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佐天「学園都市に『鬼』がでるらしいよ!」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 17:05:26.84 ID:ExQNX+4So
・昨年の春頃に書いていて、様々な事情により断念したスレです。
・元の文章に少しだけ加筆修正をしています。
・現実逃避のために書いています。
・原作は読んでいません。
・基本金がありません。
・仕事をさぼってこっそりと投下しているため、遅くなることもあります。
・ほぼほぼ完成していますが、加筆修正しながらのため、一気にすべては投下しません。
・万が一、一ヶ月もレスが無ければ落としてください。
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713798788/

【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713788018/

ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 17:05:54.61 ID:ExQNX+4So
【9月6日月曜日】

――朝 柵川中学

佐天「うーいーはーるっ!」バサッ

初春「キャッ! って、佐天さん、いい加減にしてください!」

佐天「今日は苺ちゃんかぁ。お主もなかなか良い趣味をしておるのぅ」

初春「もう、佐天さんは……」

佐天「ごめんごめん。ところでさ、もう聞いてるー?」

初春「え?何をですか?」

佐天「『鬼』のことだよ!知ってる? 最近学園都市に『鬼』が出るらしいよ!」

初春「もちろん知ってますよ。風紀委員でも問題になってますし」

佐天「やっぱり! ねえねえ! ほんとにいるのかな?」

初春「うーん、どうなんでしょう? でも、スキルアウトの人達の状態を見ると……」

佐天「五十人以上のメンバーが集まってるチームが一日にして壊滅したんだよね」

初春「はい。しかも、誰に聞いても、『鬼が出た』としか言わないらしいんですよ」

佐天「『鬼』か……なんか怖いけど、ちょっと気になるなぁ」

キーンコーンカーンコーン

初春「あ! 授業始まりますよ! 急ぎましょう!」

佐天「って、ちょっと、初春! 置いてかないでよー!」


3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 17:06:44.59 ID:ExQNX+4So
――常盤台女子寮

黒子「お・ね・え・さ・まぁーん!」ガシッ

御坂「ちょっと! 朝っぱらから抱きつくな!」

黒子「いいじゃありませんの。スキンシップはコミュニケーションの一つですわよ」

御坂「アンタの場合、それが過剰すぎるのよ!」

黒子「!!!!! ああんっ! おねえさまの愛は痺れますのっ」

御坂「はぁ。ほんと、付き合ってられないわ」

黒子「ところでお姉さま。『鬼』の話ですが……」

御坂「『鬼』?ああ、昨日の黒子が言ってた事件ね。
   五十人以上のスキルアウトを一日で壊滅させるなんて、その『鬼』って何者かしら」

黒子「残念ながら、風紀委員でも、詳細はまだ掴んでおりませんの。
   ただ、五十人の屈強な男達に、あそこまでの恐怖を植え付けたのは事実ですわ」

御坂「ふーん。そんなに凄い能力者なのかな? 気になるわね」

黒子「お姉さま。いいですの?これは風紀委員の仕事ですの。民間人のおねえさ――」

御坂「あー、はいはい。わかってるってば。ほら、早く行くわよ」

黒子「んもうっ! お姉さまったら……」


4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 17:07:13.85 ID:ExQNX+4So
――学園都市 某研究施設
??「『鬼』……か。何者かは知らないが、邪魔をするなら……」

5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 17:07:44.25 ID:ExQNX+4So
――放課後 柵川中学

佐天「うーいーはーる! 今からセブンスミストに行かない? いつもの店に新作入荷したらしいんだ」

初春「すみません。今日は風紀委員の合同会議が入ってて……」

佐天「そっかぁ。それじゃ仕方ないね。あたし一人で新作を楽しんで来るかな」

初春「また週末にでも、御坂さんたちを誘って行きましょう」

佐天「うん、それじゃ、また明日!」


――セブンスミストへの道

 佐天は久し振りに聴く音楽に耳を傾けながら、セブンスミストへの道を歩いていた。

 シャカシャカシャカ♪

佐天「(一一一の新曲いいなー! って言っても、一ヶ月前の曲なのかぁ。
    この前の事件からあんまり音楽聴かなかったからなぁ)」

 しかし、楽しそうに音楽を聴きながら道を行く佐天のすぐ後ろに、三つの影があった。

男A「――おい、あの黒髪どうだ?」

男B「なかなか良いじゃねーか。中坊みてーだが、ガキが好きってのもいるしな」

男C「ああ。あれなら、結構良い値が付くかもしんねーなぁ」

男ABC「んじゃ、やるか」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 17:08:18.72 ID:ExQNX+4So
ダダダダダッダダ

ガシッ!


佐天「(えっ!? 何? 誰!?)」

佐天「んー! いやあああああ! んーんーんー!(痴漢!? え、なにこれ!?)」

男B「ねーちゃん、静かにしろや。騒ぐと痛い目見るぜ」キラッ

佐天「んー!(な、ナイフ! え、なんで私が!? なんで!?)

男C「静かにしてれば、痛いことしねーからよー。おい、さっさと車のとこにいくぞ」

男B「おう。ほら、ねーちゃん、歩きな」

佐天「(あたし、どうなるの? ねえ、誰か助けてよ。初春、御坂さん、白井さん……)」

男A「おい! 早く中に入れろ!」

男B「わかってるっての! お前こそ車くらいこっちに回しておけよ!」バタンッ

男A「誰にも見られてねえよな?」

男C「ああ、問題ねえ」

男A「よし、出すぞ」

キュルルルル ドンッ! ブオンブオン ブォーン


――

 屈強な三人の男に連れ去られる佐天。誰もその姿を見ていないかと思われた。しかし……


  !?


ホジホジ フーッ

??「おいおい、マジかよ。ったく、この忙しいのによ……」

??「こんなの見ちまったら……」

??「見過ごせねーよなー……『漢』として……」

??「――いや、『……』としてなぁ!?」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 17:08:55.37 ID:ExQNX+4So

――車中

男C「今日も楽勝だったな」

男B「ぼろい商売だぜ。適当に女攫ってけば金がもらえるんだからよ」

佐天「(どうしよう。私、このまま売られちゃうのかな)」

男A「おい、無駄口ばっかり叩いてないで、しっかり見張っとけよ」

男B「うるせえよ! このガキ、無能力者っぽいから大丈夫だって」

男C「ほとんど抵抗してこなかったしな。真面目な無能力者は楽で助かるぜ。ハハッ」

佐天「(無能力者……あたしに力があれば……こんな奴ら……
    って、そんな事考えても仕方ないよね。本当になんでこんなことに……)」

男B「なあなあ、そう言えばよ、山崎んとこのチームが潰されたってマジか?」

男C「昨日のあれか。なんでも『鬼』にやられたらしいぜ。笑っちまうよな」

男B「どうせクスリでもやってテンパってたんだろ? あいつらジャンキーばっかりだからよ」

男C「だろーな。ヘッ、何が『鬼』だ。笑っちまうぜ」

佐天「(鬼……もう幽霊でも鬼でも、何でも良いから……助けてっ!!!)」


 救いを求める佐天。しかし、その心の声を聞く人間は誰もいなかった。だが……


キキーッ! ドーンッ! ガシャン!
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 17:09:26.04 ID:ExQNX+4So
男ABC「うおおおお!」

佐天「んーんー!(ちょっと、何これ!何があったの!?)」

男B「おい、A! どうしたんだ!」

男A「原付が急ブレーキかけやがって、こっちにぶつかりやがった!」

男B「ああ!? なんだそれ……って、おい!」

男A「どうし――」


ガシャン! ベキベキベキッ!

男A「があああああっ! なんだ、なんだこれ!」

??「てめーら……中坊連れ込んで何してんだぁ!? こらぁ?」

男BC「なんだこいつ! Aを離しやがれ!」

??「離せだぁ? 良いぜ。離してやるよ」

ミシミシッ ガシャガシャガシャッ!

男A「あ、あ、あ、がああああああ!」

――ドーン!

男B「なっ……フロントガラスから、無理やり引っ張って……」

男C「外に……投げとばした!?」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 17:10:18.03 ID:ExQNX+4So
??「お望み通り、離してやったぜ。んで、てめーらはどうして欲しいんだ?」

男B「な、なんだこいつは……能力者か!?」

男C「そんなことより、こいつやばいぞ! さっさと始末しねーと!」

バタンッ ダダッ

??「おー。わざわざ車から降りてくるたぁ、気合入ってんじゃねーか。でもよ……」

男B「うるせえ!死にやがれ!」

シュッ! シュッ!

??「たかだか光モン一つで俺に勝てるわけがねーんだよ!?」

バキッ! ゴスッ! ミシミシミシ バキッ!

男C「おい、B! ――お、お前、能力者か!?」

??「能力者だぁ? そんなの知ったこっちゃねーんだよ」

??「俺はなぁ、てめーらみてーに、女を拉致るようなクソヤロー共が気にいらねーんだよっ!」

ガシッ

男C「ひっ! ひぃっ!」


??「だからよぉ、『漢』として……『一教師』として……
   おめーらに『教育的指導』ってのをしてやるぜ!?」





鬼塚「――この、鬼塚英吉様がよぉ!?」




―――GTO GAKUENTOSHI 7 DAYS WAR―――



ttp://www.youtube.com/watch?v=4S5-cpVOWOY




10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 17:10:45.96 ID:ExQNX+4So

【8月27日金曜日】
――吉祥学園屋上入り口

鬼塚「あーあー、夏休みももう終わりかぁ。
   入院したり湘南行ったりで結局何もできなかったぜ」

ピコピコ ザシュッ ザシュッ

鬼塚「九月になったら、まーたあのハゲ教頭の顔見なきゃなんねーんだよな」

ピコピコ ドンッ ドンッ ダダダダダダッ

鬼塚「DMC4も飽きたな……また吉川んとこから何かパクってくるか」ゴロン

キンッ シュボッ パチン

鬼塚「ふーっ。あー、煙草もあと二本しかねーしよー。金もねーし。
   また冬月ちゃんに借りるとすっか……って、貸してくれるよな?」

鬼塚「ふわぁーあぁっと。眠ぃな。することもねーしなぁ。寝るか」

ぐがー がー すぴー がー


 不貞寝する鬼塚。だが、人気のない学校に響く音が……

――カツーン カツーン カツーン


     !?


11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 17:11:13.52 ID:ExQNX+4So

??「……か先生」

??「鬼塚先生」

鬼塚「ぁん?」

理事長「おはようございます。鬼塚先生」

鬼塚「ああ、理事長。おはようございます。よっと」

シュタッ

理事長「そのヘッドスプリング……相変わらず元気そうね」

鬼塚「そりゃ、この鬼塚英吉22歳独身は吉祥学園のヒーローですから!」

理事長「あらまあ。ふふっ」

鬼塚「そんなことより、どうしたんですか? 今日は職員会議とかないっすよね?」

理事長「ええ。今日は鬼塚先生に折り入って頼みがあって」

鬼塚「待ってください理事長。 それは無理です!」

理事長「あら、なんでかしら? 話も聞いてないのにわかるのかしら?」

鬼塚「だって、理事長の頼みって、いつも面倒な事ばっかりじゃないっすか。
   終わってみたら、いつも怪我してるし、あのハゲに説教されるし、金はないし、
   夏だってのに、パツキンのチャンネーと出会いはないし、童貞捨てらんねーし……」

理事長「あら残念。今度の出張は女子『校』にも行ってもらおうと思ったのに……」

鬼塚「 『!?』 」
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 17:11:45.78 ID:ExQNX+4So
理事長「今回は学園だけの問題じゃないから、ボーナスだって出るのに……
    ほんと残念ねぇ。仕方ないから、袋田先生にでも頼もうかしら」

鬼塚「ちょっと待ってください理事長! 女子『高』ってマジっすか!?」

理事長「ええ、女子『校』よ。まあ、共学の学校にも回ってもらうことになりますけどね」

鬼塚「……ボーナスっていくらくらい出るんですか?」

ピピッ

鬼塚「指二本って……まさか二十万!?」

理事長「いいえ。二百万よ」

鬼塚「に、に、ににににににににひゃくまんだぁ!?」

理事長「ええ。今回は文部科学省の方からの依頼でもあるから、額が大きいのよ」

鬼塚「(二百万ありゃ、龍二と冬月ちゃんに借金返しても、まだ余るぞ……
    それに女子『高』?高校生ってこたぁ、ミニスカから出るあの太股……
    透けるブラジャーに、揺れるパイオツ……中坊とは違うあのカラダで……

    ??「あたし先生のことが……」パラッ
    鬼塚「お前、そんなに俺の事が……」ガッ
    ??「あんっ。先生、そんなとこ……あっ! だめっ!」

    ……なんてこともあるかもしんねーぞ!? ヒトナツの思い出作りってやつでよぉ。
    そしたら童貞も捨てて、女子高生の彼女とあんなことやこんなことを毎晩……)」

理事長「それじゃ、鬼塚先生は無理ってことで。袋田先生探さなきゃいけないわね」

鬼塚「――理事長、待ってください」

理事長「ん? 何かしら、鬼塚先生」

鬼塚「この不肖、鬼塚英吉。今まで理事長からのご依頼を断ったことがあったでしょうか?
   それに、文部科学省からの依頼ともなれば、吉祥学園のヒーローとして、
   いや、教育界のヒーロー鬼塚英吉として、是非ともその任務を遂行させて頂きますよ!」

理事長「あら、さすが鬼塚先生! 頼もしいわ。それじゃ、これ」

パサッ

鬼塚「ん? 学園都市視察計画?」

理事長「そうよ。詳しいことはそこに書いてあるから読んでおいてくださいね。それじゃ」

カツーン カツーン カツーン

鬼塚「って、ちょっと理事長!? まぁ、いいか。二百万に女子高生……
   夏休みの終わりにビッグチャンスの到来かぁ!? 俺もとうとう……」

   ??「鬼塚先生、あたしの初めて……もらって欲しいの」
   鬼塚「お前……大丈夫だ。優しくすっからよぉ……」
   ??「あんっ! 先生! 先生っ!」

鬼塚「童貞卒業だああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」


――――
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 17:12:25.48 ID:ExQNX+4So
【9月5日日曜日 一日目】

――学園都市

 借金のカタに愛車を龍二に奪われた鬼塚は、電車とバスを乗り継いで、学園都市にやってきた。
 
鬼塚「ここが学園都市か……って!」

   !?

キャッキャッ チョットサテンサン!

鬼塚「青い縞々パンツ……ガキかよ……
   でも、着いた早々にパンチラを拝む事になるなんてよぉ……」ジーン

鬼塚「こりゃ、可愛い女子高生と、少し遅れた
   『ヒトナツのラン[ピザ]ー』って奴ができるかもしんねーなぁ?」

鬼塚「とりあえず、荷物が邪魔だから、宿舎ってとこに行くとすっか」


――宿舎

鬼塚「ここか……結構良いマンションじゃねーか」

ガチャ

鬼塚「お! ベッドもあるのかよ! ったく、理事長もこういう部屋用意してくんねーかな」

ドサッ バサバサ ゴソゴソ

鬼塚「荷物の整理も一応しとくか。適当に持ってきたけど、足りねーもんはねーよな……
   ん?おいおい。こんなもんまで持ってきちまったのかよ。
   って、こりゃ、綾波の限定フィギュアじゃねーか! なんでこんなとこに……
   適当に詰め込みすぎたな。まあ、困るこたぁねーか」

ガラッ キンッ シュボ パチン

鬼塚「ふぅー。部屋ん中は禁煙だってのが、めんどくせーな。
   まあ、ベランダで一服ってのも乙なもんか」

鬼塚「よし。とりあえず、この街のチャンネーでも見に行くか!」


14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 17:12:58.20 ID:ExQNX+4So
――街中

鬼塚「しっかしよぉ、なんか小奇麗な街じゃねーか」

ウィーンウィーンウィーン

鬼塚「うおっ! なんだこれ? 掃除してんのか? おいおい……
   すげー街だな。こいつは、エヴァの世界にもねーんじゃ……」

たゆんたゆん

鬼塚「 『!?』 」

たゆんたゆん たゆんたゆん

鬼塚「(なんだあれは……あの揺れ方……トロ子と同じくらいあんじゃねーか!?)」

……コノリセンパイ  ……ジュンカイノコースハ ……マイゴノレンラクガ

鬼塚「学園都市……こいつぁ、やばい匂いがするぜぇ!?」ジュルリ


15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 17:13:25.18 ID:ExQNX+4So
――路地裏

鬼塚「ほー。表通りに比べて、路地裏は結構暗いじゃねーか」

キンッ シュボ パチン

鬼塚「ふぅー。喫煙所がねーってなんだよ。灰皿くらい設置しといてくれよな。
   それにあの変な腕章つけた、チンチクリンのガキんちょ。
   偉そうな喋り方しやがって。何が『ここは禁煙区域ですの!』だ。
   ったく、煙草もおちおち吸えねーんじゃ、早速やる気がなくなってくるぜ」

キャー! ヤメテ! マテッテ オラオラ

鬼塚「ん? なんだ?」

バタバタッ ガンッ ニゲンジャネーヨ
  
女子「助けてください!」


   !?


鬼塚「(こりゃ、結構上玉じゃねーか! さっきの子とは言わないが良い乳して……)
   って、んな事考えてんじゃねーよ! どうした!?」

女子「あの人達が! 急に!」ハァハァ

鬼塚「なんだぁ?」

16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 17:14:13.97 ID:ExQNX+4So
モヒカン「おいおい、逃げんなよ!って、なんだこいつ?」

ドレッド「あん?どうした?」

モヒカン「いやよぉ、追ってきたら、なんかこいつが居やがってよ」

ドレッド「金髪にピアス?って、今時Vバングかよ!ハッ、だせえ」

――ピキッ

モヒカン「YAZAWAってヤツを真似してんじゃねーの?いつの時代だよ」アハハハ


――ピキピキッ


鬼塚「おいおい、てめーら。さっきから黙って聞いてりゃ人のことだせーだのくせーだの……
   あげくの果てには、永ちゃんをバカにしやがってよぉ?」

モヒカン「あん? お前に用はねーんだよ。そっちのねーちゃん寄こせや」

ドンッ

鬼塚「おっ! てめー、俺押しのけようなんざ――」

モヒカン「おい! 早くこっちこいや!」

女子「いやぁぁぁあぁぁぁあぁ!!」


ガシッ!


モヒカン「なんだ!? お前、人の事掴んでんじゃねーよ! [ピーーー]ぞ!」

ドレッド「あー! わかった! そいつ、正義の味方のつもりなんだよ」プッ

モヒカン「正義の味方だぁ? うぜーから、さっさとやっちま――」

ヒュンッ! ガンッ! メリメリッ!

ドレッド「なっ……モヒカンの顔が、コンクリの壁にめりこんで……」

鬼塚「おい……ショッカーだか怪人二十面相だか知らねーけどよぉ……
   正義の味方の俺を差し置いて、そこの可愛いねーちゃんとイチャイチャ――
   
   じゃねぇ。
   
   無理矢理連れて行こうなんざ、百年はえーんだよ!」
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 17:15:03.19 ID:ExQNX+4So
ドレッド「この野郎、能力者か!? ぶっ殺してやる!」シャキンッ

鬼塚「警棒か……そんなおもちゃで、この鬼塚様のタマァ獲れると思ってんのかぁ?」

ボコッ ゲシッ バキッ!

ドレッド「うああああああああああ!! 骨が骨が骨があああああ!」

鬼塚「ケッ。どの街にもこういうザコはいやがるな。
   おい、ねーちゃん、大丈夫か?」

女子「は、はい! 助けてくれてありがとうございます。あっ!」


   !?


ガキンッ!


鬼塚「がはっ!」 バタン

金髪パーマ「おいおい、なんだよこいつは……」

ザコA「どうしたんですか?」

ザコB「って、ドレッド君にモヒカン君がやられてるじゃないっすか!」

金髪パーマ「このVバングがやったみたいだな。邪魔しやがって」ペッ

ザコC「とりあえず、女連れてアジトに戻ります」

金髪パーマ「ああ。ついでにドレとモヒも回収してやれ」

ザコC「了解です!」

金髪パーマ「俺はもう少しこいつと遊んでいくぜ……ケケッ」

女子「いやぁ! やめて!」
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 17:15:41.06 ID:ExQNX+4So
ザコC「うるせえんだよ!」

ドカッ! バタン

金髪パーマ「あんまり傷つけんじゃねーぞ。商品なんだからよ」

ザコC「はい」

鬼塚「(……金属バットかなんかか? 痛ぇじゃねぇか……)」モゾモゾ

金髪パーマ「さぁて、久し振りに出張ったんだからな。サンドバッグになってもらうぜ!」


ブンッ!


――

19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 17:16:09.12 ID:ExQNX+4So
――廃ビル

ザコA「リーダー! 女連れてきました!」

リーダー「おう。『箱』ん中に入れとけ。手錠忘れんじゃねえぞ」

ザコA「わかりました」

リーダー「ん? おめぇら、金パとモヒとドレはどこいったんだ?」

ザコB「それが、邪魔が入りまして……」

ザコC「モヒカン君とドレッド君は怪我したもんですから、治療を」

リーダー「邪魔されて怪我しただぁ? ザコが! 使えねぇ野郎だな。
     んで、金パはどうしてんだぁ? あいつもやられたのか?」
     
ザコB「いえ、金髪パーマさんは、邪魔した野郎に『ノック』入れてます」

リーダー「『千本ノック』か。あいつも飽きねぇなぁ。まあ、いい」

ザコB「そろそろ戻って来ると思います。今日は『足(スティード)』持ってますし」


――┣¨┣¨┣¨┣¨ドッドッドッドッドッドッド ドルンッ

リーダー「戻ったようだな。俺んとこに来いって言ってこい」

ザコC「わかりました」

タッタッタッタ バキバキバキッ! メリメリッ!


――ドーン!

20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 17:17:26.35 ID:ExQNX+4So

リーダー「あぁ!? なんだ!?」




鬼塚「よぉ。てめーら……ちょっくら家庭訪問させてもらうぜぇ!?」


リーダー「家庭訪問だ? 何言ってやがる! 風紀委員か!?」

鬼塚「さっきから『のうりょくしゃ』だとか、『じゃっじめんと』だとか、なんだよそれはよぉ?
   女ぁ拉致るわ、だせーだのくせーだの、頭が悪ぃだの好き放題……
   しかも俺様の頭を金属バットで殴りやがってよ。これ以上馬鹿になったらどうしてくれんだぁ!?
   てめーらやっぱりショッカーの怪人なんじゃねーのか?」
   
リーダー「わけわかんねえ事言ってんじゃねえ! ぶっ[ピーーー]ぞ!」

鬼塚「あー、これだからザコはよぉ……みんな同じ台詞しか言わねーんだよな。
   中の人は楽かもしんねーけど、作者の手抜きがばれちまうぜ?」
   
リーダー「うるせえ! お前らぁ! 集合しろ! おい、B!『箱』の周りの奴も呼べ!」

 ザザザッザ ダッダッダ ドタドタドタ

リーダー「ヘッ! どうだ? 俺のチームは50人以上いるんだぜ?」

――ホジホジ フーッ

鬼塚「あのなぁ、たかだか50人くらいで――」

 バキッ!

リーダー「なっ!?」

鬼塚「そんなに調子こいてっとよぉ――」

 ドカッ! メリッ! バキッ!

ザコX「てめえ!!!」

 ブンッ ガシッ

鬼塚「このスキンヘッドの[ピザ]みたいによぉ――」

 ミシミシッ!

ザコX「がはっ」

鬼塚「『地獄』見る羽目になるぜぇ!?」

 バキバキバキッ!!!!
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/28(金) 17:18:22.05 ID:ExQNX+4So
ウオオオオオ! カカレエエエエエ! コロスゾォ!?

――ドーン!

――バキバキッ!

ナンダコイツ バケモンカァ!? ゼンインデカカレ!

――ドコッボコッガキン! ミシミシミシ……バキッ!

鬼塚「おいおい。自慢のチームってのはこんなもんかぁ?」

リーダー「嘘だろ……? 50人以上いたのに……」

鬼塚「ほらほら! 早く逃げねーと、食っちまうぜぇ!?」バキッ

リーダー「はっ! まさか、『肉体強化』か!? おい、あれを作動させろ!」

――ウウィーン キィーン キィィィィーーーーン

リーダー「能力者ならこれで……って、な、なんでだ!」

鬼塚「だからよぉ……能力者とかわかんねーんだけど、何なんだぁ?」

リーダー「お前、一体……何者なんだああああ!!」ブンブン

鬼塚「うおっ! いきなり光モン振り回すんじゃねーよ!」ガシッ

リーダー「ぐわっ! お前……がっ! 腕が……腕があああ」ミシミシミシミシ


――ボキッ! カランカランカラン

鬼塚「ったく。最近のガキはすぐに光モン出しやがる」カツーン

リーダー「腕がああああああああ!」

鬼塚「あー、クソ。頭痛ぇ……って、おい! 血ぃ出てるじゃねーか!」

リーダー「はぁはぁ……お前……一体何者なんだ……」

鬼塚「あぁ!? てめーらみてーなガキにはわかんねーかもしんねーけどよぉ…」

キンッ シュボ パチン

鬼塚「いいぜ……教えてやるよ」


フゥ

鬼塚「鬼爆の……『鬼』の字だよ!?」ドカッ


――バタン
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 17:18:50.39 ID:ExQNX+4So
鬼塚「ふぅー。やっと片付いたか。ったくよぉ、初日からこれかよ。
   そういや、あの可愛いチャンネーはどこ行ったんだ?」
   
キョロキョロ

 廃ビルを一通り見渡した鬼塚は、奥の扉から外に出た。そこに、カーゴスペースに
 巨大なスピーカーを積んだ、真っ赤なワンボックスカーを見つけた。

鬼塚「だせぇ車だなぁ、おい。今時こんなの流行らねーぞ」

 車に近づく鬼塚。だが――

ザコA「お、お、お、お、お、おまえええええええええええ!!!」

鬼塚「うおっ! なんだこいつ! まだ残ってたのかって……お前、大丈夫か!?」

ザコA「おまおおまああああえええええええええええええええええ!!!!」

ダダダッ ガンッ!

鬼塚「って……なんだこいつはぁ!?すげー馬鹿力……!?
   こりゃ、ヘナチョコ龍二並のパンチかっ!?」

ザコA「ガガギグギギガッァグゲエッッッゲゲガアガガ!!!!」

鬼塚「こりゃ、ちぃっとばかし……やべーかもしんねーなぁ?
   この様子……クスリでもキマってんじゃねぇのか!?」
   
――ミシッ ミシッ ミシミシミシッ!
   
鬼塚「うらああああああああああああ!!!!!!」バキィッ!



――ドーンッ ドンッ ドンッ バタン

23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 17:19:28.81 ID:ExQNX+4So
鬼塚「はぁはぁ……んだってんだ……危なかったぜ……」

――キィィィィーーーーン

鬼塚「あ? 耳障りな音もするしよぉ……このスピーカーか?
   うわっ! こいつ……今時ウィングつけてやがる」
   
ドンッ! ドンッ! バキバキバキッ! ――プシュー

鬼塚「静かになったぜ……で、女子高性、女子高性っと」


――ガシャン

 ワンボックスの横に回り、ドアを開けた鬼塚は、数人の女子高生を見つけた。

鬼塚「あー、ここにいたのか。ってみんな寝てるじゃねーかよ。大丈夫なのかぁ?
   手錠までつけられちまってよぉ。――おっ! この子!
   ピンクのレースじゃねーか!! 最近の女子高性はこんなのを……って!」
   
??「――ッジメントですの! って……なんですのこれは!」

鬼塚「やべっ! 誰か来やがった! 初日からこんな事やっちまって……
   理事長にチクられたら、ボーナス出なくなっちまうじゃねーか!
   さっさとフケねーとやべーな……」
   
ダッダッダッダ バタバタバタ 


鬼塚「(女子高性のパンチラ……もっと眺めてたかったのによぉ……
    しゃーねー。部屋に戻ったら、冴島からもらった女子高性モンでも見るか……)」

ダッダッダッダ

鬼塚「ああああ、クソ! こんなんなら、さっきの単車持ってくるんだったぜ!」


――
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 17:20:12.34 ID:ExQNX+4So
――

??「――わかった。所詮はスキルアウトだ。しかもあの程度の集団だからな」

――デスノデ ――ヨテイヨリスコシダケ ――ヨロシクオネガイシマス

??「邪魔する奴は……」


   !?
   
   
??「始末しなければならないな」




【9月5日日曜日 一日目終了】
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 17:21:18.22 ID:ExQNX+4So
とりあえず今回はここまで
三日目までは加筆修正済みのため、早めに投下できるはず
仕事の都合でバタバタしてるけど、完結はさせる
去年遣り残したことの一つだからさっさと終わらせるつもり
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 17:37:36.43 ID:8WA0DYaQP
痕だと思ってワクワクしてスレを開いたらGTOだったでござる
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 17:39:12.68 ID:FmVcwUZAO
GTOか
最近良スレが多くて困る
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 17:43:16.34 ID:mZRypav40
ぬ〜べ〜だと思ってワクワクしてスレを開いたらGTOだったでござる
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/28(金) 17:54:46.95 ID:ljkV0n6AO
やっと帰っってきたか
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 18:28:23.47 ID:uNY7ph0W0
期待
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/28(金) 18:37:11.83 ID:6tBEEo3SO
ミッシングパワー
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 21:41:37.94 ID:FKbtIcq3o
待ってた!! とりあえずメル欄 sage saga 入れとくといいかも?
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/28(金) 22:25:08.53 ID:WeNxeDwQo
待っていたよ
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 02:13:09.47 ID:p5ZY48DGo
【9月6日月曜日 二日目】

――宿舎

鬼塚「よし。そろそろ行くとすっかな」

キンッ シュボ パチン

鬼塚「ふぅー。昨日は散々な目に逢ったからな。今日こそ女子高性と……
   たしか、今日は……っと。公立の学校の見学だったよな。
   常盤台とかって女子『高』は木曜からかー。まあ、お楽しみは残しておくか」


――柵川中学 職員室

鬼塚「あのー? 吉祥学園から来た鬼塚ってモンなんすけど」

教員「あ! 鬼塚先生ですね! お話は伺ってます! なんでも非行問題の権威だとか」

鬼塚「け、け、権威ぃ!? ――は、はい! 私、鬼塚英吉22歳独身!
   今まで数々の非行生徒と心を通わせ、様々な問題を解決し――」
   
教員「まあまあ、そんなに固くならないでください。普段通りにしてくださいね」

鬼塚「はぁ、まあ、そういうことでしたら……
   っつーかさぁ、この街どうなってんすか? 真面目そうなガキばっかかと思ったら
   なんか変なガキのチームもあるし、能力者だとかジャージャーメンだとか……」
   
教員「ああ、風紀委員ですね。簡単に言ってしまえば、
   能力者の生徒経ちによる自警団みたいなものですよ」

鬼塚「カーッ! なんだか、偉そうな名前なんですねぇ……
   んで、能力者っつーのは何なんすか? サイコメトラーEIJIみたいな? ははっ」

教員「サイコメトリーも能力の一つですね。というか、能力についてご存知ないんですか?」

鬼塚「って!! マジっすか!? マジでサイコメトラーがいるんすか!?」

教員「ええ、はい。能力についての資料はお渡ししてあるって聞いているんですが……」

鬼塚「あ、あー、はいはい! 資料ですね! はい!
   (やべーな。資料なんか最初の方読んだだけだからな……)」
   
教員「まったく、鬼塚先生は冗談がお上手なんですから」

鬼塚「あ、あはは……(おいおい、冗談じゃねーぞ。なんだよ超能力ってよぉ……)」

教員「とりあえず、今日はこの街に慣れて頂くために、街の説明と
   明日明後日は我が校で教鞭を取って頂く事になります」

鬼塚「はぁ。んで、普通に授業すればいいんすかね?」

教員「授業自体は、鬼塚先生のやり方でやって頂ければ結構です。
   ただ、お話してある通り、放課後の方を重視して頂きたいと思いますので……」

鬼塚「(放課後!? おいおい、マジかよ!? 中坊と放課後の……
    さすが学園都市だ。中坊と教師の放課後課外授業を認めるとはよぉ!?)」

教員「あの、鬼塚先生?」

鬼塚「あ、はいはい! この教育界のヒーローこと、鬼塚英吉にお任せください! ハッハッハ!」

教員「よろしくお願いしますね(――ちょっと不安になってきた……)」

35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 02:13:48.35 ID:p5ZY48DGo

――夕方

教員「では、この街と学園の説明はこんなところです。明日からよろしくお願いしますね」

鬼塚「はい! 任せてください! (やべーな、ほとんど覚えちゃいねーや)」

キンッ シュボ パチン

鬼塚「ふぅー。一仕事終えた後の煙草は美味ぇなぁ。
   とりあえず、することもねーしなぁ……街でもぶらついてみっかな」

――イヤアアアアア

鬼塚「あん? 何か叫び声のような……あっちか?」

 誰かの叫び声を聞いた気がした鬼塚は、路地裏を覗いて見た。
 すると、三人の男が、制服姿の女の子を無理矢理連れて行こうとしているところだった。

鬼塚「おいおい、あれはちぃっとばかし剣呑な雰囲気じゃねーか」

 男達の様子を怪しいと思った鬼塚は、その後を追った。
 そして、ワンボックスカーに連れ込まれる佐天を目撃し、再び事件に巻き込まれるのだった……

36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/29(土) 02:14:25.33 ID:p5ZY48DGo
――
 
ホジホジ フーッ

鬼塚「こんなの見ちまったら……」

鬼塚「見過ごせねーよなー……『漢』として……」

鬼塚「――いや、『一教師』としてなぁ!?」

37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/29(土) 02:14:57.39 ID:p5ZY48DGo
――


鬼塚「とは言ったものの、足がねーと見失っちまうぞ!?」

ブンブン ブン

鬼塚「お、いいところに。おい、ちょっとお前こいつ貸りるぞ!」

学生「え? って、ちょっと、うわっ!」バタン

鬼塚「ワリーな!」

ブンブンブン ブーーーーーーーーーーン

学生「ちょっと! 待て泥棒! 俺の原付が……」


――

ブィーーーーーーーーーーーン

鬼塚「しっかし、また誘拐かよ。どうなってやがんだこの街はよぉ!?」

鬼塚「おっと、あのワンボックスだな。どうすっかなぁ……
   とりあえず前に出て無理矢理止めちまえばいいよな」
   
ブンブン ブィーーーーーーーーーーーン


原付は急ブレーキをかけ、佐天を連れ去ったワンボックスに体当たりをし、見事車を止める事に成功した。
そして……

――
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/29(土) 02:19:14.80 ID:p5ZY48DGo

ザザッ

初春「佐天さん!」

佐天「あっ、初春!」

初春「良かった。無事だったんですね! 事故があったって連絡聞いて……
   佐天さんの名前が出た時は心臓が止まるかと思いましたよ」

佐天「あはは。初春ごめんよ。でも、もう大丈夫!」

黒子「一体どういう事ですの? なぜ佐天さんがこんな車に……
   それにあそこで怪我をしている彼ら。見たところスキルアウトのようですが」

佐天「実は、私誘拐されちゃって。えへっ」

初黒「ええええっ!」

佐天「それで誰か助けてーって思ったら、車が止まって、男の人達が降りていって……」

黒子「ちょっと佐天さん! その説明じゃ要領が掴めませんの!
   もっと順を追って説明して頂きませんと、調査何もできませんのよ」

初春「とりあえず、支部に戻って、そこで固法先輩も一緒に」

黒子「それがいいですわね。それでは、佐天さん。支部でゆっくり聞かせてもらいますのよ!」

佐天「あはは。ごめんなさい。それじゃあ、支部で――」

――
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/29(土) 02:19:47.62 ID:p5ZY48DGo
――第一七七支部

固法「はい、ホットミルク」

佐天「ありがとうございます! 固法先輩」

固法「とりあえず、事情はわかったんだけど、その男の人は一体何者かしら」

黒子「走っている車にバイクをぶつけて止めるなんて……野蛮過ぎますの」

初春「野蛮というより、人間業じゃないですよね。
   それにスキルアウトの人達を三人も……しかもフロントガラスを破るなんて」

佐天「私も見たわけじゃなくて、声が聞こえただけなんだよね。
   静かになって、ドアが開いたと思ったら、逆行で顔が見えなかったし……」

初春「でも、声は聞いたんですよね?」

佐天「うん。特徴のある喋り方だったし、もう一度声さえ聞けばわかると思うんだけど」

黒子「声だけですと、今のところ調べようがありませんの」

固法「とりあえず、今日のところはもう良いわ。佐天さんありがとう。
   初春さんも今日はもう上がっていいわよ。佐天さんを送ってあげて」

初春「はい! それじゃあ、お先に失礼しますね」

佐天「それじゃおつかれさまでしたー! ――初春、お腹減ったよー」

バタバタ

黒子「まったく……あんな事件に巻き込まれたばかりだっていうのに、
   佐天さんは本当に元気ですこと。まあ、落ち込まれてしまうのも困りますけど」

固法「たぶんみんなに心配かけないようにしてるんだと思うわ。
   この前の事件もあったしね……だから本当は今も怖くて仕方ないと思うの」

黒子「なるほど……だから初春を付けたのですのね。
   さすが固法先輩ですの。私、そこまで気がまわりませんでしたわ」

固法「よーし、それじゃ私たちは、例のスキルアウトの身辺調査をするわよ!」

黒子「はいですの!」

――
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/29(土) 02:20:28.54 ID:p5ZY48DGo

――鬼塚の宿舎

鬼塚「ったくよぉ……昨日といい、今日といい、この街はなんだぁ?
   最近じゃ、女の子拉致んのが流行ってんのか?あぶねー街だな」

 夕方、幹線道路で三人の男を片付けた後、鬼塚は車の中にいる少女に声をかけた。
 怯えていたが、怪我はないようだったため、自分で通報しろよとだけ言って、
その場から立ち去った。「借りた原付」が壊れた以上、このままここにいたら問題になる。
そう判断して、現場から離れ、コンビニで弁当を買い、部屋に戻ったのだった。

鬼塚「確か、学校で聞いた話じゃ、スキルアウトがどうこうって言ってたよな。
   ヤンキーみてーなもんだって話だけど、ありゃやりすぎだな」

プシュッ ゴクゴク

鬼塚「ぷはぁー!運動の後のビールってのは、なんでこんなに美味ぇんだろうなぁ。
   しかし、あのヤンキー共をなんとかしろったってよ。情報もねーしな……
   まあ、とりあえず明日になったらガキ共に聞いてみっかな」


鬼塚「しかし、せっかく出張に来たんだから、何か美味いモンでも食いてぇな。
   こんなコンビニ弁当なんかじゃ、いつもと変わんねーしなぁ。
   早いとこ女子高生の彼女を作って、手作り弁当でも作ってもらうっきゃねーな!」

モグモグ ゴクゴク

鬼塚「んで、食後のデザートには……ぐふっぐふふっ」

――
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/29(土) 02:20:59.31 ID:p5ZY48DGo

――佐天の部屋

佐天「うーん、食べた食べた。余は満足じゃー」ポンポン

初春「もう、佐天さん。お行儀悪いですよ!お腹叩いたりして……」

佐天「いいじゃん。初春の作ってくれたご飯がおいしかったんだから!」

初春「はいはい。ありがとうございます」

佐天「あー! なんか適当だなぁ」

初春「そんな事ないです! 全く……」

佐天「……」

初春「佐天さん、どうかしました?」

佐天「え? あ、いや、なんでもな――」

初春「なんでもなく無いです! 佐天さん! 何か隠してますね?」

佐天「隠し事なんて無い無い! あたしと初春の間に隠し事なんてないよー」

初春「そんなこと言って……でも、何か言いたい事があるんじゃないですか?
   私には佐天さんの悩みとか辛いこととか、何でも言って欲しいんです」

佐天「初春……」

初春「だって、私たち、親友じゃないですか」

佐天「う、う、ういはるぅうぅぅぅう!!」

ガシッ

初春「ちょ、ちょっと佐天さん!? 急にどうしたんですか?」

佐天「本当はね、凄い怖かったの! 能力も無いから何もできないし……
   何もできなくて、どうなっちゃうんだろうってずっと思ってて……」

初春「……」

佐天「もしかして、もうみんなに会えないんじゃないかって……」

初春「佐天さん……もう大丈夫ですよ」

 初春は、泣きじゃくる佐天の頭を優しく撫でていた。
 そして佐天は、初春のその優しさに、ただただ涙が止まらなかった。
 
【9月6日 二日目終了】
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/29(土) 02:23:19.81 ID:p5ZY48DGo
おやすみなさい

待っててくれた人ありがとう
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/29(土) 02:23:59.91 ID:g4Lme7060
おつ
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/29(土) 02:39:27.82 ID:E0lFv+sAO
おつ
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/29(土) 02:40:37.55 ID:W+sOUzdDO
ずっと待ってた……


ずっと待ってたんだからねっ!
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/29(土) 03:08:00.00 ID:cIRRfyxwo
なんかきてたあああああああああああああああああああ
>>1はGIPの方にいた>>1と一緒だよな!?な!?
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/29(土) 10:19:32.07 ID:SNjgvUODO
なにこれ超期待
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/29(土) 18:19:50.75 ID:p5ZY48DGo
>>1は前の1と同じです
お待たせしました
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 18:21:07.60 ID:p5ZY48DGo
【9月7日火曜日 三日目】

――宿舎

ピピッピピピピピピッ

鬼塚「ふわぁぁあ……ねみぃなぁ、おい。
   ったくよぉ、なんでこんな朝っぱらから起きなきゃなんねーんだ」

 普段は吉祥学園理事長が用意してくれた、「グレートなペントハウス」に住んでいる鬼塚は
かなり遅く起きても、遅刻することはほとんどない。いざとなれば、吉川や菊池達が起こしてくれる。
 しかし、今は学園都市が用意した宿舎だ。学校までは距離がある。
 
鬼塚「とりあえず、飯はコンビニで買うとすっかな」

 キンッ シュボ パチン

鬼塚「しっかしよぉ、これからガキの相手するとなると、気が重いぜ」

――
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/29(土) 18:21:34.26 ID:p5ZY48DGo
――通学路

佐天「うーいーはーるっ!」

バサッ

佐天「えっ! 短パン!」

初春「佐天さん甘いですよ……今日の一時間目は体育ですからね。
   さっき家に戻って着替えた時に履いてきたんですよ」

佐天「そうだった……すっかり忘れてたよ。――あ!」

初春「どうかしたんですか?」

佐天「体操服忘れちゃったーえへへ」

初春「えへへじゃないですよ!早く取りに戻らないと!」

佐天「もう、めんどくさいなぁ……
   それじゃ、ひとっ走り行ってきますか! 初春は先に行ってていいよー!」

初春「はーい。佐天さん遅刻しないようにしてくださいね」

佐天「わかってるって。じゃあ、また後でねー!」

トットットット――

初春「まったく佐天さんは……でも昨日の事を引き摺ってないみたいでよかったです」

51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 18:22:37.78 ID:p5ZY48DGo

――教室

教師「それじゃ、出欠取るぞー。えー」

アカイー ハーイ イズミー ハーイ ウイハルー……

初春「(佐天さん遅刻になっちゃいましたね……)」

教師「おい、初春いないのかー?」

初春「あ、はい! います!」

教師「ジャッジメントの仕事で疲れてるのかー? ボーっとしてちゃだめだぞ」

初春「す、すみません……」

ツギイクゾー エトウー ウイース カキザキー ヘーイ クボター……

初春「(怒られちゃいました……ん? メール? あ、佐天さんからだ)」

   『ういはるー……もうすぐで教室だけど、出席取り始めてる?』

初春「(『もうすぐ佐天の番で……って、今名前呼ばれましたよ……』送信、っと)

教師「いないのは佐天だけかー? 仕方ない奴だな……
   ところで、今日から二日間、『外部』から研修の先生がいらっしゃる。
   このクラスの副担任になってくださるから、みんなに紹介しよう。どうぞー」

ガラガラッ! ドン!

生徒A「うお!」

生徒B「って!? 金髪!?」

生徒C「スキルアウト!?」
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 18:23:07.26 ID:p5ZY48DGo
――ザワザワザワ


ダンッ! シャッシャッシャッ! パンッ!

生徒「(ビクッ!)ちょ、こわい……」

 教室に入ってきた金髪は、黒板に大きく『GTO』と書いた。

鬼塚「おう、俺が今日からこのクラスの『フクタン』になる、
   グレートティーチャー鬼塚英吉だ! おめーらよろしくなぁ!?」

初春「(な、なんですか、この人は。どっから見てもスキルアウトじゃ……)

教師「あ、あの、鬼塚先生……生徒達が……」

鬼塚「ん? って、おめーらそんなにびびんなよ……」

教師「いや、そうは言っても、その格好は……」

鬼塚「ああ、これっすか? アロマーニっすよ、アロマーニ!
   アルマーニのパチモンなんすけどね。全然パチモンには見えないでしょ?」

生徒D「……ぷっ」

――アハハ ガヤガヤ ナニアレー オモシレーゾー


鬼塚「お、おめーら笑うんじゃねえ! これでもなぁなけなしの五千円でだなぁ……」

初春「(こんな先生で大丈夫かな……)」

鬼塚「っつーわけでよ、二日間だけどよろしくなぁ!」
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 18:23:43.20 ID:p5ZY48DGo
――ガラガラッ!

佐天「佐天涙子、ただ今登校しました!」

鬼塚「……」

――シーン

佐天「え? あれ? ……って! スキルアウト!? きゃあああああ!」

――ブンッ! ドン!

鬼塚「ぐはっ! て、てめえ! このグレートティーチャーの鬼塚様に何しやがる!」

佐天「え? ティーチャーって……先生!? このチンピラが!?」

鬼塚「チンピラって、この野郎! って、あれ、おめーよぉ。昨日――」

教師「はいはい。佐天、遅刻だな。早く席につけよ」

佐天「あ、はい!」

教師「おいおい、おめー、このままじゃ――」

佐天「(あれ? この声って……)」

教師「よし、それじゃ、HRはこれで終わりだ。次の授業に遅れないようになー」

――ガヤガヤ ドタドタ
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 18:24:21.98 ID:p5ZY48DGo

――着替え中

初春「佐天さん、いきなり鞄投げるなんて驚きましたよ!」

佐天「えへへ、いやぁ、昨日のスキルアウトの仲間かと思って」

初春「私達もみんな驚きましたよ。だって金髪にピアスに白いスーツなんて……」

佐天「だよねー。でもさ、あの声、どこかで聞いたことあるような気がしてさ」

初春「えっ? どこで聞いたんですか?」

佐天「うーん、思い出せないんだよね」

初春「しっかりしてくださいよ」

佐天「あはは。ごめんごめんって、早く行かなきゃ!」

初春「あ、佐天さん、待ってくださいよ!」

バタバタバタ


――ガタガタ バンッ

鬼塚「ふっふっふ。あのクソガキ、鬼塚様をなめやがってよー?
   しっかりと水色のブラジャー拝ませてもらったぜぇ?しかし発育よかったな……
   次の着替えの時間もロッカーに入っておくとすっかな。
   いや、それより、ここにビデオを設置した方が……」

バタバタバタ

鬼塚「!? やべぇ、誰か来やがった! クソ! もう一回中に……」
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 18:24:50.74 ID:p5ZY48DGo

――キョロキョロ

鬼塚「(なんだぁ? あいつ、何してやがんだ?)

??「これね……まったく、無能力者のくせに生意気なのよ!」

ブチッ! タッタッタ……


――ガタガタガタッ

鬼塚「行ったか。あぶなかったぜ……って、あいつ何してやがったんだぁ?」
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 18:25:43.62 ID:p5ZY48DGo
――一時間目 休み時間

佐天「ふぅ、疲れたぁ」

初春「一時間目からいきなり持久走だなんておかしいですよ……」

佐天「ほんとだよね。なんで一時間目に体育なんだろって、あれ?」

初春「ん?佐天さんどうかしたんですか?」

佐天「へっへー。初春、今日は新しいの履いてるんだねぇ。
   ピンクと黒のチェックなんて、初めて見ちゃったよー。おじさん嬉しいなぁ」
   
初春「ちょ、ちょっと! 佐天さん! 変なこと言わないでください!」

佐天「あはは、ごめんごめん。初春のそれがあまりにも可愛くてさぁ」

初春「もう知りません!」

佐天「ういはる、ごめんってばーって、え? あれ? ない!」

初春「もうひっかかりませんよ!」

佐天「違うの! あたしの鞄につけてた、ストラップがないの」

初春「え? もしかして、さっき鞄投げた時に落ちたんじゃ?」

佐天「ううん。着替える時にはあったのに……あれ? これあたしのストラップの紐だ!」

初春「見せてください。これは、引っ張って切れたみたいですね。
   どこかに引っ掛けたりしませんでした?」
   
佐天「いや、そんなはずは……あ、あそこに本体が落ちてる!」

初春「見つかってよかったじゃないですか。 千切れちゃったのは残念ですけど直せますよ!」

佐天「うん、そうだね。でも、なんかついてないなー。遅刻もしちゃうしさー」

初春「そんな時もありますって! さ、もうすぐ授業始まりますよ」


――キーンコーンカーンコーン

??「(――クソッ!)」


鬼塚「(気になって様子見に来たけどよ、ありゃもしかして……)
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 18:26:11.51 ID:p5ZY48DGo
――昼休み

初春「佐天さん、お昼ご飯食べに行きましょう」

佐天「今日はお弁当持って来てないから学食だね」

初春「早く行かないと場所なくなっちゃいますよ!」

佐天「よーし、初春ダッシュでいくよー!」

初春「あ、走ったら怒られますよ! ちょっと、佐天さーん!」

バタバタバタバタ


??「(帰ってくるまでに、次はこれを……)」

58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 18:26:41.94 ID:p5ZY48DGo
――学食

鬼塚「うおおおおお! ここの学食うめぇじゃねーかよ!」

佐天「うわ、あのチンピラの周りだけ空いてる……」

初春「佐天さん、先生にそんなこと言っちゃだめですよ。
   あんな格好してても一応先生なんですから……」
   
佐天「うーん、他の席は埋まってるし、仕方ないかぁ。せんせー、そこ良いですかー?」

鬼塚「あん? って、てめーは、今朝の鞄女じゃねーか! ここで会ったが百年目……」

佐天「えへ、今朝はすいません! だからここ良いですよね! 良いですね!」

初春「佐天さん、先生に失礼じゃないですか……」

佐天「いいっていいって! だって鬼塚先生だっけ? 
   見た目はあれでも、悪い人じゃなさそうだしさ!」

鬼塚「見た目があれってなんだよ!? ったく、しゃーねーなぁ。
   おっ、そのから揚げもらったぁぁぁぁ!!」

バシッ!
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 18:27:08.52 ID:p5ZY48DGo
鬼塚「なっ! 俺の箸を止めるだとぉ!?」

佐天「ふっふっふ。鬼塚先生甘いですね。このあたしから、から揚げを奪おうなんて百年早いです!」

サッ!

佐天「お返しに、このししゃもフライはもらったぁ!」

鬼塚「てめぇ! 俺が最後まで残しておいたししゃもクンを……
   上等じゃねぇか! このししゃもの恨み…… 俺様のさかなクン神拳で!!!」
   
初春「ふたりとも! お願いですから騒がないでください! 恥ずかしいじゃないですか!」

――チョットー ナニアレー ミナイホウガイイヨー

鬼塚「な! おめーのせいだかんな!」

佐天「ごめんなさーい。まあ、いいじゃないですか。
   可愛い女子中学生二人と一緒にご飯が食べれるわけですし!」

鬼塚「ったくよぉ……(まあ、確かにこいつの乳はまあまあだったな)」

佐天「そう言えば、自己紹介まだでしたね。あたしは佐天涙子、レベル0はでーす!」

初春「初春飾利です。ジャッジメントをしてます」

鬼塚「佐天に初春か。(レベル0っつーのは、超能力が使えないってことだよな)
   んでよぉ、気になったんだが、初春の頭の上の花、なんだそれ? 生えてんのかぁ?」

初春「……え? なんのことですか?」

鬼佐「(一体なんなんだ……)」
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 18:27:53.90 ID:p5ZY48DGo

佐天「ところで、先生。昨日なんですけど、もしかして、バイクで車に突っ込んだりしませんでした?

鬼塚「!? ちょっと待て」

ガシッ

佐天「んーんーんー(何するんですか!?)」

鬼塚「(馬鹿野郎! こんなとこでそんな話するんじゃねーよ!
    誰かに聞かれて、もしチクられたりでもしたら、ボーナスでなくなっちまうだろーが!)」
    
佐天「(ボーナス?)」

初春「あ、あの! 二人とも場所変えませんか? 周りの目が……」

――サッキカラウルサイネ ナニアノキンパツ ヘンタイカシラ

鬼塚「だぁぁぁぁ! わかったわかった! おめーらちょっと付き合えや」
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 18:28:22.33 ID:p5ZY48DGo
――校庭裏庭

キンッ シュボッ パチン

鬼塚「ふぅー。食後は一服しねーとなぁ」

初春「先生、ここは禁煙ですよ!」

鬼塚「まーまー。固ぇことは言うなって。んで、佐天、何が聞きてーんだ?」

佐天「あの、もしかして昨日バイクで車止めて、スキルアウトの人達を……」

鬼塚「あぁ? やっぱりお前か…… ったく、しゃーねーなぁ。 おめーら誰にも言うんじゃねーぞ?」

佐初「は、はい」

鬼塚「なんかよぉ、昨日の学校の帰りに、女の子が拉致られるとこ見たから、
   こいつはいけねーなーってんで、ちぃっとばかし、通行人からバイク借りてよぉ……」
   
佐天「やっぱり! 助けてくれたのは先生だっただ!」

鬼塚「ば! ばか! おめー、でかい声出すんじゃねーよ! ばれるだろーが!」

初春「なんでですか? 佐天さんを助けてくれたんですし、むしろ知られたらヒーローですよ?」

鬼塚「だから言っただろーが。通行人からバイク借りたってよー。
   んでも、そいつぶっ壊しちまったから、ばれたら弁償しなきゃなんねーだろ?」
   
佐天「そんなことで……」

鬼塚「ただでさえ、金がねーってのに、これ以上借金作ってどうすんだよ!」

初春「……」
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 18:28:52.01 ID:p5ZY48DGo

佐天「わかりました! とりあえず、バイクの件は内緒にしておきますね!」

初春「ちょっと、佐天さん!?」

佐天「まあまあ、初春。いいじゃないの。助けてくれたんだしさ!」

鬼塚「おー、おめーわかってんじゃねーか!」

佐天「へっへー。助けてくれてありがとうございました!」

初春「もう……あの、鬼塚先生、詳しい話を聞きたいんですが」

鬼塚「詳しい話っつっても、車止めて、ガキ共ぶん殴って、そんで終わりだよ」

初春「……」

――キーンコーンカーンコーン


佐天「あ、予鈴だ!」

初春「もう……鬼塚先生、またゆっくり話聞かせてくださいね!」

鬼塚「おうよ。おめーら、さっさといかねーと遅刻すんぞ?」

バタバタバタッ

鬼塚「ったくよぉ……次の授業は六時間目だし、昼寝でもすっかな」

ゴロン

鬼塚「(しかし、あのガキがなぁ。無能力者がどうこうとかって言ってたけどよ……)」


――

63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 18:29:18.33 ID:p5ZY48DGo

――5時間目

バタバタバタッ

初春「ふぅ。間に合いましたー」

佐天「ギリギリセーフだったねーって、あれ?」

初春「どうしたんですか?」

佐天「ちょっと! なんであたしの机の中にゴミが入ってるの!?」

初春「ええええ!?」

マコ「涙子、ちょっとどうしたのー?って、何それ! ソースまみれじゃん!」

佐天「なんで……」

初春「酷い…教科書もソースや食べかすで……」

佐天「誰!? 誰がこんなことやったの!?」

 静まり返る教室。佐天の叫びを唖然とした表情で見守る者、哀れみの視線を向ける者、
そ知らぬ顔で教科書を眺めている者。教室の中には、三種類の人間しかいなかった。
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 18:30:13.31 ID:p5ZY48DGo

佐天「ねぇ! 誰なの! 誰がやったの!?」

教師「おい、なんだなんだ。どうかしたのか?」

初春「あ、先生! 佐天さんの、佐天さんの教科書が――」

佐天「初春! あ、いえ、なんでもないんです! ちょっとお弁当こぼしちゃって……あはは」

教師「もう授業始まってるんだぞ。早く片付けろ」

佐天「すみません。すぐ片付けまーす! じゃあ、ちょっと雑巾を……」

マコ「私も手伝うよ」

初春「私もです!」

佐天「あ、マコちんも初春も大丈夫だから。授業受けてて」

タッタッタッタ

初春「佐天さん……」


――
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 18:30:41.57 ID:p5ZY48DGo
ジャージャー ギュッ ボタボタッ

佐天「なんで……今朝のストラップもまさか……でも、なんであたしが……」

ゴシゴシ ギュッ

佐天「あはは、雑巾絞るのってこんなに大変だったっけな……」

グスッ 

佐天「あれ、なんでだろ。涙が……」

鬼塚「おめーよぉ、雑巾絞るんだったらこんくらいしねーとよ」

サッ ギュッ ビリビリビリビリビリ

鬼塚「って、破っちまったじゃねーか!」

佐天「鬼塚先生……」

鬼塚「なんだぁ? なーに泣いてやがんだよ。可愛い顔が台無しだぜ?」

――グスッ

佐天「……なんでもないです! ちょっと、目にゴミが入っちゃって。
    あ、先生雑巾破っちゃって……もう! 返してください!」
    
サッ

鬼塚「あ、コラ! わざわざ俺様が絞ってやったのにって、おい、待てよ!」

佐天「あはは! 先生! ありがとねー!」

パタパタパタパタッ

鬼塚「……佐天か。元気な奴じゃねーか。ったくよぉ、どうなってやがんだぁ?」


 教室に戻った佐天は、周りの生徒達の視線を痛い程感じながら、机の周りを片付けていた。

66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 18:31:24.46 ID:p5ZY48DGo
――5時間目 休み時間

初春「佐天さん……」

佐天「あ、初春」

初春「大丈夫ですか? 教科書とかもこんなになっちゃって……」

佐天「あ、うん。 とりあえず、次の社会のは大丈夫みたいだし」

アケミ「ちょっと、涙子ー! どうしたってのさ?」

佐天「ああ、うん。ちょっとね」

マコ「うーん、一体誰なんだろう」

初春「こんな酷いことする人が、クラスにいるなんて……」

マコ「私達は昼休みは校庭で食べてたから……」

むー「ねぇ! みんな昼休みに涙子の机に来た人知らない?」

――シーン

佐天「むーちゃん、大丈夫だから!」

むー「涙子ぉ……」

佐天「あはは! まあ、誰かが間違ったのかもしれないしさ! 大丈夫!」

初春「(間違えるなんて……これはどう考えても悪戯のレベルを超えてますよ)

??「(クソ……なんで平気なの? なんで、なんで、なんで、なんで……
     なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでえええええ)」
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 18:32:01.40 ID:p5ZY48DGo
――6時間目

鬼塚「おらぁ! おめーら、鬼塚様が授業を始めんぞ! ありがたく聞きやがれ!」

ザワザワザワ ナニアレー ヤッパリヘンー

鬼塚「うるぁ! うるせーんだよ!」

ガンッ!

初春「て、テレビ?」

鬼塚「おう、おめーらのためによぉ、『外部』から取っておきの教材を持ってきたぜ?」

佐天「はーい、先生! 今日はビデオ学習なんですかー?」

鬼塚「おうよ。おめーらに今から『本当の社会科』の授業って奴を教えてやんぜ?
   わざわざ俺のDVDプレイヤー持ってきたんだぜ。こいつを繋げてっと」

ゴソゴソ ウィーン

鬼塚「おーし、今から流すDVDをよーく見やがれ。これが『外部の社会』って奴だ!」
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 18:32:27.95 ID:p5ZY48DGo



   ??「あんっ! だめ! 先生そんなところは……」
   ??「いいじゃないか。そこをしっかり見せなきゃ……」
   ??「でも、いくら身体測定だからって、こんなところまで……あんっ!」
   ??「ふっふっふ。これが大人の身体測定なんだよ……」
   
   
   
   
――『!?』


鬼塚「うおおおおおお! これは、昨日俺が見てた『制服天国〜真夜中の身体測定〜』じゃねぇか!
    おめーら、見んなよ! 見るんじゃねぇぇええええ!」
    
――キャー ナニアレー ムシュウセイジャネーカー コレハ

佐天「え、え、え、え」

初春「(あ、お花が! お花が!!!!!)


鬼塚「やべえ! ちょ、スイッチどこだ! おい、見んじゃねーぞ!」

――プツン
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 18:32:54.73 ID:p5ZY48DGo

鬼塚「あー、おめーら、今のはなかったことにしてくれ。(これはさすがにマズかったぜ……)
    とりあえず、仕切り直しっつーことでよ。こいつを見せようと思ってたんだ」
    

――ブォン ブォン パラリラパリラ ファンファンファン

   ??「うるせーぞぉ!? おまわりがなんぼのもんじゃぁ! ぶっ殺せぇ!」

   ??「おめーらぁ! マッポにビビってんじゃねーゾォ!?」

――ウオオオオ コロセエエエエエ ヒキニクニシテヤンゾォ


佐天「あの、先生、これって……」

鬼塚「ああん? 警察24時〜湘南1000日抗争編〜に決まってんだろ!
    あ、この、白い特攻服<トップク>着てるのが俺だぜ? すげーだろ!」

初春「……(私のお花が……あんっ……だめぇ……)」

佐天「……(どうしよう、さっきの身体測定が頭から離れない)」

鬼塚「どーよ? 『外部』には族<ゾッキー>っつーのがいてよぉ。
   最近は少なくなっちまったけど、こうやって、毎晩、深夜の国道でな、
   寂しがり屋の暴走天使<ミッドナイトエンジェル>がよぉ……」

生徒一同「(早く終わらないかな……)」

70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 18:33:21.06 ID:p5ZY48DGo
――

鬼塚「っつーわけで、今日の授業は終わりだ!
    明日の社会科は、仁義無き抗争〜三多摩連合結成〜を見せてやっからよ!」

トットットット


鬼塚「おっと、忘れてた! 帰りのHRは俺の担当だったわ。
    えーと、クラス委員! なんかあっか?」

クラス委員「あ、いえ、特には……」

鬼塚「おー、そうか。んじゃ、俺から有難いお言葉を授けてやっからよぉ。
   耳の穴かっぽじって聞けよ?」
   

エー ナンダロー ナニナニー

鬼塚「陰でコソコソやってるやつがいるけどよ……いい加減、表ん出てこいよ?
   正面切って文句の一つも言えねーんなら、この鬼塚様が相手になってやんぜぇ!?」
   
――シーン


鬼塚「っつーわけだ。気ぃつけて帰れよー」


――ナニイマノ エー スゴイドナリゴエ コワカッター


佐天「(鬼塚先生……今のって、あたしのために……)」

初春「凄かったですね……あ、佐天さん、帰りにクレープ食べに行きましょうよ!」

佐天「あ、うん!」

タッタッタッタ


――

??「(あのクソ教師が……コロスコロスコロスコロス!!!!!)」

71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 18:34:19.81 ID:p5ZY48DGo
――放課後

佐天「しっかし、あの鬼塚って先生、なんか凄いよねー」

初春「凄いどころの騒ぎじゃないですよ! (おかげで私のお花から……)」

佐天「ん? 何か言った?」

初春「あ、な、なんでもないです! ところで、昨日の事件も鬼塚先生が……」

佐天「ああ、そうだったね。でも今日話してみて、あの先生ならやりかねないって思ったよ」

初春「そうですね。私もあの先生なら、何をしてもおかしくないって思っちゃいました」

佐天「そうだね。あはは、あの先生見てるとおかしくって、なんか元気出るなぁ」

初春「しかし、教育委員会とかで問題にならないんですかね……」

佐天「『外部』から研修に来るって言うくらいだから、結構凄い先生だったりして」

初春「自分で『グレートティーチャー』なんて言ってますもんね……」

佐天「なんか、あの先生の授業のおかげで、嫌な事が全部吹っ飛んじゃったよ!」

初春「そうですか、佐天さんが元気になってよかったです」

佐天「初春めー、可愛いこと言ってくれるなぁ」

初春「えへへ(でも、本当に一体誰が……)」

佐天「ん、あれって、おーい!」

初春「あれ、どうしたんですか? あ、御坂さん」
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 18:34:55.18 ID:p5ZY48DGo
――放課後の教室

??「しかし、今日のあれでも懲りないなんて……」

??「あんな奴殺せばいいのよ!コロス殺すコロス!」

??「変態教師とも仲良くしやがって……」

??「何が正面切ってかかってこいよ!」

??「いいのよ。五人もいれば、なんとでもなるわ。あの教師も明日でいなくなるしね」

??「どうせいなくなるんだから、何かあっても気づきもしないわよ。あはは」

 彼女達は、一旦教室を出た後、わざわざ戻ってくるように打ち合わせていた。
放課後の教室には、五人の生徒の声が、微かに響く。そして……


鬼塚「……(やっぱりロッカーの中は狭ぇな)」

73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 18:35:22.88 ID:p5ZY48DGo
――

御坂「へぇ。それじゃ、その鬼塚って先生が佐天さんを助けてくれたんだ」

佐天「そうなんですよ! ちょっと変な人なんですけどね」

初春「金髪でピアスしてて、白いアルマーニのスーツを着てて」

佐天「違う違う、アロマーニだよ! アルマーニの偽物の」

御坂「あはは! 何それ! 本当に変な先生ねぇ」

初春「ですよね。 授業でも変なビデオを見せてくるし……」

御坂「変なビデオ?」

佐天「いや、なんでもないんです! あはは……
   (ちょっと、初春! 御坂さんに内容言ったら倒れちゃうよ!)」
   
初春「(あ、そうでしたね……)ところで、白井さんは?」

御坂「黒子はジャッジメントの仕事があるとかって言ってたわね」

佐天「仕事かぁ。そう言えば、初春は大丈夫なの?」

初春「ええ、白井さんから『今日は私達だけで大丈夫ですの』ってメールが」

御坂「へぇー。黒子が休んでいいなんて珍しいわね(二人に気を使ったのかしら?)」

初春「ほんとですよ! いつもなら『初春、いいですの? ジャッジメントというのは……』なんて」

佐天「あはは! 今の似てるー! もう一回やってよ!」
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 18:36:38.30 ID:p5ZY48DGo
初春「いいですよ! ごほんっ。 『そもそも初春は、ジャッジメントとしての――』」

黒子「自覚が全く足りませんの! 罰として毎朝ロードワークですの」

初春「し、し、し、し、白井さーん!?」

御坂「あれ、黒子、今日は支部で調べ物するんじゃなかったの?」

黒子「その予定だったんですが、嫌な予感がしましたの。それでパトロールに。
    そしたらまぁ、こんなところで初春が私のモノマネをしてるじゃありませんか。
    それも私を差し置いて、お姉さまとクレープを食べるなんて!これは……」
    
佐天「まあまあ、白井さん。昨日の事件の情報を提供するってことで勘弁してください」

黒子「昨日の事件の情報ですの? ちょっと詳しく聞かせてくださいな」


――
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 18:37:09.21 ID:p5ZY48DGo
黒子「なるほど。その鬼塚という教員が、佐天さんを救ったと」

佐天「バイクの事は内緒にしといてください! この通り!」

黒子「仕方ありませんの。大事の前の小事とも言いますし、この際目を瞑りますの」

佐天「白井さん、ありがとう!」

黒子「いえいえ、そんなことより、気になる話がありますの」

御坂「気になる話?」

黒子「はい、最近、どうも『外部』から流れてきた、ある『物』がありますの」

御坂「ある物?」

黒子「はいですの。どうやら『自分だけの現実』を鮮明に創り出すための物だと」

佐天「え! それってレベルアッパーみたいな?」

黒子「いいえ、全く違いますの。『天使の手』<エンジェルブロウ>と呼ばれてるみたいですが、
    実際はただの錠剤――麻薬ですの。それもかなり強力な依存性を発揮するらしく」

初春「白井さんは、それを調べてたんですか? 言ってくれたら私も協力しました!」

黒子「今回は、固法先輩とペアを組んで行きましたから、それには及びませんの。
    取引現場を押さえて、事情聴取だけですので、初春の頭脳は必要ありませんでしたの」

佐天「あはは、力仕事だったわけですね……」

御坂「(まったく、黒子ったら、あんな言い方して強がっちゃって)」
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 18:37:37.79 ID:p5ZY48DGo
佐天「天使の手かぁ。可愛い名前だからって、つい使っちゃいそうですね」

黒子「ええ。名前のせいか、女子中学生にも広まり始めてるみたいですの。
   使用したからと言って、レベルが上がるという訳ではありません。
   ただ、使用している時は、本当にレベルが上がった気になるらしいですが」
   
御坂「薬物による幻覚……そして、強い依存性。広まると厄介ね」

黒子「仰る通りですの。ですから皆さん、もし何か気付いたことがあったら、
    すぐにジャッジメントまで通報して頂きたいんですの。特にお姉さま!」

御坂「あー、はいはい。わかってるわよ。私だってそんなに厄介な事に首を――」

黒子「いいえ。お姉さまはいつもいつもそう言って、結局は――」

佐天「始まったね……」

初春「始まりましたね……」

御坂「もう! あ! そろそろ最終下校時刻だ! 帰らなきゃ!
   ってことで、佐天さん、初春さんまたねー!」
   
バタバタバタッ

黒子「あ、おねえさまぁーん! 待ってくださいですのぉ!」

シュンッ

佐天「……帰ろっか」

初春「……そうですね」
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/29(土) 18:40:23.48 ID:p5ZY48DGo
――鬼塚の宿舎

鬼塚「ふぃー。ひとっ風呂浴びた後のビールは最高だぜぇ」

ゴキュゴキュ

鬼塚「ぷはーっ! しっかしよぉ、あのガキ共は何企んでやがんだぁ?
   悪ふざけにしちゃ、度越してやがんぜ……しかも、この錠剤のマーク……」

 生徒達が帰ったあとの教室に落ちていた錠剤。鬼塚はこれに見覚えがあった。

グッ パラパラパラ

鬼塚「一時、三多摩で流行ってた『デモンズアッパー』じゃねーか?」


ガラガラッ キンッ シュボ パチン

鬼塚「静かな夜だってーのに、なんか起きてる気がするぜ……この街によぉ!?」



【9月7日火曜日 三日目終了】
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/30(日) 00:01:09.23 ID:j+1gSc/8o
おおこれは楽しみ
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 00:02:20.02 ID:vzaaaVgAO
知らん間に復活してたー
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 00:24:15.46 ID:IMKj+gGDO
これはいいSS
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 02:15:11.19 ID:TYvNIG6lo
【9月8日水曜日 4日目】

――佐天の部屋

佐天「ううん……もう朝かぁ。今日はいつもよりちょっと早いかな」

チュンチュン

佐天「雀は朝から元気だなー。私も元気を出して頑張るかな!」

ゴソゴソ トットット

佐天「とりあえず、お弁当でも作るかな」

トントン グツグツ ジャッジャー

佐天「んー、あ! そうだ! せっかくだから……ふふっ」


――鬼塚の宿舎

鬼塚「くわぁぁぁあっと。今日も朝からかったりーなー」

ガラガラッ キンッ シュボッ パチン

鬼塚「ふぃー。ベランダでの一服も慣れてきたな……
    しっかしよぉ、この街のヤンキーの件といい、佐天の件といい、一体何なんだ」
    
ガサガサ ゴソゴソ モソモソ

鬼塚「まぁ、今日はとりあえずジーパンでいいよな。一応初日はスーツ着たしよ」

ガチャン

鬼塚「さぁてと、今日も一発、ビッと決めるとすっか!」

ダッダッダッダ

82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 02:15:52.60 ID:TYvNIG6lo
――朝 通学路

初春「佐天さん、おはようございます」

佐天「あ、初春おはよー!」

初春「佐天さん、なんだかご機嫌ですね?」

佐天「ん? そう見えるかなぁ?」

初春「はい、なんだか今日は楽しそうですよ」

佐天「んー、別にそんなこともないんだけどなぁ」

初春「そうですか? あ、鬼塚先生ですよ」

鬼塚「よぉ、おめーら。 今日も朝からかったりーな」

佐天「おはよーございます! 先生そんな事言っちゃダメですよ」

鬼塚「あぁ? だってよー、おめー、中坊の相手なんざやってらんねーんだよ」

初春「先生、そういう事言ったら元も子もないんじゃ……」

佐天「もう。それじゃ、先生にプレゼントってことで、う・い・は・るっ!」

バサッ

鬼塚「おおぉ!? 淡いグリーンに白い水玉!?」

初春「きゃああああ! ちょっと、佐天さん! 先生の前でなんてひどいです!」

佐天「あはは。いいじゃん減るもんじゃないんだからさ!」

初春「そういう問題じゃありません! あ、逃げないでください! ちょっと!」

佐天「せんせー、それじゃ、また後でねー!」

鬼塚「おー、おめーら気ぃつけろよー(うーん、マンダム!)」


??「フフ。あの子、しっかりやったかしら?」

??「やったと思うぜ? だって、あれだけ殺すコロスって言ってたんだしよ。ハハッ」

83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 02:16:54.79 ID:TYvNIG6lo
――昇降口

佐天「ねぇ、初春……」

初春「佐天さん、落ち着いてください。これは、きっと……」


 昇降口で黙り込む佐天だが、その顔は青く、そして、瞳からは涙が溢れていた。
怒りなのか悲しみなのか、体は小刻みに震えていた。
 初春は、佐天の顔と、下駄箱に書かれた文字――
 
  「無能力者」「犯罪者」「死ね」「ゴミ」
  
 を交互に眺め、自分が何をすればいいのか、一所懸命に考えようとしていた。


マコ「ちょっと! ねえ、これって!」

佐天「マコちん……あはは、なんだろうね。あたし、やっぱりダメなのかなぁ」

初春「佐天さん……」

佐天「無能力者で、レベルアッパーなんか使って、結局みんなに迷惑かけるだけかけて……
    やっぱりゴミなのかな。あたしなんてやっぱり……」
    
初春「佐天さん! 佐天さんはゴミなんかじゃありません!
    前にも言いましたよね? 佐天さんは私の親友だって!」

マコ「そうだよ! それに、涙子だけが悪いわけじゃないじゃん!
    私だってレベルアッパー使ったんだし。それに罰も補習も受けて……」
    
佐天「違うよ! マコちんもあけみもむーちゃんも……みんなあたしが巻き込んで……
    だから、だから、全部あたしが、あたしが悪いの!」

マコ「ちょっと、涙子!?」

初春「あ、佐天さん! 待ってください!」


――
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 02:17:21.47 ID:TYvNIG6lo
鬼塚「あん? なんだか昇降口の方が騒がしいじゃねーかって、おい、佐天?」

 佐天は、鬼塚の呼びかけが全く聞こえなかったかのように、校外へと走り去った。
鬼塚はそんな佐天を眺めつつ、昇降口の様子を伺った。そこに初春の姿を見つけ、声をかけた。

鬼塚「おい、初春よー。この騒ぎは一体って、なんだぁこいつはよぉ!?」

初春「鬼塚先生! 佐天さんが、佐天さんが!」

鬼塚「あ? 佐天? これ、佐天の下駄箱か?」

初春「はい、それで、佐天さん走って……」

鬼塚「あー、よくわかんねーけど、とりあえず初春!
    こいつを速攻で消しておけや! おい、そっちのお前、名前わかんねーけど、お前もやれ!」

初春「え、でも佐天さんが」

鬼塚「佐天の事は俺に任せておけ。おめーらは、これ片付けたら教室行けよ。
    授業に遅れんじゃねーぞ? 一応俺もフクタンだからよぉ。 んじゃ」

初春「鬼塚先生待ってくださ――鬼塚先生……佐天さんのこと、よろしくお願いします」


――
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 02:17:48.01 ID:TYvNIG6lo
 走った。脇腹の痛みは随分前に感じなくなってしまい、今はただ、肺の苦しさを感じている。
 佐天は、学校から自宅へと向かう道を、ただひたすら、走り続け、途中で力尽きた。
そして、今は街路樹の陰でしゃがみこみ、零れる落ちる涙と嗚咽を、ひたすら抑えようとしていた。

――テン!

――サテン!

鬼塚「おい、コラァ! 佐天! どこにいやがんだぁ!?」

佐天「お、に、づか……先生?」

鬼塚「お、こんなとこにいやがったのか! おめー、朝っぱらから走らせんなよ!」

佐天「せん、せい。あたし、あたし……」

鬼塚「おう、なんだ? 言ってみろや」

佐天「あたし、やっぱりゴミなのかな?」

鬼塚「あぁん? なんだそれは?」

佐天「だって、無能力者で、レベルアッパー使って、犯罪者で、ゴミで……
    でも頑張ろうって思って……でも、もう、どうしたらいいかわかんないよ!」

鬼塚「佐天……よっしゃ、とりあえず、ちぃっとばかし、俺に付き合えや」

佐天「え?」

鬼塚「四の五の言わねーで俺に着いてこいってんだよ!」

佐天「ちょ、ちょっと、先生!?」

86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 02:18:15.81 ID:TYvNIG6lo

――学校

ガヤガヤ ヒソヒソ ネーネー エー アレハナイネー

初春「……(佐天さん……)」

コソコソ ヒソヒソ

生徒A「なぁ、今朝の昇降口見たか?」

生徒B「あー、見た見た。佐天の下駄箱だろ? あれすげーな」

生徒A「犯罪者なんて書かれてよー。あれだろ、レベルアッパー」

生徒C「あいつもレベルアッパー使ってたのか。だから犯罪者ね。納得」

生徒B「無能力者だとレベルアッパーとか、ああいうのに頼らなきゃ生きていけないのかね」

初春「佐天さんは、そんな人じゃありません! 佐天さんを悪く言う人は私が許しません!」

――シーン

初春「佐天さんは、佐天さんは……」

ガラッ
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 02:18:52.23 ID:TYvNIG6lo
教師「おい、初春どうした? 出席取るから席につけよー」

初春「すみません……(先生、あの騒ぎ知ってるはずなのに……)」

教師「よーし、って、また佐天だけがいないのか。あいつ今日も遅刻か?」

??「先生。佐天さん、今朝走って学校から出て行きましたー」

ガバッ!

初春「(今の……あの人が!? 確かあの人は、一日から引っ越してきた……)」

教師「なんだそれは? 抜け出したっていうのか? まったくあいつは……」

初春「(まさか……いや、そんな。あの人と佐天さんは何の関係も無いはず)」

教師「まあ、とりあえず、お前らは佐天のように遅刻ばっかりするんじゃないぞ」

――トコトコトコトコ

初春「(確か、溝口さんだったかな……一応、調べて見る必要がありそうですね)」


88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 02:19:19.24 ID:TYvNIG6lo
――街中

??「はぁはぁはぁ……(どうしよう、寝坊しちゃった)」

バタバタバタ

??「あれ? もしかして、あれって佐天さん? こんな時間にあんなところに……」


シュンッ



――店内


佐天「あの、先生?」

鬼塚「大盛りつゆだく二つ頼むわ」

店員「大盛りつゆだく二丁!」

佐天「いや、先生…」

鬼塚「何があったかは知らねーけどよ、まずは飯だ! おめーも、食えよ!?」

佐天「いや、あたしは朝ご飯食べてーー」

鬼塚「そんなん知ったこっちゃねーよ! 俺が奢ってやるってんだから、黙って食え!」

佐天「はぁ……(仕方ない、食べよう……)」

89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 02:19:49.08 ID:TYvNIG6lo
――

佐天「うっ…… (うーん、もう食べられない……)」

鬼塚「おー、食った食った。ごちそーさん」

店員「……ありがとうございました」

鬼塚「よし、んじゃ、コーヒーでも飲みにいくか」

佐天「え? 先生、学校は?」

鬼塚「おいおい、学校抜け出しといて今更そりゃねーだろ。
ここまできたんだから、最後まで付き合えよ。不良少女よぉ?」

佐天「……」

??「あの二人、どこに行くんだろう……まさか!? いや、そんなことあるはずが……」

90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 02:20:20.69 ID:TYvNIG6lo
――公園

ガコンッ ガコンッ

佐天「え……コーヒーって、缶コーヒーなんですか?」

鬼塚「うるせーな。金がねーんだからしゃーねーだろ!」

ポイッ

佐天「はぁ、ありがとうございます」

鬼塚「しかし、学校サボって公園で一服って良いもんだよな」

佐天「え?」

鬼塚「俺はよぉ、昔っからバカばっかりやってたからよ。ガキん頃から「クズ」だのなんやの、
    それはもう、社会のダニみてーに言われてたもんだ。まぁ、実際族だったしよぉ」

佐天「……」

鬼塚「マッポのお世話になったことなんて、てめーらが想像つかないくらいあんぞ?」

佐天「それでよく先生になれましたね」

鬼塚「おうよ。それも、教師になろうって思ったのが、女子高生の嫁さん欲しいからだぜ?」

佐天「えええ! さすがにそれはちょっと……」
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 02:21:03.22 ID:TYvNIG6lo
鬼塚「でもよー、教師になったと思ったら中坊の担任だし、ハゲ教頭にいっつも説教されるしよ。
    クソガキ共も言うこと聞かねーし、保護者様はうぜーし、給料も安いし、出会いもねーし」
    
佐天「それなのに先生続けてるんですか?」

鬼塚「そーなんだよ。なんつーかよぉ、ガキ共と話してっといっつも思うんだけどな。
    俺もガキ共も変わんねーんだよ。俺がガキだってだけじゃねーぞ?勘違いすんなよ」
    
佐天「……」

鬼塚「ガキだろうが、大人だろうが、かったりー時はあるし、サボりたくなる時もある。
    寂しい時もありゃ、悲しい時もある。泣きたくなる時だってあんだろーよ」

佐天「……はい」

鬼塚「んでもよぉ、俺みてーにクズクズって言われ続けたような奴でもよ。
    ダチ公ってのがいるんだよ。やべーってなった時に手差し伸べてくれるようなさ」

佐天「わかります。鬼塚先生、友達いっぱい居そうですしね」

鬼塚「おめーだってそうだろ? 初春とか、名前わかんねーけど他の奴らとかよ」

佐天「はい」

鬼塚「成績がわりぃだの、能力がどーのこーのとかよ。確かに自分に足りねーもんが
    どーしようもなく欲しくなったりするし、挫折っつーのも経験することはあんぜ?」

佐天「……はい」

鬼塚「なんつーか、俺は頭わりぃから、上手い事言えねーんだけどよ。
    今を精一杯楽しめばいいんじゃねーのか?」

佐天「……は、い」
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 02:21:46.68 ID:TYvNIG6lo
鬼塚「惨めな気持ちになったら、そんなもんはよぉ……ぶっ壊しちまえばいいじゃねーか」

佐天「……そ、う、です、ね」

鬼塚「つれー時はよぉ、ダチに頼ればいいじゃねーか。そうやってダチの絆っつーのが強くなるんだよ」

佐天「……うっ、うぅぅ」

鬼塚「俺も一応教師っつー肩書きあるけどよ、俺は教師なんつーガラじゃねーんだよ。
    おめーにはいきなり鞄で殴られたしな。教師と生徒っつーより、ダチっつーかよ?」

佐天「う、う、うわぁぁあっぁぁ! 先生! 先生!」



 ずっと我慢していた涙が、とめどなく押し寄せてきた。
 初春、マコちん、むーちゃん、アケミ……佐天は、自分の大切な友達の顔を思い浮かべ、
 抑えつけていた自分の感情を思い切り、誰にも遠慮せずに吐き出した。
 レベルアッパーを使った時のこと、友達を巻き込んだこと、友達に救われたこと……
 そして、昨日の出来事と、今朝の昇降口に書かれた言葉のことを……
 
 
 
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 02:22:14.51 ID:TYvNIG6lo
――

佐天「先生、ごめんなさい」

鬼塚「あん? 何がだ?」

佐天「泣いたり、叫んだり、愚痴言ったりしちゃって……」

鬼塚「んなもん気にすることじゃねーよ。これが俺の仕事ってやつだからよ」

佐天「あれ? もしかして、先生照れてます?」

鬼塚「ばっ、馬鹿野郎! なんで俺が中坊なんざに照れなきゃなんねーんだよ!」

佐天「あはは! やっぱり照れてる!」

鬼塚「ったくよぉ、これだからガキっつーのはめんどくせーんだよなぁ」

佐天「先生」

鬼塚「あぁ?」

佐天「ありがとう!」

鬼塚「……へっ。おうよ」

佐天「んー! 今から行けば、四時間目には余裕で間に合うかな」

鬼塚「おめー、まさか学校行くのか?」

佐天「何言ってるんですか! あたりまえじゃないですか!」

鬼塚「おいおい、めんどくせーから、もう今日はサボっちまおうぜ」

佐天「だめです! 先生がそんなこと言っちゃダメですよ!」

鬼塚「てめーが最初に学校フケたんじゃねーか! って、そうだ」

佐天「ん? どうしたんですか?」

鬼塚「いやよ、お前『デモンズアッパー』って知ってるか?」

佐天「なんですかそれ? 物騒な名前ですけど……」
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 02:22:41.33 ID:TYvNIG6lo
鬼塚「なんかよ、この街のヤンキー共が最近使ってるドラッグでよ」

佐天「ドラッグ……『エンジェルブロウ』なら聞いたことありますけど」

鬼塚「エンジェルだぁ? それってよ、羽と拳の絵が描いてねーか?」

佐天「さぁ、見たことないし……あ、でも、白井さんに聞けばわかるかも」

鬼塚「白井さん? クラスにそんな奴いたっけな」

佐天「いや、ジャッジメントをしてて、初春の同僚なんですよ」

鬼塚「ほー。そいつに聞けばわかるか。ちぃっと、放課後にでも会わせてくれや」

佐天「え、良いですけど、先生どうしたんですか?」

鬼塚「……まあ、なんつーか、『ヤボ用』っつーやつでな」

佐天「そうですか……でも、エンジェルブロウかぁ。『自分だけの現実』を強化する魔法の薬……
    本当に自分だけの現実が見やすくなるなら……躓いてる人なら使っちゃうかもしれませんね」
    
鬼塚「その『自分だけの現実』っつーのが、いまいちわかんねーんだけどよー。
    まあ、んでも、そんなもんに頼らなくても、佐天はもう大丈夫だろ?」
    
佐天「はい!」

鬼塚「そーかよ。んじゃ、まぁ、とりあえず学校にでも――」

??「あの! 待ってください!」

鬼塚「あぁ? なんだ? どっから声が聞こえるんだ?」

??「あ、すみません……」

シュンッ
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 02:23:10.28 ID:TYvNIG6lo
佐天「じ、重福さん!?」

鬼塚「うおおお! いきなり現れやがったぞ! 透明人間か!?」

重福「あの、いえ、私の能力は『視覚阻害』<ダミーチェック>なので、
    自分の存在感を消すというか、気付かれないようにすると言うか……」

鬼塚「ああ、なんかよくわかんねーんだけど、わかった。
    んで、その『惰眠ちゃらちゃら』のえーと、重福だっけ? どうしたんだ?」
    
重福「あの、私、その……佐天さんごめんなさい!」

佐天「へ?」

重福「街で佐天さんを見かけて、隣にこの人が居て、もしかして何かあるんじゃって思って……
    ついてきて、それで、あの、話を聞いてしまって……」
    
佐天「聞いてたの!? あちゃー、かっこ悪いところ見られちゃったなぁ。てへへ」

重福「かっこ悪いなんて全然思いません! やっぱり佐天さんは凄いです!
    補習の時もそうでしたけど、今日だって、そこの先生と話してるの聞いて……」
    
鬼塚「(あれ? 俺ってもしかして邪魔者っつやつかぁ?)」

重福「やっぱり、佐天さんは強い人です! だから、だから……」

佐天「重福さん……大丈夫だよ。あたしは負けないよ!」

重福「佐天さん……」

佐天「よーし、それじゃ学校に行きますか! あ、重福さんもサボっちゃダメだよ?」

重福「はい! あの、またお手紙書きますね…… ではっ!」

パタパタパタパタ
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 02:23:45.04 ID:TYvNIG6lo
鬼塚「なんか、よくわかんねーけど、お前の知り合いかぁ?」

佐天「うん。重福さん。あたしと一緒でレベルアッパー使って……」

鬼塚「そーかよ。なんか、随分と尊敬されてるみてーじゃねーか」

佐天「あ、あはは……」

鬼塚「……でも、ああやって慕ってくれてる奴がいるんだからよ。
    おめーはクズなんかじゃねーよ。それだけは俺様が保証してやらぁ!」

佐天「ありがとうございます……あたし、負けません!」

鬼塚「おうよ! 気合いれて、ビッと決めてこいや!」

佐天「はい! って、先生、そっち学校じゃないですよ! こっちこっち!」

鬼塚「あ、おめー引っ張るな! おい、このアロハ高ぇーんだぞ! って、おい!」

キンッ シュボッ パチン

鬼塚「ふぅー。しゃーねーなぁ(……一応元気にはなったみてーだけど、どうなっかな)」

――
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 02:24:31.52 ID:TYvNIG6lo

――三時間目 休み時間

初春「よかった、資料室には誰もいませんね。 今のうちに情報を集めないと……」

カタカタカタッ

初春「とりあえずproxyをいくつか経由してっと……セーシェル、ナイジェリア、ホンジュラス……」

カタカタカタッ タッーン

初春「よし、これで……アクセスできましたね。後は、溝口、溝口……」

初春「確か今月からうちの学校に来て……やっぱり、学校のデータベースではダメですね。
    バンクの情報しかないですね。さすがに学校からアクセスするのは気が引けますけど……」

カタカタカタッ カタッ カタカタタタタカタッ

初春「溝口吹火(すいか)、『発火能力者』<パイロキネシスト>、レベルは……3!?」

初春「この学校の一年生でレベル3だなんて……あれ、これは!?」

98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 02:25:06.12 ID:TYvNIG6lo

――同時刻 柵川中学校門

鬼塚「佐天、平気か?」

佐天「先生、あたしを誰だと思ってるんですか? 万年レベル0の佐天涙子さんですよ!
    イジメだかなんだか知りませんけど、これくらいじゃあたしは負けないですよ!」
    
鬼塚「おー、えらく気合入ってんじゃねーかぁ?」

佐天「当たり前ですよ!それに……あたしは一人じゃないですから!」

タッタッタッタ

佐天「あ、先生! お昼休み、一緒にご飯食べましょうね!」

鬼塚「あー? 気が向いたらなー。――まあ、あいつは大丈夫だよな」


99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 02:27:45.01 ID:TYvNIG6lo

――四時間目 教室

初春「(佐天さん、戻って来ませんね……メールでもした方が……)」

教師「で、ここのxに代入するのは……」

初春「(集めた情報も佐天さんに教えてあげなきゃいけないですし……)」

ガラガラッ

佐天「佐天涙子ただいま登校しました! 思いっきり遅刻してすみません!」

ザワザワザワザワ エー スゲー ゲンキスギジャネ

初春「さ、佐天さん!」

佐天「へっへー、初春ごめんよー。心配かけちゃったね。マコちん達もごめんよ」

マコ「ううん、涙子……良かった」

教師「おい、佐天。遅刻してきたのに、随分態度が大きいな。廊下に立っておくか?」

佐天「あ、すみませんでした!」

タッタッタ

教師「あー、佐天、連日遅刻だから、今日は裏庭の掃除だな」

佐天「げっ! はーい……(まあ、いっか)」

初春「(佐天さん、私も手伝いますからね)」

佐天「(さっすが初春! あたしの親友だね!)」

初春「(もう、本当に調子がいいんだから……あ、あとですね)」

教師「おい、佐天、初春! 静かにしろ! うるさくするなら、その頭のは――」

初春「すみませんでした。ところで『頭のは』って何のことですか?」

教師「……わかればいい(やはり、自覚はないのか?)で、yに入る数は……」


溝口「(なんで、なんであいつはあんなに明るいの!?なんでなんでなんでなんで……)」

100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 02:28:41.76 ID:TYvNIG6lo
――昼休み

マコ「涙子大丈夫だった?」

佐天「マコちん、ごめんねー! 初春から聞いたよ。下駄箱掃除してくれたんだって?」

マコ「うん、そんなことより……」

佐天「あはは! 大丈夫大丈夫! あたしは元気だけが取り柄だからね!」

マコ「涙子……あ、みんなでお昼ご飯どう?」

佐天「あ、ごめーん。鬼塚先生と食べる約束してるんだ」

マコ「え! あのスキルアウト教師と!?」

佐天「ああ見えて、結構良いところあるんだよね。それじゃ」

タッタッタ

初春「あ、佐天さん、待ってください! 私も話があって」

ダダダダッダ

アケミ「あらら、涙子ったらすぐ元気になったわね」

マコ「ほんと、よかった」

むー「じゃあ、私達は寂しく三人でご飯にいきますか!」

トットット


溝口「(くそ……こうなったら、直接……)」

101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 02:29:09.00 ID:TYvNIG6lo

――校庭

鬼塚「あー、腹減ったぜぇ……」

佐天「おーにーづーか、せんせー!

鬼塚「おー! おめー、おせーじゃねーかよ?」

佐天「ごめんごめん! お詫びに、涙子さんお手製弁当をプレゼント!」

鬼塚「うおおおおお! マジかよ! これ全部食って良いのか?」

佐天「うん、今朝作りすぎたから、この前のお礼も兼ねて先生の分も用意してあげました!」

鬼塚「おめー、いや、佐天様! ありがたく頂戴します!」

佐天「うんうん、素直でよろしい。あ、ういはるー!」

初春「ちょっと、佐天、さん、置いてかないで、くださいよ……」

佐天「あはは、ごめんごめん。お詫びに初春にもあたしのから揚げをプレゼントだ!」
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 02:29:34.59 ID:TYvNIG6lo
初春「わー、佐天さんどうしたんですか? いつもより豪華な、んっ――」

佐天「余計な事は言わなくていいの! ところで先生おいしい?」

鬼塚「んまんん(うまいぜ)、んんんんん(黙って食わせろ)」

佐天「先生、がっつきすぎだよー」

初春「(鬼塚先生。佐天さんのこと、しっかりと……ありがとうございます)」

モグモグ モグモグ ゴクゴク

鬼塚「ぷはーっ! 食った食った! 佐天、おめー料理うめーじゃねーか!」

佐天「えへへ、そうですかー?」

鬼塚「おうよ。こりゃ良い嫁さんになっかもしんねーなぁ」

佐天「そんな事言っても何も出ませんよーだ」

初春「あ、そうだ、佐天さん、ちょっとお話が……鬼塚先生も良いですか?」

佐天「んー? 初春どうしたんだね?」

鬼塚「なんだぁ?」

初春「実はですね――」


――
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 02:30:06.67 ID:TYvNIG6lo
鬼塚「ほー、そういう事だったわけか。だからあのガキは体育の授業ん時に」

初春「え? 先生、体育の授業の時に溝口さん見たんですか!?」

鬼塚「おうよ、ロッカーん中でよぉ――」

佐天「ロッカーの中?」

鬼塚「あ、いや、まあ、とりあえず話はわかったぜ」

佐天「なんか怪しいなぁ……先生、まさかロッカーの中に入って覗きしてたんじゃ……」

鬼塚「ばっ、馬鹿野郎! おめー、俺がそんなことするわけじゃ……」

初春「なんだか先生焦ってますよね」

鬼塚「おめーら俺を疑うなんてひでーじゃねーか! それに俺はロリコンじゃねーぞ!
    ったく、誰が佐天の水色のブラ見て喜ぶんだよ!」
    
佐天「あれ、あたし昨日水色の……」

――キーンコーンカーンコーン
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 02:30:38.95 ID:TYvNIG6lo

鬼塚「あ、予鈴じゃねーか! おらぁ! おめーら遅刻すんじゃねーぞぉ!?」

ダダダダッダッダダッダ

佐天「今のって、どう考えても……」

初春「見てますね……とりあえず、教室に戻りましょう」

佐天「ほんっっと、先生って最低! まったく、見たいなら見たいって言えば……」

初春「え?」

佐天「あ、いや、見たいなら、あたしがいくらでも初春のスカートを捲るよって!」

初春「やめてください!」

トットットット


――
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 02:31:08.34 ID:TYvNIG6lo

――放課後

教師「それじゃ、佐天は裏庭の掃除をしといてくれ」

佐天「はーい」

教師「では、みんな気をつけて帰れよー」

ワイワイ ガヤガヤ バタバタ

佐天「はぁ。面倒だけど仕方ないか……」

初春「佐天さん、私も手伝いますから! 大丈夫です、すぐ終わりますよ」

佐天「さっすが初春! ありがとね!」

初春「いえいえ」

マコ「涙子、ういはるん。ごめんね。私達だけ先に帰っちゃって」

佐天「大丈夫だってば! 今日は三人とも塾なんでしょ? ほらほら早く行ってきな!」

マコ「うん、ありがとね。 それじゃあ、また明日!」

トットットット

佐天「よーし! じゃあ、さっさと終わらせてクレープでも食べにいきますか!」

初春「おー!」



溝口「(フフッ……あとはみんなに連絡すればいいわね)」


106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 02:31:36.65 ID:TYvNIG6lo
ちょいと休憩
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 02:34:23.00 ID:TYvNIG6lo
      ';,   ';,.                           ';
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        _,,..-‐‐'''''''f゙ヽ, 二  /、-----、     l   l
      r'''´  , i   '、  `゙'''''''´  /   ,' `゙'‐、_ l  l
   _,.-‐''´ l  i i. l    ゙'、    _/   ,'    /'、i  .l
  f´    l   ゙,,i l     `゙''''''''´     i ,'"  ,'  l.   l
  l   ヽ__,,l   ゝ!               V   i  i、   l
  l    i  `゙ ̄´i゙::            :: l/----ゝ、___、__,ノ
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108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 02:42:59.97 ID:EkDZ/x4oo
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            f彡ミュェ、           /⌒i
           /´     ヾミ、    r-、   l   l     
          /:(   __  ィ=- ヾ、    ヽ \ |  |__   
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            '| ´ ,.  。) ィ、 }_/´ :::〉::::::::::::: ヽl  || |   ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー
            ト  ノ`,‐-ァ  r'   / ::{    ,ィ─、! |`-'
            \.  ヽニノ /ノ    l:: ::\  ̄  ノ:`‐'\
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---------------------MOTO SMOUKING------------------------
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 03:31:18.97 ID:TYvNIG6lo
――裏庭

佐天「うーん、なかなか終わらないね」

初春「思った、以上に、大変、ですね……」

佐天「初春もういいよ。凄く疲れてるみたいだしさ」

初春「そ、そんなことはありません! ほらほら! こんなに元気!」

佐天「まったくもう、初春も強情なんだから」

初春「佐天さん程じゃありませんよ」

佐天「あはは」

??「随分と楽しそうだねぇ。俺達も混ぜてくれねぇかなぁ?」

佐天「えっ?」


 談笑しながら、初春と二人で、裏庭の掃除と草むしりをしていた佐天だったが、
 その背中に声をかけてきた男達……そして、そこには溝口の姿があった。


溝口「無能力者の佐天さん。お掃除姿がよく似合ってるわね」

佐天「溝口さん……」

溝口「本当に見てて腹が立ってくるわね」

佐天「昨日のストラップも、教科書も、今朝の下駄箱も……全部あんただったのね?」

溝口「よくわかってるわね。そうよ、私よ? 何か悪いことでもした?」

初春「悪いに決まってるじゃないですか!」

溝口「あらあら、低能力者のクセにジャッジメントなんてやってる初春さん」

初春「!!!!」
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 03:31:45.39 ID:TYvNIG6lo

溝口「本当にあんた達見てると吐き気がするわ。無能力者に低能力者のくせに……
    一人は犯罪者で無能のクセに反省もせずに能天気な顔してる。
    もう一人は真面目にジャッジメントなんてね」

初春「能力が低くて真面目で何が悪いんですか! それに佐天さんだって――」

佐天「初春! いいの。溝口さんが言ってる通り、確かに私はレベルアッパーを使った。
    でも! あんなものに手を出しても意味がないって気付いたの!
    あたしには、仲間がいる! それに能力が無くったって――」

溝口「その態度が気に入らないって言ってるのよ!!!!!」

ドーン!!! チリチリチリ

初春「発火能力!」

溝口「そうよ。私はあんた達と違ってレベル3なの!それなのに、それなのにぃぃぃぃぃい!!!」

佐天「常盤台中学に在籍してたレベル3。表向きは、病気療養のために自主退学……
    でも、実際はレベルアッパー事件と日頃からの素行不良により退学勧告……」

溝口「なんでそれを! この学校のデータベースには登録されてないはずなのに!」

初春「それでも、バンクにはしっかり載ってましたよ!」

溝口「なっ……」

佐天「ねぇ、溝口さん。あたしもレベルアッパー使ったからわかるの。
    レベルが上がらない辛さ、寂しさ……だから、こんな事はもうやめようよ?」

溝口「うるさい! あんたに何がわかるの!? 私はねぇ、常盤台の生徒なのよ!
    それなのに、たかがレベルアッパー使った程度で……何がスキルアウトよ?
    スキルアウトの連中と遊んで何が悪いわけ? それで退学? なんで私が?」
    
佐天「溝口さん……」
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 03:32:24.90 ID:TYvNIG6lo

溝口「退学させられて、こんなクソ学校に来てみたら、同じクラスに無能力者がいる?
    もうね、我慢できなかったのよ! しかも無能力者のクセに調子に乗って……」
    
初春「そんな、そんなことで」

溝口「あんたらみたいなクソ真面目な低能力者に何がわかるっていうの?
    一回落ちこぼれたら、ずっとゴミ扱いされるのよ!
    それなのにあんたらは……あんたらはぁぁぁあぁああ!!!」
    
ドーン! ドーン!


佐天「きゃっ!」

初春「佐天さん!」

溝口「ほらほら、無能力者なんて汚く転がればいいのよ!」

三年男子「おいおい、溝口やりすぎじゃね?」

三年女子「いいんじゃない? 無能力者なんだし」

二年男子「俺らと同類のくせに調子こきやがってよ」

一年男子「俺なんかクラスでハブられてっつーのに……」

初春「やめてください!!!」

溝口「あ?」

初春「じゃ、ジャッジメントです! あなた達の身柄を拘束します!」

 初春はポケットの中からジャッジメントの腕章を取り出し、身に着けた。
 それで少しでも彼女達を怯ませることができればと、混乱した頭で考えた結果だった。
 
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 03:33:05.38 ID:TYvNIG6lo

二年男子「だからよぉ……低脳の分際でジャッジメントとか言ってんじゃねーよ!」

ガスッ!

初春「がッ!」

二年男子「こいつ、ジャッジメントのくせに蹴りの一発で悶えてるぜ?」

三年男子「おいおい、マジかよ?」

三年女子「うは、超うけるんですけどー」

佐天「う、初春!!!!」

初春「さ、て、ん、さ、ん……に、げて、くだ、さ、い……」

溝口「ああ? 鬱陶しいな……まずはあんたをやってあげるわ」

佐天「やめて!」

 倒れている初春と、溝口の間に立ちふさがる佐天。
 足はガクガク震え、瞳には涙を浮かべている。それでも、両腕を広げ立ちふさがっている。
 
溝口「あんたさぁ、いい加減にしてくんない? どいてよ。もうね、我慢できないわ」

佐天「嫌だ! 初春が、あたしの親友がこんなにされて黙って見てられるわけないじゃん!」

溝口「無能力者に何ができるの?」

佐天「能力なんかなくったって、あたしには、あたしには仲間がいる!
    いつだって支えてくれる仲間がいる! それを見捨てるなんてできるわけない!」

溝口「あっそぉ。それじゃ――」


佐天「(あたしが初春を……でも、あたしだけじゃ……誰か、誰か……先生!!!!)


   !?



113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 03:33:48.81 ID:TYvNIG6lo

ドカン! バキッ! ゴキゴキゴキッ!

溝口「何よこれ!」

鬼塚「よぉ、佐天、かっこいいじゃねーかよ?」

佐天「せ、ん、せ、い?」

二年女子「何よ、何よあんた!」

鬼塚「あのなぁ、女を殴るのは趣味じゃねーんだけどよぉ」

ビシッ

二年女子「ぁべしっ!」

鬼塚「とりあえず、少しだけ寝といてくれや」

溝口「あんた……」

鬼塚「ガキが火遊びしてっとよぉ、おねしょしちまうぜぇ?」

溝口「何言ってんのよ!」

ブンッ! ドーン!

鬼塚「うお! こりゃマジかよ…… こいつが能力ってやつかぁ!?」
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 03:34:49.20 ID:TYvNIG6lo

初春「せん、せい……その人は、パイロキネシストです……火を操って……」

溝口「何よ、何よあんた! なんで邪魔するの!」

鬼塚「うおおおおぉぉぉ! マジで熱ぃじゃねーかよ! ちょ、こんなんどうやって」

溝口「消えろ! 消えろ!」

鬼塚「消えろってよ、おめーは……あぶねっ! あのなぁ……」

ドンッ! ドンッ! ドンッ!

鬼塚「生徒におしおきすんのはよ、教師の仕事っつーやつなんだよ!」

溝口「何が、何が教師よ! 教師なんて、何かあればすぐに人をゴミみたいに!
    結局何もできない無能力者が教師なんかやってるんだろ!」
    
鬼塚「だぁぁ! こりゃ、埒が明かねぇぞ? 当たったらさすがにやべーだろーな」

溝口「はぁっはぁっ! もういいわ、あんたが逃げるんなら、こいつらに――」

鬼塚「おい、てめぇ! 待ちやが――」

佐天「きゃぁぁぁぁぁ!」


 溝口は、掌に具現化した火球を、うずくまっている初春と佐天目掛けて投げつけた。
 目の前に迫り来る火球。まるでスローモーションのように、火球の動きが見える。
 
佐天「(もうだめだ……!)」

 そう思い、目を閉じるその瞬間。派手な色彩が視界の隅に写った。
 そして――火球がぶつかった衝撃による爆風、そして音が耳から頭の中に響いた。
 
溝口「あは、あはは、はははははははは! 二人仲良く黒焦げよ!
    これで良くても入院ね。もしかしたら死んでるかしら? ははは!」

 高らかに笑う溝口。舞い上がった埃、そして煙が薄くなっていく――
 
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 03:35:19.74 ID:TYvNIG6lo

溝口「な、そんな、バカな……」

鬼塚「痛ぇじゃねぇか、このバカヤローが……
    こんなもん人にぶつけやがってよぉ、死んだらどうしてくれんだ? あぁ?」

溝口「ま、まさか、なんで! なんであれを受けて無事なのよ!」

鬼塚「全然無事なんかじゃねーよ。背中はヒリヒリするどころか、感覚があんまりねーぞ?
    ったくよぉ、お気に入りのアロハだったのに、ボロボロになっちまってよー」
    
初春「せ、先生? 佐天さん?」

佐天「初春? あたし達無事に…… え、先生!?」

鬼塚「よぉ、おめーら、無事かぁ? ったくよ、最近のガキ共はみんな無茶しやがるぜ……」

溝口「ウソよ。ウソよウソウソウソウソウソ!!!!!! 私はレベル3よ?
    こんな無能力者達なんか、一瞬で黒焦げに……なんでよ!」

鬼塚「けっ。これがレベル3ってやつか? 大したことねーなぁ」

溝口「な……」

鬼塚「それとも、手加減でもしてたか?」

溝口「そ、そんなわけが……」

鬼塚「じゃあ、なんで俺が平気で立ってられるんだ?
    無意識の内に手加減してたんじゃねーのか? 本当はこんな事したくねーってよぉ?」
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 03:37:36.22 ID:TYvNIG6lo
    
溝口「うそよ! そんなことあるわけがない! 私は私は……」

ガサガサ

溝口「これが、これさえあれば……」

鬼塚「おい、てめー! その白いのは、まさか――」

溝口「エンジェルブロウ……これさえ、これさえあればあぁぁあああぁ!」

ガサゴソ バリバリバリ!

鬼塚「バカヤロー! そんなに一気に入れたら――」

溝口「ッガアガガッゲッガガガガギギッギギガガザザダジャジャジャ」

鬼塚「おい、こりゃ、いくらなんでもやりすぎだろーが……」

佐天「あれが……エンジェルブロウの効果?」

初春「自分だけの現実を強化する……ウソですよ。だってあれじゃ……」

鬼塚「おい、おめーら、ちぃっとばかし下がっとけよ」

佐天「は、はい! 初春立てる? ほら、こっちに――」

溝口「コロスコロスコロスコロスコロスコロス!!!!!!!」

ボッ ドン! ボッ ブン! ドン!
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 03:38:09.29 ID:TYvNIG6lo

鬼塚「あーあー、完全にキマっちまってやがんなぁ……
    なぁ、知ってっか? デモンズアッパーっつーのはよ、
    大量にキメるとよ、身体ぁメチャメチャ強くすんだよ。
    でもなぁ、そん代わりに幻覚見え始めて……意識飛んじまうんだよ?」

溝口「ガがガガガがアアアアァアァァァアアアアァァ」


ボッ ドン! ボッ ブン! ドン!

鬼塚「だからよぉ、てめーのその火は、当たんねーんだよぉ!?」

ダッダダダッダッダ ガシッ!

鬼塚「もう、いい。寝て起きたら、抜けてると思うからよ……」

バキッ!

溝口「がはっ……」

バタン


鬼塚「ふぅ……おい、佐天! 初春!」

佐天「は、はい!」

鬼塚「ちぃっと、救急車呼んでくれや。あー、ちなみに、二台、頼む、わ……」

バタン!

初春「鬼塚先生!?」

佐天「ちょっと、先生しっかりしてください! 先生!」

鬼塚「(あー、さすがに、こいつは……だ、め、だ――)」

――
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 03:53:46.83 ID:TYvNIG6lo
――夢

 そう、鬼塚は夢を見ていた。

 真夜中の国道、生温い風。
 耳をつんざくような爆音、先を行く真っ赤なテールランプ。

 湘南。ではない。 三多摩。

 抗争に次ぐ抗争に嫌気がさし、龍二と二人で湘南を出た。
 色んな土地に行ったが、流れた先でも結局は『族』だった。

 白い三多摩連合の特攻服。
 
 特攻一番機。GS400E。
 ロケットカウル。三段シート。バッフルを外したヨシムラ管。
 背中の木刀を抜く左手。離れた距離でもわかった。
 
 視線の先からはヘッドライトの嵐。
 先を行くテールランプが点滅した。ブレーキランプの合図。そして――
 
鬼塚「うおぉぉぉっ! ぶっ殺せぇええぇええええ!!!!」

ガバッ!
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 03:54:12.95 ID:TYvNIG6lo
佐天「きゃぁあぁっ!」

ガラガラガラッ

初春「さ、佐天さん! どうかしたんですか!? って……」

鬼塚「はぁはぁはぁ……」

佐天「先生? 先生が起きた!」

初春「あ! 私、お医者さん呼んできますね!」

バタバタバタッ

佐天「先生……心配したよ……ほんと、本当に……(ぐすっ)」

鬼塚「おー、佐天、大丈夫だったかぁ?
    それよりよ、ここはどこだ? っつーか、煙草持ってねーか? 」
    
佐天「ここは病院です…… 先生、さっき倒れて……それで……(ぐすっ)」

鬼塚「あー! わかったわかった! だから泣くなって。んで、煙草ねーか?」

佐天「持ってるわけないじゃないですか! このバカ鬼塚!」

ボフッ!

鬼塚「ちょ、おま、おい、やめろ! こっちは怪我人なんだぞ! って痛ぇ!」

佐天「人がせっかく!(ガスッ) 心配!(ボフッ) してるのに!(バンバンバン!)
    なんで、第一声が『煙草持ってねーか?』なの! 持ってるわけないし!」

鬼塚「おめー、ちょっと、いや、いくら枕でも……痛ぇ! おい!」

佐天「バカ! アホ! ヘンタイ! 死んじゃえば良かったのに!」

ボフッ! ボフッ!

??「やれやれ、あれだけの怪我をしたって言うのに、随分と元気なんだね?」
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 03:54:38.82 ID:TYvNIG6lo

初春「佐天さん! 鬼塚先生! お医者の先生を連れてきましたよ」

鬼塚「医者だぁ? って、カエルじゃねーか!?」

佐天「ちょっと、先生、それはさすがに失礼ですよ」

医師「はっはっは。随分と元気の良い先生だね? 調子はどうだね?」

鬼塚「あー、痛いんすけど、それよりも、このガキにやられた傷が……うぅっ」

佐天「ちょっと! 先生!」

医師「その様子なら大丈夫みたいだね? 本当にその身体はどうなってるんだい?」

鬼塚「なんすか? どっか悪いんすか?」

医師「悪いどころか、良すぎて異常とも言えるね。脅威的な回復力だよ」

鬼塚「まぁ、身体が資本っつーか――」

佐天「単細胞なんで細胞分裂が得意なんですよねー?」

鬼塚「おー、そうなんだ、って、てめぇ!(こいつ、なんで俺のあだ名を知ってやがるんだ?)」

医師「以前からかなりの大怪我を繰り返してるね? 銃創や刃傷もたくさんあるみたいだね」

鬼塚「まー、教師っつーんは、たまにはヤクザとも闘わなきゃなんねー事もありますからねぇ」

医師「そうかい。まぁ、それだけ元気があるなら、いつでも退院していいよ」

鬼塚「お! それじゃ、こんなところはさっさと……って、あれ」

医師「ああ、そうだ。まだ麻酔効いてるかもしれないから、もう少し横になってた方がいいね」

鬼塚「そうっすか。んじゃ、適当に帰らせてもらいますんで」

医師「また何かあったら来なさい。じゃ」

トコトコトコトコ
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 03:55:16.23 ID:TYvNIG6lo

鬼塚「麻酔っつーのはどんくらいで切れるもんなんかねぇ……」

初春「どうなんでしょうか」

佐天「それよりも、先生、一晩くらい入院してた方が……」

鬼塚「入院なんてめんどくせーよ! それに明日は――」

ガラガラッ

??「失礼しますの」

鬼塚「はいはい、どーぞぉ」

初春「白井さん!」

黒子「あら、初春。あなたもここにいたんですの」

初春「はい、さっき先生を呼んで、一緒に戻ってきたんです」

黒子「そうでしたの。ところでそちらの……」

鬼塚「あん? って、お前、この前のチンチクリンじゃねーか!」

黒子「んまぁ! 人の事をいきなりチンチクリン呼ばわりなんて――」

佐天「まあまあ、白井さん。落ち着いて(チンチクリン……確かに)」

黒子「失礼、取り乱しましたの」

鬼塚「んでよー、何の用だ? 煙草なら吸ってねーぞ。持ってねーしな」

黒子「そんな事ではありませんわ。今回の事件の事でお話を伺いに参りましたの」

鬼塚「あー、そういうことか。ってこたぁ、ジャッジメントってやつかぁ?」

黒子「ご存知でしたら話が早いですの。で、今回の事件ですが……」

佐天「あ、とりあえず、私からお話しますね」


――
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 03:55:53.85 ID:TYvNIG6lo

黒子「なるほど。そういう事でしたの」

初春「ええ。それで鬼塚先生が庇ってくれて……」

黒子「こちらの殿方は、見かけによらず良い方ですのね。
    人を見かけで判断してはいけないとは、よく言ったものですわ」
    
鬼塚「おめーよぉ……んで、あの溝口ってガキはどうなるんだ?」

黒子「とりあえずアンチスキルが引き取りましたの。
    これからしばらくは取り調べなどをして、それから施設に行くと思いますの」
    
鬼塚「そうか……ったく、後味わりぃなぁ、おい」

黒子「仕方ありませんわ。これだけの事件を起こしたのですから。
    直接的な被害者があなただけだったなんて、本当に奇跡だとしか思えませんの」

佐天「……」

黒子「しかし、常盤台から転校したとは言え、元生徒があんな事をするなんて……
    まったく恥さらしもいいとこですの。常盤台のジャッジメントとしても――」

佐天「あの、白井さん!」

黒子「なんですの?」

佐天「あの……溝口さんのこと、よく調べてあげてください!
    きっとあんな風になっちゃうには理由があったと思うんです!」

黒子「佐天さん……」

佐天「きっと、夢を持って、頑張って、常盤台に入って、でも退学して……
    あたし、なんとなくですけど、辛かったのかなって……」
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 03:56:20.02 ID:TYvNIG6lo
黒子「ですが、これだけの事件を起こして、しかもそちらの先生も――」

鬼塚「あー、俺のこの傷はよぉ、あれだ。なんつーか、ガス爆発みてーな?
    そうそう、そんな感じだったわけよ! だからあいつは関係ないぜ?」
    
佐天「鬼塚先生……」

黒子「あなた、それだけやられておきながら庇うというんですか?」

鬼塚「庇うも何もよ、俺はイタズラが過ぎたガキに説教かましただけだぜ?
    んで、たまたまガス爆発に逢っちまったっつーわけよ」

黒子「……まったく、あきれましたの。そんな嘘が通じるはずがありませんの」

初春「白井さん! 私からもお願いします!」

黒子「――ですが、加害者の身辺状況をしっかり調査するのも私達の仕事ですわ」

佐天「白井さんっ!」

黒子「本当に、あなた方には参りましたの」


ガラガラッ

??「失礼するよ」
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 03:56:54.45 ID:TYvNIG6lo

鬼塚「おいおい、やけに来客が多いじゃねーか」

??「これは失礼。まさか知らない方の病室だったとは思わなかった」

初春「木山先生!」

木山「ああ。君達の声が聞こえたもんでね。つい、入ってしまったんだ」

黒子「あらまぁ、これは木山先生。今日はボランティアの日ですの?」

木山「ああ。水曜日はここで生徒達に授業をする日だからね。それで今回はどうして病院なんかに?」

鬼塚「(おい、佐天! このちょっと疲れてるけど、良い感じのねーちゃんは誰だ?)」

佐天「(ああ、木山先生です。えっとこの人は……)」

木山「そちらの男性。突然お邪魔してすまない。見たところ怪我をされているようだが」

鬼塚「え!? あー、はいはい。 そんな事は全然気にしなくていいっすよ! はい!」

佐天「……」

木山「そうか。私は木山だ。大脳生理学の研究者だ。専攻はAIM拡散力場。
    今は、週に三回程、この病院の院内学級で先生をしているんだ」
    
鬼塚「おお! 木山先生ってわけですね! 俺は鬼塚英吉22歳独身!
    生涯一教師として、今回はこの街に研修に来てるんですよ!」

佐天「……まあ、ただの変態教師なんですけどね」

鬼塚「お、おめー! いきなり変なこと言うんじゃねぇ! 誤解しちまうだろーが!
    あ、あはは! 木山先生すいません。 まったく、こいつは……」

佐天「本当のことでーす。ふんっ」

プイッ
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 03:57:20.95 ID:TYvNIG6lo

初春「(佐天さん、もしかして……)」

黒子「(あらあら。なんですの、最近はこのような類人猿が流行りなんですの?)」

木山「フフ。どうやら君は立派な教師のようだな」

鬼塚「え? まじっすか! やっぱりわかりますかねー、この俺のオーラってのが」

佐天「はいはい」

木山「生徒とこれだけ心を通わせている教師が、ダメな教師なはずがないさ」

鬼塚「……やめてくださいよ。そういうマジなのは、俺にはあんまり似合わねーんすよ」

木山「フッ。君は面白いな。同じ教師として、なかなか興味深い」


ガラガラッ

??「入りますよ」

鬼塚「あー? ったく、なんだぁ、おい?」

??「鬼塚先生、この度は本当にご苦労さまでした」

鬼塚「あぁ? って、アンタ、柵川中学の教頭!?」

教頭「ええ、覚えててもらいましたか」

鬼塚「あ、はぁ、まあ(こりゃやべーな、どう言い訳すっかな……)」
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 03:57:49.18 ID:TYvNIG6lo
教頭「いやー、さすが鬼塚先生! 本校の非行グループを一日で片付けるなんて!
    わざわざ来て頂いた甲斐があったと言うものですよ! はっはっは」

鬼塚「……」

教頭「いやぁ、これでやっと内の学校も綺麗になりますよ。
    本当にあのクズ共のおかげで、うちの評判が悪かったですからねぇ」

佐天「なっ!ちょっと――」

鬼塚「いやぁ、教頭先生! そこまで褒めて頂けるなんて光栄ですね! よいしょっと」

フラフラッ

鬼塚「おっと」

佐天「ちょっと先生、まだ寝てなきゃ!」

教頭「鬼塚先生大丈夫なんですか? ゆっくり寝ててくださいよ」

鬼塚「いやー、そうも言ってらんねーんですよ……」

バキィッ!

教頭「グヘッ!」

一同「えっ!?」

教頭「な、なにをするんだね! 君、私に何をしたかわかってるのか!?」

鬼塚「わかってるよ。ったくよぉ、どこの学校も教頭って奴はこんな奴なのかぁ!?
    さっきから黙って聞いてりゃ好き放題言いやがって……」

トコトコ
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 03:58:20.74 ID:TYvNIG6lo

教頭「ヒッ! な、なにをする! うわっ! やめ――ぐ、ぐるじぃ……」

鬼塚「生徒の事を『クズ』だなんて言う教師がいるから――」

教頭「や、や、やめ――」

鬼塚「つれぇ思いするガキ共がいるんだろーがぁ!?」

バキバキッ!

教頭「ぶぇっ……」

鬼塚「教師っつーのは、生徒の味方だろーがよぉ! あぁ!?」

佐天「ちょ、ちょっと先生! やめて!」

黒子「これ以上やってはいけませんの! 傷害罪になりますのよ!」

教頭「ひ、ひぃ!」

ダダダッダダッダ

鬼塚「クソが! 胸クソわりぃぜ」

初春「鬼塚先生……」

??「おいおい、一体何の騒ぎじゃん?」

鬼塚「あぁ? 次は誰だよ!?」

??「随分と威勢がいいじゃん?」
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 03:58:47.91 ID:TYvNIG6lo

黒子「あなたは、アンチスキルの――」

黄泉川「黄泉川じゃん。鬼塚先生だっけ? よろしくじゃん」

鬼塚「あー、はいはい、よろしくさんーって!」

ばいんばいん ばいんばいん

鬼塚「(おいおい、なんだよこりゃ! ありえねーだろあのデカさはよぉ!?)」

黒子「ところでアンチスキルの方がどうしたんですの? 報告は私達から――」

黄泉川「ああ、明日ゆっくり聞くじゃんよ。ただ、こっちも一応顔だけ出しとこうと思ったじゃん」

黒子「そうでしたの」

黄泉川「ってわけで、詳しい話はまたの機会にってことで、鬼塚先生、お大事にするじゃん」

鬼塚「あ、はーい、どうも! 次の機会はゆっくり酒でも飲みながら!」

タッタッタッタ

鬼塚「ふぅ。これでもう誰もこねーよな?」

黒子「ええ、予想外ばかりでしたが、関係しそうな方は、これで全部だと思いますの」

鬼塚「それじゃ、帰るとすっかな! おい、佐天、初春!」

佐天「……」

初春「は、はい!(ちょっと、佐天さん!)」

鬼塚「ありがとよ」
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 03:59:16.19 ID:TYvNIG6lo

佐天「え? あはは、いやー、そんな」

初春「いえいえ、こちらこそありがとうございました!」

鬼塚「ゆっくり挨拶できなかったけど、柵川中学とはお別れだ」

初春「あ、そうでしたね」

鬼塚「まあ、まだしばらくこっちにいっからよ。また会うだろ!」

佐天「先生、痴漢とかして捕まらないでくださいよ!」

鬼塚「な! おめー、コノヤロー! おっと」

フラフラ ガシッ

木山「まだ少しふらついているな。私の車で送ろう」

鬼塚「おぉ! いいんすか!? いやー、ありがとうございます!」

佐天「木山先生! その人変態ですから気をつけてくださいね!」

木山「ああ。大丈夫だ。私の起伏の無い身体に劣情を催す男性など――」

黒子「まったく、騒々しいったらありませんの」

――
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 03:59:49.64 ID:TYvNIG6lo

木山「その怪我では、少し乗り難いかもしれないが、載ってくれたまえ」

鬼塚「って! こいつぁ……ガヤルドじゃねぇかよ!!!!!!!」

木山「ああ。君は車に詳しいのかい?」

鬼塚「詳しいも何も、ランボルギーニなんて、俺らにとっちゃヒーローっつーか……」

木山「そうか。なら、その怪我が治ったら運転してみると良い。
    この車も、たまには私以外の人間が運転した方が、癖がわかりやすくなる」

鬼塚「うおおおおぉおぉ! マジっすか!? こんな怪我ささっと治しちまいますよ!」

木山「それは良かった。この車も喜ぶ」

キュルルル ゴウン! ドドッドッドッドッドッド ウォンウォンッ ブォォォ――

木山「そういえば、さっきのあれだが」

鬼塚「さっきのあれってなんすか?」

木山「教師が生徒の事をってやつだ」

鬼塚「あー、いやぁ、なんつーか、あーいった教師ってガキの頃から嫌いなんすよね」

木山「そうかい。だが、あの言葉、きっとあの場にいた子達に響いたと思う。
    もちろん私の心にも響いた。忘れないでおこうと思う」

鬼塚「いや、そんな、ははっ、照れるじゃないっすか」


――
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 04:00:16.60 ID:TYvNIG6lo

――佐天の部屋

佐天「いやぁ、本当にいろいろあったなぁ……」

 佐天は月曜日からの出来事を頭の中で反芻した。
 誘拐され、鬼塚に助けらた。
 ストラップを千切られ、鬼塚と昼食を食べ、机の中にゴミを詰め込まれた。
 下駄箱に落書きをされ、学校から抜け出し、鬼塚に捕まった。
 無理矢理牛丼を食べさせられ、公園で重福さんに会って、学校に戻って……
 そして――

佐天「溝口さん達、どうなっちゃうのかな……」

佐天「もしかしたら、私がああなっていたのかな……」

――「じ、ジャッジメントです!」

佐天「初春、かっこよかったな……一生懸命あたしの事を守ろうとしてくれて……」

――「よぉ、佐天、かっこいいじゃねーかよ?」

佐天「鬼塚先生……あー!! もう!! むかつく!!!」

ボスッ! ボスッ! ボスッ!

132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 04:00:49.45 ID:TYvNIG6lo

――鬼塚の宿舎

キンッ シュボッ パチン

鬼塚「ふぅ……さすがの俺も今日は疲れたぜ」

ゴクゴク

鬼塚「しかしよぉ、なんかやべー匂いがプンプンしてきやがったぜ……」

――「英吉さん!」

鬼塚「あんな夢を見るなんて、ちぃっとばかし、暴れ過ぎかもしれねーなぁ。
    とりあえず、今日は何も考えずにさっさと寝るか!
    ――いや、あの巨乳とスレンダーな木山先生の夢でも見るかな……」


【9月8日水曜日 4日目終了】
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 04:02:02.39 ID:TYvNIG6lo
四日目終了〜
とりあえず、ここまで
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 04:10:13.77 ID:TpdKI6bCo
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 05:07:15.36 ID:TYvNIG6lo
しかし、いろんなSSスレ見てるけど、レベル高いの多いな。うらやましいわ
最近は地の文を結構入れるのが流行りなのかな?
前は嫌われてたからあんまり入れないように擬音使いまくってるけど、
後半になってくるとどうしても地の文が必要になるなー

地の文無い方がいいのかな?
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 05:31:16.55 ID:L3t4CRLPo

ここも十分レベル高いと思うが……
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 10:06:31.73 ID:nKSCAsOIO
地の文無しでいいと思ふ
一文一文の最後が全部「だった」で終わるとかならアレだけどそういう訳でもなし、今のままで良いんじゃないでしょうか?
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 12:38:20.23 ID:ndmEA/gGo
無しでも有りでも俺は見る

ただ地の文いれるんだったら「」の前に名前入れなくてもだれが喋ってるか分かるような文にしてくれると嬉しいな
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 13:23:45.68 ID:rqKvOHcro
上手く地の文書けるならアンチなんて湧かない
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 23:47:40.73 ID:TYvNIG6lo
なるほど。確かに上手ければ地の文だろうが叩かれないか
まあ、あんまり入れないようにしていこうかな
ありがとー
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 23:48:25.47 ID:TYvNIG6lo
【9月9日木曜日 5日目】

――同日未明 第10学区某所


ミッドナイトブルーの空。日が昇るまでまだ二時間以上あった。
アンチスキルによる『ストレンジ』掃討作戦により、眠ったように静かになった街。
猥雑な雰囲気と、危険な香りがするこの場所には、何かに誘われるように、
また新たなスキルアウト達が集まってきていた……


男A「長谷部さん、例のブツ、受け取ってきました」

長谷部「おう。捌く奴らに回しとけよ? あと、帳簿っつーのつけとけよ」

男A「わかってます。しかし、あいつら何者なんですかね?」

長谷部「さあな……でも、俺らにブツと道具流してくれてんだからよ。敵じゃねーだろ?」

男A「そうですよね。なんか気になっちまったもんですから」

長谷部「まあ、何かあれば、フケちまえば問題ねーだろ」

男A[ははっ、そうですね」


――ガン! ダッダッダ! オラァ!

長谷部「あ? なんだ!?」

男A「ちょっと見てきます!」


――バリンッ! バタバタバタッ ガンッ!

142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 23:48:52.43 ID:TYvNIG6lo

男A「ぐはぁっ!」

ドーン!

??「おいおい、ここなら静かだと思ってきてみたら、随分と騒々しい奴らがいるじゃねぇか?」

長谷部「おい!? お前、何だ!」

??「お前に名乗る理由はないぜ?」

長谷部「何スカしてやがんだ!? おい、全員集まれ!」

バタバタッ ダッダッダッダ

長谷部「おい、なんでこんだけしか来ねぇんだ!? 聞こえないのか! おい!!」

??「無駄だと思うぜ…… 表にいた奴らは随分と眠そうだったからな」

長谷部「なっ……」

??「それで、少し聞きたいんだが」

長谷部「な、なんだ!?」

??「表にあった趣味の悪い車だけどよ。あれ、『キャパシティダウン』だろ?」

長谷部「てめぇ! なんでそれを!」

??「見覚えがあってよ。あれ、どこで手に入れたんだ?」

長谷部「うるせぇ! おい、おめーらやるぞ!」

??「やれやれ……結局こうなるのか」
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 23:49:19.04 ID:TYvNIG6lo

ドカッ! バキッ! ボコッ!

長谷部「うぅ……」

??「やりすぎたか……この状態じゃ聞こうにも聞けないな……」

ドサッ

??「このソファ、なかなか落ち着くな……ん? なんだこれ? 錠剤……?」

長谷部「お、まえ、なにも、の、だ?」

??「目が覚めたのか? さっき言わなかったか? 名乗る理由は無いってな。
それより、この錠剤はなんだ? 随分とたくさんあるみたいだけどよ」

長谷部「そ、それは……」

??「悪いけど、意地でも聞かせてもらうぜ」

――


キンッ シュボッ ポイッ ――ボッ! パチパチッ メラメラメラ

??「随分派手なキャンプファイアーになったな。しかし、こんな物がなんで……」
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 23:49:50.58 ID:TYvNIG6lo
――朝 鬼塚の宿舎

トントントン グツグツ トントン

鬼塚「……ん? なんか良い匂いがするな」

モソモソ ゴソゴソ

鬼塚「ふわぁぁぁっと。一体なんだぁ?」

佐天「あ! 鬼塚先生おはようございます!」

鬼塚「さ、佐天じゃねーか!?」

佐天「そうですよー。鍵かかってなかったから勝手に入っちゃいました。へへへ」

鬼塚「へへへってお前――」

佐天「って、いやぁぁぁぁあぁぁ!!!」

ブンッ カキンッ


鬼塚「ぐはっ! てめー、いきなり鍋の蓋投げるんじゃねぇ!」

佐天「先生のバカ! ズボンくらいしっかり履いてよ!」

鬼塚「あぁ? って、俺のゾウさんがハミ出て――」

佐天「実況する前にさっさと履け! このバカ鬼塚!」

鬼塚「いやぁ、わりーわりー。 普段からパンツ一丁で寝てるもんだからよぉ」

佐天「まったく…… ほら、顔洗ってきてください。ご飯できてますから」

鬼塚「お、おう。よっこらっしょっと」

パタパタパタパタ
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 23:50:15.96 ID:TYvNIG6lo

佐天「(先生の見ちゃった……なんか、この前のビデオと形が違ってたな。弟のと同じ?)」

鬼塚「うぃーっと。さっぱりしたぜ」

佐天「あ、ほらほら、座って座って」

鬼塚「お! こいつは美味そうじゃねーか! 朝から焼き魚とか何年ぶりだぁ?」

佐天「はい、ご飯どうぞ。どんどん食べてくださいね」

鬼塚「んじゃ、いただきまーす!」

ガツガツガツガツ モグモグ ゴクゴク ガツガツガツ

鬼塚「おかわり!」

佐天「ちょっと、早すぎですよ! しっかり噛んで食べてください」

鬼塚「わりーわりー。腹減ってたからよ。お、サンキュ」

ガツガツガツガツ

佐天「まったくもう……」


――
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 23:50:41.88 ID:TYvNIG6lo

鬼塚「あー! 食った食った! いやぁ、佐天の飯はマジで美味ぇな」

佐天「へっへっへ。朝から涙子さんのご飯を食べれるなんて、この幸せ者め!」

鬼塚「自分で言うんじゃねーよ。 っつーかよ、なんでおめーがここにいるんだ?」

佐天「え? って、ほら、先生怪我してたし、ご飯とかも作りそうになかったから……」

鬼塚「おー、そうかそうか。そいつはありがとよ」

佐天「いえいえ(木山先生がいるかどうか見に来たなんて言えないよね……)」

鬼塚「それよりよ、学校行かなくていいんか?」

佐天「えっ? あっ! もうこんな時間!」

鬼塚「おめー、さすがに三日連続で遅刻なんてしてたら、担任うるせーぞ?」

佐天「急がなきゃ! あ、先生、洗い物くらい自分でしてくださいね!
食器はまた取りに来ますから! それじゃ、いってきます!」

鬼塚「おうよ、気ぃつけて行ってこいや」

佐天「はーい!」

バタバタバタバタッ

鬼塚「ったくよぉ、朝っぱらから起こしやがって……今日は午後からだってのによー」

ガラガラッ キンッ シュボッ パチン

鬼塚「ふぅ。お、走ってる走ってる。まあ、美味い飯食えたし、良いとすっか」
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 23:51:08.12 ID:TYvNIG6lo

――同時刻 常盤台女子寮

御坂「そんなことがあったのね……でも、まぁ、佐天さんも初春さんも無事でよかったわ」

黒子「ほんとですの。全く毎度毎度事件に巻き込まれるなんて……
佐天さんは仕方ないとしても、やはり、初春に関しては、ジャッジメントとしての自覚が――」

御坂「はいはい。まあ、今回はレベル3の『発火能力者』でしょ?
さすがに初春さん達だけじゃ、なかなか厳しかったかもしれないわね」

黒子「ええ、それ以外にも、スキルアウトに出入りしている方たちが何名か」

御坂「スキルアウト、か……」

黒子「しかし、スキルアウト予備軍は良いとしても、あのレベル3の発火能力者。
あれを相手にしてちょっとした怪我だけなんて、あの殿方、本当に類人猿かもしれませんの」

御坂「ああ、鬼塚先生だっけ? 私も一度見てみたいな」

黒子「いけませんの! あんな野蛮で下品で粗暴な原人を、お姉さまに視界に入れるなど……
神が許しても、私が許しませんわ! もし、あの野蛮人が何かしたらと思うと――」

御坂「わかった、わかった。まあ、変な事してきても、私にもこれがあるからね」

ビリッ ビリビリッ

黒子「そうですわね。お姉さまなら、あんな類人猿なんか相手になりませんの。
それより、急がないと遅刻してしまいますのよ!」

御坂「あっ、ちょっと黒子お願い!」

黒子「んもう、おねえさまったら、こんな時ばかり私を頼って……」

シュンッ


――
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 23:51:35.20 ID:TYvNIG6lo

鬼塚「食器も洗っておいたし、これで文句は言われねーよな。
しかし、佐天のやつ、急に懐きだしやがってよ。せめて高校生ならよぉ……」

ゴソゴソ

鬼塚「ま、んな事言っててもしゃーねーし、今日はお待ちかねの女子高だしよ」

バタバタ ガタン

鬼塚「時間もまだまだあるから、とりあえず街でナンパでもしてくるか」

タッタッタ


――
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 23:52:02.07 ID:TYvNIG6lo

――街中

鬼塚「ナンパっつっても、人があんまり出歩いてねーじゃねーかよ!
さすがにほとんどが学生だけあんな……ったく、昼寝でもしとけばよかったぜ」

トコトコトコトコ

鬼塚「ったく、こんなんじゃ、どこに行っても女なんかつかまんねーんじゃ――」

??「あのっ!」

鬼塚「あ? なんか聞こえたような……」

??「こっちだよ!って、ミサカはミサカはあなたの服を引っ張ってみたり」

鬼塚「なんだぁ? このちびっ子は? おめー迷子か?」

ミサカ?「迷子なんかじゃないよ! むしろ迷子なのはあの人の方だって、ミサカはミサカは――」

鬼塚「あー、ミサカちゃんっつーのか? んで、あの人ってのはどんな奴なんだぁ?」
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 23:52:29.12 ID:TYvNIG6lo

ミサカ?「えっと、真っ白な髪で、頭に包帯ぐるぐる巻きで、杖をついてて、
もやしみたいにひょろひょろしてるんだよって、ミサカはミサカは説明してみたり」

鬼塚「真っ白な髪で、もやしだぁ? じーちゃんかばーちゃんでも探してるのか?」

ミサカ?「違うんだよ、って、ミサカはミサカは否定してみる」

鬼塚「(よくわかんねーガキだなぁ)あー、そうだなぁ、あれだ、おまわりさんにでも――」

??「クソガキィ! なんでこんなとこにいやがンだァ!?」

ミサカ?「あ、やっと見つけたって、ミサカはミサカは――」

鬼塚「あ? そいつがお前の言ってた、真っ白なもやしって奴か?」

ミサカ?「そうなの、って、ミサ――あべしっ」

もやし「テメェ、人の事をもやしとか言ってンじゃねェ! ブチ殺されたいのかァ?」

ミサカ?「あなたこそ勝手に病院抜け出したりなんてして、って、ミサカは――」

もやし「あァ? ンなこたァ俺の勝手だろォが! ったく、ほら、帰るぞ」

ミサカ?「はーい、って、ミサカはミサカはあなたの手を握ってみたり」

鬼塚「一体なんだってんだ……」

――
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 23:52:55.53 ID:TYvNIG6lo

――喫煙所

キンッ シュボッ パチン

鬼塚「ふぃー。やーっと喫煙所を見つけたぜ。クソ、まだ10時じゃねーかよ」

??「失礼」

鬼塚「あ? 何か用か?(って、なんだ、この赤髪? この暑い中コートなんか着やがって)」

赤髪「煙草を一本もらえないか? 手持ちを切らしてしまってね」

鬼塚「かまわねーけどよ、ほら」

赤髪「ありがとう。すぅ……ふぅー。この街は学生が多いせいか、煙草を売っている店も少なくてね」

鬼塚「っつーかよぉ、そのコート、熱くねーのか?」

赤髪「いや、そういうのはあまり感じないんだ」

鬼塚「ほー、そうなんか。 ところでよー、この時間帯に可愛いねーちゃんいそうな場所知らねーか?」

赤髪「可愛い……なかなか難しいな」

鬼塚「そうかー。ナンパしようと思ってんだけどよー、全然人いねーんだよ!」

赤髪「なるほど……それならば一つだけアドバイスをしておこう」

鬼塚「あん?」

赤髪「片足のないジーンズを履いた女には気をつけるといい。
ナンパ目的なんて不謹慎な理由で声をかけると……斬られるよ?」

鬼塚「なっ、斬られるって、おいおい、尋常じゃねーぞ?」

赤髪「そう。尋常じゃない。そして、この街はそういう街なのさ。
それじゃ、煙草ありがとう。助かったよ。また、縁があればどこかで……」

鬼塚「おー、おめーも日射病に気ぃつけろよー(変な奴だったな……)」

152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 23:53:25.84 ID:TYvNIG6lo

――セブンスミスト付近

鬼塚「おいおい、こりゃマジで人がいねーじゃねーかよ! こんなんじゃナンパなんか……」

トコトコトコ

木山「ん? 鬼塚先生じゃないか」

鬼塚「おお、木山先生! こんなとこで会うなんて奇遇っすね!
(おーっと、こいつはチャンス到来ってやつかぁ!?)」

木山「少しばかり買い物をね。鬼塚先生こそどうしたんだ? 研修じゃなかったのか?」

鬼塚「えっ? あー、今日は午後からなんで、少しナン――
じゃない、街でもブラブラして飯でも食おうかなって、ははっ」

木山「そうか。食事か。少し早いかもしれないが、一緒にどうかな?」

鬼塚「ま、まじっすか! 是非お供させて頂きます!」

木山「パスタでいいかな。この前、花飾りの子に教えてもらった店があるんだ」

鬼塚「いやぁ、木山先生と一緒ならどこだろうとお供させてもらいますよ!」

木山「ふふっ、君は本当に冗談が上手い。では、行こうか」


153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 23:53:49.78 ID:TYvNIG6lo

――イタリアンレストラン

木山「どうだ、なかなかの味だとは思わないか?」

鬼塚「いやー、ひっさしぶりにこんなうめーもん食いましたよ!」

木山「そうか。それは連れてきた甲斐があった」

鬼塚「佐天の飯もなかなか良かったけど、こういう美味さとはまた違うからなー」

木山「ん? どういうことだい?」

鬼塚「あぁ、なんか昨日の昼は佐天が弁当作ってくれたんすよねー」

木山「ほう」

鬼塚「まったく、何が楽しくて飯作ってくんだか……俺に惚れてたりして、はははっ」

木山「ふふ。そうかもな(鈍感な男だ…… だが、それはそれで……)」

鬼塚「あー、そういや、そろそろ行かないとやべーかも」

木山「そうか、もうそんな時間だったか。ところで今日はこれからどこに行くんだ?」

鬼塚「えーっと、確か、『常盤台』っつー女子高なんすよねー。学舎のなんちゃらって――」

木山「ああ、『学舎の園』か。そこなら通り道だ。送っていこう」

鬼塚「おぉ!? まじっすか! またガヤルドに乗せてもらえるんすか!?」

木山「ああ……いや、今日は君に運転してもらおうか」

鬼塚「うおっしゃあああぁぁあ! ガヤルド転がしたなんつったら龍二のヤローに――」

木山「さて、それでは行くとしよう」

鬼塚「うっす!」

154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 23:54:18.01 ID:TYvNIG6lo

――駐車場

キュルルル ゴウン! ドドッドッドッドッドッド ウォンウォンッ ブォォォ――

鬼塚「うおぉぉ! こいつはすげー加速だぜ! こいつならF40に勝てるんじゃねーかぁ!?」

木山「ふふ、どうだろうな」

鬼塚「うらァ! ドリフトォォォォ!!!!!!!!」

ブォン! キキィィィ! ブォォォォォ!

木山「なかなか良いパワードリフトだな」

鬼塚「でしょー? 単車も良いけど、車もおもしれーなぁ!」

木山「ふふ。ところで、君の怪我だが、どうやらほとんど治ってるようだね」

鬼塚「そうなんすよ! あのカエル顔の医者良い腕っすよね。
ちょっと前に撃たれた時なんか、何日も入院させやがって、退屈で死にそうでしたよー」

木山「まあ、あの医者は『冥土返し』と呼ばれるくらいだからね。
だが、君の回復の早さには驚かされた。あの人も驚いていたよ」

鬼塚「まぁ、ガキん頃から修羅場潜ってますからねぇ。身体も慣れちまうじゃないっすかね」

木山「魅力的だな」

鬼塚「!? あはは、そんな照れますって(おいおい、こいつぁ、もしかして……)」

木山「ふふ。(それにしても異常な早さだ……研究対象としてとても魅力的だ)」

155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 23:54:44.32 ID:TYvNIG6lo
――学舎の園前

鬼塚「いやー、木山先生ありがとうございます! 飯どころかガヤルドまで転がさせてもらっちまって」

木山「なに、気にする程の事でもないさ。それでは、私は研究があるので失礼するよ」

鬼塚「気ぃつけてくださいね!」

木山「ああ。君も身体を大切にな。また機会があればガヤルドを走らせてやってくれ」

鬼塚「もちろんっすよ!」

ドドッドッドッドッドッド ブォォォ――

鬼塚「さぁて、ここが『学舎の園』ってやつか…… まるで童話ん中みてーな街だな」

ガードマン「ちょっと! そこの!」

鬼塚「あん? 俺のことっすかね?」

ガードマン「ここは関係者以外立ち入り禁止だよ!」

鬼塚「あー、俺関係者なんすよ。 常盤台っつー学校に用事があって――」

ガードマン「常盤台!? お前見たいな奴が常盤台だって!?」

鬼塚「おいおい、随分な言い草じゃねーか、あぁ!?」

ガードマン「ひっ!」

教員「失礼ですが……」

鬼塚「あぁん? こっちは今取り込み中だ! 一昨日きやがれ!」

教員「あの、鬼塚先生、どうかしましたか?」

鬼塚「え? あー、あんた柵川中学の!」

教員「昨日はお疲れ様でした。実は常盤台への引継ぎや連絡も任されていました」

鬼塚「そうだったんすか! それなら最初に言ってくださいよー。えーっと……」

教員「野中ですよ。覚えておいてくださいね」

鬼塚「あー、すんません! 忘れっぽいもんですから、ははっ(名乗られたかぁ……?)」

野中「それでは、ガードマンさん。手続きをお願いしますね」

ガードマン「あ、は、はい(何者なんだ、この金髪は…… 白いスーツなんか着て……)」

156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/30(日) 23:55:11.66 ID:TYvNIG6lo
また余裕があれば後ほど
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 23:59:42.74 ID:i+/YsyY9o

この時間に余裕がないって何やってるんだよwwww
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/31(月) 00:02:37.71 ID:jdEXVnKUo
仕事…
やっても別に金がもらえるもんじゃ無いんだけどwww
前にSS書いてた時よりある意味では状況悪化してるわwww

さっさと仕事中終わらせて完結させたいなー
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/31(月) 00:22:09.04 ID:UJ8cWSIYo
今夜勤で病院の警備員だけど暇だからここ見てる、仕事がんばってくれ
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/31(月) 01:04:30.38 ID:7zs+WxHAO
積みゲーだった「街」やりながら見てる 428も神ゲーだったけどこれもおもろい
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/31(月) 02:21:34.16 ID:jdEXVnKUo
現実逃避しにきた
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/31(月) 02:25:16.47 ID:jdEXVnKUo
――常盤台

鬼塚「ほぉー。ここが常盤台ってとこっすか? とてつもねーお嬢様学校だっつー……」

野中「ほとんどが良家の子供ですが、生徒の中には一般家庭の子供もいますよ」

鬼塚「へぇ。こんな学校じゃ、普通のガキは耐えられないんじゃないっすか?」

野中「そうでもないと思いますよ。この学校はレベル3以上じゃなくては入れないですし、
家柄以上にレベルが物を言う世界とでも言いますか……」

鬼塚「ほー。そんじゃ、レベル5でしたっけ。そんな奴がいたらやりたい放題っすね」

野中「常盤台にはレベル5が二人在籍していますよ。『超電磁砲』と『心理掌握』ですね」

鬼塚「なんだかすげー名前っすね」

野中「ああ、本名ではないですよ。通称、ニックネームというやつです」

鬼塚「そ、そうっすよね! まさか『超電磁砲』なんて名前なわけないですよね、あはは……」

野中「ええ(やっぱり何か不安だ……)」
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/31(月) 02:25:42.40 ID:jdEXVnKUo
――職員室

教頭「これは、これは鬼塚先生、よくぞいらっしゃってくれました!」

ガシッ

鬼塚「え、ああ、はい(おいおい、おっさん! 手なんか握ってくるんじゃねーよ!)」

教頭「非行問題の権威である鬼塚先生に来て頂けるとは、私、長い事教員をやっておりますが……」

鬼塚「いやー、そんなことより、俺は今日は何をすりゃいいんすか?」

教頭「今日はですね、6限に全校生徒を集めまして、集会を致します。
鬼塚先生のお話を聞ける、またとないチャンスですので、生徒全員に――」

鬼塚「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! それって全員の前で授業をしろって事じゃ……」

教頭「ええ。もちろんです。ビデオ学習をされると伺ってますので、
VHS、DVD、ブルーレイとデッキを用意してありますのでご自由にお使いください」

鬼塚「あ、そいつはありがとうございます。 ちなみに生徒って何人くらいいるんすか?」

教頭「全校生徒合わせて200名程です」

鬼塚「200人!?(おいおい、200人の女子高生の前で授業なんかしたらよぉ……)

女子A「きゃぁ! 鬼塚先生よ!」
女子B「ああああっん! もうダメ!!!!」バタンッ
女子C「私もダメぇぇえぇぇっ! 嬉しすぎて倒れちゃうぅぅう」
女子D「鬼塚先生抱いて!!!!」
女生徒一同「おにづかせんせぇえぇぇええーーーーーー!!!!」

鬼塚「君達順番だよ、順番。守れないのなら……
全員まとめて『喰っちまうぜぇぇ!?』 なんてことも……)」


教頭「――かせんせい。鬼塚先生?」

鬼塚「あ、いえ! なんでもないです! この鬼塚英吉、しっかりと任務を果たします!」

教頭「よろしくお願いします」


164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/31(月) 02:26:11.91 ID:jdEXVnKUo
――講堂

御坂「はぁ……講演って何なのよ。面倒だからサボっちゃおうかなぁ」

黒子「お姉さま、それはいけませんの」

御坂「げっ! 黒子!」

黒子「んまぁ! 随分なご挨拶ですこと。お姉さまに嫌われたら私、私……」

御坂「はいはい。そんな事より、なんでこんな所にいるのよ」

黒子「あら、先生のお話聞いてませんでしたの? 今日の講演の座席は自由ですの」

御坂「そうだったんだ。しかし、今日の講演、なんなのよ」

黒子「『非行の現実とその解決策』。ジャッジメントとしては少し興味がありますの」

御坂「しっかし、この常盤台で非行についての講演があるとはねぇ」

黒子「お姉さま。昨日の事件をお忘れですの? 退学したとは言え、元常盤台の生徒も……」

御坂「あ……そうだったわね。そうよね。誰でもそういう事になる可能性はあるのよね」

黒子「ええ。ですから、しっかりと講演を――教頭先生がいらっしゃいましたわ」


教頭「えー、ゴホン! 皆さん集まっていますね。
本日は『非行の現実とその解決策』ということで、『外部』から非行問題の権威を呼んでます」

御坂「権威か……どうせ胡散臭い学者か何かでしょ」

黒子「お姉さまお静かになさってください」

御坂「はいはい」

教頭「それでは、入って頂きましょう。――こちらへどうぞ」
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/31(月) 02:26:42.67 ID:jdEXVnKUo
――静寂。

非行問題という、常盤台の生徒達にとっては普段なら縁の無い話だが、
元生徒による『昨日の事件』の噂が流れている常盤台。
生徒達は口には出さない物の、大きな関心を抱いていた。そして、マイクの音が……


鬼塚「『夢』を見てる奴ら、みんなに贈ります……ドリーミン!!!」

ジャージャカッジャッジャ♪ ジャジャジャージャン♪

http://www.youtube.com/watch?v=uttKuA-fKfQ&feature=related

鬼塚「どりーみんっ! アスファルート 泥だーらーけーのくーつ♪」


御坂「ちょっと! 何よこれ!? なんでいきなり歌ってるわけ??」

黒子「なんですの!? 類人猿!? しかも……上半身裸だなんて!」

キャー ヘンタイヨー ナンデ! イヤァァァ

教頭「お、鬼塚先生!!!! おい、おい、誰か! 誰かぁぁぁ!」


鬼塚「そんな奴らは好きじゃない♪ 俺はそんなにバカじゃない♪」

黒子「この常盤台でなんて真似を!」

御坂「(あれ? この曲……カッコ良いかも……)」

教頭「マイクを、いや、幕を下ろせ! なんで、なんでこんなことに……ガクッ」


――キョウトウガタオレター ホケンシツニツレテケー
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/31(月) 02:27:09.26 ID:jdEXVnKUo
――

鬼塚「センキュー!」

ザワザワ ガヤガヤ バタバタ

鬼塚「(決まった……やっぱりBOφWYにして正解だったぜ)」

鬼塚「よぉ、俺が今日の講演を担当する鬼塚英吉だ。よろしくなぁ!」

黒子「ちょっと、そこのあなた! 一体何のつもりですの!?」

鬼塚「あ? って、おめー、チンチクリンじゃねーか!」

黒子「チンチクリンだなんて! 本当に失礼な類人猿ですの!」

鬼塚「おい、ちょっと待てよ! おめー、中坊のくせになんでこんなとこにいるんだ?」

黒子「何を仰っているのですか? ここは常盤台『中学』ですの!」

鬼塚「はぁ!? 中学だぁ!? おい、ここって女子『高』じゃねーのか!?」

黒子「女子中学『校』ですわ。それより、あなたが非行問題の権威ですの?」

鬼塚「ちょっと待て! おい、ふざけんじゃねーぞぉ!?」

ピッピッピ プルルルルルル プルルルルルル
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/31(月) 02:27:36.29 ID:jdEXVnKUo
理事長「はい、吉祥学園理事長室です」

鬼塚「理事長! どういうことなんすか!?」

理事長「鬼塚先生ですか。昨日は活躍してくれたみたいですね」

鬼塚「そんなことより、ここが、常盤台って女子高じゃねーんすか!?」

理事長「え、女子校よ?」

鬼塚「だって、中学って……一体どういうことっすか!?」

理事長「あら、言わなかったかしら? 女子中学校。女子校よ?」

鬼塚「ちょ、そんな、エロサイトじゃあるまいし、そんな引っ掛けを……」

理事長「私は高校だなんて言ってませんよ」

鬼塚「お、俺の、夢が……」

理事長「とりあえず、後三日間、頑張ってくださいね」

プチッ ツーツーツー

鬼塚「……」

168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/31(月) 02:28:36.61 ID:jdEXVnKUo
――放課後 常盤台

御坂「はぁ……」

黒子「お姉さま、そんなにがっかりなさらずに……」

御坂「がっかりというか、ぐったりね。何よ、あの講演……」

黒子「突然ライブを始めたかと思えば、次は女子高生がどうとか……
その上、講演とは名ばかりで、暴走族のDVDを延々一時間半も見せ続けるなんて」

御坂「教頭先生が起きたから止められたけど、起きてこなかったらと思うとぞっとするわね」

黒子「まったくですの。もしあのままあんなDVDを見せられ続けたらと思うと……」

御坂「まぁ、ある意味、非行の実態がよくわかったと言えばわかったけどね」

黒子「しかし、あれが非行問題の権威だとは、未だに信じられませんの」

御坂「それに初春さんや佐天さんを助けたなんてね。なんだかおかしい」

黒子「思い出したら、急に疲れが出てきましたの」

御坂「あはは。そう言えば、あんたこれから仕事でしょ?」

黒子「ええ。スキルアウトに流れている武器やキャパシティダウンの出所についての調査ですの」

御坂「キャパシティダウンか……」

黒子「何かを思い出してるところ、恐縮ですが、お姉さま?」

御坂「はいはい。何かあれば、すぐに連絡すればいいんでしょ」

黒子「わかって頂けてるみたいで一安心ですの。それではお姉さま、また後ほど」

御坂「はーい。行ってらっしゃい――さて、クレープでも食べて、立ち読みでもするかな」

169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/31(月) 02:29:05.31 ID:jdEXVnKUo
――街

鬼塚「思い出すだけで腹立つぜ……」

野中「先生、私が言うのもなんですが、さすがにあれはやりすぎかと……」

鬼塚「そうっすかね? 吉祥学園のガキんちょ共なんか、俺が永ちゃんのライブやった時
すっげー喜んで聴いてくれてたんすけどねー。やっぱりお嬢様学校だからなんかなー」

野中「そうでしたか……あはは……」

鬼塚「いやぁ、野中先生もすんませんね。いろいろと迷惑かけちったみたいで」

野中「いえいえ。まあ、明日の講義はなくなってしまったみたいなので、
とりあえず明日はフリーという事で……日曜日に改めて連絡致します」

鬼塚「フリーっすか? さすがになんかわりーなぁ……
あー、それともまた柵川中学で授業でもしましょうか?」

野中「いえいえ、それには及びません。日曜に簡単なレポートとヒアリングをさせて頂ければ……」

鬼塚「そうっすか。んじゃ、そういう事にさせてもらいますわー」

野中「よろしくお願いしますね。それでは鬼塚先生、また後日」

鬼塚「お疲れさまっすー。――さーてと、とりあえず、どうすっかな……」


プルルルルル プルルルルル
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/31(月) 02:29:32.94 ID:jdEXVnKUo
鬼塚「あん? はいはい、もしもーし。こちら地球防衛軍学園都市出張所」

佐天「鬼塚先生ですかー? 聞きましたよ。常盤台でやらかしたんですか?」

鬼塚「おめー、耳がはえーなぁ。なんかよ、どーやら教頭の機嫌を悪くさせちまったみたいでよ」

佐天「あはは。さすがにいきなり裸で歌い出すなんてやりすぎですよ」

鬼塚「やっぱり最近のガキんちょ共には、BOφWYの素晴らしさがわかんねーんかぁ?」

佐天「そんなことより先生! 今暇ですか?」

鬼塚「暇っつーか、もう来んなって言われちまってよー。どーしよーかと」

佐天「やっぱり暇だ! それじゃあ、クレープ食べましょう!」

鬼塚「クレープだぁ? なんで俺が――」

佐天「はいはい、文句言わない! それじゃ場所は――」

鬼塚「おいおい」

佐天「それじゃ、待ってますよー!」

ツーツーツー

鬼塚「ったくよぉ……」

171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/31(月) 02:30:19.16 ID:jdEXVnKUo
――クレープ屋

佐天「おーにーづーかーせんせー!」

鬼塚「おー。道に迷っちまったぜ」

佐天「遅いですよー。あ、そうだ、こちらにいるのが」

御坂「ちょっと! 今日の金髪教師!」

鬼塚「げ。常盤台のガキんちょじゃねーか!」

御坂「が、ガキですってぇ!?」

バチバチッ ピリピリッ


鬼塚「ちょっ!」

佐天「はいはい、二人ともやめてくださいね。えーっと、鬼塚先生。
こっちにいるのが、常盤台中学二年生の御坂美琴さんで、
御坂さん、こっちがあたし達を助けてくれた鬼塚先生です!」

御坂「やっぱりアンタだったのね……」

鬼塚「おめー、いきなりアンタ呼ばわりたぁ、良い度胸してんじゃねーか?」

佐天「もう、二人とも喧嘩しないでください!」
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/31(月) 02:30:46.33 ID:jdEXVnKUo
御坂「はぁ……佐天さん達を助けたってのは、どうやら本当みたいだけど、
非行問題の権威って本当なの? うちの子達、みんな怖がってたわよ。
あんた、権威というよりも、非行の権化って感じよね」

鬼塚「あぁ? 非行問題の権威とかよー、ぶっちゃけ、俺もいきなり言われてな」

御坂「はぁ? 何それ?」

鬼塚「いやよー。確かに俺は悪ガキ共の扱いは慣れてっけどよ。
権威だか権利だか知らねーけど、そんな偉そうなもんじゃねーぞ?
普通にガキと一緒に遊んで、ガキと同じこと考えてるだけだからよー」

御坂「それじゃ、アンタ自身が、非行教師ってわけか……」

佐天「まぁ、それが鬼塚先生の良い所なんですよ!」

鬼塚「よー、佐天。おめーわかってんじゃねーか! さっすが俺の生徒だぜ」

佐天「へっへーん」

御坂「(佐天さん……まさかこんな金髪に毒されてるんじゃ……)」

173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/31(月) 02:31:26.31 ID:jdEXVnKUo
ファンファンファンファン ミチヲアケテクダサイ

鬼塚「あ? なんだありゃ?」

佐天「ああ、アンチスキルの特殊走行車両ですね」

御坂「そう言えば、なんでも東京都の副知事が見学に来るって聞いたわね。その護衛じゃない?」

鬼塚「ほー、副知事ねぇ」

御坂「なんでも、学園都市の教育現場を見て回って参考にするとかどうとか……
そもそもの設立理由も、環境も、何もかも違うのに、参考になるのかしらね」

鬼塚「お偉いさんの考えることはよくわかんねーからなぁ。
それに俺なんかをわざわざこんなとこに送り込んでくるくらいだからよぉ」

佐天「でも、先生が来てくれたおかげで、あたしも初春も無事なんですから!」

鬼塚「しっかり感謝しろよー?」

佐天「してますってー。だから朝ごはんも作りに行ったじゃないですか!
あ、そうだ。明日も作りに行きますね! お魚、何が好きですか?」

御坂「ちょ、ちょっと佐天さん! こいつの家にあがったの!?」

佐天「そうですよー。今朝、朝ごはんつくりに行っちゃいました! えへへ」

御坂「あ、アンタ! 中学生を家に連れ込んで何してんのよ!」
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/31(月) 02:32:39.58 ID:jdEXVnKUo
鬼塚「ちょっと待て! 誤解だ! 俺は何もしてねーぞ!?
    朝起きたらよ、いきなりコイツが部屋ん中にいやがって……しかも鍋の蓋で殴られるし」

佐天「あれは、先生が変な物を出すから悪いんですよ!」

鬼塚「ばっ、ばかやろ――」

御坂「へ、へ、変な物って! あんた、まさか佐天さんに……」

パチパチッ ビリビリッ パチパチパチパチッ

鬼塚「ちょ、誤解だかんな!? おい、佐天! おめーもなんとか言えよ!」

佐天「あはは! 知ーらない!」

御坂「アンタ……教師のクセに中学生に手を出すなんて……このっ――」

黒子「まぁ、随分と賑やかですこと……」

佐天「白井さん! 初春!」

御坂「え? 黒子?」

黒子「お姉さま。いくらその類人猿が、変態の権化だとしても、
    一般人に能力を振るうなんて感心できませんの。ましてやお姉さまは常盤台のエース……」
   
御坂「わかったわよ!」

鬼塚「ふぅー。助かったぜー。チンチクリンも役に立つじゃねーか」
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/31(月) 02:33:08.49 ID:jdEXVnKUo

黒子「チンチク……あなた、一度痛い目に合った方がよろしいんでは?」

初春「まあまあ、白井さん。 御坂さん、佐天さん、鬼塚先生、こんにちは」

鬼塚「おー、初春じゃねーか。このチンチクリンと何してんだ?」

黒子「またチンチクリンって言いましたの! 私には白井黒子という立派な名前が――」

初春「(チンチクリン……ぷぷっ)」

黒子「初春? 今あなた何か言いませんでしたの?」

初春「いっ、いえ! 何にも言ってないですよ!
    えっと、今日はジャッジメントの仕事で、今はパトロール中なんですよ!」
   
鬼塚「パトロールねぇ。そいつは、ご苦労さん。
    この地球防衛軍の鬼塚英吉、初春軍曹のご活躍を期待しているであります!」

御坂「なにそれ……」

佐天「そうそう。そういえば、あの『エンジェルブロウ』のこと、何かわかったんですか?」

黒子「いえ、それが、まだですの」

初春「でも、スキルアウトに流れている『キャパシティダウン』についてはわかりまたよ」

御坂「わかったの!?」

黒子「初春! 余計な事は喋るなとあれほど……本当にあなたはジャッジメントとしての――」

佐天「それで、それで? 結局どこのどいつが流してたの?」

御坂「私も気になるわね」

黒子「はぁ……口外しないでくださいまし?
    実は、『MAR』の元研究員が行方不明になっていますの」
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/31(月) 02:33:35.83 ID:jdEXVnKUo

御坂「『MAR』って!? まさか……」

初春「先進状況救助隊……先日の『乱雑開放』事件の首謀者、テレスティーナ・木原・LLが
    指揮、所属していた研究機関であり、武装グループ……」

黒子「ええ。そして、あの事件の際には、大量の武器やキャパシティダウンを
    スキルアウトに流していたのは、彼女の率いる『MAR』のメンバー達」

御坂「まさか、またあんな事件を起こそうなんて言うんじゃないでしょうね!?」

黒子「落ち着いてくださいまし。この件とテレスティーナには、直接の関係はないと思われますの」

佐天「あ、そっか。まだあの人は拘留中なんですよね」

初春「ええ。外部と連絡を取った痕跡も無いようです。
    ただ、事件の際にスキルアウトに武器を流していたメンバーと思われる研究員が
    一人だけ未だ捕まっていなかったんです。ですから、もしかしたら、と……」

御坂「そうだったの……でも、なんで今更?」

黒子「さぁ、それがわかれば、もう少し手の打ち用があるのですが」

御坂「それじゃ、こんなところで油売ってないで、早く調査しなきゃダメなんじゃないの?」

黒子「んまぁ! お姉さまったら! 黒子は遊んでいるわけではありませんの!」

初春「実はですね。最近、スキルアウト達が、また活発になっているって噂聞いたことありますか?」

佐天「スキルアウト……私もだったけど、確かに最近事件が多いって聞くよね」

御坂「そう言えばそうね。街の中にも、ちょっとガラの悪い奴らが目立つ気がするわ」
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/31(月) 02:34:55.63 ID:jdEXVnKUo
黒子「アンチスキルによる、『ストレンジ』掃討作戦が行われましたが、
    ですが、スキルアウトの連中が、再びあの辺りを根城にして何かしていると……」

御坂「それじゃ、さっさとアンチスキルを集めて、また捕まえればいいじゃない」

黒子「そう簡単なことじゃありませんの。あれだけの大規模な作戦を実施するには、
    上の方とも調整しなければ無理ですの。それにはまだ証拠が少ないですわ」

御坂「それじゃ、証拠集めればいいじゃない。なんなら私がまた『ストレンジ』に行こうか?」

黒子「やめてくださいまし! まったく……ですので、私達が街を見回りつつ、
    スキルアウトの犯行現場を押さえて、正式に対応できるようにしようとしてますの」

佐天「なるほどー。だから、パトロールってわけかー」

鬼塚「なんつーか、めんどくせーことになってるみてーだな……
    おめーらの言ってる事の半分以上がチンプンカンプンだぜ?」

黒子「あなたは一般人ですので、知らなくて構いませんの。
    それに『外部』の方なんですから、尚更……」

鬼塚「おいおい、随分と冷てーじゃねーか」

黒子「いいえ、そんなことはありませんの。良いですの?
    お姉さまも、あなたも、余計な事に首を突っ込まないでくださいまし」

初春「あ、白井さん。そろそろパトロール再開しないと、固法先輩に怒られちゃいますよ」

黒子「いけませんの。それでは」

パタパタパタパタ


鬼塚「ったくよぉ。全然話がわかんねー上に、あのチンチクリンは……」

佐天「まあまあ。えーっと、それじゃ、どこから説明しよっかな」

御坂「そうねぇ。えっと、じゃあ、まずは『乱雑開放』について簡単に――」


――
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/31(月) 02:35:28.76 ID:jdEXVnKUo

鬼塚「ほー。なるほどなぁ。しっかしまぁ、能力っつーのは色んなモンがあるんだな」

御坂「そうね。似たような能力でも細分化していけば、それこそ数え切れないくらいよ」

佐天「能力か……たくさんあるのに、あたしには何も無いんだもんなー」

鬼塚「佐天よー。この前言ったの忘れちまったか?
    能力があろうとなかろうとよ、おめーにはおめーの良さってのがあんだろ?
    周りにいるダチがそれを証明してんじゃねーか」

御坂「(この人、実は……)」

佐天「あはは。大丈夫ですよ! 別に無能力者だからって、いじけたりなんてしませんよ!」

鬼塚「おうよ」


??「こんな時間まで何してる? そろそろ完全下校時刻じゃん」

御坂「げっ。もうこんな時間だ」

佐天「やばいですね。早く帰らないと……」

御坂「そうね。それじゃ、佐天さんまたね! 鬼塚……先生も」

佐天「御坂さんさようならー! 先生もまた明日ねー!」

鬼塚「おーよ。気ぃつけて帰れよー」

??「鬼塚先生、元気そうじゃん?」

鬼塚「ん? おぉ!」

ばいんばいん ばいんばいん
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/31(月) 02:36:01.83 ID:jdEXVnKUo
黄泉川「アンチスキルの黄泉川じゃん」

鬼塚「おー、黄泉川さん!(まさか再びこのパイオツを眺める事ができるとはよぉ!?)」

黄泉川「何してんじゃん?」

鬼塚「いやー、佐天達とちぃっとばかし話し込んじまって」

黄泉川「楽しく話すのはいいけど、下校時刻は守らせなきゃいけないじゃん」

鬼塚「面目ないっす」

黄泉川「それより、この後の予定は?」

鬼塚「帰って、飯でも食って寝るっつーとこっすよ」

黄泉川「それなら丁度いいじゃん! 一緒に飯にいくじゃんよ!」

鬼塚「ま、まじっすか!(おいおい、木山先生といい、黄泉川さんといいよぉ……)」


180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/31(月) 02:36:36.63 ID:jdEXVnKUo
――謎の屋台

鬼塚「あのー、黄泉川さん、一体ここって何の屋台なんすか?」

黄泉川「なんの屋台だろうなぁ。まぁ、そんなの気にしないで、ジャンジャン飲むじゃん」

鬼塚「おっとっと……いやー、頂きます!」

??「あらあら。今日は黄泉川先生一人ですか?」

鬼塚「なっ! (なんだ、このちびっ子は……)」

黄泉川「小萌先生じゃん。鉄装は明日のテスト作ってないとかで残業じゃん」

小萌「そうですか。ん? そちらの男性はどなたなんです?」

黄泉川「『外部』から研修にきた鬼塚先生じゃん」

小萌「鬼塚先生ですか。私は月詠小萌です。高校教師をやってます」

鬼塚「こ、高校教師!? ちょ、黄泉川さん、マジっすか? こんな……」

黄泉川「ははっ、本当じゃん。ちなみに私と同僚じゃん」

鬼塚「黄泉川さんも先生だったんっすか!?」

黄泉川「そうじゃん。アンチスキルは一部教師が兼任してるじゃん」

小萌「ところで、鬼塚先生。さっき私が教師だって言った時、何か変な事考えませんでしたか?」

鬼塚「えっ、いや、んなことねーっすよ!」

小萌「そうですか。あんまり舐めたクチを聞くと、痛い目見せちゃいますよ?」

鬼塚「あはっ、はははは……(このちびっ子、なかなかやべぇぞ)」

小萌「おじさーん。魔王三人分と、豚足と、スズキのムニエルと、チンジャオロースください」

おっさん「あいよー」

小萌「それじゃ、せっかくなんですから一緒に飲みましょう。魔王は奢っちゃいます!」

鬼塚「は、はぁ、ありがとうございます(この街……マジでわかんねー……)

181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/31(月) 02:37:05.97 ID:jdEXVnKUo
――帰り道

鬼塚「……うぇっぷ」

トボトボ フラフラ

鬼塚「やべぇ。飲みすぎた……あのちびっ子、どう考えてもザルだろ……うっぷ。
    黄泉川先生も帰っちまうし……あの人酒癖悪すぎだろ……クソッ!」

ジョボジョボジョボ

キンッ シュボッ パチン

鬼塚「ふぃー。しっかし飲みすぎたぜー。まあ、明日暇だから良いんだけどよー。ひっく」


ダッダダダダダッダダダッダ

鬼塚「あ、百円みっけ」

ブン!

鬼塚「うぉぉ! なんだぁ!?」

??「死ねやこらぁぁぁぁ!」

ブン! ブン!

鬼塚「てめっ、いきなり……」

ガンッ! ボコッ!

鬼塚「いきなりバットで襲ってくるたぁ、良い度胸してんじゃねーか? あぁ!?」

??「げふっ!」

鬼塚「百円見つけなかったら、直撃コースだったんじゃねーのかぁ? って――」

182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/31(月) 02:37:47.24 ID:jdEXVnKUo
ブォンブォンブォン バタバタバタバタ ドタドタドタ ザザザッザ

鬼塚「……」

スキルアウトA「あんたが鬼塚か」

鬼塚「だったら何だってんだよ?」

スキルアウトA「どうもでかい顔してるって噂を聞いてな」

鬼塚「ほー。学園都市じゃ、俺様の噂で持ちきりっつーわけか。
    んで、てめーらは何だぁ? サインでも欲しいっつーのか? そんなにゾロゾロとよぉ?」

スキルアウトB「ふざけたこと言ってんじゃねーぞ! びびってんだろ? あ?」

スキルアウトC「俺達を前にして、随分余裕な振りしてるけど、頭大丈夫か?」

鬼塚「てめーら、何モンだ?」

スキルアウトA「『悪夢』<ナイトメア>だ……あんたを連れて来いって命令でね」

鬼塚「『悪夢』だぁ!? だっせー名前つけやがってよー。
    んで、誰が俺を連れて来いってんだ? 用があんならてめーで来やがれって言っとけや」
   
スキルアウトA「……直接言うんだな」

鬼塚「へっ、どーやら、帰そうって気はないみたいだな……」

ジャリッ ザザッ

鬼塚「(ざっと20人ってとこか。早めにケリつけねーと、さすがにやべーかもしんねーな……)

スキルアウトA「やれ」

「「「うおおぉぉぉおぉぉぉ! ぶっころせえええぇぇぇぇぇ」」」
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/31(月) 02:38:14.23 ID:jdEXVnKUo
バタバタバタバタ ドタドタドタ ブンッ バキッ ブンッ バキバキッ バリンッ!

鬼塚「うらぁぁぁ! 上等だよ、テメーらよぉ!?」

スキルアウトD「死ねや!」

鬼塚「おっと。しょぼい蹴りなんか出してんじゃねーよ!」

ガシッ ブンッ!

スキルアウトD「うわわわぁぁぁぁあぁぁあっぁああ」

スキルアウトE「な、ジャイアントスイングだとぉ!?」

ガンッ! ガンッ! ガンッ! ブンッ!

スキルアウトB「あっという間に五人も!?」

鬼塚「おいおい、相変わらず『咬ませ犬』っつーのは弱いなぁ!?」

ガスッ! ボコッ! ドカッ! ガンガンガンッ!

鬼塚「さぁて……残りは随分と少なくなっちまったなぁ?」

スキルアウトA「チッ」

スキルアウトB「おい、あれを使え!」

スキルアウトA「クソが……」

ウィィーーーーーン ブォォオォォォォォーーーーーーーン

鬼塚「なっ、なんだこの音はよぉ!? 頭に……ぐっ!」
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/31(月) 02:40:31.99 ID:jdEXVnKUo

スキルアウトA「今の音は『爆音小僧』<ロアードピクシー>……俺の能力だ。
        ターゲット周囲に160デシベルの音場を発生させてるんだ。
        このまま音を聞き続けていたら、耳がぶっ壊れるぜ?」

鬼塚「なんだとぉ!? (何言ってやがんのか全然わかんねぇ)」

スキルアウトA「聴覚器官を壊されたくなければ、大人しく付いて来い」

鬼塚「よくわかんねーけど、音だけかぁ!? こんなもん慣れさえすれば……」

スキルアウトA「なっ! それなら……」

ウィィーーーーーン ブォォオォォォォォーーーーーーーン

鬼塚「うおっ! うるせぇ!!!」

バキッ ボコッ ガキンッ!

スキルアウトB「ぐはっ!」

スキルアウトA「なっ! なんで平気な顔して動けるんだ!」

鬼塚「何か言ってそうだなぁ、おい? んでもよぉ、はっきり言わなきゃ聞こえねーんだよ!?」

バキッ!

スキルアウトA「あべしっ!」

鬼塚「ふぅ。やっと音止まったか」

スキルアウトA「なんで、あの音場の中を平然と……ジェットエンジン以上の音量だぞ!?」

鬼塚「あのよ……ジェットエンジンだかなんだか知らねーけどよ。
    134号線<イチサンヨン>の単車の河ん中に比べたら屁みたいなもんだぜぇ?」

スキルアウトA「意味わからねーことを……」

鬼塚「さてと、そんじゃ、ゆっくり話を聞かせてもらうとするか……」

スキルアウトA「ひっ!」
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/31(月) 02:41:00.75 ID:jdEXVnKUo
――鬼塚の宿舎

ガラガラッ キンッ シュボッ パチン

鬼塚「ふぅ……まさか、俺が狙われることになるなんてな。さすがに予想外ってやつだぜ」

帰宅途中に襲撃を受けた鬼塚は、襲ってきたスキルアウトを返り討ちにした。
リーダー格の男を得意の拷問で責め、話を聞きだそうとしたが、男はほとんど何も知らなかった。
聞き出すことができたのは、大きなチームが結成されつつあるという事、
そこのトップが、鬼塚に用事があるということ、それだけだった。
そして、これからも鬼塚は狙われ続ける、そう言って男は気を失った。

そして、これは――



『悪夢』の始まりだった……

【9月9日木曜日 5日目終了】
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/01/31(月) 02:43:13.56 ID:jdEXVnKUo
とりあえずこんな感じで五日目は終了

鬼塚の出張も後半に突入したわけです
このあとどういう展開になるのか

ここら辺から遅筆になるのでご容赦を
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/31(月) 03:10:17.90 ID:7zs+WxHAO
麗美は出るの?
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/01(火) 00:58:01.99 ID:F8GTryypo
>『悪夢』の始まりだった……

英吉を狙う側の悪夢ですね、分かります
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/01(火) 01:08:04.62 ID:Kg0invDIO
悪夢は今日結成したんじゃねーの
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/01(火) 01:16:50.91 ID:kNYyOcZJo
>>187
うるみは今のところ出る予定なし
使いどころが難しすぎてお蔵入りに…

>>188-189
これすごくわかりにくいよな。すまん…
そもそもが、『悪夢<ナイトメア>』というチームがあって、
そいつらが現実に、(一般名詞的な意味での)悪夢のような時間を生み出していく
その発端が、鬼塚襲撃事件だった。的な感覚でした。うーん、わかりにくいよねー
チーム名とかけてたんだけど、なかなか…
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/01(火) 01:39:23.65 ID:F8GTryypo
>>190
>>188は鬼塚無双で敵がひぃぃぃぃ勘弁してつかぁさぁい!!っていう目にあうんじゃねーのっていうネタ
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/01(火) 01:59:42.12 ID:kNYyOcZJo
>>191
あああ、そういうことか恥ずかしい…
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/01(火) 09:38:15.39 ID:m48j+jqIO
>>190
冗談だよちゃんとわかるw
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/05(土) 23:18:26.15 ID:eHzg0YEto
漏れら極悪非道のageブラザーズ!
今日もネタもないのにageてやるからな!
 ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  ∧_∧   ∧_∧    age
 (・∀・∩)(∩・∀・)    age
 (つ  丿 (   ⊂) age
  ( ヽノ   ヽ/  )   age
  し(_)   (_)J
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/06(日) 05:41:03.02 ID:wM0v1oAAO
これ未完で落ちたやつじゃないか!続き気になってたから嬉しいわ〜
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/06(日) 21:42:52.91 ID:eziuJ55Mo
忙しくて続き書いてないだけなんだからねっ!
放置なんかじゃないんだから、勘違いしないでよ!
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/07(月) 14:37:20.47 ID:PSAUtCCpo
爆音小僧だぁ……!?
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 23:20:44.21 ID:ELC+ZuVIO
数日のうちに続きを投下します
仕事めんどくせぇ
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/14(月) 01:11:09.78 ID:yeCuU7xeo
まだか・・・俺の佐天さん成分が枯渇しているぞ
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/14(月) 18:28:03.81 ID:hQlEp6PBo
佐天さん分というのは佐天さんに含まれているのか?
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 18:27:05.71 ID:V06ndHcIO
【9月10日金曜日 6日目】

――同日未明 第十学区

 生温い風が吹いていた。
 湿気が服越しに肌にまとわりついてくる。
 
 夏休みが明け、例年なら静かになるこの時期。
 ヒトナツの思い出を作り終えた連中は、元の日常に戻っていく。
 
 しかし、今年は少し違う。
 
 まだ、『祭り』が続いていた。
 
 いや――
 
 『祭り』はこれから始まろうとしていた。
 

――
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 18:28:01.29 ID:V06ndHcIO
「これはさすがに異常だな……」

 男は一人、見慣れた街を歩いていた。
 見慣れた街の見慣れぬ住人。昨日から違和感を感じ続けている。
 一種の自警団として望まれた『無能力者集団』が『スキルアウト』と呼ばれはじめ、その本質が変換していくのは仕方無い事だった。

 だが、この状況はおかしい。
 
 この時期、この時間に、これだけの人間がこの界隈にいるのは異常だった。
 しかも、『夏祭り』とは言えない、剣呑な雰囲気に包まれている。
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 18:28:51.56 ID:V06ndHcIO
男1「おい」

??「ん?」

男1「あんた、どこのチームの人間だ?」

??「……」

男2「あぁ? それとも参加希望者か?」

??「参加……?」

男1「なんだよ、何にも知らねーのか?」

??「しばらくぶち込まれてたもんでな」

男2「そうだったのか。何やってパクられたんだ? 強盗か?」

??「……傷害だ」

男1「あんた腕っ節強そうだからな。まあ、ご苦労さん」

??「ところで、何か『祭り』でもあるのか?」

男1「ああ。でっかい『祭り』があるんだよ」

男2「せっかく出てきたんだ。お前も参加したらどうだ?」

??「そんなに簡単に参加させてもらえるのか?」

男1「ああ。『悪夢』ってチーム知ってるか?」

??「いや」

男2「アンチスキルの掃討作戦は知ってるよな? 色んなチームがバラけちまったけどよ、
    あいつらが、色々と呼びかけてよぉ。バラけた奴らを集めて、のし上がってきたチームなんだよ」

??「……」

男2「さすがに全部のチームをまとめることはできなかったみたいだけどな」

男1「そうは言ってもかなりの人数が集まってるぜ。五百人くれーか?」

??「それで『祭り』か」
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 18:29:23.53 ID:V06ndHcIO
男1「そういうことだ。あんたも来いよ。これから俺達のチームの集会があるんだ」

??「そんなに簡単に行ってもいいのか?」

男1「人数は多い方が良いからな。『祭り』だしよ」

??「……せっかくだ。参加させてもらうか」

男2「おうよ。楽しい『祭り』にしようぜ? 何もかもぶっ壊すようなやつによー?」

??「ああ……(『悪夢』か……何をする気かわからないが、とりあえず行くしかないな)」

――
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 18:30:14.56 ID:8qQeNMl4o
キタ━━━(Д゚(○=(゚∀゚)=○)Д゚)━━━!!
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 18:30:55.18 ID:V06ndHcIO
――朝 鬼塚の宿舎

佐天「せんせー! ご飯できましたよー?」

ぐがー すぴー ぐーぐー むにゃむにゃ

佐天「全くもう……だらしないなぁ」

鬼塚「むにゃむにゃ」

佐天「でも、そういうのが放っておけなくなるというか、なんというか……」

鬼塚「ふゆつきちゃん……」

佐天「 !? 」

鬼塚「そんなとこを……」

佐天「……いい加減に起きなさい!」

ボスッ!
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 18:33:05.64 ID:V06ndHcIO
出先なので、iPhoneから投下中
改行とか、投下の感覚とかおかしいかもしれないけどご容赦
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 18:33:32.73 ID:V06ndHcIO
鬼塚「んぁ!? なんだぁ?」

佐天「もう! 先生、ご飯できたから顔洗ってきてください!」

プイッ

鬼塚「おー……佐天かぁ。今日も飯作りにきてくれたんか。ふわぁぁ」

佐天「いいから、ささっとズボン履いて、顔洗う!」

鬼塚「あー、わぁーったわぁーった!」

佐天「ったく……」

――
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 18:35:32.00 ID:V06ndHcIO
鬼塚「今日はアジのみりん干しか。渋い選択じゃねーか」

佐天「だって先生はいっつも不健康な物食べてそうだし」

鬼塚「そうでもねーぞ? 昨日は昼飯はイタリア料理で、晩飯は屋台でよー」

佐天「ほう?」

鬼塚「んで、そこの屋台っつーのがよ、何かよくわかんねーけど、
    注文した料理がポンポン出てくるんだよ。和洋中なんでもござれだぜ?」
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 18:36:30.08 ID:V06ndHcIO
佐天「へぇ」

鬼塚「まあ、結局ガンガン飲まされちまって――」

佐天「それで、誰と行ったんですか?」ニコッ

鬼塚「え? 誰って、昼飯は木山先生だろ? んで、晩飯は黄泉川先生だ」

佐天「いつの間にか仲良くなってるんですねー。へー。そうなんだー」

鬼塚「おいおい、何怒ってるんだよ?」

佐天「べっつにー」

鬼塚「なんだよ、ったく」モグモグ

佐天「……」

鬼塚「しっかし、ほんとうめーなぁ。この味噌汁もよ。カブの味噌汁とかいつ以来だぁ?」

佐天「……バカ」

鬼塚「あん?」
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 18:37:04.71 ID:V06ndHcIO
佐天「なんでもないですよーだ! ほらほら、早く食べちゃってください!」

鬼塚「なんだよ、よく噛んで食えっつったのはお前だろ!?」

佐天「そうじゃないと、食器洗って行けないじゃないですか」

鬼塚「あー、んなもんくらいやっとくからよ。遅刻しねーよーにな」

佐天「はーい。そうだ、今日はどうするんですか?」

鬼塚「どうするっても、常盤台には来るなって言われてるし、
    どこに行くっつーアテもねーからよぉ。街でもブラつくしかねーわな」

佐天「そうなんだ。それじゃ、放課後はパフェ食べにいきましょう!」

鬼塚「パフェだぁ?」

佐天「今まで何のために朝ごはん作ったと思ってるんですか? ご馳走してくださいね!」

鬼塚「なっ、おめー、俺の給料いくらか知ってんのかぁ!?」

佐天「イタリア料理食べたり、屋台で飲んだりできるんだから大丈夫でしょ!」

鬼塚「いや、それは先生達が……」

佐天「あっと、そろそろ時間だから行きますねー。放課後、メールしますねー」

バタバタバタ

鬼塚「ったく。可愛いとこあんじゃねーか。せめて、あと3歳……」
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 18:38:36.40 ID:8qQeNMl4o
なんというラブラブ空間
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 18:40:04.75 ID:V06ndHcIO
――午前10時

鬼塚「しっかし、ごろごろしてんのも飽きてきたな……」

キンッ シュボッ パチン

鬼塚「ふぅー。ゲームもねーし、金もねーし、人もいねーし、やることねーなぁ」

prrrrrrr prrrrrr

鬼塚「ん? はいはい、もしもーし」

??「よぉ、英吉かぁ?」

鬼塚「なんだ、冴島じゃねーか。何の用だ?」

冴島「随分なご挨拶じゃねーか? あ? そんな事言うんなら今すぐ借金耳ぃ揃えて――」

鬼塚「わぁーったよ! んで、どうしたんだ? 火星の土地なら買わねーぞ?」

冴島「あー、あれなぁ、実は売り切れちまってよー」

鬼塚「は? まじかよ? 三百万もしたっつーのに!?」

冴島「値上がり確実だからなぁ。英吉も買っておけば良かったのによ?
    んで、今度は金星の土地が……って、ちげーんだ。ちょいと聞きてーことがあってよ?」
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 18:41:14.20 ID:V06ndHcIO
鬼塚「あん? 聞きてーことだぁ? あいにく儲け話には縁がねーぞ?」

冴島「だから、ちげーっつってんだろ? 三多摩連合のことでなぁ」

鬼塚「三多摩ぁ? おいおい、最近は大人しくしてんだろーが」

冴島「まあ、聞けって。4年前だかそこら辺でよ、おめーらが三多摩あたり仕切り始めるくれーの話でよ」

鬼塚「あー。最初はあの辺りは小っせーチームがいくつかあったな」

冴島「そうそう。その頃結構目立ってたらしいんだけどよ、大岩っつー奴知ってっか? 大岩啓太」

鬼塚「大岩……啓太?」

冴島「知ってんのか!?」

鬼塚「あ、いや、なーんか覚えあるような、ないような」

冴島「ったく、なんだよ。頼りねーな」

鬼塚「で、そいつがどうしたんだ?」

冴島「あの頃よ、『デモンズアッパー』っつードラッグ流行ってたろ?
    なんかよー、最近また流行り出しそうだってーんで、関係者洗ってるわけよ」
    
鬼塚「その関係者っつーのが……」

冴島「大岩ってわけよ。ちぃっとばかり、賞金掛かってるもんでな。
    おめーがおいしい情報持ってたら、少しばかりわけてやろーかなってよー」

鬼塚「けっ。どうせ、なんやかんや言っててめーで賞金独り占めすんのが目に見えてんぜ?」

冴島「まあよぉ、そういうわけでよー。もしなんかわかったら教えてくれや」

鬼塚「おう。おめーももうちょい何かあったら連絡してくれ」

冴島「あ? なんでおめーに教えなきゃなんねーんだ?」

鬼塚「人様が手伝ってやろーってーのにそういう事言うのか?」

冴島「あー、わりぃわりぃ! んじゃよ、とりあえずまた連絡するわ」

鬼塚「おう」

ピッ

鬼塚「……啓太か」

キンッ シュボッ パチン

鬼塚「いや……まさかな」

――
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 18:42:21.12 ID:aJvE4tDVo
来てた
ガンバれ
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 18:42:36.17 ID:V06ndHcIO
――午後0時 市街地

鬼塚「飯食いに出てきたのは良いけど、どこで食うかだな」

トコトコ キョロキョロ

鬼塚「そうは言っても、飯屋なんか全然知らねーしなー。
    どっか美味くて、安くて、可愛いねーちゃんがいる店ねーかな」

「喫茶-猫眼- 本日のランチ550円(ご飯おかわり無料)」

鬼塚「お、めんどくせーしここで良いか」

カランカラーン

店主「……いらっしゃいませ」

鬼塚「 !? 」

店主「……空いてる席に座りな」

鬼塚「あ、あぁ(ちょ、なんだよ、このハゲ…… でけぇ!)」
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 18:44:32.92 ID:V06ndHcIO
店主「……うちの店のメニューだ」

鬼塚「どうも……(やべぇぞ? どう考えても本職の匂いがすんぞ?)」

店主「……ちなみに、食事なら、日替わりかチーズリゾットが美味い」

鬼塚「じゃあ、とりあえず、日替わりを……」

店主「……日替わりのメニューは聞かなくていいのか!?」

鬼塚「うおっ! ……えーっと、今日は何すか?」

店主「……煮込みハンバーグだ」

鬼塚「あ、じゃあそいつで……」

店主「……かしこまりました。おい、美樹! 日替わりだ!」

美樹「はーい。ちょっと待ってもらって」

店主「……だそうだ」

鬼塚「は、はぁ……」
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 18:45:51.74 ID:V06ndHcIO
――喫茶 猫眼

鬼塚「おお! こりゃ美味ぇ!」

店主「フンッ。だから美味いと言っただろう」

鬼塚「そ、そうっすね」

店主「……おかわりは自由だ。米はどうする?」

鬼塚「あ、いや」

店主「遠慮するんじゃねぇ! おい、美樹! 米のおかわりだ!」

美樹「はーい」

鬼塚「あ、いや、すんません」

店主「サービスだからな」

美樹「ご飯のおかわり、お待たせしました」

鬼塚「 !? 」

美樹「ハンバーグどうですか? 最近日替わり始めたんですけど、あんまり食べてくれなくって」

鬼塚「こ、これは美味いっすよ! いや、マジで! (な、なんだこの美人は! 愛人かぁ!?)」

店主「フンッ。美味いに決まってるだろう」

鬼塚「そ、そうっすよね、はは……」

美樹「ちょっと、だめでしょ。お客さんにそんな言い方して。ごめんなさいね」

鬼塚「いえ、気にしないでください」

店主「……フンッ」

美樹「あ、おかわり自由だから、どんどん食べてね」

鬼塚「はい! いただきます!」

――
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 18:48:58.26 ID:V06ndHcIO
――午後1時 市街地

鬼塚「うっぷ……さすがに食いすぎたぜ……」

キンッ シュボッ パチン

鬼塚「ふぅー。あー、しっかし、あの店は一体何だってんだ?
    ヤクザみたいなハゲがいるかと思えば、美人なねーちゃんが居てよ」

トコトコ ブラブラ

鬼塚「まぁ、確かにハンバーグは美味かったけどよ」

??「よーよー、そこのにーちゃん?」

鬼塚「あのねーちゃんだけだったら、通ったんだけどなー。さっすがにあのヤクザは……」

??「おい! シカトしてんじゃねーぞぉ!?」

鬼塚「あん?」
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 18:49:38.74 ID:V06ndHcIO
??「さっきから人の事シカトしやがってよ、てめーなめてんのか!?」

鬼塚「わりーわりー。んで、何の用だ?」

??「ちょっと顔貸してくれや」

鬼塚「はぁ?」

??「だから顔貸せって言って――」

ボコッ!

??「ひでぶっ!」

鬼塚「なんだぁ? てめーよぉ、俺様が誰だか知って声かけてきてんのか? あん?」

??「ひっ、ひぃぃぃぃぃ」

バタバタバタバタバタッ

鬼塚「なんだったんだ?」
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 18:50:47.01 ID:V06ndHcIO
――午後2時20分 市街地

??「おい、お前、鬼塚だな?」

 ――バキッ!

??「あの金髪、鬼塚って奴じゃねーか?」

??「そうだ、間違いねーぞ!」

 ――ボコッ!

 ――ミシミシッ バキッ!

??「おい、仲間集めろ!」

 ――ガンッ!

鬼塚「さっきからなんだぁ? ガキ共がやけに殺気だってやがるじゃねーか」

 ――バキッ!

鬼塚「ゴキブリみてーにゾロゾロ沸いてきやがってよ……キリがねーぞ?」

 ――ダッダッダッダ バタバタバタ

??「どこ行ったー!? おい、おめーら探せ!」

??「俺達はあっち見に行くぞ!」

バタバタバタバタ
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 18:51:39.28 ID:V06ndHcIO
鬼塚「ふぅ、行ったか……こりゃ、いちいち相手してたらキリがねーぞ?」

??「見つけたぞ!」

鬼塚「クソッ!」

バキッ!

??「あべしっ」

鬼塚「見つかったか?」

キョロキョロ

鬼塚「見つかってねーみてーだな…… おい、おめー起きろや!」

ペシペシッ

??「うぅ…… うおっ!」

鬼塚「おーっと、刈上げクンよぉ? でけー声出したら痛い目見んぜ? わかったか?」

刈上げ「(コクコク)」

鬼塚「よーし、良い子だな。おめーら、さっきから俺狙って来てんだろ?」

刈上げ「あ、あぁ」

鬼塚「てめーらも『悪夢』とか言うチームのメンバーかぁ?」

刈上げ「ち、違う」

鬼塚「あん? じゃあ、なんで俺狙ってんだ?」

刈上げ「……300万だよ」

鬼塚「300万だぁ?」

刈上げ「そうだ。あんたを連れていけば、300万もらえるって」

鬼塚「おいおい、どーいうことだ? 誰が300万くれるっつーんだ?」

刈上げ「し、知らねーよ! ネットで見たんだよ。アンタを捕まえたらメールしろって……」

鬼塚「ケッ! 面白ぇことやってくれんじゃねーか」

刈上げ「もう俺はアンタを狙わないからさ、な? 見逃してくれよ」

鬼塚「おう、良いぜ……だから、ゆっくり寝てやがれ!」

バキッ!

鬼塚「賞金首か……たった300万っつーのが、気にいらねーが、面白くなってきたじゃねーか」

――
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 18:52:13.49 ID:V06ndHcIO
とりあえすここまで
短くて申し訳ない
仕事に戻ります
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 18:54:19.69 ID:8qQeNMl4o
乙でした
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 19:12:41.43 ID:XHERkn0X0
鬼武者スレかと思ったら鬼塚だったでござる
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 02:09:25.53 ID:QB8EAloUo
>>1おかえりずっとまってた
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 03:50:36.96 ID:rhEKcj4IO
シティハンター懐かしいなwww
>>1
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 00:34:36.22 ID:RxIBGfoIO
仕事の初決算や、冠婚葬祭等でまとまった時間が取れず
遅々として進まずに申し訳ないかぎりです
まとまった時間が取れたらしっかり続き投下します

税理士先生、頼むから指摘はまとめてやってくれ…
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 00:37:17.79 ID:7Rs8cfdro
待ってるから、続き待ってるから
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 06:53:12.14 ID:Vv2iZmJIo
おれも待ってるぞ
このSSが今、一番の期待作なんだ
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 21:35:57.45 ID:5eFIrLoP0
鬼塚に影響される浜面とか見てみたいわあ
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/15(金) 20:51:46.20 ID:nfiQrdgF0
最後のレスから1ヶ月どころじゃない…
このスレどうすんだ?
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/04/30(土) 03:29:54.38 ID:0jVSzpU/o
復帰祈願
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 01:20:05.70 ID:TXfaTLs+P
復帰祈願
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