、このネットワークに
接続された俺のニューロリンカーを通じて仕事の指示が出される。

 『ニンジンの残量が少ないため、倉庫Dラックから補充してください』

こんなメッセージと、運搬ルートの描かれた店内見取り図が仮想画面に浮かぶため
初めての仕事だったがうまくできたと思う。


思った以上に発展してんな、日本。
さっきは道がちょっと綺麗になったぐらい、なんて言ってすまん。

……あれ?そんなこと言ったっけ?


――ぴとっ――

「ぎゃぁああッッ!!!!」

「わぁぁっ!!!」


いつそんな事を言ったのか思い出そうと必死になっていると、俺の頬に突然、鋭く
激しい痛みのような感覚が走った。


慌てて、ガバッっと飛び起きる。

同時に部屋には金属が勢いよくぶつかる音と、何かが転がる音が響いた。

そして起き上った自分の目と鼻の先に、少女の顔を見つけた。


ふわりと、柑橘類のいい香りがした気がした。


117 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [sage saga]:2010/12/25(クリスマス) 13:38:53.82 ID:4xAzZRE0

どうも>>1でした
クリスマスいかがお過ごしですか
ちなみに私は部屋でDVD見て過ごしてました。
去年の一人で映画を見に行ったのとどっちのがマシだろうか……


>>95
ホント言うとおりです
なので、また少し投下しました。
ごめんなさい、本当にごめんなさい
また、終わりませんでした。
多分次に来れるのは年明けてから時間が経ってからかと
重ね重ね、すいません

>>96
まったく持ってそのとおりです。
特にキョンが古泉に対して酷すぎる気がします
一応ハルヒがおとなしいのは仕様なのですが、それ以外は
ただの作者の力量不足です
オリキャラのキャラは次ぐらいに固められれば

>>97
それは次々回あたりにわかると思います。
一応今回にも関連する描写は入れたつもりです


クリスマスイブに投下しようと思っていたのですが、間に合いませんでした
これからはリアルのほうがいよいよ忙しくなってくるのでまた何時来れるか

できるだけ早く来たいと思いますので、どうかそれまで待っていてください。

それでは、読んでくださっている皆様、メリークリスマス!
118 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [sage]:2010/12/25(クリスマス) 20:53:05.22 ID:ba697EAO
????

何かアクセルワールドもハルヒも関係なくなってきてる気ガス
いったい1は何がしたいの
119 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 17:42:41.80 ID:1yiNekAO

>>118
えっと、まずこのssは、私がAWを読んで『もっと戦闘シーンが見たいな』
『BB以外の、この世界観で何か面白いことは起こってないかな』とか思って、
その妄想を書き起こしたものです

したがって、このssの展開としては、BB主体に進んでいく【SOS団サイド】と
それ以外を中心とした【バイトサイド】の2つが平行しながら進んでいきます

また、今のところは大体3〜4つの大きな話を予定しています
そしてそれらに付随する中小の話や、全く展開上関係のないオナニ話や、
補足説明や解説は【おまけ】
として別に入る予定です

終わる頃には全部がまとまるつもりですが、幾つかエンディングの候補があって
考え中です

見て分かる通り、独自な所もかなりあるので、今書いている部分はssの
重要な設定(のつもる)です

今し方展開が遅いのは勘弁願いたいと思います
また勝手ながら、一身上の都合により年明けてから幾らかの間は投下が難しいです
「さっさと戦闘シーン出せよゴラァ!」って人は、時間を空けて来て下さい

本当にこちらの勝手でスイマセンでした
120 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! :2011/01/03(月) 22:07:34.88 ID:RxoPOWso
あけましておめでとうございます

まだ三箇日なのでギリギリお正月ですよね?
おめでたい日ですし、少し番外編(上編)を投下したいと思います
本編はどうしたって?
ごめんなさい、戦闘シーンが描きたくてやってしまいました。
本編の方は戦闘シーンと交互に書くと調子がいいみたいなんですが、
おまけの方が完成が早そうでしたので、先に出しました(←まだ未完だけど)
お年玉の代わりみたいな、気楽な感じで読んでください
121 :【おまけ】第1次アシュ×クロ戦! [sage saga]:2011/01/03(月) 22:10:55.79 ID:RxoPOWso


『バシイィィィッ!!!』



鼓膜を激しく震わす、炸裂音が響きわたり世界は変質する。


昼夜問わず店が開きネオンの輝く、眠ることのない巨大都市群、東京。
その東京都市群の中でもトップクラスの大都市である池袋と新宿に挟まれている
目白〜雑司ヶ谷は、高級住宅地を形成しているせいもあり、午前9時前という
人間活動の低い時間帯ながら、人が集積し、闊歩し、往生している。

だが、今まで動いていた人が、車が、時がその音が鳴った瞬間から動きを止めた。
都会の煩雑な騒音も、近くで聞こえていた話声もピタリと止む。
稲妻に包まれたように視界が、碧く凍りつき、他の四覚も麻痺させる。


これが、≪加速≫。

122 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage saga]:2011/01/03(月) 22:12:28.80 ID:RxoPOWso

ブレイン・バースト・プログラムがニューロリンカーを通じ、心臓から脳へと送られる
量子クロックをハック・増幅し、意識を≪加速≫させる技術。
それにより加速された意識は、1000倍にも及ぶ。
これは1秒が1000秒、つまり16分40秒にまで感覚的には感じているということだ。
人間の英知の結晶である科学が生んだ、人知を超えた力。


その≪加速≫に置いて行かれたために見ることのできない現実世界の代わりに、
日本全土を網羅する監視システム・ソーシャルカメラが捉えた映像により作られた
仮想世界が、ニューロリンカーにより脳に視覚として送り込まれている。
つまりは、この青い世界は現実ではなく、すでに仮想世界になっているのだ。

しかし、静止させられた筈の世界でたった一人の人間だけがゆっくりと動いている。
いや、仮想世界にフルダイブ(現実世界から仮想世界へ五感と思考を完全に移行
させること)している状態では、人間ではなくアバターと言うべきだろう。

そのアバターは仮想デスクトップのBBのメニューから『マッチングリスト』を開く。
アバターはやがて手を止め、登録者からとある名前を見つけ出し、にぃっと笑った。

                          ・ ・ ・
「はんっ、あんのカラス。こんな所に落ちていやがったのかよ。柄にもなく探し回っち
 まったじゃね〜か」


目当ての名前を見つけたのだろう、その名前をタッチし、新たに浮き上がってきた
ポップから≪対戦≫を選択する。
123 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage saga]:2011/01/03(月) 22:13:29.28 ID:RxoPOWso


その瞬間、音も無く再び変質して行く世界。


今までの碧い世界はだんだんと原色を取り戻していく。

だが今までは晴れていた空には暗い灰色の雲が満ち、ぽつりぽつりと雨を落としだした。
アスファルトで綺麗に舗装されていたはずの道路にはクレバスのような深い裂け目が
生じ始め、多くの量販店や飲食店の入っているビルはたちまちひび割れる。

それだけには止まらず、汚くくすみ、建物の一部や窓が割れて道路に瓦礫をまき散らす。
近くにあった新品の外車は錆び付き、もはや動きそうになかった。


何より、そばで電話していた人が、ファストフードに並んでいた行列が、待ち時間の長い
大きな横断歩道を渡っていたはずの人々が、消え失せていた。

そして最後に、そのアバターを何かが包んでいく。

その人物の肢体を、薄暗く緑がかった装甲が覆っていき、しだいに胴から首へと昇る。
アッシュグレーの装甲で覆われたアバターの素体は、以前と比べ筋肉質になった。
チャラチャラとした装飾品が腰のまわりにつき、顔にスカルフェイス・マスクがはまる。

視界の右上にHPゲージと必殺技ゲージ、メニューと自分の名前が現れる。
さらに左上にも同じゲージと敵の名前が示された。
相手の名前は≪シルバー・クロウ≫。
それを確認すると世紀末ファッションのアバターがシャウトする。


「ヘイ、ヘイ、ヘェェ―――――イ!! とっととカム・アップれよ鴉野郎!」


デュエル・アバター、≪アッシュ・ローラー≫の完成した瞬間である。

124 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage saga]:2011/01/03(月) 22:16:44.76 ID:RxoPOWso

「クソSH I I I T ッ!!!」


いかにも硬そうなブーツを踏み鳴らし、叫びまくるいかつい骸骨ヘルメット。
いつのまにかに隣には、これまた巨大ではではでしいアメリカン・バイクが置かれていた。

丸型のヘッドライトに、全体がメタリックな塗装のされて鈍く光る。
刺々しいシルエットに比べて、まるで無防備に露出したVツインエンジンはその巨大さから
いかにこのバイクの排出量がデカいかを物語る。


「≪世紀末≫ステージかと思ったら、まさかの≪廃墟≫とかメガ・リグレ――――トゥだぜぇ!」


ともに荒廃した街中のような風景のステージだ。
だがそれぞれには決定的な差がある。

夜中の殺伐として障害物が少ない方が≪世紀末≫ステージだ。
対して≪廃墟≫ステージは車などの障害物が多く、しとしとと降る雨が地面を濡らて滑りやすく、
さらに元々暗い視界をさらに妨げるため、バイクで道をブッ走って戦うアッシュ・ローラーには
とても好条件とは言えない。

そして、なにより――――


「こんの白けた感じ、美学がたんねーんだよ! 美学が!」

今日はソウ・バットだぜぃ、とぼやく。
ぼやきつつも、アッシュ・ローラーは巨体のバイクにズシッと座り、エンジンを噴かす。
125 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage saga]:2011/01/03(月) 22:18:59.39 ID:RxoPOWso

バリバリと爆音をたてていたエンジンもすぐに温まり、あまりにも莫大なエネルギーが、熱と
振動となって周囲に拡散していく。


「だが、今日こそアイツとガチでやれるみてぇだし、な」

「べ、別におめぇのためにワンウィークもスタンバってたんじゃねぇんだからな! そこんとこ、
 かってに勘違いすんなよ!」

………。

「………」

………。

「……くだんねぇこと言ってねぇで、とっととボコしてやるか」

そう言い残して走り去る、世紀末ライダーだった。
126 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage saga]:2011/01/03(月) 22:22:45.38 ID:RxoPOWso

アッシュ・ローラーは雨の中速度を落とさず、むしろさらに加速して明治通りを北上する。

敵がいる方向を指すガイドカーソルは北、正確には北東北を指している。
今いる雑司ヶ谷から考えると、おおよそ人の多い池袋駅近辺にいるのだろう。


「オラ、オラ、オラァァ――――ア!! 出て来いよクロウ!」


Vツインエンジンのまき散らす爆音に負けじとアッシュ・ローラーは声を張り上げる。
さらに加速すると、ついに速度メーターは、ついに200kmを超えた。
クレバスや瓦礫などの障害物を、時には飛び越え、時には突き破りながら走り越えて行く。

やがて、それまでの低い廃屋や荒らされた飲食店などが広がっていたのだが、南池袋に
入り朽ち掛けや建設途中のマンションやビルが増えてきた。


アッシュ・ローラーがさらに加速しようとスロットルをさらに開こうとすると、突然それまであった
ガイドカーソルが消滅した。
相手が一定の距離圏に入ると大まかな相手の位置を教えるガイドカーソルは消えてしまう。
つまり、敵はかなり至近距離にいるということだ。

慌てて周りを見渡しても、障害物はあるが人気は感じられなかった。
しかも、カーソルが消えてから数秒たっているが、バイクの早さならすぐに非カーソル圏へと
飛び出してしまっているはずだ。
だが、いまだにカーソルが消えたままだ。


(つぅことは……!)


考えるか否やグッとハンドルを左へ切り、バイクを歩道へ寄せる。
間一髪で、そのまま走っていたら通過したであろう地点に降ってきた銀色の閃光を避け――

次の瞬間、大爆発が起こった。

シャッと、派手なライトエフェクトと爆発音が押し寄せた。
爆発の衝撃で揺らめき、横転しそうになるバイクを何とか抑えつけ、ブレーキを踏み込み
転倒すれすれで回頭させる。

今まで走ってきた道を振り返ると、雨のカーテンの向こうには、爆撃を受けたかのような粉塵と
直径4〜5mの巨大なクレーターが出来ていた。
127 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage saga]:2011/01/03(月) 22:24:35.80 ID:RxoPOWso

「――っぶねぇな、おい!! 確かに『カモ〜ン』っつたけどよぉ、挨拶ヌキってんじゃねぇよ!
 ワビサビってもんをしらねーのか?」


その強襲を避け切れたのは、まさしく僥倖。

未だにグラグラと全身を揺さぶる衝撃波を出すほどの高威力攻撃。
爆発の閃光が視神経を焼き、今も脳細胞をも焼き切ろうとし、頭がくらくらする。
視界が開き、全身の感覚が戻ってくるのにも十数秒が必要だった。

それでも、アッシュ・ローラーは煽るように喚いた。


ほんのコンマ1秒でも回避が遅れてたら、あれの直撃は免れなかっただろう。
硬いアスファルトを大きくえぐる程の攻撃だ、悪ければ半分近くHPが持っていかれる。
そのビジョンを想像しただけで背筋に怖気が走り、出るはずのない気持ち悪い汗を感じた。

しかし、間一髪避けきったことによりアッシュ・ローラーはほぼ無傷で立っている。
対して敵のHPゲージを見てみると、ガリガリと3割近くが削られていた。
何故、対艦ミサイルのような攻撃をした敵がダメージを受けているのか?


つまり、先ほど降ってきた白銀の砲弾こそが敵アバターだったのだ。


攻撃した敵側は、アッシュ・ローラーがかわしたことによりモロに道路に直撃し、本当は
与えるはずだったダメージが反射されたことで、かなり大きな損傷を負ってしまった。
相手方もよほど被ダメージが深刻なのか、なかなか相手は立ちあがってこない。

しばらくして煙が晴れてくると、クレーターの中心から一人のアバターが這い出してきた。
128 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage saga]:2011/01/03(月) 22:27:02.93 ID:RxoPOWso

「ゲフッ、……ごほごほっ!」


爆煙を吸い込んだせいで、激しく咳き込んでいるそのアバターの色は、銀。
煙たいせいで鈍灰色にみえるが、バイクのヘッドライトを受けて光り輝いている。
アッシュ・ローラーよりも頭一つ分ほど小さい体躯は、今のダメージを受けてよろよろして
いるため、見た眼よりもさらに弱々しく見える。


そのアバター、――≪シルバー・クロウ≫は近くの廃車によりかかり、何とか立ち上がる。


そのフォームは人型だが、二次成長が始まる中学1、2年の男子くらいの大きさだ。
ただ、男子にしては体の線が細い。肉厚なアッシュ・ローラーと比べるまでもなく、細い。
それは体を衝撃から守る装甲が少なく、さらに薄いせいでもある。

特に胴は、肩や胸には一様装甲が付いているのだが、面積は小さい。
背中や腹に至っては、覆うものが一切なく、剥き出しにされている。
肢体にはそれなりの装甲が付いているが、なにぶん元が細いせいでやっと普通の太さだ。
右足に至っては先の衝撃により装甲がひび割れ、崩れて燻銀の素体が露出している。


「ふぅ……はぁ…。ま、まさかアメリカンバイクに乗ってるアッシュさんから『侘寂』なんて
 難しい日本語を聞くなんて思ってなかったですよ」

「オイてめぇ!! どんだけ俺様のこと馬鹿にしてんだよ! サッチ・オブァ・ビッチッ!!!」

アッシュ・ローラーはシルバー・クロウへ向けて中指を突き立てる。
やっていることは、海外でやったら路地裏に連行されてリンチされるレベルのことなのだが、
お互い大して気にしている様子はなく、シルバー・クロウは苦笑している。
129 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage saga]:2011/01/03(月) 22:28:16.66 ID:RxoPOWso

≪アッシュ・ローラー≫と≪シルバー・クロウ≫はライバルだ。

シルバー・クロウの初対戦の相手がアッシュ・ローラーであり、初敗北した。
翌日のリベンジマッチでは、アッシュ・ローラー相手に初勝利を収めた。
それからも二人は何度もなく拳を交え、勝ち、負けてきた。

だから、2人の間には何らかのつながりがあった。
現実世界(リアル)では一度も会ったことも無く、デュエル・アバター、ブレイン・バーストを
通じてしかお互いのことは一切知らないが、それでも分かることがある。



雨に粉塵が流されて視界が完全に開けると、お互いの様子がはっきりと見れるようになった。
前頭葉から顎の先まで、つるりと丸い鏡面のフェイスシールドが覆う。
かすかだが、そのゴーグルの奥に淡い眼光が見て取れる。

全体的に凡庸で、アッシュ・ローラーのバイクのような武器らしい武器も無い。
普通とは言えないその体躯の小ささを考えると、明らかに他のアバターより劣っている性能。
しいて特長をあげるのならば、いかなる光も反射するそのボディーカラーと―――。

              ・ ・
アッシュ・ローラーはそれを見て、それまでの荒々しい雰囲気から一転して落ち着きを含んだ
声でシートから降りてシルバー・クロウに喋りかける。


「……そうか、クロウ。やっとてめぇのなくした≪力≫を取り戻したのか」

銀色のデュエルアバターそのものを象徴する≪アビリティ≫。
アッシュ・ローラーとも、周りのビルの上から見てる観戦者のアバターとも違う。
シルバー・クロウだけにしかない、肩甲骨から生える、彼の存在証明そのもの。


微かに残る火花を反射し輝く、左右10枚ずつの巨大な金属フィン――白銀の翼がそこにあった。
130 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage saga]:2011/01/03(月) 22:31:38.78 ID:RxoPOWso

アッシュ・ローラーの言葉を受けて、わずかに罰が悪そうに身じろぐ。
それでも、確かにアッシュ・ローラーの目を見据えて、口を開いた。

「はい。僕の翼、取り返せました」

「そぉか、そぉかそぉか。そりゃあソウ・グッドだ」

「うん……」

シルバー・クロウは、はっきりと告げる。
それを聞いたアッシュ・ローラーは腕を組み、上機嫌そうに激しくスカルフェイスを頷かせる。
仕草こそ親友同士の語り合いのようだが、お互いの容姿が容姿なだけに、カツアゲをしている
高校生と頭を下げて謝っている小学生にも見えなくはない構図で、なかなかシュールだ。



「本当にアッシュさんのおかげで、何とか翼を取り戻すことが出来ました」

グッと拳を握りしめて、腰を折り頭を下げるシルバー・クロウ。
しかし、お礼を言われてる立場になったアッシュ・ローラーは頭を手でかき、ほんの先程までの
彼らしくなく、非常に困惑していた。
謝り倒してくる彼に何と答えればいいのか、まるでわからないように。

「アッシュさんがなかったらレイカーさんにも会えなかったし、翼を取り返すことなんて絶対に
 出来ませんでした。――なによりアッシュさんの言葉がなかったら、ずっと卑屈になったまま
 希望も夢も無くして、僕はバースト・リンカーとしても立ち直ることが出来なかった」

だから、とさらに力んでアッシュ・ローラーを見つめる。

「あなたにはいくら感謝しても足りません! 月並みな表現ですが、そうとしか言えないんです。
 僕は、あなたに救われたんだ! この恩をいかに返さんべきか!」

「時代劇かよ!! 若干セリフちげーし!」

思わず普段のツッコミとボケが逆転してしまった2人である。
131 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage saga]:2011/01/03(月) 22:33:33.74 ID:RxoPOWso

「ンなこと言われてもさ……、俺も別にそんな恩とか、そんなんいらねぇしよ」

シルバー・クロウの様子に当惑していたが、どうしようもない。
そんな空気が二人の間に漂っていたが、ふと、アッシュローラーが、


「……そういや、俺様。あん時そんなこと言ってたな」

「へっ?」


そう言うと、ニッと笑いアッシュ・ローラーは続けた。

「だからクロウ、黒のレギオンを裏切れ」

「はぁああ〜〜〜!?」

「そんでもって、うち(緑のレギオン)に来い」

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと〜〜〜!!! 何言ってるんですかアッシュさん!!」

「何もクソも、タワー・オブ・トーキョーの天辺で言ったじゃんか。『シークレット・オペ
 レーション』で、てめぇをぶっこ抜く作戦だって、俺様になにヒワいこと言わせてんだよ
 この野郎!!」

「えっ、ギャク切れ!? ここでギャク切れですか!? あなたが何にキレてるのか、一切
 わからないんですけど!」

暴れるアッシュ・ローラーと混乱するシルバー・クロウ。
ここ最近見ることのできなかった懐かしい光景だった。
132 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage saga]:2011/01/03(月) 22:35:04.88 ID:RxoPOWso

しばらくギャアギャアと喚きあっていたが、お互いに疲れたらしい。
2人ともバイクと車に寄りかかりながら肩で息をしていた。

「ハァ…ハァ…。それだけは、どうしても、無理です……。先輩に殺されちゃいます……」

「クッ…ゼイ…そうかよ。ンじゃわかったよ」


1分近くも無毛なやり取りをしたせいで、泥や煤で汚れていた。
アッシュ・ローラーは、雨に濡れてぐしゃぐしゃになった地面からブーツに飛んできた泥を
取ろうと、近くの水溜りに足を突っ込んで洗っていたが、やがて気付いたように語りかける。


「そういやぁ、てめぇ。いつレベル5になってんだよ。羽無くしてからずっとデュエルに出て
 来なかった癖に、いつのまにかに俺様を追い越してんじゃねぇよ」

「あ、これは、そのぉ……」

あまりのも突然で予想外の問いだったのか、シルバー・クロウは言い淀んでいた。

「色々あって、翼を奪い返したら偶然、一緒にたくさんのポイントが付いてきちゃって、
 そのままの流れで、なんというか……」

「そうか、じゃあお前の貸しの返し方、決めた」


アッシュ・ローラーは、その言葉を言うか否や、バイクから背を放す。
だがシルバー・クロウに向かうわけでもなく、ドシンとシートに深く腰掛けた。
しっかりとシルバー・クロウに向き合い、右人差しでビシッと指差した。



「今から、全力で俺様をブッ潰せ」


しとしとと降っていた雨は、いつの間にかに止んでいた。
133 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage saga]:2011/01/03(月) 22:36:55.38 ID:RxoPOWso

「………は?」


あまりの衝撃にシルバー・クロウは言葉を失ったが、その言葉を運ぶ声にはかつてない
静けさと圧力を含んでいる。間違いなくアッシュ・ローラーは真剣そのものだった。
グッと見据える骸骨ゴーグルの奥で、力強い燐光が光っている。


「なんども言わせんじゃねぇよ、だから俺様を倒してみろって言ってんだ」


有無を言わせぬその気迫に圧される。
シルバー・クロウは何も言えなかった。


「てめぇがホントにバースト・リンカーになれたっつぅんなら、出来るだろ?」


屋根から滴る雫の音も空気を読んだように白ける。
張りつめた雰囲気の中、ギャラリーの囁き声もしない。


「俺様がレベル4で、てめぇがレベル5とか関係ねぇ。恩とか貸しとか≪力≫とか、
 そんなちゃちい事実(こと)なんざ俺たちにの間にゃ何でもねえって分かったんなら、
                                          本気で潰しに来い」


完全な無音の中で、中指を立ててアッシュ・ローラーは宣戦布告をする。




「俺様がてめぇを、ギガ・ク―――――――ルにブッ飛ばしてやんよ!!!」


134 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage saga]:2011/01/03(月) 22:38:24.83 ID:RxoPOWso

しーん、という表現が全く当てはまる程、フィールドは静まり返っていた。
何かを落としたら、動いたら壊れてしまいそうな程に。
それを皆分かっているのか、誰も一言も喋らない。

今まで波紋を浮かべていた水溜りも、雨を垂らしていた雲も、ボロボロと崩れていた
ビルも、噴かされていたバイクのエンジンも。
この沈黙を誰が破るべきなのかを知っていて、それを待っている。

その誰かも、誰がその役目なのか分かっていない訳ではなかった。
アッシュ・ローラーに一歩踏み出すと、握り拳を突き出して宣言する。

「わかりましたアッシュさん、僕も返り討ちにしてあげます」


その瞬間――。


ドワアアアァッ!!!、という歓声が辺りのビルの屋上から降り注いだ。
辺りにいるギャラリーの声が四方から響き、共鳴して空気を揺らした。

「いいぜアッシュ―――!! お前の本気を見せてやれ―――!!!」
「クロウ!! そんな欧米かぶれに絶対負けんなよ!!!」
「久々のアシュクロ戦盛り上げてくれ〜〜〜!!!!」

そんな嬌声がアッシュ・ローラーに、シルバー・クロウに、そして2人にかけられる。
いつしかギャラリーからの声はメッセージから変わっていた。

誰から言いだす訳でもなく、観戦者は残り半分となった試合時間900秒へ向けて、
一斉にカウントダウンを始めた。

10、9、8、7。

アッシュ・ローラーはアクセルを踏み込み、ギュルンギュルンと後輪を掻き立て――

6、5、4。

シルバー・クロウは巨大なフィンを広げて、グッと腰を落として脚部に力を込め――

3、2、1―――。


「「「「「 ――FIGHT!!!―― 」」」」」


135 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage saga]:2011/01/03(月) 22:55:07.34 ID:RxoPOWso
と言う訳でした
一回で10スレしか投下できないのが不甲斐ない
アバターがどんなのか画像検索してみてって言おうと思ったら
アッシュさんどころかクロウすら出てこないとは…
次回には画像を付けて投下しようと思います

今回の時系列は本編1話後辺りです
テラ・クールなアッシュさんが描きたくて先走りました。
原作を読んでいない人にも何かあったのかうっすら分かるように
描いていますが、より詳しく知りたいとかアッシュさんテラ・クールと
思った人は近くの図書館で本を借りてみてください

それでは
136 :アッシュさんのAAはありました [sage saga]:2011/01/03(月) 22:57:04.48 ID:RxoPOWso
  //     , '  , '   //   //     //
                、
  ∧  r'  ̄`ヽ、.   \         , '       ヒャッハー!
  / .ハ_ { (;;;;フ,、(;;}  、.   \     ./        俺様がギガ・ク――ルに登場だぜぇ
 }^ト、-、 \i l.| | リー、ノ\ __ ,\==、/  , ---、
 `(_ノニニヽ\_.iソ、 ハ /{ ./   .X. ヽ /_っ>'  ̄ ̄ ̄` <
    リ:/\\ー7`ー{  | {{ ./  ゙ }}// ./´          ` <
 ヽ__∧:{o. \\__ r 、ハヾ、___,.イニ/    ____     ` <
 // ト/|_,イ`ー-- V.ヘ_}___ /  / 三7, --―--- 、` 、     ` <
   `ー'ヽノ(  {   .} }.V.ヘ===== / /三, イ´iiiiiiiiiiiiiiiiiiii\ >―――― `
 、   / \`ー`ー┴/ V.ヘO⊂//三:/iiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii\.       ┃┃┃
  `ー/   ;.:\:{{並/   ,ィV ヘ. //三Z/iiiiiiii/ ̄ ミ\iiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiヘ       ┣━
   /     ;.:.::ハ. / /  .V .ヘZ三/iiiiii/   ミ  \iiiiiiiiiiiiiiiiiiiハ     ┃
  ,'     ;::::. :ハ/ ,/   /.V⌒ヘ:/iiiiii/  , -ミ     Viiiiiiiiiiiiiiiiiハ  
  i   /i.:.:.:_,,:イ/o o / / ,V  ヘiii/  〃 _  `ヽ、   Viiiiiiiiiiiiiiiiiハ     ┃┃┃
 、  / .ノ/_,、、 \_o_/ ,' ./ニV⌒.ヘ / , '  ヽ  ヘ    Viiiiiiiiiiiiiiiiハ    ┣━
  i,/  __{,. ィ7爻、.\   ,' |ニ:;iiiV   ヘ /       ハ ハ    Viiiiiiiiiiiiii小.     ┃
    /:.:|ヨ:/爻爻ヽ_:)../} .!ニ:iiiiiヘ   ヘ__      ハ  ',   |iiiiiiiiiiiiiiii小
 | /:.:.:.:.:|ヨ、爻爻 メ::/ :∧|ニ:|iiiiii|ヘ/ ヘ::ヘ     ハ  i   |iiiiiiiiiiiiiiiiiiii|   ┃┃┃
 ` :.:.:.:.:.:.:|フ\爻メ:/  :::/三三|iiiiii|. ヘ::::/⌒ヽ.      ! |   |iiiiiiiiiiiiiiiiiii|   ┣━
  ̄ ̄\{ \ ,}爻:/  :::/ :三三|iiiiii|  ヘ_  .ハ \  .l川 川|iiiiiiiiiiiiiiiiiii|   ┃


137 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! :2011/01/04(火) 02:09:52.47 ID:Y80xPcAO

原作既読としてはハルとアッシュのその後って気になってたし、面白い
138 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! :2011/01/04(火) 04:29:52.91 ID:oYShkYUo
面白いし続き期待
139 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! :2011/01/04(火) 11:43:54.67 ID:iqC.go20
悔しい・・でも期待しちゃう!
140 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/05(水) 01:04:28.17 ID:yUHupbgo
アッシュ様視点とかマジ俺得
口調とかもそれっぽいし、ジャンプっぽい感じがいいわ〜
サッサと続きかけビームAA↓
141 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 22:39:50.68 ID:CehoVOGAO
正直微妙…
SS・小説スレは移転しました
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/ Mobile http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/

142 :真・スレッドムーバー :移転
この度この板に移転することになりますた。よろしくおながいします。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/13(木) 23:58:19.64 ID:Yg+XmarPo
>>1です
すいません、報告前に移転が完了してしまいました
移転したこのスレをなかなか見つからなかった方、
ご迷惑おかしてしまい、誠にすいませんでした
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 00:55:13.12 ID:X8weSpwro
ついこないだアクセルワールドの既刊を読み終えた俺得なスレ!

と思って開いたのはいいのだが……
なんだろう、シーン一つ一つ見れば文章上手くて面白いのに、
一本のストーリーとしてのこの話の展開の仕方がどうもふわふわしてる気がする。
>>118が既に指摘していることだが。

多分先が投下されていけばその辺も解消されていくんだろうと思う。
待ってるから頑張ってな!
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 19:59:34.92 ID:BXw/g6hao
アクセラレーテッド、ワールドが読みづらくてうっとおしい以外は
問題ないな、wwktk
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/26(水) 00:04:03.10 ID:ZGiXizgAO

ふ、ふふふ……
あッひゃッひゃッひゃッひゃッひゃッ!!!!

やってくれるなァ、原作者(川原)さんよォッ!!


いや、わたしとしては設定を固めてくれるのはいいんだ、むしろ嬉しいよ
地盤たる原作の設定が貧弱だと二次製作なんて作れなくなっちゃうしさ


けど、けどさァ!!!

このssの設定はあくまでAWのサイド・ストーリーなんですよ
今更こんなに設定を変更されたらさ、今まで書いてたプロットとか書き溜めが
全部水の泡何ですよォッ


勿論コッチが勝手にssなんて書いてるんだから

 『急に設定いじってんじゃないよ、この[ピ---]』

なんて言う権利も無いのなんて解ってます
そんな事言う奴はss作家の風上にも置けないと思ってますよ?

だからこそ、ただの原作の脇話なのに、原作の設定を破れないでしょう


だったらッ!!!!


このスレは、どうしたらいいって言うんですか……


堂本剛の、正直しんどいっ…!!みたいなッ
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/26(水) 01:18:30.58 ID:ZGiXizgAO
すいません取り乱しました
>>1です

本当にあんな事書いて誠にごめんなさい、自分で言うのもあれですが、錯乱してたのかと
いきなりあんな私情丸出しのレスをしていまい戸惑った方もいらっしゃるのでは無いでしょうか


この駄スレを読んで下さる人達に、一体何が起こったのか、>>1がどれほど馬鹿なのか、
しいては、このssがどうなってしまうのかを説明させていただけないでしょうか?


え〜、AW原作者:川原れき(←何故か携帯では漢字に出来ない、レキ石器のれきです)さんの
ツイッターをフォローしてたり、ブログを見てたり、ラノベ板の本スレを見ている方々
ならば既にご存知かと思いますが、何と、AWに(ほぼ)公式wikiが登場しました

【BrainBurst2039Wiki】
http://www22.atwiki.jp/brainburst/

原作内でも少しブレていた設定を、これを機に統一・調整するのが目的のようです


ですがコレにより、以前の原作内での設定や、その抜け穴を縫った形で進めるはずだったssの
根底が覆されてしまい、特にデュエルアバターの重要な要素だるカラーサークルが大きく
改変されたことにより、ストーリーの根幹(幻想)がぶち殺されてしまいました

多分、修復不可能な程に…

今書いているおまけには影響がないものの、本編に関してはいかなるテコ入れも受け付けず、
正直どうしたらいいのかも分からなくなりそうです

ホント、どうしょう?


ここまで見て下さった方々に心からの感謝と謝罪を込めて、深くお詫び申し上げます
とりあえず、最低限、wikiの方です自身の考えていた設定が正しいのか、もしくは修復が
可能かの判断が出来るまでは、7刊が出版されるまでは更新が出来ないか思います

 『どんな設定改変でもドンと来いや〜』

なんて思っていた自分が愚かしくて、力と意思の無さに情けなくて
新たにプロットに変更が出来るまでの暫くの間は活動を停止させて頂く事になるかと…

最後に再び、ここまで見て下さった方、わたしなんぞに期待して下さった方、期待を裏切るような形になってしまい
本当に申し訳ありませんでした
再び、このスレで会える事を心の底から願っています
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 18:17:16.10 ID:LBq4Hi6I0
そこはアレじゃね。○巻までの設定。ぼくよくわかんないで通せるんじゃね?
だいたい禁書もハルヒも新刊でたらそげふされるだろうし
みんなが抱えていることだよ…アクセラ知らない自分が言ってもあれだけど…
うんまあ頑張れ
149 :sage :2011/01/28(金) 17:18:00.95 ID:BmKauV/S0
テメェら、ずっと待ってたんだろ? 
>>1が失踪してしまわないでも済む、原作厨の敵に回らなくても済む、
そんな誰もが笑って誰もが望む最っ高に最っ高な幸福な結末(ハッピーエンド)ってヤツを!
ずっと待ち焦がれていたんだろ、こんな展開を!
乗っ取りがやってくるまでの場つなぎじゃねぇ! マネラーが登場するまでの時間稼ぎじゃねぇ!
他の何者でもなく他の何物でもなく! テメェのその手で、
たった一つのSSを書いてみせるって誓ったんじゃねえのかよ!?
ずっとずっと神作家になりたかったんだろ! 
7氏見てえにぴぃ見てえに、命を賭けたってたった一つの小説を書ききる、
そんなSS作家になりたかったんだろ!
だったらそれはぜんぜんの終わってねぇ!! 始まってすらいねぇ!!
ちょっとぐらい長いプロローグで絶望してんじゃねぇよ!!
手を伸ばせば届くんだ。いい加減に始めようぜ、>>1
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 17:20:04.10 ID:BmKauV/S0
名前ミスったぁぁああああちくしょおおおおおおおおお
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 19:07:25.87 ID:NeBCyl6AO
ドンマイ

という訳で>>1が来るまで団員のデュエルアバター名を考えよう!
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 21:05:18.24 ID:3LHtGXQAO
>>151
ちょっと待て、それこそ>>1がもう来なくなるかもしれないじゃないか















古泉は赤系だな、超能力的と穴的に
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/29(土) 14:41:16.28 ID:Y4hEniFh0
おいAUふざけんな
先読みしてんな
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/08(火) 14:43:05.42 ID:4uyhk8zAO
こんな1を励ましてくれる人がいるなんて嬉しいです
失踪するって言ってるような物だったのにレスしてくれて
もうちょっと頑張れる気がしてきました

それとは別に、今日は電撃文庫の新刊搬入日ですね
と言うわけで、AWの新刊を手に入れてきました!
やっと読み終わりました
そして、考えてたのと被りました…

切ねぇな、タク…

7巻のネタバレになるので詳しくは言えませんが、新たに登場した
とある金稼ぎ集団は、この話でも基幹だったりしたりします

けど、うんまぁ…
原作が完結していない以上、多かれ少なかれ発刊に伴い構想が被るのは仕方ないですね
なので諦めて、開き直る事にします
ついでに、サイドストーリーからセカンドストーリーに方向転換します
せっかく建てたスレも無駄にしたくないのですし

書ききる頃には、多分8巻(予定では初秋頃らしい)が出てると思いますが、
それまで読んで貰えたら幸いです
それでは、今月末までには書き溜めて来ます



155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 00:51:28.30 ID:HhgjC7/Eo
SSにおいては「細けぇ事はいい」のだ
些事に捕らわれておっては良いものは書けんぞ!

まあ正直に言うと俺が原作読んでないから、俺は気にしないってだけのこと
待ってるぜ
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/10(木) 21:50:32.78 ID:Hig5uc3AO
俺も待ってる
原作だろがSSだろが続きが楽しみなのは一緒
諦めないで……っていうのはプレッシャーかもしれないから
頑張ってね
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 11:53:18.65 ID:j2xOwHEno
あれ?
今月末はどこいった?
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/03/20(日) 03:50:24.06 ID:NeHwGDDLo
>>1生きてるか?
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/03/25(金) 07:04:09.05 ID:OqXt+wqAO
まさか被災したか?
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