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シャロ「あたしたちは!」 インデックス「ミルキィホームズ?」 -
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1 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/18(金) 14:58:57.39 ID:GytVH4L2o
インデックスが倒れていた場所が学園都市ではなく偵都ヨコハマだったら
インデックスと会ったのが上条当麻ではなくミルキィホームズだったら
そんな設定のもと始まる、所謂クロスSS
ミルキィホームズの設定はゲーム版メイン、ダメダメじゃないよ
だけどアニメの設定も入ったりで若干パラレルな予定
途中設定の独自解釈、改変があるかもしれません
更新速度は遅め
他にも色々あるかもしれませんが、どうか生暖かく見守ってください
1.5 :
荒巻@管理人★
(お知らせ)
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/
笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/
【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
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【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
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【安価】少女だらけのゾンビパニック @ 2024/04/20(土) 20:42:14.43 ID:wSnpVNpyo
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ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713522243/
2 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/18(金) 14:59:26.52 ID:GytVH4L2o
――トイズ――
それは選ばれし者の心に膨らむ奇跡の蕾。
ある者は正常の花を咲かせ、ある者は毒の花を咲かせる。
大探偵時代……。
美しさを競い合う2つの花。そのうちの1つ、善のトイズを使い悪のトイズと戦う者たち。
人は彼等を『探偵』と言った。
舞台は偵都ヨコハマ。
トイズ呼ばれる能力を持った人間が存在し、探偵が多数存在する街。
その場所に新たなる1つの花『魔術師』が登場することによって、この物語は始まる……
3 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/18(金) 14:59:59.52 ID:GytVH4L2o
「あたしたちの名前は〜……ミルキィホームズ!」
ここはホームズ探偵学院。
探偵を育成するために、数年前に出来た国際教育機関である。
ある日、そこで一つの探偵チームが誕生した。
『ミルキィホームズ』
探偵の卵でしかない少女たち4人に、
かつて名探偵だった小林オペラを指導員に加えて結成されたチームだ。
1人はシャーロック・シェリンフォード。通称シャロ
彼女のトイズは『念動力(サイコキネシス)』
物に触れずに動かすことが可能だが、比較的軽いものでなければならず、対象が見えてないといけない。
1人は譲崎(ゆずりざき)ネロ。
彼女のトイズは『電子機器からの情報取得・制御(ダイレクトハック)』
微弱な電流を感じ取り、それを制御する。また生体電流も読める。
1人はエルキュール・バートン。通称エリー。
彼女のトイズは『怪力・重量増加・硬化(トライアセンド)』
但し、主となるのは怪力であり、重量増加と硬化はあくまで副作用になっている。
1人はコーデリア・グラウカ
彼女のトイズは『五感強化(ハイパーセンシティブ)』
あらゆる五感を限界まで鋭敏化させる。
そして指導員である小林オペラ
彼は弱冠14歳であらゆる事件を解決してきた名探偵であったが、ある事件によってトイズを失い探偵ではなくなった。
しかし、トイズを失っても持ち前の推理力・洞察力は衰えておらず、指導員となった。
4 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/18(金) 15:00:30.20 ID:GytVH4L2o
彼女たちは優秀だった。
1人1人は探偵の卵でも、彼女らはチームワークと小林オペラの的確な指示によって、次々と事件を解決してきた。
偵都ヨコハマが壊滅しそうになったのを、阻止したことすらあった。
そんなある日の朝、ホームズ探偵学院にあるミルキィホームズ事務所。
「今日も朝から暑いですねー」
「だよね〜。まあ7月20日になって夏休みに入ったし、これからどう過ごそっかなー」
「ちょっと誰よ、ベランダに布団なんて干してるの」
「わ……私じゃないです……」
「ていうか、ここで布団干す人なんているの?」
「教官は知りませんか?」
「いや、僕も解らないな……誰がいつの間に……」
「とりあえず、とりこんじゃいましょーか」
「あ、シャロ」
「あれぇ……? これって……」
「……ぉ」
「お?」
「おなかへった」
こうして2つの花――探偵と魔術師が出会った……。
5 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/18(金) 15:00:59.72 ID:GytVH4L2o
「コ、コーデアリアさーん! 布団が喋りましたー!」
「何言ってるのよシャロ。そんなわけないでしょ」
「でも、でもー!」
「わたしは布団じゃないんだよ」
「ほら、やっぱりー!」
どうやらシャロは、完全に頭が混乱しているようだった。
このままでは話が進まないと感じたネロは、シャロを押しのけて話に入り込んだ。
「ねぇ、キミ誰なの? なんでこんなところでぶら下がってるのさ?」
ネロは警戒した様子で、ベランダにぶら下がってた『それ』に質問した。
が、帰ってきた答えは――
「そんなことより、おなかがへったんだよ」
「そんなことって……キミさぁ」
「どうしたのよ?」
「あの……それって人ですか……?」
何やら様子が変だと感じた他のメンバーたちも集まってくる。
6 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/18(金) 15:01:27.23 ID:GytVH4L2o
「この人……シスターさんかしら?」
「なんで……こんなところに……」
「どうしましょう、小林先生?」
いまいち状況を掴めないミルキィホームズたちは、指導員である小林に意見を求めた。
「うーん……」
とはいえ、さすがの小林もこの状況には頭をひねるばかりだ。
年端も行かない少女が、ベランダにぶら下がっていたともなれば無理もない。
見たところ、ホームズ探偵学院の生徒とも思えない。
「とりあえず話を聞いてみたいんだけど……その前に……」
「おなかいっぱいご飯を食べさせてくれると嬉しいな」
「……何か食べさせてあげようか。僕たちも朝御飯を食べてないしね」
7 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/18(金) 15:01:57.53 ID:GytVH4L2o
「ごちそうさま」
「それじゃあ色々と聞いていいかい?」
全員が食事を終え、小林は少女に尋ねた。
「まずは自己紹介しなくちゃいけないね。私の名前はね、インデックスって言うんだよ?」
「インデックス? 何それ本名? 変なのー」
「こら、ネロ!」
つい口を挟んでしまうネロと、それをたしなめるコーデリア。
しかし、インデックスと名乗った少女は構わず続ける。
「見ての通り教会のものです。ここ重要。あ、バチカンの方じゃなくてイギリス清教の方だね」
「そ、そうなんだ……」
小林は少し困惑しながら答えた。
彼女は色々と話してくれているが、一番重要なことが解っていない。
その事について聞かなければならない。
8 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/18(金) 15:02:33.16 ID:GytVH4L2o
「どうして君はベランダにぶら下がっていたんだい?」
「落ちたんだよ。ホントは屋上から屋上へ飛び移るつもりだったんだけど」
確かにこのホームズ探偵学院は新校舎に旧校舎、学生への寮などいくつかの建物が立ち並んでいる。
屋上から屋上へ飛び移ることも不可能ではないかもしれない。しかし一歩間違えれば……。
「なぜ君はそんな危険なことをしたんだい?」
「追われていたからね」
「…………」
追われている、と聞いて小林の表情が変わる。
ここは偵都ヨコハマ。トイズを悪用する『怪盗』という存在も少なからずいる。
そういった輩に追われているのではないかと考えた。
「追われているって誰にですか?」
そうシャロは聞く。
そして、次に彼女から紡がれた言葉は予想をはるかに超えたものだった。
「魔術結社だよ」
9 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/18(金) 15:03:17.35 ID:GytVH4L2o
「え、ま、魔術って……?」
「何言ってんのさー」
「そんなの……存在するんですか……?」
彼女らはとても信じていないようだった。無理もない。
この近未来的な偵都ヨコハマで、魔術など言われても信じれるはずがない。
しかし、小林だけは違った。
「教官……? まさか彼女の話を信じているんですか?」
「まあ……そういった話を聞いたことが無いわけじゃないからね……」
「へぇ、あなたは知っているんだね」
「昔、イギリスにいた時にちょっとね。探偵をしてると、意外と世界の裏のことまで知れたりするんだよ」
「ふーん、あなたってすごいんだね」
「それに、トイズだって魔法みたいなものだからね」
「といず?」
10 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/18(金) 15:03:44.76 ID:GytVH4L2o
「そう、その人だけが起こせる奇跡みたいなものさ」
「あなたは、そのといずっていうのが使えるの?」
そう聞かれて小林の表情は少し曇る。しかし、努めて明るくこう言った。
「あはは、僕は使えなくなったけど、彼女たちは使えるよ」
「ホント? 見せて見せて!」
「うーん、そうだね。じゃあ、シャーロック見せてあげて」
「は、はい!」
そう言うと、シャロは髪を結んでいたリボンを外す。そして――
シュン――
見開かれたシャロの目が、これまでと変わる。
熱意、真剣さ……そういった情緒的なものを超えた何かが瞳に宿る。
「これがあたしのトイズだよ」
見れば、先程手のひらに置かれていたリボンは、ふわふわと宙に浮いている。
物に触れずに動かすことが出来る能力、念動力(サイコキネシス)。
11 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/18(金) 15:04:20.61 ID:GytVH4L2o
「すごいんだよ!」
「そんなこと全然ないんだけどね」
「そうなの?」
「うん。軽いものじゃないと駄目だし、動かす物も見えてないと駄目なの」
「色々制限があるんだね」
「でも、あたしだけが起こせる奇跡だから……それにこんなのでも、使い方次第で役に立つんです」
「ところで君はこれからどうするんだい?」
小林はそう尋ねた。
彼女の話がどこまで本当かは解らないが、どちらにしろこのまま放っておくわけにもいくまい。
「出て行くね。ここにいるといつ敵が来るか解らないし」
「しかし、追われているんだよね? それに行くあてはあるのかい?」
「大丈夫だよ。とりあえず教会まで逃げ切れば匿ってもらえるから」
「その教会の場所は解っているのかい? それに教会ならどこでもいいってわけじゃないだろう?」
「……詳しいんだね」
「伊達に世界を巡ってないからね。知識だけはあるんだよ」
12 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/18(金) 15:04:53.95 ID:GytVH4L2o
「はっきり言わせてもらう。このまま外に逃げても捕まるのなんて時間の問題だ」
「でも、ここにいても敵は来るから」
「なんでそう言い切れるんだい?」
「この服『歩く教会』は魔力で動いているからね。敵はこれの魔力を元に探知していると思う」
「なぜそんな服着ているんだ?」
「これの防御力は法王級だからだよ」
「つまり、どこにいても君の場所は解っているということだね?」
「そうなるかな」
「なら、少しでも敵を追い払えるように多人数で望むべきだ。彼女たちは無力じゃない、トイズを持っている」
「君がどんな理由で追われているかは解らないが、放っておくわけにはいかない」
そう小林が言うと、彼女は笑顔でこう言った。
「……じゃあ、私と一緒に地獄の底までついてきてくれる?」
13 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/18(金) 15:05:22.86 ID:GytVH4L2o
おそらくこれは、小林の手助けを遠回しに否定した言葉だったのだろう。
そう、こんなこと言われたら普通は躊躇する。
しかし、ミルキィホームズ達は迷わずこう言った。
「話はよく解りませんが、インデックスちゃんを放っておけません! どこまでもついていきます!」
「えっ……!?」
呆気にとられたような顔になるインデックス。そんな彼女を無視して彼女たちは続けた。
「まあ、その魔術ってのに興味が無いわけじゃないしね〜」
「その……やっぱり放っておけません……何か手伝えることがあれば……」
「そうよ、遠慮無く私たちに頼っていいのよ!」
「えっと……その……」
インデックスは困惑していた。
なぜ初対面である自分に、こうまで関わろうとするのかが解らなかった。
「どうしてそこまでしてくれるの?」
「だって、あたしたち友達じゃないですか!」
満面の笑みでシャロは言った。まるで当たり前のことのように。
14 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/18(金) 15:05:50.81 ID:GytVH4L2o
「ともだち……?」
「一緒に御飯食べて一緒にお喋りしたんですから、あたしたちはもう仲良しじゃないですかー」
一緒に食事をしたのは成り行きだし、一緒に話したのは事情を聞かれたからだ。
しかし、シャロにはそんなことお構いなしらしい。
それが彼女らしいといえば、そうなのだが。
「まあ、シャロの言うことはともかくさ、やっぱり放っておけないんだよね」
「それにここって、部外者禁止だからこのまま帰るのなら、僕たちは部外者を見つけたってことになるから捕まえないとな〜」
ネロはそう言って、わざとらしくインデックスのほうを見る。
「えっと……捕まっちゃうと、どうなっちゃうのかな?」
「そりゃあ犯罪だから、牢屋にさようなら〜だね」
「あう……」
15 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/18(金) 15:06:49.39 ID:GytVH4L2o
「みんな……あなたのことが心配なんです……」
エリーも続けて言う。
その顔はとても真剣で、とても嘘をついているようには見えない。
「でも……」
さらにコーデリアが続ける。
「それにね、あなたが追われているのが本当なら、それは事件ということになるわ」
「私たちは探偵、事件を放っておけない。あなたが出て行っても、勝手に着いて回っちゃうかもね」
そう言われてしばらく考えこむインデックス。
何を言ってもこの人たちは引き下がらないのだろうか?
「いいの本当に? どんな敵が来るかも解らないんだよ?」
「構わないさ」
「それじゃあ……しばらくよろしくね」
16 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/18(金) 15:07:15.86 ID:GytVH4L2o
「そういえば、あたしたちはまだ自己紹介してなかったですねー」
「そういえばそうなんだよ」
「えと、あたしはシャロ、シャーロック・シェリンフォードっていいます」
シャロは天真爛漫な笑顔で言った。
「僕はネロ、譲崎ネロ。よろしく」
ネロは少し冷めたように言った。
「あの……エルキュール・バートンです……。エリーでいいです……」
エリーは恥ずかしがりながら言った。
「私はコーデリア。コーデリア・グラウカよ」
コーデリアは落ち着いた様子で言った。
「僕は小林オペラ。彼女たちの先生みたいなものさ」
小林は穏やかな笑みを浮かべながら言った。
「あたしたちみんなで、ミルキィホームズです!」
「ミルキィホームズ?」
「そうです!ヨコハマで起こる事件を、何でも解決しちゃいますよー!」
「インデックスちゃんのことも、どーんと任せてください!」
「あはは、じゃあ頼りにしてるんだよ」
17 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/18(金) 15:08:13.70 ID:GytVH4L2o
今回はここまで。ネタが思い浮かんだら書きたくなって仕方なくなりました
勝手ですいませんが、もうひとつのミルキィSSの方は置いといてこちらに集中します
そっちのネタ考えててもこちらの方に意識がいっちゃったりするので……
場合によってはHTML依頼だします
18 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/03/18(金) 15:09:22.14 ID:ZzZuldL60
乙!
禁書+ゲーム版か、コレは期待
19 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長野県)
:2011/03/18(金) 19:23:46.06 ID:CndGN/Gc0
ゲーム版ということは…
暴露タイムで小林先生による「インデックスゥ!」が聞けるんですね
20 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/19(土) 19:31:27.92 ID:x5ZyrMCzo
短いですが投下します
今日の投下分から先が、かなり時間がかかりそうな感じなので
21 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/19(土) 19:31:54.30 ID:x5ZyrMCzo
「……というわけです」
「なるほど……大体の事情は解りました」
今小林が居る場所は、ホームズ探偵学院生徒会長室。
そして今話している女性は生徒会長である、アンリエット・ミステールである。
彼女は生徒会長でありながら、学院でのあらゆる権限を持っており、学院長ですら彼女には逆らえない。
実質このホームズ探偵学院のトップだ。
インデックスを匿うことにしたのはいいが、彼女の許可を貰わなくてはならない。
その為に、小林は大まかな事情を彼女に説明したという訳だ。
さすがに魔術結社のことは、適当に誤魔化しているが……。
「部外者をこの学院に置くことは禁止されていますが……事件に巻き込まれているというなら、放っておくわけにはまいりません」
「事件の解決も含め、この件はミルキィホームズに一任します」
「解りました」
「住む場所などは、申し訳ありませんがそちらで準備してもらえないでしょうか」
「はい。どうもありがとうございました」
22 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/19(土) 19:32:24.69 ID:x5ZyrMCzo
小林が事務所に戻ってくる。すると――
「教官、どうでしたか!?」
「許可は貰えたの?」
話し合いの結果が気になる、ミルキィホームズたちが一斉に声をかける。
「ああ、大丈夫だったよ。事件解決も含め、僕たちに任せるそうだ」
「じゃあ、事件解決のためにも頑張らないといけませんね!」
「それもあるけど、まずは生活のための準備を色々しないとかな」
「あ……そうですね……」
「えっと、とりあえず寝る場所は、この事務所の僕が使ってたベッドでいいかい?」
「別に構わないけど、おぺらはどうするの?」
「まあソファーとか、適当な場所で寝るよ」
23 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/19(土) 19:32:51.40 ID:x5ZyrMCzo
ちなみにこの事務所で寝泊りしているのは、小林のみだ。
他のミルキィホームズたちは、学院の生徒でもあるので、寮で寝泊まりしている。
「おぺらがそれでいいんだったら、構わないんだよ」
「あと、色々と必要なものがあるだろうから、買い揃えないとね」
「じゃあ、みんなでお買い物ですね」
「僕、何を買ってもらおうかなー」
「おいおい、インデックスのための買い物だから今回は自粛してくれよ」
「えーいいじゃん、けちー」
「それじゃあみんな、行こうか」
「はーい!」
24 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/19(土) 19:33:23.57 ID:x5ZyrMCzo
時刻は夕刻。
小林たちは必要な物を買い揃え、帰りの途に就いていた。
「結構な荷物になっちゃったんだよ」
「事件解決にいつまでかかるか解らないからね。余分に用意しておいたんだ」
「ごめんなさい、私のために」
そう言いながら、俯いてしまうインデックス。
やはりここまでしてもらうのに、後ろめたさがあるようだ。
「何言ってるんですか。友達を助けるのなんて当たり前じゃないですかー」
そんなインデックスの気持ちを知ってか知らずか、シャロは言い放つ。
本当に当たり前のことのように。
「友達……そっか……」
「どうしたんですか?」
「そんなこと言われたの初めてだから……なんか嬉しい」
顔を上げ笑顔を向けるインデックス。
25 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/19(土) 19:34:05.54 ID:x5ZyrMCzo
「初めて?」
「何か事情があったの?」
優しく語りかけるコーデリアにインデックスは答える。
「私、日本に来たの1年くらい前だから。それ以前の記憶は無くしちゃってるからね」
それを聞いて呆然とするミルキィホームズたち。
「あの……どうして記憶を無くしたか……解らないの……?」
エリーが遠慮がちに尋ねる。
「うん、気付いたら一人っきりで……」
「じゃあ、どうして君が敵に追われているか解らないのかい?」
「ううん、それは解る……けど」
言葉を続けるのを躊躇うインデックス。
「インデックス……出来れば知っていることを全て話して欲しい」
「……うん、解ったんだよ」
26 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/19(土) 19:34:33.29 ID:x5ZyrMCzo
インデックスが言った内容をまとめると次のようなものだった。
イギリス清教は、魔術師を討つために、魔術を調べ上げ、
対抗策を練る特殊機関『必要悪の教会(ネセサリウス)』というものがあった。
インデックスは、一度見たものを絶対に忘れることはない完全記憶を持っている。
彼等はその能力を使って、10万3000冊の魔導書を全て記憶させられた。
あらゆる魔術を識り、あらゆる魔術を中和出来るようにするために。
「……なるほど、つまり君が追われているのは、その魔道書を狙われているからなのかい」
「うん……私の頭の中を使えば、世界の全てをねじ曲げる力だって手に入れることが出来るからね」
「…………」
ミルキィホームズたちは言葉を無くしていた。
10万3000冊の魔道書や、世界をねじ曲げる力など、とても信じられなかった。
27 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/19(土) 19:35:05.19 ID:x5ZyrMCzo
「……ちょっといいかな」
「えっ?」
そう思っていたネロが、インデックスの胸に手をあて――
「どうしたの、ねろ?」
トイズを発動させた。
「……うん、確かに本当みたいだね。嘘は言ってない」
ネロのトイズは生体電流を読み取り、相手の気持ちを感じ取ることも出来る。
今言ったことが、本当か嘘かを読み取ることも可能というわけだ。
「ひどいんだよ。嘘ついてると思ったの?」
「そりゃあ、いきなりあんなこと言われて信じろって方が無茶だよ。魔術云々の話だってまだ信じがたいのに」
「むー」
「まあまあ、とりあえず学院に戻ろう。もう結構遅い時間だ」
28 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/19(土) 19:36:00.78 ID:x5ZyrMCzo
「ただいまー」
買い物を終え、学院にある事務所に戻ってきた小林たち。
部屋に入るとそこには――
「おかえり、というべきかな? 勝手ですまないけど待たせてもらっていたよ」
見知らぬ男がいた。
「君は……誰だ?」
その男は、2メートル近くあり、服装は漆黒の修道服だった。
ただしぱっと見ただけでも、ピアスをつけ、髪は赤く染めており、煙草を咥えて、とても神父とは思えない。
なにより、部外者が入れないこの学院に入り込んでいるのだ。不審者以外の何者でもない。
「うん? 僕は『魔術師』だけど?」
29 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/19(土) 19:36:38.17 ID:x5ZyrMCzo
短いですが、ここまで次回は
『対決!ミルキィホームズvs謎の魔術師』って感じでしょうか
余談ですが、地の文を書いたことがまるでないので、かなり不安です
下手かもしれませんが、ご容赦を。批判などは大いに構わないです。参考にします
30 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海・関東)
:2011/03/19(土) 20:25:39.83 ID:bbF7AWVAO
乙
31 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/03/19(土) 21:07:34.85 ID:/GoxkX5G0
乙
32 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(山陽)
:2011/03/19(土) 23:27:38.86 ID:ofMEjvEAO
乙!
だけどこれ、インデックス助けられなくないか?首輪を壊せる能力者いないし。
33 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/03/19(土) 23:36:51.79 ID:xUZ7I0tW0
小林せんせが何とかしてくれるさ
34 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(福岡県)
[sage]:2011/03/21(月) 09:55:02.98 ID:38i6RwNpo
わりと台詞だけ続くシーンが多いから「」の前に名前つけてくれると読みやすいなと思った
期待
35 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/21(月) 19:54:27.01 ID:8dipMsUIo
今日の投下を開始
>>34
の参考にしました。正直自分でも見辛いと思ってたけど
ラノベみたいな形式で書こうかなってああしてました
まあ特に拘ることじゃないので、見やすさ優先だねやっぱ
禁書のキャラは特徴ある口癖多いから解りやすいけどミルキィのほうはねぇ
36 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/21(月) 19:54:59.89 ID:8dipMsUIo
緊迫した空気が漂う。
魔術師を名乗り、インデックスの前に現れた以上、敵である可能性は高い。
小林「君の目的は、やはりインデックスかい?」
魔術師「そうだけど、勘違いしてほしくない点が1つあるね」
小林「なんだって?」
魔術師「僕の目的は、彼女の『保護』さ」
小林「『保護』……? どういうことだ?」
男はだるそうに説明を始める。
魔術師「多分もう聞いてると思うけど、ソレが持ってる10万3000冊の魔導書は、使える連中の手に渡ると厄介なんだよ」
小林「だから僕が『保護』するのさ。変な連中の手に渡って、情報を聞き出すためにどんなことをされるか、解ったものじゃないだろう?」¥
そう説明をし終えると、男は煙草に火をつけた。
あからさまに怪しい、と小林は感じていた。
この男の言ったことが真実だという確証はない。
だが、偽りであるという確証もないのも事実だ。
小林(しかし、例えあの男が言ったことが事実だとしても、疑問点がある)
37 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/21(月) 19:55:38.21 ID:8dipMsUIo
インデックス「ちょっと信用できないかも。だって私は1年間ずっと追われ続けたから」
男の話を聞いていたインデックスが答える。
小林(そう、保護が目的ならなぜ、彼女に敵と思われるようなことをしているんだ)
小林(……結論を出すには、まだファクターが足りないな)
そう判断した小林は、とにかく目の前の男をどうするかを考えていた。
魔術師と名乗った以上、油断するわけにはいかない。
魔術師「そうか、やはり信用してもらえないか。まあ、もう慣れているけどね」
そう言って男は煙草を吹かし――
魔術師「ならば、無理矢理でも連れて行かせてもらうよ。君たちを殺してでもね」
小林(何か来る!)
そう感じ取った小林はとっさに指示を出す。
小林「みんな横に飛ぶんだ! 早く!」
魔術師「僕はステイル=マグヌス。魔法名はFortis931(我が名が最強である理由をここに証明する)」
38 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/21(月) 19:56:29.06 ID:8dipMsUIo
そうステイルが宣言した瞬間、ゴォッ! という凄まじい音と共に、赤く燃え盛る炎が走る。
その炎は、ステイルから真っ直ぐと進み、あらゆる物を燃やし尽くす。
小林「くっ……」
シャロ「あ、あぶなかったですー……」
ネロ「あんなの反則だよー!」
エリー「あ……熱いです……」
コーデリア「教官、大丈夫ですか!?」
ステイル「ふうん、僕の炎剣をよく避けたね。君、中々勘がいいんじゃないか?」
ステイルは笑みを浮かべながら、小林に向かって言う。
それは、余裕の表れだった。
小林(とてもじゃないが、まともに戦って勝てる相手ではないな……)
ステイル「でも、それもいつまでもつかな?」
小林(こちらには、あの魔術に対抗しうる術がない。そのためのファクターが足りない)
そう考え小林の出した結論は――
小林「みんな走れ! 学院の外に向かうんだ!」
「は、はいっ!」
39 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/21(月) 19:57:10.44 ID:8dipMsUIo
ステイル「逃がすか! 巨人に苦痛の――」
ステイルが追い打ちをかけるため、さらに炎剣を放とうとした瞬間。
小林「シャーロック! あいつの気をそらすんだ!」
シャロ「はい!」
シャロは集中し、トイズを発動させる。
そして、椅子、小物、クッション、ありとあらゆる物をあらゆる方向から、
ステイルに目がけて飛ばしていく。
ステイル「くっ!? なんだこれは……どうなっている!?」
小林「今のうちに!」
その指示で走りだすミルキィホームズとインデックス。
ステイルはというと、予想をはるかに超えた出来事に困惑していた。
何が起きているのか、といったことではない。
まるで魔術を使ったような出来事が、魔術師でもないはずのヤツの手によって起きているから。
ステイル「ちぃっ! 燃えつきろ!」
自分に向かって飛んでくる物を、炎剣で焼き払った。
焼けずに残った物も、トイズの使用者であるシャロが離れたせいで力なく床に落ちる。
40 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/21(月) 19:58:14.60 ID:8dipMsUIo
ステイル「ヤツらが何者かはこの際どうでもいい。とにかく追うとしよう」
まだ困惑を隠せないが、大したことをされたわけではない。ただ、物を動かしただけ。
突然のことで驚いたが、この摂氏3000度の炎剣の前には児戯に等しい。
そう結論付けステイルは、走りだした。
小林(とりあえず、逃げることには成功したが……)
小林は走りながら考えてた。
このままでは、もちろんあの魔術師は追ってくるだろう。
小林(ならば……)
小林「ネロ、今から、学院の適当な端末にアクセスしてきてくれ」
ネロ「ん、いいけどなんで?」
小林「理由は後で説明するよ。とりあえず端末まで着いたら連絡して」
ネロ「ほーい」
41 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/21(月) 19:59:00.54 ID:8dipMsUIo
そう言ってネロと小林たちは別れた。
あの男がネロのほうに向かう可能性も考えたが、狙いがインデックスであること、
『歩く教会』の魔力を元に追跡しているということを考えると、まず確率は低いだろう。
小林(さて……)
インデックス「おぺら! 追ってきたんだよ!」
小林(くっ、ネロが着くまでは逃げきらないとな……)
そう考え、状況を確認する。
今走っているのは、旧校舎の狭い廊下だ。あの炎剣を出されては避けようがないが……。
そう思ったところで、小林はあることを思い出す。
小林「インデックス! 君の『歩く教会』は防御に関しては高い能力を持っているんだよね」
インデックス「うん。あらゆる攻撃を受け流し吸収するんだよ」
小林「なら、君はしんがりを努めてくれ。あいつが放つ魔術を無効化すれば安全なはず!」
そう、狭いからこそ魔術を受けるのは1人のはず。
そしてその1人が、『歩く教会』を着ているインデックスなら、他の者に危険が及ぶ可能性は少ない。
インデックス「わかった!」
42 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/21(月) 19:59:34.74 ID:8dipMsUIo
ステイル「ちっ……予想はしていたが、やはりインデックスを利用してきたか」
インデックスが相手の手にある以上、こういったことを予測しなかったわけではなかった。
しかし、この狭い廊下は予想外だった。
『歩く教会』を無視して、相手を焼き払おうとすると、建物まで焼き払う可能性がある。
ステイル「面倒だね……」
その時――ピピピと電子音が鳴り響いた。
どうやら小林のPDA(携帯電話などの機能を備えた情報端末)からのようだ。
小林(っ! ネロからか?)
小林「もしもし!」
ネロ『あ、小林? ごめんごめん遅くなっちゃって。それで何すればいいの?』
小林「学院のセキュリティシステムをハックして、今から指定する場所のセキュリティゲートを作動してさせて」
ネロ『おっけー』
小林「それじゃあ場所は――」
43 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/21(月) 20:00:13.21 ID:8dipMsUIo
そんな小林とネロの会話から寸秒……。
ガコッ! と大きな音と共にゲートのようなものが、小林たちの前に降りてくる。
小林(よし、場所はぴったりだ)
小林「みんな、あのゲートが閉まりきる前にくぐり抜けるんだ!」
「はいっ!」
さらに続けて、同じような音と共に今度はステイルの後方でゲートが降りている。
ステイル(僕を閉じ込める気か!?)
ミルキィホームズたちは、既に前方のゲートをくぐり抜け、完全に閉まりつつあった。
ステイル「邪魔だよ!」
炎剣を放つステイル。爆発とともに黒煙が舞う。
しかし――
ゲートは大して傷ついていなかった。
トイズという、魔術にも似た力を使用した犯罪が蔓延るヨコハマでは、
それに対抗した強度をもった物が用意されるのだ。
ステイル(チッ……無駄に丈夫だな。多少は溶けているが、炎剣だと時間がかかる……)
44 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/21(月) 20:00:45.20 ID:8dipMsUIo
そう判断するや否や、ステイルはある詠唱を始める。
『世界を構築する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ』
『それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり』
『それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり』
『その名は炎、その役は剣』
『顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ』
ステイル「魔女狩りの王(イノケンティウス) !」
すると、まるで意思をもったかのような巨大な炎の塊が出現した。
そして、ゲートへと向かって突き進む。
摂氏3000度の炎が、何度も何度もゲートを飲み込み溶かしていく。そしてついに――
ステイル「ふん、鬱陶しい……」
ゲートは大穴を空けて、ステイルの進行を許してしまった。
45 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/21(月) 20:01:27.18 ID:8dipMsUIo
小林「よし、ひとまずは安心か」
廊下を走り終え、すこし広い場所に着き、走るのを一旦止める小林。
ミルキィホームズたちもそれに倣う。
シャロ「つ、疲れたですー」
エリー「はぁ……はぁ……小林さんはすごいですね……息も切れてない……」
小林「まあ、探偵もどちらかというと体力勝負だからね。ある程度は鍛えているさ」
コーデリア「ところで教官、これからどうしましょう?」
小林「そうだね……」
そう言われて小林は悩む。
今の状態なら、あの男から逃げるのは簡単だ。しかしそれでは何も意味が無い。
狙いがインデックスである以上、必ずまた追ってくる。このまま逃げたのではなにも変わらない。
せめて、あの魔術の対抗策でも見つけることはできないか、と考えていた。
小林(その為には、ファクターが足りない……)
46 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/21(月) 20:01:58.36 ID:8dipMsUIo
小林「インデックス、ヤツが使っている魔術について詳しく教えてくれないか?」
小林はその足りないファクターを得るために、インデックスに知識を求めた。
こういうことは、専門家に聞くべきだ。
インデックス「えっと、あれは多分ルーンっていう刻印を、力を源にしているんだと思う」
インデックス「多分、ここで私たちが帰ってくるのを待っていたのも、この建物に相当数のルーンを刻んだから」
小林「ルーンか……」
インデックス「ルーンは刻印を消せば、力を失うはず。だからそれを探せば……」
言うやいなや周りを見渡す。
すると――
シャロ「先生、これじゃないですか!?」
そう言ってシャロが指さした先にあるのは、
文字か模様かもよく解らない物が描かれていた、安っぽい紙だった。
47 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/21(月) 20:02:41.90 ID:8dipMsUIo
小林「これか……」
しかしこの場だけでも、ざっと見ただけで数十枚はあった。
この学院全体となると何千枚あるかも解らない。
小林「ん……?」
小林「これはコピー紙か? まあ、数千枚もあることを考えれば妥当か。あとは……」
そして小林は気づく、ある重要なファクターを。あの魔術に対する対抗策を。
と、その時――ピピピと、また聞き覚えのある電子音が鳴り響く。
すぐさま小林はPDAを取り出す。
ネロ『小林ー、僕はもうやることないの? 暇なんだけどさー』
小林「ネロか、丁度いいところに! 今すぐハッキングして学院の全てのスプリンクラーを作動させて!」
ネロ『へ、何で?』
小林「いいから早く!」
ネロ『はいはいー。全部ってなるとちょっと時間がかかるかも』
48 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/21(月) 20:03:13.24 ID:8dipMsUIo
ステイル「ようやく見つけたよ」
小林「……」
ステイル「ちまちまと、せこい小技で逃げ続けてたみたいだけど……もう逃げなくていいのかい?」
小林「ああ、勝利につながる重要なファクターが見つかったからね」
小林はそう言って笑みを浮かべる。
最初ステイルが浮かべていたような、余裕を感じさせる笑み。
ステイル「どうやら、ルーンのことを知ったみたいだけど……一体どうするのかな?」
小林「もうすぐ解るさ」
と、その瞬間――
ザァァァと、激しい雨のように水が天井から降ってくる。
瞬く間に床は水浸しとなった。
ステイル「くっ、はは、アーーハッハッハ! まさか、これがそうだというのかい!?」
ステイル「スプリンクラーごときで、摂氏3000度の炎が鎮められるとでも!?」
ステイル「水に濡れた程度で、コピー紙がどうにかなるとでも!?」
49 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/21(月) 20:04:12.27 ID:8dipMsUIo
小林「そのファクターは、重要じゃない……」
ステイルは気づかない、小林のその一言を。
ステイルはきづかない、自分が見落としてる重要なファクターを。
ステイル「死ね、イノケンティウス!」
ステイルが叫び魔女狩りの王を発動させる。
しかし――発動することはなかった。
ステイル「な……馬鹿な! 何故だ、僕のルーンが消えたとでも……!?」
ステイル「あの程度の水で、コピー紙が消えたとでも言うのか……?」
混乱するステイル。何が起こっているのか解らない。
あの程度で、ルーンが消えるはずないのに。
小林「重要なのは、コピー紙に書かれてたこと。そしてそのインクが水性だったこと」
小林「それならば、水に濡れることでインクは落ちる。それがこの仕掛けの真相さ」
50 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/21(月) 20:04:47.67 ID:8dipMsUIo
ステイル「イ、イノケンティウス……イノケンティウス!」
ステイルは叫ぶ。
しかし、何度叫ぼうとも何も起こらない。
小林「さて、君をここで見逃すのは簡単だが、ひとつお灸をすえておいたほうがいいね」
ステイル「あ……灰は灰に、塵は塵に。吸血殺しの――」
ステイルは足掻く、けれどやはり何も起こらない。
炎剣すら生まれることはない。
小林「エリー! コーデリア!」
エリー「はい……!」
コーデリア「はいっ!」
エリーとコーデリアが、ステイルの前に立つ。
エリーはトイズを発動させ、そして――
エリー「えーいっ……!」
コーデリア「はあっ!」
エリーとコーデリアの拳がステイルに突き刺さる。
左頬と右頬にそれぞれの拳が。
ステイルの身体は、木の葉のように宙を舞った。
エリー「一応……私は手加減しましたから……」
51 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/21(月) 20:05:26.50 ID:8dipMsUIo
それでは今日はここまで。いやぁ、全然進まない
戦闘描写は難しいね、下手でごめんなさい
52 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(福岡県)
[sage]:2011/03/21(月) 21:04:52.94 ID:38i6RwNpo
乙
53 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/03/24(木) 13:20:11.10 ID:yi4b4ddo0
乙
期待してる
54 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/03/26(土) 08:16:08.39 ID:V7zA+8GJ0
乙
55 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(中国地方)
:2011/03/26(土) 14:16:25.66 ID:3tKNsMUb0
乙
56 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(福岡県)
[sage]:2011/03/27(日) 19:13:34.61 ID:XM8K8iYyo
>>36
の
>魔術師「多分もう聞いてると思うけど、ソレが持ってる10万3000冊の魔導書は、使える連中の手に渡ると厄介なんだよ」
>
>小林「だから僕が『保護』するのさ。変な連中の手に渡って、情報を聞き出すためにどんなことをされるか、解ったものじゃないだろう?」¥
って二番目魔術師じゃね?
57 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/27(日) 19:51:19.90 ID:QX/cSZB2o
あんまり投下間隔が開くと書く気ねえのか!って言われそうなので投下
今回は会話文メイン、あと短い
決して、今更Gジェネワールドにハマっていたとかそういう事じゃないですごめんなさい
>>56
それは重要なファクターだ
そしてそれから導きだされる結論は……恥ずかしいからスルーして欲しいということだ!
58 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/27(日) 19:51:52.77 ID:QX/cSZB2o
魔術師の襲撃から一夜明けて、
ミルキィホームズ達は事務所の後始末に追われていた。
ネロ「も〜、なんで僕達がこんなことしなくちゃいけないのさ」
コーデリア「そうは言っても、あのままにしておけないでしょ」
部屋を見渡せば、魔術師の放った炎で扉はなどが壊され、
シャロのトイズで動かした様々な物が、辺りに散乱している。
ネロ「あいつのせいなんだし、あいつにさせれば良かったんだよ」
シャロ「そういえば、いつの間にかいなくなってましたね」
あの後、事態を大きくしないためにもアンリエットと共に、
事後処理に追われているうちに、魔術師は消えていたのだ。
59 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/27(日) 19:52:21.96 ID:QX/cSZB2o
ネロ「そういや、魔術だっけ。実際見ると凄かったねぇ」
エリー「そうですね……トイズとはまた違って……」
ネロは少し感心したように言う。
トイズにも炎を扱うものはあり、この学院にも使える生徒はいる。
しかし、そのどれと比べても、明らかに威力が桁違いだった。
ネロ「で、さ」
そこまで言って、ネロはインデックスの方に向き直す。
ネロ「ねぇインデックス、僕達が魔術を使うことって出来ないの?」
小林「僕達が魔術を?」
ネロ「そーそー。、もし出来るのならそーしたほうがいいでしょ」
インデックス「んー、それはちょっと無理かも」
ネロ「どうして?」
60 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/27(日) 19:52:56.96 ID:QX/cSZB2o
インデックス「魔術っていうのは、元々能力のない一般人が能力を得るために生み出されたもの」
インデックス「だから、能力のない人間のために組み上げられた術式と儀式になっているの」
インデックス「でも君たちには、トイズっていう能力があるよね」
小林「なるほど。僕達はトイズが使える、だから魔術が使えない、と?」
インデックス「うん。能力がある人とない人は、『回路』が違うから」
ネロ「小林はもうトイズが使えないけど、それでもダメなの?」
インデックス「うーん、トイズのことは解らないから何とも言えないけど……」
インデックス「多分使えなくなったっていっても『回路』が変わったわけじゃないだろうから」
小林(この話が事実なら、僕達の『回路』……恐らくは脳の構造が、普通の人とは違うということか)
小林(実際、トイズはいまだほとんど解明されていないからな……)
61 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/27(日) 19:53:38.44 ID:QX/cSZB2o
シャロ「じゃあ、あたしたちには無理でもココロちゃんたちなら出来るんじゃないですか?」
インデックス「こころちゃん?」
シャロ「ココロちゃんはG4のメンバーなんですー」
G4とは、警察により組織された対怪盗事件捜査チーム『Genius4』の通称である。
トイズを持たないが、メンバーがそれぞれ得意分野を持っている。
探偵と警察はライバル関係にあり、それぞれが独自に活動している。
小林「そうかもしれないけど、ちょっと無理だよシャーロック」
シャロ「なんでですか?」
小林「警察に話して、事態を大きくするのはあまり得策じゃない。魔術なんてものが絡んでるしね」
小林「それに、正直に話したところで信じてもらえるかどうか」
ネロ「そーだねー。明智に話したところで馬鹿にされるだけだろーね」
インデックス「それに、使えるって言ってもすぐにあの魔術師が使ったような威力は出せないんだよ」
ネロ「あ、そうなんだ」
62 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/27(日) 19:54:21.25 ID:QX/cSZB2o
インデックス「今度は私が聞いてもいいかな?」
ネロ「ん、なに?」
インデックス「あの魔術師を倒したときの、えりーとこーでりあってすごく強かったけどあれもトイズなの?」
ネロ「エリーはそうだけど、コーデリアは違うかな」
コーデリア「そうね。私は道場で鍛えてたから、これでも接近戦は得意なのよ」
インデックス「じゃあ、えりーのはトイズの力なんだよね。なんてトイズなの?」
小林「トライアセンドって言って、怪力・重量増加・硬化の3つの効果があるのさ」
ネロ「今、硬化と効果でかけた?」
小林「いや、そんなつもりは」
エリー「あう……あの、あまりその、私のトイズの話は……恥ずかしいので……」
インデックス「えりーってすごい恥ずかしがり屋なんだね」
63 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/27(日) 19:55:34.04 ID:QX/cSZB2o
それから数日が過ぎた。
例の魔術師に特に動きはなく、ミルキィホームズ達は普段と変わらない生活を送っていた。
そんなある日……。
小林「参ったなぁ……」
小林は途方に暮れていた。
というのも、ミルキィホームズのみんなと出かけてたはずなのにいつの間にかはぐれていたからだ。
小林「いつの間にはぐれたんだろう……。というかなんで今まで気付かなかったんだ?」
小林「あれ……?」
みんなを探そうと、辺りを見回して気づく。
今この場所の異質さを。
小林(何故だ……? 何故周りに誰一人としていないんだ?)
ここは普段全く人通りのない場所というわけでも、
人の居なくなるような時間帯というわけでもない。
それなのに、小林以外は誰もいなかった。
小林(これは……もしかして!)
そう小林が思った瞬間、後ろから声が聞こえた。
「ステイルが人払いのルーンを刻んでいるだけですよ」
64 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/03/27(日) 19:57:06.48 ID:QX/cSZB2o
短くてすいませんが、これで今回は終わりです
ところで余談なんですが、みなさんはミルキィホームズの4コマは買いましたか?
25日に発売したんですけどね。もちろん俺は買いましたよ
あ、でも内容言っちゃだめですよ
何故かっていうとですね、Amazonでですね、それを買ったんですよ
発売日は25日なのにさ、まだ届かないってなんなのよ全く
65 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/03/27(日) 21:17:31.49 ID:/Lhi8eFDO
今日見かけて発売されてたのを知ったけど競馬で負けた俺に予想外の出費を出す余力はなかったぜ…
66 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/03/29(火) 05:07:58.09 ID:r18qmbDd0
>>65
ドンマイ
67 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/04/01(金) 01:29:47.36 ID:pOXhdyyCo
今回分の投下開始
68 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/04/01(金) 01:30:13.14 ID:pOXhdyyCo
その声に反応して後ろを振り向くと、そこには女性が立っていた。
そして女性は言葉を続ける。
???「この一帯にいる人に『何故かここには近づこうとは思わない』ように集中力を逸らしているだけです」
???「多くの人は建物の中でしょう。ご心配なさらずに」
小林(やはり彼女も魔術師なのか)
そう思い、女性の姿を改めて確認する。
なんてことはない、至って普通の格好をしている。一つの点を除いて。
女性の腰には、長さが二メートル以上はある大きな日本刀が携えられていた。
小林「君は……?」
神裂「神裂火織と申します。できれば、もう一つの名は語りたくないですが」
小林「もう一つの名?」
神裂「魔法名ですよ。ステイルも名乗っていませんでしたか?」
69 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/04/01(金) 01:30:41.99 ID:pOXhdyyCo
小林は冷静に状況を分析する。
小林(彼女とやり合うのははっきり言って無謀だろう)
以前に魔術師を撃退したとはいえ、それはミルキィホームズ達の力を合わせてこそだった。
しかし、今はトイズを使うことも出来ない自分一人だけ。
自分も多少鍛えているとはいえ、敵の力が未知数な以上戦うのは得策ではない、と。
小林(せめて、彼女達がここに気付いて、駆けつけるまで時間を稼げるか)
小林(何より、今足りないファクターを聞き出すチャンスかも知れない)
神裂「出来れば魔法名を名乗る前に、禁書目録を保護したいのですが」
小林「……正直、僕は君たちが彼女を保護するというのなら、それでもいいと思っている」
その言語を聞いた神裂は意外そうな顔をする。
神裂「ならば――」
しかし、小林は言葉を続けた。
小林「僕が思う疑問点を、君が解き明かしてくれるならね」
神裂「えっ……?」
70 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/04/01(金) 01:31:09.40 ID:pOXhdyyCo
小林「一つ、どう見ても普通の女の子にしか見えないインデックスが、君のような敵から今まで逃げ切れていたこと」
小林「一つ、インデックスは記憶喪失になったそうだが、10万3000冊の魔導書のことや、自分が敵に追われているなど、特定のことだけ覚えていた」
小林「一つ、君達は保護と言いながら、なぜインデックスを攻撃しているのか?」
小林「この三つの疑問点に関して、納得の行く答えを聞かせてくれないか?」
そして訪れる沈黙。
はっきり言って小林にとってはこれは賭けだった。
こんな話に耳を傾けず、問答無用で来られたらそれでお終いだ。
また、ミルキィホームズ達がここに来てくれるという保証もない。
そして長い沈黙の後、神裂が言った言葉は――
神裂「解りました。全てをお話ししましょう」
神裂「そして、理解するはずです。彼女を助けられるのは私達だけだと」
小林には、悲しみと覚悟を秘めていたように感じた。
71 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/04/01(金) 01:31:50.70 ID:pOXhdyyCo
神裂「一つ目の答えですが、貴方はこう言いましたね。『普通の女の子にしか見えない』と」
神裂「しかし……ただの女の子が、一年間も私達のような魔術師達を相手に逃げ続けることが出来ると思いますか?」
そこまで聞いて、小林は反論する。
小林「しかし、彼女の頭の中には10万3000冊の魔道書があるのだろう? ならそれを使って――」
しかし、神裂はそれを遮る。
そんなことは解っている、と言わんばかりに。
神裂「彼女から聞いていないのですか? 彼女は魔力がない、魔術を使うことは不可能です」
神裂「そんな彼女が逃げ続けることが出来た。そう『アレ』は紛れもなく天才です、扱い方を間違えれば天災となるレベルの」
小林「それでも彼女は人間だろう? 僕達と何も変わらないじゃないか」
神裂は頷き、そして続ける。
神裂「そうですね。彼女は私達と性能(スペック)は何も変わらない」
神裂「彼女の脳の85%以上は、10万3000冊の魔導書に埋め尽くされている」
神裂「残りの15%をかろうじて動かしている状態でさえ、私達とほぼ変わらないんですよ」
72 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/04/01(金) 01:32:19.98 ID:pOXhdyyCo
小林「それが、僕の疑問点にどう繋がるんだ?」
急かすかのように、答えを促す小林。
神裂は少し悲しそうに顔を伏せ、答えた。
神裂「貴方は彼女が、特定のことだけを覚えていた、と言いましたね」
神裂「それは違います。実際は逆なんですよ」
小林「逆……、それはつまり」
神裂「ええ、彼女は忘れたんですよ。私が……この手で消しましたから」
小林「……なぜそんなことを。いや、それ以前に敵である君がそんなことをして何になるんだ?」
小林は違和感を覚える。
何かがおかしい、何かがかみ合ってない、と。
神裂「私は彼女の敵ではありません。私の所属する組織名は『必要悪の教会』」
小林「っ! それは……」
小林は理解する。なぜ違和感があったのかを。
神裂「彼女は……インデックスは私の同僚にして大切な親友なのですよ」
73 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/04/01(金) 01:32:46.62 ID:pOXhdyyCo
小林は耳を疑った。
同僚だの、親友だの言われてもとても納得のいくものではない。
小林「すまないけど、いきなりは信じられないな」
小林「仮に本当だとしても、だったらなおさら、インデックスを攻撃してくる意味が解らない」
インデックスに事実を伝えれば済むこと、そう小林は考えていた。
しかし、神裂は自嘲気味に笑ってこう言った。
神裂「その理由は、今貴方が自分で言ったではないですか」
小林「何だって?」
神裂「『信じられない』と……。そう、記憶を失い10万3000冊の魔導書を持つ彼女には、全てが敵に映るんですよ」
神裂「そんな目で見られるくらいなら、いっそ……」
小林「そもそもなぜ記憶を消したんだ?」
それが不思議でならなかった。
記憶さえ消さなければ、何も問題がないはずだ。
そこまでして、インデックスの記憶を消す理由とは……。
神裂「そうしなければ、インデックスが死んでしまうからですよ」
74 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/04/01(金) 01:33:43.05 ID:pOXhdyyCo
その答えはあまりにも、小林の予想を超えていた。
記憶を消さなければ死ぬ、なんて意味が解らない。
神裂「先程言ったでしょう、彼女は常人の15%しか脳が使えない。それでも私達凡人と同じなら何も問題なかったかもしれません」
神裂「しかし、彼女には完全記憶能力がある。その能力のせいで、彼女の脳はあっという間に許容量を超えてしまう」
小林「だから彼女の記憶を消していると? つまり君達が言う保護とは、彼女の命を救うために記憶を消すためだと?」
神裂「そういうことです。普通なら忘れてしまうようなことすら、彼女は忘れることが出来ませんから」
小林は状況を整理し、推考する。
何か自分でもインデックスを救う手立ては無いかを考えて。
小林「その、記憶を消さなければならない時期は?」
神裂「丁度一年周期、あと三日が限度です。早すぎても遅すぎてもいけない」
ファクターを集め、ピースを組み合わせ答えを推理する。
記憶を消す、なんてことをしなくてすむ答えを。
神裂「解っていただけましたか? 彼女を救えるのは私達だけだということが」
だからこそ追求する。
今の話から感じた、不明確な点を明確にするため。
小林「ああ、解ったよ。君達の話に大きな疑問点があることがね」
神裂「えっ……?」
75 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/04/01(金) 01:34:30.63 ID:pOXhdyyCo
小林「まず第一に、インデックスには10万3000冊の魔導書があるのに、彼女の記憶をどうにかする術がないということ」
神裂「……魔術といえど、完璧ではありません。さらに言うなら、彼女が記憶している魔導書には偏りがあるでしょう」
小林「偏り?」
神裂「教会は彼女の反乱を恐れています。だからこそ『首輪』をつけた、記憶を消さなければ死ぬという『首輪』を」
神裂「その首輪を外す可能性があるものを、わざわざ残すはずがないでしょう」
小林「なるほど……ね」
なにか、納得したように小林は頷きながら答える。
神裂「正直に言わせてもらいますが、貴方が考えるような疑問など、とうに私達も気づいてると思いますよ」
少し刺があるような言い方で神裂は言う。苛立ちを隠せない。
自分がどれほどの間、悩み続けたのか知りもしないで。
小林「それならそれで構わないさ。君が答えてくれればそれでいい」
平然としながら、小林は話を続ける。
76 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/04/01(金) 01:35:02.01 ID:pOXhdyyCo
小林「ではもう一つ、君は記憶の限界が一年周期と言ったが、なぜそれが解る?」
神裂「なぜって……それは教会がそう言って……」
小林「人間が一年で得る知識の量が決まっているなんてことが、あるわけがない」
小林「君の言う脳の15%が、ある時は二年で使い切るかも知れないし、ある時は半年で使い切るかも知れない」
小林「そうだな……君は普段生活していて、ごみ箱が決まった日数で一杯になるというのかい?」
神裂「そ……それは……」
神裂が狼狽え始める。
考えたことも無かった、当たり前だと思っていたことに目の前の男は疑問を持っているから。
小林「まあ、生活全てが管理されているならそれもあるかもしれないが、そういう訳でもなかった」
小林「限界が一年だというのに、その一年で得る知識の量が不明確。あまりにも矛盾している」
神裂「し、しかし……! 彼女は現に一年経てば苦しむのです!」
神裂「それこそが証拠ではありませんか!? 彼女の脳が一年で限界だということの!」
声を荒らげて叫び、反論する神裂。
しかし、小林はあくまで冷静に言い放つ。
77 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/04/01(金) 01:40:15.55 ID:pOXhdyyCo
小林「そして最後に、そもそも本当に限界なんてあるのか?」
それを聞いて神裂は嘲笑う。
こいつは今まで何を聞いていたんだ、と。
神裂「は、はは……何を言ってるんです。さっきも言ったでしょう。彼女は――」
小林「脳の15%が一年で限界になる……だったら、完全記憶能力者は6年ほどしか生きられないことになる」
小林「だがね、この世で完全記憶能力の持つのは、インデックスだけじゃない。もちろんその人達が、そんなに若くして死ぬといったこともない」
神裂「し、しかし彼女は10万3000冊という、常人とは計り知れないほどの記憶を有しています。それだったら――」
神裂に先程までの余裕など微塵も無かった。
只々、必死に反論するしか無かった。
小林「君は一つ勘違いをしてる。『忘れる』ことと『思い出せない』ことは全く違うということを」
神裂「どういう意味……です」
小林「確かに、彼女は覚えた記憶を忘れることが出来ない。でも、僕らのような普通の人間だって意外と忘れることはないさ」
神裂「し、しかし、貴方はくだらない事まで覚えていますか!? それこそ、一週間前に何を食べたかなんてことを」
小林「それは忘れたんじゃない。言うならば、引き出しの奥の奥にしまっているだけさ」
小林「例えば、命の危険に晒されたとき、今までのことが走馬灯のように見えることがあるというのを聞いたことがないかい?」
神裂「……?」
それが何の関係があるのだろう、と神裂は不思議に思う。
78 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/04/01(金) 01:40:57.91 ID:pOXhdyyCo
小林「これは、脳のストッパーが外れ、生存に必要な情報を検索しているという説がある」
小林「つまりね、忘れていたと思っていても記憶の奥底では覚えているものさ。完全記憶能力者のように全てとは言わないけどね」
小林「そんな普通の人間でも80年以上生きることが出来る」
神裂「でも……でも……」
神裂は震えていた。
何か否定しなければならないのに。
そうしなければ自分のしたことすら否定されるのに。
小林「なぜ人間がそれほど記憶できるか。それは知識や思い出はそれぞれ独立したものであり、それに合わせて容れ物が違うのさ」
小林「普通、記憶喪失になってもいきなり歩き方や喋り方まで忘れることはないだろう?」
なのに小林は言う、神裂に向けて。
たった一つの真実を。
小林「これらのファクターから導きだされる結論は……」
小林「インデックスの記憶を一年で消さなければならないという事実は……無い!」
79 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/04/01(金) 01:42:02.12 ID:pOXhdyyCo
今回の投下はここまでです。相変わらず進まねぇ
余談、4コマ無事に届いて俺ハッピー
それじゃおやすミルキィ
80 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)
[sage]:2011/04/01(金) 02:18:36.13 ID:FO1Dgqslo
小林先生かっけえ
81 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東)
[sage]:2011/04/01(金) 23:05:40.65 ID:43xzsA3AO
禁書に関してもミルキィに関しても
主要キャラの顔と名前が辛うじて一致する、かなぁ、程度しか知らないけど興味深く読めた。
ただ、禁書における設定(事実)をも知らない身から言わせてもらえば、
今回の小林教官の「そんな事実は無い」という結論は早計に過ぎるとも見えた。
「魔道書の負荷のせいで一年に一度記憶操作しないとならない」を論理的に否定しきるだけのファクターは不十分、
おそらく深謀明晰なキャラなんだろうという印象は成り立たなくなったかな
82 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/04/02(土) 01:21:26.51 ID:X1rgfnsVo
おはこんミルキィ、ちょっとだけ投下します
今回、試験的に少し書き方を変えてます
>>81
なるほど、どうやら自分の文章力のなさのせいで、説得力が不足してたみたいですね
禁書は特にSSが多いから、あまり禁書について補完が必要ないと、勝手に思ってしまったかもしれません
あと、ミルキィをあまり知らないでも、興味深く呼んでもらえたのはありがたいです
ミルキィの広めるためにSS書いてるようなものなので、興味をもってもらえるかが一番気になっていたので
83 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/04/02(土) 01:21:56.77 ID:X1rgfnsVo
場所は変わって、街の大通り。
ミルキィホームズとインデックスはホームズ探偵学院への帰路についていた。
そこで彼女らは気づく。
ネロ「あれぇ、小林がいないじゃん」
コーデリア「本当だわ。はぐれたのかしら」
辺りをキョロキョロと見渡してみても、それらしい人影はいない。
シャロ「帰る方向は同じなのに、はぐれるって変ですねー」
エリー「何か……あったのでしょうか……?」
それを聞いて一同が真剣な表情になる。
つい数日前に、魔術師に襲われたばかりなのだ。
何か事件に巻き込まれていても、不思議ではない。
ネロ「また魔術師ってやつが来たのかな。インデックスは何か解る?」
インデックス「うーん……よく解らないんだよ」
84 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/04/02(土) 01:22:25.36 ID:X1rgfnsVo
コーデリア「……私が捜してみるわ」
インデックス「どうするの?」
コーデリア「私のトイズは、五感を研ぎ澄ますことが出来るの。
もし教官がまだあまり離れていないなら、声が聞こえるかも知れないわ」
そう考えた、コーデリアは目を閉じる。そして――
シュン――
トイズを発動させ、聴力を強化する。
僅かな音も逃さないように、集中し始める。
コーデリア「…………」
一同が緊張しながら、コーデリアを見守る。
何事もないことを願って。
コーデリア「……聞こえた。教官の声が」
シャロ「本当ですか!?」
85 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/04/02(土) 01:22:52.73 ID:X1rgfnsVo
コーデリア「でも、それだけじゃない。教官と話している人がいる」
エリー「それって……」
シャロ「あの魔術師ですか?」
以前襲撃してきた魔術師を思い出し、焦る。
全員で力を合わせれば退けることが出来た。
しかし、今は小林一人しかいないではないか。
コーデリア「待って……、どうやらあの魔術師とは違うみたい……女の人の声だもの」
ネロ「話している内容って解るの?」
コーデリア「……、よく解らないけど、インデックスに関することみたいね」
シャロ「どっちの方向か解りますか?」
コーデリア「……あっちね」
コーデリアはある方向を指差す。
86 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/04/02(土) 01:23:22.92 ID:X1rgfnsVo
シャロ「それじゃあ早く――」
と、駆け出そうとしたシャロを、ネロは引き止めた。
ネロ「待った。あいつらの狙いはインデックスなんだからさ、何も全員で行かなくていいんじゃない?
ここは二手に別れようよ。小林の方に行くのと、インデックスを護るのと」
コーデリア「それはいいけど……どうやって分かれるの?」
ネロ「う〜ん、ジャンケンとかでよくない?」
コーデリア「ジャンケンって……貴方ねぇ」
ネロのいつものようなあっけらかんとした調子に、呆れるコーデリア。
それにシャロとエリーも続く。
シャロ「いいんじゃないですかー」
エリー「私は……その、何でも……」
コーデリア「はぁ……それじゃあジャンケンで決めましょ」
「じゃーんけーん…………」
87 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/04/02(土) 01:23:50.97 ID:X1rgfnsVo
ジャンケンの結果、次のようになった。
小林の助けに向かうのは、エリーとコーデリア。
インデックスを無事を護るのは、シャロとネロ。
コーデリア「貴方たちのほうが少し頼りないけど……」
コーデリアはかなりの不安を抱えていた。
というのも、シャロとネロどちらのトイズも、決して戦闘に向いているとは言い難い。
ネロ「だいじょーぶだって」
コーデリア「仕方ないわね……決まっちゃったし」
シャロ「それじゃあ!」
シャロ「ミルキィホームズ−エルキュール−コーデリア+インデックス」
コーデリア「ミルキィホームズ−シャーロック−ネロ」
「出動ーーっ!!」
88 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/04/02(土) 01:26:53.59 ID:X1rgfnsVo
今回はこれで投下終了です
さて今回
>>84
や
>>86
のように二行に渡る長いセリフを前回までのように分けて書かず
続けて書いてみましたが、どちらのほうがよかったですか?
あとコーデリアさんのトイズがちょ〜っと都合いいように、少し変えさせてもらいました
きっとトイズをより使いこなせるようになった、とかそんなんで
意見集まるほど人いるかな……それじゃおやすミルキィ
89 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)
[saga sage]:2011/04/02(土) 02:59:01.30 ID:V+joNH0Q0
正直どちらでもいい。
が、意見が欲しそうなので適当に後者で
90 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2011/04/02(土) 08:15:49.91 ID:9YXKbPWNo
どちらでも。
特に見辛いというほどのものではない
91 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/04/02(土) 11:52:44.60 ID:9YsTo8FOo
個人的には「」が変わるとしゃべってる奴変わったんじゃね?って錯覚するからつながってたほうがいいかな
まああくまで個人的に、だけど
92 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/04/08(金) 23:17:40.02 ID:WIQwr/ho0
こねーぞクラァ
93 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/04/30(土) 18:25:09.12 ID:usMai4lK0
正直一方通行も書いて欲しい
94 :
◆M.H./1MVWY
[saga]:2011/05/12(木) 17:26:52.50 ID:Pw1+TIsIo
生存報告です。1ヶ月以上書くことができなくてすいません
そして、この先も少し書き続けるのが難しいので一旦依頼を出そうかと思っています
もし、最後まで書き溜めることが出来たらまた立てたいと思っています
あと、もう一つのSSのほうも同様に依頼をすることにします
少なからず続きを楽しみにしていた方もいると思いますが、本当に申し訳ありませんでした
95 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/05/12(木) 18:51:02.32 ID:ob1dq0nwo
了解
私、待つわ
59.84 KB
[ Aramaki★
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