このスレッドはSS速報VIPの過去ログ倉庫に格納されています。もう書き込みできません。。
もし、このスレッドをネット上以外の媒体で転載や引用をされる場合は管理人までご一報ください。
またネット上での引用掲載、またはまとめサイトなどでの紹介をされる際はこのページへのリンクを必ず掲載してください。

キョン「けいおん!」 律「涼宮ハルヒの憂鬱」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 20:03:04.98 ID:xlF2spWW0
高校を卒業して俺は、地元の大学に通い始めた。まぁ、良くもなく悪くもない普通レベルの大学だと思う。
本当なら、古泉と同じ東京の大学へ行きたかったのだが、俺の頭ではその目標には叶わなかった。
頑張って勉強したつもりだったんだけどな。
まぁ、大学ではそれなりに楽しい生活を過ごした。
SOS団はというと、みんな別々の大学に行った。
だからSOS団で会う時は、長期休みの時ぐらいで年に2回会う程度のものだった。
朝比奈さんは、来なかった。多分未来へ帰ったんだと思う。

なんだかんだで、大学も無事に卒業し、俺は東京にあるそこそこの中堅企業に就職した。
慣れない営業職に戸惑いつつも、なんとかがむしゃらに頑張った。上司がムカついてヤケ酒に走ったり、仕事に失敗し、悔しくて一人泣いた夜もあった。
そんな慌ただしい毎日を過ごし、早2年という月日が流れていた。
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】

ごめんなさい、このSS速報VIP板のスレッドは1000に到達したか、若しくは著しい過疎のため、お役を果たし過去ログ倉庫へご隠居されました。
このスレッドを閲覧することはできますが書き込むことはできませんです。
もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。

ツナ「(雲雀さん?!)」雲雀「・・・」ビショビショ @ 2025/06/07(土) 01:30:36.87 ID:AfN9Rsm0O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1749227436/

【安価コンマ】障害走を極めるその5【ウマ娘】 @ 2025/06/06(金) 01:05:45.46 ID:RaUitMs20
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1749139545/

貴様たちの整備のお陰で使いやすくしてくれてありがとう @ 2025/06/04(水) 20:56:21.03 ID:QjuK6rXtO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1749038181/

阿笠「わしの乳首に米粒をくっ付けたぞい」コナン「は?」灰原「は?」 @ 2025/06/04(水) 04:01:13.39 ID:ZjrmryLdO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1748977273/

レッド(無口とか幽霊とか言われるけどまだ電脳世界) @ 2025/06/02(月) 21:21:00.13 ID:ix3UWcFtO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1748866860/

キンタマ @ 2025/06/01(日) 19:16:06.13 ID:s9SMehQ1O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1748772966/

旅にでんちう @ 2025/06/01(日) 09:21:16.26 ID:/GV7JQm+O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1748737276/

【安価とコンマ】異世界転移したかもしれない人の話 @ 2025/05/31(土) 11:35:27.52 ID:+jgLu7020
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1748658926/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 20:07:15.89 ID:xlF2spWW0
SOS団のみんな何しているんだろうな…。

社会人になってからはお互い全然連絡を取っていないかった。
最後に集まったのは、大学4年の春だ。その時は既に全員内定をもらっていた。
ハルヒはテレビ局、古泉は銀行員、長門は出版社と皆かなりの大手企業だった。
俺だけあまり知られていない会社でハルヒにネタにされた記憶がある。

きっとみんなも忙しいんだろうな…。



「明日から連休になるがあまりハメを外しすぎるなよ」

上司が口うるさく言った。あしたからお盆休みだ。
久々にみんなと会えればと思い連絡を取ってみた。
だが、俺以外は普通に仕事で忙しく、会えるような状況ではなかった。

実家に帰るにしてもめんどくさい。どうやって過ごすかな…。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 20:11:46.61 ID:xlF2spWW0
連休一日目、家にいてもしょうがないと思い、何の目的もないまま外へ出かける事にした。
街に出てきたのはいいけど、何もやることがないので駅前の近くにある、パチンコ店へ入った。

「お、北斗の新台出たんだな」

2時間くらい遊んだだろうか。手元の時計を見ると針はちょうど12時を指している。
お腹も少し空いてきたし、若干の臨時収入もあったので普段行かないようなお店に入る事にした。

その店の入り口の前で…

「んっ?」

財布が落ちているのが目についた。落し物だろうか…。
俺は、その財布を拾い良心的な気持ちから交番に届ける事にした。
だが、

「……交番ってどこだっけ?」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 20:17:09.56 ID:xlF2spWW0
そういえば俺って、あんまりこの街の事知らないような気がする…。
若干、交番に届ける事も面倒になったので、本人と直接連絡が取れる物があればと思い財布の中身を拝見する事にした。
幸い、中には免許証と本人の携帯番号であろう物が記されている物もあったので早速電話をかけてみる事にした。
んっ?プライバシーの侵害?
今は目を瞑っておいてくれ。

「……あっ、もしもし、”田井中さん”の番号で合っていますでしょうか?」
「……は、はい、そうですけど」
「あの、実はですね…」

俺は、財布の件について説明した。

「ほ、本当ですか!実は探していたんです!」
「そうですか、それは良かったです。えーと、ではどうしましょうか?」
「今どちらにいますか?」
「えーと、ここは、○○ですね」
「わかりました!すぐに向かいます!着いたらまた連絡します!」
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 20:19:46.33 ID:xlF2spWW0
そして、それから5分も経たない内に田井中さんはやってきた。

「ありがとうございます!すっごい助かりました!」
「いえいえ、あっ、でも一応確認した方がいいですよ」
「えっ、まさか何か取ったんですか!?」
「いやいや、俺じゃなくて他の人がさ」


……………………。
……………。
……。


「そしたら、澪の奴がさ」
「その、澪さんって人はどんだけ恐がりなんだよ…」

俺は今、田井中と喫茶店にいる。
なぜ初対面でいきなりこのような状況になっているかと言うと、財布を拾ってくれたお礼に対して、何か御馳走したいという彼女の良心に甘えた結果からである。
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 20:23:49.52 ID:xlF2spWW0
「よっぽど楽しかったんだな。その軽音部って」
「おう、めっちゃ楽しかったぜ!んで、今日の夜に久々にみんなで会うんだぜ!」

田井中は目を輝かせながら言った。

「おぉ、そいつは楽しみだな」
「まぁね。あっ、何か悪いね。私ばっかりしゃべっちゃって」
「んっ?あぁ、気にするな。俺も聞いてて楽しいからさ」
「そ、そっか。なんていうかさ、久々なんだよね。こうやって同世代の人と話するの」
「あー、俺も仕事以外でこうやって人と話すのって久々かもしれん」
「しかもキョンは同い年だし。なんつーか、その……、結構しゃべりやすいしさ」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 20:27:39.78 ID:xlF2spWW0
それから20分くらい、田井中と他愛もない話をして店を出る事にした。
別れ際に、お互いの連絡先を交換した。

「暇な時連絡すっからなー、キョンも寂しくなったら連絡しろよ」
「へいへい」

その後、俺は家の近くのレンタルビデオ屋さんに行き、少し前に流行ったSF映画と洋物のAVを借りて、家で映画鑑賞に浸る事にした。
ていうか、久々にAVなんて借りた気がする…。溜まってんのか俺は…。
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 20:31:57.21 ID:xlF2spWW0
……………………。
……………。
……。


「んっ……やべっ」

気づけば、時刻は20時を過ぎていた。どうやら、俺はいつの間にか眠っていたらしい。
えーと、確かアバターを見てから、AVを見て久々に[田島「チ○コ破裂するっ!」]して……。

携帯電話を手に取ると、着信履歴が残されていた。ディスプレイには”田井中律”という文字が表示されている。

「あいつ、今日は軽音部で集まりがあるとか言ってなかったっけ」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 20:34:56.75 ID:xlF2spWW0
俺は、疑問に思いつつも一応連絡を取る事にした。

「あっ、もしもし、たいな」
「あっ、もしかしてキョンさんですか!」

受話器からは聞いた事もない声がした。えーと、明らかに田井中ではないよな。
Who are you?

「あ、あのー、田井中さん……ではないですよね」
「うん、違うよ!りっちゃんは今トイレにいます!」
「お、おい、唯やめとけって」
「そうよ、りっちゃんに怒られるわよ」

携帯の向こうから、何人かの声が聞こえた。田井中の言ってた軽音部の人達だろうか。
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 20:39:24.42 ID:xlF2spWW0
「えーと、さっき俺の携帯に着信が残ってたから一応連絡してみたんだが」
「うん、さっきまでね、キョンさんの事話題になってたんだよ!」

何で俺の事なんか…。あいつ一体俺の事なんて言ってんだ…。

「あっ、今○○ってお店で飲んでるんだけどね、良かったらキョンさんも来てください!」

○○といえば、あの駅前の居酒屋か。俺の家からだと15分くらいか……。
まぁ、行かないけど。

「あとね、さっきりっちゃんがね、キョン君の事」
「おい、唯!何やってんだよ!」
「あっ、りっちゃん」

受話器の向こうでなにやら言い争っているような声が聞こえる。
てか、どんだけ飲んでいるんだ…。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/25(火) 20:40:42.11 ID:7oG2bIQAo
けいおんとハルヒの組み合わせは駄目だとあれほど
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 20:43:51.16 ID:xlF2spWW0
「あっ、もしもし」
「おっ、田井中か」
「あー、その、ごめんね。うちの唯がバカな事しちゃって」
「バカとは何さ!りっちゃんひどいよ!」

「うるさい、お前はだまってろ!」
「あー、何か邪魔しちゃ悪いからそろそろ切るな」
「えっ、……うん、何かごめん」
「気にするな、じゃあ楽しんで来いよ」


電話を切った後、俺は昼から何も食べていない事を思い出した。
自炊するにも、材料が切らしているし、何よりも作るのが面倒だ。

「外に食べに行くか…」
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 20:47:39.08 ID:xlF2spWW0
……………………。
……………。
……。

「私、平沢唯って言います!りっちゃんの妻です!」
「そうです、私が夫の律です!ってこら、唯!何を言わせるんだお前は!」
「おぉ、りっちゃんのノリツッコミ〜♪」

えーと、俺は今、田井中含め軽音部の人達と一緒にいる。
何故かというと、田井中達が飲んでいた居酒屋のすぐ近くのラーメン屋で、俺が一人飯を食ってると、酔っぱらい5人組みが入店してきた。
それがこいつらだったって訳だ。まぁ、俺も若干会ってみたいって気持もあったし、だから近くのお店を選んだっていうのもあるんだけどな。
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 20:52:05.76 ID:xlF2spWW0
「しかし、唯の奴飲みすぎだろ…」

髪の長い黒髪の女の人が呆れながら言った。

「あっ、あの、も、申し遅れました。わ、私、秋山澪って言います。えーと、あっ、そうだ」

秋山さんは、バックの中から何やら探し物をしているようだ。
それにしても、何でこの人は一人でそんなにテンパっているんだ?

「あの、これ名刺です」
「あっ、どうも……ってあれ?」

この会社って…。
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 20:54:27.50 ID:zlI504iQo
メル欄にsagaって入れないと、特定ワードが強制変換されるよ。
オナニー → 田島「チ○コ破裂するっ!」みたいに
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/25(火) 20:59:31.99 ID:xlF2spWW0
「あっ、すみません。俺今日は名刺持参してなくて」
「いえいえ、全然大丈夫です!はい!」
「あの、俺○○っていう会社の営業やってるんですけど」
「えっ、○○ってもしかして…」

秋山さんは何か思いだしがらそう言った。

「えーと、うちの会社がよくお世話になってるらしくて、多分。それで俺たまに顔をだしたりしてると思うんですけど」
「そ、そうなんだ。じゃ、じゃあもしかしたら私達結構会ったりしてたのかな」
「かもしれないですね」
「えっ、何々!二人とも知り合いだったの!?」

田井中が驚きながら言う。
知り合いではないんだが、「さすがに世間は狭い物だな」と内心思わせざるをえない。

「そうだよりっちゃん!実はそのもっと前から私とキョンさんは」
「話をややこしくするな!」

俺の視界の端の方で、田井中と平沢さんがじゃれ合っているのが見えた。
………。仲良いんだな。
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/25(火) 21:02:03.63 ID:xlF2spWW0
>>15

ありがとうございます。気をつけます。
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/25(火) 21:06:53.88 ID:xlF2spWW0
「あっ、キョンさん。私は琴吹紬といいます」
「私は、中野梓です!よろしくお願いします!」

「えーと、琴吹さんと中野さんですね。こちらこそ、よろしくお願いします」

琴吹さんは、大人のおっとりとした雰囲気の女性って感じだな…。
中野さんはどちらかと言うと子供っぽい感じの人だな。

「ねぇねぇ、この後みんなでカラオケでも行こうよぉ!」

平沢さんが、目を輝かせながら言った。
ていうか本当に元気だなこの人は。

「私は明日も仕事だからきついな。そろそろ終電も来るし」

秋山さんがそう言うと、

「うーん、そうね。また今度集まった時にしましょう」

と、それに続くように琴吹さんも言った。
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 21:09:19.58 ID:zlI504iQo
いえいえ、でもsag“e”じゃなくて、sag“a”ね。
死ねとか、そのまんまだとNGなのがそこそこあるんで
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/25(火) 21:10:58.13 ID:xlF2spWW0
「えー、せっかくみんな集まったのにー」
「こらっ、唯。わがまま言うな。私だってもう少しみんなと一緒にいたいけどしょうがないだろ」
「ぶーぶー!」


その後は、終電も近いという事ですぐに解散する事になった。
最後まで平沢さんはダダこねていたが…。
俺と田井中だけ歩いて帰れる距離だったので、駅の入り口までみんなを見送った。

「今日は、なんかごめんな」

申し訳なさそうに田井中が言う。

「んっ、何が?」
「いや、なんかキョンを巻き込んじゃったっていうか」
「あぁ、そんな事か。気にする事ないさ。俺も楽しかったしさ」
「そうか」
「あぁ」
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 21:13:19.49 ID:xlF2spWW0
>>19

おっちょこちょいでした。
すみません。
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 21:22:58.15 ID:xlF2spWW0
なんていうか、俺は田井中の事が羨ましかったんだと思う。
こうして、昔の友達たちとまだバカ騒ぎをやれる事を。
今日の軽音部の連中を見ていたら俺も無性にSOS団で集まりたくなった。
そう思うと、急にあのSOS団団長の元気100%の笑顔が頭に浮かんだ。

「なぁ、キョン」
「ん、何だ」
「なんか、変だよな。私達今日出会ったばっかだっていうのにさ」
「あぁ、そうかもな…」
「うん……、でも」
「ん?」
「ふふーん、何でもねぇよ」
「そうかい」
「おぉ、今日はめずらしく星が綺麗だな!」

田井中の言葉につられて俺も空を見上げた。
空には、たくさんの星達が夏の夜空を照らしていた。
「私はここにいる…」。少し前の七夕の日の事を何故か思い出した。
一人の少女の元に集結した宇宙人、未来人、超能力者。
いつも平和な日常を望んでいた俺が、いつの間にか非日常な毎日を過ごすようになり、そしてそれが当たり前だったあの頃。
きっともうあの頃には戻れない。何故なら、その少女は力を失ってしまったから。
でもそんな当たり前な日常を、俺達はこれからも歩んでいく。
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 21:30:06.59 ID:xlF2spWW0
「キョン」
「なんだ?」
「私道こっちだから」
「送っていくか?」
「大丈夫」
「そうか、気をつけてかえれよ」
「おうよ!」

そう言って田井中は俺とは別の道を歩き始めた。
俺は、どんどん小さくなっていく田井中の背中見ながら、別れ際に見せたあの笑顔を思い出していた。
どっかの団長とは、違う魅力を持った笑顔。柄にもなくドキドキしていた。
夜空を見上げると、相変わらず星達は輝いていた。
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 21:42:03.47 ID:xlF2spWW0
「どうですか、仕事の方は」
「あー、厳しいな。なかなか成績が伸びなくてさ。お前の方は」
「んー、そうですね。僕も最近はなかなか上手くいかないもので」
「そうか。まぁ、お互い大変だな」

昨日の夜、めずらしく古泉から連絡があった。
仕事が休みになったとの事で、明日会えないかという誘いだった。
まぁ、俺としてはやる事もないし、もちろん仕事も休みだったので急遽会う事になった。
ていうのは建前で俺も会って色々と話がしたかった。
だから正直、古泉から連絡があった時は嬉しかった。
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 21:48:20.93 ID:xlF2spWW0
「あっ、ていうか古泉。前会った時に話していた女の子とはどうなった」
「あぁ、その子とはお付き合いする事になったんですが…」
「おぉ、マジか」
「えぇ、ですがつい先日別れてしまいました」
「……そりゃまた早いな」
「まぁ、色々とありまして」

モテる男を俺は羨ましいとは思うが、モテる男はモテるなりに悩みがあるのかもしれない。
まぁ、俺には一生分からん事だろうとは思うが…。
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 21:53:44.30 ID:xlF2spWW0
「そうか、まぁお前モテそうだからまたすぐに彼女なんて出来るんじゃないか?」
「いえいえ、そんな事ないですよ。そういうあなたこそ最近はどうなんですか」
「あー、俺か」

その時、何故か田井中の顔が頭に浮かんだ。

「んー、俺はまだそういうのはないかな」
「そうですか、僕はてっきり涼宮さんと結ばれるのではないかと思っていたんですが」
「お前はまだそれを言うか」
「んっふ、失礼しました」
「まぁ、俺自身もそう思ってはいたけどさ」

でも、ハルヒはそれを望まなかった。ふいに思いだす、高校3年生のあの日。
もう7年も前の事…。
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 21:58:13.52 ID:xlF2spWW0
「古泉、今何時?」
「15時ですね」
「久々に、ゲーセンでも行こうぜ」
「この年になってゲーセンですか」
「うるせぇ、たまにはお前をゲームでコテンパンにしないと気がすまん」

それから、俺と古泉はゲーセンに行き、久々にゲームを満喫した。
格ゲー、パズルゲー、音ゲー、いろんなゲームをした。中でも、クイズに答えるやつが一番盛り上がった気がする。
まぁ、相変わらず俺が大体勝利を収めたけどな。

「大分遊びましたね」
「もう18時か…」

まだ季節は夏なので、そこまで外は暗くない。
高校時代のSOS団の帰り道、少し前にハルヒと朝比奈さんと長門、そしてその後ろに古泉と俺がいる。
そんな光景を、俺はふと思い出した。
何故、そんな事を思い出したのかは俺にも分からん。
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 22:02:50.47 ID:xlF2spWW0
「なぁ、古泉」
「何でしょう?」
「SOS団で集まりたくないか?」
「そうですね。是非集まりたいです」

俺は携帯を取り出し、ある人物に電話をかけた。
出るかどうか分からんが…。
………………。
やっぱり出ないか…。

「もしもし」

繋がった!

「おっ、ハルヒか!?」
「あんたねぇ、私今仕事中なんだけど」

電話越しから不機嫌そうな声が聞こえた。
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 22:06:45.49 ID:xlF2spWW0
「あー、そいつは悪かったな」
「んで、何か用?」
「実は俺、今古泉と一緒にいるんだよ」
「…………」
「でさ、これからSOS団で集まれないかと思ってさ」
「…………」
「……それで、仕事どんな感じなんだ?」
「………はぁ、んで有希には連絡したの?」
「長門にはまだだ」
「全然ダメねアンタ。多分今日はそこまで仕事がないから私はすぐに帰れると思うけど」
「マジか!?」
「あんたに団長命令出しておくわ。まず、場所を決めて私にメールする事。それと絶対有希も誘う事。これ絶対条件ね。
 最後に、私が来るまで場を温めておきなさい!以上」

ハルヒがそう言い終わると電話は切れた。
…………。よしっ!

「古泉場所を決めるぞ!」
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 22:11:06.88 ID:xlF2spWW0
……………………。
……………。
……。


「やっほー!みんな元気にしてた!」
「涼宮さん、お久しぶりです」
「ごぶさた」
「おぉ、有希!髪伸びたわね!ロングの有希もなかなか似合うわよ」
「照れる」
「ハルヒ、久しぶりだな」
「あらっ、キョンじゃない」

その、ついでみたいな呼び方止めてくれ。地味に傷つくんだが…。

「みんなもう飲んでるの?」
「あぁ、少しだけな。ハルヒはビールでいいか?」
「うーん、じゃあそれでいいわ。キョン頼んでおいて」
「へいへい」
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 22:15:10.47 ID:xlF2spWW0
……………………。
……………。
……。


「あらっ、有希。その手にしてるのって」
「指輪」

そういうと、長門は左の手をハルヒの前に出した。

「もしかして、有希!あんた彼氏出来たの!?」

ハルヒがそう尋ねると、長門は静かに頷いた。
どことなく恥ずかしそうだ。

「長門に彼氏…。マジか…」
「これはこれは、おめでとうございます長門さん」
「これは、どんな男か見極めないと駄目ね……。有希!写メを見せなさい!」

すると長門はバックから携帯を取り出して、酒のせいで赤くなったのかよく分からない表情でハルヒに携帯を渡した。
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 22:19:45.88 ID:xlF2spWW0
「これが彼」
「うーん、なんか有希の彼氏にしては地味ね。どことなくキョンに似ている気がする」

地味ってお前…。ていうか俺に似ているのか?

「まぁ、有希が選んだ相手だもの。きっと良い人に違いないわ…、
有希!これは団長命令よ!絶対幸せになりなさい!そして結婚式には絶対私も呼ぶのよ!」
「必ず呼ぶ」
「僕も呼んでくださいね」
「俺も呼んでくれよな長門」
「あっ、キョンは呼ばなくていいわよ。その方が面白いから」
「おい!何で俺だけハブなんだよ!」
「はははは」
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/25(火) 22:22:16.89 ID:xBpuXJDYo
まさか聡じゃないだろうな
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 22:22:56.74 ID:xlF2spWW0
……………………。
……………。
……。


「はぁー、もうこんな時間かぁ。そろそろ行かないとね」
「そうですね」

そろそろ、終電も近いという事で俺達はお店を後にした。

「キョン」

珍しくハルヒが俺の顔をしっかりと見つめてこう言った。

「今日はありがとね。久々に羽伸ばせて楽しかったわ」

それに続いて、長門と古泉も

「楽しかった」
「僕も、凄く楽しかったです」

あぁ、俺もすげぇ楽しかったさ。
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 22:28:27.40 ID:xlF2spWW0
「次がいつになるか分からないけど、またみんなで会いましょ」
「そうですね。次会う時までまた頑張らなければいけませんね」
「そう」

ハルヒは空に指をさして、声高らかにこう言った。

「私達SOS団は永遠に不滅よ!」


その日の帰り道、俺は朝比奈さんが最後に言った言葉を思い出していた。
「私はSOS団の団員ですから!」
泣きながらそう言った朝比奈さんは、凄く幸せそうに笑っていた。
朝比奈さん…。朝比奈さんはSOS団にいなくてはいけない存在です。
きっと、あいつらも同じ事を思っています。だから、待っています。
また5人で集まれる日を……。

空を見上げると、ひとつだけ星がこじんまりと申し訳なさそうに出ていた。
そんな星を見ながら、俺は「そういえば、朝比奈さんって胸のあたりに星型のホクロがあるんだよな…」なんて事を思い出して、
朝比奈さんの恥ずかしそうな表情が頭に浮かんでは一人で笑っていた。
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 22:32:03.88 ID:xlF2spWW0
その後の俺は、特に予定もなく特別やりたい事もなかったので、家でのんびりと過ごす日々が続いた。
そして、連休最終日。俺は、いつもより早い時間に起きた。
普段あまり使わない香水と、整髪料で身だしなみを整え、外出する準備をする。
目的場所は、最近出来た駅前の映画館だ。

「明日、仕事休みだから私暇なんだよね」
「奇遇だな、俺も休みだ」

昨日の夜、田井中から電話がかかってきた。
その時のやり取りだ。
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 22:36:18.05 ID:xlF2spWW0
「お、マジか………、じゃ、じゃあさ」
「ん?」
「デ、デ、デートしようぜ、デーチョ」
「はぁ?」
「なんだよ、ど、どうせ暇してるんだろ。それにこんな美少女が誘ってんだ。嬉しく思えよな」
「まぁ、暇っていうのは否定できないが、いきなりデートって…」
「むぅ」
「いや、なんつーか、むしろ俺なんかでいいのかよ」
「……何が?」
「いや、だって田井中ってほら、その……可愛いし、彼氏とかいそうな気がしてたんだけど」
「か、可愛いって……、て、ていうか彼氏なんていねぇよ。いたらこうやって誘わないだろ」
「た、確かにそうだな」
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 22:38:23.41 ID:xlF2spWW0
「んじゃ、決まりだな。私映画見たい!映画!」
「おい、勝手に話進めるな」
「この間、駅前に新しい映画館出来たじゃん?あそこに行こうよ。それに私見たい映画あるし」
「うーん、そうだな。んじゃ、そうするか」
「おう、じゃあ決まりな」
「あっ、それと田井中」
「ん?」
「お前さっきデーチョって噛んでたぞ」
「だぁー!もうそこに触れるなよな!」

とまぁ、こんな感じで今日俺は田井中と会う事になっている。
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 22:42:39.16 ID:xlF2spWW0
見たい映画ってなんだろうな…。
携帯で今やっている映画を検索しながら、待ち合わせ場所で待っていると…

「あっ、もう着いてたんだ。ごめんごめん、待った?」

と田井中がありきたりなセリフを吐きながらやってきた。本来ならば、
「気にするな、俺も今きたところだ」とやさしく声をかけてあげるのが本来あるべき男の姿なんだが。

「遅い、罰金な」
「えー、なんだよそれ」

すまん。一度言ってみたかったんだ…。
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 22:45:55.16 ID:xlF2spWW0
……………………。
……………。
……。


田井中が見たいと言っていた映画は、今流行っている海外のSF映画だ。
何でも、CGを使った戦闘シーンが凄いとか。
まぁ、こういうのを好むって田井中らしいっちゃらしいなかもな。

「おっ、なかなか見やすそうな席でいいじゃないか」
「おぉ、これは特等席だな。あっ、私の左手が恋しいからって握ってきちゃだめだぞ」

いやいや、握らねーよ。とツッコミを入れようとしたけど何だか俺も悪ノリしたくなったので、

「えっ、握っちゃだめなのか?」

と真顔で返した。
すると、田井中は

「えっ、いや、でも、まぁ握ってもいいんだけどさ…」

と、下を向いてしまった。なんだ?せっかくノリに付き合ってやったのに…。
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 22:50:20.18 ID:xlF2spWW0
……………………。
……………。
……。


「いやー、以外に楽しかったな」
「だろ、特に最後の戦闘なんて最高だったよな」

3時間という超大作を見終えた俺達は、近くのファミレスで昼食を取ることにした。

「あっ、この曲唯達の歌だ」
「えっ、今この流れている曲か?」
「そうだよ」

ファミレス内では、ノリの良い音楽が流れてきている。
そういえば、この間初めて平沢さんと会った時どこかで見たことある顔だなと思ったんだよな。
この連休中に、家でごろごろしてた時、何気なくTVをつけたら平沢さんと中野さんが映っていて驚いたな。
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 22:55:02.80 ID:xlF2spWW0
「確か、HTTだっけ?」
「そうだよん、本当は私達軽音楽部「放課後ティータイム」から取ったんだけどね」
「へぇー、田井中はドラムだっけ」
「そう、まさにあのYOSHIKIも驚きの超絶ドラマーとは私の事よん」
「いやいや、あっ、でも俺もベースならやってたぞ」
「えっ、マジ!?」

やっていたといっても、三か月くらいで、高校3年生の文化祭の時に、
「今年は、バンドをやるわよ!」というハルヒの宣言によって半強制的に
始めたに過ぎないんだがな。ちなみに、その時の構成は

Gt,Vo:ハルヒ
Gt:長門
Bass:俺
Dr:古泉

といった感じだ。まぁ言うまでもなく俺以外の連中は反則的な上手さを誇っていたが。
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 22:59:05.18 ID:xlF2spWW0
「まだベース持ってんの?」
「一応あるけど」
「じゃあ、今度セッションしようぜ」
「いいけど、多分俺もう全然弾けないぞ。ていうか場所はどこでやるんだよ」
「あたしんち!」
「ドラムあんのかよ」
「ない!コップ叩けば大丈夫っしょ!」
「いやいやいや、コップ壊れるだろ!」


……………………。
……………。
……。

「あっ、私これ超得意!」
「ウイイレか……」

昼食を終えた俺達は、他に行くところもなかったので近くにあるゲーセンにやってきた。
田井中が目を輝かせて見ているは、「ウイ○ングイレブン」というアーケードサッカーゲームだ。
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 23:05:18.32 ID:xlF2spWW0
「昔、よく弟とやってたんだよ」
「へぇー、弟なんていたんだな」
「あれっ、言ってなかったけ?」

そんな事一言も聞いてない。初耳だぞ。

「なぁ、キョン。勝負しようよ」
「おー、ウイイレの神様と言われた俺に勝負を挑むとは、無謀にも程があるな」
「なにー!そのセリフ絶対に後悔させてやる!」
「はは、ブラジルでも何でも使って来い。3−0で勝利してやる」


……………………。
……………。
……。

「な、ん、だ、と…」
「ははは、私の勝ちだな」

試合結果は田井中軍率いるイタリアが強豪イングランドを率いる俺に2−0という勝利を収めた。
まさか一点も決められないとは…。
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 23:13:28.67 ID:xlF2spWW0
「本当に上手いんだな」
「だろ?いつも澪には、20点差以上付けてたからな」

それは、いくらなんでも秋山さんが可哀そうだ…。
気づけば俺達の後には、3人の小学生達がウイイレをやりたそうな顔で並んでいた。

「おねぇちゃん上手いな!」
「ねぇねぇ、勝負しようよ!」

その小学生が、田井中の事を見ながらこう言った。

「おぉ、でも私は手加減出来ないぜ」
「いいよ!どうせ、僕のブラジルには勝てないから」
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 23:16:00.69 ID:xlF2spWW0
……………………。
……………。
……。

試合結果は、5−0で田井中の圧勝だった。
少しは手加減してやれよ…。

「ふふん、まだまだ修行が足りないようね」
「ずるいよ!おねぇちゃん!もう一回勝負しよ!ハンデとしておねぇちゃんは日本使ってよ」
「しょうがないなぁ、よし!少年よ!全力でかかってこい!」
「次は絶対勝つよ!」


……………………。
……………。
……。

「あっ、もうこんな時間か」

ゲーセンから出ると、外はすこし日が落ちて空は夕焼け色に広がっていた。
手元の時計では、18時30分を指している。
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 23:18:36.22 ID:xlF2spWW0
「この後どうしよっか?」
「うーん、そうだな」

特に決めてないけど、時間帯的には夕飯だよな。

「良かったらさ…、私んち来ない?」
「えっ?」
「あー、ほらっ、腹減っただろ?良かったら私がなんか作ってあげようかなと思ったんだけど」
「いいのか?」
「うん、いいよ」
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/25(火) 23:22:57.28 ID:xlF2spWW0
……………………。
……………。
……。


「あんまり、人の部屋ジロジロ見るなよな。恥ずかしいじゃん」
「あぁ、悪い」

思ったより綺麗な部屋なんだな。ちゃんと色々な物が綺麗に整頓されてある。

「私、ご飯作ってくるから適当にくつろいでおいて」
「あぁ、サンキュー」

でも田井中が料理するなんて以外だな。あの性格だと、料理とかそういった物とは無縁のやつだと思っていたんだが。
それはさすがに失礼か…。
まぁ、俺としては久しぶりに家庭料理を堪能できるのは素直にうれしい事だ。
でも、若い男女がひとつ屋根の下で二人っきりって色々とやばくないか?

「おっ、このベット結構ふかふかだな」
「あっ、キョンは辛い物とか大丈夫、……って何やってんの?」
「…………」

意識しすぎかな、俺…。
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/25(火) 23:58:50.81 ID:KKmEc8qf0
支援
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 00:09:11.42 ID:SGQ4EDLAO
支援
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/26(水) 01:24:32.80 ID:FjHmPkAm0
日本勝ってよかった!
今から、少し投下します!
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/26(水) 01:26:19.84 ID:FjHmPkAm0
……………………。
……………。
……。


「おぉ、これめちゃめちゃ上手いぞ!」
「だろだろ、たくさん食べていいからな」

以外にも以外。
田井中の作る料理は大学から久しぶりに実家に帰った時のお袋の料理並みに上手かった。
分かるやつには分かるだろ?

「何か悪いな。こんなに美味しい物ご馳走になっちゃって」
「いやいや、いいんだよ。それに美味しいって言ってくれると私も嬉しいし」
「そっか」
「ふふん、あっ、てかキョンって○○大学なんでしょ?」

何か思い出したように田井中は言った。
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/26(水) 01:31:25.36 ID:FjHmPkAm0
「そうだが」
「サークルとか何かやってた?」
「あー、俺は旅行サークルとかいうのに入ってた」
「何それ?」
「名前の通りただ旅行するサークル。と言っても年に一、二回行く程度だったけど」

何であんなサークル入ったのか、自分でも未だに謎だ。
おそらく当時の俺はよっぽど海外旅行を夢見ていたに違いない。

「ふーん」
「田井中は軽音楽だったよな」
「うん。まぁ、練習なんて全然やってなかったけど!ちなみに私がリーダーだよん!」

田井中…、そんな練習もしないようなサークルのリーダーって威張られても全然自慢いならないと思うぞ。
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/26(水) 01:33:47.37 ID:FjHmPkAm0
ごめんミス誤爆。

>>53
全然自慢いならないと思うぞ。

全然自慢にならないと思うぞ。
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/26(水) 01:39:18.52 ID:FjHmPkAm0
「まぁ、実際はそんなもんだよな。あっ、でも平沢さんと中野さんも同じ学校の軽音楽だったんだろ?」
「あー、うん。まぁ、色々あってさ…」

それから田井中はどこか寂しそうな表情を浮かべて語り出した。

「私らが大学3年の時の事なんだけど、その時のノリで私達「Y○M○HA」の大会に応募したんだよね。
 そしたら結構いいところまで行っちゃってさ。
 それでその時にたまたま来ていたレコード会社のプロデューサーの目が止まって、デビューしないかって誘われたんだよね」

「それって凄いな。でも田井中達はデビューしなかったんだな…」

「うん。だって、プロデューサーが目をつけていたのは明らかに唯だけだったし。
 それに最初は唯一人のソロデビューって事で話が進んでいたんだ。
 唯は反対してみんなでデビューしたいって言ったんだけど、当時の私達はプロでやっていく自信なんてなくてさ。
 現実は甘くはないっていう考えが強かったんだと思う。
 もし、高校の時にそんな話が出ていれば間違いなくやっていただろうね。多分みんなもそうだと思う」

「………」
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/26(水) 01:42:30.58 ID:FjHmPkAm0
「でも、その中で梓だけは本気だったんだろうね。私も唯先輩と一緒に音楽がしたいってそのプロデューサーに凄いお願いしていた。
 唯も必死に頭を下げてお願いしてたよ。ようやくプロデューサーも承諾して、そこで誕生したのが今の「HTT」だよ」

「……そっか」

「でも私はこれでいいと思っている。今の唯とか梓を見てると本当に大変そうだし。
 結構プライベートまで拘束されてるしさ」

「………」

「私は自由気ままに生きていたいのさ〜♪なんてね」

何かここで良い言葉でもかけてあげたらと思ったんだが、俺は何を喋ったらいいのか分からなかった。
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/26(水) 01:52:17.68 ID:FjHmPkAm0
「な、なんか辛気臭くなっちゃったな。何か話題変えようぜ」
「話題って言っても、そんな急には出てこないぞ」
「むぅ」

話題ねぇ…。
あっ、そういえば…、

「田井中の大学って○○大だったよな」
「うん、そうだけど」
「谷口っていう気持ち悪いやついなかったか?」
「たにぐちねぇ…」

すると田井中は何か思い出したように、

「あっ、もしかしてあの谷口かな…」
「ん?」
「えーと、うちの学年でさ。ナンパ研究会とかいう意味分かんないサークル立ちあげた奴がいてさ。
 確かそいつの名前が谷口だったような気がする」

うん、田井中。間違いない。100%そいつは俺が知っている谷口だ。
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/26(水) 01:56:56.89 ID:FjHmPkAm0
「何か新入生の女子に、毎年サークル勧誘会でナンパしてて回りの女子みんなドン引きだったよ」
「そ、そうか」

あいつは一体どんな大学時代を送ってきたんだよ…。


……………………。
……………。
……。


「今日はサンキューな。ご飯美味しかったよ」
「ううん、私も楽しかったし」
「あーあ、また明日から仕事かよ…」
「私もだ…、めんどくさい。鬱だー!」
「はぁ…、まぁ、しょうがないか…」
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/26(水) 02:04:44.67 ID:FjHmPkAm0
「……なぁ、キョン」
「ん?」
「またうちに来いよな……。このりっちゃん様が美味しい料理をたくさん食べさせてあげるからさ!」
「はは、うん。そうさせてもらうわ」
「……おやすみキョン、またね」
「あぁ、おやすみ」


……………………。
……………。
……。


その日の夜、ゲーセンに行った時に、田井中と一緒に撮ったプリクラをベットの上でごろごろしながら眺めていた。
そこに映っている俺は、とてもいい笑顔で笑っている。

「……こいつめ、幸せそうな顔しやがって」

その後、明日から仕事という事もあって早めに寝ようとは思ってはいたものの、俺は中々寝つけずにいた。
次から次へとあいつの顔が頭には浮かんでは消え……それの繰り返し。

「はぁ…」

分かっていた…。分かっていたけど、なんとなく認めたくなかった。
ついさっきまで田井中と一緒にいたのに、俺はもうあいつと会いたくなっていた。
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/26(水) 02:09:00.33 ID:FjHmPkAm0
ここまで見てくれている皆さん。ありがとうございます。
書き溜めもなくなってしまったので、今日はこの辺にしておきます。

基本的には、書き溜めをして一気に投下するという形でいきたいと思います。
グダグダですみません。

書き始めたからには絶対完結させます。
では、皆さんおやすみなさい。
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/26(水) 02:15:37.52 ID:hvrGeMAdo
はいおつかれ
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 02:17:13.19 ID:pMEiJsM+o
しえ
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/26(水) 02:37:55.01 ID:zWgSWs560
支援
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 03:51:14.88 ID:fuc18YGwo
おもしろいな!
キョン終わったら他のキャラサイドみたいのもやってほしい!
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/26(水) 17:02:00.71 ID:zWgSWs560
支援age
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 17:08:35.16 ID:gBjrIKBo0
今までにハルヒ×けいおん!のクロスSSはあったけど、
卒業後というのはなかったな
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/26(水) 18:57:34.58 ID:zWgSWs560
age
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 20:35:22.49 ID:QxLYUn2DO
>>66
どっかにあったはず
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/26(水) 22:31:10.72 ID:fKScnGf30
支援
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 22:35:39.25 ID:4NO9CHMUo
支援レスとかしてるやつは何がしたいんだ
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 23:16:50.35 ID:JvS0uOJAO
何かしらレスがあると書き手は嬉しいもんだよ
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 00:13:45.53 ID:u8bS65aKo
ニュー速VIPじゃないんだからww
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 01:45:25.28 ID:VCvNv/wz0
皆さんこんばんは。
>>1です。
実は、本編の書き溜めも結構進んだんですが、番外編の方と同時進行して書いてしまい、
結果的に、番外編の方を先に書き終えてしまいました。

せっかくですので、番外編の方を今から一気に投下したいと思います。
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 01:47:39.07 ID:VCvNv/wz0
〜番外編〜
ハルヒ「しゅうろく!」


「もう少しでゲストの方が入るから楽屋に必要な物はちゃんと確認しておけよ」

番組プロデューサーが私に向かって慌ただしく言う。
私は今、某テレビ局の番組収録を行うためのスタジオにいる。

「1カメ近すぎ!もっとバックして!」

番組プロデューサーの声が室内に響き渡った。
番組収録の前はいつもこうだ。
時間ギリギリになって準備をして、直前になってバタバタする。
他の番組の収録の事もあるため、仕方がないと言えば仕方がないけど、私はあまりこういう事は好きではない。
やる事に対してはいつも事前に準備をしてゆとりのある行動をしたいと思っている。

「では私、楽屋準備に行ってきます」

私はそうプロデューサーに告げるとスタジオを後にした。



……………………。
……………。
……。


私の名前は涼宮ハルヒ。
今は、某テレビ局の番組ディレクターという立場で働いている。
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 01:49:56.59 ID:VCvNv/wz0
この業界で働こうと思ったのも、自分で番組を作ってみたいからだ。
そして、いつかは自分で番組を持つようなプロデューサーになるのが私の今の目標だ。
正直、今のテレビ番組はありきたり過ぎてつまらないと思う。惹かれる物が少ない。
私だったらこうするのに…。という場面がたくさんあって正直イライラしてくる。
だけど、私は途中であきらめたり投げ出したりするのは大っきらいだからとりあえず我慢して頑張る事にしている。
ちなみに、今日の収録はトーク主体の音楽番組だ。
放送時間は30分と短い。司会とゲストのトークで番組は進行される。
時折ゲストがライブ形式で演奏をするが、大体はトークによって番組は成立する。そんな番組だ。

今日のゲストは「HTT」という、今最も流行っている二人組のユニット。
私は、ゲストが決まった時にどんなアーティストなのかと、「you○ube」で何回か「HTT」の曲を聴いた事がある。
正直言うと、私の好きなジャンルの音楽ではなかった。
でも、人にはそれぞれ好みというものがあるからそれはそれで良いと思っている。
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 01:52:25.94 ID:VCvNv/wz0
「ケータリングも良し。姿見もこれだけの大きさがあれば大丈夫でしょ」

私はその「HTT」が使用する楽屋に来ている。
必要な物はとりあえず揃えたし、まぁ準備はこれで大丈夫か…。
と思っていると、

「おはようございます」

と後から聞きなれない男性の声がした。

「HTTのマネージャーの○○と申します」

そう言うとその男性は懐から名刺を取り出し、私に向かってその名刺を差し出す。

「名刺ありがとうございます。私は涼宮と申します。よろしくお願いします」

そう言い。私もそのマネージャーさんに名刺を渡した。

「えーと、今日の収録の事ですが…」

すると、そのマネージャーさんはカバンから今日の収録の台本を取りだした。
そして、いくつかの疑問を私に聞いてくる。
この人の様に、仕事の出来るマネージャーさんが現場にいると結構助かる。
たまに、本番収録の直前になって訳分かんない事を聞いてくるマネージャーさんとか、
意味不明な事を連発してくるアーティストとかがいるから困る。

「分かりました。また何かあったらよろしくお願いします」
「はい。念のため、本人がいらっしゃったらもう一度ご説明にあがりますので」
「えぇ、助かります」
「では、よろしくお願いします」

私はそう言うと、再びスタジオに戻った。
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 01:54:32.42 ID:VCvNv/wz0
……………………。
……………。
……。


「涼宮さん!本人入りました!」

後輩ADが言った。
どうやら、もう「HTT」は楽屋入りしたようだ。

「分かった。私は楽屋に挨拶しに行くからあんたはスタジオのケータリング補充しておいて」
「了解っす!」

ちなみに私達の業界では、アーティストの事を「本人」と呼んでいる。
アーティストの前でこの言葉を使うと失礼に当たるのだが、日常で使う分には、こう呼ぶのが常識なのだ。

「すみません、番組スタッフの者です。ご挨拶よろしいでしょうか」

私がそう言うと、楽屋の中から先程のマネージャーの方が出てきて

「中へどうぞ」

と楽屋の中へ入るように促された。
中には、女の人が5人いた。
おそらく、手前にいる三人がスタイリストとヘアメイクの人だろう。
奥にいるのがきっと「HTT」のメンバーだ。

「おはようございます。本日の番組を担当させていただく涼宮と申します。今日は一日よろしくお願いします」

私がそう挨拶を終えると、

「あっ、うん。よろしくねぇ」

となんとも気の抜けた返事が返ってきた。
確かこの「HTT」の茶髪の子。
私と同い年だったわよね…。
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 01:56:44.82 ID:VCvNv/wz0
「あっ、こちらこそよろしくお願いします」

もう片方のツインテールの女の子は律義にも頭を下げて挨拶をしてくれた。

「えーと、今から本日の収録の段取りの説明をしたいのですが、よろしかったでしょうか?」
「うん。いいよぉ」
「お願いします」


……………………。
……………。
……。


「ここで一回スタジオに戻ってから、またゲストとのトークになります」
「ねぇ、ところでさぁ、そろそろケーキ食べようよぉ」

この子、私の説明聞いているのかしら…。

「えっ、ケーキ買ってきてないの!?何で!?」

茶髪の子はマネージャーさんに驚いたような顔で言った。
ケーキぐらい別にいいじゃない…。大げさすぎじゃないかしら。

「何で買ってこなかったの?私、ケーキないと歌えないって毎回言ってるじゃん!」

そう言い急に怒りだした茶髪。
ちょっと…、ケーキぐらいで…。
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 01:58:27.60 ID:VCvNv/wz0
「あ、あの、もしよかったらテーブルにケータリングを置いてありますので」

そう私が、お勧めすると、

「こんな、お菓子じゃだめなんだよ!私は、ふわっふわのショートケーキが食べたいの!」

なんなのこの茶髪。いちいちなんかムカつくわ…。
そんなにケーキが食べたければ自分で買って来い。

「う〜、ケーキ食べなきゃやる気が出ないよぉ」

………。
テレビ局の人間を目の前にしてそんな事を言えるなんて本当にいい神経してるわこの子…。

「ちょっと、唯先輩…」
「う〜」
「あー、ケーキですね。ちょっと待ってて下さい」

私はそう言うと、携帯を取り出して後輩ADに電話をかけた。

「もしもし、どうしました?」
「あんたにお願いがあるんだけど」
「なんすか?」
「今すぐ、裏通りにあるケーキ屋に行ってケーキ買ってきて」
「えぇ!?無理っすよ!今、スタジオの音声チェックやってるんですから」
「そんなの、その辺にいる誰かと変わってもらいなさいよ!」
「無理ですよ!」
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 02:00:51.70 ID:VCvNv/wz0
あぁー!もう、本当に使えないわね!

「わかったわ…、今日の収録後わたしの全部おごりで飲みに連れてってあげるから」
「……えー」
「ちっ、じゃああと一日分だけタダで飲みに連れてってあげるわ!これで断ったらあんた殺すわよ!」
「あざーす!俺、涼宮さんのそういうとこ大好きっす!」
「ちょ、好きとか言うな!ばか!早く行け!」
「はい!」

ったく。あのチャラ男が。
本当に調子狂うわね…。

「お待たせしました。ケーキはこちらですぐに用意しますので」
「えー、本当に!ディレクターさんありがとぉ!これで今日は熱唱できるよ!」

ふんす!と意気揚々になる茶髪。
ふん。私の担当している番組でやる気が出ないなんてそんなの通用しないんだから。
私がここにいる以上、絶対本気でやってもらうわよ。
そして、おもしろい番組を作ってやる。

「やったね、あずにゃん!」
「ちょっと、先輩!抱きつかないでください!」
「えへへ、あずにゃん」

うわぁ、女同士であんなにいちゃいちゃして…。
って私も昔はみくるちゃんに色々してきたんだったわ…。
人の事言えないわね…。
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 02:03:04.04 ID:csekBsaSO
おっ、始まってる。
期待
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 02:04:17.64 ID:VCvNv/wz0
……………………。
……………。
……。


「唯ちゃん、学生の時モテてたでしょ〜」
「えー、そんな事ないですよぉ」
「またまたぁ」

私は今、舞台下手でゲストと司会のトークのやり取りを確認をしている。

「てかてか、そのネクタイすっごいかっこいいですね!」
「えっ?」
「どこのブランドの物なんですか!?多分、聞いてもすぐ忘れちゃうと思いますけど教えてください!」
「ははははは」

客席からは、笑いが起きる。
この番組は公開収録と言って、お客さんを入れての収録となる。
生放送の時みたいにリアルタイムで司会進行をしていくため、よっぽどの事がないかぎり撮り直しは効かない。

「あの子、また台本にない事しゃべって…、うちの看板困らせるんじゃないわよ」

さっきからあの茶髪、言いたい放題言っちゃって。
絶対台本チェックしてないわよね。
事務所はどういう教育しているのよ、全く。
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 02:06:03.59 ID:VCvNv/wz0
「さぁ、そろそろHTTさんのお二人には曲に入ってもらいましょうか」
「了解です!」

そう言うと、HTTの二人はトーク席から立ち上がり、ライブステージへ移動する。

「えー、ではさっそく最近リリースした新曲から行きます!」

ギターを担ぎ、茶髪が客席に向かって言った。
ふん。歌もギターもどうせたいした事ないんでしょ。
ちょっと可愛いから売れちゃったってタイプよ、きっと。

「じゃあいくよあずにゃん!」
「はい!」

そういうと茶髪のバッキングギターから曲は始まった。
その後の16拍目、おそらくこの曲の4小節目にあたる部分で
黒髪ツインテのギターソロ、そして後のバックバンド達が一斉に曲に加わり一気に盛り上がりを見せる。

そして茶髪の歌声は……

「なんなのよ、これ……」
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 02:08:16.72 ID:VCvNv/wz0
……………………。
……………。
……。


「今日はありがとうございました」

マネージャーさんが私に頭を下げてそう言った。

「いえいえ、こちらこそありがとうございました」

私も、頭を下げてそう言う。

「あっ、さっきのディレクターさん!」

帰り仕度を終えたであろう、HTTの二人が楽屋から出てきた。

「さっきは、ケーキありがとう!すっごいおいしかったよ!」
「そうですか、喜んでもらえて良かったです」
「うん!」

茶髪は、男子が見たら全員惚れてしまうのではないかというくらいの満面な笑みを浮かべた。

「それとね」
「?」
「この番組すっごい楽しかったよ!ねっ、あずにゃん!」
「はい!」

そう言うと、茶髪は黒髪ツインテに抱きついた。
抱きつく方も抱きつく方だけど、抱きつかれている方も満更でもないって感じね。

「また新曲出した時は、この番組に出たいな」
「えぇ、その時はぜひ。こちらはいつでもお待ちしてますので」
「今日はありがとう!お疲れ様!」

そう言うと「HTT」の二人とマネージャーさんは、楽屋を後にした。
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 02:10:06.25 ID:VCvNv/wz0
「さてと、後片づけもしないとね」

私はそう一人小さくつぶやくと、「HTT」が使用した後の楽屋に入った。
楽屋の片づけをしていると、テーブルの上にはクシャクシャになった紙クズがポツンと置いてある。
中を見てみると、すごく汚い落書きみたいなような絵が描かれていた。

「りっちゃん、みおちゃん、むぎちゃん、あずにゃん、わたし……、って何よこれ…。」

おそらく誰かが暇つぶしに絵でも描いていったんだろう。

「ほんっと、きたない絵ね…」


……………………。
……………。
……。


「へぇー、テレビの収録って大変なんだな」
「はぁ、本当にイライラしすぎて爆発しそうだわ」

私は今、ビール片手に自室のソファに座りながら夜の仕事終わりの時間を満喫している。
今話をしている電話の相手はキョンだ。
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 02:12:01.44 ID:VCvNv/wz0
「ははは、その後輩とやらに八つ当たりするなよ」
「ふんっ、あんな奴別にどうだっていいわよ」

あいつは今日、急に彼女と食事しに行くとか言って急いで帰って行った。
まぁ、私としてはお金が減らずに済んだから得した訳だし。
別に寂しいなんて全然思ってないし。

「はは、強がんなよ」
「強がってなんかないっつーの!ところであんたさ」
「ん?」
「HTTって知っている?」
「あー、なんとなく。あれだろ?二人組のやつ」
「そうそう、今日それの収録だったのよ」
「へぇー」

あの時、私はあの子の声を聞いたあの瞬間…、今自分がいる世界が変わった気がした。
平沢唯。あの子には、たくさんの人達を自分の世界に引き込む力がある。
くやしいけど、私もその一人になってしまった…。
不覚にもあの瞬間、仕事である事を忘れあの子に夢中になっている自分がいた。

「今度、CD買ってみようかな」
「はぁ?お前が聴くようなタイプの曲じゃないだろ」
「うっさわね。私が良いと思うものは何でも良い物なの」
「お前、それ昔から言ってるよな…」
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 02:19:48.91 ID:VCvNv/wz0
……………………。
……………。
……。


次の日の朝、私はいつものように誰よりも早く朝一で出勤した。
何でも、一番。それが私のポリシーだ。

「あっ、涼宮さん。おはようございまーす」

私がデスクに向かって仕事をしていると、後から声をかけられる。
後輩ADだ。

「おはよう……、ってかあんた顔がおもしろい事になってるわよ」
「これっすか?もう聞いてくださいよ。本当にひどいんですよあいつ…」
「殴られるあんたに原因があるでしょ。少しはそのチャラい性格を直しなさいよね」
「う…」
「てか、あんた私より4つも年下で、まだ新入社員なんだからもっと上司の前ではしゃきっとしなさいよね」
「だって、だって俺…」

後ろで、情けない泣き声が聞こえるが無視する事にした。
こういうのはほっとくのが、一番だわ。

「あっ、涼宮さん!それなんっすか?」

後ろを振り向くと、いつの間に泣きやんだのか後輩ADが珍しそうに私のデスクの上を覗き始めた。

「汚い絵っすね…。何でそんなの飾ってんすか?」
「別にあんたには関係ないでしょ」
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 02:23:36.42 ID:VCvNv/wz0
……………………。
……………。
……。


季節は夏にさしかかる6月の中旬、ニュースによると今世紀一番の猛暑が今年は続くらしい。
そのためか、海開きは例年より1週間早いようだ。
私は手に持っているスポーツ新聞の記事を眺めながら、今年の夏はどうすごそうか考えていた。
ふと思い出す。昔、よくSOS団で七夕祭りに行ったり、昆虫採取をしたりした学生時代を。

「私も若かったわね…」

ふぅ、と私は深いため息をついた。

「あーいたいた、涼宮さん!」

声がする方を振り向くと、後輩ADが焦ったような表情でこちらに向かってきた。

「こんなところで何してるんですか!カメリハ始まりますよ!」
「うっさいわね、ちょっと休んでただけよ。今行くからちょっと待ってなさいよ」
「もう早くしてくださいよ…。って何新聞なんか見てるんですか。おもしろい記事でもあったんですか?」
「別に、たいした記事はなかったわ。さっ、行くわよ」
「あっ、ちょっと待って下さいよ!」








【HTT!初武道館ライブ!予約1日で完売!七夕の日に決行!】

〜番外編〜
ハルヒ「しゅうろく!」

おしまい
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/27(木) 02:25:56.40 ID:VCvNv/wz0
これで終わりです。
なんか急に番外編はじめちゃってすみません。
本編もだいぶ進んでいるので明日中には一気に投下できるかと。

少数だとは思いますが、見てくださっている方々。ありがとうございます。
では、今日はこの辺で。
皆さん、おやすみなさい。
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 02:37:19.14 ID:csekBsaSO
読み終わった。
乙。普通におもしろかった。
次は是非本編書いて下さい。待ってます。

それと、4つ年下の後輩ADってもしかして
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/27(木) 02:39:44.05 ID:KKmoolSx0
乙〜!!
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/27(木) 16:08:57.72 ID:4C/qI0Oy0

楽しみだな
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 23:51:11.12 ID:1t8eYhlIO
なんで唯はいつでもクズなんだ

池沼じゃなくて常識はちゃんと持ち合わせてるだろ
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 16:12:06.09 ID:2i9e0EnAO
知らんがな(´・ω・`)
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/28(金) 21:53:59.11 ID:q7QqxLMH0
皆さん、こんばんは。
>>1です。

ちょっと訳あって遅れました。
今から、書き溜めた分一気に投下します。

>>93
唯は、あえてそういうキャラ設定にしています。
なぜ、あんなにクズになってしまうかは、これから分かってくると思いますので
是非見ていただければ、うれしいかぎりです。
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/28(金) 21:57:07.69 ID:q7QqxLMH0
「バカ野郎!」
「す、すみません!」

次の日の朝、上司の怒鳴り声が職場に響いた。

「とりあえず、俺も一緒にこれ持って先方に謝罪しに行くから。お前も早く準備しろ!」
「は、はい!」



事の発端は、お盆休みに入る前日の事だ。
俺はその日、休み前最後の出勤という事もあって、一通りお世話になっているお客さんや企業さんにご挨拶をしに行く事になっていた。
まぁ、ここ最近で一番忙しい日だったと思う。


「おい、ちょっといいか?」

今週分の領収書を経理に渡しに行く途中に、上司に引き留められた。

「はい。何でしょう」
「この企画書を今日中に○○会社まで届けて欲しいんだが…、いや、忙しかったらいいんだ。他の奴にお願いするから」
「いえ、大丈夫です。持っていきます」
「そうか、頼むぞ」
「はい!」

さて、この仕事受けたまではいい。なんだって、届け先にただ書類を渡しにいくだけだからな。
だが、ここで、俺はミスをしてしまう。今考えれば、超凡ミスだ。
なんと、俺はその上司から受け取った重要な書類を机の上に置き忘れたまま営業に出て行ってしまったのだ。
俺は、一日に回る営業に必要な書類の分を一つのファイルに順番にまとめてから出かける。
そして、電車や空いている移動時間にそれを見ながら次の営業所へ行く。
つまり、俺の一日の営業行動はすべてそのファイル一つに収められている訳だ。
その日は色々と考える事が多かった。
だから、上司から受け取った書類の事はこの時すでに俺の頭から消え去っていた。

しかも、俺は一度営業に出たら、その日はもう会社へ戻らない。
営業回りが多い日は帰りが遅くなるので、その日はなおさらだった。

何で、俺はこんな簡単なミスをしてしまったんだろうか…。
今思えばありえないミスだな…。

そして、連休明けの早朝、見覚えのある書類が俺のデスクの上に置いてあるのを見て血の気が引いていくのが分かった…。
ただでさえ、朝早く低血圧だと言うのに目の前が真っ白になった…。
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/28(金) 22:01:38.95 ID:q7QqxLMH0
……………………。
……………。
……。



「すみませんでした!」

上司と俺は相手の方に深く頭を下げた。

「いえいえ、そんな大丈夫ですよ。頭をお上げください」
「いえ、本当にこちらのミスで…」
「幸いにも、最終締め切りは明後日ですから、今日企画書を練り直して、明日制作にとりかかれば何とか間に合います」
「本当に申し訳ありませんでした!」

俺はもう一度、頭を下げてお詫びを言葉を言った。

「何かあれば、いつでもご連絡ください。こうなってしまったのは私の責任です。協力出来る事があれば何でも致しますので…」

そう言うと、上司はもう一度深く頭を下げた。

「えぇ、では何かあればよろしくお願いします」


……………………。
……………。
……。



「俺は一回会社に戻るけどお前はどうするんだ?」

相手先の会社の玄関口の前で上司は俺に言った。

「俺は、このまま次の営業に回ります」
「そうか」
「あ、あの、本当にすみませんでした!」

俺は深く頭を下げて上司に謝った。

「まぁ、こうなってしまったものは仕方がない。失敗は失敗だ。割り切って次の仕事はちゃんとするんだぞ」
「はい!」

本当に上司には迷惑をかけてしまった。きっと他にもやる事はたくさんあるはずだ…。

たった一つのささいなのミスで大きな損失に変わる事がある。
そして、信用まで失ってしまったらそれこそ社会としての自分まで失ってしまう。
本当に社会人は恐ろしいなと思う。こんな日常が毎日続く訳だから…。
いや、ただ単に俺が仕事を出来ないだけかもしれないが…。
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/28(金) 22:03:38.25 ID:q7QqxLMH0
「あ、あのー」

俺が一人落ち込んでいると、後から聞き覚えのある声がした。

「えっ、あぁ、えーと」
「あ、秋山です」
「あー、秋山さん、えっと、先日はどうも」
「い、いえいえ、こちらこそ、そ、その、どうも」

あっ、そういえばこの会社って秋山さんが勤めている会社なんだよな…。
さっきの出来事があったからすっかり忘れてたな…。

「あっ、もしかしてうちの会社に来ていたんですか?」
「えぇ、まぁ色々とありまして」


……………………。
……………。
……。



「へぇ、そ、そんな事があったとは、お気の毒でしたね…」
「えぇ、まぁ、なんていうか、お恥ずかしい話ですよ」
「まぁ、そんな事もあると思います」

俺は今、秋山さんと一緒に会社の近くの居酒屋にいる。
あの後、俺は一通り営業を回り、本日の業務をこなした後に秋山さんと連絡を取った。
連絡先はお昼に会った時に交換した。何やら、秋山さんの方も今日は会社で色々と失敗してしまったらしい。
そして、こういう時はお酒を飲んでお互い忘れましょうとの事で、俺が秋山さんを誘い、今に至る訳である。

「えーと、まぁ失敗はとりあえず水にながして今は飲みましょう!飲んで忘れましょう!」
「そ、そうですね!」
「あっ、秋山さんって確か田井中と同い年ですよね?」
「は、はい」
「じゃあ、その、お互い敬語使うの止めませんか?せっかく仕事以外で会っている訳ですし」
「えーと、そ、そうですね」
「また敬語使ってますよ。って俺もか…」
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/28(金) 22:07:55.27 ID:q7QqxLMH0
……………………。
……………。
……。


「へぇー、男嫌いかぁ」
「うん。男嫌いってわけでもないんだけど…、恥ずかしいっていうか…、で、でも昔と比べると大分マシにはなったとは思うけど」

まぁ、確かに初めて会った時はこの人一人で凄いテンパってたよな。

「で、でもやっぱり今でも男の人は恐いな。二人っきりになった時に、何されるかと思うと……いやぁぁ」

それって、半分被害妄想入っていないか?

「そこまで怯えるか普通…」
「恐いものは恐いんだ」
「ていうか、今は俺とふたりっきりじゃないか。それについては大丈夫なのかよ」
「うーん、キョンとは……なんだか大丈夫みたい」

なんだ、そりゃ…。

「……あっ、すみません。ビールもう一杯」
「あれっ、今何杯目だっけ?」

俺は秋山にそう尋ねた。
何故なら、既に秋山は今にも火を噴きそうなくら真っ赤だからだ…。

「えーと、何杯目だったっけ?」

確かまだ一杯目だった気がする…。


……………………。
……………。
……。


どうしてこうなった…。

「あぁ!マジあいつ超ムカつく!くそ!何で私があんなに苦労しなくちゃいけないんだ!」

そう言うと、秋山はビールグラスをテーブルに叩きつけた。
ちょっ、マジで回りのお客さんがドン引きしているんだが…。
てかまだ飲み始めたばかりじゃないか…。

「あの〜、秋山?」
「あぁん!?」
「いえ、何でもありません!」

おいおい!この前会った時は、普通だったじゃねぇかよ!
てか、飲む前とどんだけ人格変わってんだよこの人!
キャラ崩壊しすぎだろ!

「すみません!ビールもう一杯!」

まだ飲むのかよ…。
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/28(金) 22:12:32.61 ID:q7QqxLMH0
……………………。
……………。
……。



「おい、秋山!そろそろ起きないと終点なくなるぞ!」

「………」

秋山はテーブルに突っ伏して一向に動こうとはしない。
どーすんだよ、これ…。

「おい、秋山!動けるか!マジ帰れなくなるぞ!」

その後も、秋山は一向に動く気配はなかった。
仕方ないので、体を起して秋山の肩に手を伸ばして抱きかかえるようにして店を出る。

案の定、終電は過ぎてしまっているため帰る手段タクシーしかない。
しかし、俺は秋山の家を知らない。

「マジ、どうすんだよ……」

俺は、もう秋山とは二度と飲みに行かないと固く心に誓いながら大きなため息をついた。
どうすればいいんだ…、一人俺は途方に暮れていた…。


……………………。
……………。
……。


「さて、ついに来てしまった訳だが…」

俺が今腰をかけているのは、三人で寝れるんじゃないかと思うくらいの大きなベット。
その横のテーブルには、ボックスティッシュと避妊用として使用するためのコン○ームが不自然に置いてある。
そして、目の前には大画面でエロビデオが鑑賞出来るテレビ。
そう。ここは、皆さんもご存じの通り、男女が性行為をするための場所、ラ○ホテルである。
何故、ここに来る事になったかと言えば…、うん。もう説明する必要もないだろう?
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/28(金) 22:16:46.75 ID:q7QqxLMH0
隣には、秋山がずいぶんと気持ちよさそうに眠っている。

さて。ここで、男の取るべき行動はひとつ。
俺は秋山のスーツをゆっくりと脱がし、ワイシャツのボタンも本人が起きないように一つずつ外していく。
すると、ピンク色のブラジャーがあらわになるではないか。
俺は、秋山が起きないように、ゆっくりと背中に手を回しブラジャーのホックを外す。
そして現れたのは、なんと!今にもはち切れんばかりの二つの富士山だ。
俺はゆっくりとその富士山を揉みほぐすように触る。

「ん…」

と甘い声を発する秋山。
その声に興奮した俺は、さらに激しく揉みしだく。

「んっ、や…」

さらに興奮した俺は、秋山のスカートをの中に手を伸ばし……。
………………。
………。




なーんて妄想を膨らませながら、俺の手はしっかりと自分の股間を強く握っていた。
いかんいかん…。変な妄想をしたせいで俺の息子はすっかり元気になってしまっている。
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/28(金) 22:21:16.17 ID:q7QqxLMH0
さすがに寝ている女の子を襲うなんて事は出来ない。
そんな事をすれば犯罪になりかねないし、やはり、女の子の前では紳士的な男でありたいしな。
しかし、この状況……。はたして俺の理性は持つのだろうか…。

「こうやって見ると普通に美人だよな……」

秋山の寝顔を上からそっと覗く。整った顔立ちにスタイルの良い体。
そして、何より今にも服がはち切れんばかりの二つの富士山が、俺の事を挑発しているように感じた。

…………。
あっ、ごめん。俺もう無理なんだが…。
さすがにこの状況で理性を保っているのはしんどいものがある。
しかし、寝ている相手にはどうする事も出来ない。
テーブルの上に置いてあるティッシュを手に取り、ラブ○テル特有の大きなモニターの前に座る。

「まぁ、さすがにあんだけ熟睡してれば起きないだろ…」

そう思い、テレビのスイッチを付ける。もちろん、音量を下げる事は欠かさない。
ヘッドフォンは外の状況が全然分からなくなるので論外だ。
最大限の環境を整えて、俺は戦闘態勢に入ろうとした…。
その時、

「ん…、あれ?」

と、後ろから秋山の声がした。
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/28(金) 22:23:45.16 ID:q7QqxLMH0
こういう時の人間の条件反射というものは実に以上なものである。
俺は秋山の声が聞こえた瞬間、横に置いてあるリモコンを取り、すぐにテレビの電源【切】ボタンを押した。
ここまで、僅かコンマ0.5秒。
マイク・タイソンも驚きのスピードだ。
とまぁ、そんな事はどうでもいいんだ。
今やるべき事はただひとつ……。


「よ、よう。起きたんだな…」
「あ、キョン。ここって…」
「あー、うん。多分薄々気づいてきているとは思うんだが…」
「えっ?えっ?」


秋山が俺に抱くであろう俺に対する罪への弁解である。


「……ラブホテルだ」
「………い、いやああぁぁぁぁぁあ!!」



……………………。
……………。
……。



「ち、ちがうんだ!秋山!」
「いやああぁぁぁ!近寄らないで!」
「た、頼むから俺の話を聞いてくれ!」

秋山の叫び声と共に飛んでくる数々の物。
ちょっ、そんなもの投げたら危ないって…。
っておい!さすが今の(ボックスティッシュ)は痛かったぞー!!
って、そんな某格闘バトル漫画のくだらんモノマネをしている場合じゃない!

俺はとっさに秋山の腕をつかんだ。
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/28(金) 22:28:48.55 ID:q7QqxLMH0
「おい、秋山!落ち着け!」
「い、いや…、こわいよ…、止めてよ…」

そう言う秋山の目には、涙が溜まっていた…。

「男の人ってこわいよ…」

………。はぁ…。
分かった。分かったよ…、秋山…。

俺は掴んでいた秋山の左腕をゆっくりと離した。

「秋山、悪かったよ…」
「う”うぅ……」
「でも、秋山に聞いてほしい事があるんだ」

俺は、秋山と一歩距離を置いて話を始めた。

「うん、秋山が男嫌いっていうか…、すっごいあがり症っていうのは知ってる」

すすり泣く秋山を無視して俺は語り続ける。

「にも関わらず、こんな怪しい場所に連れてきてしまった事は俺が悪かった」
「う”うぅ……」
「反省はしてる…。許してくれとは言わない…。だけど…」
「ぐす…う”、ん」
「だけど、女の子なのに男の俺と二人で飲みに行って、ぶっ倒れるまで飲み続けた秋山にも責任はある……、と思う」
「………」

泣き声も収まったし…、少しは落ち着いてきたか…。

「俺さ、今日は違うホテルに泊まるよ」
「………」
「お金ここに置いておくからさ…」
「………」
「明日、遅刻しないで会社行けよな…」
「………」
「じゃあな」
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/28(金) 22:34:37.66 ID:q7QqxLMH0
俺はそう言うと、近くに置いてあったカバンを取り、入ってきたの入り口のドアへと一直線に向かっていった。
しょうがない…、しょうがないさ…。
俺はこうするしかなかったんだから…。
……………。
……。






あー、うん。これやっちまったな。
そうだ。すっかり忘れてたぜ。
ラ○ホテルって完全先払い制で、ここでお金払わないと部屋から出れないんだった…。
何が「明日、遅刻しないで会社行けよな…」だ。
今の俺、かっこ悪いにも程があるぞ…。

でも、こうなってしまった以上は仕方がない…。
俺は、小学1年生の時に習った「回れー右!」をして、ゆっくりと秋山のいる部屋へ戻って行った。

「あー、その秋山。実はな」
「………」

先程よりかは大分落ち着いたであろう秋山は、少し驚いたような、そんな顔をしながらもしっかりと俺の顔をじっと見ていた。

「ここ、先にお金を払わなくちゃいけないシステムでな」
「………」
「お金払わないとここから出られないんだよ。しかも、払ったら払ったですぐに部屋から出なくちゃいけない仕組みになっているんだ」
「……うん」
「えーと、どうしよっかな……ははは」

くそ、泣きたいのはこっちだぜ。
誰が望んでこんな状況を作った。
ハルヒか?もうあいつには力はねぇよ…。
ていうか、いつの話しているんだよ俺は…。

俺は色々と考えていた…。
今この状況で何が一番ベストなのか…。
どうすればいいのかを…。
誰もが笑って、誰もが幸せになれるような、そんな結末があるのではないかと…。
あっ、そこ。パクリとか言わなくていいから。
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/28(金) 22:42:43.35 ID:q7QqxLMH0
「わ、わたし……だ、大丈夫」
「………えっ?」
「だ、だから、その……、キョンもここにいても……大丈夫……だと思う」

……………。………。

「はぁ…」

俺は深いため息をついた…。何なんだよ一体これは…。
分かるやつ。今すぐここに来い。
俺は今、ラ○ホテル「プチ○マト」っていう店の503号室にいるから……、ていうのは冗談だ。
しかし、ついさっきまで俺の事を変態呼ばわりするわ、自分で気付かずにコ○ドームの袋を俺の顔面に投げつけるわ…。
そんな事をする女の子が急に何を言い出すかと思えば…。

はぁ…。俺にはさっぱり分からないね…。


「本当に俺は今日ここにいていいのか…」
「う、うん」

これがいわゆる「女の心変わり」というやつだろうか…。
いや、それはさすがに違うか。

「ふぅ…」

一息尽いたところで毎度お馴染のセリフ。ここで使わせてもらうぜ。

「やれやれ」
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/28(金) 22:50:04.07 ID:q7QqxLMH0
……………………。
……………。
……。


「ごめん。元はと言えば私が悪かったんだよな…」
「いや、いいんだ。俺がもっと考えて行動するべきだった」

今、俺と秋山はこうしてお互い普通に喋っている。
さっきまでの出来事がまるで嘘のようだ。

「いや、結構前から酒は気をつけろと律には言われていたんだ」
「そ、そうか」
「うん。でも私お酒飲むのは好きだったから…、ていうかキョン。私何かおかしな事しなかったか?」
「あぁ、大丈夫だ。秋山は何も……、へっ?」

秋山はキョトンとしながら不思議そうに俺の事を見ている。

「も、もしかして秋山…。お前、飲んでる時の事全く覚えていないのか」
「えっ、何の事だ…?」

あぁ…、なるほどな。
これまた、なんとも便利な体質をしてらっしゃる事。

「あー、そうか……、大丈夫だ。秋山は何もしていない」
「そうか、なら良かった」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」

いかんな。会話があんまり続かない。
さっきの事があったとはいえ、さすがにこの状況を意識しない方がおかしい。
若い男女がラ○ホテルに来ているんだ。

「な、なんかテレビでも見ようか」

そう言うと秋山は、手元にあるリモコンのスイッチを押した。

「あ、秋山!やめろ!それはやばいって!」
「あん!あっ!やだっ!そこはらめぇ!変なのがきちゃう!変なのがきちゃうよぉ!!」
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/28(金) 22:58:02.78 ID:q7QqxLMH0
………。………。
皆さんはタイムパラドックスという言葉をご存じだろうか。
いや、実はこれといった深い意味はない。
昔、朝比奈さんにされた意味不明な説明を何故か今思い出しただけだ。
まぁ、俺が何を言いたいかっていうと、時すでに遅しって事だ。


「あぁ〜!もうだめだ!もう中に出すぞ!中に出すからな!」
「………」
「………」
「らめぇ!中だけは!中だけはだめなのぉ!!」
「………」
「………」
「あぁ〜!あぁぁああああ」


プツン。と消える音テレビの音。
さすがに、若干ではあるが男性恐怖症の症状を持っている女の子に無理やり中○しさせるAVを見させる程、俺は鬼畜ではない。
男優がイク前にテレビの電源を切ってやったぜ。それとな、女優の顔が少し秋山に似てて内心驚いてたのここだけの話だ。


「………」
「………」
「……なぁ、秋山」
「………」
「俺、先に寝てるから」
「………」
「俺は、そこのソファで寝るから、秋山はそっちのベッドを使ってくれ」
「………」
「じゃあ、俺もう寝るからな」


この時、彼女は何を考え、どう思ったのかは俺は知らない。
だけど、次の日の朝。彼女がベットの上で熟睡する姿を見ると、どうやらあの後は普通に寝たんだろうなと俺は思った。

あれから3日が経つが、あれ以来彼女とは口を一切聞いていない。
1回彼女の会社に出向いて同じ場所に居合わせた時もあったが、その時は目を合わせてすらもらえなかった…。
さぁて、どうすっかなこれ。ははは…。
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/28(金) 23:02:26.43 ID:q7QqxLMH0
>>108
誤爆


………。………。
皆さんはタイムパラドックスという言葉をご存じだろうか。
いや、実はこれといった深い意味はない。
昔、朝比奈さんにされた意味不明な説明を何故か今思い出しただけだ。
まぁ、俺が何を言いたいかっていうと、時すでに遅しって事だ。


「あぁ〜!もうだめだ!もう中に出すぞ!中に出すからな!」
「………」
「………」
「らめぇ!中だけは!中だけはだめなのぉ!!」
「………」
「………」
「あぁ〜!あぁぁああああ」


プツン。と消えるテレビの音。
さすがに、若干ではあるが男性恐怖症の症状を持っている女の子に無理やり中○しさせるAVを見させる程、俺は鬼畜ではない。
男優がイク前にテレビの電源を切ってやったぜ。それとな、女優の顔が少し秋山に似てて内心驚いていたのここだけの話だ。


「………」
「………」
「……なぁ、秋山」
「………」
「俺、先に寝てるから」
「………」
「俺は、そこのソファで寝るから、秋山はそっちのベッドを使ってくれ」
「………」
「じゃあ、俺もう寝るからな」


この時、彼女は何を考え、どう思ったのかは俺は知らない。
だけど、次の日の朝。彼女がベットの上で熟睡する姿を見ると、どうやらあの後は普通に寝たんだろうなと俺は思った。

あれから3日も経つが、あれ以来彼女とは口を一切聞いていない。
1回彼女の会社に出向いて同じ場所に居合わせた時もあったが、その時は目すら合わせてもらえなかった…。
さぁて、どうすっかなこれ。ははは…。
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/28(金) 23:05:29.54 ID:q7QqxLMH0
今日はここまでです。
見てくださっている方々。ありがとうございました。

今日はもう遅いので寝ます。
では、皆さん。おやすみなさい。
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 23:30:39.03 ID:XTsE6F+SO
乙〜。
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/28(金) 23:42:15.93 ID:Fqp3qPH90
乙〜!!
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/29(土) 08:11:34.46 ID:IoyuTVQIO
澪が動けなくなったらまず律に連絡したりするもんじゃないのか?

そんで助けに来てもらったりそれが無理なら住所ぐらい教えて貰えばいいじゃん
携帯盗み見ても良いし
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/29(土) 12:42:24.19 ID:1ZP0/1z6o
犯る気まんまんだったんだろ
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/02(水) 20:39:14.17 ID:nb2HH9SDO
マダカナー
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/05(土) 23:05:07.11 ID:z/FASDtU0
遅れました。>>1です。
少しですが書き溜めた分今から投下します。
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/05(土) 23:09:09.29 ID:z/FASDtU0
「すみません。それ、何てエロゲーですか?」
「おい、古泉。俺は真面目に相談してるんだが」

今、俺は古泉と電話をしている。
今日は仕事も早く終わり、どこにも寄り道せずに真っすぐ帰宅する事にした俺は、一人今後の事について考えてみる事にした。

そう、秋山の件である。皆さんには、もう説明する必要もないだろう。
正直あの事は仕方ないだろと思う自分もいるが、飲みに誘ったのは俺なので責任、罪悪感を感じている自分もいる。
もちろん、秋山の事は心配である。ただでさえ、男性が苦手という彼女の症状がもっと悪化してまってはいないだろうか…。
もし、そうなってしまったのなら、それはもちろん俺の責任である訳だ。
しかし、今の俺にはどうしていいか分からない。
仕事の関係上会う機会があるとはいえ、目も合わせてもらえないのでは、声をかける勇気すら出てこない。
声をかけたらかけたで、何を喋ればいいのか分からないしな。

「すまん!あれは俺が悪かった!」

と、素直に言えばいいのか?
いや、今更のような気もするし、秋山にとっては忘れたい過去かもしれないのに、それをわざわざ蒸し返すような事をする必要はないのかもしれない。
ていうか、別にこのままでもいいんじゃないか?
しかし、それは人間としてだな……。

と、まぁこんな感じで色々と考えても埒があかなかったので、とりあえず古泉と連絡をとってみる事にした訳だ。
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/05(土) 23:11:45.61 ID:z/FASDtU0
「選択肢さえ間違わなければそのままチョメチョメ出来たのでは?」
「………切るぞ、古泉」
「ふふ、冗談ですよ」

昔から思うが、こいつの冗談はつまらない上に、たまに冗談に聞こえないから困る。

「いや、しかしあなたは本当にフラグを立てるのが上手ですね。それを壊してしまうのもあなたですが」

一体、何を言ってるんだこいつは。

「そうですね……。では逆に聞きますが、あなたはどうしたいんですか?」
「そうだな……、俺は……」

俺は一体どうしたいのだろうか?

「俺は……」

このままお互い知らないふりを通すような関係を俺は望んでいるのか?
ていうか、そもそも俺は何故あの時秋山を誘ったんだ?
今まで、仕事の関係で色んな人とご飯を食べに行ったりもしたが、自分からこんな風に誘ったりした事はなかったはずだ。
もしかして、俺は秋山に気があるのか?
いや、それはないな。会って間もないし、まだちゃんと喋ったのだって1日だけだしな。
ていうか、こういう事は古泉ではなく、田井中に相談すれば良かったんじゃないか?
そうだよ。田井中に……。


「……………」
「急に黙って、どうかしましたか?」


あぁ、なるほどな。
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/05(土) 23:16:03.77 ID:z/FASDtU0
「………なぁ、古泉」
「はい、何でしょうか?」

いや、分かってはいたんだ。
分かっていながら、心の中では認めたくない自分がいたんだ。
そして、俺は恐れていたんだろう。

「いや、何でもない。とにかくサンキューな」
「?」

俺は、この事を田井中だけには知られたくなかったんだ。
きっと、軽蔑されるからだ。
そして、田井中と秋山が幼馴染で仲が良い事を俺は知っている。
だから、俺は焦っていた。秋山が田井中にこの事を言ってしまう事が恐かったんだ。

そして、俺が秋山を誘ったのは…。
きっと秋山が田井中の幼馴染で、親友であったからだ。
だから俺は……。

まぁ、兎に角。今、俺がやるべき事。
分かったらすぐに行動におこすべきだ。
また色々考えても、思い悩むだけだしな。
「人生は短いから思い悩むより行動におこせ」という言葉をよく聞くが、全くもってその通りだ。
今は、どっかの団長さんを見習うとしよう。
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/05(土) 23:19:41.65 ID:z/FASDtU0
……………………。
……………。
……



「あっ、もしもし田井中か?」
「おぉ、キョンから連絡くれるなんて珍しいじゃん」

俺は、古泉と連絡を取り終わった後、すぐに田井中に電話をかけた。
そう。今は、変に言い訳を作るより正直に言ってしまった方がいいと思ったからだ。
先に、秋山とちゃんと話をした方がいいと思わない事もないが、まずは自分の口からしっかり田井中に言わなくてはならないような気がした。
その選択が正しいかどうかは分からんが。

いや、とりあえず今は色々と考えるのはやめよう。

「ふふん、さてはこのりっちゃん様の声が聞きたくなって電話したな!」
「よく分かったな。まぁ、そんなところだ」
「………」

って、田井中とこんな冗談を言い合ってる場合ではないぞ。
しっかり、話を切り出してだな…。
ていうか、田井中のやつ急に黙ってどうしたんだよ…。

「……もしかして照れてんのか?」
「ち、ちげぇよ!別に嬉しいとか……、そんな事全然思ってなんかないっつーの!」

そりゃ、そうだよな。
俺も半分冗談のつもりで言ったからな。
しかし、まぁこの感じだとまだ秋山は田井中にこの間の出来事の事は喋ってないみたいだな。

「ていうか田井中さ。急で悪いんだが今から会ったりできないか?」
「えっ、い、今からか!?」
「実は俺まだ飯食べてなくてさ、時間もまだ8時だし余裕はあるとは思うんだが……。いや、無理だったら全然いいんだ」
「いや、無理じゃないよ!あっ、でも私飯食っちゃったからな」
「そ、そうか……」
「でも付き合うよ!」
「本当か、じゃあ……、駅前のファミレスで待ち合わせで大丈夫か?」
「オッケー!」
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/05(土) 23:24:00.35 ID:z/FASDtU0
……………………。
……………。
……。


「私これ食べる〜♪」

メニューを眺めながら田井中は言った。
その指先には、『チョコレートサンデー』と書かれた、見た感じ甘ったるそうな盛り付けがされている写真が載っている。

「そんなのばっかり食べていると太るぞ」
「いいもん!このストレス社会に必要なのは、乙女たちの心を潤してくれる糖分だけだもん!」
「え〜と、乙女はどこにいるんだろうな」
「目の前にいるだろ!目の前に!」


さて、冗談はこの辺にしておいてだな。
そろそろ、本題へと移るか…。

「なぁ、田井中」
「ん、何?」
「最近、秋山とは連絡を取ってるか?」
「秋山……?あぁ、もしかして澪の事?」
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/05(土) 23:25:56.93 ID:z/FASDtU0
田井中は一瞬考える素振りを見せて言った。
おそらく、周りに「秋山」と呼ぶ人がいなかったため、一瞬誰の事か分からなかったのだろう。

「最近は連絡取ってないなぁ。前に、みんなで飲みに行った時が最後かな」

前というのは、きっと俺がお盆休みの時に初めて田井中達と出会ったあの日の事だろう。

「てかさ、いつからキョンは澪の事、『秋山』って呼ぶようになったの?」
「えっ」

意表を突かれた質問だった。
自分では全然意識していなかったため、少し驚いた。
そうか。俺は少し前まで「秋山」の事を「秋山さん」と呼んでいたんだ。
だから、田井中は俺が「秋山」の事を呼び捨てにした事に不自然さを感じたのだろう。
相変わらず女の人って変なところで鋭いよな。

いや、でもこれはこれで話を本題に持っていきやすくはなったんじゃないか?
この流れだった自然と話が出来るな。

「あー、実はな……」

そこから俺は、順を追ってこの前の晩の出来事について、田井中に話をした。
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/05(土) 23:30:30.49 ID:z/FASDtU0
「………最低だな」

田井中は、あからさまに不機嫌そうな態度をとり、低い声で言った。
うぅ……。改めて冷静にそんな事を言われるとつらいものがあるな。
この空間、この気まずい空気が俺の罪の意識を重くさせる。
これなら、

「マジきっも!ドン引きなんだけど!」

とか、

「マジ男って犯る事しか頭にないんだな!自重しろよ!」

とか罵ってもらった方が良かった。

「その………、すまん」
「いや、私に謝られても困るから」

田井中が淡々とした口調で言う。
確かに田井中の言う通りだ。
結局のところ俺が秋山と話合わなければこの問題は何も解決しない。

「確かに澪も悪いとは思うけどさ。でも、他にもっと方法はあったと思うんだけど」
「おっしゃる通りです」
「私はとりあえず澪の事が心配だわ。きっと、あいつ相当ショックを受けてると思うし」

そうだよな…。
こんな男なんかに、親友が危ない場所に連れていかれたんだ。
未遂だったとは言え、一夜を共に過ごした挙句レ○プ物のAVを見せられたんだ。
普通だったらブチ切れるレベルだ。
多分もう切れてると思うけど…。
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/05(土) 23:34:26.96 ID:z/FASDtU0
「私この後澪と連絡を取ってみるよ」
「あぁ、頼む」
「うん……。てかさ、ひとつ聞いていい?」

田井中は、いつになく真剣な表情で俺の顔を見据えながら言った。

「何でこんな事私に言ったんだ?」
「………」
「正直言うと、あんまり関係ないと思うんだよね。確かに、私は澪と親友だけど、結局は二人の問題だと思うし。それに、こういう事って普通人に話す事じゃないと思うし」
「………」
「ねぇ、どうして?」

………。
どうする?俺?
もう自分の気持ちはしっかりと理解しているはずだ。
何故、俺はこんなにこいつと会いたかったのか。
何故、俺はこいつの事が頭から離れないのか。
何故、俺はこんなに焦っていたのか。
答えはもう出ているんだ。

「私だったらやらないで後悔するより、やって後悔する方が100倍マシだと思うわ!」

昔、ハルヒがよく言っていた言葉が何故か俺の脳裏にこだまする。
田井中…。俺は…。
俺はな……。

「俺は……、田井中の事が好きだ」
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/05(土) 23:39:17.19 ID:z/FASDtU0
……………………。
……………。
……。


「あー、死にてぇ…」

俺は今、自室のベットの上で寝転んでいる。
相変わらず俺の心の拠り所は、人間の動く気力を根っこから奪ってしまう柔らかいベットと気持ちのいい布団にあるらしい。

「はぁ…」

こうしてボーっとしてると、さっきまでの出来事が頭から離れない。
一つ溜息を吐くと同時に、先程の田井中の言葉を思い出してしまう。

「ご、ごめん。さっきの話を聞いた後だからさ、なんて言うか…」
「キョンが何を考えているかさっぱり分からないっていうか…」
「ごめん。私ちょっと混乱しているから……、もう今日は帰るね」

そりゃそうだ。
俺が田井中の立場だったら、リバーに一発ガゼルパンチをお見舞いする自信はあるぜ。

「くっそ…。何やってんだよ俺…」

今思うと、何故あのタイミングで告白したのか自分でもよく分からん。
俺は相当焦っていたんだろうか…。

ていうか、冷静に考えてみると、俺って最悪人間じゃねーか。
秋山をラブホに連れまわしたあげく、その親友である田井中に謎の告白をして…。
くそ、これほど自分を殺したいと思った事はねぇよ。
一体、俺は何がしたいんだよ…。

「田井中…」

さっきから、去り際に見えた田井中の顔が頭から離れねぇよ。
ちくしょう…。
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/05(土) 23:45:49.40 ID:z/FASDtU0
……………………。
……………。
……。


「今日は、この資料を届けてくれ」
「分かりました」

案の定、目覚めの悪い朝だった。
今日ほど会社を休もうと思った日はない。

「今日のスケジュール確認っと…」

どんなに俺が現実を拒絶しようと、世界はあたり前のように回っている訳で。

「今日はお客さんが2件だけか…、空いている時間が暇だな」

いつものように俺は朝起きて、いつものように出勤する。
特に代わり映えのない当たり前な日常。
ハルヒに振り回されていたあの頃が懐かしいぜ。

「では、営業行ってきます」

もう、女絡みはいい。
とりあえず今は仕事を頑張ろう。
そうだ。出世してやる。出世して今の自分を見返してやろう。

そう思った。
そう思っていたのに…。

「メール?誰からだ?」

ハルヒの力が存在しないこの現実世界でも、やっぱり俺には到底未知の世界らしい。








From:秋山澪

本文:急にメールしてごめんなさい。
この間は、色々とご迷惑をおかけしてすみませんでした。
もし良かったら、一度会ってお話がしたいです。
時間が空いている時に、連絡をくれると嬉しいです。
よろしくお願いします。
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/05(土) 23:52:37.15 ID:z/FASDtU0
今日は、ここまでです。
ここまで付き合ってくれた皆さん、ありがとうございます。

また書き溜めが出来次第、投下していきます。
よろしくお願いします。
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/06(日) 00:03:04.12 ID:vC+aafySO
乙〜
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/06(日) 00:19:11.59 ID:73diAVY7o
おー、乙!
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 03:38:13.36 ID:COqeBIXB0
面白い!! 支援!!
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 03:41:25.40 ID:COqeBIXB0
誰もが笑って、誰もが幸せになれるような、そんな結末があるのではないかと…。
何のネタだっけ? 思い出せなくて気持ち悪い。伝勇伝?
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/06(日) 04:25:13.76 ID:rAMRvkjAO
先が気になっちまうじゃないか
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/06(日) 04:36:35.31 ID:IaMpn96Co
この>>1はなんと言うか「りっちゃんを解ってる」と思うの
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/06(日) 10:05:50.49 ID:QAmA0blBo
>>131
禁書目録
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 12:52:45.65 ID:COqeBIXB0
>>134ありがとう
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/06(日) 12:59:16.21 ID:beR53PAoo
おつ
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/06(日) 17:11:22.18 ID:JQAATHik0
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 21:33:22.54 ID:d6fSvC1L0
皆さんこんばんは。
>>1です。

えー、本編なんですが、はい。
先に詰まって、筆が全然進みません。
ごめんなさい。
今、色々と練っている最中ですので、今しばらくお待ちを。

せっかくなので、完成している番外編をここで一本入れようと思います。
時間が空いている方は、どうぞお付き合いください。
よろしくお願いします。

それでは、投下します。
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 21:37:32.80 ID:d6fSvC1L0
〜番外編〜
唯「平沢唯の歩く道」



「ねぇ、この大会に応募してみないか?」

澪ちゃんが一枚のチラシを机の上に広げる。

「こんなの、どっこから拾ってきたんだよ」

どことなく、りっちゃんはめんどくさそうに言った。

「そこの楽器店に置いてあった。試しにさ、これに出てみようよ」

いつになく、澪ちゃんの目が輝いている。

「これいつあんの?」
「6月。まだ4月だから後2ヵ月あるし。それに日頃の練習の成果を試すいいチャンスじゃないか」
「いやいや、全然練習してないですけどね」

あずにゃんが、溜息交じりに言う。

「これをきっかけに練習するんだよ」
「えー、めんどくせぇよ」
「何言ってるんだよ。私達は軽音楽部だぞ。これをきっかけに練習をだな」
「”部”じゃなくて”サークル”だけどな」

そう言うと、りっちゃんはムギちゃんが持ってきた紅茶を一気に飲みほした。
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 21:39:43.19 ID:d6fSvC1L0
「そんなのはどっちだっていいよ。それにさ、この大会に優勝するとプロのレコーディングの人にCDを作ってもらえるんだって。
 そのままインディーズデビューも出来るんだぞ」
「へぇー、インディーズねぇ」
「悪い話じゃないだろ。お金だってかからないし。なぁ、唯はどう思う?」
「えっ、わたし!?」

急に話を振られたので、つい変な声を出してしまった。
実は、この時私は全然違う事を考えていたので回答に困まってしまった。

「うーん、私はみんなに任せるよ」
「ムギはどう思う?」
「そうねぇ、私もみんなに任せるわ」
「私は出てみたいです」

私の隣に座っているあずにゃんが真面目な顔をして言った。

「出てみて損する事はないと思いますし…、それに最近遊んでばっかりで全然練習してなかったじゃないですか!これはいい機会です!」
「梓もこう言ってるし、決まりだな」
「こら!リーダーは私だぞ!勝手に決めるな!」

こうして、私達「放課後ティータイム」は澪ちゃんが持ってきたチラシの大会に出場する事になったのです。

「よし!さっそくスタジオを借りるぞ!」
「だからぁ!リーダーは私なのに勝手に話を進めるな!」

私は、平沢唯。
「HTT」では、ギターボーカルをやっています。
大学はみんなと一緒のN大学。
少し危なかった単位も無事に取れ、この春晴れて大学3年生になれました。
大学生活は、まぁ何となくダラダラと過ごしてますが、楽しくやっています。
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 21:41:11.62 ID:d6fSvC1L0
……………………。
……………。
……。


「ダンス愛好会に入りませんかー!」
「こちらは、小説研究会でーす」

校内では、多く人達が新入生に向けてのサークル勧誘を行っている。

「こちらは軽音楽でーす!」
「初心者の人も大歓迎でーす!ギターの事なら私がみっちり教えまーす!」

毎年、こうして勧誘をしてるけど誰一人興味を持ってくれない。
高校の時からずっとこうだけど…、もしかしてこれって何かの呪いじゃないのかな。

「全然誰も来ないな…」

澪ちゃんが肩を落として言う。

「こりゃ、今年も駄目だな」

りっちゃんも心なしかガッカリ…。

「こちらナンパ愛好会!ナンパの技術なら俺に任せろ!」

後ろの方から、訳分からない事を叫んでいる人がいた。
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 21:44:15.41 ID:d6fSvC1L0
「何だ、あいつ…」
「あいつ谷口って奴ですよ」

あずにゃんが言った。

「えっ、あずにゃんの知り合いなの!?」
「知り合いって程でもないですけど…、取ってる授業が一緒で」
「へぇー、そうなんだ」
「唯先輩達と同じ年ですよ。一浪しているらしいので私達と同じ学年です」
「へぇー、何でそんなに詳しいんだよあずさ〜。もしかして、あれかぁ?ホの字か?」

りっちゃんは、からかうようにあずにゃんに言った。

「ち、違いますよ!変な事言わないで下さい!たまたま、隣の席になった事があるだけです!」

あずにゃんは両手を左右に振り慌てながら言う。
うんうん。焦ってるあずにゃんも可愛いよ。

「ていうか、何でこの学校共学にしたんだろうな」

澪ちゃんは顔を暗くして言った。
私達が通っているN大学は私達の学年までは女子生徒しかいなかったけど、去年から共学になった。
そのため、わずかだが私達の学校には男子生徒がいる。
確かに、何で共学になんてしたんだろう…。

「あれっ、君可愛いね!もしかしてどっかで会った事ない?あっ、前世でお会いした事が」
「ごめんなさい。気持ち悪いので話かけないでください」
「ガーン!」
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 21:46:44.73 ID:d6fSvC1L0
……………………。
……………。
……。



「あっ、唯今の感じいいかも!」
「ほんと!えーと、確かこうやって…」

あれから月日は経ち、例の大会まであと一週間に迫りました。
私達は最後の追い込みのため、学校のすぐ近くにあるスタジオで猛特訓中です。

「だいぶ形になってきましたね」
「そうだな。いい感じになってきてる」
「少し休憩しよう」

りっちゃんがそう言うと、私達はスタジオを出てロビーの休憩所へと向う。

「あと一週間か…」
「あっという間だったわね。あっ、そういえば私今日はこれを持ってきたの」

そう言うと、ムギちゃんはバッグの中からいかにも高級そうなティーパックを取り出した。
英語で書いてあるから何の紅茶かは分からないけど。

「おぉ、やっぱり練習後にはムギちゃんの紅茶がないとね!」
「私、スタジオの人からティーカップ借りてくるからちょっと待っててね」

そう言うと、ムギちゃんは受付の人に話しかけに行った。

「これで、ケーキがあれば最高なんだけどなぁ」
「まぁ、唯。紅茶があるだけでもありがたいだろ」

ベースをいじりながら澪ちゃんは言う。
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 21:48:29.09 ID:d6fSvC1L0
「てか澪、この間告白された男子にはちゃんと返事したか?」
「へっ!?」

りっちゃんからの唐突な質問に、変な声をあげる澪ちゃん。

「い、いや。まだだけど…」
「うわぁ、マジかよ…。その男子可哀そうだな。絶対澪の返事待ってんだろ」
「だ、だって…。恥ずかしいんだもん…」

相変わらず澪ちゃんの恥ずかしがり屋さんの性格は今でも健在です。

「お前社会人になったらどうするんだよ。そんなんじゃ、やっていけないぞ」
「分かってるよ…」
「相変わらずモテますね。澪先輩は」
「あずにゃん!」

私は後ろからあずにゃんに抱きついた。

「うわっ、もう先輩。急に叫ばないで下さいよ。びっくりしたじゃないですか…」
「大丈夫だよ。あずにゃんには私がいるから」
「おぉ、二人ともおアツいねぇ」
「あずにゃん♪あずにゃん♪」



……………………。
……………。
……。



「よし!そろそろ時間だし、今日はこれで終了な!」

スタジオの時計を見てみると、あと5分でこのスタジオを出なければいけない時間になっていた。
私達は急いで帰り仕度をする。
そういえば、何かに熱中している時って時間の感覚なくなるよね。
あれって不思議だよねぇ…。
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 21:50:55.02 ID:d6fSvC1L0
その後、私達は割り勘でスタジオ代を払う。
澪ちゃんが持ってた割引券のおかげで一人300円という超激安な値段で済んだのはありがたいね。

「さすが澪ちゃん!」
「ふふふ、まぁな」
「とりあえず、これで大会にはなんとかなりそうだな」

スタジオから出てところで、りっちゃんが言った。

「そうね。ここまで来たら後は全力を尽くすだけって感じね」

続いてムギちゃんも言う。

「あと一週間スタジオに入れないっていうのは少し恐いけどな」
「しょうがないですよ。みんなバイトで忙しいですし」
「まぁ、後はみんなそれぞれで個人練習して本番に臨もうぜ」
「そうだな」

そうして、私達はそれぞれ帰宅した。


……………………。
……………。
……。


家に帰宅すると、郵便の中から見慣れない封筒が届いていた。

「何これ…、区役所?」
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 21:52:44.68 ID:d6fSvC1L0
封を開けて中を見ると、一部分に年金未納と書かれている。

「あっ、そういえば学校で手続きしないといけないんだった。すっかり忘れてたよ…」

そういえば、半年前に年金手帳と一緒に納付についてのハガキが来ていたんだった。
それで、憂が電話で色々と説明してくれたんだ…。内容は全然覚えてないけど…。

あー、もうめんどくさいなぁ。歳を取るって本当にやだ。
昔は何も考えずに生活できて、自分の好きな事だけやれて幸せだったな。
今は、生活費とかお小遣いとか色々と自分でアルバイトしながら稼がないといけないし…。
勉強もちゃんとしなくちゃ、単位も危なくなってくるし…。

「はぁ…、ギー太の手入れでもしよう」

そう一人つぶやくと、私はギターケースから「ギー太」を取りだした。
高校の時から、ずっと愛用しているギター。私の宝物。

「ふふふ、いい子ね。ギー太」

私はギー太を抱きしめる。
こうすると、なんだか心が落ち着くから。

「うん。みんなも頑張ってるんだし私もちゃんと練習しなきゃね」

私は、ギターケースの小さいポケットからピック取りだして、当日演奏する曲の練習を始めた…。



……………………。
……………。
……。



そしてやってきました大会当日。
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 21:54:20.95 ID:d6fSvC1L0
「もうここまできたら楽しもうぜ」

私達は今、舞台下手にいる。
前のバンドの1曲目が終了したから出番はもうすぐだ。
この大会は、1バンド持ち時間10分までと決まっているらしい。
なので、時間の事を考えて大体のバンドが2曲を演奏する。
私達も演奏する曲は2曲だ。
中には3曲もやったバンドもいたけど。

「あー、緊張するなぁ」

澪ちゃんが緊張しているのは手にとるように分かった。
だって、少し声が震えているんだもん。

「大丈夫だよ、澪ちゃん!私達なんだかんだでたくさん練習してきたし、出来るよ!」
「そうですよ、澪先輩!やれば出来ます!むしろやってやるです!」
「そ、そうだな!よし!」

どうやら、いつもの澪ちゃんに戻ったようだ。
大丈夫!私達は出来る!
そう自分自身にも言い聞かせる。プレッシャーに押しつぶされないように。

「では、次「放課後ティータイム」さんお願いします」

係員の声が私達を呼んだ。

「よし!じゃあ行く前に円陣組むか」

りっちゃんがそう言うと、私達は無言で頷き肩を組んで輪になる。

「放課後ティータイム行くぞ!」
「「おう!!!」」

そして、私達はステージへと進んだ…。
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 21:56:13.56 ID:d6fSvC1L0
……………………。
……………。
……。



「なぁ、いつになったら発表なんだ?」
「さっきから言ってるだろ。今日の17時からだ」
「んだっけ?えーと、今は…、ってあと10分じゃん!」

だらしなく椅子に座っていたりっちゃんが急に立ち上がる。

「ちょっとは落ちつけよ律!私だって内心ドキドキしてるんだぞ」
「予選通ってるといいですね」

あの日、ステージに立った私達は日頃の練習の成果を自分たちの演奏、歌声に乗せて存分にぶつけた……、つもりだ。
演奏自体は凄く上手くいった。ひょっとすると、今まで練習してきた分も含めて一番上手に出来たんじゃないかと思うくらいだ。
そして、何より楽しかった。
みんなでステージに立って、演奏して、歌った事が楽しくて仕方がなかった。

あの日から一週間経った今日が予選通過の発表に日になっている。
そして、私達は今こうして学校に集まっている。
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 21:58:30.87 ID:d6fSvC1L0
「澪ちゃん、確か発表は大会イベントのHPだったよね」

パソコンを使ってオークションのアンプを調べている澪ちゃんに、私は質問をした。

「うん、各ブロックそれぞれの予選通過バンドにのみHPに記載される事になっているらしい」
「確か各1ブロックにつき一組だけよね」

続いてムギちゃんも質問をする。

「そうだ」
「私達の他にもたくさんバンドはいたから…、正直厳しいですよね…」

…………。
あずにゃんの言うとおりだ。
私達の他にも10組以上のバンドがいたはず。
その中から一組だけとなると……、正直厳しいものがある。
審査基準は、確か澪ちゃんから聞いた話によると、演奏力、歌唱力、表現力、パフォーマンスによる4点だ。
審査の人達から見た私達は、どういう風に映っていたんだろう…。

「17時になったぞ!」

緊張な面持ちで澪ちゃんは言った。

「よしっ、HP開くからな…」
「お、おう」

一瞬にして場は緊張の渦に包まれる。
みんなに笑みはない。真面目な表情だ。

うー、空気が重いよ…。
予選通過してるといいのにな…。
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 21:59:36.56 ID:d6fSvC1L0
そして、パソコンの画面はイベントのHPに変わった。
そこには、大きく「全国大会通過者バンド一覧」と書かれていた。
そこに私達「放課後ティータイム」の名前は……、































「あった!!」
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 22:01:41.13 ID:d6fSvC1L0
りっちゃんが叫ぶように声を出して言った。

「えっ、うそ!どこだよ!律!」

澪ちゃんが必死になってパソコンの画面を見つめている。
私も必死に「放課後ティータイム」の名前を探すが、どこにも見当たらない。

「ここだよ!ここ!」

そう言うと、りっちゃんはパソコンの画面の一部分を指さした。
その指の先には…

「ほ、本当だ!あった!あったぞ!」

澪ちゃんも声を大きくして言った。
確かにそこには、「放課後ティータイム」と間違いなく私達のバンド名が書かれていた。

「すごい!私達本当に通っちゃった!すごいよ!あずにゃん!」

私は、うれしさのあまりあずにゃんに飛びついた。
そして、思いっきりぎゅーっとする。

「は、はい!私達やったんですね!」

あずにゃんも凄い喜んでいる。
感極まってか、今にも泣き出しそうだ。
うん!泣きそうなあずにゃんもすっごい可愛いよ!
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 22:04:21.15 ID:d6fSvC1L0
「私達、やったんですね!」

ムギちゃんもすごい喜んでいる。

「あぁ、全国だぜ!全国!私達やばくないか!てか凄すぎだろ!」
「これ…、夢じゃないんだよな…はは」

本当に良かった…、全国に行けて…。
本当に良かった…、みんなが笑顔になれて…。

「なぁ、さっそく今日祝勝会やろうぜ!」
「うんうん!やろうよやろうよ!」
「そうだな!たまにはパーと騒ぐのもいいな!」
「そしたら私の家でやらない?」
「そうですね!この中でしたらムギ先輩の家が一番広いですし!」
「よっしゃぁ!じゃあ今日は久しぶりに飲むぜ!!」



……………………。
……………。
……。



「だぁかぁらぁ!言ってるらろ!律のドラムはいつも走りすぎだって!」
「違うんです!私が…、私のギターがへぼいから…、うぅ」

そうでした…。
浮かれすぎてすっかり忘れていました…。
澪ちゃんとあずにゃんは酒を飲むと人格が全く変わってしまう事を…。

「なぁ、ムギ。こいつら今何杯目だ?」
「まだ、ビール一本だけなんだけど…」

二人は揃って溜息をつく。
澪ちゃん…、あずにゃん…。いくらなんでもお酒弱すぎだよ…。

「ありっ?もう私のしゃけがないじゃないか…。りちゅ!ビールもう一杯!」
「お前はもう飲むな!」
「ゆいしぇんぱい…、わたし、わたし…、本当は寂しくて…」
「うん、あずにゃん。もうお酒は控えようね」

こうして、祝勝会の夜は明けていきました…。
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 22:07:01.65 ID:d6fSvC1L0
……………………。
……………。
……。



あれからまた2週間が経ち、ついに全国大会の日がやってきました。
この日のために、私達は今までにない位の練習をたくさん重ねてきました。
しかし、大会当日。5000人以上の客を目の前にした私達は、プレッシャーのあまり本来の力を発揮する事が出来ませんでした。
りっちゃんのドラムのリズムは狂い、澪ちゃんはあまりの緊張のせいか演奏中にピックを落とし、ムギちゃんはPADの音色を間違い、あずにゃんはギターソロを外し、そして私は歌詞を度忘れするという大失態をおかしました。
全国大会という名のプレッシャーも、もしかしたらあったのかもしれません。
おかげさまで、私達は何の賞を受賞する事が出来ず、散々な結果の大会に終わりました。
私達「放課後ティータイム」は、これで終わったのです。
そう、本当の意味での終わりはすぐそこまでやってきていたのです…。
しかし、私とあずにゃんはこれが始まりでもありました…。





「散々だったな…」

りっちゃんが肩を落として言う。

「あぁ…、本当にこれじゃ…、ただの恥さらしだよな…」

澪ちゃんの魂が体から抜けていくのが見えました。
駄目だよ!澪ちゃん!お願いだから戻ってきて!

「あのー、すみません」

私は、後ろから男性の声がしたので振り向きました。 
するとそこには、会った事もない知らない男性の人が立っていました。

「あの、私こういう者ですが…」

そう言ってその男性の人は私に名刺を渡しました。
その名刺にはこう記載されていました。



【ソ○ーレコードミュージック 総合プロデューサー】
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 22:08:31.62 ID:d6fSvC1L0
……………………。
……………。
……。



「デビューですか!?」
「はい」

私は、驚いた。
だって、まさかあんなみっともない演奏をしてデビューだなんて…。

「えぇ、まぁ演奏に関しては、そうですね。正直に言うとひどいものでした」
「うぅ…」
「しかし、あなたには魅かれる物がある。その中にはおそらくまだ開花していない才能があると私は見ています」
「ほ、本当ですか!」
「えぇ、ですので…」

すごいよ!みんな!デビューだって!
私達プロになれるんだよ!

私は一人舞い上がっていた。この時、気づくべきだっんた。
さっきから話しているプロデューサーの本当の意味を。
そして、喜ぶべきはずのみんなが浮かないような表情をしていた事を。

「じゃ、じゃあみんなで…」
「あなたをソロデビューさせたいと思っています」
「…………えっ」

私は耳を疑った…。
ソロデビュー?
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 22:10:28.64 ID:d6fSvC1L0
「えっ、あ…」
「そうですね。今すぐに返事を下さいとは言いません。しかし、こちらも早い段階で手を打たねばならないのも事実です。そうですね、3日後にしましょう」
「………」
「それまでに結論を出して下さい。急ぎで申し訳ないのですが、お願いします」
「………」
「では、私は次の仕事があるので。またこれで…」
「………」



……………………。
……………。
……。



時間が止まったんじゃないかと思った。
その場に残された私達は、誰も何も喋ろうとはせず、ただの沈黙の時間が続いた。
私も何を喋ったらいいのか分からなかった。
そんな中、沈黙をやぶったのはりっちゃんだった。

「す、すげぇな!唯!デビューだってさ!」
「そ、そうだよ唯!しかもソ○ーなんて凄い有名なレーベルじゃないか!」

続いて澪ちゃんも言った。

「うん!ゆ、ゆいちゃんならいつかプロになれるって信じてたわ」

そして、ムギちゃんも…。

「………」

あずにゃんは何も言わなかった…。
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 22:13:09.58 ID:d6fSvC1L0
「うん……、でも」

でも、私は…。

「私……、断ろうかな…」

だって、だって私は…。

「………それは、どうしてだ?」

いつもとは、違った低い声。
前を向くと、真剣な眼差しで私の事を見ているりっちゃんがいた。

「どうして…って」
「………もしかしてさ、私達に悪いとか思ってる?」
「………」

私は何も答えられなかった…。

「もしな、もし唯が私達に申し訳ないと思って断るっていうなら」
「………」
「私はお前と絶交する」
「律!?」
「りっちゃんそれは…」

澪ちゃんとムギちゃんが話に割って入る。
でも、りっちゃんはそれを制するように話を続けた。
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 22:15:23.11 ID:d6fSvC1L0
「ごめん。澪、ムギ。少し話させてくれ…」
「………」
「うん。なぁ、唯。正直言って私、今もの凄い唯の事羨ましいなって思ってる」
「………」
「おそらく、ここにいる澪、ムギ、あずさ、多分みんなそう思ってる」
「………」
「でもな、唯…」
「………」
「私達はな」
「………」
「そんな妬みも通り越してしまう程」
「………」
「みんなおまえの事が大好きなんだよ」
「………」
「確かに、唯が私達とバンドをしたいって気持ちも凄い分かるよ」
「………」
「でもさ、もうそんな事言ってるような次元の話ではないと思うんだ」
「………」
「だからさ」
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 22:16:35.23 ID:d6fSvC1L0
「唯にはちゃんと考えて欲しい」

うん………。

「私達の事は全然後でいいから」

うん……。

「まずは、唯が自分で何をしたいのか……、ちゃんと考えて答えを出して欲しい」

うん…。

「まぁ、どうしても唯が私達とまだバンドをしたいって言うならまた考えてもいいけどな!」
「う、うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ」
「うわ!こ、こら!唯!」

急に涙が出た…。
なんでだろう…。
涙が止まらない…。
涙が止まらないよ、りっちゃん…。

「ば、ばか。泣いて抱きつく奴があるか!そんなに泣いたら……、私だって…うぅ」
「な、何律も泣きそうになってんだよ…」
「もう!みんな泣かないでよ!私まで…」

私達は泣きながら抱き合いました。
一目もはばからずただ泣きました。
それは、おそらくみんな感じていたんだと思います。
「放課後ティータイム」がこれで終わりだという事を…。
ただ一人、呆然と立ち尽くす私の後輩を除いては…。
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 22:18:41.23 ID:d6fSvC1L0
……………………。
……………。
……。



「それで、結果は出たのか?」
「うん。まぁね」
「そうか……、うん。唯なら大丈夫」

あれから3日が経ちました。
そして私は……

「唯なら大丈夫だよ。行って来い」
「うん。行ってくるよ」
「もし何かあったらまた戻って来い。私達はいつでもお前の味方だから」

ありがとうりっちゃん。

「そうだぞ唯。つらいからって無理しちゃだめだぞ。たまには逃げ出したって誰も文句は言わないぞ」

うん。澪ちゃん。

「また何かあったらいつでも連絡ちょうだいね。おいしいケーキ用意して待ってるから」

約束だよ。ムギちゃん。

私は決めた。
決めたんだ…。
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 22:21:15.89 ID:d6fSvC1L0
「じゃあ行ってきます!」
「ちょっと待って下さい!!」

後ろを振り向くと、どこからか走ってきたのか、息を切らしているあずにゃんがそこにいた。

「……あずにゃん」
「待って下さい唯先輩!」

すると、あずにゃんは人通りの多い学校の玄関前の入り口だというのにもかかわらず、地面に正座して、

「お願いします!唯先輩!私も!私も一緒に連れて行って下さい!」

と、私に向かって土下座した。

「私は、私はあの日、唯先輩のギターを聴いて、それから、それから…」

あずにゃんの声はだんだんに震えに変わり…

「わ、私は他の誰よりも先輩の事を……」

そして…、

「せ、先輩の事を……、うぅ、んぐっ、う”うぅ…」

言葉にならない嗚咽となり…、













「ぷっ、くす。はははははは」
「ゆい、せんぱい…?」
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 22:23:14.86 ID:d6fSvC1L0
「ばかだなぁ、あずにゃんは…」

そう言うと、私はやさしくあずにゃんを抱き寄せた。

「あずにゃんと私はずっと一緒に決まってるじゃん」
「う”、う”い”、せ”、んばい”……うわあぁぁぁぁぁあ」
「よしよし、あずにゃん」











「はぁ〜、まぁこうなるわな」

と、りっちゃん。

「うん。あずさにはやっぱり唯がいないとな」

と、続いて澪ちゃん。

「そうね。うん。やっぱりこの二人じゃなきゃね」

さらに続いてムギちゃんも。

そうだよ、あずにゃん。
みんなちゃんと分かってるんだから。

「うん!あずにゃんも一緒に行こう!」
「は、はい!」

私はあずにゃんの手を強く握った。あずにゃんも私の手を強く握り返した。
もう、それする事が当り前すぎて私達はお互い笑いあった。
りっちゃん、澪ちゃん、ムギちゃん…。ありがとう。
私はあずにゃんと頑張るよ…。
でも、つらくなったらまた戻ってきていいよね。
だって私の帰る場所は、いつもここ【放課後ティータイム】なんだから…。





〜番外編〜
唯「平沢唯の歩く道」

おしまい
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 22:30:12.09 ID:d6fSvC1L0
ふぅ……。

とりあえず、番外編、唯「平沢唯の歩く道」は終了です。
やっぱり、ゆいあずっすよね♪

キャラ的にはりっちゃんが一番好きですけど。

さて、ここまで読んでくださっている皆さん。
ありがとうございます。

これからも、暇な時、ちょっとした休憩などに読んでくださると幸いでございます。
では、今日も夜遅いのでお風呂に入って寝ます!

あぁ、明日もバイトだ…。
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/09(水) 22:52:50.18 ID:d6fSvC1L0
やべぇ…。
何だよこれ…。

>>1の書く文章とストーリーにマジで引きつけられるわ。

本編は>>1の好きなように書いてくれ。

とりあえず、乙!
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 23:25:19.76 ID:Q1y6Wd2SO
ハルヒ+けいおん好き、特にりっちゃん大好きな社会人の俺にとっては、俺得すぎるスレです!

支援
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/09(水) 23:41:30.35 ID:d6fSvC1L0
何これ?
>>1と同じIDなんだけど
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 23:51:44.03 ID:zzYo8u9AO
>>165
たまに、VIPでそういうのあるよ。
でも、お前が書き込んだ事で>>1が自演っぽくなった

ドンマイ
167 :sage :2011/02/10(木) 00:04:33.28 ID:2ITrpmJk0
>>165
あーあ、てかsageろよ
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/10(木) 00:08:43.95 ID:3C26TGXSO
>>167
お前ウケ狙いすぎだろ。
名前の欄に書いてどうするんだよ
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/14(月) 16:20:22.34 ID:F8WTmOJfo
まだかなまだかな
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/17(木) 20:36:36.26 ID:4Jux1rmfo
まだなのか
気長に待つが
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/18(金) 20:33:32.55 ID:zffdvS3E0
まだ〜ん
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/20(日) 01:50:59.81 ID:3QkAFG680
魔弾
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 20:20:33.87 ID:0qUMfLeSO
まだか…
この土日期待してたんだが
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 02:07:04.10 ID:UCCiHGEA0
こんばんは。>>1です。
最近は、読み手に回って色々なssを見ていました。

幼稚な文章ではございますが、これから書き溜めた分投下します。
遅い時間ではありますが、今宵もどうかお付き合いください。
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 02:09:54.28 ID:UCCiHGEA0
……………………。
……………。
……。



「この間は、その…、すみませんでした」

秋山はそう言うと、俺に対して深々と頭を下げた。

「いえいえ、こちらこそ、その、すみません…」

突然の謝罪に、どう対応していいのか分からず、とりあえずこちらも謝っておこうという一般的な結論を導き出した俺は、その場で秋山に対して頭を下げた。
こういう時の対応の在り方で、その人の人間性を計り知れるとはよく言ったものだ。

「いえ…、あの…、わ、私も、その…」

目の前には、必死に何かを伝えようとしているが、何を喋ったらいいのか分からない。
そんな様子の秋山がいた。

さて、とりあえずここで状況の説明をしておくとするか。
現在時刻は13時10分。
俺は今、秋山の会社の近くにある喫茶店にいる。
何故、俺が今ここで秋山と二人で会っているのかというと、今日の朝に秋山からメールをもらったのがきっかけだ。
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 02:12:21.58 ID:UCCiHGEA0
『急にメールしてごめんなさい。
この間は、色々とご迷惑をおかけしてすみませんでした。
もし良かったら、一度会ってお話がしたいです。
時間が空いている時に、連絡をくれると嬉しいです。
よろしくお願いします』


これが、今朝俺が会社を出る前に受信した秋山からのメールである。
さすがに、この文面だと秋山が何について話をしたいのかは記憶喪失でも起こさないかぎりは明白な訳で。
正直、俺としては、田井中の件の事もあったのであまり会う気が起きなかったんだが…。
しかし、こうして秋山とせっかく知り合ったのに対して、このまま見て見ぬ他人のフリを続けるのもどうかと思っていたのも事実なので、秋山の方からこうして話をする機会を作ってくれたのは素直に喜ばしく、ありがたい事である。
その後のメールのやりとりで、今日の昼頃にお互い時間が取れるというが分かったので、こうして俺達は仕事の合間を見つけて会っている訳ではあるが…。

「えーと、その…」

秋山がこの調子なので、話が一向に進まないのは目に見えている。
さて、どうしたものか…。
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 02:15:31.55 ID:UCCiHGEA0
「あー、えーと、うん。とりあえず順を追って話をしよう」
「えっ、う、うん」

ここは、やはり俺がちゃんと話をしないとな。
元はと言えば俺が悪い訳なんだし。

「まぁ、その、なんだ、つい最近の事ではあるが、俺達はその…、世間一般的な見解で言えば、あまりよろしくない場所に行ってしまった訳だ」
「うぅ…」

俺がそういうと、秋山は顔を赤くして俯いてしまった。
そんな秋山の様子を無視して、俺は話を続ける。

「そんな場所に行く気がなかったとはいえ、寝ている秋山を俺が連れていってしまったのは事実な訳であってだな、うん。元はと言えば俺が全て悪いんだ。すまなかった」

俺は、そう言うと深々と頭を下げて秋山に謝罪した。
対する秋山の方は、少し声が震えがちではあるが…、

「いや、その……、私にも責任がある訳だし……、それに行ったとはいえ……」

それから、若干の間があり

「その…、やって……、ない……、わけだし……」

と、今にも顔を真っ赤にしながら、存在自体が消え去りそうなくらい、低く小さな声で秋山は言った。
こんな状況にも関わらず、そんな仕草をする秋山を見て、不覚にも可愛いなと思ってしまう俺って…。
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 02:17:55.71 ID:UCCiHGEA0
「それに…、律にも言われたんだ」
「えっ」

そういうと、さっきまで俯いていた秋山は、俺の方を向いて話しを始めた。
顔はまだ若干赤いままだが、その表情は真剣そのものだった。

「昨日の夜、電話があって、『澪がしっかり自己管理出来ていないのが悪い』って。確かに、そうだなって……、思った」
「………」
「その、私…、ここ最近キョンの事避けてる訳じゃなかったんだけど…、その、恥ずかしくて…、会ってもどんな顔すればいいのか分からなかったし…」
「………」
「律にも、『このままじゃ、キョンが可哀そう』って言われて…、私も、この間みたいにキョンと普通にまた話せたらなって思ってて……、その……」


正直、動揺した。
秋山の口から『田井中』の名前が出た時、自分の心臓の音が聞こえるのではないかと思うくらい……、動揺した。
自分のした事、田井中の気持ち。そんな事、今更なのに…。
今更なのに…、考え出したら、急に怖くなった。
でも…、秋山の話を聞いているうちに…、何故か田井中の悪戯っぽい笑顔が頭に浮かんで…。
そしたら…、


「秋山」
「は、はい」
「その、ありがとな」


急にあいつに会いたくなって…、


「俺も秋山と普通に話せるようになりたいって思ってて……、こんな事、俺がいうのもおかしな話だけどさ…、この間の事は忘れて…、その、なんていうか…」
「うん…」
「またよろしくお願いします」


涙がでそうになった…。
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 02:20:13.94 ID:UCCiHGEA0
……………………。
……………。
……。


「はぁ…」

仕事も終わり、家に戻った俺は、半年ほど前に通販で購入した一人暮らしには少し大きすぎる程のソファの上に腰を掛けた。
冷蔵庫から持ってきたキンキンに冷えたビールを机の上に置き、今日一日の出来事を振り返る…。


あの後、俺と秋山は普通に他愛もない話をした。
お互い最近聴いている音楽の話や、秋山の昔の軽音部の話、お互いベースをやっていたという事もあって以外にも話は盛り上がった。
秋山と違って俺は3ヶ月しかベースを触った事がないのだから、それを経験者という表現を使用していいのかは分からないが。
ただ、もうお互いあの時の話はしなかった。
そうする事が、一番良いとお互い分かっていたからだ。

多分、これで秋山との問題は解決した……、と思う。
そう。もうひとつ。俺がやらなければならない事。

「よし、かけるか…」

俺は、携帯電話を開いて着信履歴から『田井中律』の文字を見つけ、そして【通話】ボタンを押した。
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 02:21:40.90 ID:UCCiHGEA0
………。
着信音が鳴る。
もう一回、そしてもう一回、受話器から着信音が聞こえるたび俺の心拍数が増えていく。

「はい…」

電話の向こうから聞こえた田井中の声は少し元気がないような、そしてどこか寂しげ雰囲気を漂わせる、そんな声だった。

「田井中か?」
「そう、でも私は3人目だから」
「じゃあ俺は4人目な」
「そういう意味じゃねーからこれ!」
「はははは」

いつもの会話。
いつものノリ。
でも、やっぱり田井中はどこか元気がない。

「ははは、ナイスノリツッコミだな」
「へへん、まぁこの界隈じゃ、ツッコミのりっちゃんとして有名だかんな」
「なるほど、田井中から半径2センチまではそう言われているのか」
「どんな狭い界隈だよ!」
「はははは」

さて、おふざけはここまでにして……、本題に入るか。

「なぁ、田井中」
「ん?」
「今日な、俺秋山と話をしてきたんだ」
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 02:24:38.56 ID:UCCiHGEA0
そうだ。田井中が秋山に言ってくれたから、今日俺はちゃんと秋山と話をする事が出来たんだ。
だからちゃんとお礼は言わなくちゃいけない。
それが人としての在り方というべきものだ。

「色々と話をして……、とりあえず仲直りっていうか…、また普通に秋山とは話せるようになったんだ。これも田井中のおかげだよ。ありがとな」
「そ、そうか。よかったじゃん。ていうか、私は別に何も…」


だけど…、



「それとな…」



俺が本当に田井中に言いたかった事は…、



「昨日のファミレスの事なんだが…」



田井中に対する、今の俺の本当の気持ちだ。



「あれ、俺本気だからな」
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 02:25:47.64 ID:UCCiHGEA0
“田井中律”。その女性はお前にとって何なんだと聞かれたら、



「あんな話をした後で、あんな空気になっちまったから」



谷口の言葉を借りて言うなら、



「雰囲気もあったもんじゃないが…」



“俺にとってAA+の女性だ”



「いや、今も雰囲気なんてあったもんじゃないと十分自覚はしているんだが」



いや、ごまかすつもりはないんだ。



「昨日も言ったんだが、もう一度ちゃんと言わせてくれ」



そうだな、俺の言葉でしっかりと言うのであれば、



「俺は…」



俺は…



「田井中の事が好きだ」
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 02:27:43.48 ID:UCCiHGEA0
本当は会って言いたかった。電話でなんてかっこ悪いと思うだろ?
でも、誘ってもきっと田井中は会ってはくれなかっただろう。
実際に誘った訳じゃない。ただ、田井中は変なとこで真面目な奴だから。
だから誘っても会ってもらえないと自分で勝手に決め付けていたんだ。
いや、実際会って田井中を目の前にして、ちゃんと自分の気持ちを言える自信なんてどこにもなかった。



「俺はまだ、田井中からちゃんとした返事を聞いちゃいない」



だけどな…、



「だから、聞かせてほしいんだ」



ずっと、言いたかったんだ。
秋山と一緒にいた時も、仕事で営業に回っている時も、ずっと、ずっと、言いたかったんだ…。
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 02:28:16.79 ID:UCCiHGEA0







「私は…、その…」

























「ごめん……」
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 02:30:17.65 ID:UCCiHGEA0
……………………。
……………。
……。



『来週からは、秋の気温になりそうです』

テレビには、美人のニュースキャスターのお姉さんが映っている。

『夏の気分は今週までとなりそうなので、気温の変化には十分にご注意しましょう』

どうやら、何をするにもやる気が失せるような猛暑は今週までらしい。
来週からは少し過ごしやすくなりそうだ。

「ごめんなさい…、か…」

いつまでこうしてボーとしていただろうか。
ふと、時計に目をやると時刻は23時55分を指している。
あと少しで、日付が変わっちまう。
一度でいいから、昔の長門みたいな反則的能力を駆使して、時間を止めてみたいもんだな。

「はぁ…、もう寝るか」

人生2度目の失恋。
偶然にも、俺が恋する女性はいつもカチューシャをしていた。
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 02:32:43.28 ID:UCCiHGEA0
その日の夜は、以外にも寝付くのが早かった。
そして、夢をみた。懐かしい光景。

「私達はSOS団なの。私は団長であって、あなたは私の大切な団員。それ以上でもそれ以下でもないわ」

見慣れた制服、見慣れた後ろ姿。
俺が初めて本気で人を好きになった女性。
いつも振り回されては、その度に大きな溜息を吐いて。
でも、俺にとってはそれが幸せだった。

「ねぇ、そうでしょ、キョン?」


――――――――――――
―――――――――
――――――




気づけば、朝だった。
カーテンからは太陽の光が漏れている。
アラームはまだ鳴っていない。
時計を見ると、どうやらいつもより早い時間に起きたらしい。

「ふぁ〜ぁ」

眠たい目をこすりながら、恋しい布団とおさらばする。
何も変わらない。またいつもの日常が始まるだけだ。
そう思っていた。






















だが、現実は、非現実だった………。
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 02:35:55.33 ID:UCCiHGEA0
短いですが今日はここまで。

次回からちょっと展開が変わります。

ここまで、読んでくださっている皆さん、ありがとうございます。
もう遅いので、今日は寝ます。
おやすみなさい。
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 03:52:37.69 ID:ZOpa3Icqo
なんていいスレを見つけてしまったんだヒャッホーイ
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 04:41:47.39 ID:C+AjBA7Lo
単純な話になるかと思ったがそうじゃないみたいだな

期待しておこう
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/23(水) 11:59:28.70 ID:dUXf/UjSO
続き気になる…
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 12:25:24.61 ID:EKldjmLIO

楽しみにしてるよ
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 13:16:40.62 ID:aYxRjDOMo
うおおお…これは面白いぞ
すげー期待してまってる!
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/24(木) 00:02:52.09 ID:PEBmbWWa0
これは激しき乙せざるを得ない。
頑張ってくれ!
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 19:55:34.55 ID:+52IsmTSO
今、けいおんWiki見たけど、りっちゃんって身長154cmしかないんだな…

りっちゃんのデコにちゅっちゅしたい支援
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 22:19:40.87 ID:KpfTlsClo
まだかなー
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/28(月) 22:22:18.35 ID:XoUTkUaro
まだかい
197 :名有りNIPPER [sage]:2011/02/28(月) 22:38:32.01 ID:MVMh9HtDO
待つぜ
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 02:06:07.27 ID:V/reCSxco
やっと今回の分読んだ。乙。やっぱりっちゃん可愛いわー
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 23:32:16.62 ID:MPECj7VSO
クロスキャラ同士の恋愛はご法度

よって駄作。

文章も気持ち悪い

ラノベ気取りかもしれんが気持ち悪い
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/01(火) 23:37:19.68 ID:09nBDzrA0
こんばんは、>>1です。
遅筆ですみません。
中々、書き溜める時間がないもので……、
ですが頑張って書いていこうと思います。

それでは、今夜も書き溜めた分投下します。
少しの間お付き合いくださいませ。
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/01(火) 23:41:06.43 ID:09nBDzrA0
「明日から連休になるがあまりハメを外しすぎるなよ」
上司が口うるさく言った。あしたから俺の会社はお盆休みに入る。


大学を卒業してから、俺は都内にある企業に就職した。
まぁ、世間一般で言う、いわゆる中小企業の会社だな。
その中でも、俺は営業の部署に配属されている。
営業成績の方は………、まぁ、その話は置いておこう。


SOS団?
あぁ、あいつらもみんな無事に就職したさ。
しかも、みんな都内にある大企業だ。
あいつらは俺とは違ってかなり有能だからな。
そういえば、社会人になってからはSOS団で全く集まってないな。
連絡も全然取ってないし……。みんな何やってるんだろうな。
まぁ、あいつらの事だからしっかりやってはいるんだろうけどよ。


さて、話は戻るが、明日から俺は連休に入る。
学生と違って何ヶ月も長期休みがある訳ではないので、やる事に限りは出てくるが、せっかくの久しぶりの連休だ。
思う存分楽しむとしよう。
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/01(火) 23:42:29.04 ID:MPECj7VSO
書かなくていいよ

気持ち悪いし

つか、こんな駄作みたくもないわ
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/01(火) 23:44:56.45 ID:09nBDzrA0
……………………。
……………。
……。



連休一日目、この連休を使って実家に帰ろうかと思ったが、急に帰郷するのがめんどくさくなったという、本当にくだらない理由で俺はそのまま残る事にした。
しかし、せっかくの休みなので家にいてもしょうがないと思った俺は、何をする訳でもないが、とりあえず街の方へと出かける事にした。
が、やはり街をぶらついていても特にやりたい事は見つからないし、興味が惹かれる物もない。
たまたま、目の前にパチンコ店があったという事で、暇つぶしにと思い何の気なしに俺は入ってみる事にした。


「久しぶりにエヴァでも打ってみるか…」



が、しかし当たらない。
一万円くらい使ったところでバカバカしくなってきたのでやめた。


はぁ、やっぱりギャンブルなんてやるもんじゃないな。
と、心の中で今まで何回もつぶやいてきたであろう言葉を吐きながら手元の時計に目をやると、家を出てからはまだ全然時間は経ってはいなかった。
お昼にしてはまだ早すぎるし、腹もそこまで減っていない。
だが、目的もなくまた街の中をぶらぶらするのも面倒だと思った俺は、どこかゆっくり休める場所はないかと、近くのお店を探し始めた。
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/01(火) 23:47:34.68 ID:09nBDzrA0
「あれ?こんなところにこんなお店あったか?」

パチンコ店から200メートル程離れた場所に、お店はあった。
外に置いてあるメニューを見た感じだと食事も出来る喫茶店と言ったところだろう。
若干高級そうな、そしてどこか怪しげな雰囲気が漂うこの喫茶店。コーヒー一杯500円と、俺が普段利用する「スターバックス」や「ドトール」よりかは若干高めだが、これと言って特別高い値段でもない。

「入ってみるかな」

このお店を見つける途中に、俺がよく行くファミリーレストランがあったはずなんだが、そこは何故か潰れていた。
最近まで普通に営業していたと記憶していたんだがな……。

まぁ、ここでメニュー見ながら突っ立っていたってしょうがない訳だし、とりあえず入ってみるか。
と思い、入口の方へ向かおうとした瞬間、

「んっ?」



何かを踏んだ。
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/01(火) 23:50:05.88 ID:09nBDzrA0
足の踏み場所を変え、下に目をやるとピンクの色をした財布が目についた。
きっと誰かの落し物だろう。
俺はその財布を拾い、良心的な気持ちから交番に届ける事にした。
だが、

「……交番ってどこだっけ?」

そういえば俺って、この街の事あまり知らないよな。
交番に届ける事が若干面倒に思った俺は、本人と直接連絡が取れる物があればと思い財布の中身を拝見する事にした。
幸い、中には免許証と本人の携帯番号であろう物が記されている物もあったので早速電話をかけてみる事にした。
ん?プライバシーの侵害?
とりあえず、今は目を瞑っておいてもいいだろう。

早速、俺はこの財布の持ち主であろう方に電話をかけた。
























だが、相手と電話が繋がる事はなかった。
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/01(火) 23:54:06.20 ID:09nBDzrA0
……………………。
……………。
……。



あの後、俺は携帯から近くの交番を調べて、あの落ちていたピンク色の財布を交番に届ける事にした。
その途中、知らない人に声を掛けられたが、別にここで語る必要もないだろう。
交番に財布を届けた後は、家の近くにあるレンタルビデオ屋さんに行き、少し前に流行ったSF映画を借りて、家で映画を鑑賞した。
内容はそこそこおもしろかったんだが、何故か所々先の展開が読めてしまった。
ずっと観たい映画だっただけに、少し不完全燃焼気味だったのが残念だ。
普通の民放チャンネルに切り替えると、今流行りの「HTT」が歌番組に映っていたが、俺にとっては興味の対象ではなかったため、別チャンネルのバラエティ番組に切り変えた。
その後は、特にやる事もなく、その辺に転がっていた漫画を読んだり、携帯をいじりながらソファでごろごろしたりと、兎に角だらしない休日を過ごした。
そんなこんなで俺の貴重な連休第一日目は終わったのである。




そして、連休二日目。
昼過ぎに起きた俺は、これまた特に決まってやる事もなく、グダグダと家で過ごしていた。
気づけば、外は若干だが日が落ち始め、夕方と呼ぶにはちょうど良い時刻になっていた。
こんな事なら、実家にでも帰ればよかった。
と思い始めた頃、一本の電話が俺の元に届いた。

「お久しぶりです」

それは、かつての高校時代、共に過ごした戦友とも呼べる親友。
古泉一樹だった。
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/01(火) 23:57:16.47 ID:09nBDzrA0
……………………。
……………。
……。



「やっほー!みんな元気にしてた!?」

そう言うと、ハルヒは持っていたカバンを端の方に置き、俺の隣にドカッと座った。
相変わらず元気100%の笑顔だなこいつは。
と、思うと同時に俺は何故か安心した。
おそらく、長い間会っていなかった旧友が、へんに変わっていなくて良かったと思ってしまうアレに近いものだろう。

「涼宮さん、お久しぶりです」

続いて古泉が言う。
こいつのこの胡散臭い笑顔を見るのも久しぶりだな。
しかし、本当に良い顔してるよこいつは。
あっ、一言いっておくが俺にBL属性はないからな。

「ごぶさた」

相変わらず短い一言の長門。
だが、その表情は昔では考えられないくらい豊かになった。
いや、初対面の一般人から見たら無表情かと思うかもしれんが、俺からしてみたらかなりの表情の変化である。
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/01(火) 23:59:10.17 ID:09nBDzrA0
「おぉ、有希!髪伸びたわね!ロングの有希もなかなか似合うわよ」

そう言うと、ハルヒは長門の髪をなで始めた。

「照れる」

少し恥ずかしそうに言う長門。
高校時代と比べたらずいぶん人間っぽくなったと思うぞ、長門よ。

「ハルヒ、久しぶりだな」
「あらっ、キョンじゃない」

その、ついでみたいな呼び方止めてくれ。地味に傷つくぞ。

「いちいちうっさいわね。せっかくこうして集まれたんだから、とりあえずみんなで飲みましょう!」
「それもそうだな」




さて、俺たちSOS団メンバーは、こうして久しぶりに集まっている訳であるが。
どうしてこうなったかと言うと、先程の古泉からの電話がきっかけである。

『今日は珍しく仕事が早く終わりましてね。久しぶりにあなたとお食事でもと思ったんですが』

最初は、俺と古泉の二人で会う予定だったのだが、みんなと連絡を取り合ったところ奇跡的に時間に余裕があるとの事でこうして集まる事が出来ている。

最後に、SOS団で集まったのが大学4年の春休みだから……、約1年半ぶりか。
本当に久しぶりだな…。



「ほら、キョン!早くその呼びだしボタンを押しなさい!そんなのだから、あんたはいつまでたっても営業成績が悪いのよ!」
「うるせぇ!て言うか、別に俺の成績が悪いのと今は関係ないだろ!」
「あらっ、あんた本当に悪かったのね…」
「………」

こうして、また集まれた事に対して俺は素直に嬉しいと思う。
やっぱり、こうやってバカ騒ぎできるのはこいつらといる時だけだしな。
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 00:01:04.98 ID:j722nZvd0
……………………。
……………。
……。



「はぁー、もうこんな時間かぁ。そろそろ行かないとね」

携帯を見ながらハルヒが言った。
腕時計を見ると、あともう少しで日付が変わろうとしている。
どうやら、時間的にもこの辺でお開きのようだな。

「キョン」

ハルヒが俺の顔を見ながら言った。

「今日はありがとね。久々に羽伸ばせて楽しかったわ」

ハルヒにしては、珍しく素直な言葉だった。
なんて言うか、そうストレートに言われると何処となくむず痒いものがあるな。
ハルヒの言葉に続いて、長門と古泉も

「楽しかった」
「僕も、凄く楽しかったです」

あぁ、俺もすげぇ楽しかったさ。
久しぶりにこんなに笑ったよ。

「次がいつになるか分からないけど、またみんなで会いましょう!」
「そうですね。次会う時までまた頑張らなければいけませんね」


ハルヒは空に指をさして、声高らかにこう言った。

「私達SOS団は永遠に不滅よ!」


あぁ、もちろんだぜハルヒ。
長門や古泉もきっとそう思ってる。いや、朝比奈さんも含めて団員全員だ。
俺達は誰がなんと言おうと『世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団【SOS団】』だ。
この言葉に嘘はないぜ。
なんてったって、ハルヒ。世界は本当にお前を中心に回っていたんだからな。
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 00:04:15.64 ID:j722nZvd0
「じゃあ、私こっちだから!またねー!」

そう言うと、ハルヒは俺達に背を向けて歩きだした。
続いて古泉も、

「では、また近いうちに会いましょう」

と、残っている俺と長門に言い残し、歩いて行ってしまった。
さて、俺もそろそろ帰らないとまずいな。
調べてないけど終電とかまだちゃんとあるんだろうな。

「じゃあ、またな、長門」

長門にそう言うと、俺は駅の方へと歩き出そうとした。
が、しかし

「待って」

ふいに長門に右手を掴まれた。
振り向くと、長門が俺の顔を見つめている。
その表情は、さっきまでの宴会気分を忘れさせる程真剣なものだった。

「気をつけて」

あぁ、大丈夫だ長門。
いくら酔っぱらっているからと言って、赤信号と青信号を間違えたりはしないさ。

「そうではない」

































「こ  の  世  界  は  存  在  し  て  は  い  け  な  い」
211 :Actress ◆RitsuEZ3ik [sage]:2011/03/02(水) 00:05:47.17 ID:H53KjtQDO
なん……だと……!?
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 00:09:41.59 ID:j722nZvd0
今日はここまでです。
ここまで読んでくださっている皆さんありがとうございました。
213 :Actress ◆RitsuEZ3ik [sage]:2011/03/02(水) 00:11:33.62 ID:H53KjtQDO
ひとまずおつ!
ちゃんとハッピーエンドになりますように……
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 01:39:25.79 ID:r9BLymZDO
乙!
これは続きが楽しみだ
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 02:51:49.92 ID:uuoP/DnIO
怖えええええ
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 20:02:44.11 ID:txKJZBmAO
乙!次がすごい気になる…
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 12:23:10.63 ID:6rmkCCJEo
単純なループの話とは違うのか…

先が気になるぜ
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 02:35:28.39 ID:59YkLOVLo
うおおおおおおお超続きが気になる
219 :sato ◆8MTPmAqd3U [sage]:2011/03/08(火) 19:00:50.42 ID:dp6BmOzDO
やべぇよりっちゃん可愛すぎるだろ……
いいぞもっとやれ
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 00:09:03.88 ID:Ux2xixTXo
まだー?
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/12(土) 07:28:17.12 ID:xZWAcrOa0
まだですか
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 10:28:12.04 ID:lWf6gPzzo
>>1は生きているのか?
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 00:02:11.86 ID:ZtgsrZZDO
まだかな
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 05:34:50.90 ID:NR3c8vRDO
まだなのかな……?
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/18(金) 22:05:11.55 ID:RdizPLUSO
皆さん、こんばんは
>>1です

僕は、今仙台にいます
幸いにも僕の住んでる場所は青葉区でしたので被害も少なく何とか生きのびる事が出来ました


今回の地震で最近まで電気が使えませんでした


パソコンはもう使ってません


出来るだけ節電するためです


なので今日は携帯から久々に、ここの板に来ました


ここまで、読んでくださっている方々


すみません


当分SSは書けないです


とりあえず、生きてる報告だけ
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/03/18(金) 22:10:46.59 ID:9fl5OSQDo
>>225
生きててよかった
仙台だったのか・・・・
気長に待ちます
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/03/19(土) 03:09:26.47 ID:ec+fs/qSo
無事だったか…心配したぞ。
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/03/19(土) 09:25:06.83 ID:TrCDeiggo
いや本当によかった
俺たちも頑張るからな
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/19(土) 16:04:18.96 ID:CColJE4DO
被災地の人だったか…
なんとか生き延びてくれ
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2011/03/19(土) 19:23:52.09 ID:TQDFaIiu0
>>1も仙台だったのか
俺は泉区だけどこっちも特に被害は無かったよ
無事で良かった
落ち着いたらまた書いてくれ
互いに頑張ろうぜ
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/03/20(日) 12:31:02.86 ID:G44AkvRZo
>>1は仙台だったのか…まあ無事でよかった。
首都圏のこちらからできる復興支援は、義援金の他にはガソリンを買いだめないとかしかないが、
また作品を書けるほど余裕がある日が来るまで待ちます。
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2011/03/25(金) 01:20:52.68 ID:a7eWvjuu0
名古屋に住んでます。
地震の被害にあわれた方、心からご冥福とお祈り申し上げます。
中学生ですが学校のほうで生徒会、室長会を中心として募金活動を行い、日本赤十字社のほうに約22万円の義援金を送らせていただきました。
今の状況が一刻も早く良くなるように我が中学校一同、心から応援いたしております。
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2011/03/25(金) 18:41:49.62 ID:aIEXPyIAO
実家に帰ってたけど戻るに戻れなくなっちゃったな……原発大丈夫なんだろうか?
137.12 KB   
VIP Service SS速報VIP 専用ブラウザ 検索 Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)