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勇者「地獄の沙汰も金次第」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : [sage]:2011/01/21(金) 03:50:07.69 ID:NYWq/vuc0
初SSです。
至らぬ点など多々あるかと思われますが、がんばります。
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ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
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いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
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【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713277692/

こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713091115/

アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
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2 : [sage]:2011/01/21(金) 03:50:57.52 ID:NYWq/vuc0
勇者「前略、親父殿にお袋様」

勇者「時の流れは速いもので、私が故郷を旅立ってから一ヶ月が経ちました」

勇者「勇者の使命を全うするため、魔王討伐に向けて頑張っています」

勇者「さしあたって、今私が直面している問題は……」


<イタカー!?

<ヤツハドコニイッター!

<サガセー!


勇者「公僕の皆様に追いかけられていることです」
3 : [sage]:2011/01/21(金) 03:51:32.56 ID:NYWq/vuc0
騎士A「いたぞ!」ザッ

騎士B「この犯罪者め、この場で斬り捨ててくれる!」チャキッ  

勇者「……すまないが、ここで捕まるわけにはいかない。スタコラサッサだ」ダッ

騎士A「待てー!」

勇者「待てないと言っている!」



勇者(何故こんなことになったのか……それは一ヶ月前、勇者として旅立つ直前まで遡る)

勇者(私には別に生まれながらの宿命や因縁があったわけではなく)

勇者(王立魔法研究所の学士として、独自に新たな魔法の研究を行っていた)

勇者(そしてある日、王宮に呼び出された私は、魔王を討つ勇者に任命されたのだ)
4 : [sage]:2011/01/21(金) 03:52:46.24 ID:NYWq/vuc0
――――――――――
一ヶ月前
王宮
所持金:0G


勇者「私が勇者……ですか?」

王様「うむ。聞けばそなたは剣術の心得もあり、魔法研究の分野でも非常に優秀」

王様「現在の我が国にそなた以上の適材はいまい」

勇者「恐れながら陛下、私は一介の研究者にすぎません。そのような大役は……」

王様「そう謙遜するでない。我々も勇者選考に半年もかけておるのだ。のう大臣よ?」

大臣「はっ。最も勇者に相応しい人物を見つけるため、国中から候補者を探しました」

王様「そなたの研究している魔法の資料も見せてもらった」

王様「あの魔法が完成すれば魔王とて討つことができよう」

王様「行け、勇者よ! 魔王を打ち倒し、世界に平和をもたらすのだ!」



勇者(その後、研究所に戻って資料の整理と書きかけのレポートを仕上げた私は)

勇者(翌日、勇者として旅立つことになった)

勇者(同僚たちへの別れを済ませ、魔王討伐の長い旅へと……)

勇者(しかし、陛下は出立のための資金を120Gしか用意してくれなかった)

勇者(これが全ての始まりだったのだ……)
5 : [sage]:2011/01/21(金) 03:53:25.55 ID:NYWq/vuc0
 
――――――――――
現在
とある街にて
所持金:6731G


騎士A「待てー! 待たんかー!」

騎士B「インチキ商売人め、王宮の権威を貶めた罪は重いぞ!」

勇者「クッ……しつこい」

勇者(出来れば使いたくはないが……是非もない)

ゆうしゃは ふところから きんかを とりだした
ゆうしゃは じゅもんを となえた!

勇者「――燃えろッ!」

ほのおのかべが きしたちの まえに たちふさがった!
あまりのあつさに きしたちは すすめない!

勇者(私の開発した魔法、それは)

ほのおのかべは もえつづけている!
ゆうしゃの きんかは おともなく くずれ はいになった……

勇者(呪文発動のための魔法媒介に貨幣を用いた、『魔貨式魔導法』)

勇者(――所持金=MP上限という画期的超理論に基づく魔法体系だ)

ゆうしゃは にげだした!
6 : [sage]:2011/01/21(金) 03:55:26.55 ID:NYWq/vuc0
 
――――――――――
路地裏
所持金:6264G


勇者「はぁ、はぁ、はぁ……ようやく撒いたか」

勇者「また貴重な金貨を……だが銅貨や銀貨ではあれほどの出力は得られない」

勇者「かといって、普通の魔法を使おうにも私はMPが低いからな……」

??「勇者さん!」

勇者「ッ!? ……ああ、君か。賢者」

賢者「また騎士団に追われてましたね? 今度は何をやったんです」

勇者「資金調達のために手製のマジックアイテムを売っていた」

賢者「マジックアイテムの売買には王宮の認可が必要なんですよ?」

勇者「知っている。認可を取るためにはそれなりの袖の下が必要だということも」

勇者「だが見てくれ。今日は1000Gも稼ぐことができた」

賢者「そりゃ良かったですね……」

賢者「ああ……なんでボク、こんな人のパーティに加わったんだろ……」

勇者「まったくだな。君も物好きな奴だ」

賢者(ブッ殺してぇ……)
7 : [sage]:2011/01/21(金) 03:58:07.85 ID:NYWq/vuc0
賢者「この間は薬草、その前は魔法石、今回はマジックアイテムの密売……」

勇者「占星術に用いる星座盤を作って売ったこともあったな」

賢者「いくらお金がいるからって、こんなんじゃいつか本当に捕まっちゃいますよ」

勇者「勇者の名誉のためにもそれは避けたいものだな」

賢者「……だいたい、なんでそんな燃費の悪すぎる魔法を使ってるんですか」

勇者「私自身に魔法の才能がないからさ」

賢者「王立魔法研究所の所員だったのに?」

勇者「基本的な魔法くらいは使える。だが上級魔法になると扱い切れなかった」

賢者「とんだ頭でっかちだったわけですね」

勇者「そういうことになる。MPの上限が低いせいだというのはわかっていたが……」

賢者(皮肉もきかねぇのかよ)
8 : [sage]:2011/01/21(金) 04:00:12.48 ID:NYWq/vuc0
賢者「で、なんで魔法媒介がお金なんです。他になかったんですか?」

勇者「いい質問だ。説明しよう……当然だが、貨幣の価値は物質としての価値とは異なるものだ」

賢者「まあ、金貨だって純金の塊じゃなく、金の混ざった合金の塊ですからね」

勇者「貨幣が額面通りの価値を持つには、その貨幣に信用があることが必要となる」

勇者「私はそこに目をつけた。国中の人間がその貨幣に価値を認め信用しているということは」

賢者「ということは?」

勇者「つまり、『貨幣そのもの』に強い念が込められているということに他ならない」

賢者「貨幣自体に……ですか?」
 
勇者「金銭はそもそも、人間の、欲望というプリミティブな衝動の象徴だ」

勇者「これは魔法的な意味を見出すには十分すぎるファクターだ」

勇者「だから貨幣に込められた念を利用する術式を開発しようと思い立った」

賢者「で、貨幣そのものをリソースに使う魔法が完成したと」

勇者「通常の魔法は精神力を代償に精霊から力を借りる」

勇者「こちらは金銭に込められた念で精霊や悪魔から力を買う」

勇者「奇跡を金で買う……簡単に言ってしまえばそういうことだ」
9 : [sage]:2011/01/21(金) 04:02:49.78 ID:NYWq/vuc0
賢者「呆れるくらい神秘性のない魔法ですね」

勇者「だが費やす金額に比例して出力は跳ね上がる」

勇者「理論上は、魔法の才能のない者でも戦略級の極大殲滅呪文を扱える」

賢者「でも魔法を使うために怪しい商売に手を染めるなんて……」

勇者「陛下が120Gしか用立ててくれなかったからな」

勇者「実験も兼ねてスライムやら大ガラスやらを狩っていたら一時間で底をついた」

賢者(あたりめーだよバカ)
  「あたりめーだよバカ」

勇者「偽造貨幣の製造も考えたのだが、流石に造幣用の設備を整えるのは不可能だったな」

賢者(勇者さんが捕まったら他人のふりをしよう)
  「勇者さんが捕まったら他人のふりをしよう」

勇者「だが、そのおかげでデータも集まったし目標もできた。10000G集まればしばらくは戦える」

賢者(頭のいいバカってこういう奴のことを言うんですね)
  「頭のいいバカってこういう奴のことを言うんですね」

勇者「……君は正直な奴だな」

賢者「それはどうも。子供の頃から素直な良い子で通ってましたから」

勇者「私は変人偏屈で通っていたよ。何故だろうな」
10 : [sage]:2011/01/21(金) 04:06:16.22 ID:NYWq/vuc0
もう少し書きためるべきだったろ……常識的に考えて……

今日の夕方〜夜にまた投下できるよう頑張ります。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 04:18:16.64 ID:4YCQ9YUqo
よし がんばれ
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 04:22:55.81 ID:/35Csjtv0
いいじゃないか
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 07:14:14.05 ID:3RTqfURDO
なんかOOOを連想した
どっちかって言うとバースだろうか
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 10:44:41.25 ID:NqXW94j4o
なんというセルリアクター
15 : [sage]:2011/01/21(金) 11:26:05.06 ID:NYWq/vuc0
――――――――――
一ヶ月前
草原
所持金:61G


ザシュッ!

まもののむれを やっつけた!
ゆうしゃは 20の けいけんちを えた!
17Gを てにいれた!

勇者「……よし、こいつの毛皮は使えそうだ」

ゆうしゃは ナイフを とりだし まものの かわを はぎとっている!

勇者「相場はわからないが、売れば多少の金にはなるだろう」ザクザク

勇者「……しかし、多くの冒険者は魔物を殺しっぱなしだが、勿体ないとは思わないのだろうか」

勇者「魔物の骨と皮、時には爪や牙は貴重な資源になるというのに……」

ザッザッザッ

??「勇者様ーっ!」

勇者「ん? ……君は、王宮の兵士か」

兵士「はい! 勇者様、王様がお呼びです」

勇者「陛下が?」

兵士「なんでも、会わせたい人がいるとか……とにかく、ついてきてください」
16 : [sage]:2011/01/21(金) 11:26:45.90 ID:NYWq/vuc0
 
――――――――――
一ヶ月前
王宮
所持金:78G


兵士「陛下! 勇者様をお連れしました」

勇者「私に会わせたい人物がいると聞き、戻って参りました」

王様「うむ。新たな勇者が旅立ったと聞いて、勇者のお供に是非にと志願した者がおった」

勇者「お供?」

王様「賢者! 賢者はおるか!」

賢者「お呼びでしょうか、陛下」

勇者「君は……確か、王宮お抱えの」

賢者「はい。ボクは賢者と申します。以後お見知りおきを」

大臣「我が軍自慢の、魔導騎士団の次期団長と目されている者です」

勇者「時期団長とは……エリートなんだな、君は」

賢者「光栄です」
17 : [sage]:2011/01/21(金) 11:27:18.12 ID:NYWq/vuc0

賢者「勇者様、どうかボクをお供にしてください。攻撃・補助・回復呪文、なんでもやれます」

勇者「……」


勇者(私の魔法の性質上、仲間を増やすことは必ずしも得策ではない)

勇者(所持金が魔法の威力に直結する以上、装備や宿代、道具代で浪費するのは避けたい)

勇者(しかし彼は賢者だ。既存の魔法との比較実験を行うのが容易になる)

勇者(受けるべきか断るべきか。どちらが私にとってメリットが大きいのか……)


勇者「……賢者。いくつか私の質問に答えてほしい」

賢者「はい?」

勇者「まず第一に、君は呪文はなんでもやれると言ったが、どんな呪文を覚えている?」

賢者「一応、最高位の極大呪文まで一通りは」

勇者「次に……君は手先は器用かな?」

賢者「? はぁ……とりあえず、マジックアイテム製造の実習ではいつも満点でした」

勇者「そうか、わかった。最後に、君はモテるか?」

賢者「??? ……それはわかんないです」


賢者(勇者さん、なんでこんな質問するんだろ……?)
18 : [sage]:2011/01/21(金) 11:28:38.23 ID:NYWq/vuc0
 
――――――――――
現在
とある村
所持金:4109G


賢者「ええ、わかりましたよ。あの時の質問はこういうことだったんですよね」

賢者「手先が器用なボクにマジックアイテムの製造を手伝わせて」

賢者「そ、その上っ……! こんな格好までさせて……!」

賢者「勇者さんっ! アンタって人はどこまでバカ野郎なんですか!」


けんじゃ
E けんじゃのつえ
E メイドふく
E ねこみみバンド
E ねこしっぽ


勇者「私もよくわからないのだが、近頃の流行りらしいと聞いたんだ」

賢者「ボクだってこんな流行まるっきり初耳です!」

勇者「物を売る時や接客をする時、男は執事、女はメイドの格好で『ご奉仕するにゃん♪』」

勇者「これで売り上げ倍増間違いなしと知り合いの商人が言っていた」

賢者「じゃあ勇者さんだってやりゃいいじゃないですか!」

勇者「商人に君の分の装備を用立ててもらったのだが、結構取られてな」

勇者「流石にこれ以上の浪費は避けたいと判断した」

賢者「こんなもん買ってる時点で無駄遣い以外の何物でもないって気付けよぉー!」
19 : [sage]:2011/01/21(金) 11:29:44.22 ID:NYWq/vuc0
勇者「その格好は私達が勇者一行であることを悟られないためでもある」

勇者「王立魔法研究所の元所員と、王立魔法大学を首席で卒業のエリートが」

勇者「まさかそんな恰好でマジックアイテムの密売を行っているとは誰も思わないからな」

賢者「それは犯罪者の思考ですよ、勇者さん」

勇者「とにかく、このアイテムを売らなければ話が進まない」

勇者「こんなところでグズグズしている暇はない。早く始めよう」

賢者「……えぇーい、もうヤケだぁ!」



賢者「ちょっとそこ行くご主人様☆」

賢者「美容と健康にすっごく効く魔法の化粧水が一本500Gだにゃ!」

賢者「それからぁ、今なら怪我がたちまち治るハーブもつけて700G!」

賢者「え、高い? う〜ん、それじゃあもっとご奉仕しちゃうにゃん☆」

賢者「……この全自動生爪剥がし機『睦雄くん13号』、今ならもう一つついて1000G!」

賢者「全自動タンスの角に小指ぶつけ機『パメラちゃん』もあるにゃ!」



勇者「……君は逞しいな」

賢者「なに若干引いてるんですかブッころがすぞご主人様☆」
20 : [sage]:2011/01/21(金) 11:30:41.45 ID:NYWq/vuc0
 
――――――――――
数日後
とある村
所持金:10037G


勇者「ようやくこれだけ貯まったか……」

賢者「10000Gかぁ……これだけあったら、少なくとも半年は遊んで暮らせますよ」

賢者「でもなぁ……王宮一の賢者だったボクがあんな破廉恥な……」

勇者「魔法のことを抜きにしても先立つものは必要だ」

勇者「大丈夫、君の行いは世界平和のために有益だ。君の行いは正しかったのだ」

賢者「勇者さんの確信犯的なところがボクは嫌いです」

勇者「とにかく、これだけあればしばらく困ることはない。先を急ごう」

賢者「……思ったんですけど、勇者さんはこれからも二人だけで旅をするつもりですか?」

勇者「何か問題があるのか?」

賢者「ちょうどお金がない時に魔物に襲われたりしたらどうするんですか。魔法使えませんよ」

賢者「戦士か武道家辺りを仲間に加えるのはどうでしょう?」

勇者「ふむ、なるほど。確かにその意見は一理ある」

勇者「しかしギルドに仲間を斡旋してもらうには城下町に戻らなくてはならない」

賢者「散々胡散臭い商売で稼いだから戻りづらいんですね?」
21 : [sage]:2011/01/21(金) 11:32:31.23 ID:NYWq/vuc0
勇者「なに、今ある所持金を節約して使っていけばなんとかなる」

賢者「なんとかなってなかったから、密売人まがいのことをしてるんじゃないですか」

賢者「ボ、ボクにあんな恥ずかしい格好までさせておいて」

勇者「私の目にはノリノリで売り子をする君の姿しか見えなかった」

賢者「シャラップ!だいたい勇者さんは……」クドクド

勇者「そう言ってくれるな。自分の分野に夢中になりすぎるのが研究者の粗忽なところで……」

ドンッ

少女「きゃっ」ドテッ

勇者「おっ……と、すまない」

賢者「大丈夫? 怪我はない?」

少女「は、はい。大丈夫です」

賢者「ったく……勇者さん、ちゃんと前見て歩いてくださいよ」

少女「ゆ、勇者さま!? ごごごごめんなさい! 勇者さまにぶつかるだなんて」

勇者「いや、気にしないでくれ。賢者の言うとおり私の不注意だ」
22 : [sage]:2011/01/21(金) 11:33:33.55 ID:NYWq/vuc0
勇者「それより、君はどうしたんだ? 何やら急いでいるようだが」

少女「は、はい……実は父が病気で、お医者さまを呼びに……」

勇者「重い病気なのか?」

少女「はい……ここ数日、ずっと苦しそうで……」

勇者「……」

勇者「……君のお父さんを私に任せてみないか?」

少女「えっ?」

賢者「勇者さん!?」

勇者「治せるかも知れん。医者に薬を処方してもらうよりは早く済むはずだ」

賢者「勇者さん、何言ってるんですか。ボクは病気を治す魔法なんて」

勇者「君ではない。私の魔法だ」

賢者「勇者さんの、って……」

少女「でも、勇者さまのお手を煩わせるような……」

勇者「人々を救うのが勇者の使命なのだろう? 気にすることはない」

少女「はぁ……では、私の家に……」

賢者「……」
23 : [sage]:2011/01/21(金) 11:34:15.29 ID:NYWq/vuc0

――――――――――
少女の家
所持金:10037G


少女「ここです。父は少し前から寝たきりで……」

勇者「全力を尽くそう。任せてくれ」

賢者「勇者さん、ちょっと」チョイチョイ

勇者「? どうした」

賢者「なんだっていきなりあんなことを言い出したんです」ヒソヒソ

賢者「あなたが単なる正義感であんなことを言うとは思えませんね」

賢者「何企んでるんですか」

勇者「確かに、打算がないとは言わんよ。魔貨式魔導法による回復呪文の効能を試したい」

勇者「どこかに丁度いい病人はいないかと探していたのだが、ここに見つかった」

賢者「それって人体実験じゃないですか!」

勇者「成功なら皆幸せになれる。よしんば失敗しても死にはしないし誤魔化すことはできる」

勇者「私は生まれながらの勇者ではなく一介の研究者にすぎない」

勇者「試せるものは何でも試して、自分の研究を完成させたいのさ」

賢者「……期待通りのクソ野郎ですね」
24 : [sage]:2011/01/21(金) 11:36:54.98 ID:NYWq/vuc0
少女「あの……」

勇者「ああ、待たせてすまない。ではお邪魔させてもらおう」

賢者「ホントにこの人は……」

ザッザッザッ

父親「うぅ……娘よ、どこへ行っていたんだ……?」

少女「お父さん! 勇者さまがお父さんの病気を治してくれるって!」

父親「そ、それは本当か……? ゲホッ、ゲホッ」

父親「おぉ、あなたが勇者様ですか……ど、どうか……」

勇者「わかっている。私に任せておけ」

賢者(不安だなぁ……)

勇者「君達のような者達のためにこそ魔法はあり、勇者はいるのだ」

賢者(うわっ、超しらじらしい)

少女「勇者さま……!」ポロポロ

父親「あぁ……ありがとうございます……」

賢者(こっちは感動しちゃってるし……心が痛むなぁ)

勇者「賢者、財布を」

賢者「はいはい」

ジャラジャラジャラジャラ
25 : [sage]:2011/01/21(金) 11:38:00.01 ID:NYWq/vuc0
賢者「……って全部使うんですか!? あんな苦労して貯めたのに!」

勇者「彼の値段がいくらかわからん。ここは強気に出るしかない」

少女「あ、あの、値段って……うちは貧乏だからお金は……」

勇者「こっちの話だ。気にすることはない」


賢者「……で、回復呪文を使うって言ってましたよね。病気に効くんですか?」ヒソヒソ

勇者「彼の病状次第だな」ヒソヒソ

勇者「回復呪文の原理は知っているな?」

賢者「ええ、もちろん。自然治癒力を高めて再生を促し、傷を癒すんです」

勇者「それに対して魔貨式魔導法における回復呪文は、損傷した部位を新しいものに『取り換える』」

賢者「取り換えるって……」

勇者「骨が折れれば新しい骨に、内臓が悪ければ新しい内臓に買い換えるというわけだ」

賢者「まるごと新品にしてしまうってことですか……悪魔との取引ってやつですね」

勇者「見たところ、彼は胸が悪いらしい。心臓を取りかえることになるだろう」

勇者「そして問題になるのは、人間の身体の値段はいくらなのか、ということだ」
26 : [sage]:2011/01/21(金) 11:39:17.94 ID:NYWq/vuc0
数分後


勇者「……うむ。術式の構築は完了した」

少女「……」ドキドキ

賢者「……」

ゆうしゃは きんかのやまに てを のせた!
やがて きんかは まばゆいひかりを はなちはじめる……

少女「眩しいっ……!」

勇者「――癒えよ」

きんいろの ひかりが ちちおやの からだに すいこまれていく!

賢者「どうなる……!?」

勇者「……!」

ちちおやの かおいろが みるみるうちに よくなっていく
きんかのやまは おともなく くずれ はいになった……

父親「……」スゥ…スゥ…

勇者「……成功だな」
27 : [sage]:2011/01/21(金) 11:39:57.89 ID:NYWq/vuc0
勇者「しばらくは寝かせておくといい。だが、すぐにでも動けるようになるだろう」

少女「よかった……勇者さま、ありがとうございます! なんてお礼を言ったらいいか……」

賢者「失敗してたら、この子になんて言って詫びたらいいかわかんなかったですよ」

勇者「気にすることはない。こちらとしても色々と有用なデータを採取することができた」

勇者「しかし……」

ゆうしゃは はいのやまに てを いれた
ゆうしゃは 218Gを てにいれた!

勇者「やはり人間の値段というのは、そう安いものではないらしい」ジャラ

賢者「そ……それだけ? 残ったお金、たったそれだけですか!?」

勇者「ああ。他の金貨は全て、『意味』を失って灰になった」

勇者「むしろこれだけで済んだことを感謝すべきだろう。しかし、心臓だけでこれか……」

賢者「そんなぁ、あんなに頑張って稼いだのに……」

勇者「実験のついでに人が一人助かったんだ。よしとしよう」

賢者(ホントこの人は……)
28 : [sage]:2011/01/21(金) 11:40:43.67 ID:NYWq/vuc0

――――――――――
翌日
少女の家
所持金:218G


父親「本当にありがとうございました。勇者様が来てくれなんだら、どうなっていたことか」

賢者「いえいえ、内心ヒヤヒヤもんだったのはこっちも同じなんで」

勇者「普通に暮らす分にはもう問題はないはずだ。身体の異常はほぼ治っているはず」

少女「本当に、本当にありがとうございます……」

勇者「顔を上げてくれ。私は医者ではないし、結果としてお父さんの命が助かったというだけだ」

賢者「失敗してたらただの人殺しですよ」

勇者「その通りだ。下手をすれば心臓が治るどころか、内臓を全部持っていかれていたかも」

父親「」

少女「」

勇者「冗談だ。多分な」

賢者「つまり冗談じゃないんですね、わかります」

勇者「君は私の良き理解者だな、賢者」

賢者「反吐が出そうですけどね」
29 : [sage]:2011/01/21(金) 11:42:21.05 ID:NYWq/vuc0
勇者「では行こう、賢者」

父親「すみません、大したおもてなしも出来ませんで……」

賢者「いえ……まあ、勇者さんも見返りが欲しかったわけじゃないみたいですし」

勇者「私は君が助かったという事実だけで十分満足だが、君達がそれでは不満だというなら」

勇者「この一件は他言無用でお願いしたい。それだけ守ってくれればいい」

少女「わかりました、勇者さま。私、誰にも言いません!」

勇者「それでは、失礼する」



賢者「……勇者さん、どうして口止めを?」

勇者「まだデータが不十分なものを、さも奇跡の業のように言い触らされては困る」

勇者「わかっているのは成人男性の心臓ひとつに10000G弱かかるということだけだ」

勇者「手足や指、眼球、その他の臓器……それらの値段を調べておかないことには使えない」

賢者「……じゃあ、それが全部わかったら?」

勇者「新たなアンダーグラウンドビジネスとして確立するかも知れん」

勇者「理論上、身体の部品を全て買い換えることで、若返りや不老不死の実現も出来るからな」

賢者「若返らせ屋、とか? そんな商売、教会が黙っちゃいないでしょうね」

勇者「だからアンダーグラウンドなんだ。表立ってやるには敵が多すぎる」

賢者「……全部でいくらくらいなんでしょうね、人間って」

勇者「……いや。案外、ありふれた寓話的教訓に帰着するかも知れんよ」

勇者「人の命は金では買えない、とね」
30 : [sage]:2011/01/21(金) 11:43:49.32 ID:NYWq/vuc0
勇者は若い男です。でも基本的に研究一筋の学者気分が抜けてません。
賢者はボクっ娘です。でも色気はないのでねこみみメイド装備でもあまりグッときません。

早漏なので昼間に投下。だが私は謝らない。
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 12:16:41.71 ID:FXY53sNIO
期待支援
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 14:30:36.20 ID:XwxXYUrUo
支援
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 14:41:36.19 ID:JJous6QIO
面白い支援
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 15:24:38.09 ID:2qJPXPGIO
ふむ、続けたまえ
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/21(金) 17:57:14.44 ID:HeIdDExco
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 18:17:43.36 ID:NKUaDreAO
ボクッ子は良いものだ
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 18:35:27.17 ID:h2afmZZJ0
乙です。
楽しみだな
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 19:58:41.07 ID:gP9gA5YIO
数レスでこれだけの支援がつくのだ
貴殿には、是非完結していただきたい
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 20:13:43.61 ID:o88GRK4Po
ボクっ子の賢者かわゆす
鬱展開になりそうで怖いが支援
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 20:17:46.27 ID:O6dnX5qYo
まだ始まったとこだがこれはいいな
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 20:55:31.10 ID:SJ076AvAO
支援するしかないだろう!
42 : [sage]:2011/01/21(金) 21:32:35.49 ID:NYWq/vuc0
支援ありがとうございます

今後は酉つけた方がいいでしょうか?
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 21:48:28.28 ID:AwI2z+J8o
つけたほうがいいとおもう
44 : ◆6I9SwHc8xc [sage]:2011/01/21(金) 22:02:20.37 ID:NYWq/vuc0
こうですか? わかりません!
45 : ◆6I9SwHc8xc [sage]:2011/01/21(金) 23:29:00.92 ID:NYWq/vuc0
 
――――――――――
現在
とある街
所持金:2460G


勇者「魔王について現在わかっていることは三つ」

勇者「ひとつ。強大な魔翌力を持っており、人間では太刀打ち出来ぬ程の力を持つこと」

勇者「ふたつ。大小合わせて百万の魔物を束ねる魔界の支配者であること」

勇者「みっつ。各地に直属の部下を配置し地上を監視していること」

賢者「これまで何人かの勇者が討伐に乗り出しましたけど、帰ってきた人はいないんですよね」

勇者「魔王の実力は推して知るべし、か」

賢者「勇者さんの魔法も未完成……いや、仮に完成していたとしても」

賢者「魔王と渡り合おうっていうんですから、それこそ国家予算レベルのお金が必要なんじゃ」

勇者「私もそう思う。先日貨幣の偽造を計画したことがあると言ったが、アレもダメだ」

勇者「どういうわけか偽造した貨幣には念が宿らない。魔法媒介として利用することは不可能だ」

賢者「社会の中で流通していくうちに、そういう念が宿るってことでしょうか?」

勇者「かも知れん。多くの人間の手に触れることで魔法的意味が生まれるのかも」
46 : ◆6I9SwHc8xc [sage]:2011/01/21(金) 23:29:45.16 ID:NYWq/vuc0
賢者「とにかく、各地で悪さをする魔物を退治するのと、お金を稼ぐのと」

勇者「両方をいっぺんにやらなければならないのが勇者の辛いところだな」

賢者「……やっぱり、仲間が必要ですよ。ボク達だけじゃ限界があります」

勇者「だとすれば商人か、あるいは盗賊か」

賢者「……地味ですね。いえ、別に職業差別をするわけじゃありませんけど」

賢者「王都まで戻ってギルドに紹介してもらいましょうか? 転移呪文なら使えますよ」

勇者「……いや、長い時間を共にする仲間を探すんだ。自分の目で確かめた方がいい」

賢者「スカウトするんですか?」

勇者「私は常に、様々な資料を精査し、実際に確認して判断を下してきた。それと同じだ」

賢者「実際に確認……ねぇ……」
47 : ◆6I9SwHc8xc [sage]:2011/01/21(金) 23:30:33.06 ID:NYWq/vuc0
――――――――――
一週間前
岬の塔
所持金:783G


賢者「うえ……ちょっと勇者さん、これグロいですよぉ!」

勇者「もう少しの辛抱だ。我慢してくれ」

賢者「そう言ったって……うわっ、ちょっとビクッてしたぁ」

勇者「コカトリスの生き血を抜くための装置を持ってきておいて正解だった」

賢者「足を縛って、内側に鏡を貼ったドラム缶に吊るして入れるなんて……」

勇者「先人の知恵だ。コカトリスはその目で見た者を石に変える力があるからな」

勇者「東洋ではコカトリスの肉は珍味に、目玉や生き血は妙薬の材料になるという」

勇者「コカトリスの血の薬は、一度実際に作ってみたかった。いい機会が巡ってきたものだ」

賢者「ドラム缶支えてるボクの身にもなってくださいよぉ〜……」

勇者「さて、次はハーピィの羽を毟る作業だ。毛髪も刈っておこうか」

賢者「ああッ! 魔物だとはわかっていても上半身が人間っぽいから超グロい! やだぁ!」

勇者「ハーピィの羽根は最高級羽箒の材料らしいが、使い心地はどうなのだろう」

勇者「……賢者! 君はムネとモモ、どちらが好きかな? 塩とタレは?」

賢者「喰う気かアンタ!? 嫌です嫌です嫌です! トラウマもんですよぉ!」
48 : ◆6I9SwHc8xc [sage]:2011/01/21(金) 23:31:44.42 ID:NYWq/vuc0
 
――――――――――
四日前
魔法の森
所持金:962G


勇者「この植物は強い可燃性があるのか……おそらく光合成によって二酸化炭素と窒素を……」

勇者「資料の通りだ。だとすればこれは兵器に転用できる可能性がある。調査の必要が……」

賢者「勇者さぁーん! 助けてぇー!」

触手「モジャモジャ」ニュルニュル

勇者「賢者!? ……ああ、その魔物は人畜無害だ。安心していい」

触手「モジャモジャ」ニュルニュル

賢者「こいつの触手、なんかやらしいですよぉ!?」

勇者「大丈夫だ、そいつの触手は相手が男でも女でも等しくやらしい」

賢者「どこが大丈夫なんだこのムッツリ学者バカーッ! あ、ちょ、らめぇ……」

勇者「ある程度やったら勝手に満足してどこかに行く。それまで我慢していればいい」

賢者「乙女のピンチに何キノコ採取してやがんだコラー!」

勇者「む……これはシビレダケに似ているが、傘の形が違うな……ワライダケの変種か?」

触手「ハァハァ……ツルペタボクッコモエー……」ニュルニュル

賢者「むがーっ!」
49 : ◆6I9SwHc8xc [sage]:2011/01/21(金) 23:32:38.45 ID:NYWq/vuc0
 
――――――――――
昨日
魔王軍の砦
所持金:1811G


ガキィンッ!

勇者「……終わりだ」チャキッ

賢者「こいつ案外弱かったですね」

魔族「ク、クソッ……! だが俺を倒しても第二第三の刺客が……」

勇者「いや、そういうのはいい。それより、君に家族はいるか?」

魔族「……妻と子がいるが、それがどうかしたか。今更情けをかける気か?」

勇者「君が力尽きた後、私は君の遺体を薄皮の一枚、筋の一本に至るまで解体する」

魔族「は?」

勇者「すまないとは思っているが魔法科学の発展のため必要なんだ。理解して欲しい」

賢者「うわぁ……勇者さんの確信犯っぷりがここでも炸裂してますね」

魔族「き、貴様……この俺がそんなハッタリでビビるとでも」

賢者「いやぁ、この人はやりますよ? きっと全身バラバラでホルマリン漬けですよ」

勇者「もしも君に家族がいるのなら、君の遺体を利用することを話し、許可をもらいたい」

勇者「快く承諾してくれるのならそれでよし、もしそれをよしとしないのであれば遺体は返そう」

賢者「言葉の通じない低級な魔物は問答無用でバラバラだったくせに」

勇者「だが言葉が通じるのならば対話を試みるべきだ。それで、家族への連絡先は……」

魔族「」

賢者「……何かとても恐ろしいものを見たような形相で死んでる……」
50 : ◆6I9SwHc8xc [sage]:2011/01/21(金) 23:33:17.52 ID:NYWq/vuc0
 
――――――――――
現在


賢者(……しかもそういうのをいちいち詳細なレポートにまとめるんだもんなぁ……)

賢者(屍食いコンドルの胃袋の中とか出来れば見たくなかった……)

勇者「とにかく、私は候補者のリストアップと身辺調査を始める」

賢者「あ、はい。それじゃあ勇者さん、ボクは何をしていれば?」

勇者「魔王と、この地方にいる魔王の部下について調べてくれ」

賢者「わかりました。いつも通り弱点とか調べてきますね」

勇者「頼む。私は一旦王都に戻ってギルドに資料を貰ってくる」

ゆうしゃは ふところから どうかを とりだした
ゆうしゃは てんいじゅもんを となえた!
ゆうしゃの からだが うきあがり そらのかなたへと とんでいった!

賢者「……あそこから墜落したら、少しはマトモになってくれるのかなぁ」
51 : ◆6I9SwHc8xc [sage]:2011/01/21(金) 23:34:21.34 ID:NYWq/vuc0
 
――――――――――
翌日
王都・冒険者ギルドの酒場
所持金:1230G(賢者と半分ずつ分け合った)


店主「とりあえず、アンタのご希望の職業ならこんなもんか」

勇者「ありがとう」

店主「しかし、どうしてこんな大量の資料を欲しがる? レベルとスキルがわかりゃ十分だろ」

勇者「私は曲がりなりにも勇者だからな。仲間選びは慎重に行きたい」

店主「まあ、勇者様だからなぁ。そういうものかね」

勇者「この資料は持ち出し禁止か?」

店主「ギルドの預かってる個人情報だからな。いくら勇者のアンタでも貸せないよ」

勇者「わかった。あっちの卓を使わせてもらう」

勇者(レベル・ステータス・スキル以外にも身長・体重・年齢・職歴・家族構成・交友関係……)

勇者(ギルドもよくぞ調べ上げたものだ。登録者はギルドの監視下にあるのか……)

勇者(資料を閲覧するのが許されたのも、勇者特権で強引にねじ込んだからだが)

勇者(これだけのものなら当然だろう……)

勇者「さて、候補者の絞り込みに入ろう。スカウトするのは……」
52 : ◆6I9SwHc8xc [sage]:2011/01/21(金) 23:35:12.23 ID:NYWq/vuc0
安価で3人目の仲間が決まります
>>57

1.戦士

2.商人

3.盗賊


性別? 決まってから考える! そして書く!
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/21(金) 23:36:44.92 ID:GGGtharZ0
ksk
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 23:38:43.70 ID:XwxXYUrUo
戦士
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 23:41:32.72 ID:V4UiFukIO
ksksk
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 23:43:06.19 ID:NqXW94j4o
3
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 23:45:50.99 ID:o88GRK4Po
盗賊
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 23:49:33.83 ID:jUo0RdzIO
1
59 : ◆6I9SwHc8xc [sage]:2011/01/21(金) 23:50:41.32 ID:NYWq/vuc0
了解しました
3人目の仲間の職業は盗賊で行きます

今回はあまり書き溜めてないので今日はこの辺で
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 23:52:48.43 ID:AwI2z+J8o
あ、メール欄にsaga入れておくといいよ
[ピーーー]とかなっちゃうから
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 23:54:26.17 ID:EanyrX0po
>>59 乙!
ちょうど今読み終わった。今後の展開にwktk
次の投下はいつ頃?
62 : ◆6I9SwHc8xc [sage sage]:2011/01/21(金) 23:58:03.80 ID:NYWq/vuc0
1〜2日に1回は投下できるようペースを整えていきたいと思っています
元々筆不精な性分なので間が空いたりするかもですが、その辺はどうかご容赦を
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 00:18:00.17 ID:7TLqVbsMo
まっつる!土日期待してまっつる!
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 00:27:54.90 ID:Gy7olcEXo
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/22(土) 07:57:52.30 ID:ne+MLnOz0
乙です。
wktk
66 : ◆6I9SwHc8xc [sage sage]:2011/01/22(土) 12:00:34.55 ID:VK0Z+oqN0
 
――――――――――
さらに翌日
王宮・地下牢
所持金:1190G


看守「勇者様、こちらです」

勇者「ありがとう。ここからは二人きりで話をさせてくれ」

看守「そうですか……何かあったら呼んでくださいね」

勇者「わかった」

勇者「……」

勇者「はじめまして、かな。私は勇者だ」

盗賊「……へぇ。アンタが勇者様か。意外と年いってるんだね」

勇者「否定はしない。私自身、勇者はティーンエイジャー限定だと思っていた」

盗賊「それで? オトナの勇者様はこんな辛気臭いところに何をしにきたのさ?」

勇者「君をスカウトしに来た」
67 : ◆6I9SwHc8xc [sage sage]:2011/01/22(土) 12:02:10.50 ID:VK0Z+oqN0
盗賊「スカウトぉ? あははははっ、アンタ何言ってんの。あたしをスカウトだって?」

盗賊「こんなヘマやってブタ箱にぶち込まれた盗賊の、どこが魅力だっての」

勇者「君を選んだ理由は三つ」

勇者「まず第一に、ギルドに登録された盗賊の中では君が最もレベルが高いこと」

勇者「第二に、君は多くの有用なスキルを覚えていること」

勇者「……そして第三に、君はとても優しい人間だということ」

盗賊「……なんだって?」

勇者「ギルドの資料を閲覧した際、君が投獄された経緯も知ることができた」

勇者「君は城下町から特定のアイテムだけを盗み出していた。これだ」サッ

盗賊「……! それは……」

勇者「キラービーの体液を原料にした毒煙玉だ。何故か、芳香剤のラベルが貼られていたがね」

勇者「キラービーの体液は地上の気圧では急激に気化し、毒性のあるガスになる」

勇者「これは風の魔法によって液体の状態を保ち、球状の容器に閉じ込めたものだ」

勇者「王宮直轄の研究機関で試作され、結局お蔵入りになった経緯を持つ」
68 : ◆6I9SwHc8xc [sage sage]:2011/01/22(土) 12:03:24.43 ID:VK0Z+oqN0
勇者「君はこれの危険性に気付き、街中にばら撒かれたこれをひとつ残らず回収した」

勇者「しかし、最後のひとつを盗み出したところで騎士団に拘束され」

勇者「家宅捜索でアジトに残っていた大量のこれを発見されることになる」

勇者「大量の毒ガスを隠し持っているということが凶悪性と解釈され、君は地下牢に幽閉された」

勇者「……と、私が知っているのはここまでだ」

盗賊「……」

盗賊「……そうだよ。あたしはそいつがヤバい代物だって気付いた」

盗賊「調べてみたら一部の兵士が小遣い稼ぎに横流ししたってわかってね」

盗賊「そいつを締め上げてブツを押収して、買った人間からも盗み出した」

盗賊「あたしに弁護人はいなかったから、問答無用でブタ箱入りだがね」

勇者「……だから、私は君をスカウトしようと思ったのだ」

勇者「君のその不器用さと優しさは、時に災難をもたらす」

勇者「だが、それでも私は、それをとても好ましく感じた。だから君が欲しいと思った」

勇者「勇者特権を行使すれば君を釈放させられる。あとは君の意思ひとつだ」
69 : ◆6I9SwHc8xc [sage sage]:2011/01/22(土) 12:05:01.21 ID:VK0Z+oqN0
盗賊「……アンタは、あたしを仲間にして何をするつもりなのさ」

勇者「最終的な目標は、魔王討伐」

盗賊「ホントにできると思ってるのかい?」

勇者「できなければ、次善の策を探す。それでもダメなら、三善の策を」

勇者「だが私一人では四善にさえ辿り着けない。だから君が欲しい」

盗賊「……女の口説き方がなっちゃいないよ、まったく」

勇者「すまない。なにぶん、研究一筋の生き方しかしてこなかった」

勇者「……それで、君はどうする? どうしたい?」

盗賊「……」

盗賊「……あたしは盗みしかできないよ」

勇者「私も大したことはできん」

盗賊「学もないし」

勇者「構わない」

盗賊「……その、アンタの言う優しさがもたらす災難っての。それに遭遇したら?」

勇者「力を合わせよう。私達なら乗り越えられるはずだ」

盗賊「……わかったよ。アンタに協力する。そんな風に言ってもらったの、初めてさ」

勇者「私は自分の感じるままを言葉にしただけだ。とにかく、これからよろしく」

盗賊「ああ、よろしく」
70 : ◆6I9SwHc8xc [sage sage]:2011/01/22(土) 12:06:12.38 ID:VK0Z+oqN0
 
――――――――――
翌日
とある街
所持金:979G


賢者「う〜ん……魔王についての情報、集まらないなぁ」

賢者「魔王の配下についての情報は嫌ってほど入ってくるんだけど……」

賢者(……もしかして、魔王の情報は隠されている、ってことなのかな)

賢者(この地方に展開している魔王軍の情報を流し不安を煽ることで魔王への興味をそらす)

賢者(魔王のことを知られると都合がよくないということ……?)

シュン

勇者「賢者!」

賢者「……ってうわっ、勇者さん!? いきなり現れないでくださいよ」

勇者「優れた科学者は神出鬼没だ、という格言がある」

賢者「だからアンタは勇者でしょ……で、そちらのお姉さんは?」

盗賊「……」

勇者「ああ、私がスカウトしてきた新しい仲間だ。紹介しよう。彼女は盗賊だ」

盗賊「……」ゲシッ

勇者「……盗賊、何故私の尻を蹴るんだ」

盗賊「……アンタ、あんな熱烈な口説き文句を並べといて、女がいたのかい?」

勇者「確かに、賢者の性別は女性に間違いないが」

盗賊「なにさ、このちんちくりんは。アンタそういう趣味?」
71 : ◆6I9SwHc8xc [sage sage]:2011/01/22(土) 12:07:19.41 ID:VK0Z+oqN0
賢者「なっ……ち、ちんちくりんとは失礼な!」

盗賊「ちんちくりんにちんちくりんと言って何が悪いのさ。それよりアンタはなんなんだい?」

勇者「彼女は賢者。私の仲間で、良き理解者だ」

賢者「ボクは勇者さんのことを理解できたことなんてありませんっ!」

賢者「それに口説き文句って……勇者さん、どんなやり方でスカウトしたんですか!?」

勇者「盗賊。君をスカウトする際に言った言葉に他意はないと、説明したはずだが」

盗賊「……ったく、ありゃマジだったのかい。額面通り、裏表なしに」

賢者「???」

勇者「言っておくが、私は必要ならば逃げも隠れもするし嘘も吐く。勇者というしがらみもある」

勇者「しかし、君を仲間にしようと思ったのは私の正直な気持ちだ」

勇者「私という、ひとりの個人の気持ちでしかない。だからそれを偽るべきではないと信じた」

盗賊「……アンタも大概不器用な奴だよ。あたしに負けず劣らずさ」

賢者「……あのぉ〜……そろそろボクにも説明をしてほしいんですけど」

盗賊「長ったらしい説明はいらないよ。あたしは盗賊。勇者にスカウトされた。以上」

盗賊「これだけわかってりゃ問題ないだろ?」

勇者「……そうだな。賢者もそれでいいか?」

賢者「まあ、とりあえずは」

盗賊「というわけさ。これからヨロシクね、賢者」

賢者「……ちんちくりん呼ばわりは忘れませんからね」



とうぞくが なかまに なった!
72 : ◆6I9SwHc8xc [sage sage]:2011/01/22(土) 12:08:52.94 ID:VK0Z+oqN0
盗賊は姉御肌です。巨乳です。優しいお姉さんです。巨乳です。義賊です。巨乳です。
ラブコメとかこっぱずかしくて苦手なのでそういう感じになるかどうかは知りません。
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 12:09:14.04 ID:BUdN6wz7o
なるほど、ボクッ子の男の娘っぽくてショタっぽい賢者か
髪型が気になる
74 : ◆6I9SwHc8xc [sage sage]:2011/01/22(土) 18:16:47.14 ID:VK0Z+oqN0
勇者:長身・鬱陶しい長髪・眼鏡・不必要にイケメン
賢者:低身長・ショートヘア・貧乳・ミニスカート
盗賊:長身・ロングヘア・色黒・巨乳

作者的にはこの程度のイメージで書いてます
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 18:17:37.64 ID:2UuwWOTVo
乙した。盗賊が女で嬉しい!
ラブコメみたいが>>1に任す!
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 18:34:13.12 ID:BUdN6wz7o
>>74
なるほど。一瞬にしてテイルズで脳内再生された

賢者はヒロインにくるかこないか……
何にせよ支援しかないな
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 20:59:42.78 ID:6h3KzGUkP
>>74 盗賊どこから考えてもリスティだな
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 21:59:03.45 ID:za3gGgmPo
リスティは腹筋ガチガチすぎてこわい
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 23:18:27.05 ID:MNwAdQfDO
良さそうな勇者SS発見、張り付こう

>>1がラブコメしないっぽいんで嬉しい支援
80 : ◆6I9SwHc8xc [sage sage]:2011/01/23(日) 02:35:55.75 ID:U4Eevslj0

 
――――――――――
とある街・カフェ
所持金:3061G


賢者「う〜ん、ここのケーキはやっぱり絶品です!」モグモグ

盗賊「ホラホラ、口んとこにクリームついてるよ」

賢者「むっ、子供扱いの予感がしますよ。これでもボクは王立魔法大学を飛び級で首席卒業……」

盗賊「はいはい、そりゃもう聞いたよ。良い子だからちょっと動かないでな」フキフキ

賢者「……勇者さんはボクを子供扱いしないのに」

勇者「魔王討伐の旅に同行している以上、子供も大人も関係ないからな」

賢者「そうでしたね、アンタはそういう人でした」

盗賊「で、これからどうするんだい? 何か当面の目標はあるのかい」

勇者「まずは資金調達だな。10000Gを目安にしたい」

盗賊「例の、ナントカ魔法のため?」

勇者「そうだ。所持金は増やしておくに越したことはない」

賢者「……ボク、もうあんな格好しませんからね」

勇者「それから、魔王軍の前線基地になっている西の塔へ行く」
81 : ◆6I9SwHc8xc [sage sage]:2011/01/23(日) 02:37:50.44 ID:U4Eevslj0
勇者「この地域では獣人や魔獣など、獣系の魔物が多かったが?」

賢者「はい。情報によると、この地方のボスは獣系の魔物の王らしいです」

勇者「とすれば、魔王軍の将は獣王か……」

盗賊「あたしも聞いたことあるよ。魔王軍でも一番の力自慢で、人望も厚い武人だってさ」

勇者「魔王討伐を目指すのであれば、いずれは戦わねばならん相手だが……」

盗賊「なら、やっつけちまうかい?」

賢者「いえ、真正面から乗りこんで行くのは流石にやめといた方がよさそうですね」

勇者「ああ。手下の魔物と戦ったら無傷では済まないだろう」

盗賊「だったらコッソリ忍び込むかい?」

勇者「いや。どちらにせよ、無用な戦闘は避けたい」

賢者「じゃあどうしましょう?」

盗賊「ボスだけやっちまうなら、暗殺って手もあるけどさ」

賢者「流石盗賊さん、サラッとエグイ手を提案しますね」

勇者「ふむ……」

勇者「……二人とも、私に考えがある。協力を頼む」
82 : ◆6I9SwHc8xc [sage sage]:2011/01/23(日) 02:38:25.90 ID:U4Eevslj0
 
――――――――――

西の塔・指令室


狼男「獣王様ッ! 大変です!」

キメラ「大変です!」

獣王「どうした、騒々しい。それからプロテインを切らしているではないか」

狼男「プロテインは明日仕入れてきます。そんなことより大変なのです!」

キメラ「先程、勇者を名乗る男が門の前に現れまして、獣王様との面会を求めています」

獣王「勇者だと? 勇者というと、あの勇者か!」

狼男「そうです、その勇者です。我ら魔王軍に仇なす存在であることは間違いありません」

キメラ「獣王様、いかがいたしましょう」

獣王「ムゥ……だが、敵陣に単身乗り込んできたその気概、大したものではないか」

獣王「しかも俺に面会したいとは……面白い奴よ! ガハハハハハ!!」

獣王「よい! その勇者とやらを通せ!」

狼男「ははっ」
83 : ◆6I9SwHc8xc [sage sage]:2011/01/23(日) 02:38:59.43 ID:U4Eevslj0
 
――――――――――
数分後
西の塔・会議室
所持金:8399G


獣王「貴様が勇者か!」

勇者「いかにも。半年ほど前に勇者に任命された者だ」

獣王「……それで? 何故俺との面会を望んだのだ、勇者」

獣王「しかも仲間も連れずたった一人で……何の魂胆があってこのような行動を」

勇者「単刀直入に言おう。この地域における戦闘行為や偵察行動の一切をやめてもらいたい」

獣王「……そんなことをわざわざ言いに来たのか?」

勇者「私の目的は君達を殲滅することではない。こちらは対話による解決を望んでいる」

獣王「……クククッ、ガハハハハハハハハ!!」

獣王「よもやこの獣王にそのようなことを提案する奴がおったとはな!」

勇者「それが最善の道だからだ。武力衝突は双方にとって利がない」

獣王「だが断る! 戦わぬ武人など張り子の虎よ」

獣王「この身、この腕ひとつで魔王様の敵を排除するのが我が役目!」

獣王「貴様は頭でっかちの軟弱者だ。そのような奴に用はない!」

勇者「……どうしてもダメか」

獣王「くどい!」
84 : ◆6I9SwHc8xc [sage sage]:2011/01/23(日) 02:40:25.82 ID:U4Eevslj0
勇者「……なら、仕方がない。君が望む方法で決着をつけよう」

勇者「一騎打ちを望むなら応じよう。少なくとも不必要な戦闘は避けられる」

獣王「……ガハハ! 少しは話のわかるところもあるようだな!」

獣王「貴様のような軟弱者に後れを取る俺ではないが、魔王様のために後顧の憂いは除かねば」

獣王「俺と勝負だ、勇者! 貴様が勝ったら要求を呑んでやろう」

勇者「であるなら、私の敗北は、即ち……死」

獣王「物分かりが良くて助かるぞ、勇者! ……いざ参る!」グォンッ

勇者「来い!」

じゅうおうは ちからを ためている
ゆうしゃは ふところから きんかを とりだした

獣王「覇ッ!」

じゅうおうの きりょくが とっぷうとなって ふきあれる!

勇者「――護れ」

ゆうしゃの まわりに まりょくの かべが あらわれた!
ゆうしゃの てのなかの きんかは はいになった

勇者(防護障壁で防いでもこの衝撃……大した威力だ)

勇者(守ってもジリ貧か……)
85 : ◆6I9SwHc8xc [sage sage]:2011/01/23(日) 02:41:10.32 ID:U4Eevslj0
ゆうしゃは きんかを すうまい ばらまいた
きんかは ゆかに ちらばった

獣王「ガハハ! なんだ、おひねりか? 俺の技は曲芸ではないのだがな」

勇者「――閃けッ!」

いなづまが きんかから あふれだし あれくるう!

獣王「!? グゥゥゥ……!」

勇者「電撃攻撃なら、硬い皮膚の上からでも……!」

獣王「おのれェ……ッ! なめるな!」

じゅうおうは みを まもっている!
じゅうおうには あまり きいていないようだ

獣王「……流石は勇者、電撃系の呪文も使えるとはな」ブスブス…

勇者「あれを喰らって無事で済んでいるということは、電撃に耐性があるのか……」

獣王「ガハハハハハハ!! このくらい耐えられんで獣の王は名乗れぬわ」

勇者「ならば――凍れッ!」

ゆうしゃは ふたたび きんかを すうまい ばらまいた
へやのなかに ふぶきが ふきあれる!
えたーなるふぉーすぶりざーど あいてはしぬ
じゅうおうは みを まもっている!

獣王「……プハァッ!」

だが じゅうおうには あまり きいていないようだ
86 : ◆6I9SwHc8xc [sage sage]:2011/01/23(日) 02:42:26.80 ID:U4Eevslj0
獣王「どうした勇者! その程度の攻撃では俺は倒せんぞ!」

獣王「もっと根性のあるところを見せてみろ!」

勇者「クッ……」

勇者(……やはり“王”と称されるほどの上級魔族……1対1では分が悪いか……)

勇者(そして、残りの所持金も……!)


所持金:1741G


勇者(もとより、戦闘になった場合は短期決戦を狙うしかないと踏んでいたが)

勇者(かなりの額を使ったとっておきの呪文が効かないとはな……)

勇者「どうやら、魔法に頼ってばかりもいられないらしい」

獣王「そうだ、魔法などでは俺は殺せん! 腰に帯びている剣は飾りか?」

勇者「飾りで終わるのなら、それでも構わなかったのだがな」チャキッ

ゆうしゃは けんをぬき かまえをとった
ゆうしゃは いっきに きょりをつめ じゅうおうに きりかかる!

ガキィィィィン!

獣王「……ッ! ひ弱な軟弱者かと思えば、なかなかにいい太刀筋」

勇者(腕で止めた……!? 肉体強化、鋼体か!)

獣王「だが力こそパゥワァァァァ!!」

じゅうおうは ちからのかぎり うでをふるう!
ゆうしゃは 48の ダメージを うけた!
ゆうしゃは ふきとばされ かべに たたきつけられた!


勇者「ガハッ……!」
87 : ◆6I9SwHc8xc [sage sage]:2011/01/23(日) 02:43:26.91 ID:U4Eevslj0
獣王「どうした勇者? もう終わりか?」

勇者「……君のパワーは想定外だ。正直に言って面食らった。だが、まだ終わっていない」ヨロッ

獣王「足元がふらついているようだが、大丈夫か?」

勇者「……大丈夫だ、問題ない」

獣王「よく言った!」

じゅうおうは もうれつな いきおいで とっしんした!
ゆうしゃは じゅもんを となえた
ゆうしゃの からだが かたく おもくなっていく!

ゆうしゃは じゅうおうの とっしんを うけとめた!

勇者「ぐぅっ……!」

獣王「ぬぅぅぅぅ……!」

勇者(鋼体には鋼体を、と思ったが……パワーが違いすぎる……!)

獣王「どっせぇぇぇぇぇい!!」

じゅうおうは ゆうしゃの からだを つかみ なげとばした!
ゆうしゃは ふたたび かべに たたきつけられた!
ゆうしゃは 25の ダメージを うけた!

勇者「ぐぅッ! ……ハァ……ハァ……」

獣王「フン……勇者といえどこの程度か……」

獣王「……武士の情けだ、最後は苦しまぬよう一撃であの世に送ってやろう」

じゅうおうは ちからを ためている!
ゆうしゃは なんとか たちあがり よろめきながら あとずさる
88 : ◆6I9SwHc8xc [sage sage]:2011/01/23(日) 02:43:56.36 ID:U4Eevslj0
だが じゅうおうは さきまわりして たいろを ふさいだ!
にげられない!

勇者「……!」

獣王「……魔王様に仇なす者は全て排除する! たとえ貴様のような軟弱者であってもだ」

じゅうおうは ためこんだちからを いっきに かいほうした!
じゅうおうの こうげき!

獣王「勇者よ、塵と砕けい!」



かいしんの いちげき!
 
 
 
89 : ◆6I9SwHc8xc [sage sage]:2011/01/23(日) 02:45:02.16 ID:U4Eevslj0
勇者「……」

獣王「……」

勇者「……」

獣王「……グゥゥ……ッ!?」ガクッ

じゅうおうは ゆかに ひざをつき たおれふした!

獣王「バ……バカな……」

勇者「……実を言えば、君と真っ向勝負して勝てるとは最初から思っていなかった」

勇者「私は囮だったのだ。君達の意識を私一人に向けさせるための」

じゅうおうの せなかには まほうで うたれた きずがある……
ゆうしゃは まどのむこうを みつめた
とおくの もりのなかには つえを かまえた けんじゃがいた!

獣王「狙撃……だと……」

勇者「私の仲間に賢者がいる。彼女は肩書きに違わぬ魔法の使い手だ」

勇者「そして彼女は見事に私の注文に答えてくれた」

ズゥゥゥゥゥゥン……!
90 : ◆6I9SwHc8xc [sage sage]:2011/01/23(日) 02:46:18.84 ID:U4Eevslj0
獣王「な、なんだ……? 今の音は……」

勇者「この塔の門を封鎖したんだ……これで誰もこの塔から出られない」

獣王「なに……!?」

そのとき かいぎしつの てんじょうのいたが はずれた
とうぞくが てんじょううらから あらわれた!

盗賊「終わったみたいだね、勇者」

勇者「ああ。君もやり遂げてくれたようだな……」

獣王「どういうことだ……!」

勇者「……たった一人で交渉に乗りこんできた私に、塔の魔物の目を集中させる」

盗賊「その隙に、あたしがあちこちに爆弾を設置して回って、ついでにこいつを頂いたのさ」キラッ

獣王「それは、我が軍の財宝の数々……!」

勇者「君の性格上、私の申し出は却下されるだろうとわかっていた」

勇者「だからこそ罠を仕掛けることは容易だった。賢者は狙撃手を、盗賊は工作と探索を」

勇者「そして私は、最も厄介な敵である君を釘づけにする囮役を務めたというわけだ」

獣王「なんだとォ……!」
91 : ◆6I9SwHc8xc [sage sage]:2011/01/23(日) 02:47:15.59 ID:U4Eevslj0
勇者「……計算では、盗賊に渡した爆弾の全てを一斉に起爆すれば、この塔は完全に崩壊する」

盗賊「アンタも含めて、みんな瓦礫に潰されてペチャンコってわけさ」

獣王「おのれェ……! 卑怯者め!」

勇者「卑劣漢の誹りは甘んじて受けよう」

盗賊「そうさ。仮にも世界を救おうってんだから、これくらいできなきゃ嘘ってもんだよ」

勇者「間もなく、私の魔翌力を注ぎこんで爆弾の起爆装置を作動させる」

勇者「そして私達は転移呪文で安全な場所まで退避する」

勇者「……さらばだ、獣王。君にとっては無駄死にかもしれないが、君の死は無駄にはならない」

獣王「貴様……よくも……!」

ゆうしゃは ふところから きんかを とりだした!

盗賊「……悪いね」

ゆうしゃは きばくじゅもんを となえた!

勇者「――弾けろ」

ばくだんの きばくそうちが さどうした!
それとどうじに ゆうしゃととうぞくの すがたは じゅうおうのまえから きえさった!

獣王「勇者ァァァァァァァァァァァァァ!!!」

とうの いたるところで ばくはつが まきおこる!
92 : ◆6I9SwHc8xc [sage sage]:2011/01/23(日) 02:48:05.45 ID:U4Eevslj0
 
――――――――――
数瞬後
西の塔に近い森の中
所持金:1832G


シュン!

賢者「勇者さん! 盗賊さん!」

盗賊「賢者、勇者を診てやりな。結構なダメージを受けてる」

勇者「……頼む。獣王とやり合うのは流石に辛かった」

賢者「はい。それじゃあ回復呪文を……」ポゥ

けんじゃは じゅもんを となえた!
ゆうしゃは くずれゆく にしのとうを みつめている……

賢者「……ホント、勇者さんって卑怯者ですね」

勇者「かもしれん。だが、獣王の軍勢との全面戦争は避けられた」

盗賊「あたしらだけで片がついたからOKってかい? ……ったく、イカレてるね」

勇者「……すまないが、人心地ついたらひどく眠くなってきた」

勇者「私は寝る。起こさないで……くれ……」バタッ

勇者「」

賢者「……寝ちゃった」

盗賊「……こりゃあまた、死んだように眠ってるね」

賢者「勇者さんでもこんな風になるんだなぁ……」



じゅうおうを たおした!
500の けいけんちを えた!
ごうけい 18900G そうとうの ざいほうを てにいれた!
93 : ◆6I9SwHc8xc [sage sage]:2011/01/23(日) 02:50:38.74 ID:U4Eevslj0
獣王はライオン獣人のイメージ。死んだけど。

もっと日常パートとか番外編とかやってキャラクターを描写していくべきでしょうかね
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/23(日) 02:52:14.51 ID:AR7Vd7Bto
>>93 乙!
できるならやって欲しい
95 : ◆6I9SwHc8xc [sage sage]:2011/01/23(日) 02:53:38.18 ID:U4Eevslj0
>>92の所持金間違えた。
× 1832G
○ 1532G
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/23(日) 04:53:44.81 ID:XvYcVt4DO
更新乙

日常なんかも>>1の好きなように

旅路だったり街の依頼を受けたりとか妄想…('A`)
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/23(日) 11:48:06.19 ID:oY+mjuiyo
うおお乙した。
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/23(日) 15:13:26.11 ID:gjjvfBhp0
乙ー
これは中々惹かれる勇者
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/23(日) 15:43:08.50 ID:tUAAOnCw0
乙です。
目が離せない展開
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/23(日) 15:58:44.70 ID:7qTztmXDo
sagaだぜお兄さん
101 : ◆6I9SwHc8xc [sage sage]:2011/01/23(日) 17:14:00.24 ID:U4Eevslj0
 
――――――――――
翌日
西の塔・跡地
所持金:20432G


盗賊「兵どもが夢のあと、っていうけどさぁ……こりゃ酷いね。あたしらが言うのもなんだけど」

賢者「みんな瓦礫の下に生き埋めですもんね」

勇者「……あまりスマートな手口とは言えなかったが、データは取れた。よしとしよう」ゴソゴソ

勇者「賢者、盗賊。私は王宮に報告書を提出しに行く」

盗賊「報告書? 昨日のことをかい?」

賢者「勇者さん、ちょくちょく王都に戻って報告書と研究レポートを出してくるんですよ」

盗賊「へー、マメだねぇ。あたしはそういうの苦手だし、めんどくさいから、よくわかんないや」

勇者「王国の支援を受ける代わりに発生する義務だ。ある程度は仕方ない」

勇者「それに今回は事の重要性が違う。魔王軍の幹部である獣王を倒したんだ」

勇者「魔王軍としても、我々を無視できなくなったはずだ。戦いはより一層激しくなる」

賢者「……覚悟はしてます」

盗賊「この旅の間は、あたしの身柄はアンタのもんさ。あたしはアンタについてくよ」

勇者「ありがとう。では私は王宮へ向かう。後ほど街で合流しよう」

ゆうしゃは じゅもんを となえた
ゆうしゃの すがたが ふたりのまえから きえさった!
102 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/23(日) 17:15:07.68 ID:U4Eevslj0
 
――――――――――
同時刻
魔王城


魔王「……へ? ちょ、ちょっと、もっかい言ってよ側近くん」

側近「ですから、西の塔の獣王が倒されたと言っているのです」

魔王「嘘だろ? あの魔界一の根性野郎がやられたって?」

側近「残念ながら事実です。斥候に確認させました」

魔王「……おいおい。勘弁してよ。勇者ってマジで強いじゃんか」

側近「つきましては、獣王の葬儀の際、士気高揚のための演説を魔王様に……」

魔王「……あー、オレの人生どうしてこうなっちまったんだ」

魔王「オレは確かに先代の魔王の息子さ。でも何の取り柄もない三男坊だぜ?」

魔王「親父が死んだ後、立て続けに上の兄貴も下の兄貴も死んじまって……」

側近「それはそれは壮烈な戦死を遂げられたとか」

魔王「知るか! なんでウチの家系は命を粗末にする奴ばっかりなんだよ!」
103 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/23(日) 17:15:36.23 ID:U4Eevslj0
魔王「おかげで継承権が繰り下がってオレにお鉢が回ってきちまったし……」

魔王「強大な力を持つ魔界の支配者、そりゃ確かに魔王ってのはそういうもんだよ」

魔王「だけどそれは親父や兄貴達のことなんだもん。オレは全然大したことないってのに」

魔王「……獣王がやられたって聞いたら、他の王も黙っちゃいないだろうなぁ」

側近「でしょうな」

魔王「こう、勇者をやっつけろー! って感じになるんだろ?」

側近「それが当然の反応かと」

魔王「だよなぁ。それで勇者をやっつけてくれるんならいいんだけど、どうかなぁ」

側近「獣王を退けるほどの者です。一筋縄ではいかないかと」

魔王「……オレ、ちょっと出かけてくる。側近くん、あとヨロシク」

側近「行ってらっしゃいませ」

魔王「……気が重いなぁ」
104 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/23(日) 17:16:55.98 ID:U4Eevslj0
 
――――――――――
数分後
魔王城・獣王の間


コンコン

魔王「あー……獣王子。いる?」

ギィィィィ……

獣王子「……魔王様。何か御用でしょうか」

魔王「堅苦しいからやめてよ、そういうの」

魔王「オレが第三王子だった頃からの友達じゃないか。もっと気楽にしようぜ?」

獣王子「ですが、今は魔王様なので……親父殿も礼儀に厳しい人だったし」

魔王「……あのさ、獣王子。獣王が……死んだってのは」

獣王子「聞いています……親父殿が勇者に討たれたと」ワナワナ

魔王「あ、ああ! そうなんだ……それなら話が早いや。あのさ」

獣王子「わかっています。僕にはこれより次代獣王を名乗り、獣王軍を再建します」

獣王子「必ずや勇者を倒し、親父殿の仇をとります!」

魔王「そうそう、その意気……って違う!」

魔王「オレが言うのもなんだけど、獣王子。お前はまだ半人前だろ?」

魔王「勇者なんかに戦いを挑んだら返り討ちに遭うのがオチだ。だからやめとけって言いに来た」
105 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/23(日) 17:18:12.18 ID:U4Eevslj0
獣王子「そんな……! いくら魔王様の命令でもそれは聞けません!」

魔王「命令じゃない。友達としての忠告だよ」

魔王「だって考えてもみろよ。あの魔界一の力自慢のガチムチ根性親父がやられたんだぞ?」

魔王「親父をやられて悔しい気持ちはわかるよ。オレだって親しかった奴を殺されて悔しい」

魔王「でも後追い自殺みたいなことをするこたぁない。やめといた方が身のためだよ。な?」

獣王子「……ですが魔王様。親父殿の死に様をご存知ですか」

獣王子「勇者どもは卑怯にも、騙し打ちで親父殿に膝を突かせた上に」

獣王子「あろうことか止めを刺さず、塔を破壊して生き埋めにしたのですよ!」

獣王子「親父殿の武人の誇りを汚す蛮行、この獣王子は許しておけません!」

魔王「ま、待ってよ。まずは落ち着いて……」

獣王子「これが落ち着いていられますか! ……僕は命に代えても勇者を討ちます」

魔王「やめろよ。命に代えてもなんて言わないでくれ。命はひとつなんだぜ?」

獣王子「とにかく、もう話すことはありません! ……では魔王様、僕はこれで」ダッ

魔王「あっ……行っちまった」

魔王「……完全に頭に血が上ってたなぁ。あいつ、ああなると頑固だしなぁ」
106 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/23(日) 17:20:30.02 ID:U4Eevslj0
??「……あやつも昔から変わらぬのう」

魔王「……あっ、竜姫ちゃんじゃないか。相変わらずボインボインだね」

竜姫「お前は女子を見るとすぐそれじゃの」

魔王「いつから見てたんだよ。ちょっとは手助けしてくれてもよかったじゃないか」

竜姫「……魔王も大変じゃな。獣王子は父の仇討ちのことしか頭にないぞ」

魔王「竜姫ちゃんからも言ってやってくれよ。そうだ、親父さんに頼んで説得してもらえば」

竜姫「ああ、無理じゃ無理じゃ。父上は獣王のことを獣臭いと毛嫌いしておったからの」

魔王「マジ?」

竜姫「うむ、えらくマジじゃ。わらわはあの鬣がフサフサのモフモフで好きじゃったがのう」

竜姫「力づくで止めることもできようが、そうなるとわだかまりが残ってしまうじゃろうな」

魔王「……ったく、命を大事にしないのはオレの家系だけじゃないみたいだ」

竜姫「そのようじゃの」

魔王「……竜姫ちゃん、頼むよ。協力してくれ。やらなきゃならないことが多すぎる」

竜姫「お前もお人好しよのう。生き急いだ死にたがりは放っておけばよかろうに」

魔王「そういうわけにもいかないよ。なにしろ友達だからさ」
107 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/23(日) 17:22:46.58 ID:U4Eevslj0
竜姫「男は義理人情に生きる、というやつか? わらわにはイマイチよくわからんな」

竜姫「魔族の女は利に聡い。損得勘定が第一じゃからの」

魔王「そうかもね。でも、そういうことを気にするのが男ってもんだし」

竜姫「……まあ、お前といると退屈せん。それくらい付き合うてやってもよいぞ」

魔王「おっ、流石ボインボインは話がわかる! 愛してるぜ竜姫ちゃん」

竜姫「ボキャ貧のお世辞や口説き文句ほど聞き苦しいものはないのう」

魔王「お世辞じゃないよ。オレは本心からボインボインな女の子が好きだからさ」

竜姫「こんな奴が魔王とは、魔界も末じゃな……」



魔王「さて、まずやるべきことは……」
108 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/23(日) 17:25:40.17 ID:U4Eevslj0
1.獣王子の説得

2.人間の街へ出て情報収集

3.勇者一行に接触


>>113で魔王と竜姫の行動を決定します
これからたまに魔王サイドの話をする予定
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/23(日) 17:27:58.38 ID:vzT3fTp3o
魔王良い人すぎだろ・・・
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/23(日) 17:30:02.31 ID:OXN6jsZlo
ksk
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/23(日) 17:35:50.93 ID:xXQqhzFFo
ksk
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/23(日) 17:36:15.40 ID:7qTztmXDo
1
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/23(日) 17:36:54.67 ID:OXN6jsZlo
3
114 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/23(日) 17:53:47.05 ID:U4Eevslj0
魔王「勇者一行に接触しよう」

竜姫「勇者どもに?」

魔王「取引を持ちかける。お互い、適当なとこで手打ちにできるようにするんだ」

竜姫「相手は魔王討伐を標榜する輩じゃぞ? お前自身が出向くのは危険ではないのか?」

魔王「確かに、こいつは博打さ」

魔王「だけど博打を打たなきゃ事態は動かない」

魔王「それに最悪、こっちが向こうとの戦いを望まないってのを伝えるだけでも意味はあるはずだ」

竜姫(……バカのくせに考えておるのう)

竜姫「ならば、誰ぞ変身魔法を使える者が必要じゃのう」

竜姫「角や尻尾、耳。人間の街ではわらわ達の姿は少々目立ちすぎるぞ」

魔王「わかった。ちょっと幽魔に頼んでくるよ。とびきりのイケメンの姿をオーダーしてくる」

竜姫「ならばわらわは、三国一の美女を所望するぞ」

魔王「安心しなって。竜姫ちゃんは元から美人だからさ!」

竜姫(……)

竜姫(……しかし、獣王子が暴走しなければよいのじゃが……あやつはファザコンじゃからのう)

竜姫(……わらわが事の趨勢を見極めばならぬか)

竜姫(……魔王は色ボケの上に、バカでお人好しじゃからな)
115 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/23(日) 17:57:32.53 ID:U4Eevslj0
生真面目で律儀でムッツリ研究馬鹿の勇者
陽気でお人好しで女の子が大好きな魔王
当初からこの二人のイメージがあって、こいつらを出会わせたいというのがありました

「竜姫」を「りゅうき」で打ってるんだけど高確率で「龍騎」になる俺のPCを褒めてやりたいです
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/23(日) 18:12:07.16 ID:xXQqhzFFo
りゅうひめで打てばいいんじゃね
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/23(日) 18:22:56.75 ID:RCA16eE8o
「り」っ竜姫を単語登録すれば一発じゃね?
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/23(日) 19:58:56.83 ID:q5LaJM10o
ダゴンナイッ
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/24(月) 00:45:05.48 ID:R1ddtwQ90
乙!頑張ってください!
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 01:34:43.28 ID:lH6rS8u/o
wktk
121 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/24(月) 01:59:14.62 ID:BP2sTImw0
 
――――――――――
同日・午後
王宮
所持金・10000G
 
 
勇者「報告は以上です。いつも通り、研究レポートにも目を通しておいて頂きたい」

王様「うむ、流石は勇者。わずか半年で、あの獣王を倒すとは」

大臣「魔王軍の報復行動に備え、我が軍も軍備増強を図るべきでしょうな」

王様「うむ。魔貨式魔導法も完成に近づいておるようだし、魔王討伐も近いだろうな」

勇者「いえ、まだ検証すべきことは多く、完成には程遠い状態です」

大臣「しかし、実戦で十分な戦果を挙げているではないか」

勇者「獣王討伐も私一人では成し得ぬことでした。仲間の協力があってこその戦果です」

王様「そなたのそういう謙虚なところ、余は嫌いではないぞ」

勇者「いえ、事実を申し上げているだけです」

王様「……では、行け勇者よ。引き続き、魔王討伐に向けて邁進せよ」

勇者「了解しました。それでは失礼します」

ザッザッザッ……
122 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/24(月) 02:00:01.47 ID:BP2sTImw0
 
 
 
大臣「……陛下。どう思われます」

王様「今のところは大丈夫だろう。そもそも、ああいう人種に手綱をつけることはできん」

王様「あの手の人間は自身の興味関心や、理念への共感を動力にする。善悪や忠誠心は二の次だ」

王様「でなければ、あんな鉄面皮を保ってはいられまい」

王様「奴の提出したレポートは魔族の屍を切り刻んだ血で書かれているからな」

大臣「まったく不敬な……とんでもない勇者もあったものですな」

王様「もし、万が一、奴が魔族へのシンパシーを感じるようなことがあれば……」

大臣「勇者は我々に反旗を翻すかもしれない、と?」

王様「……勇者の監視を強化しろ」

王様「魔族は我ら人類にとって憎むべき敵……あるいはモルモットでいてくれなければ」

大臣「勇者にとっても、その方が良心も痛まぬでしょうな」

王様「……もっとも、あの男に痛むだけの良心があればの話だがな」
123 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/24(月) 02:00:41.45 ID:BP2sTImw0
 
――――――――――
同時刻
城下町・市場
所持金:9759G
 

<マイドアリー!
 
勇者「……とりあえず、アイテムの補充は完了だな」

勇者(すぐに出発して、賢者達と合流するか。王都に留まる理由もない)

勇者(私は研究所を辞職した身だ。今更戻っても迷惑だろう)

??「……」ツンツン

勇者「?」

??「……勇者?」クイックイッ

勇者「……君は、僧侶か?」

僧侶「はい……お久しぶりです……」

勇者「ああ」

勇者(懐かしいな。彼女は研究員時代の同僚で、魔法薬学の分野で色々と世話になった)

僧侶「半年……ぶり……」ギュゥゥゥ

勇者「すまない。外套の裾を掴むのはやめてくれないか」

僧侶「あ……ごめんなさい……」ウルウル

勇者「責めているわけではない」
124 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/24(月) 02:02:05.12 ID:BP2sTImw0
僧侶「……急に……いなくなったから……」

勇者「すまない。研究所の皆には迷惑をかけてしまった」

僧侶「……迷惑じゃ……ないですけど……」

僧侶「今は……何をしてるんですか……?」

勇者「君こそ。研究所の皆はどうしている?」

僧侶「変わり……ありません……勇者さんは……?」

勇者「見ての通り、勇者としての任務に従事している。今日は報告書の提出に来た」

僧侶「……髪……」

勇者「?」

僧侶「髪……伸びましたね……」

勇者「ああ、言われてみればそうだな。気にしていなかった」

僧侶「……触って……いいですか……?」

勇者「触っても面白いものではないが」

僧侶「……♪」サッサッ

勇者「?」

僧侶「三つ編み……かわいいです……」

勇者「……君は器用だな。そんなすぐにできるものなのか?」

僧侶「……♪」キリッ

勇者(これが『どや顔』というものか)
125 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/24(月) 02:02:44.46 ID:BP2sTImw0
僧侶「それで……あの……」

勇者「?」

僧侶「あの……勇者さんさえ……よければ……私も」ドキドキ

勇者「……」

僧侶「勇者さんの旅に……お供として……」

勇者「静かに」グイッ

僧侶「……!?」カァァァァ

僧侶(ゆ、勇者さん……大胆です……)ドキドキ

勇者「……」

勇者(誰かに見られている。監視されているのか……?)

僧侶(あ、あ、あ、あうぅ……)グルグル

勇者「……」

勇者「僧侶、場所を移そう」

僧侶「は、は、は、はいぃ……」

僧侶(ゆ、勇者さん……積極的ですぅ……)ドキドキ

ダッ
126 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/24(月) 02:03:31.98 ID:BP2sTImw0
 
――――――――――
数分後
城下町・住宅街
所持金:9759G
 
 
僧侶「……はぁ……はぁ……」

勇者「急に走らせてすまなかった」

僧侶「だ……だい……だいじょうぶ……れすぅ……」ゼーハー

僧侶「あ……あの……勇者さんはどうして……」ゼーハー

勇者「私達を監視している者がいた」

僧侶「え……?」

勇者「いや、監視というより警告と取るべきか。向こうはわざと気配を悟らせていた」

勇者「獣王軍の残党か、それとも他の軍勢からの斥候か……」

勇者「どちらにせよ、君を巻きこむわけにはいかなかった。こちらの都合で申し訳ないことをした」

僧侶「い……いえ……」

僧侶「……」

僧侶「そういうの……勇者さんらしいです……」

勇者「監視者はまいたようだ。部屋まで送ろう」

僧侶「あ……ありがとうございます……」
127 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/24(月) 02:04:33.09 ID:BP2sTImw0
 
――――――――――
20分後
城下町・僧侶の下宿先
所持金:9759G
 
 
勇者「ここでよかったのか?」

僧侶「はい……送っていただいて……ありがとうございます……」

僧侶「その……」チラッ

勇者「どうした?」

僧侶「……引き止めたりして……ごめんなさい……」

勇者「いや、久しぶりに君と会えて嬉しかった」

僧侶「! ……はい……私も……」モジモジ

勇者「また会おう。それまで元気で」

僧侶「はい……また……」

ギィィィ……バタン

タッタッタッ……
 
 
 
僧侶「……勇者さん……」
 
128 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/24(月) 02:05:26.06 ID:BP2sTImw0
 
――――――――――
一時間後
とある街・教会前広場
所持金:9487G
 
 
シュン!

勇者「遅くなってすまない」

賢者「あっ、勇者さんが来ました!」

盗賊「どこで油売ってたん……っておい、なんだいそりゃ。新手の冗談?」

勇者「?」

賢者「プッ……勇者さん、なんで三つ編みなんですか?」クスクス

盗賊「くっ……くくっ。アンタ、三つ編み似合わないねぇ。誰にやってもらったのさ?」ニヤニヤ

勇者「ああ、これか……城下町で友人に会って、それで……」

盗賊「なに、女? あたしらだけじゃなく他にもいるのかい?」

賢者「おっと、それは無視できませんね。どういう関係なんですかー?」
 
 
 
ひさしぶりに ゆうじんと さいかいした ゆうしゃは
そのひ みつあみを とかなかった
 
ゆうしゃとしての しごとに むかんけいの ひとを まきこまない
きびしい たいどを とるべきだと ゆうしゃは けっしんした……
129 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/24(月) 02:07:20.45 ID:BP2sTImw0
なんか番外編っぽいの。僧侶の再登場予定は今のところありません。
やはりというかなんというか、こういうキャラとかエピソードはなんだかこっぱずかしい。
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 02:30:24.51 ID:BTEOjDzHo
乙した。僧侶カワイイのに再登場なしか…
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 03:02:51.85 ID:HWVoY33io
>>129 乙!
恥ずかしいか?別に変ではないから気にしなくて良いと思うが
僧侶の再登場予定なしは残念
132 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/24(月) 08:51:57.43 ID:BP2sTImw0
 
――――――――――
現在
城下町・門前町


魔王「……ここが王都の城下町かぁ。いいね、賑やかでさ」

竜姫「ほほほ。ほれ、周りを見てみぃ。道行く人間どもがわらわ達を振り返って見ておるぞ」

魔王「変身魔法ってすごいよな。鏡で見てみたけど、オレってば超イケメンなんだもん」

竜姫「……ところで魔王よ。天下の往来で魔王とか竜姫とか呼び合うては不審に思われる」

竜姫「呼び名を変えぬか? わらわは令嬢、お前は……楽師とでも名乗るがよい」

魔王「あ、そっか。魔王って言えば人間の敵だもんな。じゃあヨロシク、令嬢ちゃん」

竜姫「ふむ。苦しゅうないぞ、楽師」

魔王「……にしても、楽師かぁ。モテモテくんのオレにピッタリだな」

竜姫「ほう、お前が女にモテておったとは初耳じゃな」

魔王「知ってる? 音楽やってる男ってモテるんだぜ?」

竜姫「わらわの家にはお抱えの楽団がおるのでのう。別に何とも思わぬわ」

竜姫「それより楽師、本来の目的を忘れるでない。勇者に会いに来たのじゃろう」

魔王「そうそう。斥候に聞いたら、勇者が転移呪文で王都に戻ったっていう話なんだよね」

竜姫「勇者の人相風体はわかるのかえ?」

魔王「うん。なんでも、背が高くて、男のくせに鬱陶しい長髪で、眼鏡かけてんだってさ」

竜姫「……大雑把な情報じゃのう。で、所在はわかるのか」
133 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/24(月) 08:52:42.77 ID:BP2sTImw0
魔王「さあ?」

竜姫「……は?」

魔王「二人であちこち探してればそのうち会えるんじゃない?」

魔王「あ、二人っきりで街を回るって、これってデートみたいだよね。やりぃ♪」

竜姫「……そうじゃった。こやつはバカなのじゃった」

魔王「へ? なんで?」

竜姫「……常識的に考えてみぃ。こんな広い都で、たった一人を捜し出すのがどれほど難しいか」

魔王「でも、長身で長髪で眼鏡の男なんてそうはいないよ?」

竜姫「それ以前に、この都にいる人間の数が多すぎると言っておるんじゃ」

魔王「またまたぁ。RPGじゃ、王都って言っても結構狭いもんじゃんか」

竜姫「お前が何を言ってるのかわからん」

魔王「……」

竜姫「……」

魔王「……と、とにかく捜そう! 急いで勇者を捜し出すぞー!」

竜姫「……この、うつけ!」
134 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/24(月) 08:53:31.16 ID:BP2sTImw0
 
――――――――――
一時間後
城下町・市場


魔王「……アレかな」コソコソ

竜姫「うむ……長身、鬱陶しい長髪、メタルフレームの眼鏡……あ奴っぽいのう」コソコソ

魔王「とりあえず勇者に接触できればいいんだけど」

竜姫「その上で取引に持ち込めればわらわ達の思惑通りじゃな」

魔王「……隣のあの子、可愛いなぁ。ちょっと引っ込み思案っぽいけど」

竜姫「うつけ。ああいうのは根暗というのじゃ」

魔王「いやいや、ああいう子は実は情熱的で、ついでに着やせするタイプでボインボインなのさ」

魔王「見た感じ、あの勇者にお熱みたいなのが残念だけど、オレは人妻もイケるから大丈夫」

竜姫「こ奴、いつか去勢してくれようか……」

<ソレデ……アノ……

<ユウシャサンサエ……ヨケレバ……

魔王「おっ、告るのかな? 告るのかな?」

竜姫「お前という奴は……これではただの出歯亀じゃぞ」

魔王「でもさ、今はちょっと出ていきづらいだろ。あの子が告るまで待ってあげようぜ」

竜姫「あ奴らの都合など構ってはいられぬのではないのか?」

魔王「そりゃそうだけど、オレは女の子の都合を優先してあげる主義なんだ」
135 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/24(月) 08:54:18.68 ID:BP2sTImw0
<シズカニ

<……!?

魔王「あっ、勇者が大胆な行動に」

竜姫「天下の往来で女子を抱き寄せるとはやるのう」

魔王「う〜ん……やっぱ男はクールな感じの方がいいのかな。オレもそんな路線で行こうか?」

竜姫「お前には落ち着きと知性がないから無理じゃな」

<……バショヲウツソウ

<ハイィ……///

ダッ

竜姫「む、二人で走りだしたぞ。どこへ行くのじゃ?」

魔王「……気付かれてるのか? まずい、見失っちまう!」

竜姫「追うぞ、楽師」

魔王「当然! ……おい令嬢ちゃん、何やってんだよ」

竜姫「わらわのスカートは走るのには向いてない。ほれ、早うわらわをおんぶせぬか」

魔王「OK。オレ、女の子の頼みならどんな状況でも聞いちゃうよ」

ヒョイッ
タッタッタッ……

魔王「……令嬢ちゃん、オレ達って周りからはどんな風に見えてるかな? 恋人?」

竜姫「貴族令嬢とその家来が精々じゃな。ほれ、無駄口を叩いてないで走らぬか」ペシペシ
136 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/24(月) 08:54:54.23 ID:BP2sTImw0
 
――――――――――
30分後
城下町・住宅街


魔王「ハァ、ハァ、ハァ……」

竜姫「完全に見失ったようじゃな」

魔王「勇者ってなんであんなに足速いんだよ……」ゼーハーゼーハー

竜姫「お前が遅いのじゃ、軟弱者」

魔王「まあ、オレとしては令嬢ちゃんのボインボインが背中に押し付けられてて役得だったけど」

竜姫「……やむを得ぬな。今日のところは諦めて帰るしかなさそうじゃ」

魔王「だね。せっかく勇者を見つけたのになぁ。残念」

魔王「引き続き手下に勇者一行の監視を続けさせて、また適当なところで接触を試みよう」

竜姫「うむ。ほれ、早う帰るぞ。街の外に待機させておる飛竜で魔王城までひとっ飛びじゃ」

魔王「なーんかドッと疲れちまった。早く帰って……ん?」

魔王「……ちょい待ち。帰る前にもうひと仕事やらないといけないみたいだ」

竜姫「……さっさと済ますのじゃぞ。わらわは先に行って待っておるからな」

魔王「大丈夫。デートの待ち合わせ時間は厳守しろってのが家訓でね」
137 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/24(月) 08:55:51.93 ID:BP2sTImw0
 
――――――――――
住宅街・僧侶の下宿付近
 
 
???「……」

魔王「……ヘイ! 何やってんだよ。のぞきか?」

???「……なんだ、お前は」シュタッ

魔王「お前こそなんなんだよ、逆さま野郎。女の子の部屋を覗き見とは、趣味が良くないぜ」

蝙蝠男「……俺を獣王子殿下直属の忍と知っての振る舞いか」

魔王「……獣王子の差し金かよ」

魔王「言っとくけど、あの子は勇者の仲間じゃないぜ。ただの恋する乙女だ」

蝙蝠男「……勇者に繋がる者を捨て置くわけにはいかぬ」

魔王「そう野暮を言わずに、さっさと巣に帰りな。今なら見逃してやるからさ」

蝙蝠男「……何故お前が俺を見つけることができたのか……」

蝙蝠男「とにかく……俺の姿を見た者は生かして帰すわけにはいかん……」

魔王「あ……やっぱりそうくる」

蝙蝠男「……シャアッ!」

こうもりおとこは おともなく とびかかった!
まおうは じゅもんを となえた
こうもりおとこの かぎづめが まおうの のどを ねらう!

まおうは すれちがいざまに しゅうそくした まりょくを かいほうした!
138 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/24(月) 08:57:18.31 ID:BP2sTImw0
蝙蝠男「……!」

こうもりおとこの からだから ほのおが ふきだした!
こうもりおとこは いっしゅんで もえつき ひとにぎりのはいと かした……

魔王「……」

魔王「今のはメラゾーマではない。メラだ……ってね」

魔王「まあ、そんなことはなくて普通にメラゾーマなんだけどさ」

魔王「……」

まおうは はいのやまを けとばした
はいは かぜに ふかれて ひさんしていった……

魔王「獣王子の性格からして、暗殺は好まないはずだ。だからこいつらは監視が目的のはず」

魔王「だけど、こいつらを動かしてるってことは、あいつが本気ってことだ」

魔王「勇者とやり合うのも時間の問題……」

魔王「……急がないとダメかなぁ、やっぱり」

魔王「でもオレも竜姫ちゃんもそう自由に動けるわけでもない。それなりの立場だしね」

魔王「果たして獣王子が行動を起こす前に勇者に接触できるのか……?」

魔王「……ま、今は竜姫ちゃんと空のデートを楽しみますか」



まおうは かるくちを たたきながらも ふあんを かくせなかった
 
そのすうふんご、 おうとの ちかくのもりから いっとうの りゅうが とびたった……
139 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/24(月) 08:59:49.95 ID:BP2sTImw0
番外編の番外編。魔王は大体この程度のバカ野郎です。

竜姫はボインボインです。僧侶は隠れボインボインです。あれ、賢者だけ貧乳……?
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 09:17:47.23 ID:DrDOWVtgo
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/24(月) 09:44:10.83 ID:oS6HmQ7s0
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 09:50:15.04 ID:lH6rS8u/o
おつ!
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 12:59:06.92 ID:Y2b6XCrL0
オツー
そういや魔王は外見どんなんなの?
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 13:56:27.20 ID:KPutIL5Qo
乙おつ
魔王がうる星やつらの諸星で再生される
145 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/24(月) 15:33:05.62 ID:BP2sTImw0
【登場順テキトーなキャラクター紹介】

勇者
男。25歳。身長187p。鬱陶しい長髪にインテリメガネを標準装備。
生真面目かつ律義な性格で、常にベストを尽くそうと努力しているが
最近は結構危険なレベルで金銭感覚が麻痺してきた。

騎士A・B
多分出番はあれっきり。勇者に逃げられはしたものの実力は未知数。

王様
勇者を勇者に任命した人。相手が無修正でなければ決して抜かない男の中の男。

大臣
勇者を大勢の候補者の中から選び出した人。特筆すべき点のない王様の腰巾着。

賢者
女。17歳。身長147p。ショートヘアが可愛らしいボクっ娘。貧乳。
魔法全般が得意。王立魔法大学を飛び級で首席卒業と何気に高学歴だが、
低身長と貧乳が災いし大学では常にマスコット扱いだった。

兵士
勇者を呼ぶためだけにパシらされた不遇の兵士。基本的にいい人。

少女
病気の父のために奔走していたら勇者一行とエンカウントした。
治療後、部屋に残された大量の灰を掃除したのも彼女である。

父親
勇者の実験台にされ奇跡の生還を果たす。
後に「勇者様がいなかったらどうなっていたか」と世界まる見え風に語ったという。

触手
勇者曰く、相手が男でも女でも等しくやらしい。しかし適度にニュルニュルしたら満足する紳士である。

魔族
勇者のあまりの恐ろしさにショック死した人。休日は家族サービスに余念がない。

店主
冒険者ギルドの酒場の雇われ店主。「何故店主が女じゃないんだ」と謂れなき迫害を受けている。

看守
王宮の地下牢にブチ込まれるのは怖い人ばかりなので、盗賊が投獄されてきた時は内心喜んだ。
146 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/24(月) 15:33:56.83 ID:BP2sTImw0
盗賊
女。22歳。身長171p。褐色の肌に銀髪のセミロング。巨乳。
得意技は罠設置とアイテム鑑定。勇者のスカウトに応じて仲間になったが
不覚にも勇者の言葉にグッときてしまったのは彼女の新たな黒歴史である。

狼男
狼男。満月の夜は血が騒ぐため、仲間とバトルドームに興じて超エキサイティンしている。

キメラ
合成獣。ただし合成に用いられた素材の内訳は未だ不明のままである。

獣王
魔王軍幹部の一人。種族はライオン獣人で、獣系魔族の王。
趣味は筋トレで、最近はトレーニング後の効きプロテインにハマっていた。

魔王
男。??歳。身長180p。プラチナブロンドのくせっ毛がチャームポイント。
陽気でお人好しで友達思い。可愛くてボインボインの女の子に目がないが
別に貧乳でも構わないので結局可愛ければ誰でもいい。

側近
魔王の側近。
達成不可能なようで達成可能な少し達成不可能なノルマを部下に課す。被害届は出ていない。

獣王子
獣王の息子。種族はライオン獣人。獣王の死後、その後を継ぐ。
父と二人で「ライオンキング」を観に行ったあの日のことを今でも思い出す。

竜姫
女。??歳。身長169p。金髪ツインテールだが特にツンデレというわけではない。巨乳。
ワガママで高飛車な性格だが魔界を代表するバカである魔王とつるんでいるせいで
ツッコミ役に回ることが多い。当初の予定では勇者に惚れる予定だった。

僧侶
女。20歳。身長160p。目を前髪で隠している。着やせするタイプの隠れ巨乳。
当初の構想では勇者一行に参入する予定だったがどうしてこうなった。
再登場させたくはあるけど再登場予定は今のところなし。

蝙蝠男
獣王子が放った密偵。結局あれはメラだったのかメラゾーマだったのか。
147 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/24(月) 15:36:41.48 ID:BP2sTImw0
とりあえず自分の中でキャラクターを整理するためザッと書き出してみました。
作者が新たな厨二マインドの境地に達したりすることで前触れなく変わることもあるのでご了承ください。
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 17:04:27.75 ID:GZBI47ceo
かまわん続けたまえ
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/24(月) 18:07:53.99 ID:B567cMeI0
乙です。
ばっちこい
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 20:53:45.25 ID:Y/fnZqaDO
ファザコンの獣王子可愛いなwwwwww
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/24(月) 21:01:52.11 ID:S9Si9UxAO
バトルドームって懐かしすぎるww
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/25(火) 00:29:13.51 ID:va3EJlfDO
更新乙ー

ラブコメしないと言ってた>>1はどこへ…しかし胸やら容姿やら出てくるのはSSだし仕方ないのか…

黒歴史作るならいっそ硬派なファンタジー書いてクレヨン
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/25(火) 02:49:29.18 ID:gdaOMGo6o
ラブコメが苦手とは言ってたけど、しないとは言ってないでしょ。
もしかしたら竜姫勇者に惚れるとかあんのかなぁ…と思ってたけど、早々に無くなったぜw
>>1の好きな様に書いてほしいです。
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/25(火) 11:37:21.21 ID:M8OYB8yw0

ファザコン獣王子は死ぬのか生存するのか……
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/25(火) 14:46:14.04 ID:X/ry5cfDO
乙!
メラってことはドラクエ的な世界なんだろうけど、
どうもドラクエのイメージで思い浮かんでこないぜ
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/25(火) 17:53:04.31 ID:JD3KiHWmo
わかりやすく伝えるために引用したんでね?
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/25(火) 18:30:15.95 ID:JuBwdpMIO
世界観どうこうじゃなくダイ大のネタを引用しただけじゃね
158 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/25(火) 20:16:54.21 ID:y+6FDswf0
続き製作中なう。

今更ですが勇者みたいな裏表のないキャラは扱いづらいですね。
最終的に勇者や魔王が誰とくっつくとか、そういうのはあまり考えてません。
誰とくっつけてもいいけど、今の時点では特に必然性を感じませんし。
というか、勇者は生真面目すぎて会話の駆け引きも楽しめない奴なので
恋人ができたところですぐ破局するかも知れません。

きっとバーン様の名台詞は魔界に故事として伝わっていることでしょう。大魔王からは逃げられません。
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/25(火) 20:47:07.62 ID:5l4mowrCo
大魔王様が見てる
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 00:07:12.14 ID:mLutBysAO
>>158

賓乳ボクっ娘が幸せになることに、黒木メイサがダイワウーマンになる以上の必然性を感じます。
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 07:44:01.18 ID:OP1I7UPDO
>>160 なら勇者とくっつかないのは確定だな
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 20:38:27.14 ID:m34eY+AUo
あら、ラブラブコメコメはしないのか
まぁ好きに書いてくれればそれでいいが
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 07:33:02.37 ID:WQO1i7xDO
ラブコメ無しなんてかっこいいじゃん
期待
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 18:29:28.85 ID:NZldc3NIO
面白いのでお気に入りに挿入
継続的に支援させていただく
165 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/27(木) 20:30:16.96 ID:KbiGDNjY0
 
――――――――――
現在
魔王城・獣王の間
 
 
竜姫「……暇じゃのう」

竜姫「わらわもゆくゆくは父上の後を継ぎ、竜女王とでも名乗るのじゃろうが」

竜姫「父上もまだまだ現役、あと500年はこのままじゃろうなぁ」ゴロゴロ

獣王子「……竜姫。どうして僕のところで暇そうにするんですか」

獣王子「そんなに暇なら、自分の部屋でゴロゴロしていればいいでしょうに」

竜姫「たわけ。なんで暇な時に一人きりにならんといかんのじゃ」

竜姫「魔王の奴も側近に捕まっておってのう。ほれ、近う寄れ。鬣をモフモフさせるのじゃ」

獣王子「僕は忙しいんです。貴女に構っている暇はありません」

竜姫「つれないのう」

獣王子「帰ってください。僕はもう、貴女や魔王様と遊んでいられる立場ではないんです」

竜姫「おやおや、今度は立場を盾に取るのかや。魔王があんなに心配しておったのにな」

獣王子「魔王様のお心遣いには感謝しますが……」

獣王子「……いえ、それでも僕は新たな獣王としての責務を果たさねば」

竜姫「頑なじゃのう……」
166 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/27(木) 20:32:27.57 ID:KbiGDNjY0
竜姫「……よいか、魔王はバカじゃ。それくらいお前も知っておろう」

獣王子「仮にも魔王様に向かってバカだなんて、無礼です」

竜姫「事実じゃろ? あ奴は魔界を代表する大うつけ、しかも魔力も大したことはない」

竜姫「じゃが、他人のために真剣になれる、まっすぐなバカじゃ」

獣王子「……」

竜姫「まこと、魔王らしからぬ大うつけよのう。いずれ痛い目を見るじゃろうな」

獣王子「……何が言いたいんですか。魔王様のために仇討ちをやめろとでも?」

竜姫「さあ? どうであろうな。わらわは、魔王の奴がバカだという話をしておるだけじゃ」

獣王子「……たとえ、魔王様が僕のことを思って忠告して下さっているのだとしても」

獣王子「父を殺した勇者を許すことはできません。一族の誇りのためにも」

竜姫「そうじゃろうな。それが魔族の男として正しい反応じゃ」

獣王子「とにかく、帰ってください。貴女に構っている暇はないんです」

竜姫「……そうじゃな。今日のところはこれで帰るとしようかや。ではのう」

バタン

竜姫(……こりゃあダメじゃな。完全に勇者を倒すことに固執しておる)

竜姫(魔王は停戦……あるいは裏取引による解決を望んでおる)

竜姫(友である獣王子のためでもあるが、自分が死にたくないというのもあるのじゃろうな)

竜姫(しかしそれには、魔王軍の幹部があと一人か二人……それくらいの生贄が必要となるか……)

竜姫「あるいは……」
167 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/27(木) 20:33:41.30 ID:KbiGDNjY0
 
――――――――――
一年前
王立魔法大学
 
 
賢者「……お世話になりました、教授」

賢者「お陰様で正式に賢者の称号を賜り、春から王宮で働くことになりました」

大賢者「うむ、おめでとう。我が王立魔法大学始まって以来の秀才を手放すのは惜しいが……」

大賢者「君の魔法体系論は多くの教育機関で取り入れられ、多大な成果を挙げている」

大賢者「今度は王宮で、この国のために働きなさい」

賢者「はい! ……それで、教授は」

大賢者「うむ。私はやはり、これを機に引退することにするよ」

大賢者「私の教育者人生の最後に、君を一人前の賢者に育て上げることが目標だった」

賢者「残念です。研究室の皆も、とても寂しがって……」

賢者「ボクだって、教授から教わりたいことはまだまだ沢山ありました」

大賢者「なに、大学を辞職することになるが、今生の別れでもあるまい」

大賢者「また何かあったら、いつでも私を訪ねるといい。それまで息災でな」

賢者「はい。教授、今までありがとうございました」
 
 
 
賢者(……それから半年、王宮の賢者として魔法指南役の職に就いていたボクは)

賢者(魔王討伐のため派遣された勇者さんのお供に志願し、パーティの一員に加わることになった)

賢者(……そして、あっという間に半年が経った)
168 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/27(木) 20:34:43.91 ID:KbiGDNjY0
 
――――――――――
現在
とある村・宿屋
所持金:23724G
 
 
チュンチュン……

賢者「ん……」

賢者「ふあぁぁ……」

賢者「……なんだか、懐かしい夢だったなぁ……教授、今どうしてるんだろう」

賢者「盗賊さん、起きてください。もう朝ですよ」

盗賊「う〜ん……あたしのポン菓子ぃ……」ムニャムニャ

賢者「寝ぼけてないで起きてくださいよぉ」ユッサユッサ

賢者(勇者さんはもう起きてるんだろうな……あの人、えらく早起きだし)

盗賊「んっ……うぅ〜……もう朝……?」

賢者「はい、もう朝です。一緒に顔洗ってきましょう?」

盗賊「そうだね……」

賢者(勇者さんとは逆に、盗賊さんは朝弱いんだよなぁ)
169 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/27(木) 20:37:16.11 ID:KbiGDNjY0
賢者「おはようございます、勇者さん」

盗賊「おはよぉ〜……」

勇者「おはよう」ペラッ

賢者「……? 勇者さん、それなんですか? すごく上等な羊皮紙ですけど」

勇者「今朝早く、王宮から届けられた指令書だ。君も目を通してくれ」

盗賊「王宮から直接指令が届けられるなんて珍しいね」

賢者「それだけ重要な案件ってことでしょうか……どれどれ」

盗賊「王宮の書庫から無断帯出された禁書の回収……? なんだい、これ」

勇者「今回の案件は王宮というより、教会の要請によるものだ。禁書目録は知っているな?」

賢者「それは勿論。教会が作成する、所持・売買が禁止された書物のリストですよね?」

勇者「そうだ。教会とその信徒に対して有害であると見なされた書物が掲載されるのだが……」

勇者「王宮の書庫の禁書棚から数冊が無断帯出されている。いずれも同一人物によるものだ」

賢者「それって、危険な魔術書とか……?」

勇者「近いな。これは教会の教義に反する以上に、兵器にも転用できる技術だ」

勇者「持ち出されたのは、錬金術によって生まれる人造人間――ホムンクルスに関する資料だ」
170 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/27(木) 20:38:09.66 ID:KbiGDNjY0
盗賊「人造人間……ってことはなにかい? 人間をそっくり造っちまうってのかい?」

賢者「はい。過去に偉大な錬金術師が製法を発見したという、人口生命体です」

賢者「でも錬金術は現在ではロストテクノロジーですよ。再現できるとは思えません」

勇者「いや。現在の魔法科学でも、完全とまではいかないが、かなり近いところまで再現できる」

盗賊「……ゾッとしないね。なんだか気味が悪いよ」

勇者「……人間が人間を造るという行為は、神への挑戦であり冒涜であるとして」

勇者「教会の異端審問機関はそれを異端であると断じている」

勇者「主にそうした圧力によって、現在人工生命に関する研究は禁忌とされている」

賢者「教会を敵に回したらとてもやっていけませんからね」

盗賊「で、兵器に転用できるってのはなんでだい?」

勇者「……伝承では、ホムンクルスは生まれながらにして様々な知識を持っているという」

勇者「普通、一人前の兵士を育成するには多くの時間と金が必要だ。人員を割く必要もある」

勇者「だが、ホムンクルス製造の過程でそうした分野の知識を学習させることができれば」

賢者「生まれながらの兵士が誕生する……と?」

盗賊「さしずめ人造兵士、ってとこかい」

勇者「兵士の教育の手間を省いてしまえる上に、それを量産化できる。これは危険だ」
171 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/27(木) 20:38:40.69 ID:KbiGDNjY0
盗賊「……それにしても、禁書を持ち出した奴がわかってるんなら、教会の連中がやりゃいいのに」

賢者「でもそれをしないってことは、手出ししづらい理由があるんですね?」

盗賊「よっぽど強い奴が持って行ったとか……」

勇者「とにかく、可及的速やかに資料を回収する必要がある。この技術が流出したらまずい」

勇者「情報によればこの村の近くに住んでいるらしいのだが……」

賢者「どんな人なんですか? 資料を持ちだした人って」

勇者「ああ。それについては同封されてきた資料に書かれている。目を通してくれ」ペラッ

盗賊「どんな奴なんだかねぇ。やっぱ、ヤバい奴なのかな」

勇者「……正直、意外な人物だった。まさか彼が禁忌とされる研究に触れようとは……」

ペラッ

賢者「……!」

盗賊「? 賢者、どうしたんだい?」

賢者「……勇者さん、嘘ですよね? この人が禁書の持ち出しなんて……」

勇者「残念ながら事実だ。鑑識班の識別魔法によって彼のいた痕跡が見つかっている」

盗賊「賢者……まさか、アンタの知り合いかい?」

賢者「……はい……」

賢者「この人は、ボクが大学在学中に所属していた研究室の……教授で……」

賢者「……ボクの恩師の、大賢者です」
 
 
 
おうきゅうからの しれい

【ホムンクルスにかんする しりょうを かいしゅうせよ!】
172 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/27(木) 20:41:09.77 ID:KbiGDNjY0
一度くらいは賢者回を書いておこうと思った。後悔はしていない。

正直勇者が相手では誰をくっつけてもラブコメにはならないと思う。
始めて一週間近く経ちましたがこの認識だけは変わってません。
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 20:42:28.65 ID:Hgs84wJDO
乙乙
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 20:44:31.87 ID:LQ2FfDfeo
乙ー
良い展開ダナー
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 20:46:27.27 ID:NZldc3NIO
乙乙なんだな
おもろー
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 21:33:48.78 ID:KxGDTLi3o
そうか僕っ娘と盗賊ちゃんの
百合物語になるのか
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 22:30:44.00 ID:ZqJpZLYFo
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 23:08:04.66 ID:GTVt8p6/o
>>172 乙!
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 23:34:40.74 ID:1cgQcA+Ho
>>176
180 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/28(金) 08:51:50.11 ID:Sfgt0JuG0
何故……俺が百合も好きだということがバレたのだ……!?

盗賊×賢者もいいですが盗賊×僧侶もよさげですね。
特に僧侶はきっと耳年増で色々エロい。多分。
181 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/29(土) 14:58:37.85 ID:yywrOjTl0
 
――――――――――
同日・昼
森の奥の館・玄関前
所持金:23724G
 
 
盗賊「……あの館だね」

勇者「そのようだ。情報によれば、大賢者はこの館に住んでいるらしい」

賢者「……」

賢者「本当に、教授がホムンクルスの研究を……?」

勇者「私も半信半疑だ。大賢者といえば、王立魔法研究所でも有名な、魔法学の第一人者だった」

盗賊「そんな有名人が、なんだってこんなことしようと思ったんだかねぇ」

勇者「先程も言った通り、ホムンクルスは危険な技術だ。だがそれだけに金になる技術でもある」

盗賊「金のなる木ってやつだね。それとも金の卵を産む鶏かな」

勇者「私個人としても、研究者としてまったく興味がないと言えば嘘になる」

盗賊「人間、金と権力が絡むとどうなるか知れたもんじゃないからね。その大賢者ってのも……」

賢者「……教授はそんな人じゃありません!!」

盗賊「……っ」

勇者「……」

盗賊「……悪いね。ちょっと、無神経だったよ」

賢者「いえ……ボクも、大声を出してしまって……」
182 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/29(土) 14:59:08.16 ID:yywrOjTl0
勇者「とにかく、任務を遂行する。盗賊、この周辺に罠や仕掛けはないんだな?」

盗賊「ああ、それらしいもんはなかったよ。玄関の鍵も開けておいた」

勇者「よし。では行こう」

盗賊「賢者……大丈夫かい?」

賢者「……はい。行きましょう。ボクも教授に会って、直接話がしたいです」

勇者「では、行こう」

ギィィィィィ……

ザッザッザッ……

盗賊「中は結構綺麗だね。掃除も行き届いてるし……」

賢者「教授はまめな人でしたから。自分で掃除したんだと思います」

盗賊「そうなのかい? 学者先生の家ってのは、もっと散らかってるもんだと思ってたよ」

盗賊「……いや、ここにもいたね、学者先生が。勇者の部屋はキチッと整理整頓されてそうだ」

勇者「油断するな。相手は仮にも大賢者の称号を持つ男だ」

勇者「盗賊。大賢者がどの部屋にいるか、わかるか?」

盗賊「いいや。外から見てわかるように、全部の窓が塞がれてるかカーテンが閉じてたよ」

勇者「一部屋ずつ回って探すしかないようだな」

賢者「じゃあ、分かれて探しましょう。その方が効率的です」

盗賊「一人になったら危険じゃないかい? アンタ、子供だし」

賢者「子供じゃありません!」
183 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/29(土) 15:00:11.37 ID:yywrOjTl0
勇者「賢者と盗賊は二人で1階を探索してくれ。私は2階を探索しよう」

盗賊「了解、賢者はあたしに任せときな。何かあったら呼びに行くよ」

賢者「むぅ……仕方ないですね」

盗賊「じゃ、行くよ。勇者も気をつけて」

勇者「わかった。君達も注意して探索してくれ」
 
ゆうしゃは かいだんをのぼって にかいへ むかった
 
盗賊「さて、あたしらも行きますか……」

盗賊「……ところでさ、賢者」

賢者「なんですか?」

盗賊「大賢者――アンタの言うところの教授だけど、どんな人だったんだい?」

盗賊「アンタがそこまで尊敬してるんだ、よっぽど凄い人だったんだろうけど」

賢者「……」

賢者「……教授は元は王宮に仕えていた賢者で、30年前の魔王討伐遠征にも参加したらしいです」

賢者「終戦後に王立魔法研究所に入って、近代魔法研究の第一人者として名を挙げて」

賢者「その後、王立魔法大学の客員教授として迎えられ、多くの賢者を育てました」

盗賊「アンタもその一人、ってわけだね」
184 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/29(土) 15:01:42.44 ID:yywrOjTl0
賢者「魔法学だけじゃなく、畑違いの占星術や死霊魔術などにも造詣が深い人でした」

賢者「何度かその筋の研究者が会いに来ていたのをよく覚えています」

賢者「ボクは在学中、新しい魔法体系論の論文を発表しましたが、教授の助けなしにはとても……」

盗賊「……感謝してるんだね、大賢者に」

賢者「はい……教授は、よくボクにこう言いました。自分のためだけの人生は虚しいものだって」

賢者「そのような人間は、いつか必ず、その孤独な生き方を悔やむ日が来る」

賢者「誰にも影響を与えることなく、一人ぼっちで終末を迎えることになる……って」

賢者「ボクは秀才だなんだってちやほやされたけど、それは自分のためでしかなかった」

賢者「でも教授は、ボクや他の学生のために色々なことを教えてくれて、手伝ってくれて……」

賢者「ボクはそこに真実があると感じました。確かに信じられるものがあると」

賢者「だから、王宮に仕えてこの国のために働こうと思ったんです」

賢者「それから、勇者さんのお供になって、魔王討伐。国中の人々の平和のために、って」

賢者「いつか、教授みたいな立派な賢者になりたくて……」

盗賊「……そっか。アンタ、いい先生に恵まれてるよ」

賢者「……ありがとうございます」
185 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/29(土) 15:02:36.72 ID:yywrOjTl0
 
――――――――――
同時刻
森の奥の館・2階
所持金:23724G
 
 
勇者(2階は暗いな。全ての窓に板が打ちつけられて塞がれているからか……)

勇者「――灯せ」

ゆうしゃの てのひらに ちいさな ひが ともった
しゅういが ほのおの あかりで てらされた

ゆうしゃは にかいの かくへやを たんさくしていった……
しかし なにも みつからなかった
ゆうしゃは いちばんおくの とびらを あけた

勇者「ここは書斎か。資料はどこにあるんだ……?」

ゆうしゃの てのひらから ともしびが うきあがり へやぜんたいを てらした
ゆうしゃは ほんだなを さがしはじめた

勇者(この文献は魔法工学、これは錬金術について……)

勇者(これは……『人間の記憶の保存と出入力』……?)

勇者(やはり、大賢者がこの館でホムンクルスの製造を行っているのは間違いない)

勇者(指令内容は資料の回収だったが、場合によっては……ん?)

勇者「これは……」
186 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/29(土) 15:03:30.26 ID:yywrOjTl0
 
――――――――――
同時刻
森の奥の館・1階
 
 
賢者「……! 盗賊さん」

盗賊「……ああ、この先に何かあるね。嫌な感じがするよ」

賢者「この先の部屋に不自然に魔力が滞留しています。これは明らかに人為的なものです」

賢者「……多分、教授はこの先にいます」

ギィィィィ……

とびらを あけると かなりのめんせきの おおべやだった
だいしょうさまざまな そうちに かこまれて ひとりのおとこが たたずんでいる

盗賊「……あいつかい?」

賢者「はい。間違いありません……」

大賢者「――誰だ? 先程から、何者かがコソコソと嗅ぎ回っているのは知っていたが」

盗賊「あら、バレてた」

大賢者「もう少しで私の目的は達成されるのだ。私をそっとしておいてくれ……」

賢者「教授!」

大賢者「……!? 君は……」

賢者「ボクです、教授。大学で、教授の研究室にいた……」

大賢者「……久しぶりだ。勇者のお供として魔王討伐の旅に同行したと聞いていたが……」
187 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/29(土) 15:04:06.89 ID:yywrOjTl0
賢者「ボク達は、無断帯出された禁書の回収に来たんです……ホムンクルスに関する資料を」

盗賊「アンタが持ち出したってんで、何故かあたしらにお鉢が回ってきたのさ」

賢者「教授。どうしてこんなことをしたんですか。それにこの部屋にある装置は……」

大賢者「……」

大賢者「……いいだろう。君には話しておこう、私のやろうとしていることを」

大賢者「あれを見たまえ」

だいけんじゃの ゆびさしたさきには ばいようえきで みたされた すいそうが ある
その すいそうのなかで おんなのこが ねむっている……

盗賊「これがホムンクルス……? ホントに人間そっくり、そのものじゃないか」

賢者「……これが、教授の造ったホムンクルス」

大賢者「いや……ホムンクルスなどと呼んで欲しくはないな。彼女は私の娘だよ」

盗賊「はぁ?」

大賢者「伝承に語られ、資料に書かれていた製法では完全な生命体を造るのは不可能だった」

大賢者「だから私は独自の解釈と改良を加え、それを完成させたのだ」

賢者「……でも教授の娘さんって、確か」

大賢者「……」
188 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/29(土) 15:04:40.61 ID:yywrOjTl0
大賢者「私は当時の勇者パーティの一員として魔王討伐遠征に参加し、魔王を討った」

大賢者「その後、後世に何かを残せるかと研究一筋の生活を送ってきたが……」

大賢者「……研究者にはよくある話だ。家庭を顧みず、その結果、家族はバラバラになり……」

大賢者「妻は男を作って出て行った。娘は魔物に襲われて命を落とした」

大賢者「私はやり直したいのだ。また家族と一緒に……三人で……」

盗賊「だから、ホムンクルスの家族を造ってやり直すのかい」

賢者「そんなの馬鹿げてます! 禁忌の研究に手を染めるなんて、教授は……!」

大賢者「これを禁忌と規定したのは教会だ。所詮、つまらんモラルの反論でしかない」

大賢者「見たまえ、私の造った人工子宮と培養槽、それに睡眠学習装置だ」

大賢者「これで完全な肉体を、そして完全な記憶を備えたホムンクルスが生まれる」

賢者「おかしいですよ……こんなのおかしいですよ! 教授!」

大賢者「……賢者。私は以前、君に言ったな。自分のためだけの人生は虚しいと」

大賢者「私の人生はまさしくそうだった。気づけば取り返しのつかないところまで来ていたんだ」

大賢者「だから私は取り戻すのだよ。自分の手で、自分の家族を。幸福を」

ザッ……

勇者「話は聞かせてもらった」

賢者「勇者さん!」
189 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/29(土) 15:05:19.73 ID:yywrOjTl0

盗賊「勇者、2階には何かあったかい?」

勇者「資料は見つからなかった。おそらく、彼が持っているのだろう」

大賢者「……君が今の勇者か」

勇者「そうだ。大賢者、あなたのご高名はかねがね」

大賢者「せっかく来てもらって悪いが、今日は娘の誕生日なのだよ。お引取り願えないか」

勇者「……錬金術と死霊魔術の応用によるクローン・ホムンクルス。そしてブレインコピー」

勇者「人工生命というより、一人の人間を複製しようという試み。一研究者として興味は尽きない」

勇者「よければ、後学のために誕生の瞬間を見学させて頂きたい」

賢者「な……」

盗賊「勇者、何言ってんだい! こいつを止めるんじゃないのか!?」

大賢者「ふふ……なんだ? 勇者よ、何を企んでいる。私を罠にはめようとでも?」

勇者「いや、私はその必要を感じていない。単純に、個人的な知的好奇心の問題だ」

盗賊「アンタ、ホムンクルスは危険だって言ってたろう! いきなり何を言い出すんだい!」

賢者「勇者さん……」

勇者「さあ、大賢者。やってみせてくれ。私は一切手出しをしない」

大賢者「勇者……君は私と同じ、一介の研究者だったそうだな。君なら理解を示すと思っていたよ」
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/29(土) 15:05:44.92 ID:RFsAH5EVo
アグネスAAが・・・
191 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/29(土) 15:05:50.49 ID:yywrOjTl0
ガチャン!
ゴボゴボ……

だいけんじゃは そうちの レバーを おしこんだ
ばいそうようの えきたいが はいすいされていく……

やがて ばいようそうのふたが あき ねむっていた ホムンクルスが めをさました!

大賢者「お……おお……!」

大賢者「成功だ! 外気に触れても何の影響もなく、肉体的には異常は見られない……」

大賢者「我が娘は……再び完全な肉体を得て、蘇ったのだ!」

大賢者「娘よ……私だ、わかるか?」

大賢者娘「……パパ?」

大賢者「そうだ、パパだ。体の具合はどうだ? 気分は悪くないか?」

大賢者娘「ううん……なんだか調子がいいみたい」

勇者「記憶のコピーも万全のようだな」

盗賊「おいおい、生まれてほんの数秒だろ……? なんで普通に歩いて、口を聞いてるのさ……」

賢者「……これが、教授の完成させたホムンクルス……」

大賢者「娘よ、今まで放っておいてすまなかった」

大賢者娘「……ママは?」

大賢者「ああ、ママももうすぐ戻ってくるとも」

大賢者娘「パパとママと、私で、一緒に暮らすの……?」

大賢者「そうだとも。何も心配することはない。全て取り戻せるんだ……」

大賢者娘「そうなんだ……」

大賢者娘「……」

大賢者「なんだ、娘よ。どうかしたのか? ああ、そうだ。今、着替えを……」
192 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/29(土) 15:06:27.49 ID:yywrOjTl0
  
むすめは じゅもんを となえた!

だいけんじゃにむかって ほのおのうずが あれくるう!

だいけんじゃは 194の ダメージを うけた!
 
193 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/29(土) 15:06:56.26 ID:yywrOjTl0
賢者「教授!?」

盗賊「な……!?」

勇者「……」

だいけんじゃは たおれた!
じぶんの みに なにがおこったのか わからないようだ……

大賢者「む……娘よ……何故……!?」

大賢者娘「……」

大賢者娘「……ママも『造る』のね? 私みたいに」

大賢者「……!」

大賢者娘「なんだかね、だんだん頭がハッキリしてきたのよ」

大賢者娘「私は模造された人間だって、わかるの。記憶だけが不自然に鮮明だからかしら」

大賢者娘「ママが出て行った時のことも、私が魔物に殺された時のことも、よく覚えてるわ」

大賢者娘「それにね、この体、すごく違和感を感じるの。自分の体じゃないみたいで」

大賢者「あ……ああ……」

大賢者娘「目が覚める前に、聞こえてたのよ。ホムンクルスがどうたら、って」

大賢者娘「……私は、パパに造られたんでしょう?」
194 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/29(土) 15:07:55.53 ID:yywrOjTl0
勇者「……やはり、か」

賢者「やはり、って、どういうことですか?」

勇者「大賢者の書斎に、研究内容に関するメモ書きが残されていた」

勇者「ホムンクルスが様々な知識を持って生まれてくるのは、自分で見聞きするからだと」

勇者「彼らは深い眠りの中にありながら、周囲の環境を学習しているという内容だった」

賢者「つまり、あの子はボク達の会話を聞いていたってことですか?」

勇者「そうだ。更に、大賢者の記憶の保存とホムンクルスへのインプットは完璧だった」

勇者「しかし生前の記憶をそのまま移植したために、記憶の矛盾点を残してしまった」

勇者「……そして、悪意という記憶さえも継承していたはず」

盗賊「それじゃあ、あの子は大賢者を……憎んでたってこと?」

賢者「そんな……」

大賢者娘「だいたい、自分勝手にも程があるわよ」

大賢者娘「自分が家庭を顧みなかったくせに、代わりの家族を造ってやり直そうだなんて」

大賢者娘「私は何なの? パパのお人形さん?」

大賢者「違……う……」
195 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/29(土) 15:08:27.16 ID:yywrOjTl0
大賢者娘「何が違うってのよ……そうやって、自分が救われた気分になりたいだけじゃないのよ!」

大賢者「……」

大賢者娘「パパ、そっちの子に言ってたわね。自分のためだけの人生は虚しいって」

大賢者娘「ホントその通りよね。パパは最後まで一人ぼっち、家族の気持ちは揃わないまま」

むすめは じゅもんを となえた!
むすめの てのなかに ほのおが もえあがる!

大賢者娘「じゃあ……死んで」

むすめは だいけんじゃに ほのおを たたきつけた!
だいけんじゃは 101の ダメージを うけた!

大賢者「あ……あ……!」

だいけんじゃは こえにならない さけびをあげ やがて ちからつきた……

賢者「あ……き……教授……?」

賢者「死……んだ……?」

大賢者娘「ふふ……あはは、あははははははははははははははははははは」

むすめは くるったように わらっている

賢者「そんな……そんなのってないですよ……」

けんじゃは そのばに へたりこんだ……
196 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/29(土) 15:09:13.63 ID:yywrOjTl0
賢者「……勇者さん! 勇者さんはこうなるってわかってたんですか!?」

勇者「おそらく拒絶されるであろうと思っていた。殺すことまでは予想外だったが……」

勇者「だが、彼女を始末し、資料を抹消する口実ができた。よしとしよう」

ゆうしゃの てには いつのまにか ひとふりの ナイフが にぎられていた
ゆうしゃは ゆっくりと むすめのほうに むかって あるきはじめた

盗賊「……あの子、殺すのかい?」

勇者「そうだと言ったら、君は私を止めるのか?」

盗賊「そりゃあ……相手は生まれたばかりの赤ん坊みたいなものじゃないか」

勇者「その生まれたばかりの赤子に大賢者は殺された。彼女の存在は危険極まりない」

勇者「やはり後の世に残すべき技術ではない。指令に反するが、資料も併せて処分する」

賢者「……」

勇者「賢者。結果論ではあるが、大賢者はホムンクルス技術の危険性を身をもって証明した」

勇者「ショックは大きいと思うが、堪えてくれ」

賢者「やめてください……勇者さんのくせに、そんな慰めるみたいな……」

勇者「……すまない」

賢者「やめてください……やめて……!」

むすめは いぜんとして わらいつづけている
ゆうしゃは いっきに きょりをつめ むすめの のどを きりさいた
むすめは きもちのわるい こえを だしながら たおれた

むすめが ちからつきる そのまぎわ、 むすめの めから なみだが こぼれおちた……
197 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/29(土) 15:10:41.19 ID:yywrOjTl0
 
――――――――――
数分後
森の奥の館
所持金:21690G
 
 
やかたは あかいほのおに つつまれている……

盗賊「……後味が悪いね、どうも」

盗賊「ホントに、館ごと燃やす必要があったのかい?」

勇者「研究資料や製造装置は残してはおけない。これは必要な措置だ」

賢者「……」

盗賊「……賢者。元気出しなよ」

賢者「いえ……ありがとうございます。ボクは大丈夫ですから」

勇者「辛い思いをさせてしまった。すまない」

賢者「なんですか、さっきから。勇者さんらしくないですよ?」

賢者「さあ、王都に戻って報告しましょう! 資料を処分したこと、どう説明しましょうか?」

勇者「賢者」

賢者「じゃあ、ボクは先に行きますからね! ちゃんと着いてきてくださいね、二人とも」

盗賊「賢者……」
 
けんじゃは じゅもんを となえた
けんじゃのすがたが ゆうしゃと とうぞくのまえから きえさった!

ゆうしゃと とうぞくは なにもいわず もえさかるやかたの まえから たちさった……
 
 
 
おうきゅうからの しれい:しっぱい

ゆうしゃは ホムンクルスに かんする すべてのしりょうを しょぶんした
198 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/29(土) 15:12:49.81 ID:yywrOjTl0
このスレは全何話なのか自分でもよくわかってません。
当初は一話完結的に色々やろう、と漠然と考えていただけだし……
現在の目標は、とりあえず失踪しないことだけです。
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/29(土) 15:47:28.66 ID:AF4EY/y6o
支援
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/29(土) 16:25:06.74 ID:2N2fROiIO
がんばれ、応援してるぜ
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/29(土) 18:08:23.20 ID:c10twlTDO
シリアスで良いな賢者娘が仲間になってたりなんかしたらスレ閉じてた支援
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/29(土) 21:21:04.14 ID:k4za+N2mo
支援
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/29(土) 22:34:17.28 ID:ZJOkcIvV0
乙です。
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/29(土) 22:58:32.69 ID:+hFXByBVo
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/29(土) 23:47:30.18 ID:WAf/qXWIO
完結まで着いて行きます先生
こんな素敵な話を書けるんだから
失踪する理由なんてないはず
206 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/01/30(日) 22:52:03.70 ID:bp+aOAyn0
業務連絡
 
 
               ____
             /      \
           / ─    ─ \
          /   (●)  (●)  \   やべえ明日からテストだよ
            |      (__人__)     |
          \     `⌒´    ,/   こんなことやってる場合じゃなかった
          /     ー‐    \
 
 
今週は忙しくなるので続きを書くのが滞ると思われます
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 23:41:33.01 ID:fcpn2FkOo
舞ってる
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/31(月) 05:23:54.08 ID:VkSa4COUo
>>207
舞ってどうするんだよwwwwwwww

>>206
期待してる
ゆっくりでもいいけど失踪はするなよ
絶対だからな
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/31(月) 08:12:51.15 ID:UW3/NODIO
俟ってる
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/31(月) 20:57:13.24 ID:5o3hU1KTo
───舞え、蝶の様に(訳:全裸でフォークダンス踊って待ってます)
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/01(火) 23:55:33.87 ID:yOtGR7ubo
ならば私も纏う
このネクタイを!
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/02(水) 00:57:37.50 ID:cm0kIEY9o
靴下でもよければご一緒しよう
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/02(水) 01:07:57.81 ID:btsWiWhVo

    ∧_∧ ♪
. ((o(・ω・` )(o))
   /    /
   し―-J

   ∧_∧
 ((o(´・ω・)o))
    ヽ   ヽ ♪
    し―-J
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/02(水) 20:11:59.10 ID:GouTdtZAO
追いついたー
支援
215 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/03(木) 07:52:09.59 ID:XvQPYi0h0
にわかにタモリ倶楽部の様相を呈し始めたスレに俺参上!
 
 
今日の夜あたりに投下できたらな〜と考えてます
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/03(木) 14:16:48.14 ID:cFPZydTco
待ってる!
217 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/03(木) 16:08:17.54 ID:OWrRsxTS0
出先からテスト
218 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/03(木) 16:09:01.67 ID:OWrRsxTS0
 
――――――――――
現在
エルフの里付近の森
所持金:30566G
 
 
勇者「貨幣が人間の欲望の象徴であるのは、欲望というものが目に見える卑しいものだからだ」

盗賊「卑しい、って決めつけていいのかねぇ。欲望ってのはもっと複雑だと思うけど」

勇者「もちろん、人間の欲とは金銭欲だけではない。生理的・本能的なものも多い」

勇者「しかし今日の社会においては、多くの欲望は金銭と結びつけることができる」

勇者「所持金の多寡は人間社会の中で、最もわかりやすく、数値化しやすいステータスのひとつだ」

盗賊「ま、普通に考えるなら、貧乏人より金持ちの方が魅力的だろうね」

賢者「だから勇者さんの魔法で扱っているように、魔法的な意味や強い念が宿るんですね」

勇者「私はその仮説のもとに研究を重ね、魔法媒介としての利用を可能にした」

勇者「しかし、貨幣を重要視しない、あるいは必要としない社会の中ではこの魔法は成立しない」

賢者「……そんな世の中が来るってことは、今ある秩序や社会体制が崩壊するってことですよね」

盗賊「Welcome to this crazy time.このイカレた時代へようこそ……ってね」

賢者「世界が核の炎に包まれたら、勇者さんは魔法を使えなくなるんですね」

盗賊「そうなったら、そもそもあたしら生きてるかどうかわかんないけどね」

盗賊「……で、バカ話もいいけどさ。いい加減、こんな森の奥まで来た理由を教えておくれよ」
219 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/03(木) 16:09:49.15 ID:OWrRsxTS0
勇者「この先にエルフの隠れ里がある。今回の目的地はそこだ」

賢者「エルフの里……ですか」

賢者「確か、人間とも魔族とも関わりを絶って、森の奥に住んでいるんですよね」

盗賊「そんな連中に何の用があるんだい? どっちにも関わらないなら中立なんだろう?」

勇者「そうだ。エルフは100年以上前から両種族に対し中立を宣言している」

勇者「だが……先日、再編された獣王軍がエルフの住む地域に向けて進軍したと情報が入った」

盗賊「獣王軍が?」

賢者「獣王を倒して総崩れかと思ってましたけど、ずいぶん再建されるのが早いですね」

勇者「獣王の実子である獣王子が後を継いだそうだが……」

勇者「現在軍を指揮している獣王子の目的が何なのか、見極める必要がある」

勇者「中立地域への軍事的示威行動……そしてその後どうするつもりなのか」

賢者「エルフを味方につけようとしているかもしれない、ってことですね?」

盗賊「あるいは、エルフが持ってるとんでもないお宝か何かを奪おうとしているか」

勇者「とにかく、エルフの里が今どうなっているか知りたい。獣王軍に遭遇しないよう進もう」

盗賊「はいよ。賢者、アンタも気を付けなよ?」

賢者「子供扱いはやめてください。いつも言ってるでしょう!」

盗賊「はいはい。大声出さないでよ、見つかっちまうかもしれないから」

賢者「ぐぬぬ」
220 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/03(木) 16:10:39.95 ID:OWrRsxTS0
 
――――――――――
2時間後
エルフの里
所持金:30566G
 

エルフのさとは きみょうな しずけさに つつまれている……
 
盗賊「着いてはみたけど……おかしいね。人の気配がない」

賢者「静かっていうか、静かすぎますね……まだ日も高いのに」

勇者「やはり何かあったようだな。二人とも、周囲に注意してくれ」

ザッザッザッ……

賢者「……変ですね。エルフがいないのはともかく、獣王軍も見当たらないですよ」

盗賊「盗るもん盗って、さっさと帰っちまったってことかね?」

賢者「じゃあ、エルフはどうなったんですか? まさか皆殺しに……?」

勇者「エルフは強靭な肉体と不滅の魂を持つと言われる種族だ。その可能性は低いだろう」

勇者「……しかし、里全体がもぬけの殻とは……ん?」

<……!

<……! ……

盗賊「……声が聞こえる。遠くに誰かいるみたいだね」

勇者「里のエルフか……?」

賢者「行ってみましょう。何か話が聞けるかもですよ」
221 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/03(木) 16:11:09.16 ID:OWrRsxTS0
 
――――――――――
同時刻
 
 
魔王「獣王軍がエルフの里に向けて進軍したって聞いて飛んできたけど、もぬけの殻じゃないか」

魔王「ボインボインの女の子はどこ行っちまったんだよ? 寂しいにもほどがあるぜ」

竜姫「うつけ。こんな時くらい女子のことから離れたらどうじゃ」

魔王「いやいや、重要なことだよ。今のあいつが女子供に手を出すのかどうか、ってこと」

竜姫「嘘くさいのう……」

魔王「今回のことは獣王子の独断だ。オレだって、あいつの目的が何なのか把握してないんだぜ」

竜姫「とにかく……これからどうするか、じゃな。周りに誰もおらなんでは情報も得られぬ」

魔王「オレみたいなイケメンが来るもんだから、ビックリしちゃって隠れてんのかもね」

竜姫「ほう? ならば、この森ごと里を焼き尽くせば、炙り出されてくるかも知れんのう」

魔王「えっ」

竜姫「冗談じゃ。わらわの力では、魔力の充溢した森の木々を焼き払うことは難しいじゃろうな」

魔王「……よかった。まだ見ぬボインボインを失うのは惜しいよ。安心した」

魔王「オレも竜姫ちゃんも、実は魔力は大したことないしね」

竜姫「わらわはともかく、お前はそれでよいのか?」

魔王「ま、オレもそう思うけどさ。できもしないことをやろうとするほど熱血くんじゃなくてね」

魔王「とりあえず今できそうなことから手をつけていくさ。勇者との交渉とかね」
222 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/03(木) 16:11:56.01 ID:OWrRsxTS0
竜姫「その交渉のことなんじゃが、勇者に会ってどうする? 私が魔王です、とでも言うのかえ?」

魔王「そのつもりだけど」

竜姫「向こうは魔王討伐を掲げて旅をしておる連中じゃ。そんなことをして無事に済むとも思えん」

魔王「……あ、考えてみたらそうなるよな。何しろ敵のボスが目の前に出てくるわけだし……」

魔王「こう、いきなりバトルに入っちゃったりするかな? 参ったな、オレ弱いんだぜ?」

竜姫「……バカじゃバカじゃと思っておったが、ここまでだったとは……」

竜姫「お前がどれだけ直観と脊髄反射で行動しておるのかよくわかるのう」

魔王「いやあ、まあ……そんなに褒めても何も出ないよ」

竜姫「照れるな。決して褒めてはおらんから安心せい」

魔王「そりゃどうも。竜姫ちゃんがついにオレのカッコよさに気付いたのかと」

竜姫「それだけは天地魔界がひっくり返っても有り得んな」

魔王「……となると、勇者を交渉のテーブルに着かせる方法を考えないとなぁ」

魔王「穏便に済ませるにはどういう条件を出すべきか……可愛い女の子の接待とか……」

竜姫「……しっ。魔王、ちょいと黙りゃ」

魔王「え?」

竜姫「……向こうに誰かおるのう。獣王軍かや?」
223 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/03(木) 16:12:38.28 ID:OWrRsxTS0
 
――――――――――
数分後
 

魔王(……どうしてこうなった)

竜姫(……どうしてこうなった)
 
勇者「……君達は? この里の者ではなさそうだが」

盗賊「エルフでもないよねぇ。エルフって、耳が尖ってるんだろ?」

賢者「見たところ、ただの人間っぽいですけど……」

勇者「だが一般人がこんなところにいるはずがない。何者だ?」

魔王「い、いやぁ……なんていうか、旅人っていうか冒険者っていうか」

竜姫「うむ。わらわは令嬢、こっちの頭の軽そうな男は付き人の楽師じゃ」

盗賊「令嬢に楽師ねぇ……何しにエルフの里くんだりまで来たんだい?」

魔王「ま、まあ、目的なんてないんだけどね。足の向くまま、風の向くままさ」

賢者「目的もなしにうろつけるような場所じゃないですよ、ここ」

盗賊「どうも怪しいねぇ」

勇者「場合によっては重要参考人として王都に連行する必要があるな」

魔王「え、えぇ〜……それは……」チラッ

竜姫(……まったく、咄嗟の嘘のひとつも吐けぬのか)

竜姫「……ここに来たのは、わらわの意思じゃ。一度エルフというものを見てみたくてのう」
224 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/03(木) 16:13:17.71 ID:OWrRsxTS0
勇者「君が?」

竜姫「いかにも。森の奥に住まう神秘の種族と本で読んで、どのようなものか気になってのう」

竜姫「わらわは何事も、自分の目で確かめてみんと気が済まぬ性分じゃからな」

魔王「そ、そうそう! いやぁ、令嬢ちゃんのワガママには困っちゃうよ」

魔王「それで、ここまで着いたのはいいけど、見ての通り誰もいなくてさ」

竜姫「どうしたものかと話しておったら、お前達に出会ったというわけじゃ」

盗賊「はぁー……こんな森の奥まで来るなんて、大したお嬢さんだねぇ」

賢者「お嬢様のワガママも、ここまでくるといっそ立派なものですね」

魔王「あはは、だよねぇ」

竜姫「……」ゲシッ

魔王「あいたっ!? なんで蹴るんだよ」

竜姫「付き人の分際で生意気じゃぞ」

勇者「……事情は分かった。だが今この里は危険だ」

賢者「獣王軍がこの近くにいるかもしれないし……」

盗賊「かといって、このまま帰すのも危ないね。どうしたもんか」
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/03(木) 16:13:26.96 ID:Ea1bLqQqo
どうしてこうなったワロタ
226 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/03(木) 16:13:57.23 ID:OWrRsxTS0
賢者「仕方ないですね。安全が確認されるまで、ボク達と行動を共にしてもらいましょう」

勇者「……やむを得ない。今のところはそうするしかないか」

盗賊「アンタ達はそれでいいかい?」

魔王「もちろん! 令嬢ちゃんに加えてボインボインの美女がもう一人なんて最高だよ」

盗賊「嬉しいこと言ってくれるねぇ。美人って言われちゃ悪い気はしないよ」

魔王「オレ、女の子を褒める時には嘘をつかない主義でね」

竜姫「……まったく、この大うつけが。調子に乗るでない」

賢者「……胸かぁ……」

魔王「あっ、ごめんごめん。女の子はボインボインだけが価値じゃないから、大丈夫だって」

賢者「……勇者さん、この人超馴れ馴れしいです」

竜姫「すまんのう。こういう奴じゃ」

盗賊「いいじゃないか、なかなか楽しい奴だよ。ウチの勇者はこの通り絶望的に無愛想でね」

勇者「とにかく、今日は休んで体力を温存する。あの宿を拠点にしよう」

竜姫「うむ。わらわは疲れた。ふかふかのベッドを所望するぞえ」

竜姫「ほれ、そこの馬鹿オブ馬鹿。わらわをおんぶせぬか」

魔王「りょうか〜い」
227 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/03(木) 16:15:36.78 ID:OWrRsxTS0
 
――――――――――
数分後
エルフの里・宿屋
所持金:30566G
 
 
賢者「はぁ、なんだかドッと疲れました……」

魔王「大丈夫、賢者ちゃん? オレがおんぶしてあげた方がよかったかな」

賢者「主にあなたのせいですよ」

勇者「私が見張りに立つから、君達は休んでいてくれ。代わってもらいたくなったら戻ってくる」

盗賊「頼むよ、勇者」

竜姫「ほれ、楽師。お前も見張り番をしてくるのじゃ」

魔王「えぇ? なんでオレが」

竜姫(……勇者と二人きりになれる今がチャンスじゃろうが。女子どもはわらわが留めておける)

魔王(あっ……そっか、じゃあオレもついていくよ。サンキュー竜姫ちゃん)

竜姫(まったく……)

勇者「見張りは私一人で十分だ。一般人を危険に晒すことはできない」

賢者「そうですよ。大体、魔物が襲ってきたら楽師さんは戦えるんですか?」

竜姫「こいつもそこいらの魔物には負けぬ。案山子の真似事程度の役には立つぞ?」

魔王「そうそう! 大丈夫だって、オレに任せといてよ」

勇者「……わかった。好きにするといい」
 
ゆうしゃと まおうは やどやの そとに でた……
228 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/03(木) 16:16:24.00 ID:OWrRsxTS0
 
――――――――――
 
 
勇者「……」

魔王「……勇者って言ったっけ? 羨ましいよな、あんな可愛い子がお供でさ」

勇者「……」

魔王「両手に花って奴でしょ? いや、オレだってモテモテくんだからわかるよ」

勇者「……」

魔王「やっぱり一緒に旅するなら可愛い女の子だよ。それもボインボインで、目がパッチリしてて」

勇者「悪いが少し黙っていてくれないか」

魔王「あー……ごめんごめん」

勇者「……」

魔王「……えっと、勇者はアレだろ? その、魔王をやっつけるために旅してるんだろ?」

勇者「最終的な目標はそういうことになる。何故そんなことを?」

魔王「もし、もしもなんだけどさ。魔王が結構いい奴で、戦う意思はないって言ってきたら?」

魔王「ほら、魔王なんて悪の親玉みたいに言われてるけど、案外そういう奴かも知れないじゃん」

勇者「対話による解決を望めるなら、私個人としては、それに越したことはない」

勇者「しかし、王や将軍は魔王の首級を挙げることを望んでいるだろう」

勇者「魔王を倒し、平和をもたらした勇者を擁するという事実は、外交的イニシアティブとなる」

勇者「それに悪の枢軸である魔王を討つという目標は自らの正当性をも保障するものだ」
229 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/03(木) 16:17:05.72 ID:OWrRsxTS0
魔王「……戦争なんて、偉い奴がやめるって言えばいいもんじゃないの?」

勇者「戦争を終えたとしても、戦没者は帰ってこない。戦争の傷跡も残る」

勇者「結局、国民を納得させるお題目が要るんだ。自分達の行いは正義だったのだと」

魔王「じゃあ……もしもオレがその悪者の親玉の、魔王だったらどうする?」

勇者「魔王の意思を聞いた上で、交渉のテーブルに着く余地があるならば、そうしたい」

勇者「しかし、王か魔王のどちらかが戦いを望むのであれば、私はそれに従うしかない」

勇者「そして今は後者の道を行かざるを得ない。だから、もし君が魔王なら、この場で斬る」

魔王「……そっか。貴重なご意見どうもありがと」

勇者「いや、他の者ならもっと建設的な意見を出せたかもしれない。私に言えるのはこの程度だ」

魔王「……」

魔王(……交渉の余地はありそうだけど、やっぱしがらみとか色々あるんだよな……)

魔王「なぁ、勇者……」
 
 
バタッ
 
 
230 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/03(木) 16:17:59.41 ID:OWrRsxTS0
勇者「くっ……」

魔王「ゆ、勇者? どうしたんだよ、いきなり倒れて」

勇者「突然、強烈な眠気が……まさか……」

勇者「……」zzz

ゆうしゃは ねむってしまった!

魔王「お、おい! どうしちまったんだよ! おいってば!」ユッサユッサ

勇者「……」

魔王「クソッ、なんだってんだよ。竜姫ちゃん達は……!?」ダッ
 
 
 
魔王「竜姫ちゃん! 賢者ちゃん! 盗賊ちゃん!」

けんじゃと とうぞくは しんだように ねむっている……

竜姫「……その様子じゃと、勇者もやられたか」

魔王「ああ、いきなり倒れて眠り始めて……」

竜姫「催眠呪文じゃな。効果範囲を特定の種族のみに限定した強力なやつじゃ」

魔王「……ってことは、オレと竜姫ちゃんは魔族だから無事だったってわけか」

竜姫「この里のエルフもこれにやられたのじゃろう。これをやったのは、おそらく」

魔王「獣王子……」
231 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/03(木) 16:18:44.31 ID:OWrRsxTS0
ギィィィィ……

???「……その通りです」ザッ

魔王「っ!」

獣王子「こうも容易く勇者一行を捕らえることができるとは……正直、拍子抜けですよ」

獣王子「ですが、何故魔王様と竜姫がここに?」

魔王「それは」

竜姫「獣王軍がエルフの里へ進軍したと聞いてのう。お前の仕事ぶりを見に来たのじゃ」

魔王「竜姫ちゃん!」

竜姫(……勇者と接触して戦いを回避するという、当初の目論見は失敗したのじゃ)

竜姫(ここはわらわに任せておくのじゃ。悪いようにはせぬ)

竜姫「何しろ獣王子、お前の初陣じゃろ? 友人として気にかかってしまってのう」

獣王子「そうでしたか。ですが、この通り勇者一行の身柄は我が獣王軍が確保しました」

獣王子「この近くに本陣を構えています。お二人も、勇者の最後を見物なさってはどうでしょう」

竜姫「うむ。では邪魔させてもらうぞえ。ほれ魔王、お前も来るのじゃ」

魔王「あ、ああ……」

魔王(……クソッ……!)
 
 
 
ゆうしゃいっこうは じゅうおうぐんに とらえられてしまった!
232 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/03(木) 16:20:33.20 ID:OWrRsxTS0
魔王はこういう性格なので台詞がスラスラ出てきて扱いやすいです。
でも相応のバカさ加減を保とうとすると扱いづらいです。
総合するとまあ普通ってことで。
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/03(木) 16:30:13.69 ID:w6rdjLbAO
なかなかピンチだな
>>1はお約束が嫌いみたいだから先が読めない
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/03(木) 16:36:59.87 ID:HelD5C5DO
エルフをどうしたファザコン野郎(#^ω^)
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/03(木) 16:37:47.09 ID:HelD5C5DO
忘れてた更新乙

連続でスマン
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/03(木) 17:06:16.14 ID:w6rdjLbAO
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/03(木) 21:48:00.49 ID:dJ7f87gho
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/03(木) 21:52:42.60 ID:8KYi/3wDO
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/04(金) 00:50:21.86 ID:cUXAltnQ0
乙です。
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/04(金) 18:05:55.68 ID:UpffWfA6o
見つけたから待つぞ。
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/05(土) 03:08:41.94 ID:5EhK+nXDO
乙カレーライス
242 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/07(月) 17:28:12.17 ID:c7XWbM2/0
はっきり言うと、この作品のテーマはありふれたテーマ――「生きること」です。

     *      *
  *     +  うそです
     n ∧_∧ n
 + (ヨ(* ´∀`)E)
      Y     Y    *



早ければ今日の夜か、明日には投下したい
こっちは嘘にならないよう頑張ります
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/07(月) 17:29:42.44 ID:dPP+FXkko
たのしみじゃ
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/07(月) 21:37:59.76 ID:RfwCuU9AO
待つぜ
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/07(月) 22:38:12.00 ID:X26uSf/No
舞ってる
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/08(火) 00:43:03.20 ID:kayarKNno
なんだ嘘か
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/08(火) 07:52:11.79 ID:7y9NVVdDO
今日の夜だろ?
逸る気持ちは分かるが、焦ることはない


レベルと言うか、強さ的には皆どんなもんなんだろうか
248 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/08(火) 12:20:03.28 ID:DQG4XW2s0
 
――――――――――
現在
魔法の森・獣王軍本陣
所持金・0G
 
 
勇者「……ん……」

ゆうしゃは めを さました!

勇者「ここは……?」

盗賊「目ェ覚めたかい?」

勇者「盗賊……賢者も」

賢者「勇者さん、大丈夫ですか? ボク達、催眠呪文で眠らされてたんですよ」

勇者「そうか……やはり、あれは呪文による攻撃だったか」

盗賊「で、周りを見てみなよ」

勇者「これは……周囲をバリアで囲まれているのか」

勇者「バリア発生器をここまで小型化したのか……これならいつでも捕虜を閉じ込めておけるな」

盗賊「感心してる場合かい? つまりあたしら、ここから出られないってことじゃないか」

賢者「装備品もお金も取り上げられちゃったみたいですし……」

盗賊「令嬢と楽師も、あの後どうなっちまったのかわかんないしね……心配だよ」

勇者「なるほど……確かに、状況は芳しくないな」

賢者「ボク達……どうなっちゃうんでしょうか」

勇者「相手は獣王軍だ。私達を生かしておく理由などないはずだ」
249 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/08(火) 12:20:48.87 ID:DQG4XW2s0
賢者「……終わりなんでしょうか、これで」

賢者「ボク達、魔王を倒すこともできないで、殺されちゃうんでしょうか……」

盗賊「諦めちゃいけないよ。チャンスはあるはずさ。なあ勇者」

盗賊「……勇者?」

ゴソゴソ

勇者「このタイプのバリアなら、属性的には……いや、しかし魔力源の問題がクリアできない」

勇者「考えられるとすれば、生体金属を触媒にしているのか……あれなら寿命はかなり長い」

勇者「あるいは放電花の果実かもしれないが、あれは熟すまでの時間が……」ブツブツ

盗賊「……聞いちゃいないか。ま、勇者らしいけどさ」

賢者「マイペースっていうか、どんだけKYなんだって感じですよ」

賢者「……あーあ、なんだか暗い気分になったのがアホらしくなりますよね」

賢者「どう見ても絶望なのに、一番危ない立場の勇者さんはああだし」

賢者「いっつもそうですよ。勇者さんは自分のことしか考えてないんだから」

盗賊「勇者なりにあたしらを元気づけようとしてる、ってのは考えすぎかねぇ」

賢者「そんな気の効いたこと、勇者さんにできるわけないじゃないですか。バカバカしい」

賢者「勇者さんは間違っても善意の人間なんかじゃないんですから。有り得ないですよ」

盗賊「……やれやれ」

盗賊(そんなこと言って、しっかり元気づけられちまってるじゃないか)
250 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/08(火) 12:21:43.47 ID:DQG4XW2s0
 
――――――――――
同時刻
魔法の森・獣王軍本陣
 
 
獣王子「魔王様、竜姫。こちらへどうぞ。お食事を用意しました」

魔王「……ああ、サンキュー。実は昼から何も食べてなくて、腹ペコでさ」

獣王子「お二人の口に合うかどうかわかりませんが……」

竜姫「構わぬ。どうせ招かれざる客人なのじゃろう?」

獣王子「……いえ、そのようなことは……」

魔王「よせよ、竜姫ちゃん。とりあえず腹ごしらえしようぜ。せっかく用意してくれたんだしさ」

竜姫「まあ、今のところはそうするかの」

魔王「おっ、超美味そうじゃん! 魔法の森ってキノコとか山菜とか色々採れるもんな」

獣王子「はい。これはエルフの里の郷土料理だそうです。部下に作らせました」

竜姫「……ところで獣王子。何故、エルフの里に進軍したのじゃ?」

魔王「あ、そうだ。オレもそれを聞きたかったんだ。どうしてオレに何も言わなかったんだよ」

獣王子「申し訳ありません、魔王様。秘密の作戦だったので、勝手ながら独自行動を」

獣王子「この作戦の目的は、第一に、エルフの里の異変を餌に勇者をおびき出し、これを討つこと」

獣王子「そして第二に、エルフの持つ古代魔法を手に入れることです」

魔王「古代魔法……っていうと、神話の時代にあったっていう原初の魔法のこと?」
251 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/08(火) 12:22:26.63 ID:DQG4XW2s0
獣王子「はい。伝承によれば天界の神々がエルフに伝えたとされています」

竜姫「カビの生えた言い伝えじゃ。お伽噺のようなものじゃろうに」

獣王子「ですが、エルフの里には古代魔法にまつわる書物が残されていたんです」

獣王子「伝承の通りならば、これを極めた者は天地魔界を支配する力を得られるといいます」

獣王子「それを手に入れ、魔王様に献上しようと思い、里のエルフを無力化し捕えました」

獣王子「後ほど、長老以下数名を尋問する予定です」

魔王「……過激だなぁ、獣王子。初陣でこんな派手なことをやらかすなんて」

竜姫「獣王の名を継いだのじゃ。これくらいせねば格好もつかんじゃろ」

獣王子「……恥ずかしながら、そのような見栄や功名心があったことも確かです」

魔王「あ、いや、別に悪いってこっちゃないさ。ただ、思ったより落ち着いてるから」

魔王「オレだって女の子の前じゃカッコよくありたいしね。いや、オレはいつでもカッコいいけど」

竜姫「格好をつけるだけなら得意なのじゃがな。頭が空っぽなせいで後が続かぬからの」

魔王「竜姫ちゃん、オレ今のでちょっと傷ついたぜ。チューしてくれたら心の傷も癒えるかも!」

竜姫「じゃから脊髄反射でそういう妄言を垂れ流す癖を矯正しろと小一時間」

獣王子「はは……」

魔王「おっ、やっと笑ったな」

獣王子「は?」
252 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/08(火) 12:23:26.16 ID:DQG4XW2s0
魔王「さっきからしかめっ面で、堅苦しいことばっか喋ってたからさ。いつ笑うのかって思ってた」

獣王子「あ、いえ……すみません」

魔王「だからそういうのいいんだって。オレ達、友達だろ?」

竜姫「そのようなことを考えておったのか? 魔王のくせに生意気じゃぞ」

魔王「へへへ……それほどでも」テレッ

竜姫「褒めてはおらんからな?」

獣王子「……ありがとうございます、魔王様」

魔王「様はつけなくていいって。それより、せっかく三人揃ってるんだ。獣王子も飯、食ってけよ」

獣王子「いえ。これから竜王殿のところに挨拶に行きますので」

魔王「竜王……?」

竜姫「父上が来ておるのか!?」

魔王「なんであのオッサンがここにいるんだよ。火竜山脈の砦にいるんじゃなかったっけ」

獣王子「今回の作戦への協力を申し出てくれたんです」

獣王子「獣王軍も再編されて日も浅く、人手不足ですから、ありがたい申し出でした」

竜姫「……そうか。父上がのう」

獣王子「寝室も用意していますから、お休みになる時は部下にお申し付けください。それでは」

バタン

魔王「……竜王が、ねぇ」

竜姫「……」
253 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/08(火) 12:24:47.25 ID:DQG4XW2s0
 
――――――――――
2時間後
魔法の森・獣王軍本陣
所持金:0G
 

ゴソゴソ
 
盗賊「……う〜ん。やっぱり地面に穴掘って脱出ってのは無理っぽいよねぇ」

賢者「スコップの一本もないんだから当たり前ですよ……で、勇者さん」

勇者「どうした?」

賢者「さっきからバリア発生器の前でブツブツと独り言を言ってましたけど、何してたんです?」

勇者「ああ。このバリアを解除する方法が見つかった」

盗賊「えっ!? それ、マジかい!?」

勇者「マジだ」

賢者「……この、地面に書いてある魔法式はそのためのものなんですね?」

勇者「あくまでも大雑把に解析しただけだから、うまくいくかは保証しかねるが……」

勇者「脱出のためには君達の協力が必要不可欠だ。どのみち、ここから脱出できなければ命はない」

盗賊「……勇者さ、アンタってホント何でもできるんだね」

勇者「そう買い被られても困る。私には、私にできることしかできない」

賢者「全然そんな風に見えないんですけど」

勇者「……研究員時代からなんだが、他人から見るとそう見えてしまうらしい。何故だろうか」
254 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/08(火) 12:26:03.81 ID:DQG4XW2s0
盗賊「それで、あたしらは何をすればいいんだい?」

勇者「まず、賢者は私と一緒にこの魔法式に沿って術式を構築してくれ」

勇者「この魔法式は、バリア発生器に内蔵された魔力変換装置の反応に干渉、阻害するものだ」

賢者「つまり、バリアを一時的に無力化する?」

勇者「あくまでも一時的であり、しかもほんのわずかの時間だけだ。そこで盗賊。君の出番だ」

盗賊「あたし?」

勇者「この魔法式に従って術式を展開すれば、数秒間だけバリアに穴が開く」

勇者「私達二人は術式の維持で動くことができない。君がバリアの外に出て発生器を破壊してくれ」

盗賊「なるほどね。あたしは魔法とかよくわかんないから、適任じゃないか」

勇者「十分に注意してくれ。バリアに触れたら大ダメージを受ける」

盗賊「でも、あたしにしかやれないんだろ? だったらやるしかない。早速始めるかい?」

賢者「待ってください。まだ外に見張りがいます」

勇者「そろそろ交代の時間のはずだ。彼らの注意が逸れたのを見計らって始めよう」
 
………………… 
  
<オイ、コウタイダ

<フウ、ヤットヒトヤスミデキルゼ

<アイツラ、ミョウナウゴキハシテナイカ?

<オトナシイモンダゼ。アキラメタカナ?

…………………

勇者「……よし、今だ」
255 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/08(火) 12:27:05.89 ID:DQG4XW2s0
ゆうしゃと けんじゃは じゅつしきを てんかいしはじめた!
バリアはっせいきの くどうおんが すこしずつ ちいさくなっていく……

なんと バリアに あなが あいた!

賢者「ぐっ……こ、これ、結構キツいです」

勇者「外部から装置に無理矢理干渉するからか……だが道は開いた。行くんだ、盗賊」

盗賊「……了解!」

とうぞくは バリアに あいた あなに とびこんだ!
とうぞくは ろうごくの そとに でた!
バリアのあなは すぐに ふさがった……

獣人A「な!?」

獣人B「き、貴様! どうやってバリアを……!」

盗賊「言ってもわかんないよ!」

とうぞくは じめんをけり じゅうじんA・Bの ふところに とびこんだ!
とうぞくは きゅうしょを ねらって こうげきした!

盗賊「……あたしにだってチンプンカンプンなんだからさ」

じゅうじんA・Bは たおれた!

賢者「やった! やりましたよ、勇者さん!」

勇者「ああ……盗賊、バリア発生器の電源を落としてくれ。そこのレバーだ」

盗賊「はいよ。よっ……と」

ガコン

とうぞくは バリアはっせいきの でんげんを おとした!
ゆうしゃと けんじゃの まわりのバリアは きえさった!
256 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/08(火) 12:27:38.68 ID:DQG4XW2s0
賢者「ふぅ、これで一安心……あ、あれっ」フラッ

勇者「大丈夫か? ……いや、正直に言うと、私も相当消耗させられた」

盗賊「おいおい、どうしちまったんだい。いつもなら魔法のひとつやふたつ、平気で……」

賢者「杖がないからです……」

賢者「杖には、術者の魔力を増幅させ、安定させる効果もありますから……」

勇者「私の場合は、単純に魔力容量の上限が低いからだな。すぐに魔力が尽きてしまう」

勇者「……とにかく、ここから離れよう。体勢を立て直す必要がある」

盗賊「じゃあ装備はあたしが探してくるから、アンタ達は早く逃げな」

盗賊「脱走したのを感づかれる前に安全なところまで逃げないといけないし、戦えないだろ?」

賢者「そうですね……じゃあ、エルフの里の近くで落ち合いましょう」

勇者「気をつけろ、盗賊。バリアの内側から外の様子を観察していたが、不可解な点が多い」

盗賊「不可解な点?」

賢者「やっぱり勇者さんも気づいてました?」

勇者「我々を捕えたのは獣王軍のはずだが、獣系の魔物の中に混じって竜人がいた」

盗賊「竜人だって?」

勇者「彼らは本来、竜王軍の兵士だが、どういうわけか獣王軍と行動を共にしている」

盗賊「獣王軍と竜王軍が一緒になって行動してる、って……」

賢者「でも竜王軍の拠点は火竜山脈の砦で、ここからかなり遠いはずですよ」

勇者「どういう事情なのか……とにかく、注意してくれ。危なくなったら装備は諦めて構わない」

盗賊「ありがたいお言葉だね。じゃあ、アンタ達も気をつけて」
257 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/08(火) 12:29:13.11 ID:DQG4XW2s0
 
――――――――――
数分後
獣王軍本陣・司令部
 
 
獣人C「獣王子様! 大変です!」

獣王子「落ち着いてください。何事ですか」

獣人C「は、はい……バリア牢から勇者一行が脱走しました!」

獣王子「何……!? すぐに周辺の警戒を強化、アリ一匹通すな!」

獣人C「ハッ!」

タッタッタッ……

??「……なかなか面白いことになってきたじゃねぇか」

獣王子「笑いごとではありませんよ、竜王殿」

竜王「物事には予期せぬトラブルってのがつきもんだからな。そいつも楽しんでこそよ」

竜王「こんなことなら、勇者を捕まえた時点で殺しておくべきだったなぁ」

獣王子「本国に移送して公開処刑すれば、魔王軍全体の士気高揚と戦死者への慰霊になると……」

竜王「お坊ちゃんの考えそうなこったな」

獣王子「くっ……!」

竜王「まあいい、今日の主役はお前さんだ。俺んとこの部隊をいくつか貸してやるから使いな」

獣王子「……感謝します。それでは、僕も勇者捜索に参加しますので、これで」

ザッザッザッ……
258 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/08(火) 12:30:09.66 ID:DQG4XW2s0
竜王「……ヘッ、お坊ちゃんがよ。詰めが甘いぜ……お前もそう思うだろ、なあ」

ガチャ

竜姫「……気づいておったか。流石は父上じゃな」

竜王「よう竜姫。相変わらず魔王とつるんでるらしいじゃねぇか」

竜王「ていうか、なんだよその格好は。まるで人間じゃねぇか」

竜姫「うむ。変身呪文でチョチョイとな。どうじゃ? 悪くないじゃろう?」

竜姫「……それよりも父上。一体、何の魂胆があって獣王子に肩入れするのじゃ?」

竜王「魂胆ってほどのもんはねぇな。強いて言うなら親切心じゃねぇか?」

竜姫「嘘じゃな。父上の行動原理が善意とは最も遠いところにあることを、わらわは知っておる」

竜姫「まあ、獣王子がどうなろうと、わらわにはどうでもよいことじゃ」

竜姫
「しかし、友達を危険に晒すまいと奔走しておった魔王に悪いからのう」

竜姫「……何を企んでおるのじゃ、父上」

竜王「……」

竜王「……ああ、もういいわな。らしくねぇ。本当にらしくねぇわ」

竜姫「?」

竜王「どうせ今夜中には行動を起こすつもりだったからな……」

ドォン!

りゅうおうは はげしいいなづまを よびよせた!
りゅうきは 87の ダメージを うけた!
259 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/08(火) 12:31:18.12 ID:DQG4XW2s0
竜姫「がっ……!?」ドサッ

竜王「お前はそこで寝てろ。朝日が昇る頃には終わってるからよ」

竜姫「ち、父上……! 待つのじゃ、一体何をしようと……!」

竜王「お前が知る必要はねぇな」

竜王「ま、ガキが首突っ込むこっちゃねぇんだよ。じゃあな」

ザッザッザッ……

竜姫「くっ……うぅ……!」

りゅうきは からだがしびれて うごけない!

竜姫(身体が動かぬ……このままでは、魔王と獣王子が……!)

竜姫(ダメじゃ……意識、が……)ガクッ

竜姫「……」
 
りゅうきは きを うしなった!
260 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/08(火) 12:32:13.97 ID:DQG4XW2s0
 _________|\
|To Be Continued...    >
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/

Aパート終了
Bパートはまた後で投下する予定
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/08(火) 12:38:58.89 ID:nqP2wpJmo
乙乙
wwktkしてきた
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/08(火) 12:51:01.82 ID:bzRyU0bfo
>>260 乙!
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/08(火) 12:52:05.45 ID:0evuhxgDO
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/08(火) 15:58:39.87 ID:eK8inAvAO
265 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/08(火) 22:21:56.16 ID:DQG4XW2s0
Bパートの仕上げが実はあまり捗ってないでござる

明日明後日と出かける用事があるので金曜日までもつれ込むかもわからんね
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/08(火) 23:24:16.15 ID:eK8inAvAO
待つぜ
ただハイクオリティ期待しちゃうぜ
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/10(木) 07:06:07.79 ID:4dVuJPSO0
乙です。
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/02/12(土) 08:38:22.22 ID:t4w52Q4M0
 
――――――――――
数分後
魔法の森
所持金:0G
 
 
賢者「なんだか騒がしくなってきましたけど……もう脱走がバレたみたいですね」

賢者「盗賊さん、大丈夫かなぁ。それに楽師さんや令嬢さんはどうなったんでしょうか」

勇者「ああ……盗賊はともかく、彼らは……」

ギィンッ!

ゆうしゃの めのまえに いっぽんのけんが つきたった!

勇者「!」

賢者「勇者さん!」

勇者「……これは、魔王軍で制式採用されているサーベルか」

???「そのサーベルを取れ、勇者!」

賢者「あれは……!?」

勇者「……君が、獣王子か?」

ザッ

獣王子「そうだ……僕が獣王子」

獣王子「お前が卑劣な手段で殺した、獣王の息子だ!」
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/02/12(土) 08:38:57.12 ID:t4w52Q4M0
獣王子「本来なら魔界へ移送して公開処刑を行うつもりだったが、やはりこの手で……!」

獣王子「ここなら横槍が入ることもない。一対一の決闘で勝負をつける!」

ゆうしゃたちの まわりを じゅうおうぐんの へいしたちが とりかこむ!

賢者「か、囲まれちゃってますよ!」

獣王子「安心しろ。部下に手出しはさせない。僕とお前の一騎打ちだ」

勇者「……いずれ戦わなければならないとは思っていた」

勇者「武器がなくて困っていたところだ。君の正々堂々とした精神に感謝する」

獣王子「減らず口を……」

勇者「賢者、君は下がっていろ。今戦うべきは私のようだ」

賢者「は、はい。気をつけて!」

じゅうおうじは マントをぬぎすて おのを かまえた!
ゆうしゃは じめんから サーベルをぬき かまえた!

獣王子「……勇者を倒すことが死者への最大の慰めであり、我が一族の雪辱を果たすことにもなる」

獣王子「いざ、尋常に勝負!」

勇者「来い!」

ゆうしゃは じゅもんを となえた
サーベルのとうしんが せきねつし ほのおをまとう!
じゅうおうじは おおきく いきをすいこんだ
じゅうおうじの からだに きりょくが みちる!

ゆうしゃは あかくもえさかるサーベルを てに はげしくきりかかった!
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/02/12(土) 08:39:46.10 ID:t4w52Q4M0
ギィンッ!

じゅうおうじは おので サーベルを ふせいだ!

獣王子「魔法剣……このような技まで身につけているとは……!」ギリギリ

勇者「クッ……」ググッ

勇者(やはり金貨なしでは消耗が激しい……!)

獣王子「しかしッ!」

じゅうおうじは ゆうしゃの サーベルを はねのけた!
ゆうしゃは バックステップして きょりをとる!

獣王子「それでもッ!」

じゅうおうじのおのを ちゅうしんに かぜが あつまっていく!
じゅうおうじは おのを ふりかざした!
しんくうのやいばが ゆうしゃに おそいかかる!

勇者「……ッ!」

ゆうしゃは じゅもんを となえ サーベルを じめんに つきたてた
あしもとの じめんが はぜ どしゃのかべが しんくうはを ふせぐ!

獣王子「だとしてもッ!」

じゅうおうじは いっきにきょりをつめ ゆうしゃに きりかかる!
つちけむりを きりさいて おのが ふりおろされた!

勇者(……間に合わない!)

ゆうしゃは じゅもんを となえた!
ゆうしゃは おのを ひだりうでで うけとめた!
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/02/12(土) 08:40:13.26 ID:t4w52Q4M0
勇者「ぐぅ……ッ!」

ゆうしゃに 41の ダメージ!
ゆうしゃの ひだりうでに おのが くいこんでいる!
ゆうしゃは すかさず じめんにささった サーベルを ひきぬき きりつけた!
じゅうおうじに 36の ダメージ!

獣王子「左腕に鋼体呪文を集中させて防いだのか……!」

勇者「肉を切らせて骨を絶つ……とまではいかなかったか……」ガクッ

ゆうしゃは ぜんしんのちからが ぬけていくのを かんじた
ゆうしゃは じめんに ひざを ついたが
サーベルを つえのかわりにして なんとか たちあがる!

獣王子「どうした、勇者……もう疲れたのか?」

勇者「……ハァ……ハァ……」

賢者「勇者さん!」

勇者(まずい……こんなにも魔力の消耗が激しいとは……)

ゆうしゃの ひだりうでから とめどなく ちがながれている
ゆうしゃは かいふくじゅもんを となえ きずを ふさいだ!
ゆうしゃは いしきが もうろうと してきた……

勇者(魔力とは精神の力……そして精神は肉体に強い影響を及ぼす)

勇者(このまま魔力が尽きてしまえば、間違いなく戦闘不能……)

勇者(だが魔法を出し惜しみして勝てる相手とも思えない。どうすれば……)
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/02/12(土) 08:40:51.75 ID:t4w52Q4M0
 
――――――――――
同時刻
獣王軍本陣・物資保管所
 
 
ゴソゴソ……

とうぞくは たからばこを あけた!
なかには とうぞくたちのそうびひんと さいふが はいっていた!
とうぞくは そうびひんと 30566Gを てにいれた!

盗賊「……やっと見つけたよ。物置に放り込まれてるなんて、えらく雑な扱いじゃないか」

盗賊「装備の管理もいい加減なもんだし、獣王軍も人手不足なのかねぇ」

盗賊「とにかく、勇者達と合流しないとね。さっきからなんだか騒がしいし……」

盗賊「……っと、この傷薬は貰っておこうか。あとは解毒薬も」ヒョイ ヒョイ

タッタッタッ……

盗賊「! 足音……やばい、誰か来ちまう」

とうぞくは いそいで たからばこのかげに みを かくした!

バタァン!

つぎのしゅんかん ほかんじょのとびらが いきおいよく ひらかれた!

??「ハァ、ハァ……ここか、物資保管所は……」

??「クソッ、なんでこんな散らかってんだよ。早く薬を探さないとヤバいってのに……」

??「ええっと、これは……包帯か。これも必要だな。あとは薬草と傷薬……」
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/02/12(土) 08:41:27.90 ID:t4w52Q4M0
盗賊「その声……楽師かい?」

魔王「!? ……盗賊ちゃん?」

とうぞくは たちあがり たからばこのかげから でた
まおうは そこらじゅうのはこを あけて なかみを ちらかしている

盗賊「くたばっちまったかと思ってたよ。アンタ達も獣王軍に連れてこられたのかい?」

魔王「それは……いや、今はそんなことどうでもいいんだ。竜……令嬢ちゃんが大変なんだよ!」

盗賊「大変って……怪我をしたのかい?」

魔王「ああ。多分、電撃呪文か何かにやられたみたいで、ひどい火傷なんだ」

魔王「獣王軍には火傷によく効く薬があったはずだから、急いでここに来たんだ」

盗賊「そうだったのかい……薬ならあたしが持ってるよ」

魔王「マジ!? ……頼む、盗賊ちゃん! それ使わせてくれ!」

盗賊「ああ、そりゃ構わないよ。でも……」チャキッ

とうぞくは まおうにむけて ナイフを つきつけた!

魔王「と、盗賊ちゃん? 何してんの……」

盗賊「答えておくれよ。なんでアンタが、獣王軍が使う薬のことを知ってるんだい?」

盗賊「ただのお嬢ちゃんに付き従っているだけの楽師が知っているはずのない情報を、ね」

魔王「……」
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/02/12(土) 08:42:07.48 ID:t4w52Q4M0
盗賊「思い返してみれば、あたしらが催眠呪文で眠らされた時」

盗賊「あたしと賢者が眠気に襲われて眠っちまう時、あのお嬢ちゃんは平気そうだった」

盗賊「気になって勇者にも聞いてみたら、アンタもどうってことなさそうだったと言ってた」

盗賊「賢者の話だと、あれは人間だけに効く強力な催眠呪文らしいじゃないか」

盗賊「つまり、アンタもお嬢ちゃんも、人間じゃない。魔族か何かだってことになるんだよ」

魔王「……催眠呪文への耐性をつけるマジックアイテムを持ってた、って可能性だってある」

盗賊「じゃあそれを見せてごらんよ。見たところ、アンタは身なりがちゃんとしてる」

盗賊「つまり、装備品を獣王軍に没収されていないってことさ。あたしらみたいにね」

盗賊「そういうアイテムだってんなら、見ればわかる。アイテム鑑定は得意だからさ」

魔王「う……そ、それは」

盗賊「……アンタ、何者なんだい?」

魔王「……」

魔王「……じゃあ、盗賊ちゃんは、オレが魔族だったとしてどうするつもりかな」

盗賊「質問に質問で返したらテストは0点だよ」

魔王「いいからいいから。オレにだってそれを聞く権利はあるはずだぜ」

盗賊「……ま、どうしようってわけじゃないよ。でもあたしがアンタを信用するために必要だろ?」

魔王「信用?」

盗賊「そう。ルールみたいなもんだと言い換えてもいいね」
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/02/12(土) 08:42:45.84 ID:t4w52Q4M0
盗賊「本当のことを言うと、あのお嬢ちゃんが大変だってんなら、薬は届けてやりたいさ」

盗賊「けれどアンタ達には不審な点が多すぎる。頭の中の冷静な部分が、疑えと言ってくる」

盗賊「一文無しに大金を貸す金貸しはいない。担保ってもんがいるんだよ。今はこんな状況だしね」

魔王「……オレなら、女の子の言うことを疑ったりなんてしないのになぁ」

盗賊「あたしもそうありたいよ。でも、仲間の命がかかってるんだ」

魔王「……」

魔王(オレ自身、命は惜しい。正体を明かすのも気が引ける。でも女の子の命がかかってる)

魔王(そうなったら、どう考えても、優先順位ってやつは決まってるよな)

魔王「……わかった。話すよ、オレが何者か」

魔王「それでどうにかなるんなら、オレはそうするさ」

まおうは じぶんにかかった へんしんじゅもんを かいじょした!
にんげんのすがたから ほんらいの まぞくのすがたに へんかしていく……
まおうは しょうたいを あらわした!

盗賊「……!」

魔王「この通り、オレは魔族だよ。それもそんじょそこいらの田舎者とは訳が違う」

盗賊「まさか」

魔王「そう……オレは魔王。君らの言うところの悪者の親玉さ」
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/02/12(土) 08:43:25.54 ID:t4w52Q4M0
盗賊「……続けな」

魔王「オレの目的は勇者に接触して戦いを回避することだったんだ。取引でも持ちかけてね」

魔王「自慢じゃないけど、オレは力は大したことないから。それに獣王子のこともあった」

魔王「獣王子はオレの昔からの友達なんだ。親父の仇討ちにこだわってたし、危ないと思ってた」

魔王「あ、そうそう。令嬢ちゃんもオレの友達でさ。竜王の娘の竜姫ってんだ」

魔王「……でも結局、戦いは回避できなかった。それに、オレが恐れていた以上のことが起きた」

盗賊「恐れていた以上のこと?」

魔王「竜姫ちゃんがやられたのはさっき話しただろ?」

魔王「……竜姫ちゃんをやったのは、彼女の親父の竜王だ」

盗賊「竜王が……ってことは、そいつもここにいるのかい?」

魔王「いや、今はどこかへ行っちまってる。でも……」

魔王「……?」

盗賊「?」

まおうは なにかに きづいたように ほかんじょのまどを みあげた
277 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/12(土) 08:44:04.34 ID:t4w52Q4M0
酉つけ忘れてたwww
 
 
 
 
 
盗賊「どうしたんだい?」

魔王「……盗賊ちゃん。話の続きは後でいいかな」

盗賊「まだ話は終わってないよ」

魔王「今は竜姫ちゃんが心配だし、やらなきゃいけないことがある。竜王軍の連中、始めやがった」

盗賊「何を?」

魔王「……盗賊ちゃんはこの先の司令室に行ってくれ。そこに竜姫ちゃんがいる」

盗賊「アンタはどうするんだい?」

魔王「逃げる……と言いたいところだけど、オレも友達を放ってはおけない」

魔王「強い味方を呼んでくるよ。すぐ戻るから、竜姫ちゃんのこと、よろしく頼む」

盗賊「あたしが令嬢……いや、竜姫を治療するとは限らないよ」

魔王「いや、盗賊ちゃんはキチンとやってくれるさ。なにしろ、君は優しい人だと思うし」

盗賊「……二人目だよ。アンタ、勇者と同じこと言うんだね」

魔王「マジ? だとしたら、オレ達って案外感性が似てるのかも……」

盗賊「わかったよ。あたしはこの薬を使って竜姫の治療をする。アンタはアンタの仕事をしな」

魔王「サンキュー。じゃ、行ってくるよ」
278 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/12(土) 08:44:42.35 ID:t4w52Q4M0
 
――――――――――
同時刻
魔法の森
所持金:0G
 
 
ギィィィン!

獣王子「どうした勇者……! 魔法が使えなければそんなものか!」

勇者「……!」

獣王子「親父殿の仇……今こそ、この手で!」

じゅうおうじは おのを はねあげ ゆうしゃのサーベルを はじきとばした!

勇者(しまった……!)

獣王子「もらった!」

じゅうおうじは かぜのやいばを おのに まとわせ はげしく きりかかった!

賢者「勇者さん!」

じゅうおうじのおのが ゆうしゃに ふりおろされる!

勇者「……ッ!」
 
 
  
ザシュッ!
279 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/12(土) 08:46:23.66 ID:t4w52Q4M0
ボトッ……

ゆうしゃの ひだりうでが せつだんされ じめんに おちた!

賢者「――――ッ!」

ゆうしゃは げきつうに かおを ゆがめ ひざをついた!

勇者「ぐあぁぁぁぁぁ……ッ!」

賢者「勇者さん!!」

のたうちまわる ゆうしゃに けんじゃが かけよった
じゅうおうじは そのこうけいを みながら つぶやいた……

獣王子「……勝った」

獣王子「……フ、ハハハ……やった……僕の勝ちだ」

獣王子「今とどめを刺してやるぞ、勇者。父の仇を……!」

勇者「……」

ピシッ

勇者「……いや、私の勝ちだよ。獣王子」
280 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/12(土) 08:47:12.72 ID:t4w52Q4M0
ブシュゥゥゥゥ!

じゅうおうじのよろいに きれつが はしり せんけつが ふきだした!

獣王子「ガハッ……!?」

獣王子「バ、バカな……いつの間に……」

獣王子「い、いや、勇者には魔力さえ残っていなかったはず……何故……」

勇者「あのままだったなら、な……」ヨロッ

賢者「勇者さん、動かないでください! 回復呪文を……」

勇者「杖がないのでは君が消耗するだけだ……大丈夫、止血さえできればいい……」

勇者「……知っての通り、私の魔貨式魔導法は貨幣を魔法媒介に用いる」

勇者「だが、媒介に貨幣を使うのは、それが最も我々の身近にあり、かつ強い念を宿すからだ」

勇者「理論上では、魔法的価値のある物質ならば、何でも魔法媒介に利用することはできる」

勇者「勝負が長引けば私の不利だった……だから私はカウンター攻撃に賭けた」

勇者「一瞬だけ魔法が使えればよかったから、代償は比較的少なく済んだ方だったろう……」

賢者「……!」

けんじゃは ゆうしゃのかおを のぞきこみ ことばを うしなった
ゆうしゃの がんかから ちが あふれ ながれている
かれの がんかからは がんきゅうが なくなっていたのだ……!

獣王子「バカな……! 視力を代償に強化呪文を使っただと……」

勇者「もはや何も見えないが……君を戦闘不能にする程度のダメージは与えたはずだ」

賢者「でもこんな状態じゃ、周りの兵士にかかってこられたらひとたまりも……」

獣王子「……そうだ。僕はまだ死んではいないし、周りには我が獣王軍の精鋭達が……!」
281 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/12(土) 08:48:08.91 ID:t4w52Q4M0
 
パチパチパチパチ……
 
そのとき どこからともなく はくしゅの おとが ひびいてきた……

獣王子「? なんだ、誰が拍手など……」

??「……大したもんだなぁ、オイ。流石は勇者ってところだな」

賢者「……上です!」

けんじゃと じゅうおうじは そらを みあげた!
りゅうおうが つばさをひろげ ちゅうにうかんでいた!

りゅうおうは ゆっくりと じめんに おりたった……

竜王「獣王子にブッ殺されてるかと思ったが……いや、マジに予想外だぜ」

竜王「今の勇者ってのはなかなか骨のある奴じゃねぇか。お前もそう思うだろ?」

獣王子「竜王殿、一体何の……」

竜王「おっと、ストップ。別にお前さんの獲物を横取りしようなんて思っちゃいねぇよ」

竜王「ただな、ちょいとやることがあって来たのよ。なに、すぐ終わる用事だ」

獣王子「そうですか……しかし、何もこんな時に……」

竜王「そう言わずに聞いてくれや。とりあえずはな……」

バヂィィィィッ!

獣王子「――――ッ」

竜王「死ねよ」
282 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/12(土) 08:49:03.19 ID:t4w52Q4M0
 
ドサッ
 
じゅうおうじは ぜんしんから けむりを あげながら たおれた!

勇者「……! 賢者、今何が起こったんだ」

賢者「あ……り、竜王が、獣王子を……獣王子に……」

勇者「攻撃をしたのか?」

賢者「は……はい……」

獣王子「……」

竜王「ご臨終だ」

じゅうおうじは なにも はんのうしない
ただの しかばねの ようだ……
りゅうおうは ゆうしゃたちに むきなおった

竜王「よう、手負いの勇者にちんちくりんの賢者」

勇者「……竜王と言ったか。何故、仲間を殺した?」

竜王「仲間ァ? ハハッ、こりゃあ傑作だな」

竜王「お前らもそう思うだろ、なぁ?」

りゅうおうが きょうぼうな えみを うかべた
それを あいずに しゅういを とりかこむ りゅうおうぐんのへいしは
じゅうおうじの しに ぼうぜんとしている じゅうおうぐんのへいしに おそいかかった!
283 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/12(土) 08:49:38.17 ID:t4w52Q4M0
賢者「! 仲間割れ……!?」

竜王「だからよ、仲間なんかじゃねぇんだよ。あんな獣臭ェ連中とは」

竜王「俺達竜族と、あのくっせぇ野獣どもじゃ、生命体としてのレベルがダンチなんだからな」

勇者「……獣王軍を叩くことで、魔王軍内の地位を確固たるものにするということか」

竜王「その通り。あのガキの上前を撥ねてやるついでに、邪魔な連中も漏れなく始末できる」

竜王「そして古代魔法についての情報も得る……一石三鳥ってやつだ」

勇者(古代魔法……?)

竜王「さて、そろそろお前らをブッ殺してフィナーレだ」

賢者「勇者さんはやらせません!」ザッ

勇者「賢者……!」

竜王「おーおー、元気なこって。てめーの目を抉り出したアホのために、泣かせるねぇ」

賢者「確かに、勇者さんは研究のためなら自分のことさえ顧みないムッツリ研究バカですけど……」

賢者「ボクだって王宮の賢者で、勇者さんのお供です。ボクが守ってみせます!」

賢者「勇者さんがいれば、魔王だって……!」

竜王「……目の見えない勇者に、杖も持たない賢者……ナメられたもんだぜ、なぁ」

りゅうおうは いまづまを よびよせ みぎてに いかづちの エネルギーを あつめた!

竜王「……消し炭になりな」

??「待ちやがれ!」
284 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/12(土) 08:50:32.73 ID:t4w52Q4M0
そのとき けんじゃとりゅうおうの あいだに きょだいなゴーレムが おりたった!
つづいて ゴーレムのかたから とうぞくとまおうとりゅうきが とびおりた!

スタッ

魔王「大丈夫? 賢者ちゃんに勇者」

竜姫「ずいぶん酷い格好じゃのう。まあ、わらわも似たようなものじゃが」

賢者「え? え? な、なんなんですか!? なんでボク達の名前を」

魔王「……あ、そっか。この姿は見せたことなかったっけ」

勇者「その声……楽師と令嬢か?」

賢者「で、でもどう見ても魔族ですよ! 盗賊さん、どうして魔族と一緒にいるんですか!?」

盗賊「詳しいことは後でゆっくり話すよ。それより勇者、これを」

とうぞくは ゆうしゃに さいふを てわたした
ゆうしゃは 30566Gを てにいれた!

盗賊「早く回復しな。出血も酷いし、顔色も悪い」

勇者「すまない。礼を言う」

ゆうしゃは さいふを ひっくりかえして ひとつかみのきんかを かおに おしあてた
ゆうしゃは かいふくじゅもんを となえた!
みるみるうちに がんきゅうが さいせいされていく!

勇者「ぐっ……ハァ、ハァ……」

賢者「大丈夫ですか……?」

勇者「問題ない。じきに視力も回復する……次は左腕の再生を行う。手伝ってくれ」
285 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/12(土) 08:51:02.65 ID:t4w52Q4M0
竜王「チッ……まさかこのガラクタを連れてくるとはな」

竜姫「強がるのはよすんじゃな、父上」

竜姫「機械王は物質系モンスターの王……父上の得意とする電撃にも耐性を持っておる」

機械王「――竜王が魔王様に対し謀反を企てている確率、91.4%」

魔王「ああ。多分勇者達を殺った後、オレ達を相手取るつもりだったんだろうな」

魔王「オレって弱いからさ、頼りにしてるぜ機械王」

機械王「――ラジャー」

魔王「さーて……」

まおうは じゅうおうじのしかばねを みやった
まおうは つよく こぶしを にぎりしめ りゅうおうを にらみつけた

魔王「……落とし前をつけさせてもらうぜ、オッサン」

竜王「やれんのかよ? 落ちこぼれのガキが!」

竜王「お前もだ、竜姫。まさか俺に歯向かって勝てるとなんざ思っちゃいねぇだろう」

竜姫「確かに、100%の勝算など持ち合わせておらぬ」

機械王「――彼我の戦力差とレベルから計算して、我々が竜王に勝つ確率、66.1%」

竜姫「じゃが、友を殺されて黙っていられるほど大人にはなりきれぬでのう」

竜王「……大人しく寝てりゃあ、全て終わった後で相応の地位をくれてやったのによ」

竜王「てめえらの横槍で、こっちの段取りはグチャグチャだぜ、まったく」
286 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/12(土) 08:51:33.98 ID:t4w52Q4M0
勇者「魔王軍の内部抗争というわけか……大体の事情は把握した」

魔王「……勇者」

勇者「身体の傷は治した。問題ない」

勇者「君が何者かはこの際どうでもいい。目下の脅威は竜王だ」

勇者「協力して竜王を倒す。君はそれで構わないか?」

魔王「上等……実はちょっと複雑だけどな」

竜王「……ちょうどいい機会だ。俺はこいつをてめえらの身体で試させてもらうぜ」

りゅうおうは いっさつの ふるびたしょもつを とりだした!

魔王「それは……!」

機械王「――エルフの里に保管されていた古代魔法に関する書物である確率、95.9%」

竜姫「……皆の者、一ヶ所に固まるでない! 散れ!」

竜王「遅ぇんだよ!」

りゅうおうは しょもつを ひらき じゅもんを となえた
かぜがふるえ だいちがゆらぎ てんくうから ひとすじのひかりが おりてきた!
それは あれくるうほのおとなり やがて だいばくはつを まきおこした!

ゴォォォォォォォォ!!

ゆうしゃたちは このはのように ふきとばされた!
287 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/12(土) 08:52:41.05 ID:t4w52Q4M0
魔王「……ッ! なんて威力だよ!」

勇者「これが古代魔法……これほどとは……!」

竜王「まだまだこんなもんじゃねぇぞ!」

りゅうおうは じゅもんを となえた
だいちが さけ こおりのはしらが いたるところから のび ゆうしゃたちを おそう!

賢者「きゃあああああああっ!」

盗賊「賢者! 竜姫! 大丈夫かい!?」

竜姫「予想を遥かに上回る力じゃ……侮っておったか……!?」

機械王「――新たなファクターを加えて再計算。我々が竜王に勝つ確率……」

りゅうおうは じゅもんを となえた
きょだいなたつまきが まきおこり ゆうしゃたちを うちあげる!
ゆうしゃたちは じめんに たたきつけられた!

勇者「くっ……」

魔王「ぐあぁぁぁ……っ!」

竜王「ハハハハハ! 最高だな、古代魔法ってやつは! とんでもねーパワーじゃねぇか!」

竜王「確かに、ちと扱いづれぇし疲れるが……てめぇらをブッ殺すには十分すぎる力だ」

竜王「さあ……こいつで終わりだ」

りゅうおうは じゅもんを となえた!
288 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/12(土) 08:55:02.31 ID:t4w52Q4M0
そのとき ゆうしゃとまおうは たがいに アイコンタクトを かわした
いっしゅんで たがいのいとを さっした ふたりは はじかれたように こうどうを かいしした

ゆうしゃは のこりのしょじきんを いっせいに ばらまき じゅもんを となえた!

まおうは ちかくにたおれていた けんじゃととうぞくを かかえあげた!

きんかに こめられた まりょくが かいほうされ まばゆいひかりを はなった!
りゅうおうは めがくらんで となえていたじゅもんは むさんした!
ゆうしゃは ちかくにいた りゅうきのてくびを つかんだ!

魔王「機械王!」

機械王「――了解。トランスフォーム!」

きかいおうのすがたが いっしゅんで へんかし きょだいな ひこうきかいに かわった!
まおうは けんじゃととうぞくを つれて きかいおうの せに とびのった!

ゆうしゃは てんいじゅもんを となえ りゅうきと ともに とびたった!
ひこうけいたいの きかいおうが そらのかなたへと とんだ!

あとには りゅうおうと じゅうおうじのしかばね
そして たたかいを つづける へいしたちがのこされた……

しばし あっけにとられていた りゅうおうだったが やがて くちから わらいが こぼれた

竜王「ク……ククク……」

竜王「いいねぇ、最高だぜあいつら。楽しくなってきやがった」

竜王「たまらねぇ、たまらねぇな。思ったより戦い甲斐のありそうな奴らで安心したぜ」

竜王「だがあまり俺を待たすんじゃねぇぞ、小僧ども。魔界はすぐに俺のものになるんだからよ!」
 
りゅうおうは つばさをひろげ よぞらに とびたった!
 
 
 
ゆうしゃたちは にげだした!
289 :おまけ ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/12(土) 08:56:50.86 ID:t4w52Q4M0
勇者
破壊力:C(A) スピード:C    射程距離:B
持続力:D    精密動作性:A   成長性:E(A)
ユーモアセンス:E
 
賢者
破壊力:E(A) スピード:E    射程距離:A
持続力:B    精密動作性:B   成長性:B
学歴:A
 
盗賊
破壊力:C    スピード:A    射程距離:C
持続力:C    精密動作性:A   成長性:D
優しさ:A
 
魔王
破壊力:C(A) スピード:B    射程距離:D(A)
持続力:A    精密動作性:D   成長性:A
モテ度:A(自己申告)
 
竜姫
破壊力:E(A) スピード:E    射程距離:A
持続力:A    精密動作性:E   成長性:A
ワガママ:A
 
 
破壊力:攻撃力・破壊力を示す。デビルキックの威力に反映される。()内は魔法込み。
スピード:どの程度機敏に動けるかを示す。逃げ足の速さも含む。
射程距離:攻撃範囲を示す。魔王は女の子限定で世界中どこでも射程距離となる。
持続力:スタミナや魔力の量を示す。正直厳密には区分していない。
精密動作性:どの程度精密な動きができるかを示す。竜姫ちゃんは料理もお裁縫もダメダメ。
成長性:後々どの程度成長する可能性が残されているか。勇者は本体はEだが魔法込みでA評価。
 
A:超スゴイ B:スゴイ C:人並み D:ニガテ E:超ニガテ
290 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/12(土) 08:58:58.20 ID:t4w52Q4M0
なんかこう自分の中では第一部完的なアレ。いや打ち切りじゃないよ。
折り返し地点はすぎたので風呂敷を畳んでいく作業に戻ります。
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 09:42:41.63 ID:6p2pZWIOo
デビルキックワロチwwww
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 09:50:03.76 ID:XK4uR9OAO
乙です
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 10:24:08.74 ID:AlGVyjmDO
なぜジョジョのスタンドっぽいランク分けを…乙です
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 11:49:52.14 ID:Z+cGV/dAO

やっぱり盗賊いいな
巨乳だし
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 17:27:20.92 ID:ompZHuwco
おつです
竜姫さまに仕えたいのですが
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 23:05:07.61 ID:Sk59o1FAO

一瞬、獣王子がティエリアしてたのは気のせいだろうか?
297 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/14(月) 00:31:22.02 ID:ANIC+SD00
 
――――――――――
現在
王宮・謁見の間
所持金:480G
 
 
王様「……では、獣王軍の壊滅は確認したが、依然として竜王軍の脅威は残っていると」
 
勇者「はい。仲間ともはぐれてしまい、目下捜索中です」

大臣「なんと……いつ竜王軍が行動を起こすか、わかったものではないではないか」

勇者「ですが、今すぐということはないと思われます。竜王はまず魔界を掌握しようとするはず」

勇者「魔界にも現魔王のシンパや、反竜王の抵抗勢力は存在するでしょう。時間は稼いでくれます」

王様「だが、決して楽観できぬのもまた事実であろう」

勇者「その通りです」

王様「……一刻も早く竜王を倒すのだ。手段は問わん」

大臣「新たにお供を募っても構わぬぞ。仲間が生きているかどうかもわからんからな」

勇者「いえ、それには及びません。私は、彼女達が必ず生きていると確信しています」

王様「……ならば行け、勇者よ。祖国を脅かす敵を悉く排し、勇者の使命に殉ぜよ」

勇者「御意」
298 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/14(月) 00:32:42.40 ID:ANIC+SD00
 
――――――――――
数分後
城下町・カフェ
所持金:480G
 
  
勇者「すまない、待たせてしまった」

竜姫「構わぬ。多少時間のかかるであろうことは、予想しておったからの」

竜姫「……ところで、このコーヒーとやら。こんな泥水みたいなものを人間は飲んでおるのか?」

勇者「世界中で愛飲されている嗜好飲料だ。魔界にはないのか?」

竜姫「魔界で飲まれておるのは紅茶かワインじゃな。コーヒーはないのう」

勇者「なるほど」

竜姫「……して、これからどうするのじゃ?」

竜姫「父上から逃れたはいいが、魔王達とはぐれ、連絡も取れぬ」

竜姫「死んではおらぬと思うが、早急に捜し出して合流する必要があろう」

勇者「……」

勇者(……竜王が獣王子を陥れ、魔王への翻意を露わにしたあの日から、既に10日余りが過ぎた)

勇者(私は竜姫と共に、転移呪文で王都近郊まで逃れていた)

勇者(賢者、盗賊、そして魔王は機械王の背に乗り別方向に逃れたようだが、その行方は知れない)

勇者(仲間達との合流、そして竜王討伐……)

勇者(討つべき敵は魔王から竜王へ変わった。敵の敵は味方、ということか……)

勇者(……魔王軍四大幹部――獣王、海王、機械王、竜王のうち、獣王は斃れ竜王は反旗を翻した)

勇者(機械王はどうやら魔王の味方らしいが、問題は……)
299 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/14(月) 00:33:38.40 ID:ANIC+SD00
竜姫「……おい。聞いておるのか、勇者」

勇者「ん……ああ、すまない。考え事をしていた」

竜姫「お前の考えそうなことはわかる。海王はここ100年の間は表舞台に出ておらぬぞ」

勇者「……君には人の心を読む能力があるのか?」

竜姫「そんなもの持ち合わせた覚えはないわ……獣王子は死に、父上は魔界征服に乗り出した」

竜姫「機械王は初代魔王の時代から魔王一族に仕えておるし、裏切ることはないじゃろう」

竜姫「となれば、残るは水棲系モンスターの王である海王のことになる。当然の帰結じゃ」

勇者「察しが良くて助かる。仲間と離れ離れになってしまったが、君と一緒でよかった」

竜姫「うむ、苦しゅうない。もっとわらわを褒めちぎれ」

勇者「……海王が表舞台に出ていないと言ったが、その理由はわかるか?」

竜姫「いや、それはわからん。それにわらわも海王に会うたことはないのじゃ」

竜姫「じゃが海の魔物どもの統率のとれた動きを見ると、死んだようにも思えぬ」

勇者「30年前の魔王討伐遠征の際にも海王は現れなかったというが、一体何故……?」

竜姫「王たる地位にある魔族で、名誉欲や支配欲が全くないというのも考えにくい話じゃ」

竜姫「戦が起こったなら喜び勇んで戦いに行き、手柄を立てる。それが魔族の在り方じゃからな」

勇者「……まずは、図書館に行って当時の資料を確認しよう。君はどうする?」

竜姫「わらわも行くぞ。古代魔法に関する文献を探したい……正直期待はしておらぬが」

勇者「わかった。では、行こう」
300 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/14(月) 00:34:31.45 ID:ANIC+SD00
 
――――――――――
一時間後
王都・王立図書館
所持金:480G
 
 
勇者(……水棲系モンスターの王、海王。種族は魔の海の歌姫セイレーン)

勇者(海という最も広大な地域を支配する王で、美しい女性であったと言われているが……)

勇者(調査の結果、30年前の魔王討伐遠征の際も当時の勇者一行が海王と戦ったという記録はなく)

勇者(それどころか、少なくともこの50年の間、目撃証言のひとつさえ残されていない)

勇者(故に、海王の意図を推察するための材料は殆んどない……か)

勇者(次はもう少し昔の資料を調べるしかないか。古い文献を収めた書架は……)

ドンッ

勇者「……っ、すまない。不注意を……」

??「ご、ごめんなさい……余所見を……」

勇者「……」

??「……」

勇者「……君は、僧侶?」

僧侶「……勇者さん……?」
301 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/14(月) 00:35:29.54 ID:ANIC+SD00
僧侶「戻ってきてたんですね……あの……」

僧侶「会いたかった……です……」///

僧侶「勇者さんの活躍……聞いてます……」

僧侶「なんだか、すごく……自分のことみたいに……嬉しくて……」///

勇者「いや、今回はあまりいい状況ではない」

僧侶「え……?」

勇者「私の預かり知らぬところで、事態は大きく推移していたらしい」

勇者「今、重大な問題が進行している。それを解決するために資料を集めに来た」

僧侶「そうだったんですか……」

勇者「君はどうしてここへ? 魔法薬学の研究資料か?」

僧侶「はい……マンドレイクの栽培方法に関する文献を……」

勇者「ああ。それなら、向こうの書架の左端にあったはずだ」

僧侶「あ……ありがとう……ございます……」ペコッ

勇者「では、私はこれで失礼する」

僧侶「あ……ま、待って……」

勇者「?」

僧侶「あの……その……」

勇者「まだ何かあるのか?」

僧侶「ゆ、勇者さんが……迷惑じゃなければ……」

僧侶「わ……私を……勇者さんの……」モジモジ
302 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/14(月) 00:36:36.60 ID:ANIC+SD00
竜姫「……何をやっておるんじゃ、お前達は」

僧侶「っ!!?」

勇者「竜姫か。その様子では、君の求める文献はなかったようだが」

竜姫「うむ。何しろエルフの里に秘匿されていたような情報じゃからのう……それで」

竜姫「この娘は何じゃ?」ジロリ

僧侶「……っ」ビクッ

勇者「研究所時代の私の同僚だ。魔法薬学を研究している」

竜姫「ほう……? ん、思い出したぞ。確か市場で勇者と抱き合うておったの」

僧侶「そ……そんな……」///

勇者「竜姫。誤解を生まぬよう言っておくが、あれは追跡者を欺くための演技だ」キッパリ

僧侶「……は……はい……そうですよね……」ズーン…

勇者「しかし、良き友人であると私は思っている。彼女には色々助けられた」

僧侶「そ、そんなことないです……私だって……」モジモジ

竜姫(わかりやすいのう)

竜姫「ところで勇者、お前の方はどうなのじゃ? 海王に関しての情報は得られたかえ?」

勇者「いや。50年前まで遡っても、海王に関する有用な情報は得られなかった」
303 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/14(月) 00:37:48.91 ID:ANIC+SD00
竜姫「ふむ……ならば、これ以上調べても無駄かもしれんの」

竜姫「いっそのこと、海底神殿まで出向くのはどうじゃ?」

勇者「海底神殿……海王の本拠地か」

竜姫「何故100年近くに渡って海王が姿を見せぬのか、実際にこの目で確かめればよかろう」

勇者「それは私も考えていたが、もう少し資料を精査してからでも遅くはない」

勇者「最悪の場合、海王軍と戦うことになる。せめて弱点でもわかればアドバンテージになる」

竜姫「ほう……ま、その辺りは任そうかの」

勇者「君はどこへ行くつもりだ?」

竜姫「部屋に帰って寝るのじゃ。ほれ、さっさと鍵を渡さぬか」

勇者「わかった。今、鍵を……」グイッ

勇者「……」グイ グイ

僧侶「……」ギュゥゥゥ

勇者「すまない。外套の裾を掴むのはやめてくれないか」

僧侶「やめません……」

勇者「何故」

僧侶「その鍵……勇者さんのお部屋の……?」

勇者「そうだが」

僧侶「〜〜っ!」プルプル
304 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/14(月) 00:38:15.83 ID:ANIC+SD00
勇者「今、竜姫を私の部屋に泊めているんだ。だから鍵をやり取りしている」

僧侶「どうして……ですか……?」

竜姫「わらわは生憎と無一文でのう。路銀は勇者が管理しておるし、宿に泊まる金がないのじゃ」

勇者「そこで、部屋を引き払っていなかったのが幸いしたというわけだ」

勇者「再び王都を発つまで、彼女には私の部屋で寝泊まりしてもらっている」

竜姫「まったく、昔のわらわからは考えられぬ暮らしぶりじゃ。まさかあんな安アパートに……」

勇者「とにかく、私は調査を続行する。竜姫、君は部屋で休んでいてくれ」

僧侶「あ……あの……っ!」

勇者「僧侶?」

僧侶「わ……私も、手伝います……っ!」

勇者「しかし、君には君の研究があるのでは」

僧侶「大丈夫です……いえ、大丈夫になりましたから……っ!」

竜姫「……協力させてやったらどうじゃ? よほど手伝いたいようじゃぞ」

勇者「……そうか。なら、協力を頼みたい」

僧侶「は……はい……っ!」

僧侶「勇者さんと……その人だけじゃ、心配ですから……」

僧侶「わ、私……あの……その」モジモジ

勇者「よし。まずは60年前の大洪水の資料を探そう。確か16番書架の……」スタスタ

僧侶「あ……ま、待ってください……」

竜姫「……やれやれじゃの」
 
 
 
そうりょが なかまに なった!
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/14(月) 00:41:16.96 ID:gTpiiuIWo
ktkr
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/14(月) 00:48:22.73 ID:UGdxEDaoo
ちょうど今読み返してた!
支援
307 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/14(月) 00:48:31.95 ID:ANIC+SD00
自分の創作したキャラクターの担当声優を妄想したりしてニヤニヤした経験は誰にでもあると思います
そして俺は現在進行形でそれです

黒歴史は今もなお拡大を続けていると言うのか……!
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/14(月) 02:38:48.29 ID:GVJZKPhAO
誰でもやるってwwww
しかし竜姫さんはなかなか大人だな
ワガママAのくせにー
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/14(月) 04:34:23.00 ID:ajYw61TDO
やっぱ勇者のキャラがいいな

ずっとドライな性格のままでいて欲しいわ
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/14(月) 10:10:35.02 ID:gTpiiuIWo
黒歴史を代償に黒魔法が使えるようになる日は近いな
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/14(月) 20:53:27.76 ID:vT4aEW9yo
第二部(?)キター!待ってました1
ここまで立派な形になったものは既に黒歴史ではなく輝きを放っております!
今後もものすごい勢いで期待
312 :没ネタ ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/14(月) 21:18:24.02 ID:ANIC+SD00
 
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Z____________________
 
 
問題
以下の意味を持つ諺を答えなさい。
『ある事象の発生により、一見するとまったく関係のないような第三者が得をする』

賢者の答え
「風が吹けば桶屋が儲かる」
勇者のコメント
「正解だ。現在では、その論証に用いられる例の突飛さから、
 こじつけの理論や物言いを指して言う場合もある」

盗賊の答え
「風が吹けばあたしが儲かる」
勇者のコメント
「君は桶屋ではなく盗賊のはずだが」

魔王の答え
「風が吹けば女の子のスカートがめくれてすごく嬉しい」
勇者のコメント
「気持ちはわかるが後で職員室に来るように」
 
 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Z____________________
 
シリーズ化できる気がしなかった。今は反省している。
バカテスでは工藤愛子が好きです。
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/14(月) 22:07:51.87 ID:OvkAH0plo
>>312
ムッツリーニのライバルの女の子がどストライク
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/14(月) 22:08:59.29 ID:GVJZKPhAO
くすり
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 02:05:09.31 ID:KHLCwLlAO
>>312

問題は公募でいいと思うんだ。
316 :没ネタ ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/16(水) 12:37:08.15 ID:q294+nBT0
 
――――――――――
数日後
とある港街
所持金:379G
 
 
勇者「古い資料や文献を読んで、わかったことは以下の2点」

勇者「まず、海底神殿の所在。南海到達不能極にほど近い絶海の領域に位置すると伝えられている」

勇者「一ヶ月に一度、満月の夜に海底から浮上し、月の魔力を充填するというが……」

勇者「乗りこむとすればその時だな。幸い一週間後は満月だ。船を調達し、洋上で時を待つ」

勇者「次に、海王が歴史の表舞台から姿を消すのに前後して、一人の賞金首が消息を絶っている」

勇者「その生涯において500隻の船を襲い、1億Gにも及ぶ財宝を略奪したとされる伝説の海賊」

勇者「王国の犯罪史の中でも五指に入るほどの男だが……何か関係があるかもしれない」

勇者「竜姫、僧侶。私はこれから港で船を調達してくる。君達は宿屋で待っていてくれ」

勇者「……竜姫? 僧侶? どこだ?」

僧侶「ま……待ってくださいぃ……」ヨロヨロ

竜姫「ほれ、遅れておるぞ! もっとシャキッとせぬか」

僧侶「で……でも……重い……です……」

竜姫「重い? 小娘、言うに事欠いてわらわを重いと言いおったか? このっ、このっ」ムニムニ

僧侶「や、やめて……ください……」

勇者「竜姫。あまり僧侶をいじめてやるな」

竜姫「ふん、お前がわらわをおんぶせぬから悪いのじゃ。こ奴が馬になるのも致し方なかろうて」
317 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/16(水) 12:37:56.20 ID:q294+nBT0
没じゃねぇよwww
 
 
 
 
 
竜姫「魔王ならば、文句を言わずにすぐおんぶしたぞ。まったく、淑女への気遣いがなっておらぬ」

勇者「そうなのか……とにかく、私は船の調達に向かう」

僧侶「あの……そんなにすぐに、船が手に入るんですか……?」

勇者「勇者特権を行使する。書類上は、王宮が民間の船を接収したという形になるだろう」

竜姫「便利なものじゃのう、勇者特権とやらは」

勇者「とはいえ、特権の濫用は民の反発を招く。みだりに使うことはできない」

竜姫「では、わらわ達は宿屋で待っておるからの。さっさと戻ってくるのじゃぞ」

僧侶「気をつけて……」

勇者「ああ、ありがとう。では、また後で」

竜姫「うむ。では行くぞ、僧侶」

ザッザッザッ…

僧侶「……勇者さん……」

竜姫「これ、僧侶」

僧侶「は、はひっ!」

竜姫「前から気になっておったのじゃが、お前は勇者のどこを好きになったのじゃ? 顔か?」

僧侶「え……そ、それは……」///

竜姫「わらわのような高貴な生まれの者には、勇者程度の男など路傍の石に等しくての」

竜姫「真面目なだけで面白くもなんともない、あんな男のどこがいいのか理解しかねておる」
318 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/16(水) 12:38:40.12 ID:q294+nBT0
僧侶「ゆ……勇者さんは……面白いとか、そういうのじゃなくて……」

僧侶「私は……その……」

僧侶「勇者さんの……優しくて……」

僧侶「責任感が強くて、誠実なところが……」

竜姫「……ふむ。そんなものか」

竜姫「なんじゃ、お前も案外普通の恋をしておるのじゃな。相手が相手じゃから期待してしもうた」

僧侶「別に……そんな面白いことなんか……ないです……」

竜姫「あの勇者に惚れるという時点で相当面白いと思うがの」

僧侶「それに、多分……さっきのじゃ……全然足りない……」

僧侶「ひとつのセンテンスじゃ……とても言いきれないくらい……」

僧侶「……ううん……違う……」

僧侶「人を好きになる理由は……ロジックやメソッドじゃないから……」

僧侶「きっと……どれだけ言葉を並べても……伝わらない……です……」

竜姫「……なかなか言いよるわ」

竜姫「ロジックとメソッドだけで生きておるような男を好いておるくせにのう」

僧侶「誰かを好きになれば……竜姫さんにも……わかります……」

竜姫「そのようなことは有り得ぬよ。わらわが、利に聡く欲深い魔族の女である限り」

竜姫「損得勘定なしに他人を信じたり、好きになったりはせぬ。それが魔族の女の在り様じゃ」
319 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/16(水) 12:39:27.45 ID:q294+nBT0
僧侶「そう……なんですか……?」

竜姫「そうじゃ。少なくともわらわの知る女達は皆、そうじゃった」

竜姫「わらわの母上でさえその例に漏れぬ。恋が終われば、ただ打算だけの関係じゃったそうな」

竜姫「ま、最後は父上に捨てられたがの。どこで野垂れ死んだのやら……」

僧侶「それって……お互いに愛がなかったって……ことですよね……?」

竜姫「結果的にはそうじゃろうな。わらわが生まれた時にはあったやも知れぬが」

僧侶「なんだか……可哀想です……」

竜姫「人間のつまらぬ倫理観で、わらわを哀れむようなことはするでないぞ。同情など要らぬ」

竜姫「所詮、魔族も人間も、一皮剥けばオスとメスが存在するだけじゃ」

竜姫「世のメスが優秀なオスと結ばれるための戦略を立てていくのは当たり前のことじゃろう?」

竜姫「逆もまた然り……弱肉強食、優勝劣敗、適者生存。それが魔界の普遍的な摂理じゃ」

僧侶「じゃあ、竜姫さんは……お母さんが弱かっただけだって……言うんですか……?」

竜姫「魔界では強くなければ生きていけぬ。ただそれだけのことじゃ」

僧侶「……でも……」

僧侶「でも……それは哀しいことです……」

僧侶「魔族には……愛はないんですか……? 誰かを慈しむ……優しい心は……」

竜姫「さあ、それはわからぬ……しかし、ただひとつ言えるのは」

竜姫「それを見出そうとするような純粋な奴は、必ず絶望することになる」

竜姫「誰もが見ようとしないものを見て、その純粋さゆえに絶望するのじゃ」

竜姫「……そう。たとえば、あのバカのような奴は、特に」
320 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/16(水) 12:42:05.72 ID:q294+nBT0
 
――――――――――
一週間後
南海・洋上
所持金:511G
 
 
サァァァァ……

ゆうしゃたちは ふねのうえで そのときを まっていた
いまはまだ うみは しずけさを たもっている……

勇者「……」

竜姫「……今宵は満月じゃな。辺りに月の魔力が降り注いでおる」

僧侶「今夜……海底神殿が浮上するんですよね……?」

勇者「そのはずだ。だが、神殿が浮上してからは周辺の魔物の動きが活発になる」

勇者「準備は整えてきたが、油断するな。君達は戦い慣れてはいない」

僧侶「は、はい……」

竜姫「まあ、そのためにお前がおるのじゃ。ちゃんとわらわを守るのじゃぞ?」

勇者「善処しよう」

勇者「……ん。そろそろ時間だな」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

うみのそこから きょだいな けんぞうぶつが ふじょうしてきた!
かいていしんでんが げっこうのもとに そのすがたを あらわした!

僧侶「あれが……海底神殿……?」

竜姫「ほう、なかなかのものじゃな。少々古臭い建築様式じゃが」

勇者「建造されたのは少なくとも1000年前とされている。古くて当然だ」
321 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/16(水) 12:43:00.82 ID:q294+nBT0
勇者「よし。この期に海底神殿へ接近する」

勇者「僧侶、聖水の散布急げ。竜姫は空中からの攻撃を警戒」

僧侶「は、はい……!」

竜姫「ん、任せておけ」

勇者「船尾の風の魔法石を活性化。機関最大、最大船速だ」

かいていしんでんの ふじょうに ともなって まもののけはいが つよくなってきた……
そうりょは しゅういに せいすいを ふりまいた!
よわいまものは ふねに ちかづけない!

ゆうしゃたちのふねは さいだいせんそくで かいていしんでんへ むけて つきすすむ!

竜姫「空からの攻撃はなさそうじゃぞ!」

僧侶「このまま……行けそうです……」

勇者「ある程度近づいたら、飛翔呪文で神殿側に飛び移る。武器を忘れるな」

僧侶「わかり……ました……」

そうりょは おおきなトランクを かかえた!
トランクには さまざまなおふだが はられている

勇者「……? 賢者、その旅行鞄は君の武器なのか?」

僧侶「これは……お供に志願した時……大臣に持たせられて……」

僧侶「肌身離さず持っているように……って……」

勇者「そうなのか……これは何かのマジックアイテムなのか?」

僧侶「そうみたいです……でも、どんな術式なのかまでは……」
 

  
ズゥゥゥゥゥゥン……!
322 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/16(水) 12:43:27.97 ID:q294+nBT0
そのとき ふねが おおきくゆさぶられ うごきをとめた!

竜姫「! 何じゃ、何が起きた!?」

せんたいに タコのようなしょくしゅが からみつき しめあげる!
ミシミシと せんたいが きしむおとが ひびきわたる……

勇者「これはクラーケンの触手か……いかん、捕まってしまった」

僧侶「クラーケンって……あの、巨大イカのことですよね……?」

竜姫「魔物除けの聖水をものともせぬとは……どうする、この船はもうダメそうじゃぞ」

勇者「……止むを得ない、ここから神殿へ飛び移ろう」

竜姫「行けるのか?」

勇者「問題ない。代金は少々高くつくがな」

ゆうしゃは じゅもんを となえた!
さんにんのからだが うきあがり くうちゅうへ とびあがった!

僧侶「わ、わ、わ……!」

勇者「しっかり掴まっていてくれ。落ちても拾ってはやれない」

僧侶「だ、大丈夫……です……!」ギュッ

竜姫「む。奴め、わらわ達が脱出したのに気付いたぞ」

勇者「よし……今だ」

ゆうしゃは きんかを いちまい ゆびではじいて かんぱんに なげいれた!
きんかが かんぱんに おちた しゅんかん まばゆいひかりが はなたれ
クラーケンのからみついたふねは だいばくはつを おこした!
323 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/16(水) 12:44:04.52 ID:q294+nBT0
ドォォォォォォォォン……!

クラーケンは ばくはつに まきこまれ ふねのざんがいと ともに
かいちゅうへ しずんでいった……

竜姫「……出発前に船倉に何か運び込んでおったと思ったら、こういうことかえ」

僧侶「ふ、船を壊しちゃって……大丈夫……なんですか……!?」

勇者「転移呪文があるから王都には戻れる。それに船の持ち主に対しては王国が補償するはずだ」

僧侶「勇者さん……過激です……」

僧侶「でも……かっこいいです……」///

竜姫「……痘痕も靨とはよく言ったもんじゃのう」

勇者「海中からでは、空中にいる我々を追い切れないはずだ。このまま海底神殿へ突入する」

竜姫「うむ……では、仕上げと行こうかの」

りゅうきは じゅもんを となえた
こくうから むすうの ひのたまが あらわれ うみのまものへと さっとうし
だいしょうさまざまな ばくはつが かいめんを ゆらした!

竜姫「時間稼ぎ程度じゃが、これで十分じゃろう」

僧侶「すごい……です……」

竜姫「そうじゃろうそうじゃろう。もっとわらわを褒めるがよい」

勇者「よくやってくれた。行こう」

ゆうしゃたちは スピードをあげ かいていしんでんへと とんでいった!
324 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/16(水) 12:48:02.32 ID:q294+nBT0
勇者・竜姫・僧侶のパーティは誰が料理とかやってるんだろうと考え、
多分絵的に僧侶なんだろうなと思いつつ、
竜姫ちゃんはどれくらい料理が下手なのかと想像しながら書いてました

魔界的には自分で料理作るより店を襲って料理人を攫ってきた方が手っ取り早いって感じなんだろうな
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 13:02:05.23 ID:JfJu0ylAO
一旦終わりなのかな…?
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 13:14:20.63 ID:Ry2mCJqEo
賢者、盗賊もよかったけど、僧侶、竜姫もいいっすな
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/17(木) 02:29:05.19 ID:PU4fqDIf0
乙です。
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/17(木) 14:20:06.45 ID:iJahJcLLo
おつ!
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/17(木) 15:14:06.21 ID:rjdDUWCAO
>>326
欲張りさんめ
330 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/19(土) 06:51:50.32 ID:oD6pttKL0
 
――――――――――
数十秒後
海底神殿
所持金:483G
 
 

竜姫「なんとか辿り着いたのう……うぅ、ジメジメしてて磯臭いわ」

僧侶「それに……寒い……です……」

勇者「海底神殿が浮上しているのは夜の間だけだ。夜明けと共に再び海中に沈む」

勇者「その前に海王を見つけ出し、場合によっては戦って倒す」

竜姫「そうじゃな。わらわもこんなところに長居はしとうない」

竜姫「……そも、魚というのは、調理されてわらわの前に運ばれてくるものであって」

竜姫「間違ってもわらわに歯向かってよいものではない。そうは思わぬか?」

ザッザッザッザッ

しんでんのおくから ぶそうした ぎょじんが たいきょして おしよせてきた!
マーマンのむれが あらわれた!

僧侶「……! 囲まれ……ました……!」

勇者「海王の部下か」チャキッ

魚人A「噂には聞いている。お前らが勇者一味か……」

魚人B「海王様の居城たるこの海底神殿に乗りこんでくるとは、なんと不敵な」

魚人C「だが海王様には近づけさせんぞ!」

竜姫「ふん。父上ではないが、お前達とわらわでは生命体としての格というものが……」
331 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/19(土) 06:52:54.42 ID:oD6pttKL0
……♪ ……♪


竜姫「……? なんじゃ……?」

勇者「どうした?」

僧侶「何か……聞こえます……これは、歌……?」

あたりに うつくしいうたごえが ひびいてきた……

ゆうしゃのうでから ちからがぬけ ゆうしゃは かまえたけんを おろしてしまった
けんさきが ゆかにつき かわいたおとを ひびかせた……

勇者(これは……歌、いや、魔力か……?)

勇者(全身の力が萎えていく……立っていることができない……)

僧侶「ゆ……勇者……さん……?」

勇者「?」

僧侶「どうして……泣いてるんですか……?」

勇者「泣いて……?」

ゆうしゃは じぶんのかおを さわってみて はじめて 
じぶんが なみだを ながしているのに きがついた……

勇者「……君達こそ、どうして泣いているんだ」

りゅうきとそうりょも どうように なみだを ながしている
りゆうは わからないが ただただ なみだがあふれてくる……

竜姫「わからぬ……この歌が、わらわ達に何か影響しておるのか……?」グスッ

僧侶「止まらないんです……涙が、勝手に……」ポロポロ
332 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/19(土) 06:56:09.08 ID:oD6pttKL0
マーマンのむれも みな そのばにひざまずき いのるように なみだを ながしている……
もはや そのばにいる ぜんいんが こうどうふのうに おちいっていた!

魚人A「お、おお……!」

魚人B「海王様……海王様……!」

勇者(精神干渉……! 他者の感情をコントロールする術……!? まさか、これは海王の……)

勇者(しかし、これは……心の奥から湧きあがってくる、理解不能な感覚……)

勇者(そう、敢えて言葉にするなら、この感情は……)

勇者(……今は先に進むことを考えろ。惑わされるな……!)

勇者「竜姫、僧侶……マーマン達が行動不能に陥っている今が好機だ。今のうちに先に進もう」

竜姫「じ、じゃが……身体が言うことを聞かんのじゃ。立って歩くことさえ……」

僧侶「すごく強力な……精神干渉です……耳をふさいでも、直接心に流れ込んできます……」

勇者「なら……」

ゆうしゃは じゅもんを となえた!
まほうのスパークが ゆうしゃのからだに すいこまれていく!

勇者「ぐっ……あぁぁぁぁ!」

僧侶「ゆ……勇者さん……!」

ゆうしゃは めをみひらき くるしげに あえいだ
ゆうしゃに かけられていた せいしんかんしょうが いちじてきに よわまった!

竜姫「微弱な雷の魔法で痛覚神経を直接刺激したのか……無茶をしよるわ」

勇者「だが……これで私だけでも動けるようになった……君達を連れていける」

僧侶「勇者さん……治療を……!」

勇者「いや、必要ない。この痛みがなければ、また精神干渉を受けてしまう」

勇者「……先へ進もう」
333 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/19(土) 06:57:11.91 ID:oD6pttKL0
ゆうしゃは りゅうきとそうりょに かたをかしてやり
うたごえの ひびいてくる ほうこうを めざし ゆっくりと すすんでいった……

竜姫「……歌声に近づけば近づくほど、身体が重くなってきよるわ」

僧侶「あんな……広範囲の……精神干渉なんて……」

勇者「魔王軍四大幹部の名は伊達ではないということだ。私も先程の余韻で、今なお目頭が熱い」

勇者「痛みでなんとか誤魔化しているが……とてもではないが戦える状態ではない」

竜姫「それは向こうも同じじゃろうが……しかし、正直面食らったわ。敵も味方もお構いなしとは」

僧侶「でも……なんだか、おかしいです……」

僧侶「海王は……セイレーン……歌声で人を惑わす魔物なんですよね……」

僧侶「そういう魔物の伝承は……各地にありますけど……この歌は……」

竜姫「……お前もか、僧侶。わらわもおかしいと感じておったのじゃが」

僧侶「……この歌を聞いて……湧きあがってくる気持ちは……」

??「……そこまでだッ!」

勇者「!」

ゆうしゃたちの まえに ひとりのマーマンが たちふさがった!
マーマンの あしからは ちが ながれている……
ゆうしゃどうよう きずのいたみで しょうきを たもっているようだ……

魚人A「ここから先は通さん……! 海王様には、指一本触れさせんぞ……!」
334 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/19(土) 06:58:25.63 ID:oD6pttKL0
勇者「よせ。お互い、戦える状態ではないことはわかるはずだ」

魚人A「黙れッ! さっさとこの神殿から去れ……!」

勇者「何故そうまでして、私達を海王から遠ざけようとする。何か理由があるのか?」

魚人A「敵と話す舌など持たぬ! ここから先へは絶対に行かせんぞ!」

勇者「……!」

僧侶「待って……ください……!」

そうりょは なみだをとめるすべも ないまま ふるえるあしで いっぽまえへ すすみでた……

魚人A「なんだ、小娘。貴様の出る幕では……」

僧侶「……涙が、出るほど……」

僧侶「涙が出るほど……優しい気持ちになったんです……」

魚人A「!」

僧侶「この歌を聴いていると……誰かを想う気持ちが……切ないくらいに伝わってくるんです……」

僧侶「それは……海王の気持ちが、歌声に乗って……」

僧侶「私達の心に……響いているから……?」

魚人「だ、黙らんかッ!」
335 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/19(土) 06:58:54.75 ID:oD6pttKL0
勇者「……信用できないかもしれないが、私達は必ずしも戦いを望むわけではない」

魚人A「なんだと?」

勇者「獣王は斃れ、竜王は魔王に対し反旗を翻し、魔界の情勢は混迷を極めている」

勇者「機械王は魔王サイドについているが、残る海王がどう動くか見極めたかった」

勇者「海王に会わせてもらいたい。その上で、私達は判断を下さなければならない」

魚人A「……海王様が竜王の側につくと言ったら?」

勇者「それも含めて、現状では判断材料が足りない」

魚人A「……」

マーマンは しばらく まよっていたが ぶきをおろし ゆうしゃたちに せをむけた……

魚人A「来い。海王様のお部屋は向こうだ」

竜姫「ほう、案内してくれるのかえ? 感心な心がけじゃな」

魚人A「……さっさと来い。海王様のお姿を見れば、お前達も……」

僧侶「……?」
336 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/19(土) 06:59:50.23 ID:oD6pttKL0
 
――――――――――
数分後
海底神殿・海王の間
所持金:461G

 
魚人A「……海王様はこの部屋にいらっしゃる」

勇者「何故君達が、私達を海王に会わせたくなかったのか、説明を願いたいが」

魚人A「見ればわかる。海王様の歌声を聴いたのなら、嫌でもな……」

僧侶「それって……どういうこと……?」

マーマンは とびらに てをかけ ゆっくりと あけはなった
とびらの すきまから れいきが もれだしてくる……

僧侶「……!」

勇者「これは……」

竜姫「……なるほど。こういうことかえ」



とびらが あけはなたれ みえたものは
れいきを ふりまきながら へやをうめつくす きょだいな こおりのはしら だった……

こおりのなかでは うつくしい まぞくのじょせいと やせほそった しょろうのおとこが
よりそいあいながら ねむっている……

かいおうのまりょくで つくられたらしい こおりから うたごえが にじみでていた……
337 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/19(土) 07:00:44.89 ID:oD6pttKL0
魚人A「……数十年前、一人の海賊がこの海底神殿に乗り込んできた」

魚人A「人間の世ではなかなか有名人だったらしいな。お前達も知っているだろう」

勇者「彼が、あの伝説の海賊だというのか?」

僧侶「でも……服装や、身体的特徴は……伝えられている情報と一致します……」

魚人A「欲の権化のような男だ。この世の全てを欲しがっていたよ。それこそ、際限なく」

竜姫「人間の船を襲うだけに飽き足らず、魔王軍の拠点からまでも略奪を行おうとしたのじゃな」

勇者「聞きしに勝る強欲さだな」

竜姫「呆れた話じゃ。海王と言えば水棲生物の王じゃぞ? それを相手取るとは……」

魚人A「子供がそのまま大きくなったような男だった。欲深く、狡猾で、とても愚かな男だ」

魚人A「この神殿の財宝を求めて乗り込んできた海賊を、海王様はいとも容易く追い払われた」

魚人A「しかし、それが奴の欲望に火をつけたのか……奴は幾度となく挑んできた」

魚人A「何度撃退されても、懲りることなく、手を変え品を変え……」

魚人A「そして奴が来るたび、海王様は戦った」

魚人A「我々も不思議だった。何故、海王様はこの無礼千万な男を殺してしまわないのかと」

魚人A「それを聞いたら、海王様はどのように答えられたと思う?」

魚人A「殺すことはいつでもできた。今までも、幾度もその機会はあった」

魚人A「……だが、海賊が来るのが、いつの間にか楽しみになっていたのだと……」

魚人A「お前の全てを奪ってやると言われて、何故だか胸が高鳴るのを感じたと、仰ったのだ」
338 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/19(土) 07:01:12.69 ID:oD6pttKL0
僧侶「海王が……海賊に、恋を……?」

魚人A「第三者が見れば、とても愚かなことだ。あのような不逞の輩に心奪われてしまうなど」

魚人A「……そして、いくらかの年月が過ぎ、海賊が若さを失いつつあった時」

魚人A「二人の戦いについに決着がついたのだ……海王様の敗北という形で」

僧侶「それじゃあ……海王は……」

竜姫「海賊のものになったと?」

魚人A「ああ。だが、もう二人の間では、そんな約束はどうでもよかったのだろう」

魚人A「むしろ海王様は海賊のものになったという事実を求めてさえいた」

魚人A「次の日から海賊が海底神殿を我が物顔で闊歩するようになったが……」

魚人A「奴の横柄な態度など、海王様の心底から満ち足りたお顔に比べれば、些細なことだったよ」

竜姫「……理解できぬな。自分を跪かせるのにそれほどの時間を要する男など、どこが良いのやら」

僧侶「それでいいと……思います……」

竜姫「む?」

僧侶「……人を好きになるのは……ロジックやメソッドじゃないから……」

僧侶「きっと……彼女には彼女なりの理由が……あったから……」

僧侶「それを理解できなくても……ううん、理解する必要さえないのかも……」
339 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/19(土) 07:02:35.80 ID:oD6pttKL0
魚人A「その後も、海賊は相変わらず強欲であったし、海王様はそんな海賊を深く愛した」

魚人A「しかし、魔族と人間の生命の尺度はあまりにも違いすぎた」

魚人A「瞬く間に海賊は老いさらばえ、病を患い、死す時が来てしまった」

勇者「……」

魚人A「愛する者が先に死に逝く時……その時どうするかという問いの答えを我々は持たなかった」

魚人A「孤独と喪失に耐えかねた海王様の選んだ道は……共に眠ることだった」

魚人A「自身の魔力で作り上げた永久に溶けない氷の中で、二人で眠り続けることだった」

魚人A「そして時折、先程のように氷の中から歌声が染み出してくる。まるで夢を見ているように」

勇者「……では、少なくとも30年間、海王はこの氷の中にいるというのか」

魚人A「そうだ。正確な年数など誰も数えてはいないが」

竜姫「誰も、海王にとどめを刺して海王軍を乗っ取ろうとせぬのも頷ける」

竜姫「皆、あの歌声に絆されたのじゃな」

僧侶「……胸に湧きあがってくる……涙が出るほどの優しい気持ちに……」

ギュッ

勇者「……僧侶。何故、私の外套の裾を掴むんだ」
340 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/19(土) 07:03:07.68 ID:oD6pttKL0
僧侶「……勇者さん……」

僧侶「帰りましょう……? 海王に……危険は……ないです……」

僧侶「そっとしておいて……あげましょう……?」

竜姫「……どうするんじゃ、勇者?」

勇者「……」

勇者「実を言うと、私はこの場で海王にとどめを刺すつもりでいた」

魚人A「!」

勇者「理由はふたつある。第一に、海賊にかけられた賞金がまだ有効であるということ」

勇者「海賊は死亡が確認されておらず行方不明扱いであるため、王宮は賞金を取り下げていない」

勇者「この氷塊を破壊し、海賊の遺体を王都に移送すれば、1億Gの賞金を受け取ることができる」

勇者「竜王の力は未知数だ。彼に対抗するためには潤沢な資金が必要になってくるだろう」

勇者「そして第二に、海王自身はまだ生命活動を停止していないということ」

勇者「海王が死んでいるなら、彼女の魔力で作られた氷は溶けるし、歌声も滲んでこないはず」

勇者「つまり、依然として海王は健在であり、その脅威は去ってはいないということになる」

勇者「以上の点から、私は海王にとどめを刺すべきだと考えた」

魚人A「貴様……!」
341 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/19(土) 07:04:17.33 ID:oD6pttKL0
勇者「……しかし、君の話を聞いて、考えが変わった。海王を倒す必要はない」

勇者「私達は海底神殿を去る。そして、おそらくは二度とここを訪れることもない」

僧侶「勇者さん……!」

竜姫「……何故じゃ? まさか、お前まで情に絆されたわけではあるまい」

勇者「かもしれない。だが」

竜姫「だが?」

ゆうしゃは マーマンのほうに むきなおった!

勇者「……君は言ったな。海王の歌声を聴いたなら、嫌でも理解すると」

魚人A「……ああ」

勇者「この歌声と、君達の忠誠心が、私の変節の理由になった。ただそれだけのことだ」

勇者「確かに、第三者が見ればとても愚かなことだ。だが君達はそれを認め、守り続けた」

勇者「この数十年、海王軍が表舞台に立つこともなく、ただ在り続けたことが何よりの証明だ」

勇者「だから、私もロジックではなく、自分の素直な感情に従うことにする」

魚人A「そうか……」

魚人A「……礼を言うぞ」

マーマンは そっと みずかきのついた てを さしだした
ゆうしゃは そのてを にぎりかえし ふたりは あくしゅをかわした……
342 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/19(土) 07:05:22.87 ID:oD6pttKL0
 
――――――――――
翌朝
とある港街・食堂
所持金:357G
 
 
竜姫「……結局、南海くんだりまで行ったのに、大した収穫もなかったのう」

勇者「いや。当面の間、海王軍の存在は無視していいとわかった。十分すぎる成果だ」

僧侶「でも……可哀想でした……」

竜姫「海王のことかえ?」

僧侶「はい……」

僧侶「きっと……大好きな人に先立たれて……」

僧侶「心が……壊れてしまったんです……それが、たったひとつのものだから……」

僧侶「もし、同じようになったら……私も、きっと……」

竜姫「……やはり、わらわには理解できぬのう。打算でも自己愛でもない恋というのは」

勇者「あるいは慈しむ母性、慈愛だったのかもしれない。どちらにせよ、私には専門外の分野だが」

勇者(……賢者や盗賊なら、どのように評しただろうか)

勇者(……彼女達は、今どこにいるのか……)
 
 
 
  /└────────┬┐
 <     To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

343 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/19(土) 07:07:28.90 ID:oD6pttKL0
次回は魔王サイドのお話になります。
勇者サイドのパーティはメンバーの都合上あまり明るい感じではないので、
そのぶん魔王・賢者・盗賊には頑張ってもらいましょう。
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 07:12:00.25 ID:z/mqUKxJo
>>343 乙!
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 07:52:04.19 ID:Z2k0eHF6o
乙です
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 08:53:25.91 ID:Yl5GdYbBo
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 12:41:14.38 ID:DZOyjPOT0
乙です。
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 13:40:31.57 ID:put5D5tro
おつ!
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 15:08:31.83 ID:7iNqedQIo
乙!この勇者にもこんな感情はあったんだなぁ…
350 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/21(月) 18:30:48.75 ID:ff8CaeLE0
何をしているセイバー! アックス! ボルテッカだ!
バカ! わからんのか!? こいつはただの休みじゃない! 春休みだ!
ボルテッカ以外で倒せるものか!

実家へ帰省するので続き投下が少々遅れそうです。
正直申し訳ない。
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 19:14:39.01 ID:LqN1EiFKo
続きを書く意志があり、かつこうしてこまめに連絡をしてくれるから正直問題ない。むしろそれだけでありがたい
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 22:26:25.97 ID:SwQBlHLY0
ピカチュウ「ボルテッカァァァーッ!!」
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 22:39:14.50 ID:JY1dt+apo
>>350 近況報告乙
春休み……。そんな時期なんだな……
逃亡じゃなければ問題ない
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/22(火) 00:09:05.61 ID:lV9yxmAIO
(´・ω・`) テッカマンブレードか

かまわんよ
355 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/25(金) 23:20:02.77 ID:T5897/Iy0
 
――――――――――
現在
とある村・酒場
 
 
魔王「最近さ。よく、自分の人生について考えるんだよ」

盗賊「人生……? またアンタらしくない話題だね」

魔王「……もし、兄貴達がくたばってなかったら、オレはただの第三王子のままだったはずなんだ」

魔王「継承権の順番は長男からだろ? だから、三男坊のオレは魔王の座を継ぐこともなかった」

魔王「ガキの頃から気楽だったよ。特に誰からも大きな期待をされてないのはわかってたし」

盗賊「そうだねぇ。アンタ、弱いし」

魔王「そうそう。兄貴達になんて勝てるわけなかったし、獣王子だってオレより強かったよ」

魔王「でも家柄だけは最高級。衣食住に不自由はしないし、女の子にもモテモテ」

魔王「いやぁ、オレのモテモテくんっぷりを賢者ちゃんにも見せてやりたいよ」

盗賊「賢者はアンタの話を信じてないからね。モテるっていうのも含めて」

魔王「嫌われてんのかなぁ、やっぱり」

盗賊「かもね」

魔王「こなんだなんか、あんなヒョロくて短い脚から腰の入ったいいローをもらったんだよな」

盗賊「それはアンタが『胸は揉めば大きくなるって聞いたぜ!』とか口走ったからだよ」

魔王「カッとなってやった。今は反省している」
356 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/25(金) 23:21:33.77 ID:T5897/Iy0
魔王「……本当なら今頃、どこか田舎の領地でも任されて、悠々自適の生活だったはずなんだ」

魔王「それで、地元の名家のお嬢様と結婚したりしてさ……すごい美人で、優しい子だよ」

魔王「ひょっとしたらハーレムを作ったかも……いや、ひょっとしたらそっちの方が魅力的……?」

盗賊「胸の大きな女ばかりで?」

魔王「そうそう。目がパッチリしてて、ボインボインの、セクシーな女の子ばっかりのハーレム」

盗賊「そんなの、魔王でも田舎の領主でも、どっちでだって作れるんじゃないのかい?」

魔王「あ、そうか……オレとしたことが、なんで魔王城にいる時に作っておかなかったんだろ?」

魔王「いや、待てよ。ハーレムは今からでも遅くないはずだ。とりあえず盗賊ちゃんがいるし!」

盗賊「とりあえず呼ばわりは正直いい気分じゃないね」

魔王「オレの愛人第一号は盗賊ちゃん! 決定! 手始めにそのボインボインを揉みしだいて」

ゴンッ

盗賊「……頭冷やしなよ。アンタ、相当酔ってるみたいだし」

魔王「」
357 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/25(金) 23:22:26.19 ID:T5897/Iy0
盗賊「ったく。アンタから飲みに誘っといてそれかい? しょうがない奴だね」

魔王「……まあ、ちょっとそういう気分だったってだけでさ。悪いね」

盗賊「そういえば、機械王はどうなんだい? また動けるようになるのかい?」

魔王「あー……賢者ちゃんが頑張ってくれてるけど、まだダメみたいなんだよなぁ」

魔王「賢者ちゃんは今どうしてる? まだ修理してるのかな」

盗賊「いや、宿で休んでるよ。子供はもう寝る時間だからね」

魔王「賢者ちゃん、子供扱いしたら怒るぜ?」

盗賊「いいんだよ。あいつは子供で、あたしらは大人なんだからさ」

魔王「……ところで、これからどうしようかなぁ」

盗賊「そうだね。勇者達と別方向に逃げて、竜王軍の追手も撒いたのはいいけど」

魔王「追手との戦闘で損傷して、機械王が飛べなくなったのは痛いよなぁ」

魔王「かなり遠くまで逃げてきちゃったから、賢者ちゃんの転移呪文も範囲外なんだろ?」

盗賊「なんとか王都に戻れればいいんだけどねぇ……そしたら、勇者とも合流できるだろうし」

魔王「そうそう。オレも竜姫ちゃんのボインボインが懐かしいよ」

魔王「まあ、異国の地で行きずりの恋ってのも悪かないけどさ……」
358 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/25(金) 23:23:34.21 ID:T5897/Iy0
盗賊「この半月あちこちでナンパして回って、一度だって成功したかい?」

魔王「そりゃあアレだよ、スランプってやつ?」

盗賊「あたしはもう引退を考えてもいいレベルだと思うよ」

魔王「いいや、引退なんてしないよ。魔王は永久に破滅です!」

盗賊「そんなメイクミラクル誰も望んでないけどね」

魔王「……それはともかく、修理に使う魔法石が足りないんだよな? どこかで調達しないと」

盗賊「火と地の魔法石が必要らしいんだけど……この辺りには魔法石の鉱脈がないんだ」

魔王「採掘が行われてないなら店にも出回らないし、それこそ王都にでも行かないとないよなぁ」

魔王「う〜ん……」

盗賊「……いや。たったひとつだけ心当たりがあったよ。あそこならあるかも」

魔王「え、マジ!? こんな辺境で魔法石を手に入れる当てなんてあるの?」

盗賊「正直言うと、あんまり当てにしたくはなかったけどね」

魔王「で、その心当たりってのはどこなのさ?」

盗賊「……あたしの故郷だよ」
359 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/25(金) 23:24:48.59 ID:T5897/Iy0
 
――――――――――
翌朝
村はずれの森
 
 
魔王「おはよう、賢者ちゃん! 今日も朝早くから精が出るね」

賢者「おはようございます。ていうか誰のせいだと思ってんですか」

盗賊「ていうかアンタは普通に寝坊だよ。今何時だと思ってんだい?」

機械王「現在の時刻が10:41である確率、99.87%」

魔王「マジで? 昨日呑みすぎちゃったかな」

盗賊「ったく……で、賢者。機械王の修理に魔法石をが必要なんだろ? 今から探しに行くよ」

賢者「当てがあるんですか?」

盗賊「ああ。南東に砂漠があるのは知ってるだろ? そこにあたしの故郷の村がある」

盗賊「もしかしたら、そこにあるかも知れないってね」

賢者「砂漠……盗賊さんの故郷ですか」

賢者(……そういえば盗賊さんも、自分の故郷のこととか話したことないなぁ)

魔王「実は盗賊ちゃんってば、ご両親にオレを紹介したいなんて言い出し……痛ッ」ゴンッ

盗賊「バーカ……昨日の晩に魔王と相談して決めたのさ。この辺だとそこしか心当たりがなくてね」
360 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/25(金) 23:26:34.27 ID:T5897/Iy0
賢者「……なんでこのチャランポランに相談してボクに相談しないんですか」

魔王「賢者ちゃんが宿屋で寝てたからじゃん」

賢者「つまりボクが寝てる間に二人でこっそり相談したってことじゃないですか」

魔王「あれ、もしかしてオレと盗賊ちゃんが仲良くなっちゃうのが悔しかったり?」

賢者「断固としてNOです!」

盗賊「そういうのでもないんだけどね。ま、成り行きってやつだよ」

魔王「ごめんごめん。今度から酒場で飲む時は賢者ちゃんも誘うから。オトナの仲間入りだね」

賢者「そういうのはお断りします! ……それにしても」

魔王「?」

賢者「この機械王ってなんなんですか? 物質系モンスターの王って聞いてましたけど」

賢者「構造に不可解な点が多いし、ブラックボックスだらけだし、ハッキリ言ってオーパーツです」

賢者「表面の経年劣化から見ても相当古いものですけど、いつ頃建造されたんですか?」

魔王「う〜ん……確か、そいつが造られたのは初代魔王の時代だから、ざっと5000年は前だよな」

盗賊「マジかい? そんな昔のものが今も動いてるなんて、すごいじゃないか」
361 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/25(金) 23:27:52.24 ID:T5897/Iy0
魔王「親父や兄貴達は、特にメンテナンスとかしてなかったけど……オレも知らないし」

賢者「魔界の技術は想像以上です……直せるとわかっただけラッキーですよ?」

魔王「ふ〜ん……ま、直るんならそれでいいよ。今大事なのはそれだしね」

盗賊「そうだね。どうせあたしらには小難しいことはわかんないんだし」

賢者「ボク、なんで勇者さんと離れ離れになっちゃったんだろ……」

魔王「それより、砂漠に行くなら色々用意しなくちゃいけないんだろ? 道具屋に行こうぜ」

盗賊「お生憎様。アンタが寝てる間にもう揃えておいたよ」

魔王「えっ、マジ? なんだよ、デートできるチャンスだと思ったのになぁ」

賢者「せっかくなので、そんなこと言ってるから起こしてもらえないんだって理解してくださいね」

魔王「またまたぁ。オレはいつでも誰でもウェルカムなんだから、遠慮するこたぁないって」

賢者「遠慮じゃなくて、本心から嫌なんです!」

魔王「じゃあ、そのうち振り向かせてみせるよ。時間はたっぷりあるからさ」キラッ☆

賢者「うわっ、超ウザいです……勇者さんにしろ魔王さんにしろ、どうしてこうなんでしょう」

盗賊「ま、いいじゃないか。勇者にしろ魔王にしろ、楽しい奴には違いないんだからさ」
362 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/25(金) 23:28:53.17 ID:T5897/Iy0
 
――――――――――
翌日
砂漠・地下水路
 
 
魔王「ヒューッ! 涼しいなぁ。砂漠の地下にこんなとこがあったなんて知らなかったよ」

盗賊「この辺りの街や村は、この地下水路で水源を共有してるのさ。安全な通り道にもなるしね」

賢者「地下に水路を通せば、蒸発も防げますしね。なかなか理に適ってます」

盗賊「しばらく行けば、あたしの故郷の村の井戸に着く。そこから出られるよ」

賢者「でも、機械王を水路の入り口近くに置いてきちゃいましたけど……大丈夫なんですか?」

魔王「大丈夫大丈夫。あいつはオレが呼んだらすぐ飛んでくるから」

盗賊「どっちみち水路の中じゃ呼べないけどね。この水路が崩れちまったらこの一帯は全滅だよ」

魔王「でも、こんなところで敵に出くわすことなんかないんじゃないの?」

魔王「魔王軍にしろ竜王軍にしろ、こんな砂漠で何かやることがあるとは思えないしね」

賢者「水路の中を棲み処にしてるモンスターくらいはいるでしょうけど……」

魔王「大丈夫だって。そんなのオレがカッコよくやっつけて……」

盗賊「……静かに」

魔王「えっ?」

パシャッ……

パシャッ……

盗賊「……何かいるよ」
363 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/25(金) 23:30:16.75 ID:T5897/Iy0
賢者「モンスターでしょうか?」

盗賊「暗くてよくわからないけど……何かいるのは間違いない。注意しな」

魔王「マジで? 軽々しくフラグを立てるもんじゃないね、こりゃ」

盗賊「バカ言ってないで、いつでも戦えるように準備を……」

盗賊「……ッ!?」

とうぞくは はいごに なにものかのけはいを かんじた!
とうぞくは ふりむきざまに ナイフを とうてきした!

ギィンッ!

なげつけたナイフは 弾かれ すいろのかべに あたって すいちゅうにぼっした……

盗賊「弾かれた!?」

魔王「な、なに? 何かいるの?」

賢者「敵……!?」

???「……」

くらやみのなかに なにかが ひそんでいる!
364 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/25(金) 23:31:03.12 ID:T5897/Iy0
盗賊「賢者、明りを! こう暗くちゃ何も見えない!」

賢者「は、はい!」

けんじゃは じゅもんを となえた
こぶしだいの ひのたまが ちゅうにうかびあがった!
まほうのかがりびが あたりを てらしだす!

???「……ッ!?」

くらやみにひそむものは あかりに おどろいて にげだした!

魔王「……逃げた?」

賢者「みたいですね。ボク達を狙ってきたんでしょうか……?」

魔王「クソッ。あんな不意打ちみたいな感じじゃなけりゃ、オレの必殺技を喰らわしてやったのに」

賢者「ボクとしては、魔王さんが戦いの役に立ったか甚だ疑問です」

盗賊「魔王軍の刺客……いや、そういう感じでもなかったね」

魔王「どっちにしろ、ここに得体の知れない妙な奴がいるってのには違いないよな」

盗賊「……つくづく、厄介事の種ってのは尽きないねぇ」

ちかすいろは ふたたび せいじゃくにつつまれ みずのおとだけが ひびいていた……
365 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/02/25(金) 23:33:44.54 ID:T5897/Iy0
賢者は魔王をウザがり、盗賊は面白い奴だと一歩引いた感じで接しています。
魔王は割とお構いなしに馴れ馴れしく節操無く接しています。

若干スランプ気味だけど相変わらず台詞がスラスラ出てくるのは魔王の人徳かも。
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 23:54:25.98 ID:Qt0p5luDo
>>365 乙!
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 05:14:59.11 ID:5wJ5Yx3IO
なんだか魔王がインポッシブルのトーリに見えて来たぜ……!
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 23:58:44.39 ID:1HgNJd6xo
おつ!
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/28(月) 06:08:22.10 ID:dvlZyLiq0
がんばって書いてくれ
370 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/03/01(火) 23:18:30.58 ID:6eBqO0mz0
 
――――――――――
数十分後
砂漠の村・井戸
 
 
魔王「ん〜! 太陽が眩しいぜ」

盗賊「久しぶりだよ、この砂漠の暑さ。しばらく帰ってなかったからねぇ」

賢者「ていうかこれ、暑いってレベルじゃないですよ……」

盗賊「暑いっていうから余計に暑くなるのさ。さ、早いとこ用事を済ませちまうよ」

魔王「……でもさ、こんな田舎の村に魔法石なんてあるの?」

盗賊「あるかどうかは五分五分。ま、確認してみないことにはわかんないさ」

賢者「あっ、待ってくださいよぉ。どこ行くんですか?」

盗賊「バザーだよ」

賢者「バザー?」

盗賊「そ。この村では、年中バザーが開かれててね」

盗賊「そこでは、大陸のあちこちから集められた品物が売られてるのさ」

魔王「つまり、そのバザーでオレ達の探してる魔法石もあるかもしれない?」

盗賊「そういうこと。じゃ、さっさと行くよ。先に買われちまうのも癪だからね」
371 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/03/01(火) 23:19:11.25 ID:6eBqO0mz0
 
――――――――――
数分後
砂漠の村・バザー
 
 
ざわ・・・ざわ・・・

<ヤスイヨーホリダシモノダヨー

<オニイサンチョットミテッテヨー

賢者「わぁ……すごい! すごいですよ! すごい品揃えです!」

魔王「確かに……っておい親父、これって永久銀のアクセサリーか?」

賢者「永久銀!? そんな希少な金属、王都でもなかなかお目にかかれないのに」

店主「おうよ! 他にもほれ、決して錆びつかない魔法合金のノコギリとか」

店主「そうそう、これなんてどうだい? 相手の戦闘力を測れる魔法の眼鏡」

賢者「いや、それはいらないです」

魔王「すげぇな……マジで大陸中のありとあらゆるものが集まってるよ」

賢者「どんなルートで集めたらここまで……よほどの豪商がいるんでしょうか」

盗賊「そんな奴いないよ。なんたって、ここで売られてるのは全部盗品だからね」

賢者「と……盗品? 盗んできたものなんですか!?」

盗賊「そ。ここで物売ってる連中は、みんな商人であり盗賊でもあるのさ」
372 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/03/01(火) 23:20:26.70 ID:6eBqO0mz0
盗賊「価値のある物には、自然と相応の値段がつく。犯した危険の分だけ金になる」

盗賊「だから皆、騎士団に捕まるリスクを負ってでも珍しい品物を仕入れてくるのさ」

魔王「正規のルートじゃ到底手に入らないようなものも?」

盗賊「当然。その証拠に、永久銀の装飾品なんかこんな辺鄙なところに出回るわけないだろ?」

賢者「でもそんなの、王宮や騎士団が黙ってません。いずれ摘発されますよ」

盗賊「そうなったら、尻尾巻いて逃げ出して、またどこか別の場所で始めるだけさ」

盗賊「あたしが知ってるだけでもこの村は5回は移動してるよ。砂漠の隅から隅、端から端をね」

盗賊「砂漠の地下には地下水路が張り巡らされてるし、隠れる場所にも困らないからね」

魔王「逞しいなぁ……で、盗賊ちゃんも盗品商売で一山当てるつもりだったの?」

盗賊「いや、あたしは都会暮らしに憧れただけ。王都の住み心地はなかなかだったよ」

盗賊「ヘマやってパクられちまったけど、それで勇者にスカウトされるんだから人生わかんないね」

賢者「……なんだかカルチャーショックです……」

魔王「まぁまぁ、賢者ちゃん。とりあえずは目当てのものを買っちまおうぜ」

賢者「そうですね……魔法石の相場っていくらくらいでしたっけ」ゴソゴソ

賢者「……ん? あ、あれっ?」ゴソゴソ
373 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/03/01(火) 23:21:17.64 ID:6eBqO0mz0
魔王「どしたの、賢者ちゃん」

賢者「さ……財布がないです!」

魔王「えっ!? マ、マジ!?」

盗賊「……あー。スられちまったね、そりゃ」

賢者「い、いつの間に!? ちゃんと外套の内ポケットに入れておいたのに」

盗賊「言ったろ? ここにいる連中は商人であり盗賊でもある。周りは全員スリ師と思っていいよ」

賢者「そういうことは最初に言っておいてください!」

盗賊「ごめんよ、事前に教えとくべきだった……ていうか財布はあたしが持つべきだったね」

賢者「……いえ、ボクの不注意です。ごめんなさい……」ショボーン……

魔王「大丈夫だって、賢者ちゃん。オレは気にしないよ。金はまた稼げばいいんだ」

賢者「でも……」

盗賊「魔王の言う通りだよ。そう落ち込むこたぁないさ。稼ぐ当てはあるからね」

魔王「おっ、流石は盗賊ちゃん。どこか雇ってくれるとこでもあんの?」

盗賊「……ま、着いて来なよ」
374 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/03/01(火) 23:23:16.04 ID:6eBqO0mz0
 
――――――――――
数分後
砂漠の村・村長の屋敷
 
 
盗賊「着いたよ。ここがこの村の村長の家さ」

賢者「結構立派なお屋敷ですけど、ここが稼ぐ当てなんですか……?」

魔王「なに、執事かメイドでもやれっての? オレは仕えるより仕えられる方がいいのになぁ」

盗賊「バーカ、そういうのじゃないよ。第一ここ、あたしんちだよ?」

賢者「へぇ、盗賊さんの……」

賢者「……へ?」

盗賊「ほら、入った入った……おーい、誰かいるかい?」

トタトタトタトタ……

メイド「盗賊! 帰ってたのね?」

盗賊「ああ、今しがたね」

メイド「もう、突然王都に行くって言ってから連絡も寄越さないで……」

盗賊「ごめんごめん、悪かったよ。ちょっと色々忙しくてね」

メイド「執事もコックも心配してたのよ? そちらの方は……盗賊の子分?」

盗賊「旅の道連れだよ。それで、親父は?」

メイド「旦那さんは書斎にいるわ。呼ぶ?」

盗賊「頼むよ。ちょいと親父に頼んなきゃならなくなってさ」

メイド「じゃあそこの応接間で待ってて頂戴。すぐ呼んでくるからね」

タッタッタッタッ……
375 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/03/01(火) 23:24:19.31 ID:6eBqO0mz0
魔王「さっきの子、可愛いじゃんか。盗賊ちゃんと同い年くらい?」

盗賊「あたしのひとつ下。妹みたいなもんだよ」

賢者「妹みたいってことは、小さな頃から奉公していたんですか?」

盗賊「そうだよ。ウチで働いてる人間は、みんなあたしの親父が盗んできた人間だからね」

賢者「盗んで?」

盗賊「どっか余所の街の金持ちの家から、剣奴や農奴の子供を盗んできて自分の家で働かせるのさ」

魔王「……そりゃあまた、とんでもないなぁ。奴隷を盗むって」

盗賊「奴隷がくたばることなんかよくあるし、一人二人いなくなっても誰も気にしないからね」

盗賊「安全に移送する手筈さえ整えれば楽な仕事だって親父は言ってたよ」

賢者「でも、それなら普通に奴隷市場で買えばいいのに……」

盗賊「あたしもそれが気になってさ、親父に聞いてみたことがあるんだ」

盗賊「そしたらなんて答えたと思う? 『俺は盗みのスリルを楽しんでるんだ』だってさ」

賢者「うわぁ、予想以上にダメな人の答えです」

盗賊「それから『こいつはスリリングだよ! 女には教えたくない快感だ』とか」

魔王「親父さん、そのうち車輪のついた戦艦に特攻するんじゃないか?」
376 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/03/01(火) 23:24:58.56 ID:6eBqO0mz0
盗賊「極めつけに『お前が寂しくないようにガキの奴隷を盗んできたんだ。友達にしろ』だって」

盗賊「余計な御世話だってんだよ。どこの世界に友達を余所から盗んでくる親がいるんだか……」

魔王「えらいエキセントリックな親父さんだなぁ」

賢者「盗賊の鑑みたいな人ですね……」

ガチャッ

盗賊「!」

メイド「旦那さん、こちらです」

村長「おお……よう、バカ娘。帰ってきてたのか」

盗賊「久しぶりだね、クソ親父」

村長「……おい、なんだ? 開口一番親に向かってその口の聞き方」

盗賊「悪いね。バカな親の悪い影響だよ」

村長「まったく躾がなってねぇ。親の顔が見てみたいもんだ」

盗賊「おい、メイド? 鏡持ってきて差し上げなよ。一番上等なやつをね」

村長「こっちのちんちくりんなガキとバカそうな男はなんだ? お前の子分か」

盗賊「メイドから聞いてないのかい? あたしの旅の仲間だよ」

魔王「……なんでオレ達、第一印象が盗賊ちゃんの子分なんだろうな」

賢者「さぁ……?」
377 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/03/01(火) 23:25:36.45 ID:6eBqO0mz0
村長「で、何の用だ? 親子の団欒をしに来たようには思えねぇな」

盗賊「金の無心だよ。ちょっとした額が入り用でね」

村長「あぁ? そんなもん、適当に金持ちっぽい家に押し入って盗んでくりゃいいだろうが」

盗賊「この村の人間が黙って盗ませてくれるとは思えないよ。アンタもそうだろ?」

村長「まあな。だがそれを何とかさせるためにお前に色々仕込んでやったんだろうが」

盗賊「今あたしの身柄は勇者のものだからね。そのせいか、どうも気が進まなくてさ」

村長「勇者? ……そいつか?」

魔王「あ、オレはただの楽師さ。真実の愛を歌う詩人ってやつ?」

村長「じゃあそっちのガキか」

賢者「ボクは王宮の賢者です! ……親子揃ってボクを子供扱いするんだから……」

盗賊「勇者とは今別行動をしてるんだよ。で、魔法石を仕入れるよう頼まれたんだけど……」

村長「金が足りねぇから俺にねだりに来たってわけか」

盗賊「そういうことになるね」

村長「つくづく親不孝な娘だぜ。俺をナメてんのか? 家に帰ってくるのは金が欲しい時だけか」

盗賊「あたしもアンタに頼りたくはなかったんだけど、急ぐ用事なんだ。頼むよ」
378 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/03/01(火) 23:26:56.15 ID:6eBqO0mz0
村長「……ったく、このバカ娘が」

村長「……いいぜ、多少なら都合してやるよ」

賢者「本当ですか!?」

魔王「やった! 頼んでみるもんだな、盗賊ちゃん!」

村長「だが、タダじゃねぇ。条件がある」

盗賊「条件?」

村長「俺だって村長として結構忙しい身でな。解決しないといけねぇ案件を幾つか抱えてる」

村長「そこで、ちょいとひと仕事頼まれてもらいたい」

盗賊「仕事ねぇ……何をすればいいんだい?」

村長「最近、地下水路に妙な奴が住み着いちまってよ。暗がりの中で人を驚かせやがるんだ」

賢者「それって、ボク達が遭遇した……?」

村長「知ってるなら話は早い。そいつを水路から追い出すか、駆除してくれ。それが条件だ」

盗賊「なるほど……わかった。それでいいんだね?」

村長「ああ。お前なら楽勝だろ? なんたって勇者の仲間なんだからな」

盗賊「……言ってくれるね」

魔王「大丈夫大丈夫。魔物か何かわからないけど、そんなのオレがやっつけてやるよ」

賢者「魔お……楽師さんはいちいち言動が無責任です」

盗賊「ま……とにかく承ったよ。親父は財布の紐を緩めて待ってるんだね」

村長「おうよ。吉報を待ってるぜ」
379 : ◆6I9SwHc8xc [sage saga]:2011/03/01(火) 23:29:25.37 ID:6eBqO0mz0
お気づきの方もいらっしゃるかもわかりませんが、
そういえば盗賊回やってねぇなぁと思ったので今回は盗賊回です。

魔王もちゃんとバトルシーンとかで活躍させたいけどそれは少し遠くなるかもしれません。
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 23:34:53.62 ID:7BNfCKpxo
>>379 乙!
魔王の活躍早く見たい!
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/03(木) 05:06:02.19 ID:cLlfEHOh0
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 08:23:02.06 ID:TeB7bpHi0
オツゥ!
そういや竜姫もあんまり魔翌力ないって言ってたけど、親とか強い魔族と比べてってこと?
できれば竜王とか獣王みたいな幹部とか、平均的な魔族の性能も知りたいです
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 09:08:24.91 ID:mDsvvKUwo
パーティ内では>>289にパラ出てるけど
これで弱いのなら幹部クラスはA+++位いってんのかな
384 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/04(金) 01:29:03.25 ID:3RIcwNno0
僧侶
破壊力:D(C) スピード:D    射程距離:B
持続力:C    精密動作性:A   成長性:C
社交性:E

獣王
破壊力:A    スピード:B    射程距離:C
持続力:B    精密動作性:E   成長性:E
暑苦しさ:A

獣王子
破壊力:A    スピード:B    射程距離:D
持続力:C    精密動作性:C   成長性:B
ファザコン:A

竜王
破壊力:A(A) スピード:C    射程距離:D(A)
持続力:A    精密動作性:C   成長性:A
我慢強さ:E

海王
破壊力:E(B) スピード:D    射程距離:C(A)
持続力:A    精密動作性:A   成長性:E
愛情:A

機械王
破壊力:A    スピード:D    射程距離:B
持続力:A    精密動作性:A   成長性:E
柔軟性:E
 
僧侶と幹部クラスのパラメータはこのくらい。平均的な魔族はまあオールC評価でBがチラホラ程度。
正直パラメータは全くのフィーリングでつけてるので演出の都合により劇中での描写はその都度変わっていきます。
385 :思いついたから書いてみただけ ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/04(金) 01:31:18.45 ID:3RIcwNno0
キャラクター別嘘攻略

勇者
 多彩で高性能な魔法を持ち、ステータス面でも穴がない万能型。
 強力な魔法や特技が揃うが、魔法を使うたびに所持金がガンガン減っていくため
 序盤は金欠に陥りやすくゲームバランスが悪いと叩かれる。

賢者
 魔法攻撃力の面では竜姫が一歩上だが、習得している呪文の数は最多。
 ステータスは総じて平均以上に育つが、物理攻撃力が低くスピードも遅い。
 育ち方としては中盤〜終盤にかけてのステータスの伸びがいい晩成型。

盗賊
 HPと攻撃力が低いが、手数と機動力に優れるスピードタイプ。
 魔法は使えず、物理技はリーチと攻撃範囲が狭いが隙がない。
 打たれ弱く癖の強いキャラだが使いこなせば強い。しかし多対一の状況には弱いので注意。

魔王
 魔法・特技・ステータス全てにおいて中途半端な器用貧乏キャラ。
 スピードもMPもそれなり以上のものを持つので、育て方によって前衛にも後衛にもなれる。
 他キャラとの連携攻撃で真価を発揮する。

竜姫
 HP・物理攻撃力・防御力・スピードはぶっちぎりの最下位。魔法攻撃に特化したキャラ。
 単発の火力は全キャラ最高なので、後衛として適当に魔法をぶっぱさせておくのが安定。
 たまにプレイヤーの指示を無視することがあり油断できない。

僧侶
 支援・回復型の後衛キャラ。呪文の詠唱速度が最速で状況に対応しやすい。
 防御力は低いが物理攻撃力はそこそこで、実は前衛でも使っていける。
 通常攻撃は旅行鞄で敵を叩きのめすという豪快なもの。レベルを上げて物理で殴ろう。
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 03:41:29.09 ID:RS0fHVoVo
そうりょちゃんちゅっちゅ
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 08:18:31.31 ID:kRSMg+kDO
僧侶、鞄で殴打かwwwwww



中には何が詰まってるんだろうな ゴクリ
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 10:53:10.64 ID:7VmZPkbDO
Q.竜王が倒せません、攻略法を教えてください!
A.レベルを上げて物理で殴れ
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/04(金) 17:44:33.16 ID:gYY57yHyo
ラwスwトwリwベwリwオwンwwwww
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/06(日) 06:02:17.48 ID:w328hArb0
僧侶を前衛で使うのには結構やりこまないとできないな
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 09:26:06.20 ID:Zp7hlVgAO
ヘヴィストライク特化か
392 :番外編 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/06(日) 21:45:16.55 ID:BAE+pkF40
 
――――――――――
勇者が旅立つ数ヶ月前
 
 
勇者「……よし。あとは参考資料を添付すれば完成だ」

同僚「おい、勇者! これから飲みに行くんだけど、お前もどうだ?」

勇者「ああ、ちょうど今レポートを仕上げたところだ。御相伴に与るとしよう」

同僚「よし! 今日は門前町の酒場だ。いいな?」

勇者「問題ない」

同僚「へへ……一度でいいからお前が酔い潰れるところを見たいと思ってたんだよ」

勇者「残念だが、その期待には沿えない。私は酒に強いからな」

同僚「こいつ……いや、確かに、お前はどんな強い酒でも顔色ひとつ変えずに飲み干すからなぁ」

勇者「私のペースに付き合うのは君の健康に悪い。君は君のペースで飲むといい」

同僚「わかったよ。じゃあ行こうぜ」

勇者「ああ」
 
393 :番外編 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/06(日) 21:45:44.70 ID:BAE+pkF40
 
酒場 
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Z__________ 

  
同僚「乾杯!」グイッ

勇者「乾杯」グイッ

同僚「ふぅ……いやぁ、それにしても今日は人が少なくて助かったな。いい席が空いてたぜ」

勇者「今日は平日だし、そこまで遅い時間ではない。これから混み始めるだろう」

同僚「そうだなぁ……とりあえず何かツマミでも頼むか」

勇者「ああ」

同僚「そういや、知ってるか? 王宮が勇者候補を探してるんだってよ」グビッ

勇者「勇者……王宮直轄の特務武官の俗称だな」ゴクゴク

同僚「魔族との戦争が近いんだろうさ。やだやだ、戦時下じゃ好きな研究ができないぞ」チビチビ

勇者「王立魔法研究所も王宮直轄の機関だからな。魔法兵器の開発を命じられるかもしれない」グイッ

同僚「お前が研究してる新しい魔法、アレになら予算が下りるかもな」

勇者「だが、まだまだ解決すべき課題は多い。到底実用レベルには達していない」

同僚「それにしても勇者候補ねぇ……どんな奴が勇者に任命されるんだろうな」

勇者「候補者として選抜されるとすれば貴族の子女だろう。その方が広告塔として利用しやすい」

同僚「俺もお前も平民の出だし、どっちみち関係ない話かねぇ?」
 
394 :番外編 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/06(日) 21:46:27.61 ID:BAE+pkF40
 
<ヘイオマチー

同僚「……しかしなぁ」

勇者「なんだ?」

同僚「いや、お前ってさ。研究とかの真面目くさった話の時はいいんだが、どうにもな」

勇者「どうにも、なんなんだ」

同僚「ジョークとかユーモアのセンスがないってんのさ。お前、冗談のひとつも言わねぇだろ?」

勇者「ジョーク、か」

同僚「そうさ。その仏頂面と四角四面な性格を矯正すりゃ女にもモテるだろうにな」

勇者「生活の上で、異性との交際が必要だと思ったことはないが」

同僚「違う違う。そういうのは必要に迫られてするもんじゃないだろうが」

同僚「いや、悔しいけどお前は顔がいいからな! あとはユーモアセンスだよ」

勇者「ユーモア……ふむ」

同僚「面白いジョークのひとつやふたつ覚えてみれば、人生がより楽しくなるぞ」

勇者「同僚。君は酔っているな?」

同僚「バカ野郎、まだまだ酔ってなんかいねぇよ。お前ほどじゃないが俺も強いんだ」

勇者「そうか……」

同僚「おう、そうだとも。とにかくお前に必要なのはだなぁ……」
 
395 :番外編 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/06(日) 21:47:08.55 ID:BAE+pkF40
 
翌日・王立魔法研究所
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Z__________ 
 
 
勇者「……」ペラッ

勇者「……ジョークか」ペラッ

勇者「しかし、いざジョークをと思っても、なかなか思いつかないものだ」

勇者「書店で買った指南書には、普段は言わないようなことを言って意外性で笑わせろとあるが」

勇者「……私が普段は言わないようなこと、か」パタン
 
勇者「あとで思い浮かぶものをいくつか書き留めておこう。その上で問題点を列挙して……」

ドンッ
バサァッ……

勇者「……っ、すまない。不注意を……」

僧侶「ご、ごめんなさい……余所見を……」

僧侶「……って……勇者さん……?」

勇者「僧侶か。すまない、資料が床に……」

僧侶「い、いえ……大丈夫です……」

勇者「……」サッサッ

僧侶「……」サッサッ
 
396 :番外編 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/06(日) 21:47:57.84 ID:BAE+pkF40
 
僧侶(勇者さんって……なんだかいつも不機嫌そうで、怖いです……)

勇者「……」

僧侶(か、格好いい人だと思うけど……でもやっぱり……)

勇者「僧侶」

僧侶「は、はいぃ!」

勇者「確認してくれ。資料はこれで全部か?」

僧侶「あ、は、はい……だ、大丈夫……です……」

勇者「そうか」

僧侶「はい……」

勇者「……」

僧侶「……」

僧侶「あ……あの……私、これで……」

勇者「ああ、すまなかった。今後は気をつけよう」

僧侶「いえ……わ、私も不注意でしたから……お互い様ってことで……」

勇者「それならよかった。君に嫌われてしまったら、生きていけないからな」

僧侶「え……?」

勇者「では、失礼する」

スタスタスタ……
 
397 :番外編 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/06(日) 21:49:18.71 ID:BAE+pkF40
 
僧侶「……」

僧侶「い、今のって……? え……?」

勇者(君に嫌われてしまったら、生きていけないからな)

僧侶「……〜〜〜っ!?」///

僧侶「ま、まさか……そんな……で、でも、心の準備が」アタフタ

僧侶「ゆ……勇者さんって……」

僧侶「大胆……です……」///
 
 
 
勇者「……」

勇者「先程の冗談には反応がなかったが、やはり面白くなかったのだろうか……」

勇者「以前観た歌劇の台詞をそのまま流用したのがいけなかったのか……?」

勇者「……×、と。他にも候補はいくつかあるが、要検証か」メモメモ

勇者「『空に輝く星よりも君の方が美しい』……いや、これも小説の台詞か……」
 
398 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/06(日) 21:50:30.95 ID:BAE+pkF40
なんか間が持たないので急遽番外編投下。
ユーモアセンスがなくてもイケメンは爆発しろというお話。
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 22:10:05.60 ID:U+2kul410
乙です。
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 22:40:44.31 ID:4IQZhvmBo
>>398 乙!
僧侶かわいいな〜
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 02:56:29.78 ID:52dOpQuDO
僧侶はその内卑猥なコスチュームの武道家に転職して
マホイミとか言いながら殴りかかるのだろうか
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 08:20:26.88 ID:zwVEkfCDO
最終的にアムド!とか叫ぶのか


天然たらし始まったギギギ
403 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/08(火) 23:16:14.66 ID:NdJB+Wyt0
 
――――――――――
翌朝
砂漠・地下水路
 
 
けんじゃは じゅもんを となえた
まほうのかがりびが あたりを てらしだした!
 
賢者「視界は確保できました。あとは探査呪文で生命エネルギーの動きをサーチします」

魔王「へぇ、そんな呪文もあるんだ……有効範囲は?」

賢者「あまり広くはありませんよ。あと、アンデッドや物質系モンスターには反応しません」

けんじゃは じゅもんを となえた
けんじゃのてのうえに まほうじんが うかびあがった!

盗賊「……じゃあ逆に言えば、水路の中にいるのはそういう類の魔物じゃないんだね?」

賢者「はい。ボクはそう思います」

魔王「根拠は?」

賢者「あの時、敵は炎に驚いて逃げて行きましたよね?」

盗賊「ああ。賢者が明りを出した途端にね」

賢者「アンデッドも物質系も基本的に五感に頼らないので、外部からの刺激には強いんです」

賢者「急激な温度変化や強い光に弱いとすれば、むしろ獣系や爬虫類系じゃないかと……」
 
404 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/08(火) 23:16:54.04 ID:NdJB+Wyt0
 
盗賊「なるほどねぇ……じゃあ賢者はそっちに集中しな。戦闘はあたしと魔王がやる」

魔王「おっと、いよいよオレの活躍を見せてあげられるってわけだ。腕が鳴るぜ」

盗賊「アンタ、自分のこと弱いって言ってなかったっけ」

魔王「そりゃあアレだよ、オレは女の子がピンチの時は隠されたパワー的なサムシングが」

盗賊「はいはい、精々カッコいいトコ見せておくれよ。期待しないでおくからさ」

魔王「OK、任せとけって。で、賢者ちゃん、今どんな感じ?」

賢者「今のところは反応はありませんけど……もう少し奥へ進んでみましょう」

盗賊「ま、すぐ見つかるようなところにいるわけがないしね」

魔王「よ〜し! どんな奴が隠れてるのか知らないけど、オレがすぐに……」
  
カチッ

魔王「……ん?」
 
405 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/08(火) 23:17:24.67 ID:NdJB+Wyt0
 
賢者「どうしたんですか? 急に立ち止まって」

魔王「いや、今なんか変な音が……」

盗賊「変な音って……まさか」

ピシッ……

盗賊「! 賢者!」

賢者「えっ?」

そのとき けんじゃの まうえにあるてんじょうに きれつがはしり くずれだした!
じゅもんに いしきをしゅうちゅうしていた けんじゃは はんのうがおくれている!
たいりょうのすなが けんじゃにむかって おちてきた!

魔王「……ッ!」

まおうは きびすをかえし けんじゃのもとへ かけだした!

ドザァァァァァァァ……!

もうもうとたちのぼる すなぼこりで とうぞくは しかいをうばわれている!

盗賊「ゲホッ、ゲホッ……賢者! 魔王!」

しばらくすると すなぼこりが おさまり しかいがひらけてきた……
すいろは たいりょうの がれきとすなで ふさがれていた!

とうぞくが よびつづけていると がれきのむこうがわから くぐもったこえが きこえてきた……

魔王『……盗賊ちゃん! 盗賊ちゃん、大丈夫かー!?』

盗賊「魔王、無事かい!? 賢者は!?」
 
406 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/08(火) 23:18:22.60 ID:NdJB+Wyt0
 
賢者『ボクは大丈夫です。瓦礫が落ちてくる寸前で魔王さんが助けてくれて……』

魔王『へへっ、どう? オレってばカッコよかったでしょ』

賢者『助けて早々そんなことを口走るからカッコよく思えないんです』

盗賊「二人とも無事みたいだね。よかった……」

賢者『でも、どうするんですか? 道が完全にふさがっちゃいましたよ』

魔王『確かに、このままじゃ盗賊ちゃんが村に戻れないぜ』

盗賊「いや、大丈夫だよ。別のルートで遠回りすれば村の井戸まで戻れるからね」

賢者『仕方ありませんね……じゃあ、篝火だけそっちに預けますから、使ってください』

がれきのすきまから けんじゃの まほうのかがりびが とおりぬけてきた
かがりびは とうぞくのずじょうに かかげられ あたりを あかるく てらした!

賢者『プライオリティをそちらに移譲します。少し念じれば、自由に動かせるはずです』

盗賊「あたしは魔法が使えないし、魔力だってない。いつまで持つんだい?」

賢者『大丈夫です。遠隔制御でコントロールしますから、ボクの魔力が続く限り燃え続けます』

魔王『賢者ちゃんって器用だなぁ』

賢者『このくらい、大学で魔法学を修めていれば誰にだってできますよ』

盗賊「まあ、とにかくアンタ達は先に帰ってな。あたしもすぐに戻るから」

魔王『OK、盗賊ちゃんも気をつけて』
 
407 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/08(火) 23:19:32.79 ID:NdJB+Wyt0
 
バシャ……バシャ……

盗賊「……しかし、罠が仕掛けられているとはね。あたしとしたことが油断しちまったよ」

盗賊「明りがあるおかげで罠の解除もやりやすいけど……っと」ガチャンッ

とうぞくは あしもとを しらべた
じぶんのしゅういに しかけられていた わなを かいじょした!

盗賊(……罠の間隔が狭くなってる)

盗賊(ということは、この先に潜んでいるってことだね)

盗賊(……だけど、妙だ)

盗賊(こんなあからさまなことをしたら、敵に自分の居場所を教えることになるってのに)

盗賊(まるで素人の仕事じゃないか……一体どういうこと?)

盗賊「……ッ!」

キィン!

とうぞくは しょうめんからとんできたナイフを はじきおとした!

盗賊「……罠を外して一安心なところを狙った、ってところかい? もう一工夫必要だね」

??「チッ……」

盗賊「姿を現しな。なに、悪いようにはしないよ。アンタ次第さ」

??「……」

ザッ!

盗賊「OK、いい子だ。素直な奴は好きだよ」
 
408 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/08(火) 23:20:20.23 ID:NdJB+Wyt0
 
猫忍者「人間のくせになかなかやるにゃ……」

盗賊「おっと……ドンピシャだよ、賢者。予想してたのより随分と可愛いね」

猫忍者「にゃはは、戦場ではそういう奴から死んでいくにゃあ。俺様の可愛さに騙されてにゃ」

盗賊「……それを言ったら、あたしは騙されてやれないよ?」

猫忍者「にゃ? ……にゃにゃ!? ひ、卑怯だぞ人間! 俺様を騙したにゃあ!?」

盗賊「……まあ待ちなって。アンタ、あたしの顔に見覚えはないかい?」

猫忍者「……そういえば、見たことのある顔だにゃあ」

盗賊「昨日、あたし達がこの地下水路を通った時に脅かしてくれたろ?」

猫忍者「あの時の人間かにゃ。俺様の気配を感じ取るとは見所のある奴だにゃあ」

盗賊「アンタもなかなかやるじゃないか。当てるつもりで投げたナイフを弾かれるなんてね」

猫忍者「それはお互い様だにゃ。まったく油断のならないメスだにゃあ」

盗賊「……単刀直入に言っちまうけど、あたしはアンタを追い出しに来たのさ」

猫忍者「にゃに?」

盗賊「アンタ、この水路を通る奴は誰彼構わないで脅かしてるだろ?」

盗賊「上に住んでる連中が迷惑しててね。あんな罠まで仕掛けて、一体どういうつもりだい?」

猫忍者「にゃ……そ、それは言えないにゃあ」
 
409 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/08(火) 23:21:34.02 ID:NdJB+Wyt0
 
盗賊「どうして言えないんだい? 悪いけど、プライバシーがどうとかって言い訳は聞けないね」

猫忍者「う……出ていけと言われて縄張りを譲る魔族などいないのにゃ!」

盗賊「やり合えばただでは済まないと思うよ。お互いにね」

猫忍者「けっ、人間風情の力などたかが知れてるにゃあ」

盗賊「本当にそう思うかい?」

猫忍者「にゃ……!」

盗賊「……!」

盗賊(……間違いない。こいつは何かを隠してる)

盗賊(それは嘘や隠し事であり、物質的な何かでもある。つまり、何かを守っているんだ)

盗賊(じゃあ、それは何だ? わざわざ罠まで仕掛けて人を遠ざける理由ってのは……)

盗賊(……もう一枚カードを切ってみないと、わからないね)

盗賊「……アンタ、猫獣人ってことは獣王軍だね?」

猫忍者「にゃっ、よくわかったにゃあ? その通り、俺様は獣王軍の忍だにゃあ」

盗賊(忍ってのを胸張って言うのもどうなのかねぇ……)

盗賊「……あたしの仲間に魔王がいるって言ったら、どうする?」
 
410 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/08(火) 23:22:09.78 ID:NdJB+Wyt0
 
猫忍者「……そんな戯言を俺が信じると思っているのにゃあ?」

盗賊「嘘じゃないよ。アンタも見てるだろ、あの頭の足りなさそうな男だよ」

猫忍者「にゃ……確かに妙な魔力を感じる奴だと思ったけどにゃあ」

盗賊「竜王が獣王子を殺し、魔王に反旗を翻したあの夜から、魔王の行方はわかっていないはず」

猫忍者「……」

盗賊「ついでに言うと機械王もさ。こっちは水路の入り口に偽装して隠してあるよ。見に行くかい」

猫忍者「……」

盗賊「魔王とは、ちょいと込み入った事情があって行動を共にしてる」

盗賊「あたしが信用ならないなら、同じ魔族ならどうだい? 話をするくらいは構わないだろ」

猫忍者「本物の魔王様だという保証は?」

盗賊「そんなもん持ち合わせてると思うかい? そっちの方が逆に疑わしいじゃないか」

猫忍者「……」

猫忍者「なら、連れてこいにゃ。そしたら信用してやるにゃあ」

盗賊「わかった。ちょっと待ってておくれよ? すぐに連れてくるから」

猫忍者「嘘だった時はわかってるにゃあ?」

盗賊「肝に銘じとくよ。ま、あいつのことだからすぐわかると思うけどね」
 
411 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/08(火) 23:22:45.80 ID:NdJB+Wyt0
 
――――――――――
一時間後
砂漠・地下水路
 
 
魔王「久しぶりだな、猫! こいつぅ〜!」ナデナデ

猫忍者「ややや、やめるにゃ魔王様! 俺様をナデナデするのはやめるにゃあ!」

盗賊「……」

賢者「……えっと、知り合いなんですね?」

魔王「ああ。獣王子の部下で一番フカフカしてる奴だよ。それにバカで可愛い」

猫忍者「魔王様! 確かに俺様は頭は良くにゃいが、その言い方はあんまりだにゃあ!」

賢者「そうですよ、魔王さん。言って良いことと悪いことの区別くらいつけてください」

盗賊「賢者? アンタも最近ちょっと口悪いよ」

魔王「それにしてもお前、こんなところに隠れてたのか。毛並みもボロボロじゃんか」

猫忍者「う……確かに今の俺様はただの落ち武者だにゃ。しかしボロは着てても心は錦だにゃあ」

魔王「何それ? ……そういや、盗賊ちゃんの話だとお前、何か隠してるんだって?」

猫忍者「にゃあ」コクッ

魔王「あの夜、お前も魔法の森にいたよな。何を持ち出したんだ?」

猫忍者「にゃ……」

盗賊「あたし達にも見せてもらいたいね。いいかい?」

猫忍者「……いいにゃ。魔王様の件は本当だったし、特別に許可してやるにゃあ」
 
412 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/08(火) 23:25:02.13 ID:NdJB+Wyt0
 
ねこにんじゃは すいろのよこみちに とうぞくたちを ゆうどうした
そのさきには ひらけたくうかんがあり へやのまんなかに かんおけが おかれていた

ねこにんじゃは ゆっくりと かんおけのふたを あけた!

魔王「……!」

かんおけのなかには じゅうおうじのいたいが よこたわっていた……

盗賊「獣王子の死体……あの後、アンタが回収してたんだね」

賢者「……棺桶から魔力を感じます。多分、魔法で死体の鮮度を保っているんです」

魔王「獣王子……」

猫忍者「殿下は獣王軍の未来を背負って立つべきお人だったにゃあ。それを竜王の奴が……!」

猫忍者「あのまま遺体を野晒しになんてできなかったから、棺桶に入れて運び出したのにゃあ」

猫忍者「せめて、遺体は魔界に帰して差し上げようと……思っていたのにゃあ……」

猫忍者「それで、竜王軍から逃げ延びた先がここだったのにゃあ」

魔王「……」

まおうは じゅうおうじのしたいを じっとみつめている……
けんじゃは まおうの いつになく しんけんなまなざしに なにも いえずにいる
とうぞくは すこしまよったあと まおうに はなしかけた

盗賊「魔王」

魔王「……なに? 盗賊ちゃん」

盗賊「……あー、なんだい。魔法石を手に入れて、機械王の修理を終えてからのことなんだけどさ」
 
413 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/08(火) 23:25:58.11 ID:NdJB+Wyt0

盗賊「最初の行き先、アンタの行きたいトコに行っていいよ。誰を連れて行っても構いやしない」

賢者「盗賊さん……」

魔王「いいの? オレに任せたら、王都じゃなくて魔界に行くことになるぜ」

盗賊「やっぱり、魔界に行きたいんだね?」

魔王「……そりゃあ、さ」

盗賊「どうもあたしゃ、こういう話に弱くてね。泣かせるじゃないか」

盗賊「それに、普段チャランポランなアンタのそんな顔見ちゃ、ね」

盗賊「はは……あたし、やっぱり甘いかな? まあ、これは生まれついての性分で」

魔王「盗賊ちゃん」

盗賊「?」

魔王「盗賊ちゃんの優しい気持ちって、魔族の価値観からすればバカみたいに映るかもしれない」

魔王「何しろ欲しいものは奪え、気に食わない奴は殺せっていう、くっだらない世界だし」

盗賊「……」

魔王「でもオレは好きだよ、そういうの。盗賊ちゃんのこと、もっと好きになった」

魔王「サンキュー、盗賊ちゃん」ニカッ

盗賊「……ど、どういたしまして」

魔王「あっ、大丈夫だよ? オレは賢者ちゃんのことも好きだから。ジェラシー感じちゃった?」

賢者「御心配には及びません。ボクは魔王さんのこと、これっぽっちも好きじゃありませんから」

魔王「ははぁん、ツンデレ?」
 
414 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/08(火) 23:27:12.38 ID:NdJB+Wyt0

賢者「……それで、これからどうしますか? まずは村長さんへの報告ですよね」

盗賊「そうだね、それはあたしがやっておくよ。魔法石の調達も」

賢者「じゃあ、ボク達は機械王のところまで戻って、修理の準備をしておきます」

魔王「この棺桶に入ってる限り、獣王子の死体が腐ったりはしなさそうだしね」コチョコチョ

猫忍者「にゃにゃっ!? 魔王様、顎を撫でないで欲しいのにゃあ!」

賢者「あ、それボクにもやらせてください!」

猫忍者「ふにゃーっ!?」

盗賊「……じゃあ、そっちは任せる。あたしは村に行くよ」

猫忍者「それなら、俺様は魔王様と一緒に」

盗賊「おっと。アンタは居残り」ガシッ

猫忍者「にゃっ? なんでだにゃ?」

盗賊「水路の中に仕掛けた罠、全部外してきな。危ないからね」ヒョイッ

猫忍者「ぎにゃーっ!? く、首筋を掴まないで欲しいのにゃ、苦しいにゃあ」

盗賊「お、意外と軽いじゃないか。昔家で飼ってた猫を思い出すよ」

猫忍者「お、俺様を家猫と一緒にするんじゃにゃい! コラー! 離すにゃー!」



村長からの依頼:達成 魔法石調達完了!

次の目的地:魔界
 
 
 
  /└────────┬┐
 <     To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘
 
415 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/08(火) 23:28:57.70 ID:NdJB+Wyt0
二つのパーティはまだしばらく合流出来ないんじゃ

複線とか設定とかいくつ回収できるのか不安になってきたけど
この際細かいことは気にしないことにしました
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 23:30:30.41 ID:UsD1RaiSo
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 23:43:19.08 ID:VNOVzKODO
乙 ブラック羽川思い出したわ
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 00:13:01.68 ID:f7nwUp0So
>>415 乙!
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 00:15:10.44 ID:dXzTuRhRo
>>417
俺も俺も
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 09:14:02.35 ID:YqXbGI01o
               /.゛\
           /,':: ヽ\    _____             )/:|   __,,
           |i:::   :;;ゝY" ̄     ̄ ̄ `ー--、_   //:/ /'´ /´
              ,||:::. ,. '´ ,.-‐'"´  ̄ `´ ̄ ̄ `ー-.、`>'´':;/   ,'/
          /,jレ'´  /  ,.'  ,i: ::.  ヽ:.     `:<::;ゝ、  ,'/
            / :'"  /    /  /|: |:::... ハ::. 、::.. . . .  \::::;/`ヽ
        /   / ,:   .;':: / |: |∨::::..:|i:: |V::: : : :.   |:∧`ヽ、    こんなゃとこにオレ様がいる
         /   / :,'  :/:.: :/   |: | ∨::: |l:: | ∨:i::: : :  |:: :ハ   \     わけにゃいだろ人間
.       /   /.:/:  ;':: : / 、  |: | ∨: ||:: | | :ト、::: : : : |: : :|     \
.        /    | :i: :  ::: : : |  \ヽ|  |::: ||:: l ,| :| |::: : : :人:: :|       \
      /     | ;|: :  i:: : . |、_‐-.、ヽ  |: /l //|/ |:::: : : : ∧人   __
    ,ノ      |/|: : : :|:: : : |マ弐≧、 |/ |/´ ,.-‐__,|::: : : :|::::ハ:. :\/´\`Yヽ-‐、
   /       ..::|:: : ::|: : : :|弋:;リ  ,`     ,ィチマア'∧::: : :|\:|::、::/ ヘ:. |: |:: |ヘ:: |
 /        ..::::∨:.::|l: : :、ゝ` ̄       ,' ヒリ ,'' ハ:::|:: : :|:::::::::::/ ,/´〉:|,/:;/ レ'
'"        ..::::::::::\:||:; : :∧         ヽ.  ,ハ::::::l:: :;/:::::::::::l ´ ,ノ|,ノ ̄:}
        ..:::::::::::::::::::::∨: :i::∧       ´  ,.:'::::::::/;/:::::|\::|  '"    ,ノ:|
          .::::::::::::::::::::::::ノ`ヽ|ヽ::|    ー-   /:::::::::::'":::::::::/  `|    r‐r'::::|
       .:::::/´ ̄ `ヽ、ヽ  ::::`ヽ、 __ .,..::'´::::::::::::::::::::::::::/    |    | |::::リ
      .::::::/       \\  ::`‐-.、:::::::::::::::::::::::::::::::/    |    | |:::/
     .:::::/         | ハ、     `ヽ、::::::::::::::/     |:     | |/
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/09(水) 20:33:20.72 ID:a/7lcnpIO
>>420
ペロペロ^^
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 20:56:12.40 ID:JTjsQN1M0
乙です。
甘くないのがイイ!
423 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/12(土) 03:14:14.51 ID:icrLa6RD0
作者のいる地域は震度6弱で、流石にこの規模の地震は生まれて初めてでした。
ド内陸の山に囲まれた地域に住んでるので津波などの被害はなかったのですが
本棚やら食器棚やらが悲惨なことになったのが地味に効きます。

まだ断続的に余震が続いているので、皆さん気を付けてくださいね。
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 07:47:23.26 ID:XTS49Tkyo
>>423
生存確認!

ひとまず安心だが6弱か…
気をつけてくれよぉ
425 :番外編 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/12(土) 22:28:20.75 ID:icrLa6RD0
 
――――――――――
現在
とある洞窟
所持金:36937G 
 
 
ガチャッ

ゆうしゃは たからばこを あけた!
なんと なかには プラチナのよろいが はいっていた!
 
竜姫「ほほう、これはなかなかの逸品じゃのう」

僧侶「綺麗……です……」

勇者「美麗な装飾が施されているが、ただの式典用ではなく、防具としての性能も高いようだ」

僧侶「でも……私は装備できません……」

竜姫「残念ながらわらわもじゃ。この中ではお前しか装備できないようじゃな」

竜姫「せっかくじゃから、装備してみればどうじゃ? お前は面がよいからの、様になる」

勇者「しかし、これは戦闘用としては目立ちすぎるのでは?」

竜姫「細かいことは気にするでない。手に入れたらまずメニュー画面を開く、基本じゃろうて」

僧侶「でも……未鑑定のアイテムは、呪われている可能性が……」

勇者「僧侶の言う通りだ。最寄りの街まで持ち帰り、防具屋に鑑定を依頼して……」

竜姫「わらわは今装備せよと言っておるのじゃ! わかったらさっさと装備せんか」

僧侶「ワガママ……」ボソッ

勇者「……わかった。それで君の気が済むならそうしよう」

ゆうしゃは プラチナのよろいを そうびした!
 
426 :番外編 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/12(土) 22:28:56.03 ID:icrLa6RD0
 
デンデロデンデロデンデロデンデロ
 
 
 
ゆうしゃは のろわれてしまった!
 
427 :番外編 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/12(土) 22:29:33.73 ID:icrLa6RD0
 
――――――――――
数時間後
とある街・宿屋のロビー
所持金:36942G
 
 
僧侶「……」ジトッ

竜姫「……なんじゃ。言いたいことがあるならハッキリ言わぬか」

僧侶「竜姫さんのワガママで……勇者さんが危険に晒されているんですよ……?」

竜姫「ふ、ふん! その鎧が呪われておるなどと、わらわには知る由もなかったことじゃ」プイッ

僧侶「もしも……命に関わるような呪いだったら……どうするんですか……?」

竜姫「お前がなんとかしてやればよかろう。僧侶の修行をしたのなら解呪くらいできようて」

僧侶「そういう問題じゃ……ありません……!」ガタッ

勇者「よせ、僧侶」

僧侶「でも……!」

勇者「問題ない。今のところはまだ、この鎧を外せない以外に実害はない」

竜姫「ほ、ほれ。結果オーライじゃ。さすが勇者はわかっておるのう」

勇者「だが竜姫。今回の君の行いは、軽率なものだったと言わざるを得ない」

竜姫「む……」

勇者「しかし、今回の反省を次回以降に活かしてくれれば、私からは何も言うことはない」

勇者「私にとって幸運だったのは、次回があることだ。それは君にとっても同様のはずだ」

竜姫「……わかった。次から気をつける」

勇者「そうしてくれ。私も未鑑定のアイテムには細心の注意を払う」
 
428 :番外編 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/12(土) 22:30:17.16 ID:icrLa6RD0
 
竜姫「……しかし、どういう呪いがかけられておるのじゃ。勇者、わかるか?」

勇者「いや、わからない。特に自覚症状もなく装備を外せないだけとあっては……」

僧侶「ひょっとしたら……精神系の呪いかも……」

竜姫「精神系?」

勇者「肉体への直接的干渉ではなく、対象の精神を汚染するタイプの呪術か」

僧侶「確か、研究所に……呪術を専門に研究してる人が……いたはずです……」

僧侶「呪術は……私も勇者さんも専門外ですから……あの人に診てもらいませんか……?」

勇者「呪術師か。確かに彼なら何かわかるかもしれない。研究所に行ってみよう」

竜姫「そうじゃな。わらわ達では結論は出せぬし、そうするより他にあるまい」

竜姫「……あー、勇者? 辛くなったら遠慮せずわらわに言うのじゃぞ。よいな」

勇者「ありがとう。だが大丈夫だ。私に気を遣う必要はない」

竜姫「勘違いをするでない。失地を回復せぬままでは気分がよくないのでな」

勇者「そうか」

僧侶「……私……まだ許してませんからね……?」

竜姫「ふ、ふん。お前に許してもらう謂れなどないわ。ほれ、さっさと王都へ行くぞ!」

りゅうきは じゅもんを となえた
ゆうしゃたちは おうとへ むけて とびたった!
 
429 :番外編 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/12(土) 22:30:34.09 ID:icrLa6RD0
 
――――――――――
数時間後
城下町・王立魔法研究所
所持金:36550G
 
 
僧侶「……と、いうわけで……」

竜姫「こ奴にかかった呪いの正体を知りたいのじゃ」

勇者「呪術の専門家である君の意見を聞きたい。我々だけでは判断ができかねる」

呪術師「う〜ん……」

じゅじゅつしは プラチナのよろいを じっとみつめている

呪術師「結論から言っちゃうと……勇者君、これはまたとんでもない呪いにひっかかったね」

勇者「厄介な呪いなのか」

呪術師「うん。まあ、命に関わるってことはないと思うけど、解呪法が解明されていない」

勇者「確かに、それは厄介だな。術式を一から解析しなければならなくなる」

僧侶「違う方法で無理矢理解呪しようとしても……逆に悪化してしまうかも……」

呪術師「そうなんだよね。そこが呪いの面倒なところでもあり、奥深いところでもあるんだけど」

竜姫「能書きはよい。こ奴はどんな呪いを受けておるのか、説明せい」

呪術師「ああ、うん、そうだね。彼が受けた呪いはね……」
 
 
 
呪術師「ロリコンになる呪い、かな」キリッ
 
430 :番外編 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/12(土) 22:31:11.98 ID:icrLa6RD0
 
勇者「……」

僧侶「……」

竜姫「……なん、じゃと?」

呪術師「だから、ロリコンになる呪い。勇者君は今猛烈に小児性愛なはずだよ」

僧侶「……」

竜姫「……」

勇者「……君を疑うわけではないが、にわかには信じがたい話だ」

呪術師「じゃあちょっとあれを見てごらん」

じゅじゅつしは まどをあけ そとにあるこうえんを ゆびさした

呪術師「今、ちょうど学校の下校時間みたいだね」

竜姫「子供が遊んでおるのう」

勇者「そのようだ。それにしても、少女の健康的なふくらはぎはいつ見ても素晴らしい」

僧侶「……」

僧侶「……え……?」

竜姫「勇者、お前、今なんと言ったのじゃ?」

勇者「……待ってくれ。今、私は何を言ったんだ?」

呪術師「ほらね」
 
431 :番外編 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/12(土) 22:31:44.45 ID:icrLa6RD0
 
僧侶「そ、そんなはずないです……聞き間違いです……!」

竜姫「そうじゃ、わらわ達の空耳じゃ! こ奴があんなことを口走るわけがない」

呪術師「でも今の勇者君はロリコンだし」

竜姫「黙りゃ、このヘボ呪術師が! 大体、勇者のような堅物がロリコンなどこじらせるはずが」

呪術師「勇者君、あの黒髪の女の子可愛いねぇ。ほら見てごらんよ」

勇者「ああ。できれば一生涯あのままでいてくれないものだろうか」

呪術師「それは難しいんじゃないかなぁ」

勇者「しかしスカートの丈はもう少し短くてもいいように思える。君はどう思う?」

呪術師「いやぁ、僕の口からはどうにも。あっ、悪戯な風に吹かれて女の子のスカートが」

勇者「……ッ!」

ゆうしゃは まどから みをのりだした!
りゅうきとそうりょは ゆうしゃのうしろがみを つかんで ひっしにひきとめる!

竜姫「やめぬか、勇者! わらわ達はそんなお前を見とうなかった!」

僧侶「やめて……ください……!」

勇者「私にもおかしいという自覚はある。しかし内から突き上げる衝動に押されてしまうんだ」

呪術師「いやぁ、こりゃ参ったね。ロリコンの呪いに間違いないみたいだよ」
 
432 :番外編 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/12(土) 22:32:30.59 ID:icrLa6RD0
 
勇者「竜姫、僧侶、離してくれ。もう大丈夫だ」

僧侶「本当……ですか……?」

勇者「ああ。今しがた『スクール水着』という単語を意識の外へ放逐した」

竜姫「何一つ安心できぬわ、たわけっ!」

僧侶「勇者さんが望むなら……私が……」///

勇者「僧侶。君は今年で何歳になる」

僧侶「えっ……? あ、あの……20歳ですけど……」

勇者「……」

僧侶「そ……そんな……養豚場のブタでも見るかのように冷たい目で……!?」

勇者「いいか、僧侶。世間の大人が本当のことを言わないなら私が言おう」

勇者「女子中学生は老婆だ。女子高生は即身仏だ。そして女子大生は生きる化石に等しい」

勇者「幼女は命より重い……! そこの認識を誤魔化す輩は生涯地を這う……!」

竜姫・僧侶「「アグネェェェェェェェェェェェェェェェェェス!!」」

りゅうきとそうりょの がったいこうげき!
かいしんのいちげき!
ゆうしゃは きぜつした……
 
433 :番外編 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/12(土) 22:33:03.04 ID:icrLa6RD0
 
〜数分後〜

勇者「すまない、ToLOVEった」

竜姫「やっべーの、マジっべーの……特にもう主人公としての威厳がっべーわ」

僧侶「うぅ……」シクシク

竜姫「おー、よしよし……勇者がこんなことになったら百年の恋も冷めようというものじゃな」

僧侶「なんで、私……勇者さん好みの女子小学生じゃ、ないの……?」シクシク

竜姫「その発想はなかったわ」

呪術師「いやぁ、勇者君もそうなっちゃうとただの社会不適合者だねぇ」

勇者「このままではまずい。法を犯すか、自ら死を選ぶか、選択はふたつにひとつだ」

呪術師「おっと、前者はともかく後者は穏やかじゃないね」

勇者「第三者の介入によって私の自由意思が阻害され続けるのなら、それもやむを得ない」

勇者「この呪いを放置し続ければ、私が私でなくなってしまう。恐ろしい呪いだ……」

竜姫「しかし、解呪の方法はわからぬのじゃろう? それでは手の施しようが……」

勇者「……いや、ひとつ試してみたいことがある」

竜姫「何か策があるのかえ?」

勇者「それには竜姫、君の力が必要だ。手伝ってくれ」

僧侶「竜姫さんの……力……?」

竜姫「なんだかわからぬが、これ以上あんなお前は見ておれぬ。手を貸そうではないか」

勇者「ありがとう。では、場所を移そう」
 
434 :番外編 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/12(土) 22:33:51.12 ID:icrLa6RD0
 
――――――――――
数分後
王都近郊の草原
 
 
勇者「この辺りでいいだろう」

竜姫「こんなところに連れてきて、一体何を始めるつもりなのじゃ?」

ゆうしゃは じめんに まほうじんをかき そのちゅうしんに たった
そして しょじきんを すべて まほうじんのうえに ばらまいた

勇者「竜姫。君の魔法で私を撃ってくれ」

竜姫「……ッ!?」

僧侶「な……なに、言ってるんですか……!?」

竜姫「ロリコンをこじらせてついにおかしくなりおったか?」

勇者「私は正気だ……君の魔法攻撃でこの鎧を破壊する」

竜姫「鎧を?」

勇者「呪われたアイテムを物理的に破壊することで呪いから逃れる。乱暴な手だが、これしかない」

勇者「この鎧は華美な装飾とは裏腹に物理攻撃に強いが、魔法への耐性はない」

勇者「そして私達の中で最も魔法攻撃力が高いのは君だ。鎧が壊れるまで魔法を撃ってくれ」

竜姫「……よいのか? これは自慢じゃが、わらわの攻撃魔法は生半可な威力ではないぞ」

僧侶「そうです……そんなことしたら死んじゃいます……!」

勇者「心配には及ばない。一定以上のダメージを受けたら自動で回復呪文を発動する術式を組んだ」

勇者「即死してしまわない限り、肉体のダメージは回復することができる」
 
435 :番外編 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/12(土) 22:34:20.40 ID:icrLa6RD0
 
僧侶「じ、じゃあ……私も回復役に……」

勇者「ダメだ。私の近くにいたら攻撃に巻き込まれる」

僧侶「そんな……!」

勇者「竜姫、始めてくれ。覚悟はできている」

竜姫「本当によいのじゃな?」

勇者「ああ。もとより、解呪方法の解明を待っている時間は私達にはない」

竜姫「……死んだら、わらわを恨んでも構わぬぞ」

りゅうきは じゅもんを となえた!
あふれだしたまりょくが でんきエネルギーにへんかんされ いかずちのやりとかす!
りゅうきは いかずちのやりを ゆうしゃにむかって とばした!

ゆうしゃに 72のダメージ!
かいふくじゅもんが きどうし ゆうしゃのきずは みるみるうちに なおっていく……

勇者「ぐあぁぁぁぁぁぁぁっ……!」

僧侶「勇者さん……!」

勇者「……鎧はまだ壊れない。続けてくれ」

竜姫「……ッ!」

りゅうきは じゅもんを となえた!
りゅうきのてに ひとかかえもある しゃくねつのひのたまが うまれ
あおくかがやくほのおが ゆうしゃに はなたれた!

ゆうしゃに 96のダメージ!
じどうかいふくにより ゆうしゃのきずが なおっていく……
 
436 :番外編 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/12(土) 22:34:54.19 ID:icrLa6RD0
 
りゅうきは じゅもんを となえた!
くうちゅうに きょだいなこおりのかたまりが あらわれ
ゆうしゃにむかって らっかし げきとつした!

ゆうしゃに 88のダメージ!
じどうかいふくにより ゆうしゃのきずが なおっていく……

勇者「ぐっ! ……ハァ……ハァ……」

僧侶「勇者さん……!」

僧侶「竜姫さん、やめて……! 勇者さんも……!」

勇者「いや……続けるんだ。竜姫、君の魔力はまだ余裕があるだろう」

竜姫「……わらわは問題ない。しかし、お前の魔力とて無限ではあるまいよ」

竜姫「所持金が尽き、自動回復できなくなれば本当に死んでしまうぞ? やめるなら今じゃ」

僧侶「そうです……やめましょう……」

僧侶「私、勇者さんがロリコンでも……我慢します……いえ、受け入れますから……」

僧侶「勇者さんのこと理解できるように努力しますから……! だから……!」

勇者「ありがたい申し出だが、ダメだ」

僧侶「どうして……!?」

勇者「私は私という個人の自由意思に従って生きている。自分という存在を規定している」

勇者「それを諦めて妥協したり、他人任せにすることだけはできない」

勇者「変節することも時にはある。しかし堕落はしたくない。ただそれだけだ」

僧侶「……!」
 
437 :番外編 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/12(土) 22:35:54.49 ID:icrLa6RD0
 
竜姫「よくぞ言った。であれば、わらわも全力を尽くしてやろうではないか」

勇者「頼む」

僧侶「……っ!」

りゅうきは じゅもんを となえた!
むすうのきらめきが たかくかかげた りゅうきのてに うずまいていく!

竜姫「これがわらわの全力……! 受け止めてみせい、勇者!」

勇者「……!」

竜姫「行っけえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

きらめきのほんりゅうが まほうじんのうえに たつ ゆうしゃに すいこまれていく!

かくさんする ひかりのりゅうしの ひとつひとつが いまずまへとかわり
だいばくはつを まきおこした!
 
 
 
ゆうしゃは 214のダメージをうけた!
 
438 :番外編 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/12(土) 22:36:39.01 ID:icrLa6RD0
 
――――――――――
三日後
城下町・王立魔法研究所
所持金:1905G
 
 
呪術師「……で、鎧を破壊して呪いから脱出したと」

勇者「ああ。咄嗟に魔法障壁を張って威力を減殺しなければ、木っ端微塵だったかもしれんが」

呪術師「無茶するねぇ。なまじ鎧が頑丈だっただけに、苦痛は大きかったわけだ」

僧侶「鎧は砕けましたけど……勇者さんも心肺停止状態で……」

僧侶「本当に……心配したんですよ……? もう、あんな無茶は……しないで……」

竜姫「そうじゃ。わらわもテンションが上がってつい最強呪文を使ってしもうたではないか」

呪術師「しかし、僕も遠くから見てたけど、あれだけの魔法を耐えきるなんてすごいねぇ」

勇者「魔貨式魔導法も完成に近付いている。今回も有用なデータを採取できた」

呪術師「完成して実用化されたら技術革新が起こるかもね。十字勲章ものだよ」

勇者「データに関しては怪我の功名だが……竜姫」

竜姫「む?」

勇者「重ねて言うが、今後は未鑑定のアイテムには気をつけてくれ」

竜姫「ふん。言われぬでもわかっておるわ」キラッ
 
439 :番外編 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/12(土) 22:38:28.96 ID:icrLa6RD0
 
僧侶「……あれ? 竜姫さん……その指輪……」

竜姫「ああ、これか。研究室の前に落ちておったのじゃが……」

呪術師「あーっ!」

勇者「どうした、呪術師」

呪術師「それ、装備しちゃったのかい?」

竜姫「うむ。新しいアイテムを手に入れたらメニュー画面を開く、基本じゃろうて」

呪術師「いや、それ新式呪術の試作品だったんだけどさぁ」

竜姫「……なに?」

呪術師「えっとね、確かそれは髪形がひとりでにアフロになる呪いの……」

竜姫「……ぎゃーっ! わーっ! 静まれわらわの毛髪ーっ!」モジャモジャ

僧侶「懲りない……です……」ハァ

勇者「……呪術師、解呪の方法を教えてくれ」
 
 
 
デンデロデンデロデンデロデンデロ
 
 
 
りゅうきは のろわれてしまった!
 
440 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/12(土) 22:40:02.17 ID:icrLa6RD0
どの辺のタイミングで差し込んだらいいかわからず、結局没になったネタです。
勇者のキャラをボッコボコに崩そうキャンペーン中の作でした。
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 23:00:31.67 ID:EElS2hglo
>>440 乙!
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 23:14:12.74 ID:aOZPQa8ho
勇者ェ
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 00:41:08.48 ID:kXV06wqDO


別にネタ回いらね…いや、たまになら
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/13(日) 01:06:50.44 ID:EFk30mQq0
じゅじゅちゅし
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 03:13:11.05 ID:Yqv2YftTo
面白かった!やっぱゆうしゃが好き。
またやってほしい!
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/14(月) 02:16:55.03 ID:5TE2e4kAO
おつおつ
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/15(火) 03:34:31.96 ID:PyaD2bcAO
賢者の健気さは五臓六腑に染み渡るでぇ
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/15(火) 03:47:20.26 ID:PyaD2bcAO
ごめん、間違った。僧侶だった
449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 18:33:13.40 ID:HKrJb+ENo
実に面白い
が、このssずっとガリレオ先生のイメージで読んでたから
崩壊具合がやばかったwwwwww
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/03/16(水) 04:51:52.28 ID:bhqjnrLEo
期待
451 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/17(木) 21:00:54.83 ID:Wt3cOnVw0
 
――――――――――
現在
砂漠・地下水路入口
 
 
ガチャガチャ……

賢者「両脚に風の魔法石を嵌め込んで……っと」ガチャッ

賢者「できました! これで飛べるはずです」

機械王「再起動……システムチェック・進捗率31%……」カリカリカリカリ……

魔王「いやぁ、ここまで漕ぎつけるのに随分苦労したよなぁ」

賢者「魔王さんはボクの横で見てただけじゃないですか」

盗賊「難しいことはわかんないやって一番最初に投げ出したろ?」

猫忍者「いくら手持ち無沙汰だからって俺様をフカフカするのはやめてほしいにゃあ」

機械王「魔王様が役に立たなかった確率、89.9%」

魔王「まーまー。何はともあれ、これでこの砂漠ともおさらばだ」

猫忍者「いよいよ魔界へ向かうのですにゃあ?」

盗賊「でも、魔界ってどうやって行くんだい? あたしは知らないよ」

賢者「北の果てに魔界へ続くゲートがあると聞いたことがありますけど……」

魔王「というか、それが魔界へ続く唯一の道さ。魔王軍はそのゲートから地上に来てるんだ」
  
452 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/17(木) 21:01:57.53 ID:Wt3cOnVw0
 
猫忍者「何しろ北の果ての孤島にあるもんだから、どの国も手出ししづらいのにゃあ」

魔王「しかも魔族にとっては交通の要所だから、魔王軍の部隊が駐留してるしね」

盗賊「なら、まずはそのゲートを目指すんだね?」

魔王「そういうことになるね。機械王に乗っていけばすぐに行けると思う」

賢者「ボクと盗賊さんが一緒にいるのはどう説明するんですか?」

魔王「う〜ん……やっぱオレのガールフレンドってことで」

賢者「それだけは絶対に嫌です」

盗賊「捕虜とでも言っとけばいいんじゃないかい? あたしらが大人しくしてりゃバレないよ」

猫忍者「それがいいにゃ。魔王様と俺様が勇者の一味を捕まえたことにするにゃあ」

魔王「機械王もいるし、嘘にしたって結構信憑性高いんじゃないの?」

賢者「いえ、信憑性という言葉からは最も遠いところにあると思いますけど」

盗賊「ま、いいさ。捕虜でもガールフレンドでもね。とにかく出発するよ」

猫忍者「にゃ! お前達、これからは捕虜らしく俺様をフカフカするのはやめるにゃあ?」

賢者「それとこれとは話が別ですっ」フカフカ

猫忍者「にゃにゃっ!? し、尻尾を掴むのはやめるにゃあ!」

魔王「……よし。それじゃ機械王、トランスフォームだ」

機械王「了解。トランスフォーム!」

きかいおうは おおきなひこうきかいに へんけいした!
まおうたちは きかいおうのせに のり そらへ とびたった……
  
453 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/17(木) 21:04:20.37 ID:Wt3cOnVw0
 
――――――――――
昨日
城下町・勇者の部屋
所持金:8441G
 
 
竜姫「……これでよし、と」

勇者「竜姫、何をしているんだ」

竜姫「出発の準備に決まっておろうが。今回は父上と直接戦うやもしれぬのじゃろう?」

竜姫「であれば、用心に用心を重ねておかねばならぬ。色々と用意してやったぞ」

勇者「すまないが、今回君には王都に残ってもらいたい」

竜姫「……なに?」

勇者「エルフは魔法の扱いに長けた種族だ。体内の魔力の流れを見ることで種族を判別できる」

勇者「君は今、変身呪文で人間の形態を取っているが、彼らが見ればすぐにわかる」

勇者「エルフが王国と手を結んだのは魔族という共通の敵がいるからこそだ」

勇者「そこに魔族である君を連れていくわけにはいかない。十中八九、話がこじれるだろう」

竜姫「わらわが邪魔だと言うのかえ」

勇者「そうなってしまうだろう。だから、君には留守を頼みたい」

竜姫「断る! こんな安アパートに一人で留守番など冗談ではないわ」

勇者「君が家事全般が不得手だということは知っている。だが、そこを曲げて頼む」

竜姫「嫌じゃ嫌じゃ! そこを何とかするのがお前の役割じゃろうが」
 
454 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/17(木) 21:04:46.81 ID:Wt3cOnVw0
 
勇者「君が魔族であることは陛下にも伏せている。君の正体が露見したらまずい」

勇者「下手を打てば、私はここで勇者の任を解かれることになる」

竜姫「む……」

勇者「更にはスパイの嫌疑をかけられる可能性がある。私だけでなく、僧侶にもそれは及ぶだろう」

竜姫「それは……確かにまずいが」

勇者「そうなれば、庇護する者のいなくなった君の身も危うくなる」

勇者「魔界に帰る目途が立っていない現状、目立つ行動は控えた方がいい」

竜姫「……つくづく正しいことしか言わぬ男よの」

勇者「正しいかどうかはわからない。予測される範囲で最も可能性の高いものを挙げたにすぎない」

竜姫「じゃが、お前の理屈はお前の立場から考えたものでしかない」

勇者「?」

竜姫「この敵国の安アパートに一人で待っておらねばならぬ、このわらわの視座に立っておらん」

勇者「……心細いのか?」

竜姫「……でなければ嘘じゃ。一時的な協力関係にあるとはいえ、お前も僧侶も所詮は人間」

竜姫「ましてここは人間の都じゃ。同族のいない場所で、たった一人で残されるなど……」

竜姫「一時的な協力関係とはいえ、お前達と行動を共にせねば、わらわは……」

勇者「……竜姫」
 
455 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/17(木) 21:05:31.16 ID:Wt3cOnVw0
 
竜姫「わらわを連れていけ、勇者。父上さえ討ち果たすことができたなら後はなんとかなる」

竜姫「大体、父上と戦うのに、仲間が僧侶のような小娘一人では心許なかろう?」

勇者「ダメだ。君はここに残れ」

竜姫「……どうしてもダメかえ」

勇者「ああ」

竜姫「……そう、か」

竜姫「……もうよい。わかった。行ってくるがいい。わらわはここで待っている」

勇者「わかってくれたか」

竜姫「うむ……じゃが、わらわの願いを退けたからには、必ず戻ってくるのじゃぞ?」

勇者「無論だ。私は死ぬつもりはない。必ず帰ってくる。だから、私を信じて待っていてくれ」

竜姫「そういう物言いはよさぬか……お前がそうじゃから、僧侶の奴も勘違いをするのじゃ」

勇者「? 僧侶がどうかしたのか」

竜姫「なんでもない。ほれ、さっさと行かぬか!」

勇者「……ああ。では、行ってこよう」
 
 
 
りゅうきが パーティから はずれます
 
456 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/17(木) 21:07:18.45 ID:Wt3cOnVw0
 
――――――――――
現在
魔法の森
所持金:8309G
 
 
僧侶「そんなことが……あったんですか……?」

勇者「竜姫には悪いが、今回ばかりは彼女を連れていくことはできない。仕方のないことだ」

僧侶「彼女を一人で置いて行くのも……心配ですけど……」

勇者「変身魔法の効果が持続している限り、周囲から見て彼女は人間にしか見えない」

勇者「彼女の正体に気づく者はいない。王都にいる方が安全だ」

勇者「一刻も早く賢者達と合流しなければ、とは思うが……」

僧侶「魔王、っていう人も……ですか……?」

勇者「ああ」

僧侶「……でも……勇者さんは、すごいです……」

勇者「何がだ?」

僧侶「竜姫さん……人間そっくりだけど、魔族なんですよね……?」

勇者「ああ。もちろん、変身魔法を解けば彼女本来の姿があるが」

僧侶「魔族は……敵性種族なのに……」

僧侶「それをなんでもないことみたいに……竜姫さんに接してて……」
 
457 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/17(木) 21:10:33.15 ID:Wt3cOnVw0
 
勇者「君は、竜姫に対して何かわだかまりがあるのか?」

僧侶「いえ……その……」

僧侶「……ごめん……なさい……」

勇者「責めているわけではない。考えてみれば当然のことだ」

僧侶「え……?」

勇者「そもそも、私は魔王討伐を命じられて旅に出た。魔族は私にとっても敵だった」

勇者「今でもそれは変わらない。竜姫と行動を共にしていたのは状況の一部に過ぎないんだ」

僧侶「状況……ですか……?」

勇者「そうだ。私達が獣王軍に捕えられた偶然。竜王が魔王に反旗を翻した偶然」

勇者「魔法の森を脱出する際に竜姫の手を取った偶然がなければ、こうはならなかった」

僧侶「て、手を……?」

勇者「もっとも、それは彼女にとっても同様だろう。奇妙な巡り合わせがあったものだ」

僧侶「そうですね……でも……」

勇者「でも?」

僧侶「子供の頃読んだ……冒険譚みたいで……」

僧侶「それもなんだか……素敵ですよね……?」

勇者「……そうだな」
 
458 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/17(木) 21:11:59.64 ID:Wt3cOnVw0
  
――――――――――
同時刻
城下町・勇者の部屋
 
 
竜姫「まったく、勇者の奴め。信じて待っていろなどとよくも抜け抜けと……」

竜姫「……」

竜姫「……ふん、わらわもよくよく気を許したものじゃ。あんなつまらん男にのう……」

竜姫「……ん?」

竜姫「!」

りゅうきは じぶんのてのひらを みつめた
いっしゅん そのての はだのいろが あおじろくみえた……

竜姫(……いかん。変身呪文の効果が切れやすくなっておる)

竜姫(竜族の肉体はあらゆる呪文に対して耐性を持っておる。まさか変身呪文にも耐性が……?)

竜姫(……)

竜姫(早く帰ってこい、勇者。わらわの正体が露見する前に)

竜姫(ここには、お前と同じ人間しかおらぬのじゃぞ……?)
  
459 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/17(木) 21:15:13.72 ID:Wt3cOnVw0
こっちのキャラにもあっちのキャラにも作者自身が萌えながら書いていけるよう頑張っております

向こうのスレの更新もあるので、こちらの投下ペースが更に遅くなることをお詫びします
今更だけど地の文をつけようと思ったのが間違いだったかもわからんね
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) :2011/03/17(木) 22:22:31.71 ID:H8US25SAO
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします() [sage]:2011/03/17(木) 22:55:50.02 ID:2e8BQAmGo
>>459 乙!
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 23:28:49.05 ID:+WYSOdiIO
>>459
あっちについてkwsk!!
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/03/17(木) 23:45:44.59 ID:VqSb5qcoo
乙した。竜姫可愛い
464 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/18(金) 00:05:50.41 ID:BbU/tIbL0
>>462
↓このスレでも書かせて頂いてます
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1299515775/

登場キャラクターに女の子を出したがるのは俺の悪癖のひとつですが
あっちのスレでは最終的に何人女性キャラが出るのか今のところ不明です
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 00:23:41.57 ID:fpkMSKXTo
立て逃げ確認してから見てなかったが乗っ取ってたのか
466 :業務連絡 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/19(土) 16:05:49.69 ID:KcfCqSro0
たった今気づいたのですが、以前の投下の際に抜けがあったことが判明いたしました
しかもそれが勇者サイドの様子をチラッと書きつつ彼らのこれからの行動を決める部分でした

>>403の前に以下の2レスが入るはずだったんです……
467 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/19(土) 16:06:47.44 ID:KcfCqSro0

――――――――――
同時刻
とある街・宿屋
所持金:7664G
 
 
勇者「どうやら、この旅行鞄には転送呪文の術式が施されているらしい」

竜姫「転送呪文……というと、転移呪文の亜種かえ?」

僧侶「はい……軽くて小さなものを……任意の座標に転移させるものです……」

勇者「鞄に貼られているラベルは、その転送呪文の術式を刻み込んだ呪符だ」

勇者「繋がっている先は王宮だな。しかもこちらからだけでなく、向こうからも転送できる」

僧侶「すごい……です……」

竜姫「しかし、そんな便利なものを何故今頃になって?」

勇者「竜王の造反によって魔界の情勢は混迷を極め、王宮も連日に渡って対策会議を行っている」

勇者「報告書や研究レポートの提出と、指令書の受領を旅先で行えるようにすることで」

勇者「我々の状況への対応を迅速化させようという意図があるのだろう」

竜姫「逆に言えば、今まではそこまで差し迫った状況だと認識していなかったというわけじゃな」

勇者「他にも仕掛けはありそうだが……これ以上は私にはわからないな」

竜姫「ほう? なんじゃ、お前にもわからぬことがあるんじゃな。魔法に関することだというのに」

僧侶「魔法工学は……勇者さんの専門外なんです……」

僧侶「魔法学が対象とする領域は広くて……区分も多岐にわたりますから……」

竜姫「ふむ、そういうものか……ん?」
 
468 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/19(土) 16:07:35.73 ID:KcfCqSro0
 
<ガタガタガタガタガータガタキリッバッガタキリバ

僧侶「鞄が……震えてます……」

竜姫「なにやら妙な音声も聞こえるのじゃが」

勇者「呪符が反応している。王宮からなにか転送されてきたようだな」ガチャッ

ペラッ

竜姫「送られてきたのはその紙一枚だけかえ?」

勇者「そうらしい。王宮からの指令書だ」

僧侶「なんて……書いてあるんですか……?」

勇者「――王宮はエルフと手を結び、共に竜王軍の脅威に対抗することを決定した」

勇者「よって、勇者一行に、竜王軍に略取されたエルフの長老の救出を命ずる――」

僧侶「……と、いうことは……」

勇者「竜王軍の拠点である火竜山脈の砦を攻略せよ、ということだ」

僧侶「……っ!」

勇者「しかし、竜王と直接戦うには戦力が不足しているのは明らかだ」

竜姫「その通りじゃ。わらわ達3人では、どうにもな」

僧侶「これから……どうするんですか……?」

勇者「……賢者達の捜索を続けたいが、まず果たすべきは王宮からの指令の方だ」

勇者「エルフの里へ行き、協力を要請しよう。その上で火竜山脈の攻略に臨む」

竜姫「となれば次の目的地は魔法の森か……あまりいい思い出のない場所じゃのう……」

勇者「だが、行かねばなるまい。竜王を倒すためにも」
 
469 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/19(土) 16:09:27.91 ID:KcfCqSro0
自分でも最近の投下の後「アレ? この部分入れたっけ?」と違和感を感じ
確認してみたところ投下漏れがあることにようやく気付いたという体たらくでした
今後こういうことのないよう細心の注意を払っていきたいと思います
お騒がせしました
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/03/19(土) 17:04:10.62 ID:fpdkDC0AO
ドンマイ
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/19(土) 21:13:04.86 ID:ticMEVzbo
支援
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) :2011/03/19(土) 23:45:02.31 ID:WKeKaJKAO
失態を演じたとしても、きちんと最後まで書ききることが名誉挽回になる

頑張れ
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/03/20(日) 00:06:22.86 ID:NeHwGDDLo
しえ
474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) :2011/03/20(日) 08:30:47.41 ID:goyb0kFAO
支援
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/03/22(火) 10:52:44.76 ID:5iQ9zEWN0
大丈夫だ

何があろうと俺はこの>>1の味方
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 09:39:25.78 ID:Vmn388HDO
ガタキリバわろたwwwwww


これからの旅行鞄に期待してますね
477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 17:41:11.34 ID:R27fnfY60
そんな>>1を応援してる
478 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/24(木) 09:24:07.78 ID:sX9OBNeZ0
登場順適当なキャラクター紹介2

大賢者
彼が参加した30年前の魔王討伐遠征で、魔王の父が討たれたという設定。

大賢者娘
勇者が彼女を保護する展開も考えていたが、あいつならああすると思ったらああなった。

獣人A・B・C
なんの獣人かさえ設定されていないモブキャラである。

竜王
竜族の王。竜姫の父。種族は竜人。魔王に代わって魔界を支配せんと反乱を起こす。
脳内CVは藤原啓治なので作者の中での彼のあだ名はひろし。

機械王
物質系モンスターの王。トランスフォーマーである。
機械王にはまだまだ隠された機能がたくさんあるぞ!

魚人A・B・C
海王に使えるマーマン。弾ける生臭さとは裏腹に、忠義に篤い漢たち。

海王
水棲系モンスターの王。種族はセイレーン。
愛ゆえに、愛する人の死を認知することを拒んだ哀しい女。

店主(砂漠の村)
ギルドの酒場の店主と名前が被っているのは、単に作者の確認漏れだったりする。

メイド
盗賊の実家で働いている。元は奴隷の子だったが、村長に盗まれ盗賊とは姉妹同然に育った。

村長
反面教師という言葉を体現したエキセントリック親父。これでも村長。

同僚
研究員時代の勇者の同僚。絡みづらいことに定評のある勇者をよく飲みに誘っていた。

猫忍者
獣王軍のマスコット的存在だった。
魔王に顎を撫でられたり尻尾を掴まれたりモフモフされたりと愛玩動物扱いを受けている。

呪術師
王立魔法研究所の研究員。呪術を専門に研究している。
強制アフロの呪いの他、タンスの角に小指をぶつけやすくなる呪い等を考案した。
479 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/24(木) 09:25:40.63 ID:sX9OBNeZ0
キャラクター整理のためのキャラクター紹介2回目。
案外キャラが増えてないというか物語が進んでいないというか。
480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/03/24(木) 10:32:29.73 ID:YaP7RRnAO
ひろし把握ww

そして、タンスの角に小指をぶつけやすくなる呪いKOEEEEEEE!
481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/25(金) 15:04:14.81 ID:pArpdVxko
ガタキリバwwww
機械王とか俺の好みにドンピシャ
482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2011/03/26(土) 12:29:09.04 ID:ngJbv0sE0
 
――――――――――
数十分後
魔法の森・エルフの里
 
 
エルフA「止まれ! お前達、一体何の用でこの里まで来たのだ」ジャキッ

僧侶「え……えっと……」オドオド

エルフB「今、余所者を里に入れるわけにはいかん。お引き取り願おう」

勇者「私達は王宮から勅命を受けてきた者だ。エルフの長老を救出する任務を帯びている」

エルフA「なに? もしかして、お前が人間の勇者か」

勇者「いかにも。君達の代表の者に会わせてもらいたい」

エルフB「……わかった。長老代理に確認を取ってくる。そこで待っていろ」

ザッザッザッ……

僧侶「……王国とエルフが同盟を結んだっていう話……本当なんですね……」

勇者「ああ。でなければ門前払いされているところだ」

エルフA「……本当なら、お前達人間と手を結ぶなど有り得んことなのだがな」

勇者「敵の敵は味方、ということだな。共通の敵があるならそのような選択肢も生まれる」

エルフA「ふん……ん、戻ってきたか。どうだった?」

エルフB「ああ、確認を取ってきた。お前達、里に入ってもいいぞ」

勇者「感謝する。僧侶、行こう」

僧侶「は、はい……!」
 
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2011/03/26(土) 12:30:36.04 ID:px4Fdu9Oo
来てる
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2011/03/26(土) 12:32:30.85 ID:ngJbv0sE0
 
――――――――――
現在
エルフの里
所持金:8309G
 
 
老賢者「……貴殿が人間の勇者か」

勇者「お初にお目にかかります。以後お見知りおきを。彼女は私のお供です」

僧侶「よ、よろしく……お願いします……」

老賢者「よい。互いに時間がない身だろう。早く用件を言え」

勇者「わかりました。では、ひとまず現状確認をしたく存じます」

老賢者「うむ」

勇者「獣王軍によるエルフの里の無血制圧と、竜王による反乱」

勇者「その混乱に乗じて、拘禁されていた長老の身柄が略取された」

老賢者「そうだ。竜王軍が引き上げてから、なんとか我々は脱出できたが、長老だけは……」

老賢者「おそらく長老から古代魔法の秘儀を聞き出そうとしているのだろう」

老賢者「秘儀は長老にのみ伝えられている。どこでそれを知ったのかはわからんが……」

勇者「そして王宮は竜王の脅威に対抗するため、エルフ側も長老の救出のために」

老賢者「王宮からの申し出に応じて同盟を結び、協力関係となった……というわけだ」
 
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2011/03/26(土) 12:34:22.23 ID:ngJbv0sE0
 
勇者「今日私達がここに来たのは、貴方達と協力して長老の救出を行うためです」

老賢者「ほう……何か策があるのか」

勇者「はい。勇者といえど、全くの無策では」

老賢者「言ってみよ」

勇者「今回の救出作戦では、我々が火竜山脈の砦に潜入します」

勇者「それに際して、エルフは王国軍と協同して竜王軍に対し陽動をかけて頂きたい」

老賢者「陽動とな?」

勇者「はい。山脈の東西両面から攻撃を仕掛け、竜王軍の注意を引きつけて欲しいのです」

勇者「その隙に地下水道から砦内部に潜入し、長老を救出します」

老賢者「作戦のためには、何人ほど必要なのだ?」

勇者「腕利きの術者を100名。私のパーティに一人編入し、後は陽動作戦に」

老賢者「ふん、涼しい顔で無理を言いおる。流石は人間の勇者というわけか」

老賢者「しかし、その作戦に成功の保証は……」

コンコン

勇者「?」

老賢者「ん……誰だ? 今大事な話をしているところなのだぞ」
 
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2011/03/26(土) 12:34:51.00 ID:ngJbv0sE0
 
ガチャッ

??「老賢者。人間の勇者が来たと聞いたのだが……」

老賢者「戦士か……」

勇者「彼は?」

老賢者「里の自警団の団長だ。まだまだ未熟な若造よ」

戦士「老賢者よ、貴方はいつもそれだな。俺も300年は生きたというのにいつまでも子供扱いだ」

僧侶「300年……? すごく……若く見えますけど……」

勇者「エルフは不老の種族だ。ある程度まで成長してからは見た目も変わらないし、寿命も長い」

戦士「とにかく、お前が人間の勇者だな。一度どんな奴なのか見てみたかっ……」

戦士「……!」

せんしは そうりょのかおを みると ことばをうしなった
せんしは おもわず いきをのんで そうりょを みつめている……

戦士「……」

僧侶「……?」

勇者「? ……どうしたんだ」

僧侶「さあ……?」
 
487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2011/03/26(土) 12:36:32.94 ID:ngJbv0sE0
  
戦士「お、お前……いや、あ、貴女は?」

僧侶「わ、私……ですか……?」

勇者「私のお供だ。竜王討伐の旅に同行してもらっている」

戦士「そ、そうか。勇者のお供なのか……」

老賢者「どうしたのだ、戦士。何をうろたえている」

戦士「俺は冷静だ! ……それで、勇者がこの里に来たということは」

勇者「エルフの長老の救出作戦を決行する。君達エルフに協力を要請しに来た」

戦士「なに……? 竜王軍に打って出、竜王を斃すのではないのか」

勇者「可能ならばそうしたいが、竜王が手に入れようとしている古代魔法についても情報不足だ」

戦士「……老賢者。この話は本当か?」

老賢者「本当だ。今は攫われた長老と、古代魔法の秘儀を守ることを優先せねばならん」

老賢者「これより里の術者から、勇者に同行する者を選ばねばならぬが……」

戦士「む……」

戦士「……よし。ならば、俺がお前達についていくぞ」

勇者「君が?」
 
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2011/03/26(土) 12:37:05.58 ID:ngJbv0sE0
 
勇者「魔法の心得は?」

戦士「多少はある。魔法戦士としての技量は里で一番だ」

僧侶「自警団の団長さん……なんですよね……? そっちの……お仕事は……?」

戦士「ふ、副団長に任せよう。俺ほどではないが、奴もなかなかの剣の使い手だ」

老賢者「戦士。そのような勝手は許さんぞ」

戦士「事は一刻を争うはずだ。人間と手を結び中立を捨てたなら、長老の身も安全では……」

老賢者「長老はそう簡単に口を割るような男ではない。竜王も秘儀を得ぬうちは彼を殺せまい」

勇者「その見通しは楽観的に過ぎます。解読できる範囲だけでも、竜王の魔力なら危険です」

老賢者「しかしだな……」

僧侶「あ……あの……」

老賢者「ん?」

僧侶「さっきから……気になっていたんですけど……」

僧侶「古代魔法の秘儀って……一体何なんですか……?」

僧侶「長老だけが知っているくらいだから……きっと……すごい魔法だと思いますけど……」

戦士「俺も老賢者も詳しいことは知らない。ただ、それは神域の禁呪と伝えられている」

勇者「神域の禁呪?」

老賢者「そうだ。ヒトにも魔族にも過ぎたる力だ」

戦士「……そして、我らエルフにとっても例外ではないと、長老は言っていた」
 
489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2011/03/26(土) 12:38:38.13 ID:ngJbv0sE0
 
勇者「神域の禁呪……まさか……」

僧侶「勇者さん……?」

勇者(王宮や教会によって禁忌とされた研究はホムンクルスだけではない)

勇者(生命倫理や人道上の観点から、様々な魔法が禁忌の烙印を押され抹殺されてきた)

勇者(使われなくなったテクノロジーはすぐさま衰退し、自然消滅していく)

勇者(しかし古代魔法の秘儀は神々の時代から伝えられ、そして外部に漏らさぬよう秘匿された)

勇者(そうして現代まで受け継がれてきた秘儀、考えられるとすれば……)

戦士「……とにかく、協力者が欲しいのなら俺が同行しよう」

僧侶「いいんですか……本当に……?」

戦士「も、もちろんだ。俺は誇り高きエルフの戦士、二言はない!」

勇者「そうか……なら、よろしく頼む」

戦士「まあ、短い間だけの協力関係だがな……」チラッ

僧侶「……? なんですか……?」

戦士「い、いや……なんでもない。とにかく、これからよろしく頼むぞ」



せんしが なかまになった!
 
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2011/03/26(土) 12:39:12.66 ID:ngJbv0sE0
 
――――――――――
同時刻
城下町・勇者の部屋
 
 
竜姫「……」

りゅうきは もうふにくるまって ベッドのうえに ねころんでいる
そのはだは にんげんのものではなく あおじろい まぞくのものだった……

竜姫(日常的に変身魔法を使っていたせいで、耐性ができて効きにくくなってしまった)

竜姫(じゃが、こうして部屋から出ず誰にも会わなければ、正体がバレることもないはずじゃ……)

竜姫(……)

竜姫(……惨めったらしい姿じゃ。こんな安アパートの一室で、薄い毛布を被って蹲って)

竜姫(やはり無理矢理にでも着いて行けばよかったのう。勇者はああ見えて人が好い)

竜姫(僧侶の奴も、押しに弱いし、勇者がいいと言えば逆らわん)

竜姫(わらわとて竜の血筋に連なる者。父上にも負けはせぬ……)

竜姫(……)

竜姫(……父上を倒したら、わらわはどうする?)

竜姫(竜王軍を掌握し、魔界に帰るのが上策か? しかし軍の荒くれどもを抑えきれるか……)

竜姫(かといってこのまま勇者と行動を共にするのは危険すぎる……)

竜姫(もしわらわの正体が露見したら、勇者の言うように……)
 
491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2011/03/26(土) 12:40:17.96 ID:ngJbv0sE0
 
コンコン

竜姫「ッ!!」ビクッ

竜姫「……」

竜姫「だ、誰じゃ……?」


??「おかしいな。いないのか? 勇者の奴、王都に戻ってきてたんだろ?」

???「そうらしいんだけどねぇ。もう出発しちゃったのかなぁ」


竜姫(この声は、呪術師と……誰じゃ? 勇者の知り合いか……?)


同僚「ったく、久しぶりに飲みに誘おうと思ってたのに……ん?」

呪術師「どうしたんだい?」

同僚「いや、鍵が開いてるんだよ。不用心だなぁ」


竜姫(……! しまった、玄関の鍵を閉め忘れておった!)


呪術師「ひょっとして寝てるんじゃないのかい?」

同僚「だけど、鍵の閉め忘れなんてあいつらしくねぇな」

同僚「よし、ちょっと上がってこうぜ。鍵を閉め忘れてるって教えてやろう」

呪術師「そうだね。彼の寝顔なんて見ても面白くはなさそうだけど……」ガチャッ
 
492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2011/03/26(土) 12:41:23.92 ID:ngJbv0sE0
 
竜姫(――ッ!)

りゅうきは あわてて じゅもんを となえた!


同僚「おーい、勇者! いるかー?」

呪術師「相変わらずキチンと片付いた部屋だねぇ……あれ? 君は」

竜姫「な、なんじゃ、呪術師か。誰かと思うたわ」ドキドキ

同僚「おい、なんだよこの美人は。勇者のコレか?」

呪術師「彼のお供なんだってさ。この間、勇者と一緒に僕の研究室に来てね」

同僚「おいおい、勇者の奴も隅に置けねぇな。あいつのお供って女ばっかなんだろ?」

同僚「……で、アンタはなんで勇者の部屋に? 勇者は出かけてるのか?」

竜姫「う、うむ。大事な用事があると言って出て行きおった。わらわは留守を頼まれてのう」

呪術師「へぇ……何か事情でもあったのかい?」

竜姫「そ、それは……さ、最近ちょっと風邪気味でのう。その旨を伝えたらここに残れと」

竜姫「わらわは平気だと言ったのじゃが、それでも残れと言って聞かぬのじゃ」

呪術師「勇者君、意外と優しいところあるんだねぇ」

同僚「マジかよ? そりゃあ、あいつも冷血漢ってわけじゃあないけどよ」

竜姫「ほ、本当だとも。わらわに何事かあってはいかんと必死になっておった」

竜姫「あ奴の鉄面皮からはわからぬであろうが、わらわはそれはそれは大事にされておるのじゃぞ」
 
493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2011/03/26(土) 12:43:13.90 ID:ngJbv0sE0
 
呪術師「それで勇者の部屋で留守番をしてたってわけだね」

同僚「ここにこの子が残ってたから鍵が開いてたのか……」

竜姫「と、とにかくそういうわけじゃ。勇者もおらぬし、お前達はさっさと帰るがいい」

呪術師「でも、風邪だったら同僚君が治せるかもしれないよ? 彼は魔法薬学が専門だから」

同僚「そりゃ確かに俺は魔法薬の研究をしてるが、医者ってわけじゃないぞ」

同僚「素人診察を鵜呑みにするより、病院に行った方が確実だろうよ」

呪術師「……そういえば竜姫さん、病院には行ったのかい?」

竜姫「び、病院か。まだ行っておらぬが」

呪術師「おっと、それはいけないね。たかが風邪と侮ってると痛い目を見るよ?」

同僚「そうだな。風邪は万病の元っていうし……俺達が付き添ってやろうか?」

竜姫「い、いい! わらわに構うな! 病院は嫌いじゃ」

同僚「けどよ、風邪は万病の元って言うし……」

呪術師「一騎当千の英雄が風邪をこじらせて死ぬっていうのもよくある話だからね」

同僚「勇者がそんなにアンタのことを大事にしてるんなら、勇者のためにも診察を受けた方が」

竜姫「よいと言っておるじゃろうが! わらわは大丈夫じゃ、さっさと帰りゃ!」グイグイ

同僚「わ、わかったよ」

呪術師「でも、辛くなったら僕らに連絡するようにね?」
 
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2011/03/26(土) 12:43:47.15 ID:ngJbv0sE0
 
バタン

竜姫「……ふぅ……」

りゅうきは ホッと ひといきついた
げんかんのドアノブを にぎるてが ゆがんでみえ あおじろいはだに かわった……

りゅうきは げんかんのかぎを しっかりとしめた……

竜姫「まったく、勇者の知り合いにあんなお節介な奴がおったとは……」

竜姫「いや、問題はこんなわずかな時間で変身呪文の効果が切れてしもうたことじゃ」

竜姫「このままでは食料を買いに行くことさえままならぬではないか……」

竜姫「……ん?」

りゅうきは まどのそとからきこえる くつおとを きいた
そとでは へいしたちが れつをなして こうしんしている……

竜姫「ついに火竜山脈へ出兵するのか……父上と戦おうというのじゃな」

竜姫「……」

竜姫「……いや、後のことは勇者が帰ってきてから考えよう。それがよい……」

りゅうきは かーてんをしめ もうふをかぶって ベッドにねころがった……
  
495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2011/03/26(土) 12:46:04.85 ID:ngJbv0sE0
油断しているとガンダムウォーとかヴァンガードばかりやって遊んでしまうので
まだまだ頑張らないと
とりあえずエンディングまでは見えてはいるもののまだ先は長いなぁ……
496 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/26(土) 12:46:43.10 ID:ngJbv0sE0
そして酉のつけ忘れに今頃気づく俺である
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/26(土) 12:58:21.52 ID:85+q6CkDO
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage ]:2011/03/26(土) 13:31:14.83 ID:YHz0KalV0
乙です。
499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2011/03/26(土) 17:56:51.77 ID:mIBAY3kAO
乙。
ガタキリバwww。鞄が増えるのかョwww。
500 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/03/27(日) 02:42:25.82 ID:/nG1ojN50
>>493

同僚「そうだな。風邪は万病の元っていうし……俺達が付き添ってやろうか?」

竜姫「い、いい! わらわに構うな! 病院は嫌いじゃ」

同僚「けどよ、風邪は万病の元って言うし……」



今気づいたけどチェック漏れで同じこと2回言わせるとかだらしねぇな
1回目の「風邪は万病の元っていうし……」は見なかったことにして頂けるとありがたいです
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2011/03/27(日) 02:43:14.45 ID:n/4oLQXKo
きてた
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/03/27(日) 05:50:53.94 ID:liG8ohDqo
りょうかい!
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/28(月) 10:08:43.23 ID:nHpUhA6To
RPG感が増していいんじゃない?

ゆうしゃ よ! せかい を すくって くれるか!

はい
ニアいいえ

そんなこと いわずに! すくって くれるか?

はい
ニアいいえ

そんなこと(ry みたいなwwww
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/03/28(月) 16:49:12.67 ID:z0Rb4gFAO
おいおい冗談じゃねえぐらいキモいぞコイツ
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/03/28(月) 17:32:04.03 ID:gAtUZVpH0
下げぬか阿呆めが
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/03/28(月) 17:38:26.64 ID:z0Rb4gFAO
晒しageだちくしょう
507 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/04/01(金) 00:22:46.11 ID:jEZb0UaK0
       (⌒)  (¨)
    (´)  iT (`) II r¨ヽ O r‐、       / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  O  Vi.-‐.L!´.Vi:.:.:ヽ i.:.:-.、〕i'  O   /  人がSSを書くにあたって… 一番大切なことは何だと思うね?
 、 ,.V''´:.Vi.:.:.:.:.:.:.:.Vi:.:.:l l.:.:.:.:〈ノ:(¨)/ ( )  /    ジョルノ・ジョバァーナ君…
 \、.:.:.:,. -‐- 、..:.:¨.:.:l_l.:.:.:.:.:.:.//.:ヽ///
 ヽ-‐'"ィ''´ ̄`ヽ \.:.:.:.:.:.:.:.:.:.〈/:.:.:.:.:.:ヽ/     それは『意思』だよ ジョルノ・ジョバァーナ君!
  `¨´  /__,,.. -、\.\.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:_ノ      人がSSを書くにあたって最も大切なのは 完結させようという意思なんだ
      (ヾ-‐,ニヽ\.丶、`ー-- ‐<__
      ゙ミ_、、,,.ニ、\  ` ー─,,..ニ、 `ヽ     でもそろそろ大学も始まる時期なので
        ヽ;;::Oィ゙ヽ.`'  /_''"¨ヽ_,,.ヽ‐-、.._,. 更新頻度が 今以上に落ちるかもしれないというのは
          ̄  .r' i ヽヾr,、‐iニ,.ニ ニヲくヘ 割と死活問題なんだよ… 読者の皆様にはそのことをお詫びしたい…
    ,. -ァ=‐-、_   -‐゙ヽ.,.-‐' r〈li_iノl i,、V、ヽ\ニi \____________
  // '´` -‐' ̄T)エヽ-、`i .゙ーレィi.Y iノ .ト、ヽフ!
 ⌒i、   /  ,.イ´ヽ二ニニヽー ,}ヾ i | ,ゝト、ヘ
 ー-、゙┐   イ `'  ´  __,,.. ノ . ー、_ / /::::::iヽY)
   i  ) ,_,.ノ   、,. '゙´  ヽ    `-'イ:/::::>イハ、
   ハ ¨ワ                ノ/:::::::::ヽニ.ハ
   i \<               /:/::::::::::::::::::::::l:::ヽ,
 入   i.              ,:'´::::`ヽ::::::::::::::::::::::l::::::l
   `了'"               f:::::::::::::::::l:::::::::::::::::::::l:::::;'
 、.._ノ'´ \             ,i、::::::::::::::::i::::::::::::::::::::::::/
   |\  ヽ          ./ lヽ\:::::::::l:::::::::::::::::::::/i
  /   ヽ、 丶、.._  _,,..ィ''´   iヽ::::::::::::::i:::::::::::::::::/::/
508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/01(金) 08:17:04.68 ID:lFDHwXKHo
ktkr
509 :即興エイプリルフールネタ ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/04/01(金) 23:07:35.27 ID:jEZb0UaK0
 
――――――――――
4月1日
王都・城下町
 
 
勇者「賢者。君に話がある」

賢者「なんですか? また怪しい商売の話じゃないでしょうね」

勇者「資金面は今のところは問題ない」

賢者「じゃあ、どこぞの秘境に珍獣でも探しに行くんですか」

勇者「それも魅力的ではあるが、装備を整えてからでなければ行けないな」

賢者「なら何のお話ですか? 言っておきますけど、ボクだってこう見えて忙しい……」


勇者「結婚しよう」


賢者「……んですから……」

賢者「……」

賢者「……え?」

勇者「結婚しよう……結婚しましょう、結婚して欲しい……」

勇者「……うむ、この言い方が一番しっくりくる。結婚しよう、賢者」

けんじゃは こしのはいった いいローキックを ゆうしゃのむこうずねに たたきこんだ!
ゆうしゃに 16のダメージ!
 
510 :即興エイプリルフールネタ ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/04/01(金) 23:08:18.40 ID:jEZb0UaK0
 
勇者「……何をするんだ」

賢者「アンタが何言ってるんですかっ! け、け、け、結婚ってなんですかっ!」

勇者「結婚とは、主に男女が夫婦関係になることだ。あるいは夫婦間の関係のことを……」

賢者「そういう意味じゃなくてっ!」

勇者「……ああ。そうか、そういうことか」

賢者「え?」

勇者「安心して欲しい。先程の私の発言は全て嘘だ」

賢者「……はぁ?」

勇者「賢者。今日は何月何日だ?」

賢者「何月何日って、4月1日……」

賢者「……ああ、そういうことですか」

勇者「今日はエイプリルフールだ。皆、悪意のない大小様々な嘘を吐いている」

勇者「お前も嘘を吐いてみろと同僚に勧められて、意外性のある嘘を考えたのだが……」

賢者「二度とやらないでくださいね。勇者さんは嘘禁止です」

勇者「何故だ?」

賢者「いつもと変わらない鉄面皮の仏頂面であんなこと言うから怖かったです」
 
511 :即興エイプリルフールネタ ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/04/01(金) 23:09:28.30 ID:jEZb0UaK0
 
賢者「ボクはてっきり、勇者さんが発狂したのかと……」

勇者「そこまで言われるのか……やはり、私にエイプリルフールの嘘は向いていないか」

賢者「いえ、勇者さんの場合ホントっぽすぎるのが問題なんです」

賢者「その嘘を言ったのがボクだったから、ローキックで済んだようなものを……」

勇者「君は他人に嘘を吐かれたらローキックをお見舞いするのか?」

賢者「まさか、ボク以外の誰かにその嘘を吐いてないでしょうね?」

勇者「君の他には、研究員時代の元同僚に同様の嘘を吐いた」

賢者「……その人、どんな反応を?」

勇者「その場で卒倒したから、介抱した。目を覚ますや否やすぐどこかへ行ってしまったが……」

賢者「……今すぐ嘘だったって説明してきてください! 一刻も早く!」

勇者「?」
 
 
 
僧侶「ゆ……ゆ……勇者さんが、結婚しようって……!」///

僧侶「こ、婚姻届……? それとも……新居の手配……? ご両親への挨拶……?」///


そのご そうりょに ウソをばらした ゆうしゃは 
そうりょにも こしのはいった いいローキックを もらったという……
 
512 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/01(金) 23:10:20.06 ID:qim8FaO2o
金的貰えばいいのに…
513 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/04/01(金) 23:14:57.19 ID:jEZb0UaK0
                     ノ)_
                     ノ)'"ー'7 / ゙̄ス        なあ 勇者
               / /  /  / /ヽ{
             r‐く`ヽ l__/--く___  ヽ i__       いい友情関係ってのには
            r {(::)  jノヽ l {ミ ヽ\   }::Y⌒ヽ    3つの『U』が必要なんだ
          _l ヽ.__,ノ/ \〉 レ |  `ーv'\!___/   なぁ………!
.         r'´: ̄ : : ヽ.一1 /',ィ  i  ー{    ∧::::::::/:::::::  
      ,:": : : : : : : : : :i、 ヒ イリ     ',  ,' lヽ:::i:::::::::    '二) ー―、 r┬‐、 『│ |
.     /: : : : : : \: : : :l ヽ }        〉 i__ノ__|:::|::::::::.    、__)  __,ノ V  ノ   {_} 』
     { : : l\: : : :ヽ :_j ノ L,‐___     /  | }_} i::::l::::::::  
.     V: : :':、i `ー--' 斤ラ l `こ   /:::>|( し |::::i:::::::   ああ…1つ目はな………
.      ヽ: : : :i r' .ィj  ヽ  \ ヽ--'´ / ヽ\リ'⌒マ!   「うそをつかない」だ
.        ト: 〈 二´  ー'_ノ | ヽ   /  ノ:::|   }|    2つ目は
         \ヽゝ ̄  `こ ノ l  |  i   |:::/   /ム   「うらまない」…
        r i´ト、 \____ノ l |  l   |::{   ,イノ i}   そして3つ目は
         │|-|-|. _  \    / i  l   l:::∨/i lo ソ!   相手を「敬う」…
          |‐l‐l‐|/ 〉  |\ ´  |  l   |:://::::辻ソ: 
.        | / / 〈 \ l|  ` i /l  l   l'/::::::::::::i:::::   いいだろ?
         ハ ヽ    ヽl_____ l/::::|  !  ヽ::::::::::::::l::::   友情の3つの『U』だ
.        { ヽ       }ヽ::::ヽ|::::::l      V:::::::::::i:::: 
       \_    /_|:::::::l:::::::|        |::::::::::::i:::   いくらエイプリルフールと言っても
.          l/ ̄ ̄     l:::::::O:::::l        l:::::::::::::i:::   許される嘘と許されない嘘があるから気をつけろよ…
 
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/02(土) 00:13:06.25 ID:LOgIWf89o
515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/04/02(土) 02:10:56.40 ID:pnKyUoVAO
勇者&賢者の初期パーティか
この二人はなんか安定感があるな

516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/04/02(土) 14:12:47.00 ID:FI+jFsQyo
ああっ、追いついちゃった…

勇者と賢者は正カップルだと思うんだ…
517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/04/02(土) 14:13:42.26 ID:FI+jFsQyo
乙つけ忘れてた…orz

乙です…
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/02(土) 19:49:33.58 ID:XYlVHL+IO

_ノツ ヾ ゙i.:.:.:.:.:\   ___  , -/...:.:.:.:.:             \.:.:. 」ヽ
 ̄ 、    ゙i.:.:tー、y'´〃/'7/-一''"´      ☆  、     \.:.`'^ヽ       
  ヾ:.:.: ___゙i.:_ゝ_Y 、(/_,.∠-‐   ☆ =ニ二二ニー- 、_ `ヾ、☆,.>┐ ヽ   
ヾ:  i∠-―、 `ヾミ! 、ゞ、_☆ _==彡'"_ノ´:. `ミー、_\_ , '´rュ_!::.|  }   
ヾ::.  !:.:.   `ハミ、 ヽ ゙゙゙゙゙/彡ィ    ̄フ´.:.:.  = iヽゞ、!Tー-{i[]/ ゞ´!ノ;{  
.:.:〉      / \ヾーゝ/-‐''"´_ノ´/.:.:.:.:.:.:   "''、{;じ)、!ヽ ヾロ{ミ、〈;i;;;!;;;;;} 
:/      /.:.:.:.:/ ̄((彡三-一イ .:.:.:.:.:      `ヾ!!i:._, ヾ[lヽ__`,.久  
' r:     /  / / ̄ _/ ,.://    .:.:.:        ̄ミ ´_ ゝrュュィ、ノ  
  ゙!:.   .:/ / "/ ̄彡| }ハヽ       ゙   , -‐   ,-≦一 }/7    
  ノ:.:...:.:/ / _∠-‐イ  |/  }:.゙i          ゝ- 、  /O})`ブ /  
 {:.:.:./   リ´ 、ミ`   _,リ  j:.:.l_     ..,>t-:.、:.. ::ゞイ チ'´_ソ´   投げ出すのか?いや君のことだ……
_ノシ´     、ミ`    '´    、:.:.:.:\  ,〃ヾ゙_ \ヾ!_' ̄_∠ィ'´       …………黄金のSSは無敵さ
,/     、ミ`          ヾ.:.:.:.:.:.\'   ヽ__〉ニ/´ ̄         
     ミ`  _______  __,.>ー-:.、_`:.  .:/´           
      ̄ ̄   ...:..:.:.:.:.:シ //r彡=ィ⌒ー一'        
               ..:/ / 川 (          
519 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/04/03(日) 01:03:33.87 ID:JOVJu7rY0
ニ-−、ー==、_ iヘ_  `-´ ノ F、_ノi  ノ i、ヽノノ |
クr>-ミ-、 乙 / `ー..イヽr ´ 二_ノク、_フ_ /
 /|r、  ヽ /七二>、L _: :| く T /∠ノ_T
|/ |' />  '   fK`三'フ < リ ァlア:/´     去ってしまった者たちから
 /ヽヽ     /   i/ : ,-、iヽ: : :V       受け継いだものはさらに『先』に
   |\o ,   | .    レ ´ r ^ Y-、/       進めなくてはならない!!
  ノ ノ `|i .  i      、i  .ノ ./
r´r:´\/ ゝ、 !    _ . -=-'ク/
/T:::ト、::ヽ、 \     ニ二 -ノ/         そして、自分自身の情熱から発した
::::|:::i、ヽ`ー、ヽ .\     - /           「書きたい」という意思も……
::::i::::| ヽ|ヽ、 i::i i   ` ー--イ
::::i::::|/ヾ、 i i::i !    ///フノ、
::::::::::\  iノノ::|:|     |////:::::ヽ_         このSSをエターにはしない!
::::::::::::::::\/::ノノ    レ'ム'::::::::::::::: ̄ヽ_
:::::::::::::::::::::::::::く_   ヽ:::イ二ニニミ>. /iヽ
:::::::::::::::::::::::>−、)  /イ      ヽ/ ∧ヘ   今は、少しずつだけど続きを書いてる途中だから……こらえてくれ
::::::::::::::::::::::イ___ノ-、_ィ'        Y/::::i::i
520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/03(日) 09:40:28.51 ID:MBU67k1IO
          ハ、 ∧ ハ           /\   /\   /\
        ,{! ヾ } / !i ヽ    ___/\/   \/   \/   \/ |_
.      |ソハ   !}   jレi   \
        } !/¨  〃  '{   /
       ト{´{ .ハ} r'"´} !{   \  みんなに読んでもらいたから ageようと思うんですが
      FY'弍{ }' 斥ァ`}ハ   /
      ヾ{:i  /ノ〉` !rソ    ̄|/\/\   /\   /\
.        ヽ /'f=ヘ  ハト、         _/\/   \/   \/
       ,ノ´f\='/ノ!ヽ\._      \
    /ノ !|`ヽ三イ  ヽノノ `'ー-、._ /  
  / r'/   | /::|,二ニ‐'´イ -‐''"  /´{ \  かまいませんね!!
  {  V   ヽ.V/,. -‐''"´ i   /  |/
  ヽ {    r‐、___     i  /     ∩  ̄| /\/\   /\ /\
   } .ゝ二=、ヒ_ソ‐-、   i__,. '| r‐、  U          \/
.   |  〉 ,. -',二、ヽ. `ニ二i___ |:| l|   |
    |'}:} ,/|毒|\丶   i ,::'| 'ー'  {
    |ノノ  |,ノ:::::|ト、 \ヽ ! i }`i´  r|
    |_>'ィ毒::::ノ  丶 ハ し-' | !  | |
 ┌≦:::::::::::::/      lハ     | ) U
 /ィf冬::::::イ |::.. j:    }lハ.   |∩  '゙}
521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2011/04/03(日) 10:48:20.12 ID:0oqVAVRRo
投下ですか〜
522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/04/03(日) 11:56:01.67 ID:uV59PdZJ0
      |二_  _―-、_   |、ヽ_,./ r''‐'´ヽ ヽヽ  |  |
      | i二ニ―---、__, | | | ̄―_ヽヽ、:::::ノミ-| l /  |
     く二二ニ-‐''''''~´  \ヽ`'‐=,´  \/ \ノ  人) |
     |  ノ /  /二三´`ヽヽ l /ヽヽ ヽ /r‐´// |┐
     /‐'´,/ /く \-- ̄`''‐\ ヽく ||ノ、lノ,-'´// |
    ヽ/_///く   :ヽ弋;;;;ッ-、 | |:::::-<::::-=ニ二//  /´
     Y´  .\/ ノ      ̄ ̄::::ノ/ ヽ !弋シフ´/ r‐'
     | /`i、  .V/ ヽ      ::::::lノ  __| ヽ::   | /  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     .l l | ヽ |          :::::../::::: ̄ノ   //  |関係ない
     ヽヽヽ! |            \::::::/   |/  <
      | vヽ |          _,. -''''ヽ-‐、   .|、ヽ  |書け
     /.( (>、_|         !-‐''~´ `~´\!  ./'ノ   \_____
     |/ `-i´ |.          '';;,,,,,,,,,,,,,,,;;''  /|/             _,,、
     |   |  |.           """""   / |          r'''ヽ''´ヽ ヽ!-、
_,. --、 ||||   \               | |          '、 `''''''  _ノ,.--`--┬''ヽ,
    ヽ| 川|    \       ___   / |           `''''''''フヽ´   ヽ,,,,ヽ_ノ__,,
   | |||||      ::::::\  /:::::::::::::::\/ |          _,. -''´-、,.-‐‐''''''''´./ ヽ  ヽ  )
   / | | 川|       ::::::`'''‐------‐''´:  |         /r‐'''''''´/ヽヽ_, イ´    ノ _フ
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2011/04/05(火) 06:33:50.67 ID:+HpzMnYB0
AA馬鹿には消えて欲しい
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/05(火) 20:24:22.47 ID:MFBZzYcSO
勇者系のSS漁ってたらこのSSにたどり着いて、今やっと追いついた
キャラの濃さと、そのキャラクターたちが自然と動いて展開していくストーリーがすごく好みだ!!
賢者ちゃんか竜姫ちゃんを嫁に下さい
支援支援
525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/06(水) 08:15:57.86 ID:klY8yP6DO
最近の後衛には腰の入ったローキックが必要なのか
526 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/04/07(木) 12:45:02.89 ID:KQcVd8nd0
 
――――――――――
現在
魔界へのゲート前
 
 
番兵A「おい、交代だ」

番兵B「ん……もうそんな時間か」

番兵A「地上の昼も短くなってきたな……もっとも、ここは常時夜のようなものだが」

番兵B「これからの季節は特にな。しかし、魔王様はまだお戻りになられないのか……」

番兵A「竜王の反乱の際に行方がわからなくなったのだろう?」

番兵B「まさかとは思うが、竜王の手にかかり亡くなられたのか……?」

番兵A「そんなはずはない。魔王様は魔界最強の一族の末裔だぞ」

番兵B「だが噂によれば、あの竜王の娘とつるんでいたそうではないか」

番兵A「ああ。獣王の倅とも親交があったとか」

番兵B「俺は竜王の娘を見たことがある。ドレスや宝石で着飾っても、所詮は卑しい叛徒の娘よ」

番兵B「きっと魔王様の寝首を掻くために近づいたに違いない。どこまでも卑劣な……」

番兵A「しかし生き残った獣王軍の兵の話では、竜王は自分の娘までも手にかけようとしていたとか」

番兵B「そんなもの見せかけに決まっている……あるいは用済みになったか」

番兵A「魔王様に加え、機械王も姿を消している。あのお二方がお戻りになれば……ん?」
 
 
 
ばんぺいたちは そらを みあげた
とおくのそらから おおきなひこうきかいが とんでくるのが みえた……
 
527 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/04/07(木) 12:46:26.91 ID:KQcVd8nd0
 
番兵A「お、おい……あれは!」

番兵B「まさか……!」

ゲートにむけて せっきんする ひこうきかいのうえには 
だてないしょうを きた まぞくのおとこが たっていた……
 
 
 
魔王「ヒャッホー!」

猫忍者「ま、魔王様! スピード出しすぎだにゃあ!」

盗賊「猫の言う通りだよ! もうちょっと安全運転しなって!」

魔王「大丈夫大丈夫、慣れてるから。安心して空のデートを楽しもうぜ?」

猫忍者「にゃにゃにゃあ!? そ、それはちょっとアクロバットすぎるにゃあ!?」

盗賊「……ったく、賢者も何か言ってやりなよ」

賢者「キャッハー! 風です! ボクは風になります!」

魔王「おっ、賢者ちゃんもなかなかノリがいいじゃん。俺達って結構趣味が合うのかもね」

賢者「だとしても魔王さんのことは嫌いです! イヤッホー!」

盗賊「バカ、立ち上がったら危ないよ!」

猫忍者「にゃにゃ……ゲ、ゲートが見えてきたにゃあ!」

機械王「――間もなく着陸態勢に移行。お客様はシートベルトをお締めの上……」

盗賊「……そんな気の利いたもの、どこに付いてるんだい?」
 
528 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/04/07(木) 12:47:46.75 ID:KQcVd8nd0
 
きかいおうが ゲートまえに ちゃくりくし まおうと ねこにんじゃが おりてきた
ばんぺいたちは まおうのすがたを みると いそいで かけよってきた……

番兵A「あ、あなたは……!」

番兵B「魔王様! 魔王様ではありませんか!?」

魔王「よう、久しぶり。前に地上に出て以来かな?」

番兵A「ご無事でしたか……機械王も健在のようで」

番兵B「魔王様さえお戻りになられれば、もう怖いものはない! 竜王軍など何程のものか!」

魔王「よせよ。オレは弱いんだから、オレ一人いるくらいじゃ竜王には勝てないさ」

番兵B「魔王の血筋に連なるお方が、御謙遜を……」

番兵A「……それで、魔王様。あの人間どもは?」

魔王「え? ああ、オレのガールフレンド」

賢者「」ジトッ

魔王「――と言いたいところだけど、彼女達は地上で捕まえてきた捕虜だよ」

番兵A「捕虜……ですか」

番兵B「何者なのです?」

魔王「勇者の仲間だよ。手配書で見たことはないか?」

番兵A「な……勇者の!?」
 
529 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/04/07(木) 12:49:11.48 ID:KQcVd8nd0
 
猫忍者「そうだにゃ。俺様と魔王様で捕まえたんだにゃあ」

番兵B「……お前は獣王軍の者か?」

猫忍者「にゃ」

番兵A「見たことのない奴だな……見るからに下っ端のようだが」

猫忍者「にゃ!? し、失礼な奴だにゃ! 俺様を誰だと思ってるのにゃあ!」

魔王「やめとけ、猫……地上で獣王子の遺体を回収したんだ。そのついでに勇者の仲間も捕まえてね」

魔王「機械王が竜王軍との戦闘で傷ついて、修理に手間取っちゃってさ。時間がかかっちまった」

番兵A「そうでしたか……では、これから本国へ?」

魔王「ああ。魔界が今どうなってるのかも知りたいしね」

番兵B「わかりました。今ゲートを開きますので、少々お待ち下さい」

魔王「OK、じゃあ頼むよ。オレは機械王に乗って待ってるから」

ザッザッザッ……

魔王「……ふう。結構何とかなるもんだね」

猫忍者「にゃ。それもこれも魔王様の人徳のなせる業だにゃあ」

魔王「流石はオレだよ。部下にも慕われてる理想の上司ってことだな!」

賢者「こんなチャランポランでも尊敬されるんだから、世の中って理不尽ですよね」

魔王「またまたぁ。そんなこと言って、カッコいいオレの姿を見て照れちゃってるんだろ?」

賢者「それだけは絶対ないです」
 
530 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/04/07(木) 12:50:30.38 ID:KQcVd8nd0
 
魔王「まあ、オレも魔王一族の末裔だしね。スター性とかカリスマとか受け継いじゃってるのかな?」

盗賊「……それはどうかねぇ」

猫忍者「にゃ?」

盗賊「ところで魔王。魔界に行ってからは、あたし達のことはどうするんだい?」

賢者「そうですね……一応捕虜扱いですけど、勇者の仲間ですよ? 何をされるかわかりません」

魔王「あ、そっか。何しろ勇者の仲間だもんな……じゃあ本当にオレのガールフレンドってことに」

賢者「ふざけてないで真面目に考えてください」

魔王「割と本気なんだけどなぁ……」

盗賊「そういう場合じゃないってわかるだろ? 今はアンタだけが頼りなんだからね」

魔王「ま、下っ端連中には手荒な真似をするなって言っておくよ。安心しなって」

タッタッタッ……

番兵A「魔王様! ゲート開放の準備が整いました」

魔王「おっ、流石に仕事が早いね。じゃあ行きますか!」

猫忍者「にゃ。お前ら、本国に着くまで大人しくしてるにゃあ?」

盗賊「はいはい。わかってるよ」

猫忍者「いい心がけだにゃ。ほら、お前も返事をするにゃあ」

賢者「……後でたっぷりフカフカさせてもらいますからね」ボソッ

猫忍者「にゃにゃ!? お、俺様はそんな脅しには屈しないのにゃあ!」アセアセ

機械王「――発進シフト、オン。離陸態勢に移行」
 
531 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/04/07(木) 12:52:24.96 ID:KQcVd8nd0
 
――――――――――
数分後
魔界・ゲート付近空域
 
 
猫忍者「にゃにゃ……懐かしいにゃ、この空気。ついに魔界に帰ってきたのにゃあ」

賢者「噂には聞いてましたけど、本当に地下深くにこんな広大な空間が……」

盗賊「こいつは驚いたよ。下に広がってるのは湖……いや、海かい?」

魔王「そう。太陽の明るさが違う以外は地上と大差はないさ」

猫忍者「だから魔族は地上でも生きていけるのにゃ」

盗賊「太陽って……あの天井近くにある火の玉のこと?」

賢者「熱と光を放射するアーティファクトですね。あれだけの規模のものは見たことないですけど」

魔王「あの人工太陽は初代魔王が設計・開発して、それ以来ずっと魔界を照らしてるんだってさ」

賢者「ずっと、ということは、ある種の永久機関なんでしょうか?」

盗賊「アンタのご先祖様も大したもんだね。頭脳派の魔王だったのかい?」

魔王「さあ? オレには難しいことはわかんないし、ぶっちゃけ興味ないから」

猫忍者「流石は魔王様、偉大なご先祖様であっても全く敬う気がないにゃあ」

機械王「――現在位置座標から、魔王城への到着予定時刻を計算中……」

盗賊「そういえば機械王も初代魔王の作だって言ってたけど……案外、インテリ魔王で正解かねぇ」

賢者「その末裔がこんなのってことは、世襲される文化や制度が質を落とすのは真理なんですね」

盗賊「賢者。そいつはあたしらの世界にも跳ね返ってくる言葉だよ。わかってるかい?」
 
532 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/04/07(木) 12:53:25.90 ID:KQcVd8nd0
 
――――――――――
数時間後
魔界・魔王城
 
 
キィィィィン……

きかいおうは まおうじょうのまえの ひろばに おりたった!
へいしたちが ぞくぞくと あつまってくるなか まおうは かろやかに ちじょうにおりた……

側近「魔王様!」

魔王「側近くん、久しぶり! オレの留守の間、こっちは大丈夫だった?」

側近「はい。竜王軍と幾度か武力衝突を……ですが、我ら親衛隊は叛徒などに後れは取りません」

魔王「そいつは結構。魔王城も無事みたいだしね。他の地域は?」

側近「魔法石の鉱脈と加工工場を抑えられました。後は旧海王領の海域を……」

魔王「地底海の半分を抑えられたってこと? 結構ヤバくない?」

側近「後手に回ってしまったのは事実です。現在、奪還作戦の準備を整えているところです」

側近「魔王様がお戻りになられたとなれば、全軍の士気も上がりましょう」

魔王「……ま、こんな時だしね。それも仕方ないか」

側近「ゲートの番兵から連絡を受けています。捕虜は地下の牢獄に収監しておきましょう」

魔王「ああ、頼むよ。二人ともか弱い女の子だから、くれぐれも手荒な真似はするなよ?」

側近「承知しました。では、魔王様はこちらへ……」

魔王「あ、ちょっと待ってくれ。その前にやることがあるんだ」

側近「やること……ですか」

魔王「すごく大事な用事が残ってる。すぐ戻るから、ちょっとだけ待っててくれない?」
 
533 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/04/07(木) 12:53:59.07 ID:KQcVd8nd0
 
けんじゃととうぞくは きかいおうから おろされた
ふたりと いれちがいに まおうは きかいおうに のりこんだ!

すれちがいざまに とうぞくは まおうに こごえではなしかけた……

盗賊「……行くんだね?」

魔王「ああ。他の奴らには任せられないことだし、盗賊ちゃん達を連れてはいけないよ」

盗賊「獣王を殺したのはあたし達だし、みんな快くは思わないだろうね」

盗賊「ひょっとしたら、その場で殺されちまうかもしれない。それなら牢獄の方が安全だよ」

魔王「……ごめん。オレ、盗賊ちゃんがああ言ってくれたから甘えちまったけど……」

魔王「オレの都合で、女の子をとんでもない場所に連れてきちまった」

盗賊「王都付近を飛んだら撃ち落とされるのが関の山だよ。かといって竜王軍にも追われる身だし」

盗賊「いっそゲートまで最短距離を飛んで魔界へ行った方がいいって、みんなで話し合ったろ?」

魔王「そりゃそうだけど……」

盗賊「アンタが心配すべき事柄はもっと他にあるはずだよ。それを忘れないように」

魔王「え?」

親衛隊A「おい、貴様! さっさとこっちへ来い!」

盗賊「はいはい……じゃ、魔王。うまくやりなよ」

魔王「……ああ。ありがとう、盗賊ちゃん」

まおうとねこにんじゃ そして じゅうおうじのいたいをのせた きかいおうは
じんこうたいようが てらす まかいのそらへ とびたった……
 
534 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/04/07(木) 12:56:35.35 ID:KQcVd8nd0
ブツ切り投下で申し訳ありません。下手したら週一ペースです。どうしてこうなった……

しばらく魔王パーティの魔界編。
そろそろ賢者の腰の入ったいいローキックが唸る展開になるかは微妙。
535 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/07(木) 14:44:01.24 ID:HdwnhuESO
乙!
536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/07(木) 14:53:18.29 ID:Vj6ekBWDO
537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/08(金) 08:33:32.36 ID:cmiVuiEuo
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) :2011/04/08(金) 12:32:13.05 ID:BSmxoI7AO


賢者の魔王嫌いは筋金入りだが果たしてツンデレなのかどうか
それが問題だ
539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/04/08(金) 15:52:31.27 ID:1Kq61djVo
魔王×賢者とかマジでやめてえええ
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/10(日) 17:06:31.04 ID:tbTmE5vAO
期待支援
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/11(月) 23:53:51.13 ID:3zaBYLUgo
面白いです、応援してます
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/12(火) 11:29:54.86 ID:Zb6doimJ0
おつ〜ん
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/04/14(木) 02:16:01.37 ID:2DJWbl4wo
追い着いた。これは面白い…!
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/29(金) 02:14:05.59 ID:KVrhnatJo
かむばっく
545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/04/30(土) 08:49:03.08 ID:f8g15WlPo
ぷりぃぃいいいいず!
546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2011/05/04(水) 18:26:20.70 ID:9tth+Ed30
いいや限界だッ!ageるねッ!
547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 17:37:47.71 ID:o0QIuN5DO
さみしいのぉ〜・・・
548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/06(金) 01:51:29.19 ID:Q8Ym2Vlv0
そろそろこっちにも更新が来るらしいぞ。大人しく待つんだ!
549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage ]:2011/05/06(金) 08:18:21.38 ID:QTOHUu5z0
オチ無いからダイジだよ。
二兎…
550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [age]:2011/05/06(金) 08:46:09.95 ID:1OJCrRXm0
期待age
551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2011/05/08(日) 00:58:15.61 ID:a2EOD1Cro
こいよ…
552 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/05/11(水) 23:09:34.68 ID:kB63MfyQ0
続き執筆難航中\(^o^)/

気分転換と言ってはなんですがお題募集して短いの書きます
>>555
553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/11(水) 23:20:02.18 ID:fzj07lwy0
来てた!kskksk!
554 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2011/05/11(水) 23:20:04.69 ID:Xbgq5fOMo
グラップラー「うおのめ」
555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/11(水) 23:21:28.73 ID:QLlXCA8go
宝くじ
556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/05/11(水) 23:26:55.26 ID:con5X+Pro
生存と執筆中の報告だけでまだまだ待てる!
という訳で踏み台
557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 16:28:23.60 ID:K6D7pFFS0
まだかな?
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/16(月) 00:02:06.54 ID:3VLtGeNAO
生きてるならそれでいい
待ってる
559 :お題「宝くじ」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/05/16(月) 22:05:39.88 ID:s0t3mLyK0
 
――――――――――
とある日曜日
王宮・会議室
 
 
勇者「宝くじ……?」

財務大臣「そう、宝くじだ。知っているか?」

勇者「聞いたことがあります。東方の寺院などで、普請の資金収集のために主催されていたとか」

財務大臣「うむ。流石は王立魔法研究所の元研究員だ。博識だな」

勇者「ですが、何故この情勢下に宝くじを? しかも王宮の公認とは」

財務大臣「この情勢下だからこそだ。相次ぐ戦火で、各地の自然や文化財への被害も夥しい」

財務大臣「それらの修復費用を調達すると共に、民衆にも適度な娯楽を提供してやらねばならん」

財務大臣「言うまでもなく、我々のやろうとしている宝くじは賭博だ。だがそれがいいのだよ」

勇者「なるほど……それで、私を呼んだ理由は?」

財務大臣「ああ。そのことだが……君のお供にいるだろう? あの背の低い……」

勇者「賢者ですか」

財務大臣「そう、彼女だ。君から賢者にちょっとした頼みごとをして欲しいのだ」

勇者「頼みごと?」

財務大臣「なぁに、簡単なことだよ。宝くじの売り上げを上げるために、彼女の協力をね……」
 
560 :お題「宝くじ」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/05/16(月) 22:06:09.62 ID:s0t3mLyK0
 
――――――――――
午後
城下町・勇者の部屋
 
 
ガチャッ

賢者「こんにちは、勇者さん」

勇者「来てくれたか……歓迎する。楽にしてくれ」

盗賊「いいですよ、そんな。勇者さんらしくないです」

勇者「そうなのか?」

賢者「わざわざボクを呼びつけるなんて、火急の用事なんですか?」

勇者「ああ。しかも、イエスと言ってくれなければ困る案件だ」

賢者「……なんか嫌な予感がしますけど、とりあえず話を聞かせてください」

勇者「来週末から王宮の公認の下、宝くじが発売される。この話は知っているか?」

賢者「はい。戦火で疲弊した地方財政を立て直すとか、文化財の修復費用の調達とか……」

勇者「この戦時下で庶民に宝くじを買うような浮動購買力があるかどうか疑問ではあるが……」

勇者「宝くじは、その売上額から当選金と興業入費を差し引いた差額が興行主の利益になる」

勇者「つまり、できるだけ多くの人間に買ってもらわなければならないわけだ」
 
561 :お題「宝くじ」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/05/16(月) 22:07:13.93 ID:s0t3mLyK0
 
賢者「それはわかりますけど……宝くじについての講義をするために呼んだわけじゃないでしょう?」

勇者「当然だ。それで、君に頼みたいことがあるのだが……」ゴソゴソ

賢者「?」

勇者「宝くじの企画担当が言うには、君にイメージキャラクターを務めて欲しいらしい」

賢者「イメージキャラクター?」

勇者「企画書によれば、この衣装を着て各地の売り場を巡業するらしいのだが……」

ゆうしゃは うさみみバンドとバニースーツを とりだした!

勇者「さらに『一等当選者にはいいことあるかも♪』と思わせぶりなフレーズを多用することで」

勇者「男性層の購買意欲を煽って売り上げアップを狙う、と書いてあるのだが……」

スパーン!

けんじゃは ゆうしゃのひざのうらに こしのはいった いいローキックを たたきこんだ!
ゆうしゃに 14のダメージ!
  
562 :お題「宝くじ」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/05/16(月) 22:08:44.79 ID:s0t3mLyK0
 
勇者「……何をするんだ、賢者」

賢者「アンタこそ何を言い出すんですかっ! い、いきなり、そんな……破廉恥な……」

勇者「これは財務大臣からの正式な要請だ。事実上拒否権はないと言っていい」

賢者「だとしても絶対に嫌ですっ! ボ、ボクがそんなこと……」

勇者「衣装が不満なのか? この国の古い言い伝えでは、ウサギは幸運を運ぶ動物とされていて」

賢者「そういうことじゃなくてっ!」

勇者「要するにくじの売り子をすればいいんだ。以前、似たようなことはしただろう」

勇者「あの時の君はずいぶんノリノリで……」

賢者「わーっ! わーっ! 思い出させないでくださいーっ!」バタバタ

賢者「……と、とにかくですね、ボクはそんな仕事やる気はありませんから」

勇者「……君がそこまで言うなら仕方がない。財務大臣には私から断っておこう」

賢者「そうしてください……」
 
563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/16(月) 22:09:26.87 ID:jF+dtqoCo
おお
564 :お題「宝くじ」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/05/16(月) 22:10:09.01 ID:s0t3mLyK0
 
勇者「……しかし、そうなると代案を考えねばならないか」

賢者「……」

勇者「イメージキャラクターやイベントコンパニオンのプロデュースは専門外だが、どうしたものか」

賢者「……あ、あの……勇者さん」

勇者「どうした、賢者?」

賢者「い、一応、念のためですけど? あくまでも、もしもの、仮定の話なんですけど」

賢者「ゆ、勇者さんは……ボクがそういう格好をしてるの、見てみたいって思いますか……?」

勇者「? どういうことだ」

賢者「べ、別に深い意味はありませんけど、ちょっと聞いてみたくなったっていうか?」

賢者「勇者さんは一番身近にいる異性ですし、参考になるかなーって……」

賢者「もしも、仮に、万が一、ボクがバニーさんの格好をしてたらどう思うかなって」

勇者「……私は別になんとも思わないが?」
  
ドゴォッ!

けんじゃは ゆうしゃのわきばらに とびうしろまわしげりを たたきこんだ!
ゆうしゃに 25のダメージ!
 
565 :お題「宝くじ」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/05/16(月) 22:10:49.34 ID:s0t3mLyK0
 
――――――――――
数日後
城下町・宝くじ売り場
 
 
たからくじうりばでは ドラゴンのあたま ウサギのみみ カメのこうら 
ネコのて ツルのはねをそなえた きみょうなデザインのきぐるみが
こどもたちにかこまれていた

賢者「……これ、勇者さんのデザインですか?」

勇者「ああ。古今東西の縁起のいい動物を集めてみたのだが……」

賢者「売り上げはどうなんです? こんな奇怪なマスコットで大丈夫なんですか?」

勇者「予想よりも売れている。財務大臣も上機嫌だったよ」

勇者「……それより賢者。どうしてもわからないことがひとつだけある」

賢者「なんですか?」

勇者「君が帰ってしまった後、考えてみたのだが……君が怒る理由がわからない」

賢者「はぁ?」

勇者「私の返答が気に入らなかったのだとすれば、君は私にバニー姿を披露したいということになる」

勇者「しかし君はああも拒否反応を示していたのだから、私に見せてもいいという理屈は……」

賢者「わーっ! わーっ! そ、そんなのもうどうでもいいですから!」

勇者「だがどうしても解せないんだ。君の口から説明してもらいたい」

賢者「それより、折角だからボク達も宝くじ買いましょうっ! ほら、最後尾に並んで!」

勇者「……?」
 
 
 
そのご ざいむしょうは ことあるごとに けんじゃにイメージキャラクターのオファーをだすが
けんじゃが それにおうじることは なかったという……
 
566 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/16(月) 22:12:29.32 ID:HAfbPFMHo

一箇所盗賊になっとるぞ
567 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/05/16(月) 22:12:52.74 ID:s0t3mLyK0
お題ひとつにここまで時間がかかってしまうとはだらしねぇ……
どうでもいいですが最近勇者の脳内CVが石川英郎で固まってきました
568 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/05/16(月) 22:14:06.46 ID:s0t3mLyK0
>>566
アッー!

× 盗賊「いいですよ、そんな。勇者さんらしくないです」

○ 賢者「いいですよ、そんな。勇者さんらしくないです」
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/05/16(月) 22:15:04.20 ID:03OG+M7mo
うむ、実にこの勇者ありだ。ありがとう
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/16(月) 22:16:14.33 ID:A/3izGj/o
乙です
いいわーやっぱり賢者いいわー
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/16(月) 22:52:22.74 ID:28dRBmk3o
ふむ、私の目から見ると賢者はかわいいと思うのだが

だれか勇者のデザインを書いてみてくれ、見たい!
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/05/16(月) 23:57:46.41 ID:3VLtGeNAO
>>145には身長187cm、鬱陶しい長髪にインテリ眼鏡とあるな
個人的には元研究者という経歴のせいか白衣が似合いそうなイメージ
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 00:00:41.11 ID:2g2jrtCIO
絵師様()〜ってか?
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/05/17(火) 00:01:22.04 ID:s3dBmGV3o
まんま戦国無双の毛利元就でいけそうだな
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 01:12:24.54 ID:Ppw/mo4ro
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/17(火) 02:34:21.25 ID:WwQt4yZv0
乙バニー!
>>573
おまえSS見なくてもいいよ
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 14:50:49.01 ID:bxV8POdAO
勇者と賢者は40cmも身長差があるのか……胸熱
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 16:08:30.44 ID:DJvokguZo
>>572
そっちじゃねえ
勇者がデザインした宝クジマスコットの方だよ
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 17:30:31.08 ID:TSI2Sq9DO
壊死様(笑)

ぴくしぶでやってろwwww
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage ]:2011/05/17(火) 17:55:38.49 ID:cb3dHmcB0
乙です。
581 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 20:03:21.81 ID:2g2jrtCIO
絵師様降臨キボンヌwwwwwwww(笑)

まーた変なのがわく季節か?
582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 20:06:11.35 ID:77nEiAMwo

やっぱりこの初期コンビは安定感あるな
583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/18(水) 07:36:23.98 ID:7gmGDoBDO
賢者の跳び後ろ回し蹴りかぁ…


小さい割りによう動くな
584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/18(水) 12:27:01.79 ID:iYVTx1aAO
賢者どころかパラディンになれるんじゃないのか
585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/18(水) 13:19:07.78 ID:SmeLiTlLo
毒の治療にきゅうしょ突き使うシスター思い出した
586 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/05/18(水) 20:12:01.65 ID:I00C/Cke0
懲りることなく再びお題募集
よろしければ使ってほしいキャラも添えてお願いします
>>590
587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/18(水) 20:15:42.96 ID:Wo5LDHRZo
賢者の足が骨折とか期待
588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage ]:2011/05/18(水) 21:05:30.76 ID:rVsaq02oo
本編は?
589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/18(水) 21:23:22.49 ID:iYVTx1aAO
ksk
590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/18(水) 21:25:18.15 ID:fxfjXXaIO
勇者の活躍
591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/19(木) 17:49:16.01 ID:vK8dtcxS0
GJだ
592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/24(火) 04:47:42.75 ID:qpUoIRKSO
これは期待が高まる
593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/28(土) 20:39:02.56 ID:ZTuXTJoIO
594 : ◆9BJ4hJYdoU :2011/05/28(土) 20:39:56.72 ID:ZTuXTJoIO
595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage sine]:2011/05/28(土) 21:02:03.63 ID:WHyhEoq10
何こいつ?
596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/28(土) 21:41:08.69 ID:0JbA7KPB0
>>594って>>1だよね?
酉変えたの?
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/28(土) 21:44:30.56 ID:msvN9qhRo
>>596 >>1は携帯じゃないぞそれに携帯にするなら何か一言あるだろうよ
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2011/05/28(土) 22:22:27.28 ID:JGZZ6+Wx0
単なる馬鹿だろ
触るだけ無駄
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/29(日) 17:22:51.19 ID:tm/l32Tb0
あ、携帯か
そこまで見てなかったわ
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/30(月) 12:39:12.80 ID:sGheKCCIO
追いついてしまったorz

楽しいから見ているぞ
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 11:35:34.01 ID:qD05aEqt0
で?まだ?待つけど
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/02(木) 21:46:34.71 ID:OWEbDw2IO

    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
 / ̄ ̄ ̄        /|
 |\_______/ |
  |          __ ヽ_
  |   |     /     / |`'''ー------‐'''''フ
   |   |    /    /: :ノ        /
__|ヽ \  |   ,.-'´: :/     _,.-''´
    | :`'ー----‐''´: : ,.-'´  _,.-Tミ ̄     つまりこういうことか?
'‐-、_ \____,. -二-‐<ミ( ) |ミ、
   `''‐-、__,._- ,=tラフ  ミkノ /ミミ、    「奴は今、迷っている!!」
   /,.ヽくゞク!T ヽ ̄´ )  ミr'くヽヽミ、i    こう言いたいということか?
 / / >、-‐|ヘ ノ`''''''´l  ミミ|  ヽヽ/ |ヽ、
_/ / /  ヽ ゞブ 、、、  、ミミノ    /  ヽl
  / く、   ヽ〃‐‐--ヽ川/   /   !
    ||ヽ   ! ''''''ミ、ヽ/   /    /
    | | |   ヾ川川/   i´     /
    `' ヽ   !ヽ ̄: : /   |ヽ    /

603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/03(金) 12:55:05.90 ID:VSaGE0LIO
大学落ち着いたら書いてくれよ!
604 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/10(金) 02:26:47.07 ID:LVvwCULp0
 
――――――――――
現在
魔王城・地下牢
 
 
 
看守「さあ、さっさと入れ!」

盗賊「わかってるよ。そう急かさなくたっていいじゃないか」

看守「お前もだ。グズグズするな!」

賢者「うぅ……なんだかジメジメしてて気持ち悪いです」

看守「ふん、人間風情が……」

看守「魔王様がお前達を殺すなと言ったのがどうにも解せないが、まあいい。大人しくしていろよ」

ガシャン!

ツカツカ……

賢者「……はぁ」

盗賊「どうしたんだい? 溜め息なんか吐いて」

賢者「溜め息のひとつも出ますよ。計画通りとはいえ、実際にこうしてみると……」

盗賊「そうかい? ……ま、そのうち慣れるよ」

賢者「……そういえば、盗賊さんはスカウトされる前は投獄されてたんでしたっけ」

盗賊「まあね。まさか、勇者のお供になるなんて思ってもみなかったけど」
 
605 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/10(金) 02:27:19.23 ID:LVvwCULp0
 
盗賊「食事は出るし、雨風に晒されることもない。不便なのは外に出られないくらいだよ」

盗賊「とどのつまり、人間ってのは、生きていく上でそう多くのものはいらないってことさ」

賢者「そんな人生訓欲しくなかったです……でも、魔王さんは大丈夫でしょうか」

盗賊「なにが?」

賢者「こんな情勢下に外をうろついて大丈夫か、ってことです。竜王軍に襲われたりとか……」

盗賊「なんだい、アンタ魔王のことが心配なのかい?」

賢者「別に心配ってわけじゃないですけど、あの人になにかあったらボク達も危ないですし……」

盗賊「……でもね、賢者。あいつは自分のやらなきゃならないことをやりに行ったんだよ」

盗賊「その結果がどうあれ、今のあたしらにできるのは待つことだけさ」

盗賊「信じてやりなよ。魔王とはまだまだ付き合いは短いけど、悪い奴じゃあない。だろ?」

賢者「……ええ。魔王にしておくには勿体ないくらいのお人好しです」

賢者「……」

賢者「……ボク達の勇者さんがあんな人で、魔族の王があんなので。考えてみれば不思議ですよね」

盗賊「……そうだねぇ。あたしゃ、魔王が勇者でも問題ないような気がするよ」

賢者「そうですよ。あの人は、誰にも何も感じないような人なのに……」
 
606 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/10(金) 02:27:53.90 ID:LVvwCULp0
  
――――――――――
一時間後
魔界・獣王領

  
  
魔王「機械王、ここらでいい。後は歩いていくよ」

機械王「――了解。着陸態勢へ移行」

猫忍者「獣王子様の棺は俺様に任せるにゃ、魔王様」

魔王「ああ、頼む。やっぱりオレ一人じゃどうにもさ……」

魔王「……」

魔王(獣王領……久しぶりに来たけど、できればこんな形で訪れたくなかったぜ)

魔王(この土地には獣王の屋敷があって、ガキの頃にはよく遊びに来たっけ……)

魔王(……それがよりにもよって、ダチの亡骸を運んで戻ってくるなんて)

魔王「……ん?」

きかいおうが はやしのなかにちゃくりくしようとしたとき
まおうは ふと なにかのけはいをかんじた

猫忍者「魔王様……」

ねこにんじゃは しっぽをたてて しゅういをみまわしている

魔王「……猫、お前も気づいたか?」
 
607 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/10(金) 02:28:53.04 ID:LVvwCULp0
 
猫忍者「囲まれてるにゃあ。まさか竜王軍……?」

魔王「マジかよ、こんなところにまで?」

猫忍者「どうするにゃあ? 獣王様の屋敷までは結構距離があるにゃ」

魔王「そうは言っても、俺達3人だけじゃな……機械王、周りに何人いるかわかるか?」

機械王「――サーチモードへ移行。半径200m圏内の魔力反応をサーチ」

ヴゥン……

きかいおうのめに ひかりがともり ひくいおとが なりひびいた……

機械王「――魔力パターンB。魔族・獣人タイプを3体確認」

魔王「獣人……? 竜人じゃなくてか?」

猫忍者「ということは、獣王軍の生き残りかにゃあ!」

魔王「なぁんだ、心配して損しちまったぜ。獣王軍ってことはオレ達の味方だな」

猫忍者「きっと魔王様を迎えに来たに違いないにゃあ」

魔王「機械王、どうやら大丈夫みたいだ。下に降りたら連中に道案内してもらって……」
 
 
ドォンッ!
 
608 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/10(金) 02:29:46.47 ID:LVvwCULp0
 
きかいおうのボディに ちゃくだんのひばながちり 
ひこうけいたいのきかいおうは くうちゅうで おおきくゆらいだ!

魔王「ッ!?」

猫忍者「にゃにゃにゃにゃあ!?」

魔王「なんだ、一体何が……」

機械王「――胴体に被弾。地上の獣人より攻撃を受けた模様」

猫忍者「ど、どういうことだにゃあ! 下にいるのは獣王軍じゃないのにゃあ!?」

機械王「――魔法石エンジンに異常。長距離航行に支障が出る確率、22.6%」

魔王「……機械王、トランスフォームして急降下だ! このままじゃ狙い撃ちにされる!」

機械王「――了解。トランスフォーム」

きかいおうのからだが へんけいし ひとがたをなす!

まおうとねこにんじゃは ゴーレムけいたいにトランスフォームした 
きかいおうのかたに しがみついている……

魔王「とにかく走れ! 獣王の屋敷まで突っ切るんだ!」

機械王「――了解。オートコンパス・OK。ナビゲーション・オールクリアー……」

きかいおうは じひびきをたてながら じゅうおうのやしきにむけて はしりだした!


しかし つぎのしゅんかん きかいおうのあしもとのじめんが ばくはつをおこした!
609 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/10(金) 02:30:49.43 ID:LVvwCULp0
 
ばくはつにあしをとられたきかいおうは てんとうし まおうたちはじめんになげだされる! 
   
猫忍者「にゃにゃあっ!?」ドサッ

魔王「いってぇ……地雷まで仕掛けてあったのかよ……」

機械王「――左脚部に損傷。装甲の一部が脱落。歩行及び走行に支障が出る確率……」

魔王「いいよ、機械王。言われなくたってすげぇヤバい状況だってわかるからさ」

ザッ……

たちつくすまおうたちのまわりに 3にんのじゅうじんがあらわれた!

猫忍者「にゃあっ!? お、お前達は……」

魔王「知り合いか?」

猫忍者「獣王親衛隊の中でも有名な三人組だにゃ。なんでこいつらが……!?」

犀銃士「……魔王様ですね?」

たいほうをかついだ サイのじゅうじんが いっぽまえにすすみでた……

魔王「そうだけど、何の用? オレのサインでも貰いに来た?」

犀銃士「……我らが主の命により、お命頂戴つかまつる」
 
610 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/10(金) 02:32:44.90 ID:LVvwCULp0
 
犀銃士「あくまでも抵抗なさると?」

魔王「いきなり死んでくれって言われて、ハイそうですかと言うとでも思うのかよ」

猿闘士「ならば致し方ない……」

象剣士「実力行使に移るより他にないようですな」

犀銃士「……御覚悟を」

さんにんのじゅうじんが まおうに おそいかかってきた!

まおうは きかいおうにむけて こえをはりあげる!

魔王「機械王!」

機械王「――ラジャー!」

そのしゅんかん きかいおうのてあしのそうこうが はがれ
ないぶにかくのうされていた ひとくいサーベルのむれが かおをだした!

魔王「サーベルミサイル、オープンファイア!」

さんじゅうしのこうげきを かわしながら まおうが めいれいをくだす!
きかいおうのぜんしんから ひとくいサーベルのむれが いっせいにしゃしゅつされた!

犀銃士「体内にモンスターを格納していたとは……」

猿闘士「ええい、子供騙しを!」

サルとうしは おそいかかるひとくいサーベルを たたきおとした!
 
611 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/10(金) 02:34:13.68 ID:LVvwCULp0
 
はじかれ じめんにつきささった ひとくいサーベルから まりょくがもれだし 
まほうばくはつをおこす!

はやしのいたるところにせっちされたじらいが まりょくをうけて ゆうばくする!

犀銃士「物質系モンスターが自爆魔法をその身に宿すとは……」

魔王「余所見は禁物だぜ!」

まおうは とびかうサーベルのうちのいっぽんを キャッチし そうびした!
まおうのてからながれこむまりょくが ひとくいサーベルにこめられたまほうを おさえこむ!

まおうは サイじゅうしにむけて はげしくきりかかった!

ガキィンッ!

犀銃士「ぬ……!」

ゾウけんしのつるぎが まおうのサーベルをうけとめた!

魔王「チィッ……!」

象剣士「犀銃士、お前は後方へ」

犀銃士「うむ。前衛は頼むぞ」

サイじゅうしは うしろへさがり たいほうをかまえなおす!
 
612 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/10(金) 02:35:23.50 ID:LVvwCULp0
 
魔王「それなら!」

まおうは サーベルからてをはなし バックステップできょりをとった!
ひとくいサーベルのとうしんが くちのようにわれ ゾウけんしのつるぎにかみついている!

象剣士「これは……!」

魔王「BANG!」

まおうが ゆびをならすと ひとくいサーベルは まりょくをかいほうし ばくはつをおこした!
ゾウけんしに 41のダメージ!

犀銃士「象剣士!」

象剣士「ぐぬぅぅぅ……!」

猿闘士「流石は魔王様と言ったところか……侮れぬ」

魔王「機械王、次の武器だ! 今度は……」



ザシュッ!
 
613 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/10(金) 02:37:18.76 ID:LVvwCULp0
 
そのとき まおうとすれちがったかげが まおうのせなかをきりさいた!
まおうに 48のダメージ!
 
魔王「――ッ!?」
 
猫忍者「魔王様!」
 
まおうは じめんにたおれふした!
 
猫忍者「だ、誰だにゃあ! 俺様に気配を悟らせにゃいにゃんて……」
 
魔王「ぐぅっ……」
 
まおうのせなかからは とめどなく ちがながれている!
それは するどいつめできりさかれたような きずあとだった……
 
魔王「この攻撃……まさか、だろ……」
 
??「そのまさかよ」
 
猫忍者「にゃっ?」
 
いつのまにか まおうのそばには ひとりのじゅうじんのしょうじょが たっていた!
 
??「お久しぶりね、魔王様。こっちに来るの、何ヶ月ぶりかしら?」

ライオンじゅうじんの しょうじょのかおをみあげて まおうはつぶやいた……
 
 
 
それは じゅうおうじのいもうとの なまえだった……
 
614 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/10(金) 02:38:30.96 ID:LVvwCULp0
どうしてこんなに間が開いてしまったのか……慢心、環境の違い

土日辺りにはお題「勇者の活躍」を投下したいと思ってます
615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/10(金) 03:54:32.39 ID:5IH0uz6DO

まさか続きが投下されてるとはwww
616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/10(金) 08:27:10.13 ID:HblJ1voIO
おまいを待ってるんだぜ>>1
617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/10(金) 14:27:41.63 ID:HLhcReCSO
乙 今回も楽しかったです
618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします() [sage]:2011/06/11(土) 00:07:49.95 ID:I7OmYB+io
>>614 乙!
619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/17(金) 02:15:20.54 ID:CgvAGX+D0
明日明後日かな?
620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/06/17(金) 12:20:40.16 ID:fYjRWfVbo
続き書く気がないならやめちまえぼけなす
621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2011/06/17(金) 16:33:17.93 ID:aKaHNF4Io
待つこともできねえなら見るのやめろボケナス
622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/06/17(金) 16:38:50.19 ID:fYjRWfVbo
がきで低脳とか終わってんなお前いますぐ首つってきたほうがいいぞ
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/17(金) 17:43:51.01 ID:dgP3c5PIO
とりあえず落ち着いてほしい
624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/06/17(金) 19:51:49.00 ID:UndLc6qDO
4円
625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/17(金) 19:53:07.47 ID:UndLc6qDO
さげ忘れたスマソ
626 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/17(金) 21:01:48.74 ID:Fa08R2dIO
ちんちん
627 :お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/19(日) 15:41:18.11 ID:yAbJkxyo0
 
――――――――――
とある日曜日
城下町・勇者の部屋
 
 
 
ドゴォッ!

りゅうきの とびひざげりが ゆうしゃのあごをうちすえた!
ゆうしゃに 18のダメージ!

僧侶「ゆ……勇者さん……!?」

勇者「……いい飛び膝蹴りだ、竜姫。だが何故突然こんなことを」

竜姫「黙らぬか! さっさと観念してお前の罪を数えろ! そして死ね!」

僧侶「ま、待って……ください……一体なんの話……」

竜姫「やかましい! 今すぐ死なないと殺す! 殺されたくなければ死ぬがいいわ!」

勇者「冷静になれ。先程から発言内容が支離滅裂だ」

僧侶「そうです……落ち着いて話してください……」

竜姫「まだしらを切るつもりか? ……まあよい」

勇者「一体何があったんだ? 私に飛び膝蹴りをするほどのことなのか」

竜姫「……わらわの下着がなくなっておったのじゃ。しかも気に入っていたものばかり!」

竜姫「ズバリ盗んだのは勇者、お前じゃろう!」ビシッ

勇者「……私は君の下着を盗んでなどいない。それは濡れ衣だと言わせてもらおう」
 
628 :お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/19(日) 15:42:16.55 ID:yAbJkxyo0
 
僧侶「そうです……! 勇者さんがそんなことするはずありません……!」

竜姫「では何故、洗濯物を取り込んだ時に下着が少なくなっておるのじゃ?」

竜姫「大方、洗濯の最中にちょろまかしたのじゃろう! わらわの目は誤魔化せぬぞ!」

勇者「確かに私は君の衣類も併せて洗濯しているが、そんなことをして何の……」グイッ

僧侶「……」グイグイ

勇者「……」グイグイ

勇者「……すまない。シャツの裾を引っ張るのをやめてくれないか」グイグイ

僧侶「やめません……」グイグイ

僧侶「どういうことですか……竜姫さんの、し……下着を……洗濯してるって……」

勇者「竜姫を私の部屋に泊まらせることになった時、彼女は家事を手伝うことを承服しなかった」

勇者「かといって自分で洗濯する気もないようだったから、私がまとめて洗濯しているのだが……」

竜姫「ええい、話の腰を折るでない! とにかく勇者、下手人はお前でファイナルアンサーじゃ!」

勇者「君は少し落ち着いた方がいい。こんな時こそ冷静に対処すべきだ」

僧侶「そ、そうです……ま、まずは、落ち着いて平等に私の下着も洗濯してください……!」

勇者「僧侶、君もだ」
 
629 :お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/19(日) 15:45:11.56 ID:yAbJkxyo0
 
勇者「まず、状況を整理しよう」

勇者「早朝、私は井戸に行って水を汲み、服を洗濯して、バルコニーにそれを干す」

竜姫「うむ。実際に干しているところはあまり見ぬがのう」

勇者「それは君がその時間帯にはまだ眠っているからだ」

竜姫「わらわは低血圧なのじゃ。それに何故わらわが朝早く起きねばならぬ?」

僧侶「これはひどい……です……」ボソッ

竜姫「で、日中は勇者が部屋におらぬし、夜になってからわらわが自分の洗濯物を取り込む」

勇者「そして君は、今朝方に下着がなくなっていることに気付いた……というわけか」

竜姫「わかったか勇者? お前には証人もおらねばアリバイもないのじゃ」

竜姫「わらわの寝ている隙に、あるいは外出を装った上で犯行に及ぶことは容易なのじゃ!」

竜姫「……なに、わらわは寛容じゃ。今なら土下座して謝れば許してやる」

僧侶「寛容な人は……出会い頭に飛び膝蹴りをしたりしないと……思います……」

竜姫「やかましい! ……で、まだ何か申し開きがあるというなら……」

勇者「竜姫。この一件は私に任せてもらいたい」

竜姫「ん?」
 
630 :お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/19(日) 15:45:46.45 ID:yAbJkxyo0
 
勇者「君の追及に対する私の答えはひとつ。『私はやっていない』だ」

勇者「しかし、それでは君は納得しないだろう。だから私が真犯人を探す」

僧侶「勇者さん……何もそこまで……」

勇者「私は必ず君の下着を盗んだ真犯人を突き止め、己の名誉を回復する」

勇者「だからこの件を私に委ねて欲しい。悪いようにはしないと約束しよう」

竜姫「……」

竜姫「……まあよい。なら、しばし時間をやろうではないか」

勇者「そうしてくれると助かる」

竜姫「じゃが、その真犯人とやらを見つけられぬ時はわかっておるじゃろうな?」

勇者「ああ。その時は、君の好きなようにすればいい」

僧侶「……勇者さん……」
 
631 :お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/19(日) 15:46:36.66 ID:yAbJkxyo0
 
――――――――――
三日後
城下町・住宅街
 
 
 
そのひ りゅうきとそうりょは ゆうしゃに よびだされ
じゅうたくがいのいっかくにある アパートのまえにきていた……

竜姫「……勇者の奴め。三日も姿を見せぬかと思えば、急にわらわを呼び出しおって」

僧侶「なに……してたんでしょうか……?」

竜姫「真犯人を探すなど口からでまかせ、どこぞへ逃げたのではないかと思っておったがな」

僧侶「勇者さんは……そんな人じゃありません……」

竜姫「ふん……それで、このアパートじゃな?」

僧侶「……はい。勇者さんが指定した場所……ここで間違いないです……」

竜姫「勇者のところに似ておるのう。向こうに負けず劣らずの安アパートじゃな」

僧侶「この辺りは……私や勇者さんみたいな……魔法研究所の職員もたくさん住んでるんです……」

僧侶「あとは学生とか……だから、一人暮らし向けのアパートが多いんです……」

竜姫「独り者の寄り合い所帯ということじゃな……まあよい。行くぞ」
 
コンコン

ガチャッ
 
632 :お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/19(日) 15:47:21.94 ID:yAbJkxyo0
 
呪術師「はい、どちら様……って僧侶さんに竜姫さんじゃないか」

僧侶「呪術師……さん……?」

竜姫「なんでお前がここにおるのじゃ」

呪術師「なんでって、そりゃあここが僕の部屋だからさ」

呪術師「それはそうと、君達とはロリコンの呪いの一件以来だね。今日はどうしたんだい?」

竜姫「勇者に呼ばれたのじゃ。あ奴め、準備ができたから来いとわらわ達を呼びつけおった」

呪術師「へぇ、勇者君が呼んだのか……うん、そういうことなら仕方ないね。彼なら奥にいるよ」

竜姫「うむ、入らせてもらうぞ」ズカズカ

僧侶「あ……ま、待って……」

バァン!

竜姫「勇者! このわらわを呼びつけたからには、真犯人の手がかりのひとつも……」

竜姫「……!?」

僧侶「ど……どうしたん……ですか……?」

りゅうきのしせんのさきには まどぎわにたつ ながいくろかみのじょせいがいた

ごごのひざしが かのじょの ととのったおもざしを うきたたせていた……
 
633 :お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/19(日) 15:48:02.26 ID:yAbJkxyo0
 
僧侶「えっと……あの……どちら様ですか……?」

竜姫「なんじゃ、呪術師の女か? お前なぞに用はない。勇者はどこにおるのじゃ?」

??「……呼びつけてしまってすまない。だが、ここを離れるわけにはいかなかった」

竜姫「なに?」

ふりむいたじょせいのかおに りゅうきは ふと きしかんをおぼえた……

竜姫「……まさかとは思うが、お前は」

呪術師「あ、勇者君。その後どうだい? 何か進展はあったかい?」

勇者♀「ああ。君の協力のおかげだ。ありがとう」

僧侶「え……? ゆ、勇者さん……!?」

勇者♀「立ち話もなんだ。適当な椅子にかけてくれ」

僧侶「な、なんで……? どう見ても……女の人……です……?」

竜姫「……まるで意味がわからぬぞ。キチンと説明せぬか」

勇者♀「そのために君達を呼んだんだ。これから順を追って説明する」

ゆうしゃは まどをとじて カーテンをしめた……
 
634 :お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/19(日) 15:49:05.07 ID:yAbJkxyo0
 
竜姫「……で? わらわに真犯人を突き止めると大見得を切っておいて、お前は何をしておる」

勇者♀「いい質問だ。私は犯人を捜索するにあたって、最初にこのような疑問を感じた」

勇者♀「それはつまり、『何故私の部屋から下着が盗まれたのか』だ」

僧侶「あの……それとその姿と、何の関係が……」

勇者♀「私は数年前からあの部屋で暮らしており、隣近所にも私が一人暮らしであることは周知」

勇者♀「にも関わらず、私の部屋に居候している竜姫の下着が、誰にもわからぬうちに盗まれた」

勇者♀「つまり、犯人は我々の普段の生活をよく観察し、その上で犯行に及んだということだ」

呪術師「君に同居人ができたって噂が立って、それでターゲットになったのかもね」

勇者♀「竜姫は、隣人達の評価では美人と評されていた。無理からぬことではある」

竜姫「……それで?」

勇者♀「私はあの後、独自のルートでここ最近の城下町の盗難事件について調査を行った」

勇者♀「その結果、この半月の間に、下着や衣類を盗まれる被害が急増していることがわかった」

勇者♀「そして捜査線上に浮かび上がってきたのがこの男だ」

ゆうしゃは すうまいのしりょうと いちまいのにがおえを とりだした
 
635 :お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/19(日) 15:50:05.42 ID:yAbJkxyo0
 
勇者♀「この男は、半年前に城下町を騒がせた下着泥棒だ」

僧侶「……聞いたこと……あります……」

僧侶「でも……犯人は騎士団に捕まって……投獄されたって……」

勇者♀「だが調査を進めるうち、彼がつい最近になって脱獄したという事実が判明した」

呪術師「僕もその調査に付き合ったんだけど、騎士団が情報を隠蔽してたんだよね」

呪術師「事もあろうに下着泥棒風情に脱獄を許したなんて、恥ずかしくて公表できないからねぇ」

勇者♀「今が戦時下であるということも手伝ったのだろう。騎士団も慢性的な人手不足だ」

呪術師「たかだか下着泥棒程度、黙殺しても仕方ないっていう判断なのかな」

勇者♀「とにかく、彼が脱獄した時期と、下着泥棒の被害件数が増加した時期は一致する」

勇者♀「即ち、真犯人の疑いが濃厚なのはこの男であるということだ」

呪術師「下着泥棒には常習性があるらしいからね。まあ妥当な線でしょ」

竜姫「……ふむ。それはわかった。よくぞ調査したものじゃな」

僧侶「さすが……勇者さんです……」

竜姫「それで? 何故お前は女の姿をしておるのじゃ?」

竜姫「身長はあまり変わっておらぬが、体つきが完全に女のそれじゃ。変身呪文かえ?」
 
636 :お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/19(日) 15:51:03.60 ID:yAbJkxyo0
 
勇者♀「その通り、これは変身呪文による擬態だ。呪術師に協力を頼んだのはこのためでもあった」

勇者♀「一人暮らしの男性に女性の同居人ができるという、私達と同じ状況を再現することにより」

勇者♀「下着泥棒の注意を引き、犯行に及んだところを検挙する。言うなれば囮捜査だ」

僧侶「そのために……女の人に、変身して……?」

勇者♀「私に女性の知り合いはそう多くないし、君に囮を頼むわけにもいかなかったからな」

僧侶「……勇者さん……紳士……です……」///

竜姫「何を顔を赤くしておる。この手の男は誰にでもそう言うものじゃぞ」

僧侶「そ……そんなこと……」

勇者♀「とにかく、下着泥棒が脱獄した時期と竜姫の下着が盗まれた日から逆算し」

勇者♀「調査の結果得られた諸々の要素を加味して真犯人の行動予測を行った結果……」

勇者♀「真犯人が私の観察を終えて行動に移るとすれば今日か明日の夜だろうという予測が立った」

呪術師「関係各所に彼女ができたって言い触らしておいたから、情報の拡散もバッチリさ」

呪術師「加えて、その下着泥棒は一度盗んだ女性からは繰り返し盗まないらしいからね」

僧侶「ということは……勇者さんがターゲットになる可能性が……高いんですね……?」

勇者♀「この一両日がヤマだ。必ず下着を盗んだ真犯人を捕え、私の身の潔白を証明しよう」

竜姫「……その姿でなければ、もう少し格好がついたろうにのう」
 
637 :お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/19(日) 15:51:48.52 ID:yAbJkxyo0
 
――――――――――
その夜
城下町・住宅街
 
 
 
よるのとばりがおり まちがしずまりかえったとき
やねからやねを かろやかにとびうつる ひとつのかげがあった……

そのかげは おともなく じゅじゅつしのへやのベランダにおりたち 
ほしてあるしたぎに てをのばした……

しかし そのとき ベランダはまばゆいひかりにつつまれた!

??「ッ!?」

勇者♀「そこまでだ」

ベランダのしゅういを まばゆいひかりをはなつ アーティファクトがとりかこんでいる!

はんにんがみあげると アパートのやねのうえに ゆうしゃたちが ならびたっていた!

勇者♀「連続女性用下着盗難事件の犯人だな」

犯人「なっ……バカな、何故俺の行動が……」

勇者♀「確認した」

ゆうしゃは ゆびでコインをはじき じゅもんをとなえた!

勇者♀「――捕えよ」
 
638 :お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/19(日) 15:52:26.88 ID:yAbJkxyo0
 
しゅういをとびかうアーティファクトが ねつとひかりをほうしゃしながら
はんにんにむかって とっしんしていく!

犯人「チィッ……!」

はんにんは ベランダからむかいのアパートへととびうつった!

ベランダにアーティファクトがげきとつし ふんさいされる!

呪術師「あ、ちょっと困るよ勇者君。僕が大家さんに怒られちゃうじゃないか」

勇者♀「すまない。修繕費は私が負担しよう」

僧侶「それよりも……犯人を……」

竜姫「そうじゃ! あ奴め、わらわ達を前にしてちゃっかりと下着を盗って行きおった」

勇者♀「流石だな。かつて城下町を騒がせ、騎士団を翻弄しただけのことはある」

竜姫「追うぞ。僧侶に呪術師、お前達は下から追ってくるがよい」

呪術師「了解。僕達は飛翔呪文を使えないしね」

僧侶「……気をつけて……ください……」

勇者♀「問題ない。行こう、竜姫」

ゆうしゃとりゅうきは じゅもんをとなえた!

ふたりのからだがはねのようにかるくなり はんにんをおって やねからやねへとびうつっていく!
 
639 :お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/19(日) 15:53:18.77 ID:yAbJkxyo0
 
シュタッ

タッタッタッ……

勇者♀「……やはりスカートは走りづらい。ズボンを履いてくるべきだったか」

竜姫「なにをゴチャゴチャ言うておる。今は犯人を捕らえるのが先決じゃ!」

勇者♀「その点は大丈夫だ。しっかり捕捉している」

竜姫「ならばよし……さて、少し可愛がってやるとするかの」

りゅうきは じゅもんをとなえた!
まりょくが でんきエネルギーにへんかんされ かみなりのやりとなってはっしゃされる!

かみなりのやりが やどやのやねのうえにさくれつし ばくはつをおこした!

勇者♀「竜姫、やりすぎだ。犯人を殺してしまったら君の方が罪に問われる」

竜姫「案ずるな。加減はしてある……」

竜姫「……ん?」

もうもうとたちのぼるけむりがはれると そこには
まったくのむきずのまま そのばにたっている はんにんのすがたがあった……

はんにんは りゅうきのブラジャーを そうびしていた!

犯人「ふぅ……このブラがなければ即死だった」

竜姫「今すぐ死ねェ――ッ!!」

りゅうきは ふたたび かみなりのやりをとうじた!
 
640 :お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/19(日) 15:53:52.60 ID:yAbJkxyo0
 
犯人「だが甘いッ!」

はんにんは じゅもんをとなえた!
まりょくのかべが はんにんのまえにそびえたち かみなりのやりをふせぐ!

勇者♀「魔力障壁……竜姫の攻撃魔法を防ぐのか」

竜姫「こ、この変態めが……どこまでもわらわを愚弄するかっ」

犯人「フハハハ! 馴染むッ! 実によく馴染むぞッ!」

犯人「金髪ツインテで巨乳ッ! そしてお嬢様ッ! そんな女子の下着は特になッ!」

竜姫「」プチッ

りゅうきは じゅもんをとなえた

りゅうきのりょううでに きらめくまりょくのうずが しゅうそくしていく!

勇者♀「待つんだ。その出力の殲滅魔法を放てばこの区画は一握りの灰と化す」

竜姫「構わぬ」

勇者♀「私達もただでは済まない。それに犯人ごと君の下着も消滅するが」

竜姫「変態の装着した下着などもういらぬわ! あ奴ごと全てを焼き尽くすまで!」

犯人「おっと、それは我々の業界でも死の宣告だ。やめておいた方がいい」

竜姫「……く……ふふ……初めてじゃ、このわらわをここまでコケにした大うつけは……」

竜姫「絶対に許さぬぞ、虫ケラが! 二度と生き返れぬよう塵も残さず消し去ってくれる!」
  
641 :お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/19(日) 15:55:02.28 ID:yAbJkxyo0
 
まりょくがかいほうされるすんぜんに 
ゆうしゃは コインをゆびではじき じゅもんをとなえた!

勇者♀「――眠れ」

竜姫「――っ」

りゅうきは とつぜん きょうれつなねむけにおそわれた!
こうちくしたじゅつしきが むさんし じゅもんがむりょくかされる!

ゆうしゃは たおれそうになったりゅうきをだきとめ そのばにねかせた……

犯人「催眠呪文とカウンタースペルを同時に行うとは、只者ではないな」

勇者♀「君こそ、竜姫の攻撃魔法を防ぎきるとは、下着泥棒にしておくには惜しい」

犯人「昔、魔法をかじったことがあってな。役に立っているよ」

勇者♀「……とはいえ、野放しにするわけにいかなくなったのも事実だ」

犯人「俺をどうしようというんだ、お嬢さん?」

勇者♀「大人しく投降するならばよし、もし抵抗するというなら力ずくで拘束する」

犯人「美女に拘束されるのも悪い話ではないが、生憎、俺は縛る方が好みでね……」ゴソゴソ

はんにんは ふところから りゅうきのパンツをとりだした!
 
642 :お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/19(日) 15:55:43.63 ID:yAbJkxyo0
 
犯人「セタップ!」ガバッ

はんにんは まよいなく それをあたまにかぶると
またたくまに ぜんしんに まりょくをみなぎらせる!

勇者♀「……竜姫に意識があったなら、彼女は怒りのあまり憤死していたかもしれないな」

勇者♀「しかし、この異様な魔力……彼の内包する欲望とエゴの強さゆえか……?」

犯人「気が高まる……溢れる……!」

犯人「さあお嬢さん、俺が逃げるのを止められるかな……?」

勇者♀「是非もない」

ゆうしゃは コインをすうまいとりだし ばらまいた!
ちらばったコインから ほのおがあふれだし じょうかまちのよぞらをあかくそめる!

はんにんは まりょくのかべをつくり おそいかかるほのおを はじきとばした!

犯人「無駄無駄ッ! 俺の魔法は内から溢れ出るリビドーを魔力に変換している」

犯人「自らの内から発する無尽蔵の力だ……なまじの魔法では俺は倒せん!」

勇者♀「ならば……ッ」

ゆうしゃは ナイフをぬき いっきにきょりをつめ きりかかった!
 
643 :お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/19(日) 15:56:22.34 ID:yAbJkxyo0
 
勇者♀(私の仮説が正しければ……!)

ザシュッ!

ゆうしゃのナイフが はんにんがそうびしている りゅうきのブラジャーを きりさいた!

犯人「クッ……せっかくの美少女のブラジャーをッ!」

はんにんは ゆうしゃからきょりをとり そうびしていたブラジャーをはずした!
そして ふところから あらたなブラジャーを とりだした!

犯人「しかし俺にはまだこれがある! ゲットしたばかりのブラが……即ちあんたのブラがな!」

犯人「あんたの魔法は俺には通用しない……つまり離れた距離からならあんたは俺に勝てない」

犯人「あとはもう逃げ切るだけだ。あんたから逃走するだけで……勝った……この俺の……」

はんにんは ゆうしゃ♀のブラジャーを そうびした!

ゆうしゃは くちもとをゆがめ しのびわらいをもらした……

勇者♀「……いいや。私の勝ちだ」

ゆうしゃは じゅもんをとなえた!
ゆうしゃにかかっている へんしんじゅもんがかいじょされ ゆうしゃのすがたがかわっていく!

ゆうしゃは ほんらいのすがたにもどった!

勇者「そう。君ではなく……」
  
644 :お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/19(日) 15:57:00.36 ID:yAbJkxyo0
 
犯人「な……そ、その姿は! まさかッ!」

勇者「その通り。君は気づかなかったようだが、あの姿は仮初めのものでしかない」

勇者「そしてこの決定的な一言が、勝負を決する。君にとっての致命の言葉が」

犯人「や……やめろッ!」

ゆうしゃは しずかに はんにんにつげた……

勇者「――『私は男だ』」

ゆうしゃのことばに はんにんは どうようをかくしきれない!
はんにんのまりょくが みるみるうちにゆらぎ ちいさくなっていく!

犯人「そんなバカなッ! こ、この俺が……男の着けていたブラを……」

犯人「……グハァッ!?」

ドサッ

はんにんは くちからちをはき たおれてうごかなくなった!

ゆうしゃは はんにんをみおろしながら しずかにつぶやいた……

勇者「君の敗因はたったひとつだ、犯人。たったひとつのシンプルな答え」

勇者「……『君は私を怒らせた』」
 
 
 
犯人――再起不能(リタイヤ)
 
645 :お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/19(日) 15:57:46.89 ID:yAbJkxyo0
 
――――――――――
翌日
城下町・勇者の部屋
 
 
 
勇者「というわけで、犯人は騎士団に引き渡した。これで事件は解決だ」

竜姫「……うむ。わらわの手で引導を渡せなかったのが心残りではあるがの」

呪術師「今朝からそればっかりだね、竜姫さん」

竜姫「当たり前じゃ! 勇者が止めねば、あそこで奴を仕留めておったものを」

勇者「あそこで街を焼いていたら、君にも大きな不利益が生じたと思うのだが」

僧侶「でも……これで、勇者さんの身の潔白は……証明されましたね……」

勇者「ああ。下着泥棒疑惑がかかったままでは、勇者としての行動に支障が出るからな」

呪術師「まあ、僕は信じていたよ? 君は真面目でいい奴だからね」

勇者「ありがとう」

呪術師「だからアパートのベランダの修繕費、早めに払ってね?」

勇者「わかっている。今回は色々と世話になってしまったな」

呪術師「ま、いいさ。なんだかんだで結構面白かったからね……じゃあ、僕はこれで」

じゅじゅつしは ゆうしゃのへやから でていった……
 
646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/06/19(日) 15:58:05.17 ID:wVX+BX1AO
あれ?俺がいる
647 :お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/19(日) 15:58:54.70 ID:yAbJkxyo0
 
竜姫「……」

竜姫「……おい、勇者」

勇者「? なんだ、竜姫」

竜姫「……まあ、その……アレじゃ。お前のことを疑って悪かった」

竜姫「なんというか……すまなかった。謝る」

勇者「……」

僧侶「……竜姫さん……」

竜姫「な……なんじゃその顔は! せっかくわらわが非を認め謝っておるというのに!」

竜姫「お、お前もじゃ勇者! 聞いておるなら何か言わぬか!」

勇者「いや……君の口から謝罪の言葉が出てきたので、正直面食らった」

僧侶「絶対……うやむやにして終わるって……思ってました……」

勇者「しかし、竜姫も私が思っているよりも大人だったということか」

僧侶「正直……すっごく意外でした……」

勇者「君を見くびっていたようだ。どうやら謝るのは私の方……」

竜姫「〜〜っ!」
 
 
 
ドゴォッ!

りゅうきの とびひざげりが ゆうしゃのあごをうちすえた!
ゆうしゃに 23のダメージ!
 
648 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/06/19(日) 16:00:31.64 ID:yAbJkxyo0
賢者のパンツをセタップしたいです。すいません、冗談です。でも嘘ではないです。

あと身長187センチの美女とか逆にビビってしまうレベルだと思います。
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/19(日) 16:03:19.61 ID:lbx0KRB4o


何気に犯人が強すぎる
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/06/19(日) 16:05:59.54 ID:D/3XmenAO
>>648

乙です。

セタップで吹いたw
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) :2011/06/19(日) 19:32:21.39 ID:3RytFH2AO
なんじゃこりゃwwwwww
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/06/19(日) 19:34:09.90 ID:3RytFH2AO
さげ忘れスマン

そして乙
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/06/19(日) 19:37:15.28 ID:iAldKE4co
いつも乙
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/19(日) 19:55:36.13 ID:alhic9EDO
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/06/19(日) 21:57:36.63 ID:ovbBcdplo
僧侶の下着はいただいておきますね。とりあえず乙!面白かった
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/06/19(日) 22:56:42.89 ID:2/hFf7hAO
犯人……お前もまた強敵(とも)だった

それはそうと俺は盗賊のパンツをセタップしたいぜ
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/06/19(日) 22:57:36.47 ID:2/hFf7hAO
犯人……お前もまた強敵(とも)だった

それはそうと俺は盗賊のパンツをセタップしたいぜ
658 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/06/19(日) 23:02:01.16 ID:2/hFf7hAO
連投してしまったスマン
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2011/06/19(日) 23:31:23.72 ID:9c2Jx+8Ro
ゴールデンティスティクルだと?
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/06/20(月) 11:34:41.97 ID:/Rhzs3ZAO
確かに身長187センチの女性を前にしたらビビってしまうかもしれないな
それが美人なら尚更
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/06/20(月) 15:23:07.92 ID:Nmqd+EqSo
乙した
竜姫と僧侶がすごくかわいかった

犯人まじで許せねぇ竜姫のパンツでくそー
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/20(月) 20:30:29.32 ID:8SHskilDO

きっと犯人は勇者と同じベクトルの魔法使いだなw媒体が女性の下着か通貨ね差だけっぽいしwww

あと勇者!竜姫の下着洗う役目交代してくれ!!
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/06/20(月) 21:22:55.54 ID:tMJxB7Nl0
竜姫の下着をクンカクンカしたりセタップしたりしたのがバレたら命はないな

あの勇者だからこそ、竜姫も無遠慮かつ無警戒に洗濯を任せてるんだろうなぁ
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/20(月) 22:34:17.46 ID:26qoWXgIO
セタップ!キリッ

665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/20(月) 23:02:08.88 ID:MTkDwfKpo
セッタープッ!!!\(^o^)/
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/06/29(水) 13:16:08.00 ID:rT/wfdaIO

セタップ\(^o^)/
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/06/29(水) 13:16:08.18 ID:rT/wfdaIO

セタップ\(^o^)/
668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/06/29(水) 13:34:33.23 ID:ivierC/AO
セタップ/^o^\
669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/06/29(水) 18:29:06.49 ID:Bn0mbXQxo
横島を思い出した
670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage ]:2011/07/04(月) 11:34:32.19 ID:o6G9FF7S0
乙です。
671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/07/09(土) 14:51:08.97 ID:tYYLkZmAO
追い付いた
672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/15(金) 16:43:36.86 ID:+NwG1qsDO
お題も楽しいが本編進めてください
待ち遠しすぎる
673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2011/07/28(木) 18:28:19.71 ID:zR6MbPRao
はよ
674 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/07/29(金) 20:14:47.71 ID:nuQeG0MM0
 
――――――――――
同日
火竜山脈・竜王軍拠点 
 
 
りゅうおうは こだいまほうにかんするしょもつを よみあさっている……

竜王「……なるほどな。古代魔法なんて言っても、現代の魔法と根本的な部分は変わらねぇ」

竜王「要するに魔法を行使するには代償が要る。攻撃、回復、補助、召喚、それら全てにだ」

竜王「多くの場合、術者の精神エネルギーだが……こいつはちっとばかり事情が違う」

竜王「最ッ高だぜ……イカレてやがる。一部のエルフにのみ口伝で伝わってるのも納得だ」

竜王「……ん?」

ザッザッザッ……

竜人A「竜王様、ちょいとお話が」

竜王「……なんだ、テメェか。どうした」

竜人A「ええ、あのエルフの長老なんですがね。てんでダメですよ」

竜王「まだ口を割りやがらねぇのか」

竜人A「それどころか、飯も食わなきゃ水も飲もうとしません。頑固な野郎ですよ」

竜王「敵から施しを受けたくねぇんだろうよ。これだからエルフってのは頭が固くていけねぇな」

竜人A「見上げた根性ですよ。だいぶ痛めつけてやったってのにピンピンしてます」
 
675 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/07/29(金) 20:15:57.15 ID:nuQeG0MM0
  
竜人A「古代魔法の秘儀……天地魔界を統べる力の秘密ってのは、野郎しか知らねぇんでしょう?」

竜王「そうらしいな。だからあの混乱に乗じて長老を掻っ攫ってきたんだろうが」

竜人A「しかし、そんなとんでもねぇ魔法ってのはどんなモンなんでしょうね?」

竜人A「俺達にゃ想像もつかねぇ話ですが、その辺り竜王様はどうお考えで?」

竜王「お前が気にすることじゃあねぇ。それより、周辺地域の警戒を怠るんじゃねぇぞ」

竜人A「エルフ達が長老を助けに来るってことですか?」

竜王「それだけじゃねぇ。人間どもがエルフと結託したという情報も入ってんだ」

竜王「魔王の動きも掴めてねぇ。あのガキはどう動くか……」

竜人A「……お嬢も、ですか?」

竜王「それこそお前が気にすることじゃねぇな」

竜人A「失礼しやした」

竜王「わかってんならいい。とっとと仕事に戻れ」

竜人A「へい」

ザッザッザッ……

竜王「……」

竜王(クソ人間どもに田舎者のエルフ、出来損ないのガキが率いる魔王軍……)

竜王(いいねぇ、いいじゃねぇか。面白くなってきやがった)

竜王(さぁて、これからどうなっていくのか見物だぜ……)
 
676 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/07/29(金) 20:16:54.24 ID:nuQeG0MM0
 
――――――――――
同時刻
獣王領
 
 
魔王「なんだよ……久々の再会にしちゃあ、刺激的すぎるぜ……」

魔王「だろ……? 獣姫ちゃん……」

まおうをみおろす じゅうじんのしょうじょは くちもとにきょうぼうなえみをうかべ
まおうのせなかを ブーツのかかとでふみにじる!

魔王「〜〜ッ!!」

獣姫「ごめんなさいね。でも、あたしはこういうのが好みなの」グリグリ

魔王「エ……SMプレイの趣味は……ないんだけどなぁ……」

獣姫「あなたの意見は聞いてない」

ガッ!

じゅうきは まおうをけりとばした!

魔王「ぐぅっ……!」

猫忍者「ま、魔王様! 大丈夫かにゃあ!?」

獣姫「あら、猫じゃない。今日は懐かしい顔によく会うわね」

獣姫「よく魔王様と一緒になってフカフカしてあげたっけ。あなた、柔らかくて気持ちいいのよね」

猫忍者「ほ、本当に……本当に獣姫様なのにゃあ!? 魔王様にこんな……」
 
677 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/07/29(金) 20:17:29.11 ID:nuQeG0MM0
 
犀銃士「そうだ。獣王様の長女にして、獣王子様の妹君」

猿闘士「獣の王たる一族の正統なる血統に連なるお方だ」

象剣士「しかし、獣姫様がお出でにならずとも……」

獣姫「うるさいわよ、三獣士。アンタ達がスットロいのが悪いんだからね」

犀銃士「……申し訳ありません」

獣姫「ま、結果オーライよ。本来なら魔王城に刺客を送り込むつもりだったけど」

獣姫「結果的に魔王様はここに転がってるんだし……よしとしましょうか」クイッ

まおうは またたくまに さんじゅうしにとりおさえられた!

獣姫「犀と猿はそのまま魔王様を押さえといて。象は……」

猫忍者「ち、ちょっと待って欲しいのにゃあ! 魔王様をどうする気なのにゃあ!?」

獣姫「殺すけど?」

猫忍者「にゃ……!?」

獣姫「三獣士だって、御命頂戴って言ってたじゃない。聞いてなかった?」

猫忍者「それは……獣姫様の御意志だとは思わにゃくて……」

獣姫「ならこれでスッキリしたでしょ? これはあたしの意思、ひいては獣王軍の総意よ」

猫忍者「そんにゃ……」
 
678 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/07/29(金) 20:19:44.79 ID:nuQeG0MM0
 
猫忍者「だ、だとしても、魔王様をやらせはしないにゃあ! いくら獣姫様とはいえ……」

獣姫「象。うるさいから押さえといて」

象剣士「了解しました」ガシッ

猫忍者「にゃにゃっ!? は、離すにゃあ!」

獣姫「それから魔王様? 機械王を使って逃げようなんて考えない方がいいと思うわ」

獣姫「機械王があたし達を蹴散らすのと象が猫の首をへし折るの、どっちが速いかしらね」

魔王「……!」

獣姫「あんまり手間かけさせないでくれる? そうそう、大人しくしていてくれればそれでいいの」

猫忍者「ま、魔王様……俺様には構わにゃいで逃げるにゃあ!」

魔王「ダメだ、猫。お前を見捨てられるかって」

猫忍者「魔王様……!」

魔王「……獣姫ちゃん。何でこんなことをするんだ」

獣姫「当ててみる? 魔王様に当てられるかしら」

魔王「オレが憎いから?」

獣姫「はずれ」

魔王「オレを人質にして身代金を要求とか」

獣姫「それも考えてはいたけど、でもそれが全てじゃないわね」
 
679 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/07/29(金) 20:21:04.75 ID:nuQeG0MM0
 
魔王「金じゃないならモノかい? 魔王城に何かすごいものが眠ってて、それを奪おうとしてる」

獣姫「半分当たり。でも、魔王城にはあたしが求めるものはない」

魔王「……竜王にオレを殺すようそそのかされた」

獣姫「……」

魔王「当たりなのか?」

獣姫「そそのかされたっていうのは違うけどね。まあ概ね当たり」

獣姫「なんてことはないわ。向こうがいい話を持ち込んで、あたしが竜王側につこうって決めただけ」

魔王「どうして? 獣王子を殺したのはあのオッサンなんだぞ!?」

獣姫「竜王が古代魔法を持ってるからよ」

魔王「え……!?」

まおうののうりに りゅうおうのはなった すさまじいいりょくのまほうが よみがえった……

獣姫「生き残りから報告を受けて、あたしも独自に調べたのよ。古代魔法に関してね」

獣姫「現存する資料も殆んどない。伝説や言い伝えが残っているばかりだったけど」

獣姫「神話の時代の原初の魔法。伝え聞くところによると、それには黄泉帰りの呪文があるの」

魔王「黄泉帰り……?」

獣姫「今ある蘇生呪文は、死後一定以上の時間が経ってしまうと肉体に魂を呼び戻せない」

獣姫「肉体の損傷が激しくても成功率は大きく落ちるし、未完成の部分も多いけど」

獣姫「古代魔法にある黄泉帰りの呪文はそうじゃない。死者を完全に蘇らせることができるの」
 
680 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/07/29(金) 20:22:34.42 ID:nuQeG0MM0
 
魔王「金じゃないならモノかい? 魔王城に何かすごいものが眠ってて、それを奪おうとしてる」

獣姫「半分当たり。でも、魔王城にはあたしが求めるものはない」

魔王「……竜王にオレを殺すようそそのかされた」

獣姫「……」

魔王「当たりなのか?」

獣姫「そそのかされたっていうのは違うけどね。まあ概ね当たり」

獣姫「なんてことはないわ。向こうがいい話を持ち込んで、あたしが竜王側につこうって決めただけ」

魔王「どうして? 獣王子を殺したのはあのオッサンなんだぞ!?」

獣姫「竜王が古代魔法を持ってるからよ」

魔王「え……!?」

まおうののうりに りゅうおうのはなった すさまじいいりょくのまほうが よみがえった……

獣姫「生き残りから報告を受けて、あたしも独自に調べたのよ。古代魔法に関してね」

獣姫「現存する資料も殆んどない。伝説や言い伝えが残っているばかりだったけど」

獣姫「神話の時代の原初の魔法。伝え聞くところによると、それには黄泉帰りの呪文があるの」

魔王「黄泉帰り……?」

獣姫「今ある蘇生呪文は、死後一定以上の時間が経ってしまうと肉体に魂を呼び戻せない」

獣姫「肉体の損傷が激しくても成功率は大きく落ちるし、未完成の部分も多いけど」

獣姫「古代魔法にある黄泉帰りの呪文はそうじゃない。死者を完全に蘇らせることができるの」
 
681 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/07/29(金) 20:23:38.14 ID:nuQeG0MM0
 
魔王「……そいつぁすごいや。竜王も欲しがるわけだ」

獣姫「あたしもそれが欲しい。だから竜王からそれを奪おうってことよ」

魔王「表面上だけあのオッサンに尻尾を振って、チャンスを待つってのか」

獣姫「報告によれば、竜王はエルフの里に伝わる古代魔法の書物を奪っていった」

獣姫「何しろ数万年前のモノよ。100%解読できたとも思えない」

獣姫「チャンスは必ず巡ってくる。古代魔法さえ手に入れば……」

魔王「オレの命は竜王へ近づくための手土産ってわけ?」

獣姫「そうよ。魔王様の命で竜王の信用を買って、奴に近づく。そして古代魔法を奪う」

獣姫「どの勢力の側についたところで勝算は五分五分。なら、あたしは自分の目的のために動くわ」

魔王「……やめようぜ。やめてくれよ、こういうの」

魔王「相手がオレだからよかったものの、もし親父や兄貴達だったら笑って済ましちゃくれないぜ?」

魔王「だからやめよう。今すぐ、こんなこと……」

バシィッ!

じゅうきは まおうのほおに ひらてをくらわせた!

獣姫「今更やめると思う?」

魔王「……オレは獣王子を連れてきたんだ。あいつ、家に帰りたがってるに違いないから」

獣姫「黙りなさい」

バシィッ!

じゅうきは ふたたび まおうを ひらてうちした!
 
682 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/07/29(金) 20:25:22.63 ID:nuQeG0MM0
 
魔王「久しぶりに獣姫ちゃんにも会えて嬉しかったぜ。ちょっと手荒な歓迎だけど」

獣姫「命乞いのつもり?」

じゅうきは まおうのかおをつかんで めとめをあわせた

まおうは くちびるのはしから ちをながしながら つづけた……

魔王「地上で素敵なガールフレンドも見つけた。獣姫ちゃんもきっと仲良くなれる」

獣姫「だから?」

魔王「今ならまだ間に合うんだよ。オレは君を許したい。これ以上友達をなくしたくない」

獣姫「……」

魔王「……頼む。オレ、魔王だから……獣王軍が表立って反抗するなら潰すしかなくなる」

獣姫「ご忠告痛み入るわ。まさか魔王様がそんなこと言うなんて」

魔王「立場ってやつだよ。わかるだろ? 仮にも獣王や獣王子の後を継いだのなら」

獣姫「まだ状況がわかってないみたいね。それがあたしの『立場』なの」

魔王「……君の口からそんな言葉は聞きたくなかった」

獣姫「残念がるならご勝手に。あたしを哀れむならどうぞご自由に。パパと兄さんによろしくね」

じゅうきは するどいつめをきらめかせ みぎてをふりあげた! 

魔王「……ッ!」
 
683 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/07/29(金) 20:26:41.36 ID:nuQeG0MM0
 
そのとき だいちがゆれ じめんをくだきながら なにかがとびだした!

じめんのなかから ドリルモグラA・Bが あらわれた!

獣姫「なっ!? ……まさか!」

犀銃士「こいつら……!」

猿闘士「機械王の手の者か!」

ドリルモグラは サイじゅうしとサルとうしに たいあたりした!
じゅうきは すかさずそのばからとびのき まおうは こうそくからかいほうされた! 

魔王「機械王が体内に手下を飼ってるのは知っての通りだけど、こういう奴らもいたのさ」

獣姫「チィッ……象!」

魔王「遅いぜ、獣姫ちゃん」

まおうは じゅもんをとなえた!

ゾウけんしが ねこにんじゃのくびをへしおろうと うでにちからをこめたが
ねこにんじゃのからだは こうてつとかし あらゆるこうげきをうけつけない!

象剣士「鋼鉄変化……! 魔王様がこんな呪文を使えようとは」

魔王「その通り。これで猫にはお前らの攻撃は効かない」

魔王「呪文が効いてるうちは指一本動かせないし口も聞けないけど、命と引き換えにはできないしね」

ドリルモグラA・Bは まおうのさゆうにじんどっている
ドリルモグラAは まおうに こうてつのスコップをてわたした!

魔王「……あんまりカッコよくないなぁ。ま、贅沢は言ってられないか」

まおうは こうてつのスコップを そうびした!
 
684 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/07/29(金) 20:27:32.02 ID:nuQeG0MM0
 
獣姫「……流石ね。昼行燈を装ってても、やっぱり魔王の血筋ってこと」

魔王「驚いてくれるのは嬉しいけど買い被りすぎさ。オレは見たまんまのチャランポランだよ」

魔王「友達一人助けることもできない、つまんない男さ」

獣姫「……三獣士。ここはアンタ達に任せるわ。魔王様を始末しなさい」

犀銃士「御意」

魔王「おっと、どこ行くんだよ獣姫ちゃん。野暮な奴らはうっちゃって、二人でデートしようぜ」

獣姫「そう? じゃあ尚更帰らなきゃ。魔王様とのデートにピッタリの服を選ばなきゃね」

じゅうきが ゆびをならすと そらからガルーダがおりたった!
ガルーダのあしが じゅうきのかたをつかみ ガルーダはおおきくはばたいた!

魔王「……そりゃ楽しみだな。オレ、オシャレした獣姫ちゃんはすごく可愛いと思うぜ」

獣姫「誰にでもそう言うくせに」

魔王「オレはデートコースを考えとくよ。決まったら迎えに行くから、待ってて欲しいな」

獣姫「遅刻はNGよ? くれぐれもあたしの気が変わらないうちにね」

ガルーダはじゅうきとともに そらたかくまいあがり すぐにみえなくなった……

魔王「……さて」

魔王「悪いけど、デートの待ち合わせ時間は厳守しろってのがウチの家訓なんだ」

まおうは こうてつのスコップをかまえ じゅもんをとなえた!
まおうのこうげきりょくが 2ばいになった!

魔王「オレの代からね」
 
685 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/07/29(金) 20:29:04.74 ID:nuQeG0MM0
男所帯のサークルで「彼女募集中」と言うのも寒いので、
「彼氏も併せて募集中」と言ったらノンケはお断りと解釈されました。
違うよ俺はゲイじゃないよ! 女も好きだよ!
686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/07/29(金) 20:37:48.43 ID:ftxbUIl7o
ちょっとこっち来ないでください
687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2011/07/29(金) 20:41:49.45 ID:VLfPoFOxo
俺の穴貸すよ
688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2011/07/29(金) 20:42:18.31 ID:VLfPoFOxo
俺の穴貸すよ
689 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/29(金) 20:43:06.06 ID:cYxpN/Edo
なんと奇遇な!
690 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/07/29(金) 20:45:36.35 ID:r9sGQMfPo
くす。魔王が勇者を狙うのも時間の問題?
それはともかく乙!魔王もやっぱり魔王を名乗るだけあって決めるときは決めるね!
691 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/07/29(金) 22:22:22.35 ID:zst/DKZRo
ホモ以外は(ry
692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/29(金) 23:54:08.73 ID:e5CI75/SO
追い付いた乙!
学者な勇者って面白いなあ!
なんだかんだいってキメる魔王もなかなか
693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/30(土) 01:52:17.95 ID:5W407Bi9o
乙っす。

(´・ω・`)つ□⇦人肌な温かさのこんにゃく
694 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/07/30(土) 13:42:49.52 ID:N5epV34AO
女「も」……?

それはともかく乙
猫忍者と獣姫でケモナー需要もバッチリですね
695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/31(日) 01:23:38.27 ID:LL+4qJuIO
勇者の出番はまだか!
696 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/31(日) 03:27:27.04 ID:LHfdQ+hAO
今魔王が絶賛イケメン化中だから
勇者や僧侶や竜姫の出番がないのも仕方ない
697 :久々の初期パーティ3人 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/07/31(日) 20:09:47.58 ID:dkk2zqFW0
 
――――――――――
とある昼下がり
 
 
盗賊「そういえば、前から聞こうと思ってたんだけどさ」

勇者「?」

盗賊「アンタ達、あたしが仲間になる前は怪しい商売で稼いでたんだって?」

賢者「……あんまりあの時のことは思い出したくないです」

盗賊「前に聞いた限りじゃ、薬草に魔法石にマジックアイテム、占いの道具とか」

盗賊「全部王宮の認可が必要な品だよ。専門業者との利権とか、癒着もある」

勇者「武器・防具関連の業者と王国軍、それに各種研究機関の関係も取り沙汰されているな」

賢者「勇者さんは王立魔法研究所にいたんでしょう? その辺は知らないんですか」

勇者「私も所詮、一介の研究員にすぎない。そこで得られる情報などごく限られている」

盗賊「……しかし、アンタも大した悪党だよ。思いついても実行するかね普通」

勇者「騎士団の手入れをかわすのには苦労させられたよ。流石は王国が誇るエリート達だ」

賢者「そりゃあそうですよ。将来のボクの就職先ですから」

盗賊「あたしが捕まった時も大した手際だったよ。まさかアジトを突き止められちまうなんてね」

勇者「賄賂を受け取らない役人は優秀だ。それは歴史が証明している」

賢者「ということは、賄賂を贈ろうとしたんですね……」
 
698 :久々の初期パーティ3人 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/07/31(日) 20:11:29.08 ID:dkk2zqFW0
 
盗賊「まあそれはいいさ。今はアンタのおかげで自由の身だしね」

賢者「……一応聞いておきたいんですけど、勇者さんのところから逃げ出そうと思ったことは?」

盗賊「今のところはないよ。勇者がいなきゃ、少なくとも向こう3年は檻の中だったし」

勇者「恩に着る必要はない。私には君が必要だった。だからスカウトした。それだけのことだ」

盗賊「アンタにとってはそうでも、あたしにとっては違うのさ」

勇者「確かにそうだが、私は、君の自由意思を必要以上に束縛するつもりはない」

盗賊「やめたくなったらいつでもやめろって? そういうアンタだからついていく気になったんだよ」

盗賊「なんなら一生ついてってあげるよ。あたしら、いいパートナーになれそうじゃないか」

賢者「と、盗賊さん!? な、な、な、何を血迷ったことを……」

勇者「そうだ、盗賊。魔王討伐を成したら私についてくる必要もなくなる」

盗賊「あはは、冗談だよ。そんなに焦らなくても大丈夫さ」

賢者「別に焦ってません! ボ、ボクだってこんな人格破綻者と一生なんてお断りの願い下げです!」

勇者「先程から君は何を言っているんだ」

賢者「勇者さんはわからなくて結構です!」

勇者「そうなのか……」
 
699 :久々の初期パーティ3人 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/07/31(日) 20:12:13.20 ID:dkk2zqFW0
 
盗賊「そういう賢者はどうなんだい? アンタは勇者のお供をやめようって思わないのかい?」

賢者「そんなのしょっちゅうですよ。だって勇者さんですよ?」

賢者「ボクに恥ずかしい格好はさせるし、変な実験に付き合わせるし、最悪です」

勇者「君は意外と根に持つタイプだな」

賢者「忘れるわけないじゃないですか。ボクにあんな辱めをしておいて……」

盗賊「じゃあアンタは勇者のこと嫌いなのかい?」

賢者「そ、それは……確かに、矯正してほしい人格的欠陥はままあるとしても?」

勇者「君は私をそんな風に思っていたんだな」

賢者「シャラップ! まあ、その……ボクもいい加減、勇者さんとは付き合い長いですから」

賢者「……勇者さんのことは、嫌いじゃないです」

盗賊「ふ〜ん?」ニヤニヤ

賢者「べ、別にそういうアレじゃないですからね。ただ一研究者として尊敬に値すると」

勇者「私も君に敬意を表するよ。君が在学中に発表した魔法体系論はとても参考になったからな」

賢者「え、あ、ありがとうございます……」

勇者「私は君達をお供にしてよかったと思っている。感謝しているよ」

盗賊「……参っちまうね、まったく。こういう奴なんだから」
 
700 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/07/31(日) 20:13:28.87 ID:dkk2zqFW0
勇者・賢者・盗賊の初期メンバー3人が再会するのはいつなのか……
まあしばらくの間は魔王の活躍にご期待ください
701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2011/07/31(日) 20:15:43.63 ID:cQrc8C3go
激烈乙
702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします() [sage]:2011/07/31(日) 22:16:36.84 ID:XDvChrpbo
>>700 乙!
703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/31(日) 22:33:38.86 ID:LHfdQ+hAO
やはり賢者はツンデレだったのか……乙
704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/01(月) 07:42:00.80 ID:n+t4ylXIO
更新が待ち遠しいC
705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/01(月) 10:54:14.86 ID:n9tkQG7AO
魔王がこのままイケメン化したら加速度的にモテそうだけど
そんなの魔王じゃない的な寂しさも感じるだろうな
706 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/03(水) 23:36:49.00 ID:8GxLdnyu0
 
――――――――――
数分後 
獣王城
 
 
バサッ……バサッ……

じゅうおうじょうのテラスに ガルーダにつかまったじゅうきが おりたった! 
 
獣姫「ご苦労様。アンタはバードマン偵察隊に合流して、引き続き魔王様の動向を見張って頂戴」

ガルーダ「クワーッ」バサッ

獣姫「さてと……魔王様が三獣士相手にどこまでやるかしら」

獣姫「元々分の悪い勝負だったけど、あたしって奴はつくづく土壇場のツキがないのよね」

獣姫「……実際のところ、それはウチの一族全部に言えるのかもしれないけど」

獣姫「……誰か! 誰かいるかしら?」

シュバッ

鎌鼬「ここに」

一角兎「獣姫様、どうされました」

獣姫「魔王様が来るかもしれないの。歓迎の準備をしておいて」

鎌鼬「魔王様が……?」

一角兎「しかし三獣士が動いているのでは」

獣姫「油断大敵ってやつよ。それに、用心はしすぎて困るってことはないわ」

獣姫「……特に、あの人は魔王なんだからね」
 
707 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/03(水) 23:38:13.89 ID:8GxLdnyu0
 
――――――――――
同時刻
獣王領内の林
 
 
ギィンッ!

象剣士「……流石は魔王様。侮れませんな」

魔王「だったら黙って帰りな。デートの時間に遅れちまうよ」

ゾウけんしは まおうのスコップを はねのけた!
まおうは すかさずたいせいをととのえ じゅもんをとなえた
まおうのすばやさが 61あがった!

まおうは じめんをけり はげしくきりかかった!

猿闘士「……させんッ!」

サルとうしが まおうとゾウけんしのまえに たちはだかった!
サルとうしに 54のダメージ!

魔王「邪魔だ!」

まおうは じゅもんをとなえた!
かぜのやいばが サルとうしをきりさく!
サルとうしに 29のダメージ!

猿闘士「ぐ……だが!」

サルとうしは そのばからとびのいた!

サルとうしとゾウけんしのうしろでは サイじゅうしが たいほうをかまえていた!
 
708 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/03(水) 23:39:54.38 ID:8GxLdnyu0
 
犀銃士「お覚悟を」

ドォンッ!

サイじゅうしのたいほうが ひをふいた!
しかしそのとき ドリルモグラAが まおうのまえにとびだし まおうをかばった!

ドリルモグラAは こなごなにくだけちった!

魔王「……ッ!」

まおうは じゅもんをとなえた!
たちのぼるけむりをきりさき むすうのこおりのやいばが サイじゅうしにさっとうした!

ふたたびサルとうしが サイじゅうしをかばった!
サルとうしに 61のダメージ!

そしてゾウけんしが とびだし はげしくきりかかってきた!
まおうは スコップのえで こうげきをうけとめる!

魔王「畜生、いいチームワークだな」

象剣士「お褒めに与り恐悦至極」

魔王「そのチームワークを活かしてスポーツでもやってろよ。精一杯応援してやるからさ」

ドウッ!

ゾウけんしのけんを はらいのけると あしもとのじめんがはぜた!
サイじゅうしのたいほうは いまだ まおうをねらっている……
 
709 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/03(水) 23:41:21.61 ID:8GxLdnyu0
 
――――――――――
 
 
 
獣姫「ママは? 今どうしてるの」

鎌鼬「奥方様は……お変わりありません」

一角兎「この時間なら、食堂の方にいらっしゃるかと」

獣姫「そう。ありがと」

一角兎「ですが獣姫様。奥方様は……」

獣姫「……なに? 何か言うことでもあるの?」

鎌鼬「いえ……恐れながら申し上げますが、奥方様はもう」

獣姫「言っておくけど、あたしはパパや兄さんみたいに寛大じゃないわよ。それでもいいの?」

鎌鼬「……ッ」

獣姫「アンタ達は引き続き城の警備。何かあったらすぐに報告して。いいわね」

一角兎「……御意」

ザッザッザッ……

じゅうきは しろのしょくどうまで あるいていった
しょくどうにある おおきなテーブルには 4にんぶんのしょくじがよういされ
ひとりのじょせいが せきについていた……

???「あら……帰ってきてたの、獣姫?」

獣姫「……うん、ママ」
 
710 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/03(水) 23:42:35.68 ID:8GxLdnyu0
 
獣王妃「あなたのことを待ってたのよ。お父さんも獣王子もお腹を空かせてるわ」

獣姫「ごめんごめん、ちょっと急な用事ができちゃって」

じゅうきは いつもすわるせきについた
じゅうおうひは だれもいないせきにむかって したしげによびかけていた……

獣王妃「別に不思議じゃないわ、あなた。獣姫だってもう大人なのよ。こういうことだってあるの」

獣王妃「獣王子も心配性ねぇ。大丈夫、あなたの妹じゃないの」

獣王妃「この子もお父さんの若い頃にそっくりだけれど、子煩悩なところも似るのかしら?」

獣王妃「あらあら……いよいよ獣王子も反抗期かしら。うふふ……」

獣姫「……」

じゅうきは テーブルのしたで りょうてをつよくにぎっていた
じゅうきのてのひらに つめがくいこんで ちがにじんでいる……

獣姫(パパと兄さんが死んで、ママは壊れちゃった)

獣姫(今だって、いもしないパパや兄さんと一緒に楽しく食事してる)

獣姫(いっそ、パパと兄さんは死んだんだって現実を突き付けて、ママも完全に壊しちゃおうか?)

獣姫(……ううん。ママがおかしくなってるのは今だけ)

獣姫(古代魔法さえ手に入れば、パパと兄さんが生き返ればきっと……)

獣王妃「……どうしたの、獣姫? 元気ないわねぇ」

獣姫「……ごめん、ママ。あたしちょっと食欲ないの」

獣王妃「あら……きっと疲れてるのね。休んでらっしゃい? ねぇ、お父さんもそれがいいって」

獣姫「うん……ごめんね」

じゅうきは しずかにせきをたって しょくどうをでていった……
 
711 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/03(水) 23:44:41.19 ID:8GxLdnyu0
 
――――――――――
 
 
 
魔王「機械王!」

機械王「――ラジャー」

きかいおうのからだから いきおいよくじょうきがふきだした!
しゅういはまたたくまに ふかいきりに つつまれていく……

犀銃士「噴霧装置だと……!?」

まおうのすがたが きりにかくれて みえなくなった!

猿闘士「機械王にそんな機能があったとは……」

象剣士「ええい、魔王様はどこにいるのだ」

バッ!

きりのなかから まおうがとつぜんあらわれ サルとうしにおそいかかる!
サルとうしに 12のダメージ!

サルとうしが はんげきをこころみるまえに まおうのすがたは きりのなかにきえていく……

猿闘士「小細工を……!」

犀銃士「猿! ここは一箇所に固まって守りを固めろ!」

猿闘士「言われるまでもない!」

ふたたび きりのなかから まおうがとびだした!

象剣士「我らの盾となる猿を先に倒すつもりか……そうはさせん!」

ゾウけんしは とびかかってきたまおうを げいげきした!
 
712 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/03(水) 23:46:28.75 ID:8GxLdnyu0
 
ゾウけんしのけんが まおうをきりさいた!

しかし まおうのすがたが ゆがんだかとおもうと まおうはきえてしまった!

象剣士「な!?」

ガランガラン……

あとには はかいされたよろいが ころがっている……

象剣士「これは……!?」

ゾウけんしが ふしんにおもうまもなく なおもきりのなかから まおうがおそいかかる!

猿闘士「小癪な!」

ガキィッ!

まおうのすがたがゆがみ くだけちったゴーレムがあらわれた!
さんじゅうしをこうげきしたまおうは すべて モンスターのぎたいだった!

犀銃士「なるほど……この霧に虚像を映し、我らを欺くつもりか」

猿闘士「ならば……この霧を全て吹き飛ばせばいいことだ!」

サルとうしは おおきくいきをすいこんだ!
サルとうしは もうれつないきおいで やけつくいきをふきだした!

しゅういにたちこめるきりが いっきにふきはらわれた!

きりがはれると しゅういには たすうのぶっしつけいモンスターが ひしめいていた!
しかし そこにまおうのすがたは なかった……

象剣士「逃げられたか……!」
 
713 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/03(水) 23:49:02.90 ID:8GxLdnyu0
 
――――――――――
三十分後
獣王城・城門前
 
 
魔王「ハァ……ハァ……なんとか撒いたか?」

魔王「こんなにドキドキするデートは久しぶりだぜ。よりにもよって親友の妹だしさ」

魔王「……大丈夫か、機械王?」

まおうがよびかけると きかいおうのどうたいだけが そのばにうかんでいた
きかいおうのたいないには じゅうおうじのいたいをおさめた かんおけがはいっている……

機械王「――システムチェック・異常なし。死体保存装置・正常に作動中」

魔王「ならよかった。それにしても、お前って胴体ブロックだけで動けたのかよ。初めて知った」

機械王「――動体センサーに反応。警告」

ギィィィ……

じゅうおうじょうのもんが ゆっくりとひらかれていく!

もんのさきには じゅうきがまちかまえていた……

獣姫「ハロー、魔王様。結構早かったのね」

魔王「ああ、急いできたんだ。乗り物がエンストしたせいで徒歩だったけどね」

獣姫「そうなの。でも、魔王様のことだから、きっと素敵なプレゼントを持参してるんでしょう?」

魔王「勿論さ。今、君が一番待ち望んでいたものだって確信してるよ」

きかいおうのからだのハッチがひらき かんおけがおろされた
まおうは かんおけをひきずりながら いっぽずつ じゅうきのもとへあるいていった……
 
714 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/03(水) 23:49:48.15 ID:8GxLdnyu0
 
――――――――――
 
 
 
ガキィンッ!

さまようよろいに 80のダメージ!
さまようよろいは バラバラにくだけちった!

犀銃士「これで最後か」

猿闘士「機械王の手下どもめ……思ったより手こずったな」

象剣士「急ぐぞ。獣姫様に何事かあっては……」

そのとき ゾウけんしは はいごにしのびよるけはいにきづいた!

ザシュッ!

象剣士「――ッ!?」

きゅうしょにあたった!
ゾウけんしは たおれた……

犀銃士「ぞ、象!?」

猿闘士「なんだ、何が……!?」

ザシュッ!

サルとうしのくびすじに どくばりがつきたてられた!
サルとうしは そくしした!

犀銃士「な……き、貴様!」

??「……」

サイじゅうしのまえには こくいをまとったおとこが たっていた……
 
715 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/03(水) 23:50:50.04 ID:8GxLdnyu0
獣姫の脳内CVは田村ゆかりでした。一体何の作品の影響やら。
でも竜姫の脳内CVはまだ定まってなかったりします。
716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2011/08/03(水) 23:57:59.43 ID:p1umvvDVo
717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/04(木) 00:04:30.20 ID:WDFkvdxFo
乙乙
っ沢城みゆき
718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/04(木) 01:58:33.73 ID:uYhnQhiAO


竜姫なら小林ゆうとか斎藤千和とかどうよ
719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/04(木) 07:24:16.86 ID:VkXNJiyIO
おつん
720 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/05(金) 10:24:19.32 ID:V3JG271v0
 
――――――――――
同時刻
獣王城・城門前
 
 
じゅうきは まおうがひきずってきたかんおけのまどから じゅうおうじのかおを みた……

獣姫「……兄さん、なのね?」

魔王「ああ。こいつを連れて帰れたのも猫のおかげだよ」

獣姫「……」

魔王「獣王子も、獣姫ちゃんが戦うことなんか望んでないと思う」

獣姫「……そう、かもね」

魔王「……」

魔王「……なあ、獣姫ちゃん。もういいだろ」

魔王「俺が今回のことを知らんぷりすればそれでおしまいなんだ。だから……」

獣姫「だから……何?」

魔王「何って……やめようって言ってるんだよ。さっきも言っただろ?」

魔王「竜王をぶちのめして古代魔法を奪うんなら、別にあいつらの側につかなくたって」

獣姫「ダメよ」

魔王「どうして!」

獣姫「魔王様の側についたとして、確実に竜王に勝てる保証はないわ」

獣姫「それならより竜王に近づける方が都合がいい。あたしの目的はあくまで古代魔法よ」
 
721 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/05(金) 10:25:21.42 ID:V3JG271v0
 
魔王「大丈夫さ、オレには強い味方がたくさんいるんだ。獣姫ちゃんが不安に思うことなんかないよ」

魔王「あんなオッサン、オレがやっつけてやるさ。約束するよ」

魔王「古代魔法だって獣姫ちゃんにプレゼントする。天地魔界を支配するとかオレは興味ないしさ」

獣姫「……変わらないのね、魔王様は」

魔王「え?」

獣姫「今からもっと昔、魔王様が第三王子だった頃から、あなたは何も変わってない」

魔王「そうかな?」

獣姫「そうよ。今みたいに他人を安心させようとする時とか、特に」

魔王「変わらない良さってやつかな? オレってば昔っからイケメンのモテモテくんだしさ」

獣姫「ほら、また。そうやって照れ隠しでおどけてみせるのも、昔から変わってない」

魔王「へへ……まあね」

獣姫「でもどうしようもないことはある。魔王様だってわかってるでしょ?」

獣姫「いくら魔王様でも……魔王の地位と力があるとしても、取り返しのつかないものがあるの」

魔王「それは……」



魔王「……それは……」
 
722 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/05(金) 10:26:03.39 ID:V3JG271v0
 
――――――――――
同時刻
獣王領
 
 
シュゥゥゥゥ……

てつのかたまりとかしていた ねこにんじゃのからだが じょじょにもとにもどっていく……

猫忍者「うにゃ……にゃにゃあ!?」

ねこにんじゃに かけられていたまほうが とけた!

猫忍者「い、一体何がどうなったのにゃあ……急に体が重くにゃったかと思ったら意識が……」

猫忍者「そ、そうにゃ! それよりも魔王様は!?」

猫忍者「……にゃあっ!?」

ねこにんじゃが しゅういをみまわすと そこにはバラバラになったぶっしつけいモンスターと
さんじゅうしのしたいが つみあげられていた……!

猫忍者「さ、三獣士が……魔王様がやったのかにゃあ?」

猫忍者「でも魔王様も獣姫様もいにゃい……どこへ行ったのにゃあ」

猫忍者「機械王の手足が転がっているのも気ににゃるけど、今はとにかく魔王様だにゃあ!」

猫忍者「どこかへ行くとすれば、この先にある獣王城……」

猫忍者「きっと魔王様はそこに向かっているはずだにゃあ!」

ねこにんじゃは じゅうおうじょうのほうへ かけだした!
 
723 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/05(金) 10:26:50.05 ID:V3JG271v0
 
――――――――――
 
 
 
魔王「……違う。そんなんじゃない。オレ達がもっと言葉を費やすべきことは他にあるはずだ」

魔王「オレは君の本心が聞きたいんだ。どうしてオレの手を取ってくれないんだ?」

魔王「……どうして、オレと一緒に来てくれないんだ」

獣姫「……」

じゅうきは するどいつめをのばし かまえをとった!

魔王「獣姫ちゃん!」

獣姫「そんなの簡単……許せないからよ。あたしが魔王様を許すことができないから」

魔王「……」

獣姫「パパが死んだのは勇者のせい。兄さんが死んだのは竜王のせい」

獣姫「むしろ魔王様は兄さんを止めようと頑張ってた。そんなことわかってる」

獣姫「でも……それでもあたし、魔王様と昔のままでいられる自信がないの」

獣姫「パパと兄さんを助けてくれなかった魔王様が許せない。何もできなかった自分が許せない」

獣姫「逆恨みでも何でも、誰かのせいにして、誰かを憎まずにいられない」

獣姫「ママみたいに壊れてしまえれば、何も感じずに済んだのに……!」

魔王「……そんな……」
 
724 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/05(金) 10:27:50.44 ID:V3JG271v0
 
獣姫「……ごめんなさい、魔王様。でも、あたしはあなたと一緒には行けない」

魔王「……」

魔王(……そうだ。オレがもっとうまくやれてりゃ、きっと今頃は)

魔王(勇者を早く叩いておけば、竜王の動向に気を配っていれば、オレが魔界を留守にしなければ)

魔王(全部たらればの話だけど、全部オレの責任でもあるんだ……)

魔王「……でも、オレはやっぱり獣姫ちゃんと戦いたくなんてない」

魔王「獣姫ちゃんがオレを許せない気持ちはわかるし、償いたいよ。少しでも君に報いたい」

獣姫「その方法はひとつしかないわ。少なくとも、あたしにはそれしか思いつかない」

魔王「オレの命が欲しいって言うならあげるよ。でも今はダメなんだ」

獣姫「どうして?」

魔王「竜王をぶちのめすのもそうだけど、竜姫ちゃんだっていなくなっちまった。探さなきゃ」

魔王「賢者ちゃんに盗賊ちゃんだって、いつまでもこんな辛気臭いところに居させられない」

魔王「それに竜王を倒しても、勇者は引き続き魔王討伐を再開する。それも片付けなくちゃだ」

魔王「今のオレには、やらなきゃいけないことがたくさんあるんだ。だから」

獣姫「……」

魔王「だから……少しだけ待ってて欲しいんだ。全部終わったら、オレの命でも何でもあげるから」

魔王「一生許さなくたっていい。それで獣姫ちゃんが生きていけるなら、それで構わない」

魔王「だから……頼むよ」
 
725 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/05(金) 10:29:01.45 ID:V3JG271v0
 
獣姫「……ホント、魔王様って昔とちっとも変わってない」

獣姫「そうやって自分のことを簡単に投げ出してしまえるところとか、特に……」

魔王「オレが君に差し出せるものはそれだけだよ。それしか持ってないんだ」

獣姫「そんな約束して、ホントに……」

じゅうきが つめをひっこめて まおうにちかづいたそのときだった……

ジャキンッ!

機械王「――ラジャー」

ガシィッ!

まおうのはいごにいたきかいおうが きゅうにうごきだし
どうたいから かくしうでをのばして じゅうきのくびをつかんだ!

魔王「な……機械王!?」

獣姫「グ……あぁ……ッ」ギリギリ

きかいおうのうでが じゅうきのくびを つよくしめあげている……

魔王「何やってんだ、やめろ! その手を離せ!」

機械王「――管理者用上位パスからの指令を優先。状況を続行」

魔王「機械王! オレの言うことが聞けないのか!?」



??「無駄です、魔王様」
 
726 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/05(金) 10:29:58.75 ID:V3JG271v0
 
まおうがふりむくと そこには こくいをまとったおとこがたっていた!
おとこが こくいのフードをぬぐと まおうは めをみひらいた……

魔王「側近くん……?」

側近「私は、機械王に最優先指令を出せる管理者用上位パスを所持しています」

側近「機械王は今、私の命令で動いています。魔王様の命令は受け付けません」

魔王「おい……どういうことだよ。なんで側近くんがここにいるんだ!」

魔王「いや、そんなことどうでもいい。側近くんがやらせてるんなら今すぐやめさせろ!」

側近「それはできかねます」

魔王「どうして!?」

側近「この者は魔王様に弓引く反逆者。罰するには十分すぎる理由かと」

魔王「違う! 獣姫ちゃんはオレの……」

側近「ご友人であったのかもしれませんが、今は違います」

魔王「……!」

側近「機械王。折れ」

機械王「――ラジャー」

魔王「やめろぉ!!」

獣姫「ま……おう……さま……」

魔王「獣姫ちゃ……!」
 
727 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/05(金) 10:30:45.21 ID:V3JG271v0
 
 
 
 
  
ゴキッ
 
 
 
 
 
728 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/05(金) 10:31:42.61 ID:V3JG271v0
 
魔王「……ッ!」

じゅうきのからだから ちからがぬけ いとのきれたにんぎょうのように
てあしがだらんとなげだされた……

きかいおうが じゅうきのくびからてをはなし じゅうきはじめんにおとされた

ドサッ

魔王「あ……あぁ……!?」

側近「直に親衛隊がここに来ます。後の始末は任せましょう」

魔王「……」

側近「何しろ獣王軍は魔王様を殺そうとした反逆者。一族郎党全員を厳しく処罰せねばなりません」

側近「では魔王様、我々は魔王城に戻りましょう。傷の手当てを」

魔王「……!」

バキィッ!

まおうはふりむいて そっきんをなぐりたおした!

魔王「お前ッ……なんで殺した、なんで獣姫ちゃんを……!」

側近「……私は、魔王様をお守りするようあなたのお父上から申しつけられておりますので」

魔王「親父はもう死んだんだぞ! そんな命令にいつまで従ってんだよ!」

側近「恐れながら申し上げますが……魔王様こそご自分のお立場を理解されていない」

側近「あなたは魔界の支配者、魔王なのです。あなたの命はあなた一人のものではあり得ません」

側近「それに今は戦時下。あなたにもしものことがあれば全軍の士気にも関わりますので」
 
729 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/05(金) 10:32:55.04 ID:V3JG271v0
魔王「何だよそれ……オレが一番偉いんなら、オレの命令が優先だろ!」

側近「あなたの身に何事かあれば、魔王の一族の血筋は絶え、絶対的支配者を失ってしまいます」

側近「そうなれば再び魔界は混沌の時代へ逆戻り。魔界の秩序を保つためにも魔王様は必要なのです」

側近「ですから、今後は軽々しくご自分の命を賭けることなどないようにお願いいたします」

側近「……では魔王様。魔王城へ戻りましょう」

きびすをかえしてあるきさる そっきんのせなかをみながら まおうはきつくくちびるをかんだ

魔王「畜生……!」

そっきんといれかわるようにして ねこにんじゃがあらわれたが しばらくのあいだ 
まおうは そのばにたちつくしていた……
 
 
 

 _________|\   
|To Be Continued...   >
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/

730 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/05(金) 10:34:20.10 ID:V3JG271v0
 _________|\   
|To Be Continued...    >
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/


矢印ェ……
「魔王が痛い目にあうようです」編が思ったより長くなったので自分でもビックリしました。
そろそろ勇者パーティの出番かもしれません。
731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/05(金) 11:02:54.69 ID:ySHFUFnSO
乙です
獣姫ちゃんうわあああ
732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/05(金) 11:19:09.10 ID:A1AxkbmIO
いつも楽しい乙
今後、機械王が忠実なる機械であることが、魔王には苦しいかもな
733 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/05(金) 13:50:44.68 ID:302Nj9BAO


相変わらずゲストキャラに容赦ない作者やでぇ
734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/05(金) 14:32:25.03 ID:kf5Keu8w0

魔王痛い目にあうってレベルじゃねぇ……
735 :時系列順にまとめてみた ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/05(金) 18:31:21.80 ID:V3JG271v0
番外編「勇者、冗談を言う」
>>392-397

「勇者&賢者の旅立ち」
>>2-9
>>15-29

「勇者、盗賊をスカウトする」
>>45-51
>>66-71

番外編「初期パーティ3人の雑談」
>>697-699

即興ネタ「勇者、嘘をつく」
>>509-511

お題「宝くじ」
>>559-565

「勇者、獣王と戦う」
>>80-92

「魔王、決意する」
>>101-107
>>114

「勇者&僧侶と魔王&竜姫」
>>121-128
>>132-138

「大賢者とホムンクルス」
>>165-171
>>181-197

「竜王造反と獣王子の死」
>>218-231
>>248-259
>>268-288
736 :時系列順にまとめてみた ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/05(金) 18:32:53.94 ID:V3JG271v0
「勇者&竜姫&僧侶、海に行く」
>>297-304
>>316-324
>>330-342

番外編「勇者、呪われる」
>>425-439

「魔王&賢者&盗賊、砂漠に行く」
>>355-364
>>370-378
>>467-468
>>403-414

お題「勇者の活躍」
>>627-647

「竜姫、王都に残る」
>>451-458
>>482-494

「魔王、魔界に戻る」
>>526-533
>>604-613
>>674-684
>>706-714
>>720-729
737 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/05(金) 18:34:14.78 ID:V3JG271v0
いったん整理してみるために順番に並べ直してみた。
多分これで合ってると思います。
738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/05(金) 19:13:07.62 ID:A1AxkbmIO
整理乙
続きをいつも心待ちにしてっぜ
739 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/05(金) 21:30:49.34 ID:V3JG271v0
せっかくなので性懲りもなくお題募集

>>742
740 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/08/05(金) 21:34:40.20 ID:RrRaps400
賢者のデレ期到来
741 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/05(金) 21:45:45.51 ID:302Nj9BAO
バレンタインデー
742 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/05(金) 21:59:31.42 ID:3Oliz3Bso
うっかり着替えを覗いちゃう
743 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/05(金) 22:00:40.45 ID:3Oliz3Bso
うっかり着替えを覗いちゃう
744 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/08/06(土) 17:49:09.55 ID:uI6+efgW0
勇者結婚しろよ
745 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/06(土) 18:15:23.33 ID:SNCaLsjuo
勇者の恥ずかしい場面を賢者が目撃
746 :お題消化中に何故かこんな番外編ができた件 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/07(日) 02:16:05.87 ID:sYkCjTXv0
 
――――――――――

砂漠の村・村長の屋敷
 
 
ねこにんじゃとごうりゅうした そのよる
まおうたちは そんちょうのやしきに いっぱくすることになった

ゆうしょくのせきで とうぞくとメイドは おもいでばなしにはなをさかせていた……

盗賊「……で、結局あたしが、村のいじめっ子どもをとっちめに行ったってわけさ」

メイド「うんうん、あの時の盗賊はカッコよかったわぁ」

魔王「へぇ……盗賊ちゃんらしいなぁ」

賢者「盗賊さん、面倒見いいですもんね」

メイド「そうよ。盗まれてきた奴隷の私達に、まるで家族みたいに接してくれたんだもの」

メイド「覚えてる? 私がここに来たばかりの頃に暑さで倒れちゃった時、寝ずに看病してくれたの」

盗賊「そんなこともあったねぇ……そういう時に限って親父がいなくて困っちまってさ」

メイド「働けなくなった奴隷なんて捨てられて当たり前。ここで死んじゃうんだって思ったのに」

メイド「盗賊は何度も何度も励ましてくれたの。頑張れ、負けるなって」

メイド「アンタはここにいていい、あたしの家族だからって……」

盗賊「……よしておくれよ、恥ずかしい。それ何回もした話じゃないか」

賢者「あっ。盗賊さん、ひょっとして照れてますか?」ニヤニヤ

盗賊「バカ言うんじゃないよ。妹分の心配するのに何の不思議があるんだい?」
  
747 :お題消化中に何故かこんな番外編ができた件 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/07(日) 02:16:55.25 ID:sYkCjTXv0
 
メイド「……盗賊が王都に行くって言って出て行った時は、すごく心配だったけど」

メイド「無事に戻って来てくれてよかった。しかも勇者様のお供だなんて!」

盗賊「自慢になるようなもんじゃないよ。今は勇者と別行動だしさ」

メイド「そんなことないって。魔王をやっつけて世界を平和にするんでしょ?」

盗賊「……あー、えっと、最終的にはそうなるのかねぇ」チラッ

賢者「……多分、というか十中八九、そうなるんじゃないかと」チラッ

魔王「……ま、まあ? 意外と魔王っていい奴かもしれないし、わかんないけどさ?」キョロキョロ

メイド「世界を救う旅の仲間なんてこんな名誉なことはないじゃない。とっても素敵よ、盗賊」

盗賊「名誉ねぇ。あたしにゃピンと来ないけど」

メイド「盗賊は私達の誇りよ。私、この家に盗まれてきて本当によかった」

賢者「愛されてますね、盗賊さん」

盗賊「バカ。姉離れできてないだけだよ」

魔王「そりゃ無理もないよ。盗賊ちゃんのお姉さんっぷりが板に付きすぎてるからね」

盗賊「……まあ、悪い気はしないけどさ。それにしたってお互いいい年なんだから」

メイド「そんなの関係ないわよ。私、ずっとこのお屋敷で働くんだもの。他に行くところもないし」

賢者「そうなんですか? お給金で自由を買い戻そうと思ったことは?」

メイド「ううん。私は、盗賊のそばにいるのが何より幸せだって気付いたから……」

メイド「だから盗賊、早く帰ってきてね。私達みんな待ってるから」

盗賊「ああ、そのうちね」
 
748 :お題消化中に何故かこんな番外編ができた件 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/07(日) 02:18:10.37 ID:sYkCjTXv0
 
――――――――――
夕食後
村長の屋敷・談話室
 
 
魔王「あれ、賢者ちゃんは?」

盗賊「寝たよ。今日は色々あったからね。ま、お子様だから仕方ないさ」

盗賊「……それにしても、メイドの奴にも困ったもんだよ。全然進歩しちゃいない」

魔王「なんで? 可愛いじゃん、あの子」

盗賊「まあ、それはそうだけどね。あいつはあたしの可愛い妹分だけど」

盗賊「……あたしは、あの子にとても酷い仕打ちをしたんじゃないかって、不安になる時があるんだ」

魔王「何が?」

盗賊「メイドの話、聞いたろ? あの子が小さい時の」

魔王「ああ、盗賊ちゃんが寝ずの看病をしたって話?」

盗賊「……あの頃のあたしはね、何かにつけて卑屈なあの子の態度が気に食わなかった」

魔王「卑屈?」

盗賊「親父は、あたしが寂しくないように、友達にするようにってメイドを盗んできた」

盗賊「内心呆れたけど、あたしも友達が欲しかったから、メイドにもそういう風に接してたさ」

盗賊「でもあの子は、自分は奴隷だからって進んで働こうとする。あたしにもなかなか懐かなくて」
 
749 :お題消化中に何故かこんな番外編ができた件 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/07(日) 02:19:38.55 ID:sYkCjTXv0
 
盗賊「たまにメイドの手を引いて、外に遊びに行ったりした時もそうさ」

盗賊「あの子はよその親子や兄弟、家族なんかを羨ましそうに見つめてた。何も言わないで」

魔王「手の届かない、叶わない夢を見るみたいに?」

盗賊「そう。ガキの頃のあたしには、その目がたまらなく嫌だったんだよ」

盗賊「すぐ近くにあたしがいるのに、隣の芝生を羨んでばっかりなのがね」

盗賊「極めつけはメイドが倒れた時さ。あの子、熱で衰弱しながらどんな顔をしていたと思う?」

魔王「どんな顔さ?」

盗賊「『もうゴールしてもいいよね』って感じの、いかにも自分は不幸でございっていう顔」

盗賊「その時、あたしはそのひがんだ根性がもう我慢ならなかったけど、同時に理解もできたのさ」

盗賊「この子は誰かに愛されるのを待ってる。誰かに肯定されたくてたまらないんだって」

魔王「……仕方ないよ。だって奴隷の子供だったんだろ?」

盗賊「だね。牛や馬よりマシな程度の扱われ方しかされてこなかったなら、そう考えもするよ」

魔王「正直、オレにはわからない話だけど……」

盗賊「……だからあたしは、メイドと友達じゃなく家族になろうって思ったんだ」

盗賊「幸せな家族を羨むだけじゃなくて、自分も幸せな家族になれるんだって教えてやりたかった」

盗賊「あの時は、そのためにも絶対助けてみせる、って思いながら看病してたもんさ」

魔王「いい話だなぁ……やっぱり盗賊ちゃんは優しい子だよ、うん」
 
750 :お題消化中に何故かこんな番外編ができた件 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/07(日) 02:21:53.48 ID:sYkCjTXv0
 
盗賊「……でも、なんかねぇ」

魔王「?」

盗賊「あれ以来、妙にあたしにベッタリというか……もっと言うと依存しちゃってるみたいでね」

盗賊「あの子は親父に盗まれてきた子供ってこともあって、いじめられたりもしたから」

盗賊「何かとあたしが助けてやったんだけど……それがいけなかったのかねぇ」

魔王「それは難しい問題だなぁ……そういう時は助けてあげるべきだと思うし」

盗賊「人にも魔族にも寿命はある。生き物はいつか死ぬもの、そうだろ?」

魔王「そりゃそうさ。天寿を全うできる魔族なんて稀だけど」

盗賊「加えてあたしは勇者のお供、しかもこれから敵の本国に行こうってんだから……」

魔王「あ……ごめん。魔界に行くなんて言ってさ」

盗賊「いいよ、気にしなくて。アンタのしたいようにさせるって決めたんだから」

盗賊「……あたしが不安なのは、あたしがいなくなっちまったらメイドはどうするのかってこと」

盗賊「誰かに寄りかかってないと生きていけないんなら、あの子はどうなっちまうのかって」

盗賊「メイドは奴隷だったから他の暮らしを知らないし、この家に縛り付けただけじゃないかってさ」

魔王「……どうだろう。オレにはわかんないかな」

盗賊「あたしはね。メイドと家族になるっていう『今』と引き替えにして」

盗賊「あの子から『未来』を奪ったんじゃないかって、そう思えてならないんだよ」

盗賊「結局、全てはあたしのちっぽけな良心を満足させるためだったんじゃないかってさ」
 
751 :お題消化中に何故かこんな番外編ができた件 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/07(日) 02:22:50.49 ID:sYkCjTXv0
 
盗賊「そう思うとひどく後ろめたくてね。家に居づらかったっていうのも、都会暮らしの理由かな」

魔王「そうだったんだ……でも盗賊ちゃん、そのことをメイドちゃんには?」

盗賊「いや、話してないよ。いつかはちゃんと話しておかないとって思うけど」

魔王「……やっぱりさ、盗賊ちゃんって優しいよ。そうやって振り返れるんだし」

盗賊「どうかねぇ。少なくとも善意の人間ではないよ」

魔王「見返りを全く求めないとか、100%の善意とか、そっちの方が不自然だよ」

魔王「盗賊ちゃんはそうやって、メイドちゃんの将来まで考えて悩んでる。なかなかできないよ」

盗賊「罪悪感かもしれないね。あるいは、責任の取り方がわからなくて困ってるか」

魔王「……オレもさ、宿題を後回しにして後で焦るタイプだからよくわかるけど」

魔王「できるだけ早いうちにメイドちゃんに話して、姉離れできるようにしてあげなって」

魔王「ここで働く以外にも生き方があるし、メイドちゃんにはそれができるって教えてあげればいい」

盗賊「他の生き方……ねぇ」

魔王「例えば、オレみたいなモテモテくんと恋に生きるとかさ?」

盗賊「それはあの子を口説けてからにしな?」

魔王「難しいことじゃないよ。メイドちゃんが本当に望む生き方を見つけてあげるんだ」

魔王「それが、盗賊ちゃんにできる責任の取り方だと思うぜ」

盗賊「……そうかもね。アンタ、たまにはいいこと言うじゃないか」

魔王「へへ、だろ? オレってばシリアスな場面も似合っちゃうんだぜ」
 
752 :お題消化中に何故かこんな番外編ができた件 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/07(日) 02:24:42.43 ID:sYkCjTXv0
 
盗賊「……あの子への責任を取るためには、生きて帰らなくちゃね」

魔王「魔界はオレのホームだ。賢者ちゃんも盗賊ちゃんもオレが守ってみせるさ」

盗賊「頼りにしてるよ、魔王様?」

魔王「……あっ、今の結構グッと来た。盗賊ちゃん、もっかい言って! ね?」

盗賊「バーカ。これっきりだよ」

魔王「ちぇっ、残念……じゃあ、オレはもう寝るよ。おやすみ」

盗賊「ああ、おやすみ」

ザッザッザッ……

盗賊「……」

盗賊「……勇者の言ってたことを思い出しちまったよ」

盗賊「あたしの不器用さと優しさは時として災難をもたらす、ってね」

盗賊「どうしてあいつの言うことはいつもいつも正しいんだか。やってることは無茶苦茶なくせに」

盗賊「……勇者も魔王も、あたしが優しい人間だって言った」

盗賊「でも、こうして他人の人生狂わす程度には、無責任な優しさなんだよ」

盗賊「アンタは……それでも、あたしが欲しいって思ったのかい……?」
 
 
 
とうぞくのつぶやきが さびしげにながれて きえた
そして よが ふけていった……
 
753 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/07(日) 02:26:25.95 ID:sYkCjTXv0
当初の予定では魔王が賢者の着替えを覗いちゃってキャーみたいな話だったのが
あっちこっちに逸れた挙句何故だかこうなりました。

キャラの組み合わせを変えてみたりしつつお題消化作業に戻ります。
754 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/08/07(日) 03:46:56.29 ID:sXPnexCOo
乙。 魔王のイケメン、ってかいい男っぷりがとどまるところを知らないな。
照れ隠しのためにおどけるだけで優しいいい男だなぁ、魔王は…
755 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/07(日) 10:14:11.83 ID:liPdTcaAO


盗賊の場合は優しさというか慈愛や母性に近かったのかな
756 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/08/07(日) 12:10:04.67 ID:/5ammy8+o
伊達に魔族を束ねる立場に立ってないな。カリスマ的な優しさとかっこよさだ
757 :嘘製品情報 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/11(木) 13:42:04.84 ID:6AG3QGSo0
勇者「地獄の沙汰も金次第」 〜お金じゃ買えない恋もあるっ!〜

ジャンル:リア充爆死ADV
発売日:20XX年13月45日
価格:通常版5800G
    初回限定版8800G
CERO:B


ストーリー:

『勇者「地獄の沙汰も金次第」』がドタバタ恋愛コメディになって登場!?

勇者は王立魔法研究所の研究員。
たった一人の研究室で、自らが考案した新たな魔法体系「魔貨式魔導法」を研究する日々を送っていた。

そんな彼がある日、王宮から勇者として任命され、魔王討伐の使命を果たすべく旅に出ることに。
旅のお供に賢者と盗賊を迎え、成り行きから竜姫や僧侶と行動を共にし、やがて
倒すべき敵であるはずの魔王と意気投合していくうちに、平和な世界を取り戻したのだった。

しかし戦火の爪痕は深く、食料やエネルギーに関する問題は依然として残っていた。
そんな折、王立魔法研究所に戻った勇者が魔族の研究チームと共同で研究を行っていると、
ある一定の手順に従って人間や魔族の感情エネルギーを抽出した場合、途方もなく大きな
魔力を生み出すことができるという実験結果を得た。
それは、相思相愛の男女が生み出す恋のエネルギーだった!?

感情のロジック、恋のメソッド、愛のプロトコル。

人が人を愛するために必要なこととは何なのか?
果たして勇者は、有史以前からの難題を解決できるのか?

勇者の史上最大の挑戦が、今始まる――!
 
 
 
 
「比翼恋理のだーりん」やってたらなんかこんなの思いついた。
今は反省している。
758 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/08/11(木) 16:06:03.62 ID:snYPESeAO
オイ、ふざけんな
是非とも続編でやってください
759 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/08/11(木) 16:12:05.48 ID:SXsCJs3zo
ジャンルに吹いたwwwwww
760 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/11(木) 18:36:56.85 ID:B60e5CzIO
CREOは、「Z」な気がするんだ、うん
761 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/08/13(土) 14:46:21.94 ID:3uXj679xo
>>757
はやく書くのだ
762 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/19(金) 08:35:02.00 ID:fppp3b7so
早く続き読みたい
763 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/19(金) 23:11:02.87 ID:y8B0yGqj0
 
じゅうおういちぞくは まおうにゆみひく はんぎゃくしゃとして 
しゅくせいされた……

じゅうおうのちょうじょである じゅうきが ころされ
じゅうおうのつまの じゅうおうひも ちかろうにゆうへいされることとなった……
 
 
 
そしてよがあけた!
 
764 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/19(金) 23:12:00.13 ID:y8B0yGqj0
 
――――――――――
翌日
魔王城・謁見の間
 
 
まおうは ぎょくざにすわって うつろなしせんをさまよわせている……

魔王「……」

魔王(昨日は……あれからどうやって帰ってきたんだっけ……)

魔王(覚えてないな……ああ、でも、魔王城に戻ってきてすぐ休んだから……)

魔王(……賢者ちゃんと盗賊ちゃんに会わないと……二人に会って……)

魔王(……二人に……)

魔王(……ッ!)

ダンッ!

まおうは ぎょくざのひじかけに こぶしを たたきつけた!

魔王(……会って、どうする? 友達の家族を……一族郎党粛清した話を披露しろって?)

魔王(冗談じゃない。二人を不安がらせるだけだし、オレだってそんな……)

魔王(でもこれからのことも話し合っておかないと……いつまでも捕虜ってわけには……)

魔王(……彼女達だけでも、地上に帰してあげないと……)

まおうは ふかくためいきをついて しせんをおとした
そのとき えっけんのまに だれかがはいってきた……
 
765 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/19(金) 23:14:53.77 ID:y8B0yGqj0
 
魔王「……側近くん」

そっきんは ふかくれいをして ぎょくざのまえにひざまずいた……

側近「魔王様。お疲れのところ、失礼致します」

魔王「……ホントだよ。何か用かい?」

側近「お話ししたいことがあります。よろしいでしょうか?」

魔王「手短に頼むよ。オレ、疲れてるから」

側近「昨晩の会議での決定をお伝えします」

魔王「オレ抜きで会議なんかしたんだ。さぞスムーズに進んだろうな」

側近「魔王様がお疲れのようでしたので」

魔王「……で? 何が決まったんだよ」

側近「人間とエルフの連合軍に新たな動きが。近く火竜山脈へ攻撃を仕掛けるようです」

魔王「連中、ついに竜王とやり合うのか……で、オレ達はどう出るつもり?」

側近「かなり大規模な作戦のようで、我々はひとまず静観を、との方針が固まりました」

側近「地上・魔界の各地に部隊を配置し直し、各部隊の連携を密にせよとの通達を行いました」

魔王「なるほどな……それだけ?」

側近「会議で決定したのはこれだけです。ですがもうひとつ、魔王様に大事なお話が」

魔王「聞きたくないって言ったら?」

側近「あなたのお父上の意思でもあります。魔王様が果たされるべき義務と言ってもいいでしょう」
 
766 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/19(金) 23:15:50.95 ID:y8B0yGqj0
 
魔王「親父は30年前に死んだんだぞ。今更何を……」

側近「魔王城最深部に、儀礼用の祭壇があります。詳しくはそちらで」

魔王「おい! オレはそんな話聞くつもりは」

側近「入口は玉座の後ろです。この鍵を使えば隠し扉が開く仕掛けになっています」

魔王「だから……!」

側近「これはあなたが、魔王として真に正しき資質を持つかどうかを試すものでもあるのです」

側近「今、多くの魔族が、魔界の支配者としてのあなたを必要としています」

魔王「知るかよ、そんなの! なりたくてなったわけじゃない!」

側近「今は子供の言い訳が通用する状況ではありません。魔王様もおわかりでしょう?」

魔王「……ッ!」

側近「では魔王様、地下の祭壇へ参りましょう。急を要する案件ですので」

そっきんは ぎょくざのうしろのゆかに かぎをさしこんだ!
なんと ぎょくざのうしろに かくしかいだんがみつかった!

魔王「……オレに何をやらせようってんだ」

側近「すぐにわかることです」

まおうとそっきんは かいだんをおりていった……
 
767 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/19(金) 23:16:27.14 ID:y8B0yGqj0
 
――――――――――
同日
エルフの里付近の湖
所持金:8309G
 
 
エルフのさとのちかくのみずうみで ゆうしゃとせんしが はなしあっていた
みずうみには くびのながいこがたのドラゴンが およいでいる……

水竜「キュー……」

戦士「……地下水道まで移動する際、こいつらに乗ればいいのか」

勇者「ああ。地下水道の入り口に到着後、水竜から降りて砦に潜入することになる」

戦士「確かにここいらの水竜は里の調教師が躾けているが……竜王軍の水竜に偽装するとはな」

勇者「輸送部隊が乗るような地竜を用意する手もあったが、この付近には生息していない」

勇者「作戦決行は三日後。あまり準備に時間を取られるわけにもいかない」

勇者「今回の作戦はあくまで潜入と人質の救出だ。無用な戦闘は極力避けたい」

戦士「なるほどな。その意見には同意だ」

勇者「……君が私のパーティに加わってくれてありがたい。選考の手間が省けた」

戦士「我々エルフとしても長老の救出は急務だ。協力しない手はない」

勇者「そうか。協力を感謝する」

戦士「礼は成功してから言え。長老が無事かどうかさえ不明なんだ」

勇者「それでもだ」

戦士「……ふん。聞いた通りの男だな、お前は」

勇者「私のことを誰かに聞いていたのか?」

戦士「いや……その、僧侶殿に聞いたのだ」
 
768 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/19(金) 23:17:47.91 ID:y8B0yGqj0
 
勇者「僧侶が、か」

戦士「ま、まあな。彼女はお前のことを詳しく教えてくれた」

戦士「それでだな、お前にも聞きたいことがあるのだが……」

勇者「なんだ?」

戦士「……そ、僧侶殿について、教えてほしいのだ」

勇者「僧侶について……?」

戦士「そうだ。趣味であるとか、好みであるとか……そういうことを……」

勇者「何故だ?」

戦士「と、特に深い理由はないぞ? だが短い間とはいえ、パーティとして行動を共にするのだから」

勇者「確かに、お互いのことを知っておくことは大事だ。パーティの連携は作戦の成否にも関わる」

戦士「そうだろう? だからだな、その……彼女について、教えてほしいと」

勇者「本人から直接聞けばいいのではないか? その方が相互の親睦を図る意味でも……」

戦士「む……それはそうだが……いいや、そう、俺は慎重に段階を踏んでいてだな」

勇者「段階?」

戦士「そうだ。将を射んと欲すればまず馬を射よ、と言うではないか」

勇者「少々違う気もするが」

戦士「それに、知り合って間もないのにあれこれ詮索したら、彼女も訝しく思うだろう」

勇者「ふむ……まあ、別に私も、僧侶について話すことは吝かではないが」
 
769 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/19(金) 23:18:36.92 ID:y8B0yGqj0
 
勇者「彼女は私の元同僚で、王立魔法研究所にいた時に色々世話になった」

戦士「ほ、ほう。なかなかインテリなのだな、彼女は」

勇者「彼女は別の研究室だったが、魔法薬の資料を探しに図書館に行った時に知り合った」

勇者「当初はあまり会話もなかったし、ただの顔見知りという程度だったが……」

勇者「ある時期を境に、よく私に話しかけてくるようになった」

戦士「なにっ!? そうなのか!?」

勇者「理由はよくわからなかったが……今では良き友人関係を結べたと思っている」

戦士「む、むぅ……」

勇者「私が勇者に任命されて旅に出てからは疎遠になっていたが、竜王の反乱によって情勢が急変」

勇者「王都に戻っていた時に再開し、彼女が私のお供に志願したことで現在に至る」

戦士「そうか……彼女がお前のお供になった経緯はわかった」

勇者「……本当なら、私は僧侶をお供にするつもりはなかったのだが」

戦士「どういうことだ?」

勇者「確かに彼女は、僧侶の職を修めたことで多くの回復・補助系呪文を覚えている」

勇者「魔法薬学を専攻していたこともあり、薬草などに関する知識も豊富だ」

勇者「しかし彼女は戦闘員としての訓練を積んだわけではない。あくまでもただの研究員だ」

戦士「まあ、確かに彼女は可憐で……いや、戦いができるようには見えんが……」

勇者「結局は彼女の熱意に押し切られる形となったが、この判断が正しかったか確信が持てていない」
 
770 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/19(金) 23:19:53.93 ID:y8B0yGqj0
 
戦士「何を迷うことがある? お前も一人の戦士ならば、女子供を護ってやらねば」

勇者「私は勇者だが」

戦士「そんなことは関係ない。俺ならば……その、彼女一人護るくらいはわけもない」

勇者「私には、私個人にできうる範囲のことしかできない。誰かを守りながら戦えるものだろうか」

戦士「何を弱気なことを……人間の勇者といっても、案外情けない奴なのだな」

勇者「情けない、か。そうかもしれないな」

戦士「……これはまた、あっさりと認められるものだな?」

勇者「どんなに言葉を費やして言い繕ったところで、事実は覆らないからな」

戦士「事実だと?」

勇者「勇者は王宮の勅命を受けて活動するエージェントだ。国王に逆らえるほどの権限などない」

勇者「活動上、必要ならば勇者特権を行使することもできるが……」

勇者「それも王宮の権威を笠に着ているにすぎず、決して私の力というわけではない」

勇者「結局のところ、勇者といえども様々なしがらみがあり、それを越えることもできない」

勇者「私にできることは王宮が許可した範囲内のことであり、私個人の力の範囲内でしかないんだ」

戦士「……勇者というのは、もっと自由な存在かと思っていたが」

勇者「残念だが、勇者も王国を運営する大きな枠組みの中の一部でしかない。そして僧侶も」

勇者「私のお供に志願するということは、自らその枠組みの中に収まるということに他ならない」
 
771 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/19(金) 23:20:58.91 ID:y8B0yGqj0
 
戦士「……魔王討伐の大義の下で、僧侶殿も王宮に操られる駒になるというのか」

勇者「そうだ」

戦士「……それが人間の社会というものか……」

勇者「……僧侶も私のかけがえのない友人だ」

勇者「彼女が勇者のお供としてどのような役割を与えられるのかわからないが……」

勇者「彼女はあくまでも、ただの一般人だ。少なくとも数週間前まではそうだった」

戦士「そうだろうな。戦場の似合う女性ではないことは確かだ」

勇者「僧侶のような無関係の人間を巻き込まないよう、厳しい態度を取るべきと思っていたのだが」

勇者「彼女をお供にすることを認めてしまったのは、私のミスだったかもしれない」

戦士「……だが、そうなってしまったからには、命を賭けて僧侶殿を護るべきだ」

戦士「少なくとも俺ならばそうする。お前のように責任逃れの詭弁を弄したりはしない」

勇者「……君は強いな。そのように結論できるとは」

戦士「ふん! お前のような奴におだてられたところで、嬉しくもなんともない」

勇者「……今回の作戦は潜入作戦だが、最悪の場合、竜王と戦うことになるかもしれない」

戦士「……?」

勇者「私は勇者として任務遂行を優先せざるを得ないが、もし私にもしものことがあったら」

勇者「その時は僧侶のことを頼みたい。君になら任せられそうだ」

戦士「い、言われるまでもない! 俺を誰だと思っているのだ」
 
772 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/19(金) 23:22:19.21 ID:y8B0yGqj0
 
そのとき みずうみちかくのもりから そうりょがあるいてきた……

僧侶「あの……勇者さん……」

戦士「そ、僧侶殿!」

勇者「どうしたんだ? 里で休んでいるように言ったのだが」

僧侶「いえ……なんだか……一人だと落ち着かなくて……」

勇者「そうか。今しがた、戦士と作戦のことを話していたところだ」

僧侶「そう……だったんですか……?」

戦士「あ、ああ……大丈夫だ。僧侶殿は、気高きエルフの戦士であるこの俺が護ってみせるぞ!」

僧侶「え……? あ、ありがとう……ございます……」

戦士「だ、だからだな、僧侶殿は安心して」

勇者「僧侶。潜入時にはあの水竜に乗って地下水道まで移動するから、今のうちに慣れておいてくれ」

僧侶「え……!? あ、あれに……乗るんですか……?」

勇者「よく躾けられているから噛みつかれたりはしない。乗り方に少々コツはいるが……」

僧侶「む……無理です……! 怖い……です……」

戦士「恐れることはないぞ、僧侶殿。な、なんなら、俺が乗り方を教えよう」

僧侶「で、でも……その……」

水竜「キュー?」

僧侶「ひっ……!」

水竜「キュキュキュキュ……キョエー!」

僧侶「いやぁぁぁぁぁ……」

水竜「キュー」
 
773 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/19(金) 23:23:48.99 ID:y8B0yGqj0
しばらくは嫌なフラグを立てまくる作業に終始しそうな、そうでもなさそうな。
魔王はもう一発くらい痛い目に遭う予定ですが作者のテンションによります。
774 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/08/19(金) 23:25:34.36 ID:NUex3YuAO
乙です。
ハラハラしますな……
775 :お題「うっかり着替えを覗いちゃう」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/20(土) 00:36:46.27 ID:jGwE55a+0
 
――――――――――
20年前
魔界・獣王領
 
 
ザァァァァ……

そのひ じゅうおうりょうのもりに どしゃぶりのあめが ふりそそいでいた
おおきなきのみきのなかで だいさんおうじとじゅうきが あまやどりをしていた……

第三王子「……」

獣姫「……」

第三王子「……やまないなぁ、雨」

獣姫「そうね」

第三王子「獣姫ちゃん、悪いね。オレがこんな奥まで行かなけりゃもう少し早く帰れたのに」

獣姫「ホントよ。ま、目当てのモノは手に入ったから許してあげる」

第三王子「そりゃ重畳。獣姫ちゃんに嫌われたら、オレどうしたらいいか」

獣姫「女の子なら誰でもいいくせに」

第三王子「まあまあ。オレは確かに女の子が好きだけど、節操なしってわけじゃないぜ?」

獣姫「はいはい」

第三王子「獣姫ちゃんは特にチャーミングだし、声だって可愛い」

獣姫「この前、似たようなことを竜姫さんに言ってなかった?」

第三王子「え? そうだっけ」

獣姫「ホラ、これなんだから」
 
776 :お題「うっかり着替えを覗いちゃう」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/20(土) 00:38:51.02 ID:jGwE55a+0
 
ザァァァァ……

第三王子「……」

獣姫「……」

第三王子「……今頃、獣王子とかどうしてるかなぁ」

獣姫「心配……してると思う。パパって結構親バカだし、兄さんも私のこと大事にしてるから」

第三王子「気が重いなぁ。獣王にどやされちまうぜ」

獣姫「魔王の一族の人にハッキリ物が言えるなんて、今はパパや竜王くらいかもね」

第三王子「まあね。海王は海底神殿から出てこないらしいし、機械王はああだし」

獣姫「第三王子様は兄さんと仲がいいし、パパ的には息子がもう一人増えたみたいなんじゃない?」

第三王子「息子ぉ? オレが?」

獣姫「うん。兄さんはあの通り真面目で努力家でファザコンだから、手がかからないし」

獣姫「パパ、実は第三王子様みたいな出来の悪い息子っていうのに憧れてたとか」

第三王子「おいおい……オレ、仮にも魔王の倅だぜ? モテる以外に取り柄のない三男坊だけど」

獣姫「そのモテる以外に取り柄のない三男坊だから、毎日遊び暮らしていられるんでしょ?」

第三王子「それはまあ……そうなんだけどさ」

獣姫「……でも、ありがと。今日はあたしのワガママに付き合ってもらっちゃって」

第三王子「お安いご用さ。でも目当てのモノは手に入ったって言ってたけど、何を探してたんだ?」

獣姫「これよ」サッ
 
777 :お題「うっかり着替えを覗いちゃう」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/20(土) 00:40:01.49 ID:jGwE55a+0
 
じゅうきは ふところから ちいさなたねをとりだした!

第三王子「これって?」

獣姫「この辺りに生える樹の種よ。ちょっと見つけるのに苦労したけど」

第三王子「どういう樹なんだよ? ていうか、市場で苗木とか買えばいいのに」

獣姫「これはね、酒のなる樹なの」

第三王子「酒のなる樹?」

獣姫「木の実から果汁を絞ってそれを濾過すると、ほのかに果実の香りがする蒸留酒みたいになるの」

獣姫「育てる土地の土壌とかによって味や香りが変わるし、種から育てると美味しくなるらしいのよ」

第三王子「へぇ、そんなのがあるんだ……獣姫ちゃんってそんなに酒好きだったっけ」

獣姫「違うわよ。これは、パパへのプレゼント」

第三王子「獣王への?」

獣姫「うん。パパはお酒好きだし、地上に出てて魔界にいないことも多いから」

第三王子「獣王が魔界に帰った時の楽しみを用意してやるわけだ」

獣姫「そういうこと……くしゅんっ」

じゅうきは ちいさく くしゃみをした

第三王子「大丈夫? 雨に濡れたし、身体冷えちゃったかな?」

獣姫「そうかも……」

第三王子「とりあえず火を起こして暖を取ろう。君に風邪なんか引かせたら獣王に殺されちまうよ」
 
778 :お題「うっかり着替えを覗いちゃう」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/20(土) 00:40:46.03 ID:jGwE55a+0
 
獣姫「でも、このまま濡れた服を着てても……」

第三王子「あ、そうか。う〜ん……じゃあ服を乾かそう。脱いでくれる?」

獣姫「脱いで、って……ムードもへったくれもないわね。もう少し気の利いた言い方できない?」

第三王子「べ、別に変な意味じゃないって! ただ乾かすだけだし」

獣姫「わかってる。あたしを襲おうなんて甲斐性が第三王子様にあるわけないし」

第三王子「そこまで言われるとちょっと釈然としないなぁ……男は狼なんだぜ?」

獣姫「あたしの知る限り、そんな目をした狼はいないと思うけど?」

第三王子「どんな目だって?」

獣姫「構ってもらいたがりの子犬みたいな目」

第三王子「バカ言っちゃいけないよ。オレみたいなモテモテくんの優しくも荒々しい……」

獣姫「はいはいワロスワロス」

じゅうきは ぬれたふくを ぬいだ
だいさんおうじは じゅもんをとなえ ちいさなひをおこした!

第三王子「とりあえずオレの上着でも羽織ってて。すぐ乾かしちゃうからさ」ファサッ

獣姫「ありがと、第三王子様。でもそんなすぐに乾かせるの?」

第三王子「火と風の魔法で熱風を当てればすぐさ。うまくできるかはわからないけど」

獣姫「服を焼いたら弁償してもらうわよ。それお気に入りなんだから」

だいさんおうじは じゅうきのふくをひろげ じゅもんをとなえた!
ねっぷうが じゅうきのふくに ふきつけられる!
 
779 :お題「うっかり着替えを覗いちゃう」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/20(土) 00:41:36.30 ID:jGwE55a+0
 
ザァァァァ……

それからしばらくのあいだ だいさんおうじとじゅうきは 
せなかあわせになって ふくがかわくのをまっていた……

獣姫「……ねぇ。あたし今、下着だけなんだけど」

第三王子「えっ? ああ、うん。大丈夫、もうすぐ乾くから」

獣姫「その上から第三王子様の上着だけ羽織ってさ。ちょっとエロくない?」

第三王子「なっ、じ、冗談やめなよ。オレだからいいようなものの」

獣姫「あら? 男は狼なんじゃなかったっけ。とんだヘタレだわ」

第三王子「オレみたいなイケメンは紳士でもあるから、女の子のことは大事に扱うんだよ」

獣姫「ヘタレ」

第三王子「紳士」

獣姫「紳士という名のヘタレね」

第三王子「ヘタレという名の紳士だよ」

獣姫「……第三王子様はあたしに手を出そうと思わないんだ?」

第三王子「いい加減付き合いも長いからさ。獣姫ちゃんはオレにとっても妹みたいなもんだよ」

第三王子「いや、別に獣姫ちゃんに魅力がないわけじゃなくて? こう、なんて言うんだろ……」

獣姫「……もういいわよ。で、どう?」

第三王子「へ?」

獣姫「服。乾いた?」

第三王子「あ、ああ。そろそろ大丈夫かな」
 
780 :お題「うっかり着替えを覗いちゃう」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/20(土) 00:42:11.39 ID:jGwE55a+0
 
じゅうきは だいさんおうじからふくをうけとると そのばできがえはじめた……

獣姫「……」

第三王子「……」

獣姫「……ねぇ。そっちはどうなの? 最近」

第三王子「どうって、何が?」

獣姫「あなたのお兄さんが新しい魔王になってしばらく経つけど、どうだって聞いてるの」

第三王子「ああ……上の兄貴はとんだバトルマニアだからさ。今すぐにでも地上に侵攻しそうな勢い」

第三王子「下の兄貴がなんとか押し留めてるけど、こっちも根っこじゃ戦いが好きだから」

獣姫「……あたしもね。戦いに出ようかって考えてるの」

第三王子「獣姫ちゃんが?」

獣姫「前の魔王様が倒されてからこっち、色々情勢も不安定でしょ」

獣姫「パパだってあちこち飛び回って忙しそうだし、兄さんだって獣王軍に入って戦うって」

獣姫「あたしだけ何もしないっていうのも、なんかね。こう見えてもそこそこ鍛えてるし……」

第三王子「……ダメだ」

だいさんおうじは ふりむいて じゅうきにむきなおった
じゅうきのほそいかたをつかみ じっと めをみつめた……

獣姫「だ、第三王子様?」

第三王子「君が戦いに出ることなんかないよ。おばさんだって心配するだろ?」

獣姫「そ、それはそうだけど、でも……」

第三王子「……オレ、獣姫ちゃんが怪我したり、ましてや死んだりするなんて……そんなの嫌だよ」
 
781 :お題「うっかり着替えを覗いちゃう」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/20(土) 00:42:50.25 ID:jGwE55a+0
 
獣姫「……」

第三王子「大体……オレに言わせりゃ、兄貴達は異常だよ。戦うことが好きだなんてさ」

獣姫「異常だなんて……そんな言い方」

第三王子「他人を傷つけたり殺したりしてショックを受けないのは異常者だけだよ」

獣姫「第三王子様はそういう家系の生まれじゃない」

第三王子「だからってその通りになる必要なんかないだろ。オレも、君も」

獣姫「……あたしはパパや兄さんの役に立ちたいの」

第三王子「だったら怪我とか病気とかせずに元気にいればいい。その方が喜ぶよ」

獣姫「……第三王子様は今、魔族の、しかも魔王の一族の者として相当に変なこと言ってるわよ」

第三王子「オレだけがまともで、兄貴達がおかしいのかもよ」

獣姫「それは詭弁よ。第三王子様が戦いたくないから言ってる言い訳」

第三王子「それでもいいよ。獣姫ちゃんを説得するために言ってるんだから」

獣姫「……」

第三王子「……」

獣姫「……まったく、第三王子様ってば。たまに真剣になったかと思えばこうなんだから」

第三王子「オレはいつでも真面目さ。女の子のことを考えてる時なんか特にね」

獣姫「バッカみたい」

第三王子「よく言われるかな。主に竜姫ちゃんに」
 
782 :お題「うっかり着替えを覗いちゃう」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/20(土) 00:43:53.43 ID:jGwE55a+0
 
獣姫「で、いつまで見てるわけ?」

第三王子「へ?」

獣姫「あたし、着替えの途中だったんだけど」

第三王子「あ……ご、ごめん!」

獣姫「許さない、絶対にだ」

第三王子「えぇ!? ちょ、ホントごめん! この通り!」

獣姫「……でもまあ、その熱意に免じてヘタレっていうのは撤回してあげようかな」

第三王子「え……?」

獣姫「あ。見て、第三王子様。もうすぐ晴れそうよ」

そとをみると あめあしもよわまり とおくのそらに はれまがのぞいていた……

第三王子「おっ。やっと帰れるっぽいなぁ」

獣姫「パパに着替えを覗かれたってチクられたくなければ、何か御馳走して。お腹減っちゃった」

第三王子「そ、そんな密告されたらマジで殺されちゃうよ……わかった。今度奢るよ」

獣姫「今度じゃダメ。今日、帰ったらすぐね?」

第三王子「……うん。わかった。獣姫ちゃんには負けるなぁ」

それまでのどしゃぶりが うそのようにはれわたり 
まかいのそらに にじがかかったのは それからまもなくのことだった……
 
783 :お題「うっかり着替えを覗いちゃう」 ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/20(土) 00:45:23.58 ID:jGwE55a+0
 
――――――――――
 
 
まおうは ゆっくりと めをあけた……

猫忍者「にゃっ? 魔王様、起きたのかにゃあ?」

魔王「え? ……ああ……」

まおうは じしつのベットで よこになっていたが 
じぶんのめに なみだがにじんでいたのに きづいた……

魔王「さっきの……夢……?」

猫忍者「どうしたんだにゃあ? 寝ている最中に泣くなんて、どんな夢を見たのにゃ」

魔王「……ッ!」

まおうが さっきまでのこうけいが なつかしいゆめだったと じかくすると
とめどなく なみだがあふれてきた……

ねこにんじゃが そばであわてふためくのもかまわず まおうは ただ なきじゃくっていた……
 
784 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/20(土) 00:46:29.43 ID:jGwE55a+0
並行してお題を消化しようとすると続き投下が遅くなることはわかっているのにお題を募集しようとする。
これが人のサガか……
785 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/08/20(土) 02:18:53.45 ID:XZCKOu/xo
乙。 今となっては遠い日々、か… かなしぃのぉ。
786 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) :2011/08/20(土) 03:30:38.45 ID:8QdqmVOAO


勇者にも魔王にも嫌なフラグがビンビンだが大丈夫か?
787 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/20(土) 05:02:13.21 ID:8AL2olMio
>>786
お前のおかげで良いSSを見つけたよ
788 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/08/21(日) 03:21:04.93 ID:lrvMNQF80
だがsageろバカ
789 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/08/21(日) 12:16:18.86 ID:0f+lRqQSo
はよ
790 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/21(日) 15:52:53.28 ID:Md1Z7sqAO
勇者:死亡フラグ
魔王:闇落ちフラグ
ですね、わかります
791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2011/08/21(日) 18:01:38.11 ID:P7i4bf+Oo
(´・ω・`)はよおおおおあ
792 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/08/21(日) 18:07:02.29 ID:bnz3Whrio
顔文字付けて可愛くしても、催促は遠慮したほうがいいんじゃないかな? 

作者さんのペースで投下するのが一番だろうし…
793 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/21(日) 22:14:29.40 ID:v8zSu74do
>>792
同意
794 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/22(月) 21:48:30.94 ID:r6v/WZHS0
やっと追いついた、続き楽しみ。
795 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/22(月) 22:51:17.57 ID:vFczrN0AO
獣姫ちゃんも満更でもなさそうだった辺りが辛いな
第三王子時代に手をつけておけばよかったものを……
796 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/08/23(火) 07:00:31.51 ID:bbpD9/ALo
魔王にはあと一回痛い目にあってもらうってのが怖すぎる
確実に魔王として覚醒するじゃないですか
797 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/25(木) 20:59:49.36 ID:R7IVg25h0
 
――――――――――
同日
魔王城・地下
 
 
まおうは そっきんにつれられて まおうじょうのちかふかくにある
ぎしきのさいだんへと あるいていた……

カツン……カツン……

魔王「……結構歩くんだなぁ」

側近「ええ。最深部は地下8階ですから」

魔王「へぇ……じゃあ、昔は魔王の部屋なんてのはそこにあったんじゃないか?」

側近「何故そう思われるのです?」

魔王「なんとなくさ。ボスってのは一番奥でどっしり構えてるもんだろ」

側近「残念ながら、私の在任中にそのようなことはありませんでしたが」

魔王「あ、そ……」

側近「ですが、魔王という存在はある種、この魔界に語り継がれてきたものです」

魔王「語り継がれてきたもの?」

側近「魔王は単なる制度や体制としてではなく、支配者としての在り方をも受け継がれてきました」

側近「世代を重ねるうちに、選択され、淘汰されてきた情報もあるのでしょう」

側近「もしかすると、古い時代の魔王は、この地下深くに部屋を持っていたのかもしれません」

魔王「それが後になって、やっぱりやめにしようってことになったって?」

側近「ええ。それはその時代の者にしかわからないことではありますが」

ギィィィ……ガシャン
 
798 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/25(木) 21:00:45.85 ID:R7IVg25h0
  
魔王「……やっと着いた。しかし、なんだってこんなところに祭壇なんか作るんだろうな」

側近「ここが魔王城の中で最も魔力が集まりやすい場所だからでしょう」

側近「本来であれば地脈を通って地中を循環するエネルギーがここに滞留し、魔力溜まりとなります」

側近「そうした場所には強い魔術的意味が生じます。儀式などの場には……」

魔王「そういう講釈はやめてくれ。オレに何かさせるつもりでここまで案内したんだろ」

側近「ええ、そうでした。魔王様をここに案内したのは他でもありません」

そっきんは さいだんのしょくだいにひをともし はこから ひとふりのつるぎをとりだした

そのつるぎは さやにおさまっていてなお まがまがしいまりょくを ふりまいている……

側近「これから、魔王継承の儀を執り行います」

魔王「はぁ?」

側近「あなたが魔王の座を継いだ際には、略式の戴冠の儀しか行いませんでしたから」

魔王「ちょっと待ってよ、なんでそんなことを今更……」

側近「必要なことですので」

魔王「……おい。ふざけてるんならオレは戻るぜ」

側近「いいえ、ふざけてなどいません。これこそ先々代の御遺志です」

魔王「親父は別にマナーとか形式にこだわる奴じゃなかったぞ」

側近「とにかく、これを」

そっきんは まおうに つるぎをてわたした!
 
799 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/25(木) 21:01:36.05 ID:R7IVg25h0
 
魔王「こいつは、親父や兄貴が使ってた……」

側近「ええ。初代魔王の時代より受け継がれてきた魔剣です」

魔王「デザインが古臭くてダサいと思ってたけど、まさかオレの手に渡るなんてね……」

側近「これからここで、あなたはある方とお会いになります」

側近「その方との対話によって、あなたは自分が魔王として何を目指すべきかを知るでしょう」

魔王「……いや、さっきから側近くんが何を言ってんのかわけわかんないんだけどさ」

魔王「今頃になって継承の儀なんかやろうって言うのもそうだし、それが親父の遺志とかなんとか」

側近「では、私はこれで」

魔王「おい!」

側近「私はしばらくしたら戻って参りますので、ごゆるりと」

魔王「だから待てって! 説明を……」

ギィィィ……バタン

とびらは かたくとざされ そとからカギがかけられた!

魔王「〜〜ッ!」

ガァン!

まおうは いかりにまかせて とびらをけりつけた!

魔王「……クソッ、なんなんだよ。ろくな説明もしないで、側近くんのくせに生意気だ」

魔王「大体、これから誰かと会うって言ったって、こんな地下深くに誰が来るってんだよ」

魔王「……継承の儀ってことは上の兄貴もこれをやったのか? 短気な兄貴がよく我慢……」
 
800 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/25(木) 21:02:39.53 ID:R7IVg25h0
 
そのとき まおうは はいごからきょうれつなまりょくをかんじた!

魔王「……ッ!?」

さいだんのひつぎのふたが カタカタとふるえ なかから こえがひびいてきた……

????「来たか……」

魔王「なっ……だ、誰だ!?」

ゆっくりと ひつぎのふたがずらされ なかかられいきがもれだしてくる……!

????「待っていたぞ……第三王子……」

魔王「待てよ。オレが第三王子だったのは兄貴が死ぬまでだぜ」

????「そうか……そうだったな。俺としたことが……」

ひつぎのふたが ゆかにおち にぶいおとをひびかせた!

ひつぎのなかによこたわっていたなにものかが ゆっくりとおきあがり
さいだんのうえに たちあがった……!

????「外に出るのもずいぶんと久しぶりだ……」

????「お前は変わらないなぁ、第三王子。もっとも、俺達魔族は数年くらいじゃ姿は変わらんが」

魔王「……おいおい、なんだよ。オレを揺さぶるにしたって、もう少しマシな人選があるだろうに」

魔王「なんでよりにもよってアンタなんだよ……誰が得するんだかわかんないや」

先代魔王「さあな。だがこれは、親父の仕組んだことだ……兄弟」

魔王「勘弁して欲しいぜ、まったく……なぁ、兄貴」

まおうは さやからつるぎをひきぬき かまえをとった!
 
801 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/25(木) 21:03:55.03 ID:R7IVg25h0
 
先代魔王「兄弟に剣を向けるのか? お互い積もる話もあるだろう」

魔王「ゾンビか幽霊か知らないけど、こんなところで兄貴に会うはずがないからね」

先代魔王「似たようなものだがな。まあ、この通り足はある」

魔王「……兄貴は死んだ。だから俺が魔王になんてなったんだ……どうして生きてるんだよ」

先代魔王「俺は死なん……と言いたいがな。生かされていたんだよ、俺は」

せんだいまおうは ゆっくりと さいだんからおりていく……

魔王「生かされていた?」

先代魔王「数年前の話だ。俺は反抗勢力の鎮圧に向かった時、奇襲に遭い瀕死の重症を負った」

魔王「……ああ。その時、俺は本国にいた。戦いに行くのなんてごめんだったし」

魔王「そこで上の兄貴も下の兄貴も死んだって聞かされた。すぐに葬儀が行われて……」

先代魔王「だが、俺は一命を取り留めていた。気がついた時には処置を施されここに運ばれていた」

先代魔王「第二王子はどうなったか知らんが、あいつも強かな男だ、生き延びているかも知れん」

先代魔王「因みに俺の治療をしたのは側近だ。治療というよりはネクロマンシーに近かったな」

魔王「……何故だ? どうしてそうまでして兄貴の死を偽装する必要があったんだ」

先代魔王「側近の話を信じるなら、親父の遺志ということになるがな」

先代魔王「親父は俺をいつまでも表舞台に立たせておくことをよしとしなかったのさ」

魔王「……また親父か。親父は何がしたいんだ、一体」

先代魔王「まだわからないか? 初めからお前が魔王の座に立つよう仕組まれていたんだよ」

先代魔王「親父はお前を後継者にするつもりだったのさ。俺ではなく、な」

先代魔王「俺は今日この時のために生かされた。親父の遺志を語るメッセンジャーとして」
 
802 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/25(木) 21:05:06.59 ID:R7IVg25h0
 
先代魔王「……魔王というのはな。勝手に死ぬことさえ許されない存在なんだよ」

先代魔王「そもそも継承の儀とは、先代の魔王が後任に自らの志を受け継がせることだった」

先代魔王「もっとも、魔族ってのは好戦的な種族だからな……安楽に魔王の任を終えることは稀だ」

先代魔王「だから時代を経るごとに、次第に継承の儀の形は変化していった」

先代魔王「魂だけ……あるいは肉体ごと強制的に生き永らえさせて、後任に自分の遺志を伝える」

先代魔王「そうまでしても、魔王ってものには語り伝えるべきことがあったんだよ」

魔王「それが、継承の儀ってものなのか? ……親父も?」

先代魔王「親父もそうするつもりだったようだが、そうはならなかった。何故だかわかるか?」

魔王「……親父が死んだのは、30年前の王国軍の魔王討伐遠征」

先代魔王「そうだ。親父が死んだ直後の混乱の中、親父の遺体の捜索も困難を極めた」

先代魔王「結果、遺体は発見できず蘇生もできずじまい。親父の墓には何も埋まっていない」

先代魔王「そして俺は親父の意図を知ることもなく、そのまま魔王の座を継いだというわけだ」

魔王「親父は初めからオレに魔王の座を譲る気だったってのか? ……どうして?」

魔王「自慢じゃないけどオレは弱いぜ? 兄貴達にはどうしたって敵わなかったし……」

先代魔王「……それだ、第三王子。お前が選ばれたのはな、お前が弱いからだよ」

魔王「どういうことだよ? 魔王ってのは強い方がいいんじゃないのか?」

先代魔王「ああ。その点、お前は最低最悪だ。人間みたいな価値観を持ち、女に現を抜かしてばかり」

先代魔王「この魔界の絶対的支配者として、魔王として求められる資質ではない」

先代魔王「……親父達の世代だったらな」

魔王「?」
 
803 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/25(木) 21:07:00.43 ID:R7IVg25h0
 
先代魔王「だが魔王として求められる資質、それを求める価値観なんてものは時代によって変わる」

先代魔王「親父はお前に魔王の座を渡すことで、時代を変えようとしたんだ」

魔王「時代を……変える……?」

先代魔王「お前の考え方は魔族としては独特だが、言ってしまえばある種人間に近い」

先代魔王「まったく、争うより愛し合おうだとか、実に下らん。陳腐なものだ」

魔王「そうかい? オレからすれば、喜んで戦いに行く兄貴こそバカみたいだったぜ」

先代魔王「だが、だからこそ、お前の治世で魔族と人間の関係に変化が訪れるかもしれないと」

先代魔王「親父はそう考えていた。少なくとも側近にはそんな風に説明されたな」

先代魔王「歴史の流れを変え、時代に変化を促す。お前はそのために後継者に選ばれたんだよ」

魔王「……親父の誇大妄想にしか聞こえないな。オレが時代を変えるなんてさ」

先代魔王「違う。親父の遺志だ。少なくとも、死んだ奴の考えであり、遺したことだからな」

魔王「……」

先代魔王「……さて。親父のメッセンジャーとしての役目はここまでにしておこう」

せんだいまおうは じゅもんをとなえた!
てのひらからあふれだすひかりが しゅうそくして ひかりかがやくつるぎとなった!

せんだいまおうは ひかりのつるぎを まおうにつきつけた!

魔王「……!」

先代魔王「ここからは私怨を晴らさせろ」

先代魔王「落ちこぼれの三男坊のために、三文芝居の端役をやらされた恨みをな」

魔王「……やっぱり? 兄貴ならそう来るだろうなって思ってたけどさ」
 
804 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/25(木) 21:08:09.63 ID:R7IVg25h0
 
先代魔王「他にもお前を殺さなけりゃならん理由はある」

魔王「はぁ? オレ、兄貴とそこまで関係は悪くなかったと思うけど」

先代魔王「側近の話じゃ、お前の心臓を抉り出して魔法的な方法で移植すれば俺は蘇れるらしい」

魔王「マジかよ……? 側近くんがそんなことを?」

先代魔王「ああ。俺はこの数年の間、ゾンビみたいな状態で死んだまま生き続けた」

先代魔王「自分の身体じゃないような、まるで覚めない夢を見ているような感覚だった……」

先代魔王「だがそれも今日まで。肉体の欠損を補うには、肉親であるお前の身体はうってつけだ」

先代魔王「……だから死ね。俺にお前の命をくれ。腑抜けたお前の代わりに魔王をやってやる」

魔王「……悪いけどお断りだね。オレにだって、まだやらなくちゃいけないことが山ほどあるんだ」

先代魔王「そうかい」

せんだいまおうは ゆかをけって はげしくきりかかってきた!

まおうは つるぎをもちあげ ひかりのつるぎのいちげきをうけとめた!

先代魔王「だったら力ずくだ。最初からそのつもりだったがな」

魔王「相変わらず……だなッ!」

ガキィンッ!

ひかりのつるぎをおしのけ まおうは バックステップできょりをとった!

せんだいまおうは ひさしぶりにみるおとうとのすがたに ニヤリと えみをうかべた……



せんだいまおうが おそいかかってきた!
 
805 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/25(木) 21:09:27.00 ID:R7IVg25h0
上の兄貴こと先代魔王の長話フェイズでした。
割と真面目に>>757のシナリオを考えていたりしますがとりあえずは本編完結に向かいます。
806 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/25(木) 21:48:23.19 ID:iSxFMEx5o
おつおつ

やー、賢者ちゃんと盗賊ちゃんが生贄に捧げられてたらどうしようかと思ってた
なにはともあれ魔王くん頑張れ、超頑張れ
807 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/25(木) 21:50:26.94 ID:NfL7TEhe0
>>805
808 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/08/26(金) 02:06:58.60 ID:K/cIHRLJo
>>805
乙ー 物語が終盤に差し掛かってきたねー 応援してます
809 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/26(金) 16:32:16.80 ID:XJ308s9to
>>805 乙>>757に期待してるww
810 :VIPにかわりましてNIPPEがお送りします [sage]:2011/08/26(金) 18:59:57.44 ID:Hv1b9MLAO
>>757を書くとしたら攻略対象キャラは何人くらいになりますか
賢者・盗賊・竜姫・僧侶は確定だとしてもワンチャン海王とか獣姫も入りますか
811 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/28(日) 22:28:21.55 ID:h2PpldqDO
勇者パートは面白いが、魔王パートは読む気がしない
812 :!ninja [sage]:2011/08/29(月) 07:33:59.22 ID:SfynPKeko
>>811
禿同
813 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/29(月) 10:09:09.52 ID:BRJVJX9wo
魔王パート楽しんでるけどね
814 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/29(月) 10:21:29.42 ID:gXQ3m2zw0
  
せんだいまおうは じゅもんをとなえた!
ひかりのつるぎのぞくせいがへんかし ほのおのつるぎへとかわった!

はげしくもえるほのおのやいばが まおうに おそいかかる!

魔王「くっ……!」

まおうは じゅもんをとなえた!
まりょくのかべが まおうのまえにそびえたち ほのおのつるぎをふせいだ!

先代魔王「小細工だな」

しかしせんだいまおうは ちからまかせに つるぎをふりぬいた!
まりょくのかべは おともなく くだけちった……

魔王「そういう兄貴は相変わらず――」

せんだいまおうは はげしくきりかかってきた!
そのとき まおうは ゆっくりとひだりてをもちあげた……

魔王「力押ししか能がないな!」

ひだりのてのひらに かくしてあったじゅもんが かいほうされる!

しきんきょりで ばくはつがまきおこる!
せんだいまおうに 57のダメージ!
まおうに 33のダメージ!

おたがい ばくふうにまきこまれ ふきとばされる!

先代魔王「チィッ……!」

魔王「ぐぅっ!」

まおうは すぐさま たいせいをたてなおした!
まおうは せんだいまおうにむけてはしりだし ふたたび じゅもんをとなえた!
 
815 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/29(月) 10:22:54.16 ID:gXQ3m2zw0
 
せんだいまおうのまわりに ひばしらがあがり はげしくもえあがる!
まおうは そのすきにちかづき こうげきをしかけた!
もえさかるほのおが ふたりのからだをこがしていく!

せんだいまおうに 41のダメージ!
まおうに 44のダメージ!

先代魔王「しゃらくさいッ!」

せんだいまおうは じゅもんをとなえた!
ほのおのつるぎのぞくせいがへんかし しんくうのやいばへとかわった!

ぼうふうがふきあれ ほのおのかべをふきとばす!

魔王「……やっぱり一筋縄じゃいかないか」

先代魔王「久しぶりだ、この感覚。こんな穴倉じゃ身体が鈍って仕方ない」

先代魔王「……しかし、何だ今のは? お前も攻撃の余波に巻き込まれているじゃないか?」

魔王「元々、無傷で何とかなるとは思っちゃいないからね」

先代魔王「ダメージを覚悟で全力の攻撃をぶち込み、短期決戦を狙うってところか……」

先代魔王「お前らしい浅知恵だが、まあ悪い手じゃない」

先代魔王「だが逆に言えば、そんな戦法に頼らざるを得ないほどに力量差があるということだ」

魔王「長期戦になればそりゃキツいけど、これなら……ッ!?」

たちあがりかけたまおうは とつぜんめまいをかんじ そのばにひざをついた!

魔王「お、思ったより……ダメージが、あったのかな……?」

先代魔王「いいや、違うな。お前の剣をよく見ろ」

魔王「……?」
 
816 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/29(月) 10:24:00.69 ID:gXQ3m2zw0
 
まおうのつるぎは とうしんにまがまがしいまりょくをみなぎらせ 
ときどき うめきごえのような おとをひびかせている……

先代魔王「そいつは一族に代々伝わる魔剣だ。側近から聞いているだろう?」

魔王「ああ……こんなダサい剣押し付けられていい迷惑だぜ……」

先代魔王「その剣は数多の戦士の屍で作られている。この魔界で散華していった奴らのな」

先代魔王「刀身に込められた魔力は、数え切れないほどの怨念の結晶でもある」

先代魔王「闘争と征服に明け暮れた、魔王一族の血塗られた歴史を象徴する逸品だよ」

魔王「吸い取られてるってのかよ……この剣に、俺の魔力が」

先代魔王「並みの奴なら、持つだけで魂を持っていかれる」

先代魔王「魔力の消費は倍以上だ。その分攻撃力は折り紙つきだが、いつまで持つかな?」

魔王「……なんでこんなとんでもないものを、後生大事に持ち続けてたんだか」

先代魔王「俺がお前を殺すのが先か、干からびて死ぬのが先か……」

先代魔王「ここはひとつ賭けでもするか? チップはお互いの命だがな」

魔王「なら……オレはオレに賭けるぜ!」

まおうは じゅもんをとなえた!

むすうのこおりのやいばが せんだいまおうに おそいかかる!

先代魔王「通用するかよ!」

せんだいまおうは じゅもんをとなえた!
しんくうのやいばのぞくせいをへんかさせ ふたたび ほのおのつるぎをふるった!

しゃくねつのほのおのかべが こおりのやいばを とかしきる!
 
817 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/29(月) 10:25:15.39 ID:gXQ3m2zw0
 
魔王「なら……!」

まおうは じゅもんをとなえた!
まおうのこうげきりょくが 2ばいになった!
まおうのすばやさが あがった!

魔王「これならどうだ!」

まおうは ひくいしせいでつるぎをかまえ とびだした!

先代魔王「甘いんだよ」

ガキィンッ!

まおうが するどくふりおろしたつるぎを せんだいまおうは やすやすとうけとめた!

魔王「なに……!」

先代魔王「急所狙いが見え見えだ、馬鹿が。ついでにこういうのはどうだ?」

せんだいまおうのてのひらから いてつくはどうが はなたれた!
まおうにかかっていた すべてのまほうのこうかが むこうかされた!

魔王「マジかよ!?」

先代魔王「そりゃあ……俺も魔王だからなッ!」

せんだいまおうは まおうのつるぎを はじきとばした!

魔王「ッ!?」

先代魔王「終わりだ」



せんだいまおうの こうげき!
つうこんのいちげき!

まおうに 151のダメージ!
 
818 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/29(月) 10:27:43.55 ID:gXQ3m2zw0
  
魔王「が……あぁ……っ!?」

ドサッ

まおうは あおむけにたおれこんだ!
そして はじきとばされたつるぎが ゆかにおちて かわいたおとをひびかせた……

先代魔王「おっと、やりすぎたか? ……まあ殺すのが目的なんだがな」

せんだいまおうは じゅもんをとなえた!
ほのおのつるぎのぞくせいがへんかし こおりのつるぎへとかわった!

先代魔王「さて、とどめを刺すか。そしてお前の心臓を抉り出し、俺は完全復活する」

魔王「ち……くしょう……」

先代魔王「いい表情だ。早く回復しないと死ぬぞ? させるつもりもないが」

魔王「この……ドSめ……」

先代魔王「……そうだ。冥土の土産にひとつ言っておいてやるとするか」

魔王「……?」

先代魔王「お前が連れてきた捕虜。勇者のお供だと言ったか?」

魔王「! ……何故、知って……」

先代魔王「側近から逐一報告は受けてるんだよ……そうだな。俺が完全復活した暁には」

先代魔王「あの女どもを可能な限り惨たらしく殺すとしよう。見せしめとしてな?」

魔王「!! てめぇ……! 兄貴!」
 
819 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/29(月) 10:30:06.38 ID:gXQ3m2zw0
 
先代魔王「考えつく限りの拷問を加えてやろう。早く殺してくれと懇願するまで……」

先代魔王「いや、それとも先に心を壊してやろうか? どちらにせよ容易いことだ」

魔王「や……めろ……!」

先代魔王「やめさせたかったら立て。俺を殺してみろ。さあ、どうした?」

魔王「クソッ……!」

先代魔王「あの女どもが死ぬとすればそれはお前が弱いからだ。お前の弱さのせいだ」

先代魔王「優勝劣敗、適者生存、弱肉強食……強い者が生き残る。それが魔界の摂理だ」

魔王「そんなもん……クソ食らえだ」

先代魔王「シンプルでいいだろう? 弱いということは、それ自体が許されがたい罪だ」

先代魔王「お前はそこから目を背けていたんだよ、第三王子」

先代魔王「お前はいつも自分の見たいものだけを見て、自分のしたいことだけをしていた」

先代魔王「魔王の座についてからもそれは変わらなかったようだがな……まったくお笑いだ」

魔王「オレは……兄貴みたいになりたくないだけだ……!」

魔王「自分の生き方は、自分で選んで……」

先代魔王「お前に自分なんてものがあるのか? そんなものは身を守るための言い訳だろう」

魔王「くっ……」

先代魔王「だが親父は、弱さが罪ではない時代が来ることを望んだ」

先代魔王「そしてそんな時代をお前が作ると思っていたようだが……とんだ見込み違いだな」
 
820 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/29(月) 10:30:38.05 ID:gXQ3m2zw0
 
魔王「じゃあ……」

先代魔王「ん?」

魔王「親父も、弱かったのか……? オレと同じで……」

先代魔王「さあな。晩年の親父は戦場で負傷し、既に不能者だった」

先代魔王「それでも人間ごときに遅れを取るはずはなかったが……まあ、それはいい」

先代魔王「何故なら、ここで全てが終わるからな。親父の遺志も、お前の命もだ」

せんだいまおうは こおりのつるぎを ふりかざした!

先代魔王「死ね」

こおりのつるぎが ふりおろされた!

魔王「――っ」



ザシュッ!
 
821 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/29(月) 10:33:06.09 ID:gXQ3m2zw0
 
先代魔王「……!」

魔王「……」

ふりおろされたこおりのつるぎは まおうのはなさきで せいしし
せんだいまおうのひだりむねに まおうのつるぎが つきささっている……

先代魔王「グッ……ガハッ……!」

よろよろとあとずさった せんだいまおうのてから こおりのつるぎがすべりおちた
こおりのつるぎはゆかにおちると おともなく しょうめつした……

先代魔王「何故……弾き飛ばしたはずの剣が……!?」

魔王「……遠隔操作で引き戻したんだ……オレの手元に」

先代魔王「なんだと……!?」

魔王「あれだけの怨念が込められた剣なら、呼べば応えるんじゃないかってね」

魔王「できるかどうかわからなかったけど、やらなきゃ死ぬからな……こっちも必死さ……」

先代魔王「く……ふふ……この土壇場でこれとは……見直したぞ、第三王子」

せんだいまおうは さいだんのきざはしにたおれこみ ちをはいた!
ふるえるてが こくうへとのばされ なにかをつかもうとしている……

先代魔王「二度目の死か……なかなかできる経験では……ないな……クク」

魔王「……」

先代魔王「ハハ……なんだ、第三王子? その顔は……」

魔王「え?」

先代魔王「いい表情だぞ? 心底ホッとしている……笑ってるんだよ、お前……」

魔王「な……!」

先代魔王「お前は……やはり魔王の血筋に連なる……男、だよ……」
 
822 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/29(月) 10:34:27.58 ID:gXQ3m2zw0
 
魔王「違う……! オレは、兄貴みたいにはならない!」

先代魔王「この俺に……勝ったと思うなよ、第三王子……」

先代魔王「お前は、この俺を……この兄を抹殺したんだ……」

魔王「……黙れ」

先代魔王「自分のために……身内を殺したんだ……そのことを忘れるなよ……?」

魔王「黙れ……!」

先代魔王「先に地獄で待っている……せいぜい長生きして……」

先代魔王「苦しみ……続けるんだな……」

せんだいまおうのてから ちからがぬけ しずかにおろされた……

魔王「……」

まおうは せんだいまおうのしを しずかにみとどけた……

そのとき かたくとざされていたとびらが おとをたてて ひらかれた!
まおうがふりかえると そこには そっきんのすがたがあった……

側近「終わりましたか、魔王様」

魔王「……側近くん」

側近「まずは傷の手当てを。大人しくしていてください」

そっきんは じゅもんをとなえた!
まおうのからだのきずが みるみるうちに いえていく……
 
823 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/29(月) 10:38:28.07 ID:gXQ3m2zw0
 
魔王「……っ」

まおうはしずかにたちあがると おぼつかないあしどりで でぐちへあるいていく……

側近「どちらへ?」

魔王「どこだっていいだろ……ついてくるなよ」

側近「剣は回収しておきます。後ほど届けさせますので」

魔王「いいよ。あれは兄貴にくれてやる。見知った奴と一緒なら、安心して地獄に逝けるだろ」

側近「わかりました」

魔王「……そうだ、側近くん」

側近「なんでしょう?」

魔王「オレの心臓を抉り出して移植すれば、兄貴が蘇るって話……」

側近「ああ、あれですか。あれは先代様を動かすための作り話ですが?」

魔王「作り話……?」

側近「心臓を移植することによる復活など有り得ません。そのような術は存在しませんから」

魔王「だったら、兄貴がオレを殺ったら、どうしてた?」

側近「先代様を操るためのマニュアルも用意しておりました。お聞きになりますか?」

魔王「……結構だ。くそったれ」

まおうはうつむいたまま ながいかいだんを ゆっくりとのぼりはじめた……
 
 
 
せんだいまおうを たおした!
 
824 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/08/29(月) 10:39:49.81 ID:gXQ3m2zw0
次回からいよいよ竜王の砦にスネークする予定
しかし「魔王に痛い目に遭ってもらおうキャンペーン」は長かった……
825 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/29(月) 16:23:43.92 ID:BRJVJX9wo
826 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/08/29(月) 18:08:29.15 ID:Y6khEdpdo
乙。俺は魔王パートも好きだぜ!

だが一番好きなのは僧侶パート
827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/29(月) 19:25:40.34 ID:7Wc32roAO

俺は竜姫パートを楽しみにしてるぜ
828 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/30(火) 07:39:20.20 ID:aQtVJ4iIO
勇者の話が見たい、それだけだ
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/30(火) 11:44:30.41 ID:R52tCk0AO
勇者は目標を決めたらそこに向かって一直線で、その能力もあるけど
良心の呵責とかそういうのが欠けていて非情にも外道にもなれてしまう
魔王は優しくてお人好しの好人物だけど、それは支配者の素質とは言えない
言い換えれば誰かや何かを捨てる覚悟が出来ていないということ

比較してみると好対照な二人だなぁ
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
830 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/07(水) 07:52:25.64 ID:Etg7K4ZIO
勇者まだかなC
831 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/12(月) 17:41:34.59 ID:quTZy3jIO
そっちもよろしくC
832 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2011/09/25(日) 12:42:48.70 ID:BqXSfWiv0
支援age
833 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage saga]:2011/09/25(日) 16:59:35.18 ID:WtVTcLEL0
>>832
ここの仕様も理解出来ないまま、自分の知る事だけが
「常識」だとしか認識出来ないお前は取り敢えず死ね

それが嫌なら最低でも5年はROMってろボケ!!
834 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/25(日) 19:35:52.23 ID:WP3VavRIO
まあもちつけ。

たゆまぬ支援C
835 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/26(月) 14:13:09.84 ID:9+3XBTtGo
東京は市ね
836 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/26(月) 19:53:59.46 ID:3SW74iYIO
東京の人気に嫉妬///
837 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/10/03(月) 16:12:32.46 ID:IvEtSWpAO
マダー
838 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/04(火) 01:25:41.75 ID:y/MFN4C7o
なんか魔王が好きになれない…
839 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/04(火) 07:31:15.04 ID:8apd1nVIO

勇者の活躍はまだかー?
840 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/14(金) 23:43:48.89 ID:JuOQ3VxZo
盗賊さんに会いたい……
841 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/10/19(水) 00:25:59.76 ID:U3rp6yeh0
 
――――――――――
二日後
竜王軍拠点・竜王の間
 
 
タッタッタッ……バタァン!

竜人A「り、竜王様!」

竜王「あん? どうした、血相を変えて」

竜人B「人間とエルフがついに動き出したんでさぁ!」

竜人A「奴ら、東側の平地と西側の川の両面に軍を展開していやす」

竜人B「既に小規模な遭遇戦が頻発していて、戦線は混乱してますぜ」

竜王「……なるほどな。そうか……思ったよりは早かったな」

竜王「で、向こうの数はどのくらいだ?」

竜人B「併せて10000ってとこです。特に魔法を使うエルフが厄介で……」

竜人A「今のところは竜騎兵の連中に抑えさせてますが、どうしやすか?」

竜王「まだ大した被害は出ていねぇんだろう。なら、まずは砦の守りを固めろ」

竜王「それから竜騎兵を呼び戻して、全員を飛竜に乗せて再出撃させろ」

竜人B「全員をですかい? しかし、騎兵隊だけじゃ数が足りねぇんじゃあ……」

竜王「敵に空の戦力はねぇ。少ない数で十分撹乱できるはずだ」

竜王「こっちにも段取りってもんがある。とりあえずは時間を稼げ。いいな」

竜人A「わかりやした!」
 
842 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/10/19(水) 00:27:01.18 ID:U3rp6yeh0
 
竜人B「竜王様はこれからどうなさるおつもりで?」

竜王「俺はこれからジジイの尋問の続きだ」

竜人A「しかし、野郎はどれだけ痛めつけてやっても口を割らなかったじゃねぇですか」

竜王「だから奴を呼びつけたんだろうが。奴は到着したか?」

竜人B「へい。はるばる本国から、つい数時間前に……」

竜王「ならいい。さっさと持ち場につけ」

竜人B「わかりやした」

ザッザッザッ……

ピタッ

竜王「……いや。お前ら、ちょっと待て」

竜人A「へい? なんでしょう、竜王様」

竜王「砦の中の見張りを増員しろ。地下にも何人か向かわせるんだよ」

竜人B「そりゃあ構いませんが……何かあるんですか?」

竜王「なに、少しな……用心に越したことはねぇってことさ」

竜王「じゃあ、俺はあのジジイを可愛がってやるとする。お前らもうまくやれよ」
 
843 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/10/19(水) 00:27:38.09 ID:U3rp6yeh0
 
――――――――――
一時間後
竜王軍拠点・地下水道
 
 
ゴォォォォォォ……

ゴボゴボ……ザパァァァン
 
勇者「……潜入成功だな。見張りはいない」

勇者「陽動作戦はうまく機能しているようだ。竜王軍の目は外に向いている」

戦士「よし、砦の内部に入るぞ。一刻も早く長老を救わねば」

勇者「この作戦に失敗は許されない。時間の余裕がないのは確かだが、慎重を期するべきだ」

戦士「兵は神速を尊ぶ、だ。敵地にいるならばこそ、迅速に事を運ぶべきではないか」

勇者「とにかく、一旦砦の見取り図を確認して……ん?」

僧侶「ま……待って……ください……」バシャバシャ

水竜「キュー?」ペロペロ

僧侶「ひぅっ……あうぅ……」ジタバタ

勇者「大丈夫か、僧侶」

僧侶「は、はい……なんとか……」ザパァ

勇者「ずいぶんと水竜に懐かれたものだな。君には才能があるらしい」

戦士「だ、だが僧侶殿の顔を舐め回すとは、破廉恥な水竜め……」

水竜「キュー」ドヤァ……

戦士「……帰ったらきつく躾けておくよう、里の調教師に言っておくか」
 
844 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/10/19(水) 00:28:36.84 ID:U3rp6yeh0
 
勇者「だが、こんなところにまでその鞄を持ってこなくてもよかったんだぞ」

僧侶「い、いえ……大臣に、いつも持っているようにって……言われましたから……」

戦士「僧侶殿は真面目だな……まあ、心配することはない。この俺に任せておけ」

戦士「竜王軍など物の数ではない。僧侶殿の薄皮一枚とて傷つけさせぬことを約束しよう」

僧侶「あ……ありがとう……ございます……」

戦士「とにかくここから出るぞ。敵が陽動に気を取られている今が好機だ」

僧侶「砦の構造は……わかってるんですよね……?」

勇者「ああ。事前に情報は得ている」

ゆうしゃは とりでのみとりずを ひろげた!

勇者「見取り図によれば、長老が捕らえられている独房はここからかなり離れているようだ」

勇者「最短ルートはこの道だが、独房の前には見張りがいる。回り道をする必要があるな」

僧侶「でも……どこから行くんですか……?」

勇者「独房の上を通る通風孔がある。そこから侵入して長老を救出しよう」

戦士「だがそうなると、旅行鞄を持っている僧侶殿や、鎧を身に纏っている俺は難しいな」

勇者「独房への侵入は一番身軽な私が行う。君達には脱出ルートの確保を頼みたい」

戦士「わかった。長老の救出は任せたぞ」

僧侶「が……頑張ります……!」

勇者「よし。では、作戦開始だ」
 
845 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/10/19(水) 00:29:38.32 ID:U3rp6yeh0
 
――――――――――
竜王軍拠点・地下水道出口
 
 
ザッザッザッ……

サッ

僧侶「前の廊下に……見張りが二人……います……」

勇者「こんなところに見張りが? ……見たところ、今さっきここへやってきたようだが」

戦士「奴らを片付けるのは容易いが、どうする?」

勇者「無論、戦わずして無力化できればそれに越したことはない」

僧侶「なら……催眠呪文で……眠らせたり……?」

戦士「そんなもの、仲間を呼ばれる前に奴らを始末すればいいだけの話ではないか」

勇者「……少し待ってくれ。その前に情報収集だ」

ゆうしゃは コインをゆびではじき じゅもんをとなえた!
ゆうしゃのかんかくが とぎすまされ みはりのかいわがきこえてくる……
 
 
 
竜人α「……しかし、竜王様の命令とはいえ、なにもこんなところまで見張りをつけなくとも」

竜人β「竜王様の勘は当たる。だから俺達はあの方についているんだろうが」

竜人α「それはそうだが……」

竜人β「何もなかったらそれでよし。何事かあるならそれを未然に防げる。悪いことはないさ」
 
846 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/10/19(水) 00:31:17.54 ID:U3rp6yeh0
 
竜人β「まあ、そろそろ交代の時間だ。あともう少しの辛抱さ」

竜人β「ところで通風孔の蓋は開けておいたか? 掃除をするという話だったが」

竜人α「大丈夫だ、問題ない。ついでにネズミの駆除もやるらしいな」

竜人α「独房の天井の蓋も開けておいたが、まさか脱走を企てないかと心配だな」

竜人β「いや、あのエルフの長老も竜王様に相当可愛がられたからな。脱走など考えないだろう」

竜人α「何日も飲まず食わずでいられるのは流石と言うべきだな」

竜人β「いつまで持つか見物だな。口を割るのが先か、力尽きるのが先か……」
 
 
 
勇者「……」

僧侶「どう……でしたか……?」

戦士「奴らは何を話していたのだ、勇者」

勇者「……竜王は我々の陽動作戦に気づいている」

戦士「なに?」

勇者「砦内部の見張りを増員しているらしい。やはり竜族の王、侮れない男だ」

僧侶「これから……どう……するんですか……?」

勇者「とにかく、見つからないよう慎重に進むしかない。この砦の全戦力を相手にするのは不可能だ」

戦士「くっ……長老の救出が目的でなければ、今すぐにでも竜王に天誅を下してやるものを……」

勇者「彼らの話ではそろそろ交代の時間らしい。ここに身を隠して時機を待とう」

戦士「止むを得んな……今しばらくのうちは待つことにするか」
 
847 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/10/19(水) 00:31:59.48 ID:U3rp6yeh0
 
――数分後
 
 
カツーン……カツーン……

勇者「……動いたな。交代の者がやってきたようだ」

僧侶「また……二人です……」

戦士「ようやく来たか……よし、俺に任せろ。前の奴らが出ていった隙に片付けてやる」

勇者「待つんだ、焦りは禁物……」

戦士「お前のやり方は消極的に過ぎる。慎重も度を越せばただの臆病というのだ!」

バッ!

せんしは ものかげからとびだした!
みはりのりゅうじんたちは おどろきとまどっている!

竜人γ「な、何だ貴様!」

竜人δ「し、侵入者が……」

戦士「遅い!」

せんしは こしのさやからけんをぬき はやてのようにかけぬけた!

竜人γ「グッ……!?」

竜人δ「ガァァァ……!」

ちしぶきがとびちり りゅうじんたちは いとのきれたにんぎょうのようにくずれおちた!

りゅうじんγ・δをたおした!
 
848 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/10/19(水) 00:32:31.66 ID:U3rp6yeh0
 
戦士「どうだ、見張りは排除したぞ。これで上の階へ行ける」

勇者「……戦士。何故私の言うことを無視した」

戦士「俺達の目的は長老の救出し古代魔法の秘儀を守ること。事は一刻を争うのだ」

勇者「だが君の軽率な行動がパーティ全員を危険に晒すかもしれなかった。ここは敵地なんだぞ」

戦士「確かに俺は一時的にせよお前の味方になったが、お前の命令に従うなどと言った覚えはない」

戦士「俺はお前のお供でもなければ部下でもない! そこを勘違いしないことだな」

戦士「第一、俺がついてきたのは……僧侶殿が……」

僧侶「……?」

戦士「い、いやっ! なんでもない。とにかく先を急ぐぞ」

タッタッタッ……

僧侶「……戦士さん……大丈夫なんでしょうか……?」

勇者「……」

勇者(確かに私のやり方は慎重すぎるかもしれないが、彼のやり方もまた性急すぎる)

勇者(戦士の独断専行を掣肘できるとすれば僧侶だが……いや、よそう)

勇者(急ぎすぎさえしなければ戦士の力は頼りにできる。上手く操縦できるだろうか……?)

僧侶「あの……勇者さん……? どうか……しましたか……?」

勇者「……いや、大丈夫だ。問題ない」

勇者「それよりも先を急ごう。私達も戦士に追いつかなくてはいけない」

僧侶「はい……」

タッタッタッ……
 
849 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/10/19(水) 00:34:02.80 ID:U3rp6yeh0
 
――――――――――
同時刻
城下町・公園
 
 
ガヤガヤ……

竜姫「……はぁ。まったく、太陽が眩しくて憎たらしいわ」

竜姫「肌を隠すために黒衣を纏ってみたが、暑くてかなわぬ。この季節では目立つし……」

竜姫「とは言っても、生活必需品くらい買うておかねば困るしのう。どうしても外に出ねばならぬ」

竜姫「黒衣を纏うのを宗教上の理由ということにしても、いつまで誤魔化せるやら……」

竜姫「……勇者め、何をやっておる。わらわをずっと一人にしておくなど許されがたいことじゃぞ」

竜姫「父上などさっさと倒して戻ってこぬか。まったく……」

竜姫「……ん?」

りゅうきは ふと しゅういをみまわした
ひろばをふきぬけたかぜが かのじょのしっている においをはこんできた……

竜姫「この匂い……いや、まさかな」

竜姫「わらわも疲れておるようじゃ。よもやこのような場所で……」

竜姫「さ、早く買い物を終わらせて帰るとしようかの」

ザッザッザッ……
  
 
  
りゅうきが そのばをたちさったあと ひろばのかたすみにふたりのおとこがたっていた

くろずくめのかっこうをしたおとこたちの くちもとには
あおじろいはだと するどいキバがのぞいていた……
 
850 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/10/19(水) 00:37:27.49 ID:U3rp6yeh0
なかなか進まなくて申し訳ありません
実を言うとそろそろ勇者も酷い目に遭う予定です
851 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/19(水) 00:39:48.01 ID:AWhD4VqDO
みんな酷いめに合うね!
852 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/19(水) 01:07:56.27 ID:WAGQnhR7o
乙ッス!
853 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/10/19(水) 11:18:58.79 ID:CKNiuHm2o
メタルギアソリッドか
854 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/10/19(水) 12:50:55.74 ID:Sc+2KXb/o
乙。 勇者も酷い目か… 仲間脂肪とかかな。
855 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/20(木) 07:22:19.10 ID:meS/83bIO
読者も酷く待たされているが、こうやって投下の救いがある。問題ない。
856 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/10/20(木) 23:34:09.05 ID:2O/zymKno
この焦らしに快感を覚える様になってこそ真のなんちゃら〜

放置プレイとは絶対的な相手への信頼あってこそぜよ
857 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/21(金) 03:04:59.66 ID:lLA4HJMDO

酷い目か…賢者や僧侶の腰の入ったローキックや竜姫の下着洗濯しゃないのだけは確かだな
アレは御褒美だ
858 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/21(金) 14:04:59.92 ID:5vC+v/vIO
>>856
おまえ凄いな
SMの達人クラスみたいだwwww
859 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/21(金) 23:11:09.15 ID:cwzFPDJAO
賢者の腰の入ったいいローキックが懐かしい
860 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/11/16(水) 23:14:50.12 ID:VlE6wYrw0
 
――――――――――
竜王軍拠点・地下3階
 
 
ザッザッザッ……

戦士「……この階に長老が囚われているのか」

勇者「そうだ。情報が正しければ、長老はこの奥の独房に監禁されているはずだ」

勇者「先程の見張りの会話から、通風孔の蓋が開けられていることはわかっている」

勇者「メンテナンス用の出入り口から長老の独房へ侵入し、彼を脱出させるんだ」

僧侶「私達は……敵が来ないかどうか……見張っていれば、いいんですね……?」

戦士「急げよ。竜王軍の雑兵どもなど蹴散らすことは容易いが、一刻も早く長老を救わねばならん」

勇者「わかっている。私がいない間、僧侶を頼む」

僧侶「だ……大丈夫……です……! 足手まといには……なりません……から……」

戦士「い、いいや。そのようなことを僧侶殿が気にする必要はない。俺に全て任せておけ」

僧侶「でも……私は……」

戦士「勇者よ。お前もさっさと長老を助け出して来い」

勇者「ああ、可及的速やかに事を運ぼう。では、ここで待っていてくれ」

ザッザッザッ……
 
861 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/11/16(水) 23:15:43.74 ID:VlE6wYrw0
 
――――――――――
数分後
長老の独房
 
 
ゆうしゃは つうふうこうのなかを はってすすんでいった
そして しばらくすすんでいると ぜんぽうにひかりがさしこんでいるのがみえた……

………………

…………

……
 
 
 
ガタッ

長老「ッ! な、なんだ……?」

ガシャンッ

ゆうしゃは てんじょうのつうふうこうから どくぼうのなかへ おりたった!

勇者「……ふぅ。やはり、狭い通風孔の中を通るのは一苦労だな」

長老「だ、誰だ!」

勇者「エルフの里の長老だな」

長老「……いかにも、わしが長老だが」

勇者「私は勇者だ。あなたを助けに来た」

長老「……確かに、竜王の一味ではないようだな。噂に聞く人間の勇者とはお前のことか」

勇者「私のことをご存じとは光栄だ。しかし、今はここから脱出を」
 
862 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/11/16(水) 23:16:42.79 ID:VlE6wYrw0
 
長老「……ふん。わしを救い出しに来た、か……だがもう遅い」

勇者「遅い? どういうことです」

長老「わしを救う目的は、つまるところ古代魔法の秘儀を守るためだろうが……」

長老「……秘密は既に知られてしまった。竜王は古代魔法の秘儀を知ってしまったのだ」

勇者「……喋ったのですか?」

長老「奴らの拷問には耐えた。だが、よもやあのような……心を読む力があるなどと」

勇者「竜王軍に読心能力がある者がいると? 情報にはなかったが……」

長老「わしの頭の中から秘儀を読み取るため、本国から召喚したらしい」

長老「まんまと秘儀に関する情報を読み取られてしまった。こうなればわしはもはや用済み……」

長老「こんな、いつ始末されるかわからぬ老いぼれを救いに来たとて益はないぞ、小僧」

勇者「……長老。古代魔法の秘儀とは一体なんなのです?」

勇者「伝承によれば、古代魔法を極めし者は天地魔界を統べる力を得るといいますが……」

勇者「本当に、そのような力が得られるのですか? 私にはいまだに信じがたい」

長老「……言えぬ。竜王には知られてしまったが、お前達人間にまで秘密を漏らすわけには」

勇者「一介の学士としての興味がまったくないと言えば嘘になります。しかし」

勇者「秘儀を得た竜王を倒すためには、我々もその秘儀を知らなければならない」

勇者「敵がどれほど強大であれ、情報がなければ対策の立てようもない。違いますか、長老」
 
863 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/11/16(水) 23:19:14.96 ID:VlE6wYrw0
 
長老「……ここで聞いたことを決して口外せぬと誓えるか?」

勇者「保証はしかねます。勇者とはいえ、王宮の命令には逆らえません」

長老「ふん、正直な奴だ……まあいい。どのみち、一刻も早く竜王を討たねばならぬ」

長老「わしがお前に秘儀のことを話すのは、あくまでそのためだ。よいな」

勇者「承知しています」

長老「うむ……神話の時代に神々より伝えられた原初の魔法、それが古代魔法だ」

長老「だが実のところ、その多くは大なり小なり形を変えて、現代に受け継がれている」

長老「とどのつまり、古代魔法とは、今日の魔法のルーツであるというだけのもの」

勇者「確かに……以前、竜王が古代魔法を使ったのを見たことがありますが」

勇者「出力や制御系統に多少の違いはあるようですが、どれも再現可能なものばかりでした」

長老「……だが、我らエルフにのみ伝えられた禁断の術式も存在する。それが」

勇者「神域の禁呪とも呼ばれた、古代魔法の秘儀……というわけですね」

長老「そうだ。秘儀が門外不出のものとされたのは、他種族による悪用を防ぐため」

長老「覇権への欲に駆られた者達が秘儀をもって世界の理を捻じ曲げ、やがては破滅への道を辿る」

長老「それを防ぐために、長老をはじめ一部の者だけに伝えられてきたのだ」

勇者「……それで、その術式とは? 一体どんな魔法なのですか」
 
864 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/11/16(水) 23:22:09.45 ID:VlE6wYrw0
  
長老「古代魔法の秘儀……それは“時空渡り”の法だ」

勇者「時空渡り……?」

長老「そうだ。現在・過去・未来という、時間と空間そのものに干渉し、それを操ることができる」

勇者「……時間を操る魔法など、現代魔法学ではまだその糸口さえ見えないというのに」

長老「我々がそれを秘匿してきたからだ。欲望の力が世界の理を壊すと知っているからな」

長老「それを使えば、自分の肉体の時間を巻き戻すことで若返ることもできる。不老不死の実現だ」

長老「更に、自らを違う時空へ転移させることで、過去や未来の世界へ行くことができる」

勇者「……まさか?」

長老「そのまさかだ。竜王はおそらく、過去の世界を征服し歴史を変えるだろう」

長老「過去のどの時点で歴史を変えれば奴の望む世界になるかは誰にもわからんが……」

長老「とにかく、これは天地の法則に逆らった行い。どんな影響を及ぼすか想像もつかん」

勇者「……」

長老「このことは、あの呪文書に暗号化されて記されているが……」

長老「わしの頭の中から直接情報を引き出されたのなら、解読完了は時間の問題だろう」

勇者「……待ってください。それほどの魔法なら、扱うのに膨大な魔力が必要になるはず」

勇者「竜王がいかに強大な魔力を持っているとしても、到底賄えるとは思えません」

長老「いや。古代魔法の魔力源を考えれば、片道だけならなんとかなるはずだ」

勇者「魔力源……? 魔力は術者の精神エネルギーを変換するのではないのですか?」

長老「ああ。古代魔法における魔力とは、即ち……」
 
865 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/11/16(水) 23:23:11.45 ID:VlE6wYrw0
 
……! ……!

勇者「……!」

長老「なんだ、どうしたのだ」

勇者「外が騒がしい……まさか、戦士達が見つかったのか」

長老「なに? 戦士が来ているのか?」

勇者「はい。私のパーティの一員としてこの作戦に参加しています」

長老「里の守りを放り出して何をやっているのだ、まったく……」

勇者「見張りの敵兵も持ち場を離れている……やはり彼らが戦っているらしい」

勇者「……急ぎましょう。戦士達と合流してこの砦を脱出します」

長老「……うむ。だが、せめて呪文書だけでも取り返さねば」

勇者「我々にとっては古代魔法の秘儀の正体がわかっただけでも大きな前進です」

勇者「それに今の戦力はわずか3人。竜王を相手取るには不安が残ります」

勇者「情報は得た。後手に回ってしまうとはいえ、対策を立てることはできるはず」

長老「だが……」

勇者「今は一刻を争う時です。さあ、お早く」

長老「……致し方ない。では行こうか」
 
866 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/11/16(水) 23:24:07.75 ID:VlE6wYrw0
 
――――――――――
同時刻
竜王軍拠点・地下3階
 
 
キィン!

ザシュッ!

竜人ε「こ……こいつ、強いぞ!」

竜人ζ「軟弱なエルフに人間の小娘、ちょろいものだと思ったが……」

戦士「フッ……貴様ら雑兵では相手にならんな。竜王軍も大したことはない」

竜人η「おのれ、大口を叩きおって!」

僧侶「せ、戦士さん……! 私も……援護します……!」

戦士「無用だ。僧侶殿は俺が守る……何も心配しなくていい」

僧侶「で……でも……」

戦士「さあ、死にたい者から前に出ろ。まとめて片づけてやる」

竜人θ「何を寝ぼけたことを……たった一人でどれほどのことができる!」

竜人ι「ええい、構わん! 八つ裂きにしてやれ!」

戦士「僧侶殿には指一本触れさせぬ。勇者が戻ってくるのを待たず、貴様らは全滅だ!」

せんしは じゅもんをとなえ けんをゆかにつきたてた!
ちていからマグマがふきだし りゅうじんたちにおそいかかる!
 
867 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/11/16(水) 23:25:33.28 ID:VlE6wYrw0
 
しかし マグマのこうねつにさらされながら りゅうじんたちはへいきなかおをしている!

竜人ε「バカが! 俺達竜族にとっては、この程度のマグマはぬるま湯みてぇなものよ!」

戦士「知っているとも。だがこれならどうだ?」

せんしは けんからてをはなし よろいのせなかからおりたたまれたロッドをぬいた!

竜人θ「背中から新たな武器を……奴の鎧は全身武器の塊か?」

竜人ι「だがそんな棒切れが何になる!」

戦士「冥土の土産に教えてやろう。この鎧に隠された武器はすべて、杖と同じ魔力増幅効果がある」

せんしは ロッドにてをかざしてじゅもんをとなえた
こごえるかぜがふきあれ ゆかからふきだすマグマをみるみるうちにひやしていく!

戦士「最上級呪文でさえも最小限の魔力消費で放つことができる。このようにな」

なんと マグマがひえてかたまり りゅうじんたちのあしがうごかなくなった!

竜人ζ「な!?」

竜人η「う、動けん……!」

戦士「さらに、武器そのものに魔力を込めることで……!」

せんしのよろいのみぎうでのそうこうがはずれ なかからボウガンがあらわれた!
せんしは じゅもんをとなえ ぎんのやにまりょくをこめた!

戦士「貴様ら全員を消滅させるに足る破壊力を得るのだ!」

せんしは ぎんのやをはなった!
やははなたれたしゅんかん まばゆいひかりとなって りゅうじんたちをのみこんだ!
 
868 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/11/16(水) 23:26:33.47 ID:VlE6wYrw0
 
僧侶「きゃっ……!?」

ひかりがおさまったとき りゅうじんたちはきえうせていた……

僧侶「す……すごい……です……」

戦士「他愛もない……僧侶殿」

僧侶「は、はい……?」

せんしは そうりょにロッドをてわたした!

戦士「その鞄ひとつでは心許ないだろう。そのロッドを持っていろ」

戦士「先程見たように、術者の魔力を増幅し強化する効果がある。武器としても一級品だ」

僧侶「え……でも……戦士さんは……?」

戦士「この鎧は全身に武器が仕込まれている。ロッドのひとつやふたつ、どうということはない」

僧侶「そうなんですか……でも……あまり無理はしないで……ください……」

戦士「俺の心配は無用だと言ったはずだ。ま、まあ、悪い気はせんが……」

僧侶「……そういえば、勇者さんは……まだでしょうか……?」

僧侶「長老さんを助けに……行って……しばらく経ちますけど……」

戦士「ああ……それにしても、何故俺達の居場所がバレたのだ?」

戦士「ここは見張りの巡回コースからも外れていた。俺達の潜入も発覚していなかったはず……」

僧侶「……なにか……嫌な、予感が……します……」
 
869 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/11/16(水) 23:30:17.36 ID:VlE6wYrw0
最近はこのスレ→兵士スレ→文芸部の原稿という具合にローテーションしながら書いてます。
合間合間に遊戯王とかバトスピとかヴァンガードを挟むせいで遅くなってるのは確定的に明らか。
870 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/16(水) 23:34:14.29 ID:IUHhB1LXo
文芸部が分からん
なんてスレ?
871 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/16(水) 23:50:00.97 ID:b6w+DmRyo
乙乙!
たぶん部活の話じゃないか
872 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/16(水) 23:52:48.12 ID:IUHhB1LXo
見当たらない酉でググってもこのスレと兵士スレ
後謎の安価スレぐらいしか出てこなかった
873 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]:2011/11/17(木) 00:42:58.97 ID:n/mzVLWmo
乙。 あれか、戦士の鎧はダイ大の鎧の魔槍パワーアップ版みたいなもんか。
874 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/17(木) 06:14:15.84 ID:Z5Nwg0n/o
いやぁぁぁぁあああっふぅぅぁぅぅ!
待ちわびたぜ文芸部!!

>>872
そりゃそうだ
このスレの>>1参照
>初SSです。
と作者さんが書いとる
875 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/17(木) 18:44:37.39 ID:jFGwahBoo
>>874 文芸部スレはなんてスレタイなのかと聞いてるのにそんなこといわれても…
誰かスレタイを教えてくださいな
876 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福岡県) [sage]:2011/11/17(木) 18:53:17.61 ID:whGEFBZOo
>>875
>>871
877 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/17(木) 20:31:47.53 ID:jFGwahBoo
>>876 文芸で調べても部活で調べてもヒットするスレ無いんだが・・・
878 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福岡県) [sage]:2011/11/17(木) 20:43:29.30 ID:whGEFBZOo
いや、だから現実の部活の原稿の事だろって
879 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/17(木) 20:58:02.31 ID:jFGwahBoo
自分の読解力の無さに絶望したorz
すまんありがとう
880 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/17(木) 22:41:15.77 ID:CoG3/LkHo
ちょっとワロタ
881 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/18(金) 11:33:16.69 ID:z21t62QIO
同意、ワロタ

で、>>1様よ〜
文芸部の作品を発表後でいいからスレ作って同じ酉で投下しておくんなまし
882 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]:2011/11/18(金) 19:50:13.77 ID:vUBm2pdM0
それ特定されかねないよね
少なくとも身内には
883 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/20(日) 14:10:12.50 ID:BYfsmDYDO


きてたきてたww
884 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/11/21(月) 09:52:00.16 ID:slppLYuE0
 
――――――――――
同時刻
王都・城下町
 

竜姫「……」

コツ……コツ……
 
くらいろじうらを りゅうきはひとりであるいている
じぶんをついせきするもののそんざいに かのじょはきづいていた……

やがて りゅうきはたちどまり ゆっくりとふりむいた!

そこにいたのは こうえんのかたすみにいたふたりぐみだった……

竜姫「……何奴じゃ。何故、わらわをつけ回す」

???「……」

竜姫「お前達からはわらわと同じ匂いを感じる。竜の血の匂いがのう」

竜姫「よもや父上の手の者か? わらわを始末しに来たというわけか」

???「いいえ……とんでもねぇ。むしろ逆でさぁ」

???「……あなたをお迎えに上がりやした。お嬢」

竜姫「迎え……?」

???「ええ。あの夜からずっと探し続けておりやした」

バサッ

ふたりぐみは まぶかにかぶったぼうしをとり すがおをさらした!
 
885 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/11/21(月) 09:53:02.11 ID:slppLYuE0
 
竜人ψ「お嬢。俺達と一緒に来てくだせぇ。本国へ戻りやしょう」

竜人ω「お嬢の帰りを待っている奴は大勢いやす。さあ」

竜姫「……思い出してきたわ。お前達はわらわの手下連中じゃな」

竜姫「こんなところまでわらわを探しに来るとは、見上げた忠誠心じゃ。褒めてつかわすぞ」

竜人ψ「へへぇ……ありがてぇこってす。お嬢にお褒めの言葉を頂けるたぁ……」

竜人ω「勇者の野郎と行動を共にしてると聞いた時は心配で心配で……」

竜姫「案ずるな。勇者はわらわの小間使いのようなものじゃからな」

竜人ω「流石はお嬢! 勇者まで手下にしちまうたぁ、器が違うってもんでさぁ」

竜人ψ「やはりお嬢はこれからの竜族を背負って立つお方。俺達の頭に最も相応しい」

竜姫「……じゃが、今更戻れるわけがなかろう。わらわは父上に歯向かった反逆者ではないか」

竜人ω「確かにそうかもしれやせんが、方法はありやす」

竜人ψ「竜王様は手柄を立てた者には寛容です。何か手土産がありゃあ……」

竜姫「王国の要人の首でも持ち帰れと? 出来もせぬことを……」

竜人ψ「確かに難しいでしょう。ですが、今はチャンスなんです」

竜姫「チャンス?」

竜人ω「実は、これから宮殿前の広場で式典が行われる予定だそうで」

竜人ψ「なんでも今回の遠征の戦勝を祈念するってんで、国王や王妃、王子なんかもいるとか」
 
886 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/11/21(月) 09:53:54.50 ID:slppLYuE0
 
竜人ψ「その式典に潜入して、誰でもいいですが、王族の首を獲れば……」

竜人ω「それに今王都にいるのは俺らだけじゃありやせん。他にも仲間は何人もいやす」

竜姫「具体的に言わぬか。何人いるのじゃ?」

竜人ψ「俺らを含めて、生え抜きの戦士が10人ほど」

竜姫「竜族の戦士が10人……なるほど、大した戦力じゃな」

竜人ω「手柄さえ立てりゃ、竜王様もお嬢を無碍にはできないはず。やってみる価値はありやすぜ」

竜人ψ「お嬢、お願いでさぁ。俺らに任せてくだせぇ」

竜姫「……確かに、このまま魔界へ帰るよりかはいくらかマシな選択肢じゃな」

竜人ω「それじゃあ……!」

竜姫(勇者の帰りをただ待っているよりも、父上を出し抜ける可能性に賭けた方がよいのではないか)

竜姫(どちらにせよ勝算はない。あったとしても紙のように薄い確率……じゃが……)

竜姫(このまま王都に留まり、正体が露見する危険を冒し続けるのも上策ではない)

竜姫(それに魔界に戻れさえすれば、魔王と合流できるやもしれん。願ってもないことじゃ)

竜姫(やはり、わらわの選ぶべき道は……)
 
887 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/11/21(月) 09:54:38.50 ID:slppLYuE0
 
 
 
 
 
勇者『私は死ぬつもりはない。必ず帰ってくる』
 
 
 
 
 
勇者『だから、私を信じて待っていてくれ』
 
 
 
 
 
888 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/11/21(月) 09:55:35.55 ID:slppLYuE0
 
竜姫「……っ!」

竜人ψ「お嬢? どうかしたんですか?」

竜人ω「心配するこたぁありやせん。お嬢さえその気なら、すぐにでも国王の首を……」

竜姫「……」

竜姫「……いいや。その話、わらわは乗らぬ」

竜人ω「! な、何故です!?」

竜姫「悪いが、先約があってのう。わらわはそやつを信じて待っておるところなのじゃ」

竜姫「第一、今更父上に頭を下げるような真似ができるか。むしろ……」

竜姫「父上の方がわらわに頭を下げるべきじゃ。土下座して地に頭を擦りつけて、のう?」

竜人ψ「お嬢……まさか、勇者の野郎をそれほど……?」

竜人ω「バ、バカ野郎。お嬢に限ってそんなことがあるはずが……」

ドォォォォン……!

そのとき とおくからばくはつのおとが ひびいてきた……!

竜姫「なんじゃ、今の音は?」

竜人ψ「……あいつら、いよいよおっぱじめやがったな」

竜姫「なに……? まさか、式典を襲っておるのか!?」

竜人ψ「お嬢。あなたがそう仰られても、俺らはお嬢のことが可愛いんでさぁ」

竜人ω「これも竜王様にお嬢の助命を乞うため……俺らの一世一代の晴れ舞台を見ててくだせぇ」

竜姫「待て、待たぬか! お前達、早まるでない!」

りゅうじんたちは きびすをかえしてそのばからはしりさった!
りゅうきは りゅうじんたちのあとをおって はしりだした…… 
 
889 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/11/21(月) 09:57:39.49 ID:slppLYuE0
竜姫パートもちょくちょく挟みながらお送りしております。
メインキャラは全員大なり小なり痛い目に遭わせるのでご安心ください。
890 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/21(月) 12:05:38.56 ID:9Ck9egf0o
キテター!
いつも待ってるよん
891 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) :2011/11/22(火) 19:47:46.92 ID:hYKiQc1AO

竜姫のヒロイン力がどんどん高まってるな
892 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/27(日) 14:52:50.64 ID:GCEOGu53o
更新マダー
893 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/12/02(金) 02:15:45.12 ID:czdOlQwfo
追いついてしまった。待ってます!
894 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/05(月) 03:19:45.13 ID:dZeXUW810
 
――――――――――
同時刻
竜王軍拠点・地下3階
 
 
ザッザッザッ……
 
勇者「……静かすぎる。先程までの喧噪が嘘のようだ」

長老「戦士達のところにまだ着かぬのか? さっきからずっと走っているが……」

勇者「ええ、もう着いていてもおかしくありません」

勇者「……しかし、この地下3階はこんなに広くなかったはず。見取り図を見た限りでも……」

長老「どうなっているのだ……何十時間も同じところをグルグルと走り回っているような」

長老「だがそれでいて、まだ数分しか経っていない気もする……」

長老「何かがおかしい……わしらの時間の感覚さえ狂いだしている」

長老「やはり何者かの攻撃なのか? 錯乱呪文か、それとも……」

勇者「……長老。少々お待ちを」

長老「む?」

ゆうしゃは じゅもんをとなえた
くうちゅうにまほうのひがともり ゆうしゃのてのなかで コンパスのようにゆれうごいている……

長老「探査呪文か」

勇者「はい。これは付近一帯の生命エネルギーの流れをサーチするものです」

勇者「私達に攻撃を仕掛けている者がいるなら、これで捜し出せるはず……」
 
895 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/05(月) 03:20:50.10 ID:dZeXUW810
 
ゆうしゃは まほうのひのうごきに めをこらした

だが まほうのひはメチャクチャにうごいて ほうこうがさだまらない!

長老「これは……」

勇者「……やはりそうか。この付近一帯に術者の魔力が充溢し、探査を妨げている」

ゆうしゃは たんさじゅもんをかいじょした!

勇者「いつまでたっても出口の見えない通路、狂わされた時間の感覚、そして探査妨害……」

長老「つまり、わしらは何者かの幻影に落ちた、ということか」

勇者「ええ。彼らには、我々を無事に脱出させる気は毛頭ないらしい」

勇者「私達と戦士達を分断したまま各個撃破を狙っている、というところでしょう」

長老「であるなら、わしらを閉じ込めた術者を探し出して叩かねばならぬのか」

勇者「どういった術式かさえ解読できれば解呪することも可能ですが、ある程度の時間は必要です」

長老「どちらにせよ、奴らの思うつぼというわけか……」

勇者「……今頃は、戦士と僧侶の方にも何らかの妨害があるはず」

勇者「無事でいてくれればいいのだが……」
 
896 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/05(月) 03:21:26.89 ID:dZeXUW810
 
――――――――――
同時刻
竜王軍拠点・地下3階
 
 
ブゥンッ!

ミス!
せんしのこうげきは はずれた!

戦士「クッ……!」

???「そんな攻撃は私には当たりません。そろそろ学習なさってはいかがです?」

戦士「ええい、黙れ! 貴様こそ、避けてばかりでは勝てぬと知れ!」

せんしが みぎあしをけりあげると よろいのつまさきから するどいやいばがとびだし 
てきめがけてはっしゃされた!

しかし それもなんなくかわされてしまう!

???「私に不意打ちなど通用しないと言っているでしょう?」

祈祷師「この祈祷師には、何もかもお見通しなのですからね」

戦士「おのれ……!」

祈祷師「さあ、今度は私の番です」

きとうしは じゅもんをとなえた
しんくうのやいばが せんしにおそいかかる!

そのとき そうりょがせんしのまえにとびだした!
 
897 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/05(月) 03:21:57.69 ID:dZeXUW810
 
僧侶「……っ!」

そうりょは じゅもんをとなえ まりょくのかべをてんかいした!
すいしょうのようにすきとおったかべが こうげきじゅもんをはんしゃする!

祈祷師「おっと……!」

きとうしは ふたたびじゅもんをとなえ しんくうのやいばをかきけした!

祈祷師「なかなかの防御壁ですね。少しだけ驚きましたよ」

僧侶「……はぁ……はぁ……っ」

戦士「僧侶殿……前に出てきてはならぬと言ったはず。下がっていてくれ」

僧侶「だ、大丈夫……です……」

僧侶「私も……戦えます……から……」

祈祷師「フフ……涙ぐましいですね。それほど足手まといになりたくないですか」

祈祷師「いえ、というよりは……勇者に嫌われたくない、でしょう? まったく可愛らしい」

僧侶「……っ!?」

戦士「僧侶殿?」

祈祷師「いい顔です。どうですか? 心の中を覗かれるのは恐ろしいでしょう?」

戦士「どういうことだ。何を言っている!」
 
898 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/05(月) 03:22:42.37 ID:dZeXUW810
 
祈祷師「私にはね。相手の心を読む能力があるんですよ」

戦士「なに……!?」

祈祷師「本国では占いの真似事で生計を立てていましたが……」

祈祷師「今回、竜王様から直々に召喚されましてね。古代魔法の秘儀を得るために」

僧侶「そ……それじゃあ……」

戦士「うろたえるな、僧侶殿。心を読めるなどハッタリに決まっている」

祈祷師「そうでしょうか? あなたは勇者の名が出た時、内心ひどく動揺したでしょう」

戦士「!」

祈祷師「フフ……『僧侶殿は俺が守る』ですか。ご立派なことですね」

戦士「クッ……」

祈祷師「そう怖い顔をなさらずに。これで私の言葉が嘘ではないとわかったでしょう?」

戦士「まさか、本当に……!」

祈祷師「ええ。古代魔法の秘儀、すべて読みとらせて頂きました」

僧侶「……そ……そんな……」

祈祷師「『竜王に秘密を知られてしまったなら、私達はこれからどうすれば』……ですか」

祈祷師「そんな心配をする必要はありませんよ。あなた達は、ここで私に倒されればいいのです」

祈祷師「無駄な抵抗はしないことです。苦痛を増すばかりですからね……」

戦士「……悪いが、我々は無事にここを脱出するさ。長老を救い出してな」
 
899 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/05(月) 03:23:19.86 ID:dZeXUW810
  
祈祷師「脱出できたところでどうします? ……ああ、長老から秘儀の正体を聞きだすつもりですか」

戦士「わかっている……いや、わかるのなら話は早い。それから俺がどうするのかもわかるだろう」

祈祷師「ええ。あなたも秘儀を手に入れ、それをもって竜王様を倒すのでしょう」

僧侶「せ、戦士……さん……!?」

僧侶「……秘儀を、勝手に使ったら……まずいんじゃ……?」

戦士「……竜王を討つためならば、もはや是非もない。目には目を、だ」

戦士「魔族同士、魔界だけでの小競り合いならまだしも、この地上までも竜王の好きにはさせん」

祈祷師「愛する人のため? ええ、美しい理由です。素晴らしい」

戦士「貴様の戯言にはこれ以上付き合ってはいられん……」

戦士「祈祷師! 貴様が選ぶべき道はふたつにひとつだ。大人しくここから去るか、俺に倒されるか!」

祈祷師「フフ……まあ、いいでしょう。あなたに私を斬ることができるか、試して御覧なさい」

戦士「……僧侶殿。悔しいが、貴女にも戦ってもらわねばならぬようだ」

僧侶「は……はい。頑張ります……!」

戦士(……どうせ奴の目的など、俺達と勇者を分断しておくための時間稼ぎ)

戦士(俺達の心を読んで攻撃を回避するのに徹するはず。奴自身の戦力は……)

戦士(……俺のこの考えも奴に読まれているか? いいだろう。これ以上の思考は無意味だな)
 
せんしは けんをぬいてかまえをとった!

きとうしは ぶきみにわらっている……
 
900 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/05(月) 03:23:54.87 ID:dZeXUW810
 
……そのとき そうりょはあることにきづいた

ガタガタ……

僧侶(……? あれ……鞄が……?)

ガタガタ……

せんしときとうしが あいたいするなか そうりょのりょこうカバンが かすかにふるえている……

僧侶(王宮から……連絡……? なにかあったの……かな……?)

僧侶(これを、渡される時……大臣さんから……鞄を通して、大事な連絡をするって……)

僧侶(鞄が震えてる、ってことは……なにか……大変なことが……あったの……?)

僧侶(でも……今は、そんな場合じゃ……ないし……)

僧侶(戦士さんを……援護しないと……)

僧侶「……きゃあっ!?」

きとうしのこうげきのよはで そうりょのあしもとのゆかがはぜた!

そうりょはしりもちをついた!

戦士「僧侶殿ッ!」

僧侶「だ……大丈夫……です……!」
  
901 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/05(月) 03:24:51.27 ID:dZeXUW810
  
祈祷師「上の空で何を考えているかと思えば……その鞄、重要なもののようですね?」

祈祷師「鞄を通して連絡があるということは、何らかのマジックアイテムですか……」

戦士「下がれ、僧侶殿! 後方から補助呪文で俺を援護しろ!」

僧侶「は……はい……!」

そうりょは りょこうカバンをもってこうほうへさがり じゅもんをとなえた

せんしのこうげきりょくとすばやさが あがった!

戦士「でぇい!」シュバッ

せんしは はげしくきりかかった!
しかし きとうしはこうげきのきどうをよみきっている!

戦士「まだだッ!」

せんしはすかさず みぎうでのボウガンをてんかいし ひかりのやをはなった!
きとうしは ヒラリとこうげきをかわした!

祈祷師「それで不意を突いたつもりですか? 甘い甘い」

戦士「クッ……!」

祈祷師「不意打ちとは、こういうものを言うのです」ヒュンッ

きとうしがねんじると そのすがたとけはいがきえうせた!

戦士「消えた……? バカな、奴はどこに……」
  
902 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/05(月) 03:25:29.26 ID:dZeXUW810
 
祈祷師「こっちです」ヒュンッ

戦士「!」

とつじょ せんしのはいごにきとうしがあらわれた!

きとうしのきしゅうこうげき!
せんしに 32のダメージ!

戦士「がッ……!?」

僧侶「戦士さん……っ!」

そうりょは じゅもんをとなえた
ひかりのだんがんが きとうしにおそいかかる!

祈祷師「これがテレポーテーションというものです。勉強になったでしょう?」

きとうしのすがたがきえさり ちがうばしょにあらわれた!

戦士「クッ……」ヨロッ

祈祷師「『姑息な……』? フフ……その姑息な手管を弄する相手に指一本触れられないくせに」

戦士「黙れ!」

祈祷師「いくら考えても無駄ですよ。いえ、考えれば考えるほど、と言うべきでしょうね」

祈祷師「あなた達の考えは私に筒抜け。何を企んだところで、私はその先を行けます」

祈祷師「日常生活ではなかなか不便なものですが、こういう場においてはこれ以上ないアドバンテージ」

祈祷師「ものは使いようということでしょうかね。フフ……」
 
903 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/05(月) 03:26:22.18 ID:dZeXUW810
  
そうりょは じゅもんをとなえた
せんしのキズがなおった!

僧侶「だ、大丈夫……ですか……!?」

戦士「すまん、僧侶殿……これでまだ行ける。引き続き援護を頼むぞ」

僧侶「は……はい……!」

祈祷師「早々に諦めてしまえばよいものを……まあ、いいでしょう。気の済むまでお付き合いしますよ」

戦士「ほざけ!」バッ

僧侶「……」

僧侶(でも……どうすれば……)

僧侶(心を、読まれちゃうなら……あの人の言う通り……何をしてもかわされて……)

僧侶(このままじゃ……戦士さんが消耗するだけ……)

僧侶(……? あれ……?)

ガタガタガタガタ……

そうりょのりょこうカバンがふるえている……

僧侶(鞄が……まだ、震えてる……?)

僧侶(……王都で何か……大変な……ことが……?)

僧侶(……どうしても受け取らなきゃ……いけない……大事な連絡……?)
 
904 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/05(月) 03:26:49.42 ID:dZeXUW810
 
僧侶(……しょうがないから、少しだけ……確認……しよう……)

僧侶(勇者さんに……急いで伝えなきゃ……いけないのかも、しれないし……)

そうりょは そのばにしゃがみこんで りょこうカバンをひらいた!

カバンをひらいたそのとき カバンのなかから むすうのかみがとびだした!

僧侶「きゃっ……!?」

とびちったしょるいには ルーンもじやまほうしきがかきこまれている……

つぎのしゅんかん もじがあかくひかってまりょくをおびた!

僧侶「……!?」



そうりょのしかいが あかいっしょくにそまり
そうりょは いしきをうしなった……!
 
 
 
905 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/05(月) 03:28:12.99 ID:dZeXUW810
 
ガキィン!

きとうしのこうげき!
せんしに 20のダメージ!

戦士「ぐあぁッ!」ドサッ

せんしは ゆかにたたきつけられた!
せんしがおとしたけんをひろいあげながら きとうしはぶきみにわらっている……

祈祷師「いい剣ですね。これもオリハルコン製ですか」

戦士「……それも読まれていたか。その通り、この鎧はオリハルコンで出来ている」

戦士「無論、全身に仕込まれた武器もだ。その剣も生半可な凶器ではない……」

祈祷師「ですが、当たらなければ意味がない」

祈祷師「それになまじ鎧が頑丈なだけに苦痛は長引く。皮肉なものですね。フフ……」

祈祷師「……ん?」

きとうしは せんしからしせんをはずした
すうメートルうしろに ロッドをかまえたそうりょがたっている……

僧侶「…………」

戦士「そ……僧侶殿、何をしているのだ! 下がれと言ったはず!」

祈祷師「フフ……自棄になりましたか。非力な僧侶風情が、私に白兵戦を挑もうと……」

きとうしは そうりょのこころをのぞきこんだ

しかし そうりょのこころをよむことはできなかった!

祈祷師「……!?」
 
906 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/05(月) 03:28:40.74 ID:dZeXUW810
   
祈祷師(なんだ……? おかしい、心が読めない……!?)

祈祷師(彼女が何を考えているのかわからない! 先程までは何もかも筒抜けだったというのに……!)
  
僧侶「…………」ジャキッ

祈祷師「クッ……!」

そうりょは ロッドをのばしてなぐりかかった!
きとうしは すんでのところでそれをさけるが なおもそうりょのこうげきはつづく!

祈祷師(心が読めない……つまり彼女は思考をしていない……? バカな、そんなはずは)

祈祷師(……! まさか……!)

僧侶「…………!」

そうりょは じゅもんをとなえた
こごえるかぜがたつまきとなって きとうしをおそう!

きとうしに 50のダメージ!

祈祷師「ぐっ……」

僧侶「…………」

祈祷師「な……なるほど。そういうことですか……」

祈祷師「どうやら状況は私に不利なようですね……ここは一旦退くとしましょう」

祈祷師「フフ……では、また」ヒュンッ

きとうしは いずこかへテレポーテーションした!

きとうしは にげだした!
 
907 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/05(月) 03:29:13.90 ID:dZeXUW810
 
戦士「……一体、何が起こったというのだ……?」ヨロッ

戦士「僧侶殿。大丈夫か? 何故あのような無茶を……」

僧侶「…………」

戦士「……僧侶殿?」

そうりょは りょこうカバンをひろってあるきだした
そうりょは うつろなひとみを つうろのむこうにむけている……

戦士「僧侶殿!」

僧侶「……何を……しているんですか……?」ズリズリ

戦士「なに?」

僧侶「こんなこと……してる時間は……ありません……」ズリズリ

僧侶「……早く……行きましょう……」ズリズリ

僧侶「勇者さんの……元へ……」ズリズリ

僧侶「……早く……」ズリズリ

戦士「あ、ああ……」

ロッドをひきずりながらあるくそうりょを せんしもおいかけていった!
 
908 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/05(月) 03:30:20.96 ID:dZeXUW810
 
――――――――――
数分後
竜王軍拠点・地下3階
 
 
勇者「……よし。この空間を構築している術式の解析が完了しました」

長老「おお……この短時間でよくぞやれるものだな」

勇者「魔法式そのものは既存の呪文の組み合わせにすぎません。ひとつひとつロックを解除して……」

ゆうしゃは コインをばらまき ふくすうのじゅもんをとなえた

ゆうしゃのかんしょうをうけ くうかんがゆらぎ けしきがゆがんでいる……

勇者「……最後に、空間に生じる綻びに大きな魔力をぶつければいい」

勇者「長老。炎熱呪文は得意ですか?」

長老「一通りの呪文は扱えるが……」

勇者「私が指定する場所に、最大火力の炎熱呪文を放ってください」

勇者「同時に私が同威力の冷凍呪文を放ち、相反する魔力をその一点で集束・反応させ」

勇者「局所的な魔法爆発を起こせば、この空間は消えるはずです」

長老「うむ……委細承知した。お前は大丈夫か?」

勇者「こちらも問題ありません。魔貨式魔導法でなら、魔法の威力は金額に換算できます」

勇者「こちら側の威力の調整もしやすい。あとはタイミングさえ合えばいい」

長老「なるほどな……では、行くぞ」

ゆうしゃとちょうろうは どうじにじゅもんをとなえた
 
909 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/05(月) 03:31:29.08 ID:dZeXUW810
 
あれくるうほのおと ふきすさぶふぶきが いってんにあつまっていく!

勇者「……!」

長老「ムゥゥ……!」

あいはんするまりょくがしゅうそくし だいばくはつをおこした!
ばくはつがおさまると くうかんにきれつがはしり おともなくくずれさった……!

ゆうしゃたちがめをあけると そこはどくぼうまえのつうろだった!

長老「ここは独房の前……わしらはこんなところで足止めを食っておったのか」

勇者「私達はここを動けなかったから、わざわざ見張りを立てる必要もなかったわけか……」

勇者「しかし、空間を操る術か……あるいはこれも古代魔法の……?」

長老「かもしれん。だがどちらにせよ、既存の技術で再現可能であるなら気にする必要もなかろう」

勇者「……それもそうですね。行きましょう、長老。戦士達が待っている」

長老「うむ、そうだな」

タッタッタッ……

ゆうしゃとちょうろうは しばらくはしったあと
ちか3かいのつうろでそうりょとせんしとごうりゅうした!
 
910 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/05(月) 03:32:10.96 ID:dZeXUW810
 
戦士「……勇者! 無事だったか!」

勇者「ああ。君も元気そうだな。僧侶も」

僧侶「…………」

勇者「僧侶?」

僧侶「いえ……勇者さんが無事で……よかったです……」

勇者「……?」

戦士「長老……よくぞご無事で!」

長老「戦士よ……お前という奴は、里の守りを放り出して何をしているのだ!」

長老「しかもその鎧までも持ち出しおって。オリハルコンの鎧は里に伝わる至宝ではないか!」

戦士「それは……いえ、しかし、長老を救うためには致し方ないではありませんか」

長老「……こんな老いぼれなど放っておけばよかろうに。古代魔法の秘儀は知られてしまったのだぞ」

戦士「……」

勇者「長老、話は後です。今は脱出を優先しましょう」

長老「ム……ああ、そうだな……皆の者、護衛は頼んだぞ」

勇者「わかっています。戦士は私と共に前衛についてくれ。僧侶は……」

ゆうしゃは そうりょのほうをふりむいた……
 
911 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/05(月) 03:32:36.58 ID:dZeXUW810
 
 
 
 
 
パァン……!
 
 
 
 
 
912 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/05(月) 03:33:37.53 ID:dZeXUW810
 
勇者「……ッ」

ゆうしゃは あしにあついしょうげきをかんじた!

パァン!

そのあとすぐに はらとむねにもおなじいたみがおそった……!

うたれた、と ゆうしゃがりかいしたしゅんかん つぎはかたをうたれた!

勇者「な……!?」

戦士「勇者!?」

ドサッ……

ゆうしゃは ゆかにたおれこんだ!
うたれたきずぐちからとめどなく ちがながれでている……

長老「な……何事だ!?」

戦士「僧侶殿! よせ!」

せんしは すばやくそうりょをはがいじめにした!

そうりょのてには じゅうこうからはくえんをくゆらせる ピストルらしきものがにぎられており
あしもとには バラバラにぶんかいされたりょこうカバンが ちらばっている……!

勇者(あれは……そうか、旅行鞄の部品を組み替えて……)

勇者(あの旅行鞄はマジックアイテムであり、粉飾された小型銃だった……?)

勇者(いや……そんなことはいい……何故、僧侶が私を撃ったんだ……!?)
 
913 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/05(月) 03:34:40.79 ID:dZeXUW810
 
僧侶「……緊急用プログラム、第17項に則り……」

僧侶「勇者さん……あなたを……処刑……します……」

勇者(処刑……だと……?)

戦士「どういうことだ、僧侶殿!」

そうりょは うつろなひとみをゆうしゃにむけ いびつにほほえんだ……

僧侶「私は元々……勇者さんのお供じゃない……だから……」

僧侶「私を……パーティに編入する際……大臣は……保険を打ったの……」

勇者(保険……?)

僧侶「渡された鞄は……連絡用のマジックアイテムであり……」

僧侶「勇者さんが……裏切った時に、処刑するための……道具……」

僧侶「大臣の……承認が、あった時には……プログラムが起動して……」

僧侶「……私を洗脳して……手を下させる……」

僧侶「勇者さんだって……まさか、私に……撃たれるなんて……思わないから……」

戦士「裏切りだと……!? 何を言っている! 勇者は長老を救出したではないか!」

僧侶「違う……大臣が……勇者さんの処刑を、承認したのは……」

僧侶「……勇者さんが……魔族を、匿っていた……から……」
 
914 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/05(月) 03:36:00.91 ID:dZeXUW810
 
勇者(……!)

戦士「な……?」

僧侶「……先刻、王都で……式典に魔族が乱入し……陛下の暗殺を図った……」

僧侶「その際に捕縛された……一人の魔族が……勇者さんと繋がりがあることが……判明……」

僧侶「敵性種族を匿い……潜伏先を提供……そのことは王宮にも、報告していない……」

僧侶「これは……王宮に対する……明白な反逆行為……」

僧侶「だから……大臣が……緊急用プログラムを……発動したんです……」

勇者(竜姫が、王宮に捕縛された……!?)

勇者(一体、王都で何が起きたんだ……いや、まずは……回復、を……)

ゆうしゃは じゅもんをとなえようとしたが 
こえにならないうめきごえがもれるばかりだった

勇者(……ダメだ……出血が酷すぎて、意識が朦朧と……!)

勇者(くっ……)

ゆうしゃは だんだんとちからがぬけていくのをかんじた……

勇者(僧侶……!)

ゆうしゃは さいごのちからをふりしぼって こえをだした……!
 
915 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/05(月) 03:36:47.95 ID:dZeXUW810
 
 
 
 
 
勇者「……すまない……」
 
 
 
 
 
勇者「すまない……僧侶……!」
 
 
 
 
 
916 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/05(月) 03:38:03.94 ID:dZeXUW810
 
 
 
ゆうしゃは ちからつきた
 
 
 
 _________|\   
|To Be Continued...    >
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/
917 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/05(月) 03:39:31.86 ID:dZeXUW810
作者的には第2部完的なアレですが、竜姫パートもそのうち。
次スレ立てる時期って>>980くらいでいいんでしょうか。
918 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(栃木県) [sage]:2011/12/05(月) 03:40:30.42 ID:Kk1PVjVno
好きなタイミングで良いと思うよ
ちゃんと依頼さえ出せば誰も文句言わん
919 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/05(月) 05:42:01.84 ID:2YAsraXIO
ピンチがおおいなぁ


幸運Eだなこりゃ
920 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/05(月) 10:51:34.75 ID:XIrtObQWo
立て損ね、誘導し損ねがなければ>>980くらいで良いかもだが、
>>950くらいで次スレ立てて後はオマケってSSもあるな
C
921 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [sage]:2011/12/05(月) 21:03:14.83 ID:R3CHpprAO
並行して進めてた兵士スレ落ちてね?
922 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/05(月) 22:31:37.50 ID:CZ7muEfwo
おちてないよー
923 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [sage]:2011/12/06(火) 02:28:42.66 ID:stLvouUAO
勇者:反逆者扱いで処刑される
魔王:親友一家全滅、兄殺し
賢者:恩師の死
竜姫:王宮に捕縛される
僧侶:洗脳されて勇者を射殺

最後に痛い目に遇うのは盗賊か……
924 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/06(火) 14:48:05.68 ID:OKJ0UUH/o
痛たたた、既に満身創痍
925 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 17:09:17.51 ID:D4q0Al3DO

いつの間にか来てたんだ。竜姫匿ってたのが原因か…
てっきり初期に賢者と一緒に密売して騎士団に追われてた事がバレたかと思ったぜ
926 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/18(日) 18:33:25.24 ID:zochpg8Ao
  _, ,_     
( ・∀・)シュッ   
( ∪ と 彡  ──────=====三三C
と__)__)  160km/h ストレート
927 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/22(木) 02:07:37.55 ID:5a23lY/N0
 
――――――――――
同時刻
竜王軍拠点・地下水道
 
 
カツン……カツン……

ちかすいどうのなかを きとうしがあるいている……

祈祷師「クッ……少々手痛いダメージを負わされましたね……」

祈祷師「ですが、このオリハルコンの剣を手に入れたのは僥倖……フフ……」

祈祷師「東洋ではこういうのを鴨が葱を背負ってくると言うそうですが、まさにその通り」

祈祷師「まさかこのようなところで……フフ……」

??「ずいぶんご機嫌だな、オイ。何かいいことでもあったか?」

祈祷師「!」

きとうしがふりむくと そこにはりゅうおうがいた!

祈祷師「竜王様……!」

竜王「なかなかイカしたモン持ってんじゃねぇか。どこで拾った?」

祈祷師「は……はい。長老を救出しに来た侵入者から奪いました……」

祈祷師(まったく気配を感じなかった……私と同じくテレポーテーションができるのか……?)

祈祷師(不可能な話ではない……古代魔法には空間を操る術も存在しますからね……)
 
928 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/22(木) 02:08:34.00 ID:5a23lY/N0
 
竜王「そりゃおかしな話だな。俺は侵入者をブッ殺せと命令した」

竜王「で、だ。なんでテメエはこんなところをほっつき歩いてやがるんだ?」

祈祷師「そ……それは……」

竜王「それは? どんな理由があるってんだ。ええ?」

祈祷師「うっ……!」

きとうしは りゅうおうのこころをのぞきこんだ

しかし りゅうおうのこころをよむことはできなかった!

祈祷師(バカな……竜王様の心が読めないとは……!?)

祈祷師(先程の僧侶は自我意識を失った状態だったから思考が読めなかった。しかし)

祈祷師(こちらは違う……竜王様の精神への侵入を拒む何かがある……!)

竜王「……ハッ。なんで俺の心が読めないのか、って顔してやがるな」

祈祷師「……!」

竜王「テメエも甘かったな。既に読心能力への対策は打ってあるんだよ」

竜王「精神干渉系の術に対するプロテクト程度は、古代魔法じゃなくても存在するからな」

竜王「……それで? 俺が何を考えてるか知りたいんだろ? 当ててみろよ。なあ?」
 
929 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/22(木) 02:09:19.92 ID:5a23lY/N0
 
祈祷師「フ、フフ……流石は竜王様というところですか……」

祈祷師「心を読むまでもありません……竜王様が私の前に現れる理由はひとつ」

祈祷師「……それはつまり、古代魔法の秘儀を知る者を抹殺するために他ならない」

竜王「ピンポーン、大正解だ。大方、ドサクサに紛れてここからトンズラしようって腹だろう」

竜王「いい土産も手に入れたみてぇだしなぁ。それを武器として使うつもりなんざ毛頭ねぇだろう?」

祈祷師「ええ、仰る通り……エルフの長老の心を覗いた時に、ある魔法式が垣間見えましてね」

祈祷師「原理そのものは簡単ですが、その際に触媒として用いられるのが――」

竜王「オリハルコンの塊……つまりその剣が触媒になるってわけだ」

祈祷師「これだけの量と純度のオリハルコンならば申し分ありません。私は実に運がいい」

祈祷師「どうせ、竜王様は私を生かしてはおかないだろうとは思っていましたし、ね……」

竜王「ああ、当然だぜ。この秘密を知るのは俺だけでいいんだよ」

竜王「テメエみてぇなお喋りな奴にゃ、とても預けちゃおけねぇ秘密だぜ……だからよ」

りゅうおうのてに まがまがしいまりょくがうずまいていく!

竜王「死ね」

ドォォォォォォン!

りゅうおうのてから まりょくがかいほうされた!
ぼうふうがふきあれ いかずちがあれくるう!
  
930 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/22(木) 02:09:58.78 ID:5a23lY/N0
  
祈祷師「クッ……!」ヒュンッ

きとうしは ばくしんちをさけてテレポーテーションした!
りゅうおうのこうげきは はずれた!

きとうしは すうメートルさきに ふたたびすがたをあらわした

竜王「テレポーテーションでかわしたつもりか? だがそう何度も続かねぇだろう」

竜王「それに、一度に数メートル程度の距離しか移動できねぇのは知っているしな……」

竜王「極大級の殲滅魔法でこの火竜山脈ごと何もかもブッ飛ばせば関係ねぇ。だろ?」

祈祷師「……あなたにとって、この拠点も部下も既に無価値ということですか」

竜王「安心しろよ、テメエは特別だ。他の連中は死のうが生きようがどうだっていいが」

竜王「テメエは生きてちゃいけねぇんだもんなぁ……死んでなきゃいけねぇんだ。なあ?」

祈祷師「……残念ですが、私もまだこの世に未練がありましてね」

祈祷師「せっかく手に入れたチャンスを手放すのも勿体ない話。逃げおおせてみせますよ、あなたから」

竜王「そうかい……そこまで逃げたいんなら」

りゅうおうは りょううでにまりょくをしゅうちゅうした!

祈祷師「……ッ!」

きとうしは テレポーテーションできょりをとろうとこころみた

りゅうおうは りょううでにしゅうそくしたまりょくを かいほうした!
 
931 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/22(木) 02:10:55.36 ID:5a23lY/N0
 
祈祷師「……ッ! こ、これは!?」

くうかんにさけめがしょうじ きとうしは さけめにすいこまれていく!

竜王「望み通り逃がしてやるよ。行き先は俺にもわからねぇがな」

竜王「空の果てか、海の底か……はたまた異次元の彼方か。楽しみだなぁ、オイ?」

祈祷師「グッ……アアァァァッ!!」

ていこうもむなしく きとうしは くうかんのはざまへおちていった!

やがて くうかんのさけめがとじると こくうからオリハルコンのけんがおち
かわいたおとをひびかせた……

りゅうおうは オリハルコンのけんをひろいあげ かたにかついだ

竜王「……ククッ」

竜王「これで目障りな野郎は消えた。それに希少なオリハルコンも手に入って、一石二鳥ってモンだ」

竜王「あとはあのジジイをブッ殺せば古代魔法の秘儀を知る奴はいなくなる」

竜王「連中は独房の周辺に仕掛けた罠で足止めを食ってるはず……」

竜王「ジジイの救出に来た奴ら共々、俺が直々に皆殺しにしてやりゃあミッションコンプリート」

竜王「この俺の天下ってわけだ……ククク……」

竜王「……ん?」

ズゥゥゥゥゥン……

そのとき うえのかいから おおきなはかいおんがひびいてきた……
 
932 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/22(木) 02:12:10.82 ID:5a23lY/N0
 
――――――――――
数分前
竜王軍拠点・地下3階
 
 
ゆうしゃは ちからつきた

ちのうみのなかにたおれ うごかなくなったゆうしゃにむかって せんしはさけんだ!

戦士「勇者ッ! 死ぬな、しっかりしろ!」

長老「いかん……出血が酷い。身体がどんどん冷たくなっている」

戦士「長老、勇者の傷を! 早くせねば……!」

長老「うむ……わしに任せろ。戦士よ、お前はその娘を抑えておくのだ」

ちょうろうは じゅもんをとなえた!

ちょうろうが ゆうしゃのちりょうをおこなっているとき
せんしにおさえられたそうりょは じんじょうならざるちからで もがいている……

戦士「くっ……僧侶殿の細腕のどこにこんな力が……!?」

僧侶「戦士さん……放して……ください……」

僧侶「……勇者さんの、死亡を……確認……しないと……」

戦士「やめろ、僧侶殿! 目を覚ませ!」

僧侶「…………」

そうりょは じゅもんをとなえた

そうりょのこうげきりょくがあがった!
そうりょは せんしをちからまかせにふりはらった!
 
933 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/22(木) 02:13:04.39 ID:5a23lY/N0
 
そうりょは ロッドをかまえてかけだした!

戦士「僧侶殿! ……止むを得ん!」

せんしは おおきくジャンプし そうりょにさきまわりした!

僧侶「! ……どいて……ください……」

そうりょは ロッドをふりかぶった!

せんしは いきおいよくふりおろされたロッドをかいくぐり
そうりょにちかづいた!

戦士「……すまん!」

ビシィッ!

せんしは そうりょにあてみをくらわせた!

僧侶「……っ」フラッ

そうりょは きをうしなった!
せんしは たおれこんだそうりょをうけとめ そのばにねかせた……

戦士「僧侶殿……おのれ、これが人間の王のやり方か……!」

戦士「そうだ、長老! 勇者は!?」

長老「ああ……なんとか傷は塞いだのだが、意識が戻らん。体温の低下も止まらんのだ」

長老「勇者はもう……助からんだろう」

戦士「……!」
 
934 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/22(木) 02:13:57.51 ID:5a23lY/N0
 
戦士「……いや、まだ手はある! 復活呪文で蘇生させれば……」

戦士「勇者の肉体にひとかけらの生命さえ残っていれば、助かるではないか!」

長老「それを誰が使うのだ。わしは元より、お前も僧侶の修行などしてはおらん」

戦士「俺達に不可能でも、僧侶殿ならば……」

長老「その娘を起こすのか? だが洗脳の効果が続いていたらどうする」

長老「操られた娘は今度こそ勇者にとどめを刺すだろう。分の悪い賭けだ」

戦士「……では、勇者が死ぬのをこのまま指をくわえて見ていろと言うのですか!」

長老「うろたえるな……わしらにはどうしようもないのだ」

長老「この上は、その娘を連れてここを脱出し、エルフの里へ逃れるのが先決であろう」

戦士「ですが……」

長老「じきに敵の増援が来よう。ここに留まっていても全滅するだけなのだぞ」

戦士「勇者を置いていけと? 助かる見込みがないから、敵地の只中に放り出せと!?」

長老「そうだ……行くぞ。戦士よ、お前は娘を連れていけ」

戦士「……」

戦士「……クソッ!」
 
935 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/22(木) 02:15:00.64 ID:5a23lY/N0
 
<イタゾー!

<コッチダ!

長老「いかん、もう見つかったのか……急ぐのだ、戦士よ」

戦士「……!」

戦士「待ってください、長老……飛翔呪文の応用で、勇者の身体を軽くすることはできませんか」

長老「? ……うむ。一時的にしろ、重さをほぼなくすことができるはずだが」

戦士「なら大丈夫だな……俺がここで足止めをします。貴方は勇者と僧侶殿を連れて脱出を」

長老「……! 何を馬鹿なことを」

戦士「勇者を置いて行くことなどできません。足手まといになると言うなら俺が責任を取りましょう」

戦士「長老の仰る通り、今は里に逃れることが先決だ。勇者を救うためにも……」

長老「里の術者に診せるつもりか。だが里に着く頃には……」

戦士「可能性はゼロではありません。外に出さえすれば転移呪文で里に戻れるでしょう」

長老「お前はどうするのだ。お前こそ、敵地の只中に取り残されることになる」

長老「戦士よ……お前は死ぬ気なのか?」

戦士「……ただでは死にません。たとえこの五体が飛ばされようと、竜王の首級を挙げて御覧に入れる」

長老「……この、馬鹿者が……!」
 
936 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/22(木) 02:16:41.27 ID:5a23lY/N0
 
ちょうろうは じゅもんをとなえた

ゆうしゃとそうりょのからだが はねのようにかるくなった!
ちょうろうは たおれているふたりをかつぎあげ はしりだした!

せんしが ちょうろうをみおくると りゅうじんたちがなだれこんできた!

戦士(……勇者には生きていてもらわねば困る。僧侶殿が悲しむだろうからな)

戦士(彼女が自らの手で勇者を殺めたと知れば、大きなショックを受けるのは間違いない)

戦士(……もし、あの祈祷師の言うことが本当なら、俺に僧侶殿の悲しみは癒せんだろう……)

戦士「……だがそれでも、俺に出来ることはある」

戦士「この戦士の一命を賭け、万難を排して僧侶殿の憂いを取り除く」

戦士「それだけだ。俺に出来ること、俺が為すべきことは……」

せんしは ゆかにおちていたロッドをひろってかまえた!

戦士「……行くぞ!」



ズゥゥゥゥゥン……!



そのとき うえのかいから おおきなはかいおんがひびいてきた……!
 
937 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/22(木) 02:17:58.88 ID:5a23lY/N0
  
――――――――――
同時刻
竜王軍拠点・最上階
 
 
とりでにむけて そらからとつにゅうしてきたのは
おおきなひこうきかいにのった さんにんぐみだった……!

??「ふぅ、ちょっと運転が荒っぽかったかな」

??「大丈夫? 二人とも」

??「なんとかね……まったく、アンタはもう少し安全運転できないのかい」

??「でも、結構ボク好みですよ。ああいうのも」

??「おっ? じゃあ、これが終わったら空のデートと洒落込もうか」

??「あ、別にあなた個人が好きなわけじゃないんでノーセンキューです」

??「二人とも、喋ってる場合じゃないよ。急がないと」

??「わかってます。早く行きましょう」

??「OK。あのオッサンをぶちのめしてやらないとな」



魔王「……じゃあ行くぜ、賢者ちゃんに盗賊ちゃん」

賢者「はい……竜王を倒しましょう!」

盗賊「ああ、あいつと一緒にね」

まおうとけんじゃととうぞくは ひこうモードのきかいおうからとびおり 
とりでのないぶへ のりこんでいった!
 
938 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/22(木) 02:19:49.79 ID:5a23lY/N0
そろそろ勇者・賢者・盗賊・魔王が合流。
しかし勇者は力尽き僧侶は意識がなく戦士は一人で雑兵を食い止めてます。
どうしてこうなった。
939 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 03:16:06.02 ID:qbc2KaeLo
戦士かっこいいが不憫だ……
そしてここからが盛り上がりどころだな、楽しみにしてる
940 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 04:02:48.05 ID:iWdfEHyAO


勇者・戦士・僧侶で全員魔法使えるってかなりバランスいいパーティーのはずなのに
力尽きたり意識を失ったり一人で雑兵を食い止めたりしてるのか……
941 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 04:34:11.33 ID:aE/yZ29oo
やっと来たか魔王様
942 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 16:41:02.35 ID:EgNyn6N/o
魔王のチャライケメンタイムか
943 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/24(土) 22:12:12.33 ID:Ct6gU2fTo
        / ̄ \
    __☆⌒>   ヽ
   /   ∩⊂ニニニ⊃∩
 /     | ノ      ヽ
|     /  ●   ● |  メリークリクマース!
|     |    ( _●_)  ミ
|    彡、    |∪|  、`\
|   / __  ヽノ /´>   )
 \  (___)   / (___/
   \   |      /
     ̄ ̄|  /\ \
       | /    )  )
       ∪    (  \
             \_)
944 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/30(金) 22:56:06.39 ID:M+nQ0n5i0
  
――――――――――
数時間前
魔王城
 
 
首狩族「……おい、知っているか? 火竜山脈で竜王軍と人間どもがやり合っているらしいぞ」

悪魔神官「ああ、聞いたよ。これで共倒れになってくれれば儲けものなんだがな」

首狩族「だが魔王様は何の行動も起こそうとしていない。これは好機だというのに」

悪魔神官「好機? この戦に介入して漁夫の利を得るということか」

首狩族「そうだ。少なくとも先代様ならそうされただろう。あの方は実に好戦的だったからな」

悪魔神官「実に魔王らしい魔王だった。亡くなられたのが惜しまれる」

首狩族「それに比べて今の魔王様ときたらどうだ。戦に対して消極的に過ぎると思わんか」

悪魔神官「確かに。実際に我ら親衛隊を率いているのは側近殿で、魔王様は何もなさらぬ」

首狩族「所詮はお飾りに過ぎんということだな。臆病者は魔王の座に相応しくあるまい」

悪魔神官「声が高いぞ」

首狩族「何を言う。最近は親衛隊の間でも魔王様の姿勢を疑問視する声が高まっている」

首狩族「なんなら、我らで魔王様を倒し魔王軍の指揮権を掌握するのもひとつの手だろう」

悪魔神官「クーデターなど許されるわけが……」

??「なんだなんだ、面白そうな話してるじゃんか」

首狩族「ッ……」

悪魔神官「ま……魔王様ッ!」
 
945 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/30(金) 22:58:09.15 ID:M+nQ0n5i0
 
魔王「なあオイ、誰が誰を倒すって?」

悪魔神官「い、いえ……ただの戯言です。魔王様がお気になさるほどのことでは」

魔王「そうか? ならいいけどさ。最近はオレも色々忙しくて困っちまうぜ」

首狩族「……し、しかし魔王様。火竜山脈での竜王軍と人間の戦闘はいかがなさるおつもりですか」

魔王「ああ、アレ? オレも側近くんから聞いてるから知ってるけど」

魔王「……ま、なるようになるさ。今、そのための方策を考えてるところだし」

悪魔神官「では、竜王軍に対し打って出ると?」

魔王「そうなるかもね」

首狩族「いよいよ戦を始められるのですか」

魔王「さあ? 言ったろ、なるようになるって。最終的にどうなるかはオレも知らないよ」

魔王「じゃ、オレはちょっと用があるから。サボってないで仕事しろよ」

悪魔神官「ハッ。魔王様もお気をつけて」

魔王「……あ、そうそう。言い忘れてた。なあ、お前」

首狩族「な……なんでしょう、魔王様」

魔王「オレの寝首を掻きたいならかかって来いよ。いつでも相手になってやるからさ」

首狩族「……ッ! い、いえ……とんでもない話です。先々代に対して恐れ多い」

魔王「……あ、そ」
 
946 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/30(金) 22:59:33.67 ID:M+nQ0n5i0
 
――――――――――
数分後
魔王城・地下牢
 
 
賢者「……はぁ。いつになったらここから出られるんでしょうか」

盗賊「またその話かい? 焦らず気長に待ってなって」

賢者「でも、外の情報だって入ってこないし……勇者さんの動向だってわからないじゃないですか」

盗賊「そりゃあ、あたしらは捕虜扱いだからね。食事が出るだけでもありがたいくらいさ」

盗賊「それに考えようによっちゃ、ここも三食昼寝つきの宿屋みたいなモンだろ?」

賢者「こんな宿屋見たことありません。カルチャーショックで体調崩しそうです」

盗賊「あたしはこういうのも慣れてるんだけどねぇ……」

盗賊「ま、魔界に来るまで色々あったからね。休める時に休んでおくのも必要なことだよ」

賢者「こんなジメジメした牢の中じゃ全然休まりませんよ……」

賢者「……そういえば、魔界に着いた時は驚きましたね。思いの外普通の世界っていうか」

盗賊「確かに。一般的に言われてる魔界のイメージと違ったのは事実だね」

賢者「地下深くにこんな広大な世界があるのも驚きましたけど、技術水準の高さにも驚かされました」

賢者「人工太陽によって昼夜が設定されてたり、農耕や牧畜も問題なく行われていたり」

盗賊「機械王の背中から見下ろしてみると、地上と大して変わらなかったね」

賢者「あのアーティファクトは初代魔王が設計・開発したって魔王さんは言ってましたけど」

賢者「5000年前にはもう、太陽を再現したアーティファクトを作れるほどの技術力があるなんて……」
 
947 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/30(金) 23:01:01.36 ID:M+nQ0n5i0
 
盗賊「技術力といえば、機械王もそうだね。アンタが修理した時もわからないことだらけだった」

賢者「はい。ボディの各部が内部機構を見せないようにブラックボックス化されていました」

賢者「飛べるようになったのが奇跡みたいなものですよ。修理したボクも完全には理解できていません」

盗賊「でも、機械王をその……なんとかボックス化する意味はなんなんだい?」

賢者「多分、機械王が敵の手に渡った時のためでしょう」

賢者「もしボクが機械王を王宮に持ち帰って、同型のゴーレムを量産したとしたら」

賢者「それは魔王軍にとって脅威になり得ます。何しろ物質系モンスターの王ですからね」

賢者「意図的に外部から内部機構を見ることができないように封印するのは利に適っています」

盗賊「でも5000年も前の代物だよ。古すぎて魔王軍の連中にもわからなくなっちまってるんじゃ?」

賢者「それはそれでいいんですよ。ロストテクノロジーの産物は、特に解析が困難ですから」

賢者「機械王の耐用年数いっぱいまで、模倣や対抗手段の開発を封じているというわけですね」

盗賊「はぁ……ずいぶんと考えられてるもんだね」

賢者「恐るべきはこれらを開発した初代魔王ですよ。一体どんな人物だったんでしょうか」

盗賊「そうだね……多分、お人好しで困った奴を放っておけない性質だったと思うよ」

賢者「どうしてそう思うんです?」

盗賊「ああやって自分で太陽まで作っちまうなんて、相当な理由がないとできないことじゃないか」

盗賊「きっと、この地下の世界で太陽を望んでる連中のために、作ってやったんだと思うよ」

賢者「……そうですね。それほどの技術力がありながら地上を侵略していないのにも説明がつきますし」

盗賊「……案外、人間と魔族ってのは、何かきっかけさえあれば共存していけるのかもね……」
 
948 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/30(金) 23:01:55.22 ID:M+nQ0n5i0
 
カツーン……カツーン……

盗賊「……っと。この足音は魔王だね」

賢者「わかるんですか?」

盗賊「そりゃあ盗賊だからね。そのくらい朝飯前さ」

賢者「……ということは、ここから出られるんでしょうか?」

盗賊「さあね。あたしらと別れた後、何があったのやら……」

カツーン……カツーン……

ザッ……

けんじゃととうぞくのろうのまえに まおうがやってきた……

魔王「……やあ、しばらくぶり」

賢者「魔王さん……?」

盗賊「どうしたんだい? ずいぶん疲れた顔をしてるじゃないか」

魔王「まあ、ちょっとね。帰ってきて早々、色々あったもんだからさ」

賢者「外はどうなってるんですか。勇者さんの動向は? これからどうするんですか?」

魔王「焦らない焦らない。オレはその話をしに来たんだから……よっこらせっと」

まおうは てつごうしのまえにすわりこんだ

魔王「いやぁ、もう三日くらいかなぁ。賢者ちゃんや盗賊ちゃんと話してないのが辛かったよ」

盗賊「そりゃどうも。あたしらの顔を見て癒されたかい?」

魔王「バッチリさ。これでまだまだ戦えそうな気がしてきたよ」
 
949 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/30(金) 23:02:32.48 ID:M+nQ0n5i0
 
賢者「戦う、って……竜王とですか?」

魔王「……まあ、あのオッサンも当面の敵の一人ではあるんだけど」

魔王「そういうのとはちょっと違うんだよ。オレが戦うってのはさ……」

魔王「……その、なんて言うんだろう。えぇと……」

盗賊「……魔王。アンタ、何かあったろ?」

魔王「別に、賢者ちゃんや盗賊ちゃんが気にすることじゃないよ。ただ、色々あったって……」

賢者「魔王さんは嘘や誤魔化しが下手すぎです。その態度、何かあったって言ってるようなものですよ」

魔王「あ……いやぁ、そんなつもりはなかったんだけどなぁ。失敗失敗」

魔王「でも大丈夫。気にしないでいいよ、ホント。これはオレの問題だしさ」

賢者「気にします。というより、気になります。魔王さんがそんな顔するほどのことでしょう?」

魔王「違うんだよ賢者ちゃん、オレは」

盗賊「別にアンタが話したくないってんならいいけどさ……吐き出したくて堪らないって顔してるよ」

盗賊「あたしらに気を使ってるんならやめておくれよ。仲間だろ?」

魔王「……仲間」

盗賊「そうさ、仲間だよ。賢者もそう思うだろ?」

賢者「ボクは別にそうは思ってませんけど、色々協力もしてもらいましたし」

賢者「……まあ、いつも能天気な魔王さんがシリアスムードなのは調子が狂うっていうか」

賢者「ボク達が地上へ帰還するためにも、魔王さんには元気でいてもらわないと困るっていうか……」
 
950 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/30(金) 23:03:44.87 ID:M+nQ0n5i0
 
魔王「……ははぁん、ツンデレ? 賢者ちゃん、ホントはオレのこと心配で堪らないんだろ」

賢者「それだけは絶対ありえませんっ!」

盗賊「ったく、少しは素直になりなよ。そう短い付き合いでもないんだからさ」

魔王「……ありがとう、二人とも。オレ……嬉しいよ」

賢者「……ちょっとは元気出ましたか?」

魔王「ああ。賢者ちゃんがデレてくれたからかな」

賢者「デレてません」

魔王「またまたぁ」

賢者「デレてませんっ!」

盗賊「……で、どうだい? アンタが何を悩んでるのか、話してくれる気になった?」

魔王「……いや。これは多分、オレが一人でなんとかすべきことだと思う」

盗賊「そうなのかい?」

魔王「ああ。だから、ひとつだけ話すよ。オレがこれからやりたいことを」

賢者「魔王さんが、やりたいこと……?」

魔王「オレは……」

魔王「……オレは、『魔王』になりたい」

魔王「肩書きや血筋だけの話じゃない。本当の意味で、オレはこの魔界の王になりたい」

賢者「……地上世界を制服でもするつもりですか」

魔王「違うよ。地上なんかどうだっていい。オレは魔界を変えたいんだ」

賢者「魔界を変えるって……どういうことですか?」
 
951 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/30(金) 23:04:39.79 ID:M+nQ0n5i0
 
魔王「オレもついこの間初めて知ったんだけど……オレの親父は、それを望んでたらしいんだ」

盗賊「アンタの父親……ってことは、30年前までの?」

魔王「ああ。優勝劣敗、適者生存、弱肉強食……そんなクソッタレな価値観がまかり通る魔界を」

魔王「弱さが罪になる世界を、オレ達次の世代に変えて欲しいって思ってたらしいんだ」

賢者「先々代の魔王がそんなことを……?」

魔王「まったくふざけた話だろ? 結局、親父達は自分で勝手に決着して、責任を負うのを放棄した」

魔王「オレも……それを、親父の遺志を知らないまま逃げ続けてた。責任とか、義務ってやつから」

魔王「笑えるよ。親子二代で色んなものから逃げ続けてるんだ。逃げた先には何もないのに……」

魔王「それを思えば、兄貴達の方がいくらかマシかも知れない。少なくともオレよりは魔王らしかった」

魔王「だけど……」

盗賊「だけど?」

魔王「オレは、兄貴達みたいにはなりたくない」

魔王「オレはオレだ。オレはオレのやり方で、本当の『魔王』になりたんだ」

魔王「だから、この先どんなことがあっても、誰も失いたくない。誰も死なせたくない」

魔王「勿論、オレ自身だって死なないし死にたくない。オレはオレの世界を守ってみせる」

魔王「……賢者ちゃんも盗賊ちゃんも、絶対傷つけさせない」

賢者「魔王さん……」

盗賊「……」
 
952 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/30(金) 23:06:07.92 ID:M+nQ0n5i0
 
魔王「……とまあ、こんな感じさ。オレのやりたいことって」

魔王「とりあえず、差し当たってやるべきことは、竜王をぶちのめすことかな?」

魔王「それから賢者ちゃんと盗賊ちゃんを勇者の元に帰してやること」

魔王「これくらいなら今すぐにでも始められるだろ? オレが『魔王』になるための第一歩だ」

賢者「……ということは」

魔王「ああ。これから二人を脱出させてあげるよ」

盗賊「どうするんだい。アンタの権限であたしらを釈放するのかい?」

魔王「そいつはちょっと面倒かなぁ。オレの権限で手続きをすっ飛ばすにしても時間がかかる」

魔王「側近くんもうるさそうだしね……というわけで、二人にこれをプレゼントだ」チャラッ

まおうは ポケットからろうごくのカギをとりだした!

賢者「それって、この牢の鍵……!?」

魔王「すごいだろ? さっき看守を買収してもらっておいたのさ」

盗賊「……つまり、あたしらにここを脱走しろってことかい」

魔王「御名答。脱出するための飛行艇は用意してある」

魔王「自動的にゲートまで飛んでいくようプログラムしてあるから、飛行艇を奪って逃げてくれ」

魔王「ゲートの番兵には連絡を入れてある。あと数時間はゲートは開きっぱなしだ」

賢者「捕虜が逃げ出したりなんかしたら、追手を差し向けられるんじゃないですか?」

魔王「大丈夫大丈夫、ちゃんとその辺も考えてあるから。じゃあ、鍵は置いとくよ」
 
まおうは そういってたちあがると ちかろうをでていった……
 
953 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/30(金) 23:07:11.97 ID:M+nQ0n5i0
  
――――――――――
現在
竜王軍拠点・地下1階
 
 
タッタッタッ……

賢者「……で、魔王さんの言う通り脱走に成功したと思ったら、機械王に乗った魔王さんが追ってきて」

賢者「挙句ボク達を撃ってくるんですから。ビックリしたなんてもんじゃないですよ、もう」

魔王「ごめんごめん。演出的にそうしないといけなかったんだよ」

魔王「脱走した捕虜を追って、ゲートを抜けて地上まで出た、ってシチュエーションが必要だったんだ」

盗賊「確かに、ゲートを抜けちまえば魔王城にいる連中は追ってこれないけどさ」

魔王「でしょ? それに側近くんが持ってる管理者用上位パスだって、ゲートを抜ければ有効圏外」

魔王「まさかオレを乗せたまま自爆ってこともないだろうし、あとは適当なところで二人と合流」

魔王「それからこの火竜山脈に乗り込んで勇者と合流、竜王をぶちのめせば万事オッケーってわけさ」

賢者「まったくもう……それで、この砦に勇者さんがいるって保証は?」

魔王「親衛隊が両軍の動向を探ってたから、勇者がエルフの長老を助けにここに来てるのは知ってたよ」

賢者「勇者さんがエルフの長老の救出……古代魔法の秘密を守るためでしょうか」

盗賊「確定だね。あたしの知る限りじゃ、勇者ってのはあいつしかいないし」

魔王「よし……ここで二手に分かれよう。オレは竜王を探すから、二人は勇者を探して」

盗賊「了解。行くよ、賢者! 迷子になるんじゃないよ?」

賢者「あっ、久しぶりにボクを子供扱いしましたね!?」

魔王「……」

魔王(……ちゃんと生きてろよ、勇者。賢者ちゃんと盗賊ちゃんを悲しませたら承知しないからな)
  
954 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2011/12/30(金) 23:08:16.23 ID:M+nQ0n5i0
そろそろ次スレの季節なのであと一回くらいなんか投下したら次スレ立てます。
本編の続きか、タイミングを逃したクリスマスネタか何かの予定です。
955 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 03:52:52.83 ID:6JGxLp/+o
おっつん!
たのしみや
956 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 04:59:35.18 ID:Er2tZnbXo
おつー、良いお年を。
957 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/20(金) 07:51:43.75 ID:CwnUZ+QIO
そろそろ、か?
958 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/26(木) 14:09:25.50 ID:qBkJNdWho

959 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2012/02/04(土) 22:29:15.00 ID:u5XJklNh0
 
――――――――――
現在
竜王軍拠点・地下3階
 
 
ガキィンッ!

戦士「ハァ……ハァ……」

戦士「どうした……もう終わりか……?」

竜人κ「こ、こいつ……不死身か!?」

竜人λ「だがダメージがないわけはない。このまま押し切れ!」

りゅうじんたちは せんしにむかっていっせいにきりかかった!

ギィンッ!

せんしに 5のダメージ!

竜人μ「なにっ……!?」

戦士「その程度の攻撃が……俺に通用するかッ!」

せんしは よろいのスカートの裏から くさりがまをとりだした!

せんしは くさりがまをはげしくふるい りゅうじんたちをなぎはらった!

戦士「ハァ……ハァ……」

戦士「お前達が何百人かかって来ようが無駄なことだ……命の惜しい者はさっさと消えろ!」

戦士「今の俺を止められる者は誰もいない……神々だろうと悪魔だろうとな……!」
 
960 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2012/02/04(土) 22:29:41.83 ID:u5XJklNh0
 
ざわ・・・ざわ・・・

そのとき りゅうじんたちがきゅうにざわめきはじめた

戦士「……?」

??「おーおー、吠えるねぇ。上の階が騒がしいと思ったらずいぶん活きのいいのがいたもんだ」

??「どこのネズミかは知らねぇし、興味もねぇが……あまり調子に乗ってもらっちゃあ困るなぁ」

戦士「! 貴様は……!?」

??「侵入者ってのはテメエか? なかなかいいモン着てんなぁ、オイ」

??「こいつもテメエの持ち物だったみてぇだな。ま、返す気なんぞさらさらねぇけどよ」チャキッ

??「テメエのモノは俺のモノ……いや、この世の全ては俺のモノってか。名文句だねぇ」

戦士「……竜王!」

竜王「おう? エルフのガキにも顔が知られてんのか……俺も有名になったもんだぜ」

戦士「……俺は貴様を倒すためにここにいるのだ。知っていて当然だろう?」

戦士「そのオリハルコンの剣も携えてくるとはむしろ好都合。さあ、剣を返してもらおうか」

竜王「こいつはもう俺のモノよ。返して欲しけりゃ俺をブッ殺してみろ」

戦士「言われるまでもない!」

せんしは ロッドをかまえてとびかかった!

戦士(……あれからしばらく経っているが、長老は既に脱出できているのか?)

戦士(僧侶殿、長老、それに勇者さえ生きていれば……たとえ俺が倒れたとしても……!)
 
961 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2012/02/04(土) 22:30:29.82 ID:u5XJklNh0
 
ギィンッ!

りゅうおうは ロッドのいちげきを つるぎでうけとめた!

戦士「クッ……!」

竜王「いきがってんじゃねぇぞ、小僧ォ!」

りゅうおうは せんしをはじきとばした!
せんしに 11のダメージ!

戦士「だがッ……!」

せんしは みぎうでのボウガンをかまえた!
ひかりのやが りゅうおうにむけて はなたれた!

竜王「あァ? 今更そんなもんが通用すると思ってんのか」

戦士「当然だッ!」

ひかりのやが くうちゅうでぶんれつし みっつのひかりのだんがんになった!

竜王「上等じゃねぇかッ!」

りゅうおうは つるぎをふるってひかりのだんがんをはじきとばすが
そのうちのひとつが めいちゅう!
りゅうおうに 50のダメージ!

竜王「ッ……やってくれるぜ。小僧のくせによ」

戦士「貴様こそ中年の動きとは思えんな。侮っていたつもりはないが」

竜王「ハッ! ……まあ、テメエらエルフの若造りには負けるけどよ!」

戦士「……!」

りゅうおうは じゅもんをとなえた
あれくるういかずちのあらしが せんしにおそいかかる!
 
962 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2012/02/04(土) 22:31:08.30 ID:u5XJklNh0
 
戦士「ぐあぁぁぁぁぁッ!?」

つうこんのいちげき!
せんしに 81のダメージ!

せんしは じゅもんのいりょくにふきとばされ かべにたたきつけられた!

戦士「ぐっ……」ヨロッ

せんしは からだがしびれてうごけない!

戦士(全身が、麻痺している……! なんという魔力だ……)

竜王「おっと、殺し損なっちまったか……その鎧の呪文耐性は大したもんだぜ」

竜王「だが電撃系の呪文は防ぎきれねぇようだな。すっかり焦げ臭くなっちまってよ……いいザマだぜ」

竜王「……さぁて。もう一丁喰らわしてやりゃあ、流石に死ぬよなぁ。どうだ? ええ?」

りゅうおうのてのなかで いかずちのまりょくが ぞうふくしていく!

戦士「……ッ!」

竜王「……思い出すぜ。あの獣くせぇ獣王とその息子」

竜王「獣王は根性で俺の電撃を耐えられたが、獣王子の方は呆気なく死にやがってよ」

竜王「何が何だかわからねぇうちに即死しやがった……傑作だったな。アレは笑えたぜ」

竜王「そうだ、ちょうど……こんな風になぁ!」

りゅうおうが まりょくをかいほうするために みぎうでをふりあげ――
  
963 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2012/02/04(土) 22:31:38.78 ID:u5XJklNh0
 
 
 
 
 
「――待ちやがれッ!」
 
 
 
 
 
964 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2012/02/04(土) 22:32:29.49 ID:u5XJklNh0
 
ザシュッ! 
 
竜王「――ッ!?」

そのしゅんかん りゅうおうのみぎうでが きりおとされた!
まりょくがうんさんむしょうし じゅもんがむこうかされる!

キィンッ!

いっぽんのつるぎが ゆかにつきたった!
そのつるぎには まおうぐんのもんしょうが きざまれていた……!

戦士(……!? 一体誰が……)

竜王「……まさかッ!?」

りゅうおうは つるぎがとんできたほうこうに めをむけた
つうろのむこうがわから はしってくる ひとりのおとこがいた……!

まおうが たたかいにらんにゅうした!

魔王「竜王!」

竜王「チッ、テメエまで来やがるとは予想外だぜ……このクソガキがァ!」

魔王「ガキで結構さ……アンタみたいな百害あって一利なしの老害に比べたらな」

魔王「覚悟してもらうぜ、オッサン。オレの友達を殺ってくれた落とし前をつけさせてやるからな」

竜王「ほう……いい顔してやがる。少しは楽しめそうだな、オイ」

魔王「なあ、そこで転がってるお前! 死にたくなかったらどっかに逃げててくれ。邪魔だし」

戦士「お……お前、は……一体……?」

魔王「オレか? オレはな……」
 
 
 
魔王「――通りすがりの、魔界の王さ」
 
965 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2012/02/04(土) 22:33:01.73 ID:u5XJklNh0
 
――――――――――
同時刻
竜王軍拠点・地下2階
 
 
タッタッタッ……

長老「! ……しまった、行き止まりか」

竜人ο「追い詰めたぜ、ジジイ!」

竜人π「流石はエルフの長老ってところか……散々痛めつけてやったのに油断ならねぇ」

竜人ρ「今度は逃げられねぇように、手足をへし折って牢屋にブチ込んでやる!」

長老「クッ……ここまでか……!」

竜人ο「覚悟しやがれ!」

ゴウッ!

りゅうじんたちが ちょうろうにおそいかかったそのとき
ほのおのうずが りゅうじんたちをのみこんだ!

長老「なっ……!?」

竜人π「なんだ!? ジジイの術じゃねぇ……!」

竜人ρ「誰だ! ナメた真似をしやがるのは……」

??「こっちだよ!」

ザシュッ!

なにものかが はやてのようにかけぬけ りゅうじんρののどをきりさいた!

竜人ρ「ガッ……!?」ドサッ
 
966 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2012/02/04(土) 22:33:50.08 ID:u5XJklNh0
 
りゅうじんοとりゅうじんπは ほのおのうずからはいだしてきた!

竜人π「今のはハナから目くらましか……誰だ、テメエは!」

??「残念だけど名乗ってはやれないね……強いて言うなら」

ガキィンッ!

そのしゅんかん りゅうじんたちのあしが こおりついた!
りゅうじんたちのうごきが とまったのをかくにんすると いっきにきょりをつめてきりかかった!

ザシュッ!

盗賊「そこの勇者の、仲間だよ」

ドサッ……

りゅうじんたちを たおした!

せんとうがおわったあと つうろのおくから けんじゃがかけよってきた……

賢者「盗賊さん、終わりましたか?」

盗賊「ああ。ナイス援護だよ、賢者」

長老「……お前達は……? 見たところ人間のようだが」

盗賊「おっと。アンタがエルフの長老だね?」

長老「いかにも、わしが長老だが……先程勇者の仲間と言ったな。まさか……」

賢者「……勇者さん!?」

ちょうろうにかかえられた ゆうしゃにきづいたけんじゃは おもわずこえをあげた

賢者「どうしてこんな血まみれに……何があったんですか!?」

長老「話せば長いが……いや、話している暇はない。一刻も早く治癒に長けた術者に診せなければ」
 
967 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2012/02/04(土) 22:34:58.35 ID:u5XJklNh0
 
盗賊「治癒に長けた術者っていうと……賢者、できるかい?」

賢者「任せてください。見たところ身体の傷は塞がってるし、出血も止まっているから……」

長老「娘。復活呪文は使えるか?」

賢者「勿論です。ボクは賢者ですから」

長老「では早く復活呪文を。このままでは蘇生が不可能になる」

賢者「わかりました……下がっててください」

けんじゃは じゅもんをとなえた

けんじゃのからだからたちのぼる まりょくのオーラが きんいろにかがやいていく……
きんいろのひかりが ゆうしゃのからだに すいこまれていく!

盗賊「……一体全体、何がどうなってこんな傷を負ったんだい? こいつは勇者なんだよ?」

長老「いや……この男はもう、勇者ではないかもしれん」

盗賊「? どういう意味――」

けんじゃは ふっかつじゅもんを ゆうしゃにそそぎつづけている……

賢者(勇者さん……っ! なんで血まみれで長老さんに抱えられてたんですか……っ!)

賢者(それに、新しい仲間っぽい女の人も一緒で……どういう経緯で仲間にしたんですか……っ?)

賢者(ボク達が離れてたのって、意外と長い間だったんですよ……?)

賢者(聞きたいこと、話したいこと、山ほどあるんです。だから……っ)

賢者「戻ってきてください……! 勇者さん……!」

やがて きんいろのひかりが すべてゆうしゃのからだにきゅうしゅうされた……
 
968 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2012/02/04(土) 22:35:58.96 ID:u5XJklNh0
 
賢者「うっ……」

けんじゃは たちくらみににたかんかくをおぼえ たおれこんでしまった!

盗賊「賢者!」

けんじゃは とうぞくにうけとめられた

賢者「……どう、ですか……? やるだけはやりましたけど……」

賢者「あたしにゃわからないよ。特に魔法のことは」

長老「後は勇者の生命力次第ということか……ム!?」

そのとき ゆうしゃのからだが あわいひかりをまとった!

それは かいふくけいじゅもんとは べつのひかりだった……

盗賊「な……何だい、こりゃあ!?」

賢者「これって……!?」

やがて ひかりがおさまったあと……

ゆうしゃのゆびさきが かすかにうごいた!

勇者「……」

勇者「……う……」ピクッ

ゆうしゃは いきをふきかえした!
 
969 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2012/02/04(土) 22:36:46.26 ID:u5XJklNh0
 
賢者「……! やった! やりました!」

長老「生き返ったのか……これで戦士の意志も……」

盗賊「大丈夫かい、勇者? ホラ、これ何本に見える?」ピース

勇者「その声は……賢者……盗賊……? 君達は……」

盗賊「わざわざ来てやったのさ。アンタに会うため、魔王と一緒にね」

勇者「魔王……?」

盗賊「話は後だよ。勇者も相当体力を消耗してるし……アンタ達は脱出しな」グイッ

ザァァァ……

とうぞくが ゆうしゃにかたをかしてたたせると ふくのすそから はいがこぼれおちた……

盗賊(……? 灰……?)

勇者「長老……僧侶を……」

長老「うむ、任せろ。外へ出るにはどこを目指せばいいのだ?」

賢者「上の階にボク達が乗ってきた乗り物があります。そこに戻りましょう」

盗賊「なら魔王を呼び戻そう。勇者がこんな有様だなんて、正直予想外だしね」

賢者「念話でメッセージを送りましょうか? ジャミングされていなければ……」
 
970 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2012/02/04(土) 22:37:18.28 ID:u5XJklNh0
  
ドゴォッ!

そのとき とつぜんゆかがふきとび したからなにかがとばされてきた!
 
盗賊「ッ!?」

長老「なんだ……ッ!? 何が……」

ドシャアッ!

戦士「ぐ……うぅ……!」

魔王「いてて……畜生、あのオッサン……」

ちか2かいまでふきとばされてきたのは まおうとせんしだった!
ふたりともボロボロで ふかいきずをおっている……

長老「戦士!」

賢者「魔王さん!」

魔王「あ……賢者ちゃん。悪い、ちょっと手こずってる」

戦士「右腕を落とされてなお、あれだけのパワーか……恐るべきは竜王の戦闘能力……」

魔王「賢者ちゃんと盗賊ちゃんと……あと勇者とカワイコちゃんと爺さん! 早く逃げてくれ」

盗賊「アンタは?」

魔王「こっちの兄ちゃんと協力して、もう少し竜王を食いとめてやるさ」

戦士「ああ……魔王が貴様のような男だというのは意外だったが」

戦士「敵の敵は味方ということだ。今は協力しよう」

魔王「そういうこと。ていうか、まあ……協力しないとどうにもならなさそうだしね」
 
971 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2012/02/04(土) 22:37:47.90 ID:u5XJklNh0
 
勇者「ダメだ……今は、脱出を優先するんだ……」

戦士「! 勇者……生き返ったのか!」

盗賊「オイオイ、無茶しないでおくれよ。さっきまで意識がなかったんだから」

勇者「ああ……すまない、盗賊……」

魔王「勇者……ずいぶん久しぶりじゃんか。あの時はろくに会話もしなかったけどさ」

魔王「それにしてもずいぶん攻めっ気のコーディネートだな。全身真っ赤っかだぜ」

勇者「長老に危険が及ぶのは避けたい……それに、今のままでは竜王に勝てない……」

魔王「悪いけどそれは聞けないな。今はあのオッサンをぶちのめすチャンスだろ!」

勇者「いや……今はまだ、彼が手に入れた古代魔法に関する情報が不足している……」

勇者「闇雲に突っ込んで行っても無駄死にするだけだ……」

勇者「私は……仲間を無用な危険に晒すわけにはいかない……」

魔王「!」

戦士「……では、ここで退いて奴を倒す術は見つかるのか?」

勇者「確約はできかねる。だが、見つけてみせる……必ず……」

魔王「……」

賢者「勇者さん、魔王さん……」

魔王「……わかったよ。ここは一旦退こう」
 
972 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2012/02/04(土) 22:38:53.76 ID:u5XJklNh0
 
長老「うむ……そうと決まれば、早く上の階へ行くぞ。急がねば竜王が追って来よう」

戦士「そうだな……なら」

せんしは ロッドにまりょくをこめ いきおいよくふりおろした!

ギィンッ!

ピシィッ……!

すると ゆかとかべにおおきなきれつがはしり くずれおちた!

戦士「足止めになるかはわからんが……今できるのはこの程度か」

勇者「十分だろう……君達と戦っていたなら、竜王も多少のダメージを受けているはず……」

盗賊「ホラ、無理して喋るんじゃないよ。歩くのに集中しな」

賢者「ここを脱出したらちゃんと治療しないといけませんからね。本来なら絶対安静なんですよ」

勇者「すまない……だが、君達と再会できてよかった……」

賢者「話は後です。さあ」

魔王「……ちぇっ。勇者の奴、役得だなぁ。オレももう少し怪我すりゃよかった」

盗賊「悪いことは言わないからやめときな。アンタの馬鹿は死んでも治らないんだからね」

タッタッタッ……
 
 
 
ゆうしゃたちは さいじょうかいでたいきしていた きかいおうにのり
とりでをだっしゅつした!
 
973 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2012/02/04(土) 22:39:47.49 ID:u5XJklNh0
 
――――――――――
数分後
竜王軍拠点・地下3階
 
 
りゅうおうは きりおとされたみぎうでを さいせいしていた……

竜王「奴ら……逃げやがったか」

竜王「エルフの小僧の攻撃が意外と効いてやがったな。ま、ちょうどいいハンデだけどよ」

竜王「あのクソガキは相も変わらず弱かったが……気迫ってもんがあったな。ククク……」

竜王「しばらく見ねぇうちに変わるもんだ。魔王の血筋ってのは侮れねぇな……」

竜王「……だが」

竜王「早いとこ手は打たなきゃいけねぇ……何せ、逃がしちまったからな」

竜王「あのジジイは生かしてちゃならねぇ。俺以外に古代魔法の秘密を知る野郎は、特にな」

竜王「それに……『王都に差し向けた連中』の動向も気になるからな」

みぎうでのさいせいをおえたりゅうおうは くずれおちたてんじょうをみあげ
えみをうかべていた……
 
974 : ◆6I9SwHc8xc [saga]:2012/02/04(土) 22:43:27.93 ID:u5XJklNh0
\            /: : : : : :ハl\; : ト、: : : : : : : : : :.:\  /    /
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    \.    / /ノ: :/    ヘ      |        `\:\ーヽ    -‐'"´
       ___j  |/: ノ    __\.   |   ./       /:;\i
       |: : :.| . /:.:/     ´ tテ‐≧__ノ   /       //´       
       /: : : し': :/         ̄_>,  r≦___、  /      
       \: .ソ厶/              /<tj ヽ. ′ノ         -‐‐‐‐ "´
      _/^7 .//           / \ ` ´ /      俺達は次スレを建てることを強いられているんだ!
     //レ′{ /        、   /      /        http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1328362902/  
____/  |.  ヽ/  ._ -‐ _  - ´     ノ
   /  八 l  \   |^l  ヽ ` -、_     ./          `゙ ー- 、_
    {    \    '、 \\__ 〉/   /       \          `゙ ー- _
    |      ヽ    ヽ\`‐---‐'´ ,. ィ´}           \
    |        \   \  ̄   / / .|\     \  \
 

引き続き、次スレでもよろしくお願いいたします。
975 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/04(土) 22:45:00.28 ID:sB+8uzSIo
おつおつ
976 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2012/02/05(日) 11:32:29.81 ID:aJoe3D8j0
977 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/05(日) 14:57:58.00 ID:DW9vwa+5o
お帰り!
全裸ネクタイで待ってたぜ
978 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/05(日) 15:02:44.55 ID:/vPiLYRJo
乙。 次回の投下からスレ切り替えがはいるんかねー。
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