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インデックス「長点上機?」一方通行「あァ?」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/19(土) 22:20:10.62 ID:gUhTDXOAO

以前、とあるシリーズSS総合スレ」-23冊目->>184>>324>>402にて投下した一方禁書の続きです。
当時の短編を見なくても大丈夫ですし、それよりかはカップリング色が濃くなりますのでご注意下さい。
基本緩く、そして頭を空っぽにしてゆっくりご覧頂ければ幸いです。
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
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いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
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【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713277692/

こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
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アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
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エルヴィン「ボーナスを支給する!」 @ 2024/04/14(日) 11:41:07.59 ID:o/ZidldvO
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2 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/19(土) 22:26:29.26 ID:gUhTDXOAO


(そろそろ周りの視線がいてェ……)


具合が悪くなりそうなほど泣く目の前の少女に軽くヒいていたのだが、辺りの汚物を見るかのような視線に、渋々、彼にとって慣れていない少女への慰めミッションを開始した。


「うああああああん」

「……ちったァ泣きやめ」

「うぅぅぅぅ……、だって、あのラストが忘れられない、ひっ、っんだもん…」グスグス

「オマエ……、高校生にもなってアニメ映画でボロ泣きすンじゃねェよ」

「ごめん、かも……ひっく」

そう言って彼が差し出したのはウェットティッシュ。
もう慣れた手つきで、それをめくる彼女の前には特大のハンバーガー×4。
対する彼はアイスコーヒーのみ。


「みっともねェ顔すンな、暴食女」

「ぐすっ、恩に着るんだよ……、あと、うぅぅ、その言い方、ひどすぎかも」

「事実だろォ」

「あなたの可愛らしい後輩にっ、ひっく、思いやりって無いのかなっ、ひっく」


自分で言うンじゃねェとツッコミを入れた。


「あァあァ、しゃっくり出てンじゃねェか。 飲み物飲め」

「私の、終わっ、ちゃった」エグエグ

「……頑丈な胃袋ですねェ」

「ひっく」

「……後で買って返せ」

ジト目で差し出すその手を巻き込んで、彼女はコーヒーを飲む。

ちゅーちゅーと気の抜ける音と、まるでマイクを差し出すインタビューアーのような体勢な事に、少年はもう一々突っ込んだりはしなかった。

3 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/19(土) 22:29:39.86 ID:gUhTDXOAO




「……とてつもなく苦かったかも」ウガー

「もらっといて第一声がそれかオマエ」

「ご馳走、さまでした」

「ったくよォ……言えば良いと思うなよォ


「分かってるんだよ。 ぐすっ、ええと、それで追加の飲み物はコーヒーで良かったのかな?」

目元を再度拭い少女は顔を上げた。


「あァ? 別に炭酸じゃなきゃ良い」

「分かったんだよ! じゃあ行って来るね!」

腰にまで達する長い銀髪を揺らし、丸い形の可愛らしい財布をお供に席を立つ。


馬鹿にしていて、同時に心配しているようなそんな複雑な顔をして白髪の少年は告げた。


「オーダー間違えンなよ」

「ふふん、今となっては学園都市の生徒の一人である私に、あくせられーたってばそんなこと言っちゃって大丈夫?」

「映画のチケットもろくに買えねェ女がよく言うよなァ、インデックスさンよォ」

「違うんだよ違うんだよ! あれはついにカナミンを映画で見れるかも!って言う武者震いの結果で」

「それで18禁の方のチケット買いかける意味が分からねェ」

「え……、えっと」

ポスターに際どい格好をした女性が登場していたなあなんて思い出し、インデックスはほんのりと顔を赤らめた。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 22:30:31.19 ID:bY7S/MBDO
間違ってたらゴメンだけど
上条(悪)の人?
5 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/19(土) 22:32:59.10 ID:gUhTDXOAO


「本当ガキだな、つゥか早く行ってこい。 俺の口内乾いてンだよ」

「ガキじゃないもん! 私は聖職者なんだから不埒な物には慣れてないんだよ! 良いもん! 買って来る!」

「おォ」


(アイツ、多分ミスすンな)

上にあるエアコンの風によってひんやりとした冷たさを感じながら、何となく予感めいたものを感じる。

(そもそもあの暴食女って金払えるのか……?)

(奨学金、食い物に消えてそォだしよォ)

本人に聞かれたら間違いなく噛みつきコース確定である。


6 :>>4 残念ながら他人です :2011/02/19(土) 22:37:34.35 ID:gUhTDXOAO


10分後。

「はい、あなたには紅茶なんだよ!」ニパー

「おォ、貰うわ」

黒いトレーに乗せられた2つの容器。
それの自分側にある飲み物を、何の感情も抱かないで何気なく飲んでしまった。

先ほどの予感は非常に正しかった。


悶絶。

咄嗟に手を口元に当てた。

「っ!!」

「あくせられーた!?」

「……!!」プルプル

「大丈夫!?」

彼の元々からして白い肌は、更に血の気が失せてもはや青くなっていた。

せり上がってくる気持ち悪さを抑え、なんとかひくつく喉を動かし、問題の液体を飲み干す。


「……正直に答えよォかァシスター……、オマエシロップ何杯入れたンだァ……」

「2杯だよ?」

「だよ?じゃねェよ……! 季節考えろクソバカァ……!!」

ちなみに今日は、38度の真夏日、ではなくて猛暑日。

「さっきの映画で頭使ったかなって思ったんだよ」

「……ターゲット年齢が小学生のガキ向けの映画で、どォして俺が疲れンだよ」

寧ろこの食品テロの方がずっと心に響く。
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 22:39:20.72 ID:bY7S/MBDO
ういうい
支援支援
8 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/19(土) 22:40:11.44 ID:gUhTDXOAO



「カナミンを馬鹿にしちゃいけないんだよ!」

「オマエのことを馬鹿にしてる。 あと怒りてェのはこっちだっつゥの」

「う゛」

「あァあ、ガキ共ばっかの映画館へ拉致されて号泣してる影響で周囲にドン引きされてるチビの隣で、ろくにあらすじも知らねェ150分のストーリーを付き合ってやったにしては散々な扱いだよなァ?」

「私ってばヒかれてたの!?」

「……周りのクソガキ共が、いつ泣いてやがった?」ハァ

「あ、あんな感動するシナリオ他には無いってイギリスが誇る魔道図書館は断言しちゃうかも!」ビシッ

「かつての大英帝国サマも落ちたもンだな……」

やれやれと言わんばかりに肩を竦めると、更に顔が赤くなる。
顔料でも塗ったのだろうか、なんて考え暑さに脳髄がやられたか。

9 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/19(土) 22:42:02.45 ID:gUhTDXOAO


それから、やけ食いなのか、まだ手を付けていなかったハンバーガーと炭酸を恐ろしい速度で消費し始めた。


(相も変わらずよく食う女で……)

そして再認識する。
10ヶ月前の邂逅から、少女と自分の着る服や立場は変われど、彼女はよく食べよく笑いよく怒ったことに。


(救い救われ、持ちつ持たれつ、ってかァ?)


少年は、目の前の少女を見つめる。

誰よりも自分に近しい彼女を見つめる。
10 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/19(土) 22:50:16.62 ID:gUhTDXOAO


色合い:どこまでも白い
立場:両陣営の天才
才能:頭脳は誰にもひけをとらない
境遇:幻想殺しと出逢い、全てが始まる


今の傷害:記憶、演算能力


(……)



「……謝る気になったの?」ジトー

「微塵も」

「フン!!」


こうやって平和な世の中で後輩とファストフードを貪り食うことに、少しだけむず痒さを感じ――

「そうだとしたら、さっきから私のことばっかり見てるのはどうかしたの?」

「インデックス」

「ん?」


彼はあの日のようにズボンのポケットから長方形を取り出した。


「口、汚れてンぞ」

「……面目無いんだよ」


ちゃんと受け取ったことを確認して、彼は頬杖をついた。


思い返すのは、冬の日の図書館での再開。

心暖まるというか、懐が冷えたものだった。
11 :終わり :2011/02/19(土) 22:52:53.82 ID:gUhTDXOAO
短いですが、今日の分は終了です。
支援ありがとうございます、とても嬉しいです!
それでは、また今度!
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 22:54:29.96 ID:72WNc9dDO
ずっと待ってたんだよ!

日に十回は一方で検索かけてたんだよ!


乙!
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 22:54:53.75 ID:bY7S/MBDO
>>1
乙乙
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 22:59:13.46 ID:QczhvBoj0
白コンビ好きなんで超期待してる
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/02/19(土) 23:13:50.75 ID:cnX+hm350
乙。
でも>>1の安価間違えてるよね。復習に行ったらびびったわ。
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/19(土) 23:17:38.28 ID:km6W1iAAO
待ってましたーー!!マジで!!>>1乙です!!
これで一方、インデックス、禁書の検索ループかけから逃れられる…
白コンビ可愛いすぎだ…文体というか2人の間の雰囲気?が総合から好きでした!

あ、>>1の402だと闇条さんのになってますよ
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 23:24:51.64 ID:4Zj8jImJ0
自分が何人も居てびびった
白コンビに総合で虜にされましたよ、んでカプ色濃いとか思わせぶりなスレタイとか支援するしかねえし
そんでドジっ子おつ
18 : ◆ObanGQEW7M :2011/02/19(土) 23:33:36.22 ID:gUhTDXOAO
ご指摘ありがとうございます
うわぁ! 正しくは>>407ですね、本当に申し訳ないです! 私、インさんに噛まれ、一方さんに自転パンチ受けてきます、又の名をご褒美とも言う(キリッ
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/19(土) 23:36:23.22 ID:p5wDIPtSO
乙!まってた!
初っ端から2828させてもらった
白っ子ふたりかわいすぎる
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 23:41:00.65 ID:4Zj8jImJ0
おつううう!
総合から好きだったよぉぉ!!
wktkとまんねぇぇええええ!!
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 00:02:42.59 ID:f5VppRn40
できれば前の部分も貼っていただきたひ
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 00:15:04.42 ID:vF5yUcTu0
白コンの人か…!あなたのssで一方禁書に目覚めました…!
総合で投稿してた作品は私のメモ帳に永久保存してます!!

長点上機で先輩後輩…だと!?萌え所しかない><

超乙です
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 01:07:38.60 ID:gngUMmaQ0
うっほおおおおおおお!!!!楽しみにしてた作品ktkr!!!
先輩後輩マジ萌ゆるwwwwwwww

あ、>>16俺の闇条が邪魔しちゃってゴメン
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 02:17:35.88 ID:Cq+an55DO
北ァァァ川ァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 03:12:44.71 ID:vF5yUcTu0
>>23 あなたの闇条も最高でした…!大好物です^p^保存しました。

にしても19話のインさんマジシスター。
手も足も出なくてボコボコにされる一方さんに個人的には大興奮だったんだけど、
そこに現れたインさんは神々しかった…!
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 07:41:19.90 ID:Te8qLMFDO
メwwwモwww帳wwwwww
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 14:55:09.31 ID:PV4pWJ6AO
まあ人それぞれってことで

それにしても一方禁書がじわり増えてきて嬉しい限りだわ
続きが楽しみ
28 : ◆ObanGQEW7M :2011/02/20(日) 17:57:30.89 ID:xVgrZ0XAO
沢山の感想ありがとうございます。総合でもお付き合いいただきありがとうございました。
今晩9時ぐらいに投下します。

>>21
分かりました、こっちの時系列が追いついたら加筆修正して載っけることにしますね。

>>23
ご迷惑をおかけしました、私も闇条さんとはっちゃけるヒーローズ大好きです!
29 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/20(日) 20:27:21.90 ID:xVgrZ0XAO




2月の上旬、お昼前。

第七学区のとある図書館に、どこまでも白い少年が一人。書架に埋まりながら目的の本をピックアップしていた。

杖に引っ掛けたバッグには、既に何冊かの本。因みにそれらは全て厚く、文字が小さく、高度な内容なのは言うまでもない。


(ったく……、復学ぐらいすぐさせろっつゥの)


また学すると書いて復学。
今の、仮初めながら落ち着きを見せているこの学園都市で第一位は来年度から高校生としてやり直すことになっていた。

それも教室に机一つの特別クラスではなくて、誰もが経験する40人ほどの学級という彼にとっては未知の世界。



この日の前日に長点上機学園に手続きをして、予想内だと言わんばかりに特に拒まれることもなく受理された。


ただし、一つだけ条件が提示され、それをこなすために一方通行はわざわざここに居るのであった。
30 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/20(日) 20:29:45.47 ID:xVgrZ0XAO



(演算力向上についての考察なンて、今までの俺の経験則からして書けるわけねェだろ……、つゥか検算しろ)

式のミスを見つけ、一気に読む気が削がれた。

ぱたん

少し乱暴に棚に収めたのだが、平日の昼の閑散とした図書館に彼を咎める者は居なかった。

それどころか、年老いた司書以外は誰も居ないのでは無いかと思わせる空きっぷりだ。


(この課題も、俺の思考パターン解析が目的なのか、ただ単に参考にしたいのか)

いくら考えても、はっきりとした正解は分からない。

31 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/20(日) 20:32:20.22 ID:xVgrZ0XAO


長点上機学園は都市内トップの学校である。
聞いた話ではあるが、昨年の大覇星祭でも学校部門で堂々の優勝を飾ったらしい。

しかし、同じくエリート校と称される常盤台中学や霧ヶ丘女学院に比べると高位能力者の割合は寧ろ少ない。
それでいて何故トップに君臨出来るのか。


【能力具現化には自分だけの現実(personal reality)の確固が重要とされています。逆に言えば、どれほど素晴らしい演算能力やその他特殊技能を有していても、ただ才能が無いだけで最初のハードルに辿り着くことすら出来ないともとれるのです。
ですから、この選抜方法によって当校は能力に依存しない優秀な方にご入学していただきたいと考えております。】

どこかで見た募集要綱の上に記述してあった理事からの主旨説明。
そして応募資格を有するのはレベル2以下。

(馬鹿な強能力者より優秀な無能力者の方が社会貢献度は高い、それ考えると合理的っつゥか)


とは言え、あまりに優秀ならば多少であれど能力も発現するはずなので、取る人数もけして多くは無いと明記しておく。
32 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/20(日) 20:40:41.96 ID:xVgrZ0XAO


ふと上段を見ると、やたらラミネートの剥がれた背表紙を持つ本が一冊。

あんなにボロボロになるとは、きっと参考になる本なのだろうか、何せタイトルも読めないほどなのだ。


(……脚立はねェか)

わざわざチョーカーのスイッチを押すのも億劫だった。
特には理由もないが、顔は上げたままにしていた。


何故、彼が戻るのか。
それは、この都市にすむ子供なら元来当然のことだと言う同居人や保護者からの指摘であったり、彼が目指すものへは避けて通れない道であったり様々な要因があってのこと。
だが、最大の理由としては、やはり学園都市が落ち着いたことにある。


今の小康状態の理由を彼は知らない。

別に学園都市を舞台にした大きな戦争があったわけでも、理事長が変わったわけでもない。

表向きにも何も無い、だから異変を感じたとしてもごく一部に限られる。


暗部。

あれ以来徴収は無い。
都市を揺るがすような目立つ大きな事件も無い。

いつの間にか崩壊したのだ。
そう、わざわざ思い出したいような事では無いのだが、あの極寒の地から帰るとすぐ……







「どの本かな?」
33 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/20(日) 20:43:37.93 ID:xVgrZ0XAO


すぐ左からソプラノが聞こえる。
顔は、フードと髪に隠れて見えなかった。

少年は、気配に全く気づかなかったことに驚きが隠せない。


そしてガッシャンガッシャンと、この図書館の静寂を一気にぶち壊す、あまりにけたたましすぎる音を立てながら、脚立に女は登った。
そして近くにあった本を指差す。


「これ?」

「……上のボロいやつ」

「分かったんだよ」


最上段に登っているのだが、どうしたって背が足りていない、錆のある古い製品、そしてそれに元から左手で別の本を持っているという脅威のラインナップ。


重心が定まっていない。
34 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/20(日) 20:46:09.97 ID:xVgrZ0XAO


「オイ、背伸びは危ねェだろ」

「あと、ちょっと……!」

忠告に聞く耳なんか持ってはいない。

白く柔らかそうな手が本にかすり、離れて、かすり、離れて、そしてやっと触れる。
これ幸いと指を滑らせ間にこじ入れて、全力を込め一気に引き抜いた。


「ふぁっ」

灰色のカバーの一冊の本を手に入れ、しかしその勢いのまま


「っ……!」カチッ


ぐらり、少女は後方に倒れていく。

「ひぁぁぁ!」

まるでスローモーションがかかったようだった。

銀髪に光が煌めく。
あの日の炎を反射した輝きと同じように、場違いながら美しかった。


蛍光灯の光を遮るのは少女の体、それは黒く見え、後ろ向きのせいで表情は分からないが、焦っているらしい。


宙を舞う本はこの際無視である。
一方通行はもはや無用の杖を放り投げ、上から落ちてくる少女をベクトルを利用し受けとめた。

俗に言うお姫様抱っこで。
35 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/20(日) 20:49:05.60 ID:xVgrZ0XAO





ドサリ

「……オイ、大丈夫かァ?」


「――あ、れ? 落ちてない?」


「ったく、危ねェつっただろォよ」

耳元で囁くと、衝撃に絶えるべく身を丸くしていた彼女の体がおずおずと戻っていく。


「まァた、随分と無鉄砲なことで」

「あなた、受け止めてくれた、の?」

「俺以外に誰が居るンだよ」


怖々と少女の瞳が開く。

やはり、その碧に十分の見覚えがあった。
と言うか、この学園都市内でこの容貌を一目見たら忘れられないだろう。


それは彼女の方もそうらしく。
36 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/20(日) 20:50:28.42 ID:xVgrZ0XAO







「計画性ぐらい持て、チビシスター」

「白い、人?」







こうやって邂逅した。
37 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/20(日) 20:53:17.54 ID:xVgrZ0XAO



「オマエに言われたくはねェけどなァ」

「久しぶり。 髪伸びてて誰だか分からなかったかも」

「あァ、面倒で。 つゥかオマエも鬱陶しいぐらい長くなかったかァ?」


今のインデックスの髪は肩を少し越したぐらいの、ミディアムヘアーになっていた。
それと心なしか背が伸びた気がする。


「ちょっと痛んじゃって。 そういえば、本が無いかも」

「いい加減降ろすぞ」

床に彼女を下ろし、彼は脇に転がった2冊 の本を拾う。


一冊は、例のボロボロの本。


(……超能力者になろう……、つゥかただの教本じゃねェか)


こんなことの為にバッテリーを使ったのかと、どうしようもない腹立たしさを感じてならないのだが、床のタイルにあたるわけにもいかないのでなんとか苛立ちを咀嚼する。
38 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/20(日) 21:00:00.41 ID:xVgrZ0XAO



もう1冊の本を見る。
逆さまに置かれたそれを手に取り、読める向きに直して、そしてタイトルを理解する。

「これオマエが借りたンだよなァ」

「そうだよ、シェイクスピアは我が同胞だからね!」

「ハラカラ……、イギリス人なのか」

「そうなんだよ」


異国の少女とは理解していたが、生まれは英国だったのかと少し驚き、ついでに杖とそれにかけていた袋も手に入れる。

少年はチョーカーのスイッチを切り、少女を見る。


「ロミジュリねェ……」

「うん、日本語訳を読んだことが無かったのと、好きなんだよ」ニコニコ

「マクベス一択だろォ」

「そうかなあ?」

「恋愛の悲劇とか滑稽で見てらンねェ」



本を渡し、そろそろレポートに取り掛かろうとテーブルの方へ向かう。


「ねえ、あなたのお名前聞いてないかも」

「名前? 知らねェ」

「奇遇だね! 私もなんだよ」

「ふゥン」

「それで、あなたのことなんて呼べば良いのかな?」

「一方通行(アクセラレータ)」

「accelerator? 粒子加速器なんて変わってるね」

「目録には言われたかねェ」

「私の名前覚えてたんだ」

「生憎なァ」

「む、これはとうまとは違ったタイプの意地悪さんかも……!」



地下街の時のような小気味のよい足音を、後ろに感じながら。

39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 21:05:54.09 ID:Cq+an55DO
しえん
40 :終わり :2011/02/20(日) 21:05:59.12 ID:xVgrZ0XAO
長点上機の入学システムはここだけの捏造ですので、ふーんとでも思っていただければ。
書いてるうちに
インデックス「奢って……奢って……いただけませんか? 奢っ……たらどうな……です…… 奢りましょう、アクセラくん」
とか言い出しそうだな、なんて。
妄言吐かないで書いてきますね!
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 21:25:06.54 ID:IgWmPIvm0
おつおつ
インデックスの髪の毛ってもしやあの人のせい…
一方禁書蕩れ!
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 21:34:37.05 ID:JRfo0OdAO
>>40
ツンドラに春が訪れてツンドロになるインさんとか俺得
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 21:35:44.63 ID:AQuFY5W7o
髪の短いインデックスってエロゲのキャラそのまm(ry

とにかく乙
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/21(月) 20:39:18.22 ID:/onWMcrDO
-(:=>)(:=|)(:=<)―――

    団    子    三    兄    弟
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 20:58:09.71 ID:/onWMcrDO
すみません誤爆しました
46 : ◆ObanGQEW7M :2011/02/21(月) 23:00:09.13 ID:H4fkXMmAO
こんばんは
少ないのですが今夜の投下をば
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 23:02:59.52 ID:JuT3gvBfo
キターwwww
48 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/21(月) 23:03:46.03 ID:H4fkXMmAO



「ンで、どォしてオマエはここに居るンだよ」

「暇ははらはよ」モグモグ

「学校は」

「行っへるほーひ見へる?」モグモグ

「――ねェな」

「行ひはひほは、おもっへるんだけどね」

「行けば良いじゃねェか」

「うーん、ちょっとややこしいことになっちゃいそうで」


Hばかりの単語を聞き取れる自分にさり気なく驚きつつ、先ほどからの首の寒さをどうにかしたいと思い、襟を皮膚に寄せてみた。
所詮気休めでしか無いのだが、隣はその気休めすらしようとはしていない。


安全ピンだらけの修道服で2月にピクニック。
これが聖職者になるための条件だとしたら、絶対自分には無理だと断言できる。


49 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/21(月) 23:07:11.90 ID:H4fkXMmAO




ごっくん、と喉が起伏した。

巨大な弁当箱を瞬く間に消費したインデックスは、近くにあったコップに水筒の中身の緑茶を注ぐ。


「もォ食べたのかよ」

「お腹空いてたからね」ゴクゴク

「ビックリ人間ショーかよ」

「やっぱりジャパニーズティーは最高だね!」

と外国人らしさ全開で語る彼女の隣で、一方通行は近くの自販機で買ったコーヒーをちびちびと飲んでいた。


「緑茶は中国じゃねェの」

「えっと、言葉のアヤなんだよ」

「そォかよ」

「ブラックコーヒーは苦手なの?」

「自販機のは胃に悪そォで」

「なるほど」
50 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/21(月) 23:09:28.14 ID:H4fkXMmAO



そう言われれば、あの時もミルクを入れていたような気になる。



ここは図書館入り口スロープの隣にある、2人掛けベンチである。

しみじみとシスターは語った。

「いつも1人で食べてたから、なんとなくベンチが狭いんだよ」

「悪ゥございましたァ」

「ううん。 風が凌げて丁度良いかも」


「俺が風対策になるとは思わねェンだが」

「そこは私の優しさだったんだよ」

ニヤニヤと笑う少女がお茶を飲み終わるまで待ってから、修道服の帽子に軽くチョップを入れる。

「ふおっ!」

「生憎細いとは言われ慣れてンだよ」

「うん、あくせられーたって本当に」

「言うな」

言われ慣れていると語っておいて、いざ阻止すると言うのもなかなかに変な話ではあるが、そこは彼のプライドと言うことでご容赦いただきたい。
51 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/21(月) 23:13:43.77 ID:H4fkXMmAO






「そう言えば、ここにあなたが来るのって、今日が初めてかな?」

「そォだな、つゥか存在すら知らなかった」

「学校にあるらしいから、なかなか来る人居ないのかも」

人口のおおよそを学生が占めるこの街では、普通の利用者層である社会人もなかなか訪れない。
だから常に閑散としていて司書は寝てばかり、とヤレヤレと言わんばかりのポージング。


「む? もしかして、あなたも私と同じように有閑な人なのかな!?」キラキラ

「……悪ィが、ここには目的があって来てる」

一抹の心苦しさを覚え、彼女からさり気なく目を離した。

「そっか。 それはそれはちょっと残念」

弁当箱をナフキンで再度包み、持ってきていた白いトートバックに入れてしまった。
52 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/21(月) 23:20:42.03 ID:H4fkXMmAO



ゆらゆら
足を上下に。


しばし閉口し、インデックスは囁くような独り言を語る。

「図書館って新鮮で面白いんだよ」


語尾で何となく、その意図が分かってしまった。

「――3月まで俺も通うことになる」

「そっか、よろしくね!」

「あァ」

春待ちのこの時ぐらい、少女と図書館通いも悪く無いかも知れない。





「つゥか、いつから来てンだ?」

「今年の1月14日からかな」

正確な日付を言われると、なるほどやはり完全記憶能力者なのかと再認識させられる。

「とうまが暇なら行ってみれば?って」


(“とうま”……。 確かコイツの同居人だったか)

「お弁当も作ってくれるんだよ」

「オイオイ、男に作らせてンのかァ?」

ニヤニヤとしたどことなくからかいを含んだ視線に、慌てて反論をした。
53 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/21(月) 23:23:51.99 ID:H4fkXMmAO



「心外かも! 私だって――作ろう!よし作っちゃうんだよ!――とは思っているんだけど、なかなかとうまったらキッチンに立たせてくれなくって」

全く!と腕を組むインデックスの傍ら、一方通行は話中の彼が、この女に料理をさせないことに深く納得をしていた。



(打ち止めに包丁なンざ危なくてやらせられるか)

兄的・父的な考えだが、どうにもあのアホ毛の少女の包丁捌きは危なっかしく見ていられない。
自分だって料理の経験は無いが、少なくとも左手を丸めて包丁の先で切るぐらいは知っている。
それをまあ、刃先は斜めに傾いで、左手は平べったく、包丁の腹で鋸のように切っている光景を初めて見たときは、何というか血の気が失せたものだ。

きっと、彼にとっての少女もそうなのだろうと勝手に見切りを付けた。



それは、まあ、正しいことであった。

54 :終わり :2011/02/21(月) 23:28:10.51 ID:H4fkXMmAO
、イギリス清教は早く新しい修道服送ってあげるべきじゃないかなあ、正直冷えてしょうがないんじゃないかなあ。まあ依頼されれば私が暖めに行くけど!
いつもご支援ありがとうございます。
インデックス似のエロゲキャラ……だと……?
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/21(月) 23:37:14.81 ID:hTf2VF3U0
おつ!
ベンチ二人掛けに萌えた
しかしインさんならこちらが保護してるぜ
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/21(月) 23:43:32.03 ID:VWhTd/8SO
乙!
つっこみ待つとか意図を汲むとか
そこはかとない一通さんのやさしさにほんわかした
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 23:50:36.49 ID:xDLN9vG6o
>エロゲキャラ
ユメミルクスリで調べると幸せになれるぞ
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/21(月) 23:52:18.72 ID:dXDIWzcAO
乙です!!連日きてたとはっニヤニヤして眠れなくなりそうだww
やっぱこの2人の距離感好きだわー。
59 : ◆ObanGQEW7M :2011/02/22(火) 23:53:38.43 ID:mBuOQJuAO
こんばんは
まだギリギリ今日ですねということで投下
60 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/22(火) 23:55:54.85 ID:mBuOQJuAO




「……」

ペラリ
時折聞こえてくるのはページを捲る音。


真向かいの少女の顔を、頬杖をつきながらぼんやり見つめる。


一切出来物の無い白く美しい肌、高く整った鼻、長い睫、翳りを見せる瞳、顔にかかる銀髪。

顔のパーツを一つ取っても、やはり人種の違いというのをまざまざと感じる。


「私の顔に何かついてるかな?」

視線に気づいたのか、手元の本から顔を上げた。
少し眉根が下がっている。

「何もねェよ」

「そう、それなら良かったんだよ」

ほっとした顔をして、にこりと笑う。
一方通行がよく見てきた、養殖されたような紛い物の表情ではなくて、インデックスのそれは心からの笑顔だった。

61 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/23(水) 00:00:38.22 ID:+OpC90EAO


「……」

しこりのような何かが、心臓を啄む。
焦りに、似た感覚だった。

嘘がつけない性格でよくもこの悪意ひしめく街で生き残れたものだと少し感心して、同時に不安になったことだと自己完結をして


そして気づく。



こうやって笑う修道女が悪意に晒される世だとしたら、もうそれは救いようが無いと。

目の前の女の事情は何一つ知らない。
が、白濁した自分にも人懐っこい態度の彼女が、もしこれから計算づくで打算的に生きないといけなくなるとしたら、それは唾棄すべきことだ。


言ってしまえば、打ち止めしかり目の前の少女しかり、光の世界なら誰のものであっても混じり気の無い笑顔と言うのは、彼は嫌いでは無かったのだ。

62 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/23(水) 00:03:27.49 ID:+OpC90EAO



少しして。

先ほどのお返しとばかりに、インデックスに一方通行は凝視されていた。

作業の手を止め、問いかける。

「ンで、そっちは何?」

「あなたにとって差し当たりが無かったら、ちょっと聞きたいことがあるんだよ」

「言ってみろ」


誰も居ないとは言え、大きな声を出すのは憚るべきだろう。
だから必然的に吐息混じりの小さな声になるのだが、やたら幅の広い館の机のせいでうまく聞き取れなかった。


「あ…せ…ーたは」

「聞こえねェ」

そう言うと、少女は木製の大きな椅子から腰を浮かせた。
その時の、脚と机が擦れる音が思いのほか大きく、びくりと肩を震わせ辺りを見回す。
相変わらず誰も居なかった、行政はこんな様で大丈夫なのかと少しの疑問。

そして、顔を寄せる。


少年は、その薄い唇が動くのをしかと見届けた。
63 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/23(水) 00:05:45.98 ID:+OpC90EAO



「――あくせられーたは何を調べてるの?」

「演算能力向上についての効果的なアプローチを考察、っつゥ題のレポートの提出を求められてンだ」

「そ、それは、あは、またまた大変なお題だね」グルグル

「オイ、視線さ迷ってンぞ」

「ま、まあ文献を頼りにするべきかもね! 先人達の偉大なる知恵を」

「誰でも出来るアドバイスをわざわざどォも」

「きーっ!!」ダンダン

「館内ではお静かにィ」


じたばたと憤りを表現するインデックスを鼻でせせら笑いながら、そう言えば、と呟いた。
64 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/23(水) 00:08:19.60 ID:+OpC90EAO


「身なりからして、オマエは能力者じゃ」

「うん、違うよ」

「即答かよ」

即答だった。



インデックスというのは能力名で、本名不明なために自分と同じように通り名を代名詞として使っているのかと、多分真実ではないとは知りながら疑問を抱いていたのだが、それも晴らされた。




一方通行は、あの極寒の地で無能力者の少年が残していったメモの内容を今でも覚えている。


【Index-Librorum-Prohibitorum】

【禁書目録】


目の前の少女の名もインデックス、偽名ではあると思うが。


(関係はあるンだろォな)

流石に、気づかないような愚鈍さは持ち合わせていない。

完全記憶能力者、シスター、外国人。
少なくとも、今の分かっている特徴を羅列しただけで、際限なく繋がりは出てくるのだ。
65 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/23(水) 00:11:18.42 ID:+OpC90EAO





(もしそォだとしたら、打ち止めを救ったのは――)


「どうしたの、あくせられーた?」

凄く難しい顔をしてるよ、と指摘を受けた。


「何でもねェ」

「具合でも悪いの?」

「平気、つゥか地顔」


きっと、自分たちはあの少年や打ち止めを介してロシアで関係していたのだろうと彼は推測をする。

それは、九分九厘・シックスナインの可能性。

66 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/23(水) 00:15:55.17 ID:+OpC90EAO



しかし、残り一厘だけでも違う可能性があるならば、ただの善良な市民を怖がらせるだけだ。


自分の罪深さや、この都市の残虐さ。

知るべきではないし、知られたくなかった。



「――オマエの同居人に、俺のことは言うな」

「どうして?」

「オマエが思う以上に、俺は有名人なンだ」

「えーっ!! 本当なのかな、それ!? じゃあ、あの日もそういうことだったの!?」

「好きなよォにとれ」


キラキラとした碧の眼差しを向けられた。

嘘は何も言ってはいない、けれど重々しい罪悪感が広がっていく。


結局自己本位なのだから。
67 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/23(水) 00:18:40.05 ID:+OpC90EAO


恩人なら打ち明けて。
巻き込みたく無いのなら、切り離して。


そんな込み入った事情を話すべきでは無いなんて、逃げでしかない。
我が儘、知られたく無い。
礼を言えないのは心苦しい。


けれど、自分を損得で図らない知り合いを失うのが、少し嫌だった。

分かりやすく言い換えると――



「了解したんだよ! あなたのことは恥ずかしがり屋の友達だって、とうまには言っておくね!」

「恥ずかしがり屋……ねェ」


何となく笑ってしまった。
案外、言われてみればそうかもしれなかった。
徹底的に秘匿して、抱え込んでいる秘密主義者。

自覚する、どうしようもない恥ずかしがり屋だった。
68 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/23(水) 00:21:50.20 ID:+OpC90EAO


「俺がそれなら、オマエは恥知らずでどォだ」

「それはどういうことなのかな……?」

「ったく白々しい。 街中で倒れ、初対面の人間の金でファストフードを貪り食う女がどこに居ンだよ」

「…うっ、言い返せないかも」

「挙げ句の果てに、使用済みティッシュを返しに来よォとさえしやがった。 オイオイ、ちったァ常識で考えよォぜ、暴食シスターさンよォ」ニヤニヤ

「……あくせられーた」

「あァ?」

「覚悟、かも」


次は一切音を立てなかった。

動作には一切の無駄が無く、もしかしてイギリスからのスパイなんじゃないかと彼に思わせる程。
抵抗すら忘れた白い腕を掴まれ、それに歯が突き立てられる。

チリチリとした痛み。

69 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/23(水) 00:26:04.27 ID:+OpC90EAO



「ほほはへひう!?」ガブガブ

「っ! オマエ、何が」

「へーはいかほ!!」

「制裁にしてもやり方あンだろォよ!!」

口が腕から離れる。
噛み痕は、少しだけ赤かった。
全く痛く無いことを考えるにこれは甘噛みなのか。
そもそも人間が人間を噛む行為と言うのは、所有権のアピールじゃ無いのかと場違いに考えたりして。


そしてシスターは、妙に勝ち誇った顔で一言。


「これが私のやり、あたっ!」

「じゃァこれが俺のやり方だなァ!!」


三回連続のチョップ。


もはや図書館で静かにしましょうなんてルールは忘れていた。
第一次仁義無き戦い勃発である。



最中、ふと思う。


これが正しいコミュニケーションなら、なかなか友人関係と言うのはバイオレンスなものだと思う。

不思議と、嫌いでは無かった。

70 :終わり :2011/02/23(水) 00:29:35.04 ID:+OpC90EAO
白コンビ、またの名を肉体言語コンビとも言わない。みたいなノリ。

>>57
お陰様でとても満ち足りてます(キリッ
しかし、雲川先輩と色合いヴェントちゃんがいらっしゃるような
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/23(水) 01:04:00.95 ID:VBuqOi5AO

やっぱり可愛い二人だなあ
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/23(水) 01:12:15.25 ID:jOwrCkT70
おつ
距離間が良いなあ。友達から先輩後輩になるのもまた楽しみだ
あと肉体言語にえっちいこと想像したのは俺だけで良い
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 01:38:11.80 ID:snLyosjeo
乙ー
ニヤニヤがとまらん
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 05:18:07.31 ID:zUMlrAfIO


>自分たちは…(中略)…シックスナインの可能性。

ふむふむ……期待するか
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 08:03:47.86 ID:K/YlgBCAO
なんだか>>1と俺らの間で、シックスナインの意味がズレてる気がしてならないぞ…

杞憂ならいいんだが
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 08:26:27.12 ID:+OpC90EAO
>>75
99.9999パーセントのことで体位的な意味じゃ無かったんですが、紛らわしかったですね。すみません
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 10:03:34.75 ID:rbQcmbQKo
>>76
そ、そんなの知ってたよ!
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 10:33:25.64 ID:4JF8WBPt0
オ、俺も知ってたぜェ
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 16:26:56.06 ID:t8Izz0xro
おおおおれおお俺だって知ってたぜうん
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 18:14:23.14 ID:5aqyb7Ujo
ううううん、そそそうだおyな
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 21:49:46.58 ID:kSvVriGDO
気持ちいいんだよあくせられーた!>69<あァ…俺もイきそォだインデックス
82 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/23(水) 21:53:27.23 ID:+OpC90EAO
今日の投下始めます
83 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/23(水) 21:55:06.90 ID:+OpC90EAO


壁にかかっている時計を見る。
もうすぐ彼の同居人達も帰り始める時間だった。

近くに立てかけておいた杖をとって、机の上の鞄を杖に引っ掛けた。


「あくせられーた、もう帰るの?」

「あァ」

「じゃあ私も帰るんだよ、ちょっと待ってて欲しいかも」

「ン」

そう言うと慣れた手つきで分厚い本も薄い本も、どんどん収納していった。

ちらりと表紙を見た限りでは

・ロミオとジュリエット
・時代ものの小説
・占いの本(打ち止めが読みそうな)
・つり目の勝ち気そうな少女が表紙のライトノベル
・世界拷問大全

「すげェラインナップだな……」

「読めれば良いんだよ読めれば」

「色ンな奴敵にするぞ、その台詞」


あくせく動くその姿に、ふと気づくことがあった。

84 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/23(水) 21:56:35.38 ID:+OpC90EAO


「借りる手続きはしたのかァ?」

「……飛ば、してたかも」

「忘れてたとは言わねェンだな」アキレ

「だって忘れてないもん!」

「ハイハイ」

またもや素早い動きで取り出し、慌ててカウンターの方へ走っていった。

――今まで、あんなダルダルな修道服の裾に引っかからないなんて、やはりいくら暴食な女とはいえ、聖職者の時点で人間としての徳が違うんだなと感心していた。


のだが、彼女は案の定バランスを崩した。

85 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/23(水) 21:58:26.54 ID:+OpC90EAO



しかも両手を塞がれた状態で。


バチンと、破裂音がした。

「あいたたた」

「気を付けろ、っつゥか焦ンな」

「ごめんなさい」

「ったくよォ」

カツコツ

床を杖で叩きながら、転んだインデックスの近くまで歩いていく。

悪態をつきながら、辺りに散乱した本の類を拾うと、恥ずかしそうでいて何かをこらえた顔をした彼女がそれを受け取った。

全て合わせるとかなりの重みを感じる。


「ありがとう」

「早くやってこい」

「うん」


フードを靡かせながら少女は歩く。
うつらうつらと居眠りをしている司書を起こし(どうやら顔馴染みらしく、ああインデックスちゃんかと少々の会話があった)無事に手続きを済ませ、玄関近くに居る一方通行の方へひょこひょこと歩いていった。

86 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/23(水) 22:01:39.37 ID:+OpC90EAO


「お待たせしちゃったかも」

笑う彼女に対して、特に返事はしなかった。

自動ドアが開かれると、一気に冬の冷気が体を襲う。
目に飛び込んで来る館前の街路樹は、どうにも味気ない色をしていた。



「どうしたの、あくせられーた?」

「座れ」


先ほど昼食をとったベンチの前に立つ。
理由は説明しなかったのだが、インデックスはそれに従った。


日はまだ沈みそうには無かった。

87 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/23(水) 22:04:47.29 ID:+OpC90EAO


―――――――



正面で片膝を着いた一方通行は、彼にしては優しい力で彼女の右足を持ち上げた。


しかし、大事なことがある。
彼女が身に纏うのは修道服、そして事前になにも聞かされていない。


「ひゃ、わ」バタバタ

「暴れンな」

「なっ、なっ、何をするのかなぁっ!?」

「何、ってオマエが一番分かってンだろォ」

両手で時折角度を変えながら足首を観察する彼は、平気な顔をしている。
それに、更に焦らされる。


「私!? その、全然覚えなんて無いんだよ!?」ピャー

「あっそォ、じゃァ勝手にやる」

「うぅぅぅ」

体勢的に逆らいたくても逆らえない。

一言ぐらい何が目的なのか説明すべきだと至極当然なことを考えるインデックスをまるで無視した一方通行は、茶色の靴を脱がし裾を膝丈付近まで捲りあげた。
88 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/23(水) 22:09:52.74 ID:+OpC90EAO



「ひぇぇぇ……」

露わになった足に冬の風が冷たい。
雪のような肌に、鳥肌がたった。

下方の彼を見ると真剣な顔をして足首を眺めている。

(なんかもう駄目……かも)


固く目を閉じて、これから起こるかもしれない羞恥心を煽る何かに耐えようとする。

しかし

「力抜いて、目ェ閉じンな」

「……」

これにはシスターも苦笑い。
ではなく、もう諦観の笑みを浮かべていた。

「痛むが気にすンな」


気にするんだよ!、と叫ぼうとした次の瞬間。

89 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/23(水) 22:13:23.88 ID:+OpC90EAO



こつん


「〜〜っっ!!」

「あァあァ、やっぱ挫いてンじゃねェか」
何てことはない、彼の人差し指が足首を叩いただけだった。


「……はあ……っ、ううう」プルプル

「あンな転び方しといてシラ切れると思ってたのかァ?」

「……わ、すれ、てた……っ」


予期もしない痛みのせいで涙目になったインデックスは、ぼやける視界の中で支えを求め後ろの背もたれによがった。


「炎症起こすと面倒だし、治すぞォ」

「あ、なた……整体師……なの?」

「違ェよ」

良いから黙ってろとの声に、口を噤む。
どちらにしても、人差し指で弾かれただけでは説明しようのない痛み、それがじわりと体全体にまで伝い、発声することもまた生み出した。


今更になって熱を持って痛み出した足首に彼の右手が触れ、もう一方の手は本日2回目、電極のスイッチを入れた。
90 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/23(水) 22:16:34.43 ID:+OpC90EAO


――ガラリと流れが変わる。


神経が切られ、繋がれ、せき止められ、ごちゃごちゃと混ぜられて、周りの筋肉がほぐされるような感覚。

今までの記憶と言っても、そう大したものでは無いのだが、その中では経験したことがなかった不思議な感覚。


「……」


暖かさと軽い眩暈を感じた。

91 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/23(水) 22:21:56.39 ID:+OpC90EAO



「――こンなモンでどォだ」

「あ……」


いつの間にか、痛みはひいていた。

ゆっくりと足首が下ろされる。

アスファルトに置いてあった靴に、ちょこんと先が触れた。

「治してくれたのかな?」

分かりきったことなのだが聞いてみる。


「後ろで珍妙な歩き方されンのもうぜェし」

右に左に一回転、どこの動きにも問題は無かった。


「ありがとう、あくせられーた」

「面倒くせェ……」

「やっぱりあなたは良い人だね」

「気のせいだろ」

「違うんだよ」


靴を履きながら、考えてみる。
まだたった2日の付き合いしか無いというのに、何回助けられたんだろうか。

目の前の憮然とした表情の少年が優しく無いのなら、誰が優しいのか。



「……俺に感謝の気持ちがあンならこれ持て」ポスン

「えっと?」

そう言って投げるように渡されたのは、彼が持ってきていた鞄。

両手で落とさないように抱える。
92 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/23(水) 22:25:11.05 ID:+OpC90EAO




「俺が持ちたくない程度には、重てェから」

「うん、分かったんだよ」


軽快な動作でベンチから立ち上がると、汚れを気にして腰周辺を軽く叩いた。


「ンで、オマエの貸せ」

事後承諾。
またもや返事は聞かずに、ベンチの上のトートバックを杖に引っ掛けて、かつんかつんと道路を歩いていった。


慌ててその後ろを走っていく、転ばないように気を付けながら。

「あくせられーたのお家はどっち!?」

「こっから北」

「なら私と一緒だね!」


空きだらけの鞄を携えて。
93 :終わり :2011/02/23(水) 22:28:34.25 ID:+OpC90EAO
世界拷問大全は本当にあるらしいのですが、本当に重いそうです。
あと、何かと性的なことを匂わすのはもう癖かもしれないので気にするだけ無駄ってやつだなあと達観して頂けると幸いです。
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 22:29:23.79 ID:yr8ZPArXo
アクセラさん紳士すぎワロタ

こんなん誰でもほれてまうわ
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 22:32:04.02 ID:9sCs1HjBo
不器用な優しさがたまらないな…
おつー
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 23:02:12.48 ID:FtIKdQVXo
これはいい!とてもいいぞおおおおお!!

97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/23(水) 23:12:09.83 ID:McUCwrJAO
おおーじんわり2人の仲が良くなっていく感じがいいな
にしても一方さんマジ紳士
普段見えないインデックスの足ってそこはかとなくエロいよねっなんて思った自分には無理だ
乙ですっ!
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 23:38:12.42 ID:P2mHNGAg0
一方さんの紳士っぷりとインデックスさんの羞恥っぷりに胸がいっぱいです。
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 07:40:25.71 ID:y5rHohwAO
紳士すぎてセロリさんがまぶしい
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 08:53:54.32 ID:lyJ8aWai0
>>1乙通行

うおおおこの2人の絡みは本当に無垢というか、純粋というか…!
愛しさで胸がいっぱいですよ

アカデミックな2人が図書館に集うとかお似合いすぎてヤバい
そんで何故か天使は図書館に集まるっていうアレを思い出した
101 : ◆ObanGQEW7M :2011/02/26(土) 23:38:02.16 ID:euov+4VAO
1時ぐらいに投下予定です
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 00:34:41.48 ID:V7n5jhlDO
楽しみですね
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 00:38:20.88 ID:yFyIgIjDO
禁断症状が・・・は、はやく・・・
104 : ◆ObanGQEW7M :2011/02/27(日) 00:56:53.16 ID:ta2oSvaAO
それでは始めます
105 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/27(日) 01:02:09.97 ID:ta2oSvaAO




かつん、かつん

「……うー」

「……」

「……」グルグル

ちらりと後ろを見ると、預けた鞄を大事そうに両手で持ちながらシスターは何やら思案しているようだった

「……ハァ」

面倒なことになるなと、ため息が一つ零れる。
視線を前に戻し、彼女にギリギリ聞こえるかぐらいの大きさの声で喋った。


「……言いたいことあンなら言え」

「良いのかな?」


一つの頷きで返した。

ゴクリと、唾を飲み込む音が聞こえた。

「あくせられーた、あなたは能力者なの?」

「あァ」

「……即答だね」


この街に疎いインデックスでも魔術名のように能力名=殺し名では無いのは重々承知しているが、やはり聞くのには躊躇ってしまう。

彼女の同居人はレベル0。
初めてのこの街での友達は自身の能力を好んでいない。
同じくイギリス清教のスパイは能力のせいで多少の無茶を厭わない。
親友は幻想殺しで消えてしまう。

こんな友人達が居るのに、能力開発に良い印象を抱けなくても仕方のないことだろう。
106 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/27(日) 01:04:06.96 ID:ta2oSvaAO




「別に隠すようなことじゃねェよ」

「えっとそれは、さっきのイタイノイタイノトンデケー……みたいな能力なのかな?」

「ちょっと待て。 何だそれは」

「とうまが言ってたんだよ」

「その迷信じゃねェ」

「うーん、本当に迷信なのかな? 私は音階的にヒーリング効果があってもおかしくはないって」

「その議論はいずれしてやるから置いとけ」


問題はその次だった。



「あなたは、イタイノイタイノトンデケーみたいに、痛みを無くせたり傷を治療できたりするの?」


それまで一定のテンポを刻んでいた杖が、急に音を止めてしまった。


シスターは訝しげな目を少年に向けた。
107 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/27(日) 01:07:30.69 ID:ta2oSvaAO






「どうしたの?」

「――治療、ねェ」


顔に薄い笑みが広がる。
何も嬉しいわけではない、ただの自嘲だった。

いつぞや妊婦を助けたあの時、深層で感じたのだ。
こんな前向きな使い方を出来るのなら、最初から使っていれば良かったと。
他人からのベクトルを変換して受け付けないだけではなくて。

もしかしたら、悪意さえも変換出来たのかもしれないと。


――勿論、たらればの話をいくつ積み重ねたって、過去の蛮行が消えるわけでは無いのだけれど。


「――まァ、さっきのは一端なンじゃね?」

「じゃあ、もっと別のことにも応用出来たりするの?」

「あァ」


いつの間にか隣に少女が居た。

右側に伸びる影を一瞥し、彼はまた歩き出す。
108 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/27(日) 01:11:40.45 ID:ta2oSvaAO





「俺の能力は“一方通行”」

「うん」

「その本質は自身が観測した現象から逆算して、限りなく本物に近い推論を導き出す事。 ……付属品としてベクトルの操作が可能だと」

「ベクトルっていうと……、数字には疎いんだけど方向量っていう認識で正しいのかな?」

「問題ねェ。 ンで、説明は省くが、そのベクトル変換をさっきのに応用したっつゥわけ」

「随分と汎用的な力なんだね」

「そォかもなァ、何せ髪も不気味な色に脱色できるときた。 尤も、この健全じゃねェ人格のせいでロクな使い方はして来なかったがなァ」


西を見ると、先ほどのベンチで見た時よりも地平線側に太陽が移動していた。

日が暮れるまでは30分強といったところだろうか。
まあ、あと15分もすればファミリーマンションのゲートが見えるはずだった。
109 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/27(日) 01:14:16.51 ID:ta2oSvaAO


まあ、自分は良い。

(コイツの家はどこなンだ?)

同居人が少年と言うのだから、男子寮の可能性が高い。
第7学区なのだから中学生か高校生か、どちらにしても、ここには沢山の学生寮があるはずだ。


とりあえず、暗闇の中、女子独りを歩かせるのは気がひけた。
だから、あとどれぐらいかかるのか尋ねようとして少女を見ると、妙に熱がこもった視線で此方を見ていた。


どうやら不服な出来事があったらしい。
ちらりと犬歯が覗いて見えた。
110 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/27(日) 01:16:36.36 ID:ta2oSvaAO






「不気味? 健全じゃない?」

「あァ、そォだろ」

「ほんとに?」

「あァ」

「……ほんとのほんと?」

「あァ」

「……よぉし、分かったんだよ」トテトテ

「あァ?」


いったい何をするつもりなのだろうか。

インデックスは進行方向に向かって、その小さい身を割り込ませた。


「……ねえ、あくせられーた」


吐息混じりの声、そして上目遣い。

夕日に照らされた少女に、少し違った印象を受ける。

妙に妖艶な――
111 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/27(日) 01:17:26.67 ID:ta2oSvaAO








「うそつき」







112 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/27(日) 01:20:27.38 ID:ta2oSvaAO




ぱしっ

「うそつき」

「……っ!」

額に軽い衝撃。
気がつくと、少女は憮然とした表情で仁王立ちをしていた。

「……何しやがる」

「……ばか、あくせられーたのばぁか」

「……は?」

「……ばかばか。 その歪んだ精神の持ち主に何回も救われた私って何? もしかして主か何かなのかな?」

「……ちげェだろ」

「そうなんだよ、ただの他人かも」

「……」


怒りは、どうやら自分に向けていたらしい。
113 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/27(日) 01:24:41.08 ID:ta2oSvaAO






「ボロボロだったのに、あくせられーたは私を助けてくれた。 ……あの時、暗くてよく分からなかったけど、あくせられーたの声がちょっとおかしかったのは知ってたんだよ。 それと呼吸の音も」

「……あの距離はバレるだろォな」


狭い車内で、ほぼ向き合う形だった。
そういえば、あの時だって彼女は本を読んでいた。


「そうだよ。 それでね、あなたが自分を卑下するのって絶対に好きになれないんだよ。 だって、あなたが自身を否定することであの小さい子や私も含めてみんな否定してることになっちゃう」

「……」

「それって、あなたの望むこと?」

高尚な生を守ったのが下劣で凶暴な存在ならば、例え彼ないし彼女が救われて当然だとしても、それはただの悪の気まぐれに成り下がってしまう。
本来は死ぬ運命かの如く、扱われてしまう。

だから、自分がどんな存在であれ命を救ったならば誇りに思うべきなのだ――と、彼女は諭す。


「望まないなら、嘘っぱちだよね」
114 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/27(日) 01:29:56.33 ID:ta2oSvaAO




彼女はたたみかける。


「私は、今日からずっと、あなたと仲良くしていきたいんだよ。 ……なんて言えば良いのかな、友達がけなされてるのって何か嫌かも」

「……お人好しっつゥンじゃねェの」

「そうなのかな?


あとね、あくせられーたの髪の色って親近感があるんだよ。 白は修道服の色で、それに私も変わった色の髪だから」


お揃いと笑うインデックス。

しかし、あちらは銀でこちらは白。

「所詮、輝きが違うンだよ」

「良いの。 私はそれ、好きだもん」

「……そンな事この街でほざいてるとよォ、オマエ身包み剥がされンぞ」


ささやかな忠告のつもりだったのだが、怯える事もなく。

115 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/27(日) 01:30:45.34 ID:ta2oSvaAO




彼女はたたみかける。


「私は、今日からずっと、あなたと仲良くしていきたいんだよ。 ……なんて言えば良いのかな、友達がけなされてるのって何か嫌かも」

「……お人好しっつゥンじゃねェの」

「そうなのかな?


あとね、あくせられーたの髪の色って親近感があるんだよ。 白は修道服の色で、それに私も変わった色の髪だから」


お揃いと笑うインデックス。

しかし、あちらは銀でこちらは白。

「所詮、輝きが違うだろ」

「良いんだよ。 私は好きなんだから」

「……そンな事この街でほざいてるとよォ、オマエ身包み剥がされンぞ」


ささやかな忠告のつもりだったのだが、怯える事もなく。

116 :>>114は無視して下さい(+×+) ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/27(日) 01:32:57.68 ID:ta2oSvaAO





却って、待ってましたとばかりに、インデックスは得意げに胸を張った。

「生憎、私はイギリス清教のシスターなんだよ。 いついかなる時でも慈愛の精神で乗り切れるかも!」

「……ハァ」


本当に、この街には悪でもなく善でもないニュートラルな人物が居ないものだと一方通行は嘆息する。

とんだお人好しの女とこうも出逢うとは、研究所をたらい回しにされたかの地獄の日々では到底思いもしなかった。





嬉しい誤算、だった。
117 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/27(日) 01:35:31.14 ID:ta2oSvaAO




「……あれ、今のは正直決まったと思ったのに……! こんなときどうすれば良いの、とうまぁ」

「とりあえずドヤ顔すンな」

「あいたっ」



軽く彼女を小突いて、杖を握りしめ直す。

かつん、かつん


スタンスチェンジ、インデックスはぴったり隣をついて来る。
そのせいで、袖が翻るのが横目にも分かった。

「ねえねえ、私の断罪デコピン痛くなかった?」

「――すげェ痛かった」

「え……? 本当なのかな? りょ、良心が……」

「あァー、歩くのだりィ」

「ちょっと! 真面目な返答を求めるんだよ!」

「えェ? 忘れた、ンなモン」

「ちょっと! そんなのってアリなのかな!?」

「さァなァ」

「むきー!!」



並んで歩くと、何となく冬風が遮断されたような気になる。


彼らの始まりの1日は、こうして終わったのだ。
118 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/27(日) 01:37:20.27 ID:ta2oSvaAO




*****

季節は夏、8月

件のファストフード店に戻る。


「……それでね、昨日のホームルームで言われただけど、私のクラスから二人三脚を出すことになってね」

「そンなン誰か野郎にでもやらせとけ」

「……ううん、女子が出なくちゃいけないみたい」

「あァー……、ご愁傷様」

「まだ私は諦めてないかも!」

「無理だろ、絶対無理。 オマエじゃなくても口喧嘩とか精神的なバトルであの女に勝てるわけねェよ」

「あくせられーたも連敗中だっけ?」ニヤニヤ

「あの女がいちいち突っかかってくるからわりィ……」


一口飲むと、何とも言えない甘ったるさで喉が渇いて仕方がなかった。

119 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/02/27(日) 01:41:35.87 ID:ta2oSvaAO




「それでね、どうも聞いた話によると、私、あくせられーた達のクラスの男子と組むらしいんだよ……」

「やっぱり諦めてンじゃねェか」

「他の女子は引き受けてくれないだろうし」

「あァ? ンなのアイツにやらせる」

「私、初めての大覇星祭で本当の星にはなりたくないかも」

「あンまり上手くねェ」

「言って気がついたんだよ……」

ぐでーっと、制服が汚れるかもしれないなんて全く危惧せずに、インデックスは上体を倒す。

「ねぇ、あくせられーた」

「……聞きたくねェ」


意にも介さず、上目遣いと直接手を握り交渉を仕掛ける。


「最悪、一緒に走ろう?」

「まだ星にはなりたくねェ」

「あんまり上手く無いね」

「オマエが言ったンじゃねェか……」


手はどうしようもなく生ぬるかった。


*****
120 :終わり :2011/02/27(日) 01:45:20.10 ID:ta2oSvaAO
アニメの分を待っての投下って言うのは聞こえの良い嘘ですね

と言いますか、総合に投下した分との齟齬が確定的に……。とんでもなく手直しするかもなのですが、ご了承いただければ嬉しいです
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 02:22:49.07 ID:xwN7SZ1n0

なんだか心の中にぼんやりとその光景が浮かび上がってくるような文章で素敵です
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 12:42:25.31 ID:a7W8GD5B0
おつおつ!!
ここのインさんの安定した可愛らしさ…っ!!
あとクラスメイトもそりゃ居るよなぁ、誰だろう気になる
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/27(日) 17:38:44.35 ID:R0JubGCAO

アニメ見てSS見て完全に一方禁書にハマった……、つ、続きを……
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 00:01:45.95 ID:cajbJT5AO
乙です!
インデックスがヒロインすぎて眩しいぜ
あと、この学校に縁のなかった2人が制服着て、運動会の会話してるだけでうっかり感動してしまいそうだ
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 10:05:32.91 ID:ZozSJMlY0
乙乙

もう20話で完全に白コンサイドに落ちました///

長点上機の男子の制服ってどんなだろう?
個人的には紺で銀ボタンの学ランがいいな(一方さん的な意味で)

布束さんくるか…!?
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 13:57:05.02 ID:ij7R7LFho
長点上機はレールガンまんがのハッキング画面では男子はブレザーだった
布束さんの制服が紺だったから、男子も紺なのかな
127 : ◆ObanGQEW7M :2011/03/01(火) 21:12:48.74 ID:qTsAWdPAO
ご無沙汰してます
早く公式カラーの長点男子制服が来て欲しいところですね、女子のはとても好みなので胸も高鳴るわけです

今晩11時ぐらいに投下します
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 21:38:22.38 ID:1qOAnWJf0
待ってました
過去の作品を見たいのだが見つからない…
129 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/01(火) 22:56:06.82 ID:qTsAWdPAO




「さあ! あくせられーた!」

「……オイオイ、シスターさンよォ、まさか本気で作ってきたのかァ……?」

「そうだよ。 私だってひょうかと一緒に頑張ったんだから!」


慎ましやかな胸を最大限に張って、インデックスは綺麗にラッピングされたそれを手渡す。


彼女の顔は心なしか紅潮しているのに対し、一方通行のそれはこれから起こるかもしれない惨劇を想像し、一気に青白いものへと変わった。


「さあ! 食べて欲しいかも!」

「どォしてこォなった……」


じりじりとした圧力を体中から感じる。


世間はバレンタインデーに浮かれる、とある冬の日。


(やべェぞ、俺死ぬかもしれねェ……。 あァ、打ち止めァ、達者でな……)


何故彼がこんな悲痛な覚悟をしているのかは、2日ほど前に遡ることになる。


130 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/01(火) 23:02:22.05 ID:qTsAWdPAO




「お腹空いたかも」

「確定的なことだろォ」

「そうとも言うんだよ」

「フン……」

吐く息は白く、空もどんよりとした陰りを見せるそんな中。

一方通行は今日トータルで三本目になる缶コーヒーを開けた。


口から食道を熱い塊がこぼれ落ち、じんわりとした熱を胃に伝える。

非常に寒い日だ。
この痛いぐらいの刺激と、独特の酸味と苦味が非常に痛快だった。


「――」

インデックスは、ナフキンの目を解く手を休め、ただ彼を見つめる。
信じられない物でも見たかのように。

「なンだァ? ここらに霊的なモンでも居るのかよ?」

視線に気づき、自身の周辺をくるくると見回してみた。
勿論何も居るわけではない。


「ち、違うけど――」

「じゃァ、俺の顔見て驚くな」


手を伸ばして、フードに触る。
滑らかな布は、ひんやりと冷たい。


「それとも言いたいことがあンのかよ」

「えっとね」



言いよどみ。
彼は見計らって手を離す。

それは、ちょうどこの瞬間に堰が切れたような。
131 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/01(火) 23:09:00.22 ID:qTsAWdPAO




「ごめんね、でも、あなたスッゴく良い笑顔してたんだ」


破顔の理由は、何でもない、インスタントならではの、この安っぽくて紛い物の苦みが限りなく好きだったから。


「あのなァ、俺だって笑うっつゥの」

「そうだよね、私ってばあくせられーたを何だと思ってるのかな」


無愛想?意地悪?偏屈?根暗?と列挙されていくパターンは、確かに自分を構成する物ばかりのようだった。


「タダの罵詈雑言じゃねェか」

「じゃあ、落ち着きがあって冷静と言うことにしておいて欲しいんだよ」

爪が長くないと苦労するかも、と小さく呟き続ける。


「今までは笑わない人なのか、笑えない人なのか、どっちか分からなかったかも」
132 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/01(火) 23:12:18.50 ID:qTsAWdPAO




もう答えなんて出ちゃったんだけどね、と彼女自身も笑って、再度結び目に対面し直した。


強がりは言ったもののまだあまり慣れない笑顔、個人的には頬の筋肉が攣らなかったことを賞賛したい。


(前者、なンだよなァ、今は……)


もう冷たくなってしまって未練は無い。
缶コーヒーの余りを終わらせて、能力を使ってゴミ箱に入れた。

からんからんと高らかな音が少し遅れて聞こえる。



いつの間にか、ナフキンは正方形に戻っていた。

133 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/01(火) 23:13:14.40 ID:qTsAWdPAO




「あくせられーた、見てみて」

「あァ?」

言うとすぐに、パカッと、男子高校生が使うぐらいの大きなお弁当箱の蓋を開けた。

「じゃっじゃじゃーん」

「おォ」

「今日はね、とうまがハンバーグ作ってくれたんだよ!」

「学生っつゥのにご苦労なこった」



ぱん!
あんな勢いで手を叩いて痛くは無いのかと一方通行は思うのだが、そんな杞憂なんて意にも介さないインデックスは館内にも聞こえそうな大きな声を出す。


「いっただっきまーすっ!!」

ちらりと横目で見る限りでは、今まで見たことのあるどの弁当よりも大きく、栄養バランスの整っていそうな物だった。
134 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/01(火) 23:17:36.74 ID:qTsAWdPAO




「……作った奴すげェな」

「ほんほ? じゃあほーまに言っほふね」ムシャムシャ

「おォ」

(まァ顔も知らない男からの讃辞なンざ、どォだって良いだろ)


本当は、彼の精神面での根幹にまで深く影響している人物に対してなのだが、まあそこは誰の知るところでもない。


「あはっへははほひみはほへ」ゴックン


インデックスの特殊発音にも慣れてきたのは、優秀な頭脳が成す業なのか。

「バレンタインデーか」

「ぴんぽん! 私も友達と一緒に、チョコ作る予定なんだよ」


人差し指を立て、得意げに説明するインデックスの右頬にはケチャップが付いている。

ティッシュを渡すとようやく合点がいったのか、慌ててゴシゴシと口元を拭ったようだった。
135 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/01(火) 23:21:09.64 ID:qTsAWdPAO




「オマエがねェ」

「この国のバレンタインデーの仕組みは理解してたんだけど、ホワイトデーみたいな素敵なものが存在するとは、私もこれっぽっちも知らなかったんだよ!」


「製菓業界も特需狙って必死なご様子でェ」

「3倍返しなんだよね! うふふ、もうこれってみんなに贈るしかないかも!」


頬に手を当て、捕らぬ狸の皮算用中のインデックスの瞳はきらきらと輝いている。



しかし、そこでとことん意地の悪さを見せつけるのが我らが第一位である。


「――オイオイ、シスターさンよォ、プラスじゃなくても×3なンだろォ?」

「ん、どういうこと?」


今一つ状況を飲み込めない彼女に、滔々と弁じていく姿は何よりも悪い意味で輝いている。

136 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/01(火) 23:23:21.43 ID:qTsAWdPAO




「だからよォ、オマエがその日同居人になンかやるだろ。 それがクソまずかったら嫌な意味の3倍返しだってあり得ンじゃねェ?」

「……そんな」


一方通行からの実はからかいの視線にインデックスは気づかない。
気づかずに、既に3分の2が消失したハンバーグを一口かじった。


「まァ、自業自得だがなァ」

「か、完璧な計画だと思ったのに……」

「別に作るなとは言ってねェだろ、精々頑張れよっつゥことだ」

「で、でも英語にはビギナーズラックと言う慣用句も」

「だからァ、やってみりゃァ良いだろ?」

「で、でも――」

「あれェ、どっちなンですかねェ?」
137 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/01(火) 23:25:21.85 ID:qTsAWdPAO




率直に言うと、一方通行にとってはこの少女の揚げ足を取るのはもう日々のルーティンになっていて、欠かせない日常であり趣味であり仕事なのである。



「あァ、食べ専(笑)なンだっけェ。 じゃアレだな、辛辣なこと言って悪かったァ」

「う、ぐぐぎ」

「まァ、同居人なら食べ」



「……私だって、作れるかも……!」

「……おォ?」



このように、発破をかけられたインデックスが図書館の蔵書を生かし、女としてのプライドをかけたお菓子作りを実行するに至るのである。



とまあ、完全にどこかの誰かさんの自業自得だった。
138 :終わり :2011/03/01(火) 23:28:32.40 ID:qTsAWdPAO
続きはまた明日にでも

>>128
今、それを凄く修正しているのですが、ここに投下する予定です。
正直言って、だいたい別物になってしまうので読む価値はそんなに無いのかなあと思ってます
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 23:32:17.65 ID:VdRZLzFAO
乙。もうだめ猫のセロリ
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 23:54:26.05 ID:HPHsmKNR0
乙。一方さんのカプ話は俺得過ぎてニヨニヨが止まらない。
>>139を読んで猫耳一方さんが瞬時に思い浮かぶ辺り、自分でも末期だと思う。マジで
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/02(水) 00:14:02.30 ID:rB3TplFw0
おつ
つーかこんなソフトSMやってるなんて、しかも日課なんて第一位まじ禿げろし
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/02(水) 00:15:29.18 ID:xWsetFOAO
乙です!
インデックスからかうのが仕事って一方さんww
しかし白コンビがご飯を食べるベンチがある図書館って、あったら毎日通うわ
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 19:18:35.44 ID:tnQrSaqE0
>>138
いやーでもさいしょのものがたりを見て見たいんだ
期待してまっせ
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 19:49:42.24 ID:rB3TplFw0
>>143
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1297/12970/1297083486.html

>>184>>324>>407
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 21:51:33.51 ID:tnQrSaqE0
>>144
サンクス
146 : ◆ObanGQEW7M :2011/03/02(水) 22:11:40.47 ID:xBKMn+5AO
日付が変わるぐらいに続きを投下しますね
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 22:53:03.30 ID:tplRjN5r0
>>126 サンクス、ブレザーが有力なのか。ネクタイktkr

インデックスさんをいじる一方さんという関係が心地よいな…!

投下お疲れ様です。
148 : ◆ObanGQEW7M :2011/03/02(水) 23:57:53.53 ID:xBKMn+5AO





「何をそんなに怯えてるのかな?」

手の中の箱をちっとも開こうとしない一方通行に、じれったくなったのか彼女は顔を近づけながら問い詰める。


「別に怯えてなンかねェ」

「じゃあ、開けてみると良いんだよ」

「……」


何故、こんなに躊躇っているのか。


理由をあげてみる。

一つ、彼女の知識の偏り
一つ、味の好みの違い
一つ、科学に疎いこと
一つ、イギリス人


どれ一つを取っても悲しい結果になるのは予想範囲内だ。
149 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/03(木) 00:00:47.88 ID:cr1LaUDAO




変なところは知っていて、逆に一般常識が無かったり。
彼女は基本悪食だが、自分は甘いものをそんなに好きでは無かったり。
料理の原理を理解して居なそうだったり
フィッシュ&チップスがご馳走な国から来ていたり。



しかし、一番の要因は妙なプライドの高さとそれでいて抜けているところにあるのだろう、と彼は思う。


(味に深み出すためにカレーに魚の肝を入れよォと提案する女だ……)



譲れないこだわりを持っている。
少しおっちょこちょいだ。


だからと言ってインデックスのこの性格が嫌いなわけでは無かった、寧ろ密かに一目置いていたり和んだりしたこともある。


ただ、お菓子作りには邪魔じゃないのか。
それだけである。
150 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/03(木) 00:04:44.30 ID:cr1LaUDAO




(素人なンて事故が起きないよォに気を付けながら、適度に妥協してやりゃァ良いだろォに)

後悔しても、焚きつけてしまった自分が全面的に悪いのだ。


それに、まるっきり生まれ土壌が違う人物の、五感による刺激の受け取り方なんて想像するしか無いのである。

もしかしたら自分たちの味覚はそっくりかもしれないじゃないか、と潰えそうな希望的観測を胸に抱き、尋ねる。


「……硫酸とか入れてねェよな」

「一応とうまとひょうかの監修で作ったんだよ?」

「……」


ひょうか、と言う人物がテロリストじゃないことを切に祈った。
151 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/03(木) 00:06:34.52 ID:cr1LaUDAO




恐る恐る、怖々とその包装を捲っていく。
可愛らしくラッピングされたそれは元は白い紙の箱であり、トップが開くようになっていた。


今日の天気は良い、風もあまり吹いていない。
しかし、太ももの上、安定しない位置。
落とさないように、蓋を開けた。



「……」

「……一口だけでも、食べて欲しいな」


何も言わないのを拒否だと受け取ったのか、翳りのある顔で笑うインデックスから半ば強引にフォークをもぎ取り、一口大に切って口元へと運ぶ。




「ン」

舌が伝えるのは、甘味だけではなかった。
152 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/03(木) 00:08:26.10 ID:cr1LaUDAO





「――コーヒー入れてあンのと、……生地も普通の粉じゃねェな」

「うん、米粉を使ってみたんだよ」

「米粉?」

「食感がふかふかーっていうか、良い匂いもするから使ってみようかなって思ったんだよ」




足をパタパタさせるインデックスの方は向くことが出来ない。

ああ、同じものを食べていると言うことは借りたフォークは使用済みだろう、なんて些末なことを思いついた。


そうじゃない、そうではなくて言わなくてはいけないことがあるだろう。


果たして、平静を装った声を出せたのだろうか。


153 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/03(木) 00:09:20.60 ID:cr1LaUDAO






「……美味い」

沈黙



それを裂くのは一つの疑問。

「……え、本当?」

「あァ。 正直言って好みだ」

「……えへへー、あくせられーたがついに負けを認めたかもー! ありがとう、とうまとひょうか!」


実のところ、一方通行は驚いている。

それは、見た目の不格好さを差し引いても、それを補ってまだ余りある非常に彼好みの味付けのロールケーキだった。


先ほど言った食感も良く食べ応えがあるし、コーヒーが入っていてほろ苦さを感じる。


154 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/03(木) 00:10:45.70 ID:cr1LaUDAO




「コーヒーうめェ」

「あなたも、お腹空いてたんだね」

何も飲まなかったのだが、喉に引っかかりそうなケーキをちゃんと完食した。

「昼、少ねェから」

嘘である。
本当は予想以上に美味しくて、自分でも無意識で食べていたのだ。


「サンドイッチだけじゃ足りないかも」

「俺は大丈夫なンだよ」

「えー、ほんと?」

「さァな」




箱をたたみ、コンビニの袋の中に入れる。
155 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/03(木) 00:14:56.49 ID:cr1LaUDAO



「オマエ、紅茶で良いなァ?」

「奢ってくれるの!? やったーありがとう!! んとねー、じゃあねー、レモンティーが良いんだよ!」

「アイスかァ?」

「ホット、絶対にホットなんだよ!」

「了解」


杖を使って器用に立ち上がり、ベンチに座る彼女に一言。






「……約束だからな、1ヶ月待っとけ」



一方通行流の讃辞であり、また宣戦布告であった。
156 :終わり :2011/03/03(木) 00:18:13.76 ID:cr1LaUDAO
ちょっと季節を逃しました、今更感のあるネタです
いつも感想ありがとうございます、皆さんのコメント見て1人ほくそ笑んでます

>>144
わざわざ張って下さりありがとうございます!
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 00:50:14.41 ID:jFs/55kKo
インデックスか可愛すぎて死んだ
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 01:03:01.31 ID:DDr+4IFu0
おいなんだこれめっちゃ和む
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 01:09:09.96 ID:NDXF/bVzo
相変わらずすばらしいんだよ
こんなにかわいいインデックスはめったにいないかも!
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/03(木) 01:25:36.54 ID:j+6hPdJu0
おつおつ。
失礼な一通さんや、風斬は禁書内随一の常識人やで。人外だけど。
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 01:28:58.55 ID:llvAQ9c70
>>159 本人乙wwwwww

本当にこの小説って独特の空気あるよね。
言葉選びや言い回しが素敵だ…読んでて心地良い。

>>1乙通行 次回も楽しみにしてます

162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 05:34:12.32 ID:An01++vAO
イギリス人でクソワロタwwwwwwww
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 22:52:43.78 ID:hn9R14Ut0
乙!!
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 22:55:02.80 ID:/aVR6oks0
おいついた!
二人の魅力が足し算じゃなくて乗算すぎて俺がやばい
165 : ◆864fRH2jyw [sage]:2011/03/06(日) 14:11:47.03 ID:Jydgw71Ao
今日中に総合の焼き直しを投下予定です
166 : ◆ObanGQEW7M [sage]:2011/03/06(日) 14:13:01.45 ID:Jydgw71Ao
トリップ間違えました! すみません
167 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 14:14:38.28 ID:Jydgw71Ao
あぁ、追記し忘れた……
ちょいちょい設定が変わるかと思います、よろしくお願いします
168 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 15:40:18.16 ID:Jydgw71Ao


「おはよう。 今日は早いんだね」

「オマエだってそォだろ」

「だって家に居たってヒマなんだもん」


まだ開館時間にはなっていないため、扉は閉ざされている。その前で腰を付けずに座っていた少女は友人の姿を見つけ立ち上がる。

しゃらん、と修道服に付けた安全ピンが擦れる音がした。


「つゥかよォ、そのうちここの蔵書読みきンじゃねェの?」

「どうだろ? あなたと違って情報の処理には時間がかかってるかも、だから論文とかスッゴく難しい本になっちゃうと人並みのペースなんだよ」

「オマエも論文ねェ」

「専ら食べ物についてかも!」

「偉そォにするところじゃねェ」


いつもの如く白い帽子の上に軽くチョップを入れようとしたのだが、ふと下方を見る。
彼女の手の中にあるものに気づき、それは終ぞ当たることは無かった。
169 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 15:40:46.54 ID:Jydgw71Ao


「あのトートバックとでけェ弁当箱は?」

「それが、スフィンクスに紐を切られちゃったから持って来れなかったんだよ」

「スフィンクス? エジプトにでも住ンでンのか」

「ちがうちがーう! スフィンクスってのはうちの猫の名前なんだよ!」

言ってなかったかな?と首を傾げるインデックスだが、正直猫を飼っていることも初耳だった。

「オマエが付けたのか?」

「そうなんだよ?」


あまりに自信満々に言うものだから、呆れを通り越して笑えてしまう。
凄いセンスだと口走ったら腕に噛みつかれた。


どうやらいつものごとく照れ隠しの甘噛みらしい。
170 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 15:41:41.16 ID:Jydgw71Ao


「俺の肉はうまくねェぞ」

「筋張ってそうだよね」

「るせェ。 ンで? 替えの鞄とかはねェの?」

「うん。 全部とうまが使ってるみたいで何にもなかったんだよ」

少女はよいしょっ、と呟きつつ借りていた本を返却ポストに入れる。
若干身長が足りずに背伸びをしていた。



意地悪いな、と思うのだが閃いてしまったものは仕方がない。

(……持ちこたえるかねェ?)

なんとなくの好奇心から、多分膝であろう位置を手持ちの杖で小突いた。


がくん

当たり前だがバランスを崩す。

彼女の銀髪が揺れた。
171 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 15:44:16.54 ID:Jydgw71Ao



「――な、何をするのかな!!」

「悪戯」

「むきー!! 私の背が低いからってバカにしてるんだよ!!」

「スキンシップ?」

「人体ではあり得ない、金属質の物体が触れたんだよ!!」

胸板あたりに拳が交互に当たる。
反射するのも面倒だったので、されるがままだ。

「意地が悪いにも程があるんだよーー!!!」ポカポカ

「今更にもほどがあンなァ」

今日は寒さも和らぎ、なかなか外に出ていても気持ちよさを感じる。

風が吹き、少しだけ目を細めた。



172 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 15:44:43.54 ID:Jydgw71Ao


「だったら、買ったら良いじゃねェか」

「お金持ちのあなたとは違って、イギリス清教及びとうまは清貧を謳ってるかもっ!」

「つまりのところォ」

「すいはんきーを買わなくちゃいけないみたい…」

彼女の同居人の少年の物持ちはかなり悪い。
それは彼ががさつだからというわけではなく、持ち前の不幸体質は生物の垣根を超え、電化製品にまで及ぶらしいからなのだ。


寿命を迎えるにしては早すぎるそれは、今日急に動かなくなった。


しかし、生憎(?)彼にとっても炊飯器は最も近しい家電である。

173 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 15:45:17.75 ID:Jydgw71Ao



「――炊飯器ならよォ、腐るほどあるとこは知ってる」

「え、ほんと?」

「あァ、いわく旧型には興味がねェンだと。 生憎理解は出来ないが」

ふと実家の居間を思い出すと、一つのコンセントに炊飯器が群がっているのだ。
そして、物置には箱に入ったかっての一軍たちがゴロゴロと……、成れの果てに悪寒がする。

「……一つ持ってけ」

「ほんと? やったやったあ! ありがとあくせられーた! これで食費に回せるね!」

シュールな想像図に突き動かされ、ほぼ無意識で勝手に口走っていたのだが、まあ沢山あるのだし許されるはずだ。


「昼はどォすンだよ、家にあンのか」

「……あ……、鍵、置いてきちゃった」

「確か完全記憶能力者だよなァ?」

ジト目でインデックスは答えた、オプションでむくれ顔までサービスだ。

「そこはかとなくバカにしてるね?」

実のところ、完全にバカにしていた。
174 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 15:46:19.03 ID:Jydgw71Ao




携帯で時刻を確認すると、もう開館時間から10分経っている。雑談で忘れていた。

しかしまだ、扉は開かずのまま。

「お弁当は夜に食べるとして、……えへへ、空腹から満腹へのカタルシスを味わっちゃおう作戦の出番だね! 若しくは図書館の水は」

「……1500円までなァ」

近くのファミレスへ行くことになるのだろう、とりあえずATMに行くことは確定のようだ。


「あなたに神の御加護があらんことを」

「シスターのくせに調子良すぎンだよ」


十字を切る小さな聖職者に憐れみの目を向け、何となく入り口に目を向けてみた。


今までに無かった紙が張られている。
読みづらくて足をすすめた。
175 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 15:46:48.08 ID:Jydgw71Ao




「どォいうことだよ……」

「うん? どうしたのかな?」

「ここ見ろ」

白く細い指は、数多くの中から最も劣化していなそうな新しい紙を指していた。

インデックスは正面に立ち、その紙をじっくりと読み、そして疑問符を並べる。




『特別休館日のお知らせ』


ぽん、と手を叩く音がする。
ようやく合点がいったらしい。


「そっかそっか、今日って図書館はお休みなのかも?」

「かもじゃなくて休みなンだろ。 ……つゥかよォ、こンなフォントの小ささで気づくわけねェ」

「確かに私たちは分からなかったもんね」

「俺は気づきましたァ」

かたん。
杖に手を掛け、舗装された道を引き返す彼に少女は問いかける。

どこへ行くの? と。
176 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 15:47:23.58 ID:Jydgw71Ao



特に振り返りもしないで一見するとおざなりに、しかし確かに歩みを止めて一方通行は答えた。

「猫にかじられても平気そォなやつ探しに行くぞ」

とことこ、階段で修道服を引きずらないように気を付けて、彼が待っていてくれる間に右手側へ移動した。

「良いの?」

「あン時、死ぬほど人にメシたかっといてよォ、今更しおらしくなってンじゃねェ」

「それもそうなんだけどね?」


良いから、と頭を一つ掻いて吐く言葉は息が混じる。

「ガキは黙って奢られとけ」

「――うん! よろしくね」


思えば、この少女と図書館以外へ行くのは2回目だった。
177 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 15:48:13.40 ID:Jydgw71Ao






*****


からんころーんというチャイム音は、今思うと、死刑台へのカウントダウン、そして天使のラッパの音だったのかもしれない。



お昼前、何も知らない新任の女性店員の横で、フロア長の私はただただ悪夢の再来に怯えた。

「お客様は二名様でよろしいですか?」

「あァ」

「それではこちらへ」


連れ立って消えていくいつものツンツン頭ではないお連れ様が、ちらりとこちらを見た。

彼の表情は、緊張。
これから起こるかもしれない暴虐への。

(あなたもまた……、無力なんですね……ッ)

178 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 15:49:11.32 ID:Jydgw71Ao





「フロア長……ッ! あの方がいらっしゃったんですかッッ!!」

「……山田くん」

「また俺は! 惨めな勝負をッッ!」

厨房担当の山田くんは、壁に拳を殴りつけて吼えていた。
痛いほど気持ちは分かる。

何故、私達だけが、世界の歪みを一心に引き受けなければいけないのだろうか。

この覚めない悪夢に立ち向かわないといけないのか。



下唇を噛み、ただ慟哭に耐える。

蘇るのは、妻子の笑顔。


「山田くん、私たちは戦わなくちゃいけないのよ」

「……でも」

「配属されちゃったのよ、この地獄にね……」

同じく厨房担当の森さんは、身に纏う戦闘装束【エプロン】を握りしめた。

179 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 15:49:58.47 ID:Jydgw71Ao






「――コードホワイト――」

最近の悪魔は、シスターになりすましているらしい。



「――発動――」




ニヤリと、座席に災厄は笑う。

「――どれもこれも美味しそうだね――!」



*****
180 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 15:50:25.53 ID:Jydgw71Ao





そんな悲壮感は露知らず。

「うふふ、ハンバーグセットにしようっかなー。 それともスパゲティ? あー! 決められないんだよ!」

「なァ、マジで1500円までなァ」

「うんうん、スープバーとサラダバーとドリンクバーを付けて、それでライス大盛で富士山ポテトとか追加しちゃったり」

「コイツ、聞いちゃいねェ」

「1000円超えると一気に量頼めるかも、太っ腹なあくせられーたに感謝だね!」ニコッ

「」ゾクッ

言いしれようのない蠱惑的な笑みを浮かべた少女は、読んでいたメニューを元の場所に返す。
そして、事も無げに水を一杯飲んだ。


一杯とはピッチャーで、と言うことを加えておこう。
181 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 15:50:51.58 ID:Jydgw71Ao





「あくせられーたは決まった?」

「まァな」

「じゃあ、私が押しちゃうんだよ」

いつもなら、ぽんぴーんとどことなくマヌケな音を出すはずなのだが、今回は何故かその音ではない。

「たたた、たたた、たたたたたたたたた……これって」

ドシラ、ドシラと聞き覚えのあるメロディー。

ゴジラだった。

「あァ、ぴったりじゃねェか」

「それってどういう意味なのかな!?」

「怪獣で天災みたいなモンだろォ、オマエって」

現に、オーダーを取りに来た髪の薄い店員の表情は笑顔で繕ってもいない、ただただ強ばっているのだ。

「具合が優れないの?」

「い、いえ……お構いなく」

お互い苦労するな、と憐憫の目を向ける。

彼の足は微かながら震えていた。
182 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 15:51:31.07 ID:Jydgw71Ao


――――

「ただいま!」ガタン

「サラダバー19回目、ドリンク・スープ合わせて56回目。 通算75回目ェ…」

「あふへられーはっへば何で数へへるの?」ムシャムシャ

「このままだとただの山賊みたいなモンだから、概算して店のヤツにチップぐらい渡しとこォかと……」


もう彼女の大食いには慣れっこのつもりだったのだが認識が甘いことを思い知らされる。

183 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 15:52:48.75 ID:Jydgw71Ao



「はりはと!」ムシャムシャ

「意味分かってるよなァ?」

最早ドレッシングさえかかっているのか疑わしいレタスを、むしゃむしゃと頬張るインデックス。

1時間ほど前にステーキセットを完食したのに、まだまだ元気である。


「あァ、少なくとも俺は出禁くらわねェよォにしねェとなァ……」

何気なく店内を見回してみると、あちらこちらに死んだ目をした店員が彼らを見ていた。彼らがいたたまれなくなって、慌ててメニューを見た。

ちなみに、折節『クビが飛ぶぅぅ!』などの悲鳴も聞こえてくるのだが、そんなことは修道女は一切お構いなしとの姿勢を崩さない。

実に見上げた根性である。

184 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 15:53:15.07 ID:Jydgw71Ao






「シスター、何かデザート頼めェ」

「良いの?」

「むしろ頼め、オマエ、ほぼ無銭飲食みたいなモンなンだからよォ」

「うーん」

彩色豊かなデザートの面々を、端から端まで舐め尽くすように鑑賞して。

「ねえ、あくせられーたは食べないの?」

「あァ?」

「さっきから私だけが食べてるなって思ってたんだよ」


ごしごしと。

あの時もそうだが、一方通行が持ち歩いているウエットティッシュで、インデックスは口元を拭った。
185 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 15:54:29.88 ID:Jydgw71Ao

「気づくのおせェよ。 まァ、こっちは一種のショーを見てる感覚っつゥか……、めちゃくちゃ料金の高い……」


これは嘘ではない。
何故なのか、まるでブラックホールのように、あんな小さい口に尋常ではない量の食べ物が消えていくことが妙に好きだった。

それと



「……幸せそォに食うな」

「何か言った?」

「別に、早く選べっつったンだよ」

中指で彼女の額へと手を伸ばす。

こつん


186 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 15:55:46.03 ID:Jydgw71Ao


押された勢いのまま、椅子に深く座り込む彼女の顔は

何故か赤い。



「……ねえ、あくせられーた」

「あァ?」

「私ね、これ食べたいかも……」

少し躊躇い気味に言うのが珍しく、目線だけちらりと移動して

「はァ?」

「いや、違うんだよ! そのね? えっと、限定メニューだから今がチャンスかなあって……」

ツンツン、ツンツン。
彼女の両人差し指が触れて離れる。

「カップル限定メニュー…だと…?」


どうやら、まだまだ彼の受難は止まないらしい。
187 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 15:56:35.08 ID:Jydgw71Ao


―――――


「怖かったよぉぉ、あくせられーたぁ!」ギュッ

「落ち着け、オマエは既にアレから降りたンだ。 たかがモノレール」

「だってね、あんな大きいのがあんな上に…!」

彼としては、既に杖で片手を割かれているので、もう片方に体をすり寄せられるとなんとも離しようがなく、かといってモノレールに半ば無理やり乗せてしまった引け目から(まさかあんなに怖がるとは思いもしなかった)彼女を放ってもおけず、ただただ困っている。


幸いなのは、平日の昼間故に閑散としているぐらいか。

188 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 15:57:42.57 ID:Jydgw71Ao




「飛行機のほォが原理的には不気味だろォが、鉄の塊が宙を舞うンだぜ?」

「あ、それは揚力で安定してることは知ってるんだよ」

OKと親指を突き出す修道女に、彼はただ嘆息するしかなかった。

「基準が分かンねェ」

「空を飛ぶってのは気持ちが良いんだよ」

「ライト兄弟みたいなこと言いやがって」


空を見ると飛行機雲が一筋。
見事な晴天である。

189 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 15:58:10.25 ID:Jydgw71Ao




「で、どンなやつが良いンだよ?」

「えっとね、使いやすくって、丈夫で、濡れなくて、大きめのものなんだよ! 背負えると尚良いかも!」

「案外堅実な理想だな、つゥかそれならオマエにぴったりのものがあるぜ」

「ほんと!?」

「あァ、色も選び放題、体にフィット、物によっちゃァ、背筋が伸びる」

「ん?」

ここで、訝しげな表情をしたインデックスに、したり顔で彼は告げる。

ご丁寧に子供用のマネキンを指差して。
190 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 15:58:40.83 ID:Jydgw71Ao


「ランドセル、うってつけじゃねェ?」ニヤニヤ

「あくせられーたってばぁあ!! また私のことバカにするんだよぉお!!」

「ピンクとか好きだろ」

「きぃぃい! 私は英国産のレディだと言うのにぃぃ!」

「あれ、天使の羽かァ?」

「うぅー! っ!」ピーン

インデックスも地団駄を踏みながら憤慨してばっかりではいられない。

すかさずに、魔術サイドが誇る頭脳で反応してみせた。


それは、どちらがゲスいのだろうか。

191 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 15:59:58.44 ID:Jydgw71Ao




「……そっかあ! 私にランドセル買ってくれるんだ! わーい! お祖父ちゃんありがとなんだよ!」

「オマエ……っ、この……」


さっと場の空気が一変する。

一応ここは閑散としているとは言え、通りの一角なのだが天才児達には関係は無いようだった。


「ふん! やられてばっかの私じゃないかも!」

「よォしィ、くかかかかか、ここでバレンタインの借りでも返すとするかなァァ!!? シスターさンよォォォォ!!!!!」

「望むところなんだよ……!!」ガルルルル


さてはて、年も性別も違うのにどの観点で争おうとしているのか不明な中(多分誰も深くなど考えてはいない)。


彼らの足にコツンと当たる物があった。

物というのは適切なのか、どこぞのメイドは友と答えるかもしれないのだが。
192 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 16:00:40.51 ID:Jydgw71Ao



「あァ?」

「あ、まいかが乗ってるやつなんだよ」

一台の清掃用ロボが何故なのか突撃してきたのだった。

理由があるのか、まさか喧嘩を止めにきたのか。


(犬でも喧嘩は食わねェンだろ)

自分にしては子供っぽい考えを振り払う。

じゃあ、学園都市製で高性能なこのロボットならば咀嚼できるのか。
どちらにせよ、くだらない。


ただの不良品が迷惑をかけてきただけではないか。
193 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 16:03:39.54 ID:Jydgw71Ao




「おそうじろぼ、私はゴミじゃないんだよ? あくせられーたはどうだか知らないけど」

「オマエさァさっきのファミレスの借り、体で返したいンならそォ言えよ」

「全く物騒で困っちゃうかも」

するとウィーンと音を立て、2人の間に割り込んだ。

「……仲介役のつもりかよ」

「ほんとにそうかもしれないんだよ?」

ただの毒づきなのに同調された。


「オマエもよォ、とンだメルヘンだよな」

また怒って噛まれるのではないかと予期していたのに、インデックスは薄く笑っただけだった。

194 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 16:04:15.17 ID:Jydgw71Ao



「案外、修道女なんてそういう物なのかも」

「あァ?」

「全知全能たる主を心から敬愛してるんだよ? それって王子様に憧れる女の子みたいな心境じゃないかな」

「何でオマエは他人ごとなンだよ」

「神さまに助けてもらった記憶は無いんだよね」

「……」

修道服が地面に付かないよう、少しだけ持ち上げてインデックスは屈んだ。

「私がここに居たせいでキミのお掃除を邪魔しちゃってごめんね」


労うかのように、つるりとした表面を撫でると清掃用ロボは新たな不浄の地を求めてまた彷徨う。

未開の地にて布教をするシスターらもこうなのだろうかと、太陽に反射して光る後部を見つめた。



逆光が目に染みる。
195 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 16:05:08.44 ID:Jydgw71Ao




「……背負えるって、リュックとかっつゥことかよ」

「うーん、やっぱり語弊があったかも。 一つの肩からかけられるバッグが便利そうで良いなあって思うんだよ」

「ショルダーバックねェ……」

先ほど食べた苺パフェの味がまだ口の中に残っていて、妙な気持ち悪さを誘ってくる。
だから自販機をさっきから探しているのだがどこにも見つからない。

もう直ぐ店に着いてしまうと言うのに。



「でも私は、あくせられーたがくれるんなら何でも良いかも」

一定のテンポを刻んでいた杖が、止まる。
196 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 16:05:52.20 ID:Jydgw71Ao



「どういう了見だ」

「いつも仲良くしてもらってるし。


……何だかんだで、やっぱりあなたは優しいからね」エヘヘ

「俺が優しいねェ……、これまた酔狂なことを」

「食べ物くれる人に悪い人は居ないかも」

「凄まじい基準をお持ちのよォで」


かつん、かつん
197 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 16:06:34.81 ID:Jydgw71Ao


しばしの無言があって

「あ、そうだ!」

インデックスは袖の中をごそごそと漁る。



「はいこれ! コーヒー味の飴なんだよ!」

「どこから出したのかもアレだがよォ、オマエが飢えに飢えやがって拾ったンじゃァねェだろォな」

違う違うと首を振った。

「さっきのファミレスで貰って来たんだよ」

「ファミレスで?」

「お陰様で助かりましたって」

「あァ――」


先ほどの会計時に損失額分を置いてきたことだろうか。

そうだとしたら、こちらの罪悪感だけであちらに礼を言われる筋合いはさらさら無いのだが。
198 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 16:07:41.46 ID:Jydgw71Ao



とはいえ、好意を無駄にする必要もない。

「口ン中甘ったるくて困ってたンだわ」

飴を受け取り口内へ放る。
やはりというか、彼にしてみればこれだってコーヒーと名は付くにせよ甘ったるくて仕方がない。

からんからん

幾度も歯に当たる。

「どう!? 美味しい?」

「普通」

「お世辞って必要じゃないかな」ジトー

「俺に求めンじゃねェ」


それでも、他の誰でもなく彼女が渡してきたのだから、妙な義務感を持たずにはいられなかった。
199 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 16:08:42.49 ID:Jydgw71Ao


―――――


(なンか、違うよなァ――)

何とも言えない生温さ。微妙な甘さ。


「これ、温度計ついてるんだよ! こっちはピカピカしてるかも!」

「無難なやつにしとけっつゥの」


空調設備の整った室内も、やはり人は居ない。
突然の客に店員も驚いているようだった。


(この味悪くねェとか思っちまうとか、本当柄じゃねェよなァ――)


インデックスが茶色の鞄をぶら下げてこちらに歩いてくる。

期待に満ちた眼差し。

相変わらず、よく輝く碧。
200 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/06(日) 16:12:08.82 ID:Jydgw71Ao



かける言葉は決まっていた。


「ねえねえ、これはどうかな?」

「――あァ? まァ悪くねェンじゃねェの?」

「似合うってことかな?」ニヤニヤ

「ほざいてンじゃねェよ、暴食シスター」

くるり、と修道服の裾が翻る。


「ありがとね!」

「あァ」


この後、どこに行こうか。

服屋・ゲームセンター・雑貨屋、案外古本屋も良いかもしれない。


「とっとと会計すませンぞ」

「はーい」



これが、白い彼らの、とある一日。

201 :終わり [saga]:2011/03/06(日) 16:14:27.29 ID:Jydgw71Ao
スレタイ回収まであと1回ぐらいでしょうか
なかなか、進展が見えない話ですが、いつもお付き合いいただきありがとうございます。
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 17:42:34.87 ID:pG8titVQ0


にやにやしすぎてヤヴァイ
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/06(日) 17:51:55.53 ID:W3B37FoAO
なん…だと…!?パワーアップしてやがる!!
胸がきゅんきゅんしすぎてヤバス
乙です!!
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 20:48:32.53 ID:4BB6IZhao
上条さんとはいつエンカウントするんだか
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 21:16:15.18 ID:8glIb9yho
知ってるか?こいつら、付き合ってないんだぜ?
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 22:15:30.73 ID:JdHcWSKd0
おお、総合の再録でしたか乙です

白コンの醸し出す雰囲気にイヤサレータ

インデックスさんはどんな風に長点を知るんだろう
2人で入試対策とかしちゃうのかな、気になる

支援
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 00:16:24.10 ID:1nUcPzCDO
面白いけど

俺頭弱いから
時系列が良くわからんとです
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 01:15:07.08 ID:s33MFftTo
プロローグは初の邂逅である9/30(今アニメでやってる所)から10ヶ月後の翌年7.8月で、そこから遡って同年2月に再び邂逅したという設定
今投下されてるのはその2月の話な
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 01:49:52.31 ID:SjdxcPoHo
俺も頭弱いから、>>208の説明でさらにこんがらがりかけた。せっかくのフォローなのにすまん。こ。

9/30(原作12巻・アニメ2期最近の数話):一方さんとインさん初遭遇。食料とティッシュをたかる。

翌年2月:再会〜図書館を舞台にキャッキャウフフ ← 今投下されてる話(総合投下分含む)

4月:インさん長点入学?一方さん長点復学(未描写)

7〜8月:プロローグとか途中にはさまった二人三脚の話とか


つまり、>>1の書くインさんと一方さんの甘酸っぱい高校生活はまだ始まってすらいねえ、ちょっとぐらい長いプロローグで絶望してんじゃねえよ、ってことですね。
ようするに、こまけえこたぁ(ry
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 11:41:29.94 ID:exz5sbZUo
つまり>>1の戦いはこれからなんだと
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 17:54:18.26 ID:KWExKKD5o
おつ
ジョセフの店員さんたちのご冥福をお祈りします
つーか一方禁書の雰囲気良いなぁ……、俺も書きたい
212 : ◆ObanGQEW7M :2011/03/07(月) 20:26:15.56 ID:a1jl3UcAO
こんばんは! 11時ぐらいにまた来ます”ノ><ノ

>>207
分かりにくくて申し訳ないです。
何ですけど、>>208さんと>>209さんの説明が完璧なので参考にしていただければ幸いです。自分もお二人ので補完しました、もう本当にありがとうございます

>>211
人様の白コンビが見たくて仕方がないので書いていただけるとureshiiiii!!
213 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/07(月) 23:00:13.36 ID:a1jl3UcAO




囁くような歌が聞こえる。


懐かしい、どこかで聞いた旋律。

この年頃の少女にしては、幼く、それでいてきっちりと12音階を刻んでいる。

柔らかい発音、そして揺らぎながらの音の移動は午後の仕事の良いお供だ。


目の前の彼女は歌が上手い、殊に賛美歌なんて絵面的にも美しいのではないかと一方通行は密かに思う。


柔らかい光が端正な顔を照らす。
それはまるで絵画のようで、殊更自分たちの、人種の違い、性別の違い、心に依るものの違いを感じる。





そして同時に、選曲の重要性も痛感していた。

214 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/07(月) 23:01:23.12 ID:a1jl3UcAO





「でーんでーんむーしむーしかーたつむりー」

「……」

「おーまえのめーだまーは」

「ハイな気分でご唱和中に悪ィが、その本のエスカルゴのページ見てンじゃねェよなァ?」

「よく分かったね!」


インデックスが現在読んでいるのは兎にも角にも分厚い本。
表紙を飾るのはエッフェル塔とトリコロール、そして鮮やかな色のワイン。

まさにフランス盛りである。


そして、エスカルゴを見て童謡かたつむりを歌う無神経さに、一方通行が思わず顔をしかめたのも、仕方の無いことだろう。
215 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/07(月) 23:03:16.97 ID:a1jl3UcAO





「絶対おかしいだろ」

「そうなのかな?」

「グリーングリーン歌いながら出兵するよォなモンだ」

「7番は嗜好だと思うんだよ!」

「あの明るげなメロディーにどれぐらいのガキが騙されたンだろォな」

「1番歌う限りは分からないもんね。 えっと、フニクリフニクラ歌いながら火山観光をするってこと?」

「あれは行きたがってるから良いンだよ」

「うーん……難しいかも……。 ……あ、富士山歌った後に不法投棄するとか?」

「歌って無くても犯罪だ、っつゥか俺はオマエと心温まる童謡トークをしたいワケじゃねェ」

「そうなの?」



第一、まともに小学校で歌ったことが無いので知識だけの会話を繰り広げる自信も無かった。
216 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/07(月) 23:04:36.69 ID:a1jl3UcAO







ペンをノートの上に置き、首を捻る。

「嫌いな本のジャンルとかねェの?」

「あるにはあるけど、どうしてかな?」

「活字フリークにも程度があンだろ」


言っている概要すらも分からず、インデックスの頭にはクエスチョンマークが飛び交う始末だ。

はぁ、と溜め息を一つ、そして背表紙を人差し指の爪で軽く叩いた。


ぺちんぺちん。


「“新婚さンいらっしゃい!〜INフランス〜”なンて今のオマエの境遇にかすりもしねェだろォ?」


とりあえずタイトルはどうにかならなかったのかと思わざるを得なかった。
217 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/07(月) 23:06:25.55 ID:a1jl3UcAO




今彼女が読んでいるのはハネムーンのガイドブックである。
何故、この学園都市に蔵書されているのかは全く分からないが、ここにあると言うことはそういうことだ。


「イギリスとイタリアは去年行ったんだけど、フランスは行ったこと無いなあって思ったんだよ」



それにフランス料理って美味しいらしいんだよね!と明らかな本音を付け足し、インデックスは微笑んだ。



上空から地殻破断を使っただけのアビニョン侵攻は、勿論カウントに入らないだろう。
10月に飛んだロシアも、観光なんてとんでもない状況、何せ寒さだってあまり感じないほどだったのだ。

と、なると

「旅行したことねェな……」

「海外の?」

「国内もだ」

218 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/07(月) 23:08:23.40 ID:a1jl3UcAO




「そうなの?」

「何だよ、文句あンですかァ?」ジトー


自分だって、何も好きで旅行の経験が無いわけではない。
そもそも、今まで娯楽について夢想する余裕なんて一つも無かったのが悪い。



(あァ、でもコイツとファミレス行って買い物行ったンだった)


それも別に初体験ではない。
が、その時居た同居人たちは家族というカテゴリーだ。

友人と遊びに出かけた、なんて初めてのことに、何故か全く気がつかなかった。


浮かれていたのだろうか。
219 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/07(月) 23:09:58.53 ID:a1jl3UcAO





「楽しいと思うんだけどなあ」

「時間もねェし、許されて無かったンだよ」

「今は違うの?」

「何せ高校に通えるらしいからなァ」


雑談をするのは帰り道で良いだろう。


机に置いていた本を捲ろうと、手を伸ばす。
残量チェック、メモ替わりのノートの罫線を数えようとしたのだが、光がちらついて上手く見えない。




そして、左手もいつまで経っても本に到達しない。
220 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/07(月) 23:11:35.37 ID:a1jl3UcAO






「あァ?」

「うーん……、さっぱりなんだよ」


少女が何やら目を細めながら対峙するのは、計算ミスも表記ブレも無く、密かに気に入っているここの蔵書の一つ。


と言うか、一方通行の読んでいる本だった。


「一応その道の権威が書いたモンを、外部の人間が理解出来るかよ」

「こんなの理解しなくちゃいけないなんて……高校に入るのって大変なのかも……」

「とりあえず間違い正してやるから返せ」

ぐるぐると目を回す少女の手からそれを引ったくり、次は取られぬよう脇に置いた。


「俺が復学する学校は一応学園都市の最難関。 当然授業のレベルも難しいンだが、優秀なレポート書いて送れば今までの欠席分は取り戻せるンだと」

221 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/07(月) 23:15:05.04 ID:a1jl3UcAO




この特例措置も第1位の特権、有り難く頂戴して何が悪いのだろうか。


「あなたって頭が良かったの!?」


心底意外だとの顔をするインデックス。


「うわっ!」

「誰に向かってほざいてやがるンですかァ」

人差し指でまとめて、丸くこね、肘をひく。

報復で消しゴムのかすを投げたのだが、上手く避けられてしまった。


次は突発的にいこうと彼の決意は露知らず、頬杖を付いたインデックスはいじけた顔で木目を見やる。




「退屈って……キライかも」


咄嗟に返事は出来ない。
222 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/07(月) 23:18:48.85 ID:a1jl3UcAO



「いくら私が敬虔な修道女でも、暇には精神が腐敗させられちゃうんだよぉ……」

「……どこにでも通えば良いじゃねェか」




「私たちは能力開発しちゃいけないんだって。 自身の存在の根幹からして揺らいじゃうの」



初耳にも程がある。


たち、の範囲はシスターではないだろう。
実際に学園都市内にもミッション系の学校はあり、十字教徒でありながら能力者である生徒も数多く居る。


確か、体の不調を訴えるなんて話は出ていない。

223 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/07(月) 23:19:37.85 ID:a1jl3UcAO








(何にも知らねェンだよなァ)



もっと知っていたら、適切なアドバイスが出来るのかもしれない。


どうしても、適切な距離が掴めない。
詰めて良いのか、迫られても良いのか。

近くだと錯覚しているのは、単に周回遅れなだけではないか。




だから現状維持に努めるしかない、いつか走れなくなるまで。


224 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/07(月) 23:21:54.91 ID:a1jl3UcAO




「……」

だから、声をかけられなかった。


「まあ、私は本が友達だからね!」



繕ったような、不自然さが残る笑顔。
添加物だらけの嫌いだ。

同時にそれに甘んじる自分も。


大きく息を吸い、吐く。

「……ハァ」

「溜め息!?」

「……インテリちゃン気取りかよ」

「気取りじゃないんだよ。 正真正銘のいんてりげんちあなんだよ!」

「辿々しい発音を直してから言え」



何を!と反論しかけたインデックスを遮る。


聞き忘れていたことがある。
225 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/07(月) 23:23:21.76 ID:a1jl3UcAO



「オマエ、何のジャンルの本が嫌いなンだよ」

「覚えてたの?」

「あァ」


机から腕を離して、インデックスは大きく伸びをする。

さもどうでも良いように、しかし彼女の無機質な声は違和感があった。



「――占いの本、かな」


奇遇なこともあるものだった。



「俺もだ」


226 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/07(月) 23:25:09.38 ID:a1jl3UcAO









「――って昨日話したはずだがよォ」








227 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/07(月) 23:27:06.64 ID:a1jl3UcAO





「狙ったとしか思えないタイミングかも」

外は強風、雲も多く光は差し込まない。

冬ではあるが、まるで嵐が来そうな雰囲気に一方通行も困惑を隠せない。


「狙ったンじゃねェの?」

インデックスは真白い2通の封筒を交互に見やる。


まさに驚喜ない交ぜ、内包し合ったそんな表情。





「長点上機学園による、特別入試選抜の案内――」




そう、一方通行にとって見覚えのあるパンフレットが、その封筒には入っていたのであった。







――ようやく歯車は動き出す。
228 :終わり :2011/03/07(月) 23:31:21.68 ID:a1jl3UcAO
まさに私の戦いはここからでしょうか。
プロローグで5分の1使ったりしましたが、ようやく動き出すような気がします。

それでは、またお会いしましょう!
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 23:38:14.58 ID:HD7P4DaX0
なるほど。ようやく学園生活の始まりか。乙。
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/07(月) 23:46:29.21 ID:KWExKKD50
妙に分かる童謡トークとか消しゴム投げる可愛い一方さんとか、インさんの無機質な声エロスとか思ってたけど最後で頭ぱーんされた
おつ
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 07:51:17.43 ID:x0461WHAO
おつ
次回が気になる
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 14:19:40.44 ID:tKVyFC1AO
いよいよだな
おつおつ
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 15:50:44.25 ID:T1b864fAO
グリーングリーンは離婚の歌じゃなかったのか
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/08(火) 18:59:56.04 ID:x0461WHAO
離婚説初めて聞いた
かく言う俺もこの曲のパパは病死したのかと
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 19:12:13.63 ID:r4E5WaTAO
美しい始まりだと思ったらww相変わらず可愛い2人だw
もっと長くてもいいくらいのプロローグだったぜ!!でも学生白コンビ楽しみにしてます!!
乙です!!
236 : ◆ObanGQEW7M :2011/03/09(水) 23:29:13.32 ID:j4hFAazAO
短いですが0時30分に投下します
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 23:34:53.32 ID:napJc3WQo
期待してるー
238 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/10(木) 00:27:25.78 ID:LxHq7poAO




(……居ねェのか)


暗雲立ち込め、2月ももう下旬に差し掛かったのだから流石に雪は降らないと思うが、ともあれ天気が不安で傘を持ってきた――そんな朝。



珍しいことに、いつも彼より早く来て、ちょこんと席に着いているインデックスが居なかった。



この間入手したバックも無く、館内を動き回っているわけでも無さそうだ。



(寝坊、もしくは)


具合が悪いとか、用事があるとか、忘れ物をしたとかそこらの都合なのだろうと彼なりの見当を付け、文房具類を机に並べる。

じゃらじゃらと言う音が、閑静な館内に響きわたった。
239 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/10(木) 00:29:16.43 ID:LxHq7poAO




ぱかん

さて作業を始めようとプラスチックのペンケースを開く。

とあるボールペンが目に入った。


上部に桜のモチーフが付いていて、ボディーはピンク色のそのペンは、あの時のファミレスでパフェを食べた時にオマケで渡された、所謂お揃いの品で――。



ふと、奇妙な感覚。

言うなれば、背中を薄くなぞられたような焦りか。



(……本当にそォなのか……?)

240 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/10(木) 00:31:22.57 ID:LxHq7poAO




銀髪碧眼の異郷の少女。

背は小さく容姿も可愛らしい、声もまたしかり。

修道服を着ていて、咄嗟の動きは取れなそうだ。

そして、人懐っこくて、浮き世離れというか少し危機感の無い――。

何せ、あんな状況で自分に声をかけてきた女なのだ。



一方通行の指先に熱が灯る。
241 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/10(木) 00:32:59.46 ID:LxHq7poAO






(……何か巻き込まれたンじゃねェか……、交通事故とか人攫いのよォな……)


段々と加速していく思考は悪い方へと転がっていく。


(……杞憂だろォけどな)


そうして携帯を取り出し、ディスプレイに映り込む自信の姿に気づかされる。

彼女の連絡先を知らない。


時計を見ると、いつもインデックスが来ているという時間を1時間過ぎていた。



「……」


観念して目を閉じ思考をまとめ、もう一度ペンを見た。





「――あの暴食女」
242 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/10(木) 00:36:22.10 ID:LxHq7poAO




財布と杖を手元に、椅子にかけていた黒い上着を着た。


かつっ、かつっ
いつもより早いペースを刻む杖。


日本十進分類法によって整理された本の山を縫っていく。


総記・哲学・歴史
社会科学・自然科学
技術・産業
芸術・言語
文学
児童書
過去の論文

いずれの棚にも、あの修道女は居ない。


外は少し見回るだけだと自身に言い聞かせ、入り口まで歩いた。



しかし彼が絨毯を踏む前に、扉は開かれる。



「……あァ?」

「はあ、はあ……っ。 っ、おは、よう――!」
243 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/10(木) 00:39:32.24 ID:LxHq7poAO





やけに息切れをした少女の満面の笑みがそこにあった。

膝に手を当て、苦しげな呼吸をしている。



色々と言うべき所はあるのだろうが。



「……オマエ何だその格好はよォ」

「……っはぁ、後で話す、けど昨日スッゴいゴタゴタがあってね……! とうまも私も洗濯を忘れてたんだよ……」

「――それでどォしてそのチョイスになるンだよ」

「友達が置いてった、これしか……、ふーっ、女性モノの冬服がね、家に無かったんだよ……?」

「事故とかは」

「遭って、ないっ、んだよ」


ひとまず胸をなで下ろし、そして装い新たな様を見物する。
244 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/10(木) 00:41:13.37 ID:LxHq7poAO




ここで彼女の姿を整理しよう。


寒い中急いで来たのか、上気して朱い頬と潤む瞳、酸素を求めて開かれる唇もまた紅い。
フィラメントのような銀髪は風で乱れ、拡散しても尚、蛍光灯を反射する。
細く白い柔肌にはうっすらと鳥肌が立った。

そして、成長途中の肢体を包むのは――。


「ええっと――由来は日本海軍だよね」

「ンなモン知らねェ」




赤のスカーフは乱れていて。

黒のタイツから覗く、いつも隠された足は細く、それでいて妙な艶めかしさがあり。

膝上5センチのスカート丈。


そのホックが後少しで見えそうな上着。
245 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/10(木) 00:43:22.20 ID:LxHq7poAO




「セーラー服って、案外暖かいんだよ」


まるでどこぞの絵から飛びだして来たような、どす黒いセーラー服を纏った彼女は尋ねる。

髪が揺れ、肩に一房かかった。

黒と銀のコントラストは荘厳と言う他ならない。


「それにしても、あくせられーたはこんな所でどうしたの?」

「……あのコーナーから借りにきたンだよ」

「……え?」

適当に後方を指差しておいた。

246 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/10(木) 00:45:34.45 ID:LxHq7poAO






それにしても、少女に合わせたのではないかと思わせるほどぴったりとしたサイズの服だ。

鑑賞用なのか定かではないが、型からして細身なのだろう。

普通の制服は動くことを考え、余裕を持たせて胴の幅は広めに取るのだがその空きもなく、プリーツも心なしか狭めに取ってあるらしい。
247 :文量間違えました ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/10(木) 00:47:08.54 ID:LxHq7poAO




「結構違和感ねェな」

銀髪に黒が映える、甘い顔に和のテイストが合致する。
両極端のものを拾ってきた割には、上出来である。

と、なるとやはり、乱れた赤いスカーフが心残りだろう。



「……えっと、どういうことなのかな。 この場合私にその歪んだ欲を……」

「こっち来い」


いつまでも開いたままの自動ドアをとりあえず閉めたくて、節からして細い手首を取り室内――つまり一方通行側に引っ張り込む。


そして何やら慌てるインデックスを後目に電極をオンにした。

248 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/10(木) 00:49:11.39 ID:LxHq7poAO




「これ持ってろ」

「……うん」

杖を手渡し、首元に顔を寄せる。

ふるふる揺れる体躯を疑問に思うのだが、最重要は違うところにある。



赤を手に取り、街ですれ違った幾多の女学生を回想する。


「こンなンだっけ」

「……くすぐったいかも……ぉ」

「……」

「ひゃうっ!」ピクン

「これじゃ逆か……」

「う……」フルフル
249 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/10(木) 00:56:39.26 ID:LxHq7poAO




別にいかがわしいことなどしていない。

ただ微笑ましい光景にしては、インデックスの上げる声は甘ったるかった。

鎖骨にちらちらとした刺激があれば、誰だってそうなるのだろうが。


「――こンなンでどォだ」

「――くすぐったかったんだよぅ……」


若干満足げな顔をして、一方通行は杖を取り座席へと戻っていく。


追従する少女は、おもむろに呟く。



「性教育コーナーだよね、あそこ……」



その背中には届かない。
250 :終わり :2011/03/10(木) 01:02:53.32 ID:LxHq7poAO
服をおいたのは我らが青ピさんです

それにしても、黒セーラーと紺セーラーを混同している世の中には憤慨していたりします。別個ですからね、あれ! 黒と紺は全く違いますから、黒セーラーにはタイツで紺セーラーには白ハイソって棲み分けが必要だと思うんです。どっちも美しい組み合わせです、まあ白セーラーも勿論好きなんですがやっぱ黒・紺には劣っちゃうのは事実ですよ、黒≧紺>白>その他ですかねやっぱり
もっとインさんと黒セーラーの効果について語りたいんですけど、性癖がバレそうなんで止めときます
お付き合いいただきありがとうございました!
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 01:05:00.81 ID:FeG+sKGDO

性教育コーナーwww
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 01:12:50.68 ID:LAxyEnyJ0

一方さんやっちまったなww
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/10(木) 01:15:47.63 ID:W8IhB3Yn0
今までで一番>>1が輝いてる、っつうか第一位のやつのろけまくりじゃねぇか、ちくしょう
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 01:21:24.13 ID:JTo/XXm2o
ほら、多分提出する論文に関係あるんだよww>性教育
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 01:42:24.38 ID:dQ9KCw1J0
ああ今日も幸せだ!!>>1乙通行!

ほんわかしてるのにウィットに富んでる絶妙な会話が、ここの白コンの魅力の一つだな
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/10(木) 02:38:12.99 ID:KGfTJ+RA0
乙。一通さんは打ち止めの為に性教育について学んでるんだよ!
ところで上条さん家に制服置いていく知り合いって誰さ。姫神?
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 08:20:31.56 ID:stoFcKlAO
一通さんの親バカ病が
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 10:21:46.63 ID:nuW/8hXx0
>>1とは握手せざるを得ない。
だが紺のセーラーでも黒タイツだ。
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 14:55:08.49 ID:W8IhB3Yno
>>256
青ピだってさ
しかし今のとこ存在は匂わせてるけど二人しか出てないし、上条さんと打ち止めはどうなってんだろうか
260 : ◆ObanGQEW7M :2011/03/11(金) 15:09:30.12 ID:30b+HM4AO
揺れたぁぁああ
東北の皆さん大丈夫ですか!
261 : ◆ObanGQEW7M :2011/03/11(金) 15:10:23.58 ID:30b+HM4AO
あと今晩投下します
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 15:14:58.34 ID:Cru5BRYfo
どのスレも地震うぜェ
よ思ったら>>1でしたか

超舞ってる
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 15:35:02.86 ID:bTrmDF0po
>>1が投下できる地域に住んでるようで安心した
楽しみにしてる!
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 17:42:46.47 ID:GOIwzo1Io
はっ!図書館で地震にあう二人!
初めての経験に驚く禁書目録!
ベクトル的な問題で余裕の一通さん!
後は頼んだぜ
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 17:45:57.54 ID:btlwvZ31o
学園都市の超科学なら震度7でも余裕で耐えそう
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 17:57:46.69 ID:xvaX3Huko
>>265
そもそも揺れない気がする。
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 19:42:56.74 ID:7VnYnzY60
>>266
都市丸ごと耐震設計か、羨ましい
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 19:45:02.85 ID:hOymMOnAO
そりゃ地震でビーカー割れて死んじゃいましたじゃ逆立ちの人も格好つかないだろ
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 22:16:38.69 ID:DjgYqLHDo
何せ一方さんが地震どころか時点を5分遅れさせても大丈夫な街だからな
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
270 : ◆ObanGQEW7M :2011/03/11(金) 22:26:49.60 ID:30b+HM4AO
もしもし不調でなんかぷっつんして書き溜め消えたあああああああああああ、ぶっちゃけ結構あったああああああああああああ


……ちょっと書いてきますね
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/11(金) 22:53:35.09 ID:7CsFplTC0
がんばれ。
いつまでも待ってるから。
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 23:08:22.71 ID:DjgYqLHDo
わたしまーつーわ
いつまでもまーつーわ
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 12:36:00.14 ID:4p5kZ9tLo
どうやら自転のベクトルが操作されたようです

地震で地球の自転速まる NASA
http://news.goo.ne.jp/topstories/world/729/78c22ddda6bf467a843491360d34d2c1.html?isp=00002
自転に要する時間が、1000万分の16秒だけ短くなったとみられる
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 20:07:55.00 ID:qJsO6LbDO
ほす
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 13:45:37.04 ID:OibGzLYK0
保守
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 13:55:06.53 ID:lNZdD5Zmo
保守は必要無いんだぜ
みんなで>>1と東北を応援しよう

>>273
一方さんやりやがったな
277 : ◆ObanGQEW7M :2011/03/14(月) 14:16:10.59 ID:HX2a1M/Zo
ご支援ありがとうございます

東日本大震災で被災された方や、そのご家族・お知り合いの皆様の一刻も早い回復を心より祈っています
そして停電地域の皆様も交通や衛生面での危険に遭われることが無い様微力ながら心配してます


書き溜めも全部復活したわけではないのですが、とりあえずキリの良いところまで今晩投下したいと思ってます、よろしくお願いします
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 16:30:29.75 ID:OibGzLYK0
待ってたぜ
期待
279 : ◆ObanGQEW7M :2011/03/14(月) 22:00:17.11 ID:BfZXaJlAO
ちょっとばかし長いので休み休みの投下になりますがお願いします
280 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/14(月) 22:03:53.03 ID:BfZXaJlAO




「いったいどういう用事であそこに居たのかな……?」

どこを指差したのかさえ分からないのに答えられるものか、あしらってしまおう、と一度は決意したものの。


『へえー、あくせられーたってばあ私のこと心配してくれたんだー、かっわいー!』

その結果心配したことがバレたとしたら非常に間抜けだ。
それに想像上ですら無性に腹が立つのだから、誤魔化すしか無いだろう。


「――これからの俺に還元して? あァ、応用もしていくつもりだ……的な」


酷すぎる弁解だった。
281 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/14(月) 22:07:12.58 ID:BfZXaJlAO




「還元に応用!?」

「まァ、興味があるジャンルだからなァ」

「きょ、きょうみぃ……?」

「人類の繁栄には必要不可欠だぜェ?」

全ての道はローマに通ず、と言うわけでは無いが世の中に無駄な学問なんて無いと言っておけば説得力も増すはずだと一方通行は考える。


正に的確すぎる答えだった


「……は、んえい」

(……も、もしやあくせられーたは欲求不満なのかも、だから私に当てつけのようにせくはらを……)


傍からすれば、痛ましいぐらいの齟齬が発生しているのだが2人はちっとも気付こうとはしない。
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 22:10:09.25 ID:rIaRtlV10
来館者の方々の中に読心能力者はいらっしゃいませんかー?ww
283 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/14(月) 22:12:10.67 ID:BfZXaJlAO



(もしかして児童書コーナーだったかァ? ……それはそれであらぬ勘違いをされてるンじゃ)

(私に言うことでどうしたいのかな……、あとこれってせくはらじゃ無いよね……? ど、どうするのが正解なのかな……)アワアワ

葛藤するぐらいなら腹を割って話せば良いと思うのが世の理だが、無駄に高いプライドを持つ2人なのでわざわざ恥をかきにいこうとはしなかった。


「勘違いすンなよ、別にガキ(小さい子供)には興味ねェ」


「ガキ(未発達)……?」


今までの頬にあった火照りが急に退いていくような、逆に頭の芯が冷え冷えとして冴え渡っていくような感覚を覚える。


「……」ムスッ

「どォしたンだよ」

「別にこっちだってあくせられーたには興味ないもん」プイッ

「はァ?」


いくら、ただの友達とは言えど面と向かって興味が無いだのなんだの言われることには腹が立つ。


それすら誤解なのだが解く術は彼らには無かった。
284 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/14(月) 22:16:42.25 ID:BfZXaJlAO



「それで、そのゴタゴタしたことっつゥのは何だ」

「……」

「おい、シスター」

「……ふんだ!」

「はァ?」

むーっと、まだ睨みを利かせているインデックス。


何だか分からないが、女性を怒らせると面倒だと言うのは4人と同居する中で痛烈に学んでいた。

頭を振った一方通行は、自身のアウターのポケットから飴を取り出す。


人差し指で弾かれたそれは机の上を滑り、セーラーに当たって停止する。


「どォしたのか知らねェが機嫌治せ」

「……いただきます」


結局のところ舐めるのかよと心の中でツッコミを入れるのだが、彼女の顔が和らいだのを見て、何となく安堵した。

ついでに飴1つで懐柔されるシスターって大丈夫なのかと心配もしておく。

285 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/14(月) 22:19:37.46 ID:BfZXaJlAO


―――


「昨日ね、家に帰ったら2通も封筒が来てたんだよ」


いつもと同じように、密やかな会話のスタートである。


「とうまのかな?と思ったんだけど、宛名は両方とも私だったの。 1つは私も所属するイギリス清教から、もう1つは学園都市から」

「あァ」


淀みなく動く紅い唇を見ていると、何故だろうか、何かが起こるようなそんな胸騒ぎがする。

286 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/14(月) 22:23:05.10 ID:BfZXaJlAO




「最初に開けたのはイギリス清教の方。 中を見るとね、数枚紙が入ってたの」


「1枚が現在のイギリスの国勢不安についての教会の見解――あ、ロンドン発でクーデターが起きたことは知ってるよね?」

名前は確かブリテン・ザ・ハロウィンと言ったか。

「あァ。 10月はそれどころじゃ無かったがなァ」


暗部に堕ち、抗争があり、ロシアへ向かいと今とは比べ物にならないくらいの激動の1ヶ月の中、遠くの島国の状況なんて片耳から片耳へと通り過ぎていたのが事実だ。


「今は国内情勢は安定に向かってるんだけど、それでも元から犬猿の仲だったフランスだけじゃなくてイタリア・ロシアとも敵対関係になっちゃったわけだから、学園都市と共に戦勝国にはなるんだけど外交は緊迫してるんだって。


だから安全性を保証出来ない内は、私に帰って来ちゃダメって。 とは言え、帰る予定は無かったんだけどね」
287 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/14(月) 22:25:07.31 ID:BfZXaJlAO




「まだ安全な国に亡命してろってかァ?」

「うん、厳密に言うとそれは2枚目の内容なんだけどね。 ――勅令にあたるのかもしれない、確か刻印がイギリス王室のものだったんだよ。 それと、寧ろ戻ってきても送還するつもりなのでよろしくって」


インデックスは事も無げに言うが、あの国の制度からすると王室からの命令とは即ち国家としての命令であり、つまり拘束力を伴うものではないか。

話が全部事実だとしたら、何故、一国が目の前の少女にここまでの対応をするのか。

「法規的措置にも程があンじゃねェの」


ぱちくり、と瞬きを1つ。


その表情からすると、当然だったことを指摘されて驚いているような。

――どうも、認識していることに埋められないくらいの差があるような気がする。
288 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/14(月) 22:27:17.27 ID:BfZXaJlAO




「うーん……、何て言うのかなあ……。 えっとね、私はイギリス清教内で私しか就けない責務を果たさなくちゃいけない、と言うか……」


上手く説明出来ないのか頬杖をついて思案にあぐねていた。


「私は修道女なんだけど、それとは別に完全記憶能力を生かした仕事をしているんだよ。 今のところその仕事を請け負えるのが私だけだから個人の価値もあがるというか……」


「――じゃァ、オマエは」

「うん?」
289 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/14(月) 22:29:56.99 ID:BfZXaJlAO




明らかな偽名を名乗り、自身の本名を知らない。

白皙で碧眼は白色人種の特徴として挙げることは可能だが、銀髪が自然発生する民族は確か居なかったのではないか。
だとしたら疑似的に陥った一方通行ではなく、インデックスこそがアルビノの可能性も十二分にあるのかもしれない。

だとしたら、少女のルーツは何なのだろうか。


そして、教会に拾われた孤児で、十字教布教のためにここを訪れているのかとてっきり思っていたのだが、どうやら改めなくてはいけないようだ。



思考を整理し、改めて少女と向き合った。

「――オマエは十字教で重要な立場なンだな?」

「……うん、否定はできないかも」

小さく首を縦に降った。
290 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/14(月) 22:34:19.84 ID:BfZXaJlAO




「オーケー、話を続けろ」


とりあえず彼女のことは、あちらにおける超能力者【230万分の7】のような希有な存在と定義して良いだろう。


「最後にあったのが委任状。 今までみたいな流浪の結果で居着いているわけじゃなくて、公式に許可されちゃったからね。 学園都市が禁書目録【私】に対しての指示権を持つことに同意するって内容が書かれてたんだよ」

「じゃァもう1枚が大事になるンじゃねェか」

「その通りなんだけど……、ねえ、あくせられーた」


もぞもぞ

手を膝へ置き、インデックスは身じろぎする。

どこかの神父に言わせれば庇護欲をそそるような表情なのだろうが一方通行にきいたかどうかは不明である。
291 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/14(月) 22:37:31.09 ID:BfZXaJlAO




「どォした?」

「……昨日今日で微妙なタイミングなんだけど、私の言うこと信じてくれる?」


静寂、そして強風が吹き荒ぶ音さえもが聞こえる。

折節伏せられる眼は、一方通行と交わることは無い。


「……内容にもよるだろォが、信じて欲しいならなるべく努力はしてやる」

「うん、分かったんだよ」



インデックスの胸元が起伏し、愛らしい声は告げる。





「私、高校に行けるのかも」

「……」



(どこが飛躍したらそォなる……?)
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 22:39:57.04 ID:OibGzLYK0
支援
293 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/14(月) 22:41:09.63 ID:BfZXaJlAO




「それでね、」

一方通行の反応を待たず、インデックスは持ってきたショルダーバックから話のタネであった封筒を取り出しつつ追加説明を始めた。


「さっきの続きなんだけど、せっかくこっちに長居することになったんだから、高校に入ってみませんかっていう通知が来たんだよ」

「――ちょっと待て、オマエ幾つだ」


何が何なのかさっぱり分からない中まくしたてるように喋られては、情報の処理が追いつかない。


出した声もどこかピッチがずれていて、自分が動揺していることを如実に示すバロメーターとして存分に活躍していた。


「15歳くらいかも?」


何でそれすら知らないんだと詰問したかったが、話が進まない。

必死でこらえ、続きを話せと顎をしゃくった。
294 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/14(月) 22:43:09.55 ID:BfZXaJlAO





「昨日話した通りだけど、私にとって就学の1番のネックとなるのは能力開発による弊害なんだよ。


じゃあ、普通の勉強だけをする学校に入れば良いだろう、って」

「高校になると能力開発受けねェと単位認定はされねェ筈だが」

「私もよくは分からないけど、1校だけ特例が認められてるらしいんだよ」


そこで音が止む。


「……ちょっと現実味が無い、よね」


投薬や頭脳を弄る必要の無い、そんな特例。

無能力者で甘んじろと言うことか、それとも別の意味が有るのか。


「あまりにも胡散臭ェが」


都合が良すぎる、それに1つだって聞いたことは無い。

だが、何か見落としている点があるような気がする。


国家が絡んだりなど話が壮大すぎて嘘だとしたらインデックスは詐欺師になれるだろうし、そんなことをしてメリットがあるとも思えない。

295 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/14(月) 22:46:23.37 ID:BfZXaJlAO




それに、何より。


「信じてやる」


天真爛漫、人懐っこい、無邪気などを体現したような彼女が友人を騙すだなんて良心が痛んで出来ないだろう。

「ほんと?」

「あァ。 脈絡がねェコスプレに免じてなァ」

「もしかしてセーラー服が好きなの?」

「後ろめたい記憶がねェだけだ」

それを一方通行なりの冗談だと思ったのか、手をあてくすくすと転がるような声で笑った。

(……)

いつものようにほころんだ顔が見れて少々安堵したのは気のせいだろう。


「ふふ、ブレザー服の女の子にフられちゃったのかな」

「さァなァ」
296 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/14(月) 22:48:38.51 ID:BfZXaJlAO




「じゃあ話を戻すね。

私が実際に学校へ通うことになれば、今までとは違って奨学金も支給できるんだって。 その代わり協力することもあるみたいだけどね。

とうまも応援してくれたし、私も言わずもがな。 だから昨日に入学試験の申し込みはしてきちゃったんだ」

「タダでは入れねェの? 完全記憶能力者なンざ、この都市にもなかなか居ねェと思うぜ」

「だからこそ試験を突破出来るよねって事だと思うんだけど……」


その時、吹き荒ぶ風がより一層強さを増した。



がつん!
297 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/14(月) 22:52:44.66 ID:BfZXaJlAO




「うわわ」

「あァ?」

「ど、どうしたのかな……?」

「石でも窓に当たったンじゃねェの」

「……嵐が来るのかも?」

「降水確率ほぼ100」

「あっ、傘忘れちゃったかも」

「完全記憶能力者さァン?」

「うぐ」


最近暖かい日が続くため、もし降ってきたとしても雨だろう。

これらに備えて傘も持ってきていた判断が正しかったと自画自賛を心の中でしておく。

298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 22:55:25.42 ID:OibGzLYK0
なるほど、インちゃんの通う高校って…
299 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/14(月) 22:56:46.43 ID:BfZXaJlAO




「勉強は大丈夫なンだよな」

「それなんだよ……!」

さっきまでのしおらしさなんて丸めて不燃物で捨てましたと言わんばかりに、インデックスの語調に熱がこもる。


豹変振りに少しだけ体を震わせた。


「家に帰ってから我に帰ると、5教科実施されるみたい。 すーがく……!! すーがくが敵なんだよ……!! 他は資料を暗記しちゃえば良いけど、すーがくには無理かもってとうまが……!!」

「確かにオマエに関しては文系科目は心配ねェだろォな」


「……うう、初等教育からやり直さなくちゃ……」

「今は幼稚園でも足し算やるとこあるらしいぜ」

「10年のハンデ……!」
300 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/14(月) 22:58:51.11 ID:BfZXaJlAO




相変わらず司書は鼻ちょうちんをぶら下げ寝入っているから良いのだが、それにしても大音量の嘆きである。


「同居人に教われば」

「とうまはバカなんだよ……」

「……そォかい」


一方通行に皆まで言わせずに、彼女は自身の同居人を罵倒するので、未だ知らない(と一方通行が勝手に思っている)その男に対して密かに同情した。



「他の知り合い達も高校名言った途端に、良い顔で走り去っていっちゃって……、忙しいこもえには頼めないし」

「……入試はいつだ?」

2月下旬の今日から数えてあと2週間ほどだとソプラノが聞こえる。


それでいて特例が認められるほどの学校なのだから、やはりレベルは高いのだろう。
301 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/14(月) 23:02:02.57 ID:BfZXaJlAO





(提出書類の進捗状況……は良くはねェよな)

思いのほか参考になる文献が無く、当初予定していたよりも遅れを見せている状況である。


(めンどいことに付き合ってたらこっちもジリ貧、都市側も早く送れっつゥンだよ)

全く、付き合ってられないと溜め息をつき。





「――でさァ、オマエは俺を誰だと思ってやがンですかねェ?」
302 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/14(月) 23:04:15.20 ID:BfZXaJlAO




「……え? えっと、お金持ちで私に食べ物を奢ってくれる実は優しいあく」

「大量の金はどっから来てンのか。 なンてオマエには見当もつかねェよなァ」


普通のここの学生なら、羽振りが良いだけで大体は気づく。

分からないのは目の前の疎い彼女ぐらいなものだ。


だからこそ、気づかなかったから成り立つ関係かもしれない。

もしかしたら、あの時みたいにインデックスもまた離れていくのかもしれない。


(時期的にも相応、まァ黙ってらンねェのは仕方がない)


だからこそ、彼は一種の賭けに出る。

ここで終わってしまうのなら仕方の無いことかもしれない、と自身の感情を騙しつつの賭けに。
303 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/14(月) 23:08:13.93 ID:BfZXaJlAO




「言って無かったよなァ、俺が超能力者だってよォ」

「しかも序列は第1位、230万分の1の“天災”なワケだ」

「莫大な工業利益の結果の奨学金で金持ちだった、てのは流石に知ってるのかね」


ここまで言ったら流石に分かるだろう。

超能力者の恐ろしさはどんなに疎くたってその耳に入っているのだから。


「……」


(……離れて行くなら今って言ってやってンのに、どォして気づかないンだよ)


「…………い」



瞳はキラキラと輝いている。


(バカシスターが……、善意の押し売りしやがって)
304 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/14(月) 23:11:48.55 ID:BfZXaJlAO





「すっっごいんだね!! あくせられーたっつ!! ここの1位だなんて!! レベル5なんて私、初めて会ったんだよ!! もうこれはとうまに自慢するしか、あ!! そっかそっか有名人だから恥ずかしかったんだ!!」

「……はァ」

「そう言うことだったんだね、なんだー早く言ってくれれば良かったのに〜!」

「……ったくよォ」

「どうしたのかな?」


「オマエはさァ、この都市で一番のアタマした俺に、何か言うことはねェのかよ」


柄にも無さ過ぎだからか、悪態をつきながらでしか喋れない性分を恨むとともに、顔が火照っていたら冷まそうと思って当てた手の熱さに少し泣きそうになる。

305 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/14(月) 23:13:56.48 ID:BfZXaJlAO





此処まで来たら乗りかかった船と言うものだ、仕方がない。

「……数学、あなたに教えて欲しいな」

「……言ったな」

「え?」


頼られなかったことに腹が立つわけでは決して無いのだが、何故だか些か溜まっていた鬱憤を晴らすかのように、一方通行は惨たらしい笑みを浮かべた。


「ぎゃは、オマエ言ったなァ? あァ、みっちりきっちりしっかり高校3年間分の予習まで済ますぐらいに教えてやンよォ。 マジで覚悟しろ」


奇妙な光を写す赤い瞳に、薄ら寒い異変を感じたインデックスの首筋には改めて鳥肌が立った。
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 23:16:15.74 ID:tf113NLAO
俺いまによによしてる
307 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/14(月) 23:18:52.32 ID:BfZXaJlAO




「え、ちょっと本気なの?」

「教育なンてモンじゃねェ、改造だよ。 感謝しろよォ? 脳内を数式で犯してやるからよォ。 超能力者が家庭教師なンて両手を挙げて喜ぶよなァ?」

言わば、ツンデレのデレの血なまぐさいバージョンみたいなものだ。

胸のつっかえがとれてハイテンションな一方通行だが、まだ親交の長くないインデックスにとっては急に猟奇的になった友人の豹変が恐ろしくてしょうがない。


「わ、わーい。 私ってば幸運真っ盛りなんだよー」

「おォおォ、何なら新入生代表挨拶だってさせてやろォか」

「合格で充分なんだよ!」


と、まあからかうのも程ほどにして。
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 23:19:10.55 ID:X52GyFjC0
初めてあったって……
短髪ェ…
309 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/14(月) 23:21:01.70 ID:BfZXaJlAO




「とりあえず受験校を教えろ」


ポケットから携帯を出したのは、マイナーな学校だった場合どのくらいのレベルかを調べるためだった。

「ほんとにありがとね、あくせられーた」

「奨学金出たらメシでも奢れよ」

「うん、約束するんだよ!


えっとね、読み方を1回間違えたからごちゃごちゃして覚えちゃったかも」


「もしかしたらクソ楽な高校かも知れねェし、俺が聞いたことも無いような学校かもな」


「えっと、そうだ確か」


インデックスの唇が開くと同時に、視界で光が破裂した。
310 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/14(月) 23:22:12.13 ID:BfZXaJlAO










「長点上機?」



「あァ?」










311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 23:23:46.92 ID:YTqX31Z+o
スレタイ回収きたー!
312 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/14(月) 23:27:27.59 ID:BfZXaJlAO



遅れて来る、さっきの小石とは比べものにならない圧倒的な破壊音。


雷が降った。


「きゃああああああ!! ピカピカって!!! 短髪が怒ってるのかな!! 心当たりはないけどごめんね短髪ぅぅぅ!!!」

「オイオイ、どォなってやがる……」


机の下に潜り込んだインデックスに何か言うだけの頭も回らなかった。


とりあえず、マイナーでもないし楽でもない。



長点上機とは一方通行が復学予定の、正にその高校なのだから。
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 23:30:45.95 ID:ZNjyfmmEo
美琴カワイソスw
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 23:31:49.57 ID:OibGzLYK0
一点特化の才能があれば大丈夫らしいね
315 :終わり :2011/03/14(月) 23:31:52.45 ID:BfZXaJlAO
ぶっちゃけスレタイ回収出来た嬉しさで倒れそうです。
あと設定の疑問ありましたら言っていただけると幸いです。

>>308
インデックスは美琴のことってやたらビリビリしている女子中学生ぐらいにしか彼女についての知識が無いと個人的に思ってたんですが、超能力者のこと知ってたら申し訳無いです
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 01:05:12.40 ID:wKcuxm5q0
デレの血なまぐさいバージョン…ドロデレとかそんなん?
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 01:40:02.59 ID:0gaE9Jux0
>>315
確かになんかビリビリしてる短髪だなー、くらいにしか思ってなさそうだな。
目の前で猟犬部隊と戦ったりしてるけど。
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 03:56:42.90 ID:Nfc6iWJe0
>>316
ヤンデレじゃない?
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 06:27:35.55 ID:lEChd4rAO
ツンドロだよ
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 11:30:39.02 ID:Bbo1BlD3o
おつおつ
前半アンジャッシュのネタを思い出した
つーか一方さんのはツンデレっつーよりツンドラみたいな
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国・四国) [sage]:2011/03/16(水) 22:41:58.57 ID:Pew1n4qAO
乙です!!
くっ一方さんが可愛く見えてきただと…っ頬が熱いとか嬉しくてハイテンションとかさぁもう…
笑ったけどw なにデレっスかww
白コンビ可愛くてニヤニヤする自分やべー
322 : ◆ObanGQEW7M :2011/03/17(木) 21:52:45.64 ID:ZBMPd5mAO
短いですが11時ぐらいから投下します
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/17(木) 22:13:20.60 ID:D4IdKOh50
きたあああああああああ
これでかつる
324 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/17(木) 22:54:55.47 ID:ZBMPd5mAO



ピカッ!



「ひゃう!」

「――そォか、あそこの特別進学科っつゥと開発し終えた高位能力者と伸びる見込みの無い成績優秀な低位能力者だか集めてたンだわ。 オマエの言ってたのは多分それだ」

「ふわわわ」


徹底的な合理性を貫く長点上機学園は都市内トップのエリート校ではあるが、何も高レベルの能力開発に秀でているだけではない。


寧ろ、いくら高位であろうと都市から出てしまえば公式に出来ることは限られてくる。
外では、軍隊を相手に生身で戦える人間と進んで付き合おうという人間なんて居ないに等しいのだから。


そうして制限がかかってしまうのなら、圧倒的な工業利益を生み出す超能力者はともかく、大能力者以下の差などはどうと言うことは無いのかもしれないというのが専らここ最近の研究者達の水面下での定説だった。



手元の今年度の長点上機のパンフレットの長ったらしい説明を要約するとこうだ。

【次世代への還元に置いては、頭脳明晰で開発に優れる低位能力者>ありふれた高位能力者、という不等式が成り立つ】


そしてもう一つの思惑としたら、トップ校では下克上が許されているという、夢破れた低位能力者へのせめてもの救済かもしれなかった。

325 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/17(木) 22:58:41.38 ID:ZBMPd5mAO



「あうぅぅ……」

「それにしても陰謀感じンな」

昨日話してその日のうちに届くだなんてタイミングが良すぎる。

やはり、滞空回線で見張られていたのだろうし、期が熟すのを待っていたのだろう。


と、実は第三者である一方通行が真剣に考察するなかで当事者のインデックスは何をしているのか。


「何でこの季節に雷が降るのかな……」

「暴食さン、いい加減俺の脚から離れてくれませンかねェ」

「い、今はあくせられーたの棒のような脚にも縋っていたい気分かも……」

「知るか」



下は薄暗くてよく見えやしないのだが、生暖かい温度と柔らかい何かがスラックス越しに伝わってくる。


インデックスがしがみついているのだ。
326 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/17(木) 23:01:39.70 ID:ZBMPd5mAO



空がまたもや唸りをあげる。


「……て、天にまします我らの父よ……。 願わくはみ名をあがめさせたまえ、み国を来たらせたまえ、み心の天に成る如く地にもなさせたまえ、我らの日用の糧を今日も与えたまえ、我らに罪を犯す者を我らが赦す如く我らの罪をも赦し――」ブツブツ

「雨ばっかの国から来たンだろ? ちったァ落ち着けよ」

「少しは冬季雷の恐ろしさを知るべきなんだよ! 夏のやつよりずっと凶暴で大きな被害をもたらすんだから!」

「知ってますけどォ」

「うう……雷様って呼ばれる所以がよく分かるかも……、しかももっと多い地域もあるんでしょ? もう私なんてショックで死んじゃうかも……」

「丸太のよォな神経したオマエが何を言うかって話だ。 前衛的な花火とでも思ってろよ」


とは言ったものの、一向に腕が離れていく様子もない。

都市全域にあるはずの避雷針の存在を説き伏してもだった。
327 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/17(木) 23:03:14.96 ID:ZBMPd5mAO



理詰めでいって駄目なのなら、ここは奥の手を使うほかない。


「――チッ。 ……アレだ、オマエが離れるンだったらなンたらサンダー買ってやンよ」

「ブラウンサンダー!?」

「あァ、そンなン」

「ほ、ほんと?」

「店にあればなァ」


インデックスが食べ物が絡むと急に態度が変わるのは周知の事実。

さすれば、持ち前の経済力をフル活用して誘導すれば良い。

「……でも、ここは暗くて落ち着くかも」

実はもう一息と言うサインなことも把握している。

「しょォがねェなァ、すげェ弾けるわたあめも追加」


足元でガタン、ガタンと音がして――。


「……奇跡の生還かも」

「おめでとォ」


何というか彼女の御し方を段々とマスターしている自身に複雑な気分になった。






それもまだ、爪が甘かったのだが――。
328 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/17(木) 23:05:48.03 ID:ZBMPd5mAO





ぴとり


肘あたりに何だろうか、非常に柔らかい何かが当たっている。


「ちょっと待て」

「脚は譲歩するから……!」

「譲歩ってオマエに権利を譲った覚えは無いンだけどォ!」グイグイ

「腕の1・2本、怯える子羊に貸してくれたって良いかも!」

「ラム肉食らう分際で子羊だァ!?」ゲシゲシ

「否定はしないかもっ」キリッ

「ドヤ顔すンな!」
329 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/17(木) 23:08:12.64 ID:ZBMPd5mAO



頭を掴んで押し戻そうとするのだが、どこにこんな力を隠していやがったと思うほどぐいぐいと抵抗を見せてくる。


「また降ったぁぁ! あのね1パーツ、いやほんと先っぽだけだから、ね、良いよね!?」

「指だけ持たれンのも不便だバカ!」

「いつまでも閉鎖的な、ガラパゴス的では居れないかも! いんたーなしょなるに適応して行くべきだよあくせられーた!」

「人の意見総無視のオマエに言われたくねェェ!」


と、醜い死闘を繰り広げた結果。



「……うわー、雨まで降って来てるんだよ……」

「……充分平気でしょォに」


分かったから利き手は止めてくれと譲歩した一方通行が、左腕を丸ごと貸し出すことで事態は収束した。


何故自分でもあんなに拒否していたのかは分からないが、多分前後不覚のインデックスに腕を噛まれるのでは無いかという恐怖から起きたのだろうと推量している。

漂う甘い匂いや、ぬるい体温や、色々と柔らかい胴体に動揺したわけではなかった、多分。

330 :終わり :2011/03/17(木) 23:14:32.64 ID:ZBMPd5mAO
いわゆるちょいウザな子が大好きなので、13巻や22巻を筆頭とした聖女インデックスのファンの皆さんにごめんなさい。自分もインさんの出来る女モードの挿し絵にお祈りしたいぐらい好きです

あとパチパチするわたあめの名前が思い出せません、あのグレープ味は至高だと思ってます
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/03/17(木) 23:15:52.89 ID:cLwwfx3AO
わたパチ乙
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 23:18:37.97 ID:Hj1cmHUj0

わたパチか、百均のよりどり4個百円で見かけると買いたくなるな
迷った末、結局いつもラムネを選ぶけど
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/17(木) 23:20:30.46 ID:o66+kzmJo
わたパチなついな乙
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/03/17(木) 23:23:12.32 ID:bwzRqLuAO
わたパチは鼻に入ると痛い

豆知識な
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 23:33:24.44 ID:sJD7LZADO
食べすぎると血がでる
ソースは俺
336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/03/17(木) 23:40:47.00 ID:lesHYFIi0
この腹ペコシスターお持ち帰りしたいんですけど駄目ですかね一通さん
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/03/18(金) 01:13:40.37 ID:k4N5uLhq0
先に不良神父とウニ頭の人たちに訊くべきかと思う。
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/18(金) 01:23:49.48 ID:re3UkOnPo
堕天使エロメイドを忘れるな
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/03/18(金) 01:28:14.64 ID:v5qtq62+0
一通さんだけでもアレなのにハードル高すぎやしませんか
そういや黄金練成の人もいるし
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/03/18(金) 23:51:02.31 ID:ax8WMHdAO
ロシア編考えるに風斬も入れて良いような
ってなると>>336はステイル・ねーちん・風斬・アウレオルス・上条さん・一方さんを倒せば良いんだね!頑張れ!!
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/19(土) 00:04:22.78 ID:G7hVTATTo
>>340

一般人でも上条倒せるやつはいるだろうけど
それ以外は無理だww
イノケンさんすら倒せない
342 : ◆ObanGQEW7M :2011/03/21(月) 19:59:05.00 ID:GU0mp3MAO
そうだ、わたパチでしたね!! いやあ胸のつっかえが取れました。 本当にありがとうございます! それにしても知名度高いんですね、びっくりした

それと10時から投下始めます

>>336
実は一方さんだけじゃなく、もうちょい増える予定ですのでインデックス手に入れるなら今のうちです
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/03/21(月) 20:07:03.62 ID:VfY53yTl0
ブラウンサンダーにはだれもつっこまねえのな
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/03/21(月) 21:10:32.00 ID:8GbRlnaf0
>>342
なんかもう無理っぽいんで一通さん持って帰りますね
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/21(月) 21:12:49.90 ID:5Qa+SKN9o
>>344
打ち止めと番外個体と木原君か・・・インデックスに比べたら容易いミッションだな
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/03/21(月) 21:16:02.52 ID:LbSrdiXvo
長点上機に在学中といえば、布束たんだが……。
それとも所属不明連中が出てくるんかねぇ。
347 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/21(月) 22:02:37.03 ID:GU0mp3MAO



「大まかに数学っつっても、オマエどこまで出来ンだよ」

「……四則計算ぐらい、かも」

「それは算数って言うンです」


もしかしたら10歳程度の打ち止めより、理数系においては遅れているかもしれないと危惧してはいたのだが、どうやら杞憂では無かったらしい。


「大丈夫なのかな」


珍しいことに気弱な声を出すものだから、少しだけ笑ってしまった。

しかし、いつもなら犬歯を見せる→噛みつきのフルコースが待っているのに今回に限っては口をへの字に曲げているだけだった。

「科学文明に関係なくて、学校にも通ったことねェ割には上出来じゃねェの」

「そうかなあ……?」

「それにその能力ある時点で、限りねェアドバンテージなンだよ」

「数学は暗記する教科じゃない、ってとうまは言ってたけど」

一瞬真実を伝えようか迷い

「……ま、そいつは文系なンだろ」

隣の少女を養っている、どうやら気骨ある男を馬鹿とは罵っちゃいけないと何とか自制をかけた。
348 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/21(月) 22:06:34.07 ID:GU0mp3MAO



「試してやるよ」

一回言葉を切り、二の句を繋げる。


「67×83=5561」

「ごせんごひゃくろくじゅ……」

「次からは答えろよ? 8×7」

「56」

「32−18」

「……14」

「99+54」

「……ひゃく、ごじゅう……さん?」

「67×2」

「……ひゃくさんじゅう、よん」

「84÷4」

「……21」

「0.5+0.75」

「れいてん…………、違う、いってんにぃご」


隣を見ると、ぐるぐると目を回して処理に追われているのがよく分かる。

しかし、予想していたよりずっと良い。
これで計算に慣れていないのだから、記憶能力一辺倒ではなく、頭の回転は悪くないのだろう。



「最後、81×67」

「…………ごせん、よんひゃく、……にじゅうなな」


彼の予想通りの答えが帰ってきた。


隣にも真意が分かったのか、納得してもらえたようだ。
349 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/21(月) 22:14:05.79 ID:GU0mp3MAO



「これで分かっただろ」

「うん」


雨音が少しずつ聞こえてくる。


「多分、私は式とその結果を覚えちゃえば良いんだね」

「あァ。 効率を考えるとなァ」


簡単な加法や乗法だったら、わざわざ計算などしなくても正しく教育を受けた大抵の人間なら答えが即座に出せる。

英才教育を受けてきたエリートと、たった2週間ぽっちの彼女。

両者が互角とは言わないが、一歩及ばないぐらいのラインに到達するにはそれこそ大きすぎる強みを生かす必要がある。


「精神的にキツいがこれで良いか?」

「あくせられーたが協力してくれるなら、私頑張るんだよ!」

「……」


ドッシャーン!


「ひぃっ!」

「……いまいち締まらねェ奴だな」


あのままだったら、ほんのちょっとだけ感動したかもしれないと何となく思った。
350 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/21(月) 22:20:50.52 ID:GU0mp3MAO



「連続してる映像ってそのまま記憶してンだよな」

「うん。 1コマごとスクリーンショットを保存って言うのは出来ないかも」


「その必要はねェ」

そう言うと、自分の一つ左の席――現在インデックスが座っている、その正面の切り込みに指をかけ反対側へ起こす。

すると反りたった木部の裏にはモニターが、その下にはキーボードが登場した。


「え? この切り込みはデザインじゃ無かったの?」

「この都市の大抵の図書館にはこォやって収納されてる、ちょっと動け」

無機質なモニターの正面に向かい、数回キーを叩く。

「画面が変わった!?」


隣の彼女はパソコンを使った経験が無いのか、キーで操作することにやたらと興味を持っているようだ。

いくらか短くなったとは言え、覗きこまれると、敏感な肌に髪が触れる。


「鬱陶しいンですけど」

「なんかこれピアノみたいだね!」

「あァ、弾けンの?」

「多分無理かも!」

何故自信満々なのかは分からない。

それよりも、訴えをさり気なくスルーされたので、勝手に髪の毛をはらった。

毛先がまたもやくすぐったい。
351 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/21(月) 22:23:28.25 ID:GU0mp3MAO



「学習用教材っつゥにはワケの分からねェモンが多いよなァ……。 円周率を延々計算するのなンて誰が見ンだよ」


ボヤきつつ探すのは、かつての彼自身も視聴したソフト。

実は一方通行専用のオーダーメイドだったのだがどうやらいつの間にかリニューアルしていたらしい。


「各国版挨拶の魔法……、宇宙人を呑み会に誘おう……、木星の歩き方……そもそもあそこガスだらけだろォ。


……あァ、あった」

「えっと、あくせられーたは何をしてるのかな?」

「オマエが勉強するためのソフトを探してた、つゥかプラグ――ここか」


ブスリと音を立て、付属品の圧縮されていたヘッドホンとパソコンとを接続する。

352 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/21(月) 22:25:42.52 ID:GU0mp3MAO



「今考えると、俺でもなくて暴食シスター専用のソフトかもなァ」

「私? あれ、なんだか画面が真っ暗なんだよ、カナミンでも見るの? スペシャル放映版かな!?」

「これはもともと暗記力と演算能力向上の為に作られた教育プログラムだった、ただ第一版は俺が怒って壊したから改訂版かもしれねェ」

モニターをコンコンと叩くと、かつての拷問にも等しい視聴会が思い出される。

うすぐらい部屋に1人座り、黒が登場し消滅していく様をじっと見つめた、当時の夏。


まだ嫌がらせで見せられた“年上の研究員への礼儀作法”というビデオの方がマシだと思わせるほどにそれが嫌で嫌で仕方が無かったので、最終的に研究員に扇がせながら見たような気がする。
353 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/21(月) 22:30:16.27 ID:GU0mp3MAO



「あの扇持ってた男が木原くンだっけ……、まァ良いわ」


どうも記憶が前後していて分からない。


「このスライドショーを再生すると、狂ったよォに簡易な計算式が流れる。 それを見てろ。 あァ、勿論アニメキャラは登場しねェ、レンタルビデオ店にでも行くンだな」ビシッ

「了解したんだよ。 だけど残念だったね」

「あァ?」


猫型ロボットが登場するアニメの金持ちの坊ちゃん並みにドヤ顔をする女だと改めて思う。

「カナミン3期までは既にあおがみの手によってぶるーれいでぃすくに全部保存してあるんだよ。 4期は今集めてる最中。 スペシャル版だけ見れなかったから買おうか検討中なんだよ」


「――オマエの情熱はよく分かった」
354 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/21(月) 22:33:02.64 ID:GU0mp3MAO



「あ! あくせられーたには、2期中ボスの燕尾服眼帯様のコスプレが似合うかも!

なーんかごてごてしてるところとか、独特の喋り方とか、リアリスト気取って案外メルヘンだったりとか」

「俺を中二病扱いしてンじゃねェよ、特にメルヘンはほんと止めろ。 それは俺に使う称号じゃねェ」


ぱちり、と瞬き2つ。

「中二病? 何なのかなそれ」

「……」


込み上げる衝動には逆らわない。


手にしていた黒いヘッドホンをインデックスの丸く小さい頭に被せた。
355 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/21(月) 22:35:03.11 ID:GU0mp3MAO



「ん? 耳になんかくっついてる……?」

「音が出る帽子だとでも思え……、クソ、墓穴掘った……」

幸いにして言葉尻は聞こえなかったのか、インデックスは仕切りに耳へ手を持っていく。

「雨音も聞こえないし、よし、じゃあ頑張って見るんだよ!」

「ドライアイになんねェよォに、ちゃンと瞬きしろよォ」


そう忠告を付け加えて、一方通行はエンターキーを押した。



インデックスの脳内に、計算式が雪崩れ込む。
356 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/21(月) 22:37:51.25 ID:GU0mp3MAO





***


2時間後。



「…………、737×865=637505」

「やっぱりSAN値削れるよな……、まさか改訂版のBGMが組曲火星の五拍子パートで来るとは思わなかったぜェ……木原くンよォ」


机に突っ伏すインデックスの目は虚ろだ、こうなれば早急に食べ物を与えるしか無いのだが外は暴風雨吹き荒ぶ状況である。


「だだだ、だん、だん、だだ、だん。 だだだ、だん、だん、だだ、だん」

「あのティンパニーは少し忘れろォ!」


例の故人を恨むとともに、もうあのソフトを使わせるものかと心に決める。

そして、彼女が合格すれば先輩後輩の立場になることを伝える、ということもすっかり失念していた。
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/03/21(月) 22:42:29.23 ID:c7lgYDtNo
あれ聞くと何故かクッパ城思い出す
358 :終わり :2011/03/21(月) 22:44:27.65 ID:GU0mp3MAO
投下終わりですずめばち

なんとなく黒い雷さんは過大評価されすぎだと思うんですよね、小枝派としては。

それとインデックスの見たソフトというのはマトリックスに出て来た緑色のピロピロが黒字でばーっと流れてるようなものです。

>>346
しのぶちゃん出したいんですがインデックスと3つ違うんで在校生としてはあれですよねー……ギョロ目可愛い
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/21(月) 22:46:03.89 ID:5Qa+SKN9o
長点所属は布束さんと削板だっけ

駄菓子なら三つの内一つがすっぱい奴が好き
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/21(月) 22:51:16.14 ID:nOIX+OpDO

小ネタ多過ぎわろた
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2011/03/21(月) 23:13:16.45 ID:Jr909Q0I0
ホルストか
しかも火星とか
大好きです天王星海王星の次くらいに
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) :2011/03/21(月) 23:14:20.96 ID:tnwqs67Ho
おつ
燕尾服眼帯は確かに中二だ・・・・・・、つーかインさんまどかとか見てそう
木原くんの嫌がらせはんぱねぇwwwwwwwwww
http://www.youtube.com/watch?v=luy4dL6SyhQ
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2011/03/21(月) 23:19:55.92 ID:z7MIe3Ki0
>"年上の研究員への礼儀作法"
魔人探偵脳噛ネウロで笛吹が見させられた「DVD正しい礼儀作法大全集」の
 パロディーかな?
 
駄菓子はヤッターメンが至高
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/03/21(月) 23:23:47.50 ID:VfY53yTl0
タラタラしてんじゃねーよ
酢ダコさん太郎
ビッグカツ
365 : ◆ObanGQEW7M [sage]:2011/03/22(火) 01:05:58.46 ID:cnxagYEAO
>>362
わざわざありがとうございます、とか書いといて実は火星と木星しか知らなくてすみません、俄かです。 それにしても序盤心がざわつくというか、ダースベイダーのテーマみたいというか

>>363
バレましたか。 インデックスにしろ弥子にしろ大食いキャラは可愛くて好きです
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 02:22:12.20 ID:vtwN2/mu0
>>1乙通行

木原くンは犠牲になったのだ…ムカつくガキの犠牲にな

まあ布束さんはOG枠でどうにでもなry

駄菓子はクジ付いてるのがジャスティス。味じゃない。
三角くじチョコ、うんちくんグミ、糸引き飴 etc
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/03/23(水) 02:41:03.85 ID:WYuqIqLeo
出口のない迷路に絶望したフェリックスガム
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/23(水) 18:54:36.43 ID:Wlr4mIebo
昔は小学校の帰りに駄菓子屋で10円ガムを買ったもんだ
後は謎の青りんご味の餅とか
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/26(土) 11:00:23.36 ID:eTy4hMrUo
まだかなー
370 : ◆ObanGQEW7M :2011/03/26(土) 16:33:31.99 ID:rYiDipoAO
今晩8時ぐらいから投下します、お待たせしてすみません

それと、育った環境には駄菓子屋が無く、てっきり日本中そうかと思っていたんですが違うんですね!
せっかくふって頂いたのに反応出来なくて申し訳なかったです
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/26(土) 16:34:29.60 ID:s5tQtLEXo
astk
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/03/26(土) 17:13:06.07 ID:BA6GahiW0
今朝雪降ったけど全裸待機
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/26(土) 19:05:29.89 ID:0GH6UpaDO
このインデックスはヘッドホンでカールマイヤー聞かせたくなる
完全記憶な
374 : ◆ObanGQEW7M :2011/03/26(土) 20:02:06.89 ID:rYiDipoAO
時間の関係でながら投下になります、ごめんなさい
375 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/26(土) 20:04:27.50 ID:rYiDipoAO




「――…、」

「え」


ふと隣から聞こえた言葉に、インデックス瞠目せざるを得なかった。


「そォだろ」


何をこいつは驚いているのか、そうでも言いたげな目つきをしているのだが、生憎インデックスの記憶には無い。

彼女が記憶していない=言っていない、ということなのだが、忘れているのか気にしないらしい。



「俺はオマエの1個上の長点上機生じゃねェか」


「――あ――」

衝撃が強すぎて口から漏れるのはただの雑音。

それを漏らさぬように、なんの効果も無いことは象徴で口元に手をやる。
それにしても震えが酷い、揺さぶられたのは脳だけじゃなくて体中のあちこちに及ぶ。
376 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/26(土) 20:07:39.58 ID:rYiDipoAO



「なンか、すげェ足震えてンだけど」

一方通行の声が若干優しい物になったことすらも気づかない

震えが酷いのだ。
それも足はおろか、天井の染みを数えているのに時折指が視界に侵攻してくる程に。

「せ、せんぱい……? あなたが……?」

自身に言い聞かせるようなそんな意味を込めていたのだが、カツサンドを貪る隣の男はご丁寧に回答を寄越してくるのだ。


「そォだ。 何を驚いてンのか知らねェが、順当にいったら俺はオマエのセンパイ」

「…………」


彼女の脳裏によぎるのは、いつかの少年の言葉。
377 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/26(土) 20:09:45.11 ID:rYiDipoAO



「…………」

「オマエに言って無かったかァ?」

反応を知りたくて隣に座るインデックスをちら見するのだが、相変わらず小さく震えたままだった。


「…………」

「…………なァ」

「…………」

「……何か言えよォ……」


お喋り大好きなこの女が押し黙ることはめったに無い。
そして、一方通行の会話スキルは高くない。


気まずい沈黙が流れ、


「……機械ばっかの学校なんだよね、あなた曰わく長点上機って」


また、それを破ったのも、やはりというかインデックスだった。
378 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/26(土) 20:11:47.41 ID:rYiDipoAO



「……あァ?」

「新天地に友達が居るって言う安心感は凄くあるんだよ、しかもあくせられーたとはここでお別れじゃないんだって……」

「……おォ」


どういう反応を取れば良いのだろうか、素直に喜ぶのは柄ではないし、かと言ってつっけんどんな対応もそれはそれで本意では無い。



「だけど――!」


ダン!

インデックスはパイプ椅子から勢い良く立ち上がり、同じくパイプを使用した机を遠慮なしに叩いた。

蒼白で焦燥、そして苦悶が浮かぶ。




「――私は機械オンチなんだよ!!」


「……はァ?」

何を言いたいのかよく分からない。
379 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/26(土) 20:13:41.16 ID:rYiDipoAO



「え……、何かと思えばそンなこと」

「全然些末な問題じゃないんだよ!!!」ドンドン

「分かった分かった、話は聞いてやるからドンドンうっせェから止めろ」


大人しくなった彼女の陳情を聞いてみる。


「あくせられーたは、自分の学校にはとってもいっぱい、しかも信じられないくらい高価で貴重な機械が山ほどあるって言ってたでしょ……? それこそ臓器売らないと弁償出来ないくらいの……。


……私も実際とうまのことは言えなくて、家電は何でも壊しちゃうから……、最近はケイタイデンワーも……。 もし私が触って壊しちゃったら……肝臓とか腎臓とか無くなっちゃうのかな……」ウルッ


「……何か……ごめン……」


涙ぐむ理由は、殆ど彼のせいだった。
380 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/26(土) 20:18:10.45 ID:rYiDipoAO



しかも、学校に行けないはずだった彼女へのせめてもの慰めのつもりで、恐ろしいところだと刷り込むことで尽きない憧れを少しでも軽減してやろうという善意の嘘が半分だからたちが悪い。


見事にブーメランして直撃だ。

彼女の認識の長点上機は、ヤの付く自由業と遜色ない組織らしい。


「ま、まァ高いことは高いが、オマエとは関係の無い普通科の奴らのための機材だろ。 能力開発に使うよォな」


らしくないフォローも上手くいったと思ったのだが、相変わらず涙は溜まったままだった。
よく見ると下睫毛が濡れて皮膚に張り付いている。


「あとだな――」

何でこんなに焦って、しかも饒舌にペラペラ喋っているのか。

悪天候と照明の接続不備のせいで妙に薄暗い部屋を出たかったのが一番なのだろう、何やら肌寒さも感じていたのだし。
381 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/26(土) 20:22:50.96 ID:rYiDipoAO




「保険に入ってるだろォし、常識的に考えて壊れにくいよォにはなってるだろ。

あとよォ、そもそもあれは機械=生徒っつゥブラックユーモア的観点からっつゥのか。 あァ、堅物ばっかりのクソインテリ共と机並べて楽しくお勉強ですかァ? みたいな。

だからオマエは多分大丈夫だ、何なら俺の金を貸してやっても良いンだしよォ。


だから、その、泣き止め」




「……泣いて無いんだよ」

と言いつつも鞄の中からハンカチを取り出し目元を拭う。


「――ごめんね、最近の私は情緒不安定なのかも」


多分いきなりのスパルタ教育が全ての元凶だと思うのだが、追及されないので黙っておくことにする。

「元からそォだろ」

「何だか分からないけど不安感というかイライラというか、妙に火照ったり」

「ただの更年期じゃねェの」

「案外そうかも……」

くすん、と鼻を啜る音が聞こえた。
382 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/26(土) 20:25:01.23 ID:rYiDipoAO



――とは言え、あの学校が完全に白かと言えばそんなことは無い。

臓器売買は流石に斜め上すぎるが、人体実験の類――例えば脳を8等分に切り分けられ解析されることなどだったら容易に想像がつく。

何せ、殺人で指名手配されたことのある一方通行を書類上とは言え在籍させていたのだ。

理事会に繋がる卒業生を何人も輩出しているし、各機関にグレーゾーンな実験をさせているらしいとの風説を聞いたこともある。


もしも、抵抗力を持たない、それでいて稀有な才能を持つ彼女が、強制的な実験に巻き込まれたらなんて心配し過ぎでは無いのだろう。


今のこの、英国から学園都市に全権委任された状態では充分にそれだって考えられるのだ。


「ねえ、あくせられーた」


先ほどまでの妙な胸騒ぎは、純粋に笑う女の顔を今日に限って見ていなかったからだろうかと彼は思い巡らせた。
383 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/26(土) 20:27:41.77 ID:rYiDipoAO



「合格してからも仲良くしてね」


にこやかな、いつもの邪気の無い笑みがそこにはあった。



「……そォ言うのは両方の意味でフラグじゃねェの」

「え? フラグ?」

「……まァ、俺が居れば大丈夫だと思うがなァ」

「んん?」



受験も、学校生活も。

失敗しないように、他でもない自分が見ていればきっと。
384 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/26(土) 20:29:32.42 ID:rYiDipoAO



「早く食っちまえよ」

「あなたにそんなこと言われるなんて……」

「暴食の名折れじゃねェのォ?」

「誇ってなんかないもん!」

「帰ったら、次は消音であのプログラムな」

「ええー……、それもそれで辛いような……」


市販のパンを咀嚼しながらブツブツ呟くインデックス。

きっと彼女の同居人も困惑していたのだろうと推測しながら眼を閉じる。



「その次は何にしよォか――」


横から聞こえるソプラノを聞きながらゆっくりと背中を椅子に預けた。
385 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/26(土) 20:34:46.18 ID:rYiDipoAO




***


「それにしても、とうまに聞いたより案外夏休みなんて暇なものかも。 他のみんなには悪いけど、私とあくせられーたってお仕事の量は少ないからね」


それはあの男が色んな場所に顔を出す結果であって、全員が全員、あんな刺激的な夏休みを送っていたら末恐ろしいことだと一方通行は密かに思う。


「あいつらに喋ンなよ。 つゥか俺は夏休み開けるとそれなりにあるけど」

「そうなの? どうして?」

「電気料金めちゃくちゃ増えるンだってよ、何でも補習でクーラーとパソコン使うからだそォだ」

「なるほどー。 それはご苦労様なんだよ」

「棒読みすぎる」

「今日も全校集まっての会議だよね? お疲れ様だなあと思ったんだよ」


もし彼女の親友に言えば、それはそれは恐ろしい勢いで罵倒されるのだが、幸いにもここには居ないはずだった。
386 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/26(土) 20:38:25.15 ID:rYiDipoAO



「他人事のよォなセリフ吐いてるオマエにはねェの?」

「うーん。 いつも通りの内容に大覇星祭と一端覧祭のパンフレット制作に呼ばれるくらいかも?」

「どこまでも楽な業務ですねェ」

「それは自覚してるんだよ」


ずごー

「終わっちゃった」

「腹壊すぞ」

「それは嫌なんだよ……!」


氷まで腹に納めようと計画したらしい。

机に置いた透明な蓋を取り、捻りながら元あったようにはめた。


ぷらんぷらん

そして、水滴の付いた紙の容器を親指と人差し指で揺らし、店の外を見た。
387 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/26(土) 20:45:01.80 ID:rYiDipoAO



「それにしても良いお天気なんだよ」

「紫外線強そォだし、こっから動きたくねェな」

「全面同意だけど、ここで腐ってるのもどうかと思うかも」

「皮膚焼けンだろォよ」

「あなたもちょっとは黒くなるべきかも!」

「生憎間に合ってるンで」

「あくせられーた、私より白いんじゃないかなあ?」

「良い勝負じゃねェの」


半袖なのでなかなか外に出るつもりにはなれない、皮膚ガンを考えると面倒だからだ。


しかし、やはり目の前の銀髪はそれでは納得しないようだ。

ジトっとした視線を一身に浴びた一方通行は頭を掻いた。
388 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/26(土) 20:47:42.90 ID:rYiDipoAO



「行きたいとこあンの?」

唸るインデックスの長い長い髪の毛が揺れる。

前回不評だったとは言え、今度は伸ばしすぎたなと軽く反省をした。

見ているだけで暑さが伝わってくるのだから。


「遊園地」

「今からかよ」

「ラーメンフェスティバル」

「食ったばっかじゃねェか」

「カナミン2周目」

「1人で行け」

「……虫取り」

「早朝、しかも俺じゃ無い奴と行け」


提案に合わせて揺れていた紙コップの動きが止まる。
389 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/26(土) 20:58:33.24 ID:rYiDipoAO



「じゃあ、普通に買い物が良いかも」


彼女の中ではそれで決定なのか、近くにあったダストボックスへ容器を全て入れ、鞄を取った。


「あの女と行くンじゃねェの?」

「あくせられーたも、私の服選んでくれるでしょ?」

「……」

「ねっ!」


見上げると、結果をもう見透かしたような笑顔。


「……行きゃァ良いンだろ」

「やったー!!」


そしてほんの少しだけ冷たい両手が、一方通行の右手を引く。



「セブンスミストでお化け屋敷やってるってとうまが言ってたんだよ!」

「多分涼しいだろォし、そこで良い」


店員の見送る声を背に受け、ファストフード店を後にする。



隣の少女の水玉の日傘がやけに魅力的に見える、そんな夏の午後。
390 :終わり [saga]:2011/03/26(土) 21:03:25.54 ID:rYiDipoAO
新約読めてない時点で言うのもアレですが、この話は22巻後の夏の暑さにも冬の寒さにも負けそうなもやしリア充どものIFなので矛盾には目を瞑っていただけると幸いです。

いんでっくすのしんゆうってだれなんでしょうね、こうごきたいです!(棒読み)

お付き合い頂きありがとうございました。
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) :2011/03/26(土) 21:19:51.25 ID:BA6GahiW0
今回もニヤニヤやべぇ
なんだかんだで守る気まんまんの一方さんがツンデレすぎる
あと、長点インさんの太股ぺろぺろしたいんで学園都市行ってきます
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/26(土) 21:22:49.90 ID:ziTMWiqZo
おつおつ
なにこれ顔がやばい
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/26(土) 22:49:56.03 ID:X6z3xmNDO
乙乙!
三下くンの反応が気になるところだ
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/03/27(日) 00:04:51.96 ID:4839oylGo
ここのインデックスかわいすぎだよ……
真剣なお馬鹿っていいなあ
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/27(日) 00:21:53.46 ID:uxLpd7VK0
乙!
一方さんは紫外線は常時反射してるぞ。
まぁこまけぇこたぁ(ry
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/27(日) 00:47:31.51 ID:CSIel917o
能力制限無いのか
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/03/27(日) 08:36:59.35 ID:xMXtfrqb0
>>396
公式でも簡単な反射はチョーカーなしでもできてるみたい。
398 : ◆ObanGQEW7M :2011/03/27(日) 20:02:13.80 ID:kWQ4I2GAO
今晩9時過ぎから投下しますね

>>391
自転砲

>>395
詳しくはまた後ほど!
399 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/27(日) 21:09:47.02 ID:kWQ4I2GAO



閉館時間にもまだ余裕はあるがどうにも天候が良くない、と言うことでいつもより早く図書館を後にした。


「……うわぁ」

「……すげェな」



ザーザー

轟音がひっきりなしに耳を打つ。


「……雨、酷いんだよ」


軒端に居るのに水滴を被ってしまう。

まるでバケツをひっくり返したかのようなそんな雨が自動ドアを抜けたばかりの2人を出迎えた。
400 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/27(日) 21:12:28.14 ID:kWQ4I2GAO



気温のせいかひと粒ひと粒が大きい。

そうして目で辿るうちに、インデックスの呻きが聞こえた。


「どうしたァ?」

雨の音が煩くて、必然的に声を張らないと会話が成り立たない。


「傘、忘れたんだよ!!」

「馬鹿!」

「だって! 朝は急いでたんだよ!!」

確かに全力疾走で館内に入って来ていたような気がする、そして傘を持ってきた判断を自画自賛したはずだった。

それにしても、こんなに雨が強くなるとは微塵にも思わなかった。


このままでは大変だろうと鞄に入っていた折りたたみ傘を渡そうとした、のだが。
401 : ◆ObanGQEW7M :2011/03/27(日) 21:15:01.57 ID:kWQ4I2GAO


ゴォォオオ!!


「きゃぁぁあああ!!」

甲高い悲鳴と共に、インデックスは所詮コスプレ用で薄い生地のスカートを必死になって抑える。

しかしどんなに彼女が奮闘したところで、後ろから風は入り込む。
そして抑える手と手の間をすり抜け、スカートを膨らませていく。


やはり、躍起になっても大自然には勝てずに、一番強い風が吹いた時には膝上25センチほどまで露わになった。


そして、その様を呆然と一方通行は見てしまっていた。
402 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/27(日) 21:18:26.50 ID:kWQ4I2GAO



「……み、見た……?」

「……」

引きつったように笑う彼女の顔を凝視するなど、後ろめたいことがある一方通行には不可能だった

「……見たんだ……ね……!」フルフル


――まずい、これは噛みつかれると今までの経験則は告げる。
いや、逆にガブリとやられてそれで終わりの方が早く終わるのではないか。


一方通行は迫り来る痛みを想像し、目を閉じた。




ばしゃっ、ばしゃっ!



ばっしゃん!

403 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/27(日) 21:20:58.53 ID:kWQ4I2GAO





(……ン?)


数秒待っても噛まれる気配が無い。

そして明らかに水音だけじゃない、何かが跳ねる音がする。


意味の分からなさに目を開けるのと、その悶絶する声を聞いたのはほぼ同時だった。

「うわぁぁぁああああ!!」

「……、っ、おい!?」


目を開けた一方通行は驚愕せざるを得ない。

何を思ったのか、インデックスは曇天の下で土砂降りに身体を晒していたのだ。


もちろん、雨の勢いは少しでも弱くなってなどいないのに、だ。
404 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/27(日) 21:25:25.11 ID:kWQ4I2GAO



「オマエ! 風邪ひきてェのかよ!!」


みるみる濡れるのは彼女の衣服と髪。


慌てて手に持った傘を開き、頭上で翳して土砂降りの中を突き進んだ。


かつん、かつん!

やはり元となるコンパスが違う。

杖を差しても簡単に追いつく小さな背中。

それは勢いが思っていたより激しすぎて、何やら戸惑っている風にも一方通行には見えた。



「つっかまえたァァ……!!」


それはさながら、夕方鬼ごっこをする子供が背後から唐突に聞いたら失神するようなおぞましい声色だった。
405 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/27(日) 21:29:23.82 ID:kWQ4I2GAO



「あ、あく」

「なァに逃げちゃってくれてンですかァァ!?」

「ひゃう!」


両手が塞がっている関係上、傘を持つ左手で首に手を回すしか彼女を止める方法が無い。

そしてそれにより急に目の前に現れた手と、真後ろから聞こえる怒号にインデックスの体は大きく震えた。


「オマエ、どォいう了見してやがる!」

「恥ずかしかったのと……、そのぅ、傘を持って無かったから……」

「だからって風邪ひくよォな真似すンじゃねェよ!」

「ごめんなさいぃ……」


憤慨する一方通行は、うなだれた肩に目を落とす。

黒いセーラー服が雨のせいでぺたりと張り付き、細い体のラインがよりいっそう分かる。

濡れた銀髪も首や耳にかかり、風呂上がりを思わせる。

新鮮で妙に艶めかしい光景。


そして、そのままうなじにまで目をやりかけ――。
406 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/27(日) 21:34:45.75 ID:kWQ4I2GAO



「首が……っ、苦しいかも……」

「……っ、悪ィ」

「いや、こちらこそごめんなんだよ……」
インデックスの気道を塞いでいたことに気づき、慌てて手を解放すた。


先ほどの出来事に死ぬほど動揺させられ、その結果首を締めてしまった一方通行は俯き思い巡らせる。


(粗製品にも程があンだろォよ……、オイオイ、あンだけで透けるンじゃねェよ……。 一体、俺にどォしろと……)


望んでいない事だとは言え、後ろめたさ最高潮な一方通行は何とかインデックスを視界に入れないように努力する。

左手で傘を掲げ、彼女の横に立った。
407 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/27(日) 21:38:51.24 ID:kWQ4I2GAO



「……お邪魔しても良いかな?」

「どォぞお好きに……」


杖を滑らさないように、そして靴を濡らさないため、という立派な大義名分があることに感謝しつつ下を向いて歩く。



――家族である同居人を抜きにするならばこういった桃色ハプニングを一方通行が迎えたことなどは無い。


かつての残虐なイベントは、あれはどちらかと言うと赤黒くて生臭いものであり、こうやってアスファルトの濡れる匂いの中、銀髪英国少女に傘を貸すなどという機会は一生に一度も訪れるかどうか。

だから対処に困る。

妙に雰囲気の違う女と、土砂降りのなか何を話せば良いのかなんてマニュアルにあっただろうかと本気で思い出そうと試みる一方通行が居る。



要するにキャパシティを超えたのだ。

だから、この対処の仕方が果たして適切だったのかは分からなかった。
408 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/27(日) 21:43:23.36 ID:kWQ4I2GAO



「……背ェ、伸びたな」

「……そうなんだよ、よく気づいたね」


曲げてある肘に、幾度も柔らかい二の腕が当たりその度に悟られないように離す。

すると、インデックスの左肩が濡れる。

だから近づけるというルーティンを繰り返すのため、ありきたりなことしか言えないのだった。


「この前病院で図ったら150センチにはなってたんだよ。 だから今はどうなのかなあ」

「さァ、俺の知るとこじゃねェ」

「傘、交代するんだよ」

「俺の頭に当たりそォなンで結構」

「……そっか」


前を向く彼女の顔を見やる。

やけに睫毛が立体的で、印象的だ。
409 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/27(日) 21:48:18.63 ID:kWQ4I2GAO



「……さっきはタイツのおかげで何にも見えてねェから」

「じゃあ、無駄に濡れちゃったのかも……」

「……さァな」

「……うん」


何となくいつもの会話より続かないのは、ほぼ0センチという距離のせいなのか、はたまた轟音のせいかは定かでは無い。


「これって」

「何だよ」


「日本文化で、俗に――」


続きは突風と重なった。


「……さァな」


きっとそれは空耳だったのだと言い訳をして曇天を拝む。


雲が晴れる様子は無い。
410 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/27(日) 21:51:23.48 ID:kWQ4I2GAO



***

「そう言えば」

日傘越しから見上げてくるインデックスの顔はほんのりと赤い。

「……何ですかァ」

「暑さとか、紫外線とか、ハンシャーって出来ないの?」

反射をジェスチャーしたいのか、インデックスは開いた左手を傘に垂直に当て、そして真下へと降ろす。


「……俺を舐めてンのかァ?」

「あ、出来るんだね」

「出来るに決まってンだろォ……、やべェ、マジ日焼け止め頑張れ……」



こんなとき男にしては長めな髪が鬱陶しくて仕方がない、いっそのこととんでもなく短くしてやろうかとも思わなくもない。



しかし、笑いすぎで入院するだろう3人ほどの知り合いが居るため、結局実行まで果たさず終わるのだが。
411 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/27(日) 21:54:37.64 ID:kWQ4I2GAO



「何でしないの?」


それを聞いたインデックスは、至極当然な質問をぶつけた。


「……別にオマエがしても良いっつゥなら、俺に有害な条件は全部反射するけどよォ……?」

「私?」


いつもは思考の隅にも置かない道端のジェラート屋が、どうも今の彼には魅力的に思えて仕方がない。

何やら額からもジワリと汗が滲む。


「ねえねえ、どうしてどうして?」

「うるせェな……」

「教えて、あくせられーた!」


まるで教育番組かアダルトビデオのタイトルにありそうなセリフだった。
412 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/27(日) 21:58:26.36 ID:kWQ4I2GAO




「ちったァ自分で考えてみろよっつゥの……」

「お願いなんだよっ!」

「……良いかァ、1回しか言わねェぞ。 俺は反射するだけで別に総量を減らしてなンかねェ」

「うんうん」


「その分、俺が反射した紫外線を浴びるのは近くの誰か……、大抵は肌が弱いオマエだろ……。 ……あァ、クソ暑ィ……」

もう分かったな、と虚ろな目をして杖をつく一方通行。

左手はパタパタとYシャツの襟を煽って風を送ることに必死だった。

「……ええと、あくせられーた」

「何だよ」

「感動のあまり抱きついたら怒っちゃうのかな?」

「……当たり前だろ」


これが夏の嫌なところだと一瞬だけ逡巡したインデックスは、右腕をそのまま上に上げた。
413 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/27(日) 22:05:11.40 ID:kWQ4I2GAO



「……あァ?」


前傾な一方通行が彼女の方を向く。

「今や驚異の飛躍により身長155センチ弱!な私なら、こうやって差しても許されるんだよね?」

「……たかが数センチじゃねェか」


言われてみると9月よりかは、確かに身長差が小さくなった気がしなくもない。


「いやだった?」

「もォちょい上にやれ」

「気に入ったんだね!」

「良いから早く歩けェ……」

「ふふん、あくせられーたも日傘ぱわーにひれ伏すが良いかも!」


何故この女は有り余るぐらいに元気なのか、鈍感で面倒くさがりで現在進行形で頭の回らない一方通行には分からない。


まあ、幸せそうなので良いかと溜め息をつき、空気が揺らぐ真夏を目的地までさまよい歩く。


残りはあと、2キロ弱。
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/27(日) 22:08:11.01 ID:QlGdL4fTo
あ……甘ェ
415 :終わり [saga]:2011/03/27(日) 22:10:33.86 ID:kWQ4I2GAO
一方さんに後ろから怒鳴りと共に首に手ぇ回されるって、ちょっとした死の恐怖ですね。
あと、きっと学園都市製の折りたたみ傘ってとっても優秀だと思いますが、そこは気にしたら負けでお願いします

>>395
もう土下座したところを蹴飛ばしていただいても構わないです、指摘していただいたのに絶妙なタイミングの悪さで本当にすみません!
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) :2011/03/27(日) 22:12:34.91 ID:YqbGbmeI0
GJ
甘酸っぱい…なにこれ死んでしまう…
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/27(日) 22:16:57.24 ID:c/7fjpqP0

何この恋愛青春ドラマ。甘いと言う段階まで行ってないのが堪らないww

きっとこの一方さんなら紫外線反射時にインデックスに向かわないように角度調整してくれるはず
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/27(日) 22:18:53.90 ID:bpRgkqk9o
インデックスエロすぎる、うなじぺろぺろしたいお!!
でもそうするには一方通行を倒さないといけないのか

フフフ・・・どうやら俺の本当の力を見せる時が来たようだな
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/27(日) 22:26:33.95 ID:/1lXaI9w0
乙なんだよ!
禁書「あくせられーたに抱きついた側だけ日焼けしないんだよ。次は左から抱きつくべきかも」
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/27(日) 23:55:51.86 ID:/fjCXCiIO
>>418
ベクトルそげぶ
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/28(月) 00:54:34.52 ID:28TD45Tjo
おかしいな
こんな青春時代無かったんだけど
おかしいな
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/28(月) 07:27:58.84 ID:yi2F+VfDo
誰も俺を止めるな……!一発でいいからの白もやしを……モヤシを殴らせろぉおおお
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/03/28(月) 09:58:20.80 ID:WYSUAaOAO
>>417
そンな事すると「あの二人の周りだけ余計暑苦しいンですけどォ。物理的に」って言われちまうだろォが
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/03/28(月) 10:49:46.82 ID:LDbdy8jwo
ちくしょぉぉぉお!!このモヤシ天才児共がぁぁあ!!
俺だって濡れるインさん見てぇよぉぉおお!!

425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/28(月) 13:39:31.04 ID:UjwUWsj4o
>>422
フッ、お前ばっかりにいい格好させるかよ
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/28(月) 23:17:14.00 ID:UBWWFoHu0
>>422
これ使えよ
つサイボーグ用腕(木原神拳入力済)×1000本
427 : ◆ObanGQEW7M :2011/03/29(火) 03:40:56.69 ID:1N7l4f9AO
木原神拳道場も春ってことで新入生募集しているそうです、希望者頑張れ!

予告はしていませんでしたが投下いきます。

>>418
あなたは一体……誰だと言うの……?
428 : ◆ObanGQEW7M :2011/03/29(火) 03:44:00.29 ID:1N7l4f9AO




――ぴちゃり。


「……っ」

粘性の高い液体が彼女の頬にかかる。



「――あァわりィ、間違えた」

ふるふると首を振りながら、インデックスは怯える瞳で一方通行を見上げる。


「……ねえ、あくせられーた」

「あァ?」

「――ほ、ほんとにやるの――?」


暗に引き返すなら今だ、と告げるものも一方通行は彼女の銀髪を撫でそして笑いながら告げる。



「オマエが言ったンだろ」

「そ、そうだけど……」


赤い瞳は歪な輝きをした。
429 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/29(火) 03:46:07.15 ID:1N7l4f9AO




「――俺のことをこンなにやる気にさせておいてよォ。 まだ痴れ言ほざくのかァ、シスター?」

「……」


沈黙は肯定のサイン。

一方通行は自身の指を彼女の頬に這わせた。



そして程なくして聞こえるのは、少女のくぐもった声。

「あっ……、う、くぅ」

「……声出してンじゃねェよ」

「だって……、こわい……!」

「大丈夫だっつゥの……、良いからちったァ力抜け」

「う、うん……」


ギュッと拳を固く握りしめる。

そして言わなくてはいけないことがあると、インデックスはか細い声で嘆願を試みた。
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/03/29(火) 03:46:51.56 ID:s3bV4lyMo
わっふるわっふる
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/29(火) 03:48:18.46 ID:TVoRE3/do
キタ・・・ァ
えっちぃ展開だと・・・!!
432 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/29(火) 03:49:30.52 ID:1N7l4f9AO




「く、くるなら……」

「あァ?」

「……焦らさないで、欲しいんだよ」


一回言葉を切り、その真っ赤な唇を一文字に引いた。


「――初めてだから、痛いのは一瞬が良いんだよ――」


彼は鼻でせせら笑う。

こんな経験、等しく自分も初体験だと言うのに何を言うのだろうか。


「ンなの、分かってる。 ――良いからオマエは零さないよォにすりゃ良い」


そしてそのまま、返事も聞かずに左手人差し指と中指で薄い皮膚を引っ張る。


「じゃァ、入れンぞ」

「――うん」


先端が彼女のそれに限りなく近づき――、







ここで、時間は10分ほど前へと遡る。
433 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/29(火) 03:51:22.91 ID:1N7l4f9AO



「……きゅうけい」

ガチャガチャとヘッドホンを降ろす音に気づき、一方通行は手持ちの本から視線をインデックスへと移した。

「いっつへびー……」

「目が死ンでる」

「しょうがないんだよ……、2列の式が昇降するのを見てるだけなんだもん……」



彼女の瞳に、最早潤いなんて存在しなかった。


そして、痛みが伴うというのにわざわざまばたきをするのが嫌だったので、右手親指と人差し指で目頭を抑えそっと瞼を閉じる。

しかし完全に真っ暗ではなく、中央にぼんやりとした白い円が浮いていた。

それはきっとモニターが光っていたからだと推測し、やはり鬱陶しいものなので彼女は天を仰ぐ。



瞼の血液が透けて、視界は紅一色。

どうしてだろうか、妙に落ち着いた。
434 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/29(火) 03:55:10.44 ID:1N7l4f9AO



CMで、パソコンやゲームや携帯のやりすぎによるドライアイに注意しろと喚起していたような。

インデックスはその映像から音から何までを克明に思い出した。
それを見て、同居人の少年が気を付けなきゃとも言っていたことまで鮮明に。



「……私は無関係だと思ってたかも」

「あァ?」

「ドライアイのこと。 だけどそうじゃないのかもね」


すると、目の前の科学の申し子は軽薄に笑うのであった。
435 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/29(火) 03:57:20.90 ID:1N7l4f9AO



「モニターを見続けた結果起こる、慢性的な瞳の乾燥がドライアイだろォ? オマエのは精々一時的なモンだ。 気にすることじゃねェ」

「そうなんだ……」

「あァ」

「うぅ、まだ目が痛いんだよ……」


呻くインデックスに向けて、一方通行は先ほど彼も使用したそれを真正面へと転がした。

からころという音に気づいた彼女は頭を下げる。

「貸すから使え」

「あ、これが目薬なんだね!」

「使ったことねェの?」

「うん!」

コロコロとキャップを外し、乳白色をした先端部をじぃっと眺めた。
436 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/29(火) 03:58:42.10 ID:1N7l4f9AO


「それを目に翳して、容器の腹を押せば出てくる」


インデックスは指示された通りの行動をとる。

「……あ」

しかし、いざ液体を入れるとなると芯から湧き上がってくる恐怖感のせいで躊躇してしまうのだった。



「……これは助力してもらわないと駄目かも」

「なンだァ? つまりは俺にやれとでも」

「あくせられーた」

両手を合わせ、ねぇお願い、と首を傾げるポーズに言いようにされるのはこれで何回目だろうかと内心溜め息をつき、やれやれと言わんばかりに立ち上がった。


そして杖を片手に一方通行は反対側へと回り込み、椅子の斜め後方に立つ。
437 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/29(火) 04:02:15.39 ID:1N7l4f9AO




「目薬」

「はい」


インデックスの手から受け取ったそれを右手に持ち、そして気付く。

「片手はしンどい」


杖を隣の椅子に立てかけ、電極のスイッチを入れる。


「――ンじゃァ、痛い目にあいたくなければ大人しくしてろ」

「あ、あれ? その格好いい能力でばびゅーんと入れてくれるんじゃ」

「ばァか、楽してどォすンだよ」

「うわあ……」



そうして舞台は先ほどへと戻るのである。
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/29(火) 04:03:47.25 ID:gB2+Jci40
目薬は落ちてくる水滴をじっと見つめながらやると失敗しないんだぜ
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/03/29(火) 04:05:35.28 ID:s3bV4lyMo
ばびゅーンしたら目から後頭部に突き抜けるじゃねェか
440 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/29(火) 04:09:35.25 ID:1N7l4f9AO



ぽたり

「〜〜っっ、目に……っ!」

「元来目薬はそォいうモンだろ」

「……それにしても!」

憤慨するインデックスの目は、かっと開いている。

「間髪入れずに2発目投下ァ」

チャンスとばかりに、一方通行は液体を落とし入れる。


「くぅぅぅうう……!」

「ハードっつゥか、刺激によって涙出すのが目的のやつだから痛ェだろォな」

「さ、さでぃすとぉ!」

「はン、感謝こそすれ罵るたァ良い度胸で」


そう言って快活に笑いインデックスの頬を摘む一方通行。

今度からは、どんなに恐ろしくとも絶対に自分でやってやろうと、物理的な意味で頭に血が下がる聖職者は決意した。
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/03/29(火) 04:11:34.48 ID:G4Bvu1520
御坂「あ、ちょっとアンタ!待ちなさい!聞いてるの!?」





































御坂「死んでる…」
442 :終わり :2011/03/29(火) 04:14:06.40 ID:1N7l4f9AO
半分実話ですよね、これ、しかし私の友人は一方さんより辛辣でした。
本当にチキンにとっては目薬は怖くて仕方ないんですよ、ちゃんと落ちるとか落ちないじゃなくてあんなに重たいものが目に入るんですから。コンタクトの方がよっぽどマシというものです。

>>431
えろい……? はてさてじぶんはようじょなものでしてなんのことやらさっぱりわからないです><
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/03/29(火) 04:18:29.68 ID:I/GqrB4AO
よっしゃああああ!リアル遭遇!乙!超乙なんだよ!
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/29(火) 04:23:55.02 ID:TVoRE3/do
乙です

何だと・・・
まさか>>1がようじょだったなんて

インデックスがかわいすぎるから俺魔術師になってインデックスさらいに行く
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/29(火) 07:54:23.67 ID:DKJ6cboDO
>>443

VIPで有名作者だとよくリアル遭遇で騒ぐやついるけど、製作で喜ぶ意味が分からない
夜中まで起きてりゃ作者によって50%以上の確率で遭遇できんのに
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/29(火) 07:55:19.47 ID:DKJ6cboDO
忘れてた

乙です!
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/29(火) 10:00:33.47 ID:/5FOYlSHo
>>445
近所に芸能人の家あっけど一回も合ったことねぇぞ
そういうことだ
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/03/29(火) 10:31:43.94 ID:yrsvsc7Co
おつ、別にえっちい展開とかそんなこと感じたわけないんだからね!
だけど、粘性の液体が〜のくだりでありがちな肩揉みじゃないんだなとちょっと期待しちゃった自分がいるかもしれないんだよ!
>>445
>>1はょぅι゙ょだからか早く投下する、そういうことだ
449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/03/29(火) 16:22:27.07 ID:YQ8W8VcAO
ようじょなら仕方ないな。
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/29(火) 19:24:56.10 ID:JWVoMFnm0
ttp://viploader.net/lounge/src/vllounge010811.png
黒制服ぬれそぼろインちゃん胸熱
ごめんこの頃の髪の長さってこのくらいですか?
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) :2011/03/29(火) 20:08:33.90 ID:yrsvsc7C0
きゃっ、きゃわゆうぅぅぅぅ!!
まじgj!!!
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/03/29(火) 20:10:04.09 ID:yrsvsc7C0
間違えてあげてごめん…
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/29(火) 20:18:42.04 ID:TVoRE3/do
>>450
ハァハァ・・・即効で保存した
454 : ◆ObanGQEW7M :2011/03/29(火) 21:13:05.39 ID:1N7l4f9AO

以下>>450への返レスですが、ほんのちょっと気持ち悪い言動をしているかもしれないでそういうの苦手な方はご注意。








うにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああてんしょんじょうしょうるららみらくるぎぐたぁぁぁぁぁいむぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!!しぬぅぅぅぅぅっっ!!悶絶して死ぬぅぅぅぅぅ!!!!!現に五回ぐらい死んだぁぁぁぁぁ!!!!!!本望ですけどもぉぉぉぉぉ!!!!インデックスぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!短髪もほんっっとかんわぃぃぃぃぃいいいいいねぇぇええ!!!!長さも本当に想像どおりでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!そしてふつくしぃぃいいいい!!!!透明感すげぇぇぇよぉぉぉぉぉぉ!!!!雨に濡れる髪やべぇぇぇぇぇ!!!!雨になりてぇぇぇぇえええというかもはやわたしは雨ぇぇぇぇええええ!!!!いっつれぇぇいぃぃんんんんんんん!!!!!滲み出る色気ぇぇぇぇぇぇぇぇええ!!!!浮き世離れしてる感じぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!ひゃうっっ!!!へ、碧眼ステキぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!直視できねぇぇぇぇぇ!!!!!!下がった眉まじキュートっっ!!!!ちらりとのぞく歯がこれまたかわいいいねぇぇええ!!かんでくだしあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!そしてSA☆☆☆☆KO☆☆☆☆TSU☆☆☆☆!!!!!!!!!!!!!!ぺろぺろしたいよぉぉぉぉぉぉ!!!!せめてなぞらせてはくれないかなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!良いよねぇぇぇぇ、う゛にゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!あうぅぅぅ、黒セーラーに赤スカーフほんとごちそう様ですぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!総括すると木原神拳習ってきますぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!待ってろ一方さぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!






……げふん、ちょっと冷静になります

即座に反応できずにすみませんでした、そして改めて本当にありがとうございました。
手が震えるくらいに素敵な絵で萌えすぎて頭が痛くなることを初めて体感したものです。
作者冥利につくといいますか、勿体ないぐらいの絵をいただいて泣きそうなぐらい嬉しいです、あまりにアドレナリンが出たので3キロほど走ることにします。

この度は素敵なご支援本当にありがとうございました、またいつでもお待ちしてます!
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/03/29(火) 21:55:47.96 ID:uu+bN60i0
おいwwwwww大丈夫か幼女wwwwwwwwwwww
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/29(火) 22:02:04.03 ID:/5FOYlSHo
きめぇwwwwwwwwwwwwwwwwwwルイズコピペ思い出したわwwwwwwwwwwww
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/03/29(火) 22:07:00.80 ID:s7h5fcqTo
ワロタww

それより>>441は誤爆なのか?
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/03/29(火) 22:07:03.99 ID:xDsAFyWT0
俺、将来雨になるんだ
そしてインデックスを濡らすんだ

そう決めた
今決めた
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/29(火) 22:30:51.68 ID:TVoRE3/do
>>454
幼女大丈夫か、悪いものでも食べたかww
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2011/03/29(火) 23:08:17.36 ID:8hTvpPA10
この幼女某通行止めスレとか覗いてないよな?www
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/29(火) 23:13:16.19 ID:366clYA0o
落ち着けwwwwwwww
>>450
しかしGJすぎる高速で保存しました
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/03/30(水) 00:19:51.56 ID:OJdUIgaAO
おいようじょおちけつwwwwwwww
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/30(水) 03:33:17.67 ID:UJ3R4FHq0
神ssには神絵師光臨ってか?! いいねェ!最っ高だねェ!!

待ち受けにした^p^
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/30(水) 09:38:00.78 ID:FAc0OE//o
ここは変態が多いですね
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/30(水) 10:00:16.92 ID:BynS1wY70
挿絵GJ!!!
幼女のセーラーの描写は今思うと確かに変態チックだった
前回投下もアレだった
466 : ◆ObanGQEW7M :2011/03/30(水) 20:49:23.97 ID:coEce4JAO
いち、へんたいとかよくわからないしいたってれいせーだからじゅーじぐらいにまたくるね!

>>460
生粋の通行止め派な自分にそんな質問は野暮ってもんです、ええ、お察しの通りストーキングしてますよ
467 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/30(水) 22:03:02.27 ID:coEce4JAO



学園都市全域を襲った暴風雨は治まったものの、相も変わらず空は曇っている。


そしてそんな灰色の空に似合わないワルツを口ずさむのは、惜しまれつつも針のむしろ【アイアンメイデン】に戻ったインデックスだった。


「ちゃあらららーん、ちゃちゃーん」

「……」

「ちゃあらららーん、ちゃちゃー、ちゃーん」

「……おォい」

「たらりららららららー」


下に字幕が出るならば【作曲 P・I・チャイコフスキー 組曲『くるみ割り人形』より花のワルツ】と表示されていたのだろう。

それもフランス映画のような流麗なフォントではなく、教育テレビが妥当ではあったのだが。


「……バレエっつゥかお遊戯会だよなァ」

ヘッドホンを付け、パソコンに内蔵されたその曲を聞く彼女にはどうやら届いていないらしかった。
468 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/30(水) 22:07:08.58 ID:coEce4JAO



インデックスがいつにも増して上機嫌な理由、それはあと少しで地獄の学習プログラムが終了するからである。

こんなに嬉しそうな姿を見ると、相当彼女に対しキツいことを強いたのだとちっぽけな良心も痛むものだ。


「あっとごじゅうっ!」


頭の動きに合わせ、髪が右、左、ひらひら動く。


一方通行は持っていたペンを傍らに置き、頬杖をつきながら碧眼を見つめた。

それにしても、インデックスの小さい頭に四角くてガッチリしたフォルムのヘッドフォンはあまりにもアンバランスだ。


自然と笑いがこみ上げてきた。
469 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/30(水) 22:11:40.59 ID:coEce4JAO



何もかも覚えることが出来る変わりに何も忘れることが出来ない完全記憶能力者。

その1人である彼女にとって、単調な文字群を眺めるだけの退屈さと、文化の違いにより全くもって慣れていない無機質な数字の羅列のコンボは相当なものだった。


一般人ならその味わった辛さは備わっている防衛機能からして忘れることができる。
しかし、インデックスは違う、ふと思い出せばスライドショーは再開する。

それも場所を選ぶことはない。

現に昨夜、夕飯も、入浴中も、学習時も、就寝直前も、脳裏にこれがよぎるだけで彼女の精神は図書館の椅子に座り真白のモニターを眺める時にまで遡ぼった。


何度暗澹たる感情に苛まれたか、数えることはできるが、あまりにも億劫だった。
470 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/30(水) 22:13:58.89 ID:coEce4JAO



「あと16……14……12」


興奮して上擦った声でのカウントダウンが始まった。

2日前には5時間、前の日は7時間、そして今日のお昼前と後の3時間。

その、計15時間にも及ぶ入門ドリルも、残すは10題。


「8……6……4」

それにしても、無茶振りと言う名の思いつきによく耐え頑張ったと一方通行は心の底から思う。


というか、聖職者にこんな仕打ちをしておいて宗教的に問題は無いのか少し不安でもあるのだが。



「にぃ……」


すうっと、胸いっぱいに空気を吸い、インデックスは宣言する。

これで晴れて解放されるのだと。
471 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/30(水) 22:15:05.70 ID:coEce4JAO





「ぜろっ!! やっと、終わったんだよっっっ!!」

少し疲れたような、しかし嬉しくてしょうがないのだろう、満開の笑みがこぼれた。

そして前へその手を伸ばし、瞼を閉じる。
大きく伸びをすると、今までの気だるさが丸ごとどこかへ去ったような開放感が到来するのだった。


「お疲れさン」

「ありがとう! あくせられーた!」


司書の眠りを妨げないように一応くぐもった音で拍手をする。

まあ、彼が起きることはまずないだろうと一方通行も想定しているし、今更ながらだと分かっているのだが。
472 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/30(水) 22:19:23.89 ID:coEce4JAO


普段彼女に向かって手を叩くのははからかいの欲求が大多数である。

けれども今回は珍しいことに純粋な讃辞と労いによるものであった。

「苺とブドウと青リンゴ」

「青リンゴなんだよ!」

「はいよ」

「わぁー!!ありがと!!」


あの陰険な科学者共のねちっこい虐めをよく耐えたと頭を撫でる代わりに、飴を転がしておいた。

コンマ3秒で消えた。
473 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/30(水) 22:22:27.84 ID:coEce4JAO



「これで小学校4年生ぐらいまでは取り戻した筈だァ」

途端、今まで朗らかな笑顔を見せていた少女の端正な顔が歪んだ。


「まだ4年生……。 先は長いかも……」

「小学生っつゥと、ラン」

「私だって、あなたの言いたいことは何となく分かるんだよ?」ジトー

赤いランドセルを背負った打ち止めとインデックスの顔とを脳内コラージュするのはこれで2回目だが、相変わらず違和感がどこにも無い。

実は12歳でしたー!とカミングアウトされたところで自分はあまり驚かないだろうとも一方通行は推測するのだ。

「でもまァ、たったの3日でここまで来るたァ思わなかった。 進捗状況は悪くはねェ」

「ほんと!?」

「嘘吐いて何になる、っつゥか次は参考書買う必要があるな」

「お金はとうまに貰うとして。 参考書ってどこで買えば良いのかな?」


「どっか本屋で買ってこい」と言いかけ、怪訝そうなインデックスに気づかされた。
慌てて言葉を足す。
474 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/30(水) 22:25:07.96 ID:coEce4JAO



「……っつゥのはダメだな。 オマエが何を買うか全くアテにならねェし」

「だったら着いてきて欲しいかも。 丁度明日は閉館日だし、ね!」


明日は第3水曜日で、この図書館の閉館日に指定されるその日であった。

因みに第1・3水曜日と第2・4木曜日がそうであり、前回の第2木曜日には絶版(一方通行は消息不明な学者の著書を、インデックスはあまりにマイナーな詩集)を求め古本屋をハシゴした。


「良いけどよォ、遊びに行くわけじゃねェからなァ?」

「分かってるんだよ!」

慎ましやかな胸を張るものも、悲しいことに全く説得力は無かった。
475 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/30(水) 22:29:59.56 ID:coEce4JAO



「またそういう訝しげな目するんだからぁ!」

「……いやァ、自習とかできンのかと」

図書館に通っていなかった夏の話を聞くに、飼い猫と部屋を転がりながらじゃれて、たまに友達と遊ぶ、そんな携帯用ゲームよりもよっぽどユルい、現代人の9割が羨むスローライフをおくっていたようなのだ。


「買い物してきたことに満足して、ダラダラして終わるンじゃね?」

「そんなことないんだよ!」

必死で反論するものも、彼の生暖かい視線は変わらない。


「まァ、それはそれで仕方ねェかもなァ」

「……あなたがそこまで言うなら提案があるかも」

彼女の目はギラギラと危うい輝きを放っていた。

要するに波乱の前触れでもある。
476 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/03/30(水) 22:37:27.85 ID:coEce4JAO





「Welcome to my home!!」


「………」

やたらと発音が良いのはやはりネイティブだからなのかと少し感心し。


「……オマエの家じゃねェだろォよ」



とりあえず、問題の家主とは対面しないように気を付けようと明日のお宅訪問は了解した。

そろそろ、本気で家庭教師じみてきた自分に自嘲しながら。
477 :終わり :2011/03/30(水) 22:44:23.08 ID:coEce4JAO
古本屋の照明の暗さは異常じゃないでしょうか、絶対に目が悪くなると思うんです

お付き合いいただきありがとうございました
478 :名無しNIPPER [sage]:2011/03/30(水) 23:16:26.10 ID:BynS1wY70
おつ
次回ついに上条さん出るのか!?
あと、ようじょの通行止め読みたい
479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/31(木) 00:27:32.04 ID:8Ze7yMtWo
上条さんでるのかなー
480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(佐賀県) [sage]:2011/03/31(木) 02:23:46.04 ID:A0T4LvXLo
原作みたいにニアミスしまくるのもいいな
481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/03/31(木) 06:27:55.71 ID:Z4XqrqEAO
おはようじょ!乙!
482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/01(金) 22:54:32.33 ID:udRLnGHDO
>>450
ヤバいドキッとした青春の匂いがした
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/04/03(日) 21:11:14.56 ID:k/+tYvLAO
やべえ、りっちゃんイケメンすぐる
484 :※このスレにはりっちゃんは登場しません ◆ObanGQEW7M :2011/04/03(日) 21:13:58.27 ID:k/+tYvLAO
寝ぼけて自分のスレに感想を……、というか何故携帯なのに誤爆したんだ……orz

醜態晒しちゃったんですが23時頃にまた来ます
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/03(日) 21:18:31.55 ID:jVdjmzCqo
何してんだwwwwww
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/04/03(日) 21:22:46.40 ID:93Hs/zzgo
滝壺「りっちゃんと聞いて」フンス
487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/03(日) 21:25:04.58 ID:dKrW2z4mo
枝先「りっちゃんと聞いて」
488 :名無しNIPPER :2011/04/03(日) 21:30:32.97 ID:jUAJkCTf0
りっちゃんって誰だ?
けいおん?
489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/04/03(日) 21:45:42.41 ID:R7EX5GZKo
エツァリっちゃん
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/03(日) 22:01:45.25 ID:3AToZBgL0
セロリっちゃん
491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/04/03(日) 22:14:25.24 ID:S3Hm/zg10
さすがの幼女だな
492 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/03(日) 22:58:41.26 ID:k/+tYvLAO



「『君も輝く明日を手に入れろ』」

「……」ペラペラ

「――内容が稚拙すぎる、却下ァ」

「じゃあね、この『夢を夢で終わらせないために』っていうのはどうかな」

「多分だが、オマエ2色刷りだとやる気出ねェだろォ」

「えっとー……、『志望校への近道切符』」

「……何でそォいう、タイトルが妙にクサい参考書ばっか選ぶンだよ、セミナー何たらとか何とかドリルとかよォ。 それこそ無難にだなァ」

一方通行の苦言も適当に聞き流しているのか、またもやインデックスは一冊の本を差し出す。

『お前の未来をhaul in!』

「Jポップみてェなこと言ってンじゃねェよ」

「あいたっ」

フードを被ったツッコミ待ちの頭に、お望み通り軽いチョップを浴びせた。
493 :名無しNIPPER :2011/04/03(日) 22:59:27.77 ID:jUAJkCTf0
りっちゃんって誰だ?
けいおん?
494 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/03(日) 23:03:50.74 ID:k/+tYvLAO



現在、彼らが訪れているのは第7学区にあるそれなりに大型な本屋。

故に、参考書コーナーを一通り見回すのも少々の気だるさを覚える。


「魅惑のπ……?」

「グラビアアイドルの写真集がどォしてここに」

「……胸が」

半裸の女性を見つめるその瞳は羨望に満ち溢れていた。


「……はァ」

正直なところ、一方通行としては早く帰りたくて仕方がないのだがインデックスがノリノリで本選びをするので付き合わされているのだ。

そして、インデックスがさっきから推薦してくる参考書の題名は何故か妙に熱血な物ばかりである。

そのツッコミに追われ一苦労する今は、正午11時半。
495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2011/04/03(日) 23:07:55.00 ID:MjD9yjhp0
正午11時半?
まだ寝惚けているのか
仕方ない奴め
496 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/03(日) 23:08:13.72 ID:k/+tYvLAO



「格好いい方がやる気出るかも」

「心配すンな、足首吊るなり逆さにして出してやる」

青ざめるインデックスを余所に、一方通行は膝を完全に曲げる。

そして色とりどりの背表紙を指でなぞり、記憶の中のタイトルと照合させていく。


「芳川が言ってたのはこれだよなァ」

通販のレビューで一番人気だというそれ。

人差し指を引っ掛け棚から出すと、カバーの白が照明を反射しキラリと光った。


よろける体を杖に預け一気に立ち上がる。

「オイ」

「どうかしたの?」

「これで良いだろォ」


どれどれと近づくインデックスに、白を基調とした参考書を見せた。


途端、怪訝な顔をされた。
497 :時間計算が苦手です ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/03(日) 23:10:53.56 ID:k/+tYvLAO



「……ハイレベル数学……、なんか無難かも」ジトー

「本でもCDでも、ジャケ買いに正解はあンまりないンです」

腑に落ちないとの顔をする彼女の手から、最早不要と化した先ほどまでの品を奪い取り振り返る。

元あった場所を知らないので適当なスペースに丸ごと突っ込んでおいた。




「そンで、金はあンのかよ」

「勿論かも。 逼迫する家庭状況から、ゆきちとはいかないけどいなぞーは貰って来たんだよ」

「旧札まだ出回ってンのか……」

そうやって、取り留めもない雑談を交わしながらレジに向かう。

丸眼鏡の店員が子供が訝しげな目をしていた、無理もないと思う。
498 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/03(日) 23:14:24.44 ID:k/+tYvLAO

銀髪と白髪の青少年が平日昼間に買い物を、片方は純白のシスターでしかも参考書を手にしているだなんてあまりにもナンセンスな光景だろう。


――しかし、気に食わない。

「……ありがとうございましたー」

「――行くぞ」

「うん」

結局、終始不思議そうな顔を止めなかった店員を少し睨みつけ、隣の少女を促した。



1000円ちょっとの釣り銭と参考書を手に、インデックスと一方通行は学生寮までへの道を歩く。

何気なく、空を見るとそこには我が物顔で飛ぶ飛行船が。

デジタル文字の通りだと、今日はどうやら第7学区の高校で身体検査があるようだった。


「……そんな顔しなくても、ちゃんと許可はとってあるから大丈夫なんだよ?」

「はァ?」


言われて右手を頬へ伸ばす。

どうりで違和感を感じると思ったら、筋肉が左右非対称に引きつっていたらしかった。
499 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/03(日) 23:17:05.54 ID:k/+tYvLAO



「とうまに怒られたりはしないんだよ?」

「違ェよ。 ――ただ、そいつと会うンじゃねェかっつゥ心配だ」

「あなたは恥ずかしがり屋さんだもんね」

「うっせェ」

ころころと玉が転がるように笑い、シスターは続ける。


「今日は、しすてむすきゃんがあるから学校が早く終わるんだって、だから友達と遊びに行ってくる。 って言ってたかも」

「そォですかァ」

とは言え理屈では説明出来ない何かが、ざわざわと胸中を蠢くのも事実だ。
500 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/03(日) 23:20:59.11 ID:k/+tYvLAO



「精々気を付けとく」

「やっぱり1位って大変なんだね、まあ私だって知っただけでテンション上がっちゃったかも」

「ロクなモンじゃねェよ」

「こうなると超能力者のサイン、全コンプリートしてみたいかも!」

「壮大な夢を持つことを否定はしねェが……」

そう、超能力者と言うことがインデックスに発覚してしまったあの日、一方通行は『親愛なるIndex-Librorum-Prohibitorumさんへ、第一位より』というサインというには乱暴な字をメモ帳に書かされたのであった。

どうやら家計がどうしようもなく困窮した暁にオークションに出すそうだ、売れるとは全く思わないが。

そしてそれを自慢気に他人に見せびらかそうとしていたので、手持ちの飴玉で黙らせたこともあった。
501 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/03(日) 23:25:40.52 ID:k/+tYvLAO



「7つ集めたらご褒美とか貰えるかも」



「この世はデッカい宝島、ってかァ?

――つゥか、サインくれるよォな心優しいレベル5なンて俺ぐらいじゃねェの?」

言ってから超電磁砲辺りならもしかしたら良いかもしれないと思い返し、彼女の方を向くと。


「……え……?」


まるであまりに下劣すぎる下ネタを言った男子に、潔癖症の女子委員長が向けるようなそんな目をしている。

射抜くような視線、絶対零度。
502 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/03(日) 23:29:03.57 ID:k/+tYvLAO



ひゅうと喉が鳴る。

――あまりに辛辣すぎて、一瞬上手に息が吸えなかったらだった。


「……何だよその面はよォ」

「……あくせられーた、まさか本当に自分が善良って思ってる……?」

「……」


「……確かにあなたは根はとっても優しいかもしれないけど、全然人の話聞かなかったり、あの夜みたいに肝心なことを言わなかったり、やたら私のこと脅してきたり、馬鹿にしてきたり、そのいっつもモノトーンの服と、気だるそうで高圧的な喋り方と、奇妙な笑い方と、いつも偏頭痛の人みたいに陰鬱そうな表情のせいで大変伝わりにくいと言うか……。


たまにだけど私にだけ特別優しいんじゃないかと思うときもあるんだよ」


何時だろうか、打ち止めにも指摘されたような聞き覚えのあるフレーズ。

最初は、たかが冗談だった筈なのに。


(寒ィ……、……北風の野郎め……)


削がれるのは身体か、それとも精神か。
503 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/03(日) 23:31:18.66 ID:k/+tYvLAO



「……あ、私としたことがやってしまったんだよ……。 シスターたるもの壊れかけの幻想を殺したりなんかしたら駄目だと言うのに……」


チラリと様子を伺ってくる瞳。

打ち止めから伝播し、最終的には同居人全員に罵られることになったときよりもずっと心に刺さる。


「……そのね、基本あくせられーたは、そのぅ、声とか格好いいと思うんだ……よ?」

「……もォ止めろ」

「えっと、心なしか目が潤んでるような……」

我慢の限界だった。
504 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/03(日) 23:33:26.03 ID:k/+tYvLAO



「ンなわけねェだろォが馬鹿!!」ツカツカ

「ああ! そっちの道じゃ無いんだよ!」
「オマエの歩くスピードが遅いンだよ!!」

「――ごめんね、あくせられーた」

「憐れむよォな目すンじゃねェェェ!!」

「うん、そう――。 全部私の間違いだったんだよ、だから――ごめんね?」

「だァかァらァァァ!!その目が腹立つっつってンだよ、暴食シスターァァァァァァァ!!!」

「本当にごめんね、そうだ、コーヒーでも奢るんだよ」

「そンなモンで懐柔しよォってかァァァァ!!?」

「だってあくせられーた、ずぅっと飲んでるんだよ、そろそろ摂取しなきゃ寂しいかも?」


さいしょは威勢良く吠えたものも、結局思春期の息子を見守る母親のように何だかんだと宥められる。
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/03(日) 23:35:23.09 ID:3AToZBgL0
一方通行 テンプレ
・口調がおかしい
・服装がおかしい
・ネーミングセンスがおかしい
・笑い声もおかしい
・顔が怖い
・ロリコン
・いつまでも中2病( ※黒い翼が生えます)
・借金八兆円
506 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/03(日) 23:35:53.51 ID:k/+tYvLAO



そしてそこから一番近かった自販機のそばでコーヒーをすすることとなる。

一方通行的には不本意だったのだが、手を引かれ連れて行かれては仕方が無いだろうと言う結論に達し、大人しくベンチへと腰を降ろしていた。


カフェインを摂取したことで、ささくれ立った心もようやく静まりをみせてきたようだ。

隣でストレートティーを飲むインデックスにまだ若干罵倒されるのではと警戒しながら彼は問う。


「……オマエらの学生寮どこだよ」

「ここなんだよ?」

「……はァ」


指を指した先には、没個性的な建物が1つ。

どうやら、無事に目的地にまでたどり着けたらしかった。
507 :終わり :2011/04/03(日) 23:40:24.57 ID:k/+tYvLAO
色々とミスして申し訳なかったです。そして妹デックスモードのインさんは誠に辛辣なのです。
有り難いことに半分越したわけですが、まだまだ全行程の6分の1も行ってないので長々とよろしくお願いします

>>486
しずりっちゃん、かざりっちゃん、駒場のリーダーとかいっぱい居ますね

>>488
りっちゃん隊長は、世界一可愛い私の隊長です
508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/03(日) 23:47:02.19 ID:TZzmtq8G0

って言うか大長編だとは……腰を据えてこれからも読むぜ

サインを全員分集めるのはほぼ無理じゃないか?ww
509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/03(日) 23:52:46.17 ID:dKrW2z4mo

これで1/6・・・完結したら何スレになるんだww

合格できれば削板にサインを書かせるのはいけるとして冷蔵庫にどうやってサインを書かせるかだな
510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/04/04(月) 00:04:32.45 ID:8ZnmN3o7o
6位がわかんないからなぁ
511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/04(月) 00:16:13.99 ID:gLe8i/0Po
「ころころと玉が転がるように笑い」ってどんな笑い方なんだろ
よく耳にするけどわかんね
かわいい笑い方なんだろうなー
512 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/04/04(月) 01:19:17.56 ID:AeVTL5xNo
ジャケ買いは9割方ハズレだよなあ。

玉を転がすようなの慣用句はあれ、ボールじゃなくてぎょく(宝石)のことだよ。
きらきらして美しい様子を表してんだ。
513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/04/04(月) 01:51:09.74 ID:KOfw7vxk0
1隊員乙 てか、1が書くお話は、いつも食べ物がうまそうで困る
ちょっと飴買ってくるわ
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/04(月) 03:35:31.22 ID:ynIjdDILo
>>505
借金は消えたぞ
515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/04(月) 09:44:30.26 ID:780PKiX4o
一通さんの上条さんや美琴との邂逅って凄いテンション上がる
次回会うか分からないけど楽しみ
516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/04(月) 13:53:40.11 ID:SxeTgSvDO
>>512
マジかよ
また一つ賢くなっちまったぜヒャッハー
517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2011/04/04(月) 17:51:24.65 ID:5mnB9RiN0
暗部と直接のかかわりがないインデックスなら、麦野、垣根(自我があれば)は
サイン位してくれそうだけどな。
削板はノリノリだろうし、案外面識のある美琴が一番サイン渋りそうにも思うけど…

いや、むしろ問題は心理掌握がインデックスを見て魔導書にあてられないかどうかだったりして
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/04(月) 20:20:17.27 ID:43xRyK7IO
確かに今の麦野ならくれそうだ。冷蔵庫が書けるかはわからんけど
519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/04(月) 21:21:37.43 ID:/ID1SDuIO
宝石のようにキラキラ美しくコロコロと可愛らしく……
青春って、インデックスって素晴らしい
520 :名無しNIPPER [sage]:2011/04/04(月) 21:25:02.67 ID:uWYjg41Z0
おつ、インさんに罵られたいお
ぶっちゃけ最難関であろう一方さんからゲットできたからな
つーかオクで売り飛ばすなwww
521 : ◆ObanGQEW7M :2011/04/07(木) 21:27:01.90 ID:e3pd8WYAO
11時過ぎに投下します
522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/07(木) 22:07:11.78 ID:DE9O1yuE0
舞ってる
523 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/07(木) 23:03:36.51 ID:e3pd8WYAO



扉の前に立ったインデックスは手持ちの鞄からごく普通の鍵を出し、鍵穴目掛け差し込んだ。

ガチャリ、ガチャ

ノブを回転させる。

それからずるずると足を擦りながら後進し、空いている右手を差し出しながら言った。

「どうぞーっ」

外から遠慮がちに見る限り、それはどこにでもあるありふれた一部屋。
スプラッタ的展開もホラーな1コマも到底望めそうにない

「――」

「どうしたの?」


――だから、首に感じるこの圧迫感も気のせいに他ならない筈だ。


「いや」

開かれた扉を抜け、コンクリートの床より一段高くなっている室内へ踏み込んだ。
524 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/07(木) 23:05:49.03 ID:e3pd8WYAO



「同居人って短気な奴?」

「とうまはたまーに意地悪だけど、基本的には優しいんだよ?」

「オマエ抱えるよォな男だからなァ」

「それはとうまを評価しているのか私を貶めているのかどっちなのかな」

「両方だ」


学生寮、しかも一人暮らし用ということもあり、彼の住むマンションよりは明らかに狭い玄関は簡素で質素で殺風景だった。

脱いだ靴を揃えるために屈み、立ち上がろうとする。
しかし驚いたようなインデックスが目に映り、それを止めた。


「……なンだよ」

「靴とか散らかさないんだね」

「保護者がうっせェンだよ。 つゥか物は置かねェ主義なワケ?」

十字教徒の身なのだから、玄関に魔除けの品などを置いていても不思議ではないと思う。

それだったり、オブジェだったり時計や造花など飾ってあっても良いのではと思うのは同居人に看過されたのだろうか。
525 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/07(木) 23:08:30.84 ID:e3pd8WYAO



彼女は首を横に振った。

「置かないよりも置けないって言うべきかな。 事故や乱暴な来訪者とかのせいでインテリアは片っ端から壊れていくんだよ」

靴箱の上には鍵が1つ。

「それとスフィンクスも居るからね」

世にも珍しい三毛猫の雄を飼っているとかいないとか、そんなようなことを聞いたこともあった。

ある強い匂いに隠れて分かりにくいが、確かに獣の匂いもする。

「せっかく整えてもらったんだけど、悪戯されちゃうと困るから下駄箱に入れておくんだよ」

「おォ」

靴を収納し終え、服を引きずりながら奥に向かう彼女の後をいつもより控えめに床を叩きながら追った。


途中、先ほどの三毛猫が出て来たのだが人相の悪い来訪者に怯えたようで、駆け足で台所へ消えて行った。
526 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/07(木) 23:11:52.27 ID:e3pd8WYAO



「飲み物は」

「コーヒー」

「惚れ惚れするほどに流石の即答かも。 とは言え、あくせられーた。 一応イギリス産の最高級茶葉も貰い物であるんだよ? わざわざインスタントじゃなくても」

逡巡はしなかった。

「コーヒーが良い」

「分かったんだよ」


台所へと消える少女を見送ると、途端に会話が無くなった。

ガシャガシャと、金属が擦れる音がひっきりなしにするので、完全なる静寂なわけではなかったのだが。



――しかし、やることが無い。


仕方が無い、改めて雑多とした机上を眺めることにした。
527 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/07(木) 23:14:46.64 ID:e3pd8WYAO



何ということなのか、スペースの半分を占めるのはゴミである。

あまりにも多いのではないか。
ザッと見る限り、腐らなそうなものだからと言って良いのだろうか、一方通行は疑問を持つ。


「ろォく、しィち、はァち」


とはいえ、暇つぶしになればと種類ごと一列に整理し、それを数えてみた。


栄養ドリンク×1ダース。
ガムのボトル×2。
彼もよく飲む缶コーヒーの銘柄×10。
干し梅×6袋。
酸っぱそうなグミ×16袋。


「多いだろ」

思わず独り言を漏らしていた。


今まで付き合わされてきただけあって、大食いのインデックスがこの量を消費したのなら別に異常なことではないと分かる。

しかし、彼女は眠たい時には我慢せず寝るタイプの人間だ。

となると、これを片付けたのは彼女の同居人になるのだろう。

それと、きっちり全てが偶数な事に因果はあるのか。
528 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/07(木) 23:17:00.97 ID:e3pd8WYAO



「――シスター」

「どうしたの?」

「同居人は大食らいじゃねェよなァ?」

「とうま? うん、普通だと思うんだよ。 私よりは少な」


皆まで聞かさず、けたたましく笛が鳴った。

ピー!!


「うぉっと! よしこのお湯をカップに……っと」

「果てしねェ不安があンだけど」

「こ、こんなの全然平気かも! うおわっ!!」


その語調が、更に彼を誘う。
529 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/07(木) 23:18:43.51 ID:e3pd8WYAO





台所内の様子を見るためだけにわざわざ立ち上がるのは面倒なので、腕で引きずりながら体を移動させた。


そして首を傾ける途中、いかにも百円ショップで買いましたーと言った感じの茶色いゴミ箱が目に飛び込んでくる。

「……」

何故だかそれにどうしようもなく惹かれて、他人のプライバシーは御法度とは分かっているもののチラリと中を窺ってしまった。



「――はァ」


ゴミ箱の中はもう何も入れられないほどに満杯だった。






プリント、そして――化粧品とで。
530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/07(木) 23:23:20.79 ID:DE9O1yuE0
さりげなく一方通行と同じ銘柄飲んでるあたりに萌えた
531 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/07(木) 23:24:08.71 ID:e3pd8WYAO



「出来上がったんだよー、ってあくせられーたどうしたの?」

四つん這いの一方通行を見て、インデックスは首を傾げる。

「――あ、いや、勝手に覗いて悪ィ」

「ううん、気にしなくていいんだよ。 ただ、面白い物はないかも」


正直中身が気になって仕方ないのだが、流石に本人の居る前では姿勢を正すしかない。
客用のカップを運ぶインデックスの姿を見つめていた。


少しして、整頓された机上に気づいたインデックスによる驚きの声があがった。
532 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/07(木) 23:25:12.72 ID:e3pd8WYAO



「わあ、何かカチャカチャ音がするかもって思ってたら、これやってたんだね。 ……っていうか、とうまも几帳面だったのに今や見る影も無いかも。


――はい、どうぞ」

「おォ」

ことり

少し遠くにマグカップが置かれたので、両手を使い零さないように引きずった。

両手にじんわりと熱が伝わっていく。
2月、少し寒いこの部屋ではありがたかった。



左隣にインデックスが座る、毎度ながら修道服の手際が良い。
あんな長いものを、どうしてただの1回も自分に触れずにベンチに着けるのか、今は床だが。


裏を返せば彼らがそれだけ近いと言うことでもあった。
533 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/07(木) 23:27:02.54 ID:e3pd8WYAO



「……なァ」

「どうしたの?」

「気になることがあンだけどよォ」

首を曲げるのは、自分用に淹れたココアを一口飲んだインデックス。

「答えることが出来るなら答えるんだよ」

「――勝手に見て悪かったンだが、あの化粧品って」

「こちらにしろあちらにしろ、私が出したゴミじゃないんだよ」

「じゃァ」

「全部とうまなんだよ。 全く、ちゃんと分別しなきゃいけないかも!」


……これで更に一方通行の疑念は深まった。
何故、女性用化粧品が(彼の同居人も持っている型だった)この部屋にあるのか。


「……つゥか、男、だろォ……?」


思わず掠れた声になってしまった。

もしかして言い尽くせない程の深淵があるのかもしれないし、悲しきダブルミーニングがあるのかもしれない。
若しくは、そういった趣味に目覚めている少年なのかもしれなかった。


形の良い唇が、すうっと孤を描く。
534 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/07(木) 23:29:32.15 ID:e3pd8WYAO



「あれはね、使い終わったコンシーラーかも」

何でも無いように語られるそれは、充分に斜め上な回答だった。

「コンシーラー……?」

「そうなんだよ、隈を消すための道具だね」

「――あァ、この残骸がちゃンと効能あって現在寝不足っつゥ」

「ざっつらいと!」

その後の話を掻い摘むとこうだ。

何でもとある事情により、その同居人は今年度の授業を丸々2ヶ月程出られなかった。
通常なら留年ということになる
しかし、やむを得ない理由だったので恩赦がかけられた。

その代償が、各教科担任から渡されたプリントを仕上げること。

元々成績優秀とは言えない彼に渡されたプリントは膨大な量であり、寝る間を惜しんで課題に励んでいる(現在進行形)らしい。
535 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/07(木) 23:30:42.48 ID:e3pd8WYAO



「――で、その隈が酷くって」

「コンシーラーに手を染めたと」


進級がかかっているのなら、昼夜問わずに勉強しなくてはいけないだろう。

なるほど、もしノンストップで摂取しているのだとしたら、インデックスは食べていないと言うのに埃が付いていない缶も瓶もボトルも納得がいく。



ココアを飲み干したインデックスは視線を机の角に向けた。


「今日はね、ずーっと家に居ても腐るだけだからって、とうまの友達に誘ってもらうようにお願いしたんだよ」

「別に課題仕上げる為には仕方ねェンじゃねェの?」


頬杖をつき下を向くせいで、表情は分からない。

上向きに伸びた睫毛が恨めしそうに揺れる。

536 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/07(木) 23:34:39.58 ID:e3pd8WYAO



「でも、あんまり意固地にならなくても4月までには、それどころか3月入る前にも終わっちゃうかもしれないんだよ。


……とうま、また無理してるのかなーって」


「……」

何を言うわけでもなく、ただ沈黙を紡ぐだけ。

平和になった日常を享受しても、自分には能力だけで精神的に欠陥が多いことを痛感するのはこんな時だ。

慰めの言葉を言う優しさも、突き放す信頼も、的確なアドバイスも何も出来ない。

何も知らない、はその理由にはなり得ないことをあの夏の夜に知った。


(……いつになったら、俺もあの無能力者のよォに)


俯く一方通行の視界に、白く美しい両手が視界に入る。

こちらと伸ばされるそれ、もし彼女が抱きつくのなら何も言わずに黙っていようと決意し瞼を閉じる。






ぎゅむ
537 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/07(木) 23:37:05.41 ID:e3pd8WYAO





「は」

「……ははーん、引っかかったねあくせられーた!」

「はなへェ」

「ほっぺたぷにぷにですべすべだね!」

「オハエはい」

「ふぉおー! この皮の感触が堪んないんだよ!」

「はなへっふっへンはろォォ!!」



ぺし!ぱし!ぺし!
3HIT!!


「あいた……」

「急に摘むンじゃねェよ!」

「だって、下を向いたあくせられーたのほっぺがとっても美味しそうで」

「オマエ、腹が減ってンだろォ」

「よく分かったね!」


いつも減っているかもしれないということはスルーして。

少しぬるくなったコーヒーを飲み干した。
538 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/07(木) 23:39:18.40 ID:e3pd8WYAO



「俺の頬に食欲持つぐらいなら、手持ちのメシを早く食べてしまえ」

「時間も丁度良いかも。 じゃああくせられーたせんせいの許可も出たのでお昼にするんだよ!」


にかーっと笑うインデックス。

そして、その顔に気づかされたことが1つ。


「……昼メシ忘れた」

「お昼? カレーならちょこっとあるんだよ」

「暴食が譲歩したっつゥのに悪ィが、3日連続は流石に堪える」

「じゃあ買ってくる?」

「あァ、そォでもするか」

と、鞄の中を開きまたもや愕然とした。


「財布がねェ……」

「一体どうしちゃったの?」

「分からねェ、が、無くすはずもねェし」

「どっちにしろ、今日は変なんだよ?」

「返せねェのが辛いとこだなァ……」


本当に何を考えてここまでやってきたのか。
539 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/07(木) 23:45:31.10 ID:e3pd8WYAO



実は友達の家を訪問することにテンションが上がっていて、頭がふわふわとしていたのかもしれない。

思い返せば、キョロキョロと家の中を見回したりとみっともない真似をしていたような気がする。



だから、有り得ない提案にツッコミを入れるのも少しだけ時間がかかった。


「じゃあ作っちゃおうよ!」

「……」

「幸いなことに、とうまは昨日タイムセールを勝ち抜いたからね」

「……マジで言ってンの」

「貸せるお金はないし、お腹も空くだろうし、何より私だけが作ったもの食べたいのかな?」


バレンタインデーをまだ根に持っているような、少し裏が見える笑顔でインデックスは笑う。


「ね、せんせい」

「俺も料理なンざしたことねェぞ」

「一緒に頑張るんだよ?」


半ば強引に手を引かれ、台所へ押し入る。

入れ替わるようにこの場を後にした三毛猫が、怨むような目をしていたのは気のせいだろう。
540 :終わり :2011/04/07(木) 23:49:47.89 ID:e3pd8WYAO
作中は2月下旬ですが、こちらは季節の変わり目ですね。
風邪と花粉にご注意下さい。

>>512
知りませんでした、てっきりびいだまの事とかを指しているとばかり
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/08(金) 00:00:11.21 ID:/ndE32WV0
うおおお超>>1乙って訳よ!!

靴を揃える一方さんとか…可愛すぎるだろ!!
そして不慣れな料理に挑戦するとか、>>1…恐ろしい子!
萌え死にそうです^p^

542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/08(金) 00:10:48.58 ID:JEx/pTgfo
乙です!
このスレ本当癒されます
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/04/08(金) 01:09:45.33 ID:v+grP0KG0
白コンビ良いよ。すごく良いよ。
乙!
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/08(金) 11:06:09.79 ID:4rJ8qqa0o
ゴミ箱の中は丸めたティッシュでいっぱいだと思ったのに
545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [saga]:2011/04/08(金) 18:42:17.13 ID:gkY3wmxEo
おつおつ
上インが仲良くしてるようで良かったわー
次回は何を作るんだろうか
546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/08(金) 18:57:08.48 ID:PjkcnLgl0
下げてくれよ
547 :名無しNIPPER [sage]:2011/04/08(金) 21:17:08.14 ID:7V8zo0FAO
良かった……、俺が密かに危惧していた実は上条さんが死んでて、それを認めたくないインデックスが嘘をつき続けていたっつー展開は無いようで
それにしても、登場キャラ2人だけでスレ半分いったのか……すげえ
548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/04/08(金) 22:00:21.53 ID:25+3Ioboo
>>547
早くそのネタでスレを建てるんだ
549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/04/08(金) 22:57:25.47 ID:7V8zo0FAO
>>547だけど何回もごめん
もし書き込んだネタ書ける人いたらマジ書いて欲しいのと、乙しわすれた。
インさんの「あくせられーたせんせい」が性的すぎてやばい、ひらがなあまりにも萌える
550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/09(土) 02:38:41.11 ID:YapwDvwm0
全ひらがなにするだけでとたんにエロゲになるよな…
なにはともあれ乙
551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/04/09(土) 07:11:03.85 ID:HkShsPOAO
つまりこの状況は
「はじめてのおもてなし!」

こうか
552 : ◆ObanGQEW7M [sage]:2011/04/10(日) 01:11:23.70 ID:BoUptuSAO
>>549
このスレとは被りませんが、魅力的なネタすぎるのですいません、いただきます
553 :名無しNIPPER [sage]:2011/04/14(木) 18:20:43.60 ID:ISD2cBHzo
まだか
554 : ◆ObanGQEW7M :2011/04/15(金) 20:10:04.94 ID:z2dzIFmAO
長らくご無沙汰していてすみませんでした
今晩投下予定です
555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/04/15(金) 20:19:19.34 ID:QgyeoE6c0
戻ったか!
556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/15(金) 20:31:03.17 ID:EgfgD9B2o
戻ったか!!
557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/15(金) 20:45:53.88 ID:f+G4NR+g0
「「「「>>1!!!」」」」
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/15(金) 21:58:37.88 ID:r5UMsTrDO
wwktk
559 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/15(金) 23:41:49.14 ID:z2dzIFmAO




「時間もねェし俺は料理したことねェしオマエにも期待はできねェと脅威の三重苦なわけだ。 っつゥことでなるべく簡単なモンで良いなァ?」

「了解なんだよ。 えっとね、確か炊いたお米が残ってたかも、炒飯とかはどうかな?」

インデックスの提案にも彼は極めて真面目な顔で言う。

「炒飯って作ンの簡単なのかァ?」

「……流石にそれぐらいは私だって知ってるんだよ」


嘆息。

そして、冷蔵庫から適当に出した野菜をまな板に置き、近くの棚からフライパンを取り出した。


「ただご飯と切った具を炒めて上から塩胡椒パラパラってやるだけかも」

「オイオイ、同じ穴の狢なンだし意地の張り合いは止めよォぜ、聞いてる分にまるで作ったことでもあるよォな口振りじゃねェか」

「2回ほど、全然美味しくは無かったんだけどね」


口振り、ではなくて実体験であるらしかった。
560 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/15(金) 23:44:20.13 ID:z2dzIFmAO



「……」

「うーん、なんか髪の毛鬱陶しいんだよ」
造作もないとばかりに言う態度に、途方もない敗北感と焦りがこみ上げてくる。



今一度、まな板に置かれた食材と鈍く光る包丁を見る一方通行は、ポツリと呟く。

「上等じゃねェかァ……」

「……んしょ……、ねえあくせられーた。 ちゃんと髪の毛結べてる?」


「今日のオマエは、そこで俺の補佐をしてりゃァ良い」


その言葉に驚いたインデックスは、しばし口を半開きにしていた。

そして、一方通行が奇妙な手つきで包丁を持って初めて我に返ったようだった。
561 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/15(金) 23:46:15.87 ID:z2dzIFmAO



「ええ? だって料理初体験なんだよね?」

「だからどォしたっつゥンだよ。 俺は学園都市序列第一位、幾多の凡庸共とは違うに決まってンだろ」

「ちょ、ちょっと待って? 何でそんなに自信満々なのかな?」

「俺にも分からン」

とりあえず、まな板の上のレタスを見下ろしこれからの操作にあたって必要なことを見極める。

「オイ、杖持ってろ」


後ろで心配するインデックスにそれを押し付け、電極のスイッチを入れた。


何故ならばご自慢の能力を使い、繊維にかかるベクトルを行使し、早くレタスの山を作ってしまおうと考えたからである。


そして、愉悦を浮かべながら緑色に手を翳し――。







バリッ
562 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/15(金) 23:47:59.62 ID:z2dzIFmAO



「……あァ?」

「……大丈夫って、ひゃあああああっっっ!! な、なんてことをぉぉおお!」

後ろから様子を覗く彼女がこの有り様を見て悶絶する。
その声をよそに、一方通行は細々とした粉のようなレタスをつまんだ。


「ははっ、めっちゃ細けェ」

「何を笑ってるのかなぁぁ!? っていうかレタスが金粉サイズにぃぃいい!!」

「金粉見たことあンのかよ」

「無いに決まってるんだよ!! って、これの10倍くらいの大きさで良かったのに!!」

「へェ、つまり細かくやりすぎたンだな」

「こんなのレタスの良いところ綺麗に消しちゃってるんだよぉ!! Comeback食感、Comeback食物繊維ぃ!!」

「オマエの息で飛ンでンぞ」

「っ!」

横を見ると、両手を使い口を抑えていたが根本的に間違えてしまったのだからそれも無駄な努力と言っても良いかもしれない。とりあえず再度能力を使って、散らばったレタスを片しておく。

かき集めても、体積が4分の1ほどになったのは気のせいでは無いはずだった。
563 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/15(金) 23:52:08.90 ID:z2dzIFmAO



その後も、一方通行がフライパンに並々と油を入れてしまってそのせいで火柱が上がった。
インデックスが卵を溶き忘れてそのまま焼いてしまった。
手を滑らせて胡椒を瓶ごといれてしまった。
無心でかき混ぜているうちに入れたグリンピースを全て潰してしまった。
肉はレバーを使用してしまった。

と、挙げていけばキリの亡いほど悲惨なことばかりを積み重ね。


「……辛ェ……」

「胃が……もたれる……かも」

「……やる」

「……無理、だよ」


羊一頭をも食べてしまえそうな彼女が苦しいと言う時点で、この炒飯が非人道的な化学兵器の域に達しているのは言うまでもないだろう。

564 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/15(金) 23:55:21.51 ID:z2dzIFmAO



スプーンを往復させるに連れ、段々と彼女に湧き上がってきた疑問。

数式ではマイナス×マイナスはプラスじゃなかったのか。


能力を使用し味覚を麻痺させた一方通行にそれを尋ねると「この炒飯は虚数だ」と真剣な顔で言われ、よく考えなくても支離滅裂なのだが確かに数直線上には在ってはいけないものだと妙に納得してしまった。


「みふ……」


それぐらい不味い炒飯は大食いのインデックスでも断念しようかとも思ったほどであった。
だが、彼女は清貧を謳うシスターである。

合間合間に上条作のカレー(いつもの三倍増の美味しさだった)を食べながら必死の思いで炒飯を消滅させた。

今は、焼けただれるような舌を慰めるため、水を求め台所へ走るところだった。
565 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/15(金) 23:58:19.50 ID:z2dzIFmAO



遅れること、2時間弱。

「……以上3つの条件より、2辺とその間の角が等しいので△AED=△EHI……よって辺AE=辺」

からん

澄んだ音が響き、インデックスは持っていた解答集から視線をそちらへと向けた。


「……やっと食べ終わったァ」

銀色のスプーンを無造作に皿の上に置き、一方通行は机に頬杖を付いた。

「お疲れさま」


「……心から思ったンだが、料理っつゥのは手間暇惜しむモンじゃねェな……」


丁寧に仕事はするが不器用な彼女とは対照的に、器用ではあるのだが面倒くさがりでせっかちな性格ゆえに一方通行は失敗したのである。

一応、本気でやれば上手いというニュアンスを漂わせてはいる。
真偽の程をこの少しだけ寒い部屋で試す気は両者持っていなかった。
566 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/16(土) 00:00:58.49 ID:2oIr1iyAO



数学の問題も、一方通行に教わりながら2時間もしたら50題は解いただろうか。
ううと軽く唸りながら大きく伸びをする。
そしてシャーペンの端を持ち両人差し指でくるくると回す、片手でやらないのはどうしてめ出来ないからという可愛らしい理由のため。


「うさぎとかめで言ったら、うさぎがぴょーんって跳躍したら底なし沼にはまっちゃったーみたいな?」

「……ったく短縮、ショートカット、近道、ネットに蔓延る攻略法……これで良いのかねェ。 現代人ってやつは」

「おお、何だかいつもより多く悟ってるかも」

「一粒ずつ噛み締めて食べたンだし、解脱ぐらいお手の物だっつゥの」

「なるほど、多分私は至っちゃいけない境地だね……」


インデックスは後ろに障害物がないことを確認し、冷たい床へ寝そべることにする。
視点を変えて観察する赤い目、それは行きつけのスーパーに並ぶどの魚よりもどんよりと濁っていた。
567 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/16(土) 00:04:35.08 ID:2oIr1iyAO


「だが魅力もある」

何のことだろうと、会話を一言一句回想してどうやら解脱の流れだろうと推測をした。

「なあに?」

「クラムボンとイサドの正体が分かる」

「――それは心惹かれるんだよ」

「Welcome」

「But,no thank you」

「Why?」

「びこーず……」

何と答えようか――と、眠気でぼんやりとした頭で考えていたところ、白く細い指が髪の毛に触れた。


「人の事は言えねェが、オマエも大概疲れてンだな」

「うん、今は睡眠欲が1番――だけど、意地悪あくせられーたは寝させてはくれないよね?」

すると、含みのある言い方をするなと頬を抓られた。


カーテンから漏れるフィラメントのような光が、鼻をくすぐって鬱陶しい。
568 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/16(土) 00:08:01.87 ID:2oIr1iyAO



「――レタスに負けず劣らず、こっちも随分杜撰な切り方じゃねェか」

房を掬い、毛先から1センチに着目すると見事に焼けて痛んでいるのが分かる。


理由は、一方通行がロシアに居た頃、同時進行で起きていた戦い。
ロンドンの大聖堂にて、赤髪神父のトリプルイノケンティウスをかわしきれなかった結果である。


「――ああ、気付いちゃった?」

「誰でも分かる。 つゥか全部切れてねェし」

「いつかの日に、いっぱい焼けちゃって。 でもこれ以上切るとみっともなかったから」


自分でもズルいとは思う。

だけれど、曖昧な笑みが拒絶の一線になると言うことを最近覚えてしまった。
生憎、覚えてしまったことを忘れることは出来ない性質だった。

そして、やはり。


「長ェと面倒じゃねェの?」


いつもの仏頂面を引っさげた一方通行は追求することをしようとしない。

控えめな安堵と出しゃばりな自己嫌悪が胸中を穿っていった。
569 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/16(土) 00:09:50.96 ID:2oIr1iyAO



「そうでもないかも。 寝癖だけ、てやー!って直しちゃえば、あとは重力に任せれば万事OKなんだよ。 あ、風が吹いてるときにリップクリーム付けてたりするとベタベタくっ付いて最悪なんだけどね」

「へェ」

それにしても、インデックスにしてみてはやっとの思いでここまで伸ばして来たのだが如何せん元の長さまではまだまだ道のりはある。


「早く伸びないかなあ」


心の底から漏らした独り言。

それ故、別に反応は期待していなかったのだが

「――やってやろォか?」

「出来るの?」

「……多分なァ」

返答までに多少のラグ。

「……私の髪の毛、破裂しない?」

「不安ならご高説込みで詳しい原理聞かせてやろォじゃねェか」


少し不気味で陰惨な笑みをしている一方通行。
これは、つべこべ言わずにとっとと親切を受け取れと言うサインだ。


そして、その不器用な優しさを毎度欠かさずに受け取るのが彼女のポリシーだった。
570 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/16(土) 00:11:14.32 ID:2oIr1iyAO



「頭、上げた方が良いのかな?」

「とりあえずひっくり返れ」

言われた通り、俯せとなった彼女の体を見回す。

とりあえず焼けた分の長さを切ってから、全体を均一に伸ばすべきと判断した一方通行は行動に出る。


「跨がるけど膝立ちだし気にすンな」

「えっ、え」

片足で向こう側に踏み込み、マッサージ師と患者のようなポジションを取ると全体が余すことなく観察出来て丁度良かった。

おずおずと彼女の両手が額の下へと差し込まれる。

一方通行の片手は、インデックスの耳の横に、もう一方で髪の毛を弄る。


……何というか、傍から見たらそういった体位か何かと誤解されかねない格好である。
571 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/16(土) 00:12:45.85 ID:2oIr1iyAO



「とりあえずハサミは手持ちの文房具で良いなァ」

「能力でカッコ良くしゃきんって出来ないのかな?」

「やってもいいが、キューティクルがどォなっても責任は取れねェぞ」

「……是非ともハサミでお願いするんだよ」

「じゃァ適当に……、あと切った髪は終わってからまとめるンで」

「――はあい」

一気に5センチほど行くべきなのか、それともちびちびと刃を入れていくべきなのか。


未だにどうするかは決めていない。


そんな状況で白くなだらかなラインを持つ肩に刃を近づけ、そして。
572 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/16(土) 00:14:30.94 ID:2oIr1iyAO









――――ガチャ、ガチャ――――








573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/16(土) 00:15:28.50 ID:AWCxzPlR0
ヒーロー参上!
574 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/16(土) 00:15:44.91 ID:2oIr1iyAO




「――え」


ふいに玄関から聞こえるのは、ノブを回す音。


「――あれ?」

「――帰って来ねェンじゃ――ッ」



――だが、無情にも。


薄い扉を一枚隔てた先に居るのは、他の誰でも無い、上条当麻その人であった。

575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/04/16(土) 00:19:10.13 ID:R3n2AsKy0
なんか一通さんすげぇ間男っぽいwwwwwwww
576 :終わり :2011/04/16(土) 00:20:05.01 ID:2oIr1iyAO
クラムボンはおろか、やまなしまで架空の物体だと最近まで思っていました。山梨っていう品種で良いんですね。
この一週間ほどは、進級したことにより忙しかったわけですが、これからはまあ暇になると思いますので頑張っていきたいと思っています。
そして、いつも感想ありがとうございます、とっても励みになってます。
見ていただいてありがとうございました!
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/04/16(土) 00:23:23.91 ID:4ZVzLjTAO
おおういいところでw
次楽しみにしてるよー乙!
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/16(土) 00:24:13.59 ID:Ntta4mof0

次回の上条さんの反応である程度人間関係が判明するな
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/04/16(土) 00:24:41.41 ID:jsJ9EfJ90
おつ!
かぷかぷ笑わせてもらったぜ
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/04/16(土) 00:25:00.81 ID:uJ/ATm3AO
>>1乙!
一方さんの反応がもう・・・wwwwww
581 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/16(土) 00:26:35.46 ID:pEb+zoqUo
乙!続きが楽しみだ
582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/04/16(土) 00:32:54.56 ID:xqnzfu0fo
そもそもレタスを炒飯に入れる時点で間違ってるよな
料理下手の一方さんってSSでは結構珍しいかも
583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/16(土) 00:34:01.65 ID:rYjlhCXOo
>>△AED=△EHI

これだと、合同じゃなくて、面積が等しいって事になっちゃう。
合同記号「≡」は、機種依存文字だったっけ?
584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/16(土) 00:39:02.93 ID:QKoQvAO4o
>>583
一般的な表記じゃないけど=も一応合同を表せるから、まあいいじゃまいか
585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/16(土) 00:40:34.46 ID:T/pyK9RXo
炒飯にレタスって意外と合うんだぜ
シャキシャキした歯ごたえがたまらない
586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/16(土) 01:02:09.97 ID:8+PheaFg0
レタスの野菜炒めも美味いぞ

だが、粉微塵じゃなぁ
587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/04/16(土) 01:12:31.93 ID:xqnzfu0fo
レタス炒めたらレタスのシャキシャキ感台無しだと思うんだが、マジでか?
588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/16(土) 01:18:11.13 ID:lELJ/4Bto
>>587
「レタスチャーハン」でgoogle先生が936,000 件ヒットする程度にはメジャー
589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/16(土) 01:18:40.58 ID:D8IBoUQeo
一番最後に入れて軽く炒める程度なら大丈夫だろ
590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/16(土) 01:20:45.98 ID:T/pyK9RXo
炒めた程度じゃシャキシャキ感はそこまで損なわれないんだぜ
生レタスのシャキシャキとは違う食感だけど炒めたレタスの食感は中々にクセになる
591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/16(土) 01:34:28.27 ID:aKnJ5UoOo
とりあえずレタスチャーハン作ってみろ
話はそれからだ

ちなみに具はかにかまがおすすめ
592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/16(土) 02:36:46.12 ID:Yaj62BIyo
居酒屋のキッチンでバイトしてるけど
チャーハンにレタスいれてるよ
593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/16(土) 02:40:11.62 ID:aLZke1Hno
これでベッドしたに隠れるとペットが入ってきて不審に思われるしロッカーに隠れてもいずればれる、ベランダに行くと通報されるけど一方さんならにげれそうだな
594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/16(土) 02:42:17.85 ID:Yaj62BIyo
逆に考えるんだ、上条さんを排除すれば良いんだと
595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/04/16(土) 17:43:08.75 ID:jsJ9EfJ90
しかしその前にGGBが発動しそうだ
596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/04/16(土) 22:14:48.15 ID:Tcc5c2lN0
これって上条さんがインさんに惚れてたら酷いNTR展開だよね…逆上してガンゴンバキンだよね…
そうでなくとも原作どおりの保護者っぷりだと間違いなくそげぶだよね…
がんばれ一通さん、また顔の形がひしゃげるかもしれないけどがんばれ
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/17(日) 00:58:10.82 ID:/DEFZifno
上条さんは一方さんのことそんなに悪く思ってないっぽいけど
ロシアで打ち止めのために戦ってるのを理解したわけだし
ただ今ははさみ持ってるからおおいに勘違いされそうだが
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/17(日) 01:13:41.67 ID:US2f2rzxo
一方さんがインデックスを押さえつけて鋏で危害を加えようとしているように見えるかもな
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/04/17(日) 03:20:35.48 ID:bAAti9xmo
とりあえずそげぶ確定とwwwwww
600 :名無しNIPPER [sage]:2011/04/17(日) 14:25:40.29 ID:9oSao80qo
一方さんが食べるのに2時間かかる炒飯ってどんだけまずかったんだろう、レバー入りのは本当やばそうだけど
ってかステイルの罪悪感マッハでやばそうだな
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) :2011/04/18(月) 18:00:21.42 ID:2fELdjlB0
ちょwwwwいいところwwwwww
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/04/18(月) 19:49:14.00 ID:aNdkS6s10
打ち止めをお持ち帰り
603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/18(月) 20:15:59.06 ID:YQvGHZFf0
味覚を反射すべきだった
いや、しなかったことに萌えるべきかね
604 :名無しNIPPER [sage]:2011/04/18(月) 21:24:08.53 ID:72ZLS1IAO
何かこの>>1の総合に投下した話読むと、このスレにもどうも怖そうな裏事情があって何故か俺びくびくしてる
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/18(月) 21:45:21.54 ID:uPJR9afV0
インデックスさんが何か淋しげな所が心配なんだよね
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/18(月) 21:52:16.77 ID:SsNwz8gRo
>>1が投下した話ってもしかして風斬が上条さんと一言も会話しなかった奴?
607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/04/18(月) 21:57:10.68 ID:72ZLS1IAO
酉つきでネタ貰うっつってすぐのタイミングだったしここの>>1はインデックス大好きだから多分そうじゃねって勝手に思った
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/04/19(火) 20:06:27.05 ID:0FjvL7No0
まさかこの上条さんって…
…いや、書きづらくなるレスはやめておこう
609 : ◆ObanGQEW7M :2011/04/20(水) 21:53:52.04 ID:Qdz2OuQAO
やったね>>1ちゃん! けいおん!の映画が地元でやるよ!

こんばんは、もうちょいしたら投下します>>587
レタス炒飯とキャベツラーメンはオヌヌメです
610 :sage :2011/04/20(水) 22:23:40.82 ID:jHD4LBkAO
良かったね!ってことで待機
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/04/21(木) 00:10:31.18 ID:KNTpEJEx0
二時間くらい全裸で正座待機してるがまだ待てるぜ
612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/04/21(木) 00:14:03.46 ID:rySAqIjno
寝たんじゃねぇの
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/21(木) 00:16:33.15 ID:56Uf7Zvjo
>>1なら俺の横で寝てるよ
614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/04/21(木) 00:21:07.30 ID:KNTpEJEx0
インデックスなら俺の膝の上で寝てるよ
615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(-長野) [sage]:2011/04/21(木) 00:25:56.76 ID:Ft9CLXpAO
一方通行ならソファで寝てるよ
616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage ]:2011/04/21(木) 01:05:45.20 ID:y2xsulnp0
幼女だから寝落ちしても仕方ないな
617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/21(木) 03:10:26.38 ID:f4c2sQoDO
上条さんなら俺がさらったよ
618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/21(木) 07:30:46.88 ID:E0URvKHn0
朝…だと?
619 : ◆ObanGQEW7M :2011/04/21(木) 07:51:49.93 ID:HLW3jV2AO
うわぁぁあ!朝だぁぁあ……!!

すみません、本当にすみません。今し方起きたところです。寝ないようにと半裸で居たのに寝ていました、自分が信じられません。
残念ながらこれから一日を始めないといけないのでまた夕方に帰ってきます、すみませんでした
620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/04/21(木) 07:59:29.04 ID:hdowRPWAO
半裸の幼女なら仕方ないな
621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/21(木) 08:04:42.33 ID:E0URvKHn0
おはよう
ああ、半裸の幼女なら仕方ない
622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/21(木) 08:14:18.38 ID:AL/B49n90
半裸の幼女とこれから夕方まで、と聞いて
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage ]:2011/04/21(木) 16:39:38.33 ID:y2xsulnp0
>>1のCVは小萌先生辺りでいいのか
624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/04/21(木) 17:09:25.14 ID:uWjMx55no
>>1ペロペロ
625 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/21(木) 19:08:12.95 ID:HLW3jV2AO



ガチャガチャ、という響きは、やがてコンコンとドアをノックする音に変わる。

端から見たら組み敷かれているように見える態勢で、インデックスは先ほど玄関に鍵が置いてあったことを思い出す。
ここに置いて行ってしまったおかげで、突然の遭遇は免れた。

しかし、まだ状況を確認しただけで事態は深刻なままだった。


「……帰ってきた……」

「――可及的速やかに答えろ、俺が隠れられる場所はどこだ」

「……ベランダ、ベランダに行って」

両者共に張り詰めた声。
一方通行は返事を返さなかった。

俊敏に、無音でインデックスの体から退く。
滑車が滑る音にも恐怖を感じ、薄く白いカーテンをすり抜け、ガラスと布の間に立ち、静かな声で告げる。


「俺は買い物にでも行ったことにしろ」

「うん――、あっ、杖と鞄」

指摘する声に従って、それらの物品的証拠と成り得る物をかき集める。
そして、慎重な手つきで窓のロックを外し鍵を指差した。
626 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/21(木) 19:09:35.70 ID:E0URvKHn0
間男www
どうみても間男www
627 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/21(木) 19:11:49.29 ID:HLW3jV2AO



「閉めろ」

「うん……」


ととと。

白く長い布を揺らす彼女が近づいて来た事を確認して、一方通行は窓からベランダへと踏み入れた。


「……さみィ」

午後とは言えどやはり2月。
北風が首を撫でていく。


「とうま、多分忘れ物だと思うんだけど……」

「……そいつの約束反故になってたっつゥンだったら、折を見て帰るわ」

「……うん」

そろそろと扉が閉じられた。
628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/04/21(木) 19:13:21.68 ID:uWjMx55no
KJさんは仲の冷め切った旦那のようなポジション
629 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/21(木) 19:15:51.63 ID:HLW3jV2AO



「今出るんだよー!」とインデックスの声がしたのを聞いて、一方通行はなるべく奥へ進むことにした。

たどり着いたベランダの最奥は、位置的には壁を通してベッドと一直線上なのだろうか。


二方向に壁があるその場にゆるゆると腰を下ろし、チョーカーのスイッチを切った。


「……」


暫くして、足音が増える。
小さく軽い足取りと、体重をしっかりと地面にかけていると思われる2つに。


「……」

興味を持ってしまったのは仕方の無いことだ。


壁に後頭部を当て、耳を澄ます。

「――たの?」

「―い―わ――た」

「それは―――――ね」

やはり、好奇心は身を滅ぼすと言うからなのか、とても文としては聞き取れなかった。
630 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/21(木) 19:19:22.04 ID:HLW3jV2AO



現在、少女と会話するのは明瞭には聞こえないが多分――少年の声だ。

どこかで聞いたことが無いか、と考えたのだが、知っているのは名前とぼんやりとした声色のみ。
情報量が少なくて、特定などには至らない。

若しくは気づかないフリかもしれないという思いさえもした。


一方通行の知る男の中にまともな者――完璧に光の側の人間は殆ど居ない。
言えた義理ではないと理解しているのだが、彼らはどこかしら薄汚れている。

守りたいという大義はあれど、罪人は罪人で、咎人は咎人で、悪人は悪人だ。
決して賛美されるような存在ではない。

そして、そんな者が彼女の同居人だとしたらどうすれば良いのだろうか。
631 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/21(木) 19:22:00.55 ID:HLW3jV2AO



(あいつは本当に見る目ねェし)

それも俺を見つけたぐらいに最悪だ、と嘲笑して意識を室内へと戻す。


体が冷える。
今になってみれば、薄ら寒いあの部屋もこの惨めさなんて比ではなかった。

(……)

この部屋の主は、居城をうろうろ動き回っているだけで、向かってくる兆しは無い。
(……来ねェな)

流石の第一位も、こんな街中でクライミングにチャレンジするのは嫌だった。
かと言ってベランダで身を潜めるのが好きなわけでは無いのだが。
632 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/21(木) 19:24:07.12 ID:HLW3jV2AO



それにしても、彼が帰って来たときの自分の慌てっぷりと来たら尋常な物ではなかった、と自嘲せざるを得ない。

確かに接触は歓迎するところではないが、あんなに怯える必要も無かったのではないか。

炒飯の証拠は胃酸が消滅してくれたのだし、立場としては知り合いの少女に家庭教育を施してやる、気の良い一青少年なはずである。


そうだ。
実はあまりやましいことなど、と続けようとして

「……あれは」

気付いてしまった。


ほんの数分前。
彼女をうつ伏せに押し倒して、意気揚々とハサミを持っていたのが誰かということを。
633 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/21(木) 19:27:00.26 ID:HLW3jV2AO



少女は戸惑っていたし、確か、足を隠す布も少しはだけていたような。

それを傍から見たら、狂人が敬虔な修道女に乱暴しようとしている図にしか見えないと一方通行は思った。

(うわァ…………)

それになお、彼女の同居人が帰って来たら慌てて逃げ出したこと。
寒空の下外気に身を晒しながらそれに耐え、また2人だけの時間が出来ることを待っている事実。


こんな男は、正月に見た昼ドラで女性から散々に罵られていたはずだった。

「……なンつゥか」

それを見て、世の中にはこんなに情けない男が居るものかと逆に感心したのだが、まさか自分に合致するとは。




「……情夫みてェ……」


どうしようもない心持ちに、一方通行は頭を抱え込むことしか出来なかった。
634 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/21(木) 19:29:53.32 ID:HLW3jV2AO



ややあって、左からずるずると音がした。

扉が開く。


「……とうま、行ったよ?」

ひょこっ。
顔を覗かせるインデックスの顔は彼には自分と対照的で、妙に落ち着いているように思える。

「……」

「……危ないところだったね」

「……あァ」

その場に立ち上がって、腰あたりのコンクリに触れた部分を手で叩く。


ひょいひょい、手招きされるままに室内へ戻った。
先ほどよりも、この部屋独特の匂いが濃くなっている気がした。


「とうまってば、お財布忘れてっちゃったみたいで、遊びに行くから取りに来たんだって」

「……そォですかァ……」


「何か嫌な事でもあった?」

そう聞いてこられても、まさか素直に自分が愛人みたいだと思いましたまるだなんて言える筈がない。

髪を切る、という約束も忘れたフリをする。
投げやりな態度で早くやれ、と参考書を指差して机に肘を付いた。


深い溜め息。
その後の、肺一杯に広がる湿布と薬の匂いに、一瞬だけ咽びそうになった。
635 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/21(木) 19:32:09.72 ID:HLW3jV2AO




***


セブンスミスト内というのに、寄りにもよってアクアリウム専門店の亀のゲージを見つめる白い男女が一組。

悠々と動き回る緑に視線を合わせつつ、インデックスは問いかける。

「あ、後でDVD借りてって良いかな?」

そうして視線を合わせようとしたのだが、どちら側の隣にも彼は居なかった。

少しだけ遠くを見る、一方通行が業務用のクーラー前でぼんやりとしている様を見つけることができた。

「何借りンだよ」

「にょんたんといっしょ」

「――あれは園児が楽しむ用のアニメだろ」

「色んなジャンルを借りてくのもなかなか面白い――って言うのはとうまと私の総意なんだよ」

水槽内の亀が華麗にバック宙を決め、同時に可愛らしい感嘆の声が挙がった。


コッ、カッ。

硬質な床を杖が叩く。
636 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/21(木) 19:34:10.13 ID:HLW3jV2AO



そう言えば、ここ最近彼女の同居人とは会っていない。


「あの男は何してンだ?」

「とうまはね、今は確か補習と検査でてんてこ舞いかも」

そのインデックスの言葉に、迂闊なことは言うべきではないと分かっていた。
しかし、何と反応すべきか戸惑う。


「あいつ、睡眠とってンだよな?」

結局、無難なことしか言えなかった。
そして、よりにもよってこの話題を出す必要も無かった。

関与する隙間は一分も無く、選択は“彼”の自由だ。
したくなかったとしてもどうすることはできないし、してはいけないという不文律がある。

それに何より、一方通行も彼の立場に置かれたとしたら同じ行動を取っているのではないか。

と、まで考えて返ってきた答え――それは。
637 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/21(木) 19:38:50.02 ID:HLW3jV2AO



「うん、最近は日記書いたらいつでも寝ようとしてるかも」

頭をスピードが付いた槌で打ち付けられたような、揺さぶって来るような衝撃。


「寝たくて仕方が無いんだって」

「ンで、オマエは――」

冷房が効きすぎているぐらいの店内。
しかし、汗が体中いたるところから噴き出るような。
寒気なのだろう。


「勿論、止めたりとかはしてないんだよ?」

「……」

それは、一番残酷で優しい答えかもしれない。
勿論、彼女を責めるつもりは一つも無かった。

一方通行の悲喜入り混じった表情、それをガラス越しに読み取り振り向く。


「――まァ、オマエがそォすンのも当然だ」

「どうしたの?」

「いや、俺達には関係ねェよ」

妄執ごと振り払うように頭を揺らす。

一方通行は続けた。
638 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/21(木) 19:41:31.04 ID:HLW3jV2AO



「色ンなジャンル借りてってやれ。 ――あれが何を好むかも分かンねェし」

「うん! とりあえずね、にょんたん・カナミン・ぷりくまー・マイ〆ロ・ブレムン・おジャ魔女みそら・めたモテは借りようかなって」

「揃いも揃って女児向けアニメばっかじゃねェか」

この夏で、あの女に毒されすぎじゃないかと呟く彼に向けられたインデックスの視線。

どことなく冷たかった。

「何だよ、その目はよォ」

「結構マイナーなのも挙げたつもりだったんだけど」

「あァ?」

「……何で少女向きアニメだって知ってるの? こっちでは通常放送だってしてないんだよ?」

「…………」

その的を得すぎた指摘に、打ち止めの影響だと言い訳し忘れ黙りこくるしか出来なかった。
639 :終わり :2011/04/21(木) 19:44:46.33 ID:HLW3jV2AO
答えは情夫でした。
あと、タンクトップとホットパンツは半裸とは言ってはいけないらしいです。いやいや、紳士のみなさんごめんね!

>>623
沢城さんでお願いしたかったり
640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/04/21(木) 20:11:44.29 ID:KNTpEJEx0
乙!

インデックスがなんかやけに寂しそうなのがひっかかってて辛い…
上条さんもしかして…
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2011/04/21(木) 20:16:27.08 ID:ehvpiMcko
間男過ぎて笑えるww
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/04/21(木) 20:17:04.32 ID:AR6le5yAO
乙!
一方さんは上条さんのこと知ってるんだよね?
盗み聞きしてるシーンでちょいこんがらがった

しかしまぁ間が悪いなww
643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/04/21(木) 20:19:09.92 ID:WyrP8EE7o
一方さんて上条さんのこと気付いてないんじゃないの?
良く分からん
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/21(木) 20:23:30.39 ID:56Uf7Zvjo
一方さんマジ間男wwww
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/21(木) 20:28:13.75 ID:E0URvKHn0
乙!
間男じゃなくて情夫かww

時間軸がエピソードごとにバラバラなんかな?意図あってのことだと思うけど
ちょっと混乱するな
646 : ◆ObanGQEW7M :2011/04/21(木) 20:30:53.95 ID:HLW3jV2AO
返レスし忘れていたのと、表現紛らわしかったので説明を。

***の後は、夏パートで本編より5ヶ月ほど先が舞台です。なので、知っていることだったり発言だったり意見が違うのですが御承知いただけると幸いです

>>583
完全に忘れてました、ご指摘ありがとうございます
647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/21(木) 20:37:13.25 ID:FwhldRFN0

一方さんが間男過ぎてww
情夫なんて言葉すっと思い浮かぶ一方さんパネェっす

上条さんはどうやら女児向けアニメを好む女性と親密なようで
となるとインデックスは……

それはそれとして挙がったアニメの元ネタ全部分かるやついる?
カナミンは別として、ノンタンとおジャ魔女ぐらいしか分からなかった

>>646
あー、なるほど
一応「この夏で〜」って書いてあるけど、場面転換の時点で季節だけでも書いてくれると分かりやすいかも
648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2011/04/21(木) 20:52:29.10 ID:6+aNBZ0Z0
プリクマーはプリキュア
マイ〆ロはお願いマイメロディ
ブレムンは多分ブレザームーンだからセラムン
めたモテがわからない
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage ]:2011/04/21(木) 20:52:38.28 ID:y2xsulnp0
おつ。
修羅場回避かと思いきや、なんか不穏な感じだな
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/04/21(木) 20:53:04.91 ID:56Uf7Zvjo
ぷりくま:プリキュア
マイ〆ロ:マイメロ

なのはわかるんだが
651 :名無しNIPPER [sage]:2011/04/21(木) 21:01:54.88 ID:KeC0Snqpo
まさかこのスレで考察することが出てくるとは思わなかったwwwwww
たぶんめたモテ→めちゃモテ委員長っていうちゃおだかの漫画、ソースは俺の従妹(小5)

ってか一方さんの言った、女に影響されてるってのはインデックスを指して言ったと俺は思ったけど
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/21(木) 21:04:06.51 ID:56Uf7Zvjo
目の前にインデックスがいるのに「あの女」っていうのはおかしくないか?
ここはやっぱり未だに影も形も出てこないインデックスの「親友」だと思うが
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/21(木) 21:05:59.00 ID:995QBoQio
普通に美琴だと思ってた。
上琴前提の、一イン話かと。
654 :名無しNIPPER [sage]:2011/04/21(木) 21:07:32.24 ID:KeC0Snqpo
ああ、言い方間違えた
『あの女』に影響されてるのがインデックスじゃねって思ったんだ

ってか、CVみゆきちって>>1は真紅みたいな幼女なのかね
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/04/21(木) 21:08:07.29 ID:KNTpEJEx0
美琴のことなんか念頭にすらなかったわ
そんな気配ないけどなあ
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/21(木) 21:30:47.14 ID:VhXl9Jcgo
上条さんの置かれてる「立場」ってのも気になるよな
もうこのスレ半分以上消化されてるのにあかされてない事実が多すぎる
いいぞもっとやれ


それにしても、タンクトップ+ホットパンツのCVみゆきち幼女か…
半裸よりもけしからんな。うん、実にけしからん。
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/04/21(木) 21:37:53.88 ID:MjyhqRWPo
>>507の時点でまだ全体の6分の1も進んでないらしいからな
まだまだ続きそうでうれしい半面、ぼかされまくってる真相が気になってもやもやするww
658 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/21(木) 22:05:12.45 ID:f2iACF5i0
あああああ 
ここでの一方さんとインデックスに2828する反面、
自分が上条さんにどういうスタンスをとって欲しいのかわからなくなるよ…

ところで靴には気づかなかったのかーセフセフ

659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/21(木) 22:22:09.51 ID:f4c2sQoDO
靴は下駄箱にいれたんじゃないっけ?
間男通り越して情夫とかさすが俺らの一方さんは発想が違った
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/21(木) 22:52:56.71 ID:4rkETVOh0
乙乙
なんか不穏な空気だな・・・はやく先が見たいぞ
俺は吹寄かとおもった
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/21(木) 23:04:30.03 ID:VrKC1Umyo
おつおつ
インちゃんの親友って誰だろう
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国・四国) [sage]:2011/04/21(木) 23:27:47.27 ID:FLWS2N3AO
乙です!情夫にもってかれた感がww
しかし…これは上条さん、男としてきっつい状況っぽい?インデックスちゃん、可愛いは正義だが、罪でもあるな
ここの一方さんも男子してていいな
でも情夫はwww頑張って堂々と部屋にお邪魔してくれww
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/21(木) 23:33:05.57 ID:p/cZ1N1IO
「インデックスの親友。それは。わたし。」
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/22(金) 00:23:38.91 ID:cAo2M9UI0
舞夏じゃね?
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/22(金) 03:43:20.01 ID:DSmeV3S30
ああああもう白コン可愛いよ白コンんんんんん!!!

この萌えが疲れを癒してくれる…ここが楽園か
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/04/22(金) 06:05:46.68 ID:WxkEq1hAO
>>639
そんな!まさか>>1がばるかん後輩だったなんて!
667 :名無しNIPPER [sage]:2011/04/22(金) 07:53:02.14 ID:YG5Df0GAO
おーつ
日記書いちゃうなんて上条さんマジメルヘン
あと上条さんのお相手も気になるところだ
668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2011/04/22(金) 13:50:54.86 ID:FWIJ5tlXo
>>667
メルヘンっていうかたぶん伏線だろう

なんとなく予想はしてるがドキドキしすぎて続きがはやく読みたい
669 : ◆ObanGQEW7M :2011/04/23(土) 17:46:27.38 ID:d/BD/4HAO
いつも感想ありがとうございます、一応重要人物順に登場予定(例外:司書)なので他のキャラの出番も待っていただけると嬉しかったり。
まどかとあの花のダブルパンチで目が重たい、そんなこんなで今晩投下予定です。

>>647
了解です、ご指摘ありがとうございました!
670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/04/23(土) 18:11:28.99 ID:bkFIIitAO
wwktkようじょ!
671 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/24(日) 00:36:45.36 ID:8FtG454AO



受験まであと2週間も切った、2月末。
4時代の相変わらず人の居ない図書館にて。


シャッ、シャッ。

一方通行は答えの冊子と綴られたノートを見比べている。

彼の持つ、赤いペンの先が上質紙を走る。
大抵の音は同じ長さ、イコール丸であり、短いときは直線、即ち誤答を暗に示している。
ということを、最近インデックスは学習したばかりだった。


「ン」

一通り答え合わせを終えた一方通行は、正面へ開いたままのノートを差し出した。

「あ。 ありがとー」

「で、問2の(2)が両方間違えてンぞ」

「ほんと?」

「問題の写し間違えじゃねェ?」

「あ……、8が9になってるかも」

「解き方は合ってる」

「うん」

消しゴムで該当箇所を擦り、数回シャーペンが踊る。

カリカリ、と芯が引っ掻かる音がした後。

「これでどうかな」

そうして渡された答えは、次こそ正解だった。
672 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/24(日) 00:38:36.06 ID:8FtG454AO



(……何だァ?)

理由は定かではないが、首にちょっとした刺激――感覚としては静電気に近いようなものだが、一方通行はそれを感じていた。
「はぁー……、頭使うと疲れちゃうね……」

伸びをするインデックス。
瞼も下がり眠そうな顔をしている。

「4月からは毎日こォなンだよ」

「そうだね……ふぁわ……。 大変だけど早起きもそろそろしないと……」

「同感だなァ……」

低血圧気味&趣味が睡眠の少年にとって、早起きは天敵と言っても良い存在である。
しかし、住居を変えずに通学することにしたので否が応でも順応しなくてはいけなかった。
毎日モノレールに30分ほど揺られなくてはいけないのかと思うと、少しなんてものではない、激しく憂鬱だ。
673 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/24(日) 00:40:54.46 ID:8FtG454AO



「そォいやオマエさ」

「どうしたの?」

「住むとこどォすンだよ、あの学校に専用の寮はねェが」



「別に、そのままなんだよ?」


さも当然とばかりとの即答な返答。



「…………」

あまりにナチュラルだったので「あ、そォなのか」と一瞬流されかけたが


「……待て待てェ」

「どうしたの」

「ンじゃァ、あそこに間借りすンのは」

「止めないんだよ。 私もとうまのこと心配だし、あっちも『インデックスがこの街で一人暮らしだなんて絶対に無理』って退かなかったんだけどね。 ……ちょっとムカッと来るけど、……まあ、確かにそうかも」

「いや、倫理的に問題ねェの?」

「りんり?」


ポカンと瞬きする少女は事態の特異性に気が付いていないのだろうか。

聖職者とは、こんなに眩く純粋な生物なのか、目も眩むほどである。
674 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/24(日) 00:44:39.31 ID:8FtG454AO



まだ、余所者を匿っていると言うのなら思春期の男女が同棲していても不思議では無い。
しかし、しかしだ。

インデックスが順当に合格をして、高校生同士の同棲となればニュアンスは全然変わって来る。


一方通行が回想するのは、この間訪問したあの家。

何だか妙に薄暗く、寒く感じられたのは何らかの補正か否か。


「……あの狭い部屋で同棲?」

「そうなんだよ? お互いに心配だし」

「あれか、オマエらは血縁なのか」

「いやあ、違うと思うんだよ」


だとしたら、種の生存本能にかこつけてうんたらかんたらーという展開であってもおかしくない。
いや、むしろ何故今までつっこまなかったのか、シリアスそうな境遇に配慮したからなのか。

ティーンエイジャーなんて間違い盛りの年頃だろうに。



手が寂しくて、下に置いてあったボールペンを両手で弄る。

きゅい、きゅい。
金属音が妙に心地よい。
675 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/24(日) 00:47:03.18 ID:8FtG454AO



「……ってこたァ」

一方通行の思考は加速していく。


(間違いを犯しても容認される? よりにもよってこの街で? それにあいつは重要人物じゃねェのか?)


「あくせられーた? なんだか顔がとっても白く……」

端正な顔を歪ませ、数分考えた。

(容認される……、疚しくない……、逆に公認ってことかァ?)

「……」

そして一つの結論。

幾多の考えられる解から、腑に落ちるのはこれだけだ。
676 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/24(日) 00:48:21.50 ID:8FtG454AO




「……恋人?」

即ち、まだ見ぬ彼と目の前の少女が恋人である可能性。
そうだとしたら、例の少年に対してなかなかデリカシーの無いことをしていたのかもしれない。


(……ま、言わねェ方が悪いってことで)

重たく暗くて異臭がするような感情を胸に湛えながら、彼女の目を見つめた。

「――え?」

口の中で溶けてしまうような、小さくか細い声だったはずなのに、どうしてか気付いたらしい。


ゆらり。


長い長い銀髪が、陽光の反射の向きを変えた。
677 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/24(日) 00:50:15.14 ID:8FtG454AO



「誰と誰が?」

「オマエと……同居人」

「――私ととうま?」

「ちげェの?」


「――――」


その時、合っていたにしろ間違っていたにしろ彼女の性格からして、呆れ顔だったり照れ顔、若しくは怒った顔をするのかと一方通行は思っていた。

若しくは彼自身、そういった余裕の無い少女の反応を待っていたのかもしれなかった。



口を噤んで、それから2・3回、インデックスは誰にも分からないように何か呟いた。
やはり少年には何も分からず、聞こえたのは“もう一人”だけだ。
678 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/24(日) 00:55:23.32 ID:8FtG454AO



「――いやあ、あくせられーた。 残念ながら私が忘れでもしないかぎり、その展開はもう二度と来ないと思うんだよ」

破顔一笑、どこか歌うような節さえあった。


のにもかかわらず、何故、拒絶だけを抽出して強く感じたのか、自分で自分が不思議だった。



「そォなのか」

「うん。 私たちの関係を適切に言うのはとても難しいけど……、何て言うのかな、家族でもあり加害者と被害者でもあり――?」


あまりに馴染みのある状況。


家族、そして加害者と被害者の2つの要素を満たす彼女たち――と自分。
確かに、間違っても恋になんか堕ちないだろう、断言しても良い。

そしてまた、一方通行には自身の心臓が動く間に、人に思慕の念を抱くことすら想像出来なかった。
679 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/24(日) 00:58:54.36 ID:8FtG454AO



(業の深い俺が、そンな感情をアイツらに向けるだけでも罪深くて唾棄すべきことだ)

打ち止めを始めとする妹達には、やはり愛されて幸せな人生を送って欲しいと思う。

だからと言って、それをするのが自分である必要はどこにもない。
資格もない。

ただ唯一許されるのは、今回の復学のように彼女たちに認められ、そしてまた彼女らを影からバックアップするための行動のみだ。

それを、短く言うとしたら――。


「とうまには私が関与出来ない所で、人間としての最高の幸せを手にしてもらいたいっていうか――うん、なかなか比喩って難しいかも」

「オマエがなンて言いたいのか、ニュアンスは何となく分かる」

「ほんと?」

「――気持ちも分かる」


少女の表情はぱあっと華やいだ。
680 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/24(日) 01:05:34.53 ID:8FtG454AO



「流石、あくせられーたは物わかりが良いんだよ! とうまにも見習って欲しいかも」

「何で上から目線なンですかねェ」

「だってね、最近のとうまはいつでもボーっとしてて」

「あァ、ハイハイ。 分かりましたから」

と、軽口を叩きながら、もう一度少女の言葉を反芻する。


『自分が関与出来ないところで、どうか“人間として”幸せになって欲しい』


(――はっ、これはどォいう巡り合わせかね)

一方通行が“妹達”に思うものとそれは、どうやら等号で結べるらしかった。

またもや発見してしまった類似点。

まさか、この可憐で無垢な少女が大罪を犯しているとは思えないので、思い込みに依るものが多いだろうと彼は思う。
そうだとしても、深入りしないのが暗黙の了解でありポリシーなのだから早く誤解が解けると良いと考え、そこでもうこの話題は止めることにした。
681 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/24(日) 01:21:32.08 ID:8FtG454AO







彼は知らない。



『とうまはどこ?』

かつて、彼女が原因で、上条当麻が二度目の死を確実に迎えたことを。



彼は、知らない。



『――今の彼は、きっと私と同じような――不確かで、変動する、そんな存在』

かつて、上条当麻が上位の界に成り上がったことを。




――彼は、知らない。



『……とうま、ひょうか……。 ごめんなさい……』

かつて、彼女が上条当麻と風斬氷華へと残酷な選択を押し付けたことを。





――彼は、何も知らない。



『――ひとつ、決めたことがあるんだよ』


かつて、彼女が自分に対して決めた絶対のルールを。
贖う最中である罪を。





そうして彼女の時間が過ぎてきたことを一方通行は、何も知らない。


未だ、ぴりぴりとした刺激を受け続けていた皮膚を軽くなぞり溜め息をついた。


春はもうそこまで来ている。
682 :終わり [saga]:2011/04/24(日) 01:25:36.32 ID:8FtG454AO
また寝かけました、いやいや危ないところだ。
書き忘れてたんですが、この話はまるっと新訳とは無関係です。
そこも追々頑張っていきたいなーと思ってるので、ちょっとだけツッコミは保留でお願いします!
それでは、お付き合いいただきありがとうございましたー。
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/24(日) 01:26:47.24 ID:TzwjrFTL0

謎が尽きなくて頭がヤバい
684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/04/24(日) 01:27:15.57 ID:3DjaHlVf0
GJ!

やっぱ上条さんはそういうオチかよ!
畜生、危惧してたことが!危惧してたことがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
畜生、一通さん幸せにしてやってくれお願いします
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/24(日) 01:30:11.63 ID:yiyae24H0
乙!

上条さああああああああああああん!!
氷華まで何かあんのか……
気になりすぎて心像バクバクする
686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/04/24(日) 01:30:15.86 ID:qhZEninAO
乙ー!

一体わたs……彼女の身になにがあったのか、続きが気になるじゃなイカ
687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [『sage』]:2011/04/24(日) 01:32:10.17 ID:4NxCnOHW0
乙!
上条さんがどうなってるのか気になるなー
688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage ]:2011/04/24(日) 01:47:02.89 ID:AOTzWcgd0
やっぱ平和な日常なんてないんかぁぁぁぁぁぁぁ!!
でも風斬にも出番がありそうだよ! やったね?
689 :名無しNIPPER :2011/04/24(日) 09:48:23.22 ID:0vU7Z3G7o
おつおつ
> 残念ながら私が忘れでもしないかぎり
って凄い皮肉きいた台詞だよなぁ……、ってか一方さんとインデックスが似すぎててなんか物悲しい
あと風斬の出番は全裸待機してていいんですね?
690 :名無しNIPPER [sage]:2011/04/24(日) 09:49:00.09 ID:0vU7Z3G7o
ごめん、間違えてageちゃった
691 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2011/04/24(日) 10:21:44.52 ID:PN9hDojYo
あー、風斬そげぶった未来な悪寒…
692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/24(日) 11:17:05.64 ID:RApmGf1DO
乙!なんだか胸がチリチリするぜ
693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/24(日) 13:03:38.87 ID:BmOy/YSg0
通行止め番外通行欠陥通行電磁通行
↑のジャンルを否定するつもりはさらさらない、むしろ大好物だけど
それでもここの一方さんのスタンスのがひどく自然だよな。いろいろ切ない

そしてインさんの過去、上条さん風斬さんの現在
なんかやたら不吉で薄暗い雰囲気は大丈夫なのかどうなのか
694 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(佐賀県) [sage]:2011/04/24(日) 14:28:24.42 ID:kTyVaz39o
>>693
> 通行止め番外通行欠陥通行電磁通行
> ↑のジャンルを否定するつもりはさらさらない、むしろ大好物だけど
> それでもここの一方さんのスタンスのがひどく自然だよな。いろいろ切ない
なんとか通行ものの一方通行のスタンスはこのスレのも含めてどれも同じだよ
違うのは誰がそこに踏み込んでそげぶするかでしかない
695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/24(日) 19:24:54.15 ID:xm1spB+lo
電磁通行ものはレベル6の実験そのものが無かったりするから同じ
スタンスとは言い難いかも

それにしても今回は物語の核心に迫る回だったな
この話意味深な台詞が多いから一字一句見逃せないわ
696 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(佐賀県) [sage]:2011/04/24(日) 21:38:29.89 ID:kTyVaz39o
実験無しの一方通行ってトラウマ無し、弄れてない、能力際限なしのアルビノ最強イケメンだろ
もやし以外の欠点皆無の完璧超人じゃね?
697 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/04/24(日) 21:54:27.79 ID:4hQaEd8so
レベル6って言葉にホイホイついて行っちゃうけどな
698 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(佐賀県) [sage]:2011/04/25(月) 00:22:16.38 ID:EsoEgCtwo
その理由が誰も傷つけたくないという優しさから来てるんだけどな
699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/04/25(月) 00:29:10.99 ID:VGfruouq0
しかも調子に乗りまくりだしもやしだから魔術師と当たったら死ぬけどな
700 : ◆ObanGQEW7M :2011/04/25(月) 00:35:34.53 ID:lGQrPe2AO
あまりにバカバカしい内容ですが、もう少ししたら投下します
701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/25(月) 01:26:44.03 ID:zNrTrDY50
寝落ちたかな
702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/04/25(月) 01:28:58.69 ID:ESJbTBY/o
幼女だから仕方ないな
703 :起きてるもん ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/25(月) 01:31:34.40 ID:lGQrPe2AO



麗らかな陽気が眠気を誘う、そんなお昼前。


「ねえ、あくせられーた」

「あァ?」

「“ガンカケ”ってどんなことをすれば良いのかな?」

「願掛け? まァた非科学的な」

「あなたが科学の粋だとしたら、私はアンチ科学の申し子だからね!」

「あァ、はいはい」

この場合のアンチは、“反”なのか“非”なのかは定かではない。
インデックスのムスッとした表情を鑑みるに両方正解と言っても良さそうではあった。

「それで文献を見るにね、私としては“ガンカケ”とは大地の生命力も生かした日本的な儀式の一種だと認識しているんだよ」

「大地の生命力、ねェ……。 日曜朝8時半に毒されすぎじゃね?」

「残念ながらハートゲットはもう終わったんだよ」

「わりィ」
704 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/25(月) 01:33:10.56 ID:lGQrPe2AO



今時胡散臭い自己啓発家でも言わないだろう、花屋や林業関係者が聞いたら失笑ものに違いない。

またよく分からない電波発言のお出ましだ……、一方通行はそう嘆息しながらも問いに答えた。


「何でも良い、やる気あンならオマエの好きなモン絶っとけ」

「好きなもの……」

途端、彼女を取り巻く空気が鋭さを増した。
どういう意図があるのやら、何やら体をくねらせている。


「いや、食べないのは無理! 死んじゃうんだよ!」

「別に断食しろだなンて言ってませン」

「だって、好きなもの絶てって」

「特別好きなモンで良いンだよ」

「そんなこと言われたってぇ! みんな好きなんだよぉ!」

「知るか」

インデックスの顔が横を向く。

実際には1メートル以上の間隔があるのでフリにしかすぎない。
のだが、一方通行が遠隔で頬の位置を叩いたところインデックスもノり、エア平手打ちの完成だった。
705 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/25(月) 01:36:28.45 ID:lGQrPe2AO



「じゃあ、次点で好きなもの……」


目の前の銀髪少女の好きなもの。
食べ物、本、楽しいこと、そして――。


「あの、水曜6時からの」

「…………か、カナミンのことかなあああ!?」

出来るだけ穏やかに伝えたのに、怒号が返ってきてしまった。
受験が近いせいか妙にピリピリしているそんな少女。
彼女の地雷はどこにあるのか、彼にはさっぱりだ。


「何だよいちいち溜めンなうっせェ。 つゥか今からだったら、たった2回見れねェだけだろ」

……待て、確か昔にもこんなことは無かっただろうか。

(俺が幼児向けの設定だろォってつついてやろォと思ったら、すげェ勢いで論破されたンじゃ……)

言ってから、明らかに失言だと言うことに気づくも時既に遅し。

首がごきっ、ごきっと鳴った。
もちろんインデックス側からである。
706 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/25(月) 01:39:57.11 ID:lGQrPe2AO



――がるぐるぐるる

「たった……、2回……?」

「いや、ちげェ」

「……この2回にどういう意味があるのか、あくせられーた、全然分かってないかも……」

「だ、ダークストロンガー三世がかなみの出生について思わせぶりなことを言って幕引きだったンだろォ?」

しょっちゅう垂れ流される、カナミンのダイジェストを要約するとまさにこの通りであって。
一方通行も100点の答えを言ったつもりだった。

「その通り。 と、言いたいけどね……。本質は全然捉えられてはいないんだよ」

「はァ……」

分母は3ケタでは無いらしかった。
707 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/25(月) 01:47:51.04 ID:lGQrPe2AO



「そもそも、ダークストロンガー三世がかなみの亡くなったとされる兄と酷似するサフラン公爵の父って言うことから、かなみとダークストロンガーの血縁関係は指摘されてきた、ああ勿論公式本からでも。 きっと彼らは親子なんだろうなって私も思ってるんだよ。

だから、むしろ問題はそこじゃなくて、何故ダークストロンガーとサフランは闇サイドに堕ちてしまったのか、しかも幹部クラスの悪に。 そして、かなみだけは光に留まれたのか。 お母さんをはじめとする井出楠家の秘密。
全てを知ったかなみはどういう選択をするのか。 兄や父よりも世界を選択するのか。 それとも愛する人との世界を取るのか。 魔力耐性のあるかなみにとっては、魔族と共存するのも簡単なことだからね。 自分を裏切るかもしれない世界よりは、先のない背徳的な愛に燃えるお年頃かも。


あとね、制作サイド的にはもし、かなみとサフランとが兄妹だとしたら前話でディープキスまで済ませちゃったためバリバリ近親相姦になっちゃうけど、そこはどう処理するのか。 それと、ピーコック夫人役の声優が産休迎えるけどどうなっちゃうの!?ってのがこの20話でねー」



「――」

これは日本語で正しいのか、一方通行は不安だった。
708 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/25(月) 01:52:00.80 ID:lGQrPe2AO



こうなってしまったインデックス(オタデックスと一方通行は呼んでいる)は、それこそ息つく暇ぐらいではないとこちらには喋らせてはくれない。

作監がああだ、原画マンがこうだ、絵コンテがどうだと語る彼女の口調は淀みない。


「――オマエ、カナミン絶て」

棒読みに、目を見据えて告げてみる。
とりあえず正気に戻す効能はあるらしかった。


「……うおっと」

異様なぎらつきを見せていた瞳が、いつもの澄み渡った光へと戻っていく。


「……トリップしてたぞ」

「ごめんごめん。 えーと、それでどうして?」

「神頼みすンには俗すぎるだろォよ、それにそンな大切なモン賭けるンだったら説得力もあンだろ。 ってかそンなに執着してて受かるわけねェし」

「やっぱりそうなのかなあ?」

「そォだ。 つゥか、オマエは自分の信仰する宗教に殉じろよ」

修道女がこれでは、主も草葉の影で泣いているだろう。

彼としても、何千年も前に死んだ男に同情する日が来るとは思わなかった。
709 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/25(月) 01:53:23.50 ID:lGQrPe2AO



「だって、巫女服ってとっても可愛いかも?」

「知るか、とりあえず何事もサブカル目線で見ンのは止めろ。 神道がかわいそォだ」

「一方通行の巫女服なんてなかなかシュールかも……、あ、処女しか着れないんだっけ。 これは失礼しちゃったんだよ」


ペロリ、と舌を出して謝るインデックス。

その顔に苛立っているのかもしれないと彼は思った。
ジリジリと、首の刺激が一層強まるのだったから。



彼女がこんなにもハイテンションな理由としては、勉強のし過ぎと共にもう一つ。
水筒の中の強炭酸コーラを飲んだことにあったのだが、残念ながら一方通行は気づくことは出来ない。


「……春、だからかァ……」

今日は3月も第1日。
カレンダーの上の真っ赤なXデーまでは、あと9日ほどだった。
710 : ◆ObanGQEW7M :2011/04/25(月) 01:57:04.45 ID:lGQrPe2AO
三主人公が実際に居たら、何となく一番モテるのは案外浜面だったりするような
こんな夜にすみませんでした
711 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/04/25(月) 02:05:07.08 ID:yAjssKsG0
乙乙

まぁ、ヤンキーはモテる。
ヤクザの娘とか家出っ娘とか。
滝壷みたいな娘にもモテるだろう。

うん、浜面エクスプロージョンしろ
712 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/04/25(月) 02:08:01.48 ID:VGfruouq0
GJ
平和な日常でいいんだけどなんか心臓がきゅんきゅんする
辛い…

あと浜面は爆発しろ
713 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/25(月) 02:08:02.58 ID:zNrTrDY50

オタデックス……設定や台詞を一言一句忘れない、か
羨ましい。実に羨ましい
714 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/04/25(月) 02:14:42.10 ID:d+UQ5w0AO
いやあ、今回もキュンキュンした
とくに>>1の「起きてるもん」には危うく萌え死ぬとこだった

だがしかし、>>1の酉が「おばん」であることに今気づいた罠
幼女かつ「おばん」とはこれいかに
さては>>1の正体はこも…
おや誰か来たようだ
715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/04/25(月) 08:45:53.70 ID:ixZZBxCAO
「おばん」ってのは「こんばんは」って意味の方言だ。
つまり>>1はちょっと舌足らずで東北訛りのある幼女だと思え。
716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/25(月) 09:21:29.86 ID:jP/WWTE3o
カナミン面白そうwwww
717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/25(月) 12:44:55.87 ID:VnbQcOGIO
エアビンタ可愛いすぎる
718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/25(月) 17:00:30.79 ID:vHO7Ge7yo


オタデックスとはなんかオタトークしたくないなぁww
あと浜面はギャラクシアンエクスプロージョンしろ
719 :名無しNIPPER [sage]:2011/04/25(月) 18:51:57.90 ID:21UTd6gLo
インさんは確かに最高のオタになれると思う、ってか処女ってさらりとwwwwww
720 : ◆ObanGQEW7M :2011/04/25(月) 21:20:25.45 ID:lGQrPe2AO
某所で見かけましたので質問なんですが、サブカプも明文しておいた方が良いですかね?
ちらほら議論の中心になるところを見たりしているので、何となく思ったまでなんですが。お答えしていただけたら嬉しいです。
721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/25(月) 21:25:27.17 ID:vbxFnc8Ho
今後の展開で明かされるor展開に深く関わるなら伏せで、
そうでないなら知りたいって感じかも
722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage ]:2011/04/25(月) 21:45:31.11 ID:nb39eQvi0
まあ支障がない感じなら
別に明記しなくてもいいと思うけど
723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/04/25(月) 22:00:26.63 ID:Yursp7Bvo
そういった喧騒は明記しようがしまいがってのもあるからなんとも言えないかなあ。
自分は組み合わせには頓着しないので話の流れの中で自然に見えてくるのが好き。
724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/25(月) 22:04:08.19 ID:Mv09V88c0
聞きたいような、聞きたくないような。上条さんのお相手なのかな?
まあ、サブカプだしよっぽど特殊なカプじゃなけりゃそう揉めないんじゃないか
725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2011/04/25(月) 22:16:13.94 ID:4z3atI2ho
話に食い込んでくるような奴じゃなければ大丈夫じゃない?
726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/04/25(月) 22:24:16.64 ID:VGfruouq0
聞きたいけど聞きたくない!
なんというか、漫画のネタバレを見たいけど発売日まで見たくないようなそんな気分だ
727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/04/25(月) 22:31:56.88 ID:ixZZBxCAO
どんな組み合わせだろうと文句を言うつもりもない。
先に言いたいならお好きにどうぞ
728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/25(月) 22:41:30.25 ID:NsEagSg70
サブカプに一方・禁書どっちかが入ってたら明記した方がいい、っていう人はいるのかな
このスレの一方禁書はコンビ寄りだと思ってたが、カプ期待してきてる人は○○×禁書、一方×●●とか前提カプ・サブカプがあっての一方禁書は嫌だったりするの?


話の中で表現したいならその時明かせばいいと思うけど、>>1が気になるなら今明記してスッキリしちゃうって手もあるよ
>>1のスレだ、好きにやりなよ
729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/25(月) 22:43:12.50 ID:aDMpXjIZo
話が面白いのなら、カップルは何でもいい。
730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/25(月) 22:49:12.73 ID:vHO7Ge7yo
>>726
わかる
気になるけど事前に聞きたくないような
731 : ◆ObanGQEW7M :2011/04/25(月) 23:40:28.73 ID:lGQrPe2AO
ご意見ありがとうございました!
あくまでメインは白コンビですし、今回お尋ねしたのはサブというか上条さん関連だったのですが、まだ勿体ぶらせていただくことにします。
浜面は滝壺と共に元気いっぱいリア充ライフ満喫してたり、つっちーは相変わらず妹ラブだったり、まあそんな話のままです。
732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/25(月) 23:42:07.98 ID:aDMpXjIZo
でも浜面は爆発しろ
733 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/04/26(火) 00:00:25.37 ID:Tnc/vgQP0
浜面爆発しろ
734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/04/26(火) 00:16:37.24 ID:sPkUV9e3o
浜面は爆発しなくてもいい 散れ
735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/26(火) 00:18:40.45 ID:z20GqBaro
浜面はチリ一つ残さず消滅しろ

といいたいがそうなると滝壺が可愛そうだから死なない程度に破裂しろ
736 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/26(火) 01:09:38.34 ID:G8UrJcXLo
見た目ヤンキーにして髪も金にしたけど恐くて外出られないおれは相変わらずボッチな引きこもりです
737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/26(火) 08:55:27.51 ID:suZShr7D0
浜面滝壺を幸せにしろ
738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/04/26(火) 21:40:09.63 ID:reEHwjqAO
浜滝で安心した
739 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/04/27(水) 06:11:02.26 ID:u9PtY2+lo
浜面尿路結石になれ
740 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/04/27(水) 12:10:17.47 ID:ZPjz8zbT0
>>739
めちゃ痛そう……
741 : ◆ObanGQEW7M :2011/04/29(金) 21:23:15.09 ID:IL+8mzwAO
もうちょいしたら投下です
742 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/29(金) 21:32:27.65 ID:LMRoK1e80
全裸待機
743 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/29(金) 22:05:08.04 ID:IL+8mzwAO



とてて、とてとて。

その足取りは覚束ない。


びー、びー、びー。

エラー、エラー、再度エラー。


がしゃこん、ぐしゃぁん。

どこからともなく歯車の音。


うよんうよん、やゆん、ゆやん。

誰も受け取れない電波を発し。




――――ふわり。



そうして彼女は、今日も街を往く。

陽炎の如く、絶えず変遷を止まない、そんな街を。
744 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/29(金) 22:06:39.51 ID:IL+8mzwAO


「――っていう内容の絵本が好きだったかも」

タイトルは損傷が激しくて分からなかったんだけど、と加えるインデックス。


「知るかよ、つゥかいちいち音読すンな。 後はすぐ言えるよォに、タイトル探しとけ」

「なるほどね、分かったんだよー」

「それと、敬語は形式にこだわりすぎず、かといってくだけすぎると悪印象」

「一人称って“わたくし”の方が良いの?」

「慣れたほォが無難じゃねェの」

呟いた一方通行は、彼の隣を歩く彼女をチラリと見る。

「……け、い、ご……ちゅー、い」

それぐらいの量ならいとも容易く覚えることが出来るだろうに、わざわざメモ帳をとる姿があった。
745 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/29(金) 22:08:57.27 ID:IL+8mzwAO



(そォいや、俺も敬語で喋った経験は……、ま、ねェよな)


敬意を払うべき対象が、果たしてこの街に居るのかという尊大な一方通行の思考回路を振り払うのは、相変わらず収まらない首の痛み。

ちくちくと痛み出してからどれくらいになるのだろう、刺激を受けるのは基本的に日中だけなので日光が影響しているのかもしれない。


太陽を憎々しげに見つめる。
すると、肌が擦れる感覚。


「あくせられーた、不安だしもう1回お願いするんだよ!」

袖をつまんで彼を見るインデックスの瞳はいたって真剣だった。


「……あァ、じゃもっかい」

とはいえ、家でも練習しているせいか淀みない受け答えをするのであったが。
746 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/29(金) 22:11:36.84 ID:IL+8mzwAO



「オマエは椅子の左側に立ちましたァ」

「うん」

「受験番号・生年月日・ご氏名をどォぞ」


「はい。 0102番、12月25日生まれ、Index-Librorum-Prohibitorumです」

いつもより若干低めの、彼女にしては落ち着いた声だった。

12月25日は山羊座だっただろうか。


「ンで、試験官がどォぞお座り下さいっつゥだろォからそンで座れ」

「うん、分かったんだよ」


これはロールプレイングだったりお遊びでもない。
つい最近、資料を読み直してやっと彼らは気付いたのだ。

特別進学科の入試には個人面接もあるということに。

747 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/29(金) 22:15:22.33 ID:IL+8mzwAO



彼女にとって鬼門の数学も、第一位によるスパルタ教育のお陰で、貯金を作れるほどでもないが遅れは取り戻せそうだ。

それに文系教科は、ここ数点の過去問を解いてみてもほぼ満点の成績だった。
アドバンテージは潤沢にある。


ならば、残り一週間のうちに面接の練習をするべきだという結論に当然至る。

(初め聞いたときは敬語使えねェだろォし無理だろォと考えたンだが)


「あなたは何故、この学校を志望するに至ったのですか?」


「はい。 ――貴校の整えられた教育環境、切磋琢磨し合う優秀な在校生と各界の雄である卒業生、素晴らしい進学実績、そして都市内随一の先生方にご鞭撻を振るっていただけるのであれば、きっと私の進路選択もより良い物になるのではないかと思い、志望することにいたしました」

「……はい」

100点満点、というか教本に書いてあったことを少しアレンジしただけの素晴らしい答えが返ってきた。
748 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/29(金) 22:20:08.39 ID:IL+8mzwAO



逆に、愛らしいルックスの異人の少女の口から堅い文が飛び出てくる違和感は物凄い。
これには試験官も面食らうのでは無いか、と思いながらも次の質問をする。

もう慣れたものだ。


「我が校には超能力者を始めとする高位能力者も多数在籍しています。 彼らとあなたとでは全く思考パターンや目的も違うことだと思います」

むしろこちらの敬語の方が心配だ。
果たして使い方はこれで合っているのだろうか、と。

教本を買って読むことにしようと決意して、視線をほんの少しだけ上にずらす。


西の空は真っ赤に染め上げられていた。
明日は雨に違いない。
749 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/29(金) 22:21:35.32 ID:IL+8mzwAO



「先ほど、プロヒビトールムさンは『切磋琢磨し合う環境に惹かれた』とおっしゃいましたが、こォいった全く違う生徒から影響を受けることは可能だと思いますか?」
「はい、むしろ全く違う同級生との関わり合いと言うのは魅力的なことだと思います。 私は無能力者ですが、貴校の一員となった際は高位能力者とも積極的に交流していきたいと思っています」

また一点の曇りも無い回答だ。
そして、この後は他の質問に進むことが常なのだが。


(……ま、いくら気になったとは言え、意地の悪い面接官が居たとしたら、こォンな問いもすンだろォよ?ってことで)


生憎、それをしようとは微塵も思わなかった。
750 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/29(金) 22:23:28.46 ID:IL+8mzwAO



「利点や魅力を感じる理由を詳しくお聞かせ願えますか?」

「理由……?」


顔には動揺の色が浮かび、怪訝な声を出すのも隠す気は無いらしい。


「無能力者狩りだったり、スキルアウトの横暴だったり、この街におけるレベルの高低差によって深刻な問題が生じているのもきっとご理解の範疇ですよねェ?」

「――はい、早急に解決すべき課題だと思っています」


「しかし、ごく一部の心理学教授の見解では『権力や富を持った者とそうでない者の確執はなかなか埋められるものではない、しかも多感な時代には尚更だ』と言って、居住スペースを分離すべきだと言う案も出るほどです」


もっともらしい嘘を吐く自分に拍手を贈りたい。
751 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/29(金) 22:25:07.44 ID:IL+8mzwAO



今がチャンスとばかりに、更に一方通行はたたみかける。


「奴らの意見とオマエは真逆の見解を述べたよな。 だから、つべこべ言わずにとっととその理由を述べろ」

「理由……」


杖が3回鳴って。

「えぇ…」と微かな呻き声がした。

一方通行はほくそ笑む。


「いや……えっと」

彼の聞きたいことは、1tも漏らさずにちゃんと伝わったようだ。

「その……言わなきゃ、ダメですよね」

「決まってンだろォ?」

「……う」

「言えねェのかよ?」

ニヤニヤと底意地の悪い笑みを浮かべる少年など進行方向を向く彼女は露も知らない。


「言え……ます」

「じゃ、どォぞ?」


ぎゅっと、胸の前で両手を結んで、そうして少女は述べだした。
752 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/29(金) 22:29:27.03 ID:IL+8mzwAO



「……ごく私的な感情なんですけど、私は高位能力者に悪感情を抱いたことはありません。
世の中にはもっと強大な力を手にしていてそれでいて理不尽な……こと、を強いる人もやっぱり居ます、それに今は世界規模の大戦で両陣営争ってる最中で、……ほんとに簡単に一個人が世界に引き込まれちゃう。
――だけど、そう言うのって駆逐できるのかなって、摩擦を完全に無くすことってできるのかなって……本当に私って意志が弱くて……」

ああ話が逸れたと呟いて、再度口を開く。

「――そして、無能力者狩りなんてするのはごく少数だと思うんです。

私の周りの高位能力者……科学サイドの優秀者は、……優しくって。
いっつも……助けられてるなあって

ただの普通の友達……って言うか、レベルなんて気にしないなんて暴論だけど……あ、気にする範疇に入らないって言うか……気に、してると……損かも……ぅぁ……。

……うぅ、も、もういいよね……」


だんだんと塗装が剥がれていって、遂にむき出しになった最奥部は真っ赤に火照っていたようだ。
753 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/29(金) 22:32:34.30 ID:IL+8mzwAO



「いやァ、ご苦労様ァ」

「……ぐ、何故ニヤニヤとしているのかな……」

「いやァ、してませンけどォ」

「私のことを馬鹿に、馬鹿にしようと……」

「くく、いやァ? プロヒビトールムちゃンがそンな……かかっ」

前後左右に広々とした道、人も通らない。
一方通行はその場で立ち止まった。


「こうなるって分かってたよぉ! っていうかあくせられーた、私が話してる間ずっと笑ってたかもっ!!」

「気のせいで、……くっ」

「もうやだもうやだ、っていうかなんでか行で笑うのかな! スッゴく独創的なんだから!」


両拳を握ってポコポコと胴を叩いてくる、しかし必死な口調の割には痛みはない。

不思議なものだと指摘すると、更に声のトーンが上がった。
754 :少し抜けます ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/29(金) 22:38:59.43 ID:IL+8mzwAO



「ざァンねン、癖なンだよ。 だから、そォンなに顔を赤くしなくても」


「くううぅ……!!」

一方通行もそうだが、肌が白いと顔に血液が集まる様はすぐに分かる。

可哀想だなとは思わなかった。
やはり、この少女を苛めるのは楽しい、認めざるを得ない。

例えば、必死に弁解する一挙一動がバタバタとしていて。
例えば、頭に血が昇りすぎて呂律が回らなくなったりだとか。
例えば、照れ隠しに噛もうとしたら、逆に恥ずかしくなって犬歯を引っ込める態度が。

(マジ俺きめェ……)

簡単に言うと、とても愛らしいのだ。

そしてまた、夕焼けにしては局地的に赤すぎるし、と追い討ちをかけると手の動きが1.5倍速ほどになった。
正直な話、マッサージのようで心地よささえ感じる。

吹く風も、そろそろ春も到来すると告げるばかりに温かく柔らかい。




――だから、この刺すような痛みが無ければ、本当に最高だ。
755 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/29(金) 22:50:10.75 ID:1I13Rr/Fo
この痛みは噛まれているのか、それとも胸の痛みなのか
756 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/04/29(金) 22:50:53.02 ID:BtR/6rBd0
畜生!気になるところで止めやがって!
全裸で待ってやる!
757 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2011/04/29(金) 22:51:57.11 ID:fW/ikdWao
この傷の舐めあいみたいな関係は痛いな
758 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2011/04/29(金) 23:00:59.44 ID:PayLpsVf0
一方さんはラテン語を知らないだろうから別にいいんだけど
prohibitorumさんって物凄い違和感がある
日本語に直せば禁じられたさんだし
759 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/29(金) 23:13:45.10 ID:IL+8mzwAO



(予想的中なンだろォな……ってかシャレになンねェぐらいに首も痛ェンだけど、どンだけ俺は悪意持たれてンだ)


「いじわるいじわるいじわるぅぅぅ、あくせられーたのっ!」

終まで言うことは無い。


「――シスター」

唐突に、隣から小さくて真剣な声が聞こえたからだ。
思わずインデックスは、小さなその肩を震わせた。

そして、それに遅れて数秒。
スイッチを入れる小気味の良い音も聞こえる。


「1、2、3で勢い良く振り向け」

「え、振り向く?」

「1、2」

あまりに突然のことで、彼の目的も何も分からないが

「3」

「――っ」


とりあえず、言われた通りにしてみようと、その場でターンした。


くるり。
760 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/29(金) 23:16:45.12 ID:IL+8mzwAO


ひゅー、風をきって進んでいく。


……最初は幻覚の類かと彼女は思ったが、しかし空を飛んでいくそれに激しく見覚えがあったのだ。


「つえ?」

一方通行の愛用するデザイン的な杖が、地面と平行に飛んでいく。

高度はインデックスの胴体ぐらい。
いつまでたっても落下しないことから重力を操作したのだと思われる。

杖が空間を裂いていく、しかも結構なスピードで。

「……」


妙にシュールな光景だとインデックスも、それを投げた一方通行も思った。

761 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/29(金) 23:25:11.34 ID:IL+8mzwAO



そして、20メートルぐらい直線で進んだのか。
時間にしては8秒くらいが経ったところで杖がやっと地面に落ちた。


「……え?」

しかし彼女の顔は驚愕に染まる。

それは何故か。
先ほど等速運動をしていたそれは、一瞬にして重力管理下に戻っていった。

つまり、立ち塞がれるようにぽとりと落ちたのだが、障害物などは“どこにも”見受けられないのだ。


(――空中の見えざる障害物が、運動を邪魔したの――?)


絶賛混乱中☆とばかりに間抜けな顔をインデックスはしている。
そんな少女の手を握り、一方通行は1回だけ地を蹴った。

目的地は――上。
762 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/29(金) 23:29:28.26 ID:IL+8mzwAO



「ひゃぁっ、やぁぁぁぁぁ!!」

「逃さねェ!!」


気が付くとそこは、地上から10メートル。
思わず隣の一方通行に抱きついてしまったのだが、大空を駆けることの出来る超能力者とは違い、少女には全く縁の無い世界だ、仕方もないだろう。


「犯人さンよォォ! まだ逃げンなら、オマエの大事なこいつの手離すぞォォ!!」


叫ぶ少年の声は、やっと懸念から解放されるとでも言いたげな心底幸せそうな色をしていた。
しかし、聞き過ごせないことを確かに言っていた。

「ちょっと!! こんなとこでは、離さないでぇぇ!!」


途端に少女を襲うのは強烈な吐き気。
これが物理法則を無視する代償なら、抗わずに一生従順でいようと決意した。
763 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/29(金) 23:33:40.59 ID:IL+8mzwAO



そして、そんなのお構いなしとばかりに、一点を目掛けて落下していく体。

「ひぃぃ!」

そことは、杖が転がっている場所で――。

「おち……っ!」


真っ逆様に落ちて落ちて落ちて、落ちる。

今日に限って電波チックの一方通行の手からも離れてしまった。

歩く教会は形だけであり、衝突を受け流す術は無い。


「ひぅ……っ」

生理的な衝動から、固く目を瞑る。

逆に言うと無力な彼女には、それしか出来なかった。

もし五体満足で帰れたらあの男を叱ってやろうと思いながら。
764 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/29(金) 23:38:40.56 ID:IL+8mzwAO



落ちて。
落ちて。
落ちて。



「――大丈夫!?」

柔らかい腕に受け止められたようだった。
上から降ってきた言葉はどうやら心配してくれているようだ。
未だに目を閉じたまま、彼女は応答をした。


「……いつもごめんね、ありがとう……」


即座、すぐ近くから物音がした。

それは一方通行が着地したせいによるもので、慌てた様子など無くあまりに優雅な素振りだった。

「……今度こそ死ぬかと思ったかも……、あくせられーたの……ばか」

「あのなァ、竜巻スタンバってンだから死ぬわけねェだろ」



そこでやっと目を開け、いつもより低い位置から地面を見渡した。

一方通行の履くスラックスの裾が妙に翻っていたことから、風が吹いていることは認めても良さそうだ。
765 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/29(金) 23:45:22.51 ID:IL+8mzwAO



「つゥか、暴食とオマエって知り合いなワケ? タチの悪いストーカーの逆恨みだと思ってたンだが様子は違うみてェじゃねェか」

「けっ、ケガとかは!?」

一方通行を見事にスルーして、所謂お姫様抱っこの王子様役をしている彼女は腕の中のインデックスをまじまじと見やる。


「全然大丈夫なんだよ? それにしても、あくせられーたが変なことして本当にごめんね。 厳しく言っとくんだよ!」

「待て、俺は被害者だァ」

慌てて弁解をする一方通行だが、この場で勝ち目があるはずがないと悟り、伸ばしていた手を引っ込めてしまった。

「こうやって妄言吐いちゃうような人なんだけど、根は善良……いや、改善すべき点はあるかも」


そしてインデックスは、怒りと笑みをない交ぜにして彼女へと語りかけた。
766 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/29(金) 23:48:11.68 ID:IL+8mzwAO








「――ひょうかこそ、私を受け止めて痛むところはない?








767 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/04/29(金) 23:54:18.88 ID:IL+8mzwAO



無造作に縛られた髪の毛一房が、首の動きに合わせ揺れる。


「私は……大丈夫」

「そっか。 ほんとにいつもいつも、――ごめんね」


ふるふると首を動かす風斬氷華、そんな彼女の肩に白い手が一つ置かれた。

散々無視をされてきて、少々腸が煮えている一方通行のものだった。


「――とりあえず、互いに言わなきゃいけねェことは言いあおォぜ? 天使さン?」
「……えっと」

あそこのファミレスで、と指を指しながら提案する。


すると、次は彼が肩を叩かれる。

振り向くと、頬にパンチが一発。


「……知らない女の子に気安く触れるなんて最低最悪かも!」

別にお互いを全くもって知らないわけではないのだが、説明は非常に面倒なので割愛することにする。

「……さっきはすみませンねェ」

「いえ……私は」


そして、今回の鉄拳はちゃんと痛かった。
768 :終わり :2011/04/29(金) 23:59:12.79 ID:IL+8mzwAO
何か一方さんの敬語って妙に気味が悪いですね。
あと、アニメのパスポートから“インデックス”は名字の設定のようなんですが、色々と不都合があるのでここでは名前でよろしくお願いします。

それでは、お付き合いいただきありがとうございました
769 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/30(土) 00:04:27.42 ID:9QfHklCKo
乙おつ

ストーカーはステイルかと思ったら風斬だったとは・・・インデックスの罪も含めて色々気になるぜ
770 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/04/30(土) 00:05:18.12 ID:HEINw/7Lo


風斬が絡むのか、次回も期待
771 :名無しNIPPER [sage]:2011/04/30(土) 09:46:42.25 ID:f7gFZu41o
おつ
しかし>>669見る分に風斬が重要人物っぽくて俺歓喜!!
あと落ちてくるインデックスをお姫様抱っことかイケメンすぎてやばい
772 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/30(土) 20:01:03.82 ID:REqyqRwDO
なんで上条さんのインデックスが一方通行とカプってんの?
一方通行厨はなにを考えてるの?
もしかして原作アンチ?
それなら確かに納得
まともな精神なら一方通行と上条さんのメインヒロインのインデックスをカップリングするなんて思い付かないもんな
773 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2011/04/30(土) 20:25:26.26 ID:c+h+KDNAO
>>772
俺も上インと通行止めが至高だとは思っている
だけどここは二次創作だから>>1がどんな妄想を書こうが需要があれば問題ない
あとそんなに上インが見たいなら書いてくださいお願いします上イン成分がたりなくて死にそうなんです
774 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/30(土) 20:27:24.78 ID:ycUU12wF0
>>772
気に入らないものは見ないという選択肢があるんですが…
原作嫌いなら態々二次やらんだろjk
775 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/30(土) 20:28:52.11 ID:PMP/xFJ4o
>>772
なんでそんなにカップリングに拘るの?気持ち悪いから[ピーーー]よ
776 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/30(土) 20:32:27.13 ID:d9VraMAvo
>>772
わざわざ見に来ておいて何言ってんだおまえ
777 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/04/30(土) 20:40:01.40 ID:H4y8G3HJ0
んな分かりやすい書き込みに一々反応せんでよろし
778 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/30(土) 20:46:09.74 ID:95qq+gRxo
まぁカプ厨にはこう言うのがたびたびいるし
779 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/30(土) 20:54:07.49 ID:Z3ORxpizo
まあ正直原作を読んでも
上条さんとインデックスがくっつくとは思えないんだけどな
780 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/30(土) 20:55:42.66 ID:KMqhFQ18o
その話題続けるのはスレチにも程があるんで良識ある皆はそろそろ止めてくれな?
781 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/04/30(土) 21:47:12.06 ID:aa7+k+yzo
スルー能力判定検査SS速報会場ができたと聞いて
私は・・・LEVEL0ですかそうですか
782 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/30(土) 22:45:33.38 ID:D8lvYMMDO
コンビとして見てる俺に視覚は無かった
783 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/04/30(土) 22:50:47.22 ID:1F+04QJA0
>>見れんじゃないかそもそもw
冗談はさて置き、まぁ>>776が真理だわな
784 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/05/01(日) 01:17:50.87 ID:AluaJG2P0
スルー無能力者だらけだな…
785 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/05/01(日) 04:18:09.46 ID:mI+cVY/AO
おおう、いつのまにか来てたぜ
>>1乙なんだぜペロペロ

ここに来て風斬登場かあ
これはこのスレで終わらない予感
べ、べつに次スレも期待してるわけじゃないんだからねっ
786 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/01(日) 08:40:50.48 ID:4SPGpykIO
>>772
でも読むんだろ?
787 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/01(日) 08:50:03.39 ID:jxkVZShmo
こういうのを見るとまとめサイトで見るほうがいいなと思える
788 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/05/01(日) 14:11:17.39 ID:dJaPDjZz0
幼女いじめんのはよくねーぜ?
ということなので>>1はこっちが預かりました
789 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/05/01(日) 14:32:40.98 ID:asxU1V0AO
>>788
許すまじ
790 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/01(日) 20:56:41.04 ID:RdwARGE10
>>788
ペクスヂャルヴァの深紅石
791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/02(月) 00:10:50.11 ID:QtQw3V66o
>>788
あなた・・・「覚悟してる人」ですよね
幼女を預かるって事は自分が預かられるって事を覚悟してますよね・・・?
792 : ◆ObanGQEW7M :2011/05/03(火) 19:18:58.80 ID:V5xr2HFAO
どうもおばんでーす
もうちょい書き終わったら投下します
793 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/05/03(火) 19:34:45.14 ID:o8kNesnm0
おばんばーん
待ってるよん
794 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/03(火) 20:49:09.43 ID:V5xr2HFAO



「――とりあえず要約すると、ここ一週間ぐらいのあくせられーたは私といるときに妙な首の刺激を感じていて、それは私に接触したり会話したりすると増幅することから私が原因じゃないかと推測してた。

けど、おとといは私と離れた後もしばらくちりちりが止まなかった。 おとといって言うと外食に行くからとうまが迎えに来るって言って、私が残った時だね……、あ、店員さん。 ピザは私なんだよー」

マルゲリータピザを持つ店員が手を挙げたインデックスの前にそれを置いた。
完全なるひきつり笑いで。

そんな些事な事を意にも介さない、全ファミレス店員の敵とも揶揄される彼女は、すぐさまピザ用ナイフで円を4つに切り分ける。

「いっただきまーす」

言うや否やその1つをペロリと飲み込んでしまった。

食らいつく姿は蛇のようで、鰐のようで。
――弱肉強食、自然界の厳しさを近代的なファミレスで垣間見るとは――と少しだけ感嘆しつつも

「つゥか、LLサイズなんだから8等分はしろよ」

当然、指摘するのだった。
795 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/03(火) 20:53:41.06 ID:V5xr2HFAO



「だってー、いっつも失敗しちゃうんだもん」

見かねたのか、頬を膨らませる彼女の肩をそっと叩き風斬は告げた。

「えっと、私切ろうか……?」

「ほんと!! ありがと、ひょうか!」

困ったように笑いながら彼女の隣に座るインデックスから皿を受け取る。

あっという間に残り3枚を綺麗に2等分してみせた。

下を向いているせいで元からずり落ちそうなメガネが外れないのか、と一方通行は密かに心配をするのだがその心配は杞憂らしい。

「はい、どうぞ」

「ありがと! あ、ひょうかも頼みたかったらじゃんじゃんどうぞなんだよ!」

「確かに金は俺持ちで心配する必要はねェが、オマエが言うンじゃねェよ!」

わざわざ腰を上げ、チョップを入れた。

「あたっ!」

「調子に乗ンな」

「はいはい、そうだ、あなたもピザ食べる?」

「話聞け、しかし1枚よこせ」

返事は聞いてない。

皿から強引にちぎり取り、チープなそれを咀嚼する。
796 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/03(火) 20:58:12.06 ID:V5xr2HFAO



……とりあえず、チーズはゴムのようで、どこを美味しいと感じるのか不明だ。


正直にその旨を伝えてみた。

「えぇー、絶対美味しいもん! 何より本当に美味しくなかったとしても、チーズもレタスを爆発させるあなたには言われたくないと思ってるかも!」

「はァ? つゥかこンなン、俺の方が旨いの作れるわ」

「ふっふーん、嘘は泥棒の始まりなんだよ?」

「事実だボケ。 基本的に俺はショートカット志向なだけで、オマエと違ってメシマズじゃねェから」

徹底的な煽り合い。
これもいつもお決まりの展開でありネタとでも言えるのだが。

「い、インデックス!?」

それを知らないのは、虚数学区に住まう天使。


彼女の足に当たった机がガタンと動くと、フォークとスプーンを入れてある箱も煩わしい金属音をたて移動した。


「ど、どうしたのかな!?」

釣られたのか当てられたのか、とにかく2人とも妙に焦った顔と声だ。


わなわなと震える唇を動かして、彼女が伝えたいこと、それは


「頭! 大丈夫なの!?」

「……」

やはり静寂が訪れた。
797 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/03(火) 21:00:54.45 ID:V5xr2HFAO



そこだけ聞くと、まるで彼女が常軌を逸脱したような発言(さっきのはボケであり本心なわけではない)をしたかのようである。

実際に、一方通行だけでなく心優しい風斬にまで煽られたと思ったのか、少女は数秒停止した。



そして

「え、あ、その……、大丈夫、なんだよ」
一方通行に叩かれたことを指していることに気づき、ふにゃりと笑ってみせる。

「あのね、あくせられーたはご覧の通りにモヤシ体型で虚弱体質で神経質だから、私には強く出れないんだよ?」

「そォかそォか、――なら今日はオールナイトで勉強会でもしてやりましょォかね」

「さて、話を戻すんだよ」

コーラとソーダが混ざった液体を啜り、当事者でありながらもどうしようもなく第3者な彼女はボックス席を見渡した。


時刻は17時半前、もうすぐ日暮れを迎えるそんな時間。
798 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/03(火) 21:05:48.72 ID:V5xr2HFAO



「それで、色々と疑問に感じたあくせられーたは、あなたの能力を応用して……えっと“ぜったいざひょうによるしかくふかいちのぶったいにんしき”を行った」

「すげェ棒読みだな」

「正直、意味は全然分からないかも」


漢字で表記すると、絶対座標による視覚不可位置の物体認識。

正しくは、物質の位置関係認識にしか過ぎないのだがここでは余談だろう。

分かり易く言うと、蝙蝠や鯨が相手を補足するようなものだった。

一方通行は、その動物らが放つ超音波を独自のナビゲーションシステムに置き換えた。
そして、自分と後ろの見えざるストーカーとの距離を、彼ないしは彼女の特性を割り出そうとしたのだ。


「その探知の結果、後ろにひょうかがいることに気付いたんだよね」

「端的に言えばそォなるな」

「いよいよ動物じみてるかも」

頷く一方通行、唸るインデックス。


そして頂垂れるは、風斬氷華。

799 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/03(火) 21:09:37.83 ID:V5xr2HFAO



「……一方通行さん」

「あァ?」


「……ずっと、ご迷惑をかけてすみませんでした」

震える声、そして深々とテーブルに額がつくのではと思わせるほどに風斬は頭を下げた。

よく見れば肩も僅かに震えている。

「……」

しかしながら一方通行には、どこか現実味を帯びない光景だったのだ。

ここには薄い不可視のフィルターがあるようで、どうしても客観的になってしまう。

(ロシアで見せた、凄まじい破壊力を持った天使――それがシスターの知り合いで?)

そもそも正確な状況確認すら出来ていないのだ。
800 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/03(火) 21:14:57.95 ID:V5xr2HFAO



刺激、それをもたらしたのは目の前の彼女で間違いない、決まっている。

何故か。

それは、あんな正確な尾行をやってのける能力者が、2人としてこの街に居るとは思えないからだ。
正確に対象の視覚・聴覚・触覚の認識を阻害して、しかもその対象は他の誰でもない一方通行である。

正直なところ、もし刺激が無かったら気づかなかったかもしれなかった。



だとしたら、そんな力を持つ彼女を動かした理由は何なのか。

答えは言わずもがな、十中八九、彼女の隣に座る修道女の存在だろう。
先ほどあんなに必死な形相で、天空から落下するインデックスを受け止めたのは間違いなく彼女なのだから。


――ここまで考えた分だと、内気な天使が友達に話し掛けたくて、しかし出来なくって張り込みをしてしまうとの考え方が模範的に思える。

(いや、絶対にそォじゃねェ。 刺激が引き起こされたワケは掴んでる)

真実を知るためには結ばなくてはいけない点と点がある、そしてそれを自身は知っていると彼は確信していた。


(それは生ぬるいモンじゃねェ、もっと暗くて粘ついてて……)
801 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/03(火) 21:16:57.28 ID:V5xr2HFAO



「……あくせられーた」


――咎めるようなソプラノに、我に帰らされた。

真っ暗の視界から、徐々に人の声がし始めたファミレスに戻る。


正面、否、やや下方。

「……風斬、つったっけ」


返事は無かった。

「……頭上げろよ、もォ首ンとこ痛くなンねェなら、俺は良いンだし」


やはり下がったままの頭。

このままだと女子に無理やり謝らせている横暴な男そのものであり、インデックスや周りの客から容赦なく浴びさせられる視線が妙に冷たく感じられた。

周りからの理由は、風斬がか弱そうな霧ヶ丘に通うお嬢さまにしか見えないのもあるのだろうか。


どちらにせよ精神衛生的には非常によろしくないのは事実だ。
802 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/03(火) 21:19:18.48 ID:V5xr2HFAO



「オイ……、顔上げて良いンだぜ?」

許可に偽装した懇願も無視。

「……ここのドリンクバーって種類豊富って聞いたンだが」

体1つとっても微動だにしない。

「……そろそろ首痛くねェ……?」


女心も含め人間心理も分析出来たら良いのにと一方通行は思う。




最終手段でインデックスにSOSを送ってみる。

しばらくして、後ろめたさや恥ずかしさで複雑な顔を添付してアドバイスが帰ってきた。

「……あくせられーた、ごめんね、だけどあなたは今回何にも悪くないんだよ。 だって悪いのは――」


先はくぐもっていて聞こえず、何故だろうか、もう1回謝られた。
803 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/03(火) 21:22:19.60 ID:V5xr2HFAO



「とりあえず、ひょうかにはもっと分かり易い言葉をかけてあげれば良いと思うんだよ」


――分かり易い?

「ごめんねって言ったら?」

「……ごめンって言う……?」

「あなたに非が無い時点で別にこだまじゃないんだよ、これは」

その後の「案外あくせられーたってTV見てるよね」との言葉は無視することに決めた。



効き過ぎの暖房に溶かされた氷が、グラスに当たったのか、若しくは誰かが転がしたのか。

からんと涼やかな音がする。


「――ごめんね、って言ったら『いいよ』で良いんじゃないかな?」

「そォいうモン?」

「多分ね」

なるほどと思う。

そして、いつもの一方通行は言われる立場――許しを乞う側であって、許す側では決してなかった。


だから、分からなかったということにしておく。
804 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/03(火) 21:28:08.40 ID:V5xr2HFAO



(俺もコミュ障っつゥか、知らねェことは多いよなァ)

……脈絡もなく唐突に、いつだかインデックスが“とうま”と“ひょうか”のことを同時に話に出したことが蘇る。


一方通行は大体の話す内容をしたため、そして口を開けた。

「もォ良い、許す。 それと、バレンタインはオマエと上条って奴のお陰で助かった」

可愛らしい顔がこちらを向いた。
やっと顔を上げる気になったようだった。
「……すみませんでした」

「まァ、仕方ねェンじゃねェの」

“ここ”で事を起こすのも、正直怠かった。

息を吐きながら、後ろに控えるソファーにもたれかかる。

インデックスがバレンタイン!?と噛み付いてきたが、相手取るのは億劫だった。
805 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/03(火) 21:35:56.36 ID:V5xr2HFAO



その後も、ぎこちなさの残る(インデックスは全く気づいていないようだ)食事会を続けた。


「それでね、ひょうか。 あくせられーたが言ってたんだけど、メンマって竹から出来てるんだって」

「めんま?」

メンマどころかラーメンさえ、むしろ多くの料理を見たことがない彼女が棒読みで呟くのも仕方の無いことだった。


「えっとねー……、何を言うよりも実際見せた方が早いような。 ってことで醤油ラーメンを1つなんだよ!」

「え、あ、インデックス? その、代金は一方通行さん持ちなんだし……もうちょっと」

「大丈夫だ」

「でも……」

2人を交互に見る風斬に、心配無用と手を広げた。

「猛獣と飼育員みてェなモンだ、メシやっときゃ双方ハッピー」

「そう……なんですか」

「こっちは恩を売れるし、あっらは腹が膨れンだろ」

win-winであり、ちゃんと共益になっている。
と言うか、そうでもなければ奢らない。


全ては恩を蓄積させて――何かを。


――彼女に、何か。


――――何かを望んだのだっけ?


(……忘れた)

また追々考えるとしよう、このわだかまりに別れを告げ、特に意味も持たず一方通行は正面の少女を見た。
806 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/03(火) 21:40:08.62 ID:V5xr2HFAO



少々ムッとした顔の彼女が注文用チャイムに手を伸ばす。


後は、小さな機械がぴんぽーんとマヌケな音を鳴らし、呼び出された店員がこちらに来るだけなのだが――


『ま・じ・か・る・ぱ・わ・あ・ど♪』


目を丸くしたインデックスは、慌てて陶磁器のような肌をした手を引っ込め、代わりにバッグの中へと突っ込んだ。


「ケイタイデンワーめ……」

恨めしげに呟く姿は呪詛を唱えているようでもあった。


探索中のこの瞬間も、近代的で軽快なメロディーが彼らの座る30番テーブルいっぱいに響き渡っている。

「精密機械だからって慌てンなよ、あと違う方押すと切れンぞ」

「うん、斜めがけの電話のキーなんだよね――」


神妙な顔をして少女はやおら立ち上がる。

「とうまから連絡が来ちゃったから、外で話してくるんだよ、後は若い2人に任せるってことで」

ワケの分からない事を言い放ち、足早に去っていった。

明らかに呼吸が浅かったように思う。
807 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/03(火) 21:43:27.25 ID:V5xr2HFAO



「外、暗いのに……」

「大丈夫だろ、強かな奴だし」

「でも……」


正面にはわざわざ体の向きを変えてまでドアの方を向く風斬、まるで一方通行なんて眼中に無いような。
きっと比喩でも何でもなく、見ていないのだろう。


「そンなにあの暴食のことが心配か?」

「……ええ」

その両手は、よく見れば木製の椅子を堅く握り締めているのが分かる。
あんなに締め付けてしまえば、強固な木材だって千切れてしまうのではないかと思わせるほどに、だ。


一方通行は彼の背後にある窓を見た、インデックスがそこに居るかどうかを確かめたくて。

結果、白い要素はどこにもない。
そこには無機質なアスファルトと沈みかけた夕日が鎮座しているのみ。

安堵しつつ、振り返る。
相変わらず風斬は落ち着かないで、辺りを見回しているだけだった。


「……」

体全体が底から冷えていく感覚、久しく味わっていない感情を懐かしさを感じながら舐めまわした。



「――そりゃそォだよなァ」


もし終始見張らないといけないほど脆いなら、何故彼女は1つたりとも言わないのか。
勝手に黙られておいて、そんな態度を取られるなんて迷惑でしかない。
808 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/03(火) 21:45:02.08 ID:V5xr2HFAO




「――この前から、俺ンとこ殺す気でつけてたよなァ?」




「……そんなことはありません」


半拍遅れたその反応が、彼の疑念を確信へと昇華させる。

「――まァ良い、ゆっくり“ハナシアイ”しよォぜ」


「――――そうですね」

ぎ、ぎ、ぎ、ぎ。

人体が立てることは出来ないと断言できる音を発して、彼女はゆっくりと振り返った。

「幸い、お時間もありますし」


その時、初めて両者が見つめ合う。
極寒のロシアでも終ぞかち合うことの無かった視線が、やっと収束したのだ。


無機質な一方通行の表情とは対照的に、眼鏡の奥の瞳は夕日と証明を反射し、整った唇は孤を描く。



しかし、何故だろう。
809 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/03(火) 21:53:53.00 ID:V5xr2HFAO



「……人のこと言えた義理じゃねェが、もっと上手く笑ってみろよ」

それが満面たる笑顔だとは、彼女自身が醸し出すオーラからは微塵も思えなかった。

「……ごめんなさい」


彼は改めてかの修道女は偉大だと思わざるを得なかった。

もはや彼女が和ませていた空気などは雲散霧消してしまった、残るはそれぞれが共有する思い出だけ。


何から話すべきか聞くべきか、そう考えながらコーヒーに手を伸ばす。

冷たさ寄りの温い液体が喉を滑り落ちていく。

しかしそれすらもどこか乖離していき、ついには他人ごとにしか思えなくなった。



刺すような、抉るような殺気を、一方通行の“1メートル範囲内”から、“1週間×8時間”ほど浴びせていた女は、瞬きをした。

生理的にではない、人工的なものだろう。

「オマエ、瞬きする必要あンの?」

「……無いですよ」

ただ、と風斬は続ける。




「――インデックスも言ってたでしょう、ドライアイには注意、って。 あんな乱暴な入れ方して、あの子震えてましたよ……?」


全部見てました、とさも当然に告げる。


そうしてまた、人工天使は歪に笑った。
810 :おわり :2011/05/03(火) 21:57:50.03 ID:V5xr2HFAO
いつもレスありがとうございます。

最近もしもしが接続不良なことと、家族に喫煙者が居ないのに自分の部屋にタバコの匂いがするのが気になって仕方ありません。

それでは、お付き合いいただきありがとうございました
811 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/03(火) 21:59:20.67 ID:ajsvuB+no


風斬から凄いヤンデレ臭がする・・・
812 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/03(火) 22:08:07.28 ID:YUyS3ywg0
>>あんな乱暴な入れ方して、あの子震えてましたよ……?

なん、だと……? 一方通行が、乱暴に、インデックスに、入れた、だと?
そしてそれを風斬が全部みていただと……?

……ふう


813 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/05/03(火) 22:14:24.67 ID:6vocdA8D0

この天使…病んでる!
何でこう、インさんの周辺には重くて病みがちな男と女しかいねえんだ!
814 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/05/03(火) 22:23:31.67 ID:o8kNesnm0
流石は作中屈指の魔性の女だな……!
815 :名無しNIPPER [sage]:2011/05/03(火) 22:23:42.95 ID:nw8KfdVVo
おつぅぅぅううう
なんか前半との落差でこえぇぇぇえええ!!!
816 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2011/05/03(火) 22:31:20.38 ID:SFLoNTP8o
>>428-432
817 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/03(火) 23:02:16.29 ID:6+b0MKzVo
風斬様が見てる
818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方) [sage]:2011/05/03(火) 23:16:02.85 ID:mA97DdIAO
風斬さァァァァァァン!?
ちょっ、まさかそれだけの理由で[ピーーー]つもりだったのか!?
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/03(火) 23:42:39.51 ID:0vvqGwr/0
>>812
お前とはいいウーロン茶が飲めそうだ
820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/03(火) 23:48:25.98 ID:8iXKXW5Ho
乙!面白かった
>>812
おいおい何想像してんだよ・・・

・・・・・ふう
821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/04(水) 08:51:41.09 ID:2+QdTab2o
>>1の家にはステイルでもいるんじゃねーの
822 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/05/04(水) 17:21:00.61 ID:3h3NTh85o
このスレのインさんは賢そうでいいなぁ
ツッコミ・ボケ逆転とか好きだったり
823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2011/05/04(水) 17:26:13.74 ID:uHnjFkn/o

すっごく愛が重いです、風斬さん
つか、上条やばくねww
824 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/05/04(水) 18:05:42.19 ID:l0TkKI3I0
ああ、何かと思えば
怖がるインデックスをなだめながら一通さんが乱暴に入れて
一滴残さず中に染み込ませたあの事件か

……ふぅ
825 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/04(水) 19:16:53.92 ID:fIF/Hlin0
しばらくぶりにきてみたらシリアス展開だと…?!
続き超気になるな!風斬さんマジヤンデレ
826 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2011/05/05(木) 00:52:59.51 ID:GQlPe2pB0
これは風斬とステイルがどっちの方がインデックスを好きかというヤンデレっぷりを競い合っていつの間にか恋に落ちる展開・・・ッ!
827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 19:09:06.26 ID:pajOMrXDO
カザキリ†ほりっく
828 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/06(金) 18:20:22.07 ID:nODdKDP8o
>>827
一万人の妹はいても男と女の双子がいないじゃないか
・・・ハッ!百合子!?
829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 22:40:00.55 ID:x4iEFfQgo
>>828
 
ユリコ?ほりっく…だと?
なにその俺得
830 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 00:24:26.14 ID:xnyP0gFEo
天使がヤンデレなのは神話から証明されてるし
風斬がヤンデレなのは当然ですよね
831 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 00:25:25.92 ID:xnyP0gFEo
天使がヤンデレなのは神話から証明されてるし
風斬がヤンデレなのは当然ですよね
832 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 00:26:47.66 ID:xnyP0gFEo
天使がヤンデレなのは神話から証明されてるし
風斬がヤンデレなのは当然ですよね
833 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 00:28:41.54 ID:xnyP0gFEo
天使がヤンデレなのは神話から証明されてるし
風斬がヤンデレなのは当然ですよね
834 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 00:35:07.05 ID:xnyP0gFEo
何回か書き込み失敗だったけど再起動したらちゃんと書き込みできてた
連投すまぬ
835 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/05/09(月) 02:14:10.65 ID:TMiKY++P0
大事なことなので4回も言いました
836 : ◆ObanGQEW7M :2011/05/09(月) 18:59:39.62 ID:0x/mxw0AO
トゥットゥルー♪>>1しぃ☆です
とまあ、ふざけてないで今晩投下します
837 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 19:29:09.77 ID:Zd6P5u7DO
これがインデックスゲートの選択……
838 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 19:37:16.77 ID:1SEtlTbko
エル・プサイ・コングルゥ
839 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [!sututs sage]:2011/05/09(月) 19:37:42.60 ID:1SEtlTbko
 
840 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [!sutatus sage]:2011/05/09(月) 19:39:59.67 ID:1SEtlTbko
 
841 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 19:50:12.81 ID:Zd6P5u7DO
誰だよ、未来から書き込んでるやつ
842 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2011/05/09(月) 22:09:00.14 ID:3Nimk2dco
マダァ?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
843 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/09(月) 23:27:10.62 ID:0x/mxw0AO



ファミレスの従業員が、このテーブルにつく自分たちの正体――いとも容易く都市を破壊出来ることを知ったら、追い出されるのだろうなと思いつつ、一方通行は話を切り出した。

「――俺がオマエについて聞かされたのは第三次大戦後だ」

「……話したのは高次思念体ですか」

雪の降る12月、街を歩く彼に対しテレパシーで呼びかけてきたのは聞き覚えのある神々しい声だった。

「あァ、エイワスと名乗る腹の知れねェ野郎だった」

「だから……あなたは私の名字を知っていたんですね」


両の手のひらで包み込むように風斬は彼女が身に纏うブレザーを握る。
それは先ほども見た光景でありきっと無意識の癖なのだと思われた。
844 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/09(月) 23:31:27.30 ID:0x/mxw0AO



「――ご存知の通り、私は風斬氷華と言います。能力名は正体不明【カウンターストップ】です。

この体はあなたも含む能力者のAIMにより成り立っています。……人工天使、ヒューズ・カザキリとも呼称されますね……。えっと、後はあの子とその同居人は大事な友達……です」

「一方通行。レベル5の第1位……つってもオマエには脅威にならねェのか」

「そんなことはない……ですけど」

「まァ良い、それより話振ったのはこっちだ。聞きてェことあンなら言え」

言葉尻を食うタイミングにも嫌な顔をしなかった。

あまりの透明さに、尋ねる内容を吟味しているのかも分からない。


しばらくして「察知したわけを」とだけ呟いた。

「分かった」


――あの痛みが、日常生活には極めて異質な、それでいて自分には馴染みのある感情からだと気付いたのは、数日前の些事な出来事からだった。
845 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/09(月) 23:33:26.99 ID:0x/mxw0AO



「ねえ、あくせられーた」

「あァ?」

「昨日ね、たまたま見たテレビでやってたんだけど」

そう言って彼女が語り出したのは有名な外国小説のあらすじだった。

19世紀末、1人の可憐な踊り子に偏執して寵愛して、そして彼女のために人を殺めた醜い外見の男がいた。
しかし、かと言ってそれは献身的な愛というわけではない。
彼女に恋人が出来た際には嫉妬に駆られ、その足を潰そうとシャンデリアを落下させたこともある。
最終的に、彼の恋は実らずに散っていくのだった。

「ンで、オマエは何を言いたい」

「うん、怪人はパラノイアだったと思うんだけど、そんな彼はどうしたら踊り子に愛してもらえたのかなって思ったんだよ」

それは、仮定の難易度が高すぎると思った。
どす黒い感情を湛えている時点で愛してもらうだなんておこがましい。
そもそも、人殺しが幸せになんかなれるものか。

だから一方通行はこう言った。
「何も行動せずに、ただ見守るだけで満足してるしかないンじゃねェの?」と。
846 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/09(月) 23:35:22.71 ID:0x/mxw0AO


「見守る?」

「自分で赤字にしてどォすンだよ、だからいつか奇跡が起きるその時までコツコツと貯金するしかなかったンじゃねェの」

数秒の沈黙。

「ストーカーの癖に病ンでるなンて魅力もクソもねェだろ」

「――そうなのかも」

どこか腑に落ちないと言った口調だ。
彼女が首を傾げる動作に従って、美しい銀髪が揺れた。

「どォしたンだよ」

「あくせられーたって宝くじ、やったことあるのかな?」

「あるよォに見えるか?」

ふるふると首を揺らす。

「じゃあ、納得してもらえるかは不明なんだけどね――」




そして今の一方通行の反対側は、いつものシスターではなく、人工天使が1人。
847 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/09(月) 23:36:44.89 ID:0x/mxw0AO




「――アイツは言った、長年くじを買い続けて来た奴が、ぽっと出で当たっちまった奴をどォ思うのか、だってな」

「言ってましたね……、ああ、だから私が後ろに居ることに気づいたんですね……?」

肯定も否定も、何の反応も示さないことにした。

そもそも、あの少女が居なくなってから途端に生気を失った彼女には、外野が何を言っても無駄に感じられたのだ。


「――オイオイ、ここは自意識過剰だって笑うところじゃねェのか」

「あながち間違ってはいないんですよ」


「……」


何と反応すべきなのか。
考えあぐねるも、相応しい解はなかなか見つからなかった。

848 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/09(月) 23:38:54.56 ID:0x/mxw0AO



「――もしかしたら私はあの子に恋をしてるのかもしれませんし、それとも純粋に応援したくて見守った結果なのかもしれない。――だけど、きっと」

言葉を切り上げた彼女は――何故か、苦笑した。

「あなたがあの子に害をなすなら、私はあなたを消したんでしょう。いえ、今もそうなんです。そして……未来も」


「……あの時も俺を殺そォとしてたのかよ」

「さっき、あなたは私から殺気が出てたから分かったって言ってましたよね?」

「……あァ」

暗部に居たときなんて比べ物にならないくらい純度の高い殺意。

それはあまりに濁り気が無く、どうしても人間らしい感情を受け取れなかった。

――だから、惨状を潜り抜けて来た彼でさえも判断に遅れた。




「――インデックスを守るために、私はもう絶対に躊躇わないって誓ったんです。それは例外は有り得ない。



――だって、今、この瞬間だってそうなんですから」

849 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/09(月) 23:40:58.22 ID:0x/mxw0AO



言葉通りに受け取れば、後をつけていた時は殺害しようとは思っていなかった……ようだ。


「あれはオマエにとっては、ただのスタンバイでしかねェと」

「……」

緩慢だった。
けれども、彼女は首を確かに縦に振った。


――これで証明されてしまった。



強大な力を持つ風斬が、四六時中見守っていないと不安な理由が何かしらある。
それは彼女のエゴかもしれないし、同情かも分からない。
それでも、そこに問題が横たわっているのだ。


――五臓六腑が警鐘を打つ。
逃げるなら、最後のチャンスかもしれないと。


待機だけで、あれほどまでに禍々しい感情を向けられる、やはり天使は偉大だと再認識せざるを得ない。


一方通行は確かに恐怖した。
850 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/09(月) 23:42:24.67 ID:0x/mxw0AO



その彼女が、誰かを正式に敵だと認識したらどれほどの感情【さつい】を向けてくるのか。


正直なところ、あれほどまでのAIMを放出させている目の前の存在に勝てるかと言われれば怪しいところだったりする。


最も優秀な防御とは何か。
それは自身の能力のベクトル操作、それを発展させることだと傲っていたときもあった。
だが、そうではないと9月末に身を持って味わった。
反射の限界。



だとすれば、何が最硬たりえるのか?



「……オマエと違って、こっちは不死性なンざ持ち合わせてねェンだよ」

「……すみません」

要は死ななければ良いのだ、どんなに強烈な攻撃を浴びたとしても。
淡く光る彼ないし彼女が聞かせた文を反芻する。
851 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/09(月) 23:45:00.95 ID:0x/mxw0AO

――と、意味の感じれない心象を長々と綴るのはただの逃避だ。

それについての結果はもう、随分前に出したはずだ。
妹達という、一方通行の中の最優先事項と被らない限り、彼女のことを気にかけると決めたのだ。


時折のインデックスの行動が。

――危うくて、今にも下へとおちてしまいそうで、見ていられなかった。



目を閉じて、脳裏に浮かびあがる表情が1つ。

襲いかかる痛みに必死に耐えるような、圧力に負けまいとする少女だ。


もう、限界だった。


「どォして」


言ってから喉の渇きに気づく。
透明なグラスを持ち上げ、刹那的にも潤わせたことに満足できた。

一方通行は二の句を継ぐ。



「どォして、オマエはアイツのことを尾行した」



「――」

自身が口を動かしている瞬間。
1秒も見逃さなかった、から分かる。


彼女の顔は、確かに悲痛に歪んだ。
852 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/09(月) 23:48:30.38 ID:0x/mxw0AO


「――それは、……っ……」

風斬が想起した事が何なのかかは、まだ一方通行は知らない。


しかし知っても良いと、否、知りたいと思った。

「あの痛みはチャラにしてやっても良い、だからオマエがそこまでしたわけを話せ。
――事実全部じゃなくて、オマエがあのシスターに執着するわけを俺に聞かせろ」


「……あ、あなたにだって、何も関係がないでしょう……!?」


天使の、冷静だった態度も一変して。
いや、元から彼女は薄氷の上に立っていたようなものなのかもしれない。

無感情、無表情はそれこそ彼女の強がりなのだろうか。


思案する一方通行をよそに、風斬は斜め下、つまりは床を向いて唸った。

853 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/09(月) 23:51:41.24 ID:0x/mxw0AO


「俺はれっきとした被害者で、それともうすぐでアイツは俺の後輩になる」

「面白い話でも無いですし、……あなたは理解しない方がきっと幸せなんですよ?」
沈痛な声色は、どうか事情を察してくれと隠す気もなく伝えてくる。


それでも、やはりと言うべきか、取るに足らないことだ。

「知り合いがストーカー被害に遭って、何もしねェほど愚かじゃ居れねェ」

「……何も知らないくせに……」


ファミレスは更に賑やかさを増すと言うのに、彼と彼女だけが切り離されたようだ。
コールタールのようにへばついた空気が、ここ一帯を纏っている。


854 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/09(月) 23:54:08.86 ID:0x/mxw0AO



「何も知らない、あァそォだ。的を得てる」

自嘲。

確かに彼は少女の滑らかな足にある大きな痣
異常に雷に脅えること
聖職者にしては希薄な宗教観
あの家の生活臭よりも強い薬や湿布の匂い
プリントに紛れ、うずたかく積まれたカルテルぐらいにしか気づけなかった。


だけれど、1つ1つは見逃してしまうような、薄い光であれ、結んでみれば、それは燦然と輝く。
気味の悪い矛盾として、だ。


しばらく居心地の悪い沈黙が続いた。
このまま続けていたら、彼女は帰ってくるだろう。

やはり、彼女に聞くべきだったのか?一方通行は逡巡した。

――いや、でも、やはり。


「……それでも、あなたは……」


まだ食い下がるのかと思われた。




――が、続く言葉を飲み込んで、風斬は再度口を噤む。
855 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/10(火) 00:02:01.20 ID:RS55e2SAO


「――ああ」

彼女は、目を震わせ空を拝んだ。
非常に人間らしかった。

人外とは思えない。
人のように、彼女はこの状況を嘆いていたのだ。




「私からした、あの子と彼は……」

「あァ」


「強くて優しかった……、とても、とても。

けど今は、不幸で、異常で、脆弱で、脆くて、病んでいて、哀れで、救いたくて、でも何も出来ない。


……だから、彼らがもう理不尽な目に遭わないよう、私はあの子を守りたかった。


……あは、思わせぶりですよね、でも何があったのかは、私からは言いません……それはあなたへの逃げ道であり、私のあさましいプライドのせいです」



言い切った瞬間から、風斬は一気に空気へと透過し初めた。
856 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/10(火) 00:06:09.00 ID:RS55e2SAO



そうして、今こうやって対面している間にも1秒ごとに透けていく。

「ちょっと……、無理しすぎたみたいです」

「死には」

両手でグラスを持って、中の液体を飲み干した

「少しの間、現出出来ないだけで」

「……そォか」

何かがおかしかったのか、風斬は発光する顔を綻ばせた。

「どォした」

「……一方通行さんがあの子に冷たいから、私、無理して出てきてたんです。虐められないだろうかってハラハラしながら見てました」

「……それは悪かったな」

「なら、あの子にも、もうちょっと優しくしてあげて下さいよ」

「……善処する」


そうこうする間にもう、後ろの景色さえも透けて、だんだん彼女の輪郭が分からなくなってきた。
857 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/10(火) 00:23:00.95 ID:RS55e2SAO



「一方通行さん、インデックスはリスキーです。――比喩でもなくて、逃げるなら今のうちなんですよ」


先ほど、第6感が叫んだことと同じ内容。
なるほど、勘もバカには出来ないと一方通行は内心苦笑した。



「――逃げねェよ」

そもそも、人間関係は1つの例外無くリスクを覚悟するものじゃないか。

それに、だ。


「宝くじもそォだろォ、ハイリスクはハイリターン。重荷?先行投資と言うべきだろ?」

「……そ、うですか」


困っているなら助けてやりたい。
というか、たかがトラブル如きで諦めたくない。


「認めたくはねェが、俺は気に入ってンだろォよ――らしかねェ話だが……」

「……その気持ち、分かりますよ」


そして、もう霞がかって殆ど見えない風斬に告げた。

「オマエのやりてェことも、春からちゃンと引き継ぐ。だから心配するな。

――今度は、ちゃんと実体化して来い。飯ぐらいは奢ってやるから」


突拍子もない言葉に、一瞬だけ呆けて。



しかし、ゆるゆると解けるように最後に笑って、彼女は消えた。
858 : ◆ObanGQEW7M :2011/05/10(火) 00:28:14.56 ID:RS55e2SAO
キリの悪いところで申し訳ないのですが眠いのでここまで、あとこの日ももうちょっと続きます。
私の書く風斬は百合担当だったり情緒不安定の相手させられたりストーカーせざるを得ない状況に追い込まれたり、本当に不憫でして。風斬ファンの皆さんごめんなさい、本当はとっても好きなキャラなんです

それではお付き合いいただきありがとうございました
859 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/10(火) 00:32:55.27 ID:8smcrv3w0

ヤンデレ風斬いいね
860 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/05/10(火) 00:36:15.16 ID:aaJtD4Cs0

インさんの周辺が重い男女ばっかりでマジ魔性の女すぎる
でもこんな無邪気でかわいいくてたまに厚かましいのに
どこか儚くて健気で包容力のある子がいたら誰でも重くなるよね…
861 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/10(火) 00:39:52.55 ID:BMG2rBvS0
一方さんと同化して息をつめて読んでしまった

上条さんとインデックスの身に起こったことを考えると胸ん中ざわ…ざわ…します
乙!
862 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/10(火) 00:50:22.33 ID:tFUlPZUDO
まさかの虐待フラグェ……
863 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/10(火) 00:56:13.92 ID:Co5dUuRvo
>>異常に雷に脅えること

……あの、えーと……御坂さん?
864 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/10(火) 00:58:11.22 ID:8dhxE6n5o
>>863
oh...
865 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/10(火) 01:05:41.32 ID:cqZ0FuQ+0
つ…続きが気になって仕方ないぜ… 1乙
本当にインデックスの回りってヤンデレ候補多いよな…
866 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/05/10(火) 01:07:27.13 ID:aaJtD4Cs0
>>863
お前のせいで気づきたくないことに気づいてしまった……!
867 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/05/10(火) 01:37:29.12 ID:LwEkiHq00

まあ、なんつーかインデックスとその周辺のバランスってかなり危ういものがあるからなぁ
そこんとこが崩れちゃった話なのか
868 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/10(火) 01:40:11.70 ID:DuBGwzjeo
>>863
やっぱそういう事・・・なんだろうか
もしそうなら一方さんも大変だな・・・
869 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/10(火) 02:15:40.81 ID:hBQceW2B0
ヤンデレ候補ピックアーップ!
上条さん・ステイル・神裂・ヘタ錬・姫神・御坂・五和!

・・・もうダメかも分からんね
870 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/10(火) 02:26:55.08 ID:iOVAZ5SIO
ここまで読んでから読み返すとすごい痛々しくて辛い…
ゆるーいやりとりが痛々しくて虚しい傷の舐め合いに見えてきた…
インさんには幸せになって欲しい
871 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/10(火) 03:27:09.57 ID:Zprvj1P7o
今までのゆるゆるほのぼのはどこに行ったんだ…
872 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2011/05/10(火) 06:59:03.96 ID:U9SopQU/o

こういう感情が揺れまくるところが風斬はかわいいと思うの
873 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方) [sage]:2011/05/10(火) 08:46:11.09 ID:yayoNSiAO
どういうことになってんだ本当に
虐待ならステイルや上条さんが絶対に黙ってないだろうし、その二人は虐待なんて絶対にしなさそうなのに…
なにこれこわい
874 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/10(火) 10:57:37.19 ID:oa5oA2TZ0
>>304でインデックスがレベル5に初めて会ったとか言ってるけど
美琴と何かあったことがトラウマになって記憶が消えてるんじゃ
ないかと邪推してしまうな
もしそうなら風斬がこんなである以上、御坂は風斬に殺されてるん
だろうなとか考えちゃうし……

>>315で作者からフォローがあったけどつい疑ってしまう
875 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/05/10(火) 11:30:47.92 ID:w0saFRLno
おつ
今回ので一方さんの優先度が妹達>>>>>>(上条さん?)>>その他大勢から、妹達>>>インデックス>>>>>その他大勢になったてことでいいのかな?
あと>>194の発言がずっと気になってたんだけど、希薄な信仰心からしてフラグ?
とまぁ、気になる謎は多いけど、一番は風斬が百合担当だという話を幼女が書いたことだ・・・ッ!
なんか凄く気になります・・・
876 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/10(火) 16:24:49.59 ID:WhU1h1lPo
今更だけどトリ割れてるから変えた方がいいんじゃないかな
877 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/10(火) 18:10:23.20 ID:tFUlPZUDO
もしかしたら、髪も切ったんじゃなくて切られた……?
878 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/05/10(火) 18:15:36.99 ID:aaJtD4Cs0
文脈から察するに現在進行形での虐待はないだろ
過去に何かあってそれがトラウマで薬漬けに…
やばいなにこれ重い
879 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/10(火) 18:21:06.47 ID:uEnLFJox0
消えない痣……
聖痕の類だったりして
880 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/10(火) 21:42:45.92 ID:UNnuwHC0o
……ふと思ったんだが、
美琴がインさんに何かした
じゃなくて、
インさんが美琴に何かした……とか?
美琴は既に……
実はインさんが既に病みきっている

いや、さすがにないか。
881 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2011/05/10(火) 21:46:53.90 ID:U9SopQU/o
上インのトラブルに巻き込まれ、助け損なって二人の目の前で美琴(ry
じゃねえよな・・・
882 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/10(火) 22:20:05.68 ID:tFUlPZUDO
百合子スレや、一方絹旗スレみたいに、ほんわか進むと思ってたのに、一気にヘビーになったな。
883 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/10(火) 22:31:56.36 ID:8dhxE6n5o
実は単に偶然不幸が重なっただけでなにもなく、風斬さんも素でヤンデレなだけかもしれない
884 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/10(火) 23:02:53.16 ID:Sh9Rr3Ajo
>>315
これ見ると美琴は関係ないように思うけど
885 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/05/11(水) 00:20:33.95 ID:hoUd1YGbo
トラウマ元が美琴だとしたら>>312みたいな軽いノリで口にしてるのはひっかかる
あと雷と言えばヒューズの翼も雷だよなと思ったり
886 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/11(水) 20:36:40.99 ID:P9QyyT/W0
みんな、忘れてないか?


フランスの聖女様は雷の術式も使えるんだぜ?

887 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県) [sage]:2011/05/12(木) 19:44:51.29 ID:b096bSq4o
よくわかんない
888 : ◆ObanGQEW7M :2011/05/15(日) 19:03:36.51 ID:asslH6EAO
今晩は、外出先なので無事に帰ったら投下します

>>876
ググってみたらかぶってましたね……だけど抽出用のためのトリなのでこのままで行くことにします
889 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 22:05:25.18 ID:3Euz9eQA0
期待佐賀
890 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/15(日) 23:58:23.58 ID:asslH6EAO


去りゆく彼女が語った、とある心境。
消化最中のそれを、もう1度反芻しようか。



『……先程話したこと、私が正しいという確証は一つもありません、それは私が1と0で組まれたプログラムだから』

『私は既に、追加モジュールβになっていて……入力された虚偽を真実だと思いこんでいるのかもしれないんです』

『自分、それは人間【あなたたち】でも手探りで掴んでかと思えば朧となり……。そういう曖昧な物だと聞きました』

『……化け物のくせに私には、確固とした自己同一性はないんです。1つだけはっきりとしているのは……自分の特異点』

『虚数学区は1秒ごとにインストール・アンインストールを繰り返す。そうして世界は崩れ、――そして構築されます。』

『そんな幽かな存在なんです。私は刹那的に生きるしか活路が無い』

『だから、一方通行さん……。信じる理由が無いなら、良いんです。私もこれが全てにとっての正解だなんて回答できません……』

『ただ……さっきのことは今の私にとっての、真実【すべて】だったんです』




『私がすがりつけるのは、この一瞬だけだから』
891 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/16(月) 00:00:14.07 ID:sTYHlKyAO



温いコーヒーを終わらせて、半円形になったピザを手に取る。
特に感慨も持たぬまま半分、つまりは4分の1の円に千切って口に放り投げた。



ぶよぶよ、ぶよぶよ。

チーズは冷えて固まって、トマトソースは妙に油っこい。
一方通行が咀嚼をする感も、キャッチコピーのハズの芳醇な匂いは1回も感じなかった。
やはりファミレス製はイマイチだ。

とは言っても、高級な店などにも行ったことは無いのだが。



そうもしている間に見慣れた銀髪の少女が、こちらへ向かって歩いてくるのが見えた。
ひょこひょこと上下に大きく揺れるいつもの歩き方。


「遅くなっちゃってごめ……」

「あ、醤油ラーメンなら来てねェぞ」

注文してから優に20分は経つ。
段々混み出したことを考慮しても、やはり遅い。

「俺が食ったわけじゃねェし」

言うと、そうじゃないんだよと少女は曖昧に笑った。
しかし、緩んだ口元とは違い右へ左へと誰かを――風斬を求めてさ迷う視線は、どこまでも必死だ。
892 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/16(月) 00:02:56.29 ID:sTYHlKyAO



どうやら、彼女は捜索不可能と決断を下したらしい。


「えっと、ひょうか……は?」

「俺に、話すだけ話して帰った」

「そっか……」

そうしてやっと席に座った。



「……」

2人を跨ぐ、黒々とした沈黙。


風斬が“かえって”いったことに、どうやら思うところがあるようだ。
インデックスは頬杖をつき、珍しくもアンニュイな顔を晒している。
メランコリックとアイロニー。
――やはり似つかわしくはない。
やむを得ない事情があるのだろうか。


そうして一方通行が考えるのは、消えた風斬の言葉。
悲痛な叫び声だったか。

『不幸で、異常で、脆弱で、病んでいて、哀れで、救いたくて、でも何も出来ない』

(……風斬の言うことが真実だとして、異常は分かる、あの記憶力を持っている時点で多岐にわたって普通のカテゴリーには入れない)


一方通行、他ならぬ彼もそうだった。
893 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/16(月) 00:04:45.50 ID:sTYHlKyAO



(……不幸、脆弱、病んでいる、哀れ、救いたい――最後の2つは主観だから除くとしても)

――風斬にしてみては、彼女たちは、不幸で脆弱で、病んでいるのか。

(診断書はアイツのものじゃなかった――、それとむせかえるような湿布の匂い――あれもシスターからは全くしない)

楽観視して良いものなのか。


少なくともインデックスのいつもの会話からは悲壮感なんて全く感じない。
無理して演技をしているからか、それとも本当になんてことは無いのか。



目を瞑った彼の脳裏によぎるのは、悲痛な顔をした人工天使と先程のモノクロな表情の禁書目録。

(風斬の心配しすぎか、シスターが演技派か、2つに1つだとしたら)

あの天真爛漫を擬人化したような女が人を欺くビジョンはどうにも見えなかった。
先程は、風斬の必死さに気圧されただけかもしれない。


――そして、再び目の前の少女に焦点を合わせれば

894 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/16(月) 00:07:00.27 ID:sTYHlKyAO

「……あ」

「……」

――彼女は、両手でピザを持ち、顔と大差ないサイズのそれを1回で食べようと、大きく口を開けていた。


ぎこちなく首が動き視線が合う。

一方通行は目を瞑っていた。
だからこの所業はバレないだろうと胡座をかいていたのだろう、彼女は驚きと焦りに目を見開かせた。


「……オマエは、本当に……もォさァ」

「だ、だってね、まるで食べて下さいとばかりに鎮座していたから、食べるしかないのかも……って」

「……どォぞお好きに食べやがれ……」

「その、外が若干寒くってお腹が減ったというかね?」

「オマエはそォいう、シリアスとは無縁な……」

「え、食べちゃいけなかったのかな……?」

「もォ良い……」

そもそもこんなどこにでもあるようなファミレスで、小説にでもありそうな中2チックな対談が起きるわけがない。
ここに居たのは、暴食なシスターと横暴な第1位と心配性には行き過ぎている天使だけ。


――それでも十二分に奇っ怪かもしれないが。
895 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/16(月) 00:08:31.43 ID:sTYHlKyAO



「やっぱり、あくせられーたも食べたかった?」

「……俺はチキンバジル派なンですゥ」

「えー、マイナーかも、っていうか定番はマルゲリータなんだよ?」

「……そンなン知るか」

「だってね、このモッツァレラチーズの食感がまた」

「食え!」

風斬が消えた辺りから感じていたが、周囲の好奇の目がそろそろ辛い。
銀髪に真白の修道服と注目を受けやすいカラーリング。
自覚を持て、と彼は自分のことを差し置いて心中で罵った。
896 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/16(月) 00:10:27.40 ID:sTYHlKyAO



からんころん

結局、醤油ラーメンは売り切れだったのだと店員に平謝りされた。
そして今は、残念がる彼女の首根っこを掴み店を出たところだ。


外は完全に日暮れを迎えていた。
春待ち風が彼らの痩身を叩く。


「うー、さむいねー……」

一方通行を代弁するかのようなタイミングでインデックスは呟いた。

「直に冬も終わる…………と助かる」

「願望なの?」

大きく頷く。

「あなたにしては珍しいかも」

「去年まではぬるま湯にずっと浸かってたみたいなモンで。だから、まさか雪にこンなに憎悪するとは思わなかった」

「あ、私も同じかも。去年の冬はもっともっと重装備だったから、今年は冬の寒さに驚いたんだよ」

とは言え、ニットの帽子に分厚いマフラーと手袋、そして優に5キロはありそうなこれまた白いダッフルコートを着る彼女に言われても説得力は無いのが現状だ。

897 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/16(月) 00:12:17.59 ID:sTYHlKyAO


「スノーマンみてェなナリしやがって、何ほざいてンのやら」

「あれあれ、そんな一方通行だって女子みたいにいっつもカイロ持ち歩いてるの、私知ってるんだよ?」

「うっせェ、ガキが押し付けてくンだからしょうがねェだろ」

「体弱いの?」

「……今年は1回しか風邪ひいてねェし」


真実ではある。
正確に言うと風邪は1回。
他にも、林檎病とインフルエンザにもかかっていた。
そして、あまりの体の弱さを心配した打ち止めに毎日毎日カイロを渡されたのだ。


「ふーん、私は冬だって元気いっぱいだったかも」

「――馬鹿は風邪ひかねェらしいぜ?」

「そうであっても、病弱くんには言われたくないかなあ?」

「はン、繊細と言え」

「繊細(笑)」

「――よし、居直れ」

「え、いや、ごめんねって」

「問答無用だ、ばァか」


いつも通りの流れにしたがって、彼女の額を人差し指で軽く叩く。
これが慣れた応酬。


そうして戻ってきたことに安堵した。

898 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/16(月) 00:12:40.35 ID:kAnm9zbDO
なんだ、湿布はインデックスからしないのか。
それなら上条さんのただの不幸だな
899 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/16(月) 00:14:57.65 ID:sTYHlKyAO



悩みの首の痛みも消え、季節はだんだんと春へと向かう。

彼女は今に固執していた。
変化を畏れていた。
過去を憎み、未来を嫌った。
――季節に取り残されるのは1人だけなのに、感傷的になって誰かを求めたのかもしれない。


『結局は、1番おかしいのは私かもしれません』
ぽつりと漏らしたのは他ならぬ風斬だ。


不変の彼女は変遷する彼女に嫉妬したのか。
自分のアイデンティティを、友人に求めたのか。


一方通行には分からなかった。

そして、きっと、分からなくても良いことだと彼は笑った。
900 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/16(月) 00:16:58.24 ID:sTYHlKyAO



コートの中のカイロに暖を求め指を這わせても、封を開けたのは今日の午前中。
完全に無意味だった。
しかし人肌程度の温さでも良いと妥協して、そのままにしておいた。


「――受験のこと応援してる」

もしかしたら、自分に嫉妬したのかと一方通行は右手で杖を動かしながら考える。

「――と伝えてくれと言われた」

「ひょうか――から?」

「あァ」

閑静な、寮が立ち並ぶ道を歩いている。
すれ違う者も車も無い、ただ杖が地面を叩く音が辺りに響く。

「それを伝えたくて、だがチャンスは無かったンだとよ」

「――そうなの?」

「……あァ」



「――」

呟きは聞こえない。
何を言ったのか、と左を向こうとして。

突然、街路樹が揺れた。

「……」

生命力を感じない、焦げた茶色の枝が軋み酷く音を立てる。
髪が靡き皮膚を撫でるのがくすぐったい。
そしてマフラーは追い風に煽られ、一方通行の前でひらりと空を舞う。

901 : ◆ObanGQEW7M [saga !orz_res]:2011/05/16(月) 00:23:38.41 ID:sTYHlKyAO







――それはヒロインの独白を盛り上げるBGMには、到底成り得ない。

彼女の解を、もう1人の主役に聞き取らせなかったのだから。



言うなれば、せいぜい誰かの用意した都合の良い舞台装置。

不格好で不自然な、デウス・エクス・マキナの予告。







902 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/16(月) 00:26:22.40 ID:sTYHlKyAO



始まりの前触れもなかった。
終わりも同じく、突風は徐々にではなく急に収束する。

背中に感じた風圧も急に止み、あまりに突然だったので彼は少しだけバランスを崩した。


「――そっか、それなら良いのかも」



次の瞬間、インデックスは一方通行の左のポケットに右手を突っ込んでいた。



「あれ?あんまり暖かくないんだよ?」

「急に手差し込ンどいて、言うセリフはそれか」

「だって……寒かったんだもん」

「オマエのポケットだってあンだろ」

「実はね、……ふふ、カイロ目当てだったんだよっ!!」

「……な、何だってー」

しれっと言ってのける彼女の手は、可哀想なくらいに冷たい。
しかしそこでひとかけらの同情もしないのが、我らが第1位である。


「出、て、け」

そして手首を掴もうとしてポケットの中でもがく。

「い、や、か、も」

「冷たいンだよ、オマエの手は」

「心が暖かい証拠だね!」

「どの面下げて言ってン……」

しかし、布に覆われた攻防戦はインデックスの勝利に終わる。
903 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/16(月) 00:29:50.74 ID:sTYHlKyAO



「ふふ、こうすれば逃げられないかも!」

「……凄まじい外道を見た」


何てことはない。
インデックスが一方通行の手首を掴んで、下に押し付けたのだ。

正直言って簡単に抜けられるくらいの力だ。
多分インデックスも本気ではない。

しかしポケットの縫い目のあたりが解れたり、気に入っているコートがよれたりするのは嫌で抵抗は諦めた。


残りはあと長くない、少々の辛抱だと毒づいて一方通行は前へと進む。


「……オマエと風斬って」

「うん?」

「性格は真逆じゃね?」

「そうだね」


頷いた際に髪が擦れる。
その音が案外近くから聞こえることに、少しだけ彼は驚いた。
904 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/16(月) 00:35:07.16 ID:sTYHlKyAO



「穏和と凶暴……何か美術品のタイトルみたいだな」

「……今だけはその評価に甘んじることにするんだよ」

「ンで、似ても似つかねェオマエらが、よくもまァ仲良くなったと」

「ううん、違うからこそ、だよ」

街灯の真下を通り、そうして見えた影。
やはり不格好だ。

隣を歩くにしては、窮屈なぐらい近すぎる。
しかし、車道側に逸れようと一方通行が動いてもさり気なく付いてくる。
どうしたものか。


「同族嫌悪?とにかく、自分と近い人なんて嫌になっちゃうかも」

「……一理あるかもなァ」

「ドッペルゲンガーのお話ってあるでしょ?それって、見た人は死んじゃうんだよね」

もう1人の自分=ドッペルゲンガー。
西欧から伝わったと聞いたことがあった。

「――でも、それも誇張されにされまくった寓話じゃあ案外ないのかもって、私は思うんだよ」

「どォいった意味だ」

そのままだよ、とインデックスは続けた。
905 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/16(月) 00:37:26.55 ID:sTYHlKyAO



「もう1人の自分、なんて私が見たら狂っちゃうかも。

だってね、醜いところとか、弱いところとか、汚いところとか、暗いところとか、全部ぜーんぶそいつは内包してるんだから。
絶望して、気が触れるにしては充分すぎる理由じゃないかな?」


夏までの狂った一方通行と今の彼が出逢ったら、いや、別に条件を甘くする理由は無いのだ。


――今の彼が、そっくりそのまま一方通行の前に現れたら。


つまり、彼女が言うのは、今現在の自分の有り様と向き合えるかどうかということ。


「――あァ、確かに殺してェな」

「そこまで私は過激じゃないけど、でもね、確かに逃げ出したいんだよ」

「だが、案外オマエが考えるよりは良い奴かもしれねェぞ?」

言っておいて仕方ないが、彼自身は微塵もそんなことは思えなかった。


「どうかなあ?やっぱりね、絶対に会いたくないんだよ。だって私は強くないし、そんな頑丈な自分だったら嫌いにはならないから」

「オマエが言う割には珍しく理に適ってンな」

「珍しくは余計――ってことで、自分と全然違うタイプの方が仲良くなれるっていう私の証明は終わりかも、っと、きゅーいーでぃー」


906 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/16(月) 00:48:56.98 ID:sTYHlKyAO



「そォだ、二次関数の発展は終わったのかァ……?」

びくっ!
その体の震えは、やってませんとのアピールでしかなかった。

「シスター?」

「はいっ!」

どうしようもなく嘘が苦手な女だ。
いつの間にかポケットの中の手の上下も交代している。

「苦手なところはやンなきゃ伸びねェっつゥのによォ」

「きょ、今日帰ったらやるんだよ!」

「出来ンのかァ?またアニメ見て、夕飯も死ぬほど食べて」

「や、やるったらやる!かも!」

「かもじゃねェし」


残りはあと僅か。

「まァ、このままでも受かるだろォけどな」と聞こえないように呟いく。


触れる手は冷たい、とはもう言えなかった。
907 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/05/16(月) 00:51:27.11 ID:krJa+BYq0
追いついた・・・
908 :終わり :2011/05/16(月) 00:53:57.73 ID:sTYHlKyAO
このスレ内でインデックスが受験するかも怪しくなったのは、単に私の計算ミスなんで気にしないで下さい。
あとインテリぶった会話が難しいです。
それではありがとうございました

>>875
総合かどこかで、インデックスが主人公な乙女ゲーは楽しそうだなっていって投下したような。そしてそこに風斬が居たような
909 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/05/16(月) 00:56:52.37 ID:/qKlFbj20

一緒のポケットに手を突っ込むとか微笑ましいんだけど
裏に何があるのか怖くて今までのようなゆるい頭で見れない…
なんかこの日常が空虚な感じがして怖い…
910 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/16(月) 00:59:32.58 ID:NJt1BB7P0

ドッペルゲンガーっていうとぷよぷよ思い出す
911 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/16(月) 01:58:31.96 ID:pI+Tz0Nu0
これが恋人握りに発展する日が来るのをまってるよ
912 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/05/16(月) 04:33:30.19 ID:XKFZtNoco
風斬は自分に大きなモノを与えてくれたインデックスが変わってしまうことに対して
漠然としたわだかまりのようなものを抱いてるだけなんじゃないかと思うんだけどなー。
時が全てを解決するようなそういう問題。
上条の寮室が救急薬品臭いのはそりゃそうだろうなって感じだし、俺はのんびりとインデックスを愛でるぜ。
913 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/16(月) 06:21:01.94 ID:INK79jAAO
セロリさんがスノーマンとか言ってもキラースノーマンしかイメージ出来ないんだぜ
914 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/05/17(火) 19:49:25.55 ID:I+EfkTdBo
一方さんもやわらかくなったもんだ・・・・・・(ホロリ
915 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/18(水) 22:16:38.41 ID:G1Ks6P0AO
多分今夜中に投下します。
あと、これって自分にちゃんと書けっていう圧力の為なので、もし皆さんの安眠を邪魔していたら申し訳ないです。





あと、以下ただの余談です


はがないアニメ化するそうですね。
おめでとうございます、ヴィジュアル的には厨二の妹が好きです。
それもなんですが、何より今日の朝刊を見たはがないを愛する私の友が喜びで興奮してまして。
「肉の生ボイスwwwwwダウンロードしたったwwwwwwwwwwやべえwwwwwwかな恵ちゃんかわいいwwwwwwけどwww肉だと思うとwwwwwwなんかムカつくwwwwwwwwwwwwwwwwww」
なーんて、とても微笑ましかったんですが、その笑顔のまんま階段から落ちました。
残念ながら阿良々木くんは居なかったので受け止めてくれる人も居なくて、綺麗に後方から落ちていきました。
軽く足を折りました、全治1ヶ月らしいです。
ですけど、「名誉の負傷(キリッ」とか言ってまして。
何を言いたいかっていうと夏のノイタミナでNo.6がやるのでとっても嬉しいです。
916 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/18(水) 22:18:44.88 ID:Dx0eJ8t1o
>>915
友人wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
917 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/05/18(水) 22:37:53.09 ID:fyn2c0qa0
友達に入院をオススメしたい
いや、今の病院じゃなくて頭のな
918 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/19(木) 00:48:56.30 ID:Dcs6GY1AO


レポートの資料を取りに行くため一方通行が本棚へ向かった時のこと。

物々しいフォントで綴られたドイツ語。
理学関係の筈なのに、表紙で何故か露出度の高い女性が微笑んでいるスペイン語で書かれた本。
それらを入手し、杖をつきつついつもの椅子のコーナーに戻ろうとした。
しかし、そんな彼を引き留めるのは無造作に吊された今日の朝刊。

「……」

しかしそれも、見出しに踊る
『今年度の学園都市の歳入が過去最高』
『アメリカ、ドイツ共同軍事演習開始』
『無差別スキルアウト傷害事件による被害者が50人超へ』
『小学校立てこもり事件、第5位・第7位の介入により解決』
といった文字群のせいではない。


「14ページ……」

呟く最中にも、ぱらぱらと新聞紙が落ちていく。
急いで紙面に目をやった。
黒、黒、黒、ときたま白。
そして細かい数字。

「長点上機は……」

――穴が空くほどに凝視した。

結果は懸念している程では無かったが芳しいわけではない。
それを早く伝えたくて、彼は席へと急ぐ。


――が、しかし。
919 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/19(木) 00:51:46.07 ID:Dcs6GY1AO



ガ、ガン!

「〜〜っ!!」

瞬間、確かに骨が鳴いた。
咄嗟に木と衝突してしまった部位を手で抑える。

――勢い余った一方通行は、机に足をぶつけてしまったのだ。

「……あ、大丈夫?」

足が痺れている、そして痛いし情けない。また、正直なところ、生理的な涙が出て来ていた。
とりあえず無視することにする。

「……見ろ……、倍率……出てる」

「ほんと!?」

「おォ……」

駄目だ、やはり痛かった。
反射があれば粉砕していたのは机だというのに、何て不運なのだろうかと一方通行は自嘲する。
さもなくば、この脛の痛みはやってられない。

よろよろと腰をおろすと、真剣な顔で数字群を探すインデックスが見えた。

「……9.25倍?」

「……だな」

高いことに不安があるのか、若しくはどれくらいの難関か実感出来ていないのか、いまいち複雑そうな顔をしている。

「……問題、……今年の長点上機特別進学科の店員は40人。が、9.25倍もの募集がきてしまいました……っく。
……いったい……何人が、志願したのでしょォか……」

「370人なんだよ、あと妙に喘いでるけど大丈夫?」

「気にすンな……」

額に浮かぶのは汗か、はたまた実体した羞恥心か。
920 :>>919 ×店員 ○定員 ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/19(木) 00:53:59.48 ID:Dcs6GY1AO



「9.25倍……うーん、大変なことかも」

「かもじゃねェ、つゥか実際に最難関だっただろォ?」

「確かに、でも去年はもうちょっと高かったよね?」

「11弱っつゥ話だったな」

「笑っちゃうんだよ」

「同じく。記念受験だったり無謀な挑戦だったりする場合もあるだろォが――半分ほどと考えて、最低185人はオマエの真っ当な競争相手」

「わー……」

引きつった顔のインデックスは、白く柔らかい指を何やら折り畳んでいく。

「えっとー……」

「文系教科、特に英語と自由選択の外国語落とさなきゃ良いだろォが」

「頑張るんだよ! 英語は母語だし、ドイツ語も……うん、まあまあ!」
921 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/19(木) 01:00:01.65 ID:Dcs6GY1AO


『私立、難関高にしても苛酷すぎではないか』

受験生の必須科目、英語以外にももう1つ外国語があることについて内外から声は上がるが、学校側は頑として譲らない。

故に、この受験の為に塾へ通うのが普通であり、そしてまた多くの中学生たちのウィークポイントに成り得る。


と言うか、まあまあ、だなんてよくも言えた物だと嘆息せざるを得ない。
謙遜にしては質が悪すぎやしないか。

「オマエみたいに理解できねェのは動物の言葉ぐらいじゃね?っつゥ奴が言うとイヤミでしかねェし」

今度、マイナー言語で書かれた資料に出くわしたら翻訳してもらおうか。

「いや、マイナーな言語なんて分かる訳ない……っていうかアイスランド語とかサーミ語とか北欧系が地味難しいかも……、ぐぬぬ。

あ、飼い主だしスフィンクスの言ってることぐらいは分かってるんだよ!」

「はいはい、夢の国の住人乙」

922 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/19(木) 01:01:11.90 ID:Dcs6GY1AO


「違うもん! ほんとにほんと!」

「の嘘」

「の嘘!」

「の嘘の嘘」

「の嘘!」

「残念だったなァ、それは嘘だ」

「あぁー!」


その後も、内容性に欠けた他愛の無いことを話した。
これから勉強するなら何語だとか、響き的に1番可愛い四文字熟語だとか(協議の結果、曖昧模糊になった)。

あんなに高倍率、最初こそ面食らっていたものの、何とかなると思っているのか今は温和な顔つきである。
普通なら叱咤するところなのだが、彼自身も実のところそんなには心配していない。
聡い彼女なら入試も何とかするだろうと思えてくる。
しかも最近は、苦手だった数学の発展問題もほぼ満点をとっている。


それに残り3日を心配して過ごしても仕方がない、つまりやることは大体やったといえるのだった。
923 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/19(木) 01:03:16.83 ID:Dcs6GY1AO


インデックスはもう1回新聞に目を落とす。

「そういえばね」

「どォした」

「あくせられーたって、化学とかも詳しかったりするんだよね?」

「まァ、だいたいは出来ンじゃねェの」

適当に研究所の資料を漁っただけだが、と加えると、それで良いかもと笑顔で返された。


「質問があるんだよ」

「とりあえずは言ってみろ」

「奇想天外だけど笑わないでね」と前置きをした。
少し真剣さが増した表情だった。


「突然ね、一部分が火傷することってあるのかな? あ、火には多分触ってないんだよ」

――脳内会議の結果は“はい”。
1回頷いた。

「面白ェ方といたって普通、どっちが良い」

「んー、じゃあ面白い方!」

人差し指を天井に向け、インデックスははにかんだ。
やはり、そう言うとは思っていたが。

924 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/19(木) 01:08:07.88 ID:Dcs6GY1AO


「人体発火現象っつゥのがある」

「……、?」

「その名の通り、急に、何の前触れもなく人体が燃え上がるンだよ。各所から火を噴き出してなァ」


てん、てん、てん、と綺麗に三拍休んでから

「えぇぇー!! オカルトじゃないんだしそんなの恐すぎるかも!」

完全にここがどこかを忘れた叫び声だった

「中国だのベトナムだので確認されたよォで――原因は、生体電流とも静電気ともはたまた気化したリンだとも言われンが……まァ、よくは知らねェ」

授業中の女性が、はたまた性行為に及ぶ男性が発火したという事例。


眉唾物のトンデモ現象を興味深くは思うようだが、如何せん理由とするかと言えば別らしい。
化学に明るくないインデックスも、のべつまくなしには信じない。


「そっか……だけどね、多分それじゃないって思うんだよ」

「だろォな。だとしたら後は」

特に意図もなく、結果的にはもったいぶる形になった。
925 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/19(木) 01:12:33.01 ID:Dcs6GY1AO



「化学熱傷、放射線熱傷――ンで電撃熱傷」

「それらって?」

彼女なりの手応えを掴み、インデックスはたたみかけてくる。

一方通行がふと瞳を覗くと、先程の気迫が戻ってきたようで、碧は冴え冴えとした輝きを、圧倒的な存在感を放っていた。

「オマエが理解出来るよォに分かりやすく言う。

化学熱傷は硫酸、塩酸、硝酸などが皮膚を腐食すること。放射線熱傷は、放射線のエネルギーで肌が焼けるみてェな。電撃は言わずもがな、焦がす」

「…………そっかぁ」

杜撰な説明の方が分かりやすいのか、憑き物が落ちたように、かくかくと頭を動かしていた。


それにしても人体が焦げる例――だなんて、昼前にのんびりと話すには異質すぎやしないか。


「何か聞いた理由はあンのか?」

「――――えっとね、」

話によると、持ってきた新聞の連載小説を見たところ、それは以前も目にした作者だった。
そして、その小説は時代小説なのだが、顔の焼けただれた男が最初から登場する。
しかし、作中でそうなってしまった理由は一切話されない、ただ淡々とそれからの人間関係を描くだけなのだ。


「――当時だって江戸は多湿だったと思うから、自然発火は無いかなって」

「当時なら、ダントツで電撃によるものだろォな」

「そうかも。じゃあね、今だったら?」

「化学と電撃が拮抗するくらいじゃねェの?」

「――うん、うん! ありがとう、参考になったかも!」

顔を焼くほどの痛み――想像を絶する悪夢だろう。
そして今のように、こっそり学校からくすねてしまえそうなものが危険な物という事実。


「それにしても、新作出てるなんて家に新聞が無かったから気づかなかったんだよ」とぶつくされていた彼女に勉強しろと拳をいれておいた。
926 :終わり :2011/05/19(木) 01:16:42.71 ID:Dcs6GY1AO
途中一方さんが涙ぐんでいましたが、基本的にこの話の主要人物は精神的にMです。あと、先述の友人は三次のくせにウザカワイイ属性なんでほんと困ります、とりあえず明日殴りたいなと思いましたまる

お付き合いいただきありがとうございました
927 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/19(木) 01:23:54.43 ID:j2QZKFODo
哂う左右衛門を思い出したがアレは女で病気のせいだったか、なんの小説だろ

電撃かあ…


928 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/05/19(木) 01:42:50.93 ID:fyOK1GuS0
乙!このふたりやっぱなごむ!
929 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/19(木) 02:18:00.00 ID:fAMhtm0ro
乙です
の嘘のくだりが可愛すぎる
930 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/19(木) 15:39:51.45 ID:+4Tm/KVAO
幼女の友達はつまり幼女だよな
931 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/05/19(木) 17:58:04.16 ID:MRVbdd8eo
おーつ
個人的に、第七位と第五位の共同戦線がきになるな
932 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/20(金) 02:53:50.71 ID:RRsw92U40
五位ってしょくほーさんだっけ?なんかの伏線か…?
久々に和み話で和んだ
933 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/20(金) 04:00:43.84 ID:0fj6+nH60
乙!
なんか裏がありそうだな…
934 :名無しNIPPER [sage]:2011/05/20(金) 21:21:17.81 ID:eocQmCtIo
電撃って、やっぱ美琴・・・
それにしても禁書世界のドイツって何やってんだろうなあ、あまりに地味だよな
935 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/24(火) 01:05:10.74 ID:PLCNXrrt0
江戸時代に顔に大火傷って普通に火事だと思うんだけど言わぬが花だったか
ってか電撃・・・放射線・・・もう電磁波使いのあの方がリーチじゃねえか

あと友人の御性別はどちらであらせられるのでしょうか?
936 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/24(火) 22:52:24.03 ID:gK1jYsB50
幼女の友は幼女
937 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/05/25(水) 02:06:18.59 ID:xfjMvI4Bo
幼女の友達?
そんなの少年に決まってるじゃない
938 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/26(木) 06:23:36.12 ID:mO/lLTPa0
>>937
サラシまいた女が探してたぞ
939 : ◆ObanGQEW7M :2011/05/26(木) 19:20:19.94 ID:IlXVFIYAO
遅くなってすみません。出来上がりしだい投下します。

もう治ったのか友人は今日陸上競技をやっていました、あと女です
940 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/26(木) 19:31:58.63 ID:mFzuLTdeo
階段から落ちた友人が女だと……
友人さんを僕にください!
941 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/26(木) 22:22:56.47 ID:cAb33Cwgo
女の友人がいるとかさてはこの>>1…リア充
942 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/26(木) 22:30:43.36 ID:5R8iDA15o
>>1は幼女なんだから女の友人がいてもおかしくない
943 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/27(金) 00:59:46.55 ID:hGWRxlQa0
謚穂ク仇ktk
944 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/27(金) 03:59:59.91 ID:GdyO2CWAO


陽光が木製の机に注ぐ。

ナノサイズの金属製の球、つまりはボールペンが上質紙をなぞっていく。

――シャッ、シャッ。
涼しげな顔でペンを走らせる一方通行。
対照的に、そのリズムが1つ、また1つとする度に
インデックスは緊張で顔を歪ませた。


そうしてどれくらいが経ったのか。


――ペンの動きが止んだ。
採点が終わったのかと思い、恐々と彼の表情を窺う。
彼女の瞳に映る対象は未だに下を見ていた
何か考えているようであった。
赤色のボールペンを手放す素振りも見せない。
表情は読み取れない。


「……間違ってた?」

「…………」

一方通行はこめかみに指を当て、彼女の回答と冊子を見比べる。
計算のメモ、ノートの端でペンを動かした。
945 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/27(金) 04:01:36.25 ID:GdyO2CWAO


「……問352の解とお前の答案は違う」

「……あー、間違えちゃったんだね
でも、一問なら私にしては善戦かも?」

薄く笑って、インデックスは片手を差し出した。
ノートを回収したかったのだが、一方通行は返す素振りを見せない。


「――だが、計算結果はECが5√31、最短距離はFAじゃねェ」

「えっと……」

インデックスは、ぱしぱしと瞼を開閉させる。
そんな様子を見て、彼はペンを握り直した。
勿論、自身の微笑には気づかぬまま。


「やっと正解かよ、もォ前日だっていうのによォ」

内容に反して語調は柔らかい。
そして真っ赤な花が、紙に咲いた。

「……え?」

「心配なら見てみろ」

皆まで言えなかった。
気がつくと隣から漂ってくるのは、甘い香り。
視線を右にやるとすぐそこに、煌めく銀髪が。

(……髪、早くにやってやりゃァ良かった)

見苦しい、とかそういった感情もあるはある。

だが、脳裏を埋める大体数の理由とは『終わりが焦げあとでは勿体なさすぎる』といった主観である。


そんな心情を知ってか知らずか、花丸を見て綻ぶように彼女は笑った。

946 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/27(金) 04:03:30.29 ID:GdyO2CWAO


時計を見ると午後2時、今が絶好のチャンスかもしれない。

「……オマエ、時間ある?」

逡巡もせずに彼女は返す。

「ふっふっふ、私にそんなこと聞くなんて愚問にもほどがあるんだよ」

「何を偉そォに暇人が言ってやがる。
――じゃァ良い。出掛けンぞ」

鞄を片手に、それとスプリングコートを着て席を立った。


自動ドアを潜り、いつもは通らない方向へと歩いていく。

「え、ちょっと、どこに行くのかな?」

しばらく進むうちに、後ろから少々慌てたような声が聞こえた。
何と返すべきか迷い、長々考えた。
五分経ってから出した結論。
それはあくまでも素直に。

「――俺も本意じゃねェが、ここまで来たら神頼みってモンじゃねェのかって」

日中ということもあるが、頬を撫でる風が鈍い。
年中この気温で居てくれれば良いのだが、それは無理な話だろう。
嘆息した。

「かみ、だのみ?」

まるで音声発音ソフトが発声したかのように思われる。

「……」

いたたまれなくなった一方通行の歩調は、徐々に加速していく。

「あ、待って!」

「別に行きたくねェンなら」

「合格祈願で……かあ、神様が味方してくれると嬉しいね」

さり気なく横にくっ付いてきたインデックスは、にへらと笑った。

947 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/27(金) 04:08:02.39 ID:GdyO2CWAO


「――つゥか、神社行くわけだが良いのか?
宗教的にタブーとかよォ」

これで、血で血を争うような戦争に発展しないとも限らない。
――とは思うが、同一人物による巫女服着てみたい宣言がある。
シリアスには捉えようとは思わなかった。

「うん、そこら辺イギリス清教は大丈夫かも!
ねえねえ、おみくじとかってあるのかな?」

「多分なァ」

「うわぁ、楽しみなんだよ!」

修道女がそれで良いのか、というツッコミは胸の内に秘めておいた。
948 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/27(金) 04:09:40.84 ID:GdyO2CWAO


第12学区。
ざっくばらんに神学系とは言え、やはりここは日本。
足を踏み入れた途端、一気に和の雰囲気が匂い立つようだった。
あとは、ひしひしと伝わるアウェー感。


「――明日はね、電車に乗って高校まで行ってくるんだよ。
うん、だから遅刻しないように気を付けなきゃね」

「――」

「なんか変な顔してるかも、どうかしたの?」

「……ツッコミし忘れたが、オマエそのカッコして行くのかよ」

修道女は首を振る。

「この前のセーラー服なんだよ、まあ、防寒には難ありかも」

「ちげェよ。明日じゃなくて今」

人差し指を彼女の方に突き出す。

「いくら寛容とは言え、あからさまにも異教徒アピールすンのはどォなンだ?」

「あ」

口に手を当てていることから、やはり失念していたようだ。
確かに誘ったのは自分だが……。

この体たらくで他信者と諍いが起きないことが不思議でしょうがない。
949 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/27(金) 04:11:46.66 ID:GdyO2CWAO



仕方ないと言わんばかりの表情。
杖をつきながら器用に、一方通行はコートを脱いだ。
そして、それを無造作に渡す。

「俺のサイズなら、ちンくしゃなオマエには長いだろ」

睨みをくれながらインデックスは袖を通した。
今し方までの体温が淡く伝わってくる。


「ふぃー、あったかいね」

「膝よりは上……、まァ良い」

「それと下はどうすれば良いかな?
一応、タイツは穿いてるんだよ」

「だったら、安全ピンで調節して丈変えろ」

フードを外し、コートで歩く教会を隠してしまう。

まだ違和感は残るものの、これは善戦した方だろうと彼は自身を労った。
というか、実のところ一方通行の容姿だって日本人離れしているのだが、自分のことについてはあくまでも無頓着なようだ。

それこそが一方通行らしいと、インデックスは納得をする。

950 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/27(金) 04:14:06.32 ID:GdyO2CWAO


ちゃりん、と100円が賽銭箱に飲まれ消えていった。


「参拝のルールは2礼、2拍手、1礼」
なんて、やはり彼女は知っていた。

後ろで待機する一方通行を気にも留めず、淀みない動きで頭を下げる。

ぱん、ぱん!
破裂音が2回、響き渡る。


最後に彼女はもう1回頭を垂らす。

長い間、それも深く。

「……」

ただ祈るだけなのに、それがどうしてか。
荘厳な雰囲気を醸し出す一枚絵のようだと彼は素直に感じた。
こういう瞬間に、彼女は聖職者なのだと再認識させられる。
祈る、信じる――それが仕事だと。


静謐に満ちた空間の、薄ら寒くて高湿な大気が肌にまとわりつく。


「――」

軽めの足音が響く。
一方通行が目をやると、笑顔の彼女が向かって来ていた。

「ちゃーんと終わったんだよ」

「そォかい」

「……ちゃんと叶うと嬉しいなあ」

鳥居を見つめる彼女の表情の真意が分からない。
嬉しさや悲しさや戸惑いが、入り混じったように彼には見える。
951 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/27(金) 04:16:29.62 ID:GdyO2CWAO



「日本には八百万の神が居るらしい
そンだけ居ンなら、どれか1柱ぐらいはオマエの願いを叶えてくれンだろ」

「そう、だね。

……って言うか、あなたはお詣りしなくて良いの?」

「正月に来てンだよ」

「なるほどね」

インデックスは身を翻し、巫女が座っている方へと歩いていく。
歩き方が妙だった。
後ろからだといちいち跳ねているように見える。
だが、あながち間違いではないのかもしれない。


「――ってことでおみくじなんだよ!」

そう言う声は、とても楽しそうだったから。

インデックスは自分の財布から400円を出し店番をしていた彼女に渡す。

「なにがでるかなー?」

インデックスの様子に、正面の彼女も薄く笑った。
『弐百五拾六』。

奥に鎮座した棚の列から、一枚だけ紙をとって、巫女はそれを渡した。


「どうぞ」

「ありがとうね!」

白いツルツルした紙を片手に、インデックスは後ろへと下がる。


一方通行も追うつもりで、軽石に杖をついたのだが

「やっていかれますか?」

「……あァー」

笑顔の女に、何というか凄みがあって、結局彼も金を払うこととなる
952 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/27(金) 04:17:56.19 ID:GdyO2CWAO


「……大吉とか、柄じゃねェ」


健康、怪我に注意
学業、案じるな
金運、悪くはない
勝負、連戦連勝
恋愛、大変な苦労をするだろう
待ち人、最後には必ず来る
失せもの、きっと見つかる

総合、悩む1年だが必ずや自分の活路を見いだせる

「本当に……まァ」

何だかんだと悪態をつきながらも、一方通行の表情は穏やかだ。
実は彼もこれが初めてのおみくじとなる、結果が良くて嬉しいのだろう。
インデックスにも伝えようと辺りを探す。

彼女はやや離れたところで真剣に文面に目を落としていた。

「オマエ、どォだった?」

「……学業と金運は良かったかな……」

「あァ?」

予想以上に覇気が無いことを訝しんでいると、彼女のおみくじを渡された。


「……あァ……」

「……はは」

その紙には大きく一語。



「……凶かよ」
953 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/27(金) 04:20:16.70 ID:GdyO2CWAO


インデックスは自嘲めいた笑みを零す。

「……健康は難あり
勝負は死にたくなかったらするな
恋愛、悩み苦しみぬく
待ち人来ない
失せもの、無くしたのと消えたのでは違う
総合、秘密主義は破滅をもたらすことになる……なんだよ」


「…………おォ」


がっくしと落胆する少女。
初めてのおみくじだと言っていた、ちなみに一方通行も初めてだ。

「……まあ、しょうがないんだよ!
それよりも、金運良いんだから、いっぱい美味しいもの食べれちゃうかもっ」

「いや、泣きそォな顔して言っても説得力はねェよ」

「そ、そんなことは、無い」

うるうる
目に並々と液体を湛えておいて何を言うのか。

「…………仕方ねェな、これで相殺でもしとけ」

そう言って突きつけるのは、先ほどの大吉のくじだった。

「ひいてたんだ、って言うか大吉……」

「――どォ考えても俺のガラじゃねェし」

自分が大吉をひいたのは、多分こうやって彼女を引き上げてやるためだと心から思う。
±0にしてやれとどこかで誰かがうそぶいたから、自分が+を手にしただけ。

からくりが分かると、妙に腑に落ちてしまった。

「……ありがとうね、あくせられーた」

「……どう致しまして」


954 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/27(金) 04:22:00.26 ID:GdyO2CWAO


木にくじを縛り付け、果たすことも終えた。
そうして今は帰り道。

何時もより早い時間なので、影の形も若干違う。
彼らとほぼ同じ大きさで、こんな風に歩いているのかとさえも思う。



「……明日かあ、なかなか早い感じがするんだよ」

「実際問題オマエに時間は無かった」

「2週間ぐらいだもんね」

隣から、くすくすと笑い声が聞こえる。
ここ1ヶ月のあいだに、何度この声を聞いたのか。

「――結構、何とかなるんだね。

……本当はね、私、間に合うとは思って無かったんだよ」

「俺だって確証はなかった」

「ふふっ、私が頑張ったからだね?」

冗談めかして言うセリフに、だけれど嘘を思わせる文脈はどこにもない。
何となく癪には思うけれど。


「――そォなンじゃねェの?」

だから、肯定してみた。

955 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/27(金) 04:24:10.56 ID:GdyO2CWAO


「…………」

「……何黙ってンだよ」

正に絶句と言うべきか。

……何か言ってくれないと悶死してしまいそうだ。


「……あくせられーた、もしかしてもうすぐ死んじゃうの!?」

「はァ……!?」

これぞ、斜め上にかっとんだ回答と言うべきか。

「だって、カナミンではそうやって素直になったキャラから死んじゃうから!」

「アニメと現実ごっちゃに混ぜてンじゃねェ!」

「あいたっ!」

フードの無い頭にダイレクトで叩き込んだ。
この行為たりとて、もはや普遍化していて、きっとこれからもそうだろうと思う。


956 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/27(金) 04:26:27.78 ID:GdyO2CWAO


「第一、俺は死なねェ。
オマエと同じで、まだ何も始まってねェからだ」

「――始まって、ない」

「俺もオマエも、この街の住人に本当の意味でなるのはまだこれから先だぜ。

今までは長い長い、準備期間だったわけだ。
ンなの飽きるのが妥当だろォよ。


――だから、とっとと来い。
アウトローはもォ楽しみ尽くしただろ」

だから、高校に行きたいと彼女は言ったのだから。
厳しい内容にも負けずに食らいついてきたのだから。


インデックスは頷いた。

957 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/27(金) 04:28:09.98 ID:GdyO2CWAO


「この試験も通って、そうしたら」

「ホワイトデーでチョコレートフォンデュに連れてってやる」

「わぁぁああ!!」

目の輝きは2倍増になる。

貸し切りで、きっと彼女は死ぬほど食べるに違いない。
自分は甘い匂いにダウンして、コーヒーばかりを味わっている――きっとそんな未来だ。

「――カナミンの映画も夏にやるから、一緒に行こうよ!」

「考えといてやろォじゃねェか」

「やったっ!」

春も夏も秋も、次の冬も、こうして居るのだろうか。
下らない話に花を咲かせ、些細なことで議論になるような関係性で。


「――だからね、私、頑張ってくるよ」

「おォ、頑張れ」

頭に手を乗せ、焦げた部分を切り離してやる。
それは風に乗り、霧散して散っていった。


永続性を求めるその感情は発露している。
――しかし、その名はまだ彼の知るところではなかった。
958 :おわり :2011/05/27(金) 04:30:17.38 ID:GdyO2CWAO
遅くなってすみませんでした。
眠たい……、それでは寝てきます

お付き合いいただきありがとうございました。
959 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/05/27(金) 04:31:50.69 ID:sXW33Tpfo
乙やすみ!
おみくじが不穏で仕方ないぜ……だが平和を願おう
960 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/27(金) 04:34:34.21 ID:0mVTlt5Jo
起きててよかった乙ですの

何だかんだで一方さんも楽しんでるのがこの関係のいいとこだな
961 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方) [sage]:2011/05/27(金) 09:17:51.38 ID:vVn5xhFAO
おみくじは二人とも健康面と恋愛面が不吉だな…
なんかこわい
962 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/05/27(金) 11:44:55.58 ID:1X5VXwn90
早く二人の学生ライフがみたいなぁwwww
963 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/27(金) 16:09:35.65 ID:3QMbdXRl0
おみくじの内容が……
早く続きが読みたいです
964 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/27(金) 19:05:41.92 ID:CgVaVIB4o


おかしい、平和な学生生活の描写があるのに一方さんとインデックスに死相が見える
965 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/28(土) 08:16:42.77 ID:HFPsdHFIO
イン「でもいいんだ、私はあの星で。あの北斗七星の横でいつもひっそりと光っている…」
一方「今日は北斗七星がよく見える、その脇で輝く小さな星までも」
966 :名無しNIPPER [sage]:2011/05/29(日) 17:49:32.91 ID:XRaHnAxao
インデックスが落ちるイメージ出来ない
っつーかきっと文系教科は神だよなぁ
967 : ◆ObanGQEW7M :2011/05/29(日) 21:40:33.10 ID:/Tef1ufAO
こんばんは
とりあえず今日の内容が区切り良いかは微妙ですが、投下したらスレ立てる予定なんでお願いします
968 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/05/29(日) 21:43:17.63 ID:ZInpvXkL0
戻ったかッ!!!
969 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/05/29(日) 21:46:22.16 ID:KrDtX7QJo
って言うほど間隔開いてないのではないかッ!!!
でも待ってるッ!!!!
970 : ◆ObanGQEW7M [!red_res]:2011/05/29(日) 23:42:17.78 ID:/Tef1ufAO




**WARNING!!**

!!臨界点!!
!!それは、またもや死んでいく!!
!!変遷!!
!!忘却から脱却できずに!!

**WARNING!!**





**WARNING!!**


971 :No.nはかく語りき [saga]:2011/05/29(日) 23:50:23.16 ID:/Tef1ufAO



――1つ目は諦めていた。

“俺”は、もう朧気にしか思いだせないけれど。
何故か、偽善者と自称していた。
そうやって自嘲していたのに、彼は彼女を救って、それで勝手に死んでいった。
間違いなく彼は英雄だ。
でも、そこで****が死ねていたのなら不幸の連載は終わったかもしれないのに。



――2つ目は苛まれていた。

――どうしてなのだろう?
彼にとって**の継承が出来ないことは、そんなに悪なのか。
だとしたら、“俺”は最深に位置するだろう。
彼は知り得ない1つ目に焦がれ、そしてどうしようもなく嫉妬していた、後ろめたさを潜めていた。
――だからこそ、純粋で眩い行動をしてきたのか。
お陰で*はもう****だ。




――そして最後の*つ目が*。
*たち、と言うべきか。
みっともなく*に這い蹲り、**を憎み敬愛する。
矛*だらけ。
ただの絞りかす、*骸。
存*することが世界に**を、**の枷になって**。
*ねばいいのに、*されれば****。
********************。**********************。***************。*************。*********************。*****、*****、***************************************************************************************************************************************************************************************************************************。






――だけど“俺”は、死にたくない。
――いつまでも、いつまでも“俺”である限りは死を恐れ続ける。


だって“俺”は、彼になれない。


だから、こうして。
夜を這い回る。

忘れないように、眠らないように。
972 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/29(日) 23:52:13.17 ID:/Tef1ufAO



日付ももう直ぐ変わる時間。
つまりは日も暮れに暮れて真っ暗闇、そんな時。
一方通行は杖を突きつつも道路を歩いていた、それも独りで。

かつん、かつん

「……」

杖の音が冴え冴えと響く。


――何故人の気配がしない真夜中に、彼は徘徊しているのか。

全ては買い溜めしていた缶コーヒーが、予定よりも早くに無くなってしまったことにある。



「芳川のヤツ……」

そもそも、黄泉川家の食事には厳格なルールがある、特にコーヒーに関しては。

インスタント派の芳川、ドリップ派の黄泉川、そして缶コーヒー派の一方通行、そもそも紅茶党の打ち止め・番外個体連合と棲み分けは出来ている筈だった。
明文化さえしないが、相互不可侵条約を結んでいた。

というのにだ。
973 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/29(日) 23:53:59.16 ID:/Tef1ufAO



『あらごめんなさい、粉は終わっていたし、缶コーヒー飲んでしまったの』


対して悪びれた素振りも見せずに、彼女が謝罪してきたのが午後11時。
レポートの供が無くなった彼が吠えたのも、それぐらいだったろうか。


「……本当にさみィな」

憎々しげに吐き捨てるも、所詮はただの独り言。


本当は当人に買って来させたかった。
家でぬくぬくと待っていたかった。
しかし、彼女は寄り道をしてくるに違いないとの見解はきっと正しい。
そして、女性を夜に歩かせることについての配慮もほんの少しだけはある。

一方通行は、この寒空の下をえっちらおっちらと歩いていた。


「クソ……なンであのレポートはヒンディー語なンだよ……あンな紐みたいな字読める気しねェぞ」

英語で書けよ、英語でと思わず虚空に向かってツッコミを入れていた。


それにしても、空気が澄み渡り満天の星を拝める心地よい夜だ。

車の通りも殆ど無いお陰で近辺は静寂な空間。
それを杖で裂きつつ、一方通行はコンビニへと進んでいく。



かつん、かつん、かつん、かつん、かつん、かつん、かつん、かつん、かつん、か。




「……あァ?」




――それは、角を曲がったときだった。
974 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/29(日) 23:56:26.62 ID:/Tef1ufAO



後方から、微かに音が聞こえるのだ。

――ブロロロ――



こんな時間に、車がこちらへ向かって来るらしい。
一方通行はその場で歩みを止めた。
街灯の真下だ。


(また襲われたら鬱陶しい)

トラウマ――と言うほどではないが、確かにあの襲撃が起因することは否定しない。
念には念をということで、電極のスイッチを押しておく。


――カチリ。

そのまま前を向いていると、灯りに引き寄せられた虫を見てしまいそうで。
まあ、特別嫌いなわけでは無いが、わざわざ見るほど好きでもない。


(光に……群がって)

ふと彼の脳裏をよぎるのは、銀髪碧眼の異人の少女だった。

深夜のアニメを時折見ているらしいが明日は大切な日なのだし、もう夢の中だろう。


たまに図書館で見せていたような、安らかな顔で眠っているのだろうか。

彼は思い馳せる。
975 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/29(日) 23:59:11.74 ID:ezUuUpzp0
不幸の連載? 連鎖でなくてか?
976 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/29(日) 23:59:39.75 ID:/Tef1ufAO



絵画にもなりそうな表情で。
流暢に日本語を使いこなしている様を見ると、彼女が外国人ということを
忘れそうだが、寝ているときだけは違う。
高い鼻の影が落ち、長い睫毛は時折揺れる。
日差しに馴染む透明感のある肌、プラチナ色の髪。


――それを思うと、言い尽くせない罪悪感が彼の心中よりもたげてくる。


(光にたかって精神衛生を保とうとしているのは俺自身じゃねェのか)


本当に、大切な一友人として見るなら真実を打ち明けて
怖がられたとしても仕方ないと思えるはずなのに。
むしろ彼女を思うなら真理だろう。


暗部も解体し、一応の危機は去った。
――とは言え、彼の両手はもう鈍色に染まりきっている。

聖職者とはいえ許されるとは毛ほども考えてはいないし、望んでもいない。
しかし、第三者の彼女に情報も与えず騙しているのは彼だ。

“また”友が離れて行くのが怖くて、躊躇っていて。
結局は自分本位。

こうやって光に当たる人種では無いのに、と一方通行はせせら笑った。


リスナーもいないただのノイズは、暗闇に溶かされ消えていく。
そうやって彼は、しばらく静けさに包まれていた。
977 :>>975 ごめん誤字だ [saga]:2011/05/30(月) 00:04:20.34 ID:0jP/KOvAO



――ブロロロロロ


段々と増していく光量。
そして一方通行の杞憂もよそに、自動車は横を抜けていく。
遅くに出歩く少年を気にもしないで。
別に通報されても、保護者の許可がおりているので構わないが。


――音だけを聞いても法定基準よりも遥かに下、そう、不思議な程に遅かった。


何かあったのだろうか、視線をそちらに向けた。


ガードレールの先を前に前にと見やって――彼はそれを目にする。



「――ッ」



ライトがゆっくりと照らしていくのは、――白くて黒い、人影だった。

978 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/30(月) 00:05:53.43 ID:XnJXBlKMo
ええええええ……ちょっとうろたえてるわ俺
979 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/30(月) 00:08:08.05 ID:0jP/KOvAO



黒いスラックスに、包帯の白だろうか。
体系は男のように思われるが、如何せん夜闇の中で判別し難い。


一方通行との距離は、30メートルあるかないか。
車の方を向き、そこに立っているのだ。
迫り来る車に気付いていない筈が無い。


眩しすぎる光のせいで、彼の表情は分からなかった。



――動けないのか、動かないのか。

どちらにせよ、あまり関係の無いことではあった。


「……人がブルー入ってるときに眼前で死ぬンじゃねェよ」


いつもなら見逃して死なせてやるかもしれない、と薄く笑う。
タイミングが悪すぎた。



――グォォオオオ!!



地鳴りのような音がした。
願わくば、彼女の安眠を妨げるなと思いつつの大気を操作する。



車と彼とはまだ距離がある。

「こンな風でも止まンねェとはなァ!」


局地的な突風がその場を襲う。
そして左斜め前方も例外ではない。
白髪が激しく揺れ、額を叩いていく。

目に入るのが嫌で、彼はとっさにまぶたを閉じた。





細い彼をガードレールまで飛ばすには、充分すぎる風速だ。
あばらの一つか二つは折るかもしれないが、頭を冷やすには丁度良いだろう。



そして、もう一度目を開くと――。
980 : ◆ObanGQEW7M :2011/05/30(月) 00:09:58.68 ID:0jP/KOvAO







――――相変わらず、煌々とライトを浴びるその人が――今か今かと衝突の時を待っていた。







981 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/30(月) 00:17:31.24 ID:0jP/KOvAO


「――あ――」

――何故、その場にまだ。
――車も、彼も、飛ばされずに。



車はゆっくりとしたスピードながらも、彼に襲いかかる。
確実に死は迫っていた。



(当たって、赤黒い液体が出て、そォしたらアイツは終わる……?)

もう、一方通行には2つは重なって見えた。


「……!」

ガードレールを飛び越し、全速力で光の元へとひた走る。

しかし、心の底では気づいている。
このままでは間に合わないと。

それでも、何故走るかは本人には分からない。

「ふざけンじゃねェェェ!!
加速器【アクセラレータ】ァァァァ!!!」

死を見るのが嫌だから?
今更にも程がある。

だとしたら、何故。




そうして無抵抗の人影を、鉄の塊は無慈悲に喰らい――。




――――ガァァァァッッ!!!!



それは鈍い鈍い、破壊音だった。

982 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/30(月) 00:21:13.46 ID:0jP/KOvAO




「……っつ」

突然生じた肩の痛みで、一方通行は正気に戻る。

見回すと辺り一面は暗闇。
すぐ近くから、咽せるほどの湿布の匂いがすることしか分からなかった。


(……何が、俺に……)

少しだけ意識が飛んでいたのか。
直前の行動が曖昧で、今も考えが纏まらずに。

乗用車と人影がどうなったのか、頭を回転させても分からない。
否、脳が正しく作動してくれない。

――急激な眠気のせいで、全てがぼんやりと曖昧で仕方がない。





「――おきてないよな――」

だからか。

肩に置かれた手と共に、平坦な声がかけられたことに気付くのが遅れてしまった。

983 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/30(月) 00:25:54.75 ID:0jP/KOvAO




声を発そうとするも、喉が使い物にならない。


「――よお、あくま」


耳だけはまともに動くようだ。
蠢く闇から確かに声が聞こえる。


「――つーかさあ、やっとかよ」


(……違う、俺は……)

口はパクパクと動いているはずなのに、一向に肉声にはなってはくれない。

更に、視界が霞んだ気がした。


「――ほんとおせえよ」


浅い呼吸、それから唾を飲み込む音が。
彼には、どちらがそうしたのかさえ分からなかった。

(……眠い)



唐突に嗤い声が――低く、かすれた声がした。

やはり、男のものだ。


「――――だからさ、いまからでも、はやく、つれてってくれよ」


息もかかるほどの近くに居るのに彼は見えない、それから一方通行も正気では無いけれど。

子供のような笑みで。


「――いましなねえと――まにあわないだろ」


それは一方通行に――笑いかけた。
984 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/30(月) 00:34:44.19 ID:0jP/KOvAO



能力を使おうにも、そもそものスイッチが切られていた。
ぶつけてしまったのだろうかと足りない頭で考える。


「てか、あそこでああやってたってんのじゃましたのにあくまはねえか、いや、あるいみあくま?」


ぱん、ぱん。
服を払う音。


「――ほんと、おれもうんねえよなあ、きょうもまたなぐられるし。
あ、これりゅうさんぶっかけられた。
ありえなくね?
てか、これがあいでんてぃてぃとかなんかのじょうだんだろ、ほんとかみはどこにもいねーな。
ほけんおりるからいいけどさー、じゃなきゃやってらんねーよ。
へたにめぇつけられるとそれからもやっかいつーか。
でもがんたいつけてるやつをおそうとかしょうこんくさりすぎだろ?
あ、くさってるからすきるあうとやってんだよな
あは、わり」

イントネーションも調子も、喋る内容も狂っていて。

(……何だよ)

思わず身震いしそうになった。


それからも、とうとうと一方的に話し続けた。
堰を切ったように、ずっと、ずっと。

「――まあ、おれのいうことだから」


唐突に重みがひく。
温度も、鼻につく匂いも全部一緒に消えていく。




「――――全部、偽物だけどさ」



だから怒らないでくれよ、と彼はどこか別の方に笑いかけた。
985 : ◆ObanGQEW7M [saga]:2011/05/30(月) 00:36:59.95 ID:0jP/KOvAO


支離滅裂だと思った。
必要なことを話す気も無く、ただ単に人に喚き散らして。
自己満足、愉悦に浸るのは良いが巻き込まないでくれないか。


(……だが、俺もか)


嫌悪の理由は先ほどまでの、倒錯していた自身と被るからなのか。

こんな思いをさせているのなら、何とかしなくてはいけないと彼女の顔を思い返し――。



――――何か忘れているような気がする。

とにかくこの得体の知れない男を追及しなければいけない、そしてそれの材料は揃っている。

――しかしながら、悲しいぐらいに頭は働いてくれない。
いつもの明晰さはどこへやら。

(……薬か)

何気なく背中の下に意識をやると、そこは固い椅子のようだ。
後から知ることになるが、一方通行が置かれたのは木製のベンチの上であった。


――ザザッ、ザッ。

徐々に遠ざかっていく足音は、不規則で煩わしい。
かなり長い間に渡って、彼の耳朶を叩いた。





目を開けているのかも怪しい、どちらにせよ意識は断続寸前だ。


「……知る、か……恩知らずが……」



一陣の風が頬をなぞり、彼は意識を手放す。


そうして一方通行は、翌朝涙目の同居人に抱きつかれるまで眠りこけるのだった。

986 :おわり :2011/05/30(月) 00:39:14.09 ID:0jP/KOvAO
苦難の一方さん編、いやあ誤字多くて嫌になります。すいません。

それでは、新スレ立ててきます。
987 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/30(月) 00:41:20.55 ID:/TGl8sA6o


もしかしてこのどうしようもなく壊れた感じなのは・・・え?つまりそういうこと?
988 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/30(月) 00:42:05.75 ID:/1OzWqiQo
乙です
しかしこれは・・・あわわわわ・・・・
989 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2011/05/30(月) 00:46:47.61 ID:BU0VDAIT0

ちょっと意味がわからないんだが誰か解説を頼むorz
990 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/30(月) 00:48:37.41 ID:B3hpcRjco
そういえばあの人は、まだしっかりと姿を見せてないなぁ。
運も悪そうだしな。
991 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/05/30(月) 00:51:30.67 ID:BMa6z9BAO
え? え?
992 : ◆ObanGQEW7M :2011/05/30(月) 00:55:53.93 ID:0jP/KOvAO
どうも、次スレです。
スレタイが毎度毎度死ぬほど困るので、そういう才能がふってわいてこないか待ってます。

インデックス「せんぱい?」一方通行「……ガラじゃねェな」-SS速報VIP(SS・ノベル・やる夫等々)
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993 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2011/05/30(月) 01:02:08.00 ID:4aQK2M/E0
黒桜と慢心王思い出した
994 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/30(月) 01:06:24.00 ID:eXsr6Gd70
ほのぼのサスペンス!!
包帯塗れの、きっと目の隈は処理している怪人あらわる!!
995 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/05/30(月) 01:17:46.01 ID:NAPHJ8t+o


と、とりあえず埋めるか?うん埋めよう
996 : ◆ObanGQEW7M :2011/05/30(月) 01:20:32.06 ID:0jP/KOvAO
じゃあ、うめがてらどーでもいいはなしを
997 : ◆ObanGQEW7M :2011/05/30(月) 01:21:59.35 ID:0jP/KOvAO
友人と今期のアニメについて語りあったんです。
彼女の一番好きな今期アニメはいろはで、私はあの花なんですが
998 : ◆ObanGQEW7M [sage]:2011/05/30(月) 01:23:34.61 ID:0jP/KOvAO
まぁ白熱したんです、「ホビロン!」とか「あいつらに見せてやろうぜ……!」とか飛び交うぐらいには
999 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) :2011/05/30(月) 01:24:13.66 ID:0jP/KOvAO
それでもう、あーどうしようもねーぞってなりまして
1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/05/30(月) 01:24:44.65 ID:FciT/oPMo
おおおおつううううう!!

これは一体……!
1001 :1001 :Over 1000 Thread
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