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フルチューニング「一つ願いを聞いて欲しい」 -
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1 :
◆p2rftD9zG.
:2011/01/30(日) 22:13:38.55 ID:GzMVGtgAO
スレタイの通りにほぼオリジナルなミサカ00000号ことフルチューニングが出て来る作品です。
原作とは似ても似つかない展開になると思いますので、オリジナルキャラが苦手な方はお避け下さい。
フルチューニングは出てきますがカップリングのメインは通行止めです。
時系列は原作のほぼ一年後です。
それではよろしくお願いします。
1.5 :
荒巻@管理人★
(お知らせ)
[
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小テスト @ 2024/03/28(木) 19:48:27.38 ID:ptMrOEVy0
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満身創痍 @ 2024/03/28(木) 18:15:37.00 ID:YDfjckg/o
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part8 @ 2024/03/28(木) 10:54:28.17 ID:l/9ZW4Ws0
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旅にでんちう @ 2024/03/27(水) 09:07:07.22 ID:y4bABGEzO
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にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:18.81 ID:AZ8P+2+I0
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にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:02.91 ID:AZ8P+2+I0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459562/
にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:25:33.60 ID:AZ8P+2+I0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459533/
にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:23:40.62 ID:AZ8P+2+I0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459420/
2 :
◆p2rftD9zG.
:2011/01/30(日) 22:21:10.31 ID:GzMVGtgAO
今、思い出しても、あれは現実だったのか。
長い白昼夢の中に、あるいは陽炎を見ていたのか、そんな錯覚を覚えてしまう。
「あれから、10年なんだね」
「あァ。 あのクソガキが居た夏は、もう10年前になる」
「早かったね」
「否定は出来ねェな」
それか、この手に持つ線香花火のような。
背負えないぐらい沢山の物を残した、彼女と過ごした夏から10年後の夏。
別れも今日のように、星が煌めく、そんな夜だった。
3 :
◆p2rftD9zG.
:2011/01/30(日) 22:22:47.25 ID:GzMVGtgAO
「――うん、なかなかどうして良い部屋じゃないかとミサカは感心するのだが」
「……クソガキィ、それはなンなンだ」
「えーっと、そのね…」
それは、ありふれた暑い日の夕方だった。
彼ら3人にとって互いに互いの存在の根幹を成す、ある種の必然と言うべき邂逅を果たしたのは。
8月の第1日、多くの学生は夏休みの最中である。
その幾多の例に漏れず、とある家族向けマンションのリビングに涼む一人の少年が居た。
4 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/01/30(日) 22:24:16.68 ID:GzMVGtgAO
保護者その1の体育教師はアンチスキルとしての活動があって朝から不在。
この暑い中、密閉性の高い駆動鎧などに身を包んで街を守っているのかと思うと、尊敬を通り越して、自分を追い込むのが好きだとか、ラバータイツフェチだとかそういう性癖なのかと疑う。
保護者その2の方は上層部からの呼び出しで7月から研究所にカンヅメ状態で帰って来ない。
8月末までの契約らしいそれは、どうやら機密事項のオンパレードで。
なかなか研究員を監視するためにも同意の上での半軟禁。
ほとんど無職と言わざるを得なかった去年の秋を考えると、なかなか充実した夏を過ごしているのではないか。
などと少々不遜な態度で怠惰にソファーで寝転んでいた、そんな少年は玄関の扉が開く音で完全に覚醒した。
5 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/01/30(日) 22:25:38.73 ID:GzMVGtgAO
「たっ、ただいまー! もしあなたが寝てたら起きてほしいな! あとヨミカワは帰って来てないよねってミサカはミサカは叫んでみたり」
「…オマエの声で生憎なァ」
「夕方まで寝てるのはどうかと思うんだけどってミサカはミサカは苦言を呈してみたり」
少女特有の高い声が、足音と共に段々とこちらへ近づいてくる。
ガチャリと小気味よい音を立て、ドアが開く。
少年は同居人の少女を見ようと首を傾ける、何故か。
それは、彼女がいつもとは違う声色で喋っている気がしたから。
具体的に言うと、何らかの懸念を抱えているような、そんな響き。
「――うん、なかなかどうして良い部屋じゃないかとミサカは感心するのだが」
6 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/01/30(日) 22:27:53.76 ID:GzMVGtgAO
「……クソガキィ、それはなンなンだ」
「えーっと、そのね…」
もしかして、自分は予知能力【ファービジョン】を併せ持っていたのか。
気が動転して、思考パターンにそぐわないコミカルな事を考えていた、全く笑わせてくれると少年は苦笑いを隠せない。
「ああ、あなたとも初対面になるのかとミサカは推測している」
「オマエも第三次計画【サードシーズン】)の」
「いや、違う。 このミサカはその計画には全く関与していないのだよとミサカは弁明を試みる」
後ろ手で存外に閉めるのではなく、丁寧に律儀にまるで面接をこれから受ける学生のように、その女は音を立てなかった。
思えば、足音も1人分しかしなかった。
きっと同じように音を立てないよう歩いたのだろうと、少年は彼女に対する警戒を忘れないよう決意した。
7 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/01/30(日) 22:30:25.01 ID:GzMVGtgAO
「“には”ねェ? そのナリしてるオマエが、このガキや俺と全く持って無関係なンてほざくワケはねェよなァ?」
この得体の知れない侵入者から離れろという意を込め、彼は少女を手招きする。
その少女は戸惑っていた。
保護者と姉妹と、板挟みで。
「関係ない、わけなんてない、だろう? あなた達とミサカの関係は切っても切れないものなのだからとミサカは返答する」
「……オマエは誰だ」
「あなたに警戒されるほどの存在じゃない、そんな影響力は持っていない。
……見てくれのとおりの、一体のしがないクローンさとミサカは事実を述べよう」
どこか、それは自嘲する響きを伴っていたのだが、少年少女が気づく事は無かった。
8 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/01/30(日) 22:32:45.04 ID:GzMVGtgAO
「えっと…あなたのことミサカから言おっか?ってミサカはミサカは提案してみたり」
「いや、大丈夫だろう」
2人の間の不穏な雰囲気を察知したのか、おずおずと進言した少女をいなし、彼女はソファーを指差した。
少年が上体を起こしたので、もう一人分のスペースが開いている。
「どうもあなたのガーディアンはこのミサカを警戒しているようだ。 それに、ミサカはあなた自身にも詳しく説明をしたいと思うので、そちらへ行ってくれないかとミサカは請願する」
「うん、分かったってミサカはミサカは了承してみたり」
ぽすん、とソファーが沈み込む。
相変わらず薄ら笑いをしている女に、彼は苦々しげに伝えた。
9 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/01/30(日) 22:33:55.23 ID:GzMVGtgAO
「…つゥか、クソガキもあいまって口調が腹立たしいンだがよォ」
「それはミサカ達の仕様なのでね。 おいそれとは変更できないのだよとミサカはミサカは嘆いてみたり」
「……」
「あなたってそういうキャラなのねってミサカはミサカは愕然としてみる…」
腹立たしいので侵入者を睨むことにした。
どうやらそれは相手側にも伝わったらしく
「――まぁ、それは冗談として」
神妙な顔をやっとして、侵入者は自身の髪を梳く。
昨年冬に飲んだシャンメリーのような色をした髪は、夏の陽光をキラキラと反射した。
10 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/01/30(日) 22:36:19.63 ID:GzMVGtgAO
一回大きく息を吸い、そして吐き出す。
二の句が発せられるのには、少々のタイムラグがあった。
「遅くなったが自己紹介をしよう」
「ごきげんよう、一方通行に打ち止め」
「このミサカは全ミサカの試作品(プロトタイプ)」
「ミサカ00000号(フルチューニング)なのだとミサカは説明する」
11 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/01/30(日) 22:38:59.35 ID:GzMVGtgAO
「フル、チューニング…?」
確か、ミサカネットワークに通じない個体で現在行方不明と打ち止めが言っていたような気がした。
「人形どもの中の一端ってわけかァ?」
「8割は正解だ。 正しくは天井亜雄製のね。 このミサカは主に学習装置形成へのサンプル収集、能力解析のために生み出された前座にしかすぎないのだとミサカは解説する」
彼女が言った事が真実なら、彼女は全個体で一番最初に作られたクローンである。
彼女の異質さからして、それは本当だと彼も判断した。
正直に言うと一方通行はこの個体に恐怖を感じていたのだ。
打ち止めに名前しか聞かされていなかった個体が目の前に唐突に現れ、外見と精神のアンバランスさ、妙な達観さ、舌戦でいつの間にか飲み込まれそうな得体の知れない、そんな者が、世界で一番守りたい少女と共に来たのだから。
本当は今すぐにでも、隣の少女に異常はないか確かめたい。
しかし、もし敵だとしたら、器を測ることも必要だ。
ここはただの4LDKのマンション。
敵を討つには何の備えも無いのだ。
12 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/01/30(日) 22:41:29.16 ID:GzMVGtgAO
「…仕事を終えた筈のオマエが何の目的でここに来た? 俺の暗殺か?」
全てを整えられた旧個体=フルチューニングなのか。
総てを整える調律師=フルチューニングなのか。
「ミサカにはその動機も能力もない、そもそも欠陥電気達とは違い、完全にレベル0なのだよ。 静電気さえも生み出せない。
それにこの体だ、きっと最終信号の事さえも撃退出来ないだろう。 なのでそんなに怖い顔をしないでもらいたいのだ…それに」
フルチューニングはくるり、とワンピースの裾を翻しつつその場で一回転をしてみせた。
13 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/01/30(日) 22:43:55.31 ID:GzMVGtgAO
「ご覧の通りの体だ」
「身長124センチ、体重18キロ」
「あなた達両名は肉体年齢わずか7歳に負けると思うのか?とミサカは疑問に答えたのだが」
とはいえ、痛快げに笑うフルチューニングの表情に、小学2年生ぽさは微塵も見受けられない。
きっと、今まで学校へ行っていなかったのだろう。
だからなのかは彼には皆目見当もつかないが、妹達に見受けられる、体の幼さと精神の成熟さは彼女も例外ではない。
しかし11歳の打ち止め、15歳の欠陥電気、10代後半の番外個体、誰と比べても違和感はナンバーワンだった。
そして、オンリーワンでもあった。
彼女の髪の毛は、肩甲骨を超え、腰にまで達する所だったのだから。
14 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/01/30(日) 22:49:14.70 ID:GzMVGtgAO
「仮にあなた達に殺害を試みたとして…、うーん、洗剤を混ぜたって反射されるだろうし、絞殺も圧殺も刺殺も殴殺も利くとは思えないのだ。 狙えて毒殺ぐらいか?とミサカは思案する」
落下死・水死・焼死・ショック死・中毒死・遭難死・衰弱死・餓死…etc.
どれも無理だ。だから、安心してくれと両手を広げるフルチューニング。
「……そンなことほざくからオマエは警戒されンだよ」
「……」
打ち止めは少しだけ一方通行の側に近づく。
それを見たフルチューニングの眉がつり上がり、今までの余裕綽々な態度が崩れた気がした。
「あ、ああ最終信号! 今のはこのミサカの思いつきのだけで、あなたに殺意なんてないのだよとミサカは慌てて言い訳をする」
「フルチューニングのバカバカってミサカはミサカはそっぽを向いてみたり」
15 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/01/30(日) 22:51:17.11 ID:GzMVGtgAO
「すまなかった、この通りだとミサカは懇切丁寧に謝罪を試みるのだが」
平身低頭して詫びる彼女の様に、2人して
またもやドン引きしてしまった。
頭は地に付け、三つ指を付け、身動きもしない。
一方通行は、彼の高校の池にいるやたら俊敏な亀を思い出した。
「えっと、小さい子に謝られる図柄って予想以上に嫌だねってミサカはミサカはフルチューニングを許してあげる」
「感謝するよ最終信号」
「下手な茶番繰り広げてンじゃねェよ、クソガキ共が」
コツンと打ち止めの額をつつく。
予想以上に良い音がした。
16 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/01/30(日) 22:52:53.48 ID:GzMVGtgAO
「そういや」
「どうしたの?」
打ち止めは、どこで彼女と出会ったのか。
尋ねてみた結果、面白い答えが返ってきた。
「図書館だよ」
「図書館?」
「うん、夏休みの自由研究の資料集めにねってミサカはミサカは答えてみる」
「……こンな暑い中でよく出かけられンな」
「そう、この夏は特に暑い。 そうは思わないか?」
打ち止めの言葉尻に被せて、フルチューニングが喋り出した。
「図書館には、このミサカは避暑のために訪れていたのだがとミサカは知られざる裏事情を告白する」
「図書館涼しいもんねってミサカはミサカは思い出してみたり」
17 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/01/30(日) 22:54:26.84 ID:GzMVGtgAO
「ミサカもこの一年は各地を点々としていてね、劣悪な環境でも居住出来るスキルは十分持ち合わせていたはずだったのだが、どうも日本の猛暑には耐えられないらしく。 だからあなたたちを保護している黄泉川愛穂にこのミサカも1ヶ月ほど住まわせてもらえないかの交渉を試みようとしたのだよ」
「その貧相な体躯じゃホテルも泊まれなかったンだな?」
「勿論。 そもそも持ち合わせも少なくて泊まることも出来なかっただろう」
からかうような一方通行の確認にも一つも動じる素振りはない。
クローンらしからぬ対応だと思った。
妹にしろ打ち止めにしろ番外個体にしろ、それぞれ違う意味でからかいには弱い。
今日は調子が狂う。
18 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/01/30(日) 22:55:51.24 ID:GzMVGtgAO
「閉館時間まではそこに居て、閉じたらそちらに向かおうとミサカは予定を立てていたのだよ」
「どうやってここを知ったァ?」
「ミサカネットワークでちちょいとねとミサカは可愛らしく答える」
「………」
コツンと額には手を、赤い舌がちらりと口から覗く。
俗に言う、てへぺろの体勢だった。
「あぁ、摘みだそうとするのは止めてくれたまえ! このミサカは7歳なんだぞ!」
「オマエみたいな7歳、ロリコンだって断るンじゃねェの」
「あなた! フルチューニングがかわいそうだよってミサカはミサカは弁護してみたり」
それから一悶着があり、落ち着いたのはゆうに10分以上は経ってからだった。
19 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/01/30(日) 22:58:25.95 ID:GzMVGtgAO
「まあ、ここで断られてもあなたの想像するより寛容な、童女に深い関心を示す人達の元へ行けば良い話だ。
それに黄泉川愛穂が家長なのだから彼女に断られてしまってはいかしかたないだろうとミサカは推察する」
「……ちィ」
揺さぶりをかけたことで、もし一方通行が断るようなことがあれば非道だと演出でき、憐憫を誘うことで精神的に幼い打ち止めも自分側に取り付けて優位に立つつもりなのか。
フルチューニング、始祖のクローン。
そもそもクローンに“始祖”だなんて適切なのかと思わなくもないが。
何も、そんな事をしなくても黄泉川は許可するだろうと思う。
しかし、いや、だから、一方通行は気に入らない。
身を守るために言葉巧みにならざるを得なかった彼女の境遇と、それを放っておいた彼自身に。
20 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/01/30(日) 23:00:52.71 ID:GzMVGtgAO
見た目はとても幼いながら、立派に策略家をしている彼女も、間違い無くミサカシリーズ。
世界の理不尽から彼が守ると決めた対象なのだから。
「ね、フルチューニングがかわいそうでしょ。 何よりこんな暑くて外にいたら溶けちゃうよってミサカはミサカは説得してみる!」
「うるせェ、動物飼うのとワケは違うンだよ」
「にゃおん、フルチューニングだにゃん。 ごろごろぉ」
「調子に乗ンな!」
絵面的にも非常に非情なことになって、自分の好感度が下がるのも目に見えた。
しかし、どうしてもこの自称幼女を黙らせたくてたまらなかった。
蹴りたい横腹。
21 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/01/30(日) 23:02:17.27 ID:GzMVGtgAO
「……オマエにプライドはねェのか」
「そんなもの、とっくに質屋へかけてしまったねとミサカは返答する」
「……ハァ」
一方通行は溜め息を一つついた。
自分達は相当愉快な奴と出会ってしまったらしいという感嘆を込めて。
ブォオオと唸っていたエアコンも徐々に静かになっていた。
知らず知らずのうちに、チューンアウトしていたらしく、音が途絶えるとむしろ支えを無くしたようなそんな喪失感に襲われた。
「――ねえあなた。 ミサカからも真剣にお願いする。 姉妹が困ってるんだからミサカは助けてあげたいってミサカはミサカは訴えてみる」
「別に俺は関係ねェだろ。 ヨミカワが決める問題だ」
それでも、と打ち止めは一方通行に語りかける。
22 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/01/30(日) 23:05:38.51 ID:GzMVGtgAO
「フルチューニングも一緒に住もうってミサカはみんなに言ってもらいたいのってミサカはミサカは熱弁をふるってみる」
「最終信号…!」
「ねえ、あなた良いよね?ってミサカはミサカは上目遣いをしてみる」
「………」
決して打ち止めの上目遣いが、琴線に触れたわけではない。
彼女が自白しただけで、証拠は無いが普通のレベル0には打ち止めだって苦戦しない。
例えレベル5だとしても非力な女児には負けないだろうし、こうやって訪ねてくるあたり平和的に解決したいのだろう。
それに
(疑ってかかンのがバカバカしい)
妙な性格をしたこのちんちくりんについて、深く考えるのが面倒で仕方がない。
何度も言うが、決して打ち止めの鎖骨や真剣な眼差しに惑わされたわけではない。
蠱惑的な声でもない。
「フルチューニング」
初めて名前を呼ぶと、彼女は驚いたようにぴょこんとアホ毛を震わせた。
「――住みたいンなら勝手に黄泉川にでも聞いとけ、俺は知らねェ」
23 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/01/30(日) 23:09:03.27 ID:GzMVGtgAO
その言葉が予想外で、フルチューニングは目を見開いた。
一方通行の腰には衝撃が走る。
「さっすがあなた! ありがとう!ってミサカはミサカは抱き付いてみたり!」
「暑い、離れろクソガキ」
「い、良いのだろうか? ミサカが、ここにいて」
「嫌なら出てけ」
「ううん、出てなんか行かない」
そして、こちらを目掛けて走るフルチューニング。
一方通行を挟んで打ち止めの反対側へ潜り込んだ彼女は、同じように彼に抱きついた。
「感謝するよ! 一方通行」
「気が早いンだよ、ガキが」
きっとコイツも炊飯器王国とも言うべき、この家の台所を見たらひっくり返るだろう。
適当に見当を付け、もう一度彼は目を閉じる。
子供特有の高い体温を感じながら。
24 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2011/01/30(日) 23:12:46.68 ID:oqqp3kSAO
面白いよ〜
25 :
◆p2rftD9zG.
:2011/01/30(日) 23:16:32.86 ID:GzMVGtgAO
一方さんが誤字ってます、申し訳ない…
というわけでフルチューニングと黄泉川家の日常話です。
半合法ロリ、フルチューニングの外見は打ち止めがもうちょい小さくなっていっつもニヤニヤ笑ってる感じです。も、萌えねえ!
あと一方さんは若干ロリコンかもです、そこら辺苦手な方もご注意下さい。
それでは今日はここら辺で、またお会い出来たら幸いです
26 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/31(月) 01:28:40.97 ID:yrRhJCf6o
面白そう…!
27 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/31(月) 14:24:37.64 ID:6SkpzpIAO
フルチューニングっていうから前あった天草式のやつかと
28 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/31(月) 14:43:21.86 ID:jQutGWD/o
これはロリコンになるの仕方ない
29 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/31(月) 20:09:03.82 ID:mfn+iAb50
打ち止めは鎖骨ぺろぺろしたいくらい可愛い
フルチュンは横腹蹴りたいくらい可愛い
期待
30 :
◆p2rftD9zG.
:2011/01/31(月) 21:32:12.24 ID:N7t5UXuAO
感想ありがとうございます!
フルチューニングがオリジナルすぎて鬱陶しいよなあと思っていたのでとても嬉しいです
>>27
あの神には到底及ばないです、本当に
個人的にはロリコンの琴線に全く触れない幼女を書きたいと思ってます
31 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/01/31(月) 21:38:13.10 ID:N7t5UXuAO
「…まさか黄泉川も、あンな簡単に許可を出すとはなァ」
先ほどのフルチューニングと黄泉川愛穂の交渉(?)は僅か1分ほどで終わりを迎えた。
「うん、即決だったもんねーってミサカはミサカは思い出してみたり」
「タケノコとピーマン」
「はいよーってミサカはミサカは手を伸ばしてみる。 タケノコはまだここには無いね」
時刻は午後6時を回ったあたり。
まだまだ学園都市の陽は落ちない。
彼ら2人――打ち止めと一方通行は近所にあるスーパーに来ていた。
しかも、行きつけの。
何故かと言えば、同居する上での彼らの担当がおつかいと皿洗いだった。
「フルチューニングは何を担当するのかなってミサカはミサカは考え中」
「洗濯物畳むとかじゃねェの?」
そう、めでたいことに彼女の交渉は無事に成功したのだった。
32 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/01/31(月) 21:39:14.22 ID:N7t5UXuAO
***
『始めまして、このミサカはフルチューニングと言いますとミサカは説明します』
『オイ、初っ端からオマエの対応俺たちに対してと全然違うだろ』
『フルチューニング、よろしくじゃん』
『ええ、こちらこそとミサカは手を握り返します』
『口調的には妹達と全く変わらないのねってミサカはミサカは事実を述べてみる』
『それで、コイツらが言うに、何か私に頼みがあるらしいじゃん』
『はい。
――このミサカの自分本位なお願いで誠に申し訳ないのですが、8月いっぱいまで此方に住まわせていただけないでしょうかとミサカは頭を下げます』
『うん、良いじゃん』
33 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/01/31(月) 21:43:44.37 ID:N7t5UXuAO
『』
『えぇー、こうもアッサリいくものなのってミサカはミサカはヨミカワを見つめてみる』
『推薦したコッチが言うセリフじゃねェが、黄泉川さンよォ。 ちっとは考えた方が良いだろ』
『考えたよ。 んで、この子なら大丈夫と思ったまでじゃん』
『……』
『あ、ありがとうございますとミサカは…』
『フルチューニング』
『はい』
『私は一介の教師なんだし、呼びたいように呼んで良いじゃん』
『……あーりがとおお!黄泉川ぁああ!!』
『あはは、子供は元気が一番じゃん!』
***
ガラガラとカートを押す打ち止めは、左隣で杖を突く一方通行と並んで精肉コーナーを歩いていた。
「改めて、黄泉川の許容量ってハンパないねってミサカはミサカは思い馳せてみる」
脅威の包容力を見せつけた美人女体育教師は、新しい同居人と共に彼女にとって必要な物品の買い出しに出かけていた。
すぐさま彼女をなつかせ、デパートに車で走り去った黄泉川に一方通行も少しだけ惚れかけたとかそうじゃないとか。
34 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/01/31(月) 21:46:34.90 ID:N7t5UXuAO
「アイツにしてみれば、俺とオマエを囲ってる時点で何か吹っ切れてンだろォ」
「そのうちマザーヨミカワと呼ばれてもおかしくはないねってミサカはミサカは想像してみる」
うんうん、と一人頷く打ち止めの肩を一方通行は軽く叩く。
「あァ、それ」
「これ? ミサカたちの量としたら多くないってミサカはミサカは疑問視してみたり」
七百円分もある豚肉を指差す一方通行。
“カートに入れろ”のそのサインに、打ち止めは反抗した。
「クソガキは馬鹿だな。 青椒肉絲は豚肉が要だろォよ」
「えぇー!? 絶対絶対タケノコだよってミサカはミサカは猛反発!」
「はン、ガキが調子づいてンじゃねェよ」
「あなたこそカロリーばっか求めるのを是正しようとは思わないの!?ってミサカはミサカは指摘してみる」
「ダイエット(笑)」
「そんなつもりじゃ無いもんってミサカはミサカはね!」
とあるスーパーの一角で、気がつけばヒートアップしていた彼ら。
周りの学生達も2人が誰か知っているためか、止めようとはしなかった。
35 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/01/31(月) 21:49:33.22 ID:N7t5UXuAO
その後もしばし、わーわーぎゃーぎゃーと騒いで。
先に冷静になったのは年上の方だった。
「そォは言っても、夕飯を遅らせる訳にはいかねェ…。 オイ、クソガキ。 肉は譲歩してやるから早く帰ンぞ」
「はーいってミサカはミサカはあなたについて行く」
がらごろ、がらごろ。
がらごろ、がらごろ。
「あっ、お菓子!」
「コンビニにでも行け」
「スーパーの方が安いのにってミサカはミサカはぶーたれてみたり」
打ち止めの提案を一切耳に入れず、そのまま会計を済ませてしまった。
これもお決まりのパターンなのだが。
36 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/01/31(月) 21:51:58.52 ID:N7t5UXuAO
現代的なデザインの杖に先ほどの買い物袋を引っ掛けて進む、いつもの帰り道。
「それぐらいだったらミサカも持てるのになってミサカはミサカは進言してみる」
「俺の夕飯は俺が守るって決めてンだよ」
「あらら? その言い方だと、ミサカがあなたから奪おうとしてるみたいじゃんかってミサカはミサカは指摘してみたり」
「そォ言ってンの」
「ひっどーい! 今日の全部ヨミカワに言っちゃうもん!ってミサカはミサカは決心した!」
「馬鹿、取り消せ」
「バカじゃないから取り消さないもんってミサカはミサカは宣言してみる!」
逆光を浴びて、彼らの影が長く伸びている。
時折重なり、気づいて離れ、距離を保ち平行で、そしてまた重なって。
「おーい! このミサカはもうお腹が減ったのだが!とミサカはお暑い二人に叫ぶー!」
37 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/01/31(月) 21:53:37.70 ID:N7t5UXuAO
ファミリーマンションの近くで、唐突に上から声が降ってきた。
見上げると、ベランダから体を伸ばすフルチューニングが居た。
よくもまあ、小さい体であれだけの声量を持っているものだと顔を見合わせ苦笑し、
「うるせェ!!」
「もうちょっと待っててねー!!」
両者両様に叫んでみる。
その声に、空を翔る鳥も驚いて迂回していく。
「はは!! ミサカは了解したっ!!」
甲高い子供の声。
ご近所迷惑という言葉が脳裏をよぎるが、敢えて今だけは排除する。
いつもの夕飯まで、あと30分。
そんな夕方。
38 :
◆p2rftD9zG.
:2011/01/31(月) 21:55:33.79 ID:N7t5UXuAO
黄泉川先生の脅威の胸囲に挟まれて眠りたいです。
それではまた今度
39 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/31(月) 22:06:39.20 ID:71cAk1Cio
乙
青椒肉絲はピーマンの苦味がポイントなのだ!
40 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/02/01(火) 00:20:53.65 ID:QNRdn/ks0
フルチューニングが忍に思えた
41 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2011/02/01(火) 08:42:29.47 ID:jfsDUsjAO
>>40
俺もwwww
42 :
本編には関係ないです
◆p2rftD9zG.
:2011/02/01(火) 14:58:36.90 ID:0Q+T98aAO
「我が名は、ミサカフルチューニング……鉄血にして熱血にして冷血のクローンなのだとミサカは説明する」
「あなたの血を、ミサカの肉として呑み込んであげよう。 だから――あなたの血をミサカに」
「だが断るゥ」
「しょぼーん」
もしくは
「そう言えば、ブレスレットを『深呼吸をしよう!』的な意味だと勘違いしていたのも記憶に新しいとミサカはあなたに告げる」
「それはエロとは関係ねェただの勘違いだ!」
「『ドンマイ!』みたいな感覚で、実験中に『ブレスレット!』と言って、赤っ恥をかいたものだな。あのときの妹達のぽかーんとした顔は忘れられないとミサカは回顧する」
「やめろ! そのエピソードはリアルで痛すぎンだろォ!」
うん、神原後輩と八九寺Pを足して2で割った感じかなあ。
とは言え、忍も大好きです。傾物語も可愛かった!
43 :
◆p2rftD9zG.
:2011/02/01(火) 22:01:55.20 ID:0Q+T98aAO
以下から本日の投下です。
44 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/02/01(火) 22:04:59.14 ID:g2Z8y25Zo
服脱いだ
45 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/02/01(火) 22:06:31.05 ID:0Q+T98aAO
「これが青椒肉絲と言うものかとミサカは感嘆するね」
「食べたことない?ってミサカはミサカは尋ねてみたり」
「ああ、通例炊飯器で作るものではないということは知っているのだが。 このミサカは食が細い上に栄養を摂取出来れば構わないと思って来たのだとミサカは説明する」
炊飯器と言うのは、一家に一台では無かったのかというフルチューニングの呟きは誰も知るところでは無かった。
黄泉川家の闇である。
「いっぱい食べるじゃん」
「いただきますとミサカは手を合わせる」
8月1日、今日の黄泉川家の食卓から、新しい席が追加された。
いわゆるお誕生日席の位置、そこで新しい椅子に座るフルチューニングは、真っ先に水に手を伸ばした。
グラスは色違いの全五色があって、彼女は余りの青色を使用することになった。
残りは黄泉川が緑、打ち止めが黄、芳川が赤、一方通行が黒。
46 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/02/01(火) 22:13:37.36 ID:0Q+T98aAO
「あっ! 可愛いねそのお皿!ってミサカはミサカはカナミンを指差してみる!」
勇ましい格好をデフォルメされた少女が、皿の縁にワンポイントアクセントを加えていた。
そのデフォルメの仕方が、なかなかシックな雰囲気で大人が使うにも申し分ないデザインだった。
のだが、
「そうだろうか? これ、デフォルメやりすぎじゃないか?
ミサカとしてみてはカナミンの流行に迎合していないサイハイのチラリとしたところが何よりも好きなのだがとミサカは頭を振る。 本当、チェックのスカートにニーハイは食傷気味だろう、これからは生足かサイハイだって、絶対、いやミサカの願望とかではなくだね? それにニーハイは、ギャルというかお姉さんルックの膝をギリギリ越した丈とか美脚で素晴らしいとミサカは思うのだがね。 あと妙な柄のスカートよりはショーパン履けよともミサカは強く願っているよ。
話を戻そう。
とにかくカナミンはこういうオサレ系を狙っちゃだめだろうに…、あくまでもあくどく、スカートの中は見えない! この均衡は相互不可侵で良いじゃないかとミサカは落胆を隠せないね」
視聴者層としては正しいというか番組のメインなのに、何故この女は大きいお友だち目線で見ているのか。
「良いからお前は食べろ」
一番近くに座る一方通行が、彼女の頭にチョップを入れる。
妥当で適切すぎるツッコミだった。
47 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/02/01(火) 22:15:58.85 ID:0Q+T98aAO
「あたっ! あなたはもうちょっと手加減をだね」
「食わねェなら俺が食う」
「勿論いただくのだが?」
「本当に、調子良いガキだな」
一方通行が隣に構っているうちに、大皿の量が大分減っていた。
無くなる前に装おうとしたが、大きいスプーンが無い。
「いやあ、うーん。 おーいしーいなーぁとミサカはー感激の至りー」
「オマエ…!」
何らかの映像効果をされたような、ゆっくりノロノロとしたペースで、具を取るのはフルチューニング。
オプションでニヤニヤとした表情まで。
やられたらやり返す。
グラスの中の氷が溶けて、カランと涼しげな音を立てた。
48 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/02/01(火) 22:19:56.16 ID:0Q+T98aAO
「ねえ、ヨミカワもフルチューニングもこの中だとタケノコが一番だと思わない?ってミサカはミサカは尋ねてみたり」
「だから、肉に決まってンだろ」
「うん、私は苦味が好きだしピーマンじゃん」
打ち止めは向かいに座る、黄泉川を見やる。
アホ毛は重力に逆らい、天頂を指していた。
「おお! ヨミカワは第三勢力に回るんだねってミサカはミサカは予期せぬ結果に驚いてみる!」
そして、打ち止めの視線はモグモグと口を動かすフルチューニングに。
「ええと…」
頬を一つ掻き、少し眉を下げた。
第一位と恩人と妹、彼女にとってのパワーバランスを見極めて。
そして、天秤は傾く。
「――無論、タケノコじゃないか?とミサカは意思表示をする」
「ホントに!?ってミサカはミサカはバンザイしてみる!」
この瞬間、世界中からシスコンと罵られてもそれはそれでしょうがないと彼女は達観する。
49 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/02/01(火) 22:24:43.89 ID:0Q+T98aAO
(だって最終信号可愛いだろう。あの嬉しそうな顔とか、優越げな顔とか。超ラブリー。
妹萌え思ったよりヤバいなこれ。 あの時からミサカってこの子に対しては過保護だったけども。 というかミサカには10000人妹居るのだが果たして大丈夫なのか、ワクワクして大変だ。
…とは言え、どの妹よりも見た目はこのミサカの方が下なのだが。)
「やったー! ミサカのミサカの大勝利!」
「ああ、そうだな。 ピーマンもそれなりに好きなのだが、やはり一位はタケノコだろう、シャキシャキ感がたまらないじゃないかとミサカは断言する」
「さっすがフルチューニングってミサカはミサカは評価してみたり!」
「いやあ? それほどでも無いがとミサカは謙遜するがね、実のところはまんざらでもない」
口に出てンぞとの一方通行の指摘は華麗に無視だ。
50 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/02/01(火) 22:29:11.63 ID:0Q+T98aAO
「一方通行、豚肉ばっか取るんじゃないじゃん」
「あァ? 別にこれぐらい許容範囲だろォ」
「ダメに決まってんじゃん! ほれ、ピーマン」
大皿から丁寧に緑色だけを選別し、一方通行の皿にクレーンゲームの如く載せる。
1つ、2つ、と徐々に緑が増える皿を手で持ち上げながら彼は吠えた。
「黄泉川ァァ!」
「落ち着きたまえよ、一方通行とミサカは達観した瞳で見つめる」
こうして和やかに(?)夕ご飯も食べ終え、各自皿の片づけをしたところで、再度全員を机につかせた黄泉川は切り出した。
「フルチューニングの家事の担当は朝のゴミだしと洗濯物たたみに決まったじゃん。 それで、あと決めてないのが部屋兼寝床だけなんじゃん?」
すかさず打ち止めは手を挙げる。
地面と垂直で惚れ惚れするよと評論する彼女の戯言を一方通行は敢えて聞かないふりをした。
51 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/02/01(火) 22:30:48.64 ID:0Q+T98aAO
「はーいはーい! ミサカと一緒の部屋が良いと思うってミサカはミサカはアピールしてみたり」
「お前の寝癖の悪さは最早暴力だろ」
「そうかなあ?」
「一緒に昼寝すると、毎回俺のこと蹴り飛ばすじゃねェか。 あれを忘れたとは言わせねェ」
「確かに、あれをフルチューニングが受けたら怪我するかもしれないじゃんね。 だったら桔梗の部屋とかは?」
「ヨシカワの部屋、書類で大変なことになってたようなってミサカはミサカは告げ口してみたり」
黄泉川や一方通行と寝るには、ベッドの幅が足りない。
あれこれ思案する一同に、当事者で居ながらどこか蚊帳の外だったフルチューニングは、自分の就寝スペースは居間では駄目かと尋ねた。
「別に駄目では無いけど、ベッドで寝た方が良いじゃん?」
誰も見ていないBGMがわりに付けてあるテレビが、やたらとけたたましい笑い声を流した。
52 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/02/01(火) 22:35:28.42 ID:0Q+T98aAO
「――お恥ずかしながら、研究者たちも驚くほどミサカの寝言は煩いらしいのだよ。 だから、そうだね、ここがベストでは無いだろうかとミサカは提案する」
「たかが1ヶ月なのだから」
蛍光灯の眩しさが何故か目にしみて、フルチューニングはゴシゴシと自身の両目を擦った。
「……まあ、アンタがそれで良いなら私も反対はしないじゃん」
「ミサカと寝たかったらいつでもミサカは歓迎するよってミサカはミサカはあなたに伝えてみる」
「OK、いつでも訪れようじゃないか」
「大音量で遅くまでテレビ点けてンじゃねェぞ」
「ふふふ、自称深夜アニメの女帝であるこのミサカにそのようなことを言うのかね?とミサカはあなたを挑発する」
「ハイハイ、7歳が粋がンじゃねェ」
「よし! じゃあ、フルチューニングは布団敷いてここで眠るじゃん!」
「ミサカは了解したよ」
53 :
◆p2rftD9zG.
:2011/02/01(火) 22:39:59.27 ID:0Q+T98aAO
フルチューニングが徐々にウザくなってきて楽しいのですが誠に中途半端ですが以上です。まだまだ8月1日が終わらない、遅筆はんぱない。
そしていつも感想ありがとうございます、とても励みになってます。
>>44
地域によりますが基本的に服は着ないといけないってどっかの幼女が言ってました
54 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2011/02/01(火) 23:58:11.30 ID:EHl+GVz10
フルチュンが俺の好みまっしぐらでやばい
55 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/02/02(水) 00:53:52.80 ID:R7tw3QADO
フルチューニングいいな……いいキャラしてる
56 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2011/02/02(水) 17:17:42.92 ID:s9w8qePp0
通行止めも良いなあ
さりげなさが好き
57 :
◆p2rftD9zG.
[sage]:2011/02/02(水) 19:08:43.29 ID:s9w8qePp0
こんばんは
今日は用事で投下が出来ません
また明日、よろしくお願いします
58 :
◆p2rftD9zG.
[sage]:2011/02/03(木) 20:42:36.90 ID:RC+NUEpM0
>>56
が誤爆していた・・・・・・
ほんとにすみませんでした・・・、これは自演としか思えない・・・
あぁああ・・・!! やってしまったぁあ・・・
本当にすみませんでした・・・お恥ずかしいし情けない限りです・・・
申し訳ないです・・・、めだかクロススレと・・・
ちょっと頭冷やしてきます
本当に申し訳ありませんでした
59 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/02/03(木) 23:42:29.77 ID:VvTwR5ODO
別にいいから早くだな
60 :
◆p2rftD9zG.
:2011/02/06(日) 17:42:56.26 ID:Xu9TTjyAO
今晩8時ぐらいに投下始めます
重ね重ね、誤爆申し訳ありませんでした
61 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/02/06(日) 20:10:20.26 ID:Xu9TTjyAO
唐突に3拍子の軽快なメロディーが流れる。
【ショパン: ワルツ第6番 変ニ長調 Op.64】
「それはミサカ専用の着信音かねとミサカは興味津々で尋ねる」
「このタイミングだとオマエしか居ねェだろ」
真っ青な携帯を片手に持ち、パチンとスライドさせたフルチューニングはしみじみと語る。
「それにしても、子犬のワルツか…。 なかなかどうして指が回らなくて、凄く苦心したような記憶があるねとミサカはしみじみ改造する」
「オマエはピアノを?」
一つだけ大きく頷き、とある知育プログラムが云々と答えられた。
「バイオリンも良かったのだが、どうしても皮膚がかぶれてしまうようでねとミサカは溜め息をつく」
「そォかい、生憎だが音楽はとンと興味ねェよ」
ロシアの地で歌ったというのか、データ変換をした時を入れてさえ、彼が歌ったのは今まででも片手で数えきれるぐらい。
そんな数回だけだった。
「そうなのか。 だったら」
ソファーに寝転び、テレビを眺める彼に一言、
「いい加減、ソファー譲ってくれよ」
62 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/02/06(日) 20:12:34.80 ID:Xu9TTjyAO
「まだこれは終わってねェだろ」
新聞を片手で持ち、もう片方の手でとあるテレビ番組の時間帯を指差す。
あからさまに馬鹿にした言い方に、フルチューニングの眉はつり上がる。
「終わるまで寝ねェ」
「まだドレミの歌じゃないか…腹立つ…とミサカは抗戦をここに誓うのだが」
前触れもなくもう一方のソファーから立ち上がった。
「オマエ曰わく、この映画は不朽の名作なンだろォ?」
「ああ、そうなんじゃないかとミサカはおざなりに返答する」
「つゥか、この軍人逃げれンのかよ。 絶対トラブるだろォよォ」
白いソファーの上でゴロゴロ転がりつつ不毛な考察を続ける彼から少しだけ距離を取り、そして幼女の脚力を最大限使って跳躍する。
これぞ
「秘技、ミサカフライ」
「ぐ、がァァ!」
小さいとは言えど膝を鳩尾に抉り込むその攻撃に、彼はただ唸るしか出来なかった。
63 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/02/06(日) 20:14:56.45 ID:Xu9TTjyAO
「く、クソガキ…がァァ!」
「静かにしたまえ、最終個体らは寝ているのだぞとミサカは諭してみる」
「オマ、エ…」
自分も大概誉められる性格ではない、それはよく分かっている。
だが、この少女を性悪と罵ることは許されるはずだ。
ニヤニヤと笑いながら、自分をマットのように扱って寝転び、鳩尾にも再びさり気ない圧力を加えている。
「髪の毛がくすぐってェンだよ、バカ」
「ふん」
「とりあえず離れろ。 俺は続きを見てェンだよ」
「……確か、家庭教師は恋人にランクアップし、紆余曲折はあるが、なんだかんだでオーストリアへ…、もしかしたらスイスだったかもしれないが永世中立国へ亡命できました。
いやあ、めでたしめでたしだよとミサカは」
3hit!!!
「どこがめでてェンだよ、このネタバレしやがったクソガキがァァああ!!」
「なにもそんな強さで数回もチョップするなよなぁぁ」
64 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/02/06(日) 20:18:53.42 ID:Xu9TTjyAO
ばたばたばたばた。
全力をもって振り解こうとするが、フルチューニングは磁石のようにピタッと張り付いて離れない。
両者痛み分け、そんな惨状で口を開く。
「……ふん。 ミサカが何回も言って何十回もメールしているというのにそこのソファーから退かないあなたが悪いとミサカは客観的事実を遂に述べる」
「つゥか、いつからここはオマエのものになったンだよ」
「仕方がないじゃないか、ここがミサカの寝床なのだからとミサカはあなたの脇に手を回す」
あなたはロリコンでは無いんだよね、と軽く念押しして。
「……」
「え? 違うよね? ミサカの小さい胸が当たったってハイにはならないよね?」
それにはわざと答えなかったけれど。
65 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/02/06(日) 20:21:13.57 ID:Xu9TTjyAO
「布団敷きゃ良いだろ…」
「インテリア動かすのは大変なのだとミサカは即座に返答する」
「ちィ」
そう、居間で寝ることになったのだが、日当たりや風向きなどを考慮すると、テレビ側の方しか使うことは出来ないのだが、逆にそちらは家具が多くて移動させるのが非常に大変だった。
『どうする?』
『あっ、ミサカはソファーで寝ることにするよ』
即決である。
その後は、打ち止めの部屋でたくさん話をして(所謂女子会(笑)である)、いざ休もうと思いフルチューニングが居間に戻ると白い悪魔は居たわけだ。
66 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/02/06(日) 20:23:47.61 ID:Xu9TTjyAO
『バラエティー見させろ』
『どうぞ』
一時間後
『時代劇見せろ』
『どう、ぞ?』
さらに一時間後
『音楽番組』
『まぁ、眠くないから良いけれど…』
そしてそこからもうすぐで二時間の今。
「もう、3時になるのではないかな。実のところミサカはもう疲れたとミサカはあなたにへばりつく」
「明日も予定はねェし、別にこれくらいまで遅く起きてて何が悪い」
「早寝早起きは人間の守るべき生活リズムではないのだろうかとミサカは考察する」
「夏休みですからァ」
「ぐぬぬ」
67 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/02/06(日) 20:25:35.17 ID:Xu9TTjyAO
場面がいつの間にか変わっている、少し気を逸らしただけだったのに。
真っ暗の中で唯一煌々と光るテレビから何となく意味はないがピントを外してみた。
ぼんやりとした角のある光が幾らかできる。
分散したそれをじぃっと眺めてみた。
色を変え位置を変え形を変える光が群れている。
音声さえも、今はフィルターにはかからない。
(寝ても良かったか)
何となく、本当に何となくの勘なのだが、彼にはこの少女が暇を持て余している気がして。
案の定、疲れているとは言うが眠いとも言わないし、欠伸の一つだってしやしない。
(何でこンなにも位相がずれてンだ)
ただの音の羅列と光の散らばりがそこにあり――、
一点に収束する。
ほぼ零距離の少女の瞳と、自分の喉が震えた波長に。
68 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/02/06(日) 20:27:35.98 ID:Xu9TTjyAO
「……オマエのその口調は、どォいう意味があるンだ」
「ん? 多分だが、研究者らの趣味だとミサカは想像している」
「趣味?」
「ああ。 博士口調とでも言うべきかな、このミサカの喋り方は。それには、彼らがそういう趣味か、若しくは彼らの口調にも近かったりして、教えるのが楽だったからだとミサカは思うよ」
案外、その理由に納得してしまった。
あの実験を立案し実行したこの学園都市なのだから、どんなふざけた意味でも受け入れてしまえるような気がしたのだ。
「研究者どもも愉快な性癖持ってやがンだな」
「――その通りだな」
「あと、オマエのその喋り方は博士じゃなくて昭和の優等生」
「この急にモチベーション下がる感じは何だろうかとミサカはあなたを睨んでみよう」
69 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/02/06(日) 20:30:50.39 ID:Xu9TTjyAO
ぼやけていてろくに輪郭が分からない、そんな彼女の瞳を見つめる。
ちっとも鋭くなんてなっていなかった。
そして、彼自身が予期していたよりずっと柔らかい声を放つ。
「オマエはいつ作られたンだ?」
「――それは、悪いが守秘義務によりお答えできない。 まあ、ロットナンバーから把握してもらえるだろうとは思うが、一番最初ではある」
「その守秘義務を守らねェとどォなンだ」
「さあね、きっとどうにもなりはしないよとミサカは真相を告げる」
彼女の体が、少しずつ少しずつずり落ちていく。
そして、消える重みと熱量。
「忠誠か、復讐か、寂寥か、指針か、決意か、命令か、よくは分からないけれど」
終ぞ、一方通行と向き合う。
「――破るつもりは今のところ無いのさ、とミサカは語る」
「……そォかよ」
「ああ、そうなんだ」
ぱちん
チョーカーの電源を入れて、一方通行は上体を起こした。
70 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/02/06(日) 20:35:35.65 ID:Xu9TTjyAO
「寝るのか?」
「あァ、オマエも望ンだだろォ」
「――別に、居てくれても」
「なンだァ? 心変わりかよ」
二本足で床に立つ、視界を眩暈という新たな黒が遮ったのだがわざわざ気にしないことにする。
そばに掛けておいた杖を見つけ、チョーカーのスイッチを再度押す。
ぱちん
演算能力と共に、先ほどまでの高揚感が嘘のように消えていた。
71 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/02/06(日) 20:44:34.77 ID:Xu9TTjyAO
「不眠症に」
寝転んで、きっとそちらを見上げているフルチューニングを背に、彼は吐き捨てた。
「オマエ、心当たりはあるか」
「――別に」
「そォか、思い過ごしで悪かった」
かつん、かつんと杖を鳴らして一方通行は遠ざかる。
彼女の心拍数が上がる、しかし、体と言葉で彼を拒絶した代わりに、ここでどうしても言いたいことがあった。
見放さないでいてくれると言うのなら。
どうか――。
「……あなたはメールを嫌ってはいないのだろうかとミサカは問いかける」
「――別に、打つのは遅ェが」
「そ、そうなのか。 ありがとうとミサカは感謝を述べる」
そのまま、扉を閉めて彼の姿は見えなくなる。
フルチューニングは机の上の携帯へ目を向ける。
「メール、良いのだろうか」
眠れない頭が、未だかつて知覚したことのないレベルでぼんやりとするのを感じながら。
72 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/02/06(日) 20:56:20.26 ID:Xu9TTjyAO
「柄にもねェ」
誰かを思いやって、そして察してやることなど、慣れてはいなかった。
きっと彼女は眠らない、それもかなりの頻度で。
「はン、読みが外れてたら笑い者だなァ」
とりあえず浮かんでくる打ち止めと黄泉川・芳川の顔を完璧に排除して、寝返りを打つ。
「本当に、柄にもねェ…」
自嘲気味に笑ってみると、あまり聞き慣れない音がBGMとして彼の呟きに被さって来る。
手探りで携帯に触れ、そのまま受信画面を開く。
〔やっぱり、あれは名作だったな〕
「バカ、オマエが追い出したンだろ」
悪態を一つつく彼の顔は、まるで友と笑うような少年のそれで。
暗い部屋には、かちかちとボタンを叩く音だけが木霊していた。
73 :
◆p2rftD9zG.
[saga]:2011/02/06(日) 21:00:10.65 ID:Xu9TTjyAO
8月1日というか2日の終了です
今週のアニメで黄泉川家の内装が登場したのでめちゃくちゃ食いついて見てました。いやあアンチスキルって大変なお仕事!
次回、またお会いできたら幸いです
74 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/02/06(日) 21:25:14.70 ID:FU/VAWbW0
おつ!
ピアノ弾けるってことはオリジナルと共演フラグ?
それにしても一方さん男前すぎる
75 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/02/06(日) 21:25:39.21 ID:WMaE7tIFo
おつおつ
フルチン可愛過ぎワロタ
ちょっと黄泉川先生のとこいってくる
76 :
◆p2rftD9zG.
:2011/02/06(日) 22:32:52.47 ID:Xu9TTjyAO
一応ですが、彼らが見ている映画はフィクションであり事実とは何ら関係ありません
>>74
ネタをありがとうございます!
バイオリンとピアノ…、うん、考えておきます
>>75
その略し方wwwwww
でもフルチュンだと朝チュンみたいですし良い略し方無くてうけますね
77 :
ちょっとした小ネタ
◆p2rftD9zG.
:2011/02/06(日) 22:35:21.45 ID:Xu9TTjyAO
傷物語パロディ
「あァ、お出かけっつゥか」
「アクセラハーレムの新メンバー探しかね?とミサカは尋ねる」
「そンな悪趣味なグループを組織しちゃいねェよ!」
「第一期メンバーの木原くんが不在だからなあ。あのひとの穴を埋めるのは、中々大変な作業だろうとミサカは感慨にふける」
「仮にアクセラハーレムなンてものがあつたとして、どうして木原くンが元メンバー扱いされてンだよ! あいつは入れ墨のおっさンだ!」
「あんまりメンバーを増やし過ぎると物語が展開しづらいのだから、気をつけてくれよとミサカは忠告する」
木原くんと忍野ってイメージ的にどうしてか被るんですよね
78 :
◆p2rftD9zG.
[sage]:2011/02/25(金) 14:07:02.64 ID:8qKo6Lce0
私生活のほうが忙しく更新できそうにありませんので、HTML化依頼を出して来ます
お世話になりました
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