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女「世にも奇妙な共同生活」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :クリスマス終了のお知らせ [saga]:2010/12/26(日) 03:13:19.55 ID:YpnSvMUo
 町から遠く離れた森の中、女は車を走らせていた。

 空は快晴。緑の風景。
 窓からは草の匂いがする心地がいい風が流れ込む。

女「確かここら辺だったような…」

 車道も続かなくなったところで女は車を停め、キョロキョロと辺りを見渡した。
 木、木、木。木ばかり。  
 人の手で施された物など何一つない。 

 こんな所まで来る人間は自分だけなんだろうと思う。

 ふと、後部座席を見た。
 後部座席には生活に必要な服やタオル、トイレタリー用品などの日用品が詰め込まれたバッグが山のように置かれている。

女「はぁ…ちょっと多すぎたかな。運べないかも…」

 大量の荷物を見てげんなりすると、エンジンを切って車から降りた。

女「こんな山奥じゃ人もいないだろうし…盗まれる心配はないよね」

 念のためもう一度辺りを見渡し警戒する。
 
 人の気配はない。
 車と荷物はここに放置しておいても大丈夫だろう。

女「よし! それじゃあ行きますか」

 女はそのまま森の奥深くへと入っていった。

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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
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いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
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こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
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アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
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2 :クリスマス終了のお知らせ [saga]:2010/12/26(日) 03:14:37.31 ID:YpnSvMUo
 草木や枝が茂る細道。女はそれを掃いながら進む。
 しばらく歩いたところで、大きなログハウスを見つけた。

女「あった!」
 
 このログハウスは彼女の死んだ祖父が残したものであり、女は今日からここへ住むことになっていたのだ。
 ようやく目的地に到着し、女の顔から笑みがこぼれる。
 歩を少し速め、ドアの前まで来た。
 
女「へぇ〜…ここが」

 ギィ、とドアを開け中を見渡す。
 電気はついていないが、陽の光が射しているため多少は明るい。
 中は広いが、テーブルやイスなどがあるだけでどこか殺風景だ。
 しかもその上には埃が積もっており、天井にはクモの巣が張ってある。

女「長い間放置されてたんだもんね…仕方ないか」

 掃除はあとですればいい。とりあえず荷物をここまで運ぼう。
 女は再び車を置いた場所へと戻っていった。
3 :クリスマス終了のお知らせ [saga]:2010/12/26(日) 03:15:37.56 ID:YpnSvMUo
・・・
 
 細い道を歩きながら、女はこれからのことを考えていた。
 
 荷物は何から運んでいこう。
 車はどこに駐車しよう。
 掃除はどれくらいかかるのだろうか。
 夕飯は何にしよう。
 ここで上手くやっていけるだろうか。
 これからここで何をしていこう…

 だんだんとネガティブになり、はぁ、と不安が入り混じったため息を吐き出す。

女「……」

 …気楽になろう。   
 
 母親からいつも言われていた。
  
 『悪いことばかり考えていたら、悪いことしか起きない』

 もう少し視野を広げてみよう。

 空気が気持ちいい。
 景色も悪くない。
 周りには美しい自然で溢れている。
 心が開放されたような気分になる。
 以前住んでいた賑やかな街とはまた違った趣がある。
 ここにはきっと、楽しいことがたくさんあるのだろう。
  
女「…頑張ろっと」

 自分に言い聞かせるように呟いた。
4 :クリスマス終了のお知らせ [saga]:2010/12/26(日) 03:16:52.58 ID:YpnSvMUo
 考えてるうちに車を置いた場所まで到着した。
 とにかく荷物をログハウスまで運ばなければ。
 車の扉に手をかけ、開けようとする……その時だった。

――ガンッ、ガンッ

女「……?」

 反対側から音がした。

女(な、なに…? 何の音?)
 
 森に住む動物だろうか。
 それとも別の何かか…

 得体の知れないものに恐怖を覚え、体が硬直する。
 冷や汗が出てきた。

女(ど、どうしよう…暴漢グッズは車の中だし…)

 次の瞬間、反対の窓から何かが顔を現した。

獣娘「お?」

女「!?」
5 :クリスマス終了のお知らせ [saga]:2010/12/26(日) 03:18:13.08 ID:YpnSvMUo
 目に入ったのは、獣の耳が生えた少女。
 女は目をパチクリとさせながら少女を凝視する。

 耳…獣の耳だ。
 頭からネコかキツネかは分からないが、とにかく耳が生えている。

 そういえば幼いころ祖父から聞いたことがある。
 森には獣人が住んでいる、と。
 
 半信半疑でその話を聞いていたが、まさか目の前に現れるとは今日の今この時まで思ってもいなかった。

獣娘「……」

女「……」

 窓越しにらみ合いが続く。
 獣の少女は不思議そうな顔でこちらを見ていた。

 未知との遭遇。
 興奮、恐怖、驚き、焦り…全てが入り混じる。
 これまでに感じたことのない空気だ。

 女はこの空気に耐えられず、思わず口を開いた。
 
女「あ、あの……ハロー」

 引きつった笑顔でなんとか挨拶をする。
 しかし獣の少女はまだ不思議そうな顔をして女を見ていた。
6 :クリスマス終了のお知らせ [saga]:2010/12/26(日) 03:20:21.23 ID:YpnSvMUo
獣娘「……」

女「……」

女(えっと…挨拶の仕方間違えたかな…)

女「こ、こんにちはー」

獣娘「……」

女「おいっす」

獣娘「……」

女「がおー」

獣娘「……」

女「……」

 色々と挨拶を試みてみたが、返されることはなかった。
 警戒しているようだ。お尻から生えているしっぽが山のような形になっている。 

 しかし、せっかく珍しい生き物に会えたのだ。
 この機会を逃したくはない。何とかしてコンタクトをとりたい。
 おもしろそうだ。
 
 女はすでに好奇心で動いていた。
7 :クリスマス終了のお知らせ [saga]:2010/12/26(日) 03:21:08.48 ID:YpnSvMUo
女(あっ…そういえばポケットの中にチョコがあったはず…)

 相手は野生児だ。言葉が通じないならエサで釣ってみよう。
 コミュニケーションをとる手段としてはこれが確実かもしれない。 
 
 女は車の後ろに回りこみ、慎重に少女のもとへと近づいた。

女「ほら、チョコだよー」

獣娘「……」

女「甘くて美味しいよー」

獣娘「……」

 差し出した板チョコに少女の目が向く。
 すんすんと匂いを嗅ぎはじめた。
 そして女の方へと視線を戻す。

 物欲しそうな目だ。しっぽをフリフリと揺らしている。

女「食べていいよ」 
 
 警戒されないよう、女は笑顔を作った。

獣娘「……!」

 少女は嬉しそうな顔をすると、チョコに食いつく。

獣娘「おいしい!」

女「あ…喋れるんだ…」
8 :クリスマス終了のお知らせ [saga]:2010/12/26(日) 03:22:13.35 ID:YpnSvMUo
 今まで食べたことのない味なのだろうか。
 獣の少女はチョコを夢中でほおばる。

獣娘「おまえいいやつ、すき!」

女「あ、ありがとう」

 すでに警戒心は解けたようだ。
 よく見るとかわいい顔をしていると、女は少女の顔を見て気づいた。
 まるで普通の人間の女の子のようだ…

 この子は危害をくわえたりはしないだろう。女にはそう思えた。

女「あなたはえっと…獣人、なの?」

獣娘「おいしい!」

女「うん…それはよかった。それで聞きたいことがあるんだけど…」

獣娘「これなに?」

女「これはチョコっていうの」

獣娘「ちょこ…ちょこおいしい!」

女「うん。それでね、あなたは一体…」

獣娘「ちょこ! ちょこ! あははは!!」

女「あー…とりあえず食べ終わってからでいいかな」

9 :クリスマス終了のお知らせ [saga]:2010/12/26(日) 03:23:06.91 ID:YpnSvMUo
・・・

 しばらくして、少女はチョコを食べ終えた。
 今は指についたチョコをぺろぺろと舐めている。

女「あの…もういい?」

獣娘「んー?」

女「あなたはこの森に住んでるの?」

獣娘「うん!」

女「じゃあやっぱり獣人なんだ…」

獣娘「じゅう…じん?」

女「あなた達のこと。おじいちゃんから聞いたよ、人間と動物が混ざった生き物だって」

獣娘「にんげん…おねえちゃんがちかづいちゃだめっていってた」

女「お姉ちゃんいるんだ」

獣娘「うん」

女「今どこにいるの?」

獣娘「いない」

女「え?」

獣娘「もういない」

10 :クリスマス終了のお知らせ [saga]:2010/12/26(日) 03:24:29.61 ID:YpnSvMUo
女「いないって…」

獣娘「どこかいっちゃった」

女「そうなんだ…」

獣娘「うん」

女(死んじゃったのかな…)

女「…じゃあここで一人で暮らしてるんだ」

獣娘「うん」

女「私もね、今日からここに住むんだよ」

獣娘「ほんと!? なんで!?」

女「なんでって言われると…色々と事情があって…」

獣娘「?」

女「うーん…ま、まぁそんなことはいいじゃない」

獣娘「???」

女「えっと……そうだ! 私たち友達にならない?」

獣娘「ともだち?」

女「そう、友達…仲間よ」

獣娘「なかま!」

 その言葉を聞くと少女は嬉しそうに飛び上がる。
 ずっと一人だから今まで寂しかったのだろう、と女は思った。
 それに自分にとっても、こんな所で人間(に近い生き物)と交流できることは嬉しいことだ。
11 :クリスマス終了のお知らせ [saga]:2010/12/26(日) 03:25:17.96 ID:YpnSvMUo
女「これからよろしくね」

獣娘「うん!!」

 満面の笑みで女に返事をした。

獣娘「そうだ! なかま、わたしのいえにつれていく!」

女「へ?」

獣娘「こっちこっち!」

女「ちょ、ちょっと」

 少女は女の腕を引っ張ると、森の奥へと連れて行った。
 グイグイと力強く引っ張るので、女も身を任せることしかできない。

女「ど、どこまで行くの?」

獣娘「こっち!」

  見覚えのある道。先ほど通った道だ。
  そしてこの先にあるのは…

獣娘「ここ!」

女「あ…」

 少女が指差す先には、祖父のログハウスが建っていた。

12 :クリスマス終了のお知らせ [saga]:2010/12/26(日) 03:26:26.14 ID:YpnSvMUo
女「ここに住んでるんだ…」

獣娘「うん。ねるときはここ」

女「なるほどね…」
 
 確かにここなら雨風もしのげる。
 ころあいの寝床だ。

女「私もね、この家に住むんだよ」

獣娘「ほんと!?」 

女「うん、ここおじいちゃんの家なの」

獣娘「?」

女「あっ…えっとね、この家の所有権は私のおじいちゃんにあって…」

獣娘「???」

 困惑した顔をする少女。
 所有権がどうだとか主張しても、野生の子には通じないだろう。

 この家のことをどう説明しようか…女は一瞬戸惑いの表情を浮かべた。
 が、すぐに微笑を取り戻す。

女「私も、ここに住んでいい?」

獣娘「うん!!」

 所有権など難しい話をしないで、こう伝えればいいのだ。
 
13 :クリスマス終了のお知らせ [saga]:2010/12/26(日) 03:26:55.73 ID:YpnSvMUo
女「…ねぇ、ちょっと聞いていい?」

獣娘「なに?」

女「さっき人間に近づいちゃいけないって言ってたけど…私と一緒に暮らしても大丈夫なの?」

獣娘「うん、おまえはいいやつ。それにおねえちゃんににている」

女「お姉ちゃんって、あなたの?」

獣娘「うん!」

女「そっか…」

 案外あっさりと受け入れられて、少し拍子抜けした。

 それにしても可愛らしい笑みの少女だ。
 可愛らしさのあまり、思わず抱きしめたくなる。

女(なんか…この子のことが本当の妹に思えてきた)
14 :クリスマス終了のお知らせ [saga]:2010/12/26(日) 03:34:16.34 ID:YpnSvMUo
こんな感じで書いていこうかと思っています。
文が読みづらかったらごめんなさい。
ちなみにこのSSは女のキャラしか出ません。
15 :クリスマス終了のお知らせ [sage]:2010/12/26(日) 06:13:35.92 ID:0DgCR6oo
16 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/26(日) 13:52:56.92 ID:0jSmLMAO
超乙
17 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/26(日) 15:21:41.18 ID:bAJLsu.o
乙した。
女しか出ないだと?いいじゃなイカ!
18 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/26(日) 18:32:09.01 ID:2d/aAAAO
おつおつ
早急に続きを書くべきでゲソ!
19 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 02:36:36.94 ID:MCId94Ao
有り
20 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/27(月) 04:06:21.32 ID:tCGb9ZUo
・・・

女「ふぅ…これで全部。手伝ってくれてありがとうね、獣娘ちゃん」

獣娘「がぅ!」

 女は獣娘の手を借り、なんとか車内の荷物を全て家の前まで運び終えた。
 大小いくつものバッグが庭に並ばれている。
 獣娘はそれを物珍しそうに見ていた。

女「ほんとはこんなに持ってくるつもりはなかったんだけど、ついつい詰め込んじゃって…」

 女は恥ずかしそうに言いながら、一つのバッグを手に取った。
 そして中からペットボトルを取り出し、獣娘に手渡した。 

女「はい、どうぞ。ちょっと休憩しよっか」

獣娘「?」

 獣娘は初めて手にする物体をまじまじと見つめている。

獣娘「……」

 中に水が入っているのは分かった。
 しかしどうやったらそれに触れることができるのかは分からなかった。

獣娘「…?」

 軽く握ってみる。
 ペットボトルが少しへこんだ。
 だが水は出てこない。
 
 振ってみる。
 やっぱり出てこない。

獣娘「がぅ…」
 
 残念そうに唸り声をあげた。

女「これはね、こうやってあけるの」

 その光景を見かねた女は、優しく微笑みながらペットボトルのふたを取ってみせる。

女「はい、これで飲めるよ」
21 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/27(月) 04:07:26.46 ID:tCGb9ZUo
獣娘「!」
 
 すると獣娘は目を大きく見開いて驚いた。
 ふたが開くことは予想外だったようだ。
 
獣娘「すごい!」

女「そんなすごいことでも…」

女(この子、一般的なこと何も知らないんだ。これからの生活ちょっと大変そうかも…)

 ふたが取れたことに感激している獣娘を見ているとそう思える。
 
 これからここでの生活は、どんなことが待ち受けているのだろうか。
 色々と不安もあるが、とりあえずこの子といれば楽しくはなりそうだ。
 何も知らない純粋無垢な少女。
 勉強でも教えてみようか? 色んな服を着せてみようか?
 まるで本当の妹でもできたような感覚だ。
 そんなことを考えているその時だった。

獣娘「ざばーん」

女「あっ」

 獣娘は頭からペットボトルの水をかぶった。

女「あー…ずぶ濡れになっちゃった…」
22 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/27(月) 04:08:29.07 ID:tCGb9ZUo
獣娘「きもちいい!」

 ぶるぶると頭をふるって水をはらう。
 女は慌てて別のバッグからタオルを出すと、それで獣娘の頭をふいた。

女「もう、ダメじゃない。風邪ひいちゃうわよ?」

獣娘「がぅ?」

女「今のはね、こうやって飲むものなの」

 空になったペットボトルを口にあてて、飲むジェスチャーをしてみせた。

獣娘「のむもの?」

女「そう、飲むもの。獣娘ちゃんだってのどが渇いたら水を飲むでしょ? これはそういう時にいつでも水を飲めるためにあるの。分かった?」

獣娘「わかった!」

 本当に大丈夫だろうか。少し不安になる。 
  
女「…よし。それじゃあ頭を拭き終わったら家の掃除でも始めよっか」

獣娘「そーじ?」

女「そう、掃除」

23 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/27(月) 04:09:27.79 ID:tCGb9ZUo
 頭を拭き終えると、二人は家の中へと入っていった。
 中は先ほどと変わらず埃っぽく、薄暗い。

獣娘「そーじって、なに?」

女「この家を、ぜーんぶキレイにするの」

獣娘「きれい?」

女「見て、ホコリがこんなにあるでしょ?」

 女はテーブルに溜まったホコリを指ですくってみせた。

女「ほら、ばっちぃ」

獣娘「おぉ! ばっちぃ」

 獣娘はホコリが溜まっていることなどどうでもいいのだろう。
 むしろ「ばっちぃ」という聞きなれない言葉に反応を示している。

獣娘「ばっちぃ」

 そして女がやったように、獣娘もテーブルのホコリを指ですくった。

獣娘「……あー」

 それ舐めようとする。

女「ストップ! だめ!!」

獣娘「がぅ?」

 大声を出され、獣娘は少し驚いてしまった。

24 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/27(月) 04:11:02.77 ID:tCGb9ZUo
女「ばっちぃのは口に入れちゃダメだよ」

獣娘「なんで?」

女「体に悪いから。それに汚いでしょ?」

 獣娘は自分の指についたホコリをじーっと見てみる。
 確かにあまり良いものとは思えたのだろうか、眉をしかめる。

女「はい、手をふいて」

獣娘「ばっちぃ…」

女「ばっちぃね」

 女は獣娘の指についているホコリをぱっぱっと掃った。

女「そういえば、いつもどこで寝ているの?」

獣娘「そこ」

 獣娘が目を向けた先には、大きめのソファがあった。
 よく見るとそこにもホコリが被ってある。 

女「あそこもばっちぃよ〜」

獣娘「がぅ!?」

女「でも大丈夫」

獣娘「?」

女「今から掃除をすれば全部ピカピカ、ばっちくなくなるよ」

獣娘「ばっちくなくなるの!?」

女「うん」

獣娘「すごい!」

女「獣娘ちゃんも掃除、手伝ってくれるかな?」

獣娘「うん!!」
25 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/27(月) 04:12:35.70 ID:tCGb9ZUo
・・・

 頭には頭巾をかぶせ、口にはマスクをつける。体にも前掛けをかけた。
 はたき、ホウキ、雑巾、モップ、バケツ、ゴミ袋もある。
 全てバッグの中に入っていたものだ。

女「これが掃除をする時の装備よ!」

獣娘「?」

 着慣れない衣装に、獣娘は戸惑う。

獣娘「これがそーじ?」

女「ここからが本番。今からこのホウキで床を掃いたり、雑巾で拭いたりするの」

獣娘「はく、ふく…」

女「やれば分かるわよ。とりあえず窓を開けて、上から綺麗にしましょう」

 ログハウスにある倉庫から持ってきた脚立を使い、天井部分の掃除から始めた。
 はたきでクモの巣やホコリを取り除く。

 獣娘はその様子をじーっと眺めていた。
26 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/27(月) 04:16:07.69 ID:tCGb9ZUo
 天井部分が終わると、次は壁際の掃除に差し掛かる。

女「獣娘ちゃんもやる?」

獣娘「うん!」

 待ってましたと言わんばかりの返事。
 先ほど女が天井の掃除をしていたのを見て自分もやりたくなったのだろう。

 女は、洗剤の混ざった水で濡らした雑巾を獣娘に渡した。

女「これを使ってね、こうやってふくの」

 窓を拭いてお手本を見せてみる。

女「ほら、きれいになるでしょ?」

獣娘「わぁ!!」

 さっきまで汚れていた窓が、雑巾を使ってふいただけでピカピカになった。
 その光景を見て、獣娘は感動する。

獣娘「そーじ、すごい!」

女「ふふっ、すごいよね」

獣娘「わたし! わたしもやる!」

女「はいどうぞ」

 獣娘も、女がやったように汚れた窓をふいた。

獣娘「わぁ…!!」

 自分の手で汚れを落としたことに、獣娘は再び感動を覚える。 
 
27 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/27(月) 04:17:13.00 ID:tCGb9ZUo
スローペースでごめんなさい
そしてこれからもスローペースだと思います
28 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 04:28:33.46 ID:itIMGoAO
>>27
気にしない気にしない。
執筆するのは貴方なんだから
問題なし! 超乙ですの
29 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 05:47:38.60 ID:GOcCTvAo
乙した。
無理せずに、のんびり書いてくださいな
30 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 12:04:04.08 ID:lrCU8oAO
おつー
スローペースで問題ないですの
お身体を壊されたら元も子もありませんわ
31 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 14:56:47.71 ID:T.s1hlYo
VIPと違って落ちる心配もないから保守もいらない
のんびりでも完結するなら何の問題もないよ
32 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/28(火) 07:39:11.71 ID:NoGNUXgo
頑張って下さい
33 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/28(火) 08:01:42.11 ID:gkGrwPso
ケモナー歓喜
34 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/29(水) 05:12:41.91 ID:zDBDFDco
 二人は壁や窓を丹念に掃除した。
 獣娘は楽しそうに手を動かしている。
 部屋は広く拭き終えるのに時間がかかったが、なんとか終わらせることができた。 

女「はぁ〜…ようやく壁際は終了っと」

獣娘「そーじ! そーじ!」

 獣娘は目を輝かせながら、すっかり汚れが落ちた部分を指差し女に見せた。
 満面の笑みだ。
 その可愛らしい笑顔は見ている方まで癒されそうになる。

獣娘「ばっちくない!」

女「キレイになったね。えらいえらい」
  
 女は獣娘の頭を優しくなでた。
 頭をなでられ獣娘は一瞬惑ったが、女が微笑んでいるのを見ると自分も嬉しくなった。

獣娘「えへへ…」

 ふと、獣娘の脳裏に姉と暮らしていた日々の記憶が浮かぶ。
 覚えていることは微かだが、姉にもよく頭をなでられていた。
 そしてその今はいない姉の姿と女の姿が、獣娘には重なって見えた。

獣娘「……」

女「どうしたの? 獣娘ちゃん」

 ぼけっとしている獣娘に話しかける。

獣娘「…おんなは、ずっとここにいるの?」

女「え? ……うん、一応そのつもり」

 辺りを見渡し、言葉を続けた。

女「…もう元の暮らしには戻りたくないの。だから余生はここで過ごそうって思ってる」

 一呼吸おいてから、獣娘の方へと顔を戻した。
 女の顔はやや苦笑いになっている。

女「――って言っても、まだこれから何十年もあるんだけどね。百歳くらいまで生きるとしたら80年ぐらいあるかな」

35 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/29(水) 05:15:55.74 ID:zDBDFDco
獣娘「?」

 獣娘には女が何を言っているか分からなかった。
 
だが、一緒にいてくれるならそれで十分だ。
 もう一人ぼっちじゃない。

獣娘「わたしも! おんなといっしょ!」

 獣娘は女の腰の辺りにしがみついた。

女「うん、一緒に暮らそうね」

獣娘「えへへ」

 さっき出会ったばかりだというのに、なぜこの獣人とこうも親しくなっているのだろうか。 
 女は自分でも不思議に思った。

女「それじゃ、掃除の続きやろっか?」

獣娘「うん!」

 女はある日をきっかけに、自分はずっと一人で生きていこうと決めていた。
 誰とも関わらずに、ずっと…。
 だが人里から離れれば離れるほど、心細くなってい自分が見え隠れした。
 その不安はやがて大きくなっていく。
 ここに着いてからはそれが限界まできていた。
 
 そんな時にこの子と出会った。
 最初は興味本位で話しかけたが、話し続けてるうちに妙な安心感を覚えた。
 
 そして気づく――この安心感は孤独に対する恐怖心の裏返しだと。
 やはり一人で生きていくことは私には無理だ、寂しいものは寂しい。
 結局、自分で決めたことを守ることができなかった。
 なんてダメな人間だ。 

女「次は床掃除と…後はついでにお風呂場も掃除しなきゃ」

 私は弱い生き物だ――。
36 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/29(水) 05:16:45.04 ID:zDBDFDco
・・・

 数時間後、二人は一階の部屋と風呂場の掃除を終えた。
 しかしまだ二階が残っていた。
 外は夕日が沈みかけている。もう今日中に終わらせるのは無理だろう。
 明日、またやろう。

 ひとまず荷物を全て家の中に入れた。ちなみに車は放置したままである。

女「だいぶピカピカになったね」

獣娘「ぴかぴか…」

 家の中は最初に入った時と比べて格段にキレイになった。
 天井、壁、床、家具のどれにもチリ一つ見当たらない。

獣娘「ぴかぴかー!」

 この空間が心地いいのか、獣娘は床でごろごろし始めた。

女「ふふっ」
 
 女もつられて床に寝そべる。 
 そして改めて家を見渡した。 

女「はぁ…広いなぁこの家。私たち二人でも広すぎる…」

 広すぎると逆に落ち着かなくなる。まだ四、五人は入れそうだ。


37 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/29(水) 05:18:18.04 ID:zDBDFDco
女「ねぇ獣娘ちゃん。獣娘ちゃんには他にお友達はいないの?」

獣娘「おともだち…?」

女「獣娘ちゃんと同じで、耳としっぽが生えてる人」

獣娘「がぅ……いない。私だけ」

女「そっか…他に人間はいないみたいだし、話しができるのは獣娘ちゃんだけか」

 しかし、それでも十分嬉しい。

女「獣娘ちゃん、こっちおいで」

獣娘「がぅ?」
 
 獣娘は言われたとおり、女のもとへ近寄った。
 近づいた瞬間、女は獣娘を引き寄せ優しく抱きしめた。

獣娘「おんな…?」

女「汚れちゃってるね…あとでお風呂入ろっか」

獣娘「おふろ?」

女「さっき掃除したでしょ? そこで体の汚れを落とすの」

獣娘「おふろ…」

女「気持ちいいから、きっと気に入るはずよ」

獣娘「がぅ…おんな、なんでもしってるね」

女「え?」

獣娘「おねえちゃんもなんでもしってた。けど、わたしはしらないこといっぱい…」

女「…大丈夫よ。私が獣娘ちゃんに色々なこと教えてあげるから」

獣娘「ほんと?」

女「うん。だから心配しないでいいのよ、私がついているから」

獣娘「がぅ! おんな、だいすき!」

女「…ありがとう、獣娘ちゃん」
38 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/29(水) 05:19:07.16 ID:zDBDFDco
女「そうだ、お風呂の前にちょっと上の様子見てくるね。明日掃除しないといけないし」

 女は獣娘の体を開放すると、立ち上がり二階へと向かった。

女「すぐに戻ってくるから、待っててね」

獣娘「うん!」

 女は階段を上っていく。
 上に近づくにつれ暗くなっていった。

 二階には部屋が四つあった。
 女はその中のにある、階段を上ってすぐ手前にある部屋に入ることにした。

 部屋の中は暗い。電気をつけてみる。
 しだいに明るくなるにつれ、部屋の全貌が明らかになった。

女「なにこれ…」

 中には骨董品…壷や像、わけの分からない古い箱などが多数あった。

女「おじいちゃんが集めてたのかな…」

 こういう趣味があったとは、女も知らなかった。
 唖然としながら部屋をの中を見ていたその時

女「…あれ?」

 女は部屋の片隅に小さな光るものを見つけた。

女「これ……指輪?」

39 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/29(水) 05:20:50.45 ID:zDBDFDco
 見たことのないデザインの指輪。
 これは何の指輪だろうか、女は首をかしげる。

女「おじいちゃん…色々集めてたんだ」

 少し古めだが、高級な指輪なのだろうか?
 もしそうなら一度指にはめてみたい…。

 女は自分の左手の薬指に指輪をはめてみた。

女「結婚指輪……なんてね」

 一人で何をやっているのだろう、馬鹿らしい。
 しばしの沈黙のあと、空しくなった女は指輪を外そうとした。

 その時だ。

女「きゃっ!?」

 指輪が突然光を放った。

「やっ…たーーーー!!」

女「!?」

 そしてどこからか女性の声が聞こえた。

40 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/29(水) 05:22:15.83 ID:zDBDFDco
女「え…え??」

「あー、助かった。これで久しぶりに外に出れる」

女「だ、だれ!?」

「おっとお前か、私を解放したのは」

女「か、開放…?」

 女は困惑した顔で周囲を見渡した。
 それよりも、頭がこの状況に追いついていない。
 突然の光、声…一体何が起きているのだろうか。
 まさか幽霊…?

「どこ見てるんだよ。こっちよこっち」

女「え…?」

「後ろだって! うーしーろ!」

 女は声のとおり後ろを振り向いた。
 ゆっくりと、怯えながら…その先を見た。

「こんばんは」

女「あ、あなたは…」

 するとそこには、黒い翼が背中に生えた少女が立っている。
 耳やしっぽは生えていない…獣人ではない。

女「ゆっ、幽霊!?」

「違うっての!!」

 少女は声を張り上げた。

「私は――…」

 そして女へ近づいていく。

悪魔「――悪魔だ」
41 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/29(水) 05:23:45.82 ID:zDBDFDco
といったところで次回へ続く。
42 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/29(水) 06:43:15.13 ID:OBl7iIgo
おつおつした。
新キャラか!ちょっとでてくんのが早いなwでもワクワク
43 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/29(水) 16:40:00.75 ID:8sGd0zko
獣娘から悪魔っ子まで出てくるとは
44 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/30(木) 03:01:43.72 ID:nGwfzIAO
乙乙
45 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 03:54:27.34 ID:nrLQhh2o
女「あ、悪魔…?」

悪魔「そう、悪魔」

女「悪魔って…あの悪魔?」

悪魔「だからそうだって言ってんだろ。はぁー、これでようやく外の空気が吸える…最っ高ー!!」

女「え、えっと…」

悪魔「あのクソ魔女…よくも私を。次ぎ会ったら絶対にぶっ飛ばしてやる」

女「……」

悪魔「あーお腹すいた。おい、ご飯持ってきて」

女「…あなた本当に悪魔?」

悪魔「しつこい、さっきから言ってんだろバカ」

女「……あはは、大人をからかっちゃダメよ。こんな所にいて、かくれんぼでもしてたの?」

悪魔「はあ?」
 
 女はこの少女を悪魔だと信じることができず、
 町の子供が遊んでいるうちにこんな森の奥まで来たのだろう、と無理やり解釈することにした。

女「ほら、家まで送ってあげる。お母さんやお父さんも心配してるわよ?」

悪魔「こ、こら! 人の話を聞け!!」

 悪魔は声を張り上げた。
46 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 03:55:22.37 ID:nrLQhh2o
悪魔「私は悪魔だ!! そこら辺のガキと一緒にするな!!」

 大きな声に、女は威圧される。

女「…で、でも悪魔ってもっとこう…怖い感じじゃ…」

 女が想像した悪魔と、目の前にいる自称悪魔とでは大きな差異があった。
 よく本や映画に出てくる悪魔は皆恐ろしい怪物のような容姿をしている。 
 
 しかしこの悪魔は、翼が生えている以外どう見ても人間だ。
 恐ろしいところと言えばせいぜい目つきが悪いくらいである。

悪魔「なに、まだ信用してないわけ?」

女「だ、だって…いきなりそんなこと言われても…」

 イメージしていたものとまったく違く、そもそも悪魔なんて空想上の存在だと思っていた。
 獣人と出会ったとき以上に現実感がない。

悪魔「だーもう、これだから人間は。ほら見ろ、羽もある! しっぽや角だって生やそうと思えばはやせるし!」

 そう言うと頭から角、お尻からしっぽがニョキっと生えてきた。

女「!?」

悪魔「これで信用したか?」

女「ほ、ほんと…? 獣人じゃなくて?」
47 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 03:56:47.76 ID:nrLQhh2o
悪魔「獣人ってなんだ? 私は悪魔だって言ってるだろ!」

女「悪魔…ねぇ」

悪魔「はぁ…まだ疑ってんの?」 

女「だって…」

悪魔「…なんだったら、身をもって教えてもいいけど?」

 ニヤリと笑う悪魔。

女「!?」

 すると突如、悪魔が視界から消えた。
 それと同時に女は自分の体の中に何か別の魂が入り込んだのを感じる。

女『うっ……?』

悪女「どーだ、見たか!」

女『えっ……えぇっ!?』
 
 自分とは別の声が自分から聞こえた。
 体も自分とは別の誰かが動かしているようだ。 
    
女『なにこれ!?』

悪女「憑依だ、憑依。お前の体に私が憑いたんだ」

女『ちょ、ちょっとこれ…』

 近くに鏡があるのを見つけた。
 その鏡を覗いて自分の姿を確認してみる。

女『!? ……つ、角が生えてる!!』

悪女「悪魔だからな」
48 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 03:58:33.83 ID:nrLQhh2o
女『あっ、羽!! しっぽもある!!』

悪女「私と混ざってるからな」

女『服もなんか…露出が多いし…』

 女は自分の姿を見て絶句した。
 頭から角、背中には羽、お尻にはしっぽ。
 服装も変わっており、黒い衣装は胸や下半身を隠す程度だ。
 顔つきも若干が悪くなっていた。

悪女「ふははは! これで分かった? 私が正真正銘の、悪魔だって」

女『わ、分かった、分かったから…もう出てってよ』

悪女「いやだ」

女『っ!?』

悪女「面白そうだから、この体使って遊ぼっと」

女『なっ、なにするつもり!?』

悪女「とりあえず暴れまくる。誰か襲ったりして」

女『ちょっと! ダメよそんなの!!』

悪女「うるっさいなー…私の勝手だろ」

女『勝手って…私が困ります! 私の体から早く出て!』

悪女「いーだろ別にこれぐらい、悪魔なんだから。だいたい、お前がいくらやめてって言ってもこの体の支配権は私にあるんだから無駄だって」

女『いいから出てって!』

悪女「いーやーだ」
49 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 03:59:22.95 ID:nrLQhh2o
女『出てって!!!』

悪女「はいはい、むだむだ…」

女『出なさーーい!!!』

悪魔「のわっ!?」

 女が叫ぶと悪魔は体から追い出され、そのまま床に勢いよく頭から激突した。

女「はぁ、はぁ…」

悪魔「いたた…な、なにこれ。どうなってんの」

 思い切り良く飛び出したせいか、相当痛かったようだ。
 倒れこんでいる悪魔は、涙目になりながらおでこを手で抑えている。
 
女「や、やった! 動ける!」

悪魔「なにこれ…何だ…?」

女「はぁ…一時はどうなるかと…」

悪魔「あたた…」

女「あっ…」

 痛がっている悪魔を見て、女は心配そうに声をかけた。

女「…あ、あの〜……大丈夫?」 
 
悪魔「大丈夫なわけ…ないだろー!!」
 
 悪魔は起き上がると女を睨み返すと、胸元へつかみかかる。 
 
女「きゃっ!?」

悪魔「なんで!? なんで私を追い出せたんだ!?」
50 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 04:01:27.99 ID:nrLQhh2o
女「だって無理やり入るからつい…」

悪魔「ありえない…」

女「え?」

悪魔「ありえないんだよ!! 普通憑かれた悪魔を追い出すなんて、できっこないはず」

女「そうなの…?」

悪魔「それなのになんでお前は……――あっ」

 何かを思いついたのか、悪魔は女の左手を掴むと自分の顔の前まで寄せた。
 女はまだ状況が頭の中で整理できず、混乱している。 

悪魔「この指輪!!」

女「え…えぇ?」

悪魔「まさかこの指輪が…私を追い出したのか!?」

女「あのー…」

悪魔「っくしょぅ…あの魔女めーーー!!」

 悪魔は怒りに満ちた表情をしている。
 どうやらその怒りの原因はこの左手にはめた指輪にあるらしいということだけは、女は理解できた。
  
悪魔「こんな指輪外してやる!!」

女「きゃあっ!?」

 悪魔は指輪を無理やり外そうとした。
 しかし悪魔がどんなに力を込めて引っ張っても、指輪は女の薬指から抜けようとしない。

悪魔「このっ…なんで外せないんだぁ〜!!」

 さらに力を入れる悪魔。
 指ごと抜いてしまいそうな勢いだ。 
51 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 04:03:07.79 ID:nrLQhh2o
悪魔「抜けろ抜けろ抜けろー!!」

女「いたたたたっ!!」

悪魔「指輪なんかに悪魔が負けるわけなぁーーーい!!」

女「いたぁーーーい!!!」

悪魔「必殺、悪魔抜き!!」

 色々と試みているが、指輪は微動だにしない。

女「も、もうやめてぇ!!」

悪魔「こうなったら全力で…!」

女「いやっ!! 誰かーー!!」

悪魔「こん…のぉーーー!!」   
 
 また力を入れようとしたその時、

――ガブッ

悪魔「いっだぁーーーーーー!?」

 突然、悪魔の下半身に強烈な痛みが走った。
 何か鋭いものが深く食い込む感覚。
 痛みのあまり思わず女の手を離してしまった。 
52 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 04:03:44.19 ID:nrLQhh2o
獣娘「ぐるるるっ…!!」  

悪魔「なにこいつ!? いたたたたっ!! いたぁーーーーい!!!」

 痛みの正体。
 それは女の悲鳴を聞きつけてやってきた獣娘が、悪魔のお尻に噛み付いたものだっだ。

女「け、獣娘ちゃん!」

獣娘「おんな、いじめるな!!」

悪魔「離せバカ!! 痛いだろバカ!!」

獣娘「がるるるるっ!!」 
 
 必死に抵抗しようとする悪魔に、獣娘は歯をさらに食い込ませた。

悪魔「ぎゃーーーーーーーーっ!!!」

 悪魔の悲鳴が部屋中に響き渡る。 
53 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 04:04:45.27 ID:nrLQhh2o
 その後、噛み付いていた獣娘を女が止め、悪魔はなんとか助かることができた。
 一騒動も静まり、三人は今一階のリビングにいる。 
 
 悪魔は痛い痛いと言いながら、うつ伏せの状態で女にお尻を突き出している。お尻には獣娘の歯型がついていた。
 女はその突き出されたお尻に傷薬を塗っている。
 獣娘は女の側でその様子をじっと見ていた。というのも、また悪魔が暴れないか見張るためだ。

悪魔「なんでせっかく外に出たのにこんな目に…」

 悪魔の目には、うっすら涙が浮かんでいた。

女「傷跡が残らないといいけど…」
  
 女は傷口に優しく薬を塗る。
  
悪魔「いたっ!? 染みるぅ〜!!」

女「我慢して、ちゃんと直すためなんだから」

悪魔「〜〜っ…だいたい何だコイツ!? いきなり人に噛み付いたりして!!」

 悪魔は睨みながら獣娘を指差した。
 獣娘も威嚇し返す。

獣娘「がぅわぅ!!」

悪魔「がぅわぅじゃない!! いたた…」

女「この子は獣娘ちゃん。この森に住んでいる獣人よ」

悪魔「獣人…? ……そういえば聞いたことがあるような…」

女「獣人は森の守り神なんだって」

悪魔「神? こんなのが?」

獣娘「がぅ?」
54 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 04:06:28.25 ID:nrLQhh2o
悪魔「馬鹿にして…いたっ…」

女「それで私は、今日からこの子とここで一緒に暮らすことになった女よ」

悪魔「はっ…なにそれ。じゃあここアお前の家なの?」

女「正確にはおじいちゃんの別荘。でもおじいちゃんが死んじゃって使う人がいなくなったから、私が住もうかなって」

 説明を終えると、ちょうど薬も塗り終えた。
 
女「はい、これで大丈夫」

悪魔「痛くて起き上がれない…」

女「…ねぇ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

悪魔「なに?」

女「悪魔ちゃんはどうしてあの部屋で…指輪になっていたの?」

悪魔「それがほんとひどい話でさぁ…」

 まるで友達にでも話すかのように、悪魔は口を開いた。 
 先ほどとはだいぶ違った印象である。

悪魔「あっ、今何年?」

女「えっと…20XX年よ」

悪魔「じゃあ…五年前。いや、三年前……まぁどうでもいいや」

 悪魔は気にせず話を続けた。 

悪魔「――あれは私が初めて魔界から地上に来た日…」

女「ま、魔界?」

獣娘「?」

悪魔「私の地元。この世界は魔界と天界と魔法界、それとこの地上で構成されてるんだよ」
55 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 04:08:13.68 ID:nrLQhh2o
女「???」

悪魔「で、私はその魔界出身の悪魔なわけ。分かる?」 
 
女「う、うん…」

獣娘「……zzZ」

 女には悪魔の言っていることが全く理解できなかったが、悪魔が説明を続けるので仕方なく耳を傾けることにした。

悪魔「――初めて地上に遊びに来たあの日、私はめいいっぱい遊ぼうと決めていた」

女(悪いことしようとしたんだ…)

悪魔「それでまずは手始めに、適当なとこにいた人間を襲おうとした。けど人間だと思ってたら実はそいつは魔女で…」

女「魔女…いるんだ」

悪魔「いきなり私に攻撃してきたんだぞ!? 私はまだ何もしてないのに!」

女「悪いことしようとしたからじゃないの…?」

悪魔「それで指輪なんかに封印して! そのまま誰の指にはまることもなくこんな所まで流れ着いて!!」

 声をしだいに大きくしていく悪魔。

悪魔「ようやく開放されたと思ったら指輪で私の力は制限されるしお尻は噛まれるし!!」

 悪魔は勢いよく立ち上がった。

悪魔「最悪だこんちくしょー!! …いたた」

 立ち上がったせいか、お尻が痛んだようだ。
 そのままさっきと同じくうつ伏せに倒れる。
56 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 04:10:06.99 ID:nrLQhh2o
悪魔「っくしょぅ…あの魔女見つけて痛めつけないと気がすまない…」

女「この指輪が…悪魔ちゃんの力を抑えてるんだ」

 女は自分の指にはまっている指輪をまじまじと見つめた。

女「これ…もう外せないの?」

悪魔「外せるのは封印した魔女だけだろうな。ていうかなんでこんな封印したんだあの魔女…」

女「…悪魔ちゃんは、これからどうするつもりなの?」

悪魔「決まってんだろ。適当に暴れ回って、あの魔女をぶっ飛ばす!」

 この悪魔はとりあえずどうしても暴れたいようだ。

女「だ、ダメそんなの! 悪いことしちゃダメ!」

悪魔「やりたいことやって何がダメなんだよ!! 手始めにお前たちから襲って…」

女「きゃっ!?」
 
 悪魔は起き上がり、女の方へと襲いかかろうとした。
 しかし――

悪魔「なっ!?」

 悪魔は体の動きをピタリと止めた。
 体が動かせなくなったのだ。
57 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 04:11:16.92 ID:nrLQhh2o
悪魔「ど、どうなんってんだ!?」

女「…?」

悪魔「まさか…その指輪が!!」

女「こ、これ?」

悪魔「それしかないだろ!! さっき憑依した時もそう! ああもう!!」

 どうやらこの指輪を誰かがはめれば悪魔を外へとは開放するが、悪魔の行動は制限してしまう力があるようだ。
 それも指輪をはめた者の意思によって。

女「悪魔、魔女…」

 女は段々と、身の回りにおきている不思議なことを実感するようになった。
 
女「……」
 
 横では獣人が寝ている。
 目の前では悪魔が固まっている。
 指には魔女が作った指輪。

 不思議なことだらけ。

女「……とりあえず、お風呂に入ろ」

 一度頭を整理するためにもその方がいいと、女は思った。
58 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 04:11:59.08 ID:nrLQhh2o
女「獣娘ちゃん、起きて」

獣娘「…ぅが?」

女「お風呂入りに行こ」

獣娘「……うん」

悪魔「ちょ、ちょっと待て!? 私を自由にしてから行けよ!!」

女「…自由になったらどうするの?」

悪魔「決まってんだろ、暴れて…」

女「じゃあダメ。しばらくそのままね」

悪魔「はぁ!?」

女「行こっか」

獣娘「うんっ」

悪魔「ちょ、ちょっとー! ねぇー!! おーい!!」

 女と獣娘は、悪魔を無視してそのまま浴場へと向かった。

悪魔「うそ………あいたた!? また痛み出したぁ!!」

 しかし動けないので傷口を抑えることはできない。
59 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 04:12:55.12 ID:nrLQhh2o
 ログハウスの風呂場は女と獣娘の二人が入っても十分に余裕がある広さだ。
 全て木で構築されており、窓を開ければ外の景色も見える。
 入浴が好きな女にとっては、最高の空間だった。 

女「獣娘ちゃん、まずは体を洗おっか」

獣娘「?」

女「こっちおいで、きれいにしてあげる」

 女はタオルで獣娘の体をゴシゴシと洗い始めた。

獣娘「!?」

 泡立っている自分の体を見て、獣娘は驚いている。

女「この泡がね、汚れを落としてくれるんだよ」

 腕、体の順に獣娘を洗っていく。

獣娘「あはは!」

女「くすぐったい? それそれー」

 女が動かす手を少し強めると、獣娘はさらに笑い出す。

女(いじわるかな…でもかわいいなぁ)

獣娘「あはは! あははは!!」

女「下も洗おうね」

獣娘「うにゃ…っ」
60 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 04:13:43.62 ID:nrLQhh2o
女「どうしたの?」

獣娘「そこ…へん」

女「そこって…しっぽの付け根のとこ?」

 女は試しに付け根をつんとついてみた。

獣娘「うにゃぁあっ」

女「ご、ごめんさい! 痛かった!?」

獣娘「うぅん…いたく、ないけど…へん」

女「へん?」

 もう一度ついてみた。

獣娘「ひにゃぁあっ」

 獣娘の体がビクンと反応する。
 頬が微かに赤くなっていた。

女(こ、これはもしかして…性感帯かなにか!?)

獣娘「うにゅ…」

女(ここは慎重に洗ったほうがいいわね…。でもあの声をもう一度聞きたいようなその境界線は越えちゃいけないような…けどかわいいし…)

獣娘「…?」

 女が色々と不埒なことを妄想していると、獣娘が何かあったのかと女の顔を見る。

女「あっ…な、なんでもないの。ごめんね」

 不謹慎な妄想は取りやめ、体を洗うのに専念することにした。
61 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 04:14:44.95 ID:nrLQhh2o
 一通り体を洗い終えると二人は浴槽に浸かった。浴槽からは湯気が立ちこんでいる。 
 湯船の温度はちょうど良く温かく、女は全身を伸ばしてくつろいでいた。
 獣娘も入浴するのに最初は抵抗があったが、今は気に入ってるようだ。

女「きもちいいねー」

獣娘「うん! あたたかいのはじめて!」

女「あたたかいのは?」

獣娘「いつもは、つめたいところでおよいでる」

女「それって…川?」

獣娘「さかなもいる!」

女「そっか、お魚さんもいるんだ」

獣娘「おんなも、いっしょにいこ!」

女「うん、今度ね」

獣娘「えへへ〜」

 獣娘は女に抱きついた。

女「きゃっ!? ど、どうしたの?」

獣娘「やらかーい」

 そして女の胸をもみ始める。
62 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 04:15:39.06 ID:nrLQhh2o
女「そ、そこはっ…んっ」

獣娘「これなぁに?」

 手の力を強める獣娘。
 指が食い込んでいる。

女「それは……ふぁっ」

獣娘「?」

女「…あとでっ…おしえるから、もまないでぇ…」

獣娘「わかったー」

 獣娘は女の胸から手を離した。
 それと同時に女の体の力が抜ける。

女「はぁ、はぁ…」

女(誰かに揉まれるなんて初めて…)
63 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 04:16:46.61 ID:nrLQhh2o
 二人はしばらく入浴を楽しんだ。
 外の景色を眺めながら、このまま延々と湯に浸かりたいと思うほど気持ちがいい。

女(そういえば悪魔ちゃん、あのままだけど大丈夫かな…)

 ふと、さっき出会った悪魔のこと思い浮かべた。
 考えてみればあの悪魔は封印されている間ずっとフラストレーションが溜まっていたのだろう。
 出てきた瞬間に暴れたいなど言い自由奔放に振舞っていたのはそのせいかもしれない。

 それに彼女は指輪の中でずっと一人だったのだ。
 想像できないほどの孤独だ。

獣娘「〜♪」

女「……」

 楽しそうに泳いでいる獣娘を見ながら、女は思った。
 姉がいなくなった日、この子はどんな気持ちだったのだろう…。
 突然身内が消え、一人ぼっちになった時の気持ち…。

女「……」

 女はここに来る前の自分を振り返ってみた。
 自ら孤独を望んでいたが、すぐに挫折した。
 一人で生きていけるなんて思い込みは、くだらない幻想だった。
 
 このまま一人でご飯を食べて、一人で掃除して、一人で選択して、一人でお風呂に入って、一人で寝て…。
 そうやって誰に何も与えず、自分も何も変わらないまま生きていく。
 そんな生活を死ぬまで続けるのかと思うと、ゾッとした。

 こんなことを、彼女たちも考えたりしたのだろうか?
64 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 04:17:20.29 ID:nrLQhh2o
女「…ねぇ、獣娘ちゃん」

獣娘「なぁに?」

女「獣娘ちゃんは…悪魔ちゃんのことどう思う?」

獣娘「…きらい。おんないじめる」

 お湯に顎まで浸かって、ぶくぶくと泡を作りながらそう言った。

女「じゃあ、悪魔ちゃんが仲良くなりたいって言ったら、仲良くできる?」

獣娘「……」

女「私は悪魔ちゃんと仲良くなりたいなぁ」

獣娘「がぅ……おんながなかよくするなら、わたしも」

女「ふふっ、そっか」

獣娘「うぅ〜…」

女「…? どうしたの、獣娘ちゃん」

獣娘「あづい…」

女「あっ…もう出よっか。のぼせちゃうといけないし」  

 二人は湯船からあがると、軽く冷水を浴び風呂場から出た。

65 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 04:18:11.63 ID:nrLQhh2o
 脱衣所で体をふき、着替えた。
 獣娘には大きめだが、女のTシャツを着せている。

女「今度新しいお洋服かってあげるから、今はそれで我慢してね」

獣娘「がぅ?」

 髪もドライヤーで乾かし終えたが、頭からは湯気が立ち上っていた。

女「お風呂、気持ちよかった?」

獣娘「きもちよかった!」

 初めてのお風呂は大満足だったのか、元気よく返事をした。
 獣娘の顔は、最初に会ったときと比べるととてもきれいになっている。
 その顔を見てさらに可愛さが増したと女は思った。

女「また明日入ろうね」

獣娘「うん!」
66 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 04:18:54.52 ID:nrLQhh2o
 リビングに戻ると、悪魔がさっきのまま固まっていた。
 苦しそうな顔をしている。

悪魔「あっ! ようやく戻ってきたな!!」

 開口一番大声をあげた。

悪魔「さっさと元に戻せ! でないと後で痛い目に…」

女「うん、わかった」

悪魔「へ?」

 女がうなずくと、悪魔の体は縛られた縄が解かれたかのように楽になる。
 そしてそのままガクッと床に頭からぶつかった。

悪魔「いたっ…また頭打ったぁ〜!!」

 悪魔はおでこを抑えている。

女「ごめんね、長い間不自由にさせちゃって」

悪魔「…っ! そう思ってるなら二度とこんな真似すんな!!」

女「それは無理」

悪魔「はあっ!?」

 悪魔は女に掴みかかった。

獣娘「がぅわぅ!!」

 獣娘はそれを見て、悪魔に噛み付こうとする。
67 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 04:20:16.66 ID:nrLQhh2o
女「大丈夫よ獣娘ちゃん、落ち着いて」

悪魔「なんだ、ずいぶんと余裕だな。その指輪があるからって調子乗ってるのか?」

 睨みを強くする悪魔だが、女はそれに動じず言葉を続けた。

女「そういうことじゃない。あなたのことは自由にしてあげたいと思ってる」

悪魔「だったら早く…!」

女「でもあなたが人を傷つけるのなら、私はそれを止めなければいけないの」

悪魔「ふざけんな!! そんなの私が認めるわけ…」

女「ねぇ悪魔ちゃん、ここで私たちと一緒に暮らさない?」

悪魔「……は?」 

女「ここで一緒に暮らして、もしあなたが更生するのならその時に自由にしてあげる」

悪魔「なにそれ…バカにしてんのか?」

女「本気よ」

悪魔「はっ……ふざけ」

 悪魔が殴りかかろうとしたその瞬間。

女「ストップ!」

悪魔「っ!?」

 女の言葉と同時に悪魔の体が止まった。
68 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 04:21:48.02 ID:nrLQhh2o
悪魔「ず、ズルイだろこれ!!」

女「はい、右に移動ー」

悪魔「わっ!?」

 女の言葉のなすままに、右へと移動する悪魔。

女「次は左」

悪魔「わわっ!?」

女「はい、戻ってきて」

悪魔「ちょ…調子に乗るなぁ!!」

 そうは言っても悪魔の体は女の思うがままだった。

悪魔「このぉ…!」

女「ごめんね。ちゃんと言うこと聞いてくれたらこういことしないから」

悪魔「それほとんど脅しだろ!!」

女「いい? 悪魔ちゃん。今のあなたのままで魔女さんに会っても、その魔女さんはあなたの話を聞いてくれないわよ?」

 女はじっと悪魔の顔を見つめた。
 その視線に悪魔も思わずたじろぐ。

女「ちゃんと礼儀とかを覚えて、失礼したことも謝れば魔女さんもきっと指輪を解除してくれるはずだから。それができるまで一緒に暮らそ? 私が教えてあげる」
69 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 04:24:05.50 ID:nrLQhh2o
悪魔「っ……」

 ふざけるなと怒声を浴びせようとしたが、それをやめ冷静に考えてみる。
 
 このまま女に抵抗しても指輪があるから無駄だ。
 かといって、もし女を殺してしまって(これはさすがにありえないことだが)も再び指輪の中に戻るだけ。
 自由になるには魔女が封印を解除するしか他にない。
 そしてその最短ルートは……今は女の言うとおりに従うしかなかった。

悪魔「……わかった」

女「え?」

悪魔「わーかった! 私もここに住んでやる」

女「ほんと!?」

悪魔「だけど、更生するつもりなんてないからな。隙あれば私は…」

女「獣娘ちゃん! 家族が増えるよ!」

獣娘「がぅ?」

悪魔「人の話を聞けー!!」

 グゥ〜、とお腹がなる音がした。

獣娘「…おなかすいた」

女「あっ…そうね。ご飯食べよっか、インスタントだけど」

悪魔「ったく……はぁ〜、最悪だ」 

女「仲良くやろうね、悪魔ちゃん。獣娘ちゃんも挨拶して」

獣娘「やろうね!」

悪魔「…へいへいよろしゅうお願いしますでございます」

 不本意だが悪魔は女に従うしかなかった。
 残念そうに肩をがっくりと落とす。
70 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 04:25:54.61 ID:nrLQhh2o
 食事も終え歯も磨き、三人は寝床へとつくことにした。
 獣娘は先ほどよりも悪魔に懐いたようだ。
 なぜ翼が生えているのか、なぜ角が生えてると色々質問攻めをする。
 悪魔はそれを鬱陶しそうに相手した。

悪魔「お前も耳やしっぽが生えるだろ! くだらないこと聞いてないでさっさと寝ろバカ!!」

獣娘「そこ、わたしの」

悪魔「はぁ?」

 獣娘は悪魔が寝そべっているソファを指差した。

女「じゃーん寝袋持ってきたの。ベッド買うまでこれで一緒に寝よっか? 獣娘ちゃん」

 女が間に入る。

獣娘「ねぶ…?」

女「この中に入って寝るの、おいで」

獣娘「うん!」

 返事すると勢いよく寝袋の中に入った。

女「悪魔ちゃんも一緒に入る?」

悪魔「三人も入れるわけないだろ。 …私はソファで寝る」

女「そっか…じゃあこれ使って」

悪魔「は?」

女「タオルケット。そのまま寝たら風邪ひくわよ?」

悪魔「……ふんっ、悪魔が地上の風邪なんてひくわけないし」

 そう嫌味っぽく言ったが、差し出されたタオルケットはちゃんと受け取った。
 
女「それじゃ…おやすみ」

 そう言うと、女は部屋の電気を消し寝袋へと入る。
71 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 04:26:22.01 ID:nrLQhh2o
女「せまくない? 獣娘ちゃん」

獣娘「うん」

 大き目の寝袋だったので二人ぐらいは入る余裕があった。
 密着する女と獣娘。

獣娘「やらかぁーい…」

 獣娘は女の胸に顔をうずめた。

女「やっ…獣娘ちゃ…」

獣娘「…zZZ」

女「…寝ちゃった」

 寝袋の中の居心地がいいのか、獣娘はすぐに眠ってしまった。
 女にしがみつきながらすやすやと気持ちよさそうだ。
 その様子を見て、女はクスリと笑う。

女「おやすみ、獣娘ちゃん。悪魔ちゃんもおやすみ」

悪魔「……」

 返事はない。もう寝てしまったのだろうか?
 それともただ返事をするのがめんどくさいだけだろうか。

 どちらにしろタオルケットは使ってくれているようだ。
 少し嬉しくなる。
 
女「おやすみ…」

 つぶやき、女はゆっくりと目を閉じた。
72 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 04:27:24.95 ID:nrLQhh2o
女「……」

 目を閉じている間、今日あった様々な出来事を思い返す。
 
 生まれて初めてこんな遠くへやって来た。
 そこで世にも珍しい獣人と出会った。
 獣人は素直で可愛く、すぐに懐いてくれた。
 そしてその獣人と二人でこのログハウスを掃除した。
 そうしたら次はなんと悪魔と出会った。
 悪魔は暴れん坊で素直ではないが、気さくに話してくれたりもするので根は悪くなさそうだ。
 
 そしてこの二人と一緒に――これからこの家で共同生活をすることになった。
 
女「……」

 たった一日でこれだけの出来事が起きた。
 こんなことを誰かに話して、一体誰が信用してくれるだろうか。
 信じてくれる人などいないだろう。

 私は夢でも見てるのだろうか? 

女「……」

 寝ている獣娘を、ぎゅっと抱きしめた。

 ――やわらかく、そして温かい。

 これは確かに現実だ。 

女「……」

 こんなに楽しかった日は生まれて初めてのことだ。
 そしてこれから先…どれほど楽しい日々が待っているのだろう。

 女は薄れ行く意識の中、明日の予定を考えていた。
73 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/31(金) 04:27:30.98 ID:IzUH87ko
たまらんわーみんなカワイイし
ってことで支援
74 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/31(金) 04:30:23.04 ID:nrLQhh2o
一日目も終了したのでここで一旦終わりにします。
今後住人は増えていく予定ですが、主役扱いはこの三人にしようかと思っています。
支援ありがとうございました。
ではまた来年。
75 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/31(金) 04:35:50.16 ID:IzUH87ko
乙した。
ワクワクしながら待ってます
76 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/31(金) 05:15:18.62 ID:jvF5jjYo
ほのぼのいいね!
77 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/31(金) 19:19:22.44 ID:R8ueysAO
乙乙
78 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/31(金) 19:21:30.48 ID:R8ueysAO
上げてしまったすまん
79 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/01(正月) 01:24:53.81 ID:rW9DscAO
あけおめえ!

次は何が出てくるかなー?
80 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/01(正月) 07:36:02.14 ID:k73c61wo
あけおめことよろ
ワクワクして待ってます
81 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/04(火) 03:37:32.68 ID:nXj62JsP
 翌朝。

女「んっ…」

獣娘「おきてー」

女「ぅ…〜……」

獣娘「おーきーてー!」
 
 中々起きない女を、獣娘はペチペチ叩いて起こそうとする。

女「んーっ……獣娘ちゃん…?」

獣娘「おきた!」

女「朝…? ふわあぁ〜……おはよ、獣娘ちゃん」

獣娘「これ! これ!!」

女「え?」

獣娘「さかな!」

 獣娘は目覚めた女に数匹の魚を差し出した。
 どうやら今朝捕まえてきたものらしい。
82 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/04(火) 03:39:05.59 ID:A2Aq7lso
女「こんなに…獣娘ちゃんが?」

獣娘「えへへ」

女「…ありがとうね」

 お礼を言うと、女は獣娘の頭をなでた。
 獣娘はほめられたことが嬉しくて、笑顔になる。

 しかし、魚が跳ねて辺りに水が飛び散ってしまっていた。
 女はそれを見ると、少しため息をついてしまう。

獣娘「たべる? いま」

女「うーん…とりあえず焼かないとね。あと床も水浸しだから拭かないと」

獣娘「がぅ…?」

女「ちょっと待ってて、すぐ準備するから」

 女は起き上がると、床を拭くためのタオルを取りに行った。

83 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/04(火) 03:40:30.25 ID:A2Aq7lso
獣娘「……」

悪魔「ぐぅ〜…ふがっ……う〜ん…」

 一方、悪魔はソファの上ですやすやと眠っている。

獣娘「あくま、おきて」

悪魔「ぐがーっ」

獣娘「おきてー」

 ペチペチと叩く獣娘。

悪魔「がっ!? …なんだよ」

獣娘「おきて」

悪魔「う〜ん……ぐぅ〜」

獣娘「おきてー!」

悪魔「うるせえ寝かせ……ぐぅ」

獣娘「むぅー………そうだ!」

 獣娘は何かを思いつくと魚を一匹手にした。
 そしていびきをかいて寝ている悪魔の口にそれを突っ込んだ。

悪魔「…ふがっ、ごががっ!!?」

獣娘「さかな、たべる! げんきになる!」

 魚が悪魔の口の中で暴れ回っている。
84 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/04(火) 03:41:17.82 ID:A2Aq7lso
悪魔「がっ! がぺぺっ!? おえっ……ぺっぺっ!!」

獣娘「はいちゃだめ!」

悪魔「……何すんだこのクソ犬…」

獣娘「?」

悪魔「?、じゃねえよ!! 朝っぱらから何やってるんだお前!!!」

悪魔「ああもう口が生臭さ……」

女「ど、どうしたの?」

悪魔「おい! なんだこれ!!」

女「あぁ…獣娘ちゃんが獲って来きてくれたのよね?」

獣娘「うん! さかな、おいしい」

悪魔「だからって生のまま食わせるなアホ!!」

獣娘「?」

悪魔「だーーっ!! 何なんだコイツ!!」

85 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/04(火) 03:45:01.02 ID:A2Aq7lso
女「あのね、獣娘ちゃん。お魚はそのまま食べても美味しいけど、焼いたり煮たりするともっと美味しくなるんだよ」

獣娘「やいたり?」

女「うん。台所行こっか、教えてあげる」

悪魔「おいちょっと待て、何かないのか? ガムとかあめちゃんとか。口が生臭くて息できないんだよ」

女「歯磨いてくればいいじゃない」

悪魔「地上の歯磨き粉はスースーしてキライだ!!」

獣娘「はみがき…イヤ」

悪魔「ほらな! こいつも口の中スースーして気持ち悪いんだよ」

女「はぁ…じゃあ今度いちご味の歯磨き粉買ってくるから、今はそれで我慢して」

悪魔「なんだよぉ…あめちゃんよこせ!」

女「あっ! バッグの中勝手に漁らないの!!」

悪魔「ケチケチすんなって……あった! へへーん、もーらいっ!」

女「もう! …後でちゃんと歯も磨くのよ?」

悪魔「私に命令すんな。それとさっさと飯作れ」

女「そんなこと言ってると、ご飯抜きにするからね」

悪魔「うるさいな! いいから作れ!!」

女(反抗期の子ってこんな感じなのかしら…)

獣娘「さかな…」

女「あっ、うん。台所行こうね」
86 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/04(火) 03:46:02.68 ID:A2Aq7lso
 女と獣娘の二人は台所へと来た。
 獣娘は捕まえた魚を抱えている。 

女「…ねぇ獣娘ちゃん」

獣娘「なに?」

女「お魚獲ってきてくれるのは嬉しいんだけど、でもなんというか…」

獣娘「?」

女「次行くときはこれ持って行ってね」

 そう言うと女は獣娘にビニール袋を見せた。

獣娘「…これなに?」

女「これはビニール袋。今度からそれにお魚を入れてきて」

 女は獣娘が持っている魚を一匹取り上げると、その中に入れてみせた。

女「これなら持ち運びやすいでしょ?」

獣娘「!」

 女は次々と袋の中に魚を入れていく。

女「ほら、数もたくさん入る」

獣娘「すごい!」

女「今度からはこれを使ってね」

獣娘「うん!」

女(これで床が水浸しにならなくてすむかな…) 
87 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/04(火) 03:46:52.73 ID:A2Aq7lso
 袋の説明を終えると、女は材料の下ごしらえを始めた。
 魚を切り、味をつける。

女「うーんと、それじゃあ次は…フライパンで焼こっか」

獣娘「ふらいぱん?」

女「これがフライパン」

獣娘「ふらいぱん」

女「それでこれをガスコンロの上に置きます」

獣娘「がすこんろ」

女「火をつけます」

 カチッと音がすると、ガスコンロの火がついた。

獣娘「がぅわ!?」

 それを見ると、獣娘は慌てて女の後ろへと隠れた。
88 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/04(火) 03:48:12.32 ID:A2Aq7lso
獣娘「がうぅ…」

女「ど、どうしたの…?」

獣娘「あれ…こわい…」

女「あれって…火のこと?」

獣娘「…」

 コクリと頷く。

女「そっか…動物って火が苦手って言うもんね」

 女は怯えている獣娘に顔を見つめると、ニコリと笑った。

女「でも大丈夫、これは怖くないよ。獣娘ちゃんを襲ったりしないから」

 女はフライパンが温まると、その上に油をひき、魚を焼いた。
 ジュージューと魚が焼ける音がする。

女「ほら、火はこうやって使うの」

獣娘「……」

 恐る恐るフライパンを覗く獣娘。

89 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/04(火) 03:49:35.15 ID:A2Aq7lso
女「いいにおいがするでしょ?」

獣娘「いいにおい…」

女「ね? 火は怖いだけじゃなくてとっても便利な――きゃっ!?」

獣娘「!?」
 
 女が言い終えようとした直前、
 ボウッとフライパンから勢いよく炎が上がった。

 どうやらフライパンの油に火がついたみたいだ。

 獣娘は驚くと後ろに下がり、ガスコンロに向かって威嚇し始めた。
 
獣娘「がるるるっ…がぅわぅ!!」

女「だ、だいじょうぶ大丈夫、今のはちょっとしたミスだから」

獣娘「おんなおそった! やっぱりわるいやつ!」

女「うーん……許してあげて、私は大丈夫だから」

獣娘「がぅ…」

女「火はたまに怒ることがあるの」

獣娘「おこるの?」

女「そう、だから気をつけてね」

獣娘「…ひってこわい」

女「うん、こわい」
90 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/04(火) 03:50:52.60 ID:A2Aq7lso
・・・

女「はい、できあがり。これが焼き魚だよ」

獣娘「やきざかな」

 火を使った料理に獣娘は興味津々のようだ。
 指先で出来上がった焼き魚をつついてみようとする。

獣娘「あつい!?」

女「ふふっ、できあがりは熱いから気をつけて」

獣娘「うじゅ…」

 女は焼き魚をそれぞれ皿へ盛った。
 ついでにインスタントスープにもお湯を注ぐ。

女「それじゃあリビングに運ぼっか。悪魔ちゃんも待ってるし」

獣娘「あくま、うるさい」

女「うるさいねー」
 
 苦笑する女。

女「もう少し落ち着いてくれれば助かるんだけど」
91 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/04(火) 03:51:55.60 ID:A2Aq7lso
 リビングに戻ると、悪魔がソファの上で寝そべっていた。
 口の中であめを転がしている。

獣娘「あくま、おきてー!」

悪魔「起きてるっての」

女「ご飯できたわよ」

 女はテーブルの上に皿を並べた。

悪魔「待ってまし…ってなんだよ、魚だけかよ」

女「カップスープもあるけど?」

悪魔「そうじゃなくて! もっとこう……飯! そうだ飯は!?」

女「お米や野菜は今ないの。明日買出しの時に買うから」

悪魔「はあ!? 今日買いに行けばいいだろ!」

獣娘「さかなー」

女「あっ、まだ食べちゃダメ獣娘ちゃん」

獣娘「?」

女「食べる前には、ちゃんと挨拶しなきゃいけないの」

悪魔「おい、何で今日買いに行かないんだよ」

女「今日は時間がないの。この後大掃除の続きをするからです!」

獣娘「そーじ!」

悪魔「なんだよそれ…」
92 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/04(火) 03:53:30.03 ID:A2Aq7lso
女「快適に過ごすためには必要なことなんだし、しょうがないでしょ?。悪魔ちゃんも手伝ってね」

悪魔「イヤだ」

女「手伝わない子には、ご飯はあげません」

悪魔「ふざけんな! 私は無理やりここに住まわされてるのにそれはないだろ!!」

女「無理やりでも、ここに住んでいるのならうちのルールには従ってもらいます」

悪魔「ルールってなんだよ!?」

女「困っているときは助け合い、それがルール」

悪魔「…っざけんじゃ――」

獣娘「さかなー…」

女「あっ、そうだ。食べようね」

 お腹をすかせている獣娘に気づくと、女は悪魔との会話を中断した。

女「いただきます」

 女が手を合わせる。

獣娘「いただきますっ」

 それを見て、獣娘も真似をした。

93 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/04(火) 03:56:59.30 ID:A2Aq7lso
悪魔「…ちっ」

 悪魔も食べようとフォークをのばした。
 だが女が皿を下げ、それを阻止する。

悪魔「あっ!? なにするんだよ!!」

女「ルール、守ってくれる? それといただきますも言って」

悪魔「いい加減にしろ! 私はな、何かに縛られるのが大嫌いなんだ!!」

悪魔「誰がルールなんか守るか!!」

女「じゃあ悪魔ちゃんはご飯抜き」

悪魔「お前なぁ…!!」

女「それでも言うことを聞かないのなら、指輪…使うわよ?」

悪魔「っ…!?」

 女は指輪を見せつけた。
 悪魔がそれを見てたじろぐ。

女「ね? お願いだから手伝って」

悪魔「…くそぅ……わかったよ」
 
 根負けした様子の悪魔を見ると、女は皿を戻した。

女「はい、悪魔ちゃんの分」

悪魔「……」

女「いただきます」

悪魔「…いただきます」
94 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/04(火) 03:58:02.09 ID:A2Aq7lso
悪魔「……」

 黙って魚を食べる悪魔。

獣娘「やきざかな、おいしい」

女「よかった」

悪魔「なにが美味しいだよ。ただ焼いただけだろ」

 悪態をつくが、それでも箸は進んでいる。

獣娘「ひをつかったから、おいしいの?」

女「そう、火を使ったから」

獣娘「ひ! すごい!!」

悪魔「あ? 火がどうしたんだよ」

獣娘「ひはすごいけどこわい! あくまもきをつけろ!」

悪魔「何言ってんだお前。火なんて怖くねえよ」

獣娘「でもひはおこる! ぼわーって!!」

悪魔「意味わかんねえよ!」

女「ふふっ」
95 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/04(火) 03:59:07.47 ID:A2Aq7lso
・・・

 食事を終えると、獣娘と悪魔の二人はリビングで一息ついていた。
 女は台所で食器を洗っている。
 
悪魔「はぁー…食べたー」

獣娘「たべたー」

悪魔「真似すんなっての」

獣娘「?」

悪魔「だからその「なんで?」って顔するはのやめろ。一々めんどくさいな」

獣娘「あくまいつもおこってる。ひみたい」

悪魔「はぁ!? わけ分かんねえことばっか言うな!!」

女「獣娘ちゃんはずっと山で暮らしてたから、知らないことが多いの。それぐらい大目にみてあげて」

 女が台所から戻ってきた。
 
悪魔「ちっ…」
96 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/04(火) 04:00:03.87 ID:A2Aq7lso
女「よし、ご飯も食べたしさっそく掃除始めよっか!」

獣娘「そーじ!」

悪魔「はぁ…なんでこんなことに…」

女「ほら、悪魔ちゃんもやる気出して」

 そう言うと、女は悪魔にアメを差し出した。

女「一緒に頑張ろ?」

悪魔「……はいはいやればいいんだろ、やれば」

 悪魔はそれを受け取ると、包装してあるフィルムをはがし口の中へと放り込んだ。
 そしてフィルムをそこら辺に捨てようとする。

女「あっ、ゴミはちゃんとゴミ箱に!」

悪魔「あぁもう…ったく!!」
97 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [saga]:2011/01/04(火) 04:08:53.58 ID:A2Aq7lso
とりあえずここまで。

いらないと思いますが補足説明をすると、この悪魔は「アエーシュマ」という
ゾロアスター教の凶暴な悪魔をモデルにしています。
とにかく恐ろしかった悪魔らしいのでSSではこんな性格になっています。
98 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/04(火) 05:48:09.76 ID:W3NWmcEo
ふむ・・・期待!!
99 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/04(火) 09:17:23.43 ID:GOcmb0wo
乙した。癒されるわ〜
獣娘たんチュッチュッ
100 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/10(月) 01:55:30.10 ID:vW47eYh1o
ワクワク
101 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/12(水) 03:03:51.79 ID:25YpUcW6o
アフラ・待づだワクワク
102 :1 [sage]:2011/01/13(木) 00:23:08.94 ID:AI92WQ3go
すいません、私用で遅れました
今日か明日には投下します
103 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 02:13:43.42 ID:H/sWsSGwo
よろしく
104 :真・スレッドムーバー :移転
この度この板に移転することになりますた。よろしくおながいします。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/15(土) 03:53:25.97 ID:cl7dBe34o
女「それじゃあ、これから掃除をはじめます!」

獣娘「そーじ!」

悪魔「チッ……、めんどくさ」

女「んーと、まずは…昨日みたいに雑巾がけをしないとね」

女「私たちが寝る部屋と、空き部屋二つ……あと物置部屋はどうしようかな」

獣娘「そーじたのしい!」

女「うん、楽しいね」

悪魔「楽しくないっての。私に雑巾がけさせる人間なんて初めてだぞ…」

女「あっ、悪魔ちゃんには別の仕事があるから」

悪魔「あ?」

女「道の整備、お願い」

106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/15(土) 03:54:42.22 ID:cl7dBe34o
悪魔「せ、整備…?」

女「ほら、この家の周りって草木がたくさん茂ってるでしょ?」

女「そのせいで車が通れないから向こうに置きっぱなしだし…」

女「適当に草木を刈って、車が通れる道を作って欲しいなって」

悪魔「なにそれ!? めんどくさ!!」

女「で、でも、悪魔ちゃんならこれぐらい簡単でしょ? すごい力でババーッと」

悪魔「すごい力って…なんだそれ」

女「えっと……ごめん、イメージで言ってみただけ」

悪魔「……ま、確かに私はすごいけどな」

女「え?」

悪魔「なんたって私はアエーシュマだ、そこら辺の三流悪魔とは格が違う」
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/15(土) 03:55:39.28 ID:cl7dBe34o
女「あ、あえ…?」

獣娘「?」

悪魔「とにかくすごくて強くてかっこいいんだ!」

女「へぇー……」

女(自分で言うんだ…)

悪魔「みてろよ」

そう言うと悪魔は、どこからともなく大きな棍棒を取り出した。
その棍棒は血の色で汚れている。

女「えっ!? そ、それどうしたの!?」

悪魔「私の武器」

女「どこから出たの!?」

悪魔「細かいことは気にスンナ」

獣「おっきい…」
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/15(土) 03:57:35.56 ID:cl7dBe34o
悪魔「私がこれを一振りすりゃ、衝撃であっという間に…」

女「悪魔ちゃんって本当に悪魔だったんだ…」

悪魔「おい、それどういう意味だ」

女「ご、ごめんなさい。なんか、目の前でこういうの見せ付けられると改めてそう思って…」

悪魔「はっ…だったらもっとすごいのを見せてやる」

悪魔「いいか? 私がこれを振り下ろしたらとてつもない威力の…」

獣娘「こればっちぃ。そうじしてあげる」

悪魔「あっ! 何すんだ!?」

獣娘には棍棒についていた血が汚れに見えたのか、
血がついている箇所を雑巾で拭き始めた。

獣娘「むぅー…おちない」

悪魔「落ちないじゃねえ!! 何してんだ犬っころ!!」
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/15(土) 03:58:50.22 ID:cl7dBe34o
獣娘「こればっちぃ」

悪魔「どこが!!」

女「たぶん…それについてる血じゃない?」

悪魔「はぁ!? かっこいいじゃん!」

獣娘「ばっちぃ」

悪魔「ばっちくない!!」

女「ねえ…一応聞いておきたいんだけど…」

悪魔「あぁ?」

女「その血って……なんの血?」

女は恐る恐る尋ねた。

悪魔「…知りたいか?」

ニヤリと笑う悪魔。
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/15(土) 04:00:24.14 ID:cl7dBe34o
女「……やっぱりいい」

悪魔「ま、その方がいいだろうな」

悪魔「なんたってこれは、私が一振りするだけで…」

獣娘「ばっちぃ!」

悪魔「いい加減説明させろ!!」

女「と、とにかくすごい武器なんでしょ? それ」

悪魔「ただすごいんじゃなくて、超すごいんだっての。ま、説明するより見たほうが早いな」

悪魔「表出ろ、私の超かっこいい必殺技を見せてやる」

獣娘「ひっさつ…?」

悪魔「必殺技だ、必殺技」

獣娘「?」

悪魔「ったく……必殺技ってのはな? こう…ドバーッとしてドカーンってするやつのことだよ」

獣娘「どかーん?」

女「それじゃあよく分かんないじゃ…」

悪魔「ああもう、いいから外出ろ! どういうのか見せてやる!!」
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/15(土) 04:02:09.33 ID:cl7dBe34o
三人は表へ出た。

悪魔「よしっ…それじゃ今からやるぞ」

悪魔「ちゃんと見てろよ? 私の超かっこいい必殺技を」

女「あんまり無茶しないでね」

獣娘「がぅ」

悪魔(はっ…ここは特大のやつぶっ放してビビらせてやる)

悪魔はこん棒を構えた。

悪魔「必殺……えーっと…」

悪魔「『超かっこいい必殺技!』」

女(それ技名?)

悪魔「おりぁぁああ!!」

悪魔は叫ぶと、こん棒を思いっきり振り下ろした。

悪魔(決まった! これで地面がバキバキっと割れて…)

ドスンッ、と大きな鈍い音がする。

悪魔「…………あれ?」

――手ごたえがない。
こん棒は地を割ることなく、地面へと深くめり込んでいるだけである。
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/15(土) 04:03:05.15 ID:cl7dBe34o
女「ど、どうしたの?」

獣娘「?」

悪魔「い、いや…何でもない。ちょっと間違えただけ」

悪魔(あれ、おかしいな……いつもなら決まってるはずなのに)

獣娘「ひっさつわざは?」

悪魔「うっさい! ちょっと待ってろ、今のはリハーサルだ」

悪魔「ここからが本番…」

再びこん棒を構える。

悪魔「おりゃあーー!!」

こん棒を振り下ろす。
しかし先ほどと同じく、地面にめり込むだけに終わった。

悪魔「な、なんで!?」
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/15(土) 04:03:50.00 ID:cl7dBe34o
悪魔「なんでだよ!? いつもならズバッて決まるのに!!」

女「悪魔ちゃん…?」

悪魔「まさか…!!」

女「へ?」

悪魔「その指輪!! その指輪が私の力を抑えてんのか!?!」

女「こ、これ?」

獣娘「がぅ?」

悪魔「だーーーーっ!! 力も弱まってるなんて最悪だ!!」

女「よく分かんないけど…この指輪が悪いの?」

悪魔「そうだ!! その指輪が私を…!」

悪魔「あの魔女、ふざけやがって!!!」

女「お、落ち着いて悪魔ちゃん」

114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/15(土) 04:05:45.15 ID:cl7dBe34o
悪魔「くっ…そぉおお!! ぶっ飛ばしてやる!!」

悪魔「あの魔女絶対にぶっ飛ばす!!」

女「悪魔ちゃん、ひとまず冷静に…」

獣娘「あくまうるさい…」

悪魔「なんで私がこんな……くそっ!! くそっ!!」

悪魔は怒りのあまり、こん棒を地面へと何度も叩きつけ八つ当たりしている。

女「あ、悪魔ちゃん…」

悪魔「ああもう!! やってられるか!!」

ドスンッ、ドスンッ、と大きな音が響き渡る。

女「とりあえず静まって…」

悪魔「こんにゃろう!! こんにゃろう!!」

悪魔「こんにゃろーーーーー!!!」

女「静かにしなさーーい!!」

悪魔「にゃがっ!?」

女が叫ぶと、指輪の力により悪魔は体を動かせなくなった。

115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/15(土) 04:06:38.43 ID:cl7dBe34o
女「もう、だめじゃない…地面をこんなにボコボコにしちゃ」

悪魔「っくしょう…最悪だ…」

獣娘「あくま、うるさい」

悪魔「うっさい!! お前なんかに私の気持ちが分かるか…」

女「…力が使えなくてもいいじゃない」

悪魔「……なんだとコラ」

女「だって必要ないもの、ここでの生活には」

悪魔「は?」

女「そんなのがなくたって、暮らしていけるじゃない」

悪魔「そういう問題じゃなくて…」

女「とにかく、もう暴れちゃダメよ? 次暴れたら一日中動けなくするからね」

悪魔「うっ…」

女「はい、解除」

悪魔の体が束縛から解放された。
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/15(土) 04:08:36.60 ID:cl7dBe34o
悪魔「くそぅ……いい気になって」

女「こんなことされて悔しい気持ちは分かるけど、いちいち怒ってもしょうがないわよ?」

悪魔「うっさい…」

女「…元気出して。力が使えなくても、悪魔ちゃんにできることはあるんだし」

悪魔「なんだよそれ…」

女「ほら、これを使えば力を使わなくても草を刈れる」

そう言って女が取り出したのは、枝切りバサミだった。

悪魔「……」

女「頑張って、悪魔ちゃん。私たちも部屋の掃除頑張るから」

獣娘「がんばる!」

女「よし、行こっか獣娘ちゃん」

獣娘「うん!」

女と獣娘の二人は、二階の部屋を掃除しに戻っていった。
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/15(土) 04:10:05.07 ID:cl7dBe34o
悪魔「……」

悪魔「ありえないだろ…」

悪魔「怒りの化身なんて呼ばれて恐れられた私が……枝きりバサミ使って枝切るなんて…」

悪魔「……」

悪魔「……」

悪魔「……」

悪魔「はぁ……」
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/15(土) 04:11:06.25 ID:cl7dBe34o
移転などがあって一日遅れてしまいましたが
とりあえずここまで
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/15(土) 04:24:45.15 ID:V9y1EH65o
|ョ?ω?`)おつ
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/15(土) 16:22:34.76 ID:qGZTkAb4o
キテター‼
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/17(月) 03:30:43.66 ID:6UBHxWDco
悪魔「……」


手渡された枝きりバサミをじっと見つめながら、悪魔はうなだれている。

自分の能力が抑えられていること。
あの女に束縛されていること。
外に出ても結局、自由にはなれなかったこと。

様々な考えが頭の中を巡る。

こんなはずでは。こんなはずではない。
自分の思い通りにならないことが、あってたまるか。
もう一度、手に力を込め能力を使おうとする。

しかし、なにも発動しない。


悪魔「……これじゃ、向こうにいた頃の方がマシだったかも」


血で染まった自分の武器を見て、寂しそうに呟いた。
先ほどの怒りも今では静まっている。
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/17(月) 03:33:16.76 ID:6UBHxWDco
悪魔「……切るか」


のそりと動きながら、悪魔は作業を始めた。

今ここでぼけっとしていても仕方がない。
仕事をサボったら後であの女に何されるか分からない。

それに体を動かしていた方がまだ気が楽だ。

車が置かれているところまで道を開くために、
次々とハサミで邪魔な草木を切り落としていく。


悪魔「……ていうか、どんだけ切ればいいんだ」


切っても切っても一向に道は開かない。
単調な作業に、だんだんとイライラしてくる。


悪魔「あの女…めんどくさい仕事は私に押し付けて…」
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/17(月) 03:34:38.83 ID:6UBHxWDco
悪魔「くそぅ……力さえあれば無理やりあの女を…」

悪魔「いや、それじゃあダメだったか……指輪があるから」

悪魔「あーーーー!! もう!!!」

悪魔「あの魔女…ふざけんなーーーーーーっ!!」


再び沸いた怒りを、自分を封印した魔女へと向けた。


悪魔「今度会ったらぎっちょんぎっちょんのけちょんけちょんに……!!」


手を動かしながら、頭の中で魔女を倒すシミュレーションをしている。
動かしている手にも、力が入る。


悪魔「こんにゃろう! どうだ参ったか!!」

悪魔「わははは!」


草木を魔女に見立てて、勢いよく切っていく。
すると、どこからか黒い物体が顔に飛び掛ってきた。


悪魔「……?」


鼻の上がモゾモゾする。
黒い物体が動いている。


悪魔「あ…」


それは毛虫だった。


悪魔「ぎゃあーーーー!! 虫ぃぃいいーーーー!?」
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/17(月) 03:35:30.76 ID:6UBHxWDco
獣娘「?」

女「どうしたの? 獣娘ちゃん」

獣娘「あくまのこえ、きこえた」

女「え?」

獣娘「でもうるさい」


悪魔が外で仕事をしている間、二人は二階の部屋を掃除していた。


女「何かあったのかな…?」

獣娘「わかんない」

女「うーん…悪魔ちゃんのことだから心配ね……」


手を止め、窓から外を眺めてみる。


獣娘「そーじ、そーじつづき!」

女「あっ…うん、早くキレイにしようね」


獣娘に促され、女は掃除を再開した。
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/17(月) 03:37:34.33 ID:6UBHxWDco
獣娘「そーじ、そーじ♪」

女「すっかりキレイ好きになっちゃったね」

獣娘「そーじたのしい!」

女「ふふ……そっか、楽しい、か」

獣娘「おんなは、たのしくない?」


手を動かしながら、獣娘は女の顔をのぞく。
女も獣娘の顔を見つめ返した。


女「私? 私はね……楽しいよ」

女「獣娘ちゃんといると、なんでも楽しい」

獣娘「ほんと!?」

女「うんっ」

獣娘「たのしい! わたしもたのしい!!」


ピョンピョンと跳ねながら、獣娘は喜んだ。


126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/17(月) 03:38:27.86 ID:6UBHxWDco
それから数時間が経った。腕時計の針は、お昼をとっくに過ぎている。


女「もうこんな時間……ひとまず終了っ」


四つあった部屋のうち、三つの空き部屋はすっかりキレイになっている。
もう一つの物置になっている部屋は、ごちゃついているのでそのままにすることにした。


女「さてと、掃除は終わったけどこれからどうしようかな……」

女「ご飯は……お腹すいたけど、今食べると中途半端になるし」

女「うーん……」

獣娘「そーじ、もうおわり?」

女「え? うん、もう終わりよ。お疲れさま」

獣娘「おわり……」


獣娘は残念そうな声を出した。
まだやり足りないようだ。


獣娘「あのへやは?」

女「あの部屋?」

獣娘「くらくて、いっぱいあるところ」

女「暗くていっぱい……あぁ、物置部屋ね」

女「あそこは普段使わないだろうし……整理するのも大変だからまた今度ね?」
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/17(月) 03:39:29.93 ID:6UBHxWDco
獣娘「むぅ……」

女「元気ね、獣娘ちゃん。私は疲れちゃった」


女は床に座り込み、一息ついた。


女「はぁ……明日はどうしようかな」

女「食べ物と、家具……ベッドも買わなきゃ。使い古しがあると思ったのになぁ」

獣娘「?」


獣娘は、困った顔をしている女を不思議そうに見ている。


女「…獣娘ちゃん、こっちおいで」


立っていた獣娘を、自分のひざの上に座らせた。
しっぽが女のお腹にあたってちょとくすぐったい。


女「んー…落ち着く」

獣娘「おちつく」


女に合わせて、獣娘も言葉を真似た。
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/17(月) 03:41:37.05 ID:6UBHxWDco
女「私ね……こうやってしてるの好きかも」

獣娘「すき?」

女「うん、好き」

女「好きよ、獣娘ちゃん」


女は獣娘の頭を優しくなでた。


女「あなたみたいな純粋な子に……会えると思わなかった」

獣娘「おんな…?」

女「今まで一人の時は長く感じてた時間も、昨日今日あっという間だったの」

女「不思議よね……」

獣娘「?」

女「ふふっ、獣娘ちゃんには分かんないか」

獣娘「わたしも、おんなすき!」


女が思っていたとおり、よく分かってないみたいだ。
だが、それでいいと女は思った。


女「うん、……仲良くやっていけるよね、私たち」

女「これからここで…私と獣娘ちゃんと、悪魔ちゃんの三に……」

女「あっ、そういえば悪魔ちゃんもう終わったかな」
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/17(月) 03:43:18.38 ID:6UBHxWDco
短いですが今日はここまで
話がまだ二日も進んでないと書いてて気づいた深夜。
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/17(月) 16:13:23.31 ID:EPAyZcUmo
おつ
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/18(火) 02:09:02.60 ID:1IkHfAHPo
乙した。のんびりと進めて下さいな

自分にとってここは1番の癒しSSです。獣娘かわいいよ獣娘
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/18(火) 03:45:29.84 ID:mLBglfm7o
--------------------------------------------------------------

悪魔「はぁ、はぁ……」

息を切らせながら、茂みの中で草木を切り落としていく。
ただでさえ指輪の影響で身体能力が落ちているというのに、
鼻の上に乗っていた虫を追い払うのに余計な体力を使ってしまった。
おまけに草木は切っても切っても減る様子はなく、疲労だけが溜まっていった。

悪魔「ったく……こんなので切ったって効率悪いだけだっての!」

全く進まない作業に嫌気が差し、枝切りバサミをその辺へ投げ捨てた。

悪魔「はぁ〜…もっと楽に切り落とせる方法を考えないと」

悪魔「火でも使えればスッキリと減らせるんだけど……う〜ん」

腕を組み、小首を傾け考える。
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/18(火) 03:47:57.12 ID:mLBglfm7o
悪魔「……もう一度試してみるか」

何か決心したのか、棍棒を取り出した。

悪魔「さっきは全力でやろうとしたから、コントロールできなかっただけかもしれないし…」

棍棒を両手でしっかりと持ち、真正面に構える。

悪魔「考えてみれば、私には翼や角だって生えてるんだ」

悪魔「悪魔としての力を完全に失ったわけじゃないはず……」

悪魔は、ゆっくりと深呼吸をし、肩の力を抜いて目も閉じた。
意識を集中させる。

悪魔(力まず、呼吸を合わせて……)

目を少しずつ開く。もう一度深呼吸。

悪魔「よしっ……。はああぁ…」

体の内に力を溜める。

悪魔「でい…やぁぁああああああっ!!」

腹の底から叫ぶ。
棍棒を上から下へ、思いっきり振り下ろした。
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/18(火) 03:50:27.38 ID:mLBglfm7o
振り下ろされた棍棒から、凄まじい勢いで衝撃波が出た。
衝撃波は草木を吹き飛ばしながら、一直線に進んでいく。
先のほうで何かにぶつかったのか、ドカンと大きな音がした。

大木にでもぶつかったのだろうか?
だがそんなことは、悪魔にとってはどうでもよかった。

悪魔「できた……できたぁ!!」

悪魔「あっはは…。やっ…たぁあーーーーー!!」

悪魔「できたー!!」

大きくガッツポーズをし、歓喜する。
想像していたものより小さいかったが、それでも力を出すことができた。
そのことが、悪魔は嬉しかった。

悪魔「私、最っ高!!」

辺りは衝撃波の跡で、道のようなものができていた。

135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/18(火) 03:51:48.54 ID:mLBglfm7o
悪魔「あー楽しい。スカッとして気持ちもよかったし」

自分で作った道をまっすぐ進んでいく。

悪魔「やっぱ地上にでてきたからには、暴れないとなぁ。よっ、ほっ」

棍棒で素振りをし、さっきの出来事を思い出す。

悪魔「えっへへ…私にはまだ力があるんだ。鍛えれば……そのうち元のように戻るかな」

これからの事を思うと、少しだけ希望が持てた。
悪魔の顔から笑みがこぼれる。

悪魔「よーし、鍛えて鍛えて鍛えて、元の力を取り戻せたらあの魔女をぶっ飛ばすぞー!」

悪魔「おー!!」

気合を入れる悪魔。
昨夜女から提案された魔女との和解は、どうやらするつもりがないようだ。

悪魔「さてと、そろそろ女が言ってた車があるはずなんだけど…」

道を進み、放置されている車を探す。

136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/18(火) 03:53:19.21 ID:mLBglfm7o
悪魔「ん〜……どこ?」

少し歩いたところで車体らしきものが見えた。

悪魔「お? あれか!」

少し歩を速め、そこまで向かった。

悪魔「邪魔なもんは片したし、気分も良いから車ぐらい家の前まで運んでやるか」

徐々に車に近づいていく。

悪魔「さぁて、そうと決まればさっさと…………ん?」

車体全体が目に入るところまで来ると、そこには予想だにしていなかったものがあった。

悪魔「え……えええええ!?!?」

目の前にはひっくり返り、装甲がボコボコにへこんでいる女の車。
窓ガラスも割れている。タイヤも外れて転がっていた。
誰が見ても使い物にならないと思える状態だった。
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/18(火) 03:54:22.72 ID:mLBglfm7o
悪魔「なんで……」

呆然と立ち尽くす悪魔。

なぜこんな事に?
頭を働かせて考えてみる。

元からこうだった?
動物か何かに壊された?
それとも…

悪魔「……あっ」

少し前のことを思い出す。

あの時、棍棒を振り下ろした時、先の方で大きな音がした。
あれは大木に当たった音ではなく、もしかして――

悪魔「……私のせい?」

スクラップにされたも同然な車を見つめながら、悪魔は一人呟いた。
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/18(火) 03:55:45.89 ID:mLBglfm7o
今日はここまで。
書き方がコロコロ変わってすいません。
やっぱり普通に書いたほうが読みやすいかもしれませんね。
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/18(火) 09:14:32.40 ID:eVtj6K4jo
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/19(水) 02:07:01.54 ID:3BK6cV1Vo
乙した。好きなように書いて下さいな。特に読みにくいとかは思わないけど

悪魔に1人で草木刈って道作れなんてなかなかのSだな、女はw
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/19(水) 22:36:58.85 ID:0pRF/FwAO
スラオシャは出る?
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/19(水) 22:40:09.13 ID:0pRF/FwAO
上げてしまったすまん
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/20(木) 05:36:44.95 ID:sDcS2xQoo
悪魔「……」

悪魔は思案する。
ひょっとしてこれはかなりマズイことなのではないのだろうか。
もしこの状況を女が目撃したら

……間違いなく指輪を使ってお仕置きされる。

悪魔「……」

お仕置きはイヤだ。
しかし逃げることもできない。
どうすればいい……。




「悪魔ちゃーん!! どこーー?」





悪魔「っ!?」

遠くから女の声がした。
ここへ向かってきている。
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/20(木) 05:38:11.27 ID:sDcS2xQoo
--------------------------------------------------------------

女「大きな音がしたけど…一体何なのかしら」

女「悪魔ちゃん大丈夫かな……」

獣娘「がぅ…」

掃除が終わった後、もの凄い音聞いた二人は外へと出た。
そこで目にしたものは、先ほどまで茂っていた草木が全て吹き飛ばされ、
二人通るには十分なスペースがある道だった。

女「これ…悪魔ちゃんが? でもあのハサミじゃここまでできないだろうし、どうやって……」

この道を作った張本人を見つけるべく、辺りを見渡す。

女「悪魔ちゃーん!! どこーー?」

獣娘「……」

獣娘は、地面に這いつくばって悪魔のにおいの跡を追って探している。

女「…見つかりそう?」

獣娘「……こっち!」

獣娘は走り出した。
どうやら見つけたようだ。

女「あっ、まって!」

女も獣娘の後を追う。
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/20(木) 05:38:57.19 ID:sDcS2xQoo
獣娘「こっち! こっち!」

山育ち故か、獣娘の身体能力は高く
あっという間に先へと行ってしまった。

獣娘「おんな、はやく!」

女「そんな急がなくても…」

なんとか追いつこうと、女も一生懸命走る。

獣娘「あそこ!」

女「え?」

女は追いつくと、獣娘と同じ方向に視線を向けた。

女「――あっ」

そこには、うつ伏せになって倒れている悪魔、
そしてなぜかボロボロになっている自分の車があった。

一体何が?

女「悪魔ちゃん!!」

女は悪魔の元へと駆け寄った。
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/20(木) 05:41:56.79 ID:sDcS2xQoo
女「悪魔ちゃん! 悪魔ちゃんしっかり!!」

悪魔「……」

抱きかかえ、声をかけるも返事はない。
意識を確認するためにもう一度耳元で声をかけてみる。

女「悪魔ちゃん!!」

悪魔「……」

それでも悪魔が目を開けることはなかった。

女「そんな…」

女(ここで一体何が…?)

獣娘「おんな…? あくまどうしたの?」

獣娘の問いかけに、女は首を横に振る。

女「……分からない。とにかく悪魔ちゃんを家まで運びましょう」

何があったか分からないが、
まずは悪魔を介抱しなければいけないと女は思った。

獣娘「ねてる?」

女「気絶してるの。今は安静にさせないと…」

獣娘「あくま、おきて!」

女「あっ、ダメ――」

獣娘は手のひらで悪魔の顔を思い切り叩いた。

悪魔「いてっ!?」

女「…え?」
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/20(木) 05:43:02.85 ID:sDcS2xQoo
悪魔「……」

女「……悪魔ちゃん?」

悪魔「……」

女「起きてるの?」

女は悪魔の声を確かに聞いた。
獣娘がやってみたように、悪魔の頬を手で軽く叩いてみる。

女「悪魔ちゃーん?」

悪魔「……」

女「悪魔ちゃーん、聞こえますかー?」

悪魔「……」

女「…ひょっとして寝たふり?」

悪魔「……」

獣娘「まだねてる?」

女「うん…そうみたい」

女は、悪魔の両腕を横に開き
両脇に手をあてた。
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/20(木) 05:45:10.00 ID:sDcS2xQoo
女「よしっ、起こそっか」

獣娘「どうやって?」

女「こう…こちょこちょこちょー!」

激しく指先を動かすと、女は悪魔にくすぐりをかけた。

悪魔「ゃめっ…あははははははは!!」

悪魔はたまらず声を上げて笑ってしまった。

獣娘「おきた!?」

悪魔「やめ、ひゃめろーー!! ウキャーーーっあははははははは!!」

悪魔「いあぁあーっははははははは!!」

悪魔は足をバタバタさせながら、笑い苦しんでいる。
もういいだろうと、女は手を止めた。

女「あー、やっぱり寝たふりしてたんだ」
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/20(木) 05:46:38.37 ID:sDcS2xQoo
悪魔「ヒえっ、ひっ、はっはっ …ちがっ、ごほっごほっ……」

笑いすぎてむせ返ったようだ。

悪魔「はぁはぁ……寝たふりじゃなくて死んだふりだ!」

女「えっ、あれ死んでたの?」

子供っぽいことを口にした悪魔に、女はくすっと笑った。
しかし、一変してすぐに表情が変わる。

女「…ところで悪魔ちゃん」

悪魔「はぁ…はぁ……あ?」

女「何で死んだふりなんてしてたの?」

女は真っ直ぐに悪魔を見つめている。
その顔は笑っていない。

悪魔「え…いや、その……」

女「…それで、あの車はなに?」

悪魔「え?」

女「私の車、何であんな風になってるの?」

ボロボロになった車の方へと、女は一瞬目をやった。
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/20(木) 05:47:13.97 ID:sDcS2xQoo

悪魔「…あー、あれね。何なんだろうなー……」

シラを切ろうとする悪魔。

女「……」

悪魔「…な、なんだよ、私は知らないぞ! ここに来たらああなってて…」

女「……」

悪魔「うっ…」

女「……」

女は悪魔の目をじっと見つめている。
その真っ直ぐな視線に、悪魔は思わず目をそらしてしまった。

女「……悪魔ちゃん」

女が口を開いたその時、とうとう悪魔はギブアップした。

悪魔「…ああもう、分かったよ。私がやった、やりました!」

悪魔「私があの車ぶっ壊したんだ!!」

悪魔はさっきの出来事を白状した。
力が使えたこと。
その力で草木を除去できたこと。
そして女の車も衝撃波に巻き込まれてしまったこと。

全てを話した。

151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/20(木) 05:48:20.83 ID:sDcS2xQoo
女「……そっか」

悪魔「だいたいな! お前も悪いだろ!!」

悪魔「あんなしょぼいハサミ渡して草刈れだ!? できるかっ!!」

開き直ったのか、悪魔は容赦なく怒声をあびせた。
女はそれを黙って聞いている。
声の大きさのあまり、獣娘は耳を閉じていた。

悪魔「アレぶっ壊したのは確かに私だけどな、私は悪くないからな!!」

悪魔「あんな所に車を置いたお前が悪いんだ!!」

理不尽なこと言う悪魔。

女「…うん、そうよね。ごめん」

悪魔「私は責任なんて取ら……へ?」

言葉を続けようとした悪魔だが、予想外なことに女の方から素直に謝ってきたので
思わず口を止めてしまった。

女「ごめんね、一人で無理させちゃって」

悪魔「いや…はぁ?」

これから口喧嘩よろしく激しく怒鳴ろうとしていたにもかかわらず、
女にはその気がないようだ。
悪魔はすっかり気が抜けてしまった。
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/20(木) 05:49:27.11 ID:sDcS2xQoo
女「悪魔ちゃんの言うとおり、こんなの一人じゃできないよね…」

悪魔「お、おい…」

女「みんなでやればよかったのに……本当にごめんなさい。悪魔ちゃんを一人にして」

悪魔「いや、私はだな…」

女「悪魔ちゃん、怪我はない?」

悪魔「え? ないけど…」

女「ならよかった。それじゃあ家に戻ろっか。あっ、車も引っ張っていかないと…」

獣娘「もうかえる?」

女「うん、帰ろうね。悪魔ちゃんも行こ?」

悪魔「あ、あのな……」

悪魔はため息をつく。

悪魔「…頭おかしいだろお前」

女「え?」

突然の言葉に、女は少し戸惑いの表情をみせた。

悪魔「なんで自分の車壊されてるのにそんな平気でいられるんだよ」

女「一応…平気じゃないけど」

悪魔「だったら怒るなりしろ! そんなすぐ謝られると気持ち悪いんだよ!!」

153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/20(木) 05:50:40.09 ID:sDcS2xQoo
女「…でも、ここで怒ってもしょうがないし……」

女「悪魔ちゃんだって悪気はなかったんでしょ? なら怒る必要もないじゃない」

悪魔「っ……」

女の説明に悪魔は眉をしかめる。

女「あっ、だけど…」

悪魔「な、なんだよ…」

女「嘘はついて欲しくなかったかな。死んだふりとかしないで…正直に話して欲しかった」

悪魔「うっ…」

女は先ほどの無表情な顔ではなく、少し悲しそうな目をしていたので
悪魔もたじろいでしまった。

しかし、女の表情はすぐに明るくなる。

女「それにしても凄いね、道を作っちゃうなんて。ありがとう、悪魔ちゃん!」

悪魔「くぅっ…!」

女「どうしたの?」

悪魔「あーもう謝るのやめろ!! 礼を言うのもやめろ!! なんか気持ち悪いんだよ!!」

悪魔が人間に感謝されることなどほとんどない。
生まれてはじめての経験に、悪魔は動揺した。
動揺を隠すために大声を出すしかなかった。
頭の中はパニックになっている。

獣娘「あくま、なんでおこってる?」

悪魔「うっさい!!!」
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/20(木) 05:52:19.52 ID:sDcS2xQoo
女「ふふ…、それじゃあ戻ろうっか」

女「……って、車なんとかしないとね」

獣娘「くるま…?」

悪魔「チッ……」

三人は鉄屑となった車に目を向けた。

獣娘「これ、おっきい」

女「うん。タイヤも外れちゃってるし…どうやって運ぼう…」

悪魔「……私が持って行ってやる」

ぼそりと言う悪魔。

女「え?」

悪魔「だから、私が持っていくって言ってんだ!!」

そう言うと悪魔は車の方へ向かい、両手で車体を持ち上げた。
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/20(木) 05:55:12.63 ID:sDcS2xQoo
女「す、すごい! 悪魔ちゃんってすごい力持ち!?」

獣娘「あくますごい!」

悪魔「ふんっ…こんなの私の武器より全然軽いっての」

そう言って突っ張るが、照れているのか顔は少し赤らんでいた。

女「ありがとうね、悪魔ちゃん」

悪魔「だ、だから礼とか言うなって! 体が痒くなるんだよ!!」

顔の赤らみが増す。

悪魔「それに勘違いするなよ? これはお前のためにやってるんじゃないんだからな」

悪魔「ちょっと体鍛えるためにコレ使って筋トレしようと思ってだな…」

女「けどそれ悪魔ちゃんの武器より軽いんでしょ? トレーニングになるの?」

悪魔「う、うっさいな!! どうでもいいんだよそんなこと!!」

女「そっか…でもありがとうね」

女は優しい眼差しで悪魔に微笑む。

悪魔「だああああああうるさーーいっ!!!」

こんな風にお礼を言われると、耳を塞ぎたくなる。
なんだか自分が小恥ずかしくなってくる。
悪魔なのに人間に感謝されてしまう自分が認められない。
そして、その感謝を受け止めることができない。

――しかし、悪魔の心の中には何か高揚するものがあった。
悪い気分はしなかった。
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/20(木) 06:00:52.72 ID:sDcS2xQoo
ここまで。
かなり今さらですが、このSSは百合要素があります。
苦手な人はどうぞスルーを。

>>141
出そうとは思ってます。だいぶ先ですけど。
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 06:04:10.46 ID:gKA1/AI/o
おつ
これからも頑張って下さい
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 11:37:40.80 ID:HKychh3so
乙した。悪魔ちゃん死んだフリとかカワイイじゃん
百合?バッチこいやψ(`∇´)ψ
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 04:40:19.28 ID:0HJVp+gAO
畜生むろみさん読んだせいで獣娘がイエティちゃんになるww
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/23(日) 00:38:58.59 ID:Yk0zHN+mo
おつおつ
いいスレに出会えて良かった
髪型とか服とか設定が気になる
161 :1 [sage]:2011/01/24(月) 02:51:43.09 ID:gswqexrvo
遅れてすいません。
今日か明日には投下します。

>>160
ビジュアルとかは読んでる人たちの想像に任せようかなと思ってるんですが。
おおまかなことだけは書いたほうがいいですかね?
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/24(月) 15:54:33.88 ID:qVrXiS4r0
きたああああああああああああああ
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/25(火) 02:51:55.92 ID:2qkuyaLjo
>>161
自分は設定聞いた方が想像しやすいからありがたいな
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/25(火) 03:00:20.64 ID:gdaOMGo6o
ビジュアル是非ともお願いしますm(_ _)m
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 05:48:20.88 ID:EsajieZso
女:20歳。黒髪ロング。モデル体系。美人。
  服はラフな感じ。

獣娘:見た目は8、9歳ぐらい。髪は切ってないので長い。
    耳としっぽは犬かキツネ? 
    今は女からTシャツを借りてそれを一枚着ている。

悪魔:見た目は15、6ぐらい。髪は赤色。
    目つきが悪い。
    角や翼は自由に生えたりひっこませたりできる。
    アエーシュマという実在の悪魔がモデル。


おおざっぱですがこんな感じです。    
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 05:49:30.30 ID:EsajieZso
--------------------------------------------------------------

日も完全に沈み、辺りが暗くなる頃。
夕食や入浴も一通りすませ、三人は家の中でそれぞれの時間を過ごしていた。

女は私物の整理、悪魔はソファの上でアメを食べながら寝そべっている。
獣娘は特にやることもなく、部屋の中をウロウロしたりと手持ち無沙汰で困っていた。

獣娘「じゅぅ……」

悪魔「……なんだよ、さっきからジロジロこっち見て」

獣娘「やることない…」

悪魔「知るか」

獣娘「あくまやることない?」

悪魔「私は何もやらなくていいんだよ」

獣娘「むぅー……つまんない」

悪魔「あっち行けあっち、私は一人で優雅な時間を楽しむんだ」

手を払いながら獣娘を追い返そうとする。
だが獣娘はそんなものを無視して悪魔に詰め寄った。

獣娘「わたしもやる!」

悪魔の元から離れようとしない。
しっぽをふりふりと動かしている。

悪魔「…お前な、私の言ったことの意味分かってんのか? 邪魔すんなって言ってんだよ」

口調を強めて言った。

獣娘「じゃますんな」

しかし獣娘は悪魔の言葉を復唱し、その場に居座っている。
悪魔の血圧が少し上がった。

悪魔「……どっか行け」

獣娘「どっかいけ」

悪魔「消えろ」

獣娘「きえろ」

悪魔「喧嘩売ってんのか!?」
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 05:50:27.94 ID:EsajieZso
女「ど、どうしたの? 何かあった?」

大声を聞きつけ女がやってきた。

悪魔「おい! コイツ邪魔だから大人しくさせろよ!」

獣娘「こいつじゃま」

悪魔「お前が邪魔だって言ってんだよ!!」

女「なんかよく分からないけど…仲良くしなきゃダメよ?」

獣娘「うん!」

元気よく笑顔で答える獣娘。

悪魔「なにが仲良くだ……」

一方、悪魔はうんざりしたような顔をしている。

女「そうだ! 荷物の整理も終わったし、三人でお茶でも飲まない?」

悪魔「はあ?」

女「いいでしょ? 交友を深めるためにも。今淹れてくるね」

そう言うと女は台所へ向かった。

悪魔「はぁぁ〜……ここにいると調子が狂う」

獣娘「げんきない?」

悪魔「…お前たちのせいでな」

獣娘「さかなたべる? げんきでる」

悪魔「食わねえよ」

獣娘「じゃあ…」

悪魔「あーもういらないっての」

獣娘が言い終わる前に、悪魔は話を打ち切った。
獣娘に背を向けながらソファに寝転ぶ。
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 05:51:43.23 ID:EsajieZso
獣娘「たべない?」

悪魔「しつけーな、食べないって言ってんだろ」

獣娘「ちこなのに……わたしたべる」

悪魔「は? ちこ?」

聞きなれない言葉に、思わず悪魔は振り返った。
獣娘の手に持っているものを見てみる。

悪魔「あっ――チョコ」

獣娘「ちこ!」

悪魔「どうしたんだよそれ」

獣娘「おんなにもらった!」

悪魔「なんだ、それなら食うからよこせ」

先ほどの態度とは打って変わって、悪魔はチョコをせがんだ。

獣娘「じゃあちょっとだけ…」

悪魔「ちょっとじゃなくて全部だ!!」

獣娘「ちょっと!」

悪魔「ケチケチすんな! いいからよこせ!」

獣娘「むぅー……」

丸々は取られたくないのか、
獣娘はチョコを後ろに隠し、悪魔のもとから離れようとする。
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 05:52:55.76 ID:EsajieZso
悪魔「このっ……なら力ずくで!!」

獣娘「!!」

悪魔は獣娘に何度も飛び掛った。
獣娘は動物的勘でそれを避けていく。

悪魔「このやろっ! ちょこまかすんな!!」

獣娘「いーやー!!」

悪魔「逃がすか!!」

獣娘が逃げようとするなら先をまわって道を塞ぐ。
反対方向へと退こうとするも、悪魔はその先を行ってしまう。
悪魔のしつこい追撃に、獣娘徐々に追い詰められてしまった。

悪魔「はっ、覚悟しろ犬っころ!」

獣娘「がぅ……!」

悪魔「おりゃあっ!!」

これで最後といわんばかりに、悪魔は思いっきり飛び掛った。
しかし獣娘の体も素早く動く。一瞬の隙を狙って、悪魔の体をかいくぐった。

悪魔「なっ!?」

予想外の動きに、悪魔は驚いた顔をしている。

獣娘「がるるっ!!」

そして獣娘は、背後から悪魔の尻に牙を立てた。

――ガブリっ。

悪魔「ぎゃああああああああああ!!!」

昨日と同じく、悪魔は獣娘にお尻を噛まれてしまった。
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 05:53:27.05 ID:EsajieZso
--------------------------------------------------------------

悪魔「うぅ〜…また噛んだ。アイツまた噛んだ……」

女「悪魔ちゃんがイジワルするからでしょ?」

悪魔はうつ伏せになりながら女にお尻を出していた。
女はその傷口に薬を塗っている。

悪魔「くそぅ…またこんな屈辱的な思いをさせやがって……」

獣娘「がぅ……」

女「悪魔ちゃん、あんなことされたら獣娘ちゃんだって怒るわよ」

悪魔「チっ…」

女「獣娘ちゃんも、次からはなるべく噛んだりしないようにね?」

獣娘「うぅ……」

女「獣娘ちゃんだって噛まれたりすると、痛いでしょ?」

獣娘「うん…」

女「なら、自分が痛いことは他の人にもしちゃダメ。わかった?」

獣娘「……うん」

女「…もしまた悪魔ちゃんに襲われたら、今度は私が守ってあげる」

獣娘「ほんと?」

女「うん。この指輪でお仕置きするからね」

悪魔「勘弁して……」
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 05:54:07.90 ID:EsajieZso
女「はい、それじゃあ仲直りっ」

悪魔「あぁ?」

獣娘「?」

女「二人ともお互いに謝って、それで今回のことは終わりにしましょう」

悪魔「なんだよ……誰がそんな…」

女「謝らないの?」

女は指輪を悪魔に見せ付けた。

悪魔「うっ……はいはいわかったよ。すいませんでした」

女「獣娘ちゃんも」

獣娘「すいませんでした」

悪魔「お前ほんとに気持ち込めてるのかよ…私の言葉真似してるだけだろ」

女「そういう悪魔ちゃんはちゃんと気持ち込めたの?」

悪魔「あ、あたりまえだろ」

女「ほんとにー?」

イジワルな笑みをしながら悪魔に問い詰めた。

悪魔「い、いいから早く薬塗れ! 傷口がいたいんだよ」

女「ふふっ、はいはい」
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 05:54:44.13 ID:EsajieZso
獣娘「…あくま、いたい?」

悪魔「当たり前だろ。こんな深く噛みやがって……いてて」

獣娘「……」

獣娘は何かを考えながら傷跡をじっと見つめていた。

女「獣娘ちゃん?」

獣娘「いたくならないようにする」

悪魔「は?」

突然、獣娘は顔を悪魔のお尻に近づけた。

悪魔「あっ、おい! なにやってんだ犬っころ!?」

獣娘「んぁ……」

獣娘は舌を出すと、お尻の傷跡を舐め始める。
女は驚いて口をポカンと開けている。
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 05:56:36.38 ID:EsajieZso
悪魔「んにゃっ!?」

女「け、獣娘ちゃん!?」

獣娘「んむぅ…んぁ……」

一心不乱で傷跡を舐める獣娘。
これには悪魔も体が反応してしまった。

悪魔「こ、こらっ!! 何やって…――ん?」

その時、悪魔は舐められた箇所から痛みが引いていくように感じた。

悪魔「あ、あれ?」

女「どうしたの?」

悪魔「いや…なんかお尻が楽に……」

獣娘「いたい?」

獣娘が口を離した。
するとそこには傷跡は残っておらず、元の状態へと戻っていた。

女「えっ……ど、どういこと?」

獣娘「えへー」

ニコニコと笑う獣娘。
他の二人はまだ状況がよく分からず困惑している。
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 05:57:46.22 ID:EsajieZso
悪魔「おい…なんなんだよこれ。もう痛くないぞ」

女「もしかして……獣娘ちゃんの唾液にはすごい治癒機能があるんじゃ…」

悪魔「あ? ちゆきのう?」

女「自己治癒力って言って、生き物には生まれもって怪我とかを自力で治せる機能があるの」

悪魔「は、はぁ…」

女「怪我をした時にかさぶたができるでしょ? あれも怪我を治そうと治癒機能が働いてできるものなの」

悪魔「なるほど……」

どういう理屈かよく分かってないが、悪魔はとりあえず相槌を打った。

女「獣人って…こんなことできるんだ。さすが森の神様…」

獣娘「?」

悪魔「と、とにかくコイツが舐めれば傷も治るんだろ?」

女「そうみたい」

悪魔「だったら早く…おい! 他のところも舐めろ! ほら」

悪魔は早く痛みから解放されるために、
別の箇所の傷跡を舐めさせるようお尻を出した。

女「ちょ、ちょっと…ダメよ」
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 05:59:26.71 ID:EsajieZso
悪魔「なんでだ! いいだろ別に…ほら早く舐めろ」

獣娘「うんっ」

女「だ、ダメっ!!」

悪魔「だから何でだ!! こっちは痛くてたまんないんだぞ!!」

女「だって……見てると恥ずかしいし…」

モジモジとしだす女。頬は少し赤く染まっていた。
目も泳いでいる。

悪魔「そんなこと知るか!! おい犬っころ、さっさと治せ」

獣娘「わかった」

獣娘は再び傷跡を舐め始める。

女「きゃっ!?」

女はその光景を恥ずかしさのあまり直視することができず、
両手で顔を覆ってしまった。

女「うぅ……」

しかし気になって、一瞬、指の間から二人のことをチラッと覗いた。
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 06:00:03.46 ID:EsajieZso
--------------------------------------------------------------

時計の針は九時を過ぎた。外はすっかり暗くなっている。
窓からは涼しい風が流れ込んでいた。

女「ここの空気って、澄んでて気持ち良いわよね」

悪魔「……」

二人はリビングでお茶を飲みながらくつろいでいた。
テーブルはなく、コップなどは全て地べたに置かれている。

獣娘はすでに寝袋の中で寝息を立てていた。

女「美味しい? ラビアンローズっていうのよ、そのお茶」

悪魔「葉っぱくさい」

女「ふふっ、そっか。一応健康にも良いんだけど…」

悪魔「フンっ、知るかそんなの」

悪魔はズズッとお茶を一気に飲み干した。

悪魔「ったく…ほんと最悪だ。なんで私がこんな……」

この二日間のことを思い返す。
悪魔にとっては散々な記憶しかない。

悪魔「おい、指輪なんて使わないでさっさと私を自由にしろ」

女「今の悪魔ちゃんはまだダメ」

悪魔「チっ……」

女「…そういえば、魔女さんの居場所は分かるの?」
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 06:00:47.98 ID:EsajieZso
悪魔「私がそんなの知るわけないだろ」

女「じゃあ…もし、悪魔ちゃんを自由にさせる日が来たら、私も魔女さんを探すの手伝ってあげる」

悪魔「はぁ?」

女「それで、一緒に指輪の呪いを解いてくださいって頼めば…解いてくれるかも」

悪魔「はっ……お前も早く指輪外したいのか」

女「そうじゃないけど…悪魔ちゃんには早く自由になって欲しいし」

悪魔「…わけ分かんないな、お前」

女「え?」

悪魔は女の顔をじっと見つめる。

悪魔「お前は、私を自由にさせたいのかさせたくないのかどっちなんだ」

女「それは…自由にさせたいと思ってるけど」

悪魔「だったら指輪の力なんか使うな!」

女「だから言ったでしょ? 今の悪魔ちゃんのままだと、魔女さんに会わせることができないの」

悪魔「なんだよそれ……意味分かんねえ」

女「…悪魔ちゃんを自由にさせたい気持ちは本当よ? 力が使えなくて困ってた悪魔ちゃんを見て、何とかしてあげたいと思ったし…」

悪魔「……」
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 06:01:40.71 ID:EsajieZso
女「でも、…今のまま魔女さんに会っても、きっと良いことはないと思うの。だからもうちょっと我慢して。ね?」

女は、哀願するような眼差しで悪魔に語りかける。

悪魔「……」

女「悪魔ちゃん、魔女の人に会ったら力ずくでなんとかしようと思ってるでしょ?」

悪魔「当然」

女「もー…それがダメなんだって」

悪魔「私が何しようと私の勝手だ」

女「勝手、か……悪魔ちゃんらしいけど」

悪魔「…それにしても、お前ほんと変わったやつだな」

女「え?」

悪魔「おかしいと思うだろ、悪魔の私と犬っころで一緒に暮らすなんて。普通の人間なら発狂するぞ」

女はきょとんとした顔で、悪魔の話を聞いている。
その顔を見て、悪魔の口調も強くなった。

悪魔「なのに今は平気な顔して、相当変だぞ。なに考えてんだ…」

女「そう…かな?」

悪魔「そうだ。お前は超がつくほどの変人だ」

女「そんなこと言われても……」

悪魔「悪魔が憑いてるんだからもっと怯えろっての」

女「……」

そういい終わると、二人の間にしばし沈黙が流れた。
掛け時計の針の動く音が、部屋に響く。
しばらくして女の口が開いた。

女「…悪魔、か。私は憑かれて当然かも……」

悪魔「は?」

女「……ううん、なんでもない」

小さく首を横に振ると、女は飲みかけのお茶を全て飲み干した。
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 06:04:31.58 ID:EsajieZso
女「あっ、そういえば悪魔ちゃん力を使えてたけど…」

悪魔「あんなのまだまだだ。本来の半分も出せてないし」

女「でも凄かったじゃない、周りがあんなになるなんて。それで……あっ、私の車…」

話している途中に思い出した。
悪魔の力に巻き込まれたスクラップになった車のことを。

悪魔「……」

悪魔は女から少し目線を外した。

女「はぁ…どうしよう」

悪魔「あ、謝んないからな。私は悪くないし」

女「うん、いいわよ別に」

悪魔「っ……。ほんと何なんだお前、気持ち悪いな」

女「?」

悪魔「もういい! ばか」

車を壊されて怒るという当然な反応をしないので、
悪魔は肩透かしを食らった気分だった。

怒るなり怒鳴りあうなりした方が、悪魔にとっては気分的に楽だった。

女「なんかよく分かんないけど…そういうことばかり言ってると私も怒るわよ?」

悪魔「怒れるんだったら怒ってみろ」

挑発的に言う悪魔。

女「もう、なんでそんな風に言うの…」

悪魔「フンっ……」

一呼吸置いて、女は深々とため息をついた。

女「……それにしても困ったわね」

悪魔「なにが」

女「明日行こうと思ってた買出し……車も壊れちゃったしどうしよう」

頬に手を当てながら、女は明日の予定を考える。
時計の針は夜の十時を指そうとしていた。
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 06:05:41.15 ID:EsajieZso
ここまで。
そろそろ新しい入居人が来る予定。
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/25(火) 10:44:28.55 ID:gdaOMGo6o
大変乙した。設定ありがとうです。獣娘、
Tシャツ一枚か…ゴ、ゴクリ

ちょっとケガしてくる
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 12:30:50.31 ID:FPB3hQhAO
それが>>181が残した最後の言葉だった…
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/25(火) 18:16:48.14 ID:UeRoOK7BP
獣娘はふつうの女の子に獣耳としっぽが生えただけってことでいいの?
毛深いわけじゃないんだよね?
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/25(火) 19:19:36.90 ID:EsajieZso
>>183
そうですね。狼と香辛料のホロと同じような感じです。
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 03:02:16.34 ID:jgOjmdcko
ワクワク
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/30(日) 04:04:41.03 ID:0Mpz5iXCo
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??「はぁ、はぁ……これからどうすれば…」

同じ頃、真っ暗な山道を一人の少女が歩いていた。
重そうな足取りで、坂道を登っていく。
動物たちも寝静まったのか、辺りは静寂としている。

??「うぅ…こんなはずじゃ……」

疲れきった声で呟いた。
少女の額には汗が滲んでいる。
何時間も歩いていたせいで、足は疲れきってもう動かせない。

その場に崩れるように座り込んだ。

??「これじゃあどこにも行けない……」

辺りを見回す。
ちょうど休めそうな小さな洞穴を見つけた。

這いつくばりながら何とかそこへとたどり着くと
全ての体力を使い果たしたのか、仰向けになって動かなくなってしまった。

少女は深く息を吸い、そしてはいた。

ここ数日ろくなものしか食べていないせいで、腹の虫もゴロゴロと鳴っている。

??「私……ここで死んじゃうのかな…」

ポツリと呟いた。

??「まだ…何もしてないのに……うぅ……」

少女の目から涙が流れる。
その目も、力が抜けてだんだんと閉じていった。

??「ごめんなさい……お母さん…お父さん…」

やがて少女は、そのまま意識を失ってしまった。
夜の闇が彼女を包む。
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/30(日) 04:05:25.58 ID:0Mpz5iXCo
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女「車を直してみようかと思います」

朝。朝食を囲むテーブルで女が突然言葉を発した。
獣娘と悪魔はぽかんとした顔で女を見つめている。

悪魔「直すって……あのボロをか!?」

悪魔は昨日自分が壊した車を思い出した。
今でも見るからに動けない状態のまま庭に放置されている。
それを直すという女の言葉に、悪魔は驚いた。

女「工具はあるし……機械いじりは得意だから」

悪魔「得意だからって……そんな簡単に直せるもんなのか?」

女「うん、一応アレ作ったの私だし」

悪魔「マジかよ…」

女「タイヤは外れただけだし、メインエンジンさえ生きていれば……走るだけくらいになら何とかなるかな」

獣娘「?」

不思議そうに二人の会話を聞く獣娘。
彼女には二人が何の話をしているかまだ分かっていない。
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/30(日) 04:06:05.17 ID:0Mpz5iXCo
女「こんな事もあろうか、予備のパーツだってあるのよ」

悪魔「準備良すぎだろ」

女「備えあれば憂いなしって言うじゃない」

悪魔「何だそりゃ…聞いたことねえ」

女「魔界では言わないの? しっかり準備していれば、何も心配することはないって意味よ」

悪魔「ふ〜ん……あっ、似たような言葉ならあるな」

女「どんなの?」

悪魔「えーっと確か……『終末の日のために何か備えとけ』」

女「……なにそれ」

悪魔「そういう言葉があるんだよ。天使と悪魔の戦争で、世界が終末を迎えても大丈夫なように日ごろから準備しとけって意味だ」

女「準備って?」

悪魔「それは……ま、人間には関係ないな」

女「そんなこと言われると不安になるんだけど……」

獣娘「?」

女「……やっぱり天使と悪魔って戦争とかするんだ」

悪魔「大昔はな。今は……天魔友好条約とか言って天界と魔界はそこそこ仲良くやってんだよ」

女「へぇ〜……条約を結ぶなんて急に現実味が…」

悪魔「そんなことはどうでもいい。それより――」

悪魔は女に詰め寄った。
その目は輝いている。

悪魔「車直せるんだな?」

女「え? まぁ……頑張ってみるけど」

悪魔「ってことは直ればようやく飯が食えるってことだ!」
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/30(日) 04:07:03.81 ID:0Mpz5iXCo
女「でも、100%直せるってわけじゃ…」

悪魔「やっとまともな物が食える!」

女の言葉を無視し、悪魔は飛び跳ねながら喜んでいた。

悪魔「朝食ってのはな、一日の始まりに欠かせないもんなんだよ。それを焼き魚と乾パンだけって…」

獣娘「これおいしい」

乾パンをくわえている獣娘。
初めて食べる味に満足している様子だ。

悪魔「お前はいいよな、こんなので喜んで」

獣娘に対して哀れむような顔をしながら、悪魔も乾パンを口に入れた。

悪魔「けど、女が車を直せばこれよりもっと美味いもんが食えるんだぞ」

獣娘「もっと?」

悪魔「そりゃ肉とか酒とか色々…」

女「だ、だから、あんまり期待はしないで。破損状態を詳しく見てみないと分からないんだから」

女「それに、もし今日直ったとしても…すぐに町へは行けないのよ?」

悪魔「え……そうなの?」

先ほどまで笑顔だった悪魔の表情が女の言葉で曇り始めた。
今日の夕飯には食べたいものを食べられると思っていたが、
それは無理だと知りショックを受けたようだ。

女「だって直すのに最低二日ぐらいはかかりそうだし、町に行くにしても往復で5時間以上かかるし…」
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/30(日) 04:09:55.22 ID:0Mpz5iXCo
悪魔「なんだよ! それじゃあ二日はこのままなのか!?」

女「我慢して」

悪魔「〜〜っ……くそぅ」

悪魔にはそれ以上なにも言えなかった。
ただでさえ車を壊した張本人だというのに、これ以上横暴に振舞っても何も起きない。
むしろ女にお仕置きされるだけだ。

むくれながら、ペットボトルの水を一気に飲んで落ち着こうとした。

獣娘「おいしい!」

一方、獣娘は乾パンに夢中だった。
女はそれを微笑みながら見ている。

女「悪魔ちゃんもちゃんと食べなきゃダメよ?」

悪魔「はいはい…分かってるっての」

女「そうだ、今日は悪魔ちゃんと獣娘ちゃんにお願いしたいことがあるんだけど…」

獣娘「?」

悪魔「なんだよ」

女「私が車の修理をしている間、二人には何か食料をとってきてほしいの」

悪魔「は?」

女「ほら、果物とかあれば少しは食卓もマシになるでしょ? だから…」

悪魔「山の中から適当に食えそうなもん持って来いってことか」

女「そういうこと。お願い!」

女は手を合わせ二人に頼み込んだ。
しばらくした後、悪魔が口を開く。

悪魔「しかたねぇな……暇だしやってやるよ」

女「ほんと!?」

女にとっては正直予想外のことだった。
まさか悪魔がすんなり言うことを聞いてくれるとは思ってなかったからだ。

悪魔「そりゃ私だってこれ以外のもの食いたいし…体も動かしたいしな」

女「ありがとう、悪魔ちゃん」

悪魔「おい犬っころ、飯食ったらすぐに出るぞ」

獣娘「うんっ!」
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/30(日) 04:10:51.39 ID:0Mpz5iXCo
短いですが続きはまた後日
ちなみに舞台は日本でも現代でもありません
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/30(日) 06:07:19.54 ID:ozaGq9vYP
オツオツ
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 09:42:34.90 ID:fcpn2FkOo
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/01(火) 01:59:48.03 ID:6eULNqj+o
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朝食も食べ終え、三人はそれぞれの仕事に取り掛かかった。
悪魔と獣娘は食料を探しに山の中へ。
女は二人を見送った後、車を修理するために工具を持って庭へ向かった。

車の外見は酷く、窓ガラスはほぼ割られ、装甲にも所々大きな傷がついている
自分の作った車がこんな状態になり心が痛んだが、
いち早く走れる状態に戻したいという気持ちが女の体を動かした。

女「よしっ……私もがんばるぞ!」

気合を入れるために両頬を軽く叩いた。
そして自分の作業へと取り掛かる。

ボンネットを開け、中の状態をチェックする。

女「う〜ん……思っていたより大丈夫かな。あっ、でもここが……」

もともと機械いじりは好きなだけあって、女は手馴れた手つきで工具を操る。
破損状態も、予想していたより少ない。
もしかしたら今日中に直せるかもしれないと女は期待を抱いた。
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/01(火) 02:00:29.87 ID:6eULNqj+o
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悪魔「ったく、なにが『ありがとう、悪魔ちゃん』だ。いちいちお礼なんか言ってんじゃねえっての」

女が車を直している間、悪魔は獣娘と二人で食料探しに山の中を歩き回っていた。
悪魔は手に見つけた食料を入れるための大き目の袋を持っている。

茂った草木を払いのけながら奥深くへと進んでいく。

悪魔「おい犬っころ、何か見つけたら私にすぐ言えよ。とりあえず今すぐ食うから」

獣娘「うんっ」

先ほどの食事じゃ満足できなかったのか、悪魔は自分が食べる分の食べ物も探している。

悪魔「さてと、食い物食い物……」

獣娘「見つけた!」

悪魔「でかした! どれど……ん?」

悪魔は獣娘が手にしているものを見た。
緑色でグニョグニョと動いている。
それは悪魔には見覚えのある、大嫌いなもの。

虫だ。

悪魔「ななななぁあああああああああ!!!?」

獣娘「っ!?」

悪魔の突然の悲鳴に、獣娘も驚いて体が固まってしまった。

悪魔「ばっ、ばばばばば馬鹿!! なに持ってんだ!?」

獣娘「たべる?」

悪魔「食べねえよバカ!!! 早く捨てろバカ!!!」

悪魔は獣娘の手をはたいて虫を追い払った。

獣娘「あっ……」

地面に落ちた虫は、そのまま草の中へと隠れてしまった。
獣娘はその行方を残念そうに目で追った。
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/01(火) 02:01:22.10 ID:6eULNqj+o
悪魔「ビックリしたぁ〜……また虫なんかに…」

獣娘「むしー……」

悪魔「おい犬っころ、私は食えるもの拾えって言ったんだよ!! 何で虫なんか捕まえてんだ!?」

獣娘「くえるもの」

悪魔「食えねえよ!!!」

獣娘「?」

悪魔「お前なぁ…………いつもアレ食ってんのか?」

獣娘「たまに!」

悪魔「……はぁ」

獣娘「?」

悪魔「……もう虫なんか食うなよ?」

獣娘「なんで?」

悪魔「何でもだ! せめて私の前では食うな!!」

獣娘「わかった!」

悪魔「はぁ……こいつといると疲れる」

二人はさらに奥へと進んでいく。
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/01(火) 02:01:48.60 ID:6eULNqj+o
悪魔「ったく……お前今までどんな生活してたんだよ」

獣娘「?」

悪魔「ずっと一人だったのか?」

獣娘「おねえちゃんといた」

悪魔「あ? お姉ちゃん?」

獣娘「うん」

悪魔「その姉ちゃんは今どこにいるんだよ」

獣娘「いない。きえた」

悪魔「消えた? どっか行ったのか?」

獣娘「うん」

悪魔「はっ……妹置いてどこか行くなんて冷たい姉ちゃんだな。お前嫌われてたのか?」

獣娘「おねえちゃん、やさしい」

悪魔「優しかったら置いていくわけないだろ。嫌ってたんだよ、残念だったな」

獣娘「……」

悪魔「ま、お前みたいなバカを相手にしてたら嫌いにもなるはず……」

獣娘「……おねえ…ぢゃん…」

悪魔「あっ」

悪魔の容赦ない言葉のせいか、それともいなくなった姉を思い出して急に寂しくなったのか。
獣娘は泣きはじめてしまった。
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/01(火) 02:02:59.56 ID:6eULNqj+o
獣娘「うぐぅ……えっぐ…」

悪魔「おいおい…そんなことで泣くなよ」

悪魔がそう言うも、獣娘の涙は止まらない。
顔はくしゃくしゃになりながら、目からは次々と大粒の涙があふれてくる。

獣娘「おねえぢゃん……おねえ゛ぢゃーん!!」

悪魔「あぁ……めんどくさいことになった」

軽く舌打ちをすると、ため息をついた。
獣娘は泣き止まない。
このまま置いて先に進もうとしたが、獣娘がいなければ山の中で迷ってしまうのでそれもできない。

獣娘「あ゛ーーーん!! あ゛ーーー!!」

悪魔「あぉもう…うっせえ!! そんなことで泣くなっ!!」

苛立っていた悪魔はとうとうガマンできずに大声で一喝した。
これには獣娘も驚いた。ぴしゃりと泣き止む。
獣娘が泣き止むと、悪魔は獣娘と目線が同じくらいになるまで腰を下げた。
そしてはっきりと、大きな声で語りかける。

悪魔「姉貴とか家族がいないからって泣いてんじゃねえ!」

獣娘「……」

悪魔「そんなもんいなくたってな、生きようと思えば生きていけんだよ。寂しくなんかない、邪魔なやつがいなくて気が楽じゃねえか。好き勝手できるんだからな」

獣娘「……」

悪魔なりに獣娘をなだめようとしているのだろうか。
ただ、悪魔自身も自分でなにを言っているのかはよく分かっていない。

悪魔「まぁ……私には家族なんていないから分かんないけど、しょせん他人だろ? お前の姉ちゃんだって。だったらもう忘れちまえ、二度と会えないんだし」

獣娘「……」

悪魔「もうそうなった以上は仕方ないんだ。ほら……飯探しに行くぞ」

二人は再び歩を進めた。
獣娘はまだ落ち込んでいる。さっきまでの明るい表情はない。
急に会話も途切れ、微妙な空気に悪魔もどうしていいか分からず困惑していた。
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/01(火) 02:03:39.97 ID:6eULNqj+o
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??「う……」

昨夜から洞穴の中で眠っていた少女は目を覚ました。
頭には外傷はないがズキズキと痛む。
喉がカラカラだ。
体は鉛のように重く、そして寒い。

なんとか上半身を起こすと、壁によりかかり一息ついた。

??「はぁ……まだ生きてた」

昨日の夜、自分はあのまま死んだものだと思っていた。
しかし、今こうして生きている。
これは運が良いのか悪いのか……。

少女は考える。

これからどうすればいい。
お金も何も持っていない。行くあてもない。
いっそのこと死んだほうがマシだったかもしれない。

??「うぅ……」

泣きたくても、もう涙も涸れてしまった。

??「……」

しばらくして考えることをやめた。
もう何もできない。ここで終わってしまおう。
少女の目に、光はなかった。
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/01(火) 02:07:14.03 ID:6eULNqj+o
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悪魔「おい、いい加減元気出せ。うじうじしてるのは嫌いなんだよ!」

数時間、二人は森の中を歩き回っていた。
あのまま二人の間にはほとんど会話がなかった。

袋の中には途中で採った果物などが入っている。

悪魔「ほら、これでも食ってろ」

悪魔は袋の中から野イチゴ取り出し獣娘に手渡した。

獣娘「……」

しかし獣娘は食べようとせず、手に乗ってるイチゴを見つめているだけだった。
その様子に苛立つ悪魔。

悪魔「チッ……これだからガキは」

獣娘「あくま…」

突如、獣娘が口を開いた。

悪魔「なんだよ」

獣娘「…ありがとう」

悪魔「ぶっ!? は、はあっ!?!?」

突然お礼を言われてしまって、思わず吹いてしまった。
戸惑う悪魔。

悪魔「お前な、急に喋ったと思ったらいきなり何言ってんだよ!」

獣娘「おんなに、やさしくされたらありがとうっていわれた」

微かだが、再び笑顔を取り戻した獣娘は野いちごを食べ始めた。

悪魔「ったく…どいつもこいつも!!」

獣娘「あくま、ありがとう」

悪魔「うるせえうるせえうるせえ!! 優しくした覚えなんてねえ!!」

獣娘「?」

悪魔「だーーーーっ!! イチゴなんてあげるんじゃなかった!!」

お礼を言われるたびに悪魔は無性に腹が立つ。
それと同時になぜか恥ずかしくもなっていた。
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/01(火) 02:07:53.96 ID:6eULNqj+o
獣娘「えへへ」

悪魔「えへへじゃねえよ気持ち悪い!!」

獣娘「はい、あげる。おかえり!」

そう言うと獣娘は近くにあった花を一本摘まむと悪魔に渡した。

悪魔「…おかえりじゃなくて、お返しだろ」

獣娘「うん!」

悪魔「……ていうか、なんだよこれ。何で花なんだよ」

獣娘「おいしいの! こうやって…」

獣娘はもう一本摘まむと、蜜を吸い始めた。

悪魔「……」

怪しみながらも、悪魔もそれを真似して吸ってみた。

悪魔「あまっ!?」

獣娘「えへへ〜」

悪魔「なんだこれ!? 甘いぞ!!」

悪魔のテンションが上がる。
甘党の悪魔にとっては嬉しい出来事だった。

獣娘「あまい!」

悪魔「よく分かんねえけど……おい、これもっと摘んで持ち帰るぞ!」

獣娘「うんっ!!」

二人は甘い蜜の花を摘み始めた。
楽しそうに花を積んでいる様子は、二人で遊んでいるようにも見える光景だった。

202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/01(火) 02:08:31.72 ID:6eULNqj+o
悪魔「花、花〜っと♪」

獣娘「はなはな〜♪」

悪魔「それにしても、花なんて私の住んでたとこじゃ滅多に見ないから珍しいもんだな」

獣娘「がぅ?」

悪魔は手に持ってる花を見つめる。
物珍しいせいか、目が離せない。

悪魔「花か……地上には色々あるんだな」

魔界にいたころを思い出す。
花なんてものは一部の地域を除いてほとんど咲いていない。
こうしてじっくり観察することは、悪魔にとって初めての経験だった。

悪魔「ま…私には花なんて似合わないな」

ポツリとつぶやいた後、花を袋へと入れた。

悪魔「犬っころ、そっちは集まったか?」

悪魔は獣娘の方へと顔を向けた。
しかし、そこには獣娘の姿はない。
不振に思う悪魔。

悪魔「おい犬っころ!! どこ行った!!」

獣娘「こっち!」

反対側から声がする。
いつの間にか獣娘は遠くの方にいた。

悪魔「何やってんだそんなとこで! 早くこっち来い!!」

獣娘「きて! あくまきて!!」

悪魔「はぁ? 肉でも見つけたのか?」

獣娘「はやくはやく!」

悪魔「はぁ……ったく。これだからガキは」

獣娘に催促に、しぶしぶ応える悪魔。
草木を払いながら獣娘の元へと向かう。

203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/01(火) 02:09:01.64 ID:6eULNqj+o
悪魔「おい、どうしたんだ?」

獣娘「におい!」

悪魔「におい?」

獣娘「こっちからする!」

そう言うと、獣娘は先へと進んでいった。
悪魔も後を追う。

悪魔「あっ、待てよ! 何なのか説明ぐらいしろ!!

獣娘「あれ!」

悪魔「あれ?」

獣娘が指差す方向を見る。
そこには洞穴があった。

悪魔「あれがどうしたんだよ…」

獣娘「におう!」

悪魔「だから何が…あっ、おい!!」

洞穴に向かって走り出しす。
嫌々になりながらも、悪魔も走って追った。
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/01(火) 02:09:29.28 ID:6eULNqj+o
悪魔「おいこら犬っころ! いい加減なんなのか教えろ!」

洞穴へとたどり着いた悪魔は苛立った口調だった。

獣娘「ここにいる!」

悪魔「だから何がいるんだよ!」

獣娘「わかんない」

悪魔「何だそれ!?」

獣娘「これ!」

悪魔「あ?」

獣娘が指を差す。悪魔はその先を見た。

悪魔「……なんだこれ」

??「……」

そこには、ボロボロになった黒い服を着ている女の子がぐったりと座っていた。

205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/01(火) 02:10:00.35 ID:6eULNqj+o
ここまで
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/01(火) 02:38:41.12 ID:DVxFnSa6o
うむ!
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/01(火) 02:52:13.79 ID:nBDjMiEmo
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/01(火) 02:57:34.36 ID:BcuwpfUAO
次はどんなのか気になるなあ
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/01(火) 04:25:07.04 ID:bMv7XiLSo
うおおーいいとこで!
乙した。

設定は現代の日本と思ってましたテヘッ
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/02(水) 04:41:26.63 ID:vCTzD3tjo
おつ
これは童話と言ったらいいのか
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/07(月) 08:39:53.55 ID:nkwiVbRMo
待ってるよ
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/07(月) 20:16:07.51 ID:eb8GOv/lo
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女「よしっ、良い感じ。順調順調」

額の汗を手の甲でぬぐい、一先ず作業をしている手を止めた。
時刻は午後一時を過ぎた頃。
そろそろお腹もすいてきている。

女「獣娘ちゃんたち、そろそろ戻ってくるころかな。お昼ごはんの準備しておかなくちゃ」

工具をしまい、家の中へと入り台所に向かう。
森の中に入った二人の収穫に期待をしながら、女はそそくさと昼食の準備を始めた。

メニューはインスタントのシチューとパン。
それに山から調達したものを加えればだいぶそれらしくはなるだろう。

後は少しでも早く車を修理すれば、明後日にも町で色々な食材を買えそうだ。

女は鍋に水を注ぎ、ガスコンロの火をつけようとした。

女「あ、あれ?」

しかし、なぜか火はつかない。
何度つけようとしても、火は出ない。
どうやらガスが止まっているようだ。

女「うそ…今朝は使えたのに」

女は困り果て、鍋の中の水とにらめっこしている。

女「どうしよう……」
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/07(月) 20:16:33.85 ID:eb8GOv/lo
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悪魔「死んでるのかこれ?」

獣娘「がぅ?」

洞穴の中で、二人は衰弱しきっている少女の様子を見ていた。

悪魔「おーい、生きてるかー?」

耳元で声をかけてみる。
しかし反応はない。

悪魔「……死んでるな、これ」

獣娘「しんで…?」

悪魔「まぁどうでもいい。何か食い物持ってるなら奪って…」

そう言い悪魔が少女の体をまさぐり始めた時だった。

??「……うぅ」

悪魔「うわっ!?」

獣娘「おきた!」

少女は小さく声を唸らせた。
うっすらと目を開けている。

悪魔「なんだよ……生きてんのか」

??「うっ……」

悪魔「…犬っころ、帰るぞ」

獣娘「なんで?」

悪魔「ろくなもん持ってないだろ、その死に損ない。
   関わるとめんどくさそうだしそのまま死なせておけ」

これ以上ここにいるのは時間の無駄だ。
それに悪魔にとって彼女はどうでもいい存在だった。
何も持ってないならむしろ邪魔なだけだ。

獣娘「……」

悪魔「なにしてんだよ、早く…」

??「み……」

微かだが、声が聞こえた。
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/07(月) 20:17:13.86 ID:eb8GOv/lo
悪魔「あ?」

??「み…ず……」

助けが来たと思った少女は、持てる力を振り絞って声を出す。
しかし悪魔はその姿を見ても、手を差し伸べようとはしなかった。

助ける義理がない。
悪魔の思考はその一点のみだった。
それにこれ以上ムダなことをする気も起きない。

悪魔「チッ、帰るぞ犬っこ…」

言い終えようとしたその時だった。
獣娘は、悪魔が持っていた袋の中から小さな木の実を取り出した。

悪魔「あっ、勝手に何やってんだ!?」

獣娘「たべる?」

少女に木の実を差し出した。

??「うぅ……」

悪魔「お前ほんとバカだな。水飲みたいやつにそんなもん渡してどうするんだよ」

獣娘の頭を軽く小突き、Tシャツの襟を掴んで無理やり洞穴から引っ張り出そうとする。

悪魔「ほら、もう帰るぞ。私は腹が減ってるんだ」

獣娘「おんな!」

悪魔「は?」

獣娘は掴まれた手を振り払い、少女の下へと駆け寄った。

獣娘「おんなのところ! いっしょに!」

悪魔「一緒にって……その死に損ないをか?」

獣娘「うんっ!」
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/07(月) 20:20:03.74 ID:eb8GOv/lo
悪魔「ダメに決まってんだろ! そんなの却下だ却下!!」

??「うぐっ……た、たすけ…」

悪魔「あぁん!?」

少女の助けを求める声に、睨み返して突き放そうとした。
しかし獣娘はその助けに応えようと、体の傷跡を舐めて治療しようとする。

獣娘「おきる?」

??「あ…うぅ…」

舐められた箇所が少し楽になったように感じた。
しかしそれでも体を起こすことはできない。

悪魔「お前、いつまでそんなことするつもりだ?」

悪魔は呆れたようにその様子を見ている。

悪魔「いいからもうこっち来い。お前連れて帰らねえと後で女になに言われるか分かんないんだよ」

しかし獣娘は悪魔の言葉を無視しして少女の元から離れようとしなかった。
何度呼びかけても「ダメ」と言って言うことを聞かない。

悪魔「あぁそうか……もう勝手にしろ!!」

とうとう我慢が限界に達し、悪魔は獣娘をほっといて帰ろうとした。

獣娘「まって!」

悪魔「あぁ?」

獣娘「いっしょに! いっしょに!」

獣娘は少女を引っ張り出そうとする。
手を振って悪魔にも手伝って欲しいとサインを出した。

悪魔「そんなもん一人でやれ!!」

一喝。
悪魔は先に進もうとする。

獣娘「うんしょ、うんしょ」

悪魔に言われたとおり、獣娘は一人で少女を運んでいる。
しかし少女の体は運ぶには重く、ズルズルと引きずっている形になっていた。

悪魔「早くしろよ! 日が暮れるぞ!!」

獣娘「うんしょ、うんしょ」

獣娘の遅いペースに、悪魔は苛立つ。
空腹感もそろそろ限界まできていた。
とにかく早く家に戻りたい、早く昼食を食べたい。

悪魔「ちっ……いい加減にしろっての」

そう言うと獣娘の元に行き、引きずられている少女を担ぎ上げた。
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/07(月) 20:20:51.80 ID:eb8GOv/lo
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女「うーん…こんな感じかな」

女は台所の使用を諦め、庭で火をおこすことにした。
近くから材木を集め、それを使って焚き火をする。

女「まるでアウトドアね」

出来上がった焚き火台を見て、そう言葉を漏らした。
初めて作ったにしては中々の出来である。

焚き火台に火をつけるとその上に鍋を置き、水を沸かす。
そこにレトルトのシチューを入れ、温まれば完成だ。

女「これでよし。あとは……」

悪魔「おーい」

女「あっ…」

後ろから悪魔の声がする。
二人がちょうど帰ってきた。

女は二人を出迎えようと後ろを振り向いた。

女「おかえりなさ……え?」

獣娘「おかえり!」

悪魔「おい、どうでもいいからコイツ何とかしろ」

悪魔がコイツと言いながら背負っているもの。それはボロボロの少女。
女はその見知らぬ少女を見ると驚愕した。

悪魔「よっこらせ」

悪魔は少女を地面へと下ろした。
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/07(月) 20:21:53.07 ID:eb8GOv/lo
女「ど、どうしたのその子!?」

悪魔「知らねえよ、適当に歩いてたら見つけて…」

女「大丈夫? しっかり!」

女は少女の元へと近寄り声をかけた。
少女もその声に反応を示す。

??「うぅ…」

女「よかった…意識はあるみたい。とにかく家の中に運ばないと」

悪魔「めんどくせえ……。犬っころ、
   お前がしつこいからここまで運んじまったじゃねえか」

獣娘「ありがと!」

悪魔「ありがとうじゃねえ!!!」

女「二人とも手伝って。私はこの子を家の中に運ぶから、
  悪魔ちゃんは水と濡れタオル用意して」

悪魔「冗談じゃない。なんで私がそこまで…」

女「お願い!」

悪魔「イヤだ」

女「獣娘ちゃんは私と一緒に手伝ってくれる?」

獣娘「うん!」

女「じゃあ後でチョコレートいっぱいあげるね」

悪魔「おい、何だそれ!? 私にもよこせ!!」

女「手伝ってくれたらね」

悪魔「くそっ…卑怯だろそれ」

??「うぅ…み…ず……」

女「大丈夫よ、今楽なところで休めるから。あっ、火消さないと」
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/07(月) 20:22:41.40 ID:eb8GOv/lo
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少女は家の中へ運び込まれた。
リビングのソファの上で寝かされ、毛布をかけられている。

女「ゆっくり飲んでね…」

??「うっ…」

女はペットボトルの水を少しずつ飲ませた。

??「けほっ、こほっ」

女「大丈夫?」

??「は、はい。ありがとうございます…」

悪魔「おい、濡れタオルってこれでいいのか?」

女「あ、うん。ありがとう」

悪魔「チッ…あーくそっ、こうなったのも全部お前のせいだぞ」

チョコを頬張りながら、獣娘を睨みつけた。

獣娘「?」

女「これで汗拭いてあげるね。あとこれもできたら口にして、飲むゼリーだけど」

??「すいません……」

女「いいのよ、気にしないで。でも良かった、命に別状とかはないみたいで」

??「ありがとうございます…助けてもらって……」

女「あなたを助けたのは私じゃなくてこの二人よ。ね?」

獣娘「いっしょにたすけた!」

悪魔「私は人助けなんてした覚えはねえけどな。
   犬っころがモタモタしてたから仕方なくやったんだ」

??「あの…すいませんでした……」

悪魔「ふんっ……」

女「そんなに気にしないでって。困ったときは助け合いでしょ?」

??「は、はい…」
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/07(月) 20:25:32.02 ID:eb8GOv/lo
--------------------------------------------------------------

しばらくすると少女の意識も徐々に落ち着きを取り戻していった。
目には力はないが、ちゃんと見開いている。
先ほど女からもらったゼリーも、三個目を食べようとしていた。

??「おいしい…こんなに美味しいの久しぶりに食べましたぁ」

涙を流す少女。

女「そ、そうなの?」

??「はい…あ、もう一個お願いできますか?」

悪魔「なんだよ…思ってたより元気じゃねえか」

??「すいません……ここ最近何も食べてなかったせいで…」

ゼリーを吸いながら申し訳なさそうに言う。
顔色は徐々に良くなっている。

女「そうだ、今シチュー作ってたんだけど食べる? ちなみにインスタントだけど」

??「ほ、本当ですか!? お願いします!」

女「じゃあちょっと待っててね。獣娘ちゃん、行こ」

獣娘「うんっ」

二人は食事の支度をするために台所へと向かった。
リビングには悪魔と少女の二人が取り残されている。

??「……」

悪魔「ったく……なんなんだコイツ」

??「……あの〜」

恐る恐る、少女は悪魔に声をかけた。

悪魔「んだよ」

??「変なこと聞いちゃうんですけど、ひょっとして……
   あなたは人間じゃなくて悪魔とか…ですか?」
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/07(月) 20:26:37.99 ID:eb8GOv/lo
悪魔「っ!?」

??「あっ…ご、ごめんなさい。失礼しました!」

悪魔「おい、何で私の正体知ってんだ!?」

??「あ、当たってました? よかったぁ…」

悪魔「だから何で当てたのか聞いてるんだよ!!」

??「ひぇっ!? ご、ごめんなさい! 悪魔さんから少量ですけど魔力を感じて…」

悪魔「魔力を感じたって……お前まさか人間じゃないのか?」

??「は、はい。私はウィッチです」

悪魔「なっ……」

ウィッチ「あ、でもまだ見習いなんですけどね。えへへ…」

一瞬、少女からの突拍子もない言葉に悪魔の口を開けて驚いた。

ウィッチ――それは悪魔と契約しその力で魔法を使い、悪魔そのものを使役する魔女のこと。
彼女たちは悪魔の力を借り強力な魔法を使えるが、その数は年々減っていると聞いていた。

そのウィッチが今、目の前でへらへらと笑っている。

ウィッチ「悪魔さんが放っている魔力のおかげで、体もほんの少しですけど楽になりました」

悪魔「ウィッチってことは…あの魔女と同じ……」

ウィッチ「どうしたんですか?」

悪魔は思い出していた、自分のこと封印した魔女のことを。
あの魔女を思い出すと、目の前にいる同族のウィッチに対して
腹の底からふつふつと怒りがわいてくるのを感じた。

悪魔「おいっ!!」

ウィッチ「ひっ!?」

突如、悪魔はウィッチに掴みかかった。
いきなりのことに、ウィッチも怯えてしまっている。

221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/07(月) 20:27:27.99 ID:eb8GOv/lo
悪魔「お前、確かにウィッチなんだよな?」

ウィッチ「そ、そうですけど」

悪魔「だったら一発殴らせろ」

ウィッチ「えぇっ!? な、なんで…」

悪魔「お前がウィッチだからだよ! 理由なんてそれで十分だ!!」

ウィッチ「そんなぁ!?」

女「お待たせ…ってどうしたの?」

女と獣娘が台所から戻ってきた。女はお盆を手にしている。
お盆の上にはシチューの入った皿が三つ、それとパンと森で採って来た木の実などがある。

女「ちょ、ちょっと悪魔ちゃん! その子になにして…」

悪魔「うるせえ!! よくも私を…!」

ウィッチ「な、なんのことですか!?」

悪魔「私はな、お前ら魔女のせいで指輪の中にずっと閉じ込められっぱなしだったんだよ!!
   だからお前らには恨みが積もり積もってんだ!!」

ウィッチ「そんな、私は何もしてませんよ!?」

悪魔「知るか!! とにかくムカつくから殴らせろ!!」

ウィッチ「ひっ…!?」

悪魔は力強く握り締めた拳を振り上げる。
ウィッチも歯を食いしばり、思わず目を閉じた。

ウィッチ(――ぶたれる!)

その時だった。

女「だ、ダメ! ストップ!!」

悪魔「っ!!」

女の声と同時に悪魔の拳も止まった。
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/07(月) 20:29:43.03 ID:eb8GOv/lo
悪魔「っくしょう…やっぱりこれかよ!!」

ウィッチ「あ、あれ…?」

女「大丈夫?」

女は手に持っていたお盆を獣娘に渡すと
悪魔からウィッチを放し、そのまま遠ざけた。

女「なんでこんなことしたの!」

悪魔「だってコイツがウィッチっていうから!!」

女「ウィッチ?」

獣娘「がぅ?」

ウィッチ「あ、はい。私は人間じゃなくて……あーーー!!」

女「ど、どうしたの?」

ウィッチ「だ、ダメなんです! 人間にはウィザードの正体をバラしちゃいけないんです!」

女「え…?」

ウィッチ「ご、ごめんなさい! できれば今悪魔さんが言ったことは忘れてください!!」

女「そんなこと言われても…」

悪魔「おい、どうでもいいから私の体を動かせるようにしろ!!
   それでそいつをブン殴らせろ!!」

女「ダメに決まってるでしょ!」

獣娘「おなかすいた…」

ウィッチ「お願いです! どうか聞かなかったことに!!」

女「と、とりあえず落ち着いて話を…」

悪魔「だーーー!! 殴らせろーーー!!
   そして腹減ったーーー!!」

獣娘「おなかすいた…」

ウィッチ「お願いします!! 本当にお願いします!!」

女(誰か…この状況をなんとかして……)
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/07(月) 20:32:19.84 ID:eb8GOv/lo
ここまで。

ウィッチは茶髪ショート。12、3歳くらいの女の子です。
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/07(月) 20:39:46.25 ID:RfQYRRmSo
カオス杉ワロタwwwwwwww
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/07(月) 22:00:21.94 ID:X26uSf/No
獣娘ぺろぺろ
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/08(火) 01:46:50.82 ID:lEHQfIn6o
おつ
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/08(火) 05:11:47.25 ID:1OXeFRR2o
乙した。
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/12(土) 04:15:16.88 ID:8vddJb05o
悪魔「あっ!? なに一人で食ってんだ犬っころ!!」

獣娘「んーっ!!」

騒ぐ悪魔、慌てふためくウィッチ、そして両者を静めようとする女。
獣娘はそんな光景には目もくれずに、我慢できなくシチューを食べ始めてしまった。

悪魔「おい女、注意しろあれ!! 全部食われちまうぞ!!」

女「獣娘ちゃん、ご飯はみんなで食べないと…」

獣娘「おなかすいたー!」

悪魔「こっちだってさっきから腹の音が鳴ってるんだよ!!」

ウィッチ「あ、あの…私……どうすれば…」

女「み、みんな落ち着いて! とりあえずご飯食べながら話し合いましょう!」

ぽんっと手を叩き、女は自分に注目を集めさせた。
他の三人が一瞬静まる。

女「獣娘ちゃん」

獣娘「がぅ?」

女はしゃがんで獣娘と同じくらいの目線に合わせた。
そして訴えかけるように語りかける。

女「みんなでいただきます、してからでしょ?」

獣娘「うぅ……」

女「悪いことしたときはちゃんと謝らなくちゃダメよ?」

獣娘「……」

しょんぼりと首を下げる獣娘。
女は獣娘が口を開くのを待っている。

獣娘「…ごめんなさい」

女「うんっ、えらいえらい」

そう言うと女は獣娘の頭を優しくなでた。
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/12(土) 04:15:56.29 ID:8vddJb05o
女「悪魔ちゃんも、ウィッチちゃんを殴ったらご飯抜きにするからね?」

立ち上がり、悪魔のほうへと目を向けた。

女「分かった?」

悪魔「……ちっ」

女「はい、じゃあ後はウィッチちゃんにごめんなさいして」

悪魔「はぁっ!? お前いい加減に…!!」

女「できないのなら、ご飯抜き」

悪魔「ぐっ……くそぉ!!」

唇をかみしめ、悪魔はウィッチの方を睨みつけた。
鋭い目つきにウィッチの体がビクリと反応する。

悪魔「……ごめんなさい」

小さな声でつぶやく。

ウィッチ「え……?」

女「もう一度大きな声で」

悪魔「こんのっ…………ごめんなさーい!!」
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/12(土) 04:16:53.09 ID:8vddJb05o
女「よろしい!」

悪魔「のわっ!?」

悪魔の体が自由になる。
それと同時に前のめりに倒れこんでしまった。

悪魔「〜〜っ……」

ウィッチ「あのぅ……大丈夫ですか?」

悪魔「なにが大丈夫ですかだ!! 誰のせいでこんな目にあってると思ってんだあぁん!?」

ウィッチ「ひぃっ!?」

女「悪魔ちゃん!」

悪魔「ちっ……」

女「はいウィッチちゃん、お腹すいてるでしょ?」

そう言うと女はシチューをウィッチに差し出した。

女「適当なところに座って食べて」

ウィッチ「あ、ありがとうございます」

女「はい、悪魔ちゃんも。暴れちゃダメだからね」

悪魔「……」

女は悪魔にも皿を渡した。
悪魔はひどく立腹したような顔をしていたが、シチューの匂いをかぐとそれも少し緩んだ。

女「悪魔ちゃんって、食べ物で簡単に釣れるわよね」

悪魔「なっ…ば、馬鹿にすんな!!」

言われた途端に、顔を真っ赤にして反論した。
それ見て女はクスりと笑う。

四人は円を囲むようにして座り食事を始めた。
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/12(土) 04:17:44.13 ID:8vddJb05o
ウィッチ「あれ? 女さんは食べないんですか?」

女「三人分しか作ってないから、私は後でいいわ」

ウィッチ「すいません…私のせいで」

女「いいのいいの、気にしないで。それより事情を聞かせてもらえない?
  その……魔法とか、まだ分からないことが色々あって」

ウィッチ「は、はい。分かりました」

ウィッチは皿を床に置くと、正座に座りなおし真剣な眼差しで女たちの方を見つめた。
女もウィッチに対して正面から見つめ返している。
獣娘は食事に夢中、悪魔は一応聞く耳を立てながらシチューを食べていた。

ウィッチが口を開く。
と、同時に目から涙があふれ始めた。

ウィッチ「実は私……うわぁぁあああああん」

事情を話そうとしたウィッチは、これまでの悲しい出来事を思い出し
おお泣きしてしまった。

女「ウィッチちゃん…?」

悪魔「何だよ…コイツ」

ウィッチ「私、まだ修行中で…なのに契約するはずだった悪魔に裏切られて……」

鼻をかみながら、ろれつの回らない舌で話しているせいで、
聞いている女には何がなんだか分からなかった。
しかしウィッチは話を続けようとする。

ウィッチ「あの人、私の大事な……」

女「ちょ、ちょっと待って。もう少し何があったのか詳しく話してもらわないと…」

ウィッチ「あ……はい。すいません」

手で涙をふき、鼻をズズッと吸う。

ウィッチ「本当は人間に魔女のことは話しちゃいけないんですけど、女さんは特別みたいなので…」

チラリと悪魔の方を見た。
向こうがにらみ返してきたので、ウィッチは慌てて目をそらす。

この悪魔を手なずけているのだから、女も普通とは違う事情があるのだろう。
今は誰かに頼りたいという思いもあったので、ウィッチは全てを話すことを改めて決意した。

232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/12(土) 04:18:53.54 ID:8vddJb05o
ウィッチ「私はウィザード――俗に言う魔女なんですが、その中でも悪魔と契約して力を使う
     タイプの魔女…つまり『ウィッチ』なんです」

女「悪魔との契約…?」

ウィッチ「はい。魔女にも色々いまして…ウィッチは悪魔から魔力を得て、
     それと元々自分が持っている魔力とを合わせ、増幅させ、魔法を使うんです。
     他には生まれつき高い魔力を持った『ソーサラー』や
     信仰心を力にする『クレリック』、霊と交流する『シャーマン』など
     世界には多種多様なウィザードが存在します」

女「へぇ…」

ウィッチ「それで私は、ウィッチの見習いとして地上で修行を始めようとしたんですが……」

話の途中で、ウィッチは次第にうつむき始めた。

女「どうしたの?」

ウィッチ「契約の当日、私と一緒に旅をしてくれるはずだった悪魔がいなくなって……。
     しかもただいなくなったんじゃなくて、私が持ってたお金や身分証明、
     杖やクリスタルまで盗られてて……」

悪魔「……契約詐欺か」

女「け、契約詐欺?」

悪魔「たまにあるんだよ、ウィッチと契約するふりして近づいて
   金品強奪したらそのままとんずらこぐってやつがな」

女「なんか…悪質ね」

悪魔「はっ…私に言わせりゃ騙されるバカが悪い」

ウィッチ「うぅ……」

女「なに言ってるの、騙すほうが悪いに決まってるじゃない」

悪魔「いいや、騙される方が悪い」

女「騙す方が悪い!」

悪魔「騙される方!」

女「騙す方!」

ウィッチ「いいんです、女さん。私……本当にバカですから」

ため息交じりにウィッチが二人の会話に入った。

ウィッチ「お母さんはもう死んじゃったんですけど、とても優秀なウィッチで、
     お姉ちゃんも優秀なウィッチで……けど私は、何をやってもダメで。
     学校の成績はいつもビリ、基礎魔法だってろくにできない……。
     それでも修行して頑張ろうと思ったのに、詐欺にあって……。
     こんなんじゃ魔法界にも帰れない……」

悪魔「笑えるぐらい悲惨な人生だな」

女「悪魔ちゃん、ちょっと黙って」

ウィッチ「私……これからどうしたらいいんでしょう」

獣娘「ごちそうさまでした!」

食事を終えた獣娘が、大きく挨拶をした。

女「獣娘ちゃん、今は少し小さめの声でお願い…」

獣娘「?」
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/12(土) 04:20:03.56 ID:8vddJb05o
女「とりあえず…しばらくここで休んでいったらどうかしら?」

悪魔「はあ!?」

ウィッチ「い、いいんですか…?」

女「えぇ、長旅で辛いこともいっぱいあっただろうし、これから行く先もないんでしょ?
  だったら当面の間はここにいて、これからどうすればいいのか考えればいいじゃない」

悪魔「おいおいおい、ちょっと待て!! じゃあこのバカウィッチをここに住まわすってことか!?」

女「いいじゃない、この家広いんだし。一人ぐらい増えても余裕あるでしょ?」

悪魔「冗談じゃない!! なんで魔女なんかと…」

ウィッチ「あの…本当にいいんですか?」

悪魔「ダメに決まってんだろ!!」

女「えぇ、いいわよ。悪魔ちゃんのことは気にしなくていいから」

悪魔「気にしろよ!!」

女「困ったときは助けあい、だからウィッチちゃんも遠慮しなくていいのよ?」

ウィッチ「うぅ…ありがとうございます!!」

悪魔「マジかよ……ったくもう!!」

獣娘「なんでおこってる?」

悪魔「っるせえ!!」

女「獣娘ちゃん、今日からウィッチちゃんがうちに泊まることになったの。仲良くしてね」

ウィッチ「よ、よろしくお願いします」

獣娘「とまる?」

女「ここでいっしょに暮らすってこと」

獣娘「いっしょ!?」
     
女の言葉を聞くと、獣娘は突然ウィッチに飛び掛り抱きついた。

ウィッチ「ひゃっ!?」

獣娘「いっしょ! いっしょ!」

女「獣娘ちゃん、ウィッチちゃんがここに住むって聞いて嬉しいみたい」

ウィッチ「歓迎されてるってことですか…?」

女「えぇ、そうよ」

獣娘「いっしょ!」

ウィッチ「あ、ありがとうございます」

照れくさそうに笑いながら、獣娘に返事をした。

234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/12(土) 04:20:35.34 ID:8vddJb05o
ウィッチ「あの、ところで聞きたいことがあるんですが…」

女「どうしたの?」

ウィッチ「この子…使い魔か何かですか?」

獣娘の耳としっぽを、ウィッチは不思議そうに見つめていた。

女「その子はね、獣人って言って森に住んでる守り神なの」

ウィッチ「獣人……あっ、学校で習いました。地上の自然を司る神秘的な生物…。
     これが獣人、初めて見ました!」

獣娘「?」

ウィッチ「あの、それともう一つ聞きたいことが」

女「なに?」

ウィッチ「女さんは、なぜ獣娘さんと悪魔さんの二人と一緒にいるんですか?」

女「えっ……」

ウィッチ「だって、普通の人間は関わらない存在のはずですし」

女は獣娘と悪魔の方を見た。二人との出会いを思い出す。
そして今度はウィッチの顔を見た。
可愛らしい女の子の顔をしてるが、この子は魔女であり人間ではない。
ふと、冷静に振り返ってみると、この場で普通の人間は自分一人だということに女は気づいた。
奇妙な感覚が女を襲う。


235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/12(土) 04:22:08.02 ID:8vddJb05o
ウィッチ「あの〜……女さん?」

ウィッチの声で女は我に返った。

女「あっ…ご、ごめんね。それで……私のことだっけ?」

ウィッチ「はい」

女「私は最近ここに引っ越してきて、それで獣娘ちゃんとは出会ったの。
  その後、家の整理をしてたら偶然これを見つけて…」

女は自分の手にはめてる指輪をウィッチに見せ付けた。

ウィッチ「指輪…ですか?」

女「えぇ。この指輪には悪魔ちゃんが封印されていたみたいで、
  私が指にはめたら悪魔ちゃんが解放されて出てきたの」

悪魔「ふんっ……」

ウィッチ「ほぇー、この指輪に悪魔さんを……」

悪魔「それもこれも全部あの魔女のせいだ…!!」

そう言うと悪魔は突如ウィッチに迫った。

悪魔「おい、私を封印した魔女の情報を教えろ!!」

ウィッチ「えぇっ!? 急にそんなこと言われましても…」

悪魔「背は大きくて金髪で、黒いローブを着たやつだ!」

ウィッチ「そ、そんな大まかなことだけじゃ分かりませんよ!?
     ただでさえ魔女は世界各地に大勢いるのに……」

悪魔「私のことを封印したんだぞ!? それなりに実力のある魔女で心当たりねえのかよ!!」

ウィッチ「悪魔を封印することなら中級魔法でできますから、そう言われても……」

悪魔「私はアエーシュマだ!! 私のことを封印できる魔女なんてそうはいないはずだ!!」

ウィッチ「あ、アエーシュマ!?」

目と口を大きく開け、ウィッチは盛大に驚いた。


236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/12(土) 04:23:24.66 ID:8vddJb05o
女「ど、どうしたのウィッチちゃん?」

ウィッチ「あ、アエーシュマって……暴力を司り、狂暴で残忍な
     怒りの化身と恐れられるあの最凶のアエーシュマですか!?」

悪魔「な、なんだよ急に……」

女「悪魔ちゃんって、そんなに凄いの?」

ウィッチ「はい、学校の教科書にも書いてありました!
     アエーシュマさんは絶対悪と呼ばれる魔界最悪の悪神、
    『アンリ・マンユ』様の軍団の大将さんなんですよ!!」

女「軍団…?」

獣娘「?」

悪魔「……そんなものはもうねえよ」

ウィッチ「すごいなー、こんなところであのアエーシュマさんに会えるなんて!」

目をキラキラと輝かせながら悪魔を見つめている。
まるで尊敬でもしているかのような眼差しだ。

ウィッチ「あ、あのっ! 握手してもらってもいいですか?
     それとできればサインも……」

悪魔「おい」

ウィッチ「はい?」

悪魔「私は私を封印した魔女のこと聞いてんだ……
   てめぇに握手やサインなんてしてる暇はねえんだよ!!」

ウィッチ「ひぃぃっ!? ご、ごめんなさい!! すいませんでしたー!!」

女「悪魔ちゃん、落ち着いて!」

悪魔「この……ちっ…」
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/12(土) 04:24:10.98 ID:8vddJb05o
ウィッチ「えっと、アーシュマさんほどの悪魔を封印する魔女でしたら……トップレベルの魔女だと思います。
     それも五大魔導師が使うような強力な魔法でないとアエーシュマさんは封印できないはずです」

悪魔「その五代なんとかってやつが私を封印したのか!?」

ウィッチ「だ、断言はできません。先ほど悪魔さんがおっしゃられた背の高い金色の髪をした魔女が
     当てはまるかどうかも分かりませんし……」

女「その…五大魔導師って人たちには直接会ったことないの?」

ウィッチ「はい。教科書に載っていた古い写真でしか見たことなくて……」

悪魔「ちっ…使えねえな」

ウィッチ「す、すいません……」

女「ねえ悪魔ちゃん。悪魔ちゃんが襲った魔女って、普通に外を出歩いてたのよね?」

悪魔「あぁ、なんか気に食わねえ雰囲気だったから襲った」

女「でも五大魔導師っていう偉い地位にいる人たちが、私たちの世界をうろうろしてるものなのかしら?」

ウィッチ「いえ、五大魔導師は魔法界を統治している方々ですから、地上に出るなんてことは滅多に」

女「じゃあその人たちとは別に、強力な魔法を持った魔女が悪魔ちゃんを封印したって可能性もあるってことね」

ウィッチ「その可能性も…あります」

悪魔「おいおい、どういうことだよ……」

獣娘「ふわぁ〜…」
 
話を割るように、獣娘があくびをした。
退屈のあまり眠ろうとしている。
すでに目は半開きの状態だった。

238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/12(土) 04:25:02.55 ID:8vddJb05o
女「あっ…獣娘ちゃん、今寝たら夜に寝れなくなるんじゃ……」

悪魔「ほっとけ。それより本当に心当たりはないのか? なんか他に知ってる魔女はいないのかよ」

ウィッチ「私の知ってる凄い魔女は……えっと、まずお姉ちゃんが凄いです。
     今、魔法界で将来を有望されてる期待のウィッチなんですよ!」

誇らしそうにウィッチは言う。

悪魔「金髪で背が高いのか!?」

ウィッチ「いえ、背は高いですけど私と同じ茶髪です」

悪魔「違うんだったら言うんじゃねえ!! 期待しちゃっただろ!!」

ウィッチ「す、すいません! ……あっ、もう一人すごい魔女を知ってます。
     私と同じ学年の子だったんですけど、才能があって特別に……」

悪魔「そいつは金髪で背が高いのか!?」

ウィッチ「いえ、金髪じゃないし背も私と同じぐらいです」

悪魔「だから違うんだったら言うなって言ってんだろうがぁー!!」

叫びながらウィッチの方を掴み激しく前後に揺らす。

ウィッチ「ひぇぇえええっ!? ご、ごめんんさーーい!!」
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/12(土) 04:26:18.19 ID:8vddJb05o
女「あ、悪魔ちゃん! そのへんでやめてあげてないと…」

悪魔「くそっ!」

女の言葉に仕方なく従い、ウィッチから手を離した。
しかし悪魔はやり場のない怒りを抑えれないでいる。
荒々しくソファの上に座った。

悪魔「どんなやつが相手だろうと今度会ったら必ず……!」

ウィッチ「さすが悪魔さん、怒る姿が様になってます!」

女「そう?」

悪魔「くそぉ〜…なんかストレス発散したい」

女「悪魔ちゃん。さっきも言ったけどウィッチちゃんを殴るのはダメよ?」

悪魔「はいはい……蹴るのはありだな?」

ウィッチ「えぇっ!?」

女「一ヶ月物置部屋に体動けないまま放置されたい?」

悪魔「ちっ…冗談だよ冗談」

ウィッチ「よ、よかったぁ……」

女「まったく、悪魔ちゃんったら」

悪魔「ふんっ……」

悪魔は機嫌が悪そうにソファに寝そべった。
女はそんな様子を困ったように見ていた。ウィッチもおろおろとしている。
ほんの少し、邪険な空気が漂っていた。

不機嫌な悪魔。
ボロボロの服を着ながらうろたえているウィッチ。
女はこの二人を見て考える、これからこの空気を変えるにはどうしたらいいのか……。

案がひらめくと同時に、ぽんっと手を叩いた。

女「そうだ! 今からみんなでお風呂に入らない?」

悪魔「は?」

ウィッチ「え?」

女「みんな体も汚れてるし、そうしましょう!」

悪魔「お、おい私は…」

女「獣娘ちゃん、ほら起きて。お風呂に行くわよ?」

獣娘「ぅが?」

寝ている獣娘を抱きかかえ、女は三人をお風呂場へと連れ出した。

女「よし、しゅっぱーつ!」
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/12(土) 04:27:36.20 ID:8vddJb05o
ここまで。
ちなみに入居人はあと三人ぐらい増えるのを予定してますが先は長くなりそうです。
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 04:37:51.88 ID:BnGTyW7AO
まだ増えるのか…期待
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 05:19:06.95 ID:rrVwj/W6o
ウィッチはドジっ子タイプか
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 11:50:44.28 ID:DijAtPTgo
乙した。まだ増えるのか楽しみだ!
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 19:17:52.11 ID:5wzzF4wAO

このSSのジャンルはなんだ。ファンタジー?
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/17(木) 13:51:34.85 ID:QP03zwJco
支援
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/19(土) 14:21:51.57 ID:cbstlbSDO
ま…だ…か
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 23:24:33.98 ID:crKM5O2ko
やばいなコレ面白い
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 20:36:39.97 ID:52a4sRvIo
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湯気が立ち込める浴室内。
服を脱いだ四人はそこでシャワーを浴びている。

悪魔「なんだってこんな時間に風呂入らなきゃいけないんだよ」

女「いいじゃない。悪魔ちゃんだって山の中歩き回って体汚れてるでしょ?」

獣娘「ばっちぃ」

悪魔「こんなのは汚れたうちに入らねえよ」

ウィッチ「あ、あの……」

女「どうしたの? ウィッチちゃん」

ウィッチ「いえ…その……き、緊張しちゃって」

女「緊張?」

ウィッチ「私…お姉ちゃん以外の人とお風呂に入ったことがないもので……」

体にタオルを巻いているウィッチは、恥ずかしそうにうつむいた。

女「そうなんだ……でもみんな女の子なんだし緊張することないわよ?」

ウィッチ「そういうものですかね…」

女「そうそう、女同士の裸の付き合いってやつ」

ウィッチ「は、裸の付き合い……!?」

顔を真っ赤にするウィッチ。
どうやらなにか勘違いをしているようだ。

女「ウィッチちゃん?」

ウィッチ「わ、わたし、そんな…まだ……
     は、裸の付き合いって……あわわわわっ!?」

悪魔「うるせえ!! 黙ってろ!!」

ウィッチ「あ…すいません……」

獣娘「おふろー!」

女「あっ、獣娘ちゃん体洗ってから!!」
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 20:37:09.00 ID:52a4sRvIo
女「はい、頭洗おうね。シャンプーするから目閉じてて」

獣娘「うぐぅ…」

言われたとおり、獣娘は目を閉じた。
女は優しい手つきで獣娘の頭を洗い始める。
シャンプーが獣娘の頭の上で泡立っていく。

悪魔「おい、私にもそのシャンプーよこせ」

女「よこせじゃなくて、もうちょっと言い方ってものがあるでしょ」

悪魔「いちいちうるせーな、ったく」

女は右手についた泡を水で荒い流し、シャンプーを手渡そうとする。
悪魔はそれを荒々しく受け取った。

女「あっ、もう……」

悪魔「ふんっ」

女「…そういえばウィッチちゃん」

ウィッチ「なんですか?」

体を洗っているウィッチが答えた。

女「ウィッチちゃんって悪魔との契約が必要なのよね?」

ウィッチ「はい、そうじゃないと私たちウィッチは強い魔法を使えませんから」

女「だったら、悪魔ちゃんが契約してあげれば?」

悪魔「はあっ!?」

ウィッチ「えぇっ!?」

女「ど、どうしたの二人とも?」

悪魔「私がこんなやつと契約するわけねえだろ!!!」

女「でも、ウィッチちゃん困ってるし……」

ウィッチ「と、とんでもないです!! 私みたいな見習いウィッチが
     アエーシュマさんほどの名のある悪魔と契約なんて恐れ多くて……」

悪魔「そうだ! 誰がこんなぺーぺーウィッチと契約するもんか!!」

ウィッチ「ぺーぺー……」

女「契約って簡単にできるものじゃないの?」

ウィッチ「ウィッチと悪魔の契約は、お互いに一生物の契りですから……
     一応仮契約という形もあるんですけど」

悪魔「仮だろうが何だろうがな、私が魔女に力を貸すなんてことはありえないんだよ。
   分かったか!?」   

ウィッチ「は、はいっ」

悪魔「ったく…どいつもこいつも」

シャワーで体を洗い流すと、悪魔は浴槽へと向かった。
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 20:37:39.62 ID:52a4sRvIo
女「悪魔ちゃん、あそこまで言うことないのに」

ウィッチ「いいんです、私本当にぺーぺーですから……」

獣娘「まだー?」

女「あっ、ごめんね獣娘ちゃん」

シャンプーをし終えた獣娘は、すぐさま浴槽へ向かっていった。
お風呂の暖かいお湯がすっかり気に入ってるようだ。

ウィッチ「あの、女さん」

女「なに?」

ウィッチ「指輪、もう一度見せてもらってもいいですか?」

女「え? いいけど…」

左手の薬指にはめている指輪を見せた。
ウィッチはそれをまじまじと観察している。

女「なにか分かる?」

ウィッチ「いえ、全く分かりません」

がくっ、と肩を落とす女。

ウィッチ「ですけど、この指輪が女さんと悪魔さんを……
     女さんと悪魔さんは、何か共有しているものがあるかもしれませんね」
     
女「なにかって?」

ウィッチ「例えば…魂とか」

女「た、魂!?」

ウィッチ「いえ、あくまで仮定の話です。それに女さんは悪魔さんと契約してるわけではないんですよね?」

女「う、うん。…って、悪魔との契約って人間でもできるの?」

ウィッチ「はい、ウィッチの契約とは勝手が違いますけど」
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 20:38:25.58 ID:52a4sRvIo
ウィッチ「ウィッチと悪魔の契約は主に魔力の共有ですけど、人間と悪魔は違います。
     人間は悪魔に魂を分け与えることで契約をし、大きな力を手にするんです」

女「大きな力?」

ウィッチ「とにかくその人が願ったことがなんでも叶うと言われているんです。
     大金持ちになりたかったら、本当に大金持ちになれるし、有名人になりたかったら有名人にもなれます」

女「そんなこと……」

ウィッチ「でも、その分代償も大きいんです」

女「代償って…どんなの?」

ウィッチ「契約が切れた後、その人は地獄のような苦しみを受け無残な姿で死んでしまうんです」

女「えっ……」

その言葉を聞いた瞬間、女は心臓が大きく鼓動するのを感じた。
死≠ニいう言葉が胸に突き刺さる。

ウィッチ「けど、女さんは契約をしたというわけでもないですし、たぶん大丈夫です。
     それどころか悪魔さんの力を抑えるなんて……」

女「……」

ウィッチ「女さん?」

女「あっ……ごめん、ちょっと考え事をしてて」

ウィッチ「あの…今の話はあくまで契約をしたらの話ですから、女さんは気にしなくてもいいんですよ?」

女「う、うん。分かってる」
 
ウィッチ「…すいません、変な話をしちゃって」

女「いいの、聞いたのは私の方なんだし……」

体を洗い流すと、二人の間にしばらく沈黙が流れた。
ウィッチは申し訳なさそうにしている。
その様子に気づいた女が、話題を変えようと口を開いた。

女「そういえばウィッチちゃん」

ウィッチ「な、何でしょうか?」

女「ウィッチちゃんには、夢とかある?」

252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 20:39:37.69 ID:52a4sRvIo
ウィッチ「え……夢ですか?」

突然の問いかけにウィッチはぽかんとした顔をした。
その顔を見て、女の口からくすりと小さな笑みがこぼれた。

女「うん。ウィッチちゃんも夢や目標があって修行してるんでしょ?」

ウィッチ「そ、そうですね……」

照れくさそうに頭をかくウィッチ。

ウィッチ「私みたいな落ちこぼれでも、お母さんやお姉ちゃんみたいなすごいウィッチになれたらなぁ…なんて」

女「お母さんとお姉ちゃんが目標なんだ」

ウィッチ「はい! お母さんやお姉ちゃんみたいな実力のあるウィッチになって、少しでも私の魔法を
     世界のために役立てたいんです! それが私の夢です!!」

女「そ、そうなんだ」

ウィッチ「あっ……」

あまりの力説に女が少したじろいでしまった。
そして我に返ったウィッチの頬がしだいに赤く染まっていく。

ウィッチ「ご、ごめんなさい! なに言ってるんだろう私……」

女「でも、ウィッチちゃんの気持ち分かるわよ?」

ウィッチ「え?」

女「私も自分の持ってる力を世界のために役立てたいと思ってたから」

ウィッチ「そうなんですか?」

女「うん……」

女は思い出していた、自分のやってきたことを。
嫌な思い出を。
語ろうとしても言葉が止まってしまう。

ウィッチ「あの…女さん?」

女「えっ?」

ウィッチ「大丈夫ですか? さっきからぼーっとしたりしてますけど……
     私、もしかして失礼なことばかり聞いてました?」

女「…ううん、なんでもないの。ウィッチちゃんは気にしないで」

ウィッチ「そうですか? でも私、よく他の人をイラつかせたりしてるみたいだし……」

女「私はそんな風に思っていないよ?」

女はにこりと笑顔を見せた。

253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 20:40:25.20 ID:52a4sRvIo
ウィッチ「女さん…」

女「それに周りの目なんて気にしなくてもいいじゃない。自分の目指してる道をまっすぐ進めば。
  もしその道が間違っていたら……」

一呼吸置いて、言葉を続けた。

女「……きっと誰かがウィッチちゃんのことを止めてくれるはずよ」

ウィッチ「……」

女「私たちも湯船、入ろっか」

ウィッチ「あの、女さん」

女「なに?」

ウィッチ「その…女さんは夢を叶えられたんですか?」

女「……」

ウィッチ「あっ、す、すいません! また失礼なこと……」

女「私は…ダメだった」

ウィッチ「え?」

女「結局叶わなかったかな、私の夢は」

女は寂しそうな目で遠くを見つめていた。
水が滴るきれいな髪。美しくもどこか悲しげな顔。
白い肌をしたスタイルの良い身体。
ウィッチはその魅力的な姿に思わず見とれていた。

女「どうしたの?」

ウィッチ「あっ…いえ! なんでもないです……」

女「そう? それじゃあ、お湯浸かりに行こっか」

254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 20:41:03.48 ID:52a4sRvIo
一方、悪魔と獣娘は先に湯船の中でくつろいでいた。

獣娘「おーふーろー♪」

水しぶきをばしゃばしゃと立てながら、獣娘はバタ足で浴槽内を泳いでいた。
跳ね返った水が、悪魔の顔に当たる。

悪魔「こらっ…この犬っころ!! うぜえから泳ぐんじゃねえ!!」

獣娘「?」

悪魔「ここで泳ぐな!! じっとしてろ!!」

獣娘「がぅ……」

悪魔に怒鳴られた獣娘は、言われたとおり泳ぐのをやめた。

悪魔「どいつもこいつも……人をイラつかせやがって」

獣娘「どいつも、こいつも?」

悪魔「てめえだよてめえ、てめえの事だ犬っころ」

獣娘「ありがと!」

悪魔「だーっ!! コイツとじゃ会話になんねえ!!」

獣娘「あくま、なんでうるさい?」

悪魔「お前が黙ってれば私だって静かにしてるんだよ!!」

獣娘「?」

悪魔「…いいか、とにかく静かにしてろ。分かったな!?」

獣娘「うん!」

悪魔に言われたとおり、獣娘は口を閉じた。

悪魔「ったく……いい加減疲れてきた」

足を伸ばしながらリラックスした。
温かいお風呂のお湯が、悪魔の心身の疲労を癒していく。
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 20:42:11.05 ID:52a4sRvIo
悪魔「あー…気持ち良い。湯が血の色だったら最高なんだけどな」

獣娘「……」

悪魔「それにしても、退屈だー。久しぶりに暴れたいなー」

獣娘「……」

悪魔「このままじゃ体が鈍ってしょうがない……よっ、ほっ」

悪魔は湯船の中でストレッチを始めた。
獣娘はそれをただじっと見つめている。

悪魔「いつになったら私は自由になるんだろうな。よっ、と」

獣娘「……」

体を動かしている悪魔を見て、獣娘もうずきだす。

悪魔「はぁ…戦いたい。スラオシャでもいてくれれば……いや、あいつはやっぱイヤだ」

獣娘「お……」

悪魔「あ?」

獣娘「おふろー!」

とうとう我慢できず、獣娘は再び泳ぎ始めた。
勢いの良い水しぶきが悪魔に当たる。

悪魔「こらっ!! てめえ泳ぐなって言っただろ!!」

獣娘「おふろー♪ おふろー♪」

悪魔「人の話を聞け!! こんにゃろ……力ずくで止めてやる!!」

獣娘を捕まえようと悪魔は襲い掛かるが
華麗な泳ぎで避けられていった。

悪魔「おまっ…魚かよ!?」

獣娘「さかなおいしい!」

悪魔「美味しいじゃねえ!! てめえを食ってやろうかあぁ!?」

再び襲い掛かる悪魔。次々と悪魔の襲撃から逃れる獣娘。
辺りは湯船の湯が飛び散る。

女「ちょ、ちょっと! なに騒いでるの?」

遅れて女とウィッチがやってきた。
しかし悪魔と獣娘は変わらず騒いでいる。
じゃれあっているのだろうか、女にはその光景がそんな風に見えた。

256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 20:43:11.06 ID:52a4sRvIo
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女「ウィッチちゃん、私の服ちょっと大きいけど大丈夫?」

ウィッチ「はい。服まで借りて…わざわざすいません」

時刻は夜の八時過ぎ。
お風呂から上がった四人はリビングに集まっていた。

悪魔「ったく、お前のせいで全然疲れが取れなかったじゃねえか」

獣娘「たのしかった!」

悪魔「もうやだこのガキ」

悪魔がソファの上で悪態をついた。
このソファはすっかり悪魔のお気に入りの場所となっている。

女「まぁまぁ。とりあえず今日は早く寝た方がいいんじゃない?
  ウィッチちゃんだって体を休めた方がいいだろうし」

悪魔「まだ八時だろ。私は寝ないからな」

獣娘「…zZZ」

悪魔「って寝るの早えーなおいっ!!」

女「ウィッチちゃんこの寝袋使っていいわよ」

ウィッチ「あ…はい」

女「ごめんね、寝袋で。ベッドとかはまた今度作ろうと思ってるんだけど」

ウィッチ「いえ…ここまでしてもらえるなんて本当に……ありがとうございます」

女「それと獣娘ちゃんも一緒に使わせて。風邪引くといけないから」

ウィッチ「は、はい」

女は寝袋を床に敷くと、寝ている獣娘をその中へと運んだ。
ウィッチも続いてその中へと入る。

女「じゃあ、おやすみ」

悪魔「おい、お前はどこ行くんだよ」

女「車の修理」

悪魔「は?」

女「まだ途中だったから。続き仕上げてくるね。
  それと電気、もう消しちゃうね」

女は部屋の電気を消し、修理中の車がある庭へと向かった。
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 20:44:13.17 ID:52a4sRvIo
真っ暗なリビング、そこには人間ではない者たちが取り残されている。

ウィッチ「女さんって…優しいですよね」

悪魔「どこがだよ、私には散々だぞ」

ウィッチ「でも、ここまでしてくれるなんて…」

女から借りた衣服と寝袋の温かさに包まれ、ウィッチはほっと一息つく。
寝袋の中に一緒にいる獣娘の体がもぞもぞと動いた。

ウィッチ「獣娘さんの体って、柔らかいんですね」

悪魔「犬っころがお前を見つければよかったのに……」

ぽつりと呟いた。

ウィッチ「あの、本当にありがとうございました
     みなさんに命を助けられるだけでなく、ここまでしてもらうなんて…」

ウィッチはこの場にいる二人と外の女に感謝した。
絶対に助からないと思っていた命が救われたということ。
そして食事や衣服までもてなされたこと。
森の中を一人でさまよっていた頃にはこんな事が起きるとは思ってもみなかった。
ウィッチにとって三人に出会えたことは、奇跡と言ってもいい出来事だった。

しかし、助けられてもらってばかりの自分に不甲斐なさと悔しさも感じていた。


ウィッチ「私…今までずっと誰かに手を貸してもらってばかりで…自分では何もできなくて……。
     今日も助けてもらって、こんな温かく迎え入れてもらって……」

悪魔「……」

ウィッチ「私、みなさんにどう恩返ししたらいいのか……」

悪魔「おい」

ウィッチ「え?」

悪魔「私はな、お前を助けたつもりはないし今ここでお前の愚痴を聞くつもりもねえんだよ。
   迷惑だと思ってんならさっさと出ていけ。いつまでもぐだぐだ言ってんじゃねえ」

258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 20:44:57.02 ID:52a4sRvIo
ウィッチ「ご、ごめんなさい……」

悪魔の辛辣な言葉がウィッチを黙らせた。
また怒らせてしまったか、とウィッチは肩を落す。

悪魔「……」

ウィッチ「……」

獣娘「おねえ…ちゃん……」

沈黙を破るように、獣娘が寝言を呟いた。

ウィッチ「獣娘さん…?」

獣娘「うぐぅ……」

獣娘は一緒に寝ているウィッチの体に抱きついていた。
スースーと寝息を立てているが、どこか寂しそうである。

ウィッチ「……獣娘さんにも、お姉さんがいるんですか?」

ウィッチは今の寝言について悪魔に尋ねた。
しかし悪魔はそれを無視して、仰向けになりながら天井を見ているだけだった。

獣娘「……」

ウィッチ「獣娘さんのお姉さんって、今は…」

悪魔「ちっ…私が知るわけねえだろ。黙って寝てろ」

ウィッチ「でも、悪魔さんは気にならないんですか? 獣娘さんや女さんが
     今までどんな風に生活してたのか……」

悪魔「……」

ウィッチ「女さんの叶えられなかった夢ってなんだろう。もし私が力になれるんだったら……」

もしかしたら、自分を助けてくれた彼女たちに恩返しをできるかもしれない。
ウィッチはそう期待を見出していた。

悪魔「……」

ウィッチ「あ、そういえば悪魔さんってここに来る前は」

悪魔「付き合ってられねえ」

ウィッチ「あ、悪魔さん?」

悪魔はソファから起き上がると、玄関へ向かって歩を進めた。

ウィッチ「あの…どこに」

悪魔「お前のいないところ」

そう言い残すと、悪魔は外へと出て行った。

ウィッチ「……」

また怒らせてしまったか。ウィッチは寝袋に顔をうずめた。
言われたとおり黙っていれば、悪魔も怒らなかっただろう。
このままでは本当に迷惑になるだけだ、明日にでも出ていった方がいいのだろうか。
徐々に目を閉じながら、ウィッチは頭の中で今日の反省を始めた。

259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 20:46:02.26 ID:52a4sRvIo
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女「えーっと、ここをこうして……」

暗闇の中、女は懐中電灯を光らせながら作業をしていた。

女「……よしっ、これで」

悪魔「おい」

女「ひゃっ!?」

突然後ろから声をかけられ、女は驚きの声を上げた。
振る向くとそこには悪魔がいる。ほっと胸をなでおろした。

女「び、びっくりしたぁー……どうしたの?」

悪魔「別に……魔女なんかと同じ部屋にはいられないだけだ」

女「まだそんなこと言ってるの?」

悪魔「気に食わねえものは気に食わねえんだよ」

女「別にウィッチちゃんが悪いことしたわけじゃないんだから、仲良くすればいいじゃない」

悪魔「それだけじゃなくて、所々うぜぇんだよ。気安く私に話しかけやがって…」

女「そう? 素直で良い子じゃない」

悪魔「はっ…お前からしたらみんな良い子になるんだな。まったくおめでたい頭だな」

女「どうしてそういうことばかり言うのよ」

女は工具を持ち替えると、再び車の修理を始めた。
手を動かしながら、会話を続ける。

女「悪魔ちゃんだってもう少し素直になればかわいいのに」

悪魔「か、かわっ……!?」

かっこいい≠ネらともかくかわいい≠ネどとは滅多に言われたことがなかった。
思わず動揺が顔に出てしまう。

悪魔「と、とにかく! 私はあんなやつと一緒に暮らすなんて絶対にイヤだからな!!」

女「悪魔ちゃん、ここライトで照らしてもらえる?」

そう言い手の持ってた懐中電灯を悪魔に渡した。

悪魔「あ、はい」

渡されたライトで車体の奥を照らす。

女「ありがとう、ここ両手じゃないと作業が難しいのよね」

悪魔「いやいや、別に……っておい!! お前また指輪の力で私の体勝手に動かしやがったな!?」

女「あはは、いいじゃないこれぐらい」

悪魔「コノヤロッ、私はお前のパシリじゃないんだぞ!!」

女「そこもうちょっと右照らして」

悪魔「はいはい……っておいコラぁ!!」

260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 20:46:55.32 ID:52a4sRvIo
――それから三時間が経った。
悪魔が嫌々ながらも手伝っているので、作業は順調に進んでいた。

女「これなら明日にでも仕上げられるかも。悪魔ちゃん、スパナ取って」

嬉々とした顔で車体のパーツを換えていく。

悪魔「けっ…」

反対に悪魔はしぶしぶとしている。
しかし指輪の力によって女の指示には否応なしに手を貸すしかなかった。

女「よかった…メインエンジンの部分には損傷がなくて」

悪魔「……これ本当にお前が作ったのか?」

女「うん、そうよ」

悪魔「工場とかで働いてたのかよ」

女「そういわけじゃないんだけど……製造関連の仕事してたから」

女の表情が少し憂える。

悪魔「ふんっ……まぁ私はお前がどんな仕事してたなんか興味ないけどな。
   あのバカウィッチは気になってたみたいだけど」

女「ウィッチちゃんが?」

悪魔「あのバカ、お前や私と犬っころが今までどんな風に生活してたのか知りたいんだとさ」

女「そうなんだ……」

悪魔「ったく…他人の事情にいらない首突っ込もうとするから鬱陶しいんだよ」

女「そういうことが色々と気になる年頃なのよ」

悪魔「……お前も私の過去とか気にしたりするのか?」

女「悪魔ちゃんの過去?」

女はウィッチが語っていたことを思い出した。
悪魔は何とか軍団の大将だということ。
意外にも有名人だったこと。

自分の知らないところで彼女はどんなことをしてきたのだろうか。

女「……」

気になるが聞いてはいけないような気がした。
聞いたところで彼女もあまり快く話そうとはしないだろう。

261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 20:47:38.79 ID:52a4sRvIo
女「私は……別に。悪魔ちゃんだって私の過去には興味ないんでしょ?」

悪魔「そう言っただろ」

女「じゃあそれでいいわよね。昔は昔、今は今。これからをどうするかが大切なんだし」

悪魔「……いや、一つだけ気になることがあったな」

女「え?」

悪魔「あの犬っころのことだ。あいつ、姉ちゃんがいたとか話してたぞ」

女「獣娘ちゃんの、お姉さん?」

悪魔「あの犬っころにどういう教育してたんだよ、ったく」

女「私もその話、獣娘ちゃんから聞いたんだけど……お姉さん、どこ行っちゃったのかな」

悪魔「知らねえよ。どうせ犬っころの面倒みるのが嫌になってどっか行ったんだろ。
   そのままのたれ死んだのかもな」

女「……」

悪魔「ま、それも結局のところどうでもいいんだけど。それより修理まだ終わらないのかよ」

女「あ…うん。あと少しで今日の分は終わり」

悪魔「早くしろよ、眠いんだから」

女「ウィッチちゃんと同じ部屋で寝ても大丈夫なの?」

悪魔「……」

女「ふふっ、本当はもうウィッチちゃんのこと気にしてないんでしょ?
  意地張ってないで仲良くすればいいじゃない」

悪魔「そ、そんなわけないだろ! くだらねえこと言ってないで手動かせ、手!!」

女「はいはい。悪魔ちゃん、そこ照らして」

悪魔「はいよ」

女「……ふふっ」

悪魔「なんだよ」

女「悪魔ちゃん、だいぶ素直に言うこと聞いてくれたなぁって思って」

悪魔「は…?」

女「だって今、指輪の力なんて使ってないのよ?」

悪魔「なっ!?」

衝撃の事実に悪魔は口を大きく開けて驚いた。

悪魔「い、いや! 間違いなく使っただろ!!」

女「使ってません」

悪魔「使った!! 使わなきゃ私が動くわけないだろ!!」

女「だから使ってないって」

悪魔「絶対に使った!! 使った使った使った!!」

女「はいはい、じゃあそういうことにしておくわよ」

悪魔「こんにゃろ…なめやがって!!」

女「ふふっ」

悪魔「笑うなー!!」

必死になっている悪魔が女には可愛らしく見えた。
こうして話していると、残忍な怒りの化身と呼ばれていることが信じられないくらいだ。
彼女が過去に何をしたのか、それは分からない。
だが、今の彼女を見てるのは自分だけ。今の彼女を知ってるのは自分だけ。
過去を知らなくても、女にはそれだけで十分だった。
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 20:49:09.95 ID:52a4sRvIo
作業を終えた二人は家の中へと戻った。
リビングではすでにウィッチと獣娘が寝袋の中で寝息を立てている。

悪魔「まったく、そろいもそろって能天気な顔しやがって」

寝袋の中を覗き込んで二人の顔を見て呟く。

女「かわいいじゃない、子供の寝顔って」

悪魔「……ははーん」

悪魔は不敵な笑みをこぼした。
それを見て女は怪訝な顔をする。

女「なに?」

悪魔「お前…ひょとしてロリコン?」

女「ちょっ、なんでそうなるの!?」

悪魔「そうかそうか、だから犬っころとバカウィッチをここに住まわせたのか」

女「ち、違うわよ!」

獣娘「うぅ〜ん……」

起きそうになった獣娘を見て、女は慌てて手で口を塞いだ。

女「もう…いきなりなに言うの。さっきの仕返し?」

悪魔「はんっ、私は思ったことを素直に言っただけだし」

女「いじわる」

悪魔「うるせえ、いいから寝ろ」

そう言うと悪魔ソファの上に寝そべった。
悪魔の態度にやれやれと思いながら女はその上にタオルケットをかけ、
自分も寝支度を始める。

女「……悪魔ちゃん、手伝ってくれてありがとうね」

悪魔「うるせえ」

女「人の好意はきちんと受け止めなきゃダメよ。
  それと、明日からウィッチちゃんとも仲良くすること。わかった?」

悪魔「……」

女「それじゃあ…おやすみ」

女も寝床に入る。
といっても、寝袋は獣娘とウィッチの二人が使っているので今日は床の上で寝ることにした。
仰向けになり、体にタオルをかけ、目を閉じる。

女「早くベッド欲しいなぁ…」

冷たい床は、少し寝心地が悪かった。
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 20:52:27.71 ID:52a4sRvIo
--------------------------------------------------------------

真夜中。町から少し離れた林の中で一匹の大きな物体がうごめいていた。
人間の大人と同じぐらいの大きさで、黒い甲殻を身にまとったの体。細い足が八本生えている。
まるでクモのようなその生き物は、静かに、ゆっくりと、林の奥へと進んでいく。
鎌状をした口からは、鮮血がしたたり落ちていた――――。
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 20:53:29.13 ID:52a4sRvIo
ここまで。
遅れてすいません。
次からようやく話が少し進むような進まないような。
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 23:50:57.22 ID:ppReGyAro
にやにやしながら読んだよ
不穏な終わり方だな次回も期待してる
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 00:39:33.39 ID:UShiEmszo
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 04:18:24.73 ID:ueCcjPpxo
乙した癒されましたホワホワ

皆の過去気になる
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/22(火) 01:31:05.12 ID:nBax0V9AO
悪魔ちゃんが某魔法少女の杏子ちゃんで再生される
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/22(火) 17:16:39.91 ID:7tCeikVno
支援
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/22(火) 18:59:12.61 ID:1X4LMT9Ao
楽しみ
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 06:14:05.98 ID:oEGRhn9co
しえn
272 :1 [sage]:2011/02/28(月) 02:24:59.73 ID:/KylIQ0Co
今日か明日には投下します
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 02:41:11.04 ID:35v9nh/Do
はーい
274 :1 [sage]:2011/03/01(火) 21:55:11.27 ID:jhh0e/u2o
すいません遅れます
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 22:31:49.14 ID:z1iS/Rjfo
??????????///????????
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 22:34:11.19 ID:nPztAIuuo
はーい
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 23:30:55.65 ID:qqQvIvxVo
はーい
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 00:21:20.08 ID:sXcSXVkno
もうこの焦らし上手めっ///
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/05(土) 09:20:47.46 ID:6DW/n/gz0
まだなのか…
280 :1 [sage]:2011/03/05(土) 20:36:05.74 ID:o0IlEvomo
すいません、一度書いた話を全部書き直してたので遅れました
明日には確実に投下します
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 20:41:41.75 ID:oukW0324P
なぜ書きなおしたんだwwww
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 23:56:13.58 ID:xfgbkGQUo
はーい
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 21:32:53.34 ID:YoUHJk+7o
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爽やかな朝。春の気持ちのいい風が窓から吹き込んでくる。
早くに起きた女は台所で朝食の準備をしていた。
獣娘もそれを手伝っている。

一方、悪魔とウィッチの二人はリビングで寝ている。
悪魔は口からよだれを垂らし何かぶつぶつと楽しそうに寝言を呟きながら
ぐっすりと眠っていた。

ウィッチ「ふ……ぅぅ〜ん……」

寝袋の中で寝ていたウィッチが目を覚ます。
小さく丸めた体をもぞもぞと動かし、大きなあくびをして身を起こした。
背筋を伸ばす。
目を覚ますとそこは温かい部屋、台所から漂ってくる朝食の美味しそうな匂い。
まるでまだ夢の中にいるような心地だった。

ほっとため息をつくウィッチ。
しばらくすると台所から女がやってきた。

女「あっ、もう起きた?」

ウィッチ「女さん、おはようございます」

女「おはようウィッチちゃん。朝ごはんもうすぐでできるからね」

ウィッチ「すいません、お世話になってしまって……」

女「いいのいいの、気にしないで。私も好きでやってるんだし」

ウィッチ「でも……あの、できるだけ早く旅立てるようにします」

女「そう? ゆっくりしていってもいいのよ?」

ウィッチ「やっぱり迷惑はかけられませんし……悪魔さんにも悪いですし」

女「そう? ……まぁウィッチちゃんの好きにしていいわよ。私のほうは長居してもらっても構わないから」

ウィッチ「はい。ありがとうございます」

女「それと……そうだ、今のうちに顔洗ってきちゃって。ちょうどご飯もできるし」

ウィッチ「あっ、はい」

悪魔「やっぱ私……さいこぅ…ぐぅ〜……」

女「ほら、悪魔ちゃんも起きて」

女は悪魔を起こそうと体を揺すった。
しかし起きる気配はまったくない。

女「もう、悪魔ちゃんったら」

指輪を使えば起こせるかもしれないが、この力に頼りすぎるのはあまり気が進まない。
ここで生活するうえでは、なるべく悪魔には自由にさせたいと女は思っていた。

女「ま…しょうがないか」

悪魔をそのまま寝かせ、女は台所へと戻って行った。
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 21:33:34.48 ID:YoUHJk+7o
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女「はい、じゃあみんなで。いただきます」

獣娘「いただきます!」

ウィッチ「いただきます」

悪魔「ふわぁあ〜……」

リビングの床に並べられたお皿。
四人はそれを取り囲んで朝食をとっている。
ちなみにメニューは焼き魚、パン、インスタントスープ、
それと昨日採ってきた木のみがトッピングされている。

悪魔「また魚かよ……」

女「魚嫌いなの?」

悪魔「そうじゃなくて、食べ合わせってもんがあるだろ。なんで魚とパンを一緒に食わなきゃいけないんだよ」

女「いいじゃない、ね?」

獣娘「ねっ!」

悪魔「ちっ……おいバカウィッチ」

ウィッチ「は、はいっ」

悪魔「お前の魔法でなんとかできねーのかよ」

ウィッチ「なんとかって…言われますと?」

悪魔「パンをご飯に変えたりできんだろ、やれよ」

ウィッチ「いえ、私にはちょっと……」

悪魔「んだよ、使えねーな」

ウィッチ「すいません、魔法を使うにしても杖やクリスタルがないと使えなくて……」

悪魔「はんっ、魔法も使えない魔女なんて何の役にも立たねーな」

獣娘「たたねーな」

悪魔「家畜以下だろ」

獣娘「いかだろ」

ウィッチ「うぅ……」

女「こら悪魔ちゃん! そういうこと言わないの。獣娘ちゃんも悪魔ちゃんの真似なんかしちゃダメよ」

悪魔「はいはい分かりました分かりました」

獣娘「わかりました、わかりました」

悪魔「真似してんじゃねーよバカ」

獣娘「ばか」

悪魔「誰がバカだこのやろう!!」
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 21:34:17.24 ID:YoUHJk+7o
女「獣娘ちゃん、悪魔ちゃんのマネしちゃダメだって」

獣娘「なんで?」

女「悪魔ちゃんの言葉は汚いからよ」

獣娘「きたない? ばっちぃの?」

女「そう、ばっちぃの」

獣娘「あくま、ばっちぃの?」

女「うん、だからマネしちゃダメよ」

獣娘「あくまばっちぃ!」

悪魔「人をバイキン扱いしてんじゃねー!!」

女「悪魔ちゃんもそういう乱暴な話し方やめたらどう? 女の子なんだしもっと優しい話し方とかあるじゃない」

悪魔「はぁ? 誰に向かって言ってんの? 私がお前らみたいなナヨナヨした喋り方するわけないだろ。
   格好がつかねえじゃんか」

女「不良じゃないんだから」

悪魔「いちいちうるせーんだよ、何様だ。おいバカウィッチ、水注げ」

ウィッチ「は、はい」

命令どおり、ウィッチはペットボトルの水を悪魔のコップに注いだ。
端から見ればまるで親分と子分のような光景だ。

女「そういえばウィッチちゃん」

ウィッチ「なんですか?」

女「さっき魔法を使うには杖が必要だって言ってたけど、他にはどんな道具を使うの?
  ホウキにまたがって空を飛んだりする?」

ウィッチ「はい、空飛ぶホウキはありますよ。ホウキ以外でも空飛ぶ道具はありますし」

女「本当にあるの!?」

ウィッチの言葉を聞くと、女は目をキラキラと輝かせ始めた。

悪魔「なんだよ、急に嬉しそうにして」

女「子供の頃ホウキで空を飛ぶのが夢だったの! 本当に飛べるんだ、いいなぁ〜」

ウィッチ「でも、一応免許証は必要になります。最近は魔法交通ルールも厳しくて」

女「こ、交通ルールとかあるの…?」

ウィッチ「はい。例えば教会の近くで飛んではいけなかったり、時速1500キロ以上は出しちゃいけなかったりとかですね。
     あっ、ちなみに私は仮免許持ってたんですよ」

女「1500……そんなに出るんだ」
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 21:36:34.37 ID:YoUHJk+7o
女「けど、私が子供の頃に想像していたのと結構差異があるのね。ウィッチちゃんも悪魔ちゃんも」

悪魔「は? なんだそれ」

女「だって悪魔って言ったらもっと大きくて怪物みたいなのを想像していたし、魔女も存在自体が空想上のものだと思ってた。
  けど二人とも実際に存在していて、山には獣人までいた」

獣娘「?」

女「今まで色んな所を回っていたつもりだったけど、私の知らない世界ってたくさんあるのね…」

悪魔「当たり前だ、地上でしか生きてない人間には知らねえのかもしんねーけど。
   ま、しょせん人間なんて世界全体を把握できないぐらいちっぽけな存在ってことだよ」

女「うん…そうなのかも」

ウィッチ「そういえば地上って科学技術が進んだ暮らしをしているって聞いたんですけど、ここはあんまりそうじゃないんですね」

女「ここは田舎だし、この家が古いつくりなのもおじいちゃんの趣味なの。
  都会のほうに行けばここよりずっと進んだ技術であふれた街があるわよ」

ウィッチ「へぇー」

悪魔「ていうかお前さ、地上で修行するって言って具体的にはなにやるんだよ」

ウィッチ「え? それは…人それぞれなんですけど。私の場合は魔法を使って困ってる人を助けようかなって思って…」

悪魔「お前今魔法使えねーじゃん」

ウィッチ「うっ」

悪魔「はっ、魔法も使えないのに地上をウロウロしても仕方ねえだろ。もう実家帰れよ、実家」

ウィッチ「で、ですけど今帰ったら家名に泥を塗るようなことですし……」

女「ウィッチちゃんはとりあえずこれからどうすればいいの?」

ウィッチ「今は身の回りを整えないと……何か一つでも魔法が使えるようになる道具があるといいんですが」

女「それってさっき言ってた杖のこと? 普通の杖はダメなの?」

ウィッチ「普通の杖では魔法は使えません。魔女専用の杖じゃないと…」

女「じゃあとにかくそれを手に入れないとダメってことね」

悪魔「もう魔女なんてやめちまえよ。才能なさそうだもん、お前」

ウィッチ「そ、そんな〜」

女「頑張ってる人にそんなこと言わないの!」

悪魔「はんっ、実力もないやつが身の丈に合わないことしたってろくなことにならねーよ」

獣娘「ごちそうさまでした!」

話を割るように、獣娘が食後の挨拶をした。
他の三人もすでに食べ終えている。

悪魔「ま、今のまま頑張っても最悪死ぬだけかもな。ごちそうさん」

そう言うと悪魔はソファの上に体を寝かせた。

女「もう、悪魔ちゃんってば」

ウィッチ「……」

287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 21:37:28.15 ID:YoUHJk+7o
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朝食の時間が終わった後、女は台所で皿洗いを始めていた。
悪魔は食後の運動か、居間でストレッチをしている。

ウィッチ「はぁ……」

縁側からため息が漏れる音がする。
そこにはウィッチが一人外の景色を眺めながら肩を落としていた。
先ほどの悪魔の言葉を引きずっている。

ウィッチ(才能がない、か……確かに私はダメダメな魔女だけど……。
     でも、魔女をやめたら私には何も残らないし……)

獣娘「がぅ?」

ウィッチ「ひゃあっ!?」

突如ウィッチの横から獣娘が顔を覗かせてきた。
驚いて体を仰け反らしてしまう。

ウィッチ「び、びっくりしたぁ〜……驚かさないでくださいよ」

獣娘「うっちー、げんきない?」

ウィッチ「え?」

獣娘はウィッチのひざの上に乗った。
しっぽが体に当たってふかふかする。

獣娘「おなかすいてる?」

ウィッチ「いえ、お腹は大丈夫なんですけど…」

再びため息をついた。

ウィッチ「ただ、心がからっぽになちゃって……。
     何もないですね、今の私には」

獣娘「?」

ウィッチ「あはは…獣娘さんには分からないですよね」

獣娘の頭をなでてみる。
ふわりとやわらかい髪、さわり心地の良い頭。
獣娘はくすぐったそうにしている。

ウィッチ「なんか不思議ですね……獣娘さんとこうしてるだけで気分が楽になります」

獣娘「げんきになる?」

ウィッチ「元気…までとはいきませんけど、癒される感じです」

獣娘「げんきじゃない?」

ウィッチ「そうですね……元気ではないです」

獣娘「がぅ……」

288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 21:38:38.69 ID:YoUHJk+7o
二人は外の景色をぼーっと眺めている。
緑の茂った庭、風で木の葉と葉がかすれる音。
草の匂い、温かくて心が落ち着くような空気、

ウィッチは全身で自然を感じていた。

ウィッチ「この森って…上手く言えませんけど、すごく良いですね。
     魔法界にはこんな場所ありませんよ」

獣娘「まほーかい?」

ウィッチ「私の住んでいたところです」

獣娘「がぅ……わからないこと、いっぱい。
   おんなも、あくまも、ウィッチも、みんなしってる」

ウィッチ「獣娘さんはこれから勉強していけばいいんですよ。
     私は……私も勉強し直さないといけませんね」

獣娘「あっ!」

ウィッチ「どうしたんですか?」

獣娘「げんきでるの! しってる!」

ウィッチ「え?」

獣娘「うっちー、げんき!」

獣娘はウィッチの体から飛び出した。
そして森の奥深くへと走っていってしまった。

ウィッチ「け、獣娘さん…?」

女「どうしたの? ウィッチちゃん」

ウィッチ「あ…女さん。獣娘さんが急にどこかに行っちゃって」

女「獣娘ちゃんが?」

ウィッチ「はい、どうしたんでしょう…?」

女「う〜ん……分からないけど、この森はもともと獣娘ちゃんの住処だし心配するようなことじゃないと思う。
  すぐに戻ってくるわよ」

ウィッチ「はあ」

ウィッチは女が手にしているものを見た。
工具箱を持っている。

ウィッチ「これから車の修理ですか?」

女「うん、今日中に終わらせないとね」

ウィッチ「そうですか……そうだ!」

女「どうしたの?」

ウィッチ「あ、あのっ、女さん! よかったら私にも修理手伝わせてください!」

女「え?」

ウィッチ「このままお世話になっているのも悪いですし、魔法は使えないですけど…なにかお役に立ちたいんです!」

女「でも体を休ませておいた方が…」

ウィッチ「いえ、体調はもうバッチリです! どうかお願いします!」

ここまで自分の面倒をみてくれた人たちになんとしても恩を返したい。
その一点の想いで、ウィッチは引き下がろうとはしなかった。

女「……そこまで言うならお願いしちゃおうかな」

ウィッチ「はい! がんばります!」


289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 21:39:10.26 ID:zAjO84HVo
ktkr
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 21:39:52.11 ID:YoUHJk+7o
二人は一緒に車を修理することにした。

女が車のボンネットを開く。
中はウィッチが見たこともないような構造で作られていた。

ウィッチ「結構複雑な作りなんですね」

女「魔法界には車はないの?」

ウィッチ「ありますけど、ここまで精巧な車ではないです。地上の技術力はすごいんですね」

女「そうなんだ。まぁ技術力がいっきに上がったのはここ数十年のことなのよ」

女は工具を持ち、修理をはじめた。

女「技術力が上がる一方で、その分問題も多くなっちゃったんだけどね。
  ウィッチちゃん、そこのネジ締めてもらえる?」

ウィッチ「あ、はいっ」

女「ありがとね、助かるわ」

ウィッチ「えへへ」

女「それにいくら人間に技術力があっても、魔法を使える魔女の方がずっとすごいじゃない」

ウィッチ「魔法も便利なことだらけじゃないですよ。制約も多いですし」

女「ふーん…制約ってどれぐらい? 例えば……死んだ人間を生き返らしたりとかは?」

ウィッチ「それはできません。いえ、正確に言えばできるらしいんですが……死者を生き返らせるということは自然への冒涜ですから
     やってはいけないんです」

女「そうなんだ……」

ウィッチ「女さんは、誰か生き返らせたい人がいるんですか?」

女「……ううん、そういうわけじゃないの気にしないで。それにしても、空を飛べるのはうらやましいなぁ」

ウィッチ「じゃあ今度一緒にホウキで空を飛びましょう!」

女「本当?」

ウィッチ「はいっ!」

女「うれしい…楽しみにしてるね、ウィッチちゃん」

ウィッチ「任せてください!」

悪魔「なに話してんだよ」

女「あっ、悪魔ちゃん」

悪魔が家から出てきた。
手には武器の棍棒を持っている。

悪魔「ていうか、お前なにしてんの」

ウィッチ「女さんの手伝いをしているんです」

悪魔「はぁ? 物好きなやつだな」

女「そういう悪魔ちゃんは何をしに来たの?」

悪魔「決まってんだろ、トレーニングだよトレーニング」

291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 21:40:51.63 ID:YoUHJk+7o
悪魔「いつでもあの魔女をギッタギタにできるように準備しておかないとな。よっ、ほっ」

得意げに素振りをしてみせた。

女「もう、なんでも暴力で解決したらダメって言ったでしょ」

悪魔「それしか知らねーんだからしょうがないだろ」

ウィッチ「でも、今の悪魔さんがその魔女さんに勝てるんですか?
     封印前ですらあっという間にやられたって言ってたのに……」

悪魔「あぁ!? 何だとこんにゃろう!!」

ウィッチ「ひぃっ!? ご、ごめんなさい!」

女「けどウィッチちゃんの言うことは本当じゃない。力で解決できないのなら、別の方法を探すべきよ」

悪魔「言っておくけどな、私はまだ負けを認めてねえ! つまり私が認めなきゃ負けたことにはならないんだよ!
   それに次の勝負で楽勝に勝つんだからな!!」

女「なんでそんな自信満々なの…」

悪魔「私だからに決まってんだろ!」

ウィッチ「なんかよく分からないですけど…悪魔さんってかっこいいですね」

女「そ、そう…?」

悪魔「分かってんじゃねーか。私は強くてかっこいいんだ」

女「はいはい、ここら辺で暴れるのはいいけどほどほどにね。また車を壊されちゃったらたまらないし」

悪魔「うるせーな。あれは簡単に壊れた車の方が悪いんだ」

女「あんまり好き勝手やりすぎると指輪使っちゃうからね」

悪魔「ちっ、またそれかよ」

女「ここに住む限り、最低限のルールは守ってもらうわよ」

悪魔「あーあ、うぜーうぜー。いいからさっさと車直せよ」

女「悪魔ちゃんも手伝ってくれると助かるんだけど」

悪魔「誰がやるかそんなこと。バカウィッチと二人でやってろ」

女「もう……」

悪魔の横暴な振る舞いに、やれやれとため息をついた直後だった。

ウィッチ「あっ」

気の抜けたウィッチの声と同時に、パキンと金属が折れるような音がした。
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 21:41:50.35 ID:YoUHJk+7o
女「え?」

ウィッチ「あわ…あわわっ……!」

女「どうしたのウィッチちゃん? 今の音……」

ウィッチ「ごっ、ごめんなさいごめんなさい! 触ったら壊れちゃって…」

女は車体の中を確認する。
見るとエンジン周りの部品が欠けているのを発見した。

ウィッチ「ごめんなさい! 本当にごめんなさい!!」

悪魔「あーあ、やーっちゃったやっちゃった。壊しちゃったー」

ウィッチ「うぅ……」

女「だ、大丈夫よウィッチちゃん。これぐらいならなんとかなるから」

女は体を車体の奥へとのめり込ませた。

女「スパナ取ってくれる?」

ウィッチ「すいません…次は気をつけます」

スパナを手渡そうとする

ウィッチ「あっ」

が、手がすべりスパナがボンネットの奥へと落ちてしまった。

ウィッチ「ご、ごめんさい! 今すぐ取ります!」

ウィッチは奥へ落ちたスパナを取ろうと手を伸ばした。

女「ウィ、ウィッチちゃん?」

ウィッチ「もうちょっとで取れ……」

無理やり体を押し込み手を伸ばす。
奥へ奥へと腕を伸ばし、スパナを掴む。

ウィッチ「取れた! 取れましたよ女さん!」

女「う、うん…」

ウィッチ「あ…あれ? 抜けな……」

手を引っ張り出そうとするが動かせない。
どこかに引っかかってるようだ。

ウィッチ「ひぇ〜っ!? 抜けませーん!!」

悪魔「なにやってんだお前」
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 21:43:08.58 ID:YoUHJk+7o
女「だ、大丈夫!?」

女がウィッチの体を引っ張る。しかし抜ける気配はない。

ウィッチ「いたたたっ!?」

女「あっ、ごめん」

悪魔「アホらし……」

女「ちょっと悪魔ちゃん、手伝って!」

悪魔「はぁ? なんで私が」

ウィッチ「た、助けてください〜!」

悪魔「うるせーな、自分でなんとかしろよ」

悪魔は手を貸そうとせず、ウィッチの状態を呆れたような顔で見ていた。

女「ウィッチちゃん、せーので引っ張るからね」

ウィッチ「は、はいっ」

女「せー…のっ!」

力強く引っ張った。しかしそれでも抜けない。

女「もう一回。せー…のっ!!」

さっきよりもさらに力強く引っ張る。

ウィッチ「いたたたたたっ!?」

女「ご、ごめんね。でもちょっと我慢して」

グイ、グイと引っ張りあげようとするがやはり抜けない。
しかし女は諦めずに引っ張り続ける。

ウィッチ(ど、どうして抜け……あっ)

ウィッチは目の先にあるものを見て気づいた。
握られたスパナ。
これがひっかかって抜けなくなっていたのだ。

ウィッチ(な、なんだ……バカだなぁ私って)

手に持っていたスパナを放した
と同時に。

女「えーーいっ!!」

女が全力を振り絞ってウィッチの体を引っ張った。

ウィッチ「!?」

ひっかかりがなくなりあっさりと抜ける腕。

女「きゃっ!?」

しかし力が入りすぎたため、反動で二人とも思い切り良く後ろへ倒れてしまった。
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 21:43:57.77 ID:YoUHJk+7o
女「いたた……大丈夫?」

ウィッチ「す、すいません……」

地面へ思い切りしりもちをついてしまった女は、
そのままウィッチの体に押し倒された状態になっていた。

女「はぁ…抜けてよかったね〜」

悪魔「何やってんだよお前ら、アホか」

女「文句だけ言うんだったら手を貸してくれればよかったのに」

女はウィッチを抱き上げたまま上体を起こした。

女「いたっ」

右手に痛みが走る。
倒れた拍子に怪我をしてしまったようだ。

ウィッチ「だ、大丈夫ですか!?」

女「あぁ…うん、一応動かせる。ちょっと痛いけど」

ウィッチ「私のせいで…ご、ごめんなさい!!」

女「いいのいいの、これぐらい大したことないから」

ウィッチ「でも…でも……」

女「ウィッチちゃんは怪我はない?」

ウィッチ「……はい」

女「そっか、よかった」

ウィッチに怪我ないことを確認するとほっとし、女は腕を押さえながら立ち上がった。
右手で開いて閉じてを繰り返し、具合をみる。

女「うん、折れたりはしてないみたい。でもちょっと擦りむいちゃったし、消毒して絆創膏はってくるね」

ウィッチ「あっ、私が代わりにはって…」

女「大丈夫、一人でできるわよ」

ウィッチ「そ、そうですよね……」

女は傷の手当てをするために、家の中へと戻っていった。
ウィッチは家の中に入っていく女の姿を悲しそうな目で追っている。

295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 21:45:57.57 ID:YoUHJk+7o
ウィッチ「……」

苦い想いが頭の中を駆け巡る。
繰り返す失敗。何もできなかった自分への悔しさ、女への申し訳なさ。
空回りするだけの自分。重い鉄のような罪悪感がのしかかる。
ウィッチは肩を落とし、憔悴した顔でうつむいた。

悪魔「魔法も使えないしどんくさいし、お前って良いところないな」

ウィッチ「……」

悪魔の歯に衣着せぬ言葉が追い討ちをかけた。
ウィッチは今にも泣きそうになる。

悪魔「帰れ帰れ、お前みたいなやつにそもそも魔女なんて向いてないんだよ」

ウィッチ「うぅ……」

まったくダメなウィッチに対して苛立ちが募る。
ウィッチのようにウジウジして情けない者を悪魔は嫌っていた。
見ていると腹が立ってくるからだ。

ウィッチ「私……」

泣きそうになるのを必死に我慢しながら、ウィッチは口を開いた。

ウィッチ「私…なんの才能もないんでしょうか……」

悪魔「知るか、そんなの」

ウィッチ「魔法もダメ、普通にしててもダメ……もう生きてる価値ないですよね」

悪魔「死にたかったら死ねよ。どうせあの時犬っころがお前を見つけなかったら死んでたんだしな」

ウィッチ「……」

そっけない返事にウィッチは黙るしかなかった。
心のどこかで悪魔が励ましてくれると期待があったのかもしれない。
しかしそんな考えは甘かった。

悪魔「ま、私の目が正しけりゃ死ぬ勇気も持ってなさそうだけどな、お前」

言われたとおり、自分から進んで死ぬことなどできないだろう。
結局は誰かに救いの手を求めている自分がいる。
そんな自分が情けなくなってきた。

悪魔「それでも死にたいって言うなら私が手を貸してやろうか?」

ウィッチ「いえ……すいませんでした、変なこと言って」

悪魔「はぁ、お前って二言目には『すいません』とか『ごめんなさい』とかだよな。
   今日一日で何回謝ってんだよ」

ウィッチ「すいませ…」

悪魔「謝まんじゃねーって言ってんだろ! 次謝ったら殴るぞ」

ウィッチ「す、すいま…」

悪魔「こんにゃろ」

ウィッチ「あいたっ!?」

頭を軽く小突かれた。

296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 21:47:41.76 ID:YoUHJk+7o
悪魔「まったく、お前みたいなイラつくやつそうはいないっての」

ウィッチ「私って存在自体が迷惑なんですかね……」

悪魔「だな、大迷惑だ」

ウィッチ「で、でも……私は誰かの役に立ちたいんです。
     何もできない私ですけど、みんなを笑顔にしたくて……」

悪魔「なんだそりゃ、くっだらねー」

ウィッチ「え?」

悪魔「『誰かのためにー』だとか、そんな理想言いながら生きてるやつは長生きしねえんだよ。
   自分の人生なんだから、自分のために使えばいいじゃねーか」

ウィッチ「でも、私たちは一人で生きてるわけじゃないですし……」

悪魔「あーうるせえうるせえ、そういう道徳的な話はいーんだよ。
   少なくとも自分の笑顔のためだけに生きてきた私に言わせりゃ、お前も女も犬っころもただのバカだ。
   なにが助け合いだよ、アホくさい」

ウィッチ「でも…」

悪魔「でももヘチマもない! 大体お前は誰かを助けたいとか言っておきながら自分が助けてもらってばかりじゃんか」

ウィッチ「っ…」

悪魔「身の丈に合わないことしたってろくなことになんねーって言っただろ」

ウィッチ「……じゃあ私、どうやって生きていけばいいんでしょう」

悪魔「知らねーよんなもん。何でもかんでも人に聞くな」

ウィッチ「……」

女「お待たせ!」

ウィッチ「あ…女さん」

女が家から戻ってきた。手には軽く包帯が巻かれている。
その姿を見てウィッチの心が痛む。

女「どうしたのウィッチちゃん? 元気なさそうだけど」

ウィッチ「いえ……」

女「あっ、さては悪魔ちゃんに苛められた? ダメじゃないそんなことしちゃ」

悪魔「してねーよ! ちょっと言ってやったら勝手にへこんだだけだ」

女「それが苛めてるってことなの! 悪魔ちゃんって人の気持も知らないで言いたい放題なんだし」

ウィッチ「も、もういいんです。全部私が悪いんですから……」
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 21:49:05.28 ID:YoUHJk+7o
悪魔「はっ、根性ねーな。もうちょっと言い返してみたらどうなんだよ」

女「こら、そういうこと言わないの!」

悪魔「へいへい……さてと、私はトレーニングでもしようかな」

不満そうに言うと
悪魔は棍棒を手にし少し離れたところで素振りを始めた。

女「はぁ…こっちも再開しよっか、ウィッチちゃん」

ウィッチ「は、はいっ。……女さん、手は大丈夫なんですか?」

女「うん、もう平気よ。念のために包帯巻いただけだし」

ウィッチ「あの…先ほどは助けていただきありがとうございました」

女「そんな大げさなことじゃないってば」

ウィッチ「いえ、お礼を言うのは当然のことですから。それに…今の私にはこれぐらいしかできませんし」

女「じゃあ、どういたしましてって返さなきゃいけないわね」

ウィッチ「……」

女「どうしたの?」

ウィッチ「い、いえ……」

女の心遣いが嬉しい反面、辛くもあった。
なぜこの人はここまで優しいのだろうか、心に余裕があるのだろうか。
頼りない自分とは正反対だ。
まるで自分の目指している人間像とぴったり重なる。

ウィッチ「私、女さんがうらやましいです。私も女さんみたいになれればなぁ……」

思わず小さな声が漏れてしまった。

女「え?」

ウィッチ「あ、その…あはは、なんでもないです。なんでも」

298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 21:50:43.30 ID:YoUHJk+7o
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数時間が経った。
すでにお昼はとっくに過ぎている。

女「できた!」

喜びの声とともに、女はボンネットを閉じた。
車の修理が完了したのだ。
見た目はボロボロのままだが、中身は走れるようにすっかり修復されている。

女「ふぅ、ようやく終わったぁ〜」

ウィッチ「お疲れ様です」

悪魔「おっ、もうできたのか」

女「うん。あとは試運転をするだけね」

悪魔「ちょっと私に運転させろよ」

女「……悪魔ちゃん、運転できるの?」

悪魔「いや、やったことないけど」

女「ならダメ。また壊すでしょ」

悪魔「おいなんだそれ!? いいから私に乗せろよ! こんなの勘で動かせるだろ」

女「ダメったらダメ。助手席に座るぐらいならいいけど」

悪魔「んだよ、ケチ」

女「ウィッチちゃんも一緒に乗る?」

ウィッチ「私は……ここで待ってます。獣娘さんもまだ戻ってきてませんし」

女「そういえば獣娘ちゃん遅いわね」

悪魔「どっかで遊んでんだろ」

女「うーん……じゃあもし帰ってきたら、私たちは少し出かけてるって伝えておいて。
  たぶんこっちもすぐ戻ってくると思うけど」

ウィッチ「はい、分かりました」

女が車へと乗り込む。悪魔も助手席に座った。

女「それじゃ、行ってくるね」

悪魔「おい、帰りは私に運転させろよ」

女「考えておきます」

車が出発する。どうやら無事動かせるようだ。
二人を乗せた車は段々と遠くへ走り去ってしまった。
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 21:51:36.79 ID:YoUHJk+7o
ウィッチ「はぁ……疲れたなぁ」

修理の手伝いしていて体力を使ってしまった。
魔法でも使えればあっという間に直せたのかもしれない
などと考えたが、自分はそこまで魔法を使いこなせないと思い出しうなだれる。

ウィッチ「本当にこれからどうしようかな……」

どうしようもない自分はこれからどう生きていけばいいのだろうか。
自分のことを考え直してみる。
もしかしたら、自分が挙げていた理想は偽りだったのかもしれない。
世界中の人々の役に立ちたい、などと言っておきながら成果はまるで出ていない。
それ以前に魔法もろくに使えない自分がそんな夢みたいなことを本当にできると思っていたんだろうか。

ウィッチ「……」

もしかしたら、高い目標を掲げたのも何もできなかったときの言い訳にするためだけだったのかもしれない。
頭では理解していなくても、心の奥底にはそんな妥協が存在していた。
今まで自分は本気でやってこなかった、それなのに何もできないからと言い訳して……。

理想に溺れ、現実を否定したかった。
自分はもっとできるはず、やれるはずだと信じていた。
しかし信じるだけではなにもできない。

考えれば考えるほど自己嫌悪に陥る。

ウィッチ「はぁ……」

ふと空を見上げた。

悪魔の言葉を思い出した。
自分の人生なんだから自分のためだけに自分のために使えばいい。

なら、自分は本当は何がしたいんだろう――。

獣娘「うっちー!」

ウィッチ「ひゃあっ!?」

突然、体に何かが衝突した。
見てみるとそこには獣娘が抱きついていた。

ウィッチ「け、獣娘さん!? びっくりしたぁ〜…」

獣娘「これ!」

ウィッチ「え?」

獣娘は手に持っているものをウィッチに差し出した。

ウィッチ「これ……お花ですか?」

300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 21:52:42.66 ID:YoUHJk+7o
獣娘「うん!」

手渡されたのは一本の黄色い花。
ウィッチは目を丸くしながらそれを見つめている。

ウィッチ「これを…私に?」

獣娘「うん! おねーちゃんこれすきだった! げんきでる!」

ウィッチ「…確かに見てるとなんか元気がでてきますね。ありがとうございます」

獣娘「えへへ」

獣娘はウィッチの体から離れると、辺りをキョロキョロとし始めた。

獣娘「おんな!」

ウィッチ「え?」

獣娘「おんな、どこ?」

ウィッチ「あっ、女さんたちなら今いなくて…」

獣娘「?」

ウィッチ「車で近くを走っているんです。すぐ戻ってきますよ」

獣娘「どこ?」

ウィッチ「いや、正確な位置は……」

女がいないことに、獣娘は困惑していた。
不安そうな顔で辺りを見回し、女の姿を探そうとする。

ウィッチ「だ、大丈夫ですって。たぶんもうすぐ……そうだ!」

獣娘「?」

ウィッチ「この花ってもっと咲いてますか?」

獣娘「もっと?」

ウィッチ「はい! この花をたくさん摘んで、女さんにプレゼントするのはどうでしょう?
     きっと喜びますよ!」

獣娘「おんな、よろこぶ?」

ウィッチ「はいっ!」

獣娘「やる!」

ウィッチ「じゃあこの花があるところまで連れてってください」

獣娘「うんっ!」

ウィッチ「あっ……その前に一応置手紙でも書いておかないと」


301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 21:54:06.36 ID:YoUHJk+7o
--------------------------------------------------------------

女と悪魔、二人は車に乗って周辺の適当な道を走っていた。
辺りの風景は山や木しかなく、殺風景である。

女「うん、順調順調。この調子なら明日の買出しは行けそうね」

悪魔「もっとスピード出ねえのかよ。ちんたら走ってたら退屈だっての」

女「安全第一。こんなところでも何があるか分からないんだから」

悪魔「何もないんだから何も起きねーよ。ほら、ハンドルかせ」

女「あっ、ちょっと!?」

助手席から無理やりハンドルをコントロールしようとする悪魔。
女は慌てて急ブレーキをかけた。

女「危ないじゃない!」

悪魔「これぐらい何ともないって! それより席代えろよー席ぃー」

女「悪魔ちゃんはじっとしてて!」

そう言うと指輪の力が発動し、悪魔の体が固まった。

悪魔「あ、てめぇっ!? とうとうやりやがったな!!」

女「事故でも起こされたら大変なんだから。そこで大人しくしててね」

悪魔「ふざけんな! これじゃあ私がついてきた意味ないだろ!! ……あっ」

女「どうしたの?」

悪魔「お、お尻が痒くなってきた……」

女「え?」

悪魔「おい、ちょ、ちょっとかいて」

女「でも今運転中だし」

悪魔「止まればいいだろ!? あーやばいやばい! かゆいかゆいかゆい!!」

女「はぁ、しょうがないなぁ……」


302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 21:55:37.22 ID:YoUHJk+7o
女「お尻のどこがかゆいの?」

悪魔「右! 右のちょっと横!」

女「どこよ…」

悪魔「いいからかけよ!!」

女「もぉー…もうちょっと頼み方ってものがあるでしょ?」

お尻をかくために、女は悪魔の体を動かそうとする。

女「悪魔ちゃん、上半身だけ窓から出すわよ」

悪魔「ていうか私の体自由にしろよ!!」

悪魔は四つんばいの状態で胸から上を車の窓から外に出している。

女「えーっと…ここをかけばいいの?」

悪魔「バカ! そこは左だろ!!」

女「ここ?」

悪魔「もっと上だ!!」

女「じゃあここ?」

悪魔「もっと下!!」

女「えー、分かんなーい」

悪魔「お前わざとやってんだろ!?」

女「そんなことないわよ?」

顔は意地悪そうにニヤついている。

悪魔「てめっ……あ、ヤバっ! 背中も痒くなってきた!?」

女「どこ?」

悪魔「肩! 右肩のちょっと下!!」

女「ここね」

悪魔「そこは腰だろうがぁ!! いい加減にしろーっ!!」

女が楽しんでいると、反対側から別の車がやってきた。

女「あっ……」

??「ど、どうも…」

女「……」

つい、ドライバーと目が合ってしまった。
そのまま過ぎ去っていく対向車。
今この状況を、悪魔の体をいじってる自分はどんな風に見られてしまったのだろうか。
考えると恥ずかしさのあまり顔が赤く染まっていく。

女「ど、どうしよう……変なとこ見られちゃった……」

体制を変え、ハンドルに顔を伏せた。
耳は真っ赤だ。

悪魔「おい、何なんだよ!? どうでもいいから早くかけよ!!
   腕まで痒くなっちゃったじゃんか!!」

女「あぁ……絶対変なことしてるって思われてる……」

悪魔「いいから早くかけーっ!! あっ、やばい、頭も痒くなってきた……」

女「もし今度あの人に会ったらどうすればいいの……」

悪魔「分かったからいい加減かいてくれよ!! マジでかゆいんだって!!
   かいて! お願い!! お願いおねがーーーーい!!」
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 21:56:57.61 ID:YoUHJk+7o
--------------------------------------------------------------

ウィッチ「獣娘さん、あとどれくらいで着くんですか?」

獣娘「こっち!」

森の中をウィッチと獣娘の二人が歩いていた。
出発してから十分が過ぎようとした頃である。

ウィッチ(獣娘さんなら森のことにも詳しいし、迷うことはないんだろうけど……
     あまり帰りが遅くなりすぎない方がいいかなぁ)

ウィッチ「遠いんですか?」

獣娘「こっち!」

ウィッチ「いや、その……すぐに着きますか?」

獣娘「すぐ!」

そう言うと獣娘は急に走り出した。

ウィッチ「あっ、ちょっと待ってくださいよ!」

ウィッチも走る。

先へ先へと進んでいく二人。
ここが家からどれぐらい離れているのか、ウィッチには分からなくなっていた。




離れたところから何かが二人の姿を見つめていた。
二人を確認すると、足をゆっくり動かしながら後を追う。

ウィッチたちはその影に気づいていない。

影は着実に、二人へと近づいていった……。
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/06(日) 21:57:29.64 ID:YoUHJk+7o
ここまで
続きは明日か明後日か近いうちに
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 23:14:43.57 ID:U4pTC0Lyo
悪魔が全体的に素晴らしすぎて生きるのがつらい
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 13:59:32.48 ID:xH/bOTVMo
素晴らしい…乙した
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 01:58:56.13 ID:Jp828vCAO
>>1無事か?
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 14:47:03.66 ID:7v3NXOxDO
大丈夫かなぁ
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 03:24:56.72 ID:bPo9xex8o
心配
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 23:09:59.24 ID:LTSMt8kRo
心配だ
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 22:42:00.69 ID:9Si03x6IO
マジで心配なんだが
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/19(土) 06:52:45.94 ID:1XjvsP8DO
おいおい嘘だろ??
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/20(日) 00:46:41.00 ID:zCa4fjpqo
避難してるだけだよな?
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/03/20(日) 11:13:11.19 ID:laOkFUbPo
無事でありますように
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/03/23(水) 03:14:27.96 ID:iS3uURigo
心配だ
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/25(金) 21:21:39.83 ID:Io0Ej9iIO
あげてみる
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/03/26(土) 21:33:50.27 ID:PENfGQi3o
無事でありますように
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/03/29(火) 01:26:02.24 ID:YGt/DxTPo
どうかご無事でいてくれますように
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/04/01(金) 00:44:13.09 ID:Rj6s7ZOAO
すいません、諸事情で書き込めませんでした。
しばらくして落ち着いたら再開しようと思います。
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/04/01(金) 00:45:23.99 ID:Rj6s7ZOAO
あっ、名前欄書き忘れたけど>>1です。
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/04/01(金) 00:53:17.79 ID:6ykVc2Y1o
無事でよかった、本当によかった
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/01(金) 01:49:40.68 ID:6xb95xRDO
無理はすんなよ!
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/01(金) 08:19:06.99 ID:26xw4HELo
良かった!生きてた
待ってるよ
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/01(金) 08:36:53.20 ID:hWeZ8WQLP
4/1
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage ]:2011/04/01(金) 16:18:01.68 ID:7000Zpq/0
乙です。
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/01(金) 20:39:22.46 ID:fOGcYtyIO
>>319がエイプリルフールの嘘だったら本気で許さない
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/01(金) 23:56:10.68 ID:6xb95xRDO
俺はたとえ嘘でも嬉しい気持ちにしてくれた>>319に感謝するよ
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/04/07(木) 00:28:45.71 ID:cNLekutYo
--------------------------------------------------------------

悪魔「ちっくしょー……何でここら辺来ると痒くなるんだよ」

女「なにかアレルギーとか?」

悪魔「そんなもん今までねえよ」

試運転を終えた二人は、車を走らせ家へ向かっていた。
身体を動かせるようになった悪魔は、腕や背中など痒みがある箇所をあちこちかいている。

悪魔「あーあ、最悪だ。こんなんだったらついて来るんじゃなかった」

女「私だって、変なとこ見られちゃったし……」

先ほどのはしゃぎすぎた自分を思い出すと、恥ずかしさのあまり手で顔を隠したくなる。

女「この近辺に住んでる人だったのかな? あの運転してた人」

悪魔「どーでもいいから早く帰るぞ。痒くてしょうがねえ」

女「はいはい。でも何で急に身体が痒くなったんだろう」

悪魔「知らねーよ。ったく……変なとこだなここ。
   居心地が悪いわけじゃねえけど、何かあるな」

女「何かってなに?」

悪魔「何かって言うのは…何かだよ」

女「なにそれ」

悪魔「指輪の外に出てからずーっと感じてたんだけどな…とにかく、ここら辺やこの森には何かあるんだよ。
   なんつーか……何だろうなぁ。上手く言葉では言えねえけど」

女「それが痒みの原因ってわけ?」

悪魔「それは……知らねえ」
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/04/07(木) 00:29:50.80 ID:cNLekutYo
--------------------------------------------------------------

ウィッチ「わぁー…すごい」

どれだけ歩いただろうか。
ようやくたどり着いた場所は、辺り一面の花畑だった。
白、黄色、ピンク…色とりどりの花が咲いている。

ウィッチ「こんな素敵な場所があったんだ……」

獣娘「すてき?」

ウィッチ「はい、素敵です!」

獣娘「すてき……すてき!」

素敵≠ニいう単語の意味がイマイチ分かっていないが、
ウィッチの笑顔を見ると悪い言葉ではないと獣娘は理解した。

ウィッチ「この花をいっぱい持って帰れば、女さん達もきっと喜びますよ」

獣娘「えへへ」

二人は花を摘み始めた。
丁寧に、花が傷つかないように摘んでいく。

ウィッチ「それにしてもこの花、何ていう花なんだろう。見たことない花だけど……」

手に取った花をまじまじと見つめた。
どこにでも咲いているように見えて、今まで見たことのない花。
その花にウィッチは、心が安らぐようなものを感じていた。

ウィッチ「獣娘さん、この花の名前って知ってますか?」

獣娘「はな!」

ウィッチ「いや、そういうことじゃないんですけど……」

獣娘「?」

ウィッチ「……まぁいっか、名前なんて」

330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/04/07(木) 00:30:33.47 ID:cNLekutYo
ウィッチ「そういえば獣娘さんってお姉さんがいるんですよね?」

獣娘「うんっ」

ウィッチ「じゃあお姉さんとよくここに来てたんですか?」

獣娘「おねーちゃんといっしょ。はなとってた」

ウィッチ「そっか、お姉さんと仲良しだったんですね」

獣娘「えへへ」

ウィッチ「私にもお姉ちゃんがいるんですけど、何ていうか――」

言いかけようとしたその時だった。
背後から物音が、ウィッチの耳に入ってくる。
思わず振り向いた。

ウィッチ「……あれ?」

何もいない。空耳だったのだろうか。
突然のことで驚いたが、ほっと胸をなでおろした。

ウィッチ「獣娘さん。獣娘さんも今なにか聞こえ…」

獣娘「……」

ウィッチ「……獣娘さん?」
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/04/07(木) 00:31:32.46 ID:cNLekutYo
獣娘の視線は動かず、一点を見つめている。
その方向は先ほどウィッチが振り向いた方向と同じだった。

ウィッチ「あの――」

つられてもう一度後ろを見てみる。
そこには何もいない――はずだった。

「グルル……」

ウィッチ「はへ……?」

思わず間抜けな声が漏れてしまった。そこにはさっきまで何もいなかった。
しかし再び振り向くと、目の前には得体の知れない巨体がいる。

黒い身体はクモのような形していた。
顔はまるでエイリアンのように不気味な顔をしている。
鋭い歯が生えた口を大きく開け、そこからは血なまぐさい吐息を吐き出している。

その存在は異様そのもの。

計り知れない威圧感に、ウィッチは声を出すことができない。
身体も動かすことが出来ない。
まさに蛇に睨まれたカエルの状態だった。

332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/04/07(木) 00:32:02.74 ID:cNLekutYo
短いですが、ここまで。
色々ありましたが今日から再開します。
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/04/07(木) 00:57:22.65 ID:HYOWsKZxo
キテター*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*
いろいろとあったみたいだけど、>>1が無事でよかったです。
獣娘たんにまた会えて幸せ
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/07(木) 02:46:00.33 ID:ybirsUmIO
お帰り!
無事でよかった!
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/07(木) 10:50:35.31 ID:I7yUJBIDO
>>1おかえり!
ウィッチちゃん逃げてー!
336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/08(金) 01:34:20.50 ID:ysaqE1M+o
きてた!待ってたよ!
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage ]:2011/04/10(日) 23:02:07.66 ID:oxuVF7Nq0
乙です。
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/04/13(水) 09:49:54.05 ID:TPdQ1zyU0
保守
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/04/16(土) 23:25:17.28 ID:/WBBIJlxo
ウィッチ「……」

心臓の鼓動が徐々に早まる。
叫ぼうにも声が出せないので口は半開きの状態だった。
身体が固まったように重い。
未知数の恐怖に、ウィッチは支配されていた。
右足を一歩、なんとか動かして後ずさりしようとするが、つまずき尻餅をついてしまった。

巨体が近づいてくる。

ウィッチは立ち上がることができない。
すでに恐怖で身体の力が抜けていた。

ウィッチ「あっ……」

思わず小さな声が出た。目の前には不気味な暗闇。
巨体は大きく口を開けている。
先ほどから漂っていた血生臭い臭いが、より一層強烈になった。

大きな口がウィッチの頭の上を覆うとしている。
視界が暗くなると同時に、ウィッチの意識も消えかけていた。

獣娘「がうぅ」

「――!」

突如聞こえた小さな唸り声に反応し、蜘蛛のような生物は動きを止めた。
それと同時に気絶したウィッチの身体はその場に倒れてしまった。
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/04/16(土) 23:27:17.12 ID:/WBBIJlxo
獣娘「……」

「……」

獣娘は謎の生き物から目を離さず、ただ大きな体をじっと見つめている。
蜘蛛も獣娘の方へと顔を向けたまま、静止していた。

しばらくして獣娘が巨体に近寄ろうと足を動かした。

「――!!」

巨体が後ろへと下がる。

獣娘「?」

なぜそのような行動をしたのか分からず、獣娘は首を傾げつつも
一歩、二歩とさらに近寄ろうとする。

獣娘は特なにも考えておらず、手に持っていた花を差し出そうとした。
しかし蜘蛛はそれを無視し獣娘に対して背を向けるとそのまま森の奥へと去っていってしまった。

獣娘「……?」

残された獣娘は、ウィッチの方へと目を向ける。
ウィッチはすっかり意識を失っており、仰向けになりながらぐったりと倒れていた。

獣娘「……ふわぁ〜」

大きなあくび。森の心地よい空気が獣娘を眠りへと誘う。
眠気に耐えられず、まぶたは落ちかかっていた。
獣娘はウィッチに寄り添うにして、そのまま目を閉じた。
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/04/16(土) 23:28:20.32 ID:/WBBIJlxo
--------------------------------------------------------------


女「あれ? ……どこ行ったんだろう」

運転を終え、女と悪魔は家に戻っていた。
しかし帰ったら待っているであろう獣娘とウィッチの姿が見当たらない。
女が辺りに呼びかけてみるも、返事は返ってこなかった。

悪魔「おい、机の上にこんなものが置いてあったぞ」

女「え?」

悪魔が持っていたのは、ウィッチが書き残した置手紙だった。

悪魔「あいつら、どっかに行ったみたいだ」

女「なるほど……急にいなくなったからビックリしちゃった」

悪魔「ったく、落ち着きのねえガキどもだな」

女「いいじゃない、子供なんだし」

悪魔「チッ……飯は?」

女「あっ、そういえばお昼まだなんだっけ。二人が戻ってきたら食べよっか」

悪魔「いつ戻ってくんだよ」

女「うーん……分かんない」
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/04/16(土) 23:29:23.25 ID:/WBBIJlxo
次回からはできれば投下ペースを早めたいと思います。
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/17(日) 01:18:43.63 ID:jfw/+N5IO
そうしてくれると嬉しいが無理すんなよ
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/04/17(日) 10:00:52.29 ID:lofraWQIo
キテター



無理せずに乙した
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/17(日) 11:19:11.37 ID:Dwh5eBmDO
>>1乙!次が楽しみ!
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage ]:2011/04/17(日) 20:19:47.26 ID:o56Z2Zxm0
乙です。
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/04/24(日) 02:31:21.47 ID:xm1INoNMo
悪魔「分かんないってなんだよ。あんなやつらはほっといて先に食おーぜ」

女「みんなで食べたほうが美味しいでしょ?」

悪魔「あたしは今すぐ食いたいんだ! もう飯を食うことぐらいしか楽しみがねえんだよ!!」

女「ダメ。がまんしなさい」

悪魔「イヤだ! 食いたい食いたい食いたい!!
   もう我慢なんてやってられねえ!!」

女「……はぁ。チョコレートがあるから、それなら食べてもいいよ」

悪魔「んだよ。そんなのがあるんならさっさとよこせ」

女「そういう態度ならあげません」

悪魔「チッ……へいへいすいませんでした。どうかこの私めにチョコを恵んでくださいませ」

女「そんな態度ばっかりとってるとみんなに嫌われるわよ?」

女は少し呆れた口調でそう言うと、チョコレートを取りに台所へと向かった。
悪魔もその後に続く。

悪魔「お前らなんかに好かれたくもねーよ。虫唾が走る」

女「またそういうことを言う」
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/04/24(日) 02:33:43.97 ID:xm1INoNMo
悪魔「あたしは一刻も早くあたしを指輪なんかに封印した魔女をボッコボコにしたいんだ。
   お前らと仲良しクラブなんて結成してる暇はねえんだよ」

空腹と退屈のせいで苛立ちが募っているのか、
台所へ着いても悪魔はぐちぐちと文句を言い続けていた。
女はそんな悪魔の様子を見てやれやれと思いながらも、小棚に置いておいたチョコレートを悪魔に渡した。

女「今はこれで我慢してね」

悪魔はチョコを乱暴に受け取ると、早速包み紙を破り食べ始めた。

悪魔「だいたいお前さ、あの魔女を探すの手伝うって言ってたけど何をどう手伝うつもりなんだ?」

女「う〜ん……どうしよっか」

悪魔「何も考えてねえのかよ!!」

女「ただの人探しなら調べれば見つかると思うけど…相手は魔女だし、何より情報も少ないから」
  
以前悪魔から魔女について教えられた事といえば、金髪で背が高いということだけだった。
そんな姿をした人間は世界中に大勢いる。もう一つの手がかりといえば強大な魔法を使えるということだけ。
しかしそれについて知っていそうなウィッチも残念なことに心当たりがなく、現状はどうすることもできない。

女「とりあえず、気長にやっていくしかないね」

悪魔「だぁー!! なんだそりゃ!!」
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/04/24(日) 02:39:12.07 ID:xm1INoNMo
女「しばらくして落ち着いたら、あちこち回ってその魔女を探してみる?」

悪魔「あ?」

女「今は昔に比べて人の住める地域も限られてるし…まだその魔女が地上にいるとしたら、足を使って探せば見つかったりして」

悪魔「だったら早く行くぞ、あいつに逃げられちまう!!」

女「でも少し待って。獣娘ちゃんとウィッチちゃんのこともあるし……とりあえずここの暮らしが落ち着いてからじゃないと」

悪魔「そんなこと言ってる場合かよ!!」

女「それに! 今の悪魔ちゃんのままじゃ魔女に会ってもまた返り討ちにされるって言ったでしょ。
  大体道端を歩いてた人をなんでいきなり襲ったりするの。そんな悪いことしたから封印されたんじゃない。 いい加減その性格を反省しなさい!」

悪魔「やられたらやり返すしかねえんだよ!! それにあの魔女を見たこともねえくせに知った風なこと言いやがって!!
   たかが人間のお前になにが分かるんだ!!」

女「たかが人間でも、やって良いことと悪いことぐらい分かります! 私はただ悪魔ちゃんに良識っていうものを覚えて欲しいだけなの」

悪魔「はっ、よく言うぜ。お前ら人間は――あ?」

話の最中だったが、悪魔は何かに感づき突如背後を振り向いた。
一瞬背筋が冷たい手で逆撫でられたような不気味な感覚。

殺気? いや違う……。

悪魔は気配がした方へと意識を集中させた。

350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/04/24(日) 02:40:45.35 ID:xm1INoNMo
女「ど、どうしたの?」

悪魔「なぁんか……変な気配が一瞬したな」

女「変な、気配って……?」

悪魔は女の質問に答えず、無言のままリビングへ向かい、
鋭い目つきで窓から外の様子を確認した。
何かを警戒するように、辺りを見回している。
いきなり悪魔の様子が豹変したことに、女は戸惑った。

女「ねえ…どうしたの」

悪魔「いや……おっかしーなぁ。今なんか向こうにいたような気がするんだけど」

女「こら、そんなこと言って話をうやむやにするつもり?」

悪魔「んなんじゃねーよ! 確かになんかいたような気がするんだけどなぁ……。
   魔女っぽい力を持った奴が」

女「魔女? ウィッチちゃんのこと?」

悪魔「あんなひよっ子の魔力じゃねえよ。もっとこう――別の形をしたなにかっていうか。
   あーもう! 分かんねえけどなんか感じ取ったんだよ!! ……今はその気配しないけど」

女「気のせいじゃないの?」

悪魔「むぅー……おっかしーなぁ」

女「それよりさっきの話、まだ終わってないわよ」

悪魔「うるせえ! 気にくわねえ奴はとにかくぶっ潰す!!
   あたしはそれだけだ。もう寝るから飯の時間になったら起こせよ」

女「あっ、ちょっと……まったく」

悪魔(すっきりしねーな……なんだったんだあれ)
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/04/24(日) 02:46:02.64 ID:xm1INoNMo
ここまで。
時間さえあれば早く話を進めて百合っぽいことがしたいですけどまだ全然進んでないっていう。
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/24(日) 09:13:24.65 ID:l+RxPbwDO
超乙
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/04/24(日) 12:55:00.17 ID:9vmp8oLMo
乙した

無理せずに
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/04/25(月) 01:16:24.00 ID:jpl1APeSo
--------------------------------------------------------------

ウィッチが目を覚ますと、空はすでに夕日色に染まっていた。
いつの間に眠っていたのだろうか。ウィッチは先ほど自分の身に起きていた出来事を思い出せないでいた。
ひとまず、女たちも心配しているだろうから早く帰らなければいけない。
傍で寝ている獣娘を起こすと、二人の少女は手に花束を持ち帰宅することにした。

ウィッチ「うぅ〜…頭がぼーっとする。なんで寝てたんだろう。
     なんかあったような気がするんだけど……獣娘さん、何か覚えてますか?」

獣娘「ふわぁ〜」

ウィッチ「覚えてない…ですか」

寝起きでぼやけた頭を働かせてみるも、まったく思い出せない。
先ほど現れた謎の生き物のことは、気絶したショックですっかり忘れているようだ。
モヤモヤとした気持ちでしばらく歩いていると、家の前まで到着した。

ウィッチ「勝手に出歩いて遅くなって……女さんたち怒ってるかなぁ」

ウィッチは玄関のドアを恐る恐る開けた。
それと同時に獣娘はすぐさま女のいる所へと駆けていった。

獣娘「おんな!」

女「あっ、おかえり獣娘ちゃん」
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/04/25(月) 01:16:58.07 ID:jpl1APeSo
女はリビングで明日の買出しのメモをとっていた。
そんな彼女に獣娘は飛び掛り、嬉しそうに抱きついた。

女「帰ってきたときは?」

獣娘「ただ……ま?」

女「ただいま」

獣娘「ただいま!」

女「うん、おかえりなさい」

ウィッチ「あの……」

女「あっ、ウィッチちゃんもおかえり。どこ行ってたの?」

ウィッチ「帰りが遅くなってごめんなさい。お花を取りに行ってて」

女「花?」

ウィッチは両手いっぱいにある花を女に見せた。

女「きれい…見たことない花ね」

ウィッチ「女さんが喜ぶと思って、いっぱい摘んできたんですけど…」

女「ありがとう。こんなにお花もらうと、なんだか嬉しくなっちゃうね」

二人から花を渡されると、女は優しい笑みをこぼした。
誰かからプレゼントをもらえることは喜ばしいものである。
そんな女の様子に、怒られるかもしれないと思っていたウィッチは心の中で安堵した。

女「さっそく飾ろっか。家の中、殺風景だったからちょうどよかったし。
  花瓶が無いからとりあえずコップで代用を…」

ウィッチ「あっ、私も手伝います」
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/04/25(月) 01:18:25.26 ID:jpl1APeSo
--------------------------------------------------------------

悪魔「花だぁ? ふざけんな、そんなもん取りに行って遅れたのか!?
   おかげで飯食う時間だって遅れたんだぞ!!」

ウィッチ「ご、ごめんなさい!」

時刻はすでに六時を過ぎ夜になりかかっていた。
目が覚めた悪魔は開口一番、怒声を響かせる。
ウィッチは体を縮ませながら、ひたすら謝るしかなかった。

女「別にいいじゃない。こんなキレイな花をわざわざ取ってきてくれたんだし」

悪魔「じゃあ聞くけどこの花食えるのか? 食えないじゃん、役に立たないじゃん。
   なのにこんな物のためにあたしは腹すかせてなきゃいけなかったのか!?」

女「もうご飯できてるんだから、文句言わなくてもいいでしょ?」

悪魔「たっく…すぐに戻ってくりゃいいのに昼寝してた? なにのんきに寝てんだよ」

ウィッチ「ごめんなさい……」

女「悪魔ちゃんだって寝てたじゃない」

悪魔「あたしはいいんだよ。やること他になかったんだしな」

ウィッチ「でも何で寝てなのかよく分からないんです。眠くはなかったはずなのに」

悪魔「なんだそりゃ。はぁ……怒ったら余計腹が減った。飯まだかー」

獣娘「まだかー」

悪魔のあとに獣娘が続けて一言発した。
すっかり悪魔の真似をするのが癖になっているようだ。
そんな様子に呆れて、悪魔はうんざりとため息をついた。
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/04/25(月) 01:19:16.26 ID:jpl1APeSo
夕飯の後、満腹になってご機嫌な悪魔は
お気に入りのソファの上でうつ伏せになりながらくつろいでいた。
その背中の上で、ウィッチは一生懸命悪魔の肩を揉んでいる。
悪魔は「遅くれた罰なんだから文句言わずやれ」と主張。
ウィッチも申し訳ないと思っていたのか、それに対して素直に従うしかなかった。

悪魔「おい、もうちょっと強くやれよ」

ウィッチ「す、すいません」

悪魔「いいか? お前のせいであたしは何も食べれなくてずーっと辛かったんだぞ。
   罪滅ぼしとして、あたしの気が済むまであたしの言うことは何でも聞けよ」

ウィッチ「は、はい」

女「まったく悪魔ちゃんったら。ウィッチちゃん、イヤだったらはっきり言っていいのよ?」

ウィッチ「いえ…迷惑をかけたのは事実ですし」

悪魔「そうだそうだ、なんにもできねえ役立たずなんだからせめて肩ぐらい揉めよな」

女「こら、そこまで言うことないでしょ!」

悪魔「だって事実だろー。おいバカウィッチ、お前魔法使えんのか?」

ウィッチ「今は……ちょっと」

悪魔「ほらみろ。こいつは肩揉むことぐらいしかできねーんだよ」

女「確か、道具があれば使えるようになるんだっけ?」

ウィッチ「はい、杖やクリスタルがあればいいんですけど……」

358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/04/25(月) 01:21:44.58 ID:jpl1APeSo
女「それって、私たちの世界でも買えるものなの?」

ウィッチ「はい。仕事なんかで地上にやってきたウィザードや天使なんかがここでの暮らしに困らないよう
     色んなものを提供してくれる中継ポイントが各地にあるんです。そこに行けばたぶん……」

女「そっか。明日行く町にそれがあるといいんだけど」

ウィッチ「――えっ、あ……あの」

女「なに?」

ウィッチ「わたし…お金ないんですけど」

女「うん、だからお金は私が代わりに出してあげる」

ウィッチ「ええっ!? わ、悪いですよそれは!」

女「でも必要なものなんでしょ? 手に入らないとどうしようもないんだし」

ウィッチ「で、ですけど……」

女「じゃあこうしない? お金はいつか返してくれればいいから、今はとりあえず私が肩代わりするってことで」

ウィッチ「女さん――…すいません」

女「気にしないで。その代わり、道具が手に入ったら私にも魔法見せてね」

悪魔「あ〜ぁ……お人よしもここまで来るとただのバカだな」

獣娘「ばか?」

悪魔「あぁ、バカだ」

獣娘「あくま、ばか?」

悪魔「あたしじゃねーよ!!」
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/04/25(月) 01:22:53.33 ID:jpl1APeSo
ここまで
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/04/25(月) 05:18:55.95 ID:SnancPjoo
おつ
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/25(月) 16:20:36.13 ID:ZoF3g2cDO
>>1乙!頑張るねぇ!
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/04/26(火) 00:09:01.58 ID:atAd+IX1o
はあー獣娘可愛すぎ
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage ]:2011/04/26(火) 22:23:13.35 ID:yHMhbRI60
乙です。
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/30(土) 01:15:27.38 ID:qHX89KpCo

365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/04/30(土) 01:56:07.14 ID:DJjWxEWMo
ウィッチ「あのぅ……」

女「どうしたの?」

ウィッチ「なんか図々しくてすいません……わたしなんかのために……」

女「……ねぇ、ウィッチちゃん」

ウィッチ「は、はい」

女「夢、あるんでしょ? 自分の魔法を世界に役立てたいって」

ウィッチ「……」

女「私が色々お節介やいてることに対して申し訳ないと思ってるなら、
  ウィッチちゃんにはその夢に向かってちゃんと突き進んで欲しいかな」

ウィッチ「えっ……」

女「魔法なんて今まで信じてなかったけど、もし本当にあって、それを世界のために役立ててくれるのなら……
  私たちの住む世界のためになるのなら、私はウィッチちゃんにその夢を叶えて欲しいの。だから、私が出来ることはウィッチちゃんの夢への投資」
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/04/30(土) 01:57:39.72 ID:DJjWxEWMo
女「私だって今のこの世界が良い方向に進んで欲しいと思ってるんだもの。昔に比べると人口も減っちゃったし、
  なにより人の住みづらい世の中になっちゃったから…ウィッチちゃんがそれを魔法で変えてくれるっていうのなら、私は協力する」

塞ぎこんでいるウィッチに、女は優しい口調で語りかけた。

女「だからね、約束しよウィッチちゃん。ウィッチちゃんが魔法の修行を頑張るのなら私はいくらだって応援する。
  その代わりウィッチちゃんは諦めず夢を追い続けること。いい?」

ウィッチ「女さん、わたし――…」

それ以上は何も言えず、ウィッチは感極まってしまい目からはじわりと涙があふれていた。
役立たずでダメな自分でも認めてくれて、応援をしてくれる人がいることはウィッチにとって何よりもありがたい事であり、
心が救われたような気分だった。

女「よしよし、泣かないの」

悪魔「アホくさ……夢だなんだのって。聞いてるこっちが恥ずかしくなるっての」

女「いいじゃない。悪魔ちゃんにも夢ぐらいあるでしょ?」

悪魔「そういう話はパスだ」

獣娘「ゆ…め」

女「うん、夢。未来の自分の目標」

獣娘「ゆめ……」

女「まだ獣娘ちゃんには分からないかな。けどいつか、きっと獣娘ちゃんの夢も見つかると思うよ」
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/04/30(土) 02:00:14.23 ID:DJjWxEWMo
・・・

女「もう大丈夫?」

ウィッチ「は、はい…お見苦しいところを見せてしまってすいません」

数分してからウィッチも落ち着きを取り戻した。
思えばここに来てから泣いて謝っての繰り返しである。
ウィッチは少し頬を染めながら、恥ずかしさを隠すように照れ笑いをみせた。

そんな彼女に女も笑顔を返し、ハンカチを手に取りウィッチの涙を拭いた。

悪魔「ところでバカウィッチ、お前の使えない魔法をどう世界のために役立てるつもりなんだよ。
   だいたいひよっ子のお前一人でどうこうできる問題でもねえだろ」

端からその様子を見ていた悪魔が呆れた口調でつっかかる。

ウィッチ「ほとんどのウィザードは地上のことに関しては無関心なんですけど、
     中には現状を哀れんでる人たちが集まって、地上の復興ボランティアを立ち上げてたりもするんです。
     わたしもちゃんと魔法を使えるようになって、承認試験に合格したらそこに入るつもりで……。
     だから今は、魔法と地上の文化や歴史を勉強するつもりです!」

女「じゃあ地上のことで分からないことがあったら私に何でも聞いてね」

ウィッチ「はい!」

失くしていた自信を少し取り戻したような気分になり、ウィッチの顔は明るい表情に満ちていた。
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/04/30(土) 02:01:18.16 ID:DJjWxEWMo
悪魔「けッ……もういいから早く肩揉めよ。手ぇ止まってんぞ」

ウィッチ「あ、す、すいません」

悪魔「あー、退屈だ……」

なんでこんなやつらと一緒に暮らさなきゃいけないんだ、と言葉を続けようとしたが、
そんな文句を言う気力も段々と失せていた。

女「退屈なら、明日悪魔ちゃんも買い物に付き合う?」

悪魔「あ?」

女「色々買うものが多いから、私一人じゃ大変なの。暇なら明日手伝ってくれると嬉しいんだけど」

悪魔「おい、前にも言ったけどあたしはてめーのパシリじゃねえんだぞ。誰がそんなことするか」

女「そっか。町に行けば甘くて美味しいものだって食べれるかもしれないのに……」

悪魔「えっ」

女「じゃあ代わりにウィッチちゃんでも」

悪魔「ま…まてまてまて! 別に行かないとは言ってねえだろ!!」
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/04/30(土) 02:03:14.95 ID:DJjWxEWMo
女「じゃあ一緒に来てくれる?」

悪魔「まぁ……そうだなぁ。どうしてもって言うのならついて行ってやっても…いいけど?」

女「それじゃ、どうかよろしくお願いします悪魔さん」

悪魔「そこまでして頼むんだったら仕方ねえな…その代わり、ちゃんと美味いもん食わせるんだぞ? いいな!」

女「はいっ、かしこまりました」

多少上機嫌になった悪魔に対し、女は調子を合わせるように答えた。

悪魔「よっしゃ! これでようやくまともなもんが食えそうだ。おら、もっと強く揉め」

ウィッチ「こ、これでも結構力入れてるんですけど……」

悪魔「はぁ? お前どんだけ力ないんだよ……っておい!! お前はどこ揉んでんだ!?」

獣娘「?」

二人のやり取りを見ていた獣娘は、自分もウィッチの真似をしようと悪魔の背中に乗っかり、
ウィッチが揉んでいるところとは反対の位置――下半身を揉んでいた。

獣娘「やらかい」

悪魔「離れろバカ、そこはお尻だろ!! へんなとこ揉んでんじゃねーよ!!」

370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/04/30(土) 02:06:42.73 ID:DJjWxEWMo
--------------------------------------------------------------

――翌朝。

女「ほら、いつまで寝てるの。起きて!」

陽も昇り始めた早朝、女はソファで寝ている悪魔をたたき起こした。
昨夜言ったとおり、今日は必需品を買いに町へ行く日である。
家から往復5時間以上もかかる距離であるため、なるべく早く出発する必要があった。

悪魔「んだよぉ〜…もう少し寝かせろよぉ」

女「帰りが遅くなったら困るの、だから早めに行かないと。ほら準備して」

悪魔「ねみぃ〜……」

女「ウィッチちゃん、獣娘ちゃんと二人で留守番お願いね」

ウィッチ「はい、分かりました」

悪魔「うぁ〜……」

女「悪魔ちゃん、早く早く」

悪魔は女に背中を押されながら言われたとおりに準備を始めた。
顔を洗い、歯を磨き、服も人目につかないよう女の服に着替えた。

女「準備できた? それじゃあ行こっか」

悪魔「はぁ……ふわぁ〜」

女「いってきます」

ウィッチ「いってらっしゃい、女さん、悪魔さん」
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/04/30(土) 02:08:54.19 ID:DJjWxEWMo
ここまで

さいきん ようやく SSのかきかたが わかったような きがする。
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/30(土) 02:49:09.64 ID:S+4vaxq+o
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage ]:2011/04/30(土) 09:29:16.54 ID:XOJStn9y0
乙です。
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/04/30(土) 11:45:38.36 ID:aZ94mh2Do
乙した

最初から楽しませてもらってるよ
百合ワクワクテカテカ
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/03(火) 00:12:18.42 ID:9TwuXkI2o
ウィッチ「ふわぁ〜……戻ってくるのは夕方頃って言ってたかな。
     それまで獣娘さんと何してよう」

獣娘「うぅ〜……」

ウィッチ「あっ、おはようございます獣娘さん」

獣娘「おんな……どこ?」

ウィッチ「女さんはもう出て行きましたよ。帰ってくるまで一緒に待ちましょうね」

獣娘「むぅ〜……すぅ…すぅ…」

ウィッチ「あれ…寝ちゃった。わたしも寝ようかな――あっ、そうだ。
     女さんに借りた本読んでおこう。少しでも地上のことを勉強しないと」
     
ウィッチは本を開きソファの上で黙読を始めた。
が、眠気がまだ残っている状態では集中力が続くわけもなく、ウィッチのまぶたはしだいに落ちていった。

ウィッチ「すこしでも、べんきょ――…すぅ…すぅ……」

376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/03(火) 00:14:29.75 ID:9TwuXkI2o
--------------------------------------------------------------

悪魔「がぁー……すぴー……」

女「よだれ出て…まぁいっか」

家から出発してすでに一時間が経っていた。
車はゆっくりと町へ向かっている。

悪魔「――ふがっ」

女「起きた?」

悪魔「ふ…うぁ〜っ、寝心地わりぃ〜。もう着いたのか?」

女「まだ。あと二時間ちょっとかな」

悪魔「マジかよ…」

女「マジです」

悪魔「あー退屈だー!!」

女「言うと思った」

悪魔「おい、この車もうちょっとスピード出ねえのかよ」

女「一応安全運転しないと」

悪魔「つまんねえやつ…」
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/03(火) 00:15:39.92 ID:9TwuXkI2o
悪魔「どこもかしこも同じ景色が続きやがって…あと二時間も車乗んなきゃいけねえのかよ」

女「音楽でもかける? クラシックならあるけど」

悪魔「音楽よりも腹減った」

女「カバンの中に携帯食入ってから、それ食べて」

悪魔「まーたパサパサしたやつか。これ不味いんだよなぁ」

女「今日の夕飯は豪華にしてあげるから」

悪魔「本当だな!? いい加減美味いもん食わせろよ!」

女「悪魔ちゃんてほんと食べること好きよね」

悪魔「闘う方がもっと好きだけどな。っていっても、こんな何にもない所じゃ闘う相手もいないし」

女「闘う、ねぇ……悪魔ってみんなそうなの?」

悪魔「そんなん、それぞれだろ。もともとあたしは世界を争いで満たせって使命があったしな」

女「争い……?」
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/03(火) 00:16:58.42 ID:9TwuXkI2o
悪魔「そうだ、アエーシュマといえば怒りの化身だからな。あたしにかかりゃ、
   あちこちで戦争起こすのなんて容易いことだぜ」

女「……」

悪魔「ま、そんなめんどくさい使命なんて無視してるんだけどな。
   あたしはあたしのために闘えればそれでいいんだ」

女「そ、そうなんだ。戦争って言うからびっくりしちゃった」

悪魔「は?」

女「ここ最近ずっと戦争が続いてたから、もしかして悪魔ちゃんが…って思って」

悪魔「知らねーよそんなもん。人間の戦争なんて人間が勝手にやってるんだろ?
   あたしは関係ねーよ」

女「そうよね…ごめんね」

悪魔「お前らも面白いよなー。昔っから同じ種族で潰しあいしてるなんて、悪魔とそんな変わんないぞ?
   ま、そういうのは嫌いじゃないけど」

女「別にみんながみんなそういう人じゃないわよ…平和を望んでる人だって大勢いるんだから」

悪魔「ふーん……そういえば昨日人間減ってるって言ってたよな。戦争のせいか?
   いいなー、あたしも参加したかったなー」
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/03(火) 00:18:56.65 ID:9TwuXkI2o
女「その話はもうおしまい」

悪魔「んだよー、いいじゃんか。どんな戦争だったんだ? どんぐらい死んだ? なぁ、もっと教えろよ」

女「お・し・ま・い!」

悪魔「ちっ……つまんねーの」

女「悪魔ちゃんがそういうの好きなのは分かったから、もういいでしょ?
  あんまりその話はしたくないの」

悪魔「じゃあ何して暇潰してりゃいいんだよ」

女「え? うーん……しりとりでもする?」

悪魔「しりとり…ってなんだよ」

女「例えば私がしりとり≠チて言ったら、悪魔ちゃんは最後の文字のり≠ゥら始まる言葉を続けるの。
  そうやって言葉をつないでいって、最後にん≠ェついたら負け」

悪魔「よく分かんねーけど…それおもしろいのか?」

女「暇つぶしにはなるんじゃない? 悪魔ちゃんが勝ったら願いごとを一つだけ、何でも聞いてあげる」

悪魔「マジか!? よっしゃ、やってやろうじゃん! 後悔すんなよ」
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/03(火) 00:19:51.32 ID:9TwuXkI2o
女「じゃあ、しりとり」

悪魔「りで始まる言葉を言えばいいんだよな?」

女「うん、そう」

悪魔「じゃあ…リ、リリス!」

女「すずり」

悪魔「リ、リ…リヴァイアサン!」

女「はい、悪魔ちゃんの負け」

悪魔「はぁ!? 何でだよ!!」

女「ん≠ツいたら負けって言ったでしょ?」

悪魔「……じゃ、じゃあもう一回だ!」

女「いいわよ。しりとり」

悪魔「リンモン! ……あっ」

女「はい負け」

悪魔「ち、違う! 今のは無効! 今度はあたしからだ――デーモン!」

女「だから……」

その後、しりとりは町に着くまで続いた。
ちなみに悪魔の連敗である。
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/03(火) 00:20:59.90 ID:9TwuXkI2o
悪魔「くそっ! ふざけやがって!!」

女(あそこまで負けられるのはある意味すごい……)

女「ほら、もう着いたんだし降りよ」

まさに田舎町という言葉がぴったりなこの町は、都会に比べれば人口が少なく
近代的な建物はないにしても雰囲気は穏やかで和気あいあいとした空気があった。

悪魔「なーんかぬるい町だな」

女「そう? 素敵じゃない、ゆったりしていて」

悪魔「なにがゆったりだよ、面白そうなもん全然ねえじゃん。
   コロシアムとかないのか?」

女「そんなものあるわけないでしょ……」

悪魔「だー! つまんなーい!」

女「ほら、行くわよ」

悪魔「飯か!?」

女「まずは買い物すませてから」

悪魔「……はぁ」
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/03(火) 00:26:21.84 ID:9TwuXkI2o
ここまでで
当初はどんどんダークで暗い話にしようと思ってたんですけど
後味悪くなったんで今後は地の文減らして軽いノリでいこうと思います。
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage ]:2011/05/03(火) 07:47:57.64 ID:bopNsL330
乙です。
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/03(火) 17:45:52.73 ID:WDXFQrQDO
サッドエンドなら許せるが…
とりあえず>>1乙!
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/03(火) 21:51:05.05 ID:9TwuXkI2o
悪魔「で、何買うんだよ」

女「家具とか、みんなが着る洋服とか、そこらへんかな。
  重いものは悪魔ちゃんに持ってもらうけど、いい?」

悪魔(どうせイヤだって言っても無駄なんだろうな)

女「あとは…ウィッチちゃんの魔法道具だけど。
  ウィッチちゃんが言うには確か、看板に紋章があるお店に売ってるんだっけ」

女はポケットからメモを取り出した。
メモには複雑な形をした紋章が描かれており、
この紋章を看板に記している店が地上と異界の中継ポイントらしい。

女「んーっ、と……この町にあるといいんだけど」

悪魔「こんな田舎町にあるわけ――あっ」

女「どうしたの?」

悪魔「……よかったな、探す手間が省けたぞ」

女「え?」

悪魔「こっち来い、においがした」

女「に、においって……?」

悪魔「あたしと同じにおいだ」
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/03(火) 21:53:04.74 ID:9TwuXkI2o
悪魔「ほら、こっちだ」

女「あっ、待ってよ」

悪魔にひっぱられ、しばらく歩いていると、人気のない裏路地にたどり着いた。
そこに建っていたのは古臭い骨董品店――なのだが、看板にはメモにある紋章が片隅に小さく記されている。
つまりここが中継ポイントということだ。

悪魔「ビンゴ!」

女「よく分かったね……こんな変哲もない所なのに」

悪魔「言ったろ? においがするって」

女「だからそのにおいってなに?」

悪魔「この中にいるんだ、あたしと同じ悪魔がな。地上の人間とは違うにおいがぷんぷんすらぁ」

女「悪魔ちゃんと同じ…?」

悪魔「ま、入ってみりゃ分かるさ」

387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/03(火) 21:55:00.06 ID:9TwuXkI2o
次回、新しいキャラが登場する予定
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/03(火) 23:14:50.91 ID:iAo7cNKDO
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/03(火) 23:42:04.37 ID:ZHs9v1/6o
乙した!

百合百合して最後ハッピーエンドなら暗くても平気だけど、>>1の書きたいように書いてくりゃれ

新キャラワクワク
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/03(火) 23:44:51.08 ID:WDXFQrQDO
悪魔ちゃんが2人になるのか…、女大変だなww
>>1乙カレー!
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage ]:2011/05/04(水) 20:28:36.60 ID:B08GrbRq0
乙です。
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/05(木) 09:46:23.74 ID:52OHsBJdo
おつ
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/08(日) 14:40:13.45 ID:s2la/NH7o
少し重い扉を開けた。
店の中は薄暗く、棚には商品であろう壷などが置かれている。
人の気配はない。

女「あのー、すいませーん」

「はーい」

声をかけると奥から返事が聞こえた。

女(どんな悪魔なんだろう……)

「申し訳ございません、こんな朝からお客さんなんて珍しいものですからつい手を離してて――」

奥から現れたのは、見た目は女より少し年上の女性。
顔つきは聡明で黒い髪を腰まで伸ばしていた。
女性は出てきた時には営業スマイルを見せたが、その顔は悪魔と対面することですぐに崩れた。

悪魔「あっ!? テメーだったのかよ!」

「……アエーシュマ? なんでアンタがここに!?」
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/08(日) 14:41:10.56 ID:s2la/NH7o
女「えっ…知り合いなの?」

女が質問をしても二人はにらみ合いを続けている。

悪魔「……まぁな。それにしても、よりによってこんな奴がここにいたなんてよぉ、ええ?」

「それはこっちの台詞よ、なんでアンタがこんな所にいるのよ! 」

悪魔「うるせえーな、あたしがどこにいようとあたしの勝手だろうが!
   こっちはてめーのしけた顔なんてもう見ねえと思ってたのになんでこうなるんだよ!」

「は?しけた顔? 薄汚い粗暴な悪魔には言われたくないわよ」

悪魔「ああっ!?」

「あーあ、イヤだイヤだ。これだから馬鹿は、大きい声出せば威嚇できると思って。知能が動物並みね。
 あんたみたいな品性のない悪魔は地上を出歩かないでくれる? 私たちの評判まで下がっちゃうじゃない」

悪魔「テメっ……!!」

女「あの……」

「あら…すいません。えっと、お客様は人間でよろしいんでしょうか?」

女「あ、はい」

「……なんで人間がアンタと一緒にいんのよ」

悪魔「……色々あんだよ」

395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/08(日) 14:42:30.28 ID:s2la/NH7o
「はぁ〜……久しぶりのお客さんだと思ってたのに」

悪魔「こっちだって客として来てんだぞ、なんだその態度は!!」

女「悪魔ちゃん、この人は……?」

悪魔「こいつはペイモン=B粉砕、暴走、破滅をつかさどる悪魔だ」

女「ペイモン…さん」

悪魔「こいつも地上にいたとはな。あたしと同じわけありか?」

ペイモン「あんたと一緒にすんのやめてくれない? 同レベルと思われたくないの」

悪魔「テメっ…相変わらず減らず口だなコノ野郎!!」

女「ちょ、ちょっと悪魔ちゃん、落ち着いて」

ペイモン「なによ、暴力しか取り得のないくせに」

悪魔「……はっ、よく言うぜ。あのルシファー直轄のエリート部下様が、なんでこんな地上の田舎町にいるんだか。ああん?」

ペイモン「うっ……」

悪魔「ははーん、分かった。お前もうルシファーに見捨てられたんだろ? だからこんな所に左遷されたってわけか。
   あっははははは、情けねえなァおい!」

ペイモン「勝手なこと言わないでくれる!? 私はルシファー様直々の命令を受けてここに来たの!
     ……だいたいアンタこそ、魔女に指輪に封印されたって聞いたけど?」

悪魔「うっ……」

ペイモン「かっこ悪いわねぇ…あのアエーシュマが、まさか魔女なんかにやられるだんなんて。
     だっさ……あらごめんなさい、汚い言葉を使っちゃったわ。ま、薄汚い悪魔にはお似合いでしょうけど」

悪魔「おい、表出ろコラ」
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/08(日) 14:45:38.11 ID:s2la/NH7o
ペイモン「なによ、やるつもる? 見たところアンタかなり魔力が衰えてるみたいだけど」

悪魔「上等だ、これぐらいテメーにはハンデとして十分なんだよ。そのすました面ボコボコにしてやる」

女「あ、あの! 欲しいものがあるんですけど」

女は事態を収拾しようと、二人の間に割って入った。

ペイモン「……欲しいもの?」

女「は、はい。えっと…魔女が使う道具とかがここにあるって聞いて」

ペイモン「なに? 魔女にでもなりたいの?」

女「あっ、私じゃなくて別の子が必要としてるんです。基本的なアイテムが一式そろってたら嬉しいんですけど」

ペイモン「ふーん……本来だったらそういうアイテムは取り寄せなきゃいけないから入荷まで数日かかるんだけど……
      ちょうどよかったわ、たまたま在庫があったの」

女「え?」

ペイモン「ここからちょっと離れたところに引退した魔女が住んでいて、
      その人に孫へのプレゼントとして魔法道具の一式を頼まれてたのよね。
      けどその人、数日前から行方不明になっててね」
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/08(日) 14:46:37.77 ID:s2la/NH7o
女「行方…不明?」

ペイモン「理由は知らないわよ。まぁ、最近魔女達の間でもゴタゴタがあるらしいからそれ絡みっぽいけど…どうでもいいわ。
     それより、買ってくれるんでしょ? 在庫」

女「あ……はい」

ペイモン「えーっと…杖、スクロール、クリスタル、アミュレットそれとローブの五点で
     地上価格の80万でございます」

女「は、80万!?」

悪魔「なんだそれ、高いのか?」

ペイモン「そこそこ高級なやつなのよ。で、買える?」

女「うっ……じゃあ……ください。カード使えますか?」

ペイモン「あら、羽振りがいいのね。もちろん使えるわよ」

女「それじゃあカードでお願いします」

398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/08(日) 14:47:38.99 ID:s2la/NH7o
ペイモン「助かったわ、ただでさえお客が来ないのに在庫整理ができないんじゃたまったもんじゃないもの。
     今後とも、どうぞ当店をご贔屓に」

女「は、はぁ」

悪魔「なんだよ、客商売がずいぶん板についてるじゃんか。よかったな天職見つけて」

ペイモン「冗談じゃないわよ、私がいつまでもこんな所にいるわけないでしょ。
     いつか必ずルシファー様の下に戻って……」

ぶつぶつと小言を言いながら、ペイモンは商品を袋に詰め女に渡した。

ペイモン「そういえばアンタ、魔界には戻らないの? アンタがいなくてアンリ・マンユ様も困ってるんじゃない?」

悪魔「誰があんなやつ……。魔界に戻るにしても、あたしを封印した魔女をぶっ潰してからじゃないと気がすまねえんだよ」

ペイモン「相変わらずね…で、この人間がその指輪の持ち主ってわけ?」

女「あ、はい。そうです」

ペイモン「ふーん……こんな悪魔に憑かれて、あんたも運がないわね」

女「いえ、それなりに楽しんでますし……そうだ、聞きたいことがあるんですけど」

ペイモン「なに?」

女「悪魔ちゃんを封印した魔女について、なにか知ってることがあるかなって」
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/08(日) 14:48:23.84 ID:s2la/NH7o
ペイモン「アエーシュマを封印した魔女?」

女「はい。ここって魔女とかがよく利用するお店なんですよね? もしかしたらその魔女も……」

悪魔「そうだ! おい、知ってることがあるなら全部吐け!!」

ペイモン「知らないわよ。さっきも言ったけど客なんて滅多に来ないんだから」

女「なにか心当たりはありませんか? 金髪で背の大きい魔女らしいんですけど」

ペイモン「あのね、そんな魔女探せばどこにだっているわよ」

女「そう…ですか。ですよね」

ペイモン「……まぁ、アエーシュマぐらいの悪魔を倒せるっていうんだからそれなりの実力はあるんでしょうね。
     名前が広まってもおかしくはないと思うけど」

女「えっ、じゃあ……」

ペイモン「調べれば、見つかるかもしれない」

悪魔「じゃあさっさと調べろよ!」

ペイモン「アンタは何様なのよ」
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/08(日) 14:49:10.71 ID:s2la/NH7o
女「あの、どうやったら調べられんですか?」

ペイモン「うちの店が引き受けても良いわよ。そういうネットワークにも通じてるし」

悪魔「マジか!?」

ペイモン「その代わり、情報料としてお金取るけどね」

女「……おいくらで?」

ペイモン「そうね……」

不安がる顔をしている女の耳元に、ペイモンはイジワルそうに囁いた。

女「そ、そんなに!?」

ペイモン「別に無理強いはしませんよ。どうするかはお客様次第ですから」

悪魔「おい、なんだよ。どういうことだ」

ペイモン「で、どういたしましょうか?」

女「……お願いします」

ペイモン「はい、まいどあり」

ペイモン(ラッキー、常連ゲット!)

401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/08(日) 14:50:12.01 ID:s2la/NH7o
悪魔「なんだ、どうなったんだよおい」

女「調べてくれるって」

悪魔「本当か!? おい、ちゃんと調べろよペイモン。見つかんなかったら承知しねえからな!」

ペイモン「うるっさいわねー、金も払ってないくせに」

女「あの、よろしくお願いします」

ペイモン「そんなにすぐには見つからないと思うけど、お金をもらった以上きっちりやるわよ。
      そこの名簿に連絡先を書いておいてちょうだい」

女「あ、はい」

悪魔「よっしゃ、今のうちにあいつをボコる準備をしないとな」

ペイモン「見つけたところでどうせ返り討ちにあうわよ」

悪魔「あぁ!? んだとテメー!!」

ペイモン「真面目な話、あんた相当魔力が弱まってるじゃない。その指輪が原因なんだろうけど。
      そんな状態で全開でも勝てなかった相手にどうするつもりよ」

悪魔「それは…だな……」

ペイモン「あんたも大変ね、こんなやつに巻き込まれて」

女「いえ…私の問題でもありますし」
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/08(日) 14:51:16.32 ID:s2la/NH7o
ペイモン「ま、私には関係ないけど」

悪魔「チッ……あーそうだよ、テメーには関係ねえよ。口出すな」

ペイモン「アンタほんとに何様なのよ。情報を提供するのは私だってのに」

女「そうよ、失礼じゃない」

悪魔「いいんだよ、こいつはこんな扱いで」

ペイモン「……どうせだったら魔女になぶり殺しにでもされればよかったのに」

悪魔「あぁっ!?」

ペイモン「別に。なにか困ったことがあればうちに連絡ちょうだい。たいていのものは揃えられるから」

女「はい、ありがとうございます」

悪魔「誰がテメーの世話になるもんか!! おい女、もう行くぞ」

女「それじゃあ、失礼します」

ペイモン「はい、また今度」

403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/08(日) 14:52:06.48 ID:s2la/NH7o
店を出た後も、悪魔はばつが悪そうな顔をしていた。
魔女のことが気がかりらしい。

女「それにしても、あの態度はないんじゃないの?」

悪魔「うるせーな、あれは挨拶みたいなもんだからあれでいいんだよ」

女「もう。……そういえばこの魔法の道具? だけど」

悪魔「あ?」

女「なんだか申し訳ないね、行方不明になった魔女の人に。
  せっかくのお孫さんへのプレゼントだったのに……」

悪魔「いなくなったやつのことなんてどうでもいいだろ。それより目的のもの手に入ったんだから次行くぞ」

女「あっ、待って悪魔ちゃん」
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/08(日) 14:52:36.71 ID:s2la/NH7o
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ウィッチ「獣娘さん、お絵かきでもしますか?」

獣娘「おえかき…?」

ウィッチ「鉛筆を持って、この紙にこうやって……」

お手本を見せるように、ウィッチは白紙に絵を描き始めた。
     
獣娘「おぉ!」

ウィッチ「ね、楽しいですよ」

獣娘「さかな!」

ウィッチ「ネコ描いたつもりなんですけど……」

405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/08(日) 15:00:09.88 ID:s2la/NH7o
ここまで
ちなみにペイモンはソロモン王の悪魔です。パイモンとも呼ばれてます。
たぶん準レギュラー的存在になると思います。
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) :2011/05/08(日) 17:33:38.13 ID:PzYk8Elfo
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/10(火) 00:45:23.83 ID:It7OlZK7o
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女「うーんと、日常品はこれでよしっ」

悪魔「どんだけ買うんだよ……」

買い物を始めてから二時間以上。
荷物持ち担当の悪魔は、両手に大量の買い物袋を持っていた。

女「四人暮らしなんだから量が多いのは仕方ないじゃない」

悪魔「あーあ、だりぃーなー」

女「文句言わないの」

悪魔「おい、美味いもん食わせるって言ってたけどあれどーなったんだよ」

女「買い物が終わってからね」

悪魔「いつ終わるんだよ」

女「買うものを全部買ったら終わります」

悪魔「答えになってねーだろ!!」

女「文句言わないでしゃきっと歩く」
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/10(火) 00:46:17.07 ID:It7OlZK7o
悪魔「ちくしょう……騙しやがって」

女「そうだ、悪魔ちゃんたちの服も買っておかないとね」

悪魔「はぁ? 服?」

女「そ、お洒落とかしたいでしょ?」

悪魔「んなもんどーでもいい」

女「えっ、そういうの興味ない? 女の子なのに?」

悪魔「あのな、あたしはお前たちとは違う価値観で生きてんだ。
    お洒落なんてチャラチャラしたもんなんか興味ないね」

女「でも服は必要だし買いに行かないと。下着とかもね。
  悪魔ちゃんだってブラジャーとかは欲しいでしょ?」

悪魔「ブ、ブラ……?」

女「うん、ブラジャー」

悪魔「おい、ブラジャーってなんだ?」
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/10(火) 00:47:10.98 ID:It7OlZK7o
女「えっ、知らないの?」

悪魔「知らねえから聞いてんだろーが! なめんなよ!」

女「……そういえばつけてないね、ブラ」

女は悪魔の胸を凝視する。
手で掴めば調度収まるくらいの大きさだ。

悪魔「な、なんだよ……」

女「買いに行こ。悪魔ちゃんの年齢なら必要よ!」

悪魔「はぁ!?」

女「あっ、そういえばウィッチちゃんはどれぐらいの大きさだったっけ。
  うーん……まだ大丈夫だとは思うけど」

悪魔「おいコラ待て! お前あたしの年齢知ってんのかよ!?」

女「えっ……14歳ぐらいじゃないの?」

悪魔「はぁ、なんにも分かってねーな。いいか? あたしら悪魔はお前たち人間よりずーっと長く生きて…」

女「でも見た目は14歳ぐらいじゃない。ブラは必要だって」

悪魔「あっ、おい! 」

女「ほら、買いに行く買いに行く」

410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/10(火) 00:48:36.74 ID:It7OlZK7o
店員「いらっしゃいませー」



悪魔「なぁオイ、いらねえつってんだろー」

女「いるわよ。悪魔ちゃんはもうちょっと女の子らしくした方がいいって」

悪魔「よけいなお世話だ!」

女「……ブラジャーつけた方がかっこいいと思うけどな〜」

悪魔「あ?」

女「大人の人はみんなブラジャーつけてるの。つけてないと子供っぽく見られちゃうわよ?」

悪魔「なんだそれ……そうなのか?」

女「もちろん。そういえばさっきのペイモンさんも多分つけてたんだろうな〜。
  どうりでかっこいいわけね」

悪魔「あんなやつがかっこいい!?」

女「大人の女性って感じじゃない」

悪魔「冗談じゃねー、あたしの方がかっこいいに決まってんだろ!
    上等だ、ブラジャーでもなんでもつけてやろうじゃねえか!!」

女「すいません、試着室入ります」

店員「どうぞ〜」
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/10(火) 00:49:23.00 ID:It7OlZK7o
悪魔「なんでこんな個室に入らなきゃいけねーんだよ」

女「マナーだからよ。はいかがんで」

悪魔「こうか?」

女「そう。それで……」

胸をよせるため、女は悪魔の胸を背後から持ち上げた。
突然のことに悪魔の身体が反応する。

悪魔「ひゃっ!? なっ、なななななにすんだ!!」

顔を赤らませながら、悪魔は大声を上げた。

女「え? こうしないと形くずれちゃうから…」

悪魔「だからってお前そ、そんな…ところ……」

女からは悪魔の顔を確認することができないが、
耳が赤くなっているので恥ずかしがっているということは十分理解できた。

412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/10(火) 00:50:55.37 ID:It7OlZK7o
女(なんか…急に女の子っぽくなった)

悪魔「いつまで触ってんだヘンタイ!!」

女「わ…私はブラジャーのつけ方を教えてるだけだって!」

悪魔「いいからさっさと手を放せよ!!」

女「分かったから、大声出さないで」

悪魔「ったくよぅ……こんなとこ誰にも触らせたことないのに……」

女「意外と…そういうこと気にするのね」

悪魔「うるせえ!」

女「ごめんごめん。じゃあつけ方教えるから、自分でやってみて」

悪魔「お、おう」

413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/10(火) 00:51:34.35 ID:It7OlZK7o
悪魔「できた! これでどうだ?」

女「うんっ、それでオッケー」

悪魔「にしても、なんか…変な感じだな」

女「そのうち慣れるって。かわいいわよ」

悪魔「そうか、かわいいか……ってはぁ!? あ、あたしはかっこよくなるからってつけたんだぞ!!」

女「あっ……うん、かっこいいわよ」

悪魔「おい、なんだ今の間は」

女「かっこいいかっこいい、悪魔ちゃん超かっこいい」

悪魔「な、なんだよ、分かってんじゃねーか。ま、あたしは何着たってかっこいいけどな」

女(でもどう見てもかわいい…)

悪魔「気に入った、これ買うぞ」

女「はいはい」
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2011/05/10(火) 00:52:24.67 ID:It7OlZK7o
ここまで
二人の初デート?は続く
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/10(火) 00:52:31.48 ID:nzDPDZolo
悪魔ちゃんKAWAIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/10(火) 04:47:07.95 ID:ST2CJAyCo
キテター‼

ハアハア乙したハアハア
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage ]:2011/05/10(火) 19:35:05.95 ID:3ieE/Ezp0
乙です。
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/18(水) 02:53:13.76 ID:hvF3Rt6Io
ワクワク
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga sage]:2011/05/20(金) 22:29:56.47 ID:sLH0VQCgo
悪魔「どうだ、かっこいいだろ?」

女「かっこいいかっこいい。じゃ、ブラ取って」

悪魔「は? なんでだよ」

女「今は試着中。買った後またつけようね」

悪魔「なんだそれ……チッ、仕方ねえな」

女「ね、せっかくだから服も買わない? 私のシャツじゃ少し大きいでしょ?」

悪魔「いらねーよ。むしろブラジャー丸出しでいいだろ、かっこいいし」

女「…それはダメだって」

悪魔「なんでだよ!? かっこいいって言ったじゃん!」

女「ブラジャーは服の下につけるものなの。それで十分かっこよくなるから」

悪魔「そうなのか…? よく分かんねーなぁ。めんどくせえからお前に任せるわ」

女「それじゃあ適当に見繕っておくね」

悪魔「ああ、好きにしろ」

女「どれにしようかなぁ…悪魔ちゃんだったらシンプルに……いや思い切ってロック系もいいかも」

悪魔「……はぁ」

それから一時間以上が過ぎても、女の買い物は終わらなかった。

420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga sage]:2011/05/20(金) 22:30:34.76 ID:sLH0VQCgo
悪魔「おせえ!! まだ終わんないのか!?」

女「んー…あとちょっと。獣娘ちゃんにはどっちのワンピースが似合うと思う?」

悪魔「どっちでもいいだろあんな犬っころの服なんか!!」

女「うーん……迷う」

悪魔「そんなの適当に買えばいいだろーが!」

女「ダメよ、せっかくなんだし」

悪魔「なにがせっかくなんだよ!?」

女「うーん…どれにしよう」

悪魔「無視かよ!? くそっ……おい聞いてんのか! おーーーい!!」

女「むむむ……どれに……」

悪魔「このやろう、聞けよ!! つまんねえんだよオイ!! くそぅ…馬鹿にして――」

悪魔(……ん? 待てよ)

女「こっちも捨てがたいし…でもこっちも……」

悪魔(あいつは洋服選びに夢中だし……ひょっとして今あたし自由?)

女「うーん……」

悪魔(……よし、今のうちに遊びに行こう。もうこんなやつ知るか、一生服選んでろばーか。
   こっそり抜け出そう、こっそり……)
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga sage]:2011/05/20(金) 22:31:11.12 ID:sLH0VQCgo
悪魔「よっしゃ、脱出成功!! えっへへー…久しぶりの自由だ、ざまぁみろ。
   さてと、なにしよっかなー」

キョロキョロと辺りを見渡す。住宅や商店がなどが並んでいるが、しょせんは地上の田舎町だ。
これといって面白そうなものは見当たらない。

悪魔「なんかねえかなぁ〜…って、こんな所じゃ期待できそうにねえな。
   とりあえず腹減ったから飯でも……ん?」

「お願い、もう少し静かにして。周りのみなさんも迷惑しているの」

不良娘「は? アンタがうっさいんだよババア!!」

広場から怒鳴り声が聞こえた。
そこにいたのは綺麗な金色の髪をした優しそうな女性と、同じデザインの黒いパーカーを着用している数人の少女たち。
優しそうな女性はそのグループのリーダ格の少女となにやら話をしている。

悪魔(おっ、なんだなんだ喧嘩か?)

悪魔はとりあえず影からこっそりと様子を見ることにした。

「私、まだ28なのに……」

不良娘「十分ババアだっつーの! 目障りだから消えなさいよ」

「でもね、ここで騒がれるとお客さん来なくなっちゃうの。お願いだから別のところで遊んで欲しいんだけど……」

不良娘「うちらがどこにいようが勝手でしょ、邪魔しないでよ」

422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga sage]:2011/05/20(金) 22:32:01.62 ID:sLH0VQCgo
「そんな汚い言葉遣いはダメよ。それにこんな時間から外を出歩くなんて……学校やお仕事は?」

不良娘「アンタには関係ないでしょ、いい加減ぶっ殺されたいの?」

リーダー格の少女が脅すようにして持っていた金属バッドを振り上げる。
それを見て女性はたじろいだ。

不良娘「マジで死にたい?」

「えっと……」

悪魔「おいおい! おもしろそうなことやってんじゃねーか、あたしも混ぜろよ」

不良娘「……はあ?」

「あら?」

手下少女1「誰だテメェー」

悪魔「あ? んだよ、あたしのこと知らないのか? ……まぁそんなことはいい、喧嘩すんのならあたしの相手しろよ。
   こんなナヨナヨしたやつ相手したって、お前らもつまんねえだろ?」

不良娘「見かけない顔ね……アンタなに? 急にでしゃばって、ムカつくんだけど」

手下少女2「そうよそうよ! 姐さんの邪魔すんじゃねえし!!」

悪魔「御託はいいからかかってこいよ。こっちは最近ストレス溜まってうずうずしてんだ、少し発散させろ」
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga sage]:2011/05/20(金) 22:32:51.60 ID:sLH0VQCgo
不良娘「クスッ……うちら『ブラックサンダーズ』相手にやろうっての? いい根性してるじゃない」

「あら、確かそういう名前のチョコのお菓子が昔あったわね〜」

不良娘「ババアは黙ってな!!」

「……グスン」

悪魔「ブラックなんちゃらでも何でもいいからさっさとこいよ。こっちはもう準備オーケーだぜ」

手下少女3「姐さん、こいつぶっ殺しちゃいましょうよ!」

不良娘「上等よ…望みどおり脳天かち割ってやる!!」

少女は真正面から、勢いよく、悪魔に向かってバットを振り下ろした。

不良娘「覚悟しな!」

そして頭上に直撃し撃沈――するはずだと少女は思っていた。
次の瞬間、バットを持っていた手が急に軽くなる。振り下げたはずのバットが手にない。
それどころか、悪魔の姿さえいつの間にか目の前から消えていた。

不良娘「なっ――」

悪魔「なぁにボケっとしてんだよ」

背後からの声、少女はとっさに振り向いた。
そして驚愕する。
そこには先ほどまで標的にしていた敵が薄ら笑いを浮かべながらバットを手にしていた。
いつの間に背後に? いや、なぜ自分の獲物をあいつが持っている?
状況が分からず少女は頭の中でただ混乱するしかなかった。
周りの取り巻きも先ほど自分を注意していた女性もその光景に唖然としている。
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga sage]:2011/05/20(金) 22:33:40.99 ID:sLH0VQCgo
悪魔「ま、久しぶりに動けばこんなもんか」

手に持ったバットをくるくると回しながら、悪魔は呟いた。

不良少女「な…何なのよあんた……」

悪魔「こんなナマクラであたしを仕留めようなんざ100万億兆年はえーなぁ、なめんじゃねーぞ。
   やるならもっとマシなもん用意しろって……の!!」

凄まじい衝撃音。
少女の目では見えなかったが、悪魔がバットを地面に向かって叩きおろしたのだ。
地面は深く陥没し、飛び散った石の破片が少女たちに当たる。
バットは悪魔が魔力を込めたおかげでかろうじて壊れることはなかったが、原型を留めないほどへし曲がっていた。
悪魔はそのバットを今度は手で丸め始める。

悪魔「ほらよ、さっさと続きやろーぜ。昨日密かに考えたあたしの新しい必殺技を見せてやる」

ボール状になったバットを放り捨て、悪魔はにやりと笑う。
その姿はまさに悪魔――そう感じるほどの威圧感があった。
鳥肌が立ち、身がすくむ。

不良娘(こっ、殺される……!?)
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga sage]:2011/05/20(金) 22:34:37.13 ID:sLH0VQCgo
悪魔「今度はお前が覚悟しろよ……!」

悪魔が構える。それと同時に少女達はたじろぐ。
このままでは確実に皆殺しだ。少女たちは身の危機を感じ、とっさに動いた。

不良娘「あっ、アイスクリームが空飛んでる!」

悪魔「うそっ!?」

少女が指差す方向に、悪魔が振り向いた。

悪魔「マジでアイス飛んでんの!? どこだ、食ってやる!!」

不良娘「い、今のうちに逃げるわよ!」

手下少女「は、はいっ!」

悪魔「どこにも飛んで――…あっ!? お前らどこ行くんだ!!」

悪魔が気づいた頃には、少女たちはすでに遠くまで逃げ切っていた。

悪魔「コラ! 戻ってこい、喧嘩すんじゃなかったのかよ!?
   せめてあたしの必殺技見てけ!! おい!! 聞いてんのかコラー!!
   戻って来ーーーい!! ねぇ、お願いだからーーーーーーっ!!」

不良娘「うっさいバーカ!!」

悪魔の叫びも空しく、少女たちの姿は消えていった。
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga sage]:2011/05/20(金) 22:35:12.59 ID:sLH0VQCgo
悪魔「なんだちくしょう……ふざけやがって。
   あーーーもうっ!! どいつもこいつもふざけやがって!!」

「あの〜……」

悪魔「あァン!?」

「助けてくれてありがとう。あの子たち、この町でも扱いに困ってた不良グループなの」

悪魔「……別にテメーを助けたわけじゃねえよ。あたしは喧嘩できればそれでよかったんだ。
   なのにあいつらときたら……」

「でも実際助かったわけだし…そうだ! 助けてもらったお礼しないといけないわね」

悪魔「お礼…?」

店主「よかったらうちのお店に来る? 喫茶店をやってるの、なんでもご馳走してあげるわよ」

悪魔「ご馳走…マジ!? なんでもいいんだな!?」

店主「ええ、もちろんよ」

悪魔「行く行く!! 絶対行く!!」

427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga sage]:2011/05/20(金) 22:36:02.21 ID:sLH0VQCgo
店主「そういえば、お名前は?」

悪魔「名前? そうだな、アエーシュマって呼んでくれ」

店主「アエーシュマちゃんっていうんだ…へぇ〜。私は店主、よろしくね〜。
   それにしてもアエーシュマちゃんってすごいのね〜、こんな大きな穴ぼこ作っちゃうんだもの」

悪魔「まぁこんなの楽勝だっての。これでも十分力をセーブしてるしな」

店主「おかげで助かったわ〜。これであの子たちも大人しくしてくれるといいんだけど」

悪魔「それより飯だ飯! 早く食わせろ!!」

店主「あらあら、ずいぶんとお腹がすいてるのね〜」

悪魔「それがさぁ、一緒にきたつれがケチでよ。
   美味いもん食わせるからってあたしに買い物連れてこさせたのに、中々飯を食わせてくれねえんだよ」

店主「まあまあ、大変ね〜」

悪魔「まったくだ。こっちは腹と背中が今にもくっつきそうだってのにあのケチ女、
   買い物ばっかしてあたしのことなんか気にもせず……」

店主「うちのお店なら、いくらでも食べてっていいのよ」

悪魔「本当か!?」

店主「命の恩人ですもの」

悪魔「おっしゃ、それじゃあな――」

女「あっ、こんな所にいた!」
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga sage]:2011/05/20(金) 22:36:39.35 ID:sLH0VQCgo
悪魔「げっ……」

店主「あら?」

女「はぁ…ようやく見つけた。もの凄い音が聞こえたからまさかと思ったけど……ダメじゃない、勝手に外を出歩いちゃ!
  それにこの地面はなに? 」

悪魔「これか? へへん、これはあたしがぶっ壊したんだよ。どうだすげーだろ」

女「すごくない!! なんでこんなことするの!?」

悪魔「なんでって、そりゃ……」

女「暴れちゃダメって注意したでしょ? なのに地面をこんなにして……どうするのよ!」

悪魔「あのな、あたしはだな――」

店主「あの〜」

女「え? あっ……」

店主「どうかその子を怒らないであげて。アエーシュマちゃんは私を助けてくれただけなの」

女「……え?」

429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga sage]:2011/05/20(金) 22:37:20.22 ID:sLH0VQCgo
店主は先ほどの出来事を全て話した。
自分が不良グループに襲われたこと、悪魔が助けに入ったこと。
その際に地面が破壊されたことも。

女「そうだったん…ですか」

店主「ええ、だからこの子を責めないであげて」

悪魔「そうだそうだ! あたしは別にわるいことしてねえからなー」

女「…ごめん。でも、勝手に外に出歩くのはいけないじゃない」

悪魔「お前がずっと買い物してるからだろ! こっちは腹減ってるし暇だしつまんねえんだよ!!」

女「買うものが多いんだから仕方ないの!」

悪魔「知るか!! てきぱき買わないお前が悪いんだろ!!」

店主「まぁまぁ、二人とも落ち着いて落ち着いて〜」

女「あっ…ごめんなさい、つい取り乱しちゃって」

店主「お腹すいてるからピリピリしちゃうのよ、とりあえずうちのお店でご飯でも食べましょうか。
   女さんも一緒に、ね」
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga sage]:2011/05/20(金) 22:38:00.40 ID:sLH0VQCgo
悪魔「お前いいこと言うじゃんか、早く食いに行こうぜ」

女「すいません…」

店主「いいのいいの。それじゃあ行きましょうか〜」

悪魔「なんでも食わせてくれるんだよな、絶対だぞ!」

女「あんまり図々しいことしないの」

悪魔「こいつがいいって言ってんだから別にいいだろ」

店主「ええ、気にしないで」

悪魔「ほら見ろ。お前なかなかできるやつだな、気にいった。
   あんなケチ女よりずっとマシだ」

そう言うと悪魔は店主の肩に腕をまわした。

店主「あらあら」

女「むっ」

女(確かに悪魔ちゃんをほっといたのは悪かったけど……ケチ女って、そこまで言わなくても)
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga sage]:2011/05/20(金) 22:38:33.78 ID:sLH0VQCgo
ここまで
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/05/20(金) 23:45:48.73 ID:MuRaA/AAO
乙ん
ブラックサンダーのアイス買ってこよう
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage ]:2011/05/20(金) 23:46:12.84 ID:Qt3iZlUL0
乙です。
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/21(土) 01:56:33.20 ID:otS8jxjXo
アエーシュマちゃんかわいい
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/21(土) 05:39:43.84 ID:pzXwWZiko
女ちゃんかわいい
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/05/22(日) 01:30:13.11 ID:u7ZqB4TAO
おつおつ
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/22(日) 02:44:25.94 ID:qcpKzLlRo
乙した。悪魔かわいい
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/29(日) 01:21:20.44 ID:JEkdW9qZo
まだかなワクワク
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2011/05/29(日) 11:53:37.94 ID:QydyQVvK0
もう一週間たってるのか
440 :1 [saga sage]:2011/06/01(水) 03:41:32.81 ID:eReG4+UXo
すいません、私生活が多忙になってきたんで遅れます
ほんとすいません
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/01(水) 16:37:51.30 ID:XVKcT5DDO
了解〜
リアル頑張れ!
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/06/01(水) 20:38:18.28 ID:D+GDrXFpo
無理せずに
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2011/06/06(月) 20:11:20.18 ID:JL+QBSo40
大丈夫かー?
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/06/15(水) 03:57:21.33 ID:OHXuwbvpo
ワクワクして待ってます
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/24(金) 02:45:09.24 ID:hONjlgAIO
頑張って下さい
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2011/06/29(水) 03:53:35.97 ID:g6XAnR960
体調崩すなよー
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/07/01(金) 18:27:57.14 ID:wBzEDJnfo
一ヶ月
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/04(月) 23:32:00.32 ID:pSfn1PkDO
まっとるぞー
449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/07/07(木) 00:25:30.73 ID:U88jMulVo
待ってます

生存報告でもいいんで
450 :1 [saga sage]:2011/07/08(金) 19:27:52.72 ID:Z1S0yC/Co
すいません、まだしばらくは再開できそうにないです。
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/08(金) 20:51:25.68 ID:YMiKyP50o
>>1生きてた!
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/07/08(金) 20:53:53.48 ID:mw5fROfPo
ほっとした
無理せずに
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2011/07/09(土) 01:18:17.56 ID:XvsemUy20
生きてたか安心
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/14(木) 13:12:52.50 ID:hU6rBUwoo
ただ生存報告をしてくれるだけで生きる希望がわいてくる
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/07/18(月) 09:44:09.24 ID:As98DzZRo
今月中は無理か?
456 :1 [saga sage]:2011/07/21(木) 22:35:37.06 ID:yADa14WVo
すいません、まだちょっと無理です。
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/07/24(日) 12:58:33.93 ID:TH/RCRvSo
ワクワクして待ってます
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/07/27(水) 18:21:43.16 ID:qQbSiXhPo
わたしまーつーわ
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/03(水) 01:50:12.45 ID:EYVG7jO8o
ワクテカして待ってます
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/05(金) 23:34:24.53 ID:7wk8euLDO
俺も待ってるぜー!
461 :1 [saga sage]:2011/08/13(土) 08:05:56.25 ID:+254k91Vo
長い間更新できずに申し訳ありません。
勝手ながらこの度は諸事情により私生活が多忙になったため、続きを書くことができなくなりました。
このスレを楽しんでいた方々にご迷惑をかけた事を深くお詫びします。
そして、ここまで支援していただきありがとうございました。
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/13(土) 10:00:47.85 ID:u+PTnybbo
えっ…


もし落ち着いて生活にゆとりができたら、つづきを書いてくれると嬉しいです


乙した残念
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/13(土) 11:29:01.34 ID:esq/1zJ40


464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/13(土) 11:59:43.77 ID:1ipyB/qSO
終わりかぁ…
また気が向いたらスレ立てて続きを書いてほしいです。

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