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らき☆すたSSスレ 〜ひと夏の夢物語〜 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/07/21(水) 23:28:52.27 ID:Z4.6M3g0
ここは「らき☆すた」のSSスレです。

・どんなジャンルでもどんどん投下したまへ〜 by こなた
・でも、他所からの作品の無断転載は絶対ダメよ! by かがみ
・あとね、あんまりえっちなのはちょっと恥ずかしいから遠慮してほしいな by つかさ
・メール欄に「saga」と入力するとこの板特有のフィルターを回避できます。「sage」ではありませんよ。
 代表的な例が「高良」です……よろしくお願いしますね by みゆき
・長編作品はタイトルをつけてもらえるとまとめるときとかに助かります! by ゆたか
・それと、できればジャンルを明記するようにしてほしいの。
 特定のジャンルが苦手な人もいると思うから…… by あやの
・パロディとかクロスオーバーとかもおっけーだけど、
 あんまり度が過ぎると他の人に引かれっから気をつけろよなー by みさお
・シラない人へのハイリョがアればgoodネー byパティ
・初めてでもよっしゃーいっちょ書いたろかって人大歓迎するでー by ななこ
・まとめてくれる人募集中です……そして、現在のまとめ人には感謝してます…… by みなみ
・お題を出せば書いてくれる職人さんもいるっス。ネタのため……
 いや、いろんなお話を読んでみたいんで、いいお題があったら書いてみてください! by ひより
・そしてそして、SSだけじゃなくて自作の絵もOK!
 投下された絵は美術室に展示されるからジャンジャン描くべしっ! by こう
・注意! 荒らしへの反応は絶対ダメ。反応する悪い子は逮捕だ! by ゆい


(避難所)
 PCから->http://jbbs.livedoor.jp/auto/5330/
 携帯から->http://jbbs.livedoor.jp/bbs/i.cgi/auto/5330/

(まとめサイト)
 http://www34.atwiki.jp/luckystar-ss/

(SSスレ用画像掲示板)
 http://www.sweetnote.com/site/luckystar/
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もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713798788/

【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713788018/

ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/

2 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/07/21(水) 23:31:40.15 ID:Z4.6M3g0
注意書きがあったので作り直しました。
3 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/07/21(水) 23:40:41.67 ID:Z4.6M3g0
7月20日0時になりましたので、これより第19回らき☆すたSSコンクールの作品投票を開始します。
締め切りは7月26日24時までになりますのでご注意ください。
皆さまの投票をお待ちしています。

「お題」「ストーリー」「文章」の三部門に分け、投票所を設置しております。
お手数ですが、各一票ずつどうかよろしくお願いいたします。

お題
http://vote3.ziyu.net/html/lkstait.html
ストーリー
http://vote3.ziyu.net/html/lkstais.html
文章
http://vote3.ziyu.net/html/lkstaiw.html
4 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/21(水) 23:41:21.33 ID:y.caCzc0
>>1
いや知らんけど
5 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/07/22(木) 00:10:32.50 ID:2NerPi60
あれ ? 前 (?) のスレで書かれたお話 ( コンクール終了後 )
とかはどうなるの ?
6 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/07/22(木) 00:14:08.16 ID:Df/L1nM0
>>5
前のスレのお話はすでにまとめてあります。
7 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/07/22(木) 04:46:15.00 ID:dvVC5nwo
>>1
過去ログ化依頼じゃないのか。まぁ乙
8 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/07/22(木) 07:48:38.49 ID:4GAM9Yc0
前スレは過去ログ化依頼してあります。
9 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/07/22(木) 22:48:33.94 ID:APR4RASO
いちおつ

そして高翌良テスト
10 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/07/22(木) 22:49:51.67 ID:APR4RASO
(゚Д゚)……
新しい板でも高翌良さんは高翌良さんでした)^o^(
11 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/07/22(木) 23:17:06.43 ID:J33P2UM0
高良 sagaテスト
12 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/07/22(木) 23:19:30.58 ID:J33P2UM0
sagaは効くのか・・・

どうでもいいがお金持ち同士だし
「高良vs天原」
みたいな話があってもいいような気もするが
経済はやっぱり難しいのかな?
13 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/07/22(木) 23:30:48.90 ID:6g2gFgSO
みゆきさんちは、劇中だと正月くらいしか本家に顔出してない感じだなあ
個人的には本家の名字は高良じゃなくて、ゆかりさんが嫁に出てって高良になったんだと思ってる
14 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/07/24(土) 01:06:35.82 ID:mNehCQM0
調べたけど7/26は満月だね。コンクール最後に相応しい日だ。偶然かな。
15 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/07/24(土) 04:39:24.77 ID:EcEHDgY0
かなた「ここがヴィアイピーの世界ね」
16 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/07/24(土) 22:23:10.91 ID:MVvanDI0
===============================================================================
かなたさん監視開始のお知らせ
17 :暑い日 [saga]:2010/07/25(日) 13:57:43.51 ID:6Wsshg20
投下行きます。

暑い中だらだらと書きました。
よって内容はありませんし、短いです。
18 :暑い日 [saga]:2010/07/25(日) 13:59:33.80 ID:6Wsshg20
 少女は夢を見ているような気分を味わっていた。
 ふわふわと景色が揺らめき、そのうち宙に浮くんじゃないかとさえ思える。
 なにかしなければならなかったはずなのだが、頭の中がボーっとし、うまく考えられない。
 そもそも自分は今どこに居るんだろう。どこに向かっているんだろう。少女はそう考え、目の前に続くアスファルトに気がついた。
 ああ、そうだ。歩かなきゃ。少女はそう思い出し、足を前へ踏み出した。
 だが、地面をとらえるはずの足にはなんの感触も無く、少女はそのまま地の底まで落下していった。
「…お姉ちゃんっ!?」
 その耳に、一緒に歩いていた妹の声が聞こえた。



― 暑い日 ―



 コクコクと喉を鳴らし、かがみはペットボトルに入ったスポーツドリンクを一気に飲み干し、大きく息をついた。
「…びっくりした」
 そして、ポツリとそう呟いた。
「びっくりしたのはこっちだよー。お姉ちゃん急に倒れるんだもん…」
 かがみの座っているベッドの横で、つかさが泣きそうな顔でそう言った。
「…そうよね、ごめん…で、ここは…」
 言いながらかがみは周りを見回し、棚の上においてある美少女のフィギュアを見てここがどこなのかを悟った。
「こなたの部屋…こなたんちに遊びにこようとしてたんだっけ?」
「違うよお姉ちゃん。勉強会だよー」
 かがみの間違いを、つかさが訂正する。そして、つかさは心配そうにかがみの顔を覗き込んだ。
「お姉ちゃん。大丈夫なの?」
「…ちょっと大丈夫じゃないかな…まだ頭がボーっとしてる…」
 つかさの質問に軽く頭を振りながらかがみが答える。
「お、かがみ気がついたんだ」
 そこに、手にペットボトルを持ったこなたがドアを開けて部屋に入ってきた。その後ろにはバスタオルとバケツを持ったみゆきが続く。
「かがみさん、ご気分はいかがでしょう?」
「…まだちょっとボーっとする」
「そうですか…」
 みゆきは床にバスタオルを引き、その上にバケツを置いた。そしてバケツの中から小さめのタオルを取り出し十分に絞った。
「かがみさん、少し失礼しますね」
 みゆきはかがみの服の袖を肩が露出するまでまくり上げ、両腋に先ほどのタオルを挟ませた。
「…冷たい」
「はい、氷水に浸しておきましたので。これを動脈の集中する腋に挟むことで、体温の低下を促します。あとは…」
 みゆきは説明しながらこなたのほうを見た。こなたはみゆきにうなずき、持っていたペットボトルをかがみに渡した。
「…なにこれ?」
 ペットボトルに入っていたのは茶色く濁った液体。冷たくはなく、少し温かい感じがした。
「ま、飲んでみたらわかるよ」
 こなたに言われ、かがみはキャップを取り中の液体を口に含んだ。
「これ…お味噌汁?」
 一口飲んだかがみがそう言うと、みゆきがうなずいた。
「はい。熱中症の祭にスポーツドリンクを飲みすぎますと水中毒になる恐れがありますので、経口補水塩として用意しました」
「流石に作ってる時間無かったから、インスタントだけどね」
 みゆきが説明しこなたが補足している間に、かがみは味噌汁を半分ほど飲み息をついた。
19 :暑い日 [saga]:2010/07/25(日) 14:00:04.18 ID:6Wsshg20
「…でも、お姉ちゃん倒れたの、こなちゃんちの近くで良かったよ。ゆきちゃんもすぐ来てくれたし」
 かがみの身体を団扇で扇いでいるつかさがそう言うと、かがみは軽くうなずいた。
「そうね…人気の無いところでって思うとぞっとするわ…こなたが運んでくれたの?」
「いや、わたしじゃ流石に運べないから、お父さんに頼んだよ」
「そう…後でお礼言っとかないとね…変なことしてなかったら」
「いくらお父さんでもそれは無いよ」
 こなたは顔の前で手を振りそう言って、その手の人差し指を立てた。
「せいぜい、縞々パンツが見えたくらいだよ」
 にこやかにそう言うこなたに、つかさとみゆきが苦笑いを浮かべる。
「縞々…」
 かがみはそう呟きながら、穿いていたスカートをまくり上げた。つかさとみゆきは慌てて顔を背け、こなたは唖然とかがみを眺めた。
「たしかに縞々ね…」
「いや、あの、かがみ…」
 露出したパンツを眺めながら呟くかがみの肩を、こなたは呆れながら軽く叩いた。
「なに?こなた?」
「かがみがそれは、ちょっとないかと」
 そう言いながらスカートを治すこなたを、かがみはボーっとした表情で眺めていた。


「今日は勉強会は無理ですね…」
 眠ってしまったかがみを見ながら、みゆきがそう呟いた。
「そうだね…お姉ちゃん、大丈夫かな…」
 心配そうにそう言うつかさに、みゆきが微笑みかける。
「容態も安定してますし、大丈夫ですよ」
「そっか、良かった…」
 みゆきの言葉に、つかさが安堵のため息をついた。
「…いや、それはいいんだけど…」
 そして、かがみの寝ているベッドからこなたの声が聞こえた。
「なんでこんなことに…」
 呻くようにいうこなたのお腹には、かがみの頭が乗っていた。
「わたしを枕代わりにするなんて、ひどいなかがみ…ってみゆきさん、今笑ったね」
 眉根を寄せたこなたにそう言われ、みゆきは口元を手で隠してそっぽを向いた。
「…いえ…そんなことは…」
「まあいいけど…」
 こなたは諦めたようにそう言うと、自分のお腹を枕代わりに寝ているかがみの髪を撫でた。
「暑さでボケてるとはいえ、かがみらしくないなー」
「そうだね…でも」
 こなたの呟きにつかさは頷き、少し嬉しそうに微笑んだ。
「こうやってこなちゃんに甘えてるお姉ちゃんも、たまにはいいかなって」
 そう言うつかさを、こなたは呆れたような顔で眺めた。
「健康なときなら…ですよ。つかささん」
「え、あ…そ、そうだね…」
 そして、みゆきの指摘につかさは恥ずかしそうに身を縮めた。



― おしまい ―
20 :暑い日 [saga]:2010/07/25(日) 14:01:46.88 ID:6Wsshg20
以上です。

熱中症で倒れたときは、救急車を呼ぶなりしてすぐに病院にいきましょう。
21 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/25(日) 15:21:08.27 ID:RBQqhvk0
えがったよ〜、暑い中乙なんだよ
みゆきさんの博識振りと枕こなたを微笑むのがなんともたまらないね〜
室内でも熱中症にかかることもあるからみんな気を付けてね〜
あつーい、だるーい、何もヤル気出な〜い
22 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/07/26(月) 00:07:36.88 ID:V8Nj2t20
ここまでまとめた





23 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/26(月) 00:16:36.74 ID:8kRVyVAo
乙ですよ
さすがのかがみも、暑さにやられたらボケちゃうかw
凛としたかがみもいいけど、弱弱しいかがみもかわいいよね
24 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/07/26(月) 00:25:30.59 ID:V8Nj2t20
やっぱり高校時代くらいの方が物語りが書き易い。原作のネタが多い事もあるかもしれないが、卒業すると結構みんなバラバラになるから頻繁に会うことが出来ない。その辺りが難しいね。
25 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/07/26(月) 01:04:01.09 ID:cLi.i4w0
>>24
高3までは未来に対して一直線だったけど
大学はいって何したらいいか分からないリアル大学生からしたら
高校生は前だけ見て突き進んでいけるから書きやすいなぁ、と思ってみたり

とくにみゆきさんがディスられてる感が……出すにはそれなりに理由が要りますよね。正月とかwwww
ごめんねみゆきさん。
26 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/07/26(月) 02:34:43.46 ID:V8Nj2t20
自分は専門学校だったので大学の雰囲気がいまいちつかめない。
社会人くらいになれば逆に物語は作りやすいのだが。
27 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/07/26(月) 06:04:10.30 ID:1diMfR2o
★★★らき☆すた★★★

第19回らき☆すたSSコンクール作品投票も、終了まで一日を切りました。
まだ投票されてない方は、ご注意ください!

部門ごとに3つの投票所を設置しております。
お手数ですが、それぞれ一票ずつどうかよろしくお願いします。

参加作品
http://www34.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/1642.html

投票所 締め切り:本日24時
お題
http://vote3.ziyu.net/html/lkstait.html
ストーリー
http://vote3.ziyu.net/html/lkstais.html
文章
http://vote3.ziyu.net/html/lkstaiw.html

★★★らき☆すた★★★
28 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/07/26(月) 17:10:09.45 ID:9KJsecSO
かがみ「もうすぐコンクールの結果発表ね」
みゆき「どの作品が大賞になるのでしょうか」
つかさ「投票が部門別になって、予想が難しくなったよね」
こなた「ふ、甘いね…わたしはもうばっちり予想済みだよ」
かがみ「ほー。じゃ、聞きましょうか。こなたさん」
こなた「作品名を出すのはまずいから、特徴だけ軽く言うよ」
つかさ「うん」
こなた「ずばり…文中に月という文字がある作品が大賞だよ!」
かがみ「これ、この前買ったんだけどさ」
みゆき「あ、いいですね、これ」
つかさ「うん、かわいい。わたしも欲しいな。どこで買ったの?」
こなた「スルーやめてーっ!」
29 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/07/26(月) 19:36:29.14 ID:MEkazv6P
みゆき「ついに卒業ですね」

つかさ「みんなと別れるのは辛いよぉ><」

かがみ「うん、本当に寂しくなる……」

こなた「残念だよ、みんなと一緒に卒業できなくて」

みゆき「まさか、こなたさんが留」

かがみ「な、家にまた遊びに来てよね」

つかさ「そうだよ、こなちゃんいつでも来てね」

みゆき「来年の卒業式には見に来」

つかさ「とりあえず記念撮影しようよ」

かがみ「あ、黒井先生!一緒に撮りましょう!」

パシャ!

こなた「みんなに言っておく事があるんだよ」

つかさ「なになに?」

かがみ「早く言いなさいよ」

みゆき「留年の理由ですか?」
30 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/07/26(月) 19:42:37.19 ID:MEkazv6P
こなた「みゆきさん鋭い!さすが何でも知ってるよね!」

みゆき「まぁ、察する所ゲームのし過ぎかしら?」

かがみ「そういうのは思っても口に出しちゃ」

つかさ「駄目だよ!」

みゆき「あら、ごめんあそばせ」

柊姉妹(こいつ、卒業式に黒出しやがって……)

こなた「まぁ、当らず遠からずかな」

黒井「モジモジ」

こなた「実は……」

黒井「あーあーあー聞こえない」

こなた「でね、黒井先生が『お前が卒業したら私がダンジョンで困るだろ!』って事で、あと1年だけ一緒に遊ぶ事にしたの」

一同「マジで!」

こなた「マジで」

黒井「ごめん、もうこなたが居ないと私……」

こなた「先生ぇ、とりあえず今夜も頑張ろう!」

黒井「うん」

かがみ「駄目だこりゃ」

みゆき「あの二人は、リアルでもパーティなんですね」

つかさ「そりゃ姉妹同然だし」

みゆき「というか、百合なのかしら?」

つかさ「百合ってなぁに?」

かがみ「あーあーあーきこえなーい!」
31 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/07/26(月) 19:43:24.33 ID:MEkazv6P
黒井xこなた

続きはそのうちに……需要があれば書かせていただきます
32 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/07/27(火) 00:09:31.55 ID:UgUxH32o
それでは7月27日になりましたので、投票結果を発表いたします。
今回、大賞に輝いたのは、ID:NIOcQ0Io氏作『【光の速さで1.2秒】』です。
おめでとうございます!

結果はこちら。
お題部門ID:NIOcQ0Io氏作『【光の速さで1.2秒】』
ストーリー部門ID:5UE4CHc0 氏作『肝試し』
文章部門ID:NIOcQ0Io氏作【光の速さで1.2秒】
皆さま、おめでとうございます!


作者の皆さま、読者の皆さま、運営に携わった皆さま、誠にありがとうございました。
これにて第19回らき☆すたSSコンクールを終了します。
次回のコンクールもよろしくお願い致します。お疲れ様でした!

投票結果はこちら
お題
http://vote3.ziyu.net/html/lkstait.html
ストーリー
http://vote3.ziyu.net/html/lkstais.html
文章
http://vote3.ziyu.net/html/lkstaiw.html
33 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/07/27(火) 00:24:23.64 ID:pzdIP2SO
お疲れ様でした

うーん、今回は不調だったなあ
34 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/07/27(火) 00:43:36.16 ID:eLCxRK.0
大賞おめでとう。
今回のお題は難しかった。コメントが貰えればいいと思ってたけど副賞がくるとは。
ありがとうございました。


35 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/27(火) 14:54:41.59 ID:VnFyxvMo
ID:NIOcQ0Ioですが、部門章を頂いた上に大賞も取れて本当に嬉しく思います。

初投稿に萎縮して何度も止めようかと思いましたが、投稿してよかった。
また何か投稿させていただきます。

読んで下さった方、投票して下さった方、コメント下さった方、ありがとうございました!
作者の皆様、そして運営陣の皆様も本当にお疲れさまでした、次回も楽しみにしています!
36 :名無し :2010/07/27(火) 16:09:58.18 ID:7LQJJQc0
らきすたのこなたの小説誰か書いて
37 :名無し :2010/07/27(火) 16:11:02.23 ID:7LQJJQc0
38 :名無し :2010/07/27(火) 16:12:20.26 ID:7LQJJQc0
39 :名無し :2010/07/27(火) 19:59:37.10 ID:7LQJJQc0
ごめんまちがった
40 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/07/31(土) 10:32:12.18 ID:zvmOPMSO
−今は昔−

こなた「…ふいー…生き返るー…電車の中は天国だねー」
かがみ「大袈裟…って言いたいけど、これだけ暑いとね…」
こなた「…お父さんに聞いたんだけど」
かがみ「うん」
こなた「昔は電車の中もエアコンじゃなく扇風機だったそうな」
かがみ「…マジで…」
こなた「満員電車とかさぞかし…」
かがみ「いや、やめれ、想像させないで」
41 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/31(土) 11:02:42.10 ID:wN/080Y0
[禁則事項です]
42 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/07/31(土) 12:52:14.11 ID:Iq6VO2AO
〜よくあること〜


こなた「やふー、かがみん」
かがみ「げっ何他所の大学来てんのよアンタ。授業はどうした」
こなた「いやそれが休講が重なって朝イチだけ受けたらヒマでさ」
かがみ「あ〜あるね、来たら休講ばっかで来た意味ないってこと」
こなた「事前に知らせてくれる先生もいるけど…一体教授とかのスケジュールはどうなってるのか知りたくなるよね。ときにかがみんや」
かがみ「何よ」
こなた「なんで一人で学食なの?友達いない?」
かがみ「私だけ授業なくてヒマなだけよ!」
43 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/07/31(土) 19:49:20.59 ID:joJ1mgs0
まず言われることはないだろうけど
らき☆すたのママン達って「ババァ」って言われたらどういう反応するんだろう?
44 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/07/31(土) 20:20:16.23 ID:ph2U2Fc0
ただお「ババァ」
みき「日本語でおk」
45 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/07/31(土) 20:28:34.24 ID:62uMYsAO
ゆかりの場合

余所のクソガキ「ババア、どけよ!!邪魔なんだよ!!」
ゆかり「うふふふふ…誰がババアなのかしら〜?(※ドス黒い笑顔)」ゴゴゴゴゴ
みゆき「(言ってはならない事を言ってしまいましたね…;)」
46 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/07/31(土) 20:49:49.20 ID:xwF1lcM0
 みきさんにそんなこと言ったら、呪いの儀式で呪われるぞ。

 まあ、みきさんは、年齢的にも立場的にも孫がいてもおかしくはないのだが。
 って、そういう話ではないですな。
47 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/31(土) 21:11:49.10 ID:DP5tTWQ0
みきさんにしてもゆかりさんにしても若いよね
とても高校生以上の子供がいるとは思えない若さ

移住先でカキコテスタロッサ
48 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/07/31(土) 21:17:03.05 ID:zvmOPMSO
みき「早く孫の顔が見たいわねー」チラッ
いのり「………」ビクッ
かがみ(いのり姉さんにプレッシャー…)
まつり(あれ…もしかしてわたし、期待されてない?)
49 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/07/31(土) 21:26:19.59 ID:ph2U2Fc0
さて、かなたさんに言える猛者はいるのかな?
50 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/31(土) 21:35:49.27 ID:DP5tTWQ0
かなたさんは時間止まってるからなあ
合法ロリだよな

そうじろう「抱いた感じが段々かなたに似てきてドキドキするなあ」

から察するに、幼い高校生の身体的スペックなんだろうし
51 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/31(土) 21:41:15.00 ID:joJ1mgs0
むしろ一度言われてみたかった・・・とか
いやさすがにそれはないか
52 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/07/31(土) 22:12:44.51 ID:UKu6KvI0
なんか今日流れ速ええ
53 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/07/31(土) 23:09:09.46 ID:zSZ7dsAo
     期待され値/期待値(三段階)
こなた:低/低    そうじろう「ダメ、絶対」
かがみ:中/低
つかさ:中/高
みゆき:高/中

ゆたか:低/中
みなみ:低/中
ひより:中/低
パティ:中/高
いずみ:中/中

まつり:低/中
いのり:高/中

ななこちゃん:低/低
54 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/31(土) 23:30:01.19 ID:DP5tTWQ0
ななこん…
55 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/01(日) 00:26:06.77 ID:NoWwNjQ0
流れを切ってしまいますが作品を投下します。ぱっと浮かんだストーリなので期待はしないように
5レスほど使用します。
56 :まつり姉さん  1 [saga]:2010/08/01(日) 00:27:49.10 ID:NoWwNjQ0
まつり「かがみ今日の巫女の手伝い代わってもらえないかな」
日曜日の早朝、まつり姉さんが突然私に頼み込んできた。今日は特に用事があるわけもない。しかし『はいそうですか』と言うほど私は素直じゃない。
かがみ「この前は私がやったわよ、なんで今日の今日でそんな事を」
まつり「大学のレポートが遅れちゃってね、頼む、この通り」
両手を合わせて拝むような姿だった。どうやら嘘を言っているようではないみたい。代わってもいいと思ってきたが顔は拒否の表情をした。
いつもの事ながら勝手すぎる。
かがみ「レポートなら手伝いが終わってからでも出来るでしょうに」
まつり「それが出来るようなら頼まない、そうだ、今度美味しいスイーツ奢ってあげる」
かがみ「……お生憎様、私は今ダイエット中、要らない」

 話はどんどん喧嘩寸前までエスカレートしていった。
いのり「まつり、時間だよ、支度しなさい」
怒る声が響いた。さすがのまつり姉さんも諦めたのか自分の部屋に向かった。
つかさ「まつりお姉ちゃん、私が代わってもいいよ」
つかさが私達のやり取りを見ていたようだった。
まつり「つかさ、さすが話が分かるね、かがみと双子とは思えないよ」
かがみ「双子で悪かったわね」
まつり「それじゃつかさ頼むよ」
私の言う事を無視し、そのまま自分の部屋に行ってしまった。私はつかさを見てため息をついた。
かがみ「つかさ、なんで代わったのよ、そんな事したら今後、いいように使われるだけ」
つかさは私の忠告に笑顔で答えた。
つかさ「だって、大学のレポート大変そうだったから」
かがみ「大変ってね、普段からやってればこんな事になんかならない、そうゆうのをお人好しって言うのよ」
つかさ「そうだよね、普段からやってればそんな事にならない、分かるよ……でも……もう行かなきゃ」
何かを言いかけたが、私を振り切るようにいのり姉さんの所に行ってしまった。

 まつり姉さん、つかさとも中途半端な会話になってしまった。朝からもやもやした感じだった。
そのまま私は台所に向かった。
かがみ「おはよう、お母さん」
みき「おはよう、朝食はそこにあるから……あら、つかさ、朝食食べてないわね、どうしたのかしら」
かがみ「つかさはさっきいのり姉さんと巫女の仕事に出かけたわよ」
みき「今日はまつりじゃなかったの」
かがみ「そうよ、まつり姉さんの番だった、だけど私に代わってくれって言うもんだから、ちょっと言い合ってね」
みき「それでつかさが犠牲になった」
かがみ「お母さん、人聞きの悪いことを、元はまつり姉さんが……」
みき「はいはい、また始まった、いつからまつりとかがみはそんなになったのか……」
お母さんは呆れるように会話を打ち切った。何度も同じ事をするなと言わんとばかりだ。会話が途切れたのは三回目、私ももやもやを通り越してイライラと
なってきた。折角の日曜日だと言うのに。私は朝食を無言で食べた。
57 :まつり姉さん  2 [saga]:2010/08/01(日) 00:29:05.55 ID:NoWwNjQ0

みき「そういえば、つかさ……今日はお友達とどこかに行く約束してたみたいね……早く起こしてって言うから起こしたのに、家の仕事して大丈夫かしら」
お母さんが思い出したように呟いた。つかさが休日なのにこんなに早く起きてきておかしいと思った。友達とどこかに行く約束だって?。今初めて知った。
誰とそんな約束をしたんだ。私の知る限りこなたとみゆきくらいしか思い浮かばない。それにその二人なら私も誘われてもいいはず。
かがみ「友達って誰だか分かる?」
みき「よく家に来る子だって言ったわね、多分泉さんじゃないかしら」
間違いないこなただ。私に内緒で何をするつもりだったのか。まあ、それは詮索してもしょうがない。それよりもつかさはこなたとの約束を反故にするつもりなのか。
いくらこなたとつかさの仲でもそれは許されることじゃない。しかもまつり姉さんのどうでもいい理由の為に。それを知ったらいくらこなたでも怒るだろう。
まったく、つかさは何故言わなかったんだ。それを言っていれば私が代わりになったのに。
みき「いのり、倉庫の鍵を持って行くの忘れてるわ、これだと掃除とかできないわね」
かがみ「それじゃ私が持っていくわ」
みき「それじゃ頼むわね」

 結局神社に行くことになったか。つかさが気になったから。こんなことなら最初からまつり姉さんの代わりを受けていればよかった。
後味が悪すぎる。そんな後悔をしながら私は神社に向かった。

 神社の境内にある倉庫に向かった。しかし倉庫は既に鍵が開いていた。きっといのり姉さんが合鍵を持っていたのだろう。
周りをみるとゴミなどはなく綺麗になっていた。もう仕事は終わってしまったようだ。私も用無しかな。家に戻ろうとした時だった。
いのり姉さんとつかさが倉庫に向かってきた。二人は私に気付いていない。このまま帰るのも味気ないので二人を驚かすか。
私はそっと倉庫の陰に隠れた。二人は倉庫に着いた。掃除道具を片付けている。さてとそろそろいいかな。私は飛び出そうとした。
いのり「つかさ、なぜまつりの代わりなんかしたの」
私の動きが止まった。つかさの返事が聞きたかった。
つかさ「まつりお姉ちゃんとお姉ちゃんが行く行かないで言い合っていたから……」
いのり「またあの二人は……まったく何時からあんなに仲が悪くなったのか」
呆れたように言うい姿はお母さんと同じだ。
つかさ「小さい頃はみんな仲良しだったよね」
いのり「でもつかさはかがみと仲がいいいじゃない、喧嘩してるところなんか見たこと無い」
つかさ「そうだね、双子だから……かな、お姉ちゃんが他人だったら友達にもなれそうにないけどね、性格も違うし……私なんか……相手にされそうにないよ」
私とつかさが他人だったら。クラスが同じでも近所同士だったとしても会話を交わすこともないかもしれない。
いのり「それはどうかしらね、私は二人は他人でも何かしら知り合っていると思う」
つかさ「そうかな……そうならいいね」
いのり「さてと、片付いた事だし、少し休んでから帰るか、つかさとこうして話すのも久しぶりだしね……そういえばつかさは巫女の手伝いを私達姉妹の中で
     一番やってるわね、もしかして巫女の仕事が好きなの?」
つかさ「別に好きとか嫌いとかじゃないよ……どんな御守りがいいかなって悩んでいる人に助言したりするのは結構面白いよ、それに……」
いのり「それに?」
つかさは顔を上げた。私といのり姉さんはつかさの目線を追った。そこには神社にお参りをしている人がいた。
つかさ「お参りをしている人を見て思うの、この人は何を祈っているのかなって、いろいろ想像していると楽しくなるんだよ」
いのり「……つかさはロマンティストだね、まつりやかがみにも少しは見習ってもらいたいものだ」
つかさ「いのりお姉ちゃん、これは小さい時、まつりお姉ちゃんから教わったんだよ」
いのり「え?、まさか、まつりがそんな事を……信じられない……」
私も驚いた。まつり姉さんがそんな事をつかさに教えたなんて。
つかさ「その時のまつりお姉ちゃん、覚えているよ、きっと一生忘れないと思う」
58 :まつり姉さん  3 [saga]:2010/08/01(日) 00:30:11.80 ID:NoWwNjQ0

 目を閉じて当時を思い出しているようだ。これからの生き方を変えるような事をまつり姉さんはつかさに教えた。そしてつかさが静かで大人しいのは
まつり姉さんの影響なのか。私はまつり姉さんの全てを知っているわけじゃなかったのか。そしてつかさの事も……。それで私はつかさに何をした?。
私はつかさの生き方を左右するような事を教えたか。いや、何も教えていない。私はつかさを一番理解していると思っていた……そう、思っていただけなのか。
双子と言う特別な境遇にただ乗っていただけだったのかもしれない。いのり姉さんとつかさは時間を忘れて話しに夢中になっていた。
私の入る余地はなさそうだ。今、私が出て行ったら折角の二人の会話が壊れてしまう。私は倉庫の陰からそのまま家に帰った。
みき「かがみ、遅かったわね、いのり達と会えなかった?」
かがみ「そんな所……」
鍵をお母さんに返すとそのまま自分の部屋に入った。

 暫くするといのり姉さん達も帰ってきた。お昼少し前か。そういえばつかさに聞きたい事があったんだった。もう遅いかもしれないけど
話くらいは聞いておかないと、今後のつかさとこなたの仲にも関係するかもしれない。私はつかさの部屋に向かい扉をノックした。
かがみ「入るわよ」
つかさの部屋に入った。そういえば私がつかさの部屋に入るのはあまりなかった。いつもつかさの方から私の部屋に来るからかもしれない。
つかさ「お姉ちゃん、どうしたの?」
遠まわしに言ってもしょうがないか。はっきりした答えを聞きたいからストレートに聞くか。
かがみ「つかさ、朝、こなたと会う約束をしてなかったのか」
つかさ「えっ、どうして……約束はしてないよ、何でそんな事を聞くの?」
つかさの顔が曇った。約束はしてない。それなら他に何かあるのか。
かがみ「お母さんから聞いたわよ、朝起こして欲しいって言ってたじゃない、こなたに会いに行くんじゃなかったの」
つかさ「……うん……そのつもりだった」
煮え切らない返事。つもりってどうゆうことだ。他人行儀だな。つかさとこなたはそんな仲じゃないだろうに。
かがみ「何よ、こなたと何かあったの、話なさいよ」
つかさは口をつぐんだ。そして目が潤んできた。これは普通じゃない。
かがみ「どうしたの、黙ってちゃ分らないわよ、まさか喧嘩でもしたんじゃないでしょうね」
つかさはとうとう大粒の涙を流しだした。当てずっぽうに言った事が図星になってしまったようだ。つかさとこなたが喧嘩だって。想像もつかない。
あの二人が喧嘩なんて。
かがみ「泣いてもしょうがないでしょう、してしまった事はどうにもならないわよ」
覚悟を決めたのか、諦めたのかやっと話し始めた。
つかさ「この前、こなちゃんの家に遊びにいったよね」
かがみ「先週の日曜日ね、私も行ったわね」
つかさ「その時……こなちゃんの大事にしていた人形の首を折っちゃった」
かがみ「人形ってフィギアの事ね、折ったって、つかさあの時そんなの言ってなかったじゃない、まさか黙っていたんじゃないでしょうね」
つかさは頷いた。
かがみ「それでバレたって?」
つかさは頷いた。
つかさ「こなちゃん、怒ってた……何度も謝ってけど許してくれなかった……それでね、私が『人が通る所に置くからだよ』って言ったら
     余計怒っちゃって、それから口をきいてくれなくなっちゃった」
59 :まつり姉さん  4 [saga]:2010/08/01(日) 00:31:29.62 ID:NoWwNjQ0
最悪のパターンだ。
かがみ「それはつかさが悪い、折ってしまったその時に謝ればそれで終わったわよ、黙ってしまったら……」
これ以上言ってもしょうがない。それにつかさの涙はそれを充分に後悔している。問題はその気持ちをどうやってこなたに伝えるか。
つかさ「昨日、ゆきちゃんと壊した人形を探しに秋葉原に……それで見つけたんだ、同じ人形」
つかさの机の上に箱詰めされたフィギアが置いてあった。みゆきがそんな事をしてくれたのか。同じクラスだからつかさとこなたの様子がおかしいのはすぐ分かる。
かがみ「それを私にこなたの家に行くつもりだったのか」
つかさは頷いた。
かがみ「フィギアとかは趣味の世界、同じ物を弁償してもそれで解決しないわよ」
つかさ「それは……ゆきちゃんも同じこと言ってた」
かがみ「まだお昼、つかさ、今すぐこなたの家に行って来なさい、それで謝ればいい、後のことはこなたが決める」
つかさ「でも、話を聞いてくれなかったら……」
かがみ「その時は私が殴ってでも連れてきてつかさの前に立たすから」
つかさ「お姉ちゃん、私、初めてこなちゃんと喧嘩した……もうダメかも」
つかさは動こうとしなかった。
かがみ「たった一回の喧嘩で友達が終わったら私なんてもう何回もこなたと絶交してるわよ」
つかさ「お姉ちゃんは喧嘩したことあるの?」
かがみ「何度もあるわよ」
つかさ「……どうやって仲直りしたの」
そう聞かれて直ぐに答えられなかった。何か特別なことをしたわけじゃない。しばらく考えた。
かがみ「何でかな、気が付くと普段どおりに戻ってる」
つかさ「……すごいね」
かがみ「喧嘩したことを忘れるからかもね……忘れちゃいなさい、それで楽しかった事だけを思い出せばいいのよ、それでもダメならどうしようもないわね、
     そこまで縁だったことよ」
つかさは黙っていた。
つかさ「……私、こなちゃんの所に行ってくる、お姉ちゃん、ありがとう」
かがみ「お礼は仲直りしてからよ」
つかさは机のフィギアをバックの中にいれて、飛び出すように家を出て行った。
60 :まつり姉さん  5 [saga]:2010/08/01(日) 00:32:26.02 ID:NoWwNjQ0

 つかさの部屋を出た私はそのまま台所に向かった。あとはもう祈るしかない。
みき「さっきつかさが出て行ったけど、もうすぐお昼なのに」
かがみ「つかさはこなたの所に行ったわ、お昼は家では食べないって」
みき「そう、また急に……」
お母さんはそのまま食事の支度をした。
まつり「あー、お仲空いた、お昼はまだ?」
まつり姉さんが台所に来た、私と目が合った。私も今朝のもやもやを消さなければならない。
かがみ「まつり姉さん、今朝は私も頑固になりすぎた、ごめん……」
まつり「ん……何の話、何が頑固なの?」
かがみ「……今朝、喧嘩したじゃない、巫女の手伝いの話よ」
まつり「あ、ああ、何だそんな事もう忘れたよ、もう終わったこと、気にしなくていいよ」
笑顔で私に話しかけた。私も笑顔で返す。私とまつり姉さんの喧嘩は終わってしまった。その時気が付いた。私もまつり姉さんから教えてもらっていた事を。

みき「お昼にしましょう」
皆が席に着いた。食事の前に私はつかさの為に祈ってあげた。
まつり「食事の前に祈りなんかしちゃって、普段しないくせに」
かがみ「いいじゃない、たまにはそんな気分になる時だってあるわよ」
まつり「……何を祈ってたの、当ててあげようか、『私にも彼氏ができますように』 でしょ?」
かがみ「そんなんじゃないわよ」
いのり「つかさが泉さんと仲直りができるように、でしょ?」
かがみ「なんで、知ってたの?」
いのり「神社の倉庫の前で話してくれた、泉さんの事ならかがみに聞きなさいって振っちゃったけどね」
まつり「それで正解、いのり姉さんが出ると余計ややこしくなるんだから」
いのり「何、その言い方、引っかかるな」
みき「いいから早くお昼を食べなさい」

 なんの変わりない普段の光景。しかし今ほどまつり姉さんを『姉』として見たことはない。私達双子はこの姉にいつのまにか影響され、
教えられてきた。雑談をしたり。遊んだり。時には喧嘩もしたりした。たった数年先に生まれてきただけなのに……。
きっとこれからも私達は教えられるだろう。良いことも、悪いことも。

 夕方、笑顔で帰ってきたつかさの姿があった。


61 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/01(日) 00:33:33.16 ID:NoWwNjQ0
以上です。
一人のキャラを題材にしたのは初めてです。
62 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/01(日) 01:05:30.25 ID:lrILLkI0
>>61
乙です。

話自体はいいんだけど、句読点の打ち方がおかしくてちと読みづらいかも。
いや、俺もあんまり人のこと言えた義理じゃないですけど。
あと、流石にだいぶ年下だし、いのりが泉さんとは呼ばないかな…と、思ったり。

63 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/01(日) 01:19:48.24 ID:lrILLkI0
書き忘れてましたが、みきさんは作中でこたなちゃんと呼んでましたね。
64 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/01(日) 01:45:07.22 ID:lrILLkI0
こたなって誰よ…こなたちゃんでした。
65 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/01(日) 07:31:05.08 ID:auylHgSO
>>44
糞ワロタww
66 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/01(日) 08:29:47.36 ID:NoWwNjQ0
>>62
指摘どうもです。句読点のつけ方はまともに国語を勉強していないから。お許しを。
いのりのこなた呼称はまとめサイトの呼称リストで探したんだけど載ってなかった。
歳は離れているけど高校生なので泉さんとしたのだが、作中にこなたちゃんと言っているなら訂正すべきかも。
67 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/01(日) 08:40:36.24 ID:7CBn/MEo
乙でした
姉妹なんだし、なんだかんだいって影響は与え合ってるんでしょうね
上から下にだけじゃなくて
68 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/01(日) 09:36:13.59 ID:NoWwNjQ0
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ここまでまとめた

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69 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/02(月) 22:19:25.86 ID:XkaNlIAO
>>68
まとめ乙
70 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/03(火) 19:33:54.24 ID:lcZPUzk0
投下します。
71 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/03(火) 19:34:30.27 ID:lcZPUzk0
暴風雨の夜

 大型で猛烈な台風8号は、現在、○○沖にあり、北上を続けています。今晩には関東地方に上陸し……。

 ラジオから流れるのは、ずっと台風のニュースばかりだ。気象庁発足以来最大規模の暴風だとか、そんな言葉が繰り返されている。関東地方においては今晩を耐えしのげば暴風圏は脱するといった情報も伝えられていた。
 既に、関東地方のほぼ全域に避難指示が発せられている。
 それにしたがって、まつり、かがみ、つかさは、いのりの娘とともに、近くの小学校の体育館に避難していた。
「おぎゃー、おぎゃー」
 かがみに抱かれたいのりの娘が泣き出した。
「なんで、私にはなつかないのよ、この子は」
「本能でかがみの凶暴さを悟ってんじゃないの?」
 まつりがちゃかす。
 つかさがかがみから抱き取ると、いのりの娘はとたんに泣き止んだ。
 かがみがむすっとする。
 そこに、ただおといのりの婿さんがやってきた。
「はーい。お父さんですよ」
 つかさがそう言って、婿さんに娘を手渡す。いのりの娘は父親に抱かれてますますご機嫌だった。
「あれ? お母さんと姉さんは?」
 まつりがそう問うと、
「母さんといのりは、神社に残ったよ。今晩はずっと安全祈願をするってね」
 ただおがそう答えた。
「大丈夫なの?」
 かがみが心配そうにそういう。
「大丈夫だよ。うちの神社は丈夫だから」


 神社では、みきといのりが安全祈願の儀式の準備をしていた。二人とも神職の装束に身を包んでいる。
 準備といってもたいしたものではないが。
 そこに、市役所の職員が訪れた。みきが応対する。
「何か御用ですか?」
「まあ、一応、避難指示が出てますので、建前上は住民には避難を促さなければならないというわけでして……」
「御苦労様です」
「あと、市長から非公式に伝言です。くれぐれもよろしくお願いしますと」
「どれぐらい御期待にそえるかは分かりませんが、できる限りことはしてみます」
「私からもよろしくお願いします」
 職員はそういって頭を下げると、去っていった。
「今の人って……?」
 いのりが疑問形で言葉を切った。
「この地域じゃ古い家系の出身よ。市長さんもね。代々うちの氏子さんだし。うちの神社の伝説はよく知ってるのよ」
「なるほどね」
72 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/03(火) 19:35:06.82 ID:lcZPUzk0
 夜、本格的に暴風が吹き荒れ始めたころ、みきといのりは、神社の奥殿で儀式を始めた。
 二人で朗々と祝詞を読み上げる。
 その一字一句が一種の言霊である。
 絶大な力をもった御先祖様は、その言霊で台風をも鎮めたといわれているが、現代のみきといのりにはそこまでの力はない。
 それでも、気象庁発足以来最大規模の暴風を単なる強風にレベルダウンさせるだけでも、被害は大幅に抑えられる。


 夜中、小学校の体育館。
 まつり、かがみ、つかさと、いのりの娘は既に寝入っていた。
 ただおと婿さんは、まだ起きていた。曲がりなりにも彼らも神職だ。みきやいのりのような力はなくても、祈ることはできる。だから、二人は静かに祈りをささげていた。
 ふと気づくと、ごうごう唸りを上げていた風の音量が徐々に下がっている。
「あうあう」
 いのりの娘が目を覚まして、小さな両手を動かしていた。
「この子には『力』が感じられるんでしょうかね?」
「そうだろうね」
 この娘は、代々女系でつらなってきた柊家の後継者だ。素質はあるのだろう。


 翌朝。
 まつり、かがみ、つかさが目を覚ますと、既にただおはいなかった。
「お父さんは?」
 まつりの問いに婿さんが答える。
「先に帰ったよ」
 あれほど吹き荒れていた風の音も、今はもうない。気象庁の予報どおり、一晩で通り過ぎようだ。
 持参してきたおにぎりを食べた(いのりの娘は哺乳瓶でミルクである)あと、みんなで家路についた。
 昨晩の暴風雨が嘘みたいに、台風一過の晴天だった。


 ただおが神社の奥殿に入ると、二人が倒れていた。
 二人とも、力を使い果たして熟睡している。
 ただおは、二人を一人ずつ背負って家に運んでベッドに寝かせたあと、神社の点検を始めた。
 神社本体には損傷はなく、祭事に使う道具など(文化財に指定されているものもある)も無事だった。
 境内には小枝やら葉っぱやら、どっかから飛んできたゴミやらが散乱していたが、折れている木はない。鳥居も無事だ。
 そこに、まつりたちが帰ってきて、境内の清掃にとりかかった。

73 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/03(火) 19:35:47.33 ID:lcZPUzk0
「まーま」
 その声にいのりが目を覚ますと、視界に娘の姿が入ってきた。
 夫が隣に寝かせておいてくれたのだろう。その娘が目を覚まして、両手をいのりに向けて伸ばしていた。
「おはよう。いい子にしてた?」
「まー」
 時計を見るともう昼に近い。
 いのりは娘を抱き上げた。
「一緒にシャワーしましょうね」
 二人でシャワーを終えると、母のみきは既に昼食の準備を終えていた。みきはいのりより先に起きてシャワーを浴び終えている。
 食卓にまつりたちがわらわらと戻ってきた。
 テレビを見ながらみんなで昼食だ。
 テレビ画面には、各地の被害状況が映し出されていた。
 関東地方のほぼ全域で電柱が倒れまくり、街路樹の多くがへし折れていた。住宅街でも窓ガラスが割れたという被害は多いようだ。車が舞い上がって家に突き刺さったという信じがたい被害も報道されている。
 交通機関も復旧してないところが多く、まつりたちの大学や専門学校も今日は休みだった。
 それに比べると市内の被害は驚くほど少ない。折れてる電柱も街路樹もなく、住宅街にも被害らしい被害はない。
「うちの近くは被害少ないね」
 まつりがそういうと、
「お母さんといのりお姉ちゃんが一晩中お祈りしてたおかげかな?」
 つかさがそんなことをいった。
 それに、かがみが突っ込む。
「たまたま台風の目にあたったとかなんじゃないの?」
 みきといのりは、それには何も言及しなかった。ただおと婿さんもそれにならっている。


 一般市民の多くは、自分のところだけ被害が少ないことについては、運がよかった程度にしか思わなかった。
 首をかしげたのは、被害状況を集計している県のお役人と気象観測情報を集計している気象庁のお役人ぐらいだった。
 真相を知る者、真相を悟った者は口をつぐみ、何も語らなかった。
 柊家に代々伝わる「力」のことは、現代においては伝説あるいは迷信として片付けてしまうべきものであり、公にされてはならないものだから。
74 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/03(火) 19:36:56.64 ID:lcZPUzk0
以上です。
75 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/03(火) 20:07:45.57 ID:mlTA7cU0
えがったよ〜、神道のことだからついつい一気に読んじゃたよお〜
こういった見えない不思議な力だと、つかさが注目されがちだけど
みきさんといのりさんをクローズアップされてるのも新鮮で良いねえ〜
赤ちゃんの描写で如何に穏やかなのかが表現されてるのもえがったよ〜
また読みたいねえ〜、乙華麗様
76 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/03(火) 20:43:07.16 ID:aFLy/H.o
乙〜
こういう災害を避けられると知られたら、大騒ぎになりそうだよね。
しかし、他のところで「信じがたい被害」も出てるとなると、起きるはずだった被害を
他のところに押し付けただけなんじゃなかろうかと邪推してしまう。
そんなことを良しとする人たちではないとは思っているけれど。
77 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/03(火) 23:03:42.76 ID:wnVxCPA0
なんかこういう話読んでいると
超常現象って隠されているだけで
実際には結構あるんじゃないかと思えてくるな
78 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/04(水) 20:02:50.68 ID:bBaSVUE0
>>74
まとめサイトのタイトルは『暴風雨の夜』でいいのかな。土日でまとめるつもりです。
返事がなければこのタイトルを採用します。
79 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/04(水) 20:51:27.68 ID:C8etcqY0
ww
80 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/04(水) 21:19:48.03 ID:Elq2GMSO
まつり姉さん読んでたらリメイク?を書きたくなった。
書いてみていいですか?
81 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/04(水) 21:23:32.28 ID:AZ9zhR20
良いと思うよ〜(無責任)
カキコてすと
82 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/04(水) 21:27:10.67 ID:AZ9zhR20
ここって2chじゃなかったのか、初めて知った
これで規制を気にせず感想文がカキコ出来るよ〜
83 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/04(水) 23:43:17.96 ID:bBaSVUE0
>>80
『まつり姉さん』の作者です。どうぞ書いてください。ストーリを構成していくのは得意だけど、私の文章はお世辞でもうまいとは言えないので……

細かい描写とか、心理とかそうゆうのが凄く苦手。部門に分かれてからコンクールはストーリ以外は全滅。
大賞になった人のような表現力が羨ましい。>>74の『暴風雨の夜』も凄いと思った。
同じストーリで、しかも自分の作品でリメイクしてくれるなら嬉しい限りです。
84 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/05(木) 00:06:47.55 ID:FD/0/.SO
>>83
どうも。
では書いてみますね。
85 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/05(木) 00:46:51.41 ID:4.ayrw60
>>78

タイトルはそれでいいですよ。
よろしくお願いします。
86 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/05(木) 21:12:45.10 ID:y.V5Gjk0
リメイクといえば作者入れ替え企画を思い出す
87 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/05(木) 23:28:30.35 ID:m3Mp66SO
結局、一回しかやらなかったあれか
88 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/06(金) 19:43:11.46 ID:kNBbEoAO
本人の承諾無しに勝手にはやれんだろ
89 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/06(金) 20:17:51.02 ID:QKXysO60
つかさ「そうだよね、勝手にやっちゃダメだよね。
でもお兄ちゃん珍しくカッコイイこと言うね」
90 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/06(金) 21:06:49.90 ID:j3m3IK60
入れ替え企画を盛んにするなら作者別の作品リストをまとめに作成すればいいと思う。

作者別の作品リストの作成の問題点。
@今居る人の作品しか作成できない。
A他人の作品を自分が作ったと主張してしまう。
B作品数が膨大で編集が大変。
くらいかな?。

遅すぎた提案かもしれない。

91 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/06(金) 22:22:56.01 ID:wQINIOk0
ここにあるのって権利関係どうなってるの?
92 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/06(金) 22:24:45.94 ID:wQINIOk0
って管理人に無償で譲渡か すまん
93 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/06(金) 23:15:53.50 ID:ZFhsQ1Yo
もともと匿名性というか、自己主張控えめがこのスレの特徴だからなぁ
94 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/06(金) 23:50:36.83 ID:j3m3IK60
権利どうのこうのは、万が一まとめサイトの作品が漫画に採用されたり、本になったりした時くらいだ。
あまり考えなくていいかもね。
95 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/07(土) 08:00:59.87 ID:sxnXjG.0
とすると本人の承諾無しに
勝手に作者入れ替えができない理由は?
96 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/07(土) 08:24:32.32 ID:GB2veyI0
感情的な問題だろうね。その辺りを解消するために承諾を得る。それが権利と言う物かもしれないけど。
97 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/07(土) 08:32:32.16 ID:X4cYUkUo
法律な権利の問題じゃないわな
98 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/07(土) 09:08:36.64 ID:sxnXjG.0
匿名掲示板に上げてる以上そういうの投げ捨ててるかと思ってたけど
案外そうじゃないのな
99 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/07(土) 09:18:30.76 ID:X4cYUkUo
単純に、やってくれーって人もいれば嫌って人もいるってだけ
まぁ、マナーレベルの話だな
100 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/07(土) 14:38:48.33 ID:L0QO2060
いくら上手く書けてても勝手に「自分なりに書いてみましたー」とか言われても嫌だしな
101 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/07(土) 15:08:28.04 ID:.PkUu820
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       i !    ! /  {::::::::::::::::}            {::::::::::::::::}  ヽ .|    .l l
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::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::このスレはアナちゃんに監視されています:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
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102 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/08(日) 00:10:40.73 ID:AuHZhxI0
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ここまでまとめた

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103 :とある日のまつり姉さん [saga]:2010/08/08(日) 14:34:22.80 ID:SzRBGNg0
>>102
乙です。

では、「まつり姉さん」のリメイク版の投下行きます。
ちょっと変えるだけのつもりが、暴走癖がでてしまい全然違う作品になってしまった気が…。
104 :とある日のまつり姉さん [saga]:2010/08/08(日) 14:35:09.88 ID:SzRBGNg0
「かがみー。今日の巫女の手伝い、代わってくれないかなー?」
 日曜日の早朝。わたしの部屋にきたまつり姉さんが、突然わたしにそんなことを頼み込んできた。
「先週、わたしがやったじゃない…なんでまたわたしがやらなきゃいけないのよ」
 今日は特に用事があるわけじゃない。でも、まつり姉さんの頼みごとはなんか引き受けづらい。
「いやー、大学のレポートが遅れちゃって…頼む!この通り!」
 両手を合わせてわたしを拝み倒すまつり姉さん。嘘は言ってないみたいだし、本当に切羽詰っているなら代わってもいいかな、と思う。
 でも、どうしてこういう状況になる前にしっかりやっておかなかったのか…そう思うと、やっぱり身勝手なお願いだと思い直した。
「レポートなら、手伝いが終わってからでもできるでしょ?」
「それが出来るなら頼みにこないよー…」
 わたしの言い分に、ばつが悪そうに頭をかきながらまつり姉さんはそう答えた。どうやら相当溜め込んでたらしい。
 不快感が自分の顔に出てるのがわかる。こりゃ、またやっちゃうな。
「そーだ!今度美味しいスィーツ奢ってあげるよ!」
 名案だとばかりに嬉しそうに言うまつり姉さん。
「…お生憎様。今ダイエット中よ」
 冷たく突き放すようにわたしがそう言うと、まつり姉さんの顔がムッとなる。
「あ、じゃあレポートの方をかがみが代わりに…」
「それ、正気で言ってる?」
 我ながら酷い言い方だと思う。
「…なによ、人が下手に出てたら…」
 さすがにカチンときたのか、まつり姉さんの声色が変わる。ホント、なんでいつもこうなるんだろうか。
「まつりー!時間よー!早くきなさいよー!」
 階下からいのり姉さんの声が聞こえた。それを聴いたまつり姉さんの動きがピタリと止まる。
 そして、諦めたようにわたしの部屋から出て行った。いのり姉さんまで怒らせるのは、得策ではないと判断したんだろう。
「…まつりお姉ちゃん。わたしが代わろうか?」
 まつり姉さんが部屋から出た直後に、外からつかさの声が聞こえた。あの子が、日曜のこんな時間に起きてるなんて珍しい。
「マジで!?じゃ、つかさ任せた!」
 パタパタと小走りで去っていくまつり姉さんの足音。わたしはため息をついてベッドから降り、部屋のドアを開けた。
「つかさ、あんな頼み引き受けなくていいわよ…ってか聞いてたの?」
 そして、廊下に立っているつかさにそう言った。
「え、あ、その…なんかまた喧嘩になりそうかなって…」
 止めに入る機会でも伺ってたんだろうか。でも、まつり姉さんとの喧嘩を、つかさにとめられたことは無かった気がする。
「で、なんで引き受けたの?」
 わたしがそう聞くと、怒られるとでも思ったのかつかさがばつの悪そうな顔をした。
「まつりお姉ちゃん、大変そうだったから…」
「大変なのは、姉さんの自業自得よ。普段からちゃんとしてれば、こんなことならないんだからね」
 少々強い口調でわたしがそう言うと、つかさはうつむいた。
「そ、そうだよね…それは…そうなんだけど…」
 しまった。なんで何も悪くないつかさに、わたしは説教じみたことしてるんだ。
「…でも…えっと…あ、も、もう行かなきゃ」
 何か言いかけたつかさが、急に顔を上げて小走りに階段に向かう。
「え?ちょ、つかさ!」
 何を言おうとしたのか気になって呼び止めようとしたが、つかさはそのまま階段を下りて行ってしまった。
 わたしはなんとなく煮え切らない気分のまま、朝食をとろうと階段に向かった。



105 :とある日のまつり姉さん [saga]:2010/08/08(日) 14:36:21.10 ID:SzRBGNg0
「おはよう、お母さん」
「おはよう、かがみ」
 台所に居たお母さんに挨拶をして、わたしはテーブルに着いた。テーブルの上には二人分の朝御飯。わたしと、もう一つはつかさの分だろうか。
「…つかさ、まだ朝御飯食べてなかったんだ」
 わたしがそう呟くと、お母さんがこっちを見て首をかしげた。
「そう言えばまだ来てないわね。どうしたのかしら?」
 お母さんの言葉に、わたしはため息をついた。
「いのり姉さんの手伝いに行ったわ」
「あら、今日はまつりじゃなかったかしら?」
「そうなんだけど…まつり姉さんが代わってくれってわたしのとこに来て、それで断ったら…」
「つかさにお鉢が回っちゃった?」
 わたしの言葉を遮るように、お母さんがそう言った。結果的にはそうなったけど、何かそれは違う気がする。
「…つかさが自分から代わるって言ったのよ。そんな必要ないのに。大体、まつり姉さんがちゃんとしてたらこんなことに…」
「はいはい。お小言はそれくらいにして、早く食べちゃいなさいね」
 またしてもお母さんに話を遮られる。確かにお母さんにするような話じゃないんだけど…。
 なんか今日はうまくいかない。わたしは少しイラついた気分で朝食のパンをかじった。


「そういえば、今日はこなたちゃんのところに行くんでしょ?…つかさは神社の手伝いしてて大丈夫なのかしら?」
 わたしが朝食を食べ終わるころに、お母さんが神社の方を見ながらそう聞いてきた。
「こなた?」
 わたしが思わずそう聞きかえすと、お母さんは不思議そうに首をかしげた。
「あら、違うの?つかさがこなたちゃんの家に行くから起こして欲しいって言ってたから、てっきりかがみも行くんだって思ってたんだけど…」
「ううん。今初めて聞いたよ」
 お母さんにそう答えてから、わたしは考え込んでしまった。
 つかさが早くに起きていた理由は分かった。でも、なんで手伝いを代わったかという、新しい疑問が湧いてくる。
 つかさがこんな時間から、約束もせずにふらっとこなたの家に遊びにいくとは考え難い。かと言って、約束をすっぽかして家の手伝いをするとも考えられない。
 そもそもこなたと遊ぶ約束するなら、わたしに何も言わな…いや、こういうのはつかさのプライバシーだし、突っ込むのは野暮だろう。けっしてハブられたのが悔しいとかそう言うことでは無いはず…いやいや、そう言うことじゃなくて、えーっと。
 と、考え込んでるわたしの前にチャリンと音を立てて何かが置かれた。見てみるとそこにあったのは金属製の鍵。わたしが顔をあげると、お母さんが少し困った顔をしていた。
「いのりね、倉庫の鍵を忘れていったみたいなの…」
「わたし、いってくる」
 お母さんがすべて言い終える前に、わたしは鍵を掴んで玄関に向かっていた。



106 :とある日のまつり姉さん [saga]:2010/08/08(日) 14:39:53.78 ID:SzRBGNg0
「…やられた」
 わたしは倉庫の前で、ガックリと肩を落としてそう呟いた。
 目の前には扉の開いた倉庫。手に持った鍵を良く見ると、お父さんの達筆な字で『予備』と書かれたタグが付いていた。
 つかさのところに行きやすいようにって、お母さんの配慮なんだろうけど、こんな回りくどいこと…しないと、来なかったんだろうなあ、わたしは。
『そんなに気になるなら、直接つかさに聞いてみたら?』
『やめとく。つかさだって子供じゃないんだから、いちいちわたしが色々言わなくても…』
 とかいう会話になってたんだろうな…我ながら難儀な性格だ。こんなんだからこなたにツンデレだのなんだの言われるんだろう。
「…思ったより早く終わったね」
「そうね、お昼過ぎると思ってたんだけど…」
 少し離れたところから聞こえてきた声に、わたしは思わず隠れてしまった。
 …えーっと、なんで隠れるのわたし。しかも倉庫の中に。二人の話し声が扉のすぐ前まで来た。今入ってこられたら、すごく間抜けなんだけど。
「…そういえば、つかさ。どうしてまつりと代わったの?」
 聞こえてきたいのり姉さんの声に、わたしは自分の状況も考えずに扉に身体を寄せて聞き耳を立てた。
「えーっと…かがみお姉ちゃんとまつりお姉ちゃんが喧嘩になりそうだったから…あのまま終わっちゃったら、二人とも気まずいだろうし…」
 お人好しにも程がある。思わず言いそうになった言葉を、わたしは喉の奥に押し込めた。わたしたちの事なんか何時もの事なんだから、気にせずにこなたの家に遊びに行けばよかったのに。
「またあの二人…まつりもそうなるの分かりそうなものなのにね。なんでかがみに頼みに行くんだろ」
 いのり姉さんがため息混じりにそう言った。
「きっと、まつりお姉ちゃんもかがみお姉ちゃんのこと頼りにしてるからだよ」
 にこやかな表情が想像できそうな声でそういうつかさ。いやー、嫌がらせだと思うよわたしは。
「そんなものかしらねえ…つかさがかがみを頼りにするってのなら分かるんだけど…そういえば、つかさとかがみは喧嘩しないわね。少なくともわたしは見たこと無いんだけど」
 言われてみれば、わたしもつかさと喧嘩した覚えがない。
「お、怒られるのはしょっちゅうあるけど…」
 いや、つかさ。そんなことは言わなくていいから。
「まあ、つかさとかがみじゃ喧嘩にならないか…っていうか、つかさは誰とも喧嘩にならない気がするわね」
 わたしもそう思う。怒られてキレたりとかしないし、ましてやつかさから喧嘩売るなんて天地が引っくり返ってもないだろう。
「わたし、臆病だから…そう言うこと怖くて出来ないよ」
「そう?つかさって結構知らない人にも話しかけたりするじゃない」
「そ、そんなに誰でもってわけじゃないよー」
 うん。つかさは引っ込み思案なところがあって、誰にでも気軽に話しかけたりするわけじゃない。ただ、相手が困ってるとわかると、自分の状況考えずに助けようとするのよね…今日みたいに。
「…初めて巫女の手伝いをしたときね、わたしまつりお姉ちゃんとだったんだ」
 唐突につかさがそんなことを話し始めた。そうだったっけ?と記憶をたどってみたが、いまいち思い出せない。
「かがみとじゃなかったんだ」
 いのり姉さんが意外そうな声を出す。双子だからか、つかさはなにかとわたしと組まされることが多いからね。
「うん…それでね、御守り売る手伝いしてたんだけど、わたしずっと怖がってたんだ。お祈りしてる人がちょっと怖そうな人で、こっち来たらどうしようって」
 ああ、それはわかる気がする…ってか、つかさでなくてもちょっと身を引いてしまうと思う。
「そしたら、隣に居たまつりお姉ちゃんが言ったんだ『あれは絶対カツラよ。あの人、髪の毛が生えますようにってお祈りしてるわ』…って」
 アホか。
「アホか」
 うわ、いのり姉さんと突っ込みかぶった。
「それでね、その人結局御守りは買いにこなかったんだけど…休憩時間にお散歩してたら、外れの方にその人がいたんだ…なんだか凄く悩んでるっていうか、困ってるていうか…そんな感じで」
 まったく聞いたこと無い話に、わたしはじっと聞き耳を立てていた。いのり姉さんも同じらしく、相槌が聞こえなくなっていた。
「どうしようか迷ってたら、まつりお姉ちゃんの言葉を思い出したの。ホントにそうなら、そう怖い人じゃないのかなって思えてきて…何が出来るかわからないけど、とにかく話しかけてみようって思って…その…『髪の毛無くても大丈夫ですよ』…って、言っちゃって…」
 ………わ、笑うな。笑うな私…ここで笑ったら隠れてるのばれるでしょ…ちなみにいのり姉さんは遠慮なく爆笑してる。
107 :とある日のまつり姉さん [saga]:2010/08/08(日) 14:41:11.33 ID:SzRBGNg0
「怒られたでしょ、それ…」
 ひとしきり笑ったいのり姉さんが、つかさにそう聞いた。まあ、見知らぬ女の子にいきなり頭髪の心配されたら、いい気分にはならないでしょうね。
「ううん…その人、しばらくポカンとした後ね、凄く笑ったよ。今のいのりお姉ちゃんみたいに」
 なんだか意外な反応だ。
「それで、しばらくお話ししたんだ。その人、いろんなこと知ってて、凄く楽しかった…それで、別れ際にね『楽になったよ、ありがとう』って言ってくれて…」
 ああ、そっか…話すだけで楽になることもある。相手がつかさならなおさらだ。結構聞き上手なのよね、この子。
「…まつりお姉ちゃんの所に戻って、そのこと話したら言われたんだ『よかったね』って…わたし、思ったんだ。まつりお姉ちゃんはもしかしてあの人がなにか悩んでるってわかってて、話すきっかけになるようにあんな事言ったんじゃないかなって」
「それは…流石に考えすぎじゃないかしら」
 つかさの言葉に答えるいのり姉さんの、苦笑する顔が目に浮かぶ。わたしもまつり姉さんがそこまで考えていったとは思えない…思えないけど、きっかけだったことには変わりない。
「そうかも知れないけど…でも、やっぱりわたしが少しでも人と話せるようになったのは、まつりお姉ちゃんのおかげだと思う。あの事が無かったら、わたしは今でもなんにも出来ないままだと思うから」
 心底嬉しそうに話すつかさ。そのつかさのお人好しの大元が、よりにもよってあのまつり姉さんだとは…。
「あの、まつりが…ねえ」
 いのり姉さんも少し信じられないようだ。
「…あ、あれ。わたし箒どこに置いたっけ…」
 少し話の余韻に浸ってると、つかさが急に慌てたような声を出した。
「どこって…もう、忘れてきたんでしょ。戻るわよ」
 呆れたような可笑しいような。いのり姉さんはそんな感じでそう言った。



 二人の声が遠ざかった後、わたしはこっそり倉庫を出て家に戻った。
 その途中、さっきのつかさの話を思い出していた。
 つかさのお人好しの原点。あの子の美点ともいえるそれを引き出したのが、あのまつり姉さんだということ。
 それがなんというか…悔しいというか…つかさのことは、なんでもわたしが一番だと思ってたのに。
 双子だから、近すぎるから、見えないことや伝わらないこともある…ということだろうか。
 まとまりそうに無い考えを色々とこね回しながら、わたしは家の玄関を潜った。


 家に入ったわたしは、お母さんに鍵を返しながら文句を言った後、自分の部屋に戻った。
 お昼までもうすぐと言ったところで、いのり姉さんとつかさの声が階下から聞こえてきた。結構時間かかったみたいだけど、つかさは箒をどこに忘れてきたのやら。
 ふと、わたしはつかさにこなたとの事を聞こうと唐突に思った。巫女の手伝いを代わったのは、わたしとまつり姉さんのためだとはわかったけど、こなたとの事はどうなったのか、なんとなく気になったのだ。
 わたしは椅子から立ち上がると、自分の部屋を出てつかさの部屋に向かった。


108 :とある日のまつり姉さん [saga]:2010/08/08(日) 14:42:31.07 ID:SzRBGNg0
「つかさ、入るわよ」
 軽くノックして、返事も待たずにドアを開けて部屋に入る。
 家族の中でもわたしとつかさの間柄だから許される行為で、この前まつり姉さんの部屋に入るときにやったら、『ノックの意味無いじゃない』って怒られたっけか…いや、今はそんなこと関係ないわね。
「お姉ちゃん。どうしたの?」
 ベッドの上に座っていたつかさが、軽く首をかしげながらそう聞いてきた。どこかに電話してたのかメールでも打ってたのか、手には携帯を握っている。
「えーっと、まあその…今日はごくろうさま。悪かったわね、巻き込んだみたいで…」
「ううん、大丈夫。わたしが出来ることってこんなくらいだし」
 わたしの言葉に、笑顔で答えるつかざ。うーん、改めて考えると、ほんと双子なのかと疑わしくなるくらいお人好しだ。
「でも、今日こなたの家に行くつもりだったんでしょ?お母さんがそう言ってたけど」
 わたしがそう言うと、つかさの表情が凍りついた。なんだろう、嫌な予感がする。
「…うん…その…つもりだったんだけど…」
 うつむきながら、歯切れ悪く答えるつかさ。これは絶対何かあった。
「…こなたと何かあったの?」
「ちょっと…えっと…」
 うつむいたまま呟くつかさ。相当言いにくいことらしい。わたしはつかさの座って、その顔を覗き込んだ。
「何があったの?言ってみて」
 わたしは少し強めの口調で聞いた。こういう時のつかさは押すに限る。何があったにせよ、わたしに何が出来るかにせよ、とにかく話を聞かないと、文字通り話にならない。
「…あの…先週、こなちゃんち行った時に…」
 先週…金曜日ね。こなたが見せたいものがあるからって、学校の帰りによったんだっけか。
「その時にね…こなちゃんの部屋にわたし一人になったでしょ?」
「うん。なんか見せたいものがおじさんの部屋にあるからって、こなたに連れ出されたのよね」
「…わたし、部屋にあったこなちゃんのお人形に手を引っ掛けちゃって、落としちゃって…首がとれて…」
 お人形って…フィギュアのことか。
「それで…わたし、元に戻してそのまま帰ってきちゃって…昨日、こなちゃんから電話があって…『つかさでしょ』って…」
 わたしはどういって言いか分からず、泣きそうなつかさの顔をただ見ていた。
「謝らなきゃいけないって思ったのに…思ったのに…わたし、『こなちゃんがあんなところに置いとくのが悪い』って言っちゃって…」
 最悪だ。なんというか、あまりにもつかさらしくない。
「こなちゃん凄く怒って…今日何とか謝ろうって思ってたんだけど…朝、お姉ちゃんたちの話し聞いたら、つい…」
 逃げた。そう言うことだったのか。もちろん、つかさがわたし達の喧嘩を止めたかったというのは嘘じゃないだろう。でも、それ以上にこなたから逃げたかったのだろう。
「どうして、最初に…フィギュアを落としたときに謝らなかったの?」
 わたしがそう聞くと、つかさは首を横に振った。
「怖かったの。こなちゃんがこういうのすごく大事にしてるって知ってたから…こなちゃん普段怒らないから、怒ったらどうなるんだろうって…もしかして、ばれたら友達じゃなくなるんじゃないかって…そう思ったら、謝れなくなって…隠さなきゃって思って…」
 これは、どうすべきなんだろうか。つかさが謝ったのに、こなたが意地を張って許さないってのならまだ対処のしようもある。わたしが間に入ってなんとかなだめれば良いだけだ。
 しかし、今回はつかさが全面的に悪い。フィギュアを落としたのが事故なのだろうけど、その後が悪すぎる。わたしが間に入れば余計にこじらせる可能性もある…いや、こなたとわたしの間柄を考えると、確実にこじれるだろう。
 とにかくなんとか助言だけでもしないと…と、焦るわたしの頭に、なぜかまつり姉さんの顔が浮かんだ。
「…つかさ、今からこなたのところに謝りに行きなさい」
 そして、わたしはつかさにそう言っていた。
「…え…でも…」
 つかさが顔を上げる。わたしの方を見たその顔は、酷く怯えた表情を見せていた。
「大丈夫、うまくいくから。わたしが保証するわ」
 そのつかさに、わたしは出来うる限り優しく話す。躊躇する気持ちはわかるけど、ここはなんとしても背中を押さなければならない…たぶん、それが最善だから。
「もしうまくいかなかったら…その時は、わたしの事殴っても良いから、ね」
 つかさはしばらく迷った後、恐る恐るうなずいた。


 つかさの部屋を出て自分の部屋に戻ると、わたしは携帯を開いてこなたにメールを打った。
「今からつかさが謝りに行くわよ…っと」
 送信し、携帯を机に置こうとすると、着信音が鳴った。携帯を開いてみるとこなたからの返信だった。その過去最速の早さに、わたしは自分の考えが間違ってなかったことを確信した。


109 :とある日のまつり姉さん [saga]:2010/08/08(日) 14:44:30.81 ID:SzRBGNg0

 昼食のテーブルに着くと、お母さんがわたしの方を見て首をかしげた。
「つかさはどうしたの?」
「こなたの家に行ったわよ。昼食はいらないみたい」
 わたしが答えると、お母さんはやれやれといった感じでつかさの分のお皿を片付け始めた。
「つかさ、謝りに行くことにしたのね」
 わたしの隣に座っていたいのり姉さんがそう呟いた。
「知ってたの?」
「仕事の片付けしてる時に、つかさが話してくれたのよ」
 わたしが倉庫から帰ってきた後だろうか。二人が帰るの遅かったのは、その話をしてたからなのかな。
「わたしはこなたちゃんの事あんまり知らないから、相談するならかがみがいいって言っておいたけどね」
「そうね。いのり姉さんが適当なこと言ったら、余計ややこしくなりそうだし…」
 わたしが茶化すようにそう言うと、いのり姉さんは不機嫌そうな顔をした。
「まつりじゃあるまいし、そんな適当なこと言わないわよ」
「…そこでわたしか」
 今度はまつり姉さんが口を尖らせる。こういう連鎖っぷりはさすが姉妹だと思う。
「なんていうか…つかさは結構深刻っぽかったけど、かがみはあんまり心配してなさそうね」
 いのり姉さんがわたしの方を見ながらそう言った。わたしは、少し上を見ながら頬をかいた。
「んー…なんていうんだろ。なんとなく似てるっていうのかな…」
 そして、まつり姉さんの方を横目で見た。わたしの視線を追ったいのり姉さんは、納得したように微笑んだ。
「なるほどね。怒るの、続かないんだ」
「え、なに?わたしがなに?」
 まつり姉さんは急に視線が集まったことに戸惑ってる。たぶん、もう今朝喧嘩しかかったことなんか、どうでも良くなってるのだろう。
「…こなたはこんな風じゃなくて、つかさに怒ったの後悔してたみたいだけどね」
 わたしの呟きに、まつり姉さんはますますわからないと言った風に、首をかしげた。
「んー、なんなのよ…」
「なんでもないよ…それより、レポートの方は順調なの?」
 わたしがそう聞くと、まつり姉さんはそっぽを向いた。頬に冷や汗が流れてる。なんか嫌な予感。
「…いや…それが…えっと…かがみ!レポート手伝って!」
 今朝と同じように拝み倒してくるまつり姉さん。高校生にレポート手伝わせる大学生ってどんなだ。
「…いいわよ。わたしの分かる所だけならね」
 突っ込もうとする心を抑えて、わたしはそう答えていた。
「え…」
「あら…」
「へ?」
 いのり姉さんやお母さんはともかく、言いだしっぺのまつり姉さんまで目を丸くしてる。そんなに意外な答えだったのだろうか。
「たまには…ね」
 今日くらいはまつり姉さんの理不尽に付き合ってもいい。わたしはそう思っていた。




110 :とある日のまつり姉さん [saga]:2010/08/08(日) 14:45:04.26 ID:SzRBGNg0
 以下、余談。

 つかさは夕飯が終わったころに、上機嫌で帰ってきた。
 なんでもお詫びにと、こなたの家で夕飯を作ってあげてきたらしい。
 誤りに行った人間が楽しんできてどうするんだと思ったけど、それもまたつかさらしいなとも思う。
 何はともあれ、全部丸く収まってよかったと思う。
 まつり姉さんのおかげ…と言うほどではないと思うけど、きっかけにはなったはず。
 わたしは未だ終わらないレポートを手伝いながら、まつり姉さんのことを少しだけ見直していた。

 ………にしても、ホントにこれどんだけ溜め込んだのよ。



― おわり ―
111 :とある日のまつり姉さん [saga]:2010/08/08(日) 14:45:45.25 ID:SzRBGNg0
以上です。

いや、ほんとすいませんでした。
112 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/08(日) 16:14:13.09 ID:n925OZA0
えがったよ〜
オリジナルは読んで無いけど今度読んでみるよ〜
柊家は姉妹皆が影響し合ってるんだね
原作は読んで無いからいのりさんとまつりさんの特徴を掴めてないから今度原作買ってみるよ〜
いやー、楽しかったよ〜
113 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/08(日) 18:52:46.99 ID:AuHZhxI0
>>111
お疲れ様です。自分の作品をのアレンジを読むのは小恥ずかしい感じがする。

ユーモアがあってこちらの方がらきすたらしいと思う。
自分の描いていない描写があって分りやすかったかな。鍵の場面とか

つかさが謝りに行く時のかがみがこなたにメールを送った所は思いつかなかった。
ある意味つかさが悪かった事なのでかがみ自身はぎりぎりまでこなたに干渉しないようなスタンスで
書いた。けどこっちの方が自然だったかな。

つかさとこなたが仲直りした話はまつり姉さんが題材なのであえて省きました。
この作品を読んでみると書いても良かったと思った。

レポートを手伝うとは、これは笑った。
114 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/10(火) 12:05:20.00 ID:79YPAgAO
test
115 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/10(火) 12:35:21.30 ID:79YPAgAO
スレ違いかと思いつつ、らき☆すたよしみで質問させて。

このスレの初期の頃からの住人なんだけど、一度で良いからラノベ出版社が主催している〜〜賞に自分の書いた作品を投稿してみたいなと思ってるんだ。

俺が書こうとしてるのは
シリアス雰囲気のファンタジーで、主人公(モデルつかさ)もヒロイン(モデルかがみ)どっちも女の子な作品。
42×34換算で100ページ程度。

に電撃大賞は一見競争率が高く見えて、受賞作品が多い上に、実は低レベルな作品が山のように投稿されてるだけだから、それほどレベルは高くないと聞いてるので、今のところ電撃大賞が第一候補。

と言う感じなんだけど、他にオススメの賞があったら教えておくれ。
頼む!m(_ _)m
116 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/10(火) 13:02:49.50 ID:6gaYWns0
亀だが
みゆき「電車の中ではしゃがないでください」
ガキ 「うるせぇババァ」
みゆき orz
117 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/10(火) 20:29:24.80 ID:F6bDsj60
電車の中で、はしゃがないで


電車の中では、しゃがないで
に見えてずっと悩んでた
118 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/10(火) 20:57:44.28 ID:f6go8cQ0
>>115
このスレの初期の頃はらきすたすら知らなかった。当時のスレ履歴見ると一ヶ月も経たないうちに新スレ立ててるね。もっと早く知りたかった。

自分の好きな出版社の主催でいいんじゃないの?
119 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/10(火) 21:12:30.59 ID:kY7m3QSO
>>117
こなた「しゃがなべいべー」
かがみ「…いや、意味わかんないから」
120 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/10(火) 22:47:19.20 ID:79YPAgAO
>>118

はじめの頃は1日で1スレ消費した事もあったぞー。
中身の無いレスも多かったけど、小説を投稿すると速攻で感想がいくつも返ってきたな。

でまぁ、実を言うと、ラノベをあまり読んでないんだなぁ。
電撃はイリヤしか読んだことない。
強いて他を挙げるなら、ハルヒのスニーカー大賞。ただあれは、ラノベ以外も多いから……。
121 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/11(水) 20:44:42.47 ID:/5QbeAI0
-----------------------------------------------------------------------------

ここまでまとめた

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122 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/11(水) 21:57:02.79 ID:oauZ9720
>>121
乙であります、曹長殿
123 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/12(木) 08:52:23.85 ID:dlDauwSO
−盆−

こなた「お盆かあ…なんか、もの哀しいね…」
そうじろう「…そうだな」
かなた『…こなた…そう君…』










こなた「いつも読んでる漫画週刊誌が全部お休みなんて」
かなた『そっち!?』
そうじろう「いや、まったく」
かなた『そう君まで!?』
124 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/12(木) 19:38:13.22 ID:ZsNlHx20
>>115
ラノベのことはそんな詳しくないので何とも言えんが、応援するぜ
>>121
乙です!
125 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/12(木) 21:24:46.77 ID:LjfICnU0
http://www23.atwiki.jp/satousan/pages/40.html
これを見ればよろし
126 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/12(木) 23:32:14.53 ID:1WmtGsSO
↑二度と来るなよ
127 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/15(日) 11:13:03.62 ID:0iQ/zeE0
投下します。
128 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/15(日) 11:13:41.34 ID:0iQ/zeE0
柊かがみ法律事務所──とある未来のせちがらいコミケ

 かがみは、コミケ運営主体の顧問弁護士として、事務局に待機していた。
 待機といっても休んでるわけでもない。パソコンを持ち込んで、訴訟案件の草稿をまとめていた。最近はネット経由で法令データも判例データも簡単に得られるので、ネットにつながってさえいればどこだって仕事はできる。
 短期間に大量の人ごみでごった返すコミケとはいえ、弁護士が表に出なければならないような大事件はめったに起きるものではない。例年であれば、特に何事もなくすごせるはずであった。


 コミケ運営主体の顧問弁護士としての仕事は、むしろ、コミケ開催前の方が忙しかった。
 近年、中高生参加者の増大に伴い、当局からいわゆるアダルトコーナーの完全隔離と年齢確認の徹底を厳しく行政指導されている。
 法的拘束力はないのでバックレるという手もないではないが、それをやると当局から会場提供者に遠まわしに圧力がかかる可能性もあるので、運営主体としては従わざるをえないのが実情だった。
 そのため、18禁の選定を行なわなければならず、かがみはその最終判定員を委嘱されていた。
 18禁をめぐる訴訟を多くこなしているかがみが適任なのは確かであったが、はっきりいって気分のいい仕事ではない。それでも、仕事と割り切って、エロ同人誌ばかりを眺める日々をすごした(報酬が高いことだけが救いであった)。

 同人誌の場合、18禁の選定は、各サークルから運営主体に納本される2冊のうちの1冊をもって行なわれる。
 残り1冊は、国立国会図書館に納本されることになっている。コミケ運営主体が国会図書館への納本を代行するこの体制は、かがみが顧問弁護士になったあとに確立したものだった。国会図書館からかがみに働きかけがあったのだ。
 同人誌の納本率をあげるにはコミケというビッグイベントを押さえるのが最も効率がよいという国会図書館の判断は、妥当なところではあろう。
 著作権法的にグレーな部分が多い二次創作本を納本することに法的問題がないのかという心配もないではない。二次創作分野を広く支配している「好意的黙認の慣習」の法的効果をめぐっては、学会でも実務家の間でも議論があり、裁判所の判断も揺れている。そのため、この分野はいまだに著作権法的グレーゾーンが広いままだ。
 とりあえず問題があれば閲覧・複写等の利用を制限すればよいということで、国会図書館による収集・所蔵は続行されている。

 それはともかくとして、運営スタッフたちが18禁的にグレーだと判定したものを、かがみが改めて確認し最終判定を下す。18禁指定を受けた同人誌などを売るサークルはアダルトコーナーの区画に割り当てられ、隔離されることになる。
 なお、万が一、刑法のわいせつ物頒布罪に抵触するものが見つかった場合は、販売禁止を通告することになる。
 アダルトコーナーへの入り口は一ヶ所だけに限られる。そこにはゲートが設けられて、スタッフの年齢確認を受けないと中に入れない。年齢確認は運転免許証などの写真付きの身分証明書で行なわれる。
 そのゲートは、麗しくも「天国への門」と通称されるようになっていた。ゲートを通過したあとにある階段も「大人への階段」と呼ばれている。
 反発するサークルもないわけではない。そのようなサークルに対しては、まず運営主体のスタッフが説得にあたり、それでも駄目ならかがみが直接交渉して説き伏せた。
 かがみ本人は認めたがらないが、オタク界における柊かがみ弁護士のネームバリューには大きなものがあるのが実態だった。

129 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/15(日) 11:14:10.13 ID:0iQ/zeE0
 クーラーの効いた部屋で静かに仕事をしていると、運営スタッフがやってきた。
「先生、すみません。ちょっとご足労願えませんか?」
「何かありましたか?」
「身分証がなくて『天国への門』で引っかかった参加者が、駄々こねてまして。とありえず事務局に連行したのですが、『通してくれないと、かがみん弁護士を呼ぶぞ』とわめいてましてね。先生ご本人に説得していただければ、納得してもらえるかと」
「分かりました。行きましょう」
 多くの参加者が集まるビッグイベントであるから、そんなしょうもない参加者が混じってくるのも避けられない。

 かがみがその部屋に入ると、
「おお、かがみん。来てくれると思っていたよ」
「あんたか」
 かがみは、心底呆れ顔でそいつの顔をにらみつけた。
 そこにいるのは、まぎれもなく、こなただった。
「お知り合いですか?」
「まあ、昔からの腐れ縁ですよ」
 スタッフの疑問に、かがみはそう返した。
 こなたは、人気ラノベ作家として顔も売れてるはずだが、帽子であほ毛を隠すと案外誰も気づかないもんらしい。あほ毛ステルスとでもいうべきだろうか……。
「あんた、免許証ぐらい持ってないの?」
「いやぁ、うっかり忘れちゃってさ」
「写真付きで年齢を証明できる資料がない限り、ゲートは通れないわよ。カタログにも書いてあったでしょ」
「そこをなんとか。かがみん先生の証言でOKってことで」
 こなたが両手を合わせておがみ倒す。
 しかし、かがみはにべもない。
「ダメ」
130 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/15(日) 11:15:02.07 ID:0iQ/zeE0
 押し問答を繰り返しているところに、来客があった。
「おっ、いたいた。ダメだろ、こなた、免許証忘れちゃ」
「おおっ! お父さん! 持ってきてくれたんだ。あのサークルが売り切れる前に急がないと!」
 こなたは、そうじろうから免許証を受け取ると、脱兎の勢いで部屋を駆け出していった。
「お父さん、今度サービスしとくよ〜」
 そんなセリフがドップラー効果を伴って響いていた。
「なんのサービスだ?」
 思わずそう突っ込まざるをえないかがみであった。
「いやぁ、娘がお騒がせしましてすみませんねぇ」
 そうじろうが、そういってスタッフに頭を下げている。
「かがみちゃんも、すまなかったね」
「はぁ……」
 かがみも何と返していいものやら分からず、気の抜けた返事になってしまった。


 結局、今回のコミケにおいて、事件(とすらいえないものではあったが)はその1件だけだった。
131 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/15(日) 11:15:36.64 ID:0iQ/zeE0
以上です。
132 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/15(日) 17:55:18.99 ID:C2xAKCY0
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ここまでまとめた

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133 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/15(日) 18:48:00.29 ID:WDQS7mQ0
>>132
乙であります
134 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 19:15:02.75 ID:n967oEIo
>>131

こなた……w
135 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/16(月) 14:50:40.24 ID:pZ.uhASO
−紙−

そうじろう(またしてもトイレットペーパーがきれている…)
そうじろう(一階のトイレにはあるのだろうが…また下半身裸のまま誰かにかちあうかもしれん…)
そうじろう(どうする…どうする、泉そうじろう!)
ガチャッ
パティ「ハーイ、パパさん。おトイレチュウしつれいしマース!トイレットペーパー、ここオいときますヨー」
そうじろう「…あ、ありがとう…」
パティ「ソナえあればウレいなしデス。ビヒンのカクニンはツネヒゴロからバッチリとデスヨ」
そうじろう「…そ、そうだね…」
パティ「デハ、しからばゴメン!」
パタン
そうじろう「………えーっと」



こなた「流石アメリカ人はオープンだねえ…」
ゆたか「そ、そういう問題かなあ…」
136 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/19(木) 17:02:12.72 ID:0EqVB/c0
そうじろう
誕生日オメ
137 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/19(木) 20:00:33.72 ID:9/H8bISO
すっかり忘れてた
即興でなにか書こうにもPCが故障中
138 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/19(木) 20:47:35.67 ID:6cmQf0A0
>>136
おいおい まだ早いよ

そうじろう 8月21日

かなた 8月20日
139 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/19(木) 21:18:44.16 ID:0EqVB/c0
サーセンwwww
140 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 08:06:57.26 ID:nPxSUASO
かなたさぁぁぁぁん!!うわぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁああぁぁっ!!!!!

誕生日おめでとう)^o^(
141 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 08:49:53.25 ID:lLo6.iwo
かなた、誕生日おめでとう
俺のかなた、おめでとう
142 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 16:42:11.26 ID:SB0uAZA0
>>141
かなたさんが誰かのものになるとは考えにくいのだが・・・
もしかしてそうじろう?
143 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 16:43:54.90 ID:SB0uAZA0
>>141
かなたさんが誰かのものになるとは考えにくいのだが・・・
もしかしてそうじろう?
144 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 16:45:26.61 ID:SB0uAZA0
ミスった orz
145 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/20(金) 17:04:15.20 ID:lLo6.iwo
>>144
ドンマイww
そうじろう+かなたスレに書き込むまで誰も祝ってなかた(テンプレに誕生日書いてある)

改めまして、かなたさんお誕生日おめでとうございます
146 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/20(金) 19:23:01.54 ID:DovIMyc0
そうじろう「かなた、誕生日おめでとう」
こなた「お母さん、誕生日おめでとう」
ゆたか「かなたおばさん、お誕生日おめでとうございます」
パティ「ママサン、happy birthdayネ」
147 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/20(金) 21:02:40.28 ID:NEwBXbM0
かなたさんお誕生日おめでとうございまする!
148 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/21(土) 03:27:14.59 ID:clWTWLg0
そうじろうさんおめ!
149 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/21(土) 04:17:14.55 ID:NVfadYIo
忘れてた
かなた&そうじろう誕生日おめ!
150 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/21(土) 08:07:44.33 ID:VHLa2kAO

パティ「コナタ、パパさんどこデスカ?バースデーのプレゼント用意シタデスガ」
こなた「お父さん?あ〜、たぶんそろそろ帰ってくるはず」
ゆたか「去年もそうだったけど…前日からおじさん何してるの?」
こなた「お母さんと誕生日が1日違いだからね、昨日一晩中お母さんの墓前でお酒飲んでるんだよ」
ゆたか「おばさんと二人きりで…」
パティ「um…セツナイデス」
こなた「そんで和尚さんに説教されて帰ってくるんだ。墓前で酒飲むなと毎年言ってるのにこりずに…な感じで」
パティ「…台無しデス」
151 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/21(土) 11:38:47.84 ID:4QyX4sSO
−重なる−

こなた「ほい、お父さん」
そうじろう「ん、これは?」
こなた「誕生日プレゼント…昨日買い物いった時に、ちょっと思い出したからついでに買ったんだよ。わざわざ用意訳じゃないからね」
そうじろう「いや、別になにも言ってないんだが…」
こなた「と、とにかくそういうことだから!」
そうじろう「…ああ、ありがとうな」



こなた「…ふー」
ゆたか「お姉ちゃん、去年もそうだったけど、もうちょっと普通に渡したほうがいいんじゃないかな…」
こなた「いやー…わたしは普通に渡したいんだけどねー。これ、意外と恥ずかしいし」
ゆたか「…え」
パティ「ツンデレサービスですネ」
こなた「ま、そういうこと。お父さんのリクエストでね」
かなた(…そう君、まだやってたんだ)
こなた「お母さんも、こういうことやらされてたのかねー」
かなた(やらされてたわ…ホント恥ずかしいのに…でも)
こなた「まあ、あれはお父さんの…」
かなた(…あれはそう君の)

『照れ隠しだよね』

こなた「…あれ?」
ゆたか「どうしたの、お姉ちゃん?」
こなた「いや、なんだろ…今誰か…気のせいかな」
152 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/21(土) 19:30:05.96 ID:zUVdJH20
そうじろう「今年もこなたは俺の誕生日祝ってくれたよ…
      昨日はかなたの誕生日もしっかり祝ってくれたよ…
      かなた… 俺もちゃんと親してるだろ?
      そう言って欲しいよ… かな…た…」
こなた「お父さん… お母さんには敵わないけど私は…
    お父さんが大好きだからね」
かなた「(娘にそう言われる親なんて滅多にいないわよ そう君…
     大丈夫… こなたは真っ直ぐ育ってるわ…」
    
153 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/23(月) 21:09:10.40 ID:0/Cad/.0
黒井「はぁ〜 例のDSのゲームに女子向けのやつ出えへんやろか〜
   うちも熱海行きたいわ〜」
こなた「…先生、人生それでいいんですか…」
154 :命の輪の流れ [saga]:2010/08/28(土) 03:26:31.19 ID:s8dzWISO
投下いきます。

命の輪のシリーズです。
155 :命の輪の流れ [saga]:2010/08/28(土) 03:27:36.01 ID:s8dzWISO
 秋の風が頬を撫でる。その涼しさ、気持ち良さに思わず目を閉じる。
 いいなあ、こういうの。わたしは目を閉じたまま前にある大きな背中に体を預けた。
「おい、こなた。寝るなよ、落ちるぞ」
 チリンチリンと自転車のベルと共にダーリンの声がした。
「寝てないよー。寝たいほど気持ちいいけどねー」
「…落ちたらそのままほっていくぞ」
 酷い事をおっしゃる。
「あの辺でいいか?」
 続いて聞こえてきたダーリンの声に、わたしは目を開けた。
 川の側の土手を走るわたしを乗せた自転車。
「うん、いいよ」
 わたしが答えると自転車が傾き、坂を川辺に向かって降りていった。



− 命の輪の流れ −



「ほいさっ」
 我ながら気の抜ける掛け声と共に、サイドスローで投げた小石が川面を五回ほど跳ねた。
「上手いもんだな」
 感心した声をあげるダーリンに向かって、ピースサインをして見せる。
「…なんか悔しいな」
 そう呟くダーリンは最高二回という有様だ。結構不器用なのね。
「しゃーない、最後の手段だ」
 ダーリンはそう言いながら足元を探し始めた。
 そして手に取ったのは拳ほどありそうな大きな石。
「…それ、絶対跳ねないよ」
 わたしの忠告を無視して、ダーリンはその石を構えた。
「せいっ!」
 そして、掛け声と共に石をオーバースローで水面に叩きつける。
 爆音、と言っていいくらいの音。わたしの身長くらいありそうな水柱。あ、魚が飛んでる…。
「どうだ。十回分くらいはあっただろ」
 いや、十回じゃきかないだろうけど…バカだこの人。
「…とりあえず、吹っ飛んだお魚さんにあやまれ」
 わたしの言葉に、ダーリンは川に向かって頭を下げた。



156 :命の輪の流れ [saga]:2010/08/28(土) 03:32:02.43 ID:s8dzWISO
「しっかし、アレだな」
 そう言いながらダーリンが軽い感じでボールを投げてくる。
「なにー?」
 そう聞きながら、わたしは手にはめたグローブでボールをキャッチした。ズシッと重い感触。ホント、馬鹿力とはよくいったもんだ。
「相変わらず、女の子とデートしてるって気がしない」
「あー、そうですかっと」
 言いながらわたしはダーリンの頭の上を越えるように、思い切りボールを投げた。
 取りそこねたダーリンが、慌ててボールを追いかける。
「そう言うならたまにはダーリンがプラン立ててよー。わたしにばっか任せてないでさー」
 その背中に、わたしはそう言った。
「…そう言ってもなあ」
 ボールを拾ったダーリンが、なにかブツブツ言いながら戻ってきた。
「まあ、あんときは流石に女の子とって感じがしたけどな」
「へー、どのときー?」
 嫌味ったらしくわたしが聞くと、ダーリンはボールを投げてきた。
「ほら、お前んちに初めて泊まったとき」
 わたしの目の前が真っ白になった。たぶん、顔は真っ赤だ。
 初めてって…泊まったって…あんときは…あんとき…いや、あれは…当たり前ってか…。
 もやもやを消そうと思いきり目をつぶると、ゴンッと鈍い音と共にわたしの額に何かがぶつかった。



157 :命の輪の流れ [saga]:2010/08/28(土) 03:34:11.84 ID:s8dzWISO
 夕焼けが眩しい土手に、二人並んで座って川を眺める。風が気持ちいいけど、額はまだヒリヒリ痛む。
 このみょーな癖なんとかしないと、その内事故とかしそう。
 お父さんという、ある意味素晴らしいお手本がいるから、下ネタとか恥ずかしい話には強いと思ってたんだけど、彼の前だとどうもおかしな感じになる。
 これが惚れてるって事なんだろうなあ…あ、ダメだ。また顔が熱く…。
「なあ、こなた」
「ひゃあいっ!?」
 いきなり話しかけられて、飛び上がらんばかりに驚くわたし。あーもー心臓に悪いって。
「…相変わらずだな」
 あ、ダーリンちょっと呆れてる。
「ほっといてちょうだい…で、なに?」
「いや、まあ…」
 ダーリンは何か言いにくそうにしながら、わたしを抱き寄せた。
「…こうしたかったってだけだ」
 …だけって…ああ、もう…。
 動き回ってたせいか、ちょっと汗くさい。でも、不快感は全然ない。むしろいいにお………いやいやいや。わたし変態じゃないし…たぶん。
「どうかしたか、こなた?」
 何か感づいたのか、ダーリンがそう聞いてきた。
「え、いや…あー…ボールぶつけられたの、まだ謝ってもらってないよ」
 様子がおかしいのを悟られないように、ごまかしの言葉を口にするわたし。
「あれ、そうだっけ…まあ、悪かったな」
 うわあ、気持ちこもってなさすぎ。
「…なにそれ、全然誠意が感じられないよ」
「いや、お前がぼーっとしてたのも…」
「ダーリンが変なこと言うからだー」
 言い訳を遮ってわたしがそう言うと、ダーリンは呆れたようにため息をついて、わたしをさらに近くに抱き寄せた。
「え…ちょ」
 わたしが何か言う前に、唇がダーリンの唇で塞がれた。ずるいことするなあ…。
 わたしはそのまま、ゆっくりと目を閉じた。



158 :命の輪の流れ [saga]:2010/08/28(土) 03:37:24.61 ID:s8dzWISO
 結構長い時間の後、ダーリンが唇を離した。それと同時にわたしは目を開けた。二人の唇の間を唾液が糸を引いていて、なんかエロい。
「誠意。こんなもんでいいか?」
 ダーリンが顔を赤らめながらそう言ってきた。無理してるなー。
 なんかそれ見たら、わたしの方はちょっと落ち着いた。
「…このドスケベ」
 そう呟きながら、わたしはダーリンにもたれかかった。
 風の音。虫の声。川のせせらぎ。対岸の子供達の歓声。
 色んな音が混ざり合って聞こえる。
 こんな風に景色を感じるなんて、高校生の頃は思いもしなかった。
 この感じを言葉にしたい。最近そう思うようになってきた。
 でも、思うだけじゃきっとできない。できるようになるために、やらなきゃいけない事はたくさんある。
 それはきっと、わたしが思ってるよりずっと大変なこと。わたし一人じゃ踏み出すことすら困難だろう。
 わたしは、わたしの髪を撫で始めた彼の名を呼んだ。
「…なんだ?」
 いつもと違う呼び方をしたせいか、少し戸惑った感じだが、彼はわたしの呼びかけに答えてくれた。
「…呼んでみただけだよ」
 この人が欲しい。心からそう思う。
 誰よりも、なによりも近くにいて欲しい。
 誰のためでもなく、わたしのためだけに。
 自分でも驚くくらいに、この欲望は大きくなっている。
「…寝るなよ」
 いつの間にか目を閉じていたわたしに、彼が声をかけてきた。
 川の音が少し大きくなった気がした。

 求婚してみよう。わたしはまどろみの中で、そう決意していた。
 この人とならきっと、この川の流れのように、いつか大きな海へ…。



− おわり −
159 :命の輪の流れ [saga]:2010/08/28(土) 03:38:47.42 ID:s8dzWISO
以上です。

イチャイチャって難しい。
160 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/28(土) 07:58:08.29 ID:WSgH2520
>>159 乙です。
シリーズ物もいいな。書きたくなってきた。

イチャイチャは度が過ぎるとエロになるからね。それに公衆の面前でされると
快く思わない人もいるからね程々に。



161 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/28(土) 08:15:30.54 ID:jSacXhEo
乙〜
イチャイチャっすねえ
162 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/28(土) 18:18:26.75 ID:WSgH2520
-----------------------------------------------------------------------------

ここまでまとめた

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163 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/04(土) 16:32:48.83 ID:MjKYLXIo
【出来そうな気がした】

「やふーかがみーん。あのさー、一緒の大学行かない?」
『またアニメか……で何、それだけ?』
「むぅ、つれないなぁ」
『あんたと違って、こっちは大学入っても勉強忙しいのよ』
「へぇー。ところでさ、よくアニメって分かったね」
『……そら、まぁあんただしね』
「ほぅ……あ、そうだ、かがみん使わないならベース頂戴よ」
『ま、またその内使うわよ! 失礼ね!』
「んふ」
『あ……』
「かがみんギター似合うと思うよ、ツインテ的な意味で」
『もう……切っていいか……』
「ほーい。んじゃにー」

【情報漏えい】

『そういえば、前にお姉ちゃんが楽器買ってきたの』
「へぇー、どんな?」
『ギターみたいなの』
「みたい?」
『うん、なんかジャカジャカ言わないの』
「あー、ベースかな」
『べぇすって言うんだー』
「あのかがみがベースねぇ、今も使ってるの?」
『ううん、買ってから一週間ぐらいは練習してたんだけど、今は使ってないみたい』
「ふむ……そっか、つかさ貴重な情報感謝します!」
『? うん、じゃあ私お夕飯作るから切るね〜』
「ほいほいー」

「くく、さてはかがみん……」
164 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/04(土) 20:29:23.22 ID:Zer7RVI0
⊂( ・∀・)ワケ ( ・∀・)つワカ ⊂( ・∀・)つラン♪
165 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/08(水) 19:45:01.90 ID:tHix1gE0
―後輩―

店長「泉ちゃん 今日から新しいバイトの娘来るからよろしく頼むよ」
こなた「そうなんですか 後輩か… 任せてください」
店長「お 来たみたいだな」
こなた「!? んなっ!」
みき「今日からここで働かせていただきます柊みきです よろしくお願いします」
店長「こちらこそよろしくね〜 いや〜まだ17歳なんだって?
   泉ちゃん 先輩としてしっかりね」
こなた「は はい…(この人店長より年上ですよ〜
    ちゃんと面接したんですかー!)」
みき「泉先輩 よろしくね☆」
こなた「よ よろしく…お願いいたします…(何やってんですか〜
    あなた人生の先輩ですよー!)」
店長「? (泉ちゃん緊張してるのかな?初めての後輩だしな〜)」
166 :待ち人来たらず [saga]:2010/09/09(木) 22:41:37.05 ID:r/I6VQSO
投下いきます

って言っても2レスの短いものですが
あと台詞のみです
167 :待ち人来たらず [saga]:2010/09/09(木) 22:44:07.00 ID:r/I6VQSO
− 待ち人来たらず −



「…こう、田村さんはいつくるの?」
「んー、電話もメールも反応なしか…どうする、やまと?」
「十分待ちましょ。そのあと電話してみて出なかったら、置いていくしかないわね」
「まあ、しゃーないか…」
「ところで、こう」
「ん、なに?」
「雪見大福食べない?奢るわよ」
「え、なに?わたし殺されるの?」
「…なんでそうなるの」
「いやほら、イタリアンマフィアが殺す相手にプレゼントを送るとかそういう」
「わたし、いつの間にマフィアになったのよ」
「なんていうか、勢い?」
「勢いでなれるもんじゃないでしょ…それに」
「それに?」
「こうを殺るなら、問答無用でぶっ殺すわよ」
「…素で怖いよ」
「そう?」
「ってかぶっ殺すとかやめようよ。やまとも、黙ってればいいとこのお嬢さんに見えるんだし」
「なにか引っ掛かる言い方ね…まあでも、口の悪さじゃ格闘ゲームやってる時のこうには敵わないわよ」
「え、そう?」
「えーっと…強キャラ使ってんじゃねえよクソが」
「…いや」
「今のハメだろ?ふざけたまねしてんじゃねえよ[ピー]野郎」
「いやいや」
「喧嘩売ってんのか?リアルで買ったるわい」
「いやいやいや!」
「この台レバー壊れてるだろ。金返せや…がんがん」
「んなこと言うかー!どんだけなんだよ、わたし!ってか最後のがんがんって何!?」
「台を蹴る音」
「するかー!ゲーマーの名にかけて絶対せんわー!」
「…新台だったんでしょうね。涙目で靴跡を拭く店員さんが可哀相だったわ」
「だからしないってーの!」
「ところで、雪見大福なんだけど」
「ころっと話し戻すな…ってーかなんで急に奢るなんて言い出したの。なんか、やまとらしくないよ」
「昨日、ちょっとした臨時収入があったのよ」
「へー。家の手伝いでもした?」
「まあ、似たようなものね。昨日こうの家に行ったじゃない」
「うん」
「それで、こうがお母さんに呼ばれて部屋を出ていったわよね」
「うん、そうだけど」
「暇を持て余したわたしは、何となく部屋の中を見回したわ」
「…なんか嫌な予感が」
「するとどうでしょう。机の上に、誰のものか解らない財布が落ちていました」
「それ、落ちてるんじゃない!置いてるの!ってかわたしの部屋なんだからわたしのでしょーが!」
「バリバリと財布を開けるとあら不思議。中から五百円玉がでてきましたとさ」
「不思議でもなんでもないでしょ!」
168 :待ち人来たらず [saga]:2010/09/09(木) 22:48:49.18 ID:r/I6VQSO
「いや、不思議極まりないでしょ」
「どこが!?」
「こうの財布にお金が入ってるなんて」
「わたしはそんなに貧乏じゃない!ってかわたしの財布ってわかってんじゃん!あとわたしの財布はマジックテープじゃない!」
「あれ、そうだっけ?てっきり支払いはまかせろバリバリー、やめてってネタをするのかと」
「しないよ。ってかなんでそんなネタ知ってんの。ってか払わせる気満々か」
「まさか、こうに支払わせるなんて可哀相だわ。お金無いのに」
「じゃあ抜くなよ!…あーもー、五百円なにに使ったっけなあって思ってたら…ん」
「なに、この手?」
「いや、返してよ五百円」
「それは難しいわね」
「なんでよ」
「こうの家からの帰り道に寄ったコンビニに、それはそれは美味しそうな雪見大福が」
「使ったんかい!最悪だな!」
「まあ、お小遣はいったら返すわよ」
「それまでまてってか…ホント、ちゃんと返してよ…っつーか、聞きたいんだけど」
「なに?」
「たしかやまと、臨時収入あったから奢るって言ってたよね?」
「言ったわね」
「使っちゃったのに、どうやって奢るつもりだったのよ」
「………」
「…何故そこでわたしを指差すの」
「支払いはまかせろーバリバリー」
「払うかっ!!」





「…えーっと、これいつ声かければいいんスかね…」



− ちゃんちゃん −
169 :待ち人来たらず [saga]:2010/09/09(木) 22:49:58.08 ID:r/I6VQSO
以上です

どうしてこうなった…
170 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/10(金) 18:05:28.75 ID:yMz8Anw0
乙(=ω=)
171 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/10(金) 23:12:47.88 ID:RVY4Cpwo
乙〜
やまとはっちゃけてんなあw
172 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/12(日) 17:13:41.63 ID:f9NCtYY0
みなみ誕生日おめでとう
173 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/19(日) 11:30:38.78 ID:FIRHoZs0
>>172
みなみの誕生日だったのか。っと言っても即興じゃ作れないからどうしようもないけどね。

投下します。


18レスくらい使用します。
 
174 :赤蜻蛉  1 [saga]:2010/09/19(日) 11:32:23.26 ID:FIRHoZs0
 トンボは飛んでいた。どうやら迷って仲間と逸れてしまったようだ。川辺には居られなくなったのだ。もう一週間飛び続けている。
人間では一週間でもトンボのからみれば数ヶ月分の時間だろう。もう心身とも限界に近づいていた。しかし休めるような場所、水場がなかった。
しかしもう彼に帰る所はない。もう飛べない。そう思った時だった。かすかに水の匂いがするのに気が付いた。もうこの微かな匂いに賭けるしかなかった。
水辺ではくただの水溜りならそのままかればそのまま死んでしまうだろう。それでも彼は匂いのする方に向かった。四枚の羽の内もう二枚が破れている。
飛んでいる途中に車に接触してしまったのだ。もう真っ直ぐに進むのも間々ならない。それでも彼は最後の力を振り絞って飛んだ。

 彼は見つけた。青く広がる水。彼が追われた水辺よりも広い池が広がっていた。彼は喜んだ。でももう体力は限界だ。喜ぶ前に休むところが欲しかった。
池の辺に丁度止まれそうな草が生えていた。そこで休めそうだ。かれはよろめきながらその草に向かって飛んだ。そしてみごと草に止まることができた。
彼は羽を折り力を抜いた。やっとこれで休める。彼は改めて歓喜した。

 彼は周りを見渡した。自分の仲間であるトンボ、赤とんぼの姿は見当たらない。自分よりも大きいトンボの姿もなかった。池の底もみてみた。子供(ヤゴ)も見当たらない。
どうやらこの池を訪れたトンボは彼が初めてのようだ。これなら破れた羽でもこの池で暮らしていけそうだ。彼はこの池に定住することを決めた。
さて、この池の探索でもするか。そう思った彼は飛ぼうと羽に力を入れた。
その時彼は忘れていた。二枚の羽が破れていたことを。バランスを崩しそのまま池に落ちてしまった。

 彼はもがいた。しかし羽は水面にぴったりと張り付いて動かない。足もばたつかせてみた。しかし細い足では水を掻くことが出来ない。子供(ヤゴ)の時は水の中を
自由に進む事ができたのに今の彼にはそれはできなかった。動いても体力を消耗するだけだった。目の前に止まっていた草の茎がある。でもそこまで行けそうにない。
彼は死を覚悟した。

 急に何か胴体を挟まれた。鳥の嘴か。しかし感触は柔らかい。そしてとても優しく挟まれている感じだった。急に体が軽くなった。彼は水から引き上げられた。
鳥かネズミか。しかし彼に抵抗する力はない。もう身を持ち上げた者にゆだねるしかなかった。
「これなーに」
幼女が彼を手に取り男に見せた。挟んだのは鳥の嘴ではなかった。人間の指。しかし彼にその区別をする能力はない。彼は必死に抵抗したがたとえ幼女と言えども
力の差は歴然としていた。逃れられない。彼は諦め抵抗するのを止めた。
「赤とんぼだな、どこに居たの?」
男が聞くと幼女は池の水面を指差した。
「そうか、溺れてたんだね、羽もボロボロだ、もう死んでしまうね」
「しぬってなに?」
男は返答しなかった。彼には二人の会話はどうやって殺そうか相談しているように思えた。
男は悲しい顔をした。幼女はそれに何かを感じたのかそっと近くの草の上の彼を置いた。彼はその草にしがみ付いた。
「えらいぞ、それじゃ帰ろうか……」
男は幼女の手を引き池を去った。彼は何があったのか理解できなかった。なぜ助かったのか。

……

……
175 :赤蜻蛉  2 [saga]:2010/09/19(日) 11:33:52.96 ID:FIRHoZs0
ここは泉家。そこにかがみ、つかさ、が訪れていた。なになら勉強会をしているらしい。珍しくこなたとつかさは真剣になっていた。
こなた・つかさ「どう?」
かがみに問いかける。かがみも真剣にこなたとつかさのノートを見ていた。
かがみ「……驚いた、全問正解、やればできるじゃない」
つかさ「すごーい、やったねこなちゃん」
手を叩いて喜んだ。それもそのはず。こなたとつかさは苦手な数学の問題を問いていた。
かがみ「それが解けたなら宿題の問題も解けるわよ、やり方同じだから」
こなた・つかさ「えー、教えてよ」
かがみ「なに言ってるのよ、もう私の教えることはないわ……それに私はみゆきほど甘くないわよ」
こなた・つかさ「けち」
かがみ「二人で息を合わせて同じことをするな、いつから姉妹になったんだ」
かがみに嗜まれしぶしぶと二人は宿題の問題を解き始めた。

かがみ「休憩しましょ……しかし二人とも今日は頑張るわね、いつもこうなら勉強会もすることもないでしょうに」
こなた「今回はつかさと二人で決めたんだよね、少なくとも及第点は取ろうって」
かがみ「……まあ、その意気込みがいつまで続くか心配だわ」
こなた「あまり自信ないけどね……そうだ、ケーキ用意してあったんだ、ちょっと用意してくるから待ってて」
こなたは部屋を出た。かがみはつかさを見た。つかさはノートに向かってまだ問題を解いていた。
かがみ「つかさ、休むときには休まないと続かないわよ」
つかさ「そうだね」
つかさはノートを閉じて両手を揚げて背伸びをした。
かがみはそんなつかさを見ていた。
つかさ「どうしたの、何かついてる?」
かがみの目線に気が付いた。
かがみ「いやね、こなたとなんでそんな約束したんだ」
つかさ「約束って二人で決めたこと?」
かがみは頷いた。
つかさ「何でだろうね、二人で自然にそうなったんだよ、いつもお姉ちゃんに負けてるし、たまには……なんてね」
つかさは笑ってそう答えた。しかしかがみはあまり嬉しくないようだ。
かがみ「私を目標にされてもね、確かに成績は上位かもしれないけど……どうせならみゆきを目標にしなさいよ」
つかさ「お姉ちゃんはゆきちゃんを目標にしてるの?」
かがみ「クラスが同じなら……もっとライバル心むきだしだったかもね」
かがみはつかさから目を逸らした。
つかさ「お姉ちゃんは私たちと同じクラスじゃなくて良かったよ、ゆきちゃんとそんな喧嘩しちゃったら……」
つかさは今にも泣きそうな声で話した。
かがみ「ばかね喧嘩なんかしないわよ、それとこれとは別よ、ライバルでもみゆきとは友達でいられる、それに私が敵対してもみゆきは気付かない、そんな人よ、みゆきは」
つかさ「そうかな……そうなのかな」
つかさは考え込んでいた。そこにケーキとお茶を持ったこなたが戻ってきた。それぞれにお皿を配った。
こなた「何を話していたの」
つかさの表情が暗かったのが気になったようだ。
つかさ「ゆきちゃんの事だよ」
こなた「そういえばみゆきさん最近私達と一緒にならなくなったね」
かがみ「……みゆきの進路を考えれば私達なんかに構ってはいられないわね」
その一言にこなたとつかさは黙ってしまった。かがみはその雰囲気に気が付いた。
176 :赤蜻蛉  3 [saga]:2010/09/19(日) 11:35:28.79 ID:FIRHoZs0
かがみ「いや、別にこなたやつかさが邪魔になったとか……そうゆう事じゃない……と思う……」
二人は余計に沈んでしまった。かがみはそれ以上何も言えなくなってしまった。
こなた「みんなケーキ食べたね、片付けるね……」
こなたはお皿を集めると部屋を出た。
かがみ「つかさ、さっきは……」
つかさ「ゆきちゃんはそんな人じゃないよ、さっきお姉ちゃんだってそう言ってたよね……」
かがみ「そうね、憶測で話すのはもう止めよう、もう一息だから宿題片付けましょ」
こなたが戻ってからも嫌な感じが収まることはなかった。

 勉強会は予定より早く終わった。残りの時間はゲームなどをして時間を潰したがどうもノリが悪い。つかさは元々ゲームが得意なわではないので漫画を見ている。
一体感がなかった。しかし三人ともどうしていいか分らない。
こなた「なんか調子ででないねー」
かがみ「まあね……」
その原因の一つにかがみの言葉あることは自分でも分っていた。
つかさ「少し外に出てみようよ」
かがみ「いいわね、気分転換にもなるし、こなた、どう?」
こなた「いいよ、出てみるかな」
こなたは少し考えてから返事をした。出ても行きたいところが無かったからだ。

 外に出た三人。こなたが思った通りどこに行くわけでもなくただ歩いていただけだった。
つかさ「どこか面白い所ないかな」
こなた「面白い所ね……何も思い浮かばない」
かがみ「自分の地元でしょうに、少思い当たらないのか」
こなた「かがみの家だって隣町じゃない、あまり変わらないよ、どこか思い当たるところある?」
かがみにもそんな所は思い当たらなかった。喫茶店でお喋りは普段からやってる。何もない。まるで犬の散歩のようにただ近所を歩いているだけだった。
つかさ「もうすっかり秋だね、涼しくなってきてるし、雲も秋の雲だよ」
こなた、かがみもつかさと同じように空を見上げた。ひつじ雲がそらいっぱいに広がっていた。
かがみ「もうすっかり秋ね、焼き芋が恋しくなるわ」
こなた「かがみはすぐ食べ物の話になるね、さっきケーキ食べたばかりじゃん、つかさみたいに少しはデリカシーってもんをだね」
かがみ「悪かったわね、どうせ私はそんなものなんかないわよ」
つかさ「あっ、赤とんぼだ」
二人の会話に釘を刺すようにつかさが叫んだ。つかさの指差す方を二人は見た。トンボが数匹同じ方向に飛んでいた。
こなた「ほんとだ」
かがみ「アキアカネね、夏は高地で過ごして秋になると低地に戻ってくるのよ」
こなたはまじまじとかがみを見た。
かがみ「なによ、何か付いてる?」
こなた「いやね、かがみがそんな薀蓄を言うなんてね……しかも虫だし、興味あるように見えないじゃん」
かがみ「偶然知っていただけよ、みゆきほど深く調べたわけじゃない」
トンボはそのまま飛び去ってしまった。
つかさ「あのトンボは何処にいったのかな」
かがみ「卵を産むために池や沼を探しているはずよ」
こなたには思い当たる所があった。
こなた「それならいい所があるよ、夕焼けがとても綺麗な公園があるよ」
つかさ「夕焼けが綺麗な公園……行ってみたいな、もうすぐ夕方だし丁度いいかも」
つかさのその一言で公園に行く事になった。
177 :赤蜻蛉  4 [saga]:2010/09/19(日) 11:37:18.36 ID:FIRHoZs0
かがみ「へーこんな所に公園があったなんてね」
こなた「私が生まれた頃にできた公園だよ、で、そこにあるのがひょうたん池、別に名前があるわけじゃないよ、小学生の時勝手についた名前」
野球場二面くらいの大きさだろうか、ひょうたんのような形をしていた。
かがみ・つかさ「ふーん」
いつの間にかこなたは公園を案内していた。
かがみ「こなたはここで遊んでいたのか、いやに楽しそうだな、いい思い出でもあるみたいね」
こなた「いや、そうでもないよ……」
急にこなたの顔が曇った。かがみは何か複雑な事情があると思った。それを聞こうとした時。
つかさ「あっ、赤とんぼだ、さっきのかな」
またつかさが二人の会話に割り込んだ。
つかさ「向こうにも、こっちにも……うわー凄いよ……いっぱい飛んでる……なんか綺麗だね」
池の真上を見上げると赤とんぼの大群が飛んでいた。日はだいぶ西に傾いてきた。空はオレンジ色に染まってきた。
こなた「私が生まれた頃はトンボは居なかったって」
かがみ「新しい池だと生き物が住み着くのに時間はかかるわね」
こなた「小さい時、一匹の赤とんぼがこの池で溺れいたのを助けた事があってね……」
こなたは大群の赤とんぼを見ながら話した。
つかさ「……それじゃここのとんぼってこなちゃんが助けたとんぼの子孫なんだね……こなちゃん凄い」
つかさもトンボを見ながら話した。
こなた「違うよ、もう羽もボロボロで飛べそうにないほど弱ってたから……きっとそのまま死んじゃったんだよ」
かがみにはこなたがやけに悲しそうに見えた。
かがみ「よくそんな小さい頃の事覚えているわね」
こなた「拾ったトンボを見てお父さんの表情が忘れなれなくてね、何故か覚えてるよ……それからお父さんとはこの公園に一回も行ってない」
つかさ「そのトンボ……きっと辛い旅をしてきたんだね、嵐でも遭ったのかな、鳥にでも追いかけられたのかな、それでもやっとの思いでここに来て……
     池に落ちちゃったんだね、こなちゃんに助けられてきっと嬉しかったんだよ、だから……この池に住み着いたんだね」
こなた「つかさは夢をみれていいね……」
こなたもかがみもつかさの話を聞きながら黙って空を眺めていた。

「お姉ちゃん?」
突然こなたを呼ぶ声がした。
三人は振り返った。
そこにはゆたかとみゆきが立っていた。
こなた「ゆーちゃん、みゆきさんまで……何してるの?」
ゆたか「社会の自由課題をしてたんだよ」
こなた「自由課題?」
ゆたか「うん、何にしようかなって考えて、ちょうどお姉ちゃんの町に住まわせてもらってるから街の歴史でも調べようかなって」
こなた「それでこの公園?」
ゆたか「この公園の事をおじさんに聞いたら昔、おばさんとよく来てたんだって、でも新しい公園でそっけなかったから、秋なのにトンボも飛んでないから寂しいね
     おばさんが言ってからこの公園に行かなくなったんだって、だからあまり詳しく教えられないって……お姉ちゃんは小さい時よく遊んだんでしょ?」
こなた「……まあね……」
この時初めてこなたは知った。なぜ父がこの公園に来ない訳を。何故ゆたかに話してこなたには話してくれなかったのか疑問と怒りが湧いてきた。
ゆたか「……この公園は昔工場だったから汚染が酷いって書いてあったけど……でも綺麗だね、こんなに沢山トンボがいっぱい、夕日に溶け込んでいるみたい」
つかさ「このトンボ達ね、こなちゃんが小さい時助けたトンボの子孫なんだよ」
ゆたか「そうですか、お姉ちゃんもこの景色おばさんに見せたかったんだ」
こなた「そんなんじゃない、あのトンボは死んじゃったんたよ、このトンボとは関係ない……」
ちょっときつい言葉で返した。これは父、そうじろうに対する怒りであった。八つ当たりだった。ゆたかもそれ以上何も言わなかった。
みゆき「しかしこの景色を見られるのも数年ですね、なんでもこの公園の池は埋め立てられて新しい公園にする計画があるそうです」
178 :赤蜻蛉  5 [saga]:2010/09/19(日) 11:38:40.76 ID:FIRHoZs0
かがみ「みゆき、なんでゆたかちゃんと一緒に?」
ゆたか「あっ、私が図書室でこの公園を調べていたら偶然に高良先輩に会って……一緒に調べてくれるって……それで……貴重な時間を私に割いてくれて……」
みゆき「お構いなく、私も学校周辺の地理には疎かったので丁度よかったです」
かがみは最近みゆきの付き合いが悪くなった理由が分った。安心したと同時に勉強中に言った事を反省した。
ゆたか「それにしても綺麗な夕日だね……お姉ちゃんの助けたトンボ……なんかこのトンボ達、池を守っているみたいだね……絵本を描きたくなっちゃった」
つかさ「ゆたかちゃん絵本描くんだ、こんど見せて」
ゆたか「……はい、それじゃ帰ってレポート纏めるから先に帰るね」
みゆき「泉さん、お宅にお邪魔します」

 みゆきとゆたかは何度も夕日を見ながら公園を後にした。
つかさ「ゆきちゃん、ゆたかちゃんの手伝いをしてたんだね、だから私達に会えなかったんだ」
かがみ「そのようね、しかしレポートまで手伝うなんて、過保護すぎるわよ」
そうは言っているが内心は嬉しかった。みゆきはかがみ達から離れている訳ではなかったからだ。


かがみ「どうしたこなた、さっきから池を眺めてばかりで、らしくないぞ」
かがみは知っててわざとそう言って会話に誘った。しかしこなたはその誘いに乗ってこなかった。
かがみ「赤とんぼの行列、とても綺麗よね、秋の夕焼けにこれほど会うとは思わなかったわ、これもこなたが小さい時トンボを助けたからかな」
こなた「かがみまでつかさと同じような事を言うんだ」
かがみ「そうよ、そう思ったから言ったまでよ、つかさやゆたかちゃんもそう思った、そう思った方がロマンティックじゃない」
こなた「かがみからそんな言葉が出るとは思わなかったよ」
煮え切らなかった。かがみはそんな答えは望んでいなかった。
かがみ「赤とんぼが大群になったのは最近になったからでしょ、おじさんに教えたの」
こなたは首を横に振った。
こなた「どうせゆーちゃんが教えるよ、それにこの池はなくなっちゃうし、今更そんなそんな事しったって……」

179 :赤蜻蛉  6 [saga]:2010/09/19(日) 11:40:02.82 ID:FIRHoZs0
突然かがみは池の辺りに向い歩き出した。赤とんぼの大群の中に入っていった。かがみが近寄ったので近くに止まっていたトンボはビックリして飛び出した。
こなたとつかさはかがみのする事を不思議そうに見ていた。かがみは頭上に左手を上げた。そして人差し指だけを空に向けた。
かがみ「こなたが助けたトンボの子孫はこの指にとまりなさい」
暫くすると一匹の赤とんぼがかがみの指に近づきしばらくホバリングしてから指に止まった。羽を休めている。
つかさ「すごーい、お姉ちゃん、そのトンボはこなちゃんが助けたトンボの子孫なんだ」
つかさは飛び上がって喜んだ。
こなた「かがみ、赤とんぼって尖がった所に止まるよね、それを知ってれば何だって言えるよ」
冷めた言い方だった。
つかさ「そうなの、私知らなかった」
かがみは指を揺らした。赤とんぼはビックリして飛んだがすぐまた戻ってきてまた指に止まった。
かがみ「そう、赤とんぼは尖った所に止まって羽を休める……つかさが同じ事をしたら私はこなたと同じ事を言うわね、私が何も言わなくてもこのトンボは
     私の指に止まった……幼いこなたがトンボを助けなくてもこの池は赤とんぼの大群でいっぱいになっていた……」
こなた「かがみ……」
かがみは自分の指に止まった赤とんぼを見ながら話しを続けた。
かがみ「確かにここの夕焼けは綺麗、でもただ綺麗なだけ、でもこなたの話を聞いたらもっと美しく見えてきた、今まで見てきたどの夕焼けより美しく見える、
     幼いこなたはそんな事をしたのよ……この指に止まっているのはこなたの助けたトンボの子孫のトンボなのよ」
つかさ「お姉ちゃん、こなちゃん見て、私も出来たよ」
少し離れた所でつかさがかがみと同じように指に赤とんぼを止まらせていた。
かがみ「こなた周りを見てみて」
こなたが池の周りを見ると、子供達がかがみの真似をして指に赤とんぼを止まらせて遊んでいた。
かがみ「こうゆう事よ……こなたがした事を誰かが見ていれば同じ事があれば真似をする……凄いわよ、初めてこなたを凄いと思った、あの時、幼いこなたを
     見た誰かは、溺れたトンボをきっと助けるわよ……助けたトンボが死んだなんて言わないで、私も、こなたのお母さんもきっと悲しむわよ……
     この美しい夕焼け、家族みんなで見たかったんじゃないの」
その時こなたは、母、かなたが見たかった夕焼けの風景、こなたと一緒に見たかった風景なのだと理解した。そしてその夕焼けが今そこに在る。
かがみの後ろに夕焼けの風景が広がる。
こなた「お母さん……うう」
こなたは泣き出してしまった。いままでかがみ達に見せなかったこなたの表情だった。かがみは思った。おじさんはこなたにそんな姿を見せたくなったんだなと。
つかさ「こなちゃん、大丈夫、どうしちゃったの?」
つかさがこなたの元に駆け寄った。

かがみ「まさか本当に私の指に止まってくれるなんて、中学の時の自由権研究でトンボを調べたのが役にたった」
囁くように赤とんぼに語りかけるとかはみややさしく手を振った。赤とんぼはゆっくりとかがみの指を離れ頭上のトンボの大群に合流した。空は真っ赤に焼けていた。
ひつじ雲も真っ赤。そこに真っ赤な赤とんぼ。かがみは目に焼き付けるように眺めた。綺麗な夕焼けを忘れないように。

かがみ「もう日が落ちたわね、赤とんぼも居なくなったわ、私とつかさはこのまま帰るわね」
こなた「ちょっと待って、折角だから夕飯食べてから帰ってよ、みゆきさんも居るし」
つかさ「どうするお姉ちゃん、ご馳走になるなら家に連絡しないと……久しぶりにゆきちゃんとも話したいな」
かがみは少し考えた、。なたの家にはみゆきが居る。明日話すつもりだったけど今日、今しかないと思った。
かがみ「たまにはいいかもね、ご馳走になるわ」
180 :赤蜻蛉  7 [saga]:2010/09/19(日) 11:41:50.07 ID:FIRHoZs0

こなた「お待たせ」
皆が食卓に座った。
かがみ「あれ、おじさんは?」
ゆたか「今日は出版社に用事があって遅くなるって言ってました」
かがみは少し残念に思った。公園のことを聞きたいとおもったからだ。こなた手製の料理。もちろんつかさやゆたかも手伝った。
会話も弾んだ。こなたも公園での出来事が嘘のように上機嫌だった。

こなた「かがみ、さっきはありがとう」
こなたが珍しく礼を言った。しかしかがみは返事をしなかった。
つかさ「こなちゃん、そういえば公園でなんで泣いていたの?」
みゆき「どうなされたのですか?」
ゆたか「どうしたの?」
こなたは公園でかがみがしたことを話した。

つかさ「お姉ちゃん、それで赤とんぼを手に止まらせたんだ、赤とんぼがお姉ちゃんに答えたんだね……」
ゆたかは言葉も出ないようだ。みゆきも暫くなにも言わなかった。
かがみ「赤とんぼが指に止まるとは思わなかった、いや、止まった時の台詞なんか考えていなかった……」
つかさ「えっ?、どうゆうこと」
つかさは驚き聞き返した。
かがみ「止まらなければこなたの助けた赤とんぼは死んだことになる……現実はそんなものだよって言うつもりだった……でも赤とんぼは私の指に止まった、
     吸い寄せられるように、振り払っても……また止まった……こなたが赤とんぼを助けたと言った、つかさが言った、トンボが池までにたどり着くまでの苦悩……
     そんな話を聞いてあの綺麗な夕焼けを見たら、赤とんぼが池に向かう所から今の大群になるまでの物語が頭の中に浮かんじゃなったのよ……
     後は何を言ったのか覚えていない……それだけよ」
かがみの目から涙が出ていたがそれに気が付いたのはつかさだけだった。つかさは不思議に思った。虫や昆虫の事でここまで語る事なんか今までなかったからだ。
それよりも自分のした事を否定するようなことをゆうかがみにつかさは怒りを覚えた。つかさはかがみを問い質そうとした。
みゆき「しかしその赤とんぼの夕焼けも見れなくなるようです」
かがみ「公園でも言ってたわね、みゆき、詳しく教えて」
つかさがかがみに聞くより早く話は変わってしまった。もうこの場では聞くことは出来そうに無い。
ゆたか「公園の池は調整池として臨時的に造ったものらしいのです、あの辺りに立派な調整池ができたのでひょうたん池は必要なくなった……」
かがみ「皆、あの池、なくすのは惜しいと思わない?」
かがみは真剣な面立ちで座っている皆に語りかけた。
ゆたか「あの池が無くなったら、赤とんぼも居なくなるね」
かがみ「そうでしょ、あの池は残すべきね」
こなた「残すってどうやって、私達は普通の高校生、どうせ何もできないよ」
こなたのこの一言に絶望感が漂った。
かがみ「こなた、あんた赤とんぼを助けた時、あの大群になると思って助けたか」
こなたは首を横に振った。
かがみ「でしょ、やってみなきゃ分からないわよ……どう、みんな私に賛成してくれる?」
皆は頷いたがこなたは頷かなかった。
こなた「具体的にどうするのさ……」
かがみは戸惑った。
かがみ「ごめん、何も思い浮かばない……」
みゆき「私もあの池をなくしてしまうのは悲しいです、それは皆さんも同じだと思います、今は何も出来なくても、その思いがあれば……」
この言葉にかがみは励まされた。
181 :赤蜻蛉  8 [saga]:2010/09/19(日) 11:43:55.74 ID:FIRHoZs0
かがみ「みゆき、ついさっきまでみゆきの事を悪く思ってた……ごめん」
みゆき「え、なんですか?」
勉強会の会話の事であったのはこなたとつかさはすぐに分かった。しかしこなた達も少なからずかがみと同じであったので何も言えなかった。
かがみ「最近、みゆきが付き合いが悪くなったってことよ、こうゆう事ならちゃんと言って欲しいわね」
みゆき「そうでした、私からも謝ります、ごめんなさい」
かがみ「話がそれたわね、とにかく池を埋めさせない方法を考えましょ」

 こうして夕食は終わった。こなたは泊まっていけばと誘ったがかがみ達は帰ることにした。
ゆたか「かがみ先輩達帰っちゃったね」
こなた「しょうがないよ、準備もしてないしね」
こなたは少し嬉しそうだった。
ゆたか「どうしたの、何か良いことでもあったの?」
こなた「いやね、かがみもなんだかんだ言って、かさと同じような所があったってね、初めてあの二人を双子らしいと思ったよ」
ゆたか「公園で赤とんぼを止まらせた話のこと?」
こなた「そう、本来ならつかさがやっても良かった、ふふ、夕食の時にあんな事言って照れ隠しして……」
微笑みながら嬉しそうに話していた。
ゆたか「それって、ツンデレって事?」
こなた「そうそう、ゆーちゃんも分ってきたね」
ゆたか「んー、よく分からないよ、言ってみただけ……かがみ先輩、物語が浮かんだって言ってたけど私も浮かんだよ、多分かがみ先輩と同じだと思うけど
     本当に絵本描きたくなっちゃった」
こなた「それなら描いてみればいいじゃん」
ゆたか「うん」

 一方柊家。つかさは釈然としなかった。夕食でかがみが言った言葉。『赤とんぼが手に止まるとは思っていなかった』そして『現実はこんなもの』と言おうとした。
冗談でも酷いと思ったからだ。公園でこなたはお母さんの事を思っていたに違いない。それなのにかがみはあんな事を。居ても立ってもいられなかった。
つかさはかがみの部屋に向かった。そしてドアをノックする。
つかさ「はいるよ、お姉ちゃん」
ドアを開けてつかさの顔をみたかがみは驚いた。怒っていたからだ。
かがみ「どうしたのよ」
そう言うしかなかった。思い当たる節がない。
つかさ「お姉ちゃん、お昼なんであんな事言ったの?」
かがみ「あんな事ってどんな事よ」
いきなり詰め寄ったのでかがみも少しきつく返した。
つかさ「公園であんなに凄いことをしたのに……なんであんな事を言うの、あれじゃこなちゃん可哀想だよ」
かがみ「あんな事……つかさ落ち着いて、分るように説明して」
かがみはつかさをなだめた。
つかさ「夕食の時のお姉ちゃんだよ」
かがみは思い出した。
かがみ「ああ、あれね……今頃こなたのやつツンデレとか言ってるかもね……言ったのはそう思ったからよ、嘘を言ってもしょうがないでしょ」
つかさ「もし、もしも、赤とんぼが本当に止まらなかった本当に『そんなものだよ』って言ってたの」
かがみ「そうね……確かにそう言ってた、でも赤とんぼはそう言わせなかったわね」
かがみは急に悲しい顔になった。しかしつかさはまだ理解できなかった。かがみはそれを察したようだ。話したくなかったが話すしかないようだ。
かがみ「……中学校二年生の時、夏休みの自由研究の宿題……私と日下部で昆虫の地域分布を調べた」
つかさ「中学……ああ、そういえばお姉ちゃんそれで学年賞とったよね、県の展示会にも……なぜ男の子がするような研究なんかしたの?」
かがみ「夏休み前、よくは覚えていないけどクラスの男子と喧嘩したのよ、それで勝負した、昆虫の研究でどちらが優秀かってね……」
つかさ「……そうなんだ」

かがみ「そうね確かにあれで賞を取った、でもね、ぜんぜん嬉しくなかった……」
182 :赤蜻蛉  9 [saga]:2010/09/19(日) 11:46:49.38 ID:FIRHoZs0
 かがみは一回間を置いてから話し出した。あまり話したくなかった。でもつかさならとも思ったからだ。
かがみ「日下部は昆虫採集が上手かった、お兄さんがいるからかしらね……虫かごにいっぱい捕まえてね、蝉、蝶、トンボもいた、私は昆虫を捕まえることができなかった
    から昆虫を標本にした……つかさ、標本にするってどうするか分かる?」
つかさは首を横に振った。
かがみ「薬を使って殺すの、暴れないように、傷つけないようにね、そしてお湯に浸けて柔らかくして形を整えて、防腐剤を入れて乾燥させる
     ……蝶とか羽が出ている昆虫はまた違った処理をする……私は何匹もそうやって標本にした……まるで人形を作る感覚だった、生き物であったこと
     なんてこれっぽっちも思わなかった……公園で腕を上げるまではね……」
つかさ「お姉ちゃん……」
かがみ「そんな私の指にに何の疑いも無くあの赤とんぼは止まった、しっかりと私の指にしがみ付いて……羽を休めたのよ、何匹も殺した私の指に……この時、
     賞を取っても嬉しくない理由が分かった、峰岸が参加しなかった理由も分った、指に止まった赤とんぼが生きているって事が分ったのよ……
     急に胸が熱くなった……後はつかさが見てきた通り」
つかさは夕食の時のかがみの涙の理由が分った。そして、かがみが池を守ろうとしている理由も分った。つかさの顔から怒りの表情はすっかり消えていた。
かがみは押入れから数個の箱を取り出した。それは昆虫標本だった。
つかさ「それをどうするの?」
かがみ「せめて土に返してやりたくて……」
つかさ「埋めるの、でも、日下部さんと共同でやった研究でしょ、いいの、そんな事して?」
かがみ「さっき日下部に携帯で連絡した、好きにすればいいって……」
かがみは部屋を出て庭に向かった。庭に出て埋めるところを探していると。懐中電灯とシャベルを持ったつかさがやってきた。つかさは懐中電灯で
適当な場所を探して掘り始めた。
つかさ「私も家に入ってきたゴキブリとかハエとか殺してきたけどお姉ちゃんみたいな気持ちにならなかった」
かがみ「つかさ、ハエは分るがゴキブリは大丈夫なのか、見ただけで失神しそうな気がするが」
つかさ「うん、普段は見ただけで逃げちゃう、でも家の台所にいると何故か平気なんだよ」
守るべきものがあれば人は変わるのか。かがみはそう思った。
かがみ「私だって今ゴキブリが出たら叩くわよ、それはゴキブリやハエが害虫だからよ、良いとは思わないけどそれはしょうがないわね……衛生面からもね、
     でも、思えば、蚕や蜜蜂は益虫って言ってるけど、虫から見たら迷惑な話かもね」
つかさ「高校生にもなって虫の話をするなんて面白いね」
かがみ「高校生になったからこうゆう話ができるのよ、虫、虫ってバカにしてるけど、数億年前からこの地球に居るんだから見習うべき所もきっとあるはずよ、
     恐竜の滅亡の時だって生き残ったんだからね」
つかさ「お姉ちゃん凄い、賞を取ったのも分るよ」
つかさの言葉はかがみにとってあまり嬉しいものではなかった。
かがみ「違う、今言った事、あの時は少しも思わなかった、調べた事を並べただけ、みゆきの方がきっともっと気の利いた事を言うわよ……
     こなたがとんぼを助けた話を聞いて、公園の夕焼けがなかったらそんな気持ちにはなれなかった」
つかさ「お姉ちゃんは教えてもらったね、賞をもらったことよりもっといい物を、私も……教えてもらったよ」
かがみ「そうかもしれない……」
かがみが物思いに耽っているとつかさがごそごそとし始めた。
つかさ「私、あの夕焼け撮ったよ」
つかさは携帯電話の画面をかがみに見せた。
かがみ「私は撮らなかった、この目に焼き付けた、忘れないようにね」
つかさ「ひょうたん池、残るといいね……」

 この後の会話はなかった。まだかがみは池の事をどうしたらいいかわからかった。
シャベルで掘った穴の中に標本にされた昆虫達をかがみとつかさで埋葬してあげた。蝶や蝉、甲虫、トンボ類もいた。綺麗に腐ることもなく、カビも生えず当時のままの
状態で保存されていた。かがみの標本を作る技術の高さが伺える。しかしどんなに防腐処理をしても土に埋められたらいずれは腐り土に返るだろう。
止まっていた。いや、止めていた時間が動き始めた。かがみはそれを心の中で感じていた。
183 :赤蜻蛉  10 [saga]:2010/09/19(日) 11:47:51.20 ID:FIRHoZs0
 こなたが助けた赤とんぼ。こなたは死んだと思っていた。本当ははどうなったのだろうか。こなたが逃がした時はかなり衰弱をしてた。死んだのか。
いや、彼は生きていた。こなたが彼を解放した時、彼は自分の活きが悪いから捕食に値しないからと思ったにすぎなかった。彼は三日三晩草に掴まり羽を休めた。
しかし傷ついた羽は治ることはない。彼は試しに飛んでみた。彼は再び空を飛ぶことが出来た。でも、もう遠くに行くことはできない。この池で生活するしか
なかった。周りには仲間は見当たらない。彼は餌を捕りながら仲間を探した。見つけた。一匹の雌の赤とんぼ。彼らは結ばれ。数千個の卵をこの池に産み一生を終えた。
池の汚染は酷かった。次の年、成虫になれたのは数匹にすぎなかった。その子供達は何故かまたこの池に戻ってきた。それは天敵が居なかったからだった。
彼の子孫は毎年この池で産卵をした。他のトンボもこの池で産卵をしたが汚染のせいか彼の子孫しか生き残らなかった。十五年を過ぎると自然の浄化作用で池の汚染が
少なくなり一気に数が増えた。かがみの指に止まったのも、こなたの指に止まったのはこなたが助けたトンボの子孫だった。

 標本の昆虫は全て土の中に埋葬された。
かがみ「これで私が許されるとは思わないけど何かすっきりしたわ、さて、少し寒くなってきたわ家に入りましょ」
つかさ「待ってお姉ちゃん」
つかさはかがみを呼び止めた。もう庭には用はないはずだった。
かがみ「なに?」
つかさ「耳を清ませてみて、聞こえない?」
かがみは目を閉じて耳を清ませた。
かがみ「聞こえるわね、コオロギね、さすがに鈴虫はいないわね……驚いた、マツムシの音が聞こえるわ、こんな街中でも居るのね」
つかさ「シー」
つかさはかがみを止めた。かがみの声のせいかどうかは分らないが虫の音が止まってしまった。かがみは慌てて自分の両手で口を押さえた。暫くすると虫の音が始まった。
かがみは再び耳を清ませた。秋夜の虫の音。夕焼けに飛ぶ赤とんぼとは違った感情が湧いてきた。
終わり行く秋を惜しむ切ないような歌声に感じた。かがみはふとつかさを見た。
つかさは目を閉じて虫の音に聴き入っていた。埋葬した標本にされた昆虫達に祈っているようにも見える。言葉はもう要らないとかがみは思った。
かがみもつかさと同じように目を閉じて聴いた。秋の夜の少し冷たい風が二人を通り抜けた。風に乗って遠くの虫の音が混ざってくる。ただ静かに二人は聴いた。
この虫達の音を忘れないように……。

……
……
 
184 :赤蜻蛉  11 [saga]:2010/09/19(日) 11:49:02.27 ID:FIRHoZs0
 仕事も一段落をして久々に家でのんびりとできる休日だった。気が付くともうお昼を過ぎていた。これでも寝たり無いくらいだったがさすがにおなかが空いた。
そうじろうは台所に向かった。適当に食事を済ませると居間に行った。居間に行くのは久しぶりだった。原稿を書くためにほとんど自分の部屋と台所の往復
しかしていなかった。たまに台所でこなたやゆたかと会うくらいだった。居間でテレビでも見ようとリモコンを探していた。テーブルに画用紙が数枚置いてあった。
そうじろうは手にとって見てみた。風景画のようだ。夕焼けの景色か。こなたは絵心が親の目からもあるとは言えない。するとこの絵はゆたかが描いたのか。
よく見ると赤とんぼが空いっぱいに描かれてる。どこの風景だろうか。この近所にあったか。それとも学校付近なのか。
そうじろうはしばらくその絵を見ていた。するとこなたがドタドタと慌しく居間に入ってきた。
こなた「あ、お父さん、お父さんのカメラ貸してくれないかな」
会うなりいきなり貸してくれときた。何事かと思った。
そうじろう「なんでだい」
こなた「公園の風景を撮りたくてね」
そうじろう「風景なら携帯でも充分だろう、それに風景なんか撮ってどうするんだ」
こなたはそうじろうが持っていた画用紙を取った。
こなた「ゆーちゃんが絵本を描くって言ってね、公園の夕焼けなんだけど、どうしてもイメージどおり描けないって、でもちょっと今調子が良くないんだよ」
そうじろう「だから写真を撮ってやろうと?」
こなたは頷いた。
こなた「携帯だとトンボまでちゃんと撮れない」
そうじろう「トンボ?」
こなた「いいからカメラ貸してよ」
そうじろうの問いを無視するかのようだった。
そうじろう「デジカメなら居間に置いてあるのがある、もっと良いのがいいなら倉庫から出すが」
こなた「あった、これでいいよ」
こなたは画用紙をテーブルに置くとデジカメを手に取り居間を出ようとした。
そうじろう「まだ夕焼けには時間があるぞ、もうすこし経ってからでいんじゃないか?」
こなたは無視し、玄関まで来ると立ち止まりそうじろうの方を向いた。
こなた「お父さんも来る?」
ぽつりと言った。娘に買い物にさえ最近は誘われたことがない。断る理由はなかった。そうじろうは支度をした。

 居間にゆたかの絵をおいたのはこなただった。しかもそうじろうに分るように目立つところに置いた。そうじろうは絵を見ていたようだったがこなたの期待したような
反応がなかったからだ。ほんとうはそうじろうの方から誘ってもらいたかった。それなら直接公園に連れて行くしかないと思った。
一方そうじろうの方はこなたがやけに機嫌が悪いと思っている程度だった。
185 :赤蜻蛉  12 [saga]:2010/09/19(日) 11:50:55.93 ID:FIRHoZs0
 公園に着いた。
そうじろう「公園ってこの公園か?」
こなた「そうだよ」
そうじろう「久しぶりだな」
この言葉を待っていた。こなたは期待に胸を膨らませた。
そうじろう「ここに来るのはかなたと来た以来だな」
そうじろう、父はこなたと一緒にこの公園に来ていたことをすっかり忘れている。
こなた「本当にここに来たの一回だけ?」
念を押すこなた。そうじろうは覚えていない。答えようがなかった。
こなた「こっち来て」
こなたはそうじろうの手を引いた。池の一角に連れてきた。
こなた「お父さん、ここだよ、覚えていない?」
そうじろう「一体なんだ、分らん……」
こなた「覚えてなんだ……私は覚えてるよはっきり、お父さんが私をこの公園に連れてきた時の事をね」
そうじろう「そんな、はずはない……」
こなたは池の水面も指差した。
こなた「ここで傷だらけの赤とんぼが溺れていた、それを助けた、その時のお父さんの悲しげな顔も覚えてるよ」
そうじろう「何時の頃……」
こなた「小学校に入る前、もっと小さい時……その傷ついたトンボ……その子孫達が今、大群になって……」
そうじろうは笑った。
そうじろう「はは、こなた、この公園は化学工場の跡地なんだ、水質汚染が酷くね、トンボどころか魚だって三十年は生息できないと言われている」
こなたは池の中央を指差した。そこには沢山の赤とんぼが水面スレスレに飛び交っていた。
こなた「……かがみ達と来た時の半分くらいに減っちゃった」
そうじろうは息を呑んだ。これで半分。信じられなかった。田舎の田園風景を見ているような光景だった。その時、居間で見た絵を思い出した。
夕焼けに飛ぶ沢山の赤とんぼの絵。
そうじろう「あの絵は、この公園の絵だったのか」
こなた「そうだよ」

 そうじろうはかなたとできたばかりのこの公園に来た。綺麗な公園だったが何かが足りなかった。ブランコやジャングルジム、植木や、草花も植えてある。池もあった。
でもなにか無機質な感じがしていた。かなたがこの池に赤とんぼでもいれば夕焼けが綺麗だろうと言っていた事を思い出した。そして池を見に行った時、
池に赤とんぼの死骸が浮いていたのを見た。

こなた「お父さん、この公園の話、ゆーちゃんには話して私には話さなかったね」
思い出している最中、こなたはぽつりと呟くように話した。
そうじろう「ゆーちゃんは何か調べ物をしていたからな……いろいろ質問されてね、こなたは、なにも聞いてこなかった」
こなた「何もって、それが理由なの、お母さんの話はいろいろ聞いてきた、その話は私から聞いた話は少なかったよ、お母さんと来たこの公園、そんなに嫌いなんだ」
そうじろう「嫌いって訳じゃない……どうした、こなたらしくないぞ」
186 :赤蜻蛉  13 [saga]:2010/09/19(日) 11:52:32.77 ID:FIRHoZs0
 今日はいやに絡んでくる。こなたに話さなかったから焼き餅でも焼いているのか。難しい年頃になってきた。小さい頃はもっと素直だった。小さい頃、
そう思いながら幼い頃のこなたの姿を思い出した時だった。かなたが池に浮いていた赤とんぼの死骸を掬い上げたのを思い出した。
そしてそのとんぼを見ながら、このとんぼがこの公園いっぱいに飛んだ夕焼けを見たいと言っていた。
こなた「お父さん、黙ってるけど思い出した?」
三十年はないと思っていた光景。しかし今となっては三十年が二十年になった所でなんの変りもない。全てが遅すぎた。しかしこんな事を言えばこなたはもっと怒るだろう。
そうじろう「お父さん、仕事で疲れていたんだ……悪いが先に帰らせてもらうよ」
そうじろうは体を公園の出口に向けた。
こなた「お父さん、帰っちゃうんだ……かがみ達と来た時、私は帰らなかった」
そうじろう「もっと調子が良くなったら来るよ、また今度だな」
そうじろうは足を進み始めた。
こなた「お父さん、また今度はないよ、あの池は埋められちゃうかもしれない、そうなったらもう見れないよ」
そうじろうの足が止まった。
そうじろう「何故、あんなに沢山いる赤とんぼをわざわざ消す……しかし、もうお父さんには関係ない話だ」
こなたは思った。かがみ達と来た時の自分と同じだと。
こなた「お父さん、こっち向いて」
そうじろうはこなたの声のする方に向いた。こなたは池の直ぐ近くに立っていた。こなたと目が合うとこなたは左腕を空高く上げて人差し指だけを空に向けた。
こなた「お父さんのとなりにお母さんが見えるトンボはこの指とーまれ」
するとこなたの近くに居た赤とんぼがこなたの指に近づきホバリングをして止まった。丁度赤とんぼはそうじろうの方を向いていた。
こなた「ほら、お父さん止まったよ、このトンボには見えるんだよお母さんが」
そうじろうは笑った。
そうじろう「赤とんぼの習性を利用したな、子供の頃、そうやって赤とんぼを捕まえたもんさ」
こなたは腕を下ろし笑い返した。
こなた「ふふふ、私とまったく同じこと言ってるよ、やっぱり親子だね……指に赤とんぼが止まるのは分ってた、どんな台詞でもいいよね」
そうじろうはこのたの指に止まっていた赤とんぼを目で追っていた。こなたの頭上でホバリングしばらくすると。こなたの頭の上、アホ毛に止まり羽を休めた。
こなたはそれにまったく気付いていない。こなたは話を続けた。
こなた「かがみは私が赤とんぼを助けたのを褒めた……かがみが私を褒めたのはあれが初めてだった、普段は貶しあってばかり、あの時のお父さんみたいに褒めた」

この公園で……。こなたはそうじろうを引き止めようとかがみと来た時の話をしている。しかしそうじろうにはその話は聞こえていなかった。
こなたを褒めた。この言葉がそうじろうの頭に響いていた。
あれは車で買い物に行った帰りだった。こなたが急にトイレに行きたいと言い出した。もうすぐ家に着くからと言ったが我慢ができないと言う。
仕方がなくこの公園の脇に車を止めて公園のトイレに連れて行った。そして車に戻る時、こなたが私に傷だらけの赤とんぼを見せた。そうじろうは思い出した。
たしかに幼いこなたをこの公園に連れてきていた。連れてきたと言うよりは来させられたようなものだった。なんでそんな事をこなたは覚えていたのか不思議におもった。
そうじろうはこなたを見た。まだこなたの頭には赤とんぼが止まっていた。こっちを見ている。そして首を小刻みに傾げている。そうじろうの隣りを見ているように。
こなた言うように隣にかなたがいるかのようだ。

そうじろうは思った。幼いこなたが持っていた傷だらけの赤とんぼ。かなたが掬った赤とんぼと重なった。その当時まだこの池はトンボは一匹も飛んでいなかった。
急にそうじろうは悲しくなってしまったのを覚えていた。それに追い討ちをかけるように幼いこなたは『死ぬって何』と聞いてきた。説明できなかった。
しかしこなたは傷ついた赤とんぼを草に逃してあげた。思わずそうじろうはこなたを褒めた。何も出来ない自分。それ以来この公園の出来事は思い出さないようにしてきた。
そういえばこなたにはかなたの死について正面向いて話していない。二十歳になってからとも思ったが正直今でもまともに話せる自信がない。
自分自身が一番かなたの死に正面から向いていなかった。そう思った。しかしこなたはトンボを逃がした時、すでに全てを知ったのかもしれない。
187 :赤蜻蛉  14 [saga]:2010/09/19(日) 11:53:36.97 ID:FIRHoZs0

こなた「ちょっと、お父さん聞いてるの?」
やや怒った口調だった。そうじろうは聞いていなかった。しかしこなたが何を言っていたのかは想像がついた。
そうじろう「……いい友達を持ったな、大事にしなさい」
こなた「え、まぁ、そうする……」
こなたはなにか煮え切らなかった。その時、こなたの頭に止まっていた赤とんぼが飛び出した。それにこなたが気が付いた。こなたは頭を触った。
そうじろう「さっき指に止まったトンボだ」
こなた「黙って見てたんだね、何故教えてくれなかったの」
そうじろう「トンボがお父さんを見ててね、帰るのはまだ早いって言うんだよ……夕焼けを見なさいってね、そう言っているような気がした」
こなた「もうすぐ夕方だね……やっとお母さんの願いが叶うね、赤とんぼの夕焼けが見られる」
ゆたか「おじさん、お姉ちゃん、やっぱりここだった」
二人は声のする方に振り向いた。そこにゆたかの姿があった。
こなた「ゆーちゃん、調子は大丈夫なの?」
ゆたか「うん、もう大丈夫、やっぱり写真じゃ本当の景色は描けないと思って」
ゆたかは画用紙を持っていた。池の近くのベンチに腰を下ろすとクレヨンをバックから取り出した。
そうじろう「クレヨンで色をつけたのか……」
ゆたか「うん、水性、油性は難しいから、クレヨンで色をつけてる、やっぱり子供っぽいかな」
そうじろう「いや、大人でもでもクレヨンを使ってる人はいる、独特な感じを出すためにね、ゆーちゃんの絵にピッタリだ」
ゆたか「ありがとう」

 夕焼けの時が来た。ゆたかは画用紙に向かって絵を描き始めた。そうじろうは観た。思っていた以上の光景だった。今日は雲ひとつ無い快晴。
沈み行く太陽がはっきりと見えた。そらが黄金色に染まった。それを背景にして赤とんぼが池の上を大群で飛んでいた。

こなた「さてと、もうそろそろ帰らなきゃ、夕飯の支度もしないといけないしね」
ゆたか「私も帰る」
こなた「絵はいいの、まだ色はついていないみたいだけど?」
ゆたか「うん、色は帰ってからつけるんだよ、頭の中で思い出しながら付けた方がうまく行くような気がするから」
こなた「お父さんは?」
そうじろう「お父さんはもう少しここに居る、悪いな、夕飯の支度手伝えなくて……」
こなた「いいよ、ゆっくりお母さんと、たっぷり夕焼けを観て……行こうゆーちゃん」
188 :赤蜻蛉  15 [saga]:2010/09/19(日) 11:55:01.39 ID:FIRHoZs0
 帰り道、ゆたかは不思議そうな顔をしながらこなたに質問をした。
ゆたか「お姉ちゃん、あの赤とんぼが大群になるようになったのは何時なの、高良先輩といくら調べてもどこにも載ってなかった」
こなた「私も毎年あの公園に行ってるわけじゃないけど、中学三年の頃はあれほどじゃないけど居たね」
ゆたか「おじさん、あの公園にトンボが居ること知らなかったみたいだけど……もっと早く教えてあげられたような気がする」
こなた「あの公園でお母さんとお父さんが何か関係していたのは薄々分っていたよ、ゆーちゃんの話でかがみもすぐ気が付いたくらいだしね、でも……言えなかった」
ゆたか「どうして?」
こなた「怖かったから……」
ゆたか「怖いって……よく分からないよ」
こなた「お父さんの口からお直接母さんが亡くなったって聞くのがね」
ゆたか「え、聞いてないって……おじさん、私とお姉ちゃんと一緒におばさんの事色々話していたよね?」
こなた「自然に分った、周りの雰囲気とか、親戚の話とか……仏壇があれば自然にね……そう……お父さんは私に話してくれなかった、お父さんはよくお母さんの話を
    する、でもお母さんが死んだことは話さない、だから私はお母さんはと聞かれると居ないって言うんだ……そう、居ないって、かがみやつかさ、みゆきさんにも
    聞かれたときそう言った……お父さんはずるいよ、お母さんとの惚気話ばっかり聞かせて……今でも生きているような話し方でさ、肝心な事は話さない、
    だから私の中にはまだお母さんが生きている、話したこともないのに……でも……このままでもいいとも思っちゃうんだよ……」
ゆたか「そうだったんだ……」
ゆたかは気が付いた、先日公園でゆたかに怒っていたのはこの事だったんだと。そうじろうの話を聞いていると確かにリアリティがあった。かなたの性格や
こんな時はこんな事をするんじゃないか。そんな事が分る。親戚といえども会ったこともない他人の母親なのに。
こなた「可笑しな親子でしょ、笑っていいよ」
ゆたか「そんな事ないよ、そうゆう話って言い辛いよね、何となく分るよ」
こなた「さっき、それが聞けたとおもったんだけどね、でもお父さんはぐらかしちゃってね……ゆーちゃんとしか話さなくなった」
ゆたか「それならお姉ちゃんから聞いてもいいような気がするけど」
こなた「それもいいかな……だからあの公園にお父さんを誘った……ゆーちゃんの絵を利用しちゃったけどね」

 しばらくしてゆたかが思い出したように質問をした。
ゆたか「ところで、公園の池、ひょうたん池の事なんだけど……」
こなた「埋められちゃうって話だね……かがみもどうしていいか分らないみたい、みゆきさんは署名運動するのがいいて言ってたけど……そこまでする気はしない」
ゆたか「絵本が何かの役に立つかな」
こなた「どんな絵本にするの?」
ゆたか「あの公園が舞台、長旅で傷ついた赤とんぼを女の子が助けるの、その赤とんぼの子供達が恩返しするお話だよ」
こなた「……その女の子って?」
ゆたか「もちろんお姉ちゃんがモデルだよ」
こなたの顔が赤くなった。しかし夕焼けのせいでゆたかは気付かなかった。
こなた「なんか恥ずかしいな……」
ゆたか「大丈夫だよ、絵本だから誰だか分からないよ」
こなた「ゆーちゃん、この前なんだけど、怒鳴っちゃって……ごめん」
ゆたか「この前って、かがみ先輩達が居たときのこと?」
こなたは頷いた
ゆたか「うんん、気にしてないよ」
 
 こなた達が夕食の準備が終わった頃、そうじろうが帰ってきた。そうじろうの顔はいつになく真剣な顔だった。

そうじろう「こなた、夕食の前に話がある、大事な話だ、聞いてくれるか?」
こなたとゆたかは顔を見合わせた。
こなた「いいよ」
短くそう答えた。
ゆたか「おじさん、私も聞いていいですか」
ゆたかは聞きたかった。いづれ、いつの日か自分も同じ話を聞く、話す時が必ず来ることを知っているから。そうじろうは頷いた。

189 :赤蜻蛉  16 [saga]:2010/09/19(日) 11:56:17.12 ID:FIRHoZs0

 そうじろうはこなたの目を見ながら話した。
そうじろう「こなた、かなた……お母さんは、こなたを生んだ後、暫くして……亡くなった」
こなた「あれ、おかしいな、ずーと前から知っているはずなのに、もう……高校生だよ……かがみの時で最後だと思ったのに、なんでかな、また涙が出てきたよ……
    なんで……なんで、もっと、もっと早く言ってくれなかったの……お父さん……」
こなたは泣き出した。そうじろうもこの言葉をいうのが精一杯だった。二人はその場に泣き崩れた。

 ゆたかは二人を見て思った。二人の心の中ではまだかなたが生きていた。そして今本当にこの世に居ない事を確認したのだと。
二人の止まっていた時間、いや、止めてしまった時間が動き出した。これからはお互い普通にかなたの事を語り合うことができるようになるだろうと思った。
公園の赤とんぼはこなたに恩返しをした。絵本のように。ゆたかは潤んだ瞳で二人を見ていた。
……
……
 いつもの四人が学校の図書室でいひょうたん池について話していた。
かがみ「署名運動……本気か、こなた」
こなたは頷いた。かがみはこなたの目をみた。ふざけている様には見えない。
かがみ「無理よ」
短くそう呟いた。
こなた「高校生でできるとしたらこのぐらいだよね、他になにか方法あるとも思えないよ、それにかがみが言い出したんだよ、池を守りたいって」
かがみ「確かにそうは言ったけど、署名運動はそんなに簡単にいかないわよ、チラシを配るのとは訳が違う、有権者……つまり大人の署名が必要」
かがみも薄々は気が付いていた。この方法しかないと。踏ん切りがつかなかった。自信がなかった。
みゆき「アキアカネは一年一世代、池が無くなればその池のトンボは全滅でしょう」
つかさ「お姉ちゃんそれでいいの、もうあの夕日見れなくなっちゃうよ、それに標本の虫達もだって悲しむよ」
みゆき「標本?」
つかさ「うん、お姉ちゃんが中学生の時……」
かがみ「つかさ止めなさい、話さなくていい」
かがみはつかさを止めた。
こなた「かがみ、何があったのかは知らないけど私はもう時間を止めるはいやだ、だからやれるだけの事はしたい」
かがみ「時間を……止める」
がみはいままでのこなたとは違う何かを感じた。それよりもこなたの言葉に心が動かされた。
かがみ「……署名運動、やってみてみてもいい、でも皆の意見も……」
こなた「それじゃかがみ、家に来て続きを話そう、もうゆーちゃん、ひよりん、南ちゃんはもう家で絵本の準備をしてるから」
みゆき「日下部さんと峰岸さんにはもう連絡はついています」
こなた「それじゃ一時間後、家で」
かがみは二人を見ていた。こなたとみゆきは打ち合わせしているかのように動き出した。そして図書室を飛び出すように出て行った。かがみ一人図書室に取り残された。
190 :赤蜻蛉  17 [saga]:2010/09/19(日) 11:57:38.97 ID:FIRHoZs0
 かがみ「なによ、もう決まってるじゃない……日下部と峰岸にいつの間に言ったんだ……」
独り言を言って席を立ち図書室を出た。図書室出るとつかさが待っていた。つかさは苦笑いをしていた。
かがみ「私に内緒で話を進めてたのね、まったく、そらならちゃんと言いなさいよ」
つかさは片腕を上げてごめんねのポーズをした。
つかさ「お姉ちゃんあまり乗る気じゃなかったように見えたよ、だからこなちゃんがね、先に話を進めていたんだよ……でね、今日お姉ちゃんをあの時に戻すって」
かがみ「戻すって……そんな事はない、私は今でもあの池を守りたいと……そんな風に見えた?」
つかさ「最初の頃の意気込みが無くなってから」
確かにそうだった。自分から言っておいて自分からは何も決めようとしてなかった。それどころかこなたの提案を反対した。かがみは黙ってしまった。
つかさ「お姉ちゃん、さっき私の話止めたけど、中学の標本の話、こなちゃんにもう話しちゃったんだ……」
かがみ「……そう、止めること無かったのか、さぞかし笑われたでしょうね……」
つかさ「うんん、笑ってなかったよ、お姉ちゃんってツンデレじゃなかったって言ってた」
珍しいこともあるもんだと思っていた。こなたの大笑いの姿がかがみの目に浮かんだ。
つかさ「こなちゃんがね、喧嘩して競った男の子の事お姉ちゃんが好きじゃなかったんじゃないかなって言ってたよ……気を引くために自由研究で競って……
    いつの間にか賞を取ってしまって……お姉ちゃん勝ったから男の子が気を悪くしちゃって……」
かがみ「告白出来なかった……日下部も知らないはずなのに、こなたの奴、あの話だけでそこまで分るならギャルゲーもバカにしたものじゃないわね」
つかさ「えっ、こなちゃんの言ったこと本当だったの、こなちゃんの想像の話だと思ってた」
こなたの感性が鋭いのか、つかさが鈍感なのか、今のかがみにはそれはあまり興味のないことだった。
かがみ「彼との勝負に勝つつもりはなかった、でも日下部と共同研究だったから手が抜けなかった、それだけよ……もう終わった事……」
しかし心の中では終わっていなかった。中学卒業まで何度告白しようとしたか。結局それは出来なかった。それが今でも尾を引いていた。
中学時代は一年しかクラスは同じではなかった。高校も別になり彼との接点は皆無である。自由研究で競うのではなくもっとストレートに『好きです』
と言えば良かった。たった一言なのに。結果が同じならば……どうせ同じならせめて自分の意思を伝えたかった。

 黙っているかがみにつかさが問いかける。 
つかさ「こなちゃんの話、お姉ちゃん以外には話さないように言われた、私って言わなくていいことまで言っちゃうからって……そんな事ないよね?」
こなたは標本の話をすでに知っているのに図書室ではすこしもかがみを茶化すような態度を取らなかった。しかも標本の話を自分は知らない素振りをしていた。
そんなことより署名運動をしたいと言った姿はとても今までのこなたとは思えないほど大人びて見えた。
かがみ「あいつ、変ったわね……」
つかさ「あいつって、こなちゃんのこと?」
かがみ「そうよ、何があったんだ」
つかさ「……それなら知ってるよ……あっ」
つかさは自分の両手で口を塞いだ
かがみ「話しなさいよ」
つかさ「お姉ちゃんが図書室で反対するようなら話しても良いって言ってた……お姉ちゃん賛成したから……話せない…よ」
かがみ「そこまで話して何言ってるのよ、図書室に戻るわよ、それに私は一度反対したから聞く権利はあるわよ」
かがみはただこなたの熱意に流されて賛成したにすぎなかった。こなたの心境の変化の真意が知りたかった。かがみは図書室に戻ろうとした。
つかさ「お姉ちゃん、もう時間だよ、こなちゃんの家に行かないと遅れちゃう」
初めてつかさは言わなくてもいい事の意味を理解した。しかし少し遅かったようだ。
つかさはその場を逃れようとした。かがみは腕時計を見た。
かがみ「こなたの家なら急げば三十分で着くわよ、さあ、来なさい」
こうなったら何を言っても許してくれそうにない。つかさは諦めた。二人は図書室に戻り席に着いた。
つかさ「えっと……この前ね、こなちゃんとおじさんが公園に行ったんだって……」
……
……
191 :赤蜻蛉  18 [saga]:2010/09/19(日) 11:58:23.48 ID:FIRHoZs0
かがみ「待たせたわね、私……」
かがみは何もしていなかった事を謝ろうとした。
こなた「かがみ、その先は言わなくていいよ、皆がもう待ちくたびれてる、さーて、主役が来たから始めよう……発起人だからね」
こなたの言葉に思わず涙ぐむところだったが堪えた。
つかさとかがみは約束の時間から三十分も遅れてこなたの家に着いた。つかさの話はそこまで遅れるほど長くはなかった。それなにになぜ遅れた。
それはがみの涙の跡が消えるのを待つのに時間が掛かったからだった。こなたには見せたくなかった。次に泣く時はひょうたん池が助かった時にと決めたのだった。
それからのかがみは率先して意見を言うようになった。そこに迷いはもうなかった。かがみのもう一つ止まっていた時間も動き出した。


 数日後、駅前で署名運動をしているこなた達の姿があった。初めは一日に数名程度しか書いてくれる人がいなかった。中には心無い人の非難を浴びた。
学校でも冷かされたりした。それでも彼女達は止めなかった。止めてしまえば池が埋められてしまうから。
署名してくれた人には手作りの絵本が渡された。絵本の資金はそうじろうが出した。絵本に描かれていた夕焼けの風景。赤とんぼの大群。その絵本を見た人の中で
次第に公園にその夕焼けを観に行く人たちが増えてきた。その人たちの中に署名運動を手伝う人々が出てきた。
こなた達は卒業したがそのまま署名運動は続いた。この頃になると非難は鳴りを潜めて署名する人々が一気に増え始めた。
二年後、署名人数は目標を大きく上回った。こなた達は市長に署名簿を提出した。
……
……
 こなたとゆたかが公園のひょうたん池に居た。ゆたかが悲しそうに夕日を見ていた。
こなた「ゆーちゃんもう行こう、日が沈んだよ」
ゆたか「お姉ちゃん、もう少し観ていたい」
こなた「そうだね、家でもうこのひょうたん池を見るのも最後、赤とんぼ達にさよなら言わないとね」
ゆたか「うん……さようなら……ひょうたん池……さようなら……赤とんぼ……」
もう時間がないようだこなたは腕時計を気にしていた。
こなた「行こう、ゆーちゃん、ゆい姉さんが待ってるよ」
ゆたか「うん……」

 赤とんぼが居ないひょうたん池に別れを告げに来ていた。ゆたかは公園の出口付近でもう一回池に振り向いた。

ゆたか「三年間ありがとう、私は……大学に進学しました……秋になったら……またあの綺麗な夕焼けを見せてね」

 池の水面に夕焼けの光が反射して今までにない幻想的な美しさを見せていた。ゆたかはこの町を離れるのを惜しんだ。
今日はゆたかの卒業式だった。三年間住んだ泉家ともお別れとなった。そして四月から新しい生活が待っている。
公園を後にするこなたとゆたかはしばしのお別れに涙をみせた。そして秋にまたこの公園で皆と会う約束をした。
 
 その美しい夕焼けから公園は夕焼け公園と改名された。

 夕焼け公園のひょうたん池は人の手で埋められる事はもうない。そして池が無くならない限り赤とんぼも居なくなることはないだろう。


192 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/19(日) 12:00:17.14 ID:FIRHoZs0
以上です。

やっぱり投下しなければ良かった。コピペしている内にそんな風に思った。
まだまだ未熟でこうゆうのを書くレベルになっていなかった。
193 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/19(日) 22:05:24.53 ID:NA3FZako
乙です。
のめりこむように、一気に読ませていただきました。
途中から、目頭が熱くなってきてしょうがなかったです。

GJ!
194 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/19(日) 23:41:26.27 ID:FIIK55co
乙でした
195 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/20(月) 08:45:51.61 ID:BmK64jE0
-----------------------------------------------------------------------------

ここまでまとめた

-----------------------------------------------------------------------------
196 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/20(月) 21:14:24.30 ID:.AwmLAAO
>>195
まとめ乙
197 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/21(火) 01:35:28.60 ID:ry/gPOU0
>>195 いつも乙です

誰かお題下さい。
キャラかカップリングと単語を組み合わせて短編祭みたいな感じで書きたいとです。
198 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/21(火) 21:26:03.70 ID:7iFj84U0
>>193
本当に感想通り受け取っていいのでしょうか?。一人でも感動してくれたら嬉しい限りです。ありがとう。

>>197
祭りという事は同じ題材で参加してもいいと?。『プチ祭り』とは違うのかな?
個人的にはリレーSSやってみたいけど参加者がいるかどうか心配です。
199 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/21(火) 22:48:44.24 ID:JTLc1dso
単に複数の短編を書いてそんな感じにしたいってだけだと思われ、企画とかじゃなく
それはそれとして、お題とか出てたら好きに乗っかっちゃっていいと思うぞ

>>195
おつおつ

>>197
子供の頃、とか
200 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/21(火) 23:51:59.37 ID:7iFj84U0
>>197
それならお題 『かがみとつかさ』
201 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/22(水) 10:39:19.96 ID:0kkmWck0
つかさとみゆきで是非!
202 :197 :2010/09/22(水) 23:28:47.51 ID:CiJxkNI0
反応あってよかったw
個人的には長めのSS書いてたら煮詰まったので気分転換に短編やりたいと思ってお題募集させてもらった感じでした。
でもせっかくだし、書きたくなったら自由に書いたら楽しいと思いますー

とりあえず私は「かがみとつかさ:子供の頃」で1本やります、2週間以内で仕上げたい。
「つかさとみゆき」もやります!楽しそうなのでw

>>198
良ければぜひ書いてみて下さい、同じ言葉やキャラから出る発想の違いとか見てみたいです!
203 :201 :2010/09/23(木) 20:55:26.29 ID:E5xwteA0
>>202
まさか自分のリクにも応えてくれるとは!
首を長くして気長にお待ちしております
204 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/23(木) 22:03:56.26 ID:f7wUf0A0
>>199です
自分も参加しようかな二週間でできるかどうかは分りませんが。
205 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/23(木) 22:27:58.30 ID:f7wUf0A0
>>198です
面白そうなので参加します。
二週間でできるかどうかは分りませんが。
他の方もどうぞ
206 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 18:27:34.53 ID:MX8uOsSO
−せつない−

かがみ「…ふう」
つかさ「どうしたの?ため息なんかついて」
かがみ「ほら、秋ってなんか切なくなるじゃない」
つかさ「そうだね…」
かがみ「…カムバック、こなたの汗の匂い…」
つかさ「…久しぶりにそっち系のお姉ちゃんを見た気がするよ」
207 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/25(土) 10:05:27.21 ID:oO5sO9U0
>>204と205は同一人物です。
なんかボケてて同じようなレス入れてしまった。

>>206
かがみは名前通り二面性がある。どちらを使うかは書き手次第。
208 :〜コラボと言うものは〜 [saga]:2010/10/02(土) 09:35:56.04 ID:rWtI9QAO
徹夜明けの寝ぼけ頭で投下いきます。

タイトルは『〜コラボと言うものは〜』です





「いらっしゃいませ。マミーズへようこそ!」

…ファミレスに呼び出された私、永森やまとを待っていたのは、親友の八坂こうと原稿用紙だった。

「…帰る」
「待って!手伝ってとかじゃないから!感想訊きたいだけ!」
「これ、漫画でしょ?誰が書いたの」
「ひよりんの。ちょっと引っかかりがあってさ」

引っかかり。
こうの作品読むたびに何度か聞いたけど、よくわからない。
読み手と書き手の感覚の違いとか言っているけど、そんなに違うものなんだろうか。
まぁ…読んでみることにしよう。とりあえず注文してから。こうのおごりで。


209 :〜コラボと言うものは〜 [saga]:2010/10/02(土) 09:37:25.04 ID:rWtI9QAO
 
うん、面白いとは思う。パロディ元の作品は私も知っている…けど…

「わからない部分があるんだけど」
「…やまと、ギャグの解説ほど寒いものはないんだけど」
「それはわかってる。でも根本的な話だから…これ、『ブリーチ』が元ネタよね?でもこんなキャラいなかったような」
「あ〜やっぱりそうなるよね。マイナーすぎだし」
こうの引っかかりはそこだったらしい。
最初に言いなさいそういうのは。
「このキャラとかは他作品のだからね。クロスオーバー…じゃわかんないかな、コラボ漫画」
「なるほど、コラボしてたの。それならわからないはずね」
「やっぱわかんないかぁ。巻末に作品説明つける気だったけど、こりゃ冒頭にした方が親切かな」
「でもこれみたいな別のと合わせるのって、何を楽しむものなの?」
別作品同士を合わせるって、ただのごちゃまぜにならないのだろうか。
210 :〜コラボと言うものは〜 [saga]:2010/10/02(土) 09:37:56.14 ID:rWtI9QAO
Tシャツとかセットメニューのおまけとかのコラボじゃあるまいし、どっちかが良くない扱いになりそうなのに。
「うーんそうだね、書き手としては両方に興味持って欲しいってのがあるかな。同人は両方好きじゃなきゃまずやんないし。」
「売れるからじゃないの?」
「…いやまぁ、好きなのがマイナーだと見てもらえないし、有名なの吊りにしてるっちゃしてるけど…ってそんな答えが聴きたい訳じゃないよね」
その通り。
「お待たせしました。カレーラーメンとプリンカレーになります」
「あ、プリンカレー私」
…今更だけど凄いメニューだと思う。カレーの上にプリンを乗せてるなんて。何を考えているんだろう。
まぁ、カレーラーメンなんて頼む私の言葉ではないだろう。
話の続きは食べてからにしよう。


211 :〜コラボと言うものは〜 [saga]:2010/10/02(土) 09:38:50.05 ID:rWtI9QAO
プリンカレーは意外と美味しかったらしく、こうは満足そうな顔をしていた。薦められても食べたくないけど。

「で、なんだっけ」
「こういうコラボ作品って、何を楽しめばいいのかって話よ」
「読む方だよね?そうだな…やっぱ違う作品でのキャラの交流かな」
「つまり会話とかを楽しむの?」
「違う作品だからどんな風になるのか、喧嘩腰とか以外と仲良くなるのかとかあるし」
それは確かに面白いのかもしれないけど。コラボか。
「そういえば、なんでこのファミレスなの?前になんとかって漫画とコラボメニュー作った店行ってみようとか言ってたじゃない」
「え?あ〜、『WORKING!!』のコラボだっけ。いやその、宮越チョコとか無関係って聞いて、なんかガッカリしちゃって」
ファミレスだからチョコは出せないと思う。駄菓子屋とのコラボじゃないのだから。
というより、何故だろう。
直感――なんとなく、実現しなくて良かった。
「いい感してるね」
「何が?」
「こっちの話。で、他に感想とかない?」
212 :〜コラボと言うものは〜 [saga]:2010/10/02(土) 09:39:50.01 ID:rWtI9QAO
「まぁいいけど。そうね…主人公が最初から知り合いみたいになってるけど、初めて会うところとかはないの?」
「その辺は話の都合。初対面の話も良いけど、ある程度性格に対してのツッコミが描きたかったから」
「そう。ならしょうがないか」
「それにこの続きのBLで〇〇が△◆☆で…って何いきなり新聞広げてるの!」
へぇ、首位打者争いが流崎力哉でほぼ決まり。バンド『CROW』が武道館ライブかぁ。
「あら、『古四神マホロバン』と『コスモレンジャー』もコラボらしいわね」
「わかった自重するから!後ろの人に新聞返してあげて」
ふぅ、なんとかなった。
「どうもありがとうございました」
「急に『貸してくれ』なんて何ごとかと思えば…そういうことか。BLは我が愛すべき友人でもひくだろうし、自重したまえ」
「はぁ…あの、顔色悪いですけど、大丈夫ですか?」
「…気にしないでくれたまえ。視線恐怖症みたいなものでね…あの悪魔、ちょっと他人に話しただけでこんな罰ゲームは割があわないぞ。短編小説に出したのは笛吹だというのに。だいたい僕がこんなとこ来れるキャラじゃないの知ってて出す書き手も書き手だ。何も考えてないのバレバレだぞ。病院坂の名字は」
何を言っているんだこの人は。
「…そういう独り言は一番目立ちますよ」
「そのようだ、だいぶキツくなった。そろそろ友人が救出に来てくれそうだから、君達は知らん顔して会話を続けたまえ。余計な気遣いが悪化を招く状態なので切に願うよ」


数分後、ある男性が救出に来たのは言うまでもあるまい。あれが愛すべき友人さんだろう。


213 :〜コラボと言うものは〜 [saga]:2010/10/02(土) 09:42:28.76 ID:rWtI9QAO

「とりあえず、もぅ出ようか。話も終わったし」
「そうね。さっきの人も無事帰れたみたいだし。参考になった?」
「うん。それにしても気のせいか、貴重な経験をしたような」
「気のせいね」

さっきの人との会話だとしたら失礼だもの。


……
けど、何故だろう。
なんとなく、滅多に起きない事が起きていたような。

……
………
そういえば流崎力哉なんて選手いたかしら?野球詳しくないけど。それにコスモレンジャーとマホロバンなんて番組あったかしら?CROWってバンドも知らないし…
まぁいいか。
「ところでこのガムなんだけど」
「IAIの塩シャケ味だけど。ご飯欲しくなった?」

…いらない。


214 :〜コラボと言うものは〜 [saga]:2010/10/02(土) 09:43:47.42 ID:rWtI9QAO
以上です。

もぅなんでしょうねこれ。

215 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/02(土) 16:52:25.21 ID:h44rNnI0
さぁね
216 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/10/03(日) 14:43:34.10 ID:jqbqHGY0
>>197の提案でSSを作りました。
>>199>>200>>201
『子供の頃』『かがみとつかさ』『つかさとみゆき』
の三つのお題で一つのSSとしました。三つのお題で作ったのは初めてなのでどうなるか不安です。

9レスくらい使用します。それでは投下します。
217 :相談  1 [saga]:2010/10/03(日) 14:45:34.01 ID:jqbqHGY0
 とある日の放課後、私はお姉ちゃんとゆきちゃんを待っていた。学級委員の会議が長引いているのかなかなか戻ってこない。教室で一人で待っていた。
こなちゃんはアルバイトで先に帰ってしまった。誰も居ない教室。たまに部活の準備で数人が出入りする程度。いつもだとこなちゃんと雑談をして時間をつぶすけど
今回はそうはいかない。退屈な時間。待ち時間がこんなに長く感じることはなかった。こんなことなら先に帰っちゃってもよかったかな。何をするでもなく自分の机に座っていた。
校庭から運動部の掛け声が聞こえる。音楽室からブラスバンド部の練習の音。隣りのクラスからは楽しそうに雑談でもしているのか笑い声が時々聞こえた。
大きくあくびをした。何回目のあくびかな。ふと教室の外を見ると廊下から数人の生徒が歩いて来た。確かあの生徒はA組の学級委員だったかな。その生徒は鞄をもっていた。
あれ、もう会議はとっくに終わっているみたい。でもお姉ちゃんとゆきちゃんの姿はない。まさか先に帰っちゃった。そんな事はない。ゆきちゃんの鞄はまだ教室にある。
きっと先生に用事でも言いつけられたのかもしれない。それなら迎えに行っちゃおうかな。私はゆきちゃんのかばんを持って会議室に向かった。

 会議室の電気は消えていた。室内に人が居るとは思えなかった。二人ともどこに行ったのだろう。そうだ携帯で連絡しよう。ポケットに手を入れた。しまった携帯が無い。
携帯は今朝充電しっ放しで忘れていたんだった。どうしよう。私は辺りを見回した。すると会議室の隣りの部屋から微かな声が聞こえた。でもこの部屋には扉がない。
きっと会議室からしか入れない部屋。声は二人。一人はお姉ちゃんのような気がする。もう一人は声が小さすぎて誰だか分らない。何故か急に会話の内容が気になった。
内緒話のような気がしたから。私はそっと会議室の扉を開けて隣の部屋の入り口まで移動した。声は廊下よりも良く聞こえる。内容も聞き取れそう……これじゃ盗み聞きだよね。
そんな事より会話の内容が気になった。私は耳を清ませた。思ったとおりお姉ちゃんとゆきちゃんだった。

かがみ「それで相手は誰なんだ」
みゆき「……二年の……さんです」
かがみ「名前までは聞いてない……で、どうするつもり」
みゆき「……分りません、私が悪いんです……」
いったいなんの話なんだろう。さっぱり分らない。
かがみ「悪いもなにもないでしょ……両親には話したのか」
みゆき「まだ……です」
しばらく会話が途切れた。なにか込み入った話のように思え
かがみ「みゆきらしくないわね」
みゆき「あまりに突然でしたので、どうすることも出来ませんでした」
かがみ「もう済んでしまった事にどうこう言ってもしょうがないわね、これからどうするつもりよ」
みゆき「彼が……産んでも良いと言ってました、最初からその覚悟だったようです」
えっ、産む?。ゆきちゃん何言ってるの。
かがみ「それなら私はもう何も言わない、好きにすればいいじゃない、でもちゃんと話は通しておかないと大変よ」
みゆき「分かっています……すみませんこんな相談……かがみさんにしか出来ません」
かがみ「そんなの気にしなくていいわよ、それより元気な赤ちゃんが生まれると良いわね」
これって、もしかしてゆきちゃんが妊娠しちゃったって事?。相手は誰だろ。名前は聞き取れなかったけど二年生って言ってた。まさか。
みゆき「すみませんけどこの話は御内密に……」
かがみ「分ってるわよ、こなたやつかさにも黙っているわよ、特につかさは口が軽いから……おっとそのつかさが待ってるわね、教室に戻りましょ」
218 :相談  2 [saga]:2010/10/03(日) 14:48:23.52 ID:jqbqHGY0

私は慌てて会議室を出た。そして急いで教室に戻った。ゆきちゃんが妊娠した。それでお姉ちゃんに相談していた。凄いことを聞いてしまった。
ゆきちゃんは産むつもりなんだ。これって内緒にすることなのかな。そういえば両親にまだ言ってないって言ってた。どうしよう。
ゆきちゃんいつの間に恋人できたんだろう。二年生って言ってた。年下なのか。妊娠したってことはエッチも……。うわーなに考えてるんだろ。私は両手で頭を叩いた。
かがみ「つかさ何してるの」
つかさ「うゎー」
突然お姉ちゃんの声に驚いた。自分でも分るくらい顔が真っ赤になってる。そんな私を不思議そうにお姉ちゃんは見ていた。
つかさ「いつから居たの?」
かがみ「何時からって、今さっきよ……自分の頭叩いて何してるのよ、それに顔が赤いわね気分が悪かったら先に帰っても良かったのに」
つかさ「えっと、えっと……お姉ちゃん遅かったから、ちょっといろいろ考えてたんだよ」
かがみ「遅かったのは謝る、ごめん、待たせたわね、帰ろうか」
私は周りを見回した。
つかさ「ゆきちゃんは?」
かがみ「みゆきはげた箱でまってる」
つかさ「それじゃ鞄を持っていかないと」
かがみ「みゆきもそそっかしいわね、いいわ、持って行ってあげましょ」
私が会議室まで来たことを気付かれていない。ほっと安心した。それにしてもお姉ちゃんはついさっきまであんな相談を受けていた事なんて少しも感じさせない
普段のままのお姉ちゃんだった。私はしばらくお姉ちゃんを見つめていた。
かがみ「どうした、何かついてるか」
つかさ「うんん、何でもないよ、帰ろう……」
帰り道、お姉ちゃんとゆきちゃんと交えて雑談をした。ゆきちゃんも普段どおりのゆきちゃんだった。会議室での出来事を知らなければ楽しい話しだったのに
どうしても二人の会話が頭から離れない。

 家に帰っても落ち着かなかった。そして一つの疑問が湧いた。なんでお姉ちゃんに相談したんだろ。私でもこなちゃんでもなくお姉ちゃんに。それは直ぐに分った。
私はあんな事を相談されても何も考えもつかないし答えられない。頭を叩いて顔を赤くするだけ。ゆきちゃんほどの博学でも解決できない問題ならお姉ちゃんしか聞く人はいない。
でもこの問題は大きいと思う。ゆきちゃんだけの問題じゃない。相手が居ることだから。でもゆきちゃんは内緒だと言った。私だって一緒に考えるだけなら出来るのに。

 次の日の登校途中。
つかさ「うーん」
おおきなあくびをした。昨夜は一睡もできなかった。眠れるわけがない。
かがみ「あれだけ寝てたのにまだ寝たり無いのか……」
つかさ「へへへ、秋になるといくらでも寝れちゃうよね」
かがみ「まったく羨ましいかぎりだ」
眠れなかったなんて言えない。言えば理由を聞かれる。そうだ。それなら逆に聞けるかもしれない。
つかさ「そうゆうお姉ちゃんも眠そうだよ、眠れなかったの?」
かがみ「いや、眠れなかったんじゃない、ラノベを読んでて……眠らなかっただけよ」
初めてお姉ちゃんが動揺したように見えた。
つかさ「何か悩み事でもあるの?」
間を空けないで私は質問をした。
かがみ「そんなのはない、それよりバスに乗るわよ」
つかさ「え、こなちゃん待たないの?」
かがみ「昨日あいつのせいで遅刻しそうになった、つかさもそうだったじゃない」
お姉ちゃんはそのままバスに乗り込んでしまった。時間はまだたっぷりあるのに。普段ならこなちゃんを待つけど今回はお姉ちゃんに付いていった。私もバスに乗り込んだ。
バスは混んでいた。いつもなら空いている次のバスに乗る。こんなに混んでいるとは思わなかった。これじゃ話の続きが出来ない。お姉ちゃんは私と話をしたくないのが分った。
219 :相談  3 [saga]:2010/10/03(日) 14:49:58.39 ID:jqbqHGY0
結局お姉ちゃんと話をすることができなかった。学校に着くとお姉ちゃんはそのまま自分の教室に入ってしまった。私も諦めて自分の教室に入った。
みゆき「おはようございます」
ゆきちゃんの挨拶が聞こえた。私はゆきちゃんの顔を見るよりも先にお腹を見た。少しも膨れていない。それとも何か細工でもしてるのかな。
みゆき「どうしたのですか」
つかさ「あっ……ゆきちゃんおはよう」
ゆきちゃんは妊娠してからどのくらい経っているのかな……なんて聞けない。
みゆき「かがみさんが見えませんが、どうかしたのですか」
つかさ「お姉ちゃんは自分のクラスに直接行っちゃったよ」
みゆき「そうですか……」
ゆきちゃんはお姉ちゃんの教室の方向を向いていた。その心配そうな顔を私にも向けて欲しかった。
つかさ「ゆきちゃん……」
みゆき「何でしょうか?」
つかさ「昨日の事なんだけど……」
みゆき「昨日の事ですか?」
その時、お姉ちゃんとゆきちゃんの約束を思い出した。今、昨日の事を言ってしまったらお姉ちゃんが約束を破って私に話したと思ってしまうかもしれない。
そんな事になったらお姉ちゃんとゆきちゃんの友情にヒビが入るかも。
つかさ「昨日、クッキーの作り方知りたいって言ってたよね、レシピノート持ってきたけど……」
みゆき「そんな大事なもの借りていいのですか」
つかさ「いいよ、このノートのレシピは全部覚えたから……」
みゆき「それではお借りしますね」
レシピノートをゆきちゃんに渡した。
つかさ「ちょっとトイレ行って来るね……」
私は小走りにトイレに向かった。

 別に用を足したかったわけじゃなかった。涙が出てきたのを見られたくなかった。それだけだった。お姉ちゃんにもゆきちゃんにも話を聞くことが出来なかった。
協力するにも話すらすることも出来ない。洗面所のかがみの前の自分を見た。情けない顔の自分が写っていた。
意気地なし。いつもそうだ。小さい頃からずっとお姉ちゃんの影に隠れてばかり。今だってそうだ。盗み聞きしたのならそう言ってしまえばいいんだ……。
それが出来たのならもうしてる。ため息を一回ついた。
私は顔を洗って涙の跡を消した。お昼休みもう一度試そう。小さく両手でガッツポーズをとって気合を入れた。
こなた「おはようつかさ、気張るならトイレに入ってからだよ」
私ははっとして後ろを向いた。こなちゃんだ。気が付かなかった。
つかさ「お、おはようこなちゃん、別に気張ってたわけじゃないよ」
こなた「それは何かを決意した時に出るポーズ」
つかさ「えっ?」
こなた「その驚いた顔は図星だね」
にっこり微笑みかけるこなちゃん。そうだ。こなちゃんに話すかな。私はお姉ちゃん達と約束をしたわけじゃない。
つかさ「ばれちゃった……」 
こなた「もしかして片思いの彼に告白とか」
つかさ「……ちがうよ……ゆきちゃんの事……」
こなちゃんは手を突き出して私の言うのを止めた。
こなた「みゆきさんの事ならいいよ……」
つかさ「どうして?」
私は透かさず聞き返した。
こなた「最近かがみとみゆきさんが陰でコソコソしてるのは知ってる、でも二人とも何も教えてくれない……勝手にすればいいさ」
こなちゃんは怒ってる。きっと私が思ったことと同じ理由だ。
220 :相談  4 [saga]:2010/10/03(日) 14:51:23.89 ID:jqbqHGY0
つかさ「そうなんだ聞きたくないの、ゆきちゃんの一生を左右するような事でも聞きたくない?」
こなた「つかさは知ってるの?」
つかさ「うん……昨日、お姉ちゃんとゆきちゃんの会話を盗み聞きしちゃった」
こなちゃんは黙ってしまった。聞く気はないみだいだった。私は教室に戻ろうとした。するとこなちゃんは私の腕を掴んだ。
こなた「教えてよ」
私はこなちゃんの耳元で小さな声で教えた。
……
こなた「ふーん」
意外なほどこなちゃんは冷静だった。
つかさ「驚かないの?」
こなた「……そんな事で……」
つかさ「そんなこと?」
こなた「そうだよ、今時高校生でも珍しくない、お互い好き同士でそうなったんなら問題ないじゃん」
つかさ「それはそうだけど……」
確かにお互いに愛し合っているなら何も問題はない。喜んでお祝いをしたいくらい。でも私は何か嫌な予感がしてしかたがなかった。
こなた「相手は誰なの?」
つかさ「名前までは分らないよ、ただ二年生だって」
こなた「みゆきさんは年下好みなんだ……以外だったな」
私が俯いているとこなちゃんはそれに気が付いたようだった。
こなた「つかさは心配性だな、まぁ、分らないわけでもないよ……お昼みゆきさんに直接聞いてみたら?」
つかさ「でも、お姉ちゃんが……」
こなちゃんは数秒間を置いて考えてから答えた。
こなた「それじゃ私がかがみのクラスにお昼食べに行くよ、それなら余計な邪魔は入らないよ、その間ゆっくり話をすればいいよ……たまにはみさきちをからかうのもいいかな」
こなちゃんは洗面所を出るとお姉ちゃんのクラスへ向かった。私は自分の教室に戻った。そしてゆきちゃんの座っている席に向かった。
つかさ「今日のお昼なんだけど屋上たべない、二人きりで話したいことがあるんだけど……いいかな?」
みゆき「別にいいですけど、お話とは何でしょうか」
つかさ「お昼にはなすよ」
程なくしてチャイムが鳴った。慌ててこなちゃんが戻ってきた。それと同時に黒井戦士が入ってきた。こなちゃんはウインクをして私に合図する。
お昼お姉ちゃん達の所に行くことになったに違いない。

 今日の天気は快晴。暑くもなく寒くもなく屋上でお弁当を食べるには打って付けだった。私達はお弁当を広げて食べ始めた。
つかさ「今日は良い天気だね」
みゆき「そうですね、こうして二人だけで何か話をするのは久しぶりかもしれません」
しばらく雑談をした。ゆきちゃんがそわそわし出した。やっぱり今朝の話が気になるみたい。お弁当もほとんど食べ終わってるし。もういいかもしれない。
つかさ「じつはね、昨日の、会議室の隣の部屋でお姉ちゃんとゆきちゃんの会話きいちゃったんだ……」
ゆきちゃんは何も言ってこなかった。ただ私を見ていた。
つかさ「盗み聞きなのは分ってたけどね……聞いちゃったんだ……それでどうしても力になりたくてこうしてここに誘ったんだよ」
ゆきちゃんは何も言わない。もしかして怒っちゃったのかな。やっぱり余計なことをしちゃった。
つかさ「ごめんなさい、やっぱり私じゃ力不足だよね、分ってた、でも……もうこの事は話さないし聞かないから……お姉ちゃんと相談してうまく解決してね」
私はお弁当を片付けて教室に戻ろうとした。
みゆき「待ってください」
私は足を止めた。
みゆき「あまりに唐突だったので答えに詰まりました、謝らなければならないのは私の方です、この話はつかささんや泉さんにもしなければいけなかった」
つかさ「ゆきちゃん」
みゆき「しかしもういいのです、もうこの話は解決しそうなので……」
221 :相談  5 [saga]:2010/10/03(日) 14:52:56.81 ID:jqbqHGY0
 解決するって言っているのにゆきちゃんの顔が優れない。どうしてだろう。
つかさ「なんか元気ないけど……まだ両親に話していないとか言ってたけどその事なの?」
ゆきちゃんは一歩私から離れてた。とても驚いた表情だった。
みゆき「そこまで聞いていたのでしたか……もう黙っていてもしょうがないですね……実はもう話してあるのす」
つかさ「え、お姉ちゃんには話してないって」
みゆき「……かがみさんには言えなかった……」
つかさ「教えて……」
みゆき「辻さんの……両親が……まだ早すぎると、まだ……」
辻さんってゆきちゃんの彼氏の名前かな。聞いたこと無い。きっと私は会ったことも見たこともない人。
つかさ「ちょっと……早いも遅いもないよ、もうその先に進んでるんじゃないの、もう戻れないよ……まさか、ゆきちゃん」
みゆき「堕ろすことになりそうです」
まさか私の悪い予感が当たってしまった。
つかさ「ゆきちゃんのお母さん、お父さんはどうなの、反対したよね」
ゆきちゃんはそのまま腰を落として泣いてしまった。私はどうしていいか分らなかった。やっぱり私はこの事に口出しするんじゃなかったかな。私も泣きたくなった。
ゆきちゃんのすすり泣く声が聞こえてきた。そうなんだ泣いてなんていられない。ゆきちゃんの方がずっと辛いんだ。
つかさ「これから生まれようとする命を奪うなんて……悲しいよね」
ゆきちゃんは私の言葉に反応した。
みゆき「つかささんは賛成してくれるのですか、過ちで出来た……」
つかさ「ゆきちゃんと辻さんに何があったなんて聞かないよ、それが過ちかどうかなんて関係ないよ、あるのは新しい命があるってことだよね」
みゆき「しかし……」
ゆきちゃんは私に何かを言おうとした。きっと反対意見。だめ。そんな事いっちゃダメ。
つかさ「私もお姉ちゃんもこなちゃんも、ゆきちゃんだってそうやって生まれてきたんだよ……もし、もしも私のお母さんが双子じゃやだって言って私を堕ろしちゃったら……
     私は今、こうやってゆきちゃんと話すことだってできなかったんだよ……そんな悲しいこと言わないで…ゆきちゃん、辻さんのお父さん、お母さんだって
     辻さんを生んだんだから話せばきっと分ってくれるよ……」
ゆきちゃんはしばらく私を見つめていた。私の想いは全てゆきちゃんに言った。それでもゆきちゃんが辻さんの両親に従うのならもう何も言わない。でも。それも一つの選択。
みゆき「ご自分を堕ろす話なんて……すごい例え話ですね……放課後……昨日と同じ場所でかがみさんと……最終結論を出す予定でした……
     つかささん、是非立ち会って下さい、それと泉さんも……」
まだ結論がでてなかったんだ。嬉しかった。これで私とこなちゃんも参加できる。ゆきちゃんの目から涙が消えている。
みゆき「それでは教室に戻りますか」
つかさ「うん」

 教室に戻るとこなちゃんはすでに戻って自分の席に着いていた。私がこなちゃんの所に向かおうとするとゆきちゃんは私を追い越してこなちゃんに駆け寄った。
ゆきちゃんはこなちゃんに何かを話しているけど周りの雑音でよく聞き取れなかった。きっと放課後の事を話しているに違いない。

 
222 :相談  6 [saga]:2010/10/03(日) 14:54:14.56 ID:jqbqHGY0

こなた「つかさ、行こうか」
つかさ「あれ、ゆきちゃんは?」
こなた「さあ、先に行ったんじゃないの」
放課後、ゆきちゃんの言うように私とこなちゃんは会議室に向かった。こなちゃんがじっと私を見ている。
つかさ「どうしたの?」
こなた「つかさ、お昼休みにいったいどんな魔法をつかったん?」
つかさ「魔法?」
こなた「そうだよ、私とつかさがみゆきさんとかがみの秘密に参加できるとは思わなかった、しかも話はすごくヘビーな内容だよ、とても力になれるとは思えない」
つかさ「ただ私の想いをゆきちゃんに話しただけだよ……」
こなちゃんは黙って私を見ていた。少し恥ずかしい感じがした。
会議室に入るとすでにゆきちゃんが居た。
みゆき「お待ちしていました」
つかさ「隣りの部屋は?」
みゆき「今日は会議室を使う予定はありません、ここでいいでしょう、予約はしてありますので他の人が来ることもありません」
こなちゃんがモジモジと恥ずかしそうにしていた。ゆきちゃんの方を見ている。
こなた「用意周到だねみゆきさん……ところでみゆきさんに聞きたかったことがあったんだ」
みゆき「なんでしょうか」
こなた「見た所お腹は膨れていないようだけど……どのくらい経ってるの?」
みゆき「……えっ……」
その時扉が開いた。
かがみ「待たせたわねみゆき……ってどうしてつかさとこなたが居るのよ」
みゆき「あっ、それは私が……」
私はお姉ちゃんの方を向いた。見知らぬ男の子がお姉ちゃんの後ろに居た。まさかあの人が辻さんって人なのかな。
かがみ「まあその話は後ね……辻君、もっと奥に入って……」
やっぱり辻さんだ。お姉ちゃんは会議室の奥の方に腕を伸ばした。辻さんは私達に会釈をすると会議室の奥にと足を運んだ。するともう一人入ってきた。
その人は知っている人だった。
かがみ「みなみちゃんも早く入っちゃって……それじゃ始めましょ、チェリーがメアリーを孕ませた件について……私の案を聞いて欲しい」
つかさ「チェリー……ちゃん……メアリー……?」
こなた「みなみちゃんは何で来てるの、何、どうゆうことなの?」
私は頭が真っ白になった。こなちゃんも動揺している。お姉ちゃんはため息を一回ついた。
かがみ「みゆき、つかさとこなたを呼んだんならちゃんと説明しておきなさいよ」
ゆきちゃんは慌ててこなちゃんに近づいた。
みゆき「泉さんには詳しく説明していませんでした、そちらの方は私とみなみさんの幼馴染の辻さんです…先月、みなみさんの家が旅行をすると言うのでチェリーちゃんをお預り
     したのですが……散歩をしている時、辻さんもメアリーちゃんと散歩していまして偶然出会いました、挨拶をして暫くお話をしていましたらチェリーちゃんとメアリーちゃんが
     ……その……あの……交尾をしてしまいまして……」
かがみ「妊娠しちゃったってわけ……それで辻君のご両親が大変ご立腹なされて相談にのってたのよ、こなた、つかさ分った、つかさ?」
みなみ「本来これは飼い主である私の責任……こうなる可能性は私の方が高かったはず……」
こなちゃんは私の方を見ている。その訳は分ってる。痛いほど分る。こなちゃんの視線が私に刺さる。私は恥ずかしさのあまり顔が熱く感じる。穴があったら入りたいくらい。
つかさ「ごめんねゆきちゃん、ごめんねこなちゃん、ごめんねお姉ちゃん……私……やっぱり……力になれないよ……」
かがみ「つかさ、どうしたのよ……待ちなさい、つかさ……」
223 :相談  7 [saga]:2010/10/03(日) 14:55:30.66 ID:jqbqHGY0

 私は思わず会議室を飛び出した。少しでも遠くに行きたい。それだけで頭がいっぱいになった。早とちりだった。これじゃこなちゃんだって怒っちゃう。
お姉ちゃんもいままでゆきちゃんの為にやってきたことを壊しちゃったかもしれない。そう、余計なことをしてって怒られる。
いつもそう。私はそうやって皆が築いたものを壊しちゃうんだ。お姉ちゃんに任せておけば良かったんだ。
気が付くと私は電車に乗っていた。帰路に着いていた。今頃こなちゃんが私の勘違いした事を皆に言っているに違いない。そして……大笑いしているかも。

 家に帰っても何もできない。部屋に入ってじっとしているだけだった。
突然部屋の扉が開いた。
まつり「つかさ、さっきからノックしてたのに返事くらいしてよ」
つかさ「ごめんなさい」
まつり「……何、その元気のない顔……失恋でもしたような顔だよ……そうそう、もうとっくに夕食の時間なんだけどかがみが帰ってこないんだよ、携帯も出ないしメールもこない」
私は部屋の目覚まし時計を見た。もう二十時時を過ぎていた。私ったらこんな時間まで落ち込んでいたのか。
まつり「つかさ何か聞いてない?」
会議室で相談していて終業時間いっぱいまで学校に居たとしてもこの時間は遅すぎる。私は自分の携帯を見てみた。着信履歴もメールもお姉ちゃんの名前は無かった。
つかさ「私の携帯にも何も来てないよ……それに学校で別れたから」
まつり「そう……もう時間だし……もう食べようってお母さんが」
つかさ「私は食べないよ……」
食欲が湧かなかった。今日は何も喉を通りそうにない。
まつり「浮かない顔して、何かあった?」
つかさ「まつりお姉ちゃん」
まつり「何?」
つかさ「うんん、何でもない……私は食べないってお母さんに言って」
まつり「分った言っておくよ……何か失敗でもしたのか、つかさらしくない、笑って誤魔化しちゃいなよ」

 まつりお姉ちゃんはそのまま部屋を出た。まつりお姉ちゃんに私のした事を言おうとしたけど言えなかった。笑って誤魔化しちゃえか。そういえば私は何かあると
そうやって逃げてきた。でも今は本当に逃げて来ちゃった。妊娠したのはゆきちゃんじゃなくてメアリーって犬だった。そしてその相手はチェリーちゃん。本気で私は
ゆきちゃんが妊娠したと思ってた。えっ……。ちょっと待って。お昼の会話で堕ろすってゆきちゃんは言っていた。この話が本当だとするとチェリーちゃんとメアリーちゃんの
子犬は……。逃げちゃダメだった。私は会議室に残っていなきゃダメだった。ゆきちゃんは立ち会って欲しいって言っていた。これで本当に子犬が堕ろすって決まったら……
その時私は恥ずかしさよりも罪悪感が湧いてきた。犬ならどうなってもいいなんて事はないよね。ゆきちゃんは今日が最終決定って言っていた。
お姉ちゃんの帰りが遅いのは……ダメだよそんなの。
私はチェリーちゃんの子供を見殺しにしちゃった。まつりお姉ちゃんの言うように笑って誤魔化しちゃえば良かった。それで子犬が助かるなら……。
涙が出てきた。でも、もうどうすることも出来ない。出来れば放課後まで時間を戻したい。そして笑って誤魔化して会議室に残って……辻さんのお父さんお母さんに言うんだ。
堕ろしちゃダメだって……。

 二十三時過ぎ。外から大きなのエンジン音が聞こえた。私の家の近くで急ブレーキの音がした。暫くすると玄関の扉が開く音がした。私の部屋の扉は半開きだった。
まつりお姉ちゃんが閉め忘れ。玄関の音が素通りで私の耳に入ってくる。
かがみ「ただいま」
みき「かがみ、今何時だと思ってるの、連絡もしないで……」
ゆい「……ですから私が送ってきました、夜道は危ないですからね」
かがみ「こちらはこなたの従姉で成実さん」
みき「それはご親切に……かがみがお世話になりました」
ゆい「いいえお構いなく、それじゃ、かがみちゃん、おやすみ」
かがみ「ありがとうございました、おやすみなさい」
玄関のドアが閉まる音がした。暫くするとまたエンジン音がしてその音は遠く小さくなっていく。
みき「かがみ食事は?」
かがみ「寝しなだから止めておく……つかさは?」
みき「部屋にいるわよ、夕食も食べないで」
かがみ「そう……着替えてくる」
224 :相談  8 [saga]:2010/10/03(日) 14:58:06.66 ID:jqbqHGY0

 お姉ちゃんの足音が近づいてきた。でもお姉ちゃんの部屋ではなく私の部屋の前で足音は止まった。ノックする音が聞こえる。
かがみ「つかさ寝てる……入るわよ……忘れ物、あんた鞄わすれたでしょ」
お姉ちゃんは鞄を置いた。私の顔をみると少し驚いたみたいだった。私の目が真っ赤になっていたからかもしれない。でもすぐ体勢を立て直すとお姉ちゃんは部屋
の扉を閉めて私の近くに寄ってきた。眉毛が立っている。怒っている。その理由は分っている。
かがみ「つかさ、やらかしてくれたわね」
低く重い声だった。
つかさ「お姉ちゃん、私は……私は……逃げちゃった……ごめんなさ……」
かがみ「つかさが飛び出した後……」
私が話すのと同時にお姉ちゃんは話しはじめた。私は話すのを止めた。
かがみ「みゆきが辻さんのご両親に話があるって言い出してね、せめて私の案を聞いてからでもって言ったけど聞かなかった、私達はみゆきに連れられて辻さん宅へ行った
     みゆきは辻さんのご両親に会うなり深々と頭を下げて謝った……それでも許してくれなかった、みゆきは言った、生まれ来る新しい命を消したくないってね、
     そして涙ながらに私達もこうして生まれてきたって……生まれていなかったらこういして話すことも出来なかった……辻さんのお母さんが泣き出したわよ……」
つかさ「それは……私が」
かがみ「そうよ、みゆきから聞いた、あんたがお昼休みみゆきに話した内容と同じ……私が……私が一週間かかってもみゆきは動かなかった、でもあんたは一時間もしないで
     みゆきを動かした、何をした……あれだけじゃないでしょ、何をしたのよ、言いなさい」
詰め寄ってきた。何か鬼気迫るものを感じた。
つかさ「何も……してないよ、それだけだよ」
かがみ「嘘つくな、絶対何かした、みゆきはつかさの何に動かされたんだ、私に納得するように説明しろ」
私のむなぐらを掴んで揺らした。
つかさ「分らないよ……お姉ちゃん怖い、分らないよ」
私の頭のリボンが解けて落ちた。それに気が付いてお姉ちゃんは手を放した。お姉ちゃんの頭のリボンも少しずれた。呼吸も荒い。
かがみ「……理屈じゃない……そんなのは分ってる……私は一人でこの問題を解決したかった、特につかさ、あんたには知られなくなかった」
つかさ「どうして?」
かがみ「一生私の胸にしまっておこうと思ったけど、もう黙ってても意味は無いわね」
お姉ちゃんは呼吸を整えてから話し出した。
かがみ「子供の頃……今でもまだ成人じゃないけど小学校になる前の事よ……神社の境内……倉庫の片隅に猫が子供を産んでいるのを見つけた、つかさも居た、覚えてる?」
つかさ「……覚えていないよ」
かがみ「……可愛かった、そのまま抱きかかえて家にもって帰りたいくらいにね、でもね親猫が威嚇して近寄ることもできなかった、私は仔猫に触るのを諦めた、
     でもつかさは違った、親猫が威嚇しないギリギリの距離の所にずっと座って猫達を見ていた……つかさはただ見ていただけだった……数日後私は目を疑った、
     つかさ、あんたは仔猫を撫でていた、親猫は威嚇していない、それどころか仔猫たちに乳を飲ませて無防備な姿をつかさに見せていた、私は喜んで
     仔猫に近づいた……しかし親猫は私に牙を向けた、毛を逆立たせて、私を拒んだ……怖くて泣いてしまった……その時の親猫の姿が今でも忘れなれない……
     どうしてつかさに出来て私に出来ない、このままではつかさに置いていかれると思った……だから私は努力した……置いていかれないように追いかけた」
初めて聞く話だった。全然覚えていない。お姉ちゃんの作り話のように思えるほどだった。
つかさ「お姉ちゃん、追いかけたのは私の方だよ、学校の成績だって、運動だってそうだった、今だって全然……勝てる気がしないよ」
かがみ「学校の成績ね……そんなのはやる気の問題、つかさは興味のあることしかしないでしょ、私と同じくらいやってれば同じくらいの成績はとれる、学校の成績は
     意味の無いこと……それに私と同じ高校に居るじゃない……みゆきが私に相談してきた時、今の私ならみゆきを助けられる……そう思った、
     でもだめだった、この一週間私はみゆきに何もしていない、結局何もできなかった、焦れば焦るほど真っ白になっていく……同じ、仔猫に触れなかったあの時と同じ」
お姉ちゃんの目から涙が出ていた。お姉ちゃんが私をそんな風に思っていたなんて。でも素直に喜べなかった。
225 :相談  9 [saga]:2010/10/03(日) 14:59:25.71 ID:jqbqHGY0
つかさ「そんな事言ったら私だって、勘違いしたのが恥ずかしくって……逃げ帰っちゃったんだよ」
かがみ「つかさを勘違いさせたのは私のせい、情報を遮断したのだから、そもそも妊娠なんてデリケートな話頻繁に交わすことなんかあまりない……誰も責めたりしないわよ」
お姉ちゃんは落ちていた私のリボンを拾って私に渡した。
かがみ「……さっきはごめん、あんな事をするつもりはなかった……積年の思いが吹き出しちゃって、話して良かった」
つかさ「うんん」
お姉ちゃんは自分の乱れた髪を整えた。
かがみ「……そこでつかさに相談がある」

つかさ「えっ?」
かがみ「辻さんのお母さんは許してくれた、でもお父さんの方は産むのに条件を出してきた……生まれた子犬を引き取ってくれる里親を六人来週までに探しなさいって」
つかさ「六人……」
かがみ「こなたの家で色々探した。田村さんはもう既に犬を飼っている、みゆきは数に入れるなとの条件……こなた、ゆたかちゃんの実家、日下部、峰岸、成実さん
     は引き取っていいと言ってくれた、あと一人……私のクラスに数人話してもいい人が数人いる、でも、もし決まらなかったら、そう思うと心が重くなる」
私は部屋を出ようとした。
かがみ「どこに行くのよ」
つかさ「居間だよ、皆まだ起きてるみたいだし言ってみるよ犬を飼いたいって……以前、お姉ちゃん犬なんて飼えない言ってたけど本当は違うよね……私の話聞いてみる?」
かがみ「……ふふ、つかさには敵わない……その理由が分った気がしたよ、待って私も行くわ」
でも今度は失敗は許されないし逃げることもできない。ゆきちゃんの為に。そしてこれが私が知る限り最初のお姉ちゃんから受けた相談。子供の頃の話よりこれが一番嬉しかった。

……
……
 
 メアリーちゃんはシベリアンハスキー。チェリーちゃんと同じ犬種だった。当然その間にできた仔犬もシベリアンハスキー。産まれた数が七匹。辻さんのお父さんの条件の数より
一匹多かった。立てるくらいに成長した仔犬たちはそれぞれの里親のもとに引き取られていった。

まつり「ハスキー犬って大型犬だよね、こんなちっこいのが大きくなるのか」
いのり「ハスキーはソリ犬よね散歩が大変そう、引きずられて」
みき「それもしつけ次第みたいよ」
まつり「しつけね……それよりかがみに似ると大変だ」
かがみ「どうして私に似ると大変なのよ」
まつり「そう思っただけ……」
いのり「二人とも静かに、仔犬が起きちゃうでしょ。きっとつかさに似るよ、つかさに抱かれている時が一番大人しいからね」
つかさ「そんなことないよ、それよりこの仔犬の名前決めようよ」
かがみ「この仔犬はもしかしたら産まれなかったかもしれない、運がいい犬よね」
つかさ「だったらラッキーにしようよ、みんないいでしょ」
皆は何も言わず微笑んで仔犬を見ている。もう名前は決まった。名前の通りに我が家に幸運をもたらしますように。

 えっ?一匹余った仔犬はどうなったって。里親はすぐに見つかったよ。それはゆきちゃん、ゆきちゃんはねメアリーちゃんの出産に立ち会って最後に取り出した犬をもらったって。
辻さんのお父さんもゆきちゃんのその姿を見て感心して許してくれたよ。良かったね。


226 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/10/03(日) 15:04:57.05 ID:jqbqHGY0
以上です。
『かがみとつかさ』『つかさとみゆき』の二つのお題でつかさがダブっていたので
つかさをメインにした。『子供の頃』はやっぱりかがみとつかさを使うしかありませんでした。
三つのお題を表現できたかどうかは……お任せします。
227 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/03(日) 23:00:40.16 ID:654WA3Uo
乙でした
まあ勘違いだろうと思ったけどやっぱり勘違いでしたねw
そこでずっこけて終わりにならないあたりがつかさの生真面目さかな
228 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/10/04(月) 00:27:04.52 ID:vA.TgVE0
>>227
やはりベタすぎのようだったかな。実は勘違いじゃない方も考えてたんだけど
ラストがあまりに悲しくなっちゃったのでこうなりました。
229 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/10/04(月) 00:53:29.66 ID:vA.TgVE0
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ここまでまとめた

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230 :迷子! [saga]:2010/10/04(月) 02:37:38.04 ID:odWymcSO
>>229
乙です。

投下いきます。
某軽音部アニメの映画化決定記念ということで、少しコラボさせてみました。
231 :迷子! [saga]:2010/10/04(月) 02:38:34.93 ID:odWymcSO
 とある日曜日。わたしは友人の柊かがみの家に遊びに行くために道を歩いていた。
 ほんとは自転車で行くつもりだったんだけど、家から出た直後にチェーンが切れてしまって、いやーついてないったら。
 そんなこんなで道を歩いていると、前の方にやたら周りをキョロキョロ見ている女の子を見つけた。
 一見すると中学生くらいに見える、わたしよりは少し背が高そうだけど、それでも十分小さな体格。でもわたしやゆーちゃんって例もあるし、高校生かもしれない。
 遠目にもわかる艶やかな黒髪をツインテールにしたその女の子は、可愛いという表現がピッタリだ。ってかそれ以外表現が思い浮かばない。
 わたしがその子を見てると、向こうもこっちに気がついた。そしてパタパタとわたしの方に駆けてきた。近づくその子をよく見てみると、なぜか肩から鞄を二つかけていた。
「えっと、キミは地元の子かな?」
 気さくな、と言うか明らかに小さな子供に対する話し方だ。
 わたしの事を中学生…いや、小学生だと思っているのかも。
「うん、そうだよ。お姉ちゃん、どうしたの?」
 面白くなりそうなので、わたしはその勘違いに乗ってみる事にし、いかにもな口調で答えた。
「お、お姉ちゃん…私が…」
 女の子は顔を赤らめて呟いた。なんか嬉しいらしい。
 まあ、気持ちはわかる。わたしもゆーちゃんに初めてお姉ちゃんって言われたときは、それはそれは嬉しかったもんだ。
 女の子はしばらく余韻に浸っていたが、わたしの視線に気がつくと、咳ばらいをして真面目な顔をした。
「え、えっと、人を探してるんだけど、見てないかな?背はこれくらいで、髪はこんな感じでこの辺にヘアピンを二個付けてて…」
 身振り手振りを交えながら、探してる人物…服装等からして女の子らしい…を説明してくれる。
 が、わたしにはまったく見覚えがなかった。
「うーん…ごめんね。見てないや」
「そっか…」
 残念そうにため息をつく女の子。わたしはふと思い付き、女の子の顔を覗き込んだ。
「ねえ、どの辺ではぐれたかわかる?」
 わたしがそう聞くと、女の子は腕を組んで考え始めた。
「えーっと…唯先輩に鞄を渡されてすぐ見失ったから…たしか川が近くにあって…」
 地元の子じゃないらしく、かなり表現が曖昧だが、それでもわたしには何となく場所の見当がついた。恐らく今から行こうとしてるかがみの家の近くだ。
「そこに戻ってみたらどうかな?お友達も戻ってるかもしれないし」
 そう提案すると、女の子は顔を後ろに向けた。頬に冷や汗らしきものがたれている。
「え、えっと…そ、そうだね…そうしよっか…な」
 なんとなく感じてたことだけど、どうやらこの子も迷子っぽい。
「その場所わたし知ってるよ。今から行く所に近いし、連れて行ってあげようか?」
「え、あ…それは…えっと…」
 かなり迷ってる。年下に頼るのはカッコ悪いとか思ってるんだろうか。
「…そ、それじゃお願いできるかな…?」
 わりと早く折れた。結構素直な子のようだ。
「うん、まかせてよ。わたし、泉こなた。よろしくね、お姉ちゃん」
 わたしが自己紹介しながら差し出した手を、女の子は少し躊躇しながら握った。
「う、うん。こちらこそ…えっと、私は中野梓」
「ふーん…もしかして、お姉ちゃんあずにゃんとか呼ばれてない?」
 わたしが適当に考えたあだ名を言うと、梓ちゃんは驚いたように目を見開いた。
「な、なんでそれを…」
 うわお。当たっちゃったよ。



− 迷子! −



232 :迷子! [saga]:2010/10/04(月) 02:40:22.78 ID:odWymcSO
 こなたから遊びに来るとメールがあったのは、お昼を少し過ぎた辺りだった。
 買い置きのお菓子が切れてる事に気がついたわたしは、とりあえず手近なコンビニで適当にお菓子を仕入れてくることにした。
 たまには菓子折りの一つでも持ってくればいいんだけど、こなたは何時も手ぶらで来るのよね。
 まあ、こなたにそんなものを望むのが間違ってるんだろうけど。
 別に用意する義理は無いんだけど、あれでも一応友達なわけだし、期間限定のポッキーは一本でも多く食べたいし…。
 などと考えながら歩いていると、一軒の家が目に入った。わたしはその家の門から離れるように道の端に寄った。
 この家の犬はとにかくよく吠える。飼い主以外の人間は例外無く吠えられる。わたしもここを通る度に吠えられている。
 そんなだから、ちょっとでもうるさく無いように、こうして離れて通るんだけど…今日はなぜか吠え声が聞こえて来ない。
 散歩にでも行ってるんだろうかと門の方を見ると、一人の女の子が門の中にいた。
 さらによく見てみると、信じられないことにその女の子は件の犬と戯れている。
「あははっ、くすぐったいよー。舐めちゃだめー」
 わたしと同じ歳くらいだろうか。ホントに楽しそうにしてる。
 わたしがいる事に気がついたのか、女の子は犬に視線を向けたまま手招きをした。
「ほら、おいでよ。この子かわいいよー」
 いきなり見知らぬ人をこういう事に誘うのもどうかと思うんだけど、普段吠えるばかりの犬の違う一面が見れるというのも面白いかも。
 わたしは女の子の横にしゃがんで犬の方を見た。

 その直後に思いきり吠えられ、わたしと女の子は脱兎の如く逃げ出すはめになった。

「び、びっくりしたー」
 わたしの首に抱き着いている女の子が少し震える声でそう言った。わたしは膝に手を置いて呼吸を整えている。
 逃げるのに全力ダッシュしたから、無茶苦茶疲れた。ってか抱き着かれてると重いし暑い。
「あの…離して欲しいんだけど…」
 わたしがそう言うと、女の子は思いきりわたしの顔にほお擦りしてきた。
「あずにゃーん。そんな冷たいこと言わないでよー」
 暑苦しいし、うっとうしい。これがこなたなら無理矢理にでも引きはがすんだけど…ってかあずにゃんって何?あだ名?
「…あれ?あずにゃん背が伸びた?…なんか声も違うような…」
 恐る恐るといった感じで、女の子がわたしから体を離す。わたしの顔を確認した女の子はだらだらと汗を流し始めた。
「ど、どちらさまでしょうか…?」
「わたしもそれを聞きたいわよ」
 女の子は次に回りを見渡した。噴き出す汗の量が増え、見る見る泣きそうな顔になっていく。
「こ、ここどこ…?」
「どこって言われても、わたしの家の近くとしか」
「…あずにゃん、どこ?」
「さあ?」
 どうやら、この子は迷子らしい。わたしはため息をついた。
「携帯は持ってないの?とりあえず、そのあずにゃんって人に連絡いれないと」
 わたしがそう言うと、女の子は慌てた様子で服のポケットを探り始めた…が、その動きが徐々に鈍くなり、遂には止まってしまった。そして、なんとも情けない顔でわたしの方を見てきた。
「…もしかして、無くしたの?」
 わたしがそう聞くと、女の子は首を横に振った。
「ううん、多分鞄の中…」
「その鞄は?」
「…あずにゃんが持ってる」
 わたしは額に手を当て大きなため息をついた。
「わたしもちょっとコンビニ行くだけのつもりだったから、携帯持ってきてないのよね…ああ、そうだ。コンビニに公衆電話あったっけ。そこからかけてみる?」
233 :迷子! [saga]:2010/10/04(月) 02:41:58.46 ID:odWymcSO
 わたしがそう言うと、女の子は少し考えるように首を傾げたあと、深々と頭を下げた。
「よろしくお願いします」
「…いやまあ」
 なんかこう…テンションというか、間の掴みにくい子だなあ。
「じゃ、案内するわね…えーっと、わたしは柊かがみよ」
 わたしが自己紹介をすると、女の子はうんうんと頷いた。なんとも無駄な動作の多い子だ。
「私は平沢唯だよ…えーっと、かがみんって呼んでいい?」
「却下」
 唯さんの提案を一蹴して、わたしはコンビニに向かって歩きだした。
「えぇーなんでー?」
 情けない声を上げながら、唯さんがわたしの後をついてくる。
 その様子がおかしくて、わたしはクスッと笑ってしまった。



「へー。じゃあお姉ちゃんバンドやってるんだ。かっこいいなー、憧れちゃうよー」
「そ、そんな誉められるほどじゃ…」
 わたしの絶賛の声に、梓ちゃんが顔を赤らめる。うーん、反応がよくて誉めがいのある子だ。
 とりあえず今までの会話で分かったのは、梓ちゃんは桜が丘女子高等学校っていう高校の二年生で、軽音楽部で放課後ティータイムというバンドの一員らしい。
 探してる人は平沢唯って名前で、同じ部活の三年生らしい。
 ちなみに、わたしの方はほとんど情報を漏らしてない。
「唯先輩はリードギターでボーカルなんでしょ?凄いね、やっぱかっこいい人なんだろうなー」
 わたしがそう言うと、梓ちゃんは実に複雑な表情をした。
「…ゆ、唯先輩はかっこいいとはちょっと…」
「違うの?」
「練習あんまりしないし、お菓子ばっか食べてるし、音楽用語とか全然覚えてくれないし、だらけてること多いし…」
 なんか色々大変な人のようだ。
「受験生なのにあんまり勉強してないし、進路もまだ決まってないっていうし、すぐ抱き着いてくるし、変なあだ名つけるし…」
 何個かわたしにも刺さるのがあるんですが。
「今日だって鞄渡されたと思ったらいなくなっちゃうし、探してるうちに私までどこにいてるかわからなくなっちゃうし…」
 ああ、やっぱこの子も迷子だったか。
「じゃあ、ほっといて帰ればいいのに。駅への道教えるよ?」
 わたしがそう言うと、梓ちゃんはわたしの顔をまじまじと見つめてきた。まるで信じられない事を聞かされた、というように。
「ど、どうしてそうなるの?」
「どうしてって…その先輩の事嫌いじゃないの?なんか酷い人みたいだし、この機会にちょっと痛い目にあってもらって…」
 もちろん、こんな事本気で言ってるわけじゃない。多分だけど梓ちゃんはその先輩の事をそれなりに慕ってるんじゃないかって思う。これだけ欠点がすらすら出て来るのも、その人の事よく見てるからだろうし。
 ちょっとつつけば面白い反応が見られるかなあって思ったんだけど…梓ちゃんはうつむいてしまった。
「…えっと…お姉ちゃん?」
 わたしは声をかけながら顔を覗き込もうとした。
「そんなんじゃなーいっ!!」
 するといきなり梓ちゃんが顔を上げ、大声を出した。
 …正直、かなりびっくりシマシタヨ。
「…あ…ご、ごめん…」
 数歩引いたわたしを見た梓ちゃんが謝ってきた。
「あ、うん…」
 梓ちゃんに手を振って答えながら、わたしは元の位置に戻った。
「嫌いじゃないんだね…」
 わたしが呟くようにそう言うと、梓ちゃんは顔を赤らめてそっぽを向き、小さく頷いた。
 うむ、いい反応だ。また驚かされるのもアレだし、先輩をほめる方向でいってみよう。
 そんなことを考えながら、わたしは話しやすいように、いまだそっぽを向いている梓ちゃんの前に回り込んだ。
234 :迷子! [saga]:2010/10/04(月) 02:44:35.41 ID:odWymcSO



「ほら唯、ついたわよ。電話あそこだから、かけてきなさい」
 コンビニについたわたしは、公衆電話のある場所を指差しながら、後ろを歩いている唯にそう言った。
 なんか、自分でもよくわからない内に呼び捨てにしてるし。
 こなた相手でも、呼び捨てになるのに一週間くらいかかったのになあ。
「うん、ありがとう、かがみん」
 …向こうは向こうで、却下したにもかかわらずあだ名で呼んでくるし。
 唯はてくてくと公衆電話へと歩いていき、その前で首を傾げるとまたこちらに戻ってきた。
「かがみーん。十円貸してー」
「…持ってないんかい」
「お財布も鞄の中ー」
 わたしはため息をつくと、財布から十円玉を三枚ほど取り出し唯に手渡した。
「ありがとう!」
 唯はお金を握ってニッコリと微笑むと、もう一度電話の方へと小走りに向かった。
 何て言うか…怒りづらい笑顔なのよね、この子。
 とか思ってると、唯がまたわたしのところに戻ってきた。
「どうしたの?」
「あずにゃんの電話番号って何番だっけ?」
「…わたしが知ってるわけ無いでしょ。ってか、なんであなたが知らないのよ」
「いつもはアドレス帖からだから…」
 そういやそうか。にしても困ったなあ。
「自分の携帯番号は?確かあずにゃんが持ってるんでしょ?」
 わたしは少し考えてから、唯にそう言った。ってか、あずにゃんってあだ名、口にするの恥ずかしいからいい加減本名を教えてほしい。
「え、えーっと…」
 微妙な表情でそっぽを向く唯。おい、自分の携帯番号すらもか。
「じゃあ自宅の番号は?それくらいわかるでしょ?」
「…ごめんなさい」
 謝られた。こういうの何て言うんだろう…ゆとり乙?違うか。
「…わたし、先に買い物済ませるわね」
「見捨てないでかがみーん」
 少し痛くなってきた頭を振りながら、コンビニの入口に向かうわたしの腰の辺りに唯が抱き着いてきた。
「ええい、離しなさい…」
「やだー」
 引きはがそうするが、えらく強い力で引っ付かれてて、まったく離れない。

 結局、唯を引きずりながらコンビニに入る羽目になった。店員の視線が痛いわ…。
 カゴを持って、まずはお目当てのポッキーを入れる。その横から別のお菓子がどさどさと。
「…なにやってんのよ」
 いつの間にかわたしから離れていた唯が、勝手にお菓子を入れていた。
「私の分」
「ないわよ」
「えぇー…かがみんのケチー」
 口を尖らせてぶーたれる唯。子供かまったく。
「わたしはそんなお金持ちじゃないの。奢る余裕なんか無いわよ」
「じゃあ、お財布戻ってきたら返すからさー」
「…わかった、わかったわよ」
 わたしはそれで妥協することにした。このままもめてても、時間を無駄にするだけよね。
「えへへ、ありがとー」
 これまたいい笑顔で礼を言った後、お菓子を物色し始める唯。わたしはため息を一つついて、お菓子選びを再開した。
235 :迷子! [saga]:2010/10/04(月) 02:51:32.03 ID:odWymcSO
 …て、あれ?もしかしてこれって、あずにゃんと合流するまでこの子から離れられないって事?…しまったー。
「…これと…これもー…」
 わたしの苦悩はお構いなしに、カゴの中に次々とお菓子を入れていく唯。
「ちょっと待てい」
 わたしは、次のお菓子を物色しに行こうとする唯の襟首を掴んで引き止めた。
「ふえ、なに?」
「なに、じゃ無いでしょ。入れ過ぎよ」
 カゴの中には溢れんばかりのお菓子。大半は唯が入れたのだ。
「大丈夫だよー、お金はちゃんと返すから」
「大丈夫じゃない。わたしの手持ちが足りないわよ」
「ふえ、そうなの?」
「そうよ。ってかこんなに一人で食べるの?太るわよ?」
 わたしの言葉に唯がニコリと微笑む。
「それは大丈夫だよ。わたし食べても太らないから」
 わたしは無言で唯の両方のほっぺを掴み、思いきり左右に引っ張った。
「いふぁいー!はにふるのかふぁみーん!」
「嘘つきはお仕置きです」
「うほひゃないっへー!」
「なお悪い!」
 左右引っ張りに上下動も加える。柔らかくて引っ張りがいのあるほっぺだ。
 十分にこねくり回してから手を離すと、唯はほっぺを手で押さえてしゃがみこんだ。
「ほっぺた伸びちゃうよー」
「安心しなさい。人のほっぺは、こんな程度じゃ伸びないから」
「ぶー」
 ふて腐れながら唯が立ち上がる。
「澪ちゃんやムギちゃんもだけど、なんでこれ言ったら怒るんだろ…」
 そりゃ怒る。世の女性全体の半数を敵に回す台詞だ。
「かがみんだっていっぱい買ってるじゃん」
 カゴからお菓子をいくつか抜きながら、唯が不満そうにそう言った。
「わたしは買い置きするからよ。それに今日は友達も来るからね」
「そっかー…じゃあ私の分の半分はそのお友達さんに」
「だから、買うお金が無いっての。いいから戻してきなさい」
「はーい」
 意外と素直に唯はお菓子を戻しに行った。まあ、ここでごねられても困るけど。
 カゴの中を見てみると、お菓子の総量は半分くらいに減っていた。



236 :迷子! [saga]:2010/10/04(月) 02:55:06.61 ID:odWymcSO
 話の振り方間違えた。
 隣で語る梓ちゃんを横目で見ながら、わたしはそう思っていた。
「それでもう唯先輩ったらギー太ギー太って…」
 ちょっと前までは『やるときはやる』とか、『ライブの時はちょっとカッコイイ』とか、唯先輩のいいところを少し照れながら話してたんだけど、使ってるギターの話題になった途端にまた愚痴になってきた。
「そりゃあギターを大事にするのはいいんだけど、大事にする方向が違うっていうか、いちいち話し掛けたり構いすぎっていうか…」
 なんかギターにやきもち焼いてるみたいで、これはこれで面白いんだけど。
「…あれ」
 話を聞きながらふと目を向けたコンビニ。その出入口からかがみが出てくるのが見えた。
「梓お姉ちゃん、ちょっといいかな?」
「え?…あ、ご、ごめんね。私ばっか喋ってて…」
 話を遮ったのを怒ってるのを勘違いしたのか、梓ちゃんは謝ってきた。
「ううん、すれは良いんだけど…あそこのコンビニに友達がいたから、ちょっと挨拶しときたいかなって思って」
 そう言いながらわたしが指差したコンビニの方を梓ちゃんが見る。
「あーっ!!」
 そして大声を上げた。
「ど、どうしたの?」
 驚いてそう聞くわたしを置いて、梓ちゃんはコンビニの方にズンズン歩いて行く。
 コンビニの出入口。かがみの後ろから出てきた女の子。
「唯先輩っ!」
 梓ちゃんはその女の子をそう呼んだ。

 コンビニの駐車場。わたしとかがみは、車止めに並んで腰掛けている。
「…なんていうか、えらい偶然ね」
 コンビニで買ったらしいポッキーをかじりながら、かがみがそう呟いた。
「だねえ…」
 横から手を延ばしてポッキーを一本拝借しながら、わたしは短く答えた。
 梓ちゃんと唯さんはわたし達から少し離れた場所にいる。
 唯さんが、梓ちゃんに説教を食らっているようだ。どっちが先輩なんだか。
「どっちが先輩なんだかねえ…」
 かがみも同じ事を考えてたらしく、小さく呟くのが聞こえた。
「すいません。お待たせしました」
 説教が終わったのか、梓ちゃんがそう言いながらこっちに歩いてきた。後ろには唯さんがとぼとぼとついてきている。
 梓ちゃんはわたしたちの側までくると、かがみに向かって深々と頭を下げた。
「すいません。唯先輩がご迷惑をおかけしたみたいで…」
「ううん、言う程迷惑じゃなかったわよ」
 そう答えるかがみだが、結構愚痴を言ってた気がする。
「こなたちゃんも、ごめんね。付き合わせちゃって…」
 梓ちゃんは今度はわたしに向かってそう言った。
「わたしも人の事言えないけど…この短期間で随分仲良くなったのね。後輩からちゃん付けされるなんて」
 それを聞いたかがみが感心したようにそう言った。
「…へ?後輩?」
 梓ちゃんの目が点になる。ふむ、まあそろそろばれてもいいか。
「え、だって梓ちゃんって唯の後輩なんでしょ?唯とわたしが同い年で、わたしとこなたが同い年なんだから…」
 かがみが説明するにつれ、梓ちゃんの顔から血の気が引いていく。
「…す…すいませんでしたーっ!」
 そしてわたしに向かって思いきり頭を下げてきた。
「…謝る必要ないんじゃない?大方、こいつが年下に見られるのいいことに、からかってたんだろうし」
 わたしが何か言う前に、かがみがわたしの頭を小突きながらそう言った。
「あー、まあ騙してた事には違いないけど、からかった訳じゃないよ。なんてーか…いわゆる試練?観察眼を試す?みたいな?」
237 :迷子! [saga]:2010/10/04(月) 02:56:26.84 ID:odWymcSO
「良いように言おうとするな。しかも自信なさ気に」
 もう一度頭を小突かれる。ええい、突っ込みとはいえ人の頭をポカポカと。
「で、でも何か失礼なこと言ってた気がしますし…」
 梓ちゃんはまだ納得いかないようだ。生真面目な子だなあ。
「まあ、そう気にすることないよ。わたしも、年下に見られるのはあんま気にしてないし」
「そうだよあずにゃん。こんなに可愛いんだから」
 わたしの真後ろという予想外の場所から、予想外の内容で、予想外の声が聞こえた。
 わたしは振り返ろうとしたが、それより早く声の主…唯さんがわたしに抱き着いてきた。
「んー、いい抱き心地ー。それに髪の毛フカフカー」
 抱き着きながら、わたしの髪に顔を埋めてくる唯さん。
「ちょ、ちょっと唯先輩!何やってるんですか!?…ってなんか冷静ですね…」
「こういうスキンシップには慣れてるからねー…お髭がちくちくしない分ましだし」
「…普段、誰に抱き着かれてるんですか…」
 血の繋がった実の父親です。

「本当にご迷惑をおかけしました…」
 わたし達に向かってまた頭を下げる梓ちゃん。もう何度目だろうか。
「ほら、唯先輩も」
 そして隣にいる唯さんにも促す。
「んー…よし、お詫びにこれをあげよう!」
 唯さんは鞄の中から紙を取り出して、わたしに手渡してきた。
「唯先輩、そうじゃなくて…あーもう」
 苦労してるなあ、梓ちゃん。
「それじゃ、ここで解散でいいかしら?駅へはさっき言った通りに行けばいいから」
 そして仕切るかがみ。
「はい、ありがとうございました…ほら、行きますよ唯先輩」
「ほーい…それじゃ、かがみん、こなたん、またねー」
 手を振る唯さんと、それを引っ張っていく梓ちゃん。ってかいつの間にかあだ名付けられてるし。
「またねーって、会えるんかねえ」
 二人が見えなくなった後、わたしがそう言うと、かがみは自分の携帯をひらひらさせた。
「唯とメアド交換しといたから、会おうと思えば会えるわね」
「いつの間に…」
「そういや唯から貰ったの何だったの?」
「なんだろうね。えーっと」
 わたしは唯さんから貰った紙を、かがみにも見えるように広げた。
「…放課後ティータイムコンサートチケット…」
「…所、桜高軽音部部室かっこ音楽準備室かっことじる。時間、放課後…」
 わたしとかがみはどちらともなく顔を見合わせた。
「へー、唯ってバンドやってるんだ」
「あれ、かがみ聞いてなかったの?わたしは梓ちゃんから聞いてたけど」
「…そんな話、まったく出なかったわね」
 それを聞いたわたしは思わず吹き出してしまい、かがみもつられて笑い出した。
「まあ、せっかく貰ったんだし、つかさやみゆきさん誘って行ってみる?」
「そうね」
 わたしは手作りチケットを丁寧にたたんでポケットにしまうと、先に歩き出したかがみの後を追った。



− 終 −
238 :迷子! [saga]:2010/10/04(月) 02:59:32.60 ID:odWymcSO
以上です。

一人称がこなたとかがみの交代だったのですが、分かりづらかったでしょうか?
239 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/04(月) 04:12:43.95 ID:vnhe87s0
乙!
まさに日常って感じで良かったよー癒されるな。
らきすたはキャラの語り口に個性が出るから、一人称で回しても混乱しないで読めるね。
240 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/10/04(月) 21:02:07.72 ID:vA.TgVE0
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ここまでまとめた

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241 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/05(火) 21:57:07.50 ID:99QIxS2o
>>240
いつも乙です。

>>197です。
お題「かがみとつかさ:子供の頃」を書き上げたので投下します。
きっと30レスくらい。
242 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 21:59:26.72 ID:99QIxS2o

 いかにも梅雨らしい、今日はそんなぐずついた空模様の日だった。
予報通りの曇り空からは雨がぽつぽつと控えめに落ちてきている。
雨に濡れないように、苦心して歩く人々の視線が空に向くことはない。
そんな、どこか物憂げな大気に包まれた街のファミリーレストラン。
その一角で、私は怒りに声を荒げていた。

「……でも!そんなのってないじゃない!」

「ま、まあまあかがみん、落ち着いて。ここ、外、外」

 時刻はそろそろランチタイムも終わろうかという頃。
平日のせいか雨のせいか閑散として、それでも親子連れやカップルで

それなりに賑わう店内、気がつけば私は全員の注目の的となっていた。
キッチンの奥からも、エプロン姿の渋い男性が苦い顔を覗かせている。
当然、私は意気消沈して、握り締めた拳からは力が抜けていき、続いて耳の熱くなる音が聞こえた。

「よろしいよろしいー、羞恥に戸惑うかがみんもかわいいよ」

 テーブル対面のこなたがニヤニヤと私を見つめる。
蛍光灯に照らされた肌はひどく不健康な色をしていた。
聞けば、大学も2年目に入って手の抜き方を完璧に覚えたらしく、
最近はネトゲ三昧の生活を送っているとのことだ。
しかし、試験期間になると他大の私に泣きつくのはどうかと思う。


「……気色わるい言い方すんな」
243 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:00:04.10 ID:99QIxS2o






         お祭りの、そのあとは








244 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:00:49.84 ID:99QIxS2o

「―――さて、それでは話を整理しようか………どったの?かがみん」

「いや…アンタがそんな物言いをするなんて、って……」

「ああこれ?いやー!最近ハマってる探偵物のアニメがあってねー」

「…………」

「あれ?もしかして呆れてる?」

「……いや、アンタのことだからどーせそんなとこだと思ってたわよ」

「さっすがかがみん!あたしのことよーーっくわかってるねえ」

「もう、いいから続けて」

「りょーかーい。さて、それでは話を整理しようか……」

「もういいって……」
245 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:02:13.07 ID:99QIxS2o

「で、かがみんがそんなに怒ってる理由だけどさ」

 そう、とにかく私は怒っている。

「つかさが一人暮らしを始めることにしたから、じゃなくて」

 つかさは次の春に専門学校を卒業する。
早々と都内で就職先を見つけたつかさは、その近くで一人暮らしをすると言い始めた。
まあ、都内と言っても職場から家まで1時間もかからないし、
わざわざ引っ越さずに実家から通えばいいとは思った。
でも自立するのは悪いことじゃないし、それは怒った理由じゃない。

「急な話だったから、でもなくて」

 つかさは、夏休みに入ったら、つまりあと一ヶ月もしたら一人暮らしを始めると言った。
そして、それを聞かされたのが今朝。
まあ、今の学校もバイト先も引っ越せば近くなるし、
早くから生活の基盤を作っておくのも悪くないと思う。
急な話だったけど、つかさは働いて自力でお金も貯めてたみたいだし、
無計画なわけじゃないから、それも違う。


「ひとえに……なんの相談も無かったから、ってこと?」
246 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:04:46.25 ID:99QIxS2o

 ……そうよ。
そんな話、つかさは一言も私には話してくれてなかった。
お母さんやお父さんに、いのり姉さんまつり姉さんにだって相談していたのに。
そんなのって、あんまりじゃない。

「つかさはかがみんに話したら止められる、って分かってたんじゃない?」

 たしかに、そうかもしれない。。
私ならたぶん…ううん、絶対にまず反対したと思う。
それでも、つかさが本気で考えてることなら、私だって一緒に考えたい。
キツいこと言うかもしれないけど、手助けもしてあげたい。
けど……だけど、つかさがそれを拒むんだったら……私……
本当は、つかさに嫌われてるんじゃないかって思えて。
そう思うと、頭ん中がぐしゃぐしゃになって……

「で、つかさとケンカして家を飛び出して、愛する私に頼ってきたんだね」

 愛する、は余計よ。
呟いて少し目線を上げると、いつものようなどこか泰然とした笑顔で、こなたが私を見澄ましていた。
不意に、その少し細めた瞳に心臓が衝き動かされ、私は慌ててコーヒーカップに手を伸ばした。
カップの中でスプーンがカラカラと音をたて、一口にも満たない冷めたコーヒーが喉を通り過ぎていく。
そうして平静を装った次の瞬間にはもう、こなたの表情はいつもの剣呑なものに戻っていた。
247 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:06:36.26 ID:99QIxS2o

 雨音が、少しだけ耳に障る。

「でも、かがみんは仲直りがしたいんだよね?
なら今言ったことをつかさにも話せばいいじゃん」

 かがみんの気持ちを素直に伝えればいいんだよ、と芝居がかった調子でこなたは言う。

 たしかに、それを伝えればきっとつかさは私を許してくれるし、
つかさが理由を話してくれたらきっと私だって理解できる。
姉妹なんだから、ずっと一緒だったんだからそれくらい分かってる。
でも、なぜだろう。
わからないけれど。

「……それは、イヤなの」

 心底驚いた、というようにこなたは目を見開いた。
構わず私は続ける。

「なんでだろ、わかんないわよ。
頭の中ぐちゃぐちゃで全然わかんない……だけど……だけど、イヤなのよ」

 私の気持ちが、その素晴らしい解決策を良しとしなかった。
胸の中のモヤモヤが疼いて、心がざらついて、私は自分の本音をつかさに伝えることを拒んでいた。
隠していたつかさが悪いと思ってる?
ひょっとして、自分が姉だからなんて思ってる?
それは一体なぜなのか、次々に仮定を浮かべてはそれを否定していく。
初めての戸惑いに、私の感情は闇に囚われたように出口を見失っていた。
248 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:07:38.26 ID:99QIxS2o

「なるほどねー」

 そんな苦悩もどこ吹く風といった調子で、こなたは妙に納得したように頷いていた。

「……は?」

 当然、ワケが分からず私の口からは疑問の声が洩れる。

「いやーかがみんがなんで怒ってるのかわかっちゃったのだよ。それはもう、ピコーンと」

 こなたは口を猫のように丸めながら、人差し指を立てた両手を頭の上でぐるぐると回している。
その動作にツッコむ気力は、今の私には無い。

「聞きたい?ねえ、聞きたい!?」

 楽しくてしょうがない、そう顔に書いてある。
その屈託の無い笑顔は、まあ嫌いじゃないけど。
けど、今はムカつく!

「……自分で考える」
249 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:08:33.66 ID:99QIxS2o

 その答に満足したようだったこなたは、すぐに震える携帯を手に席を外した。
私はと言えば、まるで見当もつかない答を探してさ迷っていた。
今までの会話を探っても、あらためて自分に問いかけても、それらしいものを見つけることはできない。

 なんでつかさに謝れないのだろう、このモヤモヤは一体なんなのだろう。

 頭を抱えても抱えても思考の道筋すら見つけられず、ついに、私は震える左手を伸ばした。






「すいません……この豆乳仕立てのミルクレープを一つお願いします」
250 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:09:36.18 ID:99QIxS2o

 ケーキがテーブルに届けられ、私が紅茶を淹れたところでこなたが席に戻ってくる。
黙ってテーブルに着くと、フォークを片手にした私をじっと見つめた。

「……言いたいことがあるなら言えばいいじゃない」

 なんというか。

「……それで頭が回るなら、いいと思うよ」

 見透かされてるなあ、私。

「…ちょっと食べる?」

「うん、ありがとー」

 心持ち大きめににケーキを切り分けて差し出す。
それを一口でほおばって、こなたは喋り始めた。

「…ひょっと……聞ひたいんあけど……」

「いや、どっちかにしなさいよ、ほら」

 紅茶でケーキを飲み下し、再びこなたは喋りだす。

「いやごめんごめん……んでさあ、かがみんとつかさってケンカしたことあるの?」
251 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:11:48.61 ID:99QIxS2o

 私が目をぱちぱちさせていると、少し慌てたようにこなたは続ける。

「いやーだって私の知る限り二人のケンカなんて初めてだったからさ。
そこんとこ、どーだったのかなーって思って」

「ケンカねえ…」

 何か拾い物もあるかもしれないし、糖分が頭に回るまで時間もかかるし、
少しくらい脱線してもいいかな。
そんなことを、考えていた。

「どうだったかな……あ!そうそう、一度だけあったわね」

「おおー!聞かせて聞かせて!ね、ね!」

 身を乗り出して、目を輝かせてこなたは私につっかかる。
その姿を視界に収めながら、私の意識は既に記憶の海へと没入していた。
あれはたしか……

「えっと……あれは、ちょうど今くらいの季節で、たしか小1だったかしら……私は……」



 …………
252 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:13:39.42 ID:99QIxS2o

 あたしは、つかさが嫌いだった。

 このかわいらしい妹はどこへ行くにも後ろからついてきて、
でも一緒にいたらかわいがられるのはつかさばっかり。
あたしがお守りしないといけないし、そのせいであたしは好きなことできないし。
こないだだって、あたしがかわいいって言われた髪形マネされて、けっきょくつかさがほめられてた。
だからね。

「おねえちゃーん、おまつり楽しいね!」

 絶対に、今日は一緒にいてあげないんだから!

「…お母さん、あたしちょっと一人で色々見てくるね!」

「ま、待ってよお、おねえちゃーーん」

 お母さんの注意する声からも、追いかけてくるつかさからも逃げて、あたしは走り出す。
待って、待ってというつかさの声も遠くなり、あたしはお祭りの騒ぎの中でやっと一人になれた。
253 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:14:45.04 ID:99QIxS2o

 おこづかいの1000円を握りしめて、
どんな楽しいことをしてやろうかと考えると胸がドキドキする。
射的とか、わなげとか、かたぬきとか…くじびきじゃちょっともったいないな。
わたあめもおいしそう、だけどたぶん後でお母さんが買ってくれる。
お祭りの魔法があたしの胸をいっぱいにして、見える景色がぜんぶキラキラかがやいていた。

 そしてそんな中であたしの心はいつしか、ある屋台に吸い寄せられていた。

「おっ!お嬢ちゃん一人?一回三百円だよ!やってくかい?」

 勇気を出して、期待に心おどらせて、あたしのチャレンジが始まる。

 初めての金魚すくい。
もらった一枚のアミはすぐ破けてしまい、あたしのチャレンジは終わった。

「やったあ!取れた!取れたよおかあさん!」

 となりで、あたしと同じか少し小さいくらいの女の子が大声をあげた。
彼女はお母さんに頭をなでられながら、幸せそうに笑っている。
あたしはその姿を、自分と重ねていた。

「おじさん、もう一回やります!」
254 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:15:39.88 ID:99QIxS2o

 アミとおわんを両手に抱いて、あたしは注意深く水面を見つめた。
さっきの失敗でわかった。
やみくもに振り回してたら、アミはすぐに破けてしまう。
だから、アミは横にしてなるべく水とぶつからないように、狙いを定めてすぐに金魚をつかまえる!
さっと水中にアミを差し込むと狙い通り、あたしは金魚をすくい上げた。

「やった―――あ!」

 小さな水音を残して、金魚はプールへ帰って行った。

「惜しかったねえ、お嬢ちゃん!掬ったらすぐお椀に入れないとな!」

「おじさん、もっかい!」

 すぐにあたしは最後の300円を差し出す。

「毎度あり!特別だ、お嬢ちゃんに教えてやろう!お椀はもっと水に近づけたら簡単だぜ!」

 おじさんの言葉にしたがって水面ギリギリまでおわんを近づける。
再び狙いを定めて、さっきよりも鋭くアミを水の中へ。
一匹の金魚をアミからおわんのなかへ滑り込ませる。
アミは破けたが、もう金魚が落ちていくことはない。
そしてあたしは勝者のようにおわんを掲げた。

 あたしはとうとう、金魚をすくったのだ!
255 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:16:17.92 ID:99QIxS2o

「おめでとう、お嬢ちゃん!今袋につめてやるからな!」

 おじさんが金魚をビニール袋に入れている間に、あたしの頭はぐるぐると回っていた。
名前はどうしようか。
どこで飼おうか。
池がいいかな?
水槽のほうがいいかな?
あ、お母さんもお父さんも許してくれるかな?
みんななんて言うかな?
ほめてくれるかな?
ほめてくれたら…いいな!

「はいよお待たせ……おや、またかわいらしいお嬢ちゃんが来たな!」


 ……?


「おねえちゃん、やっと見つけたー!」



 ……つかさ。
256 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:17:17.02 ID:99QIxS2o

「わあー、金魚、おねえちゃんが取ったのー?すごいね!」

「……ま、まあね」

「いいなー、わたしもやってみたいなー!」

「じゃ、じゃあコツを教えてあげる!」

「ホント!?ありがとう、おねえちゃん!」

「いい?アミはこう、横にして…おわんは水に近づけるの…」


「ははは、毎度あり!お姉ちゃんはすっかり金魚掬いの達人だな!妹ちゃんもがんばれよ!」

 このときあたしは喜びのあまり、いつも抱いていたつかさへの気持ちをすっかり忘れていた。
全てが楽しいことにさえ思えていた。
つかさにほめられることも、頼られることも。
あたし自身がつかさにお姉ちゃんとして接するのも。
屋台のおじさんの軽口さえも。
257 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:18:25.82 ID:99QIxS2o

 そしてつかさはすぐに3回のチャレンジに失敗して、あたしに泣きついてくる。

「おねえちゃん、わたしダメだったよー!」

「あはは、しょうがないわねー」

 あたしが取った一匹がいるから。
そう口に出す、その瞬間だった。

「ははは、しょうがない!たくさん遊んでくれた、かわいらしい妹ちゃんにサービスだ!」

 そう言って、おじさんは金魚を2匹ビニール袋に入れてつかさに押しつける。

 つかさがとまどいながら嬉しそうに、とてもとても嬉しそうにそれを受け取ると、
あたしの中で何かが弾けた。
258 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:19:33.20 ID:99QIxS2o

 仲良くやれよー、とあたしたちを見送るおじさん、手に持った金魚、
となりを歩くつかさ、全てが遠くに感じた。
あたしには1匹、つかさには2匹。
あたしはすくって、つかさはもらって。
つまりは、そういうことなのだと思う。


―――つかさちゃんお姉ちゃんと同じ髪にしたの?やっぱりかわいいわね―――


―――つかさちゃんまたかわいくなって、浴衣も似合うのねえ―――



 かがみちゃんはしっかり者で偉いわ。


 お姉ちゃんなんだからつかさちゃんを守ってあげないとね。


259 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:20:22.39 ID:99QIxS2o

「―――あ!お母さん、お父さん!」

 気がつけば、あたし達は両親のもとへ帰り着いていた。
かけ足でつかさはお父さんに飛びつき、お父さんはつかさの頭をなでる。

「見て見てお父さん!かわいいでしょー」

 お父さんは2匹の金魚とつかさを交互に見て、ほほえんだ。

「ああ、かわいい金魚だね。二匹も取るなんてすごいぞ」

 いつの間にかそばにいたお母さんが、あたしに喋りかける。

「かがみも、かわいい金魚ね。つかさのこと見てくれてありがとう」


 耳鳴りの向こうで、つかさの声が聞こえる。
違うよお父さん、お姉ちゃんは取ったけど、わたしは取れなかったから…

 お父さんがあたしを見てほほえむ。
つかさはお日様のように笑う。
あたしの手から、ビニール袋がこぼれ落ちていった。
260 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:22:24.63 ID:99QIxS2o

 水がざあっと流れ出して、石畳に広がっていく。
お母さんは、何か喋りながら慌ててしゃがみこんだ。

「―――ない……!」

 金魚が水を求めて必死に跳ね回り、みんなが疑問の顔をあたしに向ける。



「―――いらないよ!そんなの!」



 やがて金魚は力尽きて、その動きを止めた。



261 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:24:25.44 ID:99QIxS2o

「なんで!なんでいっつもつかさばっかり!そんなのずるいよ!」

 お父さんお母さんが何か言っていたが、何も耳に入らなかった。

「やだ、もうやだ!お父さんもお母さんも嫌い!嫌い!」

 あたしはただ、つかさを睨み続けていた。

「……つかさなんて、つかさなんて……」

 その顔は驚き、そして怯えていた。
そして次の瞬間のつかさの表情を、たぶん、私は一生忘れられない。




「つかさなんて、大っ嫌い!」



262 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:25:56.12 ID:99QIxS2o

 あたしは走り出した。
お祭りの人波から人波をぬって、お父さんお母さんから逃げるように。
誰よりも、つかさから逃げるように。

 つかさは涙をぽろぽろとこぼしながら、あたしを見つめていた。
あたしには、それが何よりも恐ろしかった。
何か大切なものを壊してしまったような気がして、胸がずきずきと痛んだ。
その気持ちの正体を知るのは本当に怖くて、
瞳に焼きついたつかさの泣き顔を忘れるために、あたしはただ走り続ける。
でも、どれだけ走ってもそれはあたしの心から離れない。
そのうちに疲れきってしまったあたしは、川のほとりでフェンスに背中を預けて腰を下ろした。

 泥まみれの足にスリ傷がたくさんついていて、じわじわと痛む。
買ってもらったばっかりの浴衣は、すそが破けてしまっていた。

 なんだか不意に泣けてきたので、上を向いて鼻をすする。
すると、あんまりにも星空が綺麗で、なぜかあたしはつかさのことを思い出していた。
そのうちに視界がぼやけてきたので、浴衣の袖で顔を拭う。
拭っても拭っても涙は止まらないので、あたしは体育座りになって膝に顔をうずめた。
喉から声が漏れ出して、止まらなくなる。
我慢できなくなって、あたしは大声をあげて泣きだした。

 遠く遠くのほうからお祭りの声が聞こえる。
夜の静寂とかすかな喧騒に包まれながら、
いつまでも、いつまでもあたしはその場所で泣きじゃくっていた。
263 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:26:51.07 ID:99QIxS2o



 …………

 いつの間にか雨は止み、ゆるやかに昼が夕方に呑み込まれていく、
そんな時間帯のやわらかな陽射しが店内を照らしていた。
さきほど苦い顔をしていた男性が、緩慢な動作でメニュー表を差し換えている。
私は少しぬるくなった紅茶を飲み干して、話に一息をつけた。

「……で!で!それからどーしたの!?」

 こなたがさらに身を乗り出して、話の続きを私に求める。
すっかり人のいなくなった店内に、その大声を咎める人はいない。

「それから、えっと……どうしたんだったっけ?」

「なんじゃそら!」

 大げさな身振りでこなたは落胆を示す。

「いや、ホントに……どうだったかな……」

 私は、記憶から抜け落ちた物語の続きを探していた。
あの夜の後、私はどうして、どうやってつかさと仲直りしたんだろう。
思い出せない。

「ちょっとお花を摘みに行ってくるから、しっかり思い出しといてね!」

 そう言ってこなたは席を立つ。

 私も席を立って、コーヒーを淹れるためにドリンクバーへ向かった。
264 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:28:12.78 ID:99QIxS2o

 …なんで、思い出せないんだろう。
カップを水ですすいで、機械にセットする。
ボタンを押すと、静かにコーヒーがカップに注がれていく。
こぽこぽ、と響くその音は、私に今朝のことを思い出させた。


―――お姉ちゃん、ついでにコーヒー淹れとくね―――

―――えへへ、ちょっともーらい……にがーーい!―――

―――やっぱり、私にはまだ早いのかなあ―――



―――えっとね、お姉ちゃん。大事なお話があるの―――



「そんなこと……勝手にすればいいじゃない!」





 いつからか握りしめていた掌には、くっきりと爪跡が残っていた。

 ……なんか、私もたいがい変わってないなあ。
一方的に癇癪起こして、子供の頃とまるで同じじゃない。
つかさはしっかり成長して、もう一人立ちしようとしてるのに。
265 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:28:59.03 ID:99QIxS2o




 …………


 ……ああ、もしかして。


 そっか。






 つかさのほうが先に大人になっちゃったのかな。




266 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:29:43.95 ID:99QIxS2o

「あのー…かがみんや、んなとこで突っ立ってどしたの?」

 気がつけば隣にはこなたが立っていて、怪訝そうに私を見ていた。
置かれたままのカップから湯気が立ち昇っている。

「……ごめんこなた。私、行かなきゃ」

「へ!?話の続きは?」

「ごめん、また今度話すから」

 こなたの目の色が変化していく。

「…わかったの?」

「うん。全部わかった。だから早くつかさに会いたいの。会って謝らなきゃいけないから」

 私はこなたをまっすぐに見据える。
不意にこなたがやわらかくほほえみ、その表情は私を少しだけ安堵させた。

「わかった!じゃーちょっとだけ座って待っててよ!」
267 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:30:26.82 ID:99QIxS2o

 そう言ってこなたは私をテーブルに押しやると、携帯を持ってどこかへ行ってしまった。
勢いに呑まれた私は、大人しく座ったまま時計とにらめっこを続ける。
熱いコーヒーをどうにか飲み干した頃に、こなたが席へ戻ってきた。

「お待たせー、じゃあ行こっか」

「……行こう、って…?」

 私はその言葉の意味を測りかねていた
こなたは悪戯っぽい笑顔を浮かべると、伝票を私に突き出した。

「かがみんちだよ!」


268 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:31:22.67 ID:99QIxS2o

 電車を降りるともう、辺りはすっかり夕焼けに染められていた。
雨上がりの夕陽はあまりに眩しく、私の視界は極端に狭められる。
手で小さな傘を作ってみれば世界が燃えているようにさえ感じられて、
私たちは足早にホームを横切った。

 こなたは道中、何も教えてはくれなかった。
だから私も深くまで追求はしなかった。
なにとなく感づいてはいたが、あえて言葉にしようとは思わなかった。

 改札を出ると横目に雨で少しだけ増水した川が目に入る。
この川は、あの日の私に続いている。
立ち止まると、不意に一陣の風が吹き抜けて私を弄んだ。
私は目を閉じて、スカートを強く押さえた。

 風が止んで顔を上げると、道の先にはつかさの姿があった。
269 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:32:21.88 ID:99QIxS2o

 ほんの短い距離をおいて立っている。
あかねの色に染まったつかさは、まるで別人のようだった。

 つかさの後ろには、みゆきが控えていた。
適当な距離をおいて、相変わらずの柔和な笑顔をたたえている。
私が後ろを向くと、そーゆーこと、とでも言うようにこなたがニヤニヤと笑っている。
どこか釈然としない気持ちを抱えつつ、私は再び前を向いた。

 人々が皆それぞれの家路を辿ると、雑沓は夕暮れの外に散っていく。
そして、私達は二人きりになった。

 私は一歩一歩を踏み締めるように歩いた。

 つかさも小さな歩幅で歩いている。
その瞳は宝石のように輝いていた。

 すぐに私たちは互いが触れられる位置まで辿り着き、そして、二人の深呼吸が重なった。
270 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:32:47.34 ID:99QIxS2o







      「ごめんなさい!」







271 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:33:30.34 ID:99QIxS2o

 ユニゾンが夕暮れの空いっぱいに広がっていく。
それだけで、私の心を覆っていたモヤモヤは消えていった。

 顔を上げれば、つかさが泣きながら笑っていた。
私はつかさを抱きしめて、その感触をたしかめる。
なんだかつかさはやけに温かくて、私もどうにも涙が止まらなくなってしまう。
いつしかつかさがわんわんと泣いていたので、私も人目をはばからず泣き声をあげた。

 そうして夕陽は沈んでいき、宵の闇が辺りを覆っていく。

 長い長い一日が終わろうとしていた。
272 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:35:56.55 ID:99QIxS2o



『……とにかくありがとう。今度あらためて奢るから、飲みに行きましょ。
でも、アンタがちょっと楽しんでたのは忘れないから』

 一日の感謝と小言をこなたに送信する。
つかさはまだみゆきにメールを打っているようだ。
どこかぎこちないその指先は、私を懐かしい気持ちにさせた。

 お風呂上りでまだ少し湿った髪を気にしながら、私は疲れた体を布団に沈ませる。
洗いたての毛布からはほのかにつかさのにおいがして、
そのしっとりとした甘さは私を安心させた。

 すぐにつかさがメールを打ち終えて、私のマネをするように勢いよくベッドに突っ伏した。
さんざん泣きはらしたその後に、深夜まで色々なことを語り合っていた
私達はすっかり疲れ果て、一日の余韻に包まれていた。
つかさがベッドサイドの紐を引いて、照明が落とされる。
薄暗闇に目が慣れた頃、
つかさがベッドから身を乗り出して、床で毛布にくるまれている私に声をかけた。

「なんか、二人で寝るのって久しぶりだね。昔はいっつも一緒だったのに」

 顔は見えなくても、つかさが笑っているのがわかった。
寝そべったままで両手に頭を乗せて、返事を待っている。
私は体を起こすと、目線をつかさと合わせるようにして応える。

「そうね、ホントに久しぶり……ねえ、つかさ。覚えてる?」

 そうして私は、あのお祭りの日のことを話し始める。
今はもう、あのケンカの結末も思い出していた。
273 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:37:12.09 ID:99QIxS2o

「……それで、あの時はつかさが謝ってくれたのよね」

「うんうん、私、初めてあんなにお姉ちゃんに怒られて、
どうしようってすっごく落ち込んだんだー」

「あの時はごめんね……今日のことでさ、私あの頃と変わってないんだなーって思って」

「そんなことないよ……私だって全然だもん……」

「ううん、つかさはもう大人よ……あ、結局あの金魚、すぐに野良猫に食べられちゃってさ……」

 ささやき合うように会話は流れてゆき、やがて不意にぷつりと言葉が途切れた。




―――私、お姉ちゃんに頼ってばっかりの自分から卒業したかったの―――




 そう、つかさは私に言った。

 私も、つかさに伝えたいことがある。
274 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:38:25.54 ID:99QIxS2o

「……ねえ、つかさ」

 呼びかけに応える吐息のような声を聞いて、私はゆっくりと言葉を紡いでいく。

「私ね、自分が怒ったのはつかさが相談してくれなかったからだと思ってた。
でも本当はね、つかさが一人で歩こうとしてるのが寂しかったみたい。
ずっとずっと当たり前だった、一緒の時間が終わっちゃうみたいで、怖かったの……」

 窓の外、遠くに連なる提灯が見える。

「勝手だよね、昔は嫌だって怒ってたのに。今は私、つかさが一緒だとすごく安心するの。
だから、離れるのが怖くて。
それでつかさのこと叱って、謝るのもイヤだって思ってた……本当に、ごめんなさい……」

 あのお祭りの日が、間近に迫っていた。

「あのね、つかさ…」


 呼びかけに、返事はない。
私はもう一度つかさに声をかけて、その顔を覗き込んだ。
275 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 22:42:11.96 ID:99QIxS2o


 すぅ……すぅ……。


 穏やかな寝息が室内に響いて、幸せそうな寝顔がほのかな光に照らされている。
いつの間にか、つかさは眠ってしまっていた。

 呆れて一息に全身の力が抜け、思わず私は声を出して笑っていた。
すぐにつかさをきちんと寝かせて、ずり落ちた毛布を肩までかけ直すと、
その顔をもう一度まっすぐに見つめた。

「……私、つかさのこと応援する。つかさが一人で歩くなら、ずっと応援する。
だから、その日までたくさん一緒にいてね。それからだって私たち、きっと大丈夫よね。
だから……とりあえずは、その日までよろしく、ね」

 私はそっとつかさの髪を撫でた。
つかさが小さくほほえんだ気がしたのは、星の明かりのいたずらだろうか。



 つかさが家を出るまで……あと一ヶ月とちょっと。
それまで、どんなことをしよう。
こなたやみゆきを連れ出して、休みの日には家族で出かけて、もちろん二人でだって遊びたい。
やりたいことも行きたい場所も、数え切れないくらい。

 でもまずは、二人でお祭りに行こう。
あの日と同じ、この街のお祭りに。


 今度はつかさと、一緒にまわりたいな。

                                   (了)
276 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/05(火) 22:52:17.01 ID:99QIxS2o

 終わりです。
だいぶ長くなってしまいましたが、読んで下さってありがとうございます。

 お題を下さったお二方、本当にありがとうございました!
なんとかいただいたものを生かせていたら幸いです。

 「つかさとみゆき」も2週間でやります。
半コテ化して申し訳ないのですが、お目こぼしください!
277 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/05(火) 23:28:58.34 ID:cKZvYgAo
乙でした
頼られてるようで、かがみの方が依存度は高い気はしますよね
278 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/10/06(水) 00:03:57.04 ID:Ad5TzKk0
>>276
乙です。長編ですね。まとめるのは週末にしましょうか。コメントフォームを付ける関係で2ページに分けることになりますが
どこで分けるか教えてくれると在り難いです。


かがみとつかさは色々書けるのでお題では一番好きです。二人の対照的な性格だけどそれがたまに入れ替わったりするのが意外性を産むんですよね。自分も三つのお題で作ったつもりだったけどかがみとつかさが濃すぎてみゆきが薄れてしまったみたいです。別にするべきだった。
279 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/06(水) 00:05:46.38 ID:2IW8hVIo
>>276
おつおつ。すごくよかったよ〜GJ
280 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/10/06(水) 01:13:20.96 ID:Ad5TzKk0
>>278です タイトルは……『おまつりのその後は』でいいのかな?
281 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/06(水) 14:23:26.80 ID:N1SFHN2o
>>278
分割は>>262>>263の間でお願いします!
あと、細かいのですが『お祭りの、そのあとは』で! お手数かけます。

 かがみつかさはある種、共依存のような関係があって面白いですね。
>>277さんも言うようにかがみの依存が強い気はしますが、それも見る人の視点によりけりですし。

 個人的にはお題三つ融合という挑戦に敬意を表したいwもちろん作品内容にもですけども。

>>277 >>279
乙ありがとうございます!
物凄く嬉しかです。
282 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/10/07(木) 20:23:20.25 ID:LrAx7w.0
>>281
了解しました。

ふと思いついたssを投下します。4レスくらい使用します。
283 :携帯電話  1 [saga]:2010/10/07(木) 20:24:45.95 ID:LrAx7w.0
こなた「今日は楽しかったよ、それじゃまた明日ね」 

 今日は日曜日、こなたを家に呼んで遊んだのだった。時間になったのでつかさは駅まで送った。

つかさ「ただいま」
玄関を開けたが返事が無い。
つかさ(あれ、おかしいな、お姉ちゃん何処行ったんだろ……夜食の買出しにでもいったかな、そうだ居間の食器片付けなきゃ)
つかは居間に行った。そしておやつで使った食器の片づけをしたときだった。つかさの作ったクッキーをこなたに渡すのを忘れていたのに気が付いた。
家族の分はもう既にあるので余ってしまう。もったいない。ふとクッキーの置いてある机を見たときだった。
机の上に携帯電話が置いてあった。これは自分の物でもかがみのものでもなかった。
つかさは手にとって携帯電話をじっと見た。そして気が付いた。この携帯電話はこなたのものだ。こなたは携帯電話を置いて帰ってしまった。つかさは時計をみた。
こなたの家に届ける時間はまだ充分にある。つかさは食器を手早く片付けるとこなたの携帯とクッキーを持ってこなたの家に向かった。

 こなたの家の近くに着いた時つかさの携帯電話が鳴った。家からの電話だった。
かがみ『もしもし、つかさどこに居るのよ』
つかさ「えっ、こなちゃん携帯忘れちゃって家に届けに行って……」
かがみ『そうだろうと思った、こなたはこっちに居るよ、とにかく戻って』
つかさ「うん」
つかさはそのまま自分の家にユーターンをした。

つかさ「ただいま、こなちゃんごめんね」
家の玄関でこなたを呼んだ。しかし出てきたのはかがみだった。
かがみ「あれ、駅でこなたと会わなかったのか?」
つかさ「……うん、会ってない、もしかして」
かがみ「行き違えか、だから待ってろって言ったんだ」
つかさ「しょうがないよ、駅に行ってくるよ」

 つかさは駅に向かった。休日の夕方。帰りの乗客で駅は混んでいた。つかさは改札口の周りを探した。しかしこなたの姿が見当たらない。
しばらく探しているとつかさの携帯電話が鳴る。家からの電話だ。
かがみ『もしもし……こなたは家に戻ってきたぞ……今度は動かないように言っておくから戻ってらっしゃい』
つかさ「はーい」
つかさは家に戻った。家の玄関の前でこなたは待っていた。
こなた「ごめんごめん何度も往復させちゃって……」
つかさ「うんん、いいよ、こなちゃん……はい」
つかさは携帯を渡した。こなたは受け取ると走って去っていった。つかさはこなたを見届けると家に入った。
かがみ「まったくこなたは……つかさ、その携帯はどうしたんだ?」
つかさ「えっ?」
つかさは携帯を充電しようとして驚いた。つかさが持っているのはこなたの携帯だった。そう、つかさは自分の携帯をこなたに渡してしまったのだ。かがみはため息をつく。
かがみ「あんた達なにボケてるのよ……どちらかは気が付くだろうに」
つかさ「どうしよう……」
かがみ「自分の携帯に電話しなさいよ、まだ電車に乗っていないと思うぞ」
つかさは自分の携帯に電話した……しかし留守番電話に繋がってしまった。
つかさ「……そうだ私の携帯もう電池が切れ掛かってたんだ……」
かがみはつかさの足では間に合わないと思った。それにつかさのオロオロした行動がじれったかった。
かがみ「こなたの携帯貸しなさい、自転車で追いかけるから……私の携帯貸すから何かあったらこなたの携帯に連絡して」
こなたの携帯とかがみの携帯を交換した。かがみは飛び出すように家を出た。
284 :携帯電話  2 [saga]:2010/10/07(木) 20:26:01.38 ID:LrAx7w.0


 暫くすると呼び鈴が鳴った。つかさは玄関の扉を開くとそこにはこなたが立っていた。息を切らしている。
こなた「ハァハァ、つか・さ、私の携帯……返して」
つかさ「こなちゃん……さっきお姉ちゃんがこなちゃんの携帯を持って駅に向かったよ」
こなた「えー、なんで?」
つかさ「自転車で向かったから目立つと思ったんだけど……」
こなた「全然きがつかなかった、かがみに連絡して」
つかさ「うん」
つかさはこなたの携帯に電話をかけた。
かがみ『なんだって、こなたが家に居るって、分かった、私が戻るまで梃子でも動かないように言っておいて』
つかさは携帯を切った。
つかさ「ここに居てって、お姉ちゃん怒ってた……」
こなた「……私達何してるんだろうね、バカみたい」
つかさ「携帯って便利なのか不便なのか分らなくなってきちゃった」
こなた「そうだね」
そこでつかさはクッキーの事を思い出した。
つかさ「そうだ、どうせだからクッキー持って行ってよ、沢山作ったから」
こなた「ありがとう」
つかさはクッキーの用意をした。

 しばらくすとかがみが帰ってきた。
かがみ「あんた達しっかししなさいよね、確かに渡したわよ」
かがみはこなたに携帯を渡した。
こなた「確かに受け取った、ありがとう、それじゃ明日ねー」
こなたは玄関を出た。

つかさ「やっと元に戻ったね」
かがみ「全く、何をしてるんだか……そうそう私の携帯返して」
つかさ「うん」
つかさはかがみに携帯を渡した。
つかさ「あれ、私の携帯は?」
かがみ「……知らないわよ……って、こなたが持ってるんじゃないのか」
つかさ「あっ!そうだった、どうしよう……」
まごまごとしているつかさを見てもどかしさが頂点に達した。かがみは自分の何かが弾け飛んだのを感じた。もう抑えられない。
かがみ「まったくさっきから行ったり来たり!、なにやってるの、ムカつくじゃない、つかさ絶対に携帯取ってくるから待ってろ!!」
かがみは飛び出すように家を出た。そして自転車に跨った。今のかがみはこなたの家まで走るような勢いだ。かがみはペダルを踏み出した。
つかさ「待ってお姉ちゃん」
つかさがかがみの前に立ち塞がった。かがみは慌てて急ブレーキをした。
かがみ「危ないじゃない早くそこを退きなさい、あんたの為に行くんだぞ」
つかさ「お姉ちゃんの携帯貸して」
かがみ「何故よ」
つかさ「……もう、いいの、だから、ね、貸して」
悲しそうに言うつかさを見てかがみの興奮が少しおさまった。かがみは自分の携帯をつかさに渡した。つかさは携帯をかけた。
285 :携帯電話  3 [saga]:2010/10/07(木) 20:27:06.65 ID:LrAx7w.0
つかさ「……もしもしこなちゃん?」
こなた『あれー、かがみじゃなかったのか……ごめんつかさ、携帯返すの忘れちゃった、今そっちに戻るところ』
つかさ「……もう遅いからそのまま帰っちゃっていいよ、明日返してくれればそれでいいよ」
こなた『……明日で良いの?……分ったこのまま帰っちゃうよ……じゃーね』
つかさ「じゃーね」
携帯を切るとそのままかがみに返した。
かがみ「……そうかこなたはもう携帯持ってるんだったな……すっかり忘れててた」
つかさ「こなちゃんこっちに戻るところだったよ……」
かがみ「……また行き違いになる所だった、ありがとうつかさ」
つかさは何も言わずそのまま家に入ってしまった。かがみはつかさの変化に気が付いた。自転車をしまうとつかさの後を追った。


かがみ「つかさどうしたのよ、急に元気なくしてさ……私は別にこなたやつかさに対して怒ったわけじゃない」
つかさは暫くしてから答えた。
つかさ「……私達って携帯がないと待ち合わせも出来ないんだね……」
その言葉にかがみは衝撃を受けた。そしてつかさの悲しい顔の意味を理解した。
かがみ「そうね、そういえばそう、待ち合わせる時も携帯、電車が遅れた時も携帯、急用が出来た時も携帯……携帯が無いと何もできない、さっきの騒動で痛感したわ」
つかさ「……でもその騒動を解決したのも携帯電話だよ、携帯電話って良いのかな、悪いのかな」
かがみは答えられなかった。自分の手に持っていた携帯電話をじっと見つめた。沈黙がしばらく続いた。

『ピンポーン』
呼び鈴が鳴った。二人はびっくりして我に返った。
つかさ「こなちゃん?」
かがみ「まさか、帰るって言ったんだろ?」
つかさ「うん……でも気にしてくれて戻ってくれたのかも」
かがみ「……あいつはそんな気をつかう奴じゃないわよ」
ドアが開いた。
まつり「ただいまー、鍵がかかってないじゃない、無用心だな……ってかがみ、つかさ、こんな所で何してるの」
かがみ・つかさ「おかえり」
まつり「どうした二人とも浮かない顔をして、喧嘩でもしてたか」
かがみ「違うわよ」
つかさ「違うよ」
まつり「……ステレオで否定されたよ、ま、仲がいいのはいいこどだ……そうそう、もう一人仲のいい人からつかさにってね」
まつりはポケットから携帯電話を取り出すとつかさに渡した。そう、つかさの携帯電話だ。
つかさ「これは、私の……」
まつり「駅でばったり遇っちゃてね、間違って持ってきたから返して欲しいって言うから預かったよ」
かがみ「姉さん、こなたを知ってるの紹介もしていないのに」
まつりは靴を脱ぎながら話した。
まつり「……知ってるもなにもいのり姉さんだって知ってるよ、あんた達よく家に呼んで遊んだり勉強したりしてるじゃない、いやでも顔くらいは覚えるよ、向こうも私を知ってたよ」
つかさ「なんで……携帯をあれだけ使ったのに……」
つかさは不思議な気持ちになっていた。
まつりは靴を脱ぎ終わると家にあがった。
まつり「泉こなた……つかさと同じクラスメイト、何でもつかさを怪しい外国人から救ったんだって?あんなに背が小さいのに凄いね……それにつかさとかがみの共通の友達なんて
    珍しいじゃない? だから気にしてはいたんだ……そういえばもう一人居たな、眼鏡かけた背の高い子」
かがみ「姉さん、こなたと話したのか」
286 :携帯電話  4 [saga]:2010/10/07(木) 20:28:11.48 ID:LrAx7w.0
まつりは笑いながら話した。
まつり「かがみ変な質問だな、話さないでどうやってつかさの携帯を預かるんだよ……こなたちゃん……面白い子だね、かがみとつかさの小さい頃の話をしきりに聞いてきた」
かがみの嫌な予感が当たった。かがみはこなたをまつりに会わせたくなかった。かがみはこなたを家に呼ぶときはなるべくまつりが居ない日を選んだくらいだった。
かがみ「まさか姉さん言ったんじゃないでしょうね」
まつりはいやらしい笑い方をした。
まつり「電車が丁度来て話せなかった、でも約束はした、今度ねってね」
かがみ「そんな約束はしなくていい、それにそんな話はしなくていい」
まつり「こなたちゃんとは気が合いそうだ……かがみの反応が楽しみだな」
かがみ「ちょと、だめだから、絶対にだめ!……話すなー!!」

 言い合っているけど喧嘩をしているわけじゃない。つかさはかがみとまつりのやり取りを新鮮に感じた。それはこなたとまつりが出会ったせいかもしれない。
こなたに出会ってからかがみと自分の関係が微妙に変っていたのもその時気が付いた。そして思った。こんどみゆきをまつりといのりに紹介しようと。
なにかもっと新鮮な事が起きるような気がした。かがみといのりはまだ言い合いをしている。話に加わりたいけどそんな状況じゃなさそうだ。
つかさは渡された自分の携帯電話を見た。今日は携帯電話の便利さと怖さの両方を知ったような気がした。携帯電話の電源が切れている。充電しに自分の部屋に向かった。

 充電器をコンセントに挿しこみ、コネクターを携帯にセットした。充電開始のランプが点灯する。
(こなちゃん、クッキー食べたかな、もしかしたら感想のメールが着てるかも)
つかさは電源ボタンに手をかけた。自然と手が止まった。そして逸る気持ちをぐっと抑えた。
(今日はもういいよね)
そう心で呟き耳を清ませた。まだかがみとまつりはさっきの話をしている。しかしもう一人増えている。いのりの声だ。いのりが帰ってきたようだ。
つかさは携帯電話をそのまま机の上に置いた。

つかさ「いのりお姉ちゃんおかえり」

 つかさは部屋から出てかがみ達の会話に入った。


287 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/10/07(木) 20:29:47.58 ID:LrAx7w.0
以上です。
ほとんど即興に近いので荒削りです。
288 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/10/08(金) 21:46:07.33 ID:BDqjo.I0
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ここまでまとめた

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289 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/10(日) 06:28:21.53 ID:.3OP02SO
>>226
誰も突っ込んでないけどチェリーが♂って設定はわざと?
290 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/10(日) 13:34:52.00 ID:qWOmmMI0
8巻発売してたんだな
291 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/10/10(日) 20:14:39.43 ID:7O8av0A0
こなた「8巻出たね。中身は、角川Hot Lineでページ数稼いでる感じだけど」
ひより「それは仕方ないっスよ」
こなた「それはともかく、表紙登場おめでとう、ひよりん」
ひより「いや、私はあくまで先輩方の引き立て役っスから」
こう「なに言ってんだ、ひより。堂々のセンター正面だろ。私らの方が引き立て役だな。三年生組は本編でも出番少なかったし」
こなた「それに比べたら、ひよりんは本編でも大活躍。いやぁ、感動したよ。あれだけ気配りできるオタクなんてそうそういるもんじゃない」
ひより「おだてても何も出ないっスよ、先輩」
いずみ「実際、すごく助かってるわ。でも、友達を腐った視点で見るのは止めた方がいいと思うよ?」
こなた「おっ、若瀬さんもツッコミが板についてきたね」
いずみ「いえいえ、そんな」
こなた「若瀬さんといえば、ひより兄やみさきち兄を差し置いて、お兄さんとお母さんが本編登場してたよね。お兄さんとも仲がいいし、若瀬さんってオタクにとっちゃ結構理想的な妹なんじゃないかな?」
ひより「それは言えるっスね。私のお兄ちゃんたちがうらやましがるかも」
ななこ「委員長はなぁ、委員長としては及第点やけど、成績がなぁ」
いずみ「うっ……」
こなた「先生、みゆきさんと比べるのは酷ってもんですよ」
ななこ「まあ、そうなんやけどなぁ。少しはがんばりぃや」
いずみ「はい……」
こなた「先生も結構出番ありましたね」
ななこ「そうやなぁ。でも、海水浴はハブにされたけどな」
こなた「うっ……。あっ、そういえば、カバー裏で天原先生のチェックが入ってたのって、健康診断の結果票かなんかですか?」
ななこ「そうや。ビールひかえろいうてもなぁ。こればっかりは止められへんで」


*8巻感想
 大学生組と二年生組の出番が多い。そのあおりで、柊家(かがみとつかさを除く)と三年生組の出番は減ってる。
 ひよりは気配りのできるいい子だ。
 いずみ兄は、妹とあんなに仲がよくて、オタクとしては恵まれた立場だな。
 ふゆきちゃんの制服姿!
292 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/11(月) 07:39:59.28 ID:IqPO01Mo

いずみが成績悪かったのは意外だった
それにしても、みなみは今後常にみゆきのことをお姉ちゃんと呼ぶようになったのだろうか?
293 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/10/11(月) 12:18:19.68 ID:K7BjL2SO
いずみが結構アホの子
そうじろうは子供の頃はまだオタクじゃなかったっぽい
みなみの財布がバリバリ
つかさは西武ファン
かがみの見えっ張りは母親譲り
ひかるとふゆきがもう夫婦にしか見えない

八巻は濃いですな
294 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/11(月) 20:09:19.73 ID:4Xj2z.g0
みっくみくにしてんやんよー

この為だけにミクという名前になったのだろうかと思ってしまうネタであった
295 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/10/11(月) 20:53:19.10 ID:IMh.IVU0
レスを切ってすみません。

>>289
結論からいいますとわざとです。
指摘がないからそのままにするつもりだったのですが聞かれたので答えます。

 この物語を作るうえでみゆきには重大な責任を負わせたかったのでチェリーを♂にしました。
相手方の犬を散歩させることも考えたのですが、今回はオリキャラをあまり目立たせたくなかった。
それと原作・OVAのチェリーの行動が親戚が飼っていた♂犬とあまりに似ていたのも理由の一つです。
296 :小さなお話 [saga]:2010/10/13(水) 02:09:07.12 ID:hZU732SO
投下いきます。

お題に便乗して書きました。
思いつきで書いたんで短いです。
297 :小さなお話 [saga]:2010/10/13(水) 02:12:00.15 ID:hZU732SO
 右を見ても左を見ても知らない風景。
 一緒にいてたはずのお母さんもいない。
 ああ、そっか。これが迷子なんだ。
 そう気がつくと、不安が一気に押し寄せてきた。
 どうしよう…どうすればいいんだろう。



− 小さなお話 −



 とりあえず、動かない方がいい。
 わたしはそう思って近くにあった塀にもたれた。
 どうしようって言葉だけが、ずっと頭の中をぐるぐる回っている。
 このままお母さんに会えなかったらどうしよう。このままお家に帰れなかったらどうしよう。
「…う…うぇ…やだよぉ…」
 涙が出始めると、もう止まらなかった。わたしはひたすら泣きじゃくった。
「…えと…あの…」
 しばらく泣いていると、誰かから声をかけられた。
 顔をあげて見ると、わたしと同い年くらいの女の子が、今にも泣きそうな顔で立っていた。
「…な、泣かな…ふ、ふえ…泣かないで…」
 というか泣いていた。
溢れてくる涙を一生懸命拭いながら、わたしを慰めようとしてくれている。
「…うん、もう泣かない」
 わたしは目の端に溜まった涙を拭い去って、その子の顔をちゃんと見た。
「…よかった…」
 女の子はそう言って、また目に涙を溜めはじめた。
「えっと…」
 わたしが何か声をかけようとすると、女の子はぐっと顔を拭って、わたしの手を掴んだ。
「こ、公園…」
 そして消え入りそうな小さな声でそう言った。
「…え、公園?」
 わたしがそう聞き返すと、女の子は手を握ったまま早足で歩きだした。
「え、え、あ、あの…」
 わたしもそれに引きずられるように歩きだす。
「公園…み、みんないるから」
 さっきよりはっきりとした声で、女の子がそう言った。
 ここでお母さんを待たないと…わたしはそう思ったけど、なぜかその子に逆らえずに手を引かれるままついていった。



298 :小さなお話 [saga]:2010/10/13(水) 02:13:50.24 ID:hZU732SO
「あ、あれ…どうして…」
 女の子に手を引かれてやってきた公園。結構広いんだけど、誰も居なくてシーンとしてる。
「さ、さっきまでみんないたのに…」
 また泣きそうになりながら、女の子は公園の中をあちこち見て回る。手はまだ繋がれたままだ。
「…ごめんね」
 急に立ち止まった女の子が、わたしの手を離して謝ってきた。
「みんないたら、寂しくないのに…」
 そっか。わたしが一人で泣いてたから、この子は他の子供がたくさんいるはずだったここに連れてきたんだ。わたしが、寂しくなくなるように。
 わたしは自分がまだ迷子だというのに、なんだか嬉しくなった。
「大丈夫…」
 そう言いながら、今度はわたしから女の子の手を握った。
 女の子が驚いてわたしの方を見る。
「寂しくないよ。だって、あなたがいるもん」
 わたしは、精一杯の笑顔を作ってそう言った。
 寂しく無いってのは嘘だけど、この子にはそんな気持ちは見せられない。わたしはそう思った。


「今日はブランコ乗れないって思ってたんだよね」
 誰もいない公園でわたし達はゆっくりとブランコを漕ぎながら、色々と話をしていた。
「ブランコ、人気あるんだ」
 わたしがそう言うと、女の子は少し困った顔をして頷いた。
「うん。いつも誰か乗ってて…」
 わたしがいつも行ってる公園は、ブランコよく空いてるんだけどな。


「この前ね、面白い子がいたんだ」
 しばらく二人でブランコをこいでいると、女の子が急にそう言った。
「面白い?」
「うん。この辺の子じゃないみたいなんだけどね」
 こちらを気にしながら、女の子が話を続ける。もしかして、わたしが退屈しないようにしてくれてるのかな。
「その子、お父さんと来てたんだけどね、男の子にも負けないくらい運動できてて、ほらあれ…」
 女の子が指差す方を見ると、すごく高いジャングルジムがあった。
「あのてっぺんにも、すいすい登っちゃったんだ」
「へー、すごいね」
 本当にすごいと思った。とてもわたしには出来ないことだ。
「それでね、その子ジャングルジムのてっぺんで、こう腕組んで立って…」
 それもすごいと思う。あんなところ、怖くてとても立つなんて無理。
「『フハハハ!見ろ、人がゴミのようだ!』って大きな声で言ってたんだ」
「ゴ、ゴミ…」
 …えーっと…うん、すごいと思う。そんなこと普通大声で言えないし。
「で、降りてきた後にね、わたしのお姉ちゃんに頭小突かれててたんだ。『ゴミってなんだー』って」
「そ、それいいのかな…あ、えっとお姉ちゃんがいるんだ」
 わたしがそう言うと、女の子はどこか誇らしげに微笑んだ。
「うん。わたしの自慢のお姉ちゃんなんだ」
「へー…わたし一人っ子だから、ちょっとうらやましいな」
 わたしは迷子のことも忘れて、その子との話に夢中になっていた。
 もう、寂しく無いは嘘じゃなくなっていた。



299 :小さなお話 [saga]:2010/10/13(水) 02:16:33.57 ID:hZU732SO
「高良さーん。出して来たよー」
 職員室から出てきた柊さんを、わたしは笑顔で出迎えました。
「どうでしたか?」
 そう聞いてはみたものの、柊さんの嬉しそうな表情を見れば、結果は一目瞭然です。
「うん、ばっちり。これなら問題ないって」
「そうですか…良かったです」
「ホントにありがとう。高良さんが手伝ってくれたからだよ。わたしとこなちゃんじゃ、絶対終わらなかったよ」
「いえ、そんなことは…わたしはほんの少し手伝っただけですから」
 わたしが手を振りながらそういうと、柊さんは辺りをキョロキョロと見回しました。
「そういえば、こなちゃんは?」
「泉さんなら、先程用事があるから先に帰ると…」
 作業の間もしきりに気にしてましたから、余程大事な用事だったのでしょう。
「もー、こなちゃんひどいなー。待っててくれてもいいのに。ってか一緒に帰ろうって言ってたのに」
 そう言って少し頬を膨らませる柊さんを見てると、なんだかおかしくなって、わたしは柊さんから見えないように顔を背けました。
「あ、高良さんもしかして笑ってる?」
 でも、すぐにばれてしまいました。
「す、すいません…お詫びと言ってはなんですけど、わたしと一緒に帰りませんか?」
「え、いいの?」
「はい。方向が逆ですから、駅までですけど…」
「うん!じゃあ鞄取ってくるね!」
 嬉しそうに駆け出す柊さん。わたしは、その姿を見てとても満足した気分になっていました。


 文化祭の準備が遅れている班を手伝う。最初はただそれだけの事でした。
 でも、一緒に作業を進めるうちに、柊さんとどこかで会ったような感覚を覚えました。
 そして、休息中の何気ない雑談。柊さんが話してくれた、子供の頃の迷子の女の子の話。
 あの時の…迷子のわたしを助けてくれた女の子が、柊さんだった…わたしは話を聞いてそう確信しました。
 お母さんがわたしを探して公園にくるまでの間、ずっと話相手をしてくれて、『よかったね』と笑顔で言ってくれた女の子。
 ずっと、何かお返しがしたいと思ってたのですが、今日の事で少しは恩返しが出来たでしょうか?
「…高良さん?どうかしたの?」
「へ?…あ、いえ、なんでもありませんよ、柊さん」
 ぼーっとしていたらしく、急に声をかけられて、わたしはひどく慌ててしまいました。
「んーと、それなんだけど…柊さんじゃなくて、名前で呼んでくれたほうがいいかも」
「え、それはどうしてですか?」
「わたし、別のクラスにお姉ちゃんがいるんだ。双子の。だから、名字だとややこしいかなって」
 そういえば、あの時もお姉さんの話が少し出てたような気がします。
「そうですか…では、つかささんで」
「うん」
 なんだか少し照れ臭さは残りますが、じきに慣れるでしょう。
「では、わたしの事も好きに呼んで下さって結構ですよ」
 わたしがそう提案すると、つかささんは少し首をかしげて考え始めました。
「じゃあ、ゆきちゃん」
 あだ名がくるとは思いませんでした。
「…えーっと、だめ…かな?」
 わたしの沈黙を否定と受け取ったのか、自信なさげにつかささんがそう呟きました。
「い、いえ、ちょっと驚いただけで、それで結構ですよ」
 慌ててそう言うわたしを見て、つかささんは嬉しそうに笑いました。
「そっか…良かった」
 そう言いながらつかささんはわたしの少し前を歩き出しました。
300 :小さなお話 [saga]:2010/10/13(水) 02:18:14.19 ID:hZU732SO
「…ありがとうございます」
 その背に、わたしはあの時に結局言えなかった言葉を小さく呟きました。
「ん?なにか言った?」
 聞こえてしまったのか、つかささんが顔だけを振り向かせて、そう聞いてきました。
「いえ、なんでもありませんよ」
「そう?だったらいいけど…」
 また、前を向いて歩き出すつかささん。
 つかささんは、あの時の迷子がわたしだという事には、気付いていないようです。
 でも、わたしはあえてその事を自分から伝えようとは思いませんでした。
 つかささんが気付いてくれればそれでいい。ずっと気付いてくれなくても、それはそれでいいと、わたしは思いました。
 今はただ、新しく出会ったこの時を、ゆっくりと過ごせばいい。
 わたしは胸の奥にそっとしまい込みました。

 小さなわたしと、小さなあの子。
 むかしむかしの小さなお話を。



− 終 −
301 :小さなお話 [saga]:2010/10/13(水) 02:22:03.43 ID:hZU732SO
以上です。

というわけで『つかさ、みゆき』『子供の頃』で書いてみました。
みゆきさんが全然子供っぽくないというのはご愛嬌ということで。
ホントは三レスで収めるつもりだったんですが、ちょっとミスりました。
302 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/10/13(水) 19:37:10.94 ID:xg6v/Aw0
>>301
乙です。 つかさとみゆきで子供の頃をキーにするとはやりますね感服しました。


8巻は一通り読んだ。こなた達の卒業後の事が分ってきたのでその辺りのssも書けそう。
だけど高校時代も捨てがたい。
303 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/10/13(水) 19:57:17.27 ID:xg6v/Aw0
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ここまでまとめた

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304 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/10/14(木) 08:12:30.68 ID:.MUGwoSO
−缶コーヒー−

こなた「うー…眠いー…」
かがみ「また夜更かししてたのか…缶コーヒーだけど飲む?」
こなた「ありがと………んー」
かがみ「なに?それ、嫌いな銘柄だった?」
こなた「あーいや…この『ご褒美ブレイク』ってのが『ご褒美プレイ』に見えたわたしはもうダメなのかなと…」
かがみ「いや、あんたはそれで平常運転だ」
305 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/20(水) 21:02:24.52 ID:SrJbggoo

 復活しましたね、めでたい。
早速ですが、お題「つかさとみゆき」で投下します、20レスくらい。

306 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/20(水) 21:04:28.59 ID:SrJbggoo

 世界を夏が狂わせていた。

 かげろうが景色を歪め、歩道は銀盤を敷き詰めたようにきらめく。
誰も彼も家に閉じこもって出ようとしないので、私は人影の一切ない商店街をゆらゆらと一人歩いている。
ハンカチで拭いきれないほどの汗と日光でジリジリと痛めつけられる脚、ぼやけた頭が私をおおいに悩ませた。

 時に目的さえ忘れたようになり、軽く首を振っては思考力を取り戻す。
立ち止まって、温くなってしまった水を嚥下する。
そんな調子でどれだけの時間をかけただろう。
それでもなんとか、私は辿り着いた。

   『柊』

 インターホンから彼女の声が流れ、歌うように軽快な足音が近づいてくる。

 ああ、それにしても今日はこんなに暑い。
307 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/20(水) 21:06:16.73 ID:SrJbggoo







      彼女たちの事情

       #1 かげろうの季節






308 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/20(水) 21:08:04.58 ID:SrJbggoo

「……ん……」

 意識は朦朧としていた。
体が熱い。
焼かれるような熱さではなく、内側から立ち昇る、そういう類の熱さ。

 ゆっくりと頭の中の回路を一つ一つ繋げていく、そんなふうに私は現状の認識を進める。
ただ、眼鏡をかけていなかったので、その認識には過分な時間を要した。

 私は眠っていたようだ。
白いシーツが敷かれたベッドで、これもまた白いタオルケットにくるまれている。
曖昧な視界越しにも見覚えを感じるこの部屋、そして良く知ったにおい。
ここは彼女の部屋だ。
気遣ってくれたのだろう、クーラーでなく扇風機の涼しげな回転音が聞こえる。
それに気付くと、私は自分がこの家の玄関で倒れたことを思い出した。
間違いなく暑さのせいだと、この体が証明しているようだった。

 まだ十分に冷たい氷枕の感触を楽しむと、私は体を起こした。
タオルケットがはらりと床に落ちる。
喉がとても渇いていたし、彼女やご家族にお礼を言わなければならない。
だが、いざ起きてみるとやけに体が重く感じられる。
体調がすぐれないせいかと思ったが、どうやら違うらしい。
私はこの体、というよりは肩にかかる重みをよく知っている。
それをたしかめるべく、私はそこに手を伸ばした。
309 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/20(水) 21:11:13.54 ID:SrJbggoo

 やわらかい手触り。
いや、それはあまりにやわらかく、直接的すぎた。
私は瞬きよりも速くタオルケットを拾い上げて上半身を覆った。
そして右手でタオルケットを抑えながら、左手を腰から下に滑らせていく。
それは、やはりと言うべきなのだろうか。
つまり今の私は、一糸纏わぬ姿でいたのだった。

 途端に私の体は途方も無いほどの熱に支配される。
上気する頭からは思考力が根こそぎ奪われた。
私の脳は、ただ自分が裸であるという現実を反芻し続けるだけの機械と成り果ててしまった。

 突然、がちり、という音が響いた。
同時に、ぼやけた景色の一部が動き始める。
熱暴走しそうな脳をどうにか回転させると、私は口元まで余す所なく体を覆い隠した。
そして開いたドアが閉じるのを待たずに、彼女が私に喋りかけた。
310 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/20(水) 21:12:52.09 ID:SrJbggoo

「……ゆきちゃん!よかったあ、起きたんだね!」

 そのまま早足で私に近づいて、コップを差し出す。

「はい、お水だよ!慌てないで、ゆっくり飲んでね」

 私が対応に困っているのを感じてか、彼女が疑問の声を上げる。

「……どうしたの?」

 ここに至って、ようやく私に喋る隙間が与えられた。

「つかささん、すみませんが眼鏡をいただけませんか?」

「そっか、そうだね。はい、どうぞ」

「ありがとうございます……あ、あの……」

 彼女は眼鏡を取り出すと私に突き出して、そのまま私を見つめ続ける。
なかなかそれを私が受け取ろうとしないので、
どうしたの、といかにも不思議がっているような声を上げた。
311 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/20(水) 21:14:52.28 ID:SrJbggoo

「……ええと、その……恥ずかしいので、あまり見ないでいただけませんか……?」

 彼女は合点がいったというように手をぽんと合わせた。
しかし決してその顔をよそに向けようとはしない。
それどころか、いっそう朗らかな声を私にぶつけてきたのだった。

「そんなの全然気にすることないよー、私たち一緒にお風呂にも入った仲なんだから」

 それはそうですけど……と、言いかけた言葉を飲み込んだ。
どうやら、今日の彼女はいつもと少し違うらしい。
やっぱり暑さのせいかしら、などと私も呑気に構えて丁重に眼鏡を受け取った。
体を露出しないように気をつけながら、空いた片手で受け取った眼鏡を開いて耳にかける。
一連の動作の間ずっと彼女の視線が感じられて、
どうにも気恥ずかしい気持ちばかりが膨らんでしまう。

 一方の彼女はといえば、そんな私の緊張を気にも留めていないようだった。
はいどうぞ、とあらためてコップを差し出すと、
私が水を飲む様子を目をきらきらさせて見つめた。
たまらず私が目を合わせると、嬉しくてたまらないといったように笑った。
312 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/20(水) 21:17:28.52 ID:SrJbggoo

 その後も彼女は奔放に、時に私を煙に巻くように振る舞った。

 それはおかしなことだと、私にはわかっていた。
いつもの私なら、こんな状況には耐えられなかっただろう。
しかし、暑さのせいだろうか。
彼女の不思議なかわいらしさのせいだろうか。
いつしか私は恥ずかしさを忘れていた。
心からの楽しさで、胸がいっぱいになっていた。
いたずらに、まるで夏の妖精のように微笑む彼女を、もっと眺めていたいと思うようにさえなっていた。

 けれど、楽しい時間は決して長く続かない。
暑さと多少の気恥ずかしさ、そして会話の熱にあてられて、私は再び眩暈に襲われた。
すぐに彼女が用意した、水差しの水をゆっくりと口に含む。
ガラガラと氷がぶつかり合う快い音と冷水が喉を通り抜ける心地よさを感じると、
私は目を閉じてベッドに倒れこんだ。
そのうちに瞼の内側も暗くなり、また気を失うのかと少し身構えたが、
いっこうにその瞬間は訪れない。

 代わりに、額や頬にむずがゆい感触が生じていた。
恐る恐る、私は両目を開く。


 ああ、私は夢を見ているのでしょうか。
313 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/20(水) 21:19:57.90 ID:SrJbggoo


「……あ、あの……つかささん……?」

「ゆきちゃん、動いちゃダメだよ」

 額が重ねられ、吐息が降りかかる。
そんなまさしく目と鼻の先の距離に、彼女はいた。
まっすぐに向けられた彼女の瞳、
ともすれば紫がかったようにさえ映る奥深い色が私を釘付けにする。
生温かい吐息が皮膚をくすぐって、私の体温は容易に上昇した。
その熱が冷たい彼女の額を温めるのだと気付くと、どうしようもなく心が乱れた。

 そうして熱に侵された私は、ただひたすらに彼女の生々しい存在を全身で感じ続けていた。

「うん、やっぱこれも取替えなきゃ……ちょっと、ごめんね…ゆきちゃん」

 彼女は一人納得したように呟くと、私の頭を軽く持ち上げて枕を引き抜いた。
そのまま流れるような所作で部屋を飛び出して、パタパタと滑るような足音を響かせて階下に降りていく。
行動の真意を知って、私は深い安堵の溜息をもらした。

314 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/20(水) 21:20:59.52 ID:SrJbggoo

 しかし、胸の高鳴りは収まらない。
ドキドキと打つ鼓動に合わせて、真っ赤に燃えるような血液が全身を駆け巡る。
ゆらめく意識のせいだろうか。
繰り返す彼女の感触が。
額に残るほのかな冷たさが。
頬を撫ぜた温い空気が。
白昼夢のように浮ついた意識を、真綿のような柔らかさで捕まえて離さない。

 乾いた唇が、不意に心を触った。


315 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/20(水) 21:22:06.10 ID:SrJbggoo

「ゆきちゃん」

 いつの間にか彼女が私をじっと見下ろしていた。
リボンは結んでいなかった。

「どうしたの?」

 彼女は私を覗き込むように体を屈めると、ベッドに乗り込んだ。

「なんか、ヘンだよ?」

 立てた膝でタオルケットごと腰をおさえつけ、そのまま覆い被さるように両手を捕らえ、私の自由を奪った。

「ねえ、どうしたの」

 彼女は囁く。

「ゆきちゃん」

 彼女はわらう。
316 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/20(水) 21:22:33.05 ID:SrJbggoo




 ああ、どうして。

 こんなにも。

 こんなにも、あなたは私を惑わせる。



317 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/20(水) 21:24:32.66 ID:SrJbggoo

 しとやかな髪が触れるほど近く、彼女が私を見つめる。
妖しく微笑むその瞳の、瞳孔の美しさまで判然とするほどの近くで。

「ねえ、ゆきちゃん」

 湿った空気の振動が体内に侵入し、鼓膜を震わせ三半規管を狂わせた。
二人の世界が地面を失い宙を舞う。

「もっと見せてよ」

 彼女は上体を持ち上げて俯く。
視線が熱い。
私は顔を背け、ささやかに抵抗する。

「いいよね」

 彼女が首を垂らす。
吐息が鎖骨を撫ぜ、睫毛が首筋に触れる。
桜色の唇が私の体を覆う白布をついばんだ。
318 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/20(水) 21:25:30.54 ID:SrJbggoo


「……つかさ……さん……」

 言葉が出ない。
体が動かない。
汗が止まらない。
指先が震える。
血が熱い。
唇が乾く
目をそらせない。

 もう、彼女しか見えない。


 ああ、神様。

 どうか、どうかこれが―――
319 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/20(水) 21:26:29.46 ID:SrJbggoo







    「―――夢だったらどうする?」






320 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/20(水) 21:30:21.93 ID:SrJbggoo

 私は陵桜高校にいた。
そこで私は、私を見つめていた。
騒がしい昼の教室に負けまいと、制服姿の私たちは声を交わしている。
私がいて、泉さんがいて、かがみさんがいて、つかささんがいる。
そんないつもの風景を、私は4人のすぐ傍に立って眺めていた。
目の前の私は、とてもとても楽しそうに笑っていた。
やがてお昼休みが終わると、皆がそれぞれの場所へ帰っていく。
私は去っていく彼女の背中をじっと見ていた。
寂しげに。
愛しそうに。
そのうちに先生がやってくると、私は視線を黒板へ移した。

 教室がオレンジに染まる。
夕日が無人の教室を照らしていた。
廊下に上履きの音が響くと、私が教室の扉を開いた。
私は机からノートを一冊取り出して鞄にしまう。
不意に反射した夕焼が目が眩ませると、そらした視線が意図せず何かを捉えたようだった。
私はゆっくりと歩を進めると、そこで立ち止まった。
教室の扉に目を向け廊下の気配に耳を澄ませる。
不気味なくらい、物音の一つも聞こえない。
私が視線を下に向ける。
そして、そっと彼女の机に手を伸ばした。
しかし指先が触れるその寸前でぴたりと動きが止まったと思うと、私は踵を返して教室を飛び出していった。
胸を押えて走る私の頬が赤く映ったのは、夕日のせいたろうか。
321 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/20(水) 21:33:55.18 ID:SrJbggoo


 気がつけば、私の意識は彼女の部屋に戻っていた。
あんなに近くにいた彼女が、どこにもいない。
カーテンがふわりと浮き上がり、白い光が室内を照らした。
半開きになった扉から風が流れ出ている。
彼女は行ってしまったのだとわかった。
私はタオルケットを胸の前で結んで髪を肩の後ろに回し、
ベッドから床に降りると勢いそのままに走り出した。
けれど、扉は私が近づくことを許さないかのように遠ざかっていく。
走れば走るほど、その輪郭は揺らいでいく。
遥か遠くの、あまりにも不確かなその点に向けて、私は手を伸ばす。
そして、彼女の名前を叫んだ。


322 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/20(水) 21:35:38.95 ID:SrJbggoo



 蝉の鳴声が耳を貫く。
目の前で広がった景色は、彼女の部屋でも学校でもなかった。

 空を掴むように伸びていた腕を引いて、体を起こす。
すぐ横のテーブルをあさって、置いてあった眼鏡をかけた。
なるほど、油蝉が網戸に留まっている。
網戸を軽くつつくと、蝉はどこかへ飛び去って行った。

 外の景色は相変わらずのかげろうでゆらゆらと揺れている。
太陽は東から西への折り返しをだいぶ前に過ぎたようだ。
ひさしを越えて縁側へ、焼付くような陽射しが侵入している。
うだるような熱気に思わず後ずさり、振り返ればそこに彼女が立っていた。
柊家の居間、この部屋のふすまに手をかけて彼女は夏の花のように笑う。
323 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/20(水) 21:36:53.01 ID:SrJbggoo

「…ゆきちゃん!よかったあ……起きたんだね」

 かけ足で私に近寄り、コップを差し出す。

「はい、お水。冷たいから、ゆっくり飲んでね」

 呆けている私を見て、彼女は疑問の声をあげる。

「……大丈夫?まだ辛い……?」

 首を傾げて私を見上げるその仕草は、たしかにいつもの彼女だった。
不安げにゆれる瞳の澄んだ輝きが、私を優しく現実へと導いてくれる。
なら私は、一秒でも早く彼女を安心させよう。

「……いえ、おかげで楽になりました」
324 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/20(水) 21:39:05.75 ID:SrJbggoo


 ありがとうございます、と私は笑顔を浮かべる。
うん、と彼女がほほえみ返す。

 これで、日常へ帰れる。
私たちはそれでいい。
それ以上は望むべくもない。
そう、わかっているのに。

 ああ、胸が痛い。

 この痛みはなんだろう。
この胸の高鳴りはなんだろう。
遠くで揺れるその姿は、きっと見えないほうがいい。
手を伸ばしても、届かないのだから。

 だから、そう。

 この痛みは夢のせい。



325 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/20(水) 21:55:42.45 ID:SrJbggoo

 以上です。
また長くなってしまいましたが、ここまで読んで下さってありがとうございました。

 最初はつかみゆでアマガミみたいなのを考えてたのに、なぜかこうなりました。
つかさとみゆきで作品が何個も上がってきて、救われた気持ちです。
とにかく、お題を下さった方、本当にありがとうございました!

 あと、こうやって恋愛視点で書いてみたら面白かったので、「彼女たちの事情」というシリーズとして何本かやります。
と言ってもそれぞれ独立したオムニバス形式になると思うので、特に意識せずに読んでいただけたら幸いです。

あじゅじゃした!
326 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/10/23(土) 18:40:08.23 ID:kUTNIo.0
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ここまでまとめた

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>>325
乙です。こうゆうのは苦手です。恋愛ものは切なくなるのが殆どだからね。だけどこれはすんなり読めた。GJ。

オムニバス形式にするなら新作が出た時点でシリーズ物にまとめます。とりあえず一作目なので長編のその他に纏めました。
327 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/23(土) 23:54:53.68 ID:Yh4jx9c0
なんかしばらく見れなかった間に色々な作品が
つかさとみゆきリクした者です
全部読ませていただきました
なんだかほんわりした感じのこのコンビが大好きです
書いていただいた方々ありがとうございました
どれも素晴らしかったです!
328 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/10/24(日) 15:11:20.45 ID:JxeoUyI0
投下します。
329 :気持ち一杯のプレゼント [saga]:2010/10/24(日) 15:12:14.05 ID:JxeoUyI0
 ひよりの自宅。
 ひよりは、パソコンの画面をにらみながら、ペンタブを操作していた。
 左右に分かれた画面で、二人がそれぞれ告白を受けるシーン。見せ場の一つである。
 脚本のセリフを脳内再生しながら、キャラの動きをシンクロさせていく。
 しぐさ、表情。その動きは脳内イメージほぼそのもの。満足のいく出来だった。
「ふう」
 一息つく。
 会社の機材は使えないため、フリーの作画ソフトを使っている。
 フリーとはいえプロにも評判のいいソフトであるから、会社の機材と使い勝手はそんなに変わらない。
 ペンタブを机において、隣の席でパソコンとにらめっこしているパティに話しかけた。
「パティ、そっちの調子はどう?」
「うーん。みなみの調教は難しいですね」
 昔に比べて格段に流暢になった日本語で、パティがそう答えた。
「その言い方やめてよ。変な想像しちゃうから」
 パティがいじってるのは、フリーのマルチヴォイスロイドソフト『虹声』。
 私的なアニメ製作に声優を雇うことはできないから、すべての声をそのソフトで作る必要があった。
 パティはアニメ製作会社では脚本・演出を担当しており、音声は畑違いの分野だ。苦労するのも当然である。
「ひよりは、相変わらず妄想がたくましいですね」
「どうせ私は妄想だけの女ですよ」
 ひよりがすねたようにそう言った。
「それはともかく、みなみは難しいです。ゆたかは簡単にできたんですが」
「ひかげちゃんも、抑揚の少ない声の方が調整難しいって言ってたね」

 宮河ひかげ。会社の同僚にして、『虹声』の開発者でもある。
 『虹声』は、声優を失業に追い込むとすら言われたぐらいよくできたソフトで、アニメ制作会社でも「コンビニ店員A」といったモブキャラの声にはこのソフトを使うところが多い。ひよりたちが勤める会社でも、モブの声はこれを使っていた。
 在野のクリエーターにとっては、ヴォーカロイドの出現以来のイノベーションであり、動画共有サイトにはこれを使ったアニメ作品が多くアップロードされている。
 『虹声』はいわゆる寄付ウェアであった。貧乏な幼少時代をへて中卒でアニメ製作会社に入ったというひかげの経歴が知られるや否や、寄付受付口座には寄付の入金が殺到した。
 ひかげは、収入が増えても焼肉を腹いっぱい食べること以上の贅沢も思いつかず、入金の半分を姉に仕送りして、あとは貯金しているいじらしい子であるのだが。
330 :気持ち一杯のプレゼント [saga]:2010/10/24(日) 15:13:02.79 ID:JxeoUyI0
「ひかげを呼んで来ましょうか?」
「駄目だよ、パティ。ひかげちゃんも忙しいんだから」
 ひかげはまだ未成年であるから労働基準法的にもいろいろと制限があって、残業もさせてない。それでも、大検に向けて独学で勉強に励んでいるため、アフター5も暇ではないのだ。
「間に合うかどうか微妙なところですね」
「何が何でも間に合わすよ。いざとなれば、徹夜してでも」
「本業に支障が出たら、社長に怒られるですよ」

 こんな感じで、二人の私的アニメ製作作業は続いた。



 そして、その日が来た。
 会場に設置された大スクリーンに、アニメーションが映し出される。


 高校を卒業し別々の大学に進学したゆたかとみなみ。
 大学でのそれぞれの出会い。
 告白を受けて、交際が始まる。
 二組のカップルの交際は順調に進んだが、やがて試練に直面する。
 友情と愛情、どちらを優先するのか?
 苦悩する二人。


 はじめのうちは雑談していた人たちも、次第にそのスクリーンに吸い込まれていった。
 アニメ絵のキャラクターたちは、本人の特徴をよく表しており、そのしぐさや表情は本人そのものかと見まがうぐらいの再現度だった。
 もちろん、実話を元にしたストーリーとその演出がすばらしかったことはいうまでもない。


 友情も愛情もどちらも代えがたいぐらいに大事なもの。その思いを相手に精一杯伝えて、相手もそれを受け入れる。
 プロポーズを受けて、承諾する二人。
 結婚式を一緒にやろうと提案するゆたかに、うなづくみなみ。
 そして、ラストは二組のカップルが教会で一緒にライスシャワーを浴びる場面だ。
 最後に、製作スタッフとして田村ひよりとパトリシア・マーティンの名が映し出されて、アニメは終わった。

331 :気持ち一杯のプレゼント [saga]:2010/10/24(日) 15:14:07.23 ID:JxeoUyI0
 そのとたん、二組合同の結婚披露宴会場は、盛大な拍手に包まれた。
 ゆたかとみなみは、顔を赤らめながら、顔を見合わせた。二人の婿さんもすっかり照れてしまっている。
 パティはVサインで拍手に応え、ひよりは恐縮しながら何度も頭を下げていた。


「ゆたか、ごめんよ〜。これも公僕の悲しい定めでさぁ」
 明日早番だというゆいが泣きながら謝りつつ去っていった後の二次会。
 当然のことながら、このアニメの話題になった。
「ひよりんや。私もあのDVDほしいんだけど」
 こなたは、しきりにねだったが。
「駄目っスよ、先輩。限定品っスから」
 みなみとゆたかが大事そうに抱えているのが、その限定品の二枚である。
「ひよりんのケチ」
「おまえは少し自重しろ」
 かがみが、こなたの頭にチョップする。
 しかし、つかさは、こなたに同意を示した。
「私もほしいなぁ」
「どうしても見たいなら、ゆーちゃんから見せてもらえばいいじゃないっスか」
「ゆーちゃん、あとで見せてね」
「ええと、なんか恥ずかしいし……ちょっと嫌かな?」
「そんなぁ」
 従姉妹同士がそんなやりとりをしてる傍らで、
「ひより。これを作るのに結構お金がかかったんじゃ……?」
 みなみが言い切らないうちに、ひよりが答えた。
「大丈夫。フリーソフトで作ったから、かかったのはパソコンの電気代と私たちの手間とDVD代だけ。ねっ、パティ」
「そうです。全然気にすることはないですね」
「でも、すごく手間が……」
「その手間は、私たちの気持ちってことで受け取っといてよ」
 そういわれては、みなみとしてもそれ以上は何もいえない。
「ありがとう、本当に」
「ひよりちゃん、ありがとう」
 みなみとゆたかがそろって、改めてお礼をいった。
332 :気持ち一杯のプレゼント [saga]:2010/10/24(日) 15:14:36.33 ID:JxeoUyI0
「でも、さすがプロだよねぇ。アニメ絵なのに、ゆーちゃんやみなみちゃんそのものって感じだったよ」
 こなたが、改めて褒めちぎる。
「そうですね。まるで、みなみとゆたかさんがそこにいるかのようでした」
 それまで背景化していたみゆきが、ここぞとばかりに同意した。
「本職としては、手は抜けないっスから」
「でも、苦労されたのではないですか?」
「声優が使えないので、声を作るのに苦労したですね」
「確かに、0から声を作るところが一番苦労したよねぇ。基本音声の作成だけで三日ぐらいかかったし。セリフにあわせて調整するのに、毎回四苦八苦で」

 二次会は、当の主役たちが寝込んだあとも、おおいに盛り上がって朝まで続いた。



 ひよりとパティからプレゼントされた二枚のDVDは、その後、結婚記念日のたびにそれぞれの夫婦二人っきりで鑑賞されているという。
333 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/10/24(日) 15:16:50.01 ID:JxeoUyI0
以上です。
334 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/26(火) 19:31:56.16 ID:c5rj/AYo
一日遅れだけどみゆきさん誕生日おめ!
335 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/10/30(土) 23:49:22.41 ID:6DyRCOk0
この前の『つかさ、かがみ』『つかさ、みゆき』で書いていたら、
ふと『こなた、つかさ』『かがみ、みゆき』で物語が浮かんだので書いてみました。
テーマはタイトル通り『喧嘩』です。
19レスくらい使います。
336 :喧嘩作戦  1 [saga]:2010/10/30(土) 23:50:48.96 ID:6DyRCOk0
 二時限目の休憩時間の時だった。こなちゃんがそそくさと私に近づいてきた。
こなた「ちょっといいかな」
つかさ「なに?」
こなた「いや、ここじゃちょっと言い難い事なんだ」
そう言うと教室を出た。私はこなちゃんの後に付いていった。言い難い事、一体なんだろう。でもだいたいその内容は想像がついていていた。
こなちゃんは人があまり通らない廊下まで来ると立ち止まった。
こなた「最近のかがみとみゆきさんの事なんだけど……つかさはどう思う?」
やっぱり。そう、お姉ちゃんとゆきちゃんはここ一週間全く会話をしていない。目線すら合わそうとしていない。昨日のお昼もお姉ちゃんはお弁当を食べに来ていなかった。
つかさ「やっぱりその話だったんだね……確かにおかしいよね、昨夜お姉ちゃんに何となく聞いてみたんだけど……何も話してくれなかったよ」
こなちゃんは両手を組んで考え込んだ。
こなた「私もみゆきさんに聞いてみたんだけどね……うまく誤魔化されちゃった……まぁ、あの二人の行動を見てだいたい察しはついたけどね」
つかさ「分るの?」
こなた「喧嘩だね」
こなちゃんは短く答えた。喧嘩。お姉ちゃんとゆきちゃんが喧嘩。原因は何だろう。何で喧嘩なんかしたんだろう。
つかさ「お姉ちゃんとゆきちゃんが……あまり想像がつかないんだけど……原因はなんだろう?」
こなた「……残念ながらそこまでは分らないよ、真面目な二人だから喧嘩をすると後を引くもんさ」
つかさ「もし本当に喧嘩だったら、早く仲直りしないといけないよね」
こなちゃんはこの言葉を待っていたかのように微笑んだ。
こなた「そうだよね、つかさもそう思うよね、だから協力して欲しいんだ」
つかさ「協力はいいけどお姉ちゃんとゆきちゃんが本当に喧嘩しているのか確かめないと……」
するとこなちゃんは得意そうな顔をした。
こなた「私の考えた作戦をすればそれも分るよ」
つかさ「作戦……何?」
その時休憩時間終了のチャイムが鳴った。
こなた「やばい、次は黒井先生の授業だ、詳しい話はお昼休みで」

 こなちゃんの考えた作戦。一体なんだろう。私にも出来ることなのかな。あまり複雑な作戦だったら何も出来ないかもしれない。失敗しちゃうかもしれない。
急に不安になってしまった。でも、こなちゃんも私と同じようにお姉ちゃんとゆきちゃんの変化に気が付いていた。やっぱり喧嘩じゃないにしろ何か二人の間に問題があるのは
確かみたい。こなちゃんの作戦がうまくいけば解決できるかも。期待と不安がグルグルと頭の中を駆け巡った。

 昼休み、お昼を食べ終わるとゆきちゃんが席を外すのを見計らって私を体育館裏に連れて行った。
こなた「みゆきさんの目が気になったからなかなか誘えなかったよ」
こなちゃんはほっと一息を入れた。
つかさ「そうだね……でも、お姉ちゃん今日もお弁当食べに来てくれなかった……」
こなた「それは直接関係ないと思うよ、以前だって一週間くらい来なかった事もあった」
そういえばそうだった。あの時は別に喧嘩もしてないし。何か特別な事もなかった。私はこなちゃんをじっと見た。
こなた「何?」
つかさ「え、いや、えっと、こなちゃんって結構いろいろ考えてたんだね……と思ってた」
こなた「……それじゃ私は普段何も考えていないみたいじゃん」
こなちゃんは不機嫌な顔をした。
つかさ「ごめん……」
こなた「直ぐに謝るところはかがみとは違うね……まいいや……本題に入るよ」
不機嫌な顔がすぐに元に戻った。そしてこなちゃんは真剣な顔になる。自然と私も真剣になった。
337 :喧嘩作戦  2 [saga]:2010/10/30(土) 23:51:52.67 ID:6DyRCOk0

こなた「私はかがみとみゆきさんが喧嘩をしていると思ってる、それもかなり深刻な状態、あの二人に仲直りしてもらおうとして考えたんだけどね、二人を合わせただけじゃ
    ダメだってのはつかさだって分かるよね……二人を元に戻すには……私達も喧嘩をしちゃえばいい……つまり、喧嘩作戦」
私とこなちゃんが喧嘩。意味が分からない。そんな事しちゃったら余計に混乱しちゃうような気がした。
つかさ「……なんで私達まで喧嘩しなきゃいけないの……それにこなちゃんと喧嘩なんかできないよ」
こなちゃんは人差し指を立てて説明しだした。
こなた「演技だよ……え・ん・ぎ」
つかさ「演技?」
こなた「そうだよ、私だって何でも無いにつかさと喧嘩なんかできないよ、私とつかさが喧嘩している所を二人に見せて二人に気付いてもらうんだ、喧嘩はみっともないってね」
つかさ「でも」
私が言おうとするとこなちゃんは手を広げて私に向け口を止めた。そして話し続けた。
こなた「分ってるって、つかさは演技は苦手だよね……行き当たりばったりでやってもすぐに演技だってバレちゃう、それに私とつかさが喧嘩するんだ、かがみ達にも
     納得した理由じゃないとすぐに見破られる、私とつかさが喧嘩する理由がしっかりしてないとダメなんだよ」
つかさ「あるの、そんな理由」
こなた「あるある、この前私が貸したゲーム、そのゲームのセーブデータをつかさが上書きしちゃって消した事にするんだよ」
この前こなちゃんから借りた携帯ゲームソフトがあったのを思い出した。こなちゃんから借りたゲームなのはお姉ちゃんもゆきちゃんも知っている。
こなた「つかさはまくし立てられるといつも黙っちゃうでしょ、私がつかさに詰め寄るから俯いて泣きそうな真似をすればいい……それで頃合を見計らって……
     『こなちゃんなんか大嫌い』って叫んで教室を飛び出すんだ、そしてかがみかみゆきさんがつかさの後を追えばとりあえず成功」
つかさ「その後は……どうするの?」
こなた「……多分かがみもみゆきさんもつかさを慰めると思うよ、そうすれば心が自然と緩くなるから、二人の事を聞けばいいよ」
なんとなくこなちゃんの作戦の全体は見えてきた。でも、あまり自信はない。
こなた「……そんなに真剣にならなくていいよ、失敗してバレてもそれ自体がかがみ達の喧嘩の話をする切欠になるから……気楽に……気楽に」
緊張していたのに気が付いてそう言ってくれたのかどうかは分らないけど、その言葉に一気に肩の荷が降りた。そして出来そうな気になってきた。
つかさ「なんか出来そうになってきた」
こなた「そうそう、その調子、それじゃもう少し話を詰めよう……」
こうしてこなちゃんと念入りな打ち合わせをした。何故か頭の中にすんなりと打ち合わせが入っていく。

 二日後の放課後。喧嘩作戦を実行する時が来た。私は教室でお姉ちゃんを待っていた。暫くするとお姉ちゃんが教室に入ってきた。
かがみ「つかさ帰るわよ」
その時だった。こなちゃんも教室に入ってきた。ゆきちゃんが居ない。確か二人とも居る時点でこなちゃんが教室に入ってくる予定だった。でもこなちゃんの手には携帯ゲーム機
が握られていた。これは作戦開始の合図。私はその合図を信じた。
こなた「つかさ!やってくれたね!」
私に怒鳴りつけた。これも予定通りの台詞だった。お姉ちゃんはこなちゃんを見てびっくりしている。
つかさ「どうしたの」
こなた「どうしたもこうしたもないよぉ!」
こなちゃんは打ち合わせどおり携帯ゲーム機を私に見せた。
こなた「私のセーブデータ消しちゃったでしょ……あれはね、三日間徹夜でやっと手に入ったアイテムのデータがはいっていたんだ!」
つかさ「でも……ブロックAは消していいって……」
これで私の台詞はもうない。あとはこなちゃんが私にまくし立ててくる。
338 :喧嘩作戦  3 [saga]:2010/10/30(土) 23:53:07.76 ID:6DyRCOk0
こなた「違う、違う、そんな事言ってない、ブロックBは消して良いって言ったんだよ」
えぇ、これは予定に入っていない台詞だった。それでも私は俯いた。
こなた「黙ってちゃ分らないよ、なんでAを消しちゃったんだよ」
これも予定に入っていない。それにさっきからAを消したって言ってたけどゲームを借りた時セーブはAでやってねって言ってた。だから私はAに上書きをした。
こなた「AとBなんてどうやったら聞き間違えるんだよ……信じられない……ボケつかさ」
これも予定に入っていない台詞だった。これだけ予定にない事を言われて少しカチンときた。でもお姉ちゃんは私達を見ている。ここで予定外の事をしちゃいけない。
って、予定外の事をしているのはこなちゃん。さっきからAを消したって。私は借りた時しっかりAを消して良いって聞いた。それにボケつかさって……いくらなんでも酷い。
私は思わず顔を上げてこなちゃんを見た。こなちゃんは目にいっぱいの涙を浮かべていた。そして顔が真っ赤になっている。こんなこなちゃんを見るのは初めて。
まさか。これは演技じゃない。本当に私に怒っている。こなちゃんは私がAに上書きした事を本当に怒っている。
つかさ「こ、こなちゃん……何で今頃になってそんな事言うの……」
思わず言った言葉。もちろんこんなのは言う予定は全くなかった。この瞬間から『喧嘩作戦』からただの喧嘩になった……。ただの感情のぶつかり合い。

 喧嘩……そういえばこなちゃんと喧嘩するのは初めてかもしれない。家でもたまにお姉ちゃん達と喧嘩をする事がある。でもそれは喧嘩と呼べるものじゃない。
お姉ちゃんが一方的に私に怒鳴りつけるだけ。私は言い返さない。うんん、言い返せない。大抵私のヘマだったりするのが多いから反論の余地がない。
お姉ちゃんは言いたい事を言うとそれで終わっちゃう。そんな喧嘩が殆どだった。
だけどこなちゃんのはそうじゃない。確かにこなちゃんは消していいと言った。聞き間違えはないよ。何度も聞きなおしたし、消す時も何度も確認した。
それを今頃になって……大事なデータならもっと早く気付くはずだよ……今度だけは言い返した。

こなた「わざとやったんでしょ、つかさがそんな人だったなんて思わなかった」
つかさ「違う、違うよ、絶対にこなちゃんはAを消していいって言った……」
私も目が熱くなった。きっとこなちゃんみたいに顔も赤くなっている。
こなた「こなちゃん……そんな気安く呼ばないで」
私が言い返そうと思った時、お姉ちゃんが私達の間に入ってきた。
かがみ「二人ともそこまで、さっきから聞いてれば……」
こなた「かがみ……つかさを庇うの?」
こなちゃんはお姉ちゃんを睨んだ。お姉ちゃんは即答した。
かがみ「こなたが本当にBと言ったのか、それともつかさが聞き間違えたのか私には分らない、だけどデータを消したのはつかさ……」
こなた「ほら見ろ、やっぱりそうじゃないか」
私に向かって得意げにそう言った。
かがみ「しかし、つかさがそんな事をするのは……いや、つかさじゃなくてもそう、誰かに貸すならデータが消える可能性は容易に想像できたわね、何故バックアップしなかった、
     布教用とか言って同じ物を三冊も買ってるこなたとは思えないほど軽率だ」
こなちゃんは黙り込んでしまった。だけど納得している訳じゃなさそう。私を睨みつけてる。
かがみ「あんた達の喧嘩、私から見れば五分五分ね、つかさ、謝っちゃえよ……こなたもいい加減諦めろ」
確かにデータを消したのは私。同じゲームをしたから分る。せっかく強くしたのにデータが消えちゃったら悔しい。わたしは謝ろうとした。
こなた「私帰る」
こなちゃんは自分の席の鞄を取ると携帯ゲームを鞄にしまった。
つかさ「こなちゃん……」
こなた「私をもうそんな風に呼ばないで」
吐き捨てるように言うとそのまま教室を出てしまった。私とお姉ちゃんはしばらくこなちゃんの去っていく方向を見ていた。私はこなちゃんを追いかけようと教室を出ようとした。
かがみ「つかさどこに行く……こなたの所に行くなら止めた方がいい」
つかさ「どうして……私はこなちゃんに謝りたくて……」
お姉ちゃんは空いている椅子を取り私の席の隣りに置いて座った。
かがみ「とりあえず席に着いて、よく考えてみて」
冷静な口調で私を嗜めるように誘う。こなちゃんを追い掛けたい気分はあったけどお姉ちゃんのその見切ったような態度に何故か座って考えてみるような余裕な気持ちになった。
339 :喧嘩作戦  4 [saga]:2010/10/30(土) 23:54:21.18 ID:6DyRCOk0

 五分くらい経過した。お姉ちゃんは答えを求めてきた。
かがみ「分った?」
つかさ「うん、データを消される悔しさは私にも分るよ、あのゲームはとても難しかったし……こなちゃんあのゲームすごく気に入ってたから」
かがみ「違うそんなことじゃない、何故私がつかさを止めたか、それを聞いてる」
まったく分からなかった。
つかさ「謝って仲直りしようとしたんだけど、行っちゃいけないの?」
かがみ「……今つかさが行ってらまたさっきの喧嘩の続きになるだけ、こなたも分ってるのよつかさを怒ったってデータは帰ってこないってね、ただその怒りをつかさにぶつけて
     憂さ晴らししたかったのよ、でも引っ込みがつかなくなった……そんな状態のこなたに謝ったって真意は伝わらない」
つかさ「じゃあどうすれば……」
かがみ「一日放っておく、明日になったら普通に戻ってるわよ、その時普通にしてれば向こうから話しかけてくるわよ、それで解決」
つかさ「……それでいいの?」
お姉ちゃんは頷いた。何だろう。お姉ちゃんとゆきちゃんの喧嘩を解決するつもりだったのにこれじゃあべこべ……。お姉ちゃんとゆきちゃんは本当に喧嘩をしているのかな。
そんな事を考えているとお姉ちゃんが思い出したように私に聞いてきた。
かがみ「こなたは何で今頃そんな事言い出したんだ、つかさがゲーム返したのは随分前じゃないのか……」
つかさ「うん随分前だった……」
かがみ「そうか……それでか」
つかさ「何?」
かがみ「いや、なんでもない」
つかさ「ゆきちゃんはどうしたのかな、さっきから居ないみたいだけど」
かがみ「みゆきはもう帰ったわよ、なんでも急用ができたみたい」
あれ、お姉ちゃんはゆきちゃんと話をしているみたい。それじゃ喧嘩をしていないのかな。
つかさ「お姉ちゃんはゆきちゃんと最近一緒だけど何かあるの?」
かがみ「……何かって、何もないわよ、それより自分の事を心配しなさい……」
こうしてこなちゃんの『喧嘩作戦』は失敗に終わった。そしてこなちゃんと私の仲直り、それとお姉ちゃんとゆきちゃんの謎だけが残ってしまった。

 次の日の朝、私はこなちゃんに呼ばれて体育館裏に行った。お姉ちゃんの言うように仲直りができるのかな。それとも絶交……それだけはやだ。
こなちゃんは私と目が合うと直ぐに話し出した。
こなた「私はつかさに謝らなければならない」
つかさ「私も……謝らないと」
こなた「ゲームのデータは消えていない、つかさは私のデータを消していない」
つかさ「へ??」
何が何だか分らない。
こなた「……どうだった私の迫真の演技、正直これは賭けだった、だけどつかさも怒ってくれて……助かった、おかげでかがみは本当に私達が喧嘩したと思った」
つかさ「どうゆう事なの、こなちゃん?」
こなた「昨日つかさに説明した作戦は嘘だったんだ、嘘だけど最初は殆ど同じ……それでつかさが私を怒るようにしたんだ、つかさには本気で怒って欲しかったから」
つかさ「私を騙したの?」
こなた「結果的はそうなっちゃね、だからごめん、でも敵を欺くには見方からって言うじゃん、許して」
こなちゃんは両手を合わせている。怒る気はなかった。
つかさ「別に、怒ってないよ」
こなた「ありがとう、ところで昨日私が教室を出た時追いかけてこなかったけどどうして?、追いかけてきたら今の事話したのに」
つかさ「お姉ちゃんが止めたんだよ、今行っても仲直りできないって……それで行けなかったんだよ」
こなちゃんはニヤリと笑った。
こなた「いいぞ、かがみは完全に騙した、これでかがみ達の喧嘩をうまく止められるかも」
つかさ「こなちゃん、お姉ちゃん達喧嘩はしていないみだよ、でも何か隠してる……そんな気がする」
こなた「喧嘩じゃない……じゃ何を隠してるんだろ、私達に知られちゃ困る秘密って何だろう」
こなちゃんは腕を組み考え始めた。
340 :喧嘩作戦  5 [saga]:2010/10/30(土) 23:55:33.04 ID:6DyRCOk0

つかさ「私はあまり興味ないよ、隠しているのならきっとなにか深い訳があるんだよ」
こなた「違うなつかさ、秘密が喧嘩じゃなかったら私達は除け者にされたんだよ」
つかさ「除け者……」
こなた「かがみはつかさと姉妹でとても仲がいい、そんなつかさにも話せない秘密、知りたいとは思わないの、困ってるなら力になりたいとは思わない?」
昨日のお姉ちゃんは私がこなちゃんを追おうとした時止めて助言してくれた。私だってたまにはお姉ちゃんの力になりたい。
こなた「かがみはこっちのペースに巻き込むことが出来そう、問題はみゆきさんだね、でもみゆきさんは私達と同じクラス、かがみと別れている時間が多いからチャンスはある、
    お昼、かがみは来ないからその時がチャンスだね」
話をどんどん進めていくこなちゃん。本当にこれでいいのかな。だけど普通に聞いていたんじゃ教えてくれない。
こなた「つかさ、私達はまだ仲直りしてないって事にしておいて、その方が向こうも気を使って動きやすい」
つかさ「え、あ、うん、分った、出きるだけそうするよ、自信ないけど」
そうだ、もう後戻りはできない……かな。
こなた「それじゃ教室に戻るよ、一緒に戻ると怪しまれるからつかさは予鈴が鳴るぎりぎりで教室に入ってきて」

 こなちゃんは走って教室に戻って行った。ふと腕時計を見た。まだ予鈴が鳴るには十五分以上ある。遠回りして戻るかな。私はこなちゃんとは反対方向に足を進めた。
話し声が聞こえた。聞き覚えがある声。お姉ちゃんとゆきちゃんの声だ。二人も隠れて私達と同じように話してる。私は忍び足で二人に近づいた。丁度建物の陰で見えない。
だけど声はしっかりと聞こえた。
かがみ「みゆき、二人の秘密がやっと昨日わかったわ」
みゆき「そうですか、私の予感が当たってしまったのですね、それで何が分ったのですか」
かがみ「この前こなたが携帯ゲームを貸したの覚えてるかしら、つかさのやつこなたのセーブデータ消しちゃったのよ」
みゆき「……泉さん、そのゲームの話になると楽しそうでしたね、それで泉さんの様子は?」
え、お姉ちゃん昨日の事をゆきちゃんに話してる。私達の秘密って、ゆきちゃんの予感って何だろう。
かがみ「すごい権幕だったわ、私も思わず立ち尽くした……あれだけ言われちゃつかさだって怒るわね」
みゆき「温和なつかささんが怒ったのですか、それは大変ですね……仲直り出来るでしょうか」
かがみ「みゆきがそんなんでどうするのよ、私だって自信なんかないわよ……こなたのやつあだ名で呼ぶな、何て言うのよ、そんな状態のこなたにつかさを近づけたら
     どうなるか分らない、謝りに行こうとするつかさを止めて嗜めたわ」
みゆき「それは正解だと思います、泉さんの怒りをまず鎮めないと」
かがみ「あとあの二人は私達が喧嘩していると思っているわよ」
みゆき「それはかえって好都合かもしれません、それを利用すれば仲直りがし易いと思います」
これって、もしかしてお姉ちゃんとゆきちゃんって私とこなちゃんに何か秘密があると思っていた?どうしよう。私達が思っていたのと同じことをお姉ちゃん達も思っていたんだ。
かがみ「みゆきがあの二人と同じクラスで良かった、二人の監視、これからも頼むわよ、お昼私は行かない方が良いわね、携帯もむやみに使わない方がいいか」
みゆき「それがいいと思います」
お姉ちゃん達本気で私達が喧嘩してると思ってる。このまま二人の前に飛び出して『えへへ、あれは冗談だよ』って言うかな。だめだめ、お姉ちゃん達きっと怒るよ。
その怒りはこなちゃんにも……。お姉ちゃんとこなちゃんの喧嘩は何度も見たことある。だけどそれはじゃれ合いみたいなもの。本気の喧嘩になったらきっと大変な事に。
かがみ「そろそろ時間ね、私は直接戻るから」
みゆき「私は職員室経由で戻ります」
うゎ、どうしよう。私達は在りもしない秘密をお互いに探っていたんだ。そして両方の秘密を私は知ってしまった。こなちゃんがこの事を知ったらどうするかな。
予鈴が鳴った。考える時間がない。もう成り行きに任せるしかない。私は急いで教室に戻った。
341 :喧嘩作戦  6 [saga]:2010/10/30(土) 23:56:58.41 ID:6DyRCOk0

黒井「柊……柊つかさ」
え、まだ予鈴なのに出席をとってる。慌てて教室の扉を開けた。
つかさ「はい、はい、居まーす」
言葉よりも早く先生の中指が弾いた。私のおでこにピシっと当たった。デコピンだ。意外と痛かった。思わず額を手で押さえた。数人の生徒がクスクス笑ってる。
黒井「返事は一回……今日は早いというてるはずや、柊、最近たるんでるで……さっさと席につきなや」
なんとか遅刻は免れたみたい。額を押さえながら私は席に戻った。そして早めのホームルームが始まる。席に着いて辺りを見回した。こなちゃん、ゆきちゃんも居る。
そういえばこなちゃん予鈴の少し前に戻ってくるようにって言ってたっけ。忘れてた。
お姉ちゃんとゆきちゃんの会話が頭から離れない。
お姉ちゃんとゆきちゃん私達と同じように喧嘩を利用するって言ってた。まさかこなちゃんと同じように喧嘩作戦でもするのかな。もうそんなのやだ。

 休み時間、ゆきちゃんはこなちゃんとしきりに会話をしていた。こなちゃんとの約束があったので私は話しに参加できない。朝の会話から考えるとこなちゃんの怒りを
鎮めようとしている。きっとそうだ。本当の事をこなちゃんに教えたい。でもゆきちゃんはこなちゃんから離れようとしなかった。
このままお姉ちゃんの所に言っても良かった。でもこなちゃんに一回話をしてからじゃないと話せない。そして三時限目の休み時間、ゆきちゃんは私の所に来た。
みゆき「つかささん、お昼ご一緒にどうですか」
つかさ「……一緒にっていつも一緒だよね、どうしたの改まって」
みゆき「いえ、なんと言って良いのか……泉さんと一緒なんですが……宜しいでしょうか」
あ、そうだった私達喧嘩してる事になってったんだ。どうしよう受けるべきなのかな。考えているとゆきちゃんの後ろからこなちゃんが手で丸のサインを出していた。
前の休み時間でこなちゃんも誘われたのか。ゆきちゃんは私達を仲直りさせようとしている。そんな気がした。
つかさ「いいよ、一緒に食べよう」
何か気が引けた。本当は喧嘩なんかしていない。ゆきちゃんの誘いを受けてこなちゃんはどうするつもりなんだろう。
342 :喧嘩作戦  7 [saga]:2010/10/30(土) 23:58:03.70 ID:6DyRCOk0


 お昼休み、私達はテーブルを囲んでお弁当を食べた。
こなた「そういえば今日もかがみ来ないね、どうしたんだろ」
みゆき「あ、忘れていましたしばらく峰岸さん達と食べるそうです」
ゆきちゃんも本当の事を隠そうとしている。こなちゃんとゆきちゃんは楽しそうに話しながらお弁当を食べている。私は今朝の事とこなちゃんと喧嘩したことになっているので
話すこともできない。でも何か聞かれたらどう答えるか。そんな事ばっかり考えていた。皆がほぼお弁当を食べ終わった頃だった。
みゆき「つかささん、泉さん……ちょっと宜しいでしょうか?」
こなた「なに?」
私は返事はせずにゆきちゃんの顔を見た。
みゆき「昨日の喧嘩の話はかがみさんから伺いました、どうでしょう、もう一日経った事ですし、許してもいいと思うですがいかがでしょうか」
これは朝の話には無かった。きっとゆきちゃんの自分の判断なんだ。凄いなゆきちゃん。それに比べて私なんか一人じゃ何もできない。
こなちゃんは何ていうだろうか。私はこなちゃんの顔を見た。こなちゃんは『私に任せろ』って言っているような目をしていた。もうこなちゃんに任せるしかない。
こなた「みゆきさん、折角だけど、まだ私は許す気になれないよ……こうして一緒にご飯を食べるのも、今は嫌なんだ……みゆきさんが居るからここに居られるようなもんだ」
こなちゃんはまだ作戦を終わらす気はないのか。私はもう終わらせたい。
みゆき「話ではつかささんは泉さんに謝りに行こうとしたようですが……泉さんはご承知でしたか、私から見てもこれはなかなか出来るものではないと思います」
こなた「そんなの知らないよ、勝手に謝ったって私の気の済む問題じゃない」
なんかゆきちゃんの言葉がとても嬉しく感じた。あれは演技じゃなかった。私のしようとしたことは少なくとも間違っていなかった。目頭が熱くなった。
こなた「ちょ、つかさ……」
こなちゃんが私の涙に気付いた。ゆきちゃんも気付いた。私は慌てて涙を拭いた。
こなた「つかさ……泣いたってだめだから」
こなちゃんは席を立ち教室を出てしまった。ゆきちゃんは暫く黙ってしまった。こなちゃんは私が泣くなんて思ってもいなかったからびっくりしちゃったみたい。
みゆき「つかささん、すみませんでした……そんなつもりは無かったのです、でしゃばり過ぎました」
ゆきちゃんは深々と頭を下げていた。もうこんなのは止めにしよう。でもそれにはこなちゃんの説得が必要。作戦を終わらせないと。
つかさ「ゆきちゃん、嬉しかったからつい泣いちゃったんだ、気にしなくていいよ」
みゆき「……泉さんがあれほど意固地になっていたなんて知りませんでした、かがみさんの話は大げさではなかったのですね」
つかさ「今日の放課後、こなちゃんと会うんだ、それで直接話すから……それで終わりにするよ」
みゆき「……終わりだなんて言わないで下さい、たった一回の間違えで別れるなんてあまりにも……悲劇的過ぎます」
しまった、いい間違えちゃった。
つかさ「ゆきちゃん、終わりって喧嘩を終わらせるってことだよ、私だってあれだけでこなちゃんと別れるなんて思ってないよ」
本当は『喧嘩作戦』を終わらせるんだよ。
みゆき「それを聞いて安心しました、陰ながら祈っています」
お昼休みはもう少し時間があったけどこなちゃんを追うことはしなかった。もう演技だって分るから。
343 :喧嘩作戦  8 [saga]:2010/10/30(土) 23:59:09.45 ID:6DyRCOk0

 放課後、私はこなちゃんを屋上に呼んだ。
こなた「泣くなんて結構やるね、つかさにそんな演技力があるなんて思わなかったよ、こっちの対応が遅れるところだった、これでみゆきさんもこっちのペースに巻き込めるよ」
つかさ「あれは演技じゃいよ、ゆきちゃんの言葉に感激しただけだよ……」
こなた「どっちでもいいよ、とりあえず今後の作戦を練らないとね、二人の秘密を暴くんだ」
楽しいそうになってるこなちゃん。やっぱりこなちゃんは本来の目的を忘れてゲーム感覚になってる。
つかさ「こなちゃん、もう作戦はおわりだよ……お姉ちゃん達に私達が心配するような秘密なんてないよ」
こなた「何言ってるのさ、つかさだって言ったじゃん、二人の行動がおかしいって」
つかさ「それはお姉ちゃん達が私達をおかしいとおもっていたから……それを見て私達もおかしいと思ってた、お互いに疑っていただけなんだよ」
こなた「……何だよ急に、まるでかがみ達から聞いたような言い方してさ」
つかさ「そうだよ、今朝こなちゃんと別れた時にお姉ちゃんとゆきちゃんの話をきいちゃったんだ」
私はこなちゃんに今朝の二人の話を聞かせてあげた。
……
つかさ「そうゆうことだよ」
こなた「その話もかがみ達が仕組んだものだったらどうよ、つかさが通った所に偶然にかがみとみゆきさんが居るのは不自然すぎる」
つかさ「そうだよね、嘘かもしれない、でも私の聞いた話がお姉ちゃん達の作り話だったとしても、もう私はこなちゃんの力になれない」
こなた「どうして」
つかさ「昨日のお姉ちゃん、お昼のゆきちゃん、二人とも私達が本当に喧嘩したと思ってる、それで本気に仲直りさせようと思ってる、もうそれで充分だよ……
    なんて言ったらいいか分らないけど、もうこれ以上二人を苦しめたくなくって……なんか涙が出てきちゃった」
お昼と同じように涙が出てきた。でも今度は涙は拭かなかった。こなちゃんを説得する最後の私の問いかけ。
こなた「わかったよ、どっちにしろつかさが協力してくれないとこの作戦は成立しない、もう分ったから泣かないで」
つかさ「あ……りがとう」
分ってくれた。嬉しくなって余計に涙が出てきた。
こなた「嬉し泣きするのはまだ少し早いよ、どうやってかがみ達を納得させるんだ、中途半端なことするとそれこそかがみの鉄拳が飛んでくるぞ」
確かにそうだった。私は涙を拭って一呼吸してから話した。
つかさ「大丈夫だよ、このまま二人で笑ってお姉ちゃん達に会えばね、仲直りしたって……」
こなた「なるほど……そして作戦は私達二人だけの秘密ってことだね」
つかさ「秘密を作るとこんどはお姉ちゃん達が作戦しちゃうから……ほとぼりが冷めたらちゃんと話さないとね」
こなた「そうだ、そうだよね」
私達は笑った。
こなた「さっそくかがみ達に会いに行こう、たしか二人は委員会会議だったよね、もう終わってるかな」
344 :喧嘩作戦  9 [saga]:2010/10/31(日) 00:00:21.24 ID:/F9Smcw0

 私達はとりあえず自分の教室に戻った。教室の扉を開けたときだった。
かがみ「いい加減にしろ!!」
怒号と共にお姉ちゃんがゆきちゃんを平手打ちする光景がいきなり飛び込んできた。ゆきちゃんの頬を打つ乾いた音が教室に響く。それと同時にゆきちゃんの眼鏡が飛んだ。
こなた「まずい」
こなちゃんが低い声でそう言うとゆきちゃんはお姉ちゃんの足元に倒れた。ゆきちゃんは床に倒れたままピクリとも動かない。
つかさ「ゆきちゃん?」
私はゆきちゃんの元に駆け込んだ。ゆきちゃんを起こそうとした。
こなた「触っちゃダメー!!」
叫びにも似た声に私の動作が止まった。
こなた「動かさないで、みゆきさんの耳を見て」
ゆきちゃんの耳から血が垂れてきている。こなちゃんは素早くゆきちゃんを動かさないように制服のボタンを取って服を緩めた。そして口元に耳を当てている。
こなた「よし息がある、かがみ早く職員室から先生呼んで、救急車も」
かがみ「うそ……そんなに強く打ってない……みゆきなに冗談してるのよ……起きなさいよ」
お姉ちゃんはその場に止まってゆきちゃんを打った手を見ている。
こなた「かがみ何してるの!!!早く!」
お姉ちゃんは放心状態。ぼーとして動かない。私が職員室に行こうとすると近くに居た男子生徒が代わりに職員室に行ってくれた。すぐに先生がきてくれて暫くすると
救急車のサイレンの音が近づいてきた。ゆきちゃんは素早くタンカーに乗せられ教室を出て行った。その時お姉ちゃんはスイッチが入ったように泣き崩れた。
お姉ちゃんは先生に抱きかかえられるように職員室に向かっていった。きっと事情を聞くため。私達も教室で待機するように言われた。


 私とこなちゃん以外誰もいない教室。床についた血の跡が生々しい。まさかこんな事になるなんて。お姉ちゃんとゆきちゃんが喧嘩をしてしまった。それも演技じゃない本気。
それ以外考えられない。きっと私達が関係してる。こなちゃんも全く動かないで自分の席に座っている。きっと私と同じことを考えてるに違いない。お姉ちゃんはまだ
もどってくる気配はない。このまま黙っていても辛いだけ。こなちゃんと何か話そう。
つかさ「ゆきちゃんが倒れてからの行動が素早かったけどどうして分ったの、救急隊員の人も関心していたよ」
こなちゃんは私の方を向いて答えた。
こなた「耳への掌打……護身術であるんだよ、昔ゆい姉さんから教わった、女性の力でも充分ダメージがあるんだ……かがみは頬じゃなくてちょうど耳の上に平手打ちをした、
    だから衝撃が耳に直接いっちゃったんだよ、あれだと少なくとも鼓膜は破れてるよ、三半規管、脳にまで傷があるとちょっとまずいことになるかもね」
つかさ「そんな、ゆきちゃん……お姉ちゃんは武術なんかやってないよ」
こなた「……これは偶然、みゆきさんが反射的に避けようとして耳に当たっちゃったんだね……応急処置も一通りゆい姉さんから教えてもらった……万が一首を捻っていると
     まずいから動かさないようにって言ったんだよ」
345 :喧嘩作戦  10 [saga]:2010/10/31(日) 00:01:46.52 ID:/F9Smcw0

 話が先に進まなくなった。時間だけが過ぎてゆく。西日が窓から入ってきた。どのくらい時間が経ったかこなちゃんはその窓を見ながら話し出した。
こなた「つかさ、ごめん」
つかさ「え、いきなりどうしたの?」
こなた「私は随分前からこの作戦を計画してたんだよ、つかさとよくゲームの話をかがみやみゆきさんの居ない所で話してたの分かってた?」
そういえばそんな気がしてきた。全然そんなのは気にしていなかった。
つかさ「言われて今気が付いたよ、分からなかった、お姉ちゃんもゆきちゃんもあまりゲームやらないし……」
こなた「それを利用したんだ、私たち二人でコソコソしてれば何かあるように見えるよね、するとにかがみとみゆきさんも……コソコソしだすよね」
つかさ「こなちゃん……なんでそんな事を……」
私がお姉ちゃんとゆきちゃんの様子がおかしいと思ったのはその為だった。それでこなちゃんはそれを喧嘩だって言って私を協力させたんだ。
こなた「もう高校も終わりだし最後に大きな悪戯をしたくなったんだよ、みんながびっくりするような……」
つかさ「こなちゃん、はっきり言うよ、もうこれは悪戯のレベルじゃないよ……もしバレたらお姉ちゃんもゆきちゃんも絶交しちゃうかもしれないよ……私もこなちゃんに協力
     したことになるよね……それでお姉ちゃんとゆきちゃんも本気で喧嘩しちゃったし……私達、卒業したらもう二度と会えないかもしれないよ」
こなた「つかさは私を許してくれる?」
こなちゃんは涙目になっていた。
つかさ「許したいけど、こんな事になっちゃたら……お姉ちゃんとゆきちゃんが許さないかも、私も同罪かも」
こなた「だから今までの事全部秘密にしてほしい、ほとぼりなんか一生冷めないよ」
こなちゃんは両手を合わせて私にお願いをしている。
つかさ「私だってみんなとバラバラになるのはやだよ……でも秘密なんて」
私は俯いてしまった。
こなた「かがみがあんな簡単に引っかかるとは思わなかった、つかさも本気になって怒った……それが面白くなってこんどはみゆきさん……これは私の計画が良かったわけでも
    演技が上手かったわけでもない、私はみんなの友情を利用して弄んだだけだった、屋上のつかさの涙を見てそう思った……今頃気付いても、もう遅いよね……」

 私は始めて友情って言葉を聞いたような気がした。お姉ちゃんと大喧嘩して別れたとしても私たちは姉妹、その関係までは消えない。でも、こなちゃんやゆきちゃんと
喧嘩したりして別れてしまったらもうただの他人。もう一生会うこともないかもしれない。そうだよね、当たり前すぎるよ。せっかく出会ったんだからそんな別れ方は悲しいよね。
つかさ「もうやっちゃった事をどうにかしようとしてもどうにもならないよ、今はお姉ちゃんを待つのと、ゆきちゃんの無事を祈ろうよ」
こなた「うん……」

 もう日が暮れて終業時間が近いというのにいっこうにお姉ちゃんが戻る気配がない。
こなた「かがみ遅いなどうしたんだろ」
つかさ「まさか、ゆきちゃんに何かあったのかな、私……怖くなってきた」
こなちゃんは動揺しだした。
こなた「ばか、そんな事言うもんじゃないよ……大丈夫、大丈夫……きっと」
教室の扉が開いた。
つかさ「お姉ちゃん!」
こなた「かがみ!」
同時に呼んだ。でもそこに居たのは黒井先生だった。
黒井「災難やったな、まさかあの二人が喧嘩しよるとは私も思わんかった……」
つかさ「先生、お姉ちゃんは……」
先生はしばらくしてから答えた。
黒井「……事件性はあらへんようだし、警察沙汰はなしや……事故扱いで報告する」
私達はほっと胸をなでおろした。
こなた「かがみは……何処に」
黒井「柊はもう病院に向かったで……行ってもまだ面会はできへんけど……二人はどないする、行くなら車で送るで」
つかさ・こなた「お願いします!!」
346 :喧嘩作戦  11 [saga]:2010/10/31(日) 00:02:57.15 ID:/F9Smcw0

 先生の話ではもうすでにゆきちゃんの両親はこの話を知っていると言っていた。お姉ちゃんに対しては特に咎めることはないと言っていたけどそれはゆきちゃん次第らしい。
ゆきちゃんが許さなければ訴えられるのも覚悟しなさいと。ゆきちゃんがそんな事するはずない……なんて言えないよね。私からはお姉ちゃんを許してなんて言えない。
でもどうしてお姉ちゃんとゆきちゃんが喧嘩しちゃったんだろ。私達が原因なのは分かるけどゆきちゃんがお姉ちゃんを怒らすなんて想像もつかない。
そんな事を考えている間に病院に着いた。病院は歩いてでも行けそうな距離にあった。病院に入ると待合室に案内された。黒井先生は学校に戻った。携帯に連絡を入れれば
迎いに来てくれると言ってくれた。

 待合室の真ん中にポツンとお姉ちゃんが座っていた。私達に気が付いてこっちに向いた。目が真っ赤だった。でも涙の跡はなかった。お姉ちゃんは座ったまま話した。
かがみ「……あんた達来たのか、みゆきに会いたいのなら明日で良かったのに、まだ意識が戻らない……」
私達は返事はせずに空いている椅子にそれぞれ腰を下ろした。お姉ちゃんは私達が座ったのを見届けるとまた話しはじめた。
かがみ「醜態を見せたわね、人が倒れたのに何もしないで……応急処置は最低限の事よね……それすらも出来なかったなんて……」
つかさ「うんん、私だって何も出来なかったよ、こなちゃんがみんなやってくれたから……」
お姉ちゃんはこなちゃんの方を向いた。
かがみ「そういえばあんたを何度か殴ったことあったわよね……今思うとぞっとしたわ……今更だけど謝るわ、ごめん……」
こなた「どうしたんだよ、かがみらしくないよ……それよりも私が聞きたいのは……」
かがみ「……分ってるわよ、私が何故みゆきを殴ったかでしょ……職員室でも聞かれたわ……でも薄々は分ってるでしょ、原因はあんた達よ」
私とこなちゃんは顔を見合わせた。
かがみ「昼休み、弁当を食べ終わって日下部達と話していても落ち着かなかった、つかさとこなたの喧嘩のせい、みゆきが居るから平気だと思ったけど……様子を見にいった、
     こなたが教室を飛び出したのを見かけた……教室を見るとつかさが目を擦っていた……泣いていたのは直ぐ分った、仲直りどころか悪化してるじゃない……そう思った、
     放課後、会議が終わってみゆきに聞いたわ、何をしたかってね、昼食を一緒に食べれば何とかなると思ったとみゆきは言った、そして今頃つかさはこなたと直に会って
     話をつけていると言った、私はみゆきを叱り付けた、私達が仲介しても解決できないのに当事者同士だけで会わせてどうするつもりなんだ……ってね、
     みゆきはつかさやこなたの意思を尊重したいって言ったけど……私は今すぐこなた達の所に行くと言った、みゆきは止めたけど私は制止を振り切って向かったわよ、
     場所は察しがつく、屋上の扉が開いていた、二人を見ると……つかさがこなたを直視して泣いていた……こなたもつかさに向かって何かを言っていた……
     もう終わったと分かった、私の出来る事は何もない、たかがゲームの事って甘くみていたわ、もっとあんた達の話を聞いていれば良かった……私はそのまま戻った……
     戻ってみゆきにその話をしたら……みゆきは急に怒って私に言った、何故何もしないで戻ってきたのかってってね、現場も見ないで何を言ってるのかって言い返した、
     みゆきなら二人の間に入って話を聞くと言い出した、私はもうそれは昨日やったと言った……もうその後は覚えていない、気が付いたら私は手を振っていた」
347 :喧嘩作戦  12 [saga]:2010/10/31(日) 00:04:24.50 ID:/F9Smcw0

 屋上でのこなちゃんとのやり取り……見ようによっては喧嘩していると見えるかもしれない。屋上にお姉ちゃんが来ていたなんて気が付かなかった。
お姉ちゃんの目には涙が溜まっていた。実は私達は喧嘩なんかしていない。お姉ちゃんにそう言ったらどうなるかな。きっとお姉ちゃんは怒る……。
怒るだけじゃ済まない。三人で言い合いの喧嘩になっちゃう。でも私はもう嘘なんかつきたくない。どうすればいいんだろ。こなちゃんは黙ってお姉ちゃんを見ている。
こなちゃんもどうしていいか分からないんだ。私も分からない。でもこのままじゃだめだよ。何かしないと。何を?
もう頭が爆発しそう。お姉ちゃん達が喧嘩してなかったら仲直りした姿を見せて終わったはずなに。仲直りした姿……。そうだ、やってみよう。

つかさ「お姉ちゃん、見て」
お姉ちゃんは私を見た。
つかさ「どう?」
かがみ「どう……って何よ」
私はこなちゃんに近づいて並んだ。
つかさ「喧嘩してるはずの二人が並んで座っているって不自然だとは思わない?」
お姉ちゃんは私とこなちゃんを交互に見ている。
つかさ「お姉ちゃんを待っている間、こなちゃんが言ったんだよ、このまま喧嘩してるとお姉ちゃんとゆきちゃんみたいになちゃうんじゃないかって、だからもう止めようって……
     そうだよね、こなちゃん?」
こなた「えっ?、あぁ、うんうん、そうそう、そうだよ、うんうん」
こなちゃんがどんな反応するかなんて分からない。でもこなちゃんは喧嘩作戦を秘密にしたいって言ってた。だからきっと私の話に合わせてくれる。そう思った。
その通りにこなちゃんは相槌を打ってくれた。
かがみ「……何よ、私達は反面教師かい……」
お姉ちゃんは顔を背けてしまった。
つかさ「これでお姉ちゃん達が喧嘩をしている理由はなくなったよね……」
お姉ちゃんは顔を元に戻して再び私達を交互に見た。
かがみ「確かにね、もうみゆきと喧嘩をする理由はもうない、普通の喧嘩だったらもうこれで終わり……でも私はみゆきに怪我をさせてしまった、これだけは消えないのよ」
つかさ「だからここに居るんでしょ?」
私はお姉ちゃんにゆきちゃんの眼鏡を渡した。
かがみ「これは……みゆきの」
つかさ「そうだよ、お姉ちゃんが飛ばしちゃった眼鏡、渡してあげて……」
かがみ「つかさが渡しなさいよ」
私に突き返そうとした。私は受け取らなかった。
つかさ「こなちゃんと喧嘩して分かっちゃった、誰かに何かをしてもらったって仲直りなんかできないって、結局喧嘩した本人同士で仲直りしないとダメなんだって」
その時、ドアをノックする音がした。
看護婦「高良さんの同級生の方々ですね、意識が戻ったので面会するならどうぞ……ただし頭を打ったせいで少し混乱しているようですので沢山のお話はお避け下さい」
看護士さんはそのままナースセンターの方に帰って行った。
かがみ「みゆき……」
お姉ちゃんはゆきちゃんの眼鏡を握り締めると待合室を出て行った。
348 :喧嘩作戦  13 [saga]:2010/10/31(日) 00:05:34.21 ID:/F9Smcw0

 私もお姉ちゃんを追いかけようと待合室を出る準備をした。こなちゃんは私に笑顔で話しかけてきた。
こなた「つかさやるじゃん、本当の事言ってってバラしちゃうんじゃないかってヒヤヒヤしたよ」
私はこなちゃんを少し睨んだ。
つかさ「こなちゃん、お姉ちゃんに最後に言ったの……本当だから」
こなた「本当って?」
こなちゃんは言っている意味が分からないようだった。ポカンと口を開けている。
つかさ「私はこなちゃんと本当に喧嘩した……それで私達は自分達で仲直りしたんただよ、そうでしょ、こなちゃん」
こなた「つかさ……」
つかさ「……お姉ちゃんとゆきちゃんが仲直りしたら『喧嘩作戦』は全て忘れるつもりだから、私とこなちゃんの永遠の秘密……ゆきちゃんがお姉ちゃんを許さなかったら
    本当の事を言って謝るつもりだよ……それでいいよね」
こなた「……つかさ、ありがとう……それでいいよ……」
こなちゃんは少し目を潤ませた。そんな泣くような話はしていないのに。
つかさ「こなちゃん行こうよ、ゆきちゃんの所に」
こなた「うん……何だろうね、つかさは喧嘩が上手と言うか、慣れていると言うか……後腐れがないよ、そんなに喧嘩してるようには見えないのに」
そんな風に言われるは初めてだった。一つだけ思い当たるのがあった。
つかさ「私の家って家族が多いでしょ、お姉ちゃん達よく喧嘩するんだよね、それでもすぐ仲直りしちゃうんだよ、そんな姿を何度も見てるから……」
こなた「賑やかで楽しそうだ……羨ましいよ」
またドアをノックする音がした。ゆきちゃんのお母さんが入ってきた。
ゆかり「あら、つかさちゃん、さっきかがみちゃんとすれ違ったわよ」
普段と変らない温和な口調でそう言った。自分の娘が入院しているような感じは受けない。私はなんて言っていいのか分らない。
つかさ「おばさん、この度はお姉ちゃんが……なんて言うか……あの」
何を言っているのか分らなくなった。そんな私を見ておばさんは笑った。
ゆかり「そんなのはいいから早くみゆきの所に行ってあげて、きっと喜ぶわよ」
つかさ「行こう、こなちゃん」
 
349 :喧嘩作戦  14 [saga]:2010/10/31(日) 00:06:44.40 ID:/F9Smcw0

 ゆきちゃんの病室の近くに来ると入り口にお姉ちゃんが立っていた。部屋に入れないみたいだった。
こなた「かがみ、入ろうよ……」
かがみ「さっきおばさんと会った……私がみゆきに会うのを知って部屋を出てくれた……おばさんは私に言った、意識の無いみゆきはしきりに私の名前を言っていたって……
     それを見ておばさんは私を許してくれた……名前だけじゃみゆきがどんな気持ちになっているなんて分からない、憎くて言っているかもしれないのに」
こなた「お母さんだから分るんじゃないの、子供の頃から育てたんならね、言葉の言い回とかでも分っちゃうんだよ」
かがみ「お母さんの居ないこなたがよくそんなことが……ごめん、今のは聞き流してくれ……」
お姉ちゃんは慌てて止めたけど今のはかなり酷いと思った。
こなた「……居ないからこそ分ることもあるんだよ……」
小さな声でポツリと言った。
かがみ「……ごめん、本当にごめんなさい」
こなた「別に気にしてないよ、それにその調子ならみゆきさんを怒らすことなんかなさそうだね……早く部屋に入ろう」
まさか、こなちゃんはお姉ちゃんを試したのかな。そんな気がしてきた。
かがみ「……入って何を話す、どう語りかける、そう考えると何も言葉がうかばない、謝罪の言葉、挨拶……何て言ったら良い」
こなた「かがみは私とか家で喧嘩していつもそんな事考えてるんだ、それでよく仲直りできたね」
かがみ「あんたや身内とは勝手が違う……幼い頃から一緒にいたんだ、手の内はお互いに知っている」
こなた「それじゃ私とつかさが先に入ってみゆきさんと話してるから頃合を見て入ってきて……行こうかつかさ」
こなちゃんはドアをノックしようとした。
かがみ「待って……私が先に入るわ……」
こなちゃんはドアから離れてお姉ちゃんに譲った。
350 :喧嘩作戦  15 [saga]:2010/10/31(日) 00:08:04.88 ID:/F9Smcw0

 お姉ちゃんはドアをノックしてドアを開けた。
かがみ「入るわよ」
返事がなかった。お姉ちゃんは戸惑いながらも部屋の奥に入った。私とこなちゃんは入り口の所で止まった。
ゆきちゃんは耳にガーゼを付けていた程度だった。包帯をターバンみたいにグルグル巻きになっていたのを想像していたけど。思いのほか軽傷だったのかな。
ゆきちゃんはベットに座って窓の外を見ている。まだ私達に気が付いていないようだった。
かがみ「みゆき……」
お姉ちゃんの声に反応した。ゆきちゃんはお姉ちゃんの方に向いた。
みゆき「かがみさん……おはようございます……今日も早いですね」
おはようって……もう日はすっかり落ちて暗くなっている。さっきまでゆきちゃんだって窓の外を見ていたのに。
かがみ「おは……こんばん……」
お姉ちゃんも何て挨拶していいか分らないみたい。
みゆき「あっ、そうでした、今回議題についてかがみさんにお聞きしたい事があったのです、放課後の準備もしないといけませんね……」
かがみ「会議はもう終わってるわよ……」
みゆき「そういえば……おはずかしながら英語の教科書を忘れてしまいまして……かがみさん貸していただけませんでしょうか」
かがみ「いったいいつの話をしているのよ、今日は英語の授業なんかなかったわよ……それより私は……」
みゆき「……この前読んでいた本が読み終わりましたので御貸しできますよ……」
かがみ「はぁ?」
話が飛んで会話になってなっていない。支離滅裂ってこの事をいうのかな。看護士さんが言っていたようにゆきちゃん自分がどうなっているのか分かってないみたいだった。
ゆきちゃんはいきなりベットから降りようとした。鞄の方を向いている。きっと鞄の中の本を取りに行こうとしているんだ。ゆきちゃんは立ち上がって歩こうとたけどバランスを
崩してフラフラしている。まるで酔っているみたいだった。すぐに倒れそうになってお姉ちゃんにもたれかかった。
かがみ「ちょっと、怪我人は怪我人らしく寝てなさいよ……」
みゆき「……私は怪我なんかしてませんよ……」
お姉ちゃんだけじゃ体重を支えきれないみたいだった。いまにも二人とも倒れそうになっている。
つかさ「こなちゃん、手伝おう」
こなた「うん」
私達もお姉ちゃんを手伝いゆきちゃんをベッドに戻した。ゆきちゃんはわたしとこなちゃんに気が付いた。じっと私達を交互に見ていた。
みゆき「先ほどこな……ちゃん……と言ってましたね、怒っていない……二人が一緒にいるなんて……」
かがみ「とりあえずまずは落ち着け、渡すものがあるから」
お姉ちゃんはゆきちゃんに眼鏡を渡した。ゆきちゃんは眼鏡を受け取った。
みゆき「ありがとうございます」
ゆきちゃんは眼鏡をかけようとしたけど片耳にはガーゼで塞がれてる。眼鏡が滑ってかけられない。ゆきちゃんは手で耳を触れてガーゼを認識した。
ゆきちゃんは耳を手で押さえたまま動かなくなった。自分の身に何が起きたか分ってきたみたいだった。
………
………
みゆき「私……かがみさんと言い争って……ここは、此処は何処ですか……」
耳を押さえながらお姉ちゃんを見た。
かがみ「学校の近くの○○病院よ……」
みゆき「……そうですか……かがみさんが介抱して下さったのですね……ありがとうございます」
かがみ「お礼を言うならこなたに言いなさいよ……私はあんたが倒れて気が動転して何もできなかった、ただの小心者よ……」
みゆき「……かがみさん……愚直すぎます……嘘でもいいから『私がした』と言って欲しかった……そうでないと……うう」
ゆきちゃんはお姉ちゃんに抱きつき泣いてしまった。
かがみ「バカ、私はあんたを殴ったのよ、それなのに……何で抱きつくのよ……それは私が先にしなきゃ……うぅ」
お姉ちゃんも泣き出してしまった。もう二人は仲直りしたんだと思った。私はこなちゃんの肩を叩いて一緒にそっと病室を出た。
351 :喧嘩作戦  16 [saga]:2010/10/31(日) 00:09:29.41 ID:/F9Smcw0

こなた「私達は要らなかったみたいだね……」
つかさ「そうだね……でもこなちゃんがお姉ちゃんの背中を押さなかったらこうはならなかったかも」
こなた「かがみが何時まで経ってもドアを開けなかったからね、じれったくなったんだよ……かがみって意外と気が小さいんだね、知らなかった」
つかさ「……そういえばお姉ちゃん、まつりお姉ちゃんと喧嘩するといつも私の部屋に来てたっけ……そのまま一緒に寝たこともあるよ……」
こなた「それは知らなかった、今度喧嘩した時の参考にするよ」
つかさ「もう喧嘩はこりごりだよ……」
こなた「はは、冗談だよ、さてと……ここで話すのもなんだし……待合室でかがみを待とうか」
つかさ「うん」

 こうして一件落着……したとは思わなかった。
でもこなちゃんと約束したからには守らないとダメ。でも私は隠し事が苦手。ついつい話しちゃう。さっきのお姉ちゃんが喧嘩があると私の部屋に来るって言うのも
暗黙の了解で話さない事になっていた。だから私は忘れる。この事は忘れる。そうすれば話さなくてもいい。話すこともない。私の心の奥にしまっておこう。永遠に。

 ゆきちゃんは数日で退院できた。そしてお誂え向きに皆はこの話をする事はなかった。
 あと皆はちょっと変ったかな。お姉ちゃんは誰に対してもどんなに言い合いの喧嘩をしても手を出さなくなった。
こなちゃんは悪戯をまったくしなくなった。最後って言ってたけど本当に最後の悪戯だったんだね。ゆきちゃんは……私と同じで変ってないかも。
皆が話さないから私も話さない。そして私も忘れた……。
……
……
352 :喧嘩作戦  17 [saga]:2010/10/31(日) 00:11:16.83 ID:/F9Smcw0
 今日はとっても天気がいい、お出かけ日和。
土曜日。久しぶりに私達四人が集まる。大学を卒業すると滅多に逢えなくなるよね。それでも月に数回は誰かしらと会っていた。高校時代の友達としては多い方かもしれない。
私は家に残ったけどお姉ちゃんは家を出た。別に結婚したわけじゃないけどね。残りの私達はどうしたって?……それはご想像にお任せで。
私は皆が集まる約束をした店で皆を待っていた。予約したのは私。なんとこの店は私が働いている店。だから味は私が保証する。今日は休みを取って
客として店に来ていた。そして約束の時間が来た。
かがみ・みゆき「こんにちは……」
つかさ「姉さん、みゆき……早いね、席はこっちだから座って待てて」
お姉ちゃん、ゆきちゃん、こなちゃん、姉さん達が大学を卒業するまではそう呼んでいた。だけど社会人になると皆があだ名で呼ばれるのが恥ずかしいといいだしたので
名前で呼ぶようになった。最初は抵抗があったけどね、もう慣れた。
かがみ「つかさいいのか、一部屋貸しきっちゃって」
つかさ「うん、大丈夫だよ、それに今回はコース料理にしたからね、メニューはお任せ」
かがみ「コース料理かよ、奮発したな、割り勘でも結構すんじゃないのか」
つかさ「うんん、今日は私の奢りだからお金は気にしなくていいよ」
みゆき「いいのですか」
つかさ「四人だけで集まるのって久しぶりじゃない、だから嬉しくてね」
かがみ「そういや久しぶりだ……二年ぶりか」
みゆき「二年十ヶ月と二十三日ぶりですね」
かがみ「みゆき、相変わらずね……もう一人着てないわね……またあいつか……あいつも相変わらずってか」
みゆき「噂をすれば……来ました」
息を切らしてこなたがやってきた。
こなた「やふー、まいったまいった」
かがみ「……まったく、こいつの遅刻癖は治らんのか、まさかゲームをしてたってわけじゃないでしょうね」
こなた「まさか、子供じゃあるまいし、深夜アニメをついつい見てたら……寝坊した」
姉さんは絶句して何も言わなかった。こなたは全く変っていない。でもそれが羨ましかった。
みゆき「泉さん、昨日はどうもありがとうございました」
かがみ「ん?、みゆき昨日こなたと会ったのか?」
みゆき「はい、偶然駅でばったりと……」
かがみ「へー、偶然か、世間って広いようで狭いわね」
こなた「つかさが働いている店で食べるのは初めてなんだよね、昨日そうみゆきさんに言ったら話が盛り上がっちゃってさ、そのまま食事しちゃったんだよ」
みゆき「私は先日頂いた事がありましたので……いい話し合いになりました」
そういえばこなたが私の働いてる店にくるのは初めてかもしれない。皆呼んだつもりだったけど。やっぱり学生時代とは勝手がちがうな。
かがみ「こなた!、まだ遅刻の話は終わってないぞ、こっちに来て座りなさい」
こなた「えー、説教やだよ、もういい大人なんだしもう止めようよ」
かがみ「いい大人ならこんな事させるな、いいから来い!」
つかさ「姉さん、もういいじゃない、折角集まったんだからさ」
かがみ「……しょうがないわね、つかさに免じて今日は何も言わないわよ」
こなたは目でありがとうと言った。私は手で合図をした。
つかさ「もう始めちゃっていいかな、お料理もって来るように頼んでくるよ……お酒も少し飲む?」
こなた「少しと言わずいっぱい持ってきて……」
かがみ「ここは飲み屋じゃないんだぞ、まったく、お酒はつかさに任すわ」

 昼食会が始まった。お酒も少し入り話しが盛り上がってきた。私は皆に料理を取り分けたりお酒を注いだりしていた。
かがみ「つかさ、店員じゃないんだからさ自分の席に戻りなさいよ、私達自分で料理は取るからさ」
みゆき「そうですよ、席に着いて落ち着きませんとお話すらできません」
つかさ「……いつもの職業癖が出ちゃった、そうだね今日は店員じゃないよね、これで最後にして席に戻るよ……はい、こなちゃん」
353 :喧嘩作戦  18 [saga]:2010/10/31(日) 00:14:12.24 ID:/F9Smcw0
 料理をこなたに渡すとみんなの動作が止まった。私があだ名でこなたの事を呼んだからなのだろうか。貸切の部屋。私達以外居ないので何気に言った。特に意味はなかった。
しかし皆の反応は大きかった。
つかさ「えっと、ごめん、あだ名はもう止めようって言ったんだよね、ちょっと調子に乗りすぎちゃったみたい、もう言わないから……」
私は自分の席に戻った。しかし沈黙は続いた。私ったら雰囲気ぶち壊しだよね。どうしよう。
こなた「こなちゃん……懐かしいね、いつから止めようなんて言ったっけ?」
つかさ「え?」
みゆき「そういえば私もゆきちゃんと呼ばれていました、確か大学を卒業した辺りからあだ名は止めようと決まったと思いますよ」
かがみ「つかさは親しい人にはあだ名で呼んでたわね……」
こなた「かがみは結局あだ名は付かなかったよね……キョウちゃんでよかったのに」
かがみ「キョウちゃんって何よ……あっ!そういえば高校時代私をそう大声で呼んだことあったわよね……なんで急にそう呼んだのよ」
こなた「つかさがあだ名を付けるならキョウちゃんが良いって言ったんだよね……漢字で『鏡』でキョウ」
そういえばそんな事もあったかもしれない。でもこなちゃんはは直ぐに言い直したんだった。
こなた「でも私は『凶』の方が合うんじゃないかってね」
うぁ、あの時の会話をそのまま話しちゃってるよ。高校時代じゃ絶対に話せない。
かがみ「……で、こなたはどっちの漢字であの時呼んだんだ?」
こなた「ふふふ、そんなの聞かなくても分るんじゃないの」
かがみ「あの時知ってたら殴ってる所だ」
お姉ちゃんはそう言って料理を食べ始めた。怒っているけど高校時代とは反応が全然違う。あの時お姉ちゃんが『凶』って知ってたらこなちゃんは殴られてたかも。
みゆき「ふふ、懐かしいですね……やはり高校時代の思い出のが一番残りますね……」
ゆきちゃんは部屋の窓の外を眺めなら言った。
かがみ「そうね、私もそうかもしれない、高校時代……みゆき覚えてるかしら、喧嘩して怪我させたことあったわよね」
そういえばそんな事もあった。お姉ちゃんがゆきちゃんを殴っちゃったんだった。でも何でだったんだろう。覚えてない。こなちゃんもお姉ちゃんの方を向いていた。
みゆき「……覚えています、まるで昨日の事のように、成り行きによっては今、私達がこうして集うこともなかったかもしれません……」
そんな大きな事件なら私だって覚えているはず。
かがみ「そうね、事の発端はつかさとこなたの喧嘩だった、ゲームのデータを消した消さないの他愛もない喧嘩……二人とも覚えてる?」
私とこなちゃんは首を横に振った。
かがみ「……やっぱりね、その程度の喧嘩だったのよ、それを私達は真剣に受け止めたのよね、放っておけばよかったのに」
ゲームのデータ。何だろう。確か何かあった。何かあったのは思い出した。
みゆき「私はこれで良かったと思いますよ、雨降って地固まる……です」
お姉ちゃんは食器を置いて真剣な顔になった。
かがみ「みゆきと喧嘩したのはあの時が最初で一回きり、解せない、どうしても納得いかないのよ、でも今まで聞こうとして聞けなかった……今なら聞けそうな気がする」
みゆき「何でしょうか」
ゆきちゃんも真剣な顔になった。
かがみ「私はみゆきを殴った、この罪は消えないのは分ってる……でもね、わざと私を怒らせているように思えたのよ……これは私が罪から逃れようとこじつけた解釈かしら」
わざと怒らせる……。この言葉が心に残った。何か覚えがある。
みゆき「……十数年年間……そんな事を考えていたのですか」
かがみ「良かったら本心を話してくれるか、話したくないのならもうこの話は終わりでいいわ、私も忘れる、もう終わった事に茶茶入れてもしょうがない」
ゆきちゃんは少微笑みながら話しはじめた。
354 :喧嘩作戦  19 [saga]:2010/10/31(日) 00:15:19.48 ID:/F9Smcw0
みゆき「かがみさんと泉さん、初めて出会ってから暫くしてすぐに喧嘩をしましたね」
お姉ちゃんとこなちゃんは顔を見合わせた。
かがみ「もう数え切れないほどやったから覚えていないわ」
みゆき「そうですか……お二人は喧嘩しては仲直りを繰り返していきました、その度に絆が深まっていくのを私は目の当たりに見てきたのです……喧嘩……私は喧嘩らしい
     喧嘩はした事がありませんでした、家でも、学校でも……かがみさんと泉さんを内心羨ましく思っていたのです」
かがみ「バカね、喧嘩なんかしないにこしたことないじゃない」
お姉ちゃんがそう言ったけどゆきちゃんはそのまま話を続けた。
みゆき「……あの時……私の制止を振り切ってかがみさんがお二人を追いかけて行った、帰ってきたとき、何もしなかったと言いましたね、おそらく私もお二人の間に
     入って何かをするなんて出来なかったでしょう……そう、出来なかった、ならば何故しなかったと言えばかがみさんは怒るに違いないと……」
かがみ「……わざとだったのね、でもあの時は私も気が動転してて……そんな事まで考える余裕がなかった」
わざと……わざと怒らせた。私もこなちゃんに怒らされたんだ……思い出した。『喧嘩作戦』だ。こなちゃんの喧嘩作戦。こなちゃんと秘密にしてたんだった。
みゆき「人を怒らす術は理屈ではしっています、かがみさんからくる怒りの言葉、その言葉に対して反対の言葉で返せば怒りは増幅する……途中で止めるつもりでした、
     相手を怒らせればそのまま自分に帰ってくる、ミイラ取りがミイラに……私もいつの間にか怒っていたのです……気が付いたら病院のベットでした……」
かがみ「ふふ……そうゆう事だったのか……みゆきそれでどうだった、私との喧嘩……またやってみたい?」
お姉ちゃんは笑ってゆきちゃんに話した。
みゆき「……あの感情の高鳴り、憎しみ、嫌悪感……もうしたくありませんね……」

 二人は笑顔だった。あの時のお姉ちゃんがゆきちゃんを叩いた時の顔からは想像もできない顔……。ふとこなちゃんを見た。さっきからずっと黙っていた。
こなちゃんは何か言いたいみたいだった。そうか、こなちゃんはあの時の事を忘れていない。いや、忘れられなかったんだ。姉ちゃんやゆきちゃんみたいに。
思い出しては悩んでいた。そうだね。そうだよね。もう隠す必要はないよ。お姉ちゃんとゆきちゃんを見れば分る。
つかさ「こなちゃん、こなちゃんも何か言いいたいことあるんじゃないの?」
私は高校時代のあだ名で言った。今度は意識して言った。こなちゃんは黙ったままだった。
つかさ『喧嘩作戦……もう話していいと思う……こなちゃんもそう思ってるんでしょ、悪戯は種明かししないと終わらないよ……終わらせようよ」
かがみ「喧嘩作戦、何よそれは」
みゆき「悪戯、何でしょうか」
二人はこなちゃんの方を向いた。こなちゃんは目を閉じてしまった。
かがみ「こなた、何勿体振ってるのよ、言いなさいよ」
明るく柔らかな口調だった。お姉ちゃんのその言葉に反応してなちゃんは大きく息を吐いた。諦めて観念したため息のようにも、開放されてほっとしたたようにも見えた。
こなた「つかさ、今まで黙っててくれて……ありがとう、もう秘密にする必要はないね、終わらそう……」
黙ってたんじゃなくて本当は忘れていただけ。それも話さなきゃいけないかな。そういえばこの会合を企画したのはこなちゃんだった。もうそのつもりだったんだね。
こなた「話すよ、高校時代最後の悪戯をね……」
こなちゃんが目を開いた時、目から一粒の涙が出たのを私は見た。

 こなちゃんは話し出した。学校の教室、図書室、保健室、校庭、屋上等の風景が脳裏に浮かんでは消えた。そして、あの時の出来事もまるで昨日の事のように思い出された。
この瞬間から『喧嘩作戦』は私の思い出の一ページに加わった。今日は時を忘れて語り合おう。あの日に戻って……
 
 貸し切った部屋からは私達四人の笑い声が響いていた。


 終
355 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/10/31(日) 00:17:06.12 ID:/F9Smcw0
以上です。
黒井先生の台詞に初挑戦した。違和感たっぷりですみませんでした。

喧嘩をテーマにしたのは久しぶりです。普段仲のいい四人を喧嘩させるのは難しい。
356 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/01(月) 01:03:16.39 ID:h2uL4Js0
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ここまでまとめた

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357 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/01(月) 19:32:26.56 ID:pJoEoMAO
>>356

乙です
358 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/01(月) 21:35:41.70 ID:7gpPqwAO
>>356乙です。

桜藤祭を久々にやっていた時に思いついたモノを投下。
ネタバレがあるので一応注意。


『すれ違った記憶と再会』


季節は秋。
もうすぐ陵桜学園の学園祭である『桜藤祭』が近づいてきていたある日だった。
二年生の後輩の田村ひよりが発案した‘同人即売会’を何とか実行可能にし、一息ついて何人かで飲み物を買いにいった時。
星桜の樹が目に入った時に、口が勝手にこんな事を呟いていた。
「やっぱり咲いてるわけないか…」
「何が咲くって?」
「星桜。ほら、去年噂が流れたじゃん。山さん知らない?」
「ん〜去年かぁ。去年ねぇ」
「やさこ、去年の学園祭のこと思い出せるの?」
「うんにゃ、曖昧」
毒さんに言った通り、その辺の記憶は曖昧だ。いや、私だけじゃない。学生はおろか、先生達の記憶も曖昧だ。
359 :すれ違った記憶と再会 [saga]:2010/11/01(月) 21:36:53.09 ID:7gpPqwAO
といっても、何をやったのかを覚えていないわけじゃない。
例えば三年生は『Fate』の劇を演じていた。
例えばミスコンのようなものをやった。
例えばひよりんのクラスはネットカフェをやったetcetc…。
問題は細部だった。
劇の士郎役は男がやったいや女だった。
ミスコンはミスコンでも女同士いや男同士いや普通に女のみだった。…一部ミスコンかすら怪しいのがあるのは気にしない。
優勝したのは教師だったとか有名な生徒だった。
コスプレ即売会もやっていた。
見慣れない外人がいた。

支離滅裂にも前日に舞台が壊れたという人までいた。
もちろんそんな事実はない。生徒会の記録にもない。
まぁ、時間とともに噂はほとんど消え去ったけど。

本当にどうなっているのか…。
360 :すれ違った記憶と再会 [saga]:2010/11/01(月) 21:38:24.08 ID:7gpPqwAO
曖昧な記憶、といえば私にもある。あるというか、思い出したと言うか。この前親友を学園祭に誘った日から思い出す。

私はひよりを連れて三年生の教室の前で、誰かを待っていた。
誰…だったろうか。
とにかく私は誰かに会おうと必死だった。そんな時に、『先輩』に会った。
どうやらひよりの知り合いらしかった。
『先輩』は私に、『約束』を思い出させてくれた。そして私は誰かに会えた。
でも、『先輩』にお礼を言った記憶と言えてない記憶がふたつ。
私はお礼を言えたのかどうか。『先輩』は誰なのか。…さっぱりわからない。


361 :すれ違った記憶と再会 [saga]:2010/11/01(月) 21:40:01.67 ID:7gpPqwAO
「…つーわけなんだけどさ、ひよりんは覚えてない?」
あまりに気になり過ぎた私は、ある時ひよりを喫茶店に呼び出してこの事を尋ねた。
「と言われましても、こうちゃん先輩に当時三年の先輩を紹介した事はありませんが」
「そうだよね…」
「ちなみにそれって男性っスか?」
「なんで聞くの?」
「いえ、似たような話をクラスで聞いたものでして。ネトゲ世界に引きずり込まれた時に先輩さんに助けられたとかなんとか」
…先輩の相談をクラスメイトの夢物語と同一視とはいい度胸してると思ったが、どうもひと悶着あったらしくツッコムのはやめておいた。
「いやホントに面倒なことになりまして」
「その話はいずれきいてやるから。」
まぁ、確かに男の先輩なのは共通してるが。
362 :すれ違った記憶と再会 [saga]:2010/11/01(月) 21:40:52.40 ID:7gpPqwAO
「しかし似た話ってあるんだねぇ」
「…あの、先輩」
「言っとくけど好きかどうかって話はすんなよ。で、何?」
「いやそれはそれで興味ありますが…先輩おかしくないっスか?」
「何が」
「だって、話を聞く限りだと『誰と』会おうとしたのかが気になるもんじゃないっスか。そっちは性別すらわかりませんし、なんで会おうとしてるのかも不明。なのに気にならないなんて変ですよ」
言われてみれば確かに。
でも何故か気にならなかった。なんというか、気にする必要がない、会おうとするのが当然の相手で理由があった…気がする。
「なんですかそれ。それこそ恋人かなんかみたいっスね」
「違うってんだろ。でもまぁ、気にならないんだから仕方な」
ー今の人。あの男の人。

363 :すれ違った記憶と再会 [saga]:2010/11/01(月) 21:41:58.87 ID:7gpPqwAO
「あのっ!」
「?俺?」
気がついたら追いかけて、声をかけていた。
「えっと…」
「何か用なの?」
「私、陵桜の後輩で、その」
「確かに陵桜のOBだけど、なんで知ってるの」
「あの、その」
やばい。なんで言葉が出ないんだろう。何を言うべきなんだっけ。
「あ、ありがとうございました。あの、ちゃんと写真渡せました!」
何を言ってるんだ私は!
相手きょとんとしてるよ!
「…渡せたんだ。良かった」
「え?」
「気になってたんだ。八坂さんだけ、どうなったのかがわかんなかったから。約束思い出したって事はわかってたけど。…お礼言われることじゃないよ。写真はずっと持っていたんでしょ」
「何の話…ですか」
「さっきのお礼の話だよ。たぶん、それを言うためだけに思い出せたんだと思うし、それを受け入れるために覚えてたんだと思う。長い時をかけてこの瞬間に…だからもぅ、思い出すことはないんじゃないかな」
「…じゃあ、もぅ会えないんですか?」
「わかんない。そもそも、八坂さんに再会するなんて思ってなかったから。……強く思い強く願えばいつかはきっと、会えたりして」
「なんですかそれ。ネタが似合いませんね相変わらず」
「ひどいなぁ」
「でも…だったらさよならは言わないでおいて」
「そうだね」

『またね』


「酷いじゃないですか!店に置いてきぼりなんて!」
「ごめんごめん。…って何そのチーズケーキは」
「追加注文っス。店員さんの目がキツくて」
「そりゃ悪かったね」
「それで、どうなりました?」
一応、全部終わった。そう伝えた。
ここの会計を済ませながら、私はそう答えた。
…強く思い強く願う、か。


364 :すれ違った記憶と再会 [saga]:2010/11/01(月) 21:42:30.90 ID:7gpPqwAO
おまけ


…ビックリした。
まさか八坂さんがあのループを覚えていたなんて。
でも良かった。ちゃんと永森さんと会えたんだ。写真も渡せたみたいだし。
おっと、白石との約束に遅れそうだけど…まぁいいかな、白石だし。


完…


365 :すれ違った記憶と再会 [saga]:2010/11/01(月) 21:44:57.25 ID:7gpPqwAO
以上です。

最後のおまけはまぁ、一応「白石じゃねえからな」の意味でつけ加えただけです。


…作中でてきたネトゲ関連は気がむいたら書いてみます
366 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/02(火) 21:09:03.91 ID:zP7wSzo0


纏めました。
367 :命の輪を信じて [saga]:2010/11/06(土) 15:23:45.78 ID:em6QG220
>>366
乙です。


投下行きます。
命の輪のシリーズです。
368 :命の輪を信じて [saga]:2010/11/06(土) 15:24:42.53 ID:em6QG220
「過労だと思われます。しばらくは、ゆっくりと休養をとってくださいね」
 机の上のカルテに何かを書き込みながらみゆきがそう言うと、そうじろうは眉間にしわを寄せた。
「締め切りとか色々あるんだけど…」
「その色々の部分に問題があるのでは?少しは、自重してくださいね」
「みゆきちゃん、きっついなー…」
 ため息混じりにそうじろうがそう言うと、みゆきは書く手を止めてそうじろうの方を見た。
「こなたさんから特に厳しくするようにと、言われてますので」
 みゆきの言葉に、そうじろうがもう一度ため息をつく。
「こなた…なにか俺に恨みでも…」
「まさか…そうじろうさんの事を心配しているのですよ。厳しさはその裏返しです」
「だといいんだけどなあ…俺がなんかやらかしたんじゃないかって思えてな」
 苦笑しながらそう言うそうじろうに、みゆきもまた苦笑をかえした。



ー 命の輪を信じて ー



 みゆきの仕事場である診療所のすぐ近くにある喫茶店。みゆきはそこで少し遅い昼食をとっていた。
 本当は弁当でも作って診療所で食べてしまうのが早くていいのだが、肝心の弁当を作る時間が取れずに、いつの間にかこの喫茶店の常連となっていた。
 名物…と言ってもマスターの自称だが…のパスタを食べていると、喫茶店の入口が結構な勢いで開け放たれ、みゆきは思わずそちらの方に眼を向けた。
「…あら」
 そして、店内に入ってきた人物を見て、みゆきは声を上げた。
「こんちは、みゆきさん」
 その人物…軽く手を振りながら近づいてくる泉こなたに、みゆきは会釈を返した。


369 :命の輪を信じて [saga]:2010/11/06(土) 15:25:14.20 ID:em6QG220
「こちらに来るのは珍しいですね。どうかなさいました?」
 こなたが注文するのを見届けてから、みゆきはそう聞いた。
「ん、お父さんどうだったかなって。看護婦さんに聞いたらここに居るって言ってたから」
「疲れがたまっておられたようですね。その他には特に悪いところはないようです」
「…そっか」
 こなたは水を一口飲んでからため息をついた。
「今期は深夜アニメが豊作だからねー」
 今度はそれを聞いたみゆきがため息をついた。
「こなたさんも、自重してくださいね」
 少し強めの口調でみゆきが言うと、こなたは苦笑いを浮かべて頭をかいた。
「そう言えば、締め切りもあるようなことをおっしゃられてましたが、そうじろうさんのお仕事の方はどうなのでしょう?」
 みゆきがそう聞くと、こなたは腕を組んで難しい顔をした。
「最近、また仕事増えてるみたいなんだよね」
「そうですか…わたしは門外漢なのでよく知らないのですが、あまり融通がきかないのでしょうか?」
「そんなことないと思うよ。まだまだぺーぺーのわたしと違って、お父さんは文壇の重鎮だからね。わがままみたいなことも通ると思うよ。でもねー…」
 こなたは言葉を切ってため息をついた。
「…今の仕事のほとんどは、自分から取ってきたものなんだよね」
「そうだったのですか…」
「わたしとダーリンの収入だけでも十分食べていけるのにね…のんびりすりゃいいのに」
「アニメの事もそうですが、習慣化してるのかもしれませんね。自分の中で定着してしまったものは、なかなか変えられませんから」
「そうかもね…みゆきさんもなかなか変えれなかったし」
「なにがでしょうか?」
 みゆきが首をかしげると、こなたは自分を指差した。
「わたしの事、こなたさんって呼べるようになるの」
「ああ…」
 みゆきはそうじろうの主治医をするようになってから、泉家のとの付き合いが深くなり、今までの呼び方ではややこしいからと泉家の面々を名前で呼ぶようにしていた。
「最初は何度もこなたさんに注意されてましたね」
 みゆきが少し懐かしそうにそう言うと、こなたはクスッと笑った。
「みゆきさんに注意するとか滅多にできないからねー…ちょっと調子に乗ってたかもしんないね」
 こなたがそう言うと、みゆきは少し眉根をよせた。
「あ、やっぱ怒った?」
 こなたがそれに気がつきそう言うと、みゆきは慌てて首を横に振った。
「い、いえ、そう言うわけでは…少し昔を思い出しまして」
「昔?…まあ、怒ってないなら良いけど」
 こなたは安心したようにそう言い、アイスティーのストローに口をつけた。


370 :命の輪を信じて [saga]:2010/11/06(土) 15:26:51.62 ID:em6QG220
「良い機会…と言うのは少しおかしいかも知れませんが、一つ聞いてもよろしいですか?」
 食後の紅茶を飲みながらみゆきがそう言うと、こなたは無言でうなずいて見せた。
「あの…こなたさんの家の近くにも医院はあったと思うのですが、どうしてわざわざわたしの所まで?」
 みゆきがそう聞くと、こなたは鼻の頭を軽くかいた。
「迷惑?」
「違います。そう言うのではなくて…」
「わかってるよ」
 こなたはみゆきの言葉を遮ると、コップの中の氷をストローでかきませた。
「みゆきさんは、わたしが世界で一番信じられるお医者さんだからね」
 そしてにこやかな表情でそう言った。
「信じられる…ですか。わたしはまだそこまでだとは…」
「謙遜しなくていいよ…腕がいいってのももちろんあるけど、それ以上になんて言うか…みゆきさんだから信じられるっていうのかな」
「わたしだから…」
 みゆきはこなたの言葉を、自分の中で反芻するかのように何度かうなずいた。
「やっぱ分かりづらいかな」
 こなたが少し困った顔でそう言うと、みゆきは慌てて顔の前で手を振った。
「あ、いえ…その…分かりづらいと言うより、分かりましたって言うと自惚れになってしまうような気が…」
「…だよねー」
 こなたは表情を崩してストローに口をつけたが、みゆきが真剣な表情で自分を見ていることに気がつき、顔を上げた。
「なに?みゆきさん」
「こなたさんは、いつもそうですね…いつもそうやって、わたしの選択肢を奪っていくんです」
「な、なんのこと…?」
 みゆきの言ってることがわからず、こなたは困惑した表情をした。
「わたしを信じるなんて言うから、わたしはそうしなくちゃいけなくなるんです。あなたに出会った、高校の時からずっとそうでした…」
「え、えっと…みゆきさん?」
「…わたしは、そんなこなたさんが嫌いでした」
「…え」
 こなたは唖然とした表情でみゆきを見つめた。自分の知り合いの中で、誰かを嫌うということがもっとも似合わない人。その人物の「嫌い」という感情が自分に向けられていることに、戸惑いを隠せないでいた。
「驚きました?」
 こなたの反応に気を良くしたのか、みゆきは少し笑いながらそう聞いた。
「…そりゃ、ね」
 こなたはうなずいて見せたものの、どう捉えていいかわからずに、みゆきの次の言葉を待つだけだった。
「気づいていないかも知れませんが、あなたはずっと人の選択肢を奪っているんですよ。かがみさんやつかささん達も…もちろん、旦那様も」
「え、ダーリンも」
「はい。これは、この前お会いしたときにご本人からお聞きしましたから。『あいつは、そういうところがずるいんだ』って…」
「…怒ってた?」
「いえ、笑ってました…きっと、わかってきてるんです」
 みゆきはそこで言葉を切って、カップに残っていた紅茶を飲み干した。そして、深く息を吐いた。
「奪われた選択肢の分だけ、幸せになっていることに。わたしもそれに気がついてからは、こなたさんの事を信じられるようになりました」
 こなたはみゆきの話を聞きながら、ほとんど氷水になっていたアイスティーを飲み干して、ため息をついた。
「…わたしは、そんなつもりないんだけどな」
 こなたの言葉に、みゆきがクスリと笑う。
「わかっててやられたら、たまったものじゃありませんよ」
「…だよねえ」
 こなたも、みゆきの言葉にクスリと笑う。なんとなく安心できる感覚に、こなたは少し嬉しくなった…が、みゆきの言葉の中に引っかかるものを感じて、眉根を寄せた。
371 :命の輪を信じて [saga]:2010/11/06(土) 15:27:27.08 ID:em6QG220
「ところでみゆきさん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「はい、なんでしょうか?」
「ダーリンと『この前お会いした』ってなに?わたしそれ知らないんだけど」
 こなたの言葉に、みゆきは頬に冷や汗を垂らして横を向いた。
「え、いや…それはその…」
 そして腕時計をチラッと見ると、勢いよく立ち上がった。
「そ、そろそろ午後の診療時間ですので、し、失礼しますね!」
 そのまま店から出て行こうとするみゆきに、マスターが声をかける。
「あ、ちょっと先生、お代は…」
「ツケておいてください!」
 みゆきはマスターにそう言い放って、店から出て行った。残されたこなたとマスターが、どちらともなく顔を見合わせる。
「…ツケ、きくの?」
「いえ、ききませんけど。でもまあ、先生にはお世話になってますから…」
 こなたはため息をつくと、鞄を持って席を立った。
「じゃあ、わたしのも先生にツケといてよ」
 そして、そうマスターに言うと、返事を聞かずに店を出た。


 こなたは駐車場に停めてあった自分の車の前で大きく伸びをすると、みゆきの診療所の方を見た。
「ほんと、嘘やごまかしが下手な人だねえ…ま、そういうところが信じられるんだけど」
 そして、車に乗り込みエンジンをかけながら、今回の件を夫にどう問い詰めようかと考え始めた。



― おわり ―
372 :命の輪を信じて [saga]:2010/11/06(土) 15:28:16.44 ID:em6QG220
以上です。

そういえば、このシリーズでメイン四人はつかさの話だけやってないなー。
373 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/06(土) 21:11:08.11 ID:7U5emYY0
>>372 乙です。
このシリーズではといいましたが。命の輪のシリーズ以外にも作品を作っているのでしょうか?。差し支えなければ教えてください。

つかさの話がでたのでつかさについて書きます。
自分はSSを書く前はかがみが好きだった。当初かがみを中心にした物語が大半を占めると思っていた。
しかし気付いてみればつかさメインが殆どになってしまった。つかさ以外のキャラがメインでもその相手はつかさだったりする。
そして今ではかがみよりつかさの方が好きになった。
つかさはキャラとして扱いやすいから?
それだけじゃないような気がする。不思議な魅力がありますねつかさは。

長文失礼しました。
374 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/06(土) 23:52:14.39 ID:7U5emYY0
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ここまでまとめた

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375 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/07(日) 12:58:29.95 ID:pVXgc2SO
>>373
すいません。
質より量って感じで、とにかく数を書いてるんで、どれが自分のかはちと書ききれませんね。
376 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/07(日) 16:33:23.82 ID:M0UDxoU0
>>375
どうもです。他にも書いているのだけ分ればいいです。

ところで『命の輪』なんですがシリーズ化しているので
まとめサイトのカテゴリーをシリーズ物に移動しようと思うのですがどうでしょうか?。
反対意見がなければ次のまとめの時にでも移動したいと思います。
377 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/07(日) 16:43:54.11 ID:pVXgc2SO
>>376
まとめに関しては、やっていただいてるという事で、そちらの都合のいいようにしてください
378 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/07(日) 23:21:20.19 ID:mj3f9QAO
黒井先生、千葉ロッテ優勝おめでとうございまーす

かく言う俺も地元なのだけども
379 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/09(火) 21:26:50.96 ID:j64engE0
>>377
カテゴリーの移動はやめにしてシリーズ物に『命の輪』を加えました。
380 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/09(火) 22:31:36.01 ID:MEYGlESO
>>379
乙です。
381 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/11(木) 21:54:33.35 ID:Y0qJ0Gw0
今作ってるSSが行き詰ってしまった。
またお題提供をお願いしたい。
今回はキャラではなくテーマとかキーワードでよろしくです。
382 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/12(金) 23:58:00.71 ID:rPDTw0o0
>>381
今回は反応なかったかな。
自分の作品作りに勤します。

お題は受け付けているので書き込んでください。
383 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/11/13(土) 07:16:42.12 ID:yudLUYAO
>>382

キーワード「ラーメン」
384 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/13(土) 11:59:19.38 ID:1/elhwM0
>>382
時計とかどうでしょう?
385 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/13(土) 12:59:44.48 ID:GxhsCaI0
*381じゃないけど、お題「ラーメン」に便乗させていただきます。


ラーメン屋台にて

 ラーメンを音も立てずに上品に食べるその姿は、ここが屋台であることを忘れそうになるほどだった。
 それを横目に、自分はビール片手にギョーザをつまむ。
「いつも思うんだが、よくすすらずに食えるもんだな」
「小さなころからの癖でして」
 そんな会話は、過去何度となく繰り返してきたものだった。
 本来なら、お抱えの料理人が作ったフランス料理なんかをナイフとフォークで食べてる方が似合ってるようなお嬢様だ、こいつは。
 それをこんなところに連れてこれるのは、親友の特権である。
 何の得があるのかと問われれば答えもないが、それが特権であることには違いない。少なくても、こいつに対して多少なりとも下心があるだろう同僚男性教諭陣(野郎ども)がうらやむに値するほどには。
 ラーメンを食べ終え、まるで茶の湯のように上品に日本酒に口をつける。
 どう考えても、こいつにビールは似合わんよな──つくづく、そう思う。和なら日本酒、洋ならワインだ。それ以外は似合わない。
 見かけによらず、こいつは酒はいくらでもいける方だ。そんなに飲むことはめったにないというだけで。そんな事実を知ってるのも親友の特権である。
 財布を取り出し、屋台のオヤジに金を払う。今日は、自分のおごりだ。
「ご馳走様でした」
 こいつに丁寧に礼を言われると、どう返していいものやらも分からず、つい黙ってしまう。昔からそうだった。
 友情は利害得失ではかるものではないとはいえ、どう考えても自分の方が受け取っているものは多いのだから。


以上
386 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/13(土) 17:47:51.63 ID:hxljFTs0
>>385
乙です。これはひかるとふゆき?。でいいのかな?。

>>381>>382は同じ人です。
お題ありがとうございます。早速ですが投下します2レス使用します。
387 :誘惑  1 [saga]:2010/11/13(土) 17:51:20.18 ID:hxljFTs0
 気になっていた。うんん、最初はどうでも良かった。でも……気になっていた。それに気が付いたのは高校を卒業する辺りだった。
どうしようもない衝動。抑えきれなかった。気持ちが高ぶる。だめで元々でこなたを誘った。
こなた「私はいいけど……かがみ、後悔はしないでよね」
後悔……後に悔いる事。そんなのは今の私には無意味。そう、私はもう決めたのだから。
……
……
 あれから数ヶ月……何故、あんな事をしてしまったのか。自分の部屋のベッドで泣きじゃくる私が居た。
『後悔』……あの時行ったこなたの言葉が重く圧し掛かった。浅はかだった。軽率だった。色々な言葉が思い浮かんでは消える。
つかさ「お姉ちゃん、どうして……どうして止めなかったの、こなちゃんを巻き込むなんて酷いよ……」
気が付くと私の部屋につかさが居た。怒っている……どうやらつかさにばれてしまったようだ。私は黙ってつかさを見た。あの優しいつかさとは思えないほどの形相だった。
私の涙に怯むことなく怒りの言葉をぶつけてきた。私の欲望にこなたを巻き込んだ……それは認める。でも……それは違う。傷ついたのは私だけ。
かがみ「つかさ、こなたは変っていない……変ったのは私だけ……だから、いいでしょ……つかさには関係ないことなんだから」
つかさ「良くない…こんなの良くないよ……今のお姉ちゃん見ていられないよ……苦しんでいるお姉ちゃんなんか見たくないよ……」
つかさが泣き出した。こんな私の為に涙をながしてくれた。正直嬉しかった。だけど素直になれなかった。
その時、私の携帯が鳴り出した。こんな時間にかかってくるのはこなたくらいだ。携帯に出ようとするとつかさがひったくる様に私の携帯を取り上げた。
つかさ「もしもし……うんん間違ってないよお姉ちゃんの携帯だよ……もうお姉ちゃん寝ちゃったんだよ……そうそう……また明日にしてね……おやすみー」

 短い会話だった。私とこなたってその程度の仲だったのか。少しさみしかった。

携帯を切ると私に返した。
つかさ「……お姉ちゃん、まだ止めてなかったみたいだね……もうこなちゃんと会うのは無しだよ……」
さっきよりも口調が激しい。さすがの私も黙って居られなかった。
かがみ「何故よ、今日ので最後のはずだったのに……最後……」
つかさ「その台詞……もう何度も聞いたよ……」
かがみ「こなたが良くて私はダメなのよ……納得できないわ、そんなの不公平よ……」
つかさ「それは……お姉ちゃん、自分自身が一番知っているはずだよ、よく胸に手を当てて考えて」
するとつかさはおもむろに私の机の前に移動し机の引き出しを物色しだした。
かがみ「何するのよ、人の物を勝手に……」
私はベッドから起き上がりつかさを止めようとしたがつかさの動きが止まった。もう目当てのものは探し出してしまったようだ。
つかさ「お姉ちゃん、こなちゃんと同じなんて言わせないよ、違うでしょ?」
かがみ「違うって……何が違うの、分らないわ」
つかさ「こなちゃんから聞いたよ、いつもこなちゃんとラーメン屋で特盛注文してるんでしょ……それで帰ってきてこれだもん……信じられないよ」
つかさは私の机の引き出しからレジ袋を取り出した。いつも手元にないと気になるので1ダースほど買ってある。
かがみ「それは……○ッキー、勉強していると口が寂しくなるから……」
つかさ「高校を卒業する時……私と約束したよね……ダイエットするって……なんでラーメンなんか食べだしたの?」
つかさは呆れ顔だった。
388 :誘惑  2 [saga]:2010/11/13(土) 17:52:27.56 ID:hxljFTs0
かがみ「……卒業近くになって駅前に店がオープンするって……気になっていた……卒業式の日が開店日だった……どうせ不味いと思って……こなたを誘ったんだ……
     ところが私好みの味だった……スープ、麺、具、どれを取っても申し分のない味、病み付きになのよ……もう一度でいい、あの味を……」
つかさ「はいはい、そこまでだよ、もうラーメンの事は忘れてね、それとこのお菓子は没収するから……それから朝は当分納豆だからね……それとお昼は私が作ったお弁当以外
     は食べちゃダメだから……飲み物もお茶だけだよ……あと5キロも減らさないんだから自覚してよね……」
つかさはレジ袋を持って私の部屋を出て行った。

 それなら今度みゆきを誘ってみるかな……
突然部屋のドアが開いた。
つかさ「言い忘れたけどゆきちゃんを誘っても無駄だからね、もう事情は話してあるから……」
吐き捨てるように言うとまた部屋を出て行った。


 何故、あの時こなたを誘ったんだろう。なぜ……あの店に行かなければ……後悔するばかりだった。

 
 あれから二日目、お昼になると流石に空腹が限界になった。つかさに渡された小さな弁当箱……もうダイエットなんかどうでもいい。今日は帰りにあの店のラーメンをガッツリ
食べるんだから。そう心に決めていた。いままでこなたを誘っていたのは女性一人で店に入るのが恥ずかしかっただけ……とりあえず空腹を紛らわすか。

 弁当のを開いた……刻んだ海苔で『ガンバレ』と書いてあった……程なく携帯にメールの着信が来た。
『かがみ、がんばれー』とこなたからだった。続けて『かがみさん、ファイトです』とみゆきからも……

 目頭が熱くなった。

 帰ったらジョギングをやるかな。


389 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/11/13(土) 17:56:14.07 ID:hxljFTs0
以上です。
>>383のキーワード『ラーメン』で作ってみました。

>>384の『時計』は奥が深そうですね作ってみたいですが時間がかかりそうです。年内には無理そうかな。挑戦したいと思います。
390 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/11/13(土) 21:06:19.53 ID:1/elhwM0
>>387
深刻な話と思いきやなんと言うオチ
面白かったです
391 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/14(日) 08:23:35.22 ID:hz9c7xA0
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ここまでまとめた

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>>890 どうもです
392 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/16(火) 07:03:54.59 ID:13IUn0Eo
>>389
乙でした
一体何があったのかと思ったw
393 : ◆99/tzfnSzY [sage]:2010/11/20(土) 10:12:12.08 ID:k2phIG2o
BD-BOX出るらしいけど特に盛り上がったりしてないんだな
394 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/20(土) 20:58:54.35 ID:zGiLykg0
なにBDだと。
PCをBD化しないといかんなw
395 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/20(土) 22:59:42.83 ID:n.AvuUSO
DVDありゃ十分だしなあ
396 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/21(日) 17:40:13.93 ID:2sAqLgAO
>>365です。
そこで書いた「ネトゲ関連」ネタを勢いで作ったので投下します。

タイトルは『ネトゲ世界、再び』


397 :ネトゲ世界、再び [saga]:2010/11/21(日) 17:41:19.64 ID:2sAqLgAO

どうしてこうなったのか。どうしてこうなった、どうしてこうなった、どうしてこうなった、どうしてこうなった…って壊れてる場合じゃない!

…けど本当に、

「どうしてこうなったぁ〜!!」
「イズミ、サワいでもカイケツしませんよ」
「うぅ…わかってるわよパーさん」

話は少し前に遡る。…『さかのぼる』って『遡る』って漢字になるんだ、知らなかった。
今年の学園祭の出し物について、放課後に話を続けていた時だった。
「去年は確か…ネットカフェだったっけ」
「うん。ひよりがコスプレ衣装も持ち出してたけど」
「あれ、私だっけ?泉先輩だったような」
…思えばそれが今回の発端だった。
「じゃあ、今年もコスプレするの?」
「イズミもヤリますか?」
「え゛。いや私は」
「私もコスプレはちょっと…」
「そうよね小早川さん。コスプレはちょっとね」
いくら学園祭ではめが外せるからってそれはちょっと。
「あ、でもあのリスみたいだったやつはもう一回着てみたいかな」
「?…あぁ、あの可愛いヒーラーの衣装ね」
「うん。みなみちゃんのアーチャーの衣装かっこよかったし」
…岩崎さん、Fateのコスプレしたの?しかもアーチャー?…いやいや、有り得ないから。いくらなんでもあの格好は女性としてどうかと。真名がウィリアムテルの方や金ぴかとかでも…
398 :ネトゲ世界、再び [saga]:2010/11/21(日) 17:43:37.92 ID:2sAqLgAO
「…二人共、そんな衣装何時着たの?確かあの時用意したのって、ゆーちゃんが天枷美夏、みなみちゃんが綾波レイだったはずだけど」
…いや金ぴかなら鎧着てるわけだしでもレザーみたいな格好とか少年ギルの…いやそれはないわね。少年ギルは。
「ううん。あれは『ラッキースターユニバース』っていうゲームのだから」
「あのネトゲ?バイトかなんかでコスプレしてたの?」
「…引きずり込まれたの」
「What?ミナミ、ソレはサイマゾーンですカ?」
「そこはマクー空間よパーさん!戦隊じゃなくて、せめてガオームゾーンにしなきゃ!」
なんてこと。『〜引きずり込め』なら宇宙刑事という伝統をパーさんが知らなかったなんて。これは問題だわ。というかなんで災魔ゾーンは知ってるわけ?
「えっと…委員長、何の話してるかわかってる?」
「え?引きずり込まれたのならマクー空間って返しのはな…し…じゃないよね…」
やってしまったぁぁぁ!


…暴走していた私の思考が治まり、小早川さんと岩崎さんの話をまとめるとこうだった。
399 :ネトゲ世界、再び [saga]:2010/11/21(日) 17:45:46.41 ID:2sAqLgAO
学園祭の準備としてネットカフェの席の配置やらをしていて、トラブルが起きた。
PCがネットに繋がらなかったり、うまく連動しなかったりとか。何回かチェックしたけど原因がさっぱりわからない。困った小早川さん達は従姉妹を含めた(岩崎さんのご近所さんもいたらしい)三年生の知り合いに救援を
「…委員長」
「何、田村さん」
「長い。ゆーちゃんの言ったままでまとまってない。要するに学園祭の準備を先輩達に協力してもらってた時にそのゲームに引きずり込まれて衣装を着たってことだから」
………馬鹿じゃないわよ。だってこんな話聞かされたら、そのまま言いたくなるものじゃない。
どう考えても夢物語。しかも続きが、『魔王に頼まれてチーターをやっつけました』だもの。
「あの時は、確かお姉ちゃん達以外の先輩もいたよね」
「うん…誰か思い出せないけど、男の先輩だった」
でも言っているのがこの二人なのが問題よね。田村さんが言ってるなら妄想乙ですませるんだけれど。
「パーさん、どう思う?」
「ワタシにイわれてモ…」
「そうなんだけど、ほら」
田村さん、先輩が男と聞いて何か妄想はいったみたいだし。話をしてる二人には言えないし。
「そのゲームのナイヨウとハナシとがアうカショがアるかワカればハヤいのですが…」
「それだ。確かお兄ちゃんが『ラッキースターユニバース』を持ってるからそれで」
「イズミ…ネットのヒョウバンシらないノですカ?」
「え?」
「あのゲーム、発売してから一月後にゲームバランスが滅茶苦茶になったってクソゲー扱い。新しくやろうとする人は必ず後悔する。そんな話、聞いたことない?」
何時復活したの田村さん。聞いた事は…あった。あれってそのゲームなんだ。お兄ちゃんもそれでやめたんだっけ。
…一月後とんでもない事態が発生。魔王が最弱モンスターエリアに出没、でも必ず逃げる。
魔王の城は妙に強すぎるPKの巣窟…というかチート以外何者でもない連中の基地。しかも負かした相手を恐喝してチート薬販売。しかも現金。
会社も対策はしているが、本命がどうにも捕まらずにユーザーだけが離れていった…だったろうか。
急に小早川さん達の顔色が変わった。何か「チュンが…」とか「またあの魔王さん…」とか呟いているみたいだけど。嫌な予感。まるで何か決意したみたいな顔をした…。

400 :ネトゲ世界、再び [saga]:2010/11/21(日) 17:47:36.13 ID:2sAqLgAO

そんなこんなで現在、『ラッキースターユニバース』プレイ中。持っているなんて伝えなきゃ良かった。
「まさか、ユタカがやろうとイいダすとは…」
小早川さんと岩崎さんが二人して「やろう」と言い出して、私と田村さんが二人協力している状態になっている。
パーさんはPCがないので不参加に近い。
まさか噂通りに雑魚モンスターエリアに魔王に居て、小早川さんの説得に応じてしまうとは…本当に魔王か?と疑ってしまった。
今、裏ルートから【チュン】の城に潜入中。いつのゲームか突っ込みたくなるグラフィックなのはさておき、
魔王『カノジョから連絡あったで。遅れてくるらしいわ』
ユタカ『あの、一体誰なんですか?その女の人って』
魔王『自分らと同じで、大体の把握しとって協力申し出た奴や』
ミナミ『男性じゃないんですよね』
ヒヨリン『なんで男かどうかにこだわってるんだろうね?』
私に聞かないで。っと。

…しかし、小早川さん達以外にこんな状況を把握していて、かつ協力するような人ねぇ。最初は小早川さん達の言う先輩方かと思ったけど、どうも違うらしい。その人達は別に忙しいらしく(大学祭に備えてるそうだ)パーさんがうちに遊びに来ているのも、会議の邪魔したくないからだそうな。一度会ってみたいのだけど、機会がね…。
「イズミ!モニター!」
と、いけない。何かあったのかな。
イズミ『ごめんボゥッとしてて画面見てなかった。何かあったの?』
魔王『え…』
ミナミ『…』
ユタカ『…』
ヒヨリン『…イズミさん』
「チュンというプレイヤー、マチブセしてたの、見てなかったデスねやっぱり」
「嘘!」
チュン『…お前、イい根性してるR。ここまでコケにしたのはお前が初めてR』
イズミ『…あ、ありがとう』
チュン『誉めてないR!今すぐ過去ログ読み直して出直すR!』
イズミ『え、見逃してくれるの?』
チュン『んな訳ないR!』
うわっなんかすごく怒ってる。
401 :ネトゲ世界、再び [saga]:2010/11/21(日) 17:49:07.48 ID:2sAqLgAO
「サッキまでチュンがどうしてルートにキづいたかとかチートのクロウバナシとかカイインカンユウとかしてたのに、イズミのヒトコトでバがシラケたヨ…」
「あ、あれよ。悪人の発言なんて聞き流そうと思って」
ヒヨリン『イズミさん、悪人の台詞なんて無視だとか考えてない?』
イズミ『なんでわかったの?』
チュン『ほほぅ…死ねR!』
両手を合わせて錬成陣のつもり?
イズミ『なんか痛い厨二患者みたい。語尾のRとか邪気眼かな』
ミナミ『厨二?』
魔王『邪気眼?』
ヒヨリン『言っちゃったよ』
チュン『だだだだた誰が厨二Rか!!』
イズミ『貴女』
ユタカ『駄目だよイズミさん、事実は人を傷つけるんだよ』
チュン『貴様!!』
ヤマトラマン『何をしているの貴女達は』
ってまた誰か増えた。
イズミ『誰?…しかも何その鎧姿』
ヤマトラマン『そこの魔王の相談相手よ。鎧は気にしないで』
ヒヨリン『そのHN…もしかして永もr…さん?』
ヤマトラマン『そうだけれど。なんで打ち込み途中でやめたの』
イズミ『本名は出さないのが暗黙のルールだから。もしかして初心者?』
チュン『初心者は引っ込むR。ってその鎧は…もしや』
魔王『内〇まもるデザインの限定鎧アイテムやで。確か「ファイタスの鎧」や』
ヒヨリン『嘘!?』
ヤマトラマン『ソフトからしてこうにもらっただけで、なんとなく気に入ったから着けているのだけど。レアなの?』
何をしているの〇山まもる。ならあの鎧はブラックホールにも耐えられる訳?
ヤマトラマン『時にそちらでしているの』
チュン『!まさか!』
もう遅い。パーさんが待機しているホントの理由は通報にあるんだから。
チュン『く』
ヤマトラマン『逃がさないわよ』
ユタカ『あの、どうしてわかってたんですか?』
ヤマトラマン『貴女達と似た理由。ユタカさんにミナミさん』
ミナミ『…だから手を貸してくれるんですか?でも貴女は』
ヤマトラマン『私はいなかったけど知る事のできた位置だったから。同じ気持ちならわかるはず。今、一緒に戦わないなんてあり得ない』
402 :ネトゲ世界、再び [saga]:2010/11/21(日) 17:51:46.54 ID:2sAqLgAO
…戦わないけどね。違反者共の首謀者をチート使用通報するだけだし。
チュン『こうなりゃGMをPKするしかないR!』
ヤマトラマン『スパイラルビーム』
鎧の腰についていた西洋剣をかまえたヤマトラマンさんがそう言うと、剣先から光線が発射された。
…って光線出たのその剣!斬らないの!あ、斬りかかった。良かった。
ヤマトラマン『またつまらぬものを斬ってしまったわ』



後日談と言うか。
通報した結果チュンはお縄となり、ゲーム世界は平和を取り戻した…訳じゃない。売ったチート薬が回収出来たのでもないので、しばらくは混沌だそうだ。
ヤマトラマンさんは以後ゲームに現れていない。彼女が誰なのかを知っているのは田村さんだけだが、彼女は今日、先輩に呼び出されたため話は聞けず。
そして魔王は…

魔王『ハッハッハッ、もっと鍛えてこんかい!』

今までの鬱憤ばらしのごとく、城に戻らず、今日もプレイヤーをいじめまくっていた。

完…でいいのかしら?


403 :ネトゲ世界、再び [saga]:2010/11/21(日) 17:56:27.87 ID:2sAqLgAO
以上です。


何かいずみが変なキャラに……オチはゲームと一緒だし。

ファイタスのは趣味で、それ以上でもそれ以下でもないです。
メロスの方が好きだけど
404 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/21(日) 18:18:05.04 ID:HoJ2ht60
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ここまでまとめた

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405 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/24(水) 00:36:30.09 ID:6i4JgwSO
−てもちぶたさ−

かがみ「みゆきとつかさ、遅いわね」
こなた「そうだねー」
かがみ「もっと周りになんかあるところで待ち合わせたらよかったわね。てもちぶたさになっちゃうわ」
こなた「そうだねー」
かがみ「…こなた」
こなた「なに?」
かがみ「わたしを掴んでるその手はなに?」
こなた「これがほんとのてもちぶたさん…なんちゃって」
かがみ「………」
こなた「………」
かがみ「それはわたしへの宣戦布告と判断していいのかしら?」
こなた「いや、その…怖い、怖いって…かがみその顔マジ怖い」
406 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/26(金) 17:35:25.58 ID:vXnUf2AO
こう「誕生日おめでとう!はいプレゼント!」
やまと「ありがと…でもしっかり遅刻はするのね」
こう「あは、あははは…」
やまと「まぁいいわ。去年みたいに、プレゼントの買い物につれ回されてお金貸す事になったあげく布一枚よりマシだもの」
こう「布ってひどいなぁ。あれからずっとしてくれてるのに、その髪結んでるリボン。気に入ってくれたんでしょ?」
やまと「別に、たまたまよ。校則とかひっかからない柄だし手元に置きやすいからいつも使っちゃうだけであって、気に入ってるわけじゃないわ。最近色落ちしてきてるし」
こう「んじゃカラオケ行こっか」

やまと誕生日おめでとう!
407 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/29(月) 00:23:26.70 ID:dTysdGE0
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ここまでまとめた

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>>405
こなたは確信犯っぽいなw

>>406
やまとはゲームのキャラだっけ? 本編であまり出てこないのでキャラとして使ったこと無い
408 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/29(月) 06:48:54.05 ID:RCLG.tko
>>405
正しくは手持無沙汰(ぶさた)だよね?
かがみも言い間違いかw

>>406
なんだかんだでずっと使ってるやまとカワイイ
409 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/03(金) 12:30:15.08 ID:LwsTlQSO
−動物−

ゆたか「…でね、みんなを動物に例えたらどうなのかなって話になったの」
いずみ「へー。どんな感じになったの?」
ゆたか「えーっと、こなたお姉ちゃんが狐で、かがみ先輩が兎で、つかさ先輩が犬で、わたしがリスで、みなみちゃんが鷹で…」
ひより「ふーむ、結構いい線いってるような…」
ゆたか「…高良先輩がう…え、えっと羊、だったかな…」
いずみ「…う?」
ひより「…もしかして牛って言おうと…」
パティ「ホルスタインですネ」
みなみ「………」
ゆたか「みなみちゃん?どうしたの?」
みなみ「ううん、なんでもない…ゆたか、今日ちょっと用事があるから先に帰ってて」
ゆたか「うん…」



つかさ「お姉ちゃん、何か視線を感じるんだけど…」
かがみ「き、気のせいじゃないかな…(なんでみなみちゃんがデジカメ持って後をつけてきてるのー!?)」
410 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/05(日) 16:36:28.42 ID:S6ltIak0



ここまでまとめた。


>>409乙です。最後の意味がいまいち分からなかった。読解力のない私に解説してくれると助かります。
411 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/05(日) 17:28:57.38 ID:HiTyS6AO
鷹に例えられたから、兎のかがみをつけ回してるんじゃね?
412 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/05(日) 19:42:29.06 ID:bAtBEMSO
説明不足でしたね。
七巻かなんかでチェリーが撮影しようとすると逃げるようになったってのがあったので、犬のつかさを撮影しようとしてるんです。
413 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/05(日) 23:48:42.38 ID:S6ltIak0
>>411-412
ありがとうございますわかりました。
414 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage_saga]:2010/12/08(水) 22:42:13.29 ID:FlACUx20
とうとうSpeedが3切った・・・
415 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/09(木) 20:41:25.00 ID:P/1pOwE0
Speedって何?
416 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/09(木) 20:57:09.91 ID:P/1pOwE0
↓の数のことか。確かに少ないね。今長編書いてるけどもう少し時間かかるし。焦らず気長に行きましょう
417 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/09(木) 21:37:16.36 ID:Ch6DnjE0
みき「やぁ、僕ミッキー」
418 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/09(木) 22:20:28.19 ID:AsDUZkSO
−一狩りいこうぜ−

こなた「MHP3買ったよー!さあ、早速みんなで狩りに行こう!」
かがみ「…えーっと」
つかさ「…その」
みゆき「…わ、わたしたちはまだ…」
こなた「え、もしかして買えなかった?」
かがみ「うん…大学から帰る時に寄ったんだけど、売り切れてて…正直甘く見てたわ」
こなた「もー。だから早めに予約しとこうって言ったのにー」
つかさ「ごめんね、こなちゃん」
みゆき「予約を入れておきましたから、次回入荷時には買えると思いますので…」
こなた「しょうがないなあ…」



こなた「うーんどうしようかなあ…楽しみにしてたタイトルだし先にやっとこうかな…いや、自分だけいい装備とか面白くないし…いや、みんなとやるときに新しいキャラ作ればいいか…ああでも初めてのモンスはみんなと狩りたいし…いやでもちょっとさわりだけでも…ああ、だめだだめだ。もうちょっと、あとちょっととか言いながら延々やっちゃうに決まってる…」

こなた「うぉぉぉぉぉ!ジェラシー!」
ゆたか「お姉ちゃん、それジレンマじゃないかな…」



モンスターを狩るお仕事が忙しくてSSを書いてる暇がない(キリッ
419 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/12(日) 18:26:47.26 ID:whqkeD60
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ここまでまとめた

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>>418
ゲームもほどほどにSSを書いてくださいw
420 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/17(金) 23:22:50.24 ID:8sJ1r760
投下します
24レスくらい使います。
タイトルから分るようにつかさ以外オリキャラです。興味のない方はスルーで。
421 :つかさの一人旅  1 [saga]:2010/12/17(金) 23:27:02.37 ID:8sJ1r760
 二十歳を過ぎた頃、ふと一人で旅にでることにした。目的は特になかった。二十歳になって何か新しい発見が欲しかったかもしれない。それとも大人になって独りで何かを
したかったのかもしれない。いや、そんなのはどうでもいい。勝手気ままに気の向くまま。何処に行こうかな……っと言ってる間にもうトラブルの発生。此処はどこだろう?

 早速道に迷ってしまった。駅を降りてから地図で位置を確認すればよかった。しかしもう遅かった。地図を広げても現在地が分らないから意味がない。そうだ携帯のGPS
機能を使って……どうやって操作するんだっけ。こなちゃんに一回教えてもらったけど……忘れた。やっぱり車で行けばよかたかな。車のナビなら操作は分らなくても
現在地は分るから何とかなる。でも家族に猛反対されたんだった。特にお姉ちゃんが……そんなに私の運転下手かな……。
初めての土地。人里離れた田舎道。人通りも疎ら。来た道を戻ろうにも同じような景色なのでどう行ったかも分らない。途方に暮れるしかなかった。
向こうから人が来た。もうこなったら聞くしかない。服装からして地元の人っぽかった。
つかさ「すみません……道に迷ってしまったのですが……ここは何処ですか?」
私は地図帳を開いて見せた。
男「……見てる所全然違うよ……」
男の人は地図帳を捲り始めた。
男「……あった、今丁度ここの交差点に居るよ」
男の人は私に地図を見せた。彼の指差す地点を確認する。すると男の人は私をじっと見ていた。
男「もしかして旅行?」
つかさ「はい」
男「……こんな所に旅人がくるなんて、あるのは寂れた温泉くらいなもんだ、何か目当てでも?」
つかさ「……特に……ありません」
男「まさか家出じゃないだろうね」
つかさ「……家出するような歳ではないのですが……」
男「これは失礼した、それじゃ旅行を楽しんで……」
つかさ「ありがとうございました」
お礼を言って男の人と別れた。

 家出なんて。私は子供に見られたのだろうか。リボンを付けているから。それとも童顔だから。 さすがに子供に見られるのはあまり嬉しくない。でも道を教えてくれたし、
気を取り直して……。と地図を見て何処に行こうか探してみたがめぼしい所が見当たらない。あの男の人が言うようにこの辺りは観光地としてはあまりよくなさそう。
勝手気ままなんて言ってたけど目的地くらいは下調べするべきだった。駅に戻って目的地を探すかな。私は地図を見ながら駅の方向に向かった。
来た道とは違うのかな、何か雰囲気が違う。地図を確認した。確かに駅の方に向かっているようだ。バス停があったのですぐに確認出来た。駅まで二十分くらいかかりそう。

 そのバス停の名前を見て立ち止まった。『神社前』と書かれていたからだ。周りを見回した。するとバス停から少し先に鳥居があるのを見つけた。人一人がやっと潜れるくらいの
大きさの鳥居だった。私は鳥居に近づいた。鳥居の先は階段になっている。階段といってもちゃんとしたものじゃなく土がむき出しになっているお粗末なものだった。
何を祭ってるのかな。神社の娘なのか興味がわいてきた。入り口には神社の名前とか由来を書いたものは置いてなかった。それならば実際に見に行くしかない。

 神社を見に行くといったが何だろうこの階段は……もう百段以上は上がっている。息も切れてしまった。こんなに高いとは思わなかった。思わず天を仰いだ。
入り口にあったのと同じ鳥居が遠くに見えた。あれが頂上かも。今居るところが丁度中間地点くらいかな。ちょっと疲れてきた。だけどここまで来て引き返すのも勿体無い。
ペースを落としてゆっくりと休みながら昇った。

 やっとの事で鳥居にたどり着いた。もう足がガクガクする。鳥居を潜って……そういえば鳥居って真ん中を通っちゃいけなかった。真ん中は神様の通り道。でもこの鳥居は狭い
から端は通れないや。『ごめんなさい』と心で言いながら鳥居を潜った。

 そこには本堂と呼べるものが無かった。手水舎もない。災害か何かで壊れちゃったのかな。あるのは木が無造作に生えているだけだった。うちの神社とは大違い。
修復とかしないのかな。これじゃ御参りも出来ないよね。こんなに疲れて昇ったのにがっかりだった。もうここに居る意味はない。振り返って階段の方を向いた。
「うわー」
思わず声を上げてしまった。今まで昇ってきた階段が全て見下ろせた。こんなに昇ってきたんだ。顔を上げるとそこに大パノラマが広がっていた。この町が一望できる。
戻ろうとしていた駅も見えた。電車が模型のように見える。駅の近くは住宅街。その外は田園地帯が広がっていた。しばらくその景色を見入っていた。
422 :つかさの一人旅  2 [saga]:2010/12/17(金) 23:32:24.24 ID:8sJ1r760

 この町を一望できる所に神社か。そう考えるとここに神社をつくったのは分るような気がした。まだ階段を昇った疲れが取れていない。散策してみるかな。
階段を降りるのをやめて神社の奥に入った。獣道のような道を進んだ。木々に囲まれてしまった。これじゃ林や森に居るみたい……。そういえば本堂の跡すらない。
これってもしかして最初から建物なんか造ってなかったのかな。
するとそよ風と共になんとも言えない香りが漂ってきた。土の香り?木の香り?都会や街じゃ嗅げない匂い。うちの神社でもこんな香りはなかった。なんだか妙に落ち着く。
そよ風に木々の小枝が小刻みにかさかさと揺らいでいる。そこから日の光が漏れて差し込んできてキラキラと光ってる……木洩れ日っていうのかな。なんて幻想的なんだろう。
妖精でも出てきそうな風景だった。こんな所に何かを建てたら……そうか分った。この神社に祀られているのはこの山の自然そのものなんだ。この木、一本一本、足元の草、
そしてこの香りも全て……ここの神社はうちの神社に無いものがある。人がつくれないもの。そんな気がした。

 いつの間にか疲れが取れている。それと同時にお腹も減ってきた。丁度いいやここでお昼にしちゃおう。
丁度この地の真ん中くらいに丁度いい石があったのでそこに腰を下ろしお弁当を広げた。こういった自然の中でお昼を食べるのは小学生以来かな。これならこなちゃん達も
一緒に……違う。これは一人旅。皆と一緒じゃ普段と変らないよ、一人で居るからこそ分る事だってあるはず。

 幻想的な景色を見ながらの食事、ついつい見とれて食べるのを忘れてしまうくらいだった。一口、二口くらい食べたくらいか、何か視線を感じる。誰かに見られているような
気がしてならない。後ろを振り向いたり周りを見回したりしたけど人の居るような気配はなかった。再び食べようとした時だった。ガサガサと茂みから音が聞こえた。
私は音のする茂みを見た。犬?野犬にしては少し小さい。すぐに茂みに隠れてしまった。また食べようとするとガサガサと茂みが動いた。私のお弁当に興味があるのかな。
今度はゆっくりと茂みの方を見た。
つかさ「かわいいー」
思わず叫んだ。隠れたけどすぐに顔だけ出してこっちを見ている。良く見ると顔が細長い。犬じゃない、狐だ。狐を生で見るのは初めてだった。さすが田舎まで来た甲斐がある。

 狐は私を見ている。お弁当が欲しいのかな。そういえばお弁当の中身は稲荷寿司だった。狐は油揚げが好きだって聞いたけど本当なのかな。
試しに稲荷寿司を箸で掴み自分の口元に運んでみた。狐は茂みから身を半分出して来た。やっぱりこの狐は稲荷寿司が欲しいみたい。稲荷寿司を箸から手に持ち替えて
腕を狐に向けた。
つかさ「欲しいんでしょ、あげるよー」
狐は私と目線が合うとまた茂みの奥に隠れてしまった。すごい警戒心だな。そうか私が居るからダメなんだな。私は立ち上がり階段の方に戻った。
振り返り暫くするとさっきの狐が私の座っていた石の所までやってきた。しきりに石の辺りを行ったり来たり、匂いを嗅いだりしていた。そして私がまだ階段を降りていない
のに気付くとまた茂みの奥に戻ってしまった。やっぱり野生の動物を餌付けするのは止めた方がいいのかな。折角なので稲荷寿司を一個さっき座っていた石の上に置いた。
つかさ「もう邪魔しないから」
茂みが動かない。もう諦めて帰っちゃったかな。でもこうやって置いておけばいつかは食べてくれるかも。さて私もさっさと食べよう。
戻ってお弁当箱を見て驚いた。中身が空っぽになっていた。そんな……私はまだ数口しか食べていないのに……まさか。私は走ってさっきの石の所に戻った。
すると狐が石の上に置いてあった稲荷寿司をくわえていた。顔にはご飯粒が付いている。やられた。
つかさ「私のお弁当返してー」
狐は暫く私を見ると走って茂みの中に入って行った。あの狐は最初から私のお弁当が目当てだったのか。狐は悪賢いってよく言うけどまさか実際に体験するとは思わなかった。
つかさ「ふふふ……ははは」
笑った。可笑しくなって笑ってしまった。騙されたのに。お昼を殆ど食べられちゃったのにあの狐を憎いとは思わなかった。それどころか爽快感さえあった。私は弁当を片付けた。

 私は石の上に座っていた。別にお弁当が惜しくて座っていたわけじゃない。この森の雰囲気に浸っていたかっただけ。夏になれば蝉時雨。秋には黄色や赤の紅葉。
そして、春には桜がいっぱいに咲き乱れる。そんな光景が思い浮かびながら。

 辺りは薄暗くなって木漏れ日が消えた。私ったら時間を忘れてずっと座っていいた。慌てて階段まで戻った。日は沈み、カラスが山の方に向かって帰っていく。
今日はこの神社で時間が潰れてしまった。他の所もいろいろ見たかったのに。
423 :つかさの一人旅  3 [saga]:2010/12/17(金) 23:34:14.28 ID:8sJ1r760

 階段を下りるともうすっかり暗くなってしまってしまった。バス停まで戻って街灯の明りの下で地図を広げた。今夜泊まる宿を探さないと。
今朝道を聞いた人が言ってたっけ。ここには温泉があるって……あった。ここから2キロメートルくらいかな。満員だったらどうしようかな。でもシーズンじゃないし何とかなるかな。
そんな気楽な気持ちで宿に向かった。

 つかさ「ごめんくださーい」
かなり年月の経った佇まいだった。反応がなかった。
つかさ「ごめんください、泊めていただけませんか」
しばらくすると女将らしい女性が出てきた。かなり困った顔をしていた。もしかしてもう満員なのかな。野宿だけはしたくない。
女将「……お泊りですか……」
つかさ「そうですけど……」
女将さんはもっと困った顔をしてしまった。やっぱり泊まれないみたい。
「どうしたんだい」
突然後ろから声がした。聞き覚えのある声だった。後ろを向くと今朝道を聞いた男性だった。
男「おやおや、奇遇だね、こんな所でも観る場所はあったのかい」
つかさ「ええ、ここから少し離れた階段の沢山ある神社で……」
男「あんな雑木林しかない神社でこんな時間まで……」
男の人はびっくりしていた。確かにそうかもしれないけど私にはあの林は凄く魅力的に見えた。
女将「あんた、知り合いなのかい?」
女将さんが男性に聞いた。どうやらこの男性と女将さんは夫婦みたい。
男「知り合いってほどのもんじゃないよ、今朝道に迷っていたのを地図で場所を教えただけだよ……それより早くお通ししないと失礼だぞ」
女将「すみません、部屋は空いているのですけど……料理係の松山さんが急用ができて……予約分の料理しか用意できないのです」
男「……そうなのか……お客さんすみませんね、こう言う事情なんだが……」
なんだそんな事なのか、確かにこの辺りに食事をするような店はなさそう。お昼は殆ど食べてないからお腹はペコペコだ。晩御飯抜きは辛い。
つかさ「それなら……私は料理できますので厨房と材料を貸していただければ自分で調理して……」
女将「そんな、お客様にそんな事をさせる訳には……それに衛生上の問題もありますので……」
つかさ「それなら問題ないですよ、私は調理師の免許持っていますので……お願いです」
私は深々と頭を下げた。泊まれれば何でもいいと思った。
女将「しかし……」
男「淳子、いいじゃないか、断ってもこの子は路頭に迷うじゃないか、宿代は半額でいいかな」
つかさ「はい、お願いします」
部屋に案内され荷物を置くと早速わたしは厨房に向かった。厨房はとても綺麗に片付けられ、整理整頓が行き届いていた。調理器具も使い易い所に配置してあった。
料理係の人柄が伺える。材料を冷蔵庫から適当に選んで調理を始めた。

 料理もそろそろ完成する頃だった。
女将「驚いた、プロ顔負けの手際良さね、手伝おうと思って来てみたら……その必要もなさそう」
驚いた顔で私を見ている。
つかさ「料理関係の専門学校を出ましたので……それに料理も好きで……家でも夕食とかもつくっていますし」
女将「へぇー、最近の子にしては感心するわね、料理学校出ても使えない子も沢山居るわよ……貴女ならすぐに採用してあげるわよ」
つかさ「ありがとうございます……」
なんか照れくさかった。こんな宿屋で働くのも悪くないと思った。
女将「ところで、神社に寄ったそうじゃない」
私は料理を続けながら頷いた。
女将「あの神社はね、なんでも狐の祟りがあるって地元の人は近寄らない所よ」
つかさ「き、狐の祟り……ですか、どんな祟りなんですか……」
思わずフライパンの火を止めて料理を止めて女将さんの顔を見た。
女将「戦前、あの神社にの狐が住み着いてね……ところがその頃からこの町に様々な災いが続くようになったのよ、戦後の混乱もあったかもしれない、その狐のせいだ
   って事になってね、兵役から帰ってきた男連中で大規模な狐狩りをやったのよ……それでこの町には狐が一匹も居なくなった」
424 :つかさの一人旅  4 [saga]:2010/12/17(金) 23:36:07.36 ID:8sJ1r760
 居なくなった。それじゃ私の見た狐は何だったんだろう。女将さんはそのまま話を続けた
女将「最近になって、その狐が神社周辺に現れて人々に悪戯をするって噂が広がってね……貴女も気をつけなさいね」
つかさ「は、はい、気をつけます……」
男「淳子、お客さんが来たぞ……」
遠くから女将さんを呼ぶ声がした。
女将「あら、邪魔しちゃったね」
女将さんは厨房を出て行った。私はフライパンに火をかけて料理を続けた。あの狐さんはあの時殺された狐なのかな。人間に怨みがあるにしては悪戯がかわいすぎるような。
それにあの狐さんに悪気はそんなに感じなかったけど。ただ私の稲荷寿司を食べたかっただけだったような。

 しばらくすると慌てた女将さんが厨房に入ってきた。
女将「すみません、先ほど急に宿泊したいとお客様がいらしまして……女性だけでお泊りのお客様は貴女だけなので……同室してもよろしいでしょうか
    事情を説明したのですがそれでもいいとお客様は言われました」
そんなに丁重に頼まれても困ってしまう。でも、その女性も泊まるところが無かったら気の毒だよね。
つかさ「見ず知らずの私で良かったらどうぞと伝えて下さい、丁度料理も二人分くらい作ってしまったので……」
女将「分かりました……とこでもう一つお願いがあるのですが」
つかさ「明日の朝食ですね、もう準備しています」
女将「……流石とし言いようがないね、ますます貴女を気に入ったよ、うちで働いてほしいよ、松山さんもきっと気に入ると思うよ」
松山さんってこの宿の料理係りの人だよね、嬉しいけど今すぐは決められない。
つかさ「すみません、嬉しいけど……」
女将「冗談よ、でも考えておいてね」
女将さんはそのまま厨房を出て行った。

 料理は全て終わったので女将さんに報告をして自分の部屋に戻った。
部屋の扉を開けようとした。そういえばもう同室の女性がもう居るんだな。エチケットは大事だよね。扉をノックした。
女性「どうぞ」
つかさ「入ります」
私はそっと扉を開けた。
女性「あっ!!」
私の顔をみるなり奇声をあげた。
つかさ「え?」
女性「ふふふ、ふふふ、貴女だったの、はははは、はははは!」
そして笑い出した。意味が分からない。私は初対面の人だった。笑われる意味が分からない。調理しているときに調味料でも顔に付いたのか。慌てて顔を拭ったけど
そんな物は付いていなかった。服装も見回したけどおかしい所はなかった。彼女の笑いは強くなった。いくらなんでも初対面の人に向かってそこまで笑われるとちょっと腹が立つ。
つかさ「あのー、何か私、悪いことでも……」
女性「ははは、ごめんなさいね……でも、ぷぷ、思い出しちゃうじゃない」
また笑い出した。私はちょっと怒り気味になって自分の荷物を整理した。彼女の笑いが治まるのに数分はかかった。
425 :つかさの一人旅  5 [saga]:2010/12/17(金) 23:38:13.16 ID:8sJ1r760

女性「本当にごめんなさい……謝ります……」
頭を下げて謝ってきた。さっきまでの態度とは違っていた。
つかさ「謝らなくてもいいです、それより何故笑ったのですか」
女性「貴女、神社の林でお弁当食べてたでしょ……それで狐に一杯食わされたでしょ」
つかさ「なんでそれを……」
あの神社に私以外に人が居た。気が付かなかった。あの静寂な林だったら人が居れば気付くと思うけど。もっとも私はボーとしてると誰かが来ても気付かない事がある。
それでこなちゃんに何度か驚かされたっけな。
女性「貴女の慌てよう、狐の手際よさ、見ててとっても面白かった、笑いを堪えるのが大変だった……ごめんなさい、自己紹介がまだだったわね、私は、辻美奈子」
つかさ「私は、柊つかさです」
私と美奈子さんは握手をして挨拶を交わした。美奈子さんは見た目は私と同じくらいの歳だろうか。長髪をそのまま下ろしている。黒髪が似合う女性。そんな感じだった。
美奈子「何であれから直ぐに神社を出なかったの、私だったら怒って直ぐにでちゃう、私が階段を降りても貴女は一向に降りてこなかったわよね」
つかさ「それは、あの林がとっても綺麗だったから、見蕩れてついつい時間が経っちゃって」
美奈子「あの林に見蕩れたって、あんな林どこにでもあるような雑木林じゃない……貴女、変わってるわね」
まじまじと私を見つめた。そんな風に言われると確かにどこにでもあるような林だったかもしれない。でも私は感動したのは確かだった。私はそれを説明した。
美奈子「木漏れ日ねー、そこまで私は見てなかったかもしれない、柊さんって詩人みたい」
詩人なんて身内にだって言われたことない。きっと会ったばかりで私の事なんか知らないからそう言ってるだけに違いない。
美奈子「所でなんで一人旅なんかしてるのよ、もしかして大失恋でもした?」
急に話が変わった。失恋か……恋もしていないのに失恋はないよね。私は首を横に振った。
美奈子「またまた嘘ついちゃって、言っちゃえよ、気が晴れるわよ」
つかさ「別に、そんな失恋なんて……」
私は声を詰まらせた。
美奈子「それじゃ、初恋の話とかは、告白した時の話とか聞きたいな」
恥ずかしくなった。顔が赤くなるが自分でも分かるくらいだった。こんな話はこなちゃんやゆきちゃん、お姉ちゃんににだって話したことはない。
美奈子「もしかして、あんた……未経験なの?」
未経験って恋愛のことなのかな、エッチのことなのかな。どっちにしても未経験。私は恥ずかしさのあまり俯いてしまった。
美奈子「図星みたいね……驚いた、歳は私と同じくらいなのに今時そんな人が居るなんてさ、柊さんくらいの女性ならちょっと色目使えばいくらでも男性が寄って来るでしょうに」
つかさ「私はそうゆうの……苦手なの」
美奈子「苦手ねー、でも周りの男性が放っておかないでしょ……もしかして柊さんって同性が好みとか……胴部屋だからって私はその気は無いわよ」
少しからかっているのは分かった。私は黙って首を横に振った。
美奈子「……違うの、ふーん、柊さんってよっぽど廻りから守られているみたいね」
守られてなんかいない。ただそうゆう縁がなかっただけ。私だって恋愛もしたいし、エッチだって。だけどそれは……
つかさ「そんなんじゃないよ、でもそうゆうのって、気持ちいいだけでやっちゃいけないと思う」
美奈子「何でよ、古いわねその考え」
つかさ「その先の事があるから」
美奈子「その先ってどの先よ」
つかさ「次の命が宿るかもしれないでしょ、それに責任がもてるまでは、たとえ避妊したって……」
美奈子「それでも欲求ってもんがあるじゃない、無いとは言わせないわよ」
つかさ「それは……一人で……」
私はまた俯いてしまった。こんな話は初めてだし声に出して言ったこともない。しばらく美奈子さんは黙っていた。
美奈子「……それなりに考えているんだ、もう聞かないから……」
辻さんは自分の荷物を整理しだした。私ばっかり質問されるのも不公平だよね。
つかさ「辻さんも一人旅しているみたいだけど、何か理由があるの?」
辻さんの動きが止まった。
美奈子「私は……」
なにか言い難そうだった。もしかして辻さんが大失恋でもしたのかもしれない。だから私にそんな質問をしてきたのか。どんな恋愛をしたのか聞きたい。
でも強制はできない。しばらく沈黙が続いた。
 
426 :つかさの一人旅  6 [saga]:2010/12/17(金) 23:44:11.91 ID:8sJ1r760

 一分経つか経たないかくらいだった。
女将「お待たせしました」
私の作った料理を持ってきた。お膳に綺麗に盛り付けられて私と辻さんの前に置かれた。
女将「今日はすみませんねすっかりお世話になっちゃって」
つかさ「いいえ、辻さんの口に合うかどうかは分かりませんけど……」
美奈子「これが柊さんが作った料理ね、いただきまーす」
さっきまでの重い表情とは打って変わってガツガツと食べ始めた。その食べっぷりは一心不乱そのものだった。お腹を空かせたお姉ちゃんを思い出した。
その時のお姉ちゃんは今の辻さんと全く同じ。そういえばしゃべり方もお姉ちゃんに似ているような気がした。だからあんな質問でも何とか答えることが出来たのかもしれない。
美奈子「美味しい、美味しい」
そう言いながらあっと言う間にお膳の料理を全て食べてしまった。私もそれに釣られるように食べた。

 食事も終わりすこし落ち着いた。上機嫌になった辻さんが話しかけてきた。
美奈子「食べた食べた、柊さんって料理うまいわね、神社で食べようとしたお弁当も作ったの?」
つかさ「あれは私の一人旅のはなむけにお姉ちゃんが作ってくれたんだ」
美奈子「へぇー、お姉さんが居たのか」
つかさ「何でそんな事を聞くの?」
美奈子「さっき食べたのと味付けがね……」
つかさ「味付けって?」
美奈子「何でもないわよ、そうそう、ここの温泉はとっても気持ち良いわよ、この時間なら誰も入っていないから先に入ってきなよ」
つかさ「え、うん」
私に浴衣とタオルを渡すと追い出されるように部屋を出されてしまった。ああやってはぐらかす所なんかお姉ちゃんそっくりだ。

 かけながしの温泉。湯加減もいい。肌がすべすべになるようないい温泉だった。辻さんの言うように誰も入っていない貸切状態だった。
あれ、なぜ辻さんは知っていたんだろう。前にもこの宿屋に泊まったことがあるのかな。それに辻さんはあの神社に何をしに来たのかな。私の質問に答えられなかったのと
なにか関係あるのかな。出来れば力になってあげたい。
そういえばこなちゃんやゆきちゃん、お姉ちゃんと恋愛とかの話はあまりしたことないな。皆はもう経験しちゃったのかな。そんな話すらもしてないや。
私と辻さんでそんな話が出来たんだ。もう恥ずかしいなんて言ってる歳じゃないよ。今度皆と会ったら私から話すかな。そんな決意をしてみたりした。その時だけの決意かもね。
でも、なんて気持ちいいお湯だろう。もう少し暖まってから出るかな。

 すっかり長湯になってしまった。少しのぼせ気味になって部屋に戻った。
つかさ「ただいま、辻さんの言うようにとってもいいお湯だったよ、今度は辻さんも……」
私の話は聞いていない。テレビを食い入るように見ていた。テレビを見てみるとニュース番組だった。連続殺人犯人の裁判のニュースだ。
真奈美「死刑判決ね、あんたはどう思う?」
私が帰ってきたのは知っていた。辻さんはテレビを見ながら聞いてきた。のぼせて頭がボーとしている私には重い質問だった。なんて答えていいか考えられない。
つかさ「この事件は知ってるよ、なんでも女性や子供まで殺したって……酷いよね……」
真奈美「私はそんなのを聞いているんじゃない、死刑について聞いてるのよ」
つかさ「死刑……考えたこともないけど、死なないと償えない罪……だよね、人の命を奪ったのだから……」
真奈美「命を奪ったのだからその命で罪を償うのか、足したり引いたり、まるで算数ね、それが柊さんの考えなの?」
つかさ「そんなんじゃないとは思うけど……私には難しくて分からないよ、お姉ちゃんならもっといい答えを知ってるかも、法律勉強してるし」
真奈美「いいや、あんたの考えを聞きたいんだよ」
辻さんはテレビから目を離して私の目をみている。どうしてそんな事を聞いてくるのか不思議に思った。
つかさ「何故そんな事を聞くの、さっきだって……」
真奈美「まずは私の質問に答えて」
427 :つかさの一人旅  7 [saga]:2010/12/17(金) 23:45:49.81 ID:8sJ1r760

 何だろう、目が真剣だよ。なんか言わないと許してくれそうもない。なんて答えたら良いんだろう……思った事を言えばいいのなら言うよ。
つかさ「私が思うのは死って刑にならないって事だけ」
真奈美「理由は?」
つかさ「だって死って特別なものじゃないよね、生き物なら必ずくる物だよね、それを刑にしても意味無いよ……そう考えると殺人も意味のない事だって分かるよね、
     死刑なんか無くしちゃえば犯罪も減るんじゃないかな?」
真奈美「おめでたい考えだ」
呆れ顔で一言、一蹴された。
つかさ「えー、私の考えを聞きたいって言ったから言ったのに……」
真奈美「あんたの考えは分かったわよ、まあ死は特別なものじゃないのは確かだ……さて、私も温泉に入りに行くかな」
そのまま部屋を出てしまった。

 何だろう。私を試しているようにも、からかっているようにも見えた。彼女の意図が全く掴めない。まあ、初対面だしこれだけ喋れただけでもいいのかもしれない。
あの辻さんって人、初めて会ったのになんであんなに親近感があったんだろう。雰囲気がお姉ちゃんに似ているから。それだけじゃないような気がする。
名前以外全く分からない人。でも友達になれそうな感覚。これが旅ってものなのかな。でも良かった、いい人と巡り会えて。

 辻さんも私と同じく長湯だった。戻ってくると彼女は寝る支度をし始めた。私はまだ眠くはなかった。
真奈美「あれ、まだ眠くないのか?」
つかさ「うん」
真奈美「ああ、私が色々質問攻めしちゃったからかな……」
つかさ「うんん、それとは関係ないよ……」
真奈美「そう……そういえば柊さんってお姉さんが居るって言ったわよね」
つかさ「うん、三人のお姉さんがいるよ、私は末っ子」
真奈美「そういえばお弁当はお姉さんが作ったって言ったわよね」
つかさ「うん、私の双子のお姉ちゃん、とっても優しくて、頭が良くて、運動だって……」
突然クスクスと辻さんは笑い出した。私は話すのを止めた。
真奈美「ふふふ、また私ったら質問攻めしちゃったわね、それでもそんなに楽しそうに話すなんて……よっぽどそのお姉さんの事が好きなのね」
はっとしてしまった。さっきまでの質問とは違ってお姉ちゃんの事を聞かれると言われてもいないのに勝手に喋ってしまっていた。
つかさ「辻さんに似てるんだ、そのお姉ちゃんに……」
真奈美「おいおい、私はそんなに優しくもないし、頭も良くない……買いかぶるなよ」
つかさ「そんな所もそっくりだよ……」
辻さんは黙って顔が赤くなった。辻さんの事を聞けるチャンスかもしれない。
つかさ「辻さんは何で一人旅を?」
黙ったまま俯いてしまった。やっぱり人に話せないような理由なんだ。それを忘れるために旅をしてるに違いない。思い出させるような話は止めた方がいいね。
つかさ「ごめんなさい、その話はもういいよ、別に話しにしよう……私の友達の話とか……」
真奈美「いいわよ、話すわよ……私の事も知りたいんでしょ、あんたの話だけじゃ不公平よね」
さっき私が思っていたのと同じ事を言った。いったいどんな理由なんだろう。ちょっとワクワクした。
真奈美「そうね、失恋かしら」
つかさ「失恋…」
真奈美「なによ、まだ話していないのに悲しい顔しちゃって……」
つかさ「だって、失恋なんて」
真奈美「楽しい失恋なんかないか……」
つかさ「ふられたの?」
一瞬怯むように体を後ろに反らした。
428 :つかさの一人旅  8 [saga]:2010/12/17(金) 23:47:52.27 ID:8sJ1r760
真奈美「ストレートに言うのね……そうねふられた、ものの見事にね、あれだけ愛し合ってたと思ってたのに、男なんて勝手なものね」
辻さんの目に光るものを見た。失恋か。誰もが一度は経験するもの。片思い、両思い、どっちだって辛いよね。辻さんにかける言葉が思い浮かばない。
真奈美「忘れようと思ってふらりとやってきたこの村、忘れようと思っても忘れられない……あんたに分かる、この気持ち」
訴えかけるように私に言い寄ってきた。その迫力に圧倒した。
つかさ「で、でも、この宿屋に来たことあるような感じを受けたんだけど……」
真奈美「そう、彼と旅行に来たのよ……」
つかさ「えっ、彼氏の事を忘れるためって言ってたけど……」
驚いた表情をすると辻さんは一回ため息をついてから話した。
真奈美「鉛筆で書いた字を消すときどうする、字をなぞるようにして消していくでしょ……それと同じよ」
とても分かりやすい比喩だった。思わず頷いてしまった。
つかさ「それじゃ、神社に行ったのも?」
真奈美「そう、彼と行った……階段を登って疲れたのしか覚えてないわ……」
辻さんの表情が変わった。
つかさ「本当に覚えてないの」
思わず声に出た。
真奈美「人気の居ない所で男女が二人きり……後は……分かるでしょ……」
つかさ「う……うん」
真奈美「……他人に話すのはこれが初めて……人に話すと気が紛れるって言うけど……聞いてくれてありがとう」
辻さんは荷物から財布を取り出した。
真奈美「明日、早朝出るから宿泊代払ってお手くれるかしら」
手には一万円札が握られていた。
つかさ「おつりを……」
真奈美「私の下らない話を聞いてくれたお礼よ、少ないけど取っておいて」
つかさ「私は食事を作る条件で泊まったので殆ど宿代を払ってないので……多すぎます」
真奈美「ふふ、そんな事まで正直に言うなんて……人の好意は素直に受け取るものよ」
私はお金を受け取った。
つかさ「そんなに朝早く何処へ?」
真奈美「もう一度……あの神社へ、ちょっと鉛筆が濃すぎたみたいね、何度か擦らないと消えないわ……悪いけど立つ時は起こさないわよ」
自分で準備した布団の中に潜り込んでしまった。メールアドレスの交換でもしようとしたけど。そんなの出来る状態じゃなかった。
眠くはないけど自分も布団の中に入った。辻さんの質問や話してくれた事を振り返りながら色々考えているうちに自然と眠りについてしまった。
429 :つかさの一人旅  9 [saga]:2010/12/17(金) 23:49:53.73 ID:8sJ1r760

 自然と目が覚めた。まだ窓は薄暗い。目覚まし時計なしでこんなに早く起きたのは久しぶり。辻さんの寝ていた布団を見た。もう彼女は居なかった。もう出てしまったのか。
こんなに早く起きたので朝風呂もいいかなと思い風呂場に向かった。女将さんと丁度すれ違った。
つかさ「おはようございます」
女将「おはようございます、早いですね」
つかさ「自然に目が覚めたので、朝風呂ででもと思って……」
女将「そうですか……そういえば同部屋のお客様、もう立たれたのですが始発の電車にはまだ早いのに……」
つかさ「なんでも神社に行くって行っていました」
女将「神社……そういえば二年前、あの神社で若い子が自殺した事件があってね……やだよ、変な事思い出したよ……」
自殺……まさか、何で気が付かなかったんだろう。もしかして辻さんは死ぬ気だった。彼氏との一番の思い出の場所で……昨夜の質問。私にしてくれた失恋の話。
思い当たる事だらけ。
女将「顔色悪いわね……もしかして」
つかさ「そのもしかしてです、はやく、早く辻さんを止めないと」
女将「それは大変、玄関を出てすぐ右に鍵のかかっていない自転車があるから……警察呼ぼうかしら」
つかさ「ありがとうございます、警察は……呼ばなくていいです」
私は急いで着替えて女将さんが貸してくれた自転車で神社に向かった。
本当は昨夜私が止めなきゃいけなかった。辻さんも私に止めて欲しかったんだ。それなのに何も気が付かないで……

 神社の入り口に自転車を置くと階段を駆け上った。ペース配分なんか気にしない。持てる全ての力を振り絞って駆け上がった。
私に神社に行くって言ったのは……私を待っているのかもしれない。止めて欲しいと。だから警察は呼ばない。きっとそうに違いない。そう願うしかなかった。

 階段を登り切った。息が切れて苦しい。それでも私は森の中に入っていった。辻さんは居た。私が森を見ていた所、狐さんにあげるために稲荷寿司を置いた石に座っていた。
私は息を切らしながら辻さんに近づいた。辻さんの目の前に私が立つと辻さんは立ち上がり息を切らしている私に向かって話し出した。
真奈美「やっぱり来た」
息が切れて話せなかった。そんな私を見ながら辻さんは更に言った。
真奈美「私が自殺すると思ったかしら、それとも財布の中身を見て慌ててきたのかしら……ふふ、そんなのどちらでもいいわ」
無表情な冷たい微笑みだった。昨夜のような雰囲気と違う。息もやっと落ち着いてきた。
つかさ「辻さん……良かった、私、てっきり辻さんが自殺するんじゃないかと思って……」
真奈美「あんた、まだ気が付かないのかい、つくづくおめでたい人だよ……」
昨夜とは違う。だけど何が違うのか分からない。
つかさ「気が付かない……って何が……分からない」
真奈美「……あんたの弁当を食べてこの石の上の稲荷寿司を拾って逃げたのは私だよ……もっともあんな手に引っかかるようなトロい奴に見破れるわけもないな」
それってあの狐さんが辻さんって事。そんな、信じられない。喋ろうとしたけどなぜか声が出ない。
真奈美「あんたは選ばれた……我が一族の怨みを晴らす生贄としてね……恨むならこの神社に来た自分の不運を恨みな」
辻さんは右手を上げて手を広げた。爪がみるみる伸びてきた。その爪の先は鋭く尖っている。その手を顔に近づけると爪をぺロリと舐めた。
辻さんはゆっくりと私の後ろに廻った。振り向こうとしたけど体が動かない。
真奈美「動かないだろう、どうだい死を目前としても逃げられない心境は……七十年前、仲間はこうして殺された」
これって女将さんが言ってた狐狩りの事を言っているかな。それを確かめるようとしても口が動かない。恐ろしくて体が震えてきた。逃げたくても体も動かない。
真奈美「あんたは言ったな!死は特別なものじゃないってね、それなら今死んでも構わない……そうだろ、そうゆう事だろ、後ろから心臓を串刺しにしてやるよ……思い知れ!!」
430 :つかさの一人旅  10 [saga]:2010/12/17(金) 23:53:14.65 ID:8sJ1r760

 どのくらい時間が経ったか。何も起きない。急に体が軽くなった。恐る恐る後ろを振り向いた。そこにはただ立ったままの辻さんが居た。
真奈美「……できない、殺すなんて……」
そのまま両膝を地面につけて倒れ込んだ。さっきまで伸びていた爪も元に戻っていた。私は辻さんを起こそうと手を肩に触れようとした。
真奈美「触らないで、私は貴女を殺そうとしたのよ」
私は黙って辻さんを起こして石の上に座らせた。本当は怖くて喋れなかっただけだった。でも喋らないと。勇気を振り絞って話した。
つかさ「でも、私を殺さなかった……良かったら話して、私にも分るように」
辻さんはしばらく俯いていた。私は彼女をじっと見つめた。
真奈美「今の私は仮の姿……二年前、この神社で自殺した娘の姿を元にして化けている」
つかさ「それじゃ辻さんは昨日の狐さんなの?」
真奈美「きつね……確かに姿は狐だけど違うわよ、人間がここに来る前からこの地を統治してきた……人間がここに来た頃は私達は神様として祀り上げられた、
     知恵を授け、生きる術も教えた……」
つかさ「お稲荷さん……」
真奈美「そう言われた事もあったわね……」
これは夢、違う。今私はお稲荷さんと話している。信じられない。
つかさ「七十年前の狐狩り……それを怒っているの?」
辻さんは私を睨みつけた。
真奈美「今まで与えてきた恩を忘れ、傍若無人な振る舞いをする人間達……罰を与える事にした……とは言え殆ど死に絶えた私達にその力は無かった、力を蓄え
     ようやく罰を与える事ができても……もう既に狐狩りをした人間達はこの世に居なかった……だから決めたの、丁度七十年後、この神社を訪れた処女を殺すってね」
つかさ「それが……私なの?」
真奈美「そうよ……私は執行人よ……本当なら宿屋で殺すはずだった……」
私を見る目が悲しそうに見えた。何故私を殺せなかったか聞きたかった。質問をしようとする前に話し出した。
真奈美「あんたのお弁当を奪ったのは稲荷寿司が欲しかったから……私達は油揚げに目がないの、人間に化けるのは油揚げを作るためでもあるのよ……
     それに私達には人の作った物に触れるとその作った人の気持ちや感情がわかる能力があるの、この自殺した子も首を吊ったロープを触れてその事情を知った」
つかさ「それじゃ宿屋で話した失恋の話って……」
真奈美「事実はどうかは分らないけど彼女がそう思っていたのは確かね……それであんたのお弁当の稲荷寿司を食べた時、味はともかくある感情がこみ上げてきた、
     祈りにも似た感情、あんたの無事を願う感情、また会いたいと言う感情がね、その感情が私を支配してしまった……それを作ったのがあんたのお姉さんね」
つかさ「うん」
辻さんがお姉ちゃんに似ていたのはその為だった。そんな気がした。狐さんにお弁当を取られたのをお姉ちゃんが見ればきっと笑っただろうな。
真奈美「宿屋で見たあんたを見た瞬間に思わず笑ってしまった、まるで妹のような気がした、あんたの事がもっと知りたくなった……あんたと会話をしていくうちに親近感が……
     殺せるわけないじゃない、予定を変更してここで殺そうとした……ここなら仲間を殺された憎しみが勝つと思った……でも、何故か無性にまた会いたくなった、
     でも来て欲しくなかった、来たら貴女を殺さなければならない……何気に座ったこの石……今度は貴女の感情が……この林をこんなに美しいと思っていたなんて、
     私達の生まれた……唯一残ったこの林を、私ですらここまで綺麗にだと思ったことないのに……貴女が来る少し前……朝日が差し込んできたわ……
     思わず息を呑んだ……貴女と同じ思いが込み上げてきた……そんな人を……私は殺せない……」
辻さんは立ち上がると私に抱きつき泣いてしまった。私はお姉ちゃんの作った稲荷寿司に助けられた。そう思った。心の中でありがとうと言った。
431 :つかさの一人旅  11 [saga]:2010/12/17(金) 23:55:05.25 ID:8sJ1r760
 私と辻さん、二人は石の上に座りながら話した。私は家族や友達のこと、辻さんは一族の歴史や身の上話等だった。もう私達は幼馴染みのような仲になっていた。
不思議だった。たった一晩一緒の部屋に居ただけなのに。きっと辻さんの能力があるからに違いない。人の心が分ってしまう能力。
つかさ「辻さんのその能力、羨ましいな、私なんかKYって言われるよ、そんな能力があればきっと仕事なんかも上手くいくよね……」
真奈美「もうその名前で呼ばなくていい、私達には苗字はない、名前で呼んでくれればいいわよ」
つかさ「それじゃ……まなちゃん、でいいかな」
真奈美「……私は少なくともつかさより十倍以上は生きているわよ……そんな先輩に向かってその呼び名は……まぁ、いいか」
すこし照れくさそうに顔を赤くしていた。
真奈美「私の能力……ない方がいいわよ、同じ能力のある同士だと能力は使えない、それに、スイッチを入れたり切ったりするように出来ないのよ、だから突然
     他人の感情が入ってくるの……そんなの普通の人間には耐えられないと思うわよ……今だって自殺した子の感情が入ってきたりする……」
つかさ「自殺した子って今化けてる子の?」
真奈美「そうよ……私はあの子の自殺の一部始終を見ていた、今思えばあの子の自殺を止められた……でも止めなかった」
つかさ「どうして止めなかったの」
真奈美「私は人間を許せなかったから……だからそのままにした、そう言う意味で私はあの子を殺したのと同じよね……今の私なら助けたかもしれない……つかさみたいにね」
つかさ「私?」
真奈美「つかさなら助けたでしょ、だからここに来た……この子も後二年遅く来てたらつかさと出会っていたら違った道を歩んだかもしれない」
つかさ「私が助けられたかどうかは分らないけど……もうまなちゃんは人間を憎んでないの?」
真奈美「憎い、けど一番憎いのは仲間を殺した人間よ、でもその人間はみんな死んだ……死刑を受けたのと同じよね、もう人間への憎しみは消えたわ」
つかさ「ありがとう」
真奈美「……なんでつかさがお礼を言うのよ……」
つかさ「だって私は死刑だったんでしょ……」
真奈美「私達の怒りの捌け口になった、とんだとばっちりよね、代表して謝るわ……ごめんなさい」

 私は助かった。そしてまなちゃんという友達が出来た。友達でいいのかな。他に表現しようがない。
真奈美「朝食べてないからもうお腹がペコペコね」
腕時計を見た。もうお昼近くなっていた。
つかさ「そうだお昼一緒に食べない」
真奈美「……そうしたいけど無理ね、もう直ぐ呪文が解けて元の姿にもどるわ、元に戻ると暫く人間に化けられない」
このまま別れるのはちょっと寂しい。
つかさ「それじゃ私が作った稲荷寿司で良ければ明日の朝でも……」
真奈美「稲荷寿司……つかさ、あんた旅してるんでしょ、他にも行くところがあるんじゃないの、悪いわ遠慮しておく……」
つかさ「まなちゃん……口元……」
まなちゃんの口からよだれが出ていた。まなちゃんは慌ててよだれを拭った。私は笑った。油揚げ料理がよっぽど好きなんだね。
つかさ「ふふふ、一人旅だし別に予定もないから、それにお礼もしたいし」
真奈美「お礼なんていらないわ、私達が勝手にやったことだし」
つかさ「まなちゃん、人の好意は素直に受け取るんじゃないの?」
真奈美「……やられたわ……それじゃ在り難くちょうだいするわ……実はつかさが作ったのを食べたかった……昨日のお弁当は……」
お姉ちゃん、味付け間違えたね。まなちゃんの顔を見れば分るよ。
つかさ「それじゃ明日の日の出の頃また来るよ、約束だよ」
真奈美「約束ね……今度、お姉さんとお友達も連れてきて、会ってみたい」
つかさ「うん」
その瞬間まなちゃんの体が白く光った。目の前に狐の姿があった。昨日私のお弁当を取った狐。その狐はちょこんと私の前に座っている。逃げる気配もない。
つかさ「まな、ちゃん?」
狐は返事をしなかった。もっとも返事はしないだろうけどね。狐は名残惜しそうに私を見ていた。私は立ち上がった。狐は座ったまま私を見ている。
私はゆっくり手をのばして狐の頭を撫でた。犬扱いされて嫌がると思ったけど狐は私に近づいた。私は狐を抱きしめた。狐は私の頬を一回舐めた。
つかさ「ありがとう」
手を解いたけど狐は私の前に立ったままだった。私はゆっくりと狐から離れた。狐に背を向けて階段の出口へと歩いていった。狐の視線を感じる。
なんだろう。涙が出てきた。また明日会えるのに。振り返ってもう一度抱きしめたい。でもそうしたらもう二度とこの神社から出られないような気がした。私は走って神社を出た。
階段を降りるまで優しい視線を感じた。
432 :つかさの一人旅  12 [saga]:2010/12/17(金) 23:57:54.06 ID:8sJ1r760

 私は旅館まで戻ってきた。女将さんが玄関前の掃除をしていた。
つかさ「自転車ありがりがとうございました」
女将「あ、やっと帰ってきた、心配したよ」
つかさ「すみません……ところであと一泊したいんですけど、部屋空いてますか」
女将「空いてるわよ……丁度良かった、料理係の松山さんがお礼を言いたいって連絡が入ってね、もう一泊してくれるなら引き止めなくていいね」
つかさ「そうですか、ところで今晩、厨房をもう一度借りたいのですけど、いいですか」
女将「え、もう料理は作らなくていい」
つかさ「いいえ、個人的に使いたいので……それと稲荷寿司の材料も用意してくれると助かります、御代は後で払います」
女将「……理由は聞かない方がよさそうね、いいわ、自由に使って」
つかさ「ありがとうございます……辻さんの宿泊代払いますね」
女将「辻……さんて?」
女将さんは驚いていた。
つかさ「昨夜私と同部屋になった人です」
女将さんは腕を組んで考え込んだ。そして私を見て笑った。
女将「なに冗談言ってるの、あんた昨日から一人じゃないの、ささ、お昼の用意が出来たから食べて」
女将さんは昨日の辻さんの事をすっかり忘れていた。これも狐の能力のせいなのかな。これ以上話しても信じてもらえそうにないので玄関を入って自分の部屋に戻った。
部屋はもう片付けられていた。そうだ稲荷寿司の材料費いまのうちに払っておこう。鞄から財布を取り出して中身を見た。財布の中に葉っぱが一枚入っていた。
そうだよね、よく考えたら狐がお金なんか持ってる訳ないよね。なにか憎めないな。こなちゃんの悪戯に似てるかも。私よりずっと長生きしてるって言ってるわりには子供っぽい。
クスリと笑って葉っぱを財布の中にしまった。

 女将さんに材料代を払うと大広間に通された。そこには料理を運ぶ女性が居た。きっと松本さんに違いない。その女性は私に気付くと近寄ってきた。
女性「貴女が昨日食事を作ってくれた人ね、朝食を作っておいて食べないなんて……悪いけど食べさせてもらったわよ、今までどこに行ってたの?」
そうだった。朝食を作っておいたんだった。女性はやや不機嫌そうだった。作っておいて食べないのはマナーとしては最低だ。
つかさ「すみませんでした……神社へ行ってたので」
女性「神社って、階段の神社?」
私は頷いた。階段の神社って、そういえばあの神社って名前はないのかな。
女性「あんな神社でなにやってたの……でも、味付けは申し分なかった、貴女、料理はどこで習ったの?」
つかさ「○○料理専門学校です」
女性「……奇遇ね、わたしはその学校を卒業したわ……懐かしい、ねえ、テキビーって先生知ってる?」
つかさ「……いつも手厳しいからテキビー先生って言われてた……」
女性「わぁー今の生徒も同じあだ名使ってるんだ、確か洋菓子担当だった……」
つかさ「うん、今でもそうです……」
女性「そういえばいつも口癖があったわね」
つかさ・女性「お菓子は化学だ!!」
数秒の沈黙の後、私達は吹き出して笑った。最初は厳しい人かと思ったけど気が合いそうな気がした。
女性「ははは、ふふふ、全く変ってない……テキビー先生」
つかさ「でも、私の学年が最後で引退だそうです」
女性はすぐに暗い顔になった。
女性「そう……月日が経つのは早いわね……あの先生から教わった洋菓子……まさに化学の実験みたいに正確に材料の量を測って、温度も測って……時間も測って作った、
   普通の料理は勘とノリで作ることができる……でもお菓子は正確な測量と精密な技術で味が決まるって……」
そんな事言ってったっけな。実習の時の厳しさは今まで先生の中では一番だった。
女性「あの先生のおかげで洋菓子の奥深さが分った……もう辞めちゃうのか……寂しくなるわね」
つかさ「もう辞めてます、私も……卒業したので……」
女性は驚いた顔で私の顔を見た。
女性「え、貴女いくつなのよ……在校生かと思った……もっとも未成年の女性が一人旅もないわね……もう就職はしてるの?」
433 :つかさの一人旅  13 [saga]:2010/12/17(金) 23:59:57.70 ID:8sJ1r760
つかさ「一応……」
女性はちょと厳しい口調になった。
女性「何が一応よ、もっと自信持ちなさいよ……やっぱり料理関係?」
つかさ「うん……レストランで洋菓子担当……の手伝い」
女性は今度は私を妹のような目で、そうお姉ちゃんのような目で私を見た。
女性「へー、もしかして将来はパテシエになって独立でもするの?」
つかさ「そこまでは……考えていません」
女性「……夢は大きいほうがいいわよ、私だってまだ諦めてない」
何だろう、女性のテンションがどんどん下がっているのを感じた。言ってることは希望に満ちているのに。そういえばまだ自己紹介してなかった。考えるのはそれからだね。
つかさ「まだ自己紹介してなかったね、私は柊つかさです」
女性「私は松本かえで」
つかさ「松本……先輩ですね、よろしくです」
私はお辞儀をした。すると女将さんが松本さんを手招きして呼んでいる。
かえで「ごめん、ちょっと行ってくるわ、食べてて」
松本さんは女将さんの方に向かった。女将さんと話し込んでしまった。ちょっと時間がかかりそうだった。私は用意されたお昼ご飯を食べた。美味しい……
プロの味と言うのかな。卒業したての私なんか足元にも及ばない。でもそんな人に褒められたのはちょっと嬉しいかも。
暫く私は食事に夢中になった。どんな調理をしているのかを想像しながら食べた。

 丁度食事が終わった頃松本さんが戻ってきた。
かえで「離れて悪かったわ」
つかさ「いいえ、ご馳走様でした、とても美味しかったです」
松本さんは少し照れくさそうにしていたけど直ぐに咳払いをして気を取り直した。
かえで「それより……稲荷寿司の材料って、どうするつもり?」
そうか女将さんに呼ばれたのはその事だったんだ。
つかさ「明日の朝、神社に持って行こうと思って……」
かえで「数人分はあるわよ、一人でなにするの、あんな神社に何があるって言うの」
まなちゃんの事を言っても信じてくれないだろうな。それにしてもどんどん松本さんの顔が険しくなってきている。そんなに私の行動が気になるのかな。とりあえず適当な理由を。
つかさ「私の家は神社だから神社に興味があって……御参りを……」
かえで「あんな神社に御参りに行っても何もご利益なんかない!!……あ、」
急に怒鳴りつけるように私の話を止めた。すぐに『しまった』と思ったのか俯いて黙ってしまった。どうしたんだろう。私が二日続けて厨房を使うのが気に入らないのかな。
それともあの神社で何か嫌な出来事でもあったのかな。女将さんに呼ばれる前の事も気になる。
かえで「お客様に対してする行為じゃないわ……ごめんなさい……」
そのまま部屋を出ようとした。
つかさ「待って下さい、もしかして厨房を使っちゃいけなかった、そういえば私、松本先輩使って良いって聞いてなかったです」
松本さんは止まった。
かえで「先輩は付けなくていいし敬語も要らない、ここまで来て先輩風吹かせるつもりはないわ、厨房は夜からなら自由に使って構わない」
つかさ「階段神社をさっきからあまり良く言ってないけど何かあったの?」
松本さんは振り返って戻ってきた。
かえで「あの神社はかなり古くからあるけど何故か名前がない、私も地元の人間だけど御参りにも行かないわ、ここの殆どの住民が同じ……そんな神社に一人だけ御参りに行っ
     た人が居た……二年前……その人は二度と帰ってこなかった、私と約束したのに……」
二年前……帰ってこない。まなちゃんの化けていた女性も丁度二年間にあの神社で……まさか。
つかさ「約束って?」
かえで「……一緒に洋菓子店を開こう……ってね」
パテシエになるって松本さんの夢だったのか。あれ、でもその女性は失恋で自殺したってまなちゃんは言ってた。二人でそんな約束してたなら自殺なんて考えられないよ。
よっぽど相手の男性が酷い人だったのかな。もてあそばれた挙句に捨てられた。でもそれじゃ思い出の場所で死ぬなんて考えられない。松本さんは今にも部屋を出そうな
感じだった。もっと話を聞きたい。
434 :つかさの一人旅  14 [saga]:2010/12/18(土) 00:01:58.65 ID:M.aWGb.0
つかさ「し、失恋でもしたのかな……その人」
ちょっと言い難かったけどこれ以上話しそうになかったので思い切って言ってみた。黙ったままだった。何となく分る、図星かな。
つかさ「相手の男性はどうしてるの、松本さんも知ってる人なの?」
かえで「彼女の恋人……いいえ、婚約者は三年前に亡くなったわよ……交通事故でね」
言葉を失った。別れは別れでも死別だった……しかも婚約までしてた。
かえで「これで分ったでしょ、もうこれ以上思い出させないで……柊さんもそんな呪われた神社と関わらない方がいいわよ」
飛び出すように部屋を出ようとした。呪われた神社なんて酷いよ。きっと見たことなんだ。
つかさ「松本さんも明日行きませんか、その神社に、自殺した子……えっと……えっと」
かえで「……辻浩子よ」
つかさ「……そう、その辻さんもきっと喜ぶと思う」
かえで「どうかしら、死に急ぐような人が私なんかと会うわけないじゃない」
そのまま部屋の外に出てしまった。今度は呼び止められなかった。

 辻浩子。辻。確かまなちゃんも最初辻と名乗っていた。間違いない、まなちゃんが化けていた人と松本さんの自殺した友達、辻浩子さんは同じ人に違いない。
彼氏が交通事故で死んじゃってその後を追うように……旅館でまなちゃんは捨てられたって言ってたけど本人はそう思わないとやっていけなかったんだね。
まなちゃんは死んだ辻さんの想いを読み取ってる。松本さんに会わせれば色々分るんじゃないかなと思ったけど都合が良すぎたかな。それに松本さんをまなちゃんにいきなり
会わせたらまなちゃんだって怒るかもしれない。全ての人を許しているわけでもなさそうだからね。明日、まなちゃんに聞こう。会ってくれるかもしれない。
つかさ「ごちそうさまでした」
私の声に女将さんが別の部屋からやってきた。
女将「ありがとうございます……さっき騒がしかったけど、松本が何か失礼でも……」
心配そうな顔だった。
つかさ「いえ、何でもないです……」
女将「……部屋の掃除はおわってるわよ、出かけるのも、部屋で休んでも、温泉に漬かっても、ご自由に……」

 
435 :つかさの一人旅  15 [saga]:2010/12/18(土) 00:03:21.87 ID:M.aWGb.0
 私は最後の工程の味の付いた油揚げにご飯を詰める作業をしている。女将さんはご自由にと言ったけど、あの後私は部屋で休んだり温泉に入ったりしただけだった。
地図を広げて観光地に行く気分にはなれなかった。松本さんの話のせいもあるけど何よりまなちゃんの事で頭がいっぱいになっていた。なにしろ狐が人間に化けるなんて。
今になって夢みたいな出来事であった事に気付いた。こうしてまなちゃんの為に稲荷寿司を作っている自分が不思議に思えてきた。
『コンコン』
厨房の扉からノックの音が聞こえた。扉の方を見ると松本さんが私服の姿があった。
かえで「やってるわね……凄いわね、三段の重箱に稲荷寿司がぎっしり……柊さん、あの神社の階段をそれを持って登るわけ?」
しまった作ることばっかり考えて自分の体力を計算にいれていなかった。でも持っていくしかない。
つかさ「うん」
かえで「よければ私のリュックサック貸してあげる、背負っていけば少し楽でしょ」
つかさ「ありがとう」
呆れ顔の松本さんだった。
かえで「一つ食べても良い?」
つかさ「まだ箱に詰めていないのがあるから、どうぞ」
松本さんはお皿に置いてある作り立ての稲荷寿司を一つ摘み上げるとそのまま口に入れた。私は作業を中断して松本さんの感想を待った。
かえで「……なによこれ、お供えにしては手が込んでるわね……って何そんなに真剣に私を見るの」
お姉ちゃんは殆ど料理はしたことない。私は殆ど食べていないから味は分らなかったけど調味料の配合を間違えていたのは間違いない。でもまなちゃんの心を動かすような
お弁当を作った。経験とか技術とかそうゆうのとは別の何か。私もそんな料理が作りたい。ただまなちゃんに美味しく食べてもらいたい。その事だけを考えて作った。
つかさ「感想を聞きたくって、ついすみませんです」
私は作業に戻った。
かえで「……私が十分くらい前にすでに居たの気が付かないくらい真剣に作っていたわね、ノックの音でやっと気付いた……そこまでして作った稲荷寿司を誰にお供えするの」
つかさ「命の恩人にお礼がしたくて」
かえで「命の恩人……今時そんな言葉聞かないわね……確かに柊さんの作ってる姿を見たら食べたくなったのは確かね……大事な人なのね……ね、柊さん、
     貴女、洋菓子の店で独立して働くのって興味ない?」
自分の店か、お昼にそんなの言ってたっけ。
つかさ「自分の好きなように料理を作れるっていいですよね……憧れちゃう」
かえで「……貴女を見てたら思い出すのよ浩子の事がね……貴女とだったらもう一度挑戦してもいいかなって思った」
もしかして私を誘っているのかな。まだ会って一日しか経っていないのに。
つかさ「私は辻さんの代わりですか……私は辻さんの事知らないし、松本さんの事だって……それにまだ卒業したての雛ですよ……」
かえで「仕事ってもんは経験とか技術とか関係ないの、その仕事に対する愛着と真剣さがあればいい……それが貴女にはある、どうかしら、貴女となら出来そう」
つかさ「……突然そんな事言われても……」
返答に困ってしまった。すぐにはいとかいいえなんて言えない。そんな私を見て松本さんは笑い出した。
かえで「ふふふ、真剣に考えるなんて……純情と言うのか、正直と言うのか……本当に最近には珍しい子だよ……」
もしかしていじられちゃったかな。いつも私はそうなんだよね。作業の手を止めて小さくため息をついた。すると松本さんはエプロンを付けてフライパンに火をかけた。
かえで「……柊さん、あの神社に行くんでしょ……私の作った料理も持って行ってほしい、浩子が好きだったパンケーキ……メープルシロップは別にしておくのが好きだった」
つかさ「松本さん……それなら明日一緒に……」
かえで「貴女に出来るかしら、友達でも家族でもいいわ……そんな人が自ら首を吊ってしまった現場を見に行く勇気が……私には、ない」
また返答に困ってしまった。身近に自殺した人なんて居ない。
かえで「パンケーキ、浩子が死んでから作るのははじめて、あいつね、呼び名はホットケーキの方が正しいって言うのよ……それで何度か論争した事がある……
     ふふ、そんなの私から言わせればどっちでもいいわ……」
微笑みながら辻さんの話をしだした。辻さんがどんな人だったのか分ったような気がした。
かえで「止められなかった、分ってれば止められたのに……なんで……喧嘩したのが原因だったのは分ってる」
つかさ「喧嘩?」
かえで「自殺する前日、店のレイアウトで喧嘩になってね……洋菓子のお店を出す話自体がダメになったのよ……」
違う、それが原因ならまなちゃんがそう言ってる。直接の原因は婚約者の死。喧嘩のせいじゃない。
つかさ「遺書とかがあるの?」
436 :つかさの一人旅  16 [saga]:2010/12/18(土) 00:05:02.94 ID:M.aWGb.0
かえで「無い、だけど分るわ……もう過ぎたことね、話を聞いてくれてありがとう」
作ったパンケーキとシロップを綺麗に三つ目の重箱に盛り付けた。
かえで「残ったスペースに稲荷寿司をいれてね、全部入るでしょ」
松本さんはエプロンを外して片付け始めた。
つかさ「えっと、その話の事なんですけど……」
かえで「……冗談だと思ったかしら、私は本気よ、柊さんと店を作ってみたい、きっといいお店になると思う……返事はすぐにじゃなくていい、考えておいて」
私が言いたかったのはその話じゃなかった。でも言えない。辻さんの話をするにはまなちゃんの事を話さないと信じてくれない。だめだ。話したら余計に信じないかも。
かえで「明日は何時に立つの?」
つかさ「え、あっ、まだ考えていません……お昼過ぎかも」
かえで「そう、駅まで送ってあげるわ……先に帰らないようにね!」
手を上げて挨拶すると松本さんはタイムカードを押してそのまま厨房を後にした。

 今働いている店もそんなに悪いところじゃない。だけど……松本さんが焼いたパンケーキ、フライパンの温度を温度計でちゃんと測っていた。
小麦や水だってそうだった。もしかしたら攪拌してる時間や回数も測っていたかもしれない。盛り付けられたパンケーキはフワっとしてて私も食べたいくらいの焦げ具合。
食べるのを想像してたら生唾が出てきた。松本さんにお菓子や料理を習うのもいいかもしれない。なんてね、しまった。感想を聞くのを忘れてた。
何も言わなかったからたいしたことなかったのかな。なんかまなちゃんに食べてもらうのが怖くなった。お姉ちゃんの作ったのより不味いなんて言われたら……
でも約束したんだしもうこれで行くしかない。最後の稲荷寿司を箱に入れて厨房を片付けた。

 部屋に戻ると入り口にリュックサックが置いてあった。松本さんが置いてくれたんだ。丁度三段の重箱が入りそう。早速箱を袋に入れた。ホッとしたのか大きなあくびが出た。
眠くなった。明日は早いしもう寝よう。おやすみなさい。


『ジリリリリー!!!』

 家から持ってきた目覚まし時計の音で目が覚めた。スイッチを押して音を止めた。起き上がった一回大きく背伸びをした。ふと窓の外を見るとまだ暗い。今度は大荷物を持って
あの階段を登る。だから少し早めに起きた。身支度を整えて早速出発。
女将さんは既に起きていて玄関の掃除をしてた。神社に行くって言うとまた自転車を貸してくれた。

 考えてみればこれでもうこの階段を登るのは三回目になる。しかも三日連続で。何でだろう。普段なら運動なんて自分からはしないのに。頂上の景色が綺麗だから、
木洩れ日の風景が幻想的だから、まなちゃんが居るから……そんなの考えてもしょうがないか。でも昨日はあんなに早く登れたのに。荷物を持ってるとは言え一段一段登る事に
足が重くなっていく。息も切れて苦しい。空は明るくなってきた。もうすぐ日の出。急ごう。
437 :つかさの一人旅  17 [saga]:2010/12/18(土) 00:07:04.04 ID:M.aWGb.0

 頂上に着いた。林の奥にへと足を運んだ。居た。まなちゃんが居た。人間の姿で石の上に座っていた。私に気付くとにっこりと微笑んだ。
つかさ「おはよう、約束通り稲荷寿司作ってきたよ」
リュックから重箱を取り出した。まなちゃんは微笑んでいた。
つかさ「あっ!、そうそう、まなちゃんのその姿って辻浩子さんって人じゃないかな」
まなちゃんは黙って頷いた。
つかさ「やっぱり……私その人の友達と会ったんだよ、それでお供え預かったんだ……まなちゃん、聞き難いんだけど……その辻さんって人どこで亡くなったのか知ってる?」
まなちゃんは頭上を指差した。私はその先を目で追った。大きな枝がせり出している。枝にロープを結んで……まなちゃんが座ってる石を踏み台にしたみだいだ。
つかさ「まなちゃん悪いけどその石の上に預かったホットケーキ置きたいんだ……いいかな?」
まなちゃんはゆっくりと立ち上がって退いた。そういえばさっきから黙っちゃって。そうか昨日言ってた。変身したての時って体を上手く動かせないって。悪いことしちゃったかな。
つかさ「ごめん、変身したばっかりなんだね、すぐ終わるからちょっと待ってね」
三段目の箱を石の上に置いた。ホットケーキと稲荷寿司も一緒だけど、きっと彼氏、婚約者さんもきっと一緒に居ると思ってそのままにした。
つかさ「辻さんの友達、松本かえでさんって人が作ったホットケーキ……じゃなかったパンケーキ……どう違うんだろ……松本さんはパンケーキって……どっちでもいいかな……」
まなちゃんは笑った。ちょっと苦しそうだった。
つかさ「ちょっとの間冥福を祈らせてね……」
私は目と閉じて手を合わせた。まなちゃんの笑いが止まった。暫く静寂が続いた。

つかさ「ありがとう、一緒に祈ってくれて……あ!!、まなちゃん、今食べちゃったでしょ……まったく……あれ?」
まなちゃんの口の周りにパンケーキの欠片がついている。良く見ると目から涙が出ていた。パンケーキを食べちゃって辻さんに対する想いを読み取っちゃったのかな。
もらい泣きしそうになった。私の作った稲荷寿司はどうなんだろう。私の想いは伝わるかな。
つかさ「むやみに食べるからだよ……」
気を取り直そう。残りの二段の箱を同じ石の上に並べた。
つかさ「あまり自信がないけど……稲荷寿司だよ、中身は五目にしたり酢飯にしたりしてるから……まなちゃんならこのくらい食べられるよね……」
まなちゃんは私を見ていた。もう少し辻さんの事を聞いてみたい。
つかさ「私、辻さんの事もう少し聞きたいな……松本さんね、辻さんが自殺する前に喧嘩しちゃったんだって……まなちゃんなら分るよね、辻さんの気持ち……」
あれ、さっきから私を見てばかりで稲荷寿司に手を出そうとしてない。私の質問に答え難いのかな。それとも量が多すぎたかな。
つかさ「ごめん、食べに来たんだよね、もう何も聞かないから食べて」
さっきの涙で分った。少なくとも松本さんと辻さんの絆は喧嘩くらいじゃ切れないって。
まなちゃんは手を伸ばして稲荷寿司を掴んだ。次の瞬間、私の視界からまなちゃんが消えた。
『ドサ!!』
地面に何かが叩きつけられるような音が鳴った。見下ろすとまなちゃんが倒れていた。
つかさ「フフフ、まなちゃんまたそんな悪戯しちゃって……いくら私でももう騙されないよ……」
まなちゃんはピクリとも動かない。
つかさ「ちょ、ちょっと、まなちゃん……どうしたの」
私は腰を下ろしてまなちゃんを揺すった。だけど動かない。突然まなちゃんの体が白く光ったと思うと狐の姿に戻ってしまった。何がなんだか分らない。
つかさ「変身するのが早かったんだよね……失敗したの……ねぇ、返事して……」
全く反応がない。あれ、毛が少し赤くなってる。良く見ると全身から血が出てる……傷が、全身に傷がいっぱい付いてた。そして。首に大きな切り傷があった。
もしかしてこの傷の為に喋れなかった。私は慌ててハンカチを出して傷口を押さえた。ハンカチが少しづつ赤く染まっていく。
つかさ「何処で……なんで、こんな大怪我してるのに来たの」
このままじゃダメだ。下に降りて手当てしないと。まなちゃんを抱きかかえようとした。
『ガサガサ』
茂みが激しく揺れた。茂みを割るように狐が出てきた。大きい。まなちゃんよりひとまわり大きいくらい。私を睨みつけてきた。思わずまなちゃんを離して二、三歩後ろにさがった。
狐はゆっくりと私に近づいてきた。ちょうどまなちゃんの目の前まで近づくと止まった。
『ガルルル』
狐は唸ると前足でまなちゃんの頭を踏みつけた。そしてまた私を睨みつけた。この大きい狐。よくみると前足に血が付いている。口元にも血が付いている。もしかしてまなちゃんを
傷つけたのはあの大きな狐。どうして。仲間じゃないの。
438 :つかさの一人旅  18 [saga]:2010/12/18(土) 00:10:28.04 ID:M.aWGb.0

 眉間から鼻にかけて大きな皴が何本もつけ牙をむき出して私を睨んでいる。狐、違う、犬、狂犬、と言うより狼みたいだった。怒りをむき出しにしている。まなちゃんを踏みつけて
こうなったのはまるで私のせいと言わんばかりだった。私を許してくれたんじゃなかったの……そうか……許してくれたのはまなちゃんだけだったんだ。
大きな狐は茂みの方を向きまた唸った。茂みが揺れるとまなちゃんと同じくらいの大きさの狐が何匹も出てきた。十匹くらいはいるだろうか。彼らも牙をむき出して私を睨んでいる。
私を取り囲もうとしている。逃げようとしたけど体が動かない。まなちゃんの時と同じ。

 そうだよね。おめでたい考えだった。人間と狐。ましては神様とまで言われた狐さんと仲良くなること自体が無理なんだよね。狐狩りで殺された仲間の怨を晴らす為に私が
選ばれた。まなちゃんは私を殺すのを拒んだ。だから傷だらけになっちゃったんだ。御礼なんかしちゃいけなかったんだ。今朝一番の電車で帰らなきゃいけなかったんだ。
私はまなちゃんに甘えていただけだった。この狐さんたちは仲間が殺されて許さないんだ。
大きな狐は前足をまなちゃんから外すと石の上の重箱に移動した。クンクンと周りの臭いを嗅ぐと箱をひっくり返した。稲荷寿司が地面に撒き散らされた。大きな狐は
大きく唸った。他の狐達が近づき落ちた稲荷寿司を前足で踏み潰し始めた。私の作った稲荷寿司は誰も食べることなく踏み潰されていく。途中から大きな狐も潰し始めた。
私はそれをただ見ていた。違う。見せ付けられていた。もういいよ。こんな事したって悲しいだけだよ。そう言いたかったけど怖くて声が出なかった。

 稲荷寿司を潰し終えると大きな狐は私に近づいてきた。もうまなちゃんのような事は期待出来そうにない。私はこのまま殺されちゃう。家族や友達の顔が脳裏に浮かんで来た。
もう逢えないんだね。目を閉じて祈った。帰りたい。もう一度皆と逢いたい……


 どのくらい経ったか何も起きない。急に体が軽くなった。ゆっくり目を開いた。狐達の姿が見えない。目の前に傷だらけのまなちゃんが倒れていた。
つかさ「まなちゃん!!」
駆け寄った。まなちゃんは小刻みに呼吸をしている。傷からはもう血が出ていない。虫の息だった。私の出来ることはもうなにも無い。そう思った。
つかさ「なんで、なんで、言ってくれなかったの、私はバカだから何も分らないよ、説明して……私の代わりに……なんだよね……返事してよ、ねぇ」
何も言わない。言えるはずもない。そんなのは分ってた。まなちゃんの呼吸がみるみる弱まっていく。
つかさ「もう一度人間に戻ってよ、もう一回笑って……私の作った稲荷寿司食べて感想聞かせて……約束したでしょ……」
まなちゃんを両手で抱きかかえた。まなちゃんの目がゆっくりと閉じていく。
つかさ「まなちゃん、まなちゃん!!!」
何度も名前を呼んだ。何度も呼んだ。そしてまなちゃんの呼吸が止まった。
初めてだった。生き物が死んでいくのを目の当たりにするのは。こんなに簡単に……そして呆気なかった。涙すら出ない。
まなちゃんの体が白く、淡く光りだした。私の目のまで蒸発するようのまなちゃんの体が消えていく……そして、何も無くなった。

 静寂が戻った。狐達の気配はない。もう茂みの奥に帰ってしまったみたい。両手にいたはずのまなちゃんも居ない。辺りを見回すと踏みつけられた稲荷寿司が散乱している。
さっき起こった出来事は本当だった。潰れた稲荷寿司を一つ一つ拾って一箇所に集めた。葉っぱを被せて埋めた。土に還って肥料にでもなるかな。
ふと石を見ると三段目の箱が置いてある。中身はそのままの状態だった。松本さんの作ったパンケーキ……私の作った稲荷寿司は食べる価値もなかった。きっとそうなんだね。
ひっくり返った箱をリュックの中に入れた。そして三つ目の箱の中のパンケーキを出して直接石の上に置いた。空になった三つ目の箱もリュックの中に入れた。
ここはもう私が来ちゃいけない所なんだね。まなちゃんの笑顔が頭から離れない。私も最後は笑顔で去ろう。
つかさ「さようなら……」
笑顔だったどうかは分らないけど今出来る精一杯の笑顔だったと思う。
439 :つかさの一人旅  19 [saga]:2010/12/18(土) 00:12:48.42 ID:M.aWGb.0

 突然階段を勢いよく登る音が聞こえてきた。音のする方向を見た。松本さんだった。私を見つけると駆け寄ってきた。息が切れている。
かえで「ハァ、ハァ……自転車が置いてあったから……まだ居ると思った……良かった……」
つかさ「どうしたの……」
かえで「どうしたのじゃないでしょ……もうとっくにお昼回ってるわよ……まだ戻ってこないから……淳子さんと話しててもしやとおもって来たのよ」
腕時計をみてみた。もうそんな時間になっていた。私ったら時間を過ぎるのも忘れていたんだ。
つかさ「淳子……さん?」
かえで「女将さんの名前よ……」
それって昨日の私と同じ。心配そうに私を見てる。昨日も私もそんなだったに違いない。そんな私を見てまなちゃんは言ったんだったね。
つかさ「私……自殺すると思った、それとも宿代を払わないで帰ったと思った?」
自然に出た言葉だった。普段の私ならこんな皮肉は言わないし思いも付かない。
かえで「……バカ……もうあの時のようなのは御免だよ……」
松本さんは私を抱きしめてきた。意外な反応だった。私はまなちゃんにそんな事はしていない。私もするべきだったのかな、恥ずかしいな。でもちょっと嬉しかった。
かえで「いままで何をしてたの?」
つかさ「……箱をひっくり返しちゃって稲荷寿司全部ダメにしちゃって……それを片付けてた……でも松本さんの作ったパンケーキは大丈夫……」
松本さんは笑った。
かえで「柊さんて意外とおっちょこちょいね、折角作ったのに……その程度で良かったわ……さあ、行きましょ、お昼作ってあるから食べてから帰って」
つかさ「松本さん、パンケーキは大丈夫でした」
帰ろうとする松本さんを私は止めた。
かえで「何?」
私を不思議そうに見ている。
つかさ「ここまで来たのだから辻さんに……会って行きませんか?」
かえで「……彼女は私を、この世を捨てたの……今はまだそんな気になれない」
つかさ「今しないで……いつするの?」
松本さんは黙ってしまった。
つかさ「辻さんは松本さんと喧嘩したから自殺したんじゃない、婚約者の事が忘れなくて……」
かえで「なんで貴女にそんなのが分るの、それにどっちだって同じよ……」
松本さんはそのまま階段を降りようとした。
つかさ「……自殺じゃなかったら会えたの、病死だったら、交通事故死だったら……」
松本さんは止まった。
つかさ「どんな死に方したって同じだよ、悲しいのは同じだよ……だから冥福を祈ってあげて……」
かえで「柊さん……さっきの喧嘩じゃないって言い切り方といい、どこからそんな自信が……昨日の時とは大違いね……」
別に自信なんてなかった。ただまなちゃんがそう言っているような気がしたから。それだけだった。
かえで「……突然だった、そう、突然だった、もう二年も経つのにまだ受け入れられなかった……死に方ね、病死だとしてもきっと今と同じだったかもしれない……ごめん、
     少し時間くれるかしら……」
わたしは頷いた。松本さんは林の奥に入っていった。石の上のパンケーキの所で立ち止まった。
かえで「浩子……貴女はバカね、私よりも先に逝くなんて……放っておいたって老いで死ぬのよ……毎日来て言ってあげる……バカって……うう」
そのまま石のに崩れるように泣き出した。わたしも一緒に泣きたかったけど何故か涙が出てこない。
そういえばまなちゃんは辻さんを止められなかったって悔やんでた。それならばせめて、その友達に冥福を祈らせたい。
つかさ「まなちゃんこれしか出来なかったけど、良いよね……」
小さく呟いた。急に松本さんを照らすように木洩れ日が差し込んできた。最初にここに来たのと同じ……綺麗な光景だった。まなちゃんが私の問いに答えてくれたみたい。
松本さんはしばらく泣き続けた。いままでの分を取り戻すように……


440 :つかさの一人旅  20 [saga]:2010/12/18(土) 00:14:25.86 ID:M.aWGb.0

つかさ「駅まで送ってくれてありがとう」
かえで「私こそ……ありがとうを言わさせて、何て言っていいか……」
松本さんは本当に駅まで送ってくれた。しかも仕事を休んでくれた。
つかさ「私は……何もしていませんし何も出来ませんでした」
かえで「つかさが居なくなると寂しいわ……昨日言ったの是非検討してみて」
つかさ「一緒にお店をって話ですか?」
松本さんは頷いた。
かえで「そうよ、昨日以上にそう思うようになったわ、貴女となら出来そう……決して浩子の代わりなんて思っていない、つかさ、柊つかさとして誘っている」
その言い方はとっても嬉しかった。でもはいともいいえとも言えなかった。決められない。
かえで「つかさが拒否したとしても安心して、店を出すのはもう決めているの……あとは貴女次第よ、だから……一ヶ月後返事をくれればいいわ」
私達は携帯電話の番号とメールアドレスをお互いに教えあった。
かえで「ところであの神社でお参りって何をしたの……つかさは神社の娘って言ってたけど……」
私は返答に困ってしまった。本当の事なんていえるわけもない。
かえで「いいわ、もう聞かないわよ人それぞれよね……一人旅してるのよね、今度は何処に行くの?」
つかさ「まだ……決めていません」
かえで「そう……それならこの電車で暫く行った所にいい温泉があるわよ……つかさは温泉好きそうだし……駅名はね……」
つかさ「あ、別に教えてくれなくてもいいです……」
かえで「そう、残念ね……あ、電車が来たわ……それじゃ……」
つかさ「ありがとうございました、女将さんによろしくって、旦那さんにも……」
私達は固い握手をした。

 電車が離れるまで松本さんは私を見送ってくれた。窓の外を見た。田んぼの向こうに小高い山があった。きっとあれが神社の山に違いない。
まなちゃんにもう一度逢いたい。だけどまなちゃんの仲間が私を憎んでいる。もうあの神社には行けない。私は山が見えなくなるまで窓の外を眺めていた。

 もう深夜近い時間だった。私は自分の家の玄関の前に立っていた。予定より一日早い帰宅だった。電車の中で地図を見てどこに行こうか迷っている間にいつの間にか
帰ってきてしまった。松本さんの教えようとした温泉でも良かったのかもしれない。でも私は断った。きっと教えてもらっても同じように帰ってきてしまったのかもしれない。
つかさ「ただいま」
かがみ「おかえり……って一日早いわね……さてはホームシックにかかったな」
長旅じゃなかったににお姉ちゃんの声が懐かしい。なんでだろう。おねえちゃんは今でテレビを見ていた。私に背を向けてる。
つかさ「お父さん達は……」
かがみ「なんだか知らないけどカラオケ行ったわよ……私はお留守番」
つかさ「こんな事滅多にないのに……一緒に行けばよかったのに」
かがみ「私はそうゆうの苦手だし……そろそろつかさが帰ってくると思ったのよ、鍵がかかってちゃ入れないでしょ」
私は家の鍵を持ってる。へんな言い訳。お姉ちゃんは振り返り私を見た。
かがみ「夕食は済ませてきたの、つかさ、あんた暫くみていなのに感じが変ったわね……何かしら、大人びているというのか……さては旅で何かいい事あったのね……」
良い事なんかなかった。急に松本さんが泣いている姿が脳裏に映った。目が急に熱くなった。涙が出てきた。なんで今頃になって。家に着いてほっとしからかな。
お姉ちゃんは驚いて私を見ている。
つかさ「お姉ちゃん……私……」
だめ、言葉が出ない。出るのは涙ばっかり。私は何も変ってない。まなちゃんに稲荷寿司さえ食べてもらえなかった。何も出来なかった。見てるだけだった。子供だよ……
松本さんの誘いにも何も返事ができなかった。 私はまだまだ子供なんだ。
つかさ「うわーん」
かがみ「何があったのか知らないけど……とにかく無事でよかったわ……」
子供の頃と同じように私はお姉ちゃんに抱きついて泣いた。お姉ちゃんに甘えられるのも何回も出来ない。それでも今はただ泣いていたい。涙が枯れるまで……

441 :つかさの一人旅  21 [saga]:2010/12/18(土) 00:16:07.12 ID:M.aWGb.0

「つかさ」
誰か私を呼んでいる。
「つかさ」
誰?誰なの……もしかしてまなちゃん?
真っ暗だよ。
「おーい」
何処なの、分らないよ。ごめんね、私、来ちゃいけなかった。
どうしたの。なんで黙ってるの。私はどうしたら良かったの。教えて……黙ってちゃ分らないよ。

ねえ、どうしたら、良かったの……


 耳元に生あたたい風が吹いた。
つかさ「ひゃ!!」
私は飛び上がった。周りを見渡した。ここは……そうだった。私、巫女の手伝いで御守り売り場に居たんだった。
まつり「こんな所で寝ちゃだめじゃない……参拝者が来たらどうするの……っと言ってもこの時間じゃ人も来ないわね」
私の真後ろにまつりお姉ちゃんが立っていた……私はこんな所で寝ちゃってたのか。耳に息を吹きかけられたみたいだった。
まつり「最近どうしたの、元気ないね……旅から帰ってきた辺りからさ」
つかさ「そんなことないよ、普通だよ」
まつり「……まぁいいか、交代しようか」
私は時計を見た。
つかさ「まだ交代時間には早いけど……」
まつり「つかさにお客さんだよ」
つかさ「私に、誰だろう……」
まつりお姉ちゃんの目線を追った。
みゆき「おはようございます、つかささん」
そこにはゆきちゃんが立っていた。突然の訪問だった。
つかさ「おはよう……あれ、今日来るって言ってったっけ?」
みゆき「今日はかがみさんと約束があったのですが……どうしてもつかささんと話したい事がありまして」
つかさ「あと少しで交代だから……先にお姉ちゃんに会ったらいいよ、お姉ちゃんならこの奥でお掃除してるから……」
まつり「はいはい、話の続きは売り場から出てからにしてちょうだい」
まつりお姉ちゃんは私にウインクで合図をした。ありがとうまつりお姉ちゃん。


442 :つかさの一人旅  22 [saga]:2010/12/18(土) 00:17:23.08 ID:M.aWGb.0

 私達は御守り売り場から離れて少し離れた休憩所のベンチに座った。
ゆきちゃんは私を見て心配そうな顔だった。
みゆき「眠れないのですか?」
さっきの私を見ちゃったのかな。ちょっと恥ずかしいな
つかさ「うん……」
みゆき「無理もありませんね、旅先でのあの出来事を考えれば……」
旅から帰って数日後、私はゆきちゃんに旅先の出来事の一部始終を話した。別に誰でも良かった。お姉ちゃんでもこなちゃんでも。お母さんでも良かった。その時たまたま
ゆきちゃんが近くに居たから話した。信じてくれないと思った。ゆきちゃんは真剣に聞いてくれた。それだけで嬉しかった。
つかさ「時々夢にまなちゃんが出てくるの、何も言わないまなちゃんが……私、あの時どうしたらいいのか分らなかった、あれで良いなんて思わないよ……眠れない……」
みゆき「そうですか夢にまで出てきているのですね……つかささんはあれで良かったのです」
つかさ「えっ……良かったって、何を言ってるのゆきちゃん」
良かったはずなんかないよ、あれでいいはずなんかない。
みゆき「真奈美さんはつかささんの稲荷寿司に全てを賭けたのです、だからつかささんと約束をした……」
つかさ「ちょっと待って、お話があるって……旅の話なの?」
ゆきちゃんは頷いた。なんで今になってそんな話をするんだろう。私は不思議に思った。
みゆき「つかささんはいろいろ思い違いをなされていると思いまして……私の出した結論と真奈美さんの想いが同じだという確証はありませんが……聞いてくれますか?」
つかさ「まなちゃんはもう居ない……勘違いしたって同じだよ、もう旅の話は聞きたくない……また思い出しちゃう……」
みゆき「……そうですか、残念です」
ゆきちゃんは立ち上がった。そして帰ると思ったけどそのまま私を見て言った。
みゆき「つかささんは松本さんに辻さんの冥福を祈らせたではないですか、その時につかささんが言った言葉……そのままつかささんに言ってもいいですか?」
あの時の……そうだった。私は松本さんに言った。私はあの時の松本さんと同じなのかもしれない。ゆきちゃんはじっと私を見つめて私の返事を待っていた。
つかさ「……今の取り消すよ……ゆきちゃん座って……聞かせて」
ゆきちゃんはにっこり微笑むとまた座った。
みゆき「えーと、何処まで話しました?」
つかさ「私の作った稲荷寿司……ゆきちゃん、稲荷寿司は全部潰されちゃったんだよ、全部……松本さんのパンケーキだけが残った、きっと松本さんの想いが強かったから」
ゆきちゃんは興奮気味も私を宥めるように話しだした。
みゆき「つかささん、稲荷寿司を作るっている時何を思っていましたか?」
443 :つかさの一人旅  23 [saga]:2010/12/18(土) 00:18:53.93 ID:M.aWGb.0
つかさ「何をって……まなちゃんに美味しく食べてもらおうと思って……」
みゆき「一度でも殺意を抱いた者に対してそこまで親しく出来るでしょうか、誰にでも出来るとは思いません……真奈美さんは分っていた、つかささんがそうやって作るのを、
     その想いの篭った稲荷寿司を仲間の狐さん達に……つかささんの優しさを教えれば怒りも鎮まると」
つかさ「それなら松本さんのパンケーキも同じだよ……私よりももっと想いは強かったと思う」
みゆき「松本さんの作ったパンケーキは真奈美さん以外食べていないと聞きましたが」
つかさ「私の作ったのも誰も食べていない……私の気持ちなんか誰も読み取れないよ……」
みゆき「それが思い違いです……食べる必要なんかないのです、つかささんは言いましたね、真奈美さんはどうやって辻さんの自殺した心情を理解したのですか?」
つかさ「辻さんの吊るしたロープを触れて……あっ!」
そうだった。私は勘違いをしていた。
みゆき「そうです、狐さん達は稲荷寿司を踏んで潰した、怒りに任せて……自分達に能力があるのを忘れるくらいの怒り……踏む度につかさんが真奈美さんを想う心情が
     狐さん達に染みていったことでしょう……だから三つ目の箱に入ったパンケーキは潰せなかった……つかささんを殺めることができなかった、
     つかささんと真奈美さんの絆が狐さん達の怒りを鎮めたのです」
つかさ「……それが本当だとしても……まなちゃんは帰ってこない……」
みゆき「そうですね、帰ってきませんね、死とはそうゆうものです、真奈美さん、辻浩子さん……そして七十年前に狐狩りをした人も狩られた狐さんも……今はただ祈るばかりです」
ゆきちゃんは手を合わせて祈りだした。私もつられるように祈った。
みゆき「今、一番辛いのは真奈美さんの仲間達かもしれませんね、私達人間を怨んでいたはずが自分の仲間を憎み、傷つけ……その果てに……皮肉ですね」
つかさ「ゆきちゃんそんな事言わないで……まなちゃんが可哀想だよ」
みゆき「すみません、失言でした……」
私と同じ気持ちに狐さん達がなったとしたら辛い気持ちになってるのは理解できる。しゅんと落ち込んでしまったゆきちゃん。ちょっと強く言い過ぎちゃった。
私は財布を取り出して中から葉っぱを取り出した。
みゆき「それは?」
つかさ「これ?これはね、旅館でまなちゃんが旅費代ってくれたんだよ……次の日見てみたらただの葉っぱ……まなちゃんは悪戯好きなんだよ……笑っちゃうでしょ」
みゆき「やはりつかささんは笑顔が一番ですね……そうでなくてはいけません……」

 暫く私達は葉っぱを見つめていた。
ゆきちゃんの話を聞いたらすこしだけど引っかかりが取れたような気がした。でも、私には決めなければならない事があった。
つかさ「ゆきちゃん……聞きたい事があるんだけど……」
みゆき「松本さんの誘いの件ですか……期限が迫っていますね」
もう分っちゃってる、ゆきちゃんの意見を聞きたかった。
みゆき「私はまだ学生です、もう既に社会に出ているつかささんに私が言えることなんてありません……」
つかさ「そうな冷たくしなくても……私、どうしていいか分らないよ……」
でも実際はそうかもしれない。自分で決めないといけない。
みゆき「私はとっくに決めていると思いましたけど……違いますか?」
そんな笑顔で言われても……
みゆき「かがみさんから聞きました、最近夜食にパンケーキばかりだしてくると、嫌いではないけど毎日出されると困ると言ってましたよ……松本さんの作り方の研究ですね?」
材料の量、フライパンの温度、焼き時間、全てはかってどれがベストか調べてたんだった。
つかさ「お姉ちゃんそんな風に思ってたんだ、お姉ちゃん何もいわないから……もう大体分ったからもう作るの止めるよ」
みゆき「ふふ……もう答えは出てますね」
確かに私は松本さんと一緒に仕事がしたい。だけどその為に皆と別れるのは辛いな。
みゆき「ところで、その持たれてる物なのですが……つかささんは葉っぱと言ってましたけど私にはどう見ても一万円札にしか見えません」
私は手元を見た。私にはどう見ても葉っぱにしか見えない。空にかざしてみても葉っぱだった。
みゆき「お稲荷様の秘術ですか、不思議ですね……本当は葉っぱか、お札か、分りませんね……術を解かない限り」
444 :つかさの一人旅  24 [saga]:2010/12/18(土) 00:20:27.46 ID:M.aWGb.0

かがみ「おーい、なに二人で話してるのよ……」
突然後ろから声がかかった。
つかさ「お姉ちゃん!!」
みゆき「かがみさん、おはようございます」
私とゆきちゃんは顔を見合わせた。
つかさ・みゆき「内緒のお話」
かがみ「……怪しいな、恋愛の話なら混ぜなさいよ」
私とゆきちゃんは首を横に振った。
かがみ「はー、私達にはそうゆう色気が無いのよね……がっかりするわ」
ため息をつくおねえちゃん。私たちの話は聞かれていないみたいだった。
つかさ「お姉ちゃん、掃除はもういいの?」
かがみ「もう片付けも終わった、みゆき待たせたわね」
みゆき「それでは行きますか」
ゆきちゃんは立ち上がった。
つかさ「ところでお姉ちゃんとゆきちゃん、何をするの?」
お姉ちゃんとゆきちゃんは顔を見合わせた。
かがみ「内緒にすることじゃないわね、こなたのやつが最近田村さんと組んでなにならコソコソとしててね、ちょっとお灸を据えないと思って、みゆきと日下部で作戦会議よ」
つかさ「日下部さんも来るんだ……それ、ちょっと私も興味あるかも……」
かがみ「つかさは甘いからダメよ……と言いたいけど興味があるならいいわ、いつもの駅前の喫茶店に居るから覗いてみて」
お姉ちゃんがこうゆうのに誘ってくれるのは初めてかもしれない。
みゆき「つかささん今から行きませんか?」
ゆきちゃんも私を誘ってる。私なんかあまり役に立ちそうにないのに。
つかさ「私はもう少しここに居るよ……頭の中を整理したいから」
みゆき「そうですか、それでは後ほど……」
445 :つかさの一人旅  25 [saga]:2010/12/18(土) 00:21:48.03 ID:M.aWGb.0
お姉ちゃんとゆきちゃんは楽しそうに休憩所を出て参道を下っていった。皆まだ学生なんだなと思った。小さくなっていくお姉ちゃん達を見ながらゆきちゃんの話を思い出した。
私を励ますために言ったのかもしれない。ゆきちゃんなら私の話した事に後からいくらでも説明でそう。でも私は確かに生きて帰ってきた。あの狐さん達の怒りの表情からして
急に消えたのが不思議だった。ゆきちゃんの言うのも納得できる。真実を聞きたいけど……まなちゃんにはもう聞けない。目が潤んできたのが分る。もうあの時に泣き尽くしたと
思ったのに。まだ涙が残っていたみたい。まなちゃんを思い出すと笑顔しか思い浮かばない。笑顔。そうだよね。私が来るのが嬉しかったんだね。それだけ分ればいいよ。
旅館で初めて会ったときの笑い、稲荷寿司を持っていった時のあの笑顔。それが全てを語っている。私も私なりに結論した。

 お姉ちゃん達が見えなくなった時だった。参道に日が差した。木々の間から淡い光が漏れている。木洩れ日の風景……綺麗……思わず見とれてしまった。
あの階段神社と同じ風景。初めて見たと思っていた。あの神社じゃないと見れないと思っていた。でもこの神社にも在った。不思議に思った。
日が差すのは珍しくない、私は子供の頃からこの景色を何度も見ていたのに何で今まで気が付かなかったんだろう。
旅をしたから気が付いた。普段この光景を見ていたから旅で気が付いた。
どっちでも構わない。もうこの光景は私にとっては掛け替えのないもの。それに気が付いた。もしかしたらそんなのがもっと沢山あるのかもしれない。
普段から満ち溢れて気が付かないで素通りしてしまう、あまりに当たり前で時には粗末に扱ったりする、だけど掛け替えのないもの……生命。
教えてもらっても気付かない。自分で気付かないと分らないんだね。今まで悩んでいたのがバカみたい。
まなちゃんも気付いたんだね。いつ気付いたの。もし私の出会いで気付いたのなら嬉しいな。

 私は何をしていいのか分ったよまなちゃん。稲荷寿司を作ってもう一度階段神社に行くよ、そして狐さん達に食べてもらう。今度は踏みつけないでくれるよね。
もちろんまなちゃんの分も作るよ。お稲荷さんとして供えるよ……約束だもんね。あの大きな狐さんはまなちゃんより食べそうだから多めに作るよ。
それから帰りに旅館に寄って松本さん……かえでさんに私が試行錯誤して作ったパンケーキを食べてもらう。それが私の答え。辻さんに対する私の気持ち。

 久しぶりに清清しい。風が私の涙を拭ってくれた。
私は手に持っていた葉っぱを財布にしまった。この葉っぱはまだまなちゃんの術がかかってる……そういえばこなちゃんが言ってった。ゲームの世界で呪いがかかった時、
その呪いを解くには呪いをかけた本人が解くか、死んだときだって。もしかしたら……ゲームと現実は違う、だけど希望があってもいいよね。
私の一人旅はやっと終わりそう。違う、これから始まるのかもしれない。

 さてと、まなちゃん、駅前の喫茶店に行って来るよ。もう一人の悪戯好きの親友こなちゃん、自業自得かもしれないけど助けなきゃね。




446 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/18(土) 00:23:14.19 ID:M.aWGb.0
以上です。
文章の悪さは勘弁して下さい。


自分の作っているssはもうないので以前上がった『時計』で作ってみようかと思います。
これも時間がかかりそうです。
447 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/18(土) 12:43:05.38 ID:M.aWGb.0
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ここまでまとめた

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448 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/18(土) 21:55:34.01 ID:nGvmqjco
乙でした
449 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage_saga]:2010/12/21(火) 19:16:36.82 ID:Jk8mphY0
speed3切ったけどどうしよ、なにか祭りした方がいいのかな・・・
450 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/21(火) 21:59:23.18 ID:aPq2fpo0
祭りいいね
451 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/22(水) 00:14:02.57 ID:UtKo8t60
個人的にはリレーSSやってみたい。これだけ過疎ってると繋がらない可能性があるから
期間は長めにとって。
丁度書き始めたssが1レス分ある。自分はこのまま書き続けるけど他の人がつなげるとどうなるか興味がある。他の祭りと併用してやりたのですがいかがでしょうか?
452 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage_saga]:2010/12/22(水) 18:55:09.71 ID:Cff4Uss0
>>451
いいと思います
と文章力もクソもない俺が言ってみる
453 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/22(水) 22:28:34.41 ID:FRbJpQk0
ええじゃないかリレーSS
参加できるかわからんが支援するぜ
454 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/22(水) 22:36:50.73 ID:FRbJpQk0
ええじゃないかリレーSS
参加できるかわからんが支援するぜ
455 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/22(水) 23:49:34.95 ID:UtKo8t60
どうもです。
確かリレールールを決めないといけないかな。

基本は一人1レス。
7レスで完結。分岐は2回まで。期限は1月末くらいまでにしてみるかな。

意見がなければ土曜の0時あたりにでも始めたいと想います。
456 :つかさのだいえっと [saga]:2010/12/23(木) 12:57:26.77 ID:qWXePX.0
投下いきます。

457 :つかさのだいえっと [saga]:2010/12/23(木) 12:58:36.33 ID:qWXePX.0
 とある日の柊家。つかさとかがみは、ポッキーをかじりながらテレビを見ていた。
「なに、かがみ。ダイエット成功したと思ったら、もうお菓子?また太るわよ」
 そこに入ってきたまつりが、からかい口調でかがみにそう言った。
「大丈夫よ。今度は考えて食べてるから」
 むっと口を尖らせてかがみがそう言うと、まつりは呆れたように溜息をついた。
「それ、前も言ってたけど、結局今回のダイエットになったじゃない」
「…今度は大丈夫よ」
 かがみは強気に答えたものの、不安になったのかポッキーを食べる速度が少し遅くなった。
「それにしても、かがみに付き合ってよくお菓子食べてるわりには、つかさがダイエットしてるところ見たこと無いわね」
 まつりは今度はつかさに声をかけた。
「…え?…あ、わ、わたしはそういうのあまり気にしないから…」
 テレビに集中してたのか、少し間をおいてからつかさは答えた。
「ふーん…自分が作った料理の試食とかもしてるし、実はお腹周りエライことになってるんじゃないのー?」
 言いながらまつりは、つかさの服に手を差し込んできた。
「ひゃっ!?な、なにするのまつりお姉ちゃんっ!くすぐったいよー!」
 抗議するつかさを無視して、まつりはお腹の肉をつまみ…動きを止めた。
「…まつり姉さん?どうかした?」
 まつりの様子がおかしいことに気がついたかがみがそう聞くと、まつりはゆっくりとつかさから身を離した。
「つかさ…ごめん…ホントにごめん…」
「え、な、なに…?どうしたの…?」
 真剣な表情でうつむくまつりに、つかさは戸惑った。
「…あんたのお腹…シャレになってないわ…」



― つかさのだいえっと ―



458 :つかさのだいえっと [saga]:2010/12/23(木) 12:59:16.82 ID:qWXePX.0
 お昼休み。いつもの四人が集まり、いつも通りのお昼ご飯。
「………ん?」
 そのはずだったのだが、どうにもいつも通りではない違和感に、こなたは首をかしげた。
「つかさ、ご飯は?」
 自分にかがみ、みゆきの前にはお昼ご飯があるというのに、つかさの前には飲み物が入ってるであろう水筒があるだけだった。
「…えーっと…ちょっと食欲がなくて…」
「わたしじゃあるまいし、素直にダイエットって言いなさいよ」
 誤魔化そうとするつかさの横から、かがみがあっさりと真相をばらした。それを聞いたこなたとみゆきは、どちらとも無く顔を見合わせた。
「…ダイエット?」
「…かがみさんでなく、つかささんが?」
 そして二人とも信じられないといった表情で、つかさとかがみを見比べた。
「わたしなわけないでしょう。ダイエット成功したばっかなんだし」
 かがみの言葉に、こなたは風呂上りっぽい時間に電話でダイエット成功譚を披露されたのを思い出した。
「そう言えば、お電話でそのようなことを…」
 そうポツリと呟くみゆきの方に、こなたは顔を向けた。
「あ、みゆきさんもかがみから電話きたんだ」
「はい」
 みゆきも答えながらこなたのほうを向く。
「…ちなみに何時間?」
「…二時間ほどです」
「…わたしは三時間」
 そして、二人同時にかがみのほうを向いた。
「な、なによ。いいじゃない、嬉しかったんだから…少しくらい自慢話してもいいでしょ?」
「…いや、少しならいいんだけどね」
 こなたは困った顔で頬をかきながらつかさの方を向いた。
「でも、つかさってダイエットしたこと無いんじゃない?急にそんなの始めて大丈夫なのかな」
「大丈夫よ。経験者のわたしがついてるんだから」
 こなたの問いにかがみがそう答えると、こなたは再びみゆきと顔を見合わせた。
「みゆきさん…これが失敗フラグというものだよ」
「そうですか…勉強になります」
「…あんたらなー」
「いや、だってねえみゆきさん…」
「ええ、なんといいますか…」
 こなたとみゆきは同時にいつもの倍はあろうかというかがみの弁当を見た。
「い、いいでしょ別に。今回は理想体重よりだいぶ落ちたんだからさ…っていうかこれつかさの分も入ってるのよ。残したら勿体ないでしょ?」
 二人の視線に気がついたかがみが慌ててそう言うと、こなたはお手上げのジェスチャーをし、みゆきは困ったような顔で溜息をついた。
「な、なによー、いいじゃない…」
 二人の態度に文句らしきものを呟きながら、かがみはやや早いペースで弁当のおかずを口に放り込んだ。
 そして、三人がそんな話をしてる中、つかさはコップに入れた飲み物を黙ってチビチビと飲んでいた。



459 :つかさのだいえっと [saga]:2010/12/23(木) 13:00:58.23 ID:qWXePX.0
「あれは、まずいんじゃないかな」
 その日の放課後。こなたは一緒に帰り道を歩いているみゆきにそう言った。かがみとつかさは寄るところがあると、つい先ほど別れたばかりだ。
「あれとは…つかささんのことですか?」
「うん。いきなり絶食とかは良くないと思うんだけど」
 こなたの言葉に、みゆきは顎に人差し指を当てて考える仕草をした。
「でも、つかささんは食べ物や栄養といったものにはお詳しいですから、ちゃんと考えているのではないでしょうか。たとえば、家ではきちんと食べていて、お昼のみを抜いているとか…」
「ああ、なるほどね」
 こなたは納得したようにうなずいたが、すぐに眉間にしわを寄せた。
「けど…アドバイザーにかがみがついてるんだよね。かがみが強く勧めたら、つかさは断りきれないんじゃないかな」
「それは…そう…かもしれませんね…」
 歯切れ悪く肯定するみゆきに、こなたは苦笑して見せた。
「今ここにかがみいないんだし、そんな気使わなくていいよ、みゆきさん」
 軽い口調でこなたにそう言われ、みゆきは少し顔を赤らめて俯いた。そして、ふと何かを思いついたように顔を上げ、こなたのほうを見た。
「そう言えば以前かがみさんにも仰ってましたよね?」
「え、なにを?」
「絶食だけはするなって…泉さん。何かあったのでずか?」
「んー…いや、単に身体壊すからだってことなんだけど…ネットとかで話聞いてたら、絶食交えたダイエットで酷い目にあってる人、結構いるみたいだからさ」
「そうでしたか…」
 みゆきはまたもう少し考えると、今度はこなたの顔を覗き込んで微笑んだ。
「な、なに?みゆきさん…」
「なんだかんだ言っても、やっぱり泉さんは友達思いの方ですね。ネットで情報を仕入れたのは、かがみさんのためですか?」
「へ?い、いやそんなんじゃ…休まれたりしたら学校がちょっとつまんなくなるって感じで…」
「ツンデレですか?」
「は?ち、違うよそんなんじゃ…」
「ツンデレですね」
「違うってば…もー、みゆきさんなんか意地悪だよ。ってか新しく覚えた言葉使いたがる子供みたいだよ」
 むくれ顔でそう言うこなたを見て、みゆきはクスクスと笑い出した。
「すいません、なんだかかがみさんやつかささんが羨ましくて…」
「羨ましい?どうして?」
「こうやって、泉さんに心配していただけるのですから」
「いや、そんなの羨ましがられても…てか、みゆきさん心配するところないし」
「そうですか…なんだか残念です」
「本気で残念がられても困るけど…いや、みゆきさん、話ずれてきてるよ。つかさのダイエットのこと…って、あれ、かがみ?」
 こなたが驚いた声を上げながら前のほうを指差した。みゆきがそちらの方を見ると、かがみが一人で歩いているのが見えた。
460 :つかさのだいえっと [saga]:2010/12/23(木) 13:02:15.43 ID:qWXePX.0
「お一人でしょうか?」
「みたいだね…おーい、かがみー!」
 こなたの呼び声に気がついたかがみは、なにやら複雑な表情で近づいてきた。
「二人とも、まだこんなところに居たんだ」
「それはこっちの台詞だよ、かがみ。つかさはどうしたの?一緒じゃないの?」
 こなたがそう聞くと、かがみは頬をかいて横を向いた。
「いや、それが…歩いて帰るんだって…」
「…は?」
「…歩いて…ですか?」
 かがみの言葉に、こなたとみゆきは目を丸くした。
「い、家まで?…いや、いくらなんでもそんなことないよね。一駅だけ歩くとかそんなだよね」
「そ、そうですね。ウォーキングは健康にもいいですし…」
 こなたとみゆきの言葉にも複雑な表情を崩さないかがみに、こなたはなんとなく不安を覚えた。
「かがみ、どうかしたの?」
「…今日のお昼ご飯ね。抜くって言ったの、つかさなのよ」
「え、つかささんが…ですか?」
 こなたとみゆきは思わず顔を見合わせた。それを見たかがみがため息をつく。
「わたしはね、最初から無理なことしないほうがいいって言ったのよ。献立見直すとか、ほんの少し減らすとかそれくらいからやろうって…でも、もうお昼無しでいいってつかさが…」
 顔を見合わせながらかがみの言葉を聞いていた二人は、うなずきあうとかがみに向かって深々と頭を下げた。
「な、なに?」
「ごめん、かがみ」
「かがみさんのこと、誤解していたようです」
 かがみは首をかしげながら少し考え、昼の会話を思い出した。
「…そういや、失敗フラグとか言ってたわね。わたしが口出したせいで、つかさが無理してるとか思ってるわけね」
 かがみが睨みつけるような顔つきでそう言うと、二人はゆっくりと顔を逸らした。
「そうよねー。わたしのダイエットなんて失敗の方が多いものねー。この前のもたまたまかも知れないものねー。ふーんだ、どうせわたしはそういうキャラですよー」
「か、かがみさん、すねないでください…」
 ふてくされながら道端の小石を蹴り始めたかがみを、みゆきが懸命になだめようとする。こなたはそんな二人を見ながら、複雑な表情で頬をかいた。
「かがみ、いい感じに壊れてるなー。ダイエット成功したのがそんなに嬉しかったのかな…ていうか」
 こなたは、つかさが歩いて行ったであろう家のあるほうを向いた。
「なんか、嫌な予感がするんだよね」
 そして、ポツリとそう呟いた。


461 :つかさのだいえっと [saga]:2010/12/23(木) 13:03:26.39 ID:qWXePX.0
 その日の晩、こなたが部屋でベッドに寝転び漫画を読んでいると、傍らにおいた携帯が着信音を鳴らした。
「…かがみ?なんだろう…ほーい、なにー?」
 こなたが電話に出ると、ボソボソとかがみらしき呟き声が聞こえてきた。
「え?なに?かがみ、よく聞こえないんだけど…」
「…つかさが…ついさっき帰ってきたわ…」
「…え?」
 こなたはベッドから跳ね起きて部屋の時計を見た。部活をやっていたとしても、こんなに遅くはならないだろうと言うくらいの時間だ。
「え、ええええっ!?じゃあ、つかさマジで!?」
「…うん、家まで歩いて帰ってきたみたいなのよ…」
 思わず大声を出すこなたと、対象に疲れたような小声のかがみ。こなたは深くため息をついて呼吸を整えた。
「…で、つかさは?」
「寝てるわ…帰ってきてすぐにね。明日が休日でよかったわ。あの分だと確実に朝起きられないわね」
「親御さん、怒ってるんじゃ…」
「呆れてるって言うか…何言っていいかわからないって感じね」
「そ、そう…」
 正直なところこなたもどう言っていいのかわからなかったが、友人としてなにか言わなければと、懸命に言葉を捜した。
「と、とりあえずその…なんとか頑張って」
 だが、結局言えたのはそれくらいだった。そして、少ししてから携帯の向こう方コツンという音がして、電話は切れてしまった。
「…もしかしてうなずいたの?…大丈夫かな」
 友人の奇行に、こなたは小さくため息をついた。



462 :つかさのだいえっと [saga]:2010/12/23(木) 13:04:59.85 ID:qWXePX.0
「こなたー!つかさがいじめるのー!」
「…ナニゴトデスカ…」
 翌日のお昼過ぎ。いきなり家に来て泣きいてきたかがみに、こなたはどうしていいかわからずに、抱きつかれ揺さぶられるがままになっていた。
「いや、かがみ本気で落ち着こう…一体なにがあったの?」
「うぅ…お昼前につかさが起きてきたから、無理しないようにって言おうとしたら…」

『大丈夫だよ、わたし一人で出来るから』
『そう言ってもね…昨日もかなり無理してたでしょ?そう言うことならわたしが教えてあげるから…』
『…お姉ちゃんのダイエット、成功率低いからいいよ』

「ってつかさがーっ!」
「いや、いじめられてないっていうか、ホントのことじゃないかな…」
「こなたまでーっ!」
「…いやいや」
 こなたはどうしていいかわからず、天を仰いでため息をついた。
「泉さん、そういうことはあまりはっきりとは言わない方が…」
「いや、みゆきさん。そうは言ってもこういう場合…ってみゆきさん!?」
 自分の後ろから聞こえてきた声に驚きこなたが振り向くと、いつの間にかみゆきがちょこんと正座で座り込んでいた。
「お邪魔してます、泉さん」
「あ、うん。いらっしゃい、みゆきさん」
 丁寧に礼をしながら挨拶をするみゆきに、こなたも挨拶を返した。そしてこなたは、顔を上げて眉間にしわを寄せた。
「いや、っていうかなんでここにいるの?」
「実は、昨日のことが気になりましてつかささんを訪ねたのですが、かがみさんがこちらにと聞きまして…」
 行動を読まれているのか、律儀に行き先を言って出てきたのか、どちらにしてもかがみらしい間の抜け方だなとこなたは思い、そしてみゆきの言葉に疑問を感じた。
「いや、みゆきさん。それじゃ話が繋がんないよ」
「え、あ…そうですね。えっと、お家を訪ねたさいに、つかささんからかがみさんの伝言を預かりしまして、こちらに来ました」
「それを先に言おうよ…」
 半ば呆れながらそう言って、こなたはみゆきが来ている事にすら気がついていないのか、未だにうつむいてメソメソしているかがみの方に向き直った。
「かがみ、かがみ。みゆきさんがつかさからの伝言持ってきたって」
「…ふえ?」
 かがみはこなたの言葉に顔を上げ、そしてこなたの後ろにいるみゆきに気がついた。
「つかさの伝言?」
 かがみがそう呟くと、みゆきは微笑みながらうなずいた。
「もう帰ってくるなって?」
「いやいやいや」
 続いて出たかがみの呟きに、こなたは顔の前で左手を振った。
「いくらなんでもネガティブすぎでしょ」
「かがみさん、つかささんと喧嘩をされているわけではないのですから…」
「…うぅ、だって…」
「つかささんは、なんだかよく分からないから一度家に帰ってきて欲しいと仰ってましたよ」
「ホントに…?」
「はい」
 うなずきながら微笑むみゆき。かがみは少し考えるようにうつむいた。
「…うん、じゃあ…」
 そして聞こえてきたかがみのつぶやきに、こなたは安堵のため息をついた。
「こなた行って来てよ」
「なんでやねん」
 続けて聞こえてきたかがみの声に、こなたは思わず関西弁で突っ込んでいた。
463 :つかさのだいえっと [saga]:2010/12/23(木) 13:05:30.78 ID:qWXePX.0
「どー考えてもそれおかしいでしょ?筋とおんないでしょ?」
「だってー…なんか怖いし」
 詰め寄るこなたに、かがみが子供のように駄々をこねる。
「では、わたしと泉さんで行ってきますので、かがみさんはここで待っていてください」
 そして、それを見ていたみゆきがそう言った。
「え、みゆきさん?」
「それじゃ、参りましょうか」
 驚くこなたの手を取り、みゆきは半ば強引に部屋から連れ出した。後に残されたかがみが唖然とした表情でそれを見送った。



「…なんでこんなことに…っていうか、わたし部屋着のままだし」
 着ているパンダのワンポイントが入った服を引っ張りながら、こなたは隣を歩くみゆきを見た。
「ねえ、みゆきさん。こう言うのって、かがみ行かせないと意味無いんじゃないの?」
 そのこなたの訝しげな視線を、みゆきは笑顔で受け止めた。
「かがみさん、少しパニックになっておられたようでしたから、落ち着くための時間が必要かと思いまして」
「パニックねえ…つかさに信用されなかったのがそんなにショックだったのかな」
「だと、思います…かがみさんは、つかささんがまず最初に自分を頼るという事を、当たり前だと思っていたのではないでしょうか」
 みゆきの言葉に、こなたは納得がいかないかのように腕を組んで考え込み始めた。
「それが違ったからか…かがみってもしかして…」
 それを見たみゆきが苦笑する。
「あくまでわたしの憶測ですから、違うと言う可能性もありますよ。とりあえず、つかささんからもちゃんと話を聞いておきましょう…それと、泉さん」
「ん、なに?」
「その服、可愛いですから、外着として使っても大丈夫だと思いますよ」
「え、そ、そう…?」
 こなたは少し照れながら自分の服を見た。そしてしばらく歩いてから、いつの間にか自分の少し前を歩いているみゆきの方を見た。
「…別に、フォローしてくれなくてもいいところなんだけどな」
 そして、そうポツリと呟いた。



464 :つかさのだいえっと [saga]:2010/12/23(木) 13:07:03.27 ID:qWXePX.0
「…えーっと…なんでこなちゃんが?…ゆきちゃんもまた来てるし…」
 玄関先に立っているこなたとみゆきを見て、つかさは戸惑いながらそう言った。
「うん、まあなんて言うか…」
 こなたは自分の家にかがみが来てからの事を、つかさに簡単に説明した。
「…お姉ちゃん、もしかして怒ってるのかな…」
 それを聞いたつかさが不安そうに呟く。
「いや、あれは怒ってるんじゃないと思うけど…」
 こなたはそう言いながらみゆきの方をチラッと見た。それを受けたみゆきが一つうなずいてつかさの前に出る。
「かがみさんは、つかささんの仰られた事がショックだったようでして…どうしてあのようなことを?」
 みゆきがそう聞くと、つかさは困ったような表情をしてうつむいた。
「どうしてって言われても…ああ言わないと、お姉ちゃんが引いてくれないかなって思ったんだけど…」
 つかさは胸の前で指を絡ませながら、こなたとみゆきの顔色を伺うようにチラチラと視線を向けた。
「…えーっと…やっぱりわたしが悪い…のかな?」
 それを見たこなたとみゆきは、顔を見合わせて苦笑した。
「いやー、つかさは特に間違ったことは言ってないかと…」
「なんと言いましょうか…少しすれ違いがあったというだけかと…」
 なんとなく歯切れの悪い二人に、つかさは首をかしげた。
「えっとね…お姉ちゃんはね、ダイエットのときいつも一人で頑張ってたんだ」
 そして、唐突にそう言った。
「だから、わたしも一人で頑張らないとダメかなって思ったんだ…こういうことでお姉ちゃんに迷惑かけるのも良くないと思うし」
 こなたとみゆきはもう一度顔を見合わせた。今度は苦笑ではなく驚きの表情で。
「あ…でも、もう迷惑かけちゃってるのかな…こなちゃん、ゴメンだけどお姉ちゃんにコレ渡して欲しいんだ」
 つかさはそう言いながら、こなたに携帯電話を差し出した。
「これ、かがみの?」
「うん、置いてっちゃってたから…顔合わせづらいんだったら電話でって」
 こなたは携帯を受け取りながらうなずいた。
「つかさ…かがみはね、なんだかんだ言ってもつかさに頼られたいんだよ」
 そして、つかさの目をしっかりと見ながらそう言った。
「…うん、知ってる」
 つかさの返してきた言葉に、こなたは表情を緩めた。
「ならば良し」
 そして、満足そうにうなずいた。



「あの二人はね…内骨格と外骨格だと思うんだ」
 泉家へ戻る道に途中で、こなたは唐突にそう呟いた。
「骨格…ですか?」
 その意図を測りかねたみゆきが首を傾げる。
「そ、骨格。つかさは外側フニャフニャしてるように見えるけど、芯がしっかりしてるところがあるし…かがみは逆で外側カッチリしてるけど、内面が脆いところがあるなって」
「…なるほど、そうですね。泉さんはちゃんとお二人を見ているのですね」
 みゆきが感心したようにそう言うと、こなたは照れくさそうに頬をかいた。
「ま、まあ全身フニャついてるわたしが言ってもね…説得力ないけどね」
「そんなことありませんよ」
 こなたの言葉を即座に否定するみゆき。続く言葉がなんとなく予想でき、こなたはみゆきから顔を逸らした。
「その柔らかさは、短所ではなくむしろ長所だと思いますよ。泉さんの優しさの現われなのですから」
「…みゆきさん、褒めすぎ」
 気恥ずかしさに耐え切れなくなったこなたがそう呟くと、みゆきは不思議そうに首をかしげた。
「そうですか?思ったことをそのまま言っただけなのですが…」
「…みゆきさん、結構いじわるだよね」
 そう言いながら足を速めるこなた。それをみゆきは、少し嬉しそうに微笑みながら追いかけた。
465 :つかさのだいえっと [saga]:2010/12/23(木) 13:08:09.19 ID:qWXePX.0



「…あれ、かがみは?」
 家に戻ってきたこなた達が部屋に入ると、そこにいるはずのかがみがいなくなっていた。
「出かけられたのでしょうか?」
 みゆきはそう言いながら部屋の中を見回し、そして天井の方を向いた。
「上から声が聞こえますね」
「二階?リビングにでもいるのかな?なにしてるんだろ…」
 こなたは首をかしげながら部屋を出て、二階へと向かった。



「え?嘘?そんなとこ抜けれるの?」
「ああ、気づかなかっただろ?ここ知ってるとだいぶ違うんだよね」
 リビングに入ったこなた達が見たのは、そうじろうと一緒にシューティングゲームに興じているかがみだった。
「………」
 こなたは無言でリビングのコンセントに向かうと、ゲーム機とテレビの電源プラグを同時に引き抜いた。
「…え」
「…お」
 突如消えた画面にかがみとそうじろうが声を上げ、そして電源プラグを持っているこなたに気がついた。
「何するんだ、こなた」
「何するんだって…何しとるんだってこっちが聞きたいよ」
 不機嫌そうに答えるこなたに、そうじろうは眉をひそめた。
「いや、かがみちゃんが一人で暇そうにしてたからちょっとな…俺、なんか悪いことしたか?」
「した。だからとっとと部屋に戻りんさい」
 こなたは問答無用とばかりにそうじろうをリビングから追い出し、かがみのほうを向いた。
「…かがみも何してんだよ。人に使いっぱしりさせといて」
「…ごめんなさい」
 自分のやっていることを自覚したのか、素直に謝るかがみ。
「ほら、これ」
 そのかがみに、こなたは携帯を投げ渡した。
「え?あ、あれ?わたしの携帯?」
 それを受け取った後、かがみは自分の服のポケットを探った。
「置いてきてたんだ…」
「気づいてなかったんかい…んで、それでつかさに電話しなよ」
「…え?」
 かがみは驚いて手に持った携帯を見て、少し怯えた表情をした。
「え、えーっと…」
「…するの」
「は、はい…ごめんなさい。電話します」
 何か言おうとしたものの、こなたに睨みつけられたかがみは、とぼとぼと部屋の隅に移動して携帯を操作し始めた。
466 :つかさのだいえっと [saga]:2010/12/23(木) 13:09:18.14 ID:qWXePX.0
「まったく…なんかもうグダグダだー」
 呆れたようにため息をつきながら、そう呟くこなた。そのこなたを見ながら、みゆきが微笑む。
「みゆきさん…なんでそんな楽しそうなの」
 それに気がついたこなたが、不満そうに呟いた。
「あ、いえ…お気に触ったのならすいません」
「そう言うわけじゃないけど…んー、まあいいや」
 頭をかきながら、こなたは視線をみゆきからかがみに移した。
「…うん…えっと…わたしも、その…ごめん…うん、わかってる…」
 漏れてくるかがみの言葉から、こなたはとりあえずうまく収まりそうだと感じていた。
「一段落、でしょうか」
「だねえ」
 同じ事を感じていたらしいみゆきにうなずき、こなたは安堵のため息を漏らした。



 お昼休み。いつもの四人が集まって、いつも通りのお昼ご飯。
「つかさ、ダイエットはどうなったの?」
 つかさの前に置かれているいつも通りのお弁当箱を見ながら、こなたがそう聞いた。
「うん、続けてるよ」
「無理してない?」
「大丈夫だよ、こなちゃん。少しずつやってるから…このお弁当もね、味付け薄めたりしてカロリーを抑えてるんだ。あとウォーキングもね、帰りに一駅前で降りてそこから歩くようにしてるんだ」
「そっか。それくらいならつかさでも大丈夫かな」
「…こなちゃん、なんか酷いこといってる気がする」
 そのやり取りを見ていたみゆきが、食べるのを中断して微笑んだ。
「やっぱり泉さんはやさし」
「はい、みゆきさんストップ。こんなところで恥ずかしいこと言わないで」
 みゆきが何を言おうとしたのか察したこなたが、その言葉を途中で遮った。
「…恥ずかしいことじゃないですのに」
 みゆきは、少し不満そうに呟きながら食事を再開した。
「まあ、その分だと続けられそうだね」
 こなたがそう言うと、つかさは嬉しそうにうなずいた。
「うん、大丈夫。今度はお姉ちゃんも一緒にやってるから」
「ばっ!ちょ、つかさ!」
 それまで黙って食事をしていたかがみが、慌ててつかさを止めようとした。
「かがみさんも?」
「一緒にやってる?」
 こなたとみゆきは顔を見合わせ、そして同時にかがみのほうを向いた。
「かがみさん、もしかして…」
「また太った?」
「は、はっきり言わないでよ!」
 こなたとみゆきはもう一度顔を見合わせ、どちらともなくうなずいた。
467 :つかさのだいえっと [saga]:2010/12/23(木) 13:09:58.73 ID:qWXePX.0
「な、なによその反応…」
「いや、なんとなく予想できてたから」
「うぅ…」
「大事なことなのでもう一度言うけど、このオチは予想できた」
「念押ししなくていいわよ!…つかさも!余計なこと言わないでよ!」
 かがみはこなたに文句を言った後、そのままつかさの方を向いて文句を言った。
「ご、ごめんさい…」
 首をすくめるつかさに、かがみがあれこれと言い始める。
「…やれやれ、すっかりかがみも本調子だね」
 矛先が完全につかさに移ったと感じたこなたは、牛乳を一口飲んでため息をついた。
「そうですね…こちらのほうが、やはりかがみさんらしいでしょうか」
「だねえ…」
 こなたはみゆきに同意しながら、もしかしたらかがみのダイエットは成功しない方が良いんじゃないか…そんな事を思っていた。



― おわり ―
468 :つかさのだいえっと [saga]:2010/12/23(木) 13:11:11.06 ID:qWXePX.0
以上です。

久しぶりの投下だったせいか、切りどころが分からなくて、無駄にレス数増やした上に読みにくくなったような…。
469 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/23(木) 16:12:08.20 ID:6sc.ivk0
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ここまでまとめた

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>>468
乙です。無駄なレス数とは思わないよ。楽しく読ませていただきました。GJ
470 :Are you enjoying the time of eve? [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 08:31:34.33 ID:9DLlYcAO
今年もやっておこう

こなた「ね〜なんでデスラー総統いないの」
やまと「一応ききますけど、何の話ですか?」
こなた「実写版ヤマト」
やまと「はぁ…こんな名前で生まれてきたのが悪いと言うのなら」
\スカル/

\スカル/

やまと「私は自分の罪を数えたぞ…さぁ、お前の罪を、数えろ」
こう「やまと、それ、前にもやったよね?復活編の時」
やまと「そうだったかしら?」
こう「だから他作品の三人と組んでウルティメイトフォースを」
やまと「やらないわよ!」
471 :Are you enjoying the time of eve? [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 20:33:41.84 ID:jFbGkxs0
投下いきます。
472 :Are you enjoying the time of eve? [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 20:34:16.91 ID:jFbGkxs0
とあるクリスマスイブ


 窓から見上げる空は晴れ。ホワイトクリスマスとはいかないようだ。
 今日一日は、普通に家事をしてすごした。
 夫は、今日は仕事で帰ってこない。クリスマスイブに仕事がないようでは将来が不安だという職業であるから、これは喜ぶべきことなのだろう。
 子供でもいれば、親子でクリスマスパーティでもやるところなんだけど。
「そろそろ赤ちゃん欲しいかな?」
 そんなことをつぶやいてみる。
 夫が明日帰ってきたら、調理専門学校で鍛え上げた腕前で、二人だけの遅めのクリスマスパーティをしよう。
 そして、夫に相談してみよう。来年は、三人でクリスマスパーティがしたいって。



 そこから見渡せる夜景は、クリスマスイブにふさわしく綺麗であった。
 穴場のデートスポット。周囲には人もほとんどいない。夫に寄り添って、一緒に夜景を眺める。
 母が経営する料理教室の講師業務を早々に切り上げて、今日は夫とデートだった。
 夫は幼馴染の親友の兄で、交際は小学校のときから続く長いものだった。だから、結婚したとて特に何が変わるでもなく、恋人気分よろしくデートに出かけることが多かった。
 子供でもできれば、さすがに違ってくるのだろうけれども。
 それは天の授かり物であるから、自然のなりゆきに任せるつもりではある。
 夫と顔を見合わせる。言葉にはしなくても、以心伝心。その場をあとにする。
 これから、ちょっと豪華なレストランで食事をして、そして、ホテルで一晩を過ごす予定。


473 :Are you enjoying the time of eve? [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 20:35:17.61 ID:jFbGkxs0
 とある高級レストラン。
「ああ、なんつーか。私らにはこんなとこは似合わないよなぁ」
 そんな台詞とともに、フォークで刺したステーキを口に入れる。
「おお、うめーなぁ」
「なんつーか、もう。雰囲気台無しっスね」
 高校時代の陸上部の後輩にして、今は交際相手である彼氏が呆れたようにそう言った。
「どう考えても私らには場違いだろ。いつもどおりジョギングデートでよかったんじゃね? 今日はなんかあったか?」
「どうせ雰囲気とかは期待してませんでしたから、単刀直入に行きますよ。これ、受け取ってください」
 彼氏が小箱を突き出した。
「なんだべ?」
 小箱を開けると、そこには指輪が入っていた。
「定番どおり、給料三か月分っス」
「ええっと……」
 いまいち頭が悪いので、その意味を飲み込むまでには時間がかかった。
 その飲み込んだ意味を念押しするように、彼氏はこう言った。
「結婚してください」
「私でいいのかよ?」
「そうでなければ、こんなことはしませんよ」
 彼氏にまっすぐに見つめられて、さすがに顔が赤くなってくる。
「ああ……じゃあ、こっちこそ、よろしくってことで……」
 なんというか……雰囲気も何もあったものではないが、二人にはそれがお似合いであった。


474 :Are you enjoying the time of eve? [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 20:36:10.31 ID:jFbGkxs0
「そんなリア充たちのクリスマスイブを尻目に、ゲーム対戦で夜を明かす女二人であった」
 ナレーション風の台詞に、すかさずツッコミが入る。
「誰に言ってんだ、おまえは」
「いやぁ、なんとなく。今度書くラノベのネタにでもならないかなぁってね」
 テレビ画面の中では、二人の分身が激しい技の応酬を繰り広げていた。
「イブをゲーム対戦で明かす女二人が主人公のラノベなんぞ、読みたかないわ!」
「意外と世の男性諸君にはウケるかもよ?」
「おまえはもう帰れ」
「ひどいなぁ。イブの寂しいウサちゃんのために、こうして来てあげたというのに」
「おまえは、単にウチでだらけたいだけだろが」
 幼いころからオタクなこの来訪者は、グッズを詰め込んだ紙袋を両手一杯に持って、この一人暮らしの家に押しかけてきた。
 本日限定クリスマスグッズとやらをごっそり買いこんできたという話だった。
「よっしゃー、五連勝!」
「うぬぬ、格ゲーじゃかなわん。次はパズルゲームよ!」
「はっはっはっ、何でもかかってきたまえ」
 こうして、オタ女と半オタ女の夜はふけていく。


終わり
475 :Are you enjoying the time of eve? [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 22:28:30.61 ID:6tcJ5qE0
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ここまでまとめた

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>>474の登場人物が特定できませんでしたので
まとめサイト短編その他の主要人物が空欄になってしまいました。教えてくれれば書き込みます。

1レス物もコメントフォームを付けました。
476 :Are you enjoying the time of eve? [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 23:56:24.79 ID:6tcJ5qE0
 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆  それではリレーSSを始めたいと思います  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



ルールを説明します。
一回一レス。7レスで完結。分岐は2回まで。期限は1月末まで。それまでに7レスに達すれば終わりです。


それでは最初の1レス目を投下します。
477 :リレーSS  1 [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 23:58:14.85 ID:6tcJ5qE0
 つかさが専門学校を卒業するに当たり親からパソコンが贈呈された。しかしつかさはパソコンの操作や内容がよく理解できていない。そこでこなたにセットアップを依頼した。
こなた「これでよしっと……メール、インターネットは使えるようにしたよ」
つかさ「ありがとう、操作方法も教えてもらうと助かるんだけど」
こなた「つかさ、後は使って覚えるしかないよ、メールとインターネット、ワープロとかなら今までも使えてたでしょ、それと同じだから」
つかさ「そうなんだ、分ったよやってみるよ」
こなた「ところでつかさ、このパソコン、メールとインターネットだけやるには勿体無い仕様だよ……どうだいゲームをインストールしてあげようか?」
つかさ「私今はそんなにお金持ってないよ」
こなたは不敵な笑みを浮かべた。
こなた「ふふふ、別にお金なんか要らないよ、ほら、いくつか持ってきた、選り取り見取りだよ」
こなたは鞄からいくつかソフトを取り出しつかさの机の上に並べた。
こなた「ネットゲームは?」
つかさ「んー、時間かかりそうだし難しそうだよ」
こなた「ギャルゲーは?」
つかさ「そうゆうのはやった事ないし、それに私は女性だし……」
こなたは暫く考えた。
こなた「それじゃロールプレイングはどうかなこのゲームは全年齢対象だし面白いかもよ」
つかさ「それならいいかも」
こなたはつかさに許可を取る間も惜しむようにパソコンにそのゲームをインストールしだした。
つかさ「ちょっと、私まだゲームをするって言ってないよ」
こなた「いいから、いいから、興味なければアイコンをクリックしなければいいんだし……」
こなたに押し切られた。つかさはそれ以上何も言わなかった。そこにかがみがやってきた。
かがみ「ほー、こなたにしては珍しいわね、ちゃんとやってるみたいね」
こなた「……一言余計だよ、私だってやる時はやる」
かがみ「言ってくれるじゃない、まさか変なゲームなんか入れていないわよね」
疑いの眼でこなたを見つめるかがみ。
つかさ「今ゲームを入れてもらってる」
こなた「バカ……そんなの言っちゃ……」
かがみ「……つかさに変なの教えないでよね」
こなた「ただの普通のロールプレイングゲームだよ……それにもうつかさだって大人なんだしそのへんの分別はついてよ、いつまでも子ども扱いしてると嫌われるよ」
こなたとつかさは見合って頷いた。
かがみ「ただの普通のって強調する所が怪しいわね、つかさも相槌なんかして……まあいいわ、一段落したら台所に来て、お昼作ってあるから」
こなたは驚き、嫌な顔をした。そんなこなたを尻目にかがみは台所に戻って行った。
こなた「も、もしかしてそのお昼ってかがみが作ったの?」
つかさ「今日はお母さんも居ないし、お姉ちゃんしか他に居ないよ」
こなた「うっげー、つかさの作ったのが良かったな、おばさんのもなかなかだったよね……期待してたのに……」
こなたは項垂れた。
つかさ「それよりこなちゃんゲームの方は終わりそうなの?」
こなた「もう放っておいても大丈夫だよ」
つかさ「それじゃお昼食べに行こうよ」
こなたは渋々と台所へと向かった。
478 :リレーSS  1 [saga]:2010/12/24(クリスマスイブ) 23:59:41.11 ID:6tcJ5qE0

それでは続きをお願いします。
479 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [saga]:2010/12/25(クリスマス) 09:07:12.48 ID:PCeBUKM0
>>475
 まとめありがとうございます。
 登場人物は順不同で、こなた、つかさ、かがみ、みさお、あやのです。
 って、みゆきさんがいない!
 まあ、いいか。みゆきさんは、書くまでもなく、ブルジョア(≒リア充)だから。
480 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [saga]:2010/12/25(クリスマス) 11:50:08.95 ID:WiPEUlY0
>>479
編集しておきました。

うーんやっぱりリレーSS用に書いたわけじゃないから続けられないかな。
それとも文章が下手すぎたか。少し反省しています。
481 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) :2010/12/25(クリスマス) 18:56:41.60 ID:MPQO2ISO
クリスマスだしきっとみんなリア充してる
482 :命の輪の華 [saga]:2010/12/26(日) 02:59:05.45 ID:qkmyy760
投下行きます。

命の輪のシリーズです。
483 :命の輪の華 [saga]:2010/12/26(日) 03:01:29.58 ID:qkmyy760
 とある日の昼下がり。こなたとその従姉妹のゆたかは、喫茶店でお茶を飲みながら雑談していた。
 ゆたかが売れっ子の絵本作家になってからは二人で会うことは少なくなり、こうした時間はお互いにとって大切なものになっている。
「それでね、著者近影の写真がいるって言われて、送ったんだけどね」
 ゆたかの言葉に、こなたがアイスティーをすすりながらうなずく。
「…間違って娘さんの写真が入ってますよって言われて…」
「ぶっ!…あははははっ!」
 こなたはアイスティーを吹き出し、ハンカチで口の周りを拭きながら盛大に笑った。
「もう、お姉ちゃん遠慮なしに笑いすぎ」
「いやいや、ここは笑うところでしょ」
 笑いすぎて出てきた涙を拭うこなたに、ゆたかは少し頬を膨らませた。二十台後半の女性とは思えないそういった仕草も、彼女を幼く見せている要因なんだろうと、こなたは笑いを抑えながら思った。
「お姉ちゃんはそういうこと言われたこと無いの?」
「んー。わたしは本に写真載せないからねー」
「え、なんで?」
「わたしの写真載せたら特定層に人気でそうだけど、そういうのじゃなくて、売れるなら内容で売れたいからね」
 なぜか得意げにそう言うこなたに、ゆたかは首をかしげた。
「でも…売れてないよね」
「…う」
「っていうか…自分の容姿に対するすごい自意識過剰だよね、それ」
「…うぐ…それはさっき笑った事への仕返しなのかね、ゆーちゃん?」
「さーねー」
 ゆたかは悪戯っぽく舌を出して笑うと、ストローに口をつけた。
 



― 命の輪の華 ―



「あ、そうそうお姉ちゃん。この前言ってたわたしの絵本がアニメ映画になるってのだけど…」
 雑談が途切れたところで、ゆたかはそう切り出した。
「ん?あー、あれ…いいねー売れてて。絵本が映画になるなんてそうそうないよねー。どこまで売れる気なんかねー。ちょっと客分けて欲しいよねー」
「…さっきのことは謝るから、そんなにいじけないでよ」
 不貞腐れたこなたの物言いに、ゆたかは呆れたように溜息をついた。
「でね、その映画の主役の声優さんが、小神あきらなんだって」
「へー」
 こなたは感心したようにため息をついた。
「バラエティとかドラマとか、色々やってるから忙しいみたいなんだけど、よく引き受けてくれたねー」
「うーん、その辺のことはわたしは良くわからないな…お姉ちゃん、ファンなんだよね?」
「今はもう、熱心なってほどじゃないけどね」
「そっかー…今度製作発表会っていうのかな?なんかそういうのがあって、小神さんが来るらしいんだけど、わたしも原作者だから呼ばれてて、お姉ちゃんもどうかなって思ったんだけど」
 ゆたかがそう言うと、こなたはなんとも難しい顔をした。
「気持ちだけもらっておくよ…わたしも歳なのかねー、なんか情熱が薄れてきた気がするよー」
「…お姉ちゃん、まだ嘆くような年齢じゃないと思うんだけど…」
 気だるそうにテーブルに突っ伏すこなたを見ながら、ゆたかは困ったような顔をした。
「ま、わたしの事は気にしないでゆーちゃん楽しんでおいでよ」
「う、うん…えっと、楽しめはしないかな…たぶん…」
 突っ伏した姿勢のままひらひらと手を振るこなたに、ゆたかはなんとなく不安な気持ちになっていた。


484 :命の輪の華 [saga]:2010/12/26(日) 03:05:11.73 ID:qkmyy760

 ゆたかは部屋の中を落ち着き無く見渡していた。あてがわれた控え室。入るときに見た表札には、確かに自分の名前と小神あきらの名前が書いてあった。
「…主演声優と同室かあ」
 ゆたかがそう呟くと同時に部屋のドアが勢いよく開けられ、その音にゆたかはビクッと体を震わせた。
「はーい!おまたせー!…遅れてない?遅れてないよね?」
 腕時計を見ながら部屋に入ってきた長髪の女性。綺麗な顔立ちに、ゆたかの友人のみなみよりも高い身長。スーツの上からでも分かる良いスタイル。
「…ってー…あれ?マネージャーじゃない…誰?もしかして小早川センセ?」
「…え…あ…はい…」
 椅子に座って呆然としているゆたかの顔を覗き込んだ女性は、ゆたかの返事を聞いて大きな声で笑い出した。
「あーなんだ。間に合ってるじゃん。急いで損したー」
 そして、ゆたかの隣に座り持っていた鞄を床に投げ出すと、体をゆたかの方に向けた。
「ども、小神あきらです…って知ってますよね?」
「え、あ…その…」
 あきらの名乗りに、ゆたかは言葉を濁した。違う。自分がこなたの持っていた雑誌とかで見たことあるあきらと、目の前の女性は全然違う。確か小神あきらという人は、自分と同じ小さい体格の人のはずだ。そう思って、どう返事をすればいいのか分からなくなっていた。
「…ホントに…小神さん?」
 そして思わずそんなことを口走っていた。
「うおろ。なんか予想外の答え…」
「え、あ、その…すいません…」
「んー、なんかまったく知らないって感じじゃないような…あ、もしかして中学くらいのわたしを知ってるとか?」
 あきらがそう言うと、ゆたかはうなずいて見せた。
「あー、なるほどねー。いやー、高校の時になんかグングン伸びちゃいましねてー…そりゃもう、新たなファン層が開拓できちゃったくらいに」
 うらやましい。ゆたかは心の中でそう呟いた。自分は高校どころか大学通してもまったく伸びてないというのに。
「あら、あきらちゃんが私より早いなんて、珍しいわね」
 控え室の扉が開き、今度はゆたか達よりもだいぶ年上っぽい女性が入ってきた。
「たまにはこういう事もありますよん…あ、こっちが小早川センセ」
 その女性に、あきらがゆたかを紹介する。
「どうも、小神あきらのマネージャーです。今日はよろしくお願いしますね」
「あ、はい、こちらこそ…」
 お互い頭を下げあった後、マネージャーは豊かの顔をじっと見つめてきた。
「あ、あの…なにか?」
 ゆたかがそう聞くと、マネージャーはニッコリと微笑んだ。
「可愛らしいなあって…芸能界に興味ない?」
「へ?…え…そ、それは…」
「小早川センセ、マネジャーの冗談ですよ」
 戸惑うゆたかに、あきらが冷静にそう言った。そしてマネージャーの方に顔を向ける。
「マネージャー、そう言う冗談は本番だけにしときましょうよー。小早川センセこういうの慣れてなさそうだし」
「うふふ、そうね」
「…え…本番だけって…」
 あきらとマネジャーの会話に不穏なものを感じたゆたかは、不安そうな表情で二人の顔を交互に見た。
485 :命の輪の華 [saga]:2010/12/26(日) 03:06:11.81 ID:qkmyy760
「まあまあ、任せてくださいって。センセの魅力をばっちり引き出してみせますから」
 そのゆたかに、あきらがにこやかにそう言った。
「そうそう、小早川先生は大作家らしくどーんと構えておけばいいですから」
 マネージャーも同じように、にこやかにゆたかに語りかける。
「お、お手柔らかにお願いします…」
 ゆたかは冷や汗を垂らしながらそう答え、ふと思った疑問を口にした。
「あの…こういうのって台本とか無いんですか?…っていうか打ち合わせとか…」
「あー、無いです無いです。わたしは基本ぶっつけ本番のアドリブ重視ですから」
 ひらひらと手を振りながら笑顔でそう言うあきらに、ゆたかはさらに冷や汗の量が増えていくのを感じた。
「え、えっと…小神さんはそれでいいかもですけど、わたしはこういうの初めてで…」
「初めて!慣れてないどころか初めて!…ふふふー…」
 なにやら不穏気な笑みを浮かべるあきらに、ゆたかは逃げ出したい心境になってきた。
「まあ、あきらちゃんはプロなんだから、任せておけばいいですよ」
 そのゆたかの肩に手を置きながら、マネージャーがにこやかにそう言った。



「では、ここで本日のゲストっつーか主役!原作者の小早川ゆたか先生の登場でーっす!」
 高らかなあきらの宣言を受けて、ゆたかは恐る恐るステージの上に足を踏み出した。
「はい、拍手ー!」
 あきらの声と同時に割れんばかりの歓声と拍手が開場に響き渡った。その音量に怖気づきながらもゆたかが観客の方を見ると、半分くらいは親子連れでもう半分はあきらのファンなのか、いわゆる『大きなお友達』で占められていた。
「おーい、おまえらー。あたしん時より盛り上がってんぞー」
 あきらがやぶ睨みの表情をしながら抑揚のない声でそう言うと、歓声がピタリと止んで会場が静まり返った。
「…え…その…ご、ごめんなさい…」
 ゆたかが思わず謝ると、あきらは満面の笑みを浮かべた。
「なんてうっそーっ!お前ら、存分に盛り上がれーっ!」
 そして、あきらがそう言うと、会場はゆたかコールに包まれた。
「…あぅ…わたし、どうすれば…」
「大丈夫ですよ。小神のいつもの前振りですから、落ち着いてください」
 混乱気味なゆたかの後ろから、共演者らしい男性がそう声をかけた。ゆたかは少し呼吸を整えて、改めて観客席の方を見た。
「える!おー!ぶい!いー!らぶりーゆーちゃん!」
「って、なんでいるのっ!?」
 そして観客席の一番前でゆたかコールに参加しているこなたを見つけ、思わず声を上げてしまった。
「おや、お身内の方が来られてますかー?」
 それを耳ざとくかぎ付けたあきらが、ゆたかに擦り寄りながらそう聞いた。
「え、えと…いや、その…」
「もしかして…これですか?」
 あきらがニヤニヤしながら小指を立ててみせる。
「ち、違います!そんな人いませんっ!」
 誤魔化そうとしながらも、ゆたかはこなたのほうに視線を向けていた。よく見るとこなたの隣には、帽子とサングラスで変装しているつもりらしい、友人の岩崎みなみの姿が見えた。
「…みなみちゃんまで…」
 自分の事は気にしないでってこう言う事なの?どこか情熱が薄れているの?ってかなんでみなみちゃんまで引っ張ってきてるの?
 ステージの上にも関わらず、ゆたかはこなたに後で色々言いたいことを頭の中でまとめ始めていた。



486 :命の輪の華 [saga]:2010/12/26(日) 03:06:47.07 ID:qkmyy760
「はーい、センセお疲れ様でーす」
 楽屋に戻ってきたあきらは、同じく戻ってきたゆたかにそう声をかけたが、ゆたかは答えずに手近な椅子に座り込んだ。
「あや、ホントにお疲れさんですね」
「あ…ご、ごめんなさい。お疲れ様です」
 話しかけられてることに気がついたゆたかが慌ててそう返すと、あきらは苦笑しながら頬をかいた。
「ちょっと弄り過ぎましたかねー…」
「あ、いえ、そんなことは…小神さんは大丈夫なんですか?」
 ゆたかはそう聞きながら、先ほどのステージのあきらを思い出していた。
 ほぼすべての出演者に絡んで喋りっぱなし。しかもステージの上を、端から端まで常に歩き回りながらだった。
「わたしはー…慣れてますから」
 そう言いながら大きく伸びをし、あきらはゆたかの隣の椅子に腰掛けた。
「まあ、この後友人と飲み会ありますんで、八割くらいにセーブしてましたけどねー」
「…あれで八割…」
 ゆたかは呆れると感心するともつかないため息をついた。そして、もう一度さっきのステージを思い出していた。
 一番印象に残ったのは、あきらが何かアクションを起こす度に、観客の視線がそちらに集まると言うことだった。
 生まれついての資質なのか、それとも長年のアイドル生活で身についたものなのか、とにかく人の視線を集めるのが上手なのだ。
「…こういうの、華があるっていうのかな」
「へ、わたしですか?」
 ゆたかが思わず呟いてしまった言葉に反応し、あきらが自分を指差した。
「え、あ…はい…やっぱり芸能人って違うなって…」
「んー…まあ、わたしの持論なんですけどねー」
 あきらはそう前置きしてから、左手の人差し指を立てて見せた。
「ずばり、華というのはあるなしじゃあないんですよ」
「そ、そうなんですか…?」
「そうなんです。女はみんな生まれついての華なんですよ…ようは、その咲かせ方ってわけです」
「…へー」
 得意気に胸張ってそう言うあきらに、ゆたかは感心した声を上げた。
「やっぱり…違いますね。あきらさんは」
 ゆたかがそう言うと、あきらは腕を組んで目をつぶった。
「誰と比べてって言うのはわかりませんが…まあ、誰とも違いますな。わたしは…っていうか同じ華なんてありませんよ」
「え、いや、そう言うことじゃ…」
「さっきも言ったとおり、咲かせ方咲き方一つってことで…みんなの前で大仰に咲くのも良いんですけど、どこかでひっそりと咲くのもまた良いんじゃないかと思っとりますよ」
「それは、ちょっと寂しいような…」
「誰も見てくれなかったらそうでしょうけど、一人でも見てくれて『綺麗だな』って気に入ってくれて、その人のためだけに咲き続けるってのも、なかなかロマンがあってアリなんじゃないかと」
 ゆたかはなんとなくこなたの事を思い出していた。基本的に家から出ない生活をしている彼女もまた、あの人のためだけに咲くことを選んだという事なのだろうか。
「まあ、そういうことですから、詳しくは今夜一晩じっくりお話しましょう」
「…へ?一晩?」
 何時の間に取り出したのか、携帯をいじりながらのあきらの声に、ゆたかは思わず間抜けな声を出してしまった。
「…あー、もしもしりんこ?今日さ、一人追加でよろしく…ふっふっふ、内緒。豪華ゲストよ…いやいや、今度はほんとだって…んじゃ、そういうことでー」
 あきらは電話を切ると、いまいち事態を把握できていないゆたかの方を向いてニッコリと笑った。
「んじゃセンセ。行きましょうか?」
「え、え?ど、どこに?」
「飲み会。さっきははぐらかされましだけど、こっちの話も聞きたいですしねー」
「え、え、えぇーっ!?」
 小指を立てながらニヤニヤするあきらに、ゆたかはただ混乱した表情を見せるだけだった。



― おわり ―
487 :命の輪の華 [saga]:2010/12/26(日) 03:08:42.99 ID:qkmyy760
以上です。

あきらを書くのは初めてなんですが、なんか全然違うキャラに。
なんでこの二人を組ませようと思ったのかは自分でも分かりません。
488 :命の輪の華 [saga]:2010/12/26(日) 03:09:14.86 ID:qkmyy760
以上です。

あきらを書くのは初めてなんですが、なんか全然違うキャラに。
なんでこの二人を組ませようと思ったのかは自分でも分かりません。
489 :命の輪の華 [saga]:2010/12/26(日) 03:10:08.42 ID:qkmyy760
すみません、なんかミスったらしくて二重カキコに。
490 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/26(日) 09:30:47.00 ID:svy6ofg0
-----------------------------------------------------------------------------

ここまでまとめた

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>>487乙です。あきらは役者としての顔と個人としての顔を持ってるからね。それが黒とか白とかって言われてる。
 難しいキャラであると事は確かですね。GJでした。
491 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/28(火) 16:31:21.31 ID:THhqaVM0
なんだか人少ないね
492 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/28(火) 21:02:58.32 ID:nxmNqNA0
確かに人少ないね。年末だから忙しいのかもしれない。
そのせいかどうか分からないけどの感想が全くないssがいくつかあるようです。
作者としては反応がないほどショックな事はありません。
493 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/29(水) 00:26:08.67 ID:9wStB4s0
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆  リレーSS開催中  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



ルールを説明します。
一回一レス。7レスで完結。分岐は2回まで。期限は1月末まで。それまでに7レスに達すれば終わりです。

>>477がスタートです。よろしくお願いします。


一応宣伝しておきます。
494 :幸運(ラッキースター)と接続(コネクト)? [saga]:2010/12/29(水) 22:57:10.66 ID:jZB.D6AO
投下いきます。クロスオーバーしているので注意



Q:ここはどこですか?

A:こなたと日下部の通う大学の敷地です

Q:私こと柊かがみは何をしていますか?

A:模擬店用テントの設営です

Q:何故そんなことをしているのですか

「こなたがバカだから…よね」
「柊さん、何呟いてるの」
「なんでもないです、白金さん」

この人は白金(しろがね)やわらさん。学部こそ違うが、こなたや日下部と同じ大学に通う人で、二人の大学での友達らしい。


『幸運(ラッキースター)と接続(コネクト)?』



495 :幸運(ラッキースター)と接続(コネクト)? [saga]:2010/12/29(水) 22:58:23.20 ID:jZB.D6AO

さて、どうして私がこなたの大学でこんなことをしているのかというと。
話の発端は一ヶ月前のこと。
みんなで集まって遊んでいた時に、こなたが大学祭で模擬店の手伝いをすることになったから来ないかという誘いがあった事から始まる。

「あー、やわらに誘われたやつか。私は断ったけど」
「ヤワラ?」
「私とみさきちの同期生だよ。どうでもいいけど、大学だと同級生って言葉使わなくなるねぇ」
「私も専門学校じゃ使わなくなったなぁ。どうしてなのゆきちゃん」
「おいこら、脱線するな」
みゆきが残念そうな顔をしているが、この際無視させてもらおう。
「アンタ大学で友達いたんだ、ビックリ。類友?」
「ひどい言い様だね、大学でボッチのかがみんとは違うんだよ」
「まてこら、誰がボッチだ」
「…なん…だと…」
真顔で絶句するな!どういう意味だ!
日下部!アンタも何その世界の終演を告げられたような表情は!
峰岸、何その「柊ちゃん、ミエはらなくても…」と言いたそうな目は。
「こなちゃん、お姉ちゃんだって社交性くらいあるよたぶん」
「つかさ、それがフォローと言うなら殴るわよ」
「どうでしょうか?話をへし折る癖もありますし」
「みゆき、もしかしてさっきの事で怒ってる?」
「怒ってませんよ。…すみません、その日は私の大学も大学祭なのでちょっと」
「むぅ、ならつかさとあーやは」
「遊びにはいくけど、手伝いはちょっと…」
「私はみさちゃんに案内してもらうつもりだったから」
「うちの兄貴と一緒にな」
「…で、かがみは?」
「一日だけでいいなら手伝うけど」
どうせその日は私の大学も学祭でヒマだしね。交換条件に二日目のうちの大学祭に来る事を確約させて(ボッチじゃないことを証明してやる)、私は‘白金’さんと出会った。
496 :幸運(ラッキースター)と接続(コネクト)? [saga]:2010/12/29(水) 23:02:16.10 ID:jZB.D6AO

…で、その準備日当日、つまり学祭前夜。
テント設営係になっていた私達三人は大学に来ていたわけだったのだが。
「来れない?!どういうこと!」
『急に外せない用事が出来ちゃって…やわらにも謝っといて』
「おいこら!…切られた」
「何、泉来れなくなったの」
「らしいです。急用だとか」
「ふーん…あ、夕ちゃんちょっといい?実は…うん、お願い。報酬は録画で」
白金さんは誰かに電話をすると、「じゃ仕方ないからうちらだけでやろっか」と言った。
それにしても白金さんと言う人…日下部と友達だというのはわかる。
この人、結構体育会系で運動好きだから話もあうだろう。
これでも実家は私と同じく神社らしい。

でもこなたと友達、という印象はほとんどない。せいぜい少年漫画が好きなくらいだろう。
あいつが巫女萌えとかで声でもかけたのかな、と思っていたが、こなたが前に彼女から声をかけて友人になったと言っていたのを思い出した。
どういうことなのだろう。良い機会だから聞いてみることにした。
「白金さんって、なんでこなたと友達になったんですか?」
「ん〜なったというか…絡まれてて気がつけば、かな」
「白金さんから声をかけたって聞きましたけど」
「あぁ、あれか」
苦笑しながらその時のことを教えてくれた。
それはオリエンテーリングの時。
道を間違えていたこなたを見つけた白金さんが、「お前も一年だろ?こっちだよ」と話しかけた。そうしたらこなたがビックリした顔で「同じ学年だと思いますか?」と言ったらしい。

「泉曰く『初対面だとだいたい年下認定されるから』だって」

だがそんな事わからない白金さんは次にこう言ったのが原因で絡まれたそうだ。


「あ、先輩でした?すいません…違う?なら教授?」


「こなたが教授に見えた?!」
「いやぁ、高校の担任がさ、年上に見えない人だったもんで」
「だからってそれは…」
「それに泉みたいな身長だったから。まぁ同級生にもいたけど」
こなたみたいな身長の人が二人も…世の中って広いわね。その二人もこの大学祭に来るというから、紹介してほしいかな。
「いいよ、泉にも紹介する気だったし」
「いいんですか?そんな簡単に…」
497 :幸運(ラッキースター)と接続(コネクト)? [saga]:2010/12/29(水) 23:05:53.81 ID:jZB.D6AO
相手の人は人見知りだったりとかしないのだろうか。
「大丈夫。あいつはそういうのないし、何より、人と人とをつなげるのが大好きな奴だから」
「つなげる?」
縁を取り持つのが好きって事?
「そ。あいつはいっつも誰かと誰かをつなげてるんだよ。高校の時は三日科とか元巻さんとか…だったかな」
「へぇ」
「そんであいつと関わってたから、私は泉とつながった。で、更に柊さんってわけ」
それはまたずいぶんその人を買っている話だと思った。人との縁はそんな単純でもないだろうに。
でも、確かに今、その縁はつながっている。その話題にその人が欠かせないのは、間違えようのない事実だ。
「…つながった幸運ってわけですね」
「なにそれ?」
「独り言です。…その人、なんていう名前なんですか?」


「境ふおんです。よろしく柊かがみさんに泉こなたさん」
翌日。その人物は合流したこなたと私にそう自己紹介をした。…確かにこなたと似た身長だった。
「はじめましてふおんさん。…確かに似た身長だねぇ私達」
「ふおんでいいよ、タメでしょ?konakonaさん」
「あれ、なんで私のHNを」
それは一瞬だった。白金さんがこなたをロープで縛ったかと思うと、境さんはどこからか帽子を出して被り、
「私は昨日、夕ちゃん経由でやわらに頼まれたからとはいえ、ネトゲを徘徊した…そして素知らぬ顔でkonakonaに近づき、サボりの確認をしていたのを黙っていた。庇いも何もせず」
そしてこなたを指差して
「私は自分の罪を数えたぞ…さぁ、お前の罪を数えろ」
「今さら数えきれるかぁ!」
常習犯かアンタは!って何このいきなり始まったコントもどきは!
「って昨日の助っ人さん?!」
「そう。だから初めましても嘘」
「騙されたー!」
「さぁて、じゃ行こうか泉。…交流は?」
「スタンバイ済み」
何が始まるの?
498 :幸運(ラッキースター)と接続(コネクト)? [saga]:2010/12/29(水) 23:07:20.89 ID:jZB.D6AO
「離してやわら!私が悪かったから!それに何されるの私!どこ連れてかれるの!帰して」
「悪いが、この道は一方通行だ!あきらめて突き進むんだな泉!!」
「大丈夫怖いだけだからって、フオンはフオンは先を言ってみたり」
何やってるんだこの二人は。でも楽しそうだなぁ…あ、こなたがこっち見てる。
「かがみん、助けて」
「そこ一方通行らしいから無理」
「いやいや、禁書はかがみの方が詳しいでしょ!」
「…アロマが美味いわぁ」
納豆はカリフォルニア産に限るし、トマトはどうして赤いのかしら。
「地の文でフルメタ短編ネタやってないで助け…」
声が聞こえなくなった。白金さんが全力疾走したからだ。と、そこに日下部と峰岸が来た。あれ、日下部のお兄さんは?
「兄貴ならトイレだけど、チビっ子とやわらは?」
「さっき泉ちゃんの声があっちにいくの聞こえたけど…」
白金さんとその友人に連行された、と告げようとした時、あるアナウンスが流された。

『第×回カラオケ大会、開催致します!ではトップバッター、エントリー1番、1年の泉こなたさんと友人の三日科交流(みかしなあける)さん。歌っていただきましょう、曲は「異邦人」です。どうぞ!』
なるほど、罰ゲームね。何時エントリーしたのかしら。それに…三日科?昨日聞いた名前のような…。
『ふおん!出てこんかい!!やわらも!人を足代わりにしたあげくカラオケってなんやねん!しかも誰やこの子!』
『あ、あの、三日科…さん?』
『…ちゃんと歌うわよ。まだイントロでしょ。…泉さん、アンタからも事情聞くから後覚えとき』
今の放送で困惑した表情の峰岸が「柊ちゃん、一体何があったの?」と訊いてきたのだが、私にふらないでほしい。こっちだってわからないんだから。
…あぁ、ひとつだけ言えることがあるわね。
「…新しい縁は、トラブルとつながっていたのよ」

やれやれ。どうやら、幸運(ラッキースター)と接続(コネクト)するには、縁が違ったようだ。


終わり。
499 :幸運(ラッキースター)と接続(コネクト)? [saga]:2010/12/29(水) 23:10:03.67 ID:jZB.D6AO
以上です。

大学祭でネタ考えていたら、いつの間にか『ふおんコネクト』とクロスオーバー…何故だろう?

500 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/30(木) 00:55:31.85 ID:eVoLuX60
>>499乙です。
すみません『ふおんコネクト』は一回も読んでいないのでよく分かりません。
けいおんとのクロスオーバはいくつかあるみたいですがけいおんもあまり良く知らないのです。
クロスオーバは難しいですね。
501 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/30(木) 01:04:34.62 ID:vqVVzsSO
タイトルすら聞いたことない…
502 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/30(木) 16:31:38.47 ID:eVoLuX60
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ここまでまとめた

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503 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 09:33:40.59 ID:cqYlEBw0
リレーSSの主催者です。
1レス目>>477の続きを書いていたらもう終盤まで行ってしまった。この調子だとお正月休みには完成してしましそうです。

リレーが完成するか期限までは投下しないつもりです。どっかのssじゃないけど
その間手持ち無沙汰になっちゃうので誰かお題を下さい。もちろん便乗も大歓迎です。
504 :以下、2011年まであと1717秒。。。 [saga]:2010/12/31(金) 23:31:24.74 ID:IfzEmEAO

年越しそば

こう「年越し蕎麦は天麩羅蕎麦だねやっぱり」
やまと「人の家に乱入して何言ってるのよまったく。紅白見てたらライト振り回しだすし…」
こう「いやいや、あの歌はオレンジ色で染めなきゃ駄目なんだよ」
やまと「意味わからないわよ」
こう「…ところでさ、よく焼そばパンは炭水化物をおかずに炭水化物食べてるっていうけど」
やまと「何よ急に」
こう「きつねうどんとかの油揚げだって炭水化物だよね、アレはなんで言わないんだろ」
やまと「駄目よ、これ私の年越し蕎麦の油揚げなんだから」
こう「え〜頂戴よぉ。海老天あげるから」


あと数分くらいだけど、よいお年を!
505 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/01(正月) 11:26:22.36 ID:c8jyHTI0
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ここまでまとめた

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あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

このスレに初めて投下してから三年目になります。
SSを書き出したのも同じ年なのでそう言う意味ではまだまだ素人です。
そんな自分でもここスレは受け入れてくれた。それだけで嬉しいです。
506 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/01(正月) 17:54:25.31 ID:UqzFCAEo
みんなあけましておめでとう!

最近SS書いてないなぁ。今年は何か書きたいところだ
507 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/02(日) 23:22:32.38 ID:CI9G3c60
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆  リレーSS開催中  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



ルールを説明します。
一回一レス。7レスで完結。分岐は2回まで。期限は1月15日まで。それまでに7レスに達すれば終わりです。

>>477がスタートです。よろしくお願いします。


 感心がないみたいなので期間を短縮します。あとは進み具合を見て調整します。

508 :お正月のひとコマ [saga]:2011/01/03(月) 02:06:19.11 ID:Ztakjww0
あけましておめでとうございます。

新年一発目と言うことでお正月のSSです。
即興で書いたのでかなり短いですが。
509 :お正月のひとコマ [saga]:2011/01/03(月) 02:07:06.93 ID:Ztakjww0
 元旦の鷹宮神社。柊かがみが、お正月の恒例となっている神社の手伝いでおみくじの販売をしていると、見知った顔が列に並んでいるのを見つけた。
「こなた?一人なのかしら」
 その友人…泉こなたは眠たそうにあくびをしながら、列の先頭を眺めていた。
「かがみー、あけおめー」
 順番が回ってきて、何ともしまらない新年の挨拶をしてきたこなたを、かがみは苦笑しながら迎えた。
「あけましておめでとう。眠そうね、今年はあんた一人?」
「うん、みんな別口で用事あるってさ。流石に徹夜明けは眠いよー」
 再度あくびをしながら答えるこなたに、かがみも再度苦笑し、こなたの後ろの長蛇の列を思い出した。
「っと、今混んでるから、おみくじ引くならはやくすませちゃいましょ。話するなら後でね。もうすぐ休憩取れると思うから、裏手でまってて」
「おっけー…十番だよ」
「十番っと…はいこれ。良いのあたるといいわね」
「ありがとー。んじゃ後で」
 かがみからおみくじを受け取り、こなたは売り場から離れていった。
 次のお客の相手をしながらこなたのほうを見ると、暗い顔で肩を落としてる姿が見えて、かがみは思わず吹き出してしまった。



― お正月のひとコマ ―



 休憩時間に入ったかがみは、早速神社の裏手の方に行き、木にもたれかかって暇そうにしているこなたを見つけた。
「おまたせ、こなた」
「ううん、今来たとこー」
 気の抜ける声でそう答えるこなたに、かがみは眉をしかめた。
「…なんだそりゃ」
「気にしない気にしない。一度言ってみたかっただけだから」
 そう言いながらこなたは、持っていた袋から焼きトウモロコシを取り出して、かがみに差し出した。
「ほい、これ。手伝いしててお腹空いたでしょ?」
「お、さんきゅー。珍しいわね、あんたが奢ってくれるなんて」
「そう?まあ、たまにはね」
 答えながら、こなたは自分の分のトウモロコシを取り出して噛り付いた。
「結構、味濃いねコレ」
「確かに、ちょっと濃いわね。ちょっと喉が渇くわ…これ、鳥居前の角の屋台のでしょ?」
 かがみもトウモロコシを齧りながら、そう感想をもらした。
「…味でどこのかわかるとか…まあ、喉が渇いたなら、ほいコレ」
 こなたは多少呆れた顔をしながら、別の袋からよく冷えた缶のウーロン茶をかがみに差し出した。
「ありがと…なんか準備いいわねえ」
 かがみはお茶を飲みながら少し考え、そしてニヤッと意地の悪い笑みを浮かべた。
「ははーん、あんたアレでしょ。おみくじで凶が当たったから、神社の巫女に親切にしてチャラにしてもらおうとか考えてるでしょ?」
「えっ…な、何のことですかな…」
 かがみの指摘に、こなたは冷や汗を垂らしながらそっぽを向いた。
「っていうか、わたしが何当たったかなんて分からないんじゃ…」
「分かるわよ。あんなに盛大に落ち込んでたらね」
「…ちぇ、見られてたのかー」
 こなたはため息をついてトウモロコシにかぶりついた。それを見たかがみが苦笑する。
「トウモロコシ代返せ…なんて言ったりして」
「言わないよ。どんだけケチなんだよ、わたしは」
 茶化すかがみに文句をいいながら。こなたは自分の分のお茶を飲んだ。
「まあ、理由はどうあれ親切にしてることに変わりはないんだから、いい事あるかもよ」
 手に持ったトウモロコシを揺らしながらそう言うかがみに、こなたは憮然とした表情を見せた。
510 :お正月のひとコマ [saga]:2011/01/03(月) 02:07:44.68 ID:Ztakjww0




「それにしても、今年はさらに人増えてるみたいだね」
 食べ終わったトウモロコシの芯を入れた、袋の口を縛りながらこなたがそう言うと、かがみは少し暗い顔をした。
「うん…不景気だもの」
「関係あるの?そういうの」
「あるわよ…これだけ長引くと、やっぱり何かにすがりたいって気分になるんじゃないかな。絵馬もそういうこと書いてるの多いし」
 かがみはそこまで言って、大きくため息をついた。
「…時々、空しくなるのよね」
「空しく?」
「そう言う人たちに、わたし達が出来ることって無いじゃない。お払いとか、お守りとか、絵馬とかって気休めにしかならないし…神さまって曖昧すぎて当てになるか分からないし」
「…いや、かがみが言っちゃダメなんじゃないかな、それ…」
「しかも、それらはお金とってやってることだし…最近、こう思うようになったの。わたしは人の不幸でご飯を食べてるんじゃないかって」
 かがみの言葉を聞いたこなたは、首を少しかしげ少し困った顔をした。
「…やっぱ、かがみは変なところで真面目だねえ」
「そうね。自分でもそうなんじゃないかなって思えてきたわ」
「…そんで、やっぱ優しいね」
 付け足したこなたの言葉に、かがみは少し頬を染めてそっぽを向いた。
「な、なによ急に…ってか関係ないでしょ」
「いや、あるよ…わたしはこの人ごみ見て、絵馬とか見てもそんなことまったく思わなかったもの」
 こなたはそっぽを向いたかがみの顔を覗き込むようにそう言って、ゆるく微笑んだ。
「それに、かがみのやれる事はあると思うよ」
「…え?」
「何にも出来ないとか思わずにさ、心の中ででもその人たちに少しでも幸せが来るようにって祈ればいいんじゃないかな」
「…そんだけ?」
「そんだけ。あとはここの神様のお仕事だし」
 かがみはポカンとした表情を浮かべて、目の前の友人をしばらく眺め、そしてプッとふきだした。
「なによ。結局神頼みじゃない」
「そりゃそうだよ。だってここ神社だもん」
 なんの悪びれも無くそう言うこなたに、かがみは声を出して笑った。
「…なんかちょっとスッとしたわ。ありがとう」
 しばらく笑った後、かがみはこなたにそう礼を言った。
「どういたしまして。大した事言ってないと思うんだけどね」
 頬をかきながらそう言うこなたに、かがみはこなたを真似るかのようにゆるく微笑んだ。
「内容云々じゃなくて、そう言うことを口に出せるかどうかだと思うわよ…たまに思うわね。あんたと友達になれて良かったなって」
「それは、たまにじゃなくいつも思ってて欲しいなあ…っていうか、今日のかがみは何時に無く素直だね」
 かがみはあごの先に人差し指を当てて小首をかしげた。
「そう?…そうかもね」
 そして、こなたの頭に手を置いて、笑いながらワシャワシャと動かした。
「まあ、お正月なんだしいいんじゃない?」
「やめれー…ってかわたしのいい加減さが移ったとか言わないでよー?」
 こなたはかがみの手をどけようとしながらも、かがみと同じように笑っていた。



― おしまい ―
511 :お正月のひとコマ [saga]:2011/01/03(月) 02:08:45.11 ID:Ztakjww0
以上です。

今年もやっぱりこの二人中心に書いていくのかなあと思ったり。
512 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/03(月) 09:10:09.78 ID:gCflZVI0
>>511乙です こなた、かがみのコンビは鉄板ですね。
ところで序文を書いた後にタイトルを載せる手法、いくつかの作品に見られるのですが全て同じ作者なのでしょうか?
513 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/03(月) 11:25:24.05 ID:IHTUecSO
>>512
携帯なんでID変わってますが>>511です。
俺は小ネタ以外はこの手法で書いてますが、この手法で投下されてる全部が俺というわけでは無いですね。
514 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/03(月) 14:11:15.97 ID:gCflZVI0
>>513
ご返事ありがとうございます。この手法は皆さんやるんですね。参考にさせていただきます。

 自分はなるべくメイン四人を出したい所ですがつかさに偏ってしまう傾向がある。
逆につかさを中心に珍しい組合せで色々書いていこうかなと思います。

 後、やまとと言うキャラが分かりません、本編に殆ど出来ていない。ゲームをするしかないのでしょうか?
もしやまとの性格とか口調みたいなのが分かる人が居たら教えて下さい。
515 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/03(月) 15:33:09.38 ID:.CE0k.U0
>>511
乙です。和みましたw
>>514
できるならゲームをプレイした方が分かりやすいかもね。ちょうどPSP版が出たばっかだし。
後は他の人が書いてるやまとSS参考にしてキャラ掴むとかかね
516 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/03(月) 16:38:39.01 ID:gCflZVI0
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ここまでまとめた

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>>515どうもです PSPか実は持っていなかったりしてw このゲームの為だけに買うのも一興か……

ついでになんですけど 開催中のリレーss 自分の完成したのを先に投下しちゃっていいかな?
まさかこんなに早くできるとは思わなかった。多分この調子だと1レスも繋がらなさそうだし(つд・)
517 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/03(月) 16:51:07.03 ID:IHTUecSO
ゲームのは大半がやまとじゃなくてヤマトラマンだからねえ。
本編でチラッと出て来る本人とおまけシナリオのやまとで性格違う気がするし、原作や公式設定本でのおまけマンガでも微妙に違うし、キャラが固まりきってない気がする。
518 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/03(月) 16:55:18.12 ID:IHTUecSO
書き忘れ。

ゲームは九割方パロディで出来てるから、キャラの性格掴むのとかには役に立たたない気がする。
519 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/03(月) 20:41:35.49 ID:APS.4eU0
一レスには少し足りないけどリレー続けてもいいですか?
520 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/03(月) 23:43:23.45 ID:IHTUecSO
一レスに収まってればいいと思うので、多少短くてもよろしいかと。
521 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/04(火) 00:15:50.27 ID:EMj5bgY0
りれーss主催者です
>>519
極端に短くなければ(1行とか)じゃなければいいですよ
522 :リレーSS  2 [saga]:2011/01/04(火) 00:36:53.07 ID:05eEdg20
では投下しまーす
523 :リレーSS  2 [saga]:2011/01/04(火) 00:41:10.21 ID:05eEdg20
@まつりの部屋
まつり「ちゃんとインストールできたみたいね」
いのり「・・・でも、さすがにこれはヤバイんじゃないの?ドッキリとはいえ」
まつり「いいっていいって。べつにファイル削除したりするわけじゃないし、エロくもグロくもないし。」
いのり「・・・ほんとに?」
まつり「夜になったら勝手に起動してびっくりさせるだけだから。あとカメラの準備もしなきゃ。」
いのり「・・・何言われても知らないよ。」
まつり「大丈夫だって!」

こなた「まつり姉さ〜ん。インスコ終わったよ〜」
まつり「おーサンキュ!かがみには気づかれてない?」
こなた「疑いはしていたけどたぶん私のせいになるから大丈夫!」
まつり「よーし!あとは夜になるのを待つだけ!」

@陵桜学園保健室
ふゆき「今夜はいよいよドッキリ仕掛ける日ですね。」
ひかる「本当に・・・やるのか・・・?」
ふゆき「柊さんのお母さんとお姉さんには許可とってますから。」
ひかる「マジだ・・・この人マジだ」
ふゆき「だってあのくらいじゃ全然怖くないんですもの。」
ひかる「・・・はぁ。」

@鷹宮神社境内裏
みき 「・・・さて。」
くぁwせdrftgyふじこlp!
かなた「はい。」
みき 「ふゆき先生もドッキリ参加するらしいけど大丈夫ですか?」
かなた「『大丈夫だ、問題ない。』・・・ですよね?」
みき 「どこで覚えてきたんですか?それ」
かなた「伊達にこなた見守っていないですよ。」
みき 「ああ・・・そう。じゃぁ予定通りよろしく。」
かなた「はーい。」

============================================================
3方向ドッキリにしてみた。お好きな視点でどぞ。
状況としてはこなたがふゆき先生とかなたさんに気づいてなくて
まつりさんとふゆき先生はかなたさんに気づいてなくて
みきさんだけが全てを知っている・・・って感じです。
524 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/04(火) 08:10:51.79 ID:EMj5bgY0
>>523
リレーss主催者です。その展開になるとは思わなかった。
続きが楽しみです。
525 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/05(水) 22:15:31.17 ID:.o.2lZUo
久しぶりに来たら結構SS投下されてますね
かなり遅いけど感想書きます

>>468
つかさとかがみが内骨格と外骨格というのはいい比喩ですね
友達思いのこなたとみゆきもかわいいです

>>474
みゆきは言うにおよばず、みさおもいつの間にか相手がいそうな感じはあるなあ
けど、原作ではあやの以外には彼氏ができそうな気配もないのがw
おきらく開運&ゆるっと合格祈願セットでもネタにされてたし

>>487
あきらが大きくなっているというのは意外でした
社会経験もあきらの方が上だろうし、ゆたかの方が年下のように感じちゃいますねえ

>>499
申し訳ないです、クロスオーバー先のほうを知らないので
雰囲気はよかったです

>>511
こなたはクジ運ないのだろうかw
なにげなくいい事言うこなたはいいなあ


リレーSSの感想はまた一段落してからで

526 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/07(金) 00:37:30.41 ID:pTOag.AO
記憶喪失もの投稿してみようよかな
527 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/07(金) 09:56:38.41 ID:Itvda860
>>526
是非投下してください。

『喧嘩作戦』と『つかさの一人旅』の感想が全く無かった。
あまりの酷さにコメントすら入れられなかったのだろうか。

528 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/07(金) 14:02:34.06 ID:00xaxQDO
>>526
お願いします。
529 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/07(金) 15:15:12.96 ID:00xaxQDO
>>527
エ○パロ板みたいにボロクソ言われるよりはましかと。個人的にはGJ!
530 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/07(金) 21:06:22.24 ID:t3q91m2o
>>527
いやいや、両方ともいい話だったと思いますよ
でもちょっと長いので感想を書きにくいというか
531 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/07(金) 23:07:33.96 ID:Itvda860
>>529 >>530
二つ立て続けにコメントが無かったから少し動揺していました。
とりあえず投下し続けますのでよろしくです。
532 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/08(土) 00:06:19.90 ID:PCnAeyQ0


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆  リレーSS開催中  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



ルールを説明します。
一回一レス。7レスで完結。分岐は2回まで。期限は1月15日まで。それまでに7レスに達すれば終わりです。

進行状況
>>477スタート>>2/7レス目>>523 あと5レス  分岐0

ふるって御参加をお願いします。



533 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/08(土) 00:09:32.84 ID:PCnAeyQ0
進行状況が分かりにくいようですので書き直します

進行状況
>>477スタート→2/7レス目>>523 あと5レス  分岐0
534 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/08(土) 03:33:05.52 ID:sHmT/6AO
>>523の文章が酷い
535 :523 [sage]:2011/01/08(土) 14:09:21.26 ID:YfPTGYDO
>>534
すみませんでした。
536 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/08(土) 16:54:36.81 ID:PCnAeyQ0
リレーSSは参加して楽しむお祭りです。
537 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/09(日) 00:02:32.07 ID:44M4lzo0
今年初めての投下いきます。2レスほど使用します。
538 :笑顔  1/2 [saga]:2011/01/09(日) 00:06:03.50 ID:44M4lzo0
 今日はいつもの四人が集まりこなたの家でなにやら会合を開いていた。
かがみ「ふあー」
大きく欠伸をするかがみ、それをじっと見つめるつかさ。
かがみ「なによ、欠伸がそんなに珍しいか……昨日ちょっとレポートで徹夜しちゃったのよ」
少し顔を赤らめた。
こなた「ふあ〜」
こなたもかがみに負けず劣らずの大あくびをした。つかさはこなたをじっと見つめた。
こなた「いや〜かがみのがうつっちゃかな……昨日ちょっとレポートをね……」
かがみ「……嘘を付くな、嘘を」
こなた「まぁね、今回はみさきちがやる順番だよ」
かがみ「あんた達、まだそんなのやってるのか、いつまでも小学生だな」
頭を抱えてため息をするかがみ。そこにみゆきまで大あくびをしだした。
みゆき「……すみません、私とした事が……」
こなたはふと時計を見た。午後一時頃だった。
こなた「お昼食べ終えて一番眠くなる時間だね……いっその事すこしお昼寝する?」
かがみ「バカ……折角四人集まったのに昼寝かよ……それにまだ決まってないだろう」
みゆき「……それも良いかもしれません……十五分〜三十分のお昼ねは脳の活性にも良いとされいます」
かがみの反論とは裏腹なみゆきの提案。
こなた「それじゃお昼ねたいむ〜三十分間ね〜〜」
こなたは早速横になって眠り始めた。それに釣られる様にみゆきも座ったまま目を閉じた。かがみはこなたをたたき起こそうとしたがみゆきまで寝たとあれば無理押しはできない。
かがみ「しょうがないわね……三十分だけ、ぴったりになったら起こすわよ……」
諦めたかがみも背もたれに体重を預けて目を閉じた。

 突然ドアが開いた
ゆい「遊びにきた……」
つかさ「しー」
つかさの制止でゆいは話すのを止めた。そして皆が寝ているのを気付くとゆっくりとドアを閉めた。つかさは忍び足でゆっくりと部屋を出た。
つかさ「お邪魔してます」
ゆい「びっくりした〜こなたはお客さんが来るなんて言ってなかったから……何でみんな寝ちゃってるの?」
つかさ「なんか昨夜みんな徹夜したみいで……」
その答えに妙に納得したゆいだった。
ゆい「ところで、何の会合を?」
つかさ「ゆたかちゃん達の卒業お祝いのプレゼントの話を……あ、しまったこれ内緒だったんだ……」
つかさは慌てて口を両手で塞いだがもう遅かった。そんなつかさを見てゆいは笑った。
ゆい「ふふ、そのくらいの話なら黙ってるよ、安心しなって」
つかさ「ありがとう」
つかさは深々と頭をさげた。しかしゆいは気付いた。
539 :笑顔  2/2 [saga]:2011/01/09(日) 00:07:32.55 ID:44M4lzo0
ゆい「ところでつかさちゃんは何で一緒に寝なかったの?」
つかさ「それは……」
つかさは言葉を詰まらせた。表情も一気に暗くなった。
ゆい「あら〜何か悩み事でもあるのかな……良かったらこのゆい姉さんにはなしたまへ……」
ゆいは胸を叩いた。つかさはしばらく躊躇していた。
つかさ「ゆたかちゃん達もみんな大学に進学しちゃって……こなちゃん達もあと二年も大学生……でも私は……もうすぐ社会人になっちゃう」
ゆい「それはそれは、つかさちゃんのお祝いもしなといけないね……もしかしてこなたは……その気がないとか」
つかさは首を横に振った。そしてもっと表情が暗くなった。その時ゆいはこの相談に乗ったのを後悔した。もっと複雑な悩みなのかもしれない。
つかさ「こんなの誰も思わないかな……社会人になってからもこなちゃん達と会えるかなって」
ゆいは腕を組んで考え出した。
ゆい「そうだね、こればっかりは私にも分からない……今後こなた達がどんな進路を歩むのか、この街を離れるのかもしれない、私みたいに地元で働くのかもしれない」
つかさもそれに合わすように話し出した。
つかさ「お姉ちゃんは家族だからよっぽどの事がない限り別れないよね、でもこなちゃんやゆきちゃんは……」
高校と言う同じ場所で出会った。しかし状況が変れば付き合い方も変っていく。その行き着く先をつかさは憂いていた。
ゆい「つかさちゃんらしくないな〜いつもの笑顔は?」
つかさ「え?」
ゆい「こなたもみゆきちゃんもきっとその笑顔に誘われたんだね……」
つかさ「笑顔……」
たしかにつかさの取り得と言ったらそのくらいしかない。でもつかさは意味がよく分からなかった。
ゆい「楽しいから笑うんじゃない、笑うから楽しいんだよ」
つかさ「そうなのかな……」
ゆい「笑ってればきっとこなた達だって別れたくないとおもうんじゃないかな、社会人なったって同じ、そんな顔してたら仕事なんて出来ないぞ」
ゆいは人差し指でつかさの額をツンと突いた。つかさは思わず笑ってしまった。
ゆい「……そうそう、その笑顔」
笑っていると自然と今までの不安が取れていった。
つかさ「……なんとなく分かったような気がします……ありがとうございました……成実さん」
ゆいは親指を立ててウインクをした。
つかさは腕時計を見た。もう昼寝の時間は三十分を過ぎていた。
つかさ「あれ、お姉ちゃん起きない……もう三十分過ぎてるのに……」
ゆい「さあ、つかさちゃんの出番だよ、一足先に社会人になった先輩である所見せてあげなさい!」
つかさ「はい!」
満面の笑みで返してつかさは部屋に戻っていった。

 ゆいは思い出した。最近のゆたかの表情がさっきまでのつかさと似ていることに。
ゆい「また近々来ないとダメかな……」

540 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/09(日) 00:17:05.03 ID:44M4lzo0
以上です。
思いつきなのでこの程度です。
541 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/09(日) 03:27:28.88 ID:VKCjJkAO
>>540乙です。

『幸運(ラッキースター)と接続(コネクト)?』の筆者です。感想聞かせてもらっていて気になった事があるのでちょっと投下させてもらいます。

542 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/09(日) 03:29:37.43 ID:VKCjJkAO

高良みゆき「高良みゆきと」
三日科交流「三日科交流の」

『ふおんコネクト!解説コーナー!』

みゆき「改めまして高良みゆきです」
三日科交流「初めまして、『ふおんコネクト!』の三日科交流(みかしなあける)です」
みゆき「さて、このコーナーですが、この筆者は以前『幸運(ラッキースター)と接続(コネクト)?』を投下しています。その感想で『ふおんコネクト!』を知らないと言う意見が多数ありました。
力量不足で不快感を与えたかもしれません。
作者としては反省を兼ねて、作品補完のためにいくつか解説のようなものをしておこうと今回このような場を設けさせてもらいました」
交流「というわけで白羽の矢が立った両作品において完璧超人扱いされている私達二人が、解説を行うつもりです」
みゆき「あの、ところで交流さん?どうしてケンダマをなさってるんです?私もスクリューを持たされたのですが」
交流「ネプチューンキングを連想させる小道具がわからないから安易なものに作者が頼ってるだけでしょう。後でしめとくわ」
みゆき「はぁ、そうなんですか。では最初にこれから始めましょう」

Q:ふおんコネクト!は何か?

交流「そこから?!」
みゆき「はい。この作品自体の説明は必要です。あくまで補完しかしませんので、興味を持った方は購入していただくという形にした方がいいかと」
交流「はぁ…説明します。『ふおんコネクト!』は芳文社雑誌『まんがタイムきらら』で連載されていた四コマ漫画です。作者は『ざら。』、既に完結しており単行本は四巻まででています。私が表紙なのは二巻です。ドラマCDも出しました」
みゆき「『まんがタイムきらら』というと、『けいおん!』が連載されていた雑誌ですね」
交流「そうです。ちなみに中身はパロディ満載なので、濃い方には喜んでいただけるかと」
みゆき「あの、もしかして『幸運(ラッキースター)と接続(コネクト)?』において仮面ライダースカルの台詞や禁書目録ネタがあったのは」
交流「…原作でも似たようなものはあります。妹のエプロンのデザインが『ゲッター』だったり『エンジンオー』だったり。ふおんが『2000万パワーズ』のコスプレしたりしてます」
みゆき「は、はぁ、そうなんですか」
543 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/09(日) 03:30:14.68 ID:VKCjJkAO
交流「単行本には未収録ですが、うちの愚姉は『海腹夕ちゃん』と名乗ってオールバックの美食家になった事もあります」
みゆき「やりたい放題ですね」
交流「一応、パロネタがわからなくても大丈夫な作品だと思っているのでコアじゃない方は古本屋で試し読みしてみて下さい」

Q:白金やわらって主人公格?

交流「結論を先に言うならレギュラーキャラなだけです」
みゆき「主人公は途中で出演した『境ふおん』さんです。最も話の展開上、交流さんがメインである事が多いですが」
交流「彼女の解説をしますと、実家は神社で巫女さんであるのは作品で語った通りです。兄弟がいて、兄は最近結婚されました。実家は弟に継がせるらしいです。
お兄さんの二段ベットには悩まされたわ。
性格は体育会系で好きな漫画は少年誌系。
ちなみに、何故こなたさんと同じ大学の設定にしたのかというと、彼女の進路が原作にて『都内の大学に進学し上京』というのを利用したからです。」
みゆき「巫女焼けが嫌で実家を継ぐのをやめた…かがみさんもこういう日焼けなさるんでしょうか?」
Q:こなたと同じ身長の先生?

交流「うちの愚姉です。英夕(はなぶさ ゆう)年齢不詳独身。趣味はアニメやゲームやプラモ等。身長はふおんと似たようなものなので大体150cmくらいです」
みゆき「独身?名字が違うのですが」
交流「あぁ、両親一度離婚してるから。姉さんはノキア母さんが連れてきた養子だったしノキア母さんの名字なの」
みゆき「えっ…」
交流「元はスウェーデン人らしいけど…あ、ちなみにさっきチラとふれた妹は父が再婚したみよ母さんの連れ子です」
みゆき「複雑な家庭環境ですね」
交流「ちなみに離婚の原因はノキア母さんが仕事と家庭を両立できなかったからです。…シンナーで濡れた手そのままでチャーハン作る人やから、察して」

Q 境ふおんって何者?

交流「アホです。以上」
ふおん「真面目にやってよ!」
交流「やかまし」
みゆき「えっと、本来の主人公です。
トラブルメーカーな性格ですが交友関係が広く、一説では人間ではないのではと言われています。謎が多い方ですね。
え…これ読むんですか?…『交流さんの旦那さんでもあります』」
交流「ふおーん!!」

544 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/09(日) 03:31:29.31 ID:VKCjJkAO
Q 最後に出てきた交流って?

みゆき「…ご本人が境さんをおってどこかにいってしまわれたので私一人で語らせていただきます。
三日科交流さん。作品のメインヒロイン的立場の方です。
先程も触れた家庭環境のせいか、人付き合いが不得手で不器用だそうです。なので高校の友人と同じ大学に行きたいと願って色々と変な根回しをなさいました。
『やったねタエちゃん』な心境だったろうと境さんは語っています。…実際は皆さんバラバラな進路だったそうです。
性格はツンデレ守銭奴…怒られませんかこれ?母校の理事もなさってるそうです。
心を許した方にのみ関西弁を使用なさいます。なるほど、だから境さんには関西弁なんですね」

交流「駆け足でしたがいかがだったでしょうか?余計混乱しただけだと思いますすみません」
みゆき「本来のクロスオーバーにはマイナー作品をひっぱるために作るという要素もあるらしいので間違ってはいないのですが…」
交流「では、お相手は三日科交流と」
みゆき「高良みゆきでした」

『ばいにー!』

ガタッ


「さて、ふおん遺言は?」
「ふ、ふふふ、私を倒しても…夕ちゃんがいるのを忘れるな…」
「ならアンタのたびはここでおわりやぼうけんをうちきろう」
「にぎゃー!」

みゆき「ざんねんながらぼうけんのしょはきえてしまいました」

終わり。


不愉快に感じた方、すんません
545 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/09(日) 06:23:00.32 ID:aXsRIBUo
>>540
乙でした
原作でみさおが言ってたように、仮眠が本眠になってしまいましたかw


>>544
乙でした
機会があったら読んでみようかと思います
546 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/09(日) 09:14:44.07 ID:44M4lzo0
>>544 乙です
コラボって難しいって前回言った。それはコラボする作品の両方を読む人が知っているか。
この1点に尽きると思います。
同じ雑誌に連載されているような作品のコラボなら両方を知っている可能性は高い。
同じ原作者の作品なら両方を知っている可能性は高い。
同じアニメ製作所とか、作品の世界観が似ている以外の共通性がないとなかなか条件は厳しくなります。
しかし『ふおんコネクト!』の宣伝にはなったと思いますので無駄ではないですね。
547 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/09(日) 09:49:05.60 ID:44M4lzo0
-----------------------------------------------------------------------------

ここまでまとめた

-----------------------------------------------------------------------------
548 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage_saga]:2011/01/09(日) 20:27:09.56 ID:ufUZifXg0
>>547
まとめ乙ー
>>546
らき☆すたアニメ化の目的はもしかして・・・
549 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/10(月) 00:15:01.45 ID:IuY6Wnpa0
>>548
深読みしすぎですw
550 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/10(月) 01:24:56.20 ID:IuY6Wnpa0
リレーSS主催者です。

残すところあと五日となりました。 ここで質問です。
リレーSSに参加しようとしている方は居ませんか?
作成途中でも意思だけでも構いません。

やはりスタートの文が悪すぎたようです。もっと続きを書きたくなるような文にしないとだめだった。
2レス目の人には悪い事をしてしまいました。

551 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/10(月) 12:37:29.56 ID:BHKNwoiAO
参加しようとはしているが、確かにあのスタートからの2スレ目まで行くと続きは書きにくい
552 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/10(月) 13:53:06.80 ID:M6oVaXNE0
やはりちゃんとリレー用に考えて作らないとだめだった。自分の未発表SSのくだりをそのまま使用したのが失敗だったようです。
この辺りの反省は次回に反映させますので、このまま最後までお願いします。
分岐なども駆使して何とかお願いします。
553 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/10(月) 14:47:33.69 ID:PxfD1M8SO
ってか分岐0って書いてるけど2レス目は分岐じゃないの?
どのみち他視点を考慮して書かないといけないから厳しいけど
554 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/10(月) 16:16:32.17 ID:M6oVaXNE0
分岐はそのスレの続きを複数の人が書いたら分岐です
2レス目はまだ分岐していません。
555 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/10(月) 16:53:55.65 ID:M6oVaXNE0
>>554 スレ=レスですね 間違えです。

 あまり前後は考えなくていいと思う。リレーなのでそのレスの続きだけを考えればいいのです。
自分が1レスの続きを書くなら……こなたはかがみの作った料理が食べたくない。それだけに注目して
こなたなんだかんだ理由をつけて時間を延ばしてその場から逃げようとする。そして逃げたのはいいがゲームソフトを
つかさの部屋に置いてきてしまった。また戻らなければならない。さあどうするみたいにして次の人に渡しますよ。

 2レス目にしても同じです。自分ならみきとかなたの場面を使うと思います。

 主催者なので参加できませんが頑張ってください。
556 :リレーSS3 [saga]:2011/01/10(月) 20:51:18.66 ID:nfuI/YEAO
一応できたのでリレーSS投下します。
557 :リレーSS3 [saga]:2011/01/10(月) 20:52:51.50 ID:nfuI/YEAO
>>523の続き

さて、その夜…

つかさ「もぅこんな時間だ。そろそろパソコン止めて寝よっと」
パソコンをいじるのに夢中になっていたつかさは、普段なら既に寝ている時間なのにようやく気がついた。
つかさ「あ、でもこなちゃんのくれたゲームやってないや…明日でいいかな?いいよね」
そういいながらもシャットダウンを実行し、さて眠ろうかと布団に入ったその時ー

…ウイィィィン

ドッキリが開始された。

つかさ「あれ、今確かにパソコンを止めたはずなのに…」
不審に思いながら再びパソコンの前に座るつかさ。だが彼女の考えと異なり、パソコンの電源は入っている。
つかさ「なんでだろ…あ、そっか。この『再起動』っていうのやっちゃったんだ」
適当にいじったつかさはドッキリとは思わず、単に自分がケアレスミスをしたと勘違いした。
が、次の瞬間に、そうではないと思い知らされたー。


以上。何が起こったのかはまかせます。
558 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/10(月) 21:44:14.91 ID:M6oVaXNE0
>>557
乙です。続きを期待致します。
559 :リレーSS4 [saga]:2011/01/11(火) 01:13:49.11 ID:1MQ28fiSO
>>557に続いてリレーいきます。



 逃げなきゃ…そう思う意志とは裏腹に、つかさはモニターを凝視していた。
 ずるり…ずるり…と、湿った音をたてて髪の長い少女らしきモノが、モニターの奥からこちらに向かいはいずってきていた。
 そのモノがモニターの縁に手をかけたのを見て…つかさは声も無く真後ろに倒れた。
「あ、あれ…?」
 モニターからはいずり出てきたモノ…かなたは乱していた髪の毛を整えると、気絶したつかさの横にしゃがみ込み、頬をつついた。
「…わたし、そんなに怖かった?ちょっとショック」

 気絶したつかさをとりあえずベッドに寝かせたかなたは、少し考えるように腕を組んだ。
「一応ドッキリは成功したのかしら…んー…他の人だとどういう反応するのかしら。例えば…そう君とか」

 ずるり…ずるり…。
『…なにやってんだ、かなた?』
『あ、あれ…わかっちゃった?』
『そりゃわかるさ…どんな姿になっても、俺にはかなただってわかるよ』
『…やっぱり、かなわないな…そう君には…』

「…なんて…えへへへ…おっと」
 かなたは口の端から垂れそうになったよだれを拭い、つかさの様子を見た。
 そして、つかさの寝息が安定しているのを確認すると、部屋の窓の方へと向かった。
「これは、そう…アレよ。知的好奇心を満たす実験とか、そういう感じよ…うん」
 自分に言い聞かせるようにそう呟き、かなたは夜空を泉家に向かいふよふよと飛び立った。
 どことなく、緩んだ笑みを浮かべながら。
560 :リレーSS4 [saga]:2011/01/11(火) 01:18:02.67 ID:1MQ28fiSO
以上です。

つかさ側を続けるか、かなたの方に移るかってところでしょうか?
561 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/11(火) 02:12:58.94 ID:3bkzg+dAO
>>560

せっかくだから>>559の続きを





「………なんだったの今のは」

夕方仕掛けたこなたとのドッキリの内容は『電源を落とそうとするとつかさのパソコンが暴走し、突然エロゲーが始まる』といった事になっているハズだった。しかしドアの隙間からいのりと覗いていたまつりの目にはパソコンから半透明な髪の長い女の子が出てくるようにしか見えていなかった。
「とりあえずあれはこなたちゃんの仕掛けたものじゃなさそうね…よっと」

パソコンから女の子が出てきた瞬間いのりと揃って気絶していたが、まつりの方が早くに気が付きつかさの部屋の隠しカメラの映像を確認しようと今だに気絶している姉を跨ぎ部屋に入った。

「うわーこれって本物の…にしても変わった幽霊ね」

隠しカメラの映像を見てみると幽霊が気絶したつかさを丁寧にベッドに乗せ窓から出ていく所までが映っていた。
「とりあえずこの映像はこなたちゃんに見せた方がいいわね。随分予定と違うけどつかさの気絶するいい瞬間も撮れてるし」
まつりニヤつきながらカメラを回収すると、姉を起こすために廊下へ戻っていった


562 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/11(火) 02:14:19.26 ID:3bkzg+dAO
つかさ側の話を続けてみた


あとは別視点になると思うから頑張って
563 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/11(火) 12:09:19.01 ID:FqIOGnyS0


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆  リレーSS開催中  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



ルールを説明します。
一回一レス。7レスで完結。分岐は2回まで。期限は1月15日まで。それまでに7レスに達すれば終わりです。

進行状況
>>477スタート→2/7レス目>>523→3/7レス目>>557→4/7レス目>>559→5/7レス目>>561 あと2レス  分岐0

ふるって御参加をお願いします。

564 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/11(火) 18:57:39.13 ID:d/JFGqRu0
>>561の続き
翌日、泉家の居間。
 みき、いのり、まつり、かがみ、つかさ、こなた、ゆたか、そうじろう、さらには、ふゆきまでが、そこにずらりと勢ぞろいしていた。
 ふゆきは、ゆたかが電話をかけて、来てもらったのだ。

こなた「えーっと、話を整理すると。
 まず、私がつかさに仕掛けるいたずらのことを、ゆーちゃんと、いのりさんとまつりさんに話して。
 ゆーちゃんが学校に遊びに行ったときに、天原先生にそれを話して。
 天原先生は、ゆーちゃんに、仕掛けるエロゲーを差し替えるようにと、ホラームービーを手渡したわけですね」
ふゆき「はい。青少年に不健全なものよりは、こちらの方がよりふさわしいかと思いまして」
こなた「そんで、天原先生は、みきさんといのりさんにはそのことを伝えていたと。ここまでは、まあいいよね」
つかさ「みんなひどいよぉ」
 つかさが涙目でそう訴えたが、
ゆたか「ごめんなさい、先輩」
 謝ったのは、ゆたかだけだった。
 他のみんなは、それどころではない事態の方に関心が向いていた。
 それはすなわち、
まつり「で、最後に本物の幽霊が出てきちゃったわけね」
 かがみは、いろいろとツッコミたいところが満載だったが、あまりに多すぎて、言い出せずにいた。

 そうじろうは、例の映像を停止させて、じっと見入っていた。
そうじろう(ここでもうちょっと角度がよければ、顔が見えるんだが……)
 パソコン画面から出てきた場面では、髪を前にたらしているため顔が確認できない。そのあとの場面では、角度が悪くて、顔がよく見えなかった。
 そうじろうは、その幽霊をどこかで見たことがあるような気がしていた。だからこそ、顔を確認したかったのだが。

ふゆき「でも、本物の幽霊も見れましたし、予想外の収穫でしたね」
 ふゆきは、うれしそうな顔をしてそんなことを言った。
かがみ「たたられたりしないかしら」
 心配なのは、まさにそこだ。
ふゆき「見る限りでは、純粋ないたずら目的のようですから、その心配はないでしょう。つかささんをベッドに寝かせるといった律儀な対応をしていらっしゃいますし。専門家としては、どう思いますか? 柊さん」
 ふゆきは、みきに意見を求めた。
みき「先生がおっしゃられるとおり、実害はないと思いますよ」

 いのりは、みんなの会話そっちのけで、居間の一角をじっと見ていた。
いのり「ねえ、母さん。あそこ、いる?」
 いのりが、指差した先には誰の姿もないのだが……。
 みきが、ふいに笑みを漏らした。
みき「ふふ。やっぱり、いのりには分かっちゃうのね」
 みきは、そこにいる存在に対して、呼びかけた。
みき「かなたさん、出ていらっしゃい」
565 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/11(火) 18:59:06.71 ID:d/JFGqRu0
ちょっと詰め込みすぎたか。
でも、あと2レスで収めるには、これぐらい詰め込まないとどうにもならない。
566 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/11(火) 19:30:05.06 ID:FqIOGnyS0
何か急にスピードアップしました。
>>555のアドバイスが効いたのかな?w
あれは一つの考え方なので参考程度にして下さい。

実は〆のアンカーが一番大変なのです。果たして最後まで完走できるか。期待しています
567 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/11(火) 22:07:30.99 ID:ykWgTg9AO
クロスオーバーもの書きたいんだけど別スレ立てて書いたらダメなんですか> <
568 :523 [sage]:2011/01/11(火) 23:29:07.57 ID:vNrAnOIDO
酷いって言われた理由なんか分かった気がする…
アンカーの人すみません
569 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/11(火) 23:57:44.78 ID:FqIOGnyS0
>>567
クロスオーバ物はどうかは知らないけど、オリキャラ登場物は敬遠される傾向がある。
それでも自分は書いているけどね。
クロスオーバはオーバーする漫画なりアニメをどれだけの人が知っているかだけだと思います。
それでも書きたいと思うなら歓迎です。
>>546は別に批判しているわけじゃないですよ。

>>568
1レスに三方向の物語を入れるのが無理があったかもしれません。それからラストを誘導するような注釈も避けた方がいいかもしれません。
リレーの自由度が制限されてしまいます。
570 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/12(水) 07:18:55.74 ID:agKE6aax0


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ルールを説明します。
一回一レス。7レスで完結。分岐は2回まで。期限は1月15日まで。それまでに7レスに達すれば終わりです。

進行状況
>>477スタート→2/7レス目>>523→3/7レス目>>557→4/7レス目>>559→5/7レス目>>561→6/7レス目>>564 あと1レス  分岐0

いよいよラストです。分岐もまだいけますよ。

571 :523 [sage]:2011/01/12(水) 09:16:09.79 ID:FO45or1DO
>>569
分かりました。今後の参考にします。あと今更だが分岐してもいいのよ?
572 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/12(水) 11:06:14.46 ID:agKE6aax0
リレーが完成する前なら分岐OKですよ 1〜6までのどのレスからでも続けられます。
573 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/12(水) 11:07:05.94 ID:agKE6aax0
6の続きだと完成しちゃうので5レスまでですね。
574 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/13(木) 23:47:39.89 ID:5vde65KPo
新板にスレッドごと飛ばしてもらえるように依頼出した方がいいかもー

■ 【必読】 SS・ノベル・やる夫板は移転しました 【案内処】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1294924033/
SS・小説スレは移転しました
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/ Mobile http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/

575 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2011/01/14(金) 00:31:15.95 ID:ndiwFlk10
以来してみました。

SS・小説スレは移転しました
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/ Mobile http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/

576 :真・スレッドムーバー :移転
この度この板に移転することになりますた。よろしくおながいします。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/14(金) 00:42:12.61 ID:CEFP20wO0
高翌良 テスト
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/14(金) 00:43:11.82 ID:CEFP20wO0
高良 テスト
sagaは有効のようです。
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/14(金) 00:49:13.08 ID:CEFP20wO0


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ルールを説明します。
一回一レス。7レスで完結。分岐は2回まで。期限は1月15日まで。それまでに7レスに達すれば終わりです。

進行状況
>>477スタート→2/7レス目>>523→3/7レス目>>557→4/7レス目>>559→5/7レス目>>561→6/7レス目>>564 あと1レス  分岐0

いよいよラストです。一応15日の日付が変ったら終了と致します。

580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/15(土) 23:53:59.23 ID:y7WQKRjAO
らきすたも終わったな
581 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/16(日) 00:00:36.83 ID:j+FU2ysS0
リレーssは終了します。

あと少しで完走だった。残念です。1レス目がつなぎ難かったのが原因かもしれません。
しかし2レス目でかなたが出てきたのは驚いた。

折角あと1レスなのでラストだけ暫く受け付けたいと思います。

協力してくれた方、リレーに参加してくれた方、有難うございました。
582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/16(日) 00:05:26.04 ID:j+FU2ysS0
それでは自分のssを投下します。以前出たお題>>384の『時計』から連想して書いたssです。
お題の提供してくれた方ありがとうです。
最初の1レスはリレーss1レスと同じです。
SF要素あり。34レスくらい使用します。
583 :時を廻って 1 [saga]:2011/01/16(日) 00:07:37.70 ID:j+FU2ysS0
 つかさが専門学校を卒業するに当たり親からパソコンが贈呈された。しかしつかさはパソコンの操作や内容がよく理解できていない。そこでこなたにセットアップを依頼した。
こなた「これでよしっと……メール、インターネットは使えるようにしたよ」
つかさ「ありがとう、操作方法も教えてもらうと助かるんだけど」
こなた「つかさ、後は使って覚えるしかないよ、メールとインターネット、ワープロとかなら今までも使えてたでしょ、それと同じだから」
つかさ「そうなんだ、分ったよやってみるよ」
こなた「ところでつかさ、このパソコン、メールとインターネットだけやるには勿体無い仕様だよ……どうだいゲームをインストールしてあげようか?」
つかさ「私今はそんなにお金持ってないよ」
こなたは不敵な笑みを浮かべた。
こなた「ふふふ、別にお金なんか要らないよ、ほら、いくつか持ってきた、選り取り見取りだよ」
こなたは鞄からいくつかソフトを取り出しつかさの机の上に並べた。
こなた「ネットゲームは?」
つかさ「んー、時間かかりそうだし難しそうだよ」
こなた「ギャルゲーは?」
つかさ「そうゆうのはやった事ないし、それに私は女性だし……」
こなたは暫く考えた。
こなた「それじゃロールプレイングはどうかなこのゲームは全年齢対象だし面白いかもよ」
つかさ「それならいいかも」
こなたはつかさに許可を取る間も惜しむようにパソコンにそのゲームをインストールしだした。
つかさ「ちょっと、私まだゲームをするって言ってないよ」
こなた「いいから、いいから、興味なければアイコンをクリックしなければいいんだし……」
こなたに押し切られた。つかさはそれ以上何も言わなかった。そこにかがみがやってきた。
かがみ「ほー、こなたにしては珍しいわね、ちゃんとやってるみたいね」
こなた「……一言余計だよ、私だってやる時はやる」
かがみ「言ってくれるじゃない、まさか変なゲームなんか入れていないわよね」
疑いの眼でこなたを見つめるかがみ。
つかさ「今ゲームを入れてもらってる」
こなた「バカ……そんなの言っちゃ……」
かがみ「……つかさに変なの教えないでよね」
こなた「ただの普通のロールプレイングゲームだよ……それにもうつかさだって大人なんだしそのへんの分別はついてよ、いつまでも子ども扱いしてると嫌われるよ」
こなたとつかさは見合って頷いた。
かがみ「ただの普通のって強調する所が怪しいわね、つかさも相槌なんかして……まあいいわ、一段落したら台所に来て、お昼作ってあるから」
こなたは驚き、嫌な顔をした。そんなこなたを尻目にかがみは台所に戻って行った。
こなた「も、もしかしてそのお昼ってかがみが作ったの?」
つかさ「今日はお母さんも居ないし、お姉ちゃんしか他に居ないよ」
こなた「うっげー、つかさの作ったのが良かったな、おばさんのもなかなかだったよね……期待してたのに……」
こなたは項垂れた。
つかさ「それよりこなちゃんゲームの方は終わりそうなの?」
こなた「もう放っておいても大丈夫だよ」
つかさ「それじゃお昼食べに行こうよ」
こなたは渋々と台所へと向かった。

 
584 :時を廻って 2 [saga]:2011/01/16(日) 00:09:09.13 ID:j+FU2ysS0
 こなたは台所の入り口で立ち止まった。つかさは立ち止まったこなたに後ろからぶつかった。
つかさ「ふぎゅ……こなちゃん急に止まっちゃってどうしたの?」
こなたは目を疑った。『普通』の料理が並べられている。『普通』に食べられそう。『普通』……かがみの料理に関して言えばこなたにとっては驚くべき光景だった。
こなた「これってみんなかがみが作ったの、昨日の作り置きじゃない」
かがみは不敵な笑みを浮かべた。
かがみ「ふふふ、いつまでも料理下手なんて言わせない、私だってやる時はやる」
つかさの部屋でのお返しとばかりの台詞。
こなた「言ってくれるね、見た目だけじゃ分からないよ、食べてみないとね」
かがみはまるでメイドのように椅子を引いてこなたを誘った。それに吸い込まれるようにこなたは椅子に座った。
つかさ「……その料理、先週私が教えた……」
かがみ「バカ……そんなの言っちゃ……」
今のこなたにかがみとつかさの会話は聞こえていなかった。箸を持ち料理を摘むと無造作に口に放り込んだ。かがみは固唾を呑んでこなたの行動を見ていた。
かがみ「どう?」
こなたは何度も料理を噛んでから飲み込んだそして暫く何も言わずに机に並べられた料理を見ていた。
こなた「……美味しい」
かがみ「聞こえない、もう一回」
これはこなたにとっては屈辱に近い。しかし真実は変えられなかった。
こなた「美味しいよ、さっきのは撤回する」
かがみ「やった!これで苦手を克服したわよ」
ガッツポーズをして喜ぶかがみだった。そんなかがみをこなたは冷ややかに見ていた。
こなた「いまさら何で料理なんか……食べさせたい彼氏でもできたの?」
かがみの動きが止まった。そして急に顔が赤くなった。当てずっぽうで言った言葉にこれほど動揺するとは思わなかった。
こなた「……図星かい……いつの間に、相手は同じ大学の人?」
つかさ「え、お姉ちゃん、こなちゃんの言ってるの本当なの?」
つかさまでが本気にしだした。しかしかがみは別に彼氏ができた訳でも好きな人が居るわけではなかった。こなたの思いも寄らない質問が出たので動揺しただけだった。
かがみ「そんなんじゃないわよ、気になる人は居るけど話もしたことないわよ……」
こなた「ふーん、話したこともないって……はぁー」
片手を額に当ててため息をつく。
かがみ「な、なによ、そんなの私の勝手でしょ」
こなた「そうやってチャンスを逃しちゃうんだね……高校時代みたいに」
その言葉にかがみは見透かされたような衝撃が走った。言い返せなかった。そんなかがみを見ながらこなたは話し続けた。
こなた「かがみがいつも私達のクラスにお弁当を食べにきてた、それは何も私達に会いたいためだけじゃなかった……でしょ?」
かがみ「それは……」
言葉を詰まらせた。
こなた「かがみがチラ、チラ、って見てるのを知ってたよ、その先目線の先の男子生徒……名前は……」
かがみ「わー、その先は言うな、言ったら殴るぞ」
真っ赤な顔でこなたの口を両手で塞いだ。しかしこなたは直ぐにかがみの手を跳ね除けた。
こなた「もう過ぎたことなのに、そんなに照れなくてもいいじゃん……名前は言わないよ……その様子だと告白はしてないね?」
かがみは黙って頷いた。
こなた「もう諦めたの?」
かがみ「……もう過ぎたこと、こなたがそう言ったでしょ、もうその話はいい」
こなた「……わかったよ、もう言わないよ、でも何もしないと相手には何も伝わらないよ」
かがみ「そんなのは分かってる……分かっているわよ」
なにか重い雰囲気が広がった。それはこなたが帰るまで続いた。

585 :時を廻って 3 [saga]:2011/01/16(日) 00:11:01.48 ID:j+FU2ysS0
 その夜、つかさは自分の部屋で考え事をしていた。お昼のかがみとこなたの会話。こなたはかがみの好きな人を知っていた。
妹である自分は全く分からなかった。気が付かなかった。しかしこなたはかがみの心境を見抜いていた。
つかさは高校時代、かがみのクラスに気になる男子生徒が居た。これは誰にも言わない秘密。忘れ物をしていないのに教科書を借りにかがみのクラスに行ったことも
しばしばあった。その人を見ていたいからだった。それでもこなたやかがみ、みゆきもつかさについては全く気付いていなかった。
もともと気が付かないようにしていたのだからある意味それは成功であった。でもかがみには気付いて自分のは気付かれない。なにか寂しい。つかさの心は複雑だった。
でも結局つかさ、自分も相手に告白していない。何も無いのと同じ。かがみと同じだった。こなたの最後の言葉が頭から離れなかった。
つかさ「あっ!」
つかさは思わずこなたがインストールしたゲームのアイコンをクリックしてしまった。別にゲームする気は全くなかった。でもおかしい。ゲーム画面が全く出てこなかった。
不思議に思って暫く画面をみているといきなり真っ白なウインドが立ち上がった。そこにはゲームタイトルすら出ていなかった。
きっとインストール途中でお昼に行ったからなにか不具合があったに違いない。そう思いながらウスを動かし画面消去、閉じるバツ印をクリックした。
『カチカチ』
空しくクリックするマウスの音が部屋に響いた。何度やっても画面が消えない。もうそろそろ寝るつもりだった。このまま電源落とそうと電源ボタンに手を伸ばした。
突然画面が変わった。電源を切る手が止まった。画面にはカレンダーと時計が表示されている。そして地図らしき画面も出てきた。
良く見るとその地図らしき画面は自分の住んでいる街のようだった。画面に描かれている線路を追っていくと最寄の駅の名前が書いてあった。自分がその駅から帰る道を
追っていくと自分の家の辺りに赤く点滅するマークが点いていた。カレンダーと時計を見ると現在の日時が刻まれている。なんのゲームなんだろう。つかさは首を傾げた。
つかさはおもむろにマウスを手に持ち地図を見てみた。ドラックすると地図はスライドする。つかさは通学してきた道を追うようにマウスを操作した。
つかさ「あった」
独り言。陸桜学園と書かれている所までたどり着いた。地図を読めたのは初めてだった。少し嬉しかった。思わず陸桜学園の真上にカーソルを動かしクリックした。
すると陸桜学園の場所に青く点滅するマークがついた。マウスを動かしたが地図は固定されて動かなかった。何か設定か何かが終わった感じだったがつかさはあまりゲームを
していないのでよく分からない。すると今度はカレンダーの日付が赤く点滅しだした。今日の日付だ。そして時計も赤く点滅している。今の時刻だ。
つかさは考えた。地図と同じように日付を決めるのかもしれない。
(やっぱり学校なら……あの日しかないよね)
卒業式の午後……つかさが言おうとして言えなかったあの日あの時。つかさはマウスを操作して日付と時刻をその時に合わせた。すると今度はカレンダーと時計が青く点滅した。
新たに画面が出てきた。
『これでいいですか?』『YES』『NO』
何が良くて何が悪いのかは分からない。しかしつかさは『YES』のボタンをクリックした。画面が消えてしまった。
つかさ「えー、何も起きないの、期待したのに……」
また独り言、つかさはため息を一回ついた。どうやらこのゲームはインストール失敗のようだった。つかさはお風呂に入るために部屋を出た。
586 :時を廻って 4 [saga]:2011/01/16(日) 00:13:02.01 ID:j+FU2ysS0
 
 急に眩しい光が差し込んだ。光の方向を見上げた燦燦と太陽が照り付けていた。おかしい。もう寝る時間のはずだった。自分の部屋を出ただけだったはず。
つかさは辺りを見回した。花壇。植えられた草花。後ろを向くと見覚えがある建築物。体育館……そう、陸桜学園の体育館。ここは体育館の裏庭だ。
はっと気が付いた。自分の今の姿だった。私服でしかも足はスリッパを履いている。誰かに見つかったら怪しまれる。つかさは身を低くして花壇の植え込みに身を隠した。
つかさはその時気が付いた。もしかしたらあのパソコンで設定した通りの日時と場所に来ているのかもしれないと。
つかさ「どうしよう、どうしよう」
何も考えられない。でも学校から出た方がよさそうなだけは理解出来た。裏門からこっそり出よう。そう思った。身を低くしたまま移動をした。
裏門に着くとつかさの足が止まった。裏門には制服を来た自分の姿があった。
(なんで裏門なんかに私が)
その状況を思い出すに時間はかからなかった。
そうだった。彼に告白をするつもりだったんだ。彼はいつも裏門から下校する。だから……。
つかさは過去の自分を見ている。自信なさげに裏門の端に隠れるようにして立っていた。
(なんで隠れてるの、それじゃ意味ないよ……)
植え込みの陰から過去の自分を見た。自分ながら情けない姿だったと思っていた。暫くすると校舎から一人の男子生徒が歩いてきた。目当ての人だった。
男子生徒は普段のように歩いてきている。過去のつかさは胸に手を当てじっと彼を見ていた。しかし彼は気付かない。
(今だよ、今飛び出して……)
つかさは今にも叫びそうになったが耐えた。彼はそのまま過去のつかさを素通りして門を潜り去っていった。過去のつかさは手を胸に当てながらため息をついて項垂れた。
彼を追うこともなく過去のつかさは校舎の方に戻っていった。
(なにやってたんだろ……ただ一言言うだけだったのに……)
ただため息をつくばかりだった。
587 :時を廻って 5 [saga]:2011/01/16(日) 00:14:41.50 ID:j+FU2ysS0


 裏門は思いのほか人の出入りがあった。ここからは出られそうにない。つかさは裏門から出るのを諦め体育館の裏庭に戻った。するともう一人植え込みの陰に
隠れてる人陰を見つけた。つかさには気付いていない様子、体育館の方を見ている。目を凝らして良く見ると制服を着たかがみの姿があった。
(お姉ちゃん、なんでこんな所に……そういえば私が教室に戻った時お姉ちゃんはまだ居なかった)
不思議に思いながらかがみを見ていると誰かを待っているようだった。でも隠れてるのはどう見てもおかしい。かがみの手には手紙らしきものを持っている。
暫くすると体育館の方から男子生徒がやってきた。それはつかさのクラスメイトだった。こなたの話を思い出した。
(お姉ちゃん、もしかして手紙を渡すために呼んだのかな……その手紙はラブレター……)
男子生徒はキョロキョロと辺りを見回している。呼んだ人を探しているみたいだった。しかしかがみは一向に彼の前に出る気配はなかった。かがみは彼を見ているだけだった。
呼んだのはかがみだとつかさは確信した。数分経っただろうか。
男子生徒「おーい何してるんだよ」
体育館から別の男子生徒がやってきた。彼の友達だ。
彼「いやね、ここに来て欲しいって書置きがげた箱にあってね……」
男子生徒「……悪戯だよ、少しは考えろよ……誰がお前をこんな所に呼ぶんだよ」
彼「そうだよな、バカみたいだった、行こうか」
男子生徒たちは裏庭を後にした。かがみはそのまま彼を見送った。かがみは手紙を広げてじっと見つめた。そしてビリビリに破りその場に捨てた。
かがみの目には涙が流れていた。かがみはその涙を拭おうとはせず走ってその場を去って行った。
つかさ「お姉ちゃん……あの後笑って私達の前に現れて……カラオケパーティだって私達を誘ったんだよね……そんな事があったんだ……知らなかった」
つかさはかがみが隠れていた場所に歩くと破られ捨てられたラブレターを拾った。

 はっと気が付いた。つかさは辺りを見回した。自分の部屋に居た。思わずパソコンの画面を見た。画面は消えたままだった。夢を見ていたとつかさは思った。
つかさはパソコンの電源ボタンを押そうとして手を出すと。その手には破られた手紙の破片を握っていた。
『コンコン』
ドアがノックされた。
かがみ「つかさ、起きてるの、先に寝るわよ……」
かがみは深夜になっても起きているつかさを見て驚いた。
かがみ「珍しいこともあるわね……さてはこなたに貰ったゲームをしてたな……」
つかさは手に持っているものを見ていた。かがみは不思議に思いつかさに近づいた。
かがみ「何よそれは……えっ……なんでつかさがそんなの持ってるのよ」
つかさは手紙の破片をかがみに渡した。かがみは手渡された手紙の破片を見て当時の感情が湧きあがってきた。
つかさ「お姉ちゃんの気持ち、すっごく分かるよ、言えなかったんだよね……言えないって辛いよね……」
つかさの言葉にかがみは冷静さを失った。手紙を握り締めながらかがみは泣いた。あの時を思い出して。
588 :時を廻って 6 [saga]:2011/01/16(日) 00:16:18.38 ID:j+FU2ysS0


 数日後つかさはこなたを家に呼んだ。もちろんゲームに関して聞きたかったからだ。
こなた「何のゲームかっだって、やってて分からなかったの?」
思い切って先日起きた出来事を話した。かがみの秘め事については伏せた。自分については諦めが着いたけどかがみはまだ心の傷は癒えていないと思ったからだ。
こなた「過去の世界に行っただって……ふふふ……つかさ夢でも見たんだよ」
つかさは内心がっかりした。今まで秘めていた自分の恋を打ち明けたのにこの程度の反応だったなんて。
つかさは黙ってパソコンを立ち上げゲームのアイコンをクリックして見せた。こなたは驚いた。見た事もない画面が出てきたからだ。
こなた「何、この画面は?」
つかさ「何って、聞きたいのはこっちだよ、壊れちゃったのかな」
こなた「どうやって操作したのさ、過去に戻るってどうしたの?」
つかさはこなたに説明をした。
こなた「赤い点滅と青い点滅か……赤が現在、青が行きたい年代って訳か……つかさにしてはよく分かったね」
つかさ「こなちゃん、元に戻るかな?」
しかしこなたは元に戻す素振りは見せなかった。
こなた「……つかさに好きな人が居たってのも驚いたけど……言ってるのが本当なら……私達は凄い物を手に入れたんだよそう思わない?」
つかさ「凄い物?」
鈍いつかさにこなたはため息をついた。
こなた「タイムマシーンだよ、今だ誰も成し遂げられなかったタイムマシーン、時間旅行ができるんだよ、過去を変えることが、未来を確かめに行く事ができるんだよ」
つかさはそうは思わなかったつかさが過去に行って戻ってきた時はかがみがただ悲しみに泣いていただけだった。
つかさ「私はそんなに凄いとは思わないよ……」
そんなつかさにこなたは珍しく真面目な顔になった
こなた「私も行ってみたい時代があるんだ……できればやり直したい……」
つかさ「まさかこなちゃんも告白出来なかったの?」
こなたは黙ったままだった。つかさはもうそれ以上聞けなかった。こなたがかがみの心情に詳しかったのも理解できた。
こなた「……なんてね、タイムマシーンだなんて夢物語だよ、つかさは疲れて夢でもみたんだ、ゲームを元に戻したいけど今はソフト持って来てない、今度の休みにでもね」
笑顔で答えるこなた。つかさには作り笑顔に見えてしかたなかった。こなたはそそくさと帰り支度をし始めた。
つかさ「え、もう帰っちゃうの、お姉ちゃんもゆきちゃんもそろそろ来る時間だよ」
こなた「今日はそんな気分じゃないんだ……二人によろしくって言って」
つかさ「……うん」
589 :時を廻って 7 [saga]:2011/01/16(日) 00:17:57.65 ID:j+FU2ysS0
 こなたは帰った。暫くするとかがみとみゆきが入れ替わるように来た。
かがみ「ただいま」
みゆき「お邪魔いたします」
つかさ「お姉ちゃんおかえり、ゆきちゃんいらっしゃい」
かがみとみゆきはつかさを見ると心配そうな顔をした。
かがみ「さっきこなたとすれ違ったわよ……何があったのよ、まさか喧嘩でもしたんじゃないでしょうね」
みゆき「どうしたのですかと聞いても、帰る、の一点張りでした、どうかしたのですか?」
つかさ「……何でもないよ、喧嘩もしてない、今度の休みにまた会う約束したし……何でもないって……お姉ちゃんゆきちゃん上がって」
みゆき「それならいいのですが……」
かがみ「ま、つかさとこなたの事に口出しは無用ね、それじゃ、出かけましょ」
つかさ「あれ、どっか行くんだっけ?」
みゆきはクスクスと笑い出した。
かがみ「ちょっとしっかりしなさいよ、買い物に行く約束だったでしょ、つかさが言い出したのよ」
つかさ「あっ!!そうだった、ごめん」
つかさは急いで出かける支度をした。
590 :時を廻って 8 [saga]:2011/01/16(日) 00:19:22.31 ID:j+FU2ysS0


 楽しい買い物も終わりみゆきと別れ、つかさとかがみは帰宅した。
つかさは自分の部屋に入り着替えた。ふと自分の机を見た。パソコンの電源が入りっ放しになっていたのに気がついた。
こなたがいじっていて消すのを忘れたようだ。つかさは電源ボタンに手を伸ばした。
つかさは画面を見て電源を切るのを止めた。画面には『これでいいですか?』『YES』『NO』と表示されていた。
つかさ「そういえばこなちゃんが弄った、もしかして設定しちゃったのかな」
つかさはマウスで『NO』をクリックした。しかしまた元の画面に戻ってしまう。何度しても元の画面に戻ってしまった。つかさは強行手段に出た。
パソコンの電源ボタンを押して直接切った。でも電源は落ちなかった。直接コンセントを抜くこともできたが新品のパソコンが壊れてしまうかもしれない。それだけは避けたい。
『YES』をするしかなさそうだった。つかさは思った。こなたのやり直したいと言っていた時代にいけるのかもしれない。興味が出てきた。
いったいどんな物語が見れるのだろうか。つかさは高校時代の制服を着て玄関から靴を用意し自分の部屋に戻った。
深呼吸を一回した。
つかさ「こなちゃんごめんね」
まるで他人の不幸を見に行くような自分。思わずこなたに謝った。
そしてつかさは靴を履いて『YES』をクリックした。
何も起きなかった……やはりあの時は偶然だったのだろうか。つかさは考えた。あの時、風呂に入りに行こうとして扉を開けたら過去に行けたのを思い出した。
つかさはゆっくりと部屋の扉を開けた。

 急に静かになった。そこは陸桜学園ではなかった。閑静な住宅街の家の門の目の前につかさは立っていた。表札には『泉』と書かれている。何度も来たことのあるお馴染みの
家、こなたの家の前だった。つかさは周りを見回した。特に変わった様子はない。何となくこなたの家が少し新しく見えるくらいだろうか。いったいどのくらい前の時代なのか
まったく検討がつかなかった。つかさはとりあえず駅の方に歩いていった。見慣れた風景、だけどなにか違和感があった。
違和感と言えば久しぶりに着たせいかなのか制服がなんとなく着心地が悪い。もしかしたら少し太ったのかもしれない。
つかさは不思議に思った。学校ではなく何故自分の家だったのだろうか。近くに居た彼氏だったのかも。これなら普段着でも良かったのかもしれない。
591 :時を廻って 9 [saga]:2011/01/16(日) 00:20:32.32 ID:j+FU2ysS0

 曲がり角を曲がると道端に女性が倒れているのを見つけた。もう駅にだいぶ近い所だった。つかさは女性に駆け寄った。
つかさ「大丈夫ですか?」
女性「だ、大丈夫です、そこの椅子まで……」
女性の指差す方を見ると公園のベンチがあった。つかさは女性腕を自分の肩にかけて公園のベンチまで運んだ。つかさは女性を椅子に座らせて彼女の顔を見た。
つかさ「こなちゃん!」
叫んだが直ぐに間違えだと気付いた。
女性「こなちゃん?」
つかさ「い、いえ、人違いでした……本当に大丈夫ですか?」
こなたに似ている小柄な女性、以前こなたの家で写真で見たことのある人。その人が目の前に座っている。泉かなた。その人であった。しかし写真で見るよりもやつれている。
つかさはかなたが倒れていたいた所にあった荷物を持ってきてあげた。
かなた「すみませんね」
申し訳なさそうにつかさを見た。
つかさ「いいえ、倒れているのでビックリしました、救急車を呼びますか?」
かなた「大丈夫です、ですけど、もし良かったから私の荷物から水と薬を取っていただけると助かります」
つかさは鞄から薬と水筒をとってかなたに渡した。薬を飲んでいるようだった。病気なのだろうか。そういえばつかさはこなたから母親の死因を聞いていなかった。
もっともそんなのはよっぽどでなければ聞くことはまずないだろう。
つかさ「病気……なのですか?」
かなたはゆっくり薬を飲むと水筒をつかさに渡した。つかさは元の鞄に水筒をしまった。
かなた「お産後、ちょっと調子がわるくなって……ふぅ……楽になりました……」
つかさ「良かった……」
するとかなたの目がすこしきつくなった。
かなた「見たところ学生みたいだけど、こんな時間に……授業はどしたの?」
声はとても優しかった。しかしつかさは答えを用意していなかった。なんて言えばいいのだろうか。何か見透かされているような目だった。嘘はつけそうにない。
つかさ「えっと、その……」
言葉を詰まらせるつかさ。かなたはそんなつかさに微笑みかけた。
かなた「その制服は陸桜学園……かしら、言えない事情があるのね、しかし私を助けてくれた……何も聞かない……名前を聞いてもいい?」
つかさ「柊つかさです」
かなた「私は……泉かなた」
何か和んだ気持ちになった。かなたは暫く椅子で休んだ。つかさも話しかけるわけでもなく邪魔しないように近くに居た。
592 :時を廻って 10 [saga]:2011/01/16(日) 00:23:01.34 ID:j+FU2ysS0

かなた「もうすっかり落ち着いた、ありがとう」
つかさ「はい」
かなたは椅子からゆっくり立ち上がった。しかしフラフラしている。バランスを崩して倒れそうになった。つかさは自分の体を盾にしてかなたを支えた。
つかさ「家まで送ります」
かなた「……すみません、こうなったら最後まで甘えさせてもうらおうかな、お願いします」
つかさはかなたを支えながら家の方に向かった。つかさは思った。本来こうするのはこなたじゃないといけなかったじゃないかと。
こなたはこの時代にセットをした。きっとかなたに会いたかったに違いない。興味本位で来てしまったつかさは後悔をしていた。

つかさ「家に着きました」
かなた「……不思議ね、私は道を教えていないのに……一回も間違わないで誘導してくれた……もしかして私を知ってるのかしら?」
つかさはそこまで気が回らなかった。なんて言っていいのか分からない、ただ黙っているしかなかった。かなたはそんなつかさに微笑みかけた。
かなた「よかったら上がっていって、お茶でもどうぞ」
かなたは玄関の扉を開けてつかさを招く。つかさはこのまま帰りたかった。でもこのまま帰るのもなにか気が引ける。つかさはただ黙って泉家に入っていった。

 つかさは居間に通された。今の状態と全く同じ配置にテーブルや家具が配置されている。つかさが居間の椅子に座るとかなたは台所で作業を始めた。
なにか落ち着かない。つかさはキョロキョロと辺りを見回していた。
かなた「そんなにこの部屋珍しい?」
笑いながらお茶を持ってきた。つかさの目の前ににお茶とお茶菓子を置くとかなたも席に着いた。何か言わないと。つかさは焦った。
つかさ「えっと、お子さんは、何処にいるのですか……」
かなたはつかさが落ち着きがないのはそのせいかと思った。
かなた「あ、赤ちゃんの気配がないから落ち着かないかったみたいね……そう君……夫が不規則な仕事をしているし、今の私もこんな状態だから親戚に預けているの」
その親戚はきっとゆたかの実家だとつかさは思った。
つかさ「そうですか……すみません家庭の事を聞いちゃって」
かなた「いいのよ、話したいから話しただけ、それよりお茶とお菓子食べちゃって」
つかさはお茶を飲み始めた。かなたはそんなつかさを見つめていた。つかさは少し恥ずかしくなった。
かなた「さっきお茶にお砂糖を入れる時、何の迷いもなくその瓶を選んだでしょ……つかさちゃん」
つかさ「えっ、だっていつも……」
つかさはドキっとした。色違いの同じ形の瓶に砂糖と塩が入っている。つかさは無意識に砂糖の入っている瓶を取っていた。
つかさはかなたを見て目を潤ませてしまった。なぜか無性に悲しくなった。こんないい人にもう会えなくなってしまうなんて。
かなた「この家をを知ってるみたいと言うのかな、つかさちゃんを見ているとなんか他人のような気がしない」
何も言えなかった。つかさは俯いて涙を隠した。かなたはその涙に気付いたみたいだった。
かなた「家出でもしたの、きっと家族の方が心配してると思う」
これはチャンスだった。かなたが勘違いをしている。と言っても未来から来たなんて思わないだろう。つかさはそれに便乗することにした。この場を早く離れたかった。
つかさ「うん……そうかもしれない、私、帰った方がいいかな」
かなたは席を立つと引き出しから財布を取り出した。
かなた「これは少しだけどお礼、交通費の足しにでもして」
かなたはつかさの手を掴み持ち上げた。手の上にお金を置いた。
つかさ「こんなに、受け取れません……」
かなた「私の命の恩人ですものね」
かなたはにっこり微笑んだ。その笑顔に思わずつかさはそのお金をポケットにしまった。そしてそのまま玄関へと歩いてった。かなたもつかさの後を付いて見送ろうとした。
つかさ「あ、あとは私一人でいいので、休んでて下さい」
かなたは立ち止まり笑顔で手を振った。つかさはドアを開けた。
593 :時を廻って 11 [saga]:2011/01/16(日) 00:25:05.57 ID:j+FU2ysS0

 
 外に出たはずだった。しかしそこは自分の部屋の中だった。現代に戻ってきた。その目の前にかがみが居た。
かがみ「……つかさ、どうしたのその格好……まさかコスプレやってるんじゃないでしょうね……」
かがみは呆れた顔でつかさを見ていいた。
つかさ「これは……へへへ」
苦笑いをした。
かがみ「まったく呼んでもこないから何をしていると思ったら……今頃になってこなたの趣味が感染するなんて……趣味の世界だから干渉はしないけど土足は止めにしないか」
つかさは慌てて靴を脱いだ。
かがみ「もうすぐご飯よ、着替えてからおりてきて」
つかさはポケットからお金を出した。かなたの笑顔が脳裏に浮かんだ。また涙が出てきた。しばらく下に降りることができなかった。

 休日の日が来た。午前中からこなたは柊家に訪れていた。つかさはこなたに謝らなければならなかった。
つかさ「早速だけど私はこなちゃんに謝らないといけないの」
こなた「なぜ、何も悪い事なんかしてないじゃん」
きょとんとしてつかさを見た。
つかさ「この前こなちゃん来たとき私のパソコンでゲームの設定したでしょ……時間と場所」
こなた「……したけど、それがどうかしたの?」
少し間を置いてから話した。言い難かったからだ。
つかさ「私……行っちゃったの、こなちゃんのやり直したいって言ってた時代に……」
こなたは俯いてしまった。つかさは思った。これでこなたと友達で居られないかもしれないと。きっと怒ってくる。覚悟した。
こなた「ふふふ、家出の少女ってつかさだったのか……やっぱり、何となくだけど試しに入れてみた時間と場所……これは本物だよ、つかさ」
つかさ「え、どうゆうこと?」
つかさは聞き返した。
こなた「あの日はお母さんが入院する日だった、お父さんが聞いた話だよお母さんからね、その日、家出してきた陸桜の生徒に助けられたってね……その子の特徴が
    つかさに似てるんだよ、名前も聞いたらしいけどお父さんは忘れちゃった、だけどもうこれで分かったよ……」
つかさ「こなちゃん、もしかして私が行くと思ってたの?」
こなた「多分本当の事を行ってたら行かなかったでしょ、だから失恋っぽく演出したんだよ……もしかして制服着て行ったの?」
つかさ「設定した場所が学校だと思って……」
こなた「ふふふ、ははは、傑作だよかがみに見せたいくらいだ」
つかさ「見られちゃったよ……こなちゃんの趣味が感染したって言われた」
こなたは大笑いを始めた。しかしつかさはあまり悪い気にはならなかった。こなたは暫く笑い続けた。
こなた「……つかさ、お母さんってどんな人だった?」
唐突だった。つかさは驚いた。
つかさ「え、なんで今更、おじさんとか、成実さんから聞いてないの?」
こなた「聞いてるさ、聞いてるけど……お父さんは妻としてしか聞いてない、ゆい姉さんはその時はまだ子供だった……つかさの思ったとおり教えて」
つかさは天井をみて少し考えてから話した。
つかさ「……とっても優しかった、あの時おばさんを助けたけどなんだかか私が助けられたみたいだったよ、それにね、お金までくれるなんて、受け取っちゃけど返したいな」
こなた「そう、つかさのお母さんと比べてどう?」
つかさ「……こなちゃん、お母さんって比べるものじゃないと思うけど……」
こなた「そうだよね、そうだった……ごめん……でも比べないとイメージが湧かないんだよ」
また俯いてしまった。今度は本当に悲しいみたいだった。血の繋がっていない他人のつかさが悲しくなるくらいだ。こなたが悲しくなるのはつかさにも痛いほど分かった。
つかさ「それだったら会いにいく?」
こなたは俯いたまま動かない。つかさは質問を変えた。
つかさ「こなちゃん、やり直すって何をしたいの、おばさんって病気だったんでしょ、だったらもうどうしようもないよ……」
こなた「どうすることもできるよ」
594 :時を廻って 12 [saga]:2011/01/16(日) 00:26:41.43 ID:j+FU2ysS0
こなたは鞄から小さい瓶を取り出しつかさの机の上に置いた。
つかさ「なに?」
こなた「バイトで稼いだお金で昨日買った薬だよ、あの時は不治の病でも今ではこの薬で完治できるのさ……三年前実用になった」
つかさ「もしかして、この薬を?」
こなた「……そう、この薬を持って行ってお母さんに飲んでもらう……それだけでいい」
やり直すと言ってた意味が分かった。でも何故かつかさはあまり喜べなかった。
つかさ「それって歴史を変えちゃうってことだよね?」
こなた「変えるんじゃない、やり直すんだよ」
つかさ「でも、それはやってはいけない事じゃないかと思うんだけど」
こなた「出来ないならやらないしやれない、でも救う方法がある、あるなら助ける、当たり前だよね」
つかさ「でも……過ぎ去った事実を変えるなんて……」
こなたは顔を上げてつかさを見た。
こなた「つかさもかがみと同じ事言うんだね……つかさだって倒れていたお母さんを助けたでしょ、あのまま素通りすればよかったじゃないか、助けられるなら助ける、
     つかさだって同じじゃないか、つかさはお母さんが居るからそんな事が言えるんだよ」
こなたの目には涙が溢れていた。説得力があった。こなたの言う通りかもしれない。しかしつかさの言いたいのはそれではなかった。
かなたが生きていたとして、その世界でこなたが陸桜学園に進学しているのか疑問に思った。もし別の高校を選んだとしたら友達として一生会えない気がした。
それがつかさが過去を変えたくない理由だった。でも助けられるなら助けたい。自分の思いとこなたの言葉がつかさの頭の中で響いていた。
つかさ「こなちゃん、もしかしてお姉ちゃんにパソコンの話したの、私がお姉ちゃんと同じ事言ったって……」
整理がつかないのでつかさは話を変えた。こなたは直ぐに頭を切り替えた。
こなた「いや言ってないよ、以前タイムとラベル物の映画の話題をしてて論争になったんだ、歴史を変えるのっていいのかってね、かがみは変えちゃダメだってさ……」
つかさ「そうなんだ……」
こなたはまた直ぐに話を元に戻した。
こなた「つかさ……パソコン貸してくれるよね……」
つかさは返事が出来なかった。こなたはそんなつかさを見てもどかしくなった。
こなた「つかさ……つかさはもう二度も過去に行ってるよね、でも今ここに居て何が変わった……変っていないよね、つかさが過去に行ってなかったらその日が
    お母さんの命日だったかもしれないんだよ、そう言う意味じゃもうつかさは過去を変えちゃったんだよ……それでも私のしようとしてる事は間違ってるのかな……」
こなたはつかさを説得した。つかさは頭を抱えた。
つかさ「分からない……分からないよ……」
こなたは一回ため息をついた。このまま無理押ししても貸してくれそうにない。
こなた「それじゃ分かるまで待つよ……それからこの薬をつかさに預けるよ」
こなたは薬の瓶をつかさの手に置いた。
つかさ「なんで私が?」
こなた「つかさが居ない時パソコンを使うかもしれないでしょ……私はかがみを訪ねれば家にもつかさの部屋にも入れるからね」
つかさは驚いた。思わずこなたの目を見た。
こなた「もしかしたらやっちゃうかもしれいから……やっぱり快く貸してくれないとね、人の命がかかってるから」
こなたは微笑んだ。つかさにはその笑顔がかなたと重なって見えた。
こなた「あまり時間がないから期限を決めるよ……その薬の効力は一週間しか持たないんだって……三日後、三日後の夜また来るよ、それで決めて」
つかさは自分の手にもっている瓶を見つめた。こなたは部屋を出て帰った。
595 :時を廻って 13 [saga]:2011/01/16(日) 00:28:29.12 ID:j+FU2ysS0


 家に帰ったこなたは考えた。なぜつかさはかなたの病気を治すのに反対したのか。過ぎ去った事実を変える。確かに自然の摂理に反しているかもしれない。
しかしつかさはかがみとは違う。そこまで難い考えはしないと思った。もっと別の何かがつかさを止めさせているに違いない。しかしこなたはそれが何かは分からなかった。
ゆたか「こんにちは」
高校を卒業したゆたかは実家に戻った。それから度々こなたの家に遊びに来るようになった。ゆいと同じように。
こなた「いらっしゃい、今日ゆい姉さんは一緒じゃないの?」
ゆたか「今日は遅番だから来れないって、お姉ちゃんによろしくって」
特に何をする訳でもない。ゆたかはこなたとの会話を楽しみにしていた。今日は話が弾む。
こなた「しかしゆーちゃんもしょっちゅう家に来てるけど、ゆい姉さんと同じだね」
ゆたか「やっぱり高校時代が楽しかったから……かも」
こなた「そもそも実家を離れてまでなぜ陸桜なんか選んだの」
ゆたかは少し意外そうな顔をした。
ゆたか「前に言わなかったかな……お姉ちゃんが通っていたから……」
こなた「そうだったっけ……そういえばみゆきさんもおばさんが通っていたからって言ってたっけな……」
そう考えると何かを決める動機なんてそんなものなのかもしれないとこなたは思った。
ゆたか「意外とかがみ先輩とつかさ先輩も同じかもね、どっちが先に決めたかは分からないけど……」
こなた「ふふふ、いや、どう考えてもかがみが先でしょ……つかさは一人で決定なんか出来ないよ」
こなたは笑いながら話した。
ゆたか「笑ってるけどお姉ちゃんは何で選んだの?」
こなた「私、私は……お父さんと賭けをしたんだ、高校のランクで賞品を決めて……えっ?」
ゆたか「えっ?」
ゆたかは聞き返したがこなたの話が止まった。そうじろうと賭けをして決めた高校。もし、かなたが生きていたらそんな賭けをしただろうか。もしかしたら違う高校に行っていた。
つかさはそれを心配して躊躇しているのではないか。つかさはこなたと出会えなくなるのが嫌だった。そう思うとこなたもすんなり薬をかなたに渡せなくなった。
こなた「……ばかだよつかさは……そんなの考えたら何も出来ないよ……」
この時こなたの心が揺らいだ。
ゆたか「どうしたの、お姉ちゃん」
こなたの顔を覗き込むように心配した。
こなた「……な、何でもないよ……話の続きしようか……」

596 :時を廻って 14 [saga]:2011/01/16(日) 00:30:15.69 ID:j+FU2ysS0

 同時刻つかさはみゆきに電話をしていた。
つかさ「……って薬なんだけど、これってどんな薬かなって」
みゆき『……聞かない名前ですね、おそらく数年以内に開発された新薬だと思います、つかささんパソコンの前に移動できますか?』
つかさ「ちょっと待って……携帯電話にかけなおすから」
つかさは電話を切ると自分の部屋に戻った。パソコンを起動してみゆきに携帯電話をかけた。
つかさ「……あ、ゆきちゃん、ごめんね、いきなりこんな電話しちゃって」
みゆき『いいえ、お構いなく……私もパソコンの前に居ますので一緒に操作しましょう』
つかさはみゆきの言うようにパソコンにキー入力をした。すると薬の一覧表が表示された。
みゆき『これは……この薬は三年前に認可された薬ですね、特定の病気に開発された特効薬ですね、副作用も少なく他の幾つかの病気にも有効なので去年からは
     処方箋無しで購入でるようですね、つかささん、この薬を使うのですか?』
つかさは慌てた。なんて言っていいのか少し考えた。嘘を付いてもしょうがない。
つかさ「え、うんん、こなちゃんのお母さんの病気について調べてたの」
みゆき『それを聞いて安心しました……泉さんのお母さんがこの病気に……もし、この薬がその時代にあったなら泉さんのお母さんもきっと良くなったと思いますよ』
つかさは迷った。タイムトラベルの話をみゆきにするかどうか。みゆきなら信じる信じないは別ににして一緒に考えてくれそうな気がしたからだ。
つかさ「こなちゃんもおばさんの病気の話をゆきちゃんに聞いたんだよね?」
みゆき『いいえ、伺っていませんが……』
つかさは驚いた。こなたは自分一人でこの薬を調べたみたいだった。もっともこなたが先に聞いていればみゆきも薬の名前くらいは覚えていただろう。
無闇に話すのは控えたほうがよさそうだ。
つかさ「そ、そうなんだ、すごい薬なんだね……調べてくれてありがとう」
こなたを疑ったわけではなかった。しかしこの薬は本物だ。調べる必要はなかった。つかさはそのまま携帯を切ろうとした。
みゆき『ちょっと待ってください、余計な事かもしれませんがその薬は使用期限がとても短いですね……もっと詳しく知りたいのでしたらパソコンの画面を読んで下さい』
つかさ「……うん、分かった、ありがとう……」
つかさは携帯を切った。そのままパソコンの電源を切ろうとした。ふと薬の一覧表を見た。その薬の値段を見て驚いた。
三年前の十分の一の値段まで下がっている。他の病気にも使われたので一気に値が下がったようだ。それでも学生が簡単に購入できる金額ではなかった。
こなたの想いの強さはこれを見ただけでも充分理解できた。そして薬の使用期限、あまりのんびりはしていられない。
それでもつかさは決め兼ねていた。パソコンから離れた。自分の部屋を出る。そしてつかさは自然とかがみの部屋の前に立っていた。
597 :時を廻って 15 [saga]:2011/01/16(日) 00:31:52.90 ID:j+FU2ysS0

『コンコン』
ドアをノックしてつかさはかがみの部屋に入った。かがみは机に向かって勉強をしていたようだった。
つかさ「勉強中だったみたいだね、また後で来るよ……」
かがみ「構わないわよ、もうそろそろ止めようかと思ってたところ、何か用なの?」
かがみは椅子を回転させてつかさの正面に向いた。
つかさ「例えなんだけど……例えばこなちゃんのお母さんを過去に行って助けたらどうなるかなって……」
かがみ「……いきなり唐突だな……つかさ、出来もしない事を考えるよりこれからの事を考えた方がいいわよ」
かがみらしい答えだった。でもこれで引き下がるわけにはいかなかった。
つかさ「だから例え話、タイムマシンがあったとして」
かがみはすぐにこなたとつかさで何かあったと思った。
かがみ「こなたと何かあったのか、そいえば今日来てたわよね、そういえば珍しく私には何も言って来なかったけど……」
そして以前に似たような話をこなたとしたのを思い出した。
かがみ「ああ、あの時の話をこなたとしてたのか、つかさもその手の物語に興味を持つようになったみたいね」
つかさはとりあえず頷いた。
かがみ「つかさの例えは『親殺しのパラドックス』の逆を言ってるのよ」
つかさ「親……殺しって……穏やかじゃないね、何それ?」
かがみ「簡単よ、つかさがタイムマシンに乗ってて三十年前のお母さんを殺すのよ、どうなると思う?」
つかさ「三十年前って私達生まれてないよね……私が生まれる前にお母さんが死んじゃったら今の私はどうなるの?」
かがみ「分からないが正解、この手の物語はそれがテーマになるのよ、だから想像でしか答えられない」
つかさ「お姉ちゃんは歴史を変えるのってダメだってこなちゃんに言ったんだよね?」
かがみ「……やっぱりあの時の話をこなたとしてたのね……あれはダメって言うようり出来ないって言ったのよ」
つかさ「出来ないって?」
かがみ「良く考えてみて、タイムマシンがもし在ったとしたら人間は絶対に過去の誤りを正そうとする、私だってやり直したい事なら山ほど在るわよ……
     でも現実は変えられないのよ、過去にどんな事したとしてもその結果は変えられない、私はそう思う、そう言う意味でこなたに言ったつもりよ」
つかさ「それじゃタイムマシンが在ったらお姉ちゃんは何かする?」
それはあった。もうそれはつかさに見られている。今更隠してもしょうがない。それにつかさになら話しても茶化されたりされない。
かがみ「在ったら真っ先に卒業式の日に行くわ……そしてあの時の私の背中を思いっきり押してやる……それだけよ……例え変えられなくても……それが人情ってもの」
つかさはかなたを助けたい感情が高まった。その結果が変らないとしても、こなたと会えなくなったとしても今より幸せになれるのなら良いと思った。
その時つかさは決意した。今ならかがみの願いが叶えられると。そしてつかさ本人の願いも同時に。
つかさ「お姉ちゃん、行ってみる、卒業式の日」
かがみ「はぁ、何言ってるのよ」
かがみは呆れ顔になった。
つかさ「お姉ちゃんに渡した手紙の破片……どうやって私が手に入れたと思う?」
かがみは慌てて机の引き出しを開けて手紙の破片を見た。手紙を持つ手が震えている。
かがみ「まさか……どうやったと思ってた……出来るはずがないと思ってた……」
かがみは放心状態だった。
つかさ「もし行きたかったら、制服に着替えて靴を持って私の部屋に来て」
598 :時を廻って 16 [saga]:2011/01/16(日) 00:33:34.82 ID:j+FU2ysS0


 つかさは玄関に自分の靴を取りに行きそのまま自分の部屋に戻った。
つかさが制服に着替えているとノックの音が聞こえた。
つかさ「はーい」
扉が開くと靴を持ち制服姿のかがみが居た。
かがみ「まさかまたこの服を着るとは思わなかったわよ、そろそろ処分しようと思ってた……何か違和感があるわね」
つかさ「それは太ったからだよ」
かがみ「バカ……そんなにはっきり言うな」
その時かがみは思い出した。
かがみ「そういえばあんた以前制服着てたわね」
つかさ「……これで三回目になるよ」
かがみは黙ってつかさの行動を見守った。つかさはパソコンに向かい画面を起動した。そしていつものように地図と時計をセットした。
『ブブー』
パソコンから操作禁止の警告音が出た。つかさはまた同じ作業をする。
『ブブー』
警告音と共にカレンダーと時計が現在の時間に戻ってしまった。つかさは何度も設定しようとするが戻ってしまう。壊れてしまったのだろうか。
良く見ると設定しようとした日時が黄色く点滅している。故障ではないこのソフトがそうなっているみたいだった。つまり一度行った時代には行けないようになっていた様だ。
つかさは後ろから冷たい氷のような軽蔑の視線、いや、燃えるような怒りを感じた。
かがみ「つ、か、さ……」
重い低い声だった。つかさは後ろを振り向けなかった。
かがみ「謀ったわね……」
つかさ「……違う、違うの、この前行っちゃったから……行けないのかも、ちょっと待って、もう一回設定するから……」
かがみ「……何を設定するのよ!それはゲームの画面じゃない……つかさ、あんたって人はそれほど人の失恋が面白いのか………人の気持ちを弄ぶなんて見損なった」
誤解だ。これは完全に誤解。どうやって説明する。つかさは一所懸命に考えた。とりあえず振り向きかがみの顔をみた。かがみの顔は怒りに満ちていた。
かがみは手に持っていた手紙の破片をつかさに叩き付けた。
かがみ「何がタイムとラベルよ、あの時見ていただけじゃない、その時これを拾ったな、今日まで隠して、それでさっきあんな話を持ち出して、私にこんな格好までさせて
     さぞかし楽しかったでしょうね……つかさ一人じゃこんなの思いつかないわね、こなたの入れ知恵か」
つかさはまずいと思った。あらぬ疑いがこなたにかかった。いまこなたはかなたの事で頭がいっぱいのはず。何とかしないと。
つかさ「こなちゃんには何も言ってない、こなちゃんは手紙の話は知らないよ……」
かがみ「……呆れた、単独犯か、あんたの顔なんかもう見たくない」
かがみの目からは涙が出ていた。かがみを完全に怒らせてしまった。かがみは飛び出すようにつかさの部屋を出た。つかさはかがみを追い掛けた。
かがみは自分の部屋に入るとドアを閉めた。つかさはドアをノックする。
つかさ「開けて、話を聞いて……」
何度もノックするが反応がない。部屋の中からかがみのすすり泣く音がかすかに聞こえる。つかさはノックするのを止めた。説明を諦めて自分の部屋に戻った。
かがみの心に大きな傷をつけてしまった。つけたのではない、傷を広げてしまった。つかさの足元に手紙の破片が落ちていた。つかさは手紙の破片を拾った。
もうあの時には戻れない。急につかさも悲しくなり目から涙が出てきた。つかさもあの時自分の背中を押したかった。そして気が付いた。つかさもかがみと同じだった。
まだ未練があったのだと。タイムマシーンを使って結局何もしなかった自分が情けなくなった。もうその時間すら取り戻せない。かがみの誤解も解けそうにない。
つかさはその場に倒れこんで泣きじゃくった。
599 :時を廻って 17 [saga]:2011/01/16(日) 00:35:40.30 ID:j+FU2ysS0


 こなたはつかさに呼ばれた。約束より一日早い連絡だった。まさかつかさの方から連絡がくるとは思いもしなかった。 こなたは未だに悩んでいた。まだ結論が出ていない。
この際だからつかさと直接話して決めようと思った。こなたは柊家の門の前で呼び鈴を押した。出てきたのはかがみだった。
かがみ「いらっしゃい、今日は何の用なの?」
ぶっきらぼうな話し方だった。こなたは少し身を引いた。
こなた「や、やっふーかがみ、今日はつかさに呼ばれてきたんだよ、居るかな?」
かがみは無言でドアを全開にしてこなたを通した。
こなた「えっとつかさは何処に?」
かがみ「部屋にいる」
また同じ調子だ。
こなた「かがみどうしたのさ、つかさと何かあったの?」
かがみ「その名前も聞きたくない、用があるならさっさと行ってよね」
今度は怒り出した。こなたはかがみに追い出されるようにつかさの部屋へ向かった。
こなた「つかさ入るよ」
ノックをして部屋に入ると元気のないつかさが椅子に座っていた。こなたは扉を閉めると部屋の奥へと進んだ。
こなた「つかさ、かがみと喧嘩でもしたの、かがみのやつ凄い権幕だったよ」
つかさは事情を話したかったけど話せなかった。話すにはこなたにかがみの失恋の話をしなければならかったからだ。かがみと話すなと約束をした訳ではない。
秘密にしておくのがつかさがかがみに対する精一杯の償いだった。
つかさ「私が悪いの……」
こなたはそれ以上聞かなかった。つかさとかがみの仲の良さはこなたが一番良く知っている。そんな二人が喧嘩をするのはよほどの事情があると思ったからだ。
こなた「ところで今日は何の用なの、もしかしてお母さんの話?」
つかさは頷いた。
つかさ「うん、あまり時間がないんでしょ、少しでも早い方がいいと思って連絡したの」
この言い方でこなたはつかさの答えを分かってしまった。
こなた「ちょっと待って、この前反対したじゃない、どうゆう心境の変化をしたの」
つかさ「私ね、おばさんは生き続けて欲しい、それが一番だと思ったから、ちょっとだけ会ったけど、優しさに包まれるような感じだった」
遠い目をしてつかさは答えた。
こなた「私の答えになっていよ、つかさはお母さんが生き続けて歴史が変って私と会えなくなると思ったんじゃないの?」
つかさはこなたの目を見ながら答えた。
つかさ「そうだよ、この前はそう思った。だけど、こなちゃんはおばさんと一緒に居た方が幸せだよ、少なくとも成人するまでは両親とも居た方がいいからね、
     こなちゃんなら大丈夫、そのくらいで進路を変えないよ、例え違う高校に行ってもきっと出会って友達になれる、そんな気がする」
こなた「……つかさ、本当に良いんだね」
こなたは念を押した。
つかさ「うん、あの薬も調べてみたよ、すごい高価なんだよね……おじさんにも頼らずに凄いと思うよ、私なら途中で音を上げちゃうよ……それにこの薬……
     私が卒業式の時代に戻ったって言った……言っただけなのに信じて薬を買った……私を信じてくれた」
もし、かがみが聞いていたらつかさ達は家には居られなかっただろう。これはかがみに対する皮肉ではない。純粋にそう思っただけである。
こなたはつかさの卒業式の話だけで信じた訳ではなかった。そうじろうから聞いたかなたを助けた人の話と照合して確信を得たのだ。
つかさの人を疑わない性格の成せる業か……つかさ自身はそれを自覚していない。
こなた「つかさ、ありがとう、ありがとう」
この時こなたも迷いが消えた。こなたは何度もつかさにお礼を言った。
600 :時を廻って 18 [saga]:2011/01/16(日) 00:37:30.48 ID:j+FU2ysS0


 あれからもう一時間も経っている。しかしこなたとつかさはまだかなたに会いに行っていない。二人は悩んでいた。
こなた「問題はお母さんにこの薬をどうやって飲んでもらうか、見知らぬ人がいきなり『この薬を飲んでください』なんて言ったって飲んでくれないよね、
     食事に混ぜるか、飲み物に混ぜちゃってもいいかも……いっその事、羽交い絞めにして強引に押し込んじゃうかな……病人にそれはないよね……」
こなたは腕を組んで考え込んだ。つかさはかなたに会った時を思い出していた。
つかさ「おばさんは嘘とか策略とかは要らないと思うんだけど、逆に何かすると怪しまれるよ」
こなた「どうしてそんなのが分かるんだい」
つかさは一度かなたに会っているから何かのヒントになるかもしれない。こなたは思った。
つかさ「おばさんを家まで送った時とか、お茶をくれた時とか……ちょっとした仕草で私を見抜いたの、さすがに私が未来から来たとは思わなかったけど、
     付焼き刃みたいな作戦をしても見抜かれちゃうよ」
こなたは驚いた。かなたではなくつかさにだった。つかさはかなたの性格を的確に見抜いている。そうじろうもこなたに同じような事を言っていたのを思い出した。
こなた「それじゃどうすればいい……やっぱり歴史を変えるのは無理なのかな……」
こなたは項垂れた。
つかさ「だったら正直に話せばいいんだよ、私達が誰で、目的もちゃんと話すの、おばさんなら本当かどうかは分かると思うよ、そうすればきっと薬を飲んでくれる」
こなた「正攻法だね、それがいいかな、初めて会うのに嘘は付きたくない……つかさの通りやってみよう」
つかさはパソコンを起動させこなたに席を譲った。
つかさ「靴を持ってくるね」
601 :時を廻って 19 [saga]:2011/01/16(日) 00:39:23.78 ID:j+FU2ysS0


 つかさは部屋を出て玄関に向かった。そこにトイレに向かうかがみとばったり会った。かがみはつかさを睨み付けた。
かがみ「……こなたと楽しい雑談か、いい気なもんだな、私の話をネタにして盛り上がってたんだろう」
かがみの怒りは昨日と少しも変っていなかった。つかさは思った。何を言ったところでかがみの怒りは治まらないだろうと。ならば真実を話すまで。
つかさ「植え込みに隠れていたお姉ちゃんを見た、男子生徒が来ても隠れたままのお姉ちゃん、去っていった男子生徒、手紙を破る姿……
     みんな見ちゃった、でもそれはほんの少し前に見てきた出来事」
かがみ「言ってる意味が分からない……まだタイムとラベルの話をしてるのか、いい加減にしろ」
かがみは睨んだままだった。だがかがみの心の奥底には心に引っかかる物があった。それはあの手紙の破片だった。
つかさ「でも信じて、悪戯や面白半分であんなのはしない……本当は、本当はお姉ちゃんにも一緒に来て欲しかった、一緒に考えて欲しかった」
つかさの目が潤んだ。心の底から訴えるような目だった。さすがのかがみも少し怯んだ。
かがみ「なにマジになってるのよ……あんた達いったい何をしようとしてるの……」
つかさ「こなちゃんのお母さんを助けるの」
かがみは絶句した。荒唐無稽もはなはだしい。
つかさ「昨日はありがとう、おかげで決心がついたんだよ、成功を祈ってね」
つかさは玄関に歩き出した。かがみはつかさから感謝されるような話はしていない。ただ呆然とつかさを見送った。
602 :時を廻って 20 [saga]:2011/01/16(日) 00:41:20.78 ID:j+FU2ysS0

 つかさが部屋に戻るとこなたが首を傾げていた。
つかさ「どうしたの?」
こなた「どうしても時計が設定できないんだよ」
もしかしたら自分と同じかもしれない。つかさは思った。
つかさ「もしかして前に設定した日時とおなじじゃない?」
こなた「……そう、お母さんが入院する日にしたんだけど……」
つかさ「設定すると黄色く点滅してない?」
こなた「……してるよ」
つかさ「何故か分からないけど一度行った日時には行けないようになってるみたいだよ……こなちゃん分かる?」
こなたは腕を組んで考えた。
こなた「良くは分からないけど、同じ時間帯に何人も同一人物がいたら色々と不都合がおきるんじゃないかな……で、つかさなんで黄色く点滅するのしってるのさ」
つかさは昨日のかがみを思い出した。しかしそれは言えない。
つかさ「昨日私、もう一回行きたかったから、卒業式の日……自分の背中を押してあげれば告白できるかなって……」
こなた「恋多き乙女だね……ある意味羨ましいよ」
こなたはこれ以上つかさに言わなかった。はやしたてたり、弄ったりはしなかった。
その日に行けないのが分かったこなたは、鞄から手帳を取り出してパラパラと捲り始めた。
つかさ「それは?」
こなた「これ、これはお母さんが入院してから亡くなるまでのお母さんの行動を書いた手帳だよ」
つかさ「いつの間にそんなのを……」
こなた「お父さん、ゆーちゃんのおばさんとかから聞いたのをまとめただけだよ、高校卒業してから作っおいたんだ、まさかこんな所で役に立つとは思わなかった」
つかさはこなたのかなたへの思いの強さをまた目の当たりにした。
こなた「うーん、この日がいいかな、お母さんは一度退院してるだよね、たった三日間だけどね……丁度亡くなる一ヶ月前、薬を飲む時期ももベストかもしれない」
更にこなたは手帳を見ている。つかさはこなたを見守った。
こなた「この日は日曜日だよ、この日にしよう、休日ならお父さんは居ないかもしれないし、話をし易いかも」
つかさ「日曜日だとおじさん家にいるんじゃないの?」
こなた「お父さんはサラリーマンじゃないからね不規則なんだよ、居たら居たで一緒に話を聞いてもらうのもいいかもしれない」
こなたは画面に向かい設定した。
こなた「『YES』『NO』って聞いてきたよ」
つかさ「ちょっと待って、こなちゃん薬忘れないで」
つかさは薬を取りこなたに渡そうとしたがこなたは手を前に出した。
こなた「薬はつかさが預かって、私だと落としたり無くしたりしそう」
つかさ「……そんなの言ったら私だって……」
こなたは笑った。
こなた「そんなの気にしてたら最初から大事な薬をつかさに預けないよ、それに二人とも過去に行けるとは限らないじゃん、二回も行ってるつかさの方が可能性が高いと思って」
つかさは黙って薬を鞄の中にしまった。
こなた「準備はいい?」
つかさは頷いた。こなたは『YES』のボタンをクリックした。こなたは周りをキョロキョロと見回した。
こなた「……何も起きないよ……失敗した?」
こなたはがっかりとうな垂れた。
つかさ「うんん、靴を履いて、扉を開ければ行けると思うよ、二人同時に開ければ二人とも行けるかも……」
こなた「よし、やってみよう」
こなたとつかさは靴を履き部屋の扉の前に並んだ。二人の手が扉の取っ手にかけられた。
こなた・つかさ「せーの」
息を合わせて扉が開かれた。
603 :時を廻って 21 [saga]:2011/01/16(日) 00:43:23.11 ID:j+FU2ysS0


 つかさの身体に大きな衝撃が走った。つかさは転んでしまった。
「……済まない、私の不注意だった」
男性の声がした。男性はつかさの腕を掴んでつかさを起こした。
「ごめんね、ちょっと急いでいたので……」
男性はハンカチをつかさに渡した。顔を見上げて男性の顔を見た。それはそうじろうだった。若いせいか声だけでは分からなかった。
つかさ「いえ、私もボーとしちゃって」
つかさは渡されたハンカチで服に付いた埃を落とした。
つかさ「どうもありがとう」
つかさはそうじろうにハンカチを返した。
そうじろう「今度はぶつからないように気をつけるよ」
そう言うとそうじろうは走って行った。つかさは辺りを見回した。鞄を見つけた。つかさは慌てて鞄の中身を確認した。薬の瓶は割れていなかった。ほっと胸を撫で下ろした。
ふと正面をみると泉家の門の目の前だった。そうじろうが出かけるタイミングに来てしまったらしい。
つかさ「そうだ、こなちゃん、こなちゃーん」
つかさは辺りを探したがこなたの姿はなかった。やはり二人同時にタイムとラベルは無理だったようだ。つかさに重い重圧がかかった。一人で実行するしかない。
つかさは一回大きく深呼吸をした。つかさは呼び鈴を押そうと手を伸ばした。
こなた「おーい、つかさ」
つかさの手が止まった。声のする方を向いた。こなたが走ってきた。二人同時は成功した。
こなた「設定した場所から少し外れてた……場所を把握するのにちょっと手間取っちゃって……つかさ、来たんだね、本当だったんだね」
こなたは今にも泣き出しそうだった。
つかさ「こなちゃん、泣くのはまだ早いよ、薬を渡すまでは……ね」
つかさはこなたを優しく諭した。
こなた「そうだった、まだ目的も達していないね……」
こなたは自分の家を見上げた。
つかさ「さっきおじさんが出かけて行ったよ、おばさん一人で大丈夫なのかな」
こなた「お母さんに車椅子が必要になるのはこの時代から半月先だよ、まだ一人で行動できると思う」
つかさはまた深呼吸をした。
つかさ「……呼び鈴押すね」
こなたは頷いた。つかさが呼び鈴を押す。
604 :時を廻って 22 [saga]:2011/01/16(日) 00:45:34.45 ID:j+FU2ysS0
 しばらくするとドアが開いた。
かなた「……あら、つかさちゃん……」
すぐにつかさの名前を言った。覚えていた。つかさは嬉しかったがすぐに気持ちを切り替えた。
つかさ「こんにちは、先日はありがとうございました、実は大事なお話があるのですが、お時間はありますか」
深々とお辞儀をした。
かなた「……大事な話ならどうぞ中に」
かなたはドアを全開にした。つかさはこなたの方を向いた。こなたはただかなたを見つめていた。つかさはこなたの手を引いてかなたの前に出した。かなたがこなたに気付いた。
かなた「そちらの方は?」
こなたは放心状態に近かった。自己紹介できそうにない。
つかさ「えっと、こちらは泉こなた……私の友達です」
かなた「泉……こなた」
自分の娘と同じ名前の女性が立っている。かなたはこなたの姿を上から下まで何度も見回した。こなたはもじもじして動きそうにない。
つかさ「お邪魔します」
つかさはこなたの手を引いて家の中に入った。
605 :時を廻って 23 [saga]:2011/01/16(日) 00:47:54.59 ID:j+FU2ysS0


 静かな居間だった。かなたはこなたをじっと見たままだった。こなたも普段の元気がない。つかさもいつ話を切り出すか決めあぐねていた。時間だけが過ぎていく。
居間の置時計、正時の時報が鳴った。かなたは一回大きく息を吐いた。かなたはつかさの方を見て少しし間を空けてから話し出した。
かなた「つかさちゃん、私服だと随分大人びて見えるね」
つかさ「えっ、えっと、実は私はもう二十歳です」
つかさはどう返答するか困ったが事実を言と話し合いで決まったのでその通り話した。
かなた「あの制服はどうして着てたの?」
つかさ「えっと、こなちゃんがあの日に設定しちゃって……私はてっきり学校だと思ったから……」
かなた「設定……学校……言ってる意味が分からない」
中途半端に話しても分かってもらえない。つかさは覚悟を決めた。
つかさ「信じてもらえないかもしれませんけど、私達未来から来ました、今から二十年後の時代から……」
かなたは驚かなかった。それどころか笑顔で返した。
かなた「やっぱりね、そんな気がした……」
そう言うとかなたはこなた方を見た。
かなた「すると私の目の前に恥ずかしそうに黙って座ってる人は私の娘……でいいのかな」
かなたはこなたに微笑みかけた。しかしこなたは返事をしない。
つかさ「はい、そうです……どうしたのこなちゃんさっきから黙っちゃって、挨拶もしてないよ」
慌ててつかさはこなたにを励ました。こなたは黙ったままだった。何も言えなかった。なんて言っていいのか分からなかった。
かなた「……娘とその友達がわざわざ未来から私に大事な用事……私の命に関わるお話しかしら」
これでこなた達の話の九割はかなたが話してしまった。つかさもそこまでかなたが自分達の事を理解していたとは思わなかった。
かなた「私はあとどのくらい生きられるのか……せめてこなたにお母さんと呼ばれるまでは生きたい」
感極まってしまった。つかさもこれ以上話せそうにない。短く済ませる為、鞄から薬を取り出してかなたの目の前に置いた。かなたはその瓶を見た。
かなた「これは?」
つかさは直ぐに答えた。
つかさ「……薬です、私たちの時代では不治の病ではありません、おばさん……かなたさんの病気はそれで治ります……」
自分とあまり年齢が変らなく見えた。おばさんとは言えなかったので名前で呼んだ。そんなつかさを尻目にかなたは瓶を手に取った。
かなた「これを飲むだけでいいの?」
つかさは頷いた。
かなた「……しかし、こなたは本当に私を助けたいのかしら、さっきから黙っちゃって」
つかさとかなたはこなたに注目した。
こなた「……お、お母さん……」
俯いて呟くように小さな声だった。
かなた「なんて言ったの、もう一回」
こなたは顔を見上げてかなたの目をしっかり見た。
こなた「お母さん、薬を飲んで……下さい」
かなた「はい」
かなたは瓶の蓋を開けて口に付けると一気に飲み干した。こなたは席から立ち上がりそのままかなたに抱きついて泣いた。
つかさは見ていた。信じられなかった。何故としか言い様がなかった。今すぐにでも聞きたかった。でも聞けない。たまらなくなりつかさはトイレに走って行った。
つかさは二人を直視できなかった。つかさもトイレで泣いた。
606 :時を廻って 24 [saga]:2011/01/16(日) 00:50:14.49 ID:j+FU2ysS0

 涙も収まりつかさが居間に戻るとかなた一人だけが椅子に座っていた。
つかさ「すみません、二人だけにしたかったので……嘘です、私こうゆうの苦手なんです、逃げちゃいました」
かなたは微笑んだ。
かなた「ありがとう、おかげで少しだけどお話ができた……こなたは良い友達をもちましたね」
つかさ「こなちゃんは……」
かなた「ついさっき、私の腕の中から霧のように消えていった……」
現代に戻ったに違いない。つかさは思った。
つかさ「それじゃ私も……」
607 :時を廻って 25 [saga]:2011/01/16(日) 00:52:28.21 ID:j+FU2ysS0

 気が付くとつかさは自分の部屋に戻っていた。目の前にこなたが座っている。
つかさ「こなちゃん、靴持って来たよ……」
こなたは座ったまま動かない。
こなた「つかさ……何か変わった……かな」
つかさ「変ったって、何が?」
こなたは潤んだ目でつかさを見た。この涙は喜びの涙ではない。
こなた「私の記憶にはお母さんの記憶がないんだよ……手帳の日付も内容も全く変わってない……つかさの記憶はどうなってる、高校時代からの記憶……」
つかさ「……かなたさん、おばさんの記憶……」
つかさも同じであった。何一つ変っていない。かなたの記憶は無かった。
こなた「どうゆう事なの、確かにお母さんは薬を飲んだ……つかさも見てたでしょ、それなのに……薬の期限が切れてた、飲み方が違ってた、そもそも違う病気だったのか、
     分からない……結局かがみの言う通りになった……過去は変らない」
つかさ「こなちゃん……」
なにやら焦げた臭いがする。二人はそれに気が付いた。周りを見回すとパソコンから煙が吹いていた。つかさは慌ててパソコンに近づいたが何をいていいのか分からない。
こなたは素早くコンセントのコードを抜いた。パソコンの煙は次第に消えていった。
つかさ「……新品のパソコンだったのに……どうして」
こなた「きっと二人同時に過去に行ったからだよ……負荷がかかったんだ……もうこれで時間旅行は出来ない」
つかさ「また過去に行きたかったの?」
こなたは答えなかった。ただつかさを見ていただけだった。つかさは思ったとおりに言った。
つかさ「……私は卒業式の日に行って何もしなかった、私はそれでもう一回行きたかった、でもこなちゃんはおばさんに薬を飲ませた……私はこなちゃんが羨ましいよ」
こなたはそんなつかさの言葉に反応した。
こなたは涙を拭った。
こなた「……そうだね、お母さんって言って、返事をしてもらえた……お母さんに触れられた……」
こなたは笑った。それと同時に。つかさの肩の力が抜けた。
つかさ「パソコンどうしよう……折角買ってもらったのに……怒られちゃうかな」
こなた「保険があるから大丈夫だよ……さてと私は帰るよ」
こなたは帰り支度をしだした。
つかさ「どうせならお茶でも飲んでいかない?」
こなた「そうしたいけどお父さんが待ってるし」
つかさ「こなちゃん、おじさんに話すの……今回の出来事」
しばらくこなたは考えた。
こなた「……いや、話さない、まず信じてくれない、それに話したら話したらで『何でお父さんも連れて行ってくれなかったんだ』って僻むからね」
二人はまた笑った。
こなた「それじゃ帰るよ、またね」
つかさはこなたに靴を渡した。
つかさ「ねぇ、こなちゃん」
こなた「ん?」
つかさはこなたを止めた。
つかさ「私のお母さんとこなちゃんのお母さん、比べてどう思う?」
こなた「……つかさは比べるものじゃないって言ったじゃん、意外とつかさは意地悪だね」
こなたは即答した。もっと突っ込んで聞きたかったがつかさはそれ以上聞くのが怖いような気がした。
つかさ「それじゃまた」
こなた「それじゃね、かがみによろしく」
こなたが帰った後、つかさは部屋で泣いた。今までの出来事を整理するために。
608 :時を廻って 26 [saga]:2011/01/16(日) 00:54:53.69 ID:j+FU2ysS0

 こなたが帰って一時間くらい経った時だった。
『コンコン』
ノックするとかがみがつかさの部屋に入ってきた。先程のように怒っている感じはなかった。
かがみ「なにか焦げ臭いわね」
つかさ「……パソコンが壊れちゃって、今修理の手続きをしてる所だよ」
つかさはパソコンを梱包していた。
かがみ「こなたは?」
つかさ「もう帰ったよ……そういえばお姉ちゃん出かけてたみたいだけど何処に行ってたの?」
かがみは少し赤い顔をして答えた。
かがみ「ちょっと神社にね……つかさが言ったでしょ……だから祈っていたのよ……こなたのお母さんが助かりますように」
つかさは少し悲しいかをした。
かがみ「……私の記憶の中にこなたのお母さんは出てこない……どうやって過去に行ったかは知らないけど私の言った通りだったでしょ」
かがみも悲しい顔をした。
つかさ「お姉ちゃん、信じてくれたんだね」
かがみはつかさの机の上に置いてある手紙の破片を拾った。そして手紙を自分の鼻に近づけた。もう何も臭わない。
かがみ「もしつかさが卒業式の時拾ったのならこの紙からインクの臭いはしない、まるで昨日書いた時のようだった、新しすぎるのよ、信じるしかない……」
つかさ「ごめんなさい、私がもっと知ってれば……」
かがみは手紙の破片をつかさの机の上に戻した。
かがみ「モタモタしてたから思わず頭に血がのぼったのよ、短気は損気ってほんとね……ところで私を過去に連れて行くと言った時、つかさも制服を着てたけど、
     つかさも行くつもりだったのか、何故?」
つかさは苦笑いしながら答えた。
つかさ「お姉ちゃんと同じ、私もあの日、ある男子生徒に告白しようとしてた、お姉ちゃんみたいに文章なんか書けないから直接アタックするつもりだった、
     だけど出来なかった、だから自分の背中を押そうと思って……」
かがみは驚いた。高校時代のつかさに片思いにしろ恋人が居たなんて。つかさは隠し事は出来ないとかがみは思っていた。しかもこなたにも見破れない程奥に秘めた恋。
かがみ「ある男子生徒って……誰なの?」
つかさ「お姉ちゃんと同じクラスの……」
かがみは慌ててつかさの口を両手で塞いだ。言ったら自分も言わなければいけなくなる。つかさは見ているから知っている筈だがかがみは言いたくなかった。それだけだった。
かがみ「名前は言わなくていい……私のクラスメイトだって……そんなの全く感じさせないなんて」
かがみは全て理解した。つかさが何故かがみを誘った理由。
かがみ「……私と同じだった、だから私の気持ちが分かったのか……そんなつかさを私は……ごめん、ごめんなさい」
頭を下げて謝った。つかさはもうそんなのはどうでも良かった。
つかさ「もういいよ、分かってくれれば」
その言葉にかがみは救われた。
かがみ「ありがとう……良かったら話してくれない、こなたとおばさんの話」
つかさは頷いた。
609 :時を廻って 27 [saga]:2011/01/16(日) 00:57:35.48 ID:j+FU2ysS0



 話が終わった。かがみは目を閉じて聞いてた。
かがみ「こなたがそこまで一度も会っていない母を慕っていたなんて、いや、一度も会っていないからかもしれない、両親とも健在の私には理解できないわ」
つかさ「そうだね」
つかさは短く答えた。
かがみ「しかし何故薬が効かなかった、おかしいだろう……科学の力を持ってしても歴史を変ええられないなんて……所詮人の考えた物はその程度なのか、
     まさか薬の期限が切れてた……いくらこなたでもそんな失敗はしないだろう」
両手を握り締め悔しがるかがみ。
つかさ「お姉ちゃん、私の話はまだ終わっていないよ……私は忘れっぽいから今はお姉ちゃんにだけに話すよ、私が忘れたらお姉ちゃんが話して」
つかさは思った。かがみには話しておきたかった。とても一人でこの事実を受け止められなかった。
かがみ「何を話すつもりなのよ」
つかさ「こなちゃんが先に戻った後の話だよ」
まだ話の続きがある。かがみは薬効かなかった訳を知っているのかと思った。失敗は単純なミスから起こる……期限を間違えた。不安がかがみの頭を過ぎった。
そんなかがみの心配を余所につかさの回想が始まった。
つかさ「私がトイレから戻ったらもうこなちゃんは居なかった……」
610 :時を廻って 28 [saga]:2011/01/16(日) 00:59:52.66 ID:j+FU2ysS0


かなた「ついさっき、私の腕の中から霧のように消えていった……」
現代に戻ったに違いない。つかさは思った。
つかさ「それじゃ私も……」
しかしつかさはどうしてもかなたに聞きたかった。聞かずには帰れない。戻る足を止めた。
つかさ「おばさ……かなたさん、なんでなの、どうして嘘をついたの、こなちゃんは初めて会うかなたさんに嘘をつきたくなって言ったんだよ」
かなたはすこし怒り気味のつかさに少し驚いた。
かなた「嘘……そうかもね、そうゆう意味では私はこなたの母親失格ね」
かなたは静かに立ち上がった。
かなた「付いてきて」
隣りの部屋にかなたは移った、そうじろうの書斎だった。そこには赤ちゃんが静かに寝ていた。
つかさ「もしかして、こなちゃん?」
かなたは赤ちゃんの側に腰を下ろしてあやし始めた。
かなた「そう、こなた、この赤ちゃんが二十年後にはあんなに大きくなるなんて、不思議ね……」
つかさは何故ここに自分を連れてきたのか理解できなかった。つかさはもう一度同じ質問をしようとした。
かなた「こなたは私と同じ病気なの」
かなたは手に薬の瓶を持っていた。瓶の内蓋を取るとゆっくりと幼いこなたの口に瓶をつけて飲ませた。つかさはかなたを止めなかった。止められなかった。
かなたは外蓋だけを外しこなたに薬を飲んでいるように見せたのだった。つかさはこなたとは違う角度からそれを見てしまったのだった。
つかさ「うそ……そんなの嘘だよ、こなちゃんは自分が病気だったなんて一言も言ってない」
かなた「それは多分私が話さないように言ったから、こなたは知らないはずね」
幼いこなたに薬を全て飲ませると瓶をこなたの枕元に置き、こなたを寝かせた。
つかさ「どうして、知っていればもう一つ薬を持っていけたんだよ、そんな嘘をつかなくてもいいんだよ、今からでも戻ってもう一個薬を取ってくるよ」
熱く語るつかさに対してかなたはいたって冷静だった。
かなた「もう一つの薬は持って来れない気がする、それに持ってきてもらっても私は飲まない」
つかさ「こなちゃんはかなたさんに飲んでもらうために持ってきたんだよ」
かなた「そう、飲んでもらうために……私が亡くなったらその様にこなたは考えた、私が生きていたら薬の存在すら気が付かない……分かるでしょ、こなたが存在するには私は
     生きていてはいけない、私はこなたに生きてもらう方を選んだの、分かってくれるかな」
やさしく諭すような口調だった。
つかさ「分かんないよ、そんなの分からない、こなちゃんは……自分だけ助かろうなんて思わないよ」
つかさは必死にかなたを説得した。
かなた「こなたは最初からつかさちゃんに頼りっきりだった、きっとつかさちゃんには兄妹がいるのね……こなたが帰って、それでもこなたの代弁してくれるなんて、
     つかさちゃんの言ってる言葉が一言、一言、恰もこなたが言ってるように私の胸に響いてくる……あの時私が飲まないと言ったら、こなたが私と同じ病気だと知ったら、
     こなたは私に抱きついてこなった、そのまま帰ってもう一つの薬を取りに行こうとする、つかさちゃんと同じようにね、せっかく会えたのにそれは嫌、
     それが嘘を付いた理由」
つかさ「抱きついて欲しかった……それだけのために」
かなたはまた幼いこなたをあやし始めた。
かなた「親は子供よりも先に死んでいく……この当たり前に戻したい、それが私の願い、私が亡くなってこなたにいろいろ辛い思いもさせるかもしれない、
     それでもこなたには生きてもらいたい」
611 :時を廻って 29 [saga]:2011/01/16(日) 01:06:38.47 ID:j+FU2ysS0
 かなたはこなたの為にその命を捧げる。そしてその決意は岩のように固い。つかさはそう思った。
かなた「病気が治ったこなたはきっとわたにお母さんって言ってくれるわね」
つかさ「でも、間に合わないよ後一ヶ月しかないんだよ」
かなたは幼いこなたを見ながら言った。
かなた「……一ヶ月か、あと数年と思ったけど、これだとこなたが私を呼ぶようになるまでは間に合わないね」
しまった。そう思った時は遅かった。
つかさ「ごめんなさい……」
謝罪の言葉が空しい。
かなた「……でもこなたは私に言ったね、お母さんって……しかも成人したこなたが」
かなたは微笑んだ。つかさはそんな笑顔が眩しすぎた。
つかさ「私、帰ったらどうすればいいの?」
かなた「そうね、内緒にしてもらいたい、だけど……秘密にはできそうにない……いずれ分かってしまう」
つかさ「私が秘密を守るのが苦手だから?」
かなたは首を横に振った。しかしその理由を言わなかった。
かなた「……私の命日に、その時はこなたと夫、そう君も一緒に話してもらいたい……彼はこなたの病気を知らない、教えていないの、
     先生と私の秘密にしている……だからその時教えてあげて、そう君なら分かってくれる、こうするしかなかったって。そう伝えて」
かなたの目に涙が光った。こなたにすら見せなかった涙。もうつかさはかなたの決意をただ見送るしかできない。
つかさ「……私にそんな大事な話をなんて……出来そうにない……自信ない……それに帰ったらこなちゃんに嘘を付かないといけない」
俯いて肩の力を落とした。そんなつかさにかなたは優しく語りかけた。
かなた「さっき私にこなたの代弁をしたじゃない、あの要領ですればいい……私の代弁だから嘘は全て私の責任、これならいいでしょ」
かなたは祈るようにつかさに頼んだ。つかさは断りきれなかった。
つかさ「うん、やってみる」
短く返事をした。かなたはこなたを抱きかかえた。
かなた「つかさちゃんが余命を言ってくれたおかげで迷いが取れた、もうこれからはこう君とこなたの側に居る、それだけを考えていられる」
つかさはお礼を言われるとは思わなかった。
つかさ「おじさんは何処へ?」
かなた「そう君は出版社に行った、なんでも連載が決まったって……喜んで飛び出して行った」
かなたは涙を出しながらもその顔は笑顔だった。
つかさ「やっぱり好きな人と一緒に居るのが一番ですよね」
そんなつかさをかなたはじっと見た。
かなた「つかさちゃんは、恋をしたか、しているね……そうゆう風に言えるなんて」
つかさは照れて顔が赤くなった。
つかさ「すみません、お邪魔をしました、残りの人生をお幸せに……」
つかさはお辞儀をした。
かなた「つかさちゃん、貴女もね……こなたをよろしくお願いします」
612 :時を廻って 30 [saga]:2011/01/16(日) 01:08:16.15 ID:j+FU2ysS0



つかさ「それで玄関でこなちゃんの靴を持ってドアを開けたら……自分の部屋に戻ってた」
つかさの回想は終わった。かがみは目を閉じながら聞いていた。
かがみ「つかさ、私の言った言葉取り消すわ、歴史は変えられる、おばさんは歴史を変えた……つかさはその他に二度過去に行ってるわよね、
     つかさも歴史を変えてるわ、良かったのか悪かったのかは別にして……私達はそれに気付かないだけ……だからつかさのした事をとやかく言えない……」
一人重要な人物を忘れている。
つかさ「お姉ちゃん、こなちゃんは?」
かがみ「こなたには敬服するしかないわね、薬もみゆきに頼らず自分で調べたのか……資金も自分で調達、それに比べて私なんかつかさに八つ当たりなんて、恥ずかしい」
つかさ「お姉ちゃん、もうそれは終わった話だよ……自分を責めちゃだめだよ」
かがみ「そうね……終わった話……しかしこなたが時より見せる鋭い感性はおばさん譲りみたいね、こなたに恋人を見破られた時は焦ったわ」
つかさ「そうかもね、こなちゃん、おばさんと似てるところあるかも」
話が落ち着くとつかささ思い出した。
つかさ「しまった、おばさんに貰ったお金返すの忘れちゃった……」
かがみ「お金って?……ああ、家出娘と間違えられた時の話ね、まあ、あんな状況じゃそこまで気は回らないわ、おばさんとの約束の日に返したら」
つかさ「そうするよ」
かがみは腕を組んで考えた。
かがみ「もしかしたらおばさんは、もうその時にすでにこなたが来るのを知っていたかもしれない……そんな気がする……」
そんなかがみの話とは別につかさは急に怖くなった。
つかさ「……ねぇ、お姉ちゃん……」
つかさは聞きたかった。つかさはこなたともう会えなくなると思ったからだ。
つかさ「私、こなちゃんに嘘を言っちゃった……」
かがみ「嘘?」
かがみは聞き返した。つかさがどんな嘘を言ったか検討が付かなかった。
つかさ「私が帰ってすぐ、こなちゃんにおばさんが薬を飲んだって言っちゃった……おばさんの約束の日、きっとこなちゃんは怒るよね……
     もしかしたら、それが原因で絶交なんて……」
613 :時を廻って 31 [saga]:2011/01/16(日) 01:10:13.91 ID:j+FU2ysS0
 つかさは涙目になった。
かがみ「それはその時になってみないと分からない……だけど考えられる、いや、きっと怒るわね、私がつかさを怒ったようにね」
つかさは少し震えだした。
つかさ「やっぱり嘘つくんじゃなかった……」
かがみにはその時のこなたの感情は想像できた。
かがみ「つかさ、あの時言っても、約束の日に言っても同じよ、こなたはつかさに怒りをぶつけて来る、こなたはそうするしかないからよ……八つ当たりするしかないのよ……
     その時の怒りは恐らく私のそれを遥かに上回る……」
つかさ「お姉ちゃん、私……おばさんの約束守れそうにない…話せないよ……私、そんなに怒ったこなちゃんを見たくない……」
かがみはつかさを脅かすつもりはなかった。そうなるであろうとあえて言ったのだった。かがみはかなたの意図が分ったからだ。
かがみ「私は何故秘密がバレてしまうのか何となく分かるのよ、それはつかさや私の意思とは関係ないの、だからつかさが言わなくてもこなたは分かってしまう」
つかさ「それじゃ何で約束なんかしたの?」
それなら約束した意味がないと思った。かなたの意図が分からない。
かがみ「おばさんは幼いこなたに薬を飲ませた話をしてもらいたいんじゃない、おばさんの気持ちを伝えてもらいたいのよ、側にいたつかさなら解るでしょ」
つかさは目を閉じて思い出した。まだそんなに時間が経っていない。あの時の光景ははっきりと脳裏に浮かぶ。自然と涙が出てきた。
かがみ「つかさは私と同じ様な失恋を経験した、その気持ちが、想いが、私にタイムトラベルを信じさせた、手紙の破片はその切欠にすぎない……帰って居なくなった
     こなたの気持ちをおばさんに伝えた……今度は、その涙の出ている気持ちをそのままこなたとおじさんに言えばいいのよ、こなたはその瞬間は怒るかもしれない、
     でもきっと分ってくれるわ、私の様にね」
目を閉じながらかがみの話を聞いたつかさ、目を開けるとかがみの目を見ながら言った。
つかさ「おばさんの命日の日、お姉ちゃんも立ち会ってもらいたいんだけど……」
かがみ「……その為に話したんでしょ、聞かれなくても私の方から頼んだわ……私も関わりたかったから」
短気を起こさなければこなたとつかさと一緒に行ってあげられた。もっと別の何が出来たのではないかとかがみは思った。でもそれは自信過剰か。
自分がつかさの立場だったら、つかさのような振る舞いができたか、かなたを説得できたかどうか分からなかった。
そんな自分にできる事、せめてつかさがこなたとそうじろうの前で語る姿を見守りたい。かがみはそんな気持ちだった。
614 :時を廻って 32 [saga]:2011/01/16(日) 01:11:33.47 ID:j+FU2ysS0

 かがみはつかさの梱包を手伝い始めた。その直後だった。
『バン』
突然部屋の外から何かが当たる音がした。
まつり「やったな!!」
いのり「なに、その態度、今度と言う今度は許さないよ!!」
まつり「私だって許さない、許さないよ!!」
部屋の中にも聞こえる怒号、いのりとまつりが喧嘩を始めたようだ。ここ最近では珍しいかもしれないがこうなると収まりガ付かなくなるのが二人の喧嘩だ。
かがみとつかさは聞き耳を立てた。
みき「いのり!まつり!、あんた達いくつになったの、そんな下らない事で喧嘩して!!!」
みきの一喝が入った。その瞬間怒号が治まり静けさが戻った。
かがみ「凄い……私とつかさ、二人掛りでも姉さん達の喧嘩なんて止められない、お母さんか……私達四姉妹をここまで育ててくれた、私はお母さんのようなお母さんになりたい」
そう言うとかがみは立ち上がりつかさの部屋を出た。
この時つかさは自分が言った『比べるものじゃない』の意味を真に理解した。
つかさもパソコンの梱包を終えると部屋を出でみきの居る居間に向かった。
615 :時を廻って 33 [saga]:2011/01/16(日) 01:13:07.20 ID:j+FU2ysS0



こなた「ただいま」
こなたが帰るとそうじろうが食事の支度をしていた。
そうじろう「どうしたこなた、鼻歌なんぞして……良い事でもあったのか」 
こなたは居間や台所の周りを見回した。何も変っていない。家具の配置。照明器具。台所の風景。変ったのは少し壁や柱が古くなったくらいか。きっとかなたのセンスで
家具が配置され、照明器具が付けられた。ここはまだかなたが生きている。こなたはそう思った。
こなた「まあね……ところでお母さんはお父さんには勿体無いね、つくづくそう思ったよ」
そうじろう「なんだって、何を言ってるんだやぶから棒に」
そうじろうは少し怒り気味だった。
そしてそうじろうもそう思ったから部屋のレイアウトを変えなかった。
こなた「……だけど、そんなお父さんだから良かったのかも……おかあさんを選んでありがとう……着替えてくるよ」
こなたは自分の部屋に向かった。
そうじろうは首を傾げた。

 自分の部屋に入ったこなたは真っ先に棚から一枚のソフトを取り出した。それはつかさにインストールしたゲームソフトだった。こなたはパソコンを起動した。
つかさの時と同じ様にインストールすればもしかしたら自分のパソコンがタイムマシンになるかもしれない。ボタンを押しトレイを開けた。
ソフトをケースから取り出しトレイにセットしようとした。
自然と手が止まった。
こなた「……もう出来ることは全部したかな……そうだよねお母さん」
こなたはソフトをカッターで半分に割りごみ箱に捨てた。
616 :時を廻って 33 [saga]:2011/01/16(日) 01:14:27.41 ID:j+FU2ysS0

 数ヶ月後、それはかなたの命日。
この日こなたはつかさと会う約束をしていた。そうじろうも一緒にとの条件だった。内容はかなたの話をしたいとつかさは言った。
こなたはそれで理解した。つかさはかなたの話をしにくるに違いないと。こなたはそうじろうに話をしないと言ったから、そうに違いない。
こなた「お父さん、今日はお母さんを助けた人が訪ねてくるよ」
そうじろう「家出した陸桜の学生だった人だね、お父さんも一度お礼が言いたかった……しかしなんで今頃、もう二十年も前の話だ」
つかさが会う約束をする時言っていたのを思い出した。
こなた「お母さんからもらったお金を返す為だって」
こなたは思った。自分よりつかさの方が上手く話すに違いない。後は全てつかさに任すしかないと。今まで話さなかったのは、
自分だとそうじろうにちゃんと話せたどうか自信がなかったからだ。
そうじろう「そうか、実はあの話をかなたから聞いて二人で話したんだ、こなたを進学させるなら陸桜がいいってね……
       ん、こなた、今日はかがみちゃんとつかさちゃんが来るんじゃなかったのか、そもそもその人が来るのを何故知ってるんだ?」
困惑を深めるだけのそうじろうだった。
かなたが生きていても自分は陸桜学園の生徒になったと。そしてその原因を作ったのはつかさだった。こなたは確信した。
こなたはわくわくしてきた。家出少女とつかさが同一人物であるとそうじろうが分かったらどんな反応をするのか、いろいろ想像して楽しんでいた。

 そこに突然みゆきが訪れた。全くのアポ無しだった。みゆきはある人から手紙を託されていた。みゆきはそうじろうに手紙を渡した。

そうじろう「おい、こっ……これはどうゆうことなんだ……こなたがかなたと同じ病気だったなんて……何故、何故黙っていたんだ!!」
こなた「えっ?」
封筒の中の手紙を読み始めたそうじろうは驚愕した……封筒送り主はかなたの主治医だった人からだった。

 かなた様の御遺言により今日まで感謝状を贈るのを控えていました。遅ればせながら感謝の意を表します。その間に薬が完成しました。
そんな件(くだり)で手紙の文は始まった。
それは、かなたと幼いこなたが特効薬の開発に協力してくれたと言う感謝状だった。かなた自身が懸命に辛い研究や苦しい検査に協力してくれた事、
こなたの病気が急に回復したのを切欠に血液サンプルを分析して薬の完成が数十年以上早まった等、切々と感謝の文が綴られていた。
感謝状はかなたの生前に贈られるはずだった。薬の完成は後に書き加えられた。こなたがこの文を理解できる頃までとの希望によりかなの指定でこの日になった。

 主治医は薬の開発の功績で大学の名誉教授になった。それはみゆきの通っている大学だった。つかさが薬の質問を電話したのを切欠にみゆきは薬について調べた。
その薬が自分の大学で開発されたのを知った。あとは導かれるように教授と知り合いになり感謝状を贈る役を引き受けたのだった。

 感謝状をそうじろうとこなたが読み終わる頃、つかさとかがみが泉家を訪れる。その時そうじろうはかなたとこなたの愛をしるだろう。
そして話を終えてこなたの表情を見て知るだろう。かなたはつかさの嘘の責任を取ったと。

 終
617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/16(日) 01:16:16.66 ID:j+FU2ysS0
以上です。
>>384の『時計』のお題、パソコンの時計を見ていたら浮かんだSSです。
楽しんでもらえれば幸いです。

618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/16(日) 01:17:46.25 ID:j+FU2ysS0
>>615 は34レス目ですね 加算し忘れました。
619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/16(日) 01:22:38.20 ID:j+FU2ysS0
>>616 は34レスです。また間違えました。
すみません間違えしやすいので……誤字脱字も目立つかもしれません。謝ります。
620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/16(日) 03:54:47.29 ID:+XP8UbSAO
結局リレーSSはどうなったの?中途半端なまま終了?
621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/16(日) 08:56:16.66 ID:j+FU2ysS0
リレーss主催者です。


>>620
>>581を参照してください。
7レス目のみ受け付けます。期間は1月31日(月)まで。
それまでに終わらなければ未完成のまま終了です。
622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/16(日) 09:09:33.97 ID:j+FU2ysS0
>>621

リレーSS主催者です。
過去のリレーssを見てみました。未完で終わっているのもあるので終了とします。
但し、続きを書きたければご自由にどうぞ。
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/16(日) 10:29:21.80 ID:j+FU2ysS0
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ここまでまとめた

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リレーssを纏めたけど文の初めが枠で囲まれてしまいました。編集しても元に戻せません。分かる方がいましたら修正お願いできますか?

624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/16(日) 11:04:16.57 ID:j+FU2ysS0
>>623
直ったようです。
625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage_saga]:2011/01/16(日) 11:33:10.74 ID:OBLEnE/DO
リレーで思い出したのですが「こなた分裂」も未完ですよね?あれの続きとかリメイクとか書く場合誰に許可取ればいいのでしょうか?
626 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/16(日) 12:31:11.53 ID:OU3kfY/SO
終わっているものなら特に許可はいらないかと
俺も『刃』は勝手に書きましたし
627 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/16(日) 15:35:43.89 ID:j+FU2ysS0
 リレーの場合は皆で参加して作ったものだからこのスレ、まとめサイトの作品になりますね。
だから特に許可は要らないと思います。でも続きにしろリメイクにしろスレに投下して下さいね。
628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/16(日) 17:00:18.60 ID:j+FU2ysS0
話は変りますけど このスレの掲示板にリンク依頼ができるみたいだけど
ここのまとめサイト載せてもらいます? 宣伝になるかな?
反応がなければしませんのでよろしくです。
629 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage_saga]:2011/01/17(月) 12:49:56.42 ID:SoSG5DNDO
>>626-627
どうも。
>>628
むしろいきなりスレは取っ付きにくいかもしれないし、まとめサイト「を」載せてもらった方が良いのでは?
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/17(月) 19:25:06.80 ID:Ay4jntvSO
−理想−

いずみ「田村さん、何見てるの?」
ひより「こんど描く同人誌のネタになるかなって、先輩方に結婚したい理想の男性像ってのをちょっと書いてもらったんだけど…」
いずみ「ふーん、どれどれ…『金銭面で養ってくれる人』『とくに無いけど、とりあえず浮気しない人』『お料理をちゃんと食べてくれる人』『わたしより年上に見える人』…なんか大雑把というか」
ひより「みんなあんまりそういう事考えないのかなあ」
いずみ「田村さんはどうなの?」
ひより「へ、わたし?…や、やっぱ金銭面で楽させてもらえたらなあ…なんて」
いずみ「………」
ひより「そ、そんな冷めた目で見ないで…そ、そういう若瀬はどうなの」
いずみ「お兄ちゃん」
ひより「へ?…ああ、お兄さんみたいな人ね。そういや仲いいんだっけ」
いずみ「ううん。みたいじゃなくてお兄ちゃん」
ひより「………え?」
いずみ「なんかこう、血が繋がってない証拠とかポロッとでてこないかな、と…」
ひより「…そういうこと真顔で言っちゃ駄目っス」
631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/17(月) 22:10:42.03 ID:LvL2k6NP0
>>629
>>628の言いたかったのは>>629と同じです『を』を入れるのを忘れただけです。

>>630
誰の理想か分かってしまうねw


632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/17(月) 22:19:30.01 ID:LvL2k6NP0
-----------------------------------------------------------------------------

ここまでまとめた

-----------------------------------------------------------------------------
633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/18(火) 20:22:25.93 ID:9Kbh7VT30
そろそろコンクールでもやりたい所だけど。いかがでしょうか?
投票フォームを作ってくれる人がいれば私が主催やってもいいですよ。
634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/19(水) 01:11:43.93 ID:q9/CxOeAO
お題とかは?
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/19(水) 13:37:09.09 ID:c0WwEfHDO
お題決めるのにも投票フォーム要るのでは?
636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/19(水) 18:48:41.46 ID:q9/CxOeAO
もしやるなら参加したいな
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/19(水) 20:12:33.82 ID:TSvJsxqH0
まとめサイトの『テストページ』が設置されたけど。
もう少し説明を入れてくれると分かりやすいと思う。
と言うか自分が理解できてない。
638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/19(水) 22:15:51.42 ID:7V2tf+op0
テストページはかなり前からあったみたいだね
639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 16:41:31.19 ID:AjiK271h0
お題案は避難所に書けばいいんですよね?
640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/21(金) 17:33:35.65 ID:RsVQwJpc0

お題案はこのサイトでいいと思います。
ただし自分は投票フォームの作成ができません。
だから出来る人を募っているのです。
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/22(土) 00:04:15.94 ID:Z0jtSaQM0
学生は試験。社会人は年度末で大忙し。
コンクールは4月頃がいいのかな。と思い始めた。
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 00:23:18.65 ID:rgHRxALDO
>>641
なら投票なしでプチ祭りみたいにするのは?その人たちにも息抜きは要るだろうし。

ちなみに俺のお題案は
「∞」or「無限」or「infinity」
643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/22(土) 00:30:19.58 ID:1J9Kt+jSO
>>642
こなた「いんふぃにってぃ〜♪」
みさお「げ、メイト切れた!ちびっこ分けてくれ!」
あやの「みさちゃん、電車の中であんまり大声だしちゃダメだよ」



真っ先にインフィニティ級のRPGなアレが浮かんだ
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/22(土) 09:14:25.04 ID:Z0jtSaQM0
>>642なるほど
それではお題『寒い』
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/22(土) 14:45:16.97 ID:Z0jtSaQM0
投票フォームテストです。

長編感動から自分の作品だけ抜粋しました(苦情防止の為)
テストなので気楽に参加して下さい。

http://vote3.ziyu.net/html/to1048.html
646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 19:21:14.62 ID:L+6/CV0Vo
>>643
俺もだww

こなたがやってるらしき描写本編にあったよねー
647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/22(土) 20:42:22.16 ID:Z0jtSaQM0
ここで質問するのはスレ違いかもしれませんがそんなに頻繁にレスがないのでここで質問します。

まとめサイトで今回のテスト投票フォームの結果を張り付けたい場合(コンクールの参加作品画面のように)
画像をどうやって登録するのか。その方法が分かる方教えて下さい。

648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/22(土) 21:58:47.28 ID:dZfYFbDG0
>>647
vistaと7ならOS標準でついてるSnipping Toolがある。
それ以外のwindowsならAlt押したままキーボードのPrint Screen(自分のキーボードではPrt Scと略されてた)
を押すと今開いているウィンドウが画像としてクリップボードに行くから
慣れてる画像編集ソフト(慣れてなければペイント)ひらいて貼り付けると出てくるので
それで編集して保存すればおk
他のOSの場合は知らん
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/22(土) 23:52:51.74 ID:Z0jtSaQM0
>>648
ありがとうございます。
実はそこまでなら出来ます。その続きです。まとめサイトで
@ウィキのどこかに画像を記録させる方法です。

http://www34.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/1543.html

例えば上の画面の『投票結果スクリーンショット』のようにする方法です。
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/23(日) 00:30:50.31 ID:Got0V5Yro
>>649
1.画像を載せたいページに行く(その例なら第17回コンクールのページ)
2.ページの上の【編集】タブから【このページにファイルをアップロード】を選ぶ
3.【「指定したページ名」へのファイルアップロード】で、作成した画像を選択する
4.右の【アップロード】を選択すると【「指定したページ名」にアップロードされたファイル一覧】に画像のページ名(ファイル名)が表示される
5.画像のページ名を範囲選択&コピーして、載せたいページに貼り付ける

知ってると思うけど一応
0.載せたいページ内での表示をファイル名じゃなく「投票結果」等にしたいなら
 「投票結果」の文字列に画像のページURLを挿入すればOK
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/23(日) 00:59:58.60 ID:m4TkG7Tt0
>>649
分かりました。丁寧な説明ありがとうございます
652 :命の輪をわたしに [saga]:2011/01/23(日) 02:41:30.91 ID:PRNf0TFj0
投下行きます。

命の輪のシリーズです。
653 :命の輪をわたしに [saga]:2011/01/23(日) 02:42:01.52 ID:PRNf0TFj0
 駅前の時計台。待ち合わせでよく使われるその場所で、柊つかさは時計を見ながらため息をついた。
「…早く来すぎちゃった」
 待ち合わせの時間までまだ三十分もある。つかさはしかたなく手近にあったベンチの端に腰掛けた。そして、空を見上げながら、待ち合わせの相手のことを思う。
 知り合いから頼まれたからと父に言われ、お見合いをした男性。お互い照れるばかりで、その日は特に何も話すことはできなかった。それでも、何度か会ううちに自然に話せるようになり、今ではすっかり彼氏彼女だ。
「…大事な話があるって言ってたよね」
 話の内容にどうしても期待してしまう。付き合ってる男女の大事な話といえば、やはり…と、そこまで考えたところで、つかさは肩を軽く叩かれながら、声をかけられた。
「待ったかい?」
「う、ううん!い、今来たところだから!全然まってないよ!」
 つかさは慌てて立ち上がり、声のした方を向いた。そして、声をかけてきた人物の方を見て…そのまま固まった。
「さすがつかさ。反応がいいねえ」
 そこにはニヤついてる友人の泉こなたと、その夫が並んで立っていた。



― 命の輪をわたしに ―



「…よく考えたらあと三十分あるんだった」
 ベンチに座りなおして、勢い良く立ち上がったために少し乱れた髪を手鏡を見ながら整えながら、つかさはそうつぶやいた。
「そこでよく考えないのが、つかさのつかさたる所以だよ」
 隣に座ったこなたが、ニヤついた表情を変えないままそう言った。
「そんな所以イヤだよ…」
 心底嫌そうに呟くつかさに、こなたは苦笑して見せた。
「今日は彼氏とデート?やっぱおっちょこちょいなところは見せたくないかー」
「…分かってるんだったら悪戯しないでよー」
 少し頬を膨らませながらそっぽを向くつかさ。しかし、すぐに何かに気がついたようにこなたのほうに向き直った。
「そういえば旦那さんは?」
「ダーリンならその辺ぶらついてもらってるよ。わたしがいいって言うまでね」
 こなたはそう言いながら、ポケットから携帯取り出してそれを指差した。
「い、いいのかな…こなちゃんだってデートだったんでしょ?」
「うん、まあそうなんだけど、なんていうかな…つかさとこうやって二人で話すのって久しぶりだなって思ったら、なんとなくね」
 言葉を濁すようにそう言うこなたを見て、つかさはクスッと笑った。
「そうだね。高校卒業してから、こういうの少なくなったかなあ」
 こなたにそう答えながら、つかさは空を見上げた。
「あの頃は、休み時間とか帰り道とか、ちょっとした時間にくだらないこと駄弁ってたねえ」
 こなたも、つかさと同じように空を見上げながらそう呟いた。
「今は、まとまった時間取らないとなかなか会えないから…やっぱり、ちゃんと話しときたいこと話さないとって思っちゃうよね」
「んだねー」
 こなたはつかさの言葉にうなずきながら、手に持った携帯をもてあそんだ。
「ま、その分くだらないメールは送りまくってるけどね」
 言いながらこなたはつかさの方を向き、その表情が不機嫌そのものになってることに冷や汗を垂らした。
「ど、どったの、つかさ?」
「…昨日のメール。いくらなんでも、あれは無いよ」
 抑揚のない声でそういうつかさに、こなたは申し訳なさそうに頬をかいて見せた。
「あー…やっぱまずかった?…いや、つかさも怒るんだね」
「そりゃ、わたしだって怒るときは怒るよ。もう、あんなのやめてよ?」
「…はい、すいませんでした…ってかかがみが本気で怒ってる並に怖いし。この辺は双子って感じだなあ」
 呟くこなたに、つかさがため息をつく。こなたはつかさから少し視線を逸らし、少し考えるような仕草をした後、再びつかさのほうを向いた。
654 :命の輪をわたしに [saga]:2011/01/23(日) 02:43:17.49 ID:PRNf0TFj0
「くだらない繋がりって言っちゃあなんだけど、ちょっと変な質問していい?」
「変な?…内容にもよるかなあ」
「いや、内容とか言わなきゃ分からないし…まあ、答えたくないならノーコメントでもいいよ」
「そうだね、わかったよ。じゃ、どうぞ」
「ずっと、疑問だったんだけど…つかさ、なんでお見合い受けたのかなって」
「なんでって…変だったかな?」
「いや、なんていうか…つかさってそう言うの最初の段階で断りそうだったからさ。変っていうか意外だったんだ」
「…そーだねー」
 つかさは先ほどのこなたのように、一度視線をこなたから逸らし、再度こなたの方に向き直った。
「それはきっと、こなちゃんのせい」
 そして、そう言いながらピッとこなたを指差した。こなたは二、三度瞬きをして、ゆっくりと自分を指差した。
「…え、わたし?」
「そ、こなちゃん」
 つかさは柔らかく微笑むと、こなたから視線を外して空を見上げた。
「わたしね、こなちゃんが羨ましかったんだ…大学入ってすぐに彼氏さん作って、卒業するまでに結婚までしてさ…わたしにはちょっと無理だなって」
「…いやまあ、改めて言われると、運が良かっただけっていうか、後先考えて無かったって言うか…」
 照れくさそうに頬をかくこなたに、つかさは微笑みかけた。
「運も実力のうちだよ…それで、こなちゃんが羨ましくて、わたしお見合い受けようって思ったんだ。きっかけってのがあるなら、ちゃんと踏み込んでみようって…わたし、きっかけとかあっても、失敗するの怖くてしり込みしてたから…」
「きっかけ?…あったの?」
「うん、専門学校行ってたときに何回か…ね」
「そっか…やっぱつかさがもてなかったのは、かがみがにらみ効かせてたからか」
「え、えっと、それは関係ないかな…」
 こなたの言葉につかさは少し困った顔をし、すぐに真剣な表情をしてこなたを見た。
「お姉ちゃんで思い出したけど…こなちゃん、お姉ちゃんの今の彼氏さんの事、なにか聞いてる?」
「一応はね…かがみははっきり言わないけど、うまくはいって無いみたい」
「そっか…お姉ちゃん、わたしにはそう言うこと、全然話してくれないんだよね」
「かがみのことだから、つかさにそういう事話すのかっこ悪いと思ってるんだろうねー」
「そうかも…話を聞くことくらいしか出来ないかもしれないけど、少しは話して欲しいんだけどね」
「やっぱ、心配?一人目の彼氏があんなだったから」
「え…あ、うん…」
「アレは酷かったからねー」
 こなたは眉間にしわを寄せて、そのことを思い出していた。
 かがみが生まれて初めて付き合った男性…その男が実はかがみの他に二人の女性と付き合っていたことが分かり、かがみが怒って一方的に別れを切り出したのだ。
 しかも、その別れ話の時の相手の態度が悪かったらしく、かがみは思い切り相手の顔面を殴りつけたのだという。
 相手が後ろめたい事をしていたからか、大事にはならなかったが、確実に鼻は折れてたと、こなたはかがみから聞いていた。
655 :命の輪をわたしに [saga]:2011/01/23(日) 02:44:01.33 ID:PRNf0TFj0
「今度の人は今度の人で、かがみに気後れしてるみたいだし、かがみも前の事があるからなんか慎重だし、なんかうまくかみ合ってないみたいだねー」
「そうなんだ…」
 こなたの言葉を聞いて、つかさはため息をついた。それにつられるように、こなたもため息をつく。
「かがみはなんか焦ってるんだよね…あんな無理して付き合わなくてもいいのに」
 そう言いながらこなたがつかさの方を向くと、つかさはこなたを指差していた。
「え?なに、つかさ?」
「それも、こなちゃんのせい」
「…かがみもわたしを羨ましいと思ってるってこと?」
 こなたがそう言うと、つかさははっきりとうなずいた。
「お姉ちゃん、こなちゃんにさき越されたの、すごくショックだったみたいだから」
「う、うーん…」
「そうは全然見えないけど、ゆきちゃんもそうだと思うよ」
「え、みゆきさんまで…?」
「うん。だから、同窓会で告白されたとき、あっさりOKしたんだと思うんだ」
 こなたは腕を組んで目をつぶった。
「…みんなつられすぎだよ。わたしなんかに…」
 そう呟くこなたに、つかさは柔らかく微笑んだ。
「なんかに、じゃないよ…こなちゃん頑張ってるもん」
「頑張ってる、ねえ…まあ、そう言われてみれば、そうなのかな」
「うん、きっとそうだよ」
 つかさはそう言いながら、こなたのお腹の辺りを見た。
「この子も、きっとこなちゃんのことそう思ってくれるよ」
 こなたは自分のお腹をさすり、複雑な表情をした。
「…まだあんまり実感無いんだけどね。ここに赤ちゃんがいるなんて…わたしが子供の目標になるような母親になれるとは思えないし」
「なれるよ…こなちゃんだもん」
「はっきり言うねえ…どっからそんな自信が出てくるのやら」
 真っ直ぐな笑顔を見せるつあkさに、こなたは苦笑を返した。



 こなたが去った後、つかさはベンチから立ち上がり大きく伸びをした。そして、空に向かってため息をつく。
「…もっと誇ってもいいと思うんだけどな」
 呟きながら、つかさは目をつぶった。こういう時に思い出すのは、いつも高校時代の自分たちだ。
「…あの頃にこなちゃんがわたしにくれたものが、わたしを歩かせてくれてるんだもの」
 少し恥ずかしい独り言に、つかさは慌てて周りを見た。幸いにも聞いていた人間はいなかったようで、つかさはほっと胸をなでおろした。
 そして、ふと時間が気になって時計を見ると、待ち合わせの時間は五分ほど過ぎていた。
 つかさがもう一度周りを見回すと、遠くから一人の男性が慌てて走ってくるのが見えた。
 その様子がおかしくて、つかさはクスッと笑ってしまった。そして、その男性を迎えるために、身だしなみを軽く整えた。
 男性がつかさの前に辿り着き、呼吸を整える。
「…ご、ごめん。待ったよね?」
「ううん、全然待ってないよ」
 そう答えながら、つかさは柔らかく微笑んだ。



― おしまい ― 
656 :命の輪をわたしに [saga]:2011/01/23(日) 02:49:47.71 ID:PRNf0TFj0
以上です。

命の輪のシリーズで、なぜかメインをはった事が無いつかさの話です。
どうも俺が書くとつかさにはいい役が振られて、その分かがみが割りを食ってるような気がします。
この辺りのエピソードは書かないと思うので補足しとくと、話に出てきたかがみの二人目の彼氏は、こなたの出産時のゴタゴタで関係が自然消滅しちゃってます。
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/23(日) 09:34:02.91 ID:m4TkG7Tt0
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ここまでまとめた

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>>656乙です。
つかさは意識して書かないと他のキャラ(特にこなたとかがみ)に食われてしまうのは確かですね。

658 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/23(日) 19:49:44.03 ID:kTnr3J390
>>656
 乙です。
 なるほど、恋愛に縁遠そうなこなたがさっさと結婚したから、みんな焦ったのか。
 そういうことなら、みさおがさっさと結婚した方が、みんなを焦らす効果はもっと高そうな気がする。

 投下行きます。3レスほど。
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/23(日) 19:50:39.75 ID:kTnr3J390
とある家出娘


 あれは、絶対お父さんが悪いんだ。私は悪くない。
 心の中で何度もそうつぶやきながら、私は、おばさんの家の前までやって来た。
 お父さんと喧嘩して家を飛び出してきた私に、とりあえず頼れるところといえばそう多くはなく、なんとなくここに来てしまった。
 インターフォンを鳴らす。
 おばさんが玄関の扉をあけた。
「あら、いらっしゃい。どうしたの?」
 実年齢よりはるかに若く(というか幼く)見えるおばさんは、いつもどおりのほわほわした雰囲気でそういった。
「家出してきた」
 私がそういうと、おばさんは大きく目を見開いた。
 とりあえず、居間に通されて、おばさんの手作りお菓子とお茶を出された。
 おばさんはプロの調理師免許をもつという無駄にハイスペックな専業主婦で、その手作りのお菓子や料理は、お母さんのそれよりもはるかにおいしい。
 私の従姉妹にあたる双子は、今日は友達の家に泊まりで遊びに出ていて不在。おばさんの旦那さんは、仕事で今日は帰ってこないとのことだった。
 とりあえず、家出してきた事情──お父さんとの喧嘩について話す。
「そうなんだぁ。でも、家出してくる前に、お母さんに相談した方がよかったと思うよ?」
「……」
 おばさんにそういわれて、私は黙り込むしかなかった。


 そのとき、インターフォンが鳴った。
「はーい」
 おばさんが玄関まで走っていく。
 玄関の扉を開けると、
「あっ、お姉さん、いらっしゃい」
「うちの家出娘、こっち来てない?」
「来てるよ」
 早い。あまりにも早すぎる。私がどこに行ったかなんてすぐに分かるはずないのに……。

660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/23(日) 19:51:49.96 ID:kTnr3J390
 おばさんと同じく実年齢よりはるかに若く見える(ただし、こっちは幼くは見えないけど)お母さんが、居間に入ってきた。
 おばさんは、お母さんにもお菓子とお茶を出すと、気を利かせたのか、どこか別の部屋に行った。
「どうしてここだって分かったの?」
 私は、お母さんに訊いた。
「水鏡の占いでこの家が映ったからね」
 そうだった。お母さんのこの『力』をもってすれば、私がどこに行こうと行き先なんてすぐに分かってしまうんだ。
「お父さんには、ちゃんと言い含めておいたから。あなたが自分の意思できちんと選択ができる大人になるまで待つようにって。だから、もう帰りましょ」
 お父さんとの喧嘩の原因は、家業を継ぐとか継がないとか、まあそんな話。
 私は、神社の家の一人娘だから、どうしても避けられない話ではあるけど。でも、お父さんの押し付けるような言い方にカチンと来ちゃったから。
 だから、私はお母さんに質問した。
「お母さんは、どうして神社を継ごうと思ったの?」
 お母さん──柊いのりは、神社の家の四姉妹の長女だ。お父さんを婿さんに迎えて、家業を継いだ。
 私のように、おじいちゃんに反発したことはあったんだろうか?
「別にたいした理由はないわよ。私にとって、それが一番楽な選択肢だったっていうだけ」
 お母さんは、拍子抜けするほどあっさりそう答えた。
 お菓子をつまんで、お茶をすすってから、さらにこう続けた。
「なんだかんだいっても、日本じゃOLを定年まで続けられる女なんてそうはいないし。家を出て普通に専業主婦しても、まつりみたいに離婚なんてこともあるかもしれない」
 離婚して実家に戻ってきたまつりおばさん。言っちゃ悪いけど、あらゆる意味において反面教師だ。
「そうでなくても、旦那さんがこければ、路頭に迷うはめになるし。つかさみたいに調理師免許でももってれば、そんなときでも大丈夫なんでしょうけど、私にはそんな特技もないしね」
 そうか。つかさおばさんは、こうして専業主婦なんてしてるけど、いざとなれば自分で家族を養うことだってできるんだ。
「かがみみたいに自分の腕一本で生きてけるだけの才覚もなければ、それだけの努力ができるわけでもない」
 かがみおばさんは、敏腕の弁護士さんだ。いつも忙しそうで、実家に帰ってくることなんてめったにない。
 年に一回、正月三が日にすぎたあたりにうちにくるけど。そのときもずっとパソコンに向かってたり、英語だかドイツ語だかフランス語だかで書かれた論文みたいなのを読んでたりしてる。
「結局、婿さんとって家業を継ぐのが一番楽だったのよ。神社の方は普段は婿さんに任せておけばいいんだし」
 神社の神主は、あくまでお父さんだ。
 お母さんは、神職の資格はもってるけど、神職の装束を着ることはあまりない。神職として振舞うのは、定期的にお守りを作るときと、年に数回しかない『特殊な依頼』をこなすときだけ。そのときだけは、柊家が受け継いできた『力』が必要だから。
 それ以外は、お祭りや正月のときに巫女服を着て巫女頭みたいなことをしてるだけで、普段は専業主婦と変わらない。その主婦業だって、まつりおばさんと家事を分担してるんだから楽なものだ。
 だから、お母さんにとっては、それが一番楽な選択肢だったというのは嘘ではないのだろう。
 でも……。
「まあ、柊家直系の看板を背負うんだから、いろいろと面倒なことはあるけどさ。私はそういうのは苦にはなんないから」
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/23(日) 19:52:50.67 ID:kTnr3J390
 問題はそこだ。
 柊家開祖の『力』を受け継ぐのは、直系の女だけ。
 それを脇においとくとしても、ずっと続いてきた伝統というのは、それだけで重荷だった。
「なんにしても、あんたは、普通の子より選択肢が多いってことは確かよ。だから、大人になるまでゆっくり考えて、自分のしたいことをすればいいわ」
「私が神社を継がないっていったら、どうするの?」
「よく考えた上での結論がそれなら、お母さんは全力で応援するわよ。お父さんの説得も私がやる。なんだったら、かがみの力を借りたっていい」
 お母さんははっきりとそういった。
 かがみおばさんは、身内の依頼でも弁護料をきちんととるシビアな人だけど、仕事として受けた以上はきっちりやってくれる人だ。
 そのかがみおばさんが味方についてくれるなら、こんなに心強いことはないけれども……。
「でも、そしたら神社の方は……?」
「神主が世襲や婿養子じゃなきゃ駄目なんて決まりはどこにもないの。神職保持者の中から誰かを昇格させて神主さんにしちゃえばいいわ。柊家の名前にこだわるなら、養子縁組しちゃえばいいんだしね」
 世襲じゃなくても、伝統を受け継いでく方法はいくらでもある。お母さんのいいたいことはそういうことなんだろう。


「ごめんね、つかさ。迷惑かけちゃって」
「迷惑なんてことないよ。せっかくだから、夕飯食べていかない?」
「せっかくだけど、もううちも夕飯の準備終わってるから。ほれ、あんたも、お礼をいいなさい」
「ありがとうございます」
 私は、つかさおばさんに頭を下げた。
「私、なんにもしてないよ」


 そんな感じで、つかさおばさんの家を出て、お母さんの車に乗って家路についた。
 家についたら、まずはお父さんと仲直りして、それから……ああ、そうだ。高校に出す進路希望調書を書かなきゃ駄目だった。
 なんて書こうかなぁ……。


終わり
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/23(日) 23:14:11.73 ID:KArbTTlSO
>>661

いい話だと思うけど力云々ですごく胡散臭く感じるな
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/24(月) 00:47:02.28 ID:/98jzETY0
>>661 乙です
SFやオカルト要素を取り入れると現実離れしてしまうのでその辺りをどうするかが難しい。
しかし2レスでここまで表現できたならGJですね。
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/24(月) 19:17:55.66 ID:B8sZ2PIN0

>>661です。

>>662 >>663
 感想ありがとうございます。
 力の設定は余計だったですかね。
 いのりが事前連絡なしでつかさ家に奇襲できた理由づけと、家業の重荷の重みを増すのと、それにもかかわらずいのりはそれをたいしたことだとは考えてないというギャップ感を出すといったところだったのですが。
 確かに、ほかにもやりようはありましたね。


>>641
 4月は4月で、年度初めなんで、みんな忙しいとは思いますが。


コンクールお題案
 「ゲーム」
 なんか、こなたと黒井先生の独壇場になりそうですが。
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/24(月) 20:17:45.49 ID:64Do+x4SO
母親なら無関心でないかぎり娘の行動パターンはある程度分かるんじゃないかなあ
あと力云々で現実味が薄くなって、家業の重みは逆に軽くなってると思う

というのが、俺の極個人的な意見
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/24(月) 20:23:29.09 ID:/98jzETY0
>>664
確かに何時にしても忙しい時は忙しいか。
もう少しで投票フォームのテストが終わるのでそれから考えます。
フォームの操作が分かればまとめから投票まですべて出来ようになる。進行が止まってしまわないようにしたいので。

投票テストの方の投票もドシドシお願いします。
好きな作品がなければそれまでですが……。

↓投票テスト(感動系から抜粋、全て同じ作者の作品なので偏ってます)〆切1/26日、0:00です。

http://vote3.ziyu.net/html/to1048.html
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/24(月) 21:08:44.96 ID:/98jzETY0
-----------------------------------------------------------------------------

ここまでまとめた

-----------------------------------------------------------------------------
668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/25(火) 14:59:41.34 ID:YACYS/JW0
>>667 まとめ乙
>>661 論点違うかもしれんが「力」無しの場合みきさんのあの若さはどこからくるんだろう・・・
いくらなんでもあれはチート
669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 15:04:32.10 ID:HCNNjf/SO
漫画ですし
670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 15:09:46.21 ID:HCNNjf/SO
と言うと身も蓋も無いんで

ヒント:由美かおる
671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 19:54:36.28 ID:HCNNjf/SO
七巻八巻読み直してると、環境変わったせいか結構キャラ同士の呼称が変化してるなあ
ざっと見た感じだと


こなた
峰岸さん→あーや

つかさ
峰岸さん→あやちゃん

みゆき
みなみさん→みなみ

みさお
柊の妹→つかさ

あやの
妹ちゃん→ひーちゃん

ゆたか
田村さん→ひよりちゃん

みなみ
田村さん→ひより
みゆきさん→お姉ちゃん

ひより
小早川さん→ゆーちゃん
岩崎さん→みなみちゃん


あと変わったのか元からなのか、みゆきはゆたかの事を「ゆたかさん」と呼んでたり
ここまでくると「泉さん」のままなのがなんか特別な意味があるような気が…
それにしてもかがみは見事に呼称を変えないなあ

…ってなこと考えてたら思いついた小ネタ↓
672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 19:56:02.65 ID:HCNNjf/SO
−呼称変更−

みさお「なー、柊。そろそろあたしらも名前で呼びあわね?」
かがみ「…なんだ薮から棒に」
みさお「いやほら、名字だとさ、結婚して変わったらややこしくなんじゃん」
かがみ「まあねー…日下部が結婚出来るとは思えないから、余計な心配だと思うけど」
みさお「ひでえな!あたしだってなにかの間違いで結婚するかもしんねえじゃん!」
かがみ「自分で間違いとか言うな」
みさお「じゃあ、あやのだ!あやのは確率たけえぞ!」
あやの「え、わ、わたし…?」
みさお「相手はあたしのアニキだから、同じ日下部になってややこしいぞ!」
あやの「ちょ、ちょっとみさちゃん…」
かがみ「あー、それはあるわね…じゃあ日下部のほうは『バカな方の日下部』略して『バカカベ』って呼ぶわ」
みさお「ひどくねっ!?」
あやの「柊ちゃん、それはちょっと…」
みさお「…じゃあ、あやのの方を日下部って呼ぶのかよ」
かがみ「『バカじゃない方の日下部』略して『バカカベ』」
あやの「えええーっ!?」
みさお「それ、ぜんっぜん意味ねえよなあっ!!」
673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 23:12:09.60 ID:b4Ef1CGd0
>>672

バカカベってwあだ名をつけるのはつかさの方。しかし『ばか』は付けないかとw


かがみは呼称にあまりこだわりはないみたいだ。
親しくなると名前で呼び捨てになっていく傾向かな。
そう言う意味で言うとみさおとあやのは中学時代からの友人としてはこなたやみゆきより友人としては距離があるのだろうか。
674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 23:38:53.77 ID:PJcp8W0DO
>>672

バカじゃない方の日下部→非バカの日下部→ひばかべ
とか
675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/26(水) 00:10:48.35 ID:7I6Wf6490
投票テストの結果が出ましたので一応ご報告します。

http://vote3.ziyu.net/html/to1048.html

一票もこなかったらどうしようかと思った。
協力してくれた方ありがとうございました。

投票が二作に分かれたようです。一番はコメントが一番多い『卒業』かと思ったら意外な結果だった。
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/26(水) 00:15:45.02 ID:7I6Wf6490
これでコンクールの準備ができました。

改めて第二十回のコンクールのお題を募集します。1/29日の0時まで受け付けます。
よろしくお願いします。
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/26(水) 02:57:04.11 ID:Lax3yclAO
じゃあお題
ポリエステル

とか?
678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 02:19:41.66 ID:7Zprgr+H0
お題 『誤解』
前回いい所までいったけど不採用だった。
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/27(木) 08:35:40.68 ID:qoQ6rUP+0
募集期間を短縮します。

第二十回のコンクールのお題を募集します。1/28日の0時まで受け付けます。
よろしくお願いします。

680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 11:25:37.27 ID:siNW2iFDO
コンクールお題『記念日』

20回というキリ番なので、お題もこう区切りのある感じのやつがいいんじゃないかなと
681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/27(木) 12:31:32.99 ID:6/jOfdiSO
似たようなのだけど
『記念品』
なんてのもいいかも
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 19:14:37.82 ID:dfa1C0aSo
お題 「蜜」
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 20:06:43.81 ID:7Zprgr+H0
-----------------------------------------------------------------------------

ここまでまとめた

-----------------------------------------------------------------------------
684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 21:45:57.97 ID:2OWJY4UAO
お題 『絆』
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/28(金) 00:01:57.65 ID:NtcaRK8m0
二十回コンクールの主催者です。

お題が出揃ったようなので投票に移りたいと思います。
〆切は2/4の0:00時です。


http://vote3.ziyu.net/html/to111.html
686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/28(金) 00:28:57.45 ID:NtcaRK8m0
お題の単語の意味を調べてみました。参考にして下さい。


「∞」or「無限」or「infinity」
  名・形動]《 infinity 》数量や程度に限度がないこと。また、そのさま。インフィニティー。「―な(の)空間」「―に続く」⇔有限。

ポリエステル
  エステル結合-CO-O-をもつ高分子化合物の総称。エチレングリコールとテレフタル酸との縮重合によって得られるエチレンテレフタラートが  代表的で、合成繊維テトロンなどが作られる。合成樹脂には、不飽和ポリエステル樹脂・アルキド樹脂などがある。てかペットボトルの材料。


寒い
  [形][文]さむ・し[ク]
  1 温度の低さを不快に感じる。また、そう感じるほど温度が低い。「セーターを着ないと―・い」「冬の―・い朝」《季 冬》「塩鯛の歯ぐきも―・し魚の店/芭蕉」⇔暑い。
  2 恐ろしさなどで震え上がる。「心胆を―・からしめる」「背筋が―・くなる」
  3 むなしくて寂しい気持ちになる。「冷酷な言葉を聞いて心が―・くなった」
  4 内容や中味が貧弱である。貧しい。みすぼらしい。現在では多く「おさむい」の形で使われる。「報告書というにはお―・い内容だ」→お寒い
  5 まったく面白くない。「―・いジョーク」
  6 金銭が不足している。「懐(ふところ)が―・い」⇔暖かい。

記念日
  記念すべき出来事のあった日。「結婚―」

記念品
  〔名〕ある出来事を記念する品物。記念物。

誤解
  [名](スル)ある事実について、まちがった理解や解釈をすること。相手の言葉などの意味を取り違えること。思い違い。「―を招く」「―を解く」「人から―されるような行動」


  蜜汁(みつじゅう) 糖蜜 砂糖蜜 花蜜 蜂蜜(ほうみつ・はちみつ) 生蜜(きみつ) 白蜜 


  1 人と人との断つことのできないつながり。離れがたい結びつき。「夫婦の―」
  2 馬などの動物をつないでおく綱。



  

687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/28(金) 00:34:32.28 ID:NtcaRK8m0
>>686
こうやって単語を並べると意味の幅が広いのが『寒い』でしょうか。

ポリエステルがお題に決まったらちょっと悩むかもしれないw
688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/28(金) 01:08:49.48 ID:6b7FU7/SO
悩むというかぶっちゃけ不可能
689 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/28(金) 01:22:23.91 ID:NtcaRK8m0
主催者です。
お題投票期間は長すぎるかな?
いつもどのくらいしたっけ?
690 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/28(金) 01:51:09.20 ID:y8kbZBjDO
>>688
不可能ではないと思うよ。例えばペットボトルリサイクルから話を膨らませるとからき☆すた化学の有機化学編みたいにするとか化学反応を人間関係に置き換えるとかできそう。
691 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/28(金) 01:54:20.22 ID:y8kbZBjDO
>>689
どのくらいかは忘れたけどとりあえず土日が入っていればいいかと
692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/28(金) 02:10:12.10 ID:NtcaRK8m0
>>691
とりあえずこのまま続けます。
693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/28(金) 03:20:53.50 ID:jxzd2w6AO
俺は2月1日まででいいと思うけどなー

ポリエステルになったら是非参加してみないねwww
694 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 16:00:42.20 ID:OM9IvjRro
お題投票は、基本的に土日挟んで3日間だね
695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/28(金) 20:36:29.21 ID:NtcaRK8m0
コンクール主催者です。

>>694
そうだったか それでは期間を変更します。しかし投稿期間等はそのままでいきます。
今回は作成時間が充分にとれると思います。


お題が出揃ったようなので投票に移りたいと思います。
〆切は1/31の0:00時です。

お題投票サイト

http://vote3.ziyu.net/html/to111.html
696 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/28(金) 21:01:25.40 ID:NtcaRK8m0
主催者ってコンクールに参加してもいいんですよね?
697 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/28(金) 23:18:02.71 ID:jxzd2w6AO
ポリエステルならいいよw


今まで普通に参加してたんじゃない?
698 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 23:28:47.10 ID:OM9IvjRro
参加して大丈夫だよー
699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/29(土) 01:23:10.72 ID:c5LnM9Pk0
>>697
参加はしていたけど主催はやっていない。
投票も管理しているので何かと疑われるかなと思って聞いてみた。
700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/29(土) 02:28:27.60 ID:Zwju3d1SO
>>699
今までの主催がって意味かと
701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/29(土) 03:16:53.99 ID:+YL/fk5Po
>>699
>>700の言うとおり今までの主催、投票所係も普通に参加してたってこと

疑える余地があるのはたしかだが、そんなことをする理由もないし意味もないからね
702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/29(土) 17:14:46.88 ID:EC/wzBJO0
>>700-701
過去の人を疑っているわけではないですよ。
でも細工しても意味の無いのは確かだ。大賞とったり賞を取るのはその時の流れもあるしね。
作品を読んでどう感じたか。そんなのは人によって千差万別。
余計なことを考えないで決まったお題に全力で取り組むのみです。
703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/29(土) 18:49:03.30 ID:+YL/fk5Po
>>702
ああいや、わかってる
やる意味がないんだから疑う必要もないってことね

とりあえず、運営側でも参加は問題ない
704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/29(土) 18:51:56.80 ID:Zwju3d1SO
なんか微妙に話しがずれるな
705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/29(土) 19:08:47.72 ID:c5LnM9Pk0
>>699です。
もう二十回になるのにこんな話をしてすみませんでした。
問題になっていればとっくに問題になっていますね。
この話はもうなしでお願いします。
706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/30(日) 00:03:09.12 ID:9oDbBG9L0
☆☆☆☆☆☆第二十回コンクール開催のおしらせ☆☆☆☆☆




コンクールお題投票が一日を切りました。
こんなお題でssを作ってみたいと思う方はどうぞ投票して下さい。

〆切は1/31の0:00時です。

お題投票はこちらへ↓

http://vote3.ziyu.net/html/to111.html
707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/30(日) 10:37:24.96 ID:bWOYnLc50
投下します。
708 :柊かがみ法律事務所──仮想現実規制法 [saga]:2011/01/30(日) 10:38:45.58 ID:bWOYnLc50
 かがみは、飛翔魔法の呪文を唱えると、上空50mほどに急上昇した。見下ろせば、凶悪なモンスターたちが群れをなしている。
 現時点でマスターしている火炎系魔法の最強呪文を唱えた。あたり一面が、地獄の業火に包まれる。
 モンスターを一掃して、かがみは再び地上に降り立った。周囲の空気には、まだ熱気が残っている。
「かがみん! 私もいっしょに燃やすなんてひどいよ!」
 マンガやアニメのごとく髪の毛が燃えてボサボサになったこなたが、かがみに抗議した。
「あんたには、たいしたダメージじゃないでしょ」
 ショック死防止のため、仮想空間(ヴァーチャルスペース)における苦痛の再現度には上限が設けられている。全身火達磨になったところで、たいして熱くはない。
 ステータス的にも、これぐらいのダメージはたいしたことないはずだ。
 かがみは、視覚をステータスアイモードに切り替えて、こなたのHPを確認したが、実際たいしたダメージは受けてなかった。冷熱系に対して防御力が高い防具を身につけているということもある。
 かがみは、回復魔法の呪文を唱えた。こなたのHPが回復し、髪が元通りに戻っていく。

 チャララ、ラッラッラー♪
 聞きなれたファンファーレが鳴り響き、二人の前に黒い半透明ボードが現れた。白い文字が流れていく。

"かがみんは、レベルが上がった。賢者レベル117。最大HPが3上がった。最大MPが6上がった。賢さが7上がった。力が2上がった。身の守りが1上がった。すばやさが5上がった"

"こなこなは、レベルが上がった。勇者レベル124。最大HPが7上がった。最大MPが3上がった。賢さが4上がった。力が7上がった。身の守りが6上がった。すばやさが3上がった"

 文字を流し終えると、ボードは自動的に消滅した。


 ここは、VRMMORPG(Virtual Reality Massively Multiplayer Online Role Playing Game; 仮想現実多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム)の『ドラゴンク○ストVR』の仮想空間。
 そして、こなたとかがみは、このゲームではレベルランキングトップ20に名を連ねる熟練プレイヤーであった。

709 :柊かがみ法律事務所──仮想現実規制法 [saga]:2011/01/30(日) 10:39:41.62 ID:bWOYnLc50
「今回は、ステータスアップだけかぁ。そろそろ新しい特技でも覚えたいとこだよね」
「レベルも100を超えたら、新しい特技ってのもなかなか難しいわよ。ゲームバランスもあるんだし」
 二人の前方に城壁に囲まれた町が見えてきた。
 陽は地平線の下に没しようとしている。
「今日は、あの町で時間切れってとこね」
 仮想現実規制法施行規則で、仮想空間の滞在時間には上限が定められている。仮想体験型ゲームの場合は、1日あたり6時間、1ヶ月あたり60時間が上限だ。
 これは、仮想現実依存症や現実感覚失調症を防止するための規制であった。
 ただし、仮想空間における体感時間は調整が可能である。これも規制があって仮想体験型ゲームの場合は2倍が上限。仮想空間で12時間をすごしても、現実空間(リアルスペース)では6時間しかたってないというわけだ。
 つまり、体感時間的には、この仮想空間には1日あたり12時間滞在できるということになる。



「ここは、ゲレゲレ城下町だよ」
 町に入って最初に話しかけた町人が、町名を教えてくれた。まあ、お約束というやつである。
 町人たちの額には、薄く"NPC"と刻印されている。こうでもしないと、NPC(ノンプレイヤーキャラクター)とプレイヤーのアバターとの区別がつかない。
「ゲレゲレって、明らかに狙ってる名前だよな」
「ここのプレイヤーはオールドファンも多いからね」
 宿に入って料金を前払いしたあと、食堂で夕食をとる。二人がたのんだのは、『ブラックドラゴンもも肉の香草焼き』だ。
「レッドドラゴンよりクセがなくておいしいわね」
 かがみは、そういいながらガツガツと食っていた。
「かがみん。そんなにがっつくと太るよ」
「リアルスペースの身体に影響はないわよ」
 仮想空間でいくら食べようと、現実空間の自分にとっては脳内だけの体験であり、太ることはない。
「一応、ここでも、食えばアバターが太るんだけどね」
「魔法はカロリー消費するから問題なし」
 かがみはそう言い切り、またモグモグと肉を咀嚼し始めた。
 そこに、
「おお、おまえらも来とったか」
 二人が視線を上げると、ななこが立っていた。彼女は、ここでは、戦士レベル136といったところだ。
「黒井先生、しばらくでしたね」
710 :柊かがみ法律事務所──仮想現実規制法 [saga]:2011/01/30(日) 10:40:42.22 ID:bWOYnLc50
「そうやな。新大陸一番乗りは、うちらがもらったで」
「次は負けませんよ。ところで、ほかのパーティメンバーは?」
「ちょっとバラけて情報収集してるとこや」
「何かめぼしい情報はありました?」
「きな臭い話はちらほら聞こえてきとるな。大規模イベントがありそうやで」
「例によって、プレイヤーズカウントスイッチですかね。トップ20プレイヤーが集まるまで待ちってところで」
 プレイヤーズカウントスイッチとは、ある場所に到達したプレイヤーが一定人数を超えないとイベントが発動しない仕組みを指す。
 一番乗りのパーティがイベントを独占してしまわないようにするための仕組みだった。
「たぶんな。まあ、遅れてるやつもそのうち来るやろ」
「それまでは、小イベント探しで暇つぶしってとこですね」
 かがみは、黙々と肉を食っていた。
「そうそう、先生。かがみんったらひどいんですよ。今日の戦闘なんか、私をモンスターごと焼き尽くそうとしたんですから」
「泉のレベルなら、大丈夫やろ」
「先生までそういいますか。もう、なんか嫁にDV受けてる気分ですよ」
「誰が嫁だ」
 かがみのパンチが、こなたの顔面に入った。
 こなたに1ポイントのダメージ。
「私のアバターは男だよ。ついてるものもついてるんだからね。ヤることはヤれるのだよ、かがみん」
「ヴァーチャルセックスは仮想現実規制法違反だ」
「それっておかしくない? 愛があれば、ヤっちゃったっていいじゃん」
「少なくても、私の方に愛(そんなもの)はない」
「ひどいなぁ。私はかがみんへの愛でいっぱいだというのに」
 かがみは、背筋がぞわっとした。
 こなたのその言葉の、どこまでが冗談でどこからが本気なのか。
 リアルとヴァーチャルをすっぱり切り分けて考えられるこなただけに、リアルでは同姓趣味はないにしても、ヴァーチャルではどうだか分からない。
 いや、ここ(ヴァーチャル)では、こなたは男なのだから、同姓ですらないわけで。
 少なくても、ここに滞在している間は、自らの貞操を守ることについて常に気を配らねばなるまい。
「相変わらず仲ええな、おまえら。しかし、なんでいかんのやろな? ここに来れるのは大人だけなんやし、別にいいやろって気もするけどな」
 未成年者は、仮想現実規制法によって、原則として仮想空間への潜入(ダイブイン)が禁止されている。例外は、総務省の認可を受けた教育目的仮想空間だけだ。
「政府は善良な性道徳の確保が目的だと表明してますけど、事情通の間では本当の目的は少子化対策だってもっぱらの噂ですね。どっちにしても、最高裁で合憲判決が出ちゃいましたから、法改正する以外にはどうしようもないですよ」
 国を被告にしたその訴訟で最高裁まで原告弁護人を務めたのは、かがみにほかならないのだが。
「まあ、確かに、ここでいくらヤっても、リアルのガキはできんわな」
711 :柊かがみ法律事務所──仮想現実規制法 [saga]:2011/01/30(日) 10:41:47.36 ID:bWOYnLc50


 ななこも席につき、ビール片手に二人と近況を語り合った。
 食堂の壁に取り付けられたテレビをふと見ると、ニュース番組が始まっていた。
 ニュースキャスターNPC『DQローズ』(設定は女性)が、ニュースを読み上げ始める。


"ドラ○エワールド、夜のニュースをお送りします"

"まずは、お祭り開催のニュースです。
毎年恒例となっているプレイヤー有志による『リア充爆発しろ クリスマス廃止大決起祭り』が、12月24日、アリエナイ大陸ホゲゲ村北東草原において行なわれます。
今年も、数多くの屋台が立ち並び、6時間にわたる花火の打ち上げや、カスタムNPCアイドル萌実ちゃんによるコンサートなど、数多くの催し物が行なわれる予定です。
当日は会場周辺のモンスターエンカウント率を0にするなど、運営も全面的に協力します。
なお、運営はこの祭りによるヴァーチャル経済効果を1億6270万ゴールドと発表しています"


 カスタムNPCとは、NPCをカスタムメイドできる有料オプションまたはそのオプションで作成されたNPCを指す。
 リアルでの恋人や友人がいないプレイヤーが、ヴァーチャルでのそれを求めてカスタムメイドに手を出すという事例も結構多い。
 一時期は、アニメキャラなどを模したカスタムNPCが大量に作られたため、著作権侵害で訴えられる事例が多発し、かがみも弁護士として大忙しだったことがある。
「ほほぉ。今年は、萌実ちゃんのコンサートがあるのか。これは是非とも行かないとね」
「私は行かんからな」
「かがみんも行こうよ。萌実ちゃんの歌はいいの多いよ」


"続いて、アカウント剥奪のニュースです。
プレイヤー名『RMMAN』は、常習的にリアルマネートレードを行なったため、運営によりアカウントを剥奪されました。
なお、運営は『RMMAN』をリアルスペース警察に告発しています。
リアルマネートレードは違法行為です。絶対にやめましょう"

712 :柊かがみ法律事務所──仮想現実規制法 [saga]:2011/01/30(日) 10:42:32.68 ID:bWOYnLc50
「懲りんやっちゃなぁ。ゲーマーの風上にもおけへんで」
 ななこは、ビールのツマミの『謎の豆類の塩茹で』を口に放り込んだ。
「需要があれば供給があるのが世の常ですからね」
 仮想現実規制法によるリアルマネートレード規制の範囲は広い。
 まず、ヴァーチャルアイテムをリアルマネーで買うという本来の意味での『リアルマネートレード』。
 リアルな財貨・サービスを、ヴァーチャルマネーで買う『ヴァーチャルマネートレード』。
 ヴァーチャルアイテムとリアルな財貨を交換する『リアル・ヴァーチャル間物々交換』。
 リアルマネーとヴァーチャルマネーを取引する『リアル・ヴァーチャル間為替行為』。
 これらはいずれも違法行為とされている。
 仮想空間経済(ヴァーチャルエコノミー)を隔離して、現実空間経済(リアルエコノミー)に影響が出ないようにするための規制で、これも最高裁で合憲判決が出ていた。


 この後、ななこのパーティメンバーが来たので、ななこは席をたっていった。
 こなたとかがみも、それぞれ宿の部屋で眠りについた。
 やがて、総務省仮想空間滞在監視プログラムが規制上限時間超過を検知し、二人を仮想空間から強制離脱させた。

   ・
   ・
   ・
   ・
   ・
713 :柊かがみ法律事務所──仮想現実規制法 [saga]:2011/01/30(日) 10:43:47.62 ID:bWOYnLc50
 かがみは、目を開けた。
「柊かがみ、50歳」
 そんなことをつぶやいてみる。リアルとヴァーチャルをきちんと意識して区別するための儀式のようなものだ。
 仮想空間では18歳当時の自分の姿をアバターとして使っているだけに、この辺の意識をきっちりしておかないと、ギャップの激しさで感覚が狂うことがある。
 電極がついた帽子のようなものを取り外し、仮想空間接続端末の電源を落とす。
 時計を見ると18時。予定どおりの時間だ。
 作りおきしておいた料理を冷蔵庫から取り出し、電子レンジで暖めて夕食とする。

 明日は月曜日。最高裁大法廷での口頭弁論がある。
 事案は、規約違反を理由としてアカウントを剥奪されたVRMMORPGプレイヤーが運営を被告として損害賠償を請求している訴訟で、かがみは原告弁護人を務めていた。
 正直、勝ち目は薄い。
 それでも、「仮想空間におけるアバターはプレイヤーの人格的権利の一部を構成するから、それを消去するアカウント剥奪措置は、正当な理由がなければ認められない」という主張が受け入れられて判決の中で言及されれば、今後の同種の訴訟に影響するところは大だ。
 このほかにもヴァーチャルがらみで担当している事件はいくつかあった。
 その中には、『ヴァーチャルスペースにおけるヴァーチャルな紛争に対して下されたヴァーチャル裁判所のヴァーチャル判決は、リアルな仲裁判断としての法的効力を有するか』といった頭を抱えそうな事案もある(現在、東京高裁で係争中)。

 かがみは、夕食を食べ終わると、明日に備えて早めに眠りについた。
714 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/30(日) 10:45:22.29 ID:bWOYnLc50
以上です。
715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/30(日) 13:19:18.79 ID:9oDbBG9L0
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ここまでまとめた

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716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/31(月) 00:06:08.80 ID:0Ch1KRqD0
☆☆☆☆☆☆第二十回コンクール開催のおしらせ☆☆☆☆☆

投票の結果お題は 『記念日』となりました。

投票結果↓
http://vote3.ziyu.net/html/to111.html

予想はしていたけど全く物語がうかびません。
お互いがんばりましょう。この機会に書いてみようと思う方も大歓迎です。

投稿期間:2月7日(月)〜 2月20日(日)24:00
投票期間:2月22日(火)〜 2月27日(月)24:00

となりますのでよろしくです。
717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/31(月) 00:14:10.22 ID:gxjnotvAO

ポリエステル健闘ww

記念日か…
こなかが的なのも有りかな
718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/31(月) 00:22:41.98 ID:0Ch1KRqD0
『記念日』か……コメントに結婚記念日的なのがいいって書いてあったな。
泉家、柊家、高良家の親を出すか。こなた達を結婚させるか……
そうゆう話は苦手だ。
もっと違ったのを出すかな。
719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/31(月) 00:31:48.39 ID:jtrCkBpSO
考えてる話しのがきて良かった。
結婚記念日じゃないですけど。
720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/31(月) 12:39:19.61 ID:jtrCkBpSO
−寒−

こなた「うぅーさーむーいー」
つかさ「うん…今年の冬はホントに寒いねー」
みゆき「そうですね…かがみさんは寒くないのですか?」
かがみ「寒いわよ。我慢してるだけ…寒い寒い言っても暖かくなるわけじゃないしね」
つかさ「なるかもしれないよ?」
かがみ「…どうして」
つかさ「ほら、声出してれば括約筋が動くから熱が…って、あれ?」
こなた「………」
かがみ「………」
みゆき「………」
つかさ「え、えっと…なんでこんな微妙な空気…」
こなた「…かがみさんや、訳してくだされ…」
かがみ「…多分、横隔膜とか言いたかったんだと…」
つかさ「え、え、じゃあ括約筋って…」
みゆき「せ、説明しづらいのですが、括約筋と言うのはですね…」



つかさ「………うぅ、恥ずかしいよー」
かがみ「い、一応暖かくはなったじゃない…かな…」
721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/31(月) 22:02:53.36 ID:0Ch1KRqD0
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ここまでまとめた

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>>720乙です
同姓なら別に恥ずかしい話ではないと思う。
でもこなたの勘違いは笑ったw。
722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/01(火) 22:33:02.21 ID:Wp6R32Pl0
コンクール期間中は特に静かになってしまいます。

ちなみにコンクール期間中も一般作品を受け付けていますので遠慮なく投下してください。
723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/03(木) 19:43:57.90 ID:CXEEXPZSO
−コンクール作品−

こなた「かがみー、コンクール作品出来たよー」
かがみ「えっ、マジで?随分と早いじゃない」
こなた「ふっふっふ、本気をだせばこんなもんですよ」
かがみ「これなら一番で投下できるわね」
こなた「…いやまあ、一番狙いたい人もいるだろうし、わたしは一週間後くらいに…」
かがみ「…嘘でしょ」
こなた「な、なにがですかな…」
かがみ「いいから、こっち向け。出来たとか嘘ついたでしょ?」
こなた「…ごめんなさい、嘘です」
かがみ「なんでそんな嘘つくの」
こなた「ちょっと見栄張りたかった…」
かがみ「…はぁ…まったく」
こなた「…再来週から本気だす」
かがみ「いや、それ遅いからな」
724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/04(金) 21:38:34.82 ID:JTUZ5+6R0
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ここまでまとめた

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725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/05(土) 02:32:40.02 ID:xDKSwQN20

 こんな夜中ですが、作品を一つ投稿します。

コンクールの宣伝も含まれて……いるかも?あんまり偉そうなことは言えませんがorz
後、第1回〜第19回のコンクールのネタにちょっとだけ触れているのでネタばれの可能性ありです。
 その点をご了承いただけると助かります。
726 :20個目のお話 [saga]:2011/02/05(土) 02:34:31.00 ID:xDKSwQN20
 

5月28日。


 1人の小さな女の子が5歳の誕生日を迎えました。女の子の誕生日を祝おうと、たくさんの人がお家に遊びに来ました。元気で頼れるお姉さんも、妹のような小さな女の子も、彼女に「おめでとう」と言いました。みんなに囲まれた女の子はとっても嬉しそうに、けれどもちょっと恥ずかしそうに、それでもやっぱり嬉しそうに、にっこりと笑いました。






【 20個目のお話 】





727 :20個目のお話(2) [saga]:2011/02/05(土) 02:36:53.30 ID:xDKSwQN20
 みんなが帰った後、お父さんは自分の部屋からとっても大きな箱を持ってくると、女の子に渡しました。
「お誕生日プレゼントだよ」
 お父さんがくれた箱は真っ赤な包装紙と緑のリボンできれいに飾りつけてありました。みんなのよりもずっと大きなプレゼントだったので、女の子は今日一番嬉しくなりました。
「ありがとう、おとうさん!」
 女の子はお父さんに大きな声でお礼を言いました。そして「あけてもいいの?」と聞きました。お父さんが頷くと、女の子は大喜びで箱を開けました。
 大きな箱の中には大きな本が入っていました。きれいな箱に入っていましたが、本はあんまりきれいじゃありませんでした。とっても大きくて、そして重たい本だったので、女の子一人では持ちあげられませんでした。
「このほんはなあに?」
 少女はお父さんに尋ねました。
「この本はな、お父さんのお友達が書いたたくさんのお話が載ってるんだ。みんなお前の誕生日を祝ってあげたいって書いてくれたんだよ」
 お父さんはにっこり笑ってそう答えました。女の子は、今度はあんまり嬉しそうじゃありませんでした。こんな古そうな本なんかよりも、かわいいお人形や新しいゲームの方が欲しかったからです。
 けれどもお父さんはそんなことなんかお見通しでした。
「お前は嬉しくないかもしれないと思う。でもちょっとだけでいいからお話を読んで欲しいんだ。お父さんのお願い、聞いてくれないかな?」
 そしてこういえば、女の子はこの本を読んでみてくれる。お父さんはそこまで分かっていました。

 なぜなら、女の子はお父さんが大好きだったからです。

 思った通り、女の子は「しょうがないなぁ」と口をとがらせながらも最初のページを開きました。どうやらお願いを聞いてくれたようでした。



  1つ目のお話は、なんだか寂しそうなお話でした。
 真っ黒な空と、冷たく降る雨の中を歩く孤独な旅人。感じる寒さに身を震わせながら、旅人はひたすら足を進めて行く。道中をゆく旅人の表情は悲しそうで、けれどもちょっとだけ嬉しそう。なぜならこの道には、今はない大切な一と残した、大事な思い出がいくつも存在しているから。そんな思い出を一つ一つ拾い集めながら、孤独な旅人は"雨"に打たれて歩いて行くのでした。


 つまらなそうな女の子はもういませんでした。1つ目のお話を読み終えた女の子は、すぐに次のページを開きました。お話はまだありました。


  2つ目のお話は、ちょっと羨ましいお話でした。
 同じ日に生を受けた2人の女の子。1人は頼りなさそうな、かわいい笑顔の女の子。もう1人は人前で素直になれない、ちょっと不器用な女の子。そんな2人に仲間たちが渡したものは、小さい箱と大きな箱。小さい箱はびっくり箱で、大きな箱も……びっくり箱!!驚いた顔を見て大声で笑う仲間たちに囲まれながら、2人は最高の"誕生日"をくれたことをみんなに感謝するのでした。


 2つ目のお話を読み終えた女の子は、彼女たちが自分と同じ誕生日であることに嬉しくなりながら次のページを開きました。お話はまだありました。
728 :20個目のお話(3) [saga]:2011/02/05(土) 02:39:03.02 ID:xDKSwQN20


  3つ目のお話は、少しドキドキなお話でした。
 いつも一緒の2人の女の子。1人は元気百万倍で、1人はおっとりおしとやか。けれども元気な女の子があんまり元気だから、もう1人の女の子の恋の行方まで振り回しちゃって。自分の犯した小さく大きな罪に落ち込んでしまう元気な女の子。けれども実は、その恋の行方は始めからずっと変わってなんかいなかったのです。おしとやかな女の子のドキドキな恋模様に、元気な女の子は甘くて"あつい"ものを感じるのでした。


 3つ目のお話を読み終えた女の子は、ドキドキしながら次のページを開きました。お話はまだありました。


  4つ目のお話は、甘くて酸っぱいお話でした。
 小学生みたいな振る舞いの男の子と、小学生みたいに小さい女の子。男の子がいっつもふざけていたので、女の子はいっつもしっかりしていました。だから私の方が大人だと、女の子はずっと思っていました。しかし実は、男の子の方が心もずっと大人だったのです。男の子は素敵なお話を書きあげ、みんなを巻き込んで行きました。その主人公を演じた女の子は、この最高の"文化祭"を男の子の胸の中で何時までも覚えていようと思うのでした。


 4つ目のお話を読み終えた女の子は、顔を赤くしたまま次のページを開きました。お話はまだありました。


  5つ目のお話は、なんだか安心するお話でした。
 月日は流れて、みんなは大きくなっていく。お医者さん、弁護士さん、作家さんにお嫁さん。大きくなると、やっぱりいつも一緒にいることなんてできないけれど。それでもきちんと顔を見ると、実はみんな全然変わってなくて。今いるここは、やっぱり終わりなんかじゃなくて、まだ途中なんだ。みんなが一つになった"旅行"の思い出と共に、一人の女の子はそう思うのでした。


 5つ目のお話を読み終えた女の子は、笑い終わらないうちに次のページを開きました。お話はまだありました。


  6つ目のお話は、ちょっぴり悲しいお話でした。
 おしとやかで賢い女の子。寒い雪に凍える中で、1人の男の子に恋心を抱いてしまって。けれどもそれは叶わぬ恋。まるで悪魔のいたずらのように、2人の間に存在する越えられない壁。それでもその壁は2人の"絆"までは阻むことはできません。冷たい終わりと、暖かい始まりは、雪上で熱い戦いを繰り広げる"ウィンタースポーツ"のようでした。


 6つ目のお話を読み終えた女の子は、なんだか悲しい気持ちで次のページを開きました。お話はまだありました。


  7つ目のお話は、とっても怖いお話でした。
 小さいけれど、元気一杯な女の子。友達と一緒の旅行中、迷った道で見た変なもの。それを見たせいなのか、一緒の友達もみんな変。なぜなら女の子がいたのは、女の子とは違う人たちの暮らす、変な世界だったから。だけど自分の世界のお友達は、自分が変なことに気づかない。不思議な経験が永遠に続いてしまう、"ホラー"な世界の中で、女の子は眠りにつくのでした。


 7つ目のお話を読み終えた女の子は、お父さんとおトイレに行った後、次のページを開きました。お話はまだありました。


  8つ目のお話は、びっくりするお話でした。
 お店で働く4人の女の子。真面目に働く中で、どんなお店も大繁盛させてしまう伝説の人物の存在を耳にして。4人は少ない手がかりでその人を探していくけど、やっぱり見つからない。そんな中、たまたまお店に来たお客さんは4人全員のお友達。しかし、そのお友達が実は伝説の人物であって。4人が気づいたころ、お友達は"こなた"にはもういませんでした。


 8つ目のお話を読み終えた女の子は、もし自分の周りの誰かが伝説の人だったら、と考えながら次のページを開きました。お話はまだありました。
729 :20個目のお話(4) [saga]:2011/02/05(土) 02:41:15.07 ID:xDKSwQN20


  9つ目のお話は、なんだか素敵なお話でした。
 いつも仲良しの3人の女の子。そのうちの一人には同い年の妹がいて。だけどそんな3人……4人に、もうすぐそこに別れの時が迫っていて。それでも4人はとっても仲がいいから、やっぱりみんな一緒にいたい。そんな中起きた大事件は、1人の女の子の大作戦。でもそのおかげで、"柊姉妹"と女の子たちはずっと一緒にいることができたのでした。


 9つ目のお話を読み終えた女の子は、仲良しのお友達の顔を思い浮かべながら次のページを開きました。お話はまだありました。


  10個目のお話は、心が暖かくなるお話でした。
 もうすぐ大人になる1匹の蝉。だけどずっと地面の中にいたせいで、空が怖くて外に出れなくて。おかげでずーっと地面の底。でもそこにやってきたのはもう大人になった自分のお友達。みんながあんまり楽しいって言うもんだから、1匹の蝉は空に飛び立ちました。そしてその時、自分が怖いと思っていたのは"失敗"だったんだな、と感じたのでした。


 10個目のお話を読み終えた女の子は、次のページを開きました。お話はもう半分ほどありました。


  11個目のお話は、とってもかわいらしいお話でした。
 眼鏡が似合う真面目な女の子。とっても真面目なので、お友達と遊ぶ時も大真面目。でもそのお友達が、喧嘩を始めちゃったからさあ大変。なんとか仲直りしてほしい女の子は、ここでも真面目に不真面目に。その様子があんまり可笑しかったので、お友達は仲直り。みんなそれぞれの笑顔の中で、真面目な"みゆき"も笑顔になるのでした。


 11個目のお話を読み終えた女の子は、一緒に笑顔になりながら次のページを開きました。お話はまだありました。


  12個目のお話は、ユーモア溢れるお話でした。
 いつも笑顔の女の子。どんな時でも笑顔でいて、周りもみんな笑顔になる。どうしていつも笑顔なの?お友達がそう聞いたから、女の子は昔を思い出す。それは1人の魔法使いが、女の子に魔法をかけてくれたから。魔法使いとのお話は、悲しいけれど、やっぱり可笑しいお話で。とっても面白かったので、いつまでも"笑い"が絶えることはありませんでした。


 12個目のお話を読み終えた女の子は、声を出して笑いながら、次のページを開きました。お話はまだありました。


  13個目のお話は、不思議な不思議なお話でした。
 いっつも無口な女の子。大好きな友達に会いたくて、たくさんたくさん歩いてく。それでもあと1歩という所で、お友達とはどうしても会えない。どうして会わせてくれないの?女の子は悲しそう。でも実は、本当の女の子はもう遠くの世界に行ってしまっていたから。あと1歩なんかじゃなかったから。やがて女の子が歩くのをやめても、"死亡フラグ"は有り続けるのでした。


 13個目のお話を読み終えた女の子は、ちょっとだけ悩んだ後、次のページを開きました。お話はまだありました。


  14個目のお話は、今度も不思議なお話でした。
 とても仲良しな2人の女の子。小さくて可愛い女の子と、大きくてカッコいい女の子。ある朝目が覚めると、入れ替わってしまっているもんだから。あなたが私で私があなた。2人しか知らない大事件は、やがてみんなを巻き込む大事件に。不思議な不思議な大事件。けれども"みなみとゆたか"の二人の関係は、変わることなんてありませんでした。


 14個目のお話を読み終えた女の子は、近くにあった鏡を見た後、次のページを開きました。お話はまだありました。
730 :20個目のお話(5) [saga]:2011/02/05(土) 02:42:42.83 ID:xDKSwQN20


  15個目のお話は、ほんのり暖かいお話でした。
 夜空に上る、2つの光。1つはとってもしっかり者の、頼れる一番星。もう1つはいっつも遅れて出てくる、頼りないお星様。頼りないお星様は、いっつも一番星を追いかけて。喧嘩したって、どうなったって一番星に近づきたいから。やがて真っ黒な夜の空には、二つの"星"が仲良く寄り添って光っているのでした。


 15個目のお話を読み終えた女の子は、窓の外にあるお星様を眺めながら次のページを開きました。お話はまだありました。


  16個目のお話は少し難しいお話でした。
 ずっと子どものままでいることのできる人なんていない。みんなしっかり前を見て、次に見える景色を目にしていく。自分はずっと子どもでいることができると思ったけれど、気づけばみんなは大人になってる。開けない夜が無いように私だって大人になるんだ。だから私も前を見なくちゃ。その先にある"夢"を見続けるために、女の子は目を開くのでした。


 16個目のお話を読み終えた女の子は、ふんと声を漏らした後、次のページを開きました。お話はまだありました。


  17個目のお話は、悲しくて奇妙なお話でした。
 いっつも頼りない女の子。どじばっかりで見ていて不安なくらいに。大きな銀杏の木に導かれて、目を覚ましたら300年前の世界。そこで起こった大事件は、辛くて悲しくて、それでもどうしようもなくて。それでも健気に頑張る女の子。不意に流れ落ちた一滴の雫は銀杏の樹雨に混ざって"水"となり、川を下っていくのでした。


 17個目のお話を読み終えた女の子は、ハンカチで目の周りをこすりながら次のページを開きました。お話はまだありました。


  18個目のお話は、幸せそうなお話でした。
 仲のいい夫婦が住んでるお家は、なんだかちょっと広すぎる。どうしてこんなに広いんだろう?どうして私と二人なんだろう?広いお風呂の中で、お嫁さんは考える。その答えを知った時、一人の女の子を残して、お嫁さんは遠い世界にいってしまって。お家はちょっと広いけど、女の子は"二人"でいることをちょっと嬉しく思うのでした。


 18個目のお話を読み終えた女の子は、お父さんの方をちょっとだけ見てから次のページを開きました。お話はまだありました。


  19番目のお話は、不思議で素敵なお話でした。
 1人の女の子のお友達は、きっと誰よりも遠い所。それでも2人は仲良しだから、今日も仲良くおしゃべりをする。こちらは少しずつ暖かくなってきます。そちらの様子はどうですか?他愛もないおしゃべりは音ではなくて、光となって飛んでいく。お友達からのお返事も光となって返ってくる。おしゃべりを続ける女の子は、小さな"月"に手を振り続けるのでした。


 19番目のお話を読み終えた女の子は、次のページを開きました。お話は―――


「あれ?」


  もう、ありませんでした。
731 :20個目のお話(6) [saga]:2011/02/05(土) 02:44:30.14 ID:xDKSwQN20


「おとうさん、おとうさん」
 何も書いてない真っ白のページを指さしながら、女の子はお父さんに尋ねました。
「ここ、まっしろだよ?ほんはおわってないけどおはなしがないよ?」
「そうだな。ここにはお話がないな」
 でもお父さんはそんなことわかっていたように、しみじみと答えました。
「このお話は全部、みんながお前にくれたものだ」
「うん」
「でもな、それだけじゃこの本は完成、とは言えない」
「そうなの?」
「そうだとも、だから……」
 お父さんは少し、黙りこみました。そして、ちょっとだけ時間をおいた後、ゆっくりと口を開きました。
「今度は、お前が物語の続きを書いて欲しいんだ。お前がこの本を完成させて欲しい。そして、今度はお父さんと……後、お母さんに、お話をプレゼントして欲しいんだ」
 お父さんは優しくそう言いました。優しくそう言ってから、ちょっとだけ鼻をすすりました。女の子の返事は、お父さんにはもうお見通しでした。




 なぜなら―――




 それから何年も、何年も時間が過ぎて行きました。女の子はどんどん大きくなっていきました。身体はあんまり変わっていませんでした
が、心はどんどん大人になっていきました。そして―――
732 :20個目のお話(7 Final) [saga]:2011/02/05(土) 02:46:28.43 ID:xDKSwQN20
 

  5月28日。


 「―――。あいつももう18になったぞ。本当に早いもんだな」
 すっかりおじさんになったお父さんは小さな仏壇の前で、優しく語りかけていました。この日は女の子の18歳の誕生日。だけどお家には誰も遊びには来ていませんでした。元気で頼れるお姉ちゃんも、妹のような小さな女の子も、お家にはいませんでした。そして、18歳になった女の子もお家にはいませんでした。
 ふと。お父さんは仏壇の近くになんだか古くて、大きい箱を見つけました。お父さんは少しハッとして、それからふふんと微笑みました。箱の中身なんてお父さんにはお見通しでした。
 


 なぜなら―――なぜなら、女の子はお父さんが大好きだったからです。



 大きな箱を開けると、やっぱり。大きな本が入っていました。入っていた箱と同じように、あんまりきれいではありませんでした。大きい本ではあったけれど、持てないことはありませんでした。
 お父さんは、最初のページを開きました。お話を読み終えると次のページを開きました。どんどん、どんどん開きました。そして、19番目のお話を読み終えたお父さんは、次のページを開きました。




「…………まったく、こなたのやつめ」


  お父さんはちょっと嬉しそうに、けれどもちょっと恥ずかしそうに、それでもやっぱり嬉しそうに、にっこりと笑いました。






 お話は、まだありました。






FIN
733 :20個目のお話 [saga]:2011/02/05(土) 02:54:21.72 ID:xDKSwQN20
 
 一応、終了です。


 恥ずかしながら、コンクールお題募集時に「記念日」をあげさせていただいた者です。
嬉しいことにそれがお題として採用されましたので、「じゃあ何か俺もコンクールの記念になるものが書きたい!!」と思い、迷惑招致でこの作品を書かせていただきました。
 内容上、さすがにこれをコンクール候補としてあげるわけにはいかないので一応、宣伝も兼ねて(笑)……すいません。


 長々と、失礼致しました。最後まで見てくださった方、ありがとうございました。そしてコンクール参加を意気込んでいる方、ぜひ頑張ってください。たくさんの「記念日」作品が見れることを期待しています。
734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/05(土) 08:20:54.98 ID:g9Bb8PNE0
>>733乙です。
コンクール歴代の大賞作品を盛り込んだ作品ですね。
これはコンクール終了後にまとめさせて頂きます。

それから>>733はコンクールに参加しないの?文面から察するにそう感じたのだが。
これだけ書けるなら参加した方がいいですよ。
735 :733 [saga]:2011/02/05(土) 11:37:10.89 ID:kFxsUpO70
>>734
ありがとうございます。
参加したいなと思っているのですが、その……ネタがまだまったく浮かんでないんですよねorz
 「記念日」というお題はこれに関する作品が見たくて提案したので、自分が書くとなった時のことを全く考えていませんでしたorz
736 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/05(土) 16:04:35.95 ID:g9Bb8PNE0
>>735
記念日と言うお題は意外と難しいと思う。何か特別な日だからその日を設定しないといけない。
最初に出すのか最後にだすのか。それとも起承転結の転で出すのか。やり方はいろいろあるだろうけどね。
そのお題で書けないのなら別のお題で書けばいい。
自分は『誤解』と踏んでいてそれで物語を考えていた。決まったのは『記念日』
でもうまく操作すると『誤解』が『記念日』になってしまいます。

そのお題に執着すると結構書けないのです。だから書きたい物語を思い浮かべてそこからお題へと導いていくのです。

なんて参考にもならない事を書いてしまいました。


737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/05(土) 16:17:41.34 ID:ylQUTiVFo
>>733
GJっした!
丁寧な作りでそれぞれの作品へのリスペクトを感じました。
738 :忘れてたよ… [saga]:2011/02/05(土) 19:48:38.29 ID:MdCKkKwAO

こう「悪いね、ひよりん。おつかい頼んじゃって」
ひより「いくらなんでもこの時期にオーメダル買ってこいは酷すぎっス!」
たまき「やさこの誕生日忘れてたひよりんが悪いんじゃん。お題が『記念日』なのに誕生日を無視するから」
みく「私が言わなきゃアンタも忘れてたろうけどね…で、なんでオーメダル買いにいかせたの」
こう「いや、誰もOOOネタやらないから一応やっとこうかなぁと」
みく「明日のパンツとか女の子が言ったらまずいよ…ってやさここのコンボは」
たまき「ほいじゃスキャンしよっか」
みく「ちょっ山さん」

\シャチ/ \ウナギ/ \タコ/

\シャシャsy(ryみく「本気のネタバレはやめなって!!!怒り過ぎ!!」


…本当に八坂こうの誕生日忘れてた…orz
739 :733 [saga]:2011/02/05(土) 23:39:33.69 ID:eqVygmvF0
>>736
おお、ものすごく丁寧なアドバイスをありがとうございます。
これを参考にもう少しネタを練らせていただきます。
740 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 15:38:45.29 ID:ZyaYkH1C0
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ここまでまとめた

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『20個目のお話』はコンクール作品のカテゴリーの中にコンクール関連作品と新設しました。ご確認して良ければこのままにします。

>>739
アドバイスが役に立てばいいのですが。
741 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 19:19:40.02 ID:ZyaYkH1C0



☆☆☆☆☆☆第二十回コンクール開催のおしらせ☆☆☆☆☆

日が変わるとコンクールの投稿期間となります。
ドシドシ投下お願いします。

投稿期間:2月7日(月)〜 2月20日(日)24:00

最終日は言い換えると21日(月)の0:00時となります。ご注意下さい。
742 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/07(月) 00:15:42.55 ID:3Bj/c4Iq0
 日が変わったので、コンクール作品投下します。


743 :片方だけの銀婚式 [saga]:2011/02/07(月) 00:17:06.60 ID:3Bj/c4Iq0
 とある墓地。
 泉そうじろうは、小さな墓石の前にたたずんでいた。
 墓石には「泉かなた」と刻まれている。
「思えば、ずいぶんと時がすぎてしまったな……」
 あのときからずっと時が止まってしまった妻と、すっかり歳をとってしまった自分。
 変わらないものと変わってしまったもの。いろいろとある。


「せっかくの銀婚式だってのに、一人なんて寂しいね、兄さん」


 唐突に聞こえてきた声に振り向くと、そこには、
「ゆき……。なんでここに?」
 小早川ゆきが立っていた。
「銀婚式ぐらい、祝ってあげようと思ったのさ。うちじゃ、毎年結婚記念日は、ゆいやゆたかが盛大に祝ってくれるよ」
 小早川家ならばそうだろう。
 でも、泉家の場合は……。
「うちは、そういうもんでもないからな」
「こなたちゃんは、今日が兄さんとかなた義姉さんの結婚記念日だって知らないのかね?」
「ああ。訊いてこないから、話してもいない」
「それもまた、こなたちゃんの優しさかもしれないけどさ」
 ゆきは、墓の前までくると、
「かなた義姉さん、銀婚式おめでとう! あのときはいろいろとあったよね」
「そうだな。ゆきにはいろいろと世話になった」
「たいしたことはしてないけどね」
 そうじろうとかなたの結婚と埼玉県移住は、両方の親の反対にあって、駆け落ちも同然だった。
 当時は、ゆきにいろいろと世話になったものだ。
「でも、どうしてなんだ? うちの親だって反対してたのに……」
 そうじろうは、長年の疑問だったことを、口に出した。
 そのせいで、そうじろうやかなただけでなく、ゆきも、石川県の親戚一同との関係が致命的に悪化してしまったのだから。
「兄さんだけだったら、絶対に応援しなかったけどね。まっ、かなた義姉さんの熱意にほだされちゃった、ってところかな」
744 :片方だけの銀婚式 [saga]:2011/02/07(月) 00:18:33.32 ID:3Bj/c4Iq0


 意外かもしれないが、二人での埼玉県移住に積極的だったのは、かなたの方だった。
 通信手段が貧弱だった当時、作家として名を上げるには、出版社が集中する首都圏に住むのが最低条件だった。だから、埼玉県に移住を試みたのは、そうじろうとしては当然の選択であった。
 ただ、そうじろうは、作家として充分な収入を得られるようになってから、かなたを呼び寄せて結婚しようと思っていたのだ。
 そうであったなら、親たちもあんなに反対はしなかっただろう。


「あのときのかなたは、すごく強引だったな。まるで、いつもと立場が逆になったような気分だった」
「かなた義姉さんは、優しい人だからね。兄さんを一人で送り出すのが心配だったんだよ」
「俺はそんなに頼りなく見えたかな?」
「駆け出しの作家なんて貧乏の代名詞でしょ。そんな貧乏暮らしで一人で無茶すれば、体も壊しただろうし。私は、かなた義姉さんが一緒に来てよかったと思うね」
「そうだな……」


 それは確かにそうなのだろう。
 かなたに感謝すべきことは、数え上げればきりがない。
 だからこそ、家を買い、こなたも生まれて、さあこれからだというときに、あんなことになってしまったのは……。
 生きてさえいれば、まだまだ幸せにしてやれる自信はいくらでもあったのに。


「夫婦水入らずを邪魔するのも悪いから、私はこれで退散するよ」
 ゆきは、そういって手を振ると、その場から立ち去っていった。


 そうじろうは、再び妻の墓石と向かい合った。
 二十五回目の結婚記念日。かなたに語りたいこと、語るべきことは、いくらでもある。
「なあ、かなた……」
745 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/07(月) 00:19:44.12 ID:3Bj/c4Iq0
以上です。
746 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/07(月) 00:33:37.66 ID:ji4ReEcK0
片方だけの銀婚式
一番目エントリーしました。

ちなみにコメントフォームはコンクール終了後つけます。
747 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/07(月) 00:54:29.34 ID:ZqLmmIVX0
>>745
乙でした!!
オーソドックスに「結婚記念日」のSSですね。
よかったと思いますb
748 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/07(月) 20:03:19.63 ID:MGzPIWTSO
−お小遣−

ゆたか「んー…」
こなた「おや、ゆーちゃん。何か悩み事かい?」
ゆたか「あ、うん。たいしたことじゃないんだけど、今月のお小遣がピンチで…」
こなた「ほほー、なにか無駄遣いでもしたかい?」
ゆたか「無駄遣いじゃないよー。みなみちゃんちに行く電車代だよー」
こなた「………」


こなた「お父さん…ちょっとゆーちゃんの事でお話が…」
そうじろう「あー、もしかして電車賃の…」
こなた「お父さんも聞いてたんだ」
そうじろう「うむ。んで、それくらい出そうかって言ったら『そういった分も含めてのお小遣ですから』って断られたよ」
こなた「…ゆーちゃん、無駄にいい子だね…」


こなた「…あー、もしもしみなみちゃん?ゆーちゃんと遊ぶ時にさ、うちに来てくれる回数を増やしてくれると嬉しいんだけど…」
みなみ『…わたしもその提案はしてみましたが、わたしがみなみちゃんの家に行きたいから、と断られまして…』
こなた「…ゆーちゃん…なんでそんな無駄に頑固…」
749 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/07(月) 21:54:47.32 ID:ji4ReEcK0
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ここまでまとめた

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750 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 01:15:53.66 ID:faX4+pVM0
質問です。まとめサイトのトップページ編集で
打ち消し斜線をを文字の上に書きたいのですがどうすればいいですか?

投稿期間が終わったら期間の文字に入れたいのです。
751 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 20:27:04.12 ID:uwxnclF6o
HTMLタグ 打ち消し斜線 でググればいいだけのような
752 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 21:00:03.97 ID:40uAdXiyo
>>750
1,消したい文章を範囲選択
2,編集フォーム上部のABCに打ち消し線が入ってるのをクリック
753 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 21:57:24.86 ID:faX4+pVM0
>>751-252
>>750です。どうもです。エディターを高機能版にすればできますね。
754 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/11(金) 04:07:02.77 ID:q4HBFV9AO
まだコンクール作品は一つか

とりあえず書いてるけどほのぼのエンドかヤンデレエンドか迷い中
755 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 09:49:43.33 ID:tlb5KJRx0
コンクール作品はもう書き終わった。誤字脱字が多いとよく指摘されるので今回はそれを念入りに。

いつもコンクール投下は最終日に集中する傾向がある。エントリー漏れ作品が良く出ます。
今回は何も言わなかったけど今度からは投下時間が期限内であれOKにしてもいいと思ってるけど甘いかしら?
756 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 09:59:24.27 ID:9IWAYfOHo
期間内に投下完了するのが一応ルールだからねぇ
そのための避難所だし
757 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 13:29:49.04 ID:dTTXXCnSO
−なんの日−

こなた「おはよー。今日も寒いねー」
ゆたか「おはよう、お姉ちゃん。やっと起きたんだ」
こなた「いいじゃん、祝日なんだし」
ゆたか「そういえば、今日はなんの日か知ってる?」
こなた「建国記念の日でしょ?それくらいは知ってるよ」
ゆたか「うん。それとニートの日でもあるんだって」
こなた「休日満喫してるだけでニート!?」
そうじろう「…ゆーちゃん、ニットの日だよ。しかもそれ昨日だし…」
758 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/11(金) 19:25:13.94 ID:tlb5KJRx0
>>757
乙です。2/10はなぜか『左利き』の日でもあるらしい。
らきすたのキャラの日だなw
759 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/12(土) 09:17:32.51 ID:F7ebqHGf0
やっぱり『記念日』は難しいお題かもしれない。
普通なら3〜4作くらいは投下されているよね。

それではコンクール作品を投下します。21レスくらい使用します。
760 :遺書  1 [saga]:2011/02/12(土) 09:19:14.01 ID:F7ebqHGf0
 七月六日、
かがみは引き出しから紙と筆記用具を取り出した。
かがみは自分の部屋で遺書を書こうとしていた。二十歳の誕生日前日になんて自殺でもするのだろうか。それは違う。
かがみは死ぬ為でも死期が近いわけでもない。なぜかがみは遺書を書くことになったのか。
それは一年以上遡らなければならない。


『遺書』


かがみはつかさの部屋に入ろうとしていた。
かがみ「つかさ」
しかし返事はなかった。
かがみ「入るわよ」
かがみはつかさが出かけているのをかがみは知らない。かがみは貸した本を返しにもらう為につかさの部屋に入った。
(おかしいわね、今日は出かけるって言ってなかったのに)
かがみが部屋を出ようとした時だった。ふとつかさの机の上を見た。手紙が置いてある。何気なく手紙を手にとって見た。つかさの字で書いてあった。

『お父さん、お母さん、いままで育ててくれてありがとう。先立つ親不孝を許してください』
手紙はこんな件で始まっていた。

(うそ、これって遺書じゃない、なぜつかさが遺書なんか)
かがみは手紙を読み続けた。両親への感謝の言葉が綴られている。いのり、まつりにも同じように書いてあった。こなたやみゆきをはじめとする親友にも
お別れの挨拶があった。
しかし手紙の中にかがみの名前は一回も載っていなかった。
かがみは動揺した。それはつかさが遺書を書いていた事ではない、かがみに対する言葉が全くなかった事に動揺したのだ。
つかさが遺書を書いた原因が自分なのかもしれないと思った。かがみは過去を振り返り思い当たる節を考えた。
子供の頃からずっと一緒にいた双子の妹。高校まで一緒の学校。他の兄弟姉妹と比べても仲の良さは誇れると言って良いと自負をしている。
最近になっても態度を変えた覚えはない。つかさもかがみに対して何か変わった行動もしていない。まったく身に覚えがない。
つかさ「ただいま」
玄関の方からつかさの声が聞こえた。かがみは慌てて手紙をつかさの机の上に戻し、素早くつかさの部屋から出て自分の部屋に入った。
慌てて戻る必要なんかなかった。普段なら部屋にかがみが居てもおそらくつかさは不振とは思わないだろう。でも今回は様子が違う。
かがみは自分の部屋でつかさの様子を見守った。
761 :遺書  2 [saga]:2011/02/12(土) 09:21:41.28 ID:F7ebqHGf0
つかさはそのまま自分の部屋に入った。しかし一分もしない内につかさは部屋を出た。そして鏡の部屋をノックした。かがみは遺書を読んだのが分かってしまったのかと思った。
かがみ「居るわよ」
つかさは扉を開けた。
かがみ「おかえり、今日は何処に行ってたのよ、何も聞いてなかった」
つかさ「今日はこなちゃんとお買い物、って言ってなかったっけ?」
そういえばそんな事をいっていたような気がした。
かがみ「そうだったわね、忘れてたわ」
つかさ「そうだ、お姉ちゃんに返さなきゃいけないのが在ったんだったよね」
つかさは本をかがみに渡した。その本は返して欲しかった本だった。
かがみ「返すって、もう読んだの?」
つかさ「うんん、私にはちょっと難しいから」
つかさはそのまま部屋を出ようとした。
かがみ「ちょっと待って」
つかさ「?」
つかさは無言で立ち止まりかがみの顔を見た。
かがみ「いや、何でもない」
つかさは不思議そうに首を傾げてそのまま部屋を出て行った。
聞けなかった。遺書を何故書いたのか。そしてその文の中にかがみの名前が出ていないのか。答えを聞くのが怖かった。
何故黙って勝手に人の手紙を読んだのかと怒るに違いない。なにより『お姉ちゃんに別れの言葉なんかないよ』と言われるのが何より辛い。

 家族での夕食。食後の会話。普段どおりのつかさだった。かがみを避けるそぶりを見せない。演技なのだろうか。かがみの知っているつかさならそんな演技なんかできない。
つかさの遺書が頭から離れない。遺書を読まなければつかさは今までどおりのつかさと変わりはない。かがみはただ困惑をするだけだった。
762 :遺書  3 [saga]:2011/02/12(土) 09:23:37.83 ID:F7ebqHGf0
 
 次の日の朝、かがみはいつもの時間に起きて洗面所に向かった。しかし珍しくその日はつかさが先に洗面所に居た。かがみは朝の挨拶をしようとした。しかしつかさの様子がおかしい。
つかさ「う、うえー」
気分が悪いのか戻しているようだった。かがみはつかさの背中をさすってあげた。
その時、かがみは何かピンと来るものを感じた。まさか。しかしこれが本当だったら大変な事態だ。
かがみ「つかさ、あんた最後に生理があったのはいつよ」
朝から聞くような話ではない。でもあえて聞いた。つかさはしばらく何も言わなかった。
つかさ「最近、ないかな」
かがみ「ちょ、つかさ、その意味分かってるんでしょうね」
かがみはつかさの肩を両手で掴んで問い質した。
つかさ「分かるって何が?」
キョトンとしているつかさを見てかがみは言わざるを得なかった。
かがみ「つかさの意思でそうなったのなら私は何も言わないわ、でもね、無理やり犯されたのなら病院に行かないと、性病も心配だわ」
真剣な眼で言うかがみにつかさもその意味が分かったようだった。
つかさ「お姉ちゃんには関係ない事だよ」
一言だった。そう言ってつかさはかがみの両手を跳ね除けると洗面器で口を洗い始めた。
かがみ「関係ないって、私は家族じゃない、姉妹じゃないの、そんな大事な事黙っているなんて、私じゃ相談相手にならないって言うの?」
つかさは黙ったまま口をタオルで拭った。
つかさ「学校に行かないと、それから今日は用事があって遅くなるからこなちゃんと会えないって言っておいて」
つかさは洗面所を出て行ってしまった。
かがみ「ちょっと待ちなさい」
つかさは身支度をしてそのまま家を出てしまった。話が唐突すぎたか。それにしてもあんな態度をとるつかさは初めてだった。
高校を卒業してからめっきりと一緒に出歩く機会がなくなった。それは確かだ。しかし環境が変わったとはいえこなたやみゆきと
毎週のように会っている。後輩のひよりやみなみ達ともそうだ。最近に至ってはみさおやあやのとも会っているようだ。そういう意味ではつかさは高校時代よりも社交的になった。
これもあの遺書と関係しているのだろうか。それに昨日の遺書を知らなければ戻しただけで妊娠したなんて思わなかっただろう。うだうだ考えてもしょうがない。
かがみも身支度をして大学に向かった。

763 :遺書  4 [saga]:2011/02/12(土) 09:25:17.37 ID:F7ebqHGf0
 
 夕方。かがみはいつもの喫茶店でこなたを待っていた。
「こちらです」
こなた「やふー、かがみ」
ウエイトレスに案内されてこなたがやってきた。
みゆき「こんにちは」
かがみ「みゆきじゃない、今日は会う約束はしてなかったのにどうしたのよ」
こなた「駅でバッタリ遇っちゃってね」
みゆき「せっかくなのでご一緒させてもらいました」
こなたは店の周りをきょろきょろと見回した。
こなた「あれ、つかさはどうしたの、トイレ?」
かがみの脳裏に今朝の出来事が思い出された。この場はつかさの言うように伝えるしかないだろう
かがみ「今日は急用で来れないってさ」
こなた「へぇー、珍しいね、私達以外に誰か会う人でもいるのかな」
かがみ「さあね、それより早く座って」
こなた「って、かがみもうケーキなんか頼んじゃって、少なくとも私が来るまで待ってもらいたかったよ」
かがみ「どっちにしても遅刻よ、みゆきが来るならメール入れてくれれば待ってあげたわよ」
こなたとみゆきが席に着いた。二人はスィーツとコーヒーを頼んだ。こなたがいつのものように話を引っ張っていく。
これにつかさが加われば久しぶりに四人揃うはずだった。楽しい会話が弾んだがつかさが気になって会話に集中できない。
みゆき「かがみさん、先ほどからどうしたのですか、気分でも悪いのでしょうか?」
みゆきがかがみの異変に気づいた。
こなた「そうだよ、さっきから突っ込みが弱いよ、いつものかがみらしくない、気分が悪いなら早めに切り上げようか」
かがみ「ちがう、別に気分が悪いわけじゃない」
二人の目線がかがみに集中した。かがみは悩んだ。打ち明けるべきなのだろうか。
かがみ「こなた、みゆき、遺書なんて書いたことある?」
こなた・みゆき「遺書?」
こなたとみゆきは顔を見合わせて首を傾げた。
みゆき「遺書ですか、いきなり過ぎて話が見えませんが」
かがみは思い切って今までの事を話した。

こなた「ふふ、はは、わはははははー」
みゆき「ふふふ……」
二人は同時に笑い出した。
かがみ「二人とも笑うなんて、こっちはこれでも真剣なんだぞ」
こなた「はは、だってかがみ、朝っぱらからそんな話したらつかさじゃなくても同じ態度を取ると思うよ、早とちりだな〜」
笑いながら話すこなた。言われたとおりだ。確かにそうだったかもしれない。
かがみ「でも、遺書はどうなのよ、あれはどう説明すればいいのよ」
みゆき「遺書は私たちも書いていますよ」
かがみ「書いているって、こなたも書いたのか、どうして、書く理由が分からん」
驚き眼で二人を見るかがみ。みゆきはコーヒーを一口飲むとゆっくりと話し始めた。
みゆき「高校三年の時、私達のクラスでホームルームの時間を使って書きました、黒井先生の提案でしたね」
笑っていたこなたは笑いを止めた。
こなた「そうそう、卒業間近だったね、黒井先生が『自分が亡くなった時、大事な人に一言のこすもの』ってね、二十歳になる前に家族くらいには一言くらい残せって」
みゆき「そんな事をしたのはおそらく私達のクラスだけでしょう、今思えば大切な事だったのかもしれません」
かがみ「それじゃ、つかさの遺書も?」
こなた「その時書いたものだよ、つかさはいろいろ書きすぎるから肝心なかがみに一言書くのを忘れたんだよ」
かがみ「ふふ、ははは、そんな事だったの、はははは、なにマジになってたんだろ、私、はははは」
かがみは笑った。すっかりこれで謎が解けた。やっぱりつかさはつかさだった。帰ったら今朝のした事を謝れば良い。肩の荷が下りた気分だった。

764 :遺書  5 [saga]:2011/02/12(土) 09:26:48.68 ID:F7ebqHGf0
 
 すっかり話し込んで遅くなってしまった。喫茶店を出るとかがみ達は駅で別れた。
みゆき「待ってください」
別れたはずのみゆきがかがみを呼び止めた。こなたはもう電車に乗ってしまったようだ。かがみは振り向いた。
みゆき「さきほどは笑ってしまってすみませんでした」
かがみ「別に気にしなくていいわよ、それより黒井先生も粋なことをするわね」
みゆきの顔が曇った。かがみもすぐにそれに気づいた。
みゆき「実は、つかささんの事でお話が、気になる点がありまして」
かがみ「どうしたのよ」
みゆき「かがみさんのお話ですと今朝のつかささんはかがみさんの話を否定しませんでしたね、つかささんが妊娠していないにしても何かを隠していると思うのですが考えすぎでしょうか」
かがみ「考えすぎよ、つかさは隠し事が苦手、それは私が一番知っている、きっと私の言い方が悪かったから怒っただけ、それは私も認識しているから大丈夫よ、ちゃんと謝るわ」
そんなかがみの言葉にみゆきはかがみに微笑みかけた。
みゆき「やはり考え過ぎのようでした、私はかがみさん、つかささんが羨ましい、お互いに姉妹であり親友でもある、そんな関係を生まれた時から……」
かがみ「そんな大げさなもんじゃないわ、普通の姉妹よ、あっ!電車が着たみたい、またね」
手を上げて去ろうとするかがみ。
みゆき「その普通が一番ですね、また会いましょう」
みゆきも手を上げた。

 帰り道、かがみは考えていた。つかさの書いた遺書。読んだだけであれだけ動揺してしまうなんて。洗面所で戻していただけで妊娠を疑ってしまった。確かにこなたの言うように
早とちりだ。遺書なんて死期を予感した時に書くものとばかり思っていた。それがかがみをここまで動揺させたのだった。
自分が死ぬ時、大切な人に一言。大切な人。家族、親友、恋人。いったいどんな言葉をかけるのか。死に際に誰かに何かを言うような気力が残っているとは限らない。
だからこそ今のうちに遺書を書いておく。
(さすが一番の優等生みゆきと一番の劣等生こなたの担任だけのことはあるわね)
心の中でそう呟いた。そして改めてつかさと同じクラスになりたかった感情が今頃になって激しく湧いてきてしまった。もう過ぎてしまった事なのに。

765 :遺書  6 [saga]:2011/02/12(土) 09:28:16.26 ID:F7ebqHGf0

かがみ「ただいま」
家に帰るとみきが玄関まで来ていた。
みき「おかえり、遅かったわね、遅くなるときはメールしなさいって言ってるでしょ」
かがみ「あ、すっかり忘れてた」
みき「まったく、その様子だと夕食も要らないみたいね」
すこし怒り気味だった。しかし無事に帰ってきた安堵感が取って伺える。
かがみ「つかさは?」
みき「部屋に居るわよ」
かがみはつかさの部屋に向かった。そしてノックをする。
かがみ「入るわよ」
つかさはベッドを背もたれにして座っていた。
つかさ「入って良いって言ってないよ」
かがみを見るなりいきなりだった。思った通り怒っていた。かがみはつかさを刺激しないように話しかけた。
かがみ「今朝の発言は私の間違いだった、それを言いに来たのよ、ごめんなさい」
つかさ「お姉ちゃんって私を淫らな女って思ってたんだね」
つかさは透かさず言い返した。かがみは驚いた。しかもこんな皮肉を言われるとは思わなかった。
かがみ「そんなのは思っていないわ、ちょっと動揺しちゃって、本当よ」
つかさはかがみを睨み付けた。
つかさ「うそ」
かがみ「嘘じゃない、昨日、つかさの遺書をみてしまったから……はっ!!」
言うつもりは無かった。嘘と言われて弁解するつもりが思わず言ってしまった。つかさは立ち上がり机の引き出しから手紙を取り出した。
つかさ「見ちゃったんだ……」
かがみ「いや、その……」
言い訳が余計にかがみを苦しめる結果となった。
つかさ「泥棒みたいに黙って人の部屋に入って、勝手に読むなんて最低だよ」
かがみ「それは本を返してもらいたかったら入っただけよ、それに遺書も高校時代に黒井先生の提案で書いたものでしょ、隠す必要ないじゃない、こなたやみゆきは読んだんでしょ?」
つかさ「どうしてそれを」
かがみ「今日、こなたとみゆきから聞いたのよ、こなたとみゆきもつかさが来なくてがっかりしてたわよ」
つかさの顔が一瞬悲しい顔になったがすぐに怒った顔に戻った。
つかさ「そんなので誤魔化されないよ、お姉ちゃんのバカ!!」
(いいかげんにしろ!!)
つかさに向かって怒鳴ろうとした時だった。みゆきの言葉を思い出した。そう。何かおかしい。確かに目は本気になって怒っている。しかしつかさの言葉に感情が入っていない。
演技をしているようにも見える。わざとかがみを怒らせている感じがした。みゆきの言うように何かを隠しているのかもしれない。ここで問い質してもおそらく話さないだろう。
それならこの場は、つかさの挑発に乗っているように演技して様子を見るしかない。
かがみ「そんなに読まれたくなかったのか、そうだよね、私の事なんて何にも書いていない、つかさだって私をその程度にしか思ってないようね」
つかさの目が急に潤み始めた。つかさもその次に何かを言うつもりだったのか口がパクパクと動いているが言葉になっていない。そのうちにつかさの目からポロポロと涙が出てきた。
つかさ「……で…出て行って」
かがみ「なによ、つかさから言ってきたのよ」
つかさ「いいから、出てって言ってるでしょ!!」
両手を握り拳にして力いっぱいに怒鳴った。これは本気だ。かがみはつかさを本気に怒らせてしまったようだ。さすがこれ以上部屋にいるのはまずい。かがみは部屋を出た。
しかし危なかった。みゆきの助言がなければかがみは感情を露にしてつかさと喧嘩をしていたに違いない。いや、つかさはそれを望んでいたのかもしれない。
自分の部屋に戻ったかがみは考えた。つかさは何を隠しているのか。しかしいくら考えても答えは出なかった。

766 :遺書  7 [saga]:2011/02/12(土) 09:29:50.63 ID:F7ebqHGf0

 一夜明けた。
顔を洗いに洗面所に向かおうと部屋の扉を開けるとちょうどつかさも部屋から出てきた。
かがみ「おはようつかさ」
つかさは何事も無かったように通り過ぎようとした。
かがみ「おはよう、つかさ」
もう一度かがみは挨拶をした。つかさは立ち止まった。しかし何の返事もしない。
かがみ「昨日は悪かったわね、一昨日の件も合わせて謝るわ、それでも私を許さない?」
つかさはただ立っているだけだった。
かがみ「つかさを妊娠したと間違えたのが悪かったのか、黙って遺書を読んだのが悪かったのか、その遺書を貶したのが悪かったのか、その全てが許せないのか、
    それとも私を嫌いになったのか、私には分からない、せめて理由を聞かせて、私が嫌いになったと言うなら家を出てもいいと思ってる、丁度一人暮らしもいいと思っていた」
つかさはそのまま階段を下りようとした。かがみは煮え切らないつかさの態度に痺れを切らせた。
かがみ「つかさ、あんた私に何を隠そうとしているの」
つかさの体が大きくビクついた。そして振り向いてかがみを見た。
かがみ「やっぱり、隠している物が私にとって都合の悪いものでないのを祈るばかりね」
かがみはそのまま階段を下りた。つかさは下りて来ない。そこにいのりが居間から出てきた。
かがみ「おはよういのり姉さん」
いのり「おはよう、今日は遅いね、間に合うの?」
かがみ「今日の講義じゃ午後から」
いのり「それなら問題ないね、つかさは?」
つかさが階段を下りてきた。つかさはもう出かける準備ができている。無言のまま家を出てしまった。かがみはため息をついた。
いのり「つかさ……」
かがみ「いのり姉さん、つかさを見ていたけど」
いのりはつかさを何時になく見つめているように見えた。
いのり「いやね、昨日、かがみがつかさの部屋で何か言い合っていたけど喧嘩でもした?」
かがみ「喧嘩の方がまだましだわ、つかさが何を考えているのか分からん」
いのり「そう……」

767 :遺書  8 [saga]:2011/02/12(土) 09:31:13.58 ID:F7ebqHGf0
 一週間が過ぎた。

かがみ「つかさから誕生日プレゼントだって?」
こなた「かがみー、まさか昨日が私の誕生日だって忘れたの?」
かがみ「いや、忘れていたわけじゃない、だけど高校を卒業したら止めようって皆で約束したじゃない」
日曜日の午後、かがみはこなたと会っていた。久々にこなたの家を訪れていた。
こなた「そうだよね、私はもう十九歳、二ヶ月後にはかがみとつかさだって十九歳だよ、昨日つかさが突然私の家に来てさ、プレゼントだって置いていったんだよ」
かがみ「つかさに何か変わった所とかなかった?」
この一週間つかさはかがみを無視し続けていた。こなたを訪れたのはつかさについて聞くためだった。
こなた「変わったって、別に、つかさはつかさだよ、一時間くらい家でお話して帰ったよ」
かがみ「そう……」
こなたなら何か知っていそうな気がしたが期待はずれだった。土曜日はみゆきと会ったが結果は同じだった。
こなた「つかさは約束を二十歳だと勘違いしてたんじゃないの、なんでもこれが最後のプレゼントなんて言ってたし」
かがみ「つかさならあり得るわね」
こなた「あっ、ごめん、ちょっと待って」
こなたは慌てて居間を出て行った。数分すると戻ってきた。
こなた「ごめん、ごめん話の続きしようか」
かがみ「何か急ぎの用事でもあったのか?」
こなた「いや、ゆーちゃんが熱をだしちゃってね、様子を見に……」
かがみ「バカ!そう言うのは早く言いなさいよ、ごめん邪魔したわね、また今度にしましょ」
かがみは帰る準備をした。
こなた「悪いね、つかさにありがとうって言って、約束はしたけど、やっぱりプレゼントは貰うと嬉しいものだよね」
かがみ「そんな事言っても私はしないわよ」
こなた「ケチ!」

768 :遺書  9 [saga]:2011/02/12(土) 09:33:01.27 ID:F7ebqHGf0

 お昼を少し過ぎた時間、予定よりだいぶ早い帰宅になった。かがみが家に着くと話し声が聞こえた。庭の方角からだ。かがみは裏庭の方に向かった。
つかさといのりが庭で何かを話している。かがみは気づかれないように近づいた。
いのり「いつまで黙っているつもりなの、もう知らないのはかがみだけ、つかさが自分で話すって言うから今まで黙っていたけど、あれじゃ話す状態じゃない
    あのままだとかがみは本当に家をでてしまう」
かがみだけが知らない。どう言う事なのだろうか、かがみはつかさを見た。俯いて悲しい顔をしている。
いのり「かがみが帰ってきたら私から話す、これでいいよね」
つかさ「ダメ、言っちゃダメ、絶対に、言ったら一生いのりお姉ちゃんを恨むよ」
必死にいのりを止めている。つかさが隠している事実がこれで分かるかもしれない。かがみは建物の陰に隠れて更に近づいた。
いのり「黙ってても何れ分かってしまうよ、この前だって薬の副作用苦しそうだったじゃない」
つかさ「そうだね、それでお姉ちゃん、私が悪阻だと思ったんだね」
いのり「その薬が効かなかったら、もう……骨髄移植しか助かる道はない、そうなったらかがみしか頼れない、それなのに何故、自分からかがみに嫌われるような真似なんか」
つかさは薬を飲んでいる。そして骨髄移植。かがみはこれを必要とする病気を知っている。つかさは白血病だ。
つかさ「私は、お姉ちゃんに助けてもらう資格なんかないから」
いのり「また同じ事言って、資格って何?」
つかさは黙ってしまった。
いのり「私がかがみだったらどんな理由があってもつかさを助ける、かがみだって同じだよ」
その通りだ。かがみはいのりに思わず相槌をした。
つかさ「うんん、お姉ちゃんの気持ちは関係ないの、このまま私を嫌いになってくれた方がいいよ」
いのり「なぜ」
つかさ「私が死んでも悲しまなくてすむから」
かがみの目が潤んだ。この場に居られないくらいだった。あの程度でかがみがつかさを嫌いになるはずもない。それどころか余計につかさを亡くしたくない。死なせたくない。
いのり「ばか!!つかさは私の、いや、お父さん、お母さん、まつりの気持ちはどうでも良いって言うの、私たちはもう知ってしまった、もう忘れることすらできない」
いのりの目にも涙が溜まっている。つかさがそれに気づいた。
つかさ「ごめんなさい、ほんとうは皆もお姉ちゃんと同じようにするはずだったけど無理だった」
いのり「友達には話したの、よく遊びに来た子がいるでしょ」
つかさ「話してない、でも、遺書も書いたし、それに私の病気は不治の病じゃないんでしょ、だから、話さない」
いのりは何も話さず黙ってしまった。
つかさ「話が終わりなら夕食の買い物行って来るよ」
いのり「部屋で休んでなさない、私が行く」
つかさ「大丈夫だよ、今日はとっても調子がいいの」
つかさは家の中に入っていった。いのりもかがみもその場に立ったまま動かなかった。

769 :遺書  10 [saga]:2011/02/12(土) 09:35:23.77 ID:F7ebqHGf0

 表の玄関の扉が閉まる音が聞こえた。つかさが出かけたのが分かった。かがみは我に返り涙を拭った。そして表に回った。
かがみ「ただいま」
少し時間が経ってからいのりがやってきた。
いのり「おかえり、かがみ早いね、帰りは夜になるんじゃなかったの」
つかさは家にいない。聞くなら今しかないだろう。
かがみ「そう、そのはずだった、そのおかげかしら、裏庭でつかさといのり姉さんの会話を聞くことができた」
いのりは驚き一歩後退した。
いのり「ま、まさか、さっきの会話聞いてしまった?」
かがみ「聞いたわよ、それでもまだ解せない事がある、話して」
いのり「い、いや、それは……」
いのりは動揺を隠せなかった。
かがみ「安心して、つかさには私はまだ何も知らないように振舞うから、いのり姉さんだってつかさに一生恨まれたくないでしょ」
いのり「つかさが病気なんて夢であって欲しい……こんな事って、かがみ……ううぅ、かがみ」
いのりはまた泣き始めてしまった。かがみも泣きたかったがぐっと堪えた。
かがみ「早くしないとつかさが帰ってくるじゃない」
いのり「そうね」

 いのりは当時を思い出しながら話した。
いのり「発病したのは三ヶ月前、その日かがみは大学の行事で留守だった、食事中にいきなり倒れちゃってね、救急車で病院に搬送、その場で緊急入院のはずだった」
かがみ「はずだった?」
いのり「つかさの希望で自宅療養になった、なんでも皆と一緒に居たいって、薬で今の所落ち着いているけど悪化したら入院して骨髄移植を受けないと助からない」
かがみ「骨髄移植って血液型が合わないとできないんじゃ?」
いのり「そう、殆ど一致しないとできない、家族でも出来ない場合があるみたいね、柊家は調べたけど私を含めて全滅ね」
かがみ「……私、私が居るわ、双子なら問題ない、そうでしょ」
いのり「一卵性の双子ならね、あんたたちは二卵性、一緒に生まれただけで普通の姉妹と同じ、調べてみないと分からない」
かがみとつかさ、一緒に生まれただけで普通の姉妹と変わらない。しかもつかさを助けられないかもしれない。厳しい現実を突きつけられた。
かがみ「つかさの病気は分かった、もう一つ、つかさがあれだけ私を避けているのは病気だけの理由じゃないと思うけど知ってる?」
いのり「かがみが悲しまなくて良いって言っていたけど、それ以外知らない」
もしそれが理由ならこなたにやみゆき、その他の友人にも同じ事をするだろう。現にこなたは誕生プレゼントを貰っている。つかさがますます分からなくなった。
かがみ「……それじゃ私は喫茶店でも行って時間を潰してくるわ、夕食の時間ころ戻ってくる、これならつかさにも怪しまれない」
いのり「そこまでしなくても」
かがみ「つかさは必死になっている、私たちには理解できなくてもそれは伝わってくる、好きなようにさせてあげよう、それでつかさの気が済むなら」
いのりは頷いた。

 普段入ることの無いお店。そこでかがみは時間を潰した。いつもの喫茶店だとつかさが来る可能性があったからだ。
そこでコーヒーを一杯。一人なら本でも読んでいるがそんな気にはなれなかった。コーヒーを飲むたびにため息が出た。
『好きなように』とは言ったものの、つかさの考えを正そうと考えていた。できればつかさ自身の口から病気の事を話してもらいたい。どうすればいい。いろいろな案が浮かんでは消えた。
ふと、かがみにある考えが浮かんだ。これならうまくいきそうだ。早速今夜その考えを実行する決意をした。
それとは別につかさの病気を家族だけの秘密にすることは出来ない。しかしメールで教えるのはあまりにも薄情だ。かがみは明日の夕方、陸桜学園の校門前に来るように
かがみが知りうる全てのつかさの友達にメールをした。その時全てを話そう。

770 :遺書  11 [saga]:2011/02/12(土) 09:36:55.19 ID:F7ebqHGf0

 かがみが家に帰ると既に家族全員帰っていた。
かがみ「ただいま」
「「「おかえり」」」
つかさを除いた全員が答えた。かがみは居間の机の上にこれ見ようがしにパンフレットを置いた。
まつり「なにそれ……アパートの見取り図じゃない」
かがみ「ちょっと不動産屋さんに行って物件を見てきた」
皆は顔を見合わせて驚いている。かがみはチラっとつかさを見た。俯いていて表情は分からないがきっと驚いているに違いない。
みき「不動産ってかがみ、まさか」
かがみ「大学までの通学が結構時間がかかっちゃってね、大学の近くに引っ越すことにしたわ、大学にも寮があるけどそれでもいいかな」
いのり「あんた、それ本気で言ってるの?」
もちろん本気ではない。つかさにしている事が下らないと分かってもらうための演技だ。いのりの質問の意味をかがみだけが理解した。
かがみ「もちろん本気よ、一人暮らしもいいかなって、それに若干一名私をウザいと思ってる人がいるしねー」
かがみはいのりを見ながら話した。いのりは目で合図をした。かがみの意図を理解したようだ。そして全員つかさに注目した。つかさは重い口を開いた。
つかさ「やっと居なくなるんだ、嬉しいな」
つかさは立ち上がり居間を出ようとした。
ただお「つかさ待ちなさい、かがみに何か言うことがあるだろう」
父、ただおがつかさを止めた。かがみはつかさの言葉に期待した。
つかさ「何もないよ、かがみの顔を見なくて済むから引越しは早くしてね、アパート探しなら手伝ってあげるよ」
演技とは言え呼び捨てにされた。それに演技力も上がっているような気がした。もし演技だと知らなかったら本気にするところだった。
まつり「つかさどうしたのさ、かがみを止めないのか、言っちゃいなよ、言うなら今しかない」
珍しく本気になってつかさを説得するまつりだった。
つかさ「何も知らないで、か、かがみのばか、引越し先で死んじゃえばいいんだ!!」
つかさは家を飛び出すように出て行ってしまった。
かがみ「死にそうなのはつかさの方じゃない、ばか」
みき「かがみ、つかさの病気を知っているの?」
母、みきはかがみの呟きに驚いた様子だった。
いのり「私とつかさの会話を偶然聞いちゃってね」
みき「かがみの引越しの話は?」
かがみ「作り話よ、つかさがあそこまで意固地になるとは思わなかったわ」
ただお「それよりつかさが心配だ、迎えに行って来る」
まつり「私も行く、つかさが行く場所に心当たりがあるから」
ただおとまつりはつかさを探しに家を出た。


771 :遺書  12 [saga]:2011/02/12(土) 09:38:37.48 ID:F7ebqHGf0
みき「つかさが病気だって分かっているなら何故あんな嘘を、つかさは薬の影響でまともな考えが出来ない状態なの、たまに意味不明な事を言う、分かってあげて」
かがみ「意味不明だって、違う、つかさの行動は筋が通っている、だから知りたかった、私を避けている本当の理由を、あのまま死なれたら分からないじゃない、
    私が原因なら謝りたい、つかさが原因なら謝らせたい、このままじゃ別れられないよ、お母さん、私の気持ちは分からない?」
初めてかがみは自分の本音を口に出した。
みき・いのり「かがみ……」
かがみ「高校時代に書いたって言うつかさの遺書を見つけた、読んだけど私の名前は出てこなかった、私はつかさに何をしたんだろう、少なくとも嫌われるような
    事はしていないと思う、それとも私は知らない間につかさを傷つけていたのかしら、それすらも分からないなんて、私、つかさの姉失格ね」
いのり「まだつかさが死ぬって決まったわけじゃないよ、元気になったらきっと話してくれる、それを信じよう」
かがみ「話さないのはつかさの験担ぎって言いたいの?」
いのり「つかさはそうゆうのが好きじゃない、占いとか」
そう考えるのもいいか。かがみはそう思い始めた。
かがみ「もういい、つかさがそれを墓までもって行きたいのなら私はもう何も言わない、今は病気の回復だけを祈るわ」
みきがほっとため息をついた。もうこれ以上かがみとつかさの仲が悪化することはないだろう。
みき「それにしてもお父さん達遅いわね」

 もうあれから一時間を越えている。ただおとまつりは帰ってこない。
かがみ「ちょっといくらなんでも遅すぎる、私も探しに行ってくる、私もつかさが行く所に心当たりがあるから」
かがみは出かける支度をした。すると突然玄関の扉が開いた。ただおとまつりだった。
かがみ「おとうさん、まつり姉さん、つかさは?」
かがみ達は駆け寄った。まつりはただおの方を向いた。ただおの背中につかさが居た。ただおがつかさを背負ってきたようだ。
いのり「ちょっと、つかさ大丈夫なの?」
ただお「シー、眠っているだけだ、たぶん薬の影響だと思う、このまま部屋で寝かすよ」
ただおはそのまま二階に上がって行った。かがみ達は居間に戻った。
まつり「つかさは何処に居たと思う?」
かがみ「まさか神社隣の公園……」
まつり「当たり、あんた達が幼少の頃よく遊んだ公園、かがみもよく覚えているでしょ、つかさがあの公園に行ってかがみを思い出さないはずがない」
かがみ「つかさは私を嫌いになっていないって言いたいんでしょ、まつり姉さん、もうその話は終わったわ、私はもうつかさを追及しないことにしたから」
まつり「終わってなんかいない!!かがみは終わっても私は終わっていないんだよ」
まつりは叫んだ。
まつり「あの公園は私もかがみやつかさと遊んだ公園、私は二人がどこかに行かないように見張っててお母さんに言われてた、だけどよく公園を出て何処かに行こうとする
    子がいてね、何度も連れ戻しに行ったわよ、それがつかさ、思い出しちゃったじゃない」
みき「そういえばそんな事があったわね、小さい頃はつかさの方が活発に動き回っていた」
いのり「そういえばあの公園でつかさがブランコから落ちた時はビックリしたな、あれだけ派手に落ちたのにかすり傷だけで済んだ、怪我していたらお母さんに怒られるところだった」
ただおが二階から下りて来た。
ただお「あの公園で遊び疲れて眠ったつかさをよく家まで負ぶったものだ、さっきみたいにね」
あの公園は幼い頃のつかさの出来事がたくさんある。つかさも親や姉達の思い出が沢山あったのだろう。
ただお「つかさを見つけたとき、ブランコに乗っていた、こいでいるわけでもなく、ただ座っていた、帰ろうと言っても、もう少し居たいと言うだけだった」
かがみ「幼少の頃はあの公園でつかさと一緒に遊ばなかった、私は飯事的な遊びをしていた、つかさは元気に走り回っていたわ、あの公園でつかさに引っ張られて泣いた覚えがあるわね、
一緒に何かをするようになったのは小学生からよ、あの頃はつかさの方が姉だったかもしれない、何故今はあんなに大人しくなっちゃっただろうね」
そんな昔話をしているうちにみきが泣き始めてしまった。それに釣られるように次々に……。
暫く居間にすすり泣く声が響いていた。

772 :遺書  13 [saga]:2011/02/12(土) 09:40:09.26 ID:F7ebqHGf0
 次の日の夕方、かがみは陸桜学園校門の前に居た。もう就業時間は過ぎている。学校の門は閉じていた。ゆたか、みなみ、ひよりは在校生だけあってかがみよりも先に居た。
しばらく待つと聞きなれた車の音が聞こえる。そこにはこなた、みゆき、みさお、あやのが乗っていた。運転席からこなたが降りた。
こなた「やふー、かがみ昨日ぶりだね」
かがみ「車で来るなんて思わなかった、駐車はどうするつもりよ」
こなた「大丈夫、この辺りは駐車違反でお巡りさんは来ないから、ゆい姉さんの極秘情報だよ」
かがみ「成美さんも相変わらずね」
平日、しかも月曜日にも関わらずかがみがメールを送った人は全員来た。かがみは嬉しかった。しかし喜ぶために呼んだのではない。かがみは心の中で気合を入れた。
かがみ「皆、来てくれてありがとう、ゆたかちゃん、熱は大丈夫なの?」
ゆたか「あ、昨日は家に来ていたのに御迷惑をかけました、お姉ちゃんの看病のおかげでもうすっかり元気です」
こなたが辺りをきょろきょろと見回している。
こなた「ところでつかさは? かがみからの誘いだからあえて連絡取らなかったけど」
かがみはつかさを誘った。しかしつかさは無言のまま専門学校に行ってしまった。この時間はもうバスもない。来ないだろう。
かがみ「そのつかさについて話すわ、みんな覚悟を決めて」
かがみは一拍置いてから話した。
かがみ「つかさは病気なの、それもかなりの難病よ」
周りがざわめき始めた。しかしこなたとみゆきは目を閉じてじっと動かなかった。かがみはそのまま今までの経緯を話した。

773 :遺書  14 [saga]:2011/02/12(土) 09:41:54.12 ID:F7ebqHGf0

かがみ「これで私の話は終わりよ」
話が終わるとこなたがかがみに近づいてきた。かなり怒っているようだ。
こなた「今頃そんな話をして、遅い、遅いよかがみ、かがみはつかさの姉でしょ」
こなたはかがみに詰め寄った。
かがみ「それはつかさが黙っていたからよ、私は超能力者じゃないのよ、そこまで分かるはずもない」
こなた「つかさが妊娠しただって、それじゃつかさも怒るはずだよね」
かがみ「だから私は勘違いをしていて……ちょっと待って、遅いって言ったわよね、こなた、あんたつかさの病気を知っていたの?」
かがみはこなたの話し方で気が付いた。
みゆき「私も知っています、かがみさんならもう知っているものだと思いました、この前、駅で話した時にヒントを与えたのですが……あんな反応をされて失望しました」
かがみは慌ててみさおとあやの方を向いた。
みさお「わ、私は始めて聞いたぞ、つかさから少しもそんな感じは受けなかった」
あやの「そうね、私も始めて聞いた、今、ひーちゃんの具合はどうなの?」
続けてゆたか達の方を向いた。
ゆたか「私も知らなかったです、すみません」
みなみ「右に同じです、すみません」
ひより「面目ないっス」
改めてこなたとみゆきの方を向いた。
こなた「つかさはずっと待っていたんだ、かがみが気付くのを、なんで気づいてあげなかったんだよ、つかさが可愛そうだよ」
かがみ「こなた、みゆき、あんた達は何時どうやって知ったの?」
かがみは分からなかった。
こなた「一ヶ月前だよ、みゆきさんも同じ頃だと思う、つかさの行動を見てればすぐに分かる」
たったそれだけで分かるものなのか。かがみは愕然として動かなかった。
こなた「それにつかさに引越しの話をするなんて、かがみはバカだよ」
みゆき「つかささんの病気を知ってもかがみさんはつかささんを怒らせました、しかも故意に、それで何を知ろうというのですか、酷すぎます」
かがみ「そ、それは、つかさがあんな態度しているから、元にもどそうと思ったのよ、」
こんなに怒っているこなた、みゆきを見たのは初めてだった。
かがみ「みゆきがあの時ヒントをくれたのは確かに役にたった、あれがなければ私はつかさと本当の喧嘩をしてしまう所だった」
みゆき「喧嘩をするつもりだったのですか……病人に鞭を打つ行為に等しい、許せません」
かがみ「だ、だ、だから、わ、私は知らなかった」
こなた「知らないじゃないよ、知ろうとしなかったんだ」
かがみの目が潤んできた。必死に弁解をする。
かがみ「違う、う、うう、私だって……双子だからって……つかさの全てを……知らない、だってそうだろ、知らない所があるからこそ個々の人格として認めてるんだ」
みゆき「それは今回の話とは全く関係ありません」
かがみ「私にこれ以上何をさせたいのよ……」
とうとうかがみは座り込んでしまった。それでも執拗にこなたとみゆきはかがみを責めつづけた。目からは涙が出ている。もう言い返せない。
みなみが突然走り出しかがみとこなた達の間に割って入った。
みなみ「泉先輩、高良先輩、無知が罪なら私も責めて下さい、私もつかさ先輩が好きです、尊敬もしています、でも気付きませんでした」

774 :遺書  15 [saga]:2011/02/12(土) 09:43:31.62 ID:F7ebqHGf0
みゆき「みなみ……」
二人は責めるのを止めた。みなみはかがみの方を向きハンカチを渡した。
かがみはハンカチを受け取って目に当てた。とても話せる状態ではない。みなみは二人の前で話した。
みなみ「家族だから、一番親しいからこそ最悪な状況は考えられない」
こなた「つかさは自分からかがみに病気の話なんか出来ない、だからかがみが先に気づくしかないんだよ、かがみはつかさの優しさに甘えてただけなんだ」
みなみ「つかさ先輩も本来は自分で話さなければならない事実をかがみ先輩に話せなかった、つまりつかさ先輩はかがみ先輩の優しさに甘えている」
こなた「みなみちゃんはどっちの見方なんだよ」
みなみ「どちらの見方でもない」
感情的なこなたと冷静なみなみしばらく言い合いが続いた。感情的だったみゆきも次第に冷静さを取り戻した。
みゆき「泉さん、みなみ、もう止めましょう、私達はかがみさんを責める権利などありませんでした」
こなた「みゆきさん、どうして」
みゆき「私はつかささんに病気の話はしないように頼まれていました、泉さんもそうだったのではないですか」
こなたは黙って頷いた。
こなた「かがみには教えてあげたかった、でもつかさとの約束、天秤にはかれないよね、話せばつかさからなんて言われるか分からない、
    だから誕生プレゼントを貰ったのを話したんだよ」
みゆき「私達もつかささんに甘えていました、話すなと言われてただ黙っているなんて。教えても良かったのです、いいえ教えるべきでした、それを全て気付かないかがみさんの
    責任として押付けた……ごめんなさい」
みゆきは深々とかがみに頭を下げた。こなたはみゆきの話に心を打たれた。謝るしかなさそうだ。
こなた「ごめんなさい」
こなたもかがみに頭を下げた。みなみはかがみのもとを離れゆたか達の近くに戻った。
ゆたか「かがみさんがつかささんの病気に気付いたのは昨日でしたよね、たった一日で私達に教える決意をしたのですね、凄いと思います」
かがみ「私はただ教えたかっただけ、あとはそれぞれが考えてくれればいい」
かがみは立ち上がりづきハンカチを返した。
かがみ「みなみちゃんありがとう、こなたとみゆきにあそこまで対等に言い合うなんて、普段無口なのに凄いわ」
みなみはまた普段のみなみに戻ったようだ、俯いたまま何も言わなかった。
みさお「それぞれが考えればいいって言うけど、私にはそんな重い事実、どうしていいか分からない」
かがみ「そうね、私もどうしていいか分からない、だから皆に話したのかもしれない」
しばらく重い雰囲気が続いた。
ゆたか「つかさ先輩の真意は分からないけど、病気を隠したい、その気持ち私は分かるような気がするよ、病気になると皆の態度が変わっちゃうから、
    それが苦痛になっちゃう、それが嫌だったんだよ、だから普段どおり、いつものように接してあげるのが一番かもしれない」
かがみ「確かにそれを望んでいるのは確かのようね、日下部、そして皆、それでいいかしら」
皆は頷いた。
かがみ「ありがとう、それから私は帰ったらつかさに言う、病気の事を、普段のつかさに戻ってもらう」


775 :遺書  16 [saga]:2011/02/12(土) 09:45:12.72 ID:F7ebqHGf0
 もう外は日が落ちてすっかり暗くなった。街燈の明かりが灯った。
かがみ「今日はみんなありがとう、もうすぐ最終バスの時間ね、解散しましょう」
かがみの携帯電話が鳴った。皆はかがみに注目した。かがみは携帯電話を手に取った。まつりの名が示されている。かがみは悪い予感がした。
かがみ「もしもし……」
まつり『つかさが……つかさが』
声が震えている。かがみはどんな内容なのか分かった。でも確認しないといけない。
かがみ「姉さんしっかりして、ちゃんと話して!」
まつり『つかさが倒れた、専門学校から連絡があって……どうしようかがみ』
かがみ「病院はどこなの」
まつり『県内の〇〇総合病院……』
かがみ「私は直接病院に向かうからお父さん達にそう言って」
まつり『ばかだよ、なんで学校に行ったんだ』
かがみ「急ぐから一旦切るわよ」
かがみは携帯を切った。
かがみ「昨夜飛び出したせいかもしれない、つかさのやつ無理しやがって」
ふと周りを見るとかがみを囲むように皆が居た。
かがみ「みんな、帰ったんじゃないの?」
こなた「で、病院はどこなの」
かがみ「〇〇総合病院」
こなた「ここから直接行った方が早いね、かがみ送ってあげる、乗って」
こなたはポケットから車のキーを取り出した。
ゆたか「私達も行きたい……」
ゆたか達がこなたに駆け寄った。
こなた「っと言っても五人乗りだし、どうしようか」
みさお「それなら兄貴に頼んで車だしてもらうよ、柊達は先に行ってていいぞ」
みさおは携帯電話を取り出し電話をした。
かがみ「悪いわね、頼むわ」
こなたはかがみ、みゆき、ゆたか、みなみを乗せて先に出発した。

 病院に着くとかがみは駆け出した。受付を済ませ病室に向かう。病室の入り口に家族全員が居た。
かがみ「どうしたの、何故病室に入らない?」
かがみの脳裏に不安がよぎった。
ただお「感染してしまう可能性があるから一人しか入れない」
かがみはほっとした。
かがみ「容態はどうなの?」
みき「病気が進行していてもう薬では対処できないって、あとは骨髄移植しかないそうよ、それができなければあと一ヶ月持つかどうか……」
かがみ「誕生日まで間に合わない……そんな」
状況は最悪だった。それでもかがみにはしなければならない事がある。
かがみ「病室、誰も入らないなら私が入っていい?」
いのり「入ってもいいけど、まだ意識が戻っていない」
かがみ「構わない」

776 :遺書  17 [saga]:2011/02/12(土) 09:46:51.06 ID:F7ebqHGf0
 
 病室にはマスクと白衣の着用を義務つけられた。つかさはベッドで静かに寝ていた。安らかな寝顔だった。とても病気とは思えない。周りで看護士が忙しなく動いている。
かがみ「お邪魔します」
言葉をかけたが忙しいのか看護士は無反応だった。しばらくかがみは遠くからつかさの様子を見ていた。
時よりつかさの眉が動いた。ただ立っているだけなんて。
かがみ「すみません、手を、手を握ってもいいですか」
看護士「ぞうぞ」
看護士はかがみを見ず作業をしながら答えた。かがみはつかさに近寄り布団から少しはみ出した右手を両手で握った。しかしつかさは無反応だった。
しばらくすると看護士の作業が終わった。
看護士「邪魔しちゃったわね」
かがみにそう語りかけた。マスクをしているがその目は笑顔だった。看護士はそのまま病室を出て行った。病室にはかがみとつかさ二人きりになった。
つかさの手が少し熱く感じる。薬のせいなのか、病気のせいなのか分からない。かがみはつかさの手を強く握った。
つかさ「お姉ちゃん」
つかさの顔をみるとつかさはかがみの目を見ていた。
かがみ「呼び捨てで呼ばないのか、少し安心したわよ」
つかさは周りを見回した。ここがどこなのか分かったようだ。つかさはかがみを見ようとはしなかった。かがみはつかさの手を強く握った。
かがみ「つかさ、こうなるまで黙っているつもりだったのか」
つかさは何も話さない。
かがみ「昨日、裏庭でつかさといのり姉さんの話を聞いた、それでする気も無い引越しの話をした……それでもつかさは話してくれなかった」
つかさは目を閉じてしまった。
かがみ「話さなければ病気が治るとでも思ったのか、私が心配しなくて済むとでも思ったのか、そんな訳ないだろう、もし、つかさが倒れるまで病気を知らなかったら
    一生つかさを恨むところだった、早く帰る切欠をつくってくれたゆたかちゃんに礼をいいなさい」
裏庭でつかさが言った台詞をそのまま返した。つかさの手がかがみの手を強く握り返してきた。つかさはゆっくり目を開いた。
つかさ「お姉ちゃん……私、悪いことしちゃったかな」
かがみ「そうね、そのおかげで私はこなたとみゆきに散々叱られたわよ、何も言い返せなかった、妹の病気を知らない姉なんて……そうでしょ?」
つかさ「……ごめんさない」
つかさの目が潤み始めた。そして泣いた。それは今までのつかさの涙とは違っていた。
ちょっと叱られただけで泣き出すつかさ、すぐに挫けて泣き出すつかさ、しかし倒れるまでかがみに隠し続けてきた。
病気の辛さや苦しさをかがみには一切感じさせなかった。つかさは自分の信念をとおしたのだ。かがみはつかさに一人の大人としての強さを感じた。

777 :遺書  18 [saga]:2011/02/12(土) 09:48:24.40 ID:F7ebqHGf0
 
 もうこれでつかさはかがみに何も隠す理由はなくなったはず。かがみは聞きたかった。今なら聞けるかもしれない。いや、今しかない。
かがみ「私に黙っていた理由を聞かせて欲しい、嫌なら黙ったままでいいわ」
つかさは暫く目を閉じていた。
つかさ「遺書……私、遺書でお姉ちゃんに何も書けなかったから」
かがみ「それだけ、たったそれだけなのか」
つかさ「お姉ちゃんだけなんだよ、何も言葉が浮かばない、卒業してからも考えたけど何も書けないの……お姉ちゃんも言ったでしょ、遺書に何も書いてなかったって」
咄嗟に出た言葉だった。かがみを部屋から追い出した意味がやっと分かった。言うべきではなかった。
かがみ「あれはつかさが隠し事をしているから言ったのよ、本気で言った分けじゃない」
つかさ「でも何も書けなかった、私ってお姉ちゃんを何とも思ってないみたい」
かがみ「本当にそう思ってるのか、書ける、書けないは表現力の問題よ、つかさは文字では表現できない感情を私に持っている、それでいいじゃない」
つかさ「でも生きているうちに書きたかった、でももう時間がないみたいだね」
つかさはかがみが握っている手を引っ張って離してしまった。
かがみ「そうでもないわよ、私が居るじゃない、私の骨髄でも内臓でも心臓でも分けてあげる」
つかさ「こんな私でも助けてくれるの、私はお姉ちゃんに何もしてないよ」
これだけ一緒に過ごしてきてそんな言い方しかできないのか。
かがみ「こなたとみゆき、つかさが居なければ友達にはなれなかった、これでもつかさは私に何もしていないって言うの」
まだまだ言いたいことはだいっぱいあった。それは退院してから言おうとおもった。
つかさは寝返ってかがみに背を向けた。
つかさ「ありがとう……でも心臓だけは要らないよ、お姉ちゃん死んじゃうでしょ」
かがみ「そうだったわね……」
数分間沈黙が続いた。
つかさ「なんか眠くなっちゃった」
つかさはまた寝返りをしてかがみの方を向いた。
かがみ「それなら寝なさい、寝付くまで見ていてあげるから」
つかさ「寝たらもう二度と起きないような気がして……」
かがみ「そんな事はないわよ、安心しなさい」
そう言っている間につかさは眠りについてしまった。かがみはつかさの頭を優しく撫でた。そしてかがみはそっと部屋を出た。

 病室を出ると家族とこなた達が居た。皆、目から涙が出ていた。
かがみ「ちょっと、つかさと私の会話聞いていたんじゃないでしょうね」
皆は黙ったままだった。かがみは一回深呼吸をした。
かがみ「……お父さん、先生の所に連れて行って、私の骨髄が使えるかどうか調べて欲しい」
……
……
……
778 :遺書  19 [saga]:2011/02/12(土) 09:49:44.81 ID:F7ebqHGf0
 七月六日
かがみは自分の部屋に居た。あの日からだいぶ落ち着きを取り戻した。忙しかった。いや、それすらも忘れるように時が過ぎたように感じた。
みき「かがみ、つかさの部屋の片付けは終わったの?」
かがみ「まだ、夕方までにはやっておくわよ」
みき「早く済ませなさいね」
みきは忙しそうに一階に下りて行った。正直あまりしたくなかった。ふと時計をみた。時間は午前十時を過ぎていた。時間が中途半端だ、片付けをするのは午後からに決めた。
しかしまだ二時間の時間がある。このままボーとしているのも勿体無い。なにをするか考えた。
大学のレポートはもう既に終わっている。読書をする気分にもなれない。どこかに出かけるにも時間が足りない。まったくもって中途半端な時間だった。
それなら予定を早めて部屋の片付けでもするか。かがみは立ち上がったが直ぐに座った。
明日は二十歳の誕生日。つかさの遺書を思い出した。黒井先生は二十歳になる前に書くように言っていた。
あの遺書は高校時代につかさのクラスメイト全員が書いたと言った。こなたやみゆきも書いたと言っていた。
つかさの異常を見抜いたのは家族以外ではこなたとみゆきだけだった。きっと死を見つめ、考えたから見抜けたのかもしれない。
それならこの時間を使って自分も書いてみようと思った。かがみは引き出しから紙と筆記用具を取り出した。

三十分が過ぎた。
かがみは愕然とした。手紙は真っ白のままだった。何故。かがみは心を落ち着かせて再び書き始めた。
更に三十分が過ぎた
『お父さん、お母さん、いままで育ててくれてありがとう。先立つ親不孝を許してください』
これだけだった。これは酷い。つかさと同じ書き出しだ。これを読まれたらこなたにも笑われるレベルだった。
更に三十分が過ぎた。
頭が真っ白だった。自分が死んだ時、何を伝えたいのか、たったそれだけのはず。難しく考えるな。そう自分に言い聞かせた。
一番書きやすいのは誰かと考えた。つかさが真っ先に浮かんだ。でも今更つかさに……
それでも他の人に書けそうもない。つかさ宛に書くことにした。

つかさは忘れん棒で、おっちょこちょい、失敗ばかりして世話がかかった。ちょっと待て。本当に世話がかかったのか。それは幼少の頃だ。
小中高学校では忘れ物以外は自分で全てやっていた。料理や裁縫の類ならかがみよりはるかに上手だ。つかさならかがみが居なくても充分一人で暮らしていける。
でもその忘れ物が大きな失敗を招く場合もある。その辺りを注意しようか。そんな話より楽しい日々を綴った方がいいか。一番楽しかったのはいつだったか。
まるで湧き水のように浮かんでくる。
気が付くと全く筆が進んでいなかった。もうお昼近い時間だ。何故書けない。レポートや論文ならすぐに書けると言うのに。
その時、つかさの遺書にかがみの項目がなかったのを思い出した。
かがみ「書けないってこれの事だったのか!!」
思わず叫んだ。

779 :遺書  20 [saga]:2011/02/12(土) 09:51:07.34 ID:F7ebqHGf0

 好きとか嫌いではない、文字に表現出来なかったわけでもない、思い出や、想いが何重にも頭の中で回って書けなかった。それだけだった。
もっと早く書いていれば気付いたかもしれない。つかさにあんな態度を取らせなくても済んだ。
つかさは書けないからかがみに自分の病気を話さずに隠していた。そう自分で言っていた。病院のベッドで。
もし自分がつかさと同じ病気だったらどうしただろう。つかさと同じようにしただろうか。かがみは考えた。
きっとかがみは真っ先につかさに駆け寄り自分の病気を打ち明けるだろう。そして涙ながらに『死にたくない』と訴える。
つかさがその時何をする。たぶん何も出来ない。それは分かっている。かがみ自身も何も出来なかった。そう変わりはない。
でもつかさは一緒になって泣いてくれただろう。まるで自分の事のように思って。
それなら逆につかさがかがみに病気を打ち明けたらかがみは何をした。励ましの言葉をかける。でもそれが病人にとっては一番の苦痛なのだ。
かがみはそれに気が付かない。そうだった、みゆきに言われるまで気が付かなかった。つかさはただ耐えていた。何も言わずに。
かがみはいつの間にか泣いていた。紙に涙が落ちていく。目が涙でぼやけて焦点が定まらない。書けない。書けるわけがない。

 かがみはつかさ宛に遺書を書くのを止めた。
気を落ち着かせて考えた。一言でいい。もっと気楽に。語りかけるように。ふとある人物が頭の中に浮かんだ。
それなら……。

『こなたへ。相変わらずバカやっているのか。私が居なくなってもきっとこなたは変わらないわね。私と会う前ののうに、それでもいい。
自分のポリシーを変えないのは凄いことだと思う。こなたにもう突っ込みはできなくなるけどガンバレ!!』

今度はすんなりと書けた。こなたは親しいが会ってからまだ時間は短い。この調子かがみは遺書を書き続けた。
『つかさへ』
やはりつかさには書けない。それなら正直な気持ちだけ書くことにした。
『つかさへ。いままでありがとう』
たった一言。それがかがみの精一杯の気持ちだった。かがみは書き終えた遺書を封筒に入れた。時間を見るともう午後を越えていた。
(お昼を食べる前に終わらせるかな)
かがみは掃除道具を揃えるとつかさの部屋に入った。

780 :遺書  21 [saga]:2011/02/12(土) 09:52:27.60 ID:F7ebqHGf0

 つかさの部屋に入るのは追い出された時以来か。つかさの『出て行って』と叫ぶ姿がまるで昨日のように感じた。
つかさが入院してからだれも部屋には入っていない。湿った粉くさい空気が部屋に充満している。
かがみはカーテンを開けて窓を全開にした。初夏の眩しい日差しが部屋一杯に入ってきた。空気は入れ替わり気持ちがいい。
周りをみると。家具や床、照明器具にうっすらと埃が積もっている。一年分溜まった埃。かがみは布団を干し、床を磨き、掃除機をかけて掃除した。
つかさの机を掃除しようとした。机の上に封筒が置いてあった。掃除の手を止め手紙を取ってみるとこの前見た遺書だった。入院前に置いたのだろうか。
封筒の中を取り出した。この前見たのと同じ内容の手紙が入っていた。
(まさかつかさは死を予感していた?)
かがみは手紙を封筒に戻そうとした。手が止まった。最後の頁に書き加えられた形跡がある。かがみは最後の頁を見た。
『かがみお姉ちゃん、いままでありがとう』
まったく同じだった。そこにはかがみと同じ一言が書いてあった。紙には涙の落ちた跡もある。つかさも考えた挙句にこの一言にたどり着いた。
かがみ「ふふふ、ははは、」
かがみは大笑いをした。笑いと涙が止まらない。やっぱりかがみとつかさは双子の姉妹だ。かがみはそう強く思った。
まつり「何してるんだ、一人で大笑いして」
まつりが部屋の入り口に立っていた。かがみは封筒をそっと机の中にしまった。
かがみ「なんでもないわよ、ちょっと思い出し笑いよ」
まつり「つかさの部屋……もう一年になるのか、辛かっただろうね」
かがみ「姉さん、もうそれは終わったわよ」
まつり「そうだった、そうそう、明日の事なんだけど、明日は姉さんと電車で行くからかがみはお父さんとお母さんを車でお願いね」
かがみ「分かってるわよ、初めからの予定通り」
まつり「明日は友達も来るんでしょ、きっとつかさも喜ぶと思う」
かがみ「黒井先生も来るってこなたが言っていた」
まつり「黒井先生?……ああ、つかさが三年だった時の担任ね……明日は忙しくなるよ」
まつりは階段を下りて行った。かがみはさっきしまった封筒を元の机の上に置いた。そして自分部屋からかがみ自身が書いた遺書を持ってきてつかさ遺書の隣に置いた。
かがみ「つかさ、あんたは入院した時、『何もしていない』って言った、これだけの人が集まってくれるなんて、もう私は何も言わない、つかさ自身で感じ取りなさい」

明日はつかさの退院の日。つかさが自分の部屋に戻ってかがみの遺書を見たとき何を思い、何を語るのか。

つかさにはかがみと同じ血が流れている。かがみとつかさの血は全く同じ型だった。骨髄移植から一年余りの闘病の末、つかさは完全に病気を克服した。
偶然にも二十歳の誕生日が退院の日と重なった。明日はかがみとつかさ、そして、つかさを慕う者達にとって忘れられない記念日となる。





781 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/12(土) 09:54:34.12 ID:F7ebqHGf0
以上です。やっぱりつかさとかがみが一番書きやすい。 遺書と記念日、あまりにもかけ離れすぎて違和感たっぷりだったかな。
忘れられない記念日を連想したらこれになった。
782 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/12(土) 10:11:54.45 ID:F7ebqHGf0
遺書 は2番目のエントリーです。

ちなみにこの作品の感想はコンクール終了後にお願いします。
感想するほどのものではないかもしれませんが一応お願いします。
783 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/12(土) 11:02:42.49 ID:F7ebqHGf0
-----------------------------------------------------------------------------

ここまでまとめた

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784 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/12(土) 11:16:26.00 ID:F7ebqHGf0



☆☆☆☆☆☆第二十回コンクール開催のおしらせ☆☆☆☆☆

残すところ10日を切りました。
ドシドシ投下お願いします。

投稿期間:2月7日(月)〜 2月20日(日)24:00

最終日は言い換えると21日(月)の0:00時となります。ご注意下さい。



785 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/13(日) 18:07:42.68 ID:LvYBjCT70
コンクール主催者より。


うーん。
三連休があるから結構投稿くると思ったのだがまだ2作品しか投下されていません。みなさん苦戦しているようですね。
それだけに期待も高鳴ります。

前回コンクールだったか投下作品が複数同時に来て大変だった覚えがあります。あの時は別の人にまとめてもらって助かりました。
自分はあのような作業が苦手です。今回も土日に投下集中するのはほぼ確実となりました。
エントリー漏れだけは無いようにそれだけを祈ります。

それではがんばって下さい。
786 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/14(月) 12:36:06.70 ID:++oBBZjSO
−チョコをあなたに−


つかさ「ハッピーバレンタイン!今年のはちょっと変わったのを作ってみたんだ。気に入ってもらえるといいんだけど…」

かがみ「…つかさの手伝ってね、材料が余ったからちょっとわたしもね…他意はないわよ」

みゆき「最近お菓子作りを始めまして…ご迷惑でなければ、食べてみて下さい」

みさお「あやのが作ってるの見てたら面白そうだったからさ、あたしもやってみたんだ…まあ、形はアレだけどな…余計なモンいれてねえから、味はちゃんとチョコだと思うぜ」

あやの「え、なんでって?…んーと、みさちゃんがいつもお世話になってるから…かな?」

パティ「このバレンタインにチョコはやってみたかったデス!…アー…おミセでかったものというのはカンベンしてくだサイナ」

ゆたか「うん、みなみちゃんと一緒に作ってみたんだ…うまく出来たと思うんだけど…どうかな?」



こなた「…お父さん、わたし実は男の娘ってことはないかな?」
そうじろう「いきなり何を言い出すんだお前は…」
こなた「いや、一昔前のギャルゲみたいなイベントラッシュが、なんかもったいないなって思って」
そうじろう「…俺がいうのもなんだが、ちょっと戻ってきなさい」
787 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/14(月) 20:44:36.22 ID:ETy4zOKG0
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ここまでまとめた

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>>786
乙です。バレンタインネタは自分も書いてみようかなって思ってたけど先手を取られたので今回は止めておきます。
788 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 00:30:55.77 ID:h+TxPtL10
まとめサイトに修正報告ページを設置しました。
大きな悪戯が起きる前に対策しました。

無断で設置したので要らないと言うコメントが多ければ消します。

789 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 22:09:32.54 ID:h+TxPtL10

☆☆☆☆☆☆第二十回コンクール開催のおしらせ☆☆☆☆☆

残すところ5日となりました。
ドシドシ投下お願いします。

投稿期間:2月7日(月)〜 2月20日(日)24:00

最終日は言い換えると21日(月)の0:00時となります。ご注意下さい。

790 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/16(水) 01:56:59.11 ID:RqKuQ7jSO
なんかSSの足しにならないかと設定資料集見直してみたけど
改めてそうじろうの異様なスペックの高さとかなたのスペックの低さにびびるな
791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/16(水) 11:11:07.42 ID:j5oByt+w0
10分間書き込みがなければ投稿します。
792 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/16(水) 11:21:07.16 ID:j5oByt+w0
それでは投稿させていただきます。コンクール参加作品です。
タイトルは“こなたとつかさ、こなたとかがみ、こなたとみゆき”
3レスの予定です。
793 :こなたとつかさ、こなたとかがみ、こなたとみゆき@ :2011/02/16(水) 11:22:00.51 ID:j5oByt+w0
「泉さん、遅いですね。」
「どうしたのかな?」
「どうせ寝坊でもしたんでしょ。携帯も繋がらないし。」

 とある9月ごろ、かがみ、つかさ、みゆきはこなたと共に映画を見に行こうということになっていたのだが、こなたがなかなか来ず、かがみ達は映画館の前で待ちぼうけとなってしまった。ここまでならばいつものこと。しかし、この後の出来事はいつもとは少し違っていた。





                                 こなたとつかさ、こなたとかがみ、こなたとみゆき





「ごめ〜ん、みんな。」
「遅い!どんだけ待たせんのよ!」
「だからごめんってば。途中で買い物してたら遅くなっちゃって。」
「買い物?こなちゃん何買ったの?」

 よく見てみると、こなたの手にはラッピングされた袋が握られていた。

「うん、まぁね。と、いうわけでみゆきさん、これ、プレゼント。」
「え?」

 こなたは握っていたそれをみゆきに手渡していた。

「いや、何の脈絡もないわよ、こなた。」
「ゆきちゃん、誕生日は・・・たしか来月だったよね?」
「はい、そうですが・・・」

 みゆきは受け取りはしたものの、なぜ渡されたのかは分かっていなかった。

「まぁまぁ、気にしないで。開けてみてよ、みゆきさん。」
「あ、はい。」

 言われるままに袋を開けてみるとそこに入っていたのは、

「リボン・・・ですか?」
「うん!」

 にっこりと笑うこなたによく分からないといった感じの3人。すると、つかさが何かを思い出したように言った。

794 :こなたとつかさ、こなたとかがみ、こなたとみゆきA :2011/02/16(水) 11:22:47.24 ID:j5oByt+w0
「そういえばこなちゃん、5月くらい・・・だったかな?に家に来てプレゼントって言って渡してくれた後、授業あるからって言ってそのまま帰ちゃったことあったよね?プレゼント、防犯ブザーだったけど・・・」
「言われてみたら私もあったわね。私も5月の時に大学に押し掛けてきて渡していった後、バイトがあるからって言って帰ったけど。いきなりノート渡されても反応に困るんだけど・・・」

 三者三様よく分からない贈り物を受け取っていたという事実にクエスチョンマークを出すしかできなかった。

「こなた、あんた、何にもない日にプレゼント渡して何がしたいの?」
「何にもない日じゃないよ。私にとっては大切な日だから。」
「大切な日って何よ?」
「私がかがみやつかさやみゆきさんと出会った日。」

 言われてみれば、と3人は思った。つかさが外人さんに道を聞かれて困っていた所にハリ倒して助けたのが5月ごろ。その後、“うっかり”宿題を忘れてかがみに写させてもらったのがすぐ後だったから同じく5月ごろ。文化祭の準備の時高翌嶺の花だと思っていた委員長が実はいい人であると分かったのが9月ごろ。3人もどういうことか理解できた。だが、

「どうでもいいけど、なんで私にはノートでつかさは防犯ブザー、みゆきにはリボンなわけ?」
「ん?ああ、つかさはさ、なんかおっとりしてるから、なんかに巻き込まれちゃったりしちゃいそうじゃん。だから、気をつけてね、という意味を込めて。」
「わ、私ってそんなにおっとりしてる?」

 少々ガーンときたつかさがかがみとみゆきの方を見て聞いたが、2人とも視線をそらしていた。もはやそれが答えである。

「かがみには宿題見せてもらうのにノート借りることが多かったから、ノートを送ったわけ。」
「微妙どころかだいぶずれてるように思えるけど、まぁ、もらえるものはもらっておくわ。」
「みゆきさんは大人すぎるような感じがしてとっつきにくそうな人ってイメージしちゃうじゃん?」
「たしかに母にもバ・・・大人っぽいと言われたことがありますね。」

 ついでに“友達というより保護者みたい”とも言われた。

「だからさ、リボンとか付けてちょっとかわいらしい所見せればそんなイメージもなくなるんじゃないかなっと思って。」
「なるほどね。ちゃんと考えて送ってくれたことには感謝するけど、そもそもなんで出会った日にプレゼントを送ろうと思ったわけ?」
「まぁ、いままで迷惑をかけてきた迷惑料3年分」
「迷惑料ってあんた・・・」
「兼、これからかけるであろう迷惑にかかる迷惑料。」
「って、なんだ、その“これからかけるであろう迷惑にかかる迷惑料”って!」
「だって前にも言ったじゃん。その折にはよろしくお願いします、って。」
「おまえはほんっとに何かやらかす気満々か!?」

 キレかけ寸前(もうキレてる?)のかがみに、つかさとみゆきはオロオロしながら見ていた。

「えっと・・・あ、お、お姉ちゃん、もうすぐ映画、始まっちゃうよ。」
「そ、そうですよ、かがみさん、早くしないと席が無くなってしまいますよ。」
「そうだよ、かがみん、早くしないと。」
「あんたね・・・」
「ほら、早く早く。」
「助けない、なにがあってもぜっったい助けないからね!!」
「と言いつつ、しかたないわね、と言って助けてくれるかがみん萌え。」
「うるさい!だいたいあんたは・・・」

 口問答しながら歩き出した2人の後ろに付いて歩くつかさとみゆき。ふと、つかさとみゆきは視線を合わせて笑った。口ではうるさそうにしていても何かあった時、きっとかがみはこなたを助けるだろう。もちろん、自分達も。2人はお互いにそう考えているだろうと感じた。
 そして、仲の良さそうな4人組は映画館の中に入っていったのであった。
795 :こなたとつかさ、こなたとかがみ、こなたとみゆきB :2011/02/16(水) 11:23:23.18 ID:j5oByt+w0















(私にとってその日はとても大切な日。私のことを知っても離れないで一緒にいてくれる、そんな人たちと出会うことができた特別な日。かがみとつかさとみゆきさんに出会えた私の大切な記念日。こんな私と一緒にいてくれる感謝の思いとこれからも一緒にいてくれるであろう感謝の思いを込めて。ありがとう、これからもよろしくね。)

 〜おしまい〜
796 :あとがき :2011/02/16(水) 11:24:13.12 ID:j5oByt+w0
以上です。いかがでしたでしょうか?
なにやら無理やり記念日に結びつけてしまった感と文章構成に難がある感がします・・・。
ちなみに、作中の出会った月については想像で書いていますのであしからず。
797 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/16(水) 21:24:18.34 ID:2Ad5dMNo0
こなたとつかさ、こなたとかがみ、こなたとみゆき
は3番目のエントリーです。
798 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/16(水) 22:08:53.43 ID:2Ad5dMNo0
>>790
キャラのスペックは各々勝手に決めればいい。自ずと好きなキャラは高くなるはずです。
それが実際と違っていても、それ自体がSSを作る材料になるはずです。
799 :コンクール作品「ともだち記念日」 [saga]:2011/02/17(木) 20:09:08.63 ID:7jZue2hu0
コンクール作品の投下行きます。

節目のコンクールと言うことで、王道コンビのお話です。
800 :コンクール作品「ともだち記念日」 [saga]:2011/02/17(木) 20:09:51.08 ID:7jZue2hu0
 んーっと伸びをしてシャーペンを机の上に置く。時計を見ると、そろそろ夕ご飯が出来るころ。我ながらいい時間に終わらせることが出来たもんだと、自画自賛なんかしてみる。
 勉強用具を片付けていると、マナーモードにして机においていた携帯が震えた。開いてみると友人の泉こなたからのメールが一通届いていた。
『明日、何の日か覚えてる?』
 こなたにしては珍しい、なんの捻りもないシンプルなメール。わたしはその事に違和感を感じながらも、覚えていることを返信しておいた。
 そして、別の違和感に首を捻る。こんな風にこなたから確認のメールなんて初めてなんじゃないだろうか、と。
 少し考えて、あることに思い当たった。
「そっか…五年目なんだ」
 思わず口にしてしまう。節目だから、確認したくなったのだろうか。変に誤解を与えないように、シンプルな文面にしたのだろうか。それとも…自分から確認することが恥ずかしかったのだろうか…いや、あいつに限って恥ずかしいとかないわね…まあ、あの子の事だから、ほんの気まぐれなんだろうけど。
 机の前の壁にかけてあるコルクボードから、一枚の写真を外す。わたしとこなた、二人だけが写っている写真。一方的に抱きついてきているこなたと、それを離そうとしているわたし。でも、二人とも笑っている。なんだか嬉しそうに。
 写真の裏側には、日付と『ともだち記念日』という文字がこなたの酷い癖字で書いてある。
 その日は記念日。わたしとこなた、二人の記念日。

 忘れようにも忘れられない、わたし達の始まりの日。



― ともだち記念日 ―



 陵桜学園に無事入学でき、学校生活にも慣れてきたある日曜の事だった。
「ただいまー」
 何か飲み物を飲もうと台所に向かったわたしは、丁度帰って来た妹のつかさと鉢合わせた。
 いつもは休日にはお昼まで寝ているつかさが、珍しく朝から出かけていたのだ。
「おかえり、つかさ…あれ、その子は?見たことないけど、近所の小学生かしら?迷子か何かなの?」
 わたしはつかさの後ろに見慣れない、小学校高学年くらいの女の子が居るのを見て、そう聞いた。すると、つかさはなんだか困ったような顔をして頬をかいた。
「えっとね…昨日言ってた泉こなたさんだよ。わたしのクラスメイトの…」
 そして、何故か申し訳なさそうにそう言った。泉さん…思い出した。昨日なんかきっかけがあって友達になったとか、嬉しそうに言ってた人だ。
 わたしとつかさ、そして泉さんの間に何だか気まずい空気が流れる。
「…そ、そうなの…い、いらっしゃい」
 我ながら、何ともいえない間抜けな挨拶だ…っていうか謝罪しろよ、わたし。
 泉さんは何も言わずに軽く会釈をしてきた。わたしも何も言わず、そのまま台所に向かった。
「…今の、お姉さん?」
「そうだよ。かがみお姉ちゃん」
 後ろからそんな会話が聞こえてきた。うわー、第一印象最悪だわ…折角出来たつかさの友達だってのに…。


 台所でお茶を飲みながら、わたしはつかさの部屋がある辺りを見上げた。
 引っ込み思案で控えめで、多少人見知りもするつかさが友達になった次の日に家に招待するなんて、よっぽど気に入ったのか、泉さんが親しみやすい人物なのか。つかさが知り合う人に片っ端からつける『いい人』という評価は、今回は当たりだったようだ。
 で、その泉さんを初対面で小学生呼ばわりしたわたし…。
「…でも、アレはそう見えてもしょうがないわよね」
 いい訳じみたことを口にする。誰に向かって見栄を張ってるんだか。いいかげん、こういう性格直したいなあ…って言う事を何度思ったことやら。



801 :コンクール作品「ともだち記念日」 [saga]:2011/02/17(木) 20:11:37.65 ID:7jZue2hu0
 次の日。学校のお昼休みに、一緒にお弁当を食べようとわたしはつかさのクラスに向かった。
 小学校のころから一貫してつかさと同じクラスになれないのは、なにかしら変な力でも働いているんだろうか。なんて、くだらないことを考えながらつかさのいる教室に入った。
「こんにちは。柊さん」
 入った直後に、つかさのクラスの委員長である高良みゆきさんに声をかけられた。委員会で何度か顔を合わせて、それなりに見知った仲だ。
「こんにちは…っと、出るところだった?ごめんね」
 わたしは挨拶を返しながら、自分が教室の出口をふさいでることに気がつき、すぐに場所を開けた。高良さんは微笑みながら軽く頭を下げて、教室を出て行った。
 うーん…動作に嫌味が無いと言うか、物腰が上品と言うか、良いとこのお嬢様って噂が本当っぽく見えるわね。美人だしスタイルもいいし、少し分けて欲しいわ…。
 そんな事を考えながら、わたしは教室を横切りつかさの席に向かった。
 つかさの席にはすでに先客…泉さんが居た。
「つかさ、きたわよー」
「あ、お姉ちゃん」
 つかさに声をかけ、手近な席から椅子を拝借してくる。いつもはつかさの正面に座るんだけど、今日はそこに泉さんがいるから側面に椅子を置いて座った。
「こんにちは、泉さん」
 昨日のことを引きずらないように、なるべく自然に挨拶をする。
「…ども」
 泉さんはこっちを向いたまま軽く会釈をし、ぼそっとそう言った。う、うーん…警戒されてるのかしら…。
「こなちゃん、なんでそんなに緊張してるの?」
 昨日のことを忘れたのか、空気を読んでないのか、なんの躊躇も無く泉さんにそう聞くつかさ。ってか、もうあだ名で呼んでるのね。凄いぞつかさ…いや、その辺は今はどうでもいいわね。
「だって、先輩でしょ?…少しは緊張するよ」
「…先輩?わたしが?」
 泉さんの言葉に思わずそう聞いてしまう。泉さんは目をパチクリさせて、つかさの方を見た。
「え、だってつかさのお姉さんだって…」
 泉さんのその言葉に、わたしは彼女が誤解してることと、その原因を理解した。
「つかさ…あんた、わたし達が双子だって言い忘れてたでしょ?」
 わたしがそう言うと、つかさは微妙に視線をそらした。
「そ、そうだったっけ…」
「もー、そう言うことはちゃんと言ってよ。びっくりしちゃったよ」
 泉さんがつかさに向かって文句を言う。友達になって日が浅いとは思えない気さくさだ。この二人は、だいぶ馬があうみたいね。つかさもいい友達見つけたもんだ。
「ご、ごめんね、こなちゃん」
「うん、まあいいけど…ってことは同い年なんだよね?」
 わたしにそう聞いてきた泉さんに頷いて見せると、彼女は人懐っこい笑みを浮かべた。
「んじゃ、よろしく」
 そう言いながら手をこちらにさし伸ばしてくる。わたしは急にフレンドリーになった彼女の態度に驚きながら、それを軽く握った。うわ、小さいなあ。
「よ、よろしく…えっと、昨日はごめんね」
 手を離しながら昨日のことをわたしが謝ると、泉さんは少し首をかしげた。
「昨日?…ああ、あれ」
 そして、何か思いついたように手を叩いた。
「ああいうの、いつものことだからね。時節の挨拶みたいなもんだよ」
 良かった。怒ってないみたいだし、気にしてもいない様だ。でも、時節の挨拶にたとえるのはどうかと思う。



802 :コンクール作品「ともだち記念日」 [saga]:2011/02/17(木) 20:12:56.95 ID:7jZue2hu0
 泉さんと知り合って二週間ほどたった。
 つかさの友達だということで、わたしは少し距離を置いていたけど、泉さんと話すことは何故か心地よくて、次第に彼女のことをわたしも気に入り始めていた。

 そんなある日、わたしは一緒に帰ろうとつかさのクラスを訪れた。
 教室を覗き込んでみるとつかさの席にその姿は無く、前の席で帰り支度をしてるらしい泉さんの姿があった。
「こんにちは、泉さん。つかさ、いないみたいだけど、どうしたの?」
 泉さんに近づきそう声をかけると、彼女はわたしの方を見てため息をついた。
「先生に呼び出しくらってたよ。長くなるから先に帰ってって言われた」
「…なにしたの、あの子」
 わたしの呟きには答えずに、いずみさんは鞄のふたを閉めて立ち上がった。
「一緒に買い物に行こうって言ってたんだけどね、今日は止めとこうかな」
 そう言いながらため息をつく泉さん。ちょっと残念そうだ。ここは、姉として何かしておくべきかしらね。
「あ、それじゃわたしと帰る?なんだったら買い物にも付き合うし」
 わたしがそう言うと、泉さんは少し首をかしげた。
「いいの?つかさ待たなくて。用事があったんじゃ…」
「うん、まあ用事って言っても、今日委員会が無いから一緒に帰ろうかなって事だから…」
「ああ、そういうこと…」
 泉さんは少し考える仕草をした。もしかして悩んでる?泉さんと二人きりってのは初めてだしなー…それとも最初のアレ、やっぱり怒ってるのかしら。
「うん、じゃあ付き合ってもらっていいかな?」
 わたしが一人でヤキモキしてると、泉さんはあっさりとそう言った。やっぱり気にしてないみたい。うーん、わたし考えすぎなのかな…。
「オッケー、それじゃ行きましょうか」
 わたしがそう言うと、泉さんは頷いて教室の出口に向かって歩き出した。その後に続いて、わたしも歩き出す。
 それにしても、こうして見ると泉さんってホント小さいわね。なんて言うか、ちょっと可愛い…いやいや、何考えてるのわたし。



 泉さんに連れられてきたお店を、わたしはポカンと見上げていた。壁やら入口のドアやらに、アニメや漫画のポスターがたくさん張られている。
「えと…ここ、何のお店?」
 わたしが泉さんの方を見てそう聞くと、彼女は軽く微笑んだ。
「見ての通りの店だよ。さ、入ろっか」
 いや、見ての通りって言われても…わたしはさっさと店内に入っていく泉さんに置いていかれない様に、慌ててその後を追った。

 お店の中は、外側よりもさらに大変なことになっていた。アニメ関連の雑誌やDVD、多数の漫画やゲームに関連グッズっていうのかしら?そんなものが所狭しと並べてある。流れてる音楽も、いかにもそれっぽいアニメソングだ。
「…泉さんって、こういうとこに来る人だったのね」
 早速色々と物色を始めてる泉さんに、わたしはそう言った。
「うん、そうだよ」
 こっちを見もせずに、泉さんはあっさりと答えた。泉さんはアレか…いわゆるオタクという人らしい。しかも隠すつもりはまったく無いって感じだ。
 つかさは泉さんがオタクだということを知ってるのだろうか。知ってるとしたら、普段どういう会話をしてるんだろうか…何故かそんなことが気になった。

「…お、コレ探してたんだよねー」
 泉さんはあちらこちらをうろうろしながら、どことなく楽しそうに買うものを決めていく。わたしは、それについていくだけだ。こういうのにあまり興味がなくてよく分からないので、泉さんの買うものに何か言うこともできない。かと言って、泉さんから話を振られることも無いし、正直、一緒に買い物に来る意味があったんだろうかって考えてしまう。
 つかさとだったら違ったんだろうかって思ったけど、あの子もこういうのは分からないだろうし、変わらないだろうなって思い直した。
「これも入荷してたんだ。今日は大漁だねー」
 相変わらず、泉さんは楽しそうだ。さっきからわたしと何も喋ってないどころか、わたしが居ることすら忘れてるんじゃないかって思う。これなら一人で来ても変わらないんじゃないかな。
「…大丈夫?」
「え、な、何!?」
 急に泉さんに声をかけられ、驚いて上ずった声で返事をしてしまう。
「なんかボーっとしてたけど…」
「な、なんでもないわよ」
「そう?だったらいいんだけど…」
 一応気にはかけてくれてるのかしら…。
「あっと、こっちも見とかないとねー」
 と、思った矢先に違う場所に移動を始める泉さん。その後を慌てて追いながら、わたしは彼女が何を考えてるのかちょっと分からなくなってきていた。

803 :コンクール作品「ともだち記念日」 [saga]:2011/02/17(木) 20:14:55.22 ID:7jZue2hu0
「さてっと、アレはあるかなー」
 着いた先は…なんだろう。なんて言えばいいんだろう…ゲーム…だと思うんだけど…。
「あの…ここなに…?」
 思わず不安そうに聞いてしまうわたし。どこを見ても、なんていうか…アニメ調の女の子ばかり目に飛び込んでくるんだけど…。
 いくつかのパッケージを手にとって、タイトルを確認してるらしい泉さんは、それらを棚に戻してこちらを向いた。
「なにってギャルゲ。今ね、特集コーナーが設置されてて、掘り出し物が見つかりそうなんだよ」
 そして、事も無げにそう言った。おかしい。なんかおかしい…っていうか…。
「…こういうのって、女の子のするものなの…?」
 呟くようにわたしが言うと、泉さんは頬をかきながら首をかしげた。
「別にいいんじゃないの?しちゃいけないなんて法律無いし」
「いや、そりゃ無いけど…」
 無いんだけどなー…なんだろう…入っちゃいけない領域のような気がするんだけど…、
 わたしはなんだかめまいにも似た感覚を覚え、また色々とあさり始めた泉さんを置いてその場を離れてしまった。

 店内を少し歩いたところで、とある棚が目に留まり、わたしは足を止めた。
 どうやら書籍のコーナーらしいんだけど、前に新聞の広告で見て気になっていたものの、地元の本屋では見つからなかったタイトルが置いてあった。こういうお店って、アニメやらなんやらばかりだと思ってたけど、こういうのも置いてるのね。
 わたしはその本を手にとって、軽く読み始めた。うん、予想通りなかなか面白い。
「柊さんは、そう言うのに興味あるんだね」
「うわぁっ!?」
 後ろからいきなり声をかけられ、わたしはびっくりして本を押し込むように棚に突っ込んだ。
「な、ななななに?お、驚かさないでよ…」
 わたしは鼓動が収まらない胸を押さえながら、声をかけてきた泉さんに文句を言った。泉さんは何か困った風に頭をかいた。
「いやー、そこまで驚くとは思わなくて…あと、本はそんな乱暴に扱わない方がいいんじゃないかな」
「…泉さんが驚かすからでしょ」
 わたしは気持ちを落ち着かせようと、数回深呼吸をした。その間に泉さんは、わたしが見ていた本が入っている棚を眺めていた。
「柊さん、ラノベに興味あるんだね」
 なんとなく言った…と思う泉さんのその言葉に、収まりかけていた鼓動がまた速くなってきた。
「…と、特に…無いわよ」
 答える言葉が、何故かどもってしまう。どうしてわたしは、こんなに動揺してるんだろう。
「え、でもコレ読んでた時、楽しそうだったよ?」
 泉さんはわたしが戻した本を手に取り、こちらに差し出してきた。頭の中に『違う』って言葉が浮かぶ。
「…違うわ」
 浮かんだ言葉が、そのまま口をついて出る。この本に興味があったのは違わないはずなのに、一体何が違うって言うのよ。
「んー、別に隠さなくてもいいと思うんだけどなー」
 泉さんは、また困ったように頭をかいた。ようにというか、本当に困ってるんだろう。わたしのおかしな態度に。
「それに、柊さんがこういうのに興味あるってのに安心したよ」
 なんでだろう。泉さんの気楽そうな声が癇に障る。さっきまでそんなこと無かったのに。
「わたしばっかり楽しんでるのもアレだしね…友達なんだし」
 違う。わたしの中で言葉が大きくなる。そうか…本に興味がある事を違うって思ったんじゃない。同じに思われたくなかったんだ。
「…いつから…」
 わたしの口が…まるで別の『わたし』がいるみたいに、勝手に言葉を吐き出す。やめてよ…その先は言わないで。
「いつから、わたしとアンタが友達になったのよ!?」
 予想外に大きな声が出た。騒がしかった店内の音が聞こえなくなる。陽気な声のアニメソングが酷く耳障りに感じて、わたしは顔をしかめて泉さんに背を向けた。
「…そっか…」
 背中から泉さんの声が聞こえる。
「わたし…勘違いしてたのかな…」
 その声は、震えていたような気がした。



804 :コンクール作品「ともだち記念日」 [saga]:2011/02/17(木) 20:16:02.29 ID:7jZue2hu0
 自己嫌悪。
 家に帰る最中、わたしの中はその言葉で一杯だった。
 学校じゃ普通に話してたし、今日の買い物だって付き合うって言ったのわたしからだったじゃない。友達だって向こうが思うの当然じゃない。なのに…あんなことを…。
 オタクだと思われたくなかった。きっと、『わたし』はあの時そう思ってた。誰に向かってそんな見栄を張ってたんだろう。わたしの前に居た泉さん?それとも名前も知らない周りの人たち?
 くだらない…本気でそう思う。くだらない見栄のために、『わたし』は泉さんに理不尽な態度をとったんだ。
「…怒ってるかな…」
 ボソッと呟きが漏れる。最後の泉さんの声が震えていたのは、きっとわたしに対する怒りからだろう。泉さんからすれば、訳のわからないうちに怒鳴られて拒絶されたようなもんだから…そんな理不尽を突きつけられたら、わたしも怒るだろうな。
 ホント、最悪だ…せめてつかさとの仲だけはこじれないで欲しいと、わたしは心の底から思った。



「…ただいま」
 家の玄関をそっと開けながら、わたしは小さな声でそう言った。できれば誰にも合わずに部屋に戻りたかったからだ。
「おかえり、お姉ちゃん。遅かったんだね。どこか寄ってたの?」
 …よりにもよって、つかさと鉢合わせた。
「…ちょっとね」
 泉さんと買い物に行って、喧嘩別れみたいに置いてきた…とはとても言えずに、わたしは曖昧な答えを返してしまった。
「…もうすぐ、ご飯だよ」
 つかさは特に何も聞いてこないで、そう言って台所の方に歩いていった。
 わたしはその背中が見えなくなってから、自分の部屋に向かった。

 部屋に入ったわたしは、鞄を放り出してベッドにうつ伏せに寝転んだ。そして顔を枕に埋める。
 自己嫌悪の感情はちっとも消えてくれない。どころか、どんどん大きくなっていく。
 泉さんに学校で会ったら、わたしはどうすればいいんだろう。その場面を想像しただけで怖くなる。
 明日なんて来なければいいのに。そんな事を真剣に思ってしまう。



 わたしがどう思おうと、時間というものは止まらない。そんな当たり前なことにでも、今のわたしはため息をついてしまう。
 何時も通りに制服に着替え、何時も通りに朝食を食べる。何時もわたしより遅く起きてくるつかさは、今日は日直か何からしくすでに家を出ていた。
 台所においてある、つかさの作ったお弁当を取ることすらためらってしまう。
 今日、学校で泉さんはわたしの事をつかさにどう言うんだろうか。頭の中に浮かんだそんな考えに、わたしは顔をしかめた。
 こんな時にまで、わたしは体面を気にしてる…別の『わたし』が自分を保とうとしている。
 イヤになるな…こういうの。

 登校したわたしは、一日自分の教室で過ごすことにした。とりあえず、今日くらいは泉さんに会わずに間を置こうと思っていた。
 逃げているだけ…というのは分かっているのだけど。会ってもどうしていいかわからなくなるだけで、下手をするとまた別の『わたし』が余計なことを言うかもしれないから…いや、これも結局は逃げるための口実なのかもしれない。
 ダメだなあ…頭の中がもうグチャグチャだわ…。

805 :コンクール作品「ともだち記念日」 [saga]:2011/02/17(木) 20:17:17.24 ID:7jZue2hu0

 お昼休み。つかさのクラスに行く気にまったくならなかったわたしは、自分の机でお弁当を広げた。
「お、柊。今日はこっちか?一緒に食べようぜ」
 同じクラスで、中学時代からの友人である日下部みさおが、なんだか嬉しそうに手近な席から椅子を引いてきてわたしの机に自分のお弁当を広げた。
「…峰岸は?」
 わたしは、もう一人の友人峰岸あやのの事を、日下部に聞いた。二人は幼馴染でいつも一緒に行動している。お昼もほとんど二人で食べてるし、わたしがこちらの教室で食べるときは三人で食べているのに、今日はその姿が見えなかったからだ。
「なんか部活の顧問に呼ばれてった。お昼もそっちで食うってさ」
「ふーん…峰岸は、茶道部だったっけ?顧問ってたしか…」
 ど忘れしているのか名前が多い浮かばず、わたしは少し考え込んでしまった。
「天原センセ。保健室の」
 そしてわたしが思い出すより先に、日下部が口にしていた。記憶で日下部に負けるなんて、今のわたしは相当ダメになっているみたいだ。
「この前ちょっと話したけどさ、あやののこと筋がいいって褒めてくれてたんだよな」
 峰岸のことを、我がことのように嬉しそうに話す日下部。この二人は友達としてホントいい関係だと思う。
 …友達か…今のわたしには、なんかきつい言葉よね…。
「…柊?どうしたんだ?」
 日下部にそう声をかけられ、わたしは慌てて顔を上げた。
「あ、うん。なんでもないわ…」
 危ない。思わずうつむいてしまってたみたい。
「そうか?んじゃ、いいんだけど…」
 なにか感づかれなかっただろうか。日下部に限っては、そういう心配はまったくないと思うんだけど。
「ねえ、日下部」
 黙って食事を勧めようかと思ってたはずなのに、わたしは日下部に声をかけていた。日下部は返事の代わりに、お弁当に向いていた視線を、わたしの方にチラッと向けた。
「わたし達は、友達よね?」
 …我ながら、なんていう間抜けな質問なんだろう。
「何だ?いきなり…」
 日下部は、心底訳が分からないと言った感じで瞬きをしている。
 そりゃそうだろう。わたしだって、いきなりこんな質問をされたら目が点になる。じゃあ、何でこんなこと聞いたんだろう…もう自分でも訳がわからなかった。単純な日下部から、なにか明確な答えが欲しかったんだろうか。
「…ごめん。何でもないわ。忘れて」
 わたしはなるべく平淡な感じでそう言い、お弁当の残りを食べ始めた。日下部も首を何度も捻りながらも、食事を再開していた。なんか悪いことしちゃったかな…。

「ちょっと、あやのの様子見てくる」
 お弁当を食べ終えた日下部は、そう言って席を立った。
「…うん」
 わたしはそう短く答えた。こっちの方は、まだ少しお弁当が残っている。
「…あのな、柊」
 少し歩いたところで、日下部は振り向いてわたしを呼んだ。
「友達じゃなかったら、一緒に飯食おうなんて言わないぞ…あたしはな」
 そして日下部は、わたしが箸を止めるより早くそう言い切り、そのまま逃げるように教室を出て行った。わたしはその後姿を唖然と見送ることしか出来なかった。
 …やっぱり何か感づかれてたんだろうか。だとすれば、今のは日下部の精一杯の言葉と照れ隠しだったんだろうか。
 ありがとう。少し軽くなった心の中で日下部に礼を言ったわたしは、日下部が弁当箱を持ったまま教室を出て行ったことに気がつき、小声で笑った。
 そして、一つの考えに思い至った。

 ああ、そうか。こんなにつらいのは…泉さんと友達になりかたかったからなんだ。



806 :コンクール作品「ともだち記念日」 [saga]:2011/02/17(木) 20:17:52.73 ID:7jZue2hu0
 その日の放課後。わたしは委員会に出席するために会議室に向かっていた。
 正直気が乗らないと言うか、身が入らない状態なんだけど、委員長なんてものをやってる以上出ない訳にはいかない。こんなことなら引き受けるんじゃなかったわ…ってこんなことになるとか、その時に分かるはずないんだけど。
「こんにちは。柊さん」
 後ろから声をかけられ振り向くと、高良さんが微笑みながら軽く手を振っていた。
「こんにちは…高良さんも、今から?一緒に行く?」
「はい。よろしくお願いします」
 相変わらず丁寧な人よね…そんな他愛もないことを思いながら、わたしは歩く速度を落として高良さんと並んだ。
「…何かありましたか?」
 いきなりそう聞かれ、ドクンっと心臓が跳ね上がった。
「な、なに?急に…」
 どもってしまう。これじゃなにかあるって言ってるようなものだ。
「すいません。何か悩んでいるようなご様子でしたから…」
 一応、平静にしてるつもりだったんだけど…隠しきれてなかったみたいだ。
「…何に悩んでるように見える?」
 わたしは、話しを少しずつそらせないかと、高良さんを試すようにそう聞いた。
「そうですね…お友達と喧嘩をなされたとか」
 …何この人。それるどころか急接近なんだけど。
「…半分、正解ってとこかしら」
 わたしは素直にそう言った。なんか、高良さん相手には隠しきれない気がする。
「半分、ですか」
「そ、半分。わたしとあの子はまだ友達じゃなかったから…それに、喧嘩じゃなくてわたしが相手を一方的に怒らせただけよ」
 わたしがそう言うと、高良さんは人差し指を顎に当てて首をかしげた。
「それだと、半分どころか全然当たっていませんね」
「…あ」
 高良さんの言葉に、身体の力が抜けるような感覚を覚えた。完全に自爆だ。
「『まだ』ということは、お友達になるつもりだった…ということでしょうか?」
 続けて高良さんはそう聞いてきた。
「そう…かもしれないわね…自信ないけど」
 わたしはもう完全に諦めて、自分の事をぶちまけようとしていた。素直になりきれなくて、言葉を濁してるけど。
「…まだその方と、お友達になりたいとお考えですか?」
 それでも、次の質問には答えが浮かばなかった…まったく考えてもいなかったことだからだ。わたしは、どうしたいんだろう?
「もし、そうなら…まずはわたしと友達になりませんか?」
 そう言いながら、高良さんは左手をわたしの方へ差し出してきた。わたしは意味がわからず差し出された手と高良さんの顔を交互に見る。
 そして、少し考えて思いつく。この手を取るということ…それは、泉さんのことをまだ諦めていないと言うこと。まだ友達になりたいと思っているという意思表明。わたしの『どうしたい?』を解決するきっかけ。単純にして明快な意思表示だ。
 この人は…高良みゆきという人は、どこまでわたしの予想の先を行ってるんだろう。
 わたしはその手を…しっかりと握り締めた。あたたかくて頼りになりそうな感じがした。
「…ありがとうございます」
 高良さんは、何故か礼を言いながら微笑んだ。その意味を聞こうとしたけど、それは無粋だと感じ、わたしは微笑をかえすだけにした。たぶん、ぎこちないものになってるだろうけど。
「こんな形式ばった友達のなり方なんて初めてよ…高良さんはいつもこんなことしてるの?」
 握った手を離しながらわたしがそう聞くと、高良さんは首を横に振った。
「いいえ。わたしも初めてです」
 うーむ。なにか引っかかるんだけど…まあ、いいか。
「それと、友達になったのですから、わたしの事はお好きに呼んでいただいて結構ですよ」
「じゃあ、みゆきで」
 わたしはあまり考えずにそう答えた。つかさならなにかあだ名でも考えるんだろうけど、わたしはそういうの向いてないらしくろくなのを思いつかないからだ。
「わたしも好きに呼んでいいわよ」
「わかりました、柊さん」
 おい、そっちは変えないのかよ。思わず心の中で突っ込んでしまった。
「柊さんじゃ、つかさと被ってややこしいでしょ?…同じクラスだし、つかさ知ってるわよね?」
 わたしがそう言うと、高良さ…もといみゆきは少し顔をうつむかせた。
「わたしは、あの方には少し避けられているようでして…」
 …あー…なんかわかる気がする…。
「それ、たぶん怖がられてるのよ」
 わたしがそう言うと、みゆきは驚いたように目を見開いた。
「わ、わたし怖いですか?ど、どの辺りがでしょうか…?」
「いや、なんていうか…気後れしてるって言うのかな。話しかけにくい人だと思ってるのよ」
「そ、そうだったんですか…」
 うつむいてションボリするみゆき。こういう姿とか見せたら、つかさも親しみやすくなるんじゃないかな。
「…まあそれは、わたしの方でなんかできるか考えてみるわ。今日のお礼にね」
「お礼、ですか?」
 小首を傾げるみゆきに、わたしは微笑んで見せた。今度はちゃんとできてると思う。
「そ、お礼」
 決心するきっかけをくれたことの、ね。
「そうですか。お役に立てて幸いです」
 わたしの考えを察したのか、そう言って微笑むみゆき。ほんと、出切る人っているところにはいるものなのね。



807 :コンクール作品「ともだち記念日」 [saga]:2011/02/17(木) 20:18:47.70 ID:7jZue2hu0
 次の日。わたしは教室で頭を抱えていた。
 もう一度きっかけを作って、泉さんと友達になろうと決心したはいいけど、そのきっかけをどうしようかまったく思いつかないのだ。
 お昼も、結局自分の教室で食べてしまった。二日連続でこっちの教室だったことで、日下部に妹との仲を心配されたが、とりあえず無視。
 そんなことをしているうちに、あっという間に放課後になってしまった。


「…なにやってるの、わたし」
 ため息と独り言が同時に漏れる。きっかけなんか考えずに真正面から行くことも考えたが、とてもじゃないが実行に移せる度胸は無かった。
「柊ちゃん。高良さんって人が呼んでるよ」
 今日の委員会で使う資料をファイルにまとめていると、峰岸にそう言われた。ドアの方を見てみると、みゆきが小さく手招きをしている。
 …なにをしてるの、あの子。わたしはファイルを持ったまま立ち上がり、みゆきの方に向かった。
「どうしたの?こんなところに」
「すいません。少し大事な用がありまして…今日の委員会で使う資料はどちらでしょうか?」
 妙な事を聞いてくる。資料を忘れたんだろうかと思ったけど、周りから浮くくらいに委員の仕事を完璧にこなしていたみゆきが忘れ物とか信じがたい。それに、そもそもこの資料は各クラスごとに違うものだから、写すとか意味が無い。
「これだけど」
 みゆきの意図はわからないけど、とりあえずわたしは持っているファイルを指差して見せた。
「少し、拝見させてもらってよろしいですか?」
「いいけど…」
 とりあえず、みゆきにファイルを手渡してみたが、この子が何を考えているのかさっぱりわからない。
 みゆきは書類をチェックし、納得したように何度か頷いた。
「なるほど…では、これはわたしがお預かりしますので、柊さんはすぐにお帰りください」
「…へ?」
 今のわたしは、たぶん目が点になっている。いきなり何を言い出すんだこの子は。
「ですから、このままお帰りください…あ、ちゃんと校門から出てくださいね。バス停に行ったり裏門から出たりとかはダメですよ?」
 なんか帰り方まで指定された。
「え?いや、な…ええ?」
「では、わたしはこれで…頑張ってくださいね」
 わたしのファイルを持ったまま、早足で立ち去るみゆき。これはなんていうか、委員会サボり決定?
 …いや、そう言う問題じゃないような…てかどこから突っ込めば…いや、突っ込みの対象がもういないし…。
 わたしはしょうがなく、教室に鞄を取りに戻った。次からの委員会、出にくくなるなあ。



808 :コンクール作品「ともだち記念日」 [saga]:2011/02/17(木) 20:19:50.00 ID:7jZue2hu0
 わたしはみゆきに言われた通りに、校門から外に出た。我ながら律儀なことだと思うが、委員会をサボらせてまで何をさせようかを見てみようと言う気もあった。
 そして、少し歩いたところで立ち止まった。わたしの視線の先には…泉さんがいた。誰かを待ってるかのように、塀にもたれかかって周りを見回している。
 心臓が高鳴る。心の準備がなんにも出来てない。これは、偶然なの?
「…あ」
 泉さんがわたしに気がついた。なにか信じられないといった風に、目を見開いている。
「ホントにきた…凄いな委員長」
 泉さんの呟きに、わたしは耳を疑った。委員長?みゆきのこと?みゆきが何かしたっていうの?ってかそんなこと一言も言ってないのに、なんで相手が泉さんだってわかったの?ホントにあの子は人の心が読めるの?
 混乱するわたしの顔を、いつの間にか近づいてきていた泉さんが覗き込んできた。わたしは思わず一歩退いてしまう。
 その状態のまま、わたし達はしばらく固まっていた。通り過ぎていく他の生徒の目には、この状態は一体どう写ってるんだろう。いや、そんなこと気にしてる場合じゃない。なにか…何か言わないと。
「…帰ろっか?」
 わたしが何を言おうか迷っていると、泉さんはそう呟いて歩き出した。わたしはその背を慌てて追う羽目になった。うう…なんかかっこ悪い。


 しばらくの間、わたしは泉さんの背中を見ながら後ろを付いて歩いていた。何度か声をかけようとしたけど、どうしても口に出せない。彼女は、今何を考えてるんだろう。どういう表情をしているんだろう。
 彼女から声をかけてくれれば、まだ話せるかもしれないのに…いや、それはダメだ。わたしからじゃないとダメだ。そう決めたはずでしょ。もう一度きっかけを作るって。泉さんと友達になるって。今がそのときじゃないの。
 でも…と、わたしのなかを暗い影がよぎる。もし…もしここで拒絶されたら?わたしの言う事を、虫のいい話だと切り捨てられたら?…そんな明確に傷つくような事になるなら、このまま黙って別れてしまえば良いのでは?何も得られないけど何も失わない、『何も無い関係』に戻れるのでは?
 …黙ってなさい!…わたしは心の中で、いらない事を囁く『わたし』を力ずくでねじ伏せた。
 何が『何も無い関係』よ!泉さんを傷つけたのはわたしじゃない!それを無かったことにして、何も無いなんてそんな馬鹿な話があるものか!…ここは『わたし』が折れるところでしょ!
「い…泉さん!」
 声、裏返った。わたしかっこ悪い。でも、今はそんなの関係ない。わたしの声に泉さんが振り返る。言うんだ。わたしの思ってることを、ちゃんと。
「お、一昨日は…その…ごめんなさい…わたし、あんな店に行くの初めてで、なんか混乱してて…」
 違う。そんな言い訳なんかどうでもいい。
「…わたし、同じに思われるのがイヤだった…オタクって思われるのがイヤで…それで、あんなこと…」
 言った。というか言ってしまった、というか…泉さんは、何度か瞬きをした後…笑った。ニッコリと。
「そっか…そんなところだと思ってたよ」
 そして軽い口調でそう言った。まるでその事が何でもないことかのように。
「柊さん、いい人だね。そういうこと謝られたの、初めてだよ」
 嬉しそうにそう言いながら、泉さんはわたしの目の前まで近づいてきた。こうして並んでみると、ホント小さい。小さいのに…なんでか、大きく感じる。
「…怒ってないの?」
 思わず、そんな事を聞いてしまった。目の前の泉さんが、まったく変わらずに見えたから。
「怒る?…あー…それは、ないない」
 そう言いながら、泉さんは目の前で手を振ってみせる。言動も仕草もいちいち軽い。
「びっくりはしたけど、怒ってないよ…むしろ、柊さんが怒ってないことに驚いたくらいだよ」
 それこそ無いわ。あんな事しておいて怒るとか、ただの逆ギレじゃない。
「っていうか、ああいうところ連れてくの、いきなり過ぎたって感じだったかなあって、ちと反省してたんだ…柊さんの趣味とかわからなかったし、何か興味あるものに反応してくれたらなあって思ったんだけど…」
 そう言う意図があったんだ。それをわたしは…あれ?っていうか、それって泉さんの方もわたしを気にかけていたってこと?
「わたしの趣味だなんて…つかさにでも聞けばよかったじゃない」
 わたしは苦笑しながら、泉さんにそう言った。うん、なんだかいい調子に話せるようになったみたい。わたしの言葉に泉さんは、ポンッと手を打った。
「その手があった。全然気づかなかった」
「気づきなさいよ、それくらい!」
 やっちゃった。調子出すぎだわたし。なに全力で突っ込んでるの。
 しばらくの沈黙。わたし達はお互い顔を見合わせ…そして、二人同時に大声で笑い出した。

 うん。やっぱりこの子と話すのは、気持ちいいな。




809 :コンクール作品「ともだち記念日」 [saga]:2011/02/17(木) 20:20:48.06 ID:7jZue2hu0
 あの後、なぜかデジカメを持っていたこなたに、無理矢理写真を撮られたんだっけ。
 なんか、懐かしいな。思い出したあの頃に、苦笑いみたいなのがこみ上げてくる。
 わたしは椅子の背もたれに身体を預け、写真を天井にかざした。裏に書いてある文字が透けて見える。
 この記念日も、こなたが無理矢理作ったものだ。この文字に気がついた時の、こなたの意地悪そうな笑顔は今でも思い出せる。
 恥ずかしいって言ったのに、全然聞かないんだもんなあ…律儀に毎年付き合ってるわたしが言っても、説得力無いけど。
 結局あれは、わたしが一人で思い悩んでただけだったのかも。こなたは最初からずっと…あんなことを言われた後も…わたしを友達と見てくれてて、軽い喧嘩のようなものだと思っていたんだろうな。だから、あんなにもあっさりとしてたんだろう。記念日は、わたしに合わせてくれたのかな…そう思うと、少し嬉しくなるから、我ながら現金なものだ。
 それでも、わたしは苦心してたのにって考えると、なんか悔しい気分になる。
「お姉ちゃん。ご飯できたよ」
「うわぁっ!?」
 ノックもせずに入ってきたつかさに驚いて、わたしはバランスを崩して椅子ごと真後ろに倒れた。
「…お、お姉ちゃん。大丈夫?」
 つかさが恐る恐る聞いてくる。わたしは冷静に立ち上がり倒れていた椅子を立てて、写真をコルクボードに戻した。
「ノックしなさい」
 そして、つかさにそう言い放つ。
「え、でもいつもしてない…」
「いいから、しなさい」
 炸裂する理不尽な姉。でも、いまのはつかさが悪い。きっとそう。
「うう…なんか納得いかない…」
 ここですんなり頷かないあたり、つかさも成長したものだと思う。
「そう言えばお姉ちゃん。今見てた写真…」
「ご飯できたんでしょ?行くわよ」
 何か言おうとしてたのを遮って、わたしはつかさを部屋から押し出した。とてもじゃないけど、つかさにあの写真のことは言えない。言えば家族や友人にあっという間に広がりそうだから。


810 :コンクール作品「ともだち記念日」 [saga]:2011/02/17(木) 20:21:44.06 ID:7jZue2hu0
 わたしとつかさは黙々と食事を取っている。今日は家族がみんな出かけていて、食卓に居るのはわたしとつかさだけだ。
 こういうときは迂闊に話さない方がいい。なにからボロが出るか分からないからだ。
「さっきの写真、こなちゃんとのともだち記念日のだよね」
 ブフゥッと音を立てて、わたしの口からお米が噴出した。
「…お姉ちゃん、汚いよ」
「…ゴホッ、ケホッ…あ、あんたが…驚かす…っていうか、なんで知って…」
 むせながらそう聞くわたしに、つかさはニッコリと笑いかけてきた。
「こなちゃんから聞いたんだよ」
 …誰にも話すなって言ったのに…よりにもよってつかさに話すか…。
「…あの時ね。お姉ちゃんが帰ってくる前に、こなちゃんから電話があったんだよ」
 わたしは、つかさが何のことを言ってるのかわからなかった。
「すごくね、落ち込んでたんだ。『お姉さん、怒らせちゃったみたい』って泣きそうな声だった」
 そこまで聞いて、わたしはようやくこなたとアニメショップに行った、あの日のことだと気がついた。
「それ…ホントなの?」
 思わずそう聞いてしまう。つかさが、こんな事で嘘なんかつくはずないのに。
「うん、ホントだよ。次の日もね、学校でこなちゃん元気なかったんだ。わたしは、お姉ちゃんはきっと怒ってなんかないって言ったんだけど…」
 こなたも、悩んでいた。わたしとの事を、深刻に考えていた。あの時の軽い態度は、悩みぬいた末に辿り着いた結論だったんだ。
 あの時、同じ思いをしていた。褒められたことではないけど、少し心が和らぐ気がした。
 そしてわたしは、もう一つわからなかった事の答えが見えた気がした。
「…ねえ、つかさ。そのこと、みゆきは知ってるの?」
「ゆきちゃん?…どうだろ…同じクラスだから、こなちゃんの様子は見てたと思うけど…」
 もしそうだとしたら、放課後に会ったわたしの様子と照らし合わせて、こなたの友達であるつかさ、そしてその姉であるわたし、と繋げたのだろう。
 人の心を読んだのでもなんでもない、普通に考えてでた結論だったんだ。
 なんとも単純な答えに、笑い出しそうになる。こんな事を五年も経ってから…それもつかさの口から聞いて知るなんて。
 …ん、ちょっとまって…五年も経って?つかさの口から?
「つかさ…間違ってたらゴメンだけど。その事、こなたから口止めされてないの?絶対にわたしに話すなって」
 話は終わったとばかりに、煮っ転がしを口に運ぼうとしていたつかさの動きがビシッと止まった。
「え…えっと…あはは…」
 誤魔化すように笑いながら頭をかくつかさ。いや、あははじゃないっての。なんでこう、口止めされてることをポンポン喋るのこの子は…っていうか、口止めされてた事自体を忘れてたんじゃ…。
「こ、こなちゃんには、わたしが話しちゃったってこと言わないでね…?」
「いやです。ばらします」
 懇願してくるつかさに、冷淡に言い放つ。
「ま、待ってお姉ちゃん。こ、こなちゃんに怒られるよー」
「まちません。それと、これをネタにあしたこなたをからかいます」
「ええー!?そんなのダメだよー…っていうかその口調すごく怖いよ、お姉ちゃん…」
 自業自得、というやつだ。これで少しは口が堅くなってくれるといいんだけど…無理だろうなあ。
 まあでも、これで明日の過ごし方はなんとなく決まった気がする。
 からかうのはいいけど、その後、別のネタでからかわれると思うけど、それもまたいいかもしれない。

 なにせ明日は、二人の記念日。
 わたし達だけにしか、意味の無い記念日。
 その日がどういう日になるかは、二人の気分しだいなのだから。



― おわり ―
811 :コンクール作品「ともだち記念日」 [saga]:2011/02/17(木) 20:22:35.40 ID:7jZue2hu0
以上です。

友情を書こうとしても、百合っぽくなるのはもはや仕様。
812 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/17(木) 22:36:37.94 ID:9PYa9QTA0
>>811
エントリーしようとしましたが、容量オーバーで分割しなければなりません。
ページの切れ目を指定して下さい。
返答がない場合は>>805で分割させて頂きます。
813 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/17(木) 22:43:52.39 ID:b7G4IKmSO
携帯からなんでID変わってますが>>811です。

出来れば>>806>>807の間で区切っていただければと。
日にちが変わってきりがいいので。

っていうか、そんな長くなってるとは思わなかった。
814 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/17(木) 23:02:22.72 ID:e4jb1s/zo
アットウィキモードだと容量制限あるってこと?
だとしたらそれ何キロバイト?
815 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/17(木) 23:11:00.30 ID:9PYa9QTA0
ともだち記念日
は4番目のエントリーです。

>>813
アットウィキモード はそんなに容量が多くありません。文字の密度にもよりますが7〜8レスくらいでオーバーします。
816 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/17(木) 23:19:48.05 ID:9PYa9QTA0
アットウィキモードは1ページあたり50Kバイトだそうです。
ただしPCに表示されてる容量と一致しないそうです(増減あり)
コメントフォームとか設置できるから少なめだね。



ちなみにワープロモードは200kバイト
817 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/17(木) 23:20:21.34 ID:9PYa9QTA0
アットウィキモードは1ページあたり50Kバイトだそうです。
ただしPCに表示されてる容量と一致しないそうです(増減あり)
コメントフォームとか設置できるから少なめだね。



ちなみにワープロモードは200kバイト
818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/17(木) 23:21:35.58 ID:9PYa9QTA0
>>817 ミスです。
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/17(木) 23:31:04.58 ID:b7G4IKmSO
すいません。
ともだち記念日の1ページ目の行間が詰められてるのは、こうしないと入らなかったからでしょうか?
820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/17(木) 23:41:59.03 ID:9PYa9QTA0
>>819
1ページ目の行間は2ページ目と合わせるためにあえて詰めました。
これは『遺書』と同じです。

モードが違うので同じ書体でも行間が違うのです。
ページを変えて読者に違和感を与えないためにしたのですがご希望があれば元に戻します。
821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/17(木) 23:47:42.19 ID:b7G4IKmSO
出来れば原文のままでお願いします。

携帯などで見ると行間が完全に詰まりきって、かなり見にくくなってますので。
822 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/17(木) 23:54:20.65 ID:9PYa9QTA0
>>821
変更しました確認して下さい。
823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/18(金) 01:46:16.48 ID:qrnniBiz0
夜分遅くに申し訳ないのですが、作品を一つ投稿させていただきます。
コンクール参加作品です。
824 :記念日カレンダー [saga]:2011/02/18(金) 01:52:23.16 ID:qrnniBiz0


 インターネットで何気なくネットサーフィン。お気に入りのページを開いて、御用達の小説創作掲示板に移動する。こういうのを見ていると「かがみはやっぱりこっち側の人間じゃん〜♪」とあいつにまた囃されそうだが、断じてそんなつもりはない。……と、自分に言い訳をしながら表示されたページを見ると、トップページに何やら見慣れない文章が記入されていた。
「第20回短編小説コンクール開催!テーマは……『記念日』、か……」
 なんとなしに声に出して読んだ後、意味もなく肺に溜まり込んでいた気分の悪い空気を吐き出す。モニターに映し出されている『記念日』という3文字をもう2、3回ほど反芻したあと、私はやっぱりモニターから顔を離した。




 記念日は嫌いだ。
 1年間は365日。そのうちの1日を記念日にしたとしたら、それを迎えることができるのは365回に1回だ。人間の寿命はおおよそ80年だから、だいたい30000回に80回しか迎えることができない。


 365分の1。
 約30000分の80。
 百分率にしたら、1%なんて簡単に切ってしまう。


 一生のうちで1%にも満たないその日を待ち続けるのはあまりに虚しい。たった1日を迎えるためだけに、長い長い日常を過ごしていくことになってしまう。持って生まれることが義務となる誕生日でさえそうなのに、そんな日をわざわざ自分達で作ろうだなんて、どうして思うのだろうか?




 すっかり興ざめした私はモニターの電源を乱雑に落とし、ベッドに飛びこんで枕元の文庫本に手を伸ばす。2、3ページほどめくっていき、段々と物語に意識が入り込んで来た所に、


「お姉ちゃん、ちょっといいかな」


 図ったかのように、つかさが私の部屋のドアを開けてきた。






【 記念日カレンダー 】





825 :記念日カレンダー(2) [saga]:2011/02/18(金) 01:54:59.47 ID:qrnniBiz0
「お姉ちゃん今日なんかいいことあったかな〜って……」
 気だるそうに私のところに来た目的を聞くと、つかさは対照的に機嫌良く答える。いいところに入ってきてそんなことかと一瞬考えたものの、何も知らないで入ってきたつかさを悪く言う筋合いもなかったので、すぐにそんな気の悪い感情は吹き飛んだ。吹き飛んだのだが、
「そんなこと聞いてどうするのよ?」
 つかさの質問の意図を私は全くといっていいほど読み取ることができていない。
「えーと……えへへ、とにかく今日なんかいいことなかった?」
 しかしつかさは意味ありげに笑顔になっただけで、私の質問には答えてくれなかった。確かに、質問の内容は理由に関係することではないのだけれど、やはり急にそんなことを聞かれるとどうしても意図が気になってしまう。なんとかして問いただしたかったのだが、1度質問をしてつかさが応えてくれなかったときは、どうしたって答えてくれないときである。その事を私は知っていたので、すんなり諦めることにした。

「いいことって言ったって……」
 だが"いいこと"なんて言うが、今日のように普段通りの生活をしている中でいきなり聞かれても、おいそれと答えられるものではない。朝起きて、普通に学校に行って、あいつなんかと話して、帰ってきて、適当に過ごして。確かに幸せなことではあるのだが、これが当たり前となってしまっている以上、"いいこと"とは言えないだろう。
「残念だけど、これといってないわよ。特別どこに出かけたわけでもないし、特別誰と会ったわけでもないから、探そうったって無理ね」
「そうなんだ、残念」
 ありのままに質問に答えると、つかさは眉の端をほんの少し下げた。しかし数秒後には気にもしないように笑顔に戻り、前もって準備していたことがわかるくらい、手際良くあるものを私の前に差し出した。
「実はね、この間こんなのを買ったの」


『記念日カレンダー』


 ポストカードが何枚か重なっているタイプの小さなカレンダー。その一番上のものには、控え目に洒落た字でそう書かれていた。 
 拝借して一枚めくってみると、カレンダーによくあるきれいな風景の写真などもなく、ただ簡単に1日から31日の欄がカレンダーの規則にそって並んでいるだけ。左上にこれまた洒落たフォントで何月かが記されており、それが1月から12月までの12枚分が重なって、このカレンダーはできているようだ。
 しかし普通のカレンダーとは違い、それぞれの日にちに、曜日が一切振られていない。これではカレンダーとして機能を全く果たしていない気がするが、きちんとした意図があるようだ。なんでも、
「曜日が振られていないから、このカレンダーに1度書きこんじゃえば何年経っても記念日を忘れなくなるんだよ〜」
 ……と、いうことらしい。2月の欄にも、今年はないはずの2月29日の欄がご丁寧に準備をされている。抜かりはないということか。


 ポストカードをぱたんと閉じ、記念日カレンダーをつかさに返すと同時に納得する。なるほど。だったらつかさがここに来たのは、もし私に何かいいことがあればそれを記念日にしようと思ったから、ということだろう。自信ありげにそう言うと、
「すご〜い、どうしてわかったの!?」
 果たしてそれは見事に正解だった。



「でもだいたい、記念日なんて作ったってどうするのよ?」


 
826 :記念日カレンダー(3) [saga]:2011/02/18(金) 02:03:41.73 ID:qrnniBiz0
 だから。正解だったからこそ、私は問いかけた。

「そんな風に記念日を作ったって、来年には虚しくなるだけよ?だいたいあんたは飽きっぽいんだから、待ってるうちにいつの間にか忘れちゃうんじゃないの?」



 つかさが作ろうとしている記念日。
 それは365分の1。
 約30000分の80。
 百分率で1%にも満たない1日。



 作っている今は楽しいかもしれない。1年先が待ち遠しくなるかもしれない。でも残りの364日は、約29920日は、99%は、今思っているよりもずっとずっと長いものになるだろう。たった1日を待つために、そんなにも長い残りの日を過ごすのは、あまりにも虚しい。そんな空虚な日常を、つかさは今まさに作りだそうとしている。

 だから私は問いかけた。私にはそれが、そんなものを自ら作ろうとすることが、理解できなかったから。
 私は、記念日が嫌いだったから。






「そんなことないよ、お姉ちゃん」


 ところがつかさは、澄んだ声で、なおも笑顔で、私に言った。

「私は確かに飽きっぽいから、1日の記念日を待っているのって無理だと思う。お姉ちゃんの言うとおり、きっと忘れちゃうよ」
 自嘲気味に、また眉の端を下げるつかさ。しかしまた同じように、数秒後にはすぐに笑顔に戻った。そのまま、嬉しそうに手に持った記念日カレンダーに目をやる。
「だから、このカレンダーを買ったの。これがあれば1日の記念日を忘れることがないから。それで、1日の記念日を待つのに飽きないように―――」
 
 つかさの笑顔の、輝きが増していく。




「1日じゃなくて、毎日を記念日にできるでしょ?」



827 :記念日カレンダー(4) [saga]:2011/02/18(金) 02:06:09.34 ID:qrnniBiz0
 カレンダーは3日前の欄から、すべて埋まっていた。『カレンダーを買った記念日』に『クッキーがいつもより美味しくできた記念日』、それから『朝ちゃんと早起きできた記念日』。これらはみんな"記念日"と呼ぶにはあまりに取るに足らないものだったが、つかさの書いたこれらのかわいらしい文字は、とっても生き生きとしていて。おかげで、こんなあまりに小さな1日を、立派な"記念日"に仕立てあげることができていた。



 残りの日が長いのなら、それも"記念日"にしてしまえばいい。
 365分の1が嫌なら、30000分の80が嫌なら、1%が嫌なら。
 365分の365にすればいい。
 30000分の30000にすればいい。
 100パーセントにすればいい。
 そうすれば、空虚な日常なんて、割って入ることもできなくなる。毎日が記念日なのだから、毎日が楽しくなる。



 だから、お姉ちゃんのところに来たんだよ。つかさは、私にそう言ってくれた。



 つかさの笑顔はあまりにまぶしくて、私にはもったいないくらいだった。自然に私も笑顔になると、つかさに一つだけお願いをした。




そして――――









828 :記念日カレンダー(5 Final) [saga]:2011/02/18(金) 02:08:53.18 ID:qrnniBiz0
「おはよ〜お姉ちゃ〜ん」
「おはよう、ってまだ寝ボケたまんまじゃない!さっさと顔を洗っておいで」
「ふぁ〜い……」
 いつもと変わらない朝。いつも通り早めの朝食をとっていると、いつも通り半分とじた目をこすりながら、つかさが起きてきた。いつも通りつかさにそう言うと、つかさもいつも通りにふらふらと洗面台に向かっていく。
「まったく……」
 そして、いつも通りに確認する。テーブルの中心に置かれている、小さなカレンダー。空欄のまったくない日付の欄を一つ一つ確認し、今日の欄を探す。





「お、なんだ……」
 『朝ちゃんと早起き出来た記念日』の右隣。ほとんどの欄を埋めているかわいらしい文字ではなく、あまり好きにはなれないけれど、一番見慣れてる不格好な文字。
 

『私が"記念日"を好きになった記念日』。その文字は、他のものに劣らずとっても生き生きとしていて、こんなあまりに小さな1日を、立派な"記念日"に仕立てあげることができていた。




「もうあれから1年が経ったのか……」
 



 こんなに早く来るんだから、やっぱり記念日は悪くない。




FIN 
829 :記念日カレンダー [saga]:2011/02/18(金) 02:16:30.78 ID:qrnniBiz0

以上です。

 実際、書いてみると非常に難しいお題だな〜、とつくづく思いました。
この作品も自分で見るとまとまってる感じがしなくて心配なくらいにorz
かがみ、つかさって今回初めて書いてみたのですが……こちらも難しいですねorz


 長々と失礼しました。最後まで読んで下さった方、ありがとうございました!
そしてアドバイスを下さった>>736さん、おかげでなんとか作品を一つ作り上げることができました。ありがとうございました!
830 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/18(金) 20:43:31.07 ID:4scn6Kw50
記念日カレンダー
は5番目のエントリーです。
831 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/18(金) 21:02:22.46 ID:4scn6Kw50
とうとう800レスを超えたか。
コンクール大賞発表は新スレかな
832 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 00:20:06.67 ID:p5DENCfM0

☆☆☆☆☆☆第二十回コンクール開催のおしらせ☆☆☆☆☆

残すところ1日となりました。

自分の予想だと全部で8〜10作と言った所でしょうか

現在5作エントリー

投稿期間:2月7日(月)〜 2月20日(日)24:00

最終日は言い換えると21日(月)の0:00時となります。ご注意下さい。

833 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 09:48:53.20 ID:p5DENCfM0
『20個目のお話』を読んで思いつきました。
まとめサイトのテストページにて1〜19回大賞作品の人気投票を設置しました。(20個目のお話には載っていないSSもあります)
期限はコンクール期間中です。

特に記録には残さないつもりです。余興ですので気楽に参加して下さい。

テストページ
http://www34.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/150.html
834 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/19(土) 21:12:39.47 ID:B7WcpdGF0
>>833
乙!面白いですね!
私の環境では作品への投票のみ行えなかったのですが、皆さんはどうだったのでしょう。
作品の得票のみ0なのは、私だけでしょうか?
835 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 23:08:22.43 ID:p5DENCfM0
>>834
投票フォームの設定がおかしかったようです。直したので試してみて下さい。
編集者は誰かが投票しないと投票できないのでよろしくです。
836 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 00:04:45.88 ID:oREPBvnH0
☆☆☆☆☆☆第二十回コンクール開催のおしらせ☆☆☆☆☆

残すところ今日が最後となりました。泣いても笑っても最後です。

くれぐれもギリギリに投稿しようとは思わないように!!

現在5作エントリー

投稿期間:2月7日(月)〜 2月20日(日)24:00



837 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 19:35:00.78 ID:MThDHAAAO
なんとかできたので作品投下していきます

コンクール参加作品です
838 :こなたの命日 :2011/02/20(日) 19:37:19.66 ID:MThDHAAAO
ある日の夕方


「うぇ〜ん、遅くなっちゃったよぅ」
つかさは呼び出しをくらい一人残されていた。用が済んだ頃にはもうじき日も沈もうかという時間だった。遅くなると知っていたので他の三人は既に帰っている。


ゴトッ

「あれ?今変な音が…」
つかさは鞄を持つと物音がした隣のクラス―姉である柊かがみのクラスをひょいと外から覗いた。何か赤い塊のようなものが見えたがよく見えなかったのでドアを開け中に入った。その時は人の気配は感じていなかったが教室の後ろでその赤い塊を見つけたその瞬間叫び声をあげながら膝から崩れ落ちた。
「こ、こなちゃ…イヤァァァァァ!」
その赤い塊は制服は赤く、長く青い髪まで真っ赤に染まっていた泉こなただった。つかさは胸にナイフが刺さり仰向けになっているこなたの横で今だに叫び続けている。
839 :こなたの命日2 :2011/02/20(日) 19:41:19.63 ID:MThDHAAAO


次の日話題は昨日起きた事件で持ち切りだった。なにしろ自分の学校で事件が起きたのだから生徒の反応もそれなりに大きかった。
「なぁあやの…」
「みさちゃん」
何か言いかけた日下部みさおをいつものようにニコッと笑い峰岸あやのはみさおに答えた。ただその笑みにはいつもの優しさをみさおは感じていなかった。
「柊の奴相当ショックなはずだぜ。ちびっこがあんな」
「みさちゃん!」
さっきよりも強く別の感情が込められたように自分の名前を呼ばれ思わずみさおは続きを言おうとしていた口を閉じた。
「……あやの」
「わかってる。わかってるのよ。でも私は…!」
みさおは彼女が怒っている所はほとんど見たことがなかった。感情をあらわにして怒鳴るなんて尚更見たことがなかった。だが目の前のあやのはぷるぷると拳を握り締め、今にもその拳を机に振り落とさんばかりの剣幕で喋っている。
「………」
「私が怒ってるのは泉さんの事じゃないの。こんな時に友達に何も言えなかった自分が嫌なの!!」

みさおが事件の事を知ったのは昨日の夜あやのからの電話でだった。その時からあやのの様子がおかしいのは気付いていた。しかし改めて感情をぶつけられるとみさおはどうする事もできずにしばらく黙っていた。
「とりあえず今日の帰りにでも柊ん家寄ってみようぜ。今日は午前中だけだし。無駄かもしんないけど行かないよりマシだろ?」
「けど柊ちゃんもう携帯に出てくれないし家にかけても部屋に閉じこもったままだって…」
「だーもう!あやのらしくねぇな!そんなに嫌なのか?」
あやのは俯いたまま答えようとしなかった。
みさおはため息をつきながら昨日のこなたの血の跡らしき場所に被せられたビニールシートをちらっと視界に入れた。きっとこびりついた血の跡がとれなかったのだろうと推測しながら自分の席に戻った。
「大丈夫かな…アイツ」
その独り言は誰の耳にも届いていなかった。
840 :こなたの命日3 :2011/02/20(日) 19:44:10.50 ID:MThDHAAAO

今日は午前中に緊急集会があり今日の授業は午前で終わるという私の予想は当たっていたようです。昨日あんな姿の泉さんを発見してしまったつかささんや音信不通らしいかがみさんの様子が気になるのでまさに好都合です。先程つかささんに今日はこれから家に寄らせてもらうという筋のメールを送ったので後は黒井先生のホームルームが終わるのを待つだけです。

と、黒井先生を待っていると誰かが入ってきたようで教室のドアが開きました。そして私はそのドアから見えた人物を誰だか理解すると私その人の名前を呼びながらその人に駆け寄りました
「つかささん!!」



昨日の放課後の事はよく覚えてないや。確か…血だらけのこなちゃんを見つけた時の私の叫び声を聞いて偶然忘れ物を取りにきていたゆきちゃんが駆け付けてくれたんだよね。こなちゃんの様子を見たゆきちゃんは何か凄くテキパキとした動きでこなちゃんを触ってたね。病院で聞いた話だとゆきちゃんはあの時応急処置をしてたみたい。病院の先生も応急処置がなかったら確実に死んじゃって…ううん!こなちゃんは死んでないんだからこんな事考えちゃダメだよね!
まだこなちゃんは危ないみたいだけどきっとまたお話できるもん!でもそういえば私はそれからどうしたのか全く覚えてないな…病院から家に帰った所も覚えてないや。ふと自分に帰ったらもうすぐお昼の時間だった。携帯のメールを確認すると峰岸さんやゆきちゃんからたくさんメールが届いてて驚いちゃった。

『無理して学校に来なくていい』

っていう感じのメールもあったけど私は不安でじっとしていられなかった。とりあえず私は時間割も確認せずに鞄を掴んで学校に向かった。あっ、そういえば私制服から着替えてなかったんだ。着替える手間が省けかな…
そんな事を思ってると教室のドアがもう目の前にあった。
841 :こなたの命日4 :2011/02/20(日) 19:48:12.76 ID:MThDHAAAO

「こなた」
私は部屋のベッドの上に座りながら何もない所をじっと見つめながらずっと友人…いや、それ以上の関係であるアイツの名前を呼んでいる。
「こなた…」
昨日から電話やらメールがかかってきたけど私はそれに対応しなかった。お母さんや姉さん達も部屋の前でなにか言ってたみたいだけど私には聞こえなかった。聞こうともしなかった。

「こなた……」

私はアイツの名前を呼び続ける。



「で、なんだよ話って」
つかさ達のクラスにあやのとみさおはみゆきにホームルームが終わり次第来るように言われていた。
「本当は小早川さんやみなみさん達が来てから話した方がいいかと思いましたが、まずは皆さんにお話ししとこうかと思いまして」
「だからなにをだよ」
「泉さんのこと?」
あやのがそう言うとみゆきは頷いた。そしてなにか決断をしたような目で話し始めた。
「泉さんは昨日かがみさんのクラスで倒れていました。そして私とつかささんの証言から泉さんは…
自殺未遂を起こしたと警察の人は見ています。」
「それがどうしたっていうんだよ」
「私も最初はその…考えたくはありませんが泉さんがナイフで自殺をしたのだと思っていました。しかし今考えるとおかしな点がいくつかあったんです。」
するとみゆきは立ち上がり、着いて来て下さいと隣のクラスに向かった。
「まず泉さんを発見した時の状況です。つかささん、確か物音がしたからこの教室に入ってきたんですよね?」
「うん、そうだよ」
「ですが出血の状況から見て泉さんは随分前に意識はなかったものと思われます。」
「でも物音くらいしても普通じゃない?無意識に体のどこかが動いたりとか」
「峰岸さんの言う通りその可能性もあります。ですので私はあくまでも不自然な点をあげているだけです。」
「それが何になるっていうんだよ」
「みさちゃん…」
みゆきが話すにつれて機嫌が悪くなっていくみさおの事を知ってか知らずかみゆきは今はとりあえず話を聞いて下さい、と続きを話した
「次にですがナイフについてです。ナイフは右手で持っていましたがその点は気になる所はありませんでした。誰かにナイフを握らされたような不自然さもありません。しかし問題なのはナイフの鞘です」
「さや?」
「鞘というのは刀などを収める時に使うものですよ。あのタイプのナイフには鞘があるそうです」
842 :こなたの命日5 :2011/02/20(日) 19:51:26.31 ID:MThDHAAAO

「ちびっ子が持ってたんじゃないのか?」
「ええ、泉さんはナイフの鞘を持っていませんでした。こうなるとどういう事かわかりますか?」
「どういう……?」
つかさは首を傾げうーんと唸っている。あやのとみさおも答えはわかっていないようなそぶりを見せた。
「…鞘を紛失というのもありますが今回の場合は誰かが持ち去った、つまり泉さんは自殺ではなく誰かに刺されたと私は思うんです。」
「そんな!こなちゃんが?」
つかさは思わず大声をあげてしまったがそのことを気にせずみさおはみゆきを睨むような視線を送ったままだ
「そこまで言うっていうんなら何か確証があって言ってるんだよな?」
「はい、私の推測ですが犯人もある程度わかっています」
「高翌良さん、よかったら聞かせてくれない?」
「もちろんです。そのために皆さんに集まってもらいましたから」
みゆきの周りに集まった三人との間には不穏な空気が漂っていた。そんな中みゆきは

「犯人…というよりも一番の被害者と言った方がいいかもしれませんね…」
と悲しそうに独り言をポソっと吐いた


「ゆたか…大丈夫?」
私がそう言うとゆたかは笑顔でうん、と頷いた。
でもその笑顔は不自然で無理をしてるっていうのは多分私以外でもわかると思う。それくらいゆたかの様子はおかしい

泉先輩の事は昨日みゆきさんから聞いてその後すぐにゆたかに電話してみたらおじさんがゆたかが気を失って寝込んでるって教えてくれた。夜だったけどそんなのは気にならなくて必死にゆたかの家まで急いだ。おじさんは驚いてたけど私を部屋まで通してくれた。どうやら泉先輩の服とかを持っていく所だったみたいで留守番とゆたかを頼めるかい?と言われ私はその時から明け方までゆたかが目を覚ますまでずっと側にいてあげた。手を握っていたら突然ゆたかが目を覚まして泉先輩を虚ろな目で呼び出した。そして寝巻きのままフラフラと歩き出したゆたかを後ろから抱きしめた。私にはそれくらいしかできなかったけど
『ずっと私がいる、ここに私がいるから大丈夫だよ』
ってゆたかに言い続けてもゆたかはどこかのネジが飛んだように泉先輩を呼び続けてた。
どれくらいそうしてたのかわからなかったけど私は気付いたら泣いていた。あの時の涙はどんな涙なのか今考えてみてもわからない。…多分ゆたかがどこかに行っちゃう気がしたんだと思う。
843 :こなたの命日6 :2011/02/20(日) 19:53:56.71 ID:MThDHAAAO
それからゆたかは私が泣いてるのに気付いてからは段々と普段のゆたかに戻っていった。今日学校は休むつもりだったけどゆたかが行くって言いだしたから私も心配だからゆたかに付き添って学校まで来た。無理しなくても言いって言ったけどあのまま家に居たら泉先輩の事しか考えられなくなるのはなんとなくわかる。

まだ少し虚ろな目をしたゆたかを連れて私はみゆきさんのいる三年のクラスまで急いだ。


昨日は…よく覚えてないな。お姉ちゃんが血まみれで病院に運ばれてきた所から…
私は倒れちゃって気がついたらみなみちゃんが私を後ろから抱いてくれてた。
何故かみなみちゃんは泣いてた。何が悲しいんだろうって思ったけど多分私が関係してるんだろうね。そういえば朝から頭がよくボーっとするなぁ…
それから…私は家に居たら頭の中がおかしくなっちゃいそうだから学校に行こうと着替えたりしてたら私も行くってみなみちゃんが色々用意してくれたよね。でもどうやって学校に来て朝先生からどんな事を言われたのかは覚えてないや。今はみなみちゃんに手を引いてもらいながらどこかに向かっている。…なんだかまた頭がボーっとしてきた

みなみちゃんがいっしょならわたしは、あんしんだよ
おねえちゃん、はやくかえってきてほしいな



私のボケた頭を覚ましたのはお姉ちゃんのクラスから聞こえてきた怒鳴り声だった
844 :こなたの命日7 :2011/02/20(日) 19:57:54.94 ID:MThDHAAAO

「もう一回言ってみろ!」
「ちょっとみさちゃん!暴力はダメ!よ」
みなみとゆたかが教室に入ってくるのとほぼ同時にみゆきの話を聞いていたみさおがみゆきに平手打ちをし、さらに襲い掛かかろうとした所をあやのがなんとか抑えつけた。
「こうなるのは予想してましたが…わかっていても痛いですね」
「ゆきちゃん大丈夫?」
慌てて近寄ってきたつかさをよそにみゆきはみさおの方を改めて向き、再び話し始めた
「日下部さん認めたくないでしょうがほぼ私の思う通りです。状況的にもそれしか考えられません。」
「ふざけんな!私は認めないからな!なんで私達に相談もなしに死ななきゃならないんだ!」
「あっ、みさちゃん!」
みさおは抑えてられていたあやのを振りほどき再びみゆきの方に向かっていったが背後からみなみが近付き、みさおは腕を掴まれそのまま倒されてしまった
「先輩…すいません」
「みなみさん、そこまでしなくても私は日下部さんに殴られる覚悟はしてましたから。もう離してあげて下さい」
「はい…」
みなみは素直に腕を離しみさおから離れたが、みさおは床に伏せたまま立ち上がらなかった。どこかケガをさせたのかと心配になったみなみはみさおに近寄ったが様子がおかしい
「日下部先輩……どうしました?」
「なんであいつが…なんで……」
みさおは嗚咽を漏らしながら泣いていた。
泣き顔を見られたくないのか顔はそっぽを向いている
「そんなの…ッ、可哀相過ぎるッ…じゃねぇか……柊も…ちびっ子…もッ…」
「私も今までこんなに悲しいと思った事はありません…」
ふとみなみが周りを見回すとゆたかと自分以外は全員涙を流していた。
「みゆきさん、一体どんな話しを?」
「えぇ…まずは

かがみさんと泉さんが付き合っていたのは知ってますね?」
845 :こなたの命日8 :2011/02/20(日) 20:01:57.34 ID:MThDHAAAO


私はかがみ先輩と泉先輩が心中しようとしたんじゃないかっていうみゆきさんの話を全て聞いて何も言葉が出てこなかった。隣いるゆたかもそうだったみたい。
柊先輩と泉先輩が友達を越えた仲というのはなんとなく知っていた。二人で帰る時は手を繋いでいたしそれから…その…キ、キスをしたりしてるのも偶然だけど目撃してしまっていた。
でもそれはみゆきさん達にとってはもう普通の事になっていたみたいで女同士だから、とかはなかったみたい。でも親は…
私はゆたかが泣いているのに気がついてハンカチで涙を拭ってあげた。

今私達はかがみ先輩の家に向かっている。みゆきさんが連絡が取れないのを心配して様子を見に行きましょうって珍しくみゆきさんがみんなを引っ張って先輩の家に向かっている。…でも本当は最悪の事態を考えてるんじゃないかな。みゆきさんの表情は曇っていた



さっき立て続けにメールが届いたので流石に気になって携帯を見てみたら全てみゆきからだった。
少し驚いたけど一つ一つメールの内容を見ていくとどうやらみゆきは全て分かったみたい。流石にみゆきは騙せなかったか…
ナイフの鞘を右手で握りしめ残りのメールもチェックした。

…ん?最後のメールの内容が終わってもまだ下にスクロールが続いていた。何だろうと下にスクロールを続けていくと最後に一言
『かがみさんは生きて下さい』
とだけ書いてあった。

確かに私はこなたが死んだら自分も死ぬつもりだった。
放課後こなたに呼び出されて私の親達にこなたとの関係がバレたって言われた時は心臓が止まるかと思った。こなたは淡々と話を続けて私とこなたはもう会わないように言われたらしい。私はこなたと付き合った時から最後はハッピーエンドにならないのはわかってた。でもこなたが好きだった。私の甘さもあって今回みたいなことを引き起こしてしまったんだ。
話を終えたこなたは涙を流すでもなくスッと懐からナイフを取り出した。

あぁ…こう言うのなんて言うんだっけ…そうそうヤンデレだ。でもこなたに殺されるならいいかなと思っていたらこなたは私に殺して欲しいと言ってきた。
846 :こなたの命日9 :2011/02/20(日) 20:06:21.58 ID:MThDHAAAO
私はそんなのできないって言ったけど

「私を…『泉こなた』をここで殺して!」

と凄い剣幕で私に迫ってきたかと思うと、私の腕を強引に引っ張りこなたの上に被さるように倒れた。

そこからどうなって家に帰ったは正直覚えてない
最後にこなたが
「ありがとう…お願いだから……かがみは死なないで」
と言ってた気がする

みゆきのメールが届いた時間から推測するともうそろそろ家に着くころだと思う。
私信じてるからね…アンタは死ぬわけない…看病は私がしてあげるんだからね…こなた…………

私が天井を見上げてると玄関が開く音がしてバタバタと慌てて家に入ってくる足音が沢山聞こえた。そんなに焦らなくても自殺なんてしないわよ…
私はみゆき達を迎えに行こうと立ち上がった瞬間乱暴に部屋のドアが開け放たれ一番聞きたくない台詞を聞かされた
「お姉ちゃん!家に帰ってる途中おじさんから電話があってこなちゃんが!こなちゃんが…!」


私は今『泉こなた』の墓参りに来ている。墓といっても墓地にあるようなものじゃなくてその辺りに落ちていそうな木の棒を突き刺しただけの簡単な墓だ。ここからは『泉こなた』が倒れた教室がよく見える。言い忘れていたがここは墓地ではなく学校の校庭で、この墓も勝手に作ったものだ。
あの日から今日は私にとって特別な日になった。新しくスケジュール表を買えば友人の誕生日等と一緒に記念日として書き加えるし、毎年墓参りをしようと決めている。記念日といえばほとんどが楽しい日しかない。だからこんな日が一年に一度くらいあってもいいだろう。
私は合わせていた手を離しまた来年ね…と新発売の食玩を墓に置いてそこから離れた。



もうすぐアイツが来る
まぁ…この日を記念日にしてるって聞いたアイツと本当は一緒に来る予定だったけどまた夜中までゲームしてたみたいで寝坊したから置いてきた。

本当に憎たらしくて…人をおちょくるのが好きで…イタズラばっかするし………でも大好きなアイツが


「お〜いかがみん。置いていくなんて酷いじゃん!」
847 :こなたの命日 :2011/02/20(日) 20:12:31.74 ID:MThDHAAAO
長々と失礼しました、以上です。


最初は大穴狙いでポリエステルの作品を作っていたため期限ギリギリになってしまいました…
かなり粗い作品になりましたが読んでくれた方ありがとうございます

本当はエピローグ的な終わり方があったんですが間に合わなかったため割愛させてもらい、ああいう終わり方にさせてもらいました
それでは失礼します!
848 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 20:22:38.35 ID:oREPBvnH0
こなたの命日
は6番目のエントリーです。
849 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 20:24:21.10 ID:oREPBvnH0
これから0時近くまで入れませんのでまとめられないかもしれません。
出来る人がいればまとめてくれるとありがたいです。
850 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 22:24:05.72 ID:0ml/YBN10
 コンクール作品投下します。
きっと10レスくらい
851 :家族の近景 1 [sage]:2011/02/20(日) 22:25:40.53 ID:0ml/YBN10

「…………はあ」

 ゆうに畳一枚分はあろうかという大きなダイニングテーブル、そこに柔らかそうな頬をぺったりとくっつけたまま、彼女は大きく溜息を吐き出した。目の前に置かれた小さな目覚まし時計の針をじいっと見つめているようで、その実、彼女の瞳ははるか遠くを見つめていた。
 彼女の名前は高翌良ゆかり。18歳にもなる娘を持つ一児の母とは思えないほどに彼女の外見は若々しいが、それもこの日は格別だった。いつも柔和な笑みを浮かべているはずの彼女の表情は曇り、眉を下げてはまた溜息を繰り返している。その様子はさながら初恋に悩む少女のようだ。彼女はそんな調子なので、当然後ろから自分を見つめる視線にもまるで気が付かない。
 彼女を見つめるのは、みゆき。まるでそうは見えないが、ゆかりの娘だ。彼女は母をじいっと見つめて、その真似をするように溜息をついた。
 みゆきは、母の憂鬱の理由を知っている。それを語るのは、カレンダーに記された手書きの文字。
852 :家族の近景 2 [sage]:2011/02/20(日) 22:27:23.47 ID:0ml/YBN10





   『家族の近景』




853 :家族の近景 3 [sage]:2011/02/20(日) 22:28:22.18 ID:0ml/YBN10

 今日という日ははみゆきの両親、つまりゆかりと彼女の夫との記念日なのだ。しかし、みゆきはそれが何の記念なのかを知らない。結婚記念日ではなく、二人の誕生日でもない。みゆきの誕生日は二ヶ月前に過ぎていた。一度みゆきが母に問うと、彼女は微笑みながらこう答えた。

『みゆきが大人になったら教えてあげる』

 みゆきは大人の定義についてあれこれと考えるつもりはなかった。ただ、自分がその日が何の記念日なのかを知ることは一生ないのではないかと思うばかりだった。
 そんな大切な日に、家の中にはゆかりとみゆきしかいない。日曜の、時刻は19時を回ろうとしているというのに、彼の姿がない。だからこそ、彼女たちは深く溜息をついているのだ。
 彼は、愛する妻と愛しの娘を養うために働いている。もちろん、毎年この日は必ず家に帰るようにしているのだが、今年は運が悪かった。有り体に言って、急な仕事が舞い込んだのだ。彼は電話口でそのことを何度も詫び、埋め合わせを約束した。ゆかりも(見た目はどうあれ)子供ではないので、そのことで我侭を言うつもりは毛頭ない。とびっきりの埋め合わせを約束して、この問題には決着をつけたはずだった。
 しかし、心はそれほどに利口にはなれなかった。今日という日に捉えられた彼女の、その心の内では少女がしくしくと泣いているのだった。

 みゆきは物音一つ立てずにただ母を見つめる。表情には隠しきれない不安の色が浮かんでいたが、同時にその瞳には決意の色が宿っていた。彼女は時計を一瞥すると、足を滑らせるようにゆかりに歩み寄った。
854 :家族の近景 4 [sage]:2011/02/20(日) 22:30:07.40 ID:0ml/YBN10

「お母さん、ちょっといいですか?」

 その声はつとめて平静に、少なくともそう聞こえるようにと意図して放たれた。

「なあにぃー……みゆき?」

 対照的にゆかりはまるで飾り気の無い、憂鬱さを繕おうともしない返事を渡した。

「ちょっと、お散歩に行きませんか?」

 みゆきはいつも母と話すように穏やかな言葉をかける。決して穏やかではない心中を見せないよう、懸命に笑顔を作りながら。

「お散歩?もう外まっくらよ?」

 ゆかりは渋面を浮かべる。日付が変わる前にはもう夢を見ている彼女の生活からすれば、その戸惑いは当然のものだろう。

「でも……ええと……今、一緒にお散歩したい気分なんです」

 みゆきの表情に一瞬の翳りが差す。それでも彼女はすぐに気持ちを奮わせて、平静を作り直した。

「……んー……そうねえ、じゃあそうしようかしら」

 ゆかりは、みゆきが嘘をついたり人をごまかしたりできないことを嬉しく思った。しかし同時に彼女の気遣いへの感謝と、娘に気を遣わせてしまった自分への嫌悪を感じていた。だからこそ、娘の思いやりに応えたのだった。
855 :家族の近景 5 [sage]:2011/02/20(日) 22:31:08.15 ID:0ml/YBN10

 そうして二人はそれぞれ軽く支度を済ませ、30分もせずに夜の内へと繰り出した。住宅街の夜は暗く静かで、空気は夏にも関わらずどこか冷たさを含んでいた。そんな内でぽつりぽつりと交わされる会話は自然と控え目な調子になってしまう。ゆかりは引け目を感じながら、みゆきに導かれるままに歩き続けた。
 そうして十数分は経った頃だろうか、ゆかりは辺りが次第に明るくなってきていることに気付いた。むしろこれまで分からなかったのが不思議な程なのだが、それほどに上の空だったのだろう。二人は街の中心へ、最寄の駅へと向かう道を歩いていた。

「ねえ、みゆき。どこに向かってるの?」

 ゆかりの質問は直球で、またみゆきの返球もシンプルだった。

「すぐにわかりますよ」

 ゆかりはそれ以上なにも聞かなかった。みゆきに負う部分があったから、というのも確かなのだが、それよりも期待が上回っていたのだ。もともと旺盛な彼女の好奇心は、現状の小さな非日常を楽しみ始めていた。この時点で、みゆきの目論見は半分成功していたと言えるのかもしれない。
856 :家族の近景 6 [sage]:2011/02/20(日) 22:31:51.71 ID:0ml/YBN10

 さらに十数分後、時刻は20時をとうに過ぎた頃、二人は駅周辺の眩しい照明に包まれ、散発的な人の流れに逆らうように歩いていた。ゆかりは気の抜けた格好で出発したことを少しだけ後悔し、みゆきの背後にぴったりと寄り添っている。みゆきは小さく辺りを見回すと、歩く速度を緩めた。その歩みは次第に遅くなり、そしてついにはあるビルの前で完全に停止した。
 ゆかりは恐る恐る顔を覗かせて建物入り口のネオンを確認すると、小さな口をいっぱいに開いて驚きの声を上げた。

「み、みゆき!まさか、ここに入るの?」

「ええ、そのまさかです」

「うそ、うそうそ!わたし、心の準備が……」

「じゃあ、行きましょうか」

 そうして二人は、煌々と照る看板をくぐり、入り口を抜け、その店へと足を踏み入れていったのだった。


857 :家族の近景 7 [sage]:2011/02/20(日) 22:32:44.37 ID:0ml/YBN10



 二時間後。

「あぁーーー、すっきりしたぁ!」

「ええ、本当に楽しかったですね」

「みゆきがねえ……ふふ、いきなり『地上の星』なんて、お母さんびっくりしちゃった」

「ええと、それは……みんな友達のアイディアで……ほら、見てください。手がまだこんなに震えてるんですよ」

 『カラオケの鉄人』から出てきた彼女たちの表情は晴れそのものだった。紅潮した頬はほころび、目からは憂鬱の影が消え失せていた。二人はまるで仲良しの友達同士のように嬌声を上げながら、来た道を辿って家路に着きはじめた。
858 :家族の近景 8 [sage]:2011/02/20(日) 22:33:30.07 ID:0ml/YBN10


「みゆき、ホントにごめんね」

 明るい街から離れ熱も次第に治まった頃、二人の会話は少しだけトーンを落としたものになる。

「お母さんみゆきにたくさん心配させちゃった……いけないってわかってたんだけど……私、もっとお母さんらしくしなきゃね」

 ゆかりが目を伏せて話すと、みゆきは殊更に顔を上げて、夜空に向かって話しかけているように応えた。

「いえ、お母さんはそのままでいてください……そんなお母さんだから、私……がんばれるんです」

 肩を並べた母娘の視線が、重なる。

「それじゃあ私、もっとみゆきちゃんに甘えちゃおっかな?」

「もう、そうじゃなくって……」

 爽やかな笑い声が、夏の夜に広がっていった。
859 :家族の近景 9 [sage]:2011/02/20(日) 22:34:46.36 ID:0ml/YBN10

「みゆき、明日はどうするの?」

「明日は……夕方から家庭教師ですけど、どうかしましたか?」

 それを聞いてゆかりは少女のような、悪戯な笑顔を浮かべた。いつもなら、みゆきはその表情に対して少しだけ身構えるのだが、今夜に限ってはそんな気持ちはまるで起きなかった。

「それじゃあ帰ったら私がおいしいごはん作るから、楽しみにしててね。それに、今日がなんの記念日かも教えてあげる」

「……いいんですか?」

「いいって、ごはんのこと?記念日のこと?」

「ええと、記念日のほうです」
860 :家族の近景 10 [sage]:2011/02/20(日) 22:36:33.02 ID:0ml/YBN10

 みゆきは戸惑う。きっと知ることはないと思っていた両親の記念日の秘密を、こんなにあっさりと聞かせてもらえるなんて、考えてもみなかったことだ。
 ゆかりはくすくすと微笑んで歩みを止める。そして、釣られて立ち止まったみゆきの頬を両掌で包み込み、あらためてみゆきの目を、瞳の奥を見つめた。

「だって、みゆきったらもう大人になっちゃったんだもの」

 みゆきの顔にさあっと喜びの色が広がり、彼女は反射的にそれを隠すようにうつむいた。ゆかりは柔和な笑顔のままみゆきの頭をなでて、再び歩き始める。彼女はもう頭の中では、今日のために用意した豪華な食材の調理に考えを向けていた。みゆきは四、五歩下がってゆかりについて歩く。彼女も既に頭の中では、ゆかりとキッチンに並んでいる画を描いていた。
 そのうちに二人はもう一度肩を並べ、今晩の献立についてあれやこれやと話し始めたのだった。

 繁華街は既に遠ざかり、二人は再び夜の住宅街を歩く影となっていた。しかしその足取りは軽く、華やいだ声が途切れることはない。点々と立つ街の灯に照らされる母娘の姿は、幸福を切り取った印画紙のようだった。

 二人は知らない。

 誰も居ないはずの家に明りが点っていることを。
彼が不安も露に二人を待ち続けていることを。
そして皆が笑顔になり、幸せに包まれることを。

 二人はまだ、知らない。
861 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 22:44:00.22 ID:0ml/YBN10
 コンクール作品『家族の近景』投下終了です。
ギリギリの投下失礼しました!

専ブラから投下できなかったんで成型が残念なことに。
ブラウザで読み易い形にして読んでいただけたら幸いです。

お読みいただき、ありがとうございました。
862 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 22:44:19.86 ID:nZgdbqYeo
コンクール参加作品投下します。7レス前後になると思います
863 :泉の里帰り 1/7 [saga]:2011/02/20(日) 22:45:34.27 ID:nZgdbqYeo

 湯気の立つ浴室に、クスッとわたしの口から漏れた思い出し笑いが反響する。

 ―――じゃあさ、おとうさんいつもわたしにぺたぺたしてくるけど、わたしが男子でもいまと同じように接してきた?

 おねえちゃんにそう尋ねられて、おじさんが「あたりまえじゃないか」と返すまでの、いっときの間。
 「よーくわかったよ」と軽く言い放つおねえちゃんと、そのときの空気を思い返すとおかしくなって、ほおがほころぶ。

 あの父娘のつくるほがらかな雰囲気はとても心地よくて、わたしもそのなかにいさせてくれることが、とてもうれしい。
 そう思うから、ときどき、私はぼんやりと好奇心をめぐらせることがある。あの父娘ふたりに、大きく関わったはずのひとのことへと空想が飛ぶ。
 おねえちゃんにうりふたつな写真の姿。おじさんの伴侶だったひと。泉かなたさん。
 私が知っているかなたさんのことは、ふたりの談笑のなかに出てくる情報から勝手に想像したものでしかなくて。
 かといって、死んだ家族について居候に過ぎないわたしが真正面から尋ねるのははばかられるから、これ以上の確たる情報を集めることは望まない。
 そんなふうにかたちづくられた、ぼんやりとしたままのかなたさんの像を、頭のなかでながめている。おじさんが体裁を整えるために話題を変えようとした結果の一番風呂のなかで。
 そういえば、いまはお盆の時期だと思い当たる。きっと、ここも、かなたさんが存在した空間なのだろうと感傷的になるのは、それが理由なんだろうか。そう思いながら、お風呂の熱のなかで息をついた。

 ―――物思いをしながらの入浴。わたしは時間を忘れた。どれくらい経ったのだろうか、まぶたが下がってくる。目に力を入れて、こらえる。
 眠気と倦怠感。まどろむ薄目で見る視界は、とても白かった。湯気のせいであればそれはそれでいいのだけれど、のぼせてしまって目がチカチカしているせいであれば、それはわたしの身体にちょっと都合がよろしくないもので。
 ああ、まずいな。もう、お風呂あがらなきゃ。そう思ってわたしは、浴槽の縁をつかんで―――
864 :泉の里帰り 2/7 [saga]:2011/02/20(日) 22:46:16.30 ID:nZgdbqYeo
 立ち眩み、床に倒れ込む感覚にハッとする。とっさにバランスをとろうと身体が勝手に反応する。「わっ」と声を漏らしながら、足裏を地面を踏みしめる。転ぶのをこらえて、ほっと息をついた。
 そうしてその床の感触に気づく。廊下。お風呂じゃないところに、わたしは立っている。

 廊下の床から顔を上げると、コタツや、テレビや、見覚えの物ばかりが視界に映る。居間の入り口に、わたしは立ちつくしている。
 肩の周りにクエスチョンマークをいくつも浮かべるような思いで首をかしげた。人の姿は、見あたらない。
 自分の身体を見ながらぱたぱたたたいて調べる。どこも濡れていなくて、ふつうに服を着ているこの状況に、わたしはしばらくぼうっとする。

 だれもいないこの部屋から、出て行こうとは思わなかった。ほかの部屋を調べて、ほかのだれかの存在を調べようとは思わなかった。
 意味が、ないと感じた。おねえちゃんやおじさんの生活の気配がまったくないのがここにいてもわかるから。見慣れたものばかりの視界に、現実感はまったく伴っていない。まるで、わたしひとりが夢のなかに立っているよう。

 そう。夢に、似ているんだ。現実じゃない場処に立っている。
 そう自覚すると、こころはさらに平静になって。わたしは居間へと平然と足を踏み入れる。夢の静寂に足音をたてる感触に、妙な味わい深さを感じながら、わたしはコタツの前まで歩を進めた。
 こんなふしぎな空気のなかで、コタツに入ろうとする動作が自然に出てくるのがこれまた現実感を薄くする。そんなことを頭の片隅で考えながら、わたしはコタツにもぐって卓に伏せる。
 思考をめぐらせる。わたしがここにいる意味について。わたしをここに招いたなにかの存在について。
 得てしてこういうものは、ひとりだけでじっと考えても答えなんて出るはずもないもので。
 得てしてこういうときは、こたえを知るだれかが、種を明かしにやってきてくれるもので……。


「こんばんは」

 その声におもてを上げる。コタツの対面にひとつの影。
 こなたおねえちゃんそのままの容姿で。でもそこから受ける印象はわたしの知るおねえちゃんのものとはぜんぜんちがっていて。
 だからこのひとは、おねえちゃんとはまったくの別人なのだと理解する。
 夢のなかだからこそこのひとと会うのだと、その存在が腑に落ちる。

 ちいさいひとだな。そのひとを眼前に見て、あらためてそう思った。
 こなたおねえちゃんとほとんど変わらない、そしてもちろんわたしよりは大きな体型のはずなのだけれど、こなたおねえちゃんの母である"大人"だとして見ると、ことさらちいさな印象を受けた。

 はじめまして。とわたしは頭を下げる。
「この春から、この家にお世話になっている小早川ゆたかです」

 泉かなたさんにむかって、わたしはそう、挨拶をする。
865 :泉の里帰り 3/7 [saga]:2011/02/20(日) 22:46:58.65 ID:nZgdbqYeo
 泉かなたです。と返して、彼女はわたしに尋ねかけた。「この家での生活は、どうですか」。
「ふたりとも、わたしに良くしてくれてます。おかげで、とても楽しい毎日を送らせてもらっていますよ」
「それなら、わたしもうれしいけれど」
 言いながら、ふたりの悪い趣味に悪影響を受けてたりしてない? と苦笑する。
「悪い趣味だなんて思わないですよ。パソコンのこととか、すごい助けてもらっていますし」
 何の話をしているのかついていけないことはたびたびありますけれど。と付け加えてわたしも苦笑する。

「かなたさんは、ふたりの趣味を気にしているんですか?」
「まあ、気にしてたらそう君と結婚はしてないわね」
 苦笑を続けながらひとつ間を空けて、彼女は続ける。
「ことさら嫌うわけではないけど、そう君ほど熱中するものではないかな。
 こなたが産まれて、どんなふうに育って欲しいか、なんて話をしたことがあるのだけれど、
 そのときだって背はわたしに似ず、性格はそう君に似ないように、なんて望んだものよ」
 「……望みは、ぜんぜん叶ってないみたいだけどね」。そう口元を緩めて、おもいでを懐かしむその表情は、とてもやさしい。

 疑問が口をついた。
「どうして、わたしに?」
 かなたさんが、わざわざこんな場を設けたのはなぜなのか。
 おねえちゃんやおじさんには、会いに行かないのか。

「ふたりのことが気になるから、あなたと話してみたいと思ったの」
 かすかに目を伏せて、そう言った。
「これから、こなたたちの側に行って、ふたりを見守ることはあるかもしれない」
 でもね? と彼女はわたしに目を合わせる。
「直接、ふたりと話したりするのは、よくないな、って思うんだ」
 わたしは尋ねる。それは、どうして?

「わたしのなかにそう君たちが生きているように、そう君たちのなかで、わたしは生きている。
 こう考えられる理由は、生者と死者の垣根がしっかりしてるからこそ、だと思うの。
 空の上から、こなたたちを見守っていたい気もち。わたしはそれを、だいじにしたい。
 もし、また、生きているときと同じように、そう君がつくるしあわせのなかに立ってしまったら。
 あなたとこなたの隣に、立つようなことがあったら……」

 そこに、立ってしまったら、とかなたさんはわたしを見つめる。

「ぜったいに、いつまでもいつまでもそこに居たがって、その垣根を台無しにしちゃう」
866 :泉の里帰り 4/7 [saga]:2011/02/20(日) 22:47:43.99 ID:nZgdbqYeo
 余計なことは、わたしは何も言えない。かなたさんのその気もちに、わたしなんかではどんな返事も軽く映ってしまいそうで。
「でも、せっかく帰ってきたんだし、ただふたりを見物するだけ、っていうのもったいないから」
 黙りこんだわたしの胸のうちを察してくれたのか、かなたさんは茶化すように言葉を続けた。
 だからせめてあなたと話そうと思ったんだ。と笑いかける。
「あなたからみた、そう君とこなたの話を聞きたい。そう、思ったの」
 それは、要は、自分の家族が他の人からもほめられる様子を見たがっているということで。
 かなたさんもそれを自覚しているのか、恥ずかしそうに、はにかんでいる。
 こんな話の流れに、すこし、呆けて。でも、一拍ののちにそれを理解すると、わたしもクスリと笑って、それに応えたいという意志が湧く。
「気もち、わかります」
 わたしがかなたさんと同じ立場だったら、きっと、同じことを聞きたがると思う。家族を、自慢したいと思う。

 ちいさく、すっと息を吸う。

 わたしは語る。

 頼りになるお姉ちゃんのことを。

 わたしを安らがせてくれる、仲の良い父娘の和のことを。

 わたしからみた、おじさんとおねえちゃんの現在を―――
867 :泉の里帰り 5/7 [saga]:2011/02/20(日) 22:49:48.21 ID:nZgdbqYeo
 別れぎわの対峙は、玄関にて。
「玄関をくぐれば、元に戻るよ」
 玄関をくぐれば、おわかれ。
 わたしは、伝えられただろうか。伝わっただろうか。
 いま、わたしがいちばんちかくにいるおねえちゃんとおじさんのことを。

 彼女は微笑んで、わたしの手をとる。
「……わたしよりちっちゃい……」
「……気にしてることを言わないでください」
「ごめんね。でも、あなたを子供あつかいしているわけじゃないのよ」
 沈んだわたしに取り繕うように、彼女は言う。
「人より小さいだけで、かわいく見えて得してるなんてことはないわよね」
「わかってくれますか」
「うん、わかるわ。あなたは子供じゃない。これからどんどん、すてきな大人になっていける。本心から、そう思う」

 ありがとう、と彼女は感謝を告げる。
 それを聞いて、わたしは思った。
 
 きっと、伝わった。きっと、伝えられた。ここに思い残すことは、もうない。

「じゃ、またね」

 ……思い残すことは、ひとつ、あった。

 ―――生者と死者の垣根。
 またね。きっと、ただの社交辞令。
 だけれど親しみのこもった、別れの挨拶。

 もう、逢うことはないことは、わかっているけれど。

「はい、また」

 わかっている、けれど―――
868 :泉の里帰り 6/7 [saga]:2011/02/20(日) 22:50:28.18 ID:nZgdbqYeo
 玄関をくぐった先は、脱衣所だった。後ろを振り返ると、そこには浴室がある。
 身体を確かめると、ぽたぽた水滴が垂れ落ちるお風呂上がりのすっぱだか。

「……」

 別れの余韻も何もかもが台無しになるような状況の変化に頭が追いつかなくて、そのままの姿勢で呆然と硬直する。
 しばらくして寒気が身体に走って、大きなくしゃみ。我に返って、あわてて身体を拭いて衣服を着ける。

 先ほどまでの、かなたさんとのひとときは、何だったのだろうと思う。
 居間へと進むと、家の主たちの騒がしいやりとりが聞こえる。
 先ほどわたしが入った静寂の居間は、ほんとうに起こったできごとなのか、なかば夢心地のままそこへと向かう。
 お風呂空きましたよ〜……と中を伺うと、焦った様子のおねえちゃんとおじさんがデジタルカメラの映像をわたしに向けて差し出してくる。

「ゆ、ゆーちゃん見てこれ、こ、こここれ心霊写真!」
 
 あ、さっきまでのひとときは現実だ、と即座に納得した。 
 わたしは部屋をぐるりとみわたす。どこかにかなたさんはいるのだろうか。
 姿は、みえないけれど。
 消去しなきゃ、お炊きあげしなきゃ、とあわてるふたりを見せるのも忍びないので、なんとか、この場を収めようと声をあげる。

「け、消したりお炊きあげしたりしたら、逆に恨まれると思うんです!」
「ん? ん、んんん?」
 おじさんがうなる。こんなまったく逆の視点から意見を挟まれると、どっちが幽霊へのいい対処法なのか判断をつけかねてしまう。
 混乱を深めるふたりに、落ち着いてと促して、わたしは続ける。

「この写真は記念に、とっておきませんか?」
「き、記念!? ゆーちゃんこういうの好きだっけ!?」
 脈絡のないわたしの言葉に、ふたりの落ち着きはあっさり砕けた。狼狽するおねえちゃん。目を見開いてわたしを見るおじさん。

 自分で記念と口に出して、それがどれだけこの映像にふさわしいか、気がついた。親娘三人の、記念写真。
 記念は、紀年。過ぎ去った日の記憶を新たにすること。 

 こんにち、八月某日。――この日はとある魂が、家に帰ってきた日。
 この日は、魂が里帰りした記念の日。だから―――

「……と、とにかく、これは記念写真なんです!」

 ―――だから、もうなりふりかまわず、この映像データは現像するまで死守に努めようと思った。
 こんな混迷の様子を、かなたさんはどんな顔をしてみているのかは恥ずかしくて知りたくもないので、この場にいるであろう彼女のことは意識しないようにしながら……。
869 :泉の里帰り 7/7 [saga]:2011/02/20(日) 22:51:06.33 ID:nZgdbqYeo
 そうして、どうにかなった写真は、わたしのたからもののひとつとして引き出しにしまわれた。
 写真をとりだして、日付を見るたび、わたしはかなたさんとの邂逅のおもいでをあらためて意識する。
 いつか、ふたりに話したいと思う。この紀年日に、お風呂場で起きた、ふしぎなできごとを。

 わたしが大人になるころには、その夢のような記憶は、不確かな断片となっているだろうけれど。
 それでもその断片をかき集めて、わたしは物語を作りたいと思う。
 あの日起こったふしぎな出会いのできごとを、ふたりに伝えたいと思う。
 
 願わくばそのときは、あなたも聞いていてくれるとうれしいです。
 
 遠い空の垣根の向こうがわへむかって、わたしは笑いかけた。

 END.
870 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 22:55:12.06 ID:nZgdbqYeo
以上です。
1レスごとの最後に空行を3つ入れていたのですが
反映されてないですね……

これから自分でwiki編集してみるつもりですが
そのときの文章修正は3行の空行だけになります
それ以外の誤字脱字や、投下後の文章修正は行わない旨だけ
宣言しておきます。
871 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 23:29:44.78 ID:oREPBvnH0
家族の近景
は7番目のエントリーです
まとめありがとうございます
872 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 23:31:56.71 ID:oREPBvnH0
泉の里帰り
は8番目のエントリーです。
今編集していますね。ありがとうございます。
873 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 23:38:56.43 ID:nZgdbqYeo
・家族の近景
・泉の里帰り

を編集してみたのですが
ワープロモードの改行と行間隔の仕様が理解できず
いろいろヘンな成形になってしまっています。申し訳ありません。

テキストエディタに作品をコピー→レス番号や名前欄を削る
→wikiの「既存ページをコピーして新規ページ作成」(ページ元はともだち記念日)
→ワープロモードのテキストボックスに、ディストエディタからコピペ

という手順で作業を行いました。
874 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 23:47:40.93 ID:oREPBvnH0
家族の近景
泉の里帰り
の二ページ目はアットウィキモードにしないとコメントフォームが付けられません。
またこの2作品は アットウィキモード1ページで済むかもしれません。
もしよろしければこちらで編集し直しますがよろしいでしょうか?

875 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 23:49:18.82 ID:0ml/YBN10
>>873
乙です!
私のぶんまで編集をありがとうございました。
876 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 23:49:58.83 ID:nZgdbqYeo
>>874
お願いします
ともだち記念日がワープロモードだったから
ワープロモードでもいいのかと思ってしまいました
877 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/21(月) 00:17:12.27 ID:eBES6MXP0
☆☆☆☆☆☆☆第二十回コンクール☆☆☆☆☆


投稿期間の終了です。
第二十回コンクール投稿期間の終了を宣言します。

投稿して頂いた作者の皆様お疲れ様でした。
様々な『記念日』がありました。
作品を並べてみると自分の作品の浮きっぷりが恥ずかしい。今回はどの賞も取れそうにない。

愚痴はそれまでにします。二日空けて投票開始となります。気に入った作品をゆっくりと選んで下さい。

今回も「お題」「ストーリー」「文章」の三部門に分け、投票所を設置しますのでよろしくお願いします。

・家族の近景
・泉の里帰り
の2作品は急いで編集したので作者さんは内容を確認して下さい。間違えがあればこのスレに報告して下さい。





878 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/21(月) 00:38:27.02 ID:eBES6MXP0
反省
編集を頼むのなら方法を説明するべきでした。すみませんでした。
879 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 01:01:25.15 ID:Vam0ZlZSo
>>877
〆宣言乙


参加者もみんなお疲れ様でした
まだ全部読めてないけど、あとでゆっくり読ませてもらいます
880 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/21(月) 21:52:02.01 ID:eBES6MXP0
ポリエステルでssを作っていた人が居たが、どんな物語になるんだろうか?。
コンクール終了後にぜひ投下していただきたい。

ポリエステルの投票は2位だった。
何となくぼやーとしたイメージのようなのだけはしておいたけど実際これがお題に決まっていたら苦戦は免れないね。
881 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/21(月) 23:37:35.02 ID:R2/3wFjSO
作品数が三とかになってそうだな
882 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/22(火) 00:00:05.15 ID:4XneJgey0
それではこれより第19回らき☆すたSSコンクールの作品投票を開始いたします。

「お題」「ストーリ」「文章」の三部門に分けて投票所を設置しました。
お手数になりますが各一票、投票をお願いします。
投票するとコメントを求められます。一言入れて頂けると作品に花を添えることでしょう。(コメントは投票には関係ありません)


お題
http://vote3.ziyu.net/html/o20kai.html
ストーリ
http://vote3.ziyu.net/html/s20kai.html
文章
http://vote3.ziyu.net/html/b20kai.html


投票締め切りは2月27日(月)24:00です



あなたにとってどの作品の『記念日』が心に残ったのか。




883 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/22(火) 00:03:55.92 ID:4XneJgey0
>>882
回数間違えた。やり直します

それではこれより第20回らき☆すたSSコンクールの作品投票を開始いたします。

「お題」「ストーリ」「文章」の三部門に分けて投票所を設置しました。
お手数になりますが各一票、投票をお願いします。
投票するとコメントを求められます。一言入れて頂けると作品に花を添えることでしょう。(コメントは投票には関係ありません)


お題
http://vote3.ziyu.net/html/o20kai.html
ストーリ
http://vote3.ziyu.net/html/s20kai.html
文章
http://vote3.ziyu.net/html/b20kai.html


投票締め切りは2月27日(月)24:00です



あなたにとってどの作品の『記念日』が心に残ったのか。




884 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/22(火) 00:15:51.74 ID:4XneJgey0
投票所の背景色が濃すぎたかな
読みにくかったら言ってください調整します。
885 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/22(火) 00:26:12.10 ID:1NEhXS9bo
乙。字は一応読めるが目が痛くなるから薄くした方がいいと尾も
886 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 23:25:59.14 ID:JwHQQ0FM0
うーん
投票期間内は静まってしまうものなのかな。
景気づけに誰かお題を下さい。何か書いてみたいです。
887 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 00:52:02.36 ID:vae+Crwyo
>>886
それこそポリエステルとか
888 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/26(土) 06:53:17.16 ID:1rh7K/cV0
……
結局それですかw
時間がかかるかもしれなけどやってみますか。興味がある人もどうぞ
889 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 09:25:38.12 ID:JPdC2trm0
解釈のふれ幅が広そうなポリエステルは、実はかなり二次創作的なお題なのかもしれん
考えるだけ考えてみるかー
890 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/26(土) 14:39:05.70 ID:MttAsMWSO
お前らどんだけポリエステル好きなんだよww
891 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 00:32:04.94 ID:WEQNt72SO
−続かない−

こなた「ポリエステルって言ったらあれだよね。ジャッキー・チェンが主演してた映画」
かがみ「それポリスストーリー…で?」
こなた「え?…いや、で?って言われても…えーとつまり何て言うか、万物は無情…」
かがみ「………」
こなた「無言で冷たく見下ろすのヤメテ!いや、マジで!」
892 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 07:27:35.49 ID:ahKh1Eb4o
今更で悪いけど投票〆日にち間違えてない?
893 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 09:23:59.60 ID:4AnUqlug0
投票期間は6日
22+6=28日
確かに一日短いですね。

直しておきましょう。
894 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 09:30:51.71 ID:4AnUqlug0
第20回らき☆すたSSコンクールの作品投票期間中です。

「お題」「ストーリ」「文章」の三部門に分けて投票所を設置しました。
お手数になりますが各一票、投票をお願いします。
投票するとコメントを求められます。一言入れて頂けると作品に花を添えることでしょう。(コメントは投票には関係ありません)


お題
http://vote3.ziyu.net/html/o20kai.html
ストーリ
http://vote3.ziyu.net/html/s20kai.html
文章
http://vote3.ziyu.net/html/b20kai.html


投票締め切りは2月28日(月)24:00です



日にちを修正して一日延びています。また投票を済ませていない人は今からでも間に合いますのでぜひ投票を。

895 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 09:34:18.88 ID:4AnUqlug0
修正しました。
投票所の期間も直してあります。
896 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 10:32:39.66 ID:4AnUqlug0
まとめサイトのテストページで行っている過去コンクール大賞作品の人気投票。
一回目の大賞作品が『第一回目』と言うことでしょうか、票を伸ばしています。

 大賞作品はもうすでに注目されている作品。
今度は大会ごとに大賞作品を抜いた形で人気投票をやっていきたいと思います。
また違った結果が出ると思う。いかがでしょうか?

897 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 00:04:12.82 ID:5cdarMcZ0
第20回らき☆すたSSコンクールの作品投票期間中です。

「お題」「ストーリ」「文章」の三部門に分けて投票所を設置しました。
お手数になりますが各一票、投票をお願いします。



お題
http://vote3.ziyu.net/html/o20kai.html
ストーリ
http://vote3.ziyu.net/html/s20kai.html
文章
http://vote3.ziyu.net/html/b20kai.html


投票締め切りは2月28日(月)24:00です



日が変わると結果発表です。

また投票を済ませていない人は今からでも間に合いますのでぜひ投票を。

898 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/01(火) 00:15:16.41 ID:ya1SOeoS0
それではこれから第二十回コンクール結果を発表します。

コンクール大賞
エントリーNo.04:ID:7jZue2hu0氏:ともだち記念日



部門賞
お題
エントリーNo.04:ID:7jZue2hu0氏:ともだち記念日

ストーリ
エントリーNo.06:ID:MThDHAAAO氏:こなたの命日

文章
エントリーNo.04:ID:7jZue2hu0氏:ともだち記念日


以上となりました。

大賞および部門賞おめでとうございます。

899 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/01(火) 00:28:57.58 ID:ya1SOeoS0
改めて各賞おめでとうございます。主催者からお祝いを申し上げます。

主催者なので自分の作品『遺書』について反省します。

まず初めにテーマが重すぎたか。多分途中から読むのを止めてしまった人が多かったのではないかと思います。
ストーリの進み方にも無理があった。他のキャラの活躍する場が少なかった。
文章の悪さはどうにもならない。勉強不足と経験不足か。

こんなところでしょうか。
他にも気になる所があれば書いて下さい。


以上

900 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 00:37:19.75 ID:AOTP7pogo
文章部門の票のバラけぐあいがすごい
901 :記念日カレンダー [saga]:2011/03/01(火) 00:40:56.96 ID:aEJNfnOg0
大賞は『ともだち記念日』ですか、おめでとうございます!
及び、各賞受賞者さんおめでとうございます!そして参加者の皆さん、お疲れ様でした!

 自分の作品の『記念日カレンダー』も思った以上に健闘してくれたので光栄です。
しかし、参加作品を見ると自分もまだまだだなぁと痛感しました。

 また皆さんの新しい作品を見れる事を期待したいと思います!
902 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/01(火) 00:49:07.41 ID:atD0YVXAO
ストーリーだけ票がどうしたんだ
903 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/01(火) 01:13:08.68 ID:ya1SOeoS0
確かに今回は票にバラけが凄いね。
いままでは同数だったけど。
全ての人が3票入れた訳ではなかったみだいですね。

こればっかりはどうしようもない。部門賞該当者なしなら入れないだろうし。

今後の課題と致しましょう
904 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/01(火) 01:32:31.26 ID:6VVHTsuSO
すいません「ともだち記念日」の作者ですが
確か大賞は総得票数の一番多い作品だったのではないでしょうか?
だとすれば大賞は「こなたの命日」という事になりますが

あとお題部門は同数で一位のようですので、「記念日カレンダー」の方も部門賞となるのではないでしょうか
905 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/01(火) 01:43:27.66 ID:ya1SOeoS0
失礼しました。

コンクール大賞
エントリーNo.06:ID:MThDHAAAO氏:こなたの命日  17票

二位
エントリーNo.04:ID:7jZue2hu0氏:ともだち記念日 13表




部門賞

お題
エントリーNo.04:ID:7jZue2hu0氏:ともだち記念日
エントリーNo.05:ID:qrnniBiz0氏:記念日カレンダー


ストーリ
エントリーNo.06:ID:MThDHAAAO氏:こなたの命日

文章
エントリーNo.04:ID:7jZue2hu0氏:ともだち記念日


済みませんでした。再修正の結果こうなりました。まことにすみませんでした。
906 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/01(火) 01:45:53.58 ID:atD0YVXAO
大賞はともだち記念日でいいんじゃない


票もおかしいし
907 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/01(火) 01:54:38.40 ID:ya1SOeoS0
確かに票はおかしい。しかし各票に差があった場合については想定していませんでした。
今回はそのまま単純に計算しした結果を採用します。
908 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/01(火) 02:09:20.84 ID:ya1SOeoS0
なんか主催者失格のような気がしてきた。
日時は間違える。大賞作品を間違える。間違えだらけでした。
暫く自粛します。

909 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/01(火) 02:41:16.58 ID:atD0YVXAO
いや、主催者は悪くないさ

ただ俺はこんな終わり方で胸糞悪いけどな


自分の作品に票入れていいなら誰だって大賞取れるだろ…
910 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 04:06:26.00 ID:mxtRCQ440
真相わからん以上どうしようもないしな。不正の確証もないわけだし
次回も続くようなら対策も必要だろうけど、それもないだろう
真っ当にやらにゃ気持ち良くなれんしなー

主催の方に落ち度はないと思う。20回やってきて初めてのことだしね
これからも自粛せずに投下して下さいw読者として楽しみにしてるので

なにはともあれコンクールお疲れでした

あと、みゆきとあやのとあきらの競争は面白かったぜ
911 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/01(火) 12:54:24.64 ID:6VVHTsuSO
−今年もやってきた−

そうじろう「…うぅ」
パティ「パパさんナニかありましタカ?チョーシわるそうデスガ」
こなた「お父さん花粉症なんだよ。今年は特に多いって話だからねえ」
パティ「そでしたカ」
ゆたか「なってないとわからないって言うけど、大変そうだよね…」
そうじろう「…もう殺す」
ゆたか「…え…な、なに?」
そうじろう「スギの野郎共ぶっ殺してやらぁぁぁぁぁぁぁっ!」
パティ「パパさんごランシン!?」
ゆたか「お、おじさん落ち着いてー!」
こなた「とりあえず鼻水飛び散らせないで欲しい」
912 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/01(火) 23:04:45.31 ID:ya1SOeoS0
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ここまでまとめた

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>>910
自粛はコンクール主催です。投下は普段どおりする予定です。
とりあえずポリエステル作成中。
913 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/02(水) 12:06:49.25 ID:m2uxbdiSO
しっかしこの投票わざとばれるようにやってるとしか思えないけど
バカにされてるんかねえ
914 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 12:21:43.80 ID:P4f0EkTbo
投票形式の設定とかどこか間違ってたのかもね
915 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/03(木) 03:15:44.60 ID:YDZfsvlAO
それはないだろ
まぁ俺はもうコンクールに参加するのは止めるよ
とりあえずあの作者は二度とここに来るな
916 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/03(木) 12:08:42.94 ID:6Uta9fDSO
やったのは参加者じゃないと思うよ
流石にあんなバレバレのはコンクール結果とか気にしてない人間の悪戯でしょ
917 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/03(木) 12:11:48.88 ID:0IBQnkvxo
結局まつり姉さんスルー・・・
918 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 13:24:00.15 ID:8cpcT18AO
というか、
管理者が投票者のIPアドレスを見ればそれで解決じゃね?
919 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/03(木) 22:47:58.01 ID:c4Styg7x0
コンクール主催者です。
投票形式が甘いのを選んだのが悪かったようです。
勉強不足でした。

投票形式が厳しいものでもアドレスを二つ以上持ってる人がいれば同じ事ができてしまう。
結局いたちごっこですね。

そう考えると過去のコンクール投票も絶対公正かと言われればそうでもないのかもしれない。
920 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/03(木) 23:34:10.12 ID:6Uta9fDSO
ここまであからさまなのは過去無かったと思うぞ

いや、お題投票かなんかで一回あったか?
あの時は怪しい票を削除して集計したんだっけか
921 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/03(木) 23:46:26.23 ID:6Uta9fDSO
あと簡単だからやったんだと思う
過疎ってるんだし手間かけてこんなことやるやついねえと思うぞ
922 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/04(金) 01:40:00.80 ID:DKeO+aA40
か「こなたってどうして陵桜に入学したの?」
こ「う〜んとねぇ」
か「ふんふん」
こ「制服が可愛いから」
か「へぇ〜意外な理由ね」
こ「ってお父さんが言ったから」
か「マジすか!?(何かすごい危険な気がする…!)」
923 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/04(金) 08:33:36.30 ID:y5dR/ZwI0
コンクール主催者です

コンクールの投票に関してはもうこれ以上追求しません。
週末には投票所も消します。
自粛するといいましたがまた主催をするかもしれません。
その時はよろしくお願いします。

以上
924 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/04(金) 23:34:39.99 ID:sa4EbRC70
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ここまでまとめた

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925 :やみなべ! [saga]:2011/03/06(日) 19:49:43.42 ID:+CavUcrAO
>>924乙です。

投下いきます。



…いつか、こんな日がくるんじゃないのではと、考えていなかったわけじゃない。
高校を卒業して、私達四人は違う道を歩みだした。それは、何時合流するのかも何時離れていくかもわからない道。
…つまり、どんな人と付き合いができたりするのかとかも、どんな影響を受けるのかも、もはやわからないのだ。

私達四人と他数名が集うこの暗い部屋の中で、そんなことを考えていると、私達を集めた主催者である妹ーつかさが宣言した。

「闇鍋はじめるよ〜」


『やみなべ!』
926 :やみなべ! [saga]:2011/03/06(日) 19:51:10.23 ID:+CavUcrAO
いつか誰か「やろう」と言い出すんだろうなぁと思ってた!けどてっきりこなたか日下部だと思ってた!
まさかつかさが言い出すとは思わなかった。何でも「ある意味一回経験して損はないから」と奨められたらしい。…卒業してからこの子、一体どんな人と専門学校で知り合ったのよ。
「なんで峰岸まで賛同してるのよ…」
「だって楽しそうじゃない。不思議と食べられる物になる事が多いなんて聞いたら」
「大丈夫だよかがみん。ちゃんと食べられるものしか入れてないし」
「そうそう。薬味(胃薬)つかうか?」
「あんたたちは黙ってろ悪乗りコンビ!」
「一応、秘密兵器(カレールー)は持ってきたっス。いざとなればコレに頼れば何とかなります」
…ちなみに何故かこの場に田村ひよりさんがいる。こなた曰く、部活でやった事のある経験者だからだそうだ。

「それでは、今回の闇鍋のルールを説明させていただきます。闇鍋の基本は

1:全員で材料を持ち込む
2:それを暗い部屋で鍋に投入し煮込む
3:煮込み終えた品を食す

となっています。よく

4:一度箸をつけたら必ず食べなければならない

と言いますが、これは公式ではなくローカルルールです。
今回はそのルールも採用しています。また、今回は一人一品以上入っています。箸を入れる順番は峰岸さんから時計回りにお願いします」
「みゆき、それだとつかさが最後になるんだけど」
「主催者でもあるつかささんに鍋の煮加減をみてもらいましたから、つかささんは鍋の中身を知っています。ですから公平を期すためにこの順番となりました」
そういえば蓋開けて中をみてたっけ。
「誰が何を持ってきたのかについては、その品を誰かが食べた時でよろしいですか?」
「変なものだったら容疑者は二人に絞れるんだけどね」
「だからちゃんと食べれるものだって。信じろよ柊ぃ」
「信じられん」
「あやの〜柊が冷たい〜」
「大丈夫よ柊ちゃん。お菓子じゃないのは確認してあるから」
なら安心ね。峰岸が確認しているのなら。
「それじゃ電気消すよ〜」

927 :やみなべ! [saga]:2011/03/06(日) 19:51:57.12 ID:+CavUcrAO
〜一周目〜

最後のつかさが取ったのは…唐揚げ?確かに食べ物だけど、鍋に入れるものじゃないだろ。
「あ、それアタシだ」
「日下部の?アンタにしちゃまともね」
「だから大丈夫って言ったじゃんか。それよかアタシのコレなんだ?」
「麩かな?にしちゃ形がおかしいけど」
「多分、私がいれたサンドイッチのパンだね」
「泉ちゃん、サンドイッチ入れたの?じゃ私のはそのハム?」
何入れてるんだこなた。というかそのハムもおかしいし。
「ハム?変だね、私BLTサンド入れたはずなのに」
「ハムは私っス。前の余りで」
前って言うのはアニ研でやった時かしら?

「田村さん、この米粒見たいなのは何?ハムについてるんだけど」
「それはわからないっス。おにぎりでも入っているのでは?それより私の…豆腐が途中で崩れて取れてないんですが」
「豆腐は私です。すみませんが取り直しは無しなので…次まで我慢して下さい。私のお肉はどなたですか?」
「それ私だよ。こなちゃんは何」
「もち巾着だね。かがみでしょ」
「…よくわかったな」
「ベタな鍋の具入れそうなの、みゆきさんかかがみくらいだもの」
…ちなみに私はアサリの佃煮だった…

928 :やみなべ! [saga]:2011/03/06(日) 19:52:27.55 ID:+CavUcrAO
〜二周目〜

「ネギかぁ。これもお姉ちゃん?」
「あ、それは私」
「あやちゃんのかぁ。…あやちゃんのそれ、トマト?」
「BLTサンドのだね。私のはマグロの刺身かな?…色が気味悪くなってるけど」
「あの、つかさ先輩?なんでもぅ麺を入れてあるんですか?というか私麺1本だけなんですか?」
「すみません、交換とかは無しなので…私も御飯粒のみですから」
「誰よおにぎりなんて入れたの」
というかこの鍋、既に麺入りおじやと化しているのか。
「おにぎりじゃなくて、みさちゃんが持ってきた唐揚げ弁当の御飯じゃないかな」
「ん、そうなのか?御飯ものって誰もいねぇの?」
おいまて、今弁当って言った?鍋に弁当?
「そうだけど?だって菓子類は禁止されてっからさ、できるだけウけ狙いしようとしたら弁当になったんだ。で、安かったこの唐揚げに」
「最初は釜飯のつもりだったんだよね…柊ちゃんはソレ、ホタテ貝?缶詰めのかな」
うん、峰岸は頑張ったのね。わかったわ。しかしなんでまた…。

929 :やみなべ! [saga]:2011/03/06(日) 19:53:52.34 ID:+CavUcrAO
〜三周目〜

おいこら。さすがに三回連続は言わせてもらうわよ。
「さっきから私が取るのが貝類ばっかりなんだけど、誰が持ってきたの?」
今度はミル貝?私が貝類を嫌いなのはみんな知ってるはずよね。
「こなた、アンタ?」
「私じゃないよ。サンドイッチの他には白菜とホウレン草のおひたしなんだから。みさきちじゃない?」
「アタシは唐揚げ弁当だけだぞ」
「私は麺とネギとトナカイのお肉だし…ひーちゃんは?」
「私は兎肉とマグロとカボチャだけ」
「ちなみに私は豆腐とキノコ類とどじょうです。…母が羊羮を持っていくよう言っていたのですが無視しました」
…つまり貝類をもってきたのは…
「田村さん、どうゆうつもり?」
「というか皆さんが持ってきてる物にはスルーっスか?!トナカイとか兎とか言ってますよ!それにどじょうって!ほら私目があっちゃいましたよ!」
「何言ってるのよ!トナカイって北欧じゃ普通に食べてるし兎のサンドイッチもあるじゃない!柳川鍋がどじょうって知らないの!」
ちなみにラクダも美味しいらしいわね。トナカイは通販で輸入できるのよ。ロシアとかから。
「そんな事より貝を持ってきた方が大問題よ!人の嫌いな物を入れるなんて常識を疑うわ!」
「柊先輩の食の常識はグローバルなんですか?!その常識はどこの国の常識なんすか!」
「いやかがみ…トナカイは普通ひくと思うよ」
「てことはさっきあやのが食ったのが兎肉だったのか…」
こなたと日下部が何か言ってるけど、無視させてもらうわ。
「なんで貝を持ってきたの」
「じ、実は…カレールーを買いにいった時に」


『あら、田村さん』
『あ、お久しぶりっス』
『買い物?…その材料にカレールーって、何を作るの?』
『いえ、実は知り合いの先輩方と闇鍋を…』
『…それでカレールーなのね。ふぅん、それって柊かがみさんって人と?』
『ええ。お知り合いなんスか?』
『そう。だったらコレを持っていって』
『え、コレって』
『代金は私が払うから。必ず入れなさい』

930 :やみなべ! [saga]:2011/03/06(日) 19:57:00.21 ID:+CavUcrAO

「…という事がありまして。その人の差し入れっス」
「ほほぅ」
誰かしら?そんな厄介な真似してくれる奴って。話からすると、アニ研の人でもなさそうだけど。
「その人の名前は?」
「永森やまとさんです」
…誰?知らない名前だ。けど何故だろう、心底納得が行く。まるで「我関せず」な感じに頼み事を断り続けられたような相手に感じる。一方的に話を打ち切って、帰れと言われた気分になる相手だ。そうか、そいつなのか。
「あの女ぁ…やっぱりあの時深呼吸せず殴るべきだったかしらね」
「どういう関係なんスかお二人は」
「例えるなら、非協力な転校生とそれにむかつく隣のクラスの人ね」
「意味わかりません」
「とにかく田村さん、罰としてこの鍋が余った場合、一人で食べてね」
「えぇ!!」

問答無用。入れたことへの罰はしておかないとね。
私は目をつむり、貝を丸飲みしながらどうやって永森やまとに復讐しようかを考え始めた。


以上です。某ゲームやっていたら書いてみたくなった。後悔ならしてる。
931 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/07(月) 23:37:37.19 ID:ptvKvA8C0
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ここまでまとめた

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>>930
闇なべとは変わった趣向ですね。面白かったです。
932 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/13(日) 19:42:33.65 ID:jyKo2sIIo
俺も文才があれば書いてみたいな
933 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/13(日) 21:30:11.00 ID:JsghWtfu0
>>932
書こうと思えば書けるよ。
実際自分も文才なんかなくても書いている。
934 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/14(月) 01:42:53.21 ID:/J8Dky+SO
このスレの住人は大丈夫だったのかな…
935 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/14(月) 16:13:21.15 ID:+wcQgisA0
このスレはどの作品が誰の作品かって特定していないからね。
いつもコンクールすると8〜10作品来るから
20人以上は作者は居ると思う。
読者や愛好家はぜんぜん分からないですね。
936 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山梨県) [saga]:2011/03/15(火) 21:42:12.29 ID:imKPfYxc0
  /⌒ヽ
  / =ω=)すいません、ちょっと通りますよ・・・
  |    /
  | /| |
  // | |
 U  .U


かがみ「ぶっ」
かがみ「なんだその恰好は!」

  /⌒ヽ
  / =ω=)歩ける寝袋だよ〜。備えあれば憂いなし
  |    /
  | /| |
  // | |
 U  .U

かがみ「そうか」
937 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/16(水) 04:32:33.07 ID:GgfoJfUSO
自分は月に1度くらいしか来ないけど、SSは全部読んでる

つかさが好きなので、おまじない(呪い)の話、狐の話、パソコンでタイムスリップする話とかを書く人のがお気に入り
キャラ達の口調に違和感があるけど、個人的に感情移入しやすい文章というか

もちろん他の人のも好きだから定期的に来てるんだけども

住人の皆、これからもらき☆すたを大好きでいてくださいね
小ネタ含め、次回作も期待してます
938 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/16(水) 19:14:18.91 ID:6c3VTPcSO
−身近な…−

いずみ「なんか、兄妹ものが流行ってるわねー」
ひより「そうだねー…わたしはちょっとピンとこないけど」
いずみ「…これはあれかしら。そろそろわたしもお兄ちゃんがお風呂に入ってる時に、間違えて入っちゃうようなイベントを起こすべきなのかしら」
ひより「ヤメタホウガイイトオモイマス」


つかさ「お姉ちゃん、それ新しいラノベ?…お兄ちゃんがどうとかすごいタイトルだけど…」
かがみ「まーね…ふーむ」チラッ
まつり(な、なに…?)
いのり(急に悪寒が…)
かがみ「姉…ってのも悪くないかもね」
つかさ(お姉ちゃんの守備範囲が広がってる!?)
939 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2011/03/17(木) 21:06:29.27 ID:lcVe7V3T0
>>937
キャラの口調に違和感があれば多分それは全て自分の作品だと思う。これは前々から指摘されていたし自覚もしている。
だけど一向に直る気配はない。これでも意識はしているつもりです。
おそらく口調が違ってしまうのは自分の持つらきすたキャラのイメージが自分の中で固まってしまった為だと思います。
それが原作のそれと違ってしまったのでしょう。それでも気に入って頂けるのであれば嬉しいです。

 前置きが長くなりましたが投下します。お題『ポリエステル』で書いた。多分このお題で最初の作品になると思います。
いろいろ考えてこの作品になりました。あまりお題を意識しないで読んでくれると嬉しいです。
940 :いのり姉さん 1/10 [saga]:2011/03/17(木) 21:09:11.99 ID:lcVe7V3T0
 いつもの生活。いつもの風景。そして住み慣れた家。平和な我が家、柊家。そう、あいつが来るまではそうだった。でも、あいつがきてから我が家は困り果てている。
でもあいつのせいで私たち柊家は変わった。


まつり「またやられたよ」
憤るまつり姉さん。
みき「私も」
相槌をするお母さん。
ただお「この前は盆栽をひっくり返された、もう許すわけにはいかん」
さすがのお父さんも憤慨している。そして、私も。
かがみ「私もぎょぴちゃんを食べられそうになった、これは私に対する挑戦ね」
まつり「ぎょぴちゃん?……ああ、金魚ね、私なんか洗濯物にオシッコ引っ掛けられた、もう許さないんだから!!」
ここ数週間くらい前に近所に野良猫が住み着いた。住み着くだけなら誰も文句は言わない。しかし数日前から家の裏庭に来ては糞尿を撒き散らし、悪戯の限りを尽くしている。
寛容な柊家もさすがにこれ以上野放しにはしておけなくなった。それでこうして家族会議をして野良猫をどうするか話し合っていた。

みき「ご近所にも相談してみたのだけど、あの猫は他所では悪さはしていないそうよ、協力はしてくれそうだけど、やっぱり追い出すしかないわね」
まつり「少なくとも裏庭に入れないようにしないと」
ただお「猫の入りそうな壁には園芸用の網を張ればなんとかなりそうだ」
かがみ「それじゃダメよ、猫は高い塀も飛び越えられるのよ、それだけじゃ生ぬるいわ」
喧々諤々の意見が飛び交った。それでも決定的な対策は出てこなかった。さすがに案が出なくなってきた。そんな時だった。
まつり「姉さん、つかさ、さっきからずっと黙ってるけどやる気あるの?……少しは対策案だしてよ」
いのり・つかさ「えっ……」
意見に夢中で気が付かなかった。たしかにいのり姉さんとつかさはさっきから私達の意見を聞いてばかりで何も発言していない。私達は二人に注目した。
しかし二人は何も言わなかった。
みき「二人ともしっかりしてもらわないと、この前だってつかさの下着がビリビリに破られていたのよ」
いのり「そんな事言っても私は実際に被害を受けていないから、あまり実感がない」
みきはため息をついた。
つかさ「……あまり猫さんのせいにしちゃいけないような気がするけど……」
まつり「甘い、甘すぎる、つかさは、だから野良猫が図に乗るんだ……つかさ、あんたもしかして餌付けしてないでしょうね、最近家ばかり来るようになった」
まつり姉さんはつかさに詰め寄った。つかさは大きく首を横に振った。
まつり「……どうだか怪しい」
つかさを疑いの目で見ている。今はそんな事をしている時ではない。
かがみ「そんな事よりこれからどうするのよ、野良猫は待ってくれないわよ」
私は話を元に戻した。
いのり「それならペットボトルに水を入れて玄関とか猫の来そうな所に置くのはどう?」
まつり「……それいいね、お父さんの網を張るのと併用すれば来なくなるかも」
ただお「やってみるか……」

 結局一番無関心ないのり姉さんの一言で対策が決まってしまった。私自身はあまり有効な手段とは思えなかったが他に良い案が浮かばなかったので賛成するしかなかった。
会議が終わると各々自分の部屋に戻っていった。ふと私はつかさの顔を見た。何か俯いて元気が無い感じだ。まさかまつり姉さんの言っているのが本当なのか。
私もつかさを疑った。これが本当なら止めさせないといけない。暫くしてから私はつかさの部屋に向かった。
941 :いのり姉さん 2/10 [saga]:2011/03/17(木) 21:10:42.47 ID:lcVe7V3T0

 つかさの部屋に入った私は早速聞いた。
かがみ「つかさ、もしかしてあの野良猫に餌付けしてるんじゃないでしょうね」
つかさ「やっぱりお姉ちゃんも同じ事言うんだね……」
つかさにしては珍しく反論をしてきた。
かがみ「私だって疑いたくない、だけど家族でそんな事をするのはつかさくらいじゃない」
つかさ「そうだね、そうだよね、あのネコさんを最初に見つけたら私だってそうしたかもしれない」
かがみ「最初、最初ってどういう意味よ」
つかさは暫く黙り込んでしまった。私はつかさを睨み付けた。
つかさ「……やっぱりお姉ちゃんには隠せない」
そう言うと一回深く呼吸してから話した。
つかさ「餌付けしてるのはいのりお姉ちゃんだよ」
つかさの言葉が信じられなかった。いのり姉さんが猫を可愛がるなんて。動物はそんなに好きではなかったはず。しかも野良猫なんて。
かがみ「それでいのり姉さんを庇ったの?」
つかさ「そうゆう訳じゃないけど……私もきっと同じ事をしたから、何となく……」
これ以上つかさを問い詰める事が出来なかった。
かがみ「なるほどね、これでいのり姉さんがあの案を出したんだな」
つかさ「案ってペットボトルで追い出すって言った?」
私は頷いた。
つかさ「いのりお姉ちゃんは私達の為に大事にしていた猫さんを追い出す決意をしたんだね……」
かがみ「いいや、その逆よ、いのり姉さんは追い出すつもりなんかないわ」
つかさは驚き不思議そうな顔で私を見つめた。
つかさ「どうして、水の入ったペットボトルを見ると猫は怖がるんじゃないの?」
かがみ「バカね、それは都市伝説みたいなものよ、そんなので猫が怖がるわけがないじゃない、つかさは見たの、猫がペットボトルを怖がっている姿を」
つかさ「……ないけど、お姉ちゃんは見たの、猫がペットボトルを素通りする姿」
見てはいなかった。しかし確信はある。そしていのり姉さんもペットボトルで猫が怖がらないのを知っている。それあの案を持ち出して私達の怒りをやり過ごそうとしている。
つかさとの話でそう私は結論した。
つかさ「お姉ちゃん……この事、皆に話すの?」
つかさは小さな声で私に質問した。私はその質問の意味を理解した。こんなのは話すまでもない。
かがみ「どうせ効かないのはすぐにばれるわね、その時にでも話すわよ、でも、それまでにぎょぴちゃんが食べられちゃったら元も子もない、金魚鉢にでも避難させる」

あれから二週間が過ぎた。私の予想とは裏腹に猫はすっかり鳴りを潜めた。裏庭に来た様子が全くなった。まさかあれだけで猫撃退が出来たとでも言うのだろうか。
未だに信じられない。しかし結果が全てを証明していた。
まつり「凄い効果ね、あれからあの猫一回も庭に来ていない、かがみも金魚元に戻せそうだよ」
かがみ「どうかしら、一ヶ月くらいしないと安心できない」
負け惜しみか。自分で心の中でそう呟いた。
しかしこれが本当だとするといのり姉さんは餌付けまでして可愛がった猫を自ら追い出した。そんな事が簡単に出来るものなのか。それとも一時の気まぐれか。
それが事実なら私はいのり姉さんを軽蔑する。猫の、生き物気持ちを弄ぶなんて。

942 :いのり姉さん 3/10 [saga]:2011/03/17(木) 21:12:07.05 ID:lcVe7V3T0
 
つかさ「お姉ちゃん、あれ……」
つかさが居間の窓を指差している。私はつかさの指差す方を見た。庭の植え込みに一匹の猫が座っている。そう、あの悪戯猫だ。尻尾の先が黒いのが特徴。
一度見たら忘れなれない猫だ。
猫対策をしてから三週間目の休日だった。もしかしたら確かめられるかもしれない。
つかさ「猫さんが入ってきちゃった……追い払う?」
かがみ「シー」
私はつかさを猫が気付かない位置まで呼び寄せた。私達は猫を観察することにした。猫は水の入ったペットボトルの壁をじっと見つめている。猫はご自慢の尻尾を左右に
揺らしている。いい気なものだ。4,5分くらいしただろうか。猫は立ち上がりペットボトルを背にして引き返してしまった。猫はペットボトルを越えなかった。
つかさ「ほら、言ったとおりでしょ、猫さんは怖いんだよ」
自信満々のつかさ。別に賭け事をしていた訳じゃない。悔しくもなければ怒りも湧いてこない。しかし少なくともあの猫に関して言えばペットボトルは有効だった。
これは認めるしかなさそうだ。なんだろう、このやり切れない気持ち。猫に対してではない。いのり姉さんに対してだ。

みき「丁度良かった、これをいのりに渡してきて」
お母さんは私達をみつけるとお守りの入った箱を差し出した。
つかさ「分かった、行って来るよ」
つかさは箱を受け取ろうとした。
かがみ「私が行って来る」
お母さんから箱を受け取った。
つかさ「え、いいの、この前お姉ちゃんが行ったから今度は私の番だよ」
かがみ「ちょっと気晴らしに外に出たくなった、ついでに渡してくる」
いのり姉さんとは二人きりで話したい。あの猫をどう思っているのか直接聞く。それしかこのもやもやした感情を消す事はできない。

 飼い主の途中放棄。私が一番嫌う行為だ。子供でもそのくらいは知っている。いのり姉さんはそれをしようとしている。許せない。猫を飼いたいのならそう言えば良い。
追い出された猫は路頭に迷う。きっと野垂れ死にだ。たとえ生き残っても他の家で同じ悪戯をして迷惑をかける。
お守り売り場にはまつり姉さんしかいなかった。私はお守りの箱をまつり姉さんに渡した。
かがみ「いのり姉さんは?」
まつり「あれ、会わなかった、ついさっき帰ったけど……」
行き違いになったのか。それなら夕方家族が集まった時にでもいいか。
かがみ「それじゃ私も帰るわ」

帰り道。神社の鳥居を出ようとした時だった。私の正面から歩いてくる猫の姿を見た。尻尾の先が黒い。あの猫だ。猫はそのまま私を通り過ぎ私の来た道を戻るように神社の
境内に入っていった。私はある程度の距離を保ちつつその猫の後を追った。
猫は神社の奥の方に入っていった。普段は人が来ない所だ。林道を抜け広場に出た。そこにいのり姉さんが居た。猫はいのり姉さんを見つけると駆け足で近づいて行った。
『にゃー』
猫はいのり姉さんの足に絡みつくように擦り寄った。いのり姉さんはしゃがむと猫を優しく抱きかかえた。
『ゴロゴロ』
嬉しそうに喉を鳴らす猫。いのり姉さんを信頼しきっている様子だ。いのり姉さんもまるで子供をあやす様だ。飼い主と飼い猫の良く見る光景だ。
いくら餌付けをしているとはいえ数週間でここまでの関係になれるのか。まるで仔猫から育てたような感じすらする。私はいのり姉さんに近づいた。いのり姉さんは気付いた。
驚くわけでもなくいのり姉さんは私の方を向きながら猫をあやし続けた。
いのり「かがみ……つかさ意外に見られるなんて……」
かがみ「その猫が案内してくれたわよ」
いのり姉さんは黙って猫を撫でている。猫は目を閉じて今にも眠りそうだ。やはり私から聞かないと何も言いそうにない。
かがみ「その猫がどんな猫なのか、姉さんなら分かるわよね、私が納得できる説明をして」
いのり姉さんは困った顔をした。
かがみ「私がこの神社を出ようとしたとき、その猫が境内に入って行った、目的が決まっているように、何かを求めるようにね、思わず追いかけたら姉さんが居た」
猫はいのり姉さんの腕の中で寝てしまったようだ。いのり姉さんは観念したみたいだ。ゆっくりと話し始めた。

943 :いのり姉さん 4/10 [saga]:2011/03/17(木) 21:13:32.62 ID:lcVe7V3T0
いのり「十年前、そう、もうそんなになるかな、かがみ達はまだ小学生、私が中学の時だった、神社に捨てられた仔猫を見つけた、しっぽの先が黒い仔猫……だった」
十年前、姉さんは十年も前からこの猫を知っている。信じられない。私はこの猫を初めて見たのは数週間前だった。
いのり「見て直ぐにその猫が気に入ってね……タマって名づけたよ、私は抱きかかえてタマを家に持ち帰った、そしてお父さんとお母さんに言った『この猫を飼いたい』」
姉さんはそのまま黙ってしまった。私にはその答えが分かった。願いが叶ったならその猫は家の猫になっていた。
いのり「『ダメ!!』この一言だった、泣いて頼んでも聞いてもらえなかった……今思えばつかさを利用すればよかった、でもその時はそんな知恵なんか無かった……
    私は猫を抱いたまま家を飛び出した、神社で私は何時間も泣いていた……」
姉さんはタマを胸元まで抱きかかえた。その時の悲しさが私にまで伝わってきそうだ。
いのり「そんな時、私に声をかけてきた人が居てね、事情を話すとタマを飼ってもいいよって言ってくれた……それが山田さん」
かがみ「山田さんって隣町の?」
姉さんは頷いた。山田さん隣町の地主さんでよく神社の寄付をしてくれる人。家から1キロ位はあるだろうか。
いのり「いつでも会いに来て良いと言ってくれた、私は毎日のように山田さんに家に行ってタマの世話をした、何時しかタマはこの神社にまで遊びにくるようになってね、
    ここでいつもタマと遊んだものね……」
かがみ「知らなかった、今まで内緒にしていたなんて、どうやって十年も秘密にしていたの?」
いのり「知らない、秘密にしようとしてはいたけど、特に何もしていない……でもタマは何故か家に来ようとはしなかった、そのせいかもね」
それがどうして数週間前から来るようになったのだろう。分からない。
かがみ「その利巧なタマが最近になって悪さをするようになった、姉さん、何かしたんじゃないの?」
いのり「そうね、一つだけ思い当たる事がある」
かがみ「それは?」
いのり「私ね、一ヵ月後に結婚する」
私は言葉を失った。初めて聞いた。相手は誰。何故今まで黙っていた。そんな素振りも一回も見せてはいない。
かがみ「け、けっこん」
姉さんは少し微笑んだ
いのり「まだ、お父さんやお母さんにも言っていない、もちろんまつりやつかさにもね、まさかかがみに最初に言う事になるなんてね、
彼は、仕事でちょっと遠くに行く、私も行く事になる、タマにそれが分かってしまったのかもしれない」
かがみ「相手は誰なの、何処に行くのよ、何故黙っていたの、そんなのいきなり言われても私はどうしていいか分からない」
動揺している私に姉さんは諭すように話した。
いのり「相手はかがみの知らない人、行き先はヨーロッパとだけ言っておく……何故黙っていたか……何故かしらね、何より嬉しい事なのに、皆に話したかったのに……」
タマは姉さんが遠くに行くのが分かった。だから家にまで来て悪戯までした。それで姉さんを止めようとした。私達家族でも気付かなかったのに何故タマには分かる。

944 :いのり姉さん 5/10 [saga]:2011/03/17(木) 21:14:48.57 ID:lcVe7V3T0

 猫や犬と人間の付き合いは長い。有史以前まで遡る。野生の猫は人間と共に生きる選択をした。餌をくれるから。人間も数ある野生の動物から猫を選んだ。
ネズミを獲ってくれるから。最初はその程度の関係だったかもしれない。時が流れ次代がかわるにつれて猫は人間を理解するようになる。
もちろん人間の言葉なんかわかるわけは無い。だから微妙な表情の変化、もしかしたら匂いなんかで人の心を読むのかもしれない。人の心が分かれば
付き合い方も分かる。こうして猫は人間社会に溶け込めた。
タマにとって姉さんは居なくなっては困る存在。いのり姉さんの微妙な変化をタマは感じ取った。私達家族にも分からないような微妙な変化を。
いのり「家で悪戯したのは私を結婚させたくなかったのかな、ふふ、暫くここに来なかったから……でも、こんなに甘えてくるのはここ数年なかった、
    そこまでして私を行かせたくないみたいね」
タマを優しく撫でる姉さん。その時。裏庭でペットボトルを見つめるタマの姿が脳裏に浮かんだ。タマはペットボトルを越えようとはしなかった。
私はタマの心が分かったような気がした。
かがみ「猫が水の入ったペットボトルなんて怖がらないのを知っていて私達に提案したでしょ?」
いのり「知っていた、知っていたけど私はもうタマとは一緒に居られない、だから少しでも遠ざけようとした……だけどタマは諦めなかった……
    こんなに甘えて私を止めようとしている……もうタマは高齢、タマが亡くなるまで結婚を延期してもいい」
姉さんの目が潤んできた。そう、姉さんが提案したペットボトル作戦。庭に置かれた沢山のペットボトル。それでタマは理解した。姉さんがこの町を去ろうとしているのを。
かがみ「タマは姉さんを止めに来たんじゃない、お別れを言いに来た」
いのり「何故」
姉さんは私を見て怒り気味に言った。私にタマの何が分かるのかと言いたげだった。私もそれに答える。
かがみ「タマはここに来る前に家の庭に来た、タマはペットボトルを越えずに引き返して姉さんの居る神社に向かった、怖がったフリをしたのよ、
    姉さんがこの町を去るのを分かっていた、だからそうやって思いっきり甘えて最後のお別れをしている、私はそう思う、きっと明日からは
    この神社にも、家にも来ないと思う、結婚を延期したりしたら、それこそタマは暴れるわね」
姉さんはタマを抱いたまま泣き崩れた。タマは眠ったままだった。猫の十歳は人間に例えるとかなりの歳だろう。山田さんの家からここまでの距離を移動すればその疲労は
辛いに違いない。姉さんとタマ、最後の時間を邪魔するのはもういいだろう。
かがみ「結婚の話を私はしない、姉さんの口から皆に話して」
私はそっとその場を後にした。

 いのり姉さんが結婚だって。驚き半分。当然が半分って所か。もうとっくに結婚してもいい歳だ。内心このまま結婚なんかしないと思っていた。
柊いのり。柊家四姉妹の長女。歳が離れているせいかつかさやまつり姉さんに比べると一緒に遊んだりした覚えは殆ど無い。気が付いた時からお姉さんだった。
まつり姉さんと喧嘩している時、真っ先に止めに入るのはいのり姉さん。弱気なつかさを励ましていたのは私よりいのり姉さんの方が多かったかもしれない。
そんな弱気なつかさも中学までか。こなたとみゆきが友達になってからは見違えるようになった。こなたとみゆきの影響も大きいがいのり姉さんが励まなさなければ
こなたとみゆきはつかさの友達になれなかったかもしれない。

 気が付くと私は家に帰っていた。自然と裏庭に向かっていた。園芸用ネットと水の入ったペットボトルが今となっては空しいだけだ。
そういえば私は姉さんに祝福の言葉を言っていなかった。なぜか祝う気持ちにはなれなかった。猫を飼っていたのを黙っていたから、結婚する姉さんへの嫉妬心か、
家を離れてしまう淋しさからか、素直になれない。タマが庭で悪戯をした心境が分かったような気がした。そして、そんなタマは姉さんの別れを決意した。
私は庭に置かれたペットボトルを片付け始めた。
つかさ「どうして……お姉ちゃん」
私を不思議そうに見ていた。
かがみ「もうこれは必要ない」
つかさ「でも、また猫さんが来たらどうするの」
かがみ「もうタマは二度とここに来ない」
つかさ「えぇ、お姉ちゃん、その名前どうして知ってるの」
つかさは驚いた。しかし私は何も言わない。そんな私を見て何かを感じたのかつかさは二階に行った。暫くするとつかさは私の部屋から金魚鉢を持ってきた。
つかさ「池に戻してもいい?」
私は黙って頷いた。
つかさ「うわー、元気に泳いでる、やっぱり大きい池の方が嬉しそうだよ」
つかさはそう言うとお父さんが仕掛けた園芸用の網を片付け始めた。

945 :いのり姉さん 6/10 [saga]:2011/03/17(木) 21:16:19.88 ID:lcVe7V3T0
 
 夕方になっていのり姉さんが帰ってきた。家族全員が居るまで姉さんは自分の結婚の話をし始めた。皆は動揺した。お父さん、お母さんは叱り付けて怒った。
まつり姉さんは呆れた顔で姉さんをみていた。つかさは放心状態。それぞれが姉さんに辛く当たった。それを見てまたタマを思い出す。家族それぞれ態度は違うけど
同じような反応になる。まつり姉さんもこれが分かっているから言い出せなかった。そんな混乱の中、私はもう心の整理がついた。
かがみ「姉さん、結婚おめでとう」
その言葉に皆は次第に冷静さを戻した。そして祝福ムードへと変化していった。
 
 二ヵ月後。
つかさ「それじゃお姉ちゃん行こう!」
かがみ「そうね」
先月いのり姉さんは旦那さんとヨーロッパに行ってしまった。空港での別れの時のつかさの泣きじゃくりぶりは周りの人々の涙を誘った。そんなつかさも今では普通に戻っている。
今日はわたしとつかさで山田さんの家へ今までタマをを育ててくれたお礼に行く予定をしていた。私達は歩きながら話した。
かがみ「つかさはタマをいつ知ったのよ」
つかさは少し間を置いて話した。
つかさ「えっと二年くらい前かな、たまたま掃除しようとして神社の奥の方に行った時にいのりお姉ちゃんとタマちゃんが居たのを見つけた」
そうか、その時タマは山田さんの家で飼っているのを知ったのか。だからつかさはいのり姉さんが追い出そうとしても平然と居られたのか。タマには帰る所がある。
かがみ「そうだったの、それにしてもお父さんとお母さんが猫嫌いだったとは思わなかった、家ではもう猫は飼えないわね」
つかさ「それは違うよ」
かがみ「違う、違うってどうしてよ、いのり姉さんはタマを飼うのを反対されたじゃない」
つかさは空を見上げならが話した。
つかさ「私ね、お母さんに聞いたんだよ、あの時お父さんとお母さんは喧嘩してたんだって、だから素直に聞き入れられなかったって言ってたよ、いのりお姉ちゃんの
    一所懸命に猫を飼いたいって言ってた姿が今でも覚えているって言ってた、でもね、それが切欠でお父さんとお母さんは仲直りしたんだって」
頼むタイミングが悪かっただけないのか。つくづく不運だった。でもその不運を自分の力で乗り越えてタマを育て続けた。
かがみ「私、姉さんを誤解していた、いい加減で、ズボラでお調子者で……だからペットに対してもなんの責任も感じていないと思ってた、でもタマを見て分かった
    姉さんはいい加減でもズボラでもないってね」
つかさは無いも言わず微笑みながら空を見上げていた。

946 :いのり姉さん 7/10 [saga]:2011/03/17(木) 21:17:41.14 ID:lcVe7V3T0

つかさ「ごめんください」
山田さんに家に着いた。つかさは早速呼び鈴を押した。中から奥さんの浩子さんが出てきた。
浩子「いらっしゃい、つかささん……かがみさん」
浩子さんは少し暗いかをしていた。
つかさ「えっと、少し遅れてすみません、いのりお姉ちゃんが持ってきた猫のタマをいままで預かってくれて有り難うございました」
私達は深々と頭を下げた。
浩子「別に改まってそんなお礼なんかいらないよ、泣いているいのりさんを見ていたら放っておけなくてね、それに丁度あの時は猫を飼いたいと思ってたから
   お互いの利害が一致しただけ、お礼を言いたいのはこっちのほうよ、いのりさんは毎日のように家に来てはタマの世話をしてくれたからね」
かがみ「そうですか、それを知ったのもついこの間なんです」
私はお礼の品を手渡そうとした時だった。
つかさ「あの、タマちゃんに何かあったのですか?」
つかさは心配そうに浩子さんに質問をした。後から聞いたがつかさは弘子さんの口調が普段と違っていたと言っていた。私には全く分からなかった。
つかさの質問に浩子さんは言葉を詰まらせた。
浩子「その、タマがね……昨日息を引き取ったのよ」
つかさ「そんな……」
浩子「眠るように亡くなった……」
つかさは私の胸の中で泣き崩れた。
あの日以降タマは家にも神社にも来ていない。来なかったわけではない。病気で来られなかった。
違った、タマは姉さんと別れをしに来たわけじゃなかった。タマは姉さんに自分の死期が近いのを伝えに来た。それがタマの真意だったのか。
タマは姉さんと一緒に居たかった。それだけだった。
私は姉さんに、タマになんて事をしてしまったのか。私は姉さんに結婚を急がせてしまった。タマの寿命が数ヶ月だったら姉さんに言うように延期しても良かった。
私はタマの心、姉さんの気持ちなんて全く理解していない。
浩子「もう荼毘に付しているけど……祈ってあげて」
つかさ「是非そうさせて下さい」
つかさは私から離れると部屋の奥に走るように向かっていった。もともとこのお礼はつかさの提案だった。つかさのタマに対する想いも姉さんと同じ位なのかもしれない。
私が部屋に入るとつかさは既にタマの小さな骨壷の前で手を合わせていた。私はつかさの隣に並びつかさと同じように手を合わせて祈った。

947 :いのり姉さん 8/10 [saga]:2011/03/17(木) 21:19:39.60 ID:lcVe7V3T0

 帰り道、私はつかさに聞いた。
かがみ「私は姉さんに怒られるだろうね、まさかこんな事になるなんて、神社で私が姉さんに言った事は聞いてるでしょ、私は姉さんを急がせただけかもしれない」
つかさは何も言わず携帯電話をいじっていた。答えるまでもないか。つかさも怒っているに違いない。つかさは急に立ち止まった。私も立ち止まる。きっと私に対する
怒りをぶつけてくるに違いない。覚悟を決めた。
つかさ「浩子さんに渡したお礼の品の中にね、いのりお姉ちゃんが書いたお礼の手紙と葬式のお金が入っているんだよ」
かがみ「えっ?」
私は意外なつかさの言葉に何の反応も出来なかった。姉さんは知っていて旅立った。
つかさ「神社でお姉ちゃんが言った言葉で分かったって言ってたよ、もうタマちゃんは長くはないって」
かがみ「それなら何故予定通り結婚して外国まで行ったんだ、今日まで待つ事だって出来たはず、神社で姉さんはそう言ったんだ」
つかさ「結婚はいのりお姉ちゃんと司郎兄さんで決めた事だからって……」
決めた事。解せない。司郎さんは山田家の息子。いのり姉さんが毎日のようにタマの世話をしに通っていくうちに司郎さんはいのり姉さんを好きになった。
ごく自然の成り行きだ。司郎さんだってタマと毎日のように暮らしていた。二人を結びつけたのはタマ。
私は神社で姉さんとタマが触れ合って居る所を見て人間とペットの関係以上の絆を感じた。そう感じただけだったのか。タマが悪戯をしていた時以上に姉さんを軽蔑する。
つかさがいじっている携帯電話が目に入った。
かがみ「つかさ、その携帯で姉さんにタマが亡くなった知らせをしてるんじゃないでしょうね?」
つかさ「うん、今送信するところ……」
かがみ「止めておけ、そんなの送っても二人はもう幸せモードで楽しんでいるわ、タマの事なんか忘れている、放っておきなさい」
つかさ「私はそうは思わないよ、いのりお姉ちゃんは……違うよ」
つかさの目が潤んでいる。元々このお礼はつかさの提案だった。私は付き添いみたいなもの。
姉さん達はあのお礼の品で全てを終わりにするつもりだ。つかさだってそのくらいは分かっているはず。
でもタマは幸せかもしれない。つかさがあんなにタマの為に泣いてくれたのだから。私は涙がでない。タマとの付き合いが殆どないからか。感情移入ができない。
つかさは携帯電話をポケットにしまった。送信したのだろう。もう姉さん達の問題だ。

 数日後いのり姉さんと司郎さんは帰ってきた。たった一日の滞在だった。そう、タマを埋葬するためだけに。

 私は学校を休んで空港に居た。姉さん達を見送るためだった。いや違う。わざわざ帰国するのだったらなぜタマを見送らなかったのか聞きたかった。
出航ロビーで姉さんに聞いた。
かがみ「姉さん、ひとつ聞きたい事がある、そこまでするなら何故待ってあげられなかった、姉さん達ならそれができたはずじゃない」
やや怒り気味で姉さんに伝えた。司郎さんは私から少し離れた。姉さんは少し目を閉じて考えてから話した。
いのり「あの時、神社で私とタマはお別れをした、そうね、したはずだった、だけどつかさのメールを見た時、まだお別れをしていなかったのに気付いてね」
かがみ「どうして、そんなのはすぐ気付くじゃない、その時間もあったはずよ」
いのり「かがみ、周りを見て」
私は姉さんに言われるまま周りを見た、出航ロビーで人々が行き交い、別れを惜しんでいる人もいれば手を振って送る人もいる。
かがみ「何よ、何も変わらないじゃない」
姉さんに意図が分からない。
いのり「違う、よく見て、先月の出国の時は家族全員が送ってくれた、でも今回はかがみ一人だけ」
かがみ「そんなのは聞いていない、私の聞いてる事に答えて」
いのり「覚えているかな、つかさなんか泣きっ放しだった」
かがみ「一ヶ月前の話なんか覚えている、今更なによ」
一向に答えない姉さんに苛立った。
いのり「つかさ達が来ない、もうお別れが済んだから」
私は言い返せなかった。あんなに泣いていたつかさは確かに今回来ていない。
いのり「別れは遠ければ遠いほど、期間が長ければ長いほど辛い、そうでしょ、みんなは、特につかさはそれをよく知っていたみたいね、感情を隠すことなく私に表してくれた」
かがみ「そ、それと私の質問とどんな関係があるのよ」
948 :いのり姉さん 9/10 [saga]:2011/03/17(木) 21:21:05.14 ID:lcVe7V3T0
私は動揺した。そんな私を諭すように話しかけた。そう。それはまさしくお姉さんそのものだった。
いのり「私もね、あの時つかさと同じようにお別れは済んだと思った、だけどね、つかさのメールを見た時気付いた、まだお別れを済んでいなかった……ってね」
遠くで話を聞いていたのか司郎さんが俯いている。
いのり「それからもう一人お別れを言っていない人が居てね、本人もそれに気付いていない、だから帰ってきた」
かがみ「誰よその人は」
いのり「目の前に居るじゃない、かがみ」
お別れを言っていない。そんなはずは無い。誰よりも先に結婚の祝福をした。お別れだってちゃんとした。
かがみ「私は……タマの事を聞きたくて来ただけよ」
いのり「ふふ、かがみ、相変わらず素直じゃないね、その話なら後から手紙でもメールでも聞ける、そうじゃないの」
笑って話す姉さん。まるで私の心の中を見透かしたような言い方。違う断じて違う。
かがみ「はぐらかさないで」
私は話を戻そうとした。
いのり「いつもそう、かがみ、先月もつかさに譲ったんでしょ、だから私も何もかがみに言えなかった」
今別れれば五年は帰ってこない。あの時別につかさに譲ったつもりは無かった。だけど確かに姉さんに正面から話を交わしていない。
かがみ「いのり姉さん……」
いのり「そして私はもう柊家の人じゃない、だからもうまつりに遠慮することも無い……今まで良くやってくれた、お父さん、お母さん、まつり、つかさを帰ってくるまで
    よろしく……まつりと喧嘩しちゃだめだ……めだから」
いのり姉さんの目から涙が出ていた。その時気付いた。私は姉さんにお別れを言いに空港まで来たのだと。
かがみ「そっちこそ、夫婦喧嘩して離婚なんか承知しない」
姉さんは無言で頷いた。
かがみ「いのりお姉ちゃん」
私は思わず幼少の頃の呼称で名前を言った。
空港の別れのシーン。よくある光景。お互いに抱き合って別れを惜しむ。周りの人々と同じように私たちは別れを惜しんだ。
『〇〇行き〇〇〇便の出航準備ができました……』
アナウンスが響いた。
いのり「あ、もう時間、それじゃ、かがみ……」
いのり姉さんは振り返って私に背を向けると司郎さんと手を繋ぎ小走りに飛行機の方に向かった。『幸せに』と心の中で祈った。
私は二人が見えなくなるまで見送った。でも涙で歪んで見えて最後まで見届けられなかった。たった五年間の別れだと言うのに。

 いのり姉さんとタマの出会いはお父さんとお母さんの喧嘩を仲直りさせた。十年以上経っているのに覚えているのだからきっと危機的なものだったに違いない。
つかさの性格にも大きな変化を与えた。最後にいのり姉さん自身は結婚にするに至った。そして私はどんな影響を受けたのか。
私自身は分からない。だけど何かを感じる。それが悪いものではないのは分かる。

949 :いのり姉さん 10/10 [saga]:2011/03/17(木) 21:22:24.63 ID:lcVe7V3T0

 空港から帰宅するとつかさは既に帰ってきていた。
つかさ「おかえりお姉ちゃん、どうだった?」
かがみ「どうだったって、何が?」
つかさの聞きたい事はすぐに分かった。だけど直ぐには言えなかった。つかさはそれ以上聞かなかった。空港で何があったのか分かったようだ。
私もこれ以上答えなかった。つかさはそんな私に微笑んだ。
かがみ「姉さんが居なくなって淋しくなったわね、犬か猫でも飼いたくなったわ」
つかさ「お姉ちゃんからそんな台詞を聞けるとは思わなかったよ、そういえばね、まつりお姉ちゃんの友達が飼っている猫が子供を産んだんだって、話聞いてみる?」
一番タマを憎んでいたはずのまつり姉さんも影響をうけたのか。
話くらいなら聞いてもいいかな。

 三日後私達は仔猫を貰いに向かった。三匹の仔猫から気に入った子を選んでよいと言われた。つかさは真っ先に一匹の仔猫を箱から取り出し抱いた。
私とまつり姉さんも直ぐにその仔猫を気に入った。つかさはタマと名付けた。
柊家に新しい家族が加わった。尻尾の先が黒い可愛い仔猫。




950 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2011/03/17(木) 21:25:40.36 ID:lcVe7V3T0
以上です。

ポリエステルのお題で書いたがポリエステルの文字は一度も出ていません。お題的は失格でしょう。許してください。

以前に『まつり姉さん』の作品を書いたのでいのりも題材にしてみました。
柊家のキャラは好きなのでこれからも書きたいと思います。

951 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2011/03/17(木) 21:41:10.21 ID:lcVe7V3T0
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ここまでまとめた

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952 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/03/18(金) 19:39:09.27 ID:IZzl7vvZo
ビクッみたいな感じです!
http://board.sweetnote.com/:images/site/luckystar/2011031819351308?t=jpg
953 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2011/03/19(土) 22:58:22.20 ID:lntl9eyc0
第一回コンクール作品の人気投票をやってみたいと思います。
大賞作品は抜いてあります。
今回は『お題』にとらわれず、単純に気に入った作品に投票して下さい。
今回の投票はテストも兼ねています。(二重投票対策)
また投票にはコメントが必須になっていますので気をつけて下さい。

締切日は3/24(木)24:00 です。


投票所
http://vote3.ziyu.net/html/kkk19.html
954 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/21(月) 08:30:41.12 ID:m/o5lAT00
ん?名前欄に地名出るようになったの?テス
955 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2011/03/21(月) 10:03:19.99 ID:UiBT0yV80
地名が書いてあるね
(長屋)はおそらく集合住宅(マンション)タイプでしょ。
956 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2011/03/25(金) 00:09:02.97 ID:b62vVrqz0
>>953の結果が出ました。詳細は http://vote3.ziyu.net/html/kkk19.html にて確認してください。

時期が悪かったのか一票しか入りませんでした。
コメント必須は条件が厳しかったか。
これに懲りずに同じように第二回コンクールも同じような投票をしたいと思います。
957 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/25(金) 06:07:33.65 ID:U0rf2NPx0
自分は新参だから、初期コンクールは全部読まないといかんけど時間ないしって具合に投票できなかった。
しかし山が過ぎたら参加したいと思うし、とりあえずは応援してます。

958 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2011/03/25(金) 21:16:03.26 ID:md2DBhbN0
どうもコンクールに投票したものです
新参者ですが以後お見知りおきを
やっぱ俺も全部読むのはかなり時間かかりました。
959 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/25(金) 22:28:57.07 ID:N81/56h9o
コンクールのレビューが書かれなくなってさびしい
960 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2011/03/25(金) 23:09:05.37 ID:b62vVrqz0
新参者か、そう言う意味では私も新参者かな。第十四回コンクールから作品を投下してます。
コンクールだけで7作品ですかね。もう新参者じゃないか。

コンクール再投票もさることながら、まとめサイトのおすすめリストの更新もそろそろあってもいいと思う。
最後の更新が2008年の4月です。その後もかなりの作品が投下されています。
避難所におすすめリストの条件が載っているけど今までそれに該当する作品はありません。
厳しすぎるのか、作者の力不足なのか。何か良い方法はないですかね。
961 :もしも [saga]:2011/03/26(土) 02:32:57.66 ID:pa94OWvs0
投下いきます。

なんかふと思いついた短い話です。
962 :もしも [saga]:2011/03/26(土) 02:33:44.94 ID:pa94OWvs0
 とある日の夜。わたしは部屋で積んでいるゲームの消化をしていた。
「…んー、結構かかるなー」
 流石に少し疲れて大きく伸びをしたところで、コンコンッと部屋のドアがノックされる。
「ほーい」
 わたしが返事をすると、ドアが開いて中学生の男の子…わたしの弟が入ってきた。
「姉ちゃん。借りてた漫画、返しにきたよ」
「ほいほい、適当なとこにでも置いといて」
 わたしがそう言うと、弟はベッドに漫画を置いた。部屋に入ってからずっと、弟はわたしの方をまったく見ようとしない。
「ねえ、なんでまたそんな不自然にわたしの方を見ないのかな?」
 わたしがそう聞くと、弟の顔が少し赤らんだ。
「だ、だって姉ちゃんやってるゲーム…」
 言いにくそうにゴニョゴニョと呟く。今わたしがやってるのは、十八歳未満お断り…いわゆるエロゲーというやつだ。
「ほほー。いっちょ前に色気づいたのかい?」
 わたしはからかうようにそう言いながら、こっそり弟の後ろに回りこむ。
「そ、そうじゃないよ…ひゃっ!?」
 そして、不意を着いて抱きついた。
「な、なんだよ姉ちゃん!?」
 慌てる弟を見上げて、わたしはニッコリと微笑む。
「そういう風に意識するって事は、こういうことに興味あるって事だよ」
 そう言いながら、弟の身体をまさぐる。身長はとっくにわたしを追い抜かし、中学生になってからはすっかり身体つきも男の子っぽくなってきている。
「ちょ、ちょっと…ね、姉ちゃん…」
 わたしの行動に慌てふためく弟。身体はともかく、精神的にはまだまだ子供なんだと思う。
「…わたしもね、こんなゲームやってるわけだし、当然興味あったりするんだけど…」
 少し湿っぽい声でそう言うと、弟の口から息を呑む音が聞こえた。



「はい、そこまで」
 熱く語るこなたの脳天に、かがみのチョップが振り下ろされ、ゴスッと鈍い音を立てた。
「こ、これからいいところなのに…ってか、痛いんですけど」
 頭をさすりながら文句を言うこなたに、かがみがため息をついてみせる。
「いや、それ以上はやばいでしょうに…」



― もしも ―



 とある日の午後。いつもの四人がこなたの家に集まって、色々と談笑していた。
 その内にこなたが最近見たアニメに弟キャラを気にいって、もしも自分に弟が居たら…と言うことを話し出したのだ。
「なんであんたはそっち方面に結びつけるのよ…」
「いやまあ…そういうお年頃ですし?」
「いや、大学生と言うよりさかりのついた中学生って感じなんだけど…」
 かがみは呆れたようにそう言いながら、コップに入ったお茶を飲みながら、他の二人の方を見た。その二人…つかさとみゆきはこなたの話が中断した後、黙ってうつむいている。
「…ここまで耐性が無いってのも問題かも知れないけどね」
 かがみはそう呟いて、こなたの方に視線を戻した。
「ほいじゃ、次はかがみで」
 それを受けて、こなたがどこか嬉しそうにそう言った。
「わたし、ねえ…つかさが男の子だったらって感じでいいのかしら」
「チッチッチ…それは違うよかがみ」
 かがみの言葉に、こなたが目の前で人差し指を振りながら、そう言った。
「弟モノってのはね、年下だから良いんだよ。双子の弟とじゃ、また違うんだよ」
「いや、良くわかんないけど…」
 力説するこなたに冷や汗を垂らしながら、かがみは自分に弟が居たら、ということを考え始めた。



963 :もしも [saga]:2011/03/26(土) 02:35:06.09 ID:pa94OWvs0
 勉強が一段落着いたところで、わたしは飲み物を補充しようと空になったコップを持って台所に向かった。
 階段を下りているところで、台所からいい匂いが漂ってくる。
「…またやってるわね」
 わたしはそう呟きながら階段を下りきり、台所に入った。
「あ、かがみ姉ちゃん。休憩?」
 案の定、来年高校生になる弟が、台所をパタパタと走り回っている。いい匂いはオーブンの方からだ。
「ちょっと飲み物をね…今度は何作ってるの?」
「チョコケーキ。美味しそうなの、テレビでやってたからさ」
 使い終わった道具を流しに入れる弟を見ながら、わたしはため息をついた。
「あんた、もうちょっと男の子らしい趣味を持ったら?」
 わたしの言葉に、弟が肩をすくめる。
「古いなあ姉ちゃんは。今は男だって料理くらい出来ないと」
「そうなんだけど、あんたお菓子しか作らないじゃない…」
 わたしは、そう言いながらコップにお茶を注ぐ。ふと見ると、弟がわたしの前に立っていた。
「な、なによ…」
「なんだかんだ言っても、一番食べるのかがみ姉ちゃんだろ?」
 弟の言葉に、わたしは顔をしかめて横を向いた。
「わ、わるい?」
「悪くは無いよ。食ってるときの姉ちゃん嬉しそうな顔してるし…そういう姉ちゃん見てるの、俺好きだしな」
「…バカ。何言ってるのよ」
 悪態をつきながらも、わたしは顔が熱くなってるのを感じていた。



「って何言ってるんだわたしは!」
「自分で突っ込んだ!?」
 いきなり拳を振り上げながら叫んだかがみに、こなたは後ろに倒れそうになったが、辛うじてこらえ、体勢を立て直した。
「いきなりびっくりさせないでよ…ってかかがみだって盛ってんじゃん」
「う、うるさいわね…なんか勢いでこうなったのよ」
「…っていうか、これと似たような会話、昨日お姉ちゃんとしたよね」
 こなたとかがみの会話に、つかさがさくっとそう割り込んできた。
「なんだ、元ネタありなんだ…っていうか結局つかさがモデルか」
 こなたがため息混じりにそう言うと、かがみはそっぽを向いた。
「い、いいでしょ別に…こんなの急になんて思いつかないわよ。アンタと違って普段から妄想してるわけじゃないんだから…ていうか、つかさ。ばらすな」
「ご、ごめんなさい…」
「いや、わたしも普段から妄想なんてしてないけど…」
 こなたは頬をかきながらそう言って、つかさの方を見た。
「んじゃ、次はつかさだね」
「え、えっと…弟かあ…んーっと…」
 つかさは腕を組んで唸りながらも、ぽつぽつと話し始めた。



964 :もしも [saga]:2011/03/26(土) 02:35:46.54 ID:pa94OWvs0
「つかさ姉ちゃーん。ちょっと宿題でさあ」
「うん、ごめん。わたしちょっと忙しいから」
 弟がノートと教科書を持って居間に入ってくるのを見たわたしは、見ていたテレビを消して立ち上がった。
「思い切り暇そうにテレビ見てたじゃん…」
 弟がそう言いながらわたしの腕を掴む。
「うう、何でわたしのところに…かがみお姉ちゃんに手伝ってもらってよ…」
「かがみ姉ちゃん手伝ってくれないんだよ。『自分でやりなさい』って言ってさー」
「自分でやりなさい」
「だからさ、お願い手伝ってよ!」
「な、なんでわたしの言うことは無視なんだよー…」
 結局、わたしは渋々と弟の宿題の手伝いをすることになった。

 数十分後。
「…ここってどうだっけ?」
「なんでお姉ちゃんが俺に聞いてるんだよ…」
 案の定というかなんというか…わたしは何の役にも立たないどころか、足を引っ張っていた。
「だって、中学の時の勉強なんか覚えてないもん…」
「…姉ちゃん陵桜出てるんだろ?」
 弟の視線が冷たい。だから手伝うのイヤだったのに。
「うう…わたし、もう良いでしょ?」
 逃げようとするわたしの服の袖を、弟が掴む。
「せっかくだし、最後まで手伝ってよ」
「…これ以上は拷問だよー」
「だったら見てるだけで良いから」
 わたしを強引に座らせ、宿題の続きをはじめる弟。なんていうか…ほんと情けない。
「…こんなお姉ちゃんでごめんなさい…」
 思わず出てしまったわたしの呟きに、弟が顔を上げた。そして、クスッと笑う。
「こんなお姉ちゃん、だから良いんだよ」
 言葉の意味は良くわからなかったけど、褒められてはいないような気がした。



 話し終わったつかさの肩に、こなたが無言で手を置いた。
「え、なに、こなちゃん?」
 そのこなたの心情を代弁するかのように、かがみがため息をつく。
「…妄想の中くらい、もう少しましな自分にしたらいいのに」
 そして、呆れたようにそう呟いた。
「だ、だって、わたしに弟がいたら絶対こうなりそうだもん」
「そうですね」
 つかさの言葉に頷くみゆき。その行動に、場が一気に静まり返った。
「え、あ、あれ?みなさん、どうかしましたか…?」
「ゆ、ゆきちゃん…」
「まさかみゆきさんがつかさをディスるとは…」
「あ、えっと、その、ご、誤解しないで下さい…」
 周りの雰囲気のおかしさに気がついたみゆきが、慌てて両手を目の前で振った。
「つかささんの学力が云々ではなくてですね…飾らない人柄といいましょうか、年下のご兄弟相手でも無駄に偉そうにはなさらないといいますか…」
「なるほど、つかさはそんな感じだね…つまり、どこぞの見栄っ張りな姉とは違う、と言うことかな」
 みゆきの言葉に、余計な一言を付け加えて同意するこなた。
「…それは誰のことを言ってるのかな?こなたさん」
「べ、別にかがみの事だとは言ってな…いふぁいいふぁい」
 そのこなたのほっぺをかがみが摘み上げた。
「ふぁへ、らふとふぁみゆひふぁんらふぇ」
「さて、ラストはみゆきさんだね」
 ほっぺをつかまれたままなので、うまく発音出来て無いこなたの言葉を、かがみが律儀に訳して見せた。
「あ、はい、それでは…」
 良く伸びているこなたのほっぺを心配そうに見ながら、みゆきは咳払いをひとつして話し始めた。



965 :もしも [saga]:2011/03/26(土) 02:36:36.40 ID:pa94OWvs0
 良く晴れた昼下がり。大きな窓の側。家の中でも特に日当たりが良いその場所は、暖かな春の陽気に包まれていました。
「…こんな所で寝てはダメですよ?」
 その光の中で、ウトウトと舟をこいでいる弟に、わたしは優しく声をかけました。随分と暖かくはなったとはいえ、この時季は油断をするとすぐに風邪を引いてしまいます。
「う…うん…」
 返事はしたものの、弟は今にも寝入りそうな様子で、そこを動こうとはしませんでした。
「ふふ…なにか掛け物を持ってきますね」
 その様子が可笑しくてわたしはつい笑ってしまい、誤魔化すように毛布を取りに行きました。

 わたしが戻ってくると、弟は床に突っ伏して、静かに寝息を立てていました。待ちきれずに寝てしまったようです。
「しょうがない子…ですね」
 わたしは起こさないように弟の身体を仰向けにし、その身体に持ってきた薄手の毛布をかけました。
 気持ち良さそうに眠る弟。その姿を見て、わたしの中にふとした悪戯心が湧いてきました。
 弟の頭の側に正座をし、ゆっくりと丁寧に頭を持ち上げてわたしの太ももの上にのせました。
「…起きたら、なんて言うでしょうね」
 子ども扱いするな…とはよく言われます。でも、年の離れた…並んで歩いていると、親子と間違えられるような…小さな弟は、わたしにとっては何時までも子供に思えてしまいます。
 わたしは弟の髪を軽く撫でました。すると、弟はくすぐったそうに身をよじりました。その可愛らしい姿を見ていると、もうちょっとだけ大きな悪戯心が湧いてきました。
 わたしは、周りを見渡し誰もいないことを確認すると、自分の顔を弟の…。



「みゆき、よだれ」
「…はっ!?」
 かがみに指摘され、みゆきは慌てて自分の口の端を服の袖で拭った。そのあまりにみゆきらしくない行動に、こなたとつかさは少し身を引いていた。
「え、えっと、その、アレ、ほらアレです…」
 何か言い訳めいたことを言おうとしているが、焦ってまったく言葉になっていないみゆきを、他の三人は冷や汗を垂らしながら見ていた。
「…ち、小さな男の子って、可愛いですよね?」
 そして、ようやく出てきた言葉がそれだった。
「…春だね、かがみ」
「…そうね」
 まるで何も気かなかったかのように、みゆきから目線をそらしてまったく関係ない話を始めるこなたとかがみ。
「え?え?い、泉さん。かがみさん…わたし、なにか間違ってましたか?どこかおかしかったですか?」
 その態度が理解できずにうろたえるみゆき。
 つかさが心底困ったような表情で、その肩に手を置いた。



― おしまい ―
966 :もしも [saga]:2011/03/26(土) 02:37:28.07 ID:pa94OWvs0
以上です。

なんでか、みゆきさんはショタコンなイメージが。
967 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/03/26(土) 10:42:03.82 ID:AmZeIhoAO
>>966
乙 …まぁこなただとショタじゃなくて同い年に見えちまうしね
968 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2011/03/26(土) 11:00:55.84 ID:d+5oaRlN0
>>966
乙です。早速まとめさせていただきます。



第二回コンクール作品の人気投票をやってみたいと思います。
大賞作品は抜いてあります。
今回は『お題』にとらわれず、単純に気に入った作品に投票して下さい。
今回の投票はテストも兼ねています。(二重投票対策)
投票にコメントは必須にしていません。
時間がないとの意見だったので少し期間を延ばしました。


締切日は4/2(土)24:00 です。

投票所
http://vote3.ziyu.net/html/dainikai.html
969 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2011/03/26(土) 11:19:27.49 ID:d+5oaRlN0
-----------------------------------------------------------------------------

ここまでまとめた

-----------------------------------------------------------------------------
970 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2011/03/26(土) 11:21:03.90 ID:d+5oaRlN0
そろそろ新スレ立ち上げるかな?
971 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2011/03/26(土) 14:21:43.22 ID:d+5oaRlN0
まとめサイトのテストページにて長編感動系列の人気投票をしています。
期間は未定。気軽に参加してみて下さい。

テストページ
http://www34.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/150.html
972 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/30(水) 15:08:01.86 ID:Q/3PxFrSO
>>970
人まったくいないし、990くらいでもいいんじゃね?
973 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2011/03/30(水) 21:13:06.76 ID:ZwDjsxSg0
>>972
そうさせて頂きます。

SSを書きたいと思ってる人にヒントになるかどうか分かりませんか書いてみました。

第一回〜十三回コンクールお題(十四回からは参加)
この中で一番難しいのは自分にとっては第六回の『ウィンタースポーツ』。
自分自身がほとんど経験がないからかもしれない。
一回から参加していたとして、このお題は不参加になっていたかもしれない。
その他で難しいと思ったのがコンクールではないけど『殺人事件』。これはどうにもならない。

『ポリエステル』で作った『いのり姉さん』はいかがでしたか。ポリエステルをペットボトルとして表現してみた。
自分的にはこれが精一杯です。他の人の作品を読んでみたいです。

ジャンル的には鬱系・死亡系が苦手ですね。まとめサイトを見ると作品数が少ない割には読んでる人は多いみたいなのでいつか挑戦してみたいと思います。
SFっぽいのとか、ファンタジックなのが書きやすいかな。動物、オリキャラなんかを取り入れるのも好きです。恋愛物は一作品作ったけどどうかな〜?。

らきすたのキャラで一番書きやすいのがつかさ、次にかがみ、みゆき、意外とこなたは難しい。
組み合わせでいくとかがみとつかさが書きやすい。こなたとかがみは確かに魅力的だけど何故かまだ一作品も作ってない。
こなかが専用サイトもあるくらいなのであえて書くこともないかもしれない。
キャラで一番難しいのはパティかな。口調もさることながら外国人というのがキャラを理解するのに壁となっている。

ストーリは音楽を聴きながら考えています。曲は歌詞が無いもの。歌詞があると言葉が頭の中に入ってしまいイメージが消えてしまいます。
もし作っている作品が歌詞のイメージと一致しているのなら逆にいいかもしれませんが、そんな曲には滅多にめぐり合えないでしょう。
自分はクラッシックを聞きながらストーリを構成しています。クラッシックみたいな曲は感情の変化とか物語の起承転結の流れを考える上で凄くいいです。
交響曲とか交響詩などは曲自体が物語りになっているのでお勧めです。作曲者とか評論家が言っているような物語ではなく自分の物語を当てはめていく感じです。
解説などはあまり読まないで聴くと良いと思います。

ssを書きたいと思っている人に少しでも役に立てばと思います。
974 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/31(木) 04:01:37.53 ID:5MmaHK7Q0
かがみとつかさは作りやすくていいよねー
ゆたかとみなみとかもそうだけど、明確に対称的なキャラ同士だと話が膨らんで楽な気がするよ。

975 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2011/04/02(土) 14:07:40.94 ID:BIOKKo540
なかなか自分からストーリが浮かんでこない。
だれかお題を下さいな。

976 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2011/04/03(日) 00:16:55.57 ID:qsEjSMje0
第二回のコンクール人気投票結果が出ました。
http://vote3.ziyu.net/html/dainikai.html

同じく第三回コンクール投票を開始します。
〆切は4/9(土)24:00 です
投票所
http://vote3.ziyu.net/html/daisann.html

よろしくお願いします。
977 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) :2011/04/03(日) 19:10:44.20 ID:zzOtbWd/o
>>975
季節的に花見とか?
978 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2011/04/03(日) 23:37:19.74 ID:qsEjSMje0
>>977
お題ありがとう。ボーとしてたら自分の過去作品の続編が浮かんでしまった。
花見はこれから考えると終わった頃投下になってしまいそうだw
それでもいいなら考えます。
即興でできる方がいるならどうぞ先に投下してください。
979 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/04/08(金) 01:09:14.91 ID:sC13D2Ir0
かがみ:泣き上戸
つかさ:笑い上戸
みゆき:絡み酒
で三人にこなた振り回されるみたいなイメージで花見しようと思ったけど挫折した。
酔っ払いってむずかしいな。
980 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2011/04/09(土) 10:23:16.31 ID:7fyVvAGy0
>>979
確かに難しいかもしれない。原作でもお酒を飲む場面が出てこないからね。
それでも作ってみました。
短くまとめてみました。参考にもならないと思いますが読んでみて下さい。
981 :花見  1 [saga]:2011/04/09(土) 10:25:10.85 ID:7fyVvAGy0
 大学最後の春休み、つかさはもう社会人、みゆきは大学院に進学すると言っていた。こなたと私は来年卒業だ。まさかこなたが留年しないでここまでくるとは思わなかった。
日下部と同じ大学だったのが幸いしたのか。否、いまだにジャンケンでレポートの書く順番をやっているみたいだし、全く変わっていない。
今日は高校時代の友人とお花見をする……とは言っても集まったのはいつもの四人だけ。いつも集まりはいいはずなのだが何故か今日に限っては用事が重なったようだ。

『花見』


こなた「ここなんかいいね」
こなたはシートを広げ始めた。
かがみ「まてまて、なんでいつもそうなのよ、まだ誰もそこが良いって言ってないでしょ」
いつもこなたは勝手に物事を進めてしまう。よく考えもしないで。昔からいつもそう。もっと良い場所があるに違いない。もう少し探してからでも遅くはない。
つかさ「でも、ここが一番いいかも」
みゆき「そうですね」
つかさとみゆきが賛同した。
かがみ「まだ良い場所がきっとあるわ」
私は少し向きになった。そんな私を尻目につかさは私の後ろを指差した。振り返ると太い幹が私の目に飛び込んだ。視界を塞ぐような太さ。見上げると空を覆い隠すように
枝を広げその枝に淡い桃色の花が咲き乱れている。ソメイヨシノ。今まで見たことのないスケールだった。八分咲きと言った所か、その迫力と美しさに私は言葉を失った。
この公園は何度も来ているのにこんな木があったなんて。私はそのままこなたの敷いたシートに腰を下ろした。つかさは早速作ってきた料理を並べ始めた。
もちろん私も手伝った。そこにみゆきが手作りのクッキーを添えた。
こなた「やっほー、さすがつかさだね、とっても美味しそうだ、みゆきさんも手作り感が出てていいね、この変なのはかがみの?」
かがみ「変なので悪かったな、こなたは何を持ってきた」
こなた「花見と言ったらこれしかないでしょ」
こなたはかばんを開けてビンを取り出した。焼酎、日本酒、ビール……お酒。
こなた「かがみ、よその目は、もう私たちは二十歳過ぎてるからダメとは言わせないよ」
私が何を言うのか先読みしたようだ。お酒を持ってきたのを怒っているとでも思ったのか。私の言いたいのはそんな事じゃない。
かがみ「あんたそんなに持ってきて全部飲むつもりなのか、このメンバーに酒豪がどこにいる」
こなた「まあまあ、余ったら持って帰ればいいんだし、つかさ、みゆきさん飲む?」
つかさ「折角だからもらっちゃおうかな〜」
みゆき「料理もあることですし……いただきます」
つかさは紙コップを人数分並べた。こなたはそこに景気よく日本酒を注ぎ始めた。こなたの態度がなぜかムカついた。
こなた「皆で乾杯しよう〜」
三人は紙コップを手に持った。
こなた「かがみ、コップを持って、乾杯の音頭とってよ」
皆の視線が私に集まる。
かがみ「私は飲まないからこなたがしなさいよ」
こなた「ちぇ、かがみは付き合い悪いね、私たちだけで飲もう」
こなた・つかさ・みゆき「かんぱい〜」

982 :花見  2 [saga]:2011/04/09(土) 10:26:25.88 ID:7fyVvAGy0
 こなた達はコップのお酒を飲み始めた。つかさの作った料理が次々と配られる。私は少し離れて桜の木を眺めていた。
お酒は別に飲めない訳ではない。飲む気分になれないだけ。心配なのはつかさだ。つかさがお酒を飲んでいる所を見たのは一回もない。飲み方を知っているのか。
もっともつかさはもう社会人だ。そのくらいの嗜みは心得ているだろう。そうは言ってもほんの数年前まで高校生だった私達、もうお酒を飲み交わす歳になったのか。
咲き乱れている桜、小学校、中学校、高校、そして大学。幾度となくこの花を見ている。毎年毎年。私は幼少の頃の自分を思い出して物思いに耽っていた。

 どのくらい経ったか。おそらく一時間は経っていないだろう。楽しげに会話が弾んでいるこなた達。笑い声が私の耳に入ってきた。
一人で物思いの耽るのも飽きた頃。私はこなた達の方に目線を向けた。ふとつかさの顔を見た。酒で酔っているのか顔が、特に頬がほんのりと赤くなっている。
唇もこの公園に来るときよりも赤く見える。口紅を塗っているみたいだった。目も少し潤んでいるように見える。ドッキっとした。艶やかだ。
女の私から見ても嫉妬するくらい色っぽく見える。あれがつかさなのか。違う。そこに居たのは大人の女性、つかさだった。
それに引き換え私は、こなたが私の言うことを聞かないだけでふて腐れて……子供の様だ。自分が情けなくなってきた。
みゆき「かがみさん」
声のする方を向いた。どうやらこなたとつかさの会話に付いていけなくなったみたいだ。みゆきの持っているコップには殆どお酒が残っていない。
私はお酒の入ったビンを持ってみゆきに差し出した。みゆきも持っていたコップを私に差し出す。
みゆき「かがみさんの姿があまりに悲しげでした、大丈夫ですか」
妹を見て嫉妬していたなんていえる筈もない。
かがみ「桜を見ていたらなんか昔を思い出しちゃってね」
みゆき「そうですか」
みゆきも酔っている。でもつかさほど変わっては見えない。みゆきは私の注いだお酒を飲むと桜の木を見つめた。
みゆき「このソメイヨシノ、かなりの樹齢のようですが、本来ソメイヨシノはそんなに寿命は他の木に比べると長くはないのです、人間と同じくらいの寿命で枯れてしまう
    ものもあるそうですよ、この桜は人の手を加えられて大事にされているみたいですね」
かがみ「どうして寿命が短いのよ、葉よりも先に花を咲かすから負担がかかるのか?」
みゆき「それなら桃等も同じです、おそらくソメイヨシノは品種的に弱いのかもしれません、しかしこの桜は別物のようです」
かがみ「命を削ってまで毎年花を咲かすなんて、私たちの為に毎年」
みゆき「どうでしょうか、桜は別に私達人間の為に花を咲かせている訳ではありませんよ、植物が花を咲かすのは、私たちが呼吸するように、食事をするように、
    自然の営みにすぎません、私達人間が勝手に綺麗だと思っているに過ぎません」
酔っていてもみゆきはみゆきか、しかしみゆきはこんな皮肉じみた話し方はしない。
かがみ「どうしたのよ、みゆきらしくないわよ」
突然みゆきの目から涙が出てきた。
みゆき「来年になれば学生は私一人になってしまいます、またこのように皆さんが集まってくれるでしょうか、現に日下部さんやみなみは……
    私達は学生のように自由でいられなくなります、何時の間にか疎遠になって忘れ去れるのではないかと」
日下部達が来られない理由はみゆきだって知っているはず。今更そんな事で泣くなんて。みゆきの涙の量は増えるばかり。まさかみゆきは泣き上戸なのか。
かがみ「だからこうして集まってるんでしょ、折角のお花見が台無しになっちゃうじゃない、私も飲ませてもらうわ、一緒に飲もう」
私は既にお酒が注がれたコップを手に取った。みゆきの潤んだ目が私を見ている。コップを口に近づけようとした時だった。突然後ろから誰かに抱きつかれた。
こなた「かがみ〜助けて!!」
手に持っていたコップを溢しそうになった。コップを置いてこなたの方を向いた。こなたの顔は真っ赤だ。飲みすぎなのは一目瞭然。
かがみ「絡むなら後にしてくれ、今はみゆきと話しているところだ」
こなた「だって、つかさが、つかさが……」
必死に助けを求めている。私はつかさを見た。つかさは酒の瓶を持っていた。中身は八割くらい無くなっている。まさかつかさとこなたであれだけの量を飲んだのか。
あれほど艶やかだったつかさの表情は一変しこなたと同じように顔は真っ赤だ。これではただの酔っ払いじゃないか。
つかさ「私のお酒が飲めないって言うの、こなちゃん、早くコップ出して」
こなた「だ、だからもう飲めないって……許して〜」
どうしてそうなった。経過を見ていないがつかさは酒癖が悪いのが今分かった。
つかさ「だーめ、許さない」
つかさは強引にコップに酒を注ごうとしているが目標が定まらず酒がシートに零れた。私はつかさから瓶を奪い取った。つかさは私を睨み付けた。
つかさ「お姉ちゃん邪魔しないで、私はこなちゃんと飲んでいるの、こなちゃんがいっぱい飲ませるから今度はこなちゃんの番だよ」
かがみ「こなた、あんた無理やり飲ませたのか」
こなた「知らない、知らないよ〜」
もはや二人とも話をするような常態じゃない。私は二人の間に割って止めた。みゆきは更に泣き出した。私は三人の酔っ払いの世話をする羽目になった。

983 :花見  3 [saga]:2011/04/09(土) 10:27:49.69 ID:7fyVvAGy0
 
 三人は静かに眠りについている。暴れるつかさ、泣きじゃくるみゆき、つかさから逃げようとするこなた、一人、一人言い聞かせて落ち着かせた。
こういった宴会で貧乏くじを引くのは決まって素面の人と相場は決まっている。私もさっさと飲んでいればよかった。今更後悔しても遅いか。
ふと周りを見回した。そこには私達と同じような光景があった。叫んでいる人、踊っている人、寝ている人もいる。男性だけの集団、女性だけの集団、
家族連れもいるみたいだ。よく見ると桜の木は他にあるのにこの大木を囲うように集っている。
私はもう一度桜の巨木を見上げた。見事という他はない。今まで見てきたどの桜よりも立派で美しい。しかし良く見てみると所々の枝に花が付いていない箇所があった。
かなりの樹齢のせいなのか。この桜はあと何回こうやって花を咲かせてくれるのだろうか。また見たい。いや。まだ見ていたい。来年も、少なくとも私が生きている間は
生きていて欲しい。そんな気分にしてくれる不思議な桜の木。込み上げてくる感情があった。みゆき……。みゆきも私と同じ気持ちだったのか。
またここで私達とこの桜を見たい。そう思ったのか。泣き上戸じゃなかった。泣かせてくれるじゃない。
暫く私は時間を忘れて老いた桜の木を見ていた。

こなた「つかさ〜」
寝言を言っているのか。こなたを見た。その寝顔は穏やかそのものだ。つかさに絡まれていたとは思えない。こなたは何故無理に酒をすすめたんだ。
先につかさが潰れると思ったのか。今になって思えばつかさは社会に出て酒を飲む機会はいくらでもあったはず。こなた、つかさに勝負を挑んだのは失敗だったわね。
それとも私と同じようにつかさに嫉妬したのか。それに酒は競って飲むものではない。私は自分に注がれた酒の入ったコップを手に取った。私にとってはこの位の量で丁度いい。
まったく、飲みたい時に私の友達は先に酔いつぶれちゃって。私はため息をついた。
コップの酒を飲もうとした。コップの中に一枚の桜の花びらが浮いていた。
桜の木はこなた達の代わりに私に付き合ってくれるとでも……。普段の私ならそんな考えなんかしない。でも今の私はそんな自分を否定しない。
コップに酒を注ぎ桜の木の根元にそっと置いた。

 来年、きっとここに来る。つかさ達も来る。そして来られなかった友人も連れてくる。約束します。だから貴方もまた綺麗な花を咲かせて。
「乾杯」
桜の老木に向かって乾杯をした。

つかさ達が目覚めたらお花見のやり直しをするか。お酒の無い本当のお花見をね。


984 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2011/04/09(土) 10:29:29.77 ID:7fyVvAGy0
以上です。
急いで作ったので構成が雑すぎた。
985 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2011/04/09(土) 10:39:16.47 ID:7fyVvAGy0
-----------------------------------------------------------------------------

ここまでまとめた

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986 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2011/04/10(日) 00:00:43.92 ID:Gp1b1DT20
第三回のコンクール人気投票結果が出ました。
http://vote3.ziyu.net/html/daisann.html


同じく第四回コンクール投票を開始します。
〆切は4/16(土)24:00 です
投票所
http://vote3.ziyu.net/html/dai4.html

よろしくお願いします。

この企画はあまりよくないかな。不評ならこれで最後にします。
987 :飲まれ酒 [saga]:2011/04/10(日) 03:14:30.53 ID:BH//71rJ0
>>979
お気に召すかは分かりませんが、その構成で少し書いてみました。
988 :飲まれ酒 [saga]:2011/04/10(日) 03:15:31.68 ID:BH//71rJ0
「…あ、お父さん。わたしだけど、ちょっと車回して欲しいんだ…うん、お花見のところに…えーっと三人酔いつぶれてるのがいて、家に連れて帰ったほうがいいかなって…ううん、もうめんどくさいからみんなウチでいいよ。一晩とまらせちゃお…うん、それじゃ」
 泉こなたは携帯を切ると、ため息をついて先ほどまでの騒ぎの現場を見た。
 満開の桜の木の根元にひかれたレジャーシート。その上には日本酒やらビールやらの大量の残骸。そして、その中で眠りこけている、柊かがみ、つかさ、それに高良みゆきの三人。
 こなたはもう一度ため息をつくと、お酒を入れてきたらしいビニール袋に、とりあえず空き瓶を入れ始めた。
「…こんな飲み方しちゃ、そりゃこうなるよ」
 ビンでいっぱいになった袋の口を縛り、適当な場所に置いて、新しい袋を用意する。そして、今度は空き缶をその中に入れ始めた。
「わたし…何しにきたんだろ」
 そう呟きながら、こなたは何度目か分からないため息をついた。



― 飲まれ酒 ―



 満開の桜並木。無数に舞い落ちる桃色の花びら。あちこちから聞こえてくる酔客の笑い声や歌声。
 その中をこなたは、みんなが待っているであろう場所へと走っていた。
「…かがみ、怒ってるだろうな」
 携帯で時間を確認すると、約束の時間から一時間ほど遅れていた。角の生えたかがみの顔が脳裏に浮かび、こなたの走る速度が少し遅くなったが、すぐに思い直した。
『せっかく二十歳になったんだから、こういうところで飲んでみようよ』
 そう言って、今回の花見を提案したのは自分だったんだ。言いだしっぺがこれじゃ流石にかっこつかないなと、こなたは走る速度を上げた。


989 :飲まれ酒 [saga]:2011/04/10(日) 03:16:28.57 ID:BH//71rJ0
 この辺りでは一番綺麗な桜だとみゆきが主張し、場所取りをしておいてくれてるはずの場所。
「あーこなちゃんらー」
 そこに着いたこなたが見たのは、顔を真っ赤にして完全にろれつの回っていないつかさだった。
「…始めちゃってたのか。まあ、しょうがないか。つかさ、他の二人は?」
 こなたがそう聞くと、つかさはしゃがみ込んで足元から桜の花びらを一枚拾い上げた。
「いや、つかさ?他の二人は…」
「ひにぇいっ」
 そして、重ねて聞こうとするこなたの鼻先に、謎の掛け声をあげながらその花びらを貼り付けた。
「ぷ…うふふ…あははははっ…にゃはははははははっ!」
 さらに、そのこなたの顔を指差しながら大爆笑をするつかさ。
「え、えっと…これの何が面白いの…?」
 こなたは鼻先から花びらを剥がしながら、腹を抱えて地面にうずくまっているつかさはとりあえず置いておいて、他の二人がどうなっているのか周りを見回した。
 そして、桜の根元で木に向かって膝を抱えながら、缶ビールらしきものをチビチビと飲んでいるかがみと、レジャーシートの真ん中で一升瓶片手に胡坐をかいているみゆきを見つけた。
「…うわー近寄りたくないなー…」
 こなたは回れ右をして、全力でその場を逃げ出したくなったが、なんとかこらえて怖そうなみゆきを避けてかがみの方に近寄った。
「かがみ、大丈夫?」
 そう声をかけながら、こなたはかがみの顔を覗き込んだ。
「…うぅ…こなた…?」
 こなたに気がつき、うつむかせた顔を上げるかがみ。
「う、うわ…」
 その涙と鼻水でぐずぐずになった顔を見て、こなたは思わず後ろに引いてしまった。
「こなた…ぐす…こなたぁ…」
「は、はい、なんでしょう…」
 そのこなたを追って四つんばいで迫ってくるかがみに、こなたは思わず敬語で返事をしてしまう。かがみはそのままこなたの胸に顔を埋め、嗚咽を漏らし始めた。
「…来ないと…えぐっ…もう来ないって…わたし…うぅ…」
 嗚咽の中に混じる言葉にこなたは罪悪感を覚え、謝ろうと口を開いた。
「かがみ、ごめにゃわっ!?」
 そして、言葉を出そうとした瞬間に、後ろから襟首をつかまれ引き倒された。
「いてて…な、なにごと…」
 仰向けに倒れたこなたが見上げると、完全に目の据わったみゆきの顔がそこにあった。
「泉さん。わたしには。挨拶は。無しですか」
 一言一言はっきりと区切りながら話すみゆきに、こなたはなにか恐ろしいものを感じ取っていた。
「あ、こ、こんにちは…」
 なんとも間抜けに感じる挨拶をするこなたの顔の横に、みゆきは持っていた一升瓶をドンッと音を立てて置いた。
「注ぎなさい」
 そして紙コップをこなたの目の前に突き出す。逆らうとダメだ。そう感じたこなたは、起き上がって一升瓶を手に取った。
「だ、だいぶ飲んでるみたいだけど、大丈夫…?」
 一升瓶の中身が思ったより減っていることに気がついたこなたは、心配そうにみゆきにそう聞いた。
「わたしに。お酒が。注げないというのですか?」
 答える代わりに、半眼で睨みながらそう言ってくるみゆきの持つ紙コップに、こなたは首を振って酒を注いだ。みゆきは注がれた酒をじっと見つめると、紙コップの端に口をつけ、ちびちびと舐めるように飲み始めた。
「…変なところに、みゆきさんっぽさが残ってるなあ」
 呆れたようにそう呟いて、こなたはため息をついた。その直後に、こなたの後ろ…かがみが居た辺りでパシャッと水っぽい音が聞こえた。
「え、なに?」
 こなたが振り向くと、かがみの頭の上で、ビールの缶をひっくり返しているつかさが見えた。
「あははははっ!おねえひゃんびしょびしょー!」
「うえーん!なにするのよつかさー!やめてよー!」
 けたたましく笑うつかさと、泣きじゃくるかがみ。
「つかさ、なにやって…あーもう…」
 こなたは仲裁に入るために立ち上がろうとしたが、服の裾をみゆきに掴まれ、止められてしまった。
「泉さん。どこに。行くつもりですか?」
「え、いや、あれ止めないとさ…」
 こなたがつかさ達のほうを指差すと、みゆきはこなたが持っている一升瓶を取り上げ、つかさ達のほうにふらふらと歩いていった。
「飲みなさい」
 そして、そう言いながら中に入っている酒を、つかさとかがみにぶっ掛けた。
「つめたーい!にゃはははははっ!」
「みゆきまで…ぐすっ…うわぁぁぁぁぁぁぁんっ!」
 さらに大きな声で笑い出すつかさ。子供のように泣き喚くかがみ。
「わたしの。お酒が。飲めないのですか?」
 その二人を半眼で睨みながら、ずれたことを口にするみゆき。
「…どーすりゃいいの、これ…」
 こなたは頭を抱え、一刻も早くこの事態が収まることを願った。



990 :飲まれ酒 [saga]:2011/04/10(日) 03:17:39.63 ID:BH//71rJ0
 翌日。
 誰かが廊下を走るバタバタという音で、こなたは目を覚ました。
「ん…あー…こんな時間…」
 枕元にある目覚まし時計で、もうお昼前だということを確認したこなたは、おおきく欠伸をしながら自室を出た。

 部屋を出たこなたは、とりあえずリビングに向かおうと階段に足をかけたが、そこで足を止めた。ふと、トイレに方から誰かのうめくような声が聞こえた気がしたからだ。
 こなたは少しその場で考え、そして昨日酔いつぶれた三人を家に連れてきて、そのまま居間で寝かせていたことを思い出した。
 三人のうち誰かがトイレで吐いているのだろうと考え、こなたはドアの前でしばらく待ってみることにした。
「…あ…泉ひゃん…」
 トイレから出てきたのは、ハンカチで口を押さえたみゆきだった。
「お、おはようございまふ…」
「おはよう、みゆきさん…大丈夫?」
 こなたがそう聞くと、みゆきは引きつった笑顔で頷いた。
「はい…だいぶ良くなったと…」
 真っ青な顔で弱々しくそう言うみゆきは、とても大丈夫そうには見えず、こなたはため息をついた。
「リビングに戻る?肩貸すよ」
「…すいません…」
 こなたの提案にみゆきは素直に頷き、二人は寄り添うように階段に向かった。


 二階に上がりリビングに入ると、ソファーに寝転び呻いているかがみの姿が見えた。
 それを横目に身ながら、こなたはみゆきを別のソファーに寝かせた。
「かがみ、大丈夫…じゃないよね」
 こなたがそう聞くと、かがみは顔を上げようとし…途中で断念してもとの体勢に戻った。
「…死ぬ…」
 そして、そうポツリと呟いた。
「…急性ではありませんから…死にはしないかと…」
 律儀にそう言うみゆきは、頭痛が酷いのか目をつぶって頭を抱えていた。
「どうだい。気分は?」
 そして、リビングの入口から聞こえてきた声にこなたが顔を向けると、そうじろうがつかさを負ぶって部屋に入ってきた。
「つかさ、どったの?」
 かがみの隣につかさを寝かせるそうじろうにこなたがそう聞くと、そうじろうは困ったように頬をかいた。
「つかさちゃん、二階のトイレで吐いてたんだけどね、戻る最中に力尽きたみたいで、廊下で動けなくなってたんだ」
「あー、二階はつかさが使ってたのか。それでみゆきさん一階に…わたしらが通った後に出てきたのかな」
 こなたはそう言いながら、かがみとその横のつかさを見た。
「やっぱ、わたしの服だと小さいね」
 かがみとつかさは、昨日散々酒を頭からかぶったために服を洗濯していて、乾くまでの間にとこなたの服を借りているのだが、丈が足りずに無駄に露出が多くなってしまっていた。
「これはこれは眼福なんだけどな…」
 そうじろうはそう言いながら懐か紙の箱を取り出して、テーブルの上にあるスポーツ飲料の横に置いた。
「朝からだいぶ吐いてるし、そろそろ吐き気も収まってきなんじゃないかな?飲める様なら薬を飲んでおくと良いよ」
 そして、そうじろうは寝ている三人にそう声をかけたが、呻くばかりでまともな返事は返ってこなかった。
「まだ、無理かな…」
 そうじろうは困った顔をして、空いているソファーに腰掛けた。その隣にこなたも腰掛ける。
「しっかし、酷い有様だねえ」
 こなたはそう言いながらため息をついた。
「かがみやみゆきさんは、お酒の飲み方分かってるような気がするんだけど、どうしてこうなったのやら」
「花見だったんだろ?ああいう場は慣れてないとなあ」
「そういうもんなの?」
 こなたがそう聞くと、そうじろうは深く頷いた。
「場の独特の雰囲気に飲まれちまってな、普段の自分のペースが守れなかったりするんだよ」
「ふーん…」
 こなたは改めて三人を見て、昨日の有様を思い出して苦笑いを浮かべた。
「…まあ、こなたが一緒に飲まれなかったのは幸いだな」
「ん、なんで?」
 そうじろうの呟きに、こなたは首を傾げた。
「なんでって、覚えてないのか?…お前、正体なくすほど飲むと脱ぎだすじゃないか」
「…え、マジで?」
「二十歳の誕生日のときに、折角だからって飲んですごいことになってたぞ」
「ぜ、全然覚えてない…」
 こなたは頭を抱えてその時のことを考えたが、まったく思い出すことは出来なかった。
「脱ぐって…わたしどこまで脱いだの?」
「そりゃあ、全部。素っ裸になるまで」
「…うわあ」
 もし時間に間に合って一緒に飲んでいたら、あの場でストリップを始めるところだった。そう思うと、こなたは遅れたことが良かったような気がしていた。
「…さて、そろそろかがみちゃん達の服が乾くかな。こなた、ここ見てあげておいてくれよ」
 そうじろうがそう言いながら立ち上がり、大きく伸びをした。
「あ、うん…お父さん、ごめんね。なんかまかせっきりでさ」
 昨日迎えに来てもらった上に、朝から三人の世話をさせていたため、そうじろうが少し疲れているんじゃないかと、こなたは感じていた。
「なんだ、らしくないな」
 こなたの言葉にそうじろうは笑うと、軽く手を振ってリビングから出ていった。
 こなたはそうじろうが出て行くのを見送った後、寝ている三人を見て、昨日からもう何度目かわからないため息をついた。
「…ほんと、大丈夫かな」
 そしてそう呟いて、こなたはソファーの背もたれに身体を預けて大きく伸びをした。


― おわり ―
991 :飲まれ酒 [saga]:2011/04/10(日) 03:19:19.98 ID:BH//71rJ0
以上です。

みゆきのこれは絡み酒とは違うかなあ、と思ったり。
992 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2011/04/10(日) 12:17:48.96 ID:Gp1b1DT20
-----------------------------------------------------------------------------

ここまでまとめた

-----------------------------------------------------------------------------

新スレを作成しました。ので埋めちゃって下さいな。

新スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1302405369/


993 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/04/10(日) 17:49:01.62 ID:8hsf6naAO
994 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2011/04/10(日) 18:51:46.34 ID:Gp1b1DT20
995 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2011/04/10(日) 19:00:18.10 ID:Gp1b1DT20
しかしこのスレが終わるのに一年弱かかってしまった。
去年の7月〜だからね。
新スレはもっとスローペースになるかも。

自分は世界観よりはキャラが好きでらきすたが好きになった。
何処にでも居そうなキャラ。
だからあまりらきすたの原作にはこだわらずに好き勝手にキャラを動かしてます。

自分の作品でキャラクターが好きになったと言う人が居れば幸いです。



996 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/04/10(日) 20:01:10.54 ID:+JeeaEIQ0
>>987
おお、ありがとうございます!
なんか自分の頭の中を書いてもらったように感じます。感謝感謝です。
酔っ払いって矛盾なくキャラを壊せて面白い。

>>986
そっからお勧めに載せる作品とか決められそうでいい企画だとは思うんですけどねー
なにせ時間が取れずに協力もできないもんで、申し訳ない限りですが…・。
997 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/04/10(日) 20:04:27.91 ID:+JeeaEIQ0
次スレの発展祈願埋め
998 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2011/04/10(日) 22:34:09.39 ID:bSWy6y4i0
>>991

次スレでは俺もss書こうかな…
999 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2011/04/10(日) 22:34:09.38 ID:bSWy6y4i0
>>991

次スレでは俺もss書こうかな…
1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2011/04/10(日) 22:35:06.26 ID:bSWy6y4i0
>>991 よかったぜ

次スレでは俺もss書こうかな…
1001 :1001 :Over 1000 Thread
  | l| l || || l|           | l| l || || l|         
  | l| | || || l!           | l| | || || l!         たらい回しの最果ての地へようこそ!
   l   l| .|    ☆        l   l| .|    ☆     
  ____ /    .     ____ /    
  ゝ___ノ がーん! .   ゝ___ノ がーん! 
   (    )  .   .  .     (    )
   と    i             と    i          SS速報VIP(SS・ノベル・やる夫等々)
    しーJ              しーJ          http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/
1002 :最近建ったスレッドのご案内★ :Powered By VIP Service
厨二能力やるからそれ使って戦おうぜ @ 2011/04/10(日) 22:14:06.59 ID:kTlBLtfMo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1302441246/

【それぞれの】妹に告白された!!24【歩む道】 @ 2011/04/10(日) 22:08:45.06 ID:UgMLXuDB0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1302440924/

ここだけU.C.0079 コンマ00で特攻 @ 2011/04/10(日) 22:02:38.57 ID:VXXIoa9Fo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1302440558/

ギンガナム「安価で我が世の春が来た!」 @ 2011/04/10(日) 21:46:22.68 ID:dCSCJW2SO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1302439582/

【A】蒼い子が全レス【雑】※スイートイカ娘 @ 2011/04/10(日) 21:33:54.21 ID:tKfCYBYgo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1302438833/

びんちょ ハク 寝こさん 混ぜるな危険  1.090 @ 2011/04/10(日) 21:12:14.51 ID:jzcTqGw+o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1302437534/

梓「Have A Good Die」 @ 2011/04/10(日) 21:04:56.64 ID:ylk7FBUWo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1302437096/

バイクスレ @ 2011/04/10(日) 20:22:54.81 ID:GTh1wPAPo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1302434574/


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