このスレッドはSS速報VIPの過去ログ倉庫に格納されています。もう書き込みできません。。
もし、このスレッドをネット上以外の媒体で転載や引用をされる場合は管理人までご一報ください。
またネット上での引用掲載、またはまとめサイトなどでの紹介をされる際はこのページへのリンクを必ず掲載してください。

インデックス「とうま・・・・・・おいしそうだね」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 : ◆Rx8sTNAmH2 [sage saga]:2011/03/07(月) 00:16:53.75 ID:t7p9coLv0
 
 
 
 
 
 
 
 
第0話:戦いの始まり
 
 
 
  
 
 
 
 
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】

ごめんなさい、このSS速報VIP板のスレッドは1000に到達したか、若しくは著しい過疎のため、お役を果たし過去ログ倉庫へご隠居されました。
このスレッドを閲覧することはできますが書き込むことはできませんです。
もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。

諸君、狂いたまえ。 @ 2024/04/26(金) 22:00:04.52 ID:pApquyFx0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714136403/

少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714054765/

渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

2 : ◆Rx8sTNAmH2 [sage saga]:2011/03/07(月) 00:17:52.65 ID:t7p9coLv0

インデックス 6日目 06:06:06 天草式所有船『四郎丸』内部




インデックスはゆっくりと目蓋を開けると、見慣れない低い天井が視界を埋め尽くした

ここは何処だろうと、起き上がりぼーっとした頭で周りを見渡す
彼女がついこの前まで居候していた部屋よりも小さな部屋だ

質素だがしっかりとした家具。掃除はきちんと行き届いているらしい
静かだが、どこかからエンジンのような音が、かすかに聞こえてくる

後ろを振り返れば、小さな丸い窓があった
寝ていたベットの上に立って外を見ると、どんよりと灰色の波立つ水面と曇り空が見えた
どうやら自分は今、海の上にいるらしい。かなりの大型船の一室のようだ
船はゆっくりと何処かに進んでいる

インデックスはしばらくそのまま外を眺めていた。頭がうまく回らずぼんやりしていた
彼女はどうして自分がここにいるのか全く思い出せなかった
完全記憶能力を持つ彼女は、今まで食べてきた全てのご飯の名前を全て並べ挙げることだってできる

しかし今、彼女はまったく自分のおかれた状況が理解できていなかった。それどころか記憶を辿ることさえできなかった

そんなことより、彼女はただ一つだけ、先ほどから嫌な感覚に苛まれていた
きっとこれが原因で自分は目が覚めたに違いない


お腹が絞られるような、喉が熱くなるような、頭が重くなるような── 彼女はこの感覚をよく知っているような気がした
3 : ◆Rx8sTNAmH2 [sage saga]:2011/03/07(月) 00:18:53.55 ID:t7p9coLv0
ガチャ、という音が前触れも無く部屋に響いた。インデックスはぐるりとそちらを振り返った。
部屋のドアから、一人の少女が覗いていた

「あ、目を覚まされたんですね! 良かった」

其処にいたのは、何処にでも居るような── 強いて言うなら二重目蓋が印象的な少女
インデックスはこの少女のことを知っていた

インデックス「……いつわ?」

五和「もう何も心配要りませんよ。あ、上条さんたちも無事です。今お呼びしてきますから」

彼女はにっこりと微笑みかけると、直ぐに出て行ってしまった。どうやら様子を見に来ただけらしい
ぱたぱたという足音が遠ざかっていくのを聞きながら、ここでインデックスは初めて自分以外の人のことを思い出した

短髪、あいさ、まいか、ご飯をくれた白い人……
そして──

バタバタと幾つかの足音が近づいてきた。そしてその足音は扉の直ぐ前で止まり、

上条「インデックス!」

神裂「インデックス!?」

ステイル「……よかった。目を覚ましたんだね」

インデックス「とうま……かおり……ステイル?」
4 : ◆Rx8sTNAmH2 [sage saga]:2011/03/07(月) 00:19:29.66 ID:t7p9coLv0
3人はほっとした顔でこちらに近づいてきた。後ろには扉から、五和と他にも何人かが見つめていた
皆嬉そうな顔をしている

上条「ああ、俺だ。まったく心配かけさせやがって……」

神裂「それをあなたが言うんですか?あなたも本当はまだ寝ていなくてはならないんですよ」

ステイル「むしろそのまま寝てくれていたほうがいいんだけどね」

上条「なんですと!?」

上条が素っ頓狂な声で叫ぶと、みんな笑い出した。安堵した空間がそこにはあった


インデックスを除いては


インデックスは先ほどから感じていた感覚の正体をやっとつかんだのだ。上条たちに出合った瞬間に

確かにそれは、自分のよく知っている感覚だった

上条「インデックス?どうした?まだ調子が悪いのか?」

一人だけ表情を変えないインデックスに、上条がそっと手を伸ばした。右手が頭の上に伸びる

インデックス「……た」

上条「はぁ?」

その手がふっと、触れる直前で止まった



インデックス「おなか……すいた……。」




一瞬、空気が固まった
5 : ◆Rx8sTNAmH2 [sage saga]:2011/03/07(月) 00:20:20.08 ID:t7p9coLv0
神裂「ふふっ」

空気を破ったのは神裂だった

神裂「そうですね。起きたばかりですが、あなたなら沢山食べても平気でしょう。

五和?何か適当なものを作ってもらえますか?」

五和「は、はい! 女教皇様! 腕によりかけて作ります!」

神裂が後ろに声をかけると、五和は右腕にぎゅっと小さな力瘤を作ってそれに答えた

ステイル「それじゃあ、僕達も食堂に行こう。実は忙しくて昨日から何も食べてないんでね」

上条「そうなのか?……ああ、俺もなんだか、安心したらお腹がすいてきたよ」

ステイル「そうか。じゃあ…… 君はインデックスと待っていたまえ。

消化がいいものを五和が作ってくれるだろうから、ここまで持ってこよう」

ステイルが促すように出て行くと、神裂や他の野次馬たちもざわざわと廊下に消えていき
部屋には上条とインデックスだけが残った

上条「あいつ機嫌よかったな。お前のことすごい心配してたから、多分安心して気が緩んだんだろ」

上条は閉まったドアを見ながらぽつりと呟いた。インデックスはじっとその背中を見つめた

彼は何時も着ているTシャツではない、見たことのないTシャツを着ていた。誰かが用意したものだろうか

そして両腕には包帯が巻かれていた。多分服で見えないところにも、いっぱい包帯やガーゼがついているのだろう

インデックス「……」
6 : ◆Rx8sTNAmH2 [sage saga]:2011/03/07(月) 00:21:25.29 ID:t7p9coLv0

いつものインデックスなら、「とうま! また怪我して!」と叫んで噛み付くぐらいのことをしそうなものだが
彼女はただ黙って背中を見つめていた。そのエメラルドの目の瞳孔が、すうっと小さくなった

上条「うー……意識したら急激に腹減ってきたぜ。五和の料理、楽しみだな」

インデックスは答えない

上条「……インデックス?」

上条は振り返って、銀髪の少女を見た。どこか疲れたような顔には、心配そうな面持ちが浮かんでいる

インデックスはすっと俯いた。髪の毛が目元を覆い隠した

上条「どうした?まだ調子悪いのか?ベットで寝てたほうがいいんじゃないか?」

先ほどと同じように、そっと手が小さな頭に伸ばされる

インデックス「お腹が……すいたんだよ……」

上条は今度は手を止めなかった。サラサラとした髪に手が触れる。彼はうっすらと微笑みを浮かべた

上条「お腹減りすぎて力が出ないのか。すぐに持ってきてくれるから我慢しろよ。あ! 俺に噛み付いたりすんなよ! インデックス!」

空腹の彼女がどういう行動をとるか、いつもの被害を思い出した彼は、慌てて手を引っ込める




その手ががしりと掴まれた
7 : ◆Rx8sTNAmH2 [sage saga]:2011/03/07(月) 00:22:33.56 ID:t7p9coLv0
上条「お、おい! 冗談だ、噛み付かないでくれ! 上条さんは食べてもおいしくないですよ!」

うろたえたように、しかし冗談めかして上条は手をさらに引こうとする

だが手はそれ以上、上条に近づくことは無かった
少女はその体のどこにあるのかわからないほどの怪力で、上条の手を引っ張っていた

上条の顔がここに来て、やっと真顔になった。おかしい。何かおかしい

上条「インデックス……?」


インデックス「お腹が……すいたん……だよ……」


少女はゆっくりと顔を上げた




上条の顔色がさあっと青くなった。その表情は、いつもの彼を知るものなら誰が見ても驚くほど、絶望に満ちていた

上条「そ……んな……」



少女の口がゆっくりと動いた
8 : ◆Rx8sTNAmH2 [sage saga]:2011/03/07(月) 00:23:51.67 ID:t7p9coLv0
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
インデックス「とうま……おいしそうだね」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
インデックス 6日目 06:13:44 天草式所有船『四郎丸』内部 発症
9 : ◆Rx8sTNAmH2 [sage saga]:2011/03/07(月) 00:25:12.94 ID:t7p9coLv0
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
        ゼツボウ
第0話:    戦いの始まり
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                              おわり
10 : ◆Rx8sTNAmH2 [sage saga]:2011/03/07(月) 00:26:23.01 ID:t7p9coLv0

○禁書目録ゾンビパニックものです

ふと思いついた小ネタ(タイトル含む)を書き込むスレ6の>>730ですが
あれからいろいろ考えて、書いてみようと決断しました

○時系列としては22巻以降、いろいろ問題が片付いた世界のつもりです
 新約とは別のベクトルをたどることになりそうですが、もしかすると新約の設定もひっぱってくるかも
 またそれ以前にも様々な点が原作と違っている、 パラレルワールドになってます

例:上条と美琴が一方通行と和解済み。ほかにも原作に無いキャラ同士が知り合いとか
  :死んだキャラクターなどが復活(するかも)
  :わりとデフォでキャラ崩壊してる場合も

○SS初挑戦です。 わかり辛い、 読みづらいことがあると思いますがお許しください
 「こうしたほうがいいよ」のアドバイスを頂けたら、 改善するよう努力します

○ゾンビパニックものの常として、死、流血などの表現がでてきます。 全体的に暗いです。 ほぼバットエンド確定です
 苦手な方はブラウザバック

○禁書目録、 超電磁砲の原作以外に、 他の方の書いたSSの設定や他ゲーム、 マンガ等のネタなどが出てくることがあります
 ただ、 物語の根幹となる部分には影響しません。 あくまでネタはネタです

例:あの妹達が登場予定

>>1は遅筆です。完結は絶対にさせますが、 ペースはかなり遅いと思われます
 書き溜めは少しだけあります
 また>>1の知識不足により、 「それは無い」が出てくるかもしれませんが、 「熱膨張」ということでお願いします
 指摘してくだされば訂正し、 以降気をつけます

○「>>1はこんな曲を聴きながら書いてたよ」、というようなものを乗せるかもしれません
 また「俺は脳内でこんな曲が流れてたぜ」というものがあれば
 書いてくれるとそこからイメージがわくかもしれないです
11 : ◆Rx8sTNAmH2 [sage saga]:2011/03/07(月) 00:27:20.97 ID:t7p9coLv0

その他

Q俺の○○が××なわけない。 おい、俺の嫁がなんで●●なんだ

Aキャラクターがイメージと違う言動をすることがあります。 ごめんなさい


Q原作ちゃンと読ンでンのかァ?

A禁書目録は本編は全て読みました。アニメの超電磁砲も見ました。ドラマCDは聴いていません。SSは1しか読んでいません
 しかしけっこう細かいところは忘れています。 時々読み直しながら書くので、 おかしいところがあったら指摘してください


Q魔術サイドに出番はありけるの?

Aほぼ無いです。科学側はかなりのキャラがでると思います


Qオリキャラとか出しやがりませんよね?

A敵役に出ます。後は名もなき村人Aは結構出てくるかもしれません


Q日本語が。おかしい。誤字脱字。多すぎ。

A精進していきます。どんどん指摘してください


Q他にもいろいろおかしいんだよ! 正直つまらないんだよ!

A頑張りますので、応援お願いします
12 : ◆Rx8sTNAmH2 :2011/03/07(月) 00:28:58.21 ID:t7p9coLv0
あと投下間隔はだいたい5日〜2週間程度になると思います
よろしくお願いします
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 00:31:11.19 ID:YPcRTlMAO
乙乙乙!!元ネタわからないけど>>1がただ者じゃないのはわかった!支援

早速だけどタイトル見開き部分で「super ultra violet」が脳内再生されたよ。ブックマーク確定だ
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/07(月) 00:47:42.40 ID:RO+80tco0
ひやっほーい!!待ってました乙
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 01:23:21.96 ID:HrzE5DP+0
題名からして、かみうまかと思って来たら
またブックマが増えてしまった
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 14:05:37.82 ID:w0rHVG6AO
こいつは面白そうだぜ
初っ端からインペリアルさん発症しててワロタ
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 15:04:30.98 ID:iP3cxMKpP
私の。活躍を楽しみに待ってる。
18 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/09(水) 00:22:38.87 ID:QPz9raj10
ちょっとはやいですが第1話を投下します


>>13
元ネタは特にないですが、しいて言うならバイオハザードとサイレンでしょうか
俺はそれくらいしかゾンビもののゲーム(映画)見たことないです
super ultra violet聞いてみました。デビルメイクライの曲ですか?とてもかっこいい曲ですね
教えてくれてありがとうございます

>>14
待っててくれてありがとうございます
期待にそえるかどうかはわかりませんが、がんばります

>>15
インデックス「やと ねつ ひいた も とてもかゆい 今日 はらへったの、とうま くう」

>>16
あえて先に言っておきますが、もうインさんの出番はしばらくないです(予定)

>>17
小萌「姫神ちゃんの出番はもう少し先ですよー?」


さて、今回書いている間聞いていた曲はだいたいこんな感じです

KOKIA - The Power of Smile
http://www.youtube.com/watch?v=q_l36cI-QSA

Red Hot Chili Peppers - Scar Tissue
http://www.youtube.com/watch?v=TGObF2q63Ew

SIRENサントラ - 蛇ノ首谷
http://www.nicovideo.jp/watch/sm6601475 (曲が見つからなかったので、プレイ動画になっています)

Marilyn Manson - Coma White
http://www.youtube.com/watch?v=QQPJYnr48yU
19 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga sage]:2011/03/09(水) 00:23:21.16 ID:QPz9raj10
上条当麻 1日前 16:44:44 第七学区 とある高校からの下校路


青ピ「だから猫耳メイドさんやバニーナースみたいに異なるジャンルを組み合わせるのもありなんよ」

土御門「にゃー、たしかにそれはありっちゃありだが、やっぱりジャンルはそのテンプレを極めたほうが、

      最後には萌えるというものぜよ」

上条「キャラクターが反乱するこの時代、特徴が1つじゃやっていけませんよ」

青ピ「あーわかるわかる。最強でありながら最弱なとこもあるとか、悪魔っぽいけど天使でもあるとか。

    そういうギャップ持ちキャラっていうのは人気がでるもんや」

土御門「だからといって下手にまぜこぜすぎてもカオスになるだけだぜい。

      逆にたとえば、あえて影が薄いとこを逆手にアピールすることもできるにゃー」

青ピ「あとは口調や一人称とかも重要やね。無理なく、他にはないような特長を簡単にだせるやんか」

上条「お前らはものすごく無理ある口調だけどなー」

青ピ・土御門「なんだと」

上条「ちょ、いきなりまじにならないでください!上条さん心臓とまりますから」

学園都市の中心に位置する第七学区。その中でも南のほうに走っているとある道
空がだんだんと黄色くなってゆくこの時間、3人の高校生がくだらないことを談笑しながら歩いていた

背の高い、青い髪の毛と耳のピアスが特徴的な、擬似関西弁
着崩した学生服の下からアロハシャツとネックレスがのぞいた、サングラスの金髪

そしてこの中では1番常識的そうな、ツンツン尖った髪の毛が印象的な学生

彼らは同じ高校に通う友人同士である。彼らは高校から下校する途中だった
20 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga sage]:2011/03/09(水) 00:23:54.04 ID:QPz9raj10

青ピ「お、ん。じゃあ、わいはこっちやから。今度ゲーセン一緒にいこな」

上条「ああ、またな」

土御門「ばいばいぜよー」

分かれ道で、青髪が別れ、金髪とツンツン頭はそのまま並んで歩き出した
彼らは同じ寮のお隣さんでもあるのだ

土御門「今日は特売はいいのかにゃー?」

上条「んー……今日は特に欲しいものはないし、卵なんかは明日のほうが安いんですよ」

歩く2人以外にも、彼らの周りには人がいた
下校する男子学生、仕事の途中らしき男性、友達と笑いながら喋る女子学生、追いかけっこをしてる小学生…
みなそれぞれ自分の生活の一環として、この道に立っている

上条「平和だなー。ほんと」

土御門「おおっ。かみやんの口から『ふこうだー』以外の感想が漏れるとは!?」

上条「さすがにそれは言い過ぎじゃありませんこと!?」


土御門「まあでもたしかに、平和そのものぜよ。ここはにゃー」

上条「……やっぱり暗部は、色々あるのか?」

土御門「んー……詳しくはいえないにゃー。でも前よりはぐっと楽にはなったとは言っておくぜい」

土御門「だけど、やっぱりこの街の暗闇はまだ色濃くあるし、魔術サイドとも今は落ち着いてるが、

      決着がついたわけじゃないからにゃー……。さらにいうなら、世界中には未解決の様々な問題があるもんだぜい」

上条「……」
21 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga sage]:2011/03/09(水) 00:24:39.92 ID:QPz9raj10

口を閉じてしまった友人の肩を、金髪はぽんとたたいた

土御門「いやいや。でもかみやんや、そのほかのいろんな人達のお陰で、

      本当にいろんな問題が片付いてきてるんだぜい?」

土御門「難しく考えるこたぁ無いんだにゃー。かみやん。これは皆で勝ち取った平和だぜい。

      かみやんの『幻想殺し(イマジンブレイカー)』でも殺せない、ちゃんとした現実ぜよ。

      今はこの平和を満喫するとしようぜい!」

上条「……ああ!そうだな!」

ツンツン頭は気を取り直したように、笑顔を浮かべた。それを見て金髪もにぃっと笑う
2人の隣を小さな子達が笑いながら駆け抜けていった


上条(そうだよな……うん。少しずつでいいんだ。……今はこの平和を楽しむか)






上条「あっ」

土御門「どうした?」

上条「……宿題……学校に忘れた……」ズーン

土御門「……あちゃー(これはあの台詞がくるぜい)」wktk



上条「……ふ──」


22 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga sage]:2011/03/09(水) 00:26:19.82 ID:QPz9raj10










第1話:上条の不幸









23 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga sage]:2011/03/09(水) 00:27:02.33 ID:QPz9raj10

上条当麻 1日目 9:23:21 第七学区 自室のバスルーム


上条当麻は狭いバスタブの中で目を覚ました
彼には同居人がいて、その子に自分のベットを貸しているために、こんな狭いところで寝ているのだ

彼は寝ぼけ眼で目をこすった。いつもなら真っ先にうるさい目覚まし時計を止めるのだが
今日はとても静かな朝だった

上条(……ん?目覚まし?)


上条「げっ!まさか!」

上条は、ばっ、と起き上がると、あわてて風呂桶の中に入っていた目覚まし時計を手に取った
チッ、チッと音を刻むその針は、本来ならとっくに学校についていて、授業を受けている時間を指し示していた

上条「うおおおおーー!?やばいっ!早起きして学校に行って、忘れた宿題やるつもりだったのに!

    まさかの目覚まし設定忘れ!?不幸だーー!!」


叫びながら一歩踏み出そうとして、思いっきり足を滑らせ、顔面からバスルーム脱出をすることになった彼は
痛みに顔をしかめつつ、急いで出かける準備をしようと、リビングに飛び込んだ

上条「インデックス!悪いけど昼飯はパンか何かを食べてくれ!夜ご飯は早めに作りますから!」
24 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga sage]:2011/03/09(水) 00:27:58.37 ID:QPz9raj10

上条が声をかけたのは、ひょんなことから同居している
彼を魔術の世界へと誘う事になった一人の少女、インデックスと呼ばれるシスターだ
ちなみに彼がバスタブで寝ているのは、彼女にベッドを貸しているからである


上条「あれ?……インデックス?」

部屋にシスターの姿はなかった。トイレも開いたままだし、台所にも気配はない
普段彼が起きる頃に、だいたい一緒に目が覚める彼女だが
そういえば、起きているなら自分のことを起こしてくれてもいいはずではないか
むしろ「朝ごはんが食べたいんだよ!」ぐらいのことを言いながら、無理やり起こしにきそうなものである

玄関のほうを振り返ってのぞくと、彼女の靴が無くなっていた

上条「おいおい……どっか出かけちまったのかよ?」

視線をベッドの上にもどすと、そこに昨日はなかった走り書きが置いてあった
上手で少しかわいらしい文字の書き方は、間違いなくインデックスのものだった

上条「……なになに?」



『とうまへ
少し気になることがあるから、外に出てます。
もしかするとお昼くらいまでは帰らないかもしれません。
けーたいと鍵は無くさないようしっかり持ってますから大丈夫です。
まだとうまがいつも起きる時間より早いから、起こさないでいくね。
何かあったらけーたいに連絡ください。  Index-Librorum-Prohibitorum』


25 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga sage]:2011/03/09(水) 00:29:01.56 ID:QPz9raj10

最後の署名だけ見事な筆記体で書かれているのは
記憶をなくしていても流石はイギリス育ちだろうか

上条「やっぱどっか出かけたのか。気になることねぇ?」

インデックスが気になりそうで、昼までかかりるような用事を、上条は思いつかなかった

スフィンクス── この子も訳あって飼っている三毛猫── も見当たらないが
おそらくインデックスが連れて行ったのだろう。仮にスフィンクスがでていって、それを探しに行くなら
『スフィンクスがでてっちゃったから、探しにいってきます』くらいのことは書きそうなものだ

上条「まさか……魔術関係か?」

真っ先に頭に浮かんだのは、学園都市のどこかで魔術が発動し、それを感知したインデックスが
調べに出かけて行ってしまったということだが──

上条(だったら俺を起こして、そのことを言うだろうしなー……)


メモを握りながら、うんうん首をかしげていると、不意に部屋の時計が鳴った
はっ、として時間を見ると、9:30になっている。もう1時間目にはとても間に合わないだろう

上条「や、やばい!忘れてた!とりあえず学校に連絡……後土御門にも連絡入れといたほうがいいか!?

    いやでもあいつも授業中か!?」

とりあえず考えは後、学校へ走る途中でインデックスの携帯に電話をかければいいと判断した
それより目下は絶賛遅刻中のわが身である。1時間目はともかく2時間目まで遅刻はさけたい
彼はこの一年、様々なことが原因で学校を欠席し続け、もうこれ以上出席数を無駄に出来ない身なのだ

パジャマを脱いで洗濯カゴに放り込み、食パンを焼かずに咥えつつ、いつもの学生服をあわただしく着る
喉にパンを詰まらせそうになりながらも、着替え終え、鞄をひっつかみ、鍵と携帯を手にして──

上条「げえっ!?携帯電池切れかよ!ふ、不幸だ……!」

26 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga sage]:2011/03/09(水) 00:29:47.92 ID:QPz9raj10

いざ学校へ出陣、の前に連絡を入れておきたかったが、携帯の画面は暗いままだ

上条(そういえば2、3日充電してなかったし、昨日の夜青ピとくだらないメールのやり取りしてたしなー)

なんてことを考えても、発電能力者でもない上条にはどうすることも出来ない
しかし充電している時間はないし、かといって携帯を置いていくこともできない


上条「そ、そうだ!前になんかの安売りで買った、『歩いて充電君』があるはずだ!」

『歩いて充電君』とは人が歩くときにでるエネルギーで携帯を充電できるという、この学園都市では少し旧式な充電器具である
部屋中をひっくり返すと、悪運のおかげかすぐに見つかった。急いで接続し、振ってみる
どうやら壊れてはいないようだ

上条(あーでも直ぐにたまるわけじゃねーから、学校まで走っていく途中くらいにならねーと使えないか)

上条「ええいこのさい贅沢は言いませんよ!頼むぜ『充電君』!」


携帯をポケットに突っ込むと、上条は短距離走の選手顔負けのスピードで家から飛び出した

今日の天気は、雲が多めの晴れというところだろうか
寮の階段を二段飛ばしで駆け下りていく

上条「さーて、上条さんの体力と走力は並じゃないとこを見せてやりますよ!」

27 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga sage]:2011/03/09(水) 00:30:16.73 ID:QPz9raj10

寮の玄関口を飛び出した上条は、ふとある違和感を感じた

上条(……あれ?人が歩いてない?)

道に誰もいないのだ。車も走っていない、ずいぶん静かな空間だった
この学園都市のほとんどが学生で構成され、しかも今は大抵の学校で授業中の時間とはいえ
上条が今いる通りはけっして小さくない。学生の姿はともかく、大人の一人くらいいてもおかしくはないのだが……

さきほどのインデックスの置き手紙がチラリと頭をよぎる

もしかすると魔術関係── 人払いのルーン

上条(いやいや、それはないって。まあこんな日もあるだろうよ)

頭の中にちらりと浮かんだ言葉を無理やり沈めて、がらがらの道を走っていく


実際のところ、上条の考えは正しかった。この現象は魔術によるものではなかったのだ



それに人はいた


上条(ん?どうしたんだあの人?)

上条がさらにしばらく走っていると、ふと、道の脇にしゃがみこんでいる人の姿が見えたのだ
上条も見たことだけはある学生服だ。スカートなので女子生徒、おそらく中学生くらいだろう
上条から見て後ろ向きにしゃがみこんでいるために、顔は見えない
28 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga sage]:2011/03/09(水) 00:30:48.83 ID:QPz9raj10

人がいたことに少し安堵しながら、上条はすこしスピードを落とした
こちらが近づいている間、女子生徒はまったく動いていないようだった
彼女の目線の先と思われるほうにも特に何かあるようには見えない

上条(どうしたんだろ?気分でも悪いのかな)

世界でも有数のお人よしといわれるほどのこの男は、自分がいま日数不足で
留年の可能性があるにもかかわらず、この女子生徒のことを気遣った
もしも気分が悪くてしゃがみこんでいるなら、自分のなけなしの充電分で救急車を呼ぶぐらいのことはできるだろう


いよいよ近づくその後姿が、上条の足音に反応したのか、ぴくっ、と動いた
上条は走るのをやめ、少し呼吸を整えながら、その子に声をかけた

上条「君、大丈夫か?気分が悪いんなら、病院にでも連絡しようか?」


女子生徒は答えることなくゆっくりと立ち上がった。そしてこちらへ振り向き──




銃声が聞こえた




上条「!?」


29 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga sage]:2011/03/09(水) 00:31:49.61 ID:QPz9raj10

上条は瞬時に音の発生源、ななめ後ろに振り向いた。音の発生源は1km以上離れているとこだろうか
ここからでは、ビルが邪魔で見えないところのようだ。自分が狙われたわけではないらしい

音はそのまま何度も続く

1発、2発、3発、4発


そして男の断末魔の叫び


その後には再び静けさが戻った

上条(なんだ!?なにが起きたんだ!?

    アンチスキルが何かと戦ったのか、それともスキルアウトか!?

    まさか……魔術師が侵入してきたんじゃないだろうな!?)

再び頭をよぎるのは、同居するシスターの置手紙
銃を手にしていそうな、学園都市を警護するアンチスキル、学園都市に闊歩するスキルアウト
そして以前学園都市に侵入してきた魔術師たち

インデックスの気になることが、もしも魔術師の侵入を表しているとすれば
科学側を倒したい魔術師とアンチスキルが激突し、戦闘になった可能性は否定できない

上条「くそっ!」

上条当麻は、インデックスと出会ったその日から、短期間で多くの戦いの経験を積んでいた
そしてその経験が、これはただ事じゃないと警鐘を鳴らしている

上条(スキルアウト同士の喧嘩とかの可能性もあるけど、それでも銃をつかうなんて異常だ。

    もし万が一、魔術師が関わってんなら、そこにはインデックスもいるかも知れねえ!

    畜生!せっかく平和になったと思ったのに……!)

上条は銃声がしたほうに駆け出そうとして、ふと後ろの女子生徒を思い出した
彼女も先ほどの銃声と声を聞いているはずだが、今まで一言も発しないままだった

上条「ねえ君── 」

上条は一度声をかけようと振り向き──
30 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga sage]:2011/03/09(水) 00:32:36.63 ID:QPz9raj10




女子生徒「…………ぁああー……」





その、『女子生徒』の姿に言葉を失った





上条「……え?」

その顔は元々は利発そうだったのだろうか、その名残が見られた

だがしかし、今その子を見てかわいいと思える人はそういないだろう
皮膚は病的に蒼白くなり、唇だけが赤くなっていて、まるで一見ピエロのようにすら見える
目は空ろで、瞳孔は大きく開いている。口は半開きでよだれをたらしていた

そして何より── 目を引くのは額と右頬だった

腐っている。そう表現するのが一番いいだろう
熟れ過ぎた果実のように、筋肉がたるみ、破れた皮膚からはどろどろした血と膿のようなものが流れていた

彼女はいつの間にか、すぐ傍まで近づいてきていた
両腕をだらんとあげて、左足を引きづりながら、ゆっくりとこちらに歩いてきている


その様は、まるで──


上条「ゾ、ゾンビ……!?」
31 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga sage]:2011/03/09(水) 00:34:12.72 ID:QPz9raj10

上条当麻には、ゾンビ映画を見た記憶は一度だけしかない
ある日に高校の学友達と、学園都市の最新技術で撮られた映画を見に行ったのだ
それは恐ろしい迫力で、なんども劇場からは悲鳴があがった

そしてそれ以前の記憶はない。それは上条が夏のある日に記憶喪失になったからだ
しかし失われたのは『エピソード記憶』だけで、ゾンビというものがどういうものかの知識はある

それはまさに動く死体。生きている人間を襲い、咬みつかれた者は──

上条「うわああっ!?」

まさにそこに考えが至った瞬間、女子生徒が、ぐわりと口をあけつかみ掛かってきた!

上条はとっさに腕を大きく上げ、後ろに跳躍してで距離をとった
その胸の前を、やはり白くなっている手がすっと掠った。空を抱きしめた形になった女子生徒は
ぐらりと一瞬体制をくずしたものの、ふたたび体をこちらに向け、近づいてくる

上条(なんだよこれ!?どうなってるんだ!?)

── 咬み付かれたり、傷を負わされた者もまた、ゾンビになる
そんな情報が頭の中で点灯する。この少女に咬み付かれたらどうなるかはわからないが、全く試す気は起きない

幸いなことに、そしてゾンビものの定石どおり、相手はゆっくりとしか動けないようだ
バックステップで距離を10mほどあけた上条は、改めて女子生徒を観察した

上条(……みれば見るほどゾンビにしか見えねぇ……。なんかのドッキリにしちゃ、リアルすぎる!こいつはマジだ!

    誰かの能力か、なんかの投薬実験のせいか?もしくは……魔術か!?なら俺の右手で打ち消せるか?)
32 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga sage]:2011/03/09(水) 00:35:25.62 ID:QPz9raj10

上条はぐっ、と右の拳を握り締めた

彼の拳は『幻想殺し(イマジンブレイカー)』という、異能の力であればどんなものでも打ち消す力が宿っている
これまでもたくさんの『幻想』を殺してきた力は、たしかにまだここにある

上条(……でも……これがもし打ち消すことが出来なかったら……)

上条はこれまでにも、幻想殺しでは殺しきれない力や、あるいはきちんとした場所を突かなければ
消せない力というものに相対したことがある

この場合、もしもこの子がなんらかの能力、あるいは魔術を、体全体にかけられることによりゾンビになっているなら
おそらく体の何処でも触れた瞬間に、その力は破壊されるだろう

だが、肉体を腐らせる能力などというのは聞いた事がないし
魔術であっても、体の内部など触ることの出来ない場所にかけられていれば、もう幻想殺しではどうしようもない

また当然、薬品投与などが原因なら、文字通り上条には手の施しようがない
つまり、触れば治るという確証がないのだ

それどころか、この少女の有様を見ると、普通ならもう死んでいるような状態である
幻想殺しは異能によって傷つけられたところまでは治せない
もしかすると触れた瞬間、体を動かしている力も消えて即死、なんてことにもなりかねない


上条(『幻想殺し』を試してもいいけど……
    ここはアンチスキルかジャッチメントを呼んで、何とかしてもらったほうが── )

── アンチスキル?
33 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga sage]:2011/03/09(水) 00:36:29.16 ID:QPz9raj10

上条「さっきの銃声…………まさか!?」

上条は女子生徒から目を離し、先ほどの銃声が聞こえたほうを見た


もしかして── この子みたいなゾンビが他にもいるんじゃ──





上条「ははっ……マジかよ……」

振り返った先にいたのは──


男子生徒「…………ぅぉ……ぁ」

女性「……あ……ぁ」

アンチスキル「……う……」

こちらに向かってくる三つの影
1人は上条と同じ高校の制服を着た少年。見たことのない顔だが、年は1つ上だろうか。口の端から血が垂れている
1人はどこかの店の制服を着た、大学生くらいのお姉さん。おなかの辺りが血で真っ黒に染まっている
1人はぼろぼろになったアンチスキルの防護服を着た男性。右腕が、ない

それぞれが、手を前に掲げ、ゆっくりと足を引きずるようにこちらに向かってくる
特に損傷の酷い体のアンチスキルは、ゆらゆらと体を揺らめかし
血のこびりいた顔は血色が悪く、死斑が浮かんでいるのが遠目にも見えた
34 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga sage]:2011/03/09(水) 00:37:07.12 ID:QPz9raj10

上条(ほ、他にもいるのかよ……。しかもあれ……アンチスキルがあんな風になるなんて。

    もしかして……今学園都市中にゾンビが溢れてるんじゃ……!)

おそらく、先ほどの銃声も誰かがゾンビと戦った時の音なのだろうと、上条は見当をつけた
その音に引き寄せられたのか、あるいは上条の存在をなんらかで捕らえたのか、それとも偶然なのか
ゾンビたちは間違いなく上条を目指して近づいてくる

上条(アンチスキルがあの格好で、ぼろぼろになっているってことは……、

    生きてる人間が咬まれるか何かしたらこっちもゾンビになるのか!?

    くそっ!わかんねーことが多すぎる!なんでこんなことになってんだ!?)

女子生徒「ああぅー……」

上条「!?」


最初に出会ったゾンビの女子生徒が、いつのまにか、あと3歩もすれば手の届きそうなとこまで来ている。



上条はもう覚悟を決めていた

上条(いいぜ……とりあえず幻想殺しを試してみよう!)

幻想殺しがどう効くかを知っておくことは、後々できいてくるだろう
もしも正気を取り戻せるなら、一人救えたことになる。効かないなら、これから無理に突っ込んでいく必要はない
そして仮に触れることでこの少女が死んでしまうなら── 認めたくはないが危機がひとつ減ったことになる

上条はさっと少女に向きあい、体に力を込めた
35 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga sage]:2011/03/09(水) 00:38:47.81 ID:QPz9raj10

映画の話ではないが、攻撃を受けると危険な可能性があるのは
こちらに近づいてくるアンチスキルのゾンビを見たら明らかだ
どう見ても、生きているときに他のゾンビたちに襲われ、自分もゾンビになったとしか思えない姿である

上条は少女の動きと、こちらが動くタイミングを計った
彼のいつもの戦いのスタイルは、基本的には相手の攻撃を幻想殺しで相殺しながら
真正面から突っ込んでいく、いわば突撃型である

だが今回は相手の腕の中に飛び込んでいくわけにはいかなかった
掴まれたりしたらそれが最後になりかねない
仮にゾンビになることを『感染』と表現するとして、その『感染』を幻想殺しが防いでくれるかはわからないのだ
もちろんその以前の話に、相手がこちらを捕食する気なら、致命傷を負うリスクすらある

上条(こっちを掴もうとした瞬間、すれ違うようにかわしながら、どこかに触れる! これでいこう!)


女子生徒「ぁあー」

先ほどと同じように女子生徒が掴みかかってくる
普段、ある女の子の文字通り電撃にさえ反応できる彼は、この程度の速度なら簡単に回避すことができる
空振りした腕の脇をすっとすれ違い、そのざまにすっと右手を少女の頭に当てた。髪と頭皮の感触がたしかに手に伝わる

そのまま幅跳びのようにジャンプして距離をとると、上条は振り返って少女の様子を確認した

女子生徒「…………ぅぅうー」

上条「……くそ、駄目かっ……!」

ゆっくりと振り返る少女の様子は、まるで先ほどと変わっていなかった
幻想殺しが発動するときは、まるでガラスが割れるかのような音がするのだが、それも聞こえなかった

上条(少なくともただ触れただけじゃ駄目なのか……)
36 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga sage]:2011/03/09(水) 00:39:28.80 ID:QPz9raj10

女性「……う、ぉぉ……」

男子生徒「……ぁ」


上条「くっ……」

女子生徒のすぐ後ろに、後から現れたゾンビたちが並んだ
距離が近づいたために、先ほどはよく見えなかったところがよく見える
2人とも、頬が溶けたように腐敗し、女性のほうは片目がなく、男子生徒の片手の指は、全部ありえないほうを向いていた
最新技術の映画で見たときよりも、リアルな恐怖と嫌悪感が上条を襲った

上条(くそっ……!)

上条はこみ上げてきた吐き気をこらえながら、その場から逃げ出した
スキルアウトが相手のとき、3人以上が相手なら逃げるのが上条の護身術の1つである。
囲まれて逃げ場がなくなれば、そこでおしまいだからだ。それは相手がゾンビでも変りはない
それに今、彼がこの場にいても、できることは何もない

背後の呻き声がだんだん遠ざかっていく。幸い、進む先の方向からにゾンビの姿は見えない

走る上条の頭の中では様々なことが渦巻いていた

上条(なんでこんなことになってるんだ!?昨日は平和そのものだったのに……!

    この現象は街中で起こってるのか?まだ誰か、生き残っている人がいるのか?

    いったい誰がこんなことを引き起こしたんだ!?あんな風になった人達は元に戻れるのか!?)

上条(インデックスはどこに行ったんだ?無事なのか?何をしているんだ?気になることって?

    土御門達……学校のやつらは?それにビリビリ……。俺の友達は無事なのかよ!?)
37 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga sage]:2011/03/09(水) 00:40:24.12 ID:QPz9raj10

走りながら聴覚を研ぎ澄ませてみる
何も聞こえない── いや、ほんとうにかすかだが、様々な方向から銃声や爆音、そして悲鳴が聞こえる気がした
どこかで、能力者やアンチスキルとゾンビが戦っているのだろうか?
なんとか情報を集める手段はないのか、情報──

上条「そうだ!携帯!」

速度を緩めずに携帯を取り出してみる
もう使えるほどには充電されていたが、電波の棒は圏外になっている
学園都市の中で圏外になることは、よほど電波を通さない仕掛けをしてあるとこでもない限り
めったに起きることではないのだが……

だがそれでも、朝に来ていた着信とメールは確認できた
着信は1件、小萌先生からだ。メールは7件も入っている

小萌先生からの留守電は後に回し、上条はメールのほうを確認することにした
その間も足は止まらず、当初の目的の方向── 彼の高校へ向かい
ときどき周囲を見て、ゾンビの群れに飛び込むなんてことがないように警戒する
幸か不幸か、周りにはゾンビも人も見当たらなかった

1件目のメールは土御門から
『HRがはじまるってのにどこで油うってるんだぜい?また美人のおねえさんでも助けてるのかにゃー?』
などという、いつもの調子のメールである


だが2件目以降、様子が一変していた

残り6つのうち、3件が土御門から、1件は青髪ピアス、1件は姫神から届いていた
全員彼の友人であり、同じ高校の同じクラスに所属する人達である
それぞれの内容はきれぎれに、
『かみやん!無事なのか?返事をくれ!』『かみやん!どこにおるんや!』『どこにいるの?返事をして』
などとこちらの安否を真剣に気遣うものだった
38 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga sage]:2011/03/09(水) 00:40:59.30 ID:QPz9raj10

そして土御門の最後のメールには、それまでにない詳細な内容が書かれていた


『何かあったのか?メールが出来ない状況なのか?インデックスは傍にいないのか?

できれば安否が知りたい。返事ができるようになり次第、連絡をくれ

今この学園都市で何が起きているのかはわからない。だが、とても恐ろしいことが起こってしまったようだ

俺は今、高校の体育館に立てこもっている。外には……なんと呼べばいいか。化け物どもがうようよしている

中には俺たちのクラスメイトだった奴らもいる。やつら、朝から様子がおかしかったが、いきなり授業中に暴れだしたんだ

こっちは危険だが、俺としてはなんとか合流してもらいたい。できるか?かみやん。体育館だ


追記

とりあえず子萌先生、青ピ、吹寄、姫神は無事だぜい。今、他にも30人くらい一緒にいるにゃー

皆かみやんの無事を祈ってる。とにかく連絡をくれ!頼むから生きてろよ!かみやん!』



上条「土御門……!」

上条はそのメールを読み終わると、少しだけ顔の表情を緩めた
どうやらまだ、何十人かでも生き残っている人達がいるらしい。そしてその中には、上条が特に親しかった人達もいるようだ
しかし、どうやらクラスメイトや学友たちの多くは犠牲になったようにも取れる
それにこの現象はやはり学園都市中で起こっているらしいし
魔術側、科学側の両方に精通する土御門にも何が起こったのかわからないところをみると、問題の解決も厳しそうだ

しかし上条のやるべきことは決まった
まずはなんとしてでも高校の体育館にいる仲間たちと合流すること。そしてそこから打開策を考えること

上条「やってやるぜ……!」
39 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga sage]:2011/03/09(水) 00:42:04.92 ID:QPz9raj10

上条は最後の1通のメールを見ようと目を落とした
だが、その目線が携帯に落ちる途中、あるものを前方にとらえ、急いで前を見据えなおす

ここにきてゾンビたちが、進路上に現れたのだ
見える範囲で5人。学生服を着た男女が、空ろな表情でこちらに歩いてくる
こちらがつっこんでいくように走っているため、距離はどんどん縮まっていく

上条「うおおおお!!」

上条はスピードを落とさなかった。むしろ今まで以上にペースをあげて走っていく
ゾンビたちの動きは遅い。つかまれる前にすり抜けて、そのまま一気に走り抜けてしまおうというのだ


上条(こんなとこで死ねるもんか!絶対に皆のところに行くんだ!)



上条(そして……インデックスやビリビリを探し出す!)








ちらりと見えた最後のメールの送り主の名は御坂美琴となっていた


内容は


『 たすけて 』


上条当麻 1日目 9:47:30 第七学区登校路 自分の通う高校へ向かう
40 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga sage]:2011/03/09(水) 00:43:13.28 ID:QPz9raj10








     モノガタリノハジマリ
第1話:上条の不幸








                              おわり
41 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/09(水) 00:43:59.99 ID:QPz9raj10
投下完了です。読んでくださったかた、ありがとうございました

新約とあるはいつ発売でしたっけ?
新しいキャラクターがでてきても、多分登場させることはないですが
既存のキャラの新たな一面はチェックしておきたい……

それと今回投下前に、書いているとき聞いていた曲というものを乗せましたが
『そういうの出されるとこっちのイメージ崩れる』とか『正直ないからやめて』とか
ありましたら次回から自重します。意見をお願いします
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 00:47:34.28 ID:Eq4TUznPo

続きがすっげえ気になる…幻想殺し効かないってきっついな
何か打開策あるんだろうか
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 00:51:38.84 ID:ZTNyCnHAO
どうあがいても絶望なのに気になっちゃう!不思議!
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 00:54:08.67 ID:ogkWM3Ma0
あぁぁぁぁぁぁ続きが気になるぅぅうぅぅ乙です!
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 01:08:02.31 ID:cQuD2TNAO
曲アリだと思う。でもって描写がしっかりしててかつ読みやすい・・・
幻想殺しの説明もわかりやすかった。これからも読ませてもらうから、期待してるよ。乙
46 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/09(水) 01:27:22.35 ID:QPz9raj10
誤字訂正
>>30
×両腕をだらんとあげて、左足を引きづりながら、ゆっくりとこちらに歩いてきている
○両腕をだらんとあげて、左足を引き摺りながら、ゆっくりとこちらに歩いてきている

>>38
×とりあえず子萌先生、青ピ、吹寄、姫神は無事だぜい。今、他にも30人くらい一緒にいるにゃー
○とりあえず小萌先生、青ピ、吹寄、姫神は無事だぜい。今、他にも30人くらい一緒にいるにゃー

最後のはやっちゃいけないミスだ……すみません
他にもいろいろ推敲したいとこが……
次の投下は1週間後くらいになる予定です
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 01:48:57.73 ID:H0UHYox7o
うわぁぁぁぁこええええ!!
黄泉川先生大丈夫かよ…
おつかれえええ!!

そういやサイレンとのクロスがあったな
どうなってんだろ
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/09(水) 02:02:56.74 ID:ogkWM3Ma0
>>47 作者は、異界に取り残されました。(↑∀↑)
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 03:02:00.17 ID:FD0kdkqAO
博士「どうしよう…」
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 04:28:26.32 ID:6l2MqTEAO
丁重で読み易い
ドキドキしながら続きを待つぜ
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 07:44:54.94 ID:se0h45vAO
乙!!御坂は!御坂はどうなるんだ!
ついでに新約とあるは3月10日・・・そう佐天さんの日に発売だ!!
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 07:47:31.48 ID:uicyLuOIO
サイレンスレの絶望感が蘇ったわ
上やん美琴を助けたってー!
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 10:29:29.87 ID:i7WcRi8IO
美琴が…、早く!
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 14:04:30.65 ID:KNpFfnaOo
おい誰かサンダーガン持ってこい
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 20:06:27.74 ID:7YssSTqs0
ちょっとブラックオプスでゾンビやってくる
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 00:21:39.05 ID:I1K+IJJ20
>>1
いつか、いつか来ると思ってたぜ 学園都市感染物語
てか、あんだけ科学でいろいろやってる町なんだから
バイオハザードの一回や二回はやってそうだよね
アレイ☆がどーなってんのか気になる
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 00:27:36.05 ID:Rop+GYuyo
ロメロやバイオのゾンビならまだしも、マーベルゾンビだとまさに絶望だぜ……

マーベルゾンビ=生前の特殊能力がそのまま使えるゾンビ。
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 21:39:10.05 ID:FitaTK9G0
>>56
☆「プランどころじゃねEEEEEEE」
59 : ◆Rx8sTNAmH2 [sage]:2011/03/11(金) 16:54:14.89 ID:/Y8l+jKL0
ああああ!第3話の書きためがきえてるううう!!
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
60 : ◆Rx8sTNAmH2 :2011/03/12(土) 00:10:35.77 ID:pJZmbxEc0
ええと皆様こんばんは
地震の被害に遭われたかたはいらっしゃいますか?大丈夫でしたか?
これからの二次被害にもお気をつけ下さい

>>1の家では食器が沢山割れ、本棚が倒れたものの、家族全員無事でした
ただ、こうして書き込んでいる間にも余震がきており、正直けっこう精神的にきついです・・・・・・
また>>59でもありますが、一部の書きためが停電のために消失してしまいました

この土日に第2話を投下する予定でしたが、予定を延期し、月曜以降とさせていただきます
投下を待ってくださるかたには申し訳ありませんが、少々お待ちください
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 00:26:34.31 ID:huWIdDhZo
無事でよかった

それにしてもSIRENとバイオのいいとこどりみたいで面白いな
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 00:34:21.74 ID:i26Ro+eAo
無事でよかった
落ち着いたら再開してくれ
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
63 : ◆Rx8sTNAmH2 :2011/03/13(日) 16:38:48.01 ID:tQMxf1Mi0
今晩だいたい9時ごろから投下させてもらいます
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 16:47:38.33 ID:py3iZU2DO
楽しみに待ってます!
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 17:12:30.73 ID:XWnRa1oAO
無事でなによりだぜ
さあ落ち着き次第三話の復元に取り掛かるんだ
66 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:03:04.65 ID:tQMxf1Mi0

訂正
>>36
×背後の呻き声がだんだん遠ざかっていく。幸い、進む先の方向からにゾンビの姿は見えない
○背後の呻き声がだんだん遠ざかっていく。幸い、進む先の方向にゾンビの姿は見えない



>>1です
みなさまの地域は地震の被害、大丈夫でしたか?怪我をされた方などいらっしゃいませんか?

>>1の近所では、お墓の石碑や神社の灯篭が砕け散ったり、瓦や塀が崩れた家があるくらいで
大怪我した人や亡くなられた方はいらっしゃらなかったようです

一応油断はまだできない状況ではありますし、これから物資などが足りなくなる可能性もありますが
とりあえず落ち着いたので、第2話を投下させてもらいます

視点は移って美琴パートです
このSSはさまざまなキャラクターの視点で話が進んでいきます
時間を目安にそれぞれの行動を見ると面白いかもしれないですね
67 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:03:50.33 ID:tQMxf1Mi0

本編投下の前にレス返しを。意外と感想多くてびっくりです。プ、プレッシャーが……

>>42
そげぶが出来ない時点で上条さんは普通の高校生(設定能力上)ですからね
そのあたりもこれからの彼の行動に関わってくるかも

>>43
絶望にあがく姿は美しいからって、ゾーマが言ってた

>>44
どうぞお茶でも飲みながらまったりお待ちください

>>45
ご意見どうもです。曲はそのまま載せさせてもらうことにします
一応、書きおえた後時間を置いて、無理はないか、判りにくいことはないか確認するようにしてます

>>47>>48
結局途中で終わっちゃったみたいなんですよね
作者さんが俺の書いている作品を見て、続きを書きたいと思ってくれたら皆得

>>49
助手「何したんですか!?また大事な書類にコーヒーこぼしたとかじゃないですよね?」

>>50
ありがとうございます
遅筆なので、他の方の作品の合間合間にでも読んでいただければと

>>51
新約まだ読んでないです……気になるー!
あ、ネタバレは構いませんよ。時期過ぎてるんで

>>52
美琴なら俺の隣でぬいぐるみ もふってるよ

>>53
悟空を待つクリリン状態!
68 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:04:26.85 ID:tQMxf1Mi0

>>54>>55
コール オブ デューティ ブラックオプスですか?元ネタがちょっとわからなかった……すみません

>>56>>58
多分バイオ兵器としてウィルスとかの研究もしているでしょうね。でもしっかりと管理はしてそうです
アレイスターは……

>>57
調べてみたら、アメコミですか?そんなのもあるんですね。まさかヒーローをゾンビにするとは
この話でのゾンビたちは、果たして能力が使えるのでしょうか?そのあたりも書いていきたいです

>>61>>62
ありがとうございます
本当に今回の地震と津波は……本当にヤバいって感じでしたね……

>>64>>65
ありがとうございます
第3話はなんとか半分くらいまで書き直せました



今回書いている間に聞いていた曲はこんな感じです

ALI Project - プラタナスの葉末に風は眠る (instrumental)
http://www.youtube.com/watch?v=GFTLOCj7wZA

Johann Pachelpel - Kanon In D
http://www.youtube.com/watch?v=hOA-2hl1Vbc&feature=fvst

ALI Project - 地獄の門
http://www.youtube.com/watch?v=NPdGY2-gLTY

Avenged Sevenfold - Bat Country
http://www.youtube.com/watch?v=IHS3qJdxefY

ALI Project - 若い死者からのレクイエム
http://www.youtube.com/watch?v=yOP4xltvXS8

Metallica - Enter Sandman
http://www.youtube.com/watch?v=1QP-SIW6iKY
69 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:05:01.05 ID:tQMxf1Mi0

御坂美琴 1日目 6:45:00 第七学区 常盤台中学寮の自室


 ジリリリリリリ

デフォルメされたカエルの顔の目覚まし時計が、けたたましく音をたてる
その音に夢の世界から追い立てられた少女が、布団の中から手を伸ばし、ガシャンと音を止めた

美琴「んー……ふわぁああ……」

上半身を起こして、大きく伸びをしたのは
ピンクにカエルの顔が散りばめられた、ファンシーなパジャマを着た少女である
ただ、その服を好むには少し年齢が過ぎているような気がしないでもないが……

くしゃくしゃになった頭をかきつつまだ眠そうに小さくあくびをする、彼女の名前は御坂美琴
名門常盤台中学に通う中学2年生であり、学園都市で7人しかいないレベル5、第三位その人である

美琴「黒子〜?おはよー」

美琴は目をこすりながら、部屋の反対側にあるもう1つのベットのふくらみに声をかけた
そこには白井黒子という、彼女の後輩が寝ているはずだ

ここ常盤台女子寮では、学年の違うもの同士が同じ部屋にはいることはめったに無いのだが
『あくまで合法的に』この後輩は、自分と同じ部屋で生活する権利を獲得した

それだけ、美琴に心酔しているということであるが、その憧れが行き過ぎて変態行為へとつながり
美琴の怒りをかうこともあるという……。だが基本的には正義感の強い、真面目な子だ
常盤台に入学してからの付き合いだが、なんだかんだでお互い信用しあっている仲である

その後輩は、どうやらまだ起きていないようだ
いつもは大体、美琴の目覚まし時計の音で一緒に起きるのだが
70 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:05:22.08 ID:tQMxf1Mi0

美琴は別におかしいとは思わなかった

白井黒子は『風紀委員(ジャッジメント)』に所属している
ジャッジメントとは生徒で構成された、アンチスキルとは別の警察的機関である
その仕事柄、夜遅くまで仕事があったり、時には戦闘や長距離の移動を強いられることすらある
もちろん、本来は『生徒』に『危険にさらす』ことと『危険を跳ね除けるだけの力をもたせる』ようなことは
学園都市としてもあまりしたくないのか、本来あまり重要な事件に関わることは無い

無いはずなのだが、この仕事には真面目な少女は、率先して活動し
率先しすぎて始末書の山が出来るほどに活動することすらあるのだ

昨晩もおそらく、美琴が寝た後も、書類を片付けていたか何かで遅くなったのだろう
そういう日の翌朝は疲れのためか、なかなか起きてこないのだ

美琴「黒子ー?起きないの?」

美琴が声をもう一度かけると、布団の山がモゾリと動き、小柄な少女が顔を覗かせた

黒子「うー……今起きますの……」

美琴「また遅くまで始末書書いてたの?目、真っ赤よ」

目をしばしばさせている後輩を尻目に、美琴は洗面台へと向かった



歯を磨き、顔を洗い、髪にくしを通したところで、美琴は黒子がまだ起き上がっていないことに気がついた

美琴「ちょっと黒子。二度寝してる時間はないわよ!」
71 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:05:48.04 ID:tQMxf1Mi0

黒子のベットの脇まで寄ってみて、美琴は初めて後輩の調子がおかしいことに気がついた

顔だけ布団の上に出し、こちらを見ることもなく、ぼーっと天井を見つめている
その表情は空ろで、心なしか熱を帯びているように見えた

美琴「ちょっろと、どうしたの?調子悪いの?」

美琴が声をかけると、黒子はやっとこちらに気がついたように、目線だけ動かした
どうみても普段の快活な調子は見られない。普段は怪我をしても無理をおすような性格の子である
相当調子を崩しているようだ

黒子「ええ……その、ちょっと頭がぼんやりしますの」

美琴「熱があるのかしら?」

美琴は自分の手を、そっと後輩の額に当ててみた
心なしか平温よりも高い気がするのは、先ほど顔を洗ったとき、水で手が冷たくなっているだけではないだろう
黒子はその手の冷たい感触が心地いいのか、目を閉じて顔を緩ませた

美琴「うーん……ちょっと熱があるみたいね。風邪かしら?

    ほら、おとといも何かの予防注射か何かあったじゃない。これから寒くなる一方だしね」

黒子「もしかしたら、それが体にあわなかったのかもしれないですの……。

    でもそれなら昨日には症状が出ている気がしますの……」

美琴「どうする?今日は学校休む?」

黒子「お姉さまの手のお陰で少し楽になりましたが……そうですわね。ちょっと今日はお休みさせてもらいますの。

    まったく……調子を崩すなんて、ジャッジメントの風上にも置けないですわね……」

美琴「しかたないわよ。人間なんだから風邪くらいひくわ。それよりゆっくり休んで、今日中に治しちゃいなさい」
72 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:06:30.36 ID:tQMxf1Mi0

美琴が手を放すと、黒子はそっと目を開け、名残惜しそうにこちらを見た
不覚にもそのしぐさにちょっとドキッとしてしまった美琴だが、寮には点呼の時間があり、それに遅れることは出来ない
いそいそといつもの制服に着替え、髪を整えた

美琴「とりあえず、水。ほら、のんどきなさい」

黒子「すみませんの……お姉さまはほんとにお優しいですのね」

準備を終えた美琴が、コップに冷たい水を入れて黒子の前に差し出すと
彼女は起き上がって美味しそうにぐびぐびと飲んだ。が、飲み終えると、再びベッドに倒れてしまう

美琴(ほんとに調子悪そうね……。私が学校から帰ってきても、調子が悪いみたいなら

    病院につれていくことも考えとこ)

結構面倒見のいい美琴は、そんなことを考えながら部屋の出口に向かった


美琴「それじゃあ、寮監と学校には私から連絡しておくから」

黒子「お願いしますわ……お姉さま。いってらっしゃいませ」

美琴「何かあったら携帯に連絡してね。後、無理しちゃ駄目よ」

それだけ言い残して、美琴は部屋から出て行き、扉を閉めた。点呼のため、食堂に向かわなくてはならない。
部屋の窓から外を見てみると、少し雲はあるが、いい天気だ。今日も何事も無い、平和な一日になるだろう


その日が地獄の日々の始まりであるとも知らずに、美琴は歩き出した


御坂美琴 1日目 7:15:19 第七学区 常盤台中学寮廊下 美琴、食堂へ
73 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:07:05.75 ID:tQMxf1Mi0









第2話:常盤台の混乱









74 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:07:40.60 ID:tQMxf1Mi0

御坂美琴 1日目 9:02:29 第七学区 常盤台中学 美琴のクラス


美琴(なんだかなぁ……)

美琴は頬杖をついて、ノートをペラペラめくりながら朝のことを思い出していた

調子を崩していたのは黒子だけではなかったのだ

美琴が寝泊りする常盤台の寮は、朝の7時に起床、身なりを整え、7時半に食堂に集合し、点呼を受けなくてはならない
しかし、今日はなんと4分の1ほどの子が点呼に現れず、数人が遅刻するという異例な事態
集合時間に間にあったこの中にも、調子が悪そうな子がいたのだ

厳しいことで有名な寮監も、さすがに体調を崩したものを責めることは出来ず
またその数があまりにも多いために、珍しくためらう様な口調で

寮監『風邪か何かが流行っているのか?しっかりと予防行動をするように』

と、述べただけに留まり、学校側への連絡と、事態の把握のため引き上げてしまったのだ


そして学校についた後も、この奇妙な出来事は続いていた

美琴たちの住む寮のほかに、常盤台はもう1つの寮を持つ
そちらのほうでも、同様な症状がおきた子が多くいるというのである

しかも生徒だけではなく、教員も2、3人ほど、体調不良で休んでいる人がいるらしい

実際、美琴が今いるクラスの席は、3分の1が空席になっていた
出席している子にも3人ほど、辛そうな顔をしている子や、ぼーっとあらぬほうを見つめている子がいる
学校全体がそんな状況なので、とりあえず今日の授業は、復習と自習が中心となり
明日以降、いやもしかすると今日の昼からでも学校閉鎖になりかねない勢いであった
75 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:08:17.86 ID:tQMxf1Mi0

症状としては、軽い熱、吐き気、頭痛、そして倦怠感らしい
特に倦怠感は、体をうごかすのも億劫なそうだ
黒子も同じような感じだったので、おそらく同じ『病気』に感染したのだろう

症状は一見ただの風邪のようだが、咳はでないし、下痢などという話も聞かない
まあそこはお嬢様学校、口にしたくないだけかもしれないが……

美琴(それにしても妙なのは、ここまで一斉に『病人』が出たことよね)

インフルエンザなど感染力の強い病気でも
まず初めの一人から、また一人、また一人と感染していくのが普通である
だが今回は病気の感染経路が全く不明なのだ
昨日の昨日まで、皆元気そのものであり、謎の病気が流行っているなんて噂でも聞いていない

そもそも学園都市は、基本的に清潔であり、予防注射の摂取なども義務化されているので
風邪をひくなんてことが珍しいくらいなのだ
逆に言うと、普段から清潔な環境に慣れているので、未知の病気が現れたときに
抵抗力が落ちる可能性はある。今回はそれが原因なのだろうか

美琴(まったく……どうなっているのかしら?私もとりあえず手洗いうがいは気を使いますか。

    黒子には何か持っていってあげようかな。今の時期は何の果物が美味しいんだっけ?

    あ、ケーキでもいいか。風邪のときは味がわからなくなるって言うし、濃い目の味のがいいかな?

    あと寮の子達にもクッキーでも差し入れてあげようかな。朝の感じだとジュースのほうが喜ばれるかな?)
76 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:09:24.97 ID:tQMxf1Mi0



クラスメイト1「う……ううう……」


美琴はふと、考えの世界から抜け出した
美琴が今座っている席は、教室の中央より少し後ろの席だ。ほとんどクラスの全体を見渡すことが出来る

一番前、出入り口に近いところに座っていた子が、机に突っ伏して呻いていた

美琴(あ、調子が悪かった1人……悪化したのかな?)

クラスメイト2「ちょっと?どうしたんですの?」

クラスメイト3「大丈夫ですか?」

近くの席に座っていた子が立ち上がり、心配そうに駆け寄った
自習をしていたクラス中の視線がそこに向かう

教師「どうしました?」

自習を監督していた女教師も近づいていく。だがクラスメイト1は反応せず、ただ机に伏して呻くだけだ

クラスメイト4「どうしたんでしょう?体調を悪化させたんでしょうか?」

美琴「さあ……?」

隣席の子の誰ともなしの呟きに、美琴は目は向けず答えた

美琴(大丈夫かしら……そういえば、黒子も悪化させてないといいけど……)

この時点ではまだ、美琴はある意味暢気なことを考えていたのだが──

クラスメイト5「うう、ああぁ……」

クラスメイト6「だ、大丈夫?あなたも?」

クラスメイト7「わ、私も……気分が……ぁぁ」

クラスメイト8「ええ!?ちょ、ちょっと」

美琴「!?」
77 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:11:35.96 ID:tQMxf1Mi0

なんと、他の朝から調子の悪そうだった子も、一斉に突っ伏してしまったのだ
3人とも、何かを耐えるような声をあげ、時折肩を震わせている

教室の中がざわめきたった

教師「静かになさい!だれか、この3人を保健室まで連れて行ってあげなさい

    他に誰か、気分の悪い子はいませんか?」

教師が声をあげると、教室は静まった。他に手を上げる子はいない

クラスメイト2「わ、私が連れて行きます」

クラスメイト6「こっちは私が……」

クラスメイト8「じゃあこの子は私が連れて行きます。ね、立てる?」

クラスメイト3「私もいきます。私はレベル3の『念動力(テレキネシス) 』ですから、負担をかけず支えたげられると思います」

教師「ええ、じゃあ……お願いしますね」


美琴「あ、私も行きましょうか──」

── 美琴が手を上げた瞬間だった



「きゃぁああああああああああ!!」



美琴「!?」

下の階から、絹を裂くような悲鳴が上がったのだ
しかも1人分だけでなく、次々と立て続けに、違う声が響いてくる

教室が先ほどよりもざわめき、ある子は不安げに顔を曇らせ、ある子は窓から下の階を覗いた
78 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:12:20.72 ID:tQMxf1Mi0

美琴(何!?何があったの?……下の階は一年生のクラスよね?)

教師「全員静かにしなさい!私が見てきますから、ここで静かに待機していなさい!」

教師が再び諌め、出口に向かったところで──


「いやぁああああ!!」

「きゃあああああああ!!」


クラスメイト4「こ、今度は何?」

美琴「上の階からだわ!」

下からの悲鳴は続いたまま、今度は上の階から悲鳴が上がったのだ
上の階ゆえに振動が伝わりやすいのか、どたばたと足音が響き、椅子や机が倒れるような音も聞こえる

美琴「── っ!」

美琴は机の横にかけていたバッグを机の上にあげ、中身をぶちまけた
目的は、ゲームセンターのコインが詰まったホルダー型コインケース。1つにつき20枚まで装填できるものが2つ、転がり出る
それを引っつかみ、スカートのポケットに突っ込んだ

何の変哲も無いコインであっても、美琴の『超能力』であり、名の由来でもある『超電磁砲(レールガン)』で撃てば
音速の3倍以上のスピードで、50m先の標的をぶち抜くこともできる。強力な武器になるのだ

美琴はこの学園都市の『表の住民』ではあるが、他の同学年とは比べ物にならないほどの戦闘を経験していた
その経験が、自分の護身をするよう、生存本能に働きかけたのである

さらに、デフォルメされたカエルの姿をした携帯電話も、電源が入っていることを確認してポケットに入れると
美琴は自分に近いほう、教室のもう1つの出口に向かって走り出した

クラスメイト4「御坂さま!?」

教師「こら、御坂さん!何処にいくんですか!?」
79 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:13:24.94 ID:tQMxf1Mi0

美琴「すみません先生!私、上の階を見てきます!」

扉の前で美琴は振り向き、教師の方を見た
クラス中の視線がこちらに向かっているのに、ほんの少しだけたじろぐ

美琴「わ、私は『風紀委員』じゃないけど、『レベル5』です!何か、手助けできることがあるかもしれない!」

教師「……え、ええ、そうね。だけどもしも危険なことが起きてたら……」

教師はためらった。レベル5の力添えと、少女を危険に送り出すかもしれないことを、天秤にかけているのだろうか
そうしている間も、悲鳴はあがり、どたどたという音は続いている

廊下に影が映った。どうやら隣のクラスの子が、何人か廊下に出てきたようだ。不安げにきょろきょろとしている

美琴「大丈夫です。何かあったら、すぐに戻ってきますから!」

もちろんそんなつもりは無いが、美琴は早く決断してもらうために、声をあげた
教師は顔を上げ、頷いた

教師「わかったわ。でも、危ないことは教師の皆さんに任せて、できるだけ無理はしないでね」

美琴「ありがとうございます!気をつけます!」


教師「こちらこそお願いします。では他の子は静かにここで待機を──」

── 美琴がドアを開け、教師が意識をクラスに向けた瞬間だった



クラスメイト3「きゃああああああああ!!」




ついに、『この教室』で悲鳴があがった


80 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:14:14.64 ID:tQMxf1Mi0

美琴「っ!?」

美琴が振り向き、そして目にしたものは──



クラスメイト1「…………ぅ、ぅ」


クラスメイト2「……っ……!……っ!」パクパク

いつの間にか立ち上がっていたクラスメイト1が、がっちりとクラスメイト2にしがみついていた

抱きつくクラスメイト1、抱きつかれるクラスメイト2
それだけなら、たいして珍しい光景ではない。スキンシップの一環で抱きつく後輩がルームメイトにいるくらいなのだから
お嬢様学校とはいえ、ここは女子高、昼休みなどに見られる光景ではある


だが、それ以外は、全てがおかしかった

美琴の位置からは、クラスメイト1の顔が、クラスメイト2の喉に、まるでキスをするかのような角度で触れているように見えた
だが、その、口が触れているであろう位置の下に、どんどんと流れていくものがある

血だ

クラスメイト1はクラスメイト2の首筋に噛み付いているのだ

その血は恐ろしい勢いで、喉を伝わり、白とクリーム色の制服に、黒くしみこんでいく
クラスメイト2は、何がおこったのかわからないという表情で、上を見上げ
何かを言いたいのか、空気が吸えないのか、パクパクと口を動かしていた

2人の1番近くにいたクラスメイト3は、目を大きく見開き、口を両手で塞いでいる
まるで動くことを忘れてしまったかのように固まった彼女は、その凄惨な状況を脳の中に刻まれ
そのショックに耐え切れず、ふらふらと倒れてしまった
81 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:15:14.64 ID:tQMxf1Mi0

誰もが、何が起こったのか、何がおきているのか理解できず、呼吸さえ飲み込んで、2人を見た

その間、クラスメイト1は離れることなく、クラスメイト2の顔色は青白くなっていった
ふと、クラスメイト2の右手がゆっくりと上がり、クラスメイト1の後頭部にそっと触れた

クラスメイト2「…………っ……ぁ」

喉から引き離そうとしたのか、あるいは無意識の動きか
一瞬、まるで抱きしめるかのような形になったあと


その手は力なく垂れ下がり、足もガクンと力が抜けたように、その身をクラスメイト1に委ねた


美琴「── うそ……」

それを皮切りに、クラス中に悲鳴の合唱が起きた
ある少女はガタガタと立ち上がり、教室の端に後退した。その顔は恐怖に引きつっている
ある少女はクラスメイト3のように気絶した。無理も無いだろう。前触れもなく、目の前で悪夢のような光景が繰り広げられたのだから
ある少女はぽかんと口をあけていた。何が起こったのか、未だに理解できていないのだろう

教師「な、これは!?ちょっと、離れなさい!」
そしてここにきてようやく教師が動いた。彼女も近くにいたのだが、やはり突然の出来事に、体が固まっていたのだ
未だにクラスメイト2の喉から口を離さないクラスメイト1を、後ろから羽交い絞めにして引き離そうとする
が、しっかりと抱きついていて、まったく離れる気配が無い

クラスメイト4「う、あああ!!」

ここでクラスメイト4が叫びながら駆け寄り、教師に協力した
2人がかりで引き離そうと必死に力を込めると、ついにクラスメイト1はその身を剥がした

再びクラスに悲鳴が上がった

82 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:16:28.25 ID:tQMxf1Mi0

クラスメイト1の顔は、白と赤で構成されていた。とても昨日まで普通に笑い、泣き、怒っていた人間とは思えない
表情は空ろで喜怒哀楽がなく、顔色は青白で、クラスメイト2と同じくらいに死を漂わせていた
額には脂汗がてかてかとひかり、口の周りには血がべっとりとついている
その口をくちゃくちゃと租借──何を租借しているかは考えたくない ── するさまは、もはや到底人間とは呼べない
まるで、これでは──

クラスメイト4「ゾ、ゾンビ……!?」

クラスメイト2をその腕に抱きしめた、クラスメイト4の顔から血の気が引いた
なけなしの勇気を振り絞った彼女ではあったが、あまりの恐怖にへなへなと崩れてしまう
クラスメイト2は、ぐったりとしていて、血は今も流れている。だがクラスメイト4に止血をするだけの余裕はなかった

それに、どう見ても、もう彼女は呼吸をしていない

教師「!! こら! あ、暴れないで!」

教師に羽交い絞めされていたクラスメイト1だったが、口の中の何かを飲み込むと
自由を得ようともがきだした。女性とはいえ大人が振り回されるほどの力だ
さらにクラスメイト1は、教師の腕に顔を近づけ、思いっきり噛み付いた!

教師「っ!!うう……!」

それでも、教師はクラスメイト1を放すことは無かった
何がこの少女に起きているのかはわからない。だが、それでも、これ以上生徒達を傷つけるわけにはいかないのだ


だが、状況はさらに悪化していく



クラスメイト5「……ぅ、ぁあー……」

クラスメイト7「…………う〜……」
83 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:18:43.88 ID:tQMxf1Mi0

クラスメイト6「う、嘘でしょ!?」

クラスメイト8「きゃああああああ!?」

先ほど突っ伏してしまった、残りの2人も、顔を上げ、動き出したのだ
クラスメイト1と同じく、空ろな表情、蒼白い皮膚となり、近くにいた子に襲い掛かる!

クラスメイト6「い、いや!」

クラスメイト8「誰か、助けて!」




美琴「やめなさいっ!!」




突如、クラス中の机と椅子が浮き上がった。中身をぼろぼろと下に落としながら
空中を飛び、クラスメイト5とクラスメイト7を包囲して、他の子に近づかないようにけん制した

美琴が磁力を操り、動かしたのである

クラスメイト6「み、美琴さま!」

クラスメイト8「あ、ありがとうございます!」

美琴「皆!はやく逃げて!ここは危険だわ!」

美琴は出入り口を開ける様にどき、凶暴化したクラスメイトを見据えながら叫んだ

そのまま机と椅子の固まりは、おかしくなった少女達を巻き込み、クラスの端、廊下側とは逆側に
まるで牢屋のように鎮座した
2人の少女は、呻き声を上げながら、隙間から手を伸ばす。だがしっかりと組まれていて出ることは出来ない
美琴の叫びに、クラス中が、一斉に出口に向かって逃げ出した。中には気絶してしまった子に肩を貸している子も見られる

すぐに皆出口に殺到し、部屋に残ったのは、美琴と教師にクラスメイト4と、気絶しているクラスメイト3だけだ
そして、凶暴化した3人だ。そのうちの1人は未だに危険である
クラスメイト1は教師から口を離したものの、未だクラスメイト2とクラスメイト4のもとにいこうともがいている
84 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:19:55.38 ID:tQMxf1Mi0

クラスメイト4「み、御坂さま!」

教師「御坂さん……!」

美琴「先生!離れてください!電流で気絶させます!」

美琴は教室の前方に駆け出した。その体の周りにビリビリと紫電がまとわりついている

教師「お、お願いっ!」

教師が意図を理解し、ぱっと離れた瞬間


美琴「何が起こったのかわからないけど、とりあえず寝てなさいッ!」


人が気絶する程度の微細な調整をした電流が、空を裂き、クラスメイト1に流れた
御坂美琴の能力は『電撃使い(エレクトロマスター) 』であり、そのなかでも抜きん出て、高威力出力や精密制御を可能とする
磁力を操って机を空中に浮かばせたり、コインを飛ばしたりと、その能力の応用性は高い
電流を流して人を気絶させるくらいは朝飯前である

クラスメイト1「……っ」

クラスメイト1は、がくっと筋肉を収縮させ、白目をむいてばったりと倒れた
上手く気絶させることが出来たようだ

美琴は油断無く電気を纏ったまま、さらに近づく
……起き上がる気配は無い

教師「み、御坂さん。ありがとう……。」

クラスメイト4「み、御坂さま。助かりました」

美琴「いえ、私がもう少し早く反応できていたら……。それに、勝手に皆に指示を出してしまいました。」
85 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:20:56.21 ID:tQMxf1Mi0

美琴も他の子と同じように、クラスメイト1の『奇行』を見て固まってしまったのだ
いかにその気になれば、軍隊とぶつかりあうことさえできるレベル5とはいえ、
自分のクラスメイトが、同じクラスメイトにより殺される── しかも凄惨なやり方で ──
そんな光景を見て動揺しないほど、美琴は裏の世界に足を踏み入れてはいなかった
なんだかんだいっても、彼女はまだ中学2年生の女の子なのだ

だが、彼女は立ち直るのも一番早く、また頭はこの学校の中で一番速く回る演算力があった
その演算がたたき出したことの1つは、『調子が悪かった子は危険な可能性がある』ということ

そのすぐ後に、予想通り、クラスメイト5とクラスメイト7が立ち上がったので
彼女は即座に机と椅子の『隔離室』を作ることが出来たというわけである

教師「いいえ、私もそれは同じだし、こんなことになっては、皆逃げてもらったほうがいいわ

    本当に助かったわよ。ありがとう」

クラスメイト4「わ、私達もはやく逃げましょう!」

教室の隅の2人は、閉じ込められているものの未だにうなり声を上げているし
クラスメイト1も、何時目を覚ますかわからない。それに、他の所から凶暴化した子がくれば
この部屋に逃げ場は無いのだ

こうしている間にも悲鳴はどこかから上がり続けている。どこかから爆発音や風切り音まで聞こえた
誰か戦っているのだろうか。── 先ほどまで、同じ授業を受けていた仲間と

いつの間にか、同じ階からも悲鳴があがっている。きっと他のクラスでも同じような現象が起きているのだろう

廊下をバタバタと、他のクラスの子達が逃げていく
同じ学年なので、見知った顔ばかりだ。皆、見たことが無い恐怖の表情を浮かべ、中には泣いている子もいる

教師「ええ。そうね。行きましょう」

教師は腕の咬まれたところに、綺麗にハンカチを巻いていた
服の上から咬まれた筈なのに、異常なほど色濃い痣が出来てしまっている

教師は倒れてしまっているクラスメイト3をそっと抱き起こし、肩に腕を回させた

教師「この子は私が連れて行きます」
86 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:21:45.75 ID:tQMxf1Mi0

教師「もしも、その……こんなことは言いたくないけど、『ゾンビ』みたいな子が、学校中で現れているなら、

    学校指定の非難場は危ないかもしれないわね。私が許可をします。2人とも、好きなところに逃げなさい。」

クラスメイト4「せ、先生はどうなさるんですか」

教師「私は……一度非難場に行って、そこにいるだろう生徒や教師と合流した後で、

    どこか安全なところに移動します。学校の近くにしばらくいないといけないので、危険である可能性はありますが、

    教員として、非難場には一度行かなくてはなりません。どうします?一緒に来ますか?」

クラスメイト4「……わ、私はご一緒させてもらいます。一人では怖くて足が竦んじゃいそうです」

教師「わかりました。御坂さんはどうします?」

美琴「……」

美琴は先ほどから、頭をフル回転させ、様々なことを考えていた

この『凶暴化』の原因はなにか、どれくらいの規模で起きているのか、凶暴化した子としなかった子の違いは
凶暴化した子たちが友人を襲った理由は、安全な場所は、学園都市はどう動くのか、また暗部が関わっているのか
こんな風になってしまった子は、治療できるのか、アイツならどんな風に動くか
そして黒子なら──

美琴「黒子……!」

そこで美琴はショックを受けたように、可愛い後輩のことを思い出した。

彼女も朝、今凶暴化した子達と同じような症状に悩まされていなかったか?

もしも朝に調子が悪かった子達が、皆ゾンビになるというなら

黒子は、彼女は、今

どうなっている?
87 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:22:22.82 ID:tQMxf1Mi0

美琴「わ、私は、寮のルームメイトが心配です」

教師「寮にいるの?……今日休んだ子達は危険だわ。寮が今、どんな風になっているか……」

美琴「それでも!……そうだ、携帯!」

教師「連絡するのは安全な場所に行ってからにしなさい」

携帯を取り出した美琴を、教師はそっと止めた

教師「その後で連絡しても遅くは無いでしょう?とりあえず、今は此処から出ましょう」

美琴「はい……。」

美琴は少し唇を噛み締めたが、素直に携帯をポケットにしまった


クラスメイト4「……それでは、行きましょう」

美琴「あ、1つだけ待って!」

美琴は自分のハンカチを取り出し、クラスメイト2に近づき、そっとしゃがみこんだ
上向きに倒れていた彼女の顔色は真っ青だった。対照的に体は血で真っ赤に染まっている
……呼吸はしていない。死んでいる
食い破られた喉をなるべく見ないようにしながら、美琴はそっと目を閉じさせ、顔にハンカチをかけてあげた

おそらく、クラスメイト1から引き離されたときには、もう手遅れだったのだろう
彼女が最後に何を考えていたのか、それを思うと美琴の心は痛んだ

美琴(ごめんね……私が動けていれば、助かったかもしれないのに。助けてあげることができなかった。

    本当に……ごめんなさい……。)

教師「……その子はここにおいていかないといけないわね……心苦しいけど……」

クラスメイト4「…………」グスッ

美琴「……では行きましょう。途中までは私も一緒に行きます」

88 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga 余震ェ・・・]:2011/03/13(日) 21:23:17.36 ID:tQMxf1Mi0

美琴は立ち上がり、死体を背にして歩き出し──


── そして、出入り口に立っている、教師とクラスメイト4の顔が、さっとこわばるのを見た

視線の先は── 私の足元?


美琴「っ!!」


美琴は、教師達が何を見たのか確認せず、足に力を籠め、前方に跳躍した
足の下を、何かが動いたような気がした

着地とともに振り返った、その先にあったものは──




クラスメイト2「…………」



美琴「……え?嘘、でしょ?」


クラスメイト2が、確かに死んでいた子が、仰向きに横たわっていた子が


うつぶせになって、こちらを見ている。暗い目だ。視線が合った

その手は伸ばされ、何かを掴もうとしたかのように、軽く握られてる

クラスメイト4「あ……あ……」ガクガク

教師「御坂さん!はやく教室からでなさい!」
89 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga 余震ェ・・・]:2011/03/13(日) 21:24:56.43 ID:tQMxf1Mi0

教師は、震えて動けないクラスメイト4を、廊下に無理やり押し出すと、ドアに手をかけ美琴を呼んだ
クラスメイト3は肩に担いだままだ。

美琴は言われずとも、すぐにクラスメイト2から目を放し、教室の外に駆け出した

クラスメイト2の目を見たとき、美琴は体中に鳥肌が立つのを感じた
あの子は死んでいる。死んでいるのに、生きている

美琴が脱兎のごとく教室から飛び出すと、教師はぴしゃりとドアを閉め、外から鍵をかけた
クラスメイト2は、ゆっくり、ゆっくりと、床をはいずってにこちらに近づいてきている
扉を開けることは出来ないだろうが、それでも思わず3人はできるだけ扉から体を遠ざけた

美琴「な、なんなのよ……あれ……」

自分が出した声は、情けないほど震えていた。心臓はバクバクと脈打ち、呼吸はいつになく乱れている
恐怖に足が震えるのを感じた。美琴はこの感触をしっている

かつて、とある『実験』を止めようとしたときの感触だ。『死』が自分に牙を向いたときの恐怖だ


クラスメイト4「ほんとに、ほんとに酷いわ……。こんなことって……」

クラスメイト4はぼろぼろと涙をこぼしていた
恐怖からか、それとも友人の救いの無い姿に打ちのめされたのか……

その姿を見て、美琴はなぜか、少し落ち着いた
落ち着かなくてはならない、冷静でなくてはならないと、脳が命令を送っているのだろうか

その時、少し離れた教室のドアから、誰かが出てきた
3人はさっとそちらを向く

同級生がこちらに、腕を上げてゆっくりと歩いてきた
ただ、その様は、どうみても普通の状態ではない。顔色は悪く、口の端からはよだれが垂れている
この子も、犠牲になったのか。美琴は複雑な感情に、ギリリと奥歯を噛み締めた

教師「さあ、行きましょう。ここは危険だわ!」

教師が自分にも言い聞かせるように叫んだ。彼女はクラスメイト3に肩を貸す形ではなく
背に負ぶっていた。そのほうが、手は使えないが速く移動できると判断したのだろう
90 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:26:21.35 ID:tQMxf1Mi0

美琴「ええ、さあ、行くわよ!」

クラスメイト4「え、ええ。ありがとうございます」

クラスメイト4に手を差し伸べながら、美琴は油断無く、凶暴化……いやゾンビ化したクラスメイトを見据えた
ゆっくりとしか歩けないようだが、確実にこちらに向かってくる

つかまれば、自分も、クラスメイト2のようになってしまう

美琴(そんなの……絶対に嫌よ!)

美琴はポケットのコインホルダーの感触を確かめた
もしかすると、いや、ほぼ確実に『超電磁砲』の出番があるだろう

いつの間にか、悲鳴は遠くに消えていた。皆遠くに逃げていったのだろうか
常盤台の外は安全なのだろうか。一体何人の学友が生き延び、何人死ぬことになるのだろう

もう1人、いや、2人と、ゾンビたちが教室から出てくる
早く移動しないと、逃げ道が塞がれてしまう

教師「さあ、階段へ」


教師とクラスメイト4と一緒に、美琴は階段に向かって急いだ
重荷を背負う教師にあわせ、全力疾走ではないが、ゾンビたちが追いつける速さではない

美琴(あの子たちがゆっくりとしか動けないのは、不幸中の幸いね)

階段にたどり着き、ゾンビがいないか確認する。途中にはいないようだが
下の階の廊下に何人かいるようだ。彼女達は1年生、美琴達の後輩にあたる子らのはずである
小さくうなり声を上げながら、ふらふらとうろついている。中には血がこびり付いている子もいた

美琴「……っ」

だが、美琴にしてやれることは何も無い
そもそも、何がどうなっているのか、何もわかっていないのだ。下手な干渉は犠牲を増やすだけである

美琴(黒子の安全を確認したら、とにかく正確な情報が必要ね)
91 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:28:07.71 ID:tQMxf1Mi0

クラスメイト3を背負う教師を、バランスを崩さないように支えつつ
音を立てないように階段を下りてゆく

どうやら、ゾンビとなった子達は、あまり目は良くないようだ
気づかれずに踊り場にたどり着き、さらに下を目指そうとしたときだった


「こ、こちらに来ないでくださいな!!」


美琴「!」

美琴が聞き覚えのある叫び声が、この階のどこかからか聞こえてきた
ふらふらとしていたゾンビたちが、一斉にそちらへ歩き出す。どうやら音や声には反応するらしい

教師「に、逃げ遅れた子がいるのかしら?」

クラスメイト4「あれ……、今の声って」


美琴「先生、私は今の声の子を助けに行きます。皆さんは安全な場所に逃げてください」

美琴は迷いを感じさせない口調で宣言した。教師とクラスメイト4は驚いたようにこちらを見る
が、すぐに頷き返した。美琴の性格を知っているのである。こういうときに、彼女は一歩もひかないと

教師「わかったわ。今の子を助けてあげてください。本当に、気をつけてね」

クラスメイト4「御坂さま……ご無事で」

美琴「あなたも先生達を能力で守ってあげて。たしか……レベル3の『思念使い(マテリアライズ) 』だったっけ」

クラスメイト4「ええそうです。しっかりお守りします。……それでは、またお会いしましょう」
92 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:28:46.49 ID:tQMxf1Mi0

お互いに頷きあうと、美琴を残して教師達は階段を下りていった
それを見送ることなく、美琴は廊下に飛び出した。こちらに気づいているゾンビはいない


ゾンビたちは全員、ある教室を目指しているようだ

そこからは、ガタガタと机同士がぶつかるような音が響いている
まだ、中で誰かが抵抗しているのだろうか


美琴は後ろにゾンビがいないことを確認した後、コインホルダーから数枚、ゲームセンターのコインを取り出した

美琴(もう、知り合いが傷つくとこは見たくない。誰かを守れないで『レベル5』なんて笑い話にもならないわ)

そのコインを一枚親指に乗せ、まっすぐと腕を伸ばす。彼女の必殺技、『超電磁砲』の構えである

美琴(そのためなら……ごめんね、私はあなたたち(ゾンビ)を殺すことも辞さない!)

腕の直線上には、何人かの変わり果てた後輩達がいた


美琴(今行くから待っててね)

美琴はコインをピンと弾いた。唇をぎゅうっと噛み締める





美琴( 婚后さん )


常盤台の廊下で『超電磁砲』が炸裂した


御坂美琴 1日目 9:14:23 第七学区 常盤台中学廊下 美琴、ゾンビと交戦
93 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:29:46.71 ID:tQMxf1Mi0

寮監 1日目 7:56:36 第七学区 常盤台中学寮廊下


めがねにスーツをビシッと決めた女性がワゴンを押していた。常盤台の寮監である
ワゴンには山のように冷えたスポーツドリンクを積まれていた
寮監は今、部屋を渡り歩いていた。それぞれの部屋で休んでいる子に飲み物を渡し、状況を把握するためである
鬼の寮監と言われるほど普段は厳しい女性だが、沢山のドリンク代は彼女の自腹である
なんだかんだで人を思いやることのできる人なのだ。もっとも表に見ることはめったに無いのだが
彼女は規則に厳しい、融通の利かない人物なのである

寮監(ふむ……まったくどうしてこんな、急に病気が広まったんだ)

学校のほうに連絡をすると、もう1つの寮でも同じことが起きたようであり
さらに知り合いに聞いてみると、なんと学園都市中で、同じような現象が起きているらしい

寮監(自分の管理不届きが招いたかと思っていたが、どうやらただの病気というわけではないようだ)

部屋で休んでいる子は、皆覇気がなく、こちらの質問にも、どこか上の空でしか答えない
冷えたドリンクを渡すと、その時だけは少し反応を見せるのだが、それ以外のときはぽーっとしているのだ
寮監は専門的な医療知識はもっていないため、これだけでは何の病気なのかまったくわからなかった

寮監(医者を呼んだほうがいいだろうな……忙しいだろうが……。薬だけでも持ってきてもらわねば)


寮監(……まあいい。次は……白井、白井黒子か)

寮監はそこで考えを一旦打ち切った。次の欠席者の部屋の前についたからだ
彼女のルームメイトである御坂美琴によれば、体を動かすのもつらそうだったということだが

コンコン、と部屋のドアを叩く。返事があるとは思っていない。今までの子も、皆返事をしなかったからだ

寮監「白井、私だ。入るぞ?」

ワゴンから一本ペットボトルを取りつつ、ドアノブに手をかけた
94 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:30:12.28 ID:tQMxf1Mi0



寮監「……む?」

ドアノブが回らない。鍵が掛かっているのだ
プライバシーに関する配慮として、寮のそれぞれの部屋には、内側からかけることができる鍵がついている
ただし、普段その鍵をかける子はほとんどいない。せいぜい寝る間くらいである

もちろん寮監はマスターキーを持っている
すぐにスーツの内ポケットから鍵を出し、開錠して、扉を開けた


寮監「白井?」


部屋には誰もいなかった。黒子のベッドには、夜着ていた物だろうか、パジャマが脱ぎ捨てられている
バスルームにも居る気配は無い。クローゼットを見ると、彼女の制服が無くなっていた

寮監(調子がよくなったから、学校に行ったのか?)

それにしては何か、おかしい気がする。寮監の感がそう告げていた

寮監(……テレポートで出て行ったのか?寮内で能力は使用禁止だというのに……。

    だが……なぜわざわざ鍵をかけたんだ?それに学校に行くなら私に一声かけるはずだ)

寮監は窓の傍によってみた。明るい日差しが、雲の間から飛び込んでくる
もちろん黒子の姿はどこにも無い

寮監はそこで少し考えてこんでいたが、黒子の机の上に飲料を置くと、部屋から出て行った

寮監(なんにせよ、今は他の子の様子を確かめねばならない)

寮監(白井の奴なら大丈夫だろう……首を捻られてもすぐに復活するような奴だ)


寮監(だが……後で携帯に連絡を入れて……場合によってはペナルティ1つだな)

寮監はドアをしっかり閉めた後、次の体調不良者がいる部屋に歩き出した


寮監 1日目 7:59:06 第七学区 常盤台中学寮廊下 他の部屋へ
95 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:30:43.63 ID:tQMxf1Mi0










.       ミコトノトマドイ
第2話:常盤台の混乱









96 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:31:21.46 ID:tQMxf1Mi0

Q なんで婚后さんが一年の教室に居るの?

A 次回明らかになります

投下終了です。読んでくださった方、ありがとうございました
ちょっと、美琴さん影が薄かったですね。モブが結構出張ってしまいました
多分、これからもモブが出張ることは結構あると思います。ご了承を

とある×サイレンスレ、あるいは原作ゲームを思い出した方が結構いらしゃったようですね
上条さんの取った行動がほぼ同じというのがあるでしょうし、他のゾンビ物とのクロスはなかったから……?


次も大体1週間程度を予定しています
次回は……皆大好きなあの方の出番ですよォ
97 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:31:57.96 ID:tQMxf1Mi0

これはこのSSとはまったく関係のない、>>1からのおねがいです

○募金情報まとめ
http://sites.google.com/site/quake20110311jp/bokin
○東北地方太平洋地震のソーシャルメディアでの対応【義援金追加・随時更新】
http://matome.naver.jp/odai/2129984847046256401

ここで募金に関する情報がまとめられてます。余裕のある方はぜひ一読をお願いします
クリック募金もあるみたいなので、こちらのページから飛んでクリックしていってください
ただ、>>1もここにあるすべてのページを見たわけではないので
一応自分でしっかりと判断してから、クリックや募金をしてください

募金は赤十字社にするのが一番確実なようです
街頭での募金は詐欺や宗教団体などの可能性もあるのでご注意を
声をかけられたら、「証明書を見せてください」と答え、きちんとした証明を出せなければ無視するのがいいでしょう
あと日本ユニセフや24時間テレビなんかは個人的に信用できないといっておきます
それに限らず、個人が支援するさいは、必ず裏をとってからにするのがいいかと思われます

それと、『鶴おって被災地に届けようぜ』と考えている方は今はやめてください
他の支援物資を送るスペースの圧迫になりかねません
さらにいうと、現在個人からの物資はほとんど受け付けていないようです

○東北の被災者に支援物資をと考えている方ちょっと待ってください
http://d.hatena.ne.jp/k_ma_calon/20110311/1299837162

鶴や励ましの手紙は、もう少し、状況が落ち着いてからにしてください
『裏に鶴の絵が描いてあるお札』のほうなら、きっと誰かの助けになってくれると思います

そして、今様々な情報が流れておりますが、正確なもの、デマ情報と混雑しているみたいです
ソースの無い情報はできるだけ信用しないようにしてください
また、無駄に不安を煽られる様なら、一度情報をストップさせることも精神の安定に必要かと思われます


本来であればこのようなことをSSスレで書くのは見当違いなのかもしれません
読者様、運営様にはご迷惑をおかけしますが、>>1のわがままをお許しください
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 21:35:31.34 ID:m2Sl52aD0

お前は優しいやつだな…
できることはしてみようと思う
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 21:38:07.40 ID:rAG5zx6do
黒子ぉおおおお!!!!

100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 21:39:58.26 ID:6TtvnnA7o
クラスメイト(数字)が少しわかりにくかった…
誰が誰だか…

とりあえず面白かった、乙
次も期待!
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 21:52:17.04 ID:/thrqu6AO
H.O.T.D.思い出した
102 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/13(日) 21:54:04.38 ID:tQMxf1Mi0
>>95の『常盤台の混乱』のとこに『おわり』っていれるの忘れてましたね……


クラスメイトがわかりにくいというレスがありましたので簡単にまとめました

○クラスメイト1
最初に発症。クラスメイト2を襲う

○クラスメイト2
クラスメイト1の友人。クラスメイト1に襲われ死亡、ゾンビ化する

○クラスメイト3
クラスメイト1の友人。途中から気絶し、教師に担がれて脱出。能力はレベル3のテレキネシス

○クラスメイト4
美琴の隣の席の子。クラスメイト1を引き剥がすのを手伝う。その後は教師とともに行動
能力はレベル3のマテリアライズ。実は再登場予定

○クラスメイト5
二番目に発症。クラスメイト6に襲い掛かる

○クラスメイト6
クラスメイト5の友人

○クラスメイト7
三番目に発症。クラスメイト8に襲い掛かる

○クラスメイト8
クラスメイト7の友人

103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 22:13:58.90 ID:buifNT+DO
美琴と寮監は生き残ってほしい
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 23:00:47.63 ID:amu73l2go
むしろゾンビが美琴と寮監どうやって倒すか予想できんわ
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 14:34:35.57 ID:ZEBVPBiAO
木原クンもビックリの超展開!?

モブキャラのクラスメイト4が再登場というところがまたリアルですね…読んでいて引き込まれます、これからも頑張って下さい
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 17:03:32.20 ID:NgR8wgVw0
私。大活躍する。予感が。
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 18:41:57.12 ID:2p7oA73So
>>106
変わった喋り方のモブキャラだな
108 : ◆Rx8sTNAmH2 [sage]:2011/03/14(月) 23:28:58.38 ID:N0rNqpzJ0
新約を流し読みしました
能力インフレしすぎワロタwwwwwアレイスターはいったい何と戦ってるんだよ
なんで能力者なんてものを創ったのか理解できないくらい化学兵器強えーじゃねーか
そしてSSのキャラが何人も出てくるわ……何?全部読めと?忍者やら忍者娘やらあとがきの木原(幼女)はともかく
朝のなんたらの女とかこれからにめちゃくちゃ関わりそうじゃん。どうすんのよ?周りにSS借りれそうな人いないぞ?
後はアイテムの女性陣とか色々書きたいことあるけど、まあそこはグッと我慢しときます。浜面は爆発していい

まあマドハンドやらフレンダ妹やらは出てきてもチョイ役になると思います
一部の兵器や設定、学園都市の考え方などは出てくるかもしれませんね

ところで何気に姫神ちゃんが期待されているようなのでここで書いときます
彼女の出演は第五話からの予定です
続きをお楽しみに
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/03/16(水) 00:34:58.86 ID:A7i24hI/0
>>108
期待してる
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/16(水) 22:14:08.00 ID:qQgdUp2F0
wwktkして待ってるぞ
111 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:27:36.28 ID:d2qlSLXY0
誤字訂正
>>70
×もちろん、本来は『生徒』に『危険にさらす』ことと『危険を跳ね除けるだけの力をもたせる』ようなことは
. 学園都市としてもあまりしたくないのか、本来あまり重要な事件に関わることは無い
○ただ、『生徒』に『危険にさらす』ことと『危険を跳ね除けるだけの力をもたせる』ようなことは
. 学園都市としてもあまりしたくないので、本来あまり重要な事件に関わることは無い

>>94
×寮監はそこで少し考えてこんでいたが、黒子の机の上に飲料を置くと、部屋から出て行った
○寮監はそこで少し考えこんでいたが、黒子の机の上に飲料を置くと、部屋から出て行った


レス返しです

>>98
ありがとうございます。募金は

>>99
婚后「私は!?私もピンチですのよ!?」

黒子「これが人気の差というものですわ」

>>100
どうもすみません……。一応まとめ>>102てみましたが、たしかにちょっとわかりづらかったですね
これからも『スキルアウト2』とか『アンチスキル1』とか出てくると思います
できるだけわかりやすくはするつもりですが、読みづらければ遠慮なく言って下さい

>>101
学生がゾンビや疑念と戦う話みたいですね。読んだことありませんが……
実はあんまり>>1はゾンビ物の話を読んだり見たりしたことが無いんですよ

>>103>>104
寮監はギャグ補正で強いのか、ガチで強いのか、個人的には少し微妙なところだと思っています
美琴たちは恐れてますが、子供庇って上から落ちてきたものでかなりダメージ受けてたりしますしね
彼女は果たしてこの惨状にどう向き合うのでしょうか

>>105
基本的に超展開の連続になります
最後のほうでは「あれ?これ何の話だっけ?」となっちゃうかもしれません
112 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:28:07.00 ID:d2qlSLXY0

>>106>>107
姫神は個人的にはかなり好みなキャラなのですが、残念ながら原作ではこれ以上の活躍は見込めませんね
彼女の能力はゾンビに効くのか……そのあたりもお楽しみに

>>109>>110
応援どうもです!


さて、今回の話は皆大好きウルトラマン、一方通行の視点です
それと、例の妹達がでてきます
このSSでの妹達は、数多あるSSの設定を原作よりも多く受けています
いわゆるキャラ崩壊というのを起こしている可能性もあるのでご注意を

今回聞いていた曲

【ハンマー状態】ハンマーを電波ソングにしてみた
http://www.youtube.com/watch?v=0QWFy0-mVxM

New スーパーマリオブラザーズより - 地下BGM
http://www.youtube.com/watch?v=yyHJPggo7CI

King Crimson - 21st Century Schizoid Man
http://www.youtube.com/watch?v=zBfCzhYbWBk

System of a Down - Attack
http://www.youtube.com/watch?v=olILVp-J7Y8

MGS OSTより - Intruder 1
http://www.youtube.com/watch?v=Atzzwdw-YiE

Dio - Don't talk to strangers
http://www.youtube.com/watch?v=BFyxCf8ZgBw

宇多田ヒカル - Goodbye Happiness
http://www.youtube.com/watch?v=cfpX8lkaSdk
113 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:28:45.08 ID:d2qlSLXY0

一方通行 2日前 14:22:37 第七学区 ファミリーサイド



ピーンポーン ピーンポーン

一方通行「……」

ピンポンピンポンピンポン

一方通行「……」イライラ

ピピピピーンポーンピピピピーンポーン


一方通行「があああああああ!!うざってェ!!出ればいいンだろ出ればよォォ!!」ウガー

ここはとあるマンションの一室で、学園都市最強の能力者が、まさに『眠りを邪魔された獅子』のような叫び声をあげた
彼は一方通行(アクセラレータ)と呼ばれている、学園都市のレベル5、第一位その人である

彼は第三次世界大戦後、『さまざまなこと』に『ケリ』をつけ、
現在は彼が守り抜いた『2人の少女』とともに、とある知り合いの教師の家に居候しているのだ

『ケリ』をつけたあとの彼の暮らしは平穏そのもの(ただし同居人たちからの被害は除く)であった
殺し合いも無い。襲撃も無い。強いて言うなら同居人に引っぱり回される程度である
しかし今日は家には一方通行一人しかいない。同居人は全員、仕事やら通院やらで出払っているのだ
久しぶりに一日ゆっくりゴロゴロするかァ、と思った矢先のピンポン攻撃である

初めは無視を決め込んでいた一方通行であったが、チャイム音は止まることなく
むしろだんだん激しく、メロディアスにすらなってきており、たまらずベッドから飛び起きたというわけだ

一方通行(ちっ……どこの三下だァ!?ご近所さンってこたねェよな?

       これでくだらねェ勧誘やら業者だったら、ミンチにして生ゴミ処理場におくってやる……)

物騒なことを考えながら、一方通行は杖を取り、玄関へ向かって歩き出した
その間もチャイム音は休まず鳴り響く。自分が演奏者にでもなったつもりなのだろうか?明らかに調子に乗っている
114 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:29:11.57 ID:d2qlSLXY0

鼻息も荒く鍵を開けると、その音が聞こえたのか、ピンポンの音は止まった
が、一方通行の機嫌のベクトルは下降方向に進み続け止まることは無い
前に人が立っていたら、まず間違いなく突き飛ばされるであろう勢いで、ドアをあけた


一方通行「はァーいはい!!どちらさンですかァ!!」ガチャァン



ミサカ14889号「…………」

ミサカ20000号「…………」

ミサカ14510号「…………あっ」

一方通行「  」



一方通行「人違いでェす」バタン



ピンポンピンポンピンポン


一方通行「  」イラッ


一方通行「うるせえええええェェ!!なんでおまえらがここにいるんだ、妹達(シスターズ)!!」ガチャ

再び扉を開けた一方通行の前に居たのは三人の少女だった
ぱっと見るだけでは、いや、じっくり見たとしても簡単には見分けがつかないこの少女達は、第三位たる御坂美琴のクローン達だ
常盤台中学の制服を着ているとこまで、姿形はオリジナルそっくりだが
全員同じ無表情と、その頭につけている無骨な暗視ゴーグルが、妹達の目印である

とある実験のために、一方通行は彼女達を1万人殺したことがある
その実験がつぶれ、一方通行と『打ち止め(ラストオーダー)』が出会い、さらに紆余曲折を経て
現在、彼と彼女達はいわば共生関係を作ることになった
すなわち、妹達は一方通行の演算を補助し、一方通行は妹達を守るという関係である

しかしわざわざ一方通行の自宅までやってくるような物好きな── ある意味個性のある個体は少ない
そして一方通行の目の前に居る3人は、かなり個性的な個体たちだった
115 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:29:58.34 ID:d2qlSLXY0

ミサカ14889号「いろいろ問題が解消されたらしいので遊びに来ました、とミサカは3人を代表して一方通行に挨拶します」

ミサカ14510号「こ、こんにちは、ア、一方通行さん、とミサカは、ど、どもりつつもお辞儀をします」ペコリ

ミサカ20000号「借金帳消しと暗部脱出おめでとうございます、とミサカは拍手をします」パチパチパチ

一方通行「帰れ」ギィ

ミサカ20000号「そうはい神裂!!」ガッシィ

一方通行「なーンなンですかァ!!」グググ

ミサカ14889号「ですから『遊びに来た』っていってるじゃないですか、とミサカはドアを抉じ開けようとするミサカ20000号に加勢します」

ミサカ20000号「いいじゃないですか、どうせ暇だったんでしょう?とミサカは踏ん張りながら問いかけます」グヌヌ

一方通行「暇を満喫すンのに忙しいンですゥ。ていうかお前ら海外に住ンでンだろ!?こんな簡単に来ていいのかよ!」グヌヌ

ミサカ14889号「このミサカとミサカ14510号は国内組ですが、確かにミサカ20000号はロシア所属のはずです、とミサカは肯定します」

ミサカ20000号「国境程度はミサカには何の障害にもならないんだぜ、とミサカは一方通行への愛を叫びます。

          ついでに言いますとと今回はちゃんと許可を取ってます」

ミサカ14510号(いつもは許可とってないんでしょうね、とミサカはミサカ20000号の面倒を見てる研究者に同情します)

一方通行「押し売りはおことわりしてるンでェ。お引取りくださりやがれ!!」

ミサカ14889号「というか今日ここにくることは上位個体に連絡してありますが?『おっけーいってミサカはミサカは(ry』との返事でしたが」

一方通行「聞いてねェぞ!そんな話!!」

ミサカ14510号「あ、あの……」

ここで今までほとんど黙っていた個体が口を開いた。一方通行はドアを閉じようとしながらもそちらを見る

ミサカ14510号「そ、その、もしご迷惑なようでしたら、改めて出直しますが、とミサカは悲しみをこらえながら提案します……」ウルウル

一方通行(ぐっ……!)
116 : ◆Rx8sTNAmH2 :2011/03/17(木) 19:30:45.13 ID:d2qlSLXY0

一方通行はミサカ14510号の目に涙が浮かぶのを見て怯んだ
彼は自分自身に架した誓いから、彼女達の涙には弱いのである


一方通行「…………しかたねェ、とりあえず家に入って──」

ミサカ14510号「うっし言質を取りました、とミサカは拳を握ります。イエーイ」

ミサカ14889号「さすがはミサカ14510号です。グッジョブとミサカはハイタッチ」パンッ

ミサカ20000号「うむむ、計算と天然半々で女の武器を使うとは侮りがたしですね、とミサカは評価します」

一方通行「えっ」

ミサカ14889号「2、3日ほど、毎日遊びに来る予定がつぶれなくてよかった、とミサカはほっと一安心します。ではお邪魔します」

一方通行「えっ」

ミサカ14510号「お、お邪魔します。うわぁ……と、とってもいいお部屋ですね、とミサカはちょっぴり緊張気味です」

一方通行「おい、今なンつった?計算?2、3日?」

ミサカ20000号「あ、ちなみにさきほどチャイムを押していたのはこのミサカです、とミサカは無い胸を張ります」ドヤァ

一方通行「  」

一方通行「あ、あのクソガキ……わざと黙ってやがったな……!帰ってきたらただじゃおかねェぞ……!」

ミサカ14889号「お茶くらいだしたらどうですか?とミサカは礼儀を知らない一方通行に飲み物とお菓子を要求します」

一方通行「  」モウドウニデモナーレ

先ほどまで静かだった部屋は、同じ顔をした3人の少女の襲来で、たちまち賑やかになった
のんびり過ごしたかった一方通行としては、正直迷惑この上ないが、今回は相手が悪すぎる
舌打ちしながらも、しかたなく一方通行は台所にあるお菓子を取り出してやるのだった


一方通行(……まあ、これも平和になったってことなンかな。……よくわかンねェけど……)


ミサカ20000号「あ、ミサカはお茶よりも一方通行の[ピーーー]が飲みたいです」

一方通行「おまえは帰れ。マジで帰れ」

一方通行 2日前 14:25:42 第七学区 ファミリーサイド 妹達、学園都市に来訪
117 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:31:24.26 ID:d2qlSLXY0










第3話:一方通行の誓い









118 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:32:32.24 ID:d2qlSLXY0

一方通行 1日目 08:32:40 第七学区 ファミリーサイド


「ねえねえ起きてってば!ってミサカはミサカはあなたにダイブ!!」

一方通行「……っぐェっ!」

その日の一方通行の朝は、爽やかな目覚めとは程遠いものとなった

一方通行「……打ち止めちゃァァァあん!?人の上に飛び乗るなンて子に育てた覚えはありませンがねェェェえ!!」

打ち止め「だって何回声かけても起きてくれないんだもん!ってミサカは── あたっ!暴力反対!チョップやめて!」

一方通行「さっさとどけクソガキ!……ったくまだ8時じゃねーか。まだ俺は寝ンぞ、次飛び乗ったら今日のおやつ抜きだかンな」

打ち止め「う……。そ、それはイヤかも……。って、それどころじゃないんだってばー!!」

再び眠りの世界に入ろうとする一方通行をゆさゆさと揺さぶる小さな少女
彼女の名前は打ち止め(ラストオーダー)。妹達の1人であり、彼女達を統率する上位個体である
一方通行がその能力を賭けて助け出し、その後も彼に大きな影響を与えることになる子だが
平和を取り戻してから、彼女がこれほど慌てる様子を見せることは無かった

耳元で甲高い声で叫びつつけられ、体を揺さぶられ続ければ、流石に眠気もどこかへ飛んでいってしまう
一方通行は舌打ちしつつ、珍しく『早起き』することとになった。ちなみに彼の平均起床時間は11時である


一方通行「……でェ?何だ?何が起こったって?」

打ち止め「う、うん。なんだかね、病院に居る妹達から連絡があったの、ってミサカはミサカはきりだしてみる」

一方通行「病院……冥土帰し(ヘブンキャンセラー)ンとこか?」

打ち止め「そうだよってミサカはミサカはうなずいてみたり。連絡してきたのは10032号なんだけど、

       おかしな患者さんが沢山来てるんだって」

一方通行「……ああ?なンだそりゃ?」

打ち止め「なんでも、ものすごくぼーっとしている人達で、軽い熱もあるみたい。そういう人達が沢山病院に来てるの。

       だけど何の病気かが、冥土帰しにもわからないんだって。それから病院に来てる人以外にも、

       今、学園都市中でこの症状が蔓延してるみたいなの、ってミサカはミサカは説明してみたり」

一方通行「……冥土帰しにもわからない病気だァ?」
119 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:33:16.16 ID:d2qlSLXY0

冥土帰し(ヘヴンキャンセラー)とは、世界中の最先端科学の結晶たる学園都市でも、頂点の腕を持つ医者である
その腕前は、『死んでさえなければどんな病気、怪我でも治す』と言われるほどで
一方通行や上条当麻達を含め、この医者がいなければ何度も命を落としていただろう人は沢山居るのだ

またこの医者は一部の妹達を預かっている
妹達はクローンゆえに体が弱く、時々調整を行わなくてはならない。その調整を、善意でこの医師は引き受けているのである
その対価として、妹達の中には病院でボランティアをする個体が居るのだが、その中の1人が連絡をしてきたようだ

世界最高峰の医者のわからない病気、それが学園都市中に蔓延している
なるほど、確かに何かありそうだ、と一方通行は考えた

打ち止め「それともう1つ、これは別の患者さんの話なんだけど、ってミサカはミサカは話を続けてみる」

一方通行「あ?まだなンかあンのかよ?」

打ち止め「こっちは少しだけなんだけど、『凶暴化した』『とても人間とは思えない』患者さんがきているんだって。

       顔面蒼白で、一見死体のようにすら見えるんだけど、ちゃんと動いてるの。学園都市の路地裏で暴れてるとこを

       アンチスキルが捕らえて、連れてきたんだって。だけど手がつけられなくて、今は病院の一室にとじこめてるんだって、

       ってミサカはミサカはちょっぴり怖がりながらあなたに話してみる」

一方通行「凶暴化した人間……?そいつはさっきの病気と関係があンのか?」

打ち止め「冥土帰しがまだ診察してないから判らないけど、こっちも普通じゃないって、ミサカはミサカは10032号の意見を伝えてみたり」

一方通行「……」

いつもの快活な様はどこにいったのか、不安げに顔を曇らせる打ち止めを見て、一方通行は眼を細めた

一方通行「……そんで?俺に何をしろって言ってきてンだ?まさかお医者さンごっこしろなンてこたァないよな?」

打ち止め「ええとね、できれば病院に来て、念のためボディーガードをして欲しいんだって、ってミサカからもお願いしてみたり。行ってくれる?」

一方通行「……ちっ」
120 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:34:17.95 ID:d2qlSLXY0

一方通行は杖を手に立ち上がり、ゴキゴキと体を鳴らした

一方通行「……コーヒー飲ンでからなら行ってやるよ」

打ち止め「わあぁ!ありがとう!ってミサカはミサカは嬉しくて思わずあなたにダイブ」バッ

一方通行「はいはい」スルー

目標に避けられ、ぼすっと頭からベッドに突っ込んだ幼女を見向きもせず
一方通行はリビングへと向かった

一方通行「おい、黄泉川……はいねェよなぁ」

芳川「私ならいるけどね。おはよう、一方通行」

リビングの机には1人の白衣を着た女性が、机の前で何かの研究書類を読んでいた
芳川桔梗。妹達を使った実験の関係者で、実験が頓挫してからは、ここ黄泉川家に居候している同居人である

ちなみに家主である黄泉川愛穂は、学校の教師をしているので、普段ならこの時間はもう学校にいっている

一方通行「……そこのコーヒーもらうぞ」

芳川「構わないわよ」

一方通行が台所にあるポットからコーヒーを注ぐ間も、芳川は研究書類を眺めていた
ちらりと目をやると、『学習装置(テスタメント)』という言葉が目に入った。妹達の関係の書類だろうか

一方通行「……ああ、そういや番外個体(ミサカワースト)はどこだ?」

芳川「あの子は朝早くから病院よ。腕の治療を今日中に済ませたいんだって。

    ちなみに、愛穂はそれより早くからアンチスキルの仕事に呼ばれていったわ。大変ね」

一方通行がもう1人の『家族』の名前を出すと、直ぐに芳川が答えてくれた
番外個体とは一方通行を殺すために製造された、妹達とは少し毛色の違う御坂美琴のクローンである
彼女は第三次世界大戦のとき、一方通行と敵対し、その後は協力関係を結んで、大戦後は一緒に黄泉川家に居候していたのだ
ちなみに、平和を取り戻してからの一方通行のイラツキの原因の5割は、この番外個体のせいである

数日前に調整に出かけたばかりだが、どうやらまた今日も病院にいっているらしい

一方通行「……俺もこれから病院に行ってくる」

芳川「ええ、気をつけてね」
121 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:34:56.14 ID:d2qlSLXY0

一方通行「理由は聞かねェのか?」

芳川「もう打ち止めから聞いたわ。何か異常な病気が流行ってるんだって?」

一方通行「……」

芳川「……ちなみに打ち止めに『起きないようなら思いっきり飛び乗ってみなさい』なんて言ってないわよ」

一方通行「誰もンなこた聞いてねェよ」

コーヒーを啜りながら、ジト目で芳川を睨みつけると、女性研究員はそそくさと目をそらした

芳川「……まああなたなら大丈夫でしょ。あの子達を守ってあげてね」

一方通行「言われるまでもねェ。おい!クソガキ!いつまでベッドに寝てンだ!」

打ち止め「はーい、今行くって、ミサカはミサカはあなたの匂いを堪能しつつ返事してみたり!」

一方通行「マセたこと言ってンじゃねェぞ、クソガキ!おまえ、仕度できてンのか?」

芳川「あら、打ち止めも連れて行くの?」

隣の部屋同士で会話する子供達をみながら、芳川はふと疑問を漏らした

一方通行「ああ?何が?」

芳川「だから、打ち止めも連れて行くの?あなたは危険かもしれない場所に行くんでしょ?

    そこに打ち止めを連れて行くの?」

一方通行「もしも仮に未知の病気だとしても、あの冥土帰しのことだ。学園都市の技術で直ぐに特効薬や予防薬を作るだろう。

       向こうに着いたら妹達の誰かに護衛させといて、予防薬が出来次第摂取させる」

ここ高級マンション『ファミリーサイド』は、自動ドアが耐爆仕様になっていたりするなど
最新の防衛建築の実地試験を兼ねた施設である
普段の一方通行なら、打ち止めは安全な場所かつ保護者の目もあるここに置いて置き
自分ひとりで危険に向かうところであるが
どうやら、『謎の病気』とやらに打ち止めが感染することを心配しているらしい
122 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:35:46.32 ID:d2qlSLXY0

打ち止め「それに私もできるかぎりあなたと一緒にいたいのって、ミサカはミサカはまたも飛びついてみる!」

一方通行「必殺ゥベクトルスルゥー」スルー

隣の部屋から飛び出してきた打ち止めをまたしても回避した一方通行は
コップに残ったコーヒーをぐいっと飲み干した。それを机の上に置くと
彼はリビングの椅子に掛けてあった自分のコートをさっと着込む。すぐに出る気なのだ

一方通行「さて、ンじゃ行ってくる。おら、クソガキ、一緒に行きたいンならマスクつけろ」

打ち止め「むー!!だけどそんな過保護なあなたが好きよってミサカはミサカは大胆告白キャー!!」

一方通行「黄泉川には、いつ帰れるかわからンが晩飯までに打ち止めは帰す、と伝えてくれ」

芳川「わかったわ。気をつけていってらっしゃい」

打ち止め「完全スルー!?」ガビーン

一方通行はさっさと玄関のほうに歩いて行ってしまった。打ち止めはそれをトテトテと追いかけ
芳川はもう目を研究書類のほうに戻していた



マンションを出た一方通行は、すぐに町並みに違和感を覚えた
歩いている人がやけに少ないのだ

一方通行「おい、その病気は今学園都市中に広まってるって言ったな?」

打ち止め「うん。冥土帰しのとこにはいった連絡によると、学校でもたくさん欠席者がいるって、

       ミサカはミサカは下位個体に確認しつつ答えてみる」

一方通行「その病気は大人もかかンのか?」

打ち止め「病院にきたなかには、研究者や教員、それに店員さんなんかもいるらしいよ?

       ってミサカはミサカは補足説明」

学園都市製の最新式マスクの下から、もごもごとくぐもった声で打ち止めは答えた

一方通行(家から出れねェ奴は家に、そうでない奴はもう学校や仕事場に出かけちまったのか?)
123 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:36:16.81 ID:d2qlSLXY0

一方通行のとりあえずの答えは、別に学園都市第一位でなくともはじき出せそうな簡単な答えだった
が、一方通行はどこか嫌な感触を町並みに覚えていた

一方通行(なンか気分がわりィな……。『予感』ってか、何かただ事じゃねェことがおこってる気がする。

       こりゃ今すぐ引き返して打ち止めを芳川に預けたほうがいいかァ?)

打ち止めもどこか不安そうにキョロキョロとあたりを見回していた

一方通行「……おいクソガキ、俺から離れンなよ」

打ち止め「うん、わかった、ってミサカはミサカは素直に頷いてみる」

打ち止めは素直に一方通行に寄り添い、杖をついているほうとは逆の手をぎゅっと握った
一方通行も振り払わず、油断無く警戒しながら病院に向かって歩き──


ドォオ オ オン


── 出そうとした瞬間だった

進行方向からみて左側の路地から、いきなり爆風が吹き出した
黒い煙と赤い火が表通りを僅かになめ、すぐに上空に向かって消えていく
周りの通行人もあっけに取られたように、立ち止まってそちらを見ている
悲鳴を誰も上げないのは、突然のことで何が起きたのかわからないからか、被害者が見当たらないからだろうか

もちろん一方通行はすぐに行動を取っていた
爆発を見た瞬間、打ち止めの手を離し、首にあるチョーカーに手をかける。いつでも能力が使えるようにするためだ
同時に打ち止めを庇うように一歩でる。打ち止めもすぐに、邪魔にならないように手を離して、一方通行の後ろに隠れた

しぃんと空間が静まった。通行人の視線が注目する路地に、今は何も動きは無い


一方通行「…………なンだ?今の爆発は?」

爆発による煙が、完全に見えなくなった頃、一方通行はチョーカーから手を下ろし、ぽつりと呟いた
124 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:36:45.91 ID:d2qlSLXY0

一方通行が爆発を見た瞬間に考えたことは、何かしらの暗部が自分を狙って動き出したか、ということだった
が、それにしてはずいぶんお粗末な行動だといわざるを得ないし、何よりまったくメリットのない行動のように見える
おびき寄せるためにしろ、注目を集めるにしろ、もうすこし賢いやり方がありそうなものだ
同じ理由で、一方通行とは関係のない、暗部の活動という理由もなさそうである
それならば、妨害してくる可能性のある一方通行の目の届く範囲で、あんな目立つことはしないだろう

次に考えたのが、不慮の事故
だが、そんな爆発する可能性がある物を、あんな狭そうな路地を通って運ぶことがあるのだろうか
正規の研究や武器なら警備員がついて、道を堂々と通りそうなものだし
裏の運び屋なら、こんな警備員が住んでいるマンションのまん前を通るルートを選ぶとは思えない

一番ありえそうなのが、発火能力(パイロキネシス) などの火炎系能力者の仕業である
それならば少なく見積もってもレベル3、もしかするとレベル4はあるかもしれない威力だ

たとえば、学校に遅刻しそうになった能力者が近道に路地を走っていたところを
スキルアウトたちに絡まれ、思わず全力で能力を使ってしまった── といったところだろうか

一方通行「……ちっ。いくぞ、クソガキ」

打ち止め「はーい、ってミサカはミサカはあなたに着いていったり」

一方通行はそこで一旦考えを打ち切った
通りを歩く人達はまだ立ち止まっているが、自分はいつまでもここに居るわけにはいかないのだ
それに── 結局はなにが起きたのか、推論するより見たほうが正確だ
どうせ進行方向は同じである。ぱっと覗いてみて、何が起きたのかを把握した後に、そのことに干渉するか否かを決めればいい

その路地だけでなく、他の方向にも気を配りながら、一方通行は歩き出した。直ぐ後ろに打ち止めもついてくる
杖を突く音が静かな空気を破り、周りの通行人も動き出した
ある人はそのまま自分の目的地へ歩き去り、ある人は電話を取り出してどこかへ連絡を始めた

中には路地のほうを見にこようとやってくる、野次馬根性旺盛な人もいた
だが路地の前に一番早くたどり着いたのは、一番近い所にいた一方通行たちだった

一応何があってもすぐに能力が使えるよう片手を空けたまま、一方通行は路地を覗き込んだ



125 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:37:17.21 ID:d2qlSLXY0

一方通行「…………打ち止め!こっち見ンじゃねェ!!後ろ向いて俺の背に張り付いてろ!」

打ち止め「えっ!?あわわ、わかったよって、ミサカはミサカはびっくりしながらも従ってみる!」

一方通行は路地の先にある物を見た瞬間、後ろから覗こうとした打ち止めの目を手で覆った
打ち止めは驚いた様子を見せながらも、素直に従った。ここでわがままをいうほど、彼女は馬鹿ではない

一方通行「おいおい……こりゃあどういうことなンですかァ?洒落になンねーなこりゃあよォ、おい」

一方通行は唇を三日月のように引き伸ばす、独特の悪魔のような笑みを浮かべた。が、その赤い眼は全く笑っていない


一方通行の覗き込んだ路地は、爆風で黒くこげていた。どうやら想像していた以上に爆発の威力は高かったらしい
その爆発の中心と思われるところ、一方通行のいる通りから10mほど先に、影が蹲っていた

黒焦げになった、性別もわからない死体。おそらく先ほどの爆発に巻き込まれたのだろう。まだ煙が髪あたりから昇っている
だが一方通行の注意はそこには向いていない。そこは今は重要な話ではない


死体に、人間が群がっている。2人の学生服を着た男女が、死体の前にしゃがみこみ

   ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・. ・
その肉を喰らっている

一方通行「どうかしてるぜェ!!」

一方通行は、とある実験の最中、妹達の肉を食べたことがある
ただ、それはあくまで相手の注意を引くための行き過ぎたパフォーマンスであり
彼は決して人肉食癖(カニバリズム)があるわけではない

だが、この男女は、明らかに自分の飢えを満たすために、死体を喰らっているように見えた
男のほうは死体の腕をもぎ取り、指の先から喰らいついている。もう残っている指は一本しかない
女のほうは死体の原に顔をうずめていた。ゆえに顔は見えないが、長い髪とセーラー服で女とわかる

明らかに異常なことが起こっている
学園都市中で蔓延する、倦怠感を齎す謎の病気。凶暴化した患者。そしてこの死体を喰らう男女


一方通行の学園都市第一位の頭脳が、恐ろしい地獄絵図の想像をはじき出した

一方通行(おい、まさか。そんなことあるわけねェよな)
126 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:37:57.44 ID:d2qlSLXY0

男「おい、君」

そのとき、先ほどどこかへ連絡をしていた通行人が、一方通行に声をかけてきた
営業職のサラリーマンだろうか、スーツを着た痩せぎすの中年男性である
どうやらまだ、路地の惨状には気がついていないらしい

男「今、アンチスキルに連絡した。手が空いていないそうだが、できるだけすぐにこちらに来てくれるらしい。

   現場を荒らさないようにしてほしいそうだから、そこの路地には入らないようにしなさい」

打ち止め「あ、そ、そのぉ……」

一方通行「……」

一方通行はまったく反応せず、打ち止めは大人と保護者の間でうろたえた
男は反応を示さない少年に少し眉を顰め、うろたえる少女を見て僅かに苦笑いを浮かべた
それから少年の目線の先、先ほど爆発があった路地を見て──


男「ひっ!?な、なんだこれは!?」


打ち止め「あっ、大丈夫って、ミサカはミサカは見知らぬ男の人に手を差し伸べてみる」

一方通行「!……ちっ」

男は叫び声を上げ、尻餅をついてしまった。その目は見開かれ、体はがくがく震えている
その叫び声とただならぬ様子に、さらによけいな野次馬達が集まってきてしまった

男2「どうかしたんで……う、うわああああああ!?」

女「なーに?何があったの?……きゃああああああああ!!」

男3「爆発に巻き込まれた人でも居るのか!?……な、なんだこれは!?」
127 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:38:25.34 ID:d2qlSLXY0

野次馬達は次々に悲鳴を上げていく。それに一方通行は苛立ちを感じたが、次の瞬間彼らのことなどどうでもよくなった
視線がぶつかったのだ


死体に顔をうずめていた女がこちらを見ていた


顔色は青白く、目のまわりだけが窪んでいて、そこだけ黒く影になっている
元々から目つきの悪い女子学生だったのだろうか。その目は暗く、死んだ魚を思わせた
鼻先や頬、口周りには、死体のものと思われる血がべっとりとついていて── 口はもごもご何かを食んでいた
長い髪はぼさぼさで、不気味に女の顔を演出していた

そんな幽鬼のような姿の女に見つめられ、野次馬達はさらに大きく悲鳴を上げた
その声が注意を引かせていることに気づく余裕も無いようだ

一方通行「おい!ちょっと黙── っ!?」

一方通行はそんな群集に、ついに声を荒げかけたが、その声は途中でとまってしまった

女が動いたのだ。緩慢な、どこか機械的な動きで立ち上がり、自分のスカートのポケットに手をもぐりこませている
いままで獣か何かのような姿だったが、ここにきて人間らしい行動を取るのが逆に不気味だった

不気味な女はゆっくりとポケットから何かをとりだした
一方通行や野次馬達の視線がそこに集中する。それは──


一方通行(……空き缶?)

どこにでもあるような自販機で売られているジュース、その空き缶のようだった
中に何かが入っているような気配はない

不気味な女「…………」


上からつまむように持ったそれを、女はこちらに、ぽいっ、と投げた
それは女の直ぐ手前に力なく落ち、コロコロとこちらに転がってくる
128 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:39:00.24 ID:d2qlSLXY0

一方通行(…………なんだ?思考力が落ちてるのか?けん制か攻撃のつもりか?)

缶は一方通行の2mほど前で止まった。

いや、わずかに震えるように動いている?


一方通行(…………はっ!まさか!)

一方通行「打ち止めァァァああああああ!!」



一方通行が叫んだ瞬間

      ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
空き缶がぐしゃりと歪み──

.         ・. ・ ・ ・ ・ ・ ・
次の瞬間、爆発を起こした!

爆風は、瞬間的に一方通行たちにせまり──


── カチリ


まるで、強力な上昇気流に煽られたかのように、その熱風の矛先の全てを上空にそらされた


不気味な女「…………ぅ」



一方通行「あァ?なンの冗談ですかァこりゃ?」

白い悪魔のような、1人の少年の手によって

一方通行「おめェこの俺が誰だか知って、汚ねェ花火あげたンじゃねェよなァ!?ああ!?」
129 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:39:41.09 ID:d2qlSLXY0

一方通行は髪の毛一本すら焦がすことなく、そこにそのまま立っていた
彼の後ろで、未だに路地を見ないようにしている打ち止めも、周りの怯えて身を庇う野次馬たちも怪我ひとつ無い

『一方通行(アクセラレータ)』

一方通行の能力名であり、学園都市最強の能力であるその力は『ベクトル操作』である
運動量・熱量・光・電気量etc……といったあらゆるベクトルを観測し、触れただけで変換する能力で
今回は熱量の運動を操作、こちらに向かってくるベクトルを、すべて上方向に向けたのだ

現在、一方通行は過去の事件の後遺症で、能力を使うためには首元にあるチョーカー型電極のスイッチを入れなくてはならない
そのスイッチは、現在能力仕様モードに切り替わっており、ランプもそれを示す赤色に変わっている

空き缶── アルミを基点に重力子(グラビトン)を加速、周囲に放出する能力、『量子変速(シンクロトロン) 』
要するに女の能力は、アルミを爆弾に変えることが出来る能力である
一方通行はそこまで知らなかったが、止まった空き缶から『不自然なベクトル』を観測したことと
先ほどの爆発、その焦げ後から、『爆発系能力の基点』と推論し
瞬時に能力仕様モードに、チョーカーのスイッチを入れ替え、爆風に対応したのである

打ち止め「び、びっくりしたっ、てミサカはミサカは──」

一方通行「下がってろ、打ち止め!」

爆音に驚いてしゃがみこんでいた打ち止めを尻目に、一方通行は
まるで地団太を踏むように、ダンッ、と足を地面にたたきつけた


不気味な女「…………ぁ?」

女は自分の能力で群集を吹き飛ばせなかったことを、不思議そうに眺めていたが
一方通行がその場で足踏みしたのを見て、さらに間抜けな声を漏らした


そして次の瞬間、我関せずと腕を貪っていた男と共々、上空に吹き飛ばされた

一方通行が足元のベクトルを操作し、彼女らを下から思いっきり『蹴り飛ばし』たのである

7〜8mほど真上に舞い上がった彼女たちは、そのままくるくると落下し、地面に叩きつけられた
受身を取れた気配は無く、ピクリともしていない
それを確認すると、一方通行はふぅと息をつき、チョーカーのスイッチをカチリと通常モードに切り替えた
130 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:40:18.77 ID:d2qlSLXY0

男「お、おい、今のは君がやったのか?」

最初に一方通行に声をかけた中年男性が、震える声でたずねた
一方通行はここでやっと彼のほうを見て、質問には答えず逆に男性に尋ねた

一方通行「おい、アンチスキルにはもう連絡したってさっき言ってたな」

男「あ……?あ、ああ。すぐにはこれないらしいが。何か他の事で忙しいらしい」

一方通行「その時、電話に出た奴はどんな様子だった?他には何か物音が聞こえなかったか?」

男「え?」

男は一瞬面食らったようだったが、一方通行の眼力に押され、慌てて記憶の糸をたどった

男「そ、そうだな。なんとなく余裕が無いような口調だった気がする。それに……そう、

   後ろのほうが、なんだかすこしドタバタしていたような気もするな」

一方通行「……そうか。おい、クソガキ、行くぞ」

打ち止め「はーい、ってミサカはミサカは元気よく返事!」

一方通行は打ち止めに声をかけると、ざわざわとする野次馬達を一瞥した
すぐに彼らは、一方通行のために道をあけた。その間を2人は並んで歩き出した

男「ま、まってくれ!一体何が起きているんだ!?あの子達はいったいどうしたっていうんだ」

一方通行「── 」

男がその背に声をかけると、一方通行は立ち止まり──


「きゃああああああああああああああ!!」


一方通行「── あれが答えだ。くそったれ」
131 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:41:20.97 ID:d2qlSLXY0

悲鳴が上がったのは、彼らのいる通りの一方通行たちが進もうとしていたほうとは逆端だった
黄色い声を上げた女性が、口を両手で覆い、何かを凝視している。その体は遠めにも震えていた

そして── その視線の先には
先ほど一方通行が倒した男女とは違う別の男が、ゆっくりと女性に近づいてきていた
顔色は悪く表情は空ろ、手を前に伸ばすような姿勢で、一歩一歩彼女に近づいてきている。明らかに異常な姿だ

一方通行「ちっ」

瞬間、能力仕様モードに切り替えた一方通行が、たまたま足元に落ちていたアスファルトの欠片を
思いっきりそちらに蹴り飛ばした
ベクトルの集約された礫は、一直線にすさまじいスピードで、蒼白い顔の男のこめかみに直撃した

ばたっと倒れる男を見て、悲鳴を上げた女性はへなへなと崩れ落ちた


男「あ、あれは?」

一方通行「見ての通りだ。どうやらああいうおかしくなっちまった奴らが、沢山居るらしい」

呆ける男や野次馬達を見ず、一方通行は答えた

一方通行「ついでに言うと── こいつは俺の予想だが、これからああいう奴は増えてくぞ」

男「な、何?今なんといった!?」

一方通行「襲われたくなきゃ、すぐにこの街を出るか、誰かが助けてくれるまで家に引きこもってるンだな」

一方通行は冷たく言い放つと同時に、街のどこかから悲鳴が上がった
男達はビクリとそちらをふりかえったが、一方通行は興味を失ったかのように打ち止めの方を見た
少女は震えてこそいなかったが、先ほどよりもさらに顔を曇らせていた

一方通行「── クソガキ、いったン帰るぞ」

打ち止め「えっ?」

一方通行「舌噛まねェよう、口閉じとけ」
132 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:42:54.54 ID:d2qlSLXY0

一方通行は有無を言わさず、その小さな体を抱き上げた。それからすぐに彼は大地をけり、5mほど飛び上がると
背中に4本の竜巻を背負い、彼の住むマンションの部屋に飛び去っていった

後に残された男達はそれを呆然と見ていたが、またしてもどこかから悲鳴が上がったのを皮切りに
散り散りににげていった。何処へ行けばいいのかも分からないまま



ファミリーサイド二号棟13階の一室に黄泉川たちが借りる部屋がある
芳川は研究資料を一旦置き、自分にあてがわれた机の中から、護身用の小銃を取り出していた
彼女もまた、何かがこの学園都市で起こっていることに気がついたのである
というか、朝、黄泉川が慌しく出かけていった頃からそんな予感がしていたのだ

芳川「こんなもの、もう二度と使わないといいのだけれど」

たった2発しか弾を装填できない、おもちゃのような拳銃は、それでも芳川の手の中で存在感を放っていた
軽く握ってみて、壊れているところが無いか点検する。問題なく使えるようだ

なんの前触れも無く、リビングの窓に影が映った
振り返った芳川が見たものは、背に竜巻を背負い、打ち止めをいわゆるお姫様だっこした一方通行だった
彼が滞空しながら、軽くつま先で窓を小突くと、一体どういうベクトルを操作したのか
内側からしか開けられないはずの鍵がはずれ、同時に窓がガラガラと開いた
外の冷たい空気が一気に流れ込み、それで起きた風に髪をなびかせながら、芳川はごく普通に声をかけた

芳川「おかえりなさい。言っとくけど、土足で汚した分は後で自分で掃除して頂戴ね」

一方通行「芳川、今すぐ黄泉川に連絡を取れ」

綺麗に掃除された床の上に着陸した一方通行は、打ち止めをおろして開口一番、芳川に命令した

打ち止め「ただいまーってミサカはミサカは芳川にあいさつしてみる。ねえ、あなた?

       どうして此処に戻ってきたのってミサカはミサカは聞いてみる。病院に飛んでいけばよかったのに」

芳川「あら、必要ないから帰れって追い出されたのだと思ったのだけど」

一方通行「冗談を言ってる暇はねェ。おい、クソガキ。病院に居る妹達の1人を冥土帰しンとこに走らせろ。

       芳川ァ!てめェはさっさと黄泉川に電話をかけやがれ!」
133 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:43:21.38 ID:d2qlSLXY0

打ち止め「うん、それじゃあ一番近いところに居る19090号にそう連絡するね、ってミサカはミサカはびしっと敬礼!」

打ち止めはすぐに行動に移したが、芳川は首を振った

芳川「残念だけど、私も今さっき電話をかけたばかりなのよ。今は電波の届かない所にいるか電源を切っているわ」

一方通行「じゃあ留守番サービスセンターでいい。時間差があってもとにかく連絡が取れればなンでもいい」

芳川「わかったわ、ちょっと待って頂戴」

芳川が自分の携帯電話を取り出したのを見ると、一方通行は自分にあてがわれた部屋に向かった

部屋の端にある棚の一番上をさっさと開いて、中身を掴み取り、一旦足元に置いた
床に並べたものは、彼が暗部時代に使っていた銃が2丁に、弾が入ったケースが幾つか、そして皮の鞘に収められた無骨なバトルナイフだ

銃はきちんといつでも使えるように整備されている。一応軽く確認しながら、彼はそこに弾を込めた
さらに銃を入れるホルスターを棚から取り出し、しっかりとベルトに止めると、そこに銃をいつでも取り出せるように納めた

バトルナイフは皮の鞘ごと左腕に巻きつけた。彼が杖をつくほうの腕である
一度さっと右手で取り出してみると、学園都市製の金属が鈍い光を放った。骨さえ切断できる切れ味がありそうなナイフである

ナイフを納めなおすと、最後にコートの内側にある大きなポケットに、残りの予備の弾をケースごと詰め込み
傍から見て武装しているとはわからないように、さっとそれを着込みなおした

次に彼はその一段下の引き出しを開いた。そこにはチョーカーの充電器が入っていた
充電器のコードを束ね、ズボンのポケットの奥に押し込むと、一方通行は二つの引き出しをしっかり閉めた
これで彼の準備は完了である

一方通行が部屋に戻ると、2人が迎えて頷いた

芳川「いつでもメッセージを残せるわよ」

打ち止め「こっちも19090号が、冥土帰しのそばについたよ、ってミサカはミサカは報告してみたり!」

一方通行「よし。じゃァ、芳川。留守電に、打ち止めとてめェが、マンションにいることを教えて、

       そちらから連絡できしだい、安全な場所を教えろ、という旨のメッセージを入れといてくれ」

芳川「了解。ええとここのボタンを……。ええと、愛穂?私、桔梗だけど──」
134 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:43:47.50 ID:d2qlSLXY0

受話器に喋りだした芳川から目を離し、一方通行は打ち止めに向き直った

一方通行「時間があまり無い。そっちの聞きたいことはとりあえず置いといて、こちらの言葉を全部正確に、

       冥土帰しに伝えてくれ。あと、この話は少なくとも病院に居る妹達全員は聞くように、おまえから命令しろ」

打ち止め「了解!19090号や他の妹達もわかったって」

一方通行「……ああ、冥土帰しに話すその前に、2つ確認しなきゃならねェことがあったな。たしか10032号だったか?

       お前のとこにいる凶暴化した患者って言うのは、顔面蒼白で、一見死体のようにすら見える、って言ってたよなァ?」

打ち止め「『間違いありません。今彼らは個室に押し込んで隔離してあります、とミサカは答えます』だって、

       ってミサカはミサカは物まねしつつ、伝えてみたり!」

一方通行「似てねェ。次だ。それからそういう患者は来てねェか?あるいは……来てから発症したような奴はいないか?」

打ち止め「『いえ、それからはそういう患者さんは来ていませんし、入院中や診察待ちの人にもそういった症状は見られません、

       とミサカは否定します』だってって、ミサカはミサカは結構うまく物まねできてると思うんだけどなぁ」

一方通行「……そうか、わかった」

芳川「こっちはメッセージを入れ終わったわよ」

一方通行が確認を終えたところで、芳川は携帯の電源を切った
彼はそちらをみて頷くと、打ち止めと芳川の二人の前に立つように少し移動した

一方通行「芳川、おまえも聞いといてくれ。今、学園都市はかなりヤバいことになっちまってるみてェだ」

彼の言葉に、いつになく真剣な面持ちで芳川は頷いた
135 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:44:51.97 ID:d2qlSLXY0

一方通行「── 結論から言う。そこに今来てる未知の病気の感染者。そいつら全員危険だ。凶暴化する可能性がある」

打ち止め「!」

芳川「!?」

一方通行の言葉に打ち止めと芳川は目を丸くした。打ち止めは、MNWで繋がった妹達にも動揺が広がるのを感じた

一方通行「俺は先ほど、お前らのほうに来てるような凶暴な人間に接触した、というか……襲われた。

       確かに死人つうか、まるでありゃあゾンビだな。人を能力で殺してその肉喰らってやがった」

芳川「ちょっと── 」

一方通行「黙って聞け。そいつらは思考能力や俊敏性が落ちていたようだったが、

       なンの躊躇も無く能力で爆殺しようとしてきやがった。もちろン返り討ちにしてやったが」

一方通行「あンなのはどう見ても普通じゃねェ。これは確実に人間の仕業だ。暗部の仕業か、暴走した研究員か、

       あるいはどこかからウィルスか薬かなンかが漏れ出したか、だ。

       どうみてもあのゾンビ女は、昨日まで普通に生活していた表の住民だった風にしか見えなかった」

一方通行「そして、冥土帰し、おまえにもわからねェ病気が突如として学園都市中に蔓延……明らかに関連性がある。

       患者は皆、倦怠感を感じてるってことだったな?薬かなンかに脳がやられてる進行途中なンじゃないのか?

       頭が完全にやられちまった奴から、凶暴化して人を襲うようになンじゃねェのか?」

一方通行「今、黄泉川の奴とも連絡が取れない。アンチスキルはてンやわンやに忙しいそうだ。

       そして今、学園都市の様々なとこから悲鳴が上がっている……。

       アンチスキルのやつらは、今現れ始めたゾンビどもと戦ってンじゃねェかと俺は推測した。

       実際、俺がちょっと外に出ただけで3人のゾンビを確認したんだからな」
136 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:45:29.07 ID:d2qlSLXY0

一方通行「とにかく危険なことには変わりねェ。妹達は実験のときの武装をまだ持ってンだよな?

       今すぐにそいつを装備しとけ。弾はあるだけあったほうがいい」

打ち止め「冥土帰しが、『わかった、そうさせるね』だって。それからミサカ10032号が、

       『いま武器を取りに行き、ミサカたちに分配します、とミサカは連絡します』だって!」

一方通行「よし。さて、わかンねェことはいくつもあるが、とりあえず冥土帰し、今聞きたいことは3つだ。

       『この現象の感染ルートと原因がわかるか?』、『倦怠感を感じる患者が凶暴化する可能性は?』、

       そして『治療薬と予防薬は作れるのか?』ってことだ。どうだ?」

打ち止め「ええと、まず第一の『感染ルートはわからない。けど原因は未知のウィルスのようだね』だって」

一方通行「ウィルス……だァ?」

打ち止め「『さっき君が言ったように、脳に何らかのダメージを与えている可能性があるね』ってミサカはミサカは伝えてみたり!

       『しかし、こんなウィルスは僕は知らないし、兵器として開発したにしろまず自爆は考えられないね』だって!」

一方通行「誰かが故意にまいた?だがよォ、そんなことして学園都市の上の奴らが得すンのかよ?

       アレイスターの『滞空回線』はまだ健在だ。内にしろ外にしろ、そんなことたくらむ奴がいた時点で、

       暗部の奴らに差し押さえられンだろ?」

滞空回線とは、学園都市上層部が情報を集めるために使っている70ナノメートルのシリコン塊である
学園都市中に5000万機ほど散布されているとされ、ほとんど秘密の行動なんてことはできないのだ
上層部に反逆を企むもの達の情報をすぐにキャッチできるのは、なによりこのナノサイズの機体の影響が大きい

打ち止め「『わからない。だが、僕は医者だし、誰の仕業かは僕の管轄外だ』だって、ミサカはミサカは伝言してみたり。」

一方通行(……ちっ、わからねェ。アレイスターのプラン通りなのか、それとも予定外の事件なのか。

       それだけでも判ればだいたいは絞り込めて来るんだが)
137 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:47:06.98 ID:d2qlSLXY0

一方通行には、学園都市側にメリットが1つでもあるようには、まったく思えなかった
むしろ、謎の病気が学園都市から生まれたなんてことが外部にばれたら、それこそ学園都市は外から潰されるだろう

一方通行(それを見越した外部からの攻撃か?だがそれなら上層部が止めるだろうし……。

       あるいは内側からの上層部への攻撃……にしても上層部に察知されずにここまでできる奴がいンのか?)

打ち止め「ええと、話を続けさせてもらうよって、ミサカはミサカは冥土帰しの言葉を続けてみたり!

       『ワクチンや予防薬に関しては、今すぐには造れないし、量産体制も整えるには時間がかかるね』だって!」

一方通行「だろうなァ……。造るこたァできんだな?」

打ち止め「『僕は患者に必要な物をそろえるのが仕事だからね』って── えっ、ちょっと待って!!」

一方通行「!? どうしたァ?」

冥土帰しの言葉を19090号を経て伝えていた打ち止めだったが、急に慌てて言葉を切った

打ち止め「え、ええと!大変!10032号が病院の妹達に武器を配ってたんだけど、

       待合室にいた患者が凶暴化して襲ってきたんだって!ってミサカはミサカは10032号からの連絡を伝えてみる!」

一方通行「それで?そいつはどうした!?妹達に怪我は無いのか?」

打ち止め「怪我は無いみたい。ええと、静止と警告をしても止まらなかったから、威嚇射撃をしたんだって!そしたら──

       ああもう!MNWが大混乱で情報が上手く伝わって来ないいいぃぃ!ってミサカはミサカはもやもやして地団駄踏んでみたり!」

一方通行「……ちっ、おい冥土帰し!そこは危険だ!今すぐ妹達ンところにナース連れて逃げろ!!」

打ち止め「ええっと、その……!とぎれとぎれにしか聞こえないけど、『入院患者が……』どうとか……」

一方通行「くそっ!」
138 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:47:50.11 ID:d2qlSLXY0

打ち止め「約束して。絶対、絶対、絶対に無事で帰ってきてね、ってミサカはミサカはお願いしてみる!」

ここで初めて打ち止めの目に涙が浮かんだ。未知の敵に対する恐怖ではなく、一方通行がいなくなってしまうことへの不安からだ
かつて第三次世界大戦の最後で、彼が彼女の元から離れたときに見せたのと同じ涙だった


一方通行「はっ……なァに言ってンですかァ?このクソガキはァ?」


一方通行は打ち止めの頭に手を置き、乱暴にかき撫でた

打ち止め「あわわ、何するのってミサカはミサカはガードしてみたり」

一方通行「おまえは誰に口聞いてンですかァ?俺は学園都市最強の能力者、レベル5の第一位、一方通行様だぜェ?」

一方通行はそういって、彼女の前でしか見せたことのない、優しい笑みを浮かべた

一方通行「安心しろ。俺は傷1つ負わねェ。で、妹達やお前らも守ってやる。ついでに原因もぶちのめしてやンよ。だから……

       ガキはガキらしく、素直に笑ってりゃいいンだよ」

打ち止め「……うん!わかった!約束してねって、ミサカはミサカは指きりげんまんを要求してみたり!」

一方通行「針でも何でも飲ンでやらァ」

打ち止めの差し出した小さな小指に、一方通行の細い小指が絡まった



打ち止め「ゆーびきーりげーんまーん、うーそついたーら、演算切っちゃうんだから!」

一方通行(何気に怖えェこと言うなクソガキ!?)

打ち止めの目にもう涙は浮かんでいない。いつものように彼女は笑顔を浮かべていた
139 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:48:41.33 ID:d2qlSLXY0

芳川「さっき出かけるときも言ったけれど、本当に気をつけてね」

一方通行は演算使用モードに切り替え、先ほど入ってきた窓に足を掛けた
高いところなので学園都市の様子がよく見える

学園都市のいろんなところから悲鳴があがり、逃げ惑う人の姿や、おかしくなった人間の姿もちらほら見える
……ところどころからは煙が上がり銃撃音も聞こえていた

一方通行(本格的に始まったな)

一方通行は厳しい表情でそれらを見た
今の彼としては、表の住民たちを助けたいところではあるが── おそらくいちいち助けていては
いつまでたっても病院にたどりつけないだろう

一方通行「病院にいって、安全を確保した後に、妹達を通じて連絡させ── 」

彼はそこまで言って、ふと、あることを思い出した。彼は後ろを振り返り、打ち止めを見据えた
打ち止めは芳川の隣で、彼を見送ろうとしていた。その手はしっかり、研究員の手と繋がれている


一方通行「おい、クソガキ。病院に居る妹達は、今、全員武装してンだよな?」

打ち止め「え?う、うん。今もMNWははっきりしないけど、全員武装して、戦いを始めてるみたい。

       でもどうして?ってミサカはミサカはたずねてみたり」

一方通行「今、学園都市にいる妹達は、病院に居る奴らだけじゃねェ」

一方通行は、前日2日、毎日遊びに来ていた妹達のことを思い出したのだ
彼女達はたしか、夜は第七学区のホテルに泊まると言っていたはずだが?
ここ(ファミリーサイド)に泊まりたいというお願いを却下したことを、いまさらながら一方通行は後悔していた

一方通行「そっちの妹達はどうなンだ?能力以外に武器はあンのか?」

打ち止めもハッとした様子で、慌ててMNWを確認した

打ち止め「武器は何も用意して無いみたいって、ミサカはミサカはログから確認してみる!

       本当にただ遊びに来ただけみたいだし……」
140 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:49:22.22 ID:d2qlSLXY0

一方通行「ちっ……予定変更だ。俺はホテルに居る3人の妹達と合流した後、病院に向かう」

一方通行はすぐに決断した。ここまで遊びに来てくれた妹達、特に個性が芽生え始めた子達
絶対に傷つけてはならない

一方通行「ホテルから動くな、と伝達できるか?上位命令つかってでもホテルから動かさせるな」

打ち止め「りょうかーい!ってミサカはミサカは早速電波をビビビビビー!!」

一方通行は目標をかえ、ホテルのほうにまっすぐ体を向けなおした
大体ここから3キロほど離れたところにある、大きなホテルだ
彼の能力なら数分もかからずにたどり着く事が出来る


一方通行「それじゃあ、行ってくる」

彼はそれだけ呟くと、タンッと軽い音をたてて、マンションから飛び出していった


芳川「大丈夫よ、打ち止め」

芳川は彼がでていった窓をしっかり閉めると、笑顔が消えた打ち止めを抱きしめた

芳川「あの子はあなたとの約束を破ったことがあったかしら?」

打ち止め「ううん、ないよ……ってミサカはミサカはあの人のことを思ってみたり」

芳川「なら信じなさい」

芳川は打ち止めの頭を撫でながら、優しくそういった
自分にも言い聞かせるように

芳川「あの子の誓いは絶対よ。ね?」

打ち止め「うん、わかってる!ミサカはミサカはあの人のことを、世界で一番信頼しているんだから」

そういって打ち止めは笑顔を芳川に見せた。が、すぐに不安げな顔になり、一方通行が飛び去ったほうを見た

打ち止め(絶対に……帰ってきてね、ってミサカはミサカは心からお祈りしてみる)


一方通行 1日目 09:00:23 第七学区 ファミリーサイド 妹達のいるホテルへ
141 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:50:08.24 ID:d2qlSLXY0









         ヤ ク ソ ク
第3話:一方通行の誓い









                              おわり
142 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 19:50:36.56 ID:d2qlSLXY0

終わりです。読んでくださった方、ありがとうございました
というわけで一方通行の始動でした
打ち止めは原作で、美琴とインデックスを足して3で割ったような扱いになってきてるけど
このSSでもしばらくフェードアウトです。あと芳川さんもしばらくお休みかな

このSSでは一方通行の三人称が『彼』になっています
鈴科百合子説を押す方には申し訳ないですが、このSSで一方通行は男性ということでお願いします

あ、それとですね
暇人のSS日記 さまがこのSSをまとめてくださってるみたいです。どうもありがとうございます!

次回は禁書原作でのもう1人の主人公と、その愉快な仲間達の出番です
お楽しみに!


追記
下のアマゾンェ……『教室で盛大にゲロ吐いた(単行本)』ってなんぞ?
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/03/17(木) 19:54:18.92 ID:4u/+X170o
おおおお、正しいゾンビものになってきたぁああ。
震えるぜ。

大期待
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/03/17(木) 20:26:38.28 ID:lgzayEgPo

やっぱり能力は使ってくるな
浜面楽しみだ
145 : ◆Rx8sTNAmH2 [sage]:2011/03/17(木) 20:39:53.80 ID:d2qlSLXY0
あれ>>98へのレスが途中で消えてる
募金が一番できることかつ助けになることだと思っています
って書こうとしてました
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 20:53:32.40 ID:IBfs9hLDO
乙でぇぇす!
次回も期待してます
147 : ◆Rx8sTNAmH2 [saga]:2011/03/17(木) 20:58:42.36 ID:d2qlSLXY0
たびたびすみません。途中抜けてました
>>137>>138の間
─────────────────────────────────


一方通行は、ギリッと歯を噛み締めると、芳川のほうに向き直った
彼女は会話を聞きながら考え込んでいた。かつて暗部にいた研究者の一人ではあるが
それでも今の会話の中にはしらない情報が沢山あったのだろうか

一方通行「芳川ァ!俺は今すぐ病院に行ってくる!打ち止めはここに置いていく!

       黄泉川がくるまでここから動くな!黄泉川がきても、安全が確認できなきゃドアを開けンな!いいか!?

       何か護身用の武器はあるか?何でもいい」

芳川「一応これがあるわ。」

芳川は着ていた白衣ポケットから小銃を取り出して見せた

一方通行「……頼りねェが贅沢は言えねェな……俺の武器はおまえが使うには大きすぎる」

芳川「大丈夫よ。打ち止めは私が守ってあげる。それに打ち止め自身もレベル3の『電撃使い』だしね」

一方通行「おまえのこともだ。絶対に傷つくんじゃねぇぞ。

       ……そうだ打ち止め、番外個体は?あいつも病院にいるんだよな?」

打ち止め「うん。彼女もこの話は聞いてたみたい。今は隔離された部屋の培養機に入ってるみたいだよ。

       病院の中でも安全だし、発電も部屋の中で行ってるから心配ないみたい」

一方通行「そうか……いざってときは妹達をその部屋に集合させろ」

打ち止め「MNWが落ち着いたらそう伝えるね、ってミサカはミサカは約束してみたり」

一方通行「いいか、もしかするとお隣さンでさえ危ねェかもしれねェ。誰か来ても絶対に黄泉川以外の奴以外に応答するな。

       出来る限りおとなしくしてろ。そしてMNWから情報を集めて、お前からは落ち着くように指令を出せ。

       ちゃんと黄泉川や芳川の言うことを聞け。わがまま言うんじゃねェぞ。でも何かあったらすぐに2人に知らせろ。いいな?」

打ち止め「うん、わかったよ。……ねぇ、あなた?」

一方通行「ああ?」
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 23:51:29.96 ID:Cfl3dEcIO

上条、御坂、一方ときたから次はやっぱり奴だろうな
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/03/18(金) 00:46:48.53 ID:5v+kIMiM0

一方さんって杖、右手でついてなかった?
ナイフぶら下げるなら、腰か脇辺りか
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 00:58:29.89 ID:Im+4yrP90
能力使える設定じゃないとパワードスーツでゾンビ組みは詰むからなww
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 01:22:36.00 ID:qUcDbyDSO
釧路帷子ェ……
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/03/18(金) 02:22:48.09 ID:IV70jUCAO
『あなた』だと?このクソロリコンめがァァァ!
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陰地方) [sage]:2011/03/18(金) 13:42:47.24 ID:ImhyjkgH0
パワードスーツ誰かもってこい
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/03/18(金) 16:21:12.60 ID:MJkyvlWAO
新入生からパクってくるわ
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/18(金) 16:56:59.70 ID:6f2sxIyno
小銃ってハンドガンじゃなくてライフルのことだよ
156 : ◆Rx8sTNAmH2 [sage]:2011/03/23(水) 00:49:12.13 ID:flM8944s0
地震で消えた書き溜めの分までは回収し切りましたが、第四話完成までもう少しかかりそうです
投下は土日を予定しています。よろしくお願いします
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/03/23(水) 05:05:57.20 ID:nHVsotvAO
それまでハーブでも調合してるか…
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西) [sage]:2011/03/24(木) 09:21:10.95 ID:bCS9Tze40
>>157

…と思ったらレッドハーブ2個しか無かったりして(笑)
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/24(木) 21:59:23.07 ID:6Lb8ARVT0
基本的に銃が主体の浜面は一番ゾンビの世界にマッチしてる気がする
160 : ◆Rx8sTNAmH2 [sage]:2011/03/25(金) 19:43:39.77 ID:6hx/zbhQ0
大変申し訳ありません
個人的な理由で、今月末まで関東から関西へしばらく行くことになりました
もう今月中は投下できないです。4月の10日までには必ず投下します
たびたびの約束破り、ご期待してくださっている読者様に、重ねてお詫びを申し上げます
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/25(金) 20:13:07.98 ID:QIEr0zLDO
>>160
了解だぜ!
無事に帰ってきてね(´・ω・`)
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/03/26(土) 05:49:23.67 ID:zgbIsacAO
了解、いつか投下される日を待ってるぜ
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/03(日) 14:17:47.12 ID:2SbaKzIL0
きたい
164 : ◆Rx8sTNAmH2 [sage]:2011/04/08(金) 13:37:26.26 ID:uZbKGNse0
私は帰ってきた!
お待たせしてすみません、日曜までには投下します
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/08(金) 13:46:17.42 ID:9HrphkkDO
>>164
待ってました!おかえり( ´∀`)
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/09(土) 09:13:22.72 ID:Vp/OMOkAO
部屋暗くしてガタガタ震えながら待ってるぜ
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西) [sage]:2011/04/10(日) 10:49:49.93 ID:JUT4Wazf0
待チくたbれぜ。


…かゆ うま
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/10(日) 20:10:03.84 ID:pbTp5BMuo
久しぶりにブックマークから開いてたら更新宣言が!やったね待つぜ待つぜー
169 : ◆Rx8sTNAmH2 :2011/04/11(月) 00:09:49.93 ID:DauAaz+I0

まずレス返しです

>>143
正しいゾンビもの……ですか?
個人的にはゾンビものは
『死に足を突っ込んでいながら生きてる』『数がどんどん増え、味方も敵になりる』『傷つけられると自分も仲間入り』
というあたりがポイントだと思っています

>>144>>150>>153>>154
能力なしだと
『上条さんがマジで役立たず』『生き残りの警備員や、風紀委員で対処できちゃう』『能力者にとってはただの動く的』
と、まったく緊張感の無い状態に……。他にもとある理由で能力を持たせました
パワードスーツは対ゾンビに効果的そうですよね。バイハザとか実装すればいいのに

>>146
期待どうもです!

>>148
はぁぁあああまぁぁあああづぅぅうううらぁぁあああ!!は個人的にキャラがいまいちつかめてないので
他の主人公たちに比べてあまり活躍しないかも……
というか始まりのネタから難産でした。もう爆発しろ浜面

>>149
ナイフは初め腰にぶら下げようと思いましたが、2丁拳銃腰にさした上にナイフも腰?と思ったので
個人的にロマンな腕につけさせてもらいました
股間にぶら下げるのもありかなと思いましたが、ビジュアル的に打ち止めの教育によろしくなく
胸につけるのはモヤシ体系のセロリさんには似合わない気がしたので……
杖は灰村氏のサイトにある設定画で確認しました。右手でついてますね。きき手と逆の手でついてるものだと思いこんでました

というわけで>>133の一部を
×『バトルナイフは皮の鞘ごと左腕に巻きつけた』『一度さっと右手で取り出してみると』
○『バトルナイフは皮の鞘ごと右腕に巻きつけた』『一度さっと左手で取り出してみると』
に訂正させてもらいます。申し訳ないです

>>151
気づきました?残念ながら帷子ちゃんはここで出番ボッシュートです\チャラチャッチャ ミョォオーン/
アニメでもほんの少ししか出番無いのにね。そのうちきっと、マイナー好きな作者さんがメインで書いてくれるよ!

>>152
打ち止めは一方通行の嫁。番外個体も一方通行の嫁。というかもう皆一方通行の嫁でよくね?
170 : ◆Rx8sTNAmH2 :2011/04/11(月) 00:10:35.45 ID:DauAaz+I0

>>155
ぎゃああああ!直してないの忘れてたあああ!
すみません。俺も途中で「小銃って言い方でいいんだっけ?」と思って、そこでライフルのことだと知ったんです
で、それをすべて直したはずなのに、直ってないってことは、地震のときの停電で台無しになったのか……
おのれ魔術師!
ええと、>>1は実はぜんぜん武器についての知識がないんで、こういうミスこれからも出ます。多分
見つけたら暖かく指摘してくださいね
とりあえず>>132>>143の『小銃』はすべて『小さな拳銃』に訂正します。ごめんなさいです

>>157-159 >>161-163 >>165-168
大変お待たせして本当に申し訳ない
今回ご期待にそえるようなものが書けたかどうか……



今回聞いていた曲は

Lunasa - Morning Nightcap
http://www.youtube.com/watch?v=Ss21UDdg8xo
Walpurgisnacht - Mijn Dierbaer Peellant
http://www.youtube.com/watch?v=47eHmu9OGQg

171 : ◆Rx8sTNAmH2 :2011/04/11(月) 00:11:24.19 ID:DauAaz+I0

浜面仕上 1日目 07:32:28 第七学区 蔦に覆われた洋館


浜面仕上が目を覚ますと、見慣れない天井が彼を出迎えた
一瞬頭が混乱するが、すぐに昨晩のことを思い出し、ふっ、とため息をついて力を抜く


浜面「……あー……そうか」

浜面(昨日は遅くまで仕事して……そのままここに泊まったんだった)

彼はパジャマにも着替えず、布団をかけないままでベットに倒れていた。よほど昨日は疲れていたのだろう
自分にあてがわれた部屋にぼろぼろになって入った記憶はあるが、ベッドに倒れこんだ記憶さえない

浜面が目を覚ました所は、彼の所属する『アイテム』のリーダー麦野沈利が個人的に所有する家で
第七学区にある、学園都市では珍しい古い洋風の屋敷である
麦野はレベル5の第4位であり、はいて捨てるほどの金を持つ。かなり広い敷地としっかりした調度品がそろっているが
普段は使っていなかったらしい。浜面にしてみれば理解できない世界である

彼らアイテムは第三次世界大戦を生き残り、一度はばらばらになったアイテムを再結成
暗部を抜け出して、平和な生活を送っていた
ただし浜面は相変わらず雑用なので、たいして境遇に変化は無い

強いて言うなら、滝壺理后という彼女ができたことくらいか

浜面(……そういやその愛しの彼女はなにしてんだ?)

昨晩、滝壺は浜面より先に、違う客室へと就寝しに行ったはずだった
彼氏彼女の関係になったものの(主に彼氏がチキンなため)一緒の部屋で寝てないのだ

まだぼーっとする頭で、ふらふらと部屋から出る。彼がいたのは屋敷の2階にある客を泊める用の部屋だった
この屋敷の2階は、数室の客室と遊戯室になっている。麦野は誰かをここへ呼んだりしたことがあったのだろうか
浜面は他の客室のドアをノックしてみたが、どこからも反応が無かった
もしかしたら何処かに寝ていて起きていないのかもしれないが、浜面は女の子が寝ているかもしれない部屋に入っていく勇気は無かった
それがたとえ彼女であってもである。むしろ彼女だからかもしれない

浜面「んー……どうしたもんかね?」
172 : ◆Rx8sTNAmH2 :2011/04/11(月) 00:12:18.33 ID:DauAaz+I0

突然、彼のズボンから、軽快な音楽が鳴り響いた
ちょっとビビった浜面だが、直ぐにポッケから携帯電話を取り出して、耳に当て──


『出るのが超遅いですよ、浜面!ワンコールででないっていうのはどういうことなんですか!?』

そして、大音量で響いてくる少女のキンキン声に、思わず顔をしかめ、耳から放した

『ちょっと?聞いてます?浜面?馬鹿面?超ヘタレ面?』

浜面「聞こえてますー!誰がヘタレだ誰が!?え?絹旗!」

電話先からの心無い言葉に心を打ちぬかれた浜面が思わず叫び返すが、絹旗はまったく怯むことなく、むしろせせら笑った

絹旗『滝壺さんと、手を繋ぐのにも赤面汗だく超必死、自分から積極的にアプローチできずに泣き寝入り、

    あげくに自分でデートプランも考えられず、結局私泣きついてきたのは、どこのイケメンさんでしたっけ?』

浜面「すみません次からはワンコールででるようにします」

絹旗『よろしい』

電話の相手は絹旗最愛、アイテムのメンバーである。彼女はアイテムの生き残りの中で唯一、大戦中は学園都市に居たが
帰ってきた他の3人を迎え、新アイテムとして合流、暗部を卒業したのである
といっても彼女の生活が大きく変ったというわけではなく、暗部の仕事が無くなっただけで
相変わらず、趣味のC級映画を楽しんだり、麦野たちと駄弁ったり、浜面をこき使ったりしていた

彼女は昨日、

絹旗『じゃあ浜面、ここの飾りつけ超お願いしますね。私は明日の食事とか段取り用意しときます』

絹旗『ああ、浜面だけじゃセンスが超心配なんで、滝壺さんに監督してもらいます。それじゃあ行ってきますね』

と言ったきり、まったく音沙汰無しだった
もしかして自分と滝壺の間で気を使ってくれたのかなー、というのは浜面がちょっぴり感謝したことだが
まかされた仕事が膨大すぎて、その思いが吹き飛んだのは30分もしないうちであった

173 : ◆Rx8sTNAmH2 :2011/04/11(月) 00:12:47.96 ID:DauAaz+I0

浜面「あー、で?なんだ?何かあったのか?」

絹旗『なんだもこうだもないですよ!ちゃんと飾りつけしたんでしょうね!?

    クラッカーとか、紙ふぶきは用意してあります?パーティゲームはひと揃えしてあるんですか?』

浜面「おーそれか。あーあー、ちゃんとやりましたよ、ちゃんと!」

浜面は携帯を耳に当てたまま、階段のほうへ向かった。足元の板が、軋む音を立てる
階段から一階を覗くと、そこは大きな食堂のような部屋になっていた

普段は落ち着いた雰囲気の部屋なのだろうが、今は紙で作られたわっかテープやキラキラしたモールがはりめぐらされ、
大きな机には、ファンシーなピンクの地にうさぎちゃんの絵が散りばめられたテーブルクロスが掛けられている
何より目を引くのは、台所側に掛けられた大きな紙だ。太く、大きく、ちょっと丸っこい字でこう書かれている


む ぎ の  退 院  お め で と う


筆を取ったのは滝壺である。どこかからか持ってきた馬鹿でかい筆で、見事に書き上げたのだ
ちなみに書き終えた後の浜面の拍手に、珍しく得意げに鼻を高くしたりしていた

話を戻すとこの賑やかな飾りつけ、浜面の仕事、絹旗が外出した理由は、この文字で説明できる
今日は麦野が病院から退院するので、そのお祝いパーティをしようというのだ

麦野はとある事情から、大戦直前に片目と片腕を失い、体内に致命傷と言えるほどのダメージを負った
大戦中はその原因である浜面を追い、ロシアにて彼らを追い詰めたものの、その体はぼろぼろで限界になっていた
そして大戦後、アイテムに戻った彼女は、冥土帰しという医師の元に入院、治療を受け、本日めでたく退院となるのである

と、それはいいし、大変喜ばしいことなのだが、いかんせん準備が大変だった
まず会場をどこにするかからである。個室サロンを借りてもいいのだが、できればもっと気兼ねなくしたい
幸い、これはすぐに解決した。絹旗が麦野から家を借りることに成功したのだ(もちろんパーティに使うとは言っていない)
が、その家はほとんど使われておらず、当然埃だらけであった
さらに、パーティの準備をするだけの人手もない。計画をたてたのは3人だが、肉体労働担当は浜面だけであった
つまり、浜面は、家中の掃除から、飾りの仕込み、飾りつけ、パーティグッズの買出しなどを、ほぼ全て1人で行うはめになったのである

浜面「なあ。やっぱおかしいよな。お前も雑巾がけくらい手伝ってもよかったよな?」

絹旗『か弱い女性を働かせるんですか?超浜面ですね』

浜面「その人の名前を形容詞みたいに言うのやめていただけません?」
174 : ◆Rx8sTNAmH2 :2011/04/11(月) 00:13:22.72 ID:DauAaz+I0

絹旗『まあいいです。こっちは昨日の内に全部食事を超予約しときました。あと浜面や滝壺さんから頼まれた、

    麦野へのプレゼントも、しっかりと買っておきましたよ』

浜面「お、サンキュー。今言ったが、こっちは準備完了で、後は食事と麦野待ちだぜ」

絹旗『ああそれですが、実は知ってました。滝壺さんから全部聞きました』

浜面「はぁ!?」

『大丈夫。信用されてないはまづらのことも私は応援している』

突如として電話の相手が変った。どうやら絹旗の直ぐ隣で話を聞いていた子に変ったらしい
そしてその声の主は、朝浜面が寝ぼけ頭で居場所を考えていた少女だった

浜面「滝壺!?なんだ、絹旗のとこにいってたのか?」

絹旗『私の泊まってるとこに、朝方ふらふらやってきたんですよ。なんかおかしな電波がどうのとかで』

浜面「なんだ。じゃあ今この家は俺1人か……。って、準備終わったって聞いたなら、なんでわざわざ俺に確認するんだよ?」

絹旗『いや、超浜面のことですから、滝壺さんが出て行った後で、寝ぼけて会場ぶち壊してないかなと』

浜面「してませんから!?」

浜面の素っ頓狂な叫びが面白かったのか、受話器の向こうからクスクス笑う声が2人分流れてきた
ぐぬぬ、と思わず手に力を入れる浜面であるが、どうしようもない。相手が悪すぎるのである

絹旗『まっ、そういうわけで、浜面。これからの段取り説明しますからきいといてください』

浜面「あ?あ、ああ。そういや今、お前らどこにいるんだ?」

絹旗『もうホテルをチェックアウトして、麦野の病院に向かってます。私達はこのまま麦野と合流して、タクシーでそっちに行きます。

    浜面はその間に、来るはずの料理とプレゼントを受け取って、最後の準備をしといてください。

    間違ってもつまみ食いしないでくださいね』

浜面「しねーよ」
175 : ◆Rx8sTNAmH2 :2011/04/11(月) 00:13:52.29 ID:DauAaz+I0

絹旗『料理もプレゼントの郵送も、大体9時ごろには届くはずです。超特急便で頼みましたから。

    私達は、大体10時くらいにはそっちにつくと思います』

浜面「りょーかい。じゃあ待ってるぜ」

絹旗『超楽しみですね』

連絡を終えた絹旗が、ここで声を楽しそうに上げた

絹旗『私はロシアで麦野や滝壺さん達になにがあったのかは、聞いた分にしか知りません。

    でも、皆いいほうに変っていったのはわかります。特に麦野は、なんというか、すごく変りました。

    今日のパーティはきっと、ものすごく楽しいものになりますよ!』

滝壺『わたしも楽しみ。きっと楽しい時間になるよ』

浜面は笑顔で喋っているだろう2人のことを想像した。そして今、病院で退院手続きをしているだろう女性のことも

浜面「……ああ、俺もすごく楽しみだぜ!」

絹旗『浜面はパーティ中も雑用なんですから、楽しんでる暇なんて超無いと思いますが』

浜面「わかってたよちくしょぉおおーーー!!」

口では悔しがるようなことを言っていたが、浜面は笑っていた。彼も、たとえ雑用に使われるとしても、パーティが楽しみなのだ
戦争を乗り越え、暗部を脱し、何よりまたアイテムがまた仲良く終結した。ちょっとくらいこき使われたっていいではないか
だからこそくたくたになるまで、なれもしない掃除をし、無いセンスをしぼって飾りつけをしたのだから


絹旗『じゃあ一旦きりま── ん?滝壺さん、何か?』

絹旗『はまづら。さっききぬはたが言ってたデートプランについて、後で話があるから。それじゃあまたね』プツッ

ツーツー、となる電話を、浜面は呆然と耳に当てていた。彼の表情はさっきまでとうって変わってこわばっている

浜面(そういや、絹旗にすすめられた映画見に行ったとき、見栄張って『全部俺1人でプラン考えたぜ』的なこと言った気も……。

    す、素直に絹旗に考えてもらったと言っておけばよかった!い、いや、それは駄目か!?調子に乗るんじゃなかった!!)

浜面「な、なんかヤバイ!どうすれば……!う、うわああーー!滝壺ごめーーーーん!!」

静かな家に、1人の男の情けない叫びが響いた
176 : ◆Rx8sTNAmH2 :2011/04/11(月) 00:14:43.97 ID:DauAaz+I0










第4話:浜面仕上よ銃を取れ!









                                 (前半)
177 : ◆Rx8sTNAmH2 :2011/04/11(月) 00:15:14.40 ID:DauAaz+I0

浜面仕上 1日目 08:10:04 第七学区 蔦に覆われた洋館


この洋館は構造上、2階にある客間にまでチャイムの音が届かない
そのため浜面は1階の食堂で適当な椅子に座っていた
そのために幸か不幸か、彼はすぐに異変に気づくことになった

浜面「……ん?」

だらしなく座り、何を考えるでもなく、ぼーっと手の中で判子を弄んでいた浜面は、
ドンという音が玄関のほうから聞こえたような気がして、顔を上げた

浜面「なんだ?もう宅配がきたのか?」

ちょっと速いなー、と思った浜面だが、ここは第七学区でも一番の過疎区域で、
しかもお隣さんたちとの交流があるわけでもなく、たずねてくるような一般人はいない

宅配車が来たのかと思っていた浜面だったが
それだったらすぐにチャイムを鳴らすはずだし、よくよく思い返してみれば車のエンジン音も聞こえなかった

再び、ドンという音。今度ははっきりとわかったが、扉が叩かれる音だ
しかしノックをしているというよりは、ぶつかってきたような音のように聞こえる

浜面「……なんだ?ったく……」

浜面はとりあえず席を立ち、玄関に向かった
彼はかつてはスキルアウトの一グループを束ねていたこともある、アンチスキルの折り紙つきの不良である
アイテムやそのほかの知り合いからは、へたれだのビビリだのといわれることがあるが
それでもそれなりに修羅場をくぐり、一般人よりかは体も鍛えてある。格下の相手への凄み方も知っていた

浜面(どっかの悪ガキがイタズラでもしてんのか?ちょっと追い払うか)

ちなみにこの場合追い払うのは、浜面が迷惑に思っているからでも、子供への教育的指導でもない
家の持ち主たる麦野の逆鱗から、何も知らぬ子達を守るためである
178 : ◆Rx8sTNAmH2 :2011/04/11(月) 00:16:37.15 ID:DauAaz+I0

玄関に向かう途中、三度目のドンという音が聞こえた
どうやらほぼ確実に、玄関の前に人がいるようだ

浜面(ったく……。誰か知らねーけど、麦野の家にイタズラするなんて運の無い奴だぜ)

靴をひっかけた浜面は声をかけずに、扉に近づいた。直ぐ前に人の気配を感じる
どんなやつが、なにをしているのか、それを確認するために、そっとドアスコープに目を近づけた


浜面「…………は?」


浜面の口から、間抜けな声が漏れたのは、仕方の無いことであろう


絹旗が好むC級映画にでてきそうな、ゾンビと形容するほか無いような姿の人間が、扉の前にいたのだから


浜面はぽかんと口をあけたまま、一旦覗き穴から目を離し、
パン、と自分の頬を叩いた後、キリッとした表情でもう一度外を見た

夢でも幻覚でもない。そこにはゾンビが2人、外からこちらを見つめていた


浜面「……おい、おいおい。おいおいおいおい!!なんだこりゃあ!?」


浜面が思わずだした大声に、ビクリと反応したゾンビは、扉越しにうなり声を上げ、
ドンと扉にぶつかって来た

浜面「うぉわっ!?」

浜面は無意識に、さっと後ろに体をずらした。古い扉が軋む音をたてたが、丈夫な鍵が彼を安全に守ってくれていた
179 : ◆Rx8sTNAmH2 :2011/04/11(月) 00:17:39.96 ID:DauAaz+I0

浜面「おいなんだこれ、どういうことなんだよ!?絹旗あたりのドッキリじゃないだろうな……」

バクバクと音をたてる心臓を服の上から押さえつつ、震える声で浜面は呟いた
自分の体が小刻みに震え、目が大きく開かれ扉を凝視するのを、他人事のように彼は感じた

だがしかし、わざわざ今日という日に浜面をビビらせるために、こんなネタを仕込むような絹旗ではない
万が一驚かせるなら、皆がそろったあとで浜面を驚かせ、「超ドッキリでした!」という流れにしそうなものだ
第一、このためだけにゾンビのコスプレをしてくれるような知り合いはアイテムにはいない
下位メンバーは、アイテムの解散と暗部からの解放により、今は誰も連絡がつかないのだ

では先ほど見た者はなんだったか
2人の男だった。片方はスーツを着た中年男。もう片方は学生服を着た青年だった
その2人に共通点があるようには見られない。たまたまこの近くに住んでいた人だろうか

ドン、と再び扉がなって、浜面はビクリと体を振るわせた。額にいつの間にか浮き出た脂汗が、つーっと一筋伝った

しかしその姿は人間と呼べるものではなかった
灰色の皮膚、腐敗した頭皮、濁った空ろな目、だらりとあげられた腕……
明らかに理性を失ったような姿は、まさしくゾンビそのものだった


浜面は一度大きく深呼吸をした


浜面(落ち着け……落ち着けよ。お前はあの大戦を生き抜いたじゃないか……。考えろ、どうするべきか)

浜面(ゾンビ映画は俺も見たことがある……。こういうときは武器と逃走経路が重要なんだ。そう、そこがまず重要だ。

    武器は……スキルアウト時代から使ってる拳銃がある。こいつはいざって時には使えるだろう。

    逃走経路は、裏口や窓からでればいいか……。その後は車で麦野達の居る病院に向かう、どうするにせよこれしかないだろ。)

浜面(だけど……ほんとになんなんだよ……。やっと平和になったと思ったのに!糞っ!何がどうしたって──)


「きゃあああああああ!?」


浜面「!?」
180 : ◆Rx8sTNAmH2 :2011/04/11(月) 00:18:12.83 ID:DauAaz+I0

混乱する頭で考えつつ、ギリギリと歯を噛み締めていた浜面は、外から聞こえた声に、バッと顔を上げた

浜面「……まさか!?」

慌ててドアに駆け寄り、ドアスコープを覗き込む
ゾンビ達はそのままそこにいた。が、こちらを見ていない。後ろのほうを振り返っている

その視線の先には──


女子中学生「あ……あああ……」


腰を抜かし、わなわなと震える女子中学生が──


浜面「嘘だろ……おい」


ゾンビ「う……あ……」

女子中学生「ひっ……」

ゾンビ達はドアから離れ、ゆっくりと女子中学生のほうに歩き出した
女子中学生は顔を蒼くし、離れようともがくが、どうやら完全に下半身の力が抜けているらしい


浜面はそれを見て──


浜面「──ちくしょーっ!!」

ダッとドアから離れ、飛ぶように廊下を駆け抜け、二階へと飛び上がっていった



181 : ◆Rx8sTNAmH2 :2011/04/11(月) 00:19:37.78 ID:DauAaz+I0










第4話:浜面仕上よ銃を取れ!









                               (前半)終わり
182 : ◆Rx8sTNAmH2 :2011/04/11(月) 00:22:16.92 ID:DauAaz+I0
Q.え?これだけ?

A.これだけです・・・すいません
実は家庭環境の変化で、SSを書くことはおろか、SS速報にもなかなかこれませんでした・・・
次回は第四話後半として、浜面の行動とアイテムの行動を書きたいと思います
それにしてもアイテムのキャラは掴みづらい・・・いやちゃんと掴めてるキャラなんてそんなにいないんですが


次回もかなり遅れるかもです。のんびりとお待ちください
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/11(月) 16:55:18.15 ID:FofDnxmLo
完結するまでいつまでも待ってる。とプレッシャーをかけてみます。
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/04/12(火) 01:40:04.86 ID:glUDTZ6/0
まずは復活、お疲れ様
気長に待ってる
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/12(火) 15:10:43.08 ID:TzAbWxaAO
出来の良いゾンビクロスだと思ったぞ
そっちは大変だろうが、まあぼつぼつと正座してるぜ
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/21(木) 00:39:34.45 ID:nSi8jFXAO
そろそろ膝が分断しそうだぜ
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西) [sage]:2011/04/21(木) 03:07:17.74 ID:5jy83io80
>>186

膝が分断だと…

貴様這いずりゾンビかっ!?頭踏みつぶしてくれるわ!!
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/24(日) 02:22:30.57 ID:m3mpSd1AO
>>187
最近のゾンビは頭部から虫が出てくるんだぜ
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/04/28(木) 01:31:46.28 ID:yHpTOv0Uo
>>188
え?中世にタイムスリップしてチェーンソーで暴れまわる事になるんでは無いのか。
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/04/29(金) 17:46:43.81 ID:3NzWU+900
背中から羽が生えてきgkmdtwlpkhrori-ta
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/30(土) 05:40:08.92 ID:LANLnQSAO
そろそろ肉がくさ りおち て きて
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/04(水) 03:18:44.96 ID:3yyffzSAO
>>1の日記が残されている。
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/05/17(火) 00:38:46.51 ID:+d3elegAO
日記


今日からゾンビ系のSSを書こうと思う。今回は禁書で行こうかな。人気あって、キャラも個性あってやりやすいし。

皆からレス貰えるといいなぁ
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/05/17(火) 00:44:00.28 ID:+d3elegAO
日記2

やっぱSS書くのって難しいね…
でも皆からのレスのおかげで頑張れそう!! 厳しい指摘もあったけど……。

そういえば最近、筋肉もりもりな気がする!

これで女の子からモテるといいなぁ
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2011/05/17(火) 00:46:09.25 ID:0zPUkc96o
筋肉モリモリで女の子からモテルってのは幻想だ
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/05/17(火) 00:47:21.33 ID:+d3elegAO
日記3

うーん、最近書くのが遅くなってるなぁ〜
待っててくれてる人もいるから頑張らないと!!

さらに筋肉がもりもりになってる…、 林檎も潰せる勢いだよこれは。 これが才能ってやつ?
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/05/17(火) 00:50:56.07 ID:+d3elegAO
日記4


そろそろ話が詰まってきたな…、どうオチをつけようか迷う。 この頃頭の上手くまわらないんだよなぁ〜
ボケ始めるには早過ぎないか?



ヤバい、筋力の増加がヤバい。いや冗談じゃなく…
なんか不気味
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/05/17(火) 00:54:55.52 ID:+d3elegAO
日記5



もうダメだ…、ネタがねえ
肉食いたい


昨日知り合いで飲み会したら、筋肉の事で女の子達にキャーキャー言われたうれしい


199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/05/17(火) 00:57:50.80 ID:+d3elegAO
日記6


てか最近原発ヤバくない?
SS書いてる場合じゃねえわ

………! もしかして俺の筋力の増加の事も、放射能に関係があったりして(゜∇゜)
まさかな
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/05/17(火) 01:01:50.75 ID:+d3elegAO
日記7


一昨日くらいから知り合いから犬を預かってたんだけど昨日その犬とじゃれあってたら、うっかり犬の足を強く握っちゃって………

その飼い主さんにめっちゃ怒られた ごめんねごめんね
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 13:47:24.65 ID:Rg5rCZcqo
うまくもかゆくもない!
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/05/17(火) 18:52:32.13 ID:+d3elegAO
まだ来ないのか……
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2011/05/20(金) 10:58:41.14 ID:dkFOFUis0
早くきてーーーー




204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2011/06/03(金) 21:42:31.63 ID:LkF8SI/J0
なんか怖いけどオモローwwwwwwはやくね〜〜〜
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/03(金) 21:56:29.05 ID:4nvOgRla0
あがったから、期待して来てみれば……
>>204ェ……
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/06/03(金) 21:58:00.16 ID:tuL7hdqjo
>>204
まずはブチ[ピーーー]
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西) [sage]:2011/06/03(金) 23:26:28.22 ID:eM7jKfpW0
>>204

貴様の罪はバンジージャンプに値するッ!!!

さぁ飛びやがれ!

綱無しでな…
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/06/04(土) 15:08:38.93 ID:sd31zYdE0
>>204死ね
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/04(土) 15:17:56.14 ID:qRaEA+da0
>>208
オマエモナー
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/04(土) 16:35:09.85 ID:ZyVI1U67o
だ埼玉・・・
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西) [sage]:2011/06/22(水) 18:11:50.12 ID:4E3oDchd0
まだかな…
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西) [sage]:2011/07/01(金) 13:52:40.73 ID:SymebkR+0
もう7月やないかー!


あれか。蒸発か!?
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/07/12(火) 09:00:51.22 ID:HDe4ua5AO
削除依頼だされてますよ
174.28 KB   
VIP Service SS速報VIP 専用ブラウザ 検索 Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)