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澪「余命一ヶ月だってさ…」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 08:42:51.50 ID:IW7IgJuDO
初SSです。

・けいおん澪の一人称形式です。
・少し鬱っぽいです。
・短いので最後までお付き合い頂けると少し嬉しいです。
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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
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【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 08:44:38.58 ID:IW7IgJuDO
何か一から新しい事を始めようとしても、無意味だ。何故なら終わらせることが出来ないから。

入院してからもう何日目になるだろうか。真っ白い壁と天井に閉じ込められた病室で、私は新曲の歌詞を書こうとして…シャープペンを置いた。

人はいつか死ぬんだという事を漠然とにしろ考え始めるのは普通何歳になってからなのだろうか。少なくとも高校生の私には、その日一日を精一杯過ごすということに終われる日々の中で、今まで死という現実を直視する事はなかった。

病院のベッドの上という暇という暇を積み上げたような場所で私は、自分の残された時間についてばかり考えていた。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 08:46:30.64 ID:IW7IgJuDO
今の環境を私はそれなりに受け入れてはいた。ただ、ママ…お母さんが、私が入院してからというもの、毎日私に会いに来てくれることに少しばかり心の痛みを感じていた。

「…どうせ死ぬのに」

具合なんか全然悪くないのにこんな所に閉じ込められて、気分ばかりが滅入っていく。そんな鬱々とした気持ちのまま私は何となく軽音部で作った曲を口ずさんでみた。
ふわふわ時間。
私が歌詞を書いた、放課後ティータイムの中でも大切な曲だ。

「ああカミサマお願い、一度だけのーー…」

掠れた声でそこまで口ずさんでから私は歌うのを止めた。余計に気分が落ち込んでいくだけなのに口に出してから気がつくなんて全くもって馬鹿らしい。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 08:47:59.20 ID:IW7IgJuDO

「…どうしてなのかな」

もう私は放課後音楽室で唯達とお茶を飲むことも、みんなと演奏をすることも、まして学校に行くことすら、永遠に出来ないのだからーー…。

事故なんかで唐突に死んでしまうよりは、それなりに覚悟は出来ているつもりだ。しかし、気持ちの整理がつかない。
このまま死が訪れることが何より怖い。

一ヶ月。

それが私に与えられた、最期の生きる時間だった。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 08:50:37.60 ID:IW7IgJuDO


私、秋山澪はごくごく普通の高校生だ。長く黒いストレートの髪と標準より少しだけ豊満なバストが特長と言えば特長と言えるかもしれない。それ以外には特に人に自慢出来る特技も持ち合わせていない。ただ私は軽音部に所属している。軽音部にいるからには何か楽器が出来なければ嘘であり。そして私はベースというものが弾けたりする。それくらいだろうか。軽音部には他に四人の仲間がいて、そこで私は放課後ティータイムというバンドを組んで音楽的活動をしたりしなかったり。年二回、文化祭と新歓ライブが私達の主な発表の場だが、今年のクリスマスには中学時代の友人のコネで、ライブハウスで演奏したりもした。
その帰り道、私は突然目の前がブラックアウトし意識を失った。有り体に言えば、倒れた。
意識のない私を誰かが呼んだ救急車が病院に運び、何がなんだか分からないまま私は、入院することになった。
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 08:52:20.65 ID:IW7IgJuDO
数日後、私は自分の病名を担当の医者から聞かされることになる。先生は私の緊張を解くところから始め、そして私は自分の体に起こった異変について知ることになる。病名については難しい名前で延々と話されてよくは覚えていない。ただ私の病気は治療不可能で末期。もう余命一ヶ月しかない、という揺るぎない事実だけだった。

「ーー髪、切ろうかな」

さらさらと、手で自分の髪を梳きながら、ひとりごちる。なんだか急にうっとおしく思えてそんな独り言をこぼしてしまう。勿論ハサミなど持っているはずもないし、美容院になど行けるはずもない。

第一、本当に切るつもりなどさらさらなかった。
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 08:53:47.11 ID:IW7IgJuDO


ーー

「じゃあ出席を取るわねー」

担任の山中先生はいつもと変わらない平坦な声で続ける。
「平沢唯さん」
「はい」
「田井中律さん」
「はーい」
「琴吹紬さん」
「はい」
「秋山澪さん」
「…」
「…秋山さん?」

「秋山澪は欠席です。これから先ずっと」

本来なら私が座っている筈の席には、縫い目がボロボロになった小汚いうさぎのぬいぐるみが、くたびれたように鎮座していた。

「ーーじゃあ、貴方は誰?」

みんなの視線が一斉に私の席に集まる。

「私はーー…」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 08:55:24.03 ID:IW7IgJuDO
「…そこで目が覚めたんだ」

「ふーん」

私の話しを黙って聞いていた律は、真顔でそう相槌を打った。律、というのは先に話した軽音部のメンバーで、小学校時代からの私の親友だ。律は私が今日みた夢の内容という、他人が聞くには恐ろしく興味の薄い類の話しをしている間中ずっと真剣に、私の顔を見つめながら聞いていた。やがて律は、

「変な夢だな」

それだけを付け足した。

「うん」

それだけ言うと、私と律の間には、なんとも言えない静寂が訪れる。
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 08:56:57.10 ID:IW7IgJuDO

律とはつい最近までずっと一緒にいたのに、まるで何年も会っていないかのように歯車が滑らかに噛み合わず、とてもぎこちのないものだった。軽音部の他のみんなも、始めは毎日お見舞いに来てくれてはいたが、そのうちに回数が減り、今では毎日来てくれるのは律だけになった。
律がいうには、みんなは次の新歓ライブに向けて、部活動に忙しいらしい。

次の?

私がいないのに、どうして次のことを考えるのだろう?ベースのいない放課後ティータイムなんて、どうしたって味気のないものになるだけなのに。
みんな私を見捨てて、次を考えている。

あんな奴ら…。
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 08:58:55.74 ID:IW7IgJuDO

「じゃあ私、帰るな」

「あ…」

そんな私の内にあるどろどろした感情を読まれたのか、律は席を立つ。私は引き止める理由も思い付かず、せっせと帰り支度をする律をただじっと見つめる事しか出来ないでいた。

考えたくないのに。

そんな取り繕いが綺麗ごとみたいで、私はさらに自分が嫌になる。
唯達は唯達で頑張っているだけじゃないか…。それなのに。

「じゃあな澪。…あんまり思い詰めたりするなよ」

「…うん」

律の気遣いに私はそれだけ答え、それから律の出ていく後ろ姿をベッドの上から見送った。それから窓の外をぼんやりと眺めていると、しばらくして律が病院の敷地外へ出ていく所が見えた。すれ違うようにその律へ近づいていく中年の女性。小さい律はその女性と軽く挨拶をしたが、早く部室へ帰りたいのか律の方はすぐに遠ざかっていく。
ママだ。
…いや、その人は私のお母さんだった。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 09:00:42.90 ID:IW7IgJuDO


「具合はどう、澪ちゃん?」

私の隣に座りそんな事を聞く。病室に来てから五分で聞くことは毎日決まって同じ台詞だった。同じことばかり繰り返す母親は私を心配させまいとしているのだろうが、その顔はまるで『笑顔』が張り付いてしまった能面のように見えた。一人っ子の私を可愛がるのは何もおかしくはないが、今のお母さんはどこか不気味だ。
そんなお母さんに私は決まった台詞を返す。

「…うん、平気、大丈夫だから」

体調が悪いわけではないし気持ちは変に落ち着いているから、そういう意味では平気なのかもしれない。
それから小一時間あれやこれやと特に実のない会話をしてから、お母さんは病室を後にした。
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 09:02:11.53 ID:IW7IgJuDO

そして、夜が訪れる。
私の命を削る暗い闇が。


ーー

その糸は、今まで自分がぐちゃぐちゃに絡まっていることにすら気づいていなかった。
絡まったままだった細く白い糸。解こうとすればするほど、糸はその長さを増していく。このまま永遠に解けないんだと解くことを諦めることは、理解が出来ない程に罪深いことではないだろうと、糸は自分勝手な結論を下した。
糸は、自分で解くことを諦めた。ピンと張った一本の線になる夢を。
そんな自分を誰かに見てもらうことを諦めた。
誰かに解いてもらおうと助けを求めた。

糸は秋山澪に、助けを求めた。

ーーしかし。
秋山澪にだって、その糸を解くことなど出来はしなかった。
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 09:03:53.95 ID:IW7IgJuDO


私は目が覚めるとすぐ、カレンダーの日付に赤いマーカーで×印をつけた。
昨日という一日が終わり、今日という一日が始まる儀式。
今日は二月二日だ。

カレンダーには二月十六日に予め赤で丸が書いてあった。
そこが、私の命日。

「…」

余計なことは考えたくなかった。ただ、前だけを見ていたい。それでも…。


「おっす、来たぞ」

律はいつものように私のベッドの隣に座る。私の精神状態も考えない無神経な律に私は無言で答えた。感じ悪く思われたかな…知ったことか。どうして…律は親友なのに…。
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 09:05:31.83 ID:IW7IgJuDO
「どうした?元気ないじゃんか」

そんな私に律は軽口を続ける。実際元気になれるわけがないことを律だってよく知っている筈なのに。

「…うん」

私はただなんとなく、生返事を返す。
元気ない…か。
窓の外はそんな私にお似合いだと神様が語りかけるような、そんなどんよりとした灰色の空だった。ずっと病院のベッドの上にいて元気になれる筈もない。

手持ち無沙汰なのか律は、桜高指定の鞄からスティックを取り出すと私のベッドをドラム代わりに叩き始める。
会話もなく、ただ律がスティックを叩く。緩やかに時間は流れていく。
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 09:07:30.47 ID:IW7IgJuDO

走り気味な律のドラム。私は軽音部での活動の事を思い出していた。放課後ティータイム。私にとってはもう過去のことだ。終わってしまった私の青春…。

「…みんなもさ、」

私のほうを見ずに律は話しかける。手は止めずに。

「どう受け止めたらいいかさ、分からないんだよ」

「…ーーなに?」

「澪の事、お見舞いに来ないのもさ…、だから、その…さ…みんなの事あんまり……しないでくれよな」

私は律を見ていた。声が小さくなっていって聞き取りづらかったが、きっと律はこう言ったんだろう。
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 09:09:19.94 ID:IW7IgJuDO
恨まないでくれよなーー…と。

「…ーー恨むよ」

律の手が止まる。

「澪…」

「みんなの事じゃない…私の、運命の事」

どうして私が…私だけが。私はすぐにでも病院を抜け出して部室でベースを触りたかった。どうせ死ぬなら学校に通ったっていいじゃないか…!私は私の体をこのベッドに縛り付けるたくさんの目に見えない意思が恨めしかった。…そんな子供じみた駄々だってこねたくなるさ。こんな…。

「あ、明日はさ…、みんなにも来るように言ってみるからさ…ハハハ」

慌てた律は取り繕うようにそう言葉を紡ぐ。いつもならそんな優しい律の気遣いが嬉しかったが、

「…いーよ、別に」

今日は、ついそんな言葉を口に出してしまった。
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 09:11:30.04 ID:IW7IgJuDO
「…あ、」

私の馬鹿!律の気持ちも考えろ!

「…ごめん」

私は謝罪した。

「いや…うん」

それきり、沈黙が二人を支配する。俯いたまま私は何かを口に出す気力もなく、律が喋りかけてくれるのを待った。どうして、どうして、どうして、どうしてーー…。

「…雨か」

私は、顔を上げた。いつの間にか律は窓の外を眺めていた。外からは激しい雨音が聞こえてくる。

「じゃあ私、帰るな」

「あ…うん」

私は、それしか言うことが出来なかった。
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 09:13:14.28 ID:IW7IgJuDO
「澪」

去り際に律は、

「生きろよ」

それだけ言って、病室を後にした。


次の日から律は、お見舞いに来なくなった。

生きろよ。

私はあの日律が去り際に放ったその言葉の意味を、ずっとずっと考えていた。


ーーそうして、二月十六日はやってきた。
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 09:15:08.71 ID:IW7IgJuDO


私達は小さい時からずっと一緒で、これから先もずっと親友同士でいられるのだと、口に出すまでも、頭で考えるまでもなく、当然のことなのだと今までそう錯覚していたーー…。

「あ、りっちゃん」

私が川べりのベンチに座って呆けていると、平沢唯が駆け足でやって来た。

「寒いねー」

「そうだな」

もう三月なのにな。

澪にあんなことがあったっていうのに、唯は努めていつも通りだった。唯と唯を取り囲む回りの空気はいつだって変わらない。

「…四月になったらさ」

「ん?」

「私達、部員集め頑張らないとね」

「…そうだな」

澪が抜けた穴を埋めないとな。

「あずにゃんも来年一人になっちゃうし、澪ちゃんだってーー…」

「…うん」

今日は三月二十三日。澪は今でも閉鎖病棟にいる。

一ヶ月毎に余命が一ヶ月だと錯覚する精神病…、澪はこれから先もずっと、あのカレンダーに赤い丸を書き続けるのだろう。
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 09:15:51.50 ID:IW7IgJuDO
終わりです。
ありがとうございました。
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 09:20:30.83 ID:0dYRfNjTo
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 13:52:19.93 ID:hhOcFTqeo
後処理しろよ
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 21:10:50.83 ID:rASBSCHOo
なんつーオチ…
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 22:50:04.42 ID:zF+TpuBDO
いや、悪くない
悪くないぜ、乙
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 10:33:29.85 ID:rIaRtlV10
そのままメンバーが老衰で亡くなっていって澪が最後まで生きて本当に誰も見舞いに来なくなってからカレンダーに印を付けた日に亡くなる
そこまでは読めた
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/24(木) 04:26:53.93 ID:b8k2fIp7o
ほかのクズすぎわろった
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/24(火) 05:55:17.20 ID:05XbO2ZRo
終わったらちゃんと依頼出しましょうか
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/05/24(火) 07:25:04.05 ID:TzA8apgAO
なん……だと……
酷く救いの無いオチだが面白かった。
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/24(火) 14:26:44.58 ID:eA18JTbIO
予想外のオチだった
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