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上条「ずっと一緒生きてくんだろ、美琴!?」 美琴「ごめん、当麻…」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/14(火) 00:12:57.05 ID:oVcRJwDO
初めての製速、頑張ります
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諸君、狂いたまえ。 @ 2024/04/26(金) 22:00:04.52 ID:pApquyFx0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714136403/

少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714054765/

渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

2 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 00:16:16.66 ID:stwq50co
がんばって、わたしはそんな初めての>>1を応援してる
3 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 00:18:46.69 ID:oVcRJwDO

このSSは自分が以前VIPで書いた

上条「よぉデレデレ」御坂「デ…デレデレって呼ぶなぁ//////」
ttp://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1289030501/

の続きとなります。

なので

・上琴はすでに付き合っています

・クリスマスSSですが、あまり関係ないかも……

・基本的に文章は下手なのに、地の文主体で進みます。

寛容な心で生暖かく見守って下さい……。
4 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 00:20:32.64 ID:oVcRJwDO
そしてもう既にスレタイでミスっている、恥ずかしい。

上条「ずっと一緒に生きてくんだろ、美琴!?」 美琴「ごめん、当麻…」

です


では始めます
5 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 00:20:36.83 ID:I35vyY.o
乗っ取り(?)とは思えない程上手かったの覚えてるよ
期待
6 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 00:23:16.21 ID:oVcRJwDO


12月23日。


世間は専らクリスマス直前という雰囲気に酔いしれる日。

ここ学園都市も例外ではない。
本来、科学の結晶ともいえるこの街でそんな宗教イベントが存在するというのも可笑しな話だが、そこに住む人々にとってはそんなことは気にならないようだ。

――――そんな日のとあるファミレスで……。


「そうよ! 明日はクリスマスイブじゃない!」


ガタッと勢いよく立ち上がった少女は片手は拳を握り、余った片手で目の前に座るツンツン頭の少年を指差す。


「あー、そういえばそうだな。 上条さんはクリスマスとずっと無縁だったからすっかり忘れてましたよ、」


指を差された少年は持っていたコップの水を飲み干すと、急に顔を険しくしてテーブルに身を乗り出した。


「……………それで、だ」
7 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 00:24:25.77 ID:oVcRJwDO


「な、なによ………?」

「実はな…………」


少女は立ち上がった姿勢のまま、ゴクリと喉を鳴らす。
少しだけ頬を紅くして。


(なに? もしかしてなんか予定してくれてるとか? だだだったら、クリスマスなわけだし、いろいろ……)







「…………補習があるんだ」


.
8 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 00:25:28.59 ID:oVcRJwDO






俺のハンバーグに雷が落ちた。



.
9 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 00:26:59.37 ID:oVcRJwDO

美琴「もう一回言ってみなさい」

上条「いやですね、美琴さん! これにはやむにやまれぬ事情があってですね!」


雷が落ちたというのは決して比喩ではない。
もちろん屋根のあるファミレスで雷が落ちるわけがない。
落としたのは目の前に座る一見すると普通の容姿端麗な少女。
しかし彼女は常盤台が誇る電撃使い、“超電磁砲”御坂美琴様であったりする。


美琴「補習!? アンタはいつ冬休みに入るのよ!」

上条「補習は明日までです! あと三が日が終わったら皆より早い新学期が始まります!」

美琴「明日まで………」


怒れる雷神と化していた美琴は俺の言葉を聞くと急に飛ばしていた電撃をしまい込み、今度は顔を赤くして俯いてしまった。


美琴「明日まで、なら………」


そのまま席に座り、両手を膝に揃えてモジモジしながらチラチラとこちらを伺ってくる。
どうやらデレモードに入ったようだ。

※一応説明しておくが、人一倍鈍感な上条当麻も、御坂美琴が俗に言う“ツンデレ”であるということはさすがに認識している。…………という設定。
10 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 00:30:11.88 ID:oVcRJwDO

美琴「明日も、今日と同じ時間に終わるんでしょ……?」


実を言うと俺は今日も幼女マスクの鬼畜先生の補習を受けていた。
昼休憩の時に美琴から連絡が入り、補習が終わり次第ファミレスにて合流となったわけだ。
美琴もクリスマスにまで補習が割り込むとは思わなかったのだろう。
俺も思ってなかったですよ、はい、………ちくしょう。


上条「一応そのはずだけど……」

美琴「なら大丈夫じゃない、びっくりさせないでよ、もう……」

上条「あぁ、終わってから行くのか。 でもお前、門限は?」

美琴「なんとかなるわよ」

上条「おいおい……」


美琴は相変わらず顔を赤くしたまま、テーブルに置かれたパフェをつついている。
クリスマスにまで門限がついて来るのも少し堅苦し過ぎないかとも思うが、私情で校則を破るのも良くない………はず。
11 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 00:32:57.73 ID:oVcRJwDO

美琴「ていうか、絶対なんとかするわよ。 だって………」

上条「ん?」

美琴「その、当麻との初めてのデートがクリスマスイヴなのよ? もう絶対、外せない、っていうか、えっと、その………」

上条「…」


こうなった美琴には勝てない。
なんでこの人は的確に俺の急所を突いてくるんですかね?


上条「わかった、補習が終わったら電話する」

美琴「すぐに電話すんのよ! 一分一秒だって無駄に出来ないんだから!」

上条「了解しましたお姫サマ」

美琴「お姫っ……………!!」


ボンッという効果音とともにさらに顔を赤くしたツンデレお姫さんは、言葉に詰まったのかまたパフェをつつきだす。
ぶつぶつとお姫様、とか、ずるい、だとか呟いているのは聞こえないふりをしておこうか。

さて、俺達のやり取りがまるで恋人達のようだという声がどこからか聞こえてきそうなので一応説明しておこう。

それは昨日、12月22日のこと。

数日前から様子のおかしかった美琴に振り回されたあと、白井からとある装置を使って美琴に簡単な洗脳?を施していたことを告げられた。
しかもそれはその日、つまり昨日の朝には解けているはずだったもの。

演技をしていたことがばれ、逃げ出した美琴を追いかけた俺はラブラブちゅっちゅであはーんあはーんな出来事により晴れて両想い→交際に至ることとなったわけである。
(適当とか言うな、真実は君の脳内で補完してくれ)
12 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 00:37:22.04 ID:oVcRJwDO

そして不幸なのが売り?だった私こと上条当麻は、学校帰りに名門女子中学生とファミレスデートをするほどに進化した。
この分の不幸が後々まとめて襲い掛かってくる、……………とは思いたくない。

…………と、考えているうちに目の前に座っていたはずの美琴が消えて、代わりに左腕に心地良い暖かさが。
目を向けると俺にピッタリとくっついて、いそいそとパフェをこちらの席に寄せる御坂嬢の姿。


美琴「……えへ」

上条「……あの、美琴さん?」

美琴「パフェ、食べる?」


あれ? まだ洗脳が効いてる?
13 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 00:41:04.66 ID:oVcRJwDO

美琴「……もう、明日はまた余計なことに関わって入院なんてのは許さないから」

上条「大半は不可抗力なんですがね」

美琴「いつか死ぬわよ?」

上条「そりゃ出来ないな、俺には美琴を守るって使命があるわけだし」

美琴「なっ………!!」


またも顔を染める美琴、やっぱりまだ洗脳が効いてんのか?



美琴「………ずっと、守ってくれる?」

上条「当然だろ?」

美琴「ずっと一生よ? 途中でいなくなるなんて許さないんだからね?」

上条「あぁ、約束だ」


そう、約束した。

レベル5という本来は人を守る立場である美琴。
俺が守らなきゃ誰が守るって言うんだ。


―――――そう、約束だ。


.
14 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 00:43:05.72 ID:oVcRJwDO



黒子「お 姉 様 は!!」


ところ変わって風紀委員117支部。
バン! と机を叩き肩を怒らせ震わせどす黒いオーラを発しているのは美琴の常盤台の後輩である白井黒子。


黒子「おねぇだばわぁ……またあ゛の類人猿とぉ……!」

初春「し、白井さん、落ち着いてください」



机に突っ伏した黒子をなだめているのは頭のお花畑が特徴の(比喩で馬鹿にしているわけではない、悪しからず)初春飾利、黒子の同僚である。


佐天「あはは……、泣いてるのか怒ってるのか……」


少し離れたソファーでお茶を飲みながら苦笑いを浮かべているのは黒の長髪が美しい佐天涙子、初春の同級生であり黒子達の友人である。
ついでに言うと彼女は風紀委員ではなく、この支部にはただ遊びに来ているだけだ。

突然、黒子が顔をあげ、なにかを決心したように叫び出した。
15 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 00:44:20.02 ID:oVcRJwDO

黒子「こうなったらっ!! なんとしてでも明日のクリスマスイブデート(憎悪)を阻止してやりますの!!」


まずは寮官を味方につけてぐふふ………、等と呟く黒子を尻目に、眼鏡をかけた少女が初春達にお茶を持ってきた。
黒子達の風紀委員の先輩、固法美偉。


固法「いくら恨めしいからって、人の恋路を邪魔するのは感心できないわよ?」

黒子「私は! あの腐れ類人猿よりも前からお姉様との恋路を歩んでましたの! 横取りしたのはあの猿ですわ! キィーーーーーーッ!!!」

佐天「あはは……、もうどこから突っ込んでいいのやら……」

初春「もう白井さん、机が汚れますよう……」


ガンガンと机に額を打ち付ける黒子をなだめる初春。
佐天と固法はある程度こうなることは予想していたのか、顔を見合わせて苦笑を浮かべていた。

と、そんな時。


女「あのー」


いつのまにか入口に見知らぬ女性が立っていた。
16 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 00:45:20.21 ID:oVcRJwDO

女「えーと、一応チャイム鳴らしたんですが、返事がなかったので……」

固法「すみません! えっと、ご用件は……?」


先程の黒子の暴走で呼び鈴が聞こえなかったのだろう。
固法は初春と佐天にとりあえず黒子を奥に連れていくように伝えると、急いで苦笑する女性の応対を始めた。


女「こちらの支部はあの方と仲がいいと聞きまして」

固法「あの方?」

女「えぇ、実は……」





.
17 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 00:47:13.10 ID:oVcRJwDO

場所はそのまま1時間後。


女「では、よろしくお願いします。 突然お伺いしてすみませんでした」

固法「いえいえ、ではまた明日」


深くお辞儀をして去って行く女性を見送ると固法は視線はドアに向けたまま、奥で話を聞いていたであろう3人に声をかける。


固法「どうやら117支部が表舞台に立つ時が来たようよ」

初春「あの、固法先輩、白井さんが……」


初春に言われ視線を向けると、そこにはよだれを垂らしながら笑う黒子の姿が。


黒子「うふ……ぐふぇ……ぐへへへへ……」

佐天「うわぁ……」

黒子「……さて、初春サン、佐天サン?」


しばらく不気味な笑みを湛えていた黒子は、よだれを拭くと初春と佐天に視線を移す。


初春「は、はい!」

佐天「なななんでしょうか!?」


不気味過ぎる黒子に圧倒されたのか、2人は直立し敬礼をしてみせた。


黒子「こうしてはいられませんわ。お姉様のクリスマスイブデート、友人である私達が成功するよう支えるべきですの」

「「はい?」」

黒子「善は急げですの! まずは明日のお姉様のお召しものを調達しに行きますわよ!」


言い終わるが否や、黒子は2人の手をとり人間とは思えない速さで117支部を後にした。


固法「風紀委員の仕事は……、まぁ今日はいいか」
18 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 00:51:08.64 ID:sAAFMiU0
PCからに切り替えます

話が動くまではこのまま退屈な文が続きますがご了承を…
19 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 00:53:11.27 ID:W6RuI9oo
期待!!
20 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 00:53:44.15 ID:sAAFMiU0



さらにところ変わって……。


打ち止め「ねぇねぇ、明日はクリスマスイブなんだよ、って、ミサカはミサカは貴方に報告してみたり!」

一方通行「あァ? それがどォしたァ?」

打ち止め「アナタはクリスマスに興味ないの? って、ミサカはミサカはわかりきった質問を投げかけてみたり……」

一方通行「わかりきってンなら聞くな、俺はそンなキャラじゃねェ」

打ち止め「うーでもでも! ミサカは興味ありありなんだよ! って、ミサカは……!」


とある一室で問答を繰り広げているのは、学園都市第一位の超能力者“一方通行”と、妹達(シスターズ)の官制用個体である通称“打ち止め”。
量産型能力者計画にて標的となった妹達が一方通行と共にいるのは随分不釣り合いに見えるが、様々な紆余曲折を経て2人は自他共に認める相棒(パートナー)となった。
(一方通行は頑として認めようとしないが)


番外個体「ミサカも興味あるなー、クリスマス」

打ち止め「ほらほら! ミサカ達にとって初めてのクリスマスなんだよ! もうワクワクが止まらないって、ミサカはミサカはアナタに懇願してみる!」

一方通行「あァー?」


話を聞き付けて来たのは妹達の文字通り“番外個体”。
他の妹達と違いレベル4に相当する能力を持ち、身体年齢も少し上回る。
番外個体も元は一方通行とは敵対関係だったのだが、これもまた紆余曲折を経て生活を共にするようになった。


番外個体「なんか最近街に色んな電飾が付いてるのもそのクリスマスってやつなんでしょ? ミサカも見てみたいなー」

打ち止め「それそれ! きっと夜になったらもっと綺麗になるはず! もう行きたい行きたい行きたーい!! ってミサカはー!」

一方通行「ああァうっせェ!!」

21 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 00:56:54.53 ID:sAAFMiU0


耳元で鳴り響くステレオおねだりに我慢が出来なくなったのか、一方通行はガバッと立ち上がったかと思うとなにか遠いものを見るような目でクリスマスについて語りはじめた。


一方通行「いいかァ、クリスマスってのはなァ……」

「「ふむふむ」」

一方通行「まず街は溢れかえった人混みで寿司詰め状態、真っ直ぐ歩くのもままならねェ」

「「ほうほう」」

一方通行「だからどこの店に行こうが、人が多くて入れたもんじゃねェ、そして」

「「そして?」」

一方通行「一番ムカつくのは、これみよがしに見せつけてくるカップル連中だァ」

「「…」」

一方通行「あと、“恋人いないやつら集まろうぜ”みたいにつるんでる連中も気にいらねェ」


打ち止め「…………えーと、つまりアナタにとってクリスマスは孤独との闘いで、楽しみたくても一人もつるむ友達が居なかった、ってことでいいのかな? ってミサカはミサカはアナタの心の嘆きを代弁してみたり……」



ピシッという効果音と共に硬化した一方通行。
番外個体はもう声が出ないほどの笑いに腹を抱えて転がり回っている。

22 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 00:57:58.98 ID:sAAFMiU0


打ち止め「大丈夫だよアナタ、今年からはミサカ達がいるんだから……」

一方通行「打ち止めァ……」

打ち止め「だから明日は楽しいクリスマスに、しよ?」

一方通行「うゥ…………」

打ち止め「アナタ……」

一方通行「だが断る」

打ち止め「なんでなんでなんでぇ!?」

一方通行「キャラじゃねェっつってンだろ、行きたいなら黄泉川達と行けばいいじゃねェか」

番外個体「んだよ冷たいなこのモヤシ」

一方通行「ンだとォ?」

番外個体「そのまんまの意味だよ甲斐性なし」

黄泉川「はいはいそこまでー」


あわや高位能力者同士の喧嘩が始まるかというところで、彼らの保護者である黄泉川が割って入った。


黄泉川「んで、なんの話してんの?」

打ち止め「クリスマス!」

番外個体「ミサカ達はどうしても街に出たいんだけど、どっかの誰かがついて来てくれないって」

一方通行「だァから……」

黄泉川「あぁ、だったらちょうどいいじゃん?」

一方通行「はァ?」
23 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 01:00:22.25 ID:sAAFMiU0

黄泉川「明日はお客さんが来るから、あんた達は街にでも遊びに出といて欲しいんじゃん」


鶴の一声、ではないが、居候の身分では一方通行に拒否権はない。
結局一方通行は、仕方ねェ、と頭をかきながら渋々了解した。


打ち止め「やっほーいクリスマス!」

一方通行「つーかお客さンってのは誰なンだ、珍しい」

黄泉川「学園都市の有名人さんじゃん、まぁその辺は気にしなくていいからクリスマス、楽しんできなって」

一方通行「チッ……」

番外個体(最終信号と3人で歩いてたら夫婦+子供に見えないかな? そそそそんなわけないかなな……)


24 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 01:04:05.28 ID:sAAFMiU0

12月23日、夜。 常盤台女子寮。


美琴「えへ……えへへ………」

門限ギリギリに部屋に戻ってきたお姉様はもんのすごく上機嫌だった。
鼻歌をうたいながらシャワールームから出てきたと思うと今度はクマのぬいぐるみに抱き着いてニヤニヤしながらベッドのうえを転がりだした。

こんなお姉様もとても可愛らしいのですけども、その原因があの類人猿となると心の底から殺意が湧いてきますわね。
お姉様との交際という幸せの絶頂にいるのですから、針の一本や二本刺したところでなんの支障もないはずですわよね、ふふふ……。


美琴「あ、そうだ、黒子ー」

黒子「はいですの!」

美琴「明日は夜まで出かけるから、寮官のごまかし、お願いできるかな?」


ピシッ、と、持っていた櫛の歯が数本折れ床に落ちた。


美琴「あ……、ごめん、迷惑だよね、やっぱり自分でなんとかする」

黒子「い、いえこれはお姉様に対してではなく、お姉様にそんな顔をさせるどこぞの類人猿に対しての感情の顕れですの! わかりましたわ、寮官は私がなんとか抑えますから、お姉様は心行くまで逢瀬をお楽しみくださいまし!」

美琴「逢瀬って……、うん、ありがとう黒子」

黒子「あぁお姉様! 私はお姉様から労りの言葉を授かるだけでも幸せですの!」

美琴(こういうのがなければホントに良い子なんだけどなぁ……)


………さて、明日お姉様の着る召しものは用意できた。
問題はどうやってこれを着てもらうか。
お姉様の性格からしていくら殿方の為といえどアレを着るとは思えない。
ならばやはり力ずくか、しかしレベル5のお姉様には私だけではとても……。

………味方をつけますか。

となったら、すぐに手配しなければ。


黒子「もしもし初春? 調べて欲しいことが……えぇ……もちろん風紀委員の仕事ですの……」
25 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 01:08:16.11 ID:sAAFMiU0


あと数時間で日付が変わるという時間。
黒子は隣のベッドで電話を始めた。


黒子「えぇ……金に糸目はつけませんわ……」


………普通に考えて女子中学生が言う言葉ではないような気がする。
なんかさっきから物騒なことばかり聞こえてくるような……。

まぁそんなことより、明日だ。
思えば昨日、あんな風に想いが通じ合ってからというもの、当麻は当たり前のようにそばにいてくれて。


美琴「えへへ………えへ…」


昨日のことを思い出すと、自然と顔がにやけてしまう。
仕方ないよね、まだ一日しか経ってないわけだし。


それにしても。



―――――嫌な予感がする。


26 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 01:10:06.30 ID:sAAFMiU0

漠然とした不安。

特にひっかかることはないのに、なにか大変なことが起こりそうな予感。

明日のことは楽しみだけど、なにかどこかで不安を感じている。
それはデートが失敗するだとか、嫌な奴に会ってしまうだとかそんなレベルでなく。

なにか大事なものを失ってしまうような、そんな予感。


美琴「気のせい、だよね」


当麻は自分のことを不幸だとか言ってるけど、私も結構な不幸体質だと思う。
色んなことに巻き込まれて、まあ自分から首突っ込んだのもあるんだけど。
量産型能力者計画はその最たるもの。

今では1万人近い妹がいるなんて幸せだー、なんて思えるけど。
1万人以上の妹を守れなかった事実はいまだ私の心を蝕んでいる。


美琴「もう、なにも起きないでよ……」


定期的に訪れる不安と後悔の波に、私はただベッドの中で小さくなるだけ。
世界という大いなる意思の前で、自分はこんなにも無力だ。

…………と。


美琴「あ、メール……」


枕元に置いていた携帯電話からメールの着信を告げられた。
送り主は……。
27 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 01:12:40.76 ID:uch3VQAO
タイトルからも不穏な空気が
滲(にじ)み出てるんだが…
28 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 01:15:55.43 ID:sAAFMiU0

―――――――――

from:当麻

無題

本文:おやすみ、美琴


――――――――



美琴「………えへ」


………そう、今は信じ合える人がいる。
守ってくれるって約束もした。


美琴「おやすみ、当麻…………」


こうして、美琴の今年の12月23日は終わった。


その身にふりかかる災難を知らぬまま……。



29 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 01:20:16.70 ID:sAAFMiU0
話的にきりがいいのと、この後の文を改善したいので今日はここまでにしときます。

話が動くまでにもう一悶着ありますが、クリスマスまでには完結させる予定です…

30 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 01:22:16.69 ID:W6RuI9oo
乙!
これは続きを期待せざるを得ないな。
31 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/14(火) 02:16:02.49 ID:noDfDIQ0
またひとつ楽しみなスレが始まったばい
32 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 04:51:25.67 ID:.CnxzXko
乙〜
続きが気になる…
33 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 05:36:43.72 ID:R8hY0WEo
タイトルマジでこええよ……
しかし最後はハッピーエンドになると信じてる

あと前スレ?からのファンでした
結婚してください
34 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage ]:2010/12/14(火) 12:42:32.93 ID:tnjBK0I0

 前スレも楽しませていただきました!

 タイトルやその他諸々から不穏な空気が漂ってきますが
 最後まで見届けるつもりです ハッピーエンドを信じて
35 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 13:32:05.01 ID:sAAFMiU0
昼から休みがとれたので少しだけ投下。

前スレけっこう見てくれてる人いたんですね、感謝です
36 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 13:32:42.37 ID:sAAFMiU0



12月24日、朝。


イン「とうま! 朝なんだよ!」


朝早く、風呂場に飛び込んできたのは上条宅の居候のシスター、インデックス。
こいつの頭には食うことしかないのか、まったく。


上条「あぁー、朝か……」

イン「今日は短髪が来るんだよね!? クリスマスだからもちろん御馳走作ってもらえるよね!?」

上条「それは美琴に聞いてくれー……もう少し寝る……」

イン「ダメなんだよ! また昨日みたいに寝坊して朝ご飯作る時間がない! とか言われたら、私は今度こそ死んじゃうかも!」

上条「それで死んでたら命がいくつあっても足りませんよおやすみー……」

イン「末代まで祟ってやるんだよ! がぁーーーっ!!」

上条「あぁだだだだだ! シスターが祟るとかどうなんだよ!」


俺は剃刀のような歯で噛みついているインデックスをなんとか引き剥がすと、補習の準備をするために寝室へ。
しっかし冬に風呂場で寝るのは覚悟していたとはいえ、やはり寒い。
明日からはもっとちゃんと防寒対策をしないと、魔術師に殺される前に寒さで凍え死んでしまいそうだ。


イン「ねぇとうま、聞いてる?」

上条「はいはい、でも今日は帰るの遅くなりそうだから、早めに作って置いていったんでいいか?」

イン「じゃあいらない」

上条「…………………………………………………はい?」


気のせいだろう。 いや、気のせいだろう。
たとえ天地がひっくりかえろうとも、美琴がデレデレになろうとも、あのインデックスさんが晩御飯はいらないなんて……。
37 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 13:40:08.06 ID:sAAFMiU0

イン「レンジで温めるようなご飯はいらないんだよ」

ステイル「今日はせいぜいあの超電磁砲とやらと突っつきあってればいい」


どうやら気のせいではないようだ。 そうか、これは多分魔術師のしわざだな。 
インデックスの隣に赤と黒のトーテムポールのようなものが見えるのも多分魔術師のしわざだ。
おのれ魔術師、……………………………ん?


上条「ステイル!? なんで俺の部屋に!? 不法侵入だ! 無断家宅侵入罪だ!」

イン「私が入れたんだよ、とうまが寝てる間に」

ステイル「やれやれ、朝からこの子を悲しませるなんて、君はどれだけの罪を負えば気が済むんだい?」

上条「待て、部屋の中で炎をだすな! 燃える! 燃え移るぅ!!」


なんてことだ、部屋の天井が黒く変色しちまった。
これでこの部屋を引き払うときに莫大な金がかかるのは確定……。


イン「ここにいてもクリスマスのご馳走は期待できないんだよ! てことで私はステイルと一緒に近くの教会に出てくるんだよ!」

ステイル「まぁそういうことだ、君は下品に性の日を祝ってればいい」

上条「てめえら……、しっかり負の置き土産を残しやがって……」

ステイル「そういえばもうひとつ、言っておかなければあったな」


ピッと放り出されたタバコの吸い殻をなんとか床に着く前にキャッチ。
この不良神父は俺に恨みでもあんのか、あるか、あるよな。


ステイル「今日は、少しきな臭い空気が漂ってる」

上条「は?」

ステイル「君のそばに置いておくとあの子が危ないってことだよ、詳しくは土御門に聞いてくれ」

上条「……あ、ああ、わかった」

イン「じゃあ行ってくるんだよ! 短髪によろしくね!」


………きな臭い? 
また魔術師がらみの事件でも起きてんのか?
38 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 13:44:00.57 ID:sAAFMiU0



土御門「いよー、カミやん、今日も朝から女の子といちゃいちゃかにゃー?」

上条「あぁ、なんで俺の周りの女の子はみんなスキンシップが過激なんですかね?」

土御門「愛情の裏返しってやつじゃないのかにゃー? そのうち過激なスキンシップも快楽として享受出来るようになるぜよ」


登校路を一緒に歩いているのは金髪にサングラスの土御門元春。
俺の悪友であり、悪友であり、悪友である。


土御門「そんな顔しないでほしいんだがにゃー、…………ときにカミやん」

上条「なんだ?」

土御門「…………話がある」


土御門の目つきが変わる。どうやらまた魔術方面でなにかあったらしい。
そういえばさっき赤髪のエセ神父もなんか言ってたな。
まったく、きのう美琴に危ない真似をするなと釘を刺されたのに……。


土御門「めんどくさいとは思うなよ、今回は御坂美琴にも危険が及ぶかもしれないからな」

上条「……それは聞き捨てならねぇな、なにがあったんだ?」

土御門「まだわからない、敵が魔術師であることは間違いないんだが、それ以外は……」

上条「とりあえず気をつけろ、ってことか」

土御門「…………ま、そうだにゃー。 超電磁砲も第三位の超能力者、そう簡単にはやられないはずだしにゃー」

上条「わかった、今日は気をつけとく」

土御門「よろしく頼むぜい」



39 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 13:47:17.99 ID:sAAFMiU0
>>37修正

ステイル「そういえばもうひとつ、言っておかなければならないことがあったな」

です
40 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 13:50:04.79 ID:sAAFMiU0



12月24日、午後4時。


そんなことがあったから、補習も全然頭に入らなかった………、というのはもちろん言い訳だが。
だかしかし、気をつけろと言われても俺は便利な能力も魔術も使えないわけで。
必然、いつもと変わらない日常となる。

ただ、今までと違うのは。


青ピ「ん? 校門のところに誰かおる?」


こんな不幸な俺にも彼女が出来たこと。


上条「よぉ美琴、待っててくれたのか」

美琴「うん、どうせ暇だし」


可愛い女の子が校門で笑顔で迎えてくれる。
うん、これはもう不幸じゃない。


青ピ「カミやん……、これはどういうことか、くわーーしく教えてもらえんかなぁ?」


おっと、すぐ近くで不幸が芽生える音が。


美琴「なによ、アンタそっちの気があるの? 当麻に手は出させないわよ」


ギュ、と俺の腕に抱き着く美琴。
目の前で順調に不幸が育っていく。
美琴さん、今この場所でその行動はNGだ。
そしてその勘違いもNGだ。 
41 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 13:54:27.30 ID:sAAFMiU0

土御門「カミやーん、これはもうデルタフォース解散の危機だにゃー」

上条「ちょっ! 土御門てめぇには昨日言っただろ!」

青ピ「ブ・チ・コ・ロ・シ・かくていね♪」


あぁ、今日も綺麗に不幸の花が咲いた。


美琴「やめなさい!」


獣のような目で俺に襲いかかってきた青髪ピアス、もとい変態。
しかしそれは俺に覆いかぶさる前に撃ち落とされた。


青ピ「あふぅん!」

上条「おぉ美琴様! マイエンジェル!!」

美琴「当麻は私のモノなんだから! 渡さないわよ!」

上条「その見解は少し違いま……」

美琴「アンタも男相手にフラグ立ててんじゃないわよ!」

上条「コイツとフラグ立つぐらいだったら死んだほうがマシだ!」

青ピ「なんやて!? ひどい! 僕との関係は遊びやったんか!?」

42 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 14:06:03.04 ID:sAAFMiU0

上条「はああ!?」

美琴「あ、あ、あああアンタ、言うに事欠いておおお男なんかと……!!」

上条「美琴さん!? さすがにコレはないですからね!?」


隣に立つ大男を指差し、必死に弁論。
自分でも言ってる意味がよくわからない。
というか今この場がどんな流れが出来ているのかわからない。


美琴「そ、そりゃ私は同性愛にも理解はあるから否定はしないけど……でも当麻が……」

上条「そこは否定してくださいね!? 顔赤くしてどんな妄想してるんですか!?」

美琴「でも! 今は私と付き合ってるんだから! 私だけを見てよ!」

上条「ちょっ!? なんで涙目になってるんですか美琴さん!?」

青ピ「カミやん! 僕と彼女どっちがええんや!?」

上条「美琴」キッパリ

美琴「当麻………////」

上条「そんな嬉しそうにしないでくださいよ!? そもそも前提からして間違ってますからね!?」




43 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 14:08:04.37 ID:sAAFMiU0







収集のつかなくなったデルタフォースをなんとか退け、とりあえず着替えるため寮への帰路につく。
もちろん隣には俺を窮地から救ってくれた天使付き。


上条「いやいや、先程は助かりました」

美琴「言ったでしょ、一分一秒無駄に出来ないって」


まだちょっとツンツンしているが、今の俺には光り輝いて見える。
ただ、不幸というのは重なるもの。

またも見慣れた顔が俺達の前に立ち塞がった。


黒子「見つけましたわ、お姉様」

美琴「げ、黒子………」

結標「なんで私まで…」

黒子「お姉様、なにも言わずに私について来て下さいな」

美琴「はぁ?」


立ち塞がった白井と結標と呼ばれた女の子は紙袋を手に、美琴に手招きをした。


黒子「お姉様、ちょいとこちらへ……」

44 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 14:10:51.97 ID:sAAFMiU0

渋々黒子のそばに行った美琴は警戒しながらも差し出された紙袋の中を覗く。
以下会話文のみ。


美琴「……なにこれ?」

黒子「今日のお姉様の衣装ですの」

美琴「はぁ!? 無理無理! こんなの絶対着れないわよ!」

黒子「いえいえ、お姉様に合わせて購入しましたの、きっと可愛いですわよ?」

美琴「無理! 騙されないから!」

黒子「どうしても、着ないともうしますの?」


(と、ここで黒子が傍観にまわっていた結標を呼び寄せた)


黒子「いくらお姉様といえど、レベル4のテレポーター2人を同時にお相手できまして?」

結標「報酬はちゃんと用意してるんでしょうね?」

黒子「当然ですの、しかしアナタも特異な趣味がおありですのね?」

結標「アンタに言われちゃおしまいよ」

美琴「力ずくでも、ってワケね……!」

上条「お、おいお前ら……」

45 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 14:12:28.65 ID:sAAFMiU0

美琴「いいわ! 相手してあげるわよ! ついて来なさい!」


俺が制止する間もなく、美琴は街灯や鉄筋入りのビルを使って、文字通り飛んでいってしまった。


黒子「追いますわよ!」

結標「はいはい」

上条「おおい…」

黒子「悪いようにはしませんのでご安心くださいまし、上条さんは自宅にてお姉様が帰るまでに心の準備をしていてくださいな」

上条「はぁ?」


心の準備? なんだそりゃ。
まぁ、美琴も心なしか楽しそうにしてたし、白井だし、大丈夫か。


『御坂美琴も危険が及ぶかもしれないんだからな』



…………やっぱり、追いかけるか。

クリスマスってこんなに疲れるもんだっけか?

46 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 14:13:55.20 ID:sAAFMiU0
とりあえずここまで

次でやっと話が動くかな? 思ったよりも短くなりそうです
47 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 15:38:16.28 ID:.CnxzXko
とりあえず乙!
48 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 18:38:54.60 ID:sAAFMiU0


学園都市第三位、“超電磁砲”御坂美琴は休日で無人の建設現場にいた。
その建設現場は砂と土の敷き詰められた見晴らしの良い広場と、資材置場、そして鉄骨で骨組みのみ作られている建設中のビルから成る。

超電磁砲はその広場で待ち構えていた。

レベル5、学園都市の頂点。

しかしこちらはレベル4の大能力者が2人。
勝ち目は、……………ある。


美琴「ここなら、周りを気にせず戦えるわ」


私がこのくだらない作戦に参加したのは、それなりの報酬が用意されていたから。

だがそれだけではない。

超電磁砲が第三位?
確かに彼女は学園都市の広告塔としての意味合いが強いが、しかしそれでも原子崩し達より上位とは思えない。

要するに、私は超電磁砲が気に入らない。

だから参加した。
真っ正面から超電磁砲を叩き潰してやる。


黒子「多少の怪我は仕方ありませんわよ!」


先手は、白井黒子。

持っていた針を移動させ、超電磁砲の服を狙う。
なるほど、これなら傷つけずに戦意を喪失させることが出来るわけだ。
しかしこの攻撃は超電磁砲が真上に飛び上がったために空を切る。


黒子「お姉様! 素っ裸にしてさしあげますわげぇへへへへ………!」

美琴「ふふふ、いくらテレポーターといえど、磁力で不規則に動き回る私を補足出来るかしら!?」

49 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 18:50:07.20 ID:sAAFMiU0

白井は超電磁砲を追って針を次から次へ撃ち込んでいく。
戦力を計るため私は安全圏から2人の闘いを見ていたが、なるほど、脚力で跳ぶわけではない、翼で飛ぶわけでもない磁力で不規則に動き回る敵の動きは予測が立てられない。

やはり白井一人では手に余るか。
テレポーターの戦いを見せてやる。


結標「白井! 合わせなさい!」

黒子「了解ですの!」


まずは資材置場にある鉄板を使い、超電磁砲の飛ぶ方向へ移動させる。


美琴「おぉっと!」


これは超電磁砲がすんでのところで方向を変えて避ける。
ここからだ。

さらに鉄板を数枚、超電磁砲の飛ぶ方向と、その周りに移動。
これで超電磁砲が次に飛ぶ方向は限定された。


美琴「うわっ!?」


超電磁砲はこれもかわしたが、方向を変えた先には既に白井がテレポートさせた鉄板が数枚。

スピードの出ていた超電磁砲はそのまま背中から鉄板に叩きつけられた。


美琴「きゃふ………っ!!」

結標「今だ!」


超電磁砲の体勢が大きく崩れたこのチャンスを逃すわけにはいかない。
御坂美琴を捕獲するために作戦前に渡された睡眠ガス、これを口元もしくは直接気管内に転移させればこちらの勝ちだ。

50 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 18:51:43.75 ID:sAAFMiU0

勝利を確かなものにするため、私と白井が落下する超電磁砲の背後へと自分自身を転移させた直後。

超電磁砲の身体が青白く光った。


結標「チッ……!」


10億ボルトの超高電圧を自在に操る能力、電気操作系の頂点。
その雷撃を、すんでのところで自身を転移させかわす。


美琴「いったぁ……、油断したわ……」

黒子「どうですかお姉様? 今ならまだ身体の隅々まで舐め回す程度で済ませてあげますのよ?」

美琴「………私がそんな簡単に降参すると思ってんの?」


超電磁砲が再び空中へ飛び立つ。


結標「もう一度よ白井!!」

黒子「言われなくとも!」


先程と同じく、鉄板を転移して行く手を塞ぐ。


美琴「二度も同じ手は通用しないわよ!」


御坂美琴の目の前に現れた鉄板は、雷撃によって大穴を開けられ、その威力を失う。


結標「チッ…! 白井!!」

白井「了解!!」


今度は転移する鉄板をそれぞれ10枚重ねにして質量を増やし、超電磁砲の行動を押さえ込む。



――――――はずだった。



51 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 18:54:29.33 ID:sAAFMiU0


美琴「甘い!!」


激しい火花と閃光が走り、青白い電撃と共に空に黄金色の軌跡が描かれた。

“超電磁砲”(レールガン)

高電圧によって強力な磁場を作りだし、電磁誘導で音速の3倍以上の速度で弾を打ち出す、御坂美琴にしか出来ない文字通りの必殺技。
しかも今回の弾はいつものコインではなく、先程打ち砕いた鉄板の破片。

質量はコインの数十倍、威力は――――。


美琴「“超電磁砲”の名前はダテじゃないわよ」

結標「くっ……!」


10枚重ねられ鉄塊と化していた鉄板は、超電磁砲によって粉々に砕かれていた。


美琴「自分の飛ぶ方向に鉄板が来るなら、私はそれを待ち構えてればいいってわけよ」


―――見誤っていた。

10億ボルトという電圧。

それはジャンボジェット機の機体にも穴を開けてしまう自然界最強の雷と同じ電圧。


美琴「んじゃ、そろそろこっちからもいくわよ?」


52 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 19:00:53.12 ID:sAAFMiU0


超電磁砲の身体から紫電が走る。


結標(…………今までと違うレベルの雷撃がくる!)


次の瞬間、建設現場は凄まじい電流と閃光によって満たされた。
人を[ピーーー]ほどではないとはいえ、この広いフィールド全てをカバーする電撃。

自分自身の転移距離が短い白井黒子は…………。


黒子「あばばばばばばばばば!!」


当初の予想通り、白井はここでリタイア。
だが私は建設現場のはるか上空に自身を転移することでこの攻撃をかわした。

あの雷撃は凄かったが此処までは届かない。
それにこの転移で私は超電磁砲の視界とレーダーから消えたはず。
今なら気づかれずに仕留められる……!

建設中のビルの頂上に降り立ち、催眠ガスをかまえる。
確実ではないが、超電磁砲の周りにガスを撒き散らせば効果はあるはず。


結標「……ん?」


転移させようとした時、超電磁砲が動いた。
地面から黒い砂を引き出し、つむじ風のようにして自身を覆っていく。


結標(砂鉄……? これじゃあ正確な位置がわからない……!)

53 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 19:03:04.22 ID:sAAFMiU0

砂鉄の嵐は周りの砂をも巻き込み、辺り一帯の視界を塞いでしまった。


結標「ふん……一時的に身は隠せても……!」


しばらくして砂ぼこりがやみ、超電磁砲の姿が――――――。



……………ない。



結標(まずい!!)


急いで辺りを見渡し、建設中のビルの中、鉄板や鉄骨が組み合わさって身を隠せそうな場所に滑り込んだ。

雷撃が来ないところを見ると、あちらもまだ私の位置は捉えてないのだろう。
しかしお互いに相手の居場所がわからない場合、電磁波のレーダーを持っている超電磁砲のほうが圧倒的に有利だ。

かといって下手に自身を転移させれば、超電磁砲に背中を曝してしまうかもしれない。

……動けない。


結標「……!?」


突然、目の前に砂鉄の槍が現れた。


結標(見つかった!? なんで!?)


それを紙一重でかわし、一つ下の階へ転移。
だが、砂鉄の塊はこちらの位置がわかっているかのように追いかけてくる。

54 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 19:05:06.35 ID:sAAFMiU0


結標(なんで!? 私自身のテレポートは目視でもレーダーでも追いつけないはず……!)


砂鉄の追跡から逃れるため、ビルの最上階に自身を転移させたとき。

――――――――気づいた。


結標(私はここに、追い込まれて………)


直後、肩を掴まれた。
転移はもう間に合わない。



美琴「つーかまーえた♪」



雷撃が、来る。




結標「きゃぁぁあああああ!!」







55 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 19:06:59.55 ID:sAAFMiU0





結標「く……、これが、レベル5……!」


零距離からの雷撃をくらった結標は、目の前に立つ年下の少女を見上げた。
学園都市の頂点、その第三位。


美琴「ちょっとてこずったけど、ざっとこんなもんよ」

結標「くぅ……!」

黒子「完敗ですの……」


隣にはボロボロになりながらもなんとかついて来た白井黒子。


結標「あなた、なんで私の位置がわかって……?」

美琴「あぁ、あれはね」


美琴が姿を消した直後、結標も転移によって身を隠した。
美琴に結標は捕捉出来なかったはず。


美琴「あのビル、ほとんど鉄骨と鉄板で出来てたでしょ?」

結標「あ……」

美琴「ビル全体に微弱な電流を流してたのよ、僅かだけど電流が乱れたところに敵がいるってわかるの」

結標「そんなことまで……!」


ハッキングさえも可能なほど精密に電流を操れる、それも美琴がレベル5たる理由の一つ。

56 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 19:13:35.49 ID:sAAFMiU0

美琴「ビルの中にいるってわかった時点で鉄骨使って電気流してもよかったんだけど、それじゃ芸がないでしょ?」

結標(……………完敗、ね)

美琴「で、黒子?」

黒子「はい、ですの……」

美琴「なんでこんな事までしたワケ? 味方まで付けてさ、ただあの服を着てほしいからってだけじゃないわよね?」


美琴は腰に手をあて、悪い子供を叱るような姿勢で黒子を問い詰める。


黒子「それは……」


観念した黒子が全てを白状しようとしたその時。
あとを追ってきたのか、美琴の後ろからとある人物が現れた。
さきほど置いてけぼりにした上条当麻。
建設中のビルをここまで(最上階)まで自分の足で登ってきたのだとすると、なかなかの根性だ。


上条「おいおい美琴、あんまり乱暴しちゃ駄目ですよー」

美琴「にゃ……」


ポン、と美琴の頭に手を置く上条当麻。


黒子「いまですの!」


この隙を逃さず、黒子は持っていた催眠ガスを美琴の口元に転移させた。


美琴「へ、なに? あぅ…………っ!!」

57 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 19:15:56.23 ID:sAAFMiU0

黒子の目論見通り、油断していた美琴は電撃を飛ばす間もなく催眠ガスを吸い込んでしまった。
体から力が抜け、その場に倒れこみそうになった美琴をあわてて上条が受け止める。


美琴「むきゅぅ………」

上条「美琴!!」

黒子「大丈夫ですわ、後遺症の危険のない即効性の催眠ガスですの」

上条「催眠ガス?」

黒子「えぇ上条さん、お姉様を少しだけ、お借りできまして?」

上条「美琴を? でも……」

黒子「30分でお返ししますわ、直接お部屋にお届けしますの」

上条「まぁ、なら……」


白井だし、まぁいいか、と上条は美琴を黒子と結標に引き渡す。


黒子「では上条さん、楽しみに待っていてくださいな」

結標「あーあ、負けた負けた」


にっこりと笑って美琴と共に消える黒子。
結標も後を追って消えてしまった。


上条「なんなのでしょうか、今日の上条さんの扱いは………」



58 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 19:36:55.37 ID:sAAFMiU0
休憩します

アイテムを出すかそうかで迷ってるんだけどどうしよう
59 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 19:39:14.87 ID:AWezfEgo
どこかまとめられてるとこ教えて
60 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 19:53:04.21 ID:sAAFMiU0
>>59
前作ですか?
61 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 20:15:27.84 ID:sAAFMiU0


その頃……。



Prrrrr、Prrrrr


pi


一方通行「なんだァ? 今日は忙しいンだよ」

土御門『冷たいにゃー、せっかく一緒にクリスマスという熱ーい夜を過ごそうと思ったのににゃー』

一方通行「あァ、火葬場で年越したいってンなら手伝うぜェ」

土御門『なんか最近毒舌に磨きがかかってないかにゃー?』

一方通行「そりゃ多分、同居人のせいだなァ」


チラ、と番外個体のほうを見る一方通行。
番外個体は打ち止めと共に街のイルミネーションに目を奪われているのか、一方通行の視線には気づかない。


土御門『感情豊かになってオジサン、嬉しいにゃー』

一方通行「あァそォか、多分今が人生で一番幸せな時期だろォから、今のうちに死んどけェ」

土御門『……これ以上無駄話続けると本気で傷つくから、本題に入るぞ』


一方通行はこれくらいで傷つくタマかよ、と心の中でツッコミながらも、電話からの声に耳を傾ける。
しかし仕事の話にしては急だ。

62 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 20:16:06.46 ID:sAAFMiU0

土御門『今日はずっと街中にいるんだな?』

一方通行「あァ、ガキどもが連れてけ連れてけ煩ェからな」

土御門『なら、出来るだけ第7学区にいて欲しいんだ』

一方通行「なンだ、仕事じゃねェのか」

土御門『いや、仕事だが不明な点が多すぎて具体的な対処が出来ない、ただ、第7学区が中心になりそうだということだけはわかってる』

一方通行「他の奴らは?」

土御門『既に待機済みだ、…………そうそう』


一方通行「ン?」

土御門『さっきテレポーターvs超電磁砲を目撃したんだにゃー』

一方通行「テレポーター? ……ってアイツが?」

土御門『もう一人、常盤台の白井黒子ってのもいたんだがにゃー、結果、気になるかにゃー?』

一方通行「どっちが勝とうと俺には関係ねェだろ」

土御門『ほほー気になるかー』

一方通行「切るぞ」

土御門『おおい! そりゃないぜい!』


必要な話は済んだようなので電話を耳から離し、通話を切ろうとした時、一方通行の視界に見慣れた姿が目に入った。

63 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 20:19:41.87 ID:sAAFMiU0

向こうも一方通行に気づいたのか、チッ、と舌打ちをしながらも歩み寄ってくる。


一方通行「よォ、また超電磁砲と闘りあったらしいなァ」

結標「あーもうあれは反則よ反則、なんなのレベル5って、いろいろ反則的過ぎるでしょ?」

一方通行「その口ぶりだと負けたみてェだな、しかも2人がかりで」

結標「……誰から聞いたのか知らないけど、その通りよ」


結標は小さく両手をあげて“お手上げ”のジェスチャーをして、さらにため息をついた。


結標「で? 女の子2人も連れて、随分と豪勢じゃない?」

一方通行「俺が連れ回されてンだよ見りゃわかンだろォが」

結標「へぇー、……じゃ、じゃあ私も面倒見てあげようか?」

一方通行「はァ?」

結標「どうせ第7学区うろうろするんだし丁度いいじゃない、……あ、邪魔はしないから」

番外個体「………チッ」

打ち止め「ん、人数は多いほうが楽しいよね! って、ミサカはミサカは広い心で受け入れてみたり!」

一方通行「あァ? …………ったく」

土御門『おーい』

一方通行「ンだァ? まだなンかあンのかァ?」

土御門『…………気をつけろよ』


いつにない土御門の真剣な声色に、一方通行と結標は顔を見合わせる。
もう、仕事は始まっているのだ。


一方通行「オマエもな」


一方通行はそれだけ伝えると、雪がちらつきだした空を見上げた。
………何かが起きそうだ。

64 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 20:24:20.97 ID:sAAFMiU0





私こと上条当麻は困惑していた。

テレポーター2人を見送ったあとクリスマスに染まった街を一人トボトボと歩き続け、ようやくついた自分の部屋。
玄関の戸を開け一番に目に飛び込んできたのは、部屋の真ん中に置いてある巨大な箱だった。


上条「なんだこりゃ……?」


よく見ると綺麗にリボンが巻かれ、メッセージカードまで付いていたり。


『美琴より愛を込めて』


と書いてあるメッセージカードはとりあえず保留。
なんだこれは。 怪し過ぎる。
今朝も土御門に気をつけるよう言われたのに、こんな怪しい箱を開ける馬鹿がどこにいるだろうか。

と、眺めていると箱の中から微かな物音が。


…………気になる。


開けてはならないのに開けてみたくなる、人間の性。

65 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 20:26:31.08 ID:sAAFMiU0

上条(………おのれ魔術師!!)


意を決して包装を解き、一気に蓋を開ける。
そこに入っていたのは………。


上条「みこ、と…………?」


そこに入っていたのは、御坂美琴。
俺の彼女。


美琴「んぅ……」


美琴は眠っているのか、時折身体をよじったりしている。
いや、そこは問題じゃあない。

問題は美琴の服装。

いわゆるボディコン?というものなのだろうか。
全体が赤色で、胸元と裾に白いファーのようなものが付いているのはおそらくクリスマスカラー。
肩を露出し、丈が短いので美琴の綺麗な脚があらわに……。
いや、正直に言おう。
パンツが見えている。
横を向いて眠っているので服がたわみ、慎ましい胸元もギリギリまで見えていたり……。

※「御坂美琴」で画像検索すると出てくるアレです。


美琴「ん……」


目を覚ましたのか大きく身をよじる美琴。
それによって裾が捲り上がり、腹部まであらわになる。
俺はもう目を離すことが出来ず、その様子を見守るだけ。

66 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 20:28:02.49 ID:sAAFMiU0

美琴「寒ぃ………、あれ? 当麻?」

上条「美琴………」

美琴「ちょっと当麻! 鼻血! 大丈夫!?」


美琴はまだ自分の姿に気づいてないのか、箱の中から上目使いで俺を見上げてくる。
しばらくしてあまりの寒さに自らの肩を抱いた時、ようやく気づいたのか美琴は服と同じくらい顔を真っ赤にして箱の隅へと飛びすさった。


美琴「ちょ、ちょっと待って!! なんなのよコレ!? ………ひゃあ!?」


箱の隅に行ったはいいが思ったよりも強度のなかった箱の壁は美琴がぶつかった衝撃を受けて簡単に壊れてしまい、美琴はそれとともに背中から倒れ込んでしまった。

目の前でM字開脚するサンタさん。

俺の理性はここで跡形もなく吹き飛んだ。


上条「………美琴」

美琴「ふぇ!? んぅ………!」


いまだ状況を把握しきっていない美琴の唇を、自分のそれで塞ぐ。
相手はまだ中学生? それがどうした。


67 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 20:29:27.66 ID:sAAFMiU0

美琴「だ、だめ、当麻……! まだ心の準備が……!」

上条「なに言ってんだこんな格好までして、誘ってんだろ?」

美琴「こ、これは知らない間に……! あぅ……!」


本気で嫌がる美琴を押さえ付け、あらわになった肩と首に顔を埋める。
もう自分でもなにをしているのかわからない。
ただ目の前の獲物を貪る肉食獣のように美琴の身体を漁る俺は、多分今まで生きてきた中で最低な行為をしているのだろう。
だが、止められない。

そんな時。








地響きのような巨大な爆発音と共に、部屋全体が大きく揺れた。








上条「なんだ!?」


我に帰った俺は美琴を押さえ付けていた手を離し、辺りを見渡す。


美琴「なに!? すぐ近く……!?」



68 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 20:31:15.16 ID:sAAFMiU0

直後、俺と美琴の携帯電話が同時に着信を告げる。
俺の携帯には土御門から。
美琴の携帯には白井から。


上条「もしもし!? 土御門、これは……!?」

土御門『カミやん、いますぐそこから出ろ!!』

上条「は!?」

土御門『敵の正体がわかった! その魔術師が使うのは魔術でもなんでもない!』

上条「魔術師が魔術を使わない!?」

土御門『奴が使うのは、プラスチック爆弾だ!!』



爆弾? 魔術師が?
まさか、今のも………!?


上条「ソイツの目的は!?」

土御門『カミやん自身だ! それとその近くにいる人間……!』

上条(俺と……、美琴!?)


と、突然、先に電話の終わった美琴が俺の手を引っ張った。


美琴「当麻! 行くわよ!」

上条「行くってどこに!?」


美琴の話によると、今朝、アンチスキルに学園都市第7学区に爆弾を複数設置したという電話が入ったらしい。
しかしそれ以外、設置した場所も目的もなにも言わずに切れたので、いたずら電話だろうと特に警戒しなかった。

69 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 20:33:50.29 ID:sAAFMiU0

上条「そしたら本当に爆発が起きたと………」

美琴「幸い今のところ怪我人は出なかったらしいけど、爆弾を見つけなきゃ、次は大変なことになるかもしれないじゃない!」

上条「おいおい、爆弾探すのはアンチスキルに任せるべきじゃ……!」

美琴「この人の多さと渋滞でアンチスキルの爆発物処理班がまともに動けないらしいのよ、下手に市民に知らせたらパニックになるから、私達で探すの!」


土御門の話を聞く限り、その爆弾を仕掛けたのは魔術師。
そしてその狙いは俺達。
どう考えてもこれは罠だ。
しかしだからと言って爆弾を放置すれば関係のない人達に被害が及ぶ。

選択の余地はない。




大きなため息をついて気持ちを切り替え、走り出す。




70 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 20:35:27.25 ID:sAAFMiU0













俺の人生最悪のクリスマス・イヴが始まった。














71 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 20:44:18.52 ID:sAAFMiU0
一応書きためはあったのですが、あまりに駄文なためここからはながら投下になります
ここからは比較的読みやすくなるんじゃないかな……と

ハッピーエンドかどうかは…………上条さん次第です
72 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 21:47:32.47 ID:AWezfEgo
>>60
はお
73 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 21:48:16.41 ID:AWezfEgo
>>72
はおじゃない
はい
です
74 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 22:39:36.48 ID:z7Oe/.so
>>3に書いてあるスレタイでぐぐれば一発で出ると思うぜよ

しかし寸止めで事件が起こるとか流石上やんだにゃー
75 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 22:41:15.12 ID:DMqaerY0
乙!
続き気になるな
76 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 23:14:07.97 ID:WdX/3Zgo
乙〜
77 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/15(水) 00:37:05.80 ID:KmGJvw6o
超乙!!
78 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage ]:2010/12/15(水) 01:27:08.30 ID:sX5dvx20

乙!!!! 続きが超気になります!!
79 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage ]:2010/12/15(水) 01:39:25.48 ID:sX5dvx20

 あ、アイテム出すのならどうぞ!!
ていうか話に支障がないないなら出して下さいお願いします
80 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/15(水) 01:43:14.67 ID:9b8Ve2AO
超乙です!
エロルートは!
エロルートはどうなったゥァァァァァ!
81 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/15(水) 01:52:05.69 ID:FLRTf/go
そげぶされました
82 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/15(水) 16:28:10.85 ID:QlxudEDO
てすと
83 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/15(水) 16:37:50.70 ID:QlxudEDO
携帯からも書くので酉付けときます

あと、全体を4章に分けようと思うのでここまでを「第一章」とします
今日の深夜になんとか2章終わるかな……

前作はけっこう評判が良かったみたいで、色んなところにまとめられてます
有名なとこだと、ぷん太さんや自分用まとめさんやとある魔術の禁書目録SS専用まとめさんとかにも

VIPでは入れ代わり電磁通行など他にもいくつか書きましたが、まぁそのあたりは追い追い……


しかし製速は温かい……
感謝です
84 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/15(水) 21:23:18.89 ID:Vokfg6w0
オツゥゥゥゥゥゥゥ
もっと見たいっす!この文章表現好きだ
85 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/15(水) 21:39:05.74 ID:HvLHXKoo
今一番楽しみなスレ
86 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/15(水) 21:57:21.46 ID:tRmPcYc0
なんとか、なんとかクリスマスまでに完結させるんだ……!
よし、今日はがんばって二章を終わらせる!

ながらですが投下します
87 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/15(水) 21:59:08.30 ID:tRmPcYc0

第二章「幸福を砕くもの」

88 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/15(水) 22:00:22.27 ID:tRmPcYc0




「―――――――――――――さっきはドジなだけなんて言ったけど」


「“幻想殺し”ってのがホントにあるなら

神様のご加護とか

運命の赤い糸とか


そういうものもまとめて消してしまってるんだと思うよ?」





「……ごせつめいを」




「君の右手が本物ならね、その右手があるだけで『幸運』ってチカラもどんどん消していってるんだと思うよ?」





クリスマスが聖夜だなんて、誰が言ったんだ。
少なくとも今年のクリスマスに、奇跡なんて起こらなかった。




「何が不幸って、君。そんな力を持って生まれてきちゃった事がもう不幸だよね♪」




神様でも殺せる男のくせに。

俺はたった一人の少女さえも守ることは出来なかった。




89 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/15(水) 22:01:25.60 ID:tRmPcYc0



街に出た俺達は白井から伝えられた、アンチスキルと風紀委員の捜査網が一番手薄になる場所へと走る。


上条「さっきの爆発はどこで!?」

美琴「近くの学校の運動場! もちろん冬休みで誰もいなかったみたいだけど!」


人気のない運動場。
そこで爆発させたということは。


おそらくこれは警告。

朝の電話は嘘ではないという警告だ。


先程の爆発で街は騒然としているかと思ったが、そうではなく、むしろ落ち着いていた。
その理由は、さっきから街頭の電光掲示板やモニターに流れている文章にあった。

『先程の爆発はTV撮影用の演出です』

パニックになるのを避けるためだろうが、なかなかよく出来ている。


上条「美琴の能力で爆弾を探すことは出来ないのか!?」

美琴「街中じゃ難しいわね……!」


設置された爆弾が時限式であろうと、リモート式であろうと、それは電波を発しているはず。
美琴ならそれを特定できるかと思ったが、様々な電磁波が混在する街中から爆弾が出
す電波を探し出すのはほぼ不可能だった。
やはり人海戦術で探すしかないのか。

90 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/15(水) 22:02:51.20 ID:tRmPcYc0

一方通行「おィ、三下ァ!!」


道路を挟んで向こう側の歩道から聞き慣れた声が。
美琴もそれを確認し、近くにあった看板を磁力を使って飛ばし道路を渡る。


一方通行「オマエらも“プレゼント”探しかァ?」

上条「あぁ、そっちはなにか見つかったか?」

結標「まだなにも……、これだけ能力者が集まってるってのに時代遅れな爆弾ひとつ見つけられないなんて、歯痒いわね」


この広い街の中で、探すのは小さな爆弾数個。
レベル5たる美琴の能力も、一方通行の能力も、今はなんの役にも立たない。


番外個体「それにしてもお姉さま、今日はいつにも増して凄い格好してるね?」

美琴「え………?」


なんと、美琴はさきほどのサンタコスのままで街に飛び出していた。
行き交う人の目が痛い。


「おー、なんていうかクリスマスだね」
「なに? なんかのイベント?」
「てかあれってもしかして御坂美琴じゃない? レベル5の……」
「え、マジ? なんか披露すんのかな?」
「あん? 超電磁砲?」
「結局、麦野はクリスマスもいつもの格好ってわけよ」
「超時間ないんで急いでくれません? ただでさえ超ご機嫌斜めだっていうのに…」


立ち止ったとたん、あっという間に人だかりができてしまった。

91 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/15(水) 22:04:34.32 ID:tRmPcYc0

美琴「あ………、これは、えと、……………………………っくし!」

上条「すまん美琴、上着ぐらい持ってくるべきだったな」


さすがに見てられなかったので、とりあえず俺の着ていたジャケットを手渡す。
美琴は「それじゃ当麻が寒いじゃない」とか言って拒んでいたが、俺が強引に着せると急に大人しくなった。


美琴「………えへ(当麻の匂い……)」

上条「さて、これだけ人数がいるんだ、手分けして探すか」

一方通行「それはいいが、どうやら動いてンのは俺たちだけのようだぜェ」


上条「………どういうことだ?」

一方通行「さっきからアンチスキルを見かけねェ、せいぜい交通整理をしてる程度だ」

結標「風紀委員もよ、街中は至って普通なの」

打ち止め「道行く人達もみんな楽しそうだったよ、ってミサカはミサカは話の輪に入ってみたり!」


そんなわけないだろ、と喉元まで出かかった言葉を飲み込む。

そうだ、思えば寮を出てからここまで、一度もアンチスキルとは出会わなかった。





なにかが、変だ。




92 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/15(水) 22:05:55.39 ID:tRmPcYc0

黒子「お姉様!!」

美琴「黒子! なにかわかった!?」


群集の向こうからテレポートしてきたのは美琴の後輩の白井黒子。
たしかこいつも風紀委員だったな。


黒子「あぁお姉様! なんて姿を大衆に触れさせていますの!」

美琴「アンタが着せたんでしょうが! それより、なにか進展は?」

黒子「そ、そうですの、その件で……」

上条「……………白井」


美琴には悪いが、先に俺の質問に答えてもらおう。
これは多分、そう単純な事件じゃない。

一方通行と頷きあい、白井に向き合う。


上条「白井、他の風紀委員やアンチスキルの人達はどこにいる?」

黒子「………どこに、と言われましても、爆弾の捜索に」

上条「いや、寮を出てから一度もアンチスキルを見てないから、ちょっと、な」

美琴「ちょ、ちょっと当麻、それどういう……」


どういう意味か、自分でもわからないさ

だが、嫌な予感がするのだ。

この事件はただの爆弾騒ぎじゃない。

93 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/15(水) 22:25:22.47 ID:tRmPcYc0









そして、今日二度目の爆発音が轟いた。








94 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/15(水) 22:37:38.40 ID:tRmPcYc0


音からして先程の爆発と同じくらいの規模だろう。
ビルの間から黒煙が昇る。
たしかあっちには公園があったはず……!


一方通行「チッ、どうやらおしゃべりしてる時間もねェようだなァ……」

上条「仕方ない、残りを探そう!」

美琴「黒子! 今の爆発で怪我人は……!?」


この事件には怪しいところが多々あるが、爆発が起こっていることは事実。
まずは爆弾を探し出すことが先決か。

しかし魔術師のやつ、今回はかなり派手に暴れるな。

まるで………。


黒子「………お姉様!」

美琴「どうしたの!?」




黒子「佐天さんが…………!」



95 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/15(水) 22:56:49.54 ID:tRmPcYc0





滝壺「はまづら、どうかした?」

浜面「い、いや、なんでもないよ、はは……」


とあるカラオケ店にてクリスマス真っ最中の俺は、携帯電話を開いて愕然とした。


着信記録、5件

絹旗←New!
麦野
麦野
麦野
麦野


浜面(おいおい、今日は仕事は入らないはずだろ……)


これはもう、ブ・チ・コ・ロ・サ・レ・かくていね。
さーて、人生最後に歌う曲はなんにしようかなー。

やっぱ定番で決めますか。


96 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/15(水) 23:08:17.14 ID:tRmPcYc0

誰かが部屋に入ってきた。

でも俺には見えない、聞こえない。


イントロが始まり、マイクを……………。




とられた。


俺からマイクを奪った人物は、リモコンでマイクの音量をどんどん上げていく。


さらば俺の鼓膜。






麦野「はぁまづらぁぁぁああああああーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

浜面「ぎゃああああああああああああああ!!!!」


97 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/15(水) 23:29:25.77 ID:tRmPcYc0


滝壺「むぎの?」

麦野「はーい仕事よ仕事、さっさと起きなさい起きて起きんかこの糞包茎野郎ォ」

浜面「あだだだだだだだ!!!」


ぐい、と耳を持って俺を持ち上げた女は俺の耳が奏でるミチミチという愉快な音も気にせず、そのまま俺を引きずっていく。


絹旗「私の電話さえも超無視した罰ですね、それにしても超楽しそうです」

フレンダ「麦野は要するにクリスマスで浮かれてる恋人たちをぶち壊したかっただけなわけよ…」



耳を引っ張られたままカウンターで精算を済ませた直後、視線の先を閃光が走った。


98 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 23:45:26.16 ID:Vokfg6w0
ふれんだぁぁぁぁぁぁ
99 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/15(水) 23:51:31.41 ID:tRmPcYc0





初春「佐天さん! しっかりしてください!」


目の前を血だらけの少女が運ばれていく。
既に意識はなく、友人の問いかけにも反応を示さない。

被害者は4人。
いまのところ死者はでていないが、いずれも重傷を負い、すでに病院へと搬送された。

爆発によってえぐり取られた地面と、そこかしこにべったりと付いた生々しい血の跡。


美琴は、ほとんど無表情でその現場を見つめていた。
大事な友人が運ばれていく瞬間も。
瞬きひとつせず、目だけでその様子を追っていた。


上条「…………美琴」

美琴「………………さない………」


美琴の小さな肩がふるえる。
少し俯き、前髪で目は見えないが、その口元は傷がつきそうなほど固く結ばれている。


美琴「許さない…………! こんな、無差別に人を傷つけるなんて………!」

上条「美琴……」

美琴「行くわよ、当麻。もう誰も、死なせない、殺させない」

上条「あぁ、同感だ」


100 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 00:13:10.24 ID:oIMPUjc0


麦野「あら超電磁砲、こんなとこでなにやってんのよ?」

美琴「アンタ……」


突然、俺達の前に数人の女が立ちふさがった。
どうやら美琴の知り合いのようだが、あいにく今はそんな余裕はない。


上条「悪いが急いでるんだ、通してくれ」

麦野「へえ、旦那と一緒に血だまり巡りでもしてたわけ? 趣味悪いわね」

美琴「…! この……!!」

上条「よせ、美琴! そんな奴らにかまうな!」


リーダーと思われる女の暴言に、美琴が詰め寄る。
美琴はしばらくその女を睨みつけた後、ふいっと顔をそむけ、女たちを無理やり押しのけて歩きだした。


麦野「あら、いいの? せっかく協力してあげようと思ったのに」

美琴「誰がアンタなんかに……!!」

麦野「忘れた? ウチには、爆発物のプロがいるのよ?」



フレンダ「……………………………てへ」


101 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 00:39:40.22 ID:oIMPUjc0





フレンダ「爆発の規模と爆弾本体の大きさからして、これに使われているのは軍用の高性能爆薬なわけよ」

美琴「軍用……!」


背に腹は代えられず、俺達は現場から少し離れた場所で第七学区の地図を広げた。


フレンダ「問題はこの箱なわけよ、完全な絶縁体で出来てるのよね」

美琴「!」

麦野「ここは学園都市、別にアンタじゃなくても電流を操作することのできる能力者はいくらでもいる。それに配慮したわけね」

フレンダ「加えて振動にも反応するように出来てて、うかつに持ち上げればドカンってわけよ。ほら、水平でなくなるとこの金属球が配線に触れて通電しちゃうわけ」

美琴「念動力系の能力でそれは固定できないの?」

フレンダ「できないこともないけど、根本的な解決にはならないわけよ。そう、たとえば麦野の能力なら一瞬で爆弾を消してしまえるけど」


つまり、爆弾を発見したとしても俺達では解除は出来ないということか。
しかし見つけることさえできれば、あとはアンチスキルに任せるか、最悪でも周辺の市民を避難させる余裕が出来る。


フレンダ「んで、ここからが大事なわけなんだけど」




102 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 00:49:58.13 ID:oIMPUjc0

フレンダ「こんなアナログな振動感知機、いまどき誰も使ってないわけよ」


フレンダと呼ばれた金髪の少女は、現場からぶん捕ってきた爆弾の残骸をいぶかしげに見つめる。


絹旗「そうですか? 超繊細な電子機器を使うよりは超頼れそうですが」

フレンダ「だってこの仕組みだと、他の爆弾の振動で誤作動しちゃうかもしれないじゃない?」

美琴「そっか、あれだけの爆発だと近くに置いてたら簡単に起爆しちゃうわね」



フレンダ「そう、“近く”に置いてちゃね?」




そうか。


近くには置けない。


つまりそれぞれの爆弾の設置場所は離れている。


103 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 01:05:11.57 ID:oIMPUjc0

フレンダ「もし他の爆弾も同じ仕組みで作ってあるなら、それぞれの爆弾の位置は必然的に離さなくっちゃいけないわけよ」

滝壺「ふれんだ、なんかかっこいい」

フレンダ「てへへ、んで、爆弾の振動のみならず、極力大きな振動があまりこないところに仕掛けたいから………」


フレンダは持っていたペンのキャップを外し、広げていた第七学区の地図を赤く塗りつぶし始めた。
その説明に皆食い入るように地図を見つめる。


フレンダ「高架下や大きな幹線道路沿い、建設現場の近くと今までの爆弾の振動が届いてしまういわゆる危険地帯をのぞけば……」


さきほどまで真っ白だった地図は、もうほとんど真っ赤になった。


上条「おお! これならなんとかいけそうだ!」

絹旗「ぐぬぬ、超やりますね……」

フレンダ「結局、ここまで絞れるわけよ、ただしこれは他の爆弾も同じ作りをしてるっていう前提だから確実じゃないけどね」

美琴「でも、凄い! 見直したわ!」

麦野「よし、じゃあ早くでましょ」

美琴「ね、ねぇ、麦野さん……」



104 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 01:19:26.71 ID:oIMPUjc0

美琴「なんでここまでしてくれるの……?」

麦野「………それが今回の仕事だからよ、なんか文句ある?」

美琴「仕事……」


その時、美琴の携帯電話が着信を告げた。
相手は、白井黒子。


美琴「もしもし、黒子!?」

黒子『お姉様、大変ですの! さきほど犯人から電話がありまして、すべての爆弾は午後8時に爆発すると……!!』

美琴「なんですって!?」

フレンダ「……、やっぱり次元式かぁ……」

絹旗「なにか超ひっかかることでも?」

フレンダ「箱自体が絶縁体なわけだから当然時限式だと思ってたんだけど、それっぽい装置は見当たらなかったわけよ……」

麦野「はぁ? じゃあどうやって起爆すんのよ?」




そうか。


今回の魔術師が爆弾を使うのはそういうわけか。


今は午後6時12分。

急がなければ。

105 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 01:23:41.50 ID:oIMPUjc0
や…やっぱ今夜中に第二章完結は無理……

ちょと休憩…
106 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/16(木) 04:18:35.99 ID:4ebFE6SO
待ってるんだが…まだなのか
107 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/16(木) 09:52:20.11 ID:b78yssDO
ごめんなさい寝てました…
今日は休みなので今度こそ二章完結を…
108 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 10:46:09.34 ID:oIMPUjc0





上条「もしもし、爆弾の設置場所が絞れた!」

土御門『でかしたカミやん! すぐに一方通行にも送ってくれ!』

上条「あぁ、俺達は今から〇〇通りの商店街に向かう!」


再び走り出した俺達は、携帯電話を片手に爆弾の設置が予測される地帯へ。
しかし今日はクリスマス。
人混みを押しのけながら走るのはけっこうな重労働だ。


美琴「つかまって!」

上条「え!? うぉぉ……!」


差し出された手をとった瞬間、いきなり身体が浮かび上がった。


上条「おぉ、飛んでる……」

美琴「ちょっとはしたないけど、アーケードの上を行くわよ」


ふわりと商店街のアーケードの上に降り立った俺達はまた走り出した。
アーケードは透明な樹脂で出来ているため、下を歩く人達の様子がよく見える。

向こうからもよく見えるのだろう、たまに何事かといった表情で指をさしてくる人も。
それにしてもなんか皆、美琴のほうを見てるような。


………………あ。



上条「あの、美琴さん?」

美琴「なによ」

上条「その、………パンツが、見えてます」

109 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 11:02:24.60 ID:oIMPUjc0



美琴「――――――――!!」


今の美琴の格好は言うまでもなくセクシーサンタさん。
下の人達(おもに男達)の目はもっぱらその丈の短い服の内部へと注がれていた。


美琴「……………いいからさっさといくわよ!!」


たしかに、今はパンツがどうとかいってる場合じゃない。
急がなければ人の命がかかっているというのに。

なぜか俺の目もそっちに行ってしまう……。
あ、見えた。


美琴「もしもし、黒子!? 爆弾の場所がある程度絞れたわ!」

黒子『本当ですの!? すぐアンチスキルのほうに送ってくださいまし!』

美琴「わかった!」











―――――――これが見納めになるなんて、誰が思っただろう。









110 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 11:51:21.18 ID:oIMPUjc0




目的地に着いた俺達は携帯電話を構えたまま爆弾を探す。


土御門『しかし今回の魔術師は派手だな、普通敵地でこんなに目立つのは避けるもんだが……』

上条「確かにそうだ、アンチスキルや風紀委員が動けば困るのは自分だろうに……」


いくら俺達をおびき出すためとは言っても、ここまでする必要はなかったはずだ。
なにか他の目的があるのか? だとしたらいったい何のために……。


美琴「当麻!」


さきほどから携帯端末でなにかを探していた美琴が顔をあげた。
ないかを見つけたようだ。


上条「どうした!?」

美琴「商店街の外れに、テナントが全部出て無人になってるビルがあるの」

上条「怪しいな、だがそこで爆発してもあまり被害は……」

美琴「そのビル自体を倒壊させれば十分な被害が出るわよ、これを見て」


差し出された携帯端末の画面にはなにやら数字の羅列と一本の折れ線グラフ。
頭の悪い上条さんにはわかりません。


美琴「いろいろハッキングして調べたの、これはあのビルの電気使用量をグラフ化したものよ」

上条「電気使用量? あれ、なんかいきなり増えてるな」

美琴「そう、無人で誰も入った記録はないはずなのにここ2日間だけ電気使用量が一気に増えてるの」


無人のビルに人の入った形跡。
つまり………。


上条「急ごう! 美琴!」


111 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 12:01:40.29 ID:oIMPUjc0





その頃、土御門達はとある倉庫に身を隠していた。
その隣にはステイルともう二人、インデックスと神裂火織の姿もある。


土御門「ステイル、どうやら敵の目的は幻想殺しだけじゃないようだ」

ステイル「それはもとよりわかってるさ、しかしここまでおおっぴらに動くのは感心できないね、また戦争を起こすつもりか?」

イン「ねぇ、とうまは大丈夫なんだよね?」

神裂「大丈夫です、上条当麻は爆弾ごときで死ぬような男ではないはずです」

土御門「たしかに、爆弾ごときで死んでたら今まで何度死んでることか……」


とその時、土御門の携帯が光り出した。


土御門「もしもし、一方通行か、なにか見つかったか?」


112 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 12:13:00.88 ID:oIMPUjc0



一方通行『あァ、だがなンとも言えねェな、見つけたには見つけたが……』

土御門「どうした?」



一方通行『………こいつは偽物だ』



偽物? どういうことだ?


一方通行『形は爆弾のなりをしてはいるが、ただのハリボテだァ』

土御門「……だが、今までの2発は実際に爆発して……!」

一方通行『そォだ、しかも人の目の多い開けた場所でなァ』

土御門「……!」

一方通行『なァ、そりゃ爆発させるところは人の多いところの方が効率がいい。だが、人の目があるところでそンな大層な爆弾をどうやって仕掛けたンだろォなァ?』


確かにそうだ。
しかも今は……。


一方通行『しかも今はクリスマスでいつもよりも人が多い。 三下どもを追い込むまでに誰かが見つけて触りでもしたらなんの意味もねェ』

土御門「……つまり、どういうことだ?」



一方通行『奴らは大衆の目の前で、堂々と爆弾を設置したンだよ、能力もなにも使わずになァ』




113 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 12:26:34.10 ID:oIMPUjc0





土御門は一方通行からの通話を切ると、険しい顔で見つめている三人に向き直る。


ステイル「どうだい? なにか進展は……」

土御門「ステイル、俺達も動くぞ」


サングラスの奥で土御門の目が光る。
今までは“あの”幻想殺しのことだろうから簡単には死なないだろうと思っていたが事情が変わった。


土御門「その子は頼んだ、俺達はカミやんと合流する」

神裂「わかりました、気をつけて」


こおから先はただでは済まない。


嫌な予感がする。


土御門「チッ……電話がつながらない……!」




間に合うか…………!?



114 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 12:39:26.37 ID:oIMPUjc0
ちょとお昼寝休憩
ここまででもうわかったって人いるかな?

いないことを願ってる
115 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/16(木) 12:59:16.87 ID:tJZTPmko
ところどころで入るモノローグが不穏すぎてわかるわからないどころじゃないです…
116 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/16(木) 13:36:51.42 ID:xyL5aCso
誰かさんが怪しいのはなんとなくわかる
目的はよくわからんが
117 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/16(木) 13:55:34.77 ID:wk7jCIDO
黒子が何したかったのかわからん。なんでサンタコスさせたんだ?
118 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 14:38:14.50 ID:b78yssDO
ではこのあとの展開に差し支えないところだけ

黒幕は飽くまで魔術師です
しかし原作で既存のキャラではなくオリジナル設定ですが
そして目的も飽くまで上条当麻の殺害もしくはその周囲の人間に危害を加えること
エツァリの時と同じです

黒子が美琴にサンタコスをさせたのは単純にその姿での色んな美琴を見たかったからです
119 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 15:21:25.20 ID:oIMPUjc0





閑散としたビルの中、俺と美琴の足音だけがひどく大きく鳴り響く。
一見すると廃墟のようにも見えるこのビルは一カ月ほど前にテナントが一気に退去して以来放置され続けている。
テナントが一斉に退去した理由は、ついこの前に第八学区に出来たデパートに移転したからだとか。
俺と美琴が一昨日行った場所じゃねえか。そんなタイムリーな。


美琴「当麻! あれ!」


一階を探索し終え、二階へと足を踏み入れた俺達の目に飛び込んできたのは、窓際に置かれた二つの四角い箱。
どうやらこれ以上隠すつもりはないようだ。

よく見ると隣り合った二つの箱からいくつかの窓際の柱にむけて線が延びている。
柱に視線を移すと、そこにも白い箱がくっついていた。


美琴「やっぱり、このビルごと倒壊させるつもりね……」

上条「みたいだな、間に合ってよかった」


近づいてわかったが、この爆弾には時計が着いていた。
本体の上にある液晶画面が『00:32:57』と、午後8時までの残り時間を表示している。
左から順に時間、分、秒数だ。


美琴「もしもし黒子? ひとつ見つけたわ、すぐにアンチスキルを……」


窓から目の前の通りを覗くと、楽しそうに歩いている何組かのカップルが見えた。
商店街の端にあるとはいえ、クリスマスにはそれなりの人通りがあるようだ。


上条「美琴、下に行って誘導を…………」


そう言って振り返った時、俺は自分の目を疑った。

120 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 15:25:37.60 ID:oIMPUjc0





さきほどまで、確実に三十分以上の時間を表示していたはずの時計。




だが今は。











『00:00:03』












上条「………………………美琴!!!」









121 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 15:28:41.33 ID:oIMPUjc0





美琴「へ? ……………きゃっ!?」






美琴の体を抱き込み、床に伏せる。






122 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 15:29:57.67 ID:oIMPUjc0














瞬間、俺の瞼を激しい閃光が焼いた。












123 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 15:33:45.15 ID:oIMPUjc0













ぱしゃり。












124 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 15:36:06.69 ID:oIMPUjc0




…………静かだ。




爆弾は? 爆発したのか?



美琴は……、俺の腕の中にいる。



きょとんと、俺を見上げている。




少しだけ顔をあげてみる。










爆弾は、まだそこにあった。








125 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 15:39:09.86 ID:oIMPUjc0



『00:00:00』となっているはずの時計は。

















『Merry X’mas!!』















ぱしゃり。






126 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 15:43:54.87 ID:oIMPUjc0





女「おつかれさまでーす!! 上条さん! 御坂さん!」






………………カメラ?


照明?   



マイク?




さっきまで俺達以外誰もいなかったはずのフロアには、先頭に立つ女を筆頭になにかしらの機械を持った人たちが十数人。





……………これは。




これは。




もしかして。



127 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 15:47:31.74 ID:oIMPUjc0

上条「………………………………………てれび?」




女「はい♪ びっくりさせちゃってごめんなさい! 実は今までの爆弾騒動は……」












全部、TV撮影のための演出なんです♪



















上条・美琴「「はぁぁぁああああああああああああああああ!!??」」




128 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 15:54:52.22 ID:oIMPUjc0

美琴「あ、あのあのあの………」


いまだ現状を理解できていない美琴が口をパクパクさせていると、男たちの間から見知った顔が現れた。


黒子「すみませんお姉様、そういうことですの」

美琴「え、だって、さささ佐天さんは……?」






佐天「やっほー御坂さん、騙しちゃってすみません」




血まみれの女の子さえも現れる始末。
笑顔でぶんぶん手を振る姿は正直このうえなく不気味だ。




そうか。





やられた。



129 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 16:00:48.43 ID:oIMPUjc0


女「年末の企画で、ぜひ学園都市が誇るレベル5の一人、御坂さんに協力をと思いまして」


美琴「あは、は…………」



ぺたり、と床に座り込んだ美琴。



ああ。




まったく。



アンチスキルがあんまりいなかったわけだ。


全部許可をとってある演出なのだから。





誰からかはわからないが、ひとつの笑い声を皮切りに、現場は笑いの渦に巻き込まれた。




130 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 16:02:03.22 ID:oIMPUjc0






だが。





一方通行「オマエら、いますぐここから離れろォ」








131 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/16(木) 16:02:37.51 ID:wk7jCIDO
ここは夫婦揃って説教すべき
132 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 16:04:00.05 ID:oIMPUjc0



ここで終わっていてくれれば、どんなに幸せなクリスマスだっただろうか。




俺の右手がまた不幸を呼び寄せたのか。








事件はこれだけでは終わらなかった。




133 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 16:05:30.41 ID:oIMPUjc0
用事が出来たのでちょっとはずします

ちょっと書きためてまた夜に再開します
134 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/16(木) 16:09:12.47 ID:tJZTPmko
ああやっぱり…
135 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/16(木) 18:28:02.70 ID:/EFLr0Ao
X'masじゃなくてXmasだぞ よくある語表記だから気を付けろよ
136 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 18:46:59.15 ID:oIMPUjc0
ホントだ、初めて知ったありがとう
137 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 19:13:04.16 ID:oIMPUjc0




「……アンタ、私のこと変だと思ってんでしょ」

「……どうしてさ」

「アンタは優しいから、私が、積極的に頼んだら断れないだけなのよ」

「……そう、かな」

「でも…! アンタは一緒にいてくれた…! それが、すごく、嬉しくて……!」


「だから…、私が素直なままでいれば、もっと、一緒にいれるかなって……!」


「ごめん…、自分勝手だよね、私、ホントに…」

「あのな、御坂」



なんで、もっと早く気付かなかったのだろう。
もっと早く気づいていれば……。


138 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 19:14:51.44 ID:oIMPUjc0





上条「一方通行、これはな……」


恐らくはまだ事の真相を知らないのであろう男に話しかけようとした時、俺の携帯が鳴りだした。
土御門からか、あいつもくだらねえ芝居うちやがって。


土御門『カミやん今どこだ!?』

上条「よう土御門、なんだよ、まったくくだらない冗談を……」

土御門『俺は冗談なんて一言も言ってない』

上条「はぁ? こっちではもうネタばらしされてんだよ、だから……」

土御門『ネタばらし……? ……………今すぐそこから離れろ! 早く!!』


はぁ? こいつはまだ演技続ける気か?
いくらなんでもこれ以上は……。

ため息もそこそこに、心配そうに見つめてくる美琴の頭を撫でながら振り返る。



…………ちょっと待て。




『00:00:14』



―――――――――嘘だろ、おい。



一方通行「チッ………! さっさと出ろォ! 死にたくなかったらなァ!!」

女「え? だって……そんな……!」

美琴「当麻……!」

上条「美琴、出るぞ!!」
139 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 19:25:40.75 ID:oIMPUjc0


全員が一階に辿り着いたのと同時に、頭上で爆弾が炸裂した。
ばらばらと落ちてくる破片をなんとか耐えながら出口へと向かう。


男「なんだよコレ!? 聞いてねえぞお!?」


それはこっちの台詞だ。
まさかこれも撮影の一部とか言うんじゃねえだろうな。

先に出口に辿り着いたアナウンサーが外でなにか叫んでいる。


女「ビルが………!!」


外に出た俺は、その女が指さすほうを見て愕然とした。


女「ビルが、倒れてくる………!!」


最悪なことに、ついさっきまで俺達がいたビルは、商店街の通りのほうへ傾きだしていた。
このままでは道行く人たちが下敷きに………!
なんとか一人でも、と身構える。

だが俺より先に動いた人物がいた。


美琴だ。


140 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 19:37:04.29 ID:oIMPUjc0


美琴「でやぁぁああああああ!!!」


美琴の体から紫電が走り、ビルの外壁を覆う。

傾き続けていたビルが止まった。
まさか、ビルの中の鉄筋を磁力で持ち上げているのか。


美琴「早く! 逃げて!!」


美琴の言葉に、呆然と様子を見ていた人たちが悲鳴をあげながら動き出す。
あっと言う間に通りには誰もいなくなった。

美琴以外は。


美琴「もう……ダメ……! 支えきれな………!!」


美琴から発せられていた電流が弱まり、止まっていたビルがまたゆっくりと動き出した。

このままでは美琴が……!


上条「美琴……!」

一方通行「あンの野郎ォ………!」


またも俺よりも先に動いた人物がいた。

一方通行が通りへと飛び出していく。
一方通行が力尽きた美琴を抱えあげた瞬間、それは分厚いコンクリートによって俺の視界から消えた。


141 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 20:09:15.19 ID:oIMPUjc0

倒れたビルによって辺りは砂埃に包まれ、その粉塵を吸い込んでしまった人達が咳込んでいる。

美琴は。

一方通行は……。


しばらくして収まってきた砂煙の中から現れたのは、そのどちらでもなかった。


麦野「あらら、こりゃまた派手にやったわね……」

フレンダ「ちょっと遅かったみたいだね、出遅れちゃったわけよ……」

上条「おまえら………!」

麦野「なに泣きそうな顔してんのよ、あいつらがどういうやつだか、アンタのほうが知ってるでしょうが」


麦野はそう言って砂埃が完全に収まり、かわりに現れた瓦礫の山を指す。
差された先では、まるでそれを見計らったように瓦礫が崩れ落ち、中から美琴とそれを抱いた一方通行が現れた。
そうだ、どちらも学園都市230万人の頂点であるレベル5。
ビルが崩れた程度で死ぬようなタマじゃない。


美琴「あ、危なかった………!」

一方通行「後先考えずに飛び出すからだろォが、まったく余計な手間増やしやがって」

美琴「ごめんごめん、あ、あの、もう降ろして……」

一方通行「あァ?」

美琴「お、降ろしてください! 恥ずかしいから…………!!」


わかっている。

わかってはいるけれど、俺は少し一方通行に妬ましく思ってしまったり……。

142 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 20:24:01.25 ID:oIMPUjc0


打ち止め「お姉様、大丈夫!? ってミサカはミサカは救急箱片手に問いかけてみたり……」

美琴「うん、大丈夫、ありがとね」


頭を撫でられえへへーと無邪気に笑う打ち止め。
隣では番外個体が擦り傷を負った美琴の手当てをしている。

と、姉妹の観察をしていると後ろから肩を叩かれた。


土御門「カミやん、無事だったか……!」

上条「土御門、………とステイルか、これはいったい…?」

ステイル「言っただろ、今回の敵が使うのは爆弾、そしてその狙いは君達だと」

土御門「これで終わりとは思えない、気をつけて……」




気をつけてくれ、と土御門が言い終わるが早いか、またしても。



視界の中にあった風力発電の風車が轟音とともに爆散した。


土御門「チッ…! やっぱりか!」

上条「土御門!」

土御門「いいかカミやん、かいつまんで説明するからよく聞いてくれ」



143 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 20:41:14.18 ID:oIMPUjc0

土御門「敵は魔術師だ、そして、爆弾は魔術によって起爆される」


そう。 爆弾の残骸に時限装置もリモート式の受信機も付いていなかったのはそのため。
さらに箱を絶縁体で覆うことで、おそらく俺の近くにいるであろう美琴の能力の干渉を封じた。


土御門「だが、この広範囲に散っている爆弾に、魔術で直接信号を送るのは不可能だ、つまり……」

ステイル「信号の“中継地点”となる術式が、この第七学区のどこかにあるはずってことさ」


中継地点。

魔術師が爆弾を起動させようとして発した信号はまずそこに集められ、そこから指定した爆弾に発信すりょうになっている。
つまりその術式を破壊することが出来れば、これ以上の被害は食い止められる……!


土御門「俺達は今からその術式を破壊しに行く!」

ステイル「既にだいたいの場所はわかっているが、破壊するのはそう簡単じゃない」

土御門「だからカミやんは残りの爆弾の捜索を頼む!」

上条「残りの爆弾って、また探し出すのには時間が……」

一方通行「それに関しては解決済みだ、いいかァ」


一方通行が言うには、こうだ。

爆弾の設置場所や方法からして、この犯人はおそらくテレビ局の人間になりすましている。
つまり、爆弾が設置してあるのは番組側がもともと仕掛ける予定だった場所と同じはず。

俺は少し離れた場所で呆然としている女子アナウンサーとさきほど毒づいていたディレクターに声をかけた。

144 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 21:08:53.14 ID:oIMPUjc0

女「な、なに…?」

上条「今回、爆弾の設置を担当したのは誰ですか?」

男「爆弾? あぁ、その辺りは基本的に小道具の人が…、でも、運動場と公園以外はダミーのはずなんだけど…」

女「○○さんじゃない? 小道具の」

男「あぁそうだ、でも彼はいま本社にいるからここにはいないよ」


おそらくその人が犯人か。
次は……。


上条「残りの爆弾の場所って、わかります?」

男「残りの……、ちょっと待っててくれ」


ディレクターと思しき男性はそう言って近くにあったワゴン車から一枚の地図を持ってきた。


女「のこりとは言っても、もうほとんど…」

男「そうだな、いま風車が爆発したから、残りはふたつ」

女「あ、○○ビルの屋上のは?」

一方通行「それは俺がもう確認した、ちゃんとダミーだったぜ」

上条「と、なると……」


最後に地図上に残った赤い点。
ここだ。

145 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 21:30:19.27 ID:oIMPUjc0

一方通行「俺は犯人を抑える、爆弾は三下にまかせたぜェ」

上条「あぁ、じゃあ……」

美琴「待って! 私も行く!」

上条「美琴……」

一方通行「連れてってやれ、少なくとも今回はオマエよりは役に立つ」


出来るだけ美琴は危険な場所に連れて行きたくはないのだが……。
しかし、今回の相手は基本的には爆弾であり、魔術師ではない。


上条「わかった、行こう、美琴」

美琴「……うん!」

黒子「お姉様……」

佐天「御坂さん、あの……」

美琴「安心して、ちゃんと帰ってくるから。 黒子はあとでオシオキだからね?」


いたずらっぽく白井の頭を撫でる美琴は、時折俺よりも大人びて見える。
無理もないか、中学生とはいえあれだけのことを経験しているんだ。


女「あの、私も行きます、詳しい場所はわかりませんが、近くまでは案内できますんで」

上条「………お願いします。 でも、危ないんで最低限の案内でいいですからね?」

女「はい!」


と、そこにようやくアンチスキルの車両が数台現れた。
そのうちの一台が近くにきて、窓を開けた。

146 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 21:37:04.57 ID:oIMPUjc0

黄泉川「またか少年! 今度はなにが起こってんじゃん!?」

上条「黄泉川さん、すぐに○○通りの廃工場までお願いします!」

黄泉川「これはタクシーじゃない! と言いたいとこだけど、なんか理由がありそうじゃん!?」

上条「その通りです!」

黄泉川「話は車の中で! さっさと乗るじゃん!!」


急いでアンチスキルの車に乗り込み、シートベルトを締める。
事件は間違いなく、最終局面だ。
魔術師は一方通行とあの女の子達が抑えてくれる手はずになっているし、起爆の要所となる術式は土御門達が破壊する。

これが、最後の仕上げだ。



黄泉川「発進すんじゃん!! 舌噛まないようにね!!」








147 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 22:19:33.46 ID:oIMPUjc0




上条達が去った後、現場ではTV局のスタッフも撤退の準備を始めていた。
それぞれ「いったいなにが…」とか「俺達のせいじゃないよな?」などと口にしながら機材を車に詰め込んでいく。

金髪の少女はその中の一人に目をとめると脚線美が自慢の足でその人物のそれを思い切り薙ぎ払った。
そんなことなど予想していなかった人物はひとたまりもなく、その少女の足元に倒れ込んだ。


男「な、なにすんだ!?」

フレンダ「なにすんだ、って?」


様子を聞きつけた麦野と一方通行達が駆け付ける。
フレンダはそれを確認すると、倒れたままの男に小さな銃を突きつけた。


フレンダ「爆弾は基本的に小道具の人が扱ったって? 他の人は騙せても、このフレンダの目はごまかせないってわけよ」

男「……なんのことだ?」

フレンダ「アンタからは、何種類もの爆薬の臭いがすんのよ。 結局、染みついた臭いは消せるわけないのよね」

男「ほォ……」


その瞬間、男の纏っていた雰囲気が一変した。
男はゆっくりと立ち上がり、自分を囲んでいる能力者たちを見まわす。


男「こいつぁ驚いた、まさかソッチにも爆弾のプロがいたとはなぁ……」

一方通行「なァるほど、局の人間になり済ましてるとまではわかってたが、番組の担当者本人だったとはなァ」


148 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 22:42:36.84 ID:oIMPUjc0


男「苦労したよ、学園都市に潜入したのは二年前。 いつか必要になるからと送り込まれたが、こんな大きい仕事を任されるとはね」

結標「随分な余裕だけど、周りは見えてるのかしら? レベル5の超能力者が二人とレベル4が二人、ただの爆弾魔が勝てるとでも?」

男「はは……、ただの爆弾魔か、舐められたもんだ」


突然、男が片手を大きく上げた。
フレンダはすぐさま引き金を引き、男の頭を吹き飛ばして……。


――――――いるはずだった。



フレンダ(か、体が、動かない……!?)

一方通行「オマエ……なにしやがったァ……!」


男を取り囲んでいた全員が、突然、凍りついたように動きを停止する。


男「不用意に私の術式の範囲に入ってくるからさ、まったく無知なガキどもの相手は退屈過ぎんぜ」

麦野「チッ……テメエ……!」

男「さて、さっきの足払いの礼でもさせてもらおうか」


男はさきほどフレンダが落とした銃を拾うと、それをフレンダの額に突きつけた。


フレンダ「あ………あう………麦野ぉ……………」


149 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 22:55:38.96 ID:oIMPUjc0



打ち止め「びりびりー、って、ミサカはミサカは変態さんにオシオキしてみたり!」

男「ぐぉぉ!?」


意外なことに、この状況を打破したのは第一位でもなく、麦野でもなく、遠くで様子を見ていた打ち止めだった。
電撃による一瞬の隙を逃さず、フレンダは銃を取り返し、一方通行は演算補助機のスイッチを入れる。
フレンダはまた銃を突きつけると、舌をペロ、と出してみせた。


男「あ……あぁ……」


さきほどまでの気勢はどこにいったのか、男は目に見えてわかるほどガクガクと震えている。


麦野「フレンダ、ちょっと待ちなさい」

フレンダ「麦野?」

麦野「さっきまでは普通にアタマ吹っ飛ばしてハイ終わりって思ってたんだけど」

フレンダ(あ、スイッチ入っちゃってる?)



麦野「気が変わったわ」




フレンダ(………………………ご愁傷サマ)






150 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/16(木) 23:07:37.78 ID:oIMPUjc0
けっきょく、自分でもおもってた以上にフレンダが活躍してるってわけよ

ちょっと書きためて、日付変わったら再開します…
151 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/16(木) 23:09:44.39 ID:1c.iZI20
フレンダかっけ〜
おっつ!
152 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/16(木) 23:15:29.10 ID:bsP6krUo
魔/術/師
ですね分かります
153 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 00:02:17.07 ID:z0Hdeug0





目的地へと向かう車の中、窓の外を流れる景色は既に夜のそれとなっていた。
ほんの数時間前までは普通の日常を過ごしていたはずなのに。

やっぱり私も、けっこう不幸だ。

当麻は前の席で黄泉川さんに事の経緯を説明している。




上条当麻。



私のヒーロー。



女「ねえねえ、二人はいつから付き合ってるの?」


当麻の横顔に見惚れていると、ふいに隣に座る女性に話しかけられた。


美琴「え、えと、まだ二日しか……」

女「二日!?」


そんなに驚くことかな。
確かに付き合いだしたのは一昨日だけど、でも知りあってからはけっこう経ってるんだし……。


女「あ、ごめんね。 なんていうかもう、ずっと前からラブラブな感じに見えたから……」

美琴「あう………」


154 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 00:03:59.03 ID:z0Hdeug0

女「でも、意外。 レベル5の御坂さんが無能力者の彼と付き合ってるなんて」

美琴「た、たしかに当麻は能力はないけど、でも、すっごく強いんだから! それに、やたら正義感強くて、なんかいろんなことに巻き込まれるけど、でも、すごく優しくて……!!」

女「はいはいごちそうさま。 わかってるわよ、今日一日見てきたんだから」

美琴「あうあうあう………」


こういう人は苦手だ。
自分が思ってること、全部言わされてしまう。


女「彼が、大事?」

美琴「…………うん」

女「そう、大切にね?」


言われなくとも。

ただでさえ当麻はいろんな女の子から好かれてるんだ。
常に掴んでおかなきゃすぐにどっかいっちゃいそうだもの。


美琴「………うん」





―――――――――そう、ずっと。





ずっと、掴んでおかなきゃ。



155 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 00:19:03.41 ID:z0Hdeug0






女「ここです、この工場です」


目的地についた俺たちは車から降り、女子アナウンサーの後をついていく。
黄泉川さんは非常線を張るとのことで、車に残るそうだ。

問題の工場は工業団地の中にあり、両隣の工場にはまだ明りが点いていた。
女子アナウンサーは黄泉川さんから渡された懐中電灯で辺りを照らしながら、ずんずんと工場の中を突き進んで行く。


女「えっと、たしかこっちに………」


懐中電灯を持っている女子アナウンサーは自分の前しか照らさない。
そのため俺は途中、何度かわけのわからない機械に頭や足をぶつけてしまったが、美琴は「なにやってんのよ」と平然と歩いてきた。

どうやら自分から出ている電磁波の反射波で周りの障害物を把握出来ているらしい。
まるでコウモリだ。


女「ありました! あれです!」


広い工場の中ほどまで来た時だろうか、突然女子アナウンサーが前を指さした。
懐中電灯により暗闇から浮かびあがってきたのは、二十センチ四方くらいの箱。

――――――これが、最後の爆弾だ。


美琴「やっぱり、外側は絶縁体ね。 私の能力は干渉できないわ」


美琴は恐れずに爆弾に近づき、しげしげと眺めている。
女子アナウンサーは懐中電灯を近くの機械に固定し、どこかに電話をかけ始めた。


156 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 00:28:09.92 ID:z0Hdeug0


prrrrrrrr prrrrrrrrr


上条「お、俺にも電話か……」


タイミングよくかかってきた電話をとり、爆弾を見つけた旨を伝える。


土御門『そうか、こっちもたったいま術式を破壊した』

上条「そうか、てことはこの爆弾はもう爆発しないんだな?」

土御門『というか、もう術式を破壊する必要もなかったみたいだ』

上条「とゆーと?」

土御門『犯人の魔術師は既にアイテムが綺麗に三枚卸しにしてくれたらしい』

上条「おいおい……」


三枚おろしとは穏やかじゃないな。




土御門『犯人はディレクターの男だったらしい』




女「チッ……出ないな…………」


それを聞いた瞬間、俺の脳内は加速した。

157 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 00:36:29.54 ID:z0Hdeug0




『先程の爆発はTV撮影用の演出です』





「爆発の規模と爆弾本体の大きさからして、これに使われているのは軍用の高性能爆薬なわけよ」





『しかし今回の魔術師は派手だな、普通敵地でこんなに目立つのは避けるもんだが……』





「そう、無人で誰も入った記録はないはずなのにここ2日間だけ電気使用量が一気に増えてるの」







「はい♪ びっくりさせちゃってごめんなさい! 実は今までの爆弾騒動は……」







「年末の企画で、ぜひ学園都市が誇るレベル5の一人、御坂さんに協力をと思いまして」




158 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 00:37:39.59 ID:z0Hdeug0




「ビルが、倒れてくる………!!」









「言っただろ、今回の敵が使うのは爆弾、そしてその狙いは君達だと」











「敵は魔術師だ、そして、爆弾は魔術によって起爆される」

「だが、この広範囲に散っている爆弾に、魔術で直接信号を送るのは不可能だ、つまり……」








「爆弾? あぁ、その辺りは基本的に小道具の人が…、でも、運動場と公園以外はダミーのはずなんだけど…」

「○○さんじゃない? 小道具の」

「あぁそうだ、でも彼はいま本社にいるからここにはいないよ」







159 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 00:40:12.55 ID:z0Hdeug0











「あの、私も行きます、詳しい場所はわかりませんが、近くまでは案内できますんで」

「………お願いします。 でも、危ないんで最低限の案内でいいですからね?」








160 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 00:45:52.39 ID:z0Hdeug0




俺達はなんなく爆弾を見つけることが出来た。





なぜか。





関係者が案内してくれたからだ。





その関係者はなんと言っていた?








「あの、私も行きます、詳しい場所はわかりませんが、近くまでは案内できますんで」

「………お願いします。 でも、危ないんで最低限の案内でいいですからね?」





161 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 00:49:13.34 ID:z0Hdeug0


魔術師の狙いは俺達。




広範囲にちらばる爆弾に直接魔術で信号は送れない。



ならば近くならどうか。






最後の爆弾。







狙いは











俺達。



162 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 00:51:59.58 ID:z0Hdeug0





狙いは、俺と









その周りの人間。




163 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 00:55:00.13 ID:z0Hdeug0





次の瞬間。







五度目の爆発は、俺の目の前で起こった。







164 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 01:01:40.36 ID:z0Hdeug0





すべてがスローモーションで流れていく。






閃光で照らされる工場内。







噴き出す爆風。







衝撃波によって吹き飛んでいく機械。







165 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 01:03:01.25 ID:z0Hdeug0






美琴の華奢な身体が、宙を舞う。









166 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 01:09:50.35 ID:z0Hdeug0





使用用途のわからない機械に叩きつけられた美琴のまわりに、赤い華が咲いた。






そのまま、まるで無造作に投げられた人形のように床に倒れ伏す。













女「あーあ、小娘のほうがひっかかっちゃったかー」




167 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 01:16:00.71 ID:z0Hdeug0





上条「な………………」





なんだこれは。





なにが起こった?





女「ま、いっか、小娘のほうも標的だったんだし、これもアリだよね♪」


上条「あ、あああ……………」


女「どうよ? 目の前で最愛の人を殺された気分は?」




女「あの子、純粋で一途よねー、アンタのこと悪く言ったら顔真っ赤にして反論してきてさ」



女「ま、もうただのお肉の塊なんだけどね」




上条「うぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」



168 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/17(金) 01:21:35.46 ID:gjulxfko
変なスペースいらない
169 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 01:23:09.05 ID:z0Hdeug0




俺は、走った。


目の前で笑う女に向って。




女「じゃ、君も死んでみよっか」



女が懐から拳銃を取り出す。


しかしそれさえ、興奮した俺の脳は捉えることが出来なかった。

まっすぐ、女に向って手を伸ばす。


その拳銃は火を噴く寸前、どこからか放たれた黄金色の光条によって消し炭となった。


女「な………!!」


美琴「へん……! ざまあ、みなさい……………!!」



俺の右手が、女の喉を捕えた。






170 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 01:35:03.45 ID:z0Hdeug0


女「かはっ……………!!」


そのまま女を押し倒し、右手に力を込める。


女「あ………ぐぅ………!」


喉を強く絞められ、女の目が血走ってきた。
しかし俺は力を緩めない。
このままではこの女は確実に死ぬ。
だが、力を抜くことが出来ない。
俺の両腕はまるで独立して生きているかのように女の首を絞め続ける。


美琴「だめ……! とうま……!」


今にも消えそうな声で俺を呼ぶ美琴。
それによって我に返った俺は、すぐさま両腕を離した。

女はまだ生きていた。
ただ、倒した時に頭を打った衝撃で気を失ったようだが。


上条「美琴!!」


美琴に近づいた時、なにかがぱしゃりと音をたてる。


…………これは、血だ。



171 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 01:44:46.41 ID:z0Hdeug0



美琴「当麻……」

上条「美琴! しっかり……!」

美琴「あは……最後の最後で…、やられちゃった……」


美琴の身体からは、なおも血が流れ続ける。


美琴「当麻……、私、もう………」

上条「な、なに言ってんだ、これくらいの傷、どうってこと……!」

美琴「ううん……わかるよ……」

上条「ばか野郎! ずっと…!」


上条「ずっと一緒に生きてくんだろ、美琴!?」

美琴「ごめん、当麻…」


美琴の身体から力が抜ける。
いつの間にか、俺達の周りには爆発を聞いて駆け付けた隣の工場の従業員が人垣を作っていた。


上条「頼む、救急車を…!」


なにやってんだよ。
なにボーっと見てやがんだよ。

助けろよ。

俺の力じゃどうしようもねえんだよ。

172 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 01:53:05.99 ID:z0Hdeug0






数十分後、俺は馴染みの病院にいた。

目の前に横たわるのは、生命維持装置に繋がれた美琴。


冥土返し『24時間以内に意識が戻らなければ、生存は見込めないんだね』


俺はどこかで期待していたのかもしれない。

今まで、なんだかんだで俺の周りの人間は生き残ってたりする。
だから美琴も、すぐに意識が戻ってまたいつもの日常が戻ってくるんだと。

だが、現実にそんな俺の期待など通用するわけもなく。




173 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 01:59:22.82 ID:z0Hdeug0



懸命な処置も虚しく、耳障りな電子音が心臓の停止を告げる。


美琴の身体から生命維持装置が外されていく。
待ってくれ、まだ外さないでくれ。
もしかしたら、もしかしたらまだ息を吹き返すかもしれないじゃないか。

おそらくそれは賭博に酔って追銭を繰り返すギャンブラーと似たような心境なのかもしれない。

そしてそれは大抵の場合、報われない。












12月25日。


俺はこの日、美琴を失った。








174 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 02:01:13.00 ID:z0Hdeug0
第二章はこれで終わりです

>>168
うん、PCだからって調子に乗って改行してたら見にくくなっちゃった、ごめん
175 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/17(金) 02:02:11.92 ID:oo1UnPwo
改行しすぎて読みにくい
176 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/17(金) 02:02:33.18 ID:ekrfvHco
乙です
ようやく寝れると思ったら、どうなるんだこれ…
177 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/17(金) 02:07:22.88 ID:t8UKAY2o
うわあああああああ
178 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/17(金) 04:06:01.57 ID:NauTMl.o
別に読みにくくないよ
やりたいようにやってくれ
179 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/17(金) 07:05:35.83 ID:oo1UnPwo
縦960の解像度で数行はさすがに読みづらいだろ
携帯小説じゃないんだから・・・
面白いけどさ
180 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/17(金) 08:26:20.70 ID:OTVify20
まじかよ…
181 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/17(金) 11:02:51.11 ID:Idbc8.DO
読みにくいけど面白い
182 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 16:57:09.93 ID:z0Hdeug0
指摘してくださるのは読んでくれている証拠、感謝です
ながらだとどうしても改行で稼いでしまって……
ここからはちゃんと書きためての投下にします

あと、登場人物のせ台詞の前後の改行を2行にしていたのを1行に戻します
183 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 17:08:00.24 ID:z0Hdeug0

第三章「みさか」

184 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 17:08:36.28 ID:z0Hdeug0




俺には夏休み以前の記憶がない。


「私には御坂美琴って名前があんのよ!」


それが最初だった。

最悪な実験に果敢に立ち向かった美琴。ロシアにまでついてきた美琴。
付き合いだしてからは一緒にいるのが当たり前だった。
ずっとそれが続くのだと思っていた。

学園都市230万人の頂点、七人しかいないレベル5の第三位。
決して弱くはないそのチカラ。
だから、多少の事件に巻き込まれてもそう簡単に死ぬはずはないと思っていた。
それはある種、信頼にも似たもの。

だが、間違っていた。
どんなに強い能力を持っていても、その身体はまだ幼い女の子そのものだった。
美琴は死んだ、俺の目の前で。

「………ずっと、守ってくれる?」

「当然だろ?」

「ずっと一生よ? 途中でいなくなるなんて許さないんだからね?」

「あぁ、約束だ」

多くの魔術師を破ってきた。反則的な能力を持つ者達にも、神の右席さえも。
いつもこの右手が破ってきた。

だが、この右手は現実というモノの前ではなんの役にも立たなかった。

185 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 17:09:31.23 ID:z0Hdeug0


美琴が死んだあとのことは、よく覚えていない。

覚えているのは、いつも世話になっていた蛙顔の医者に掴みかかったこと。
その医者のせいではないことはわかっていた、その医者が美琴を救うために全力を尽くしてくれたことも。
だが、俺は言わずにはいられなかった。どんな傷でも治してきてくれたじゃないか、なぜ助けてくれないんだ、と。

そして病院内のどこかの廊下でアイツ達と出会った。
妹達。美琴のクローン達。学園都市に残った妹達全員が、そこにいた。
そしてその中の一人、御坂妹がその目に涙を溜めながら俺に詰め寄ってきた。

「どうして」

溢れ、行き場をなくした涙が御坂妹の頬を伝う。

「どうして、お姉様を守ってくださらなかったのですかっ……!」

答えられなかった。
皮肉にも感情の乏しいクローン達に涙を教えたのは、オリジナルである御坂美琴の死だった。

その後、妹達が去ったのを見計らって海原が姿を現した。
正確には海原ではない、いつかの魔術師。そいつは何も言わずに、俺の頬を殴りつけてきた。
避けなかった、避けられなかった。なぜなら、そいつも泣いていたから。

その日、俺が寮に戻ることはなかった。

186 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 17:10:28.60 ID:z0Hdeug0




「手は尽くした、でも、僕は神様ではなかったんだね……」

「あなたのせいではありません、いえ、誰のせいでも……」

「ありがとう、……電話をとってくれないかい?」

「ええ、どうぞ」


「…………もしもし、僕だ。たったいま、御坂美琴くんが亡くなった」

『なんだと!? 彼女はレベル5だぞ!?』

「レベル5とはいっても、身体はまだ子供なんだね」

『どうするんだ……、他のレベル5と違って御坂美琴は表に出せる存在。学園都市の宣伝文句でもあるんだぞ……』

「なら、少し僕に協力してくれないかな?」

『ほう、木原博士をあれほど嫌っていた冥土返しが学園都市の暗部に頼みごとか?』

「君達としても、彼女がいなくなるのは困るだろう?」

『面白い、一応聞いてやろうか。なにが必要だ?』

「君達のところで保管しているアレが欲しい」



そう、今すぐにだ。

187 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 17:11:26.69 ID:z0Hdeug0





気がつくと、私は学園都市にいた。

しかしなにかが違う。

誰もいない。
音がしない。
風もない。
ただ時間だけが過ぎていく空間。

「お姉様」

誰?

「お姉様」

声のした方を振り向くと、私がいた。いや、正確には私ではない。
常盤台の制服を着てはいるが、それとは不釣り合いな大きいゴーグル。
妹達、私の妹。

「お姉様、こちらに、来てしまったのですね」

「こちら?」

「お姉様、ミサカは……」

そのミサカは最後まで言葉を紡ぐことなく、俯いてしまった。
だが私はその言葉よりも先にその妹達が着ているサマーセーターについた缶バッジが気になった。
どこかで、あれを見た気がする。

突然、風が吹いた。

反射的に目を瞑った私の耳に飛び込んできたのは、さきほどまで無かったはずの街のざわめき。
目を開けるとそこはいつもの学園都市だった。
人々が往来し歩道を埋め、自動車が車道を走る。

「お姉様」

そんな喧騒の中でも、なぜかその妹達の声ははっきりと私の耳に届いた。

「少し、お茶でもしましょう」

188 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 17:13:10.33 ID:z0Hdeug0

とある喫茶店に入ってからしばらくして、注文した紅茶が二つ、テーブルに置かれた。

「この喫茶店は、ミサカのお気に入りなのです」

自分のことではないのに、なぜか胸を張って自慢そうにそう言う妹達。
やっぱり妹達の味覚の好みも私と似てくるんだろうか。

「へえ、私もここは結構来るのよ?」

「それはそうでしょう、この喫茶店はお姉様に教えてもらったのですから」

「へ? そうだっけ?」

「えぇ、初めて飲んだ紅茶は最悪でしたが、ここの紅茶には驚かされました」

「はは、そんなまずい紅茶、いったいどこで飲んだってのよ」

「研究所の中です」

その言葉を聞いた瞬間、ズキ、と頭の奥でなにかが蠢いた。
そしてそこから今までの記憶が溢れだす。

「お姉様」

「あ……あ……」

「お姉様、覚えておいでですか」

「そん、な……」

「ここはお姉様とミサカが初めてお茶をしたところです」

「あ……アンタは……!」

「ミサカの検体番号は」



「9982号です」


189 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 17:13:56.79 ID:z0Hdeug0





丸一日が過ぎたころ、俺はようやく寮に戻った。
自分の部屋の扉の前で立ち尽くす。
インデックスはどうしただろうか、まだ土御門達と一緒にいるんだろうか。
この扉を開けたら、なにごともなかったように美琴が出迎えてくれるんじゃないか。

扉を開け、一番に目に入ったのは、大きな箱。

一昨日の夕方、この箱の中から美琴が出てきた。あられもない格好で。
その姿に本能を抑えきれなかった俺は、獣のように襲いかかったのだ。

この部屋の時間はその時のまま止まっていた。

カーテンが開いたままのサッシから柔らかい夕日が差し込む。
俺は部屋に入ると、その箱によりかかるようにして座った。
携帯が鳴った。ディスプレイには『土御門』の文字。
だが、俺の目はそれよりも携帯に付いているストラップに釘付けとなっていた。

「アンタ生きてたんなら連絡くらいよこしなさいよ、馬鹿!」

「これ渡しとくわ、あの後偶然拾ったの。切れて短くなっちゃってるけど、文句は言わせないわよ」

いつまでたっても出ないからか、土御門からの電話が切れた。
思えば丸二日間寝ていない。

少し、眠ろう。

もしかしたらこれは全部悪い夢なのかもしれない。
目が覚めたら、インデックスを迎えに行こう。

どうせ学校は冬休みだ。
誰も咎めるものはない。

海原のやつ、遠慮なく殴りやがって。まだ痛えぞ。

190 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 17:14:57.29 ID:z0Hdeug0



「9982号……でも…アンタは……!」

「お姉様」

目の前に座っていた妹達、いや、9982号はゆっくりと立ち上がった。

「もう、お気づきなのでしょう?」

「……!」

「ここは、学園都市ではありません」

「わた、しは………」

「お姉様」

9982号が私に向かって手を差し伸べる。

「お姉様はもう、あの人達と同じ世界には存在しません」

「そう、ね………」

「ミサカはここでお姉様を待つつもりでした。 あの時言えなかったことをお伝えするために」

「あの時……」


……ん、まだなんかあるの?
……いえ

さようなら、お姉様。


「でも、こんなに早くお会いしたくはありませんでした」

「……でも、しかたないじゃない? それにアンタ達がいるなら寂しくはなさそうだしね」

「お姉様……」

そんな悲しい顔しないでよ。未練がない、と言ったらウソになるけど。
しかたないじゃない。人はいつかは死ぬんだから。
それにたった二日間だったけど、私は確かに当麻の隣に立つことができた。

差し出された手に自分の手を重ねようとした、その時。
私の手は、まるで立体映像のように妹の手をすり抜けた。

191 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 17:16:01.27 ID:z0Hdeug0

「え……?」

「………………お姉様」

最初は私と同じように驚いていた妹の顔に笑みが浮かんだ。
それは心から嬉しそうな、純粋な微笑み。

そして再び、突風とともに景色が変わった。

今度はどこかの果てしなく広い草原。
青く澄み渡った空に、美しく茂った草木が風で波を立てる。
目の前に立つ妹は、そっと差し伸べていた手を戻した。

「お姉様、お姉様はまだ、こちらのミサカ達と暮らす必要はないようです」

「え? それどういう……」

ふと自分の手を見ると、それは半透明になって景色を透かしていた。

「ちょうどいい機会なので、今、言わせてください」

「あ、あんた………」

私の身体はどんどん消えていく。
妹は屈託のない笑みを浮かべながら……。

「ミサカは、00001号から10031号のミサカ達は」

「少しの間でも、たとえ誰にも看取られることはなくとも」

「お姉様と同じ世界に生きることができて………」


――――――――幸せでした。


「また、お茶をしましょう。いつまでも、待ってます」

「………うん」


―――――また、ね。

192 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 17:17:11.39 ID:z0Hdeug0



あれから、5日が経った。

目が覚めても、なにも変わっていなかった。
インデックスを迎えに行く気にもならなかった俺は、この五日間なにをするでもなく街をさまよい歩いている。
昨日、運悪く御坂妹と出会ってしまった。

「すみませんでした」

「………え?」

「あなたの所為ではないのはわかっていたのに、ミサカはあなたに醜い言葉をぶつけてしまいました、と、ミサカは謝罪します」

「いや、いいさ、むしろ同情されるよりも海原みたいにぶん殴ってくれたほうがよかった」

「では、この場であなたを殴ってもいいですか?」

「……………いや、ええと」

冗談ですよ、と淡い笑みを浮かべる御坂妹。だがその笑顔はどこか切なげだった。
そして御坂妹は大きく深呼吸をして再び俺の目を見つめる。

「…………あなたは、奇跡を信じますか?」

その目はまっすぐ、俺の目を見ていた。
まるでごまかしを許さない、とでも言うように。

「……あったなら、美琴は」

「ミサカは信じます」

俺の言葉を最後まで聞かずに言い放つ。そちらから聞いてきたのにそれは少し失礼ではなかろうか。

「そしてそれは神や異能が偶然に作りだすものではなく、人の手によって必然的に起きるものだと」

「それではミサカは大事な用事があるので失礼します」

結局あいつは何が言いたかったんだろう。
それにいつもの虚ろな目は、確かになにかを見ていた。俺ではない、なにかを。

193 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 17:18:35.84 ID:z0Hdeug0

そして昨日に引き続いて今日も、会いたくない人物と会ってしまった。

「あら上条さん?」

「………白井か」

「なんかいつもに増してブッサイクな顔ですわね、まるでここ五日間まともに眠ってないような」

「あぁ、その通りだよ」

「あっそ、ですの。別にアナタが不摂生をしてようと私には関係ありませんわ」

「そうだな、その通りだ」

「それより、お姉様を知りません? あれから一度も寮に御戻りになられないんですの」

知らないかって? よく知ってるさ。
そうか、美琴は学園都市にとっても貴重な存在。おいそれとその死を公表することさえ出来ないのか。

「事件のあと帰り道で別れて、それっきりさ」

「そうですの? ワタクシてっきり上条さんの部屋に入り浸っているのではと思っていたんですが……」


「……と、これから支部に顔を出さなくてはいけないので、ごきげんよう」

俺は白井に真実を教えることが出来なかった。
白井は真実を知るまで、ずっと美琴の帰りを待つのだろう。
白井だけではない、いつも一緒にいる友人たちも、美琴を慕う常盤台の生徒達も。

194 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 17:19:32.84 ID:z0Hdeug0

陽が沈みだした頃、俺はあの自販機の前にいた。
記憶を失った後、初めて美琴と出会った場所。
俺は携帯電話を取り出すと、美琴の携帯に電話をかける。

この五日間、気がつくとそうしていた。
いつか美琴が出てくれるのではないかと。結局、俺もまだ真実を受け入れられないでいるのだ。
もちろん電話には誰も出ない。一昨日からは電池が切れたのか、コール音さえもしなくなった。
いつまでこれを続けるのだろうか。これで最後にしよう。
これ以上続けても、自分を追い詰めるだけだ。

ため息をつきながら発信を切ろうとしたその時だった。





『もしもし、どしたの?』






「あなたは奇跡を信じますか?」

「ミサカは信じます。そしてそれは神や異能が偶然に作りだすものではなく、人の手によって必然的に起きるものだと」



195 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/17(金) 17:22:08.80 ID:z0Hdeug0
短いですが、第三章はこれで終わりです
もうここまできたならばらしてもいいでしょう

このSSは当然のごとく、ハッピーエンドです

最終章はまだ書きためてないのでまた明日に……
196 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/17(金) 17:33:01.62 ID:bQGXaMwo
00001号から10031号のくだり卑怯すぎるだろ……
197 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage ]:2010/12/17(金) 18:31:02.57 ID:0B7DzfU0

  同上 泣くしかありませんでした……

 美琴は大切にしてくれる人がこんなにもいて良かったな
198 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/17(金) 19:18:08.18 ID:I/b1YRoo
乙〜
最後はハッピーエンドなんですね!
ぶっちゃけ前回の分読んだあと今まで軽く鬱ってました
期待して待ってます!
199 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/17(金) 19:33:55.99 ID:d//gWEDO
なんか目と鼻から汁が出てきて止まらないんだけど何これ
200 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/17(金) 19:52:02.04 ID:eSLQyKIo
俺治ったばっかだけどインフルエンザには気をつけろよ
201 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/17(金) 21:09:33.75 ID:oo1UnPwo
ハッピーエンドに見えるけど暗部ってのが嫌な予感しかしない・・・
202 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/17(金) 21:10:15.20 ID:B72wkz.o
フルチューニンg
203 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/17(金) 21:15:01.50 ID:OTVify20
あ、俺もインフルエンザにかかったみたいだ
204 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/18(土) 20:16:00.97 ID:k8ay2sDO
浜面「途中から俺が出てないって? 車で待機してたからだよ」

最終章は手を抜きたくないのでもうちょい時間かかります……
月曜日までには完結させます
205 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/18(土) 21:22:43.09 ID:y7H1lT.o
大丈夫、わたしはそんな忘れられてたはまづらでも応援してる
206 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/19(日) 03:49:21.31 ID:/SwSwyIo
ヤバい作者本気だ
期待して待ってます!
207 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/19(日) 12:04:03.59 ID:AuzrqJ20
シリアス展開なのに、あえてお昼時に投下

エピローグ含めてたった十数レス、一章と二章の頭でっかち感が否めない……
ちゃんと全部書きためにしとけばもっとスマートにまとまったんだと思う、反省反省

今まで読んでくれた人、本当にありがとうございました
短いですが、最終章とエピローグを書き終わったので、投下します
208 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/19(日) 12:05:06.08 ID:AuzrqJ20




真っ白な部屋。

単調にリズムを刻む電子音。

「やぁ、目が覚めたかい?」

充満する薬品の臭い。
私を取り巻く白衣を着た数人の男たち。

「リアル………ゲコ太………」

ここは、どこだろう。
夢の中の学園都市は……。
私はたしか、爆発に巻き込まれて。

「不本意だけど、ちゃんと認識出来ているようだね」

自分の身体がズタズタに引き裂かれ、命が流れ出ていくのを感じた。
死んだ、はずだった。誰かの暖かい腕の中で。

「……………かなきゃ………」

「まだ覚醒には至ってないようだ、君、すぐに上部に連絡を。“成功した”と」

「わかりました」


行かなきゃ。


アイツに会いに、行かなきゃ。



209 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/19(日) 12:05:54.98 ID:AuzrqJ20

最終章「Merry Xmas, Happy New Year」

210 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/19(日) 12:06:45.55 ID:AuzrqJ20


電話の向こうから聞こえてきたのは、この五日間、渇望して止まなかった声。
たった五日間なのに、ひどく懐かしく感じる。
頭の中を、最期の瞬間が流れていく。


ずっと、ずっと一緒に生きてくんだろ、美琴!?

ごめん、当麻……。


美琴は死んだ。
三日前、妹達が泣きながら骨壷を持って行ったのも目撃した。

誰だ。

いま電話に出たのは。
いや、俺はこうなることを期待して電話をかけていたんじゃなかったのか。

そして怖い。
あり得ないことを期待している自分が。

「みこ、と…………………?」

『なによ、アンタからかけてきたんでしょ?』

知らぬ間に、俺の目からは涙が溢れていた。
言葉が、出ない。

『アンタ、いまどこにいんのよ?』

答えなければ。
ここで答えなければ俺は一生、後悔する。なぜだかわからないがそんな気がするんだ。

「自販機………」

小さいながらもなんとか一言だけ、声を発することが出来た。
だがあとが続かない。唇が震える。

211 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/19(日) 12:07:44.84 ID:AuzrqJ20


『自販機? ……あー、わかった。今すぐ行くから、そこにいなさいよ!』

そう言って電話は切れた。
俺はしばらく通話の切れた画面を見ていたが、やがて近くのベンチに腰を降ろす。
いつの間にか陽は沈み、電灯と自販機の明りが俺を照らしていた。

―――――あなたは、奇跡を信じますか?

あったなら、美琴は死んでいなかった。
それとも、俺の右手がそれを消してしまったのか?

―――――ミサカは信じます、そしてそれは神や異能が偶然に作りだすものではなく、人の手によって必然的に起きるものだと。

だとしたら、俺の右手では消せない。
消えるはずがない。ならばやはり奇跡なんて存在しないんじゃないか。

奇跡という言葉はいつも人の心を惑わす。
普段はそのものの存在さえ疑うというのに、なぜか人は簡単にそれを望んでしまうのだ。
ある者は怠惰に、ある者は必死に努力を積み重ねながらそれを願う。
そして願い叶わなかった時、どちらも口を揃えてこう言うのだ。

やはり奇跡など初めから起きるはずなかった。

美琴を失うまでは俺も多少なりとも信じていた。
だが、美琴は死んだ。
自分の力が及ばぬ部分を奇跡などで補おうとするから、可能性を断たれたとき必要以上に苦しむのだ。
だから俺は初めからそんなもの信じない。信じれば、傷つくのは自分だから。
安易な理想に浸るよりは、乾いた現実に身を任せたほうが楽だと知った。

ならば今の俺はなにを望むのだろう。

美琴の生存?
それこそ奇跡というものだ。

ならばなぜ俺はまだ此処にいる?
美琴がここにくるのを待っているのか?

いや。

ただ、声が聞きたいんだ。
アイツの底抜けに明るい声で。
また、俺の名前を呼んでくれたら……。

212 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/19(日) 12:08:38.36 ID:AuzrqJ20


「とーま、こんなとこにいたんだ?」


うなだれていた俺の頭上から声をかけてきたのは、俺の部屋の居候であるインデックス。
いつの間にか俺の隣に腰を降ろし、一緒に連れてきた猫を膝に乗せる。


「とうま、とうまはいま、どんな気持ち?」


悲しい?

苦しい?

………死にたい?

でもねとうま、とうまは今までどれだけ頑張ってきたの?
私と出会ってから、いろんな「不幸」に巻き込まれてきたよね。
平凡で平和な学生生活を過ごすはずだったこの学園都市で。

でも、とうまは諦めなかった。

とうまは自分のことを不幸体質だって、俺の近くにいたら不幸に巻き込んでしまうって。
でもね、とうまはどれだけの人に幸せを振りまいてきたかわかってる?

短髪が死んだのも、自分の所為だって責め続けてる?
私が知ってるとうまは、そんな弱いとうまじゃない。こんなとうまは大っ嫌い。

そんなことしてたら、もし。

もし、短髪が帰ってきたときに、嫌われちゃうよ?

だから、今は現実と向き合って?
とうまはどこに電話をかけたの? そして誰がでたの?

213 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/19(日) 12:09:40.68 ID:AuzrqJ20

「………なにが、言いたいんだ?」

「私はシスターだよ? 悩める子羊がいたら、それを救うのが私の役目」

「…………一人に、してくれ」


インデックスは最後に少しだけ、柔らかな微笑みを俺に向け、帰って行った。

そうさ、俺はいろんなことに巻き込まれてきた。
最後まであきらめず、やり通してきた。
だけど、今回は違うんだ。美琴はたしかに死んだんだ。

幻想なんだ。

これは。




二時間近くそのままでいた。
既に街は完全に夜に。俺はふらりと立ち上がり、自販機へ。
側面に付いた凹み。懐かしいな、と思いながらその凹みに手をやった時だった。

214 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/19(日) 12:11:13.77 ID:AuzrqJ20




「ちょろっとー、買わないならどくどくー」



215 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/19(日) 12:12:04.46 ID:AuzrqJ20



声とともに俺は横へはじかれた。
記憶の中と同じ、あの声で。


「なによその顔? もしかしてまた二千円札呑まれたっての?」

「美琴…………?」


見間違うはずのないその姿。
いたずらっぽい笑みを浮かべて俺を見る瞳。
すべて、俺が求めていたもの。

俺が何も言えずただ立ち尽くしていると、美琴は少しだけ顔を曇らせた。


「………………………悪いけど、今回は取り返してやれないわよ? 能力、失っちゃったから」


そう言って片手で自販機を撫でる。
俺の中で一つの可能性が組み立てられていく。
それは俺の意思を無視して言葉になり、目の前の美琴へと投げかけられた。

「シスターズ……………?」

「………………半分正解で、半分ハズレってとこかな」

煮え切らない返答に、俺の中でなにかが切れた。


「………誰なんだよ、お前は!? 美琴は死んだんだ!! 俺の目の前で!!
 俺はアイツを守りきれなかった! 生き返るはずなんてない!
 これ以上…………! これ以上俺の心を惑わすな!!」


そんな姿で目の前に出てこられたら期待してしまうではないか。
もう信じないと決めたのに。
これ以上、美琴の幻想を相手にしていれば傷つくのは俺だ。
俯き、かすかに震えている幻想に背を向け歩きだす。

「待って…………!」

あれほど聞きたかった声は今では俺の心を蝕むものでしかなかった。
少なくとも、この時までは。

216 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/19(日) 12:13:00.06 ID:AuzrqJ20


「………待ってって言ってんでしょ無視すんなやゴルァァアアアアーー!!!!」

何事かと振り返った瞬間、美琴の凄絶なタックルが炸裂した。
見事に俺の鳩尾へと決まったそれはさらに俺の後頭部をベンチへ叩きつけ、またさらに身体全体を地面へと叩きつける。

………痛い。

非常に痛い。

これは、夢なんかじゃない。


「………あ、あれ? ちょっと当麻? 起きてよ!」


飛びかかった意識をなんとか取り返し、目を開く。
そこには視界いっぱいの美琴。

唇になにか暖かく柔らかいものが触れている。

唇だけではない。
俺の頬にも暖かい、……液体。誰かの涙。
ゆっくりと離れていく温もり。すぐそこに、美琴がいる。

「行かないでよ………馬鹿…………!」

「美琴……なのか………?」

217 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/19(日) 12:13:58.69 ID:AuzrqJ20


そっと、右手を伸ばす。


触れる。


柔らかい。


暖かい。


消えない。
これは幻想なんかじゃない。


俺は無意識のうちに目の前の少女を抱き締めていた。
その存在を、温もりを確かめるように。

「当麻……私……!」

「美琴……なんだな…!? 本物、なんだよな……!?」

その言葉に、美琴の肩がびくりと揺れた。


「美琴……?」



「私は………!」


218 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/19(日) 12:14:48.66 ID:AuzrqJ20


量産異能者「妹達」の計画よりも前。
御坂美琴のDNAマップを使用して、一体のクローンが作られた。

それはまだ検体番号を与えられる前のミサカ。
一年間近い培養期間を経て作られた、試験運用クローン。

だが、そのクローンは超能力どころか「命」さえも持つことは出来なかった。
原因は脳の発達不良。

もともと来たるべき「量産計画」に備えてデータを取ることが目的だったその個体は、失敗が明らかになった後も培養が続けられた。
そして、データを取り終えたその個体は破棄されることなく学園都市の暗部組織へと引き継がれた。
理由は素体である御坂美琴が研究所を襲撃し始めたため。

最終的に、彼女達は実験を中止に追い込んだ。
この一件で「妹達」の研究情報はほぼ失われてしまったため、この個体は重要な資料として保管されることとなる。


そしてこの12月25日、御坂美琴が死んだ。

学園都市にとってこれは予期せぬ大きな損失だった。
暗部との関わりを持たない、しかも容姿端麗で面倒見もいい御坂美琴はまさに学園都市の「広告塔」であったから。
第三位という高い位置にいる御坂美琴の代わりを探すのは絶望的である。
そこで白羽の矢が立ったのが、この個体だった。

学園都市きっての名医である冥土返しが提案したのは。



脳移植。



科学の栄華を誇るこの学園都市でも、人間の脳移植は極めて難易度の高いことである。
垣根帝督のように機械的な「復元」は出来ても、いくら同じ遺伝子を持つクローンとはいえ別の人体に挿げ替えるのは未だ例はない。

219 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/19(日) 12:16:12.87 ID:AuzrqJ20


この措置を学園都市の上層部が認めたのは、希少なレベル5を出来る限り残したかったのと、この移植が成功すれば「命の予備」を作ることが可能になると考えたからである。
自分のクローンさえ作っておけば、脳が死なない限り蘇生が可能となる。夢のような話である。

そして、手術は成功した。

美琴が目を覚ましたのは昨日。
意識の戻った美琴の世話は基本的に妹達がすることとなった。
この計画を知らされたのは、学園都市の幹部と一部の暗部組織の構成員、そして「妹達」。
さらに美琴を看取った上条当麻にも知らされるはずだった。

それは土御門から伝えられる予定だったのだが、何度電話しても上条当麻が出なかったので報告が出来なかったわけだ。



「私は、私のカラダは、本物じゃない……!」

「美琴………」

「やっぱり、気持ち悪いかな………?」

そう言って俺から離れようとする美琴。
俺はその美琴の身体を逃すまいと強く抱き締め、腕の中へと引き戻した。

「当麻………?」

「馬鹿野郎……! 気持ち悪いわけ、ないだろうが……!」

「当麻……!」


220 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/19(日) 12:16:27.35 ID:s.AxbI6o
ねぇねぇ、とーまとーま
今どんな気持ち?
        ∩___∩                     ∩___∩
    ♪   | ノ ⌒  ⌒ヽハッ    __ _,, -ー ,,    ハッ   / ⌒  ⌒ 丶|
        /  (●)  (●)  ハッ   (/   "つ`..,:  ハッ (●)  (●) 丶     今、どんな気持ち?
       |     ( _●_) ミ    :/       :::::i:.   ミ (_●_ )    |        ねぇ、とーまどんな気持ち?
 ___ 彡     |∪| ミ    :i        ─::!,,    ミ、 |∪|    、彡____
 ヽ___       ヽノ、`\     ヽ.....:::::::::  ::::ij(_::●   / ヽノ     ___/
       /       /ヽ <   r "     .r ミノ~.    〉 /\    丶
      /      /    ̄   :|::|    ::::| :::i ゚。     ̄♪   \    丶
     /     /    ♪    :|::|    ::::| :::|:            \   丶
     (_ ⌒丶...        :` |    ::::| :::|_:           /⌒_)
      | /ヽ }.          :.,'    ::(  :::}            } ヘ /
        し  )).         ::i      `.-‐"             J´((
          ソ  トントン                             ソ  トントン
221 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/19(日) 12:17:01.65 ID:AuzrqJ20


再び美琴の目から涙が溢れる。

「私……、私、怖くて……!」

「うん」

「身体が自分のじゃないって知られたら、嫌われるかもしれないって……!」

「うん」

「でも、私は……!」

「うん」

「もう一度アンタに……、当麻に、会いたくて………!!」

「美琴……」

「もう一度、声が……聞きたくて……!」


もう一度、頭を撫でてもらいたくて。
もう一度、暖かい身体と腕で抱き締めてもらいたくて。
もう一度、もう一度………。

それは、俺がこの五日間ずっと願っていたのと同じもの。

もう叶わぬと諦めた。なくても生きていけると、目を背けた。
大切なものは、同時に足枷となる。だからもう二度となにも信じまいと。

だが、生きているとわかった瞬間、その決意は簡単に崩れ去った。
たとえ身体はクローンであっても、その記憶と、その想いは確実に美琴のもの。

人は弱い。頼るべきものが出来てしまった瞬間、人は同時に弱くなる。
知らないでいれば強いままでいられた。
知らないままでいれば我慢し続けることができた。

だが、俺は知ってしまった。
美琴という、暖かな帰るべき場所を。

もう俺は、ソレ無しでは生きられない。

222 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/19(日) 12:18:34.66 ID:AuzrqJ20

守り続けよう。それは恐らく美琴の為ではなく、自分の為。
俺が、美琴が必要だから守るのだ。この腕の中の存在を。
一度は確かに失った、この儚い存在を。


「美琴……!」


そういえば一週間くらい前、美琴に想いを伝えたのもこの場所だった。


「美琴、また、俺と一緒にいてくれるか……?」

「………」

「…………美琴?」




あなたは奇跡を信じますか?

ミサカは信じます。そしてそれは神や異能が偶然に作りだすものではなく、人の手によって必然的に起きるものだと。






「当たり前じゃない、ばか」






あの時と同じ街灯と自販機で照らされた舞台のうえで。




俺達は改めて恋人となった。


223 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/19(日) 12:19:50.14 ID:AuzrqJ20





どれくらい抱きあっていただろうか。
ふと時計を見る。あと少しで日付が変わってしまいそうだ。

幸い、いまこの公園には俺達二人しかいない。
少しくらい抱きあっていても誰にも文句は言われないだろう。

「………ひゃあ!?」

俺は美琴を抱きあげると、側にあったベンチへと腰を降ろした。
さっき押し倒されたときに気付いたが、美琴は震えていた。
いまさらだが、美琴の格好は制服の冬服のみ。それではさすがに寒いだろうと上着を脱いで差し出す。

「そんな薄着じゃ寒いだろ、ほら」

「あ、ありがとう……」

どうせ拒んだところで無理矢理着せられるのがわかっているのか、今度は素直に受け取ってくれた。
それにしても、美琴の身体の震えは尋常ではない気がする。
それに額にはうっすらと汗が。

「美琴……?」

どうしたんだ? と聞いても首を振るだけで答えようとしない。
そういえば、それほどの大手術をした後、たった数日で出歩いて大丈夫なのか?
いや、そんなわけはない。つまり美琴は……。

タイミングよく、携帯が鳴った。
相手は御坂妹。

「もしもし!?」

『もしもし、落ち着いてよく聞いてください、……お姉様は生きてます』

224 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/19(日) 12:20:43.47 ID:AuzrqJ20


「あぁ、俺もついさっき知った、それより……」

『お姉様が病院を抜け出したんです、まだ体調は万全ではないというのに……!』

「やっぱりか……、美琴はいま俺の隣にいるよ」

『…………そうですか、よかった、お姉様の様子は?』

「少し熱があるみたいだ、いまからタクシー呼んでそっちに向かうよ」

『申し訳ありません……、お姉様を、よろしくお願いします』

「あぁ」


御坂妹との電話を終えると、そのまま電話でタクシーを呼び、視線を美琴に戻す。


「美琴、なにか言うことは?」

「あう……」

「病院、抜け出したって?」

「あうあうあう………」



美琴は。


目を覚ましたあと、すぐに病室を抜け出そうとしていたらしい。
だがその時はさすがに身体が言うことを聞かず、そのせいでベッドから派手に落ちてしまい、その音を聞きつけた妹達に取り押さえられてしまった。
二日目になって少しだけ身体が動くようになった美琴は、厳重な(100人近い)妹達の警備をかいくぐって病院を抜け出した。
その後、寮に着替えに戻った美琴は携帯電話を忘れたことを思い出し、なんとその足でショップに行き番号そのままに新規契約してきたのだとか。

「だから、またペア契約しなおそうね?」

「あのな……、ったく」

でも、そのおかげで俺は今日、美琴と再会することが出来た。
いやしかし。そのために新規契約してくるとは、さすがお嬢様。


225 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/19(日) 12:23:27.77 ID:AuzrqJ20

「でも、当麻に会いたかったんだもん………」

着信履歴の一件目が当麻だよ、えへへー、と、手のひらで買ってきたばかりの携帯電話を転がす美琴。
正直、ここが公共の場であるのと、タクシーを待っている状況であるのが幸いした。
これがもし自分の部屋だったらもう……。
押し倒して、ひん剥いて、俺の超電磁砲をぶーんぶーん。

「な、なに? 当麻、目が怖いよ………?」

まぁここは公園だし、街灯もあって比較的明るいし、美琴は病人だし。
それでも美琴を食い尽くそうっていうのなら、まずはそのふざけた幻想をぶっころり。

でも。

これくらいは許されるだろう。

「美琴……」

キスくらいは。

「当麻……」

ゆっくりと、顔を近づけあっていく。
もう少し。
もう少しでお互いの唇が触れ合うというところで。


「お姉様、やっと見つけましたわ! ……………アラ?」



激しいデジャヴ。

でも。


「ていっ」


ぐいっと服の胸元を引っ張られ、振り向きざまにキス。



「………当麻、愛してる」




俺の奇跡は、まだ始まったばかりだ。
226 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/19(日) 12:24:31.08 ID:AuzrqJ20






〜エピローグ〜



「あーあ、年越しが病院なんて、最悪よねー」

「文句はナシ、ですの。まったくしばらく行方不明と思いきや、大怪我を負って入院しておられたとは」

「ごめんって。お詫びになんでも聞くからさー」

「で、では! お姉様の下着(使用済み)を……!」

「それはナシ」


1月1日。

あれから発狂して跳ねまわる黒子をなんとか宥めた私は、当麻が呼んだタクシーでこの病院へ戻った。
もちろん、当麻も一緒に。

入口で待機していた10032号は顔を般若のようにして私を待ち受けていて。
熱があるにもかかわらず、たっぷり30分間の説教をしてくれた10032号は、結局最後には笑って「おかえりなさい」と言ってくれた。

「ミサカ達は、お姉様の死に直面することで多くの感情を得ることができました。しかし、ミサカ達はこのようなことは二度と望みません、と、ミサカは釘を刺しておきます」

そう言った10032号の笑顔は、夢で見た9982号のそれと綺麗に重なった。
私の大事な妹。隣で見ていた当麻に「どっちが姉なんだか」と呆れられたのは癪だったけど。

227 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/19(日) 12:25:54.44 ID:AuzrqJ20


「やっほー御坂さん! お見舞いに来ましたよー!!」

「あ、あの佐天さん、病院では静かに……」


黒子から私が入院してることを聞いた佐天さんと初春さんがお見舞いに来てくれた。


「聞きましたよ、御坂さん。夜の公園で抱きあってキスしてたって!」

「あ、あああああれはえっと、その……!」

「ふぇえ御坂さん、けっこう大胆……!」

「あうあうあう……」


また、扉が開く音がした。新しい来訪者。


「お姉様、会いたかったよー! ってミサカはミサカはー!」

「チッ、なンで俺まで……」

「一応ミサカも心配したんだよ? 一応ね」

「アンタ達……」

「上位個体、そこはミサカのポジションです、と、ミサカはお姉様の隣に陣取ります」


打ち止めと番外個体、一方通行に続けて妹達全員がぞろぞろと入ってきた。
後から入ってきた妹達はなにやら大きな箱を持っている。

228 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/19(日) 12:27:15.62 ID:AuzrqJ20


「あわわわ、御坂さんがいっぱい……」

「こ、ここは天国ですの……!?」

「正月ということで、“おせち”を持ってきました、と、ミサカは自己の気の効き具合をアピールします」

「わーい! おせちー!」

「かなりの量があるので、ここにいる全員で食べましょう、と、ミサカは提案します」

「……あの、御坂さん、僕もご一緒に……」

「なンだいたのかァ、変態ストーカー野郎ォ」

「ロリコンに言われちゃおしまいね」

「そういうアナタはショタコン女じゃありませんの?」



……………病院で過ごす元旦なんて退屈だ、と思っていたけれど。


「おっ、いい匂いがするんだにゃー」

「おおー! これはもしかして日本の伝統おせち!? 短髪! 私も早く食べたいかも!」


………思ったよりも忙しくなりそう。


229 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/19(日) 12:28:06.79 ID:AuzrqJ20


「うおっ!? なんだこの人数!?」

「当麻!」

「ほれ美琴、頼まれてた外泊許可書。ついでに餅も買ってきたから後で食うか」

「うん!」

「餅!? 今日は日本の味をいっぱい楽しめそうなんだよ!!」

「おまえはほどほどにしとけよー」

「…………当麻」

「ん、どうした、美琴?」




「……………ありがとう」



「………どういたしまして」



230 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/19(日) 12:28:56.35 ID:AuzrqJ20






「………楽しそうですね」

「うん、思い切って提案してよかったよ」

「でも、能力、失ったって……」

「あぁ、あれは身体が馴染むまでは危険だから学習装置を応用してリミッターをかけただけなんだね。頃合いを見て外すよ」

「でも……、ホントに、奇跡です。あの手術が成功するなんて」

「君もまだまだだね。奇跡なんて言葉は、僕たち医者は使っちゃいけないんだよ?」

「あ……はい……」

「世の中にあるのは常に必然だ。奇跡に頼ってちゃ、患者は救えない」

「はい……」

「たとえば今回の手術も、仮にツリー・ダイアグラムに演算させたら99パーセント以上の確率で成功する、という結果をだしていたはずさ」

「……はい」

「でも」


もし。


神や異能によって偶然に作りだされるものではなく、人の手によって必然的に起きるものを奇跡と呼ぶのなら。


231 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/19(日) 12:34:42.50 ID:AuzrqJ20


何年も前、御坂美琴くんがDNAマップを提供したこと。


量産能力者計画の個体が残っていたこと。


僕がこの手術に携わったこと。


僕と彼らが旧知の仲であったこと。


あの子達全員が知り合えたこと。


そして、彼と彼女が出逢えたこと。



いろんな必然が重なって出来た今回の結果は。



「あー! それ私が食べようと思ってたのに!」

「ふふふ、プロの貧乏である上条さんに箸で勝てるわけありませんよ!」






―――――――――奇跡と、呼べるのかもしれないね?












Fin.


232 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/19(日) 12:42:32.40 ID:s.AxbI6o

面白かった
233 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/19(日) 12:43:01.69 ID:3cm8Xx6o
GJです!
イイ最終回だった
感動しました!
美琴が死んでしまったときはどうなってしまうんだろうと軽く鬱ってましたけど、最後は2人でハッピーエンドに終わりことができて良かったです!
GJ!
234 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/19(日) 12:44:34.61 ID:fD.ZNjQo
乙!
ハッピーエンドでよかった
骨壷とか能力消えたとか出てきたときはえっと思ったがそうか脳移植があったか…
能力使用に必要なのは演算能力だしすぐレベル5に戻れそうだな

そして上条さん再会直後なのに煩悩パネェwwwwwwwwww
235 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/19(日) 12:52:17.39 ID:zZtfj.DO



これで、俺の妄想は終わりです

はじめは第二次世界大戦中のパリを舞台とした男女SSを書くか、禁書のパロディSSを書くか、これを書くかで迷っていたのですが、結局、続編であるコレに落ち着きました

美琴が生き返らないENDもあったのですが、美琴好きな自分としてはなんともはや……

このSSはこれで終わりです
余裕があれば設定を引き継いでギャグ短編をと思っていますが、なにぶん多忙な身の上でして…

自分に最も近い人物を亡くすのは想像以上に悲しいことです
今回美琴は生き返りましたが、現実ではそんなことは絶対に有り得ません
人はあっさり死にます、びっくりするくらい簡単に

情緒もなにもあったもんじゃないです
気づけば墓石の前、です

だから、ただの知り合いであっても、大切にしてください
時間は一方通行です、決して巻き戻りません

では、僕はしばらくVIPに戻ります
改めて読んで下さったかた、本当にありがとうございました
236 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/19(日) 14:23:29.42 ID:lg0BRSwo
前スレも好きだっただけにこの二人がより強く繋がって幸せになるのは嬉しい限り
次はVIPで見かけるのか、ここに短編投下してくれるのか分からないけど
見かけたら支援させてもらうぜ
237 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/19(日) 17:58:24.88 ID:8nzND0co
乙。いい話だった
こんないい話なのに、上条さんはもうちょっと早く美琴を襲ってれば、処女を二回食べられたとか考えた人はちょっと感電した方があばばば
238 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/19(日) 19:57:06.64 ID:W9qjsIAO
>>237
小便はすませたか?
神様にお祈りは?

部屋のスミで ガタガタ震えて
命ごいをする 心の準備はOK?
239 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/19(日) 20:29:53.92 ID:fD.ZNjQo
>>238を妹達が言ってると思うとそれだけで……ふぅ
240 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/19(日) 22:18:37.94 ID:W9qjsIAO
>>239
へ、変態だーーーー!!!
241 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/20(月) 01:39:00.93 ID:JrJr6cwo
乙!いい物読ませてもらいました
ハッピーエンドでよかったよ、ほんと
242 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/20(月) 18:58:21.32 ID:vRd1Ag20
乙!楽しませてもらった
美琴なら目と鼻の先の爆弾でもフレンダ涙目の対応力で防げると信じるz(
243 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/20(月) 19:36:50.47 ID:LRtpecDO
けっこう読んでくれてる人いてびっくりした
本当にありがとう

>>237
膜は重要じゃない、重要なのは「初めて」という気持ちだ

>>242
強い美琴もいいんだけど、か弱い美琴も魅力的だと思わないかい?
244 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/20(月) 19:38:16.04 ID:LRtpecDO

おまけ

「ろみおとじゅりえったー」その1
245 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/20(月) 19:39:16.14 ID:LRtpecDO

上条「美琴が可愛すぎて生きるのがつらい」

御坂妹「さいですか」

上条「まだあまり体調良くないみたいでさ、少しとろーんとした目でさ、上目使い、これだよ」

御坂妹「現在看護にあたっている16820号も似たようなことを言っていました」

上条「俺が帰ろうとしたら涙目になりながら服の裾掴んで『帰らないで…』って!」

御坂妹「どうやら貴方は面会制限をする必要があるみたいですね」

上条「調子乗りました、すみません」ドゲザ

御坂妹「駄目です、お姉様が全快するまで面会を禁止します」

上条「マジですみませんでした、マジでチッ…反省してまーす」

御坂妹「では、もしお姉様が抱き着いてきたら貴方はその下半身のキレる若者を抑えることが出来ますか?」

上条「いや、無理」

御坂妹「退場」

ガシッ←待機していた妹達が上条を羽交い締めにする擬音

上条「お、おれが消えても、第二第三の俺が……!」ズルズル

御坂妹「現れるかヴォケ」
246 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/20(月) 19:42:04.03 ID:LRtpecDO

バターン!←病院の鋼鉄の城門が閉まる音(上条視点)


上条「くっ……美琴ぉ……!」


ガチャ


上条「ん?」

16820号「あ…すみませんもうしませんから許して……!」ズルズル


バターン!


16820号「あぁ……」ガク

上条「なにがあったんだ?」

16820号「ミサカはただ、お姉様が苦しそうにしていたので……」

上条「看病してたのか、それだけでつまみ出すなんて…!」

16820号「ただ、お姉様を気持ち良くしてさしあげようと、全身をくまなく舐めまわして……」

上条「どうだった?」

16820号「正直最高でした」グッ

上条「くっ……義妹に先を越されるとは……!」

16820号「そこに義をつける辺り徹底してますね」

上条「はっ! こ、この状況は漫画学園都市昔話で見たのと同じじゃないか!」
247 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/20(月) 19:43:18.68 ID:LRtpecDO

16820号「そはすなわち!?」

上条「ロミオとジュリエット!!」

16820号「おぉー!!」




上条「御坂妹はさしずめ意地悪な義母ってやつだ」

16820号「それシンデレラです」

上条「あれ? 毒リンゴ食ったんだっけ?」

16820号「白雪姫」

上条「ロミオと白雪姫? それはないだろ」プププ

16820号「ぶん殴るぞテメェ」バキィ

上条「痛い!痛い!」

16820号「あ、すみません、口より先に手が出るタイプでして」

上条「……じゃあ俺は口より先に」

16820号「それ以上言わないほうがいいですよ」

上条「…………チッ」



16820号「ろみおとじゅりえったー」




かくして上条当麻と16820号の美琴奪還作戦が始まった。
248 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/20(月) 19:44:55.32 ID:LRtpecDO

というのを考えてる

もとは総合に投下しようと思ってたんだけど、せっかく立てたスレだし、暇な時に書こうと思います

ではでは
249 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/20(月) 19:54:25.85 ID:s40K3ywo
なにこれ面白そう
上条さんどうしようもねえwwwwwwww

取り合えず全身くまなく嘗め回してる辺りの描写をねっちょり詳しくですねry
250 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/20(月) 19:57:40.17 ID:c2JbCqco
期待
251 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/20(月) 20:38:42.11 ID:8gdaE.Qo
この上条さんは期待できる
252 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/20(月) 21:19:44.09 ID:AkNnPkQo
じゃあ俺第4の上条さんな
253 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/20(月) 22:16:53.13 ID:LRtpecDO

今日は暇なのでポチポチと

「ろみおとじゅりえったー」その2
254 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/20(月) 22:18:21.34 ID:LRtpecDO

上条「ロミオとジュリエットか、ふふふ、即ち俺はお姫様ジュリエットの恋人のロミオ」

16820号「あの、一応言っておきますが」

上条「君はさしずめロミオの友人マキューシオ」

16820号「ミサカは死ぬ運命の噛ませ犬ですか、そこまで知っておきながら肝心なことを忘れているようなので一応言っておきますが」

上条「ほう、言っておくが美琴の心は俺のモノだぞ?」

16820号「ロミオとジュリエットは悲劇です」

上条「オーケー、前回の話はナシだ、やはりこれはドラクエだ」

16820号「逃げましたね」

上条「魔王(御坂妹)に囚われたお姫様(美琴)を助けに行くんだ」

16820号「魔王より強いお姫様ってどうなんですか」

上条「君はさしずめ宿屋の店員マキューシオ」

16820号「引きずってんじゃないですか、気に入ったんですか」

上条「響きがイイよね」

16820号「シェイクスピアに失礼なんで自重して下さい」
255 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/20(月) 22:19:05.05 ID:LRtpecDO

上条「てことで俺は勇者。さぁ、行くぞ女騎士」

16820号「女騎士ですか、及第点です。ですが一応電撃使いなので魔法使いのほうがいいです」

上条「魔法使いか、もう好きにすれば。武器は毒リンゴな」

16820号「なんでちょっと投げやりなんですか、好きにさせてもらいます。それともうひとつ」

上条「なんだいマキューシオ」

16820号「……」メキィ

上条「あふぅん!!」ズベシャ

16820号「今までの会話はMNWで10032号にも筒抜けです」

上条「……マジ?」

16820号「マジです」





美琴「ねぇ、当麻は?」

御坂妹「仲間を探しに行きました」

美琴「仲間?」

御坂妹「私は魔王のようです」

美琴「……はぁ?」

御坂妹「お姫様、面白そうなのでちょっと見に行ってみますか?」

美琴「あ、うん。気分転換に外の空気吸いたいし」



16820号「ろみおとじゅりえったー?」



続く
256 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/20(月) 22:27:11.88 ID:Ajl94q2o
やばいこの上条さん今までのSSで一番好きだw

ノリいいしエロいし美琴にベタ惚れだし煩悩に正直だし
なのに手は出せてないとか素晴らしくいいな。
257 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/20(月) 23:19:11.70 ID:LRtpecDO

「ろみおとじゅりえったー」その3
258 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/20(月) 23:19:52.07 ID:LRtpecDO

上条「勇者、女騎士、魔法使い、賢者、他になんかあったっけ?」

16820号「賢者と僧は一緒にされることもありますね」


ネーネー、モウチョットダケッテミサカハミサカハ-!
アーウッセェ、クソガキィ……


上条「あ、賢者」

16820号「賢者ですね」

一方通行「あァ?」

上条「一緒に魔王を倒しに行こう」

番外個体「えっ、なんかおもしろそう」

一方通行「三下オマエ、ついに頭が……」

上条「美琴が捕まったんだ、俺だけじゃ助けられねぇ、協力してくれ」キリッ

一方通行「またかァ……オマエちゃんと面倒見てンのかよ……」
259 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/20(月) 23:20:48.12 ID:LRtpecDO

上条「よし、賢者と2人の魔法使いが加わったぞ」

16820号「あ、まだそのノリだったんですか」スーハースーハー

上条「……なにやってんだ?」

番外個体「……パンツ? 誰の?」

16820号「お姉様分の補給です。ちなみに使用済みです」スーハー

上条「くれ」

16820号「やなこった」

一方通行「なァ三下、最近気づいたんだがよォ」

上条「なんだいマキューシオ」

一方通行「俺は噛ませ犬か」

上条「意外と知ってんだな、流行ってんの?」

16820号「少なくとも貴方の有るか無いかわからないくらい小さな脳の中では」

上条「あぁ、空前のブームだよ。で、どうしたアクセ。リーター」

一方通行「いま“ロ”って言った、ちっちゃく“ロ”って言った」

上条「気にすんなよ、で、どうしたアクセロリータ」

一方通行「最近悟ったンだ……、やっぱりロリは中学生までだよなァ」
260 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/20(月) 23:21:21.23 ID:LRtpecDO

16820号「……」ザザザ

上条「おぉ、ひいたひいた。え、ちょっと待って、だったら俺もロリコンになるの?」

番外個体「手遅れだと思うよ?」

一方通行「同士よ」

上条「待て、有り得ない。大きな栗の木の下でアナタと私が仲良く遊ぶくらい有り得ない。栗って当たったら痛いじゃん危険じゃん」

16820号「…」スーハー

上条「あ、ツッコミさえ来ない。なにこれ怖い」

一方通行「……同士よ」




美琴「ねぇ、アレなにしてるの?」

御坂妹「なんでも最近“ジュリエット”という女性にご執心のようでして」

美琴「…」ピシ

御坂妹「その女性と結ばれるために必死に仲間を集めているようです」

美琴「ほぉー…、私というものがありながら贅沢なモンね当麻……!」ゴゴゴ



打ち止め「ろみおとじゅりえったー?」


続く
261 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/20(月) 23:27:50.44 ID:LRtpecDO

あれ? なんか本編よりこっちのが人気?

まあいいや今日は一気に書いたけど明日からまた忙しいので一日一ネタ書ければいいかな……
読んで下さってる人、ありがとうございます

今日はこれで
おやすみなさい
262 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/20(月) 23:34:54.46 ID:Ajl94q2o
どっちも面白いよ
シリアスだったしコメディ分多いのもギャップあって楽しい
263 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/20(月) 23:36:38.82 ID:OhzMWbUo

一方通行はマキューシオというよりティボルト
264 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 00:25:46.17 ID:8pohL9Ao
本編を経てこそのオマケだよ
どっちも好きだぜ

ギャグの台詞回しがいちいち笑えるww
265 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 08:36:15.57 ID:K9TZe3go
上条さんはクンカーだったのか・・・
266 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 09:51:09.32 ID:Yxn8Pn20
なにこれ面白い
じゅりえったー!
267 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 10:09:53.41 ID:LV4vv26o
上条「くれ」

てめえwww
268 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/21(火) 21:02:07.29 ID:y3J8WkDO

だんだんギャグではなくカオスになってきたり

「ろみおとじゅりえったー」その4
269 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/21(火) 21:02:41.84 ID:y3J8WkDO


16820号「ミ・ミ・ミサカの大爆笑♪」


上条「歳バレんぞ」

16820号「ミサカは永遠の14歳ですがなにか?」

上条「見た目とキャラのギャップ凄まじいな」

16820号「そう、ギャップ萌え。こんなミサカのお茶目な一面を見せれば、妹達を溺愛するお姉様のこと、きっとミサカの想いにも応えてくれるはずです」

上条「それは妹達の総意なのか?」

16820号「いえ、もっぱら私情ですね」


神裂「上条当麻、こんなところで何をしてるのです? あの娘の近くにいなくていいのですか?」

上条「あ、女騎士」

16820号「まさしく女騎士ですね」

神裂「はぁ?」
270 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/21(火) 21:03:39.56 ID:y3J8WkDO

イン「とうま、短髪はもう大丈夫なの?」

ステイル「こんな馬鹿面見てちゃ治るものも治らないだろうさ」

上条「僧侶と遊び人だ」

16820号「僧侶と遊び人ですね」

ステイル「誰が遊び人だオイ」

上条「14で煙草吸ってて放火しまくってて落書きしまくっててどこが遊び人じゃねぇんだ」

神裂「女騎士………///」ポワワン

イン「僧侶、まぁ間違ってないかも!」

上条「よし、メンツが増えた」

16820号「これで卓2つ使えますね」

番外個体「えっ、麻雀?」
271 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/21(火) 21:04:17.67 ID:y3J8WkDO

上条「魔王をロンしてお姫様をツモりに行くんだ」

イン「なるほど、で、なにするの?」

上条「魔王をロンしてお姫様を」

16820号「他のが思い付かなかったなコイツ」

神裂「行きましょう! 魔王を倒しに!」

上条「この人なんでこんな乗り気なの? 正直ひくわー」


ナナセン!
ギョワァァァァ……!


一方通行「ツッコミ不在だなァ」

打ち止め「ミサカがやるー!」ピョンピョン
272 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/21(火) 21:05:02.06 ID:y3J8WkDO

一方通行「ガキに出来るかよ、試しに誰かボケてみろォ」

ステイル「イノウエンティウス」

打ち止め「ぶちころすぞハゲ」

一方通行「おィ、伏せ字」

ステイル「これツッコミっていうのかい? なんか理不尽に罵られただけな気がするんだが。そして少し傷ついたんだが」

打ち止め「バーwwwwwwコーwwwwドwwwwwwww」

ステイル「もういい僕帰る」グスン

上条「まぁ待ちなさいマキューシオ」

ステイル「噛ませ犬」

上条「はい」
273 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/21(火) 21:05:29.60 ID:y3J8WkDO






美琴「海原さん、ちょっと協力してくれる?」

エツァリ「は、はい、喜んで!」

御坂妹「………ストーカー」ボソッ

エツァリ「」ビクゥッ

美琴「えっ、なに?」

御坂妹「いえこちらの話です(余計なこと言いやがったら下の皮まで剥がすぞクズ魔術師)」

エツァリ「…」ビクビク

美琴「当麻は私だけのモノなんだもん……、ジュリエットなんかに渡さないんだから……」

エツァリ(………中学生?)

御坂妹(多少アタマは弱いですがちゃんとした中学生です)



神裂「ろみおとじゅりえったー!」


続く
274 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 21:14:33.91 ID:8pohL9Ao
>打ち止め「ぶちころすぞハゲ」
打ち止めが笑顔で言ってると思うと胸が熱くなる
275 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/21(火) 21:25:23.73 ID:y3J8WkDO

切れ味悪くなってきたから今日はこれで

「ろみおとじゅりえったー」その5
276 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/21(火) 21:26:21.80 ID:y3J8WkDO


西暦199X年、世界は核の炎に包まれた。

(中略)

だが、人類は死に絶えてはいなかった!



テーテテテーテテテテテテテテテ…
テテテテーテーテテテテーテー


16820号「あ、違った、これスター○ォーズのテーマだった」

上条「壮大だなオイ」

16820号「あぁ、お姉様分が足りない」

番外個体「お姉様分?」

16820号「お姉様分が不足すると記憶力の低下、発汗、発熱などの症状が出ます」

上条「お姉様分はお姉様(美琴)に含まれてるのか?」

16820号「ははは、当たり前だろう」

一方通行「どっかで見たやり取りだなァ」
277 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/21(火) 21:27:25.78 ID:y3J8WkDO

16820号「お姉様食べたいなぁ」

上条「なんか白井とは違う意味で危ない匂いがするな」

16820号「………お姉様の匂いがする」クンカクンカ

上条「おーいどこに、…………行っちまった」

一方通行「なァ、アイツらなンかどうだァ?」


ムギノー!
ウッセェサワグナアタマイタイ
ダイジョウブ、ワタシハソンナムギノモオウエンシテル


上条「むぎのんか」

一方通行「むぎのンだなァ」

上条「おーい、むぎのん」






.
278 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/21(火) 21:28:28.40 ID:y3J8WkDO




美琴「もう……、10032号どこ行っちゃったのよ……」

ガサガサ

16820号「…」ヒョコ

美琴「あ、アンタどこ行ってたのよ! 病人一人にして!」

16820号「お姉様……」ハァハァ

美琴「え、なに? 10032号じゃないの?」

16820号「ミサカの検体番号は16820号です」ハァハァ

美琴「えっ、もしかしてさっきセクハラしてきた妹なの!?」

16820号「お姉様、力を抜いてください…」ペロペロ

美琴「ひゃあ!? あっ……ちょっとやめ……!」ゾワ



.
279 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/21(火) 21:30:39.98 ID:y3J8WkDO



上条「いきなりメルトダウナー撃たれるとは思わなかった」

麦野「綺麗に避けやがったけどね」

上条「てことで麻雀、じゃなかった、美琴が捕まってうんとこしょ」

絹旗「なんか超おもしろそうです」

麦野「アイテム雇うんだったら報酬が無いとねェ」

上条「報酬か……、なにがいいかな?」

番外個体「貧乏学生じゃなかったの?」

上条「きびだんごで」

麦野「テメェ私らをなんだと思ってんだ」

上条「猿」

麦野「…」カチーン

上条「犬」

一方通行「…」カチーン

上条「雉」

神裂「…」プツーン

麦野「コイツ幾つに刻もうか」

一方通行「とりあえず百くらいで」



美琴「いやぁぁあああああ!!!」



続く?
280 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/21(火) 21:36:25.33 ID:y3J8WkDO

なんか思ってたより書く時間あるんで次からは普通な上琴を書いてこうかと思います

ろみおとじゅりえったーは飽くまでオマケとしてそのうち……

書き溜めるためにしばらくかかるのでしばらくはごきげんよう
281 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/21(火) 23:19:18.55 ID:bto1RTso
今全部読んだけど最高だった!
美琴のクローン脳移植は俺も考えてたけど先越されちまったい
ここまで上手く違和感なしに話作れるのはすごく羨ましいな

そしてオマケのギャグのキレが良すぎてかなり笑わせてもらったww
普通の上琴も期待してるよ!
282 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/22(水) 01:24:11.13 ID:zQikze6o
乙〜
283 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/22(水) 06:28:12.87 ID:dDKKncoo
猿犬雉の配役に妙に納得してしまった
16820号マジ怖い
284 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/22(水) 11:16:59.96 ID:jdX5YYQo
犬はステイヌさんじゃないのかかませ犬的に
285 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/23(木) 02:30:49.45 ID:CdfwVBw0
御坂姉妹が仲良くて上琴とか俺得すぎてシヌ
286 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/23(木) 09:03:29.61 ID:QB6SSUDO

・このまま続編としてほのぼの上琴
・まったく別の方向でスレタイを目指す
・スレタイなんて関係なしに上琴

どれがいいかな?
基本いつも即興で書いてたから中長編でなければ即興のがいいの書けるかも
287 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/23(木) 09:18:24.34 ID:NPB9s.Eo
真ん中以外なら
288 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/23(木) 09:23:51.60 ID:zRiz/FMo
ハッピーエンドなら真ん中もアリ
でも上下二つのが希望度は高いかな
289 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/23(木) 09:24:01.63 ID:22pCJxQo
>>286
どれでもいいけど「ろみおとじゅりえったー」みたいな変態上条で頼む
290 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/23(木) 17:44:00.66 ID:QB6SSUDO
では、ギャグの風味を取り入れながら続編の続編を書いてみます

おそらく地文は使わないかと

今日の夜あたりに第一章を投下できるよう頑張ります
291 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/23(木) 20:54:55.95 ID:QB6SSUDO

1月2日


御坂美琴の病室にて。


「はぁー、昼間は酷い目にあったわ」

「そうか? なかなか楽しかったと思うけど」

「アンタはね。私は16820号に舐め回されたり、便乗してきた青髪の男に迫られたりで大変だったんだから」

「使われてなかったとはいえ、病棟を一棟潰すのは流石ですね、とミサカは当事者で無いフリをしてみます」

「レベル5が4人も集まればな。病棟一つで済んでよかったよ」


夜もふけたとある病室でやたら物騒な話に花を咲かせ?ているのは、“超電磁砲”御坂美琴とその恋人である上条当麻、そしてシスターズの10032号いわゆる御坂妹である。
三人が話しているのは今日の昼起こった「ロミオとジュリエット事件」のことだったり。
292 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/23(木) 20:55:58.05 ID:QB6SSUDO

かい摘まんで説明すると、美琴を独り占めしようと古病棟に立て篭もった御坂妹(当然本人は美琴を変態達から守ろうとしていただけだが)を倒すために立ち上がった勇者達(いい迷惑である)が魔王(御坂妹)の牙城(古病棟)に攻め込んだ。
おい括弧多すぎてよくわかんねぇぞ。

「私はもう能力使えないんだからね、今回はひたすら被害者なのよ? なのになんで私まで怒られなきゃ………ブツブツ」

「最後ノリノリで『ロミオー!!』って叫んでたのは誰ですかね?」

「あ、あれはアンタ達が無理矢理言わせたんでしょ! もう……恥ずかし過ぎてワケわかんない………」


牙城(古病棟)に攻め込んだ勇者達(本当にいい迷惑である)は我こそ魔王(御坂妹)を倒さんと各々の能力を解放した。
ベクトル操作でコンクリ片が飛び交い、原子崩しで病棟全体が蜂の巣となり、最後に選ばれし正義の闘士の「すごいパンチ」によって牙城(古病棟)は瓦礫の山と化した(この間わずか5分ほどである)。

「括弧が多い」

「えっ?」

「いえこちらの話です」

「それにしても流石レベル5だよな。億単位の修繕費用をポンと出せるなんて」

「払ったのは主に一方通行と麦野さんだけどね。あーあ、なんか楽しいことないかなー」

灰色の山を前にしてようやく自分達の悪行に気付いた上条達一行。
これにはさすがの冥土返しも苦笑い、………………………とはならず。
学区全体に響き渡るのでは、と思うほどの怒号によってこの事件は終息した。
事件の首謀者は私こと上条当麻と16820号(イロハ号と呼ばれているとか)ということにされてしまったが、まぁ間違ってはないので否定できない。
293 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/23(木) 20:56:48.45 ID:QB6SSUDO

ところで、最近急速に個性を伸ばしつつある妹達だが、この16820号もそのうちの一人で。
なんでも自分と同じ顔なはずの「お姉様」に心底惚れ込んでいるのだとか。

「お姉様が楽しいことをご所望だと聞きまして」

噂をすればなんとやら。
廊下で聞き耳を立てていたのか、美琴が言い終えたのと同時に病室に入ってきたシスターズは16820号。
なにやら黒いテープで覆われたDVDケースを持っている。

「年始色のテレビ番組も見飽きたでしょう。昼間のお詫びにミサカお勧めの映画のDVDを持ってきました」

「あ、ありがとう」

「早速見ますか?」

「うん、暇潰しになればなんでも」

「では再生します」

と、DVDケースからディスクを取り出し………………、ちょっと待て、なんだそのピンク色(比喩)のディスクは。

「上映時間は118分です」

「ちょっと待て、それなんて映画?」

「“百合色な日々”ですが」

「よし、ちょっと一緒に外出ようか」

「えー?」ズルズル
294 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/23(木) 20:57:26.12 ID:QB6SSUDO

〜廊下にて〜


「あのな、美琴はな、多少DQNっぽいところはあるが根は純粋無垢なお嬢様なんだよ」

「でもいずれ貴方の汚らわしい超電磁砲をぶち込むつもりなんでしょう?」

「それは否定しない」キッパリ

「ならば今からちゃんとした性教育を行っておかなければ。いざ本番になって拒絶されたら、○○ジンブレイカーの名が泣きますよ?」

「その卑猥な文字の伏せかたはやめろ。あとアレのどこがちゃんとした性教育なんだ?」

「アレとはなんですか、118分の上映時間のうち109分が濡れ場という垂涎の作品ですよ?」

「要するにAVなんじゃねぇか。あと妙にリアルな数字出すのやめてくれ」

「ちなみにOPが15分と非常に長いです」

「OPから濡れ場に入ってんのか、スタッフの顔が見てみたいよ」

「先程から文句ばかり垂れていますが、貴方はお姉様に“正しい性教育”をすることが出来るのですか?」

「当たり前だろう。いいか、見てろよ」


こういうのは掴みが大事なんだ。
そう、保健体育の授業と思えばいい。
病室のドアを開けて一言目。コレでまず話の雰囲気を変える。



「美琴、[田島「チ○コ破裂するっ!」]についてだが」



テレビが飛んできた。




.
295 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/23(木) 20:58:42.44 ID:QB6SSUDO

1月3日、朝。


寒い。非常に寒い。
なぜ俺は床に寝ているのだろう。
そうだ、俺は昨日、美琴に正しい性生活について講釈しようと病室に入って……。
そこで記憶は途切れている。

まあいい、朝だ。

1月3日。
明日からは鬼畜ロリ教師による補習が始まる。
つまり実質的に冬休み最後の日となるわけだ。
年末年始を最悪な事件に見舞われ、病室で過ごすことになった美琴にはなんとかして良い思い出を作ってやりたい。

なにかないか。
そうだ、今日までは三が日。
初詣に行こうか。
もちろん美琴には振袖を着て貰ってぐふふ。

「おはようございます、よく眠れましたか?」

美琴が起きる前に病室に現れたのは、件の16820号。
今日はコイツに協力してもらおうか。

「この状況でよく眠れましたかと聞いてくる度胸だけは褒めてやる」

「あのあとお姉様が流石に可哀相と言って毛布をかけていたのですが」

「んなもん無いぞ」

「ミサカが夜中頂きました。お姉様の匂いのついた毛布、家宝です」

「それを迷いなく実行する辺り流石だな。それより美琴の振袖姿、見たくないか?」

「興味深いですね」

16820号の目の色が変わった。
先程までの虚ろな目はどこへやら。まるで獣のような目をギラギラさせ、俺の顔を覗き込んでくる。
296 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/23(木) 20:59:42.22 ID:QB6SSUDO

「お前、振袖持ってないか?」

「ないです。必要とあらば用意しますが」

「いや、お前が買ってくると外に着て行けないようなの買って来そうだからいい」

「むぅ、見越されていましたか」

「まぁそれもアリ……ゲフンゲフン」

「とりあえず外出許可を取りに行きますか」


おっと、そうだった。
とりあえず冥土返しから外出許可をもらわなければ。
駄目と言われたらどうしよう。無理させるのはいけないから、諦めるか。
どこかから「過保護」とか声が聞こえてきそうだ。
297 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/23(木) 21:01:33.99 ID:QB6SSUDO

1月3日、10:30。


「こ、こんな感じかな……?」

そう言って目の前でくるりと回る天使。
無事医者から許可を貰うことが出来た俺達は白井に連絡して、振袖を持って来てもらった。
以下会話文のみ。

美琴「で、当麻は普通の格好なの?」

上条「上条さんは貧乏なので袴(だったっけ)などは持ってないわけですよ」

美琴「じゃあ……」

上条「待て、流石にそんなものまで買ってもらうのは俺のプライドが許さない」

美琴「むぅ……」

16820号「では、早く初詣に」

御坂妹「16820号、あなたは留守番です」

16820号「なぜですか、10032号。ミサカにはお姉様を見守るという使命が」

御坂妹「その使命とやらは建物ひとつぶっ潰してお姉様を危険に曝したうえ、夜にいかがわしい映画を見せるのですか」
298 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/23(木) 21:01:55.76 ID:QB6SSUDO

上条「えっ、アレ見たの?」

御坂妹「見ました」

美琴「…………///」

上条「oh……」

16820号「結局10032号も見ていたではないですか」

御坂妹「どうしてもというならば力ずくでも……」パチッ

16820号「ミサカの能力は10032号を上回りますよ、それでもかかってきますか?」バチバチ

はい、姉妹喧嘩が始まりました。
優勢なのは16820号。しかし御坂妹も美琴を盾にしたりして果敢に戦っています。
ちなみに周りの機器は美琴の電磁波で壊れないよう、特殊なものが使われているので壊れる心配はないが。
それでもいくらかの機器は既に煙を上げ始めていたり。

「おいお前ら、美琴が危ないだろ」

「う……」

「すみません………」

よし、ここは大人な俺がこの場を治めるべきだよな。


「とりあえずその映画の感想を………」



テレビが飛んできた。




.
299 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/23(木) 21:07:27.43 ID:QB6SSUDO

結局昼までの記憶が飛び飛びになってしまい、俺の冬休み最後の半日は既に終わってしまった。


そして残りの半日。




クリスマスほどではないとはいえ、俺を待っていたのはまたも不幸だったり………。





百合色な日々なんて実在しませんよ、あったとしてもまったく関係ありませんので悪しからず。




序章、完
300 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/23(木) 21:14:57.49 ID:QB6SSUDO

あかんどうしても妹達が前面に出てしまう

もうちょい練ってから投下します
301 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/23(木) 21:19:41.17 ID:wRpgRhco
乙乙
お姉様ラブ個体か
某スレに倒錯娘号という同系統個体がいるがどちらかというとプラトニックというかストーカー気質でここまでアクティブじゃなかったな
302 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/23(木) 21:34:34.49 ID:oMuF7Vso
乙!
上条さんwwwwwwwwwwww
303 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/24(金) 00:36:00.32 ID:PyJDUEco
ダメだこの上条さん…(褒め言葉
304 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/24(金) 01:01:53.95 ID:tbsZmAoo
乙〜
305 :Are you enjoying the time of eve? [sage]:2010/12/24(クリスマスイブ) 11:31:33.75 ID:DRTML2M0

もうだめ上条さん面白すぎるwwwwwwwwwwwwwwww
続きも楽しみにしてる
306 :Are you enjoying the time of eve? [sage]:2010/12/24(クリスマスイブ) 17:38:41.15 ID:q7Og7uU0
テレビが飛んできた

このノリ超最高です
307 :Are you enjoying the time of eve? [sage]:2010/12/24(クリスマスイブ) 18:02:01.67 ID:fFitkPco
いつも上琴SSならもうお前らやっちゃえよって感じなのに
なぜかここでは美琴の貞操に危機を覚えるw

上条さんには変態を貫いて欲しいし
美琴には貞操を守って欲しいw
308 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/24(クリスマスイブ) 19:11:38.82 ID:GxXEioDO

うぉお変態上条さん人気だなぁ
ありがとうございます

本編のほうはもうちょいかかるので日付変わる前にろみおとじゅりえったーを1ネタ書けたらなぁと

クリスマス? そんなもの上琴のためであって自分自身は………
309 :Are you enjoying the time of eve? [sage]:2010/12/24(クリスマスイブ) 19:19:19.89 ID:PyJDUEco
だいじょうぶ。そんな>>1を私は応援してる。
310 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/24(クリスマスイブ) 23:46:51.91 ID:/wmbHxQ0
本編のほうがきりのいいとこまで書けたので、投下します
もう開き直ってドタバタ路線です
311 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/24(クリスマスイブ) 23:48:07.99 ID:/wmbHxQ0


1月3日、昼。
最寄の神社までの道程中。


「テレビぶん投げるくらいの体力あんなら、もう退院してもいいんじゃねぇか?」

「私もそう思うんだけどね、でもゲコ太が冬休みいっぱいは入院しといたほうがいいって」

「そうかー、でも俺は明日から補習だし病院に入り浸れるのも今日までだぞ?」

「え………」ジワ

「く………!」


ちくしょう、ここが天下の往来でなければ。
いや、野外プレイもアリなのか? いいのか?
もしかしてコレは誘っているのか?
そうか、それなら仕方ない。


「そこの野獣。思考がだだ漏れです、とミサカはお姉様の前に立ち塞がります」

「えっ、マジ?」

「当麻……、それはさすがにちょっと………」

「冗談だよ冗談。あ、小銭が落ちてる」

「冗談とは思えなかったんだけど……」

馬鹿だなぁ。俺がそんな変態なわけないじゃないか。
たとえ変態だとしても、変態という名の紳士だよ。

それより、新年早々お金を拾うとはなかなか幸先いいじゃないか。
500円玉…………、いや、これは。

「コイン……?」

312 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/24(クリスマスイブ) 23:48:42.63 ID:/wmbHxQ0

「見たことない模様ね、どこのゲーセンのコインかしら」

「いるか?」

「私はもう超電磁砲は撃てないからいいわ。それより、珍しいから当麻が持ってれば?」

財布の中に入れておけば、なにか少しでも運が良くなるかな?
さて、そんなことをしてる間に目的の神社に着きましたよっと。

……………あれ?


「なんか……、人、少ないな」

「うん、けっこう大きな神社なのに……」

大きな鳥居をくぐった俺達を迎えたのは圧倒的な人の波。
……………ではなく、広い境内を遠慮なく吹きすさぶ冷たい北風と。

「御坂さーん!」

「お姉様! あぁ、今日も麗しゅうございますわ……!」

「御坂さん、すごく可愛いです……!」

クリスマスでも世話になった白井黒子、初春飾利、佐天涙子の3人組。

「あら上条さん、明けましておめでとうございますわ」

「おぉ、こちらこそ。んで、なんでこの神社はこんなにスッキリしてるんだ?」

「あれ? 皆さん知らなかったんですか?」

「なにを?」

「ここの神主さん、おととい交通事故で大怪我しちゃったらしいんですよ」

「はぁ!?」


もう縁起悪すぎて誰もお参りに来ないんですよー、あははー。
ならば佐天さん、君達はなんでこんなとこにいるのかな?

313 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/24(クリスマスイブ) 23:49:34.22 ID:/wmbHxQ0

「だって面白いじゃないですか、こういうの」

「こちらとしては他人事ではないのデスガ………」

「あ……、そうでした。すみません、御坂さん」

「えっ? いやいや別にいいわよ!? 私は私でいま結構幸せだし……」

「わぁ御坂さん、さっそく惚気ですかー!?」

「ふぇ!? いいいいいやそそそそそんなこととと……………! あうあうあう…………」


その幸せというのは俺か?
俺のことだな?

「上条さん、目が怖いです……」

「ちょっとは自重しろこの類人猿、とミサカは回し蹴りを叩き込みます」バキーン

「ぐばぁ!! いきなりは卑怯だろ!」

「御坂さん、ホントにアレが御坂さんの……?」

「うん、馬鹿で変態でウニ頭だけど、いざって時はすごく頼りになるの」

そう言ってもらえるのは嬉しいが、その説明文にウニ頭って必要だったんですか美琴たん?

「そうなんですかー、でもウニ頭かぁー……」

「俺、売られた喧嘩は買うほうだよ?」

「年下の女の子に向かってなに言ってんのよ馬鹿!」

「だって! だって美琴たん!」

「たん言うなぁぁ!!」

美琴は能力を失ってるから少々は大丈夫、と思ってる時期が僕にもありました。
でも、美琴は能力を無くしてもなかなかの戦闘力を持っているようで。
ちぇいさー、という掛け声とともに側頭に回し蹴りを叩き込まれた俺は、今日3度目の気絶をすることとなった。




314 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/24(クリスマスイブ) 23:50:16.14 ID:/wmbHxQ0






「おーいカミやん、大丈夫かにゃー?」

「おぉ土御門……、此処は……」

「神社の中の休憩所だぜい、女の子達はあっちでお参りしてるぜよ」

よかった、今回は長い時間気絶していたわけではないようだ。
土御門の指差すほうに視線を向けると、ちょうど美琴達が賽銭箱の前で柏手を打っているところだった。

「俺も行きますか……」

「新年早々災難だにゃー」

「あ、当麻、今から行くの? 賽銭ケチっちゃ駄目だからね?」

「あいよー」

賽銭箱の前にたどり着き、財布を開けて………。

………あれ?
そんなバナナ。
小銭が、小銭が500円玉しかない。
千円札すらない、どうしよう。

「…………仕方ない、500円。お願いしますよ神様」

なけなしの500円を放り込み、柏手を打つ。
何回だったっけ、まぁいいや。


315 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/24(クリスマスイブ) 23:51:08.78 ID:/wmbHxQ0




「お守り。いまなら全部千円で。売ってあげられる」

「いらないよ、お守りなんて右手で触った途端に効果消えちまうだろうし」

「だったら。左手d」

「ねぇ上条さん、御坂さんとはもう?」

場所を休憩所に移してから数十分。
さすが女の子は話のネタが尽きないなぁ。

「俺はいつでも準備万端なんだけどな、美琴の嫌がることはしたくないからなぁ」

「あn」

「へぇー、さっきの見てるともう食べちゃったのかと」

「俺は飽くまで紳士なんですよー、ねー美琴たん」

「たん言うな、罰としてなんか飲み物買ってきて?」

「へいへい……」ドッコラショ

「ワタクシはアイスコーヒーでお願いしますわ」

「私はイチゴオレをお願いします」

「じゃあ私は抹茶オレで!」

「ミサカはカフェラテを」

「美琴は?」

「んー、じゃ、バナナミルクオレってやつ」

「了解しましたー」


………バナナミルク、なんかエロい。
製作者はもちろんわかったうえで販売してるんだよな?
アンタとはいい酒が呑めそうだ。

あぁいう果物+ミルク類は若い女の子に人気だそうな。
つまりそういうことだ。

316 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/24(クリスマスイブ) 23:52:30.25 ID:/wmbHxQ0

「おっと……、一人で持っていくのは厳しいな」

「手伝うぜい、カミやん」

「おぉ、サンキュ。そういえば土御門はなんで此処に?」

「………取引がある。重要な、な」

「………初詣が終わったらさっさと帰ったほうがいいぜい、巻き込まれないようににゃー」


取引ね。まぁどうやら今回は俺達は関係ないみたいだし。
邪魔にならないように、コレ飲んだらさっさと帰るか。

「買ってきたぞー」

「あ、当麻!」

「ん、どした?」

「賽銭箱が盗まれたって……!」




……………はい?


「この休憩所はちょうど賽銭箱の死角になるのです、とミサカは補足しておきます」

「でも、いまこの神社には私達くらいしかいないのに……」

「ワタクシ達はずっと此処におりましたし……」


………え、ちょっと待って。
なんで皆の視線が俺に?
なんだ? 皆して俺にときめいちゃったとか?
いやいやいや、いくら貧乏な上条さんといえど、賽銭箱を盗むなんて罰当たりな真似は……!

317 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/24(クリスマスイブ) 23:54:52.08 ID:/wmbHxQ0

「ち、違うわよ! 当麻はそんなヤツじゃないもん! ウニ頭だし!」

「そうですわね。しかし万が一ということも……、ウニ頭ですし」

「はぁ……このウニ頭……、とミサカは溜息を……はぁ……」

どうしよう土御門! 容疑をかけられた焦りと理不尽に罵られることへの怒りが爆発しそう!
一方通行がいればこの感情のベクトルも操作してくれるかな!?

「あ、ちょっと待ってくれ、“今回の相手”から電話だにゃー」

「あ、そう……」

「もしもし俺だ。…………………はぁ?」

「どうした?」

「カミやん、ここに来るまでにコインを見なかったか? 今回の取引の物で、重要なデータが入ってるんだが……」

おぉ、さすが腐れ縁。
見ましたよ拾いましたよ。
感謝しろよこの腐れシスコン。

「あぁ、それなら俺が拾っていま持ってるよ」

「よかった、アレひとつで学園都市全体がひっくり返りかねないシロモノだからな」

「たしか小銭入れに……」

………あれ。

「……………ない」

おかしいな。
確かに小銭入れに………。

――――――仕方ない、500円。お願いしますよ神様。

………ちょっと待ってくれ。
俺、500円玉なんて持ってたっけ。
持ってなかったよな。あはは。

318 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/24(クリスマスイブ) 23:56:46.42 ID:/wmbHxQ0


「………………土御門」

「どうした?」

「………………寄付、しちまった」

「………………………は?」

「賽銭箱の中に……………」


次の瞬間。

土御門の口から放たれるはずだった怒号は、どこからか発せられた銃声によって掻き消されることになった。

「チッ……、敵方のテロリスト達だ!」

「みんな休憩所に逃げ込め!」


さすがは全員それなりの修羅場をくぐり抜けたつわもの達。
俺の声を聞くや否や、すぐに休憩所に飛び込んで身を伏せた。
直後、人のいない神社全体に銃弾の雨が降り注ぐ。

「バカだろオマエ! バカだろオマエ! 大事なことなので二回言いました!」

「うっせェ! 俺は気前よく500円神様にくれてやったつもりだったんだよ!」

「学園都市の機密データなんて高価なモノ賽銭にするなんてどうかしてるぞ!」

「あぁぁこれは夢だ夢なんだぁぁ!! ほら、ウニが二本足で歩いてる!!」

「愉快に現実逃避してんじゃねぇ! さっさとコインを取り戻してこい!」

「ちょっと当麻! いったい何が起こってるの!?」

「俺に聞くなぁぁ!!」



銃弾は幻想殺しじゃ消せないってのに。
美琴は能力使えないってのに。


―――――どうする、上条当麻。



319 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/24(クリスマスイブ) 23:58:25.50 ID:/wmbHxQ0
短いけど今日はここまでで。
軽い感じでハードな話を進めていくのって難しい…

メリークリスマス!
320 :Are you enjoying the time of eve? [sage]:2010/12/25(土) 00:00:51.80 ID:NmvQ.6Mo


上条さんは変態じゃなくて変態という名の紳士だったか
321 :Are you enjoying the time of eve? [sage]:2010/12/25(土) 00:01:50.34 ID:MKpPBk.o
いいな、凄くいい。
変態ウニ頭と美琴の距離感が凄くいい。
322 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/25(土) 00:16:56.69 ID:bbNrhU.0

あ、誤字訂正
>>314は「千円すらない」ではなく「千円しかない」です

あれ? これって上条さんが変態なんじゃなくて書いてる僕自身が変態なんじゃ……
まあいいよね、正直シリアスよりこっちのが書いてて楽しいし

今日(25日)は同士達と、カップルで埋め尽くされた街に繰り出す予定なので、次は日曜になると思います
ここまで読んでくださったかた、ありがとうございます。最後までお付き合いいただければ光栄です

では改めて

メリークリスマス!
323 :Are you enjoying the time of eve? [sage]:2010/12/25(土) 00:23:24.38 ID:MKpPBk.o
>>322
メリークリスマスメリークリスマスと連呼うるせええええええええw
324 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [sage]:2010/12/25(クリスマス) 02:50:09.19 ID:K0mtihEo
乙です!
325 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [sage]:2010/12/25(クリスマス) 03:03:07.50 ID:WOuwL9so
乙!
それからメリークリスマス!
326 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 00:56:49.35 ID:gRYqtloo
お前だったのかwwwwww
327 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 01:01:43.74 ID:iXcVBzgo
同じ上琴厨としてリスペクトしてます
328 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 01:13:11.92 ID:Xt5Ue/oo
まったくあっちでもこっちでもお前というヤツは(服を脱ぎながら
329 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 01:51:55.75 ID:3E7EUg6o
続き超期待してますよ
330 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 02:46:12.33 ID:iqdnDO20
VIPから来ますた
331 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/27(月) 07:57:42.97 ID:uoa8VwDO
ちょ、こっちでやるのは飽くまでVIP側が落ちていた時であってウワァァアア
332 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 15:02:08.38 ID:Xt5Ue/oo
落ち着けwwwwww
333 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/28(火) 00:24:02.18 ID:c/FdTWg0
明日から本気出す
こっち放置しててすみませんでした

とりあえず先に本編を終わらせる予定です…
334 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/28(火) 01:23:00.28 ID:RlwYz1.o
向こうも楽しかったからおkおk
335 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/28(火) 23:36:23.90 ID:c/FdTWg0
なににびっくりしたって、自分の酉で検索したらこのスレ以外にも同じ酉使ってる人がいたってこと
いずれ酉変えるかも

相変わらず短いけど続き投下します
336 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/28(火) 23:38:04.67 ID:c/FdTWg0


1月3日、午後3時過ぎ、今日の天気は。


……………晴れ時々多量の鉛。


「なぁ、さっき巫女さんっぽいのを見た気がするんだが……」

「それ。わたsガガガガ……」

「あぁ!? 聞こえねぇ、なんだって!?」


随分と平和な会話だが一般人から見るとこの状況は決して日常的ではない(たぶん)。
科学の結晶である学園都市とはいえ、神聖な場所である神社に銃弾の雨が降らせるなど、罰当たりにもほどがある。


「やけに落ち着いてるが、なんか対策でもあんのか土御門?」

「対策? そんなもの必要ないぜよ」

「あぁ、やっと死ぬ気になったんだな。でも出来れば俺達は巻き込まないでほしかった。ほら、ちょっと足を一歩踏み出すだけで胸いっぱいにアツアツ新鮮な鉛を吸い込めるぞ?」

「一方通行もだけど、なんか最近みんな毒舌がキツイにゃー。グサグサくるぜい」

「ちょっと、アンタ舞夏の兄なんでしょ!? 一般人がなんでこんなやっかいごと持ち込んでんのよ!?」

「俺から見れば、君達のほうが一般人なんだがにゃー……」


その一般人をこんなベリーハードな状況に追い込んでるのはどこのどいつだ? ん?
いや、そんなくだらない話をしてる場合じゃない。今まさに降りかかっている銃弾はこの休憩所の屋根や壁をどんどんえぐりとっていく。
土御門本人は出来るだけ魔術を使うわけにはいかないし、美琴はいまや無能力者。唯一役に立ちそうなのはレベル4の白井くらいだが、これほどの相手には太刀打ちできまい。

337 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/28(火) 23:39:06.53 ID:c/FdTWg0


「ほんとに落ち着いてるな、おい」

「心配ないにゃー。なんせこっちには学園都市が誇るレベル5、“超電磁砲”御坂美琴様がいるんだぜい? これくらいの相手なら一瞬で倒せるはずだにゃー」

「は?」

「ささ、御坂様、ちゃちゃっと頼むぜい」

「え、いやだから、私はもう能力は使えないって…………」

「………………」







「そうだったぁァぁぁぁああぁあぁぁああああーーーーーーー!!!!!!」

「えぇぇえええーーーーー!!!!??」


突然頭を抱えて膝をつく学園都市が誇る三馬鹿の一角。ねぇコイツ、どうやって殺そうか。
頭を抱えたくなるのはこっちだっつうの。
あぁ、美琴の眼差しがいい感じ。そのジト目はいろいろと情欲を誘いますいやそんなことより…………。


「バカだろオマエ!! バカだろオマエ!! はい、大事なことなので二回言いました!!」

「よし、とりあせず落ち着こうカミやん!! これはたぶん夢だ!!」

「テメエも現実逃避してんじゃねえか! よしわかった!! 土御門、オマエがおとりになってとりあえず死ぬ、これでどうだ!?」

「もう少し現実的な意見を頼む!!」

「わかった!! とりあえずテメエがおとりになれ!!(ゲシッ)」

「おおおーーー!!?」


とりあえずこのどうしようもない馬鹿を休憩所の外へ蹴りだす。
しかしソイツはゴキブリのようなスピードで戻ってきた。チッ、すぐにドアを閉めるべきだったな。
耳元でゼエゼエと息をしながら文句をたれる役立たず陰陽師。非常に耳障りだ。

338 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/28(火) 23:40:36.17 ID:c/FdTWg0


「おいおいおいおい!! ホントに死ぬとこだったぞ!!」

「ギャグ展開だ、どうせ死なねえよ」

「ちくしょう、アニメで培った俺のクールさが……」

「しかし、こんなに派手にドンパチやってんのにアンチスキルの一人も来ないのはおかしいな」


新年早々こんなに大々的に爆竹を鳴らす家なんてないだろう。
今は銃で済んでいるが、いつ重火器を持ち出してくるとも限らない。
こういう敵にはアンチスキルもそれなりの仕事をしてくれるはずなんだが………。


「あぁ、ステイルが人払いのルーンを貼っているからな」

「は? ステイルが近くにいるのか? だったら早く救援に……」

「いや、帰った」

「帰った?」

「なんでも小萌先生に映画に誘われちまったんだってよ、強引に」

「電話しろ。今すぐ」


おいおい、小萌さん、いい仕事してくれますね。
タイミング良すぎですよホント。神社に誰もいなかったのはそのせいだったのか。
大方、美琴の友人達はそのルーンが貼られる前から神社にいたのだろう。俺達が普通に神社へ来れたのは、おそらく俺の右手のおかげなんだろうな。
ちくしょう、今回もいい具合に不幸を運んでくれたようだ。


「もしもし、ステイルか? 今すぐ戻って……………、はぁ?」

「なんだって?」

「カナミン死ぬほどおもしれぇ、だってよ」

「電話かせ」

「はいよ」

339 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/28(火) 23:42:21.77 ID:c/FdTWg0

「もしもし、とっとと戻って人払いのルーンを外せ。さもないとインデックス放ったらかしてロリとイチャコラしてたって神裂に言うぞ」

『な……! それはやm(バキイ)』

「おぉぉいカミやーん!!!」


返事を待つことなく、携帯を反対折りして通話を切る。
これでステイルは戻ってくるだろう。あとはどうやって時間を稼ぐか。
それに、コインも取り戻さなくてはならない。


「賽銭箱の窃盗のほうは任せてください、とミサカは提案します」

「おお、そうか! 妹達がいたか!」

「お姉様の一件でいま学園都市には百体以上のシスターズがいます、そのチカラを使えば賽銭泥棒などすぐに捕まえられるはずです」

「よし、頼む。中に入ってるコインが大事なモンなんだ」

「了解です、ミサカネットワークを使って学園都市内にいるミサカ全員に通達します。感謝しろよこの役立たず、とミサカはかつての想い人に蔑みの視線を送ります」

「うぐ……!」

「ははは、たしかに近代兵器が相手じゃカミやんは役立たずだにゃー」

「テメエにだけは言われたかねえよこのシスコン魔術師ーー!!」

「二人ともやめなさいって………!!」


冷静を欠いた俺達の間に美琴が割って入る。
その時突然、ひっきりなしに続いていた銃弾の嵐が途絶えた。

「いよいよか……」

(新手が来るか………?)

340 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/28(火) 23:43:55.33 ID:c/FdTWg0

辺りが静寂に包まれ、皆それぞれが神経をとがらせる。
白井は初春さんと佐天さんを壁際に寄せてそれを塞ぐようにして針を構え、俺は隣で不安そうに見つめてくる美琴を己の身体で包むように抱きよせた。
土御門の顔には、今までのような軽さは見られない。


「カミやん、いざとなったら俺がおとりになる。その間にこの休憩所を出て東へ走れ。人払いのルーンとの境界線が一番近いところだ。あと白井……、だったか、もしもの時はその子達を頼むぞ」

「………お前はどうするんだ」

「……一般人を巻き込んでしまった責任ってやつだ、後は頼む」

「土御門………」



「はーい、話し合いは終わりましたかァー??」


扉が開かれ、不愉快な声が部屋全体に響いた。
迷彩服を着込んだ数人の男達と共に休憩所に入ってきたその男は他のテロリストと違い、黒いローブを着こんでいる。こいつは………。


「……魔術師か」

「そうだよォー? 銃撃ばかりだったからただの武装集団と勘違いしちゃったかなァー??」

「いちいちムカつく喋り方すんな、テメエ」

「ふん、知っているんですよォ? 幻想殺しと言われるその右手、“この世の現実”に対してはまったくの無力であるとねェ??」

「そうだな、だがテメエみてえなムカつく魔術師には絶大な力を発揮してくれるんだぜ?」

「おっと」


俺が拳を握り込むのと同時に男が手を挙げ、それを見たテロリスト達が銃の照準を定めなおす。
どうやらこの男がこのテロリスト集団の頭のようだ。
ちくしょう、銃が相手じゃ俺はただのガキでしかない。
この際、腕の中でかすかに震えている美琴だけでもなんとかして逃がさなければ。

341 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/28(火) 23:47:14.58 ID:c/FdTWg0

「ほォ、どうやらその娘をよほど大事に思っているようですねェ??」

「んだと?」

「そこの娘、こちらへ来なさい」

「な………! テメエ!! 美琴に手を出すんじゃねえ!!」

「来ないのならば、この場で皆殺しにしてブツを奪い取るまで、ですよォ?」

「く……!」

「出来ればそんなことしたくないんですけどねェ……、死体の処理って大変ですからねェ?? ヒャハハハハ……!!!」

「頭イカレてんぜこの野郎………」

「当麻、私………」


話を聞いていた美琴が、俺の腕の中から顔を出した。
まさか、言うとおりに人質になる気なのか。


「だめだ、行くんじゃない」

「お姉様!」

「…………みんなの、ためだもん」

「美琴………!」

「御坂さん……」

「ふふ、さすがは学園都市が誇るレベル5。他のガキどもとは違って頭がいいようですねェ?」

「私を知ってるんだ? じゃあアンタ達全員、私一人で簡単に倒せるってこともわかるわよね?」

「えェ知ってますよォ? 今は能力を失って無能力者同然だってこともねェ……??」

「く……!」

「一応縛っておきなさい、暴れられると面倒ですからねェ?」


目の前で美琴の身体に縄が巻かれていく。
おい、俺を差し置いて緊縛プレイだなんて、いやその、亀甲縛りでお願いします、でもなくて。
俺と美琴はまだアレもまだなんだぞ? とてつもなくピュアな仲なんだぞ? こんなところで一切合財奪われてたまるか。

342 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/28(火) 23:50:19.69 ID:c/FdTWg0

「………おい、土御門」

「なんだ?」

「……さっさとおとりになれよ」

「えっ、このタイミング?」

「テメエ自分から進んで囮になるっつっただろ! 女の子を助けて[ピーーー]るだなんて、このうえない名誉だろうが!!」

「女の子だけならなぁ!! 残念ながらカミやんも含まれてる時点で“女の子を助けて成仏END”は成り立たねえ!!」

「んだと!? 美琴じゃ不満だってのか!!? だったらテメエにはもう“カッコつけてイイトコ見せようとしたけど、要領悪くてイタイ死にかたになっちゃった☆END”しか残ってねえなあ!!」

「いやいや“仲間を失った孤独を背負う一匹狼END”も残ってる! だいたい人払いのルーン張ってるっつうのに入ってきたカミやんが悪いんだろ!!」

「あぁ!? もとはと言えばテメエの取引相手がコイン落としたりするからだろうが!! だいたい今回の取引相手って誰だよ!!?」

「それは機密だから言えねえな!! 言っちゃうけどな!!」

「おォ言えよさっさと!!」

「……麦野沈利」




「…………………………………はい?」

その瞬間、目の前を見覚えのある電子線が通り抜けた。
それを追って視線をずらすと、着弾点と思われる場所には既に数人のテロリスト達が倒れ伏している。


「なーにやってんだよ、超電磁砲」


この方こそ、学園都市230万人の頂点、7人しかいないレベル5の第四位。
通称“原子崩し(メルトダウナー)”。


「なんか、か弱いオンナノコっぽくなってんじゃん」


麦野沈利サマ………。



続く

343 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/28(火) 23:53:38.32 ID:c/FdTWg0
こんな感じで次回へ続く……

だんだんギャグっぽさがなくなっていって次回はかなりカオスなことになると思います
俺の拙い文章力で表現しきれるかな……不安だ……
344 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/28(火) 23:57:48.96 ID:PBDYE12o
いやこの上条さんがいる限りギャグっぽさは失われないだろ
345 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/29(水) 01:38:32.63 ID:uh1r9Cgo
乙!
なんかギャグなのかシリアスなのかよく分からなくなってきたなw
346 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/29(水) 02:05:47.23 ID:6c6MrFwo
俺は好きだぜ…この上条さん
347 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/29(水) 02:39:54.21 ID:7QR.fH2o
乙!
たしかに、ここの上条さんは好きだww
348 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/29(水) 05:40:35.45 ID:heWx3p6o
シリアス+コミカルで、
シリアルな上条さんですね。わかりますん
349 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/29(水) 10:44:14.81 ID:bK5b7wco
何かにつけて美琴に欲情する上条さん大好きです。
頑張れ美琴負けるな美琴(上条さんの毒牙に)
350 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/30(木) 23:45:16.49 ID:hunMgdU0
今回は話を進めるだけなのでギャグはないですすいますん
明日から忙しいので短いですが今書けてるとこまで投下しとこうと思います

いまさらコミック版5巻まで一気に買ってきたけど、ホントに姫神もえんじぇるふぉーるも無かったことになってんのね……
351 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/30(木) 23:45:49.99 ID:hunMgdU0




「アンタ本当に超電磁砲? なんでそんな奴らにお縄もらっちゃってんのよ」

「私は能力使えないんだってば! 言ってる暇あんなら助けてよ!」

「ほぉー、第三位様が第四位に助けを求めるなんてねェ……」

「それいつまで引きずってんのよ!」


突如あらわれた学園都市の第四位、麦野沈利。
今回の土御門の取引相手ならばおそらく俺達を助けてくれるはず。………だと信じたい。
この暴君の登場は魔術師達にとって望ましくない展開だったようで、一通り美琴の麦野の会話?を聞き終えた魔術師は小さく舌打ちをした。


「チッ……、第四位も到着してしまいましたか」

「へー、私のことも知ってんのね」

「知ってますよォ? 攻撃翌力だけなら第三位にも勝るとも劣らないとさえ言われる“原子崩し”麦野沈利。
 あらゆる障害物を無視して放たれる電子線は学園都市の上位2名を除いてすべての事象を破壊し尽くす………」

「最後のほうの説明は気に入らなかったけど、まあそんなところね。アンタ達も例外じゃないのよ?」

「………撃て」


麦野の挑発に、テロリスト達は銃弾の嵐で応対する。
しかしこれくらいの“常識的”な攻撃で倒れるレベル5ではない。
テロリストの持つ銃器から放たれた銃弾はすべて、彼女に辿り着く前に文字通り“消滅”していた。
麦野の表情が、怖い。口の端を吊り上げ、まるで般若のような……、いったいどっちが悪役だかわからなくなる。


「おもしろい、私に真っ向から歯向かうつもりね。2人とも!! やりたい放題よ!!」

「「了解(です)!!」」


そうやら麦野は一人ではなかったようだ。
どこに隠れていたのか、見覚えのある金髪の少女と背の低いロリッ子まで飛び出してきた。

352 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/30(木) 23:47:11.66 ID:hunMgdU0


「チッ! 応戦しなさい!!(ぐいっ)」

「きゃ………!」

「美琴!」


麦野達一行とテロリスト達が入り乱れての大混戦の中、魔術師は美琴を連れて……………、消えた。
どこかの物陰へ隠れたとかではなく一瞬で。あれも魔術なのか?
まずい、俺の右手が魔術を無効化出来ても、見えないのでは対処が出来ない。
だが、美琴はあくまで人質。すぐに危害を加えたりはしないはずだ。
と、思案している間に人払いのルーンを解除し終えたのか、赤髪の不良神父が戻ってきた。
……………ん? その後ろにもう一人、白い物体が……。


「とうま!」

「インデックス!? なんでこんなとこに……!?」

「僕が連れてきたんだよ。それより、人払いのルーンを一部解除しておいたぞ」


インデックスとステイルを休憩所の中へ引き入れる。
そうだ、人払いを解除したのならもう脱出は出来るはずだ。
外は相変わらずアイテムとテロリスト達の戦闘が続いているが、白井ならそれくらいテレポートで飛び越えられるだろう。


「よし、白井。初春さんと佐天さんを安全なところへ頼む。そのままアンチスキルを呼んでくれ」

「わかりましたわ。絶対にお姉様を取り戻してくださいな」

「あぁ、当然だ」


二人の手を取り、休憩所から消える白井。これで一般人の避難は出来た。
しかしステイルはなんでインデックスをこんな危ないところに連れてきたんだろうか。


「奴の正体はもうわかってる。反学園都市組織に所属するハグレ魔術師の一人、通称“霊装写し(コレクター)”だ」

「コレクター? なんだそりゃ」

「………聞いたことがある」


おっと土御門、テメエ今までどこに……、いや今はそれどころじゃない。

353 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/30(木) 23:49:48.45 ID:hunMgdU0

「そう、本人のチカラは大したことないんだけど、色んな道具を自分の手足のように自由自在に操るんだよ」


インデックスの説明によると、霊装写し本人は決して強い魔翌翌翌力は持っていないのだが、モノの“複製”を作るのが非常に得意なのだそうだ。
もちろんここで言う「モノ」とは、魔術関係の武具や道具などのことである。そしてそれらを自由自在に扱い、格上の魔術師すら倒してしまう厄介なハグレ者。
ちなみになぜ“ハグレ者”と呼ばれるのかと言うと、特定の宗派を持たない魔術師をそう呼ぶことがあるのだとか。


「じゃあ、さっき一瞬で目の前から消えたのは………?」

「おそらくプルツヘイム、ハデスの兜とか呼ばれているやつかな」

「ハデス?」

「ギリシャ神話に登場する新世代の神々の長、ゼウスの長兄にあたる冥界の王だ。
 単純に“死”や“あの世”のことを差す単語としても使われる。本物はもちろん並みの人間に扱える代物じゃない」

「へぇ、けっこう有名どころの武器をコピーしてんだな」

「有名なものっていうのは、それなりに強いチカラを持っているからレプリカでも十分な能力を持ってるんだよ。
 そうやっていろんなところに伝わる霊装をコピーしていってるから、どこの宗派にも属さないのかも」

「へぇ……」


って、そんな呑気に談義でしている場合じゃない。
美琴を助けだしてコインも取り返さなければ。…………アレ(コイン)ってやっぱりかなり重要なもんだったりすんのかな。

「重要も重要。見つからなかったら本気で切腹することになるな」

「落としたのは麦野達なんだろ?」

「連帯責任ってやつだにゃー………」


暗部モードなのにニャー語が出ている辺り、けっこうマジでやばいのかもしれない。
え、これギャグ展開なんだよね? 違うの?
じゃあ美琴をあの変態ロリコン魔術師の近くに置いておくのはかなりまずいんじゃないか。


「賽銭箱泥棒を捕捉したようです、とミサカは報告します」

「おぉ、それで?」

「……………この神社に追い込んだようです」


事態は着実に混乱を極めていく………。

354 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/30(木) 23:51:17.03 ID:hunMgdU0





あの一件以来、能力を失ってしまった。
途方もない努力の末、手に入れたレベル5というチカラを。
それでも、もう一度アイツと歩いて行けるなら、それならばどんなモノでも捨てる覚悟はあった。

でも………。


「やっぱり、私は当麻の足手まといになっちゃってるよね……」


能力があればあんな奴ら一瞬で片づけられるのに。
能力を持たない私はただの女子中学生。戦闘訓練を積んだ男達に勝てるはずもない。


「おい、べらべら喋ってんじゃねえ」

「うっさいわね、麦野さん達が暴れまわってるんだから、これくらいの声聞こえやしないわよ」


私をさらってきたリーダー格の男は、一人の部下と思われる男に私の見張りを押しつけて戦場へと戻って行った。
コイツだけなら、なんとか倒せないだろうか。
しかし、コイツも訓練を積んだテロリスト。なかなか隙を見せてくれない。


「妙な真似すんじゃねえぞ、テメエ殺したとこで俺達は損なんてないんだからな?」

「く……!」


あんな奴らに当麻達と麦野さんが負けるとは思えない。それはコイツらもわかってるはず。
このままでは私は人質にされてしまう。そうなれば当麻は………。


「へへ、なかなか可愛いじゃねえか、[ピーーー]にゃ惜しいな」

「ちょ、ちょっと顔寄せないでよ、息臭い……」

「強気な女をヤんのもなかなかあばばばばばばばばばばb!!!」


突然、男が泡を吹き出し倒れてしまった。
今のは電撃? でも、私は能力なんて使ってないし、使えないし……!
それに妹達もこの場所はわからないはず……。
それに倒れた男の背後から現れたこの人は………。

355 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/30(木) 23:54:50.75 ID:hunMgdU0

「いまのうち。はやく逃げて。」

「アンタは……」

「私は。ただの通りすがりの魔法少女。近づいても気付かれないのも。私の能力なの」

「そ、そう………」


どこからか取り出してきたハサミで私を縛っていた縄を切ると、またどこから取り出したのかゴツイ警棒を構えた。
どっかで見た気がするんだけど……、気付かれないのって能力とかじゃなくて……。


「それ以上考えないほうがいい………」

「ごめんごめんごめんって!! それにありがとう! よし、すぐに当麻のとこに……」

「待って。いまは戻らないほうがいい」

「へ?」

「いまの貴方は。…………足手まとい」

「………!」


……確かに、その通りだ。今の私が戻ったところで、なんの力にもならない。
それどころか、またみんなの足を引っ張って………。


「お姉様!」

「え? あ、10032号……」

「すぐにこの機械を付けてください」

「なに、これ?」

「ミサカネットワークにお姉様の脳を繋ぐためのデバイスです」

「ミサカネットワークに? なんで……」



「お姉様の能力を抑えているリミッターを、………解除します」




続く
356 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/30(木) 23:57:09.27 ID:hunMgdU0
次回からはギャグに戻せそうです
読んでくれている方々、ありがとうございます

年が明けたら再開します
357 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/31(金) 00:00:45.30 ID:TNJiaE2o
リミッター解除ォ!
358 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/31(金) 00:01:29.57 ID:cUIzlt20
>>351の翌は誤字です

もしかして翌も3倍?
359 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/31(金) 00:05:02.11 ID:TNJiaE2o
>>358
気にすんな
>>353の方がひどいから
360 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/31(金) 00:16:53.45 ID:S51eWuAo
sagaつけようぜ
361 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/31(金) 00:20:04.41 ID:cdw3LNQo
リミッター解除(性的な意味で)だと…?
362 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2010/12/31(金) 00:21:15.53 ID:pFZ3c.DO

おかしいな>>353は普通に翌ひとつだけだったはずなのに……

ついついsagaを忘れてしまう……すみません…
次からは常時付けとくことにします
363 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/31(金) 05:46:40.87 ID:K70/7x6o
えっ、次ギャグになるのかよw
364 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! :2011/01/02(日) 00:08:50.87 ID:.WhpOEo0
       _人人人人人人人人人人人人人人人_
      >   あけましておめでとう!!!    <
        ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
                           lヽ彳ミ !斗\l__
       , ':´: ̄ ̄ :`:- 、           -=::::::::::::::::::::::::::::::::::ゝ
     /:./: : : : : :.!: ト、:ミ:\        -=≡::::::::川|:::.::/:::::::::::>
    /: : /: : : :ハ: : /l: :! \ミ :!       ≦:::::!:::∠ レ'l!∠从::::::::::≧
    ハ: : :|: | :/\V レ' / ヽ: }        ム::_|/ ≡  ≡ レl::::::::::ゞ
   ハ: : : |: !/ ●    ● 小: l         |   L    レ/ミv
  /: |i (lvv⊂⊃ 、_,、_, ⊂l人!           |.   l=l ゝ  __ )
  从:.|:i⌒ヽ j    (_.ノ  ノN/⌒)       ヽ   |_|   /
  ムィ ヽ  ヽx>、 __, イl ̄ヽ /          ,ゝ--- ィ_
    レ' ∧__,ヘ} ヘ个ナ/   ハ           く  | `ゝ  ノ
      ゝ_   リ  ∨ |  >'          /´~ ゝ ! /  /  ̄\
365 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2011/01/02(日) 23:55:42.04 ID:sbf167c0
携帯壊れた……
秀吉タオルケットを買う金がなくなってしまった……

バカテスSSを書く準備もしているので三が日が終わったら全速力でこちらを終わらせます
そろそろ潮時だと思うので……
366 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/03(月) 01:56:52.24 ID:.oLuOI6o
潮時どころか現行で最も好きなスレの2つの内の1つだというのに…

そんな悲しいこと言わないで
367 : ◆aP6AvzX03I [sage]:2011/01/04(火) 22:53:29.84 ID:vcLFUMU0
そう言っていただけると嬉しいのですが、禁書はネタをちゃんと練っておかないと書くのが難しくて……
まあこれからさらに忙しくなるので、終わるまでにはまだ一カ月くらいかかりそうですが……

今回も話を進めるためにギャグ文が少なくなりました
368 : ◆aP6AvzX03I [sage saga]:2011/01/04(火) 22:55:59.52 ID:vcLFUMU0


数十分後、賽銭箱を盗んだ不良達が呟いた一言。


「誰だよ、こいつら……」




1月3日、午後3時半。


俺の目の前では相変わらずアイテムとテロリスト達の戦闘が続いている。
本来、銃器しか持たない男達が相手ならばレベル5である麦野沈利の敵ではないと思うのだが……。
ならばなぜこんなに時間がかかっているのかというと………。

「オラオラァァ!! 男のくせにちょこまか逃げ回ってんじゃねェよ三下ァァ!!」

「ひぃぃ……!」

「安心しなァ、今回コロシは御法度になってっから、命だけは助けてやんよォ。
 その代わり、どっか潰しとかなきゃ逃げられちゃマズイからねェ。
 どこにする? 腕? 脚? あ、目ん玉いってみようか!! 脳みそまで抉っちゃったらゴメンねェ!!? ヒャハハハハ!!」

どうやらこの状況を楽しんでおられるようで、さきほどから反撃出来なくなった敵を一人一人丁寧に刻んでいるようです。
しかしこの女、どこぞの魔術師も顔負けの悪役っぷりである。
え? 俺達の助っ人なんじゃないかって? 他人ですよ、他人。こんな悪人が知り合いなわけないじゃないですか。たぶんね。
そして既にテロリスト達の大半は戦意を喪失しており、一方的な鬼ごっこが続くだけ。
気付けば最初麦野とともに出てきた二人の少女も、戦いに巻き込まれないよう(というか麦野の“遊び”に巻き込まれないよう)にと、ちょこんと俺の影に隠れていた。

「こうなった麦野は止まんないんだよ……」

「ウニ頭さん、原子崩しが来たらその超便利な右手で弾いといてください」

「いや、俺は美琴を助けに行かないと……」

とはいえ、あの原子崩しの弾幕を通り過ぎる頃には俺の身体は右手を残してこの世から消えていることだろう。
童貞のまま死ぬのはどうしても避けたい………。ていうか流行ってんのか、ウニ頭という呼称は。

…………………おや?

369 : ◆aP6AvzX03I [sage saga]:2011/01/04(火) 22:56:51.81 ID:vcLFUMU0

「……? どうしました? 麦野のほうを超ガン見して……?」

「ハアハア、麦野の揺れ乳は最高なわけよ……」

……どうやらこの金髪の少女と俺は気が合うらしい。年上、巨乳というルックス的には俺の趣味どストライクの麦野沈利。
この惨劇を見る限り、性格は受け付けないところがあるが見てくれだけならこの上ない逸材である。

「あ、麦野、後ろ!」

「おっと!!(バシュッ!)」←※原子崩しの発射音。

「今度は超右です!!」

「超右ってどんくらい右なのよ!!(バシュッ!)」

「むぎのん! 左!」

「むぎのん言うんじゃねェウニ頭ぁぁあああああああ!!!(バシュゥッ!)」

「うぎゃあああああ!!?」

危うく新年早々、冥土に渡るところだった。ていうか俺の時だけ出力が若干あがってなかったか?
ちくしょう、このうえなく自然な流れで右から左に揺れる巨乳を見られるはずだったのに。
いいじゃないか、むぎのん。可愛いし。あといつから俺の名前はウニ頭になったんだ?

「へぇ、当麻は麦野さんみたいな巨乳が好きなんだ?」

「えぇ好きですよ、年上で巨乳。見た目だけならパーフェクトですね」

「パーフェクトねぇ……」

「ちなみに今も左に敵はいなかったのですよ。でも敵がいるとは言ってないから嘘にはなr………」

「ふーん、私というモノがありながら贅沢なもんね当麻………」

警告音がする。俺の頭の中で赤色灯が猛烈な勢いで回り出した。
土御門は。土御門はどこに行った? いまこそ囮になる時だってんのに。
あ、アイツ休憩所のなかで妹の写真に祈りを捧げてやがる。祈ってる暇あんなら命削ってでもテロリストに対抗しろクズ陰陽師。
そうだ白井は、白井ならテレポートでここから脱出……。ダメだ、白井はとっくに離脱したじゃないか。

370 : ◆aP6AvzX03I [sage saga]:2011/01/04(火) 22:57:48.28 ID:vcLFUMU0

そうだ、美琴は甘えん坊だから頭を撫でながら笑いかければ誤魔化せるはずさ。

「よし、落ち着こう。ほらほら、夢なんか見てる場合じゃないぞステファニー」

「なに神木に話しかけてんのよ」

あれあれ。滝のように流れる汗で前が見えない。やけにゴツゴツしてると思ったら木だったのか。
ガサガサゴリゴリしてて肌荒れなんてレベルじゃないぞなんて言いそうになっちゃったよ。
HAHAHA、俺としたことがクールさを失うなんて。

「あぁそっちにいたのか、いやこれは決して浮気とかではなくてだな」

「歯を食いしばりなさい」

冷や汗が止まらない。冬の寒さと相まって激クール。というかステファニーという、とびきりファニーなジョークにはノーコメントを貫くんだな。 
いや、そも考えてみれば今の美琴は能力を使えないはず。なら大丈夫だ。
女子中学生の打撃技の威力なんてタカが知れている。

「や、やぁ美琴さん。奴らに捕まっていたのでは……?」

「また能力使えるようになったから、此処に来るまでに出会った奴はみんなやっといた」

「アレレレレレレレ? ノノノ能力復帰シタノ? オ、オメデトウゴザイマス美琴サン」

なぜだかわからないが美琴たんの能力は戻ったみたいだ。
でも、他ならぬ俺を殺そうなんてことはしないはず。だって俺達は恋人同士なんだから。

「……この際、なんで二度と能力使えないなんて嘘ついてたのかは言及しないであげる。
 でも、浮気性な当麻にはちょっとだけゆで卵の刑ね?」

「ゆで卵? それで許してくださるんですか?」

ゆで卵の刑か。もしかして塩無しでいくつものゆで卵を食わされるというアレか。
だが、スーパー貧乏な上条さんを甘く見られては困る。
ゆで卵など喉に詰めて窒息どころか、数日分のタンパク源として自ら進んで食おうじゃありませんか。

「うん、電子レンジで温められた生卵みたいにしてあげる」

どうやら今日が俺の命日のようだ。

「黒子ー、当麻の右手、抑えといてねー」

「了解ですの、お姉様(ガシッ)」

「あれ、白井さん? いつ御戻りになられたので?」

「つい先ほどですの。アンチスキルはもうすぐ到着するはずですから安心してくださいな」

371 : ◆aP6AvzX03I [sage saga]:2011/01/04(火) 22:59:04.71 ID:vcLFUMU0

「そそそうか、じゃあ此処は麦野達に任せてアンチスキルを出迎えに……」

「上条さん…………」


―――――――地獄に堕ちろ、この類人猿。


「悪魔だ! 悪魔がいる! 悪魔が俺を暗闇の底にいざなってるよ!!」

「往生際が悪いですわよ上条さん!!」

「童貞のまま死ねるかァ!! 美琴の痴態を見るまではぁぁ!!」

「大声で言うなこの馬鹿ーーーーー!!(バチバチバチィ!!)」

「うぎゃあああああ!!」

確実に人を殺せるほどの電撃が襲いかかってくる。
少しでも触れれば体中の血液が沸騰してボン、だ。俺の愛する美琴たんはいつの間にこんなに残忍な子になっちゃったんだろう。
もしかしてアナタを殺して私も死ぬってやつか? 最近ツンデレのツンの部分が少ないと思ったら、ヤンデレになっていたのか。

「…………あ」

人生が終わるか否かの瀬戸際で、転がっていた小石に躓いてしまった。
ダメだ。終わった。やっぱりあの時、爆発なんか無視して美琴を食ってればよかったんだ。
さっきコインを賽銭にして神様に願ったばかりだったのに。



…………ポフッ。



372 : ◆aP6AvzX03I [sage saga]:2011/01/04(火) 22:59:59.09 ID:vcLFUMU0



………………………あれ? 

電撃がこない。
それになんか暖かくて柔らかいモノに包まれているような……。

「こ、この類人猿………!」

「麦野さん………」

……なんだろう、俺の頭を優しく包むこの柔らかな物体は。
少しだけ、顔をあげてみると。

「テメエ………」

そこにあったのは絶賛殺戮中の麦野沈利の御顔。
…………つまり、この豊満な二つの物体は……。

「麦野を押し倒すなんて、超度胸ありますね」

「ちちち違う!! こ、これは石に躓いて……!!」

「あっ……! う、うごくな……んっ……!」

「すすすみませんむむむ麦野様!! いますぐ退きますんで……!!」

「当麻………」

「はっ!!」

やばい、我らがお姫様の怒りのボルテージがやばい。
いやですね、これはですね、いや確かに少しはラッキーだとか……いやその……。

「テメエ………コロス……」

こちらもやばい。いくら俺といえど、レベル5二人を同時に相手にするのは……。

そんな時。



「ちくしょう!! なんだよアイツら! 同じ顔が何十人も!!」



賽銭泥棒と妹達が合流した。


373 : ◆aP6AvzX03I [sage saga]:2011/01/04(火) 23:01:07.43 ID:vcLFUMU0






その頃、休憩所の中では……。

「本当に大丈夫なのかい? 幻想殺しの手には余るんじゃないのかい?」

「大丈夫だにゃー、なんならステイル、お前が助太刀に行ってもいいんだぜい?」

「遠慮しとくよ、さっきから馬鹿馬鹿しい会話しか聞こえてこないしね」

「お腹すいたんだよ……」

外の戦闘を尻目に高みの見物をしているのは、土御門、ステイル、インデックスの三名。
土御門は妹の写真を握りしめ、ステイルは煙草を吸いながらルーン作成、インデックスは空腹で床にへばりついて……。
まぁ、一言でいえば緊張感が皆無なのである。

そこへ……。

「見つけましたよォ?? さぁ、さっさとコインを渡しなさい」

「げっ、見つかったかも」

「生憎だがにゃー、俺達はコインを持っていないんだぜい。持ってたらとっくに騒動に紛れて逃げてるっての」

「はァ?? ならばまだあの原子崩しが持っているんですかァ??」

「ま、そんなとこだな」

「そうですか、ならば貴方がたにはもう用はありませんねェ」

そう言って、ごそごそと大きな棍棒のようなものを取り出す魔術師。
三人は互いの顔を見合わせ……。

「ステイル、まかせた!!」

「いいだろう、塵はt(ドカッ!)ぶべら!!」

「ステイル! この犠牲は忘れないんだよ!」

「この状況で長ったらしい詠唱するなんて馬鹿かアイツ………」



374 : ◆aP6AvzX03I [sage saga]:2011/01/04(火) 23:02:20.72 ID:vcLFUMU0



「お姉様、そいつらが賽銭箱泥棒です!!」

三人ほどのスキルアウトと、それを追ってわらわらと神社に入ってくる妹達。
ちなみに既にこの場所ではテロリスト達との攻防戦と、俺と二人のレベル5との熱い攻防戦が繰り広げられている真っ最中。
このうえ賽銭箱ドロが混じったら……。

「あー! アナタは幻想御手の時のカメレオン男ですの!!」

「あー! テメエはビルぶっ潰した風紀委員!!」

どうやらまたも知り合いとの邂逅があったようだ。

「反省したと思いきや、今度は賽銭泥棒とは……。風紀委員として見過ごすわけにはいきませんわね」

「………へっ、あれから俺もレベル4になったんだぜェ? 簡単には負けねえよ……」

「白井黒子さん、その男、ミサカ達の手に余るので御助力をお願いします」

「当然ですの」

はい、今度は高位能力スキルアウトvs白井+妹達が始まった模様です。

「当麻、今度は妹達にも色目使おうっての!?」

「よそ見とはいい度胸だなァ、ウニ頭ァ!!」

「……隙アリ!」

「うっせェ、テメエら屑テロリストはお遊戯でもしてろォ!!(バシュッ!)」

「うぎゃあああ!!」

詳しく実況したいが、いまは美琴と麦野の攻撃を防ぐのに精一杯だ。
途中に一瞬だけテロリストが出てきたのでわかると思うが、未だテロリスト達との攻防も続いているのである。

そして。

「カミやん! こっちも頼む!!」

「とうま! とうまの出番なんだよ!」

恥知らずな陰陽師どもが休憩所から魔術師を率いて飛び出てきた。

375 : ◆aP6AvzX03I [sage saga]:2011/01/04(火) 23:03:40.48 ID:vcLFUMU0

「当麻! おとなしくゆで卵になりなさい!」

「ウニ頭ァ! 私の身体弄っといてタダで帰ろうってのかァ!?」

「盗んだ賽銭はいりません、中に入っていたコインを返せばまだ生き残る余地があります、とミサカは……」

「へっ、攻撃さえ当たらなければどうってことねえんだよ、いつかみたいに崩すビルも無えしなァ」

「なかなかやりますわね、ですが風紀委員としてアナタを放ってはおけませんわ!」

「麦野、コインも超探すべきでは……」

「テロリスト達は。私にまかせて」

「な、なんだこの巫女、どっから現れあばばばばばばば!!」

「さァ、私がなぜ霊装写しと呼ばれているかをたっぷりと……」

「ちょっと待って! いまそれどころじゃ……!」

「お姉様の危機と聞いて、とミサカ16820号も合流します」

「ちくしょう、テメエが賽銭盗もうなんて言うから……!」

「むむむ、霊装写しでも、ほぼすべての魔術に精通してる私がいれば……」

「結局、麦野は一度暴走したら誰にも止められないわけよ……」

「バカテス二期楽しみだなぁ」

「カミやん、アイツが今持ってんのは……」

「お姉様、能力が戻ったのなら……」

「カメレオン男! 大人しくお縄に……」

「当麻、大丈夫だよ、優しくしてあげるから……」

「盗んだ賽銭戻せば……」







「あああああああテメエらうっせぇぇぇぇええええええええええ!!!!!!」


続く
376 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/04(火) 23:09:46.88 ID:X.gMYdYo
「あああああああテメエらうっせぇぇぇぇええええええええええ!!!!!!」

どう考えてもあなたのせいですほんとうにあr
377 : ◆aP6AvzX03I [sage saga]:2011/01/04(火) 23:10:16.49 ID:vcLFUMU0
しばらく忙しいのと携帯電話が壊れて出先での書きためが出来ないのとでおまけ編が完結するのは2月を過ぎるかと思われます
だんだんギャグネタを思いつかなくなってきたのでこれからは遅筆となりますがご了承を……
378 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/04(火) 23:14:23.11 ID:rXLYaqAo
最後がカオスwwwwww
遅くなってもいいんで頑張ってください!
379 : ◆aP6AvzX03I [sage saga]:2011/01/04(火) 23:19:53.63 ID:vcLFUMU0
メモ帳から移すときに文が抜けてしまった……
まあいいか、そんな重要な部分じゃないし

ありがとうございます、やっぱり速さより質を優先したほうがいいですよね
次回からはもっと練ってから投下します
380 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/05(水) 00:55:58.20 ID:xm7SYBgo
霊装写しにふいた
381 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 23:00:33.53 ID:xGLODwywo
板移転みたいだから依頼出したほうがいいぞ作者

■ 【必読】 SS・ノベル・やる夫板は移転しました 【案内処】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1294924033/

SS・小説スレは移転しました
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/ Mobile http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/

382 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage]:2011/01/13(木) 23:24:58.23 ID:aKlKu6TDO
忙しくて知らなかった…
ありがとうございます、移転願いをしときます
SS・小説スレは移転しました
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/ Mobile http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/

383 :真・スレッドムーバー :移転
この度この板に移転することになりますた。よろしくおながいします。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/17(月) 16:48:09.29 ID:NO1bJgHKo
 
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/31(月) 16:14:44.15 ID:LcMTgUPEo
ふにゃー
386 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage saga]:2011/01/31(月) 23:54:05.36 ID:/VoEIRL+0
´・ω・`)
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/31(月) 23:55:40.31 ID:YpZZtvXro
>>386
確保ーっ!!
388 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage saga]:2011/02/01(火) 23:11:41.95 ID:/XPwl3Hj0
まだまだ忙しいのです……
最近はもっぱらVIPに常駐していたりゲフンゲフン
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/01(火) 23:34:15.44 ID:A4eAkY6Oo
いつまでも待ってるよ
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/08(火) 00:40:59.45 ID:CVOWkgNp0
あげ
391 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage]:2011/02/08(火) 01:20:29.70 ID:Cg9cb9YDO
再開の目処がたったので一応報告

今週中に再開します
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/08(火) 01:47:03.57 ID:P0XSeTjLo
やったー!
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/08(火) 22:09:20.48 ID:USsTEojXo
戻ったか!!
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/08(火) 22:46:19.24 ID:6oTrAOcuo
戻ったか!
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 01:29:24.16 ID:wZMluj8V0
戻ったか!!
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 21:07:32.40 ID:bksQso3G0
楽しみにしてるよ!
397 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage]:2011/02/09(水) 21:11:43.80 ID:r+tm/YVDO
いまだ書きため中…
明日には投下出来るだろうか
398 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage saga]:2011/02/11(金) 00:00:11.78 ID:FvajUkZS0
では4レスだけですが投下します

おそらくこの投下でみなさん、「あること」に気づくこともあるかもしれません
でも気づいても絶対に言わないでください
言われたら逃げます、ホントに
399 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage saga]:2011/02/11(金) 00:02:26.96 ID:FvajUkZS0


「だいたいな、まずお前ら誰と戦ってんだ!!?」

「当麻」

「ウニ頭」

「幻想殺しですねェ」

混乱を極めた現状を打破しようと投げかけた言葉は、たった三秒も経たずに元の場所へと戻ってきていた。
ちくしょう、これを機会に向けられた殺意をどこかに転嫁しようと思ったのに!

「違うだろ! ちょっとだけ、ちょっとだけでも俺の話を聞いてください!!!」

そう言いながら手慣れた土下座を素早くこなし顔をあげると、目の前には槍があった。
おそらく魔術師の腕から放たれたのであろうその槍は既に回避不可能な位置に存在し、その運動エネルギーの発散をいまかいまかと待ちわびている。
それでも身体に染みついた戦闘の記憶からだろうか、俺は無意識のうちに身体を捩り、回避運動を開始していた。
だが、到底間に合わない。あとわずか、当たる―――――!

「私の当麻に手ェ出してんじゃないわよ!」

突然視界に紫電が走り、眼前へ迫っていた槍を包みこみその動きを止めた。
―――否、止まってはいない。その物体の運動エネルギーは明らかに増大している。
そう、逆の方向へと。

「な………!!!」

当然そのようなことを予想していなかったのであろう魔術師は、自分が放った時分よりもさらに破壊力の増した槍撃を受けることとなる。
が、そこは不殺を掲げる美琴のこと。槍は直前で僅かにその軌道を変え、放心している魔術師の顔を掠め背後の灯篭に突き刺さっていた。

「な……! ななな………!」

「アンタ、まさかこの程度のチカラで私達に喧嘩売ったわけじゃないわよね?」

「グ、グングニルだぞ!? そんな、ただの電気ごときにィ……!」

言い終わるが早いか、魔術師の足元に円状の魔法陣が現れ、境内の砂地を漆黒に塗り潰してゆく。

「なァにが科学ですかァ!! 太古より人間が培ってきた魔術が、そのようなものに遅れなどォ!!!」

魔術師が掲げていた右手を振りおろしたのと同時に、魔法陣の内側に存在する灯篭、木々、石畳、建物の全てが浮き上がり、さらにその質量を武器として加速し美琴へと襲いかかった。
避けられる速さではない。助けなければ、と手を伸ばすが当然届くはずもない。
しかも美琴は…………、微動だにしない。

400 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage saga]:2011/02/11(金) 00:04:15.37 ID:FvajUkZS0

「美琴!!!」

ゴキ、という鈍い音が鳴り響き、同時に衝突の余波が砂を巻き上げ視界を奪う。
数瞬の後、砂埃の収まった視界に現れたのは……。

「ただの電気……?」

「な……なぜ………!?」

「魔術だかなんだかよくわかんないことばっか、私も言わせてもらうけど」

美琴は動いていなかった。
先程までとまったく同じ場所にまるで仁王のごとく立っている。
あれほどの物体の衝突を、動かずしてただ砂鉄を操るのみで受け止めたのだ。

「私は、レベル5よ」






魔術師達の騒動から少し離れた鳥居の下では、別の戦闘が続いていた。

「チッ……! 以前よりも腕を上げてますわね…!」

「逃げんじゃねえぞジャッジメントォ!! テメエは俺がこの手で! ズタズタにしてやんだからよォ!!」

白井黒子は苦戦していた。
相手はカメレオンのような顔をした、『偏光能力(トリックアート)』を操るスキルアウトただ一人。
しかしスキルアウトとはいえその男は既にレベル4の大能力者でしかも喧嘩慣れもしている厄介な相手。

「アナタ…、それほどの努力が出来ますなら、もっと正しい方向に能力を使ったらどうですの!?」

「くだらねェなァ、そんなくだらねェことなんかしたとこでよォ、なんか俺に得があるってのか!?」

「まぁたしかに得はありませんけども……」

黒子は先程から防戦一方である。
相手の位置を演算に組み込むテレポーターにとって、光を捻じ曲げる偏光能力は天敵と言っていいだろう。

401 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage saga]:2011/02/11(金) 00:05:33.11 ID:FvajUkZS0

(しかし偏光能力は攻撃能力を持たず、奴の攻撃はナイフを振り回すだけの一辺倒なモノ。テレポートで逃げている間は大丈夫ですわ。それより問題なのは……)

黒子が相手の攻撃をかわしながらチラリと視線をやったのは、休憩所の近くでなにやらモゾモゾと動く同じ容姿の女子中学生達。
そう、先程スキルアウト達とともにこの神社に入ってきた妹達(シスターズ)である。
いくらかの妹達はスキルアウトの中でも簡単に倒せなかったキツネ目の男と戦闘中であり、残りの妹達はというと…。

「アナタ達、まだ見つかりませんの!?」

「もう少し、もう少しだけお待ちください、とミサカは捜索を続けます」

取り戻した賽銭箱をぶちまけ、数十人がかりで件のコインを探していた。

(レベル3といえど、偏光能力に対しては相性の良い能力だと思うのですけれど……、コインが見つかるまではなんとか持ちこたえなければ……!)

偏光能力が実際にどういうものなのか、推測でしかないがおそらく光子に干渉することの出来る能力なのだろう。
テレポーターにとっては天敵だが、応用に富んだ電撃使いならばおそらくは偏光能力とも優位に戦えるはず。

(それにしても……)

いったんテレポートで相手と距離を置いた黒子が視線を向けたのは、必死でコインを探す妹達。

(殿方達の目も気にせず、四つん這いになって……お姉様と同じスペックのヒップと生脚が丸見えですの……げへへ……!)

「チッ……、埒があかねえ。俺も本気出させてもらうぜェ」

「げへへ………、………へ?」

楽園のような景色に意識を飛ばしていた黒子が声のした方向に視線を戻した時。
――――そこには誰もいなかった。

(しまった…………!)

すぐさま演算を開始し、テレポートで距離をとる。
その瞬間、同時に今までいた場所の土が抉られ、弾け飛んだ。

「なっ……!?」

「へへェ、レベル4になったんだ、自分の姿を消すことくれェ出来て当たり前だろォ?」

思っていたよりも近くで声がする。
またもテレポートで距離をとるが、これではじり貧になるのは目に見えている。

(これは、本気で取り掛からないといけませんわね……!)

402 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage saga]:2011/02/11(金) 00:06:55.38 ID:FvajUkZS0




さらにもう少し離れた本殿の近くでは、スキルアウトの中でも念動力の能力を持つキツネ目の男と……。

「ここなら、邪魔はいません、とミサカ16820号は挑戦的な眼差しを送ります」

「へへ……いいじゃねえか、相手にとって不足無しだ………」

16820号が向かい合っていた。
二人はたがいに目を離さず徐々にその間合いを詰めていく。
それはあたかも野生の地、アフリカの草原で火花を散らすライオンのように。
そしてお互いがそれぞれの間合いに入った瞬間、二人は全力で大地を蹴っていた。

「いざっ!」

「おぉっ!」








「………ですからミサカは頭の天辺からつま先まで、すべてお姉様と同一なのです、とミサカは薄い胸を張ります」

「マジで? いやあ俺昔から御坂美琴のファンでさー。ていうかホントだったんだなクローンがいるって」

「お姉様を呼び捨てにするとは…」

「すいませんでした、御坂様です。な、なあ、俺と写真撮ってくんねえかな?」

「ううむ…、ミサカの肖像権はお姉様に属しますので、それは承知しかねます…」

「えー…、一枚だけ! 一枚だけでいいから! ……それか本物と話すチャンスを…。金ならいくらでも出す!」

「そうですね、金額によっては……。ですが、とりあえずこの騒動が落ち着かない限りはちょっと…」

「なあ、いったいなんでこんなに荒れてんだ? 賽銭箱ごときでこんな騒ぎにゃならねえだろ?」

「とあるコインが行方不明のようでして、それが重要なモノだとかなんとか」

「コイン? ………もしかしてこれか?」

「あ」

「そうみたいだな、よし、本物の御坂美琴との会話でどうだ?」

「く……! それを交渉材料にするとは……!」

「駄目なら絶対渡さねえ。こう見えても俺はレベル3の念動力者だからな」

「しかたありませんね……。お姉様の電話番号をお教えしましょう、それでよろしいですか?」

「マジで? やった! こうなったらもうこんなことしてる場合じゃねぇ! 向こうで本物の御坂美琴の活躍をこの目に焼き付けなければ!」

「………はぁ、コインは取り戻しましたが……」


――――あとでお姉様に大目玉を食らいそうです……。

403 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage saga]:2011/02/11(金) 00:08:31.19 ID:FvajUkZS0




広場は膠着していた。
たかがレベル5など、と甘く見ていたのであろう魔術師は顔を青くしたまま動かない。
美琴の圧倒的な能力に怖気づき誰も動こうとしない中、今まで黙って成り行きを見ていた麦野が口を開いた。

「………そう、レベル5。学園都市の最高位」

ゆっくりと、しかし確実に魔術師の方へ歩みながら、少し低い声で。

「私よりも序列が上ってのは気に入らないけど、超電磁砲が強いのは確かよ。私とタイマン張れるくらいだし」

「麦野さん……」

「レベル5ってのはね、頂点なのよ。能力者達のね、だから……」

なるほど、戦力の差を説明することで平和的に解決しようというわけか。
そういえば麦野の声はこころなしか少しばかり優しくも聞こえる。

「同じレベル5の私も馬鹿にしたってことで、ブ・チ・コ・ロ・シ・かくていね♪」

前言撤回、すぐにでも虐殺を始める気だ。

「ちょちょちょっと麦野さん! 殺すのはダメー!!」

「離せ超電磁砲!! コイツの脳みそ吹っ飛ばして連中のボスんとこに送りつけてやんだからよォ!!!」

もはやへたりと腰を抜かし完全に戦意を喪失している魔術師達をさらに細切れにしようとする麦野。
美琴はそれを必死に抑えようとするが、体力で麦野に勝てるはずもない。

「アンタ達! 早く逃げなさい! 言っとくけど私でも麦野さんは止められないんだからね!」

「は、はひぃぃぃ………」

「…………勝負あったかにゃー」

「……土御門、テメエ今までどこでなにしてやがった?」

「おいおい、オレは能力も魔術も使えない“一般人”だぜい? こういう時くらい安全なところにいてもいいじゃないかにゃー」

「はぁ……こっちは死にかけてたってのに……」

「ま、それはどうでもいい」


「いよいよ、仕上げだ」




続く
404 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage saga]:2011/02/11(金) 00:14:09.56 ID:FvajUkZS0
少しずつ、少しずつ…
ではまた
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 00:41:15.44 ID:IGqpHnsSo
乙〜
続き待ってます!
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 02:59:35.05 ID:J/drmsrSo
なんか平和だなwwwwww
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 22:15:25.33 ID:S4HAWFayo
乙です
続き待ってますよ〜
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 06:08:53.50 ID:ZjwBrtOb0
16820号がいいキャラしてるな
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/12(土) 10:38:34.53 ID:D+MjjIhAO
あげ
410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 14:14:02.28 ID:7jeEmOHeo
作者以外がageるな
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/14(月) 01:29:07.09 ID:vZlk9gUY0
乙ー
412 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage]:2011/02/14(月) 21:41:09.04 ID:n/d90qmDO
おまけも終盤に入ってるのでどうオチをつけるか考え中
次はもう最後まで一気に投下しようと思っているのでもう少しお待ちください…
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 01:00:21.95 ID:Jze4Gyg+0
楽しみに待ってる
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 12:22:15.79 ID:46RWZWJAO
期待
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 15:35:21.82 ID:ncyVBNci0
色々大変だろうけど頑張ってくれよ作者
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 15:40:59.83 ID:GGEjSAuco
たまに生存報告をしてくれると、嬉しいかも
417 : [sage]:2011/03/07(月) 08:37:34.52 ID:izoE5E1DO
生存報告

ごめん農業のほうと並行して書き溜めてるし、この転換期でかなり忙しい
しかも4月から異動
新居でしばらくPCが使えなくなるからそれまでには完結させるつもりです
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 10:09:11.69 ID:kyEzYBhgo
待ってます!
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 18:25:48.67 ID:IyI78N+po
触れなかったけど触れてよかったのか農業
どっちも楽しみにしてるから私生活に影響出ないレベルで頑張ってくれ
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 21:46:41.47 ID:FitaTK9G0
まってるぜい
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/13(日) 17:27:14.53 ID:Tx7loVWc0
浜面  仕上げだ
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 21:46:52.80 ID:G7cF6MGm0
ずっと待ってるから・・・。だから、おもしろいものにしてくれ。
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/03/18(金) 00:41:56.95 ID:xJW3WhvD0
待ってる、俺はいつまでも待ってるぞ
424 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage]:2011/03/19(土) 22:35:42.12 ID:4ni9JeADO
ちゃんと書きため中ですよん
ギャグ要素は薄くなるのでご了承ください
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/03/23(水) 22:11:12.36 ID:C7zdL8bb0
構わないぞ
いつまでも待ってる
426 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage saga]:2011/03/29(火) 01:34:03.14 ID:72YXvAGm0
生存報告がてら、書けたとこまでだけでも投下しときます
427 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage saga]:2011/03/29(火) 01:34:39.91 ID:72YXvAGm0


その男は、特になんの変哲もない、中流の魔術師を父として生まれた。
ごく自然と父親と同じ道を歩むこととなったその男は、ある時、自分の限界を知ることとなる。

――――自らすらも“世界樹(ユグドラシル)”に捧げたオーディーンのみが持つことを許された武具。

それは北欧系の魔術結社との小競り合い。その中で見た圧倒的な力。

――――“主神の槍(グングニル)”だ。

そう言い放ち高々と槍を掲げた彼女の姿は、いまだ男の脳裏に焼き付いている。
かろうじて生き残った男はそれまで自分が培ってきた魔術、そして己の才能の限界に打ちひしがれた。
しかしそれと同時に、自分がこれから成すべきこと、そしてこの世界で生き抜いていくための知識を見出していた。

それが、霊装による武装。

自分の力が脆弱なのであれば、霊装で補えばいい。
だが強力なモノが必要だ、ならば既に存在する霊装のレプリカを作ればよい。
男の才能は、ここで目覚めた。
本物に比べれば見劣りはするが、それでも十分過ぎるほどの威力を持つ。
中流に過ぎなかった男は、いつしか数十人の部下を持つほどになった。

そして男は慢心しなかった。
自分自身が持つ魔力自体は脆弱であることを理解し、さらなる霊装を求め続けた。
それが常に死と隣り合わせにある、暗部組織で生き抜いていくための知恵。
写し、創り、使い続けた。

だが、男は気付いていなかった。
そんな研鑽の日々を積み重ねた結果、脆弱だったはずの自身の力は数年前の自分をはるかに凌駕する域まで達していたことに。
気付かず、さらに研鑽を重ねた。

霊装写しとしてではない魔術師としての力が、この日、とある神社で解放されることとなる。


428 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage saga]:2011/03/29(火) 01:35:29.97 ID:72YXvAGm0




「数千年も人類が培ってきた魔術が……!」

魔術師の足元から、またも漆黒の魔法陣が現れた。
だがさっきとは違う。先のとは違い素人目に見てもわかる、魔力の迸り。
そして魔法陣から巻き上げられた黒い光が、魔術師の右手に集められていく。

「科学などというモノに負けるわけにはいかないンですよォォォ!!!!」

今までの攻撃は本気ではなかったのか、しかも美琴は能力が戻ったとはいえ病み上がりの身。
俺も自慢ではないが、これまで数々の魔術をこの右手で受け止めてきた。
だからわかる、アレは美琴の持つ超電磁砲以上の破壊力を持っている。ならば、此処であの魔術と美琴を相対させるわけにはいかない。
しかし同じレベル5の麦野は既に興味を失い、神社の出口近くまで移動してしまっている。
先程からの魔力の奔流に気付き、こちらに向かって来てはいるものの、美琴と魔術師の間に割って入るのは到底間に合わない。
役立たず陰陽師を始めとして、ヘタレ炎術師と大食いシスターもここではあてにできない。
つまり、いま美琴を守ることの出来るのは自分しかいない。

そう考え付くよりも先に、身体が動いていた。
境内に敷かれた砂を踏みしめ、右手を突き出しながら美琴の前に立ち塞がり―――。

「さがってて」

突き出された右手とともに、動きを制される。
目の前でいまにも振りかざされようとしている強大な力と対峙してなお、美琴は怖気づきもしていなかった。
その瞳に宿るのは、ただ自分は負けないという強い意志。
そう、いまさら思い出したが美琴の負けず嫌いはなにも俺に対してだけではない。
そしてそれは決して自惚れではない。自らの力を過信しているわけでもない。
たとえ自分より強い相手と相対しようとも、正しい目的の為ならば絶対に退くことはない。美琴はそういう人間だ。

「消え失せろ、小娘がァァァ!!!」

俺の動きが制止されたその一瞬を突いて、ついに魔術師の手から漆黒の光条が放たれた。
それとほぼ同時に美琴の右手からも、音速の数倍まで加速させられたコインが放たれ……。

それぞれの攻撃はちょうど放った両者の中間地点で激突した。
衝突の衝撃波によって土砂が巻き上げられ、傍らにいた俺達を襲う。

「うわっぷ……!」

激しい閃光と土煙りが、辺り一帯の視界を奪う。
第二の衝撃がないところを見ると、どうやら二人の攻撃は相殺したようだが……。

「美琴!」

取り戻した視界に現れたのは、ガクリと地面に膝をつく美琴の姿だった。

429 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage saga]:2011/03/29(火) 01:36:58.82 ID:72YXvAGm0


「あぅ…!」

見た目には目立った外傷はない。魔術師の攻撃の直撃を食らったわけではなさそうだ。
おそらく美琴自身の能力に病み上がりの身体がついてこれなかったのだろう。
苦しそうに肩で息をする美琴に、二撃目を放つ体力は見受けられない。

「あははァ……勝負ありましたねェ……」
「へん……、けっこうな力持ってんじゃない。武器を多く使ってたから、てっきり自分自身の力の弱さを補うためのモンだと思ってたんだけど…」
「そのつもりでしたよォ、しかし、やはり私には相応の力があったようですねェ……?」
「模造品を作ってる間に知らないうちに力がついてたってとこかしら? 自分が弱いって諦めながらも、しっかり努力出来てんじゃない。ひねくれさせとくには惜しいわね……」
「なんとでも言いなさい、能力があるとわかった以上、然るべき力を持って科学の代表とも言えるアナタを消し去ります」
「く……!」

魔術師のほうは再び魔法陣を形成し始めている。
さきほど制止され、美琴と俺の距離は十メートルは離れているだろうか。
このままでは間に合わない。長らく運動不足だった身体に鞭を打ち、足元で滑る砂に舌打ちしながら美琴へと駆け寄る。
その瞬間、魔術師と目があった。
口元をニヤリと歪め、また視線を戻す。

間に合わない――!

「ふぅ……仕方ないわね……」

美琴は膝をついたまま、立ち上がらない。

「自分に能力があるってのにもっと早く気付いてれば、こんなに性格捻じ曲がることもなかったんでしょうね……。
 人の言うこと無視して病み上がりな身体のまま出てきた私が言えることじゃないかもしれないけど……」

俺はなおも走る。あとたった数メートルが異常に長く感じる。

「それでも、それでも私は私を支えてくれる人を裏切るわけにはいかない。
 それに、ここで私が負ければアンタの為にもならないのよ。だから………」

魔術師が俺のほうに気を取られている間に、美琴は着物の袖の中から拳銃を取り出し―――。




………え?




「えええぇぇ!? 拳銃!!?」


「……だから、オシオキ♪」




パンッ


430 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage saga]:2011/03/29(火) 01:38:52.68 ID:72YXvAGm0




「お姉様……!」

魔力と超能力の激突による衝撃は、離れたところで戦闘を続ける黒子達のもとにも届いていた。

「今の閃光は…、超電磁砲の……?」
「おォおォ、よそ見とはいい度胸じゃねえか!!」
「くっ……!」

地面が揺れるほどの衝撃だったのにも関わらず、姿を消しているスキルアウトはそれさえ戦術として組み込んでくる。
どうやら黒子が思っていた以上に戦い慣れしているようだ。

(このままではジリ貧ですの……!)

神社の境内という開けた場所に置いて、姿を消すことの出来る能力者を相手に選んでしまったのは間違いだったのかもしれない。

(あっちのキツネ目のほうを相手に選んでおけばよかったですわね……。しかしそうすると、この野蛮な男をお姉様の妹様に任せてしまうということ……。あぁ、でも苦戦する妹様をこの黒子が颯爽と助け上げて、妹様から攻略していくというのもアリですわね……!)

まだあらぬ妄想に浸れる余裕があるだけマシだろうか。
白井黒子はレベル4の空間移動能力者。ナイフしか攻撃手段を持たない相手の攻撃など、かわすことは造作もない。
しかし、問題なのはこちら側の攻撃手段も通用しないという事実。
相手の男が姿を消している限り、位置を把握することは出来ない。
足跡すらも消しているほどの用心深さだ、むやみに声を出して捕捉されるような馬鹿な真似はしないだろう。

空間移動というのは汎用性に優れた能力である。
攻撃手段は限られるが、瞬間的に自身を含む事象を移動させることが出来るこの能力は、おそらく他のどの能力に対しても相性の良い能力だろう。
奇襲であればレベル5の御坂美琴も倒せそうだが、数百メートルの範囲を索敵出来る電磁波のレーダーをどう掻い潜るかが問題だ。
しかも電撃の射程はほぼ無限。結局、正確な空間移動が有視界内に限られるという能力の限界により、結標ともども返り打ちにされてしまったが(本編参照)。

だが、それはレベル5を相手にした場合であり、自分と同ランクのレベル4を相手にする時などは空間移動はある意味反則的なほどの力を持つ。
………はずだった。

(そう、妹様を救うというのも、今の状況からするとかなり困難なことになりそうですけれど……)

正直なところ、レベル3であっても電撃使いである妹達のほうがこの男の能力には相性がよさそうだ。

「白黒さん! ミサカが御助力いたします!!!」

その時、少し離れたところからこちらに駆けてくる少女が黒子の視界に入った。

「アナタは!?」
「ミサカは誇るべきお姉様の妹の一人、ミサカ16820号です!」

ビシっと決めポーズをとる少女は、さきほどキツネ目のスキルアウトと共にどこかに消えていた妹達だった。
ここに来たということは、キツネ目は既に撃破したのだろう。
それなりのレベルの念動力者を一人で倒すとは、さすがは御坂美琴の妹といえるかもしれない。

「ハッ! どんな能力者が来ようが、俺の敵じゃねぇ!」
「おっと、ミサカの能力を甘く見ていると痛い目をみることになりますよ?」

次の瞬間、黒子の見慣れたモノよりは少しばかり控え目な雷撃が放たれた。

「ぐぁぁああ!??」

控え目とはいえそれは数十万ボルトの電圧を持つ電撃。まともに受ければ感電死だってありうる攻撃である。
油断してそれを真正面から受けた男は、一時的に能力が解除されたのか、数分ぶりにその姿を現した。

「自分の周囲数メートルの範囲の空間であれば、ミサカでも電撃で満たすことは可能です。
 姿を消していようが近接での攻撃手段しか持たないアナタなどミサカの敵ではありません」
「はぁ……随分とあっさりと……」
「あ、白黒さん、ちなみに目的のものも既に回収しましたので早くお姉様のところに戻りましょう!」
「白黒さんって……」

目的のモノというのは先程まで探していたコインのことだろう。
またもビシっとポーズをとる146820号の背後から、ぞろぞろと残りの妹達が向かってきている。
それを確認した黒子は、いまだ転がるスキルアウトにくるりと顔を戻した。

「さて……」

よもやこの人数相手にまだ反攻してこようとは思うまい。

「ちくしょォォ……ガキがァ……!」

先程の衝撃も気になることだ、憂いが消えた以上、ここに長居する必要はない。

「風紀委員として、器物損壊、暴行、傷害の現行犯で拘束いたしますの!」

431 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage saga]:2011/03/29(火) 01:40:02.09 ID:72YXvAGm0







…と……こと……!

あれ? ここはどこだろう。
たしか私は、変な魔術師と対峙してて……。
16820号に渡された麻酔銃を撃ったところまでは覚えている。魔術師は油断していたし、当麻に気を取られていたから弾は当たったはず。
16820号は学園都市特製の即効性麻酔だと言っていたから、魔術師の攻撃を食らったわけでもない。
なら、なんで私は倒れて……?

「美琴! しっかりしろ、みこと!」

あ、当麻の声が聞こえる……。
そっか、麻酔銃を撃った後、急に視界が暗転して……。そのまま倒れちゃったのかな…?

「お姉様…? 外傷はないようですし大丈夫なはずなのですが……」

何号かはわからないけど、妹の声も聞こえる……。
けど、身体が動かない。まるで意識と切り離されたように、動いてくれない。
皆の声は聞こえるし、誰かに抱きかかえられてる感触もある。なのに目は開かないし、声も出ない。


………だからだろうか、さっきから遠慮ナシに私の身体を触りまくっている輩がいるのは。


「お姉様、お姉様、げへへ………!」
「あぁミサカとは見た目は同じでも、一目でそれとわかる肌の美しさはお姉様独自のモノ……!」
「………」

聞こえている声は二人分だが、手の感触は明らかにそれより一人多い三人分。
まぁ、この状況、メンツからしてそんなことをしてくる人間は限られている。
アイテムの三人はもちろん、友人である妹にご執心な金髪アロハも、赤髪の不良神父もこんなことはしてこない。
当然残るのは私に一番近い人間で、なおかつこの頃自身の欲求を抑えきれなくなりがちなウニ頭だけ。

「ここは念のため、私が人工呼吸を…!」
「ならばミサカは念のため、優しく心臓マッサージを……!」
「………」

不穏なセリフと共に唇に近づいてくる誰かの荒い息遣いと、心臓マッサージと言いながら撫でたり揉んだりしてるだけの一組の手の感触。
さらには着物の裾をまくって太ももを触られる感触まで。
意識がはっきりしてるせいか、全力ではないとはいえ能力は問題なく使えそうだ。
ためしに少しだけ火花を散らしてみる。パチッという小気味良い音とともに伝わる、確実な発電の手ごたえ。
よし、とりあえず焦がす手前くらいまでの電流でこの不届き者達に天誅を―――。

「おっと」

私が火花を散らした直後、誰かの手が私の頭の上に置かれた。
途端に使えなく能力。これはつまり、置かれた手が誰のものであるのかを明確に表している。
しばらく止まっていた手が、能力を封じられたのをきっかけにまたその動きを再開した。

………プチ。

どこかで、なにかが切れる音がした。


「いつまで触っとんじゃぁぁあーーーッ!!!!」


予想とは反して、私の足は勢いよく動いてくれた。
ムエタイの闘士もびっくりな速さで蹴りあげられた膝が、私を抱き抱えていた当麻の顔面を抉る。
その反動で頭に添えられていた右手が離れたのを確認した瞬間、私は遠慮なく能力を解放していた。

432 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage saga]:2011/03/29(火) 01:40:47.80 ID:72YXvAGm0





「……お姉様」
「………なによ?」
「心配して介抱していたミサカ達に、容赦ない電撃を浴びせるのはいささか理不尽ではないでしょうか?」
「……あれを本気で介抱だと言い張るアンタにびっくりだわ」

思っていたよりも元気に復活してくれた美琴は、それと同時にどぎつい膝蹴りをプレゼントしてくれた。
その瞬間にいつもと違って短パンを履いてない足元にゲコ太プリントのパンツが見えたのは秘密だ。

「………ねぇ、あの魔術師は?」

ようやく怒りが収まったのか、美琴はまた俺の膝の上に戻りキョロキョロと辺りを見回す。

「アイツならそこに転がってるよ」

俺が指さした“そこ”には、土御門達につつかれながら横たわっている魔術師がいた。

「しっかしいきなり拳銃なんて取り出すからびっくりしたぞ」
「麻酔銃よ、16820号が念のためにって私にくれたの」
「そうです、今回まったく役に立ってないウニ頭さんと違ってミサカはお姉様の安全にしっかりと貢献しているのです!」
「悪かったな、役に立ってなくて」

確かに。今回はいろいろいろ理不尽なことも重なり、俺の出る幕はほとんど無かったような気がする。
とはいえ別になにもしなかったわけじゃない。オレはオレで懸命に動き回っていたんだ。

「よっと……」

オレが心の中で不満を叫んでいると、ふいに美琴が立ち上がった。まだふらつく足どりを、急いで俺の手で支える。
「まだフラフラしてんのに、なにやってんだ」と、目だけで語りかけると、美琴は身体の不調に多少表情を歪めながらも柔らかく微笑んできた。

「………まだ、終わってないのよ」

そう言った美琴が向かった先には、倒れたまま動かない魔術師の姿。


――――ねぇ、聞こえてる?




433 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage saga]:2011/03/29(火) 01:42:11.56 ID:72YXvAGm0
思ったよりも長くなったので最後まではまだ書きためが出来ておりません
もう少々お待ちを……

遅くとも5月までには終わらせたい…!
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/29(火) 03:17:18.04 ID:+pTNET0do
GJです!
続き待ってます
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/29(火) 11:37:08.90 ID:AnmrAcVa0
>>1乙デス!
今回も面白かった!
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/29(火) 13:55:16.08 ID:Jl+nNkWNo
美琴前かっけーとか思ってたらまた変態展開とか油断も隙もねぇわww
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/03/30(水) 20:51:18.47 ID:b5DPfgzO0
乙うううううううううううううう
続きも超待ってる

438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/30(土) 12:18:14.25 ID:4jrtRf6DO
5月までに終わらせなくてもいい
質を保って頑張ってくれ

待ってるよ!
439 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage]:2011/05/03(火) 23:47:02.25 ID:zxX1MEjDO
(´;ω;`)ブワッ

やっとネットが開通したので今から農業もあわせて今から書きためです…
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2011/05/03(火) 23:51:48.10 ID:+PAOfBcNo
待ってた
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/04(水) 00:51:56.91 ID:PMtB3Jdvo
お、農業もあなただったのか、両方期待してます
442 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage saga]:2011/05/08(日) 00:50:03.02 ID:faii417U0


ぼんやりとした意識の中。

彼は傍らから聞こえてくる会話に耳を傾けていた。


……なるほど、あの時彼女が取り出した拳銃は麻酔銃だったのか。
男に気を取られていたがために、そんなモノさえ避けることが出来なかった。
もちろんそれは自分の実力不足によるもの。
自分の実力では手負いの小娘一人倒せなかったのだ。

気付けば、先程から続いていた会話は終わり、代わりにこちらへと近づいてくる足音が。
足音はすぐそばで止まり、その主の声が頭上から降り注ぐ。

「ねぇ、聞こえてる?」

聞き覚えのある声。これは自分がつい先ほどまで対峙していたあの少女のものだ。
しかしこの質問はなにを意図しているのだろうか。
自分は今、地面に伏している。それはこの少女の放った麻酔弾によるもの。
話しかけている相手がいま、麻酔によってまともに口を聞ける状況ではないことは彼女が一番知っているだろう。

「まぁ、聞こえてないならそれでもいいんだけど」

いいのかよ。

「いや、そこはちゃんと聞かせてやれよ」

間髪いれずに男のツッコミが入る。
意識はあっても口の聞けない自分の代わりに言葉にしてくれるのはありがたい。

「もちろん冗談よ。……あのね、私は人の生体電流も感じ取れるのよ。アンタの脳の電気信号を見る限り、意識はあるわよね。
 だから私の声はちゃんとアンタに届いてるハズ、わかった?」

なるほど。流石は科学の頂点、レベル5の電流使い。こと電気の扱いに関しては能力の限界すら見せてはくれない。

「………アンタ、正直言って強いわよ」

当然だ。でなければこのような任務を受けるはずもない。

443 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage saga]:2011/05/08(日) 00:52:42.06 ID:faii417U0

「偶然………、偶然私が能力を取り戻したのと、麻酔銃を持っていたのと……それと当麻がいい感じに囮になってくれたのと……」

「あ、やっぱり上条さん、囮としてしか使われてなかったんですね」


………違う。


「なんだかんだで私、運がいいのよね。だから今回もそう」


違う。


「だから………、そう、アンタは強いわ、間違いない」

「――――違う!!!」

「……!」

持てる全ての力を振り絞りようやく、ようやく声を出すことが出来た。
第三位の超電磁砲が勝ったのは偶然?………違う、そうではない。

「………必然、です、すべて……!」

「………必然?」

「そう……能力も満足に使えぬ少女一人仕留められない私の、失態です……!」

コレが彼女の暮らす“表”の世界の出来事ならば、彼女の言うとおり、自分は運が悪かっただけかもしれない。
しかし自分、自分達が身を置いている“この世界”は。“この世界”は違う。
過程など問題ではない、大事なのは結果。そこに過程を顧みる『感情』など存在しない。

「結果が、すべてなのです………。私は、しくじった……」

思い出すのは、未だ魔術を自由に使えなかった自分。
どれほど努力を積み重ねようと、どれほど他者と自分の溝を埋めることに躍起になっても、越えられぬ壁がそこにはあった。
結果を出せぬ以上、いくら努力をしたところで「よく出来ました」などと褒め称えてくれる輩などいようはずもない。
だからだろうか、“模造”という自分の才能に目覚めた時は例えようのないほどの喜びに浸ったたものだ。
それからは部下もつき、自分を慕う者さえ現れた。

しかし――――。

444 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage saga]:2011/05/08(日) 00:55:36.63 ID:faii417U0

「まァしくじったからといって組織に殺されるようなことはありません……。
 しかし………霊装写しとまで言われた私の魔術師としての居場所はこれで無くなった……」

連れて来た部下達の姿は既になく、イヤホンで繋いだ無線機からはただ虚しくノイズが流れるのみ。
考えてみれば、自分の能力は他者の武具に依存するもの。そもそもが自分の力ではないのかもしれない。
自分はいったいどれだけ脆い土台の上に立っていたのだろうか。
ひとたび辛酸を嘗めさせられるようなことがあれば、すぐにこれだ。部下は去り、慕う者も見放すだろう。

これを機に、魔術の世界から足を洗うのも悪くはない……。

私の言葉の意味を理解したのか、少女の目も人を見下すそれに変わっていた。

しかし……。


「あっきれた! アンタの“強さ”ってその程度だったの!?」

「………はァ??」

彼女の口から発された言葉は、自分が予想していたものとは正反対のものであった。

「ずっと頑張ってきたんでしょ? 魔力の弱さを補うために、必死でやってきたんでしょ?
 なのに、なに? たった一度失敗しただけでもう諦めるっていうの!?」

「………!」

「並の努力じゃなかったんでしょ!? そんな簡単に捨てていいもんじゃないでしょ!?
 それに、アンタ最後はレプリカの武器に頼らずに、自分の力で私の超電磁砲と張りあってたじゃない!」

確かに。言葉では言い表せないほどの努力を重ねてきた。
そしてその甲斐あってか、いつの間にか自分の魔力も向上しており、模造した武具頼らぬ戦い方も見つけられた。
………しかし、もう遅い。

「もう遅いのですよ。部下は去り、名は地に落ちた。組織からも疎んじられるでしょう……。
 もはや私に寄るべき場所はありま………」

そこで、言葉を切った。
なぜならば彼女の眉毛が綺麗に八の字を描いていたから。
いぶかしげに、まるで「アンタ本気で言ってんの」とでも言いだしそうな表情で。

445 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage saga]:2011/05/08(日) 00:57:17.80 ID:faii417U0

「………私もさ、自分で言うのもなんだけど、努力で能力手に入れたクチでさ」

そして突然軽く苦笑を浮かべたかと思うと、しゃがみこんで瞳を閉じたまま語りかけて来た。

「でもさ、努力ってだいたい人には見えないじゃない? 私の場合、付いてきたのはレベル5という結果だけ。
 まるで初めからレベル5だったかのように見られて、羨ましがられて、嫉妬されて、疎んじられる」

「………」

「だからさ、私、アンタが羨ましい」

そう言ってにっこりとほほ笑んでくる少女。
正直言って、自分には彼女がなにを言いたいのかがよくわからない。
今度は自分がいぶかしげな表情で彼女を見つめてみる。すると、彼女は自分を挟んで反対側の方を指さしてきた。

「アンタ、ずっとこっち向いてたから気付かなかったんだろうけど……」

そこには去ったはずの部下達が数人、正座しながら心配そうな目で自分を見つめていた。

「アンタにはまだ“過程(努力)”を知っている、そしてまだ尊敬してくれてる仲間がいるじゃない。
 だから私、アンタが羨ましいの」

「あ……」

「一度の失敗がなんだってのよ。アンタはまだやり直せる、ついてきてくれる仲間もいる」


そうか、残っていたのか。
私の過去も苦悩も、そして今回の失態を知りながらなお自分についてきてくれる部下、いや、仲間が。
私が彼らに微笑みかけると、彼らも安心したのか柔らかな微笑みを返してくれた。

………随分と、肩が軽くなった気がする。


「あ、言っとくけど、やり直すなら暗部以外でね?」


彼女は最後に、また困難なことを言ってのけた。
しかし今の自分ならばそれも可能のような気がする。否、出来る。

魔術の才能を与えてくれなかった神よりも私を救ってくれたこの少女に、仰向けになったまま頷きかける。
その日の私は生涯の中で一番無様で、そして誇らしいものとなった。




446 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage saga]:2011/05/08(日) 00:59:46.68 ID:faii417U0


1月3日、午後6時過ぎ。



波乱の元となった魔術師は麻酔が切れるや意気揚々と本国に帰り、土御門達は取引を完遂した。
魔術師が帰った直後に警備員が到着、境内の惨状を見て頭を抱える黄泉川先生に事情を伝えなければならなかったのだが……。
しかしそこは白井黒子がうまく取り繕ってくれたので、ややこしい言い訳を考えずに済んだ。
幸い、白井も妹達も怪我はなかったようで、戻ってきた初春さんや佐天さんとまた楽しそうに談笑していた。

さて、今の俺はというと、俯きながら俺の袖を引っ張ってきた美琴と一緒に二人で賽銭箱の前に突っ立っている真っ最中。

「…………あの魔術師が羨ましいって?」

「………ちょっとだけ、ね」

俺は、美琴がレベル5になるまでどんな努力をしてきたのか知らない。
恐らくは白井もそうだろうし、初春さんや佐天さんだって知らないだろう。
そして人に心配をかけるのを良しとしない美琴のこと。両親にさえその苦難は言ってないんじゃないだろうか。

「………だけど、さ」

くるりと俺のほうへ向きなおって微笑みかけてくる美琴。
その顔に、先程までの暗さはまったく見受けられなかった。

「アンタは、私を私として見てくれる。“レベル5の超電磁砲”としてじゃなく、“御坂美琴”として」

そこで美琴は話を区切り、財布から取り出した5千円札(ちくしょう)を惜しげもなく賽銭箱へ放り込んだ。
そしたまた俺の方へと向き直る。

「だから当麻が私のことをあんまり知らないって意味じゃないよ、ってことだけ、言っておこうかなって。
 私の過去のことも、これから話してく予定だし、ね」

「そうだな、いろいろ聞かせてもらいたいな」

俺は去年の7月以前の記憶は無いけれど。
誰も知らない美琴の過去を知ることが出来る栄誉はありがたく受け取りたい。

「………鈴、鳴らすか」

「2回目、だけどね。大丈夫かな?」

「そんなケチな神様に頼んでダメなら、上条さんに頼んどけ」

「………次からそうする……」

447 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage saga]:2011/05/08(日) 01:02:08.72 ID:faii417U0

冬の午後6時過ぎ。

辺りは既に暗くなり、わずかな照明で照らされた神社にがらんがらんと鈴の音が響きわたる。
それに呼応するかのように、黒く塗りつぶされた空からはふわりと白い光が落ち始めた。

「…………雪、降ってきちゃった」

「…………そうだな、そろそろ帰るか」

「………うん」

まだ病み上がりの身体である美琴にこの寒さは辛い。
こういう時の為に余計に着て来た上着を美琴の肩にかけ、休憩所でのんびりと煎じ茶を飲んでいた御坂妹、16820号と合流する。

「あれ? 黒子も帰っちゃったの?」

「報告書の作成のため、先に帰宅するとのことです、とミサカは伝言の役目を遂行します」

「あ、お姉様……」

「ん、どしたの? 16820号」

「その……コインを取り戻す対価として、お姉様の電話番号を教えてしまいました。
 後日熱烈なファンの男から電話がかかってくるかもしれませんので、軽くでいいので話の相手をしてやってください……」

「あぁ、そういうことなら別にいいわよ。コイン、取り戻してくれてありがとね、16820号」

「……!」

美琴の言葉に、不安から一気に歓喜の表情へと変わる16820号。
うーむ、あれほど感情がしっかりしている妹達は他にいないんじゃないだろうか。

「さて、美琴が風邪ひく前に帰るぞ」



そして、歩きだす。

向かう先は病院だが、今のメンツならばそんなことは気にならないくらいポジティブな空間だ。


448 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage saga]:2011/05/08(日) 01:04:12.70 ID:faii417U0


「というかそもそも、アナタがコインを賽銭箱に投げ込んだりしなければ、もっと楽に解決したのでは?」

「うぐっ……!」

「しかも当麻は今日はなにもしてないしねー」

「ちょ、美琴さん!? そういうの割と本気で傷つくからヤメテください!」

「ではお姉様、役立たずは放っておいて、ミサカ達だけの映画鑑賞と洒落込みましょう」

「おい、公共の場でピンク色のDVDをチラつかせるな」

「大丈夫です、今回は18禁ではありません」

「そうか、よかった」

「21禁です」

「悪化してるからな!? オマエのそのとどまることを知らない美琴への情欲は悪化の一途を辿ってるからな!?」

「まぁ後でミサカが要約を兼ねた感想文を400字で書いてあげますので、期待していてください」

「800字で頼む」


失言――――。


そう思った時には既に遅く。


三が日を彩ったこの騒動は、俺の三度目の気絶で幕を下ろすのであった。



449 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage saga]:2011/05/08(日) 01:06:34.97 ID:faii417U0





「うん、なかなか素晴らしいんだね?」

「……なにを見ているのですか?」

「16820号くんから貰ったDVDなんだね、君も見るかい?」

「セクハラです」

「ごめんごめん、ナース物となるといささか興奮が抑えきれなくてね? ほら、君も着てるナース物」

「セクハラです」

「いやいや僕としたことが少し取り乱しちゃったね?」

「少しなんですか」

「僕を誰だと思ってるんだい? …………むむむ、これは!!」

「………」

「…………奇跡と、呼べるのかもしれないね?」

「いったいなにがあったんですか、先生………」




Fin.


450 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [saga]:2011/05/08(日) 01:13:43.56 ID:faii417U0
えらく長くかかってしまいましたが、これで終わりです。
最終的に地文付きSSの練習みたいな感じで何度も文体を変えてしまいましたが、読みづらさはご愛敬ってことで……。

もっと上琴描写を入れるべきかと思ったのですが、おまけですしこれくらいでいいかな、と。

これだけ遅くなっても、定期的に覗いてくれてる人もいるみたいですので(非常にありがたいです…)、HTML化依頼は2週間後くらいに出そうかと思ってます。

それでは読んで下さった皆さん、いままで本当にありがとうございました。

現在は平行して上琴の農業SSを進行中なので、そちらも是非!


451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/08(日) 01:15:29.08 ID:RSlqH8sUo
乙!

楽しませてもらたよ!
軽い後日談と農業に期待してる!
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/08(日) 01:19:13.41 ID:TS54lw06o


そうか、股間も冥土から帰ってきたのか
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/08(日) 01:29:03.98 ID:c96X5k1AO
乙でした

農業の方も楽しみに待ってます
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/05/08(日) 01:43:56.23 ID:5XginFhqo
終わりか
寂しいけど仕方ないな
乙!
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 11:04:20.45 ID:38SPTJBDO
すげぇ面白かった
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 13:08:39.77 ID:dAz26y5io
乙!
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/09(月) 01:09:06.92 ID:AIDLoqfR0
超乙!ずっと待ってた…!
ありがとう面白かった
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/05/09(月) 23:42:48.71 ID:102moyzKo
面白かったー

一気に読んできたよ

乙です!
459 : ◆vUZM4zZuJ2Cr [sage saga]:2011/05/20(金) 01:08:31.34 ID:xpOpkjjd0

そろそろHTML化以来を出してきます

読んでくれた方、改めてありがとうございます
農業とは別にシリアスものもまた書こうと思っているので、この経験をもとにまたさらに良いものを書けるよう精進します

では、また

ノシ
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/20(金) 01:28:02.30 ID:szMMfnlCo
乙!
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/05/20(金) 02:08:44.63 ID:0WRUUV9jo
乙でした!
自作も楽しみに待つことにします
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