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TV 「ねことあひるが力を合わせて」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/02/09(水) 03:07:29.88 ID:OlrL6Yl2o
・パート

・禁書目録・超電磁砲の台詞形式SS

・オリキャラメイン(苦手な方は注意してください)

・今回はゆっくり投下するつもりです

・不定期です

・投下の間隔がかなり空くことがあると思います

よろしくお願いします
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713353246/

木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1713351945/

いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713279251/

【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713277692/

こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713183168/

【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713091115/

アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713089503/

エルヴィン「ボーナスを支給する!」 @ 2024/04/14(日) 11:41:07.59 ID:o/ZidldvO
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 03:08:19.73 ID:44LS5o8Ko
まさかの続編か
超期待
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 03:08:47.05 ID:eTlxd+mXo
えっちょま……ここんとこのSSはどうなってんだ
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 03:09:51.34 ID:OlrL6Yl2o


プロローグ


………………とある病院

黄泉川 「それで、君はまだ口を割る気はない、と?」

ミツアミ 「………………」 プイッ

黄泉川 「……強情じゃん。まったく」

鉄装 「あ……えーと、お嬢ちゃん?」 スッ 「ほら、甘い甘い飴ちゃんだよー?」

ミツアミ 「………………」 プイッ

鉄装 「あうう……」

黄泉川 「どんな手を使ってもダメ、か。そうなるともうお手上げじゃん」

ミツアミ 「……もう帰ってもいいですか? 寮母さんが心配するので」

黄泉川 「………………」 ハァ 「……分かった。寮まで送ってくじゃん」

ミツアミ 「結構です。友達のお姉さんが来てくれるそうなので」

プイッ

ミツアミ 「それでは、失礼します」 ペコリ

鉄装 「うぅ……とりつく島もありませんね」

黄泉川 「よほど話したくないみたいじゃん。自分の命の恩人について」

黄泉川 「小学一年生にしてあの義理堅さは見上げたモンだが……どうしたもんだろうな」
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 03:12:33.75 ID:OlrL6Yl2o
鉄装 「命の恩人って言ったって、結局は殺人犯じゃないですか。それを庇うなんて――」

ミツアミ 「――……あの人はヒーローさんです。逮捕なんて、絶対にさせません」

鉄装 「わっ……!」

ミツアミ 「……今度こそ、失礼します」 ペコリ

黄泉川 「………………」 ハァ 「……あれは無理だな。他を当たるぞ、鉄装」

鉄装 「は、はい。そうした方がいいみたいですね……」

鉄装 「……過剰防衛による能力者殺害事件、かぁ。被害者はレベル4」

黄泉川 「レベル4の能力者を殺せる人間なんて限られる。よほど強大な能力者か、もしくは人殺しを厭わない危険人物だ」

黄泉川 「たとえ被害者がどんな屑だったとしても、人殺しは人殺しだからな」

黄泉川 「アンチスキルとしては放っておくわけにはいかないじゃん。なんとしても捕まえるぞ」

鉄装 「被害者でもあり唯一の目撃者でもあるあの子が犯人のことを教えてくれるのが一番なんだけどなぁ……」

黄泉川 「ぼやくな、鉄装。行くぞ」

鉄装 「……は、はい!」

黄泉川 (……子どもを守るために殺人を犯す……完全な悪人ではないはずだ)

黄泉川 「………………」

黄泉川 (……一方通行。お前もまた、どこかで足掻いているのか……?)

黄泉川 (深い闇の底で、もがき苦しんでいるのか……?)

グッ……!!

黄泉川 (救わなければ。誰も彼も、完全な悪に堕ちてしまう前に。なんとしても……!)
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 03:13:21.35 ID:OlrL6Yl2o
………………待合室

ミツアミ 「………………」 トボトボ (あの人は……人殺しなんかじゃないもん)

ミツアミ (私を助けてくれた、ヒーローさんだもん……)

?1 「あっ……! ミツアミ、きた!」

ミツアミ 「? あっ……イルちゃん!」

ミツアミ 「ごめんね。待たせちゃって」

イル 「気にする、ない。イル、待つの、なれてる」

?2 「お疲れ様です、ミツアミちゃん」 ニコッ 「災難でしたね。お怪我がないようで何よりです」

ミツアミ 「メイさんも、わざわざお迎えありがとうございます。ご心配をおかけしました」 ペコリ

メイ 「ふふ……本当によく出来た方ですね」 ナデナデ

?3 「あーっ! ミツアミちゃんばっかりずるい! わたしもナデナデしてっ!」

ミツアミ 「幼女ちゃん」 シーッ 「病院では静かに、だよ」 メッ

幼女 「あぅぅ……」

ミツアミ 「でも、幼女ちゃんもケガがなくてよかったよ」

幼女 「うん! でも、今度悪い人にさらわれたら、この前作った必殺技を使って倒しちゃおうね!」

イル 「ヒッサツワザ……?」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 03:14:36.64 ID:OlrL6Yl2o
ミツアミ 「よ、幼女ちゃん……! 恥ずかしいよ……」

幼女 「ふぇ? 何で?」 キョトン

ミツアミ 「何でもなのっ」

幼女 「……? あ。そういえば、何でミツアミちゃんはお部屋から出てくるのにこんなに時間がかかったの?」

ミツアミ 「あー……うん。私は幼女ちゃんと違って、犯人さんとかを見ちゃったからね」

ミツアミ 「その事情聴取だよ」

メイ 「……怖い思いをしましたね。大丈夫ですか?」

ミツアミ 「私は……大丈夫です。怖かったけど、それ以上にカッコ良かったから」

イル 「カッコ、良かった?」

ミツアミ 「………………」 コクン 「……話そうと思ってたんだ」

ミツアミ 「……イルちゃんが言ってた、“とまる” って言うひとのこと」

メイ 「!?」

イル 「み、ミツアミ!?」 ガシッ 「と、とまるがどうしたと、言う!?」

ミツアミ 「……会ったの。自分を止って名乗った人と」

幼女 「?」

ミツアミ 「その人が、私と幼女ちゃんを助けてくれたんだよ」

ミツアミ 「――左手の薬指と小指がない、あのひとが」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 03:15:38.44 ID:OlrL6Yl2o
………………

メイ 「………………」

イル 「………………」

メイ 「……良かった」

イル 「ん……。ほんとうに、良かった」

―――― “止さんは、私を助けてくれました”

―――― “あのひとは絶対に悪い人じゃないから……だから、アンチスキルの人にも話してません”

―――― “止さんから連絡があったら、私にも教えてください。私も、ちゃんとお礼が言いたいから”

メイ 「……ミツアミちゃんに感謝ですね。止さんの現状を教えてもらうことができました」

イル 「ん、そのとおり、だ。とまるが無事と、わかった。それだけで、いい」

メイ 「ふふ……今夜はお祝いですね。美味しいものでも食べに行きましょうか」

イル 「ん! イル、beefsteak、食べたい!」

メイ 「ふふふ……」

モゾモゾ……

メイ 「? ……家の前に誰か……?」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 03:17:11.26 ID:OlrL6Yl2o
?1 「………………」

イル 「? おまえは……」

?1 「……あ……イルちゃん、メイさん……」

メイ 「『ボックス』 の下部組織の……!? どうしてここに!?」

世話子 「………………」 ジワッ 「……メイさん……イルちゃん……」

――ポタッ……ポタポタッ……

世話子 「うぅ……ごめんなさい……ごめん、なさい……っ!」

メイ 「一体どうしたんです!? この包帯……怪我をしていらっしゃるのですか?」

メイ 「それに、この女の子は……?」

?2 「………………」

イル 「………………」 トト…… 「……ダイジョブ、か? 顔、上げる」

?2 「………………」 クイッ 「……ああ……お主が、“いる” か」

イル 「……?」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 03:18:07.87 ID:OlrL6Yl2o
メイ 「あなたは……?」

?2 「…… “めい” とやら、すまぬが、家に入れてはくれないか?」

?2 「われと世話子はもう、限界だ。寒くて寒くて、凍えそうなのだ」

?2 「迷惑はかけぬ。面倒もかけぬ。ただ、一時だけでも暖かい場所を提供してはくれないだろうか」

メイ 「あ、当たり前です! 早く家にお入りになってください! すぐに暖房を入れますから!」

ガチャッ

イル 「………………」 ギュッ 「……さ、中、はいる」

?2 「すまぬ。心より感謝する」

イル 「……おまえの、名前、教える」

?2 「……ああ、名乗るのを忘れていたな。失礼を詫びよう」

?2 「――われの名は、月子という」
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 03:19:26.08 ID:OlrL6Yl2o
………………

メイ 「……そう、でしたか」 フルフル 「止様はそんなことを……」

月子 「すまぬ。われの事情にトマルを巻き込んでしまったのだ」

イル 「あやまること、ない。どうせとまるは、頼まれなくても、勝手に傷ついて、いく」

世話子 「……そういうひと、ですからね」

世話子 「……でも、私だけは、そんな止さんについていてあげなくちゃいけなかったのに……!」

メイ 「………………」 ギュッ 「……自分を責めてはいけません、世話子ちゃん」

メイ 「それを言うなら、わたしだって、ずっと止様についていてあげなければならなかったのですから」

メイ 「少なくとも、途中で闇から逃げ出したわたしに、あなたを責めることなどできません」

世話子 「メイさん……」 ギュッ 「ありがとう……ございます……」

月子 「………………」

ギュッ

月子 「む……?」

イル 「ツキコも、あまり自分、責める、ない」

イル 「ダイジョブ、だ。とまるを信じろ。とまるは、ゼッタイ、かえってくる」

月子 「………………」 ギュッ 「……うむ。そうだな。ありがとう、いる」
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 03:21:10.91 ID:OlrL6Yl2o
………………

世話子 「………………」 コクコク…… 「すみません。お茶までご馳走になってしまって……」

メイ 「いえいえ。月子ちゃんも、お口に合いましたか?」

月子 「うむ。世話子の入れる緑茶も好きだが、めいの紅茶も旨い」

メイ 「ありがとうございます」

メイ 「ふふ……ともあれ、今日からお家も賑やかになりますね、イル」

イル 「ん。イル、うれしい!」

世話子 「へ……?」

メイ 「? 何を呆けた顔をしていらっしゃるんです、世話子ちゃん?」

世話子 「いや、あの……さすがに、そこまでお世話になるわけには……」

メイ 「……わたしも、『ボックス』 時代にはあなたに散々お世話になりましたからね」

メイ 「幸いにして広いアパートです。お部屋なら余っていますし」

メイ 「…… 『ボックス』 は馴れ合いのチームです。一緒に、暮らしませんか?」

世話子 「………………」 グスッ 「……すみません。お世話になります」

月子 「……すまぬ。恩に着る」

イル 「気にする、ない。ここにいるのは、とまるに、ゼンブをすくってもらった者、ばかり」

イル 「一緒に、とまるの帰りを待つ、イチバンいい」
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 03:24:02.47 ID:OlrL6Yl2o
イル 「ツキコ、からだ、つめたいな」

月子 「む……?」

イル 「フロ、はいると、いい。からだ、あったまる」

月子 「う、うむ……」

メイ 「……そうですね。イル、一緒に入ってあげなさい」

イル 「ん! わかった」

世話子 「あっ……で、でも月子ちゃん、お風呂は……」

月子 「………………」 フルフル 「……もう、我が儘を言ってはいられんからな」

月子 「トマルと約束したのだ。普通に戻ると。だから、大丈夫だ」

世話子 「月子ちゃん……」

月子 「われは決めたよ、世話子。われはもう我が儘は言わない。普通になるために」

月子 「……トマルが守ってくれた普通を、享受するために」

世話子 「……うん」 ニコッ

月子 「うむ」
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 03:25:17.33 ID:OlrL6Yl2o
………………

イル 「ふん……ふん……♪」

パシャパシャ

月子 「………………」

イル 「……? どうした? ぬるいか?」

月子 「いや……熱いくらいだ。ちょうどいい」

イル 「そう、か……」

イル 「? ツキコ」

月子 「む? 何だ?」

イル 「そのCollarのような、Crossは、なんだ? はずさないの、か?」

月子 「ああ……いや、これは外せない」 ギュッ 「……外しては、いけないものだからな」

イル 「?」

月子 「……われの身体を縛りつける戒めだが、それと同時にわれを自由にする翼でもある」

イル 「……?」

月子 (これは外せない。十字教術式による厳重なプロテクトがかかっている)

月子 (……構わぬ。どうせ、『神体』 としての力など、争いしか生まぬのだからな)
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 03:26:06.47 ID:OlrL6Yl2o
………………

世話子 「……子どもたちは強いですね」

メイ 「ええ……それはもう。わたしたちもうかうかしていられません」

世話子 「はは……」

メイ 「………………」

メイ 「……世話子ちゃん。イルをお願いできますか?」

世話子 「えっ……? どちらかにお出かけですか?」

メイ 「ええ……少し」

世話子 「………………」

世話子 「……多分、あのひとはあそこには戻ってきませんよ」

メイ 「……ええ、でも……それでも、行きたいんです」

世話子 「……分かりました、お任せ下さい」 ニコッ 「お夕飯の準備もしておきますね」

メイ 「すみません。お願い致します」 ペコリ
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 03:27:43.17 ID:OlrL6Yl2o

………………裏路地

止 「………………」

フラフラ……

止 「………………」

ヨロヨロ……

――――ドサッ

止 「ッ……」 (クソが……。立ち上がれねぇ……)

止 「電話……」

スッ……prrrr……ピッ

?? 『はいどうも、ご機嫌よう、通行止め(ドライブキャンセラー)』

止 「……調査は、あらかた、終わった……」

止 「裏付けは、取れていないが…… 『スクール』 とやらは、スナイパーを雇いたい、らしい」

止 「今後、何らかの仲介業者に、接触する、可能性が、ある……もしくは、もう、接触、したか、だ……」

?? 『なるほどなるほど。こちらで調べたデータとも一致しますね。分かりました』

止 「それから、もう一つ…… 『ブロック』 とやらについての情報も、手に入った」
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 03:28:52.68 ID:OlrL6Yl2o
止 「『ブロック』 は、やはり、『スクール』 とやらと同じ、ように……学園都市に、反逆の意志を、見せている」

止 「人員の、ひとりを締め上げたが……どうやら……綿密な、計画を練っている、ようだ……」

止 「詳細は、分からないが……リーダー格の人間……佐久とやらが、全てを知っている……」

?? 『ふむ。「ブロック」 についても反逆は確実、ですか。面倒なことになってきましたね』

止 「………………」

?? 『くく……あなたも反旗を翻しでもしますか? 「ボックス」 ?』

止 「……冗談じゃ、ねぇ。勝算のない戦いを、するつもりは、ない」

ゼェ、ゼェ……

止 「くだらないこと、言ってる暇が、あるなら……次の仕事を、聞かせろ……」

止 「その、『スクール』 とか 『ブロック』 とかって、連中を、潰せば、いいのか……?」

?? 『あれから12時間ぶっ通しで働いているというのに、精力的な方ですねぇ』

クスクスクス……

?? 『さすがに意地悪をしすぎたようですね。私も鬼ではありませんし、何よりあなたに死なれてしまっては困る』

?? 『休んでください。今のあなたは戦力にならないですからね』

?? 『「スクール」 や 「ブロック」 の相手は別の組織にやらせます』

?? 『……まぁ、まだ “彼ら” に情報を開示する段ではありませんけどね』 クスクス

止 「勝手に、しろ……俺と同じ、ような……クソ共の、心配を……する気、なんざ、ねぇよ……」

止 「……んなこと、より……約束は、ちゃんと、守るんだろうな?」

?? 『怖い声を出さないでください。約束は守ります。あの四人の生活は、基本的人権に則って保障します』
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 03:29:54.83 ID:OlrL6Yl2o
?? 『……ああ、そうそう。それから、あなたにいくつかのプレゼントが』

止 「……んだと?」

?? 『今までの 「ボックス」 の本拠はもう使えないでしょう?』

?? 『だから住み処をご用意致しました。場所は後で通知します』

止 「……胡散、臭ぇな」

?? 『言ったでしょう? 我々はあなたに期待しています。くだらない理由で死なれてもらっては困る』

止 「はは……散々……上層部に煮え湯を飲ませた、俺に対しての、言葉とは思えねぇ、な」

?? 『さぁて? その煮え湯とやらが本当に熱湯だったのか、それは分からないですよ?』

止 「はっ……ぬかせ」

?? 『それから、簡易的な義手と 「機械化小銃(メカニカルライフル)」 の予備を』

止 「……機械化小銃、だと? あれは、俺が自分で、用意したもの、だぞ?」

?? 『我々があなたの動向を把握していないとでもお思いですか?』

?? 『あなたの編み出した 「斉撃」 ……相手を殺すことを厭わない良い戦術です。今後も使ってください』

?? 『そのための支給品ですよ。あなたが我々のオーダーを遂行するための備品です』

止 「………………」

?? 『くく……受け入れなさい、通行止め。あなたは上層部の手の上で踊るしかないのですから』
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 03:31:11.44 ID:OlrL6Yl2o
止 「……けっ、ありがたく、もらっておくさ……」

?? 『そして最後に…… 「ボックス」 の補充要因を、ひとり』

止 「っ……!」

?? 『ああ、これについてはまだ確定ではありませんでした。忘れてください』

クスクス……

止 「……お前はさぞ、楽しいだろうな」 ゼェゼェ 「俺たちを、翻弄しながら、使い潰せばいい、だけなんだからな……」

?? 『こういうポストはこういうポストで、意外と心労があるものですよ。残念ながらね』

止 「ふん……そうかよ」

?? 『では、失礼します。私もこれで忙しい身の上でしてね』

止 「ああ……」

?? 『……ボロボロですね。大した戦闘技術も技能もないのに、暗部でひとり戦っているのですから当然ですか』

止 「………………」

?? 『まぁ、死ぬな、とは言いませんけどね』 クスクス 『せめて有益な死を期待していますよ、能力殺し(AIMキラー)』

プツッ……

止 「………………」 (有益な死、か……)

ガクッ……

止 (……少し、眠るか……身体中が、痛てぇ……)

ズキッ……

止 (ありもしねぇ左手が……痛みやがる……クソッタレ……)

………………………………
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 03:33:01.97 ID:OlrL6Yl2o
今回はここまでです。
次の投下はすみません、いつになるかちょっと分からないです。
できるだけ早くに投下します。
上がっていたら始まったと思って来て頂けると嬉しいです。

見ていてくださった方、ありがとうございました。
またよろしくお願いします。
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 03:59:39.19 ID:x/9ORdHGo
ねことあひるキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
マジで最近のssどうなってんだwwいやうれしいんだけどwwww
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 04:02:48.70 ID:izsZ6MhA0
>>21何がそんなに凄いんだ? クオリティ上がってきてるとか?
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/09(水) 06:29:03.98 ID:b3QRqDvDO
なんでオリキャラメインの話が持て囃されてんの?

自己投影の恰好の的だから?
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 07:50:43.73 ID:MvuQmKTAO
>>23
面白いからに決まってんだろ
術式とか結構深く考えてくれてるし
キャラの名前だけを借りたようなやつより万倍良い
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/09(水) 08:02:50.40 ID:tTPCgc0AO
ねことあひるキタ!
支援支援
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 08:13:54.93 ID:1VDSSH5AO
キターーーーー(・∀・)ーーーーー!!!
朝から雪で萎えてたやる気が、一気に出てきました!
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 08:27:02.09 ID:5zmhduWKo
ねことあひるより止の方が気になって仕方ない作品きたあああ
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 09:20:32.23 ID:qGOrYzMAO
まさかの第4期キター!!
しかしシリーズを追う毎に止サイドに比重が置かれて行くなw
もちろん黒子サイドも楽しみだけど
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 09:39:56.44 ID:UoVo22yDO
>>1
またwktkさせてくれ
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 11:30:38.01 ID:XKtp7D4IO
まさかの続編とかこれはマジで期待!
>>22
最近VIPやらで一方好きの変態とか、ないと思ってた一方禁書の続きとか面白いスレが立て続けに立っているってことでしょ
こいつらの作る話は総じてクオリティ高いのは言うまでもないしな
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 11:49:36.55 ID:1JQH59iAO
このスレの三割は自演でできています
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 17:05:51.50 ID:OlrL6Yl2o
………………………………

………………数年前 ESP研究所

カツカツカツ……

102 「………………」

チッ

102 (まだレベル1かよ、クソが……)

102 (今度こそレベル2にシフトしたと思ったんだがな……)

102 「……胸くそわりぃ。さっさとレベル5になりてえってのに」

ゴソゴソゴソ……

102 「あん……?」

103 「………………」

102 「……? 103?」

103 「にゃっ!?」 ビグッ 「……な……なんだ、102か……ビックリさせないでよ」

102 「んな廊下の隅っこで何やってんだ?」

103 「わっ……わぁ! 静かにしてよっ!」

102 「あん? うるせぇのはお前だろうが」
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 17:07:00.82 ID:OlrL6Yl2o
102 「何だってんだ、一体?」

103 「いや、それがさ……」 モジモジ 「ネムとディズが、お腹が減ったって言うからさ……」

102 「………………」 ハァ 「……お前、まさか食料かっぱらいに来たのか?」

103 「わぁ! だから大きな声を出さないでよバレちゃうでしょっ!」

102 「……あのネコとアヒルをあんま甘やかすなよ。飼い主として示しがつかねぇぞ?」

103 「僕はあの子たちの飼い主じゃないよ。友達だよ」

102 「けっ……そうかい」

ニィ

102 「しゃあねぇな。気晴らしに協力してやるよ。食料庫に忍び込むんだろ?」

103 「本当!? 助かるよ!」

102 「小腹も空いてたしな……おら、行くぞ103!」 ダッ

103 「あっ……! ま、待ってよ102!」 タッ

………………………………
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 17:08:00.52 ID:OlrL6Yl2o
………………………………

………………

男 「………………」

白井 「……? 男さん?」

男 「……っあ……なに、白井さん?」

白井 「ボーッとしていらっしゃったようですので……どうかされました?」

男 「あ、いや……ごめん。何でもないです」

白井 「………………」

ジーーーーーーーーーッ

男 「うっ……」

ジーーーーーーーーーッ

白井 「………………」

男 「………………」 ハァ 「……うん。ごめん。何でも話すって約束ですもんね」

男 「ちょっと昔のことを思い出してたんだ。僕がまだ小さかった頃……ESP研究所にいた頃のことを」

男 「あの頃の102はとても活発で、いつも僕を引っ張ってくれてたんです……」

男 「……けれど、僕がいなくなってからの彼は……ずっと、一人で……」
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 17:09:09.51 ID:OlrL6Yl2o
男 「………………」

ギュッ

男 「白井さん……?」

白井 「大丈夫、ですの」 ニコッ 「今からでもやり直すことはできますの」

白井 「貴方がそれを望むのなら、いくらでも」

男 「……うん」

男 (……後悔はいつだってできる。102に謝ることだって、いつか正面切ってすればいい)

白井 「さ、行きますわよ」

男 「うん。行こう」

男 (多分、たくさん回り道をしてきた。今だって、もしかしたら回り道なのかもしれない)

男 (けれど待っていて、102。僕はいずれ、絶対に君に追いついてみせるから……!)

………………精神病棟入り口
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 17:11:06.68 ID:OlrL6Yl2o
………………第七学区 風紀委員第177支部

固法 「………………」

コクコクコク……プハァ

固法 (……今まで経験してきた、いくつかの不可思議な事件……)

固法 (『魔術』 ……それが当てはまれば、綺麗さっぱり片が付くんだけど……)

―――― “ダメだよ、みい。これ以上は何も言えないかも”

固法 (けれど、インデックスさんは口を開いてはくれなかった)

固法 (きっとこれ以上私たちを巻き込みたくないってことなんだろうけど)

固法 (白井さんの言葉からして、きっと九月一日に騒動を起こしたのも 『魔術師』 ……)

固法 (0930事件だけの話じゃない。きっと、魔術師は学園都市に何度もやって来ている)

スッ……

固法 (……私の 『透視能力』 では “まだ” 見通せないもの。科学では計れない本物の異能)

初春 「……? 深刻な顔しちゃってどうしたんですか? 固法先輩」

コトッ

固法 「ああ……初春さん。ありがと」
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 17:12:29.68 ID:OlrL6Yl2o
初春 「牛乳ばっかり飲んでたらお腹壊しちゃいますよ?」

初春 「それに、そんな顔ばっかりしてたら、皺ができちゃいます」 クスッ

固法 「……それもそうね」 プハァ 「考えてたって仕方ない、か」

キョロキョロ

固法 「それで、今日は男くんと白井さんはどうしたのかしら?」

初春 「なんでも、デートらしいですよ?」

固法 「……まったく。誰も彼もまるで緊張感がないんだから」

初春 「ケンカ明けなんですからそれくらい許してあげましょうよ」 ニコニコ

固法 「……そうね。まぁ、それくらいは仕方ないのかしらね」

――――prrrrrr……

固法 「?」 スッ 「はい、こちら風紀委員第177支部ですが」

?? 『ああ、その声は……たしか固法くんと言ったね』

固法 「……? えー……失礼ですが、どちらさまでしょうか?」

?? 『いや、これは失礼。学園都市統括理事の貝積継敏だ』

固法 「はぁ……」 ハッ 「――は?」

ガタッ!!

固法 「と、統括理事!?」
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 17:13:49.45 ID:OlrL6Yl2o
………………精神病棟受付

男 「は……? ど、どういうことですか!?」

受付 「ですから、申し上げた通りです」

受付 「あなたが面会を求めていらっしゃる方は、別の病院に移送されました」

受付 「申し訳ありませんが、面会はできません」

男 「だっ……だから、それがどういうことだって聞いているんです!」

受付 「ここは病院ですよ? お静かに」

白井 「……静粛にしてほしいというのなら、しっかりとした情報開示をお願い致しますの」

スッ

白井 「こう見えても、わたくしたちは風紀委員ですのよ?」

受付 「申し訳ありませんが、何もお教えすることはできません」

男 「っ……」 ギリッ 「……彼女は生きているんでしょうね……?」

受付 「? 物騒なことをおっしゃいますね。当たり前でしょう」

白井 (……男さん、この様子では、この方は何も知っていないようですの)

男 (うん、そうみたいだ。また裏で何かが動いている……そんな気がする)

prrrrrr……

白井 「……? 電話? 固法先輩から?」
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 17:14:29.80 ID:OlrL6Yl2o
………………???

少女 「………………」

ガタッ……ゴトッ……

少女 (……なるほどな。目覚めてみれば、身体中を縛られ、目隠しをされて転がされている、か)

少女 (私らしい終わりと言えるか……くく……)

少女 (この揺れとエンジン音からして、トラックといったところか……)

少女 (殺すなら殺すでひと思いにやればいいものを。わざわざ連れ出すメリットってのは何かね)

フッ

少女 (だが、生憎だったな、上層部のクソッタレども)

少女 (すでに “あの言葉” はアイツに伝えてある。あんな甘い奴を信じたくはない……しかし、)

―――― 『こんなことをしたって仕方ないよ。……僕も手伝うから、だから、もうやめよう』

―――― 『――まずはその不幸を、幸せで吹き飛ばす!!!』

少女 (アイツは……アイツの想いは、拳は、私に突き刺さった。アイツは、私に想いを届かせたんだ)

少女 (……信じてやろうじゃないか。私と、仲間の不幸を……吹き飛ばしてくれることを)

少女 (願わくは……この街の闇を、お前の幸せが吹き飛ばしてくれることを……)
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 17:16:34.36 ID:OlrL6Yl2o
………………イギリス清教『必要悪の教会』女子寮

ステイル 「――――と、いうわけで、本日付で 『必要悪の教会』 所属となったシスターだ。よろしくしてやってくれ」

姉 「え、えっと……元ロシア成教 『殲滅白書』 所属のシスターです。パン作りが得意です」

姉 「み、皆さん! ふつつか者ではございますが、よろしくお願いします……!!」

アニェーゼ 「はぁ……? よく分からんですが、境遇は私たちと似たようなモンってとこですかね」

ルチア 「ロシア成教……といえば、先日いらっしゃった刺激的な服装の方が思い起こされますね」

アンジェレネ 「でも、この方は普通の修道服を着ていますよ? あれはロシア成教の正式な服装だったんじゃないんですか?」

オルソラ 「ああ……そういえば皆さん、洗濯が滞っておりますので、全自動洗濯機を使ってくださいね」

ステイル 「………………」

ギリッ

ステイル 「くそっ、唯一まともといえる神裂がいないだけでこの有様か……ッ」

シェリー 「誰が唯一まともだ誰が」 ボリボリ 「……こっちでうまくやっとくから、心配しないで野郎は消えなさい」

ステイル 「……ゴスネグリジェ姿の不精女が何を……」 ボソッ

シェリー 「あん? なんか言ったかコラ」

ステイル 「……変な奴ばかりだが、生活には困らないはずだ。何かがあれば、誰かに言え」

姉 「あっ……ありがとうございました……! ステイルくん」

ステイル 「………………」 チッ 「……ふん。精々うまく暮らすんだね」
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 17:18:16.07 ID:OlrL6Yl2o
シェリー 「ふん。カッコつけ野郎め……」

姉 「………………」

シェリー 「ほらほらほら、この子が困っちゃうからさっさと自己紹介しちゃうわよ」

シェリー 「そしたら今夜は歓迎会だ。パーッとやるに限るね」

アンジェレネ 「歓迎会!?」 キラキラキラ 「それはつまり、食べ放題ってことですよね!?」

ルチア 「シスターアンジェレネ! あなたはなぜそう十字教の教義に真っ向から刃向かおうとするのですか!」

アニェーゼ 「まぁまぁ、いいじゃないですか、シスタールチア。こういう日ぐらいはハメ外したって」

オルソラ 「ああ……そういえば皆さん、洗濯機が壊れてしまったので、修理されるまで手洗いでお願いしますね」

シェリー 「それはもういい――っていうかさっきは洗濯機使えって言ってたわよねあんた!? どっちなの!?」

オルソラ 「? えーっとですね、洗濯機が滞っているから、洗濯機を使って欲しいのです」

シェリー 「もはや意味が分からないわよ! ……ああもう、いいわ。あんたの言葉は後で解読するとしましょう」

シェリー 「……悪いね、騒がしくて。まったく、女しかいないとこうなってダメだわ」

姉 「あ……いえ! とっても楽しそうです!」 ニコニコ

姉 (男……お姉ちゃんは、イギリスで楽しく暮らせそうです)

姉 (あなたが吹き飛ばしてくれた不幸、支えてくれた幸せ……)

姉 (その全てを想いながら、わたしはがんばってみます)

アンジェレネ 「ごちそう! ごちそう! 食べ放題! 食べ放題! オルソラさんの美味しいパスタ!!」 ルンルン

ルチア 「し・す・た・ぁ・あ・ん・じぇ・れ・ね!!!」 ドカーン
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 17:19:32.81 ID:OlrL6Yl2o
アンジェレネ 「あうー……! シスタールチアはちょっと厳しすぎですよぅ!」

ルチア 「そんなことはありません。正しき教義を身につけるには、まず正しき生活から」

ルチア 「あなたのような欲の権化がシスターでは、迷える子羊に示しがつかないでしょう」

アンジェレネ 「うぅぅ……」

ルチア 「……そういえば、シスターアニェーゼ、先日の件は本当に私たち三人に任ぜられたのですか?」

アンジェレネ 「あうー……」 (´・ω・`)

アニェーゼ 「ああ、そうみてえですよ? 私と、シスターアンジェレネとシスタールチアの三人のようです」

アンジェレネ 「がおー」 (「・ω・)「

ルチア 「……はぁ。何だって私があんな粗野な場所に……神の教えを知らぬ野蛮人の巣窟などに」

アンジェレネ 「………………」 (誰も聞いてない……) (´☆ω☆`)キラン

アニェーゼ 「まぁまぁ、仕方ねえじゃないですか。観光程度に楽しむことにしましょう」

アニェーゼ 「シスターアンジェレネもしっかり準備しておいてくださいよ? 出発は今夜の飛行機ですからね?」

――ヒョコッ

ステイル 「……ああ、そうだ。ひとつ確認したいことがあった。アニェーゼ、――」

アンジェレネ 「――天誅! ですですっ!」

――――バッッッサァァアアアア!!!
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 17:20:51.73 ID:OlrL6Yl2o
ステイル 「!?」

姉 「はわっ……!?」

アニェーゼ 「……やれやれ」

オルソラ 「あらあら、素晴らしい滞空時間でございますね」

シェリー 「………………」 ハァ 「……アホかしらね、まったく」

アンジェレネ 「ふふふ……」

ルチア 「?」

ハッ

ルチア 「す、スカートめくり……!?」 バババッ 「し、シスターアンジェレネ!!」

アンジェレネ 「逃げるが勝ちです!」 ダダダダダッ

ルチア 「ま、待ちなさい! というか、無視された程度でそんな蛮行に及ぶなんて……!」

ルチア 「あなた明らかに色々な悪影響を受けていませんか!?」 タッ

ルチア 「くっ……あれもこれもそう、ぜーんぶ、あの異教徒の少年のせいです……!」

アニェーゼ 「……また彼は不幸な思いこみをされてるようですねぇ」 チラッ 「ってーか、ステイル氏」

ステイル 「なっ、なんだい?」

アニェーゼ 「いつまで鼻を押さえてんです? ロリコンなフリをして実はルチアみたいな正統派がお好きで?」

ステイル 「なっ……!」
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 17:22:03.33 ID:OlrL6Yl2o
ステイル 「だから君たちはなぜそう下卑た話が好きなんだ!? 仮にもシスターだろう!?」

アニェーゼ 「へぇへぇ。英国の男性はお堅いですねえ」

アニェーゼ 「……それで、そのむっつりラッキースケベが今度は一体なんのご用で?」

ステイル (いつか燃やす。彼女を傷つけようとした分も含めて、いつか燃やす)

ステイル 「……先日話した件だよ。仕事、請け負ってくれるだろう?」

アニェーゼ 「ああ……私とシスタールチア、シスターアンジェレネで問題ねえですか?」

ステイル 「……今の一幕を見る限り甚だ心配だが、信じるとしよう」

ゴソゴソ……

ステイル 「それで、少し案内役のクズ野郎が学園都市の用事で空けているらしい」

ステイル 「だから、連絡の方はこちらに頼むよ。彼の友達らしいし、魔術についても少しは知っている」

アニェーゼ 「はぁ……?」

ステイル 「心配することはないさ」 チラッ

姉 「?」

ステイル 「なにせ、彼は学園都市の治安維持を司る組織に身を置く、彼女の “弟” だからね」

姉 「えっ……?」

ステイル 「……だから、頼むよ、シスターアニェーゼ。学園都市への出張業務」

アニェーゼ 「了解です。ま、問題を起こさねえように気をつけますよ」
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 17:24:15.48 ID:OlrL6Yl2o
シェリー 「? おい、不良神父」

ステイル 「なんだい? 鄙びたゴチックドレス女」

シェリー 「クソが……その様子だと知らないらしいわね。あんた、明後日から空いてる?」

ステイル 「生憎と仕事があるな」

シェリー 「……アニェーゼあたりが使えればと思ったんだが、無理らしいわね」

ステイル 「何の話だい?」

シェリー 「別系統の命令。ノルウェーの魔術結社を潰せっていわれてるのよ、私」

ステイル 「それは初耳だ」 ハァ 「この命令系統のずさんさを早急に改善しないといつか足下をすくわれそうだ」

シェリー 「そもそも魔術師はテメェのことを隠すのが当たり前なんだから、仕方ないと言えば仕方ないけど」

シェリー 「……にしても参ったな。即戦力になるくらいの実力者がひとりほしかったんだが」

アニェーゼ 「あ……私が行きましょうか? 学園都市への出向は違うシスターでも……」

ステイル 「ダメだ。部隊のリーダーである君が行くことに意味がある」

シェリー 「……攻撃性能が高くなくてもいい。私が陽動をしている隙に、目的を果たしてくれるだけでいいんだ」

シェリー 「部隊の中に隠密性に優れるようなシスターはいないかしら?」

アニェーゼ 「いないことはねえですけど……それを専門としているかと言われると疑問ですね」
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 17:25:42.07 ID:OlrL6Yl2o
姉 (隠密性?) オズオズ 「あ、あの……」

シェリー 「あん? ああ、ごめんごめん。あんたを放ったらかしにしてたわね」

姉 「い、いえ……あの、ですね、わたし、お役に立てるかもです」

シェリー 「へ……?」

姉 「えっと、『姉と弟』 の術式を正規の形で組み直せば、あらゆる魔術的罠をかいくぐることくらいはできます」

姉 「お、お役に立てないでしょうか?」

シェリー 「………………」

姉 (うぅ……やっぱり、つい少し前までロシア成教にいたわたしなんかを、信じてくれるわけが……――)

ガッ

姉 「はぇ!?」

シェリー 「ありがとう。めちゃくちゃ助かるわ!」

ステイル 「ふむ……まぁ、彼女の隠密性はあの子も認めるほどだからね。不足はないだろう」

アニェーゼ 「はぁ、あの 『禁書目録』 が。そりゃ素直にすげえですね」

姉 「あっ……は、はい! がんばりますです!」

姉 (わたしの、新しい居場所…… 『必要悪の教会』)

ダダダダダ……!!!

ルチア 『シスターアンジェレネぇぇえええええええええ!!!!』

姉 (……少し騒がしいけど、暖かくて優しい場所)

アンジェレネ 『べーだっ! 私はもう決めました! シスタールチアの呪縛から逃れるとっ!』 フンス

姉 (……ちょっとだけ、騒がしすぎるかもしれないけど)
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/09(水) 17:27:41.03 ID:OlrL6Yl2o
………………???

止 (う……あ……)

ピクッ

止 (何だ……? ああ……休みを、もらって……路地裏で、ぶっ倒れて……)

止 (……暖かい? 柔らかい……? 布団……?)

止 (寝かされて、いる……?)

止 (夢……? いや、もう、何でも、いい……)

?? 「あっ……目が覚めそうです?」

止 (声……? ああ、くそ、眠みぃ……)

?? 「眠いです? なら、無理はしなくていいんですよー」

?? 「ここは先生のお家です。何も心配しなくていいですからねー」

?? 「ゆっくりしっかり眠って、身体を治してください。ボロボロなんですから」

止 (幻聴……夢……ああくそ、もう何もかもが、どうでもいい……)

止 (眠みぃ……)
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 17:30:51.54 ID:OlrL6Yl2o
今回はここまでです。
今後も暇をみつけてこんな風に短い投下をしていくと思います。
投下は本当に不定期だと思います。


手前勝手で申し訳ありませんが、お付き合いいただければ嬉しいです。
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 19:53:30.31 ID:mHU0lKEAO
>>1
乙です
続編が読めるとか嬉しいです
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 20:37:25.55 ID:vVaMNc5AO
なんと続編とな!ずっと待ってた!
大層乙であった!
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 22:51:39.97 ID:5DxKm84wo
乙です
まさかの小萌先生キタ!
あわきんも同居してるし止のハーレム建築は揺らぎないなww
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/09(水) 23:07:43.82 ID:Ik+S7iXSO
まさかの続編……!!
胸熱。
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/10(木) 01:12:49.58 ID:fy3HuktDO

仕事クビになったけど、どーでも良くなったぜ!
54 :1 [saga]:2011/02/10(木) 01:40:56.46 ID:VwEXzTNqo
………………貝積邸

男 「………………」

ソワソワキョロキョロ

固法 「男くん」

男 「!」 ビグッ 「にゃっ、にゃんですか?」

固法 「……はぁ」

白井 「……少しは落ち着いてくださいな。まったく、情けないですのよ」

男 「そ、そんなこと言ったって……」

ソワソワ

男 「こんな豪邸、来るの初めてだし……」

白井 「そんなことで、数年後にわたくしの家に挨拶に来られまして?」

男 「えっ……?」 カァア 「……そ、そんな……気が早いよ白井さん////」

初春 「白井さんのお家もやっぱりこれくらいの豪邸なんですか?」

白井 「いつか招待して差し上げますわよ。その時に判断してくださいな」

固法 「あなたたちはあなたたちで緊張感がなさすぎよ。まったく……」
55 :1 [saga]:2011/02/10(木) 01:42:11.42 ID:VwEXzTNqo
――ガチャッ

貝積 「やあ、風紀委員の諸君。こちらから呼び出しておいて、お待たせして失礼した」

男 「ひっ……!」 ガタッ

貝積 「? どうかしたかね?」

白井 「気になさらないでくださいですの。若干挙動不審な方ですので」

貝積 「なるほど。では気にしないことにしよう」

男 (酷すぎない? ねぇ、酷すぎない?)

初春 (あー、そっか。男さん、実際に面と向かうのは今日が初めてですもんね)

貝積 「まずは、忙しいだろうに、呼び出してしまったことから謝罪しよう。すまなかった」

固法 「いえ……それで、ご用件というのは?」

貝積 「いやいや、そう改まらずとも、大したことではないよ。先日のお礼がしたいというだけだ」

固法 「……風紀委員として、当然のことをしたまでです」

貝積 「しかし、その一言ではいそうですかと引き下がれるほど、統括理事というポストは軽くないのだよ」

固法 「だとしても、風紀委員として特定の方と懇意にするわけにはいきません」

男 (す、すごい固法さん……統括理事相手に普通に会話を進めてるよ……)
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/10(木) 01:43:00.98 ID:VwEXzTNqo
固法 「……まぁ、風紀委員でない、個人としてならそれも吝かではありませんけどね」

貝積 「なるほど。たしかにそのとおりかもしれないな」

貝積 「では、風紀委員としてではなく、個人として君たちにお礼をしよう。何か希望はあるかね?」

固法 「……だ、そうだけど? 男くん?」

男 「へ……?」 ガタッ 「そこで何で僕に話を振るんです!?」

白井 「それくらいで涙目にならないでくださいな……情けない」

初春 (やだ……やっぱりちょっと怖いくらいの男さんの方がよかったです……)

固法 「事情が差し迫ってるのはあなたでしょう? 権力者に聞いてほしい話があったんじゃないの?」

男 「あっ……」

グッ……

男 (そうだ……僕は……)

貝積 「……? そういえば、君は……?」

男 「……申し遅れました。風紀委員第177支部所属の、男です」

貝積 「ああ……雲川の後輩の……」 (ほぅ、唐突に目が据わった……面白い少年だな)

男 「統括理事、貝積継敏さん……僕に、ひとつだけお願いがあります」
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/10(木) 01:44:13.53 ID:VwEXzTNqo
貝積 「なんだろうか?」

男 「……とある少女の行方を調べてほしいんです。できるだけ速やかに。彼女が、死んでしまう前に」

貝積 「……ふむ。事情はなんとなく飲み込めた。街の深部に踏み込んでしまった子どもを救って欲しいのか」

貝積 「分かった。出来る限りのことはしてみよう」

貝積 「その子の詳しい情報を教えてほしい」

男 「○×病院精神病棟にいた女の子です。今日から行方が分かりません」

貝積 「ふむ。調べてみよう。少し待っていてくれたまえ」

ガチャッ

貝積 「……ああ、私だ。速やかに情報の開示請求をしてもらいたい案件がある」

貝積 「なに、心配するな。権利侵犯をするつもりはない。私も搦め手が苦手というわけではないのだよ」

………………
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/10(木) 01:45:04.87 ID:VwEXzTNqo
………………

貝積 「……――ああ、分かった。あとは頼む」

ガチャッ

貝積 「………………」

男 「……どうですか?」

貝積 「……予想以上に機密性が高かった。ただ深部に関わっただけの子どもではなかったようだ」

貝積 「だが、なんとかなりそうだよ。完全に救うことは叶わなそうだったがね」

貝積 「とりあえず彼女の命は救えそうだ。それ以外については、まぁ分からんがね」

男 「………………」

貝積 (一体なにに触れてしまったというのだか。この苛烈な命令は間違いなく潮岸のものだ)

貝積 (あの男がここまでして消したがっている何かを掴んでしまったということか……)

貝積 (まぁ……そんなもの、数は限られてくるのだが……アレの情報か……)

男 「―――――― 『ドラゴン』」

貝積 「!!!?」 ガタッ 「なッ……き、君は……!?」

男 「………………」 ニィ 「……やはり、反応されるんですね。ここまでとは思いませんでしたけど」
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/10(木) 01:47:01.93 ID:VwEXzTNqo
白井 「男さん……」

男 「大丈夫。なんとなくだけど、分かるんだ。この人は悪い大人じゃない」

貝積 「………………」

スッ

貝積 「……驚かせてしまったようだ。すまない」

貝積 「しかし、その言葉の重要性を知っているのなら、不用意に口にはしないことだ」

貝積 「命が惜しいのならね」

男 「……あなたはこの言葉の意味を知っているということですね?」

貝積 「………………」

フルフル

貝積 「……すまないが、私は、その言葉について、知っているとも知らないとも、」

貝積 「はたまた知っているにしても、どこまで知っているのかについてさえ、口にするつもりはない」

貝積 「言葉の意味だとか、そういう次元の話ではない。どこまで知っているのかさえも、知られたくないのだ」

男 「………………」 (学園都市に十二人しかいない統括理事がここまで恐れる……)

男 (一体何なんだ……?)
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/10(木) 01:48:40.69 ID:VwEXzTNqo
prrrrr……ピッ

貝積 「……ああ……そうか。うむ……分かった。頼む」

貝積 「……どうやら彼女を助けることができそうだ。無論、命を保障するというだけだがね」

貝積 (潮岸の命令に、私の命令を被せただけのことだ。危ういことに変わりはないが……)

男 「……そうですか。とりあえず、それだけで僥倖です。ありがとうございます」

貝積 「いや……」

貝積 (……こうして子どもたちが苦しみながら戦っているというのに)

貝積 (結局私は、お役所仕事のポストでしかない、か……歯がゆいものだ。子ども一人も救えはしない)

貝積 「それで、他に何かあるかね? 少なくとも、私にも君たち全員の願いを聞くくらいの余力はあるが」

固法 「……私は……まぁ、またの機会に、ということで結構です」

初春 「あ……わ、私もそれで……」

白井 「………………」

貝積 「君は?」

白井 「……この街の闇を、歪みを……払う努力をしていただければ、それで」

白井 「それで、わたくしは満足ですの」

貝積 「………………」 フゥ 「……重い願いだ。努力する、という大人の逃げでしか応えられんよ」

白井 「ならば……」 ニコッ 「それを “逃げ” と言える誠実性に賭けると致しましょう」
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/10(木) 01:49:45.77 ID:VwEXzTNqo
………………???

ゴトッ……ガタッ……

少女 「………………」

――――キキッ……

少女 (止まった……?)

少女 (とうとう殺されるってことか……ふん。もったいつけやがって)

カチャッ……

?? 「下ろせ」

ガシッ……ドサッ

少女 「っ……」

?? 「まだ中学生くらいのガキか……不憫なモンだ……」

少女 (そう言いながら殺すくせに……なに善人ぶってやがる)

ゴゥンゴゥンゴゥン……

少女 (この音は聞き覚えがあるな……。なるほど、死体処理用の溶鉱炉か……)

?? 「……安心しろ。生きたまま放り込むような真似はしないさ」

ガシャッ……!!

――――――シュン!!
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/10(木) 01:52:34.44 ID:VwEXzTNqo
?? 「!? なッ……銃が消えた……!?」

少女 「……?」

――ピッ!!

?? 「くかッ……――」

――――バラバラバラ……

?1 「……はぁ、くだらないわ。何でこんなバカみたいな仕事に二人がかりなわけ?」

?2 「自分に言われても困ります。自分なんて、すぐに次のオーダーに取りかからなきゃなんですよ?」

?1 「それこそ私に言われてもねぇ」

少女 「なっ……何が起きて……?」

?1 「……緊急のオーダーって言うから何かと思えば、こんな死にかけのガキを助けろ、だなんてね」

?2 「ふふ……男の子だったら良かったのですか?」

?1 「内臓取り出されたいの?」

?2 「これは怖い。失礼を致しました」 クスクス

少女 「お……お前らは何者だ……!?」

?2 「? そうですねぇ……何と名乗ればいいのやら。少なくともヒーローではないとしか言えませんね」
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/10(木) 01:53:56.42 ID:VwEXzTNqo
?1 「……行くわよ、女子中学生スキー。私たちの仕事は終わったわ」

?2 「おや、ショタスキーさん。我々の仕事は彼女を助けることでは?」

?1 「無理よ。助かる気がない奴を助けるなんて芸当、少なくとも私にはできないわ」

?2 「……まぁ、たしかにそうかもしれませんね」

少女 「なっ……何を……」

?1 「……あなた、レベル2の能力者でしょ? そんな目隠しや戒めぐらい、自分で何とかできるでしょうに」

?1 「それをしないということは、あなたは自分の命を諦めている。そんな人間を助けることなんてできないわ」

少女 「っ……」

スタスタスタ……

?2 「……まぁ、彼女はああ言っていますけどね。自分も、全面的にそれに同意ですが」

?2 「とある少年のお願いらしいですよ? あなたを助けてほしいって」

少女 「!? ま、まさか……」 ギリッ 「アイツ……それがどれだけ危ないことか分かっているのか……!?」

?2 「さぁて、どうでしょうね? これはとある統括理事直接のオーダーです」

?2 「つまりその “アイツ” とやらは交渉したということでしょう?」

?2 「学園都市に12人しかいない統括理事と。……ただ、あなたを救うために」

?2 「……そこまでのことをさせて、それでもやっぱりあなたは死にますか? 死を選ぶのですか?」

少女 「………………」

少女 「クソがッ……!!」

――――チッ……ボワァァアアアアアアアアア!!!!
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/10(木) 01:55:58.20 ID:VwEXzTNqo
?2 「おお……大した出力の炎ですね。能力が単純な分、演算も容易ということでしょうか」

少女 「お前は……」

?2 「……あなたには名目上、役割が与えられます。クソくだらない闇で、今後もがんばってください」

スッ

?2 「こちらの封書に、あなたの新しい役割が書かれているそうです。従うか否かは、どうぞご随意に」

少女 「……従ってやるさ。どうせ私に未来はない」

?2 「おやおや。それは自分も同じですよ」

ニコッ

少女 「胡散臭い笑みだ」

?2 「よく言われます」 スッ 「……では、失礼します」

少女 「………………」 (クソが……あの野郎、まだ私に苦しめっていうのかよ……)

少女 (……私はもう、生きることなど諦めたというのに……!)

少女 (なのに……何で……っ)

少女 (何で…… “助かった” なんて思ってるんだよ、私は……!!)
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/10(木) 01:57:07.25 ID:VwEXzTNqo
………………アパート

月子 「………………」 スヤスヤ

イル 「………………」 スヤスヤ

世話子 「………………」

クスッ

世話子 「……可愛い寝顔。ふたりとも、両極端な美少女だもんね……」

世話子 「抱き合って……まるで二人で温め合ってるみたい」

世話子 「………………」

世話子 (止さん、あなたは……あなたは、こんな子たちを待たせているんですよ?)

ギュッ

世話子 (早く……戻ってきて……)

世話子 (お願いだから……)
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/10(木) 01:58:26.90 ID:VwEXzTNqo
……………… 『ボックス』 本拠

メイ 「………………」

カツカツカツ……

メイ (世話子ちゃんと月子ちゃんの話を聞いて、もしかしたらと思って来てしまいましたが……)

メイ (……当然ですよね。止様は、もうここに戻ってくることはない)

メイ 「………………」

――ピタッ

メイ 「……懐かしい。わたしはここでイルと、シィ様と暮らし……そして、止様に出会った」

―――― 『万が一の人殺しを厭うような人殺しが怖いわけがないだろうが』

―――― 『そんな辛そうな目をした奴が、怖いわけがねぇんだよ』

メイ 「………………」

ギュッ

メイ 「止様……」 グスッ

メイ 「……貴方様はわたしとイルに、二本の指を、そして世話子ちゃんと月子ちゃんに、左手を」

メイ 「次に、貴方様は何を犠牲になさるおつもりですか……?」

メイ 「貴方様は……あなたは……わたしたちのために、その命を、使い潰すのですか……?」

メイ (神様でも悪魔でも構わない……死神だっていい……)

メイ (お願いです……あの方を……あの優しく、善意に満ち溢れた方を……)

メイ (――守ってください……っ)
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/10(木) 01:59:05.73 ID:VwEXzTNqo
………………帰路

男 「………………」

白井 「………………」

固法 「………………」 (……この様子じゃ、何も話してくれはしないようね)

固法 (『ドラゴン』 ……何かの暗号、といったところかしらね)

初春 (……一体、男さんと白井さんは何を知っているというのでしょう……?)

男 「………………」 ボソッ 「……ごめんね、固法さん、初春さん」

初春 「へ……?」

男 「すぐに、二人にも教えるから。だから、ちょっとだけ待っていて」

男 「……もっと確かな情報が欲しいんだ。僕は、不確かな情報で二人を巻き込みたくない」

白井 「……しばらくはわたくしと男さんだけで、個人的に調べてみるつもりですの」

白井 「近い内に、絶対にお二人にもお伝え致します。だから……」

固法 「………………」 クスッ 「……分かってるわ。待っているから安心して」

初春 「そうです! 私たちは、いつでもお二人の味方ですからね」

男 「……うん。ふたりとも、ありがとうございます」
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/10(木) 02:00:01.92 ID:VwEXzTNqo
prrrrr……

男 「ん……? 黄泉川先生から……?」 ピッ 「もしもし?」

黄泉川 『男じゃん? いま大丈夫か?』

男 「? ええ、大丈夫ですけど、何か?」

黄泉川 『ひとつ頼まれてほしいことがあるじゃん。個人的な頼みになるんだが』

男 「……? べつに構いませんけど……何をすればいいんです?」

黄泉川 『いや……とある女の子に尋問をしてもらいたいんだ』

男 「尋問? 僕がですか?」

黄泉川 『ああ。明日の独立記念日は空いてるか?』

男 「は、はい……でも、ちょっと待ってください。一体何に関することなんです?」

黄泉川 『……そっちには詳しい情報は行っていないだろうが、知ってはいるだろう?』

黄泉川 『件のレベル4殺害事件だ』

男 「ああ…… 『念動力者』 の高校生が殺されたって事件でしたっけ?」

男 「でも、それは風紀委員の管轄じゃないって話でしたよね?」

黄泉川 『ああ……だから個人的に頼みたい。他でもない、お前にだ』
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/10(木) 02:01:43.96 ID:VwEXzTNqo
男 「まぁ構いませんけど……明日は午前中に研究所の実験が入っているので、それ以外なら大丈夫です」

黄泉川 『ありがたい。では、相手にも確認を取ってから詳細をメールを送るじゃん。では、またな』

プツッ……

男 「? 何なんだろう? 個人的に?」

白井 「何でしたの?」

男 「よく分からないけど、レベル4の殺害事件について協力を頼みたいんだって」

固法 「あら、珍しいわね。そんな凶悪事件に対して風紀委員の協力を仰ぐなんて」

初春 「そうですねー。普段は子どもが余計なことをするなーっ、ですもんね」

男 「いえ……協力といっても、目撃者の尋問だけらしいですけど」

白井 「……まさかまたいつかのように、ネコさんに対しての尋問などではないでしょうね」

男 「ううん。女の子だっていってたから、多分人間でしょう」

固法 「……でも、レベル4を殺害できるっていうことは、同等かそれ以上の能力者の仕業ってことよね」

初春 「いえ、情報によれば銃殺らしいので、能力者以外の殺しのプロの犯行という可能性もあります」

男 「銃殺……」 (と、いうことは魔術は関係ないと考えるのが妥当か……)

フルフル

男 (いけない、な。よくわからないというだけで、僕は魔術を真っ先に悪者にしようとしてる)
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/10(木) 02:02:57.25 ID:VwEXzTNqo
男 「………………」

男 「レベル4殺害、ですか……」

白井 「? 何ですの?」

男 「………………」

スッ……ギュッ

白井 「!?」 ッボン!!! 「お、男しゃん!? い、いきなり、何を……!?」

初春 (公開ハグきたー)

男 「……僕らはきっと、知ってはいけないことをたくさん知りました」

白井 「はぇ……?」

固法 「………………」

初春 「………………」

男 「……だから、約束してください、皆さん」

男 「――絶対に、死なないで」

固法 「………………」 クスッ 「……縁起でもないこと言わないの」

固法 「白井さんは 『空間移動』、わたしは 『透視能力』、男くんは 『幸福御手』、初春さんは 『守護神』」

固法 「わたしたち四人が力を合わせて、解決できない案件なんてないわ」

固法 「よく分からないものがモヤモヤと渦巻いているこの学園都市を晴れさせることだって、造作ないはずよ」
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/10(木) 02:07:20.38 ID:VwEXzTNqo
初春 「………………」

グッ

初春 「……そうですよ! それに、わたしたちには頼れる仲間がいます!」

初春 「レベル5の御坂さんや、いつも私たちを支えてくれる佐天さん、」

初春 「そして、ネムちゃんやディズちゃんだっています!」

初春 「みんなで力を合わせて、この街を守りましょう!」

白井 「ええ! わたくしたち学生の底力を見せてさしあげましょう」

固法 「………………」

プッ

白井 「……? 何ですの?」

固法 「男くんに抱きつかれたままじゃしまらないわよ、白井さん?」

白井 「あっ……///」

シュン……!! ――ドッ!!

男 「テレポートで頭頂部から地面に落下!? これは痛い!!」 ジタバタ

白井 「もっ……もうっ! 男さんは本当に助平でいらしゃいますわね!」 プンプン

男 「うぅ……ちょっと感極まってハグしちゃっただけなのに……」

男 (……大丈夫。僕には、こんなに頼もしい仲間がいる)

男 (僕がみんなを守る……なんて傲慢なことは言わない。みんながみんなを守るんだ)

男 (僕らはひとりじゃない。頼もしい仲間がいる。共に戦ってくれる、かけがえのない仲間が)

男 (……大人の都合や思惑で苦しむ子どもなんて、いてはいけないんだ)

男 (この街は……学園都市は、僕たち子どもの街だ……! 僕らが僕らでいられる、かけがえのない居場所なんだ……!)



男 (そんなくだらない不幸は、僕ら風紀委員が残らずまとめて吹き飛ばす……!!)

72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/10(木) 02:11:53.49 ID:VwEXzTNqo


━━━翌日 10月9日 学園都市独立記念日

     新たな物語が始まる━━━
73 :1 [sage]:2011/02/10(木) 02:15:46.08 ID:VwEXzTNqo
今回はここまでです。
こんな深夜に見ていてくださった方がいればありがとうございます。

レス本当に嬉しいです。ありがとうございます。

また上がっていたら見に来てくださるとうれしいです。
それでは、また。
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/10(木) 03:29:11.10 ID:SiwLEpLAO
一応前スレまとめが欲しい
このスレ除くと遊園地事件が最新スレであってる?
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/10(木) 17:19:54.02 ID:aQdijIwpo
>>74
たしかそう
ttp://punpunpun.blog107.fc2.com/blog-entry-1914.html
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/10(木) 20:06:31.53 ID:HQ+F73UAO
>>75
いやその後にお姉ちゃんと月子の話があるからそれじゃないか
どのみちプンタでまとめられてるだろうけど
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/10(木) 21:27:09.15 ID:aQdijIwpo
>>76
あったね。サーセン
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 16:45:33.01 ID:pZtP8fiIO
新作くるたびにまえの読み返しちゃう
そんで止カッケエエエエ!ってなる

たのしんでるから頑張ってね!
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 02:05:50.80 ID:ViuPmKdoo
10月9日というと15巻の内容か
アイテムとかスクールとか出てくんのかねぇ
80 :1 [sage]:2011/02/13(日) 20:03:31.00 ID:d3PiysGgo

ttp://punpunpun.blog107.fc2.com/blog-entry-1575.html

ttp://punpunpun.blog107.fc2.com/blog-entry-1702.html

ttp://punpunpun.blog107.fc2.com/blog-entry-1914.html

という感じで、これが4話(?)目です。
貼り忘れていました。すみません。

長々と放置して申し訳ありません。
ちょっとだけ投下します。
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/13(日) 20:04:39.45 ID:d3PiysGgo


止 「………………」

ピクッ

止 「う……あ……」

?? 「あ……目が覚めたかも」

止 (なんだ……ここは、アパート……?)

止 (俺は、そうだ……路地裏でぶっ倒れて、そのまま……)

?? 「おはようなんだよ」

止 「お前は……」 (なんだ……? 銀髪の……シスター……?)

?? 「初めまして、だよね」

ニコッ

?? 「わたしは、インデックスっていうんだよ」

止 「……?」

――ズキッ

止 「がっ……!?」
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/13(日) 20:05:45.16 ID:d3PiysGgo
インデックス 「あっ……! だ、ダメなんだよ、動いたら」

インデックス 「包帯は朝、こもえが替えたって言ってたけど、傷がなくなったわけじゃないんだから!」

インデックス 「安静にしてて。大丈夫。ここは安全だよ」

止 「っ……ここ、は……?」

インデックス 「こもえのおうちだよ」

止 「こもえってのは、何者だ……?」

インデックス 「えーっとね……とうまの先生なの」

止 「……? 学校の先生、ってことか?」

インデックス 「うん。そのとおりなんだよ」

止 「………………」

――グッ……!!

インデックス 「あっ……! だ、だから動いたらダメなんだよ!」

止 「うる、さい……!」 ググッ…… 「っく……これが俺にかかる本来の負荷か……」

ギィィィィィィンン!!!!

止 (だが、俺の 『通行止め』 なら……)

――――――ガクッ
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/13(日) 20:06:35.38 ID:d3PiysGgo
止 「っ……!!?」

……パタッ

止 「がッ……!」

インデックス 「あわわ! 無理するからなんだよ!」 アタフタ

インデックス 「怪我が酷くなったらまずいかも! ジッとしててっ」

止 (何で、『通行止め』 が作用しない……?)

止 (身体がダメージを受けすぎている……筋細胞の破損と血液の欠損が著しいせいか……)

止 (随意運動を強制的に行使するにしても、そもそも運動するための筋肉がなければどうしようもない)

止 (そしてその筋肉を動作させるための血も足りていないということか……) チッ (クソが……)

止 「……おい」

インデックス 「なぁに?」

止 「後で礼はする。食い物をくれないか?」

インデックス 「えっ……?」 ギクッ

止 「おい何だ今のベタベタな擬音は」

インデックス 「う、ううん! 何でもないんだよ!」

インデックス 「あなたのためにこもえが用意したご飯を、全部わたしが食べちゃったなんてことはありえないかも!」
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/13(日) 20:08:26.00 ID:d3PiysGgo
止 「………………」

インデックス 「………………」

シュン……

インデックス 「ごめんなさいなんだよ……」

止 「……べつに構わねぇよ」 フゥ 「……おい、悪いと思ってるならお遣いくらいしろ」

インデックス 「な、何なりと、なんだよ!」

止 「俺のジャケット……そこのハンガーにかかってるやつの中に、電子マネーが入ってる」

止 「コンビニなりスーパーなりなんでもいい。とにかく手早く肉と血が作れそうな食い物を買ってこい」

インデックス 「り、了解なんだよ!」

…………グゥゥ……

インデックス 「………………」

止 「………………」

ハァ

止 「……テメェの分も買ってきて良い。持てるだけ買ってこい」

インデックス 「……!」 キラキラ 「本当にいいの!?」

止 「いいからさっさと行け」
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/13(日) 20:09:27.92 ID:d3PiysGgo
………………

止 「………………」

ガツガツガツ……!!!!

インデックス 「………………」

ムシャムシャムシャムシャ……!!!!

止 「おはえふほひはえんひょひほ!!」 (お前少しは遠慮しろ!!)

インデックス 「ううはいんはよ! はへへいいっへいっはほはあはははほ!!」
        (うるさいんだよ! 食べて良いって言ったのはあなたかも!!)

止 「っ……」

ガツガツガツ……!!!!

インデックス 「はむっ……」

ムシャムシャムシャムシャ……!!!!

ガツガツガツ……!!!!

ムシャムシャムシャムシャ……!!!!
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/13(日) 20:11:38.06 ID:d3PiysGgo
インデックス 「ご馳走様! なんだよ!」 ケプッ

止 (こいつ俺より食いやがった……)

止 (しかし、このガキのどこにあれだけの量の飯が入るんだ……?)

インデックス 「ありがとう、……えーっと……そういえば、まだあなたの名前を聞いてなかったかも」

止 「………………」

止 「……ふん。名乗る名前なんかねぇよ」

インデックス 「むぅぅ……」

グーパー

止 (身体は大分言うことを聞くようになってきたか……急ピッチで血が作られてるのがなんとなく分かる)

止 (この程度なら、能力者相手なら戦えないこともなさそうだ)

止 「……それで、そのこもえとかいう先生はどこにいるんだ?」

インデックス 「お買い物だって。わたしにあなたのことお願いして行っちゃった」

止 「そうかい。そりゃ好都合、だ」

フラッ……

インデックス 「あっ……ごはん食べ終わったら寝なきゃダメなんだよ!」
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/13(日) 20:13:04.24 ID:d3PiysGgo
止 「……うるせぇ。行かなきゃならねぇんだよ」

止 (俺が寝ていたのが約半日……そろそろ上層部が俺にオーダーを出すはずだからな)

止 (こんな何も知らないようなガキを、俺たちクソの事情に巻き込むわけにはいかねぇ)

インデックス 「それでもわたしはシスターなんだよ! 傷ついた子羊を放っておくことなんてできないかも」

バッ

インデックス 「寝てて! あなたの身体、まるで魔術を無理に使ったみたいにボロボロなんだからっ!」

止 「だからうるさ――」

ピクッ

止 「――……お前……!」 ギリッ 「お前、いま何て言った……?」

インデックス 「へ……?」

止 「お前、まさか……まさか、魔術を知っているのか……?」

インデックス 「あなた、魔術を知っているの……?」

止 「………………」

インデックス 「………………」

――カチャカチャ

止&イン 「「!!?」」

ガチャッ
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/13(日) 20:14:11.41 ID:d3PiysGgo
?? 「はーい。小萌先生のご帰宅なんですよー」

月詠 「シスターちゃーん? 良い子にしてましたですかー……っとと」

月詠 「あやや? もう起きてらっしゃいましたか、謎の高校生ちゃん」

止 「………………」

止 「……ガキ?」 ボソッ

月詠 「が、ガキとはなんですか!? 小萌先生は先生なんですよー!?」

止 「小萌って……ああ、俺を拾った先生って……アンタが!?」

月詠 「その反応からして失礼です! 先生はれっきとした大人なんですからねっ!」

月詠 「ああもう! 結標ちゃんといいこの子といい、失礼ちゃんですねっ!」

止 (結標……? おいおい、こいつ何者だよ……)

月詠 「……それで、謎の高校生ちゃん」

止 「……んだよ?」

月詠 「あなたのお名前を教えてくれますか?」
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/13(日) 20:16:34.44 ID:d3PiysGgo
止 「……名乗る名前なんてねぇよ」

インデックス 「ほらまたそういうひねくれたことを言うんだから!」 プクーッ

月詠 「先生、ふざけて言ってるわけじゃないんですよー?」

止 「……?」

月詠 「失礼ながら、あなたの荷物を見させていただきました」

月詠 「携帯電話はプリペイド式。そして財布はおろか、身分証明書の類も一切ありませんでした」

月詠 「それこそ、この学園都市で身分を表わすIDカードさえ、です」

止 「………………」

月詠 「そんなこと、学園都市に住まう学生としてはありえないことなのですよー」

月詠 「電子マネーも読み取らせてもらいましたけど、名義も何もかも滅茶苦茶ですねー」

止 「っ……」

月詠 「それに、その身体中の傷……そして、左手……」

月詠 「あなたは、一体どこのどちらさまなんです? どんな事情を抱えていらっしゃるのです?」

月詠 「先生、場合によっては知り合いのアンチスキルさんを呼ばなければいけないのですよ」

止 「………………」 チッ 「……呼びたければ呼べ」
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/13(日) 20:17:19.13 ID:d3PiysGgo
月詠 「………………」

ハフゥ

月詠 「強情さんですねー。まったく」 ムッフー

インデックス 「……? その割にはこもえ、随分と嬉しそうな顔してない?」

月詠 「気のせいなのですよー」

ニコッ

月詠 「……安心してください。そんなことはしませんです」

止 「……?」

月詠 「わたしは先生ですからねー。事情も分からない子どもを放り投げたりはしません」

止 「っ……善人が。クソッタレめ」

月詠 「まずは自己紹介が先でしたね」

月詠 「私は高校教師の月詠小萌です。専門は 『発火能力』、喫煙と飲酒を嗜みますです」

止 「………………」

止 「……名前は捨てた。だが、止と呼ばれていた」
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/13(日) 20:17:46.37 ID:d3PiysGgo
月詠 「止ちゃん、ですか……?」

インデックス 「むーっ」 ブーッ 「わたしには名乗ってくれなかったのにっ」

止 「………………」

スッ

止 「……感謝はする。だが、俺はあんたたちみたいな平和な人間とこれ以上関わるつもりはない」

月詠 「あっ……ダメなのですよー! まだ寝てなくちゃ!」

バッ

インデックス 「そうなんだよ!」

バッ

止 「………………」 (ガキふたりが立ちふさがって……押し留めてるつもりか?)

止 (簡単なことだ、通行止め 。手を伸ばして、押しのければそれでいい)

止 (それだけの話だろう? ほら、早くしろよ)

止 (早く、しろよ……)

フラッ……

止 「っ……」

ガクッ……
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/13(日) 20:19:08.08 ID:d3PiysGgo
月詠 「ああ……!」 アタフタ 「だから言ったのですー! ゆっくり休んでください!」

止 「っ……おい、お前……インデックスとか言ったな?」

インデックス 「な、なに?」

止 「魔術を知っているってことは、お前も魔術師だろう?」

インデックス 「………………」

止 「頼む……身体を全快にしろとは言わない。楽に動かせる程度でいい。治癒の魔術を使えないか?」

インデックス 「………………」 フルフル 「……無理だよ。わたしには魔術は使えないから」

止 「……そうか。分かった」

――――ギィィィィイインン……!!!

止 (……大丈夫。身体は最低限、動く。いや、動かす)

グッ……ググッ……

月詠 「ああっ……だ、だからダメですってばー!」

止 「……悪いな。これ以上、あんたたちを巻き込むわけにはいかない……」

止 「ありがとよ、月詠先生とやら。ほんの数時間とはいえ、柔らかい布団で寝ることができた」

止 「あんたは先生の鏡だな。あんたみたいな先生に会ってりゃ、俺も道を間違えずに……」

止 「……いや、関係ないな。結局、俺がクソッタレの悪人だったってだけだ」
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/13(日) 20:21:43.84 ID:d3PiysGgo
インデックス 「……あなたは、ひょっとして魔術師に追われているの?」

止 「はっ……魔術師とか、超能力者とか、そういう単体だったら話は早いんだがな」

フッ

止 「生憎と、俺はそんな単純な構図の下にいるわけじゃない」

止 「……世話になったな、シスター。先生」

スッ……

月詠 「止ちゃん……」

月詠 「……なら、せめてこれを持っていってくださいです」

止 「あん……? 名刺?」

月詠 「あなたが困ったとき、辛いとき、大変なとき、助けが欲しいとき……」

月詠 「せっぱ詰まってなくたって構いません。愚痴を聞かせたいというだけでも大丈夫です」

月詠 「いつでも、この電話番号に電話をくださいね。授業中でなければ、絶対にでますから」

止 「……ありがとよ。……なぁ、先生」
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/13(日) 20:22:45.93 ID:d3PiysGgo
月詠 「? 何です?」

止 「……あんたがどこのどんな先生なのかは知らないけどさ」

止 「もしどこかに “落ち” そうになっている奴がいたらさ、励ましてやってくれよ」

止 「たった一言だけでいい。大丈夫かって聞いてやるだけでいい」

止 「……それだけで、俺たち子どもは救われるんだ。道を踏み外さなくて済むんだ。だから、頼む」

止 「これ以上、この学園都市で泣いている子どもを、増やさないでやってくれ……」

月詠 「………………」 グッ 「……わたしには、先生には……」

月詠 「それが、あなたの悲鳴にしか聞こえないのです……」

月詠 「助けてって、救ってって……そう、泣き叫んでいるあなたの声にしか聞こえないのです……!」

止 「……そうかも、しれねぇな。情けねぇ話だ」

止 「…… “月詠” ね。なんの因果だかな。俺の知り合いにも、似たような名前の奴がいるよ」

止 「あんたみたいな先生が、増えてくれりゃいいんだがな……」

ガチャッ……

止 「じゃあな、先生、シスター。世話になった」

インデックス 「あっ……」

止 (……さぁ、戻ろうぜ、通行止め)

止 (クソッタレの人殺しが住まうに相応しい、闇の底へな……)

止 「……いや、その前に行くところがあったか」
95 :1 [sage]:2011/02/13(日) 20:24:48.90 ID:d3PiysGgo
今回はここまでです。

また上がっていたら見に来ていただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/13(日) 20:46:27.87 ID:rI/3gJsvo
止ェ・・・
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/13(日) 20:54:42.96 ID:6x5TZQtvo

止さんがダークヒーロー一直線すぎていろいろつらい
98 :1 [saga]:2011/02/14(月) 04:16:21.46 ID:j6GRjggUo
………………ESP研究所

男 「………………」

キィィ……

――ネコトアヒルガチカラヲアワセテーーー

……キィィィ……!!!!

――ミンナノシアワセヲーーー

…………キィ……ィィィ……!!!

男 「ッ……!」

ガクッ

ィィィ……――――……

男 「ぐっ……」

ネム 「お、男? ちょっとあんた大丈夫!?」

ディズ 「どうしたっていうのよ? 簡単なネットワークの接続実験じゃない」

男 「う、うん……ごめん……」 ゼェ、ゼェ……

所長 「………………」
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/14(月) 04:17:13.88 ID:j6GRjggUo
………………休憩時間

所長 「……男くん、ちょっといいかな?」

男 「……? 何ですか?」

所長 「……君の能力の精細な解析結果が出たよ。それで報告がある」

男 「報告?」

所長 「ああ。……単刀直入に言おう。解析は無理だ」

男 「……は? 無理? それってどういうことですか?」

所長 「……ひとつ言えることは、君の 『自分だけの現実』 領域が揺らいでいるということだ」

男 「『自分だけの現実』 領域が揺らいでいる……?」

男 「そ、そんな……! だって僕は、自分の能力くらい正しく意識していますよ?」

所長 「そうとも言えないようだ。見てみたまえ」 スッ 「君の能力使用時のAIM拡散力場の変遷だ」

男 「……?」

所長 「明らかに一定していない。これはもはや……暴走能力者のそれに近いと言っても過言ではないよ」

男 「暴走、能力者……?」

―――― 『そう。それでいい。それでいいんだよ。これが僕のしあわせで、君のしあわせだ』

男 「っ……」
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/14(月) 04:17:43.86 ID:j6GRjggUo
男 (能力の暴走……あの時のような、洗脳を……)

所長 「……自覚はあるようで良かった。そう、君の能力は使いようによっては人の脳を犯しかねない危険なものだ」

所長 「PSIのように直接相手を傷つけるようなものではない。けれど、人の何もかもを奪う可能性があるんだ」

所長 「……分かっているとは思うが、君の能力は状況によってその強度を著しく変化させる」

所長 「ネムサスくんとデイジィくんがいない状況では、君の能力はレベル1にも満たないだろう」

所長 「しかし逆を言えば、一定領域にネコとアヒルが大量に存在する状況では、レベル2の領域を超える」

所長 「ただし、分かっているとは思うが、君の脳内演算能力はレベル2ほどしかない」

所長 「……念のために釘を刺しておこう。ネコとアヒルが大量にいる状況で無理な能力使用は控えたまえ」

所長 「ただでさえ今の君は 『自分だけの現実』 すら制御し切れていない」

所長 「これ以上過ぎた能力を使用すれば、負担によって脳が焼き切れて使い物にならなくなるぞ?」

男 「………………」

所長 「……ただ、私にはこの 『自分だけの現実』 領域の揺らぎが、君の能力強化のきっかけと思えてならない」

男 「え……?」

所長 「今まで安定的に行使できていた能力が不安定になる。これはレベルシフトの予兆でもあると言っているのだよ」

男 「レベル、シフト……? 僕が、レベル3に……?」
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/14(月) 04:18:24.21 ID:j6GRjggUo
所長 「無論、一朝一夕でできるものではない。加えて君はレベル2になったばかりだ。そう簡単にはいかない」

男 「………………」

男 「……もちろん分かっています。でも、それでも……」

所長 「……分かっているとも。私も研究の手を緩めるつもりはない」

所長 「君の能力を研ぎ澄まし、幸せを呼ぶ唄を全世界に向けて発信する。このプロジェクトはもう動き出している」

所長 「……そのためにも、君は今一度自分の能力をしっかりと認識し直す必要がある」

男 「僕の能力を認識し直す……? 『自分だけの現実』 領域の見直しをするということですか?」

所長 「いや、機材を使った確認ではなく……自問のようなものだ」

所長 「“ネコとアヒルとの会話を可能とする能力” が拡張されつつある」

所長 「その拡張を滞りなく進めるために、君の能力を正しく見ることが大事になる」

所長 「そうでなければ、無意識のうちに脳内で行っている演算の最適化が難しくなるからね」

所長 「今日の実験の様子は、それが原因だろう。演算に無駄が多すぎるんだ」

所長 「認識は演算に多大な影響を与えることは君もよく知っているだろう」

所長 「指を複雑に絡み合わせ、腕をねじらせた状態では、指定された指を上げることが難しくなるのが良い例だ」

所長 「認識にズレが生ずれば、人間は自分の指を持ち上げるという簡単な演算さえミスしてしまうのだよ」
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/14(月) 04:18:56.82 ID:j6GRjggUo
男 「認識のズレ……。能力の見直し……」

所長 「ああ。そのためにとある人に依頼をしておいた。大脳生理学の専門家だ」

所長 「能力使用時の脳の基礎的な分野においては、間違いなく私より造詣が深い」

所長 「先ほどアポを取っておいた。今から向かいたまえ」

所長 「……一度基礎に立ち返って、能力の根本を見直してみたまえ」

男 「……はい。分かりました」

男 「それで、その方のお名前は何というのです?」

所長 「……まぁ、君もよく知っている人物だろう」

男 「?」

所長 「いや、あの事件が起きたとき、君はまだ風紀委員ではなかったか」

所長 「しかし、名前くらいは知っているだろう」

男 「だ、だからその人って一体――」

所長 「――ほら、先方を待たせては悪い。もう行きたまえ」 スッ 「これが住所だ」

男 「えっ? あっ、ちょっと所長……!」

所長 「ネムサスくんとデイジィくんは借りておくよ。少し試したいことがあるからね」

男 「それは構いませんけど……って違う! だからその人のお名前を――」

所長 「――では、男くん。彼女によろしく言っておいてくれたまえ」

ニコッ

所長 「かの、教師の鏡でもある研究者にね」
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/14(月) 04:19:42.19 ID:j6GRjggUo
………………研究所前

男 「まったく……所長の奴、帰ったらぎたぎたにしてやる」

男 「……住所は……そう遠くはないのか。歩いていくかな」

ブルッ……

男 「うん? 着信記録の伝達と……留守番電話の記録か……」

男 (ESP研はあらゆる波動に影響が出ないように、電波のシールドがあるからなぁ……)

男 「なんだこの番号……? 国際電話じゃないか」

ピッ……

?? 『……やぁ、いけ好かない能力者。一日ぶりだね』

男 (この声……ステイルくん!?)

ステイル 『何だか知らないが何度電話しても出ないので留守電とやらに残すことにするよ』

ステイル 『用件はひとつ。日本時間の十月九日の午前十時、君の元に僕の仲間が三人やってくる』

ステイル 『君は一日、彼女らの使いっ走り……もとい案内役として動いてくれ』

男 「は……?」 ガバッ 「なに一方的に勝手なこと言ってくれちゃってるのアナタ!?」

ステイル 『なお、君に拒否権はない。“こちらの事情” を知っているのは君か彼くらいのものだからね』

ステイル 『まったく……にゃーにゃーうるさい陰陽師も彼も動けないとは……使えない奴ばかりだよ』
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/14(月) 04:20:32.27 ID:j6GRjggUo
男 「意味不明なことばっか言ってるよこの人!? こいつ説明する気ないだろ!?」

ステイル 『まぁ君はどうせこの電話を聞いてギャーギャー騒いでいるだろうから一つだけ言わせてもらうと』

ステイル 『――文句言ったって変わらないから大人しく言うことを聞け』

男 「こっ……このふてぶてしさ……! 留守電を聞いてるだけなのにとても苛立つ……!」

ステイル 『学園都市とイギリス清教の円滑な関係を維持するためだと思って我慢するんだね』

ステイル 『それじゃあ失礼するよ。僕も忙しいからね』

ガチャッ

男 「あ、あの神父……! 今度会ったら学園都市中の猫をけしかけて顔面にネコパンチ浴びせてやる……!」

男 「っていうか十時って! もう過ぎてるじゃないか!」

?1 「――ステイル=マグヌスから聞いてた通りですね。独り言がうるせぇ方です」

男 「はぅあッ!?」 ガバッ 「……ど、どちらさまなんです?」

?1 「彼が連絡したでしょう? イギリス清教のモンですよ」

?1 「まったく、捜しましたよ。寮にいねえモンですから」

?1 「管理人の方にここだと教えてもらってようやく分かりました」

男 (? シスターさんが……三人?)

?2 「ああ……何で私がこんな異教の街に……ああくそ……何で……」 ブツブツブツ

男 (やだあのお姉さんメッチャ怖い……)

?3 「はわわわわ……美味しそうなものばかりなんですよ……!!」 ブルブルブルッ

男 (やだあの子すごくデジャブ……)
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/14(月) 04:21:29.02 ID:j6GRjggUo
男 「え……えーっと……ってことは、あなた方がステイルくんの仲間の……」

男 「魔術師さんたち……ってことなんです?」

?1 「まぁ、仲間ってぇのが日本語でどの程度の意味合いなのかは知りませんが、そんなトコですかね」

?1 「一応名乗っておきますか。私はアニェーゼと言うモンです。よろしく」

?2 「……異教徒に名乗る名などありません」 プイッ

?3 「し、シスタールチア、失礼ですよぅ……」

?3 「……あっ……あわわ、私は、アンジェレネっていいます」

男 「はぁ……え、えっと……アニェーゼさんと、ルチアさんと、アンジェレネさん……ですね?」

男 「僕は……学園都市、風紀委員第177支部所属の男と申します」 ペコリ

男 「それで、えーっと……あの、アニェーゼさん? 結局僕は何をすればいいんです?」

アニェーゼ 「聞いてないんですか? ちょっと私たちが指定する場所に案内してくれればいいというだけです」

男 「あー、そうですかぁー」

ニコッ

男 「――では、僕はこれで失礼しますね」

――――――ダッ!!!

アンジェレネ 「へっ……?」
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/14(月) 04:22:00.28 ID:j6GRjggUo
男 (逃げろ! 逃げるんだできるだけ早く!)

男 (ありえない! ありえないだろ! 何だって僕がこんな面倒事に巻き込まれてるんだ!?)

男 (本来こういうのは僕じゃなくてどっかのツンツン頭の仕事だろう!?)

男 (僕には僕の事情がある! 学園都市とイギリス清教の関係とかはよく分からないけど、)

男 (――知った事じゃないよ! こっちはこっちで忙しいんだから!)

――タタタタ……!!!

アニェーゼ 「随分と原始的な案内の仕方ですねぇ。これが学園都市スタイルですか」

ルチア 「ふん。客に対して乗物も用意しないとは。さすがは下賤の野蛮人」

アンジェレネ 「うぅ……私、走るの、苦手、なのに……」

男 「――って何で普通に追いすがって来てるのあなたたち!?」

男 (ってかこの子超厚底なのにメッチャ速い!?)

アニェーゼ 「何言ってやがるんです? 案内してもらうんだから当然でしょう?」

男 「す……ステイルくん……あの不良神父……!!」

男 「……上条くん、今だけは貸してね? っていうか、間違いなく君のせいだよね?」

男 「――ふっ……不幸だぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!」
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/14(月) 04:22:41.06 ID:j6GRjggUo
今回は以上です。

またよろしくお願いします。
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/14(月) 11:59:11.64 ID:fwo1jiDAO

男は最近止に移りつつある主役の座奪還のために、もっと頑張るべきww
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:20:06.38 ID:TeLbiXuJo
………………第七学区 とあるアパート

月子 「む……ぅ……」

月子 「もう……十時過ぎか……寝過ぎてしまったのう……」

ムギュッ

月子 「む?」

イル 「ん……」 モゾモゾ

月子 「……そうか。昨夜は、いると一緒に寝たのだったな……」

イル 「んん……」 ムギュッ

――――カツッ

月子 「……硬質の、この腕は……義手、か……」

イル 「むふふ……」

月子 「……そう、だな。お前も、辛うじて止にその命を助けられたのだったな」

月子 「………………」

月子 「……ともあれ、こう抱きつかれていては起きるに起きられんな」

月子 「……まぁ、よいか」

スリスリ

イル 「むふっ……あったか……」

月子 「くふっ……く、くすぐったいぞ、いる」

モゾモゾ
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:20:33.91 ID:TeLbiXuJo
――ガチャッ

世話子 「? 月子ちゃん、イルちゃん、起きたのー?」

月子 「!?」

イル 「むにゃむにゃ……」 スリスリ 「……ほかほか……」

世話子 「………………」

世話子 (なんだろう……そこはかとなく淫靡です……)

月子 「い、いるっ! もう昼も近いぞっ! 起きるのだっ!」

イル 「umm……ん? おお……ツキコか……」 パチパチ

ムギュッ

月子 「はぅあっ!?」

イル 「おまえは、抱きごこち、いい。ちいさくて、ちょうどいい」

月子 「人を抱き枕のように言うでないっ!」

世話子 「……ふぅ。まったく、一日経たずに仲良しさんだね」

月子 「う……うむ……」 ムギュムギュ

イル 「ん!」 ムギュムギュ
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:21:00.86 ID:TeLbiXuJo
………………食卓

メイ 「あらあら、お二人とも。もう少し寝ていても良かったのですよ?」

イル 「め、さめた。お腹も、へった!」

月子 「む……良い匂いがするな」

メイ 「ふふ。少し待っていてくださいね。すぐに朝食を用意致しますから」

イル 「ん!」 ススッ 「イル、手伝う」

月子 「む……われも手伝うぞ、めい」

メイ 「そうですか? じゃあ、イルはこれをテーブルに運んでくださいな」

メイ 「月子ちゃんは、中くらいのお皿を四枚、テーブルに並べてくれますか?」

イル 「ん、イル、わかった」

月子 「うむ。分かったぞ」

メイ 「………………」

ニコッ

メイ (イル、お友達が増えてとっても嬉しそうです)

メイ (ふふ……♪)
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:21:56.98 ID:TeLbiXuJo
………………

イル 「………………」 モグモグモグ

月子 「………………」 パクパクパク

世話子 「………………」 モグモグモグ

メイ 「………………」

カタッ……

メイ 「……世話子ちゃん、月子ちゃん、怪我の調子はどうですか?」

世話子 「あ、はい。私は動く分には大丈夫です。元々大した怪我ではありませんでしたから」

月子 「うむ。われも問題はないぞ」

メイ 「それは良かったです。では、今日はちょっと病院の方にお付き合い願えますか?」

月子 「病院?」

イル 「イルの、ようじ、だ。左手、の、ドウサカクニン、というやつ、だ」

世話子 「あっ……そ、そっか……イルちゃん、左手……」

イル 「気にする、ない。イルの、左手、何もフジユウ、ない」

イル 「セワコ、助けてくれた、おかげ。イル、生きているだけ、嬉しい!」 グッ

世話子 「う……うん! そう言ってくれると、無茶した甲斐があったってもんだよっ」 グッ

メイ 「………………」 ニコッ 「……それで、帰りにお役所の方に行きましょう」

世話子 「役所……? 何かの手続きです?」

メイ 「ええ」 ニコッ 「お二人の通う学校を、決めなきゃいけませんからね」
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:22:47.86 ID:TeLbiXuJo
………………第七学区病院 個人オフィス

冥土帰し 「………………」

……コンコン

冥土帰し 「……? どうぞ」

ガチャッ……

止 「………………」

冥土帰し 「……驚いた。まさか病院を抜け出した翌日に帰ってくるとはね

止 「……今、大丈夫か?」

冥土帰し 「色々な案件や患者を抱えていてね。できれば手短に頼みたいが、」

スッ

冥土帰し 「……まぁ、固いことは言うまいね。座りなさい」

止 「ああ……悪い。感謝する」

冥土帰し 「本当に……君はもう少し自分の身体を大事にするべきだね?」 ジッ

止 「……ふん、左手のことか? ワガママの代償だ。問題はねぇよ」

冥土帰し 「まったく……」 ハァ

カチャカチャカチャ……

冥土帰し 「……診せなさい。安静にしていなかったんだ。傷が開いているかもしれない」

止 「いや、そこまでしてもらう理由がない」

冥土帰し 「いいから診せてくれないか? 君が自分の行為をワガママと呼ぶように、」

冥土帰し 「僕の行為もまたワガママみたいなものだ。死の可能性を絶対に看過できない」
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:24:54.97 ID:TeLbiXuJo
止 「……っ、分かったよ」

スッ

止 「ったく……何で表の連中はどいつもこいつもこうお節介なんだ?」

冥土帰し 「僕が完全な表にいると思っているのならその認識は改めるべきだね?」

止 「医者として色々見てきたってんだろ? もう聞き飽きたってんだよ、この善人が」

冥土帰し 「年長者の話はしっかりと聞くものだよ? まったく」

……ササッ……ギッ

冥土帰し 「……できれば入院してもらいたいところなんだけどね?」

止 「ふざけんな。んなことできるわけねぇだろうが」

冥土帰し 「と、言うと思ったよ」

冥土帰し 「だが、やはり傷は基本的には修復されているようだね」

止 「まぁ……どっかのプロが治療してくれたからな」 (科学的な治療じゃないが……)

冥土帰し 「そうかい? まぁいい」

冥土帰し 「……じゃあ、改めて用件を聞こうか。何の用かな?」

止 「ああ……」

……ドン!!

冥土帰し 「……何だい? このいかにもなアタッシュケースは」
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:25:37.81 ID:TeLbiXuJo
止 「……治療費の一部だ。現金で悪いが受け取ってくれ」

冥土帰し 「……君は診察をして包帯を替えるだけで相手に大金を渡すのかい?」

止 「んなわけねぇだろうが。イルの義手の代金だよ」

冥土帰し 「………………」 フゥ 「君ねぇ……――」

止 「――……分かってる。こんなモンじゃ足りねぇってことくらいはな」

止 「完全ワンオフの義手だ……開発費だけで何億ってレベルだろう? 分かってるさ」

止 「これはその金の一部だよ。完済は遠いだろうが、気長に待ってくれるとありがた――」

冥土帰し 「――舐めるなよ? 君は一体誰に向かって何を言っているんだい?」

止 「………………」

冥土帰し 「……いらないよ。お金は君にとっても必要なものだろう?」

冥土帰し 「それに、彼女のことは彼女のことだ。君が過剰に干渉するべきものじゃない」

冥土帰し 「あの義手の代金を払うとして、それは未来の彼女が背負うべき負の遺産だよ?」

冥土帰し 「……無論。僕としては誰にも請求するつもりはないけどね」

冥土帰し 「何にせよ、あの義手の金は、“払いたいと思った彼女” が払うべきものだ。君の領分じゃない」

止 「………………」
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:26:22.82 ID:TeLbiXuJo
止 「……うるせぇ。いいから受け取れ、クソッタレ」

冥土帰し 「………………」

止 「……俺は、せっかく幸せになれたイルに、余計なものを背負わせたくねぇんだよ」

止 「俺の力が及ばなかったから、イルに、そしてメイに……余計な十字架を背負わせちまった」

止 「だから……もうこれ以上、アイツらに余計なものを押し付けたくねぇんだよ……!」

冥土帰し 「………………」 フン 「……舐めるなと言ったはずだよ、偽善者」

止 「っ……」

冥土帰し 「何を背負うも下ろすも投げ出すも、それは当人達が決めるべきことだ」

冥土帰し 「それを勝手に背負おうとするなんて、傲慢も甚だしい」

冥土帰し 「君は何より君の生存を考えるべきだ。その金を使えば、自己保全の可能性を少しは上げられるだろう?」

冥土帰し 「忘れるなよ? 一時だけだったとはいえ、僕は君の指と腕の治療をした。君は僕の患者だ」

冥土帰し 「患者の死の可能性を少しでも下げられるというのなら、僕は何でもするよ」

冥土帰し 「……善意の行為を踏みにじることだって厭わない」

止 「………………」
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:27:22.02 ID:TeLbiXuJo
止 「……今は持っていたとしても邪魔になるだけだ。もらってくれ」

冥土帰し 「通行止め、君ねぇ……」

止 「……べつにイルの何もかもを背負うわけじゃねぇ。使い道は勝手にしろ」

冥土帰し 「……分かったよ。これは君名義で、恵まれない子どもたちへの寄付金として送付しておく」

止 「ふん。勝手にしろ」

ザッ……

冥土帰し 「行くのかい? 今日はイルくんが通院する日なのだけどね?」

止 「だったらなおのこと、さっさと行かねぇとな」

冥土帰し 「……彼女もメイくんも、君を求めているよ? もちろん、月子くんも世話子くんもだ」

止 「……うるせぇよ」

冥土帰し 「……分かっている。何もできない僕に、こんなことを言う資格はない」

冥土帰し 「僕は医療という戦場にしか立つことはできない。だから、死にそうになったらいつでも来い」

冥土帰し 「死なない限りは治してやる。絶対にだ」

止 「……ああ。ありがとよ、先生。……あの四人のことを、頼む」

――――……
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:28:28.00 ID:TeLbiXuJo
冥土帰し 「………………」

冥土帰し 「……一方通行に、通行止め……」

冥土帰し 「……前者はまだいい。利用価値がまだ多分に残っている」

冥土帰し 「“彼” はまだ、一方通行を必要としている」

冥土帰し 「……そして、一方通行もまた、利用されるだけで終わるような甘い子どもではない」

冥土帰し 「彼は基本的には光の多い人間ではない。木原一族に通じる歪みを持っている」

冥土帰し 「……だが、通行止め。君は違う。君は……」

冥土帰し 「君は、弱い。利用価値も低い。そして何より……――」

冥土帰し 「――相手がどんな人間であろうと、それを殺すことに未だに抵抗を抱いている」

冥土帰し 「……君は、至極 “普通” の人間なんだよ」

冥土帰し 「そんな君が闇の中で人を殺している。君の身体が、心が、そのたびに壊れていく」

冥土帰し 「精神が真っ当であるからこそ、君の中にその全ての傷が、歪みが、痛みが、蓄積されていく」

ギリッ……!!

冥土帰し 「……なあ、今は敵となってしまった、かつての僕の友よ、」

冥土帰し 「――君は一体、何人の子どもを使い潰していくつもりだい……?」
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:29:16.22 ID:TeLbiXuJo
………………病院前

止 「……さて、そろそろ上層部から電話がかかってくる頃合いだと思ったが……」

止 「もうかれこれ十二時間は連絡がない……どういうことだ?」

止 「……俺なんかに構っている暇がない……まさか、『スクール』 か 『ブロック』 が動いたのか?」

――――――キキキッ……!!!

止 「っ……!?」 (車……?)

?? 「……乗れ。仕事だ」

止 「……!? お前は……」

?? 「? お前とは初めましてだと思うが?」

止 「………………」

?? 「念のために聞いておく。お前は 『ボックス』 の通行止めだな?」

止 「……ああ。まさかとは思うが、お前が 『ボックス』 の補充要員か?」

?? 「そういうことになるらしい。忌々しいがな」

?? 「とにかく早く乗れ。上層部からの仕事の依頼が、山ほど溜まっている」

止 「……クソが」
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:30:01.73 ID:TeLbiXuJo
………………車内

止 「………………」

?? 「……その顔はなんだ?」

止 「そんなナリで車を運転していて、よく何も言われなかったな」

?? 「幸いなことに今日は祝日だからな。アンチスキルが少ない」

止 「そうかよ。運転は問題ねぇんだろうな?」

?? 「ああ」

止 「………………」

?? 「……? 何だ? 私の顔に何かついているのか?」

止 「うるせぇな。余所見してねぇで前見て運転しろ」

?? 「………………」

止 「……俺はお前をなんて呼んだらいいんだ? 着火能力者(セミパイロキネシスト)、でいいのか?」

?? 「っ……!? なぜ私の能力を知っている?」

止 「はっ! ヒーロー二人に追いつめられる様は結構見物だったぜ?」

?? 「……あの場にいたのか、クソが」

?? 「………………」

?? 「……火子でいい」

止 「安直な偽名だな」

火子 「アンタに言われたくない。102だから止、止だから通行止めって、どんだけ安直なんだよ」

止 「………………」
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:31:29.79 ID:TeLbiXuJo
火子 「……最初に言っておく」

止 「あん?」

火子 「私はアンタと馴れ合うつもりはない」

止 「そりゃ好都合だ。俺もねぇよ」

火子 「あくまで仕事だ。私は上層部からアンタの監視の命を受けている」

止 「そうかい」

火子 「アンタが滅茶苦茶ばかりするから、上層部はアンタにしっかりと手綱をつけておきたいらしい」

火子 「……分かるか? 私が上層部にあることないこと言えば、アンタの大切な者はまとめてドカンだ」

止 「………………」

火子 「そうなりたくなければ、大人しく命令に従ってるんだな」

止 「……ふん」 ボソッ 「ガキが、何を悪人ぶってんだかな」

火子 「……なんか言ったか?」

止 「いや」

火子 「っ……クソが」 チッ 「後ろにアンタの武器と義手がある。適当に準備しとけ」

止 「ああ、そうさせてもらおうか」
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:32:26.48 ID:TeLbiXuJo
ガチャガチャガチャ……

止 「……義手ってこれか?」

火子 「私に聞くな。私はただ命令通りにこの車を拾ってアンタを迎えに来ただけだ」

止 「ったってこれ……」 ガチャガチャ 「……関節に強力な磁石がついてるだけじゃねぇか」

火子 「……?」

止 「……どこの狂戦士だよ。クソッタレめ」

火子 「でも付けるんだな」

止 「ないよりゃマシだ。手の形がついてるだけで目立たなくなるしな」

止 「……それから、『機械化小銃』 か。胸くそ悪りぃ。ご丁寧にカスタマイズまでしてくれてやがる」

止 (……? 弾丸・カートリッジの自動交換だけじゃなく、砲身まで自動で交換するのか……)

止 (砲身が三本ついて……見た目は細くて不格好なガトリングガンだな)

火子 「……なんか中学生が考えた最強の銃器って感じだな。だっせぇ」

止 「黙れ。いいから前見てちゃんと運転しろ」

火子 「へぇへぇ」

止 (……? これは馴れ合いじゃないのか?)
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:33:15.71 ID:TeLbiXuJo
………………

男 「………………」

ゼェゼェゼェ……

男 「わ、分かった……分かり、ましたよ……お付き合い、します……」

男 「だっ……だから、せめて……僕の、用事、くらいは……優先させて、ください……」

アニェーゼ 「? 何で息切れしてんです?」

男 「こっ……この……! 嫌味じゃなく純粋な疑問なのがますますむかつく……!」

アンジェレネ 「わっ……わたし、は……分かりますよ……」 ゼェゼェゼェ……

ルチア 「まったく……情けないですよ、シスターアンジェレネ」

アンジェレネ 「そう、言われても、ですね……」

アニェーゼ 「で? おたくの用事というのは一体何なんです?」

男 「ひとつに、とある研究者さんの、お話を聞きます」

男 「ふたつに、とあるアンチスキルさんとの、約束を果たします」

ルチア 「………………」 チッ

男 「それくらい、我慢してください! 午後には、そちらの用件も、聞きますから!」
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:33:47.87 ID:TeLbiXuJo
アニェーゼ 「仕方ねえですね。そちらの都合に合わせますよ」

アニェーゼ 「ですが、代わりに明日も付き合ってもらいますがね」

男 「……もう何でもいいです」 (僕の日常……うぅ……)

男 「えーっと……地図によるとこのあたりなんだけど……」

キョロキョロ

?? 「? あの、どうかしましたなの」

男 「?」 (女の子……? 中学生くらいかな?)

?? 「道に迷ってるの? なら、私が案内できるかもなの」

男 「あ……それはありがたいです! えっと、この住所なんだけど……」

?? 「えっ……? この住所……」

男 「? どうかしました?」

?? 「……ううん。何でもないの。先生に何かご用なの?」

男 「え……えっと、ちょっと能力のことで相談があって……」

男 「……って、先生? 知り合いなんですか?」

?? 「………………」 コクン 「初めまして、なの」

?? 「私は、春上衿衣と言うの。よろしくなの」
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:38:35.10 ID:TeLbiXuJo
………………第七学区 病院立特別児童養護施設

?1 「……今日くらいは休んだらどうだ? せっかくの休日だというのに」

?1 「そう根を詰めても、いいことはないぞ?」

?2 「えぇ? でもでも、私も早く衿衣ちゃんや飾利ちゃんたちと一緒に普通の学校に通いたいもん!」

?2 「みんなだってそうだよ? 私たち、早く中学生になりたいからっ」

?1 「……まぁ、そうだな」 フッ

カランコロン

?1 「……? ああ、君か……」

春上 「こんにちはなの、先生」

?2 「あっ! 衿衣ちゃん! 来てくれたんだっ」 タッ

春上 「絆理ちゃんも、こんにちは! なの」 ギュッ

?1 「おいおい、枝先。勉強はいいのか?」

枝先 「衿衣ちゃんが来てくれたんだから、勉強どころじゃないもん!」

?1 「まったく……」 ニコッ

春上 「あっ……忘れてたの。先生、今日はお客さんを連れてきたの」

?1 「客……?」

男 「あっ……」 オズオズ 「えっと……ここ、で、いいんですよね……?」

?1 「君は……ああ、もしやESP研の……?」

男 「は、はい。そうです。初めまして。ESP研所属、レベル2の男です」

?1 「そうか。初めまして」

?1 「……私は色々な肩書きを持ったが、今はこう名乗るのが筋だろうか」

?1 「元研究者で犯罪者。そして何の因果か、今はすっかり毒気を抜かれてこの児童養護施設の施設長などを任せられている、」

?1 「――……木山春生という者だ。よろしく」
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:40:20.55 ID:TeLbiXuJo
男 「は、犯罪者……?」 (木山春生……? どこかで聞いたような……)

木山 「おや? その様子では所長さんは君に何も伝えていないようだな」

男 「……あの野郎、僕が困る様を想像して絶対に楽しんでやがる。帰ったらぶっ○してやる」 ブツブツ

木山 「……可愛い顔をして怖いことを言うものだ」

木山 「……枝先、春上くん。申し訳ないが、客人だ。奥で他の子どもたちと一緒に遊んでいてくれ」

枝先 「はーい!」  春上 「はいなの!」

アニェーゼ 「学校……? にしては、歳がてんでバラバラな子が多いですね」

木山 「? 君の連れか?」

男 「とてつもなく否定したい衝動にかられていますが……まぁ、連れです」

木山 「シスターとは珍しい。この学園都市でまだ活動している宗教家がいるとはね」

ルチア 「ふん。そんなつもりはありません。信じる気もない者に諭す言葉はありませんから」

木山 「ほう?」 ニヤリ 「それは元科学者から言わせてもらえば、逃げにしか聞こえんが」

ルチア 「なっ……!」 クワッ 「科学者ごときが信心を語ると言うのですかッ!?」

アンジェレネ 「わわっ! お、落ち着いてください、シスタールチア!」

男 「………………」 (かみじょーとーまー、はやく このひとたちを ひきとりに きてー ?)

男 (ぼくの へーおんな にちじょーが、いちじるしく そがい されて いまーす)
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:41:34.13 ID:TeLbiXuJo
木山 「信じる気がないと何を持って断じているのだい?」

男 「あのー……」

ルチア 「神の威光を恐れるのなら、こんなバベルのような街はできるはずがありませんっ!」

男 「えーっと……」

ルチア 「ならばここに住まう者たちも、元々からして信心などを持つはずがない!」

男 「この方に用事があるのは僕でしてですね……」

木山 「そこだよ、シスターくん? 元々からして信じる機会がないんだ。この街の “子どもたち” はね」

ルチア 「? 子どもですって……?」

木山 「……ここにいる子たちは、『置き去り』 と言われていてね。まぁ、いわゆる捨て子だよ」

ルチア 「!?」

アニェーゼ 「………………」

アンジェレネ 「あっ……それって、私たちと……」

木山 「……色々と事情が重なって、彼らはみんな不自由な思いをしてきた」

ルチア 「………………」

木山 「シスターくん? もしよろしければ、説法でも説教でもしてきてくれないか?」

木山 「私は宗教というものを否定するつもりはない。それが彼らの空白を埋められるというのなら、ね」
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:42:14.65 ID:TeLbiXuJo
ルチア 「っ……」

木山 「最初から否定するなど人間にあるまじき行動だよ」

木山 「科学的でない。私は、そんな理由で彼らが救われるかもしれない可能性を消したくなくてね」

木山 「……それとも、学園都市の人間は端から神を信じる機会が……権利がないと言うのかな?」

ルチア 「………………」

スッ……

ルチア 「……行きますよ、シスターアンジェレネ」

アンジェレネ 「えっ?」

ルチア 「……彼が逃げないように監視するのはシスターアニェーゼがいれば十分でしょう」

ルチア 「神を知る機会を持たぬ子どもたちに、聖書を読み聞かせてあげましょう」

アンジェレネ 「……はい!」 グッ 「私たちも、それを聞いて育ったんですもんね! 伝えてあげなくっちゃ!」

木山 「………………」 ククッ…… 「面白い友人がいるのだな、君は」

男 「いやーなんかもー何もかもがどうでもいーって感じですけどねー」 ハハハハハ……

アニェーゼ 「放心してねえで、さっさと用件とやらを済ませちまってくださいよ」

男 「あっ、なんかそもそもの元凶がすっごく偉そうな顔してるぞー。ちょーウケルー」 ハハハハハ……

アニェーゼ 「脈絡もなくぶっ壊れねえでください。頼みますから」
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:43:07.09 ID:TeLbiXuJo
アニェーゼ 「まぁ、悪かったとは思いますよ」 ペコリ 「ジャッポネーゼスタイルです。申し訳ない」

男 (ジャッポネーゼスタイルってイタリア語なの? それとも英語なの?)

アニェーゼ 「仕方ねえんですよ。私もあの二人も修道院……孤児院の育ちですから」

男 「へ……?」

アニェーゼ 「孤児と聞いて、何か思うところがあったんでしょうね」

アニェーゼ 「これでシスタールチアの異教徒嫌いが少しは改善されればいいんですがね」

木山 「……ここは様々な理由から教育の機会が与えられていなかった子どもたちのための施設でね」

木山 「年齢相当の学年に就学できるほどの学力を身につけさせてから送り出す役目を負っている」

木山 「宗教がどうのというのは私には分からないが、彼らにとっての何らかの刺激になれば私も嬉しいよ」

アニェーゼ 「そう言ってもらえるとありがてぇです」

木山 「さっきも言ったとおり、私は犯罪者で保釈中の身でね。過度な外出は避けなくてはいけない」

木山 「だから研究所に赴けなかったんだよ。足労させてすまなかったね」

男 「いえ……。あの……もし間違いだったらごめんなさい。僕は風紀委員なんですけど、」

男 「……もしかして、木山先生は 『幻想御手』 事件の……?」

木山 「ああ、君は風紀委員だったのか。それなら話が早い。あの事件の首謀者だよ、私は」
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:44:59.47 ID:TeLbiXuJo
男 (なるほど……だから所長はあんなことを言ったのか……)

木山 「保釈中の人間がこんな仕事を得られるはずがないんだがね」

木山 「この施設はあるお医者様の計らいで作られたものだ。だから病院立ということなんだが」

木山 「彼が私にもう一度チャンスをくれた。だから私は、今度こそ子どもたちを守る。そう、決めたんだ」

男 「……そのお医者さんって、もしかしてカエルに似てませんか?」

木山 「? よく分かったな」

男 「やっぱり……」 ハァ 「あの人らしいや。“患者” を治療するためには本当に手段を選ばないんだから」

木山 「そういうことだよ。彼に言わせれば、子どもたちは元より、私も彼の患者らしいからね」

木山 「……では、本題に入ろうか」

木山 「さっきも言ったとおり、私はもう科学者ではない。できることなど限られているが、」

木山 「まぁ、君の能力に興味がないこともない。協力させてもらおうか」

男 「はい。お願いします!」

………………

春上 「うわぁ……このシスターさん、お胸がとってもおっきいの!」

枝先 「たしかにこれはすごいかも……」 マジマジ

ルチア 「そこ! 私の話をしっかり聞いてますか!?」

春上 「でも、こっちの子はぬいぐるみみたいで可愛いの」 モフモフ

アンジェレネ 「あうー! 三つ編みをモフモフしないでくーだーさーいーっ!」
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:45:41.68 ID:TeLbiXuJo
………………

木山 「……では、まず君の話を聞かせてもらおうか」

男 「僕の話ですか?」

木山 「ああ。……君の能力について、私に説明してくれるかい?」

男 「は、はい。えっと……レベル2の感応力(テレパス)で、固有能力名は 『幸福御手』」

男 「具体的に言えば、ネコとアヒルとの、鳴き声を介した会話を可能とするという能力で――」


木山 「――ダウトだ」


男 「……へ?」 アセアセ 「い、いや、僕、嘘なんて何一つついてないんですけど……」

木山 「ああ。君は嘘をついているつもりはないのだろう。しかし、勘違いしていることがある」

男 「勘違い……?」

木山 「勘違いというよりは、認識の誤りというところかな」

木山 「恥ずべきことではないよ。君のように特殊すぎる能力の場合、それは往々にして起こりえることだ」

男 「どういう意味です?」

木山 「能力において重要なのは結果よりプロセスだ。君はそれを逆に捉えている節がある」
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:46:47.18 ID:TeLbiXuJo
男 「プロセス……?」

木山 「そう。君の知っているとおり、能力者の能力は当人の脳内の 『自分だけの現実』 領域において決定される」

木山 「その 『自分だけの現実』 が発現したもの。それが能力だ」

木山 「君にとって、そして誰にとっても分かることは、君がネコとアヒルとの会話を可能としていることだろう」

木山 「しかしそれは能力の本質ではない。君が彼らとの会話を可能とするのは、何故だ?」

男 「それは……僕が、ネコとアヒルと脳波をリンクさせるから……あっ」

木山 「そう。君の能力は、“ネコとアヒルとの会話をするという結果” を出すために、“彼らと脳波を繋げること” だ」

木山 「……君は自分自身の能力を根本から見誤っている。まぁ、誤差と呼べる範囲であるけどね」

木山 「君の能力の本質は、ヒト、ネコ、アヒルの三者の脳波を繋げること、ということだ」

アニェーゼ 「ははぁ。つまり、ネコやアヒルと会話ができるってのは、その副産物ってわけですね?」

木山 「そういうことになる。まぁ、そもそも、それを成すための能力なのだろうがね」

男 「……っていうか外部の人にこんな話を聞かせてしまっていいんです?」

木山 「問題はなかろう。学園都市が隠匿したがっているのは、行き過ぎた自然科学の内容と、能力開発の基礎的部分だ」

木山 「とある異能力者の至極部分的な能力の話などを聞いても何にもならないだろう」

アニェーゼ 「そもそも、科学なんぞにさして興味もねえですしね」
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:47:38.67 ID:TeLbiXuJo
木山 「ESP研の所長は君の能力に揺らぎが発生していると言っていた」

木山 「その揺らぎは、段々と演算能力が高まってきている君の脳内で、」

木山 「君の誤った認識のせいで、能力が正しく走っていないために起こった現象だと考えられる」

木山 「たとえるなら、表計算ソフトで書類を作ろうとしているようなものだよ」

木山 「できないことはないが、余計な手間が増える。なまじ演算能力が高まってきているから、その手間をこなせてしまう」

木山 「だから君の脳に余計な負荷がかかってしまっているということだ」

男 「能力の正しい認識……それができれば、レベルシフトにまた一歩近づくということですね」

木山 「そう簡単に進めば誰も苦労はしないよ。能力開発はそんなに単純なものではない」

ペラッ

木山 「……ESP研から送られた君の能力のデータを見る限り、君については特にね」

男 「……? 僕の能力はそんな大それたものじゃないでしょう? ただのテレパスだし……」

木山 「しかし複雑に分化している。能力の使い方が多岐に渡っているというのが私の見解だ」

木山 「能力は単純であることに越したことはない。脳内での演算が容易になり、出力を上げることが簡単になるからね」

木山 「そしてデータを見る限り、君は正しい演算を為せているとはとても思えない」

木山 「男くん、君、文系だろう?」
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:49:30.12 ID:TeLbiXuJo
男 「え……? 何で分かったんです?」

木山 「データを見れば分かるさ。脳波が一定しない。まともに演算できていない証拠だ」

男 「うっ……まぁ、確かに……感覚で使ってますけど……」

木山 「しかしそれではこれ以上の成長は望めないよ。頭の中でしっかりとした演算のアルゴリズムを開発しなければ、」

木山 「能力使用の効率化が不可能。それは即ち、演算の無駄が多いということになる」

男 「でも……能力って感覚で動かすものなんじゃないんですか?」

木山 「……科学の最先端の粋が生み出した能力者の言葉とは思えないな」 フゥ

男 「むっ……」

木山 「……たとえば、私の知り合いのとある 『電撃使い』 の話をしようか」

木山 「彼女はレベル5の電撃使い。圧倒的な能力をその身に宿している」

男 (御坂さんじゃん)

木山 「君、電撃使いがどうやって電気を出力していると思う?」

男 「どうやってって……そりゃ……こう指を立ててババババッ、って」

アニェーゼ 「……? 能力者ってのはそんな簡単に能力ってのを使えるモンなんですね」

木山 「いや、それは違う。というか、学園都市の人間が外部の人間に間違った知識を植え付けないように」

男 「うぅ……」
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:50:22.32 ID:TeLbiXuJo
木山 「先ほども言ったとおり、能力者が脳内の 『自分だけの現実』 を外部に表出したものが能力だ」

木山 「だが、ただ外へ出すというものではない。頭の中で演算をし、」

木山 「現実に即した形で能力を表出する必要がある。故に、あり得ないことは起こり得ない」

木山 「彼女は、基本はガウスの法則あたりだろうが、正しい電束密度等を計算した上で能力を使っている」

木山 「……いや、その演算を成せなければ能力が使えないと言った方が正しいか」

男 「………………」

木山 「自分は文系だからと諦めて聞き流さないように」

男 (バレてた……)

アニェーゼ 「つまり、能力の使用にはとても難しい演算とやらが必要ってことですね?」

木山 「ああ。もちろん能力の質によるがね。11次元絶対座標軸の演算などはもっと複雑になる」

男 「でも、御坂さんは “電気を出す” っていう感覚で電撃を放ってるって言ってたけど……」

木山 「それはそうだ。レベル5ともなれば、演算など感覚で済ませてしまっているだろう」

木山 「手足を動かすのと同じだよ」

木山 「慣れる前、幼少の頃は一挙手一投足が難しい。しかし、成長すれば感覚で動かせる」

木山 「『超電磁砲』 クラスともなれば、大学数学程度の演算、感覚でこなせてしまうのだろうな」

木山 「……ともあれ、脳内の演算と向き合わなければ、能力の成長などは見込めんよ」
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:51:41.20 ID:TeLbiXuJo
男 「いや、でも……僕、数学とか物理とか苦手ですし……」

木山 「低レベル能力者は大抵がそう言って逃げるな」

男 「うっ……」

男 「でも、演算って言ったって……何をどうしたらいいのか……」

木山 「そんな状態でも能力を扱えるというのが恐ろしいところだな」

木山 「君の場合は脳波を扱うわけだから、波動に関しての演算が主となる」

木山 「君はそれを感覚でこなしているが、正しい演算を元に割り出されたアルゴリズムを用いれば、」

木山 「君の能力使用時の効率は格段に跳ね上がるはずだ」

男 「……でも、演算を頭の中で具体的ににイメージするって難しいですよ」

木山 「だろうな。しかしそれを私はアドバイスできないよ。生憎と私は能力開発を受けていないからね」

木山 「しかし、ならば高位能力者にアドバイスを求めればいい」

木山 「……君は先ほど 『御坂さん』 といったね? つまりあのレベル5、御坂美琴と知り合いということだろう?」

木山 「年下にものを教わるというのは癪かもしれんが、能力向上のために頼んでみたまえ」

男 「そう……ですね。分かりました。そうしてみます」

木山 「私に言えるのはこれくらいだよ。基礎を見つめ直し、能力の研鑚に励みたまえ」

男 「……はい。頑張ります」 グッ 「ありがとうございました、木山春生先生」 ペコリ
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:52:33.43 ID:TeLbiXuJo
………………

春上 「………………」

枝先 「………………」

子供達 『………………』

アンジェレネ 「………………」

ルチア 「………………」 フゥ 「……まったく、途中から真剣に聞き始めたと思えば、」

ルチア 「全員すぐにおねむですか。これだから科学の街は」

ルチア 「……まぁ、私たちも最初はこんなものでしたね」

ルチア 「信仰に触れることもなく、ただ日々を生きることに精一杯だった頃……」

ルチア 「……信じろ、とは言いません。ですが、この教えから何かを感じてくれれば、私は嬉しいです」

モゾッ……ギュッ

ルチア 「……?」

春上 「おかーさん……」 ムニャムニャ

ルチア 「……すがるものが違うというだけのことですね」

ルチア 「私は信仰に。そして、ここの子どもたちは、科学に」

ルチア 「……ただ、それだけのこと……たとえ異教徒の街であったとしても、子どもに罪はありませんよね」

アニェーゼ 「――これは珍しい。随分と丸いことを言いますね、シスタールチア?」

男 「うわぁ、そんな素敵な笑顔もできるんですねー」

ルチア 「!?」
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:53:21.28 ID:TeLbiXuJo
ルチア 「い、いいいいいいいつからそこに!?」 カァア

木山 「『信じろ、とは言いません。ですが、この教えから何かを――』」

ルチア 「だぁぁぁあああ! さ、ささ再現しなくていいですからっ!」

春上 「んう……?」 パチッ 「……ルチアさん、あったかいの」

ムギュッ

ルチア 「起きたのなら放していただけませんかっ!?」

枝先 「むぅ……衿衣ちゃんずるい……」

ムギュッ

ルチア 「はうあっ!?」

男 (意外と面白いひとだ)

アニェーゼ (意外と可愛いとこもあるんですね)

木山 (意外と乙女だ)

アンジェレネ 「………………」 zzz…… 「……むにゃむにゃ……もう食べられないですよぅ……」

ルチア 「あなたもいい加減起きなさいシスターアンジェレネ! というかなぜ寝言まで日本語なのですか!」

アンジェレネ 「……?」 モゾモゾ 「……ああ……美味しそうなパニーニが二つ……」

カプッ

ルチア 「あ、あああああなたはどこに噛みついているんですかッ!!」
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:53:53.54 ID:TeLbiXuJo
………………

春上 「シスターさんたち、バイバイ、なの」

枝先 「また来てね! すっっごく楽しかったからっ!」

ルチア 「寝ていただけじゃないですか、まったく……」

スッ

枝先 「? これって、聖書?」

ルチア 「……布教用のものです。読みたかったら読んでください」

ルチア 「まぁ……あなた方にとっては、目障りなだけかもしれませんけどね」

ルチア 「……私もあなた方と同じ孤児でした。そして、聖書に救われたんです」

ルチア 「だから、少しでもあなた方の助けになるのなら……使ってください」 プイッ

木山 「……ふむ。科学的見地から見ても、宗教には心のよりどころとなりえる性質があるからな」

ルチア 「そういう科学的な解釈は好みません。宗教とは心で感じてから考える情緒的なものです」

木山 「なるほど。これは失礼」
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:54:44.39 ID:TeLbiXuJo
枝先 「ありがとう! ルチアさん!」

ルチア 「べっ、べつに、私はただ、シスターとしての仕事をしているだけで、お礼を言われるようなことでは……」

春上 「でも、ルチアさんの聖書のお話、とっても楽しかったの」

ルチア 「そ……そう思っていただけたのなら、幸いです……」 プイッ

男子1 「なっ! 力が入ると胸が揺れてたしな!」

男子2 「あっ、バカ。目の前で言うなよ」

ルチア 「っ……このクソガキ共……!」

アンジェレネ 「寝巻きのときのシスタールチアはもっとすごいんですよ?」

ルチア 「あなたは余計なことを言わなくていいんですシスターアンジェレネ!」

アンジェレネ 「あうぅ……」

木山 「……何にせよ、子ども達は楽しんでいたようだ。感謝するよ、ルチアくん」

ルチア 「私は私の信仰心に基づいて行動しています。異教徒に感謝されるいわれはありません」

木山 「おやおや。大人には手厳しいのだな」 クスクス

木山 「……また、話を聞きたければ来たまえ。歓迎するよ。風紀委員の皆を連れてきてくれてもいい」

男 「はい。ありがとうございます」

男 「……では、お邪魔しました。今度はみんなと、僕の友達のネコとアヒルを連れてきますね」

春上 「うわぁ……とっても楽しみなの!」

枝先 「シスターさんたちもまたねっ! また、絶対に来てね!」

ルチア 「えっ……? わ、私たちも、ですか?」

枝先 「うん! それまでに、聖書をしっかりと読んでおくからっ」 ノシ

ルチア 「……し、仕方ありませんね」

枝先 「ん! 約束だよ、ルチアさん!」
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:55:27.24 ID:TeLbiXuJo
木山 「………………」 (行ってしまった、か。結局言えずじまいだったな)

木山 (固有能力名 『幸福御手』 ……一部の動物との意志の疎通を可能とする、『特殊感応』)

木山 (彼の脳波がプリセットされている二体の個体がいる場合には、安定的な能力の行使が可能)

木山 (そしてネコやアヒルの個体数……いや、一定領域下における密度が高まった場合には、レベル2の枠を超える)

木山 (……ネコとアヒルがいない状況で能力を使用した場合、一度暴走の経験あり……)

木山 (……なるほど。動物たちが彼の能力にセービングをかけているのか)

木山 (だから彼単体での能力行使には、それ相応のリスクを伴う)

木山 (ネコやアヒルを介せば、人間との脳波のリンクを形成することも可能……)

木山 (一度は、大規模な脳波のネットワークを形成し、全ての人間と動物の間での会話を可能とした)

木山 (……まさかとは思うが……これは……) フルフル (……いや、やはり彼に伝えるべきではないな)

木山 (ただでさえ能力の過渡期に入っている彼に、余計な情報を与えたくはない)

枝先 「春生先生? どうかしたの?」

木山 「ああ……いや、何でもないよ」

木山 「そろそろお昼の準備をしようじゃないか。春上くんも食べていくだろう?」

春上 「はいなの!」 タッ 「絆理ちゃん! 私もお料理手伝うの!」

枝先 「うん! みんなで一緒に美味しいの作ろうねっ!」

木山 「………………」 (『幸福御手』 ……これは、一歩間違えれば、相手の脳波を掌握しうる最悪の能力となる)

木山 (『感応』 ではなく 『念話』 としての特性が強い現状ではそんなことはあり得ないだろうが……)

木山 (対象の記憶も、想いも、信念も、何もかもをまとめて消し去ってしまうことも、理論上は不可能ではない)

木山 (……考えすぎか。少なくとも、彼はそんな能力の使い方は望まないだろうしな)

枝先 「? 先生も、ほら」 スッ 「行こ?」 ニコッ

木山 「ん……ああ、行こう」 ギュッ

木山 (……大丈夫。私にこの子たちがいるように、彼にも、風紀委員の仲間がいるのだから)
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:56:25.14 ID:TeLbiXuJo
………………

アニェーゼ 「つっても、話を聞く限り、能力者ってのも大変なんですねぇ」

男 「……まぁ、ね。でも魔術師ってのも大変でしょ?」

アニェーゼ 「どうなんでしょうね? こちらは信仰心が物を言いますからね」

男 「信仰心……神様にお祈りすると魔術が使えるの?」

ルチア 「無知が如実に表れる言葉をどうもありがとうございます」

男 「僕に対しては春上さんたちに対しての柔らかさが全く感じられないのですがその辺はどうなんです?」

ルチア 「魔術はあなた方科学サイドの人間に計れるほど簡単なものではありません」

男 「無視かぁ。無視かー。寂しいナァー」

アンジェレネ 「男さんって顔の割には陰険で根暗で適当な人ですよね」

男 「無邪気な顔して何そのいきなりなクラスター爆弾発言!? 結構傷つきますからね今の!?」

アンジェレネ 「あっ、間違えました。陰険で根暗で惰弱で適当な人ですよね」

男 「何で増えた!? 何で増やした!?」

ルチア 「うるさいですね。大声を出さないでください」

男 「くそっ……何なんだこの敵しかいない四面楚歌状態は……!!」
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/19(土) 20:57:19.17 ID:TeLbiXuJo
アニェーゼ 「で、次の用事は何でしたっけ?」 ペッ

男 「投げやりな感じになるのやめません? ってか唾を吐くな唾を」

男 「はぁ……次はとあるアンチスキルさんのお手伝いですよ」

prrrr……

男 「……っと、その当人から電話だよ……」 ピッ 「もしもし?」

黄泉川 『すまん色々と立て込みそうだからそっちで勝手にやってくれ詳しい内容はメールで送る以上じゃん』

プツッ……ツー、ツー、ツー、ツー……

男 「………………」

男 「ははっ……? ははははっ? ハハハハハハハハ……」

男 「なんかもうさ……あれだよね。絶望したってヤツ? うん、きっとそうだよ」

男 「何なの? こっちはシスター三人につきまとわれて散々だってのに、今度は教師が僕を振り回しますか」

ブツブツブツブツ……

アンジェレネ 「あわわわわ……なんかダークサイドに落ちちゃいましたよ?」

アニェーゼ 「正直な話、知った事じゃねえんですけどね」

ルチア 「使いものになりませんね。これだから異教徒の男は……」

ピピッ

男 「……きちんとメールは来るし……何なんだよ色々立て込みそうって」

男 「……場所は第七学区の小学生寮……? ん? ここってもしかして……」
144 :1 [sage]:2011/02/19(土) 20:59:11.64 ID:TeLbiXuJo
今回は以上です。
見ていてくださった方、ありがとうございました。
何日も投下できず、本当にごめんなさい。

話に起伏はないくせに、視点がコロコロ変わって分かりづらいと思います。
もう少しお付き合いをよろしくお願いします。
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 22:13:32.33 ID:37hLGjbAO
乙ー
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 22:26:20.67 ID:EowYM5T4o
おつー
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:24:23.68 ID:SC5fDKcMo
………………

男 「………………」

ルチア 「? 一体どうしたというのです? 私たちをマジマジと眺めて。いやらしい」

男 「違いますよ。というか僕には恋人がいますから他の女性に興味なんかありません」

アニェーゼ 「意外と言いやがりますよねこの人」

アンジェレネ 「実は失礼なことを言われまくってる気がします」

男 (シスター三人連れて小学生の寮に突撃って、かなりアレな感じだよね……まぁ仕方ないか)

アニェーゼ 「?」

男 「……何でもないです。行きますよ」

………………小学校付属寮
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:25:08.19 ID:SC5fDKcMo
男 「あの……すみません」

寮母 「? どちら様ですか?」

男 「アンチスキルの要請で派遣された風紀委員の者です」

寮母 「ああ……お話は伺っております。お勤めご苦労様です」

寮母 「……? そちらの方々も風紀委員の方ですか?」

男 「ただのオマケです気になさらないでください」 ニコッ

アンジェレネ 「オマケ……」 (´・ω・`)

男 「……じゃあ、大人しく待っていてくださいね? これが終わったらそちらの要件を聞きますから」

アニェーゼ 「逃げねえでくださいよ?」

男 「もう無駄だと分かったので逃げません」

寮母 「……では、ご案内いたします。こちらへ」 スッ

男 「はい。お願いします」

寮母 「………………」

男 「? 何か心配事がおありですか?」

寮母 「……あの、風紀委員の方、あの子は悪い子ではないんです。ただ、少し頑なになっているだけで」

寮母 「だからどうか、あの子を責めないであげてください……」

男 「……ええ、もちろんです」 ニコッ 「無理矢理話を聞き出すつもりもありませんからご安心を」

男 「僕は風紀委員。この街の平和を守るために活動しています」

男 「本末転倒なことをするつもりはありません」

寮母 「すみません……ありがとうございます」
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:25:46.00 ID:SC5fDKcMo
………………一室

男 「……で、まさかの君たちか。これは驚いた」

幼女 「わたしも驚いちゃった! お話を聞きに来る風紀委員さんっておにーちゃんのことだったんだねっ」

ムギュッ

ミツアミ 「………………」

グイッ

幼女 「あう……?」

ミツアミ 「……今は、ダメ。この人に懐いちゃ、ダメ」

男 「ミツアミちゃん? どうかし――」

ミツアミ 「――気安く呼ばないでください」 キッ

男 (……うわー、ひょっとして僕なんかやらかした?)

ミツアミ 「……お兄さんが相手でも、私は喋りませんから。あの人のことは、絶対に」

男 (えーっと……黄泉川先生のくれたデータによれば、さらわれたのはふたり。けど目撃者はひとりだけ)

男 (……この様子だと、ずっと意識を失っていたというのは幼女ちゃんの方みたいだな)

幼女 「はぇ?」

男 (よくよく運の良い子だなぁ。……いや、良くはないか。さらわれてるわけだしね)
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:26:14.62 ID:SC5fDKcMo
男 「あー……とりあえず二人に大した怪我がないようで良かったよ」 ニコッ

ミツアミ 「……ふん」 プイッ

男 (取りつく島もないなぁ)

男 「えーっと……一応アンチスキルや風紀委員に対しての協力は学生の義務なわけだけど……」

ミツアミ 「逮捕したいならすればいいじゃないですかっ!」

男 「わわっ……」 ビクッ 「そんなことはしないよ。ただ、お話を聞きたいだけだから」

ミツアミ 「何度言われても同じです。あの人のことを、私は絶対に喋りませんっ」

男 (うーん……難しいなぁ)

男 「……その人、ミツアミちゃんと幼女ちゃんを助けてくれたんだよね?」

ミツアミ 「………………」 コクン

男 「だから話したくないの? その人のこと」

ミツアミ 「だって……話しちゃったら、あの人が逮捕されちゃうもん……」 プイッ

男 「なるほどねぇ。命の恩人を売りたくない、か。たしかに気持ちは分かるけどね」

男 「……でも、安心したよ」 ニコッ

ミツアミ 「……? 何です?」

男 「その様子だと、その人が悪いことをしたっていうことは分かってるみたいだから」
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:27:02.91 ID:SC5fDKcMo
ミツアミ 「あっ……あの人は悪くなんかありませんっ!」

男 「でも、だったら僕にその人のことを話してくれてもいいんじゃない?」

ミツアミ 「そ、それは……だって……」

男 「………………」

男 「……僕にもね、君の気持ちは分かるよ。けど、君も分かってるだろう?」

男 「――人殺しは、たとえどんな理由があったとしてもしていいことじゃない」

ミツアミ 「でもっ……! あの人は、とっっっても悪い人をやっつけただけです!」

ミツアミ 「悪い人をそのままにしてたら、余計に危ないじゃないですか!」

男 「うん、そうかもしれないね」

男 「……でもね、ミツアミちゃん。これだけは忘れちゃいけない」

男 「人間を裁くのは人間じゃない。法律だよ。人が人を罰することなんて、あっちゃいけないんだ」

ミツアミ 「そんなの……! だって、あなたは……風紀委員は、あの時助けに来てくれなかった!」

ミツアミ 「それなのに、今さらそんなことを言って……! あの人を責めるんですか!?」

男 「………………」 コクン 「……そうだよ」

ミツアミ 「ずるい……! そんなのって、ずるいよ……っ!」
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:27:35.75 ID:SC5fDKcMo
幼女 「ミツアミちゃん……」

ギュッ

ミツアミ 「………………」 フルフルフル……

男 「……ごめん。君たちにこんな難しい話をするべきじゃないって、分かってるんだ」

男 「けどね、どんな理由があろうと、人は殺しちゃいけない。それは、平和を否定する行いだからね」

ミツアミ 「………………」

男 「……ねぇ、分かるだろう? 人を殺すことが悪いことだってことは」

ミツアミ 「………………」

男 「……君は、その人にこれ以上そんな罪を重ねてほしいのかい?」

ミツアミ 「……そんなこと……」

男 「………………」

ミツアミ 「……ない、ですけど……でも、あの人は……」

男 「……君の言葉はもみ消されたりしない。しっかりと記録され、司法の場で明るみになる」

男 「君がその人を守りたいというのなら、それはしっかりとした場でなされるべきだ」

男 「その人がまだ子どもなら、情状酌量の余地は十分にある。僕も風紀委員として減刑を申し入れるよ」
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:28:07.68 ID:SC5fDKcMo
ミツアミ 「………………」

男 「……教えてくれないか? その人のことを」

ミツアミ 「………………」

男 「………………」 ギュッ 「……頼むよ……救いたいんだ……っ」

ミツアミ 「えっ……?」

男 「もうこれ以上……学園都市の中で苦しむ誰かを放っておくことなんてできない……!」

男 「助けたいんだ……救いたいんだ……僕は」

ミツアミ 「………………」

ミツアミ 「……もう、あの人があんなことをしなくて済むように、してくれるんですか?」

ミツアミ 「助けて、くれるんですか?」

男 「……約束する。僕が助けるよ」

ミツアミ 「………………」

男 「………………」

ミツアミ 「………………――ま、る……」

男 「えっ……?」
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:28:49.61 ID:SC5fDKcMo
ミツアミ 「……止、さんです」

ミツアミ 「その人の名前は、止さん……レベル4の、通行止め (ドライブキャンセラー) って名乗っていました」

ミツアミ 「それから、能力殺し (AIMキラー) とも……」

男 「………………」

ミツアミ 「……高校生くらいの、男の人です。とっても真面目そうな人でした」

ミツアミ 「大きな銃を持って、私と幼女ちゃんを、守って戦ってくれました」

男 「……ありがとう、ミツアミちゃん」

ギュッ

男 「……ありがとう。本当に……ありがとう」

ミツアミ 「……あの人は、とっても温かかった。とっても優しかった」

ミツアミ 「あの人は、絶対に悪い人なんかじゃないもん……」

男 「……そうだね。きっと、心根はとっても優しくて、強い人なんだ」

男 「約束するよ、ミツアミちゃん。僕は絶対に、その止っていう人を見つけ出す」

男 「……そして、正しい生活が送れるように、全力でサポートするから」

ミツアミ 「……はい」
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:29:45.40 ID:SC5fDKcMo
………………

寮母 「………………」 ソワソワソワ……

……ガチャッ

寮母 「あっ……! お、終わりましたか?」

男 「はい……。辛い思いをさせたと思います。行って慰めてあげてください」

寮母 「は、はい……!」

タタタタタ……

男 「……止……とまる……これは、もしかしなくとも……」

―――― 『安心しろ。出入り口方面は御坂が守ってくれてるし、お前たちを追っていた連中には止が向かってくれた』

―――― 『とまるのあんぜんと、はやく帰ってくることを、イルはいのらなければ、ならない』

男 「……少しだけ、見えてきた気がするよ」

男 (遊園地での事件……あれは、学園都市の深部に関わる “あの言葉” を知ってしまった少女が引き起こした)

男 (そして、その事件において上条くんと行動を共にしていた “止” という人物……)

男 (ミツアミちゃんたちを助けた人物もまた、“止” と名乗った……)

男 (この両者を同一人物と考えれば…… “止” と学園都市の深部との関わりが見える)

男 (…… “止” は、102やあの女の子と同じ……学園都市の闇に関わる人物……)

男 (……そう考えて問題はないだろう)

男 (通行止め……そして能力殺し…… 『書庫』 やネットで調べる必要があるな)

男 (……そして、イルちゃんとメイさん……あの二人にも、話を聞かなければ)

グッ……!!

男 「……約束したんだ。絶対に、助けなくちゃ」
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:30:22.46 ID:SC5fDKcMo
………………第二三学区

査楽 「……っ……ぐ……」

査楽 「一方通行……手心を、加えた、つもりですか……?」

査楽 「……っく……――」

? 「――……はっ、あの最強らしいやり口だな。生かさず殺さず、しっかりとご退場願うってか」

査楽 「!? あ、あなたは……?」

? 「お前は俺のことを知らないだろうが、俺はお前のことを知ってるぜ?」

? 「レベル4未満の空間移動能力者。面白いよな。何の因果か、俺はお前をよく知ってるんだ」

査楽 「な、に……を……」

? 「なぁに、心配するな。俺はお前を助けに来た。こっから先は通行止めだ」

ギィィィィィィンン!!!!

査楽 「っが……!?」

止 「……だからもう休め。今日はもうお役御免だよ」

止 「救急車はすぐに来る。それまで待ってろ」

止 「……まぁ、真っ当な救急車じゃねぇだろうけどな」
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:31:14.63 ID:SC5fDKcMo
………………

火子 「ふぅん? それがアンタの能力なんだ? 意外と優しい感じなんだな」

止 「気持ち悪いことをぬかすなクソが。俺だってこんなことはしたくねぇよ」

止 「……だが、上層部からの命令が、指定された能力者の延命措置だってんだから仕方ねえだろうが」

火子 「文句言うなよ。そんな身体で殺し合いをしろと言われるよりはマシだろうが」

止 「……けっ」

火子 「今日は撃破された能力者の延命が主な仕事らしい。完全に裏方だな」

止 「………………」 (……しかし、一体何が起きてやがるってんだ?)

止 (クソくだらねえ学園都市の裏事情が表に染み出てきてやがる)

止 (『スクール』 と 『ブロック』 とやらの反逆……上層部でも御しきれてねえってことなのか……?)

止 「……もしくは、これも全て計算の内、か」

火子 「あん? 何か言ったか?」

止 「………………」 フン 「いいや。べつに何も」

ザッ……

止 「行くぞ、火子。……次の戦場にな」

火子 「……けっ、命令するな」

火子 「次は……第一八学区だな。もう戦闘はあらかた済んでるみたいだが、生存者を捜せとのことだ」

止 (……能力者の使い回し、か。何にせよ随分と余裕がないみたいだな、上層部も)
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:31:50.56 ID:SC5fDKcMo
………………第七学区 風紀委員第177支部

固法 「………………」

固法 (うーん……なんかおかしいのよね、今日)

固法 (緊急用のアラートが不自然なまでに動作しない)

固法 (……初春さんがいてくれれば調べてもらうんだけどなぁ)

白井 「――――……ええ? 迷子の捜索ですの?」

固法 「……?」

白井 「十歳くらいの女の子の探し人? それって、その子が迷子なのではありませんの?」

白井 「アンチスキルに預ければよろしいのでは? ……? 逃げ出す、ですって?」

白井 「……はぁ。仕方ありませんの。存分にお付き合いしてさしあげなさいな」

――ピッ

固法 「……初春さんだめそう?」

白井 「ええ……迷子の迷子を捜索中、だそうですの」

固法 「面白いことに巻き込まれるものねぇ」 クスクス

白井 「はぁ……。佐天さんは追試ですし、男さんはご用事がおありになる」

固法 「ふふ。少し寂しいわね、二人だけだと」
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:32:33.26 ID:SC5fDKcMo
………………第七学区

男 「――――……報告は以上ですよ、と」

ピッ

男 「黄泉川先生に送信……っと。これでオッケーかな」

男 「……ん、これで僕の用件はお終いです。そちらの用件を聞きましょうか」

アニェーゼ 「やっとですね。待ちくたびれましたよ」

男 「はいはい申し訳ありませんね」

男 「……で、何をすればいいんでしたっけ?」

ルチア 「ですから、道案内です。指定する場所に私たちを案内してください」

男 「はぁ……まぁ、それくらいでしたらお安い御用ですけど」

アニェーゼ 「シスターアンジェレネ、地図を」

アンジェレネ 「はいっ」 バッ 「……えーっと、北はこっちですよね」

男 「? 地図って……白紙じゃないですか」 (羊皮紙……?)

ルチア 「黙っていてください、異教徒」

男 (……なんだろう、ルチアさんって。いちいちつっかかるなぁ)
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:33:19.18 ID:SC5fDKcMo
アニェーゼ 「……さて、そろそろ一発で成功させてくださいよ?」

アンジェレネ 「複雑な術式は組み上げるのが苦手なんですからプレッシャーかけないでくださいよぉ……」

スゥ……

アンジェレネ 「―― “大地には彼の地より出でし恵みが豊穣と成るために降り注ぐ”」

――――ズズッ……

男 「……?」 (なんだ……? 羊皮紙が動いて……――)

アンジェレネ 「“豊穣を得た我らが乞うは星々の導き。恵みの大地をその光で灯せ”」

ズズズズズズッッッ……!!!

男 「!? よ、羊皮紙が……!?」 ビクッ 「立体に、なった……!?」

ルチア 「……まぁ、及第点といったところでしょうかね?」

アニェーゼ 「手厳しいですねぇ。成功したんだから合格点をあげましょうよ、シスタールチア」

アンジェレネ 「えへへ……嬉しいな。成功しましたっ」 ピョンピョン

男 「……これも、魔術ですか?」

アニェーゼ 「ええ。ギリシャからローマに伝わった西洋占星術をベースにした、位置情報を得る術式です」

アニェーゼ 「火、水、風、土、の四大元素を応用して十字教術式で作り上げる、初歩の魔術ですよ」
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:34:06.97 ID:SC5fDKcMo
アンジェレネ 「えへへっ。見てくださいよ、男さん」

男 (薄々とは勘付いていたけど、僕はこういう外見が子どもっぽいタイプが好みなんだな)

男 (いや、もちろんロリコンじゃないよ? ロリコンじゃないよ?)

男 「何です?」

アンジェレネ 「ほらほら、この羊皮紙が成している立体、何かに似てません?」

男 「……?」 (平面に、ポツポツと浮き出る立体……これは、もしかしなくとも……)

男 「……なるほど。学園都市の立体地図ということですか」

アンジェレネ 「大正解ですっ!」

男 (ご機嫌だなぁ。よっぽど魔術が上手くいったのが嬉しいのかな?)

男 「それにしてもすごいなぁ、魔術って。こんな精巧なものを一瞬で作り上げちゃうなんて」

アンジェレネ 「すごいです? すごいですかぁ。すごいですよねぇそうですよねぇ」 ニンマリ

男 (ウザ可愛いってこういう子のことを言うんだろうな)

ルチア 「シスターアンジェレネ。基礎の基礎で威張らないように」

アンジェレネ 「………………」 (´;ω;`)

男 「あー……」 (仕方ないなぁ……)

ナデナデ

アンジェレネ 「?」

男 「すごいと思いますよ? うん、まぁ……魔術を知らない僕からすればね」

アンジェレネ 「!」 ニンマリ 「ふふふふふ……やっぱり私はすごいんです……っ!」

男 (本当にウザ可愛いなこの子)
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:34:50.83 ID:SC5fDKcMo
アニェーゼ 「本題に入りましょう。我々があなたに案内して欲しいのは、この黒点の部分です」

男 「黒点……? ああ、ちらほら見受けられるね……って、結構多くない!?」

アニェーゼ 「だから言ったでしょう? 明日も付き合ってもらうって」

男 「マジですか……」

男 「……ってか、こんなに精巧な、しかも立体の地図があるのなら案内人なんて必要ないんじゃ……」

アニェーゼ 「その場その場に行くための交通手段に精通した案内人が必要でしょう?」

ルチア 「我々に学園都市を踏破しろと言うのですか?」

男 「あー……じゃあ、タクシーでも拾ってきますね。そうすればまるっと解決!」

――ガシッ

男 「ひっ……!?」

アニェーゼ 「テメェは魔術サイドの事情に一般人を巻き込むつもりなのかゴラァ!?」

ルチア 「あわわっ……! シスターアニェーゼ、素が出ちゃってますよぅ!」

アニェーゼ 「ああ……これは失礼」 ニヤリ

男 「失礼だったと思うのならニヤリとするんじゃなくてニコッとしてください!」

男 「というか僕も一般人です! 何さり気なく僕を変人の仲間にしようとしてるの!?」
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:35:31.44 ID:SC5fDKcMo
アニェーゼ 「魔術なんてモンに関わって、一般人のつもりでいるんですか?」

男 「……真面目な顔で言うのやめてほしいなぁ。凹むから」

男 「分かったよ……分かりましたよ。ご案内致します」

男 「……それで? 案内した先で何をするつもりなんです?」

ルチア 「疑うような目をしないでください。大変不愉快です」

ルチア 「こちらは学園都市のために行動しているんですよ? 失礼な方ですね」

男 「学園都市のため?」

アニェーゼ 「……男さん、アナタ、今まで学園都市に一体何人の魔術師が侵入したか知ってます?」

男 「えっ……?」

アニェーゼ 「細かい数までは私らも知りませんがね、一人や二人でないことだけは確かですよ」

男 「………………」

アニェーゼ 「……学園都市は魔術に対しての備えがあまりにも弱い」

アニェーゼ 「だから私らが派遣されたんですよ。学園都市の魔術に対しての守りを強くするためにね」

アニェーゼ 「この黒点の位置は魔術的にそれなりの意味を持つ場所です」

アニェーゼ 「この座標に術式を施すことにより、侵入者を魔術的に探知することができるようになります」

アニェーゼ 「……それが今回の私らの仕事ってわけですよ。分かってもらえましたか?」
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:36:17.43 ID:SC5fDKcMo
男 「………………」

ルチア 「……9月30日の事件で、一体何人が被害にあいましたか?」

ルチア 「聞けば、学園都市の上層部、統括理事とやらも被害にあったようですし」

ルチア 「……まぁ、私としては、異教徒が何人死のうと知ったことではありませんけどね」

ルチア 「しかし、イギリス清教としては学園都市に倒れられては困る」

ルチア 「……魔術師の精鋭に寝首をかかれるようなことになってはまずいのですよ」

ルチア 「そのための魔術的防衛です。納得してください」

アニェーゼ 「……まぁ、『神の右席』 なんていう非常識なレベルの連中に対して意味があるかは疑問ですがね」

アニェーゼ 「ないよりゃマシですよ。多分ね」

男 「………………」 (……おかしい)

男 (……何人もの魔術師の侵入を許した? この学園都市が?)

男 (おかしい。そんなことあるはずがない。だってここは、最先端の科学力を誇る学園都市だぞ?)

男 (魔術師だって人間だ。侵入するためには外縁部を越える必要がある)

男 (たとえそこを突破したとしたって……セキュリティはいくらでもある)

男 (二、三人くらいはまぁ考えられる。ただ、何人もというのは絶対におかしい)

男 (……考えられることはひとつ)

男 (――……学園都市上層部が、何らかの意図を持って侵入を見逃した案件が存在する)
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:36:52.63 ID:SC5fDKcMo
男 「………………」

アンジェレネ 「……? 黙っちゃって、どうかしたんですか?」

アニェーゼ 「まだ疑ってるってんですか? 何なら誠意でもお見せしましょうか?」

男 「……いや……何でもないです。分かりました。ご案内致します」

ルチア 「……?」

男 (学園都市の思惑、か……思ってたよりずっと根が深そうだな)

男 (まさか魔術なんて非科学的なものまで介在しているなんてね)

男 「……あのさ、ひとつ聞きたいんだけど、あなた方は、上条くんを知っているんだよね?」

アニェーゼ 「上条くんというと……上条当麻のことですか?」

ルチア 「………………」

アンジェレネ 「………………」

アニェーゼ 「……ええ、もちろん知ってますよ」

アニェーゼ 「知って、いますとも」

男 「……なら安心だね」 ニコッ 「上条くんの友達なら、僕も信じられる」

ルチア 「とっ……ともだっ……!? 何をバカなことを……――」

男 「――……よろしくね、アニェーゼさん、ルチアさん、アンジェレネさん!」
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:37:26.30 ID:SC5fDKcMo
………………第一八学区 素粒子工学研究所

止 「おうおう……また随分と派手にやらかしてくれたモンだな」

火子 「……情報によれば、暗部の小組織同士が小競り合いをしたらしい」

止 「この状態から見て、レベル5クラスの能力者がぶつかりあったな、これは」

止 「…… 『ブロック』 は能力者で構成された組織じゃない」

止 「『スクール』 と違う組織がぶつかりあったと考えるべきか」

止 (……この無理矢理に溶かされたような穴……間違いない)

―――― 『……くだらない真似をしてんじゃないわよッッ!!! 死ねッッッ!!』

止 (動いてやがるんだ……あの、シィの仇のクソ女が……ッ)

止 「……生存者はいないな」

止 「いたとしても、この規模の戦闘を生き延びる能力者なら、もう逃げていると考えるべきだろう」

止 「……行くぞ」

火子 「……? ああ……」
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:38:39.85 ID:SC5fDKcMo
………………第七学区

佐天 「ふぁぁぁ……」

佐天 「……ったくさぁ、せっかくの祝日だってのに補習なんてついてないよね」

佐天 「で、補習終わったから遊ぼうと思ったら、みんな忙しくしちゃってるしさ」

佐天 「初春も白井さんも風紀委員で忙しいし、御坂さんは……」

佐天 「………………」

佐天 「……御坂さん、大丈夫かな」

佐天 「電話には出てくれたけど、元気なさそうだったし」

佐天 「……水くさいんだから。何かあったんなら、遠慮無く相談してくれればいいのに」

佐天 「………………」

ギャーギャーギャー……!!!

佐天 「……?」 チラッ

佐天 「……あれ、男さん?」
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:39:10.44 ID:SC5fDKcMo
………………

アニェーゼ 「………………」

ルチア 「………………」

アンジェレネ 「………………」

男 (……黙りこくって、十字を切って、指をくんで、お祈りする……)

男 (魔術的セキュリティの強化っていったって、何か大それた儀式とかをするわけじゃないんだな)

アニェーゼ 「………………」 ピッ……!!

アニェーゼ 「……とりあえず、これで終わりです」

ルチア 「この区画は大方できあがりましたね。そろそろ次の区画に移りましょう」

男 「………………」

アンジェレネ 「? どうかしました?」

男 「えっ……? あ、いや、べつに……」

アニェーゼ 「………………」 ハァ 「……大方、コイツら本当に何かしてんのか、って疑ってるんでしょう?」

男 「そっ、そんなことは……」 アセアセ 「……なくは、ないですけど……」

ルチア 「失礼な男ですね。これだから異教徒は」

男 (……この人って、異教徒嫌いってよりは異教徒嫌いでなおかつ男嫌いって感じがするなぁ)
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:40:03.22 ID:SC5fDKcMo
アニェーゼ 「ジャッポネーゼ風に言えば、塵も積もれば山となる、ってことですよ」

アニェーゼ 「小さい術式を山ほど行使することで、最終的に学園都市の大穴を塞ぐんです」

男 「でも、お祈りだけって地味すぎません?」

ルチア 「三位一体によって大幅な効果の増幅をしています。問題はありません」

ルチア 「それとも、魔術を知らぬあなたが我々に物申すと言うのですか?」

男 「いや、もちろんそんなつもりはないですけどね」

男 「……すみません。魔術について何も知らない僕は黙ってます」

アンジェレネ 「その通りですよ。それが懸命です」 フフン

男 「……じゃあ、お仕事の道案内に集中しますよ、と」

男 「この立体地図によると、黒点は全体的にまばらですね」

男 「第七学区は概ね終わり……じゃあ、とりあえず隣の学区に移動するということでいいですか?」

アニェーゼ 「そこら辺は任せます。良きに計らっちまってください」

男 「……じゃあ、そうしますけど……」 チラッ 「この立体地図、どうするんですか?」

アンジェレネ 「えっ? どうするって……持っていけばいいじゃないですか」

男 「電車に乗ることになりますし……こんなの持ってたら目立ちますよ」

男 (ただでさえあなた方は目立ってるんだから……)
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:41:00.12 ID:SC5fDKcMo
アニェーゼ 「簡単な話ですよ。術式を解除すれば元の羊皮紙に戻ります」

アンジェレネ 「!?」

アニェーゼ 「そして着いた先で再構成すればいいだけのことです」

アニェーゼ 「……さ、術式を解除してください、シスターアンジェレネ」

アンジェレネ 「せ、せっかくうまくいったのに……解いちゃうんですか……?」

ルチア 「はぁ? 何を寝ぼけたことを言っているのですか、シスターアンジェレネ」

アニェーゼ 「あう……せっかく、初めて成功したものなのに……」

ヒシッ

アニェーゼ 「いやです! 羊皮紙に戻しちゃうなんて……!」

アニェーゼ 「はぁ……。シスターアンジェレネ。この術式はどこでも構成できるからこそ便利なんです」

アニェーゼ 「普段は羊皮紙として持ち歩き、必要になったら地図とする」

アニェーゼ 「……その意味、しっかり分かってます?」

アンジェレネ 「あうー……」 (´・ω・`)

男 「次も成功しますよ」 ナデナデ 「だから、解除してください」

アンジェレネ 「分かりましたよ……」

サッ……サッ……クタッ……

アンジェレネ 「あうう……」

男 (魔術師って言ったって、普通の子どもなんだなぁ)



佐天 「へぇ……? 今度はシスターさん三人ですか。これはまたすごいですねぇ」



男 「……にゃっはぁ!!!」 ビグッ
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:41:45.21 ID:SC5fDKcMo
佐天 「………………」 ジトッ

男 「あ……あはは……さ、佐天さん、こんにちは……」

アニェーゼ (……?)

佐天 「こんにちは。モテモテですねー」

男 「い、いや……それほどでも……」

佐天 「………………」 スッ

男 「なっ……何で携帯電話を取り出すんです?」

佐天 「いえいえ、お気になさらずに。ちょっと友達に電話するだけですから」

男 「と、友達って……?」

佐天 「風紀委員やってて、ツインテールで、可愛い可愛い、誰かさんの彼女のことですけど?」

男 「待った! 全力で待って! 待ってくださいお願いします!!」

佐天 「………………」 ハァ 「……何であなたはそうなんですか?」

男 「そうって……?」

佐天 「何でそう浮気性なのかって聞いてるんです」

男 「待って待って待って! マジで待ってマジで!! 勘違いですよそれは!!」
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:42:51.90 ID:SC5fDKcMo
佐天 「勘違いって……」 チラッ

佐天 (ちびっ子二人におねーさん一人……三人ともシスター)

佐天 「……男さんって、シスコンだったりします?」

男 「うまい! シスターと妹をかけたとてもうまいことを言ってるけど今ばかりは笑えない!」

アンジェレネ (うまいかなぁ……?)

男 「説明させて! この人たちはイギリス清教の魔じゅ――」

――ドガッ

男 「脳天に激痛が!?」

アニェーゼ (テメェは馬鹿なんですかッ! この腐れ能力者!!)

アニェーゼ (明らかに一般人っぽい人を巻き込もうとしてんじゃねえですよ!!)

男 (ごめん! 確かにその通りだからそのヘンテコな杖を僕の頭部に振り下ろしたことは不問とするよ!)

男 (っていうかどこから取り出したんだよその杖……)

佐天 「……?」 ジロッ 「随分と仲が良さそうですねぇー」

ピッピッ……

男 「待った! 本気で! 携帯電話はしまいましょうか! 佐天さん!」
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:43:42.46 ID:SC5fDKcMo
佐天 「………………」 ジトッ

男 「え……えーっとですね、この人たちは……」

ルチア (……はぁ。仕方ありませんね)

アニェーゼ (ええ……頼みましたよ、シスタールチア)

ルチア 「私たちはイギリスからやって参りました、使節団なのです」

佐天 「使節団?」

ルチア 「はい。学園都市と英国を繋ぐ、親善大使のようなものです」 ニコッ

男 (あれ? あんな素敵な笑顔、僕には向けてくれていませんけど?)

アンジェレネ (私にだって向けてくれたことないですよぅ)

ルチア 「私たちが道に迷っていたところ、この方が案内役を買って出てくれたのです」

ルチア 「とても親切な方で、私たちに優しく学園都市を案内してくださるのですよ」

――……ゾゾッ

男 (鳥肌がっ! 鳥肌が!)

アニェーゼ (馬鹿なこと言ってねえでフォローするんですよ!) ドガッ

男 「っあ……う、うん、一応僕も風紀委員だからね。困っている人は放っておけないから」 キリッ
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:44:37.91 ID:SC5fDKcMo
佐天 「ふぅん……」

佐天 「……まぁ、男さんと違ってこの人たちは誠実そうだから、信じるとしましょうか」

男 「僕佐天さんになんかしたっけ? ねぇ、僕佐天さんに何かしました?」

佐天 「道案内、かぁ……」 ニンマリ 「じゃあ、私もお手伝いしますよ! なんか面白そうだし!」

ルチア 「……!?」

男 「う゛ぇっ……!?」

アニェーゼ 「は……?」

アンジェレネ 「あぅ……」

佐天 「……? どうかしました? 私、こう見えて、学園都市の裏事情に詳しいんですよ?」

佐天 「男さんなんかより、よっぽど上手に学園都市観光ツアーを組み立てて見せますよ!」 フン!

男 「………………」 ガバッ (どうしてくれんですかルチアさぁぁぁあああん!!!)

ルチア (へ、変なことを言わないでください異教徒! 今のは私のせいではないでしょう!?)

アニェーゼ (巻き込むどころか自分から巻き込まれに来るとは……)

佐天 「電車やバスのお得な乗りつぎ方から都市伝説まで!」

佐天 「完全にナビゲートしてみせますよ!」 フフン

アンジェレネ (……なんかすっごい貧乏くさいことをすっごく自慢気に言ってます)

アニェーゼ (とにかくなんとかしてくださいよ!)

男 (何で僕!? ――……わっ、分かりましたよ! だから杖を振り上げないでくださいっ)
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:45:39.51 ID:SC5fDKcMo
男 「あー……あの、ですね、佐天さん?」

佐天 「? 何ですか?」

男 「えっと……シスターさん方は、遊びで来ているわけではないので、そういうのはあまり……」

佐天 「むむっ、私だってちゃんと案内できますよ!」

佐天 「……それとも何ですか? 私がレベル0だから一緒に来てほしくないって言うんですか?」 ウルッ

男 「そんなことあるわけないじゃないですか! 一緒に行きましょう佐天さん!」

――ドガッ

アニェーゼ (何考えてんですかテメェは!? 何で誘ってんですかアホなんですか!?)

男 (否定はしない! けど女子中学生を泣かせるなんて非道な真似ができるか!!) キリッ

アニェーゼ (ありゃ明らかに嘘泣きでしょうが!! このド腐れ能力者!)

佐天 「へへ……男さん単純なんだから」

男 (っ……じゃあアニェーゼさんが断ってくださいよ!!)

アニェーゼ (……仕方がねえですねぇ)

ザッ……

アンジェレネ (おお……! さすがは我らがシスターアニェーゼ! 格好いいです!)
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:46:07.97 ID:SC5fDKcMo
アニェーゼ 「……もし、お嬢さん」

佐天 「なぁに? お嬢ちゃん」 ニコッ

アニェーゼ 「おじょっ……」 プルプル

男 (早速爆発しそうですよー?)

アンジェレネ (シスターアニェーゼ! がんばって……!!)

アニェーゼ 「……あ、えーと、ですね」

佐天 「?」

アニェーゼ 「………………」

アニェーゼ 「……まぁ、いいか」

男 「――は?」

アニェーゼ 「じゃあ、男さん共々、よろしくお願いしますよ……えっと……」

佐天 「あ、はい! 私、佐天涙子っていいます! よろしくお願いします」

アニェーゼ 「はい、よろしくお願いします、佐天さん。私はシスターアニェーゼっていいます」

ルチア 「シスタールチアと申します」

アンジェレネ 「あ……し、シスターアンジェレネです……! よろしくお願いしますっ」
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:46:47.86 ID:SC5fDKcMo
男 (待て! かなり待て! 何だいきなり諦めやがって! 厚底ォ!!)

アニェーゼ (なんです?)

男 (なんです? じぇねえですよ!!)

男 (何で最終的にお願いしちゃってるんですか!?)

アニェーゼ (こうするのが一番良いと思ったからです。これ以上余計なことに時間はかけてられねえですから)

男 (っ……! 正論な気がするけどなんか何度も殴られた分、釈然としない……!!)

ルチア (細かいことにいちいちうるさいですね。わずらわしい。これだから異教徒は)

男 (異教徒という言葉がもはやただの悪口に成り下がっている……!)

男 「………………」 チラッ

佐天 「よーし、涙子おねーさん頑張って案内しちゃうぞーっ」 ワキワキ

男 「………………」

アニェーゼ (……安心してください。彼女を巻き込むようなヘマはしませんよ)

アニェーゼ (私らのくだらない事情に、あんな真っ直ぐな娘を巻き込みたくはありませんからね)

男 (……当たり前です)

男 (彼女のような人の笑顔を守るために、僕は風紀委員をやっているんですから)
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:47:39.64 ID:SC5fDKcMo
………………駅

佐天 「皆さん! 切付の買い方はご存知ですか!?」

アニェーゼ 「知ってます」

ルチア 「知っております」

アンジェレネ 「知ってますよ」

男 「……失礼ですよ、佐天さん」

佐天 「そうかぁ……さすがに知ってますよねぇ……」

スッ……ピピッ

アンジェレネ 「!?」 ガバッ 「なっ……何なんですかそれは!?」

佐天 「へっ……?」 パチパチ 「……何って、普通の携帯電話だけど……」

アンジェレネ 「携帯電話で改札を通過!?」 キラキラ 「何か未来って感じがしますね、シスタールチア!」

男 「ぷっ……み、未来……っ……電子マネー搭載の携帯電話で……未来って……っ」 プークスクス

ルチア 「なっ……///」 プイッ 「わっ……私にそんな話を振らないでください!!」

アンジェレネ 「あう……」

男 「でも、たしか携帯電話の電子マネー機能って学園都市外部でもあり得る技術だったような……?」

アニェーゼ 「そんなのが浸透してるのは日本だけですって。ほら、馬鹿なこと言ってねえで、さっさと行きますよ」
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:48:58.21 ID:SC5fDKcMo
………………電車内

佐天 「あ、そういえば男さん」

男 「?」

佐天 「ファミレスでサバ缶を食べていいと思います?」

男 「………………」

男 「ごめん、一瞬フリーズしかけました。何ですって?」

佐天 「だからぁ、ファミレスで、持ち込んだサバ缶を食べていいのかな、って話です」

男 「もはや道義的とかそういう問題以前にそういう発想をしないよね、普通の人は」

佐天 「ですよねぇ……」

男 「……? どうかしたんですか?」

佐天 「いえ……ああ、それともう一つ。持ち込んだ鮭弁をファミレスで食べるのは?」

男 「さっきとほとんど変わらないでしょう!?」

佐天 「そうですよねぇ……」

ルチア 「……まぁ、日本人は変人が多いと聞きますからね。おかしくはないでしょう」

アンジェレネ 「そうですよね。日本人ってどこかおかしい人が多いですもんね」

男 「そこ! 偏見でものを言わないように! というか僕を見ながら言うな!」
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:53:15.32 ID:SC5fDKcMo
………………病院

冥土帰し 「………………」

イル 「………………」

ピッ……ピピッ……

冥土帰し 「……うん。問題はなさそうだね。動作パターンにも異常はないよ」

イル 「そう、か。よかった」

冥土帰し 「大事に使ってくれているようだね。メンテナンスもしっかりされているね」

イル 「ん。メイが、やってくれる、から」

冥土帰し 「そうか。支えてくれる人がいるというのは素晴らしいことだね」

イル 「ん!」

冥土帰し 「……定期メンテナンス以外でも、異常が感じられたらまたすぐに来なさい。いいね?」

イル 「ん、わかってる。ありがと、センセ」

冥土帰し 「患者の経過が良好なら僕はそれで十分だ。そして、そんな笑顔を見せてくれるのなら、他に何もいらないよ」

冥土帰し 「……じゃあ、次はメイくんだ。呼んできてくれるね?」

イル 「わかった。じゃ、センセ、また、な!」 ノシ
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:53:44.67 ID:SC5fDKcMo
………………

冥土帰し 「……イルくんに異常は見られない。問題はなさそうだよ」

メイ 「はい、ありがとうございます」

メイ 「わたしが見る限りでも、きちんと動かせているようです」

冥土帰し 「うむ。何よりだね。君は大丈夫かい? 一応、身体の方は完治しているようだけど」

メイ 「えっと……あの……」 オズオズ 「ひとつ、だけ……」

冥土帰し 「? 何だい?」

メイ 「あの……治療費の方は……その、本当に申し訳ないのですが、もう少し、待っていただきたいのですが……」

冥土帰し 「………………」 ハァ 「……誰も彼も僕を何だと思っているんだか」

冥土帰し 「気長に払ってくれればいいよ。無理に請求しようなんて思わないからね」

冥土帰し 「治療費を払うためにまた身体をこわすなんてことになったらもはや本末転倒だね」

冥土帰し 「そんなことにならないように、今はしっかりと身体を休めることに集中しなさい」

メイ 「はい……」 ペコリ 「本当に、ありがとうございます……!」

冥土帰し 「病院専属のセラピストもいる。最近見つけた、素晴らしい精神療法もある」

冥土帰し 「……君も、辛くなったらいつでも来なさい」
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:54:23.37 ID:SC5fDKcMo
………………待合室

イル 「……♪」

月子 「………………」 キョロキョロ

イル 「? どうか、したか? ツキコ」

月子 「はっ……? あ……いや、何でもない」

世話子 「……?」

イル 「………………」 ニコッ 「……とまる、さがしてるのか?」

月子 「! ……う、うむ」

イル 「恥ずかしがる、ない。イルも、サイショは、ずっととまる、さがしてた」

世話子 「………………」

イル 「……けど、とまるは、いない。だから、やめた」

イル 「いまは、とまるのこと、わすれようと、してる。簡単じゃ、ないけど」

イル 「それで、いつか、とまる帰ってきたとき、ジマン、する」

イル 「……イル、こんなにがんばった! って」

月子 「……そう、だな」 ニコッ 「トマルが帰ってきたときに、恥ずかしくないようになっていなければな」

イル 「ん!」

世話子 「………………」 (この子たちは、本当に強いな)

世話子 (私ももっとしっかりしなきゃ……!)
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:55:11.02 ID:SC5fDKcMo
………………英国 『必要悪の教会』 女子寮

姉 「………………」

姉 (作戦決行は、明日)

姉 (それまでに、できるだけのことはしておかないと……)

―――― “潰す魔術結社の名は 『勇魚の咆哮』 。色々とえげつない計画を立ててるクソ共の集まりだ”

―――― “私が陽動を担当する。その隙に、あんたには奴らの計画の根本を潰してもらう”

―――― “……できるわね?”

姉 「………………」

姉 「……できるできないの話じゃない。わたしは、やらなければならないの」

グッ……

姉 (きっと、ロシアの戦争への参戦は確実。総大主教に、戦争派の司教を御する力はない)

姉 (ローマ正教に……いえ、『神の右席』 に利用されるだけ利用されて、終わり)

姉 「ロシア成教、『殲滅白書』 。多分に歪みを含む戦争によって、きっと彼らも大きく歪む」

姉 「わたしはせめて、そんな彼らを立て直すための準備をしなくては……」

ギリッ……ギリリッ……!!!!

姉 「そして……わたしを騙し、弟を殺した、ニコライ=トルストイを……ッ!!!」

姉 「……力を、得る。そのために、イギリス清教に殉ずる」

姉 「だからお願い、力を貸してね。わたしの……最愛の弟」

姉 「……強く賢く逞しい、本物の英雄さん」
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:55:46.76 ID:SC5fDKcMo
………………学園都市

止 「………………」

ピピッ……

火子 「……あん? ……………………」

火子 「……おい、通行止め。次の指令だ」

止 「けっ……次はどんなクソッタレな人命救助だ?」

火子 「不満なようなら何よりだな。次は人命救助じゃない」

止 「……んだと?」

火子 「傭兵退治、だとよ」

止 「………………」

止 「……はぁ?」
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 16:56:51.83 ID:SC5fDKcMo
………………

タタタタタ……

?T 「クソッ……クソッ! クソッ!!!」

?T 「『ブロック』 の連中……裏切りやがったな……ッ!!」

?T 「外壁を乗り越えたところで、何だってあんなヘリまがいの怪物兵器がやって来るんだよ……!!」

?T 「クソがッ……こんな馬鹿げたことに付き合ってられるか!」

?T 「この街から安全に逃れる方法を、早急に捜さなければ……!!」

………………

?U 「……ははっ、これはまた好都合に好都合が重なったものだ」

?U 「科学同士の内紛、か……全く、馬鹿げたことだ、本当に」

?U 「まぁ、元々からして一つではない我々魔術サイドに言えたことではないか」

?U 「くく……待っていろよ、『――――』 。管理者がいない今が好機。我々はお前を手に入れる……!」

………………

?V 「くくっ……暗部のクソ共が暴れてるな。悪くない風景だ」

?V 「ああ、存分に暴れて、存分に壊してくれよ。このくだらない街をな」

?V 「その間に、俺たちは楽しませてもらうとするさ。お前たちのドンパチに紛れてなぁ」

?V 「……一方通行、残念だったな。お前は俺たちを潰しきれなかった」

?V 「――さぁて、楽しい楽しい実験教室の始まりだ」
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 16:57:54.96 ID:SC5fDKcMo
今回はここまでです。

今さらですが能力の設定等に関してはわたしの独自解釈がかなり入っています。

またよろしくお願いします。
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 17:36:13.07 ID:EqUyIJkJo

188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/22(火) 08:03:16.79 ID:DmiLKyLAO
乙ー
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/26(土) 10:35:55.05 ID:eFVzjmADO
ガンバ
190 : [sage]:2011/02/28(月) 22:44:56.35 ID:p+k32Rcno
ご無沙汰しています。

ちょっとだけ投下します。
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 22:46:55.18 ID:p+k32Rcno
………………アンチスキル詰め所

鉄装 「………………」

鉄装 「はふぅ……」 クタッ (ついてないなぁ。せっかくの祝日なのに、当直なんて)

カタカタカタカタ……

鉄装 (しかもこんなものの解析を押しつけられるなんてさ……)

鉄装 (例の、レベル4殺害事件の被害者の、携帯電話の解析)

鉄装 (ROMは辛うじて生きてるけど、ストレージはもう致命的だよ)

鉄装 (……やっぱり、花飾りちゃんに頼むのが一番だと思うんだけどなぁ)

―――― “こんな凶悪な犯罪に、中学生を巻き込むわけにはいかないじゃん!”

鉄装 「……そりゃ、その通りですけどね。でも、子どもを信じることも必要だと思うけどなぁ」

鉄装 「黄泉川先生は過保護すぎますよ。絶対」

?? 「誰が過保護だって?」

鉄装 「ひっ……!?」 ガバッ 「……って何だ。才郷先生ですか」

才郷 「ははっ、ビビるくらいなら独り言はほどほどにしておくんだな」

才郷 「黄泉川さんは今日は非番だよ。ここには来ないさ」
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 22:47:25.77 ID:p+k32Rcno
才郷 「……それで、それ、何か分かったのか?」

鉄装 「今のところは何も。外部メモリもバラバラに壊れてますし」

才郷 「だよなぁ……」 ポリポリ 「……個人的には、この事件を追うのは嫌なんだよな」

鉄装 「? アンチスキルが変なことを言わないでくださいよ」

才郷 「いやな……この被害者がどんなヤツだったか、お前も知ってるだろう?」

鉄装 「それは……まぁ……」

才郷 「……何人もの子どもに酷いことをして、そして殺して、死体すら隠した」

才郷 「俺には、こいつを殺した犯人の気持ちが分からなくはない。お前は違うのか?」

鉄装 「……分からなくはないです。でも、人を裁くのは人じゃありません」

鉄装 「この学園都市には学園都市の決まりがあります。それを守らないといけません」

才郷 「………………」

鉄装 「……それに、黄泉川先生だったら、きっとこう言いますよ」

鉄装 「『守るべき子どもに人殺しをさせるつもりか才郷!!』」

才郷 「……!」 ビクッ

鉄装 「……ってね」 テヘッ

才郷 「……まぁ、そうだろうな」 フゥ 「だが調子に乗るなよ鉄装」 ドゴッ
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 22:47:54.80 ID:p+k32Rcno
鉄装 「うぅ、ゲンコツなんて酷いですよ……パワハラで訴えますよぉ?」

才郷 「俺が訴えられるくらいなら黄泉川さんは何千回訴えられればいいんだ?」

鉄装 「……違いないです」

――――……ピピピッ

鉄装 「……? データサルベージ……7%!?」

才郷 「どうした?」

鉄装 「携帯電話のストレージから少しだけデータを復旧できたみたいです!」

カタタタタタ……

鉄装 「……これは、CSV形式のファイル……? 表……?」

鉄装 「ファイル、出力します」

――……パッ

才郷 「……? これは、アドレス帳か……?」

鉄装 「……ファイル名は……lv4net.csv……」

才郷 「レベル4……? データの破損が大きすぎるな。内容が読み取れない」

鉄装 「……とりあえず、このファイルの復元を出来る限りやってみます」
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 22:49:44.82 ID:p+k32Rcno
………………第一○学区 少年院横

止 「………………」

カチャカチャカチャ……

火子 「……片手だけでセッティングできるのか?」

止 「仮にできないと答えたら、お前が手伝ってくれるっていうのか?」

火子 「……けっ、嫌な野郎だ」

止 「ああ、それはよく言われるな」

止 「……この義手、使いようによっては結構便利だし、大丈夫だ。問題ない」

火子 「そうかい」

――――カチッ

止 「……よし、機械化小銃の固定、完了」

止 「“砲身を2番に変更(BarrelRoll=2nd)”」

……ガガガガガッ……ガゴ゙ッ!!!

止 「“カートリッジ変更” 。“弾丸を尖頭弾へ(Barrett = PB)”」

……――ガヂャッ!!
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 22:50:22.24 ID:p+k32Rcno
火子 「………………」 スッ 「……報告によれば、あと数秒で 『ブロック』 と傭兵が到着するぞ」

止 「分かった。こちらも準備は終わっている」

火子 「……お前、狙撃の技量は高いのか?」

止 「さぁてな、まともな狙撃なんてこれが初めてだ」

火子 「……そんなんでオーダーをこなせるのか?」

止 「……知ってるか? プロの狙撃手の失敗の、最も多い理由」

火子 「……?」

止 「スナイパーってのは極限状態での仕事もこなさなきゃならない」

止 「……飯もない。休息もない。そんな過酷な状況下で、御しきれなかった手足のブレ」

止 「プロでもテメェの手の震えを御しきれなければ簡単に失敗する。それが素人ならなおさらな」

火子 「……じゃあお前はどうするっていうんだ?」

止 「決まってる」 ニヤリ

――――ギィィィィィィンン!!!!

火子 「……!?」

止 「――テメェの不随意運動くらい、完全に制御しきってみせるさ。俺の 『通行止め』 でな」
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 22:51:08.59 ID:p+k32Rcno
………………

佐久 「――……行くぞ! 座標移動の人質はこの中にいる!」

佐久 「座標移動さえ手に入れれば、俺たちの悲願の達成に大きく近づくんだ!」

傭兵1 「………………」

ダダダダダダ……!!!

――――ピシュン!

傭兵1 「っあ……?」

……ズザッ……!!

手塩 「……!? 佐久! 狙撃、だ!!」

佐久 「クソッ……!! 構うな! 俺たちは少年院内部に突入する!」

佐久 「狙撃手がいるってことは、追撃の連中が予想以上に早く来る可能性が高い!」

佐久 「追撃者をここから先に入れるな! それがお前たち傭兵の仕事だッ!!」

手塩 「……行くぞ! 佐久」

――――ピシュン! ピシュン! ……

傭兵2 「かっ……――」
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 22:53:08.19 ID:p+k32Rcno
………………

火子 「…… 『ブロック』 の主要メンバーと思われる連中は少年院の中に入ったぞ?」

止 「知ったことか。俺が命じられたのは外部から侵入した傭兵の殲滅だろう」

――……パシュッ!

止 「『ブロック』 の目的も何もかもどうでもいい。俺は俺の仕事をこなすだけだ」

止 「……んあ?」

?? 『………………』

止 「……何だありゃ? 赤いセーラー服の、女?」


――――ドクン……


止 「っ……!?」

グッ……ググググッ……!!

止 (なっ……!? 何だってんだ!? 手が、勝手に……!!)

バキッ……!! ガゴッ!!

止 「くっ……そっ……たれがッッッ!!!!」

ギィィィィィィンン!!!!!
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 22:54:14.92 ID:p+k32Rcno
火子 「お、おいおい! お前なにやってんだ!?」

火子 (小銃の銃口を自分に向けようとしてる……?)

止 「っ……! 火子!! 俺を突き飛ばせ!!」

火子 「……はぁ?」

止 「何でもいいから早く突き飛ばせ!!!」

火子 「……よく分からないけど、まぁいいや。命令するなっての!!」

――――ドガッ!!!

止 「がっ……!!」

……ドサッ!! ――――ガシャッ!!

止 「っ……はぁ……はぁ……すまん。助かった……」

止 (動ける……? 機械化小銃が手から離れたからか?)

火子 「……? お前、何やってんだ?」

止 「……分からない。ただ、急に身体が言うことを聞かなくなった」

止 「そうしたら、手が勝手に機械化小銃の銃口を俺の頭部に向けようとしやがった」

火子 「?」

止 「……辛うじて 『通行止め』 で強制的に身体の運動を停止させたが……」 ビキッ 「ッ……!?」
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 22:56:04.16 ID:p+k32Rcno
止 (動こうとする力と止まろうとする力……相反する命令が重なって、腕の筋肉が少しいかれたな)

火子 「……? ったく、意味分からねぇよ」

――――スッ

止 「――……やめろ!! 今それを拾うな!!」

火子 「……っ!?」 ビクッ 「なっ……何にもしねぇよ!」

止 「そうじゃない……何かがおかしい。さっきの俺みたいになりたくなかったら、やめておけ」

止 「機械化小銃は後で俺がワイヤで回収する」

火子 「……そうかい」

止 (……さっきの、胸の妙な圧迫感、緊張感……これは、まさか……)

火子 「……けっ」 チラッ 「――――……ッ!?」

止 「どうした!?」

火子 「こ、こっちに来い! 下がすごいことになってるぞ!!」

止 「……? …………――なッ!?」

?? 『………………』

止 「あの、女……!!」

止 「――……たった数秒の間に、あれだけの数の傭兵を……!?」

………………

?? 「……さぁ、場は整ったぞ、エツァリ」

?? 「早く来い。私に殺される、ただそれだけのためにな」
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 22:57:02.62 ID:p+k32Rcno
………………

止 「………………」

火子 「………………」

火子 「……一応、目的は果たしたな」

止 「ああ……」 ギリッ (さっきの妙な感覚といい……あの女、間違いない)

止 「……魔術師か」

火子 「あん?」

止 「いや……――」

――――――キキッ!! ザッ……!!

止 「……!? あれは……」

火子 「……おおう。これはまた随分な大物がやってきたもんだな」

止 (一方通行、海原、結標、土御門……なるほどな。こういう繋がりがあったのか)

火子 「どうする? ついでに連中も狙撃しておくか?」

止 「……ふん。素人の狙撃程度であの連中を殺せるわけがねぇだろうが」

火子 「……?」

止 (……俺が世話になった奴ばかりだ。何の因果なんだかな、これは)

――……ザッ

止 「……行くぞ。俺たちの目的は達成した。次の戦場はどこだ?」

火子 「あ、ああ……」 ピピッ 「……次は……遠いな。第三学区だそうだ」
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 22:58:15.22 ID:p+k32Rcno
………………

佐天 「………………」

ペタン

佐天 「男さーん。疲れましたよー。おぶってくださいー」

男 「……あのねぇ、佐天さん。自分からついてきておいてその言い草ですか?」

佐天 「だってぇ……もっと観光地とか巡るんだと思ってたんですもん」

佐天 「それなのに、道の真ん中とかでお祈りするだけなんて、つまらないですよ」

男 「……だから言ったのに」 ハァ

男 「まぁ、確かに歩き通しでしたからね。そろそろ休憩しましょうか」

佐天 「奢りですか! やったぁ!!」

男 「そんなこと一言もいってないよ!? くそっ、でも無邪気に喜ぶ姿が可愛いから奢らざるを得ない……!」

アニェーゼ 「……? 何やってんですか?」

男 「ああ、アニェーゼさん。そろそろ休憩しませんか?」

アンジェレネ 「あっ! さ、賛成ですっ!」

ルチア 「あなたは体力がなさすぎですよ、シスターアンジェレネ」

アニェーゼ 「そうですねぇ……ま、息抜きも必要ですしね」

佐天 「やたっ!」
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 22:59:16.47 ID:p+k32Rcno
………………カフェ

店員 (シスター……?) 「え、えと……ご注文はお決まりでしょうか?」

ルチア 「私はカップチィノで」

男 (ネイティブだ)

佐天 (すごく……ネイティブです)

アンジェレネ 「あ、私はチョコラータ・コン・パンナでお願いします!」

店員 「……は?」

アンジェレネ 「? だから、チョコラータ・コン・パンナですよ!」

店員 「申し訳ありません。当店ではそのような商品は扱っておりません……」

アンジェレネ 「!? 仮にもカッフェを名乗る店がチョコラータ・コン・パンナを置いてないんですか!?」

店員 「いえ、あの、えーと……」 (カッフェ……?)

男 「店員さんを困らせないでください。ここはカッフェじゃなくてカフェです」

アンジェレネ 「ぶぅー……!」 プンスカ 「じゃあ、私はこの店で一番甘い飲み物と食べ物を所望します!」

店員 (甘い飲み物に甘い食べ物……!?) 「か、かしこまりました……」

アニェーゼ 「まったく……。あ、私もカップチィノで」

店員 「はい……。そちらのお客様はどうされますか?」

男 「えーっと……僕は……ブレンドで」

佐天 「私はこの特大パフェと紅茶を! 男さんの奢りで!」

男 「いちいち言わなくていいです。ちゃんと奢りますから」

店員 「……かしこまりました。少々お待ち下さい」
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 23:00:21.18 ID:p+k32Rcno
………………

アンジェレネ 「………………」 モグモグモグ

佐天 「………………」 モグモグモグ

アン&佐 「「うまーーーーーーーっ……!!!」」

ルチア 「まったく……シスターアンジェレネは」

アニェーゼ 「まぁまぁ、どうせ彼の奢りなんですし、いいじゃねえですか」

男 「待て! かなり待て! あなたたちの分まで奢らせるつもりですか!?」

アニェーゼ 「冗談ですよ。狭量な野郎ですねぇ」

ルチア 「まったくです」

男 「ぐっ……なんで僕が馬鹿にされているんだ……!?」

アンジェレネ 「? ほらほら、イライラするときは甘いものですよー?」

スッ

男 「!? こ、これはまさか……!?」

アンジェレネ 「あーん」

男 「あ、あーん……」

アンジェレネ 「――なんてことするはずないじゃないですかっ!」 パクッ 「甘ぁ〜〜〜〜〜!!」

男 「………………」 (ほんっっっっっとにウザ可愛いなこの子)

佐天 「……他の女の子との間接キスを許容、と」 メモメモ

男 「そこ! 変なことメモしない! 本当に怖いから!」
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 23:01:12.12 ID:p+k32Rcno
………………

アニェーゼ 「さて、休憩もしたことですし、もう一がんばりしましょうかね」

ルチア 「……この分なら明日で終わりそうですね」

ルチア 「こんな異教徒の街に長くいてはこちらが保ちませんからね。良かったです」

佐天 「? ルチアさんって、学園都市が嫌いなんですか?」

ルチア 「………………」 プイッ 「……十字教圏以外は、苦手です」

佐天 「はぁ……」

ルチア 「さぁ行きますよ。早く済ませるに限ります」

アンジェレネ 「あ……シスタールチア!」 タタタタ……

男 「………………」

アニェーゼ 「……嫌な感じだと思われるかもしれませんが、気にしないでやってください」

アニェーゼ 「良くも悪くも真面目なんですよ、シスタールチアは」

アニェーゼ 「だから、あんまり嫌わないでやってくれると、私としては嬉しいです」

佐天 「嫌いになるつもりはありませんけど……なんか寂しいなぁ」

男 「……むしろ僕は嫌われてますけどね」
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 23:01:47.32 ID:p+k32Rcno
………………

佐天 「――……でね、そこのクレープ屋さんがとっても美味しいの」

アンジェレネ 「うわぁぁぁあ……! 行きたいです! 是非行きたいです!」

佐天 「じゃあ、後でみんなで行こうか」

アンジェレネ 「はい! 是非是非!」

ルチア 「シスターアンジェレネ!」

アンジェレネ 「あう……」

男 「………………」

男 「……ねぇ、アニェーゼさん」

アニェーゼ 「? 何です?」

男 「アニェーゼさんは、あの二人の上司……なんだよね?」

アニェーゼ 「どうでしょうね? 形式上はすでに正式な部隊とは言い難いですから」

アニェーゼ 「……彼女らが私の元にいてくれている、というとらえ方の方が正しいかもしれません」

男 「へぇ……人望があるんですね」

アニェーゼ 「からかわねえでくださいよ。そんなんじゃないですよ」
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 23:02:28.82 ID:p+k32Rcno
アニェーゼ 「……そもそも、私のせいで、彼女らはローマ正教を追い出されたようなモンなんですから」

男 「えっ……?」

アニェーゼ 「……余計なことを言いました。忘れてください」

男 「………………」

アニェーゼ 「………………」

男 「……アニェーゼさんたちは、上条くんとはどういう関係なの?」

アニェーゼ 「………………」 フッ 「……簡単な話ですよ」

アニェーゼ 「私たちは……いえ、私は、一度彼を殺そうとしました」

アニェーゼ 「……けれど、彼は助けにきてくれた。オルソラを助けようとしていただけかもしれませんが、」

アニェーゼ 「――……でも、彼は私たちを助けてくれたんです」

アニェーゼ 「……命の恩人……なんて陳腐な言葉じゃ表せねえですね」

アニェーゼ 「あの男の行動理念は、単純明快でありながら、想像を絶するようなモンですから」

男 「……はは、そうだね。でも、それが彼なんだよなぁ」

男 「一度殺されそうになったくらいじゃ、彼はその人を見捨てたりしないだろうからね」

男 「彼はきっと、誰にだって手を差し伸べるんだ。たとえそれが、元敵であったとしても」
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 23:03:15.63 ID:p+k32Rcno
アニェーゼ 「……男さんは彼のクラスメイトなんでしたっけ?」

男 「ええ、まぁ……。普段はただの馬鹿なんですけどねぇ」

アニェーゼ 「随分と辛辣ですね」

男 「事実を述べているだけですよ。……まぁでも、僕も彼に何度も助けてもらいましたから、」

男 「――アニェーゼさんの言いたいことはなんとなく分かります」

男 「僕は、彼に憧れていますから。だから僕は、彼のようになりたいんです」

男 「上条くんのような、本物のヒーローになりたいんです」

アニェーゼ 「………………」

男 「……まぁ、達成するのがいつになるか分からないですけどね」

アニェーゼ 「………………」 ジッ 「……あなたのお姉さんから、少しだけ話を聞きましたよ」

男 「えっ……? 姉さんから?」

アニェーゼ 「……なってんじゃないですか? 少なくとも、たったひとりの姉を守れるくらいのヒーローには」

アニェーゼ 「私にはヒーローなんてモンは分かりませんが、」

アニェーゼ 「……大切な者を守れれば、それだけでヒーローってことなんじゃないんですかね」

男 「………………」

アニェーゼ 「……おっと、そろそろ次のポイントですね。では、佐天さんと離れていてください」

男 「……あ、アニェーゼさん!」

アニェーゼ 「? 何です?」

男 「あ……ありがとう!」

アニェーゼ 「………………」 プイッ 「……べつに礼を言われるようなことはしてねえですよ」
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 23:04:15.94 ID:p+k32Rcno
………………車内

止 「………………」

火子 「………………」

火子 「……通行止め、お前は」

止 「あん?」

火子 「………………」 プイッ 「な、何でもない……」

止 「……そうかい」

火子 「………………」

火子 「……なぁ、」

止 「なんだ?」

火子 「何で、能力に違いなんて生まれるんだろうな?」

止 「……?」

火子 「何で……私は完全な発火能力者になれなかったんだろうな」

止 「………………」

火子 「……何で、こんな出来損ないの能力しか得られなかったんだ?」

止 「………………」

火子 「……すまん。忘れてくれ。余計なことを言った」

止 「……あいにくと俺は研究者じゃねぇ。『自分だけの現実』 についての講釈なんかは垂れられねえよ」

火子 「……ああ」
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 23:07:06.72 ID:p+k32Rcno
止 「だが、一つ言えることがある。能力の出来不出来を決めるのは能力そのものじゃない」

止 「……その能力を持つ、人間なんだ」

火子 「え……?」

止 「……俺は、たくさんの能力者を見てきたよ」

止 「優しいが故に、自分の能力を恐れる能力者」

―――― 『わたし、今、血まみれですよね? ふふ……はは、また、人を殺したんですもんね』

止 「無能力者のくせに、誰よりも強い本物のヒーロー」

―――― 『お前はここにいろ。大丈夫だ。お前の大切な奴にも、アイツらには指一本触れさせやしない』

止 「弱いくせに、泣き虫のくせに、きちんとヒーローになっていた能力者」

―――― 『……もちろん覚悟は、できてるんだよな? ……NO.00102』

止 「希少な大能力を持っているというのに、それを正義のために使う高潔な能力者」

―――― 『アナタには分からないでしょう! 何者かの威を借ることしかできないアナタには!』

止 「学園都市で七人しかいないレベル5でありながら、力を正しく使おうとする能力者」

―――― 『……いいから、早く行きなさいって。行く場所があるんでしょ?』

止 「大切な存在を守るために、強敵に立ち向かった無能力者」

―――― 『私も、月子ちゃんを……月子ちゃんの笑顔を、守りたいから……!!』

止 「……殺戮にしか使えない自分の能力を嫌い、しかし最後には大切な者を守るために全てを賭した優しい能力者」

―――― 『これが、誰かを守りたいときの底力、か……』

止 「……能力なんて、大した問題じゃねぇよ。すごい能力を持っていたって、何もできないクソだっている」

止 「逆に言えば、レベル0だってヒーローに成り得るんだ」

止 「大事なのは能力そのものじゃない。その能力をもって何を成すか、だ」
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 23:07:58.52 ID:p+k32Rcno
火子 「………………」

止 「……まぁ、まずはテメェの 『自分だけの現実』 を見つめ直すことだな」

止 「お前の能力の本質……それに気づければ、お前はもっと強くなれる」

火子 「私の、能力の本質……?」

止 「お前と発火能力者との違いはなんだ? それを、少し自分なりに考えてみろ」

止 「天才でも鬼才でもなんでもない、努力しかできない弱い俺には、それくらいしか言えねえよ」

火子 「………………」 スッ 「……通行止め、お前は、」

止 「あん?」

火子 「お前は……どうして、そんなに強いんだ?」

止 「……はっ、俺なんて弱いもいいところだぞ? じゃなきゃ腕なんか失くしてねぇよ」

火子 「……腕を失ってもなお戦う。それを人は、強いというんじゃないか?」

止 「知るか」 フン 「……言っておくが、ヒーローはもっと強いぞ? お前もよく知っているだろうがな」

火子 「………………」

止 「……そろそろ着くな。ここから先は俺だけでいい。お前は車で待機してろ」

火子 「……?」

止 「……すぐに戻る。それまでに、お前なりに答えを考えておけ」
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 23:08:34.08 ID:p+k32Rcno
………………

受付 「……では、書類の方を確かに受領致しました」

受付 「本手続きの方は、後日、実際に学校に赴いてしてくださいね」

世話子 「……はい。分かりました」 ペコリ 「……ありがとうございました」

世話子 「………………」 スッ 「……転入書類、かぁ……実感湧かないなぁ」

月子 「世話子!」 トトトトト 「どうだったのだ? 高校の方は、転入できそうか?」

世話子 「うん。ばっちりだよ」 ハァ 「……高校一年生、だけどね」

月子 「? どういうことだ?」

世話子 「……私は一応十八歳。本当なら高校三年生なんだけど、学力が足りないって言われちゃった」

世話子 「はぁ……十五、六歳の若人共に囲まれることになるのかぁ。苛められないかなぁ?」

月子 「大丈夫であろう」 グッ 「われが保障するぞ。世話子なら大丈夫だ」

世話子 「ふふ、ありがと、月子ちゃん」

世話子 「それで? 月子ちゃんはどうだったの?」

イル 「ツキコは、イルと同じガッコ、通うこと、なった!」

月子 「うむ。特別な配慮ということで、くらすも同じにしてもらったぞ!」

世話子 「わぁ……良かったね、月子ちゃん、イルちゃん」 ナデナデ

月子 「うむ!」  イル 「ん!」
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 23:09:32.95 ID:p+k32Rcno
メイ 「……ところで、世話子ちゃんはどんな高校に通うことになったのですか?」

世話子 「ただの公立高校ですよ。いわゆる低位能力者が集まる普通の高校です」

メイ 「世話子ちゃん……」

世話子 「ああ、いんですよ。私はもう、自分が無能力者であることなんて何とも思っていませんから」

世話子 「……今はとにかく、“普通” に戻る練習をしないと」

メイ 「……そう、ですね」

世話子 「せっかく止さんが戻してくれたんです……だったら、しっかりと戻らないと」

世話子 「今もきっと戦ってる止さんに、申し訳ないですから」

世話子 「……さて、まずは高校一年生レベルの勉強を復習しないと」

メイ 「ふふ。それくらいでしたらわたしが見てあげられると思いますよ?」

世話子 「本当ですか!? ぜひお願いします!」

メイ 「はい♪」

月子 「む……われも、イルに勉強を教えてもらいたいぞ」

イル 「ん! イルも、ツキコに、ニホンゴ、おしえて、ほしい!」

月子 「うむ!」
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 23:10:06.26 ID:p+k32Rcno
………………第三学区 高層ビル二五階

?? (これは……超予想外に傷が深いですね……)

?? (さすがは学園都市第二位、といったところですか)

ドタドタドタドタ……

?? (ふぅ……下部組織が超ようやく来ましたか)

人員1 「おっ……! マジじゃねぇか、こりゃラッキーだな」

?? 「……? どうかしましたか? 超早く救急車まで運んでほしいのですが」

人員2 「はぁ? ははっ……傑作だなこりゃ」

?? 「……どうかしましたかと、超聞いてるんですが」

人員1 「どうしたもこうしたもねぇだろうが、クソが」

ガッ……!!!

?? 「……乱暴ですね。超丁寧に扱ってくださいよ」

人員2 「おいおい、自分の立場が分かってねぇのか、テメェは?」

?? 「……?」

人員1 「…… 『アイテム』 は実質的に壊滅だ。もう俺たちはお払い箱さ」
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 23:11:07.64 ID:p+k32Rcno
?? (まさか……本当に、浜面が麦野を……?)

人員2 「ってことは、どういうことか分かるか?」

人員2 「どうせ殺されるんだ。弱ってるテメェに、今までの鬱憤くらいぶつけったっていいよなぁ!?」

人員1 「……おあつらえ向きだよ。もう能力どころか、身体も動かせないんだろ?」

?? 「いやらしい。何を考えているんです?」

人員2 「馬鹿が。テメェみてぇなガキに誰が欲情するか」

人員2 「サンドバッグにするだけだ……!!」

ブゥン!!!

――――……ギィィィィィィンン!!!!!

人員2 「――がッ……!?」

人員1 「ッオ……!!? こ、これ、は……!?」

?? 「!?」 (これは……!?)

人員2 「む、胸……が……がはっ……!?」

――――――ブッシャァァァアアアアア!!!!

?? (……!? 身体中から血が……!?)
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 23:14:03.64 ID:p+k32Rcno
カツカツカツカツ……

?? 「……?」

? 「くだらねぇことさせやがって。クソが」

? 「覚悟もねぇレベル0の分際でいきがってんじゃねぇよ、カス」

?? 「あ……あなたは……!」

? 「……よう、久しぶりだな、絹旗」

絹旗 「…… 『ボックス』 の……止さん……」

止 「無事なようで何よりだ」

スッ……

絹旗 「あっ……」

止 「……下に救急車が来ている。そこまでは運んでやるよ」

絹旗 「……すみません。助けてくださって、超ありがとうございます」

止 「いや。これも仕事だ」

絹旗 「………………」

止 「……背負ってやろうか?」

絹旗 「………………」 フルフル 「……超生憎と、私はお姉ちゃんたちほど弱くはありませんから」

止 「……どうやらそのようだな」 フン 「陳腐な言葉だが、死ぬなよ?」

絹旗 「はいはい。超耳タコですよ」

止 「……それと、すまん。ひとつだけ頼みがある。聞いてくれるか?」

絹旗 「?」
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 23:17:26.53 ID:p+k32Rcno
………………第七学区 駅

アニェーゼ 「……ふぅ。とりあえず、半分近くは終わりました。あとは明日で大丈夫ですかね」

男 (っていうかこの量だと……明らかに明日は元から想定されてただろ)

アニェーゼ 「何か言いたいことがあるならはっきり言えよゴラァ、です」

男 「……何でもないですよ」

アンジェレネ 「それにしても疲れました……」 ハフゥ

ルチア 「だから、そういうことは思っても口にしないようになさい、シスターアンジェレネ」

佐天 「まぁまぁ」

男 「……そういえば、何も考えず第七学区に戻ってきちゃいましたけど、」

男 「アニェーゼさんたちは今日はどこにお泊まりになるんですか?」

アニェーゼ 「テントを持ってきてますから、組み立てて泊まるんですよ」

佐天 「えっ……? ま、マジですか?」

アンジェレネ 「うぅ……この季節は底冷えするんですよねぇ、テント……」

ルチア 「信仰心があればその程度、大したことではありませんよ」

男 「………………」 ハァ 「……あの、よろしければ、なんですけど」
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 23:18:14.70 ID:p+k32Rcno
アニェーゼ 「何です?」

男 「僕の部屋に泊まりませんか? 三人くらいなら寝られま――」

――……ドゴォォォオオオッ!!!

男 「アッパー気味の右ストレートを鳩尾に頂きましたッ!!」

佐天 「………………」 シュゥゥゥ…… 「……男さん? アンタ何考えてんの?」

男 「うぅ……初春さんに話しかけるときみたいな口調になってる」

男 「……なんか勘違いしてるみたいだから言わせてもらうけど、もちろん僕は泊まりませんよ?」

男 「僕は今日一日くらい友達の家に泊まりますし、僕の部屋を自由に使ってくださいってことですよ」

佐天 「……なぁーんだ。公開浮気でもするのかと思いましたよ」

男 「人のこと殴っておいてなんでそんなに不満そうなの? ねぇ何で?」

アニェーゼ 「し、しかし、そんなお世話になるわけには……」

男 (何を今さらなことを言ってるんだこの子?) 「いいですよ、べつに。僕は風紀委員ですから」

男 「この寒空の下、無駄に無法者の多いこの学園都市で女の子にテントに泊まらせるなんて真似、できません」

アンジェレネ 「うわぁぁぁあああ」 パァァ 「……お言葉に甘えましょうよ! ねぇ、シスターアニェーゼ!」

アニェーゼ 「し、しかし……――」

ルチア 「……そんな施しをしていただかなくて結構です。ありがた迷惑です」
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 23:18:56.35 ID:p+k32Rcno
男 「………………」

アンジェレネ 「し、シスタールチア! いくらなんでも言い過ぎですよ!」

ルチア 「お黙りなさい! シスターアンジェレネ!」

ルチア 「異教徒の生活空間などで寝泊まりするくらいなら、テントの方がよほどいいというものです」

ルチア 「我々は神の信徒です。寒さくらいがなんですか」

男 「……はぁ。あのですね、そもそも、学園都市内でテントを張るなんて無理なんですよ」

ルチア 「……? 何ですって?」

男 「この街の至る所を、警備と清掃を兼ねたロボットが巡回しています」

男 「……何か異物を発見したら、すぐさま僕ら風紀委員やアンチスキルに連絡がいきます」

男 「外部の人間が学園都市で問題を起こすなんて、それこそ致命的ですよ」

男 (……特にあなたがたは魔術師でしょう? まずいですよ、絶対) コソッ

ルチア 「っ……」

男 「……大人しく僕の言うことに従ってください。悪いようにはなりませんから」

ゴソゴソ……スッ

男 「僕の部屋の鍵です。自由に使ってください」
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 23:19:58.07 ID:p+k32Rcno
アニェーゼ 「……では、ありがたく借りさせてもらいます」

ペコリ

アニェーゼ 「何だかんだで本当に世話をかけまくっちまってますね。ありがとうございます」

アンジェレネ 「ありがとうございます! 本当に!」

ルチア 「………………」

アニェーゼ 「……シスタールチア」

ルチア 「……分かってますよ」 プイッ 「……その……ありがとう、ございます……」

男 「べつにいいですって。……さて、僕は青髪くんの家にでも潜り込むかな」

男 「……明日は、学校が終わったらすぐに合流しますね。では、失礼します」

タタタタ……

佐天 「あ……行っちゃった」 ヤレヤレ 「まったく、照れ屋さんなんだから」

ルチア 「照れ屋……?」
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 23:20:29.62 ID:p+k32Rcno
佐天 「あのひと、人に感謝されるのがくすぐったいみたいなんですよ」

佐天 「風紀委員だっていうのに、可笑しいですよね」

ルチア 「………………」

佐天 「……さて、それじゃ、繁華街にでも行きましょうか!」

アンジェレネ 「繁華街!?」 ジュルリ

佐天 「お仕事は終わったんでしょう? なら、今度こそこの涙子おねーさんの出番です!」

佐天 「さ、行きましょう! 夕飯を食べる場所を選びながら、日が暮れるまで観光としゃれこみましょう!」

アンジェレネ 「うわぁぁぁあああ! 佐天さん大好きですっ!」

ルチア 「………………」 ハァ 「……まったく。誰も彼も」

アニェーゼ 「……まるで誰かさんと同じですね」

ルチア 「……お節介極まりない。だから嫌なんですよ、この街の人間は」

ルチア 「……異教徒だというのに、本当に嫌いにはなれないから」

アニェーゼ 「………………」 ニコッ 「……ともあれ、お仕事はお終いです。私たちも楽しむとしましょうか」
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 23:21:28.58 ID:p+k32Rcno
………………ESP研究所

所長 「ふむ……」

ネム 「……なんだってのよ、変態」 ニャーッ

ディズ 「早くこの変な機械外しなさいよ!」 ガーッ

所長 「……うん。やはりないな。いや、当たり前なのだが……」

ネム 「はぁ? 言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ!」

ディズ 「変態!」

所長 「……君たちは今、私に意志を伝えることができている」

ネム 「はぁ? 何当たり前のこと言ってるのよ!」

所長 「そして、私の言葉も君たちに伝わっている」

ディズ 「だからそれがどうしたって言うのよ!」

所長 「……おかしいんだよ。こんなことはありえない」

ネム 「? ありえないって?」

所長 「この場に男くんはいないんだ。君たちが意志を伝えられる理由が分からない」

ディズ 「それはだって、私たちに男の脳波が移植されてることが理由でしょ?」
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 23:22:17.95 ID:p+k32Rcno
所長 「……脳波が移植された程度で能力開発がなされるとでも?」

ネム 「?」

所長 「君たちは明らかに能力を使用しているんだよ。分かるかい?」

所長 「……本来、動物の能力開発なんて、ありえない話なんだ」

所長 「そして……実際に測定してみると、やはり君たちからはAIM拡散力場が発せられていない」

ディズ 「当たり前でしょ? 私たちは能力開発を受けたわけじゃないんだから」

所長 「しかし実際に我々は意志の疎通を可能としている。これはどういうわけだろうか」

ネム 「………………」

所長 「……答えはひとつだ。男くんの能力だよ」

ディズ 「? でも、ここに男はいないわよ?」

所長 「そう。だから、ひとつの仮説がここに立つ」

所長 「……即ち、君たちが男くんの能力の端末となっている、ということだ」

ネム 「端末?」

所長 「……離れた場所にいる男くんの能力を、この場で引き出している、ということだよ」

所長 「君たちと男くんとは強力なパスで繋がっている。あり得ない話ではない」
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 23:22:57.14 ID:p+k32Rcno
ネム 「えーっと……つまり、能力を使っているのは私たちではなく、あくまで男」

ディズ 「私たちは単に、能力の噴き出し口になってるってこと?」

所長 「うむ。無論、まだ仮説の段階だがね」

所長 「おそらく君たちは、AIM拡散力場……男くんが無意識に発している微弱な能力を受信し、増幅して吐き出しているのだろう」

所長 「……しかし、これで全世界に幸せの唄を届ける計画が一歩前進する」

ネム 「どうして?」

所長 「もしこの仮説が正しかったとしよう。そうなれば、君たちは擬似的な 『幸福御手』 術者となる」

所長 「地球単位で見たネコとアヒルの密度が低くても、男くんという単体が多ければ問題はない」

所長 「……君たちは計画のために重要な存在だということだよ」

ディズ 「ふぅん……」

ネム 「そんなことより、男はちゃんと基礎を見直せたのかしらねー」

所長 「……まぁ、そうだな」 フゥ 「計画は根本となる男くんありき、だからな」

――――シュン!!!

白井 「……ご無沙汰ですの、所長さん!」

所長 「………………」 フゥ 「……これはまた、随分と唐突に現れるものだ」

白井 「男さんはどこですの? もう黒子は早く男さんに会いたくて会いたくてたまりませんの」 クネクネ
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 23:30:48.29 ID:p+k32Rcno
所長 「……? そういえば、もうこんな時間か」

所長 「おかしいな。昼間にアンチスキルの用事をこなすと言っていたが、さすがにもう済んでいるだろう」

白井 「戻ってきていないんですの?」

所長 「ああ……」

白井 「……まったく、仕方がありませんわね」 プクゥ

カチャカチャカチャ……

白井 「さ、ネムさん、ディズさん、男さんを捜しに行きましょうか」

ネム 「そうね。じゃ、所長、またね」

ディズ 「できれば会いたくないけどねっ」

所長 「まったく……」 シッシッ 「ほら、行くのならさっさと行きたまえ」

白井 「? やけに大人しいですわね」

所長 「……私はこれから忙しいのだ。何せ、男子児童が外で遊ぶ時間だからね」

カチャカチャ……

所長 「ふふ……さぁ、出番だ、最新式の業務用カムコーダよ……!!」 グフフフフ……

白井 「………………」

ガチャッ

所長 「!? て、手錠!?」

白井 「こんな馬鹿げたことで名乗るとは思いませんでしたが、」 ハァ 「……風紀委員ですの」
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 23:31:18.49 ID:p+k32Rcno
………………第三学区 救急車

絹旗 「……そんなもんをどうするんです?」

止 「必要になりそうなんだよ」

絹旗 「ふん……言っておきますけど、それはオリジナルのデータではありませんよ?」

絹旗 「あくまでコピーのコピー……劣化は超否めません」

止 「構わねぇよ。俺がほしいのはこの根本のアルゴリズムだ」

止 「可能性が絞られようと関係ない。この脳の動作があればいい」

絹旗 「……そうですか」

止 「………………」

絹旗 「……それにしても、あなたは強くなりましたね」

止 「ああ? ……まぁ、一応レベル4になったらしいからな」

絹旗 「違いますよ。そんな超くだらない話じゃないです」

止 「あん?」

絹旗 「……あなた、容赦なく、懸念なく、迷いなく……超簡単に人殺しをしましたね」

絹旗 「超強いですよ、そういうの。少なくとも、この暗部ではね」
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 23:31:42.63 ID:p+k32Rcno
止 「………………」 ケッ 「……褒め言葉じゃねぇな。どんだけ人間やめてるかって話じゃねぇか」

絹旗 「ま、超突き詰めればそういう話になっちゃいますけどね」 ニヤッ

止 「ガキが偉そうに」

絹旗 「おや? 暗部では、私はあなたの超先輩ですよ?」

止 「はっ……否定できねぇのが痛いところだな」

スッ……

止 「……じゃあな、絹旗」

絹旗 「ええ。お互い生きていたら、また会いましょう」

バタン……!! ――――………………

止 「……さて、最後の仕事に行くとするか」

止 「あの最悪のクソ女か。チッ……胸くそ悪りぃ……」

………………車内

絹旗 「……はぁ」 (もしかしなくとも、私、超売れ残りってやつですよね……)

絹旗 (浜面は滝壺さんを選んじゃいましたし……あーあ……)

絹旗 (まさか本当に現れるとは。この超クソみたいな闇の底に)

絹旗 (見た目はただの不良でも……でも、浜面はヒーローになったんですね)

絹旗 「はぁ……こんなに超可憐で超可愛い私なんですから、いつかは現れてくれますよね」

絹旗 「――いつか、きっと……」
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 23:32:53.48 ID:p+k32Rcno
………………???

?T 「……っ……」 (外縁部から離れたことで難を逃れたか……)

?T (……ほとぼりが冷めるまで潜伏していた方がよさそうだな)

――ウィィィィィィンンン

?T 「……ッ!?」 (警備ロボット!? これは……ッ!)

ロボ 『不審者ヲ発見。警戒信号ヲ各アンチスキル・風紀委員支部ヘ発信――』

――ッッッドン!!!!

ロボ 『――発――砲――――ヲ――確――認――…………』

?T 「クソがッ……!!」

?T (警戒信号とやらがこの街の治安維持部隊に送られたか……!!)

?T (一刻も早くこの場から離れなければ……!)

幼女 「? なんかこっちの方から音が聞こえたような……――」

?T 「――……!?」 (ガキ……!?)

?T 「………………」 (子供なら、それ相応の利用価値はあるか……)

幼女 「? ……おじさんは、だぁれ?」
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 23:33:39.52 ID:p+k32Rcno
………………???

――――ドガッ!!!

?U 「……? いないのか?」

?U 「情報によれば、この学生寮のこの部屋に居候しているはずなんだが……」

?U 「……管理者が学園都市にいない現在、違う人間に匿われているということか……」

?U 「まぁいい。『盤』 に反応は出ている。この近くにいることだけは確かだ」

?U 「……待っていろよ、『禁書目録』 。10万3000冊の魔導書図書館……!」

………………

?V 「ふぅん……第七学区の特別児童養護施設、ねぇ……?」

?V 「ま、何年も寝たきりだったのなら当然か。哀れなもんだな」

ククククク……

?V 「……ブツは手に入ってる。因子も揃っている」

?V 「楽しみだなぁ。木原一族が残した負の遺産……」

?V 「『樹形図の設計者』 には否定されたらしいが、実際のところはどうなんだか」

ザッ……!!

学生 『………………』

?V 「そろったな。じゃ、行くとするか。実験材料のそろう場所へ」

?V 「レベル4コミュニティ、『能力結社(タレントコレクト)』 、出撃だ」
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 23:37:04.24 ID:p+k32Rcno
今回はここまでにします。

長らく投下できずに申し訳ありません。
待っていてくれた方がいらっしゃいましたらありがとうございます。

次も上がっていたら始まったと思って見に来てくださると嬉しいです。

失礼します。
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 00:04:17.08 ID:vpoGqBgDO

しかしまぁ、幼女は毎度毎度…w
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/01(火) 00:17:00.06 ID:15mAKdUDO
幼女はレベル5の『誘拐被害(拐われ上手)』だな
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 01:11:03.11 ID:ab0EP7/so
乙。
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 05:07:44.50 ID:SuZL4p9AO
追いついちまった。
まさか続編が読めるとは。
大分設定忘れてるからまた一回シリーズの最初から読み直さないと。

あと止がベルセルク読んでたらしい事になんかワロタw
234 :1 :2011/03/15(火) 23:50:56.59 ID:gFjqNEQgo
少しだけ投下します。
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2011/03/15(火) 23:51:43.09 ID:gFjqNEQgo
………………第七学区 小学生寮

ミツアミ 「………………」

ナデナデナデ

ミツアミ 「……ごめんね、ミケちゃん。ずっと一緒にいてもらっちゃって」

ミケタ 「にゃーん」 (……幼女ちゃんより撫で方が丁寧で気持ちいい……)

ミツアミ 「ふふ……ミケちゃんは可愛いねー」

ミケタ 「にゃーん……」

ガチャッ

ミツアミ 「? 寮母さん?」

寮母 「……? あら、やっぱりここにもいないのね……」

ミツアミ 「どうかしたんですか?」

寮母 「幼女ちゃんが見当たらないのよ。さっきお散歩に行ってくるって言ったきり戻ってきてないみたい」

ミツアミ 「……!?」 ビグッ

ミケタ 「にゃっ!?」

寮母 「幼女ちゃんのことだから、どこかで道草食ってるだけかもしれないけど……」

ミツアミ 「わ、私捜してきます!」 ダッ 「ミケちゃんもおいで!」

ミケタ 「にゃあ?」 (何を言ってるのか分からないよ……)

寮母 「あっ……! ミツアミちゃん……!?」
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2011/03/15(火) 23:52:31.10 ID:gFjqNEQgo
………………第七学区

ミツアミ (あんなことがあったばっかりだもん……心配だよ)

ミツアミ (幼女ちゃん……)

―――― 『可愛い顔に可愛い声に可愛い匂い……ぐふっ、素敵だよ素敵すぎるよ……!』

ミツアミ 「ひっ……!」

ミツアミ (やだよ……もし、あんな人がいたら……もう、いやだよ……)

ミツアミ (幼女ちゃん……大丈夫だよね……?)

ミケタ 「………………」 (……? 僕、暖かい寮にいたいんだけどなぁ) フラフラ

ミツアミ 「ミケちゃん! 幼女ちゃんだよ! 飼い主さんを探しに行くの!」

ミケタ (だから何て言ってるのか分からないんだってば……) フン

ミツアミ 「ミケちゃん……」

?? 「……? お前、は……」

ミツアミ 「えっ……? イルちゃん?」

ミツアミ 「それにメイさんと……月子ちゃんとおねーさんも……?」
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2011/03/15(火) 23:53:20.55 ID:gFjqNEQgo
メイ 「? そろそろ夕方ですよ。一人で出歩いていては危ないです」

ミツアミ 「………………」

イル 「……? ミツアミ? 泣いて、るのか……?」

ミツアミ 「……――――けて……」

世話子 「……? どうかしたの……?」

ミツアミ 「……お願い、します……一緒に、幼女ちゃんを、探してください……!!」

月子 「!? 幼女がどうかしたというのか!?」

ミツアミ 「寮に帰ってこないの……。だから私、心配で……」

ミケタ (……僕、帰っていい?)

世話子 「……メイさん」

メイ 「ええ、もちろんです」 ニコッ 「……ミツアミちゃん、ほら、涙を拭いて」

ミツアミ 「あっ……」

イル 「ミツアミ! あんしん、する。イルたちも、いっしょに、探す!」

月子 「うむ。幼女とみつあみはわれの初めての “友達” であるからな」

ミツアミ 「………………」 コクン 「……ありがとう、ございます……!」

ミケタ 「にゃっ!!」 (寒いし何言ってるか分からないし、付き合ってられないよ!)

――スタッ
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 23:53:41.03 ID:2v/JDwgqo
ふむ
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2011/03/15(火) 23:55:13.52 ID:gFjqNEQgo
ミツアミ 「あっ……! み、ミケちゃん! ミケちゃんは心配じゃないの?」

ミケタ 「にゃ!」 フン

ミツアミ 「……っ……分かってるよ。心配しすぎだって」

ミツアミ 「でも、心配なんだもん。嫌な予感が頭を離れないんだもん」

キィ……

ミツアミ 「幼女ちゃんは、私の大切なお友達だから……」

キィィ……

ミケタ 「にゃっ!?」 (何……? 声が、分かりそう……?)

メイ 「……!?」 (これは……頭を撫でるこの感覚は……!)

ミツアミ 「頭でっかちな私を、いつも引っ張ってくれる大切な友達だから」

ミツアミ 「……お願い! ミケちゃん! 幼女ちゃんはあなたにとっても大切なご主人様でしょう!?」

ミツアミ 「一緒に幼女ちゃんを探してっ!! お願い!」

キィィィ……キィィィィン……!!!!

ミケタ 「!?」 (言葉が、分かる……!? ――っていうか幼女ちゃんがいないの!?)

メイ (間違いありません。……これは、あの時の……)

―――― 『僕の歌を聴けぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええっっっ!!!!』

メイ (あの方の能力と同じ……?)
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2011/03/15(火) 23:59:05.72 ID:gFjqNEQgo
ミケタ 「にゃっ……!!」 タッ

ミツアミ 「一緒に来てくれるの!? 良かったぁ……」 ギュッ

ミツアミ 「ミケちゃんも幼女ちゃんが大好きだもんね。ありがと、ミケちゃん」

ミケタ 「にゃにゃっ!」

ミツアミ 「うん!」

メイ 「………………」 (これは、一体……?)

メイ (……いえ。今は考えるときではないですね)

世話子 「メイさん、二手に別れて探しましょう。何か分かったら連絡をし合うということで」

メイ 「そうですね。では、ミツアミちゃんはわたしとイルと一緒に行きましょうか」

世話子 「じゃあ、月子ちゃんと私で別の場所を探しますね」

メイ 「………………」 コソッ (……世話子ちゃんには大きなお世話かもしれないけど)

メイ (何か嫌な予感……いえ、気配がします。十分に気をつけてくださいね)

世話子 (はい。私も、何か嫌な感じが離れません……メイさんもお気をつけて)
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2011/03/16(水) 00:00:05.61 ID:rQgjrQuBo
………………植物性エタノール工場

ズズッ……

?? 「ぐっ……くそがッ……!!!」

ズズズズズズッ……

?? 「クソがッ! クソがッ! クソがァァァアアアアアアアア!!!!」

ザッ……

止 「――おいおい。仕事頼まれたから来てみれば、元気じゃねぇか」

?? 「テメェは……」

フン

?? 「……はっ、誰かと思えば、いつかのカスじゃない」

止 「……ははっ、そんなカスに見下ろされてる気分ってのはどんなもんだ? 麦野沈利」

止 「そしてもうひとつ。レベル0に負けた気分ってのはどうだ? 教えてくれよ」

麦野 「……殺されたいみたいね」

止 「無理していきがんなよ。身体もろくに動かせないくせに何いきがってやがる」

――――ガヂャッ……!!!

止 「俺を殺せるもんなら殺してみせろ。お得意の能力で俺を撃ち抜けばいいだろうが」
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2011/03/16(水) 00:00:43.91 ID:rQgjrQuBo
麦野 「………………」

クスッ

麦野 「……お仲間の仇を討ちに来たってわけ? 泣かせるわねぇ」

止 「………………」

麦野 「それとも、醜態をさらした私を殺せって上層部に命令された?」

止 「………………」 スッ 「……一つだけ聞く」

麦野 「ああ?」

止 「お前は、今まで殺してきた人間に対し、一度でも申し訳ないとか、そんな風に思ったことがあるか?」

麦野 「……申し訳ない?」

止 「………………」

麦野 「………………」

麦野 「……よくよく思い返してみれば、私って今まで、何人の人間を殺してきたのかしらね……」

麦野 「なんてことでしょう……私、なんてことをしてきたのかしら……」

麦野 「……ああ、神様仏様。どうかこの罪深き人殺しを許してくださいませ……――」


麦野 「――……なーんてくだらねぇこと考えるとでも思ったのかテメェは」


麦野 「ぶわぁーーーーーか!」 ペッ 「んなことしてる暇があるかっつーの!!!」
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/16(水) 00:00:59.22 ID:xfAneiWKo
止やー
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/16(水) 00:01:49.12 ID:rQgjrQuBo
麦野 「死んだ奴ってのはなぁ、どいつもこいつもクズなんだよ!」

麦野 「力がねぇから、カスだから、クズだから死んだってだけだ!」

麦野 「いちいちんなもんに取り合ってられるかっての! テメェの仲間もそうだったんだよ!」

止 「……そうか。よく分かった」 スッ

麦野 「ははっ。[ピーーー]の? やってみろよ三下が……ッ」

止 「………………」

ニタリ

止 「……いいや、そうじゃない」

麦野 「んだと……?」

止 「お前がクズ以下のゴミだと改めて認識できたからな。そんな慈悲に溢れることはしねえよ」

止 「お前がもし、まだほんの少しでも人間らしさを残していたなら、」

止 「上層部を誤魔化してでも、せめて人間として死なせてやろうとは思ったが……」

止 「どうやらその必要はなさそうだ。お前はもう人間以下のバケモノだ」

止 「……上層部の言うとおり、お前の生命維持を全力でやってやるよ」

麦野 「なっ……!?」 キッ 「テメェッ……何を……!」
245 :244ミス [saga sage]:2011/03/16(水) 00:02:29.90 ID:rQgjrQuBo
麦野 「死んだ奴ってのはなぁ、どいつもこいつもクズなんだよ!」

麦野 「力がねぇから、カスだから、クズだから死んだってだけだ!」

麦野 「いちいちんなもんに取り合ってられるかっての! テメェの仲間もそうだったんだよ!」

止 「……そうか。よく分かった」 スッ

麦野 「ははっ。殺すの? やってみろよ三下が……ッ」

止 「………………」

ニタリ

止 「……いいや、そうじゃない」

麦野 「んだと……?」

止 「お前がクズ以下のゴミだと改めて認識できたからな。そんな慈悲に溢れることはしねえよ」

止 「お前がもし、まだほんの少しでも人間らしさを残していたなら、」

止 「上層部を誤魔化してでも、せめて人間として死なせてやろうとは思ったが……」

止 「どうやらその必要はなさそうだ。お前はもう人間以下のバケモノだ」

止 「……上層部の言うとおり、お前の生命維持を全力でやってやるよ」

麦野 「なっ……!?」 キッ 「テメェッ……何を……!」
246 :244ミス [saga sage]:2011/03/16(水) 00:03:27.88 ID:rQgjrQuBo
止 「誰かさんが残した負の遺産……治療の枠を越えた、人体の補修……改造」

止 「……どうやら、人間が触れてはいけない領域の治療をされるらしいぞ? お前」

止 「そのボロボロの身体、どんな風に改造されるのか、楽しみだよ。くく……くくく……」

麦野 「テメェ……テメェはぁぁぁあああああああああ!!!」

止 「ははっ!! 睨め睨め。そして何もできない自分を呪え」 ニィ 「……あの時の俺と同じようになあッ!!」

………………ギィィィィィィィンンンン!!!!

麦野 「ッ……!?」

止 「ははっ……レベル5といえど、瀕死の状態では脳内のプロテクトも甘いな」

麦野 「やっ……めろ……ッ……!!」

止 「精神状態の安定化を実行。脳内物質の抑制を可能な限りで実行」

止 「呼吸安定。脈拍固定」

麦野 「ヤメロ……やめろ!! 私のアタマに入ってくるなぁぁぁぁああああああ!!!」

止 「ははははははははははは!!! 良い声だぜ麦野ォ!!」

止 「喚け! 叫べ! 惨めに這いつくばって吠えていろッ! お前にはそれがお似合いだッ!」

――――ザッザッザッ……ガシャガシャッ……
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2011/03/16(水) 00:04:25.34 ID:rQgjrQuBo
止 「……どうやらお迎えが来たようだな」

止 「お前の命はすでに俺が繋げた。お前はどうやっても死には逃げられない」

止 「……じゃあな、レベル5の第四位」 ニィ 「次に会うときに、どんな滑稽な姿になっているのか楽しみだ」

麦野 「テメェは……ッ!! テメェは殺す! 浜面を殺した後だッ……!」

麦野 「覚えておけ! クソッタレのレベル4!!」

麦野 「テメェはアイツを殺したあと、アイツに与えた苦しみの千倍は苦しませてから殺す!」

麦野 「……そんときに後悔するんだな! 私を生かしたことをッ!!」

止 「………………」

クククッ……

止 「……耳に心地いいモンだなぁ」 ニィ 「惨めな敗者の遠吠えってのはさ」

止 「……殺しにこいよ、レベル5。気が向いたら待っててやる」

止 「そのときには、俺も容赦しない。お前を殺す。他でもない、シィの仇のお前をな」

麦野 「はっ……上等だ……! 絶対ぶっ殺してやるから覚悟しとけ!!」

止 「ああ……俺は逃げも隠れもしない。来いよ、レベル5、『原子崩し』」

止 「忘れるなよ? 俺は 『通行止め(ドライブキャンセラー)』 だ」

麦野 「……テメェこそ忘れんなよ? 絶対に……絶対にぶち殺してやる……ッ!」
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2011/03/16(水) 00:05:37.22 ID:rQgjrQuBo
………………

止 「………………」

止 「……何故、」

止 「何故、殺さなかった?」

止 「………………」 ギリッ 「……クソがッ!!」

――ッッッッッガン!!!

止 「……殺せばよかったじゃねぇか。あんなクソ女、ただの悪人じゃねぇか!」

止 「上層部の回収部隊が現れる前に殺しておけば、生命維持が間に合わなかったと誤魔化せた……」

止 「なのに何で殺さなかった……何で……!?」

止 「………………」

止 「俺は……アイツを……?」

止 「――シィの仇の麦野を……可哀想だと、思ってしまったのか……?」

止 「哀れだと……惨めだと……そう、思ってしまったのか?」

止 「ッ……!! 人殺しのくせに……人殺しを躊躇ったのか、俺は……」

止 「殺したいというワガママを、貫けなかったのか……貫きたく、なかったのか……」

止 「……っざけんな。ふざけんな……!!」

止 「俺は……」

止 「………………」 ブンブン 「……殺す人間くらいテメェで選べなくてどうする」

止 「しっかりしろよ、人殺し。お前はヒーローなんかじゃない。悪人を助けたいなんて思ってどうする」

止 「……忘れるな。俺はただの人殺しだ。人殺し以外で、人を助ける手段なんて持っちゃいないんだ」
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2011/03/16(水) 00:06:57.52 ID:rQgjrQuBo
………………第七学区 アンチスキル詰め所

カタタタタタタタタ……

『lv4net.csv  データ復旧率、85%』

鉄装 「これは……」

鉄装 「レベル0撃墜数……? ハント……? これって……」

鉄装 「っ……」 (吐くな……私。こんなことで、吐いてたら……っ)

鉄装 「これは……レベル4のコミュニティの……」

鉄装 「――……レベル0狩りの、戦績表……」

ギリッ……!!

鉄装 「こんな……こんな、ことが……ッ」

鉄装 (被害者のレベル4もこれに荷担していた……間違いない……)

鉄装 (こんな大がかりな事件、表沙汰になっていない方がおかしい……)

鉄装 (つまりこれは……学園都市そのものの悪意が介在しているということ……)

鉄装 (誰か……相当な力を持つ権力者が、貴重なレベル4を守るために……隠蔽した……!!)

鉄装 (こんなことが……!!)

鉄装 「こんなことが許されていいはずがない……ッ」
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2011/03/16(水) 00:07:39.96 ID:rQgjrQuBo
――バン!!

才郷 「鉄装!!」

鉄装 「あっ……! 才郷先生、このデータ……――」

才郷 「それは後だ!! 緊急出動だ! 十秒で装備を固めろ!!」

鉄装 「えっ……?」

才郷 「とんでもないことが起こっている!! 早くしろ!!」

鉄装 「なっ、何だっていうんですか!?」

才郷 「市街地でレベル5が暴れているんだよ!!」

鉄装 「――は……?」
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2011/03/16(水) 00:08:05.75 ID:rQgjrQuBo
………………第七学区 公園

アンジェレネ 「はぐはぐはぐはぐはぐ……!!!」

ルチア 「……シスターアンジェレネ。そう急がずともクレープは逃げませんよ」

アンジェレネ 「はふはふはふはふはふ……!!!」

ルチア 「……はぁ」

佐天 「――……本当ですか? 私も最近ご無沙汰なんですよねぇ」

アニェーゼ 「へぇぇ。まさか知り合いとは思いませんでした」

佐天 「男さんもいけずだなぁ。木山先生に会ったんなら、私にも教えてくれればいいのに」

佐天 「……久しぶりに会いたいな。枝先さんたち、元気にしてるのかな?」

アニェーゼ 「なんでも、中学校に入るために猛勉強の真っ最中らしいですよ」

佐天 「そっか」 ニコッ 「初春や春上さんと一緒に学校に通いたいよね」

アニェーゼ 「何だったら、今から会いにいきますか?」

佐天 「えっ? いいんですか?」

アニェーゼ 「シスターアンジェレネの胃袋を満足させるために歩き回るよりはよっぽどいいですよ」

アンジェレネ 「――……クレープおかわり!」

ルチア 「いい加減になさいシスターアンジェレネ!!」
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2011/03/16(水) 00:10:21.71 ID:rQgjrQuBo
………………特別児童養護施設

木山 「………………」

ギュッ

木山 「ん……?」

枝先 「せーんせっ」

木山 「ああ……枝先と春上くんか。いきなり抱きついて、どうしたんだ?」

枝先 「せんせ、なんか怖い顔してたから。えへへー」

木山 「そうか? ……それは悪かったな」

春上 「……大丈夫なの?」

木山 「当たり前だ。私はこの子たちの “先生” だからね」

春上 「はいなの!」

木山 (そう……私はこの子たちの先生なんだ)

木山 (あの子たちだけじゃない。様々な理由で、教育が遅れている子どもたちの入園が増えている)

木山 (施設長として、私がしっかりとしなければな)
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2011/03/16(水) 00:11:14.77 ID:rQgjrQuBo
ドタドタドタドタ……!!!

木山 「……?」

ガラッ!!

男子1 「せ、先生!」

木山 「? どうした? そんなに息を切らして」

男子1 「お、表に……表に、変な連中が!!」

木山 「なに……?」

男子1 「それで……小さい子たちを、捕まえて……先生と春上を、呼んで来いって……!!」

木山 「なっ……なんだと……!?」

ガタッ

木山 「っ……」 ギリッ 「……お前たちはここにいろ」

ギュッ

木山 「……?」

春上 「……私も行くの」

枝先 「わ、私も! 私も行くよ!」

木山 「しかし……」

春上 「私も呼ばれているの。なら、行った方がいいの」

枝先 「せんせ! 早く行かないと……!!」

男子1 「こっちだよ! 急いで!!」 ダッ

木山 「っ……」
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2011/03/16(水) 00:11:48.51 ID:rQgjrQuBo
 たとえばあの時、道を違えていなかったら。

 もしも、研究者としての道など、捨てていたら。

 もしも、あの木原という悪魔の元からあの子たちを助けることができていたら。

 だとしたら、己は今も教員として、多くの子どもたちを教え導くことができていたのだろうか。

 そして、あの子たちは今、中学生としての「当たり前」を享受できていたのだろうか。

 ……自分でも詮無いことを考えるものだと思う。

 しかし、それでも。

 それでも、木山春生という名の自分は、そんな “もしも” を望まずにはいられない。

 子どもたちにとっての最上の未来を、望まずにはいられない。
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/16(水) 00:12:30.50 ID:rQgjrQuBo


今回は以上です。
投下が遅くなり申し訳ありません。

またよろしくお願いします。
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/16(水) 00:14:38.07 ID:xfAneiWKo

続き気になるぜ
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/16(水) 04:54:47.16 ID:waIBDATEo
乙。
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/16(水) 06:54:05.66 ID:X/5tMlzIO
相変わらず止がかっこよすぎて濡れる
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/03/17(木) 12:53:42.35 ID:W0zseWJAO
乙ー
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/08(金) 20:46:26.99 ID:hBPBKkrWo
舞ってる
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/16(土) 14:34:26.08 ID:odjMsHKbo
そろそろ一カ月経つし生存報告ほしいな
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/16(土) 14:48:12.84 ID:s1uqzuRVo
>>1じゃないけど俺は生きてるよ
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/16(土) 16:02:00.80 ID:ZaV+mi7jo
すみません。
>>1です。
生きてます。

ゴタゴタがあり少々遅れていますが、絶対に終わらせますので、
もし待ってくださっている方がいらっしゃいましたら、ご安心下さい。

すみません。
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/16(土) 17:41:56.65 ID:Y2gsaGQ1o
信じて待つ
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州・沖縄) [sage]:2011/04/17(日) 23:52:05.64 ID:pwG6sh/AO
問題ない。待つ。
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/04/19(火) 18:16:05.17 ID:sRC1lcuAO
生存報告きた
待ってます
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/01(日) 06:39:45.88 ID:w7yGXAeKo
待つよ
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/12(木) 21:58:30.83 ID:w8j1a9QCo
>>1です。

一応、今週末にまとめて投下できるかもしれません。
報告までに。
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/05/14(土) 23:39:04.60 ID:6pxoNTIno
………………玄関前

?V 「っ……おっせぇなぁ。ひょっとして逃げたんじゃねぇだろうな?」

?V 「……ま、逃げたんだったら、ここにいるガキどもは残らずミンチだな」

子供1 「ひっ……!」

?V 「じゃ、あと十秒。10、9、8、7――」

――――ザッ!!

木山 「――その子たちを解放しろッ!!」

?V 「おっ? いいタイミングで現れるねー。さっすが “先生”」

木山 「貴様らは……」 (五人の……高校生……? スキルアウトなどではなさそうだが……)

子供1 「せ、せんせい!!」

子供2 「たすけてっ……こわいよぉ……」

木山 「お前たち……」 ニコッ 「……大丈夫だ。安心しろ」

木山 「用事があるのは私だろう!? その子たちを放せ!!」

?V 「おうおうおう。威勢がいいねぇ。犯罪者のくせに」

木山 「ッ……いいからその子たちを解放しろッ!!」
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/05/14(土) 23:40:59.46 ID:6pxoNTIno
?V 「そうはいかねぇなぁ」

?V 「おい、春上衿衣ってのはどいつだ?」

春上 「わ、私なの……」

?V 「ふぅん……お前がねぇ。ただのガキにしか見えねぇが……」

春上 「あ、あの……! 用事があるのは、私なの?」

春上 「なら……その子たちは、解放してほしいの……!」

?V 「だからできねぇっつってんだろうが。馬鹿かお前」

枝先 「っ……! さっきから何なの、あなた! 何が目的なのっ!?」

?V 「んあ……? おお、テメェはたしか、春上衿衣の主たる媒介じゃねぇか」

枝先 「えっ……?」

?V 「いいねえ。勝手に役者が揃っていくこの感じ。天が俺に笑ってくれてるようにしか思えねぇ」

木山 「なっ……何を! 貴様何を言っている!?」

?V 「すぐに分かるさ。なぁ? “暴走能力の法則解析用誘爆実験” の実行者さんよぉ?」

木山 「ッ……!? 貴様ら何者だ……!?」

?V 「……レベル4のサークルだよ。ちょっとばかり裏事情に詳しいだけだ」

木山 (レベル4……? まさか、この場にいる全員が……!?)

木山 (だとすれば……私にどうこうできる連中ではない。人質まで取られていては……クソッ……!)
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/05/14(土) 23:43:17.07 ID:6pxoNTIno
木山 「貴様ら……! こんなことをしてタダで済むと思うなッ! アンチスキルと風紀委員が黙ってはいない!」

?V 「それが黙ってしまうんだなー、っと」

木山 「なんだと……?」

?V 「大方、ここに来る前に電話なりなんなりしたんだろ?」

?V 「でも残念。今日はアンチスキルも風紀委員もろくろく動けねぇよ」

木山 「なっ……何を……!?」

?V 「馬鹿共が暴れてくれてるおかげでなー。学園都市上層部が色々な隠蔽工作に大忙し」

?V 「それで混乱しねぇ方がおかしいだろ? 今日は普通の緊急回線もろくに繋がらねぇよ」

枝先 「そ、そんな……」

?V 「それにそもそも、上層部にとって俺たちとお前たち、どっちの方が価値が高いと思ってるんだ?」

枝先 「へ……?」

木山 「――……ッ!? き、貴様……!!」

?V 「分かるだろ? 元犯罪者が運営する、『置き去り』 しかいない施設なんて……くく……っ」

?V 「……なぁ? お前たちさぁ、自分に少しでも価値があるとでも思ってたの?」

枝先 「……は……?」
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/05/14(土) 23:45:08.22 ID:6pxoNTIno
子供1 「え……?」

?V 「だからさぁ、親に捨てられて、実験動物みたいな扱い受けて、」

ニタリ

?V 「――それでもまだ、自分たちに価値とか、存在意義とか、残ってると思ってるの?」

枝先 「……そっ、そんなの……だって、私、は……」

春上 「絆里ちゃん……! 絆里ちゃん!」 ギュッ

枝先 「こ、これから……たくさん、お勉強して……これから……これからっ……」

?V 「ねぇんだよ。これからなんてなぁ」

?V 「何年も眠ったままで、目覚めても普通の人間に追いつくのが手一杯だろ?」

?V 「そんな人生、俺だったら絶望しちまうな。はは……自殺モンだよ」

枝先 「そ……そんな……」

男子1 「………………」

木山 「やっ……やめろッ!! 貴様……ッ!! 貴様ァ……!!」

?V 「テメェもだぜ? “先生” ? 研究者として終わったテメェに価値があるとでも?」

?V 「この学園都市にいる意味もない、ただの犯罪者じゃねぇか」

木山 「………………」

木山 「……ああ、その通りだ。私はただの犯罪者で、研究者としてはもう終わっている」
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/05/14(土) 23:46:21.93 ID:6pxoNTIno
枝先 「先生……」

?V 「ははっ、分かってんじゃねぇか」

木山 「だが、違うんだ。もう、そんなことはどうでもいいんだよ」

?V 「……んだと?」

木山 「……ああ、そうだよ。私は、ただのどうしようもない犯罪者だ」

木山 「実験のため、己の研究者としての生命のため……何も知らないまま、この子たちを危険な目に遭わせた」

木山 「……だがな、この子たちは、今でもそんな私を支えてくれているんだ。こんな、どうしようもない私を、だ」

枝先 「せん、せい……?」

木山 「こんな私に、この子たちは、優しい声で、先生と呼んでくれる。温かい手で、私に触れてくれる」

木山 「……私は多くの過ちを犯した。たくさんの人に迷惑をかけた」

木山 「そんなことは百も承知だ……。私はもう、研究者に戻る権利はない」

木山 「だが、私にはこの子たちがいる……! 今の私には、守るべきものがあるんだッ!!」

木山 「その子たちを放せ……! そして、先の言葉を訂正しろ……ッ!!」

木山 「――私はともかく……ここにいる子どもたちは、生きる価値など有り余るほど持っている!!」
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/05/14(土) 23:49:52.35 ID:6pxoNTIno
?V 「………………」

?V 「……そうかい。興ざめだ。じゃあ、その生きる価値もろとも壊させてもらおうか?」

ガッ……!!

子供1 「ひっ……」

子供2 「怖いよぉ……っ」

木山 「や、やめろッ!! その子たちに手を出すな!!」

?V 「冗談だ。くくっ……そう必死な顔をするなよ。殺したくなる」

木山 「ッ……放せと言っているのが分からないのかッ!!」

?V 「動くな。テメェはただ見てるだけでいいんだよ」

?V 「……来いよ、春上衿衣。このガキ共を五体満足で返してほしいんならなぁ」

春上 「っ……わ、分かったなの! 行くの! だからその子たちに酷いことをしないで!」

枝先 「え、衿衣ちゃん……」

春上 「大丈夫なの。私は、大丈夫」 ニコッ 「だから、心配しないでなの、絆里ちゃん」

木山 「春上くん……!」

春上 「……木山先生も、心配しないでなの」

子供1 「うぅ……」

子供2 「ふぇえ……」

春上 「……今、行くからね。大丈夫なの。心配しなくてもいいの」

?V 「ああ、そうだ。それでいい」 ニヤリ 「……それで、いいんだよ」

枝先 (ダメ……! ダメだよ! 何で……? 何でこんなことになっているの……?)

枝先 (助けて……誰か、助けて……――――)


                         ――――ドガァッッッ!!!!

275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/05/14(土) 23:51:07.15 ID:6pxoNTIno

………………

男 「………………」

男 「……はぁ。我ながら、少しカッコつけすぎたよなぁ」

男 「なにが 『僕の部屋の鍵です。自由に使ってください』 だよ。僕のバカ」

―――― “え、あ、いやぁ……悪いなぁ男やん”

―――― “今日はちょっと用事があってな。家に泊めるわけにはいかないんや”

―――― “男やん、堪忍な”

男 「うぅ……青髪くんって、本当に肝心なところで役に立たないんだから」

男 「上条くんはまだ帰ってきてないみたいだし……土御門くんは電話繋がらないし」

男 「ま、高校の男子寮に行けば誰か泊めてくれるひとがいるよね」

男 「……いるといいなぁ」

トボトボ

? 「………………」

男 「ん……?」

男 「あれは……?」
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/05/14(土) 23:56:22.90 ID:6pxoNTIno
………………

御坂 「………………」

御坂 (……はぁ、ダメだな、私って)

御坂 (黒子はおろか、初春さんと佐天さんにまで心配かけちゃって)

御坂 (………………)

?? 「みーさか、さん!」 ポン

御坂 「ひっ……!?」

?? 「へっ――――」

――――バヂバヂバヂバヂ……!!!

?? 「――電撃を頂きましたぁぁぁぁぁあああああああ!!?」

……………………プスプスプス……

御坂 「……って、何だアンタか」

男 「……何だアンタかって……思いっきり感電させといてそりゃないでしょ……」

御坂 「急に肩叩いたりするからじゃない。アンタは女子かっての」

男 「……君は急に肩を叩かれたくらいで相手に通電させるのかい?」

御坂 「あーはいはい。風紀委員様のお説教なんか黒子だけで間に合ってるわよ」 シッシッ
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/05/14(土) 23:57:16.84 ID:6pxoNTIno
男 「まったく……僕だったからよかったものの」

御坂 「ちゃんと加減くらいしてるわよ。どっかの馬鹿が相手じゃないんだから……」

ハッ

御坂 「………………」

男 「? どうかしたの?」

御坂 「……ううん。何でもない」

男 (……そういえば、白井さんたちが御坂さんの様子が変だって言ってたな)

男 (と言ったって、僕が何をしてあげられるわけじゃないけどさ)

御坂 「……で、何か用?」

男 「いやいや、友達を見かけたら声くらいかけるでしょ、普通は」

御坂 「友達、ね……」 フゥ 「ったく、アンタって掛け値なしでそういうこと言うのよね」

男 「へ?」

御坂 「べつに。常盤台のお嬢様の友達ポジションを、そう簡単に手に入れられると思うなってだけのことよ」

男 「うわ。本気で言ってるんならドン引きだよ」

御坂 「じょーだんよ。ばかばかしい」

男 「………………」 クスッ 「……ならちょうどいいや。聞きたいこともあったんだ」

御坂 「?」

男 「もし用事がなかったらちょっと付き合ってくれないかな。お茶くらいなら奢るよ」
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/05/14(土) 23:58:30.72 ID:6pxoNTIno
………………公園

御坂 「……へぇ、アンタ、木山春生に会ったんだ」

男 「うん。白井さんたちに少しだけ聞いたことがあるよ。御坂さんと木山先生、戦ったんだってね」

御坂 「……過去の話よ。木山には悪意があったわけじゃない」

御坂 「今は児童養護施設の先生、か。案外性に合ってるんじゃない」

男 「僕が見た限りでは、板に付いてるって感じだったよ」

御坂 「そう。それなら何よりね。私も今度、黒子たちと会いに行ってみようかしらね」

御坂 「……で、アンタはその木山に言われたわけだ」

男 「うん……」

御坂 「脳内の演算と向き合わなければ、能力の成長などは見込めない、かぁ……」

御坂 「……まぁ、たしかにその通りよね。頭の中で正しいアルゴリズムを形成しなきゃ、」

御坂 「強力な能力ってのはどうやっても使いようがないわ」

御坂 「とはいえ、私にアドバイスをしろと言われてもね……」

御坂 「木山春生……面倒事を押し付けることだけは本当に得意なんだから」

男 「悪かったね面倒事で」
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/05/15(日) 00:00:08.58 ID:YlsSO4Rvo
御坂 「冗談よ」 クスッ 「ま、あんまり的確なことは言えないでしょうけど、それでよければ」

男 「ぜひお願いします!」

御坂 「……まずは意識の変え方ね」

男 「意識の変え方……?」

御坂 「そ。だって、木山はアンタの能力の認識が誤ってるって言ったんでしょ?」

御坂 「だったら、それに対しての意識をしっかりと改めなきゃ」

御坂 「アンタの能力は、『ねことあひると話す』 だけじゃない」

御坂 「『ねことあひると人間の三者間で脳波を繋げる』 。それがアンタの能力の本質」

男 「……?」

御坂 「なら、それをしっかりと認識した上で能力を使ってみなさい。それだけで大分違うはずよ」

男 「え……? それだけでいいの?」

御坂 「ううん。もちろんそれだけじゃ不完全」

御坂 「それに加えて、その本質を発現させるための演算式の組み立て方を知ることも必要ね」

御坂 「演算アルゴリズムをろくに作らず無理に強大な能力を行使しようとすれば、能力の暴走は免れないわ」

御坂 「そうね……アンタの場合は、波動に関する専門書でも読んで勉強すれば?」

御坂 「シュレディンガーとかフーリエあたりから入るのがいいんじゃないかしら」

男 「………………」

御坂 「放心してんじゃないわよ、こら」
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/05/15(日) 00:00:45.67 ID:YlsSO4Rvo
男 「勉強、かぁ……。木山先生と同じようなこと言うんだね」

御坂 「アンタだって風紀委員やってるくらいだから、そこまで頭悪くないんじゃないの?」

男 「いや、まぁ……成績はもちろん悪くはないけどね」

男 「でも、理系科目は少し苦手でさ」 ハァ

御坂 「……ま、それでも頑張らなくちゃね。やりたいことがあるんなら」

男 「……うん。その通りだと思う。ありがと、御坂さん」

御坂 「ん、がんばんなさいよ」 ニッ 「この超電磁砲の友達だってんならね」

男 「はは……肝に銘じておくよ」

御坂 「………………」

男 「……? どうかした?」

御坂 「………………」 ジッ 「……友達、か」

男 「?」

御坂 「……アンタってさ、アイツの友達なのよね?」

男 「いや、アイツってのが誰だかまったく分からないんだけど……」

御坂 「だから、アイツよ、アイツ。上条当麻」
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/05/15(日) 00:01:43.33 ID:YlsSO4Rvo
男 「上条くん? ……うん。同じクラスの友達だけど」

御坂 「なんか変わったこととか、なかった?」

男 「変わったこと? 彼の回りで変わったことがなかった試しがないよ」

御坂 「そういうことじゃなくて……なんていうか、違和感があったりとか……」

男 「……? よく分からないけど、違和感ねぇ……」

御坂 「………………」

男 「……しょっちゅう入院してるからなぁ、彼」

男 「よく分からないけど、特に違和感とかはないと思うよ」

御坂 「そう……」

男 「上条くんがどうかしたの?」

御坂 「……ううん。何でもないわ」

男 「そう? ……なら、無理には聞かないけどさ」

男 「白井さんたち、心配してたよ? まぁ、無理して気丈に振る舞えとは言わないけどさ」

男 「何かが相談事があったら話してみるのも手じゃない?」

男 「ずっと一緒に戦ってきた、風紀委員の戦友にさ」
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/05/15(日) 00:02:36.99 ID:YlsSO4Rvo
御坂 「そう……そうね……」

男 「うん」

御坂 「……はは。失格、かな。こんなんじゃ」

男 「え……?」

御坂 「……私ね、もちろん自覚とかはないけど、どうやらヒーローにされてるみたいなのよね」

御坂 「後輩たちにも心配されるようなこんな体たらくじゃ、見放されちゃうかな、ってさ」

男 「………………」

御坂 「はは……」

男 「……あのさ、御坂さん、」

御坂 「ん?」

男 「御坂さんがどうだかは僕にも分からないけどさ、」

男 「僕にとっては……そしてきっと、白井さんや初春さんや佐天さんにとっても、」

男 「――御坂さんは、憧れのヒーローだよ」

御坂 「……はは、ありがと」 スッ 「……でもね、私は……アンタたちの知らない事件も、経験したから」

御坂 「私だって……いつでも強いわけじゃない。学園都市第三位って肩書きは、絶対的なものじゃない」

御坂 「……それを、知ってるから」
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/05/15(日) 00:04:28.17 ID:YlsSO4Rvo
男 「………………」

御坂 「………………」

男 「……ねえ、御坂さん。僕には、憧れてるひとが沢山いるんだよ」

御坂 「……?」

男 「その中でも、僕がこんな風になりたいって思うひとが、三人いるんだ」

男 「ひとりが、風紀委員になりたてのころ、怖がる僕を激励して導いてくれた白井さん」

男 「ふたりめが、僕の友達の上条当麻」

男 「そしてさんにんめが、いかなるときも優しく、そして強い……御坂さん、君だよ」

御坂 「………………」

男 「僕には、白井さんのように自分の正義を信じ切ることはできないかもしれない」

男 「僕には、上条くんのように、自分の想いをぶつけきることなんてできないかもしれない」

男 「僕には、御坂さんのように自分の信念を貫き通すことなんてできないかもしれない」

男 「けどね……僕は、そんな三人ような、ヒーローになりたいんだ」

男 「これはきっと勝手な想いなんだろうね。自覚はあるよ」

御坂 「………………」
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/05/15(日) 00:05:34.55 ID:YlsSO4Rvo
男 「けどさ、御坂さん、君、忘れてないかな?」

御坂 「忘れてる……?」

男 「君には仲間がいる。友達が、いるんだ」

男 「君は強いヒーローだ。けれど、力が貸してほしいときは、仲間に言えばいい」

男 「それだけの話だよ」

御坂 「………………」 フゥ 「……そう、ね」

ッピン!

男 「いたっ……! な、何をするんだよ」

御坂 「分かるでしょ? デコピンよ、デコピン」 ニッ

御坂 「私に助力を頼んでほしいなら、もう少し逞しくなってからにしなさいよ」

男 「なっ……!」 カァア 「だっ、誰も僕に頼めなんて言ってないじゃないかっ」

御坂 「ははっ……アンタって本当にからかい甲斐があるわよね」

御坂 「黒子が気に入るのも分かる気がするわ」

男 「くっ……少しいい話をしてるつもりだったのに……!」

御坂 「いい話するにはタッパがたりないのよ」 クスクス

男 「背が低いのは仕方ないだろ!?」
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/05/15(日) 00:06:07.88 ID:YlsSO4Rvo
男 「まったくもう……!」

御坂 「………………」

フッ

御坂 「…………ありがと……」 ボソッ

男 「……? 何か言った?」

御坂 「べつに、何も」

クスッ

御坂 「ほら、もうそろそろ暗くなるから早く帰りなさい」

男 「女子中学生が男子高校生にその注意はないでしょ!?」

御坂 「なんなら送ってってあげよっか?」

男 「結構だよっ!」

御坂 「ははっ……ごめんごめん」

男 「……ともあれ、能力のこと、ありがとう。僕も御坂さんに追いつけるように頑張ってみるよ」

御坂 「レベル5への道のりは大変よー? 私が言うのもなんだけど」

男 「うん。それでも、がんばる」 グッ 「そしていつか、御坂さんに助力を仰いでもらうからね」

御坂 「そ。ま、せいぜいがんばんなさいな」 スッ 「……それじゃ、また、」

御坂 「――……アイツの友達の、小さいヒーローさん」
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/05/15(日) 00:06:44.49 ID:YlsSO4Rvo
………………

男 (……御坂さん、少し元気になったみたいだ)

男 (それにしても、どうしたっていうんだろう?)

男 (上条くんのことを聞いてたけど……彼関係で何かあったのかな?)

男 (上条くんと御坂さん……何かあったのなら、話してほしいけど……)

男 「………………」

ハァ

男 「……僕も、人のこと言えないか」

男 (魔術のことや、あの “言葉” のこと……話せないことはいっぱいある)

男 「……きっと、君たちは、僕らよりずっと前にいるんだろうね」

男 「けれど、いつか絶対に追いついてみせる。君たちが何を背負っているのかは分からないけど、」

男 「いつか絶対に追いついて、僕らにも背負わせてもらうからね」

――――――ブルッ

男 「……? 着信……?」

………………
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/05/15(日) 00:07:22.60 ID:YlsSO4Rvo
………………

?V 「ッ……!?」

学生1 「リーダーに攻撃……!? どこからだ……!!」

子供1 「ひっ……!?」

子供2 「きゃっ……!!」


?A 「――シスターアンジェレネ! シスタールチア! 今です!!」


…………ダッ!!!! ……ッタン!!

子供1 「あっ……」

子供2 「おねー、さん……?」

?B 「大丈夫……」

?C 「……な、ようですね」

春上 「えっ……? さ、さっきのシスターさんたちなの……?」

?D 「大丈夫? 春上さん?」

春上 「あっ……さ、佐天さんなの!?」

木山 「君、たちは……何故……?」

佐天 「へへっ……正義の味方、推参、ってね」 テヘッ
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/05/15(日) 00:08:10.73 ID:YlsSO4Rvo
アニェーゼ 「勝手に格好つけねぇでくださいよ。まったく」

佐天 「てへっ」

枝先 「シスターさんたち……来て、くれたんだ……!!」

アニェーゼ 「ま、遊びに来ただけだったんですけどね。どうにも愉快なことになっていたようでしたので」

アニェーゼ 「手始めに人質の奪還を」 ニヤッ

木山 「すまない、恩に着る……」 (しかし、さっきの攻撃は、一体……?)

ルチア 「感謝をするのでしたら、我々ではなく我らが父へ」

ルチア 「我らは神の思し召しで動く信徒であります故に」

木山 「……敵わんな、君には。しかし今なら信じられそうな気分だよ」

ルチア 「それは何よりです、異教徒の科学者」

アンジェレネ 「大丈夫ですか?」 ニコッ

子供1 「あ……う、うん!」

ルチア 「あなたは?」

子供2 「だ、ダイジョブ!」

アニェーゼ 「……ともあれ、無事で何より」

ニヤァ……
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/05/15(日) 00:08:48.30 ID:YlsSO4Rvo
?V 「っ……クソが……痛ってぇじゃねぇか……」

学生2 「……大丈夫か? 大分吹き飛ばされたようだが」

?V 「ああ、問題ない……」 (シスターだと……?)

アニェーゼ 「……よくもまぁ、孤児に対して失礼千万なことをほざいてくれましたねぇ」

アニェーゼ 「シスタールチア、シスターアンジェレネ、」 チャッ

アンジェレネ 「もちろん……!!」 カチャッ

ルチア 「分かっています」 ッドン!!

アニェーゼ 「あなたたち、逃げるのなら今の内ですよ?」

アニェーゼ 「……といってもまぁ、逃がす気なんてねぇんですけどね!!」

アンジェレネ (うわー……あんな凶悪な顔のシスターアニェーゼ久々に見ました……)

?V 「………………」

?V 「……はっ、逃げる気なんざねぇよ」

ザッ……!!

アニェーゼ 「そうですか。それは良かったです」 ニコッ

アニェーゼ 「つまり真正面からぶっ殺せるってことですからねぇ」

?V 「ぶっ[ピーーー]? 俺たちを? ははっ……笑わせてくれるじゃねぇか」
290 :>>289修正 [saga]:2011/05/15(日) 00:09:26.63 ID:YlsSO4Rvo
?V 「っ……クソが……痛ってぇじゃねぇか……」

学生2 「……大丈夫か? 大分吹き飛ばされたようだが」

?V 「ああ、問題ない……」 (シスターだと……?)

アニェーゼ 「……よくもまぁ、孤児に対して失礼千万なことをほざいてくれましたねぇ」

アニェーゼ 「シスタールチア、シスターアンジェレネ、」 チャッ

アンジェレネ 「もちろん……!!」 カチャッ

ルチア 「分かっています」 ッドン!!

アニェーゼ 「あなたたち、逃げるのなら今の内ですよ?」

アニェーゼ 「……といってもまぁ、逃がす気なんてねぇんですけどね!!」

アンジェレネ (うわー……あんな凶悪な顔のシスターアニェーゼ久々に見ました……)

?V 「………………」

?V 「……はっ、逃げる気なんざねぇよ」

ザッ……!!

アニェーゼ 「そうですか。それは良かったです」 ニコッ

アニェーゼ 「つまり真正面からぶっ殺せるってことですからねぇ」

?V 「ぶっ殺す? 俺たちを? ははっ……笑わせてくれるじゃねぇか」
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 00:11:48.00 ID:YlsSO4Rvo
木山 「だっ……ダメだ下がれ! これ以上君たちを危険にさらすわけにはいかない!」

アニェーゼ 「だからって、あなたに何かができるわけでもねえでしょうが」

木山 「そ、それは……」

アニェーゼ 「……まぁ、任せてくださいよ。私たちはプロですからね」

ルチア 「……一応、歯止め役として進言させていただきますが、」

ルチア 「シスターアニェーゼ。科学サイドの事情に介入することはあまり望ましくはありませんよ?」

ルチア 「最悪、学園都市とイギリス清教の関係を悪化させることにもなりかねません」

アニェーゼ 「ははっ、シスタールチア。車輪を構えて臨戦態勢なのに何言ってんですか?」

ルチア 「……そうですね。無駄なことを申しました」

アンジェレネ 「……退けるわけないじゃないですか……!!」

アンジェレネ 「孤児院を襲撃して悦にいるような人を目の前にして、退けるわけがないじゃないですかっ!!」

アンジェレネ 「科学だの魔術だの、そんな立場を気にしてこの場で何もしなかったら、」



アンジェレネ 「――――私たちは “あの人” に、合わせる顔がありません!!」



ルチア 「……その通りです、シスターアンジェレネ」

アニェーゼ 「ええ……。まず間違いなく、“彼” ならこうしているでしょうからねぇ」
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 00:12:42.31 ID:YlsSO4Rvo
木山 「しかし……! 彼らは全員レベル4なんだぞ!?」

アニェーゼ 「能力なんぞに負けはしません。我々は神の信徒ですからね」

アニェーゼ 「さ、子どもたちを連れてさっさと建物の中に避難してください」

木山 「だが……」

佐天 「ここは任せましょうよ、木山先生。悔しいけど、私たちがいても邪魔になるだけです」

木山 「佐天くん……」

佐天 「分かるんです。なんとなく、ですけど」

木山 「分かる……?」

佐天 「……はい」

佐天 「あのシスターさんたちの背中を見てると、なんとなく、安心できるというか」

佐天 「自分でも何を言ってるのかよくわからないけど、でも、わかるんです」

佐天 「――このひとたちは、私のよく知るあのヒーローと同じなんだって」

木山 「ヒーロー……? 『超電磁砲』 ……か……」

佐天 「……アニェーゼさんたちは、御坂さんに会ったことなんてないだろうけど、」

佐天 「もしかしたら、どこか私たちの知らないところで、細い細い糸で繋がってるのかもしれませんよ」
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 00:16:03.25 ID:YlsSO4Rvo
木山 「……わかった。行こう」

木山 「みんな、施設の中に急ぐんだ」

春上 「は、はいなの!」

?V 「チッ……くっだらねぇ。させるかよ」

スッ……

?V 「“座標軸固定 = 破壊”」

アニェーゼ (ッ……!? なんだか分かりませんが、まずい……!)

アニェーゼ 「待ってください! いま建物に近づいては……!!」

木山 「ッ……!!」 ガッ 「みんな止まれぇ!!」

バギッッッ!!!!

         ――――ガラガラガラ…………

木山 「げ、玄関が……」 (壊れた……!? この不自然な破壊は一体……)

枝先 「こ、これじゃ中に入れないよ!?」

?V 「……ははっ。春上衿衣、そう簡単に逃がすかよ」

木山 (今のがあの男の能力……? 一体何をしたというんだ……?)
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 00:17:52.83 ID:YlsSO4Rvo
?V 「さて……これで逃げ場はなくなったな」

アニェーゼ 「……ふん。とことん小せぇ野郎ですねぇ」

?V 「……邪魔するってんなら、まずお前らからぶっ潰してやるよ」

?V 「せっかくこっちが人質まで用意して穏便にことを済まそうってしてやってんのに」

学生1 「……リーダー、俺たちがやるか?」

?V 「……いや、出なくていいよ、お前らは」

?V 「連中はよく分からん能力を使うらしいが、俺一人で十分だ」

?V 「俺に不意打ちで能力を直撃させたくせに、一撃で俺を気絶させることすらできなかった」

?V 「そんな能力、恐れる必要すらないからな」 ニヤリ 「……相手してやる。来いよ、シスターども」

アニェーゼ 「言ってくれますね……なら、次はぶっ殺してさしあげますよ」

アニェーゼ 「『蓮の杖』 …… 『司教杖』 を展開……」

バサッ!!!

春上 「天使様の……翼……?」

ルチア 「……大丈夫。あなたたちは、私たちが守ります」

アンジェレネ 「迷える子羊を守るのも、教会の役目ですからっ!」
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 00:18:34.98 ID:YlsSO4Rvo
アニェーゼ 「あなたみたいなクソ野郎は、惨めに地面に這いつくばってんのがお似合いですよッ!!」

ッドン……!!

?V 「……?」 (杖を地面に……――ッ……!?)

――ドガッ!!!

?V 「っ……」 ガフッ 「……なるほど。座標攻撃か……」

木山 「なっ……き、君たちも能力者なのか……?」

アニェーゼ 「だから、科学なんぞと一緒にしねぇでくださいよ。これは神の御業です」

ルチア 「……まぁ、あまり大っぴらにできるものではありませんが……ねッ!!」

――――ドバァァァアアアッッ!!!

?V 「ッ……!?」 グサッ!! 「……ぐっ……」

枝先 「車輪が爆発したの……!?」

?V 「クソがッ……!!」 ダッ……!!

ガシャッ……!!

アンジェレネ 「……来たれ! 十二使徒のひとつ、……――」

パァァァア……シュン!!!

春上 「綺麗な……光なの……」

――――――ドガッ!!!

?V 「がッ……!!」
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 00:19:37.79 ID:YlsSO4Rvo
アニェーゼ 「……ふん。他愛もねえですね。こんなモンなんですかぁ?」

ルチア 「俗物が。身の程を知りなさい」

アンジェレネ (お二人とも顔が凶悪すぎてどっちが悪人なのか分からないです……)

?V 「………………」

?V 「……――で? これで終わりか?」

アニェーゼ 「っ……? 何を、笑っていやがるんですか……!?」

?V 「おいおい、これで終わりかって聞いてるんだから答えろよ」

ルチア 「……シスターアニェーゼ。話は通じないようです」

ルチア 「殺すというのは誇張としても、多少は痛めつけておく必要があるかと」

アニェーゼ 「……そうですねぇ……」

ガシャッ……!! ブゥン…………――

?V 「――あ、悪りぃ。また同じ事するんだったら勘弁してくれ」



?V 「“座標軸固定 = 破壊”」



――――バキッ!!!

アニェーゼ 「――は……っ?」
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 00:22:04.94 ID:YlsSO4Rvo
ルチア 「なっ……!? 『蓮の杖』 が……」

アンジェレネ 「折れ、た……!?」

ルチア 「っ……」 サッ……――

?V 「あ、アンタも邪魔。壊れてね、っと」

――――バキッ!!

アンジェレネ 「し、シスタールチアの車輪が……?」

?V 「っと、ついでにアンタの変な袋も、と……」

――――ビリッ……ザララララ……

ルチア 「なっ……何が起きて……!!」 (奴は何もしていない)

ルチア (それなのに霊装が瞬時に破壊された……これは、一体……)

?V 「何で分からねぇかなぁ……? 言ったはずだぜ? 俺はレベル4だってさぁ」

?V 「アンタたちさ、能力使って攻撃しておいて、まさか反撃がないなんて思ってたの?」

?V 「ばっっっっかじゃねぇの!! ははっ、正真正銘の馬鹿だコイツら!!」

木山 「……座標攻撃? 11次元絶対座標軸操作の応用か……!?」

?V 「こんな時でも冷静に分析か。根っこは科学者なんだな、アンタ。くだらねぇ」

?V 「ッ……やっぱ痛ってぇな。好き勝手してくれやがって。糞が」
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 00:23:29.96 ID:YlsSO4Rvo
アンジェレネ 「なっ……何故、霊装が……!?」

アニェーゼ 「……決まってるでしょう、シスターアンジェレネ」

ルチア 「まさか、これが……能力。学園都市の開発した、科学による異能……」

?V 「おいおい、何だその物言いは? まるで自分たちが能力者じゃねぇって言ってるみたいだが」

――スッ

?V 「まぁ、ここまで強大な能力ってのはなかなかないってのも事実だがな」

――――――バキッ!!!

アンジェレネ 「ひッ……!!?」

アニェーゼ 「シスターアンジェレネ!?」

ルチア 「腕が、折れて……!?」

?V 「だが、俺は名乗ったはずだぜ? 『俺たちはレベル4だ』 ってなぁ」

佐天 「手を触れずに、遠くの誰かを攻撃……もしかして、『空間移動』 ……!?」

?V 「んあ? よく分かったな。ま、11次元絶対座標軸の系列って点ではその通りだ」

?V 「だが俺の能力は、『空間移動』 なんかよりよほど攻撃性に優れている」

?V 「―― 『座標破壊(ポイントディバイダ)』 。指定した座標軸の11次元絶対座標に働きかけ空間を歪め、」

?V 「その座標に存在する物体を瞬間的に破壊する。それが俺の能力だ」
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 00:24:47.84 ID:YlsSO4Rvo
佐天 「そんな……!」 (あの人は、白井さんのように鉄矢を用意する必要もないんだ)

佐天 (……あの人は今、この場にいる全員の喉元に刃物を突きつけてるようなもの)

佐天 (思うだけで……演算するだけで、ここにいる全員の首をへし折ることだってできる……)

佐天 (そんなの、どうやったら……)

木山 「っ……!」

――タッ

枝先 「せ、先生……!?」

座標破壊 「ん? 何の真似だ?」

木山 「……やめろ」

座標破壊 「あん?」

木山 「その子たちは関係ないだろう!! 用事があるのは私のはずだ!!」

座標破壊 「おいおい、攻撃しておいて今さら無関係ってのはないだろう?」

木山 「憂さ晴らしがしたいのなら私にすればいい! それ以上彼女たちに危害を加えるな!」

ルチア 「ば……馬鹿なことを! ただの異教徒が!!」

ルチア 「下がりなさい! あなたに何ができるというのですか!」

木山 「……できるさ。少なくとも、子どもたちの盾になるぐらいのことはな」

ルチア 「な……何を――」

木山 「――子どもだ。君たちも。我々大人が守るべき、子どもなんだ」

木山 「たとえ国籍が違うのであろうと、信じる物が違うのであろうと……」

木山 「君たちも彼らと同じ子どもだ。なら、我々大人が守らなくてどうする」
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 00:26:22.34 ID:YlsSO4Rvo
座標破壊 「……はぁ? 守る? アンタが? 俺みたいなレベル4から?」

木山 「………………」

座標破壊 「……そうかい。ま、俺の攻撃に並びなんか関係ないんだが、」

座標破壊 「――お望み通りあんたから痛めつけるとするか」

スッ――――


「――――――――――っっざっっっっけんな……ッ!!」


ズズズッ……

座標破壊 「……あん?」

アニェーゼ 「……な……」

ルチア 「し……シスター、アンジェレネ……?」

座標破壊 「……何か言ったか? シスター」

アンジェレネ 「……聞こえなかったんですか? 『ふざけんな』 って、」

アンジェレネ 「―――私は、そう言ったんですよ……!!」
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 00:27:32.58 ID:YlsSO4Rvo
アニェーゼ 「シスターアンジェレネ! あなた、腕が……」

アンジェレネ 「……シスターアニェーゼ。シスタールチア」

アンジェレネ 「霊装は破壊されましたが、私たちにはまだやれることはあるはずです」

木山 「き、君は……! おとなしくしていろ! その腕、骨折というレベルの怪我では……――」

アンジェレネ 「――……あなたはまだ、この子たちにとって必要なはずです」

ニコッ

アンジェレネ 「だからそうやって、自分を投げ出したりしないでください」

佐天 「アンジェレネちゃん……?」

アンジェレネ 「大丈夫ですよ、佐天さん。ご心配なさらずに」

ルチア 「シスターアンジェレネ……? あなた……」

座標破壊 「お、おいおい……そんな体で犯罪者を庇うってのか?」

座標破壊 「その腕、ただ折れてるだけじゃないんだぞ? 空間ごと断裂させたんだ」

座標破壊 「肉も骨も神経も何もかもが破断して……とてつもない激痛がアンタを襲ってるはずだ」

座標破壊 「皮一枚で繋がってるだけって状態なんだぞ……!?」

アンジェレネ 「………………」

座標破壊 「な、何だ……さっきの変な攻撃の他に、まだ攻撃手段があるっていうのか……?」

アンジェレネ 「……私は……いえ、私たちは、とある一人の能力者を知っています」
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 00:28:48.39 ID:YlsSO4Rvo
座標破壊 「なんだと……?」

アンジェレネ 「私たちはきっと、教義という名の正義の下、とても酷いことをしました」

アンジェレネ 「……でも、あの人は止めてくれた。200人以上の数の暴力を、恐れることもなく」

アンジェレネ 「私たちを止めてくれた」

座標破壊 「何を……何を言ってやがる……!!」

アンジェレネ 「あの人だったら、立ち上がります。そして、あなたの前に立ちはだかります」

アンジェレネ 「だったら……」 ギリッ 「だったら……!!」

アンジェレネ 「神の信徒である私たちが立ち上がらないわけにはいかないんですよッ!!!」

座標破壊 「ッ……!?」 (なっ……この、気迫は……!?)

ズキッ……!!!

アンジェレネ 「っ……」 (やっぱり、片腕……完全に、いかれて……――)

――スッ

アンジェレネ 「あ……」

ルチア 「……よく、言ってくれました、シスターアンジェレネ」

アニェーゼ 「その通りです。彼なら……彼であれば、間違いなく、」

アニェーゼ 「丸腰で……右手ひとつで、立ち向かいます」
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/15(日) 00:29:32.24 ID:YlsSO4Rvo
今日はここまでです。

ではまた今度。
失礼します。
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州・沖縄) [sage]:2011/05/15(日) 00:51:12.12 ID:hGMilamAO
戻ってきたー!
待ってた!乙!
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 16:41:22.89 ID:NFYywuqio
乙。男がめずらしくかっこいいなww
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/18(水) 00:03:44.38 ID:svJo4/zAO
乙ー
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 18:33:13.96 ID:hmyffCzDO
このシリーズ通して出てきたキャラが多すぎて混乱してる俺ガイル
誰がどういう関係なのか……
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/05/23(月) 19:45:13.31 ID:eoMDMhv9o
俺でよければ把握してる範囲でまとめるけど
>>1の許可がほしいな
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/23(月) 22:20:33.67 ID:RmOYgQpio
>>1です。
>>308
よろしければお願いします。

今週末には少しまとまって投下したいです。
できるか分かりません。すみません。
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/05/24(火) 23:36:41.65 ID:kSPzyhUyo
1作目
風紀委員になったばかりの男がさらわれた幼女を救うために犯人(止)と戦う物語。
2作目
遊園地でテロ騒ぎに巻き込まれ、暗部に落ちた止と風紀委員の男らが戦う物語。
止が暗部で絶望的な戦いに身を置く物語。
3作目
学園都市のとある教会のシスター(姉?)を巡る男の物語。
学園都市にやってきた少女(月子)を巡る止の物語。
4作目
現在進行中。
学園都市独立記念日の物語。


以下1作目以降ネタバレ


男(103)
主人公。レベル2の『幸福御手(ピースメーカー)』を持つ。
風紀委員に所属。白井黒子らとは同僚(黒子とは恋人同士)。上条当麻らのクラスメイト。御坂美琴とは友達。
止とは幼少の頃に友達だった。幼女、メイ、イル、ミツアミらとは顔見知り。

ネムサス
猫。男の友達。男の脳波が移植されている。

デイジィ
アヒル。男の友達。男の脳波が移植されている。

止(102)
ライバル(?)。レベル4の『通行止め(ドライブキャンセラー)』を持つ。
暗部の『ボックス』という組織に所属。上条当麻、御坂美琴とは顔見知り。
男とは幼少の頃に友達だった。メイ、イル、世話子、月子とは元同僚。
かつて幼女をさらったため、暗部に落とされる。
しかしその後は、メイ、イル、世話子、月子、幼女、ミツアミらの窮地を救った。

火子
2作目で登場。遊園地でテロを起こしたが、男たちによって拘束され、精神病院に送られる。
現在は止とともに行動している。

幼女
1作目で止にさらわれ、2作目で遊園地の騒ぎに巻き込まれ、3作目で能力者に襲われ、4作目でまた何かに巻き込まれている模様。
普通の小学生。男とは知り合い。ミツアミ、イルらとはクラスメイト。

ミツアミ
3作目から登場。幼女とイルの友達。
幼女と一緒のところを能力者に襲われるが、止に助けられる。

メイ
2作目から登場。レベル4の『接触爆殺(タッチボマー)』を持つ。
暗部の『ボックス』に所属していたが、止の計らいによりイルと一緒に表の世界に戻る。
止の元同僚。世話子の元上司(?)。イルを心の支えにしている。

イル
2作目から登場。レベル3の『予感能力』を持つ。
暗部の『ボックス』に所属していたが、メイとともに表の世界に戻る。
止の元同僚。止に命を救われる。

世話子
2作目から登場。レベル0。
暗部『ボックス』の下部組織の人間。暗殺術に長ける。3作目で月子とともに表の世界に戻る。
止らの元部下。

月子
3作目から登場。日本神道系の魔術師。
暗部『ボックス』の新しい人員として配属される。紆余曲折の末、表の世界に戻り、イルの友達となる。
止と世話子に命を救われる。

姉(シスター)
3作目から登場。ロシア成教系魔術師。
貝積継敏を暗殺しようと画策するが、男によって阻止され、現在はイギリス清教に身を置いている。
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/05/24(火) 23:39:44.11 ID:kSPzyhUyo
ちょっと見づらいかな?
とりあえず全部見直して書ける範囲でまとめてみた

修正点とか付け足しとかあったら随時どうぞー

やってみて分かったけど俺本当にこのシリーズ好きだわwwww
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/05/27(金) 21:02:06.40 ID:H7rinr+zo
>>1です。
>>310
ありがとうございます。

少しまとめて投下します。
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/27(金) 21:14:05.96 ID:H7rinr+zo
木山 「き、君たち……?」

アニェーゼ 「下がってください」 ニッ 「せめて少しは格好いいところを見せつけさせてくださいよ」

佐天 「みんな……」

アンジェレネ 「心配には及びませんよ、佐天さん」 ニコッ 「私たちは、プロですから」

春上 「シスターさん……」

ルチア 「……ご安心を」

ルチア 「あなたたちは、私たちが……いえ、私たちの信じる神が、守ってくださいます」

座標破壊 「ッ……! 何をしようと変わりはしねぇよ」

座標破壊 「俺の能力に死角はない。何をしようと、座標をピンポイントで破壊するだけだ」

アニェーゼ 「シスタールチア! シスターアンジェレネ!」

アニェーゼ 「『福音の守護聖霊(マテオ=アンジェーロ)』 を展開します!!」

アニェーゼ 「正面に穿つように、私を起点として散開の後、同時に術式の発動を!!」

ルチア 「了解しました」

アニェーゼ 「了解です!」

――――バッ!!

アニェーゼ 「三位一体の効果増幅を狙います! タイミングを合わせてください!」

――――ギッ……ギギギギギギ……!!!

座標破壊 (な……んだ……!?)
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/27(金) 21:15:12.33 ID:H7rinr+zo
木山 「光の壁……? これは、いったい……」

ルチア 「……かつて、12使徒のひとりは、人にはそれぞれ守護聖霊がついていると唱えました」

ルチア 「その教えを元に、『天使の力』 との相関関係から導き出される守護の力」

ルチア 「それを表出させる基礎的な防御術式です」

座標破壊 「………………」

スッ……

座標破壊 「…… “座標軸固定 = 破壊”」

――――キン……!!

座標破壊 「……?」 (なんだ……? 座標を指定する行為そのものを弾かれた……?)

座標破壊 (演算に不全はなかったはずだ。ならばこれは……)

アニェーゼ 「……基礎的であるが故に苛烈でもあります」

アニェーゼ 「背後に守るものに害成す存在は何であろうと通しはしませんよ」

アニェーゼ 「加えて今、私たちは三位一体の構造を作り出しています」

アニェーゼ 「そう簡単に、こちら側に何らかの “害悪” を届かせられると思わねえことですね」

座標破壊 「……ふぅん。物理的な干渉はおろか、AIM拡散力場そのものまで弾くってことか」

アンジェレネ 「……はっ……はっ……」 ゼェゼェ……

座標破壊 「よく分からない能力だな……だが、ひとつ分かることは、」

ニィ

座標破壊 「――お前たちを潰せばその光の壁は消えるってことだ」
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/27(金) 21:18:31.70 ID:H7rinr+zo
座標破壊 「『発火能力者(パイロキネシスト)』 、『発電能力者(エレクトロマスター)』 、『空力操作(エアロマスター)』」

発火能力 「ああ」

発電能力 「おう」

空力操作 「出番か」

座標破壊 「物理的な防御能力を持つってことは、裏を返せば物理的な攻撃が通じるってことだ」

座標破壊 「だから、壊せ」

アンジェレネ 「………………」 ゼェゼェ……

座標破壊 「……狙う場所は、分かってるよなぁ?」 ニヤァ

発火能力 「……もちろん」

…………ゴァァァアアアアア!!!!

発電能力 「分かってるに決まってる」

…………バヂヂチヂヂッ!!!!

空力操作 「さて……やってやるか」

…………ゴォォォオオオオオ!!!!

アニェーゼ 「……っ」 (炎、電撃、暴風……これが……これが、能力……!?)
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/27(金) 21:19:11.37 ID:H7rinr+zo
アニェーゼ 「………………」

アニェーゼ (これは明らかに我々の……いや、組織を束ねる私の責任です)

アニェーゼ (能力ってのは、私たちの扱う魔術とはその本質を違えることを失念していました)

アニェーゼ (能力はこんなにも手軽に、まるで片手間のように扱えるものなのですね……ッ)

アニェーゼ (魔術ほど下準備を必要とするわけではない……これが、科学による超能力)

アニェーゼ 「………………」

アニェーゼ (私は、心のどこかで舐めていたんですね……)

ギリッ

アニェーゼ (所詮は科学だと。私はそう侮って、高位能力者という存在を甘く見ていた)

アニェーゼ (その結果が、これです。霊装を破壊され、防御術式を展開するだけで精一杯)

アニェーゼ (加えて、シスターアンジェレネにあんな怪我を……)

ボタッ……ボタボタッ……

アンジェレネ 「っ……」

アニェーゼ (……だから、絶対に……!)

アニェーゼ (絶対に、この防御術式だけは守り通します……! アニェーゼ部隊の名にかけて……!)
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/27(金) 21:19:48.91 ID:H7rinr+zo
発火能力 「行くぞ……!」

ゴァァァアアアア……!!!!

木山 「なんという高出力の炎だ……ッ!」

――――ッッッドン!!!

アンジェレネ 「ぐ……ッ……!!」

ルチア 「シスターアンジェレネ!!」

アンジェレネ 「大丈夫、です……」

アンジェレネ 「術式に不全は、ありません……!」

発電能力 「へぇ……あの炎が直撃してもビクともしないのか……じゃあ、」

――――ビジジジジジッ!!!!

アンジェレネ 「ぐっ……!?」

アニェーゼ (電撃……! 手負いのシスターアンジェレネを狙っているんですか……!)

……ピシッ……

アニェーゼ (!? まずい……! シスターアンジェレネの魔力が弱まっている……)

アニェーゼ (魔力のバランスに揺らぎが発生しては、三位一体の増幅効果が……!)

アンジェレネ 「……っ……お願い……保って……!!」
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/27(金) 21:22:57.23 ID:H7rinr+zo
空力操作 「……これで終わりだな。高密度の空気のハンマーだ」

……ゴォォォオオオオオ!!!

アンジェレネ 「ッ……おね、がい、します……神様……」

アンジェレネ 「力を……」

空力操作 「弾け飛べ」

――――ッッッガッッ!!!!

アンジェレネ 「……がッ……は……」

ガクッ……

アニェーゼ 「シスターアンジェレネ!!」

アンジェレネ 「……っ……ダメ……」

ピシッ………………

――――――――――パキッ……

空力操作 「……バリアみたいなの、壊れたみたいだぜ?」

発火能力 「……はっ、存外呆気なかったな」

座標破壊 「ばーか。お前たちの能力が無駄に強力すぎるんだよ」

発電能力 「おいおい、無駄ってのは酷いだろ、リーダー」
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/27(金) 21:23:45.22 ID:H7rinr+zo
ルチア 「だ、大丈夫ですか!? シスターアンジェレネ!」

アンジェレネ 「…………――なさい……」

ルチア 「えっ? 何と言ったのです!?」

アンジェレネ 「ごめん……なさい……」

――――ツ……

アンジェレネ 「ごめんなさい……っ……ひぐっ……ごめん、なさい……」

ポタッ……ポタッ……

アニェーゼ 「シスターアンジェレネ……」

アンジェレネ 「私の、せい、ですね……」

アンジェレネ 「私が、いつも、自堕落な生活をしてるから……」

アンジェレネ 「私が、いつも、怒られてばかりだから……」

アンジェレネ 「私が、ろくな術式も使えない、落ちこぼれ、だから……」

アンジェレネ 「だから、神様も、私を見捨ててしまったんですね……」

アンジェレネ 「……ふふ……私は……本当に、ダメな魔術師……ダメな、シスターです」

ルチア 「………………」

ギリッ

ルチア 「そんな、わけが……」

アンジェレネ 「えっ……?」

ルチア 「……そんなわけが、ないでしょうが……ッ!!」
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/27(金) 21:24:49.54 ID:H7rinr+zo
アンジェレネ 「シスター、ルチア……?」

ルチア 「あなたは確かに、自堕落でどうしようもないシスターです」

ルチア 「……でも私は知っていますよ。シスターアンジェレネ。あなたの、素晴らしいところを。たくさん」

ルチア 「あなたはいつも人知れず基礎的な術式の練習をしていましたね」

ルチア 「あなたは時々、教会近辺の子どもたちに、拙い口調で、しかし懸命に聖書を読み聞かせていましたね」

ルチア 「あなたはいつも、話が散逸的になりがちな私たちの部隊を、影でまとめてくれていましたね」

ルチア 「……あなたはいつも、どんな辛いときでも、その明るい笑顔を見せてくれましたね」

アニェーゼ 「シスタールチア……?」

ルチア 「いつも傍にいたから……私には分かります」

ルチア 「あなたは悪食家で暴食家で怠け者で、決して素晴らしいシスターではないかもしれません」

ルチア 「あなたは術式の構成も甘く拙く、そして遅い。だから至高の魔術師とはいえないかもしれません」

ルチア 「……しかし、誇りなさい」

ルチア 「――あなたは優しく温かい……本物の神の信徒です」

アンジェレネ 「……!!」
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/27(金) 21:25:31.90 ID:H7rinr+zo
座標破壊 「……っだらねぇ……」

座標破壊 「くだらねぇ三文芝居だな。弱者同士傷の舐めあいですかー?」

発火能力 「おいおいリーダー。感動のシーンらしいんだから水差すなよ」

発電能力 「ま、いいじゃんよ。笑えるし」

木山 「貴様……ッ! 貴様らはッ!!」

木山 「貴様らは笑うのか……!? 力及ばず涙する少女を……笑うというのかッ!!」

座標破壊 「泣かせてやってるだけ感謝してほしいけどな」

座標破壊 「本来、敗者には泣く権利すらないんだぜ?」

枝先 「ひどい……あなたたち、おかしいよ!!」

座標破壊 「……この街は能力者のものだ」

座標破壊 「雑魚が、弱者が、負け犬が……何を言おうと変わりはしねぇよ」

座標破壊 「……おい、『肉体強化(パワービルド)』」

肉体強化 「ああ……」

アニェーゼ 「ッ……!?」

――――――ブゥン!!!
                     ドガッッッッッ!!!!
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/27(金) 21:27:59.29 ID:H7rinr+zo
アニェーゼ 「がッ……!!」

ルチア 「シスターアニェーゼ!!」

肉体強化 「………………」

――――ドゴォオオオオッッ!!!!

ルチア 「がッ……!!?」

アンジェレネ 「シスターアンジェレネ……シスター、ルチア……」

肉体強化 「……ふん」

――――ッッッッドンンン!!!!!

アンジェレネ 「かッ……あ……」 (なんて……力……)

肉体強化 「………………」

肉体強化 「他愛ない。全員たったの一撃でお終いか?」

木山 「やめろ……!」 ガクッ 「……もう、やめてくれ……!」

アニェーゼ 「ぐっ……」 (一撃で、壁まで、吹き飛ばされるとは……なんて膂力ですか……)

肉体強化 「……まぁ、こちらとしても痛めつけるのは本意ではないがな」

肉体強化 「単なる楽しみだ。悪いな」

木山 「貴様ァ……!!」

アニェーゼ 「………………」 (まるで、ダンプカーに突撃されたような、気分です……)

アニェーゼ (身体が、思うように動かせない……、しかし……)

アニェーゼ (こんな、ことで……私は……)

グッ……ググッ……

アニェーゼ 「――この、程度で……ッ!!」
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/27(金) 21:28:33.42 ID:H7rinr+zo
肉体強化 「……ん?」

アニェーゼ 「……勝手に、お終いにしてんじゃ、ねえですよ」

座標破壊 「おいおい、まだ立つのか? ボロボロのくせに」

アニェーゼ 「……たとえ、『蓮の杖』 が破壊されたとしても」

座標破壊 「……?」

アニェーゼ 「たとえ、防御術式が破られたとしても……」

アニェーゼ 「……まだ、この心は、」

ザッ……!!!

アニェーゼ 「私の信仰は折れちゃいねえんですよ……ッ!!!」

座標破壊 「………………」

ニィ

座標破壊 「……そうかい。そりゃ結構なこって」

座標破壊 「座標軸固定。破壊」

――――――バギッ……!!!

アニェーゼ 「かは……ッ……」

ガクッ……
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/27(金) 21:29:25.26 ID:H7rinr+zo
アニェーゼ 「あ……脚が、折れ……ッ」

座標破壊 「何を喚こうと無駄だ。何を願おうと無駄だ」

座標破壊 「信仰心? そんなくだらねえモンで何ができる」

座標破壊 「何かできるもんならやってみろ。俺を倒すなりなんなりしてみろよ、オラ」

ルチア 「シスター……アニェーゼ……」

座標破壊 「俺はレベル4の 『座標破壊』 。アンタは祈ることしかできないシスター」

座標破壊 「俺の能力はただ演算するだけで何だって破壊することができる。その脚みたいにな」

座標破壊 「無駄なんだよ。無理なんだよ。アンタには何も守れない」

座標破壊 「アンタの信じるカミサマとやらは何もしてくれやしない」

座標破壊 「……アンタの言う信仰なんかじゃ、何も救えやしねぇんだよ」

アニェーゼ 「………………」

――ニィ

アニェーゼ 「くく……くくくく……」

座標破壊 「ッ!? な……何を笑ってやがる!!」

アニェーゼ 「……なんです? そうやって私に言い聞かせないと、不安なんですか?」

アニェーゼ 「そうやって無駄だと、無理だと、相手に言い聞かせないと怖いってんですか?」
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/27(金) 21:31:19.25 ID:H7rinr+zo
座標破壊 「なっ……何を……!!」

アニェーゼ 「まるでテメェの弱みを私に見せてるみてえですよ?」

座標破壊 (ば、馬鹿な……)

アニェーゼ 「足なんかじゃなく、頭なり胸なりを潰せば殺せるのに」

座標破壊 (片足を断裂させたっていうのに……)

アニェーゼ 「殺すのが怖い……というわけじゃあなさそうですね」

座標破壊 (想像を絶する痛みのはずだ……それこそ、常人なら発狂するほどの)

アニェーゼ 「相手の心を折らないと気が済まない……そんな、クソみてえな思念ですか」

座標破壊 (恐怖ってもんがないのか、コイツは……!?)

アニェーゼ 「……あーあ。なんか、アナタを見てると軽く自己嫌悪に陥っちまいますよ」

座標破壊 (これが……信仰心だとでもいうのか……くそがッ……!!)

アニェーゼ 「――きっとあの時の私も、アナタみてぇなクソったれだったんだってね」

座標破壊 「ッ……!!」

――――――ドガッ!!!

アニェーゼ 「ご、がッ……!?」

空力操作 「……黙れ、雑魚が。負け犬は、無様に這いつくばってりゃいいんだよ」

発火能力 「……落ち着け、リーダー」

発電能力 「戯れ言だ。耳を貸すな。どうせあのシスターはもう立てない」

座標破壊 「……ああ。そうだな」
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/27(金) 21:31:59.52 ID:H7rinr+zo
座標破壊 「……さて、邪魔者は消えた。そろそろ目的を果たさせてもらおうか」

木山 「ぐっ……」

枝先 「先生……」

春上 「……うぅ……シスターさん……」

木山 「……」

座標破壊 「はは……麗しい愛情だねぇ、“先生”」

スッ……

座標破壊 「だが、これを見てもまだそんな茶番が続けられるか?」

木山 「……?」 (なんだ……? 薬剤……?)

座標破壊 「その反応だと分からないらしいな。ま、あの時からまたモデルチェンジしてるらしいしな」

座標破壊 「分からなくても無理はないか」

木山 「モデルチェンジ……?」 ハッ 「……ま、まさか……!?」

座標破壊 「……ああ、察しの通りだよ。これは 『体晶』」

ニィィ

座標破壊 「――つまりは、『能力体結晶』 だ」
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/27(金) 21:34:28.23 ID:H7rinr+zo
春上 「え……?」

佐天 「『能力体結晶』 って……あの……?」

木山 「馬鹿な……あの研究は……あの女は、もうすでに……!」

座標破壊 「もちろん。テレスティーナ=木原=ライフラインの研究はもう終わっている」

座標破壊 「そもそもがあの研究は奴個人のもので、引き継ぐような人間はいなかったからな」

木山 「ならば、何故……?」

座標破壊 「……知らないのも無理はないか。『体晶』 は件の研究以外の用途で今も使われているんだよ」

座標破壊 「能力の暴走を誘発させる薬品……それは本来、能力者にとってはリスクしか生まないもんだが」

座標破壊 「一部の能力者にとっては、能力の強化に繋がるらしい。よくは知らないがな」

木山 「そんな、ことが……」

座標破壊 「だから未だに 『能力体結晶』 は使われている。残念だったな」

木山 「だ、だが……あの研究が終わっているのならば……――」

座標破壊 「――そうだな。だからこれは俺たちの個人的な興味だ」

木山 「ま……まさかッ……!? 貴様らは……!」
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/27(金) 21:35:05.84 ID:H7rinr+zo
佐天 「もしかして…… 『能力体結晶』 を……!」

春上 「……?」

木山 「春上くんに……投与するつもりなのか……!?」

座標破壊 「……アンタたちもさ、興味ないか?」

座標破壊 「あの “木原” が全てを賭して築き上げた研究の行く末に、さ」

佐天 「アンタ……!!」

座標破壊 「―――― 『絶対能力進化』」

ククッ……

座標破壊 「面白そうだろ? なぁ? 『樹形図の設計者』 には否定されたらしいが……」

座標破壊 「何かの間違いで 『絶対能力者』 なんかが生み出されたら……」

座標破壊 「くく……最高に愉快だと思わないか?」

木山 「貴様らは……そんな個人的な欲求を満たすためだけに……」

木山 「――こんな暴挙に出たというのか……!?」

座標破壊 「吠えるなよ、元研究者。アンタも同じだろうが」

座標破壊 「テメェの研究のため、テメェの研究者としての躍進のため、」

座標破壊 「――そのために、たくさんのガキ共を犠牲にしたんだろうが」
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/27(金) 21:38:20.07 ID:H7rinr+zo
木山 「っ……!」

座標破壊 「同じなんだよ。アンタのやったことと、俺たちのやろうとしてることは」

座標破壊 「少なくともアンタに、俺たちを否定する権利はないね」

座標破壊 「……アンタも俺たちと同じだよ」

座標破壊 「立場や力を振りかざし、興味や利益のために弱者を虐げる人間だ」

木山 「わ、私は……っ……――」



「――――違うよ」



ギュッ

木山 「な……?」 (温かい……手……)

枝先 「……違うよ。絶対に、違うもん」

座標破壊 「……んだと?」

枝先 「先生は、あなたたちなんかとは違う」

木山 「枝、先……?」

春上 「……絆里ちゃん」

枝先 「先生は、ずっと優しかった」

枝先 「先生は、きっと私たちを傷つけるつもりなんてなかった」

枝先 「先生は、ずっと私たちを助けるために、寝る間も惜しんで走り回ってくれてた」

枝先 「……そのせいで、色んな人に迷惑をかけちゃったみたいだけど……」

枝先 「……でもね、先生はね、それでも……」

枝先 「――私たちの大好きな、木山春生先生なんだよ」
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/27(金) 21:39:21.44 ID:H7rinr+zo
男子1 「そ……そうだ! 先生はお前たちなんかとは違う!」

男子2 「先生は……木山先生は……俺たちの大好きな先生だ!」

男子3 「……せ、先生は……俺の初恋の……誰よりも優しい先生だ!!」

木山 「枝先……お前たち……」

ポタッ……ポタッ……

座標破壊 「……だがそいつは、お前たちを実験動物扱いしたんだぞ?」

枝先 「違うよ。先生は温かかった。先生は……私たち一人一人を、大切にしてくれた」

枝先 「私たちを大切にしてくれた、優しい優しい、先生だったんだよ」

座標破壊 「………………」

ルチア 「……くくっ……くくく……ははっ……ははははははは……!!!」

座標破壊 「……何が可笑しい、シスター」

ルチア 「滑稽ですよ、アナタ。自分の行動理由に自信がないから、相手を扱き下ろそうと必死」

ルチア 「罪人は悔い改めることができる。咎人はその悪事を清算することができるのです」

ルチア 「たとえ何を言おうと、アナタの行動を肯定されることはありませんよ」

ルチア 「――異教徒でありながら、しかし彼女にはどうやら、我らが父が微笑んでくれているようですから」

座標破壊 「……ふん、何もできない屑が吠えるな」

座標破壊 「カミサマとやらが救ってくれるのなら苦労はない。この世界はそんな都合よくできちゃいないんだよ」

座標破壊 「何がどうであろうと変わりはしない。俺たちは何をしても許される」

座標破壊 「春上衿衣、こちらへ来い。さもなくばこの場にいる全員をすぐさま殺す」
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/27(金) 21:47:33.26 ID:H7rinr+zo
春上 「……分かったの」

佐天 「春上さん!?」

枝先 「だ、ダメだよ! 衿衣ちゃん!」

木山 「そうだ。あの時とは状況が違うとは言え、『能力体結晶』 が危険な物であることに変わりはない」

木山 「能力の暴走が発生することだけは確かだ……最悪の場合、君は……」

春上 「でも、私はみんながいなくなっちゃうことの方が辛いから」

ニコッ

春上 「大丈夫なの。私はあんなもので、どうにかなったりはしないの」

枝先 「衿衣ちゃん……」

春上 「……約束してほしいの。私はあなたたちの言うとおりにする」

春上 「だから、これ以上みんなにひどいことをしないでほしいの」

座標破壊 「……ああ。約束しよう」

春上 「……じゃあ、行ってくるね、絆里ちゃん」

枝先 「衿衣ちゃん……!」

スッ………………――


――――――バヂヂヂヂヂヂッ!!!!


春上 「えっ……?」
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/27(金) 21:48:33.62 ID:H7rinr+zo
枝先 「……あっ……?」

佐天 「っ……!?」

木山 「ぐッ……」

……――ガクッ

春上 「ば、絆里ちゃん!? 佐天さん!! みんな……!?」

発電能力 「ははっ……大口叩いておいて、呆気ねぇモンだなぁオイ」

佐天 「アンタ……!!」 ガクッ 「っ……」

発電能力 「おっと、無理はしないほうがいいぜ?」

発電能力 「感電ってのはな、思うより深刻なダメージを身体に与えるんだよ」

発電能力 「後々に動作不全って後遺症を残したくないならジッとしてな」

座標破壊 「……まぁ、そもそも動けるような状況ではないだろうがな」

座標破壊 「何を呆けている、春上衿衣。さっさとこちらへ来い」

春上 「み、みんなには手を出さないって……」

座標破壊 「ああ? 約束? そんなもんが守られるって思ってる時点で終わってるよ、オマエ」

座標破壊 「本当に履行させたいことがあるんなら、しっかりと契約書にしなきゃなぁ」
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/27(金) 21:51:37.38 ID:H7rinr+zo
木山 「きっ……サマ……ッ!! 貴様ッ……!!」

座標破壊 「はっ、だから動けねぇっての、“先生” ?」

座標破壊 「大体、こんな一方的な状況で約束もクソもあるわけがねぇだろうが」

男子1 「ぐぅ……あ……」

男子2 「……身体が、しびれて……」

男子3 「うごか、ない……」

子供1 「うぅ……いたいよぅ……」

子供2 「………………」

子供1 「えっ……? ど、どう、したの……?」

子供2 「………………」

子供1 「ねえ……どう、したの……? どうして、動かないの……?」

佐天 「っ……」 (うご、ける……なら、這いずってでも、私は……!!)

ズズ……ズズッ……

座標破壊 「あん……?」

子供1 「おねーちゃん……?」

佐天 「大丈夫だよ……大丈夫だから」

スッ……ギュッ

子供2 「………………」

佐天 「大丈夫……大丈夫……」 グッ…… 「いつか、初春たちの役に立つだろうと思って、」

佐天 「――……蘇生法とか、ちゃんと、保健の時間に習ってたん、だから……」

佐天 (身体、痺れてうまく動かない。でも、それでも……)

子供2 「………………」

佐天 「だい、じょうぶ……この子は、絶対……私が、助ける……!!」

春上 「佐天さん……みんな……っ……」

グスッ……
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/27(金) 21:52:20.08 ID:H7rinr+zo
座標破壊 「……悔しいか? レベル2の 『感応力者』 、春上衿衣」

春上 「……っ……どうしてなの……?」

春上 「どうして、あなたちは、こんなにひどいことができるの……?」

座標破壊 「決まってるだろ? 力があるからだ」

座標破壊 「レベル4っていう、圧倒的な力を持っているからだ」

座標破壊 「……俺たちが憎いか? 俺たちを殺したいか?」

春上 「………………」

木山 「っ……」

子供1 「うぅ……」

子供2 「………………」

佐天 「お願い……! 息を吹き返して……!!」

枝先 「衿衣、ちゃん……」

アニェーゼ 「……ぐっ……」

ルチア 「…………っ……」

アンジェレネ 「……おね、がい……します……神様……」
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/27(金) 21:53:44.74 ID:H7rinr+zo
春上 「………………」

春上 「…………――い――――」

座標破壊 「あん……?」

春上 「憎いの……! とっても……」 ギリッ

座標破壊 「……なら、これを飲め」

ポイッ……カランカラン……

春上 「………………」

座標破壊 「もしかしたら……万が一の確率ではあるが……」

座標破壊 「もしもお前が 『絶対能力者』 となれば、俺たちを倒せるかもな」

春上 「………………」

座標破壊 「お前がそれを飲まないと言うのなら、俺たちは今この場の全員を殺す」

座標破壊 「助けたいだろう? ならばそれを飲め」

座標破壊 「……俺が憎いだろう? それを使い、『絶対能力者』 となってみせろ」

ニィ

座標破壊 「そして憎い俺たちを、倒してみせろ」
336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/27(金) 21:54:11.17 ID:H7rinr+zo
木山 「だっ……め……だ……!!」

春上 「………………」

木山 「はる……うえ、くん……! それは、ぜったい……に、ダメ、なんだ……!」

枝先 「そう、だよ……! 衿衣、ちゃん! それは、……――」

春上 「――――でも、みんなを守れるかもしれないの」

木山 「……!?」

枝先 「衿衣、ちゃん……?」

枝先 「だ、だって、衿衣ちゃん! そんなもの、飲んだら……!」

枝先 「衿衣ちゃんが、どう、なっちゃうか……分からないんだよ!?」

春上 「……それでも、もしかしたら、強くなれるかも、しれないの」

座標破壊 (当時とは条件が違う。『絶対能力者』 になれる可能性はゼロだろうが……)

座標破壊 (もしモデルチェンジした 『体晶』 が春上衿衣の身体に適合すれば、)

座標破壊 (『大能力者』 ……いや、『超能力者』 クラスの力は出るかもしれないな)

座標破壊 「……さぁ、飲め。春上衿衣。そして、その結果を俺たちに見せてみろ」
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/27(金) 22:02:37.73 ID:H7rinr+zo
春上 「………………」

木山 「……ぐッ……」

枝先 「衿衣ちゃん……!!」

春上 「……ごめんね、絆里ちゃん…………――――――」



「――――――……謝るべきだという自覚があるのなら、やめた方がいい」



春上 「えっ……?」

?? 「自分を想ってくれる誰かのことを想うのなら、ね」

木山 「君、は……」

?? 「……ごめんなさい。遅くなりました」

枝先 「……あのひとは……」

?? 「……怖かったね。でも、もう大丈夫だ」

子供2 「……けふっ…………」 ゴホゴホ

佐天 「………………」 ヘタッ 「……よかった」

?? 「佐天さん……よく、がんばりましたね」

佐天 「へへ……」 テヘッ

座標破壊 「……なんだ、お前は……?」

?? 「………………」 ギリッ 「……なるほど。お前たちが……」


?? 「お前たちが……ッッ!!!!」


座標破壊 「ッ……!?」 (な……何だ……!? 今の、気迫は……?)

佐天 「ははっ……分からないの? それって、危機意識が足りなすぎると思うよ?」

座標破壊 「なんだと……?」



佐天 「――――正義のヒーローのお出ましってことだよ、悪者さん」 ニィ

338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/27(金) 22:03:26.34 ID:H7rinr+zo
今回はここまでです。

またよろしくお願いします。
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/02(木) 02:52:53.03 ID:Nn1K6MaSO
>>1
毎回楽しみにしてるよ
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/02(木) 09:51:52.95 ID:2feWs6jDO
なんか懐かしいスレタイ見つけた
これは支援するしかない…!
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/06/03(金) 06:33:14.04 ID:6bRy0ni10
>>1乙!?
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/07(火) 18:48:51.29 ID:V/n+MXM1o
>>1乙。
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/23(木) 23:25:19.24 ID:LTq7hvsLo


そして待つ
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/25(土) 16:34:44.34 ID:QWXoNJ2T0


俺も待つぜ
345 :!ninja [sage]:2011/06/26(日) 09:41:35.19 ID:OE+wuwBZo
 あ
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/26(日) 09:42:35.89 ID:OE+wuwBZo
すまん誤爆
347 : :2011/07/05(火) 20:18:25.39 ID:bSd9vOaPo
お待ちいただいている方、ありがとうございます。
少しまとめて投下します。
348 : [saga]:2011/07/05(火) 20:23:16.54 ID:bSd9vOaPo
………………数分前

男 「……? 着信……?」 スッ 「佐天さんから……?」

ピッ

佐天 『男さんですか!?』

男 「わっ……」 キーン 「いきなり叫ばないでよ……どうしたんです?」

佐天 『緊急事態です。落ち着いて聞いてください』

男 「えっ……?」 キッ 「何があったの!?」

佐天 『レベル4の学生が五人ほど、枝先さんたちのいる施設を襲撃しています』

男 「なっ……!? なんだって!?」

佐天 『今、アンチスキルや風紀委員の連絡網は上手く機能していないみたいなんです』

佐天 『だから、風紀委員に直接頼んでいます。お願いします、男さん』

男 「木山先生の児童養護施設だね!? 分かりました! 今すぐ向かいます……!」

ダッ……!!!

男 「佐天さんはどこにいるの!?」

佐天 『近くから監視していますが……そろそろ、行きます』

男 「!? だ、ダメだ危険すぎる! 今すぐその場を離れて――――」

佐天 『――――大丈夫、ですよ』 ニッ 『私だって、風紀委員のみんなの仲間ですから』

男 「えっ……?」

佐天 『それに、私が引き下がっても、私のツレが黙っていられそうにないですしね』

男 「それって、まさか……!?」

男 (まさか、アニェーゼさんたち……魔術師が戦うっていうのか……!?)

佐天 『では、切りますね』 ギリッ 『私もそろそろ、我慢の限界ですから……!!』 ピッ

男 「ちょっと……! 佐天さん!! 佐天さん!?」

男 「ぐっ……!!」 ダッ……!! (くそっ……無事でいてくれよ……!!)
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 20:25:07.23 ID:bSd9vOaPo
………………現在

座標破壊 「正義のヒーロー、だと……?」

ハッ

座標破壊 「その腕章……風紀委員か……!!」

男 「………………」

座標破壊 「……この非常事態下で正常に機能している風紀委員がいることには少し驚いたが」

座標破壊 「まさかお前ひとりで俺たち全員を相手にできると思っているのか?」

男 「……お前たちの目的は何だ?」

座標破壊 「なぁに、ちょっとした実験をするだけのつもりだったんだがな」

座標破壊 「『能力体結晶』 による 『絶対能力進化』 ……その可否の実験」

座標破壊 「次から次へと雑魚が現れやがって、そのせいで余計な血がたくさん流れた」

ククク……

男 「お前ッ……!!」

座標破壊 「おいおい、そんな怖い顔するなよ」

座標破壊 「こっちはちょっと春上衿衣に協力してもらいたかっただけなんだぜ?」

男 「……もういい。話す言葉なんか何一つないみたいだ」

ザッ……!!!

男 「風紀委員だ……!! お前たち全員の身柄を拘束する!」

座標破壊 「へぇ……嫌な目だな。本気で正義の味方でも気取ってやがるのか?」

佐天 (……白井さんには、電話が繋がらなかった)

佐天 (今の御坂さんには、これ以上何かを背負ってほしくなかった……)

佐天 (だから、男さんを呼んだ……これは、間違いじゃなかった……!!)

佐天 (この人は……うん! 本物の……本物の……――――)

佐天 「――――――本物の、ヒーローなんだから!!」
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 20:26:13.41 ID:bSd9vOaPo
座標破壊 「ふぅん……」

男 「………………」 ジリッ

木山 「お、男くん気をつけろ! そいつの能力は 『空間移動』 の系列だ!」

木山 「瞬時に座標攻撃が飛んでくるぞ!!」

男 「ッ……!」 (なら、先手必勝だ……!!)

タッ……!!!

座標破壊 「……ま、そりゃ座標攻撃できる奴に対しては距離を詰めるのが定石だろうな」

男 (動いてさえいれば、たとえ座標攻撃といえど簡単には当てられないはず……――――ッ!?)

――――――ゴォォォオオオオオオ!!!!

男 「ぐっ……!?」 (炎……!? 『発火能力』 か……!!)

――――ズザァァァアアアアア!!!

発火能力 「ちっ……避けやがったか」

座標破壊 「へぇ……横からの不意打ちをよく避けたな」

男 (大丈夫。訓練で身体に叩き込んだ体捌きはしっかりと動いてる……!)

男 (やれる。僕は、上条くんや御坂さんのような、)

男 (――ヒーローに、なれる――――)


                       「座標軸固定。破壊」


                                ―――――――グチャッ……
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/05(火) 20:27:55.41 ID:/3Sqz69E0
勝手な私見ですが、地の文にした方がもっと面白くなるのではないでしょうか......
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 20:34:33.22 ID:bSd9vOaPo
男 「は……?」

木山 「ぐっ……がッ……!!!?」

枝先 「木山、先、生……?」

佐天 「!? 木山先生……!! 腕が……!!」

春上 「先生……!? 先生!!」

男 「なん、で……?」

座標破壊 「……おい、ヒーロー気取りの風紀委員」

男 「何で、こんな……」 ギリッ 「どうして僕じゃなく、先生を……!!」

座標破壊 「馬鹿だな、お前。悪者が素直に戦うとでも思ってたのか?」

男 「お前……ッ」

座標破壊 「……ってか、お前、ヒーローじゃねぇな」

座標破壊 「ヒーローってのは、もっと完ぺきなモンだろ?」

座標破壊 「くく……なのに何だよ、このザマは」

座標破壊 「お前、何一つ守れてねぇじゃねぇか。はは、傑作だな」

佐天 「木山先生!? 木山先生!!!」

木山 「大丈夫、だ。……大した、怪我では、ない……!」

座標破壊 「……お前、ヒーロー失格だよ。とんだ雑魚がやって来たもんだな」
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 20:35:46.60 ID:bSd9vOaPo
男 「………………」

枝先 「先生……! 先生……」

男 「僕、は……」

座標破壊 「……くだらねぇ。メンタルまで弱いんじゃ救いようがねぇな」

座標破壊 「やれ」

肉体強化 「ああ」

ダッ……――――――――ドゴォッ!!!

男 「がッ……!?」

――――ドサッ……

佐天 「男さん!?」

男 「くっ……く、そ……」

座標破壊 「こんなのが風紀委員なのかよ。どうしようもねぇな、この街は」

座標破壊 「……さて、邪魔者が今度こそいなくなったところで……春上衿衣」

春上 「………………」 キッ 「……あなたは……あなたは……!!」

座標破壊 「おうおう。そう怖い顔をするなよ」
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 20:36:44.50 ID:bSd9vOaPo
座標破壊 「これ以上誰かを傷つけてほしくないなら、ほら、さっさと 『体晶』 を使え」

春上 「………………」

枝先 「衿衣、ちゃん……」

木山 「……ダメ、だ……春上、くん」

佐天 「春上さん……」

座標破壊 (ん……? しかし 『体晶』 はどこに……――――)


――――――ユラリ……


春上 「え……?」

座標破壊 「あん?」

男 「………………」 フラフラ 「……そう、か……」

佐天 「男さん……!!」

肉体強化 「……興ざめだな。そんな足下もおぼつかない状態で何ができる」

男 「……僕、は……」

座標破壊 「……いいよ、俺がやる」

スッ

座標破壊 「座標軸固定。破か――――――」



                         「――――僕は、ヒーローにはなれないんだね」



――――――ギギギギギギギギ……!!!!!
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 20:37:30.32 ID:bSd9vOaPo
座標破壊 「ッ……!?」

……ギギ……ギギギギ……ギギギギ……!!!!

男 「――――――」

座標破壊 「これは……?」 ハッ 「お前……!! その手のケースは、『体晶』 の……!!?」

男 「――――――」

ギギギギギギギギギギ……ギギッ……!!!

男 「――――演算――アルゴリズム――――簡易――――平均……――――」

男 「――――演算――――変更――――――新――編成――――」

男 「―――――正規――――――認識――――」

男 「―――――新規――――――領域――――」

男 「―――――思念――――――直結――――」

座標破壊 「なんだ……? この耳鳴りのような、不快な音は……」

佐天 「………………」 (何で、だろう……?)

佐天 (男さんは、立ち上がってくれた……なのに、どこか不安……ううん、怖い)

佐天 (……どうして? 私はどうして……) キュッ (どうして、男さんのことを……)

佐天 (男さんのことを、“怖い” なんて思ってるの……?)

男 「――――――」

――――ゾワッ……!!

佐天 「ひっ……!?」
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 20:38:52.04 ID:bSd9vOaPo
木山 「なんだ……? これは……この、妙な耳鳴りは……」

枝先 「……怖い……何だろ……あのひと、さっきと全然違う……」

子供1 「………………」 ガタガタガタ…… 「……こわいよぉ……」

佐天 「だ、大丈夫だよ……」 ギュッ 「あの人は、正義の味方だよ?」

男 「――――――」

佐天 (何……? あれは、私の知ってる男さんじゃ……ない……?)

アニェーゼ 「何だって、言うんですか……?」

アンジェレネ 「男、さん……?」

ルチア 「彼は、一体……」

男 「――――――」

座標破壊 「ッ……!! 死に損ないはそこで寝てろ……!!」

男 「――――――」

………………スッ――――


――――ギィィィィィィンンンンンンン!!!!!!


座標破壊 「――っがッ……!!?」 (何だ……!? 耳鳴りが、急激にッ……)

春上 「ひあッ……!!」 ガクッ

枝先 「ひっ……!!」 ガタガタガタ

発火能力 「ッ……!? なん、だ、この……」

発電能力 「頭を……ッが……!?」

空力操作 「内側から……撫でられるような感じは……ッ!!」

肉体強化 「ぐっ……演算が……!?」

アニェーゼ 「……!? 何だってんです!?」

佐天 「な、何……!? 何が起こってるの……?」

木山 「春上くん!? 枝先!!」 (能力者だけが苦しんでいる……これは、まさか……!)

男 「――――――」

ニィ

木山 「……!?」 ゾクッ
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 20:39:43.29 ID:bSd9vOaPo
木山 「男くん!! 君は……まさか、『能力体結晶』 を……!?」

男 「はは……なんだ、簡単なことだったんですね……」

ニィィィ

男 「…… “幸せ” をつくるには、幸せを壊すモノを壊せば、いいんですね」

男 「……これが、正しい演算……これが、正しい、僕の答え……」

木山 「君は……自らの能力を捨てるつもりかッ!!?」

男 「捨てる? はは……ひどいなぁ、木山先生。違いますよ」

男 「今わかったんです……これが、僕の能力の本質なんだって」

男 「“幸せを壊すモノを内面から壊し、幸せを守る”」

男 「それが、僕の能力の本当の有り様なんです」

男 「こんな……こんな理不尽なことをする連中を、壊して壊して壊し尽くせば……」

男 「ねぇ、木山先生? いずれ世界は幸せで満たされますよね?」

木山 「っ……そのための能力暴走……そのための 『AIMジャマー』 というわけか……」

男 「? 分からないけれど、考えてみたら簡単なことなんですよね」

男 「――人間の脳波に干渉して、『自分だけの現実』 を揺らがせることくらい」

男 「僕の能力―― 『幸福御手』 を、少し暴走させれば」
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 20:41:22.74 ID:bSd9vOaPo
佐天 「『AIMジャマー』 ……?」

木山 「……君もよく知っているだろう? 『キャパシティダウン』 と同じようなものだよ」

佐天 「……!? 『キャパシティダウン』 ってあの、テレスティーナが使ってた……!?」

木山 (しかし…… 『AIMジャマー』 と同じ力を、彼は単体で使っているというのか……)

木山 (あれの使用には、膨大な処理能力を持つプロセッサと大容量のサーバが必要不可欠なはず……)

木山 (……機械に頼ることなく、レベル2の演算能力でそれををまかなっているとすれば、)

木山 (――このままでは脳髄に負荷がかかりすぎて、彼が……)

―――― ((『幸福御手』 ……これは、一歩間違えれば、相手の脳波を掌握しうる最悪の能力となる))

木山 (そして彼の能力を考えれば……これだけで済むはずがない……!)

春上 「……ダメ……ダメなの……!!」 ガタガタガタ

佐天 「春上さん! 春上さん!?」

春上 「それはダメなの……とっても、暗くて……怖い、ものだから……」

木山 (……!? 男くんの感応力に、春上くんの感応力が共鳴しているのか……!)

木山 「止め、なくては……!!」 ズキッ!! (ぐっ……傷が……ッ!)

座標破壊 「――――っ……ふざけてんじゃ……ねぇよクソッタレが!!」

男 「……はは」
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 20:42:25.12 ID:bSd9vOaPo
座標破壊 「……ッ!! 何を、笑ってやがるんだよ……!!」

男 「うん。オマエ、うるさいよ」

スッ………………ギギギギギギギギ……!!!!

座標破壊 「がッ……!?」 (な、ん……だ……!?)

――――――シアワセ――――

座標破壊 (頭……の、中に……何かが、入って……!!)

木山 (これが、彼の……能力の暴走……その、真価……)

男 「ははははははは。もう、何でもいいよ。暴走でも、何でも」

男 「だって、僕は弱いから」

男 「僕には白井さんのような能力はない。御坂さんのような強さはない。……そして、」


男 「――――上条くんのようには、なれないから」


座標破壊 「がっ……あッ……!!」

男 「……だったら、もういいよね。僕には、こんな風にしか、できないから」

男 「だから僕は、僕の能力で……オマエたちを内側から壊す……」

男 「……ヒーローになれない僕には、それくらいしかできないから」
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 20:43:18.40 ID:bSd9vOaPo
枝先 「ひ……あ……」 ガタガタガタ

子供1 「怖いよ……怖いよぅ……」

春上 「ダメ、なの……こんなの、ダメ……」

男 「………………」

座標破壊 「が……ぐッ……」

佐天 「………………」 フルフル 「……違うよ。こんなの、違うよ」

佐天 「男さん! こんなのって、おかしいよ!!」

男 「……? 佐天さん……?」

佐天 「男さんはヒーローでしょ? ヒーローはこんなことしないよ!!」

佐天 「あなたには見えないの!? あなたの能力で苦しんでる、春上さんたちの姿が!!」

男 「………………」

男 「……僕は、やっぱり、ヒーローじゃないです」

男 「僕は弱い。僕には誰も守れない。僕は……ヒーローには、なれない」

男 「……ごめんなさい、佐天さん」

佐天 「そんな……そんなのって……」 グスッ 「そんなのって、おかしいよ……」
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 20:44:57.84 ID:bSd9vOaPo
男 「………………」

男 (……思えば、いつも誰かが傍にいてくれたから、僕は僕でいられたんだ)

男 (上条くん、青髪くん、土御門くん、御坂さん、初春さん、固法さん……そして、白井さん)

男 (頼れる友達やヒーローが傍にいてくれたから、僕は僕でいられたんだ)

男 (……やっぱり僕はヒーローなんかになれないよ)

男 (こんなに弱いもん。だから、自分の怒りが抑えられない)

男 (助けたくて……けど、弱いから、助けられない……)

男 (僕は……――――――)


―――― 『……学園都市を、守ってくれ――』


男 「ッ……! 上条、くん……」


―――― 『そうしょげないの。能力なんてなくったって、本当に強い奴は強いもんよ?』


男 「御坂さん……」


―――― 『ふふ……それに、たとえ道を踏み外したとしても、わたくしが道を正して差し上げますから』


男 「白井さん……僕、は…………――――」




                       「――――約束、致しましたものね」



                      ……クスッ……
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 20:48:15.80 ID:bSd9vOaPo
――――ットン……


男 「へ……?」


                    ……ギュッ……


?? 「遅れてしまいました。ごめんなさいですの」


佐天 「あ……」

            ……ギギ……ギギギギギ…………

?? 「もう、いいんですのよ。無理をなさらなくとも」


木山 「……まさか、抱き締めるだけで、能力の暴走を止めるとはな」

            ………ギギギ………ギギ……ギ……

?? 「……あなたは弱い。たしかに、それはその通りですの」


アニェーゼ 「……なんですか……? この、聖母のように、優しい声は……」

            …………ギギィ……ギ………………

?? 「けれど、弱いヒーローがいてもいいではありませんの」

?? 「弱さを乗り越えて、ありのままの自分の強さで、能力で……」

ニコッ

?? 「……わたくしは、それだけで立ち向かうあなたのことを、お慕いしているのですから」

男 「………………」 グスッ 「本当に……遅い、ですよ……」

男 「――――――――白井さん……」

白井 「ESP研に携帯電話の電波が届かないとは存じませんでしたので。ごめんなさいですの」 ニコッ


            ………………ギィ……ギギギ……………………――――――――
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 20:48:57.02 ID:bSd9vOaPo
――――――………………

ルチア (場の空気が、一変した……?)

ルチア (まるで、枯れ果てた大地に天使の福音が降り注ぐかのように……)

ルチア (この場が、静寂と平穏を取り戻した)

ルチア (………………) フッ (……科学サイドも、そう捨てたものではないのかもしれませんね)

アンジェレネ 「……私の、見間違い、でしょうか……?」

ルチア 「……? なんですか、シスターアンジェレネ?」

アンジェレネ 「あの少女の背に、神々しい光が……」 ニコッ 「とても神々しい光が、見えます……」

ルチア 「……もしかしたら、見間違いではないかもしれませんね」

佐天 「……やっぱり、男さんは白井さんがいないとダメだね」 ニッ

? 「あら? 私たちも忘れないでよね」

佐天 「ネムちゃん! ディズちゃん!」 クスッ 「……空気、読んだんだ?」

ディズ 「当たり前でしょ。さすがにあんなふたりの間に割り込めないわよ」

ネム 「さて……これで役者は揃ったわよ?」

佐天 「へへ……」 グッ 「……風紀委員の真価、発揮だね」
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 20:50:06.86 ID:bSd9vOaPo
座標破壊 「がっ……」 ガクッ!! 「……何だ? おさまったのか……?」

発火能力 「……ちっ…… 『自分だけの現実』 がグチャグチャにされた気分だ」

空力使い 「だが、この程度なら簡単に立て直せる……」

発電能力 「……ああ」

肉体強化 「たかだかひとり雑魚が増えただけのこと」

座標破壊 「……潰すぞ」

座標破壊 「ここにいる連中全員残らず潰す……!!!」

白井 「あらあら、物騒なことを言う殿方ですのね」

白井 「……男さん、いけますわね?」

男 「ええ。もちろん」 スッ 「……ネム!! ディズ!!」

ネム 「はいはい」

ディズ 「分かってるわよ」

男 「ネムは僕の近くで動作アルゴリズムを僕に、ディズは上空から鳥瞰視界を僕に」

男 「リーダー格の男は座標攻撃をする! 気をつけろよ!」

ネム 「了解!」 タッ……!!   ディズ 「やってやるわよ!」 バサッ……!!

男 「……ごめんなさい、佐天さん、木山先生」

佐天 「えっ……?」

男 「今度は……今度こそは、しっかり守りますから……!!」

木山 「ふっ……ああ、頼んだぞ……風紀委員」
365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 20:51:10.83 ID:bSd9vOaPo
座標破壊 「ッ……クソが……! まだ分からないのか!!」

座標破壊 「俺の能力はあらゆるものを破壊する。お前たちが何をしようと無駄なんだよ!!」

座標破壊 「座標軸を演算式に入れるだけで、お前たちは一瞬にして弾け飛ぶ!!」

スッ…………――

白井 「――――あら、そうですの?」

座標破壊 「!?」 (背後だと……!?)

ブゥン……!!   ドガッ……!!!

座標破壊 「ぐっ……!!!」

白井 「……ふふ、なら、その演算の暇も与えなければいいだけのことでしょう?」

座標破壊 「お前……テレポーターか……!!」

白井 「同じ 『空間移動』 系列の能力同士……仲良く致しましょう?」 ニコッ

発火能力 「くっ……リーダー!!」

ゴォォォオオオオオ……!!!

発火能力 「喰らえ――――」

男 「――――おっと、君たちの相手は僕だよ?」

発火能力 「!?」

ブゥン!!!  ガッ……!!!

発火能力 「ぐっ……!!?」 (こいつ……! 『体晶』 の影響が残っていないのか!?)

男 「白井さんはその座標攻撃能力者をお願いします! 僕は残りのレベル4の相手をします!」

白井 「……了解ですの!」
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 20:51:48.84 ID:bSd9vOaPo
発電能力 「ッ……!! 雑魚のくせにレベル4を四人も相手にできると思っているのか!!」

バヂバヂバヂヂヂヂヂ!!!!!

男 「ははっ……能力の発動が遅いよ」

ザッ……!!

発電能力 「ッ……!!?」 (なんだ、この素早い動きは……!?)

男 「残念だけど、僕にはとある 『電撃使い』 の友達がいてね」

男 「彼女だったら、攻撃を気取られる前に僕を撃ち抜いてるよ」

ニコッ

発電能力 「っ……!?」 (懐に、潜り込まれ……――――)

――――――ドゴォォォオオッッッ!!!!

発電能力 「がッ……!!」

男 「……電撃自体のスピードは、もちろん変わらない」

男 「けれど、発動のタイミングが遅ければ、それだけ避けるチャンスも大きくなる」

男 「君程度じゃ、ネムの演算アルゴリズム借りた僕には追いつけないよ」

男 「……――まずは、一人目」
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 20:52:52.80 ID:bSd9vOaPo
発火能力 (発電能力者がやられたか……だが)

発火能力 (くくっ……悦に入ってる今、お前の背中はがら空きだぜッ……!!)

ゴォォォオオオオオオオオオオ!!!!

発火能力 「もらった……!!!」

男 「!?」

ザッ……――

発火能力 「遅い!!」

――――――ゴァァアァァァアアアアアア!!!!

枝先 「あっ……!!」

発火能力 「くく……はははははは!!! 燃え尽きろ雑魚が!!」


――――――――ズザッッッッ……!!!!!


発火能力 「なッ……!!!?」 (炎を突き抜けただと……!?)

男 「――――無理に避けようとするんじゃなく、突っ込んだ方が被害は少ないからね」

男 「それにしても、レベル4の炎ってのはこんなものなんだね。興ざめだよ」

ザッ………!!!!

            ――――――ドゴォォオオオオオオオ!!!!


発火能力 「ごッ……!!?」

男 「……この程度じゃ、あの本物の炎には遠く及ばないね」

男 「『魔女狩りの王』 っていう、本物の異能の炎にはさ」

男 「――……二人目」
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 20:53:43.99 ID:bSd9vOaPo
空力使い 「………………」

ゴォォォオオオオオ!!!!

空力使い (空気のハンマー……悪いな、発火能力者……お前ごとやる……!!)

空力使い (このタイミングなら気づかれない……!!)

――――――ゴォオッッッ!!!!

男 「………………」

空力使い (吹き飛べ、風紀委員!!)

……――――ザザザッ!!!!

空力使い (なっ……!? こちらに背中を向けながら避けただと!?)

男 「……何のために “彼女” が空をから僕らを見下ろしていると思ってるんだい?」 ニィ

空力使い 「なん、だと……?」

ディズ 「………………」

男 「ディズの視覚は僕の視覚ってことさ。空から君たちの行動を把握しているんだから、」

男 「――僕に死角なんかできるわけがないだろう?」


                 ――――――――ドゴォォオオオッ!!!!


空力使い 「ぐッ、が……!!」

男 「……それともうひとつ。鳥類の演算アルゴリズムには、急な突風の受け流し方ってのもあってね」

男 「それを参考にすればあの程度の空気の塊、少し重心をずらすだけで避けられるよ。残念だったね」

男 「……――三人目」
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 20:54:53.76 ID:bSd9vOaPo
男 「……最後のひとりは……」

肉体強化 「………………」

男 「……へぇ? 律儀に待っててくれたんだ?」

肉体強化 「俺はそこで倒れている馬鹿共とは違う」

肉体強化 「不意打ちなどという姑息な手段を使うから、本来の能力を引き出せんのだ」

男 「なるほど……たしかに、それは言えてるかもね」

男 「レベル4に面と向かって本気の力を出されたら、不意打ちより面倒だ」

肉体強化 「……そうだ。だから俺は本気で潰すぞ、風紀委員」

男 「……来なよ。僕も、さっき吹き飛ばされた借りを返さなきゃだからね」

男 「それから、アニェーゼさんたちをあそこまで痛めつけたのも君だろう?」

男 「……悪いけど、僕も本気で行く。少しだけ怒っているんだ」

肉体強化 「………………」 フン 「……くだらんな。先の暴走で俺たちを壊しておけばよかったものを」

男 「……ははっ……」

肉体強化 「……? 何が可笑しい?」

男 「分からない? それは、ヒーローのやることじゃないんだよ」

肉体強化 「なんだと?」

男 「……僕は、やっぱりヒーローになりたいんだ」

男 「けど、僕には君たちを “止められる” ような能力はない」

男 「だから、僕の憧れる “彼” に倣う」

ググッ……グググググッ……!!!!

男 「暴走なんかじゃない、この拳一つで、立ち向かう。君たちを “壊す” のではなく “止める”」

男 「ヒーローになることを諦めない」

男 「……僕は弱い。だから、僕は “彼” と違って、ひとりじゃ何もできない」

男 「けど、大切な、大好きな、頼もしい仲間がいてくれれば、僕は、ヒーローになれるんだ」

肉体強化 「ふん……やれるものならやってみろ。この、人類を超えた膂力を持つ俺を、」

肉体強化 「――――倒せるものなら倒してみせろッ!!!」
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 20:55:35.18 ID:bSd9vOaPo
………………

座標破壊 「………………」

白井 「………………」

 似通った性質を持つ二人の能力者の対峙。

 それは即ち、一瞬でも気を許せば敗北するという事実を示していた。

 実際に戦っているわけではない。

 しかし水面下ではお互いの動きを注視し、相手の隙を探り合う戦いが続いていた。

白井 「………………」

座標破壊 「………………」

 お互いに何度かの攻防はあった。

 白井黒子が手元のガレキを座標破壊の頭上に飛ばし、座標破壊がそれを回避する。

 座標破壊が白井黒子の位置座標を歪ませ、白井黒子がそれをテレポートで回避する。

 お互いに決定打どころか、かすり傷ひとつ負わせることすらできていなかった。

座標破壊 「……ふん。さすがはテレポーター。こちらの手の内はお見通しか」

白井 「と、いうよりは、わたくしたちの能力が相互干渉を起こしているのですわね」

 隙を見せたフリをするため、はたまた相手に隙を作らせるため。

 11次元絶対座標に直接干渉することができる希有な能力者たちが口を開く。

座標破壊 「AIM拡散力場の影響か……なるほどな」

白井 「ええ。わたくしたちはお互いに似通った能力の持ち主ですもの」

座標破壊 「“なんとなく” の回避ができるってことか……」

座標破壊 「……しかし、そんな悠長に構えていていいのか?」

白井 「何がですの?」

座標破壊 「あっちの風紀委員、戦闘向きじゃないだろう? それに 『体晶』 の影響も残っている」

白井 「………………」

座標破壊 「……死ぬぞ?」

白井 「………………」

クスッ

座標破壊 「……?」

白井 「……何を言っているのやら。あの方は風紀委員ですのよ?」

白井 「あなた方のようなゴロツキに負けはしませんの」

座標破壊 「ふぅん……」

ニヤリ

座標破壊 「だが、今まさにやられそうだが?」

白井 「………………」
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 20:56:10.05 ID:bSd9vOaPo
………………

男 「オォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

ザッ……!!!!!   ――――――ドゴォオオオッ!!!

肉体強化 「………………」

肉体強化 「ふん。この程度か?」

男 「くっ……まだまだ、だッ!!!」

――――ドガッッッッ!!!!

肉体強化 「浅いな。膂力が足りない。その程度の拳と脚では、俺の筋肉の鎧は貫けない」

男 「言わせておけば……ッ!!!」

――――ズガァァァアアアッ!!!!

肉体強化 「………………」

――――――ガッ!!!

男 「……!!?」 (手を……!? まず――)

肉体強化 「――だから浅いと、」 ブゥン……!!!! 「言っている……!!!」

ドガァァァァアアアアアアッッッ!!!!!

男 「ぐっ、がッ……!!?」
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 20:57:37.73 ID:bSd9vOaPo
肉体強化 「………………」

男 「………………」

           ――――――――…………………………ガクッ…………

佐天 「男さん……!!」

肉体強化 「……無駄だ。無防備な鳩尾に俺の渾身の拳を入れた」

肉体強化 「ある程度鍛えていなければ死んでいただろうが、運が良いな」

肉体強化 「……とはいえ、もう二度と立つことなど叶うまいがな」

佐天 「男さん……男さん!!!」

木山 「男くん……!!」

枝先 「男さん!!!」

春上 「……お願い、なの……」

肉体強化 「……無駄だ。生体工学的に無理だ。それだけの衝撃を与えた」

肉体強化 「内臓も潰れているだろう。このまま放っておけば、勝手に死ぬ」

アニェーゼ 「……我らが父よ」

ルチア 「……かの、異教徒に……」

アンジェレネ 「……今一度、立ち上がる力を……!!」

肉体強化 「はっ……神様に祈ってどうにかなるんだったな、この世界は今よりずっと良くなっている」

肉体強化 「誰の不幸も、誰の理不尽も、この世界は救ってくれやしない」

肉体強化 「俺はそれを知っているから、努力して力を得た。二度と、不幸に合わないように」

ニヤリ

肉体強化 「そうして手に入れた力だ。好きなように使ったって誰にも文句を言われる筋合いはない」
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 20:58:16.44 ID:bSd9vOaPo
佐天 「ッ……!! ふざけんな! そんなわけないでしょ!!」

佐天 「この街には風紀委員がいる! アンチスキルがいる!」

佐天 「そんな勝手がまかり通るはずがないんだよ!!」

肉体強化 「……はは、傑作だな。そんなのが本当に機能していると思ってるんだから笑える」

肉体強化 「この街の闇を知らないのならそれまでだ。闇に飲み込まれたときに、そのまま死ぬだけだ」

木山 「………………」

肉体強化 「だが、その闇を上手く利用すれば、俺たちのようになれる」

佐天 「……?」

肉体強化 「……俺たちはな、今まで何人もの低位能力者をゲームの対象にしてきた」

肉体強化 「『無能力者狩り』 ……あれは楽しかったな……くく……」

佐天 「は……? 無能力者、狩り……?」

肉体強化 「制限時間内にレベル0の屑共を何人狩ることができるか、とかな」

春上 「!? なんてことを……」

肉体強化 「おいおい、最初に俺たち能力者に舐めた真似してきたのはレベル0の方だぜ?」

肉体強化 「……正当な報復だよ。それをちっとばかしゲーム調に楽しんでただけのことだ」

佐天 「アンタ……ッ!!」 ギリッ 「そんなことが許されると思ってるの!?」

肉体強化 「はっ……だがな、今まで一度として俺たちは捕まったことはないんだよ」

肉体強化 「なんたって学園都市内で稀少なレベル4の集まりだからな」

肉体強化 「上が勝手に事件をもみ消してくれるのさ。ありがたい話だ」

肉体強化 「……分かるだろ、“先生” ? 元研究者としては、稀少な能力者を保護したいという気持ちがさ」

木山 「っ……」
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 20:59:03.42 ID:bSd9vOaPo
肉体強化 「……ま、どっかの “最強” のせいでそれもちぃっと休止状態だけどな」

肉体強化 (あの野郎……俺たちを全部潰す気だったんだろうが、甘かったな……)

肉体強化 (駒場の野郎も、今際の際に学園都市第一位に意志を託すなんてな。皮肉すぎて笑えねえ)

肉体強化 (だが、駒場も俺たちの全容を把握していたわけじゃない。『能力結社』 も大分頭数を減らされたが、)

肉体強化 (『発電能力』 の野郎がクラッキングで繋がりを断った。一方通行は俺たちを追い詰めきれなかった)

肉体強化 (まぁ、無能力者狩りは休止せざるをえなくなったが……こうして新しいオモチャで遊ぶことができる)

肉体強化 「くく……どうせ俺たちは捕まらない。俺たちは何をしても許される」

肉体強化 「なんせ、貴重なレベル4だからなぁ!!」

ルチア 「ッ……! メチャクチャなことを……!!」

肉体強化 「だが、真理だ。悔しければ高位能力者になるんだな」

肉体強化 「……俺たちとお前たちは違う。価値が段違いなんだよ」

肉体強化 「特にこんな施設に入れられたような連中はな」

枝先 「……!」

肉体強化 「無価値だな。能力レベルだけじゃない。学力にまで差がついている」

肉体強化 「くく……ここまで無価値な人間がいるってのが驚きだ」

枝先 「っ……そんなこと……そんなこと、ない……」

春上 「絆里ちゃん……大丈夫なの。すぐに追いつけるの」

肉体強化 「そうだ。そうやって無価値同士、傷をなめ合ってればいい」

佐天 「………………」 ギリッ 「……アンタはッ……!!」

肉体強化 「あん……?」

佐天 「アンタなんか、レベル4じゃない……ッ!!!」
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 21:00:42.28 ID:bSd9vOaPo
肉体強化 「……はぁ?」

佐天 「私の知ってるレベル4だったら、そんなことは言わない……!!」

佐天 「そして “あのひと” だったら、そんなことは言わない……!!」

佐天 「誰にだって価値はある! なりたい何かを目指して、なりたい自分を目指して、」


佐天 「――――そうやって未来に向かっていくすべての子どもに、価値があるんだ!!」


佐天 「能力だけが絶対じゃない! この学園都市はみんなが生きる街……みんなが成長していく街……!!」

佐天 「この街は……学園都市は、アンタたちみたいな連中のオモチャじゃない!!」

肉体強化 「……ふん。うるさい奴だ。なんだ? レベル0なのか、お前?」

肉体強化 「コンプレックス刺激されたからって吠えてるんじゃねぇよ」

ザッ……!!!

肉体強化 「次はお前だ。潰してやるよ、レベル0」

佐天 「………………」 キッ

肉体強化 「……?」 (なんだ、こいつ……? 怖くないのか?)

佐天「……私はアンタたちなんかに屈しない。私は、本当に強いひとを知っているから」

佐天 「“あのひと” だったら……あの学園都市第三位だったら、そんなこと、絶対に……――――」


「――――ええ。そうね、佐天さん。絶対に、許さないわ」


――――――――ッッッッッッッッッッッドンンンンンンッッッッ!!!!!

肉体強化 「……!!!?」 (オレンジ色の、光の束……!? これは、まさか……!!)

?? 「佐天さんから離れなさい。さもないと、本気で当てるわよ? それとも、喰らってみたいのかしら?」

……バリッ……バリバリッ……!!!

御坂 「――――この、『超電磁砲』 を」
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 21:02:18.01 ID:bSd9vOaPo
肉体強化 「なっ……なぜ、こんなところに、常盤台の超電磁砲が……!?」

木山 「君が、なぜ……?」

御坂 「……はん、ちょーっと更生した誰かさんの様子でも見てやろうかなーって来たら……」

ギロッ

御坂 「アンタら、何とんでもないことやってくれてんのよ……!!」

佐天 「御坂、さん……」

御坂 「……ごめんね、佐天さん。もしかして、気、遣わせちゃったかな」

佐天 「えっ……?」

御坂 「……まだ、結論は出てないけど、私は大丈夫だから」

御坂 「だから、今度こういうことがあったらすぐに呼びなさいね? 約束よ?」 ニッ

佐天 「あ……は、はい……!!」

肉体強化 「っ……!!」 (俺の相手が超電磁砲だと……!? そんなの、勝てるわけが……!)

御坂 「あら? 随分おもしろい顔をしてるけど……アンタの相手は私じゃないわよ?」

肉体強化 「なっ……? 何だと……?」

御坂 「……ま、正直、私が本気でぶちのめしてやりたいトコロなんだけど、」

御坂 「どいつもこいつも、譲る気はなさそうだしね。仕方ないわ」

肉体強化 「な、にを……――――――」


                     「――――――――ありがとう、御坂さん……」


肉体強化 「……ッ!!?」 バッ!
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 21:04:02.88 ID:bSd9vOaPo
男 「………………」

フラ……フラ……

肉体強化 「ばっ……馬鹿な……!? 立てるはずがない!」

肉体強化 「臓器そのものにまでダメージがいっているはずだ! それでなぜ立てる……!?」

男 「……立つさ……当たり前だろう?」

男 「……ヒーローだったら、絶対に立つ。だったら、僕も、立ち上がらなきゃならない……」


          ググッ……グググググッ……!!!


男 「立つよ……何度だって……何度、倒れたって……」

男 「仲間の、力を借りて……守るべきひとの、応援を聞いて……」

男 「……そうやって情けなく、かっこ悪く立ち上がる……君たちのような人間に、立ち向かう……!!」

男 「一流の悲劇なんかいらない……! 三流でも、馬鹿馬鹿しくても、ありきたりでも……ッ!」

男 「みんなが笑って過ごすことができる……そんな当たり前の “幸せ” を守るためにッ!!」

肉体強化 「ッ……この死に損ないがぁぁぁぁぁあああああああ!!!」

ダッ……!!!!

肉体強化 「潰れろ……!!! 風紀委員!!」

枝先 「男さん……!!!」

御坂 「……大丈夫よ」

枝先 「えっ……?」

御坂 「だってアイツは……」 ニコッ 「“ヒーロー” だもの」
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 21:05:03.53 ID:bSd9vOaPo
男 「………………」

ザッ……!!!

肉体強化 「避けられると思うなッッ!!!」


――――――――――――――ドガァァァァアアアアアッッッ!!!!


木山 「!!?」 (圧倒的な身長差で、上から……!!)

佐天 「お……男さん!!?」

肉体強化 「………………」 (頭上からの全力の拳だ……いくらなんでも――――)

――――――――ググッ……!!!!!!

肉体強化 「!? なっ……んだとッ……!?」 (コイツ……俺の拳を、両腕で受け止めたのか……!?)

男 「……知らないのなら教えてやる……猫って、襲いかかるより待ち伏せする方が得意なんだよ」

肉体強化 「……!?」

男 「不思議だよ。本当に。何故か、今は意識が鮮明なんだ。感覚が、知覚が、広がっていく気がするんだ」

キィ……キィィ……――

―――― 『「ねことあひると人間の三者間で脳波を繋げる」 。それがアンタの能力の本質』

―――― 『なら、それをしっかりと認識した上で能力を使ってみなさい。それだけで大分違うはずよ』
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 21:05:52.15 ID:bSd9vOaPo
男 「……うん。分かる。ネムの身体の動作。ディズが送ってくれる視界。その全てが、分かる。処理できる」

――――…………キィィィィィィィィィィィィィィィイイイイインン…………!!!!

男 (新しい演算アルゴリズムの構築。その、最初の一歩)

男 (波動を感じろ。脳波という微弱なパルスを、繋げきる。処理しきる)

男 (僕――術者の身体への命令を円滑に。直接、対象二体の演算アルゴリズムを叩き込む)

男 (身体動作に “思考” に混ぜるな。ただ純粋に、演算そのものを、機械のように現出させる)

男 (そう。限定的に “人類の枠” を超越する。脳内に独自の運動領域を形成する)

肉体強化 「……ッ……!!」 (何が……一体、こいつは、どうして、何を……これは、どういう……!!?)

肉体強化 (ちがう。悩むな。考えるな。演算が乱れる。筋力が……――――)

男 「――……それにしても軽いな……」 ギリッ 「この程度の拳、軽すぎて笑えてくる……!」

グッ……ググググッ……!!!

肉体強化 (この俺と……力で拮抗しているだと……!?)

男 「……君も、そこで倒れてる彼らと同じだよ」

男 「この程度の能力……僕の知っている、とあるヒーローの拳に比べたら、」

男 「――――軽いにも程があるッ!!!」

ググググググッ……!!!!
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 21:06:23.70 ID:bSd9vOaPo
………………

春上 「すごいの……」

枝先 「あれが、風紀委員……あれが、正義のヒーロー……」

アニェーゼ 「なるほど……」

アンジェレネ 「……なんか、デジャヴ……感じて、しまいますね」

ルチア 「……彼と、同じ……なのでしょうね」

木山 「……ふむ。まるで、いつかの君を見ているようだな」

御坂 「くだらないこと言うんじゃないわよ。傷に障るわよ?」

子供1 「……あのおにーさんは……」

子供2 「けふっ……ヒーローさん……」

佐天 「……そう。あのお兄さんは、本物のヒーローさんなんだよ」

男子1 「……すっげーな」

男子2 「うん……俺たちも、いつか……」

男子3 「あんな風に……」

………………

男 「――――うぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

ググググッ……グググググッ……!!!!
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 21:07:31.12 ID:bSd9vOaPo
肉体強化 (ばっ……馬鹿なッ……!?)

肉体強化 (俺が……この俺が……!! 単純な膂力で、押されているというのか……!?)

男 「君がどんな不幸を背負っているのかなんて知らない」

ググッ……ググググッ……!!!!

男 「けれど、そんな強大な力を持っていて、それをこんなくだらないことにしか使えないというのなら、」

――――――ッッッッッダンンンッッッ!!!!!

肉体強化 「ッ……!!?」 (パリィ……!? 俺の拳を、弾いッ―――――しまっ……!?)

肉体強化 (し、しかし俺には鍛え抜かれた筋肉の鎧が――――)



男 「――――――そんな不幸ぐらい、自分で勝手に吹き飛ばせッッ!!」



ドゴォォォォオオオオオオオッッッッ!!!!!

肉体強化 「………………」

――――――ゴフッ……!!!

肉体強化 「馬鹿、な……俺の、筋肉の、鎧を……」

男 「……猫の動作演算アルゴリズムは、何より瞬発力に重きを置いている」

男 「瞬間的な筋肉の動作に関しては人間よりよほど上手だよ」

男 「その動作を僕の拳に取り入れた……おそらくは人類が “出してはいけない” 速度の拳だ」

男 「人体と猫の動作アルゴリズム。その完全な融和。これが君が馬鹿にした低位能力者の力だ」

肉体強化 「ぐっ……きっ……さ、まっ……!」

男 「……この程度の鎧が君の全力だというのなら、鍛え直した方がいい」

男 「まだ “見習い” 程度でしかない僕の拳すら、防ぎきれないのなら、」

男 「――――誰かさんの拳になんて、絶対に、勝てないだろうからね」

肉体強化 「っ……あ……――――」

――――ドサッ……
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 21:12:44.95 ID:bSd9vOaPo
………………

座標破壊 「……ッ……」 (役立たずどもが……!! レベル4が雑魚に負けてんじゃねぇよ……!)

白井 「……とまぁ、こんな具合ですわね」

白井 「アナタ、たかだか悪者がヒーローに勝つことができるなんて、本気で思っていらっしゃいましたの?」

座標破壊 「……くだらねぇ。変わりはしねぇよ」

座標破壊 「まずはお前を殺し、それからこの場の全員を残らず殺す」

座標破壊 「それで終わりだ」

白井 「………………」

クスッ

白井 「……そうですの。ならば、そろそろあなたをどうにかすると致しましょうか」

座標破壊 「ふん。強がるなよテレポーター。お前はずっと俺を睨んでるだけじゃねぇか」

白井 「ええ。まぁ、わたくしだって、恋人の活躍シーンを立てるくらいのことはしますもの」

座標破壊 「……なんだと?」

白井 「あら、分かりませんの?」 ニコッ

白井 「――そろそろ、わたくしも本気でいかせてもらおうと申しておりますのよ?」
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 21:13:59.99 ID:bSd9vOaPo
座標破壊 「吠えるな……!!」

白井 「ふふ……」

座標破壊 (……奴には、どうやら俺が能力を行使する瞬間が分かっているようだ)

座標破壊 (おそらくは同系列の能力の、『AIM拡散力場』 の関係だろう……)

座標破壊 (俺にもなんとなく分かる……。奴が能力を使ってテレポートする瞬間が)

――――ットン……

白井 「……あなたの能力は、11次元絶対座標軸から空間に干渉し、」

白井 「その空間そのものをねじ曲げる能力……といったところですわね?」

座標破壊 「……ああ」

白井 「………………」 クスッ 「……それで、よくそんな偉そうな顔ができますわね」

座標破壊 「!? 何だと……!?」

白井 「11次元絶対座標軸に対しての演算が甘いのですわね。だからそんな中途半端な能力になりますの」

座標破壊 「ッ……!! 中途半端な能力だと……!?」 ギリッ

 瞬間、路傍の石ころが不自然にゆがみ、破裂する。

座標破壊 「俺の能力は何をも破壊する!! ダイヤモンドだろうがなんだろうが、」

座標破壊 「物体の存在する空間をねじ曲げて、どんなものだって破壊することができるんだぞ!?」
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 21:16:36.98 ID:bSd9vOaPo
白井 「……ふふ……そんなこと、わたくしにだって簡単にできますわよ?」

 ザクッ、と。小気味よい音がした。
 目を向けるまでもない。ただの布きれがアスファルトに深々と突き刺さっていた。

白井 「こんな風に物体を飛ばせば、どんなものも破壊することができますの」

座標破壊 「ッ……!!」

白井 「……あらゆる物体を破壊することができる能力……ふふ、その程度がなんですの?」

白井 「わたくしの能力と比べるべくもないと思いますが?」

座標破壊 「テメェ……ッ!」

白井 「自分の能力を驕り、たくさんのひとを傷つけ、馬鹿にし、笑う……」

白井 「アナタのような人間に、風紀委員の正義に勝つことなど絶対にできませんの」

座標破壊 「殺す……!! テメェは絶対に殺すッ……!!」

白井 「……もう終わりに致しましょう」

スッ……

座標破壊 (あの鉄矢……あれを直接俺にぶち込む気か……)

ニィ……

座標破壊 (だが、それさえ避けてしまえば……その瞬間に俺が奴の身体を破壊する……!!)
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 21:17:15.90 ID:bSd9vOaPo
白井 「………………」

座標破壊 (奴の能力発動の瞬間、横に跳ぶ。そしてその直後に奴を俺の能力で……!)

白井 「………………」

――――ッ…………

座標破壊 (――――来るッ……!!)

 それは確信だった。その瞬間。その刹那に、白井黒子がテレポートを使うだろうという確信。

 そしてそれは、確かに当たっていたのだ。

座標破壊 (避けた……!! これで――――ッ……!!?)

座標破壊 (やっ……奴が、いな……ど、どこに――――――)


――――――――――――ットン


座標破壊 「ッ……!?」

 背筋が凍る。

 そのどこまでも軽やかな足音は――――

座標破壊 (馬鹿、なッ……!!?)


                   ――――――――――己の背後から、聞こえた。


座標破壊 (まさかコイツ、鉄矢じゃなく自分自身をテレポートさせたのか……!!?)

座標破壊 (馬鹿な……! コイツ、俺と同じような能力者のくせに、)

座標破壊 (自分から敵の近くにやってくるなんて――――)

白井 「――――お馬鹿さんですわね」

クスッ

白井 「申し訳ありませんが……気絶していただきますわよ?」

ブゥン……!!!!

座標破壊 (っ……!!? 演算が……能力の、発動が……間に、合わ――――)

――――――――ドゴォォォオオオオオオッッッ!!!!

座標破壊 「ごっ……!!?」 (俺が、そん、な……馬鹿、な……)

――――ドサッ……!!
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 21:18:21.41 ID:bSd9vOaPo
白井 「……鉄矢を取り出しのはフェイクですわ」

白井 「どんな屑でも学生ですもの。さすがに鉄矢をぶち込んだりは致しませんの」

白井 「あなたの敗因は、能力に頼るあまり、自分自身を戦力として考えなかったことですわね」

白井 「……わたくしもアナタも、能力を同時多発的に使用することはできない」

白井 「ならば、先に使用させて隙を作らせるというのは良い発想でしたが、」

ニコッ

白井 「――――その程度の浅知恵で、この白井黒子を倒せるなんて思わないでくださいまし」

座標破壊 「………………」

白井 (……この学園都市で、わたくしたちレベル4は確かに稀少な存在ですの)

白井 (ですが、だからといってそれを驕ってはいけない)

白井 (“自分は何をしても許される特別な存在” であるなどと、間違っても思ってはいけないんですの)

白井 「……本当に特別になりたいのなら、そのままレベル5を目指すのがよろしいのですわ」

白井 「レベル2でありながら、レベル5を真剣に目指しているあの方のように……」

座標破壊 「………………」

白井 「側頭部に渾身の回し蹴り叩き込みましたものね。意識はないでしょうが、」

白井 「……覚えておいてくださいな。これが、わたくしたち風紀委員の正義ですの」
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 21:18:59.48 ID:bSd9vOaPo
………………

男 「はは……さすが、白井さんだな……」

クラッ……

男 「っ……」

――スッ……

白井 「……大丈夫ですの?」

男 「あ……うん。まだ、暴走の余波が残ってるみたいで……」

ビキッ!!!

男 「痛ッ……それに、ネムたちの動作演算アルゴリズムを使いすぎたみたいで……全身の筋肉が……」

男 (それに、なんか右手が動かないし熱いし……骨がいかれてるな、きっと)

ネム 「あたりまえよ! アンタの身体はあくまで人間なんだから!」

ディズ 「私たちの動作アルゴリズムをそのまま使ったら、身体に負荷をかけるに決まってるでしょ!」

白井 「それに 『能力体結晶』 なんて危険なモノを自分から飲むなんて!!」

男 「うっ……そっ、そんなことよりも、早く重傷者を病院に運びましょうよ!!」

御坂 「さっきから電話してるんだけど……どうやら救急の回線がどうかしちゃってるみたいね」

男 「あ……なら、僕が直接病院関係者に電話します。ツテがあるので」 ソソクサ

白井 「あっ……」 プンスカ!! 「男さん! まったく……!!」

佐天 「……木山先生、大丈夫ですか?」

木山 「あ、ああ……」 ズキッ!! 「っ……! はは……緊張から解放されたせいか、痛みが増したな」

ルチア 「……応急処置をします。服を破きますよ?」

木山 「ああ……すまないな。君たちは大丈夫なのか?」
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 21:19:47.49 ID:bSd9vOaPo
ルチア 「二人の応急処置は済ませました。私は軽い打撲だけですし」

木山 「そうか……すまない。部外者の君たちまで巻き込んでしまって」

ルチア 「……謝るのはこっちですよ。結局、アナタに怪我をさせてしまいました」

ルチア 「私たちはプロです。なのに、科学を侮ったばかりに、この結果です……」

ルチア 「私は、散々馬鹿にしてきた科学に敗れ、科学に助けられてしまった……」

木山 「ルチアくん……」 フッ 「……何を馬鹿なことを言っているんだ、君は」

ルチア 「……?」

木山 「君たちが頑張ってくださったから、男くんや白井くんが間に合ったんじゃないか」

木山 「本当にありがとう。この街に住まう者として……この子たちの先生として、本当に感謝する」

木山 「……そして、君たちが信じる神ならば、科学しか信じられない私にも、信じられる気がするんだ」

木山 「きっと、君たちのような偉大な聖職者が、十字教の教えを世界に広めたのだろうな」

ルチア 「………………」 プイッ 「……おだてても何も出ませんよ、異教徒。私はまだ修行中の身です」

木山 「ふむ。これは手厳しいな」

ルチア 「……あなたこそ、」

木山 「?」

ルチア 「……あなたのような、子どものために身体を張れるような大人が……本物の “先生” がいるから、」

ルチア 「きっとこの科学の街は成り立っているのでしょうね」 ニコッ

木山 「……ふふ……その褒め言葉、その素敵な笑顔と一緒に、ありがたく受け取っておこう」
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 21:20:16.65 ID:bSd9vOaPo
………………

アニェーゼ 「まったく……この腕でよく術式が行使できたモンですね」

アニェーゼ 「本当に無茶をしたモンです。ヘタをしたら死んでましたよ?」

アンジェレネ 「うぅ……すみません」

アニェーゼ 「………………」 クスッ 「……冗談ですよ。怒っちゃいません」

アンジェレネ 「……?」

アニェーゼ 「……部隊の隊長として鼻が高いですよ」 ニッ 「成長しましたね、シスターアンジェレネ」

アンジェレネ 「えっ、あっ……はは……必死、だったもので、」 ズキッ!! 「っ……!」

アニェーゼ 「……私の足もそうですが、骨から筋組織まで完全に折れちまってますね」

アニェーゼ 「これは恢復術式だけでは治せそうにありません」

アンジェレネ 「………………」

アニェーゼ 「……まぁ、科学ならなんとかしてくれるでしょうが」

アンジェレネ 「えっ……?」

アニェーゼ 「……少しくらい世話になったところで、神を裏切ったことにはならねぇでしょう?」

アンジェレネ 「は……はい!!」
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 21:20:52.96 ID:bSd9vOaPo
………………

枝先 「………………」

ギュッ

春上 「絆里ちゃん……」

枝先 「衿衣ちゃん……わたし……」

春上 「………………」 グッ 「……大丈夫、なの。絆里ちゃんたち、みんながんばってるの!」

春上 「年明けには復学できるって言ってたの!」

枝先 「……うん。でも、私はそんなことより、衿衣ちゃんが心配だよ」

春上 「えっ……? 私なの?」

枝先 「だって……衿衣ちゃん、また同じような人たちに狙われたら……」

枝先 「それに、この人たちだって……本当に捕まるかどうかも分からないし……」

春上 「………………」

白井 「大丈夫ですわ。お二人とも、それに関してはご心配なく」

枝先 「えっ……? 白井さん?」

白井 「この方たちには、今度こそしっかりと、自分たちの罪を償ってもらいますの」

枝先 「で、でも……この人たちはレベル4だから……」

白井 「……そんなことは、絶対にさせませんの。大丈夫。ご心配には及びません」 ニコッ

春上 「うん! 絆里ちゃん、白井さんがこう言ってるってことは、絶対大丈夫ってことなの」

枝先 「……ん! そうだね。だって、白井さんたちは、本物のヒーローだもんね!」
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 21:21:50.30 ID:bSd9vOaPo
………………

御坂 「………………」

スッ……

子供1 「……? おねーちゃん、何やってるの?」

御坂 「動かないで。あんたたちの生体電気を計ってるんだから」

子供2 「せーたいでんき?」

御坂 「感電ってのは怖いものなの。だから、異常がないか調べてるってこと」

御坂 「特にあんたたちみたいな幼児は、感電が元で突然パッタリいったりするんだから気をつけないと」

子供1&2 「「?」」

御坂 「……無理に分かろうとしなくていいわよ」

……スッ

御坂 「大丈夫そうね。心拍にも問題はないわ」

佐天「へへ……よかったね、ふたりとも」 ナデナデ

御坂 「……あなたのおかげね、佐天さん」

佐天 「えっ……? わ、私ですか?」

御坂 「佐天さんがすぐに応急処置をしてくれたから、この子は生きてる」

御坂 「生体電気を計れば分かるわ。あなたの処置が完ぺきだったってことくらいね」

御坂 「……誇るといいわ」 ニッ 「佐天さん、あなたがこの子の命を救ったのよ」

佐天 「わ……私が……」 ジワッ 「……は、はい!!」
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 21:23:15.22 ID:bSd9vOaPo
………………

男子1 「……すっげーよなぁ」

男子2 「ああ、本当にすごかったな……」

男子3 「………………」 グッ 「……俺たちも、強くならなくちゃな」

男子1 「ああ、あの風紀委員みたいに……強く……」

男子2 「枝先たち……それから、木山先生も守れるくらい、強く……」

男子3 「……絶対になろうぜ! あんな風にさ!」

………………

男 「………………」 ピッ 「……さすが先生。話が早くて助かるや」

白井 「………………」 ニコッ 「……お電話は終わったようですわね?」

男 「あっ……し、白井さん……」 ビクッ 「す、すぐに救急車をよこしてくれるそうです」

白井 「そうですの。では、わたくしのお話の続きをしてもよろしいですわね?」

男 「いや、あの……今はなんか良い感じで終わりそうなのでまた後日ってわけには……――」

白井 「――――行くわけがないでしょう?」 ニコッ

男 「……ですよねー」

白井 「さて、まず何から怒ればいいのやら……」

………………

ガミガミガミガミ……!!!!

男子1 「………………」

男子2 「……なりたいか、アレに?」

男子3 「……少し考え直すわ、俺」
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 21:23:47.93 ID:bSd9vOaPo
………………

白井 「――――大体男さんはですね、いつもいつもいつも――――」

男 「………………」 (何で僕みんなの前で怒られてるんだろ……)

白井 「――――聞いてらっしゃいますの!? 男さんは本当に――――――」

男 (うわー……せっかくカッコ良く決めたはずっだったのになぁ……)

白井 「――――本当に、いつもいつもいつもいつも――――」

男 (なんだろう。今この瞬間にも、僕のヒーロー度がガンガン下がってる気がする……)

白井 「――――いつもいつも……いつもいつも……っ……――――」

男 「……?」

ギュッ……

男 「あっ……」

白井 「――――いつも、いつもいつも……無茶ばかり、して……」 グスッ

男 「………………」 クスッ 「……ごめんね、白井さん」

ギュッ……!!

白井 「はうっ……///」

男 「大丈夫だから。僕は、絶対に負けないから……もっと、強くなるから」

男 「……だから、ずっと僕の傍にいてね。僕を、導いてね」

白井 「あわわわわ……」

男 「僕の風紀委員の先輩で、相棒で、憧れのヒーローで……そして、」

男 「――――何よりも大切で、大好きな……恋人さん」

白井 「あうう……」 プイッ 「ずるいお方……」

男 「はは……ごめんごめ――――」

              ――――――バヂヂヂッ……!!!!!

男 「へ……?」 (あ、あれ……?)
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 21:24:18.79 ID:bSd9vOaPo
男 (な、ん……?)

――――グラッ……

白井 「……? 男さん、どうされたんですの? 少し重いですわよ?」

男 「………………」

クタッ

白井 「……!? 男さん!? 男さん!!?」

ネム 「男……!?」

御坂 「どきなさい黒子!!」

バッ

御坂 「……っ!?」 (意識がない……それに、それだけじゃない……!)

御坂 「――脳波のパルスが、微弱すぎる……!!」

白井 「え……? ど、どういうことですの!?」

佐天 「男さん……?」

御坂 「……っ!」 ギリッ 「黒子! 今すぐテレポートでこいつを病院に運びなさい!」

黒子 「え……? で、ですが――――」

御坂 「――――いいから早くしなさい! こいつ、死んじゃうわよ!?」

黒子 「っ……! わ、分かりましたの!」

――――――シュン…………
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/05(火) 21:25:13.75 ID:bSd9vOaPo
佐天 「み、御坂さん、男さんは、一体……」

枝先 「ど、どうしたの? あの人、急に動かなくなっちゃったけど……」

御坂 「……バカね、わたし。本当に、バカ」

ギリリッ……!!!

御坂 「『能力体結晶』 ……あれがどれだけ危険な代物か、失念していたわ……」

木山 「……いや、それは私の台詞だろう。彼は……」

木山 「『能力体結晶』 による暴走状態に、陥ったんだ……それを、私は……」

佐天 「そ、そんな……! もしかして……男さんも……」

枝先 「わ、わたしたちと同じような、昏睡状態に……?」

木山 「分からない。あのときとは状況も 『能力体結晶』 のモデルも違う」

木山 「しかし……無事で済むとは、とても……」

ルチア 「!? ど、どういうことですか、それは!」

アンジェレネ 「男さん……」

アニェーゼ 「……っ」 ギリッ

ディズ 「………………」

ネム 「男……」
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 21:26:01.87 ID:bSd9vOaPo
今日はここまでです。
またよろしくお願いします。

わたしも地の文入れた方がおもしろくなると思います。
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/05(火) 22:12:20.49 ID:MK2eAWhSO
>>1
待った甲斐があったぜ。
好きなようにやってくれ。
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/07/06(水) 01:15:23.08 ID:huAiCqQc0
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 10:15:22.48 ID:0yarCyZIO

相変わらず熱い展開に惚れ惚れするぜ

新訳ではようやく主人公3人が邂逅したけど、このSSの主人公2人が手を取り合うのは一体いつになるのか

次回も楽しみにしてます
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岐阜県) [sage]:2011/07/08(金) 04:59:00.36 ID:X91MylOuo
乙。
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/02(火) 22:27:03.36 ID:0UJR5kfho
まだかな
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/04(木) 01:09:45.76 ID:4Dj6JYNU0
待っているぜ!
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/20(土) 20:56:04.49 ID:OnsjCHay0
待機なう
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/21(日) 02:34:31.16 ID:Yj+6XCASO
月刊誌と思えば。
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/21(日) 11:12:47.78 ID:966lLeDDO
これって前作(第3期?)見れる場所ないのか。まとめブログとかに載ってんのかな
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/28(日) 06:34:48.87 ID:30+cg1ruo
まだかな
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/29(月) 00:47:52.36 ID:oA6q2j0Oo
すみません。
>>1です。

もう少しだけ待ってください。

待っていてくれる方、ありがとうございます。
ごめんなさい。
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/29(月) 04:52:39.91 ID:5aWaGsTWo
私待つわ
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/30(火) 01:01:14.99 ID:GY61DHpmo
いつまでも
410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/08(木) 00:37:50.99 ID:Powm37RWo
まつわ
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/19(月) 13:40:06.54 ID:UOI3VG/co
まだかな
412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/21(水) 13:15:56.10 ID:oTpwFyxp0
まだかなー
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/23(金) 20:06:49.71 ID:Azn+ZWgt0
学研の
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage]:2011/09/25(日) 09:33:00.97 ID:zTILY/dZ0
>>1さんまだかなー
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/08(土) 21:06:16.73 ID:PFTfa2bvo
待ってる
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/08(土) 21:07:04.00 ID:PFTfa2bvo
待ってる
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/08(土) 21:31:52.26 ID:PFTfa2bvo
待ってる
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/08(土) 21:33:34.06 ID:PFTfa2bvo
連投スマソ
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/10/13(木) 23:47:08.60 ID:xXIK41QYo
待ち
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/21(金) 23:09:44.46 ID:C13ISbGAo
まだかい?
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/24(月) 19:29:47.01 ID:a4amgTOro
>>1です。
お待たせしてごめんなさい。
少しだけ暇ができそうなので、11月中には投下します。
もう少しだけお待ちください。
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/26(水) 14:59:44.09 ID:XE+jph340
わかった、ちょっと冬眠してくる
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(滋賀県) [sage]:2011/11/03(木) 02:14:10.90 ID:oaQufhBA0
>>1の生存報告がある……こんなに嬉しいことは無い……!
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/25(金) 00:10:35.15 ID:TZILJD83o
まだかな
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/01(木) 03:15:08.09 ID:Z9/mOGYi0
     ____________
    ヾミ || || || || || || || ,l,,l,,l 川〃彡|
     V~~''-山┴''''""~   ヾニニ彡|
     / 二ー―''二      ヾニニ┤
    <'-.,   ̄ ̄     _,,,..-‐、 〉ニニ|
   /"''-ニ,‐l   l`__ニ-‐'''""` /ニ二|
   | ===、!  `=====、  l =lべ=|
.   | `ー゚‐'/   `ー‐゚―'   l.=lへ|~|
    |`ー‐/    `ー――  H<,〉|=|
    |  /    、          l|__ノー|
.   | /`ー ~ ′   \   .|ヾ.ニ|ヽ
    |l 下王l王l王l王lヲ|   | ヾ_,| \
.     |    ≡         |   `l   \__
    !、           _,,..-'′ /l     | ~'''
‐''" ̄| `iー-..,,,_,,,,,....-‐'''"    /  |      |
 -―|  |\          /    |      |
    |   |  \      /      |      |
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋) [sage]:2011/12/01(木) 08:44:21.69 ID:Fi+Nf2a0o
ケータイから>>1です。
ごめんなさい。区切りの良いところまで投下したいので、もう少し待ってください。
本当にごめんなさい。
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/02(金) 02:35:40.17 ID:jLhTKdzp0
生存報告があればあと1週間は戦える
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/02(金) 02:36:51.72 ID:E24PhnUIO
生存報告あるだけでもありがたい
いつまでも待ってる
429 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/17(土) 23:31:35.25 ID:MsODFW1Yo
そろそろくるかな
430 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/18(日) 11:27:31.80 ID:QdRAO1ts0
もう・・・休んでもいいよね・・・?
431 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 02:00:25.64 ID:LYFvGMWr0
鳴くまで待とうホトトギス
432 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/02(月) 17:35:05.24 ID:GgpS+bfj0
特定のSSに張り付くことなんて今までなかったから
あまりわからないんだが、
実際こうやってフェードアウトしちゃう
書き手さんって多いの?
どうなの?もうあきらめた方がいいの?
433 :以下、あけまして [sage]:2012/01/03(火) 10:34:23.14 ID:yrzH59ybo
ごめんなさい。
何度も謝っていますが、もう少しだけ待ってください。
書き上げて投下したいのですが、少し悩んでいる部分があるので、約束からだいぶ遅れてしまっています。

愛想をつかしていただいても構いません。
必ず終わらせますので、どうかご容赦ください。
434 :以下、あけまして [sage]:2012/01/03(火) 13:36:55.49 ID:9bg8pOFgo
まつよ
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage]:2012/01/07(土) 13:55:04.32 ID:/UxHmghC0
まってるよ!
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/14(土) 07:41:14.20 ID:jbc0VOhXo
まてるよ!
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [sage]:2012/01/28(土) 09:39:08.73 ID:ZpaoxZOX0
まてねえよ!
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/29(日) 05:44:17.91 ID:jhqWL5fgo
いやまつさ
439 :マチュピチュ [sage]:2012/01/31(火) 04:56:59.88 ID:UPMTF8At0
今北産業

上の流れにワロタ


予定が伸びるのは仕方ない。作品だもの、それも素人の。

でも「〜月中」とか「もう少しだけ」と言いつつ
数か月てのはいただけない。

変に期待もたせるから待てなくなる人出てくるんでしょうに。
素直に「まっだまだ完成しねえよ!テヘッ☆」くらい言っておけば?
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [age]:2012/02/15(水) 21:50:54.55 ID:gZ6cpAIz0
あげ
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/17(金) 23:48:55.46 ID:wdYlv7rGo
まってる
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/26(日) 10:06:32.47 ID:SmYc7xkuo
はよはよ
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/03/07(水) 16:44:28.87 ID:+7/DsjHx0
ふと思いだしてググってみたら続編来てた
この作品のオリキャラ好きだから応援してる。
楽しみにして待ってるよ
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/17(土) 00:09:57.29 ID:jhCDaJO4o
まだかな
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/03/26(月) 23:12:00.02 ID:m79J7KEto
そろそろ・・・ね?
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/03/26(月) 23:12:25.94 ID:m79J7KEto
そろそろ・・・ね?
447 :あみんも限界 [sage]:2012/03/26(月) 23:12:51.24 ID:m79J7KEto
そろそろ・・・ね?
448 :あみんも限界 [sage]:2012/03/26(月) 23:13:17.58 ID:m79J7KEto
そろそろ・・・ね?
449 :あみんも限界 [sage]:2012/03/26(月) 23:13:46.68 ID:m79J7KEto
そろそろ・・・ね?
450 :さげてやんない [age]:2012/03/28(水) 20:30:16.89 ID:yE2JFw8L0
>445-449

「うはwwww本当に待ってやがるwwwwwwww」
ってのが>1の狙いとみた
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2012/04/05(木) 23:29:45.58 ID:2HDH7Fw0o
生存報告頼む
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