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面接官「えーと、次の方…ちっ、なんだ無能力者か」 佐天「…」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 00:10:07.46 ID:ObxX0uXd0
化粧室で服装をチェックし、笑顔の練習をする。もう何度もしてきたことだ。
結局、私は大学を卒業するまで能力が発現することは無かった。
両親にも説得され、大学を卒業後、学園都市を離れ、地元で就職活動中だ。
在学中に当然、就職活動をしたが、結果は散々で、一つも内定は取れなかった。
私が初めて学園都市に来てから数年、世間では学園都市の学生達だった人たちが、
その能力を用いて活躍していた。能力者、というだけで採用する企業さえ現れ始めた。
まぁ、それは当然と言えば当然なわけで、
それでも、まだ能力者でない人が日本には大多数たったので特に問題は無かったのだが…。
一年前、私が大学4年になりたての時。学園都市以外でも能力者が現れ始めた。
と、言っても、精々レベル2〜3程度で、4以上はほとんど居なかったが、
それでも学園都市以外での能力の発現、ということで、結構話題になった。
その時は、学園都市外の能力者の数もそんなにいたわけではなかったが、
私が地元に帰った頃から、その数は増え始めた。今では、10人に8人は能力者だ。
これに、昨今の不況も重なり、私のような無能力者はますます就職しにくくなった。
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ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
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いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
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【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
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こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
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アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 00:13:06.17 ID:ObxX0uXd0
まず、書類選考で落とされるようになり、面接すら受けさせてもらえないことがほとんどだった。
中には、学園都市の大学に入学し、能力開発を受ける人たちも居たが…
私はもう一度行きたい、とは親には言えなかった。
そんな中、この会社は面接を行ってくれる、貴重な会社だ。逃す手はない。
気合を入れ、私は待合室に行く。周りには他に数人、同じく面接を受ける人たちがいる。
名が呼ばれ、私と、他に数人が面接室へ入る。今日こそ、内定を。
そう意気込んでいた私は、面接官の一言によって頭が真っ白になった。
「…はい、では、えーと、次の方…ちっ、なんだ無能力者か」
突然の言葉に、体が動かなくなる。
面接官は、書類を見ながら、なんで無能力者が居るんだよ、と横の人に話しかけている。
周りの面接を受ける人たちの、嘲笑が聞こえる。
…どうやら、私が書類選考を通ったのは会社側のミス、らしい。
ざわめきが落ち着いた頃、面接官が言葉を発する。
「…あー、えーと…佐天涙子さん?
…残念ながら我々の会社では、無能力者は、要らないんですよ…それでも面接を受けますか?」
次の瞬間、私は立ち上がり、面接室を飛び出した。
ドアも閉めず、走り出した。会社の化粧室の個室に入り、扉を閉めた。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 00:15:16.58 ID:ObxX0uXd0
私の頬を涙が伝う。悔しかった。
どうして無能力者というだけで、こんな目に遭わなければならないのか。
私の頭の中を、同じ疑問がグルグルと回りだした。
けれど、答えは既に決まっていた。誰だって、能力が無いよりあったほうがいい。
子供でもわかる、単純明快な答えだ。けど…。
納得は出来なかった。能力の発現には個人差がある。
努力して発現するものもいれば、労せずして発現するものもいる。
こんなにも不公平なもののせいで、私は虐げられる。
私だって、能力が欲しい。けれど、手に入れられなかった。
…少し落ち着きを取り戻し、涙で崩れた化粧を直そうと扉を開けようとする。
すると、先ほど一緒に面接を受けようとしていた女性が聞こえた。トイレ入ってきたようだ。
女性は、鏡に向かって化粧を直しているのだろう、独り言を言っていた。
「…しっかし、さっきの無能力者、面白かったなー。
面接も最後まであの子の無能の話題ばっかりで緊張も解れたし。
無能力者もたまには役に立つのねーあはは」
ふと、私の中で、何かが切れた。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 00:17:10.07 ID:ObxX0uXd0
目の前が真っ暗になる感覚。そして湧き上がる怒り。
しかし自分では驚くほど冷静だった。
…冷静に、筆記用具に入っているカッターを取り出す。
二人のうち、一人は先に出て行った。私は静かに個室の扉を開けた。
振り向いた彼女の口を塞ぎ、カッターを首にあて、脅す。
怯える彼女の顔を見て、私は少し悦に入った。
一緒に個室に入り、鍵を閉める。レバーを引き、水を流し、そこに彼女の首を押し付けた。
ジタバタともがく彼女を全力で押さえつけ、さらにレバーを引く。
…やがて、彼女は動かなくなった。私は鍵をかけたまま、扉を登り、そのまま会社を出た。
不思議と罪悪感は感じなかった。能力者に勝てた。そんな充実感があった。
そしてそれは段々と、もっと得たいという欲望に変わった。
いつの間にか私はメールを打っていた。送り先は初春。
今度の日曜に会う約束をした。ああ、愉しみだなぁ…。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 00:20:49.39 ID:ObxX0uXd0
「うーいーはーるー!」

威勢のいい声を上げながら、同じように威勢よく両手を振り上げた。
巻き起こる風が初春のスカートを豪快に巻き上げ、縞模様のパンツがあらわになる。
私の声に反応したのか、周囲の人間の視線が男女を問わず初春の下半身へと集まった。

「え・・・?」

学生時代から待ち合わせの度に繰り返されたこの行為だが、初春が警戒するようになることはついになかった。
しばらくぶりの再会ということでなおさら彼女の警戒はゆるくなっていたようだ。
スカートが元の位置へと収まり、人々が気まずそうに視線を逸らし始める頃になるまで初春は状況を飲み込めていなかった。

「ちょっと佐天さんなにするんですかあー!」

我に帰った初春が私の胸を両手で交互にたたきながら涙声で訴えかける様子は、学生時代のそれと全く変わっていなかった。

「いやーやっぱり初春に会ったらこれをやらないと始まらないからねー」

「はじまるって何がですかあー!」

頭の上の無駄に豪華なお花畑と、待ち合わせの時にスカートめくりを警戒しないのんきさも変わっていない。
背だって顔つきだって幼いままで、中学時代から今にタイムスリップしたのかと思うほどだ。
何から何までが昔の初春。
そう、初春は外見も中身も何一つ変わっていない。

レベル1だった能力が、3に上がったこと以外は。
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 00:23:03.58 ID:QG8LHIgQo
ほう、こっちへ来たのか
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 00:23:37.47 ID:ObxX0uXd0
レベル0の私とレベル1の初春。
無能力者と低能力者という小さな差は私達の間にはないも同然だった。
御坂さんや白井さんと仲良く振舞っていても、私の胸中にはいつだってくすぶりがあった。
私とこの人達は違う種類の人間なんだ。
どれほど彼女たちが優しく、平等に接してくれてもこの思いを忘れることはできなかった。
だからこそ私と初春は本当の意味での親友でいられたんだと思う。
学校もクラスも立場も、そしてなによりも人間としての程度が同じだということが、初春との繋がりを強くしていた。
私と初春は同じ人間だから、初春とはずっとこのままの関係でいるんだと思っていた。

だけど違った。

初春は私側の人間じゃなかった。
3年に学年が上がり、進路を決めはじめなければいけない時期。
特に理由もなく、初春と同じ高校に行くんだろうとそう考えていた。
そんな中受けた能力審査、私は初相変わらずのレベル0。
それに対して初春は、レベル3の評価を得た。
長い間レベル1だった人間が急に能力を発達させることはそうそう起こることではない。
努力により能力開発を進めることは可能だと言われているが、所詮それも才能のある者に限った話で
私のように元々持っているもが0の者は、いくら努力しようが0は0のままだ。
御坂さんの様に才能のある人が努力して、初めて能力は花開く。
全ての人間には生まれた時から数字が与えられていて、それを変えることは一生できない。
だから私と初春も、結局違う人種の人間だったんだ。そう出会ったときからずっと。

私は0で初春は3だった。
無能力者と強能力者。その差は、とても大きかった。
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 00:30:43.08 ID:ObxX0uXd0
それからの私と初春は全く別の道を歩み始めた。
今までと同じ教室で同じ授業を受ける私と、進学クラスに移り特別なカリキュラムを組まされた初春。
常盤台中学とは違い、私の学校においてレベル3というのは特異な存在だった。
レベル2の人間は、ほぼ例外なくそこで能力の発達がとまる。
だが、レベル3は違う。レベル3のままでいる学生がほとんどだが、数字をひとつ上げレベル4になる学生も大勢いる。
御坂さんを例にあげれてしまえば、レベル5に上がる資質を持っているとみることさえ出来る。
いわばレベル3というのは能力開発における壁であり、可能性の有無を決めるラインなのだ。

初春はその壁を超えた。
初春は可能性への道を開いた。
当然受験したのは違う学校で、私と初春は違う高校、違う大学へと進んだ。
その差は結局、内定の有無までを生み出した。

当時の私はそれを素直に喜び、祝福できた。
能力だけじゃない、初春のいいところをたくさん知っていたから、だから彼女は内定をもらえたのだとそう信じていた。
だから私だって頑張ればなんとかなる、そう自分に言い聞かせて就活を続けた。
書類選考で落とされても、やっとのことで辿りついた最終面接を、無能力者だからという重役の一言で無駄にされても、私は諦めなかった。
能力なんかじゃない、私の中身を見てくれる会社があることを信じ続けて。

でもそれももう過去の事に過ぎない。
全て私が間違っていた、いや私じゃなくてこの社会が間違っていたんだ。
長い時間をかけてようやく私は気づくことができた。
きっかけをくれたあの会社には感謝しなければいけない、嬉しそうに話している初春を見て私はそう思った。
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 00:40:18.72 ID:ObxX0uXd0
「それで、今日はどうしたんですか?」

今まで一方的に話を進めていた初春が急に訪ねる。
適当に町をぶらついた私達は、当初からの予定であった映画鑑賞を前に早めの夕食を済ませるためファミレスにいた

「いやー特に理由はないんだけどねー。なんか初春に会いたいなーっておもってさ。」

そうですか、といって初春はパフェをすくって口に運ぶと顔をほころばせ嬉しそうに笑った。
社会人にもなって恥ずかしげもなくパフェを頬張るその姿は、とても初春らしいと言える。
その初春はあきらかに不自然な理由を追求することなく話題を戻したことからも、私の異変に気づいているのかも知れない。
さっきからどうでもいいような下らない話を続けているのはきっと気を使っているからなのだろう。
入社間もない新入社員である初春には、きっと聞いてもらいたい愚痴のひとつやふたつあるに違いない。
それなのにそのことに全く触れないのは、それが私にとって皮肉にしかならないことを十分理解しているからだ。

「社会人ってさ、どんな感じ?」

そんな初春の話を無理矢理遮ってそう尋ねた。
言葉を発し続けていた初春の口が開いたまま静止し、え・・・、という小さな音が漏れたのがかろうじて聞こえた。
だが、初春が困惑した様子で固まっていたのはほんの一瞬のことで、考えがまとまらないうちに慌てた様子で言葉を返した。

「あ、あの、社会人と言ってもですね、学生と比べて変わったことはその、ないというか、あでもちょっとはあるといいますか・・・」

「それって学生気分で社会人やってるってこと?」

「え・・・ち、違いますよ!決してそういう意味でいった訳じゃ・・・。」

「あっはっはっは!冗談だよ冗談!そんなマジになられるとこっちが逆に困っちゃうってー」

涙目になって立ち上がった初春を制して、席に座らせる。
言いたいことは沢山あるけどファミレスの中は人目が多いし、あまり争っているところを見られるのは好ましくない。
機会はこれからつくればいい。時間はまだまだたくさんある。
そうやって自分に言い聞かせながら、大げさに笑う演技を続けた。
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 00:46:34.47 ID:ObxX0uXd0
「それよりさ、何観るか決めようよ。」

「そ、そうですね!」

私がそう言うと初春は急いでカバンから雑誌を取り出して机の上に開いた。
そのページには所々にマーカーが引かれていて、初春が今日のことを楽しみにしていたことが伝わってきた。
初春にとって今日は、長らく会っていなかった友人との再会できる日なのだ。
きっと私と過ごすことで、学生時代に戻った気分になれるとでも思っていたのだろう。
だけど私は違う。

「私のオススメはですね、これです!」

先程の不穏な空気を吹き飛ばすように自信満々に初春が指さした先には、舌を出すほどの甘ったるい題名が刻まれていた。
紹介文を見なくても、これが陳腐なラブストーリーだということは嫌というほど理解できた。

「えーそんなの見たってつまんないよー」

「そんなことないです!これ見たら佐天さんきっと感動して泣いちゃいますよ?」

それはあんただろうが、そう言って初春の頭を小突く。
初春はそれに対して頭をかきながら嬉しそうに笑うばかりだった。
屈託のない、子供のような無邪気な笑顔。
見ている人が心のそこから笑っているんだとそう思えるような眩しい笑顔だった。
昔はその笑顔に癒され、時には慰めてもらったことすらあった。

今はその初春の笑顔がただただ、憎い。
早く壊してしまいたい、気付かれないよう拳をギュッと強く握りしめた。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 00:52:18.58 ID:ObxX0uXd0
「そんなのよりこっちみようよこっち!」

違うページにグロテスクな映像で有名なホラー映画の名前を見つけた私は、それを初春に勧める。
別に私自身この映画を楽しそうだと思うわけではないけど、実話と銘打った下らない他人の恋愛話なんかを観るよりはマシに決まっている。

「い、いやですよ!折角の休日になんで怖い思いしなきゃいけないんですか!」

休日・・・ね。
青ざめた顔で反対する初春は自分の失言に気づいていない。
休日があるということがどれほど素晴らしいことなのか理解していないのだ。

「いいじゃんいいじゃん。今日は初春が叫んでるところを見に来たようなもんなんだし。」

「そんなことのために私を呼んだんですかあ!?」

口やかましく騒ぐ初春に対してイライラが募っていくが、それを表に出すことはせずに昔通りの私を演じる。
上映の時間が迫っていることを告げて、強引に初春を納得させると私達は店をでた。
夕陽が沈みかけた薄暗い町を、私と初春は肩を並べてゆっくりと歩いて行く。
観賞を終え映画館から出てくる頃には、町は街灯の明かりのみになっているだろう。
人目に付かないような路地裏の位置を確認しながら、私は小さく笑った。
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 00:58:58.62 ID:ObxX0uXd0
「うぅ・・・だから私はいやだったんですよぉ・・・」

「ほらもう大人なんだからいつまでも泣かないの。」

上映中、途切れることなく叫び続けていた初春がかすれた声で呟いた。
それを慰めながら外に出ると、案の定町はすっかり夜の闇に包まれていた。
歩くことすらままならない様子の初春に肩を貸して、その町へと歩き出す。
しばらく無言のまま歩き続けた私達だったが、ふと初春が言葉を漏らした。

「佐天さんは・・・これからどうするんですか?」

「どうするって・・・何が?」

顔を見ずに答えを返す。
初春が聞きたいことは分かっているが、あえて分からないふりをした。

「・・・就職のことですよ。」

「さーねー。今まで頑張ってきたけどさ、所詮無能力者だからそれも全部無駄だったみたいだし。」

「そんな・・・佐天さんは能力が使えなくてもいい所をたくさん持ってます!」

私の肩を離れて向きあうことになった初春が大きな声で言い放った。
その言葉は私の頭を突き抜けて不快感を残した後に、夜の街へと吸い込まれていった。
それは今の社会を理解していない者だから言える言葉。
私が私自身につぶやき続け、自分を偽るために使った言葉でもあった。でも・・・

「意味ないんだよ、そんなもの」

先程まで穏やかだった空気が、私を中心に渦を巻くようにざわめいた。
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 01:03:09.36 ID:ObxX0uXd0
「私がどれだけ頑張ったって、無能力って言葉の前じゃ評価してもらうことすら不可能なんだよ。
 私より劣っている人間だろうが能力さえあればそれは優秀な人間になるの。
 その能力が役に立つのか立たないのかは別の話なんだから笑っちゃうよね。」

「佐天さん・・・。」

初春が悲しそうな顔で私をみつめている。
まるで私のことを哀れんでるかのようなその表情が私の中の何かを爆発させた。

「あんただってそうだよ初春!たまたまレベルが3だったってだけの理由で内定がもらえたの!
 別にあんたが優秀だからじゃない!運が良かっただけ!なのにあたしを見下さないでよ!」

「私は佐天さんのことを見下してなんかいません!」

「うるっさい!!!」

もう我慢の限界だった。
かろうじて残っていた理性が初春のことを路地裏へと押しこみ、そして消えた。
ポケットから取り出したカッターから勢い良く刃を出して初春の首筋へ当てる。
初春と食事をしている時も、町を歩いている時も、映画を見ている時もずっと握り締めていたカッターだ。

「声出さないでよ初春?」

左手で塞がれた口が何かを求めるようにうごめくのを無視して言葉を続ける。

「私達友達でしょ?だったら、言う事聞いてくれるよね?」

もがくように振られた初春の頭から落ちた髪飾りを、思い切り踏みつけた。
初春、私あなたの笑顔が大っきらいなの。だから今からそれをグチャグチャにしてあげるね。
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 01:10:12.13 ID:ObxX0uXd0
「初春、あなたの能力なんだったっけ?」

私の左手を引き離そうと奮闘する初春を尻目に、私はあの時の感覚を思い出していた。
能力者を、無能力者の私が、[ピーーー]。
たまらなく残酷で、愉快で、歓喜を湧き起こすあの感覚が今でもしっかりと両手に残っていた。

「ああ、思い出した定温保存(サーマルハンド)だったよね。初春にお似合いな地味な能力。」

首筋を撫でるように刃を顎へと移動させ、そこから耳へ向かって皮膚の表面をすこしづつ削りとっていく。
そして耳の穴へと吸い込まれかけた刃は急に向きを変え、初春の眼球へ刃先を突きつけるように静止した。

「でも今はずいぶん立派になった。触れている物体の温度を±50まで変化出来る、そうだよね?」

初春の頭が震えながら微かに上下した。
私の左手を引き離そうとするその両手に今は力は感じられず、恐怖だけが伝わってきた。

「ほら、私の腕の温度を上げれば助かるかもよ?なんでやらないの?」

歪んだ笑みを浮かべながら尋ねる。
カッターを持った手が勝手に動き、眼球を突き刺して抉り取るのを想像して気分が高翌揚するのを感じた。

「あーこんな状況じゃ演算なんてできないよねー。やっぱり初春は能力があっても無能なんだよ。」

そういってケタケタ笑う私は他人の目から見たらどう映っているのだろう。
まだ時間はそう遅くない。この声を聞きつけた誰かにみられる可能性も十分あるのに、そんなことを考える余裕なんて全くなかった。

「だからさー、こんな使えない腕・・・いらないよね?」

言葉が終わらないうちに初春の右手にカッターの刃を当て、そして思い切り引いた。
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 01:16:42.96 ID:ObxX0uXd0
え、ちょっと待って規制入るんですかここ知らなかった・・・
なんかこう適当にそれっぽい言葉をあててください
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 01:18:00.11 ID:+n09+lFN0
saga(さが)で回避できるよー

saga sage併用可能
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/12(土) 01:22:43.63 ID:ObxX0uXd0
そうなんですかありがとうございます!
それじゃ一応>>14投稿しなおします
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/12(土) 01:25:12.08 ID:ObxX0uXd0
「初春、あなたの能力なんだったっけ?」

私の左手を引き離そうと奮闘する初春を尻目に、私はあの時の感覚を思い出していた。
能力者を、無能力者の私が、殺す。
たまらなく残酷で、愉快で、歓喜を湧き起こすあの感覚が今でもしっかりと両手に残っていた。

「ああ、思い出した定温保存(サーマルハンド)だったよね。初春にお似合いな地味な能力。」

首筋を撫でるように刃を顎へと移動させ、そこから耳へ向かって皮膚の表面をすこしづつ削りとっていく。
そして耳の穴へと吸い込まれかけた刃は急に向きを変え、初春の眼球へ刃先を突きつけるように静止した。

「でも今はずいぶん立派になった。触れている物体の温度を±50まで変化出来る、そうだよね?」

初春の頭が震えながら微かに上下した。
私の左手を引き離そうとするその両手に今は力は感じられず、恐怖だけが伝わってきた。

「ほら、私の腕の温度を上げれば助かるかもよ?なんでやらないの?」

歪んだ笑みを浮かべながら尋ねる。
カッターを持った手が勝手に動き、眼球を突き刺して抉り取るのを想像して気分が高揚するのを感じた。

「あーこんな状況じゃ演算なんてできないよねー。やっぱり初春は能力があっても無能なんだよ。」

そういってケタケタ笑う私は他人の目から見たらどう映っているのだろう。
まだ時間はそう遅くない。この声を聞きつけた誰かにみられる可能性も十分あるのに、そんなことを考える余裕なんて全くなかった。

「だからさー、こんな使えない腕・・・いらないよね?」

言葉が終わらないうちに初春の右手にカッターの刃を当て、そして思い切り引いた。
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/12(土) 01:35:15.46 ID:ObxX0uXd0
一瞬の静寂があった。
その行為が与えた影響が目にみえるまで、私と初春は黙って刻まれた直線を見つめていたからだ。
そしてにじみ出た赤い液体を確認して、私は心臓が強く脈打つのを感じた。
たまらず悲鳴をあげようとする初春の口をより一層左手で強く押さえて握りしめる。。
私は前歯の直前まで溢れてきた狂気の咆哮を、やっとの思いで抑えて大きく息を吸った。

「いいよ初春・・・すごいいいよ・・・。」

息を荒くして耳元でささやきながら新たな線を加える。
その線から流れた血液が最初の傷と混ざり合う様子は、とても美しかった。

「もっと・・・もっとグチャグチャにしてあげるからね・・・。」

それからはもう何も考えられず、カッターを乱舞させることしかできなかった。
次々と増えていく切り傷からは血が止めどなく流れでて、初春の手を赤く染めていく。
気がつけば、初春の右手は赤い手袋をしているのではないかと思うほど真紅に染まっていた。
もはや気絶しかけている初春の頬を、カッターを持った手の甲を使って叩く。

「ねえ・・・気絶しちゃダメだよ。私初春が苦しがってる顔を見たいんだから。」

言葉をかけても初春は反応しない。
さっきより強く叩いたにも関わらずなおも無反応の初春に対して、私は右手の向きを変えて、頬を抉った。
柔らかい粘土を切ったかのようなその感触は、目眩を起こすほどの刺激となって脳内を駆け巡る。

「ああぁああぁぁああぁぁぁあぁあああああ!!!」

私の指の間をすり抜けた初春の悲鳴があたりに響いた。しかしそんなことは今の私にとってはどうでもよかった。
切り刻む、この行為が私の脳の奥深く、それこそ学習装置(テスタメント)でもいじることのできないほどの深部をかき回していた。
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/12(土) 01:45:45.22 ID:ObxX0uXd0
「もうやめてください!佐天さんはこんなことする人じゃ・・・!」

今までとは打って変わって暴れだした初春が、私の手を振りほどいて逃げようとする。
それを差し出した足で転倒させて阻止すると、馬乗りになってカッターを持ち直した。
そうして見下ろした初春の顔は血で薄汚れていて、それが私の興奮をさらに煽った。

「私はこういう人間なんだよ初春。」

頬に当てた刃が、奥へと沈んでいく感触を味わいながら語りかける。
言葉にならない声をあげ続ける初春に、私の声が届いているのかはわからない。

「初春、私ねあなたの前に一人殺したんだ。
 私のことを無能力者だからってそれだけの理由で見下して、馬鹿にしたクソみたいな能力者を。
 それで気づいたの。無能力者の私でも、能力者を簡単に殺せるってことに。
 意味もなく能力者の採用を続ける企業のお偉いさんに見せてやりたかったなあ。」

プツン、と小気味いい音が響いたかと思うとカッターを押し付ける手から力が抜けた。
どうやら左頬を貫通したカッターの刃が口内へと滑るように侵入したらしい。
初春が痛みに耐えられないように首をふり、その動きに合わせて傷口が大きく広がった。

「だから私は能力者を殺さないといけないんだよ。
 私がそこら辺の能力者なんかよりずっと優秀な人間だってことを示すために。」

口内をかき回すように奥へ奥へとカッターを力任せに突っ込むと、初春は大きく体をうねらせて抵抗した。
その無駄な抵抗が今の私には滑稽に思えて、咳き込むほどの笑いを誘った。
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/12(土) 01:58:27.80 ID:ObxX0uXd0
「あ・・・うあ・・・」

だらしなく開いた初春の唇から、うめき声がこぼれ出る。
しばらく口内に入れたカッターで遊んでいたが、その声で初春の反応が鈍くなっていることにやっと気がついた。
カッターをゆっくりと引き出してみると刃の先に肉片がこびりついてるのが確認できた。
それを指で弾いて取り払うと、肉片はアスファルトにこびりついてただのゴミにしか見えなくなった。
何も言わなくなった初春は相当な量の血を流していて、頭の周りに小さな血溜まりを作っていた。
だからなのか、初春の瞳は光をなくし焦点を合わせることができないように小刻みに揺れていた。
もう意識が殆ど無いのだろう。さっきまでは私を押しのけようとしていた両腕も、地べたに張り付いたまま動かない。

「やっぱり能力者を殺すなんて簡単なことなんだね。ありがと初春。
 あなたのおかげでまた自分に自身が持てたよ。」

鼻をそぎ落とすようにカッターを動かす。
刃を当てた瞬間に小さく痙攣を起こした初春だったが、それも一瞬のことですぐに元のように動かなかくなった。
されるがままの状態を初春を見て、舌打ちをしてしまう。

「もう初春が相手してくれないからつまんなくなっちゃったよ。」

切り取った鼻を適当に投げ捨てると、楽しみにとっておいたはずの眼球をなんの感情も持たずに突き刺した。
異物が眼窩に侵入してきたことを初春の脳は認識出来ていないようで、今度は何の反応も得られなかった。
微かな吐息が頬にあいた穴を抜けるときに音を出していて、それを聞いていなければ初春がまだ生きているとは思えない。
何かを探るように右手を動かすが、大した抵抗を受けずにカッターはどこまでも沈んでいった。
きりがないのでカッターを引き抜くと、まぶたを閉じている逆の目も潰しておいた。

いつしか胸の中で燃えていた嗜虐の炎はすっかり消え去り、これらの行為はただの作業と化していた。
それでも丁寧に、何度も何度も繰り返し初春の顔を斬りつけたのは、私にとって初春がやっぱり特別な存在だったからなんだと思う。

そうして私が腕を止めたのは、初春の顔から全ての凹凸が消え去りカッターの刃が何も切れなくなった頃だった。
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/12(土) 02:10:55.96 ID:ObxX0uXd0
ここまではVIPで書いたものを少しだけ修正したものです
もしかしたら見ていた方がいるかも知れませんが、遅くなってしまって申し訳ありません

それでここから先なんですけど全く書きためてないです
適当に話を進めていたおかげでこれからどう展開するのか考えるので精一杯だったからなんですけど
正直スレが立っていないとやる気が出ないっていうのがもっと大きい理由です、すいません
明日には続きを書き始めようと思いますので、遅筆でいつ終わるかわかりませんが
よかったら見てやってください
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 02:12:27.67 ID:+n09+lFN0
おつ、ゆっくりでいいからがんばれー
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 02:15:02.93 ID:1fgg9XVgo
>>22 乙!
VIPの時から見てたよ。続きに期待してる
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 03:31:13.28 ID:BnGTyW7AO
ヤダグロい…
佐天さんは就職できないなら俺のとこに永久就職すればいいと思うよ乙乙
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 03:49:41.97 ID:8hjNMdxh0
流浪人剣心の般若みたいな感じか
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 04:13:07.13 ID:yh2a/lBBo
面白いけど少し見にくいと思うぜい
行間開けたほうがいいと思う
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 07:59:05.73 ID:kKGSqBrDo
こっちに来てたのか
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 10:23:54.78 ID:hqPSN/po0
つまり上条さんニーt……いや専業主夫か
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 16:17:59.56 ID:52HqUasAO
実際能力開発したら大人になっても学園都市から引っ越せないだろうな…

旅行だけでもチップ埋め込まれるんだし

一生学園都市で飼い殺しされるとなりゃ、そりゃ無能力者はスキルアウトにでもなるわww
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 18:09:09.67 ID:H9XBwGZl0
最終目標は一方通行だよな
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 22:35:14.41 ID:BFg/DM9k0
無能力者に本当の意味でやられる一方さんか…

胸が熱くなるな
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/13(日) 00:39:28.33 ID:ARwoeirM0
今から少しだけ続きを投下します

その前に、やっぱり読みづらいですかこれ?
こうしたらいい、みたいなのがあったらいってください
行間を開けたほうがいいというのは地の文も全て1行開けたほうがいいということでしょうか?
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/13(日) 00:43:08.07 ID:18JZpfYVo
個人的には今のままで読みにくさは感じなかった
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/13(日) 00:44:37.63 ID:fYHJHIqAo
少し詰めすぎなようなきはするけど別に構わん
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/13(日) 00:55:17.09 ID:ARwoeirM0
わかりました読みにくい方には申し訳ないんですけどとりあえず今のままで投下させてもらいます

それで注意なんですが視点が変わっています
混乱させるような書き方をしたつもりはないので大丈夫だと思いますが、そのつもりでご覧ください
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/13(日) 00:56:31.51 ID:rT5pEDcPo
はやくしろ
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/13(日) 00:58:09.52 ID:ARwoeirM0
「警察ですの。」

取り出した手帳を見せつけるように言った。
わずかに開かれたドアの隙間からは疲れた様子の目が覗いている。
視線が手帳を捉えたにも関わらずドアの隙間が保たれているのを確認して言葉を続けた。

「初春飾利さんが殺害された事件について涙子さんにお話がありますの。」

それを受けた女性が小さなため息をついたのを私は見逃さなかった。
私の前にもこの事件について様々な人間が、こうしてやってきたに違いない。

「涙子は今ちょっとお話が出来る状況じゃ・・・。」

「そうですの・・・。ではお母様でもよろしいのでお話を伺ってもよろしいですか?」

「私にですか・・・?別にお話できることなんてありませんけど・・・。」

声色に若干の怪訝さを含めて言葉を返すこの女性が、佐天さんのお母様だと言うことは聞かなくてもわかった。
佐天さんを訪ねてくる人はいても、自分自身に話を求めてくるのは初めてだったのだろう。
そんな私を不思議に思うのは当たり前のことだった。

「事件前後の様子を知りたいんですの。お願いしますの。」

頭を下げた私に対してお母様は戸惑いを隠せないようだった。
すると、いくら時間が立っても姿勢を変えずにとどまり続ける私を前にドアが閉じられた。
そして閉じられたドアの向こう側で微かな金属音が響いたかと思うと、今度は大きく開かれた。
歳は40代といった頃だろう、やけに小さく見えるその女性は簡潔な言葉で私を中へと迎い入れる。
声色と表情、そして体全体から発せられる雰囲気が彼女の心身が疲労していることを伝えていた。
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/13(日) 01:08:59.35 ID:ARwoeirM0
「涙子さんは今どちらにいらっしゃいますの?」

「事件のことを知ってからは部屋にこもりっきりで・・・。誰とも話したくないと言ってます。」

客間へ通された私にお茶を用意しながらお母様が答えた。
塞ぎこむのも無理はない。私だって警察という立場でなければ立ち直ることなどできなかった。
いやまだ立ち直ってなどいない。仕事だと割りきって無理矢理に自分を納得させているだけだ。
気を抜いてしまえば初春の死という事実の前に、為す術も無く押しつぶされるだろう。
それ以上考えるのをやめて、そうですの、と小さくつぶやいて目を閉じた。

まぶたの裏に浮かんでくるのは4人で過ごした華やかな時間。
そのうちの1人である初春は、もういない。
助けられなかった、助けることができなかった。
自分にはどうしようもないことだったとはわかっていても悔しい気持ちが込み上げてくる。

だからせめて佐天さんだけは助けたい。
その思いだけが今の私を突き動かしていた。
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/13(日) 01:14:06.11 ID:ARwoeirM0
「捜査の方は進んでいるんでしょうか?」

「まだなんとも言えない状況ですの。ですが必ず犯人は捕まえて見せますの。」

私の前にお茶を置いたお母様が、逆に質問してきた。
用意していた無難な言葉を返してから一口だけそのお茶を啜る。
柔らかい苦味が口内に広がるのを感じて心が落ち着いた。

「訪ねてきた警察の方の口ぶりだと、どうしても涙子を疑っているように思えてしまうんです。」

確かに警察内部で佐天さんを容疑者だとみる者は多くいる。
事件直前に現場近くの映画館に二人でいたことは確認されているが、
佐天さんが事情聴取に応じたのは初春が殺されたことを伝えた時だけで、それ以降は今日のようにお母様が全て断られていた。
その時に得られた情報は、初春とは映画館を出てすぐ別れたこと、怪しい人物を見た覚えはない、という2点だけ。
なぜ最寄りの駅ではなく映画館で別れたのか、警察としてはこの点を疑問に思い再度話を聞こうとしている。
それを友人の死にショックを受けているという理由から一週間も拒否しているのだから疑われても仕方のないことだった。

だけど私は佐天さんが初春を殺すはずがないと信じている。
新米警部補の私が無理を言って1人で訪ねてきたのは、それを証明するためだった。

「お母様、安心してください。涙子さんは絶対に無実です。」

まっすぐに目をみつめて断言する。
心の底からでた言葉だった。
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/13(日) 01:19:52.19 ID:ARwoeirM0
「もしかして涙子とお知り合いなんですか?」

その言葉でお母様は、私と佐天さんとの関係に気づいたようだった。
私も学園都市内の学校に通っていたこと、初春とは風紀委員(ジャッジメント)として同じ支部で活動していたこと、
そして初春を通じて佐天さんとも遊ぶ様になったことを丁寧に説明した。

「それで、事件前後の涙子さんの様子を知りたいんですの。」

お母様の警戒心が解けたのを見計らい本題を切り出した。
本人に聞けるならそれが一番だが、それが無理な現状はお母様に聞くしかなかった。

「涙子は事件の会った日の数日前から機嫌が良さそうでした。
 それまでは内定がもらえないことを気にしてずっとイライラしてたんで不思議に思ったんです。
 理由を聞いてみたら、学生時代の友人と合う約束をした、とのことでした。
 その友人というのが初春さんだったみたいです。
 当日、見違えるほど元気になって帰ってきた涙子をみて安心したんですけど、
 次の日に警察の方が訪ねてきて・・・。」

「もう十分ですの。言いづらいことをお尋ねしてしまって申し訳ありませんの。」

悲しそうに顔を伏せるお母様にお礼をいう。
佐天さんが内定をもらえないまま実家に帰っていたのは知っていた。
だが私も初春も今まで佐天さんに連絡を入れることはなかった。
無能力者であることが彼女の就職活動の妨げになっていることは明白で、
その佐天さんに私達の言葉を素直に受け取ってもらえるのか自信がなかったからだ。
今はそっとしておく代わりに佐天さんが内定をもらえたその時は盛大にお祝いをしよう、
そう初春と決め事をしたのを覚えている。
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/13(日) 01:26:10.23 ID:ARwoeirM0
だから会う約束を持ちかけたのは佐天さんの方だと思われる。
就活に疲れた心と体を、旧友との会話で癒そうとしたのだろう。

「そういえば涙子さんはお部屋にいらっしゃるのですのよね?ずいぶんと静かな様子ですけども。」

「部屋にいるときは不気味な程静かで、時々自殺でもしたんじゃないかって心配になるんです。
 ごはんを食べる時は下りてくるのですが、いつも疲れた様子でふらふらしていて・・・。」

どうやら私が思っている以上に、佐天さんは初春の死に大きな衝撃を受けているようだ。
今日はこのまま帰るつもりだったのだが、一言だけでも声をかけていきたくなった。

「お会いしなくてもいいので、少しだけ声をかけてもよろしいですの?」

「もちろんですよ、きっと涙子も喜ぶと思います。」

私の申し出をお母様は快く受け入れてくれた。
案内された通りに階段を登りながら、私はどんな言葉をかければいいのか考える。

理不尽な理由で内定をもらえず、久しぶりに再開した親友を殺され、そしてその容疑者として扱われている佐天さん。
どれほどの言葉を用いれば彼女の傷を癒すことが出来るのだろうか。

レベル4という能力はこの問題の前には全くの無力だった。
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/13(日) 01:31:04.86 ID:ARwoeirM0
「佐天さん?私白井ですわ、お久しぶりですの。」

閉じられたドアを前に口を開いた。
いざ目の前にしてみると、部屋の中は本当に静かで向こう側に佐天さんがいるのか不安になるほどだった。

「その・・・初春のことは本当に残念でしたの・・・。」

私の声はドアを隔てても十分に届くはずのものだったが、返ってくるものは何もない。
顔を見せてくれないとしても、声だけは聞けるものだと思ってた私にとっては寂しい反応だった。

「急に訪ねてこられても迷惑ですわよね。ごめんなさいですの。
 でも少しだけでいいからお話を聞いて下さいですの。」

無言の返答を肯定だと受け取って、話を続けた。

「私が警察に入庁したのはご存知ですわよね?
 私は初春を殺した犯人が絶対に許せません。どんな手を使ってでも捕まえるつもりですの。
 そのためには佐天さんの力が必要だと思っていますわ。
 ですので、もしもその気になったのなら・・・いつでも連絡してくださいですの。」

見えないことは分かっているが、ドアの前で深く頭を下げた。
私の言葉が佐天さんを立ち直らせるきっかけになることを信じて。
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/13(日) 01:36:47.35 ID:ARwoeirM0
今日書けたのはここまでです
警察のこととかよく分からないので想像で書いてある部分ばかりですがそこら辺はツッコまない方向でお願いします
あと黒子の口調は頑張ったつもりなんですけど違和感を感じられたらごめんなさい
いざ書くとなると難しいんですね単純に「ですの」つければいいかと思ってました
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/13(日) 05:12:21.20 ID:fYHJHIqAo
なん…
だと…

ここからどうなるんだ…
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/13(日) 13:25:05.88 ID:UfNy3ZbAO
黒子も殺されちゃうのか…嫌だな
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/13(日) 13:54:14.19 ID:5fM3rL+p0
おつおつ

読み応えがありますな
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/13(日) 15:39:17.51 ID:kkHErnaAO
嫌な予感しかしない
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/14(月) 23:35:35.58 ID:O6kwBCJn0
今続きを書いてはいますがいかんせん筆が進みません
投下できるのは明日か明後日になると思います
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 20:54:16.64 ID:Vn2KY9Izo
いきなり警部補ってことは、黒子キャリア組か…
エリートになにか言われたら佐天さんじゃなくても卑屈になるな
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 21:43:54.56 ID:nnrG+rf60
レベル4でしかも珍しくて便利なテレポーターだからなぁ、警察としても欲しいんだろうね
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 18:13:10.81 ID:SExfFqOAO
間が空くなあ
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/20(日) 23:31:47.19 ID:69IPcklf0
ホンットにすいません!
言い訳になりますけど、忙しくて続きを書ける状況じゃありませんでした。
一段落ついたんで、これからはできるだけ毎日書けるように頑張ります

ということで相変わらず少ししか続きはかけていませんが投下します
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/20(日) 23:41:59.24 ID:69IPcklf0
私の携帯に佐天さんからのメールが届いたのはそれから3日後のことだった。
その文面は短く単純で、最低限の言葉だけで綴られていた。

「明日午後一時に〇〇駅に来て下さい。」

了解の旨をこちらも簡素な文で表して返信をした。
返信が完了したのを見届けてから携帯を折り畳み、大きく溜息をつく。

もちろんこれで佐天さんが十分に立ち直れたと思うほど、私は楽天家じゃない。
それでもこのメールを私に送ってくれたことがただただ嬉しかった。
私の言葉が佐天さんに届いたのか、それとも彼女自身の力が初春の死と向きあうことを可能にしたのか。
いずれにしても、事態が好転したことは間違いない。
佐天さんがどれほど回復したのかはわからないが、明日はできるだけ新しい情報を聞き出したい。
それが佐天さんを助けること、そして初春の仇を取ることへとつながるのだから。

ただひとつ気がかりなのは、待ち合わせ場所に指定されたのが事件現場の最寄り駅だということだ。
事件当日、初春と佐天さんはその周辺を遊び歩いたという。
佐天さんにとっては、いやでも事件を思い起こす様な景色ばかりのはずだろう。
それともそれらを見ても動じないほどに回復しているということなのか・・・?
昨日お母様から聞いた様子からはにわかに信じがたいが、それならそれで素直に喜ぼう。

とにかく今は色々と考えても仕方ない、話は明日になってからだ。
自分に何が出来るのかをもう一度確認して、強く心を引き締めた。
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/20(日) 23:47:31.99 ID:69IPcklf0
約束の日、待ち合わせの時間の30分前には駅に着き佐天さんがくるのを待っていた。
少し早く来すぎたと思われるかもしれないが、遅刻でもして佐天さんの気を削ぐような真似はしたくなかった。
ただ家でじっとしていることができなかった、ということも大きな理由になっていることは否めないが。

時間が迫ってくるにつれて心が落ち着かなくなるのを感じていた。
佐天さんはどんな顔をしているだろう、自分はどのように接すればいいのだろう、まず最初になんて言えばいいのだろう。
1秒ごとにうかんでくる心配事が頭の中に積もっていき、それに比例して鼓動が高まっていった。

「ごめんなさい、待たせちゃいましたか?」

不意にかけられた謝意の言葉。
それに反射的に振り向いてしまったせいで心の準備を全くしていない状態で向きあうことになってしまった。

「私が来るのが早すぎただけですの。佐天さんが気にすることじゃありませんわ。」

だが、口から出たのはなめらかで自然な言葉だった。
自分で自分を褒めたくなるほどの対応をすることができたと思う。
こんなことを考えている場合ではないのは分かっているのに、心のどこかで安心している自分がいた。

「ならよかったです。お久しぶりですね白井さん。」

佐天さんの顔は想像していたよりはずっと明るい。
あくまで『想像していたよりは』であって、やはり表情には陰りが目立っていたが。
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/20(日) 23:50:37.97 ID:69IPcklf0
「お久しぶりですの佐天さん。お会いできて嬉しいですわ。」

「私もです。今日は急にお誘いしちゃってごめんなさい。」

「全然問題ありませんわ。」

当たり障りの無い言葉を並べて会話を続ける。
私も佐天さんも明らかに初春のことを口に出すのをためらっていた。
本来なら私達の間に立って笑っていたはずの初春の姿が思い浮かんできて、何も言えなくなる。

気まずい空気が流れ始めたのを察して佐天さんが口を開いた。

「あの、とりあえず辺りをぶらぶらしませんか?」

「え、あ、そうですわね。」

とっさに了承してしまった私を置いて佐天さんは歩き出した。
それに小走りで追いついて、歩幅を合わせるように歩く。
まっすぐと前を見て歩く佐天さんの足取りは、まるで行き先が決まっているようだ。
私はその横顔を盗み見ながら彼女の意図を探っていた。
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/20(日) 23:55:32.49 ID:69IPcklf0
佐天さんにとっても私にとっても、今日の目的は事件の話をすることのはずだ。
それなのにこれまでにしたことといえば、佐天さんについて周辺を歩きまわり買い物をしただけだった。
今は佐天さんの提案で、早めの夕食をとるためにファミレスでご飯を食べている。

「それで結局そこも面接で落とされちゃいましたよ、あはは。」

何事もなく話を続ける佐天さんに相槌を返しながら胸の中は疑問でいっぱいだった。
人と話すことさえ困難だった佐天さんが、わざわざ私を呼び寄せたことには意味があるはずだ。
そう思っていたのに、その思いが裏切られたような気がしていた。

「・・・今日歩いた道とか寄った店はですね、全部あの日と同じなんです。」

話の流れを遮って佐天さんが呟いた。
先程まで取り繕っていたはずの明るさは、表情と声から完全に消えている。
私の煮え切らない様子を察知しての発言だったことは、言われなくても理解できた。

「あの時もこうやって適当に遊んで、この店でご飯を食べたんです。」

その声は今にも消え入りそうなほどか細くて、彼女が懸命に搾り出しているものだということが伝わってくる。
私は何も言えずに、次の言葉を待つだけだった。

「昔に戻ったみたいでした。中学校の頃、私も初春も子供だった頃に。」

明らかに佐天さんは無理をしていた。
彼女は今、初春のことを思い出しているのだ。
誰よりも自分に近い存在で、誰よりも自分のことを理解していて、そして誰よりも失いたくないと思っていた人のことを。

「あの日が・・・初春に会える最後の日だったなんて・・・私気づけなかった・・・。」

彼女の言葉によって鼻の奥へとこみ上げてきた感情を抑えるのに私は必死だった。
しばらく何も言えずに、二人は料理が冷めていくのを見ていた。
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/20(日) 23:58:36.95 ID:69IPcklf0
「今まで何も言わずにあちこち連れ回してしまってごめんなさい。
 ただ初春のことを話したら、感情が押えられくなるんじゃないかって心配だったんです。」

沈黙を破るその言葉と共に、佐天さんは小さく頭を下げた。

「いいんですの。私もまだ初春のことを思い出すと胸が締め付けられますの。
 佐天さんだったら尚更辛いはずですわ。」

今日こうやってここにいること自体が佐天さんにとっては相当な苦痛なのだろう。
無理をして私を誘い、事件の日のことを話そうとしてくれている彼女を責めることなどできるはずがなかった。

佐天さんはそれから、事件の日の初春の様子を時間をかけて話してくれた。
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/21(月) 00:01:03.61 ID:RhcjpUT30
「映画館を出て駅に向かって歩き出そうとしたら、初春がこれから人に会うって言い出したんです。」

ゆっくりと話は進み、いよいよ核心に辿りついた。

「時間も遅かったし今から人に会うなんて、と不思議に思いました
 けど、声をかける間もなく反対方向に歩き出しちゃったからそこで別れることになったんです。」

言い終えた佐天さんが長らく触れなかったコップに手を伸ばしお茶を口に含んだ。
私は聞き出したその情報と今までの捜査でわかっていたことを照らし合わせる。

初春の人間関係に特筆すべきものは何一つなかった。
会社の人ともうまく接していた様で、恨みを買うようなこともなかったらしい。
元々他人を怒らせたり不快にさせるような人間ではないし、当然のことだった。
現場が人気のない路地裏ということからも合わせて、私は通り魔による犯行だと考えていた。

しかし初春は直前に誰かと会っていたらしい。
彼女の携帯電話からはそのような約束をしていた痕跡はなかったのに、だ。
なにか複雑な事情がこの事件にはあるに違いない。

「白井さん、いいですか。」

思考にふけり、黙ったまま何も行動を起こさない私に声がかけられる。
慌てて謝ろうと口を開こうとすると、それよりも先に言葉が続けられた。

「お願いがあるんです。私を事件の現場に連れていってくれませんか。」

一瞬彼女が何を言っているのかが分からなかった。
困惑する私に対して、彼女の視線がとても力強く突き刺さっていた。
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/21(月) 00:05:10.05 ID:RhcjpUT30
「駄目ですの。あそこはまだ立ち入り禁止ですわ。」

「お願いします。どうしても見たいんです。」

どれほど断っても佐天さんはしつこく食い下がってきた。
うんざりするほど同じようなやりとりを繰り返してから、私は理由を尋ねた。

「どうしてそこまで現場が見たいんですの?
 私も一度現場を見ましたけども・・・とても気分が悪くなりましたの。
 進んで見に行くような場所では決してありませんわ」

今でも現場の様子は鮮明に憶えている。
重く淀んだ空気、冷たいアスファルト、なによりもそれにこびりついた赤黒い血の跡が瞼の裏に焼き付いて離れない。
それが初春の体を流れていたことを想像して、吐き気をこらえることができないほどだった。

「だからです。」

なのに、佐天さんはそうはっきりと言い切った。

「初春はきっと私が想像できないほどの苦しい思いをして殺されました。
 なのに私はそれを助けることができなかった。
 もちろん私なんかにできることがなかったのは分かっているんです。
 でも悔しいんです。悔しくて悔しくて・・・どうしようもないんです。」

佐天さんの胸の中をかき回すその渦は、私のものと全く同じだった。

「だからせめて知っておきたい、初春がどこで殺されたのかを。
 そしてこの気持ちを忘れないようにしたいんです。」

静かに語るその声に込められた気持ちが痛いほどに伝わってくる。
結局のところ、私と佐天さんは同じ気持ちを抱いていたのだ。
それがわかった今、私にできることは1つだけだった。

「わかりましたの。」

ありったけの感情をこめてそう言った。
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/21(月) 00:07:41.96 ID:RhcjpUT30
以上です
なんか書くのにはかなり時間がかかってるのにいざ投下するとなるとあっという間に終わるのが悲しいです

続きはまた明日・・・書けるように頑張ります
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 02:02:27.84 ID:LWjNENDao
佐ァァァァァァァ天さァァァァァァァン!!
次はやはり黒子なのか…それともまだ泳がせるのか…
やべえ気になる
乙!
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/22(火) 01:28:11.14 ID:0vENAaaAO
邪天さんこええ……
でももっと見たい
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 18:21:44.45 ID:zEs/Z/xN0
おつおつ

しっかりした文章だし書くのに時間掛かったり量が少なくなったりは仕方ないと思う
>>1のペースでがんばれ
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/25(金) 23:39:08.46 ID:UjkL0R930
街灯の光を頼りに歩みを進める私と佐天さんの間にはひとつの言葉も存在しなかった。
その代わりに張り詰めるような緊張感だけが、二人の間を繋いでいた。
そして、目的の場所へと近づくにつれその緊張感は存在をましていく。
それは目の前に簡素な柵があらわれ、立ち入り禁止という言葉が眼に入ることで最大に達した。

「ここですの。」

一言で説明を終えると佐天さんは十分すぎるほど理解できように視線で答えを返した。
事件からはかなりの時間がたっていることから、もう警備には人員を割いていない。
だが、形だけの立ち入り禁止とはいえその役割は立派に果たされていた。
この場所に限らず周辺を含めて人の様子は感じられない。
通り魔による犯行の可能性がある以上、ここに近寄ろうとする人間がいないのは当然のことだった。

「最後にもう一度だけ確認しますわ。
 本当によろしいんですの?」

佐天さんと向き合い、ゆっくりと言葉を投げかける。
こちらをまっすぐにみつめる彼女の瞳には若干の後悔が表れている様に思えた。
しかし、それ以上に強い決意が体全体から感じられるのも事実だった。
少しの間、ほんの2,3秒だろうがその間に様々な思いが彼女の頭の中を駆け巡ったに違いない。
バッグを抱きしめながら、大きく開かれた唇から発せられた返答はとても短かった。

「はい。」

どちらからともなく頷いて、柵を乗り越えた。
街灯の光もとどかない建物と建物の隙間。
それだけが理由とは思えないほどの暗さが、その空間にはあった。
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/25(金) 23:41:23.21 ID:UjkL0R930
携帯のライトで照らすことで明るさは確保できたが、重く冷たい空気までは取り払うことができなかった。
その空気を吸い込んだせいで、前来たときと全く同じ不快感が胸の中に湧き上がる。
私が何かを言う前に佐天さんはある地点を目指して歩き出していた。
彼女が目指す先の地面には、言われなければ気づかないようなシミがある。
そのシミは私が見たときよりもだいぶ薄くなっていたが、一際重たい空気が溢れでているのは相変わらずだった。

しゃがみこんだ佐天さんは、シミの上にそっと手をおいた。
小さく丸った背中からは怒りとも悲しみとも言えない感情が読み取れる。

「・・・。」

聞こえてきたのは嗚咽の音だった。
思わず私にまで感情の揺らぎが伝わってきそうになるほど、その声は胸に響いた。
佐天さんの震える肩をみて、意を決したように彼女の元へと歩き出す。

ほんの小さな違和感が私の歩みを止めたのは、佐天さんまであと一歩という時だった。
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/25(金) 23:44:50.66 ID:UjkL0R930
何がおかしいのか、と聞かれたらはっきりとこたえることはできない。
それほど曖昧でかすかな違和感ではあった。
だが一度感じてしまった以上、気にならずにはいられなかった。
残りの一歩を踏み出し、佐天さんの背中を撫でながら優しい言葉をかけてあげたい。
そう思う一方で、その違和感の正体を探らなければという気持ちが私を動けなくしていた。

「・・・。」

私の葛藤をよそに、佐天さんの嗚咽の音は途切れることなく続いている。
それを聞きながらふと思った。

その声が笑いをこらえている様にも聞こえるということに。

「白井さん。」

不意の呼びかけは、驚くほど冷静な声で行われた。
思わず身体が過剰に反応してしまったのは何故だったのだろう。

「ありがとうございます、ここに連れてきてくれて。」

立ち上がりながら佐天さんは言葉を続ける。
あちらを向いたままで、その表情は確認できない。
一帯の空気が佐天さんを中心にとぐろを巻いているかのような錯覚を覚えた。

「お礼ってわけじゃないんですけど、教えてあげたいことがあるんです。」

言いながらゆっくりと振り返る佐天さんから視線をそらせない。
根を張ったように両足が地面に固定され、動くことができない。
それに抵抗するように心臓だけが狂ったように鼓動を続けている。

違和感はいつの間にか恐怖へと形を変えていた。

「初春を殺したのは、私です。」

言葉を理解するより早く佐天さんの顔が眼前に迫っていた。
それはどこまでも純粋で、どこまでも狂気にあふれた笑顔。

彼女の表情を確認するのと、眼球に激痛が走ったのはほぼ同時だった
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/25(金) 23:48:48.76 ID:UjkL0R930
結局かなり時間があったのにかけたのはこれだけですすいません・・・
ホントは区切りのいいところまで書いてから投下したかったんですけど
あまりに日にちを空けるのもどうかと思ったんでとりあえず投下しました

続きが書けしだい投下します、気長にお待ちください
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 23:57:42.61 ID:s+Bs6mUTo

wwktk
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 11:43:00.06 ID:XaNA6VmMo
制速からSSが消えたと思ったらここに移動してたのか
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 00:54:24.17 ID:FdZSGHvmo


黒子…
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 19:43:57.79 ID:pjs8IZ+k0


文章上手いしwktk
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/03/18(金) 23:53:32.64 ID:MV0GD9CAO
いろんな意味で心配
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/29(火) 10:41:26.18 ID:g0+boNcM0
>>1無事か?
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 05:15:39.82 ID:F0FS9IOIO
まだかなー
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) [sage]:2011/05/09(月) 19:32:59.36 ID:HIM928/60
めちゃくちゃツボなSSを発見したと思ったら…
>>1よ、戻ってきておくれ…
支援
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) :2011/05/19(木) 23:46:53.33 ID:rWurs5Mk0
長らく放置してすいませんでした
現在、続きはある程度書けてはいるのですが投下するのは最後まで書ききってからにするつもりです
というのは伏線回収というと大げさですが、今までの展開のつじつまを合わせるためでして、
書き終えたものから投下すると、「やっぱさっきの訂正で」みたいな事になるのが目に見えてるからです

必ず完結はさせるつもりです
さんざん待たせておいて本当に申し訳ありませんがもうしばらくお待ちください
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/20(金) 00:23:27.40 ID:00ip/4KSo
OK、待ってる
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/24(金) 09:29:46.36 ID:tjicToA20
いつまでも待ってる
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/12(火) 19:45:26.35 ID:jjlKnmgIO
楽しみにしてるぜ
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/08/22(月) 01:14:06.61 ID:R8vdtPPvo
待ってるよ
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