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俺の妹がこんなに可愛いわけがないSSスレ Part.8 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 19:55:28.94 ID:7fCxRwMd0
前スレ
俺の妹がこんなに可愛いわけがないSSスレ Part.6
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1295402665/

まとめwiki
http://www43.atwiki.jp/vip_oreimo/
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713798788/

【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713788018/

ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/

【安価】少女だらけのゾンビパニック @ 2024/04/20(土) 20:42:14.43 ID:wSnpVNpyo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713613334/

ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713522243/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 19:55:55.39 ID:7fCxRwMd0
・鬱、エロ、NTR、オリキャラ、クロス作品の場合は、投下前に断り書きをしましょう
・完結させてからの投下が望ましいです。3回以上中断する場合は別スレを検討しましょう
・やむを得ず中断させた場合は、再開時に前回のものをアンカーで知らせてください
・前の作者の投稿から3時間程度の間隔をあけるのが望ましいです。無理な場合は一言断りましょう
・被り防止のために事前に投下時刻を宣言しておくのもオススメ
・SS作家さんには惜しみない賞賛を
>>980 を踏んだ人が次スレを立てましょう

感想や雑談などご自由に
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 20:12:15.10 ID:bFu0lFVZo
スレ立て乙です!
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 20:32:13.35 ID:a8iuyNvAO
乙です
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 20:33:25.12 ID:wbznHPa7o
スレ立て乙
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 21:55:31.07 ID:r0NSSshL0
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 23:00:12.94 ID:hEY0z+vco
スレ立て乙です!
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 23:26:41.09 ID:t89Ck0Vpo
前スレの黒猫とあやせの話を書いた者です。
続きの要望があったので調子にのって書いちゃったよ!!

KI N SI N 要素満点なので嫌な方はIDNGでお願いします
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 23:28:42.64 ID:t89Ck0Vpo
窓から外を眺めながら私は大きくなったお腹をなでる。

言葉では言い表せない愛しさと、やりは言葉では言い表せない後ろめたさ、

そして生まれてくるこの子への謝罪をしながらなでた。

「いよいよ来週……かぁ。元気に生まれてくれるといいなぁ」

子供は親を選べない。なんて残酷なことなんだろう。

この子は生まれる前から罪を背負って……いや、両親に罪を背負わされて生まれることになる。

「妹も……兄を選べないよね」

ふと考えてしまう。

あの人と兄妹でなかったら……。

例えばまなちゃんのような幼馴染だったら、例えば瑠璃のような後輩だったら、

こんなに悩まずに済んだだろうか。

「……いっっっまさらねぇ」

いい加減にしよう。

何度も考えたことで、何度も同じ答えを出した問いだ。

「兄妹じゃなかったら、あいつが私を気にかけてくれるわけないじゃん」

「おい、そりゃどういう意味だ」

独り言に返答があったことに驚いて、入り口に目を向ければ最愛の人であり、

お腹の子の父であり、たった一人の血の繋がった兄が立っていた。

「ななななな!!!ははは入るときはノックしてっていつも言ってるでしょ!?」

「したっつーの。返事なかったから寝てんのかと思ったんだよ。んで?さっきはどういう意味だよ?」

ベッドに手をおいて顔を近づける。

流石私の兄貴だ、顔を近づけてもなんともないぜ。私は心臓バクバクいっててなんともありすぎるケド。

「……兄妹じゃなかったら、あんたと私接点出来そうに無いじゃん?3つも歳離れてるしさ」

「バーカ」

「わっ、ちょ、なにすんのよ!」

急に頭をワシワシとなでられる。

別にいやなわけじゃない。むしろうれしいんだけど、こういう反応になってしまうのは体に染み付いた習慣。

こうやって頭を撫でているときの兄貴はとても優しい顔をしてる。

その顔は私にだけ向けてくれる、私だけの表情。

それが私がこうして頭をなでられるのが好きな一番の理由だ。

「……お前みたいな不器用で鈍くさいやつ、俺が放っておくかよ」

頭から頬に手を移して、さっきよりももっとやさしい表情で言ってくれた。

「それに、男ってのは好きな女の子にアプローチかけずにはいられないモンなんだよ。」

「あに……き……」

そうしてゆっくりと兄貴が顔近づけてくる。

そういえば久しくキスもしてない。

したいけど、盛り上がっちゃったらこまるな。

でもしたいな。

そんなことが頭でグルグルしてるうちに、あと数センチの距離まで兄貴が近づいてきて
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 23:30:52.31 ID:t89Ck0Vpo
「「真昼間からなにやっとんじゃーーー!!呪い[ピーーー]わよ!?(ブチ殺しますよ!?)」」

「オウフ!!!!!???」


変態鬼畜兄貴があらわれた!

あやせは一気に距離を詰め、その場で反転しながらキックを放った!!

あやせのハイキック!!京介の頬を蹴り抜いた!!

京介は膝を付いた!!

瑠璃が勢いよく走り、京介の膝を踏み込んでニーキックを放った!!

瑠璃のシャイニングウィザード!!

<<バリーーーン!!!>>

京介は窓ガラスを割って外に落ちた!!

変態鬼畜兄貴をやっつけた!!


「兄貴ーーー!?あ、あんたらなにしてくれちゃってんの!?」

「ハッ!しまったつい癖で」

「……悪気は無いわ。リア充氏ねばいいのに、とかは思ったけれど」

「[ピーーー]気満々だよね!?むしろ120%殺意だよね!?」

「「シラナイ、ワカラナイ。デンパカナニカダ」」

唐突に現れた二人の親友は、登場してすぐいい雰囲気をぶち壊してくれた。

残念半分、安心半分なのは私だけの秘密だ
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 23:33:06.17 ID:t89Ck0Vpo
「危なかった。主人公補正とギャグ補正と十二の試練が無ければ死んでいた」

「つまり11回は死んだのね、わかります」

「あと1回でキチンと死ぬですね、よくわかります」

「なにこの黒いの×2、超怖い」

「つかお前ら、まず言うことg」

「「ついカっとなって脚が出てしまった。今では反省してる。だが後悔はしていない。」」

兄貴が戻ってきて(なぜか無傷で帰ってきた)二人は頭を下げた。

しかし二人があまりにも清々しい顔をしているので謝っているように見えない。

むしろ誤っている。

「コホン……調子はどう?桐乃。なにか悪いところはない?ブラコン以外で」

「強引に話進めたよ、この厨二病患者。」

「厨二病は不治の病よ。普段は影を潜めていても発作的に出てくるわ」

ドヤ顔で即答された。

「まあ、私は今日は特に用は無いのだけれどね。この子が久しくあなたと会ってないというものだから、引っ張ってきたわ」

「わ、ちょ!瑠璃さ……ん」

瑠璃があやせの手を引いて私の前に立たせる。

「久しぶり、桐乃」

「うん、久しぶり……あやせ」

そこから言葉が続かない。あやせも同じなようで視線が私と瑠璃の間をいったりきたりしている。

「「あの!」」

やってしまった。あやせも同じような顔をしてる。

マンガやゲームでよくあるシチュだけど、コレは実際によくあるからこまる。

「兄さん!ここは若い二人に任せて私達は7巻の続きをやりに行きましょう!!」

「え?ちょ!おmえええええええええ!!!!!!!!!」

私やあやせが制止するよりも、兄貴が返答するより早く瑠璃は兄貴の手を持って外に出て行ってしまった。
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 23:34:18.83 ID:t89Ck0Vpo
「……いいの?桐乃。目の前が浮気現場だよ?」

「……大丈夫、瑠璃はそんなことしないって分かってるし。仮にしちゃっても……1回は不問」

実際は1回どころじゃ足りない。

瑠璃のおかげでどれだけ私と兄貴が救われたか。

千手観音でもないと数え切れない。

「心が広いね、桐乃は。じゃあ、私もちょっとお兄さんを借りt」

「あやせの枠ねーから!!」

「…………」

「「…………ぷっ」」

ああ、やっと戻れた。

「ははははは!!!ひどいよ桐乃。いくら実際に枠が無くても最初に言い切らなくても」

「なに言ってのよ、あやせなんて今でも兄貴のストライクゾーンど真ん中なんだから、釘刺しておかないと!」

変わってない。お互いずいぶん変わっちゃったけど、ぜんぜん変わってない。

「もう……相手の好みなのに勝算がないとか、わけがわからないよ」

「ヤンデレ無表情フェイスでその言葉言うな!契約契約言ってきそうなのよ」

「わたしと契約して夫婦n」

「ドタマぶち抜くわよ?」

「マジごめん」

大分オタクになってしまったようだけど、基本の部分ではやっぱり変わってない。

いや、第一に私じゃなくて、私とあやせを対等にして話をしてくれてる。

あやせは成長したんだ。

「あ、言い忘れてた」

「ん?なに?」

「……おめでとう、桐乃」

「!!……うん!ありがとう!あやせ!!」

だからもう一度、親友になれるよう私も成長していこう。
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 23:39:02.83 ID:t89Ck0Vpo
「ところで兄さん、この懐かしのゴスロリ&ネコミミをつけた、ギリギリ四捨五入20歳の女を見てくれ。こいつをどうおもう?」

「すごく……イタいです」

「うれしいこと言ってくれるじゃないの、それでこそわざわざ引っ張り出して来た甲斐があったというものだわ」

「お前、それでいいのか?」

病院の中庭のベンチにつれてこられたかと思うと、いきなりくそみそな展開になった。

というかこいつ家からコレで着たのか24にもなって。

「大丈夫よ、兄さん。桐乃とあやせの友人は17歳を言い張ってるわ」

「可奈子は別格だろ。つか、現役高校生って言っても信じるわ」

「いえ、私が言ってるのは中のh」

「やめろ、王国民に殺される」

あの精鋭部隊はモニター越しでも会うのはごめんだ。

訓練されつくした動きは美しいというが、アレはもう一回りしてキモイ。

それにしても今日のコイツはどうもおかしい。

社会に出て、『黒猫』が大分いなくなってからこんなことはなかったのに。

「……マジで恋人の続き……始める気なのか?」

「はんっ!」

瑠璃は鼻で笑ってベンチから立ち上がった。

昔よりは短いが、長い黒髪と漆黒のスカートがふわりと揺れた。

「仮に続けたとして、そしてエンディングまでたどり着けたとして、

 それは一体誰が得をするのかしら?」

「……自分から言い出しておいて、ずいぶんな言い草だな」

実際はあの二人にゆっくり話しさせたかったことくらい分かってる。

それでもわざわざこの話題を口実にする理由など無かったはずだ。

「……ついにあなたは、お父さんになるのよ」

「……ああ」

瑠璃が、いや黒猫が背中を向けたまま、ベンチに座ったままの俺に話す。
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 23:39:57.97 ID:t89Ck0Vpo
「厨二病に感染されていなくても、こういうしかない子の父親になるよ。禁忌の子の……ね」

「……ああ」

そんなことは分かってる。

そのあたりは全部覚悟して今ままで来たんだ。

「子供がかわいそう、あなた達がかわいそう、ご両親がかわいそう……いくらでも同情はできるわ。

 ……けれど、私は……私達はそんなことしてあげない」

「……」

黙って黒猫の言葉の続きを待つ。

きっとコイツの言いたいことはこんなことじゃないはずだ。

「……ずいぶん空気が読めるようになったのね?ここで私の言葉をさえぎらずに、続きを待つなんて」

「お褒めに預かり光栄だよ」

黒猫は少しだけ振り向いて視線だけをこちらに向けた。

過去の俺を咎めるの言葉ともに。

だから俺はそれを皮肉って返してやる。

「同情なんてしてやらない。私でも、あやせでも、麻奈実先輩でもなく、

 あの子を選んだあなたを私は絶対に許さない。だから……」

そこでクルリと振り向いて満面の笑顔で、とても残酷でうれしい言葉をぶつけてきた。

「ありがとう、おめでとう、さようなら初恋の人」

なにもいえない。何も思い浮かばない。だけど何か言わなくてはならない。

だからこそ、俺は動いてない頭とカラカラの喉にムリヤリ仕事をさせてこういってやる。

「俺の方こそありがとう、そして悪かった。お前にばかりこんな仕事をやらせちまって」

「かまわないわ。それにこれは私が、私の意志でやったことよ」

「そうか……だったらこの場で、この言葉でお前に誓うよ」

「……聞かせて頂戴」

ああ、ホントに俺は、なんてバカな男なんだろう。

振った女にこんなこと聞かせるなんて。

「俺達が幸せになれないわけない」



END
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 23:43:23.02 ID:t89Ck0Vpo
結局ありふれた話にしかならなかった。KI N SI Nって難しい
京介と桐乃の背景設定?そんなものはない

ゲー研部の同人の内容ってオチも考えたけどなんとなく却下
もう少し上手いこと話がまとまる力が欲しいです



ハッ!ヒロインのメガネ2人が出てないじゃないか!!
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 23:48:02.73 ID:5Vp7JucSo
おつおつ
エピローグ風味な雰囲気が良かったぜ

メガネ2人…?
部長と誰だ…?
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 00:02:25.74 ID:Fj05DZtAO
メガネをかけた真壁先輩と部長の
厨二病に感染されてなくても禁忌の関係というしかないエロス
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 00:48:21.24 ID:I/YCTa8AO
あやせの枠ねーからwwwwwwwwwwww

乙〜
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 01:12:50.13 ID:SOXNGDN+o
乙です
あやせの枠はPSPのアレで使用済みなのでした
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 01:29:46.01 ID:dHk5K5lAO
PSPの加奈子みたいに結婚生活の話もよさそうだな、明日で期末テスト終わるし考えてみます

希望のキャラいます?
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 01:39:13.13 ID:MC9ECxqCo
>>20
ブリジットかあやせ
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 02:19:47.55 ID:6HmO9ZNro
ブリジット
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 02:26:17.95 ID:SjsUUzDu0
僕はかなかなたんっ
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 03:50:41.40 ID:mU12a7pHo
>>15
前スレで続きをリクした者です。
今回も激しくGJでした!

シリアスかなと思ったら途中でギャグになって、またシリアスで締めるとは…ww
2回も意表を突かれておもろかったww
単なるハッピーエンドじゃなくて、禁忌のこともちゃんと盛り込んでていいね。
次回作も期待してるよ。
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 12:19:35.80 ID:ta6Ygxe6o
ねんどろきりりんが届いたから眺めてニヤニヤしながらSSでも考えるか
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 13:29:11.60 ID:n8fUUY7I0
>>25
黒猫好きの自分は4月下旬くらいから本気出します
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 18:19:59.90 ID:l6NUsuLso
前スレ>>988のSS読んだけど全然鬱展開じゃなかった(笑)
てゆーかアンチ桐乃な俺的にはむしろTrueEndと言っても過言ではない!
まったく良いものを読ませていただきました。
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 19:37:22.76 ID:JQv1DHaA0
ああいう描写の怪我のシーンがあるのに、
そんなことをわざわざ書くようじゃ
アンチ云々以前に人として引く。
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 19:52:05.88 ID:pW/dOubk0
Wiki探したけど鬱SSって意外にも4つしかないんだな

ということで
>>27
http://www43.atwiki.jp/vip_oreimo/pages/115.html
30 : ◆rLcwcMEJTs [sage]:2011/03/02(水) 21:21:19.21 ID:W1jRFPzko
どうも>>9です。トリを付ける決意をしました。
見直したら文章ヘンで、説明足らずで意味不明な会話がたくさんありました
ついでにネタを詰め込みすぎてサムくなっていました
もうしわけありません。
寝ぼけた頭でモノ書くもんじゃねぇな
次はもうちょっと考えて書きます


そして本題
>>16
瑠璃×部長を一瞬で考えた俺をどうしてくれるんですか
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 21:30:09.68 ID:TEVTY5UAO
>>29
これ、最後は刺したの?
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 21:47:53.03 ID:n8fUUY7I0
>>30
今後もちょくちょく作品投下してくれると嬉しいです

>>31
個人的にはそういう解釈で読んだけど・・・
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 22:01:21.43 ID:cFv3ZK9/0
目をえぐったとか潰したとかそういう描写じゃないかと思うケド
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 22:30:35.65 ID:y9NwRfZ6o
俺も>>33みたいに思ってた
傷痕が見えないから今まで通り親友でいられるって感じで
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 22:49:21.78 ID:TM1P17Oko
>>30
今後も期待します
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 23:52:05.93 ID:l6NUsuLso
>>28
   n                n
 (ヨ )              ( E)
 / |    _、_     _、_    | ヽ そう言わずに
 \ \/( ,_ノ` )/( <_,` )ヽ/ / 仲良くしようぜ!!
   \(uu     /     uu)/
    |      ∧     /
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 00:30:49.37 ID:rcPbyVL8o
でも○○が嫌い発言は出来るだけ控えとけよ
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 03:02:51.81 ID:RA85mHvdo
とあるモノを買った衝動で書いてみました。
時間も時間ですので反応はないかもしれませんが、投下してもよろしいでしょうか?
ちなみに4,5レスほどです。
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 03:05:38.88 ID:UpZzHtRQo
ばっちこーい
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 03:06:43.69 ID:RA85mHvdo
では、投下させていただきます。
イチャコラはありませんが、ご容赦を。


以下、投下。
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 03:09:02.09 ID:RA85mHvdo
寒さと暖かさが行ったり来たりしながらも、花粉症やらなんやらで着々と春の気配を感じる三月の頭。
俺は特に考えもせずCDショップに入った。
受験勉強はどうした?もちろんやってるよ。
前期日程が終わった後は多少なりとも気が抜けたが、それもほんの少しだ。
翌日からはきちんと中期・後期に向けて麻奈実と一緒に勉強している。
今日も午後からは図書館で勉強会の予定だ。まったく、受験生も楽じゃねえ。
というわけで午前中は、たまたま早く起きちまったので春の陽気を感じるために散歩してたところだ。
爺臭い?ほっとけ。
とは言ったものの、やはり目的もなく店に入ったため、少し歩き回っただけで飽きちまった。
「あ、このバンド、まだ活動してたんだ」とかぐらいの感動があったけど、そのために足を止めるような俺じゃない。
冷やかしになっちまうが、もう出よう。そう思って店の入り口に向かう俺の目に、一枚のCDが目に留まった。



昼前に自宅に戻った俺は、部屋に入ると手に持っていたビニール袋を机の上に置き、勉強会に行く支度を始めた。
麻奈実との約束の時間は午後1時。まだ出かけるには余裕はあるが、たった今買ってきたコイツを聴いてるほどは無い。
帰ったときのお楽しみというわけだ。
必要なものを鞄に詰め込み終わると、俺は昼食を食べるために部屋を後にした。



夜―――。
夕食を食べ終わった俺は、今は自室で勉強中だ。
耳にはヘッドフォンを付け、午前中に買ってきたCDを流しながら英語の長文を読み解いている。
頭の中では長文を訳しながらも、耳から入ってくる音に少しだけ懐かしさを感じていた。
だからさ、いきなりあの妹様が入ってきてもさ、気付かなかくても仕方ないよな。

ゴンッ!

視覚と聴覚を一方向にだけ集中させていた俺の後頭部に、唐突に痛みが走った。
ヘッドフォンを外し、少し涙目になりながら、て自分の背後に目を向ける。
案の定、不機嫌な面を貼り付けた桐乃が立っていた。

「いきなり何すんだよっ!」
「うっさい!アンタがアタシの呼びかけに応じなかったからでしょ!」
「そりゃ悪かったよ。……だからって、いきなりゲンコツは無いだろ」
「フン!痛い思いをしたくないなら、次からはすぐに気付きなさいよ!」

おーおー、今日も絶好調ですねぇ。コイツの理不尽さには多少慣れたと思っていたが、どうやらそいつはとんだ思い違いだったらしい。
だからと言ってコイツに抗議したところで、簡単に治る訳じゃねぇんだよなぁ。

「で、何か用か?」
「……これ」

桐乃がなにやらもじもじしながら差し出してきたのは、湯気が立ち上るマグカップだ。中には光沢のある黒い液体が入っている。

「その……、夜はまだ、冷えるから。差し入れ……」
「お、おう。ありがとな」

若干赤くなりながら盆に載ったマグカップを差し出してくる桐乃を見て、俺も釣られて顔が赤くなる。
こんな些細なことでさっきの理不尽行為を許してしまう俺は、誰がどう見てもシスコンだよなぁ。ま、いいけどさ。
マグカップを受け取った俺は、コーヒーを一口含み、それを机の上に置く。なんだか、俺が淹れたのより美味く感じるな。
俺がもう一度礼を言おうと顔を上げると、桐乃はとあるCDケースを手に持って、それを繁々と眺めていた。

「なんだ?そのCDがどうかしたか?」
「へ?……いや、なんでもない」
「そうか」
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 03:10:01.69 ID:RA85mHvdo
桐乃が今持っているこのケース、コイツは俺が朝に買ってきたCDのものだ。
タイトルは『-MYTH- The Xenogears Orchestral Album 』
その名の通り、15年ほど前に発売された『ゼノギアス』というゲームのアレンジアルバムだ。
リアルタイムではないが、俺もこのゲームを友人から借りてプレイしたことがある。
当時小学校低学年だった俺だが、このゲームのことは今でも記憶にある。
最初は劇中に出てくるギアのかっこよさに目が行ったものだが、次第にシナリオや音楽にも目を向けるようになった。
当時のPSは今の主流ハードとは違い、グラフィックは向上したものの音に関してはまだチープだった、と記憶している。それより前のハードに関しては知らんけどな。
それでも、このゲームの音楽は素晴らしいものであり、プレイしてから10年以上経っても、俺の記憶に残っている。
しかし、今思い返すと、小学生がやるには結構重いシナリオだったな。
ソイレントシステムとかさ。ベッドシーンもあったし。
天帝とか、エレメンツとか……。あれ?これって厨二病の一種か?

「これ、何のCDなの?」

俺がゼノギアスの思い出について振り返っていると、桐乃がそんな質問を投げかけてきた。
まぁ、コイツが生まれる前に発売されたものだしな。ゲームのタイトルぐらいは知ってても、プレイはしたこと無いだろう。

「ん?ああ、『ゼノギアス』ってゲームのアレンジアルバムだ」
「ぜのぎあす?」
「昔発売されたRPGだよ。懐かしくて、つい買っちまった」
「へぇ〜。って、ゲームのサントラとか買うなんて、アンタも立派にヲタ街道をひた走ってるわね」
「ほっとけ」

それからは桐乃がそのゲームについて聞いてきたので、俺はおぼろげな記憶を頼りに簡単に説明した。
ま、検索でもかけりゃ今でも情報は手に入るだろうし、ほんとに簡単な事だけだ。
10分ぐらいその話をして、桐乃は俺の部屋から出て行った。この時のことを、俺は少しだけ後悔している。




「ただいま〜」

あれから数日経った。俺と麻奈実は二人揃って志望校に合格し、この春から大学生だ。
これまでの受験勉強で鬱屈した思いから解放された俺は、部活に顔を出したり、すでに合格を決めた友人達と遊んだりして、残り少ない高校生活を楽しんでいた。
そんなある日、飲み物を求めてリビングに入ると、桐乃がゲームをしていた。今日は両親はいないし、こいつも受験は終わったからな。ま、いいだろう。
また大画面でシスカリでもしているんだろうと思ってテレビ画面を見た。そこには黒い細身の機械人形が拳法の構えを取って敵と戦っている姿が映されていた。

「おい、これって……」
「あ、兄貴。おかえり」

どうやら桐乃は俺が帰ったことにたった今気付いたらしく、こちらに顔を向けて挨拶をした。それも一瞬で、その顔はまたすぐにテレビに向けられてしまった。

「これ、ゼノギアスだよな?どうしたんだよ」
「ん〜。沙織から借りた」

マジかよ……。アイツも桐乃と一つしか歳が違わないのに、なんで持ってんだよ。いや、沙織なら不思議でもねーか。
それより、まさか桐乃がプレイしているとはな。これはアイツの嗜好には合わないと思っていたんだが。試しに感想を聞いてみるか。

「で、どうだ。プレイした感想は?」
「まだ始めたばっかだから、何も言えないかな。でも、悪くないかも」
「そっか」

どうやら感触は悪くないようだ。それに、自分が好きだったものを良く言われると嬉しいもんなんだな。
俺は懐かしさを覚えながら桐乃のプレイを眺めていた。





それから2日後。俺は今、アキバに来ている。
というのも、俺の大学合格を沙織たちもささやかながら祝ってくれるらしく、皆の都合が合う今日、集まることになったのだ。
んで、今はいつものメイド喫茶で休憩中というわけだ。

「それでは改めまして。京介氏、この度はおめでとうでござる」
「おめでとう」
「おう。ありがとな、二人とも」

合格が決まったその日、メールでこの二人にもその事を知らせ、その時にもおめでとうと言われたが、やはりじかに言ってもらえると嬉しいもんだよな。
それからはいつものようにやいのやいのと少し騒がしくも、楽しいひと時を過ごした。その途中、桐乃が沙織にあるケースを差し出す。

「沙織、これありがとね」
「いえいえ。拙者もたまたま持っておりましたゆえ、どうということはござらん。しかし、きりりん氏からゼノギアスのことをお聞きしたときは、少々驚きましたぞ」
「あら、それは?」
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 03:11:33.45 ID:RA85mHvdo
黒い紙に赤色のスプレーで大きく×を描いたようなジャケットのケースを見て、黒猫が声を掛ける。やっぱり、普通は知らないよな。

「黒猫氏はご存知ないようですな。これは『ゼノギアス』というゲームでして、発売から15年ほど経った今でも、非常に評価の高いゲームなのですよ」
「名前くらいは聞いたことがあるわね。で、それを何故あなたが持っているのかしら?」
「兄貴から話を聞いてさ、少し興味が湧いて沙織に聞いてみたのよ。そしたら"持ってる"って言うから、借りてみたの。結構面白かった」
「黒猫氏も如何ですかな?」
「せっかくだけど、遠慮しておくわ」
「それは残念ですな。しかし、言ってくださればいつでもお貸ししますぞ」
「ありがとう」

沙織は桐乃からゲームを受け取ると、いつも背負っているリュックにそれを収めた。そして、新たなゲームケースを三つ、取り出す。

「では、これが約束の品です」
「ありがと」
「なんだ、そりゃ?」

沙織が新たに取り出したゲームを桐乃が受け取る。一番上に置かれていたパッケージには『Xenosaga』と書かれていた。

「これは『ゼノサーガ』と申しまして、ゼノギアスの主だった製作スタッフが別会社で発売したゲームです」

まさかそんなモノが発売されていたとは・・・・・・。このことは俺も知らなかった。

「続編、ってことか?」
「いえ、正式な続編ではありません。しかし、ゼノギアスと通ずるところもありますので、ファンにとっては押さえておきたい作品ではありますな」
「そうなのか。しかし、なんで三つもあるんだ?」
「このゼノサーガはこの三つで一つの作品なのですよ。映画でもあるでしょ?前後編に分かれていたり、三部作のものだったり。これも、言うなれば三部作品なのです」
「へぇ」
「これ以外にも『ゼノブレイド』という作品がありまして、こちらは関連性は無いものの、新たなゼノシリーズとしてなかなかの評価を受けております」

まだあるのかよ!
せっかく時間も出来たし、機会があればプレイしてみようかと思っていたが、流石にそんなにあるとやる気が起きないな。
しかし、桐乃はこの……ゼノサーガだったか?を借りたということは、プレイする気なんだよな。それと並行してメルルやエロゲもやるんだろうし。
いつ寝る気だ、コイツは。
桐乃は沙織から受け取ったゲームを鞄に入れ、その後はいつものように四人でのアキバ散策を楽しんでいた。



時間はまた経って、今は四月。
無事に入学を果たし、新たな生活に向けて意気揚々としていた俺に、桐乃は部屋に来るように言ってきた。
最初に人生相談を受けてからもう2年。随分と時間が経ったが、人生相談は相も変わらず継続中だ。
高校生になっても、うちの妹様は悩み多き乙女のようだ。まぁ、俺も頼られるのはイヤじゃない。去年の後半は、受験のことを気遣ってあまり相談には来なかったしな。
しょうがない。行ってやろうじゃないの。
桐乃の部屋の前まで行き、ドアをノックする。桐乃からお許しを貰い、俺はドアを開けて部屋に入ったんだが……。
あれ?なんか、前に入ったときと違う?いや、大きくは変わってないんだが、なにか違う。
俺はその違和感を突き止めようと、室内をくまなく見渡す。途中で桐乃から「なに見てんのよ。キモ」と罵倒が飛んできたが、今は気にしないでおこう。
そして、俺はその違和感の正体に気付いた。それは桐乃のヲタグッズが凝縮された押入れの中にあった。この時、なぜか桐乃はこのスペースを開放していたんだよな。
その中にはフィギュアがあった。そのこと自体は別に不思議でもなんでもない。
でもさ、いつもアイツが愛でているメルルや可愛らしい妹のものとは違うんだ。
褐色の肌に紫のような銀のような色の髪、扇情的なボディラインに機械的な衣装を身に纏った大人の女性、
それとは色違いの青っぽい髪に色白の肌、ドデカいガトリングを持った、扇情的なボディラインに機械的な衣装を身に纏った大人の女性のフィギュアとかが置いてあった。
そして押入れの下のスペースには、見覚えのあるパッケージのゲーム、それとは別に可愛い妹がはじけているようなパッケージじゃない、
さっきのフィギュアと同じキャラと思われる人物が印刷されたものや、どこかの草原に赤い剣っぽいものが突き刺さっているものがあった。

「あの、桐乃さん。このフィギュアとかは?」
「ああ、それ?沙織に借りたゼノサーガに出てくるKOS-MOSとT-elosのフィギュア」

オーケーオーケー。なんとかまだ理解できる範囲内だ。だがこれを買っているということは、思いのほかハマったということか。
俺は続けて、ゲームケースを一つ手にとって再度訪ねてみる。ちなみに桐乃に見せたのはどこかの草原に赤い剣っぽいものが突き刺さっているパッケージのヤツだ。

「これは?」
「それはゼノブレイド。ほら、先月集まったときに沙織が言ってたでしょ。あの後、ついつい買っちゃったんだよね」

おおう、やはりか。いや、おもいっきり『Xenoblade』って書いてありますからね。わかりましたよ。そして、桐乃がゼノシリーズに結構ハマってることもな。
そんなことを考えていると、桐乃は急に屈み、押入れの下のスペースをガサゴソと漁りだして、いくつかの小さいケースを取り出した。

「これはゲームサントラ、アレンジアルバム、ドラマCD。んで、こっちが……」

あらかたCDを取り出した後、次は何やらデカい本を数冊出してきやがった。まだあるのかよ……。

「シナリオブックでしょ。設定資料集。あと小説もあるよ。ゲーム本編とは関係ない話をしてたりするけど」
「それ、全部買ったのか?」
「うん!あのね、最初は意味がわからないこともあったんだけど、資料とか見たりしてたらさ、色々と深い設定があってね。それを理解したうえでプレイすると、また違った味わいがあってさ……」

なんというデジャヴュ……。一番最初にコレクションをお披露目したときと同じ展開じゃねーか。
しかもなんやら聞き覚えの無い用語をポンポン言ってきやがる。まるで黒猫と話しているようだ。
妹よ、気付いているか?今のお前は、常日ごろ厨二病と揶揄している黒猫と同じ状態になっていると。
まさか、懐かしさのあまり買ってしまったCDが発端でこんなことになろうとは……。
俺は今、昔の俺にすごく忠告したい気分になったよ。

おわり
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 03:13:30.24 ID:RA85mHvdo
以上でございます。
京介が買った『-MYTH- The Xenogears Orchestral Album 』が今日、届きまして、
久しぶりに聞くゼノ音楽に高翌揚しながら書いたものです。

少しでも懐かしさを感じてくれれば幸いです。
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 03:17:13.71 ID:UpZzHtRQo
乙です
共通の趣味が出来るのっていいよねとオモタ

ちなみにゼノシリーズ知らないけど邪神モッコスは知ってた
フィギュア辺りのくだりでそのネタが来るかと身構えたww
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 03:35:43.95 ID:RA85mHvdo
>>45
アルターから出てるフィギュアはなかなかのものよ。
そして、見直したら文章のおかしいところがあった。推敲したんだけどな……。


>>43
×:そして押入れの下のスペースには、見覚えのあるパッケージのゲーム、それとは別に可愛い妹がはじけているようなパッケージじゃない、

○:そして押入れの下のスペースには、見覚えのあるパッケージのゲーム。可愛い妹がはじけているようなパッケージじゃない、


訂正しておきます。
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 04:18:44.26 ID:NHLUli6DO


ゼノギアスはチョコボか何かのおまけにあった体験版だけやった記憶が
とりあえず主人公がグリリバってのはおぼえてる
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 10:02:51.69 ID:jr1bSffAO
乙!
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 13:38:25.15 ID:fh2Yys3do
乙です。
ゼノサーガUをプレイした時のこれじゃない感は異常
主にキャラデザ的な意味で
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 20:35:04.33 ID:yQgrGmeuo


ゼノギアスは■の全盛期の作品の1つだよな
■が全盛期なぶん、厨二成分もハンパないが
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 23:15:05.44 ID:RA85mHvdo
黒猫の独白SS書いてみました。
京介と付き合ったけど、別れてしまって、それから数年後……という体で。
即興で書いた1,2レスほどのものです。
投下してもよろしいでしょうか?
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 23:17:03.92 ID:36cTaTH50
投下しちゃいなYO!
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 23:18:05.83 ID:RA85mHvdo
では、以下投下。
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 23:22:26.71 ID:RA85mHvdo
あの夏の日、私は先輩に告白した。
そのこと自体は後悔はしていないわ。だって、私が選んだ道だもの。
もちろん、先輩のことだから、色々とやきもきさせられることも覚悟をしていたわ。
ただ、その覚悟はまだまだ足りなかったみたい。こうして、あの人から離れた今だからわかることだけれど……。


告白してから数日後、先輩は了承の意を示してくれた。
今だから言えるけれど、その時の私はすごく舞い上がっていた。
それを悟られないよう必死で誤魔化そうとしたけれど、無理だったわ。だって、あの人の顔が赤かったもの。私の反応を見た結果ね。
それからしばらくは、幸せだったと思う。
恋仲になったことをあの子や沙織に伝えた時、沙織は自分のことのように喜んでくれたし、あの子も何だかんだで祝ってくれたわ。
心の奥底では納得していないだろうけれど、理解してくれようと努めてくれた。
大好きなお兄さんを取られるかも知れないなんて思いながらね。本当、私には過ぎた友人だわ。


それから、先輩は私に時間を割いてくれるようになった。どんなに短い時間でも、一緒にいてくれるようになった。
それが嬉しくて、舞い上がっていたけれど……でも、わかるのよ。
あの人が優しい言葉を掛けてくれても、心のどこかであの子のことを気にかけているのが。
2人きりで出かけても、唇を重ねても、先輩の中からあの子の影は消えなかった。
最初の内は、「それも仕方が無い」と割り切っていたけれど、次第にそれが我慢できなくなってきたわ。
初めて肌を重ねたときは、痛さと幸福感、肌から伝わってくる熱で誤魔化せたけれど、回数が増していくごとに、温もりを感じられなくなった。
どんなに求めても、浅ましいくらいに貪り合っても、どんどん冷たさが増していった。
それは先輩が悪いわけじゃない。私の……私の中の醜い嫉妬心のせい。
楔を打ち込めば、枠組みに当て嵌めれば、先輩の心の中に私が棲めると思った。それは、とても浅はかだったと言わざるを得ないわ。
先輩とあの子は、とてもとても深いところで繋がっている。互いに、なくてはならない存在だった。
そんなこと、わかっているつもりだった。そう、"つもり"だっただけ。

自分の中の醜いものに気付いた私は、それを隠そうと必死だった。嫌われたくなかったもの。先輩にも。あの子にも。
それで無理がたたったのでしょうね。ある日、学校の中で倒れてしまったのよ。
目が覚めると、保健室のベッドの上だった。その隣には先輩がいて、私の手を握ってくれていた。
それは嬉しいことなのだけれど、私はそれ以上に恐怖を感じた。先輩の手から……ちっとも温もりを感じなかったから。
冷たい、冷た過ぎるくらいの手。常識で考えればありえないことだけれど、まるで死人に手を握られているようだった。
その時に気付いたわ。ああ、私はもう、"先輩のことを諦めてしまっている"って。
だから、私は言ったわ。「別れましょう」って。

はっきりと言えたことに、私は驚いた。こんなにあっさりと、つらい言葉を吐けるなんて。
きっと、どこかで割り切っていたのね。今ならそう思える。
先輩は食い下がってきたわ。何故?どうして?俺が悪いのか?……それはそうよね。突然、別れを切り出されたら取り乱すものだわ。
こんな時でも、先輩は優しかった。自分に非があると思って、治す努力をすると言ってくれた。
違う。違うのよ、先輩。私が悪いの。私の浅はかさと、醜い心が悪いの。
でも、そんなこと言えない。言えるわけがない。私はただ、首を振ることしか出来なかった。
そんな自分が情けなくて、惨めで、涙が溢れてきた。顔をぐしゃぐしゃにしながら、私は首を振り続けた。
そんな私を、先輩は慰めようとしてくれたわ。でも、その優しさも、私が泣いたことで誘導したような気がして、惨めに思えて、差し出してくれた手を払い除けてしまった。
私はただ俯いて、泣き続けた。その内、先輩は席を立ってしまった。
呆れたのかしら?付き合ってられなくなったのかしら?きっと、どちらでもないわね。だって、あの人は超が付くくらいのお人好しでお節介焼きだから。


それから日を空けて、私は再度別れを切り出した。
理由も言わず、私の我侭で別れを選んだ。いくら罵倒されても仕方ないと思っていた。
でも、先輩は何も言わなかった。それが有り難くて、私はまた泣いた。


今でこそこうして冷静に振り返れているのは、私の中で一応の決着が着いたからだと思う。
あの子や沙織も、何も聞いてこなかった。だから、今でも笑って傍に居られる。
それが、とても嬉しい。

でも、今でも思うのよ。
奪う気などなかったけれど、願ってはいた。
"どうせ愛せるのなら、完璧に"、と……。



おわり
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 23:25:43.61 ID:RA85mHvdo
以上です。
黒猫らしさ、上手く出せたでしょうか?
少しでも感じていただけたら幸いです。

ちなみに、黒夢の「ピストル」も歌詞を元ネタにしてSSを書いてみました。
黒夢サイコー。

ありがとうございました。
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 23:27:28.21 ID:36cTaTH50
>>55

予告から覚悟はしていたけど、やっぱり切ないね
また次も頼みますぜ
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 23:32:01.79 ID:UpZzHtRQo

切ねぇ…
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 23:35:08.13 ID:y8pfSgzU0

本編ではどんな展開になるのかね
京介があやせに問い詰められることだけは簡単に想像できるが
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 23:39:43.69 ID:rJHdEePmo
きっと桐乃が大暴れした挙句京介が宥めるとか?

地味子が嫉妬して京介の前から居なくなったりしそうで怖い
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 00:50:30.58 ID:NL66gAV9o

しかしいまのところ
『黒猫の出番が多いのに黒猫ファンに○されそうなSSスレ』
というなんとも妙なスレになってるな
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 00:53:43.22 ID:lB5gDZFSO
>>55
乙です

黒猫は悲恋似合うわぁ…
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 01:35:51.42 ID:hghFcRaio
加奈子があやせの下僕になった日のSSが読みたい
63 :kai662 :2011/03/04(金) 13:50:59.67 ID:4lMc5MB00
あやせのssを投下してもいいだろうか?

64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 13:52:02.02 ID:hB5788uio
かもーん
65 :kai662 :2011/03/04(金) 13:54:10.14 ID:4lMc5MB00
それでは早速、ていうか言い出しっぺなのに悪いがあんまり期待はしないでほしい





とある公園、人通りが多い事から私はよくここにある人を呼び出す
高坂京介、桐乃のお兄さんで桐乃を卑猥な趣味に導いた張本人である、その人を。

そういう今日だってお兄さんをとある事情で呼んでいるのだ。
待ち合わせ時刻は午後2時、さて、お兄さんはいつも何分くらい前からここに来るのでしょうか、ちなみに今は十二時半だ。
私は十二時にはもうここに居たが、何もする事がなく欠伸を噛み[ピーーー]作業に意識を向けていた

それから私はさすがにこんな時刻からは来ないだろう、と思い、ちょっとジュースを買いに出かけた
私がいつも十五分前くらいに着いてもお兄さんは必ずいるし……、やっぱり三十分くらい前から来ているのでしょうか?、そうだとしたらお兄さんにしてはいい心掛けですね
そんな事を思いながら、そして買ったジュースを飲みながらさっき座っていたベンチに戻ろうと歩いていった。

だが途中で私はあり得ない光景に足を止めた。
そして急いで時計を確認する、十二時四十五分。何回か見ても結果は一向に変わらない。

なんでいきなり時計を確認したのか?、そんなのは簡単ですよ、そこにお兄さんが居たからです。そう何時ものベンチにお兄さんは今いるのです

私は思わず自分の目を疑い、ゴシゴシと目を擦る
そして再度見ても、やはり結果は変わらなかった

いつもこんな時間から来ているのですか?何で?私が心配だからですか?

そう思った瞬間私は頭を振ってその考えを忘れようとする。だけど忘れる事は出来ずに、こんな事をしているきっかけの昨日の出来事が思い出された
こんな事をしている理由は昨日、私がお兄さんと会うのを控えたほうが良い、とお姉さん(麻奈実)に言った事から始まったのだ
66 :kai662 :2011/03/04(金) 14:04:38.72 ID:4lMc5MB00

         ・・・・

私は何とか冷静さを取り戻し、もう一度お兄さんを見た
お兄さんは何もする事が無いらしく、ベンチに座ってカバンから本を取り出し読み始めた
どうせそれもいかがわしい本なんでしょ?…………、でもちょっと日陰で本を読んでいる姿は格好良い……ってなんですか、何を思っているのですか!?私!!

そこで私はさっきよりも大きく頭を振った「騙されちゃ駄目です!、騙されちゃ駄目です!」と呟きながら

なんとか邪悪な考えを取り除いた私は、今そこで欠伸をしているお兄さんを睨む。
よっぽど暇なのだろうか、当たり前だ、なんでこんなに早く来ているのか不思議で仕方ない。

そんな事を思っていると、お兄さんに小さな子供が近づいていく。それもよりによって女の子だ。
あ、危ないですよ!、そこの子!、そのお兄さんに近づいちゃいけません!!
居ても経ってもいられずに思わず立ち上がる私。
だがそんな私にあり得ない声が届いた

「よーし!!、今日は何で遊ぶ!?、今日も兄ちゃんはある人を待っていて暇だから何でもしてやるぞ!?」

京介さんのそんな優しい、甘すぎる声が
その声を聞いて私は、さっきまで危険だと思っていて焦っていた心は一切消えて、自然と顔が綻んでしまうのを自覚してしまう
そして今まで薄々思っていた事が真実だと確信してしまう

『どうしてですか?、どうしてそんなに優しいんですか?』

そう言おうとしたが、出たのはただの吐息、……何回試しても一緒。吐息は風に溶けて消えるだけ

お兄さんが桐乃に卑猥な趣味を教えた?、そう思ってた?。違う、何もかも違う、ただ、ただ、私は甘えてたのだ、お兄さんの優しさに、心に。
ただ、お兄さんを私の黒い感情の捌け口にしていただけだ。

いつの間にか溢れていた涙が止まらない、落ちて、地面に黒い染みを残して消えていく。繰り返し、繰り返し。
溢れて止まらない涙、私は思わず踵を返して走り去ろうと足に力を入れた

「もう帰るのか!?、ちょっとは遊んでこうぜ!」

そう聞こえたと思ったら頭に何かがぶつかった、結構勢いがあったのか私は前のめりに倒れてしまう。…ポンポンと私の前を跳ねるサッカーボール。

「なにするんですか!!」

私は反射的にそう叫ぶ
「あやせたんが俺を呼んだのに勝手に帰ろうとするからだろ?」
「気持ち悪いからその呼び方を止めてください!!」

思わず出てしまった私の毒舌、だがお兄さんはそれすらも笑い飛ばしてこう言ったのだった
「へいあやせ!、パスだ!」

私はつい笑ってしまう顔を隠しながら思いっきり蹴り返してお兄さんのもとに走っていった
近づきながらもう一度呟く、さっき言えなかった言葉

『お兄さん、どうしてそんなに優しいんですか?』

聞こえないような、小さな、とても小さな呟き
それでもお兄さんは『そりゃ………、桐乃の大事な友達だからな』と言った気がする

嘘つき、そう思う。お兄さんは関係の無い人だって絶対に見捨てないだろう、見える全ての人たちをできるだけ、救おうとするだろう
そんな性格だから次々に犠牲者がでるのだ、今日だってそうだ、現に私が犠牲者になっている

いや、私は犠牲者になっていた、と言ったほうが良いだろう
ただ単に今日、私は自覚しただけなんだ、この感情に。
目の前にいるお兄さんを見て、改めて思う。
反則だ、と。

私はお兄さんにせめて仕返しをしようと近づき抱きついて耳元で名前を呼んだ
「京介さん」

それから振り返ったお兄さんに私が何をしたかは、内緒。
自覚した感情は何?、それも内緒。

ヒントは最初は『キ』で始まって『ス』で終わる、最後は『こ』で始まって『い』で終わる

そんな……、行為と感情。

私はポカンとしているお兄さんに向かってこう言って帰った

「お兄さんが優しすぎるから悪いんですよ?、これからはちょっとは自重してくださいね?」

帰り道、私は最後にお兄さんが見せた呆けた顔を思い浮かべて、皆よりちょっとリードかな?
なんて考えて笑いながら帰ったのだった

終わり
67 :kai662 :2011/03/04(金) 14:15:10.25 ID:4lMc5MB00
間の文を飛ばしてしまった、65と66の間だと思って読んでおくれ


        ・・・・



「お姉さんお兄さんと会うのは控えたほうが良いですよ?、さもないとあの変態の事です、絶対にいつか襲ってきますよ?」

私がそう言うとお姉さんは間髪いれずに予想外の返答をしてきた

「めっ!、だよ?あやせちゃん。あやせちゃんは京ちゃんの事を本当に真剣に見た事があるの?、見た事があるなら絶対にそんな事は言えないよ?、京ちゃんはね、誰にでも優しくて優柔不断だけど、だけどね?、絶対に困っている人は見捨てない、とっても優しい、優しすぎるくらい良い人なんだよ?。だからあやせちゃんが相談があると言って断った事なんで無いでしょう?」

そう言って「ははは」と乾いた笑いを漏らすお姉さん、自分でも最後が支離滅裂になっている事に気がついているのだろう
だけどその時の私はそんな事を考えている暇は無かった、どうして?、その通りだ、なんでお兄さんは何時もあんなに酷い事を言っている私の相談を受けてくれるのでしょうか……。

結局その場で答えはでずしかたなくこの方法、お兄さんと一日過ごして何が目的かを突き止める事にしたのです


68 :kai662 :2011/03/04(金) 14:27:27.80 ID:4lMc5MB00
えぇと、まだ一応続きがあるんだが。投下してもいいか
オマケ……てきな感じのなんだが。

それと先程は失礼した、我ながら何と言うミスを!!!と、嘆いていたところだ。

ここで皆が辞めて欲しいなら辞める事にする。 
69 :kai662 :2011/03/04(金) 14:28:16.61 ID:4lMc5MB00
えぇと、まだ一応続きがあるんだが。投下してもいいか
オマケ……てきな感じのなんだが。

それと先程は失礼した、我ながら何と言うミスを!!!と、嘆いていたところだ。

ここで皆が辞めて欲しいなら辞める事にする。 
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 14:29:39.66 ID:k5RVpUkPo
どんどんやってください
71 :kai662 :2011/03/04(金) 14:36:38.11 ID:4lMc5MB00
おまけ



「はっ!……、なんだ?、ここはどこだったっけか
てか俺はこんな所に何の用があったんだ?、さっきまで遊んでたガキ共もいねぇし」

そこで俺は頭を捻る、思い出されたのはあり得ない風景だった

なんと!!、おらがあやせたんにキスされてるでねぇか


「いや、落ち着け?俺。そんな事があり得るはずがねぇだろ?、あのあやせだぞ?、俺に会った瞬間心底嫌そうな顔をするあやせだぞ?」

そこで俺の中のミニ京介が会議を始めた

『そうだ!、あのあやせが俺にそんな事をする筈が無い!』

『そうだぞ!俺!、どうせ何時ものように俺が生んだ変な妄想に決まっている!!!』

『調子にのんなよ!?俺!!』

自分なのに涙が出てくるのは何でだろう


でも…………ふむ、やはりそうか、俺が生んだ妄想だったのか。
悲しいけれどそれ以外……、ありえねぇもんなぁ。

結論、俺が生んだ妄想




そんな事を京介が思っているとは露知らず、あやせはその頃日記に今日の事を嬉しそうに書いていたのはまた別のお話。







こんどこそ終わり






72 :kai662 :2011/03/04(金) 14:41:07.33 ID:4lMc5MB00
今度こそ本当に終わり

どうだっただろうか、我ながら京介のキャラがしんでるなぁ。
と思っている。

自覚はしてるからあんまり苛めないでほしぃ

そんじゃ、ありがとう。
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 14:48:06.10 ID:hghFcRaio
お疲れちゃん
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 14:51:57.39 ID:3GiXcW79o


さすがあやせさん!
二時間前から待っててもなんともないぜ!
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 20:19:27.71 ID:CvNQwInAO
前々から気になってたしゼノギアス買いました。ゲームアーカイブスだけど

なんか人少ないですねー
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 21:41:01.32 ID:y3WxObLio
乙だぜー
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 22:33:55.94 ID:B7PqFgjDO
しかし感嘆符や疑問符の後ろに句読点を打つのだけが気になってしょうがなかった
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 23:50:34.34 ID:aPv1XNuD0
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 01:30:58.75 ID:TKVmfUeOo
SS内に現実のネタを混ぜるのって、嫌われるんかね?
ガンダムとか特撮とか
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sagee]:2011/03/05(土) 02:16:03.23 ID:O+6kF6Fw0
>>80
それを言ったら沙織・バジーナ大尉殿は全否定されちまうぞ。バンダイ絡んでるんだからガンダムはOKじゃね?
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 02:17:30.21 ID:TKVmfUeOo
>>80
無限ループって怖いね。
んじゃ、仮面ライダーネタで書いたものがあるんだけど投下していいかな。
3,4レスほどのでございます。
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 02:22:28.99 ID:TKVmfUeOo
んじゃま、以下投下
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/05(土) 02:23:52.80 ID:TKVmfUeOo
「ただいま〜」

帰宅の挨拶をするも、俺を暖かく出迎えてくれる人物はいない。声すらない。
高坂家の長男の扱いは往々にしてこんなもんだ。
まぁ、今日は親父は仕事。お袋は居るだろうがテレビでも見てるんだろ。桐乃はあやせ達と買い物だとかで昼過ぎには出かけていったしな。
だが今日に限って言えば、この無言空間は大変ありがたい。何故なら、誰にも見つかることなく、この手に持つブツを部屋まで持っていけるんだからな。
俺は靴を脱ぐと、忍者の如く気配を消しながら階段を静かに駆け上がる。
部屋に入り、扉を閉めたところでやっと一息つけた。ふぅ〜、ミッションコンプリート。
ベッドに腰掛け、某有名量販店のビニール袋に入ったブツを取り出す。その箱を見ただけで、俺の顔はだらしなくにやけてしまう。

「ふへへ、ついに買っちまった」

おっと、自分でも身震いしたくなるくらいの気持ち悪い声を出しちまった。落ち着け、俺。自重しろ。そうだ、こんなときは素数を数えるんだ。
2, 3, 5, 7, 11, 13……。オーケイオーケイ。
昂る気持ちを少しだけ落ち着かせた俺は、箱の封を切り、中身を取り出す。
ボール紙、っていうのか?仕切りがある茶色い箱の中には赤・銀・黒が配色された奇妙な形の本体、黒のスロット、灰色のベルト部分とホルダー。
そして緑・赤・黄・黒色のでかいUSBメモリみたいな形のパーツ。これだけ言えば、わかるヤツにはわかるだろ?
包装袋を外し、本体にベルトをはめ込んだら、あとは腰に装着だ。
俺はベッドから立ち上がると、それを腰に巻き始めた。
……あれ?あれあれ?
ちょっと待て。待ってくれ。いや、待ってください。
あとちょっと……。あとちょっとなのに……、ベルトが届かNEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!

……orz。
いや、可能性は考慮してたさ。だってさ、「対象年齢3才以上」だけど、高校生まではカバーしてないよな。うん、普通はそうだよ。
だが、ここでへこたれるような俺じゃない。こんなこともあろうかとアレを買っておいたからな。
俺は某有名量販店のビニール袋に入った"もう一つのブツ"を取り出した。それは黒いベルトだった。
HAHAHAHAHA!!こんなときのために「DX延長ベルト」を買っておいて正解だったぜ!
コイツがあれば、たとえ俺のような思いをした人がいても大丈夫!早速、ベルト部分に付けてみよう。
さぁ、次はどうだ。
………………。
キタ!キタぞ!これで勝つる!
今、俺の腰にはベルトが巻かれている!巻かれているんだ!イィヤッフゥゥゥゥゥゥッ!!
次はコイツだ。俺は四本あるパーツから緑のモノを手に取り、背部に刺さっている紙を抜いた。ほら、アレだ。電池を繋げない様に差されている厚紙みたいなヤツ。
これで準備は整った。俺は、恐る恐る緑パーツに付いているスイッチを……押した!!

『サイクロン!』

おお。おおおお。オヲオオオッヲオオヲヲヲヲオオオヲッ!!
ガイアウィスパーキタキタキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
やっべぇ。どこかで聞いたことあるような音声だが、マジかっけぇ……。おもちゃの割に綺麗に聴こえるんだな。
次はこれを……ドライバーの右側に……。ゴクリ

『ディーンッ!ドゥーン、ドゥーン、ドゥーン……。』

待機音キタよキタよォォォォォッ。解放されるのを待ってるよォォォォォッ。
俺は待機音を鳴らしたまま、黒色のメモリを手に取り、厚紙を抜く。そして、スイッチを押して……。

『ジョーカー!』

ウホッ!これは良いジョーカー!
サイクロンに比べて、声が力強いなヲイッ!イイヨイイヨー。最っ高ダヨー。
今度はこれを……ドライバーの左側に……。

『ディーンッ!ドゥーン、ドゥーン、ドゥーン……。』

2本のメモリが待機中ダヨー。解放されたがってるよー。この好きモノめっ!
さぁ、あとはこの本体を、手を交差させてオープン……。

『ギュゥゥゥゥン……、サイクロン!ジョーカー!』
『ダラララーダーダーダー、バーンバーンバーン!』

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!サイクロンジョーカーだぁぁぁぁぁぁ!!
ああ、まさか男児用おもちゃでここまで感動出来ようとは……。あ、やべ。ちょっと涙出そう。

……ふぅ、ちょっと興奮しすぎたな。
時計を見ると、もうすぐ4:30になるところだった。今はここまでだな。こんな所、桐乃やお袋に見られたら馬鹿にされるどころじゃねえし。
俺はダブルドライバーとガイアメモリを、机の一番大きい引き出しの中にいれ、リビングに下りていった。
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/05(土) 02:24:29.51 ID:TKVmfUeOo
いつものように7:00に夕食を食べ、親父の後に風呂に入った俺は、今はもう上がって部屋に戻っていた。
それもこれも、さっきは存分に堪能できなかった「DXダブルドライバー」でしこたま遊ぶためだ!
今度はいくらかの落ち着きを持ってベルトを巻き、本体をWの形に開く。

『サイクロン!ジョーカー!ダラララーダーダーダー、バーンバーンバーン!』

おおお。
いいわぁ。すっげぇいいわぁ。たまんないわぁ。
さて、まだまだサイクロンジョーカーで遊べそうだが、ここでメモリチェンジだ!

『ヒート!』

赤いメモリのスイッチを入れ、ガイアウィスパーを轟かせると、俺はサイクロンメモリを抜き、ヒートメモリを差し込んでバックルを開いた。

『ヒート!ジョーカー!パララーンパラララパラララーン、バーンバーンバーン!』

オオオッ!ヒートの変身音はなんてロックなんだ!まさにヒート!震えるぞハート!燃え滾るほどヒート!
さてさて、ルナメモリはどんな感じかにゃーん。
さっきと同じ手順で、俺はヒートからルナへとメモリチェンジ!バックルオープン!

『ルナァ!ジョーカー!シャーン…シュアーーン…、バーンバーンバーン!』

さすが「神秘」の記憶を封じ込めたメモリ。変身音も何処となく幻想的だ。
しかし……、こうやってヒートとルナがあると、メタルとトリガーも欲しくなるな。放送終了して大分経ち、値下がりしたものをたまたま見つけたから買っただけなんだが……。
これはヤバイ。集めたくなってきた。
いやぁしかし、部長がPCで見てた動画をたまたま覗いただけだったんだが……。ここまでのめり込むとは思わなかったぞ。
最初は「なに?このセンターマン」なんて思いもしたが、見ていくうちにどんどんハマっていった。しかも、動いたらカッコイイしな。
ほら、あるだろ?ガンダムとかでもさ、公式イラストを見たときは「ないわぁ〜」って思ってたのに、動いてるのを見たらメチャメチャカッコ良く見えるってことが。アレと同じだ。
桐乃も女児向けアニメであるメルルのファンだし。案外、似たような嗜好の持ち主なのかもな、俺達兄妹は。
さて、名残惜しいがそろそろやめておかないと桐乃がこっちに来そうだな。最後に、アレやっとくか。
俺はルナメモリを抜き、再びサイクロンメモリを差し込んだ。今度はなりきりだ。
まずは……手を交差させながらバックルを……開く!

『サイクロン!ジョーカー!ダラララーダーダーダー、バーンバーンバーン!』

交差させた手を解き、一昔前の某ヴィジュアル系バンドのボーカルのように、俺は両手を左右に開く。
今の俺は変身状態だ。ここから体を横に向け、顔だけ敵に向けながら、銃の形にした左手を掲げて……

「さぁ、お前の罪を数えろ」

ガチャ。
え?ガチャ?何、ガチャって?
え?ドアが開いてくよ?え?ちょっと待って。いやいやいや、マジで待ってェェェェェェェェェッッ!!
俺の懇願は届かず、ドアが開かれた。その先には……風呂上りで頬が赤い妹様が立ってましたよ。

「……なにやってんの」
「え、いや……。えっと、あの、これは違うんだ」

あまりのことにとっさに反応できない。なんて言えばいいんだよ。
おい、やめろ。ニヤニヤすんじゃねぇ、この野郎!妹だけどこの野郎!ぐあああっ、よりによってコイツに見られるとは!
おいばかやめろ。その「いいネタ見ぃ〜つけた」って顔やめろ。いっや、マジでやめてください。やめてくださいこの野郎。

「へぇ〜。そんな趣味が有ったなんて、まだまだ"純粋な心"をお持ちのようで〜」
「いや、あのな。違うんだよ。これはだなぁ……」
「あ〜はいはい。わかったからさ。ちゃんとみんなには教えとくから」

イヤァァァァァァァァッッ!
神様仏様桐乃様!それだけは!それだけはご勘弁を!マジでやめて!俺泣いちゃうぞ!本当に泣いちゃうぞ!
そんな俺の動揺は露知らず、桐乃はニヤニヤしながら自室に向かった。
……終わった。はは、終わった。
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/05(土) 02:24:59.39 ID:TKVmfUeOo
アタシは自室に戻ると、まずドアに鍵をかけた。
それから本棚を動かし、コレクションスペースを開放する。少し奥まったところに置いたと思うんだけど……あった!
Mを逆さまにしたようなバックルのベルト。ダブルドライバーだ。
実はアタシも密かに買ってたんだよね、これ。
朝に放送してたヤツをたまたま見て、それから何となく見続けちゃって、思いのほかハマったんだよね。
それでベルトも買っちゃって、メタルシャフトとトリガーマグナムも揃えた。ファングメモリやエクストリームメモリ、プリズムビッカーもね。
しっかし、さっきの兄貴は傑作だったなぁ。今までも焦ったところは結構見てきたけど、あんなに見事に固まったのを見たのははじめてかも。
血の気引いてたよね、あれ?あ〜キモキモ。ただでさえキモいのに、特撮好きとはねぇ〜。
さっきの兄貴の顔を思い出しながら、アタシはベルトを巻いた。子ども用でもアタシなら余裕で巻ける。あれ、兄貴も巻けてたよね?結構細いんだ。
ベルトを巻き終わると、アタシはバックルに触れる。
劇中では、これを付けてると相手の考えてることが分かるんだよね。
これはおもちゃだからそんなことは出来ないけど、もしそんな機能があったら、素直に兄貴に感謝の気持ち、伝えられるかな?
いつもはついついキツイ態度を取っちゃうけど、ちゃんと感謝してるんだよ?兄貴、気付いてる?
アタシがソウルメモリ側で、兄貴がボディメモリ側だったら、変身すればいつでも話せるんだよね。兄貴の体の中でさ。たとえアメリカと日本でもさ。
でも……兄貴の体にアタシと兄貴の意識があるって、ちょっとキモいかも。けど、それだったらいつもみたいに恥ずかしくて手を上げることもないからいい……のかな?
そんなことが出来たら、あの冷戦状態も起きなくて、普通の兄妹をやれてたのかな?でも、やっぱりイヤかな。
うん、今の状態も悪くないし、アタシと兄貴はこれからもずっと兄妹なんだから。今はこれでいいんだ。
だいたい、あのシスコン兄貴の中にアタシの意識があったら、それこそ何されるかわかったもんじゃないし〜。
アイツのエロエロな思考が流れてくるとか、うっわキッモ!マジキモい!あ〜キモキモ。キモ過ぎて絶望したくなるわ。絶望がアタシのゴールになっちゃうじゃん。
それにファングジョーカーになったら、アタシの体にアイツが入ってくるじゃん!貞操の危機どころじゃないって!
あ〜あ、シスコンの兄貴を持つと大変だよね〜。
アタシはベルトを外して元の場所に戻し、コレクションスペースを閉めるとベッドにダイブした。
ボフン、と音が鳴り、ベッドが軋んだ。布団の柔らかさが伝わってくる。
とりあえず、今日の兄貴の恥ずかしいシーンは、明日黒いのと沙織に伝えとかないとね。
あ〜、明日が楽しみ♪



おわり
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/05(土) 02:25:45.28 ID:TKVmfUeOo
おまけ


同時刻 高坂家のとある一室―――。

「変身……」

『スカル!バン!ギュゥゥィイーン、ギュォォォンッ!』

「ふむ、俺の声に似ている気もするな」





同時刻 田村家―――。

「変……身ッ!」

『アクセル!ブゥンブゥゥンブゥンブゥゥンブゥゥゥゥゥン!キュイィィィン!』

「さあ……振り切るぜ」

「ロック〜。お風呂あいたよ〜」





同時刻 五更家―――。

「変身」

『KAMENRIDE……DECADE!!』
『キューン、シュパパパパパパーーン!』

「ふふ……。そう、私は世界の破壊者……」





同時刻 某高級住宅街―――。

『キンキンキンッ!』

「変身!」

『タカッ!トラッ!バッタッ!タ・ト・バ!タトバ!タッ・トッ・バッ!!』

「歌は気にするな……、と言われましても、やはり気になりますわね。放送が終了したら、全てのコンボ音をまとめてカラオケ配信してくださらないかしら?」
「さ、次はラトラーターですわ。ラタラタ〜♪ラトラ〜タ〜♪ 」



おわり
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 02:27:40.58 ID:TKVmfUeOo
以上です。
京介のテンションがちょっとウザかったかな。
桐乃もらしくなかった気がする。
イチャイチャは無いけど、楽しんでいただけたら幸いです。

仮面ライダーの中で一番かっこいいのはシャドームーン。異論は認める。


ありがとうございました。
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 02:39:22.98 ID:L0n99wSAO
おつんつん
だがライダーで一番かっこいいのはオルタナティブだ
そこだけは譲れぬ
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 02:42:33.48 ID:HBF2DvP6o
乙です
正直ライダーネタは分からなかったけど、妙にテンションが高くてそこが面白かった
ゼノギアスの人もそうだけど、ネタ元に愛を感じるSSすなww
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sagee]:2011/03/05(土) 02:44:05.95 ID:O+6kF6Fw0
>>87
ふー、ようやく無限ループから抜け出せたぜ。乙
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 02:45:35.27 ID:TKVmfUeOo
>>89
それも私だ。


正直、イチャイチャは書けんからネタに行くのです。
恥ずかしながら。
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 02:53:25.01 ID:e3GV2RdAo
乙です。
沙織スレの「沙織のガンプラ講座」もそうだけど、ネタがわからなくても楽しい。ネタがわかると二倍楽しい
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 06:27:27.03 ID:gbYOMRMDO



しかし親父wwwwww確かに中の人同じだけどさwwwwww
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 09:23:35.73 ID:N5asBGqc0
今しがたpixivにUPしたSSです。
コトブキヤの桐乃フィギュアとpixivの某絵を見てイメージが湧きましたw

タイトルは「俺の妹のフィギュアがこんなに完成度が高いわけがない」

後悔はしていません(笑)。
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 09:25:03.72 ID:N5asBGqc0
「うーむ…」

俺は今、猛烈に悩んでいる。

桐乃のフィギュアが出たと聞いて興味本位でアキバまで行って見てきたんだが、あまりの現物の美しさに思わず手にとって買ってしまった。
それを持って帰って、自室で中身を開封したまではいいんだが…飾るべきか、それとも隠すべきか…。

ほら、なんというかさ…出来がすごいいいし、ここまで完成度が高いと飾っておきたくなるよな?
だけどさ…もし飾ってそれを桐乃に見つかったらさ…

「ナニ? あんた、実の妹のフィギュア買ってんの? しかもそれを誇らしげに飾っているなんて…どこまでシスコンなんだか? キモwww」

とか草生やして言われそうだしな…。

とりあえず、飾る飾らないは一旦頭の隅に引っ込めて、俺は改めて桐乃フィギュアをじっと見た。
表情や色合い、頭身などの完成度が非常に高い。
そして細かいところまでよく作られている。
だけど…この身体に付いているビニールが邪魔だな…これどうやって取るんだ?
このビニールを無理に取ろうとして、ヘンな破り方をしてしまったせいで、今は中途半端にそのビニールが挟まっているような状態になっている。

ん? 待てよ?
身体に付いている…てことは…このフィギュア、解体できるのか…?

俺は試しに、桐乃の下半身部分を手に持ち、上半身と分離できるか試してみた。
すると…いとも簡単に分離させる事が出来て、挟まっていたビニールを取り外す事に成功した。

「なんだ、やっぱり離せるんだ…って、ええぇぇ…!?」

うお…なんだこれ…!?
俺は何気に桐乃の上半身の制服部分に目をやったんだが…制服の下から…ブラが…チラ見えしてんじゃねーか…!!
何コレ!? こんな細かいところまで作られているの!?
こんなトコまで完成度高いの!?
最近のおもちゃ…侮れんな…マジで…。

待てよ…?
ここまで細かく出来ているって事は…もしかして…。
俺は桐乃の下半身部分に目をやった。
手に触れてみるとスカート部分がぐらぐらと動く。
どうやらスカートは着脱可能らしい。

「ごく…っ…」

俺はスカートを摘まんで…それを取り外した…。

「うおぁ…っ…」

うわぁ…マジですげぇ…。
スカートを取った桐乃の下半身部分に、純白の下着が露わになった。
そしてその部分をじっくりと見てみると…

す…すげぇ…。
その…何というか…股間のこんなところまで再現されてる…。
ここまで手が込んでいるとは…正直、感服したぜ…。

「…な…なにやってんの…あああ…アンタ…?」

ぎくうぅっっ!?

こ…この…声…ま…まさか…。
俺が恐る恐る扉に振りかえると…そこには…顔を真っ赤にした…妹様がいらっしゃいましたよ…。




「ああああ…あんた…なに…あたしのフィギュアの…ししししかも…下半身を…視姦してんのよ!? このチカン! ヘンタイ!! シスコン!!!」

桐乃が涙目で俺を罵倒してきたが…今回ばかりは言い訳はできない。
俺は黙ってひたすら土下座した。


暫くして、長い罵倒がやっと終わったと思った俺は、頭を上げて桐乃を見上げた。
すると桐乃は顔を真っ赤にしてもじもじしながら、俺をチラチラと見ていた。

「あのさ…、そんなに…あたしの…下半身に興味があるなら…言ってくれればいいのに…」

俺はその言葉と共に桐乃に手を引っ張られ、桐乃の部屋に連れ込まれた。




因みにフィギュアは桐乃の手によって再び組み立てられ、俺の部屋の本棚に飾られた。
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 09:25:48.91 ID:N5asBGqc0
以上、アホネタでした(笑)。
改行制限ギリギリなので、何とか1レスですみました。
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 09:53:33.85 ID:PDkqp7zTo
沙織「VF-25が〜」

京介「……」
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 10:03:15.94 ID:gtDJs4yDO
乙っす。

そして、ここから京介のフィギュア道が始まるんですね。わかります。
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/05(土) 10:37:36.07 ID:wKeUpGvK0
完成している桐乃×京介のssを投下する

もうブログに乗っけてるんだがいいだろうか?
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 11:26:49.73 ID:PDkqp7zTo
ブログのアドもいっしょに貼れば、より望ましい
早くしろ
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/05(土) 12:44:03.45 ID:wKeUpGvK0
      私が兄貴にこんな表情をするわけがない


う……ん

私はまだ完全に覚醒していない体にムリヤリ命令して、気持ちのいいベッドの中から抜け出した

「まだこんな時間か…」
こんな時間なら兄貴は起きてないだろうな……

最近の私はどうかしている
何かといえばあの間抜けな顔が浮かんでくるのだ
喜んでいる顔、照れている顔、微笑んでいる顔
どれもかっこいいとは言えない間抜けな顔、だけど何故か安心する顔。そして思い出すと何故か胸がドキドキする……そんな顔

こんな事はただの思い過ごしだ

私はそう思い込むと頭をブンブンと振って、顔を洗いに行こうと自室のドア開いた

ガンッ!!

開いたのはいいのだが勢いがあり過ぎたらしい
今、目の前には泣いているのか怒っているのか、とにかく微妙な顔をして鼻を押さえている兄貴がいるのだから

…………
「あーー……、遺憾だわ」
「遺憾だわじゃねぇ、ゼロ〇の真似してんじゃねぇ!!」

悪かったわよ
「うるさいなぁ、こんな朝早くに起きてるあんたが悪いんでしょ」
「なっ…」

でた、私の悪い癖、いつも思っている事と違う言葉がでてしまう
なんでなんだろう
だけど今更謝れるわけもなく、私はフンッ、と言うと再び洗面所へと歩き出した


「ふぅーー………」
透明な水が流れ出ている蛇口を見ながら私はため息をついた
兄貴を罵った後に来る後悔が私を蝕んでいた
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/05(土) 12:45:49.81 ID:wKeUpGvK0
―――嫌われたかな?

そんな考えが私の脳裏に浮かび上がり、いっそう憂鬱な気分になってしまう

―――いや、元々好かれてなんかないか

ここまでくると自分のマイナス思考が止められなかった
どんどん湧き上がってくるマイナスな言葉や思いに潰されて目からは涙が流れ出た

「ひっく…ふぐ………」

いつもはこんなに酷くないのに
なんで今日はこんなに溢れてくるの?
なんで止まらないの?

「うぅ…ああぁー…」

ついに声まで漏れてしまった

止まれ!!
いくら命令しても私の体は言う事を聞かず、ただただ溢れてくるだけだ
途中で私は断念して感情の赴くままに涙を流し声を出していた


………………ポスン


真っ白
私の視界も、頭も、一瞬で真っ白になっていた

「桐乃……」

そこに、まるで真っ白いノートに書いていくように、優しい声が聞こえてきた

「我慢すんなよ、泣けよ……俺の前で無理してんじゃねぇよ」

ずるい。

そんな事言うなんて反則じゃない……
私は何か悪口を言おうと口を開くが出てきたのは全く違う言葉だった
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/05(土) 12:48:20.87 ID:wKeUpGvK0
「兄貴ーー……、兄貴…ありがと…ひっく……」

出た、私の悪い癖
思った事の反対を言ってしまう悪い癖
だけど今回は……………ちょっといい癖






        ・・・・







「あ、ありがと………、もう大丈夫」
そう言うと私は兄貴の胸から顔を離した

「そ、そうか、そうつは良かった。あ、えと、その……わ、悪かったな、その……いきなり抱きしめちまって」

いや…いいよ、全然。えと…その……、私も嬉しかったし。
「ほんとよ!!、このシスコン変態兄貴!!、もう私、学校行く準備するんだからさっさとどっか行ってよ!」

でた、私の悪い癖。でもこの癖で私がこれから悲しむ事はないだろう
だってこの兄貴が私をそんな事で見捨てないってわかってしまったから

だって兄貴はシスコンなんだもんねぇーー

兄貴は私の表情を見て、一瞬笑ったかと思うと、またいつもの表情に戻って「へ〜へ〜、分かりましたよ。妹さま」、と言いながら自分の部屋に戻っていった


なんで私の顔を見て最後笑ったんだろう?


きになったが私は見ない
何か今、鏡をを見たら負けてしまいそうだからだ

誰にかって?、そんなの決まってるでしょ?

兄貴に、だ。

「へへ………」

私はそんな声を漏らしながら
二階の兄貴がいるであろう部屋に向かって目一杯 『笑った』 のだった

104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/05(土) 12:56:01.86 ID:wKeUpGvK0
以上、終わりだ。
投下したことに後悔はない

105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 13:20:04.83 ID:HBF2DvP6o
>>95
続きを…!
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 13:20:44.42 ID:HBF2DvP6o
>>104

なんで京介は桐乃の部屋の前に居たんだ?
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 13:44:48.47 ID:gtDJs4yDO
乙だぜい

イチャイチャいいよいいよー
そういうのが書けてうらやましいよー
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 14:37:18.97 ID:fQteBIcIO
>>104
それでHTML依頼はいつ出るんだ?
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/05(土) 15:29:47.91 ID:wKeUpGvK0
HTML依頼ってなんだ?。すまん、そこらへんをよく分かっていないんだ

よかったら教えてくれ
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 15:44:24.39 ID:HBF2DvP6o
>>109
気にするな
>>108がなんか勘違いしてるんだと思う
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 16:13:33.71 ID:TKVmfUeOo
>>109
ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1299288108/

これ立てたの、あんただろ?
ここは勝手にスレ落ちしたりしないから、放置されっぱになるんだわ。

ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1294929122/

だから、HTML化依頼しないとずっとそのまんまなわけ。
アドレス貼っとくから、処理してきてね。
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 16:21:30.77 ID:2EePKFKAO
>>88 まさかの同志
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 16:24:32.50 ID:BYbB0nwAO
>>96
肝心なところの描写が…!
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 16:34:05.69 ID:ozYu1Kq1o
>>111
1の痛さが半端ねぇな
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 16:47:25.84 ID:b4PEADBQo
アイタタタ
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 16:48:19.17 ID:lUSWyKHTo
>>110
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/05(土) 16:51:24.83 ID:wKeUpGvK0
すまんかった、これで良いんだろうか?
まだ良く分からん。
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 16:57:00.05 ID:TKVmfUeOo
>>117
おk
ま、気にスンナ
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 17:33:57.73 ID:BYbB0nwAO
気にするな
変な煽りはスルーで
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/05(土) 19:25:20.91 ID:wKeUpGvK0
皆はssを書かないのか?

ていうか誰か書いてくれ、異常に読みたい。
できればあやせ×京介で頼む
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 19:46:56.93 ID:nUV2DRbDO
いいから黙ってろ
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 19:52:02.01 ID:N5asBGqc0
>>113
いや、あの後はあえて描写しなかったんですわ。
いつもいちゃらぶでR-18に繋がるようなSS書いているので(エロ脳だから、そーゆーのしか思い浮かばんw)、たまにはと思って。

続きは皆さんの脳内で補填して下さい(笑)。
その方が皆さんの好きなシチュで想像できますでしょw
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 20:28:55.62 ID:TKVmfUeOo
京介×あやせで書いてみますた。
今回は台本形式。1レスの超短編です。
以下、投下。
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/05(土) 20:29:37.62 ID:TKVmfUeOo
とある公園―――。


京介「おっす。待たせたか?ラブリーマイエンジェルあやせたん」

あやせ「すごく待ちました。だから死んでください!」ブォン

京介「ぐふっ!……待たせたのは悪かった。だが、いきなりビンタは無いだろ!?」

あやせ「お兄さんがいきなりセクハラ発言をするからです。次はぶち殺しますよ」

京介「(目の光が……!)お、おう。わかった、気をつけるよ」

あやせ「わかればいいんです。と言うか、いつも言ってるんですからいい加減理解してください」プクー(←超かわいい)

京介「お、おう!いつも悪いな」ニコッ

あやせ「(?……お兄さんの歯が光ってる。)お兄さん、綺麗な歯ですね?」

京介「ん、そうか?きっとこれのおかげだな」ガサゴソ

あやせ「そ、それは……!」

京介「おう!アパガードだ!」

ナレーション『薬用ハイドロキシアパタイトの働きで、口臭や虫歯を予防し白く健康な歯にする美白歯みがき』

京介「それが!」

あやせ「アパガードですね!」

京介・あやせ「「あははははははははは♪」」(←お姫さま抱っこ中)

ナレーション『歯を白くする、アパガード』

あやせ「お兄さん、素敵です……///」

京介「あやせ……///」



おわり
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 20:30:05.91 ID:TKVmfUeOo
以上です。
ついカッとなってやった、でも反省はしていない。
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 21:08:33.88 ID:PDkqp7zTo
>>124
こういうユルイSSは嫌いじゃないな
たまにはこんなのがあってもいいだろ
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 21:23:52.77 ID:sBPtAXDJo
ガリレオ見たな?
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 21:26:35.26 ID:TKVmfUeOo
>>127
バレたか
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 22:01:56.42 ID:YR7ybgAv0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1297644807/

こんなスレあったなら誰か教えてくれたってよかったじゃないか
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 22:55:20.50 ID:r7k6TNhAO
そういえばテンプレに関連スレとか無いんだっけ

そのスレの桐乃は若干ろりりん気質入ってて微笑ましい
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/05(土) 23:03:15.64 ID:wKeUpGvK0

あやせが可愛かったらもう何でも良い

132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 23:53:36.32 ID:HBF2DvP6o
じゃあSS速の既存別スレ

京介「桐乃…お前に人生相談があるだが…」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1297644807/
俺の妹が身長180cmなわけはない
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1294927055/
桐乃「デレノート……?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1295702504/
【俺の妹】高坂京介は落ち着かない
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1296372251/
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga ]:2011/03/05(土) 23:53:58.95 ID:oCWnfErk0
麻奈実「あいつらに勝ちたい。
血縁があるから妹になれて、人気があるから恋人になれて、目に光をなくせるからヤンデレになれる。
そんな救いのない現実を。
そんな未来のない事実を。
どんなに、かっこよくなくても。
どんなに、泥臭く、ぶざまでも。
私は覆したい。
私は勝ちたい。

地味でも、眼鏡でも、空気でも!

ヒロインを張れるって証明したい!! 」
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 00:07:14.74 ID:PuXiZFZgo
ベルフェゴールさんはむしろ属性盛りすぎだから何かに特化した方がいいと思うんだ
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 00:07:56.43 ID:cDXqsoAmo
  \\_
:三ニ=:::::::ヽ
:ヽ.ニ=::て.>廴_
三.ヽ= (⌒ヽ;:;:;,.二)
ニ=-ヽ:ヽ、,∠.^^ぅ ダメだ。その願いは私の力を超えている。
〃,べ= ̄ニ二 ̄
/;:ィリ ノノ ,.へヽ
;:ヘ/ ̄ ̄ ̄Vヽヽ
ソ        ├┤|
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 00:20:11.23 ID:qWXUaJIDO
幼馴染で、メガネかけてて、家庭的で、親公認で、勉強できて、容姿は「可愛らしい」と思われている。


麻奈実さん、圧勝じゃないすか。
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 00:21:09.00 ID:7afAo/Yto
でもいらない子
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 00:38:42.50 ID:aGnfz9PDO
麻奈実じゃ勃たない
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 00:39:48.55 ID:qWXUaJIDO
俺の中じゃ、ヒロイントップ2の一人なのに……。
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 01:11:37.90 ID:PC3fupYDO
>>139
もう1人は?

141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 01:17:40.65 ID:qWXUaJIDO
>>140
バジーナ大尉
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 01:24:16.44 ID:/KhbzWgyo
漫画版のスイーツぽいきりりんと、笑顔がまぶしいまなみが大好きです
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 01:48:48.69 ID:Ko4QUFPDo
麻奈実サンまずは髪伸ばせば…
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 02:35:10.54 ID:3etH6tnSo
VIPの加奈子SSがばかなこでかわいい
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 03:32:52.72 ID:vN4exsN20
俺の中ではブリジットとリアの二強だ
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 03:42:29.81 ID:ijSO94qlo
桐乃がダントツで、次点であやせとブリジット

ブリジットの棒っぷりがたまりません
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 05:49:27.84 ID:MbRXHaRNo
ブリジットの棒っぷりワロタww

英語訛りの日本語が単なる棒読みになる不思議…
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 06:01:27.40 ID:eN23PlgSO
【俺妹】黒猫は後輩可愛い24
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1298371954/
に書いてみた話を転載

846 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/05(土) 16:17:03.14 ID:q1ASTdEzO
高坂家から、ひな祭りパーティーの誘いが届いたのはしばらく前のことだ。
あの子からの、必ず妹達を連れて参加して、という内容には、内心躊躇するところもあったのだが、
招待状は「高坂家」からということで、先輩のお母様の署名もされていた。
それなら行かないというのも失礼だろうと、私達は誘いを受けることにしたのだった。

※※※
「うわあ、妹ちゃんたちキター!!!」
「ようこそ。今日は来てくれてありがとう。楽しんでいってね」
「こちらこそ、お招きいただきまして、ありがとうございます。」
私は手土産の桜餅をお母様に渡す。
「さあさあ、上がって上がって♪」

「うわあ、立派なひな人形…」
「おひなさまが、きれいです」
リビングには、豪華な7段のひな人形が飾られてた。
私の家には勿論、余所で見かけることもそうそうない、それは立派なものだった。
「それじゃ、始めましょうか」

※※※
「…それにしても、五更さんたち姉妹は本当に仲がいいのね」
「はい。ねえさまのことは、だいすきです」
「ルリ姉は、たまに厳しいときもあるけど、やっぱりあたしたち姉妹は仲良しだと思います」
「やっぱりね。桐乃からみんなのことを聞いて、一度会って見たかったの。
話し通りの良い姉妹ね」
あの子が私達姉妹の事を家族に話していたとは、意外だった。
「『あんな姉妹って、ホント、いいよね』とか、
あなたたち姉妹の事をとても羨ましがってたのよ」
「違うから、そんな、羨ましいとか言ってないし!」
あの子は慌てて否定するが、顔が真っ赤なのは図星の証拠。まったく、あの子らしいわ。

ふと目を移すと、下の妹がひな人形をじっと見つめていた。
「わたしのおうちには、こんなおひなさまはないです」
そう、私の家にはひな人形がない。ひな祭りに招待された時、妹達と参加するのを躊躇したのは
余所様と我が家のひな祭りの差を妹達が感じてしまうことを恐れてたからだ。

「そうね。私も子供の頃、家にひな人形がなくて、お友達の家の人形を見て羨ましいと思ったっけ」
お母様が語り出す。
「にいさまのおかあさんのおうちも、おひなさまがなかったですか?」
「そうなの。私も三人姉妹なんだけど、家が狭いからかひな人形がなくて、
その代わり、母親が自分で紙や布でひな人形を作って毎年お祝いしてたの」
「ねえさまとおんなじです。ねえさまも、おひなさまをつくってくれます♪」
「いいお姉さんね」
「はいっ♪」

※※※
楽しい時間はあっという間にすぎ、私達は高坂家を後にした。
自宅に戻り、高坂家でも話の出た自作の人形を飾る。
「ホント、ルリ姉は手先が器用だよね」
「ねえさまのおひなさまがだいすきです」
妹達が褒めてくれる。
「それにしても、今年の人形はいつもとちょっと違うよね」
「そうかしら?」
「よりリアルになったというか…」
「おだいりさまが、にいさまそっくりです」
「そうかー、高坂くんに似てるね。お雛様はルリ姉そっくりだし、
二人並んでラブラブって感じ?」
「ねえさまとにいさまはらぶらぶです」
「ち、違うわよ、何を言い出すのかしら。さあ、夕食の支度をするわよ」
ふと鏡を見ると、私も顔が真っ赤だった。
まったく、あの子のことをを笑えないわね……
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 14:41:45.14 ID:+lLpNzDgo
>>148
乙だぜい。

五更姉妹はやはり可愛い。
俺妹Pの五更姉妹は実に良い。
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 15:42:25.26 ID:LiPJxkkAO
>>144
kwsk
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 15:54:12.66 ID:vAsHN4lto
>>150
これかな
桐乃「はぁ?アンタ掛け算もできないの!」
http://raicho.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1299250491/
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 15:58:05.65 ID:LiPJxkkAO
>>151
トン、今から見てみる
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 18:54:12.95 ID:MLDoKuXOo
かなかなちゃんSSカモン
154 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/06(日) 20:47:00.82 ID:/8fklwxAo

時代は加奈子なのか? すまん。

ひたすら淡々と進行するあやせ√を書いてみた。
冬晴れのとある日、京介とあやせ二人だけの出来事を……だらだらとお送りします。

題名 『あやせの海岸物語』

午後9時00分から 投下します(25レス)
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 20:49:04.14 ID:8LezWXQQo
期待
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 20:56:14.00 ID:FfHt31wGo
パンツ脱いで靴下とYシャツ着たからいつでもおk
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 20:57:23.74 ID:3etH6tnSo
かもーん
158 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/06(日) 21:00:10.55 ID:/8fklwxAo

冬晴れのとある土曜日――

俺は鎌倉駅東口の改札口で、あいつが来るのを待っていた。
改札口に掛かっている時計を確認すると、すでに八時を過ぎている。
俺は柱に寄り掛かったままダウンジャケットのポケットに両手を突っ込み、
自動改札から次々に吐き出されて出て来る乗客に眼をやった。

漆黒の長い髪、輝くような笑顔、あいつの美貌は遠目からでもひと目で分かる。
読者モデルをやっているだけあって、スタイルもファッションも非の打ち所がない。
そんなあいつに気後れしながらも俺が軽く片手を挙げると――
あいつも気付いて、白い吐息を弾ませながら俺に向かって駆けて来た。

「申し訳ありません、お兄さん。……わたし、電車に乗り遅れてしまって……」
「そんなこと気にすんなって。俺も今さっき着いたばっかだからさぁ」

一時間も前から待ってましたなんて、正直に言えるわけがねえだろ。
さっきまでの苛立ちなんて、あやせの顔を拝んだら何処かへ消し飛んじまった。

「それよりも、あやせは朝飯まだなんじゃねえか? 何なら喫茶店にでも入るか?」

俺たちは、取りあえず駅前にある喫茶店に入る事にした。
その喫茶店は、渋谷や原宿などにある様な若者受けするお洒落な店とは全く違い、
古都鎌倉に相応しく、いかにも時代掛かった落着いた店構えだった。
マスターは物静かな初老の紳士といった感じで、俺たちを見て笑顔で軽く会釈をしてくれた。
大手のコーヒーショップしか知らない俺には、何だかとても新鮮だ。
マスターの案内で窓際の空いた席に着くと、モーニングセットを二つ注文した。

「あやせ、今更聞くのも何だけどさぁ、今日は何で鎌倉なんだ?」

あやせは俺の言葉に、一瞬きょとんとした表情をしたんだが……

「……わたし、昨日の夜電話した時、お兄さんに言ってませんでしたっけ!?」
「俺はあやせから、今日の朝八時に鎌倉駅の東口へ来いとしか聞いてねえけど」
「御免なさい。……わたし、てっきりお兄さんに説明したとばかり思い込んで……」
159 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/06(日) 21:00:43.26 ID:/8fklwxAo

あやせから電話があったのは、昨日の夜だった。
普段ならメールで済ませる様なヤツが、昨夜に限っては珍しく電話を掛けて来て、

『お兄さん、明日暇ですよね? 朝の八時に、鎌倉駅の東口へ来て下さい』

それだけ言うと、あやせは一方的に電話を切りやがったんだ。
俺があやせに普段何気なくしているセクハラを咎められるにしたって、
わざわざ鎌倉まで呼び出す必要はねえし――まさか、デートのお誘い?
なんて事を考えている内に詳しい事を聞きそびれちまって、今ここにいるわけだ。
電話一本で理由もろくに聞かずに来ちまった俺も悪いけど、
あやせの様子がいつもと違う様な気がして、それが気になったのも事実だった。

「お兄さん……絶対に怒らないと……約束してもらえますか?」

申し訳なさそうな顔をして俯いたと思ったら、上目遣いで俺の顔をそっと窺うあわせ。
あやせみたいな可愛い女の子に、そんな表情されて怒るヤツがいるわけねえだろっての。
もしかしてあやせのヤツ、知っててやってんじゃねえだろうなぁと思うと複雑な気持ちだ。
とは言うものの、今朝あやせに改札口で会ってから俺の顔は緩みっぱなしで、
今更それを引き締めて怒ったところで、冗談にしかならねえしな。

「俺が怒るわけねえだろ。怒るくらいなら、初めっから来ねえよ」
「それを聞いて安心しました。……うふふっ」

やっぱ知っててやってたんじゃねえか。
あやせに怒られる事は度々あっても、俺があやせを怒った事なんて一度もない。
さっきまでの申し訳なさそうな顔なんて忘れたかの様に、あやせの顔に笑顔が戻る。
俺を鎌倉へ呼び出した理由は、去年テレビで見た『とめはねっ!』とかいうドラマの舞台が、
鎌倉と江ノ島周辺だったらしく、あやせとしては一度現地を訪れてみたかったらしい。
160 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/06(日) 21:01:36.81 ID:/8fklwxAo

注文したモーニングセットがテーブルに並べられるのを待って、俺はあやせに聞いた。

「――それってさぁ、俗に言う聖地巡礼ってやつか?」

俺はコーヒーにミルクを数滴だけ落としてから、カップを口に運んだ。

「お兄さん、聖地……何ですか?」
「いや、気にしないでくれ……独り言だから」

あやせがついに禁断の世界へ!? そう思ったのは俺の思い過ごしで、
更に話を聞いてみると……

「じゃあ、あやせは小学生の頃、塾で習字を習ってたんだ」
「はい。それに、ドラマの後半でバックに流れていた曲がサザンの曲だったので、
 わたしとしては、一度は来てみたくて……」

あやせが鎌倉に来たかった理由は分かったし、それはそれで納得したんだけどな。
俺はあやせに呼び出された時からずっと聞きたかった事を、この場は胸の内に収めた。
それよりも朝からあやせと一緒にいられるんだから、それで十分かもしれねえ。


喫茶店を出てからは、俺とあやせは一緒に近くの鶴岡八幡宮に参拝した後、
若宮大路と呼ばれている参道周辺を散策しながら、再び鎌倉駅へ戻った。
鎌倉駅から最初の目的地、稲村ヶ崎までは江ノ電という小さな電車に乗って行く。
この江ノ電って、場所によっては民家の軒先すれすれの所を走ってるもんだから、
あやせの様に初めて乗った者にとっちゃ、かなり驚かされる。
おばちゃんが勝手口から顔を出していたり、踏み切りでもないのに電車が通過すると人が線路を
横断したりと、それだけ電車のスピードが遅いってのもあるんだろうけどな。

「お兄さん、わたしこういう電車って初めてなんですが、お兄さんは乗った事ありますか?」
「俺がまだ高一だった時、何度かな。そん時は藤沢駅から乗ったから路面電車だったけどな」
「……それって、どういう意味ですか?」
「分かり難いかもしんねえけど、江ノ電って路面区間と専用軌道区間ってのがあってさ、
 腰越駅で切り替わんだよ。……分かんねえよな」
「………………」
161 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/06(日) 21:02:10.83 ID:/8fklwxAo

電車は駅に到着する度に数人の乗客が下車し、また新たな客を乗せて発車する。
車内を見回すと、先程よりかなり込んで来た。
ドアの横にある手摺に掴まりながら、車窓を流れる景色を楽しげに見つめるあやせ。
俺はさり気なくあやせの後ろに立って、彼女の立っている空間を確保してやった。
次の到着駅を知らせる車掌さんのアナウンスが車内に流れると、
シートから立ち上がり、網棚から荷物を降ろす乗客なんかで車内が多少ざわつく。

「お兄さん、もうすぐ稲村ヶ崎に着きます。今日はわたしが、お兄さんをご案内しますから」
「じゃあ、俺は黙ってあやせのエスコート役に徹するよ」

あやせは少し照れた様な笑顔を見せた。
俺はあやせと一緒にいると、不思議な緊張感を覚えるんだ。
何かこう上手く言えねえけど……
あやせはどうなんだろう、俺みたいなのと一緒にいて楽しいのかなぁ?
俺のそんなあやせへの想いなんて、知るはずもねえだろうな。
民家の家々の隙間から垣間見える青空を眺めながら、俺はひとり苦笑した。


稲村ヶ崎の駅は、俺が思っていたよりもずっと小さな駅だった。
ホームの端に小さな駅舎があって、階段を数段下りて上り線の線路を横切った所が改札口だ。
そのまま隣にある踏切に出ちまった方が早いんじゃねえの?

「なあ、ここってさぁ、改札口の意味ってあんのか?」
「お兄さん、こういうのは趣があるって言うんです。言葉には気を付けて下さい」

あやせにしてみれば、今日は聖地巡礼みたいなもんだからな。
コレクターに向かって『これ集めてどうすんの?』って聞くみたいなもんか。
俺たちは名ばかりの改札口を出て、踏切を渡ると海へ向かって歩き始めた。

百メートル足らずの緩やかな下り坂を抜けると、一気に視界が開ける。

「お兄さん、あれが稲村ヶ崎です」
162 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/06(日) 21:02:47.79 ID:/8fklwxAo

あやせは弾む様な声で左前方を指差しながら俺の顔を見た。
こんなに嬉しそうに笑っているあやせなんて、俺は今までに見た事がねえよ。
急かすように俺の手を取って歩き始めたあやせの横顔を見ていると、
これなら早起きしてまで来た甲斐もあるもんだと、染みじみとそう思った。

稲村ヶ崎は国道134号線に面した、小さな岬といった所だった。
岬の先端は崖になってるけど、手前には公園もあって、
土曜日の上、晴天にも恵まれたからか、かなりの人出で賑わっている。
あやせの案内によると、崖の上には展望台があるらしい。
俺たちは階段を上って展望台へ行く事にしたんだ。

それにしても、さっきからずっと手を繋いだままなんだが……。

展望台には何があるってわけでもなく、眼下に広大な海が広がっているだけだ。
冬の海は碧く澄んでいて、水面には太陽の光が乱反射してとても美しかった。
沖合いに目を転じると、ウインドサーフィンのカラフルなセイルがいくつか見えた。

「良い所ですねー。景色も綺麗だし本当に来てよかったです」
「俺も稲村ヶ崎は初めて来たけど、悪くねえかもな」
「そうですよね。……でも、お兄さんを本当に案内したいのは、ここじゃないんです」
「――と言うと、この先に見える江ノ島か?」

喫茶店であやせから聞いた話じゃ、ドラマの舞台は鎌倉から江ノ島周辺だって事だから、
この先に見える江ノ島へ行くもんだと俺は思ったんだ。

「江ノ島へ行く事は行きますが……そこへ行くまでの道が、今日は大切なんです」

あやせのヤツ、何だか思わせ振りな言い方しやがって……
まあ、俺も敢えて反対する理由も無いしな。

「どのみち今日の俺はあやせのエスコート役なんだから、おまえに付いて行くだけだよ」
「じゃあ、お兄さん……今日はわたしに、しっかりと付いて来て下さいね」

階段を下りる時、小さな子供を先頭に展望台に向かって上って来る家族連れと擦れ違うと、
あやせは俺と繋いでいた手をさり気なく解いた。
163 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/06(日) 21:03:24.86 ID:/8fklwxAo

あやせは駅へ向かうわけでもなく、国道の片側にある歩道を歩き始めた。
俺はあやせが何処へ行こうとしているのか、全く見当が付かなかったんだ。
左手には海しかないし、右を見たってガソリンスタンドや民家が点在しているだけだ。
まさか、ここから江ノ島まで歩いて行こうってわけじゃあるまいな。

「なあ、あやせ、この先に何かあんのか?」
「ここから一キロぐらい先に、ロケで使われた高校があるんです。
 もしかしたら、外観だけかも知れませんけど……そこへ行きたいんです」

ちきしょう! やっぱ歩いて行くのかよっ。

「お兄さん、何かご不満でもあるんですか?」

あやせは、俺に右手を差し出しながらそう言った。
犬じゃあるまいし、手を繋ぐくらいのご褒美で、俺が素直に尻尾を振るとでも思ってんのかね。
俺は自分の右手を差し出して、毅然とした態度で言ってやったんだ。

「あやせ、俺がおまえに、車道側を歩かせるわけにはいかねえだろ。
 ……何たって、今日の俺はおまえのエスコート役なんだからよ」

今日一番のキメ台詞じゃねえかと、俺は思ったよ。
言った俺も恥ずかしかったけど、言われたあやせも恥ずかしかったみたいだけどな。
それでも、あやせは改めて左手を差し出してくれたんだ。

「……お兄さんって、よくそんな恥ずかしい台詞を真顔で言えますよね」
「ほっとけっ」

俺たちは手を繋ぐと、ゆっくりとした歩調で歩き始めた。
対向車のドライバー達が俺たちを見て、ニヤニヤしていたのが印象的だったけどな。
海から吹いてくる冷たい風が、火照った俺の顔に当たって心地良かったよ。
164 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/06(日) 21:04:03.24 ID:/8fklwxAo

あやせからドラマのあらましを聞きながら、その中で流れていたというサザンの曲
『希望の轍』――それは、俺が以前何度も聴いた曲だった。
俺は頭の中で、その曲の歌詞とメロディーを思い浮かべていた。

「ドラマの中で結希ちゃんが、『希望の轍』とはこの国道134号線の事を謳ったものだと、
 大江君に言うシーンがあるんです――聞いてますか、お兄さん?」

聖地巡礼中のあやせは、声を弾ませながらドラマの良かった所を俺に言って聞かせた。
だがなあやせ、そのドラマを見てねえ俺にとって、おまえの言ってる結希ちゃんや大江君が
出演者の名前なのか、それとも登場人物の名前なのか分かるわけねえだろっての。

「お兄さん、多分あの建物です。……ドラマで見たのと全く同じです」

あやせが目を輝かせながら指差した白亜色の建物は、江ノ電の線路のすぐ脇にあった。
それはあやせの言った通り学校らしく、海に面して教室の窓がいくつも並んでいる。
それにしても、高校生にとって教室の窓から外を見たら海ってのは、贅沢の極みかもしれん。
俺の通っている高校の窓から見える風景なんて、どこにでもある住宅街だもんな。
あやせは携帯を取り出すと、周囲の景色を何枚も写真に収めていた。
校庭では、ソフトボール部の女子生徒達が練習している様子が見える。

「勝手に校庭に入ったりしたら、やっぱりいけないですよね?」
「下手すりゃ不法侵入になるだろうし、やっぱ、まずいんじゃねえか?」

そりゃあ、あやせは可愛いから見逃してくれっかもしんねえけどさ、
そんな可愛い女子中学生を連れた俺なんか、一発で怪しまれるだろうが。

あやせは俺の顔をマジマジと見てから、深い溜息を吐いた。

「仕方がないですね。……じゃあ、次はあそこに見える駅まで行きます」

あやせが指差した駅というのは、ここから更に一キロほど先にあって、
国道と海に面した小さな駅だった。俺は軽い目眩を感じ、こめかみを抑えた。
165 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/06(日) 21:04:42.87 ID:/8fklwxAo

「あやせ、あの駅へ行くのは構わねえけどさぁ、その手前にも駅ってのはあんのか?」
「ええ、ここからは見えませんけど、この学校のすぐ近くに駅ならありますけど」
「じゃあさぁ、一区間だけでも電車に乗って行かねえか?」
「……わたし、お兄さんには江ノ島へ行くまでの道が大切って、言いませんでしたか?」

あやせは左手を差し出すと、首を傾げてニッコリと笑った。
俺のラブリーマイエンジェルが、ブラックエンジェルに変わったかと思ったよ。
それでもあやせの可愛さには抗えず、俺は彼女の手を取ってまた国道を歩き始めた。
しばらく歩いていると、テラス席のあるお洒落なレストランが見えてきたんで
時計を確認すると、昼飯には少し早かったんだが、あやせに聞いてみた。

「なあ、この辺りで昼飯にするってのはどうよ。昼になると込むだろうしさ」

俺が『珊瑚礁』と書かれた店の看板を見ながら言うと、あやせも気に入ったのか賛成してくれた。
階段を上がって店内に入ると、内装は控えめな南国風で、大きな窓からは海が一望できる。
テラス席もあるにはあるんだが、幾らなんでもこの冬の季節じゃな。
俺たちは運が良い事に、海の見える窓際の席に案内された。

「お兄さん、もしかして、前からこのお店知ってたんですか?」
「……何が?」

店内を見回しながら興奮気味に話すあやせに、俺はちょっと引き気味だったんだが、
俺の顔が蒼ざめるまでにそう大して時間は掛からなかった。

「わたしも雑誌やネットでしか見た事がなかったんですが……
 ここって、湘南では超有名なお店なんですよ。
 それに、海の見える窓際の席に座れるなんて、本当に幸運だと思います。
 前からこのお店に一度は来てみたいと思っていたんです。
 ……それが、お兄さんと一緒に来られるなんて思ってもみませんでした。
 このお店ってカレーがメインなんですが、シーフードもとても美味しいそうですよ」
166 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/06(日) 21:05:34.12 ID:/8fklwxAo

興奮冷めやらぬといった様子であやせは俺に話し掛けてくるんだが、
メニューの値段に眼が釘付けになっている俺にとって、はっきり言ってどうでもよかった。
でも、あやせの前でそんな素振りを見せられるわけねえだろ。
平静を装いながら、俺はあやせにメニューを指し示して……

「で、あやせは何にする? 今日は俺が奢ってやるから、好きなもん頼めよ」

あやせもそこで初めてメニューを見て、さっきまでのはしゃぎ振りが止まった。
きっとあやせの事だから、俺に遠慮しちまうに違いない。
こういう時は先手を打たなきゃな。

「なあ、あやせ、俺に遠慮なんかして恥を掻かせないでくれよ」

俺がそう言ったところで、あやせの性格からしたら遠慮するなと言う方が無理ってもんだ。
だからこの際、俺が強引にでもあやせの好きそうなメニューを頼む事にしたんだ。
あやせには地鶏のカレーとシーフードサラダを、俺は浜豚ロースカツのカレーを注文した。

「……すみません、お兄さん。……でも……」

先程とは打って変わって大人しくなっちまったあやせに、どう声を掛けたらいいもんかな……
ふとその時、桐乃に無理やり彼氏役をやらされ、デートに連れ回された時の事を思い出した。
俺はあやせと視線を合わさない様にして、海を見ながら呟いた。

「あやせ、こういう時、男ってさ……女の子が甘えてくれると嬉しいかもしんねえな」
「……分かりました。……じゃあ、今日はお兄さんに思いっきり甘えさせて頂きます。
 でも、覚悟して置いて下さいね」

俺たちが外の景色を眺めながらあれこれと話している内に、注文した料理が運ばれて来た。
たしかに値が張るだけあって、料理はどれも絶品だったよ。
お袋もよくカレーを作るけどさ、これと比べたら、ありゃなんじゃって言いたいね。
あやせの食べている地鶏のカレーも旨そうだったし、この店にして正解だったのかもな。

「お兄さん……お兄さんさえよければ、サラダは一緒に食べませんか?
 あと、お兄さんの方のカレーも一口下さい。代わりに、わたしのもあげますから」
167 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/06(日) 21:06:12.38 ID:/8fklwxAo

食事が終わって会計を済ませると、俺たちは店を後にした。

「お兄さん、ごちそうさまでした。本当に美味しかったです」
「そっか、またいつか一緒に来ような」

あやせは笑顔で頷くと、さり気なく俺の右腕に左腕を絡ませて来た。
俺がそんなあやせに戸惑って何か言おうとしたら、今度はあやせの方が先手を打ったんだ。

「今日は思いっきり甘えさせて頂きますって、わたし言いましたよねっ」

そこで俺が何か言ったら、無粋になっちまうだろ。
今日一日、俺はあやせのエスコート役なんだから、彼女のやりたい様にやらせてやるさ。
それにしても残念なのは、俺もあやせもダウンジャケットを着ていた事かな。
海岸線に沿って緩やかに湾曲している国道134号線――
あやせと腕を組んで歩きながら、俺は彼女と初めて出合った時の事を想い出していた。

『俺は高坂京介。――そっちは?』
『あ、ごめんなさい! 申し遅れました――わたし、新垣あやせです』

俺の妹の一番の親友でもある新垣あやせ。
あやせとの出会いは、平凡な人生が何よりと思っていたこの俺に、新鮮な旋風を巻き起こした。
桐乃のオタク趣味が発覚して、絶交状態になった桐乃とあやせを仲直りさせるために奔走したり、
友人の一人である来栖加奈子のマネージャーに扮して、コスプレ大会に潜り込んだりと――
その間には幾度となく、『変態!』と罵倒されたり、殴られたり蹴られたり……
それでも、今こうしてあやせと仲良く腕を組んで歩いている事を思えば、
知らぬ間に俺たち二人の距離が縮まっていたのかもしれねえな。

「お兄さん、何か可笑しな事でもあったんですか? 何だか笑っている様に見えますけど」
「……別に何でもねえって、ちょっと昔の事を想い出しただけさ」
168 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/06(日) 21:06:50.27 ID:/8fklwxAo

あやせはポケットから小さく折り畳まれた紙片を取り出すと、それを広げて辺りを見回した。
俺が横から覗き込むと、それは“巡礼マップ”ならぬ“ロケ地マップ”だった。
パソコンからプリントアウトしたらしく、地図の上にはいくつかの印が付けてある。

「なあ……その印のある所、全部廻るのか?」
「いいえ、今日のところは鎌倉と江ノ島周辺だけです」
「……だろうな、その地図だと印が茨城県にもあるもんな」

店を出てから小一時間歩いて、ようやく目指す駅に到着した。
国道と平行して建っている駅のホームと、目の前にある海を遮るものは何もない。
俺にとっては何の変哲もない駅だったけど、あやせはここでも何枚かの写真を携帯に収めていた。
ちょうどその時、江ノ島方面から電車がやって来ると、あやせは俺に携帯を渡して、
国道と線路を仕切るフェンスの前に立った。

「お兄さん、わたしと駅のホームと電車が上手く入る様に撮って下さい」

プロのカメラマンでもない俺に、何バカなこと言ってんの?
電車の速度がかなり遅かったから、何とかシャッターは押せたけどな。
俺はあやせに携帯を返しながら、真顔で聞いてやった。

「なあ、あやせって、鉄子だったっけ?」
「……何を訳の分からない事を仰ってるんですか」

訳が分からんのは、おまえの方だろっての。
眉間にしわを寄せながら不思議そうな顔をして、あやせは俺から携帯を受け取った。

「それよりもお兄さん、ここから江ノ島までは、まだ距離がありますけど……
 電車に乗ってもいいですよ」

俺は振り返り、稲村ヶ崎からあやせと一緒に歩いて来た道を見た。
今俺とあやせが立っている場所は、江ノ島までの道程の半分を少し過ぎた所だった。

「あやせさえ良けりゃ、俺はこのまま歩いて行ってもいいぜ」

あやせは満面の笑顔で頷くと、また俺と腕を組み、俺たちは歩き出した。
初めから歩いて行きたいと思ってたんなら、はっきりそう言えばいいのに……
遠慮して俺に判断を委ねるあやせが、無性に愛らしく思えた。
いや、あやせとこのまま歩いて行きたかったのは、むしろ俺の方かも――
それを素直に口に出して伝えられない自分が、情けなくてもどかしかった。
169 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/06(日) 21:07:22.99 ID:/8fklwxAo

江ノ島は国道134号線とは橋で繋がっていて、その橋を数百メートルも歩けば島内となる。
今は引き潮なのか、橋の下には砂地が見えて陸続きになっている様にも見えた。
島の左側にはヨットハーバーがあり、幾艘ものヨットやレジャーボートが係留されている。

「お兄さん、ヨットハーバーへ行ってみてもいいですか?」

俺たちは橋を渡るとそのまま左手に進み、江ノ島のヨットハーバーへと向かった。
港に帰って来た一艘の白いヨット、その真っ白なセイルが午後の日差しを受けて輝いた。
間近で見るヨットは想像以上に大きく、その容姿に圧倒される。
俺なんかじゃ一生掛かっても、この中にある一番小さなヤツですら持てねえけど。
それでも一度くらいはこういった船に乗って、大海原に出てみたいと思うよ。
自嘲気味に俺が溜息を吐くと、俺の顔を見ながらあやせが言った。

「お兄さんには、車で十分だと思いますよ。それにわたし、船は苦手なんで……車でいいです」
「俺には車で十分って、貶してんだか慰めてくれてんだか分かんねえけど……」
「一応慰めたつもりなんですが、お兄さんがヨットを買うなんて想像も出来ませんから」
「それじゃ、せいぜい車が買える様に努力するわ」
「お願いしますね。……じゃないと、何処にも連れて行ってもらえ――
 お兄さん、この先の防波堤まで行ってみませんか? ねっ、早く行きましょ」

あやせは俺の腕を引っ張る様にして歩き始めた。
そんなに急がなくたって、防波堤は逃げやしねえっての。
それにしても、何であやせの顔が赤いんだ? 何か聞き逃してねえか、俺。

「釣りをしている人が沢山いるんですね。何が釣れるんだろう」
「アジとかシロギスが釣れるらしい……いや、俺じゃなくて、以前親父が言ってたんだ」
「お兄さんのお父さんって、釣りをなさるんですか?」
「なさるってほど高尚なもんじゃねえけど、俺もガキの頃はたまに連れて来てもらったよ」

防波堤の先端まで行ったところで、何があるわけでもなくただ寒いだけだ。
それでもあやせにとっては楽しいらしく、ここから見える三浦半島をじっと見つめていた。
しばらくは俺の腕にしがみ付く様にしていたあやせが、少しずつ後退りしながら俺に言った。

「あの……やっぱり寒いので、戻ってもいいですか?」
「我慢してたんじゃねえのか? それを早く言えっての」
170 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/06(日) 21:08:03.40 ID:/8fklwxAo

江ノ島まで来た記念に何か買って帰りたいと言うあやせのために、
俺たちは江ノ島の中にある神社へと続く参道へと足を向けた。
参道はなだらかな坂道になっていて、途中急な所は階段を上る事になる。
道の両脇には、貝殻細工を中心とした土産物屋や飲食店がびっしりと軒を連ねていた。
あやせは店先に飾られた風鈴のような貝殻細工を手に取ると、軽く揺らしてその音色を確かめた。
金属が触れ合う様な乾いたその音は、まるで南部風鈴の様な趣のある音色だった。
その音色に満足したのか、あやせは店の奥にあるレジへと向かった。

「あやせ、そのくらいなら俺が買ってやるって」
「いえ、これはお母さんへのお土産にするつもりなので、わたしが買います」

店の奥で包装をしてもらい、レジ袋を手に提げて店を出て来たあやせは、
俺から視線を外したまま思わせ振りな事を言い始めた。

「お兄さんには、他に買って欲しい物があるんです」
「……俺に買って欲しい物って……?」
「ずっと先の事ですから……今すぐと言うわけではありません」
「……ずっと先って言うと……卒業祝とか、入学――」

俺が入学祝とか、と言い掛けると、あやせの顔から表情が消え……

「卒業祝じゃありませんし、入学祝でもありません。
 お兄さんはわたしに、何かのお祝い以外で物を買うって発想が無いんですか?
 ……それからお兄さん、ここ階段ですから……気を付けて下さいね」

あやせが俺に何を買って欲しいのか、はっきりとこの場で言って欲しかったんだけどさ、
階段の下へと転がり落ちて行く俺の映像が、脳裏を横切っちまって……

「まあ、あやせが欲しいって物なら、何だって買ってやるから、な」
「本当ですか? 約束ですからね。……お兄さん、忘れないで下さいね」
「俺が万が一にもあやせとの約束を破ったら、張り倒しても構わんからさ」
「いいえ……ぶち殺しますから、安心して下さい」

いつも通りのあやせの台詞が出て来たって事は、取りあえず機嫌を直してくれたって事だな。
あやせから『ぶち殺します』って言われて、ヘラヘラ笑っていられる俺って何なのって思うけど、
人前で『ぶち殺します』って平然と言えるあやせもどうかと思うけどね。
可愛かったら何言っても許されるのかっての。同じ台詞を麻奈――

「あやせ、上にある灯台へ行ってみるか?」
171 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/06(日) 21:08:46.09 ID:/8fklwxAo

江ノ島には展望台を兼ねた灯台がある。
歩いて行くにはかなりの距離なんだが、ここには『エスカー』と言って、
巨大なエスカレーターと呼ぶに相応しい乗り物があるから、それほど苦でもない。
俺が江ノ島へ来るのは二年振りだから、懐かしさもあったんだ。
高一の夏休みに、女の子目当てに赤城たちと何度かナンパしに来たんだけど……
まあ、結果は無残極まりなかったけどな。

「……今日はお兄さんと一緒だから、やめて置きます。……だって……」
「俺と一緒だと、何か都合でも悪いってか?」
「来る前にネットで調べたんですけど……灯台へ行くには、神社の前を通るじゃないですか。
 江島神社というそうですけど……それって、弁財天だから……」
「弁財天って事は、いわゆる弁天様って事だろ? それが俺と何か関係があんのか?」

いつもなら俺に対して、もっとはっきりと物を言うヤツなのに、
今日のあやせに限っては、先程の会話といい、何か奥歯に物が挟まった様な言い方をする。
気になるとはいえ、こんな事であやせの機嫌を損ねてもなんだし……
最後まで付き合って、彼女を無事に家まで送り届けるのが俺の役目だよな。

「お兄さんにはっきりと言えないのは、申し訳ないんですけど……
 弁天様って女の神様じゃないですか。……ネットにも嫉妬深いって書いてあったんで……」
「まあ、俺には神様の性格までは分からんけど、あやせが良いなら俺は構わんよ」
「本当にすみません。……お兄さんが鈍感で助かりました」
「誰が鈍感だっつーの。……それよりも、他に行きたい所があるんじゃねえの?」
「サザンの曲にも出て来る、えぼし岩を見てみたいんですが……いいですか?」

えぼし岩ってのは、茅ヶ崎の沖合いの姥島と呼ばれている岩礁にある岩の事だ。
釣り好きの親父から以前、えぼし岩ってのは、昔の公家や武士が被っていた烏帽子に
その形が似ているところから、その名が付いたって聞いた事がある。
要するに沖合いに顔を出している、どうと言う事もない小さな岩なんだよ。
親父が言うには絶好の漁場らしいけど、釣りに興味のない俺には関係のない話さ。
あやせが見たいって言うんだから、お供しない訳にはいかねえけど。

「えぼし岩ね。……江ノ島からじゃ、ちっと遠いかもしれねえけど、
 今渡ってきた橋の上か……それともなきゃ、砂浜へ降りれば良く見えると思うぜ」
「お兄さんって、妙に江ノ島に詳しくないですか? よく来るんですか?」
「そんな事もねえよ。……まあ、好きだからじゃねえか」
172 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/06(日) 21:09:29.92 ID:/8fklwxAo

あやせの希望もあって、俺たちは橋よりも茅ヶ崎寄りに広がる片瀬海岸の砂浜に行く事にした。
橋を渡りきって左手に進むと、そこから車道は二車線になり、歩道もぐっと広くなる。
国道に沿ってファミレスやリゾートマンションが立ち並び、湘南の雰囲気を醸し出している。
それにしても、赤城と来た時にも思ったんだけど、ファミレスの横にラブホは有り得ねえだろ。
事情があってやむを得ず桐乃と入ったラブホだって、もう少し控えめな所にあったってのに。
こんなに目立つラブホに、一体どんなヤツが入って行けるって言うんだよ。

「お兄さん、あれ……何の建物ですか?」
「ああ、あれはラブ…………らぶ、らぶほたる?」
「………………」

俺があやせのエスコートをするのも、正直これで終わったと思ったね。
あやせはと見れば、歩道の左側に立っている大きな建物を指差しながら言ってるじゃねえか。

「水族館……あやせ、あの建物は江ノ島水族館だよ」
「……水族館なんですね? ところでお兄さん、有り得ない妄想はやめて下さい。
 何が、らぶほたるなんですか。……わたし、桐乃から聞いて全部知っていますから」

あやせの口調はたしかに怒っているんだが、目元が微かに笑っている様にも見えた。
俺の失言にブチ切れてもおかしくない、この情況でだ。
やっぱり、今日のあやせは何か違うんだよな。

「それよりも、わたしを砂浜に案内してくれるんじゃないんですか?」
「あ、ああ、すまねえ。……砂浜はここを通れば行けっから」

俺が先に行こうとすると、あやせは俺の右腕にさり気なく自分の左腕を絡ませてきた。
本当にコイツはあやせなのかとも思ったんだけど、何もこの雰囲気を自らぶち壊す必要もないしな。
あやせが怒っていない事が分かっただけでも、それでいいじゃねえか。
173 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/06(日) 21:10:08.67 ID:/8fklwxAo

水族館の横にある公園を通り抜けると、もうそこは砂浜だ。
右手の沖合いには、えぼし岩がぽっかりと小さく浮かんでいる様にも見える。
あやせはしばらく陶然とした表情をしていたが、やがて笑顔になった。

「えぼし岩って、とっても小さくて可愛いですね」
「ああ、魚が良く釣れるらしいけどな」
「……何だか、その言い草だと……お兄さんはあまり興味が無い様に聞こえますけど。
 でも、今日のところは許してあげます。……それよりも、少し歩きませんか?」

冬の砂浜は人気も少なく、いたとしてもカップルか小さな子を連れた親子連れくらいだった。
あやせは俺に寄り添い、ゆっくりとした足取りで砂浜の感触を楽しんでいる様だった。
昨夜のあやせからの電話に始まって、鎌倉駅で待ち合わせ、稲村ヶ崎から江ノ島まで二人で歩き、
今こうして俺はあやせと湘南の浜辺を歩いている。
あやせにしてみれば、きっとここがゴールなんだろう。
俺としちゃもう少しあやせと一緒に歩いていたい気持ちもあるけど、贅沢は言えねえ。
あやせみたいなヤツが、俺なんかを誘ってくれただけでも感謝しねえとな。

「お兄さん……少しだけ、海を見ていてもいいですか?」
「……ああ、何なら座るか? 砂浜なら構わねえだろ。一応、ハンカチ敷いてやるから」

ダウンジャケットのポケットからハンカチを取り出し、砂浜の上に敷いてやると、
あやせは少し照れた様に頬を赤らめながらその上に座った。
俺だけ突っ立てるわけにもいかねえから、迷ったんだけどあやせの横に座らせてもらった。

「本当にお兄さんって優しいですよね。……でも、時々鈍感になってしまうのは何故なんですか?」
「面と向かってそう言われても、答えようがねえだろ。自分じゃ気付かねえんだから」
「……そうですよね。気付かないから、鈍感なんですものね」

一人納得した様に頷くけどさ、それって俺に対してあんまりじゃね?
おまえだって人に質問しといて、勝手に自分で答え出してさ、自己完結する癖があるじゃねえか。
それだってあまり褒められた事じゃねえだろっての。
あやせだから俺は何言われても許すけどさ……これが、麻奈――

「お兄さん、ほら、あの二人見て下さい」

穏やかな表情で俺に話し掛けるあやせの視線を辿ると、
そこには小学生くらいの兄弟が、波打ち際で砂山を造って遊んでいるのが見えた。
174 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/06(日) 21:10:59.84 ID:/8fklwxAo

兄の方は3、4年生といったところだが、弟の方はまだ学齢前かもしれない。
弟を見ていてもどかしく思ったのか、兄が手を貸そうとすると、その手を邪険に振り払う弟。
先程あやせに言われた事も忘れて、俺は何となく幼い日の桐乃を想い出していた。
当時の桐乃は人見知りが激しく、遊び相手と言ったら俺か麻奈実くらいのもんだった。
今の桐乃を見たら、とてもじゃねえが想像も出来ねえけど。

「兄弟がいるって……何かいいですね。……あの二人、本当は仲が良いんでしょうね」

俺と同じ様に二人の姿を微笑ましげに見ていたあやせが、ふと言葉を漏らした。
一人っ子のあやせの眼に、あの兄弟はどう映ってるんだろう。

「俺は妹じゃなくて、弟だったら良かったと思う時もあるけどな。
 煩わしいって思った事もあるし、親なんて息子より娘の方が可愛いんだろうけどさ、
 俺より桐乃ばっか可愛がりやがって、ムカツク時もあったよ」
「そんな事言うと、桐乃に言い付けちゃいますよ……
 わたしは一人っ子だからかもしれませんけど、やっぱり兄弟っていいなぁと思います」

桐乃が生まれた時の事は、今でも鮮明に憶えている。
ある日、親父にお袋の入院している病院へ連れて行かれて、
新生児室のガラス越しに見た得体の知れない生き物、それが桐乃だった。
親父から、あそこで眠っているのがおまえの妹だって言われても、三歳の俺に分かるわけがねえ。
お袋が桐乃と一緒に自宅に帰ってきて、初めて桐乃を抱かせてもらった時なんか、
手を離したら桐乃が死んじまうんじゃねえかと思って、怖くて泣きそうになっちまった。
俺の腕の中にすっぽりと納まって眠る桐乃は、その日から俺の宝物になった。

「小さい頃のわたしって、引込み思案で人見知りが激しかったんです。
 お母さんが心配して、劇団かモデル事務所にでも入れば友達が出来るんじゃないかって……」
「それであやせは、今の事務所に入ったんだ?」
「はい、中学生になってから今の事務所に入って、桐乃に出会ったんです。
 初めての仕事の時、緊張と不安で泣きそうになっていたわたしに……
 そんなわたしに、親切に声を掛けてくれたのが桐乃だったんです。
 二年生に進級するとクラスも一緒で、本当に幸運でした。
 ……桐乃は、わたしの一番の親友なんです」

あやせが桐乃を親友と呼び、大切にする気持ちが俺にも何となく分かる気がした。
桐乃が友達を大切にしている事は以前から知ってたけど、
あいつの口から親友という言葉を聞いたのは、あやせが初めてだった気がする。
もしかしたら、二人の間には、何か通じるものがあったのかもしれない。
175 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/06(日) 21:11:48.07 ID:/8fklwxAo

桐乃の兄貴として俺がいる様に、もしあやせにも兄貴がいたら……
きっとそいつは、文句を垂れながらも四六時中あやせの世話を焼いているに違いねえ。
だったら俺とは話が合うんじゃねえかと思うと、可笑しくてしょうがなかった。

「なあ、あやせ……今日は俺なんかと一緒で楽しかったのか?」

あやせは俺の問いには答えず、振り向いて笑顔を見せただけだった。
まあ、今の俺にとっては、それでも十分だと思ったよ。
再び海を見つめるあやせ。その長く美しい黒髪が風になびくと、白いうなじが露になった。
俺の眼が吸い寄せられそうになったのを、誰が非難出来るって言うんだよ。
そんな俺自身の欲望との戦いの真っ最中に、海を見つめたままあやせが俺に問い掛けた。

「お兄さんは……桐乃の事、どう思っていますか? ……好き、ですよね?
 もし……桐乃もお兄さんの事を好きだと言ったら、お兄さんはどうしますか?」

桐乃という名前を聞いた途端、俺の心の中で欲望が白旗揚げて退散して行く。
なぜあやせがここで桐乃の名前を出して来たのか、それは俺にも分からなかったけどな。
あやせが言う様に、俺は桐乃の事が多分好きなんだと思う。
だけど、あやせが思っている様な“好き”って意味じゃなくてな。
桐乃は俺の事をどう思っているか決して口じゃ言わねえけど、俺にだって分かるよ。
俺ですら分かるのに、桐乃の一番の親友のあやせに分からないわけはねえよな。

「あやせの言う様に、桐乃の事は嫌いじゃねえ。むしろ好きなんだと思う。
 俺は、あやせにだけは正直に話して置きたい。
 当然の事なんだけどさ、俺はあいつが生まれた時からずっと一緒にいるんだよな。
 妹が泣いた時、それを泣き止ませるのは、妹を持った兄貴の務めなんだと思う。
 あいつは怒るかもしんねえけど……」

あやせに、俺の言いたい事が伝わっただろうか。
以前にも増して、俺のシスコンが進行したと勘違いされても構わなかった。
たしかに桐乃は魅力的な女の子さ。何処に出しても恥ずかしくない自慢の――妹なんだよ。
桐乃の事を俺よりも大切にしてくれるヤツが現れて、桐乃が本当の恋を知るまでは、
俺はいつまでも妹の世話を焼く、シスコンの情けない兄貴でいてやりたい。

「俺はさ、桐乃からどんなに邪険にされようが、あいつの事が心配なんだよ。
 どうしようもなく心配で仕方がねえんだ。……何か笑っちまうだろ?
 長い間、お互い無視し合ってた時期もあんのに……俺は、あいつの兄貴なんだってな」
176 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/06(日) 21:12:31.08 ID:/8fklwxAo

海を見つめるあやせの横顔に、少しだけ憂いの陰が差していた。
俺が桐乃に対して持っている感情を、あやせには有りの儘に話したつもりだ。
しかし、一人っ子のあやせにとっては、少し残酷だったかもしれん。

「……桐乃が羨ましいです。……こんな素敵なお兄さんのいる桐乃が羨ましい」

感傷的になっちまったあやせに、俺は掛ける言葉が見付からない。

「あやせにとって俺は、シスコンで変態の鬼畜兄貴じゃなかったのか?」
「もうっ、わたしの事そんなに苛めないで下さい。――大ウソ吐きのお兄ーさんっ」

あやせは振り向くと顔を赤らめて、俺をちょっとだけ睨み付けてから言った。
思い出すのもおぞましい、出来る事なら削除してしまいたい俺の黒歴史の一ページだ。
でも、数日後あやせからもらったメールを見て……分かってはいたけどな。

「言うに事欠いて、大ウソ吐きはねえだろ。俺があやせにウソなんか吐いた事あるか?」
「お兄さんがそこまで言うなら、今日のところはそういう事にして置いてあげますね。
 ……でも……わたしにも、お兄さんみたいな人が側にいて欲しい……」
「今更あやせに兄貴ってのは無理でも、彼氏の一人や二人なら簡単に見つかるだろ?」

あやせほど可愛い女の子なら、言い寄って来るヤツは数え切れねえだろうし、
ましてや、春から高校生になる彼女にしてみれば、彼氏なんて選り取り見取りだろうが。
俺は思った事を正直に言ったつもりなのに、あやせは寂しそうな顔をして俯いちまった。

「わたしに彼氏なんて、出来るわけありませんよ。……よく知っているじゃないですか。
 性格はキツイし、思い込みは激しい……そんな子、誰も好きになんかなってくれませんよ。
 ……桐乃みたいに素直で優しい子なら、誰からも好かれるんでしょうけど」
「そんな事ねえって。あやせの事が好きだっていうヤツはきっといると思う。
 あやせがそれに、気付いてねえだけじゃねえかなぁ」
「お兄さんにそう言ってもらえると何だか……そうですよね。
 わたしの事を好きになってくれる人が、すぐ近くにいるかもしれませんよね」
177 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/06(日) 21:13:30.14 ID:/8fklwxAo

あやせほど友達思いで優しいヤツなんて、他にはそう易々と見付からないっての。
それに引き換え、桐乃は自分自身の気持ちに対して素直なヤツで、
自分の友達にだけは不思議と優しいヤツなんだよ。
俺なんか、今まで桐乃からどれだけ酷い仕打ちを受けて来たことか。

「あやせの彼氏になるヤツって、どんなヤツだろうな。すっげームカツクんだけど」
「……多分、鈍感な人だと思います。……でも、凄く優しくて……」

さっきまで落ち込んでいたあやせの横顔に少しだけ笑顔が戻った。
幼い兄弟が残していった波打ち際の砂山が、次第に打ち寄せる波に崩されてゆく。
夕陽が山の稜線へと傾き、見るものすべてを茜色に染めてゆく――
俺は立ち上がって、服に付いた砂を軽く払うとあやせに言った。

「なあ、あやせ、そろそろ帰るか」

時計を見るとまだ帰るには早かったんだけど、冬は暗くなるのも早いし、
あやせみたいに可愛い女子中学生をいつまでも連れ回していたら、別の意味で問題だろ。
妹の桐乃と同じくあやせにも門限があるだろうし、そろそろ帰るつもりだと思ってたんだ。
しかし、あやせは膝を抱えたまま身動ぎもせず、海を見つめたまま小さな声で呟いた。

「お兄さん……今日は、お父さんもお母さんも出掛けていて……
 明日までは帰って来ません」

俺は自分の耳を疑った。聞き間違いじゃねえかと思ったからさ。
余程のバカか単なる勘違い野郎でもない限り、今まさにあやせから誘惑されてると、
そう思ってもいいんだよな。
もしかしてこの真冬の湘南の海で、俺はあやせと大人への階段を上っちまうってか?
親愛なる赤城よ……すまん! 俺はおまえより一歩先へ行くぜ!
高校を卒業する前に、こっちの方を先に卒業させてもらうわ!
あとはこの俺が、ひと言二言優しい台詞をあやせに掛けてやれば確定じゃねえか。
それなのに、俺の口を吐いて出た台詞は予想以上に陳腐なものだった。

「なあ、今あやせが言ったこと……俺は冗談だと思って、聞かなかった事にすっから、な。
 あやせはまだ、中学生――いや、そう言うわけじゃなくてさ……」

あやせの事を好きだと想う純粋な気持ちが、俺のくだらない妄想を焼き払っちまった。
俺のそんな想いを知ってか知らずか、畳み掛けるように俺を責めるあやせ。
178 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/06(日) 21:14:07.72 ID:/8fklwxAo

「シスコンで変態のお兄さんの台詞とは、とても思えませんよね」
「俺の言い方が気に障ったのかもしれねえけど……」
「お兄さんは、女の子に……わたしに、恥を掻かせるおつもりですか?」
「申し訳ない。……俺があやせに恥を掻かせたって言うなら、素直に謝るよ」

俺はあやせに頭を下げた。でも、俺は自分の正直な気持ちに従ったつもりだった。
あやせの様な可愛い女の子から誘われてんのに、それを断る男なんてバカかもしれん。
だけど、こんなにも純真なあやせを、俺は一時の欲望で傷付けたくなかったんだ。
あやせは唇を噛み締めしばらく逡巡していたが、やがてその重い口を開いた。

「……お兄さんの仰る事は良く分かりました。……わたしも、どうかしてたみたいです。
 軽率な事を言って……すみません…………忘れて下さい」

あやせは抱えていた膝を更に引き寄せると、顔を埋めた。
表情を窺い知る事は出来なかったけど、小刻みに肩が震えているのが分かった。
声を出さない様にして、泣いていたんだ。

俺はあやせに声を掛けるべきかどうか迷った。
そういえば今日のあやせって、何となく朝から様子がおかしかったじゃねえか。
いや、あやせがおかしいのはいつもの事だけど、今日は特別におかしいというか。
普段のあやせなら自分から俺と手を繋いだり、腕を組んだりするわけがねえ。
ましてや、冗談でも俺を誘惑する様な台詞を吐くヤツじゃない。
俺は今朝から疑問に思っていた事を、思い切ってあやせに聞いた。

「なあ、あやせ、今日俺を鎌倉に誘ったのは何でだ?」

あやせは膝を抱え顔を埋めたまま、モゴモゴと呟く様に話し始めた。

「それは、朝、喫茶店でお兄さんに説明したじゃないですか」
「そうじゃなくてさ、何で俺を誘ってくれたんだ?」
「……お兄さんは、わたしとじゃ不満なんですか?」
「いや、俺はあやせに誘ってもらって嬉しかったよ」

俺の聞きたかった事と、あやせの答えに微妙なズレがあるんだが、
これじゃ泣いているあやせを詰問している様で、どうにも居心地が悪かった。
こうなったら、あやせが泣き止んでくれるまで待つしかねえかもな。
空はすっかり夕闇に包まれ、星が一つ二つと煌き始めていた。
179 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/06(日) 21:14:54.99 ID:/8fklwxAo

「御免なさい。……わたし、今日は素直になろうって決めてたのに」

あやせは顔を上げると、ハンカチを取り出し、涙に濡れた目をそっと拭った。
俺はあやせの口が再び開かれるのを、ただじっと待った。――波音だけが俺の耳に響く。
長い沈黙の後、静かに、そして淡々とあやせの口から言葉が漏れてきた。

「今朝も言いましたけど、鎌倉へ来たのは……
 ドラマの舞台になった場所を、実際に見てみたかったからです。
 ……それから、お兄さんを誘ったのは…………お兄さんと一緒にいたかったから。
 お兄さんと一緒に鎌倉の街や、湘南海岸を恋人同士みたく歩いてみたかったんです。
 ……お兄さんは、わたしとなんかじゃ、ご迷惑だったかもしれませんけど……」

あやせはそこで言葉を切ると、再び膝を抱え顔を埋めた。
俺は自分の愚かさを呪うしかなかった。
あやせが俺に好意を寄せてくれていたなんて、夢にも思わなかったし、
時折見せてくれる優しさは、あやせの持って生まれた性格なんだと。
酷い扱いを受けた事もある。殴られたり蹴られたり、手錠を掛けられた事も……
そういや、防犯ブザーを鳴らされた事もあったっけ。
しかしそれだって、今思えばあやせなりの照れ隠しだったのかもしれない。
本当に死ぬんじゃねえかと、本気で思った時もあるけどな。
俺はあやせに、素直に詫びる事にした。

「あやせから誘ってもらえて俺が迷惑なんて、そんな事あるわけねえじゃねえか。
 それから、おまえを泣かせちまった事は謝る。……その代わと言っちゃ何だけどさ、
 俺が出来る事なら何でもしてやっから……それで勘弁してくれねえか?」

あやせは膝に顔を埋めたまま、再びモゴモゴと話し始めた。

「本当に……本当に何でもしてくれるんですか?」
「俺はおまえにウソは吐かないよ。――ただし、死ねってのはナシだ」

一応念を押しとかねえと、あやせなら『目の前の海に飛び込め』とか言いかねないからな。
いつだったか、桐乃の携帯小説の取材に無理やり駆り出された時なんか、
アイツは渋谷のスクランブル交差点で、いきなりダンプに轢かれてみてくれって言いやがったし。
最近の女子中学生の思考は、俺にはとてもじゃねえけど理解できんよ。
180 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/06(日) 21:15:39.89 ID:/8fklwxAo

「何でもしてくれると言うのなら、わたしの誕生日にキスしてくれますか?」
「……はぁ? あやせ、今なんつった?」

あやせはスカートに口を押し付ける様にしてモゴモゴ喋るもんだから、
何て言ったんだか、よく聞き取れなかった。
たしか、誕生日がどうとかまでは聞こえたんだが……

「あやせ、よく聞き取れなかったんで、もう一度言ってくれるか?」
「……わたしの誕生日に、キスして下さい!」

ドサクサに紛れてとんでもねえ事を言いいやがる。
たしかに何でもしてやるって、先に言っちまったのはこの俺だ。
今更やっぱりウソでしたってわけにも――そういや、あやせの誕生日って?

「なあ、あやせの誕生日っていつだっけ?」

あやせは顔を上げると、俺の眼を真っ直ぐに見据えて言ったんだ。

「わたし、今日で十五歳になりました」

あやせの様子が朝からおかしかったのが、やっと分かった。
俺の事をからかってるんじゃないってのは、あやせの真剣な眼差しを見れば分かったよ。
十五歳になったばかりの女の子が、精一杯の勇気を振り絞って俺に言ってくれたんだと。
だったら、俺には精一杯の誠意を持ってそれに応える義務があるはずだ。

「……今日があやせの誕生日だって、俺知らなくて……御免な。
 何のプレゼントも用意してねえし……本当に申し訳ない」
「いいえ、気にしないで下さい。わたしも、お兄さんに教えてませんでしたから」

俺たちの間に気まずい雰囲気が漂い始めている事を、俺は十分認識していた。

「あやせ、俺はおまえに聞いて欲しい事がある」
181 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/06(日) 21:16:32.83 ID:/8fklwxAo

あやせにしてみれば、このまま俺がキスすると思うよな。
彼女の方からキスしてもいいですよって、言ってる様なもんだから。
俺の見当違いにも聞こえる台詞に、あやせは動揺したのか赤面して俯いてしまった。
そして、消え入りそうなくらい小さな声で呟いた。

「……な、何でしょうか……聞いて欲しい事って」

俺は大きく深呼吸してから、俯いたままのあやせに俺自身の想いを告げた。

「あやせが俺の事をどう想っているのかは聞かない。
 だけどな、俺があやせの事をどう想っているかだけは聞いて欲しい。
 俺は、あやせが好きだ。……初めてあやせと出会った時から、ずっと好きだった。
 だから……もし、あやせさえよければ、俺と付き合って欲しい」

俺の正直な想いをあやせに伝えて、それで振られるなら仕方がねえし諦めも付くってもんだろ。
とは言っても、今日一日あやせと一緒にいて、あやせが俺の事をどう想ってくれているのか、
十分過ぎるほど知ってから告白するなんて、男として情けねえけどな。
告白して振られるだけならまだしも、これまでの俺とあやせの関係まで壊れちまう様で……
そうなる事が無性に怖かったのかもしれねえ。
想いを告げた今だって、あやせからはっきりとした返事をもらうまでは、俺は不安で仕方がなかった。

「……ずるいですよ、そんなの。
 お兄さんはどうしようもないほどの鈍感で、もし今日気付いてもらえなかったら、
 わたし……諦めるつもりだったんです。
 それなのに、お兄さんからそう言われたら……わたしは、ハイとしか言えないじゃないですか」

ようやく顔を上げてくれたあやせの瞳は、涙で潤んでいた。
今日この海岸へ来てから、俺は何度あやせを泣かせたんだろうと思うと、胸が痛んだ。
俺は鈍感で、そんな俺の事を好きでいてくれたあやせの気持ちにも気付かずに……
あやせが理由も言わずに鎌倉まで俺を呼び出した事も、海岸線の道を手を繋ぎながら歩いた事も、
十五歳の誕生日の今日、俺と一緒にいたかったと言ってくれたあの言葉のどれを取っても、
この瞬間のためにあったんだと――俺は、今更ながら気付いたんだ。

「じゃあ……俺と付き合ってもいいって言うのか?」

あやせは涙を拭い、恥ずかしそうに小さく頷くと、無邪気な笑顔で俺に右手を差し出した。
182 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/06(日) 21:17:12.41 ID:/8fklwxAo

翌朝――

遮光カーテンの隙間から月明かりが射し込んでいる事に気付いて、俺は目が覚めた。
隣りではあやせが静かな寝息を立てて眠っている。
彼女を起こさない様に、俺はそっとベッドから這い出した。

窓のカーテンを少しだけずらして外を見ると、
江ノ島の灯台の灯りは、相も変わらず暗闇の海を照らし続けている。

「……お兄さん……どうかしたんですか?」

振り返ると、眠たげな眼を擦りながら、あやせが不安そうな声で俺に聞いた。
部屋が暗いせいもあって、俺は優しく囁く様にあやせに言った。

「すまねえ……起こしちまったかな。なんも心配ねえから、もう少し寝てな」

あやせは俺の言葉に小さく頷くと、言葉を続けた。

「……お兄さん、本当によかったんですか?」

俺が無言で頷きながらあやせに笑い掛けると、彼女も恥ずかしそうに笑った。
そして、あやせは掛け布団を両手で引っ張って口元まで隠すと、
悪戯っ子の様な目をして俺に言ったんだ。

「お兄さん……大好きです」

あやせ、その仕草は反則だろ! 俺はそう思ったんだが、口に出しては言えなかった。
母の胸に抱かれて、安心して眠る子供の様な笑顔を見せてから、あやせは再び瞼を閉じた。
この笑顔が見られるなら、俺はもうしばらく大ウソ吐きのお兄さんのままでいてやる。
心の中でそう思っている自分が、無性に可笑しくて仕方がなかった。



(完)
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 21:20:11.29 ID:cLkMgwEro
うお、どっかでオチとか付かずに普通に結ばれた。おめ
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 21:38:49.51 ID:Q8osARKI0
GJ!

あやせ可愛いすぎ!
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 21:59:26.44 ID:Ee5O7yE10
よくやった!ありがとん!
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 22:02:15.14 ID:8LezWXQQo

ひさびさに直球的なラブストーリーだったな
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 22:09:36.18 ID:JlcNuGWG0
乙です
ストレート万歳!
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 22:11:38.65 ID:uUZ/lT8jo
ちくしょうキュンキュンした
乙!
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 22:33:12.35 ID:GHyQFd480
乙乙!
またこのスレに名作が誕生したな
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/06(日) 22:51:05.56 ID:JcIqCu1V0

こういのが見たかった。
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/06(日) 22:53:21.71 ID:Xn7wyyvk0
乙!

可愛い……あやせマジ天使
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/06(日) 22:54:06.03 ID:Xn7wyyvk0
乙!

可愛い……あやせマジ天使
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/06(日) 22:54:41.59 ID:Xn7wyyvk0
乙!
可愛い……あやせマジ天使
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 23:03:45.53 ID:b9WKO/v6o
>>191-193
落ち着け
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/06(日) 23:14:01.19 ID:Xn7wyyvk0
すまない、つい興奮してしまった(投稿に失敗したのを誤魔化そうとしている)
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 23:16:23.95 ID:Q2rfeQZqo
ttp://ruru2.net/jlab-ruru/s/ruru1299384173957.jpg

ワロタ
ギラヴァンツ北九州というJ2チームのゲーフラ
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 23:16:30.35 ID:APRj4Ryc0
>>195
大事な事だから3回言ったんだろ?わかるぜその気持ち
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 23:21:28.90 ID:VHG/TFyQ0
>>この笑顔が見られるなら、俺はもうしばらく大ウソ吐きのお兄さんのままでいてやる。

この文章が妙に気になるのは俺だけ?
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 23:25:32.87 ID:a3yDnN2Ao
>>198
あやせの前では変態シスコン兄さんを演じるってことじゃね

つってもあやせの前だと京介は理性がぶっ飛ぶからどうなるかわからんけど
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 23:44:01.18 ID:SucvjaU6o
乙だぜい!

この胸の奥底から湧き上がってくる感情は何だ!!
次も期待してます。
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 23:47:25.33 ID:/KhbzWgyo
ここは平和でいいなぁ。癒される
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 23:50:20.04 ID:F46r1ztD0
最近桐乃以外のカップリングのssを見るたびに桐乃の精神状態が心配になるよ
203 :あるクンカの末路 [sage]:2011/03/07(月) 00:07:06.30 ID:pZ5sSE8Fo
中3ぐらいにパンツに目覚めて、兄貴のでこいてたらそっこーで兄バレ。

「よその家の盗んだりしてないだろうな!?」って散々といつめられ、

それはない!って断固抗議した(他人のとか想像するだけでマジキモイんですけど)

結局兄貴のは自由にしていいから、よそのは盗むなってことにされた。

兄貴は泣きまくって渋々了解させられたようだ。

それからというもの、度々部屋を強制捜査されるは、兄貴には口きいてもらえなくなるわで肩身せまかった。

兄貴はフロあがると、私の部屋の入り口から向こう側の壁に届くくらいの勢いでパンツぶんなげて

入り口をバーンって閉めていってた。

今思うと一番かわいそうなのは兄貴だったな。ごめんねこんな妹で。

でも、今当時をふりかえると天国だったんだけど、そのときもやっぱり毎日天国だったよ。

”桐乃に彼氏ができるまでね”という契約?が母とかわされたようなので、

パンツ投げ込みながら「桐乃、いつ彼氏できんだよ!」とか罵られたり・・・ これは結構効いたな。

「しかたないでしょ!(受験で)忙しいんだから!」とか虚しく答えながら、パンツを拾うワタシww

#初出は2004年頃
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/07(月) 01:16:30.17 ID:cLwbXn5L0
これはこれで終わりなのか?
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 01:24:57.37 ID:9RuWo8xKo
親公認のクンカとか…
でも京介→桐乃の蔑みってのは悪くないッ
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/07(月) 01:32:56.68 ID:cLwbXn5L0
やっぱり終わりだったのか、まだ続きがあったらどうしようかと思った
でも乙、俺的にはこういうのも良い
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 02:09:57.63 ID:Th/5ByBy0
これはコピペの改変だよ
いつ見ても短くまとまってていい
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 06:26:43.46 ID:NEzNKavWo
確か姉と弟の話だったよな。
初めて目にした時は色んな意味で泣けた。
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 07:30:01.06 ID:osVbKbLDO
>>182
この気持ち、まさしく乙だ!
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 08:35:27.88 ID:ztvwS7Y5o

男ならこく、とかいうけど女ってマスベってなんて言うの
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 08:51:43.63 ID:3a2sUEdDO
あやせの海岸物語読んだ
もう最ッ高に可愛いね
鎌倉に舞い降りた天使だ
クライマックスは感動したわ
良作読めて幸せ
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 09:06:01.87 ID:BZb1tFFNo
そろそろ黒猫SSが来る予感
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 10:00:00.51 ID:pZ5sSE8Fo
中猫ちゃんといっしょのお布団でスンスンしたいよおおおおおお
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 10:01:16.19 ID:dDa02ozjo
誰かブリジット√を……
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 10:41:41.21 ID:cGwrgu7Uo
>>154
GJ!面白かったです。
ただひとつ気になることがあって、あやせが案内役をするって言ってるのに京介がエスコート役っておかしくないですか?
間違ってたらスルーしてください。

216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 10:56:53.45 ID:59fb7ELGo
エロパロスレといい最近は地元観光案内みたいなSSが流行っているのか?
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 11:31:00.88 ID:PODDLiJY0
後輩と沖縄・大阪・高知と旅したやつか?
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 12:33:53.70 ID:+SdXdzBi0
>>212
そういわれれば黒猫SS減ったね
ずいぶん見てない気がする

きっと誰かが…(チラッチラッ
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 12:42:22.42 ID:HacnImuAO
もはや桐乃あやせの二択だ
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 12:48:53.90 ID:/YMBZqRDO
お前の中ではな
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 12:56:19.92 ID:3pS79yNAO
京介が京都にいて、あやせが来るSS思い出した
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 13:25:41.03 ID:hqeg3ehKo
なぜか突然ヤンデレ京介という単語が頭に浮かんだ
きっと誰かが書いてくれるとの天啓に違いない
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/07(月) 13:33:22.30 ID:pZ5sSE8Fo
>>222
俺妹はリアル

千葉千葉市内の自宅で、中学2年の妹(14)を刺したとして、千葉署は24日、
高校生の少年(17)を殺人未遂容疑で現行犯逮捕した。

少年は「(妹に)ばかにされたのでやった」と話しているという。

発表によると、少年は同日午後3時25分頃、自宅で妹を包丁のような刃物で刺した疑い。

少年は、妹を刺した後、母親に電話で連絡。母親からの連絡を受けた近くに住む祖母が119番し、
駆けつけた同署員が洗面所で倒れている妹を発見、少年が「私がやりました」と認めたため、
現行犯逮捕した。妹はその場で死亡が確認された。同署は容疑を殺人に切り替えて調べている。

同署によると、少年は最近、アダルトゲームや幼児向けアニメに夢中になりこの妹と争いになることが多かったという。

両親と妹の4人家族で、犯行当時は妹と2人だけだったという。

父親は警察官で関係者は大きなショックを受けている。

(2010年11月24日21時07分 読売新聞)
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 13:41:14.71 ID:KojcYxqAO
ヤンデレ要素が欠片もねえ
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 13:58:20.91 ID:HacnImuAO
リアルすぎる…
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/07(月) 14:32:18.26 ID:cLwbXn5L0

何も聞かずに勝手に投下、桐乃ssである(オリキャラ注意)



       私の兄貴がストーカーをされるわけがない 前編




「桐乃!!頼む!!今日一日俺の彼女になってくれ!!」

………何でこんな事になったの?
これを説明しようと思ったら何日か前に遡らなければならない。

そう、それは数日前の事……




       ・・・・




その日、私は珍しく兄貴に話しかけた、何故かと言うと兄貴の様子が学校から帰ってきた頃から何やらおかしいのだ
帰ってきたと思ったらカバンを部屋に置きもせずにリビングに行きソファーに沈んだし
晩御飯の時も外の様子をむちゃくちゃ気にしてちょっと物音がしただけでビクッと私にしがみ付いてきたし
ま、まぁ?、別にシスコンなんだから仕方が無くちょっと……、うん、ちょっとだけならしがみ付いてもいいんだけど……
って、今はこんな話じゃなかった

……もう、とにかく挙動不審なのだ
だから仕方なく晩に私がわざわざ兄貴の部屋に行って理由を聞いた、そしたら兄貴は私にこう言ったのだ
「俺……実はストーカーに付き纏われているみたいなんだ」
「はぁ、何言ってんの?兄貴、まずは洗面所に行って鏡を見てきたほうが良いんじゃない?」
私は思わず条件反射でそう言ってしまった
するとどうだろう、兄貴はなにやら押し入れから太いロープを取り出して天井に吊り下げ始めたじゃないか、そしてそこから何やらロープの端っこをワッカにして首を…………ってそうじゃなーーーーい!!!!
「兄貴!!、嘘、今さっきの嘘だから!!、だから自殺なんかしないで!!」
私がそう言うとこちらを捨てられた犬の様な目で見てきた
「………本当?」
うぐ……辞めて…その目を……辞めてーーー!!
私は罪悪感で潰れそうになったがなんとか耐えて兄貴に今さっきの続きを促した

兄貴の話だとなにやら数日前に兄貴が告白されたらしい、それから何やら視線を感じるようになって、最近になったら影まで見えるようになったらしい
それで最近は何やら様子がおかしかったのか…。
しょうがない……協力してやるか。
私はそう思うと兄貴に暫く護衛してやると言ったのだった
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/07(月) 14:33:23.80 ID:cLwbXn5L0
        翌日



「はい、皆、今から授業を始めます」
先生はそう言うと教科書を取り出して読み始めた
私は前にいる兄貴をちょっとつついてこちらを向かせた
「ねぇ、兄貴?、どう?視線感じる?」

兄貴はそんな私を見てため息をついた、そしてこう言った
「なぁ、なんでお前がここにいんの?、学校は?」
あっきれた、このバカ兄貴はもうそんな事も忘れたのだろうか
私も負けずにため息をつき返すと、言ってやった
「何言ってんの?、兄貴を護衛するために決まってんじゃん!、それとももう昨日の事忘れたの?」
「うん……確かにそれは物凄い有難いよ?、だけど………だけどね?、もう一回言うけどね?………あんでお前が学校にいんだよ!!??第一なんで誰も注意しねぇんだ!?おかしいだろ!!!」

え?、何がおかしいの?
そんな目で周りが兄貴を見る
「え、何この雰囲気、悪いの俺?、俺が悪いの?」
その後、兄貴はずっと悩んでいたが無視する事に決定した
……ったく!、あんたはシスコンなんだから私が傍に居ることを喜んでればいいのよ!!
私は心の中でそう愚痴った後、窓の外をボンヤリと眺めながら欠伸をしたのだった

その後はこれといって何も無く、ただ私は意味の分からない授業(さすがの私も高校生の授業は分からない)を聞きながら欠伸を噛み[ピーーー]作業に没頭していたのだった
そして今は昼休み、兄貴と一緒に立ち入り禁止の屋上で昼食を食べている所だ

「あのさぁ、桐乃?、なんでこんな所で食べる必要があるんだ?」
そんなごもっともな質問を兄貴は私が食べている横で口にした

え?、なんでそんな所で食べてるのって?、べ、別に何でもいいじゃない!
そんな言葉が思わず出るところだったがなんとか我慢して兄貴の方を見る
そして私が言った言葉はたった一言
「なんで?」

そんな私を見て兄貴はため息をついた
「……あのなぁ……桐乃?、俺がこんな立ち入り禁止の屋上で昼飯を食べて、先生に見つかったらどうなると思う?」

「……、退学?」
「んなわけねぇだろ!?、停学だよ!!て・い・が・く!!」
その後も兄貴は何かぐちぐちと言っていたがはっきり言って私は何も聞いていなかった
屋上で食べたい訳?、そんなの簡単じゃない!、私が憧れてたからよ!!か、彼氏と一緒に屋上で一緒のお弁当を食べるのが!!

ま、そんな事を私が言うはずも無く、ただ刻々と時間は過ぎ昼休みは終わった
兄貴は食べ終わってもなにか言っていたが、絶対に私を途中でほっぽりだしてどっか行かなかったのは兄貴らしい……かな?



はぁ〜、それにしてもやる事がない一日だった
あの後あった事といえば兄貴の友達の赤城っていう人がいきなり来て今度一緒に秋葉にホモゲーを買いに行かないかと言ってきた(叫んだ?)事ぐらいだろうか
まぁ、それ以外は何も無く今無事に下駄箱の前に来ている

だが、こういう時に限って問題は起こるらしい、簡単に言うと油断大敵って事だ
だって今現に兄貴は自分の下駄箱を開けた体制で固まっているのだから
それから何秒か経つと兄貴はまさにギギギ……という効果音がつきそうな動作で私の方を見て、こう言った

「き、き、桐乃……、なんか、手紙入ってたんだけど」
そう言って兄貴は泣いているような笑っているような、微妙な顔で私を見たのだった
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/07(月) 14:37:12.35 ID:cLwbXn5L0
       兄貴がストーカーをされるわけがない    中編





前回までのいきさつ。
私がなにがあったのかと訪ねると兄貴がストーカーにあっていると騒ぎだしました、そして最後にそのストーカーから手紙をもらいました。あれ?、作文?

………え?、なんでこんなにアバウトなのかって?それとなんで銀○が混ざってるのかって?
それは簡単、私、高坂桐乃が今無償に現実逃避をしたいからです
だって、考えてもみなさいよ?、冗談か勘違いだと思っていた兄貴のストーカー騒ぎが今現実になって私の前に現れてみなさい?、そりゃ現実逃避でもしたくなるっつーの

そんな風に私が軽い現実逃避をしていると
兄貴がソファーに隠れながらもう一度話しかけてきた

「桐乃……、どう?、なんて書いてる?」

そう、今私達は無事に家に着き、この手紙を机に放置している

……、それにしても、さすがに情けなく無い?、今も兄貴はソファに隠れてビクビクと怯えている
こんな調子だと、私が手紙を開いてとんでもない内容だったらどうなるのだろう、………失神?
まぁ、そんな兄貴を見ながら哀れみの視線とため息をついて、私は目の前にあるどっかの物好きが書いた手紙に向き直った

改めて見てみると………、太い、どんだけ書いたんだと突っ込みたくなるほど太い
なにこれ………札束?、お経?、なにかの本?
そんなわけないけどそう思いたくなるほどその手紙は太かった
こんな手紙を見るとさすがの私も怖くなる、ていうかこんなの貰って怖がらない奴は神経が鉛かなにかで出来ているのだろう

私は恐る恐る手紙に手を伸ばした、そして神経を張り詰めながら慎重に手紙の封を切った
中身は思ったとおり何十枚もの手紙(ラブレター?)が入っていた

最初の一枚に手を伸ばす
そして私は冷や汗を掻きながら読み始めたのだった



  
『  突然ごめんね、この前告白した、千早だよ(ハート)
最初はまず私がどれだけ京介君の事を好きか書くね、私の日記だよ(ハート)


○月○日

今日、京介君はちょっと遅刻してきた、私も一緒に遅刻しちゃったけどそれのおかげで京介君が「お仲間だな」、と言って笑ってくれたのでとても嬉しかったです(ハート)
その後、私は席に着いて授業を受けました、京介君は何分か経つと寝ちゃって涎を垂らしてました、とても可愛かったです(><)

三時間目では先生に京介君があてられました
なにやら最初は悩んでましたが近くに居た麻奈実さんがちょっと教科書で教えて答えてました

う〜〜〜ん、麻奈実さんずるいです!』






そこで私は顔を上げた、なにやら無償に気に食わない
あのバカ兄貴が学校でも地味子なんかといちゃついてるからだろうか………、いや、違う、バカ兄貴が学校でいちゃついてると私が来年高校に行った時に「おい、あのバカップルの妹がきたぜ〜」とか言ってバカにされる可能性があるからに違いない!!
私はそう思うと兄貴をジト目で見てこう言ったのだった
「あんた、学校で地味子とイチャつくの辞めてよね!」
「…………?」

その後兄貴は意味が分からなかったのか、終始キョトンとしていたが私は無視すると続きを見だしたのだった
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/07(月) 14:39:06.15 ID:cLwbXn5L0
『  ごめんね、これ以上は恥ずかしいから見せれないや………、だって………恥ずかしいんだもんっ。でも安心してね、私はストーカーじゃないから、だから私は京介君の家の事は調べてないからね!

それじゃ、私が京介君をどれだけ好きか分かってもらえた所で本題に入るね、今回この手紙を出したのは最近ちょっと気になる事があるからなんだ
その気になる事ってのはね、最近でてきたなんか、その、なんか、その……、いつも一緒に居る女の子なんだけど…、どういう関係なのかな〜なんて





い、いや、べつにね!?、その、そんなに答えたくないんだったら答えなくていいんだよ!?

で、でも……、そ、その、私みたいな告白した側としては……、知っておきたいな〜、な、なんてね
い、いやー、それにしても、今日はいい天気ですねー、なんかこういう天気の時はなんかちょっと出かけたくなっちゃったりならなかったりしちゃいますよね〜

あ、今クッキーが丁度焼けたみたいです〜』



ここで私は手紙を紙ふぶきにして窓から外に放り投げた

……なにこの手紙!!、なにこのグダグダ感!!、はっきり言って突っ込みを我慢するので精一杯だったわよ!!!
最後まで読んでないけど、なんかあのまま読んでたら最終的には得意な料理のレシピとかになりそうな雰囲気だった…、それとなんで最初の恥ずかしいって二回書いたんだろう?
はっきり言って、家の事を調べてないっていうのも全然信用できない

…………………………………………どうしよ?
さすがに私がずっと護衛をするわけにはいかないしなぁ、本当にどうしよ?


そんな風に私が悩んでると、今さっき私が放り投げた紙くずの一部の二枚が兄貴の前に花びらの如く舞い降りた
それに何が書いてあったんだろうか、見た瞬間、ワナワナと震えだし、そしてついに何かが切れたのだろう、兄貴は私に向かってダッシュしてきて肩を掴みこう言った

『桐乃!!頼む!!今日一日俺の彼女になってくれ!!』






   ・・・・








そう、こんな感じで今に至る

はぁ………
私はため息をつくと一先ず兄貴の手をどけようと………、手?

な、なんか今更だけど今私って凄い状況なんじゃないだろうか、肩にかかった兄貴の手、呼吸の荒さ、血走った目

そんな事を考えると私は自分の心臓の鼓動が早くなっていくのを感じた、頬も熱い

「あ……に、きぃ」

そんないろっぽい声が私の口から漏れた
ちょ、なに言っちゃってんの!?私!!

「き、桐乃、いいか?」

兄貴がそんな事を聞く
私が兄貴の方を向くと、兄貴は私の顔を覗き込んでいた

あ…、すごく真剣な目…

「う、うん、い、よ」

私はとうとう頭もボンヤリしてきて息荒く兄貴に返事をしたのだった

はっきり言って、その後はなにも覚えていない
ちょっと覚えていると言えばソファーにあった二枚の紙くずに書かれた『今日』 『見極める』というメッセージと

強いて言えば、……兄貴がスッゴく喜んでいた顔ぐらいだろうか
ま、とにかく私は兄貴に手を引かれて、私から誘ったのではない、初めて兄貴に誘われたデートに出かけたのだった
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/07(月) 14:41:05.73 ID:cLwbXn5L0
私の兄貴がストーカーをされるわけがない 後編









「きょ〜うすけ!!、ねぇ、私お腹へっちゃった!!どっか食べに行こうよ!!」
私はそう言いながら兄貴の腕にしがみ付いた。そんな私を兄貴は気味が悪そうに見つめてくる

しょうがないじゃない!!、私はやると決めた事は徹底的にするタイプなのよ!!
そんな思いを込めて私は兄貴を睨む
そしたら兄貴は「はぁ…」とわざとらしくため息をついて、空を見上げたのだった




そう、今私達は偽装デート中なのだ
経緯は長くなるからちょっと省かせてもらうわ。

それにしても………、何なんだろうか、この兄貴のデートコースは。私が最初に「どこに行こうか?」と聞いたらなんて言ったと思う?
このバカ兄貴はこう言ったのだ
「……、植物園?」
信じられる?、デートで植物園って…、兄貴の頭には何か沸いてるに違いない。

そんな風に思い出しながら私も兄貴と同じようにため息をついて空を見上げたのだった

それから私達は何も話さなくなり、私は兄貴の返事を待った



………………………、遅い、返事が遅い
このままでは私達の後ろに着けてきている(気がする)千早ちゃんだと思われる子にきずかれるのではないだろうか?
まぁ、それはいいとして私がとにかく暇すぎる、いや、はっきり言うと退屈すぎる………、あれ?変わってないか
とにかく、そんな事を思ってしまうほど、長いのだ、兄貴の悩む時間が。


私が合計三度目の欠伸をしかけたところで兄貴はやっと話し出した

「それじゃぁ、………牛丼屋にでも行くか?」
あんなけ考えてそれか!!!!
私はそんな突っ込みが出かけるが頑張って顔を引く着かせながら我慢した

だけどこのまま何もしないでいるのは我慢できないので私は突っ込みの代わりに兄貴のわき腹に思いっきり肘鉄をお見舞いしたのだった

さすがの鈍い兄貴でもあそこまでしたら、私が不満なのは分かるらしく、顔を歪めて苦しみながらこういったのだった
「ガ………ガストで、いい、ですか?」

ま、それでも私は不満だったが、しょうがない、牛丼屋よりはましになったし良しとしよう。
そう納得すると、私は兄貴の手をとって歩き出したのだった


所変わってガストの中にいる私達、だが私達の目の前に新たな問題が立ちふさがっていた、白くて丸い溶けていく物達、カリッとした食感のスティック達、ドロッとしてるジャム達そしてその他諸々の甘いもの達、それの集合体、通称ビッックパフェが私達の目の前にドンッと立ちふさがっていた
てっぺんは立たないと食べれないだろう

「……しまった、さすがの私もこんなにでかいのは食べれないかも………」
私が思わずそう呟くと兄貴はガバッと立ち上がり叫んだ

「だから言っただろうが!!、お前が調子に乗って『カップルで食べて愛を深めよう!!、ビッグラブバベルノ塔』なんてふざけた名前のパフェなんて頼むからこうなったんだぞ!!」
へぇ、意外と器用じゃん小声で叫ぶなんて
私はそう思いながら、そして現実逃避しながらパフェに手をつけた

そんな私を見て観念したんだろう、兄貴は私に一言「そんな下から食うなよ、倒れるぞ、パフェが」と言って立ち上がって、てっぺんのクリームをパクついたのだった
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/07(月) 14:45:52.61 ID:cLwbXn5L0
十分後


「ケプッ」

はしたないとは思うが、そんな音が私の口から漏れる
あれから何口食べただろうか
いまやあのパフェは半分まで減り、私達は座りながらでも食べれるようになっていた

だが分かると思うがパフェという物は下に行けば行くほど太くなり、大きくなる、ここまで言えば分かると思うが、ハッキリ言うと量も多くなるって事だ
目の前にいる兄貴も、もうウンザリだ……、ていう顔をしていた

だがその後も兄貴が手を止める事は無く、黙々と食べ続けた

な、なによ、かっこつけてるつもり?
私はそう思いながらどんどん無くなっていくパフェを見ていた



……………結論から言うと私達は完食した、完食して店を出た………、
店を出たのだが、兄貴が再起不能になった
何故なら私の目の前で兄貴はお腹を押さえながら、公園のベンチでうずくまっているのだから
「うぅ、アイスが………、アイスが追いかけてくるよぅ」

はぁ、情けないなぁ。私はそう思い
「しっかりしなさいよ!!」
という言葉と共に兄貴の背中を叩いたのだった
だが叩いた瞬間兄貴は顔を歪め「ウプッ」と言って口を手で押さえた
「や、やべぇ、なんか腹の方から上ってきてる気がする、いや、なんか確実に上ってきてるって、来ちゃってるって!」

え、ちょ、まじ?、ここで吐く気?

そんな風に私が焦っていると、兄貴は納まったのか顔をあげ私にこう叫んだ
「お、お前なぁ、言っとくけど最後は俺しか食ってなかったからね!?、それと今マジやばいんだから背中とか叩くんじゃねぇ!!」

そういい終わると兄貴は再びうずくまった

だが私達は全く気ずかなかったらしい、近ずいてきている足音に
兄貴は腹痛で、私は兄貴が心配で…じゃなくってパフェをちょっと食っただけでお腹を壊す兄貴に呆れて

まぁとにかく、私達はきずかなかった、歩いてきた人物、そう、黒猫に。
「あなた達何やってるの?、近親相姦?、それとも愛の逃避行かしら」

だから私達が驚いたのは仕方がないでしょ?
私と兄貴は肩をビクッと震わすと、ゆっくりと黒猫の方を見た

何も言葉が出てこない、なにかが首に詰まってるみたいに声が出なかった
すると黒猫は呆れたように両肩を上げた
「まぁいいわ、で、何してるの?、また妹の世話でもやいてるのかしら?」
「はあ!?何言っちゃってんの!?今回は私が!!……」

条件反射で全部言ってしまいそうになるが、何とかこらえ、ばれてないか周りを見わたす
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/07(月) 14:48:13.11 ID:cLwbXn5L0
!!!!!
……………?
な、何やってんの?あの子
噂の千早ちゃんは、まるでチョッ○ーのように半身を電柱から出してこちらを見ていた

ど、どう反応すればいいの?
さすがの私もどう反応すればいいか分からない

そんな私の心を代弁するように黒猫が口を開いた
「で?、なんで貴方の周りにはいつも愉快で変な人たちが集まるのかしら?」

そう言って向こうに居る千早ちゃんを指さした
そこまでするとさすがに自分がばれている事きずいたのだろう
千早ちゃんは隠れていた(つもり)の電柱から手を離し、黙ってこちらに歩いてきた
「ひっ」

兄貴はそんな声を上げて逃げようとするが私が襟首を掴み、引き止める
そんな事をしている間にも千早ちゃんは黙々とこちらに歩いてくる

そして最後、あと三メートル、っていう時に千早ちゃんは走り出した、いや正確に言うと兄貴に向かって突進……、もとい体当たりした
「ガフッッ……」

兄貴の口からそんな言葉(?)が漏れる
この時点での体制は兄貴の腹に馬乗り状態で、やばい、もとい、エロい、もとい、はしたない!!、格好になっていた

下らへんを見ている兄貴は鼻から鼻血を出していた、あの体制だともろにパンツが見えるのだろう

「ちょ、あんた何しちゃってんのよさ!!」
そんな訳の分からない、どこの地方の言葉かも分からない言葉が私の口から漏れるが、千早ちゃんはそれを思いっきり無視して、そしてその場の空気をも無視して兄貴に向かってこう言ったのだった

「京介君!!、私もその三角関係に入れてください!!、京介君が望むなら私もお兄ちゃんって呼びますから!!、そして四角関係になりましょう!!!!」
その言葉を聴いた瞬間この場の空気が止まった、いや、死んだ。兄貴の世間体と一緒に。

「「な、何言ってんのよさ!!!」」
思わず私と黒猫がそう同時に突っ込んだ
だが千早ちゃんも負けじと叫び返す
「だって仕方ないじゃない!!、京介君がハーレムが好きって言うんだから!!」
「いや、言ってないからね!?そんな事一言も言ってないからね!?」

千早ちゃんを跳ね除けて兄貴が悲痛の叫びをあげる
私もさすがに兄貴が可哀そうになってきて加勢した
「そうよ兄貴が変態なのはシスコンっていう所だけよ!!」
「やめて!!、お兄さんのライフはもうゼロよ!!」

…………あれ?、逆効果?

そう思った頃には既に手遅れで、兄貴は泣きながら走り出していた
私はしまった!!と思って兄貴を追いかけようとすると、「まちなさい………」と、ひどく冷たい、凍る様な声がこの場に響いた
黒猫も走り出そうとしていたんだろう、だがその声を聞いて固まってしまったらしい、まさに時が止まってしまったように、唯一動いている物は風になびく木の葉と私達の顔を伝う汗………、いや、冷や汗ぐらいだろう

「もう一度言うわ、待ちなさい………」

その言葉で私と黒猫は恐る恐るその場で完全に後ろを向いた

どのくらい経っただろうか、痛いくらいの静寂がこの場を支配しれいた
だが黒猫は本当は怖いくせに、恐ろしいくせに千早に向かってまたいつものように虚勢をはって口を開いた

「あ、あら、何か用かしら?、私は今から貴方とブラコンに追い詰められて、傷心である兄さんを追いかけないといけないんだけど?」
「別に追いかけてもいいわよ、止めたけど、辞めさせようとしてるわけじゃないの、その代わりにこの質問には答えてもらうわ」
そう言って千早ちゃんは私達を見回す、今度は冷たい目ではなく、ひどく真剣で、心を決めた様な目だった
まるで、なんで貴方達なの?、なんで私じゃないの?、とでも言いたげな、悲しい目で私達を見つめていた
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/07(月) 14:52:31.01 ID:cLwbXn5L0
そして喉を一回コクンと鳴らした時、千早ちゃんの口から言葉が漏れた

「貴方達は、京介君の事が好きなの?」
その言葉に私の心臓はドクンッと一回鳴っただけで、後は時が止まったように頬を伝っていく冷や汗の嫌な感触だけが私の感覚を支配した

その理由はもう分かっていた、分かってしまっていた
簡単だ、この質問に答えると自覚してしまうからだ、自分の心が、自分の気持ちが。

それが怖い、怖いのだ、どうしようもなく

ふと自分の足を見ると膝が笑っていた
どうしようもない、乾いた笑いが漏れてしまう

そこで声が響いた、それはまるで兄貴の様な、むちゃくちゃで、ちょっと情けない、そんな空気を吹き飛ばすような声がこの沈黙を打ち消した

「好きよ!、どうしようもなく、あの不器用な優しさも、鈍感さも、………妹思いな所も、全部!」

黒猫はそう言うと私の事を見た、ひどく挑戦的な、そんな目で、まるで、貴方はどうなの?それが限界?、とでも言うかのように

そこで私は自覚した、気持ちに?、ま、それもあるけど…………、はっきり言うと自分の情けなさに!
だってそうでしょ?、こんな気持ち自分次第なんだから、自分がどれだけ好きかなんだから

はぁ、情けない、何で黒猫なんかに助けられたんだろ?

まあ?今さっきまでの私は私じゃないし?
兄妹?関係ないし!私が好きなんなんだから相手も私の事を好きにさせればいいのよ!!

それにあいつはシスコンだし?、こんなの勝ったも同然じゃん?

そこで私は深く息を吸う、そしてゆっくり吐き出した

大きな声で、大きな声で…………たった一言を吐き出す

「好き!!」

顔を上げて、ニッと笑う
まだまだ!!
そこで私はもう一度息を吸う

「大好き!!」

そこでやっと皆の顔を見る
黒猫はやっぱりか、とでも言いたげな苦笑い、千早ちゃんは自嘲気味な、ちょっと後悔するような笑いをしていた

そして千早ちゃんは「ふぅ」、と息を吐き出すと私達に向かって歩いてきた

私達に一番近い所で止まるとこう言って千早ちゃんは帰っていった
千早ちゃんはこう言ったのだ

「負けてませんよ?、ライバルです、私達は。ま、私が勝ちますけど!」
「違うっての、私が勝つに決まってんじゃん!」
「あら、私の事を忘れてるんじゃないかしら、残念ね、私さえいなければ貴方達にもちょっとは勝ち目があったのに」
私達はそう言うとお互いに笑ったのだった

その後私は千早ちゃんが完全に帰ったのを見て、さて、兄貴を探しに行くか、と、歩き出そうとした
だが、その時黒猫の声が聞こえてきた

「もしもし、兄さん?、ええ、大丈夫、もう帰ったわよ、え?、うん本当よ、本当だってば
で、いまどこにいるの?、え?、部屋のベッドの下?。………………、はぁ、もういいわ私達ももう帰るから、それじゃぁね」

そこで黒猫は電話を切った、そしてニッと笑うとこう言ったのだった

「今回は譲ってあげるわ、いいことも聞けたしね?、ブラコンさん?」

そう言って黒猫はフッと鼻で笑って帰っていった

「ちょ、違うっての!!、私が兄貴の事を好きなんじゃなくて、兄貴が私の事を好きなんだっての!!」

苦し紛れ………、じゃなくって、本当の事を言っても黒猫は背中を向けたまま手をヒラヒラと振るだけだった
私は帰り道に「何なのよ!!」、と叫ぶと釈然としないまま、帰り道についたのだった


まぁいいわ、帰ったら兄貴でこのイラつく気持ちを発散してやる!
帰ったら何をしようか、フィギュア鑑賞会?、DVD鑑賞会?…………いや、やっぱりゲームかな?、だってそれのほうが兄貴をぼこぼこにしやすいし?。
よし決定!!帰ったら兄貴をゲームに誘ってぼこぼこにしてやるとするか!!

そう思って私はニシシ、と笑ったのだった

終わり
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/07(月) 14:56:38.51 ID:cLwbXn5L0
京介サイド





ロッカー前

俺はいまなんで固まっているのかって?、それは簡単、新しい手紙が俺の手の中にあるからだ、え?なんで手紙だけで固まってるのかって?
その答えも簡単、手紙が普通じゃないからだ
それでも大袈裟だっていう奴はこれを見ろ、そして思い知れ



好き好き好き好き
好き好き好き好き
好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き

好き好き好き好き好き好き好き好き
好き好き好き好き好き好き好き好き
好き好き好き好き

好き好き好き好き
好き好き好き好き

好き好き好き好き
好き好き好き好き好き好き好き好き



道瑠より(ハート)


な?こんなのもらって固まらない奴がいるわけないだろ?
そんな事を考えて俺は現実逃避をしていたのだった、はは……膝が笑ってやがる。




その後俺がヒッキー(引き篭もり)になるのはまた別のお話









今度こそ本当に終わり
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/07(月) 14:58:52.92 ID:cLwbXn5L0
終わり、一気に投下してすまない
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 15:02:29.22 ID:HacnImuAO
いいぞ
最後2828したww

ちなみにメール欄に「sage saga」って入れると伏せ字にならなくなる
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 15:11:53.65 ID:HacnImuAO
無償に、気ずく、納まる ビッック
あたりは誤字なのでWikiに写す人は直してあげるといいかも
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 15:25:38.78 ID:+SdXdzBi0
乙です
面白かったよ

最近またSS投下が増えてきてうれしい
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 15:27:10.97 ID:BZb1tFFNo
気付いた人が率先して直してあげてもいいかも
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 15:36:45.47 ID:cPxtOSsAO
>>228
手紙とかなら太いじゃなくて厚いとか厚みがあるとかじゃね



もしこのストーカーがあやせだったら…
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 16:36:15.44 ID:rycnlKsSO
>>223
やっぱりネタだったな
そりゃ本当にそこまで酷似してたら祭になってるはずだわww

※※※
ネタ元らしい記事
17歳少年、14歳の妹を自宅で刺殺の疑い 岡山・倉敷(24日)
 24日午後3時37分ごろ、岡山県倉敷市内の住宅から、けが人がいるとの119番通報があった。
消防隊員が、洗面所で血まみれになって倒れている中学3年の少女(14)を見つけた。
住宅内にいた兄の無職少年(17)が刺したと認めたため、駆けつけた警察官が殺人未遂容疑で現行犯逮捕した。
医師が現場で少女の死亡を確認。県警は容疑を殺人に切り替えて調べている。
県警によると、少年は「妹にばかにされたのでやった」と供述しているという。
 倉敷署によると、少年は妹と両親の4人暮らし。当時、両親は外出中で、家には少年と妹がいた。
少年は同日午後3時30分ごろ、妹を包丁のようなもので刺した後、母親に電話したという。
母親から連絡を受けた近くに住む親族が119番通報した。
少年は通報後も自宅内にいたといい、凶器とみられる刃物も近くに落ちていたという。
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 16:41:35.38 ID:sILZgNDlo
乙だぜい。

しかし、本編だと京介に強烈にアタックする人間がいないのは何でだぜ?
次も待ってます。
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 17:00:28.09 ID:sILZgNDlo
ついでに投下予告。

他作品との軽いクロスSSを書いてみますた。
登場人物は俺妹からは京介、他作品からも一人だけ。
イチャイチャSSを望んでいる紳士諸君には申し訳ない。
クロスが嫌いな方も読み飛ばしてくれ。

19:00ごろに投下予定。
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 17:04:50.36 ID:HacnImuAO
いつも麻奈実と一緒にいるから?
SSではあやせがよく恋愛対象にされるけど、原作だと全然そんな間柄じゃないよね
黒猫ぐらいか
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 17:06:02.81 ID:HacnImuAO
リロードしてなかった
期待してます
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 17:13:18.72 ID:MdwOUA9co
京介と麻奈実は周りからは公認の仲だからなぁ
最初から略奪するつもりの人じゃないと京介にアタックしないんじゃね
途中から出てきた黒猫が麻奈実の友達辺りから泥棒猫扱いされていてもおかしくないかも・・・
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 17:20:24.82 ID:Th/5ByBy0
ありえるな・・・
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 17:24:24.32 ID:mU5fEirIo
そこで京介が猛烈フォローする展開だな
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 17:37:41.18 ID:/SKLuEFVo
麻奈実が病んじゃう展開ですね


あやせ先生の正しい病み方講座
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 17:38:08.77 ID:nXwDhuBDO
>>249
期待してるぜ
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 18:07:55.34 ID:hqeg3ehKo
>>249
手錠と猿轡された京介が教材になる光景が目に浮かんだ
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 18:09:57.77 ID:HacnImuAO
麻奈美「きょうちゃん……黒猫さんと付き合うってほんと……?」

京介「ああ、ようやく俺にも春が訪れたよ」

麻奈美「どうして……? わたし、わたし……」シクシク

京介「あぁン?なんだよ、お前彼女気取りだったのかよ?」

京介「おいおい勘弁してくれよ。キスもしてねーのによー」

麻奈美「ううっ……ぐすっ……」メソメソ

京介「あっ、これから登下校は瑠璃とするからよ」

京介「でも受験勉強の面倒はいままで通りヨロシクな!」



病みの世界へ
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 18:14:05.16 ID:/SKLuEFVo
黒猫「闇の世界ですって!?」ガタッ
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 18:21:26.93 ID:+SdXdzBi0
病みvs闇か…胸熱
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 19:01:43.28 ID:sILZgNDlo
投下しますぜ。※クロス物注意


以下、投下。
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/07(月) 19:02:44.35 ID:sILZgNDlo
人工光に彩られながらも、どこか品の良さを感じさせる街――――銀座。
そんな俺には似合わない街を、一人で歩いていた。
時刻はもうすぐ23:00。明日も仕事があるのに、なぜかまだ帰る気にはなれない。まったく、思春期のガキかよ。
そんな自分自身に溜息を吐き、ボーっと視線を上げたとき、とあるビルの名前が俺の目に入ってきた。
確か、会社の先輩が言ってたな。「このビルの地下に、美味いバーがある」と。
普段ならバーなどと言う小洒落た空間には行かないのだが、その時の俺はどうかしていたのだろう。
まるで街灯に群がる虫のように、ふらふらとそのビルに入っていってしまった。

どこか重苦しさを感じさせる木製のドアを開けると、これまた木製のカウンターと椅子があった。
カウンターの向こうには白いシャツの上に落ち着いた色のベストを纏い、蝶ネクタイを締めた若い男性が立っていた。
いわゆる、バーテンダーと言うヤツだ。

「いらっしゃいませ」

穏やかな笑顔を浮かべ、客に挨拶をするバーテンダー。サービス業に従事している人間だからだろうか、髪は短く切られており、清潔感がある。
ほかに客は居ないようなので、俺は適当に席に着いた。それと同時におしぼりが差し出される。

「ご注文は?」

おしぼりを受け取り、それで手を拭いている俺に、バーテンダーが尋ねてきた。
だが、「バー」と言うものに来たことがない俺には何を注文していいのかわからない。仕方が無いので、ここはプロにお任せしよう。

「あの……こういう店にはあまり来たことが無いので、何を頼んでいいのか……」
「そうですか。普段はどのようなお酒を?」
「もっぱらビールですね。ここに来る前も、居酒屋で飲んでましたから。強い酒もそれなりには飲めます」
「そうですか……。では、『ジントニック』はいかがでしょう?」
「じゃ、それで」
「かしこまりました」

ジントニックか。それなら俺も知ってる。
まだビールが得意じゃなかったころ、居酒屋ではもっぱらカクテルを飲んでたからな。
バーテンダーさんはグラスを一つ、自分の目の前に置き、カットされたライムの果肉にフォークとスプーンが合わさったような長い金属棒を押し込む。
そこから溢れ出る果汁をグラスに入れると、搾ったライムもグラスの中に入れた。そこに、大き目の氷を二個入れ、ジンを注ぐ。
今度はトニックウォーターが入った瓶を手に取り、グラスに注いでいく。満たされたグラスの中を一度だけ混ぜ、最後にライムの皮を軽く絞る。

「『ジントニック』です」

コースターに乗せたグラスを俺の前に移動させる。
店内の雰囲気のせいか、このジントニックがひどく高級なものに見えた。
少し気圧されながらも俺はグラスを手に取り、それを口に運んだ。

「!」

う、美味い!
なんちゃってカクテルには無いキレやコクが、俺の口内を駆け巡る。そしてこのスッキリとした味わい、爽やかなライムの香り……。
ジントニックって、こんなに美味かったんだ。これがプロのテクってヤツか。

「お客様。トニックウォーターの苦味はどこから来ているか、ご存知ですか?」
「い、いや。知らないッス」
「元々は"キナ"というインカの熱病の薬が入っていたから、この苦味が生まれたそうです。このキナと言う薬、スペイン総督夫人のマラリアを治療したことがきっかけで、ヨーロッパに広まりました」
「へぇ〜。じゃ、トニックウォーターって薬なんすか」
「そうとも言えますね。ですが、日本で市販されているトニックウォーターに、キナは入っていません。それなのに、TONIC(元気づける)という言葉だけは残っています」

元気づける、か。たしかに、どことなく元気が出そうな味だな。
でもさ、一杯目にこれを出したってことは、そんなに元気無さそうに見えたのかな?
情けないな……。アイツの前では、そんな顔にならないよう気をつけねえと。
俺は自分の弱気を吹き飛ばそうと、ジントニックを一気に飲み干した。

「次は、なににされますか?」
「えっ……と、『マティーニ』ってカクテルですよね?」
「はい。ジンベースのカクテルです」
「じゃあ、それを」
「かしこまりました」

バーテンダーさんはビーカーみたいな容器に氷を入れ、その中にベルモット、ジンを入れた。
さっきも使ってたフォークとスプーンが合わさったような金属棒、多分酒を混ぜるときに使う専用の器具なんだろうな、それでジンとベルモットを混ぜていく。
混ぜ終わると、ビーカーに蓋みたいなものを被せ、カクテル・グラスに注いでいき、最後にレモンの皮を軽く絞った。

「『マティーニ』です」

たった今作られたマティーニを受け取り、口に運ぶ。
これも美味い……けど、流石はジンベースのカクテル。少し強いな。

「美味しいですね。でも、俺には少し強いかな」
「そうですか。それでは、少し失礼をして……」
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/07(月) 19:03:57.84 ID:sILZgNDlo
そう言うと、バーテンダーさんはグラスを奪い、大きな氷を入れたロックグラスにマティーニを入れた。
新しいグラスに入れられたマティーニを受け取り、改めて口に運ぶ。

「あれ?さっきより飲みやすい……」
「氷があることで加水され、アルコール度数が下がります。また、温度が下がることで口当たりが良くなり、自分のペースで飲むことが出来ます」

そういうもんなのか。酒って、付き合いと、酔いたいときにだけ使う代物だと思ってたけど、こうやって色んな味を楽しめるんだな。
と言っても、このマティーニは俺にはまだ少し強い。氷がもう少し溶けてから飲むとしよう。
俺は少し時間を潰すために、懐に入れてあるシガレットケースを取り出す。
そこで気付いたんだが、俺がケースを取り出し終わる頃には灰皿が俺の前にあった。さっきは無かったのに……。
俺の動作だけで喫煙することに気付いて、灰皿を出したのか。すげえな、バーテンダーって。こんなにサービスが行き届いてるのかよ。
俺は煙草に火をつけ、紫煙を燻らせながらマティーニをゆっくり飲んだ。
この間、俺とバーテンダーさんとの間に会話は無い。普通なら、何か話しかけようとするだろ?でもさ、しないんだよ。まったくさ。
普通は気まずい雰囲気になるんだろうけど、今の俺にはそれがありがたかった。耳に心地いい音楽だけが、店内に流れていた。
酒が美味くて、少し薄暗くて、細かな気遣いが嬉しくて……。だからかな、俺は親しい人間にすら話したことの無いことを、このバーテンダーさんに話しちまったんだよ。

「バーテンダーさん。俺ね、もうじき結婚するんだ」
「それはそれは。おめでとうございます」
「ありがとう。でね、情けない話なんだけどさ。俺、今絶賛マリッジブルー中なんだよね」

今日会ったばかりの人に、なんつー情けない話をしてるんだよ。
本当、今日の俺はどうかしてる。酔いすぎだ、馬鹿野郎。

「男にもマリッジブルーがあるって話は、聞いたことあったけどさ。自分がそうなるなんて思わなかったよ」
「アイツのことは好きだ。だから結婚するんだ。でもさ……不安なんだよ。"ちゃんと幸せに出来るのか?"ってね」
「今まで、不安なんてほとんど無かった。有っても些細なことばかりだった。でも、人一人の人生を抱え込むってなったとき、スゲー不安になったよ」
「こう言っちゃなんだけど、俺の恋人は出来た女でね。俺にはもったいないくらいのいい娘だ」
「だからかもな。いざ、結婚!ってなったときに、"俺より良い男がいるんじゃないか?" "もっといい生き方があるんじゃないか?"そんな風に思っちまった」
「ホント、なっさけねーよな」

俺は一息に喋った。自分の中の不安を全部ぶちまけるように。
なんだよ、コレ。からみ酒もいいとこじゃねーか。恥ずかしいし、情けねーし、今すぐ消えちまいたい。
腕時計を見ると、もうすぐ日付が変わる時間だった。いい加減、帰らないと。俺は煙草をもみ消し、席を立とうとした。
そこに、今まで無口だったバーテンダーさんが話し掛けてきたんだ。

「"恋は人を盲目にするが、結婚は視力を戻してくれる。"」
「へ?」

さっきまで無口だったのに、口を開いたらコレだ。俺がマヌケな声を出しても、仕方ないだろ?
そんな俺をよそに、バーテンダーさんは笑顔を浮かべながら言葉を続ける。

「ドイツの科学者、ゲオルク・クリストフ・リヒテンベルクの言葉です。彼は優秀な科学者であり、風刺家でした。学生時代から亡くなる直前まで、ノートに様々なことを書いたそうです」
「そのノートにはリヒテンベルクが感銘を受けた引用、読んだ書名、自伝的描写、様々な考察が書かれており、様々な格言を残しました」

恋は人を盲目にするが、結婚は視力を戻してくれる。
なるほどな。言い得て妙とはこういうことか。俺のこの不安も、結婚を前にして視力が戻った結果なのかも知れない。

「お客様。お帰りになる前に、もう一杯いかがですか?コレは私からのサービスですので、お代は結構です」
「え、いいんですか?それなら……」

バーテンダーさんはシャンパングラスと三つの瓶を取り出すと、混ぜ棒のスプーン部分を利用して、三つの酒を順に注いでいく。
グラスの下から、赤、緑、白の酒が綺麗に層を重ねている。

「プースカフェ・スタイルのこのカクテル。名前は『ビジュー』、フランス語で『宝石』という意味です」
「へぇ〜。たしかに、宝石のように綺麗ですね」
「ベルモットの赤がルビー、シャルトリューズのグリーンがエメラルド、ジンの白がダイヤを表しています。ですが、この三つを混ぜ合わせると、もう一つ宝石が現れます」
「もう一つ?」

バーテンダーさんはシャンパングラスを手に取り、その中身を氷を入れたビーカーみたいな容器に入れ、混ぜ棒で混ぜていった。
ああ、せっかくの綺麗な色なのに。
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/07(月) 19:04:36.84 ID:sILZgNDlo

「この三つを混ぜ合わせたカクテル。名前は『アンバー・ドリーム(琥珀の夢)』」

ベルモット、シャルトリューズ、ジンを混ぜ合わせると、琥珀色の鮮やかな液体が出来上がった。バーテンダーさんはカクテル・グラスを取り出し、中身を注いでいく。

「琥珀とは、木の樹脂(ヤニ)が地中に埋没し、数万年という長い年月により固化した宝石です」
「これが、もう一つの宝石ですか」

差し出されたカクテル・グラスを手に取り、口をつける。
美しい色合いに合った、洒落た味が舌に広がっていく。

「美味しい……」
「"男と女が結婚したときには、彼らの小説は終わりを告げ、彼らの歴史が始まるだろう。"ロミュビリュズという人物の言葉です」

ここでバーテンダーさんが、またどこかの誰かさんが残した名言を言い放った。
この人、名言好き?薀蓄を披露したいだけの人なの?違うとは思うけどね。

「結婚式のスピーチなどでもよく使われる言葉ですが、人によってはネガティブな印象を受けるかもしれませんね」
「どうしてですか?」
「小説というのは、全てではありませんが、大抵幸せな結末が用意されているものです。恋愛をテーマとしているものは特に」
「ですが、歴史は違う。学校で習う歴史でも、悲劇をちゃんと記している。だから"結婚というのは、夢から覚めることなんだよ"と言われている気がしないでもない」

そういう考えも、確かにできるな。
小説はフィクションだが、歴史は事実を記したもの。嬉しいことも、悲しいことも全てひっくるめて"歴史"なのだ。

「長い時間を共にすれば、苦難にも直面するでしょう。でも、その時間を共に歩み続け、嬉しいことや悲しいことも全て含めて、"いい人生だった"と言える」
「時を経て、改めて振り返ったとき、その輝きに、大切さに気付ける。そんな琥珀のような最期を、迎えられたら良いですよね」

ああ、そういうことか。
そうだよな。不安になるのは当然だよ。
でも、まだ何も起こってないうちから不安になって、足踏みしてても仕方のないことじゃねえか。
失敗やすれ違いも起きるかもしれない。それを回避するための努力はするさ。けど、もしそんな事態になったとしても、一緒に解決していけばいい。
これからは俺一人じゃない。アイツもいるんだ。助けを求めれば、周りの人たちも協力してくれるだろうしな。
そうやって一緒に生きていって、最期を迎える。そして最後に言うんだ。「いい人生だった」って。
ただの松ヤニが、数万年かけて宝石とは違う輝きを持つように。人々を惹き付ける琥珀のように。そんな歴史に、自分達でしていくんだ。

「ありがとう。なんか、色々とスッキリしました」
「いえ、差し出がましい真似をして、申し訳ありませんでした」

俺が礼を言うと、バーテンダーさんは頭を下げて謝ってきた。
たしかに、お節介なバーテンダーさんだよ。でも、そのお節介のおかげで、俺は救われたんだ。だから、謝らないでくれよ。
ま、俺は何も言わなかったけどな。

「俺、高坂って言います。バーテンダーさんの名前は?」
「佐々倉。佐々倉溜と申します」

会計のときに、俺は名刺を取り出し、バーテンダーさんに渡した。
バーテンダーさんは「頂戴します」と言って受け取り、自分の名刺を差し出してきた。
佐々倉溜、か。

「今日はここに来れてよかった。また来ます。今度は"妻"と一緒に」
「お待ちしております」

佐々倉さんが頭を下げて見送る中、俺はドアを開けて夜風が吹く銀座の街に戻っていった。
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/07(月) 19:05:06.92 ID:sILZgNDlo
それから二ヵ月後――――。


ボクは今日も昼過ぎに出勤する。
バーの開店時間は夜、それまでに準備を終えないとね。
お店に来てまずやる事は、この店に来た郵便物のチェックだ。ま、大したものはあんまり来ないけどね。
今日もダイレクトメールやチラシが何個か入ってる。お仕事熱心なのは良いけど、ちょっと邪魔臭いよね。
そんなチラシ達の中に、ハガキが一通混じっていた。宛名は店名ではなく、ボク個人になっている。
裏を見ると、「この度、私達は結婚いたしました。」というメッセージと共に写真がプリントされていた。
純白のタキシードに身を包んだ男性と、同じく純白のドレスを纏った美しい女性が笑顔で写っている。以前、ご来店されたことのあるお客様だ。
ハガキの下の方に、お二人の名前が記されていた。高坂京介様と――――。
お二人は本当に幸せそうな笑顔をされており、こっちまで幸せな気分になってくる。
でも、お二人とも頬が赤いから、夫婦というより付き合いたてのカップルみたいに見えるけどね。
それにしても、本当にお美しい方だ。こんな女性と結婚できるなんて、とても羨ましい。ボクも夢見ちゃうよ。こんな女性と結婚したいな、って。


バーテンダーに相応しい服装に身を包んだボクは、グラスを拭いている。もう開店時間は過ぎている。
今日はどのようなお客様がご来店されるだろうか?ボクのグラスでお客様を癒せるだろうか?
思い上がった考え方だが、それでもこの店に来てくださったお客様すべてが、この店を出るときには幸せな気持ちでいてほしい。ボクはそう思っている。
そして今日も、重苦しさを感じさせる木製のドアが開かれる。


「いらっしゃいませ。『バー・イーデンホール』へようこそ」



おわり
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 19:08:12.35 ID:sILZgNDlo
以上です。

『バーテンダー』とのクロスでした。
バーに行ったこともなければ、銀座に行ったこともない。
カクテル知識は漫画からそのまま拝借。
少しでも楽しんでいただけたのなら幸いです。

京介の相手はわざと明示しませんでした。みんな、好きなヒロインを当て嵌めれば良いじゃない。
あと、すんげーどうでもいい設定とかもあったけど、書く必要を感じられず削りました。

ありがとうございました。
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 19:30:39.99 ID:BZb1tFFNo

バーテンダーのしっとりした雰囲気にうまく結婚に悩む京介を溶け込ませられてたと思います
とても浸れるSSでした
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 19:33:49.82 ID:gEvg31wVo
>>260

クロスと聞いて警戒したけど、これはいいクロス
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 19:39:54.31 ID:HacnImuAO
バーテンダー読んだことないけど、すらすら読める良SSだった
しっとりした雰囲気で、色恋でも笑いでもなくて新しいかも
また次回作期待してます
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 19:41:34.36 ID:AAEXtjtv0
バーテンダーを知らなくても十分楽しめました
乙です
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 19:54:37.05 ID:dDa02ozjo
>>234,260
ニヤニヤできたし、雰囲気あってよかったです。乙。
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 21:46:07.06 ID:mylLohdAO
バーテンダー見たことないから何か某傾いてる人の顔が浮かんだ
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 22:57:32.30 ID:i6qCzY5k0
>>223
一瞬ガチかと思ってドキっとした・・・

>>235
乙です
なんかいつもとは立場が逆だったんで新鮮な感じで楽しめました

>>260
乙です
バーテンダー原作知ってるけど、かなりの良クロスだと思います
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 23:37:40.64 ID:i6qCzY5k0
ついでに>>218で視線を感じたので投下させていただきます
京介×黒猫で、語り手は二人交互といった感じです
269 :『俺たちのすれ違いがこんなにベタなわけがない』 [sage]:2011/03/07(月) 23:39:22.49 ID:i6qCzY5k0
付き合い始めて2週間ちょい。
今現在、俺と黒猫の仲は早くもギクシャクしている。
早すぎる?
気にしてるんだから言わないでくれ。
これでも結構仲良くやってたんだぜ!?
ほんの数日前までは―



『俺たちのすれ違いがこんなにベタなわけがない』



正直、最初の原因はよく覚えてないんだ。
きっと相当ちっぽけなことだったに違いない。
まあ、俺の視点から経緯を説明させてもらうとこういうことだ。


ことが起こったのは先週の金曜日の帰り道だった。
普通の高校生なら、1週間の学業から解放される喜びを噛み締められる至福の帰り道・・・・・・なのになぁ。
とりあえずアイツがいつもの厨二調子で俺をからかってきたんだよ。
普段なら俺がほどよくツッコんで受け流して談笑になるはず、だった。
でもあの時は・・・・・・なんかさ、途中で感じたんだよね。
いつもと風向き違うなぁ・・・ってさ。
しかも俺自身もその変な風に乗っかっちゃってるんじゃないか、ってさ。


ん?俺らっていつもこんなに言い合ってたっけ?こっからどうやって丸く収めりゃいいんだ?


なーんてことをもう少し早くに考えてればよかったのかもしれないが、少し遅かった。
疑問に思った時には、すでに俺の家に行く道とアイツの家に行く道の分岐点に来ていたんだ。


アイツは最強に不機嫌な様子で、
「声も聞きたくないから着いて来ないで頂戴」とか何とか言って怒って一人で帰っちまったってわけさ。
いつもはアイツの家まで送って帰ってたんだけどな。
まあ・・・・・・追いかけようと思えば追いかけられたし、止めようと思えば止められたかもしれない。
でもあの時は俺も何となくムシャクシャしてたから、
「おい!ちょっと待てよ!」っていうありきたりなことを叫んだだけで、すぐ反対方向に歩き出しちゃったんだ。


もちろんその後、家に帰ってからすごく後悔した。



だから次の日の土曜日、
俺は昼過ぎに自転車を飛ばしてアイツの家まで行った。
本当は朝早くから行こうかとも思ったけど、休みの日だし。ほら、下のおチビちゃんを起こしても悪いだろ?
・・・まあ、結果はありきたりな展開だったけどな。

「ルリ姉なら朝早くからアキバに行くってメモが・・・・・・あれ?高坂くんと一緒じゃなかったの?」

俺だって薄々わかってたよ?いじけたアイツが俺を避けて出かけることくらい予想してたよ?
でもさ、ここまで教科書通りにやるこたぁねえだろ。

俺は家に帰ってからも時間を空けて何度か電話をかけた。
・・・ああそうだよ!お察しの通り、1回も出てもらえなかったよ!

でも・・・着拒されてなかっただけマシ、かな?

って違うだろ!何で俺はこんなに下手に出てるんだ!?

「そりゃあ俺も悪かったかもしれないけどさ・・・・・・でも、アイツだって・・・・・・」
一回そんなことを考えると、何か俺にも変な意地っつーか対抗心が芽生えてきて。



日曜日?
日曜日は特に連絡をとろうとはしなかった。
朝からずーっと学生の本分に打ち込んでたよ。俺も一応受験生のはしくれだぜ?
まあ、その・・・・・・変な意地があったってのも否定はしないけどよ・・・・・・・・・・・・。
270 :『俺たちのすれ違いがこんなにベタなわけがない』 [sage]:2011/03/07(月) 23:40:37.49 ID:i6qCzY5k0


こうして迎えた今日は月曜日。

普通は月曜の朝ってのは何となく元気がない。
休み明けってのはテンションがどうも上がらん。
・・・・・・特に、あんな土日を過ごした今日の俺は尚更な。

いやー。それにしてもいい日差しだ。最近雨が多かったから余計にすがすがしい。
『雲ひとつない青空』ってこういう日のことを言うんだろうな。

この天気のおかげでテンションも若干晴れたところで、俺は校門をくぐった。
月曜がダルいっていうのは俺だけじゃなくてみんな共通のことらしく、
普段の月曜の朝は何となく眠そうな雰囲気が漂っているもんだ。

だが、ここ最近はその法則が崩れている。
理由は・・・・・・おっと、今日も早朝の校庭から楽しそうな声がしてるな。
おーおー。朝早くから元気だねえ。

今は体育祭の丁度2日前だ。
1・2年生はもちろん、受験を控えた俺ら3年生も、体育祭1週間前くらいからは休み時間に練習で汗を流している。
さすがに身分をわきまえてるから、学校終わってから集まったりはしないけど。
俺のクラスも例外ではない。多少男女間で温度差はあるが。

あの校庭にいる人たちは朝練してんのか?随分とやる気あるな〜。
うちのクラスも今日の休み時間は運動系部活のメンバーを中心に練習すんのかなぁ。

でも、みんなには悪いが今日はパスだ。
そろそろ俺も決着つけねえと。

昼休み。
俺はサッカーの誘いを断って、怒れる夜魔の女王が待ち受ける教室へと向かった。
いくら下級生の教室だからと言って、やっぱり他のクラスの教室に一人で行くのは少し緊張する。
しかもそれが、自分の彼女がいるクラスの教室となると尚更だ。

教室の前まで着くと、俺はちょっとだけ気合を入れて、開けっ放しになっている扉からやや遠慮がちに教室を覗く。

・・・だが、アイツは教室にはいなかった。
というか殆ど人がいなかった。
いるのはいかにもぼんやりしてておとなしそうな女子が数人。あ、一人だけ居眠りしてる男子がいるな。

もしかして・・・アイツ、体育祭の練習しに行ったのか?
アイツの性格上、絶対参加なんてしてるわけないと思ったのに・・・。
まあ、それほどアイツもクラスに馴染んできたってことなのかね?
しょうがねえ。放課後にでも待ち伏せするか。

そんなことを考えながら1年生のフロアを歩いていると、突然聞き慣れた声に呼び止められた。

「あっ!高坂先輩っ!こ、こんにちはっ!あの、ちょっと・・・・・・」

声の主は俺の後輩・赤城瀬菜だった。なにやら俯きながら、誰もいない階段の方へ俺を手招きしている。

「おう。どした?何か用か?」
今日の瀬菜はなんだか顔が赤い。そしてやけに周りの人目を気にしている。
うーん、なんつーかその、不覚にも・・・・・・・・・ちょっと可愛い。
べ、別に瀬菜が巨乳+眼鏡だったからじゃねえぞ!?ホントだぞ!?

「先輩。今日はウチの部が休みだってこと、知ってますよね?」
「え!?そうなのか?なんで?」

・・・・・・せっかく、アイツと話すチャンスだと思ったのに。

「なんでって・・・・・・先週部長が言ってたじゃないですか」

へ?部長が?
ああ、言われてみれば・・・・・・


271 :『俺たちのすれ違いがこんなにベタなわけがない』 [sage]:2011/03/07(月) 23:41:19.77 ID:i6qCzY5k0



『どうしてだ!?どうして俺が体育祭の練習なんかに駆り出されなきゃならんのだ!』
『そうですね。部長が練習したって絶対戦力になんかならないのに』
『たとえ一時でも、ファナたんに会う時間を削られるなんて耐えられん・・・・・・・・・』
『まあまあ部長。部長なんかが練習に誘ってもらえただけ奇跡じゃないですか。諦めて参加してきたらどうです?』
『誘われたんじゃない!ありゃ強制だ!徴兵令だ!』
『なに訳のわからないこと言ってるんですか。何にせよ僕らには関係ないんで。とりあえず、ご愁傷様です』
『こうなったらお前らも道連れにしてやる!月曜と火曜は休みだ!更に各々、家に帰ってからもPCでお気に入りのキャラに会う事は禁止する!』



・・・こんな感じの部長と真壁君のやり取りがあったような気がしなくもないな。
部長・・・。そういうの八つ当たりって言うんですよ?わかってます?



「それで・・・あのう・・・・・・先輩にお話したいことがあってですね・・・。放課後、部室に来ていただけませんか?
そんなに長くはお時間いただきませんから・・・・・・」


おどおどした瀬菜の言葉で俺はハッと我に返った。

瀬菜が俺に話?
しかもこのシチュエーション、二人きりでってことか?
でも、放課後は―


「ああ、えーと、放課後は―」

いや・・・待てよ。
こう言いかけてから俺は考えた。

1年生のほとんどのクラスは校庭に放課後集まって、ドッヂボールだのソフトボールだのを練習している。
そんでもって今は本番間近だ。
アイツのクラスの女子が練習してるのも見かけたことあるし、きっと今日の放課後も練習するに違いない。
アイツも今日の昼休みは練習に参加したみたいだし、だとしたら普通は流れ的に放課後練にも出るだろう。
それを俺が会いに行って邪魔するのも・・・・・・なんかねえ。
それにそんなに時間かからないって言ってるし・・・・・・ぶっちゃけ、瀬菜が俺に話したい内容も若干気になる。


よーし、整理しよう。
放課後は瀬菜の話を聞いてから、アイツの練習が終わるのを待つ。
そして今度こそ、面と向かって誠意を込めて謝る。
これで決まりだ。
アイツが帰ってきたら「お疲れ」とでも声をかけてやろう。
なんか飲み物でも買って待っててやろうかな。


「・・・わかった。放課後に部室、だな。」
「あ、ありがとうございます!じゃあそういうことで宜しくお願いします!」



俺は瀬菜の頼みを快く了承した。

だがこの時の俺はまだ知らない。
この後、過酷な試練が待ち受けていることを・・・。


272 :『俺たちのすれ違いがこんなにベタなわけがない』 [sage]:2011/03/07(月) 23:42:01.15 ID:i6qCzY5k0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


・・・・・・少し、言い過ぎてしまったかしら?

で、でも、元はと言えば先輩がいけないのよ!?
素人のくせにマスケラのことで私に意見するなんて。
それに・・・・・・・・・それに、あの程度であんなにムキになることないじゃない!
確かに、私の口が悪かったということもあるのだけれど。



土曜日の早朝。
私はまだ寝ている妹たちにメモを残して一人で秋葉原に行った。
最近はテスト期間だったり、あの子や沙織と予定が合わなかったりしたから、私にとっては久しぶりの秋葉原。
勿論、思う存分堪能してきたわ。
今回の一番の掘り出し物は、限定デザインの漆黒の仮面かしら。その再現度はまさに素晴らしいの一言。
・・・・・・・・・彼がつけたら、とてもよく似合いそうね。

どうして急に秋葉原に行ったのか、ですって?
愚問ね。私は常闇の住人・夜魔の女王よ?
私は私の本能が赴くままに行動するだけ。理由なんて必要ない。
やがて私の魔翌力によって天は暗黒に染め上げられ、私の忠実な隷属である闇の獣たちによって地上は・・・・・・・・・今日はこの辺でやめておこうかしら。

でも、否定は出来ないわ。
変な意地を張っていて彼に会いたくなかった、という理由もね。


ただ・・・・・・・・・電話に出なかったのは少しやりすぎてしまった。
昼の13時から23時まで、計12回もかけてくれたというのに。
妹の話だとやっぱり家にも来てくれたみたいだし・・・・・・。
それを避けてしまったのは他でもない私自身だけど。


―明日は、ちゃんと話をしよう。
そう思って私は、深くて高貴なる眠りについた。



しかし日曜日、彼から連絡は来なかった。

こ、こちらから電話をかけてみようかしら?
でも・・・出てもらえなかったら・・・・・・。

もしかして、昨日のことで怒っているのかな・・・?

いいえ、違うわ。きっと勉強しているのね。きっとそうよ。
勿論、私に一切の連絡がないのは残念なことだけれど・・・・・・仕方がないことだわ。彼は受験生だもの。
邪魔をしてはいけない。


一瞬不安に落ち込みそうになった心のバランスを保って、
私はその日、ずっと創作活動に力を入れた。



今日は月曜日。
とても日差しが強い日・・・・・・。永遠の暗闇を寝床とする私にとってはあまりよくない天気だわ。
私達夜の貴族は光に力を吸い取られてしまうのよ。
・・・心なしか身体がだるいような気もするわね。

学校に着くと、校庭からは体育祭の朝練をしている人たちの声が聞こえてくる。
朝早くから御苦労なことだわ。



今日こそは彼と話をしなくては。
土曜日は私のつまらない意地で彼には多大な手間をかけさせてしまったわけだし。
だからその・・・・・・今日はわ、私から会いに行ってあげようかしら?
夜魔の女王である私自らが出向くなんて、こんなことはもう二度としないわ。と、特別よ?
273 :『俺たちのすれ違いがこんなにベタなわけがない』 [sage]:2011/03/07(月) 23:42:50.25 ID:i6qCzY5k0



昼休み。
勇気を出して、3年生の彼の教室に行ってみた。
上級生の教室には独特の威圧感のようなものがあるから、本当はあまり気が進まなかったのだけれど。
私は開け放たれたままになっている扉からおそるおそる中を覗いて、彼の姿を探す。

でも、案の定教室に彼の姿はなかった。
教室にいるのはいかにもぼんやりしていておとなしそうな女子生徒数人と、一人だけ居眠りしてる男子生徒一人。
確か私の教室も同じような風景だった気がするわ・・・。どこのクラスにも似たようなタイプの人間はいるものね。


教室にいないとなると、彼はどこに・・・・・・・・・。


その時、目の前を彼と同じクラスの人たちがサッカーボールを持って通っていった。
・・・読めたわよ。おそらく彼も体育祭の練習に連れ出されたのね?
まったく・・・・・・さすがヘタレ先輩だわ。一時の感情に任せて遊びに行くなんて。
貴方は受験を控えているのでしょう?もう少し強い意志を持ちなさいな。

大勢でスポーツをしている場で先輩の名前を呼ぶなんて私には絶対出来ない。
でも・・・彼のことだから・・・・・・。きっと、私の姿を認めたら駆け寄ってきてくれるわよね?



早速校庭に出て先輩を探した。
この学校の校庭はまあまあの広さだ。
ソフトボール、ドッヂボール、サッカー、・・・・・・。色々な人が色々な種目に勤しんでいる。
あら?あそこで大縄に引っかかったのは田村先輩かしら?
でも、こんなに大勢の人がいるのに、先輩だけが見当たらない。
先輩のクラスの集団の中にも彼はいない。



一体あの人は、私を放っておいてどこをほっつき歩いているの?



そして放課後。

彼が来やしないかと少し教室で待ってみた。
でも、とっくに帰り時間を過ぎているのに彼は来ない。
しびれを切らして彼の教室に行ってみた。
やっぱりいない。



もしかして・・・・・・私を置いて帰っちゃったの・・・・・・・・・?


・・・そうだわ。
あの人のことだから、今日はゲー研が休みだということを聞き逃しているのかもしれない。
先輩はいつも連絡事項を全然聞いていないんだもの。彼は本当にヌケているんだから。
受験生である彼が部室で一人待ちぼうけているなんて滑稽・・・いえ、時間の無駄だわ。
そ、そうね・・・・・・・・・同じ部員として教えてあげるのは、し、自然なことでしょう?

一旦折れそうになった心を再び繋ぎとめて教室を出ようとした時、突然クラスメイトに声をかけられた。


「五更さん。今日の放課後、ウチのクラスの女子でソフトボールの練習しようと思うんだけど、一緒にどう?」
「・・・ごめんなさい。今日は少し頭が重くて・・・・・・。足元がふらふらしているから貴女たちに迷惑をかけてしまうかもしれないわ」

我ながら何の捻りもない、下手すぎる言い訳だったわね。
でも今はそれどころじゃないの。悪く思わないで頂戴。
274 :『俺たちのすれ違いがこんなにベタなわけがない』 [sage]:2011/03/07(月) 23:44:36.80 ID:i6qCzY5k0

部室のドアの近くに行くと、案の定誰もいないはずの部室から声が聞こえてきた。

「・・・かぎ・・・れは・・・・・・えを・・・」

部室の中から聞こえてくるのは間違いなく先輩の声だ。
ようやく見つけたわよ、先輩。やっぱりここにいたのね。
使い魔の分際で主である私にここまで手間をかけさせるなんて、あとで裁きを受けてもらうからそのつもりでいて頂戴。
それにしても、この人は何訳のわからないことを言っているの!?
それと・・・・・・一緒に話しているのは誰かしら?

「高坂先輩、もう少し大きな声ではっきりとお願いします」


瀬菜?


まったく・・・・・・。
いくら連絡がとれないからって、仮にもか、彼女である私を放っておいて他の女と談笑しているなんて・・・・・・。
あの人はどういう神経をしているの?
先輩にはキツいお仕置きが必要のようね。


・・・また少し、からかってみようかしら?

悪戯心半分、話すきっかけを見つけた嬉しさ半分。
私は、彼に対する軽めのからかい文句を考えながら部室のドアノブに手をかけた。



「赤城。俺は・・・俺は・・・・・・・・・俺はお前を愛してる!」
「きゃあああああああああああああ!!!せんぱぁぁぁぁぁぁい!!!!!」

急に中から聞こえてきた大声にビクッとして、思わず手を離してしまう。
勿論わかっている。
私が驚いたのは、声の大きさなんかじゃなくて・・・・・・・・・


「お、おい!声を落とせ!誰か来たら色んな意味で二人ともヤバいだろ!」

色んな意味で?貴方達は男女二人っきりで何をしているの?



「・・・す、すみません。私としたことが取り乱しちゃいました・・・・・・・・・・・・・・・。」

この後瀬菜は声をひそめ始めたから全部は聞き取れなかったけれど、私ははっきり聞いてしまった。



「こ・・・の後・・・・・・じゃな・・・・・・・・・“京介”。・・・・・・が・・・・・・・・・えへへ・・・」

彼女が、『京介』と先輩を名前で呼んでいたのを。
それもかなり熱のこもった口調で。
あの子は、BLのカップリングの話をしている時でさえあんなに色っぽい声色は使わないのに。
そ、それに、わ、私だってまだ彼のことを名前で呼んだことはないのに!


275 :『俺たちのすれ違いがこんなにベタなわけがない』 [sage]:2011/03/07(月) 23:45:30.58 ID:i6qCzY5k0
その後も二人は話し続けている。
小声で内容は全然わからないけれど、心なしか先輩の声も熱を帯びているような・・・。
一体二人は誰もいないはずの部室で何を話しているの?
それにさっきの会話は・・・・・・・・・?
先輩、瀬菜に向かって『愛してる』ってどういうこと?
ドアを開ければわかるのかもしれないけれど、そんな勇気は私にはない。
いつもは平然と出入りしている部室のドアを開けるのが、怖い。


「あっ、あのさぁ〜。えーと、お、俺さ!そろそろ、勉強するから帰るわ!わりぃな!」
「ええ〜、もう帰っちゃうんですか〜?じゃあ、続きは明日にしましょう。明日もよろしくお願いしますね。高坂先輩」

まずい。足音がこっちに向かってくる。
このまま二人と鉢合わせなんて気まず過ぎるわ。
私が慌ててドアから離れようとしたその時−


「な、なあ。このことはさ、その・・・アイツには内密に・・・・・・」
「アイツって・・・・・・五更さんですか?」

不意に自分の名前が聞こえてきて、思わずまた聞き耳を立ててしまう。


「そうだ。お前も知ってると思うが・・・・・・俺とアイツは、つ、付き合ってるんだ」
「ああ・・・・・・・・・ええ、そうでしたね。そんなことは知っています」

今の先輩の発言で、明らかに彼女は機嫌を損ねた様子だ。
どうして?私と先輩が付き合っていると何か不都合なことがあるの?


「だからさ、その・・・俺が・・・・・・その・・・こんなことをやってるってアイツが知ったら・・・・・・・・・」
「・・・わかりました。この件は五更さんには『まだ』内緒にしておきます」

どうして私には内緒にしようとするの?
仲間外れにするつもり?
それとも・・・私には言えないの・・・・・・・・・?


「おい!『まだ』って何だよ!?いずれはバラすってことか!?」
「ええもちろん。五更さんには、二人の禁断の愛の完成版を見せ付けちゃおうかなぁなんて思ってまして。うへへへへ・・・」

もう嫌だ。これ以上二人の会話を聞きたくない。


「わかってねえ!お前全然わかってねえだろ!」

最後に聞いた先輩のこの言葉の直後に、ガチャッと音が聞こえた。

ドアノブに内側から手がかけられたのがわかって、私は急いで駆け出した。
後ろから焦った様子の先輩の声が聞こえたような気がしたけど、そのまま走った。
校門を出るまで、後ろは振り返らなかった。
276 :『俺たちのすれ違いがこんなにベタなわけがない』 [sage]:2011/03/07(月) 23:46:21.10 ID:i6qCzY5k0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「・・・かぎ・・・れは・・・・・・えを・・・」
「高坂先輩、もう少し大きな声ではっきりとお願いします」

んなこと言ったってな、俺にだって恥じらいってもんがな・・・


「あ、かぎ、お、れは・・・お、お、おまっ」
「先輩!」

怒るなよ!人の気も知らないで!
えーい!!!こ、こうなりゃヤケクソだ!


「赤城。俺は・・・俺は・・・・・・・・・俺はお前を愛してる!」
「きゃあああああああああああああ!!!せんぱぁぁぁぁぁぁい!!!!!」


ぐぁああああああ〜!!!!!恥ずかしすぎる〜!!!!!!


「お、おい!声を落とせ!誰か来たら色んな意味で二人ともヤバいだろ!」
「・・・す、すみません。私としたことが取り乱しちゃいました・・・・・・・・・・・・・・・。」

慌てて瀬菜は声のトーンを落としたが、その口調からは興奮が一切拭いきれていなかった。


「こ、この後、『“赤城”じゃなくて・・・“浩平”だろ?“京介”。』っていうお兄ちゃんのセリフが入ります。
えへへ・・・ですから次の高坂先輩のセリフは・・・・・・」

なあ瀬菜、頼むから赤城のセリフをそんなにエロティックに言わないでくれ・・・さすがに気持ちわ(ry



ってだあぁぁぁ!!!何なんだこの羞恥プレイは!!!!!

277 :『俺たちのすれ違いがこんなにベタなわけがない』 [sage]:2011/03/07(月) 23:48:02.28 ID:i6qCzY5k0

話は30分前くらいに遡る。


授業が終わってから、俺は瀬菜との約束通りまっすぐゲー研の部室に行った。
ん?俺に放課後練なんてないぜ?
さっきも言った通り、さすがに3年で放課後練習してるようなクラスはほんの一部だけだ。


「瀬菜〜?いるか?」
「あっ、高坂先輩!わざわざ来ていただいてありがとうございます!」

瀬菜は部室のPCで何かのゲームを起動している。
・・・ってなんだ。またBLゲーか。
あれ?でもなんかこの二人のキャラ、どっかで見たことあるような・・・・・・・・・?
これってまさか・・・・・・・・・・・・・・・いや、どう見ても。


「俺と赤城・・・・・・だよな!?」

確か瀬菜は以前にもゲー研部員をモチーフにしたガチホモゲーを作っていたが、なんか前よりもリアルになってるんだが。


「やっぱりわかりますか?そうです。このキャラは高坂先輩とお兄ちゃんをイメージして作りました。ちなみに、お兄ちゃん×高坂先輩です」

もうなんか嫌な予感しかしねえ。
でも、一応聞かなきゃダメか?


「それで・・・俺に話っていうのは・・・・・・・・・」
「あ、それは・・・・・・その・・・・・・お話っていうかお願いで・・・」

なんかモジモジしてるお前を見てると益々いやな予感がしてきたな。
そしてその予感は見事に的中することとなった。


「そ、その、高坂先輩に、先輩モチーフのキャラの声優をやって欲しいん・・・・・・です」
「ええええええええええ!?」

ちょっと待ってくれ。いつもと雰囲気の違う後輩に呼び出されたと思ったら、
『ガチホモゲーの声優をやってください』だとぉぉぉぉぉぉ!?
とんでもねえ飛び道具だろ!
いや、だがむしろ相手が瀬菜って時点で俺も予測しておくべきだったのかもしれないが・・・。
278 :『俺たちのすれ違いがこんなにベタなわけがない』 [sage]:2011/03/07(月) 23:48:39.28 ID:i6qCzY5k0

「これはサンプルみたいなものなんですけど・・・・・・。
うまくいったら部長と真壁先輩にも協力してもらって・・・本格的に作ってみようかな、なんて考えてまして」

完成版計画まであるのか!
しかもお前、腐女子だってことは隠しておきたいんじゃなかったのかよ!?
完全に自滅に向かってるぞ!それともアレか、ついに欲望に負けちまったのか!?


「えっ!?いや、ま、待て待て待て待て!俺にも一応メンツっていうか世間体っていうもんがだな!」

だいたいにして俺が声をあてるってことは赤城もってことだろ?
赤城だってこんなのOKするわけが・・・・・・・・・


「お願いします!お兄ちゃんはいいって言ってくれたから、あとは先輩の声だけなんです!」

ですよねー。赤城が妹からの頼みを断るわけがないか・・・。


「あ・・・・・・いや・・・・・・あ〜・・・・・・」

まずい!なんとかして、なんとかして言い訳を探すんだ!俺!


「そ、それにお前さ!今朝、『そんなに長くはお時間いただきませんから』って言ってただろ!
これメチャクチャ時間かかるんじゃないのか!?」
「安心してください。フルボイスにするつもりはありません。重要なシーンだけちょこちょこっと生ボイスを・・・・・・」

瀬菜が慌てて補足を付け加える。
そうか。フルボイスじゃないのか。それなら少しは安心だな。
・・・ってそういう問題じゃねえ!


「いや・・・・・・でも・・・・・・それはさすがにさ・・・・・・」

明らかに戸惑っている(というか嫌がっている)俺の様子を感じ取ったのか、
瀬菜の顔が段々と曇ってきた。


すると突然、

「やっぱりダメ・・・・・・ですか?・・・・・・ううっ・・・・・・・・・ふえっ・・・・・・ひぐっ・・・・・・・・・」
「うおっ!ちょ、待てっ!」

・・・瀬菜の天気予報は曇りのち雨だったようだ。


「お兄ちゃんがぁ・・・せっかく・・・・・・ぅえっ・・・応援ッ・・・してくれたのにッ・・・・・・ううう・・・」
「泣くなって瀬菜!泣かないでくれ!」

女の子の涙ってなんかズルいよな。
なんかこう、言うこと聞いてあげたくなっちゃうだろ?


瀬菜が相当気合を入れて作ったであろうBLゲー。
自分が協力したのに俺が断ったなんて赤城が知ったら・・・・・・。
しかもそのせいで瀬菜を泣かせたなんて知られたら・・・・・・俺が赤城にガチで殺されかねん!
たとえ命が助かったとしても修羅場は避けられないだろう。
・・・よし、俺も男だ。ココは覚悟を決めるしかねえ!・・・・・・・・・のかよ!?誰か他に方法があるなら教えてくれ!頼むから!
男だからこそやりたくねえんだよ!!!



「わ、わ、わ、わかった!や、やる!やらせてください!だからもう泣き止んでくれ!」

結局、俺は折れた。心の中で一筋の涙が流れたような気がしたのは気のせいじゃないはずだ。


「ほ、ホントですか高坂先輩!?ありがとうございます!!えへへ・・・よかった〜」

瀬菜はさっきまでの泣き顔が嘘のようにパッと目を輝かせている。
お前、まさか本当に嘘泣きしてたんじゃねえだろうな?
279 :『俺たちのすれ違いがこんなにベタなわけがない』 [sage]:2011/03/07(月) 23:50:13.37 ID:i6qCzY5k0

・・・とまあ、こうして俺は人生初となるBLゲーのアテレコに挑戦することになったわけだが・・・・・・・・・


「先輩、次はちょっとエッチなシーンのセリフなんですけど・・・・・・うへへ・・・」

瀬菜・・・・・・・・・。耳元でハアハアすんのやめてくれないか?


もうヤだ!とりあえず今日はもうムリ!
よし、どうにかしてこの場から逃げ出さねえと・・・・・・・・・。

「あっ!お、俺さ!そろそろ、勉強するから帰るわ!」
「ええ〜、もう帰っちゃうんですか〜?じゃあ、続きは明日にしましょう。明日もよろしくお願いしますね。高坂先輩」

はあ〜。ようやく解放されたぜ。
ってまた明日だと!?
うう。とりあえず今夜は全力で明日の対策を練ろう。


・・・・・・アイツ、もう練習終わったかな?


・・・・・・・・・ん?
って待った待った!
帰る前にこれだけは絶対言っておかないとダメだろ!?

「な、なあ。このことはさ、その・・・アイツには内密に・・・・・・」
「アイツって・・・・・・五更さんですか?」
「お前も知ってると思うが・・・・・・俺とアイツは、つ、付き合ってるんだ」
「ああ・・・・・・・・・ええ、そうでしたね。そんなことは知っています」

急にそんな機嫌悪そうにすんなよ・・・
悪かったな!俺と赤城のイチャイチャを妄想してる最中に現実に引き戻すようなこと言っちゃってさ!


「だからさ、その・・・俺が・・・・・・その・・・こんなことをやってるってアイツが知ったら・・・・・・・・・」
「・・・わかりました。この件は五更さんにはまだ内緒にしておきます」

ふう・・・・・・。瀬菜、空気読んでくれてありがとよ。・・・って『まだ』だと!?


「おい!『まだ』って何だよ!?いずれはバラすってことか!?」
「ええもちろん。五更さんには、二人の禁断の愛の完成版を見せ付けちゃおうかなぁなんて思ってまして。うへへへへ・・・」

だ、ダメだこの腐女子・・・・・・・・・・・・・・・。

「わかってねえ!お前全然わかってねえだろ!」

もういい!こうなったら何としてでもこのBLゲーの完全版は阻止してやる!
ま、まずはコイツの兄を何とかして味方にしねえと・・・・・・・・・。

悲壮な決意を胸に、俺は部室のドアノブに手をかけた。


すると、それとほぼ同時に、ドアの向こう側で誰かがスタートダッシュした音が聞こえた。

俺は一瞬で自分が冷や汗かき始めたのがわかったね。
どこのどいつだよ!?聞き耳なんて立ててやがったのは!?
お前相当な悪趣味だぞ!?・・・・・・・・今の俺が言えた義理じゃないけどよ・・・orz

俺は急いでドアを開けて、足音が遠ざかっていく方に目を向けた。
盗聴犯はこっちを振り返りもしないで逃げていく。


・・・・・・ってあれ?あの後ろ姿って―


「アレって・・・・・・五更さんですよね?もしかして・・・・・・全部聞かれちゃってたんでしょうか・・・?」

あー。なんかもう冷や汗も引いちゃったよ。うん。

280 :『俺たちのすれ違いがこんなにベタなわけがない』 [sage]:2011/03/07(月) 23:51:48.93 ID:i6qCzY5k0

瀬菜は黒猫に聞かれていたことを気にかけてくれたが、俺は強がって平静を装い一人で帰路についた。

辺りはすっかり夕方。
朝はちょっとだけすがすがしく思った道も、今は全然魅力を感じない。
それは急に蒸し暑くなった気温のせいだけじゃねえ。

やっちまった・・・・・・最悪だ・・・・・・・・・・・・・・・。
ただでさえ喧嘩して向こうは俺を拒否してんのに、人生初となるホモゲーの声優デビューを聞かれちまった・・・・・・・・・・・・・・・。
おまけにわりとガチなテンションの時に。
しかもアイツはBLに結構抵抗あるみたいだし。
こりゃもう全速力で逃げられたのも全然納得できるレベルだ・・・・・・・・・・・・。



家に着いて自分の部屋で寝転んでからも考えることは同じ。

はあ〜。
俺は何度目かの大きな溜息をついた。
いや、溜息というよりは唸っていると言ったほうがいいのかもしれない大きさだ。
まさかよりによってこんな形で彼女に愛想つかされるなんて、俺はこれからどうすればいいんだろう?

それによくよく思い出してみれば、そもそもアイツが機嫌悪くなった原因も、俺がマスケラのことで出しゃばったからだったような・・・。
アイツに勧められてDVD漁りだして、ちょっと詳しくなったからって得意げに話合わせようとしたから・・・。
だいたい何で俺は怒って帰っていくアイツを止めなかったんだよ!?つまんない意地張ってねえで追いかければよかっただろ!!!
結局、こうなったのも全部俺のせいか。もう自分が嫌になってくるな。


ドッドッドッドッド・・・・・・


ん?足音か?


バタン!

「うっさい!何でさっきから溜息ばっかりついてるワケ!?部屋の外まで聞こえてるっつーの!」

突然部屋のドアが開いて妹様が攻め込んできた。

だから毎回毎回ノックくらいしろってんだよ。
それにしても、ドア一枚挟んだくらいじゃ溜息まで聞かれちまうのか。
じゃあやっぱりさっきのも部室の外まで聞こえてる・・・よな・・・・・・

「な・・・何の用だよ?」
「別に。あんたのデカすぎる溜息がうるさかったから文句言いに来ただけ」
「ああ、そうか。そいつは悪かったな」

普段とは違う俺の様子に気がついたのか、意外なことにあの桐乃が食いついてきた。


「それにしてもあんた・・・・・・どうしたのよ?なんか尋常じゃないくらいテンション低いじゃない」

俺はひたすら黙りこくっていた。
こいつに相談しても盛大に爆笑されて終わるだけだ。

「わかった。この間の模試の結果サイアクだったんでしょ?」
「それとも・・・お父さんに殴られるようなことやらかしたとか?」

突然『俺のテンションが低い理由当てクイズ』を始める桐乃。
桐乃よ、確かにその二つは幾度となく経験したことあるけど間違いだぜ。


「黙ってないで何とか言いなさいよ!せ、せっかくこのあたしが話しかけてやってんのよ!?
じゃあ・・・黒いのと喧嘩でもしちゃったとかぁ?」

桐乃がイタズラっぽくにやけながらモロに俺の心の傷口に踏み込んできた。

ああそうだよ!その通りだよ!
おまけに状況は更に悪化しちまったよ!(泣)


281 :『俺たちのすれ違いがこんなにベタなわけがない』 [sage]:2011/03/07(月) 23:53:01.92 ID:i6qCzY5k0
明らかに動揺した俺を見て察したのか、桐乃の表情も少しだけ変わったような気がする。

「えっ・・・もしかして・・・・・・図星・・・なワケ?」
「・・・・・・ああそうだよ。ご名答だ」

「なっ、何で!?も、もしかしてエロ本!?ベッドの下のエロ本がバレたの!?ねえそうなの!?」

コイツ何でこんなにエロ本に食いつくんだ?

「ちげーよ」

そう言うと桐乃は若干安心したかのような素振りを見せた。
一体なんだってんだよ?

「あ、あっそ・・・。そ、それじゃあ、あの邪気眼厨二病に愛想つかされるとかどんだけイタいことしたのよ?」
「・・・・・・・・・・・・。」

そうだよなぁ・・・・・・。
付き合いたての彼氏がホモゲーの吹き替えなんてしてたら、さすがにヒクよなぁ・・・・・・・・・。

「な、何よまた黙り込んじゃって!・・・・・・心当たりあるんだ。キモッ」
「結局お前は何が言いたいんだ?他に用がないなら出てってくれよ」

別にカッコつけるわけじゃないけど、今は一人にして欲しい。

しかし、俺の願いとは裏腹に、桐乃はいきなり中で何かが爆発したかのように一気にまくしたててきた。

「あーもうウザい!
そんなに黒いのと仲直りしたいんだったらウジウジしてないで電話するだの家に行くだの、何でもすりゃいいでしょ!?
と、隣の部屋にそんな死人みたいなのがいたらこっちまでテンション下がってくんのよ!」


・・・そうだ。
あれ以来、俺はまだ黒猫と一回もちゃんと話してない。
ましてや喧嘩のことを謝ってすらいねえ。
例のことだってちゃんと説明すれば・・・・・・・・・。
どんよりするのは面と向かってフラれてからでも遅くはないはずだ。


「桐乃・・・・・・・・・あ、ありがと・・・な。」
「は、はあ?な、何であんたから礼なんて言われなくちゃならないのよ?キモッ!ウザッ!」

妹様はその後もかなりひどい罵声を俺に浴びせながら俺の部屋から出て行った。
どうやら、愛すべき妹達が待っている自室へと帰っていったようだ。


・・・あいつって、何だかんだでいいとこあるよな。
桐乃、ホントにありがとよ。今度なんか奢ってやるからな。


心の中で桐乃への礼を済ませた後、俺は少し緊張しながら携帯電話を取り出した。

今度こそ、黒猫にちゃんと伝えよう。
282 :『俺たちのすれ違いがこんなにベタなわけがない』 [sage]:2011/03/07(月) 23:54:25.28 ID:i6qCzY5k0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

自然と急ぎ足で家に着いた頃には周りはもう薄暗くなっていた。

少し息切れして帰ってきた私を心配してくれた妹達には、
「体育祭の練習に付き合わされていたの。それに、今日は特別日差しが強かったから魔翌力の消耗が激しかっただけよ」
と、半ば無理にごまかした。
信じてもらえたかどうかはわからないけれど。

そして私は自分の部屋に入って机の椅子に腰掛けると、少しずつさっきの出来事を思い出してみた。


でもあれだけじゃ・・・その・・・・・・だ、断定は出来ないわ!何かの間違いかもしれないじゃない!
そ、そうよ。そんなこと有り得ない。

だって先輩と瀬菜がそんな・・・・・・・・・・・・・・・。


『ねえねえ。リア充になったあんたに、兄貴の秘密教えてあげよっか?』

その時不意に、頭の中にニヤッした彼の妹の声が響いた。

・・・そういえばあの子が言っていた。
先輩のベッドの下にある“お宝”には、『巨乳で眼鏡をかけた女性』ばかりが写っていると。
『両方ともあんたには無縁じゃんww大丈夫なの?wwwwww』
なんてからかわれたことを思い出す。


眼鏡はともかく、きょ、巨乳・・・・・・・・・


ここで私は、頭の中で自分の裸体を思い描いて小さな溜息をつく。
・・・残念ながら、どちらの要素もやはり私にはないものね。

今までは田村先輩にばかり嫉妬していて、瀬菜も条件に十分合致しているということを忘れかけていたわ・・・。
それに・・・・・・。今までの行動から見ても、彼はどうも年下を好んでいる傾向があるような・・・・・・。


私の中で状況がどんどん悪い方に進んでいく。

思い返してみれば、彼は妹の影響で今でこそオタク文化を理解し始めているけれど元々そういうものとは無縁な人間。
その・・・・・・恋人ととまではそんな話はしたくないのかもしれないし、恋人が重度の厨二病だったら嫌悪感を抱くかもしれない。
もしかしたら、私のアニメの話題やアニメキャラの口調にだって今まで無理をして付き合ってくれていたのかもしれない・・・・・・・・・。


で、でも、それを言うなら瀬菜だって―
彼女だって・・・・・・・・・彼女も・・・・・・・・・・・・・・・。

−いいえ、彼女は一応腐っていることを周りには知られないように努力しているのよね・・・。

283 :『俺たちのすれ違いがこんなにベタなわけがない』 [sage]:2011/03/07(月) 23:56:04.78 ID:i6qCzY5k0

〜♪♪♪

急に机の上の自分の携帯が鳴り出して、私はビクッと一瞬身を固めた。
この音楽は漆黒のテーマ。
私のお気に入りのBGMの一つ。
そして・・・。


着信:『高坂京介』


そして、彼専用の着信音。

早く出なければ。
これはチャンスよ。
彼から直接聞いてみるのが一番早いはずだわ。
ぐずぐずしていたらまた話す機会を失ってしまうわよ。

・・・でも、電話に出るのが怖い。
勿論、彼がそんな不誠実な真似をするとは思っていない。
彼はただでさえ嘘が下手だし、ましてや悪意のある嘘をつくような人ではないもの。
私は彼を信じたい。いいえ、信じてる。

でも・・・
もしもアレが私の勘違いなんかじゃなかったら?
もしも本当に彼に嫌われてしまっていたら?
もしも私の不安を彼の口から決定付けられてしまったら?
そんなの絶対に厭だ。
これ以上、彼との関係を崩したくない。
新しい情報が入ってくるのが怖い。


私が躊躇しているうちに、漆黒のテーマはぷつりと鳴り止んでしまった。


今度は大きな溜息をついた。
いつもはあれだけ強がれるくせに、自分は肝心な時になんて臆病なんだろう。
しばらくの間机から動く気にはなれなかった。


「ルリ姉ぇ〜。ご飯まだぁ?お腹空いちゃったよ〜」

妹の声にハッとして時計を見た。
いけない、もうこんな時間―

私は気を持ち直し、慌てて夕食の支度をするために台所へ向かった。


夕食の準備は上の妹も手伝ってくれたので無難に済ませることが出来た。
ありあわせで急遽作った食事だったのだけれど、わりと好評のようね。
下の妹は「ねえさま、とってもおいしいです」なんて言ってお代わりもしてくれた。
慰める、という意味でも自分を少し褒めてあげたいわ。

食事が終わって一気に睡魔に襲われたのか、下の妹がウトウトし始めている。
完全に眠ってしまう前にこの子をお風呂に入れようかと考えたその時、


ピ〜ンポ〜ン。


突然インターホンが鳴った。

両親が帰ってくる時間にしては早すぎる。
こんな時間に誰かしら?
夜の来客は何となくドキドキするものね。


「・・・・・・はい。」

しかし相手の声を聞くと、私のドキドキは一気に加速した。


「高坂・・・です。」



先・・・・・・輩・・・・・・・・・?

284 :『俺たちのすれ違いがこんなにベタなわけがない』 [sage]:2011/03/07(月) 23:58:15.78 ID:i6qCzY5k0

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


俺は今、五更家の前に来ている。
決死の思いでかけた電話はまたまたスルーされちまって正直へこんだが、俺はさっき決めたんだ。
黒猫にちゃんと伝えよう、ってな。
そう思って気持ちに任せて家を飛び出した。
こんな時間に親に断りもせず勝手に家を出たわけだから、帰ったらパンチを覚悟しなけりゃならんかもしれんが。

とてもいい感じの風が吹いている。
夕方は蒸し暑く感じた気温も、今はむしろ半袖の俺には涼しすぎるくらいだ。
こんな好条件も手伝ってか、自転車をすっ飛ばすと普段は歩いて30分くらいのところを10分くらいで着くことが出来た。
勇気付ける、っていう意味でも自分をちょい褒めてやりたい。

俺は軽く深呼吸した後、インターホンを押した。
初めてこの家に遊びに行った時より緊張してるかもしれない。
―今度は、ちゃんと出てもらえるかな?


ピ〜ンポ〜ン。


「・・・・・・はい。」
少々の間があった後、応対してきたのは間違いなくアイツの声。

「高坂・・・です。」
自分の中では精一杯無難な感じを装ったつもり。しかし向こうは何も言ってこない。
また応対拒否されるんだろうか?
そう思って俺が若干不安に駆られたその時―


「何の・・・御用かしら」

ようやくだ。ようやく会ってくれた。
見慣れた五更家の玄関から、若干俯きながら黒猫が出てきた。
月明かりに照らされたこいつの黒髪と真っ白な肌はとても綺麗だ。
思わずここに来た目的を忘れて見とれちまってたくらいだよ。

「それで?何の御用かしら、と聞いているのだけれど」

こいつなんか疲れてるのかな?いつもより覇気がなくて声が小さいような・・・。
それとも怒ってるんだろうか・・・?

「お前に・・・・・・話があるんだ」
「・・・だからと言ってこんな遅くに訪ねてくるなんて、私の都合も考えてほしいものだわ」
「いや・・・・・・それは・・・すまん」

こころなしかお得意の嫌味にも勢いがない気がする。

「そ、それで?早く用件を話して頂戴。私だって暇じゃな・・・」

「ごめんっ!」
黒猫の言葉を遮り、俺は勢いよく深々と頭を下げた。
地面しか見えないから相手がどんな顔をしてるのかはわからない。でも続けた。

「全部俺が悪かった!つまんねえ意地張ってお前のこと怒らせて、しかもほったらかしたりしてホントにごめん!」

まだ黒猫は何も言わない。

「でも・・・あれは・・・・・・その・・・き、昨日のは、瀬菜に泣きながら頼まれたから仕方なくっ」
「・・・・・・・・・グスッ」

いきなりすすり泣きが聞こえてきて、今度は俺が言葉を遮られた。
おそるおそる顔を上げて黒猫の方を見ると、なんと涙目になってこっちを見ている。
・・・俺、なんかまずいこと言っちゃったか?
285 :『俺たちのすれ違いがこんなにベタなわけがない』 [sage]:2011/03/07(月) 23:59:37.22 ID:i6qCzY5k0


その時、黒猫が戸惑っている俺の胸に飛び込んできた。
俺の服をギュッと掴みながら完全に泣いてしまっている。
震えている声が何とも切ない。

「・・・・・・・・・私は厭・・・」
「・・・黒猫?」
「あなたが私の元を離れていくのが厭・・・・・・」

俺がお前から離れる?

「わ、わたしは、眼鏡もかけてないし、巨乳でもないけど」
「おい、お前どうしたんだよ?」
「あなたと一緒にいたいの!だから捨てないで!」
「俺がお前を捨てるわけねえだろっ!」

「あなたが気に食わないって言うならコスプレもやめる。アニメの話し方も直すわ。だから・・・。」
「そんなこと俺は思ったことねえよ!俺だってお前とアニメの話すんのすげえ結構楽しいし!だからそんな風に言うな!」

俺は思わず大声を出していた。
正直こいつが何でいきなりこんなことを言い出したのかはわからない。
でも、こんなことはもう言ってほしくなかった。


「本・・・当・・・・・・?」

涙を浮かべた顔でおそるおそるこっちの様子を伺う黒猫。
それを見て俺は我慢出来なくなり、黒猫を強く抱きしめて叫んだ。
近所迷惑?知るかそんなもん!


「俺は・・・俺はありのままのお前が好きだ!
すげえ厨二病でイタいことばっか言うし、言い方もキツいけど・・・・・・
でもホントは誰よりも素直で優しくて頑張り屋で!俺や、桐乃のこともめちゃくちゃ大切に思ってくれてる!
俺は!そんなお前が大好きだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


黒猫は一瞬驚いたように固まっていたが、すぐに最高の返事を返してくれた。


「わ、私も・・・・・・・・・。へタレで鈍感でデリカシーの欠片もないけど・・・・・・そんな先輩のことが好き。大好き!」

286 :『俺たちのすれ違いがこんなにベタなわけがない』 [sage]:2011/03/08(火) 00:01:15.94 ID:gs4qd4nG0


街灯に照らされた五更家の真ん前で、俺達はしばらくの間抱き合っていた。
黒猫の体はとても温かくて心地いい。
こいつを抱いてるとすげえ安心出来る。
トータルたった3日くらいとはいえ、空白の時間があったから尚更なんだろうか。

・・・どのくらい時間が経ったんだろう?
なんか1時間くらいこのままでいる気がするけど、こういう時って案外そんなに経ってないんだよな。
我に返って見るとこの状況が急に恥ずかしくなってきた。
後々これは、『思い返すと死ぬほど恥ずかしくなる思い出ベスト3』に入るんじゃないだろうか?
俺は照れ隠しの意味も込めてさっきさり気なく感じた疑問をぶつけてみることにした。

「な、なあ・・・。お、お前さぁ、さっき・・・その・・・巨乳だの眼鏡だの言ってたけど・・・・・・」

いきなり話しかけられてビクッとしていたが、黒猫は俺の胸に埋めていた顔を上げて恥ずかしそうに答える。

「だって・・・あ、貴方の妹が・・・・・・。」
「なっ!?桐乃が!?」

あの野郎・・・・・・。
だからさっきベッドの下のエロ本に異常に食いついてたのか!
もしかしてアイツ、自分のせいで俺らが喧嘩したんじゃないかって気にしてたんじゃ・・・?
ってそりゃねーよな。いやいや、アイツに限ってそんな・・・・・・。
ちなみに同時刻、何故か桐乃が盛大なクシャミをしていたということを俺は知らない。


それからまた俺たちはずっとそのままの体勢から動かずにいたが、しばらくして、

「ね、ねえ先輩・・・。その・・・瀬菜のことは・・・・・・」
何故か少し思いつめた様子で黒猫がこう切り出してきた。

そうだった!そのことすっかり忘れてたぜ。
だがこうなった以上、瀬菜には悪いが・・・・・・。

「あ、ああ。悪かったな。嫌な思いさせちゃって・・・。
俺、アイツにちゃんと言うよ。『やっぱあの約束なかったことにしてくれ』ってさ」

「わ、私も!私も一緒に行くわ!」
「え゛!?な、なんで!?」

何でお前そんなに必死なんだ?

黒猫は消え入りそうな、そしてどこか寂しそうな口調で言った。

「その・・・・・・貴方が彼女とか、関係を持ってしまった責任の一端は、私にもあるのだから・・・・・・」

「い、いやいやいやいや!お前は来なくていいよ!ホモゲーの吹き替えごときでそんな大袈裟な・・・・・・・・・って、え!?関係!?」

「ホ、ホモゲーですって!?」

「・・・・・・・・・え?」

「・・・・・・・・・え?」
287 :『俺たちのすれ違いがこんなにベタなわけがない』 [sage]:2011/03/08(火) 00:04:13.67 ID:gs4qd4nG0


・・・こうして無事に黒猫の多大な勘違いが明らかになった。
全てが上手く繋がって、そのあまりにベタすぎる勘違いに俺は思わず吹き出してしまった。

「えっ、お前そんな風に思ってたのかよ?あっはははははははは・・・」
「な、何が可笑しいというの!?少しはこっちの苦労も考えて頂戴!」

だってさ・・・ホモゲーのアテレコと浮気現場を勘違いしてたなんて、なあ?

「でもよ・・・。だいたいにして真っ先に浮気を疑われるなんて、俺ってそんなに信用がないのか?」
「あ、あれは状況が状況だったし!そ、それに貴方だって!」

必死になって言い訳してるお前も可愛いな。


ニヤニヤしている俺に気がついたのか、黒猫は怪訝そうな顔でこっちを睨んだ。

「先輩。何を余裕ぶっているのかしら?話がこれで落ち着いたと思っているなら、それは大きな過ちだわ。」
「えっ?それってどういう・・・・・・」
「私と正式に主従関係を取り戻したいと願っているなら、条件があるわ。」

なっ、なに!?これでハッピーエンドじゃねえのかよ!?
しかもあえてツッコまんが主従関係だと!?

「目に見えてうろたえているようね。さすが人間風情は甘いわ。それでよく18年もの間生きてこられたものね・・・・・・。」

俺は確かにさっき言ったぜ?『ありのままのお前が好きだ』ってさ。
でもこれは開き直りすぎだろ!?

「条件は・・・・・・。」
「お、おう」
またコイツのことだからとんでもないこと要求してくるんじゃ・・・。


「も、もう絶対に私に隠し事はしないで頂戴。隷属である貴方が、主人である私に隠し事なんて絶対に許さないわ。
これはその・・・・・・“契約”じゃなくて“約束”よ。」

か、か、可愛い・・・・・・。
こいつ・・・その気になりゃあこんなに素直になれるんだな。
よし、そんなら俺だって。

「ああ、わかった。約束する。もうお前に隠し事はしない。じゃあさ・・・俺からも一つお願いしていいか?」
「なっ、何を言っているの!?じ、条件を出しているのは私の方なのに、貴方からなんてっ」

お前こそ『目に見えてうろたえているようね』なんて人のこと言えた義理かよ。


「だって“俺たち”が関係を戻すんだから俺ばっかり言うこと聞くのは不公平だろ?」
「そ、それは・・・・・・そうだけど・・・。」

黒猫は少し悔しそうで、かつ心配そうな表情をしている。
そんな顔しなくても雰囲気ぶち壊すようなことは言わねえって!


「まあまあ落ち着けって。まずは聞くだけ聞いてくれよ。
えーっとさ・・・・・・あ、明日からは毎朝迎えに来てもいいかな?一緒に学校行こうぜ。」
「えっ!?」

俯いていても、こいつの顔が真っ赤になっているのがわかる。
・・・まあ、俺も人のことは言えないんだけどな。


「それで?聞き入れてもらえるのか?女王様?」
「え、ええ・・・・・・・・・いいわ。これで、交渉は成立よ。それじゃあ・・・。」

そう言うと黒猫は、ピンクに染まった頬をしながらゆっくり目を閉じた。


「“約束”の・・・・・・証を示して頂戴・・・・・・」


これは・・・そういうことでいいんだよな?

俺も静かに目を閉じた。
もっとも、心臓の鼓動はかなりうるさかったけどよ。



そうして俺たちは、長い長い“約束の証”を交わした。
288 :『俺たちのすれ違いがこんなにベタなわけがない』 [sage]:2011/03/08(火) 00:06:07.97 ID:gs4qd4nG0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

昨夜、先輩が家に訪ねて来た時は正直とても驚いた。
同時にとても怖かった。
だから先輩に応対するのは、私の中では勇気を振り絞った行動だった。
心の準備なんて何も出来ていなかったから。
彼の口から私が恐れていた言葉が出てくるんじゃないかって不安だったから。
あの時の私は、事態を最悪な方向にしか考えられなくてネガティブな感情に押し潰されそうになってしまっていた。
そして、気付いたら自分の気持ちを抑えきれなくなっていた。

でも・・・・・・そんな私を彼は優しく抱きしめてくれた。

昨日は改めて彼の気持ちと自分の気持ちを確認することが出来て、とっても安心出来た気がする。


・・・少し、気恥ずかしさもあったのだけれどね。
家に帰った後の妹達のニヤニヤ顔といったら!
それに絶対にあれは近所に丸聞こえだわ・・・・・・・・・。


そして今私は、昨夜の約束通り先輩と一緒に登校している。


その・・・・・・ふ、二人で手を繋ぎながら・・・・・・・・・。


ご、誤解しないで頂戴っ。彼から私に頼んできたのよ。
も、勿論、最初は私は断るつもりだったわ?
公衆の面前でそんなことっ、は、ははは恥ずかしいじゃない!?

でも・・・・・・今の私はとても幸せだ。
顔が緩んでいくのを止めるのに精一杯なくらい。


・・・結局、すべてが私の取り越し苦労だったのよね。
そう考えると何だかドッと疲れてくるし、何だか屈辱的だわ・・・。
だ、だってあんなの完全に単なる私の被害妄想じゃない!
あんなにくだらないことであんなに取り乱していたなんて!は、恥ずかしい・・・。

・・・それにしてもあの魔眼遣い。無邪気で私をここまで狼狽させるなんて恐ろしい相手だわ。
この借りは大きいわよ?覚悟することね。いつか必ず貴女に不幸の星を落としてあげるわ・・・。フフフ・・・。


「高坂せんぱ〜い!五更さぁ〜ん!」
「げっ!?瀬菜!?」

丁度その時、瀬菜がこっちに元気よく走ってきた。
先輩、友人の妹相手にビビりすぎよ?
それにしてもなんという絶好のタイミングで現れるのかしら。

「・・・高坂先輩。この間のこと、五更さんは・・・・・・」
「ん?ああ・・・それならもう完璧に大丈夫だぜ!」

私の方をチラチラ見ながら遠慮がちに先輩に耳打ちする彼女に、彼はこっちを振り返ってから心底嬉しそうに答える。

「なーんだ。よかった!それだったら・・・・・・・・・。五更さん。ちょっと高坂先輩をお借りしても?」
「え、ええ。」

この子は本当にまったく無意識のうちに私達二人をあそこまで翻弄したのね。
さすがは魔眼遣い、油断のならない存在・・・・・・・・・。


「って何で逃げようとしてるんですか高坂先輩!今日も収録手伝ってくれるって約束したじゃないですか!?」
「あのなぁ・・・瀬菜・・・そのことなんだけどよ。悪いんだけど・・・・・・・・・」

先輩は申し訳ないようなホッとしたような調子で、なんとか彼女の御機嫌をとろうとしている。

「あら?手伝ってあげたら?先輩」
「へ?いや、でも」

先輩がさも意外そうな顔でこっちを見た。

「例えどんなに邪な“契約”でも、それを途中で破棄しようとするなんて、貴方のポリシーに反するのではなくて?」
「いや、まあそれはそうだが・・・・・・・・・」


『呆れるほどのお人好し』。
それが彼のいいところでもあるのだから、私に遠慮なんてしてほしくない。
本当は、私だけを見てほしい、という独占欲の塊のような気持ちも少しあるのだけれど。

289 :『俺たちのすれ違いがこんなにベタなわけがない』 [sage]:2011/03/08(火) 00:07:15.09 ID:gs4qd4nG0

「ふふ・・・。これで五更さん公認ですね。さあ、高坂先輩!今日はたっっっくさん喘いでもらいますからね!うへへへ・・・・・・」
「うげえっ!?そんなシーンまで録るのかよ・・・・・・orz」

・・・でも、この場合は逆効果だったかしら?悪いことをしちゃったわね、先輩。

「先輩、やっぱり私も一緒に行くわ」
「んなっ!?何でお前が来るんだよ!?そのことはもう誤解が解けただろ!?」
「随分とつまらないことを訊くのね先輩。そんなこと決まっているでしょう?」


何故って―


「も、もしかして・・・五更さんもお兄ちゃん×高坂先輩が好きに・・・」
「そ、そんなわけないじゃない!莫迦なことを言うのはそのくらいにしておいて頂戴!」


何故って―


「・・・追い込まれた先輩の醜態に興味があるからよ。ねえ先輩?せいぜい四苦八苦して私を楽しませて頂戴」
「!?五更さんって・・・かなりのSですね・・・・・・・・・」
「クソッ・・・彼氏のホモボイス収録風景見て何が楽しいってんだ!?この、ドS猫!!!」

私の方をいかにも恨めしそうな目つきで見る先輩。
それを見ると思わず自然と笑みがこぼれてしまう。


ねえ、先輩。本当はね。


何故って―

ほんの少しでも、貴方ともっと一緒にいたいからよ。

・・・なんてこと、今の私じゃ絶対に面と向かっては言えないわ。
や、闇の眷属である私は・・・その・・・・・・あ、あまり火照ると影に帰らなければならなくなってしまうのよ。


でも、もう少しだけ待っていて頂戴。
私が、あと少しだけ素直になれるまで・・・。

(終)
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 00:08:55.90 ID:gs4qd4nG0
以上です。
長々と失礼しました。
書いてる途中でベタになっちゃったのは内緒ですが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 00:20:33.61 ID:cjrevfuAO
まだ読んでないけど先に乙です
風呂でゆっくり読んでこよっと

防水ケータイ万歳
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/08(火) 00:28:05.91 ID:yztMNObOo
わふぅ
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 00:28:36.97 ID:I24wdI4uo
乙すぎる
頬の引きつりが止まりません
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 00:55:49.12 ID:cjrevfuAO
なんという良作…
笑ってしまうようなすれ違いも俺妹っぽくて面白かった
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 01:10:12.70 ID:RoXLAdNjo
ウホッ!いい黒猫ss
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 01:11:05.85 ID:0sPw7t02o

かわいかったぜ
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 01:38:51.14 ID:tbs5nA+SO
乙!面白かった
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 01:57:45.55 ID:+qPi94uMo
乙だぜい!

それにしてもあやせSSといい、黒猫SSといい……。
俺の心が憤死してしまいそうになるSSばかりだ!!
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 02:17:15.21 ID:PFcZHM+/0
やっぱ黒猫だね


もちろん桐乃もあやせも沙織も加奈子もブリジットも赤城もリアもフェイトさんも外せないけどね
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 05:37:43.74 ID:uaLHFozP0
先輩×お兄ちゃんも外せませんよね
勿論真鍋先輩×部長もいいんですけど
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 10:33:45.82 ID:0cAxrmKDO
ニヤニヤが止まらないww
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/08(火) 10:35:29.36 ID:Dt/7Lt+H0
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 11:30:53.74 ID:cjrevfuAO
>>300
真鍋先輩はけいおん
俺妹は真壁先輩
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 12:11:22.29 ID:NvkygtoSO
>>290
乙です
展開がかなり俺得でした
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/08(火) 15:56:16.61 ID:AiALbyJK0
乙!
そしてありがとう!
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 18:23:49.78 ID:cJe4F3qAO
乙。やっぱりベタな王道は良いよな
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 19:19:10.65 ID:s4+v7UlLo
力作乙。
よければブリジット√書いてもいいんだぜ?
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 22:30:55.17 ID:ecScAh8AO
>>307
いつも歪みねえな……
ときには自分のリビドーを解き放っても良いと思われ
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 23:05:25.35 ID:99GPz+M+o
誰かブリジット書いてやってくれ…
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 23:38:23.31 ID:+JqzFb400
ブリジットかわいいよブリジット
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 23:41:56.48 ID:s4+v7UlLo
こうなったらセルフでブリジット√書く。待ってろ下さい
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 23:43:20.32 ID:OTOMUHdq0
黒猫ばっかカラコン描写されてるけど、実際桐乃もカラコンだよな。
あんな綺麗な空色、外人でも見ないし。
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 23:50:35.59 ID:I24wdI4uo
>>311
鼻の下伸ばして待ってる
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 23:54:43.04 ID:99GPz+M+o
>>311
意外な展開へ向かったな
見せてもらおう、歪みないブリ好きのSSとやらを
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 00:04:47.76 ID:aphiU9Ato
>>311
おいおい。
せっかくお前のために即興で書いたというのに……。無駄になっちまったな。
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 00:07:35.58 ID:k1Ouee8ko
>>315
なん……だと……?
ありがとう是非投下しちゃってくれ。ネクタイ装備して待ってる
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 00:08:18.95 ID:aphiU9Ato
んじゃ、投下。
台本形式の小ネタだ。期待しないでくれよ。
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/09(水) 00:10:44.77 ID:aphiU9Ato
ブリジット「マネージャーさん、マネージャーさん」

京介「お?どうした、ブリジットちゃん」

ブリジット「マネージャーさんに聞きたいことがあるんです」

京介「そうか。で、聞きたい事ってなんだ?」

ブリジット「"せいこう"ってなんですか?」

京介「せいこう?どういう字を書くんだ?」

ブリジット「ちょっと待ってくださいね。えーっと……」カキカキ

ブリジット「こうです!」ババーン

京介「ぶふぉっ!!」

ブリジット「わぁっ!どどどうしたんですか、マネージャーさん!?」

京介「い、いや、なんでもない!ホント、大丈夫!」

ブリジット「そうですか、ならいいんですけど……。で、これってどういう意味なんですか?」

京介「あー、そうだなー……。(オイィィィ!!誰だよ、ブリジットに"性交"なんて教えやがったヤツは!)」

京介「その前に、その言葉は誰に教えてもらったのかな〜?」

ブリジット「かなかなちゃんです!」

京介「そ、そうか……。(あんの糞餓鬼ィィィィッッ!!!!)」

ブリジット「それで、かなかなちゃんにも聞いたんですけど、『オメーにはまだ早い』って言われちゃって……」

京介「そうかー……。(あー、一応常識くらいはあるんだな)」
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/09(水) 00:11:12.21 ID:aphiU9Ato
ブリジット「けど、『どうしても知りてーなら、糞マネにでも聞いてみろよ』って言われたんです」

京介「そうかー……。(俺に振るんじゃねえよ糞餓鬼ィィィィッッ!!!!)」

ブリジット「というわけで、教えてくださいマネージャーさん!!」キラキラ

京介「そ、そうだなー。(どうしよう。めっさキラキラした瞳で見つめられてるんですけど……)」

ブリジット「」キラキラワクワク

京介(ワクワクしだしたーーーーーー!?どうする、どうするよ俺ッ!!)

京介「えっとだな……。(下手なごまかしは、良くないよな……。ええい、仕方ない!)」

ブリジット「はい!」キラキラワクワク

京介「性交ってのは……、sexのことだ」

ブリジット「へ……?」

京介「sex。make love。言い方は色々あるが、まあそういうことだ」

ブリジット「あ、あの!私、すごく恥ずかしいことを!?あわわわわ……///」

京介「うん、ブリジットちゃんにはちょっと早かったかな。聞き流してくれていいぞ」

ブリジット「あうー……///」

京介「今日はもう帰ろうか。ブリジットちゃんも疲れただろ?(精神的にもな)」

ブリジット「は、はい。そ、そうですね……///」

京介「さ、着替えて帰ろう。俺は部屋の外で待ってるから」テクテク

ブリジット「……あ、あの!マネージャーさん!」

京介「ん?どした?」

ブリジット「あ、あの……、あのですね……。あと、あと六年くらい経って、私が大きくなったら……」

ブリジット「私と性交してくれますか!?」///

京介「へ?」




おわり
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 00:12:01.50 ID:aphiU9Ato
以上。
10分程度じゃコレが限界。
つーわけで、期待しているぞ。>>311
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 00:13:37.27 ID:2z49Nifc0
>>320乙!
俺も何か書こうかねぇ……
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 00:18:31.57 ID:k1Ouee8ko
>>320
乙。
完全に無意識でフヒヒと笑ってしまった
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 00:23:34.01 ID:GvD7LSjgo
>>319
乙!

ブリジット16歳か…
間違いなく美少女
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 00:45:21.85 ID:vd56INWdo
>>320


>>311>>321
期待
325 : ◆5yGS6snSLSFg [sage]:2011/03/09(水) 03:04:04.35 ID:k1Ouee8ko
「ただいま。……あれ? 出掛けんの?」
「おかえり。うん、ちょっとね」
「どこ行くんだ? そんなにやにやしちまってよ」

帰宅早々玄関で靴をはく桐乃を見つけ、なんとはなしに声をかけた。
オシャレな恰好はいつも通りだが、今日はそれに加えて満面の笑みが張り付いていたからだ。

「えっへっへ〜、今からブリジットちゃんとメイト行くの」
「ブリジットと? おまえ、ブリジットに嫌われてなかった?」

偽装デートの一件以来、ブリジットにとってこいつはメルルを莫迦にしたお姉さんとしか映っていないはずだが。

「あやせが取り計らってくれたの。あたしがオタクを莫迦にしてるって誤解もといてくれたしね」
「ふーん」

あのあやせがねえ。そんなことはないんだろうけど、あやせの場合なんか裏がありそうで怖い。

「あ……昼からは家で一緒にメルル見るけど、ブリジットちゃんに色目使ったらぶっ[ピーーー]から。大人しく部屋に籠っててよね」
「つーかーわーねーえっての」

だから、俺はロリコンじゃないって言ってるだろ。

「ふんっ、どうだか。……行ってきます」
「……行ってらっしゃい」



リビングにあるソファで横になっていると、玄関の扉が開く音がした。

「帰って来たのか?」

寝ぼけ眼をこすり、玄関へと繋がる扉を見つめる。
すると、ガチャリとその扉が開いた。

「今日はお母さんたちいないから、ここの大きいテレビで見れるよ」
「お、おじゃまします……」

桐乃に続いて、ブリジットが申し訳なさそうに顔を出す。今日の彼女は白いワンピースを着ていた。綺麗なブロンドと相まってとても似合っている。
俺の姿を見つけた桐乃が途端に嫌そうな顔をした。

「げ……あんた、そこで何してんの? 今日はここでメルル見るって言ったじゃん。さっさと部屋に戻ってよね」
「俺がどこにいようが俺の勝手だろ? ……心配しなくてもおまえらが帰ってきたらどくつもりだったさ」

渋々ソファから重たい腰を持ち上げ、自分の部屋へと足を向ける。
ブリジットはというと、先ほどまでの険悪な空気にすっかり怯えていて桐乃の後ろに隠れるようにしてこちらの様子を窺っていた。
……ブリジットに悪い事しちゃったかな。
しかし、たった半日一緒にいただけだと言うのにえらく懐かれてるな。
まあ、元から趣味は一緒だしな。それにリアにも好かれていたことから考えるとこいつは姉としての才能があるのかもしれない。
そんなことを考えながら、桐乃たちの方を横目で見つつすれ違う。
326 : ◆5yGS6snSLSFg [sage]:2011/03/09(水) 03:05:25.18 ID:k1Ouee8ko
「あれっ?」

俺と目があった瞬間、ブリジットが疑問の声をあげた。

「あの……まちがってたらごめんなさい…………もしかして、あの時の彼氏さんですか?」
「「げっ!?」」

うめき声に近い声をあげる俺と桐乃。
しまった……加奈子と同じ感じで大丈夫だろうと勝手に脳が判断してた。よくよく考えたらそんなことありえないのに。
そして、それは桐乃も同じだったらしい。
おろおろと慌てるばかりで、一向に言い訳が出てくる気配はない。
最終的にこちらをキッと睨み付け、「早くなんとかしなさいよ」というオーラをこれでもかと迸らせている。

「はっ!?  ま、まさか“同棲”というやつですか!?」

ブリジットが全力で行ってはいけない方向に勘違いし始めたこともあり、仕方なく俺が事情を説明してやった。
まったく、桐乃もこれくらい自分でやれよな。なんでそんなに慌ててんだよ。

「とまあ、そういうわけだ。わかってくれたか?」
「はい」

ブリジットはにこりと微笑んで素直な返事をくれた。誰かさんもこれくらい素直ならいいのにな。

prrrrrrrr

俺がブリジットへの説明を終えるのを待ってくれていたかのようなタイミングで桐乃の携帯電話が鳴った。

「あやせ? どうしたんだろ」

さてと、俺がここにいてももうやることないし自分の部屋に戻るか。
桐乃が電話中なので無言で立ち去ろうとすると、ブリジットが俺に手を振ってくれた。
その微笑ましい光景に思わず頬が緩んでしまう。小さい子って、いいなあ……。
はっ!? ち、違うぞ!? 今のはロリコン的な意味ではなくてだな。どちらかというと娘を想う親父のような気持ちなんだよ! きっと!!
一人勝手にどきどきしてしまった気恥ずかしさから、足早にリビングを後にする。
すると、俺が階段の一段目に足をかけたところでリビングから桐乃の叫び声が聞こえてきた。

「嘘でしょ!?」

なにごとかと思い、リビングへと戻る。
リビングの中を見ると、桐乃が青ざめた表情で電話をしていた。
桐乃の台詞から電話の相手かはあやせだと思われるが、あやせとの電話で桐乃が青ざめるような事態ってなんだ?
まさか、またオタク関連じゃねえだろうな。
だとすると、また俺がいわれもない変態のそしりを受けたり、あやせからハイキックをもらたりすることにならないとも限らない。
ううっ、考えただけで胃が痛い。桐乃だけでなく俺も青ざめちまいそうだ……。
327 : ◆5yGS6snSLSFg [sage]:2011/03/09(水) 03:07:27.51 ID:k1Ouee8ko
「どうしてもあたしじゃないと駄目なの? ………………そっか。わかった。今から行くね」

ピッと電話を切った桐乃はまるでこの世の終わりかというような顔をしていた。

「お、おい……桐乃? いったいどうしたんだ?」
「今日来るはずだったモデルの子が急にこれなくなって、それで代打が必要なんだって」
「お、おまえ以外にはいないのか?」
「もう服は変更がきかなくて、その子の体型に一番近いのがあたしだから……」
「そ、そうか……」

そりゃあ……ご愁傷様。モデルも大変だな。  ・ ・ ・ ・ ・ 
がっくりうなだれる桐乃をなぐさめるため、俺はブリジットに声をかけた。
腰を落とし、目線の高さをブリジットと合わせる。

「お姉ちゃんな、これから仕事に行かなくちゃならないみたいなんだ。悪いな。もしよかったら、また、一緒に遊んでくれるか?」
「そうですか……でも、わかりました。お仕事がんばってくださいね」

ブリジットは一瞬残念そうな顔をしたものの、すぐさま笑顔を作って見せた。
こんな風に割り切れるのも、小さいながらに仕事の大変さをわかっているブリジットならではだろう。

「だってさ。ブリジットは俺が送るから、おまえは仕事頑張ってこい。今から行くってことは急ぐんだろ?」
「……うん、ありがと」

妹の意外な素直さに少し驚いたが、「でも」とさらに言葉を続ける桐乃。

「あんたブリジットちゃんに馴れ馴れしくしすぎ。ちょーキモい。……このロリコン」
「ぐっ……」
「お兄さんはロリコンなんですか?」
「決して違う!」



「ブリジットちゃんに手だしたらぶっ[ピーーー]からね!」

先ほどまでばたばたと何やら用意していた桐乃だったが、そんな不穏な捨て台詞を残して出て行き家には俺とブリジットが取り残された。

「さてと、桐乃も行っちまったし帰るか? 送ってくよ」

そういえばブリジットってどこに住んでるんだろ。
しかし、ブリジットはうつむきがちにもじもじするだけで、うんともすんとも言わない。

「どうしたんだ?」
「あ、あの……せっかく来たので……彼氏さん……じゃなかった。お兄さんとお話ししたいなあ……なんて。ダメですか?」
「お、俺と?」
「はい」
「俺はいいけど、俺と何を話すんだ? あ、その辺適当に座ってくれ」

言っとくけど、あの桐乃の兄貴だからってメルルとかに特別詳しいわけじゃないからね。
そりゃ、その辺の一般的な高校生とかよりは詳しい自信はあるけどさ。悲しいことに。
すると、二人掛けのソファの片隅に腰をおろしたブリジットが口を開いた。
328 : ◆5yGS6snSLSFg [sage]:2011/03/09(水) 03:08:59.40 ID:k1Ouee8ko
「れっ、恋愛についてですっ!」
「ぶふぉあ」

ブリジットの宣言に思わず吹き出してしまう。
俺は、若干顔をひきつらせながら、

「あ、あのね……さっきも言ったけど俺と桐乃は兄妹で、恋人同士じゃないんだよ?」

と、諭すように優しく言ってやる。

「じ、実はお兄さんが私の好きな人にふんいきが似てたので……それで、ちょっと相談というか……お話聞いてもらえたらと思って……」
「え…………ブリジットちゃんにも好きな人ができたの?」
「は、はい」

顔を真っ赤にしてうつむくブリジット。
ま、まじかよ。誰だ、そのうらやまけしからんやつは。以前会った時は好きとかよくわからないって言ってたのに。
やっぱり同い年くらいのやつなんだろうか。でもこの年頃の女の子って、うちの妹のもそうらしいけど、同い年のやつはガキに見えるらしいから年上だったりするのかな。
だとしたら、俺はそいつをロリコンと呼ばざるを得ない。こんな小さな子の純情を弄ぶなんて許せん。
……弄ぶのくだりは完全に俺のイメージだけど。
だが、この前まで好きってのもよくわからないと言っていた子が、いきなり「好きな人ができた」とか言うのは年上として少し不安ではある。まさか、ほんとに騙されてなんかいないだろうな。

「その人ってどんな人なんだ?」

さりげなくどころか直球で探りを入れる。
……しまった。探りを入れるにしても、もっと上手い言い方があったろうに。
これじゃあ、ただの出歯亀じゃねえか。

「じ、実はその人、ちょっと前まで私とかなかなちゃんのマネージャーやっててくれた人なんですけど……」

……ま、まさか……嘘だろ?

「じむしょの人に聞いたら、もうやめちゃったって聞いて……連絡先も……わからないって」

最後の方はほとんど泣き出しそうになっていた。
あれ以来、あやせからの相談は受けていない。こいつらに俺の素性聞かれたらどうすんだろうと思ってはいたんだが、まさかやめたことになってるとはな。
ひょっとすると、俺のマネージャーの真似事は前回をもって完全に終了ということだろうか。

「この前、お兄さんたちを見てやっとわかったんです。これが好きって気持ちだったんだって。せめてありがとうくらい…………ふぇぇ……ぐすっ……」

感極まったブリジットはついに泣き出してしまった。
い、痛い! 心が痛い! 半分俺のせいで泣かしてるみたいなもんだし!
これはばらすべきなのか? いや、でも、あやせに黙ってばらしちゃってもいいもんだろうか? 後になってあやせに怒られるのだけはまじで勘弁願いたい。
329 : ◆5yGS6snSLSFg [sage]:2011/03/09(水) 03:10:04.41 ID:k1Ouee8ko
「うう……ぐすっ…………ひっく…………」
「………………ブリジット」
「ふぁい?」

俺の呼びかけに反応したブリジットは、目に涙を浮かべながらこちらを見上げる。
なんだか背徳的な感じがして、不覚にもどきりとさせられてしまう。

「ちょっと待っててくれ」

そう言い残し、ブリジットの返事も聞かずに自分の部屋に駆け上がる。
机の引き出しを開け、お目当ての物をひっつかみ、急いでブリジットのもとへと戻る。

「ふう……待たせたな」
「お、お兄さん? どうしたんですか?」
「ちょっとな」

そのまま歩を進め、ブリジットの隣に腰を下ろす。
そして、先ほど取ってきたお目当ての物・サングラスをかけ、片手で自分の前髪をかきあげた。
効果は抜群だったようで、先ほどまでべそをかいていたブリジットの表情がぱあっと明るくなる。

「マネージャーさん!」
「悪かったな。色々、事情があってさ」

ブリジットはぶんぶんと首をふり、怒ってないことをアピールしてくれる。
そして、

「マネージャーさん!」

もう一度大きな声で叫ぶと、そのまま俺に抱き着いてきた。
そのまま、ぐずるブリジットの頭を撫でてやる。ブリジットの綺麗なブロンドヘアーは、その見た目に違わずさらさらだった。

「ごめんな。でも、これ加奈子には内し――」

がちゃり。
リビングに不吉な音が響いた。

「あ、あああ、あんた……」

俺の腕に頭を抑えられ、苦しそうにぐずっているブリジット。
現行犯で逮捕されても文句は言えない。
330 : ◆5yGS6snSLSFg [sage]:2011/03/09(水) 03:11:39.40 ID:k1Ouee8ko
「ちっ、違うんだ! これには深いわけが!」
「黙れロリコン! あんだけ言ったよね!? ブリジットちゃんに手を出したらぶっ[ピーーー]ってさあ!」
「人の話を聞け!」
「問答無用!」

ぐわ、と手を振りあげた桐乃を見て覚悟を決め、俺は静かに目を閉じた。
俺の顔を衝撃が襲うのをいまかいまかと待っていたが、一向に衝撃は襲ってこない。
何事かと思い目を開くと、そこにはブリジットが立ちはだかっていた。

「わたしのマネージャーさんをいじめないでください!」
「ブ、ブリジットちゃん!? どいて、そいつ殺せない!」
「殺しちゃだめです! お姉さんのばか〜!」

ブリジットが発した言葉は桐乃にとって致命傷だったようだ。
ぺたん、とその場に座り込みがっくりと項垂れる。

「あとで…………説明……してもらうかんね」

力なくそう呟くのが精一杯みたいだった。
我が妹ながらこの反応はどうなの? ブリジット溺愛しすぎじゃね? それに比べて俺の命の軽い事……。
本気で殺しにかかってきたわけじゃないってのはわかってるけどな。

「お姉さん、今せつめいします」
「「えっ?」」

またしても俺と桐乃の声がハモる。

「わたし、この人とけっこんするんです! よろしくお願いします、お義姉さん!」

もはや口を開けて茫然とするしかない俺たちをよそに、ブリジットは一人にこにこといつもの素直な笑顔を湛えていたのだった。



おわり
331 : ◆5yGS6snSLSFg [sage saga]:2011/03/09(水) 03:13:16.21 ID:k1Ouee8ko
しまった、今になってsaga忘れたことに気付いた

ブリジットの棒っぷりがたまりません。おやすみ
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 03:26:41.48 ID:aphiU9Ato
>>331
コレは乙と言わざるを得ない。
そして……お前だったのかーーーーーー!!
沙織スレ、いつも見てます!超頑張ってください!

一個だけ言えるとすれば、京介と結婚したら、ブリジットが義姉になるんだぜ。桐乃は義妹になるんだぜ。
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 04:14:20.84 ID:pndSb89AO
乙乙
やっぱりブリジットの幼恋は和む…。
他のヒロインだとアフターストーリーでない限りこうも好き好き光線出さないから余計にそう思う

どいてそいつ殺せないワロスww

ちょっとだけ違和感あったんだけど「決して違う」は「決して〜ない」で結ばないんだったら
「断じて違う」とかのがいいんじゃまいか
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 05:45:32.69 ID:/KW12IDAO
乙です!
桐乃は両方に嫉妬することになるのかw

俺もひとつ気付いたんで指摘
「莫迦」は痛系キャラ(俺妹では黒猫)が使う言葉なんで、桐乃や京介の台詞には普通に「馬鹿」がいいかも
確か原作でも黒猫だけだった希ガス
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 07:14:33.71 ID:SwuzvebDO
ブリの親父に挨拶に行くのはなかなか勇気いりそうだ
336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 07:52:15.14 ID:GvD7LSjgo
親父もガチオタなんじゃなかったっけ?www
言葉通じないのはキツイけど
337 : ◆5yGS6snSLSFg [sage saga]:2011/03/09(水) 08:20:01.21 ID:k1Ouee8ko
感想、指摘ありがとう。ためになります
>>332に関しては、ブリジットが桐乃を義妹、桐乃がブリジットを義姉と呼ぶのはどうにも違和感が拭えなくてこうしました
まぎらわしくてすいません

言い忘れてた
また書きにくるよ
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 11:31:44.04 ID:Zvzf0Zn+0
リア「どいつもこいつもブリジット・ブリジット・ブリジット!なぜブリジットは書いてこのわたしを書かない」
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 11:37:41.39 ID:vd56INWdo
あまり需要がないかr・・・ゲフンゲフン
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 12:22:35.45 ID:Kt76eZ6DO
アニメしか見てない人だと、リアを知らない人もいるじゃん
だからじゃね?
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 13:17:04.76 ID:mktyZTPDO
リアはブリジットと比べてロリ設定が使いにくいイメージがある
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 13:23:19.73 ID:Hb6EpATq0
誰かリアが遊びに来た日に京介とお風呂入ってたっていう話キボンヌ
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 13:49:14.04 ID:Qm1eQ3+H0
そういえば最近沙織と麻奈実のSSも見てないような
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 14:01:52.03 ID:aphiU9Ato
沙織SSはお、今書いてるからちょっと待って。
今日中には投下できるから。
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 14:06:37.45 ID:ade9wfDDO
期待しちゃう
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 14:21:11.16 ID:Qm1eQ3+H0
>>344
おお!
楽しみに待ってます
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 14:35:07.14 ID:/KW12IDAO
>>344
ktkr
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 14:59:46.94 ID:aphiU9Ato
うし、書けた。
今回は少し長いけど勘弁ね。あと簡易設定として、

京介:22歳 大学四年
沙織:20歳 大学二年

となっている。成人しているってことね。

以下、投下。
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/09(水) 15:01:28.52 ID:aphiU9Ato
「んあ……」

あー……、朝か。
陽光がカーテンの隙間から差し込み、陽気なスズメ達が新しい一日の訪れを歓迎している。
俺は体にかかっているシーツをどけ、上体を起こした。俺は裸で寝ていたので、今はちょっと寒い。それにしても……あー、頭痛えぇぇ。
右手で頭を押さえながら、左手でベッドを押し、立ち上がろうとした俺だったが……

むにゅ♪

あー、なんだ?今の感触は。
その正体を探ろうと、俺は左手がある方向へ目を向けた。そこには……一糸纏わぬ姿を惜しげもなく曝け出している超美女がいた。

「へ……?」

え?ちょっと待て。このお美しいご婦人はどちら様?何で俺のベッドで寝てるの?しかも裸で。
なんとか寝る前の記憶を探ろうとするも、さっきから引いてくれない鈍痛が、俺の思考を妨害する。
ダメだ……、思い出せん。つか、ここドコ?よくよく見たら俺の部屋じゃねえぞ!?
え?いやマジでどうなってるの?そういえば、何で俺も裸?
朝起きたら見知らぬ部屋で、隣には知らない美女がいて、お互い裸……だと……?軽くホラーじゃねえか!?
オーケーオーケー。落ち着けよ、俺。まずはこの状況を冷静に整理しよう。

Q.ここはドコだ?  A.知らない部屋だ。
Q.何故、俺は裸?  A.まったくわからん。
Q.この隣の美女は? A.存じ上げない。

……なるほど、わからん。何もわからんことがわかった。
って、何にも解決してNEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!11
と、とりあえずだな、まずは服を着よう。うん、それが良い。そうしよう。ちょっと寒いしな。
今にも声を張り上げそうな自身を抑え込み、俺は室内を見渡す。俺の服はベッドのすぐ傍に有った。
下着を身に着け、ジーンズを穿きながらも俺は考えていた。昨日の夜は、何してたっけか?
確か……、うん飲んでた。外で飲んでたんだ。しかも俺一人じゃなかった。誰とだっけか?
服を全て身に着け、昨日の行動を何とか思い出そうとしている俺の耳に、可愛らしい声が届く。

「んぅ……」

ここで言い訳をさせてほしい。俺は昨日の行動を思い出すだけで精一杯だったんだ。だからさ、失念していたんだよ。ベッドで寝ていた女性が……裸だったのを。
首だけベッドの方向に向けた俺は、その姿勢のまま固まった。
考えてもみてほしい。顔だけじゃなく、その肢体もパーフェクトと言わざるを得ないスーパービューティーが、寝ぼけ眼でこちらを見ているんだ。
男性諸君、君達ならばわかるだろ?そんな神の作品……、いや美神が目の前で無防備な姿をしていたら、俺と同じ反応になるはずだ!

「あ、おはようございます。京介お兄様」

おまけに声も美しいだと!?なんだ、この完璧超人は!これでメガネを掛けていたら、もう言うことは無い!断じて無い!!
……ん、ちょっと待てよ。今、このヴィーナスは俺の名前を呼んだ。それはいい。だが、普通の呼び方じゃ無かったよな?
このアフロディーテは何と言った?――――「京介お兄様」だと?

「え?お、おま……おま……」
「あ、あの……。そんなにジロジロ見られると、恥ずかしいです……///」

ご婦人は体を覆っているシーツを口元まで持っていき、頬を赤らめながらそんな可愛いらしいことを言ってきやがった。
ぐふっ!圧倒されただと!?
俺はそんなサービスシーンを前にしながらも、なけなしの理性を総動員させて目を背けることに成功した。自分で自分を褒めてあげたい。
視線をどこに向ければいいか迷っている俺の背後では、小さな衣擦れの音が聞こえてくる。おそらく、先程の女性が服を着ているのだろう。
くそう、なんでこういう時って聴覚が敏感になるんだ?この原理を解明できたらノーベル賞取れるんじゃねえか?
俺は脳内を駆け巡る様々な疑問や邪念を振り払いながら、なんとか後ろにいる女性に話しかけた。

「あ、あの……つかぬ事をお聞きしますが……。沙織さんですか?」
「へ……?もう、何を仰っているんですか?わたくしは沙織ですよ……ふふっ」

やっぱりそうだ!俺のことを「お兄様」なんて呼ぶのは沙織だけだもんな!しかもお嬢様モードの!
あー、良かった。沙織だったのか。ふぅ、焦って損した。
……あれ?そうなると、俺は沙織と閨を共にしたということか?なんで?
『謎が一つ解けたら、新たな謎が出てきた』。な……何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何をされたのかわからなかった……。
頭がどうにかなりそうだった……。催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……。
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/09(水) 15:02:35.63 ID:aphiU9Ato
お互いに服を着終えた俺達は、改めて向き直った。俺にははっきりさせておかねえといけないことがあったからな。

「沙織……。聞きたいことがある」
「はい、なんでしょう?」

沙織はフリルブラウス、ブラウンのシフォンスカート、グレーのニーソックスという格好だ。あのぐるぐる眼鏡も無い、完璧なお嬢様モード。
なんでこういうときに限ってお嬢様スタイルなんだよ……。おかげで直視できねえ。

「ここはどこだ?」
「わたくしの家です」
「なんで、俺はここにいるんだ?」
「昨夜、お兄様が酔い潰れてしまいましたので、こちらに運ばせていただきました」

成程。俺も飲んでいたことだけは覚えている。その相手が沙織で、酔いつぶれた俺を介抱してくれたってことか。
ホント、コイツには助けられてばっかだな。

「そっか。迷惑かけて悪かったな。ありがとよ」
「いえ、礼には及びません。それに、昨日は……その……」
「ん?」

どうしたんだ?沙織のヤツ、いきなりもじもじし始めたぞ。おまけに顔もほんのり赤い。う〜む、実に色っぽい。
いやいや、そうじゃねえ。なんでいきなりこんな反応を?トイレか?

「その……ですね。わたくし、お兄様に激しく愛されてしまいましたので……、とても嬉しくて……」

ホワッツ?何を言ってやがるんですか、この超お嬢様は?激しく愛された?
……え?それって、どういう意味?言葉通りの意味なの?HAHAHA、そんなまさか……。
だが、俺のそんな願いは、沙織の次の言葉で粉々に砕かれてしまった。

「わたくし、初めてでしたのに……。お兄様ったら、何回も何回もわたくしを求めてくださって……」

……………oh.
俺は無言で立ち上がると、この部屋の中でも特に頑丈そうな壁の前で立ち止まった。これなら……これなら……。

「あの……、お兄様?」
「うおおおおおおおおおおおおおっ!!思い出せ!思い出せよ、このポンコツ脳がッ!!」

俺は壁目掛けてガンガン頭を打ち付けた。痛え、すげー痛え。けどよ、このぐらいしないと思い出せねえ気がするんだよ。

「お兄様!お止めになってください!!」
「止めるな沙織ィ!このぐらいしねえと、俺の頭は思い出さねえんだよオオオオオオオオオオ!!!!」
「それでは、思い出す前に頭が割れてしまいます!!」
「それでもこれしか方法が無えんだアアアアア!!」

沙織の制止も聞かず、俺は頭を壁に打ち続けた。ガンガン打ち続けた。鈍い音が室内に響き渡る。

「思い出せェ!思い出せよ俺エエェェェ!!もしくは全て忘れろオオオオオオオ!!」
「お兄様!目的が変わっています!」


「つまり、昨夜のことは全く覚えていない、ということですね」
「申し訳ございません」

今の状況を説明しよう。沙織は椅子に座って腕を組み、俺を見下ろしている。
俺はというと、沙織の前で額をフローリングの床にこすり付けていた。つまり、DOGEZA状態だ。
結局、俺は昨夜のことを全く思い出せなかった。その事を沙織に正直に話した。もちろん、沙織は怒ったさ。
知ってるか?激しく怒られるより、静かに怒られる方が何倍も怖いんだぜ。今の沙織は、ウチの妹様が怒っている時の何倍も怖かった。
罵倒の言葉も、手や足が出ることも無い。ただ、俺にプレッシャーを浴びせてくるんだ。針の筵に座る気持ちってのは、こういうことを言うんだと身をもって知ったよ。
頭を下げ続けた甲斐があったのか、沙織は溜息を一つ吐くと、優しげな口調で話しかけてきた。

「悲しいことではありますが、覚えていないのであれば仕方ありませんわね」
「許して……くれるのか?」

俺は頭を上げて、沙織の顔を見る。沙織は穏やかな笑みを浮かべながら、俺を見ていた。
俺は思ったよ。この世に聖母がいるんなら、きっと沙織の事だってな。なんなら、「沙織教」を開いてもいいと思ったくらいだ。

「今回は大目に見ましょう。ですが、わたくしも女の子です。この埋め合わせはきっちりとしていただきますから」
「お、おう!もちろんだ。俺に出来ることなら何だってやる!いや、やらせてください!」

沙織には本当に申し訳ないが、昨夜のことは全く思い出せない。なら、ほかの事で卍解……、挽回するしかねえ。
それに、コイツには俺や桐乃のことでかなり助けてもらっている。その借りを、少しずつでも返していかないとな。

「では、そのことについては後日連絡を入れます。今日は一旦お帰りなったほうがよろしいのでは?」
「ああ、そうだな。今日のところは帰らせてもらうわ」

俺は足の痺れをこらえながらも立ち上がり、玄関に向かった。
沙織は俺の後ろについてきて、見送ってくれている。なに、この子?天使なの?現代に舞い降りた天使なの?あ、聖母だった。

「今日は悪かった。今度、必ず埋め合わせするからよ」
「ええ、楽しみにしておりますわ」
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/09(水) 15:03:09.71 ID:aphiU9Ato
ーーーーーーーーーーーー


沙織の家で起こった騒動から三日が経った。
俺は卒論執筆のため、大学に来ている。と言っても、進行状況は順調そのものだ。就職内定もすでに取っており、いたって平穏な日々を過ごしている。
研究室で卒論の内容を纏めていると、ポケットに入れていた携帯が震えた。液晶には「沙織」と表示されている。

「もしもし」
「あー、拙者拙者」
「わりーが、俺の知り合いに侍はいねーよ」
「はっはっはー。相変わらずでござるな、京介氏」

電話に出ると、いつものバジーナ口調が聞こえてきた。こっちに慣れているとはいえ、この口調を聞いて安心する俺ってなんなの?
それはさておき、沙織が連絡してきたってことは……。

「埋め合わせの件、だよな」
「そうでござる。ときに京介氏、今度の日曜は空いているでござるか?」
「ああ、残念なことに予定は入ってねえ」
「それは重畳。では、その一日を拙者にいただきとうござる」
「わかった。何時にどこ集合だ?」
「朝の10:00。アキバの電気街口で待っていてくだされ」
「結構早いな。わかったよ」
「では、拙者はこれにて!」

用件を伝え終わると、沙織はさっさと電話を切っちまった。ったく、お前は台風かよ。
俺は電話をしまうと、再び執筆に取り掛かる。ある程度進めておかねえと、あとで泣きを見るからな。沙織と出かけてる中、卒論のことを気にしていたくもねえし。
埋め合わせと言いつつも、今度の日曜を楽しみにしている俺がいた。
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/09(水) 15:04:23.61 ID:aphiU9Ato
ーーーーーーーーーーーー


当日――――。

俺は約束した時間の二十分前に到着し、今は沙織を待っているところだ。
休日のアキバは、相も変わらず人でごった返している。今日は七月上旬並みの陽気と天気予報で言っていた。
そんな中、この人混みに紛れていくのだ。夏用の服装で正解だったな。
そんなことを考えながら、携帯で時間を確認していると――――。

「京介さん!」

背後から声を掛けられた。振り返らなくてもわかる。沙織の声だ。
軽快な足音を鳴らしながら、沙織が俺の前にやってきた。その時、俺は声を失ったよ。
アキバだから、いつものバジーナスタイルで来るものだとばかり思ってたからな。それがどうだ。俺の目の前には純白のワンピースを着たお嬢様がいやがった。
その清楚なワンピースがまた似合うこと似合うこと。思わず凝視しちまったよ。

「お待たせしました」
「……」
「あの、京介さん?」

沙織は俺の変調に気付き、目の前で手の平をひらひらさせている。俺は何とか現実に戻ってくることが出来たが、沙織は心配そうな顔をしていた。

「あの、どこかお加減が?」
「……あ、いや!なんでもねえ!いたって健康だ!」
「それならよろしいのですが……」
「ホント、なんでもねえ!ただ、すげー美人が現れたから、思わず見惚れちまっただけだ!」
「え?」

ぐああああああああああああああああ!
いくら動揺してたからって、いきなり何を言い出すんだよ俺エエエエエエエエエエエエエエッ!!暑さで頭がやられたのか!?
それに見ろ!沙織だって顔を赤くして俯いちまったじゃねえか!ああ、何やってんだよ。俺の馬鹿野郎。
しかし、こうして俯いている沙織は可愛いな。美人な沙織も良いが、こういう年相応な感じも……って、違うだろ!!

「わ、悪い!いきなり変なことを口走っちまって!」
「へ、変なこと……」

あれ〜?今度はなにやら不機嫌そうな顔をされていますよ〜?
どこだ!どこで地雷を踏んだんだ、俺!このクソ馬鹿野郎!

「あ、あのー。沙織さん……?」
「いきなり持ち上げておいて、それを変なことだなんて……。京介さん、ヒドイです……」

お、仰るとおりです……。
いつもは桐乃や黒猫のフォローに徹しているし、あの格好のせいで忘れがちだが、沙織だって女の子なんだ。
せっかくおめかしして来てくれたのに、俺は何つーことを……。
俺の無神経な一言で、沙織は目に涙を浮かべている。あ、こういう沙織も可愛いな。なんか、こう……。嗜虐心をそそられるというか……。ええい、煩悩退散!!

「悪い……。他意はないんだ」
「いいえ、許しません」

沙織は頬を膨らませながら、そっぽ向いてしまった。ちくしょう、可愛い。
いや、今は沙織の機嫌を何とかして直さねえと。埋め合わせどころか、俺の好感度がマイナスに……。
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/09(水) 15:04:52.63 ID:aphiU9Ato
「本当にすまない。でも、沙織に見惚れてたってのは事実だ」
「もう、また冗談を……」
「いいや、誓って本当だ。沙織に見惚れてるときに声を掛けられたから慌てちまって、ついあんなことを言った。傷つけちまったよな、本当にスマン!」

俺は人目もはばからず頭を下げた。なんか、この間から沙織に謝ってばっかだな。それもこれも、全部俺のせいなんだけどさ。
周囲からはくすくすと笑い声が聞こえるが、そんなの知ったこっちゃねえ。いくら笑われようと、俺にはこうするほか無えんだ。
そんな俺の肩に、沙織の手が置かれる。

「わかりましたから、頭を上げてください。京介さん」

頭を上げると、沙織が全てを慈しむような笑顔を浮かべていた。あれ?数日前も似たような状況があったよな?

「許してくれるか?」
「いいえ、許しません♪」

なん……だと……。
あんな顔しておきながら、許してくれない。そりゃねーよ、沙織さん!結構恥ずかしかったんだぞ!あー、どうしたらいいんだよぅ……。
俺がどうにかして沙織の機嫌を直そうと考えている最中、左腕が誰かに絡め取られた。いや、沙織しかいないんですけどね。

「許しませんからね。代わりに、今日一日、ちゃんとわたくしを楽しませてくださいな」
「お、おう!もちろんだ!」

沙織は俺にもたれかかりながら、笑顔でそう言った。
それがまた可愛くて、俺はドギマギしちまった。おまけに俺の腕にさ。当たるんですよ。沙織の豊満なアレが。これやべー、マジでやベー。
隣にいる沙織は可愛いわ、やわらかいものが当たるわ、いい匂いはするわ。色々やばい。性的な意味で。

「じゃ、行きましょうか」

そう言って、沙織は俺を引っ張っていった。
ただ、沙織のほうが背高いから、なーんか不恰好になっちまうんだよな。はぁ……。
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/09(水) 15:05:24.99 ID:aphiU9Ato
ーーーーーーーーーーーー


俺達が最初に向かったのはガンプラ売り場だ。
沙織はガンダムが好きだし、俺も男の子だからな。人型ロボットって言うだけで、こう……内から来るものがあるんだよ。あ、ロボットって言っちゃダメだったんだっけ?
俺は沙織についていきながらガンダム講座を聞いていた。

「京介さんは、どういうMSがお好きですか?」
「俺か?そうだな……」

俺は陳列されているガンプラを見渡し、その中から大き目の箱を一つとって、沙織に見せた。

「こういうのとか、結構好きだな」
「クシャトリヤですか。UCの機体ですね」
「たまたま映像を見たんだけどさ、すげーカッコ良かったんだわ。あとこのゴツい感じとか、俺の好みなんだよ」
「そうなんですか?ふふ、少し意外です」
「そうか?」
「ええ。京介さんなら、主役機の方を好むとばかり……」
「主役機ってさ、なんかスッキリしすぎじゃないか?スマートなのも好きだが、やっぱこういうのに目が向いちまうな。それに、脇役の機体や敵機の方が好みだったりするぞ」
「ふふっ。本当に意外」

何がおかしいのかわからないが、沙織が楽しんでいるのならそれでいい。
泣き顔や不機嫌そうな顔も可愛いけど、コイツにはやっぱり笑顔が似合う。思わず俺も笑顔になっちまうくらいだからな。
それから俺達は、店内にあるガンプラを見て色々話しながら、その場を後にした。


次はショールーム。
ここにはショーケースの中に色んなものが展示されている。ガンダム系の展示もあるぞ。

「こういうのを見ると、自分でも作りたくなるけどさ。こんなに綺麗に作れないだろうな、きっと」
「そうですね。でも、近づけることは出来ると思いますわ」
「沙織はこういうの得意そうだもんな」
「慣れているだけです」

俺の腕に引っ付いている沙織は、展示物を眺めながら俺に答える。
俺も、沙織の方には顔を向けない。なんか、そうしちゃいけない気がしたからな。
傍から見れば、俺達はいっぱしのカップルに見えてるだろうな。そういう雰囲気も出してるだろうし。ただ、場違い感が半端無いけど。

「じゃあさ、今度教えてくれよ」
「わたくしが?」
「ああ。こういうのってさ、やっぱ自分で作った方が愛着湧くだろ?それに、沙織なら先生として適任だしな」
「ふふっ、わかりました。ですが、私の指導は厳しいですわよ?」
「……なるべくお手柔らかに頼むぜ」
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/09(水) 15:05:52.32 ID:aphiU9Ato
ーーーーーーーーーーーー


さて、沙織とアキバを散策してから一時間以上が経過している。少し早いが、ここらで昼飯にしようと思ったんだ。混むのは嫌だしな。

「沙織、ちょっと早いけどメシにしないか?」
「そうですね。わたくし、行ってみたいお店があるんですけれど、よろしいですか?」
「おう、いいぞ」

そう言って案内されたのは、意外や意外。ラーメン屋だった。

「ここ……なのか?」
「はい。わたくしだけだと、なかなか入りづらくて……」
「沙織が良いんなら、俺は構わないけど……」
「じゃ、早速」

店内に入ると、席は七割ほど埋まっていた。コレがもう少し後なら、完全に満員だったな。
俺は入り口にある券売機で二人分の食券を購入し、席に着いて店員に渡した。
程無くして、俺達の前にラーメンがやってきた。ちなみに俺は味噌、沙織は塩だ。鉢からは湯気と一緒に食欲をそそる香りが漂ってくる。

「「いただきます」」

両手を合わせ、割り箸を取って、俺達は麺を啜る。
味はなかなか良く、次回もまた来たいなと思うほどだった。

「うまいな」
「そうですね。わたくし、あまりこういうものは食べたことが無かったのですが、美味しいです。今度、きりりんさん達も誘ってみようかしら?」
「あー、それはやめとけ」

あの妹様はこういうのにはとかくうるさいのだ。きっとゴネるに違いない。もっとお洒落な店に行こうと言うに決まっている。
沙織もそれはわかっているらしく、俺の忠告を簡単に聞き入れてくれた。
しかし、こういう時でも沙織はお嬢様なんだなと実感する。俺なんか音を立てて麺を啜っているのだが、沙織は音は立てないし食べ方は綺麗だし。
まるでラーメンという名の高級品を食べてるみたいだ。それでも、スープは跳ねるみたいだがな。

「沙織、動くなよ」
「え?」

俺はハンカチを取り出すと、沙織の口周りについたスープを拭いてやった。
沙織はおとなしく、俺のされるがままになっているが、頬が赤かった。やっぱ、恥ずかしいよな。小さい子じゃねえんだから。ま、俺がしたかったから許せ。

「おし、キレイになった」
「あ、あの……、ありがとうございます」
「いや、気にするな。それに恥ずかしかったろ?」
「その……少し……」

沙織は顔を赤らめたまま俯いちまった。やりすぎたかな?
それはそうと沙織さん。あんまり放置すると、麺が伸びちまいますよー。
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/09(水) 15:06:20.43 ID:aphiU9Ato
ーーーーーーーーーーーー


食事を終えた俺達は、再びアキバの街に繰り出した。まあ、普段桐乃たちと行ってるようなところを回っただけなんだけどな。
同人ショップにフィギュアショップ、ゲームショップやアニメ関連グッズのショップ。ショップばっかりだな、オイ。
途中で家電やPCなんかも見たりしたけどよ、やっぱ普段と変わらない。
色々見て回って、その都度会話して、俺達は笑い合った。桐乃や黒猫と一緒にいるのも楽しいけど、こうやって二人きりってのも良いな。
携帯の時計を見ると、時間は三時を回っていた。結構時間が経ったな。

「沙織、まだ帰るには早いけど、この後はどうする?」
「そうですね……。もう見て回るものはほとんど回ってしまいましたし……」

沙織も、今日はもう見たいものは見尽くしたようだ。これでイベントなんかがあれば、そっちに行くんだろうけどな。
俺もまだ帰りたくなかったし、何かないかと考えていると、沙織が閃いたようだ。

「カラオケなんていかがですか?わたくし、少し疲れてしまいました」
「カフェとかじゃなくてか?」
「はい。それに、京介さんの歌を聞いてみたいですし」
「う……。別にいいけど、上手くないぞ?」
「構いません。上手い下手は関係なく、京介さんの歌が聞きたいんです」

ここまで言われて引いたんじゃ、男が廃るってもんだよな。
俺は覚悟を決めて、沙織と一緒にカラオケ店へと向かった。


カラオケ店に来た俺達は、フリータイムで入室した。部屋に入った後は内線で飲み物を頼み、席に着く。
はぁ〜、今日はほとんど歩き通しだったからな。座っちまうと一気に疲れが来る。

「ふぅ〜」
「ふふっ、京介さんったら。おじいちゃんみたい」
「ほっとけ。お前は疲れてないのか?」
「もちろん疲れてますよ。でも、それ以上に楽しかったですから」
「そりゃ良かった。俺も楽しかったけどよ、疲れとは関係ないと思うぞ」
「そうですか?」

今日の沙織はよく笑う。いや、いつもの沙織もよく笑うけどね。ぐるぐる眼鏡かけてωな口をしながらだけど。
つか、お嬢様モードの沙織とこんなに長く接したことってあったか?少しは慣れたけど、やっぱ美人の笑顔は破壊力あるわ。毎回ドキドキするもん。
店員が飲み物を運んできて、俺達はそれを手に取る。俺はアップルジュース。沙織はジンジャーエールだ。
俺がアップルジュースを飲んでいると、沙織がいきなり俺にもたれかかってきた。

「あのー、沙織さん?」
「申し訳ありません。わたくし、思っていたよりも疲れてしまったみたいです」

いや、それはいいんですけどね。あなたがそういうことをすると、俺の理性とか理性とか理性とかがやばいんですよ、ホント。ええい、何か他の事を考えるんだ俺!
あー。沙織のヤツ、背は高いのに座高は俺より低いのか。頭が肩のとこに来てるし。座るとちょうど良い感じ?
それに髪は綺麗でさらさらだし、いい匂いはするし、可愛いし、スタイル良いし……。そういやあの時の俺、沙織の裸を……違う違う!今はそういうことを考えるんじゃない!

「少しだけ、このままでもよろしいですか?」
「お、おう」

あー、どうすんだよ。ホントにやばいんだって。
なんでこういう時にしおらしくなるんだよ。抑え込むのも大変なんだよ?コイツ、自分が可愛いって自覚があるのだろうか?いや、無い!(反語)
でなきゃ、こんなに無防備な姿を晒さないだろ。常識的に考えて。
結局、それから一時間くらい、俺の肩は沙織に占拠されてたわけだ。
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/09(水) 15:06:47.91 ID:aphiU9Ato
ーーーーーーーーーーーー


時刻はもうすぐ六時を回ろうとしていた。
俺達はカラオケ店をすでに退室し、今はUDX内のカフェで一服中だ。一応言っておくが、俺も沙織も非喫煙者だからな。

「今日はとても楽しかったです。京介さん、ありがとうございました」
「俺も楽しかったよ。行くトコ全部、沙織にまかせっきりにしたのは悪かったと思ってる」
「いえ、わたくしがお誘いしたのですから当然のことです」

元々は俺が原因でこんなことになっちまった上に、ここは普通なら避難されるところなんだろうが、そんなことは関係なく沙織はいつもフォローしてくれる。
それは、コイツが良いヤツであり、良い女であり、良い人間だからなんだろう。
槇島沙織だろうと、沙織・バジーナだろうと関係ない。全部ひっくるめて「沙織」という人間なんだ。そして、俺はそんな沙織を好いている。
それが「大切な友達」としてなのか、「一人の女の子」としてなのかは……今はまだわからないけど。

「もうこんな時間ですのね。そろそろ、お開きにしましょう」

関係を持ったから、こんな気持ちが芽生えたわけじゃない。遠因にはなるかもしれないが、それは原因じゃないんだ。
だからさ、時計を見た瞬間、沙織が少し悲しげな表情になったのも見逃さないし、それを払拭してやりたいと思うのは当然だろ?
俺は困ってるヤツは見過ごせない。それが妹だろうと、友達だろうと、知らないヤツだろうと関係なく、な。
シスコンである前に、俺は超が付くほどのお節介焼きなんだ。なら、俺がこの場で掛ける言葉は決まっている。

「なあ、沙織」
「はい?」
「また、どこか出かけないか?今度も二人きりでさ」
「え?」

沙織は俺の言葉が理解できないのか、きょとんとしている。結構ストレートな誘い方だと思うんだがなぁ〜。

「あの……それって……」
「次のデートのお誘いだよ。言わせんな恥ずかしい」

なんとなく沙織の顔を見ていられなくて、俺はコーヒーを飲むフリをして視線を外した。
沙織は今、どんな顔してるんだろ?さっきの寂しげな表情が消えているといいな。……あれ?何で黙ってるの、沙織さん?
俺は沈黙に耐えられなくて、沙織に答えを催促した。

「で、良いのか?嫌なら無理には……」
「い、嫌じゃありません!」

いきなり沙織が声を荒げるもんだから、周りの人がこっちに注目し始めやがった。こっち見んな。
沙織もそれに気付いたらしく、頬を赤らめながらも笑顔で答えてくれた。

「嫌じゃありません。とても嬉しいですわ」
「そっか。じゃ、今度は俺から連絡するよ」
「はい。お待ちしてます」

早速で悪いんだが、前言を撤回させてもらう。どうやら俺は、沙織のことを「一人の女の子」として好きなようだ。
だってさ、沙織が笑えば嬉しいし、泣いていればこっちも悲しくなる。今の俺は、最高に嬉しいと感じているんだ。
この気持ち……まさしく愛だ!
だからと言って、愛を超え、憎しみも超越し、宿命となることは無いけどな。断じて無いからな!!
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/09(水) 15:07:21.55 ID:aphiU9Ato
ーーーーーーーーーーーー


カフェを出た俺達は、八時間ぶりに秋葉原駅電気街口に戻ってきた。こんなに長い時間一緒にいたのに、なんだかあっという間だった気がする。

「今日は本当に楽しかったです」
「ああ、俺もだよ。別れるのが惜しいくらいにな」
「もう、またご冗談を……」
「本心だよ」

そう、これは俺の本心だ。まだ沙織と別れたくなかったけど、ガキみたいな我侭言っても仕方ないだろ?
それに、今生の別れじゃない。会おうと思えば会えるんだからさ。だから、今日はここでお開きだ。

「近いうちに連絡するから」
「絶対ですよ。忘れたら怒りますから」
「男の誓いに、訂正は無い」
「ふふっ」

さあ、今度こそ本当にお別れだ。駅の改札口に向かう沙織を、俺は手を振りながら見送った……。あれ?沙織さんが引き返してきますよ?

「どうした?忘れ物か?」
「はい。大事なものを忘れていました」

沙織が悪戯っぽく笑った次の瞬間、俺の唇に柔らかいモノが触れた。え……?なに、今の?
状況を理解できない俺は沙織の顔を見た。あれれ?頬が赤いですよ、沙織さん。

「これで大丈夫。それでは、また」

そう言って沙織は、改札口を通って駅の中に入っていっちまった。俺はと言うと、未だに状況が飲み込めず、呆然と突っ立ってたよ。
なんとか現実に戻ってきた俺は、その時決心したんだ。次に沙織と会ったら、自分の気持ちを伝えよう、ってな。
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/09(水) 15:07:52.11 ID:aphiU9Ato
ーーーーーーーーーーーー


「ふぅ……」

京介さんと別れ、電車の席に着いたわたくしの口からは、自然と溜息がこぼれていました。
疲れたから、だと思います。肉体的にと言うより精神的に、ですけれど。それに、別れ際には軽くですけれど、その……キスもしてしまいましたし……。
今思うと、結構恥ずかしいことですよね。わたくしったら、なんてはしたないことを……。思い出すだけで顔が熱くなってきました。
でも、あのくらいしないと、鈍感なあの方のことです。わたくしのことを意識はしてくれないでしょう。

「それにしても……」

今日一日で、京介さんの心中は変化したのでしょうか?果敢にアタックしているのですが、あの方の鈍感さは筋金……いえ、鉄骨入り。
コロニー落としくらいの衝撃がなければ気付かないのでは、と思うぐらいですから。
今日のわたくしの行動で、陥落までは行かなくても、外堀を埋めることぐらいは出来ているといいのですが……。
たとえ出来ていなくても、次があります。ほかならぬ、京介さんがチャンスを与えてくださいましたから。

けれど、あの件を実行したときは、まさか次があるとは思っていませんでした。
京介さんが酔い潰れてしまったあの日、わたくしの家に運んで、服を脱がせて、その隣でわたくしも眠りについて……。そう言えば、わたくしも裸でしたね。
実際はなにも無かったんですけれど、それを利用して今日のデートに漕ぎ着けて、わたくしのことを意識していただこうと思っただけなのですが……。
これは、京介さんがわたくしに傾いてきているということでしょうか?でしょうね。うん、そういうことにしておきましょう。そして、次こそは決めます!
だから、京介さん……。

「覚悟しておいてくださいね」

わたくしは、自身を奮い立たせる意味もこめて、そう呟いたのです。


【俺の妹の友達がこんなに狡猾なわけがない】


おわり
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 15:09:34.58 ID:aphiU9Ato
以上です。
今回はちょっと長いのでね、タイトルをつけてみたり。
俺の沙織への愛が少しでも伝われば、コレに勝る喜びなし。
キャラ崩壊とか、らしくないとか、そこらへんのことは目を瞑ってほしい。


ありがとうございました。
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 15:43:21.48 ID:/KW12IDAO
乙!
今日中っていうからてっきり夜かと思って油断したぜww

この沙織は素晴らしいな
おかわりを所望いたす
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 16:14:50.98 ID:47tx0M+h0

これぞ沙織や!
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 16:28:24.89 ID:aphiU9Ato
やっべ、誤字発見。

>>357
×:ここは普通なら避難されるところ
○:ここは普通なら非難されるところ

逃げられてどうする……orz

>>361
おかわりは今のところ考えてないんだ。
そもそもこれも、「あやせの海岸物語」を読んで、最初と最後を思いついて、あとはだらだら書いただけだしな。
誰かのSS読んで、シチュが思いつけば書くかもしれん。あんま期待しないでね。
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 17:10:07.66 ID:ni/WwIFSO
俺の中で沙織株高騰中…
365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 17:40:42.20 ID:2z49Nifc0
流れに便乗して小ネタでも投下〜


とある休日ーーーー

拙者、沙織・バジーナと申する者でござる!
今拙者がいるのは京介氏の部屋のドアの前。
何故拙者がいるのかというとーーーー


「今日は先輩はどうしたの?」
ここはきりりん氏の部屋。ちょこんと座った黒猫氏(←カワイイでござる)がきりりん氏に問いかける。

「あ、そういえばアンタら来るの言い忘れてた……デュフフwいい事思いついた!」
きりりん氏が怪しく笑う。この顔をするときは、いつも京介氏が被害を受ける。
兄妹そろって分かりやすいでござるなぁ……

「何をするのでござるか?」
「フフン……アイツの部屋を覗き見するのよ!」
拙者の予想はハズレなかったでござる……
しかし、京介氏の私生活……でござるか。
興味がありますな!

ーーーーとまぁ、ザックリいくとこんな感じでござる!
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 17:41:56.45 ID:2z49Nifc0
「……ゴクリ」
物音を立てないようにドアノブに触れ、そっとドアを開ける……見える、私にも中が見えるぞ!!
中にいる京介氏は……パソコンで何か見ているようですな。あれは、今放送中の某アニメですかな?

「デュフフwww抱きしめたいな!」
ちょ、ちょっと不気味でござる……
「京介氏?」
「フヒヒ、この気持ち、まさしく愛……って沙織!?」
京介氏が驚き、急に立ち上がってこちら側を向く。

あぁ、急に立ち上がったりしてはヘッドホンのコードが引っ張られて抜けてしまーーーー

『お、お前は私の嫁にする!決定事項だ!異論は認めん!』
『お、お前は私の嫁にする!決定事項だ!異論は認めん!』
『お、お前は私の嫁にする!決定事項だ!異論は認めん!』
『お、お前は私の嫁にする!決定事項だ!異論は認めん!』

ーーーーこ、これは……とあるシーンのみがリピートされた動画!?

「ギャアアアア!?!!!!?」
京介氏が叫び声をあげながら、あわてて動画を停止させる。まるでこの世の終わりであるかのような顔ですぞ……

「あの、京介氏……?」
「ち、違うんだよ!?けして心を奪われちゃったとかそんなんじゃなくてーーーって自爆しちゃったよ俺!?どうすればいいんだあぁぁぁぁあ!?」
「京介氏!!」
「な、なんだよ沙織……?」
フッフッフ……次に拙者が何を言うかは、皆さんも想像がついているでござろう……!


「これからは、お嫁さんと呼んだほうが良いでござろうか?////」
「」

ーー終われーー
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 17:42:51.04 ID:2z49Nifc0
「IS見ながらニヤついている所を見られた」
と友人が嘆くのを聞いて思いついた。
以上、失礼した!
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 17:50:41.30 ID:aphiU9Ato
>>367
乙だぜい。
ISは見てないが、京介がラウラ or マリーナ好きというのはわかった。
あれ、もしかして中の人ネタ?
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 18:10:37.26 ID:+pnpwdKAO
SSは書きたいんだが、妄想が膨らまなくてな… ところでブリジットって国籍とか分かってるっけ?
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 18:25:05.78 ID:Kt76eZ6DO
>>369
イギリス人美少女とのこと
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/09(水) 18:30:35.70 ID:k1Ouee8ko
>>360,367
乙!久しぶりの沙織ネタよかった
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 20:14:40.78 ID:SwuzvebDO
>>369
イギリスじゃなかったか?
名前からして英語圏は確実
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 21:00:09.36 ID:Qm1eQ3+H0
>>360
乙です
ばっちり沙織愛届きました

>>367
京介wwwwこれは焦るwwwwww
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/09(水) 22:13:04.68 ID:k1Ouee8ko
麻奈実「きょうちゃん、ホロニックランチャー右手〜」

こんな電波を受信した
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:25:52.86 ID:03Jqq7/a0
諸々の事情で、止むを得なく乗り遅れたバレンタインもの。
京介、後に桐乃視点。内容はやや黒猫寄り。序盤に麻奈実成分アリ。
設定は4〜5巻の間、原作との相違点や矛盾点には目を瞑ってもらえると幸いです。
そこそこ長いため、前後編に分けています。今回は前編のみ投下。では。
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:26:41.09 ID:03Jqq7/a0

―――――


二月十四日。
俺のように健全な男子高校生にとって、絶対に見過ごすことのできない超がつくほど重要な日。
そう。今日は世の恋する女の子が男の子にチョコだの何だのを渡すバレンタインデーである。
放課後に至るまで、俺の視界の隅にはチョコを渡す女子の姿やプレゼントを貰う男子の姿が映っていた。
堂々とした受け渡しはほとんど義理の類だから、俺としてはあまり気にしないんだが、
本命のチョコを渡す場合は少なからず恥じらいがあり、女子は人目につかない場所に男子を呼び出す。
呼び出された男子は内面ドギマギしながらも、素面を気取ってプレゼントを貰う。
・・なぁんてことが水面下で行われていると思うと、それはそれで色んなところが煮えくり返りそうになるのである。

「おい高坂、これ見てくれよこれ〜」
「見えてるからグイグイ押しつけんじゃねぇよ、気持ち悪い。
 っていうか、それを見せ付けられるのはこれで5回目だ」

意中の女子からプレゼントを貰った男子はこの赤城浩平のように大抵腑抜けになる。
赤城が持っているのはバレンタインのプレゼントと思しき、綺麗に包装された長方形の箱だ。

「で、それを誰から貰ったんだ。おまえのふやけ具合を見りゃ何となく見当つくけどよ」
「よっくぞ聞いてくれましたっ!何を隠そう、愛しいマイシスターからのチョコレー・・」

♪〜

「ん、メールか」

シスコン野郎の終わりなきノロケ話に終止符を打ってくれた俺の携帯電話に感謝しつつ、
そのディスプレイを見ると、メールマークと共に人畜無害な俺の幼馴染みの名前が表示されていた。
あれ、今日の麻奈実は用があるとか言って先に帰ったはずなんだがな。
赤城の話を聞き流しつつ、メールに目を通した俺は呪縛から解放されたように立ち上がる。

「おいコラ高坂、俺の話はまだっ、」
「分かったよ、明日その味の感想も含めて聞いてやるから、そのバカになった口を明日まで閉じてろ」

ぶっきらぼうに捨て台詞を吐き、俺はそそくさと教室を出た。
これ以上付き合ってられるかっつーの、こちとら慈善事業じゃねぇんだ。
くそ、あまりのストレスに五臓六腑が断末魔の悲鳴をあげているぜ。
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:27:36.21 ID:03Jqq7/a0

「ちっ・・」

放課後だからか、バレンタインの儀式を執り行ってる男女がそこら中にわんさか居やがる。
俺は今日が平日であることを心の底から憎みながら昇降口へと向かったが、
当然のことであるかのように、俺の下駄箱にチョコが入れてあるはずもない。
俺は普段から「普通」を愛してやまない人間だから「変化」を求めようとはしない。
だから、女にアプローチをかけるなんてことはまったくと言っていいほどない。
・・そのツケがここで回ってくるんだよな、毎年のことなんだけどよ。

「くそ・・!」

やれやれ、自分の心が荒んでいくのが分かるぜ・・。
こういう憂鬱な日はさっさと学校を出るに限るんだよ、ちくしょう。

378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:29:16.19 ID:03Jqq7/a0

―――――

時刻は、夕日の眩しい午後四時半。
くさくさした気持ちのまま、俺は行き慣れた和菓子屋「田村家」に上がり込んでいた。
別にバレンタインの恩恵を授かれなかった悔しさから幼馴染の懐へ逃げ込んだわけじゃないぞ。
メールで呼び出されたから仕方なく来たんだ。うん、きっとそうだ。

「ごめんね、きょうちゃん。急に呼び出しちゃって・・」
「いや、俺としても学校に長居したくなかったからな、丁度良かったよ」

理由は言いたくないけどな。

「そ、そっか〜・・ちょうど良かったんだっ」

む・・やけに麻奈実の様子がよそよそしい。
トイレにでも行きたいのなら、自分の家なんだから遠慮することもないだろうに。

「どうしたの、きょうちゃん?」
「・・いや、何でもねぇ」

出された煎餅を一枚頬張りながら、俺は麻奈実の振る舞いを観察する。
座布団の上に姿勢正しく正座し、その制服には皺一つない。
・・う〜ん、相変わらずおとなしい奴だ。
平々凡々をこよなく愛する俺だが、麻奈実には劣るぜ。

「そういえば、きょうちゃん・・今日は何の日か覚えてるよね?」
「あぁ。糖分補給日だろ、イケメン限定のな」

綺麗さっぱり断ち切ったはずの赤城のドヤ顔が真っ先に頭に浮かぶ。
くそ、血縁関係のある女から貰ったチョコなんて数に入れて良いはずがねぇ。

「・・き、きょうちゃん。もしかして機嫌悪いの、かな?」
「あ、いやそういうわけじゃねぇんだ。そう見えちまってたのなら謝る」
「うぅん、大丈夫だよっ・・ところできょうちゃんは今日ちょこれーととか貰った?」
「ぐぅっ!?」

ま、麻奈実よ・・俺の気持ちを理解してくれた上でそんなことを聞くのか。
純粋な奴ほど、懐に携える言葉の鋭さは半端じゃないぜ。
まぁ、相手は麻奈実だし、ここで見栄を張って嘘をつく必要もないよな。
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:30:16.98 ID:03Jqq7/a0

「・・おまえの予想通り、ゼロだよ。ゼロ」
「えぇっ、予想なんてしてないよぉ」
「・・名高い可憐な美少女が実は俺のことを好きで、影ながらいつも俺のことを見つめてくれていて、
 いつもは周囲の目もあって話をする機会すら設けられないけれども、今日はバレンタインだからと腹を括って、
 俺にチョコをプレゼントしてくれたりなんかしちゃって〜、とかそういう展開もなかったしな」

しまった。つい欲望を長々と口にしてしまったぜ、エロゲのやり過ぎだろうか。
そんな俺の小さすぎる葛藤をスルーし、麻奈実が話を続ける。

「そうなんだ・・あの、きょうちゃんはさ、」
「ん、何だよ?」
「・・美少女からじゃないと、ぷれぜんとを貰っても嬉しくない?」

んぁ?いきなり何を言い出すんだコイツは。
そりゃあ確かにプレゼントを貰うなら可愛い女の子であるに越したことはない。
美少女からプレゼントを貰って喜ばない奴が居たのならそいつは男じゃないし、俺が全身全霊を込めてそいつを殴りに行く。
赤城みたいに脳味噌が溶けた人間のような反応をしている奴の方が、
美少女からプレゼントを貰っても澄ました顔をしている奴よりかは幾分マシだ。

・・まぁ、でも俺は自分の身の程を弁えている男だ。

「・・いや、相手が誰であろうと、俺は嬉しいぞ」
「そ、そっか・・それなら、」

ふと、麻奈実が立ち上がる。
俺はようやく麻奈実がトイレに行くと決めたのだろうと思い、
二枚目の煎餅に手を伸ばそうとしていたところだった。
そのとき、俺の目の前に小奇麗に包装されたやけに細長い箱が差し出される。

「きょうちゃん、これ・・」
「何だこれ?」
「あのっ・・開けてみて」

何の疑いも持たずに、俺はその箱の包装を剥ぎ取り、中のブツを確認しようとする。
伏し目がちな麻奈実が俺の手つきを恥ずかしそうに見つめていた。
心なしか、頬が少し赤らんでいるようにも見える。
その様子に対して疑問符を浮かべながら、いざ中身を見てみると、そこには綺麗な水色に染まった・・、

「ネクタイ、か?」
「うん・・」

ネクタイにこれといった説明なんて要らないだろう。
水色一色で、いくつもの白いラインが斜めに敷かれているとだけ言えば簡単に想像がつくはずだ。
普段、制服の一部としてネクタイをつけてはいるが、これに関しては少し上品な香りがする。
一般庶民の男子としては、おいくらだったんだろうかと考えちまうよ。
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:31:10.15 ID:03Jqq7/a0

「これどうしたんだ・・っていうか、もしかしてこれ、」
「きょうちゃんへの、ばれんたいんのぷれぜんと・・だよ」
「プレ、ゼント・・お、おう?」

参ったぜ、完全にやられた。粋なことしやがって麻奈実の奴!
俺が付けるには色合いが少し派手な気もするが、この際関係ねぇ。

「もしかして気に入らなかった、かな?」
「そんなわけあるかっての・・嬉しいよ、本気で」
「ほ、ほんとっ・・わたしに気を遣わなくても良いんだよ?」
「バカ野郎っ、気なんて遣ってねぇよっ・・!」

確かに麻奈実は恋愛対象に入るような、下心ある目で見れるような女じゃないが、これは正真正銘の贈り物だ。
学校に居たときにメラメラと燃え上がってた俺の嫉妬の炎も少しは鎮火してくれたよ。

「そんなに喜んでくれるとは思わなかったよ〜」
「ん、そうか?」
「きょうちゃんには毎年ぷれぜんとしてるしね」
「・・あ」

諸君、俺は毎年誰からもプレゼントを貰っていないと言ったな。
あれは嘘だ。
一応、麻奈実からは毎年欠かさず贈り物をしてもらっている。
なぜ伏せていたかというと、幼馴染からのバレンタインプレゼントなど数に入らないと思っていたからだ!

「と、いうかこんなの学校で渡してくれれば良かったのによ」
「そ、それは・・ちょっと恥ずかしかったから」

ああ、なるほどね・・確かにバレンタインに麻奈実が俺にプレゼントなんて寄越したら、
周りの奴らに(特に赤城)勘違いされる可能性もあるしな。

「それにしてもどうしてネクタイなんだ?」
「ちょこれーととか甘いものはいつもうちで食べてるし、ばれんたいんはお菓子以外でも良いって聞いたから・・」
「だからネクタイを選んでくれたってわけか」
「うん、だからきょうちゃんが学校にいくとき付けてもらえれば・・って、あぁっ!?」
「ん、どうした?」

にこやかな表情から一変、慌てふためき始めた麻奈実。
何だ、いまさら返せって言っても返さないぞ(><)←柄にもない
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:32:02.53 ID:03Jqq7/a0

「いや・・学校に付けていけるネクタイって、確か学校指定のものじゃないといけないんだよね」
「あぁ、そういやそうだったな」

俺の高校のネクタイの色は指定されていて、麻奈実のくれたネクタイはその基準から大きく外れちまってる。
こんな明るい色のネクタイをしていったら、速攻で没収されるのがオチだな。

「まぁ、確かに・・ちょっと無理かもしれねぇな」
「実用性のあるものをって思って贈ったのに、実用できないなんて・・抜けてるにも程があるよね」
「良いんだよ別に。数年後ネクタイを買う必要がなくなったって思えば」
「うぅ・・ごめんね」
「ばか、気にすんな」

ベタな言葉だが、こういうのは気持ちが大事っていうしな。
プレゼントされた側が文句を言う権利はないし、何より文句なんてこれっぽっちもない。
おまえの気持ちはプレゼント以上に伝わったよ、十分な。

「ありがとよ、大事にする。
 使う機会がない間も大切に保管させてもらうし、不安なら、部屋の壁にインテリアとしてでもぶら下げておこうか」
「い、良いよっ・・もうそれはきょうちゃんの物なんだから、どう扱おうがきょうちゃんの勝手だよ」

この年でネクタイをプレゼントされるなんて思ってなかったが、嬉しいことには変わりはない。
冒頭で言った通り、この世の男は異性にプレゼントを貰えばほぼ例外なく腑抜けになるのさ。無論、この俺もな。

「そうだ。ホワイトデーのお返し、何が良い?」
「え、えっと・・何でも良いよ、きょうちゃんがくれるものなら何でもっ」

う〜ん、何でも良いってのが一番困るんだよな。
麻奈実は和菓子屋の娘だから、やはり食べ物をあげても効果が薄い気がする。
まぁ、こいつの性格を考えるに何をあげても喜んでくれはするだろうが、
今回これだけのことをしてくれたんだ・・男なら恩も怨みも倍返し。
麻奈実が本当に心から喜んでくれるような贈り物をするのが、筋ってものだよな。

「そうか。まぁ楽しみにしといてくれ、でもあんまり期待はしないでくれよ」
「ふふっ、分かった・・きょうちゃん、もうちょっとゆっくりしていく?」
「いや、今日はちょっと早めに帰らないといけないんだよな・・」

言ってなかったと思うが、今日は木曜日だ。
お袋が習い事で家を開ける日であると同時に、我が妹とゲーム(不健全)をする日と決まっている。
もとい、決まってしまっている。

「そっか・・そういえば今日の夜は雪が降るって言ってたし、長居させちゃうのはまずいよね」
「ああ。俺としてはもうちょっとここに居たいんだが、
 ・・悪いな、プレゼントだけ貰いに来たみたいになっちまってよ」
「うぅん、大丈夫。気にしないで。来てくれただけでも十分だから」
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:32:48.92 ID:03Jqq7/a0

♪〜

閑静な和室で携帯電話が空気を読まずにけたたましく鳴り響く。
麻奈実から贈られたネクタイを丁寧に箱にしまい、ポケットを弄って携帯を取り出した。

「なっ・・こりゃまた珍しい」

ディスプレイに『着信中 黒猫』と表示されている。
どういうわけかそれを見た瞬間、心臓が口から飛び出そうになった。

「きょうちゃん・・?」
「悪いな麻奈実、もう帰るよ。プレゼント、本当にありがとな」
「あ、うん。ほわいとでー・・楽しみにしてるから」
「おう、任せとけ。また明日学校でな」

麻奈実が聖母のような微笑みで俺を送り出す。
俺はそんな聖母マリアがくれたプレゼントを左手で鷲掴み、ポケットに入れ、
玄関へと向かうと急いで靴を履き、田村家から出た瞬間に通話ボタンを押す。
かれこれ五十秒くらいは着信音が鳴りっぱなしである、失敬。

「もしもし、俺だが」
『出るのが遅いわ。ところであなた、これからの予定は?』

挨拶もなしかよ。

『ちょっと、どうして黙るのよ』
「・・今の今まで友達の家に居て、もう帰ろうと思ってたところだよ」
『なるほどね、予想通り良くない方向だわ。
 いえ・・間に合った分、運が良かったといったところかしら』
「ん、何の話だよ?」

よく分からないことを言うな・・まあ普段から理解しづらいことばかり言ってる奴だが。
どうやら黒猫も外に居るらしく、向こう側からもときどき車の音だの何だのが聞こえてくる。
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:33:25.70 ID:03Jqq7/a0

『こっちの話。・・とりあえず、今あなたが帰宅することは私が許さないわ』
「は、何で?」
『何が何でもダメなのよ、代わりに少しの間は私に付き合いなさい』
「いやいや、ちょっと待ってくれ黒猫。木曜が桐乃のメルル・シスカリ・その他開放デーであることは知ってるだろ?
 だから俺は今日もそれに付き合わなくちゃいけないんだよ」

従わないと、桐乃は鬼のように怒る。
それはもう凄い勢いで、烈火の如く。
まったく、理不尽極まりない話だ。

『良いのよ、”今日は大丈夫”だから』
「ん、どうしてだよ?」
『・・で、私に付き合うの、付き合わないの、どっちかしら?』
「何なんだよ・・ったく、分かったよ。付き合えば良いんだろ。ただし、ちゃんと説明はしろよな」
『ふっ、よろしい。従順な下僕は好きよ』
「で、どこに行けば良いんだ・・っていうか、おまえ今どこ居るんだよ」

『あなたの後ろよ』

つんっ。

「うおおわっ!!?」

その言葉と同時に背中を指で突かれた。
振り返ると、件の黒猫少女が携帯を耳に当てながら、空いている方の手を腰に当てて立っている。
今度こそ心臓が口から飛び出たかと思ったぞおい・・気配も存在感もありゃしねぇ。ゲンガーかおまえは。

「何よ、幽霊でも見たような驚き方をして。あなたという男は本当に不躾極まりないわね」
「メリーさんみたいな登場の仕方をされたら誰だってビビるっつーの」

相変わらず、その出で立ちもいつもと同じ「闇に染まったメリーさん」みたいなゴスロリファッションだ。
こんな静かな街中でこの姿を見ると、違和感を覚えずにはいられないな・・正直浮いてるぞ、その格好。
こんな奇抜な格好が自然体になる状況なんてこの地球上のどこを探しても稀だろう。

「その目は物凄く失礼なことを考えている目よね」
「そ、そんなことねぇよ・・で、何の用なんだ」

というか、どうしてここに居ることが分かったんだろうか。
そんな俺の疑問を知ってか知らずか、黒猫は思わせぶりな笑みを浮かべていた。
いつもの人を蔑むような、妖艶な目つきで。
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:34:02.54 ID:03Jqq7/a0

「・・そうね、ただの暇潰しよ」
「ひ、暇潰しだぁ?」
「尻尾を振って喜ぶが良いわ、私のような高貴なる存在と時を共にできることをね」

いきなり何を言い出すんだこいつは。
こんな日に男一人捕まえておいて、堂々と暇潰しなどと言いやがる。
いや・・まぁ、ある意味いつもの調子なんだけどよ。

「ところで、人間界の男どもが総じて浮かれている日でも、あなたは相変わらず浮かない顔をしているのね」
「人間界の男どもが浮かれてる日・・バレンタインのことか?」
「そう、St. Valentine's Day。
 私のように闇に生きる存在からすれば、疎ましいことこの上ない制度だけれど」
「はぁ・・」

どうして自分が疎ましいと思うこんな日に俺を呼び出したんだよ、このお嬢さんは。
いつも通りではあるが、だからこそこいつが何を考えているのかが読めない。
いや、一生読むことはできないだろうな、そして、読みたくはない。
読むことができるということはコイツと同等の世界観を持ってしまったということと同義だからだ・・それも悪くはないか?

「とりあえず、近場の喫茶店にでも入るとしましょう。私、こう見えて疲労困憊なのよ」
「何でおまえが決め・・、」
「ほら、早くなさい。私は喉が渇いたの。それくらい言われずとも察知しなさいな」
「・・・」

・・いつも通りだ。
その尻に黒くて長い尻尾があったなら、ご機嫌に左右に揺れていただろう。
俺は財布の中身を確認しつつ、高飛車な黒猫嬢の後を追った。

385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:34:51.99 ID:03Jqq7/a0

―――――

「ふぅ・・久々に長歩きをしたから、疲れたわ」

俺たちが入ったのは、誰でも知っている緑と白の色遣いが目立つ某大手コーヒーショップだ。
こういう類の店には疎い俺だが、黒猫が入りたいと言うのだから従うしかない。
甚だ遺憾ではあるが、知らないうちに黒猫従属体質になってしまっていたらしい。甚だ遺憾ではあるが。

「で、俺が家に帰っちゃいけない理由ってのを教えてもらおうか」
「なっ・・そ、そんなこと誰が言ったのかしら。勝手な憶測で事を進めないで欲しいわね」
「さすがの俺でも分かるっての、それくらいはな」

二月の半ばというまだ肌寒い季節だというのに、黒猫は冷や汗をだらだらに垂らしている。
その姿は、互いの前に置かれたアイスコーヒーのグラスに似ていた。
中身はキンキンに冷えているくせにその肌には水滴を垂らす、みたいな。

「だ、だから言ったでしょう。私の暇潰しに付き合って、と」
「あぁ、そうかよ」

俺と目を合わせようとしない・・やっぱり、何かを隠してやがるな。
そうじゃなきゃ、わざわざ学校が終わってすぐにこんなとこまで出向く必要がない。
ただでさえ女王様気質の黒猫だ。何か特別なワケがあるに違いないんだが・・。

「っていうか今日はバレンタインだろ。おまえだって好きな男の一人や二人居るんじゃないのか。
 放課後になっても決心がつかず、大好きなあの人を待ち続け、部活が終わった頃にようやく渡しに行く・・みたいな、」
「フン、私が人間の男どもに媚び諂うと思っているのかしら」
「媚びへっ・・あのなぁ、そういうモンじゃないだろ。
 良いか。バレンタインっつーのはな、日頃伝えられない想いを好きな男に伝えられる特別な日だぞ」
「ふぅん?」
「それに、この日じゃなきゃダメなんだ。だからこそ世の男女があれだけ意識してるんだぞ。
 外に出てもウチでテレビを点けてもラジオを聞いてもネットをしても、どこもかしこもバレンタインバレンタイン・・、」
「だから?」
「だから?・・って、そんな淡白な」
「さっきも言ったでしょう、バレンタインなんて低俗な風習に私が乗るとでも思うのかしら。
 巷でよく言われる『お菓子会社の陰謀』とか『メディアの勝手な流行作り』とかいう噂も聞くに堪えないわね」
「別に好きな男にだけあげなきゃいけないってわけじゃねぇ、日頃お世話になってる奴に贈り物をしても良いんだ」
「・・どちらにせよ、同じことよ」

唾を吐くように言い、足を組み直した黒猫は静かにストローに口をつける。
さっきはいつも通りと言ったが、いつも以上に接しづらい・・。
麻奈実からの贈り物で少し浮かれていた俺の心が冷めてきたぜ。
少しの間も幸福な気分に浸らせてくれないのかよ、人生ってもんは。
こういうめぐり合わせなのか?
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:35:36.07 ID:03Jqq7/a0

「ところで・・あなた、ポケットに突っ込まれたそれは何?」

そして、件の麻奈実からのプレゼントをピンポイントで指摘された。
丁度思っていたことや物事の核心を突かれると、途端に口ごもる俺である。

「あ、いや。これは」
「怪しいわね・・まさか、」
「・・バレンタインのだよ、悪いか?」

この際、隠しておく方が逆に怪しまれる。
俺がネクタイの入った箱をちらりと見せながらそう言うと、黒猫は唸るような眼差しを向け、
何かを我慢するように再びコーヒーでその喉を潤し、一呼吸入れようとする。
慌てっぱなしだった先程とは違い、今回は無理やり気を落ち着かせようとしているようだった。

「なるほど・・あなたにプレゼントだなんて、物好きな女も居るものね」
「あぁ、そうだな。そんな物好きからのプレゼントでも俺は嬉しいんだよ、ほっとけ」
「・・そう」

黒猫の表情が悲しいような、辛いような、形容しづらい表情に歪む。
あまり・・いや、今までに見たことのない表情だ。
どうしてそんな顔つきになったのかまでは分からないが。

「じゃあ、兄さんはもう満足というわけかしら」
「どういう意味だ?」
「バレンタインに女の子からプレゼントを貰い、満足したのかということよ」

満足、ねぇ・・。
俺は腕を組み、少し思案する。

「・・まぁ、一つも貰えないと思ってたからな、満足といえば満足だ。
 まだ貰えるってんなら貰いたいが・・もう良いさ、俺は高望みをしないんでね」
「そう・・」

また、おまえはそういう顔をする・・。

「何だよ、なんか不満そうな顔してないか」
「いいえ。あなたらしいと思っただけよ」
「何だそりゃ・・」

時刻は、街灯が点き始めるであろう午後五時過ぎ。
いつもなら桐乃とシスカリの対戦格闘に耽っている頃だろう。
金はかかるが、あの低度の疲労や目の疲れが溜まる苦行をするよりは今の方がマシだな。
数分間の沈黙が続き、互いのコーヒーがあと一口くらいになった頃、黒猫がその均衡を破るように口を開いた。
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:36:30.74 ID:03Jqq7/a0

「仮に・・仮によ?」

その言葉に、俺はふと顔を上げる。
黒猫は両手を膝の上に置き、口をまごつかせながら続けた。

「仮に、あなたへのプレゼントがあると言ったら、兄さんはそれを・・受け取る?」
「おまえからのプレゼント、か?」
「・・そ、そうよ。それ以外の意図が含まれていたかしら」

黒猫は口元に手を当て、何かを遮るように言っていた。
何かを恥じるような、それでいて何かを隠すような振る舞いだ。
やれやれ、何が言いたいんだこいつは・・まぁ、でも、

「そんなの考えるまでもねぇよ、受け取るに決まってんだろ」
「ほ、本当?」

素っ頓狂な声と共に、黒猫が俺にも分かるくらいにその目を丸くする。
俺はその様子が少し面白いと思いながらも、話を続けていく。

「こんなの即答だし、おまえにそんな嘘ついて何になるんだよ。
 さっきも言ったが、バレンタインってのは世話になった奴に感謝の気持ちを込めて贈り物をする日だ。
 それを受け取らないってことは相手が誰であれ、そいつの気持ちを踏み躙ることになるんだ、分かるだろ」

さっき会ったばかりの眼鏡をかけた草食動物みたいな幼馴染の顔が脳裏に浮かぶ。
俺の言っていることはまったくもって正論のはずだ。異論は認めない。

「そうだけど・・あなた、これ以上高望みはしないって言ってたじゃない」
「ぐっ・・いや、なんつーか、さっきのはちょっと見栄を張っただけだ、すまん。
 貰い物は多いに越したことはないし、その数だけ自分を想ってくれてる奴が居るってことなんだからさ」
「そ、そう・・そうね。及第点をあげても良い答えだわ」
「何だそりゃ。っていうかおまえ、もしかして俺に・・、」

プレゼントでもくれるのか、と言おうとした瞬間、


「つ、つけあがらないことね、この人間風情がっ!」


バンッ!!とテーブルを叩き、黒猫が勢い良く立ち上がる。
その行為に俺はおろか、店内の客のほとんどの視線が黒猫へと浴びせられた。
ただでさえ、目立つ格好してるっていうのにコイツは・・!
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:37:18.74 ID:03Jqq7/a0

「わ、私があなたのような凡人にプレゼントだなんて・・そんなのぼせた考えは捨てることよっ」
「あぁ、そうかよ。・・別に期待なんてしてねぇし」

期待なんてしてない、というのも少し見栄を張った嘘である。
口をついて文句が出てきちまうのは妹と似てるのかねぇ・・いや、桐乃が俺に似たのか?

「とりあえず座ってくれ、客の視線がピンポイント集中砲火で痛いんだよ」
「ふ、フン・・!」

静かに腰を下ろし、そっぽを向く黒猫。
腕を組んだまま、こっちを見ようとしない。
うーん、また機嫌を損ねちまった。
・・誰か、猫の飼い方を教えてくれないか。
切実に。

♪〜

っと、またメールかと思ったら、俺の携帯は震えていない。
・・となると。

「おい、どうかしたか」
「・・用事ができたわ、帰らせてもらうけど良いかしら」
「また突然だな・・まぁ、止めはしないけどよ」

気まずい空気だからか、特に物言いをする気にはなれない。
まぁ、別に文句はなかったけどさ。
互いに俯いたままで店を出ると、店に入る前より外は肌寒くなっていた。

「天気悪いな・・」

見上げると、昼は快晴だったはずの空が微妙に曇り始めている。
そういや、麻奈実が今日は雪が降るとか言ってたっけな。
確かに、今にもちらつきそうな天候だ。
ボーッと空を見上げていると、ふと黒猫の小さな声が聞こえた。

「今日は雪が降るそうね・・兄さんはマフラーとか手袋くらいしたらどうかしら」
「生憎ながら、マフラーも手袋も持ってなくってな。
 それで今まで学校生活はこなしてきたが、やっぱそろそろ限界かもな、ははっ」
「そう・・」

ははっ。という爽やかな笑いがそんなに似合わなかっただろうか、と少し落ち込む俺。
気にするな俺、黒猫はいつも釣れない態度じゃないか、頑張れ俺。
というか、おまえもその格好は寒くないのかよと思った矢先、黒猫が俯きながら何やら呟き始めた。
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:37:45.89 ID:03Jqq7/a0

「その・・悪かったわね。さっきはいきなり怒鳴ってしまって」
「・・お、おう?」

てっきりずっと不機嫌のままだと思っていたから、正直俺は驚いた。
目を合わせられないところがまた黒猫らしいというか、何というか。
まぁ、こっちにも非がないとは言えないから、俺も何も言えやしないけどよ。

「別に気にしてねぇさ、あんなの謝るまでもねぇし。俺も至らないところがあったしな、悪かったよ」
「いえ・・あと、いきなり暇潰しに付き合えだなんて横暴だったわ、ごめんなさい」
「・・いや、大丈夫だ。たまにはこういうのも良いもんだよ」

これは社交辞令とかじゃあない。一応、本心からの言葉だ。
桐乃の初めての友達になってもらったって恩もあるし、何より黒猫は俺の大切な友人でもある。
たまには二人で会って、こうやって言葉を交わすのも良いだろう。

「あの・・また、誘っても良いかしら」
「ああ。できれば今度は前日までにメールしてくれると助かるよ」
「分かったわ・・じゃ、また」
「途中まで送った方が良いか?」
「あ・・、」

俺の問いかけに対して、何かを言いかけた黒猫は、
やはり、何かを思い出したように俺に背中を向けると、
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:39:05.27 ID:03Jqq7/a0

「・・いいえ、あなたは早く家に帰ってあげなさい」
「?」
「あぁ、それと・・『それ』はそこのポケットではなくて、ズボンのポケットにでも入れておくべきだと思うわ」
「ん?」

黒猫が指差した「それ」は、俺が麻奈実から貰ったネクタイの入った箱だった。
ブレザーのポケットから微妙に顔を覗かせている。
ふむ、ちょっと走ったくらいで落ちちまいそうだな。

「そうだな、わざわざありがとよ」
「別に、・・あなたを守るためよ」

・・何だそりゃ、さっぱり分からん。
まぁ反抗する理由もないので、言う通りにするけどよ。

「じゃあ、また・・兄さん」
「おう、気をつけてな」

黒猫の言葉の意味は分からないまま、俺は何となく手を振って、彼女の背中を見送った。
結局、黒猫との距離感が縮まったのか縮まらなかったのか、微妙な時間だったな。
と、いうか本当に何しにここまで来たんだアイツは。

「・・寒っ」

まだ二月中旬。
吐く息は白い。

「帰るとするか・・」

周囲の店はすっかりバレンタイン仕様で、街並はピンクや白の装飾や照明に彩られている。
こごえる寒さと不快な雰囲気に当てられながら、俺は足早に家路へとついた。

391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:39:51.14 ID:03Jqq7/a0

―――――

「遅いっ!!!」
「・・・」

帰宅早々、鬼の形相で兄に迫る妹。
「鬼の形相で」さえ付いていなければ、『おかえりなさいっ、お兄ちゃん☆ミ』みたいな字面なのによ。
いや、別にこの超肉食系女子(自分が萌える妹に対してのみ)である桐乃にそういうことを求めているわけじゃないぞ、断じて。

「今日は木曜日、何の日か忘れたわけじゃないわよね?」
「バレンタイぷごぉわっっ!?」

最後まで言葉を綴ることすら許されぬ強烈なビンタが俺の頬に炸裂した。
極寒の外界から帰ってきたばかりの人間のほっぺたにこの攻撃は正直こたえるぜ・・!
冬で早帰りとはいえ、コイツは今日も陸上部で扱かれてきたはずなのにどうしてこんなに元気なんだよ。

麻奈実から黒猫、そして、桐乃。
まさに天国から地上、地上から地獄へと転がり落ちたみたいだな。

「ほら、さっさと準備してっ!」
「ちょっと休ませてくれよ、外めっちゃ寒くてさ」
「っ・・!」
「ちょ、ビンタはもうっ・・!」
「・・分かったわ、5分ね。いや、3分」
「お、おう」

あれ、いつもならここで「あんたの都合なんて関係ないっての!ほら、さっさと来るっ!!」
なぁんて怒号が響くところなんだが、今日の桐乃は変なところで丸い気がする・・気のせいか?

「あたし、リビングで準備しとくから」
「ああ、すぐ行くよ」

まぁ、妹の挙動が理解不能なことは今に始まったことじゃない。
俺はひりひりと痛む頬を撫でながら部屋に戻り、鞄を放り捨て、
急いでリビングに行くと、桐乃がゲームのセットを完璧に済ませていた。
本当にまあ何というか、我が妹ながら自分の欲望に対して俊敏で従順な奴だ。
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:40:47.27 ID:03Jqq7/a0

「あんたさ、いつもより帰りが遅かったけど何かあったの?」
「ん、ちょっとな」

部屋で脱ぎ忘れた制服を脱いでソファにかけたとき、テーブルに温かいお茶の入ったコップが置かれていた。
しかも、二人分。
今日の桐乃はやけに気が利いてる気がするが・・。

「何よ、”ちょっと”って」
「いや、何でもないさ」

・・うーむ。
麻奈実の家に上がり込み、黒猫と暇を潰していたなんて話せば、どうせこいつは機嫌を損ねるに違いない。
まぁ、今正直に話しても、後になってバレても、同じことだろう。

「ふぅん・・まぁ、良いわ。さっさとやるわよ、ほら」
「・・?」

うん、やはり様子がおかしい。
いつもなら、ある程度の追求があってもおかしくはない場面なんだが・・。
また、俺の自意識過剰だろうか。

393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:41:24.80 ID:03Jqq7/a0

―――――

時刻は、どの家庭も夕食を済ませたかその真っ最中であろう午後七時。
一通りゲームをやり尽くした俺たちは、昨日の晩飯の残りのカレーを食していた。
子ども二人だけの晩飯を手抜きする母親には思わず溜め息が出ちまう(悪い意味で)。
前述の通り、母親は習い事(しかも、今日に限っては泊まりがけのレッスン)のため、帰らない。

「あれ、親父は?」
「今日は帰らないって。お母さんが言ってた」
「・・そうか」

父母不在、在宅者は兄妹のみ、か。
両親が居ない日なんて数少ないっていうのに、俺は彼女の一人も家に連れ込めないわけだ。
目の前でカレーを静かに口に運んでるこの妹が家に居なければ、もっと連れ込める可能性は上がるんだけど。
まぁ、彼女なんて居ないんだけどなっ!(泣

「・・・」
「・・・」

さて、話題がない。
スプーンが皿に当たる音とテレビの音しか響かない食卓風景である・・離婚間際の熟年夫婦かよ。
いや、別に絶対に妹と話をしなきゃいけない決まりなんてこの世のどこにもないわけだが、
食卓を囲んでいるにもかかわらず、ただただ機械的に食事を済ませるだけって、何か嫌だろ?

「そういやさ、今日バレンタインだったけど、おまえは誰かにチョコあげたの?」
「・・あやせと加奈子にあげたけど、それが何?」

また、この妹はぶっきらぼうに話しやがる。
今日のこいつは機嫌が良いから色々と突っ込んでこないのかと思っていたが、
機嫌云々じゃなくて、単純にテンションが低いだけな気がするな。

「ふーん、男にはあげなかったのか?」
「うわ、どうして妹の交友関係探ろうとしてるワケ、キモ〜ッ」
「深読みしすぎだ。別におまえに好きな男が居るとか居ないとかに興味なんかねぇよ」
「・・あっそ。じゃあ聞かないでよ、そんなこと」

こっちが閑散とした食卓に何気ない会話を取り入れてやろうと思ってたのに。
わずか三往復の会話で沈黙が殺伐にランクアップしちまったよ。
もういっそのこと、さっさと食べてさっさと部屋に戻ろうかと思った矢先、
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:41:56.21 ID:03Jqq7/a0

「そういうあんたこそ、誰かから貰ったの?」
「ん、いや。まぁ・・そうだな」
「ま、まままさか、貰ったのっ!?」

ガタン、と桐乃が椅子を揺らして立ち上がった。
そんなオーバーリアクションをとるほど驚かれるとさすがに凹むんだが。
黒猫にしろ桐乃にしろ、そんなに俺がプレゼントを貰うのがおかしいのか。
世界には約三十五億人の女が居るんだぜ、一人くらい俺にプレゼントをくれても不思議じゃないだろう。

「んだよ、悪いのか」
「な、ぐ・・あ、あんたがチョコを貰ったことよりも、あんたにチョコあげるような物好きが居たことに驚きだわ・・」

実の兄に対して、酷い言い様だ。黒猫にも似たようなことを言われたけどさ。
何度も言っているように、今に始まったことじゃないけどよ。

「数に入れていいかどうかは分からないけどな」
「何それ、どういうこと?」
「麻奈実から貰ったんだよ。チョコじゃなくてネクタイだったけど」
「チッ・・!」

ぐっ!?
何か今こいつ、あからさまに舌打ちしたよな。
素性の知れない女じゃなくて幼馴染に貰ったって方が桐乃の機嫌も直るかと思ったが、逆効果だったか。
っていうか、こいつは事あるごとに麻奈実につっかかるよな・・何でだ?

「地味子か、なるほどねぇ。だからあんたちょっと浮かれた感じなのね」
「浮かれっ・・んなコトねぇって!」
「それを言いたくて自分からバレンタインの話題なんか切り出したんでしょ、あたしのことなんか興味ないくせにさ」
「おまえはさっきから深読みしすぎなんだよっ!」
「あーやだやだ、男ってホント例外なく単純よね〜」
「お、俺は違う!」

桐乃が両手をヒラヒラとさせて、呆れたポーズをしていた。
た、確かに麻奈実からプレゼントを貰ったが、そんな表情や行動に出るほど嬉しがってた記憶はないぞ。
余裕のある奴は、是非読み直してみてくれっ!
こんなんじゃ、あの超ド級シスコン野朗赤城と同類だ(相手が実妹か幼馴染かっていう大きな差はあるが)!
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:42:24.40 ID:03Jqq7/a0

「嘘つけってのっ!あたしは知ってんだからね。
 あんたさ、学校終わってすぐに地味子の家に行ってたでしょ!」
「はっ!?何で知って・・、」

その瞬間、ゴスロリファッションに身を包んだ顔馴染みの姿が脳裏に浮かぶ。
く、黒猫の仕業か・・。
どういうわけか、今日に限ってはアイツと桐乃は繋がってやがったわけか!
と、いうことは黒猫と二人きりでスタ●に入り浸っていたことも桐乃は知ってるのか?
わけが分からん。

「ほらね。っていうか毎週木曜は、あんたはさっさと家に帰って、あたしの相手をする約束じゃない!」
「俺には俺の都合があるっての、っていうか『今日は遅帰りでも大丈夫』って聞いたんだよ!」
「はっ、誰に?」
「黒猫にだよ、おまえが黒猫にそう言ったんじゃないのか?」
「え・・?」

桐乃が呆気にとられたように目をぱちくり、口を半開きにさせる。
・・あれ、黒猫と桐乃は裏で繋がってたんじゃないのか?

黒猫とは、麻奈実の家のすぐ近くで会った。
そして、桐乃は俺が麻奈実の家に居たことを知っている。
つまり、黒猫は俺と会う前、もしくは別れた後に『俺が麻奈実と会っていた』ことを桐乃に報告しているはずだ。
(何でそんなことをしたのか、また、黒猫がどうして居たのか、なんて疑問も浮かぶけどな)
黒猫が麻奈実のことを知らないにしても、桐乃に『兄さんは「田村屋」という和菓子屋から出てきたわ』とでも密告すれば、
桐乃は俺が麻奈実と会っていたことくらいすぐに推測するだろう。
だが、黒猫は俺とコーヒーショップでぐだぐだしていたことを桐乃に言っていないらしい。

「あんた・・黒いのと会ったの?」
「あ、あぁ。麻奈実の家のすぐ前でな」
「・・・」
「桐乃・・?」

「・・あの――ソ猫、――しゃ――ね」

桐乃が小声で、かつ怨念たっぷりに何かを呟いた。

――あのクソ猫、出しゃばったわね。

怖っ・・!
何だよ、おまえら裏で手を組んでたんじゃないのか?
何のために協力していたのかは知らんが、さっぱり状況が掴めん。
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:43:05.86 ID:03Jqq7/a0

「・・もう良い。約束破った罰として、今日はあんたが洗い物ね」
「なっ、そりゃちょっと理不尽すぎるだろ!」
「うっさい!」
「確かに今日は遅帰りだったけどゲーム自体はやったじゃねぇかよ、少ししかゲームできなかったのがそんなにムカついたのか?」
「うっさいうっさい!」
「それとも俺が麻奈実の家に行ってたこととか黒猫とだらだらしてたことがそんなに癇に障ったのかよ?」
「あーもう、うっさいうっさいうっさい!!」

バッターン!とテーブルを両手でぶっ叩き、腰を上げる桐乃。
その衝撃で互いのグラスが倒れ、テーブルが水でぐしょ濡れだ。
そんなことには構わず、桐乃はギラギラとした視線で射[ピーーー]ように俺を睨み付けている。

「き、桐乃・・?」
「・・・」

ああ、いつものパターンか・・結局、こうなるんだよな。
再三言っているようにこれは日常風景なんだが、これだけ実妹とコミュニケーションを取れないと
実兄として何らかの責任があるんじゃないかと思っちまうよ・・。

「おい、桐乃っ」
「うっさい、皿洗いしといてよ。あと、今日明日は話し掛けないで。ノロケオーラが感染るから」
「な・・」

バッタ−ンッ!!
家が傾くんじゃないかというほどの勢いでドアを閉めた桐乃は、怪獣のような足音を響かせて二階へ上がっていった。
やれやれ、追い掛けるのは面倒だ。
あいつを追い掛けてまた怒鳴り合いをするよりは皿洗いをして米とぎしていた方が遥かに楽だな。
俺は保守派なんでね。

「やれやれ・・」

溜め息混じりに、ふとテーブルを見渡す。
桐乃の皿にはまだ半分以上カレーが残っていた。

397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:44:06.70 ID:03Jqq7/a0

―――――

さて、災難と幸運というものは突然やってくるものだ。
これから起きる出来事はそのどちらに属するのかは未だに判断できないが。

「ふぅ・・」

結局、あれから桐乃とは一言も言葉を交わせず、風呂は入れ違いになったものの、目すら合わさなかった。
いつものことだと割り切った俺が今日の復習と明日の予習を無難に済ませ、いざ夢の中へと逃げようと思った矢先のことだ。

♪〜

時刻は、午後十一時半過ぎ。
日付の変わる三十分前とはいえ、友人から電話だのメールだのが来てもおかしくはない時間だ。
俺は何の気なしに携帯のディスプレイを見やる。
どうせ、赤城辺りが『明日の授業で自分が指される番だからここだけでも良いから教えてくれ』とか下らない妄言を・・、

『着信中 黒猫』

またか・・。
何の用かは知らんが、良い機会だから今日桐乃と連絡を取り合っていた理由でも聞いてみるとしますかね。

『・・・』
「よう、こんな時間にどうしたんだ?」
『くしゅん!』
「は?」
『・・な、何も言わずに家から出てきなさいっ』
「出てきなさいって・・今か?」
『はぁ、はぁ・・あなたに、選択権はないわ、四の五の言わずに、早く、出て来、ふ、ふぇ・・っくしゅん!』
「・・・」

やれやれ、今日は厄日らしい。
了解の旨を伝えた俺はジャケットを一枚羽織り、引き出しの中からポケットティッシュを一袋だけ乱雑に取り出した。
念の為、隣の部屋でエロゲを貪っているであろう桐乃に気付かれないように静かに部屋から出ておく。
足音もたてずに階段を下り、暗い玄関で不慣れに靴を履いて、ゆっくりと外へ出ると、

「お・・?」

真っ暗な視界に無数の白い粉がちらほらと舞い散っていた。

雪だ。

一面の銀世界といっても、何センチも積もっているわけじゃあない。
とにもかくにも、今年初の降雪に俺は一瞬だけ感傷に浸っていた。
無論、一瞬だけしか浸れなかった理由は、
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:46:02.71 ID:03Jqq7/a0

「こんな寒さの中、私を待たせるなんてあなたはとんだ無礼者ね・・っくしゅん!」

・・いつものゴスロリ服の上から見慣れない真っ黒なコートを着た黒猫が居た。
黒に黒を重ねるファッションセンスに関しては、もう何も言うまい。
服装とはマッチしない貧相なビニール傘をくるくると回しながら、不機嫌そうな表情を浮かべている。

「待たせたって・・おまえが呼び出したんだろ」
「ふん、どっちでも・・くしゅ、くしゅん!」
「まず、鼻かんどけよ」
「・・フン、気が利くわね」

何か腑に落ちないような顔をしつつ、素直に俺からティッシュを受け取り、鼻をかむ黒猫。
一体、コイツは何しに来たんだ・・?

「・・とりあえず、中に入るか?」
「ふぅ。いいわ、アレに見つかると面倒だから」

・・アレって桐乃のことか?

「えーと、何か用があって来たんだろ。
 長くなるんだったら、今日は親居ないから遠慮しなくて良いんだぞ?」
「・・それはどういう意図が含まれているのかしら」
「あ・・?」

あ、いやっ!
別にそういう意味で言ったんじゃねぇ!
大体、親は居ないが桐乃が居るし・・。
何よりっ、

「俺はおまえのことをやましい目で見ちゃいない!」
「・・・」
「あれ?」
「恐らく、心の中で思っていた文章が最後の方だけ口に出てしまったようね・・けほけほっ」
「・・聞かなかったことにしてくれないか」
「無理ね、あなたの失言で私は酷く傷ついたわ」

黒猫がいつになく怪訝な目でジッと見つめてくる。
やめろ、桐乃とはまた違った、俺を責めるような目を向けないでくれっ・・!
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:47:18.49 ID:03Jqq7/a0

「・・兄さん、少し頭を下げなさい」
「え?」

突然のことだったが、俺は言われた通りにお辞儀をするように頭を下げる。
一方の黒猫は肩に掛けていた大きめのポーチからガサゴソと何かを取り出した。
見慣れた、妙にもこもこした・・、

「罰として、この呪いの魔道具を首に巻きなさい」

傘を置き捨て、精一杯背伸びをした黒猫が俺の首に温かい何かを巻き付けた。
寒々とした首周りが、一瞬でぬくもりに包まれる。
分かっているのに、俺は口に出さずには居られなかった。

「マフラー・・か?」
「違うわ。私が特別に精製し、永きに渡り魔翌力を注ぎ続けた呪いの魔道具よ」
「・・・」
「あなたが私を裏切るような言動や行為をする度に、これがあなたの首を締め付けていくわよ」

・・おっかねぇ。でも、なぜだかホッとした。
なるほどね、わざわざ来た理由はこれか。

俺は落ちていたビニール傘を拾い、黒猫の手に戻してやった。

「・・ありがとよ、黒猫」
「ば、バカじゃないかしら。そこはお礼を言うところではないわ・・けほっ」

俺は一言だけ感謝を告げ、黒猫はどこか誇らしげに言葉を漏らす。

「礼を言わずには居られなかったんだよ、悪いな」

すっかりかじかんだ手でマフラーを触る・・素人目に見ても編み目が少し荒い。
でも長さは十分だし、クリーム色を基調とした色遣いは見るだけでもすごく心が温まる。
・・十分に伝わったぜ、黒猫。

「そういや、どうしてこんな時間に渡しに来たんだよ、明日でも良かったんじゃないか?」
「だ、だって・・兄さんがバレンタインのプレゼントは十四日のうちに渡さないと意味がないって言うから」

あぁ・・そういえば、昼間会ったときそんな感じのことを言っちまった記憶がある。
正直、あのときは勢いで言っちまった節があるし、別に当日渡さなきゃいけないなんてルールはないんだが、
黒猫がそれを信じちまった以上、黒猫がプレゼントをこんな時間に渡しに来ちまった原因は俺にある、な。
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:47:45.85 ID:03Jqq7/a0

「それにしても、何でマフラーなんだ?」
「・・不満かしら」
「いや、そんなことはねぇ。ただ、最近のバレンタインのプレゼントって多種多様だろ?」
「えっと・・一緒に喫茶店を出たとき、あなたが『マフラーも手袋も持ってない』って言ってたから・・」
「あぁ・・いや、待て待て。あれから五、六時間しか経ってないだろ。マフラーってそんな短時間で編めるものなのか?」
「・・かなり前から編んでいただけよ」
「だよな・・なんか悪かったな、手間かけさせたみたいで。大変だったんじゃないか?」
「別に。魔道具の精製は慣れたものだから」

クッ、ところどころに黒猫ワールドを挟んできやがって・・。
人の言葉を素直に受け取れないのかよ、こっちが恥ずかしくなってくるぞ。

「でも、前々から編んでたのなら、尚更今日の昼に渡してくれれば良かったんじゃないのか?」
「・・それはっ、」

グッと口を閉じる黒猫。
下唇を噛んで、何かに耐えているような様子だ。

そんな中もこなあああああああああああああああゆきいいいいいいいいいいいいいいいいいは未だしんしんと降り続け、手先足先は寒さのせいで感覚を失っていた。
俺でさえ真冬の寒さをこれだけ直接受けているんだから、
脂肪が少ない(ように見える)黒猫は余計寒いんじゃないだろうか。

そんなことを考えていると、ようやく黒猫がその小さな口を開いた。

「・・用は済んだし、私は帰るわ」
「え、おいっ」
「何かしら」

さっきの何かを恥ずかしがっているような黒猫の表情が、いつもの女王様に戻っていた。
思わず怯む俺。頑張れ俺。
バレンタインのプレゼントを二個も貰った今日の俺は間違いなく運気が良いはずだ。
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:48:20.92 ID:03Jqq7/a0

「この際、今までの話は打ち切ろう。だが、こんな時間におまえを一人で帰らせるわけにはいかねぇよ」

携帯を見ると、あと数分で深夜0時というところ。
俺はともかく、黒猫は見るだけで未成年だと分かる。
可能性は低いが、警察に見つかったら速攻で補導されちまうだろう。
徘徊してた理由が「男友達にマフラーを渡すため」なんて口が裂けても言えないはずだろうし。

「別に大丈夫よ、夜でこそ私の真価は発揮されるわ」
「そうは言ってもだな・・、」
「それに今日は木曜日でしょう。
 あなたも私も明日学校があるのだから、私が泊まるのは互いに利益があるとは思えないわ」

確かに、黒猫がアポなしで泊まりに来たなんて桐乃に言えばそれはもう大変面倒なことになるだろう。
黒猫が居る間は桐乃も拳を潜めるだろうが、黒猫が帰った途端にてんやわんやの悲劇の幕開けである。
かと言って、泊まりを隠すとすれば、俺の部屋に匿わなければいけない。
それはもう、様々な意味でギリギリアウトである。

「分かった、じゃあせめて家まで送るよ。良いマフラーを貰ったから全然寒くないしな」

・・正直まだ寒いけどよ。

「いえ、それも遠慮するわ」
「何でだよっ」
「あなたが家に居ないことにあの女が気付いたらどうするの。
 あの女のことだから、どうせまだエロゲをやるために起きているはずよね?」

と、二人して桐乃の部屋の窓を見やる。
俺たちを嘲笑うかの如く、煌々と明かりが点いていた。

「・・ばっちり、」
「点いてるな・・」

だったらどうしろって言うんだよ・・。
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:49:07.19 ID:03Jqq7/a0

「別にバレたって良いだろうが、ちょっとコンビニにでも行ってたって言えば、」
「こんな寒い中にコンビニに出向くのは大馬鹿者ね」
「か、構わんさ・・!」
「それにほら、足元を御覧なさい」
「ん?」

御覧なさい、って雪しかないが。

「足跡よ」
「?」
「大小2つの足跡。小さい方の足跡は外から来ていることから分かるように、来訪者であることは明らかだわ」

標準より小さい足跡であることから、来訪者は女性であることが推測できるわね、と付け加える。

「大きい方の足跡はこの家から出ていることから分かるように、あなたの足跡であることは自明のことよ」

目を閉じたまま、淡々と説明を続ける。

「そして、あなたが私を送るとなれば、この大きい足跡と小さい足跡は私たちの動向を知らせてしまうことになるわね」
「つ、つまり・・?」
「つまり、もしあなたが家に居ないことに気付いて、あの女が外にまで出てきて、この足跡に気付いたとしたら・・、
「いや、それは考えすぎだろ・・?」
「可能性はゼロではないでしょう、それともあなたは”あの明かり”が消えるまでここで待てというのかしら?」
「ぐっ・・」
「ちなみに、先程までかなりの量の雪が降っていたけれど、もう収束傾向にあるそうよ。
 つまり、足跡がこれから降る雪で埋もれて、なかったことにもならなさそうね」

・・支離滅裂なことを言っているようで、何だかんだ妙な説得力を持っている気がする。
確かに、桐乃は翌日に学校があろうとも気が済むまでエロゲをやるタイプだ。
学業は優秀なラインを保ち、部活は真面目に励んでるというのに、何の疲労を感じることなくエロゲに専念しやがる。
今日は俺と微妙な小競り合いをした分、余計にストレスを発散しているに違いない・・、が!

「・・別に桐乃に何を言われようと構わねぇよ。
 むしろ、こんな寒さの中、おまえを一人で帰らせる方がよっぽど辛い」

我ながら、とても青臭い台詞を吐いている気がする。
別に良いさ、やましい気持ちがあるわけじゃないんだ。
ただ純粋にコイツが心配なだけなんだからよ。
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:49:50.44 ID:03Jqq7/a0

「俺にこれを渡すためにわざわざこんな時間に来てくれたんだから、それ相応のお返しはするべきだろ?」
「私が自分の判断で勝手に来たんだから、あなたが気負う必要はないわ」
「いや、でもな・・」
「『それ相応のお返し』というのはホワイトデーとやらにしてもらえれば満足よ」
「それはマフラーのお返しだ。わざわざ家まで来てくれたって好意と、おまえを家まで送るってことがイコールになるはずだろ?」
「言ってる意味が分からないわね」

バッサリと叩き斬られた。
俺は間違ったことを言ってないはずなんだが。
っていうか、どうしてそこまで意固地になるんだよ。
別に折れても良いじゃねぇか。
こういう言い方は嫌いだけど、年下なんだから年上の好意に甘えれば良いじゃねぇか。
俺の都合なんて考えなくても良いんだよ。

すると、黒猫が耐えかねたように悲痛な声をあげる。

「どうしてあなたはそんなに頑固なのよ・・」
「ん?」
「別に良いじゃない・・あなたはいつもそうだわ、私なんかをそんな必死になって気遣わなくても良いじゃない」
「・・・」
「?」
「ぷっ」
「な、ちょっ・・どうして笑うのよっ!」
「いや、何でもねぇ・・ははっ」

参ったな、コイツの思考回路はまるっきり俺と同じだ。
それ故にお互いに譲る姿勢を見せないってこった。
まったく、俺も黒猫も桐乃も結局はみんな揃って頑固なんだよな。
全員心の奥底では我が強いからしょっちゅうぶつかることになる。
類は友を呼ぶってか?
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:50:33.16 ID:03Jqq7/a0

さて、問題はこういうときにどうすれば良いかってこと。
答えは簡単だ、先手を打っちまえば良いだけのことさ。
自分の気持ちに素直に、な。

「どうしてそんな頑固なのかって・・おまえが心配だからに決まってる」
「な・・、」
「おまえに選択権はねぇよ。四の五の言わずにさっさと行くぞ」

黒猫が俺を呼び出したときと同じ台詞で締め括る。

悪いな、黒猫。
おまえを一人で帰らせちまったら、ぐっすり眠れそうにないんでね。

「私を送って、兄さんが風邪なんかひいたりしたらっ・・けほっけほ」
「・・何かおまえの方が風邪ひいてないか、さっきから咳き込んでる気がするんだが」
「別に心配、ないわ・・ここまで走ってきたから、まだ呼吸が整っていないだけよ」
「何でまたそんな無茶な」
「身体が温まると思ったからよ・・思いの外温まらなかったけれど」
「そりゃそうだろ、雪が降るほどなんだから度を超えてる」
「フン、私ほどの存在になれば・・暑さも寒さも大した障害になりはしないわ」
「何とでも言ってろよ、明日以降ならいくらでも聞いてやるから」
「あなたという、人は・・」

どうやら、黒猫は完全に折れたらしい。
その証拠に一気にトーンダウンしやがった。
何か言い包めたみたいであまり気分が優れないが、何もしないで終わる方が気分が悪いんでね。
それに、このくらいの寒さで倒れるほど俺はヤワじゃないさ。
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:51:23.45 ID:03Jqq7/a0

「ほら、雪が強くならないうちに・・、」

言い終わる前に、俺は言葉を失った。
いや、失わざるを得なかった。

「っ・・」

俺の胸に、黒猫が力なく倒れこんできたからだ。
同時に、その鼓動がはっきりと伝わってくる。
厚手のコートを着ているはずなのに。

「ごめん、なさい・・」

その声は途切れ途切れだった。
俺は流されるがままにその華奢な肩を軽く掴む。


「もう、限界だわ・・」


その言葉の意味を理解する時間すら与えられないまま、
俺の身体は倒れこんできた黒猫の身体と共に白雪の中に溶け込むように、倒れ込む。

黒に染まった黒猫の背中には、白い雪の結晶がちらほらと落ち、染み込んでいった。


406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:54:17.11 ID:03Jqq7/a0

以上です。
実は少し前にこのSSを途中までVIPで投下したんですが、諸々の事情で中止。
推敲して、改めてここに投下したという顛末です。
サラッと目を通す程度でも喜ばしい限りです、後編は近いうちに。
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:54:44.70 ID:iIcSAdyZo
ああ、どっかで見たような気がしたのはそういう訳か
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:55:29.07 ID:9E7RIV9Go
乙です
後編に期待
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/09(水) 22:56:14.05 ID:k1Ouee8ko
乙です。次回からメ欄にはsagaっていれておくと幸せになれる
410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/09(水) 23:06:55.82 ID:gpv18x0Co
これからゆっくりと読ませて頂きます。
“粉雪”がとんでもないことになっていて、
いまごろ悶絶していませんか?

きっと親切なまとめwikiさんが修正してくれることを信じて
まとめに転載されることを待っていて下さい。

>>400 さんの言うように sage saga 入れた方がいいですよ。

元被害者より
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 23:08:14.41 ID:Qm1eQ3+H0
>>406
乙です
続き気になってたんで嬉しい
412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/09(水) 23:10:05.71 ID:AgBmqgQdo

黒猫かわいいなぁ
粉雪はいきなり来るといかん笑っちまう
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/09(水) 23:10:40.00 ID:b8UWsOQIo
こなゆきトラップは台無しにされるからなぁ
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/09(水) 23:31:23.30 ID:gpv18x0Co
連投すんません。

先程の件、既に修正されてまとめwikiに転載されてた。
ただ、396レス目の“射殺す”がまだ……

管理人さんでもないし、自分の書いたSSでもないんで、
勝手に修正してもいいのかどうか躊躇してます。
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 23:35:23.84 ID:aphiU9Ato
乙だぜい。
確かに前に読んだことあるな。
そして>>400でフイタww
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 23:36:32.21 ID:aphiU9Ato
>>414
俺は自分で修正してるな。
改行規制で削ったところとか、あとで見直して誤字があった場合は。
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/09(水) 23:42:07.41 ID:fK6sYNYto
うああああよかったよう
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 23:47:01.48 ID:vd56INWdo
>>406

後編に期待
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 00:07:45.32 ID:4qFUaa+Do


しかし
>なぜ伏せていたかというと、幼馴染からのバレンタインプレゼントなど数に入らないと思っていたからだ!
・・・・(^ω^♯)
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 00:11:50.94 ID:gAaQxe9Wo
懲らしめる必要がありそうだな
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 00:26:44.85 ID:UMs2VDu+o
>>419
その悔しさをバネに、麻奈実SSを書くんですね。
期待してます!
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 00:29:39.73 ID:4/CsjwDSO
>>374
それは黒猫に言わせたいが(中の人的に)
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 01:29:54.35 ID:H8+N5I+90
日付が変わる間際に部屋にプレゼント投げ込む妹を早くみたいです
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 01:39:31.52 ID:Yk4yBczS0
>>406

全裸期待してる
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 01:40:20.73 ID:Yk4yBczS0
間違った

待機してる
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sagee]:2011/03/10(木) 04:47:53.81 ID:HQTLa8Lw0
>>424
君は変態だ。臆することなど何もない。 
と、某総帥様がエレガントにおっしゃっておられます。
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 11:20:13.38 ID:4OxB1P7ho
>>406の全裸に期待
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 15:56:05.32 ID:qluO/kkUo
なんか、麻奈実分を補給しなきゃいけない気がしたんで投下します。

以下、投下。
429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/10(木) 15:56:33.24 ID:qluO/kkUo
『もしもし〜』
「麻奈実、こんな時間に悪い」
『ん〜ん、気にしないで〜。それで、きょうちゃんどうしたの?』
「ああ。急で悪いんだが、今日泊めてくれないか?」


オッス、オラ高坂京介。地元の国立大学に通う19歳。
さて、冒頭の会話を気にしている諸君も多かろう。これには深い理由があるんだが、その説明は後にさせてもらう。
ま、いつものことっちゃいつものことなんだけどな。


「こんばんは〜」
「おう、きょうちゃん。いらっしゃい」
「あ、爺ちゃん。こんばんは」

俺が麻奈実の家の玄関をくぐると、麻奈実の爺ちゃんがいた。どうやら、たまたま通りかかったようだ。

「やっと婿に来てくれる気になったのかい?」
「残念。そうじゃないんだ」
「ちぇ〜。期待したんじゃがなぁ」

この問答もいつものこと。つか、爺ちゃん。来るたんびにそればっかじゃねえか。何年同じことやらせる気だ。
それに、老い先短いジジイが「ちぇ〜」と言ってもかわいくないからやめとけ。
爺ちゃんは不満そうに口を尖らせながら、奥にいる麻奈実を呼んだ。程無くして、見知った顔の幼馴染がやってきた。

「きょうちゃん、いらっしゃ〜い」
「おう。悪いな、急にこんなこと頼んじまって」
「気にしないで〜。さ、上がって上がってぇ」

麻奈実はどうやら風呂上りらしく、なんかほっこりしてた。女子大生にしては地味だが、麻奈実らしいパジャマを着て、髪はポニーテール。
なんでポニーテールなんだ?髪洗った後はしないもんじゃないのか?いや、よくは知らんが。
そうそう、高校のときの麻奈実はショートカットだったが、今はセミロングくらいまで伸ばしている。理由は知らん。

「きょうちゃん、ご飯は食べた〜?」
「メシは食ったんだけど、風呂はまだでな。悪いけど、貸してくれるか?」
「うん、いいよ〜。うちはみんな入っちゃったから、ゆっくりしてね〜」

俺は夜風に当たって冷えた体を暖めるため、田村家の風呂を借りることにした。しかし、運が良かったぜ。
みんな入った後なら、普通は流しちまうもんだからな。電話したときに、最後の一人が入ってる最中だったのかもしれんな。
勝手知ったる田村家の廊下を進み、俺は風呂場へと直行した。




「ふぃ〜」

体を洗い、湯船に浸かった俺の口から自然と声が漏れる。自分で言うのもなんだが、爺臭いことこの上ない。
けどよ、若いからって声が出ないってことも無いだろ?きっとあれだ、日本人のDNA的なものが作用してるんだ、うん。
そんな不毛な論理展開を繰り広げていると、脱衣所から麻奈実が声を掛けてきた。

「きょうちゃ〜ん。お湯加減どお〜?」
「おう、ちょうどいいぜ」
「よかった〜。タオル、置いとくからね〜」
「あいよ〜」

やっぱ、あいつといると落ち着くな。さっきまでくさくさした気分でいたんだが、こんな何気ない会話で癒されるんだから、麻奈実はすげーと思う。
心も体もほんわかできた俺は、非常にいい気分で湯を堪能した。
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/10(木) 15:57:23.81 ID:qluO/kkUo



「……というわけだ」
「そっか〜。それで追い出されちゃったんだね〜」

風呂から上がった俺は、田村家に来たときと同じ格好で麻奈実と向き合ってるわけだが……。
爺ちゃんよぉ……、いつぞやと同じように布団を並べて敷くとか、芸が無いぜ。もうこの程度じゃ俺は動揺せんのよ。……大人になるって、かなしいことなの。
今の説明でわかると思うが、俺と麻奈実は今、布団の上だ。決していかがわしい意味じゃないからな。勘違いしないように。
そして、俺が麻奈実にSOSを発信した経緯を説明していた。
簡単に言っちまうと、桐乃に追い出されたんだよ。
今日は両親共に不在、俺も桐乃より早く帰宅していた。そういうわけで桐乃が帰ってきた後、夕食を食べてリビングでシスカリをプレイしていたわけだが……。
どうやら学校で嫌なことがあったらしく、桐乃はかなり不機嫌だった。そんな心境が影響したのか、アイツのプレイは乱れまくり。おかげで俺の勝ちが続いちまったわけだ。
それが桐乃の不機嫌度に拍車を掛け、プレイは乱れ、俺に負けるという悪循環に陥った。
俺も桐乃が変なのは気付いたからな、どうしたのか声を掛けたんだが……。まあ、いつもの憎まれ口で返されてな。
そっからは売り言葉に買い言葉。ご近所様にも聞こえるくらいの白熱した口論になり、アイツに追い出された……というわけだ。まったく理不尽な話だ。俺のことだけどよ。

「いくら夏だからって、こんな寒空の下放り出しやがって」
「で、わたしに助けを求めたんだね〜」
「そういうわけだ。幸い、ケータイは持ってたんでな。これで麻奈実に繋がらなかったらと思うと……」
「えへぇ〜」

いやいや、麻奈実さん?俺は何も褒めちゃいませんぜ?むしろ、今の会話で照れるトコありました?

「それで、きょうちゃんはどうするの?」
「ん?なにがだ」
「きょうちゃんは、桐乃ちゃんに謝りたいんだよね〜?」

麻奈実のヤツ、今の話を聞いてなかったのか?俺は完全な被害者だぞ。謝られこそすれ、俺が謝る道理なんざ一切無え。
そんな俺が、桐乃に謝りたいだなんて思うはずが……。

「相変わらず、よく気付くよな」
「きょうちゃんのことだもん。わかるよ〜」
「まったく……。お前には敵わねえよ」

まあ、俺もつい言葉過ぎちまったトコもあるしな。桐乃が不機嫌なこともわかってたのに、大人気ない対応をしちまった。それは謝らないといけないと思う。
だからって、アイツが謝らなくていいことにはなんないぞ!

「それで、どうするの?」
「今日はおとなしくしとくよ。アイツも、一度言った言葉を素直に下げられるようなヤツじゃないしな。一晩経てば、少しは落ち着くだろ」
「じゃ、明日謝るんだね〜」
「そういうことだ」

麻奈実はまるで自分のことのように嬉しそうな顔をしてやがる。ったく、俺もお節介お節介と言われるが、お前には負けるよ。
いや、あれか?孫のケンカを見守るおばあちゃん的ポジションというか、そういう心境までシフトチェンジしちまったのか?

「もう少し素直で可愛げがありゃ、こんなことにはならねーのにな」
「そんなこと言っても、きょうちゃんが桐乃ちゃんのことを大切に思ってるのはばればれだよ?」
「お前まで俺をシスコン扱いか?」
「だって、しすこんさんでしょ?」

ぐっ!即座に言い返せない自分が憎い!
それに、こいつの言葉って妙な説得力があるんだよな。将来は教師か占い師になったらどうですか、麻奈実さん。

「はぁ〜。これが弟とかだったら、こんなに苦労しねーのかな?」
「どうだろう?うちはロックだけだからわかんないよ」
「お前は苦労してなさそうだけどな」
「そんなことないよ〜。男の子の気持ちって、やっぱりわからないもん」

麻奈実でもそういうときがあるのか。なんか意外だな。ウチと違って、麻奈実とロックの姉弟仲は良好に見えるからな。
俺もロックみたいな弟なら、もっと扱いやすいのによ〜。
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/10(木) 15:58:15.60 ID:qluO/kkUo

「でも、桐乃ちゃんがうらやましいな」
「なんで?」
「だって、なんだかんだ言っても、きょうちゃんは桐乃ちゃんのためにがんばってるでしょ?わたしもそんな優しいお兄ちゃんがほしかったな〜、って」
「そうかい。俺も麻奈実みたいな妹がほしかったよ」

そうすりゃ、こんな理不尽極まりない扱いはされないだろうし、俺の生活に奇妙な変化をもたらしてくれることもなかっただろうに……。
ま、そんな「もしも」の話なんかしたって、意味は無いのにな。
……ん?麻奈実のヤツ、なんで頬が赤いんだ?おまけに蕩けそうな顔しやがって。

「おい、麻奈実!」
「ひゃわっ!!?いいいいきなりなに!きょうちゃん!?」
「い、いや。お前が心ここにあらずだったから、強めに呼んだだけだ」
「そそそそう!?ごごめんね」
「あ、謝らなくていいぞ〜」

そんなに驚くことだったか?おまけに、まだ顔が赤いぞ。体調良くねえのかな。

「麻奈実、夏風邪か?顔が赤いぞ」
「そそうかな!?」
「ちょっと動くなよ」
「ひゃうっ!?」

俺は麻奈実のおでこに自分のおでこをくっつけた。うん、熱は無いな。でも、まだ顔が赤い。やっぱ風邪かな?

「今日はもう寝るか。熱は無いけど、なんか調子悪そうだしな」
「う、うん!そうだね!」
「?」

う〜ん。なんか麻奈実の様子がおかしいぞ。ま、寝れば治るだろ。
麻奈実は部屋の電気を消し、眼鏡と髪ゴムを外して布団に入った。俺も布団に入って寝る態勢に移行する。
明日は妹様のご機嫌を直さなきゃいけないしな。やれやれ、お兄ちゃんも楽じゃねえ。

「おやすみ、きょうちゃん」
「おやすみ、麻奈実」

俺は布団に入ってすぐに目を閉じたんだが、麻奈実が話しかけてきたため寝ることは出来なかった。

「ねえ、きょうちゃん」
「ん〜?」
「さっきのわたしが妹だったらって話だけど……」
「おう」
「きょうちゃんは、わたしが幼馴染より妹だった方がよかったのかな?」
「……」
「きょうちゃん?」
「いや、お前は幼馴染の方がいいわ」
「ほえ?」
「俺はさ、今のこの関係が心地良いんだ。きっとお前が妹だったら、そうならないんじゃないかって思う」
「……」
「だからさ、今のままがきっと一番なんだろうよ」
「……えへへ〜。そっかぁ〜」
「ああ。さ、もう寝ろ」
「うん。おやすみ、きょうちゃん」
「おやすみ」



おわり
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/10(木) 15:58:48.12 ID:qluO/kkUo
おまけ

その日の夜中――――。


「きょうちゃん、起きてる?」
「……」
「もう寝てるかな?」
「……」
「きょうちゃん。わたしもね、今のままが良いと思うんだ」
「……」
「でもね、もっともっときょうちゃんといっしょにいたいとも思ってるんだよ」
「……」
「それって、わがままかな?」
「……」
「きっと、わがままだよね」
「……」
「でもね、多分わたし、我慢できないと思うんだ」
「……」
「だから、わがままなわたしを許してね」
「……」
「おやすみ、きょうちゃん」
「……」




おわり
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 16:00:50.65 ID:qluO/kkUo
以上です。
むぅ〜、意外に難産だったぜ。
麻奈実らしさが出てたら良いんだが……。

麻奈実を低評価してる紳士諸君は、漫画版を読むことを薦める。
きっと麻奈実のことを見直すはずだ。

ありがとうございました。
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 16:04:36.19 ID:hWttWILao

地味子分補給できた。これで定時まで頑張れる。
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 16:26:47.02 ID:d6Qe1XBD0
麻奈実が可愛くないわけじゃない!
○○(←各々好きなキャラ名)が可愛すぎるんだ!

こういう人が実は多いと予想
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/10(木) 16:32:34.91 ID:WFKHi97Wo
乙。最近、このスレのSSがやたら豊作でうはうは

麻奈実は悪くない、棒っぷりが可愛すぎるのが悪い
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 16:38:32.86 ID:nLBym4VDO
大変よろしいと思います。

地味子は萌えない。
でも、可愛い。
何だこの感情は…
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 16:51:45.06 ID:4OxB1P7ho


次はそろそろ加奈子SSが来る予感
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 17:00:49.26 ID:rTYHpJlDO
俺妹Pの加奈子ですね、わかります
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 17:11:41.44 ID:J1JIBD7Vo
加奈子ネタ思いついたが、君達はあれだろ?
ロリロリなかなかなちゃんをご所望なんだろ?
ないすばでーに成長したかなかなちゃんは嫌なんだろ?
コレは没だな。
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 17:18:56.13 ID:/Ov6n5WU0
>>433

なんだろう、このほんわか感は・・・。
>>440
かなかなちゃんの逆襲だと!?
是非!
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 17:22:25.30 ID:jJdW7N3SO
>>433
乙でした
麻奈実不憫で京介ぶん殴りたくなったww

>>440
没にしないでー…て書けばいいんか?
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 17:27:24.00 ID:J1JIBD7Vo
>>442
いや、単純に聞いてみたかっただけ。すまんね、構ってちゃんみたいになって。
加奈子SSはネタが思いついたら書いてみる。
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 19:11:54.47 ID:nCW5n+hA0
>>443
他人なんか気にするな
自分の発想を信じて書けばいいんや
俺は加奈子の老後SSだって受け入れる覚悟があるぞ

つまり何が言いたいかというと、>>433のSSで、

「ふんっ……兄貴、反省したんならもう入っていいよ」ガチャ
「あれっ?いない……」
「ちょっとぉ〜、隠れてるんでしょ?出てきなさいよ」
シーン
「……」
「えっ、嘘でしょ……ちょっと懲らしめようとしただけだったのに……」
「携帯も持ってないし……どこ行っちゃったのよ……」
「まさか家出!?失踪!?」
「そんな……あたしが悪かったから……帰ってきてよぅ……」ウルウル
「兄貴ぃぃ!」

とパジャマ姿で必死に近所を探し回る桐乃サイドの続きが読みたいということだ
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 19:44:41.71 ID:Ko1Se5RDO
>>444
なにそれ可愛い
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 21:50:18.47 ID:J1JIBD7Vo
ID変わってるな、なぜか。
>>444からネタを貰ったんで、書いてみたよ。桐乃サイドと後日談。

以下、投下。
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/10(木) 21:51:13.63 ID:J1JIBD7Vo
京介が田村家で安眠に浸っているころ……。



「クソッ!クソックソッ!!」

あたしは今、誰もいないリビングで一人、悪態を吐いている。シスカリで思うようなプレイが出来ないからだ。
いつもはしないようなミスでCPUにヒットポイントを削られ、繰り出した技は避けられ、あたしの可愛い妹があられもない姿にされていく。
今日だけで何度辛酸を舐めただろう。兄貴とプレイすれば幾分かは溜飲を下げられるのだが、今日に限ってはそれもうまくいかなかった。
兄貴みたいなヌルゲーマーにいいようにされるなんて、今までじゃ考えられないことだった。
原因はわかっている。学校のバカ男どものせいだ!
中学生男子というのは、世の中で一番下世話な生き物だ。時間場所を問わず、下種な話に花を咲かせている。それ自体は良い。あたしのいないところでする分には。
だけど今日は違った。とあるバカグループが隠し撮りしたあたしの写真を片手に、そんな話をしていたのだ。それが不運の始まりだったのだろう。
あたしは外面もなにもかなぐり捨てて、烈火の如く怒った。あたしのそんな姿を見たこと無いあのバカ共は大層驚いていた。
ほかの女子も味方につけたあたしに詰め寄られ、バカ共は素直に謝り、件の写真データを削除した。けど、それだけじゃあたしの怒りは治まらなかった。
家に帰ってからもそれは続き、あたしは不機嫌オーラを放出しまくりだったのだ。
あの鈍感なバカ兄貴も気付いたらしく、機嫌が悪い理由を訊ねてきた。
言い訳させてもらうと、そのことを聞いてくるタイミングが悪かった。兄貴に対戦で何度も負け続け、あたしの不機嫌度はMAXだったのだ。
それに、兄貴にそんな話をしたくなかった。「同級生に性的な目で見られてました」なんて、家族には話したくない。特に、兄貴には。
だから言ってしまった。「アンタに心配される筋合いは無い」って。完全な八つ当たりだ。
そこからは売り言葉に買い言葉。自分で突っ撥ねておきながら兄貴に優しくされたくて、でも口からは憎たらしい言葉しか出なくて……。
あたしは兄貴の顔が見たくなくて、強引に家の外に放り出した。ご丁寧に鍵まで掛けて。

「バッカみたい……」

ホント、あたしはバカだ。なにしてるんだろ……。
いくら兄貴に言いたくなかったからって、あんな態度は無いじゃん。素直に甘えるなり、言葉を濁すなり、方法はいくらでもあるのに……。
冷静になってくると、あとからあとから罪悪感が湧き上がってくる。
時計を見ると、もう日付は変わり午前0:30を過ぎていた。
いくら夏とは言え、夜は思いのほか寒い。あたしはゲームの電源を切り、玄関に向かった。
このドアを開けたら謝ろう。素直に謝るんだ。そう心の中で唱え続け、意を決して鍵を開けた。

「……兄貴?」

けど、その決心は無駄に終わってしまった。兄貴の姿が無かったからだ。まったく、こんなときに何をしてるんだか。
あたしは外に出て、家の周辺を探した。でも、兄貴の姿は見つけられなかった。
え?どうして?どこにいるの!?
あたしの頭の中がパニックになるのに、そう時間はかからなかった。
部屋着のまま、夜の住宅街を走り出す。行き付けのコンビニや、兄貴の通学路にも行った。結果は同じだった。
……そうだ、ケータイ!なんですぐに気付かないのよ!!
あたしは来た道を駆けて家に帰ると、リビングに置いてある自分のケータイを手にし、電話帳から兄貴の番号を見つけてコールした。

『お掛けになった番号は、電波の届かない場所にあるか、電源が入って……』

うそ……。なんで繋がんないのよ!
さっきまであたしの心を支配していた怒りは霧散し、今は不安と罪悪感で満たされていた。探すにしても時間が時間だ。
あたしは急に重たくなった体をなんとか動かし、リビングを片付け、部屋に戻った。
ベッドに入って、もう一度兄貴のケータイに掛けてみる。

『お掛けになった番号は、電波の届かない場所にあるか、電源が入って……』

結果は同じだった。
あたしはいつ連絡が来ても良いようにケータイを胸に抱き、体を縮こまらせて目を強く瞑る。
一人の家は音がしなくて、あたしの不安をより一層膨らませる。瞑っていた目から自然と涙がこぼれた。

「どこにいるの……。あにきぃ……」
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/10(木) 21:51:49.12 ID:J1JIBD7Vo
ーーーーーーーーーーーー


翌早朝。
俺は家に戻っていた。昨夜は気が立っていたとはいえ、妹一人を残しているんだ。常識的に考えて、この対応は良くない。
田村家の面々は朝食に誘ってくれたが、俺はそれを断り、朝靄が立ち込める中、玄関扉の前に立っていた。
すくみそうになる心に鞭打ち、大きく息を吐いて、俺はドアノブに手を掛けた。

「あん?」

さっきまで俺にプレッシャーを与え続けていたドアは、ノブを回すとあっさりとその役目を終えた。
鍵を掛けずに一晩過ごしたのかよ。不用心すぎるぞ、妹よ。
俺がドアを閉め、靴を脱いでリビングに入ろうとすると二階から、
バターンッ!ドタドタドタッ!
そんな音を立てながら、ウチの天上天下唯我独尊妹様が降臨された。

「…………」

ううっ!無言のプレッシャーが怖い。俺、逃げ出していいかな?いやいや、ダメだろ!
俺は一度を喉を鳴らすと、かすれながらも何とか声を出すことに成功した。

「お、おはようきりぶふぉおぅっ!!」

だが俺の健闘も空しく、朝の爽やかな挨拶を言い切る前に桐乃からスーパー頭突きを食らった。
本来なら床に叩きつけられるところだが、幸か不幸か俺の体は近くの壁に支えられ、なんとか立っていられた。背中は痛いんですけどね。

「お、お前!いきなりなに……」

俺は桐乃に文句を言おうとしたが、それは出来なかった。だってさ、俺の胸に頭をこすり付けて泣いてるんだぜ。あの桐乃がだよ!そりゃなんも言えねえって!!

「バカ!どこ行ってたのよ!ケータイも繋がんないし、あたしがどんだけ心配したと……」

そこからは桐乃の罵倒は泣き声に変わり、俺の着ていたシャツは涙と鼻水で汚されていった。
俺は何も言わず、ただ桐乃の頭を撫で続けていた。


ーーーーーーーーーーーー


さて、時間は過ぎて夜。
俺は自分の部屋で正座させられていた。誰がそんなことをさせるんだって?んなもん、一人しかいねえじゃねえか。

「で、アンタ。昨日はどこ行ってたのよ?」
「だ、大学の友達の家です」

俺に正座させている張本人は、今は俺のベッドに鎮座し、絶賛尋問中だ。ああ、視線が痛い。なんなの?コイツの目はナイフなの?
桐乃さん、そんなにまっすぐ見つめないでもらえませんか?お前の視線で俺の心がヤバイ。

「ふ〜ん。地味子のところか」
「おい、地味子って言うなっていつも言ってるだろうが」
「うっさい!アンタに口答えする権利なんて無いんだからっ!!」

怖ぇーーッ!!今日の桐乃さんはいつにも増して怖えよ!そして俺に謝る気なんざさらさらナッシング!いや、予想通りだけどね……はぁ。

「悪かったよ、心配掛けちまって。それに昨日は言い過ぎた。本当にスマン」

俺は桐乃の剣幕に圧倒され、ついつい頭を下げちまった。べ、別に桐乃の視線から逃げたかったわけじゃないんだからね!!
まぁ、昨日のことを謝るのは当初の目的だったしな。これで俺の任務は終了だ。さて、女王様の反応は……。

「き、昨日のことは……そ、その。あ、あたしも悪かったっていうか……」

おや?普段の桐乃らしくないぞ?どうやら俺の謝罪のこうかはばつぐんだ!

「だ、だからと言って!あんたがあたしに心配掛けさせたのは許してないんだからっ!」

ええ〜〜。それは無くね?だって、元を正せばお前が俺を締め出したことが……いや、何も言うまい。
こういう時の桐乃は何を言っても無駄だ。触らぬ桐乃に祟りなし。

「だ、だから罰として……」
「罰……?」

おいおい、この上罰まであるのかよ。理不尽過ぎるのにも程があるぞ、妹よ。まあ、付き合ってやるけどさ。
それより妹よ。さっきから何をもごもご言ってやがる?聞こえないぞ。それに顔も赤いぞ。お前も夏風邪か?

「ば、罰として!今夜はあたしと一緒に寝なさいっ!」
「……は?」



おわり
449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 21:53:02.71 ID:J1JIBD7Vo
以上。
期待に応えられただろうか?
取ってつけたようなオチに関しては目を瞑って欲しい。

ありがとうございました。
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 22:11:01.11 ID:5PbAXqeAO
きりりんが乱れまくりと聞いて(ry

>>433,>>449
乙!

そういえば加奈子SSって近頃は少ないっけ?
どうもそんな感じがしなかったな。灯台もと暗しと言うか…モニョ

麻奈実SSが来たからには、いよいよ稀少度高いのはリア、瀬菜、フェイトそんぐらいかね
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 22:13:15.46 ID:FKs2tJrAO
なんとなく瀬菜ちゃんには赤城兄といちゃいちゃしててほしい
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 22:20:16.55 ID:mcLU5b0ko
>>449

だが京介が大学生ということはきりりんは高校生になってるんだぜ
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 22:24:01.29 ID:J1JIBD7Vo
>>452
oh......
なんという致命的ミス。計算間違ってた……orz
まぁ、なんというか……すんませんでした。
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 22:48:42.54 ID:Yu/O8mdIO
桐乃「やるじゃん」
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 23:08:42.71 ID:/Ov6n5WU0
>>449
桐乃サイド乙!
きりりんは永遠の中学生でいいよ
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 23:48:29.93 ID:5PbAXqeAO
455を見た瞬間さくらんぼシンドロームという単語が浮かんだが
あの設定で俺妹はキツイ……ってより誰得か。

えいえんなんて顕在化したら鬱展開しかなくね、とかマジレス

時間ものはSSのネタとしては普遍性があるかもだけど
話が明後日の方向へ行ってしまいかねない危うさを伴うのが難点かなあ…

あの二行でこうも連想するとか、我ながらどんだけアブノーマルストーリーに飢えてんのって感じだが
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 01:19:58.22 ID:gqgzr36M0
まぁ俺も桐乃のあられもない姿のzipを持ってますけどね
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 04:01:21.34 ID:UkrfTpfjo
>>457
京介さん心の声だだ漏れですよ
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 07:59:56.09 ID:oJiqA30DO
きりりんでシコる同級生とか考えたらイライラしてきた
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/11(金) 08:00:56.54 ID:TnzDLdHjo
しこっていいのはしこられる覚悟のあるやつだけだ!
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 09:16:14.11 ID:dcv+QvJd0
リアルな話なら桐乃とあやせは学校中の男子のオナペットベスト3に入るだろうな
3百人の中学生がいると考えてそのうちの半分の150人が男子
そいつらのうち少なく見積もって4分の1の男子が毎日桐乃で抜くわけだ
およそ37人が毎日桐乃を妄想してそのうちの半分が1日2回[田島「チ○コ破裂するっ!」]すると仮定する
すると1日に45,6回の精をその姿だけで絞り取ってるということだ

とんでもないサキュバスだよ!
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 09:18:35.02 ID:dcv+QvJd0
1日に55,6回だった…やっぱりとんでもないサキュバスだよ!
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 10:01:20.58 ID:AfEpNUw1o
水着グラビアとか格好のズリネタだもんな
妄想の中で何回孕ませられてるか分かったもんじゃないぜ
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 12:22:41.71 ID:5+zfpvvUo
                              -‐ニ ┤
                       _  -‐ ´ /   }
                 __ /´        `ヽ、  j
             _ -‐二 ─ァ         (:.r:.) ヽノ              君たちはいつもそうだね。格好のエロネタを見つけると、決まって同じ反応をする。
            く  ̄   /   (:.r:.)          ヽ\                訳が分からないよ。どうして人間はそんなに、性的な話題にこだわるんだい?
                  \  / /         、_,    } ヽ
                   ヽ/   {       ー´       ノ  ヽ
               /   ハ               イ     ヽ
               ,′   | ゝ           / l     ヽ_┐
          _    l    ├─`ー ┬-    l´   l     ヽ //
         \ヽミヽ/     !     l        !    l     /ヘ
   /⌒     ヽ\〃ミヽ、 j     ,'      l\  ∧_ // ゚ \
  /  (       `ノ    \、    l       \/レ-< 、 ゚、_ _ )
 /   \     /o      ノヽ\  ハ  i     ヾ、:..ヽ \゚`ヽ、  \
 {    r‐` ̄ / o  o / `ー┘ { {  |       `"ヽ `ヽ、_)`ー--' 、
    ゝ-/   /  /         ! 丶 {          ヽ  \    'ー─/__ /
       / l  ∨    /       }    \     ´      _ -‐ ´
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 13:49:19.01 ID:5qGjNRYIO
同級生が持ってたのがあやせの隠し撮りだったら……

桐乃「ほら、マジで今すぐ謝んなって(滝汗)」

加奈子「」ガクガク

男A「なんでだお?俺だってあやせたんの写真でほむほむしたいお!それに、あやせたんは雑誌でもっと過激な写真いっぱい撮ってるはずだお!これくらいいいだお!」

あやせ「私に言ってくれれば良かったのに!今から私の写真、
とらせてあげてもいいよ?ついてきて」

男BCDE「やったーー!!これで勝つる!」

桐乃「あわわわ……」

……

桐乃「その日、結局5人は教室にもどってこなかった。次の日にクラスの男子が5人に何があったか聞いたらしいけど、誰も空白の時間のことは覚えてなかったんだってさ」

あやせ「桐乃?だれとお話してるの?」

桐乃「」

加奈子「」ガクガクブルブルガクブル



うん、たまには京介の1ミリも絡まないあやせさんもいいものだな
466 : ◆5yGS6snSLSFg [sage saga]:2011/03/11(金) 14:02:59.12 ID:TnzDLdHjo
>>465
あやせさんこえー

ゼーガペインとのクロス?ネタ書いてみた。1レスだけだけど。クロスだめな人はスルーしてね
467 : ◆5yGS6snSLSFg [sage saga]:2011/03/11(金) 14:04:23.27 ID:TnzDLdHjo
麻奈実「ぜーがぺいん?」

京介「ああ、ちょっと昔のゲームなんだけどけっこう面白いんだぜこれ。二人用だからおまえらとやろうと思ってさ」

黒猫「……どうして私達二人なの?」

京介「なんとなくだ」

――――――

麻奈実「きょうちゃん、ホロニックランチャー右手〜」

京介「あいよ」

――――――

黒猫「あははははは、我こそはウィッチ! 先輩、ホロニックブレード右手!」

京介「黒猫、いきいきしすぎだろ」

――――――

麻奈実「きょうちゃんの!」
黒猫「先輩の!」
麻奈実・黒猫「「リアシートは渡さない!」」

京介「……なんか二人が恐いんだけど。おまえら感情移入しすぎだ、落ち着け」
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/11(金) 14:06:33.29 ID:TnzDLdHjo
しずの先輩かわいい。また何か思いついたら書く
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 14:35:54.28 ID:oJiqA30DO
俺は先輩の味方だよ!
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 16:08:53.72 ID:rlPYUwuAO
お前ら無事か??
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 17:01:20.86 ID:W5bwbsGSO
死ぬかとおもた
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/11(金) 17:19:50.31 ID:sGES3vd2o
ん?
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/11(金) 18:24:25.58 ID:5+zfpvvUo
対地震のテンプレ、念のために貼っておきますね。。
もし避難する事になったら通帳・判子等の現金はちゃんと確保しておく事 これはズボンなどに突っ込んで肌身離さない
ラジオは持っていくといい
それ以外に避難用に持って行くと便利なものがある
・ゴミ袋(大きい方がいい・給水車の飲み水を入れるバケツ代わりになったり色々と使い道が多い)
・ラップ(頑丈な奴が便利・皿に敷いて洗う用の水を節約したり傷に巻きつけて止血や木と一緒に巻いて包帯代わりになる)
・クッション(生地が厚い奴がベスト・外に避難する時は頭を守れるし避難生活中は枕にすると少し体力を維持し易い)
・通気性の良いスニーカー(通気部分以外はガッチリした奴・頑丈な靴だと足元に散らばってる破片で怪我をし辛い)
通気性が良いと水の中を安全に歩けるから クッションはあればでいい

全部持っていくのは大変だが、1つでもあると便利だから
優先順位は真っ先にゴミ袋・続いてラップ クッションはあれば程度でいい
いいか、外に避難する時は頭と足に気をつけろ!!怪我せず安全に避難することが大事だ!

・逃げるなら車よりも自転車 みんな同じ考えで渋滞の危険がある
・もし車から逃げるならキー差して逃げろ 後で救急活動のときに退かし易い
・近所に高台があるならとにかくそこを目指せ 目算でも10mあれば十分なんとかなる
・津波は2回目3回目の方が前回のパワーを吸収して威力が上がる 絶対に油断するな
・警察、消防に繋がりにくくなるため安否確認での電話の使用は控えること
・災害伝言ダイヤルttp://www.ntt-west.co.jp/dengon/も利用すべし
・逃げる場所は鉄筋鉄骨コンクリのガッチリした建物 出来れば4F以上が望ましい
それと、危ないと思ったら荷物も捨てる覚悟で!!命大事に!!!

気をつけて。もういう時の好奇心はマジで人を殺すからな


同士諸君、およびこれ以上の被災者が出ないことを祈って。
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 23:26:02.48 ID:DnorgR5co
やっと電気が回復した('A`)
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/12(土) 00:35:02.51 ID:kUSoQjd00
ゼーガペインじゃなくてペインオブゼーガじゃね?
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 00:48:55.77 ID:mP1e6dcAO
不謹慎かもしれないけど、地震ネタはいいかも… 亡くなった方々にはご冥福を
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 00:49:56.31 ID:bD6aRsuoo
早く落ち着いてまたSS楽しめる雰囲気になるといいな
被災者の方にお見舞い申し上げます
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
478 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 11:02:34.82 ID:Mo3bBgZSO
大変なことになったな…。
皆,無事か?
479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 23:08:31.36 ID:a9uzaniAO
皆が無事であるように。
この空気の停滞感、しんどいわ

呼び水になるようにリクでも挙げてみる?
480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/12(土) 23:15:37.65 ID:ebqtahCto
じゃあ、俺が何か書く。ネタ援助かもん

>>475
まじだ。よくそんな細かいところまで憶えてるなあ、感服。
481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 23:25:47.03 ID:gJLfu64E0
かなかながでればわりとなんでもいい
482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 23:49:05.30 ID:9RZUTdoDO
Youが書きたいものを、書けば良いと思うよ


るろ剣-再閃-を買った影響か、妙に志々雄様みたいな京介を書きたい
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 00:11:32.39 ID:YyPAyJDAO
被災地に住んでる友達を心配するきりりん

それを励ましたりする京介(+α)

とか書こうかと思ったけど、まだまだ洒落にならないから止めた方がいいかな?
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 00:13:45.83 ID:wQqvdFCJo
リアSS書ける人って尊敬するな〜(チラッ
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 00:18:42.50 ID:w0xHKxJDO
>>483
読む人によりけりだけど、止めた方がいいと思う
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 00:22:25.72 ID:qGtuQMPko
まだっていうか、そのSSを書く意味がわからない
487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 00:35:39.19 ID:n86jBtJoo
>>486
同意

まだ1万人以上安否不明なのにネタにできる精神がわからん
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/13(日) 00:45:18.64 ID:wlVIZM4DO
普段死ねだの殺すだの平気で言ってるような連中が不謹慎がどうたら語るのもおかしな話だな
489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 01:28:23.53 ID:hXDC2Dtso
このスレや原作を楽しみにしてた人の中にも津波の被害にあった人は当然いるんだろうな
学校や職場から戻ったらスレ開こうとか思ってたのに
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 02:16:29.34 ID:y4M4XScWo
ネタがすっ飛んだ
491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 06:39:03.43 ID:YyPAyJDAO
昨日ここに居た誰かがもうここには居ないと思うとぞっとしないな
492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 07:08:44.73 ID:E2Ri/sTSO
まあさすがに今地震ネタ投下はやめた方がいい気がする
書くだけ書いておいて,落ち着いてきたら投下することも出来るし
493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 10:42:31.07 ID:nkksJjvDO
書くなら、癒されるほのぼの日常とかをお願いしたい……

都内在住だけど、まともに寝る事も出来ずもう気がめいってな……
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/13(日) 13:59:23.49 ID:Ea2rmdZ3o
リア√書いた。夜には投下しにくる
495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 14:16:18.58 ID:0Yo6C5Cio
wwktk
496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/13(日) 15:44:03.90 ID:/uudNxok0
すごく不謹慎だけど地震SSすごい期待してる俺がいる
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 16:48:40.52 ID:pF8zVhF10
桐乃と京介が部屋でエロゲプレイ→地震→桐乃が京介に抱きつく→揺れが収まったところで「何やってんの?マジキモイ…。」→その後また余震で桐乃が京介に抱きついて「ひょっとしたら最後になるかもしれないから…」と言って京介に告白する。

というのを想像した俺は不謹慎だから定期預金の1万解約後、募金した上で首吊ってくる。
俺も他人事じゃないというのは身にしみているんだが…。
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 16:50:57.65 ID:mxm8kbpVo
ああ、そうしとけ
499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 18:05:13.39 ID:abZ5/58k0
まあ、現状でそれをネタに作品作るのは不謹慎だよね。

でも、そういう自然現象をネタにすると作品を作りやすいというのも肯ける。
実際、自分も前々から地震ネタのSSの構想あるし。
今は発表する気はないけど。
500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 18:23:44.41 ID:ms1lwy+qo
不謹慎不謹慎やかましい奴らだな
なら金の一つでも送ってろよカスどもが
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 19:12:38.72 ID:2bkj1AeAO
募金することと不謹慎さと、まるで関連がないけどな
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 19:28:45.20 ID:Xu55fysAO
もちつけ…

夜に予告してるリアの人が来るまでのつなぎに、>>481のリクで加奈子投下。

タイミング被らないように
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 19:32:34.64 ID:Xu55fysAO
※後半はちょっとだけ微エロあり注意
(以下本文)


ここが加奈子の部屋かー

マンガなんかではよくある初めて上京した地方人のように
周りを見渡しては、その新鮮さにハァ…とかふぅ…とか感嘆を漏らす。
来栖家に訪れたことはあったが、前は部屋までは上がらなかったからなぁ。

「入口に突っ立ったままで、なに呆けてんの」

飲み物と菓子を乗せた盆を手に部屋の主がやって来る。
手は塞がっているので、半開きの戸を小笠原流で器用に開きながら。

「はしたない」
「カノジョの部屋に入って第一声がそれかよ? 他にあるだろ、せめて用意してきた飲み物に礼を言うとかさ」
「そりゃそうだ。サンキュー」

盆ごと受け取って近くのテーブルに下ろすと、クッションをホイと寄越された。
察するに座布団代わりということらしい。

「そのしれっとした顔、すっとぼけた感じが癪だなぁ……こっちは結構緊張してたってのにさ」
「そ、そういうものか?」
「前に言ったっしょ。男が女を部屋にあげるのとはニュアンスが違うんだって」

言わせんな恥ずかしい、と小声で続ける加奈子。
思わず、抱き締めたいなマイハニー!という衝動に駆られるが、今はまだ紳士たらんと理性を総動員。

その後は、持ってきてくれた麦茶を飲みつつ、なんてこたない雑談に興じる。
ハンガーにかけられた服を可愛いと言えば、いま狙ってる似合いのボトムスがあるから買って欲しいとせがまれ。
CDラックにウチにないポップスを見かけて話題にすれば、貸してやるから聴いて気に入ったら新譜を買って(ry

「お前、彼氏を財布あつかいすんのも大概にしろよ…」
「四の五の言わない。これぐらいで加奈子を独占できるんだから、安い買い物じゃん。
 京介があんまり渋るならいつかみたくナンパ待ちでもしようかな〜?」
と、ろくでもない事をサラッと言うので
さすがに聞き捨てならず、加奈子を掴まえて言い聞かせる。

「そういう冗談は、好かねえ」
「あ、ウソウソ。本気にすんなってば」

釘をさす意味で怒った風を強調してみたつもりだが、
所詮装いなのは筒抜けだったのか、加奈子は慌てた様子もなく笑みすら浮かべている。

「しないから、もうあんなこと。アタシにはもう京介って彼氏がいるんだし。安心していいよ」
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 19:36:38.61 ID:Xu55fysAO
屈託なく笑い、躊躇いもなく抱き着いてくる彼女はこの上なく愛らしい。
俺が折角なけなしの節制を振り絞ったというのに。
こうもアッサリ動揺させられるとは…

「あのなぁ、自分ちの中だからって無頓着すぎだ。いくら俺でもその気になりかねんぞ」
「いいよいいよ。むしろカモン? 家に上がるとき、家族は留守にしてるってちゃんと言ったじゃん」

確かに言ってたな……
例によって、これなんてエロゲ?的な思考が走ったのを覚えている。

「あほ。それならこっちこそ言った筈だ。お前が高校出るまで一線は越えないってな」
「え〜、これだけ御膳立てしてもまだ意地張っちゃってんの。カタイんだって京介は」

両想いの恋人なんだから欲望に忠実になっちゃえば、と煽る加奈子。
こいつがこんなだと余計に、俺がブレーキかけなくてどうするって意識が働く。
この通り加奈子の積極性が優勢で甚だ頼りない決意ではあるが…

「今は我慢しとけっつーの。お前のこと大事に思ってるからこう決めたんだ、わかれ」
「言ってる意味はわかるけど。それならそれで『加奈子のこと大事に思ってる』のを態度で示してくんない?」

ぶっちゃけ欲求不満なんだよねー、と絡んでくる加奈子。
これじゃあムードもへったくれも無いなと苦笑を誘われ、
同時にここは彼氏として相応に応えてやるべきかという気持ちが湧く。
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 19:38:42.06 ID:Xu55fysAO
「わかったよ、ホラこっち来い」
「ん」

改めて加奈子を抱き寄せる。数日ぶりの、恋人の距離だ

「寂しい思いさせてたなら、悪かった、気付いてやれなくて」
「謝んないでいーよ。加奈子のが、その…欲しがりなんだろーし…」
「かもな」

俺たちはごく自然に口付けをかわす。

陶然と薄目になった加奈子の唇に舌を滑らせると、繋いだ手に小さく震えが走った。
そのまま、上気した頬に逆の手を添えて軽く撫でる。
それを合図に加奈子も両手を俺の首の後ろへ回してきた。
開いた唇を交差させるようにして口内で貪りあう。
互いを求めてより強く抱き寄せる腕の感触と、荒い呼吸に時折混じって漏れ伝わる声が俺たちの全てだった


理性の「り」の字までかき消えてしまう前にと、辛うじて踏みとどまり顔を離す。
一瞬、二人の間に名残惜しむように唾液が糸を引いた。

未だ焦点の定まらない目をこちらに向ける加奈子の、てらてらと艶かしく光る唇をハンカチで拭いてやる。
じきに落ち着きを取り戻してきた加奈子が俺の胸に顔を埋めて呟いた

「ちょーしあわせ……頭ヘンになっちゃう、ね……」
「あぁ。俺も幸せだよ、加奈子」
「でも、足りない。もっとして。京介…」
「ちょtt」


結局この日俺たちは指折り数え切れないほどキスをして、
同じくらいかそれ以上に「幸せ」「好き」と睦み言を交わし、
陳腐な言い方になるが時の経つのも忘れて愛し合った。

それでもどうにか据え膳食わずを貫いたのが少し不服だったようだが。
帰り際、絶対にあと三年ももたせないんだからと宣言する加奈子に、敗北の予感が脳裏をよぎる。

俺の彼女がこんなに小悪魔なわけがない

506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 19:40:47.05 ID:Xu55fysAO
おわり。
あくまで繋ぎ的なもんなので投下間隔なんかは気にせずドンドン次行っちゃってokで。
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 20:12:41.62 ID:0L1125Tfo

かなかなちゃんマジ天使
この京介は三年どころか三ヶ月で陥落しそうだな
508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 20:14:03.92 ID:n86jBtJoo

3日の間違いだろ
509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 21:02:31.36 ID:jHAAws36o
「私の禁くんかは3日持たなかった」キリリンッ

地震ネタがアレな人は、(一時)停電ネタで書いたらいいと思うよ
510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 21:06:18.92 ID:0Yo6C5Cio

やはりかなかなSSはいいものだ
511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 21:15:45.58 ID:TS+rRTLw0
乙です
エロかなちゃんいいね
512 : ◆5yGS6snSLSFg [sage saga]:2011/03/13(日) 21:31:31.60 ID:Ea2rmdZ3o
乙です。かなかなちゃんは根強い人気があるイメージ

それでは予告したリア√投下
513 : ◆5yGS6snSLSFg [sage saga]:2011/03/13(日) 21:33:19.99 ID:Ea2rmdZ3o
「はあ!? またリアが来るの!?」
「そっ。今度、東京で陸上の世界ユースがあんの」

リアが我が家にホームステイしたのが4年前。俺はもう大学生で、桐乃は高校生だ。
桐乃が言うには、リアはその世界大会とやらに出場するため来日するらしい。
そして、その大会の前日に現地入り。大会までの間を我が家でホームステイして過ごす予定だと言う。

「そういうのって、近場のホテルとかとったりするんじゃないの? しかも前日って……普通もっと早く来日するもんじゃねえの?」

時差ボケとかどうする気だ。
確かに4年前はそんなの気にもとめてずに元気に走り回ってたけどさ。今度は遊びに来たわけじゃないんだろ?

「そうなんだけど、リアがどうしてもその日にあたしん家がいいって言ったんだって」
「ふーん」

あのリアがねえ。
陸上一筋で陸上に勝る優先事項など何もないはずのリアが大事な世界大会前にわざわざ千葉の、練習環境すら満足にない我が家に、時差ボケ覚悟の日程でホームステイ。
今度は一体どういう要件だ? 大会前に桐乃と勝負して弾みをつけようってことだろうか。
しかし、それならわざわざホームステイする必要はない。それに時差ボケ覚悟の日程で来日する理由の説明がつかない。
まあ、あいつのことだから何も考えてないってことも十分にありえそうだけどな。

「いつ来んの?」
「明日」
「明日ぁ!? お、おま、もっと前もって言っとけよ!」

やっべー! 何も準備してねえぞ!?

「きもっ、何慌ててんの? あんたは別に何も用意することとかないじゃん」
「……そうっすね」

でもさ、あれから4年経ったんだぜ? ちっこかったリアも今では16歳。
絶世の美女に変身しててもおかしくないわけじゃん。心の準備は必要だと思うんですよ。
やべー、今から超どきどきしてきた。こんなこと桐乃に言ったら殴られるから絶対口には出さないけど。

『キョウスケおにいちゃん、超好きっ!』

リアの台詞が、さまざまな表情と共に鮮明に思い出される。
けらけらと笑っていたかと思えば、一瞬だけ淫靡で大人びた表情を見せてくれもした。
そして、そのどれもが懐かしかった。
514 : ◆5yGS6snSLSFg [sage saga]:2011/03/13(日) 21:35:44.31 ID:Ea2rmdZ3o
「はは、そういやあいつとの初対面はえらいハプニングから――」

どすっ。みぞおちに鈍い痛みが走る。
桐乃がえぐりこむようにして容赦ない一撃を下さった。

「あ〜〜! キモいキモいキモい! 今思いかえしても腹立ってきた!!」
「あ、あれは……事故だって…………何度も言ったろ」

先ほどの一撃でうまく呼吸ができないが、それでもやっとの思いで言い訳を口にする。

「うっさいうっさい! あたしの――は、は、裸見たくせに!!」
「そっちかよ!」

リアの方はいいのか!

「どっちもダメに決まってんでしょ!」
「げふっ」

再び炸裂する桐乃の鉄拳。
口は災いの元。最後の余計な突っ込みのせいで、もう一撃もらうことになってしまったのだった。



翌日――リアが来日する予定の日。

「ただいま〜」

玄関に桐乃の声が響き、我が家の新たな住人の来訪を教えてくれた。
階段を下り、リアを出迎える。
そこでリア――らしき人物を見てぎょっとした。
身長は桐乃と同じか少し低いくらいだろうか。すらりと伸びた細い足に、これぞアスリートといった均整のとれた身体。
艶やかな黒髪は背中の辺りまで伸び、その鳶色の瞳は爛々と輝いていた。

「あっ! キョウスケおにいちゃん! またお世話になりますっ!」

どうやらリアで間違いないようだった。だが、その容姿は以前とは比べものにならないほど大人びている。
そして、以前よりさらに流暢な日本語を喋るようになっていた。
天真爛漫な笑顔でにこにこ微笑む元小さな居候に向かって俺は、

「いらっしゃい。ま、ゆっくりしてってくれ」

少し視線をそらしながら歓迎の挨拶をしたのだった。
515 : ◆5yGS6snSLSFg [sage saga]:2011/03/13(日) 21:37:39.96 ID:Ea2rmdZ3o
その日の夜、いつぞやの時と同じようにリアの歓迎会が行われた。
再びお袋が久しぶりに全力で料理の腕を振るう予定だったのだが、大会前なので食事管理が特に厳しいらしく、お袋の本気を見ることはかなわなかった。
しかしそれでも、出された料理をうまいうまいと全て平らげてしまうあたりがいかにもリアっぽくて微笑ましく思えた。

「結局何しに来たんだ? あいつ」

湯船につかりながらリアの目的について頭を巡らせる。
桐乃へのリベンジは4年前に達成済み。桐乃の足がいきなり速くなった理由も(誤解したままではあるが)納得済み。
それなら単純に桐乃と勝負しにきたのかと思えば、今日は一日中桐乃とゲームやアニメ鑑賞して遊んでて勝負するなんてこともなかった。

「さっぱりわからん」

こりゃあ、大会前にリラックスするために遊びに来た辺りが正解かもな。
日程に関しては何かしら事情でもあったんだろ。
自分の中で一つの結論が出たころ、脱衣場からするすると衣擦れの音が聞こえてきた。

「ま、まさか……」

まさかリアの奴、また「一緒にオフロ入ろっ!」なんて言い出すんじゃねえだろうな。
まずい! あのときはまだリアも子供だったし、冗談半分ですんだけど今はまずい!
何がまずいってちゃっかり俺のリヴァイアサンが覚醒しかかってることだ!

「おにいちゃん、一緒にオフロ入ろっ!」
「きゃああああああああ………あ?」

浴室のドアを開いた向こう、そこには水着着用のリアが立っていた。
しかもその水着、なんとスクール水着である。

「えっへっへー。3年どころか4年経ったし、前キョウスケおにいちゃんに言われた通りしっかり水着も着てきたよ!」
「違う、あれはそういう意味じゃない!」

俺は水着をリクエストしたことは一度もないよ! たしかにそれっぽく聞こえたけども!
そもそもなんでスクール水着をチョイスしたんだ!?

「あれ? 違ったの? ……じゃあ脱ごっか」

そう言うと、リアは水着の肩ひもに手をかけた。

「ス、ストオオオオップ! おまえは俺を犯罪者にしたいのか!?」

なんなの!? 外国の方ってみんなこんなにオープンなの!?
いいや、違うはずだ。だってブリジットはもっと落ち着きがある子だったもの。マネージャーや桐乃の偽装彼氏として数回話しただけだけどさ。
なんとかリアの全裸化を食い止めることには成功したが、それでも出ていく気はさらさらなかったらしい。
516 : ◆5yGS6snSLSFg [sage saga]:2011/03/13(日) 21:38:32.02 ID:Ea2rmdZ3o
「背中流してあげる! こういうの裸の付き合いっていうんでしょ?」

おまえは裸じゃねえけどな!
しかし、俺があれだけ悲鳴あげたってのに桐乃はおろか親父たちすら現れない。
いくらなんでも、この家での長男の扱い悪すぎない? もし俺が暴漢に襲われてたらどうするの。

「なんか前よりおっきいね」
「お、おおお、おっきい!? 何のことだ!?」

リアに言われるがまま背中を流してもらっていると、リアの突然の言葉に動揺してしまった。

「何で慌ててるの? 背中、背中がおっきいって」
「あ、ああ、背中な。もちろんわかってたさ」

なんだ背中か。驚かせやがって。
むにゅん。
あれ? こんな感触のタオル、うちにあったかな? 
妙にやわらかくて、肌触りは――そうだな、サテン生地っぽいな。たとえばスクール水着なんかはこれに近いかもしれない。

「……リア? 当たってないか?」
「くふっ。当ててるんだよ? おにいちゃん」
「お、おまえどこでそんなの覚えやがった!?」

さては桐乃か!? 桐乃の影響なのか!?
逃げるように風呂から上がった俺は、そのまま自室へと逃げ込んだ。

「なんなんだ!?」

今度ばっかりはあいつの真意がさっぱり見当もつかねえ! 俺をからかって何がしたいんだあいつは! あの純粋だったリアはどこへ行ってしまったの!?

「このままじゃ駄目だ。邪念は捨てて早く寝よう」

部屋の電気を消し、そそくさとベッドに入る。
かちゃ。
静かな部屋にドアの開く音が響く。

「……寝ちゃった?」
「………………起きてるよ」

声から判断してこの声の主はリアであるようだ。だが、その声にいつもの快活さは感じられない。
入口とは反対の方向を向いて寝ているのでリアの表情を確認することはできなかった。
ぱたん、と静かに扉が閉められる。
517 : ◆5yGS6snSLSFg [sage saga]:2011/03/13(日) 21:39:58.90 ID:Ea2rmdZ3o
「キョウスケおにいちゃん」

次にリアの声を確認した時には、リアはベッドのすぐわきまで来ているらしかった。
相変わらず足音がしないやつだ。

「一緒に寝てもいい?」

そう聞かれて、どきりと心臓が跳ねた。
だが、ここで動揺しては相手の思うつぼだ。表面上はなるべく平静を装う。

「桐乃が怒るぞ?」
「怒らないよ」

桐乃が怒らない? どういうことだ?
しかし、リアは俺に考える間を与えてはくれなかった。
そのままするすると布団の中に進入してくる。これにはさすがに俺も慌てざるを得ない。

「リ、リア!? ちょ、ちょっとま――」
「桐乃にはおにいちゃんと寝るって言ってきたから」

その一言で俺の言葉は、喉にふたをされたようにぴたりと出なくなる。まるで魔法にかけられたみたいだった。
この状況を桐乃が許した? 一体どういうことだ? 

「……とにかく説明してくれ。それで、俺が納得したら一緒に寝てもいい」
「うん。わかった」

それから、リアは今回の無茶な日程の来日の理由を語り始めた。

「桐乃の真似してみたんだ」
「桐乃の?」
「うん」

こつん、と背中に軽く何かが当たる感触がした。
リアの姿は未だ見えない。

「桐乃があたしを負かしたことがあったってことは前に言ったでしょ?」
「ああ」

4年前、桐乃が留学していた頃。俺は様子がおかしい桐乃を無理やりに連れ戻しに行った。
桐乃が『あたしのコレクション全部捨てて』なんて言うメールを送ってきたからだ。
友達と会えない、エロゲができない、アニメが見れないといった理由から桐乃は体調を崩しており本調子ではなかった。
そんな桐乃は俺がエロゲを持ち込んだことにより劇的な復活を遂げ、なんとリアを負かしてしまったらしかった。
もっとも、リアには兄妹の愛の力として説明してあるけどな。

「それが桐乃の真似とどう繋がるんだ?」
「あはっ、やっぱりキョウスケおにいちゃんは馬鹿だなあ」

むっ。馬鹿に馬鹿と言われる筋合いはないぞ。それにやっぱりってなんだ、やっぱりって。
……同じやりとりを4年前にもやった気がするな。
518 : ◆5yGS6snSLSFg [sage saga]:2011/03/13(日) 21:42:36.40 ID:Ea2rmdZ3o
「桐乃は、桐乃が大好きなおにいちゃんと久しぶりに会って――その次の日あたしに勝った」
「ああ」
「だから、あたしも大好きなキョウスケおにいちゃんと会えば足速くなるよね」
「いやいや! ならねえよ!」

どんな論理の飛躍だ! 俺は陸上の神様かなにかか!? 会うだけで速くなるわけないだろ!?
しかし、リアは全く動じない。

「なるよ」

きゅっ、と背後から優しく抱きしめられた。

「桐乃も、あの時こんな気持ちだったんだね。これならリアが負けちゃうくらい速くなるのもわかるかも」

うまく言葉が出てこない。

「寂しかったんだよ? …………明日、頑張るから見ててよねっ」

どうやら、こいつの『キョウスケおにいちゃん、超好きっ』は嘘ではなかったらしい。
あの時はてっきり、単純に足が速くなるとの思い込みで言ってただけだと思ってたんだがな。
いや、あの時はそうだったのかもしれないが。少なくとも今は違うようだった。
桐乃がこの状況を許した理由も、好きなものができない、好きな人に会えないつらさを誰よりも知っていたからだろう。

「…………仕方ねえな、今日だけだぞ」





大会当日。
リアは今競技場内のスタートラインに立っている。じきにスタートの合図がなるだろう。
かつて言えなかった言葉。妹を依怙贔屓した結果、かつて伝えられなかった声援を今度こそ伝えるべく、俺は誰よりも大きな声を張り上げたのだった。



おわり
519 : ◆5yGS6snSLSFg [sage saga]:2011/03/13(日) 21:43:11.08 ID:Ea2rmdZ3o
天真爛漫キャラ書くのむずい……
こんなのリアじゃねえという方もいらっしゃるかもしれませんがご容赦を
ちなみに陸上の大会とかの知識はまったくないので、「そんな大会ねえよ」という突っ込みは許して
520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 21:54:08.90 ID:abZ5/58k0
乙です。
まぁ…16歳になって心も成長してるだろうから、リアのキャラはこれでいいのではないでしょうか?

陸上競技の世界ユースは実在する大会です。
521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 21:55:12.48 ID:K2PaNEaA0
>>519
お前わかってるなら予防線張るなよ
つかこんなのリアじゃねーし
でたらめな日程になってるし
すきです、付き合ってください。縦読みヨロシク
522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 21:58:39.70 ID:0Yo6C5Cio
登場したの6巻の最後らへんだけだし書くの難しいよね
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 22:04:30.10 ID:n86jBtJoo
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 22:34:48.56 ID:UKxG4vVAO
加奈子の人もリアの人も乙です

リアssがこれを機に増えてくれると嬉しいですな、もちろん加奈子ssも
525 :なんとなくSS [sage sage]:2011/03/13(日) 23:14:26.43 ID:K2PaNEaA0
俺はいたって普通の高校生だと思う
いや、どちらかと言えば目立たない奴だな
スポーツも勉強も誇れるほどではない
おっと数学だけは別だぜ、上の下程度だけどな

帰宅部なのは仕方ない、実家が自営業だからな
店に手伝いに出ることもあれば、母親の代わりに家事をすることもあるさ
おかげで近所の商店街のおっちゃんおばちゃんからの評価はおおむね良好だ

だから田村屋のばあちゃん達ともソコソコ仲がいい
したがって同じクラスの田村さんのことも良く知ってる

学校以外で初めて会ったのは、お使いの時だった
急な来客に出す為のお茶請けを田村屋に買いに行った時
店にいたのが田村さんだった

明るい接客、丁寧な包装、優しい言葉
学校で受ける印象とは全然違ってた
それ以来、買出しは率先して行くようになっちゃったな・・・

――――――――――――――――――――

「やっぱり付き合ってんのかな?」
「誰が?」
「あの二人」
「ああ、あの二人ね」
「いっつも一緒に帰ってるからさ」
「仲良さそうだしな」
「はぁ・・・」

ため息しか出ない
アイツは幼馴染って話だけど、やっぱそうだよな
彼女は目立つタイプじゃない、けど、すごくいい子だ
きっとアイツもそれを知ってるんだろう

でも、もしかしたら俺にだってチャンスがあるかもしれない
言わなきゃ伝わらないし、伝えなきゃこのままだ
そして言おうと思えばいつでも言える、必要なのは俺の勇気だけだ

―――――「えっと、ごめんなさい・・・」―――――

ハイ玉砕、わかっちゃいたけど涙が出る
やっぱり彼女はアイツの事が好きなんだとサ

玉砕しても買出しの時に顔をあわせることがあるから、なお辛い
「来てくれてありがとう」だってさ、くそ、やっぱり可愛いな

告白していいことが1つあった
彼女はアイツと付き合ってるわけじゃないことが判明した
もしこの先彼女を泣かせてみろ、絶対奪ってやっからな、高坂!
526 :なんとなくSS [sage sage]:2011/03/13(日) 23:20:24.65 ID:K2PaNEaA0
名も無きクラスメイトの物語でした
初投稿だったもので色々至らない点があったと思います
オリキャラ語りなのに投下前に注意書き書き損ねましたorz

ギリギリ50行に収めましたが60まで大丈夫なんでしたっけ?
527 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 23:33:09.64 ID:Xu55fysAO
>>519
超乙っ
リアは陸上の縛りが必至だし、情報量の少ない中よくそこまで…

>>526
乙っ
赤城かと誤読しちったけど、奴以外に麻奈実狙いの男子が潜伏しててもおかしかないね。

携帯だと省85とか90とか見た気がするから、改行は100かも
528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sagee]:2011/03/14(月) 00:49:12.05 ID:aGdZXwoy0
自宅掃除してたら、一昔前にはやった、"circle! Let's one more chance!"の掛け声のブートキャンプのDVDが見つかったわ。
やっぱり隊長の名前が名前だけに京介さんもはまったのかね?あの母親なら絶対DVDは全巻買って、トレーニングチューブ持ってると思うんだが
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 01:03:30.48 ID:kNywY0aDO
>>526
オリ主が原作キャラと恋愛するの書きたいならにじファンあたりでやった方がいい
530 : ◆kuVWl/Rxus [sage saga]:2011/03/14(月) 01:54:08.66 ID:k5hkM09AO
京介「明日から停電かぁ……」

桐乃「なによアンタ、文句あんの?日本中が非常事態だってのに」

京介「いや、別に文句は言ってないだろ」
桐乃「うちも今から早速節電モードだからね。不要なコンセントは抜いて、照明やエアコンの節約のために、なるべくひと部屋で生活すること」

京介「お前、省エネに詳しかったんだな……」

桐乃「そして夜更かしせずに早く寝ること!起きてたらそれだけ電気使うんだから。ホラ、さっさと二階へあがるのよ」

京介「わかったって……じゃあ、おやすみな」

桐乃「ちょっと、なに自室に入ろうとしてんのよ。……あ、あんたはしばらくあたしの部屋で寝起きするの」

京介「……はいぃ?」

桐乃「しょ、しょうがないでしょっ!?節電のためなんだから!あんたの狭い部屋で二人なんて無理だし」

京介「だからって……マジかよ……」

桐乃「まだ夜は冷えるし、仕方ないからベッドに入れてあげるけど、変なことしたらコロスからね」

京介「うおおおい!一緒のベッドで寝る気か!?」

桐乃「だ、暖房の節約のためよ!」



〜就寝〜

桐乃「(兄貴、あったかい……)」



黒猫「じゃん!電気は大切にね!」
531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 01:58:49.45 ID:k5hkM09AO
うちの地域も3時間停電×2のグループでした
4月末まで続くらしいけど……頑張りましょう
532 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 01:59:41.36 ID:7qsLOjEbo
でんこかよ。黒猫。
533 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 02:06:29.77 ID:zQy5D+ASO
これはいい時事ネタ
啓蒙になってるしww

きりりんカワユス
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 07:56:06.53 ID:B041Xgqpo
>>530
GJ!
535 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 09:08:49.14 ID:xDnULgSY0
>>530

その発想はあった。黒猫は禁書目録の御坂からか?

さてそろそろブレーカー落とすか…。
536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 09:39:37.07 ID:B041Xgqpo
>>535
あれはもともと東京電力のでんこというキャラのネタだよ
御坂のはそのパロディ
537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 11:17:14.04 ID:hyJBUhYDo
>>506>>519>>526>>531
乙だぜい。

こう、人のを読むとやっぱり書きたくなってくるな。
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 11:45:51.09 ID:ed3NlL0Qo
ならば黒猫SSを一筆たのむ
539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 11:50:11.30 ID:hyJBUhYDo
手持ちのネタに、黒猫のが無いな。
一考してみよう。期待はしないでくれ。
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/14(月) 11:54:45.41 ID:mI2i9Ft0o
ブリジットでもいいんじゃよ?
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 12:00:00.17 ID:W9C6EBKSO
>>540
相変わらずブレないな…
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 13:20:21.80 ID:GWQ2HXql0
俺はかなかなを求め続ける
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 13:32:52.30 ID:CNsUmycLo
なかなか難しいな
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 16:53:23.59 ID:6Nq4K+CP0
誰か…あやせを……
545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 17:01:01.12 ID:hyJBUhYDo
書いてみた……けど。なんだろうね、これは。
ここまでヤマなし、オチなし、意味なしになるとは……。
まぁせっかく書いたんで、戯れに読んでみてください。

以下、投下。
546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/14(月) 17:01:53.36 ID:hyJBUhYDo
寒い……。
それが今の、俺の率直な感想だ。だが、俺はまだマシな方だと思う。
周囲には、冬だというのに過度に露出している女性陣がわんさかいるしな。まったく、レイヤーというのは恐れ入る。

俺は高坂京介。地元の国立大学に通う19歳だ。
冒頭の説明でわかるヤツもいるだろうが、一応説明しておこう。俺が今いる場所は、冬の東京ビックサイト。その屋外にあるコスプレ広場だ。
何でそんなところにいるのかって?そう慌てなさんな。それも今から説明するからよ。
そう……あれは一月半ほど前、一本の電話から始まった――――。



「コスプレだぁ?」
「そう。一度はしているのだから、手馴れたものでしょう?」

俺が自室で妹様からの宿題(無論、エロゲーだ)をしている最中、俺達高坂兄妹の共通の友人である黒猫から電話がかかってきた。
電話を取るや否や、「今年の年末、あなたにはコスプレをしてもらうから」などと抜かしてきやがる。
挨拶も無しにそんなことを言ってきたのだから、俺があんな態度を取るのも頷けるってもんだろ?
当然、俺は黒猫に説明を求めたさ。

「いきなりンなこと言われてもよ、さっぱりわからんぞ。ちゃんと説明してくれ」
「ふぅ……。相変わらず、物分りの悪い雄ね」

そしたらこの反応だよ。コイツといい、妹といい、なーんでちゃんとした説明をする前に理解を求めるのかねぇ。
違いと言ったら、黒猫は訊ねれば、ある程度は答えてくれるところか。桐乃なんざ、まったく答えちゃくれねーからな。
黒猫の回りくどい説明を要約するとこうだ。
今年の冬コミ、黒猫はサークルとしては参加しない。それを聞きつけた黒猫――――五更瑠璃の友人である赤城瀬菜から、「とあるキャラのコス作りに協力して欲しい」と頼まれたのだという。
しかしそのキャラというのは、まぁ当然と言うべきか、男キャラである。そこで白羽の矢が立ったのが、この俺というわけだ。
黒猫も瀬菜も知っている人物で、そのキャラと体型が似ているのは俺しか思い当たらなかったらしい。

「事情はわかったけどよ、俺の意志確認とかはしないつもりだったのか?」
「あら、今しているじゃない」

黒猫さん、これは意思確認とは言いませんぜ。"事後承諾"って言うんですよ。俺に大事な用事があったらどうするつもりだったんだ?
まあよ、幸か不幸か予定なんざ無いんだがね……はぁ。
それに、卒業したからと言って、可愛い後輩の頼みごとを無下に扱うわけにもいかんしな。

「しゃーねーな。わかった、ちゃんと予定は空けとくよ」
「最初からそう言っていればいいのよ。おかげで無駄な時間を過ごしてしまったわ」

おいおい、聞いたかよ。可愛い後輩の頼みを聞いたら、感謝されるどころか罵倒されたでござる。
コイツとの付き合いもそれなりに長いからな。別に傷付いたりはしねえが、もう少しかける言葉に気をつけてくれよ。俺、いつか泣いちゃうよ?
その後、俺達は寸法取りとかそこらへんの予定を詰めて、通話を終えた。
547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/14(月) 17:02:25.93 ID:hyJBUhYDo
ーーーーーーーーーーーー


それから数日後。俺は五更家を訪れていた。
今日は例のコスプレのために、俺の正確な寸法を取るらしい。あと、今回のコスは特殊らしいので、必要な布の量も調べるんだとよ。
布の量ってなんぞ?と思っている諸君も多いだろうな。大丈夫だ、俺もわからん。

ピンポ〜ン♪

俺が呼び鈴を鳴らすと、少し舌っ足らずな可愛いらしい声がインターホンから返ってきた。

「どちらさまですか?」
「高坂です。瑠璃さん、いらっしゃいますか?」
「あ、にいさまですね。すこしまってください」

程無くして五更家の扉が開き、中から黒猫の下の妹がとてとてと出てきた。うむ、いつ見ても可愛らしい。
すでに小学校に上がっているとのことで、最初に見たときに比べ、髪と背が伸びていた。しかし、愛らしさはさらに増している。

「にいさま。いらっしゃいませ」
「こんにちは。姉ちゃんは留守か?」
「いいえ、おくにいます。どうぞ、あがってください」

俺は下の妹に手を取られ、五更家の敷居を跨いだ。案内された部屋に行くと、いつものようなゴスロリ服を纏った黒猫が、なにやら書き物をしていた。
隣にはすでに瀬菜もいる。

「よくここまで辿り着けたものね」
「お久しぶりです、高坂先輩」
「よう。邪魔するぜ」

俺は黒猫たちの近くに座ると、今もなにやら書き続けているものを覗き込んだ。
それは、俺にさせるコスプレのキャラの公式イラストに、様々な注釈を書き込んでいるものだった。
俺は驚いた。それは、事細かに書かれている注釈の内容にではない。キャラにだ。
俺でも知っている、とある漫画の有名悪役キャラ。今でも、その漫画を連載していた雑誌の読者からは、「悪のカリスマ」を持つキャラの一人として認識されている。
頭に飾り付きの帽子を被り、紫っぽい紺色の着流しにブーツ、皮手袋を身に着け……全身に包帯を巻いている男。もうわかっただろ?

「志々雄様!!」
「「え?」」

俺の突然の大声に、黒猫と瀬菜がこちらに振り向く。これは声量ではなく、俺の発言に対して驚いているようだな。
それもそうか。ただ名前を呼ぶだけならいざ知らず、様付けまでしちまったからな。コイツ等が重度のヲタでも、少しは引いちまうか。
けどな、この志々雄真実というキャラ。俺が幼い頃に強烈な印象を与えてくれたキャラの一人なのだ。俺の中では、あのセルと同等と言ってもいい程の好きなキャラなのだ。
だからさ、その気味の悪いものを見るような目はやめろよ。な、二人とも?

「今のは聞かなかったことにしておくわ」
「そうしてくれると助かる……」

黒猫が、なんとかこの空気を無理矢理に転換させ、コスプレの衣装作りを始めた。
俺の寸法を細かく取り、メモに書き込んでいく。このとき瀬菜は、黒猫のアシスタントのようなことをしていた。
俺は基本的に動かないので、流石に暇になってくる。その退屈を紛らわすため、瀬菜にとある質問を投げかけてみた。

「なあ、瀬菜。志々雄のコス作りはお前の提案と聞いたが、何で今になってなんだ?」
「実は最近、るろ剣を完全版で読み直しまして。その時に志々雄を見て思ったんですよ。"これ、コス作り大変なのかな?"って。まあ、好きなキャラでもあるんですけどね」

つまり、好奇心と嗜好が合わさった結果、ということか。
それに巻き込まれた俺と黒猫は、不運なのかも知れん。けどな、俺はこのとき、瀬菜に少しだけ感謝していた。
だってさ、好きな……いや、憧れていたキャラになりきることが出来るんだぜ?はっきり言って、役得以外の何物でもない。
黒猫はどうなんだろうな?いくら友達の頼みとはいえ、好きでもないキャラのコス作りなんざ、苦行としか言えんだろう。いや、好きか嫌いかは知らないがな。
寸法を測っている黒猫の顔を見てみる。……どうやら、杞憂のようだな。
普段は見せない真剣な眼差し。けど、そこには楽しげな色が見て取れた。コイツはコイツで、この状況を楽しんでいるようだ。

「これであらかた終わりね。先輩、頼んでいたものは持ってきたかしら?」
「ああ、あるぞ。けどな……、やっぱりやらなくちゃダメか?」

ここで志々雄真実というキャラを知らない人のために説明しよう。黒猫は、俺にあらかじめ「丈の短いパンツを持って来い」と言ってきた。
言われたときは理解できなかったが、今ならわかる。志々雄真実は全身に大火傷を負い、その体には大量の包帯を巻いている。
にも関わらず、着流しの片側を肌蹴させたり、その裾から足を出したりという描写が多々あるのだ。
つまり、肌(?)を見せる機会が多いのだ。かと言って、全裸状態から全身に包帯を巻くわけにも行くまい?俺一人ならいざ知らず。
というわけで、より完璧なものを作りたい黒猫は、「極力全裸に近い状態」で包帯を巻くという案を出したのだろう。

「当然でしょ。私がやる以上、半端なものは許さないわ」
「……わかったよ。何処で着替えりゃいい?」
「奥に部屋があるわ。準備が出来たらこちらに来て頂戴」

俺は自分の荷物を持って、黒猫が指し示した部屋に向かった。はぁ……なんだかなぁ。
548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/14(月) 17:02:52.58 ID:hyJBUhYDo



数分後。
俺はメンズ用の黒いホットパンツのみを着用した状態で、黒猫たちの前に再び姿を現した。
その姿を見た女子どもは、揃って顔を赤くしている。クソ!恥ずかしいのはこっちだってんだ!

「おい、こっちも恥ずかしいんだ。早くしてくれ」
「わ、わわわかっているわっ!布。布を巻くから……こここっちに来なさい!」

黒猫は恥ずかしさのあまり、声を荒げて俺に指示を出す。ったく、なんだってこんな目に……。
一方、瀬菜はというと……。ヤベ、なんかトリップしてるんですけど!!?
……しまった。俺はとんでもないことを忘れていた。そう、コイツが……高レベルの腐女子だということを……。

「フヒヒww高坂先輩、細いのに意外と筋肉質なんですね。お兄ちゃんも筋肉あるし……これは……ハイレベルな肉弾戦がwww」

ひいぃぃぃぃぃっっ!!!!
もうヤダこの娘!アイツの前でほぼ全裸なんて、ライオンの前に生肉を置くのと同義だったよ!!
あああああああああああ……。アイツの頭の中じゃ、俺はどうなってるんだ?……イヤだ、想像したくも無え。
俺は俺自身の精神を保つため、瀬菜のことを頭の中から除外した。なにやらシャッター音が聞こえるが、きっと空耳だ。
その間、黒猫は顔を赤らめつつも、俺の体に細長い布を巻いていく。
後から聞いたが、今回は原作のイメージに近づけるため、あえて市販されている包帯は使わないそうだ。
それにしても……、女の子に素肌を触られている状況というのは、健全な男子としては興奮せざるを得ないシーンだ。
黒猫の滑らかな指が肌を這う。少し冷たい指先が、俺を刺激する。いかんいかん、このままでは俺のリヴァイアサンが……。
俺は頭の中で、古代ローマ史の出来事を振り返っていた。



必要な布の量がわかったところで、今日の打ち合わせは終了した。ふぅ、異常に疲れたぜ。主に瀬菜のせいで。

「それじゃあ、これから衣装を作っていくから。調整が必要なときに、また呼ぶわ」
「わかった。じゃあ、またな」

俺はコレで帰ったのだが、黒猫と瀬菜はあの後も色々と準備を進めていったらしい。
その後、黒猫に呼ばれては修正、修正、また修正。
そして一週間前、黒猫と瀬菜の力作が完成した。
549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/14(月) 17:03:22.03 ID:hyJBUhYDo
ーーーーーーーーーーーー


はぁ、なかなか壮絶な日々だったな。俺は何とはなしに、煙管を咥える。言っておくが、俺は非喫煙者だからな。これもコスプレの一環なんだよ。
しっかし、黒猫は本当にすごい。着流しだけならともかく、この皮手袋も自作、ブーツも有り物を改造して作った。頭の帽子も、包帯を取れば原作のような鉢金が現れる仕様になっている。
左腰に差す刀はなんともならなかったみたいだけどな。それでも、なるべく原作に近づけるため、鍔を少し改造した模造刀を用意した。
少しだけ見える肌は浅黒く、目は鋭く見えるようにメイクが施されている。ちなみに、俺の目には紅いカラーコンタクトという徹底ぶり。
包帯も、白い布を何セットも用意し、巻く部位によって大きさなどを変えている。色も、画材を使って少しくすんだような色合いにしてあった。
さっきまでここにいた桐乃や沙織も、この出来には驚いていた。あの桐乃も、珍しく素直に褒めてたしな。
こうした努力の甲斐あって、この志々雄コスはなかなか盛況だ。写真も幾度となく撮られた。
惜しむらくは、俺の声がアニメ版志々雄にあまり似ていないことか。

「あ、あの……」
「あン?」

背後から声を掛けられた俺は、少し刺々しい声色で返事をして振り返った。
そこには、二人の幼い少女がいた。
ひとりはツインテールの髪に、水着のような衣装の上から防寒具を着ている。
もうひとりは長い金髪を後ろで一つに纏め、少し露出の多い衣装にマントを羽織り、先の少女と同じようにその上から防寒具を着ている。
金髪の少女は俺が怖かったのか、振り返った瞬間に「ひっ」と呻きを漏らした。が、それも一瞬だ。
そして、俺はこの少女たちのことを知っていた。

「あァ、加奈子とブリジットじゃねェか」
「え?わたしの事を知ってるんですか、志々雄さん!?」

金髪の美少女――――ブリジット・エヴァンスは自分の名前が呼ばれたことに感激していた。加奈子はなにやら怪訝な表情をしている。
ああ、今は全身包帯なんだから、向こうは俺のことわかるわけないか。
彼女たちは、今回の冬コミでメルルイベントに参加している。今は多分、休憩時間なのだろう。
しかし、まさかこの包帯マンが、昔マネージャーを装っていた男とは思うまい。
ちなみに、彼女たちには俺の正体は随分前に話してある。

「こんな姿じゃ、わかるモンもわからねェか」
「あん?その声、聞いたことあんな」
「そりゃそうだろう。話したこともあるからな」
「え?あれ?……もしかして……、マネージャー……さん?」
「おお、よくわかったな」

いや、マジでよくわかったな。声だけでわかるモンか、普通?
俺の正体がわかった二人はというと……、互いに目を見張って、口をポカーンと開けていた。
驚くのはわかるが、女の子がそんなはしたない顔をするんじゃありません。ほら、ファンが見てるぞ。

「え?え?ええええええええ!?な、なんでマネージャーさんが?え?マネージャーさんが志々雄さん?志々雄さんがマネージャーさん?」
「おーい、戻ってこーい」

いかん。ブリジットの混乱具合がヤバすぎる。"志々雄さんがマネージャーさん"ってどんな状況だ。
俺はブリジットを現世に戻すため、頭を軽くポンポンと叩いた。

「落ち着け。コレはコスプレだ」
「え?あ、そ、そうですよねー。はぁ、びっくりした」
「にしてもよー。なーんで糞マネが、こんなトコでコスプレなんかしてんだ?」
「知り合いに頼まれてな」

加奈子はそれほど驚いてないな。いや、志々雄様のことを知らんだけか?
久しぶりに会った俺たちは、暫しの間歓談と洒落込んだ。と言っても、主にブリジットの質問に俺が答えてただけだが。
加奈子はというと、その合間合間に俺へ毒を吐いていた。相変わらず糞生意気なガキだ。
その光景が珍妙だったのか、俺たちの周囲はにわかに騒がしくなる。どうかしたのかねぇ?

「お、おい。メルルとアルファ・オメガが志々雄様と楽しげに話してるぞ!?」
「なんて面倒見のいい悪のカリスマ!そこにシビれる!あこがれるゥ!」
「これは貴重だ!富竹フラァァァッシュ!!!」

そんな言葉と共に、幾多のフラッシュが焚かれた。ヤベ、ちょっと騒がしくなってきたな。
俺はともかく、この二人はまだ仕事がある。騒がれるのは、あまり好ましくないだろう。

「もう戻った方が良いぞ。これ以上ここにいると、少し騒がしい連中に囲まれる」
「んー。ま、そうだな。もうすぐ休憩も終わるしよー。うし、戻るぞブリジット」
「うん、わかった。それじゃマネージャーさん、また」

二人の魔法少女(コスプレ)は、俺の言葉に素直に従い、この場を去っていった。"また"とは言うが、次に会えるのはいつかねえ〜?
「かなかなちゃ〜ん。まってぇ〜」だってよ。可愛いねぇ。
さて、俺ももう一踏ん張りしますかね!
550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/14(月) 17:03:49.31 ID:hyJBUhYDo
ーーーーーーーーーーーー


年は明けて一月。
俺と桐乃は、久しぶりに黒猫と沙織に会っていた。いつものように、アキバのとあるメイド喫茶に集まり、今はあの日の写真データを鑑賞中だ。

「いやはや、黒猫氏のコスも見事ですが、それを着こなす京介氏も、なかなかどうして」
「俺は着ただけだからな。褒めるなら黒猫だろ」
「ふーん。ま、なかなかじゃない。このバカ兄貴をここまで似せるとはねぇ〜」
「バカは余計だ」

俺のコスプレ以外もいろんな写真があったが、今の話題は志々雄コスの写真だ。桐乃や沙織もケータイで撮っていたが、黒猫のデカい一眼レフで撮った写真は、それはそれは良く撮れていた。
瀬菜にもこの写真データは送ってあり、好評を得ているとのことだ。
いろいろと恥ずかしい思いもしたが、こうやって褒めてもらえると、苦労した甲斐があったというものだ。俺はあんまり苦労してないけどな。

「謙遜することはありませぬぞ、京介氏。この志々雄コスは、ネットでも話題になっておりますゆえ」
「ネットで?マジでか?」
「ええ、マジでござる」

沙織は口元をωにすると、ケータイを取り出してなにやら操作を始めた。十数秒後、俺にケータイ画面を見せ付ける。
そこには、俺のコスプレ写真と共に、ネット住民の感想が書かれていた。

『リアル志々雄様ktkr』
『地獄からお戻りになられたぞおおおおおおおおおおっ!!!11』
『クオリティ高杉』
『えぇい!由美はいないのか!!』

などなど、その多くは驚きと興奮、そして賞賛の声だった。しっかし、褒められるのは嬉しいが、ネットにまであがるのはなぁ……。
顔が見えないキャラでよかったぜ。

「ふっふっふー。驚かれるのはまだ早いですぞ。数多ある京介氏の写真の中でも、この写真の反響は凄まじいですからな」

沙織は口元をさらに歪めると、再びケータイを操作し、ある一枚の写真を表示させた。今度は、皆に見せるようにテーブルの真ん中にケータイを置く。

「あっ」
「えっ」
「あら」

俺、桐乃、黒猫は三者三様に驚き、声を漏らす。俺はいや〜な汗が噴出し、桐乃はなにやらぷるぷるしてやがる。黒猫はいやらしい笑みを浮かべていた。
だが、俺の驚きはこんなものでは静められなかった。人目があることも忘れ、迷惑も顧みず、ただただ絶叫した。

「なんじゃこりゃあああああああああああああああ!!!!!」

テーブルの真ん中に置いてあるケータイには……志々雄真実、メルル、アルファ・オメガが楽しげに話している写真が表示されていた。



おわり
551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 17:05:52.71 ID:hyJBUhYDo
以上です。

俺は志々雄ネタを使いたかった。
そこに黒猫、加奈子、ブリジットを出そうと思った。
そしたらこうなった。

とにかく、ネタを考えるときはオチも一緒に考えないといけないことがわかった。
こんな意味不明SSでも、楽しんでもらえれば幸いです。

ありがとうございました。
552 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 17:28:34.40 ID:ckoQ+NSc0
面倒見のいい悪のカリスマ吹いたww
面白かったぜ、乙!
553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 17:55:21.98 ID:nk3L8E8Ro

テンション上がるのは分かる
554 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 18:23:48.93 ID:eD+QKiSd0

悪のカリスマ志々雄コスの京介もいいね
しかも面倒見がいいとか…これはこれでアリだ!
555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 19:43:48.71 ID:EB4iaA8g0
>>551

自分の欲望をよくぞ上手くまとめあげた
556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/14(月) 20:26:40.78 ID:mI2i9Ft0o
乙です
すげえ、よくこんなに詰め込んだな。ブリジットも出て来てにやにや
557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 20:37:13.90 ID:qkvaUKLn0

最近かなかなが増えてきて嬉しいかぎり
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 21:15:41.53 ID:kNywY0aDO
>>551
十分面白かったぞ
瀬菜が腐りすぎててやばいww
声だけでわかるとかブリジットどんだけー
559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 21:20:18.53 ID:hyJBUhYDo
息抜きにあやせSS書いてみた。
台本形式の小ネタどす。

以下、投下。
560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/14(月) 21:20:46.55 ID:hyJBUhYDo
とあるひ!

京介「ウエッホグォッホ!あー、風邪かねえ」

あやせ「お兄さん、こんにちは」

京介「ん?あー、あやせ。こんちゃ」

あやせ「(……あれ?)お兄さん、マスクしてますけど風邪ですか?」

京介「そうかもしんねー。咳が治まらなくてな。あとだりー」

あやせ「お兄さんがだるそうなのはいつもじゃないですか」

京介「んー。ま、そうかな」

あやせ「(……あれれ?)お兄さん、やっぱりおかしいですね」

京介「そうだな。風邪だな、こりゃ」

あやせ「早く帰って休んだ方が良いですよ。うつされても困りますし」

京介「そうだな。じゃあな、あやせ」

あやせ「はい、それでは」




あやせ「セクハラ発言も、突っ込みも無かった……?」
561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/14(月) 21:21:14.95 ID:hyJBUhYDo
つぎのひ!

京介「あー、だり。熱は無いのになあ」

あやせ「お兄さん、一日ぶりです」

京介「あやせか。どうした?」

あやせ「ひどいですね。見かけたから挨拶したのに」プクー

京介「そうか。ごめん」

あやせ「(やっぱりおかしい……)お兄さん、まだ体調悪いんですか?」

京介「見ての通りだ。熱は無いんだがな」

あやせ「熱が出ないときは、治りが遅いらしいですよ」

京介「そうなのか。長引かれると困るな」

あやせ「だから……えいっ!」ギュー

京介「おおっ!」

あやせ(変態のお兄さんなら、ここまですれば反応が!)ニヤリ

京介「……あやせ。あんまり引っ付くな」ググッ

あやせ「あ……、すいません。(押し戻された!?)」

京介「お前にうつすわけにもいかん。もう帰るわ」テクテクテクテク

あやせ「は、はい。お大事に……」




あやせ「あんなの……お兄さんじゃない……」グスッ
562 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/14(月) 21:21:45.25 ID:hyJBUhYDo
さらにつぎのひ!

京介「ふぃ〜。やーっと治りやがった」

あやせ「お兄さん!」

京介「おわっ!お、おう、あやせ。奇遇だな(怒ってる……?)」

あやせ「ていっ!」ギュー

京介「うわっ!ど、どどどうしたあやせ!?(うはー!やわらけー!いいにおいー!)」

あやせ「……風邪は、もういいんですか?」フゥー

京介「……!?(あ、あやせの声が耳元に……。おまけに息も……!)」

京介(うう〜〜〜〜〜。も、もう!我慢でぇきなぁい!!)

京介「……あやせ!!」ガバッ

あやせ「はっ!いやああああああああああああああああああああっ!」ハイキックゥ!

京介「ぶべあっ!」ドサッ

あやせ「こ、ここっこここの痴漢!変態!ぶち殺しますよ!」ゴゴゴゴゴゴ

京介(な、何故だ……。あやせの方から……接触してきたのに……)バタッ

あやせ「ふんっ!」プイッ




あやせ(良かった。もとに戻って……♪)



おわり!
563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 21:22:34.32 ID:hyJBUhYDo
以上です。

やっぱこのくらいゆるい方が良いな。
ありがとうございました。
564 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 22:08:05.26 ID:6Nq4K+CP0
あやせ可愛いけどひどいww
565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 22:11:52.33 ID:EB4iaA8g0
でも、そんなあやせが大好きです
566 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 22:37:42.24 ID:hyJBUhYDo
毎度思うが、まとめwikiのサブタイが秀逸。
567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 23:40:40.19 ID:ed3NlL0Qo
てか投下されてからwikiに載せられるのがめちゃはやい
568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 23:43:17.34 ID:hyJBUhYDo
>>567
それも毎度思う。
複数人で管理・更新してるんだろうけど、ただ投下するだけの身としては頭の下がる思いだわ。
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 01:27:10.11 ID:sozpeqNxo
小ネタを律義に拾ってくれるのは嬉しい
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 01:51:27.65 ID:iS3ighkvo
>>566
京介エンジンとか良いよな
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 02:00:21.43 ID:v3XHg2t7o
>>570
ぱっと見、内容がわからんから読みたくなるサブタイだわ、それ。
個人的には、

・キモオタ街道爆進中の兄貴の私生活を覗き見してみた
・玉砕上等移奪宣言

この二つがヒット。
「移奪」なんてサラッと出んわ。
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 02:23:15.74 ID:5TBXlVIbo
大介無双にはクスッときた
小さな暫定婚約者とか高坂兄妹流緊張解消法とかは語呂がよくて好きだ
意外とサブタイが見ようという意欲を駆り立てるから侮れん
そしてそろそろ桐乃SS全裸待機
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 02:33:12.60 ID:QybF6JZDO
向かいの家に梅の花が咲いている
きれいだな
ということでお花見ネタに期待
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 04:21:09.56 ID:u8mKeaa70
おい誰かホワイトデーネタ書かないのかお願い致します
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/15(火) 06:16:10.82 ID:Lj3urlD7o
サブタイが秀逸なのは俺も思ってた。あのセンスを俺にも分けて欲しいくらい
そしてwiki編集毎度ご苦労様です
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 14:12:06.02 ID:v3XHg2t7o
花見ネタ、書いてみた。
参加者が多くて収拾つかなくなってるが、気にしないでくれるとうれしい。

以下、投下。
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/15(火) 14:12:40.28 ID:v3XHg2t7o
「春眠暁を覚えず」とはよく言ったもので、春の訪れと共にやってきた暖かな陽気は、俺の中から眠気だけを効率良く引き出してくれる。
暇潰しのために持ってきた文庫本も、今は睡眠促進剤としてしか機能を発揮していない。
これで隣に可愛い女の子でもいれば、少しは違ったのだが、生憎今そこにいるのは無駄に爽やかなムカつくイケメン野郎だった。

「俺の隣にいるのが、なんでお前なんだろうな」
「おい、高坂。口を開くたびに俺に当たるのはやめろ。俺の繊細な心はもうボロボロだ」
「なら、粉々に砕いてやるよ」

無駄に爽やかなムカつくイケメン野郎――――赤城浩平は、そんな心にも無いような反論をして、俺のイライラを加速させた。
この余裕な態度も鼻につく。まったく、妹の頼みとなると途端に元気になりやがって。

「お疲れさま〜。きょうちゃん。赤城くん」
「おう、麻奈実」
「こんにちは、田村さん」

高校時代と変わらない、他愛の無い言い合いをしている野郎二人の下に、眼鏡をかけた地味な幼馴染――――田村麻奈実が少々大きな荷物を持ってやってきた。
麻奈実は、孫のケンカを見守るお婆ちゃんのような笑顔を浮かべ、自宅から持ってきた温かい緑茶を差し出す。
それを飲み、ほっと息を吐くと、さっきまでの不平不満も幾分か減少した。

「せっかくのお花見なのに、そんな態度じゃ桜がかわいそうだよ〜」
「そうだぞ高坂。田村さんの言う通りだ。少しは空気を読め」
「その言葉、熨斗付きで返してやるよ。このドシスコン」
「妹が好きで何が悪い!!」

俺の軽い挑発に、赤城は必要以上に乗ってくれやがった。まったく、イチイチうるさいヤツだな。
怒り心頭の赤城は麻奈実に任せ、俺は無視を決め込んだ。そんな俺たちの頭上からは、白みのある淡紅色の花弁が、ひらひらと何枚も舞っている。

「それにしても……」

俺は視線を少し上げ、ここら一帯の風景に目を向けた。あちこちに生えたソメイヨシノには、花弁が五枚合わさってできる花が幾百幾千と咲き誇っていた。

「美事なもんだ」
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/15(火) 14:13:14.34 ID:v3XHg2t7o
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事の発端は半月ほど前。ホワイトデーが明けて数日経ったときだった。
その時の俺は、ひどく疲れ切っていた。主に精神的に。
妹やその友達、幼馴染や後輩から貰ったチョコのお返しのため、普段では考えられないほど散財したからだ。
あまり金の掛からないヤツもいたが、妹を筆頭に、ひどく金を使わせる輩もそれなりにいたからな。
まったく、「バレンタインデーのお返しは三倍返しが基本」なんて言い出したヤツをぶん殴りたくなるぜ、はぁ。

「ただでさえ辛気臭い顔を、さらに辛気臭くしてどうすんのよ」
「ほっとけ」

その辛気臭くなる原因を作り出した張本人が、俺に罵詈雑言を浴びせてきやがった。少しは労ってもよくね?
そんな中で溜息を吐いたものだから、流石の妹様も俺を心配したようだ。今度は少し優しげな言葉を掛けてきてくれた。

「ホントどうしたのよ?具合でも悪いの?」
「体調は悪くねえよ。ただ、財布の中がさびしいだけだ」
「どーせまた、エロいもんを大量に買い込んだんでしょ」

どーせってなんだよ!俺はエロ関連にしても大量に金は使わねえよ!
はぁ……。お前の中の俺は、どんだけエロマジンガーZなんだよ。あんまりいじめると、パイルダーオンすっぞコラ。

「ちげーよ。律儀にホワイトデーの"三倍返しの法則"を守った結果だ」
「はぁ?あんた、そんなに何人からもチョコ貰ったの?」
「あぁ、今年は多かったな。お前だろ。麻奈実、黒猫、沙織に、あやせ、加奈子、ブリジット。あとは瀬菜か」
「へ、へぇ〜。それはそれは……随分とおモテになるようで……」
「あ?馬鹿言ってんじゃねえよ。あれ、全部義理チョコ……」

つまらない勘違いをしている妹に反論しようとしたが、俺はそれをやめた。やめざるを得なかった。
だってさ、桐乃の体から赫怒の炎が立ち上ってんだよ。幻視かも知れんけどさ。そんな中、言葉を継げねえって!!

「ど、どうかしたか?」
「別にぃ〜……。どうもしないわよ。あんたが誰からいくつチョコ貰おうが、あたしの知ったことじゃないしぃ〜……」

ん、なんでかは知らねえが、桐乃様は大変お怒りのようだ……。どれだ?俺のどの発言が逆鱗に触れた?
俺が怒りの原因を考えている中、桐乃はリビングを出て行き、怒りに満ちた足音を響かせて部屋に戻った。



「どうしたもんかね〜?」

俺は自室で、そんな情けない声を出していた。
原因はわからんが、ウチの妹様はとかくお怒りだ。この状態を長引かせるのは、俺にとっても非常によろしくない。
つまりだ、何らかの方法でお姫様のご機嫌を取ってやりゃにゃあいかんわけだ。はぁ、迷惑な話だよ……。
そんな泣き言を言っても、何も始まらない。俺は無い知恵を絞って、桐乃が喜びそうなことを考えた……が、女心なんざ微塵もわからん俺に、妙案なんぞ思い浮かぶはずも無い。
となるとだ、誰かの知恵を借りるべきかも知れん。桐乃のことをよく知っている女の子に。
候補としては……黒猫か、沙織かあやせといったところか。

たとえば黒猫に相談した場合……

『黒猫。桐乃のことで相談があるんだが……』
『どうして私が、あの女のことで力にならなければいけないのかしら?そんなのは放っておきなさいよ。それより先輩……』

むぅ。なんだかんだ言いつつも、あいつは力になってくれるだろうが、無駄に時間がかかる気がするな。
この問題、できるなら今日中に解決したいし、黒猫はダメだな。

なら、沙織に相談した場合は……

『沙織。桐乃のことで相談があるんだが……』
『はっはっはー。相変わらず仲がよろしいですな、お二人は。して、相談とは……』

きっと口元をωに歪ませて、俺の悩みを解決してくれるだろう。
だが、こう毎度毎度あいつに頼るのもなぁ……。沙織に悪いし、下手に沙織に頼る癖がついちまうのもよくない。沙織も却下した方がいいか。

となると、あとはあやせに相談した場合だが……

『あやせ。桐乃のことで相談があるんだが……』
『お兄さん。私、言いましたよね?桐乃に手を出したらどうなるか……』

ダメだダメだダメだ!桐乃のご機嫌取りどころじゃねえ!あやせにこの話をしたら、俺は修正、もしくは粛清されちまう!!
いくら生意気な妹のためとはいえ。俺の命を賭ける気にはならない。これは絶対にダメだ!

ああ〜、どうすりゃいいんだろうな。
頭をぽりぽり掻きながら、俺は椅子の背もたれに思いっきりもたれかかった。そのとき、お袋が町内会で貰ってきたカレンダーが俺の目に入ってきた。

「そうだ!」

桐乃に効くかはわからんが、俺は妙案を閃いた。
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/15(火) 14:14:01.68 ID:v3XHg2t7o
ーーーーーーーーーーーー


というわけで、俺は桐乃のご機嫌を取るために「花見」という案を思いつき、今はこうして、地元の花見スポットで場所確保の任についているというわけだ。
最初は渋った妹様だが、説得の甲斐あってなんとか了承してくれた。
赤城がいるのは、こいつも花見をするつもりだったらしいので、瀬菜を誘うついでにこいつも連れてきた。麻奈実は俺から誘った。

「妹の機嫌を取るのも、楽じゃねえ」
「そう言うな、高坂。これもお兄ちゃんの宿命だ」

俺があくびをかみ殺しながら愚痴を漏らすと、隣の最高純度のシスコン野郎がそんなことを言ってきやがった。
お前にはそうかもしれねえがな、俺はそんな役割は御免だよ。

「それより高坂。瀬菜ちゃんたちはいつ来るんだ?」
「ん〜、もうすぐじゃねえか。約束は12:30だからな」
「お、もう12:00過ぎてんのか。早く来ないかなぁ〜」

赤城、その気持ち悪い声を出す作業を今すぐやめろ。今、俺はお前を無性に殴りたくて仕方ないんだ。
俺のそんな心情は露知らず、赤城は麻奈実に話しかけている。

「ところで、なんで田村さんはこんな早めに来たんだ?」
「お弁当はできたし、いつまでもきょうちゃんと赤城くんだけじゃさみしいでしょ?」

麻奈実の言葉を聞いた赤城は「さすが田村さん!」なんて言って感激してるが、勘違いすんなよ?
麻奈実のことだ。いつまでも孫だけにしておくのはイヤだったんだろう。さすがだよ、お婆ちゃん。
おい、赤城。麻奈実との距離が近ぇよ。今すぐ離れろこのクソシスコン。

「げっ」

俺ら同級生組が、そんな馬鹿なことをやっていると、桐乃、黒猫、沙織、瀬菜がやってきた。黒猫の後ろには、その妹たちもいた。

「早かったな」
「いやはや、場所取りご苦労!お邪魔しますぞ」

そんな快活な声を出して、沙織がビニールシートの中に入ってくる。バジーナ口調だからわからんかも知れんが、沙織はいつものヲタ服じゃないぞ。
淡色のTシャツに薄手のジャケット、細身のジーンズにブーツという服装だ。沙織の立派なボディラインがわかるファッションだな。
だが、顔にはいつものぐるぐる眼鏡なため、口調はアレなまんまだが……。
黒猫も、今日はゴスロリ服じゃない。春らしいワンピースの上にカーディガンを羽織っている。いつぞやの白猫を思い出す服装だ。
妹達は子どもらしく、動きやすさを重視したような服装。可愛く見えるのは、元が良いからだろうな。
瀬菜は瀬菜で、沙織に近い格好だが、なんというか……少し地味だな。あとキャスケットも違う点か。
んで、ウチの妹様は相変わらずばっちり決めてやがる。人気の読者モデル様は一味違うな。

「高坂先輩、お兄ちゃんとの時間はどうでした……?フヒヒwww」
「相変わらずだな、瀬菜」

ホンット、こいつは相変わらずだ。人選を誤ったか?
俺が瀬菜の処遇について考えていると、沙織に話しかけられた。

「して、京介氏。そちらとこちらの眼鏡のご婦人方は?」
「ああ、お前は初めてだったか?こっちのおとなしそうなのが幼馴染の田村麻奈実。そっちの気持ち悪いのが後輩の赤城瀬菜だ。その隣にいるのは瀬菜の兄貴の赤城浩平」
「おい、高坂!瀬菜ちゃんに向かって気持ち悪いとは……」
「うるさい黙ってろ殴るぞコラ」

俺が激昂した赤城を押さえている間、沙織は麻奈実と瀬菜に自己紹介を始めた。あのぐるぐる眼鏡を外して……。

「はじめまして。わたくし、京介さんと桐乃さんのお友達で、槇島沙織と申します」
「は、はじめまして。田村麻奈実……です」
「高坂先輩の高校の後輩の赤城瀬菜です!」

麻奈実は、いつかあやせに自己紹介されたときのように、沙織の素顔に見惚れていた。
一方瀬菜は、一切物怖じせずに元気一杯挨拶をしていた。瀬菜、お前すげえよ。
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/15(火) 14:14:33.11 ID:v3XHg2t7o
簡単な自己紹介が終わり、沙織が眼鏡を掛けなおすと、もう一団体お客様がやってきた。

「こんにちは、お兄さん」
「うーす、来たぞ」
「マネージャーさん、お久しぶりです」

あやせ、加奈子、ブリジットの三人だ。俺はあやせだけに声を掛けたんだが、あやせがあとの二人も誘ったらしい。
十二人で座るには、ビニールシートが少々狭かったが、まあいいだろう。

「ちょ、ちょっとあんた。何人に声掛けたのよ?」
「お前に黒猫、沙織に麻奈実、あと瀬菜とあやせだな。黒猫の妹と加奈子、ブリジットは想定外だが……」
「いくらなんでも声掛けすぎでしょーが!」
「別に良いだろ?大勢の方が楽しいんだからさ」
「そ、そりゃそうだけど……」

よくわからんが、ウチの妹様はこのメンバーにご不満があるらしい。だからって、今さら「帰れ」とも言えんのはわかってるだろうからな。ここは我慢しとけ。
さて、これだけの人数が集まるのは、俺としても想定外だった。だから、気になることが出てくる。

「食い物、足りるかな。麻奈実の弁当もあるとはいえ……」
「ご心配なく。わたしもお弁当を作ってきましたから」
「私も作ってきたわ」

俺の心配そうな声を聞き、あやせと黒猫が、それぞれ重箱を出してきた。
麻奈実はそれをてきぱきと並べていく。中身はどれも美味そうだった。

「んじゃ、大丈夫かな。ほれ、赤城。皆にコップ配れ」
「はいよ〜」

俺は赤城に指示を出し、皆にコップを配っていった。コップを受け取った者から、思い思いにジュースやお茶を注いでいく。

「全員に行き渡ったか〜?」

俺の声に返事は無い。周りを見渡すと、皆ちゃんとコップを持っていた。
それを確認した俺は、高らかに声を上げる。

「うし。じゃあ皆、コップを掲げろ〜。せぇ〜の……」



「「「「「「「「「「「「かんぱ〜い♪」」」」」」」」」」」」



俺の合図と共に、紙コップが掲げられ、春の宴が始まった。
桐乃は、はじめこそ不満そうな顔をしていたが、今はあやせと共に弁当について歓談中だ。
黒猫は、下の妹が加奈子とブリジットに反応したようで、上の妹と一緒にそちらで話に花を咲かせている。
沙織は、麻奈実と瀬菜が積極的に話しかけているようで、口元をωにしながらガールズトーク中だ。
俺はというと……。

「ま、こうなるわな」
「おいおい、高坂。それは俺に失礼じゃねえか。そんなに俺が嫌いか?」
「気持ち悪いこと言うな。お前とは朝から一緒だったんだぞ。なんで皆が来てからもお前と一緒なんだよ」
「友達甲斐の無えヤツだなぁ」

ま、こんだけ女の子がいるんだ。男だけあぶれちまうのも致し方ない。不満はあるがな。
俺と赤城は隅の方で、お茶を片手に静かにしていた。
それにしても……。俺は周囲の光景を眺める。
ここには色んな人間が集まり、桐乃の『表』と『裏』の友人とか、俺の知り合いとか関係なく参加している。
少しだけ懸念もあったが、こうやって楽しげな状況を見てると、それは杞憂だったと思い知らされた。
「女三人寄れば姦しい」とは言うが、この場所はまったくその通りになっていた。けど、みんな笑顔だ。
桜が舞い、美味いメシを食べ、話に花を咲かせているこの光景を見ていると、いつぞやも感じた思いが心に浮かび、思わず口から出てくる。

「悪くねえ」
「ん?なんか言ったか、高坂」
「なんでもねえよ」

ああ、悪くねえ。こんな日も、たまには悪くねえ。
それが、俺の今日の感想だった。



おわり
581 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 14:17:30.09 ID:v3XHg2t7o
以上です。
なに?赤城がヒロインっぽい?
それは幻想だ!そのふざけた幻想をぶt(ry

ありがとうございました。
582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 14:26:57.28 ID:eISiPhnAO
それは別の高坂さんだwwww
583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/15(火) 16:44:25.53 ID:Lj3urlD7o

文章中の情景描写がいい。裏山。俺もこんなふうにかけたら……
584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 18:46:59.28 ID:5TBXlVIbo

黒猫が加奈子達と打ち解けてるっぽいのが意外すぎるww
585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 20:52:51.04 ID:HqUkgbmA0
乙です
瀬菜ちゃん得のラストもいい感じ
586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/16(水) 00:19:19.17 ID:Mq31vBKI0
ブリジット√に挑戦してみたんで、唐突に投下させていただきます。

※途中から急展開注意です
587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/16(水) 00:21:58.80 ID:Mq31vBKI0
『俺が幼女に恋した日』

俺は今日、ひょんなことから一日限定で再びマネージャー業に返り咲いた。
ひょんなことって何かって?まあそこはあんまり気にするな。それは今回さほど重要なことじゃない。

んでもって今は仕事を終えて帰り支度をしているところだ。
ついさっき加奈子が散々俺の仕事ぶりにダメ出ししながら帰っていき、部屋には俺とブリジットの二人しかいない。
そんな時、いきなり後ろからブリジットに呼ばれて俺は振り返った。

「あ、あの…マ、マネージャーさんっ!」
「ん?」
この時俺はかなりくぐもった声で返事をしたと思う。
何故って、俺はさっき買ったペットボトルの麦茶を飲み干している最中だったからさ。
丁度控え室にゴミ箱あるしな。後でかさばるくらいなら今飲んじゃった方が……

「わ、わたしと、付き合ってください!」
「ブフォオッ!」

な、なんだって!?
あまりに突然の申し出に、俺は思わず飲んでいた麦茶を吹き出してしまった。

「大丈夫ですか!?マネージャーさん!」
「ご、ご、ごめん!濡れたりしてないか!?」
心配そうな顔で俺にハンカチを差し出してくれるブリジット。
こんな小さい子に心配される俺って……。

「ホントにごめんな、ブリジットちゃん…。」
「いいんです。わたしの方こそ、驚かせてしまってごめんなさい…。」
俺はさらに差し出されたティッシュで濡らしてしまった床を拭きながらつくづく思う。

この子ってホントにいい子だよなぁ…。
幼いながらに礼節をわきまえていて気配りも出来て、周りへの配慮を決して忘れない。
今だっていつの間にか一緒に床拭き手伝ってくれてるし。
まさに、理想の女の子像じゃねえか。
…っておいおい………こんな小さい子相手に何考えてるんだろうな俺は。
そんなことより聞きそびれた話の続きを聞かないと。

「そ、それで…さっきの話は……?」
「は、はい。実は…」
ブリジットは再びあらたまって話し始めた。
ごめんな…。俺が茶を吹き出したばっかりに……。

「わたし、最近外に出かけると誰かの視線を感じる気がして………」
「ええっ!?それって、まさかストーカーってことか!?」

なんでもブリジットの話によると、最近歩いてると何だか常に人の気配を感じるらしい。
確かにブリジットは最近徐々に知名度が上がってきてるから注目が集まるのは仕方がないことなのかもしれない。
この間は某朝の情報番組でちょっとした特集が組まれてたし。
だが、それにしてもだなぁ、こんな小さい子にベタベタまとわりつくなんて一体どこの変態だよ!?
ったく、とんでもねえヤツだな。

「それでわたし、ちょっと心配で…」
最後の方は小声で、いかにも怯えている様子が伝わってきた(ように感じた)。
その姿を見て、当然俺の心は即決されたね。
よし!俺はこの子のために一肌脱ぐ!この高坂京介、困っているいたいけな少女をほったらかすほど落ちぶれちゃいねえぜ!

588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/16(水) 00:23:32.57 ID:Mq31vBKI0
「なるほどな…。ブリジットちゃんを怖がらせるなんて許せねえ!俺も力になるよ。俺に出来ることなら何でも言ってくれ!」
「ありがとうございます、マネージャーさん………」
俺が力を込めて全面協力の意思を伝えると、ブリジットは少しホッとした様子で微笑んでくれた。

「んで、俺は何をすりゃいいんだ?」
「えーと…その……『一日だけ誰かに彼氏のふりでもしてもらったら』って、かなかなちゃんが…。」

加奈子が?
なるほどね。彼氏の存在をアピールして相手に諦めさせようって作戦か。
まあきっと口調はもっと汚かったに違いないが、ちゃんとアドバイスしてやるなんてあいつも何だかんだでいいとこあるじゃねえか。
ん?でもこの流れからすると………

「ってことは…俺がブリジットちゃんの恋人役を?」
「ダメ…ですか?」
ブリジットは俯いて、とても申し訳なさそうにしてしまっている。

俺がブリジットの彼氏役…。
いや、決して嫌なわけじゃない。
いつも大抵あの加奈子とセットだから尚更そう感じるのかもしれないが、ブリジットは礼儀正しく純真でとても可愛い。
この子と一日デート出来たら、きっとすごく癒されるんじゃないだろうか。

…だが、さすがに俺だって世間の目は気になる。
少し年が離れすぎていやしないか!?
まあ確かに最近は年の差カップルなんて珍しくもないけどさ。
実は、好きだったアイドルがよくわからない年上のミュージシャンと交際していた、なんてことはよくあることだ。
でもなぁ…。
例えば、30歳の男性と22歳の女性が8歳差婚。これは何となく受け入れられると思う。
しかし、18歳の高校生と10歳の小学生が付き合ってたら?何となく前者とは異なる違和感を感じないだろうか?
これは世間的にはその…ロ、ロリコン……になってしまうわけだよな…。

もしも皆がこのことを知ったら…。
『言い訳なんて問答無用』ってのがアイツらのスタイルだからな。
桐乃にブチのめされ、黒猫に冷めた目で見られ、沙織にネタにされ、加奈子にバカにされ……。
あやせには普通に通報されてしまいそうだ。場合によっちゃ殺されたりするんじゃ…。
麻奈実は………ってアイツは気にしなさそうだな。
本来なら『ストーカーと対決することになるかも』なんてことを心配するのが普通なんだろうが、俺の頭に真っ先に浮かんだのはこんなことだった。
ズレてる?ええ、自覚してます………

589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/16(水) 00:24:01.03 ID:Mq31vBKI0
果たして、こんな俺で本当に大丈夫なんだろうか?

しかし!このか弱く健気な少女は、他でもない俺を頼ってくれてるんだ!ここは男として期待を裏切るわけにはいかねえだろ!

「ダメならいいんです…変なことお願いしてごめんなさ…」
「い、いやっ!ダメじゃない!!その……俺なんかでよかったら、引き受けるよ。」
さっき『何でも言ってくれ!』って言ったばっかりだしな。まあ、『ホントに俺でいいの?』って感じなんだけどさ。

「ほ、本当ですか!?マネージャーさんっ」
不安そうな表情から一転、ブリジットの顔はパッと輝いた。
ブリジットは感情がわかりやすくて好感が持てるなぁ。なんて素直でいい子なんだろう。
…どっかの妹とは大違いだ。

「ありがとうございます、マネージャーさん!」
「いいってことよ。それで、作戦決行はいつ頃になるんだ?出来るだけ早い方がいいよな?」
「今週の土曜日…は空いてますか?」
「…土曜日だな?ああ、オーケーだ」
土曜日はたしか麻奈実と勉強会する予定が入っていたが……許せ幼馴染よ!

「んでさ…どこ行く?ブリジットちゃんはどっか行きたいとことかあるのか?」
俺は一体この子とどこに行ったらいいんだろう?
このくらいの年代の女の子ってどんなとこ連れてけば喜ぶんだ?見等もつかん。

「動物園とか水族館とか植物園とか…。ただどっかに買い物に行くってのもアレだしなぁ……。」
「あっ!そ、それなら大丈夫です……」
優柔不断な俺を見かねてか、代わりに相手が答えてくれた。
偽装デートとはいえ、我ながら情けねえよ。こういう時は普通男がバシッと女の子が目を輝かせるような場所を……。

勝手に一人で落ち込む俺をよそに、当のブリジットは何やらカバンの中をごそごそと漁っている。
そして、どうやらお目当てのものを見つけたようだ。

「…これ、事務所の人からもらったんです。『よかったらお友達と行ってきたら』って」
そういってブリジットは俺に二枚の長方形の紙を差し出した。
やたらとカラフルなそれは、なんと某遊園地で一日遊具が乗り放題になるチケットだった。

「い、いいのか?これって結構貴重なものなんじゃ……」
「わたしは全然…。じゃあ、朝の9時に入り口で待ち合わせでいいですか?」
「お、おうっ!」
女の子と二人きりで遊園地なんて、ぶっちゃけ俺の人生の中で最大規模のデートだ。なんかそう思うと緊張してくるな…。
いや、今まで妹との偽装デートしかしたことないけどもさ。

「それじゃあ、わたしそろそろ帰らなくちゃ。マネージャーさん、土曜日ですよ?忘れないでくださいね?」
「大丈夫だって!そんなすぐには忘れないから安心してくれ」
「はい!それじゃあマネージャーさん、お疲れ様でした!」
「そっちこそお疲れさん。またな〜」


ブリジットを見送った後、俺はふと考えた。
そういえばブリジットと会うにしても、俺は『マネージャーさんスタイル』にしなきゃならんわけか。
でもな…。
スーツにグラサンにガチガチのオールバックで遊園地なんて絶対に浮くよな…。どうしたもんか…。


590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/16(水) 00:25:26.04 ID:Mq31vBKI0
こうして迎えた当日。
俺はブリジットとの約束通り、朝9時に某大型遊園地の入り口の前にやってきた。
悩んだ末、俺はスーツの名残を出そうと私服は黒っぽい色を基調としたシンプルなデザインのものをチョイス。
さらに髪形は『オールバック気味』ってレベルにしてグラサンは伊達メガネで代用…ってホントにこんなんで大丈夫なんだろうか?
我ながらなんか…変じゃねーか?

自分の格好に改めて疑問を抱きながらも今更後戻りは出来ないので、俺はこれ以上身なりを気にするのをやめてブリジットを探すことにした。
今日は休みの日だからか親子連れが目立つ。
周りをぐるーっと見た感じ、ブリジットはまだ現れていないようだった。
あの子は待ち合わせ時間に遅れるような子じゃないと思うんだが……もしかして何かあったのか?
そういえばブリジットの私服ってあんま見たことないけど、どんなのなんだろう?
…まさかアルファ・オメガのコスプレでは来ないだろうしな。
そう思って今度はゆっくり慎重に周りを見渡す。
すると…………。


ブロンドの髪をしていなかったらおそらく気がつかなかっただろう。
俺の目線の先には、見慣れたコスプレ衣装の水色ベースではなく、
明るいピンク色を基調としたとても可愛い格好をして髪をお団子に結ったブリジットここから少し離れた木の下のベンチに座っていた。
パッと見はとても小学生とは思えないが、よく見るとどこか少女のあどけない感じも醸し出しているようで……。
この、大人のようで子供のような不思議な外見と、純真そのものである中身がブリジットの魅力の一つなのかもしれないな。
不覚にも一瞬ドキッとさせられちまったよ。
いや、別に小学生相手に本気でときめいたわけじゃなくてだね、いつもとギャップがあったからであってだね………

…おっと。こんな呑気にしてる場合じゃねえ。ブリジットを探してるうちに約束の9時を少し過ぎてしまっているではないか。
俺は小走りで待ち合わせ相手のもとに向かった。


「ブリジットちゃん……だよな?」
「は、はい…」
「ごめんな、ちょっと遅くなって。ブリジットちゃんの印象が変わってたから見つけるのに時間かかちゃってさ…。待たせちゃったか?」
「どなた……ですか?」
「…えっ?」

…あれ?これちょっとヤバいんじゃねーか?
『待たせちゃったか?』に対する王道的返し文句・『ううん、私も今着たとこ!』の代わりに俺を迎えたのは明らかな戸惑いの表情だった。

「あの、もしかして…マネージャーさん?…ですか?…それとももしかして……お兄…さん?」
案の定、俺の中途半端なスタイルは早速待ち合わせ相手を混乱させてしまったようだ…。
しかもなんかもう半分バレちゃってるし。
もうこうなったら仕方がねえか。これで今日一日ごまかせるほど俺は嘘が上手くないからな。

「…ちょっと……待っててくれないか?」
俺は近くのトイレに駆け込んで鏡を見ながら速攻で髪型をいつもの『お兄さんスタイル』に戻し、伊達メガネを外して、再びブリジットの前に姿を見せた。
「な、何回も待たせちゃってごめんな………」
「やっぱり、お兄さんだったんですね?あれ?でもそれじゃあマネージャーさんは…?」
「ブリジットちゃん…実はこれにはワケがあってだな………」
俺はブリジットに全てを打ち明けた。
今まで変装してマネージャーになっていたこと、桐乃とは実は兄妹であるということ、全部だ。
デート開始前にこんなことを説明することになるなんて…。なんか非常に申し訳ない。

「…と、こういうわけだったんだ。今まで長い間隠しててごめんな。」
「いえ、わたしは別に…。やっぱり、マネージャーさんは優しい人です。お姉さんのためにそこまで…」
ブリジットは目をキラキラさせながら俺を見ている。
ちくしょう…。そ、そんな顔されたら……なんか照れちまうだろーが!

「あのさ、それで…このことは加奈子には言わないでおいてくれると助かるんだけど……」
「かなかなちゃんにはナイショ…?どうしてですか?」
「いやっ、その…と、とにかく言わないでくれっ!頼むっ!」
そうなってくると後々面倒なことに……。
俺は手を合わせてブリジットを拝んだ。

「じゃあこれは、わたしとマネージャーさん、二人だけのヒミツですね!?」
ブリジットはとても嬉しそうにこっちを見ながらニコッと笑った。
うっ!これが噂のキラースマイルか!?不覚にも一瞬ドキッとしちまったぜ。
なるほど、これなら確かにロリオタが熱狂するのはわかるかもしれん……いや、俺は違うぞ!?


…でも、何でブリジットはあんなに嬉しそうなんだろう?

まあいいか。とりあえず一山超えたな。桐乃にも後から報告しておかねえと。


「マネージャーさん、今日は一日よろしくお願いしますっ!」
「ああ、こちらこそ。」



開始前に色々あったが、ようやくここから、俺とブリジットの一日デートがスタートした。

591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/16(水) 00:27:26.56 ID:Mq31vBKI0
受付を済ませて中に入ると、早速遊園地の定番が俺たちを出迎えてくれた。


「マネージャーさん、わたし…あれに乗りたいです!」
ブリジットが指差したのはでっかいメリーゴーランド。まあ、定番中の定番だよな。
最後に乗ったのいつだっけ?随分前のように思える。

他にもゾウとか色々動物がいたが、俺たちはこれまた定番の巨大な馬に二人乗りした。
ブリジットが前で俺が後ろだ。
知っての通り、メリーゴーランドってのは基本的にずっと円運動だ。しかもこれは上下に動いたりもしないタイプ。
うーん…なんつーかその……正直、高校生の俺には若干物足りないな。うん。
心なしか周りの客層も子供ばっかりな気がする。
まあブリジットは喜んで乗ってるみたいだからいいんだけどさ。

その時、どこからともなくすごくいい香りがしてきた。なんだかほどよく甘い…。
どっからだ?何の香りだ?
ちょっと考えてから匂いの原因を嗅ぎつけて俺はハッとした。

ブリジットのブロンドの髪からだ!
一見単なる甘い香りのようだがほのかに刺激的で…嗅げば嗅ぐほど違った魅力を発見できる絶妙な香り………
…っていかんいかん!この状況でクンカするなんて完全に変態だろ!
俺は慌てて首を横に振った。

「マネージャーさん?」

おそるおそる前を見ると、ブリジットが不思議そうな顔でこっちを見ていた。
さっきまであんなに景色を楽しんでたはずなのにまさか振り向くとは!
こいつはヤバイぞ…。

「いっ!?いや、何でもない!何でもないんだ…ちょっと虫が飛んできて……ハハ」
笑え笑え。自慢じゃないが俺は言い訳がドヘタクソだ!
果たして、今のでごまかせたんだろうか?

「あの…マネージャーさん……。」
「えっ!?ど、どうした?ブリジットちゃん」

まずい!やっぱバレてたか!?

「あの、えーと…今日は一応恋人だから……。
やっぱり、“ブリジットちゃん”じゃなくて、ちゃんと“ブリジット”って呼んでほしいんですっ…」

ふう。俺のクンカの件はバレてないようだな……って、今なんつった!?

ブリジットを見ると、なんとなくこっちを向いてはいるがとても恥ずかしそうに視線をそらしている。
まあそりゃあ恥ずかしいよな。
それにしても『呼び捨てで呼んでくれ』なんて結構この子は本格主義なんだな…。
なんにせよ、ここは空気を読んで爽やかに快諾しよう。

「あ、ああ!そうだよな!気がつかなくてごめん。その……」
何でだろう?労力的には『ちゃん』を外すだけなのになんだか緊張する。
俺は軽く息を吸い込んだ。

「ブ、ブリジット。…これでいいか?」
俺の口から発された彼女の名前は、自分でもびっくりするくらい小さかった。
年下の女の子を呼び捨てで呼ぶだけなのにこんなにドキドキしちまうとは…。
悔しいが、自分が女の子の扱いに慣れていないと認めざるを得ない。

「あのぅ…」
「ど、どうした?」
…あれ?呼び方が気に入らなかったのかな?
それともやっぱり俺に呼び捨てで呼ばれるのは違和感があるか?
まあ、正直俺もだよ。全然慣れてねえしな。

「わ、わたしも…マネージャーさんのこと、名前で呼んでもいいですか?」
「ええっ!?」
俺はびっくりして大きな声を出してしまい、周りの親子から痛い視線を感じた。
なっ!?今度は俺を名前で呼びたいだとぉ!?
この子はどこまで本格派なんだ?確かに恋人の呼び名が『マネージャーさん』じゃ変だけども。

でも、さすがにそれはちょっと恥ずかし「きょ、今日だけ!今日だけでいいんです!ダメ…ですか……?」

「い、いや!全然いいぜ!じゃあさ、俺のことは“京介”って呼んでくれ」
心の葛藤をいとも簡単に抑え、俺はいつのまにか反射的にOKを出していた。
どうも俺はブリジットにお願いされると弱いらしい。それも、顔を赤らめてお願いされると尚更な。
…いやいや。お前ら、頼むから変な誤解だけはやめてくれよ!?俺はそっちの人種じゃないからな!

「は、はい!ありがとうございます!きょ、きょうすけさん!」
ブリジットは嬉しそうな声で元気よく俺にお礼を言った。あっ、俺の名前を言うときは少し恥ずかしそうにしてたかもしれない。
でも、やっぱり『さん』は付けるんだな…。まあそこもブリジットらしくてイイんだけどさ。
よし、今日はこの可愛らしいプリンセスにとことん付き合ってやるとするか!
592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/16(水) 00:29:26.66 ID:Mq31vBKI0
ちょっと稼働時間が長すぎるんじゃないかと思っていたメリーゴーランドがようやく止まり、
いよいよ俺たちは広い遊園地の中枢へと歩いていった。

「よーし、じゃあ次行こうぜ!次は何がいいんだ?ブリジット。」
「次は……あれ!あれに乗りたいです!きょうすけさん!」


こうして、メリーゴーランドを皮切りに俺たちは本格的に遊園地巡りを始めた。

数年ぶりのジェットコースターにビビって、乗車前から若干顔が引きつる俺。
「ぬおおぉぉぉぉぉ〜!」なんて叫び声出してたのは多分俺だけだったよな…。
その隣で、「きゃあ〜!」というありきたり過ぎる歓声をあげてはしゃぐブリジット。
う〜ん、微笑ましいねえ。…俺には微笑むほどの余裕はなかったけどさ。

回転ブランコってのには初めて乗ったが、あれには吹き飛びそうになる錯覚に陥る独特のスリルがあるな…。
まあ途中からはそれが快感に思えてきたんだがな。慣れれば面白いもんだぜ。
しかし後ろから「きょうすけさ〜ん」て呼ばれてた気がしたけど何にも反応出来なかったな……。
でもよ、さすがに回転中に後ろは向けないだろ!?

だが、ゴーカートでは少しはいいとこ見せられたんじゃねえか?なんせガキの頃レースゲームで鍛えてたからな!
見事なドライビングテクニックを披露してブリジットから尊敬のまなざし(多分)を向けられ、俺は少し得意になった。

…久しぶりのバイキングの揺れで酔ってしまう、というヘタレアピールも忘れなかったが。


いやぁ〜。それにしても懐かしい。
久しぶりに童心に帰った気分だよ。
ブリジットも楽しんでくれてるみたいで何よりだ。



そして、時間も丁度昼飯時になってきたので、俺たちは施設内の昼食コーナーで食事をとることにした。
ぶっちゃけ、昼食コーナーを甘く見てたよ。メニューも種類豊富で、そこら辺のファミレスにも負けてないレベルだ。
ここは食券を買うタイプか。でも、こんだけあると迷っちまうなぁ…。

ここでふと隣を見ると、ブリジットはメニューをじーっと見ながらカバンからメルルの顔型の財布を取り出そうとしていた。
もちろん、俺はそれを制止したさ。
男として、こんな小さい女の子に金払わせるわけにはいかねえだろ?
いや、だから変な意味じゃないって!一般男性の立場としてだぞ!?

「ああ、いいよいいよ。俺が払うから。」
「ええっ!?」
「ほら、何が食べたい?好きなの選べよ。」
「でも…お父さんからお金ももらってるし……。」
「遠慮すんなよ。今日は一応デートなんだからさ。こういう時は男に甘えておくもんだぜ?」
「は、はい…。ありがとうございます…。」

なんだかまだものすごく遠慮してるみたいだけど、一応は俺に奢らせてくれるようだ。
もしかして、親戚以外の男にメシ奢ってもらうの初めてなのかな?
それともイギリスの文化では日常茶飯事だったりするんだろうか?わかんねーけど。

「んで、何にするんだ?俺は……オムライスにしようかな?」
「わたしもっ!わたしも…オムライスがいいっ…です……。」
顔赤くして俯いちゃって……その………か、可愛いじゃねーか。
誤解すんなよ?ここで言う『可愛い』は小動物的可愛さだ。断じて変な意味じゃないからな!
でもさ、こういう反応してくれると俺も自腹を切った甲斐があるってもんだよ。
593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/16(水) 00:30:47.11 ID:Mq31vBKI0


「…ところでブリジット。今更だけど…お前は俺と一緒にいて大丈夫なのか?」

俺はスプーンでオムライスを口に運びながら、ふと疑問をぶつけてみた。

「えっ?どういう意味ですか?」
「ほら、ブリジットは今や売れっ子タレントなわけだし。
それにさ、俺なんかと一緒にいるところを学校の友達とかに見られたら変な誤解されちゃうんじゃ…。
ぶっちゃけその……嫌だったりしないか?」

正直、これは偽装デートを頼まれた時から思っていたことだ。
確かにオファーしたのはブリジットの方だが、実際無理してるんじゃ…。
だってよ……その…自分で言うのも悲しいけどさ………お、俺だぜ!?残念ながらお世辞にも冴えてるとは言いがたいしさ。
それにブリジットは絶対学校でもモテてそうだし、
『俺なんかじゃなくても一緒に遊園地行ってくれるボーイフレンドは山ほどいたんじゃないのか?』
と続けようと思ったがやめておいた。これ以上自分を卑下するのはよしておこう。

しかし、ブリジットの口から出たのは意外な言葉だった。

「わたし……わたし、きょうすけさんとがよかったんです!」
「……えっ?俺が?」
一瞬、心の声を読まれたのかと思ってドキッとした。

「わたしは、きょうすけさんと一緒にいるところを友達とか他の人に見られても全然嫌なんかじゃありませんっ!」
こんなに主張の激しいブリジットは初めて見た。ちょっと怒っているようにも見える。
「ご、ごめん…変なこと聞いて……。でも、そんなつもりじゃ………」
驚いたのと申し訳ないのとで自然と声が小さくなってしまう。俺は本当にバカだ。こんなこと聞いても何にもならないのに。

「…それとも……きょうすけさんは私に付き合うの嫌ですか?め、迷惑……でしたか?」
力ない俺の謝罪を聞くと一転、ブリジットは俯いてとても悲しそうな声になった。
それを見ているとなんだかいたたまれない気分になってくる。

「そんなことない!…俺も、今日はブリジットと遊園地で遊べてすごく楽しいよ!
…ほら、俺くらいの年だとなかなかこんなとこ来る機会もないだろ?
なんか今日は久しぶりにリラックス出来てるって感じするぜ!…ブリジット、誘ってくれてホントありがとな。」
これはもちろん本音だ。
だからこそ、俺はブリジットの誤解を解きたくて必死だった。

「…は、はい!よかった…。わたしも、わたしもとっても楽しいです!きょうすけさん!」
俺が素直な気持ちをぶつけるとまたもやブリジットの表情は一転。今度はとってもいい笑顔になってくれた。
よかった…。俺の気持ちは届いてくれたみたいだ。
ブリジットは子供らしく表情が豊かだが、やっぱりこの子には笑顔が一番似合う。
この時は、この笑顔のためなら何でもしてやりたいとさえ思ったね。


さて。ブリジットの機嫌も直って一安心したところで、俺はふと考えた。
そういえばさっきの言葉は……?
『わたしは、きょうすけさんと一緒にいるところを友達とか他の人に見られても全然嫌なんかじゃありませんっ!』
俺は女の子にこんなこと言われたの初めてかもしれない。っていうか初めてだ。
これって、好意的に見られてると思ってもいい………のかな?
…って、俺はさっきから何考えてるんだ!?何でこんな小さい子相手にマジなテンションになってるんだよ!?


俺は照れ隠しの意も込めて、必要以上に大声で元気よく言った。
「よーし!メシも食ったしそろそろ移動するかぁ!ブリジット、次はどこ行きたいんだ?」


594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/16(水) 00:32:41.54 ID:Mq31vBKI0
その後も俺たちは色々なとこをまわった。

お化け屋敷ってさ、『ここら辺で来るっ!』って思っててもビクついちまうんだよな…。
ぶっちゃけ効果音の大きさにビックリすることが多い気もするが。
そんな中、ブリジットはずっと俺の服の袖を掴んでいた。
「きょうすけさん、置いていかないでくださいね…」
なーんてあの心配そうな顔で言われた時は、思わずお化けから守ってやりたくなっちゃったね。
…いや、だからお前ら、変な目で見るなって言ってるだろ!これは、この感情は…えーと……と、とにかく違うんだよ!

あとはあれだな。ジェットコースターのボート版みたいなヤツ。『急流すべり』だっけ?
なぜか俺だけ尋常じゃない量の水を被ったんだが…。またブリジットにハンカチ貸してもらっちゃったよ。

ミニボールバズーカで的当てするヤツなんかは結構ハマる。ミラクルショット連発したブリジットにスコアは負けちゃったけど。



そして、コーヒーカップの予想外の高速回転に少し参っちまった俺はベンチに座って休ませてもらうことにした。
ブリジットには大変申し訳ないと思ったが、「わたしも疲れてたからちょうどよかったです!」だってさ。
…この子にはいつまでもこのままでいて欲しい。一生汚れないでいて欲しい。これが切実な俺の願いだ。

それにしても、なんか遊んでるはずなのに意外と疲れるもんだなぁ…。
俺もそろそろオッサンの仲間入りってことか?
…なーんてね。まだまだ俺はそんな弱音は吐かないぜ。
だってブリジットを見てみろよ!俺より全然はしゃいでるのに顔色一つ………ってあれ?ブリジットがいねえ!?どこ行った!?


「きょうすけさ〜ん!」
俺が辺りをきょろきょろ見渡し始めたその時、ブリジットが両手にソフトクリームを持ちながらこっちに走ってきた。

「おいおい、そんなに走って転んじまったら大変だぞ?…って、それは?」
「さっきは、きょうすけさんがオムライスをご馳走してくれたから…今度はわたしからご馳走します!」

な、な、な、なんて優しい子なんだ!
もう俺、嬉しくて泣いちゃいそうだよ。
これが桐乃だったらきっとソフトクリームもパシって俺に買わせるに違いねえ…。
ここは素直に相手の好意に甘えておこう。つーか普通に嬉しい。


「なんか気ぃ使わせちゃって悪いなぁ……でもありがとよ。じゃあ遠慮なくご馳走になるぜ。ブリジットはホントにいい子だな。」
「えへへ………。あの…きょうすけさんはどっちの味が好きですか?」
右手にバニラソフト・左手にチョコソフトを持って照れた様子のブリジットが訊いてくる。

「うーんと……じゃあ、バニラもらっていいかな?」
そう言って俺は右手からバニラソフトを受け取った。
まあ俺自身バニラ味は好きだし、女の子はチョコの方が好きなんじゃないかと思ったからだ。
それにしても、自分じゃなくてまず俺の好みを優先にしてくれるなんて、この子はどこまで出来た子なんだろう。

「…うん!甘くて美味しいな」
「はい!とっても!」



ああ、この子と一緒にいるとホントに癒されるなぁ…・。
なんかこいつと一緒にいると楽しくて落ち着くっていうか…。
ついさっきまでここに二人で来ている目的すら忘れてたよ。
まるでガキみたいに『こっから帰りたくない』とか思っちまうぜ。

――あれ?
もしかして、この気持ちは…。も、もしかして………

…っていやいや、そんなわけないだろ。
俺はロリコンじゃねーぞ?
いくらなんでも俺がブリジットに……


595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/16(水) 00:33:53.26 ID:Mq31vBKI0
「あの…きょうすけさん……。」
「!?」
完全に自分のだけの世界に入っていたところで不意に声をかけられて俺はビクッとした。
まずい。俺は多分今すげえ変な顔になってたに違いない。


「その…バニラ味………一口だけもらってもいいですか?」
「えっ?」
ブリジットは俺の食いかけのバニラソフトを指差しながら少し恥ずかしそうに言った。
もちろん俺はさっきとは違う意味でビクッとしたさ。


これってアリなのか!?大丈夫なのか!?
もしかしたらイギリスでは自然なことなのかもしれないがここは日本だぞ!?
こ、こ、これは完全に、その…か、間接キスってことになるんだよな!?
だがここで変に動揺を見せればまたブリジットに変な顔されるかもしれん…。
そうか、今の小学生はきっとそんなの気にしないんだ!そうに違いない!
それに頼んでるのは向こうだ。だからその……………いいよな?い、いいんだよな!?


「お、おう!いい…ぜ…。」
そう言って右隣に座るブリジットの方にバニラソフトを差し出す。恥ずかしくて見られないから顔は逸らしたままで。

「は、はい!じゃあ、いただきますっ……」
バニラソフトを持っている右手に少し力がかかった。
どうやら今、ブリジットがパクッといったらしい。俺はまだ恥ずかしくて隣を見れない。

「…おいしい……ありがとうございますっ………」
感想が聞こえてきてようやくブリジットの方を向くことが出来た。
自分から申し出たはずなのに、向こうも相当動揺しているようだ。
それは思わず俺のアイスをせがんでしまった恥ずかしさなのか、それとも俺とその……かっ、間接キスした恥ずかしさなのかはわからないが。



「あのぅ……」
「な、なんだ?」
「よかったら、その…わ、わたしのもっ………」
そう言ってさっきの俺と同じく、顔を赤らめて目を逸らしながらチョコソフトを差し出してくるブリジット。

「え゛!?い、いや!お、俺はいいよ!ほら、早く食べないとお前のアイス溶けかかってきちゃってるぜ!?」
そ、それはさすがに無理だろ!!!!!
溶けかかっていたのはブリジットのチョコソフトだけじゃない。
キザな言い方かもしれないが、俺の顔も恥ずかしくて溶けちゃいそうなくらい熱かった。

そう言いながら自分のバニラソフトも溶けてきていることに気がつき、
急いで、そしてかなり緊張しながらついさっきブリジットが口をつけたばかりのバニラソフトを口に運ぶ。

味は……なんとなく、さっきより甘くなったような気がする………

…って俺は何言ってんだよ!?相手は小学生だぞ!?なんつーキモいコメントしてんだ!!自重しろ、俺!!!


――でも、なんだろうな。一向に止まらないこの胸のドキドキは。


596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/16(水) 00:35:53.48 ID:Mq31vBKI0

俺たちは恥ずかしさから少し互いに気まずくなりながらも遊園地巡りを再開した。


…ブリジット、お前って意外とジェットコースター好きなんだな…。これ、さっきも乗らなかったか?

よくわからない動物の着ぐるみと一緒に写真を撮ったりもした。
これはこの遊園地オリジナルのキャラなんだろうか?どっかで見たことあるようなデザインだな…。まあ、深く詮索するのはやめておくか。




そして、二人で散々道に迷ってようやくミラーハウスから出られた頃には辺りはすっかり薄暗くなってきていた。夕日が綺麗だ。

「そろそろ帰ろうか?あんまり遅くなったらお前んちの親にも心配かけちゃうかもしれないし…」
「は、はい…。そう…ですね……。」
ブリジットはちょっぴり残念そうだが仕方ねえ。小学生の娘が遠出してなかなか帰って来なかったらきっと親御さんはたいそう不安だろう。

「じゃ、じゃあ…最後にあれに乗ってもいいですか?」
さて、本日すっかりお馴染みになった、ブリジットの指差しのラストは……?


「観覧車かぁ…。」
観覧車と言えば大定番だよなぁ。俺の中では遊園地って言われてまず思い浮かべるのがこれだ。
それにしてもこりゃ随分と大型サイズだな…。一周するまでどんくらい……………ってなんだと!?

俺を驚かせたのは『観覧車』の看板のすぐ下に、ピンクの可愛い字体で書かれた文字だ。

『カップルシート』

確かに言われてみれば、ゴンドラ一台一台やけにハートをかたどったデザインだけども。
というよりカップル専用の観覧車ってなんだよ!?
俺が慌てて隣を見ると、ブリジットも固まっていた。
どうやらあっちも気がついてなかったみたいだな…。いや、まさかこんな観覧車があるなんて普通思わないだろ。
もう本日一番恥ずかしそうにしちゃって声も出ないようだ。
つーかすごく気まずい!この空気をなんとかしなくては…。

「アハハ…まさかこんなのがあるなんてな……。お、俺も初めて見たよ!カップルシートの観覧車なんてさ!」
我ながらすごくわざとらしいテンションだ。
何で俺はこういう時うまい切り替えしが出来ないんだ!?最近は自分の中でツッコミキャラが確立してきたと思ってたのによ…。
真壁君だったらもうちょい上手いこと言えるんだろうか?
とにかくこのまま続けるしかねえか…。ブリジットはまだ固まったままだし…。

「いや〜、今の遊園地にはこ、こんなのあるんだな!?じゃあ、普通の観覧車探しに……「い、今だったら!」………へ?」

「今だったら空いてるから……。きょ、きょうすけさんは、わたしと乗るの、い、嫌ですか?」
「い、いやっ!別に嫌じゃないけど……」
「じゃ、じゃあ!………わたし、きょうすけさんと一緒にあれに乗りたいですっ!」

597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/16(水) 00:37:17.76 ID:Mq31vBKI0
こうして俺たちは今、カップルオンリーの短い行列に並んでいる。
周りの雰囲気が何だか熱気を帯びていてものすごく気恥ずかしい。

ブリジットは何でそこまでして観覧車に乗りたいんだろうか…?
も、もしかして……まだ帰りたくないから?そ、その…まだ俺と一緒にいたいから、だったりして………。
…なっ、なななななな!俺は今なんつーイタい妄想を……。相手は10歳の女の子だぞっ!?
いやっ、でもっ!さっき、「『きょうすけさんと一緒に』乗りたい」って………。
あーもう!俺はどうしちゃったんだよ!!何でブリジットのことを考えるとこんなに落ち着かないんだよ!!!

つか、そもそも俺たちが恋人って言って通用するんだろうか?
いや、確かにそんなこと言ったら今日の企画自体成立しないけどさ、係の人にもどんな顔されるか………。



そんな俺の心配をよそに俺たちの順番がきた。
俺は必死によさげな言い訳を考えていた最中だったのだが、
係員さんは笑顔で「楽しんできてください」とだけ言ってあっさり誘導してくれた。

そりゃ客の余計なことは詮索はしないだろうけど、特に変な顔はされてなかったよな…?
もしかしてその……………俺たちって意外とお似合いだったりするの…かな?
ま、まあ……そんなに…悪い気はしない…かな………。



「キ、キレイな、夕日だな…」
「は、はい…」
いざ乗ってみたはいいが、『二人っきりで観覧車』というシチュエーションで何を話せばいいか全くわからない。
反対側の席に座っているブリジットもそれは同じみたいで、この後は長い沈黙が続いた。


俺たちの乗ったゴンドラもそろそろ頂上に差し掛かろうとしていた。
それにしても随分ゆっくりだなこの観覧車は………。
そうか。きっとカップルが長くイチャつけるようにスピードもゆっくりなんだろう。なるほどねえ…。
このゴンドラが地上に着いたら偽装デートは終わり。つまり、俺とブリジットの“恋人”としての一日が終わる。
そう思うとなんかちょっと名残惜しいような気もしてくるぜ。
――もうちょっとだけ、ゴンドラのスピード遅くならねえかな?

俺がそんな事をぼんやり考えていると…

598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/16(水) 00:39:27.15 ID:Mq31vBKI0
「きょうすけさん、今日は私にお付き合いしてくださってありがとうございました。」
ブリジットが先に沈黙を破ってくれた。
ごめんな…もし俺が赤城くらい気さくだったら気まずくならずに済んだのに………。


「いやいや、こちらこそ。誘ってくれてありがとな。楽しかったぜ。」
白状するとこの時、俺は完全に今日ここに来た目的を忘れてちまってたよ。
…しょうがないだろ?そのくらい素で楽しかったんだよ。


「わたしも今日はきょうすけさんと一緒にいられて、すごくすごく楽しかったです!
だから…あのぅ……また今度、もう一回私とお付き合いしてください!」
丁寧にお辞儀してくれるブリジット。
ブリジットは小さいけど礼儀をちゃんとわきまえてるから、これはもしかしたら社交辞令かもしれない。
でも、なんかすごく嬉しい。


「ああ。俺でよかったら、何度でも付き合うよ。」
もしも、もしもだぞ!?
もしもその…今度は俺から誘ったら………この子はどんな顔をするだろうか?



「きょうすけさん、あの…ちょっと……」
不意に、ブリジットに手招きされた。目を逸らしながら何だかモジモジしている。
「ん?」
何だろう?内緒話か?
俺は言われるがままブリジットに近付き、耳を傾けた。何となく自分の鼓動が早まっているのがわかる。

「も、もうちょっと…」
「こ、こうか?」
この時点で、俺の顔の高さはほぼ完全にブリジットの顔の高さと等しくなった。


ちゅっ…。


その時、不意に俺の頬になんか柔らかいものが触れたんだ。
最初にメリーゴーランドで嗅いだ、あの甘くてほのかに刺激的な香りと一緒に――

あまりに突然で、何が起こったのか理解するのに少し時間がかかった。
「ブ、ブ、ブ、ブリジット!?」
「今日だけはその…わ、わたしたちは恋人だから………。」

俺は今まで周りの目ばっかり気にしてた。「ブリジットは小学生だから」だの「世間的にはロリコンだぞ」だの。
無意識のうちに自分の気持ちに嘘をついてたんだ。
でもその瞬間、俺は確信した。
もう否定はできねえ。
これは…。この気持ちは…。
俺はやっぱり、ブリジットに――

「ブリジット。俺は、俺は――」
「きょ、きょうすけさんっ」
まだ若干の迷いを含んだ俺の言葉は、ブリジットに簡単に遮られた。

「お願いが……ありますっ………」
ブリジットの声には小さいながらも力がこもっていて、少し緊張しているようにも見える。
その…なんというか…………………すごく可愛い。

「わたしが…」
夕日でカモフラージュされているが、その顔は夕焼けに負けないくらい真っ赤になっているのがわかる。
さらにブリジットは続けた。

「わたしが、もうちょっと大きくなったら……」
その口調と様子からは、つたないがすごく勇気を出して話しているのが伝わってきた。
そんなブリジットを見て、俺もようやく決心がついたんだ。

「わたしが、もうちょっと大人になったら………わたしと――」
「ブリジット!」

今度は、俺がブリジットの言葉を遮った。男として、その続きは女の子に言わせちゃいけない気がしたからだ。
いや、むしろ俺が自分の口から言いたかった。

ロリコン上等!笑いたきゃ笑え。
俺の心にはもう何の迷いもない。

「ブリジット。俺もお前に大事なお願いがあるんだ。俺は、お前が大人になるまでなんて待ってられねえ。今すぐに、俺と――」


(終わり)
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/16(水) 00:40:05.26 ID:Mq31vBKI0
(おまけ)

そういえばすっかり忘れてたけど、結局ストーカーの件は何だったんだ…?
もしかしてストーカー最初からなんていなかったんじゃ…。
まさかブリジットが俺とデートするために嘘を?
…ってそんなわけねーか。

俺の可愛い彼女に限ってそんなことするわけねえ。

きっとあいつの勘違いだったんだろうな。急に忙しくなった芸能活動で疲れもあったんだろう。


…だが数日後、コンビニで何気なく目にした週刊誌の表紙に俺の目は釘付けとなった。


『本誌独占スクープ!あのロリコスプレイヤー、ブリジット・エヴァンスちゃんに超年上恋人発覚!遊園地デートを激写!』


あいつの言ってた『誰かの視線を感じる』ってまさか…。


…なあ、ブリジット。
俺たちなら乗り越えられる………よな?



(続かないよ)
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/16(水) 00:41:59.37 ID:Mq31vBKI0
以上です。
ブリジット=純真幼女くらいの認識しかなかったのでキャラ崩壊してるかも…
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage saga]:2011/03/16(水) 00:42:20.26 ID:L0TxOo3xo
乙。ブリジットくぁいいいいい!にやにやしっぱなしだった

棒っぷりは欠点ではない。チャームポイントだ
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/16(水) 01:21:06.36 ID:BfMPLSTDO
道産子乙!

ブリジットかわいいよブリジット。
そして京介のDT臭がハンパないなwwww


だが……だが……、コミック一巻の麻奈実の「どうぞっ?」には勝てない!
603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/03/16(水) 01:55:26.07 ID:ANDsMwxK0
いいねェいいねェ
紳士の社交場になってきたじゃないか
604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/03/16(水) 03:13:04.58 ID:+z5rQh/+o
最近はちょっと長いのが多いな。
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/16(水) 06:10:21.53 ID:sC00xV+DO
ブリジットかわええええ!
天使だ…
しかし桐乃にバレたら折檻食らうなww
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/16(水) 08:24:15.97 ID:5DR//wAOo
素晴らしい・・・
ブリジットちゃんマジ天使
607 :セロリ [sage]:2011/03/16(水) 08:35:28.78 ID:J8iYEC0B0
幼女ルートさいっこうだねェ…。
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/16(水) 08:54:37.74 ID:CLmr6QlDO

うっかりロリコンになってしまいそうだぜぇ
609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/16(水) 13:52:17.98 ID:Mq31vBKI0
>>599にて間違い発見。
×:もしかしてストーカー最初からなんていなかったんじゃ…。
○:もしかしてストーカーなんて最初からいなかったんじゃ…。

脳内訂正お願いします…。

読んで下さった皆さん、ありがとうございました。
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/16(水) 20:10:28.85 ID:7ELZkzypo
俺妹Pのifルートでも使われたネタで一つ。
イチャイチャは無いし、出てくるのも京介と親父だけ。
イチャイチャ期待してた人はごめんね。

以下、投下。
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage saga]:2011/03/16(水) 20:11:13.69 ID:7ELZkzypo
「京介。今度の日曜日の夜は、予定を空けておきなさい」

親父が俺にそう言ったのは、俺が20歳になったその日の夜だった。

時刻は18:30を少し過ぎたところ。
俺は家から一番近い繁華街の駅前にいた。日曜ということもあり、この時間帯は帰宅のため駅を利用する人たちでこの場所は少し混雑していた。
俺のような学生や、明日は休みを取っている社会人には、その混雑は関係ないが。
親父との約束は19:00。少し早く来すぎたかと思っていると、

「京介」

独特の重厚感がある声が、俺の名を呼んだ。
声がした方に目を向けると、家の中ではあまりお目にかかれない、スーツを着た親父がこちらに向かって歩いてきているのが見えた。

「待たせたか?」
「まだ約束の時間じゃないんだから、そんなこと気にする必要は無えよ」
「それもそうだな」

19:00までにはまだ20分以上あるというのに、こういうことを気にするのは親父らしいと思えた。
親父は「付いて来い」とだけ言うと、一人でスタスタと歩き始めてしまった。俺はおとなしく、親父の後を追う。


親父の後ろに付いて10分ほど歩き、俺たちはとある一軒の店の前で歩を止めた。
店の名前や外観から察するに、個人で営業している居酒屋のようだ。俺の方を一度だけ振り返った親父は、慣れた様子でその店の暖簾をくぐった。俺もそれに続く。
店内はあまり広くなく、カウンター席とその向こうに厨房、座敷の上にテーブルがいくつかある程度のもので、暖色の光がすでに来店している数人の客の姿を照らしていた。
厨房内には、人の良さそうな笑顔を浮かべた店主と、着物を纏った妙齢の女性がいて、俺たちに向かって「いらっしゃい」と声を掛ける。

「久しぶりだね、大ちゃん」
「ご無沙汰してます、大将」

親父はこの店を何度か利用したことがあるようだ。口角を少しだけ吊り上げて、顔なじみの店主に挨拶を返した。
大将は久しぶりの再会が嬉しいようだが、着物を着た女性の方は俺のことが気になったようだった。

「大介さん、後ろの子は?」
「ウチの息子ですよ、女将。今日は成人になったコイツのお祝いをしようかと思いまして」
「はじめまして、高坂京介です」

親父による俺の紹介が終わると、俺は二人に向けて頭を下げて挨拶をした。こういった行動が自然と出来たのは、両親の教育の賜物だろう。
女将は「あらあら、ご丁寧に」と言って笑顔を浮かべている。大将は「いい子だね」と親父に感想を漏らしていた。
高坂家で子どもが他人様から褒められる場合は、往々にして桐乃のことなので、俺は内心照れくさかった。
いや、ちゃんと挨拶を返しただけで褒められるのもね、少し情けない気もしたけど……。
その後、俺たちは女将に案内され、店の奥にある座敷に通された。


席に案内され、おしぼりを受け取ると、女将は俺たちに「ご注文は?」と訊ねてきた。

「俺は日本酒を。京介、お前はどうする?」
「初めてだしな……。ビールにしとくよ」

飲み物が決まり、親父はメニューからいくつかの品物を注文した。それをメモし終えた女将は、厨房にいる大将にオーダーを伝えに行く。
俺もメニューに目を通したが、そのラインナップは居酒屋というより小料理屋のように思えた。

「今日は祝いの席だ。遠慮は要らん」
「ありがとな、親父」

俺が親父に礼を述べたあたりで、女将が飲み物とお通しを載せた盆を持ってやって来た。てきぱきと注文した品をテーブルの上に並べていく。
俺はビールの入ったジョッキを、親父は手酌で日本酒を入れたお猪口を掲げる。

「「乾杯」」

こうして、男二人の酒宴が始まった。
612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage saga]:2011/03/16(水) 20:12:20.16 ID:7ELZkzypo

ケータイの液晶を見ると、時刻は20:00をすでに過ぎていた。かれこれ、一時間以上は飲んでいることになる。
テーブルの上には、料理の入った皿と空いた皿がいくつかある。結構食べたな。
親父は毎晩の晩酌のように、手酌で日本酒を呷っていた。俺も最初の内はビールだったが、今は親父のように日本酒をちびちびと飲んでいた。
初めての飲酒だが、アルコールへの耐性は思ったより弱くは無かったようだ。
けれど、酒の作用もあって顔は熱い。きっと赤くなっているだろう。
対する親父は、俺より飲んでいるにもかかわらず顔色すら変わっていない。お袋がいつか言っていた「あの人はさっぱり酔わない」という言は、嘘ではなかった。

「京介」

俺が注文した揚げ出し豆腐を口に運んでいると、親父が声を掛けてきた。だが、いつものようにこちらに視線を向けてこない。

「お前に大事な話がある」
「なんだよ、改まって……」

俺は軽い調子で返したが、それもすぐにやめた。さっきまで視線を落としていた親父が、真剣な眼差しでこちらを見ていたからだ。
そこにただならぬものを感じた俺は、箸を置いて親父の目を見た。

「大事な話って?」
「ああ、実はな……」

親父の口から出てきた言葉は、俺の短い人生の中でも一番驚いたと言っていい内容だった。

「お前は……、俺と母さんの本当の子どもではない」




親父から聞かされた内容は、俺にとっては衝撃の事実だった。
自然と呼吸が浅くなり、自分の心臓の音がうるさいくらいに聞こえてきた。そんな中でも、親父の話している内容がきちんと理解できるのだから、人間の脳というのはなかなかにタフらしい。
俺は親父達の本当の子どもではなく、お袋の兄弟方の子どもだという。

「優しい人たちでな。俺も母さんも、随分とお世話になった」

その人たちには生後間もない息子がいた。それが俺だという。

「だが、不幸な事故が有ってな。二人とも、若くしてこの世を去ってしまった」

残された赤ん坊は、最初は施設に入れようという話になったのだが、

「当時、俺たちには子どもがいなくてな。そこで、俺たちが引き取ると申し出た」

こうして俺は、"高坂京介"として生きていくことになった。

「冗談……、ってわけじゃなさそうだな」
「当然だ。こんな話、冗談でもしていいものではない」

親父はそう言って、酒を一息に呷った。
俺は、今聞いたことを頭の中で整理するのが精一杯だった。

「驚いたか?」
「……そうだな。今まで生きてきた中で、一番驚いたよ」

俺は場の雰囲気を軽くしようと、無理矢理に笑ってみた。けれど、上手く笑えた自信は無い。
軽く思考が麻痺しながらも、俺は親父に、一つだけ気になることを訊ねた。

「なあ、親父。俺の本当の両親って……どんな人たちだった?」
「……。お前によく似て、優しい人たちだったよ」

親父はその人たちと過ごしたときのことを思い出しているのか、やわらかい笑みを浮かべてそう言った。

「お節介とも言えるな。お前が以前、桐乃のことで俺に掴みかかってきたことが有っただろう?」
「そんなことも……あったな」

親父は、桐乃の趣味のことで一悶着あった時のことを口にした。あれ以来、親父はこのことを話題にしたことは無かったのだが。
俺にとっても、あれは永遠に忘れたい黒歴史の一つである。

「あの時のお前を見て思ったよ。やっぱりお前は、あの人たちの子どもだとな」
「え?俺の本当の両親って、あんな感じなの?」
「ああ。俺や母さんが悩んでいたときも、ああやって親身になってくれた。あの時のお前は、あの人たちにそっくりだったよ」

ええ〜〜〜〜〜。俺のこの悪癖って、遺伝だったのかよ。
親父よ、なんか微笑ましいことのように語ってますがね、俺にとっては迷惑以外の何物でもないわけよ。
こいつのせいで、俺がどれだけ苦労したことか……。あぁ、今思い返しても胃が痛くなる……、はぁ。

「どうした?溜息なんぞ吐いて」
「いや、なんでもない。気にしないでくれ」

このやり取りで気が抜けたのか、さっきまで麻痺していた思考がやっと平常運転に戻ってくれた。
そのせいで、もう一つだけ気になることが思い浮かんだわけだが。
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage saga]:2011/03/16(水) 20:12:53.68 ID:7ELZkzypo
「このこと、桐乃は……」
「言ってはいないが、気付いてるかも知れんな。なにせ勘のいい子だ」

親父は口が堅い。お袋も、おしゃべりだからと言ってこんな事を簡単に口にするような人ではない……と思う。
それでも、勘のいい桐乃のことだ。普段の生活で、何かを感じ取っている可能性はあった。確信までは無いだろうがな。

「親父。この事は、俺から桐乃に説明させてくれ」
「それは構わんが……」

親父は、俺の懇願を渋った。それも当然だろう。なんたって、家族の問題だからな。親父は、家族の中に溝が出来ないか懸念しているのだろう。
俺はそんな親父の心情を理解しつつも、引き下がらなかった。

「安心してくれ。今すぐに説明する気は無い。ちゃんと時期を見計らって、大丈夫だと思ったときに説明する。だから……」
「……わかった。お前のことだからな。好きにしろ」

俺の真摯な態度が通じたのか、親父は素気無い言葉を投げるだけだった。
勘違いしないでくれよ。ウチの親父は桐乃と一緒で、ただ素直じゃないだけだ。この返事も、親父にしてみればかなり色よい返事なんだ。

「ありがとうな、親父」
「礼を言われる覚えは無い」
「いや、桐乃のことだけじゃねえよ。俺を育ててくれたこともだ」

俺の言葉を聞いて、親父は酒を飲もうとしていた手を止めてしまった。そんなことに構わず、俺は言葉を続ける。

「いくら俺が鈍くても、親父とお袋が、俺のことを実の息子のように育ててくれたのはちゃんとわかってる。だから、ありがとう」

俺は親父の目を見ながら、素直な気持ちを述べ、頭を下げた。
「高坂家の長男の扱いは悪い」と、心内ではさんざん悪態を吐いてきたが、親父たちは俺のことを大切に育ててくれた。実の息子じゃないにも関わらず、だ。
こんなこと、なかなか出来ないと思う。実の娘がいるのにな。だから、それを出来た親父たちはすごいと思う。
俺の感謝の言葉を聞いた親父は、さもつまらなさそうに溜息を吐いた。

「バカ息子が」
「ちょ!」

オイ!俺の感動的な言葉を聞いて、返す言葉が「バカ息子」とはどういうことだ!
別に優しい言葉を期待していたわけじゃないが、よりにもよって「バカ息子」は無いだろクソ親父!

「何をくだらんことを。お前は俺たちの"息子"だ。これまでも、これからもな。血の繋がりだとか、そんなつまらんことを気にするな。このバカ息子が」
「親父……」

ちくしょう……。親父のクセに、なんて事を言いやがる。おかげで、目から汗が出てきたじゃねえか。
この恨み、いずれ晴らさせてもらうからな。せいぜい長生きしろよ!



時刻はもうすぐ21:00。
俺たちはすでに店を出て、今は駅に向かって二人で歩いている。今日は俺の成人祝いということで、勘定はすべて親父が支払ってくれた。
いや、こういうことじゃなくても親父は奢ってくれそうだけどな。お堅いオッサンだし。

「親父、今日はご馳走様」
「礼など要らん。息子に支払いを任せるほど、俺も落ちぶれてはいない」

礼を言ったらこれだよ。ったく、どんだけ素直じゃねえんだって話だ。ま、このオッサンが素直になったところなんざ、気味が悪くて見てられんだろうけど。
親父の素気無い態度も気にせず、俺は話しかける。

「今度はさ、俺から誘うよ。そんときゃ、俺の奢りだ」
「要らん気を回すな。気持ち悪い」

ちょ!気持ち悪いは流石にひどくね!?桐乃の「キモ」もきついけど、はっきり「気持ち悪い」って言われるのはもっときついわ!
ったく、ツン成分多すぎだろこのオッサン……。
俺が親父の言葉に大ダメージを受けていると、親父は突然足を止め、空を見上げた。
繁華街の光害に阻まれながらも、晴れ渡った空には輝く星を見ることができた。

「へぇ。こんなトコでも、綺麗に見えるもんだな」
「そうだな」

親父は相変わらず、素っ気無い感想を口にするばかりだ。けどな、俺は見逃さなかったぜ。
親父の目の端に、うっすら涙が浮かんでたことをよ。


おわり
614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/16(水) 20:14:58.36 ID:7ELZkzypo
以上です。
散々使われていそうなネタだけど、楽しんでもらえれば幸いです。
ありがとうございました。
615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/16(水) 21:28:05.26 ID:1M7ejd6ho

こういう親子の距離感嫌いじゃないな
616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/16(水) 23:01:07.63 ID:Mq31vBKI0
乙です
こういう素直じゃない親子愛に憧れる
617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sagee]:2011/03/17(木) 09:40:28.74 ID:z67N0FC70
この話大介さんに死亡フラグがたってね?
618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 12:19:25.86 ID:vshtUmxK0

個人的には実の息子であってほしいが、こういうのもいいね
619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 12:23:15.28 ID:JYkHs3RSO

やっぱり大介さんが一番の萌えキャラだな
620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 13:20:16.19 ID:6fs6eZ980

桐乃のツン成分は父親譲りかww
621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 13:46:51.50 ID:nCMFEvxi0
>>617
そして京介を高坂家にとどめる口実として
きりりんが自分と京介の婚姻届を出すわけですねわかります
622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage saga]:2011/03/17(木) 14:02:52.61 ID:1PHjPp0ko
乙です。親父がメインヒロインになる日も遠くないな
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 14:09:01.15 ID:ve8DZWUTP
何?佳乃さんの大介攻略記とな?

若かりしころの二人の話ですか。気になるような気にならないようなww
624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 16:29:01.53 ID:JYkHs3RSO
>>621
それちょっと見てみたいけど,大介さんに死んで欲しくはないな…
625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage sage]:2011/03/17(木) 18:52:39.13 ID:nCMFEvxi0
>>624 佳乃さんも死んでしまうがこんなカンジ?

俺、高坂京介は混乱している
大学進学を決めて、ようやく大学生活に慣れたという頃に
両親が、否、今まで俺を育ててくれた夫婦が突然交通事故で亡くなった

葬儀屋、親戚、親父の同僚などに連絡をして葬儀を済ませたら
今度は悲しむ暇も無く相続だの後見人だのといった話が出て来て
さらにその中で俺が実の子じゃないという事実まで飛び出してくるんだから
頭の中はまさに混乱のキワミだ
それは16才になったばかりの妹(と思っていた)桐乃もそうだろう

「えーと、それでつまりどういうことなんでしょうか?」
役所の人や司法書士さん、遠い親戚といった人達から色々話や
これからとり得る進路などを言われてもイマイチ頭に入ってこない
「あ、あたしはそんなの絶対イヤ!!」
桐乃は何か激しく怒鳴っている
後見人とか財産管理だとか相続だとかそういうややこしい話がぽんぽん飛び出してきてんのに
お前は理解できたのか?やっぱすげぇな桐乃は・・・
「ようするに兄貴にはこの家を出て行ってもらうってことでしょ!?そんなの認められない!!」
――え?そんな話も出てたの?
親戚の人と司法書士さんが実子でないことがどうのとか相続権が云々とか言ってたが

「もういい!!それならアタシが兄貴と結婚する!!夫婦なら家族なんだから問題ないでしょ!?」
「は?」

その後もやいのやいのと話し合いが続いていたが俺の頭の中は
いや、俺たち兄妹の頭の中は両親の死で大混乱だったんだろう
うん、きっとそうだ―――

法律とか詳しくないので適当でスマン
626 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 19:04:20.88 ID:JYkHs3RSO
>>625
おお!そんな感じ!
よければ続きを
627 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 19:14:32.53 ID:Hg/eX5h7o
>>625
はよ黒猫と沙織を参加させての泥沼を
628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage saga]:2011/03/17(木) 19:16:15.17 ID:1PHjPp0ko
>>625
ブリジットを参加させての5角関係でもいいんだぜ?
629 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 19:20:36.52 ID:ve8DZWUTP
あやせ、加奈子も合わせれば七色のレインボー関係が
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage sage]:2011/03/17(木) 19:34:22.86 ID:nCMFEvxi0
お前ら焦りすぎだwwww
ちょっと調べてみた

未成年者で婚姻する場合は、父母の同意が必要である(737条本文)。
父母の一方が同意しないとき、父母の一方が知れないとき、
父母の一方が意思を表示することができないときは他の一方の同意だけで足りる(737条但書)。
ただ、民法737条については実親と養親がいる場合はどうなるのか、
離婚や親権喪失の宣告などによって父母の一方あるいは両方が
親権を喪失している場合はどうなるのかといった問題点をめぐり学説が複雑に対立しており、
父母ではなく親権者あるいは未成年の後見人の同意
または家庭裁判所の許可とすべきといった議論もなされている

また財産管理についても結婚した場合、民法上成人として扱われるから
相続や財産管理の問題も消えるね

このドサクサで適当な人を後見人にして婚姻届提出って流れなら
その後の流れが案外上手くいきそうだな、余計な登場人物を出さないで済む的な意味で

ちょっと本気で続き考えてみるがSS書いたのなんかほぼ初めてだから期待しないでおいてくれ
631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/03/17(木) 19:40:27.89 ID:A99N3J88o
>>627
沙織えもんが登場すると、あっさり解決しちゃうからなぁww

ハッ、まさか騒動の解決を餌にして脅迫を・・・・・・
632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/03/17(木) 19:48:37.61 ID:dkOeLUCio
何でもかんでも自粛ってのには反対だけど、
人が死ぬネタはやめとかない?

ちょっと変な方向に行きそうだったので念のため…
633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 19:55:23.63 ID:56qXoErIO
そんなこと言ったら、ヤンデレとか禁止になるだろ
634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/17(木) 19:57:46.63 ID:om6tnt6jo
家族愛を書いたつもりが、いつの間にか両親に変なフラグを立てていたでござるの巻
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/03/17(木) 20:02:49.56 ID:gKP1hOQAO
>>633
うむ、イミフ
636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sagee]:2011/03/17(木) 20:08:19.06 ID:z67N0FC70
世間体だの、相続だの、そんな道理京介さんなら無理で押し通してくれるさ。
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage sage]:2011/03/17(木) 20:10:39.26 ID:om6tnt6jo
つまり、高坂さんの幻想殺し無双が始まるんですね。わかります。
638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 20:12:40.75 ID:Yvch7hC/0
>>632
うん、その気持ちはよくわかるから、出来うる限り配慮して書いてみる
639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/03/17(木) 20:57:58.71 ID:YJL/u6sa0
>>632今の時事ネタを自粛するのはわかるけど
そんなこと言い始めたら何も書けなくなるよ
640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 21:11:39.43 ID:uq7DLMQSO
>>639
本気でそう思うなら書かない方がいいよ
普通それぐらいの分別はつくし、少なくともこの数日書かれたSSは問題なかったと思う
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/03/17(木) 21:18:23.14 ID:dkOeLUCio
>>639
言葉足らずでした
人が死ぬのが全部駄目ってことじゃなくて、命を軽く扱うのはなんかマズいかなって思った次第

両親死んで桐乃&京介結婚…///
なんてノリでね

まぁ、あくまで一意見なのでスルーしてください
この話題引っ張りたくないので
すいませんでした。ROMります
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 21:21:15.57 ID:SM39tlhDO
自粛厨にスレ潰されたか…
643 : ◆NAZC84MvIo [sage sage]:2011/03/17(木) 21:25:13.08 ID:Yvch7hC/0
ひとまず方向性とオチが固まるまで1レスで済むコネタを投下していきます
ちなみに設定の都合上、桐乃の誕生日は遅くとも6月くらいとさせていただきます

タイトル 「俺が妹と夫婦なわけが無い!」(仮)


「そ、それじゃあ桐乃ちゃんと夫婦になっちゃったの!?」
「ああ、もうほんと最近混乱しっぱなしだぜ・・・
 ――麻奈実は俺が養子だって知ってたのか?」
「ううん。おじいちゃんとかお母さんとかは知ってたんだとおもうけど・・・」
「ま、俺が知らなかったんだから当然だよな――」

大学の学食で幼馴染の田村麻奈実と昼食をとりながら、報告をする
普段はサークルのメンバーとかとも一緒なんだが
さすがに付き合いの浅い連中の前でこういう話をするのには抵抗がある
かといって外で二人で会うのも“恋人”に悪いからな
いくら幼馴染で友人とはいえ、女性と二人きりで食事をするなんて
恋人からしたら許せない行為だろう
もっとも、さらに許せないようなことをしてしまったわけだが・・・

「そ、それでこれからどうするの?」
「どうするもこうするも今は先のことなんて想像つかねーよ、
 まあ、今までの生活を続ける為の方法だったことには間違い無いしな。」
「そ、そうなの?」

住む場所や財産相続、管理、さらには様々な手続きに至るまで
未成年の俺たち兄妹の意思で決める為には
実状などとは無縁の書類上の資格が必要だったのだ
家族であることや、後見人を必要としない成人であること等がそれだ
実年齢が二十歳に達していなくても、結婚すれば民法上成人として扱ってもらえる

「そ、そっか、そうなんだ・・・」
「ただ、まあ俺も桐乃も大人になったらそれぞれ一人立ちしなけりゃならないから
 その時には―――離婚ってことに・・・なるかな?」

声に出して言うとそのあまりの内容に顔が引きつっていくのが自分でもわかる
まだ結婚した実感すら無いというのに(あってたまるか!)
離婚する時のことを考えねばならんとは何の冗談だ

あの事故で、今までの俺の平和な日常は壊された
どんなに嘆いてもその事実は変わらない

――だが全てを無くしたわけじゃない

心配してくれる友人や幼馴染、―――それに恋人
両親の知人に至るまで俺たちをバックアップしてくれる人達がいる
悲しみを分かち合い、共に生きていく“家族”も――

「ま、なるようにしかならんさ」
仮に実の兄妹だったとしても
アイツが成人するまでは俺が守らなきゃならなかったことに変わりはない

「今はアイツの前向きさを見習ってみるよ、
 やり方はしっちゃかめっちゃかだけどな。」

そして、俺は“妻”の待つ家へと向かうのだ――
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/03/17(木) 21:30:11.38 ID:+bknf0NVo
そもそもなんで京介が家追い出されるはめになるのか意味不明なんだが
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/03/17(木) 21:32:12.52 ID:gKP1hOQAO
強制じゃなきゃ至極もっともな意見だよ
心に留めておくってことでいんじゃない
元々俺妹SSで人死ぬ話なんかほとんどないし
>642みたいな煽りが一番下らない

てことで>>643乙です
646 : ◆NAZC84MvIo [sage]:2011/03/17(木) 21:34:44.31 ID:Yvch7hC/0
>>644
安心しろ、俺にもわからん
実子でなかった事から相続権が無かったり
既に19才という年齢から養育の必要なし、とか
財産(+α)目当ての親戚が桐乃だけの後見人になって・・・とか

気分が暗くなるような理由ならいくらでもこじつけられそうな気もするが
考えたくないし想像したくないな
647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 21:42:19.41 ID:caWdOrMZo
乙でした
ちゃんと養子縁組の手続きしてれば実子じゃなくても相続権あるみたいね
まぁ子供だと思って言いくるめようとする親戚はいてもおかしくないかも
648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/03/17(木) 21:45:23.12 ID:z51nSVDAO
乙〜

その設定だとドシリアスにしか展開できそうにないなぁ、自分なら。

仮に同設定を複数人が書いたらかなりカオスなことになりそうだぬ

結婚もいいが、エロスも書きたい。
嗚呼困った
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 21:47:27.68 ID:0VAFu8LDO
>>643
乙だぜい。

やむを得ない事情で結婚した幼馴染を温かく見守る麻奈実マジ聖母

関係ないけど、実子の京介をなんとかして桐乃と結婚させようとする両親のSS思い出した
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/03/17(木) 21:50:35.49 ID:A99N3J88o
>>649
一年後・・・
麻奈実「ねぇ京ちゃん、いつ離婚するの?」
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 21:53:21.81 ID:Hg/eX5h7o
だが待って欲しい
今は遺産相続の細かい事よりも、桐乃が結婚したことをいいことに好き放題する様を考えた方がいいのではないだろうか
それを見ている黒猫や沙織を想像するだけで股間が熱くなるのではないだろうか
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sagee]:2011/03/17(木) 22:25:11.88 ID:z67N0FC70
結婚というのは「忍」の一文字だと二時間ドラマ(崖上)の帝王がおっしゃっております。
犯人になった黒猫やあやせを崖上で説得する刑事の京介さんもありだな。
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/17(木) 22:29:48.47 ID:om6tnt6jo
>>651
あやせ無双フラグにしか見えない
654 : ◆NAZC84MvIo [sage sage]:2011/03/17(木) 22:46:00.06 ID:Yvch7hC/0
7巻の終わりまでを受けて黒猫が恋人という事で


タイトル 「俺と妹が夫婦なわけが無い!」(修正)


「――それで?話というのはなんなのかしら?」

こえぇぇええーーーー!!!!

今、俺の目の前にいるの俺の恋人、黒猫(本名、五更 瑠璃)は怒っている
口調こそ丁寧なものの、その態度から強烈な怒りのオーラを感じ取る事が出来る
いまコイツが
「私は夜魔の女王(クイーン・オブ・ナイトメア)・・・」
とか言い出したら信じてしまいそうだ
だが、この様子からすると

「ひょっとして・・・もう知ってるのか?」
「・・・ええ。あなたの“奥さん”から聞いたわ」

地の底から響くような声で、しかもはっきりと“奥さん”・・・だと・・・?
「す、すまん!!お前が怒る気持ちもよくわかるがこれには深い訳が・・・」
「言ってごらんなさい。理由次第では許してあげなくも無いわ」

それから俺は必死で言い訳をした
あの混乱の中で出来うる限り、家を、「家族」を守る為にしたことであり
瑠璃への愛情が無くなったりしたわけでもない
さらに情けない言い訳をするなら
もっと良い方法があったかもしれないが、あの時の俺は頭が正常に働いてなかった、と
出来うる限り黒猫の怒りを静めようとあれやこれやと説明した


「―――で?」
はいダメでした。
何でだ?俺このまま振られちゃうの?グスン

「あなたは私がなぜ怒っているかという事すら理解していないようね」
「・・・何の、ことでしょう・・・?」
「事情はもう一人の当事者から既に聞いて知っているわ。
 あなたが今述べたような理由も聞いている。」
「じゃ、じゃあなんで・・・」
「何故?何故ですって!?それはこっちのセリフよ!!」

何でだ?なぜ黒猫はこんなに怒ってるんだ?
 、、、、、、、、、、、、、、
「私はあなたの恋人でしょう!?
 それなのに何故私は今更になってそんな話をあなたから聞かされてるの!?」
「――あっ・・・!」

バカだ俺は
そうだよ事故の話はとっくにコイツにも伝わってるし、両親のことも知っている
俺と同じくらい――いや、ヘタすると俺以上に悲しんで
俺たちのことを心配してくれていたに違いない。―――なのに

「すまん・・・」
「謝らないで、これは私の我侭よ。
 あなたに何かあった時、私をもっと頼って欲しい。ただ、それだけなの。」

俺はコイツに余計な心配をかけたくなかったから
弱音や愚痴を吐くことを避けるため
落ち着くまではと思い連絡をほとんどしてなかった
それが余計コイツを悲しませることになるなんて
一年近くも付き合っておきながらなにやってんだ俺はよ!

「お願い、辛いなら辛いと言って。悲しいなら悲しいと言って。
 こんな時に助けを求める事は、悪い事ではないはずよ」
「そうだな・・・ありがとう」

そっと抱き寄せて感謝の言葉を述べる
でもやっぱ泣き顔なんて見せたくねーよ

「あなたも・・・あなたの妹も強がり過ぎよ」
「うん」
「恋人と親友が両親を亡くしたって言うのに、心配しないはずが無いでしょう?」
「そうだな」
「力になりたい、そう思っているのよ、私も沙織も・・・」
「うん」
「きっとあなたやあなたの妹の友人だって・・・」
「うん」

恋人の優しい言葉を聴きながら俺はあの日以来初めての涙を流し続けた・・・
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/03/17(木) 22:54:38.25 ID:bxmJ83BIo
なにか非常事態が起きた時だけ自粛しようってのがおかしい。
いつだってチープな問題ではないだろ。

とスレも読まず言ってみるてst
656 : ◆NAZC84MvIo [sage]:2011/03/17(木) 22:56:43.92 ID:Yvch7hC/0
ふう、早く状況を落ち着かせて明るいLove米にしたいが
ここまで書いて桐乃×京介ルートだと修羅場展開以外ありえないんじゃなかろうか・・・
3つめでさっそく自分の首絞めてどうするんだ俺!

ちなみに>>625本人なんですがトリップつける前とID変わっちゃってますね
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 23:20:34.99 ID:Hg/eX5h7o
>>656
ふふふ、いつだって修羅場は歓迎なんだぜ・・・
悶え苦しみながら続きをかんがえるのだー

あ、黒猫の思いやりペロペロ
次も期待しています^p^
658 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sagee]:2011/03/18(金) 04:43:24.10 ID:RD8GbtC10
あ、ありのままに起こったことを話すぜ。昨日三マルクで一人でランチバイキングを食べていたんだ。そしたら横にゴスロリ衣装を着た2人組の腐女子が延々と攻め受け談義を繰り広げてやがった。
な、何を言ってるかわからねえかもしれねえが、つ、つまりは瀬菜の腐った妄想に対する京介さんの気持ちがわかったってことだ。
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 09:07:18.97 ID:WxQGckZzo
ランチバイキングが通常運行できるほど大阪は潤ってるのか
東北では被災者が食い物なくて悲痛の声あげてるってのに
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage saga]:2011/03/18(金) 09:10:35.98 ID:SuOMxSvNo
乙です

>>658
サンマルクと言うことはヨドバシか
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 09:42:18.63 ID:uGTFf8KDO
>>659
その考えが買い占めに繋がってるんだぞ
政府も言ってるが、食料自体は日本全体では十分な量が確保されてる
今被災地に必要なのはそれを運ぶ手段
むしろ無事な地域はしっかり消費して経済回してあげた方がよっぽど日本の為になる
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 09:50:18.03 ID:0oKmfFsDO
自粛厨と不謹慎厨大暴れだな…
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/03/18(金) 11:53:38.38 ID:OpBpQ7+J0
なんでも厨つける語彙貧しい奴を厨厨と呼ぶらしい
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 12:28:23.85 ID:N4GTjTtDO
京介が二つに折ったチューチューアイスを巡る攻防……。
いや、なんでもない。
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 12:47:06.77 ID:uGTFf8KDO
>>664
怒鳴り、時には暴力に訴え、とんでも理論で片割れを強奪した桐乃
半分こが出来て大変ご満悦な妹様だった
一方、黒猫は無言で京介の食いかけを強奪した
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage saga]:2011/03/18(金) 12:48:37.94 ID:SuOMxSvNo
>>665
そして、沙織はポッキーを買った
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 13:00:54.72 ID:N4GTjTtDO
>>666
一方、麻奈実はきょうちゃんに振る舞うための新作お菓子を練習していた
668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/03/18(金) 13:01:37.28 ID:+PrZIthzo
余った加奈子は京介の棒アイスに噛み付いた
669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 13:05:41.24 ID:Y1wtuzFio
お前らはいつも頭が暖かいんだな
670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 13:27:08.71 ID:1BY1ECHDO
手持ちぶさたになったあやせは二つの肉まんを京介に食べさせた
671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 13:31:17.69 ID:shk3ewigo
>>665
怒鳴る、暴力に訴える、これただのキチガイ野郎だな
桐乃さすがの屑っぷり
672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/03/18(金) 16:22:47.07 ID:GBnLrnAwo
>>668
噛むのはシャレにならんぞ
673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/03/18(金) 16:37:41.51 ID:eXz4cqZS0
せめて咥えるにしてくれww
674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 18:52:36.32 ID:aKQ4xRaL0
お前らのやり取りをみてこんなSSが…、駄文失礼<(_ _)>
多少ネタが入ってるが気にしないでくれ…。


「ただいま〜。」

我が家の傲岸不遜な妹様は、扇風機を独占しソファの上で寝転がっていた。

「おい、桐乃!おまえこんなんでうっかり寝たら風邪ひくぞ!」

「うっさい!冷房は苦手だから扇風機つけてるんだから!そんなに妹の体調が気になるってホントシスコンだわ!」

とまあ通常通り、まあ慣れたもんだけどね…。

そういや昨日買っておいたチューペットアイスがあったな…。なんて思い出しながら冷凍庫を漁ってると見つけ出すと…。

「私にも半分ちょうだい。」
「おまえには自分から動くという発想は無いのか!?」
「いいじゃない!シスコンなんだから!」
「はぁ…。」

と短くため息をつく俺。

「兄貴ィ、アイス食べたい。あ〜〜い〜〜す〜〜〜。」
「お前はどこぞのアニメのバンドのヴォーカルか?わぁったよ、ホラ!」

と言ってチューペットのくびれに狙いをつけ思い切りひざ蹴りをかまし、パキッと小気味いい音を立てて2つに割れたチューペットの片方を渡してやった。

「「はぁ〜、やっぱ夏の暑い日にはこれだな〜。」」
「ってなんでハモるわけ?シスコン!ド変態!」
「知るか!大体ド変態は関係ねえだろ!」

といつも通りのやり取りが始まったと同時にインターホンが鳴った。

「しょうがねえ、行ってくるから俺の分持ってろ。」
「ハイハイ…。(ニヒヒ…、これで兄貴の食い掛けゲット〜!)」



「どちらさまで〜?」
「佐川急便です…。」
「品物と送り主は…?」
「パソコン部品です、送り主は「妹モノのエロゲーならお任せ堂・秋葉原支店です…。」

あれ?なんか送り主の名前だけ隠してない展開ってどこかのアニメで…、まあいいや…。

「すみませ〜ん、ハンコを取って来るんで…。」
ドタドタ…
「じゃあここにハンコを…。」
「はい」
「じゃこれがお品物ですので…。」


その後妹様がなぜか中身が無くなったチューペットを必死に吸っていた光景を見て

「捨てようか?」

と声を掛けたら

「そんなに妹の食べかけのチューペットが欲しいとかどんだけ?ハイこれがあんたの…。」

と顔を真っ赤にして言い返してきたのはまた別のお話…。
そしてその晩に桐乃が兄貴の食い掛けチューペットをしゃぶりながらオカズにしたのもまた別の話
675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 19:43:33.64 ID:N4GTjTtDO
>>674
乙。

一番のド変態は桐乃ということですね。わかります。
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/18(金) 21:05:31.39 ID:xuZYlQ+H0
乙です
桐乃は変態でもいいと思う
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/03/18(金) 21:36:10.07 ID:dk6+QVlAO
乙です
チューペットっていうのかあれ…初めて知った


別件ですが、いま書いてるのがエロ話なんですが、エロパロでやるべき?
エロ描写入りだと警告必要なのは知ってるのだけど、最初から最後までエロネタだと板違いですかね?
678 : ◆NAZC84MvIo [sage sage]:2011/03/18(金) 21:49:19.08 ID:8HZySKni0
>>674
きりりんカワユス

>>677
俺は両方見てるのでどっちだろうと見逃さないぜ

>>654のこの行修正お願いします
今、俺の目の前にいるの俺の恋人、黒猫(本名、五更 瑠璃)は怒っている
               ↓
今、俺の目の前にいる俺の恋人、黒猫(本名、五更 瑠璃)は怒っている

タイトルは「俺と妹が夫婦なわけがない!」で決定
原作タイトルと音の響きを似せる為「と」と「が」の位置を入れ替えて「無い」は平仮名に

沙織との会話編投下します
これの次は桐乃とのイチャコラ予定
679 : ◆NAZC84MvIo [sage sage]:2011/03/18(金) 21:55:52.77 ID:8HZySKni0
「―――――そうか、ありがとう」
『なんの!拙者と京介氏の仲ではござりませぬか。
 礼には及ばぬというものです』

今、俺が電話で話している相手は沙織・バジーナと名乗る妹の友人だ
本名は槇島沙織といって、かなりいいとこのお嬢様でもある
妹がオタクの友達が欲しいと思い立って参加したコミュニティ
「おたくっ娘あつまれー」の管理人であり
今では俺の大事な友人の一人だ
妹のオタク友達としてずっと付き合って来たので
沙織の素顔を見たときには皆仰天したもんだが
今は沙織のその素顔の部分に救われているところが多々ある

「いや、本当に助かるよ。
 相談できる専門家がいるってだけで相当心強い」
そうなのだ
今、俺たち兄妹は普通だったら経験しないような事もやらねばならない状況にある
保険の契約などを筆頭に、諸々の財産管理などは、はっきり言って荷が重い
そもそも困った時誰に相談すればいいのかもわからない状態だった

『ええ、彼は場数を踏んでいますから頼りになりますぞ』
「ははは、それもそうだけど、信頼できるっていうのが何より有難い」
沙織は俺たちを大切に思ってくれている
これは自惚れじゃ無く事実だと胸を張って言える
そしてその沙織が信頼できる人物、特にそういう事に詳しい人物を
そのお嬢様としての人間関係の中から紹介してもらったのだ

「ま、出来るだけ自力で頑張ってみるけどな」
『無理や過信は禁物ですぞ』
「わかってるよ」
『そうでござるか?』
「?――何の話だよ?」
『一人で全部背負い込もうとするのは、京介氏の美点でもありますが
 恋人にすら何も話さずにいるというのは――』
「まてまてまて!!」
こいつ一体どこまで知ってるんだ?
まさか黒猫に泣きついた話まで知ってるんじゃないだろうな?

『黒猫氏が言っておられましたよ?
 彼からではなく、彼の“奥様”から事情を聞かされた、と』

ああ、そういうことね
桐乃は俺より先にこんな事になってしまった経緯を黒猫に説明したんだ
ま、あの二人は親友同士だからそんなことをしても不思議じゃない
問題は、俺が黒猫に報告するのが遅かったことだ
よくよく考えれば沙織よりも遅かったんだから愚痴る気持ちも湧くだろうな

「その件は非常に反省してるから“奥様”だなんてからかうなよ・・・」
『事実ではありませぬか』
「違わねーケド違えーよ!!」

わけわからんと思うだろ?俺だってわかんねーもん
ま、さっくり説明すると俺はつい最近妹と結婚したんだよ
余計わかんなくなりそうな説明だが気にするな!

『言わんとすることは伝わりますが
 出来ればもう少し真剣に考えていただきとうござりまする
 ―――おそらくきりりん氏の心中は京介氏の比ではないほどに
 混乱されていると思われますし・・』
「・・・」
『京介氏はこういう時自分の事は後回しにしてでも
 周りの人のことを気にかけるお方ですので
 逆にあまり心配はしておりませぬ。
 それよりも黒猫氏ときりりん氏のお気持ちを想像すると
 居ても立ってもおられないのですよ』
「―――――そうだな」
『ざっくりいうと京介氏は今、不倫をしているわけですし』
「おい!!」
『黒猫氏にさせているとも言えます』
「―――!!」
『・・・・・拙者の頼みはひとつだけでござりまする』
「なんだよ」
『拙者の大事な友人たちを悲しませたりしたら承知しませぬよ?』
「わかってるよ、俺だってサークルクラッシャーなんて呼ばれたくないしな」
『それを聞けて安心しました、では!』

電話を切ったあと俺は宙を見つめながら
今、自分の置かれてる現状のややこしさにあらためて困惑していた

「人生相談・・・俺は誰にすりゃいいんだ?」
680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 22:19:38.93 ID:dQy78AlDO

このまま続けるつもりなら書き溜めて投下した方がいいんでないの?
681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/03/18(金) 22:24:42.84 ID:aNrzPTbUo
乙です
続くのかと思ったけど1レスで終わりかな?

>>680
同意。もしくは別スレ立て。
以前それでこのスレが大荒れになったの思い出した…

>・完結させてからの投下が望ましいです。3回以上中断する場合は別スレを検討しましょう

これですな
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/18(金) 22:26:51.29 ID:xuZYlQ+H0
>>679
乙です
沙織はホントにいい子ですな
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/03/18(金) 22:29:09.45 ID:aNrzPTbUo
>>677
別にどっちでもいいんじゃないかな
684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/18(金) 22:37:23.08 ID:xuZYlQ+H0
>>677
現状見てると別にエロの有無で投下作品が厳密に分けられてるわけじゃないし、
結局は書き手さん自身の判断かと……
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/18(金) 22:37:31.20 ID:iKtAo+Xjo
>>677
どうしてもココに投下したいってんなら止めんが、直接的な性行為描写があるんなら向こうの方が良いと思う。
わざわざ別れてるんだし。

>>679
乙。
バジーナさんの優しさは五臓六腑に染み渡るでぇ。
長くなるんなら別スレ立てた方がいいと、俺も思う。
十数レスで終わるなら、完結してから投下が好ましいね。
686 : ◆NAZC84MvIo [sage]:2011/03/18(金) 22:38:34.94 ID:8HZySKni0
>>680-681
了解です

>続くのかと思ったけど1レスで終わりかな?
そうです、一場面一場面で80行の縛りがあったほうが俺には書きやすいみたい
687 : ◆kuVWl/Rxus [sage]:2011/03/18(金) 22:47:52.51 ID:dk6+QVlAO
>>685
了解!
停電のせいか急に家のパソコン起動しなくなって、携帯でしか書けなくなったんで、
のんびり投下できるVIPで久々にやってくるお
688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 23:09:59.81 ID:Khp2nQzSO
>>679
乙です

最近は長編も短編もまんべんなく投下されてて嬉しいな
689 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/03/18(金) 23:43:30.43 ID:SCyPLYVg0
>>687全裸でvipに張り付いてるから早くな
690 :687 [sage]:2011/03/19(土) 00:23:06.12 ID:TSNwUG/AO
>>689
レベル不足とやらでスレ立てできなかったorz
仕組みが変わったらしい
連休中にエロパロに投下しとくんで良かったら読んでください
あっちでもトリつけとく
691 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/03/19(土) 00:30:10.17 ID:+NYOCAXYo
>>690
忍法だかなんだか言うのが導入されたんだよな
荒らし対策らしい。ドンマイ
692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/19(土) 01:34:30.89 ID:NDaR5a8Do
読点の代わりに改行して、なおかつ句点が無いとすごく読みにくいな
693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/03/19(土) 03:26:06.75 ID:ec+fs/qSo
句読点の代わりに改行する意味がわからんでござる。
694 : ◆NAZC84MvIo [sage]:2011/03/19(土) 12:47:19.69 ID:XSVkjuST0
>>692-693
今後の参考にしたいので添削してくれると嬉しい
695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/19(土) 13:14:25.01 ID:HQ3JWHI/o
>>694
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1442192.txt.html

簡単に句読点追加してみたよ。改行タイミングはあくまで俺流だから、読みやすくなってるかはわからんが。
あと、添削云々はさすがにスレ違いだから、今後はこういう書き込みは控えた方がいいと思う。
696 : ◆NAZC84MvIo [sage]:2011/03/19(土) 17:11:49.57 ID:xepOolpW0
>>695
d
697 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/03/19(土) 18:31:57.30 ID:eVsnN9vP0
京介「あやせ、結婚しよう」 あやせ「ほ、本当ですかお兄さん!?」の人の作品また読みたいなぁ。
698 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/19(土) 19:11:13.72 ID:JETsHuzSO
そろそろなんか投下されそうな気がする
699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/19(土) 21:27:48.95 ID:ZjUq8tJx0
スレチだが桐乃スレで「京介は将来警官になってそうだな。」と言う奴が居てこんなSSの骨格が思い浮かんだんだが…。

京介が公務員試験合格後親父のコネで千葉県警に就職→当然ブラコンの桐乃も兄貴を追いかけ、公務員試験合格後親父のコネで(ry
→丁度その頃ニュータウン開発計画で駐在所が新駅の前に建設決定。交番での人員不足解消のために父が復職→桐乃の就職1年後に辞令が出て3人とも同じ駐在所になる、一家で引っ越すことに。

で3人の勤務状態はこんな感じじゃ…。

大 「京介・桐乃悪いが警羅に行ってくるぞ…、しっかりとやれ!」
京桐「「は〜い」」
桐 「じゃ早速エロゲでもしようかしら?」
京 「おい、お前先月も同じような件で叱られなかったか?」
桐 「いいの、いいの!見つからなきゃいいんだし…。でハイこれ。」
京 「は?」
桐 「新作のエロゲよ!あんたもやるに決まってんでしょ!」

大 「ほう、勤務中にエロゲーか…。」

京桐「「ビクッ!!」」
京 「げ、親父…!」
桐 「お父さん…?いや、あの〜これは……」
大 「バッカモ―ン!!忘れ物をして取りに戻ったらこれか…。警察官が勤務中にR18のエロゲをするんじゃない!大体京介、お前も妹の管理責任があるからな!2人とも始末書は明後日までに書け!」
京 「別にいいだろ。どうせ開発も進んで無い上にド田舎だし…。」
桐 「兄貴の言う通りだよ!上下線とも電車は40分おきにしか来ないし…。」
大 「ギロッ…(親父の圧力)」
京桐「「すみませんでした…orz」」
大 「じゃあさっさと始末書書けよ!とりあえず忘れ物は持ったからまた行ってくる。」」
京桐「「はい…。」」
京 「ふ…、不幸だぁぁぁぁぁ!!」


だめだな…、どうしてもコミカルな方に転がってしまうorz
これじゃ葛飾区の名物警官と変わんねえな…、首吊ってくる…。
700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/03/19(土) 23:13:03.53 ID:Dut7RYUm0
京介が警官になってそうなのはなんとなく共感できる
701 : ◆5yGS6snSLSFg [sage saga]:2011/03/19(土) 23:54:49.93 ID:BTEDHaXWo
ちょいと投下させてもらいますね
702 : ◆5yGS6snSLSFg [sage saga]:2011/03/19(土) 23:55:28.45 ID:BTEDHaXWo
「……すまん、よく聞き取れなかった。もう一度言ってくれ」
「ちゃんと聞いてて下さい! もう。……だから、私と一緒に死んでほしいんです」

軽く今の状況を説明しておくと、俺はいつものようにあやせにメールで「人生相談がある」と呼び出され、いつもの公園でいつものように人生相談を受けている最中だ。
だったのだが、それがどうしていきなり俺の命を差し出さねばならない状況になっているのか。
しかもあやせの言い草はまるで心中してくださいと言わんばかりだ。

「落ち着け、あやせ。俺はまだ死にたくない。いくらあやせの頼みでも心中は無理だ」

右手の手の平をあやせに向け、はっきりとNOの意思を伝える。心中ダメ、ゼッタイ。

「だっ、誰がお兄さんと心中すると言ったんですか!? けがらわしい!」
「他ならぬおまえだよ! 今さっき、私と一緒に死んでくれって言ったところじゃねえか!」
「ち、違います! 話を最後まで聞いて下さい!」
「だったら変なところで話を区切るんじゃない!」



それから、あやせの話をじっくり聞いてようやく話の全貌が理解できた。

「要は、俺にコスプレ大会に参加しろと?」

それも、おまえと一緒に。

「はい。その通りです」
「そりゃ、一体なんの冗談だ」
「冗談ではありません。私は本気です、お兄さん」

あやせが言うには、近々カップル限定のコスプレ大会があって事務所の方針でそれに参加しなければならなくなったらしい。
いったいどんな方針だ――とも思ったが、加奈子やブリジットを雇ったりしている辺り、あやせの事務所は本気でアニメ関連業界に進出しようとしているのかもしんねえな。
そして、冒頭の一緒に死んでくれとは、一緒に“社会的に”死んでくれという意味だそうだ。
あやせにとって、コスプレ大会への参加はそれほどの覚悟を必要とするようだった。
それもそのはずで今回の大会の様子を、あやせが普段モデルを務めるファッション誌が取り上げることになっているらしい。今、オタク系男子が熱い! という意味不明の煽り文付きで。

「っていうか、なんで俺なんだ。あやせの事務所にだって男のモデルはいるだろ」

自分で言うのも悲しいが、俺は地味面でスタイルだって普通だし、モデルとは縁遠い人種だぞ?

「じ、実はみんなコスプレに抵抗があるみたいで。そこで私が参加してくれそうな人に心当たりがあると……つい」

なんてこった。俺は「つい」で参加させられそうになっているのか。
まあ、自分のコスプレした格好がいつも自分が載っている雑誌に乗ったりするわけだからあやせや他のモデルさん的にはシャレにならんよな。
その恰好を大勢の人間、下手したら友人たちにも見られちゃうわけだろ? 
社会的に、というか、まず恥ずかしさで死ねる。その点に関しては俺も同意するよ。

ふむ、どうやらあやせの言うことに嘘はないようだ。でも、だからといって即座に「はい、参加します」とはいかない。

「その相談を受けることによる俺のメリットは?」

雑誌に載せられ、社会的に心中させられてしまうわけだから流石に今回ばかりはタダ働きは遠慮したい。
よほどのことがない限り俺は参加せんぞ。

「参加者はみんな、彼女をお姫様抱っこして登場する予定になっています」
「乗った!」
「この変態!」

俺の返事も早いが、その即答を受けての手刀はさらに早かった。首筋にきれいな一撃を頂きそのまま悶絶する。
なんせ、俺が「の」を喋った瞬間には腕が動き始めていたもの。もし「ノー」だったらどうしてくれるんだ? いや、実際はそうじゃなかったわけだけども。

「で、衣装のことなんですけど」
「ああ、そういえば俺は何を着ればいいんだ?」

とんでもない衣装はごめんだぞ。
703 : ◆5yGS6snSLSFg [sage saga]:2011/03/19(土) 23:56:01.13 ID:BTEDHaXWo
「はい! それなんですけど、今回はこれで行こうと思うんです!」
「うお」

あやせが急に大きな声を出すもんだから、ついついびびる俺。
瞳を爛々と輝かせたあやせが俺に見せつけてきたのは、どこかで見たDVDのパッケージだった。

「マスケラじゃねえか」
「あれ? 知ってるんですか?」
「ああ。俺の知り合いにマスケラが大好きな奴がいてな」
「じゃあ、話は早いですね。お兄さんには、この主人公のコスプレをしてもらいます」

DVDのパッケージの裏に描かれている変身後の主人公をあやせは指さした。
関係ないけどこのDVD一体誰のなんだろ。まさかあやせの――じゃないよね?

「あいよ。俺はそれでいいけど、あやせはどうするんだ?」
「わ、私は夜魔の女王にしようかな……なんて」

そう言ってあやせは、自分の指同士をつんつんさせながら恥ずかしそうに顔を背けている。
よほど今回のコスプレが恥ずかしいらしい。俺に対してこんな無防備な姿を見せちまうくらいだからな。
それにしても、ゴスロリあやせか。今から超楽しみだぜ。ふひひ。

「ところで、衣装はどうするんだ? 事務所が用意してくれるの?」

もしあれなら、俺の知り合いにちょうどこの衣装持ってるやつがいるから頼んでみてもいいけど。

「それには及びません。衣装に関しては、あとは最後の仕上げだけですから心配しないでください」
「仕上げ? まさか手作りなの?」
「あっ。も、もちろん事務所のスタッフさんの――ですよ!?」
「いや、それはわかってるけど。……どうした? 顔が赤いぞ?」

そんなに焦ってどうしたんだろ。何かまずいこと聞いちゃったのかな?

「な、なんでもありません!」
「い、痛い! いきなり怒り出すんじゃない! 落ち着けって!」
「もう! お兄さんは大人しく私をお姫様抱っこしてくれればいいんですっ!」



おわり
704 : ◆5yGS6snSLSFg [sage saga]:2011/03/19(土) 23:56:32.07 ID:BTEDHaXWo
こんだけ
オチというか締めがよええ。反省しないといかんね
705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/20(日) 00:08:24.69 ID:y8AOiMWIO
よくやった乙
706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/20(日) 00:15:27.90 ID:DjLlo9nDO
乙だぜい。
これ、続くようにしか見えんのは俺だけかね?
707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/20(日) 00:16:33.47 ID:7JOEUes1o
いや素晴らしいよ
あやせのデレがなんだか素晴らしいよ
708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/20(日) 00:20:40.06 ID:NYZZvwqDO

この後黒猫と鉢合わせになるんですねわかります
709 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/20(日) 00:25:33.73 ID:av/39+cSO
乙です
やっぱりあやせ可愛いわ
710 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/03/20(日) 00:35:45.65 ID:c6bHIhJwo
これそのまま180のあやせ√にしようぜ!
711 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/03/20(日) 01:02:21.33 ID:EaXTXpaa0
あれ・・・つづけてもいいんだぞ
712 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/20(日) 01:07:51.70 ID:8bCRtWFDO
これは黒猫にも相手役として参加を頼まれる様子がありありと
713 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/20(日) 01:09:39.94 ID:PiQ3TwrA0
乙 これ続くんだよね?
714 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/20(日) 01:34:14.49 ID:QKv/3/CD0
これがただしいSSだなww
さっき自分が投下したSSによる空気のまずさが浄化されてよかったww
715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/03/20(日) 02:24:34.73 ID:JfInl/Kv0
アニメではかなり薄められているが、原作とドラマCDでは京介は
あやせに対してはかなりの変態さんなんだよな。
716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/20(日) 02:57:31.73 ID:arVwP8ADO

717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/20(日) 03:28:43.16 ID:y8AOiMWIO
↑どうしたwww
718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/20(日) 04:30:09.60 ID:4RuQDSUDO
あやせマスケラにハマってんのか
しかしあやせとコスプレしてイベント出てるの桐乃に知れたら…
719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sagee]:2011/03/20(日) 04:57:03.62 ID:G856Rp0d0
京介さんのコスプレ好きはMr.武士道を意識してのものなのか?原作でも沙織に渡したプラモもあれだしな。
720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/20(日) 07:41:09.11 ID:7Ik+G17h0
>>704
乙です
続きを期待しても…いいですか?

黒猫が「ニコニコにウマウマUPしようして練習してたら妹に見られた」って言ってたの思い出して、
ちょっとしたネタが思いついたんで自分も投下させていただきます
721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/20(日) 07:43:24.84 ID:7Ik+G17h0

『仁義なきウマウマ』



「――それで?ど、どうだったかしら?」

私は今、自宅に遊びに来ている先輩の前でウッーウッーウマウマを踊り終わったばかり。

かねてから持っていた『ニコニコにウッーウッーウマウマをUPしたい』という野望を叶えるため、私は人知れず練習を重ねてきた。
そして今日はいよいよそれを他人にお披露目することにしたのだ。

まあ…その……他人と言っても、か、彼氏なのだけれど………。
前哨戦とはいえ、彼氏の前で猫耳+シッポ+メイド服で踊るのはなかなか気恥ずかしいものね…。

しかし私の心配を他所に、彼の下した評価は最高級のものだった。

「…振り付けとリズムはバッチリだし、腰のキレも申し分ない。はっきり言って完璧だ。今すぐ撮影して投稿しても問題はないだろう」

「そ、そう。それは何よりだわ。」

よかった…。
妹たちに見られて気まずくなったこともあったけれど、苦労して練習した甲斐があったというものね。
これでとりあえずは及第点…。

「――だが、俺は動画のUPには反対だ。一つだけ重大な問題があるからな。」

な、なんですって!?私のウマウマのどこが気に入らないと言うの!?
こんな恥ずかしい格好までして踊っているというのに!


「どうしてよ!?だってあなたは今、私の踊りは完璧だって……。」
「だからそれが問題なんだよ!」
「…えっ?」

先輩は何が言いたいのかしら?完璧だと言っておきながらUPに反対するなんて、全然意味がわからないわ。


そして少し間を置いてから、彼はその理由を赤面しながら叫んだ。

「俺が心配してる問題ってのは、お前が可愛いすぎるってことだっ!
猫耳メイド姿の瑠璃なんて……こんなのUPしたら絶対に再生数がうなぎ上りになるに決まってるだろ!」

「なっ………」

この人はいきなり大声で何を言い出すのかしら!?
もうっ。そ、そんなこと言われたら…は、恥ずかしいじゃないの……。

「そ、それの何が問題だというのよ!?」

「だってもしも有名になったら…。
お前がその……変なヤツに変な目で見られたりとか………さ、最悪の場合オカズにされたりするかもしれないだろ!?
俺はお前の彼氏としてそんなの絶対に嫌なんだよ!」

「先輩……」

要するに彼はヤキモチを焼いているのね?まったく、そんなことで嫉妬するなんてくだらないんだから…。
でも……そ、そのくらい、私を思ってくれているということ…なのよね?

きっと先輩は、私をとても大切にしてくれているんだわ。

そう思うと頬が緩んでいくのを止められない。
せっかく練習したのに…と思う気持ちもあるけれど、彼がそう言うなら………

「し、仕方がないわね。あなたがそんなに言うなら考えてあげなくも………」


私がそう言いかけた時、突然部屋の襖がガラッと開いた。


「「ちょっと待ったぁー!」」

そして、それと同時に聞こえてきた、この無駄に威勢のいい声の主は………


722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/20(日) 07:44:25.44 ID:7Ik+G17h0

「ねえさまのおどり、とってもおじょうずでした!」
「でも…ルリ姉が辞退するって言うなら、あたしにも考えがあるんだよね」

「なっ!?何でお前らがここに!?」


それは、他ならぬ私の妹たちだった。
そういえば存在をすっかり忘れていたわ……なんたる不覚ッ………


「ちょっと!いつから見ていたのよ!?」
「いつからって…最初から。ルリ姉が高坂くんに『あなたに見てもらいたいものがあるのよ…』って言ってるとこからずっとだけど?」
「そ、そんなに前から見ていたのね………」

まったく…自分の部屋だというのに、油断も隙もあったものではないわ。
…あら?もしかして、ということは――


「…あっ、もちろん二人がラブラブしてるとこも見てたよ〜。ふふふ…高坂くんって、すっごいヤキモチ焼きなんだね?」

私たち二人の顔はみるみるうちに真っ赤に染まった。

やはりそこも見られていたのね………。こ、この子はいつも一言多いのよっ。
普段ならすぐに制裁を加えるところだけれど、今は先輩もいるし…。
しかし、ここでうろたえてはいけないわ。姉としての威厳を保つためにもね。


「そ、それで?何か用事でもあるのかしら?私たちは今忙しいのよ。用がないんだったらさっさと…」
「そのことなんだけどさぁ。ルリ姉がやめるんだったら、あたしが代わりにウマウマ踊ってニコニコにUPする。別にいいでしょ?」

「「んなっ!?」」

私としたことが、驚いて先輩の声と極限までシンクロしてしまったじゃないの。
この子が私の代わりにウマウマを踊ってニコニコにUPする?一体どうやったらそんな展開になるのかしら?

「お、おい、お前何言ってんだよ!?」
「まったくだわ。いきなり出てきて意味のわからないことを言うのはやめて頂戴。そもそも代わりに踊るって言っても……」

「出来るよ?あたし、ルリ姉の踊り見てたら覚えちゃったしぃ〜。嘘だと思うんだったら見せてあげよっか?」
「おねえちゃんのおどりも、すっごくおじょうずですよ!」

下の妹まで…。
しかも、私の練習風景は妹たちにずっと見られていたというの?この子たちが寝静まったであろう時間を選んでいたつもりだったのに!
アレを身内に見られていたなんてすごく恥ずかしい………。

でも、この子が踊るウマウマも少し見てみたい気もするわね………

「い、いいわ…。そこまで言うならやってみなさい……」
「OK。決まりだね。それじゃあ高坂君、BGMよろしくぅ〜」
「お、おう!」

妹の合図で、さっきまで私が踊っていたウッーウッーウマウマのBGMが再び流れ出した。


Vi undrar är ni redo att vara med…♪

ふん。あれは単純なように見えて極めようとすると意外に難しいのよ。
こんな素人じゃ……………あら?振り付けとリズムはバッチリだし、腰の動きにキレもある………。


…Nu är vi här med Caramelldansen!

しかも、最後のオリジナルのキメポーズもなかなか可愛いわね。

け、結構やるじゃないの……………


723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/20(日) 07:45:37.85 ID:7Ik+G17h0

「ま、まあまあね…。」
「へえ〜。上手いもんだな。」
「やっぱりおねえちゃんもおじょうずです!」

踊り終わった妹は私たちからの賛辞の声にたいそう満足したらしく、自信たっぷりに先輩に尋ねた。

「どうだった?あたしのウマウマ、ルリ姉のより可愛いでしょ?」
「ちょっと!先輩に何を訊いているのよ!?」

この子は何を考えているのかしら?まさか私と張り合うつもり?

「えっ!?いや、まあ…確かに上手だったぜ………」

先輩、あなたもあなたよ?
その…否定してくれたっていいじゃない!私の方が可愛かったって言ってくれてもいいじゃないの!

「えへへ〜。高坂くんに褒められちゃった。それじゃ、あたしがルリ姉の代わりに踊っても問題ないよね?」

妹はわざと私の方を見ながら得意げな顔をしている。
その時、私は確信した。
この子は絶対に場をかき乱すためだけにこんなことを言い出したに違いないわ…!


「だいたいにして、何故あなたが私の代わりに踊る必要があるの?全然意味がわからないわよ?」
「別に深い意味なんてないよ?ただの思いつきだからさ〜。いいじゃん。だってルリ姉はもうUPしないんでしょ?」
「…ふん。好きにしたらいいわ。勝手にニコニコでもどこでも――」

「いや…ダメだ!!!」


私が言い終わらないうちに、突然先輩が私たちの会話に大声で割り込んできた。
ちょっと先輩、私の時にはそんなに早く即答してくれなかったじゃない!?


「えっ?どうして?どうしてなの高坂くん!?」

…どう見ても口元が笑っているわよ……。まったく、なんてわざとらしい聞き方なのかしら。


「そんなの決まってるだろ!お前の踊りを全国のロリコン軍団の目に晒すわけには…」
「ええ〜……でも私、ルリ姉が辞退するんだったら五更家の代表としてどうしてもやりたいんだよねぇ〜」
「どんなこだわりだ!つか代表ってなんだよ!?…だが、そういうことなら………。」

まったくだわ。何が五更家の代表よ?また訳のわからないことを…。
でも、先輩が何やら考え込んでいるような…?
なんだか……厭な予感がするわね……………

そして、私の悪い予感は案の定的中してしまった。

「な、なあ瑠璃……。やっぱりさ、最初の予定通り、お前が踊ってUPしたらどうだ?」
「な、なんですって!?」

ちょっと待って頂戴。さっきと言ってることが違うじゃないの。
私を全国の変態から守りたいんじゃなかったの!?

「だってよ…それならお前の妹がUPしなくても済むんだろ?まあマスケラの仮面でも被ってやれば問題なさそうだし…」
「そんな今更……」

なんなのよ、先輩のこのテキトーな返事は!?さっきまでの熱意はどこへ行ってしまったのよ!?
そしてなんなのよ、妹のあの勝ち誇ったようなニヤケ顔は!?

「だって、最初に『ニコニコにウッーウッーウマウマをUPしたい』って言ったのお前だろ?よく考えたら無理矢理止めるのも悪い気がするしな」
「そうだよ〜。高坂くんもいいって言ってくれたんだし。よかったじゃん、ル・リ・ね・え?」
「ぐっ……」

そうよ。確かに最初に『ニコニコにウッーウッーウマウマをUPしたい』と言い出したのは私よ。
でも………でも、なんかこれじゃあ私よりも妹の方が彼に大切にされてるみたいじゃない!

724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/20(日) 07:49:32.67 ID:7Ik+G17h0

そしてここで、私はある事実に気付いた。

…ハッ!私と付き合っている以上、私の妹=彼の義妹になるんだわ!
だから彼の持っている強烈なシスコンスキルが発動されて、義妹を必死でロリコンユーザーから守ろうとしているのね!?
これは裏を返せば、あの子を義妹と意識するくらい私と真剣に交際してくれている、という証でもあるのだけれど、なんか複雑な気分ね…。
というより、釈然としないわ…。

しかもあの様子から見て、間違いなくあの子は姉である私に喧嘩を売っているじゃないの!
こうなったら…あの子に、“妹”の立場というものををわからせる必要があるわね………

一人、胸の内でこんな風に強く決意すると、私は妹を勢いよく指差して言い放った。


「こうなったら…勝負よ!もう一度二人で踊って、『どっちが踊りをUPするべきではないか』を決めるのよ!」

ええ。自分でも相当変な提案をしたのはわかっているつもりよ。それに、結局何を決めるのかがイマイチわかりにくいということも…。
でも………これはもはや女の意地よ!いくら相手が妹とはいえ先輩の好みに関して負けたことは我慢出来ないわ!


「お前まで何で変なこと言ってんだよ!?」
「ル、ルリ姉、いきなりどうしたの!?」

「あら?自信がないならいいのよ?所詮あなたは私の妹…。
妹という人種は、姉には絶対に勝てないように作られているものだし、怖気付くのは当然よね?」
「ムカッ……」

私の用意した大きな釣針に、我が妹はまんまと食いついた。

「わ、私は別にいいよ?ルリ姉がそこまで言うなら…う、受けて立ってあげる!それでいいよね?高坂くん?」

ふふふ。上手くこっちの挑発に乗ってきたわね。

「これで決まりね…。勝敗決定は先輩に委ねることにしましょう。いいわね、先輩?」
「ええっ!?俺が審査すんの!?またおかしなことになってきたなぁ………」


今日こそは覚悟なさい、我が妹よ。
屈辱的な敗北によって、最近生意気になってきたその態度を徹底的に改めさせてあげるわ!


…とは言ったものの………。
悔しいけれど、相手に妹属性がある限りこちらの状況不利は覆らない。こうなったら……奥の手を使わせてもらうわよ。

私はメイド服のポケットから秘密兵器――“赤縁眼鏡”を取り出して装備した。

「どう?先輩。似合うかしら?」
「うん…。その…すげえ似合ってるよ…………」

見なさい、先輩のあの締まりのない顔を。
(少し残念だけれど)先輩が眼鏡属性に弱いことはわかっているわ。
こんなところでコレを使うことになるなんて不本意だけど、完全勝利をおさめるためには仕方がないわね。

先輩の惚気た様子に気がついたのか、妹も必死に反撃してくる。

「こ、高坂くんっ!あたし、高坂くんのために一生懸命頑張っちゃうから応援してね?」

ふふふ。無駄よ。そんな風にキラッ☆とした感じで応援してねアピールをしたところで………


「お、おう!頑張れよ!」

えっ!?先輩がなぜか顔を赤らめているわ!?彼にはロリコン趣味はないはずなのにどうして?
…そうか。
この感じ、どこかで見たことがあると思ったら…キラッ☆はあのスイーツ女の雰囲気そのものじゃないの!
おそらく偶然だとは思うけど、これ以上ここで彼に実妹の影を感じさせてはマズイわね。一気に形勢が不利になってしまう。
早急に手を打たなくては…。

これ以上の妹属性強化を危惧した私は更に動いた。


「ねえ、“兄さん”」
「な、なんだよ?それにお前、その呼び方…」
「余所見をしないで、ちゃんと私の方を見ていてね?“兄さん”。」
「ああ…。」

さり気なく呼び方を『兄さん』に変える。これで、私にも擬似妹属性が付加されたわ。
そして口調も自分の中では精一杯の色気を出してみた…つもり。これでスイーツ女のような雰囲気も多少は押し流せたはずよ。

――ふっ。ここまでするなんて、妹相手にしては少し大人気なかったかしら?
725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/20(日) 07:50:31.91 ID:7Ik+G17h0

「ちょっ!?ルリ姉、なんかズルくない!?」
「あら、何のことかしら?それよりそろそろ始めるわよ。先輩、BGMの用意を」
「…ん?あ、ああ。じゃあ…流すぞ!」


Vi undrar är ni redo att vara med…♪

こうして、私たち姉妹は激しく火花を散らした。
一見すると二人で延々と同じ動きをしているだけに見えるかもしれないけれど、これは久しぶりの私と妹との真剣勝負。
この勝負だけには絶対に負けられない。この子の姉という立場としても、先輩の恋人という立場としてもね。


ウッーウッーウマウマ(゚∀゚) ウッーウッーウマウマ(゚∀゚)……………♪

何故だろう。身体がとても軽い。
まるで私の体内にある闇の波動が全て解放されていくようなこの感じ…。
今の私なら、長年夢見ていたあの漆黒の闇の中へと飛んで行けそうな気さえするわ…。


…Nu är vi här med Caramelldansen!

そして曲が終わってフィニッシュを決めた後、私は確かな手応えを感じずにはいられなかった。


――勝った。
ダンス自体は我ながら今までで最高の出来。これなら本当にニコニコにUPしてもまったく恥ずかしくない。
事前のアピール合戦も明らかに私が優勢だったし、これで負けても悔いは……いいえ、これで負けるわけがないわ。


隣を見ると、妹も何だかやり切った表情をしている。
この子のこんな表情を見るのも何だか久しぶりだわ。

「…準備はいいかしら?」
「あ、あたしはいつでもいいよ?」

お互いの意思を確認し、私たちは同時に叫んだ。

「「先輩(高坂くん)!どっちのウマウマが好き?」」


シ〜ン。


…………………………あら?返事がないのだけれど…

726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/20(日) 07:51:49.40 ID:7Ik+G17h0

「ちょっと!高坂くん、話聞いてる?」
「まさか、この後に及んで『決められない』と言うわけではないでしょうね?」
「えっ!?あっ!いやっ!えーと、そのっ」

彼は私たちに詰め寄られてかなり焦っている。明らかによく見ていなかった様子だ。
この人は嘘が苦手だからすぐわかるわ。
わざわざ『余所見をしないで見ていてね』って言ったのに…。

「い、いやぁ〜……ふ、二人ともすごいよかったよ!うん!か、可愛かった!」

何なの?この投げやりなコメントは?こんなにわかりやすい棒読みは久しぶりに聞いたわよ。

「…それで?早く私たちの質問に答えて頂戴。『どっちが踊りをUPするべきではないか』今すぐに決めなさい」
「そうだよ!当然あたしだよねっ?」
「い、いや、それは、その、あの、えーと…」

もう!こんな時くらいはっきりして欲しいものだわ。
いくら先輩が恋人だからって私にも限界というものが………それにしても、彼はやけに落ち着かないわね。
それに、よく見ると彼の目が別の方向をチラチラ見ているような…。

そう思って先輩の目線を辿っていくと…………………………


なんとその先には、私たちの踊りを頑張ってマネしている下の妹の姿があった。

「にいさま…わたしのおどりもおじょうずでしたか?」
「ああ!とっても可愛いぞ!まあ……強いて言うならもうちょっと腰の動きを………」

そして私たちを無視して妹の問いかけには即答する先輩。
こ、この男ッ……………

「先輩………?」
「高坂くん………?」

私たちの鋭い視線に気がついた先輩は慌ててフォローに走った。

「い、いや!もちろんお前らも可愛かったぞ!うん、惚れ惚れした!…それでさ、も、もしよかったらなんだけど………」

またテキトーな返事を……って、今度は何かしら?
なんだか……また厭な予感がするわね……………


そして、私の悪い予感は再び的中してしまった。



「もしよかったら………今度はこの子も入れて3人d「「この…ロリコンッ!!!!!」」


(終わり)
727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/20(日) 07:54:29.21 ID:7Ik+G17h0
以上です。
実はこれ書くと決めるまでウマウマ見たことなくて昨日初めて確認したんですが…
なんとなく雰囲気がわかっていただけたら嬉しいです。
お目汚し失礼しました。
728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/03/20(日) 08:32:54.91 ID:vf5Z2CiJo
かわいすぎるぜ
729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2011/03/20(日) 08:50:52.09 ID:2kNHaPP/o
朝っぱらから良いものをみた
乙!
730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/20(日) 09:41:35.88 ID:4RuQDSUDO
三姉妹丼とか胸熱
731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/20(日) 10:34:44.83 ID:av/39+cSO

普通に動画で見てみたい
732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/03/20(日) 11:38:17.12 ID:hmEP/mE80
最近の京介の紳士っぷりは目に余るものがあるな

ここらでフェイトさんなんていいんじゃないか?
733 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/20(日) 12:58:50.83 ID:7JOEUes1o
かなかなちゃんss来い
734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/20(日) 13:04:36.54 ID:lTlalG+w0
乙。流石シスコンだなww
735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/03/20(日) 14:19:06.33 ID:Kg5sdauVo
フェイトさんにたらしこまれて金を貢ぐ京介ってのが来る予感
736 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/03/20(日) 14:35:36.45 ID:c6bHIhJwo
そしてその金の出所は京介に貢いでるきりりんですね
737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/20(日) 14:57:50.18 ID:av/39+cSO
大介さんと不倫するフェイトさんの話を
738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2011/03/20(日) 15:07:51.66 ID:2kNHaPP/o
佳乃さんを悲しませる気か
739 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/20(日) 15:09:15.91 ID:DjLlo9nDO
ライトノベルの二次創作なのに、お前等が出してくるネタがことごとく重いな
740 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/03/20(日) 15:11:48.45 ID:c6bHIhJwo
綺麗なフェイトが想像できないんだ・・・
741 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/03/20(日) 15:14:59.25 ID:vf5Z2CiJo
どんな世界のフェイトでも世界線の収束で落ちぶれるから無理だろ
742 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/20(日) 15:17:18.47 ID:DjLlo9nDO
つまり、「綺麗なフェイトさん」を見たければ、1%向こうのβ世界線に行かなくちゃならないわけか
743 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/20(日) 15:17:55.33 ID:YvXyKbmfo
遅ればせながら“ホワイトデー”ネタを書いてみた。
一体何を書きたかったんだか、今となっては良く分からんが……

題名『一日遅れのWhite Day』

午後3時30分から 投下します(15レス)
744 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/20(日) 15:30:05.86 ID:YvXyKbmfo

春まだ浅い三月のとある日曜日――
俺はリビングのソファに寝そべりながら、外の気配に全神経を集中していた。
日曜日にもかかわらず、今朝も親父は当然のように仕事へ出掛けて行き、
お袋も隣りの奥さんと買物に行くと言って先ほど家を出て行った。
そんな中、何で俺一人が家で留守番なんかしているのかと言えば、
先日通販で買った品物が、宅配便で今日届く予定になっているからだ。

ソファに置いてあった女性週刊誌を暇つぶしに読みながら待っていると、
ようやく家の前でトラックの止まる音が聞こえた。
俺はテーブルの上に予め用意していたハンコを持って、そそくさと玄関へ向かった。
宅配便のお兄ちゃんから品物を受け取り、伝票にハンコを押す。
生まれて初めて通販ってのを利用してみたけど、悪くねえな。
店で買うのが恥ずかしいような物でも、通販なら何の問題もねえしな。

「さてと、これで一応の準備は出来たってことだ。
 残る問題は、これをどうやってあいつに渡すかだなぁ……」

俺が通販で買った品物は、何を隠そうホワイトデーに渡すための贈り物だ。
幼馴染の麻奈実は、毎年バレンタインデーには必ず俺にチョコをくれる。
毎年もらうけど、俺から麻奈実にホワイトデーにお返しをしたことはない。
当然今回のホワイトデーだって、俺が麻奈実にお返しをすることはない。
なら、何でわざわざ通販でお取り寄せまでしたかっつーと、これにはわけがある。

「あやせも、これなら喜んで受け取ってくれっかもな。
 ……待ってろよラブリーマイエンジェルあやせたん!」

あとはホワイトデーにこれを渡しながら、俺があやせに愛を告白するだけじゃねえか。
しかし、直接電話するのは怖いんで、待ち合わせの場所と日時はメールを送って置いた。
ここまでくれば、幾らあやせだって俺の愛を受け容れるしかあんめえ?

「もしかして、俺って完璧じゃね?」

俺があやせに渡す生チョコの詰め合わせを持って階段を上る時、
思わず足がもつれてすっころんだのも愛嬌ってモンさ。
745 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/20(日) 15:30:43.11 ID:YvXyKbmfo

春休みを目前に控えた教室には、何となくのんびりとした空気が漂っている。
放課後になったらいつもの公園に来てくれと、あやせには既にメールしてある。
あいつからは、今日になっても一切返信はなかったけどな。
でも、そんなことを気にしてたら、あやせに惚れる資格はねえよ。
放課後までもう少しの辛抱だ。
俺は頬杖を突きながら、何の気なしに教室の窓から校庭を見渡していた。

「……なんも落ちてねえよなぁ」

チャイムの鳴る音で我に返ると、速攻で教科書やらノートを鞄に詰め込んだ。
俺が先に公園へ行って、あやせを待ってるくらいじゃないと、今回の作戦は成功しねえ。

「じゃあなっ、赤城。また明日なっ」
「高坂、そんな急いで何か用でもあんのかよ。もしかして、田村さんと――」
「麻奈実はなんも関係ねーよ。大体あいつ、今日は委員会があるって言ってたしな」

赤城のくだらない詮索を振り切り、教室を足早に出ようとすると背後から声がした。
聞き馴染みのあるその声に、俺は顔を引きつらせながらもゆっくりと振り返った。

「きょうちゃん、一緒に帰ろ〜」
「……麻奈実? 今日は委員会があるからって、言ってなかったか?」
「あ〜も〜きょうちゃんたら。忘れちゃったのかな〜?
 委員会は延期になりましたって、お昼休みに言ったでしょ〜」
「いや、忘れたんじゃなくて、たぶん俺が聞いてなかっただけだ」

放課後に予定しているあやせイベントのことで頭がいっぱいなもんだから、
昼休みに麻奈実が俺に話し掛けて来たことすら記憶になかった。
赤城はこの際いいとしても、この情況で麻奈実まで振り切って帰るわけにもいかねえ。
俺は仕方なく、麻奈実と揃って教室を出ることになった。
746 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/20(日) 15:31:11.29 ID:YvXyKbmfo

学校からの帰り道、麻奈実が思わせ振りなことを俺に言い始めた。
今朝一緒に登校する時も、教室で声を掛けて来た時も何か様子が変だったから、
俺も何となく気にはなっていたことは確かだ。

「ねぇ、きょうちゃん、今日は何の日だったかなぁ〜」
「麻奈実の誕生日だったか?」
「もう〜そんなわけないでしょ〜。
 きょうちゃんたら、知っててそんなこと言うんだから〜。ぷんぷん」

いつもながら麻奈実の会話には擬態語が混じっちゃいるが、そんなことに構っている暇はない。
一刻も早く麻奈実を振り切って、あやせとの約束の場所へ行かなくちゃなんねえ。
それに、いきなり何の日かって聞かれても、あやせイベントの日ってことしか思い浮かばねえよ。
今日はバレンタインにチョコをもらった男共が、くれた相手にお返しを――って、まさかなっ!
まさか麻奈実のヤツ、俺からのお返しを期待してるってか?

「きょうちゃん、今日は三月十四日だよね〜。……何の日だったかな〜」

麻奈実からは毎年もらうばっかりで、俺も悪いとは思ってたんだが、
なにも今年に限って催促するようなことを言わなくてもいいじゃねえか。
俺は麻奈実がホワイトデーを知ってたってのも驚きだったが、
自分から催促をするような台詞を吐いたことには更に驚かされた。

「……きょっ、きょうちゃん……ほわ、ほわ、ほわ」

何をほわほわ言ってるんだか。
ホワイトデーと言いたいんだろうが、このあたりが麻奈実の限界だろう。
元来地味で控えめなヤツだし、俺にバレンタインデーのチョコを渡す時だって、
毎年のことなのに思いっきり恥ずかしがってたもんな。

「麻奈実、それを言うならホワイトデーだろ」
「もう〜きょうちゃんたら、知ってるくせに……ほんとに意地悪なんだから〜」
「で、今日がホワイトデーだからって何かあんのか?」
「えっ………………」

麻奈実は口をぽかんと開けたまま固まった。
747 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/20(日) 15:31:45.77 ID:YvXyKbmfo

俺はちょっとからかうつもりで、麻奈実の後頭部に軽くチョップを入れてやった。
すると麻奈実の掛けている眼鏡が、思い切りずり落ちた。

「だから今日がホワイトデーだからって、何かあんのかって」

慌てて眼鏡を掛け直しながら、麻奈実は不思議そうな顔をして俺に聞いた。

「……きょうちゃんこの前、ホワイトデーにはどんな物を贈るんだって、
 わたしに聞いたよね。……あれって?」
「………………」

忘れてた。俺はすっかり忘れてたよ。
俺はあやせからチョコをもらったことですっかり有頂天になっちまって、
すぐにあやせへのお返しが頭に浮かんじまった。
だけど、実際にお返しなんてしたことないから、思わず麻奈実に聞いちまったんだ。
当然あやせからもらったってことは伏せたけどな。
それにしても、まずいことになった。
いま俺の学生鞄の中には、あやせに渡す予定の生チョコの詰め合わせが入っている。
わざわざ通販でお取り寄せまでしたのに、これを麻奈実にやるわけにもいかねえしな。

その時、俺の頭に閃くものがあった。

「ほらっ麻奈実、これやるよ」

俺は鞄を開けると、ある物を麻奈実に手渡した。

「えっ、えっ、きょうちゃん、ありがと――って、これ……何?」
「何って、見りゃ分かるだろ。クッキー……の、ような物だ」

麻奈実は俺が渡した物をまじまじと見てから、ぼそっと呟いた。

「わたし、これ見たことある。……かろりーめいとって言うんだよね。
 弟のいわおがこの前食べてたもん」
「麻奈実、これだってクッキー……の、ような物に違いはねえだろ?」
「……そうだよね、きょうちゃん。……これもくっきーだよね。……ありが……うっ」

麻奈実の眼鏡がたちまち曇ってくるのが分かった。まずいっ! やり過ぎちまった。
748 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/20(日) 15:32:14.69 ID:YvXyKbmfo

麻奈実は気落ちした様子で俯くと、カロリーメイトを持った手に徐々に力を込めていった。
無駄な抵抗をすることもなく、少しずつ変形してゆくカロリーメイトの外箱。
俺は麻奈実とはガキの頃からの付き合いだが、
麻奈実がこれほど怒りを露わにしたことなんて、今だかつてなかった。

「まっ、麻奈実さん? ……もしかして怒った、のか?」
「………………」

俺の問い掛けにも、麻奈実は無言でカロリーメイトの箱を握り潰してゆく。
この事態を乗り切る方法はひとつしかねえ。
俺は泣く泣く学生鞄からあやせ用に買った生チョコの詰め合わせを取り出すと、
麻奈実の目の前にそっと差し出し、彼女に詫びた。

「麻奈実、すまねえ。……ちょっとからかうつもりだったんだけど、
 まさかおまえが泣いちまうなんて、俺……」
「……きょうちゃん、それ……わたしに?」
「当たり前じゃねーか。麻奈実以外の誰に、俺がこんなもん買うと思ってんだよ」

麻奈実は眼鏡の隙間に人差し指を突っ込み、涙を拭いながら笑った。

「でも、本当はそれ……わたしのために買ったんじゃなくて、
 あやせちゃんとかにあげるために買ったんじゃないの?」
「それは麻奈実の思い過ごしだっつーの。
 あやせがバレンタインに、俺にチョコなんてくれるわけがねえだろ。
 俺、あやせからめちゃくちゃ嫌われてるじゃねえか」
「そんなことないよぉ〜。
 あやせちゃんはきょうちゃんのこと、きっと気になってると思うよ〜。
 もし、本当にきょうちゃんがそう思っているのなら、
 それはきょうちゃんが気付いてないだけだと思うな〜」

あやせが俺のことをどう思っているかは知らんが、
この生チョコの詰め合わせは、あやせに渡すために買ったってのは間違いねえ。
俺は女の感ってヤツがこれほど鋭いものだと、改めて思い知らされた。
749 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/20(日) 15:32:48.68 ID:YvXyKbmfo

しかし、今ここで女の感を云々している猶予は一刻もねえ。
俺は麻奈実の両肩をいきなり掴むと、前後に激しく揺さぶりながら一気に捲くし立てた。

「麻奈実は俺の幼馴染を何年やってるんだ? なっ、そうだろ?
 あやせは桐乃の親友であって、俺とは単なる顔馴染みってだけじゃねえか。
 万が一あやせが俺の嫁になるようなことがあったとしても、
 麻奈実の幼馴染としての実績が今更揺らぐもんじゃねえだろ?
 それに、あやせがどんなに麻奈実の幼馴染席を欲しがったところで、
 俺の嫁であるあやせには決してその席は手に入るもんじゃねえ。
 言うなればおまえは、野球に例えりゃ不動の四番打者みたいなもんなんだよっ」

麻奈実は頭を前後にぐわんぐわん揺すられながらも、
顔から半分ずれた眼鏡の奥にある瞳は、何か喜びに溢れているようだった。

「そっ、そっ、そうだよね〜。
 きょっ、きょうちゃん、わたしにもあやせちゃんに負けないものがあったんだね。
 幼馴染って野球に例えると四番打者なんだねっ」
「麻奈実もようやく、俺の言いたいことが分かってくれたかぁ? 
 そうさ、俺がひとつ年を取ると、麻奈実もひとつ年を取る。
 麻奈実が将来おばあちゃんになれば、俺も一緒におじいちゃんになるんだ。
 そうして俺と麻奈実との幼馴染の関係は、永遠(とわ)に続くんだ」
「きょうちゃ〜ん。何だか永遠って言葉……良く分からないけど素敵だよね。
 わたし、きょうちゃんと幼馴染で本当によかったと思うよ〜」
「俺だって麻奈実と同じ気持ちさ。
 おまえとこれからも幼馴染でいられるかと思うと、何だか照れちまうけど……
 これからもよろしくなっ、麻奈実」

俺の迷台詞を真に受けて、麻奈実は鼻をふんふん鳴らしながら喜んで家に帰って行った。
それにしても、何とかこの場は麻奈実を誤魔化せたのはいいんだが、
あやせにやろうと思って通販で買った生チョコは、もう俺の手にはない。
今からコンビニまで走って、新しく買って来るほどの時間はねえし……。
750 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/20(日) 15:33:19.52 ID:YvXyKbmfo

いや待てよ、あやせならこんなモンでも喜んでくれっかもしれねえよな。
あやせって根はいいヤツだし、友達に対する思い遣りも人一倍あるだろ。
例えばこの箱の潰れたカロリーメイトを、俺が申し訳なさそうな顔して渡すとだなぁ……

『わぁ〜、お兄さん、カロリーメイトじゃないですか。
 これって、いま女の子に大人気の超有名なバランス栄養食なんですよ。
 それに、これ(ポテト味)が手に入るなんて、超ラッキーだと思います。
 前からこのポテト味、一度は食べてみたいと思っていたんです。
 ……それが、お兄さんからもらえるなんて思ってもみませんでした』

なーんてことは、間違ってもあのあやせが言うわけねえよな。

俺があれこれと言い訳を考えながら、重い足取りで公園に到着すると、
あやせは既に来ていてベンチに腰を下ろしていた。
俺は取りあえず木の陰に隠れて、あやせの様子を窺うことにした。
このままじゃ俺の方から呼び出したくせに、あやせに会わせる顔がねえだろ。
仕方ねえから今日のところは適当に誤魔化して、後日改めて渡そうかとも思ったんだ。

それにしてもあやせのヤツ、眉間にしわを寄せてさっきから一体何やってんだ?

あやせは憮然とした表情で両腕を組んでいたかと思うと、
いきなりニッコリ笑って両手を前に差し出した。
かと思いきや右手の拳で自分の頭をポンと軽く叩き、最後に肩をすくめ、ペロッと舌を出した。
その動作を二度三度と繰り返した後、学生鞄から文庫本を取り出しページを開いた。

俺は背中に冷たいものが流れるのを、はっきりと感じたよ。
あやせのヤツ、何で俺が公園へ呼び出したのか感付いてやがる。
そりゃそうだよな。
バレンタインにチョコを渡した相手から今日呼び出されたとなりゃ、誰だって気付くよな。
俺がどうしたもんかと逡巡していると、あやせは腕時計をチラリと見てから文庫本を脇へ置き、
再び先ほどの動作を繰り返した。
751 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/20(日) 15:33:58.77 ID:YvXyKbmfo

これじゃあ俺が出て行くタイミングが掴めねえじゃねえかっ。
俺は足元にあった小石を拾い上げると、あやせの後ろにある木の植え込みに向かって投げた。
しかし、小石が小さ過ぎたのか、あやせは一向に気付いた様子を見せない。
俺は再び小石を拾い上げ、植え込みに向かって投げる。
手を出したり引っ込めたりしながら自分の頭を叩き、舌を出す超絶美少女中学生と、
そんな女子中学生に向かって小石を投げ付ける地味顔の男子高校生。
こんな所を知らないヤツに見られたら、即通報もんだね。

そうこうするうち、あやせもようやく物音に気付いた様子で、
驚いてベンチから立ち上がると、辺りをキョロキョロと見回した。
俺がこのタイミングを逃すわけにはいかねえ。
あやせに気付かれない様に、俺は公園のフェンスを一気に飛び越え一旦外へ出ると、
猛然とダッシュして公園の入り口へ向かって駆け出した。
再び公園の入り口に立つと、何食わぬ顔で平静を装いあやせに声を掛ける。

「すまねえ、あやせ。遅くなっちまったかな?」
「あっ、お兄さん、そ、そんなことないです。……わたしもさっき来たばかりですから」
「そっか、ならいいんだけど。いや、帰り際に赤城に捉まっちまってよ……
 赤城ってのは同じクラスのヤツなんだけど……ま、どうでもいいよなこんな話……」
「そうですね。……ところでお兄さん、わたしに何か用でもあるんですか?
 わたし、こう見えてもけっこう忙しいんですけど」

つんと澄ました顔で言う割には、あやせさん? 何だか顔が赤いんじゃないんですか?
あやせがベンチで何やってたんだか、俺は全部言ってもいいんだけどね。
言ったら恥を掻くのはおまえの方じゃないんですかっての。
俺が何も知らないと思ってか、あやせは口調を強めて俺を責めた。

「それに、自分からわたしを呼び出しておいて、呼び出したお兄さんの方が遅いと言うのは
 一体どういうわけですか? 申し開きがあるのならお聞きしますけど」

どういうわけですかって聞かれてもなぁ、あやせがあんな妙な動きをしてるから、
俺が出て行くタイミングを失っちまったんじゃねえかっ!
それに、俺は約束の時間よりも前に公園に着いたってのに、おまえはいつからいたんだよ。
752 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/20(日) 15:34:31.20 ID:YvXyKbmfo

「だっ、だからさ、遅くなっちまったのはさっきも言ったように赤城のヤツが……
 いやぁ、これじゃ只の言い訳だよな……あやせ、本当に申し訳ないっ」
「……まあ、今日のところはその赤城さんという方に免じて許してあげますけど。
 それではさっそく頂く物を――じゃなくて……何の用でしたっけ!?」

最近俺は、あやせについて気付いたというか感じたことがあるんだ。
俺があやせに惚れているのを好いことに、あやせって段々と厚かましくなって来てねえか?
それにしても美人で可愛いヤツってのは、ホント得だよな。
性格が多少アレでも、言われたこっちが悪いみたいで何となく許しちまうもんな。

「あっ、ああ、そうだった。
 今日来てもらったのは……俺、あやせからバレンタインにチョコもらったじゃないか。
 ……そのお返しというか何というか」
「えっ……そんなお返しなんて……あまり気を使わないでください。
 わたし、お兄さんのその優しい気持ちだけで十分ですよ」
「いや、あやせからもらっといて、何もしないなんて出来ねえだろ?」
「そ、そうですか? まあ、お兄さんがそこまで言うのなら……」

そう言いながら、あやせはニッコリと笑って両手を前に差し出した。
俺がさっき見た光景そのまんまじゃねえか。
このあと本来なら、俺があやせに生チョコの詰め合わせを渡すはずだったんだよな。
そうすっと、あやせは右手の拳で自分の頭をポンと軽く叩いて、
可愛い顔して肩をすくめてから、ペロッと舌を出すはずだったんだろ?
とてもじゃねえが、手ぶらで来ましたなんて言えねえ……よな?

「あっ、あやせ、すまねえ。俺、今日は見ての通り何も持って来てねえんだ。
 ……でっ、でも、ちゃんとバレンタインのお返しはすっから、なっ」

あやせの顔からすっと表情が消え、肩をすくめるどころか、両肩がガックリと落ちた。

「……お兄さん? まさか、手ぶらで来たわけじゃありませんよね?」

俺、あやせに殴られるのか? バレンタインのお返し持って来なかったから、俺、殴られんの?
でも、あやせ言ったよなっ、さっきたしかに言ったよな!

「いや、たしかにあやせの言う通りだけど、さっきあやせも気持ちだけで十分だって……」
753 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/20(日) 15:34:59.50 ID:YvXyKbmfo

冷め切った無表情の顔を俺に向けたまま、あやせは一歩、また一歩と俺に詰め寄って来た。
俺の脳みそ程度じゃ、この場を切り抜けるための最善策が思い浮かばねえ。
あやせを呼び出したのは俺の方だし、この際殴られても仕方ねえよな。
俺は目を瞑り歯を食い縛ると、両手の拳を握り締め、あやせからの衝撃に備えた。

「おっ、お兄さん、何もそこまでしなくても……
 わたしがあまりにも酷い女みたいじゃないですか。
 わたし、いつもいつもお兄さんのこと殴ってるわけじゃないですよ」
「す、すまねえ、あやせ。つい習慣と言うか、俺の習性と言うか……」

あやせは何が可笑しいのか、ニコニコと笑いながら俺の顔を見ていた。

「お兄さんが今日手ぶらで来たのには、何かわけがあるんじゃないですか?
 どんなわけがあったのか、わたしは聞きませんから安心してください。
 お兄さんは、冗談でわたしを呼び出すなんてこと、するような人じゃないですもの」

俺はあやせに正直に話して、本当に良かったと思ったよ。
下手に誤魔化そうとして箱の潰れたカロリーメイトなんか渡してたら、
今頃俺は地面に横たわっていたんだろうな。

「あやせにそう言ってもらえると、俺、何て言ったらいいのか……」
「わたしは、お兄さんのそういう優しい気持ちだけで十分です。
 でも、お兄さんとしては、それじゃ気が済みませんよねぇ?」
「………………ど、どういう意味だ?」

俺は鼓動が高鳴り、全身に鳥肌が立つのが分かった。怖い――今の俺の正直な実感だった。
あやせは口元に笑みを浮かべると、俺の右腕を掴み、少し背伸びをしながら俺の耳元で囁いた。

「お兄さん、もしかしたら東京ディズニーシーへ行きたいと思っていませんか?
 わたしはお兄さんの気持ちだけで十分なんですが、お兄さんがどうしてもと言うのなら、
 一緒に行ってあげてもいいですよ。……今週の土曜日にでも」
「……す、すまねえな。……行き先まで決めてもらっちまって」

その後は、俺がどうしても東京ディズニーシーへ行きたいとの前提で話は進み、
当日の待ち合わせ場所を決めたり、小突かれたり蹴られたりしながら、
陽の沈むまで他愛もない話をしてその日は別れた。
754 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/20(日) 15:35:34.96 ID:YvXyKbmfo

あと二、三週間も経てば桜の季節だというのに、まだまだ夜は冷え込む。
俺は受験勉強の手を一旦休め、壁に掛かったカレンダーを見て深い溜息を吐いた。
昨日はあいつらのお蔭で、散々なホワイトデーになっちまった。
やむを得なかったとはいえ、麻奈実に生チョコの詰め合わせをやったのは失敗だった。
この先あいつ、絶対勘違いすんだろ。
そうは言っても麻奈実には日頃から世話になってるし、
こういう時でもなければ、俺があいつに何かしてやるなんてこと滅多にねえしな。
まあそれはそれで、いいんだけどさ。

麻奈実はともかくとして、忌々しいのはあやせだ。
まんまと俺を嵌めやがって、何が東京ディズニーシーだよ。
そりゃ、あやせとデート出来るのは嬉しいけどさぁ、二人で幾ら掛かると思ってるんだよ。

「今月は通販の支払いとあやせとのデート代で、俺の小遣いはすべて消えるな」

俺は改めて大きな溜息を吐くと、気を取り直し時計を確認してから部屋を出た。
今夜は寝る前に、やって置かなくちゃならねえことがあるんだ。

俺は桐乃の部屋の前に立つと、軽くドアをノックしてから声を掛けた。

「桐乃っ、いねえだろ。……勝手に入るぞ」

桐乃はアメリカへ留学しちまって、もうこの家にはいない。
それでも俺が声を掛けたのは、兄妹でもそれが礼儀ってやつだと思うからさ。
逆に中から返事があったら怖ぇけどな。
桐乃が色々と身の回りの物を留学先へ持っていったってのもあるし、
お袋が小まめに掃除をしていることもあって、部屋の中は小ざっぱりとしている。
以前のように鼻を衝くような、甘ったるい化粧品の残り香も殆ど消えかけている。

「お袋のヤツ……」

俺は桐乃の机の前に行き、少しためらってから椅子を引いて、そこに座った。
755 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/20(日) 15:36:04.91 ID:YvXyKbmfo

俺が桐乃の部屋に無断で入るのは、これで二度目だ。
一度目はあいつがアメリカへ留学したと聞いて、何となく桐乃の部屋のドアを開けた。
あの時はきれいに片付けられた部屋を見ても、なんだあいつくらいにしか思わなかったけどな。
そして、今夜が二度目ってわけだ。

この部屋で桐乃から“人生相談”と称して、妹のオタク趣味を知ったあの時の衝撃が思い出される。
それはつい昨日の事のような、それでいてずっと昔の出来事だったような不思議な感覚だった。
椅子に座ったまま壁に眼を向けると、そこには『星くず☆うぃっちメルル』のポスターが貼ってある。
お袋も掃除の際に気付いたはずなのに、剥がさずに残して置いたようだ。

「相変わらず目と髪がピンクだな」

俺は自分でも可笑しいとは思ったんだけど、ポスターのメルルに向かって話し掛けていた。
何となく、桐乃に話し掛けるようにな。

「あやせのヤツ、以前からおかしいとは思っちゃいたけど、益々おかしくなってるぜ。
 俺のこと嫌ってるとばかり思ってたんだがな。
 バレンタインのチョコをくれた時だって、何だか嫌そうな顔してたくせによ。
 ……でも、桐乃のことは凄く心配してたよ」

あやせは公園で俺との別れ際、随分と迷った挙句、不安そうな顔で俺に聞いてきた。
756 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/20(日) 15:36:37.96 ID:YvXyKbmfo

「桐乃から、何か連絡はありましたか? わたし、何度かメールしたんですけど……」
「いいや、あいつからはなーんの連絡もねえよ。案外薄情なやつだったりして、なっ」
「お兄さんっ! お兄さんが冗談で言ってることくらいわかりますから、
 わたし、何も言いませんけど……もし、本気で言っているのなら……」

あやせの気持ちも考えずに、俺は軽率なことを言っちまったと反省した。

「すまねえ。俺の言い方が悪かったな。
 ……今んところ、桐乃からは何の連絡もねえ」

俺の言葉にあやせは、ふっと寂しげな表情を見せた。
でも、直ぐにいつもの笑顔に戻って、俺の目を真っ直ぐに見据えながら言った。

「きっと、まだ留学したばかりだから、いろいろと忙しいんですよ。
 わたしなんかと違って、本当にしっかりした子なんですから。
 ……落ち着いたら必ず連絡してくれると思います」

あやせは胸の前で、両手で小さくガッツポーズを作ると、

「だから、お兄さんも心配しなくて大丈夫です!」
「心配してんのは俺じゃなくて、あやせ――」

その時、あやせの瞳に光るものを見つけちまった俺は、それ以上何も言えなかった。
桐乃は親友のあやせは無論のこと、黒猫や沙織にも何も告げずに留学しちまった。
俺には桐乃が何を考えているのか、さっぱり分からない。
いや違うな。俺はあいつが生まれた時からずっと一緒に暮らしていながら、
あいつのことを何も分かっていなかったってことだろうな。

「お兄さん、桐乃から何か連絡があったら、必ずわたしにも教えてくださいね」
「桐乃が連絡するとしたら、俺なんかよりもあやせの方じゃねえのか?」
「うふふっ。本当に鈍いんですね。……でも、連絡があったら教えてください」
「ああ、あやせにはすぐに知らせてやっから」
「ありがとうございます。……それと、今度の土曜日、わたし楽しみにしています」

あやせは笑顔で俺に手を振りながら、公園を後にした。
土曜日の件は、どうしても俺があやせと一緒に出掛けたいっていう前提じゃねえのかよ。
まあ、あやせが喜んでくれりゃ、俺はそれでいいんだけどよ。
757 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/20(日) 15:37:12.37 ID:YvXyKbmfo

桐乃がまだ日本にいた頃、あやせが桐乃の部屋に遊びに来たことが何度かあった。
俺は隣りの自室にいても、壁越しに聞こえてくるあいつらの声は本当に楽しげだった。
桐乃が何も言わずに留学しちまって、あやせはどんなに寂しがってるんだろうな。
昨日だってあやせのヤツ、俺と桐乃のことをもっと話したかっただろうに。
なあ、桐乃、俺なんかじゃおまえの代わりは出来ねえけどさ、
今度の土曜日は、あいつの我がままくらい大目に見てやってくれよな。

俺は椅子の背もたれに身体を預け、クルリと椅子を一回転させてみた。

「それにしても、本当にきれいに片付けてから行ったんだな」

押入れの前にある本棚の一方は空っぽで、もう片方とて半分くらいしか本が入っていない。
桐乃はいまどきの女の子にしちゃ、部屋を飾り立てるような性格じゃなかったけど、
こうして改めて見ると、何だか殺風景な感じすらする。
唯一、壁に貼られたままの『星くず☆うぃっちメルル』のポスターが、
桐乃のオタク趣味を物語っているようだった。

「おまえは中学生にもなって、美少女アニメなんかに嵌まってっけどさぁ、
 俺がアニメなんか見てたのは、小学生のガキの頃だけだっつーの」

見ていたといっても『ドラえもん』や『ドラゴンボール』くらいだけどな。
あの頃はドラえもんの四次元ポケットから出て来る道具が、すっげー欲しくてよ。
もし今、俺にドラえもんがいてくれたら、何を出してもらうかなぁ。

「……そうだな“どこでもドア”がいいかもな。
 そうすりゃ桐乃っ、いつでも俺に会いに来られるじゃねえか、だろ?」

俺の方から桐乃に会いになんか、絶対に行かねえ。
兄貴に一言もなく行っちまった妹なんか、意地でも会いになんか行ってやんねえよ。
留学するならするって、一言くらい言う時間は幾らでもあったじゃねえか。
それなのに、何も言わずに、ある日いきなり行っちまうなんてよっ。
758 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/03/20(日) 15:38:01.06 ID:YvXyKbmfo

いや、そうじゃなかったよな。
おまえは俺に、たった一言だけ言ってからアメリカへ旅立ったんだよな。

『――じゃあね、兄貴』

あれは桐乃にしてみれば、俺への精一杯の思い遣りだったんだろうな。
もしもあの時、桐乃が俺に正直に話していたら、俺はきっと妹を引き止めたに違いねえ。
桐乃に嫌われて、二度と口を利いてくれなくなったとしてもだ。

「桐乃っ、悪りぃけど、やっぱ“どこでもドア”はナシだ」

そんなもんがあったら、俺は毎日おまえの顔を見に行っちまいそうだ。
桐乃が自分で決めて、遠く離れたアメリカで一人で頑張ってるっていうのに。
それなのに兄貴の俺が、頑張ってる可愛い妹の足を引っ張るわけにはいかねえもんな。
すまねえな、情けない兄貴でよ……。
『星くず☆うぃっちメルル』のポスターが、やけに滲んで見えやがる。
早いとこ用件を済ませて、この部屋から退散した方が賢明かもな。

俺は机の上のメルルの置時計を見ながら、桐乃のいるロサンゼルスが、いま何時頃か計算した。

「えーっと、日本が夜の十一時だから……桐乃のところは……
 十四日の朝七時ってことか。……あいつ、もう起きてっかなぁ?
 ……なあ、これ、桐乃に届けてやってくんねえか?」

俺は、桐乃の空っぽになった机の引出しをそっと開けた。
そしてキャンディーの入った小箱にメッセージカードを添えて中に置くと、静かに閉じた。
我が家のドラえもんは、タイムマシンで過去へ行くのか未来へ行くのか俺には分からねえ。
それでも、出来ることなら未来の桐乃へ届けてやってくれと、俺は心の中で願っていた。

部屋を出る時、俺はドアノブに手を掛けたまま何気なく振り返り、桐乃の机に向かって声を掛けた。

「――じゃあな、桐乃……気が向いたら、また来てやっから」

桐乃がそこに座っているような気がしたんだ。
兄貴の顔を見て無邪気に微笑む、世界中で一番可愛い俺の妹がな。


(完)
759 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/20(日) 16:26:10.15 ID:DjLlo9nDO
乙。
きょうちゃんがいい兄貴過ぎて、きゅんと来たわ。
こういうの、超好きッ!
760 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/20(日) 16:39:58.42 ID:PDoD/R1SO

あやせたんとのデートも見たかった
761 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/20(日) 16:53:48.49 ID:7JOEUes1o

抜け駆けするあやせたんかわいいよ
762 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/20(日) 16:54:24.39 ID:7JOEUes1o

抜け駆けするあやせたんかわいいよ
763 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/03/20(日) 17:09:32.64 ID:hU/Xb7cSo
帰ってきて机を開けたらきりりんがまた大変な事になっちゃうww
764 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/03/20(日) 17:10:10.93 ID:hU/Xb7cSo
帰ってきて机を開けたらきりりんがまた大変な事になっちゃうww
765 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/03/20(日) 17:12:29.75 ID:hU/Xb7cSo
あれ?なんかエラーで連投になっちゃう
スマン
766 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/20(日) 17:32:50.60 ID:7JOEUes1o

抜け駆けするあやせたんまじ天使
767 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/20(日) 17:33:27.40 ID:7JOEUes1o
俺も3回も連投しちまったww
768 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/03/20(日) 17:49:00.06 ID:JfInl/Kv0
やっぱり、あやせって桐乃ライバルなのかな。


それはそうと、あやせの中の人のラジオが4月から始まるらしい。
769 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/20(日) 18:28:16.15 ID:4RuQDSUDO
麻奈実マジちょろい
あやせとのデート編も書いて頂けるんですよね?
770 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/03/20(日) 18:57:54.20 ID:EaXTXpaa0
(完)じゃなくて(続)だよね?
最後の最後で間違えるなんてドジなんだからまったく
771 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/20(日) 19:35:00.10 ID:av/39+cSO
あやせ大人気だな
772 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2011/03/20(日) 20:23:37.50 ID:KsGnWyOko
良い兄貴度に比例して麻奈実に対する態度がひどいww
773 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/20(日) 21:33:51.06 ID:7Ik+G17h0
乙です
もしよければデート編も是非
774 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/03/20(日) 22:29:58.63 ID:fYKeK0vO0

あやせたんマジ天使

デート編もお願いします
775 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/03/21(月) 00:27:45.74 ID:CANz///B0
乙であります
貴方の書くあやせは本当に天使ですな!
デート編はもちろんあるんですよね?
776 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/03/21(月) 00:49:11.23 ID:p+INWW0zo
え?普通にこの京介クズじゃね?
グスとキチガイ女の話ならvipでやれよ
777 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/21(月) 00:55:57.02 ID:nSso+ejBo
加奈子SSそろそろくるな
778 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/03/21(月) 01:46:12.10 ID:/bNqMFnd0
俺妹ってキチガイ除いたらブリジットしか残らねーじゃんwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
779 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2011/03/21(月) 01:55:17.96 ID:fMtj6Dh+0
ちょっと聞きたいんだが
京介のチンコがロケットに改造されて黒猫がぶっ飛んでくSS
って何レス目?

腹筋崩壊って聞いて探してんだけど見当たらない。
ガセ…?
780 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/03/21(月) 02:02:23.94 ID:jyC4azD6o
エロパロの方だ
781 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/21(月) 09:56:01.57 ID:vF5npYVSO
さあ、次は誰のSSかな?
782 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/21(月) 10:09:38.60 ID:wKKzmEQYo
ブリジット√はいくつあっても足りない
783 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/21(月) 13:51:33.07 ID:FMps6rDmo
フェイトさんのSS書いたから投下するぜぃ。
かなかなちゃんやブリジットを期待する紳士には申し訳ない。

以下、投下。
784 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage saga]:2011/03/21(月) 13:53:35.27 ID:FMps6rDmo
雨と湿気の祭典が終わりを告げ、うだるような暑さの一端が顔を見せ始めた七月上旬。
窓を開け放ち、少しでも涼を取ろうと悪足掻きをしながら、俺は自室で大学の講義内容を復習していた。
この春に二年に進級し、より専門的となった内容に悪戦苦闘していると、机の端に置いていたケータイが震えた。
ケータイを手に取り中身を見ると、正直言ってあまり関わり合いたくない人物からメールが届いていた。その内容は……、

『相談したいことがあるの。七時に待ち合わせましょう。場所は――――。』

今の時刻は四時半を過ぎたあたり。つまり、猶予は数時間ばかりしかない。
はっきり言って行きたくねえんだが、わざわざ俺を頼ってきてくれているのに、それを無下にするのも忍びない。
俺はケータイをポケットに突っ込むと、リビングに向かった。今日の俺の分の夕食は必要ないことを、お袋に報告するためだ。


ーーーーーーーーーーーー


自宅を出発し、電車を乗り継ぎ、俺は新橋のとある居酒屋の前にいた。
この時点で嫌な予感はビンビンしているんだが、相手は「すでに中にいる」と連絡してきた。
俺は溜息を一つ吐き、少し安っぽい引き戸を開け、中に入った。

「いらっしゃいませ〜。一名様ですか?」

垢抜けた、可愛らしい顔立ちのお姉さん(多分、バイトだろう)にそう聞かれた俺は、すぐに否定の返事をした。

「いや、連れがもういるみたいなんすけど……」
「京介く〜ん。こっちこっち〜」

だが、それは必要なかった。メールの差出人が俺を呼んだからだ。
声をした方に顔を向けると、そこには、涼しげなパンツスーツに身を包んだ、理知的な雰囲気を漂わせている女性が座っていた。
バイトの姉ちゃんに別れを告げ、俺は件の人物がいる席に向かった。

「久しぶりっすね、フェイトさん」
「そうね。ずいぶんご無沙汰だったかな」

伊織・フェイト・刹那。
泣き黒子が印象的な美人で、一見すると仕事をバリバリこなすキャリアウーマンなのだが……、その実態はただのダメ人間だ。
この人と初めて会ったときのことは割愛するが、その後も定職に就かずFXに手を出したり、コミケで同人ゴロをして食い扶持を稼いでいたり。
去年あたりからトンと姿を見なくなったのだが……。

「最近はコミケでも会いませんしね。同人はやめたんすか?」
「あー、あれね。作家さんのスケジュール調整が難しくて、結局解散したわ」

なんというか、予想通りの答えであった。意外だったのは、その事を話すフェイトさんの様子が平然としていたことだ。

「じゃ、今は何を?」
「雑誌社に勤めてるの」
「え!?」

あまりにも真っ当な回答をされたため、思わず大きな声が出てしまった。正面にいるフェイトさんも驚いた顔をしている。
非常に失礼な反応をしてしまったが、フェイトさんの経歴を知るお前等なら、俺の気持ちがわかるだろ?

「じゃあ、今は熊谷さんのところで?」
「ううん。MAWとは別の会社で働いてるの。そこで編集をしているわ」

そう言って、フェイトさんは名刺を一枚差し出した。確かにそこには、メディアスキー・ワークスとは違う会社名が表記されていた。

「知らなかった……。おめでとうございます」
「ありがと。……と言っても、もう一年ほどいるんだけどね」

俺の祝いの言葉に、フェイトさんは少し恥ずかしそうに微笑んだ。けれど、そこには大人の女性独特の色香があった。
普段付き合いのある女性といえば、そのほとんどが年下であるため、不覚にも俺はドキッとしてしまった。

「そ、それじゃあ、遅くなったお詫びというわけじゃないですけど、今日は俺がおごりますよ」
「心配しなくても大丈夫よ。今は餓死することも無いから」

おお!まさか、フェイトさんからこんな言葉が聞ける日が来ようとは!
ヤベェ、ちょっと泣きそうだ。
785 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage saga]:2011/03/21(月) 13:55:00.77 ID:FMps6rDmo

「そ、そうっすか。で、相談ってのは?」
「うん。実は見てほしいものがあって……」

恥ずかしさから逃れるため、俺は本来の目的である相談の内容をフェイトさんに訊ねた。
フェイトさんは脇に置いていた鞄から、一台のノートPCを取り出し、少し操作をすると俺に差し出した。

「ところでこの画面を見てくれ。こいつをどう思う?」
「すごく……文字です……」

ノートPCはWordが起動されていて、ディスプレイには縦書きの文字が並んでいた。少し読んでみたが、どうやら小説のようだ。

「これは?」
「僕が書いた小説だよ。少しまとまったから、第三者に読んでもらいたくて京介くんを呼んだんだ」
「そりゃ構わないっすけど……。俺でいいんすか?」

俺は率直な感想を述べた。
熊谷さんのようなプロならまだしも、俺のような素人が読んだって良いアドバイスなどは出来ない。けど、フェイトさんはそんな答えを予測していたのか、

「いいんだよ。アドバイス云々じゃなくて、素直な感想が聞きたいんだ。それに、君は僕にとっても特別な人だからね」
「はぁ……」
「ほら。君が黒猫さんとMAWに来たとき、言ったじゃないか。『大好き』だって。だから、京介くんに読んでもらいたい」

くっ!ここでその話を蒸し返すとは……!
はっきり言って、あまり思い出したくない過去である。トラウマと言ってもいい。あの時の俺は、変なスイッチが入ってたんだ。
認めたくないものだな、自分自身の若さ故の過ちと言うものを……。
俺は「そういうことなら」と言って、ポケットからケースを取り出し、チタンフレームのシンプルな眼鏡を取り出した。
大学一年の秋あたりから、遠くのものが見えにくくなったので購入したものだ。普段は掛けていない。
この姿を瀬菜に見られたときは、「せんぱい!『鬼畜眼鏡』みたいでいいですね!」などと言って目を輝かせていた。『鬼畜眼鏡』という代物がどういったモノなのかなど、知りたくもない。
そのあと、「眼鏡せんぱいとお兄ちゃんの鬼畜攻め×強気受けとか……フヒヒww」とか言っていたような気がするが、きっと幻聴だ。

「へぇ。いつの間に眼鏡なんて掛けるようになったんだい?」
「去年の秋あたりからっすね」
「そうなんだ。失礼!」

フェイトさんは、まるで猫のような動きで俺から眼鏡を奪い取り、自分が掛けてしまった。
その姿は、まぁなんというか……。俺のどストライクだったんだ。
男物の眼鏡だったんだが、中性的な容姿のフェイトさんに良く似合っていた。思わず見惚れちまったよ。眼鏡バンザイ!

「あんまり強くはないんだね。どう?似合うかな?」
「か、返してください!」
「きゃっ!?」

内心ドギマギしていたため、すこし強引に眼鏡を取り返してしまった。驚いたフェイトさんは軽く悲鳴を上げてしまっている。
俺は恥ずかしくて、押し黙ったまま小説を読み始めた。フェイトさんは少し拗ねながら、唇を尖らせて「少し強引だよ」とぼやいていた。





数十分後、俺は小説を読み終えた。
ボリュームは80ページほど。ジャンルはダーク・ファンタジーとでも言うのだろうか、魔法とかが飛び交うバトルものだった。
ところどころで厨二病的な用語も出てきたが、さすが一度はプロを目指した人というべきか、そのような設定等は話を読み進めると理解できた。
ライトノベル的な内容で、正直悪くないと思った。
眼鏡を外し、目頭を揉みながら俺はフェイトさんに感想を述べる。

「悪くないんじゃないですかね。ややこしい設定も、読み進めていくと理解できますし。描写も良かったと思います」
「面白かったかい?」
「ええ」

俺の感想を聞いたフェイトさんは、頬を赤らめながら嫣然と微笑んだ。ん?頬だけじゃなく、顔全体がうっすら赤いぞ?
よくよく見ると、フェイトさんの手元には黄金色の液体が半分ほど入ったジョッキがあった。

「飲んでたんすか……」
「手持ち無沙汰だったからね。京介くんの顔を肴に」

なにやってんだよ、この人……。
俺は溜息を吐き、懐から淡い黄色の小さな箱を取り出した。

「煙草、吸ってもいいすか?」
「僕は構わないけど、体に良くないよ?」
「わかってますよ、そんなこと」
「ならいいけどね。でも、そっか。京介くんも、もう成人してるんだよね」

フェイトさんの了解を取り、中に入っている紙巻煙草を一本取り出し、火を点ける。
妹様から謹んで送られるイライラから逃避するため、ついつい手を出してしまったんだが……。今じゃすっかり手放せなくなった。
786 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage saga]:2011/03/21(月) 13:56:02.60 ID:FMps6rDmo

「僕も、一本貰っていいかな?」
「いいっすよ。どうぞ」

俺はフェイトさんに煙草の箱と100円ライターを手渡した。
それを受け取ったフェイトさんは、女性らしいしなやかな動作で煙草を取り出し、火を点けた。
だが、様になっていたのはそこまで。煙を吸い込んだフェイトさんは、思い切りむせてしまった。

「げほっ……ごほっ……!」
「だ、大丈夫っすか!?」

俺はフェイトさんの背をさすりながら、お冷を手渡した。
涙目になりながらも、フェイトさんはそれを受け取り、一気に飲み干した。

「はぁ……ふぅ〜」
「吸い慣れてなかったんすか?」
「まあ、確かに最近は吸ってなかったけど……。これ、キツくないかい?」
「タール:21mg ニコチン:1.9mgっすからね。キツいですよ」
「キツ過ぎだよ!?」

そうは言いますがね、慣れちゃうと他の銘柄じゃ物足りなくなっちゃうんですよ。
ほんと、慣れって怖い……。


ーーーーーーーーーーーー


その後、俺とフェイトさんは空白期間にお互いにあったことを話しながら、酒を酌み交わした。
二時間ほどそんなやり取りを続け、今は勘定を済ませて駅に向かって歩いていた。

「ふぅ。今日は相談に乗ってくれた上にご馳走にまでなっちゃって、本当にありがとう」
「いいですよ。遅い就職祝いってことで」
「はは。ちょっと押し付けがましくないかい?僕は嬉しいけどね」

アルコールが入っているため、二人とも妙にテンションが高かった。そんな会話を繰り返していると、目的の駅にはすぐに着いてしまった。

「さて、今日はお別れだね」
「そうっすね。フェイトさんは社会人だから、次はいつになるかわからないっすね」
「おや。僕に会えなくて寂しいのかな?」
「はっ、まさか」

フェイトさんが悪戯っぽく聞いてきたので、俺は少しぶっきらぼうに答えた。その程度じゃ動揺なんてしませんよ。
そんなことはお見通しだったのだろう。フェイトさんは「ふふっ」と笑うだけだった。
787 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage saga]:2011/03/21(月) 13:56:35.78 ID:FMps6rDmo
「僕は少し寂しいけどね」
「またまた〜」
「むぅ〜。本心なんだけどなぁ」

この発言についてはどうやら本気だったようで、フェイトさんは拗ねてしまった。もうすぐ三十路の女性なのに、そんな可愛らしい仕草が妙に似合っていた。
それも一瞬で、フェイトさんは俺にすっと近付くと、そっと話しかけてきた。

「ねぇ、京介くん。君の眼鏡、もう一回貸してくれないかい?」
「はぁ。別にいいっすけど」

その言葉の真意がわからないまま、俺はフェイトさんに言われたとおり、ポケットから眼鏡を取り出した。
眼鏡を受け取ったフェイトさんは、それを掛けてこちらに向き直った。うん、やっぱり似合う。
そんなことを思っていたら、フェイトさんがこちらに近付き、首を両腕で抱かれ……唇を塞がれた。

「!?」

声も出せず、状況も理解できず、俺はただ呆然と、フェイトさんのされるがままになっていた。
アルコールの匂いと、女性特有の柔らかな匂い、控えめな香水の匂いが鼻腔をくすぐる。
時間にして五秒も無かっただろうが、俺には随分と長く感じられた。唇から伝わる感触が無くなり、フェイトさんの顔が視界に入る。

「あ、あの……」
「ふふっ」

俺がまともな言葉を出す前に、また唇を塞がれた。
今度はより艶かしく、情熱的に、唇を吸われ、舌を入れられ、唾液を吸われ、口腔を蹂躙された。
未だに状況が飲み込めず、俺は突っ立ってることしか出来なかった。
十数秒程経っただろうか……。俺を解放したフェイトさんは、二歩ほど後ろに下がって距離を取った。

「煙草の味……。でも、嫌いじゃないよ」

そう言って、唇を舐める眼鏡の美人。頬を赤らめながら、唇を濡らしながら、妖艶に微笑む。
その様は蠱惑的で、思わず見惚れ……いや、魅入られていた。
フェイトさんは眼鏡を外すと、俺に近付いて、それを掛けてくれた。遠くまでクリアになった視界の中、それでも俺はフェイトさんの顔を見て呆然としていた。
俺に眼鏡を掛けると、フェイトさんはさっきのようにまた体を寄せてきた。今度は、耳元に口を寄せて、

「次に会ったときは、もっと大人らしいことをしよう。もちろん、僕とね……」

そう囁いて、駅の中に入っていった。
ようやく現実に戻った俺は、自分の唇を指で撫でた。まだ少し湿っていて、フェイトさんの名残が俺の指を濡らし、妖しく光っていた。
俺は、フェイトさんの去り際の言葉の意味を考え……こう漏らした。

「あの人とは……もう会わない方がいい気がする……」


おわり
788 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/21(月) 13:58:34.16 ID:FMps6rDmo
以上。

世界線の変動率を確認できない俺には、この先のフェイトさんがどうなるのかなどわからない。
再び世界は収束するか、違う未来を紡ぐか……。
そう、すべては運命石の扉(シュタインズ・ゲート)の選択のままに。

エル・プサイ・コングルゥ

ありがとうございました。
789 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/03/21(月) 14:02:27.19 ID:jyC4azD6o

悲劇は避けられないんだよ
790 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/03/21(月) 14:12:18.00 ID:drUgcr/80


まさかフェイトさんに眼鏡装備させるとは……GJ
791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/21(月) 14:12:52.32 ID:/hLAO63w0
誰か加奈子√をどうか一つ
792 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/21(月) 14:32:00.78 ID:nSso+ejBo

なんかフェイトさんエロいな
793 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/21(月) 14:33:36.82 ID:wKKzmEQYo
乙。
なんかどころか直球でエロくてよい
794 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/21(月) 14:44:40.58 ID:/hLAO63w0
すいません見えてなかった…

乙です
ここに、ここに綺麗なフェイトさんが!
795 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/21(月) 14:59:36.02 ID:vF5npYVSO

なんだ、フェイトさんだってやれば出来るじゃないか…
796 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/03/21(月) 15:35:11.64 ID:zMYKibl1o
乙です
フェイトさんはSG世界線にでも到達しないと更生しないと思うんだ
797 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/03/21(月) 19:46:47.80 ID:DvQKZV8W0
きりりん氏は作品だけじゃなく恋人までNTRれてしまうわけか…
その筋の人にはたまらんだろうな
798 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2011/03/21(月) 21:32:56.37 ID:CslhNYO/o
え、フェイトさんって女性だよな?
不安になってきたじゃねぇか
799 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/03/22(火) 01:58:53.39 ID:kuVnvd0/0
大人エロスの僕っ娘たまんねぇな
800 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/22(火) 03:29:00.71 ID:2HInFmRDo
立ってたから貼っとくばい。

【俺妹SS】俺と妹が夫婦なわけがない!
ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1300627984/
801 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/22(火) 21:43:51.21 ID:KfrzPx1eo
かなかなちゃんカモン
802 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/03/22(火) 21:51:04.55 ID:SlZDR46P0
wikiみてたまげたなぁ
今夜はおらヒマしねぇぞ!
803 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/22(火) 22:49:26.49 ID:dSbwWP0r0
同感
あんな大作が進んでいたとは知らなかった
これからゆっくり読ませていただこうと思う
804 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 00:10:08.48 ID:PAJrQtZY0
誰もいなさそうなんで一本投下して逃げるぜ!
805 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 00:11:28.95 ID:PAJrQtZY0
千円札を両替し、ICカードを取り出して出撃準備完了でござる!
「拙者が選ぶは、もちろん百式でござる!」

沙織・バジーナ、百式、出るでござる!

久々なので肩慣らしにそれ程難易度の高くないステージを選び、CPUを撃破していく。やはり百式は扱いが難しくなったでござるなぁ……
何度か同じステージコースを選び練習していると、不意に声が聞こえてくる。

「おい、あいつ1人見たいだし、乱入しようぜwww」「2対1wフルボッコwww」
どうやら向かい側の2台に座ったようでござるな。

「こ、これはヤバイでござる……!」
というのも、このゲームは乱入による対戦ができるのでござるが、拙者は今協力者がいないので味方はCPUなのでござるよ。当然、プレイヤーが乗るのとはパワーがダンチなわけで……

マダオワランヨ!
テンキョーケーン!
アタレー!……………

「やめてよねwww2人が本気をだしたら、1人が2人に勝てるはずないだろwww」
806 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 00:13:16.86 ID:PAJrQtZY0
ーーーしばらく前ーーー

「フッフッフ、この風、この肌触りこそゲーセンよ!」
ご機嫌いかがでござるか?拙者、沙織・バジーナは絶好調でござる!
何を隠そう、久々にゲームセンターでゆっくりと遊べるのでござるからなぁ!今日は諭吉さんを崩してしまいますかな……!

「ガノタの拙者がやるは1つ、エクストリームバーサスでござるよ!」
エクストリームバーサスというのは、正式名『機動戦士ガンダム EXTREME VS.』という、2対2のモビルスーツ対戦ゲームのことでござる!
ここは穴場で、台数は8台もあり、あまり人がこないので対戦が起きにくいので練習には最適なのでござるよ!
807 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 00:14:46.29 ID:PAJrQtZY0
とまぁ、意気込んでプレイしていたらフルボッコにされたでござる……
「うぅ……グスン」
こうもボロ負けしてしまうと悲しいです……
と、拙者が悲しみにくれていると、

「少女!そう気を落とすな!」
と声。驚いて顔を上げると、そこには

「やぁ、私はきょ……ミスター・ブシドー。ご覧の通り侍だ」
オタクスタイルの拙者も、「変態の間違いでは?」と言いたくなるような、陣羽織と仮面に金髪のカツラを被った青年がいました……
808 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 00:15:57.97 ID:PAJrQtZY0
「アタレー!wwwwww」「うへへwwあ?乱入者?」

「よ、よろしくお願いするでござる!」
「援護は任せたぞ、少女!」
拙者は今、先程の変……侍と共にリベンジマッチに挑むところでござる。別に、挑もうとは思っていなかったのでござるが、「これは宿命だ!」など、結局は言いくるめられてしまった……
拙者が再び百式を選び、ブシドー氏はスサノオを選んだようでござるな。

「いざ尋常に、勝負!!」「いくでござる!」「楽勝www」「返り討ちにしてやんよwww」


ーーーーー
拙者が射撃で敵を牽制しつつ、ブシドー殿が切り込む。即席にしてはかなりのコンビネーションで、見事勝利したでござる!
809 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 00:17:28.44 ID:PAJrQtZY0

「本当に、感謝でござる!」
「何、センチメンタリズムな運命を感じただけさ」
フッ、と微笑むブシドー氏は中々決まっているでござるな。
「おっと、そろそろ帰らねばならんな。口惜しさは残るが私とて人の子だ……」
「そうでござるか……また会いましょうぞ!ブシドー氏!」
「あぁ、さお……バジーナ殿」
あれ、今「沙織」と言おうとした……?いや、聞き間違えでござる……よな?

「そういえば、ICカードの登録名も『ブシすけ』……。どこかで聞いた気が……」

後日、知り合いの部屋で仮面やら陣羽織やら金髪のカツラやらが見つかるのはまた別のお話。

ーーーー終われーーーー
810 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 00:18:29.14 ID:PAJrQtZY0
オタクなバジーナさんが書きたかったでござる。失礼したっ!

拙者の愛機はユニコーン。
811 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/23(水) 00:22:16.76 ID:uhxycviG0
乙です
拙者の愛機は偶然にもブシドー氏と同じでござる!
812 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/23(水) 00:28:18.28 ID:XCpyPGMbo
EXVSの百式は哀しみ背負った性能だからな・・・沙織は涙目だろう
そこに颯爽と現れるスサノオですねわかります(声優的な意味で
813 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/23(水) 01:06:08.75 ID:3bR2WwCzo
乙。

EXVSはやってねーな。スサノオ使いたいけど。
PS3かPSPで出ないかねぇ。

んじゃ、かなかなちゃんSS完成させてくる。
814 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sagee]:2011/03/23(水) 02:06:09.05 ID:QE+Qs6pq0

EXVSいつも混んでていまだにプレイできてない。

理想郷で銀英伝のSS見た影響かあれを読んだら黒猫がどういう感想を抱くか気になっちまったぜ。
815 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/23(水) 03:35:07.22 ID:3bR2WwCzo
かなかなちゃんSS投下だぜぃ。
816 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage saga]:2011/03/23(水) 03:36:06.60 ID:3bR2WwCzo
「高坂くん。君には、来月から来栖さんの専属マネージャーになってもらうから」

俺が会社の上司からそう言われたのは、この芸能事務所に入社して、もうすぐ一年が経とうというときだった。


ーーーーーーーーーーーー


俺の名前は、高坂京介。雑誌モデルが多数在籍している芸能事務所所属の23歳。
もちろん、俺がモデルとして所属しているわけじゃないぞ。自分で言うのもなんだが、地味面だしな、俺。……はぁ。
冒頭でも言ったが、俺はこの芸能事務所の社員なんだ。それ以外は、特筆すべきところは無い。
業務上、テレビ等のマスメディア関係のことには、アンテナを張って情報収集をしちゃいるが、趣味らしい趣味も無く、基本的に平凡な生活を送っている。
入社してからの一年、俺は基本的に会社内で対外交渉をしていた。どうやらこれは、業界のことを知るための期間なのだそうだ。
一年の勉強期間の後、タレントのマネジメント業務に就く。これは先輩方も通ってきた道であり、ついに俺の番になったというわけだ。
ただ、最初の担当があのクソガキこと来栖加奈子というのは、どういう運命のイタズラなんだろうな。
それからの一ヶ月、俺は現在のマネージャーである先輩から業務の引継ぎと、担当タレントに関する注意事項、その他もろもろを説明・指導してもらった。
その間に季節は春となり、俺は24歳になった。


ーーーーーーーーーーーー


というわけで、あっという間に俺のマネージャー業務初日となった。
今日は朝からファッション雑誌の撮影で、事務所に集まってから車で撮影場所に移動する手筈となっている。

「おはようございま〜す」

妹様のおかげで、散々聞き慣れた声(と言っても、別人の声なんだが)が事務所内に響いた。
俺と先輩は席を立ち、加奈子を迎えに行った。

「おはようございます、来栖さん。前々から連絡していた通り、今日からはこの高坂くんが専属のマネージャーとなります。ほら、高坂くん。挨拶を」
「……」

俺は咄嗟に言葉を発することが出来なかった。これは、俺自身が加奈子のことを嫌っているから、というわけではない。
久しぶりに見た加奈子の容姿に、ただただ驚いていたからだ。
ツインテールだった髪は解かれて、腰まであるストレートのロングヘアーに変わっており、表情は以前のようなガキっぽさは鳴りを潜めていた。
一番驚いたのは、彼女のスタイルだ。以前会ったときのような幼児体型ではなく、胸こそそれほど大きくないものの、女性らしさが際立っていた。
わかりやすく言えば、「スレンダー美人」と言ったところか。背も伸びていたしな。目算で165cmはある。

「高坂くん?」
「あ。す、すいません」

先輩に声を掛けられたことで、俺の意識は現実に戻り、加奈子に向かって挨拶をした。
自社のタレントくらいちゃんと把握しておけ、と思う諸君も多かろう。
言い訳させてもらうと、プロフィールや仕事の状況はきちんと把握はしていたさ。ただな、実際の姿を見て驚くことってあるだろ?
雑誌社から送られてくる見本誌には目を通してなかったし、ファッション誌を個人で購入するほど酔狂でもないんだよ、俺は。

「おはようございます。今日から来栖さんのマネージャーを務める高坂京介です。よろしくお願いします」
「高坂さんですね。こちらこそ、よろしくお願いします」

オイ、聞いたか?加奈子が丁寧に挨拶を返したぞ。
糞生意気な中学時代を知る俺にとって、このことは容姿以上に衝撃的だった。成長したのは外面だけではないということか。

「今日は雑誌の撮影ですね。新垣さんがいらっしゃったら車で移動しますので、それまでゆっくりしてください」
「は〜い」

今日の予定を伝えると、加奈子はおとなしく事務所内の休憩スペースへ向かった。俺は温かいお茶を淹れるため、給湯室に向かった。
それから数分後、あやせも事務所にやってきた。俺たちは撮影場所に向かうため、車を置いてある駐車場に向かった。
817 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage saga]:2011/03/23(水) 03:36:51.89 ID:3bR2WwCzo
ーーーーーーーーーーーー


「はーい!じゃ、休憩はいりまーす!」

撮影が一段落したところで、撮影スタッフが声を張り上げた。
スタッフは機材の調整やフィルムの確認作業に入り、モデルたちは思い思いに休憩し始めた。

「お疲れ様です」

近くにあるベンチに腰掛けた加奈子に、俺はクラッシュタイプゼリー入りのカフェスイーツを手渡した。加奈子は今でも、この飲料を好んで飲んでいると先輩から聞いていたしな。
今日は日差しも温かく、よく冷えたコイツはまた格別だろう。

「ありがとうございます」

加奈子は笑顔を浮かべ、カップを受け取った。
メルルイベントのときは「とっとと飲み物買ってこい」と命令し、買ってきても労いの言葉など掛けなかったコイツが、今では普通に礼を言う。
本当にあの頃とは何もかも違うんだな、などと爺臭い思考をしてしまう俺を誰が責められる?
俺も加奈子の隣に座り、ホットの緑茶のフタを開けた。

「あの、高坂さん……」
「はい?」
「高坂さんは、妹さんっていらっしゃいますか?」

加奈子は、ストローを口に咥えながらこう聞いてきた。
高坂という姓などさして珍しくもないのだが、一応の確認といったところだろう。特に隠すことでもないので、俺は素直に答えた。

「桐乃という妹がいます」
「本当ですか?そ、その、桐乃さんは……」
「来栖さんがご存知の桐乃のことです」

ある程度予測はしていたはずなのだろうが、加奈子はずいぶんと驚いていた。
まぁ、中学時代からモデルとして活躍する美女と、こんな地味面の男が血縁だと思えないのもわからんでもない。
いろんな人から「似てない兄妹ですね」と言われ続けたからな。

「そうですか。私、桐乃さんとは中学時代からの友人で……」
「存じてます。一度、顔を見たことがありますから」
「え!?」

今度の俺の答えには、加奈子も盛大に驚いていた。きっと覚えていなかったんだろうな。偽装デートのときも、俺たちが兄妹ということは気付いてなかったし。
それに、会ったのは一度だけではないのだが……。まぁ、そのうちの二回は変装していたしな。仕方ないだろう。
それに加奈子同様、俺も少しだけあの頃とは容姿が異なる。髪が短くなっただけだが、ちゃんと顔を覚えていないコイツにとっては、それだけで大違いだろう。
ちなみに今の俺の髪形を説明すると、本田圭佑ってサッカー選手がいるだろ?あんな感じだ。色は黒だがな。

「ごめんなさい。私、覚えていなくて……」
「気にしないでください。ちゃんと話したことも無い間柄ですし、俺は気にしていませんから」

本当に申し訳無さそうに顔を俯かせている加奈子に、俺は笑顔でそう言った。
いわゆる営業スマイルというヤツだが、そんな無駄に爽やかな笑顔でも、少しは効果があったようだ。
加奈子は困ったような表情をしつつも、笑顔を見せてくれた。むぅ、可愛い。まさかコイツに、こんな感情を抱く日が来ようとは……。
人生とはわからないものである。

「高坂くーん。ちょっと来てくれー」
「はーい。今行きますー」

あやせのマネージャーをしている先輩に呼ばれたため、俺は加奈子に一言断ってから席を立った。
加奈子担当ということで少し不安だったが、この分なら問題ないだろう。
818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage saga]:2011/03/23(水) 03:37:32.25 ID:3bR2WwCzo




「はーい。オッケーでーす!」

撮影開始から三時間が経過し、撮影スタッフから声が上がった。今日の分は終了である。
スタッフ、モデルたちが「お疲れ様でした」と声を掛け合い、お互いの労をねぎらっている。
俺は先輩と共に撮影スタッフに近付き、今日のお礼と今後の予定について打ち合わせを行った。その間、モデルたちは休憩と着替えだ。
十分ほどでそれも終わり、今は先輩とこれからの予定について話し合っている。

「新垣さんはこれから次の現場だけど、そっちは?」
「こっちは午後からボイトレとダンスレッスンが入ってますね」
「じゃ、車はこっちで使うから、悪いけど電車で移動してくれる?」
「わかりました」

朝に乗ってきた車は、あやせたちが使うことになった。俺はその事を伝えるため、PDAを仕舞い、加奈子のところに戻った。
その加奈子はというと、すでに着替え終わり、ベンチで一息ついている。

「お疲れ様です、来栖さん」
「はい、お疲れ様です」

俺は加奈子に、さっき買っておいたミネラルウォーターを手渡した。これからボイトレなので、さっきのような飲み物は与えない。
加奈子はペットボトルを受け取ると、すぐにフタを開けて中身を一口飲んだ。

「午後からはボイトレとダンスレッスンですね。車は新垣さんの方で使うので、申し訳ないですが俺たちは電車で移動です」
「わかりました」

午後からの予定を伝えると、加奈子はペットボトルのフタを閉めて鞄に放り込み、即座に立ち上がった。
昔の加奈子なら「チッ!加奈子は歩きかよ。あーやってらんねー」とか文句を言っていただろうな。

「高坂さん。次は何時からですか?」
「1:30からです」
「少し空くんですね。じゃ、ちょっと早いですけど、どこかでお昼にしましょう」
「はい」

二人で駅に向かう中、俺たちは新たな予定をスケジュールに組み込んだ。
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage saga]:2011/03/23(水) 03:37:59.31 ID:3bR2WwCzo
ーーーーーーーーーーーー


それから月日は経ち、七月となった。つまり、俺が加奈子の専属となって三ヶ月が経ったというわけだ。
今日は初のテレビ収録である。
某テレビ局の芸人七人がホストを務める人気バラエティ番組へ、ブリジットと共にゲスト出演する。
この組み合わせになったのは、メルルコスプレイヤー時代の話も番組内でするためだ。
ここでお茶の間の知名度が上がって人気が出れば、彼女の夢である「アイドル」への道も開かれるだろう。

「失礼しまーす。飲み物買ってきましたー」

俺が外にあるコンビニから控え室へ戻ってくると、中には加奈子しかいなかった。ブリジットはトイレだろうか?

「来栖さん、いつものです」
「あ、ありがとうございます。……あ!?」

ブリジットのことは気にせず、俺は加奈子にいつものクラッシュタイプゼリー入りのカフェスイーツを手渡した……のだが。
彼女はそれを落としてしまった。そこで気付いたが、彼女の手は小刻みに震えていた。

「来栖さん?」
「ご、ごめんなさい!」

加奈子は即座に謝り、落としてしまったカップを拾った。けれど、震えは納まりそうに無い。

「緊張されてますか?」
「は、はい。その、少しだけ……」

そうは言うが、「少しだけ」緊張している程度では、この震えは異常と言えた。
それも無理はないと思う。なんせ、テレビ初出演が人気番組。相手はベテランの芸人さんだ。
怖い物知らずだった中学時代ならいざ知らず、この業界でそれなりに生きてきた彼女なら、そのプレッシャーに怖気づくこともあるだろう。
仕方ないとは思いつつも、俺は「らしくねーな」とも思ってしまった。それは、レイヤー時代の彼女を知ってるからだろうか。
それに、所属タレントの管理はマネージャーの務め。緊張をほぐすことも、その一つと俺は考えている。
俺は溜息を一つ吐き、胸ポケットから日差し除けのために持ってきたサングラスを取り出した。それは、七年前にも使用したものだ。

「らしくねーな」
「え?」

普段の丁寧語とは違う俺の言葉に、加奈子は驚いて向き直る。
あの頃とは髪形も違うし、共通点なんてサングラスだけだ。それでも、俺は「赤城浩平」を装ってきたあの時と同じ態度を崩さない。

「らしくねーって言ったんだ。アキバのUDXじゃ、たくさんのヲタどもの前で、あんなに堂々と歌って踊ってたじゃねーか」
「高坂……さん?」

加奈子は依然として驚いたままだ。だが、構うもんか。

「お前、言ってたじゃねーか。『ステージで歌うのは楽しかった』って。『カワイイって褒められるの好きだし、あたしのパフォーマンス見た奴らが喜んでんのとかさ、気分いーし』って」
「……」
「あの時と何が違うんだよ?メルルイベントと、この番組収録に差なんてあるのか?無えだろうが。あの時の『不敵な来栖加奈子』はどこに行っちまったんだ?」
「……」

詭弁だということはわかってる。あの時と今とじゃ、何もかも違う。
それでも、こんな弱気なコイツは見ていられなかった。なんでそんな気持ちになったのか、それはわかんねえけどよ。
とにかく、見ていられなかったんだよ。

「黙って聞いてりゃ、好き勝手言ってくれるじゃねーか」

それまで黙っていた加奈子が、声を発した。いつもの丁寧な口調ではない、『あの時』のような糞生意気な口調だ。
加奈子は立ち上がると、俺をビシッと指差した。

「糞マネのくせに、この加奈子さまにせっきょーくれてんじゃねーよ。こんな収録、ラクショーに決まってんじゃん」
「そうかい。んじゃ、いつものようにブチかましてこいよ」
「はっ。言われるまでもねー」

俺の激励を突っぱねて、加奈子はあの時のようにイヒヒと笑った。
もう大丈夫だ、俺はそう思ったよ。
820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage saga]:2011/03/23(水) 03:38:25.66 ID:3bR2WwCzo
ーーーーーーーーーーーー


収録も終わり、今は夜の7:00だ。俺たちはテレビ局の前でタクシーを待っていた。
結果から言うと、収録は大成功だった。
ホストの芸人さんの話術のおかげでもあるが、加奈子とブリジットの魅力は十分に伝わったと思う。
この番組をきっかけに、これからコイツは伸びていく。俺はそう思った。

「高坂さん」
「はい?」

加奈子の突然の呼びかけに、不覚にも間抜けな声で返事してしまう俺。うん、実にカッコ悪い。

「今日はありがとうございました。この仕事がうまくいったのは、高坂さんのおかげです」
「いや、俺は何も。来栖さんの力ですよ」

そう、俺は何もしちゃいない。全てはコイツ自身の力なのだ。俺は好き勝手にモノを言っただけ。

「そんなことありません。高坂さんに励まされなかったら、私は緊張のあまり、ろくな働きも出来なかったと思います」
「はは、大袈裟な。でもマネージャーとしては、それは嬉しい言葉ですね」
「それは、メルルのときからマネージャーをしてくれているからですか?」
「うっ……」

いや、そういうわけじゃないんだが。あ、でもどうしよう。
つい勢いに任せてご高説を垂れてしまったが、あの時のことはコイツには秘密だったんだよな……。このことが露見したら、あやせに……。
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!考えたくもNEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!111

「高坂さん」
「はい……」

俺が生命の危機をヒシヒシと感じていると、加奈子からまた声を掛けられた。
そちらに顔を向けた瞬間、唇に温かく柔らかな感触を感じた。甘いコロンの香りが、俺の思考を妨害する。
俺がアホみたいに固まっていると、加奈子はイヒヒと歯を見せて笑い、

「これからも、この加奈子さまがコキ使ってやっからよー。覚悟しとけよ、糞マネ」

そんなムカつくセリフを言い放った。顔が赤いから可愛さ百倍、憎さは少し、って感じだけどな。
あやせに殺されるか、加奈子に過労死させられるか……。
どうにも、俺のマネージャー生活は過酷なものとなりそうだ。


おわり
821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/23(水) 03:39:40.76 ID:3bR2WwCzo
以上。

前に漏らした「成長したかなかなちゃん」で書いてみた。
少しでも楽しんでいただけたら幸いでござる。

ありがとうございました。
822 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/03/23(水) 03:44:41.00 ID:l+x60TE5o
乙ン
823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/03/23(水) 03:54:02.93 ID:dWHZlx100
乙!
良かったb


……ただ160pのかなかなというのは複雑だ
824 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 04:32:25.46 ID:KxhdRBuDO
これはアリだ…
続きはないのか?
825 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/03/23(水) 04:42:46.00 ID:jE2F04KOo
乙!
仕事モードの加奈子はいいな
あの容姿で性格までよくなったら無敵じゃないか
826 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 05:43:52.00 ID:ZKRf5w/do
加奈子SSは良作揃いだな
827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 10:17:11.49 ID:rpm4UIlpo
幼女ものもっともっと
828 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/23(水) 11:15:46.50 ID:avqJP/So0
おつ
頼む続きを!
いつもだが良作のss読むと続きがほしくなるな
829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/03/23(水) 11:36:18.09 ID:/Z8SW9RJ0
>>828
スパっとそこで終わるからこそ綺麗に仕上がってるってのもあるんだぜい?
830 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/23(水) 12:53:06.01 ID:3r3Kw5uv0
>>821
乙、加奈子もかわいいな
次の作品も期待してます

>>829
おっと、某死神マンガの悪口はそこまでだ
831 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 15:12:44.02 ID:N2wifvIDO
>>821
ただ、その時代のあやせたんとブリたんの様子も(ry


>>830の霊圧が……消えた……!?
832 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/03/23(水) 18:24:29.60 ID:pWrS5eEy0
意外に加奈子って、書きやすいキャラなのだろうか。
エロパロの方にも、ゲーム特典小説の前日譚みたいなのがあったし。
833 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 20:23:06.97 ID:BdsR5nYQo
>>831
加奈子の事が羨ましくてしょうがないあやせと、
一発でマネージャーさんと見抜くブリジット
834 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/23(水) 20:25:00.47 ID:uhxycviG0
乙です
かなかなちゃん、いい感じに成長出来て何よりだ
835 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/03/23(水) 21:09:38.14 ID:442w1jEAO
>>821
乙。
六年後とは思いきった設定を。
加奈子ってキャラの魅力の取り方は幅があるものなんだなー

>>827
そんなにブリジットが見たいのか、アンタって人は〜!!
つ言い出しっぺの法則
836 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 21:28:29.60 ID:vxrfsHrDO
>>831
そっちも現在進行形でダラダラだが、>>830は一晩でノート丸1冊分くらい名前の書き取りやらかした漫画じゃね
837 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 21:35:34.25 ID:X2QEaqw/o
どっちも死神漫画じゃね?
838 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 21:52:01.47 ID:uhEjChBSO
>>832
やっぱ一番書きにくいのは幼女√だと思うんだ
839 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 22:08:37.68 ID:Gf3XDwd3o
どうも>>8です
トリを忘れました、こまった、まあいいか
部長×黒猫という誰も得をしない続きが出来たので投下します

ダメっぽい人はNGでお願いします
840 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/23(水) 22:09:40.20 ID:3bR2WwCzo
>>833
期待してるぜ。

一個書けたんで投下しまっす。
イチャイチャは無いが、勘弁してね。
841 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/23(水) 22:10:12.19 ID:3bR2WwCzo
やっべ。

>>839さん、お先にどうぞ
842 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 22:12:53.71 ID:Gf3XDwd3o
>>840
どうも、すみません
ではお先に失礼して




京介「桐乃、お前は俺に構ってもらうのに『人生相談』とか何か重要な話題が必要だと思っているようだが、別に無くてもこっちから構う」

桐乃「なんですって!?」

京介「それとメンドクサイので義理の兄妹で両親説得済みってことにしておいた。

   あとは俺と式を挙げるだけだな」

桐乃「フン、上等よ。私もひとつ言っておくケド、実の兄妹で妊娠ENDって話が

   >>9のあたりあった気がするけど、別にそんなことは覚えてないわ!」

京介「そうか、さあ来い桐乃!」

桐乃「きょうすけーーー!!!」




あやせ「兄妹バカップルの惚気が毒女を死なせると信じて……!!」

瑠璃「ご愛読ありg……違うわ。これから始まるのよ。今回の主役は私よ」

あやせ「前回も前々回も主役じゃありませんでした?」

瑠璃「カプが無いからノーカンよ」

あやせ「そんな!いくら作者がカプ厨だからってお兄さん以外とのカプなんて黒猫派や独占厨が黙ってませんよ!!」

瑠璃「黒猫の相手が京介以外認めない。カプ厨氏ね。黒猫は俺の嫁という方はNGをお願いいたします」
843 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 22:14:28.21 ID:Gf3XDwd3o
「少し……飲みすぎたわね」

3次会のカラオケが終わったころには十分に酔いが回っていた。

あまり歌わずに飲んでばかりいたのだから当然かもしれない。

日中は少し暖かくなってきたとはいえ、深夜の空気はまだ冷たい。

逆にそれが少しだけ酔いを醒ましてくれた。

「あんた……あれだけ飲んで『少し』……なの?」

「桐乃、自分の身体がかわいいなら、瑠璃さんの酒量限界には触れないほうがいいよ」

少し後ろから失礼な声が聞こえた。

後ろに目をやると昨日の主役である高坂桐乃と、その親友の新垣あやせがいた。

二人とも酔っているようだけれど、心配は必要なさそうね。

「飲み方を知っているだけよ。それに式では大仕事させられたんだから、2次会と3次会くらい大目にみなさいな」

もう昨日の話だけれど、先輩と桐乃の共通の友人としてスピーチをした。

さらに受付、2次会幹事と続いて、3次会になってようやくごく親しい知人だけになったのでゆっくり飲ませてもらった。

居酒屋とは違う賑やかさの中で飲むのも悪くないものね。

「それにはすごく感謝してるケド……あの量は『飲み方知ってる』ってだけじゃどうにもならないレベルでしょ」

「予定の無い休日前なら確実に一升瓶空けてるよ。翌日にはケロっとしてるし」

「マジ!?」

「マジ。付き合わされる私が言うんだから間違いない」

「そこに同席しているのだから、あなたも同類でしょう?」

「私は途中でカクテルや水飲んだりしてます!」

「いや、あやせ。それでも十分すぎるでしょ?」

世間の普通と自分の普通が一致しないと苦労をする。

いまさら分かったことではないけれど、酒の席ではいつも思ってしまう。

少しお酒は控えるべきかしら?

「でも、『あんな風』になる飲み方をするより良いのではないのかしら?」

「まあ、そうですね」

私達の視線の先にはぐてんぐてんに酔っ払った高坂(兄)と赤城(兄)が二人そろって真っ白に燃え尽きていた。

瀬名が二人にポカリを渡しているけれど、なにか顔がうれしそう。

理由は……考えるまでも無いわ。

沸点がずいぶんと高くなったので、外ではああいった面を目にすることは少なくなった。

代わりに沸騰したときの勢いが良くなったのだから、身近な人間には迷惑この上ないけれど。

そんなことを考えていると、桐乃がパンっと手をたたいて私達の注目を集めた。
844 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 22:17:14.71 ID:Gf3XDwd3o
「えーっと……それでは、ここで3次会もお開きです!

 今日何度言ったけどもう一度言わせて!

 みんな!今日は私と京介の結婚式に来てくれてありがとう!」

 おめでとー!    幸せになれよー!   リア充爆発しろー!!

みんながみんな、もう昨日から何度言ったかわからない祝福の言葉を、もう一度桐乃に向けて言った。

「もういい時間なので!私は旦那を連れて帰ります!(初夜かー!)

 いやいやwwwwww兄貴があんなだから今日はムリでしょwwwwww

 (今日はー?!)夫婦なんだからいいでしょーー!!」

みんなにからかわれながら桐乃は先輩と一緒にタクシーで帰っていった。


「さて、それじゃあ飲みなおしn」

「「「却下ーーー!!!」」」

「……えぇー?」

「「「えぇー?じゃねえよ!!!」」」

「瑠璃さん、落ち着いてあなたが今日飲んだお酒を上げていってください。」

みんなから抗議の声を受け、あやせからまでもストップをかけられる。

今日は1次会のこともあったからそんなに飲んでないとは思うのだけれど、

言われたので仕方なく、自分が飲んだアルコールの量を思い出す。

えーっと、式が始まって、その最中に少しだけ飲んだ。

2次会に移ってやっと一息つけて、ウォーミングアップ。

3次会はみんなが出来上がってたからカラオケ。歌いながら飲む。

「ビール換算で9Lくらい?」

「「「「アウトーーー!!!」」」」

「えぇーーー!!??」

「「「「えぇーーー!!??じゃねえよ!!!」」」」

みんながみんな私をイジめる。引きこもりたい。

「飲み足りないとは言わないけど、飲み会の締めにゆっくり2〜3杯飲むにはちょうどいいとおもうのだけれど」

「「「ねーよ!!!」」」

「ほら、五更。俺が付き合うから、みんなを困らせるな」

「あ、ゲン」

肩に手を置かれたと思うと、頭ひとつ上から聞きなれた声が聞こえてきた。

三浦絃之介。

もう高校時代からの付き合いで、かれこれ10年近くになる。

ちなみに高校卒業と機に比較的まともな人間になっている。
845 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 22:18:07.02 ID:Gf3XDwd3o
「「「み、三浦さん!!あなたも結構飲んでるんじゃ!!」」」

「ん?いや、五更よりは飲んでないぞ?さっきのカラオケではほとんど飲んでないしな。」

「三浦さん、ほんとに大丈夫なんですか?」

「新垣さん、コイツとの付き合いは俺のほうが長いんだから大丈夫だって」

「ちょっとゲン、あんまり頭をたたかないで頂戴」

私の頭に手を置いたまま話していたゲンの手を掴んで抗議する。

この身長差だと上目遣いどころか見上げないといけないのが難点だ。

「「「三浦さん!五更さんのお相手宜しくお願いします!!」」」

「相手をするのは構わんが、コレをツブしてしまってもかまわんのだろう?」

「三浦さん、日本産で一番かっこいい死亡フラグですが、結果を考えるとかっこ悪いです。」

「だからゲン、頭をなで続けないで頂戴」

手を掴んでもなでるのをやめないので、今度は腕を掴む。

外からみると私が甘えているように見えるかもしれないが、この際どうでもいい。

酔ってるし。

「「「それじゃあ、俺達はこれでー!」」」

「瑠璃さーん!あんまり三浦さんを困らせちゃダメですよー!」

好き勝手言いながらあやせたちは帰っていった。

あやせはともかく、他の人たちはまともに家に帰れるのかしら?

「……さて、飲みなおしはどこに行くんだ?」

「……分かってて言ってるでしょ?」

もう2時前だ。

開いてる店などたかが知れている。

「まあな、俺の部屋でいいか?近いし」

「ええ、構わないわ」

いつもの流れ。二人のルール。

店が閉まる時間になってからの『飲みなおし』。

どちらかの部屋に行ってから、私が愚痴をゲンに聞いてもらうだけの

ただのわがまま。
846 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 22:19:30.02 ID:Gf3XDwd3o
「ほんとにあの子はなにをかんがえてるのかしらねぇ〜?

 親友っていうのは素直にうれしいわよ?

 友人代表挨拶ってのも光栄よ?

 でも相手が私の初彼氏でそれを取ったっていうんだから

 もう少し気を使ってもいいんじゃないの〜?」

「そうだな、お前もその辺はまだ引っ張ってるもんな。

 そしてその話題は俺の部屋に来てから4回目だ」

そんなに話したかしら?

まあ、いい。なんだかんだいってこの人は最後の最後まで私に付き合ってくれる。

何の見返りもなしに……。

「…………ねぇ。」

「ん?」

「なんで……10年近くもこんな……あなたが損をするような関係を続けてくれるの?」

「なんでって……」

「先輩にフラれて、偶然部室にいたあなたに泣きついて……あの時が最初だった」

「……懐かしいなぁ」

「あなたは卒業して働きはじめて、忙しいのに……ずっと私に構ってくれた。

 私が泣きたいときに、私が泣く場所を用意してくれた」

「あの時はいろいろ大変だったなぁ。正直お前が泣きついてくれたおかげでがんばれた気がするぞ」

視線をゲンに向ける。

大分氷の解けた焼酎をカラカラと音を立てながらグラスを回していた。

その氷を見ながらゲンは笑っていた。

「高校出て、大学に行って、バイトやサークルで終電逃した私を、あなたは部屋に泊めてくれた」

「助かったぞー?お前が来るたびに部屋きれいになるし、美味いメシが食えるからな」

「それからよね、私が帰るのが実家じゃなくて、ここになることが多くなったのは」

「いつの間にかお前の私物が増えてたからなぁ、あんまりにも自然すぎて気にもしなかった」

二人でグルリと部屋を見回す。

大きな衣装棚。

大きめの鏡と化粧品類。

女性物のスーツ。

他にもたくさん。

ここがゲンの部屋というにはあまりにも不自然な物とその数。
847 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 22:20:29.85 ID:Gf3XDwd3o
「いい機会だから教えて。あなたがここまでしてくれたのは下心?それとも同情?」

「両方だな。下心7、同情3」

「……その割には、手を出さないのね」

「まぁな」

残っている焼酎を飲み干す。ゲンも薄くなった焼酎を一気に煽った。

「……次は?」

「ウィスキー、コーラで割るか?」

「悪くないわね」

コーラと氷を取るためにコタツから出て冷蔵に向かう。

冷蔵庫の中身を考えると、コレ1杯くらいでお開きかしら。

とりあえずチーズとアーモンドフィッシュで飲もう。

「お待たせ。いつもどおりでいい?」

「ああ」

返事を確認してからウィスキーをグラスに注ぐ。

ウィスキー3:コーラ1

私とゲンが一番好きな割合。

みんなにはキツイと言われるけれどお構いなしだ。

「これが今日のラストかしらね」

「そうだな。もうツマミもないし、それじゃ」

「「かんぱーい」」

一口だけ飲んでグラスを置く。

うん、やっぱりウィスキーの味がよく分かるコレくらいがちょうどいい。

アーモンドフィッシュの袋を開いてお皿に入れる。

チーズはどうしようかしら。

あまり開けすぎると食べきれなさそうな感じだけれど。

そんなことを考えているとゲンが話を始めた。

「さっきの話な」

「え?」

「下心メインの割には手を出さないんだなって話」

「……ええ」

正直珍しい。

こういう場のゲンは聞き専か、話題を振られたときしか話さない人なのに。
848 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 22:21:27.69 ID:Gf3XDwd3o
「……心がこっちを向いてない女でいいなら、5万も出せば抱けるからな」

「!!」

息が詰まった。

「……8年か?それだけ失恋引きずってる女の相手してるんだから、我ながら馬鹿だとおもうよ」

「……本当よね」

よくここまで、この人に頼りっぱなしで来たものだ。

恥もクソもあったものじゃない。

なんて最低な女なんだろう。

「結婚の話も親や上司からも言われるんだけどな、もうすぐ30だし」

「……ごめんなさい、私……ずっとあなたの邪魔n」

「ずっと同じ言葉言ってかわし続けてるんだわ。

 『高校時代からの後輩が好きだから、そいつに敗北宣言されるまで待ってくれ』って」

「……正気?」

「上司はともかく、冗談で親にそんなこと言えるか」

「馬鹿……ねぇ……っ!」

本当になんて馬鹿な人なんだろう。

こんな色んな意味で痛い女より、もっと素敵な女性は星の数ほどいるはずなのに。

「馬鹿だからこれまで、こういう関係でいたんだろうが」

「ホントに……大馬鹿だわ……っ!」

ダメだ、まだ泣くな。

嗚咽をもらす程度に、目に涙を溜める程度に留めなければ。

いまこの人の前で涙を流すわけにはいかない。

「ぁっ!」

「あー……うん。そういう状況になると、エロゲみたいな行動ってしちゃうモンなんだな。」
849 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 22:22:51.20 ID:Gf3XDwd3o
「……馬鹿ぁ……!!台無し……じゃない……!!」

「いや?お前が腕の中で、胸に顔押し付けて泣いてくれてるんだから、実に俺得だぞ?」

そういうことじゃない、台無しだ。

もうこの人の前で、この人の腕の中で泣くことなんてしたくなかったのに。

なのに、こんなことをされたら

「もう……あなたなしで生きていけないじゃない……!!」

「……別にいいぞ?ずっと頼って生きてくれれば」

「…………今なら聞かなかったことにしt」

「ずっと俺頼って生きてくれないか?」

ああ、なんて人だろう。

自分からメンドクサイ道を選びに行っている。

この人は自分の人生までクソゲーにするつもりなんだろうか。

いや、違う。

この人のプライベートは全部クソゲーになるようになってるんだ。

なのに私という更なるクソゲー要素を取り込もうとしてる。

この人はクソゲーを作ること、やることが生きがいなんだ

だったら

「……私の人生の企画とデバック……お願いするわ」

「おう、俺のも頼む」

二人でクソゲーを作り続けていこう。

クソゲーを作り続けて、少しでもみんなに自慢できる良ゲーを作れるようになろう。

ああ、でも良ゲーすぎたらあやせに嫉妬されるかもしれない。

そのときはきっとあやせはこう言って祝福してくれるだろう。





あやせ「いや、瑠璃さんの人生がこんな良ゲーなわけがないですよ。マジで。

     ……え?私は?ねぇ、私は!?」



END
850 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 22:26:38.35 ID:Gf3XDwd3o
投下終了です

>>16 部長と誰だ?

からよくここまで想像できたもんだ、自分
コレだからカプ厨は嫌われるというのに
とりあえず部長は風呂に入りさえすればイケメンだと思う

あやせはPSPが恵まれてる上に、他の職人さんが素敵なので
1人くらいこういう扱いをする変態がいてもいいんじゃないかな?

それでは
851 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 22:31:39.34 ID:Gf3XDwd3o
>>840さん、どーぞ
852 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/23(水) 22:40:04.31 ID:3bR2WwCzo
>>851
承ったー。
以下、投下。
853 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage saga]:2011/03/23(水) 22:40:47.42 ID:3bR2WwCzo
むぅぅぅぅぅ……」

コレを読んでる諸君等は、「おいおい、またかよ」なんて思うだろうが、一応自己紹介させてくれ。
毎度のことで申し訳ないが、「お約束」というのは大事なんだ。こうやって積み重ねていくことで「様式美」へと発展する。
CMでも言ってるだろ?「まほうのことばで、たのしいなかまがポポポポォォォォンッ!!」ってな。
俺の名前は高坂京介。今年の春から大学生となった19歳。
自分で言うのもなんだが、ごく平凡な大学生で、所属しているサークルはないし、趣味だって特筆するようなもんはない。
そんな俺がPCディスプレイを睨みながら奇声を発してたら、普通だったら心配するところなのだが……。
まあ、なんだ。ウチのお袋様の場合はちょっと違う。

「京介ぇ〜、買い物行くのめんどくさいから、あんた代わりに行ってきてぇ〜」

相変わらずノック無しで息子の部屋に入ってくるこのオバサン。以前までは口を酸っぱくして言い聞かせてたんだが、今ではそれもやめてしまった。
だっていくら言っても聞かねえんだもん。俺でなくても嫌になるわ。
そんなお袋の理不尽な要求に耳を貸さず、俺はディスプレイを見続けている。

「あ〜ら〜?あんたまたエロサイト見てたの?」
「なんで俺がPC使ってる=エロサイト鑑賞ってことになってるんだよ!?」

なんて嫌な方程式だ。それもこれも、ウチの妹様がこのお喋り女に告げ口したのがきっかけだ。
まぁ……ね。俺の自業自得とも言えなくはないが……。
俺は体を少しどけて、お袋にもディスプレイが見えるようにした。

「あんたの趣味なんてわかってるんだから、今さら見せられてもねぇ〜」
「エロサイトじゃねえっつってんだろ!!」

ちくしょう……。実の母親をこんなにブン殴りたいと思ったのは久しぶりだぜ。
俺の必死さが伝わったのか、お袋は渋々といった体で、今表示されているサイトをやっと見た。

「自動車免許?な〜に、あんた免許取るつもりなのぉ?」
「そうだよ。無いより有った方がいいからな」

そう、俺は今、普通自動車免許を取得しようと考えているわけだ。
ただ、自動車学校に入校したことのあるヤツならわかると思うが……金が掛かるんだよ、結構な。
けど、俺が悩んでるのはそのことじゃない。いや、それもあるけどな。
自動車免許と一緒に「二輪免許」を取ろうかと思ってるんだ。
ただ、それには一つ問題がある。……資金である。
高坂家の長男の扱いは、非常に悪いからな。
これが桐乃だったら、二輪免許取得料金まで親父達が出してくれるんだろうが……。

「ま、あんたの好きにすればいいんじゃない?それより、ほら。早く買い物行ってきてよ」

はぁ〜〜〜〜〜。人使い、いや息子使いの荒い母親だぜ。
桐乃は常々親父似だと思ってたが、あの理不尽さはお袋似だな。
854 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage saga]:2011/03/23(水) 22:41:17.42 ID:3bR2WwCzo
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散々悩んだ結果、俺は大型二輪まで取ることに決めた。
時間があるときに取っちまった方が楽だしな。
当然、料金も大いにかかったさ。全部で四十万近いお値段だ。
これでも、多少は割り引いてくれたんだぜ。おかげで、俺の貯金でなんとかまかなえたってわけだ。
免許取得後に買う予定のバイクは、ローン組んで、バイトでもしながら払っていくしかないけどよ。
ちなみに今は、大学近くの自動車学校で教習までの待ち時間を潰しているところだ。
度重なる出費で気が滅入っているところに、聞きなれた声が耳に入ってきた。

「あれ?高坂じゃねえか」
「なんだ、赤城か」
「相変わらず連れねえなぁ」

一応紹介しておこう。
たった今、俺になんの断りも入れず隣に座ってきたこの爽やかイケメン野郎の名前は赤城浩平。
高校時代から親交のある友人で、妹のことで頭を悩ます兄貴仲間だ。違う点は、コイツは最高純度のシスコンであるが、俺はそうじゃないという点だな。

「お前も免許取りに来てるのか?」
「それ以外の理由で、こんなトコに来るヤツがいるのか?」
「はは、そりゃそうだな」

そういうコイツも、自動車免許を取りに来ているのだろう。んで、車を買ったら最初に乗せるのは妹の瀬菜だな。うん、間違いない。
そう言えばコイツ、アキバのアダルトグッズショップに行ったとき「バイク買うために貯金してる」って言ってたな。

「なあ赤城。お前、二輪免許持ってるんだっけ?」
「おお、持ってるぞ。それがどうした?」
「いや、俺も取る気でいるからさ、良いバイクショップを知ってるんなら教えてほしいと思ってよ」
「ほ〜ぅ。お前が二輪ねぇ」

なんだ、その意外そうな面は。そんなに似合わないか?

「意外そうな面すんな。ムカつく」
「はは。そう邪険にすんなって。でも、またなんでいきなり二輪取ろうと思ったんだよ」
「男の子ならバイクに憧れてもおかしかないだろうが。それに、取るなら時間があるときに取っちまった方が楽だからな」
「そうだな。んで、同時進行で教習中なのか?」
「いや、先に車の免許を取ってからってココのオッサンに言われた」

そう、予定としてはまずは自動車免許を取ってから二輪に移行することになっている。
なんでも、二輪は路上教習が無いからこういう流れなんだとよ。それに、自動車免許があれば筆記は無くなるからだとも言われた。
大学の帰りや休日に来る予定だから、免許取るまでにどのくらいかかるんだろうな。
ちなみに「合宿免許」という制度もあるらしいが、それはやめといた。

「そうか。じゃあ、二輪取るまでは結構あるんだな」
「そうだな。なるべく来るようにはするが、結構かかるだろうな」
「希望の車種とかはあるのか?」
「具体的には決めてないが、250ccのヤツを買おうかと思ってる。基本、街乗りだろうしな」
「んじゃ、時間あるときに連れてってやるよ。そこで色々見てみようぜ」
「わかった。じゃ、頼むわ」

こうして、俺のライダー化は着々と進んでいった。
855 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage saga]:2011/03/23(水) 22:41:55.66 ID:3bR2WwCzo
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自動車学校に通い出してから一ヵ月半が経った。
時間を見つけては教習を受けた甲斐があり、普通自動車免許の方はすでに取得済だ。今は普通二輪の教習を受けている。

「ねえ」
「……あん?」

休日の教習を受け終わり、帰宅後リビングで麦茶を飲んでいると、我が家の誇りである妹様が雑誌を読みながら話しかけてきた。

「ここ最近、帰りは遅いし休日も出かけてるけど、なにしてんの?」
「自動車学校行ってる」
「はぁ!?聞いてないんですケド……」

そりゃ、言ってねえからな。そもそも、お前に言う必要がどこにあるというんだ?
そして、何故不機嫌そうな顔をしている?あれか?最近付き合いが悪いからか?そりゃ悪かったな。

「いつから通ってるワケ?」
「一ヵ月半前からかな……」
「そんだけ通ってて、まだ行ってるの?なに、アンタ免許も一発で取れないほど馬鹿なの?」
「車の方はもう取ってるよ。今は二輪の教習受けてんだ」
「はあ!?それも聞いてないんですケド……」

そりゃ、言ってねえからな。そもそも、お前に言う必要がどこにあるというんだ?
そして、何故不機嫌そうな顔をしている?ワケわからん。

「そっちの教習はいつまでかかんのよ」
「さあな。始めたばっかだから、また一ヶ月半くらいはかかるんじゃね?」
「二輪って、そんなに時間かかるの?」
「大型二輪の教習もあるからな。かかると思う」
「大型まで取る気なの!?聞いてないわよ!!」

そりゃ、言ってねえからな。そもそも、お前に言う……いや、もうやめよう。

「そういうわけだから、お前や黒猫、沙織には悪いけどよ。しばらくは一緒に遊べないわ」
「べ、別に。アンタがいようがいまいが、こっちには関係ないっつうの!」
「へーへー。さいですか」

まったく、怒りっぽい妹様だぜ。
俺はこれ以上の怒りを買う前に、そそくさと自室へ退避した。
856 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage saga]:2011/03/23(水) 22:42:20.59 ID:3bR2WwCzo
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さて、また時間は過ぎて二ヶ月後。つまり、俺が自動車学校に通い出して三ヵ月半が経ったわけだ。
途中、大学の方が忙しくて教習を受けられない期間もあったが、なんとか人が混み合う夏休み前には大型二輪免許まで取得できた。
そして今日は、俺が注文したバイクが届く日である。
大型二輪を取る少し前にバイクショップで注文し、今日の午前中にバイクショップの兄ちゃんが届けてくれる予定となっている。
俺が自室でソワソワしていると、机の上に置いていたケータイが震えた。

「は、はい。高坂です」
「高坂様ですね?バイクショップ○○の高橋と申します。あと三十分ほどでそちらに着くと思いますので、よろしくお願いします」
「は、はい。お待ちしてます」





「それじゃ、確かにお届けしましたんで。ありがとうございましたー」
「はーい。ご苦労様でしたー」

バイクの簡単な説明と、マニュアル、付属パーツを渡し終わると、高橋さんはバイクを運んできたトラックに乗り込み、我が家の前から去っていった。

「ついに……。ついに、来たか」

俺が購入したのは、HONDA VTR B-STYLE。もちろん新車だ。
赤城とショップに行ったとき、展示されていたコイツを見つけた。
赤と黒で構成されたカラーリング、バイクらしいフォルムに惹かれ、こいつにしようと即決した。一目惚れと言ってもいい。
こうやって目の前にすると、なんとも言えない満足感と高揚感が俺の心から湧き上がってくる。
その代わりと言っては何だが、しばらくはローン生活なんだけどな。
俺は一旦自室に戻り、あらかじめ買っておいたフルフェイスメット、ライダースジャケット、皮手袋を持ち、踝までガード出来るショートブーツに履き替えて外に出た。
装備を適当な場所に置き、バイクにキーを差してシリンダーを回す。
ヘッドライトが点き、エンジンの始動準備が整う。
俺はよく知らないんだが、今のバイクは昔に比べるとエンジンの始動がずいぶんと楽なんだとよ。
クラッチを握り、スタータースイッチを押すと……力強いエンジン音が轟き始めた。

「おお!」

たったこれだけのことなのに、俺は感動しちまったよ。この気持ち、わかるかな〜。
俺は暖機のためにエンジンを点けたまま、ジャケットを着て、手袋をはめた。あと数分で、俺は公道を初めて走行する。
ワクワクしながら暖機をしていると、家の玄関扉が開き、桐乃が出てきた。

「ちょっと。朝からうるさいんですけど」
「あ、すまん。あとちょっとしたら移動すっからよ。悪いけど我慢してくれ」
「あっそ。へぇ、バイク届いたんだ」
「おお、ついさっきな」

文句を言ってきたときは、思いっきり眉を顰めていた桐乃だが、今はなにやら興味深そうにバイクを眺めている。
女の子なのに、こういうモノに興味があるのかね。珍しい。

「これから乗るの?」
「おう、初ライドだ」
「キモ。なにイキイキしてんの」

フハハハハハッ!悪いが桐乃よ、今の俺にはお前の罵倒なんぞ通用せんぞ!まるでそよ風のようだ!
そんな俺の様子が気に入らなかったのか、桐乃はぷいっとそっぽ向いてしまった。フッ、可愛いやつめ。
だが何か言いたいことがあるのか、顔を背けつつも視線はこちらに向けられていた。

「どうした?なんか言いたいことがあるのか?」
「せ、せっかくバイク買ったんだから……その……」

ん?何を言い淀んでるんだ、コイツは。顔もやや赤いし。
俺がそんなことを考えていると、桐乃はやっと言いたいことを口にした。

「こ、今度!私を後ろに乗せなさい!」

大声でそう言った。
は?なに言ってんだコイツは?ああ、そうか。コイツ、道交法なんて知らないもんなぁ。
しょうがない、ここはお兄ちゃんがキチンと教えてやるか。

「そりゃ構わないけどよ。二人乗りするには、免許取得して一年経過しないと出来ないぞ」
「え……?」
「だからよ、最低でも一年は無理だ」

俺がそう言うと、桐乃はずいぶんと間抜けな顔をしていた。やっぱ知らなかったんだな、コイツ。



おわり
857 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage saga]:2011/03/23(水) 22:42:53.52 ID:3bR2WwCzo
おまけ


どうやら、考えることはみんな一緒のようです。


−黒猫の場合−

「あの女から聞いたのだけれど、二輪免許を取ったそうね、兄さん」
「ああ。つか、兄さんはやめろ」
「いいじゃない。そんなことより、私はいつ、兄さんの後ろに乗せてもらえるのかしら?」
「最低でも一年は駄目だ。法律でそう決まってる」
「え……?」


−沙織の場合−

「聞きましたぞ、京介氏。なにやら二輪免許を取得し、すでにバイクも購入済だとか」
「おお。耳が早いな」
「きりりん氏からの情報でござる、して、京介氏。拙者、京介氏にひとつお願いがあるのでござるが……」
「大方予想はつくが……言ってみろよ」
「ええ。拙者を後ろに……」
「二人乗りは免許取得から一年経過しないと出来ないから駄目だ」
「ちょ!まだ言い切ってないでござるよ!」


−麻奈実の場合−

「きょうちゃ〜ん。ばいくを買ったの?」
「おお。誰から聞いたんだ?」
「赤城くんだよ〜。でも、意外だな〜。きょうちゃんがばいくに興味があったなんて」
「男の子だからな。あ、二人乗りなら一年間は出来ないからな。法律で決まってるんだ」
「え!?わ、わたし、まだなにも言ってないよ〜」
「いや、最近その話題になると同じことを聞かれるんでな。先に言っておいた」
「も、もう〜。(なんでばれたんだろ?)」


−あやせの場合−

「お兄さん、バイクを購入したそうですね」
「二人乗りしたいなら一年待ってくれ。真っ先にあやせを乗せるから」
「……まだ何も言ってませんし、お断りします」


−赤城の場合−

「お〜い高坂〜。バイク届いたんなら後ろに……」
「なんで免許持ってるお前までそう言ってくるんだよ!!」


おわり
858 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/23(水) 22:43:57.98 ID:3bR2WwCzo
以上。

むう、初っ端から「を忘れるというミスが……。
完全にノリで書いたんで、それが伝われば幸いです。

ありがとうございました。
859 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 22:50:53.62 ID:Gf3XDwd3o
乙です
後ろに乗せる女の子がいるライダーとか氏ねばいいのに

しかしあえて一言
男は黙ってCBR
860 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/23(水) 22:58:14.43 ID:3bR2WwCzo
>>850
乙だぜい。
三次元に興味を持つ部長なんて……!
部長は清潔にすれば素晴らしい人だと思います。

>>859
俺もあえて言おう。
初バイクは08年モデルのブサだったと。
861 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [saga]:2011/03/23(水) 23:16:40.84 ID:g2Qwt+yo0


それとついでに聞きたいんだが今投下していいんだろうか
順番は厳守するから駄目だったら言ってくれ
862 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 23:17:50.38 ID:rpm4UIlpo
きて
863 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 23:23:20.69 ID:X2QEaqw/o
みて
864 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage saga]:2011/03/23(水) 23:24:22.50 ID:g2Qwt+yo0
では

以下投下
865 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(熊本県) [sage]:2011/03/23(水) 23:25:27.98 ID:97r7jl1Yo
>>842
乙だぜぃ

しかし!
酒で酔ってる奴にスポドリなんて飲ませたら
死ぬかもしれんぜ!ww
866 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage saga]:2011/03/23(水) 23:26:01.85 ID:g2Qwt+yo0
ただ今早朝6時半、俺はイチゴ味のドロリッチを買うためにひたすら走り、売っている自動販売機を探している
あの味は何故か……、いや、ドロリッチは、と言った方が良いな、とにかくドロリッチは何故か殆ど売っていない

そのおかげで俺は今加奈子のパシリとしてこんなに走っている、くそっ。もう辞めてやろうか、こんな仕事。

そんな事を考えていると俺は合計29箇所目である自動販売機に辿り着いた
膝で体を支えて息を整えてから、自動販売機を見るがどんなに願っても願いは叶わないのか、そこにはドロリッチは売っていなかった

俺はもう一度走り出す為にちょっと小休止を入れようとそこにあったベンチに座った

「はぁあ、何でこんな事になったんだ?」
そんな声が俺の口から漏れるがどんなに言ったってこの現状は変わらない

こんな事は昨日加奈子の相談を受けた時に覚悟していた事なんだから。今のこの状況は言わば自業自得だ。

そう、この状況は昨日の加奈子からの一本の電話から始まったのだ。
その事を俺がドロリッチを探している間に話しておこうと思う




    ・・・・・





昨日、俺はベッドに潜り込み何時ものように睡魔のヤローが襲ってくるのを待っていたんだ
だが睡魔のヤローは何時まで経っても襲ってきやがらなかった、何時もなら俺がベッドにもぐった瞬間に、十秒も経たずに襲ってきやがるのに、だ。
867 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage saga]:2011/03/23(水) 23:27:32.28 ID:g2Qwt+yo0

「ちっ、何なんだ?睡魔のヤロー、サボってんのか!?」
そんな言葉を深夜三時くらいにボヤくが、誰かの返答があるはずもなく、俺の言葉はむなしく部屋の空気と一体化したのだった

「ふぅ、しゃーない、何か食ったら眠くなんだろ…」
俺はそう言って勢いよく立ち上がった
さて飯でも食べに行きますかぁ、と思いながら立ち上がったのはいい、だが、なんなんだろうね、俺はこういう星の下に生まれてきたのかねぇ

そう心の中で言いたくなるほどタイミング良く俺の携帯は鳴っていた
まさに立った瞬間ってやつだった

pipipi……pipipi……

今も俺の携帯は机の上で勢い良く鳴っている、何故だかなぁ、今の俺には携帯の音が不幸の音に聞こえてきて仕方ねぇんだけど、これって俺の勘違いかな?

内心涙目になっててもなんでか俺の手は机の上の携帯に向かって伸びていった
そして手に取り着信名を見る、これが加奈子とかなら楽勝でブチッてやったんだけど、いかんせん、こんな時に限って着信名は『ブリジット』と書かれていたのだった

こうなったら俺にブチるっていう選択肢は消える、消えてしまう
俺は内心だけでなく現実でも涙目になりながら電話にでたのだった

「あー、もしもし?京介だが?」
『あん?、よぉ、加奈子なんだけどぉ、ちょっくらお願いしたい事あんだけど?』

………お前かよ!!
そんなやるせなさ99%加奈子のチビ野郎1%で構成された突っ込みを心の中に押しとどめて、俺は初歩的、かつ今現在最も大事な事を聞いたのだった

「お前、なんでブリジットの電話からかけてきてんの?」
『え?だってクソマネってば私からの電話だとブチッてくんじゃん』
「当たり前だ、お前は必ずと言っていいほど俺に不幸を持ってくんじゃねえか」

それと俺の聞き間違いじゃなければ今さっきからブリジットの「お電話返してよー、ねぇってばぁ」って声がお前の後ろから聞こえて来るんだが?聞き間違いか?

『聞き間違いだ』

あれ!?、今さっき俺口に出していなかったよね!?

「もしかしてお前超能力者なのか?」
『そんなわけねぇじゃんww』

そんなわけないらしい
868 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage saga]:2011/03/23(水) 23:28:42.50 ID:g2Qwt+yo0
ま、そんな事は(本当に心を読まれたならどうでもよくないけど)どうでもいいとして

「で?なんの用だ?、まぁ何か用事があっても俺はブチるけどな」
『ちょ、酷くない!?、何で加奈子の時だけクソマネは冷たいんだ!?』

そこまで聞いた所で俺はため息をついた、何を今更言ってんだ?、そんなの簡単じゃねぇか

「じゃ、理由を言うぞ? その@口が悪い。 そのA口が悪い そのB口が悪い
…………分かったか?」
『わからねぇよ!、理由全部一緒じゃねぇか!!』

「ほら、その口調だよ、分かってねぇの?」

そこで加奈子は「うぐ……」と声を詰まらせた

『分かったよ、口調変えればいいんだろう?』
「おう」

俺がそう返事をすると加奈子は演劇の練習みたいにアーアーんんっ、と声の調整を行った

『分かりませんよ!、何で私の時だけマネージャーさんは冷たいんですか!?酷いです!!』
「前言撤回!!、即座にその口調を元に戻すんだ加奈子!!」

俺は即座に片手を口に当てた
『ちょ、何で!?、クソマネの言った通りにちゃんと変えたじゃん!声まで変えたじゃん!!』

うおぇっぷ、危ねぇ、今日の晩に食ったカツが俺の胃液と共にリバースされちまうところだったぜ

「も、もういいんだ加奈子、もう………いいんだ。」
『何この空気!、まるで私が悪いみたいになってんだけど!?』

………え?、加奈子は自分が悪くないって思ってるの?
『思ってるよ!!』

ここで加奈子は電話越しでも分かる程荒れている息を整え始めた

「どうした?何でそんなに興奮しているんだ?」
『誰のせいだとだと思ってんの!?』

俺のせいらしい

「はぁ、で、なんなんだよ、俺に用って」

面倒くさいから俺は加奈子に続きを促した
ったく、なんでこんなに話しが脱線すんだか。疑問でしかたない。

『もう突っ込まないからなぁ!!』

残念だ。
869 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage saga]:2011/03/23(水) 23:29:49.90 ID:g2Qwt+yo0

『それで、その相談っつーのは超簡単、一日私達のマネージャーに戻って欲しい、っつー事なのよ、分かる?』
「加奈子、悩んだんだが、その話し………、断らせてもらう」
『ぜってー悩んでねぇだろ!!、話して十秒も経ってねぇのに何が悩んだだ!?』

そこで俺は顔を伝う汗を手で拭った。ふぅ、久しぶりだ、こんなにボケ倒したのは
本来俺はボケの方なのに何故か俺の周りには個性的過ぎる奴らがウヨウヨいやがるからなぁ、しょうがなく突っ込みに回ってしまうのだ

『はぁ…はぁ…、も、もう満足したか?クソマネ?、それで、真面目な話しどうなのよ、来れんの?』

息を切らしながらそう言う加奈子。ま、俺としても行ってやりたい事この上無いのだが、どうも腑に落ちない、何で俺なんだ?、というかお前の一存で俺をマネージャーに戻すとか出来んの?、という疑問がどうしても沸いてきてしまう
ま、聞いてみりゃわかんだろ。
俺はそう思ってさっき考えた事をそのまま口にした

「一つ疑問なんだが何で俺なんだ?、ていうかお前俺をマネージャーに戻すとか出来んのかよ?、どうも気になってな」

そこまで言ったところで会話が途切れてしまった。な、何だ?、もしかして俺聞いちゃ駄目な事聞いちゃった?
そう思ってたら何やら電話から加奈子のボソボソ……、という言葉?、が聞こえてきた

「え?何て?」

『………ボソボソ』
「あん?、全然聞こえねぇって!」

『………ボソボソ』
「聞こえねぇっつってんだろ!?」

『………ボソボソ』
「ちゃんと言えやぁああああ!!!」

いい加減イラッとくるわ!!
なんなの?、言いたくないのか?
870 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage saga]:2011/03/23(水) 23:31:17.48 ID:g2Qwt+yo0

そんな疑問が俺の中に沸いてくる。ふむ、もういっかなぁ
嫌がってんなら別に無理に聞こうとも思わねぇしなあ

何て事を俺が考えていると加奈子は決心したのか、電話越しでも分かる程大きく唾を飲み込み、話し始めた

『あ、あ、あんたが1番……マネージャーの中で好きだから』

そしてその後の何とも言えない沈黙が訪れた

お前2番目の質問に答えろよ、ま、出来るからこんな事を俺に言ってんだろうけど

ていうか、い、いかんぞ?、自分で聞いといて何なんだがとてつもなく気まずいぞ?
その後俺はどうやって話しを切り出そうか、と考えながら気まずい沈黙に耐えていた
それから何分くらい経っただろうか、俺の精神上ではすでに一時間ほど経っている気がする、そんな時に加奈子はこの沈黙を打ち消した

『り、理由は話したぞ?、で、どうなんだよクソマネ』

……無理、絶対断れねぇって、これ
だってここで断ったら俺ってなによ、ただ人が言いたくない事を無理矢理聞いた最低野朗じゃん
…………ま、別に断る気は最初から無かったんだけどな。

そこからは別にこれといった会話は無い

ただ一つだけ確かなのは加奈子が最後俺が断れないようにしたのはわざとだって事だ、うん。
だってあいつ最後に言った言葉ってこんなのだからな

『へへ、マネージャー単純過ぎ!!』




という事で今俺は仕事終わりに加奈子が飲むから買って来い、って言われたドロリッチを今買いに行ってる途中っつーわけだ
ったく、ちっとはブリジットちゃんを見習って欲しいね、ブリジットちゃんなんか「何でも良いですよ、マネージャーさんが美味しそうと思ったやつを買ってきて下さい」なんて事をニッコリと笑いながら言ってくれるんだぞ?
そんな事をドロリッチを求めて爆走しながら考えていると目の前にまた新しい自動販売機を発見した

「ドロリッチぃいいいいいいいいいいいいーーーーーーーーーいいいいいいイ!!!!!」

そう叫んで自動販売機に群がっていたガキ共をおっぱらう

頼む、ドロリッチよ、あってくれ!


最後の希望と言わんばかりに俺は目を充血させながら目の前の自動販売機を見た
871 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage saga]:2011/03/23(水) 23:32:30.77 ID:g2Qwt+yo0



………あ、あ、あ、
「あったぁああああああああああああああああああ!!!」

その日、俺は合計30台もの自動販売機を巡りドロリッチ苺味を確保したのだった



そして歩く事三十分、ようやく俺は仕事場へと無事帰り、ちょっと前に仕事の休憩に入ったのであろう加奈子とブリジットに向かって買ってきた飲み物を渡した
「で?、どうだったのよ、仕事のほうは」
何の気なしに加奈子達にそう聞くと、予想通りの返答が二人から帰ってきた

「あ?、クソマネは加奈子がこんな事でミスるとでも思ってんのかよ?(片方の眉を上げて)」

「はい、おかげ様で何時もより上手く出来たと思います(超笑顔)」

もうどっちがどっちなのかは言わなくても分かるだろう、てか分かれ
だがそんなに態度が違うとやっぱりこっちとしても二人に対する態度が変わるのは分かって欲しい

「あ?思ってっからそう言ったんだろうが、あ?。それとお前仕事で汗かいてっからって調子に乗ってそんな物ばっかり飲んでたら太んぞコラ!」

「え?そう?それは良かった、これでこっちも来たかいがあったってもんだ、え?なに?帰りにレストランに行きたい?、よしちょっと待ってろよ?予約入れっから」

どっちがどっちに対する返事かというと上が加奈子に対する返事で下がブリジットに対する返事だ
後ろで何か加奈子が叫んでるがもはや気にしない

その後すぐに後半の撮影が始まった

改めて見ると思う事がある

この仕事をやっている人は皆こうなのか?、という疑問だ
カメラの前だと人が変わっているのだ
時に眩しいくらいの笑顔を見せ、時にこっちまで切なくなってくる悲しい顔を見せる
大胆な格好、照れくさそうな格好

そんな、そんな姿を見てるから俺も加奈子の言う事に文句は言っても、逆らったりはしない(あまりに理不尽なのは含まない)

「やっぱ……、かっこいいな……」

聞こえないのは分かってるのに俺の口からは自然と言葉が漏れていた

ま、ちょっとは認めてやってもいい、うん。
872 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage saga]:2011/03/23(水) 23:33:23.26 ID:g2Qwt+yo0


その後、特に変わった事は無く、いつも通りに撮影は終わりタオルと飲料を加奈子達へと渡す
「お、サンキュー!」
「ありがとうございます、マネージャーさん」

何でこんな時だけ加奈子は礼を言うんだか……、俺は今さっきドロリッチを買いに走った事に礼を言ってほしかったよ!

ま、何はともあれ、やっと終わったな〜
思い返せば大変な事ばかりだったが、今は大切な思い出だーはっはっは!

なんて感慨にふけっていると加奈子はまるで当然かの様にこんな事を言い出した

「あ、この後カラオケな〜!、着替えたらすぐ行くから待ってろよ!!ブリジットにはもう話してあっから」
「よろしくお願いしますね!、マネージャーさん!」

はい?why?

俺が会話について行けずにいると加奈子は俺が状況を理解するに充分な言葉を言った

「あ、もちろんクソマネの奢りだかんな」

………こいつ、俺にたかる気だ

ヤヴァい、このままだと俺が奢るはめになりそうだ、だってブリジットが俺によろしくと言っていたって事は加奈子の野郎があらぬ事をブリジットに吹き込んだって事だからだ
俺の中の非常警報が赤いランプを灯しながら何か打開策を!!!、と言って叫んでいる
俺は頭でほとんど考えずに叫んだ

「俺は金無ぇからなぁ!!」

その言葉に加奈子は掛かった!、と言わんばかりにニヤァと笑う
そして俺に対して決定的な一言を言って下さった

「今さっきみたぜぇ?、今日のギャラ、福沢諭吉さんが四人ぐらいでお前につぶらな瞳を向けてただろ?」
「おふぁ!!、何で知っていやがる!」

そんな事を言っても最早後の祭りだった、加奈子は「奢りでよろしくぅ!!」と言いながら行ってしまったし俺が悲しげな瞳でブリジットを見てもブリジットは苦笑いをしてすみませんと言わんばかりに頭を下げて行ってしまった
最早ここからの打開策は無い

そんな俺の口からは、吐息と共にこんな言葉が出たのだった

「oh……no my way(オー、ノウ マイウェイ)」


ちなみに意味は逃げ道が無い、という意味だ
873 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage saga]:2011/03/23(水) 23:34:13.24 ID:g2Qwt+yo0





 ・・・・






「メ〜ルメルメルメルメルメルメ メ〜ルメルメルメルメルメルメ!!!」


今、俺の耳に親のいない休みの日、異常に薄い壁の向こうから嫌というほど聞いた音が大音量で流れてきている
加奈子よ、何故………何故その歌をチョイスするのだ、俺はお前がオタクではないと信じているんだよ?

そんな言葉を苦悶の表情に込めて俺は加奈子を見た

そこにはそれはもう満面の笑みを浮かべている加奈子の顔があった

……こいつ、俺が嫌がるのを楽しんでいやがる



それに気がついた俺は何かが、俺の中の何かが音を立ててプツンと切れたのを自覚した

そこで俺は曲を選ぶ機械(名前を知らない)を手に取り一気に5曲程を入れる


加奈子……、いいよ?、お前がその気なら俺も付き合おうじゃないか……
俺は!!お前がアニソンを歌い続けるならばその空気をブチ壊すために泣き歌を歌い続ける!!


「まず第一曲目!!!、Sky chord 〜大人になる君へ〜!!」


そう俺が言ったら加奈子の顔が引きつった、ような気がする!!
それを見て俺は大きく息を吸い込んだ


『素直な歌が歌えない 飾り付けてしまうから
いつからこんなに楽に自分 守る事を覚えたの?

校庭から見える空 君には何色に写る
ただ真っ白な雲でも 時に真っ黒に変えたくなる

見っかんない sky chord 昔ならあったのに
なくした sky chord 誰のせいでもなく 自分

きっと大人になることなんかより 大切なものがあるの
きっとそれを見つけらんないまま 大人になっていくんだ』
874 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage saga]:2011/03/23(水) 23:35:30.97 ID:g2Qwt+yo0



え?、これもアニソンだって?、そんな細かい事は気にするな!!
ていうかそこ!!何勝手に料理頼んでんだ!?、それ以上俺の財布を薄くする行為をすんじゃねぇ!!

俺がそんな事を言っている間に店員が来てパフェを置いていく
加奈子貴様ぁ、一体何時の間に頼んでたんだ!?

ああ!ブリジットまで何て高そうなパフェを頼んでいるんだ……。

3時間後、店を出る時に俺が叫んだのは仕方の無い事だと思う、ていうか、何でカラオケだけで福沢諭吉さんが二人も俺の手元からいなくなるんだ……


涙目の俺はポケットに手を突っ込んで不貞腐れて歩いている、その両脇には加奈子とブリジットが付いてきていた
なに?両手に花だって?うるせぇ!、片方は毒花だよ!

その内ブリジットは俺の前に申し訳なさそうにしながら立ちこんな事を言ってきた

「あの……やっぱり自分の分だけでもお支払いしましょうか」

ちょっと目が潤んでいる

そんな様子を見て俺はフゥ、とため息をついていった

「いいよ、今回は俺が奢っから」
「でも…」

まだ申し訳なさそうにしているブリジットの頭に俺は勢い良く手をおいてグシャッと撫でた

「本当にいいから」

そういって俺は笑う
それでやっと笑顔になったブリジットは俺の腕に勢い良く抱きついた

やっぱ子供は笑顔が一番だな
875 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage saga]:2011/03/23(水) 23:36:33.93 ID:g2Qwt+yo0

そんな事を思いながらブリジットを見ていると俺はおかしな事に気が付いた
………何かもう片方も重いと思ったら加奈子も抱き付いてきてんだけど
本当に桐乃と同級生とは思えない程、小さな膨らみが俺の腕に押し付けられていた

俺が戸惑っていると視線に気がついたのか加奈子がちょっと見上げてきてボソボソと何かを呟いた

「え?何て?」

聞こえなかったので聞き返すと加奈子はムスッとしながら上目遣いをして今度は大声で言った

「ブリジットばっかズルいぞ!、私にも構え!!」

………はい?
俺がポカンとしていると加奈子はもう一言大声で言った

「お、お前は!!加奈子とブリジットの二人のマネージャーなんだからな!!」

そこまで言われて俺はやっと加奈子の気持ちが分かった
こいつ……俺の事を

何で気ずかなかったのか自分でも不思議だ

そんな事を思いながら俺が見つめていると加奈子は段々と頬を紅潮させていった
そして俺は革新的な事を言ったのだった

「お前……俺の事を玩具かなんかだと思ってんな?」

そこまで言って加奈子はポカンとした、横を見るとブリジットも何か信じられない物を見る様な目で俺を見ていた

「え?なに?、お前自分の玩具を取られた感覚で怒ってたんじゃねぇの?」

え?違うの?。
ねぇ、違うの?
876 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage saga]:2011/03/23(水) 23:37:53.14 ID:g2Qwt+yo0

そんな困った目で俺が皆の事を見てても皆は黙ったまま何も言ってくれない

それに何だか加奈子の方を見たら桐乃が怒った時の様な顔をしている、それも普通に怒っている時ではない、静かに、ただ静かに怒っている時の顔だ

思わずブリジットの方に助けを求める視線を送るが、そこには冷たい目をしたブリジットがいて、俺をジーっと見ていた
そしてブリジットの小さな口から俺に対する死刑宣告が出た

「手遅れです」

とてもニコやかに
その笑顔を見て数秒後、俺は自分の男として失ってはいけない所を勢いのついた加奈子の蹴りが当たる所を見た


薄れていく意識の中、俺は思った

俺が……、何をしたっていうんだ?
877 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage saga]:2011/03/23(水) 23:38:35.29 ID:g2Qwt+yo0







・・・・







「ん………」

俺は瞼越しでも分かる明るい光に当てられ瞼を開けた
目に飛び込んだのは真っ赤な夕焼け、あまりに眩しくて俺は夕日に背を向けた

そしてその直後に聞こえてきたのは加奈子の戸惑ったような声だ

「ちょ、お前何処に顔向けてんだよ」

そこで俺はやっと頭が冴えてきた、そして目を開けるとそこには

へそがあった

「どわひゃぁ!」

そんな声が俺の口から漏れる
そして後ろに落ちると地面に尻餅をついてしまった

改めて冷静に見るとここは公園のベンチだった、そのベンチには加奈子とブリジットがチョコンと座っている
両方顔を赤くして。

何で二人がまだこんな所にいるんだ?
まさかまだ蹴り足りなかったのか?
これ以上蹴られたら俺は男では無くなってしまうかもしれない

俺は警戒して二人を見る

すると二人はまるで練習してたかのようにハモりながら声を出した

『「あの!」「なあ!」』

な、なんだ?
一体何なんだ?

俺は戸惑うばかりだ

「か、カナカナちゃんはさっきマネージャーさんを膝枕してたんだから今度は私の番だよ!」
「それはブリジットがジャンケンで負けっからだろ!?」

そこまで言い合うと二人はこっちを意味ありげに見てきた
な、何なんだ?一体俺に何を求めてるんだ?

やがて二人は諦めたようでまた睨みあった

切がないと二人とも思ったんだろう
我先に!、と言わんばかりに一気に話始めた
878 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage saga]:2011/03/23(水) 23:41:51.56 ID:g2Qwt+yo0

「おい!(あの!)就職さきは決まったのか(んですか)!?」
「いや、まだです!」

雰囲気に負けて俺は目を逸らしてすぐさま答える

何か知らんけど怖い!!
とてつもなく怖い!!

さあ!次は何なんですかこの野郎!!
どこからでも来いやぁ!!!、と言わんばかりに二人を再び見ると
いきなり手を掴まれた

目を潤ませて、思いつめたように真剣な目で二人は俺を見ていた

「どうしたんだよ、二人共」

思わず漏れる俺の言葉
二人はそれに反応したようにこちらを見て大声で言った

『マネジメントに興味はない!?』


悪りぃ、赤城、俺はちっと先に就職決定のようだ
俺はこいつらとちょっくら先に青春を謳歌してくるぜ

そんな事を思いながら俺は晴れやかに返事をしたのだった


「興味?」

俺を真剣に見つめる二人

「あるに決まってんだろ?」

そこで二人は飛び上がって喜んだ
だが、ここで終わりじゃないぜ?

「ただし」

もう一度俺を心配そうに見る二人に俺は言った

「お前等のマネジメント限定でな!」
寒い風が俺と二人の間を通過していった。空気が死んだのは言うまでも無いだろう







最後に一言言うなら、そうだな
俺はそこで赤くなって俺の腕に抱きついている二人を見て考える

そして笑った

俺のモデル達がこんなに可愛いわけがない

かな。
879 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage saga]:2011/03/23(水) 23:44:09.00 ID:g2Qwt+yo0
オマケ


「なぁ、クソマネ?」

ちょっと心配そうな声で加奈子が俺に言い寄る

「何だよ」
俺が答えても一向に返事が来る気配が無い

訝しげに思い加奈子の方を見ると加奈子はニヤリと笑ってこう言ったのだった

「クソマネの男の象徴、ちゃんと機能するか見てやろうか?」

その一言で俺は真っ赤になる、ブリジットなんか気絶してしまってるじゃないか


ま、その後どうなっかはご想像にお任せしよう。



終わり



880 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/03/23(水) 23:49:21.84 ID:g2Qwt+yo0
以上で終わり

かなり衝動的に書いてしまったためグダグダ感がはんぱない
だが投下した事に後悔は無い

881 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/23(水) 23:51:07.73 ID:3bR2WwCzo
>>880


幼女コンビに懐かれるとか、京介は着実にロリコン道を歩いていってるな。よかったぜぃ。
リアが加わればジェットストリームアタック完成ですね。
しかし、相変わらず句読点の使い方が独特だ。
882 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/03/24(木) 00:22:01.59 ID:+HXygamOo
かなかな可愛過ぎだろ
最近は加奈子SSも増えてきて俺得だぜ
883 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/03/24(木) 00:25:28.52 ID:hVdTBMgGo
>>857
あやせだけ扱い違う。京介さんぶれないなww
884 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/24(木) 00:26:12.81 ID:+z2a4ev5o
幼女素晴らしいよ幼女
885 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/03/24(木) 00:34:49.15 ID:611dYzlso
オマケのシーンの時、あやせと桐乃はどんな表情をしているのだろうか、と、ふと思った
886 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/24(木) 01:51:53.73 ID:4BveOI03o
句点のある時とない時って何か理由があるの?
887 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/03/24(木) 03:22:59.08 ID:zPEwXX/yo
メシでも食ってんじゃね
888 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/24(木) 05:08:24.86 ID:sjNiFHGDO
かなかなちゃんSS増えて、僕満足!
889 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/24(木) 06:18:31.46 ID:c6Vy2uvg0
おつ!
加奈子はやっぱいいな いやあやせもいいし いっそハーレmゲフンゲフン
890 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/03/24(木) 07:03:02.47 ID:cTnhlaLQo

加奈子ssが増えてうれしい
891 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/24(木) 09:20:48.56 ID:NYOnVWN1o
>>842


>>858
同じく乙。バイクネタ書こうと思っていたらまさかのネタ被りでござる

>>859
CBRかっこいいよね
俺はZZRも好きだ

>>880
乙。ブリジットくぁいいい
892 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/24(木) 12:15:10.88 ID:R5gDsIhSO
誰か、わりと真面目なブリジット√を…
893 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/24(木) 12:20:05.70 ID:Rv5FFuxvo
僕は沙織がいいな!
894 :VIPにかわりまして妹好ERがお送りします [sage]:2011/03/24(木) 12:37:37.93 ID:5KYyYfQIo
ハァ?
アンタ達なに言ってんの
京介が一番に決まってんじゃん
ヒロイン京介が超カワイイ妹さまに攻略されるのが一番
895 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(石川県) [sage]:2011/03/24(木) 16:33:46.04 ID:fjXKs/+zo
カップルばかりじゃなくて、男同士の愛…友情とかもいいと思うんです。
896 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/24(木) 16:47:40.18 ID:Xi/1JgtDO
>>895
瀬菜乙
897 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/24(木) 16:56:36.80 ID:Rv5FFuxvo
調子に乗って「京介マネージャーの業務日誌 あやせ編」を書いてみた。
蛇足感は否めないが、良かったら読んでくだされ。

以下、投下。
898 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage saga]:2011/03/24(木) 16:57:15.92 ID:Rv5FFuxvo
「新垣さん。俺が嫌いなのはわかりますが、仕事はちゃんとこなしてくださいね」
「そんなこと、言われるまでもありません」

唐突で申し訳ないが、誰か助けてくれ。
俺は今、あやせを車に乗せて現場に向かってるんだが、車内の空気がひっじょ〜〜〜〜〜〜によろしくない。
俺とあやせの仲を改善しろとまでは言わないから、この空気だけでも何とかしてほしい。
はぁ、やっぱり安請け合いしなけりゃよかったかなぁ……。


ーーーーーーーーーーーー


「臨時マネージャー、ですか?」
「そう。来週の火曜は来栖さんはオフだから、高坂くん、手が空いてるでしょ?」

事の発端は一週間前、事務所の先輩の一言がきっかけだった。
なんでも、来週の火曜はどうしても外せない用があるらしく、先輩は有休を取るというのだ。それ自体は別段珍しい話でもない。
ただ、その日あやせは外で仕事があるらしく、最低でも一人は彼女に付いてないといけない。
そこで白羽の矢が立ったのが、この俺というわけである。

「そりゃ構いませんけど、俺でいいんですか?」
「うん。その日は、特に重要な打ち合わせとかが入ってるわけではないし、先方にもきちんと連絡しておくから」
「そういうことでしたら。あとで当日のスケジュール、送ってくださいね」
「了解。ごめんね、突然」
「いいですよ。先輩にはお世話になってますから」

内容自体は大したことではない。要は、あやせの送迎と身辺管理、その日に決まったことをあとで先輩に報告するだけなのだから。
俺が当日までにしておくことは、その日にやろうと思っていた仕事を、前日までにある程度片付けておくことだけである。
問題は……相手が「あやせ」ということだ。
恥ずかしい話ではあるが、彼女との「因縁」は、七年経った現在でも存在している。
このことが、当日の仕事に悪影響を及ぼさなければいいのだが……。


ーーーーーーーーーーーー


そして当日の朝。
今日は事務所に来てから車で現場に向かうことになっているので、俺は事務所内でスケジュールを確認していた。
あらかたのタイムテーブルを頭に叩き込み、PDAで詳細をチェックしていると、

「おはようございま〜す」

本日のパートナーがやってきた。
俺は席を立ち、あやせを出迎える。

「おはようございます、新垣さん。もう少ししたら出ますんで、ここで休んでてください」
「わかりました。今日はよろしくお願いします」

字面では伝わらないと思うが、あやせからは不機嫌オーラが迸ってたよ。そりゃあ、超サイヤ人もかくやと言わんばかりにな。
俺はなんとか笑顔で応対したものの、頬がひくつくのを抑えられなかった。
あやせの気持ちもわかるけどな。
今まで、コイツのマネージャーは女性が担当していたんだ。いくら臨時とは言え、男で、しかも大嫌いな相手が一日付いてくるんだ。心中穏やかとはいかないだろう。
いかん、もう胃が痛い……。
俺は手早く準備を整え、あやせを伴って駐車場へ向かった。
どうか今日一日、穏やかに過ごせますように……。
899 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage saga]:2011/03/24(木) 16:57:45.35 ID:Rv5FFuxvo
ーーーーーーーーーーーー


そして冒頭に戻るわけだが……。
依然として車内の空気は悪いままだ。ハンドルを握る手が、汗でびしょびしょである。
午前の予定は、再来月催される人気雑誌数誌が合同で主催する、リアル・クローズを主としたファッションショーの衣装合わせだ。
都内のスタジオで行われるのだが、到着までの約四十分、この状態が続くと思うと胃に穴が空きそうだ。もう帰りたい……。

「お兄さん。加奈子のマネージャーをしていると聞きましたが……」
「ん!?え、ええ。今年の四月から担当していますよ」

流石の魔王……じゃなくて、あやせもこの空気に耐えられないのか、俺に話しかけてきた。
はっきり言って、助かった……。こんな状況を打破できる魔法の言葉を、俺は持ち合わせていないからな。

「……何故、そんな他人行儀な喋り方なんですか?」
「公私混同を避けるためですよ。いくら知っている相手でも、けじめはきちんと付けないといけませんから。新垣さんも、"お兄さん"と呼ぶのはやめてください」
「わたしがどう呼ぼうと、わたしの勝手です」

あやせは怒ってしまったようで、ぷいっとそっぽを向き、窓の外を眺めている。
彼女の言いたいこともわかるが、はっきり言って子どもの理屈である。ここは大人として、一社会人としてちゃんと言い聞かせないといけないな。
年齢は、二人とも成人しているんだけどね。

「そういうわけにも行きません。今日一日だけとは言え、ビジネスパートナーなんですから。聞き分けてください」
「むぅ……」
「別に呼び方までは指定しませんよ。ただ、"お兄さん"は駄目です。他の呼び方なら構いませんから」

あくまでも常識の範囲内での話だがな。
あやせだって、そのくらいはわかってるだろう。……わかってるよな?

「わかりました。それじゃあ、これからは……きょ、"京介さん"と呼びますから」
「いや、それは……」
「文句は聞きません。それに、わたしはマネージャーさんの事は下の名前で呼ぶようにしてるんです」

そうだっけ?そう言われると、先輩もファーストネームで呼ばれてたような気がするな。
まぁ、ここらが妥協点だろう。交渉事において、相手の要求をある程度汲むのは基本だしな。

「わかりました。それで結構です」
「改めて、今日はよろしくお願いしますね。きょ、京介さん……」

いや、どもるならそんな呼び方するなよ。別に加奈子みたいに"高坂さん"とか、ブリジットみたいに"マネージャーさん"でもいいんだが……。

「あと、"変態"、"死ね"、"通報しますよ"も駄目ですからね」
「そんなこと言いません!!」

中学時代はことあるごとに言ってたじゃねえか。棚に上げるんじゃないよ。
でもまあ、このやり取りのおかげでさっきまで漂ってた険悪な雰囲気は吹き飛んだから、まあいっか。
900 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage saga]:2011/03/24(木) 16:58:30.17 ID:Rv5FFuxvo
ーーーーーーーーーーーー


予定通りスタジオに着いた俺たちは、今は個別に仕事中だ。
あやせは何点かの衣装に袖を通し、修正して欲しい箇所を口頭で伝えている。俺はスタッフと打ち合わせ中だ。
先方には連絡済みなので、後日回答して欲しい事柄を聞いているだけだがな。
おかげで打ち合わせはすんなりと終わり、今は衣装合わせ中のあやせを離れたところから眺めていた。
加奈子の成長にも驚いたが、あやせも同様だ。
中学時代から変わらない艶やかな黒髪に、子どものような丸さが抜け、均整のとれたスタイル。
身長も伸び、俺とさほど変わらない。大人の女性らしさが加わり、若いのにずいぶんと色気を感じる。
そうだな。強いて言えば、栗山千明嬢から鋭さを無くした感じと言えばいいのだろうか。ま、察してくれ。俺は説明が下手なんだ。

「マネージャーさーん。ちょっと来てもらえますかー」
「はーい」

そんなことを考えていると、スタイリストさんからお呼びが掛かった。俺は小走りであやせたちの元に駆け寄る。

「今日、新垣さんから指摘された部分を修正して、また合わせてもらいます。日程を決めてもらえますか?」
「わかりました。今日は回答できませんので、明日以降でもよろしいですか?」
「それで結構です。出来れば今週中で」
「了解です」

スタイリストさんからの要求をメモし、俺はお礼を述べた。これでここでの仕事は終わりだ。
あやせが着替え終わったら、どこかで昼食を取って、また別の現場で仕事だ。

「それじゃ、今日はこの辺で。またお願いしますね」
「はい。よろしくお願いします」

スタイリストさんも含め、全スタッフが撤収作業を開始した。
俺はあやせに付き添い、控え室兼更衣室に向かった。




「それじゃ、表で待ってますんで。終わったら声を掛けてください」
「わかりました。……覗かないでくださいよ、京介さん」
「そんなことしませんよ。心配なら鍵を掛けてください」
「む……」

スタッフがいなくなった途端にこれだ。慣れたとは言え、はっきり言って疲れる……。
あやせは不機嫌そうな顔をしながら、更衣室に入っていった。
俺は近くの壁に寄りかかり、一息吐いた。

「はぁ……。あやせも変わんねえなぁ」

そんな愚痴が、自然と漏れ出てしまう。
確かに、女子中学生には衝撃的な出来事だったとはいえ、七年も引っ張って疲れないのだろうか……。
俺は大いに疲れているよ。現在進行形で。

「ま、自業自得か」

そう割り切らなければ、やってはいけない。いけないのだが……もう少し態度が柔らかくなってもよくね?
とりあえず、今日一日の辛抱だ。なんとかやっていくさ。
決意を新たにしたところで、更衣室の扉が開き、事務所に来たときと同じ、清楚な格好をしたあやせが出てきた。

「お疲れ様です、新垣さん」
「お疲れ様です。次の予定は?」
「ちょっと間が空いて、2:30から渋谷で行うトークショーのリハです」
「じゃあ、その前に昼食ですね」
「ええ。じゃ、移動しましょうか」

そう言って、俺は再びあやせの後に付き添った。
それにしても、あやせの不機嫌度がアップしている気がするんだが……。もしかして、さっきの独り言を聞かれたか?
901 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage saga]:2011/03/24(木) 16:58:56.69 ID:Rv5FFuxvo
ーーーーーーーーーーーー


現在時刻は1:00。
今はあやせと二人で、午後からトークショーを行う会場近くの軽食店で遅めの昼食だ。
どうやらカフェとして開いてる店のようだが、メニューが豊富で女性に人気のある店らしい。
今日は日差しが強く、外の熱気はアスファルトの上の景色を揺らめかせるほどである。冷房の効いた店内はとても過ごしやすかった。
俺はアイスコーヒーとアメリカンクラブハウスサンド、あやせはアイスティーとパニーニをそれぞれ注文した。
状況だけならデートにも見えるが、残念ながら違う。ああ、非常に残念だ。

「京介さん。加奈子はどうですか?」
「あん?」

サンドを頬張っているところに、あやせからそんな話を切り出された。
実にわかりにくい聞き方だが、つまり「仕事の方はどうですか?」という意味だ。
友達思いのあやせだ。気になるのも仕方ないだろう。最近では、撮影以外で一緒になることが少ないからな。

「そうですね。少し危なっかしいけど、順調ですよ。来栖さんは努力家ですから」
「そうですか。この間のテレビ収録も、好評と聞いてますから大丈夫ですよね」
「どうでしょうね。来栖さんは経験が足りないですから、なんとも。でも、それをサポートするのが俺の仕事ですから」
「そう……ですか」

あやせはなにやら神妙な面持ちで、アイスティーのグラスを握っていた。どう見ても、友達を心配している表情ではない。

「あの、何か気になることが?」
「京介さんが加奈子にいかがわしいことをしてないか、それが心配なだけです」
「しませんよ!」
「ふん。どうだか……」

今度はそっぽ向いてしまった。一体なんだというのだ……。


ーーーーーーーーーーーー


さて、またまた時間は飛んで夜の6:30。トークショーが先程終了したばかりだ。
再来月に行われるショーの宣伝も兼ねているため、会場は若い女性だけでなく、マスコミのカメラも入っていた。
加奈子なら緊張してしまう場面だが、あやせはそうはならなかった。他に出演予定のモデルさんが二人いたからとは言え、その居住まいは堂々としたものだった。
大きなショーを何度も経験しているあやせだからこそ、と言えるだろう。

「お疲れ様でした」

控え室に戻ってきたあやせに、俺は冷えたミネラルウォーターを差し出す。
日も落ち掛けていたとはいえ、屋外でのイベントだ。ステージ上の気温はひどいものだったろう。
あやせはペットボトルを受け取ると、即座に三分の一ほど飲み干してしまった。

「ふぅ」
「よほど暑かったんですね」
「ええ、ライトもありますから結構キツいんですよ」
「なるほど」

これまでの人生でステージに上がることなど無かった俺には、その辛さはわからない。だが、そんな中でもきちんと仕事をこなしたあやせはすごいと思った。
人当たりの良い笑顔を浮かべ、司会や他のモデルさんとトークをこなし、イベントの宣伝もきっちりやった。プロとしては当然のことだが、それを実践できる人間は意外に少ない。
中学時代から読者モデルをしてきたのは伊達じゃないということか。

「でも、流石ですね。正直言って感心しました」
「そ、そうですか?」
「ええ。あまり大きい声では言えないんですけど、テレビ収録前の来栖さんは、すごく緊張されていたので」
「へぇ……」
「あ。今の話、来栖さんにはオフレコで。陰口のつもりで言ったんじゃないんですけど、比較されるのは嫌だと思いますから」
「……わかりました」

……あれ?なんであやせはしょんぼりしてるんだろう?
一応褒めたんだが、何が気に入らなかったのかわからん。やっぱり、あやせの担当は女性じゃないと駄目だな。俺じゃ細かい機微はわからん。
こういうときは下手に触れない方がいいな。うん、そうしよう。

「じゃ、少し休んだら事務所に戻りましょう」
「そうですね」

こうして、俺の臨時マネージャー業は幕を下ろした。
902 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage saga]:2011/03/24(木) 16:59:23.24 ID:Rv5FFuxvo
ーーーーーーーーーーーー


翌日。俺は先輩に、昨日の報告をした。

「先輩から回答してほしい事とかは、メールで送りました。ちゃんと閲覧してくださいね」
「オッケー。ありがとね、高坂くん」

これで俺の仕事は終わり、ようやく本来の業務に戻れるというわけだ。ふぅ、なんとかうまくいった……と思う。
俺は報告を終え、一息吐きながら冷たいお茶を飲んでいると、先輩から「そうそう」と声を掛けられた。

「昨日のトークショー、朝の情報番組で少し流れてたけど、高坂くんは見た?」
「いや、見てないっすね。なんかまずいことでもありました?」
「その逆。あやせちゃん、いい顔してたの」
「はあ……」

先輩が何を言いたいかわからないんだが、どうしたらいいと思う?
俺の心情を細かく読み取ったのか、先輩はPCを操作し、ニュースサイトのとある記事を表示させた。それは、昨日のトークショーを写真付きで報じているものだ。
そこに貼られている写真を指差し、

「ほら、これ。いい顔してるでしょ?」
「はあ……」

でしょ?なんて言われても、俺にはわからない。雑誌用の写真のときと何か違うのか?
俺の生返事も気にせず、先輩は続ける。

「いつもよりもすっごくいい表情してる。高坂くん、何か気付いたこと無い?」
「そう言われましても、俺にはわかんないっすね」
「もう、使えないわねぇ〜」

ぐっ!今の一言は痛かった……。痛かったぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!
先輩、時々言葉がキツいんだよな。正直なだけなんだろうけど。

「いつもこんな感じだと良いのになぁ。今度から、高坂くんにあやせちゃんのマネージャーもお願いしようかな」
「いや、勘弁してください。嫌われてるんですから」
「あら、なんで?」
「プライベートなことなんで、詳しくは言えないっす」
「ふぅ〜ん」

なにやらニヤニヤしながら俺を見つめる先輩。絶対勘違いしてるな。
けど、勘弁してほしいのは本当だ。俺は加奈子で手一杯だし、あやせも嫌だろうしな。

「ま、深くは聞かないわ。でも残念」
「すいません」
「いやいや、別に非難したわけじゃないから」

そう言って、先輩はからからと笑った。なんつーか、バジーナのときの沙織みたいな人だな。
俺はそんなことを思いながら、表示されたままの写真を見ていた。俺にはわからないが、確かにそこには、あやせの良い笑顔が写ってたよ。


おわり
903 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/24(木) 17:00:41.22 ID:Rv5FFuxvo
以上。

少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
ブリジット編と加奈子第二弾もネタは考えているが、形になるかは正直わからん。
あまり期待しないでくれ。

ありがとうございました。
904 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/24(木) 17:03:29.11 ID:DYBANw0QP
期待せざるを得ない
905 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/03/24(木) 17:05:27.35 ID:cTnhlaLQo

加奈子編きたいしてます
906 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/24(木) 17:43:44.42 ID:+z2a4ev5o
期待値の上昇が後を絶たない
907 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/24(木) 18:05:19.29 ID:rhRuZ6YUo
乙でした!
あやせとの展開も含めて期待しております
908 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/03/24(木) 18:16:54.57 ID:8vMELOiJ0
まだ続編があるならスレ建てたほうがいいんじゃない?
ってかそれだと嬉しい
909 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/24(木) 18:56:48.05 ID:FO1CaZ8DO
あとブリジット編と加奈子編第2弾の二つ程度ならわざわざ立てなくてもいいと思うけど
それ以上の長編になるようなら個別スレを検討してみてもいいかも
910 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/24(木) 19:12:41.03 ID:sjNiFHGDO
あやせルートも話続くよね?ね?
なんで不機嫌なのかわからなかったしそのへん詳しく
911 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/03/24(木) 19:35:07.12 ID:s3L/tmpAO
乙です!次も期待

>>910
単に、京介には良い感情もってないから、じゃないですかね
原作設定ではそうなんだけど、SS読んでると忘れがちw
912 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/24(木) 19:42:56.10 ID:Rv5FFuxvo
スレ立ては今のところ考えてないっす。そこまで話膨らんでないしね。
>>909の言う通り、残り二つ書いて、ある程度筋道ができたら立てるかもしれないけど、今は無理。
そもそも残り二つも書けるかわからないんで。

>>910
理由は一応考えてあるけど、説明するのもなんなので好きに想像してくれ。
スレ立てたら明かすかもしれない。
913 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/24(木) 19:47:00.29 ID:NYOnVWN1o
京介入社を知り自分専属にしようと事務所にかけあったが叶わなかったためと予想
914 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/24(木) 20:08:15.26 ID:2lM+9tCXo
>>911
えっ!?
915 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(奈良県) [sage]:2011/03/24(木) 20:28:16.96 ID:2aQlGnqQo
いい表情してたってことだから京介と一緒でうれしかったってのが国語のテストでは正解だろうな
916 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/24(木) 20:42:43.48 ID:5P4f8DC+0
>>914>>915
落ち着け
>>911はあやせ本人の照れ隠しだと考えるんだ
するとあら不思議
917 :911 [sage]:2011/03/24(木) 21:09:19.73 ID:s3L/tmpAO
いや、表向きそうだということで…
冒頭の部分ね

ス、スマンカッタ…
918 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/03/24(木) 21:43:47.97 ID:WmrdETJAO
なんという加速
このままでは終末を待たずして世界が一巡してしまう、的な

すごく…乙です…
だけじゃ味気無いだろーから各々簡単に感想置いてくナリ。

>>842
恥ずい台詞のオンパレードに胸熱。部長△
ウェットな黒猫とは意外にマッチング、これは応援したい

>>858
杓子定規に後部座席を断られた桐乃がまた兄貴に馬乗りになる展開ですねわかります

>>880
ジャスラック平気?
それはそうと、加奈子をはじめ桐乃やあやせみたいな突発的危険に備えて京介は骨掛けを修得すべきww

>>903
白あやせ可愛い。
あとは強いて言うこともないんだけど…
「変わらねえなぁ」と言ってる京介自身内面は大して変わってないトラジコメディぶりが安定。
919 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/03/24(木) 22:45:01.27 ID:PwJew6A4o
>>915
それ、問題の読み間違いでテストでは不正解…
920 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/24(木) 22:48:21.39 ID:OWjb2/ro0

このシリーズ好きだから、続けてくれると嬉しいです
921 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/24(木) 23:11:05.70 ID:Q82DOd/IO
すごい読みやすかった
922 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/24(木) 23:18:04.46 ID:1UcVZjdWo
足をケガしてしばらく不自由な黒猫
部長が色々お世話

例1
立ち上がるとき

黒(だっこのポース)
部(抱き起こし)

足が治った後もついついやっちゃって
高坂家に遊びに行ったときにやって顔真っ赤



投下してすぐに寝るとロクな夢みねーな


マネージャー京介かっけーな
モデル組も人気杉て嫉妬
乙でした
923 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/25(金) 01:37:19.03 ID:7Im7394Q0
スペックが高くなった京介はいいな
924 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/25(金) 05:06:13.61 ID:CNp7AJeDO
これ以上部×黒やるならNTRスレでやれ
925 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sagee]:2011/03/25(金) 06:21:00.12 ID:bEXB1xVH0
五更姉妹でキャッツアイ


寝る
926 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/03/25(金) 10:06:16.48 ID:YFRYBq+W0
>>924
注意書きあればいいんじゃね
927 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/03/25(金) 10:40:50.46 ID:isBKQi3uo
名前欄にでも題名あればNG出来るんだろうけどね
928 :922 [sage]:2011/03/25(金) 13:23:04.18 ID:tMwQKdfSO
不快にさせたようで申し訳ありません
NTRっていうはもっと悪意があって、救われないとダメなモンと思ってました
コテハンかスレ立てを考えます
929 :922 [sage]:2011/03/25(金) 13:23:31.97 ID:tMwQKdfSO
不快にさせたようで申し訳ありません
NTRっていうはもっと悪意があって、救われないとダメなモンと思ってました
コテハンかスレ立てを考えます
930 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/25(金) 13:25:49.57 ID:9MADW4cYo
大事なことなので
931 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/25(金) 13:37:37.84 ID:KhEG8J+DO
>>2にも書いてある通り、投下前に注意書きすりゃええやん。
そもそも、これってNTRじゃないと思うんだが……。
932 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/25(金) 13:40:56.71 ID:kZekVMeto
書く前にカップリングを予告しておくようにしてもらうってことでいいんじゃないの
933 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/03/25(金) 13:44:39.24 ID:xDEPfwgQo
NTR感じる人もいるってことだろ
俺は理解できんが
934 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/25(金) 14:04:41.37 ID:HVPWlyWSO
>>924 がNTRの定義を勘違いしてるだけでしょ。ググって解決


抱っこのポーズって、桐乃が捻挫して京介が世話焼く話を思い出した
935 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/25(金) 14:32:35.74 ID:J46iT7s6o
NTRってわけじゃないけど嫌がる人もいるから>>932でいいんじゃない
936 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/03/25(金) 16:33:38.82 ID:ETsU/WWOo
単発ネタならまだしも、続けるなら荒れるのわかってて
わざわざここでやらんでもいいんでは?
937 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/25(金) 17:23:29.64 ID:hhJ3pYv9o
バレンタインの人の後編はどうなったのかな……。
938 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/25(金) 20:50:37.99 ID:iYs1SFBL0
個人的に部長は好きなキャラだから、ヒロインの一人とくっつくのは特に嫌ではないな
でもココだとどうしても荒れるから、やっぱり別にスレ立ててやって欲しいかも
939 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/25(金) 20:52:42.27 ID:9MADW4cYo
部長が普通にイケメンなのが納得いかない
940 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/25(金) 21:36:52.66 ID:uxG3Wum6o
>>924>>922が不意打ちだったからだと思う。
あれだけで気になるのかって思う人もいるだろうけど、俺はちょっと気になった。
自分でも気にしすぎだとは思うんだけどね。
941 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/25(金) 22:36:48.74 ID:9tUawD4Oo
予告が来たが……真壁くんヒロインだったのか
942 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/25(金) 23:19:47.56 ID:hhJ3pYv9o
あと四日で13話配信か。
瀬菜ちゃんと真壁くんSSが増える予感。
943 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/26(土) 00:46:31.98 ID:v/3esz+F0
>>599のちょっとした続き的なの書いてみたんで投下します。
今回は短いです。
944 :CP表記忘れた…。京介×ブリジットです… [sage]:2011/03/26(土) 00:48:25.20 ID:v/3esz+F0

俺の名前は高坂京介。18歳。
彼女いない歴18年…だったんだが、そんな俺にもついに彼女が出来た。

先日、俺たちは『偽装デート』の名目で遊園地に行った。
しかしそこで俺が本当に彼女の虜となってしまい、最終的には俺が告白して、俺たちは晴れて付き合えることとなったのだ。

…そう。
俺の彼女の名は、ブリジット・エヴァンス。10歳。
彼女は正式に事務所にも所属しているコスプレイヤータレントで、ちょっとした有名人でもある。

無論、俺たちの関係は二人だけの秘密だ。
『俺、8歳年下の小学生と付き合ってるんだ!』なんて、周りに打ち明けるのは結構な勇気がいることだからな………

だが、ここだけはハッキリさせておこう。
決して俺は“ロリコン”と言われることを恐れているわけではない。前回ラストでの「ロリコン上等!」という言葉に嘘偽りは一切ない。
ただ、今のままで交際宣言してもなかなか受け入れてはもらえないとは思う。
だから周りには、環境を整えてから正式に報告したいと考えているのだ。
俺は今や『恋に年齢なんて関係ない』とさえ思っているが、世間的には俺たちの関係はある意味で“禁断の愛”なんだろうなという自覚はあるからな。

一回だけ週刊誌にスクープされた時はかなり焦ったね…。
まあ大半の読者が記事を信じなかったから、何だかんだで『知り合いのお兄さん』ってことでガセネタとして扱われたみたいだけど。
ほとぼりが冷めてホッとしたよ…。思ったより全然大事にならなかったのも奇跡的だった。
危うく、社会的に抹殺されるところだったしな。あやせなんて直接的な意味で俺を抹殺しようとしてたしよ…。


945 :CP表記忘れた…。京介×ブリジットです… [sage]:2011/03/26(土) 00:50:01.45 ID:v/3esz+F0
☆☆☆☆☆


そして今日、ブリジットは初めて俺の家に遊びに来ている。
前述の通り、周囲には俺たちの恋人関係はまだ内緒なので、このイベントは(俺の中で)かなり慎重に企画されたものだ。

親父は当然仕事でいない。
お袋はついさっき買い物に出かけたばかり。
桐乃はモデルの仕事の後、なんかの打ち上げがあるとか何とか言って朝から出かけて行った。
夕飯も友達と食べてくるらしく、あやせと加奈子も一緒だそうだ。
もちろん、黒猫・沙織・麻奈実がウチに来る予定もなし。

つまり、この家にはしばらくの間誰もいないわけだ。
…俺とブリジットを除いてはな。


そしてブリジットは…。
ついさっきまでは一緒にメルルのゲームやって遊んでたんだが、
「きょうすけさん…わたし……ねむくなってきちゃったみたいで………」
なんつって、今は俺のベッドの上でスウスウと可愛らしい寝息をたてて眠ってしまっている。
今日はポカポカしてていい天気だし、昼寝したくなる気持ちもわからないわけじゃない。
でも――


無人の家。そして隣にはベッドに横たわる愛しの彼女。

この状況はさ、まあアレだよ。
この状況はその………いわゆる“絶好の機会”ってヤツだよ…。


自分で言うのも小っ恥ずかしいが、これまでの俺たちの関係はとてもピュアだった。
手が触れ合っただけでも互いに微笑み合うような、典型的な純愛だった。

でもよ、この状況ですることと言えば、一般的には1つだけ………だよな?

そんなことを思わず考えると、うっかりリヴァイアサンが起動し始めようとしている。
…変な目で見るな!これは自分の彼女の無防備な姿を前にした男にとって、至って普通の反応だ!


…とはいえ、俺にもまだ理性はある。
だってこれってさ………一歩間違ったら犯罪じゃね?いくら付き合ってるとはいえ高校生と小学生がさ………
それに、もしもこんなことしてブリジットに嫌われたら!?
「きょうすけさんの…ばかぁ!うえぇぇぇぇぇぇん……」とか言って泣かれたりしたら!?


「う、うーん………」

葛藤中に突然隣から声が聞こえてきて、俺はビクッとした。
まずい、ブリジットが起きた!
寝起き一発目で、彼氏の膨らんだズボンを見せるわけにはいかん!

「スー…スー………」
「な、なんだ…寝言か……」

よ、よかった…。思わず安心して独り言まで言っちまったよ…。

だがブリジットの次の一撃が、俺の理性を処刑台へと誘うのであった。

「きょ…すけ……さん…。だい……すき……………」

親父!お袋!桐乃!麻奈実!………わりぃ、俺死んだ!(社会的な意味で)
寝言で大好きですは反則だろ!?
もういいや、俺も素直になろう。後々のことは後からでいいや。
でも…やっぱさすがに突然はマズいよな。

「ブリジット。ブリジット。」
「…むにゃ………きょう…すけ…さん?」
「おはよう。ブリジット。」
「おはよう…ございます……」

気持ちよく寝ているところ悪いとは思ったが、俺はブリジットを軽くゆすって起こした。
ブリジットはまだ寝ぼけているみたいで、いつもに比べて何だかぼんやりしている。
その姿もかなり愛らしい。
しかし俺は、そんなブリジットとこれから………

946 :CP表記忘れた…。京介×ブリジットです… [sage]:2011/03/26(土) 00:52:15.09 ID:v/3esz+F0
「ブリジット。その……お、俺と!俺とヤってくれないか!?」
「え、ええっ!?」

我ながらストレートど真ん中過ぎたかな…。
ブリジットも一発で目ぇ覚めちゃったみたいだし……顔が尋常じゃないくらい赤くなってるぜ…。
だが、これが俺の正直な気持ちだ!この思い…君に届け!

「や、ヤってほしいっていうのは……もしかして………」
「こんなことを突然言われて、ビックリさせちゃったことは謝る。
でも、嫌がるお前に無理矢理…ってのは嫌だったんだ。だから、最初にお前に確認しておこうと思って…」
「でも……す、少し恥ずかしいです………」
「そのことだったら大丈夫だよ。今家には誰もいないし、みんなもすぐには帰って来ないからさ。」
「……………」

ブリジットは俯いて完全に黙り込んでしまった。よく見ると身体も小刻みに震えてしまっている。

そうだよな…。いきなりこんなこと言われたら………
ちくしょー!俺は自分のことしか考えないで、なんてバカなことを!

「あ、あの!変なこと言ってごめん!今言ったこと全部忘れてくれ!……本当に、ごめんな…お前の気持ちも全然考えないで………」
「…テレビで………」
「…えっ?」
「こ、この間見た、お昼のテレビドラマで言ってました!…“初めて”は、本当に好きな人にあげるものだって…。
そして、私の本当に好きな人は…きょうすけさんです!」
「ブリジット…。」

お前は、お前はそんなに俺のことを………

「だ、だから私も!“初めて”は、きょうすけさんとがいい…です………」

ブリジットの表情からは、小さいながらも強い決意が感じられた。
さっきの震えは武者震いみたいなものだったんだろうか?
…女の子にここまで言わせといて、俺が何もしないなんてダメだろ。
こうなったら、俺も覚悟決めるぜ。“禁断の愛”が何だってんだよ!!!!!

「ブリジット。ほ、ホントにいいんだな!?」
「は、はい……私は…きょうすけさんとだったら………」

まずい。言い出したのは俺なのに、さっきから鼓動がドクンドクンと鳴り止まねえ…。
落ち着け、俺。こういうのは普通男がリードして…

俺は一旦、自分自身の精神を静めるために目を閉じた。
その時――


ちゅっ…。


えっ………?

あの日、遊園地で乗った観覧車の時みたいに、それはあまりに突然だった。
俺の唇は、一瞬のうちにブリジットに奪われたのだ。

「ブリジット…」

突然のことに困惑する俺の目の前には、顔どころか身体中真っ赤に染まったブリジットの姿があった。

…そうか。
よくよく思えば、俺たちにとって唇同士のキスはこれが“初めて”だ。
もしかしてブリジットが言ってたのは――


「私の、“初めて”あげたんだから………」

まだドキドキがおさまらない俺に、ブリジットは死にそうなくらい赤面しながらも、更なる強力な一撃を与えてくれた。

「………一生、ポイしないでくださいね…?」

「…ブリジット!」

俺のために精一杯の小さな勇気を振り絞ってくれたブリジットを前にして、『もっとイイコトしようぜ』と迫れるほど俺は鬼畜じゃない。

俺は愛しい彼女の名を呼んで強く抱き締め、今度は自分から……………


947 :CP表記忘れた…。京介×ブリジットです… [sage]:2011/03/26(土) 00:53:37.22 ID:v/3esz+F0

☆☆☆☆☆

よくよく考えたら、10歳に「俺とヤってくれ」なんて言ってもわかるわけねえよな…。
特にブリジットなんて純真の塊だしよ。
ま、まあ本当はちょっとホッとしたけどさ…。
まったく、あの時の俺は何考えてたんだか。
やっぱり何事も手順は大事ってことなのかね…。


次のステップがいつになるかはわからない。

でも…俺はあの時、あいつを一生『ポイしない』って決めたんだ。


だからもうちょっと!もうちょっとだけ待とう!

確か、中学の保健体育で詳しく習うよな?
そう…だよな?

(終わり)
948 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/26(土) 00:56:02.25 ID:v/3esz+F0
以上です。

「ポイしないでくださいね」は過去に誰かが言ってたような気がして…使わせていただきました。
ちょっとした繋ぎのつもりで書いたんで、他の方もどんどん次投下しちゃってください!
949 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/03/26(土) 00:57:03.20 ID:slH2Dogao
京介さんまじ犯罪者!
950 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/26(土) 01:17:25.32 ID:btqc0L3SO
これがブリジットの虜になってしまった者の末路か…
951 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/26(土) 01:32:08.35 ID:JuD4uf7DO
乙だぜぃ。

積極的なブリジットを前に、京介さんは理性を保てるのか!?
まぁ、中学生でも関係を物のはいかがかと思うがね。
成長期だと、骨盤歪んだりしちゃうんだろ、確か。

しかし、最近は加奈子とブリジットが幅を利かせてますなぁ。
952 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/03/26(土) 02:31:24.05 ID:/vkcVdmx0
小学生に迫るゲスな京介にはブリジットはもったいないから俺によこせ

しっかり調教してヤる
953 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/26(土) 02:45:36.42 ID:HbtDSKvSO
>>952
しっかり京介を調教してやってくれ
954 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/26(土) 03:04:28.54 ID:cBJD/+s50
黒船「ポイしないでくださ〜い」
955 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/03/26(土) 03:05:53.91 ID:3kLHf0wAO
>>948
おつ〜
ブリジットものは(だけに限らないけど)京介の恋愛観やヒロインへの距離感が書き手毎に違うから新鮮
ただこの京介さんはちょっと直結思考すぎな気もする
萌えを超え保護欲を超えて愛欲になった、のかww


あと次スレが近いので今のうちに
関連スレは>>132>>800
かな? 一つはじきにhtml化されるかもしんないけど
956 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/26(土) 03:47:48.68 ID:D3vJ43x7o

くそう、このブリジットくぁいすぎる

最近ブリジット√が豊作でうはうは
957 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/26(土) 04:31:03.68 ID:JuD4uf7DO
>>955
そだね、今のところはそれだけだと思う
958 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/26(土) 05:50:34.59 ID:9EWxoblqo
>>957
これは?
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1297087278/
959 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/26(土) 05:54:38.28 ID:JuD4uf7DO
>>958
あぁ、それもあったね。
更新止まってるけど、いいんかね。
960 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/26(土) 06:20:00.18 ID:i8dgPuHDO
ブリジット天使すぎる…
961 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/26(土) 07:27:41.34 ID:p6nZkmtL0
>>948

ブリジットが可愛いいな〜、続きを期待してます
962 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/26(土) 09:35:04.57 ID:0Wfq2DaSo
幼女はいいね
心が洗われるようだ
963 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/26(土) 09:40:16.48 ID:btqc0L3SO
>>955
ガチ幼女√はどうしても京介がロリコンっぽくなっちゃうもんなww
いや、でもそれでいいと思うんだ
964 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/26(土) 12:42:41.79 ID:4VMu2sJ5o
>>948
乙っす〜

この京介さん、一歩間違えれば鬼畜√直行な気がするぜ!
次も期待しちょります。
965 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/26(土) 12:43:51.77 ID:4VMu2sJ5o
京介×ブリジットの流れに便乗しちゃうぜ。

以下、投下。
966 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage saga]:2011/03/26(土) 12:44:17.95 ID:4VMu2sJ5o
「二人とも、お疲れ様」

深夜番組の収録が終わり、控え室に戻ってきた弊社所属のタレントを労う。ここ最近、こういう場面が続いていた。
一ヵ月半前に収録したバラエティ番組の反響で、この二人に対するテレビ出演のオファーが増えたためだ。

「お疲れ様です、高坂さん」
「マネージャーさん、お疲れさまです」

安っぽいパイプ椅子に腰を下ろした二人に、それぞれ飲み物を手渡す。
加奈子には、いつものクラッシュタイプゼリー入りのカフェスイーツを。
ブリジットには、ペットボトルに入ったロイヤルミルクティーを。これも、最近では当たり前となった光景だ。
笑顔を浮かべ「ありがとうございます」と丁寧な礼を述べる二人。疲れているにも関わらず、それを感じさせない。
だからと言って、すぐにここを出るというようなことはしない。
幸い、少しぐらいはゆっくりできるのだ。休める時に休ませる。タレントの健康管理は、マネージャーの基本だからな。

「少し休んだら、ここを出ましょう。時間も時間だから、どこかで食事も。希望はありますか?」
「わたし、甘いものが食べたいです!」

快活な声で答えたのは、六年の時を経て美しく成長した少女――――ブリジット・エヴァンスだ。
輝くようなブロンドのロングヘアーは健在で、大きな蒼色の目、すっと伸びた鼻梁、鮮やかな桜色をしたやや薄めの唇。
白磁のような肌、スリムながらも出るところは出ていて、加奈子よりも年上に見えなくもない。身長も、加奈子どころか俺より少し高い。173cmくらいか。
ただ、中身は16歳の女の子だ。無垢な笑顔を浮かべ、甘いものが食べたいと元気いっぱいに言う、どこにでもいるような女の子。
正直、食事として甘いものを食べるのは遠慮したいところだが、この顔を見ると反論など出来ない。出来るわけがない。

「わかりました。来栖さんも、それでいいですか?」
「はい。私も、甘いものが食べたい気分だったので」

加奈子も、この可愛い妹分のお願いは断れないようだ。
準備を終えた俺たちは、三人揃って控え室を後にした。


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加奈子が通っているダンススタジオにほど近いカフェで、俺たちは少し早めのティータイムと洒落込んだ。
この店にしたのは、午後から加奈子のダンスレッスンが入っているためだ。ちなみにブリジットは、午後からオフとなっている。
香ばしい豆の匂いがする中、注文した品が運ばれてきた。
俺はアッサムティーにミートパイ、加奈子はこの店オリジナルのブレンドコーヒーにいちごタルト、ブリジットはココアとハニートーストだ。太るぞ。

「来栖さんをスタジオにお送りしたら、エヴァンスさんを事務所まで送ります。しばらくお一人ですけど、よろしいですか?」
「わかりました。レッスンが終わる前に、またスタジオに来てくださいね」
「了解です」

加奈子の了解も得られたので、俺の午後の予定が決定した。
本来ならブリジット担当のマネージャーがここにもいるはずなのだが、こうして二人一緒の仕事があるときは俺が身辺管理をしている。
じゃあその間、ブリジットのマネージャーは何をしてるかって?無論、働いてるよ。
いろんなメディア関係者のところを回って、タレントの売込みをしている。いわゆる「営業」ってヤツだな。
ただ、俺はこの「二人一組」での仕事に、少し不安を覚えている。そのことについては、今は明言しないでおく。


ーーーーーーーーーーーー


食事を終え、加奈子をスタジオに送り届けた俺は、ブリジットと一緒に駐車場に向かっていた。
キーについているリモコンでドアロックを解除し、運転席に乗り込もうとしたとき、ブリジットから声を掛けられた。

「あの、マネージャーさん」
「ん?どうかしました?」

大事な用でも思い出したのだろうか。そうであれば、事務所に送り届ける前に用を済ませてもらってもいいのだが。
加奈子のレッスンは三時間もあるし、すこし迂回するぐらいどうということはない。

「わたし、かなかなちゃんを待っていたいんです」

だが、ブリジットの答えは俺の予想に反したものだった。
元々加奈子に懐いていたブリジットだが、最近になって一緒に仕事をする機会が大幅に増えたので、加奈子と離れがたいのかもしれない。
待っていたいと言うのなら、俺に止める道理は無い。ブリジットは午後からオフだし、言い方は悪いが、どう過ごそうと彼女の勝手なのだから。
ただ、三時間というのは長い。
何度も加奈子のレッスンに付き添っている俺は慣れているが、慣れていない人間にとっては少しキツいと思った。
俺はケータイを取り出し、事務所に連絡を入れる。

「高坂です。はい。エヴァンスさんなんですが、帰るのが少し遅くなります。はい。俺も付いてるので、心配は要らないです。はい。はい。すみませんが、よろしくお願いします」

簡単な報告を終え、俺はケータイを胸ポケットに仕舞った。

「んじゃ、どこかで時間を潰すか」
「はいっ!」

ブリジットは、午前中に見せたような無垢な笑顔を浮かべた。
967 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage saga]:2011/03/26(土) 12:45:34.24 ID:4VMu2sJ5o
ーーーーーーーーーーーー


車はそのままに、俺たちは徒歩である場所に向かった。
自動ドアをくぐった先では、大きな電子音をが鳴り響いていた。

「うわぁ」

ブリジットが感嘆の声を漏らす。
ここは、カラオケ、ボウリング、ゲームなどが一つの建物に入っている複合型のアミューズメント施設だ。
安い料金で色んな遊びが楽しめる場所であり、学生時代はよく利用していた。久しぶりに来たので、ゲームコーナーには見慣れない筐体がいろいろあった。

「あっ!メルルだ!」

ブリジットが反応したのは、クレーンゲームの筐体だ。中には、星くず☆うぃっちシリーズの登場キャラをデフォルメしたぬいぐるみが入っていた。
ここで一応説明しておく。
ウチの妹様もお気に入りだった「星くず☆うぃっちメルル」だが、今でもシリーズ展開がなされている。
女児向けアニメとして人気を博し、大きなお友達の後押しも受けて、今では人気コンテンツの仲間入りだ。初期シリーズは新たに作り直され、劇場版として公開もされた。
このクレーンゲームは、今では懐かしい初期キャラのぬいぐるみを景品としているようだ。

「へぇ。懐かしいな」
「そうですね。最近は新しいシリーズのキャラ商品ばかりなのに」

どうやらブリジットも、俺と同じく懐かしさを感じているらしい。いや、この娘にとっては、俺以上に思い入れがあるだろう。
メルルの公式コスプレ大会でアルファ・オメガのコスプレをしたことで、今では日本で仕事をしている。それは加奈子も同じだ。
今の自分も、加奈子との出会いも、全てはメルルがあったからこそだ。
俺は景品を凝視しているブリジットの隣に立ち、100円硬貨を投入した。

「マネージャーさん?」
「どれが欲しい?やっぱ、メルルとアルファ・オメガか?」
「えっ……と、その……」
「ほれ、遠慮すんな」
「は、はいっ!じゃあ、その2つで」
「あいよ」

ブリジットの要望も聞けたので、俺は狙いを定めて、クレーンを操作し始めた。





「あの、ありがとうございます」
「気にするな。俺が勝手にやっただけだ」

ブリジットはメルルとアルファ・オメガのぬいぐるみを大事そうに抱えながら、俺にお礼を言った。
1,000円使う前に2つとも取れたことは、俺の腕前からすればなかなかの戦果だろう。
目的も達成したので、今はクレーンゲームから離れ、目ぼしいものがないかゲームコーナーを散策中だ。

「ふふっ」
「どうかしたか?」

隣にくっついているブリジットが急に笑い出したので、俺は顔をそちらに向けた。

「マネージャーさんのしゃべり方、昔と変わらないなぁと思って」
「……気付いてたのか?」
「かなかなちゃんから聞きました」

これは失策だった。
確かに、加奈子に口止めを強要はしていないので、親しい間柄であるブリジットに話してしまってもおかしくはなかった。
なーんでそんなことも気付かなかったのかね、俺は。これ、下手するとあやせバレも有り得るよね?ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉ……。
それだけは……それだけはなんとしても避けたい!だって俺の命がかかってるんだもん!

「でも、なんか納得です」
「へ?」
「声はいっしょだったし、雰囲気も似てましたから。もしかしたら……、とは思ってたんです」
「へ、へぇ。そうなんだ」

これには俺も笑うことしかできなかったよ。何にって?自分の迂闊さにだよ!
「加奈子が気付かなかったんだから、ブリジットも大丈夫だろ〜」なんて、愚かな考えに至ってしまってたんだからな。
そりゃそうだ。この娘とは、何度かあの姿で会ってるんだ。気付いてもおかしくないだろ……。
迂闊……圧倒的迂闊っ……!
過去の自分をブン殴りたい気分だぜ、はっはっはー!……はぁ。
968 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage saga]:2011/03/26(土) 12:46:01.68 ID:4VMu2sJ5o
「そういえば、なんで今はしゃべり方が違うんですか?」
「ん?ああ。だってよ、今はブリジットはオフなんだからさ。そんな時まで仕事っぽい雰囲気にしたくないだろ」
「そんなこと、気にしなくていいのに……」
「そういうことを気にするのが、マネージャーなんだよ。それに本音を言うと、あの話し方、結構疲れるんだわ」
「ぷっ……ふふふっ」

俺の話しぶりがおかしかったのか、ブリジットはたまらず吹き出してしまった。
全部本当のことなのだが、こうやって笑ってもらえるなら、まぁそれもいいかもしれないな。そんな風に思った。
笑い出したブリジットはそのままに、俺はゲームコーナーを見渡す。ふむ、どうにもブリジットと一緒に楽しめそうなものは無いなぁ。

「マネージャーさん、ひとつ聞いてもいいですか?」
「おう?」

回復したブリジットがまた声を掛けてきたので、俺は再び顔をそちらに向けた。

「マネージャーさんは、その……。かなかなちゃんのこと、どう思ってますか?」
「加奈子のこと?」

改めて聞かれると、実に答えにくい質問が飛んできた。
どう思ってるか、ねぇ……。考えたことも無かった、というのが正直なところなのだが……。さすがにこの答えは良くないだろう。
しかし、なんでブリジットはこんな質問をしたんだろうな。
俺は顎に手を添えながら瞑目し、しばし考えに耽る。

「そうだなぁ……。"手のかかる妹"ってのが、一番しっくり来るかな」
「妹……ですか?」

ま、そういう反応が来るわなぁ。言うに事を欠いて"妹"だもん。
実妹がいる身ながら、ビジネスパートナーを妹と言う俺。本当の妹様や黒猫が聞いたら、「どんだけシスコンだよ」と言われるに違いない。うん、絶対言うわ、あいつら。
でもな、これがぴったり来るんだからしょうがない。

「アイツ、ちょっと頑張りすぎるところがあるから、見ててハラハラするし、ほっとけねえんだ。それに、俺の最初の担当だからな。ついつい贔屓目で見ちまうし」
「……そうですね。かなかなちゃん、すごくがんばってますもんね。よく見てないと気付かないくらいに」
「そうそう。だからさ、俺はアイツのブレーキ役でもなくちゃいけないんだわ」
「ふふっ。確かに、ちょっとお兄さんっぽいですね」

ブリジットは納得したのか、薄く笑った。
しかしあれだな。小っ恥ずかしいこと言ったな、俺。本人いないからいいけど。

「このこと、加奈子には秘密な。ちと恥ずかしいし」
「はい。わたしとマネージャーさん、二人だけの秘密ですね」
「……は、はは。ま、そうなるかな」

ブリジット、その言い方は良くないとマネージャーさんは思いますよ。だって、なんか響きが淫靡じゃね?
七年もいて、もう日本語は完璧だと思ったんだけどな。機会があればきちんと教えよう。うん、そうしよう。

「マネージャーさん。かなかなちゃんのこと、これからもよろしくお願いしますね」
「おう、任せとけ」

そう言って、ブリジットは俺に頭を下げた。
ほんと、いい娘だよ。こんなに真っ直ぐに育ってくれて、家族じゃないけど嬉しいよ。これからもそのままでいてください。
そんなことを思いながら、俺たちは二階に続くエスカレーターに乗った。

「いいなぁ、かなかなちゃん……」

ブリジットのその言葉は、残念ながら俺の耳には届かなかった。
969 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage saga]:2011/03/26(土) 12:46:49.92 ID:4VMu2sJ5o
ーーーーーーーーーーーー


あれからボウリングやダーツで二時間ほど時間を潰した俺たちは、今はスタジオで加奈子のレッスン風景を眺めていた。
講師の手拍子に合わせ、スライドやサイドウォーク、あとなんかよくわからんテクを織り交ぜたコンビネーションで軽快にステップを踏む加奈子。
ヒップホップダンスには決まりが無いため、途中で他のダンスの動きを加えたりしているようだ。
長年のレッスンの結果か、その動きによどみは無く、見ている者も踊りだしたくなるほどのエネルギーに満ち溢れていた。

「かなかなちゃん、かっこいいですね」
「ああ。いつ見ても驚かされるよ」

これは俺の正直な感想だ。
素人目でも、加奈子の歌とダンスの上手さはよくわかる。こうして付き添うようになってからは、努力に裏打ちされて得た結果だと理解もできた。
どうにも俺の周りの女の子は、どいつもこいつもすごいヤツばかりだな。
けど、そんな現実を目の当たりにして、コンプレックスを抱くようなことは今は無い。
俺は俺で、自分に出来ることを精一杯やってるからな。そして今は、コイツ等に仕事をしやすい環境を提供するのが、俺のやるべきことだ。
だから、今の俺は充実している。誰に恥じることもない。


ーーーーーーーーーーーー


「かなかなちゃん、すっごいかっこよかったよ!」
「そんなことないよ」

加奈子のダンスレッスンも無事終わり、今は車で事務所に向かっているところだ。
後部座席では加奈子とブリジットが、まるで姉妹のように仲良くはしゃいでいる。その手にはそれぞれ、メルルとアルファ・オメガのぬいぐるみが握られていた。
どうやら俺が昼間に取ったぬいぐるみのうち、メルルの方は最初から加奈子に渡すつもりだったらしい。なんとも可愛いじゃないか。
それと……意外にもブリジットは、加奈子のああいうダンスを見たことが無かったようで、素直に感動し、その気持ちを真正面からぶつけていた。
加奈子は加奈子で、可愛い妹分から送られる賞賛に満更でもないようだ。
何でわかるかって?だってよ、口調はそのままだが、顔は昔みたいにイヒヒと笑ってるからな。機嫌のいい証拠だ。
それをバックミラー越しに眺めながら、俺も薄く笑った。
そんな和やかな空気を内包したまま、車は赤く染まる街並を横切っていった。


おわり
970 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/26(土) 12:49:09.20 ID:4VMu2sJ5o
以上。

ロリじゃないブリジットでお送りしました。
最低でもあと一回、マネージャー回は書くつもりでござる。
可能であれば、また数日中にお会いしませう。

ありがとうございました。
971 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/03/26(土) 13:12:17.28 ID:Mli+iM0W0
乙。やっぱり真面目な話も良い
感情移入しやすくてとても読みやすかった、乙

大事な事だから二回言った!
972 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/26(土) 13:17:53.79 ID:D3vJ43x7o
おつ

>173cmくらいか
ブリジットもすっかり大きくなって……。だがそれがいい

ブリジットにはいつまでも棒であってほしい
973 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/26(土) 13:51:34.30 ID:v/3esz+F0
乙です!

16歳のブリジットかぁ…
この子には真面目にこんな感じで育っていってほしいね…
974 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/03/26(土) 14:06:27.04 ID:WeV2V3240
うんブリジットはこのくらい成長してもなんの違和感もないな


だが160の加奈子は認めんぞッッッ
975 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/03/26(土) 14:06:51.10 ID:Cud4C2cF0
乙です

ひとつ突っ込ませてもらうと、京介の身長は175cmだから
成長ブリジットよりもまだ少し高いね
976 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/26(土) 14:18:25.46 ID:4VMu2sJ5o
>>975
oh...
170と勘違いしてた……orz
あれだ、170は志々雄様だったわ
977 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/26(土) 17:02:45.60 ID:8aEmgJQNo
この頃の桐乃は何をやっているのだろうと、ふと気になった
やっぱりモデル続けてんのかね?
978 :sage :2011/03/26(土) 17:06:19.02 ID:BbPOlsaw0
>>976
大丈夫だこれくらいの差など
女性にはヒールという武器があるし
979 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/26(土) 18:18:18.33 ID:0Wfq2DaSo
次スレです

俺の妹がこんなに可愛いわけがないSSスレ Part.9
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1301131029/
980 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/26(土) 18:26:03.02 ID:4VMu2sJ5o
>>979
乙っす
981 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/26(土) 18:45:01.26 ID:fzNqP3fDO
>>979
982 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/26(土) 19:39:57.76 ID:D3vJ43x7o
>>979

なんか書きたいけどネタが出てこない
983 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/26(土) 20:39:58.36 ID:D9sHB5Dmo
SSのネタとして車やらバイクを使うときに悩む
千葉って車・バイクの必要度どんなもん?

必須
あったら便利
ないと困る

この3択だとどんなもんだろう
984 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/26(土) 20:42:54.26 ID:4VMu2sJ5o
>>983
>必須
>ないと困る

これ一緒じゃね?
多分、あったら便利くらいだと思うぜ。
985 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/26(土) 20:43:30.99 ID:D9sHB5Dmo
下2つは、なくてもなんとかなるけど、どっちかって言うと

と続く感じ
986 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/26(土) 20:44:04.47 ID:D3vJ43x7o
>>984
"なくても困らない"って書きたかったんだと思われる
987 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/26(土) 20:48:51.88 ID:D9sHB5Dmo
>>983
回答あり
必要度の違いを言うのはなかなか難しいな

>>986
訂正あり
そっちの方が分かりやすいか
988 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/03/26(土) 20:55:59.52 ID:3kLHf0wAO
このPC凄いよぉ、さすがネカフェの規制さんんんん!!

別に無くても困らないけど、立場によるところが大きいんでない?
田舎と違って「車もバイクもねーのかよpgr」とか当然の地域ではないね、少なくとも。
大介には必須でも、京介にはどうだろう


あと>>979
989 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/26(土) 21:04:02.75 ID:JuD4uf7DO
ワイの神奈川の友達は、どっちも免許持ってたけど、バイクを多用してたよ。
まぁ、そいつがバイク好きってのもあるけどね。

きょうちゃんの場合、親父から「車の免許くらいは持っておけ」って言われるくらいだと思う。
本人自身が興味ないと、買わないし使わないだろうと思う。
990 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/26(土) 22:28:23.63 ID:D9sHB5Dmo
どうも、>>922>>983です

埋めついでにSSをひとつ
京×桐です
ゲー研でてきますが、部×黒じゃないから大丈夫……たぶん
991 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/26(土) 22:30:38.81 ID:D9sHB5Dmo
「ん〜……」

リビングで本と数枚の書類を前に俺は悩んでいた。

俺は高坂京介、22歳。大学4年生。

無事に就活も終え、あとは卒論を仕上げるだけだ。

そして俺を悩ませている原因はというと

「さっきからなにしてんの?ずっと唸っててキモいんですケド」

「いきなりだな、おい」

いきなり俺に暴言を吐いてきたコイツは高坂桐乃、19歳。大学1年生。

いわずと知れたハイスペック妹である。

いや、義妹である。

ついでに俺の彼女である。

「いや、車買おうかなって思ってな」

「え?いまさら?」

「う……まあ、そうかもしれないんだが……」

もう免許を取って3年近くになる。

この間車に乗ったのは親の車で、それも数えるほどしかない。

そんな俺がいきなり車を買おうかと思うようになった理由はというと……。

「その……高校の時の知り合いが車買ってな。この間ドライブにいったんだが……やっぱり楽しいし、うらやましいなぁ……と」

「はぁ?なにそれ。影響受け易す過ぎでしょ。そこまで行くとキモイを通り越して、哀れなんですけど?」

「さっきよりひでえな、おい」

実際そうなのだから反論の余地はない訳だが、ストレートに言われるとやはりちょっぴり傷つく。

「つか、京介の知り合いで今車買うような人いたっけ?せなちーのお兄さんはバイク一筋だし」

「えーっと、三浦って分かるか?ゲー研の部長やってたヤツ」

「ああ!あのお風呂に入らない残念な人!」

三浦よ、お前は俺の妹にひどい覚えられ方をされているぞ。

事実だから特に訂正はしないが。

ちなみに三浦は俺と同時に卒業して、働いている。

「残念な人だよね、あの人、ヘヴィ級ってか無差別級のヲタだし。普通にしてればいい人なのに」

「お前がいうな、それ」

「まあ、いいじゃん。で?あの人なに買ったの?」

「……スバル、インプ、STI-tS」

「ごめん、わかんない」

「簡単に言うと、メーカー純正のスポーツカーを、メーカーが更にスポーツ仕様にしたヤツだ。当然、値は張る。」

「どれくらい?」

「えーっと……たしか500万しないくらい」

「マジで!?」

「マジで」

桐乃が驚くのも無理はない。

社会人3年目。しかもヲタ趣味の三浦が持つ車としては高価すぎる。

しかも三浦はそういった車よりも、ヲタグッズに金をかけるイメージだしな。
992 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/26(土) 22:32:31.96 ID:D9sHB5Dmo
そのころのゲー研

「すごいよこのSTI-tS!さすがSTIのお兄さん!!」

「順番で言えばこれが弟ですけどね」

「そんなこまかいことは気にするな真壁!」

「とりあえず事故らないでくださいね。もう吐くものもないから大丈夫ですよ」


「ちぃ!やっぱりパワーと駆動方式の差がありすぎるわね……相手に回転縛りでコノザマなんて!!」

「だから五更さん!やめましょうよ!いくらRSでもフィットでインプを追っかけるのはムリですって!!」

「……瀬菜、だまってなさい!舌かんでもしらないわよ!!」

「わあーん!!助けておにいちゃーん!!」

「(ターボかスーチャーを真剣に検討しなければいけないわね……!!)」




桐乃とふたりで中古車雑誌や新車見積もりの眺める。

イニシャルコストかランニングコストかどちらを選ぶかで、選択肢は変わってくる。

それが中古車であってもだ。

「つーかさ」

「うん?」

「別にいまじゃなくてもいいんじゃない?就職してからもでもいいじゃん、内定もらってるんだし」

「う〜ん、まあ、そういうことも考えたんだが……」

「なによ、気持ち悪いわねぇ」

桐乃が怪訝な顔をしてこちらを見てくる。

う〜ん、本音を言うべきか言わざるべきか……。

しかしすぐに22年の経験から言ったほうがいいという判定が下った。

「いや、俺もう8月くらいしかヒマがないだろ?だからお前と一緒に旅行とか……そういうの楽しむのには車あったほうがいいかなって……な」

「あ……うん、それは……そうかも」

桐乃が雑誌で顔を隠す。

たぶん……というか間違いなく赤くなってるんだろう。

本当にかわいいやつだ。

「って、そういうことなら、私も少しはお金だすよ?」

「いや、それは遠慮する」

「なんでよ?」

まだ少し赤い顔を雑誌から除かせながら桐乃が尋ねる。

ここはたたみかけるのが正解だと経験が言っている。

「彼女を乗せるんなら、自分の金で買ってないとカッコつかねぇじゃねぇか」

そういうと桐乃は、再び雑誌で顔を隠してしまった。

まったく本当に……



俺の妹はなんでこんなに可愛いんだ
993 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/26(土) 22:33:14.86 ID:D9sHB5Dmo
数日後の黒猫さん

「すいません、ボルトオンターボとスーパーチャージャーの見積もりお願いできますか?」

「瑠璃姉ぇえ!!??買い物じゃなかったの!?なんでこんなトコにきてんの!?」

「安心しなさい。今日は見積もりもらうだけだから」

「瑠璃姉ぇぇぇえええーーー!!!」




終わり
994 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/26(土) 22:34:13.46 ID:D9sHB5Dmo
以上です。

思いつきって怖い。
そして思い付きって大事。

結論
思いつきもさじ加減次第
995 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/03/26(土) 22:39:12.38 ID:PLKw+aO4o

五更家の経済力が心配である…
996 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/26(土) 22:40:00.09 ID:D9sHB5Dmo
忘れてました

>>979乙です

質問に答えてくれた方、ありがとうございました
997 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/03/26(土) 22:45:52.57 ID:4VMu2sJ5o


部長がスバリストって、なんかしっくり来るな。
京介さんは無難にプリウス乗ってればええんや。
998 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/26(土) 23:31:08.22 ID:D9sHB5Dmo
>>995>>997
どうもです


あれですよ、黒猫さんバイトで稼いでるんですよ、きっと

イニD脳な俺の所為でインプです、部長とか世間の傾向はまったく無視でしたが
しっくりきたならうれしいです




そしてなぜたったあと3レスがこんなに長いのか……
999 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/26(土) 23:33:25.30 ID:0Wfq2DaSo
瑠璃姉ぇは一体どこへ向かおうというのか・・・
1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/26(土) 23:35:22.49 ID:fzNqP3fDO
>>1000なら次スレも豊作
1001 :1001 :Over 1000 Thread
                     ___, - 、
                    /_____)
.                    | | /   ヽ || 父さんな、会社辞めて小説で食っていこうと思うんだ
                    |_|  ┃ ┃  ||  
                   (/   ⊂⊃  ヽ)        /  ̄ ̄ ̄ \
                   !   \_/  !        ( ( (ヽ     ヽ
                   ,\ _____ /、       | −、ヽ\     !
   ゝ/  ̄ ̄ ̄ \     /. \/ ̄\/   .\     | ・ |─ |__   /
   / _____ヽ    |  |  _┌l⊂⊃l  |  |    ┌ - ′  )   /
   | | /  ─ 、−、!    |  |  / ∋ |__|  |  |    ヽ  /   ヽ <
   |__|─ |   ・| ・ |    |  /`, ──── 、 |  |     ` ─┐  ?h ̄
   (   ` ─ o−i    ヽ /         \ .ノ_      .j ̄ ̄ |
    ヽ、  ┬─┬ノ / ̄ ./            ヽ- 、\    /   ̄ ヽ\
  // /ヽ─| | ♯|  /   i              | ..) ) \  i  ./   |\\
  | |  /  `i'lノ))┘/ , ─│             !-l⊂⊃l┐__ヽ__/\ / |   | |
  | |  | ̄| / /| / ( (... .ヽ              / |____|∈  __./ .|   | |
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レベル5デブ @ 2011/03/26(土) 21:56:22.84
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A雑民なら大学デビューはもちろんパツキンだよな、ダサい私服はやめてふんどしを装備 @ 2011/03/26(土) 21:40:32.88 ID:VVDW+Mmfo
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【VIPで】桜花賞で勝つのは俺の馬【競馬】 @ 2011/03/26(土) 21:29:25.21 ID:Ww91jZtPo
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フラレたあの子に久しぶりにメールしてみる。 @ 2011/03/26(土) 21:26:17.78 ID:yowWDNIAO
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怖いコピペって語りには向かないよねひとりかくれんぼ @ 2011/03/26(土) 21:09:04.63 ID:dacT3xa0o
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