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固法「――……風紀委員です。先輩」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/03/29(火) 22:50:47.88 ID:/PiAdqIY0
 ―――とある日、PM10:40、学園都市第7学区、とある路地裏……





今にも降り出しそうな曇天の夜空、


その翳り空すら見えない深い深い路地裏……


そしてそこに、3つの影。




一人は何処にでも居そうな、男(心無い能力者)。

一人は怯える無力な、少女(無能力者)。


もう一人は・・・・・・正体不明の【何か】。








 『少しは加減して欲しいもんだな・・・・・・能力者』








正体不明の黒い【それ】は、男(狂人)に向い重々しくそう告げ……ゆらりぬらりと、立ち上がった―――
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713353246/

木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1713351945/

いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713279251/

【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713277692/

こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713091115/

アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
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エルヴィン「ボーナスを支給する!」 @ 2024/04/14(日) 11:41:07.59 ID:o/ZidldvO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713062467/

2 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/03/29(火) 22:52:01.48 ID:/PiAdqIY0
・『とある魔術の禁書目録』とアニメ版『とある科学の超電磁砲』の混合SSです
・時系列がオカシイ所もありますが、仕様で
・エロはたまに有るかも?
・アンケート有り



@『先輩、おかえりなさい』 ・・・・・  http://ex14.vip2ch.com/news4gep/kako/1274/12742/1274286109.html

A『先輩、いってらっしゃい』・・・・・  http://ex14.vip2ch.com/news4gep/kako/1276/12769/1276955816.html

B『先輩、おはようございます』・・・・・ http://ex14.vip2ch.com/news4gep/kako/1282/12825/1282560744.html

C『おやすみ、先輩』   ・・・・・   http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1288/12884/1288450572.html



※3/29現在、諸事情で新約を買えてません。暫くネタばれ禁止!
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/29(火) 22:55:18.53 ID:JxZeztxDO
まさかのW立てキター!
4 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/03/29(火) 22:59:05.02 ID:/PiAdqIY0
 ―――とある日、PM10:15、学園都市第7学区、とある路地裏……



一人の少女が走っていた。齢14、5程の女の子。
深夜のランニングや夜遊びの待ち合わせに遅れた故急いでいるわけではない。

追われている。

10時過ぎに近所のコンビニまで氷菓子を買いに行き、その帰りだ。
確かに最近通り魔事件が多発しているという情報は知っていたが、まさか自分がターゲットにされる事は無かろう。
そんな誰もが思ってしまう軽い気持ちで、数百メートル先のコンビニへ向かってしまった。


少女『ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・っ』タッタッタッ・・・


しかし、その『まさか』が起きる。


少女『な、何で・・・・・・』ハァハァ・・・


気付いたのはコンビニを出る瞬間。
会計を終え自動ドアを出る際に、擦れ違い様に入った男性とぶつかった。
何処にでも居そうな大学生くらいの男は律儀に『すいません』と謝ってきた。彼女も直ぐ『こちらこそ』と返す。

瞬間―――耳鳴りがした。

その時は『あれ?』と首を傾げる程度にしか思ってなかったのだが・・・・・・ふと、それが何時までも止まない事に気付く。
更に数十メートル先まで歩いた所で、環境音もしない事に気付く。

そして・・・・・・後ろから『どうしたの』という声だけが、合成音の様な聞こえた。

先程、ぶつかった男。
少女は急いで自分が何も聞こえなくなった事を伝えた。男は先程と同様、律儀親身に『うんうん』と聞いてくれる。
御蔭でいくらか落ち着き冷静を取り戻せた。しかし・・・・・・そこでまた、気付いた。

男の声は、聞こえる。

思わず『え』と声を上げてしまった。
その青褪めて表情が固まった少女の姿を見て、男は笑った。『やっと気付いた?』と言わんばかりに。

少女は走り出した。

家は近い。急げば直ぐに逃げ込める。大丈夫、そしたら警備員(アンチスキル)に連絡をして・・・・・・


??『急ぎ? どうして逃げるのかなぁ?』


息を呑む・・・・・・家まで、間に合いそうも無い。
それはそうだ。自分はただの女子中学生。相手は見目普通だが『能力者』らしき男性。
逃げ切れるわけがない。

少女は意を決して叫んだ。住宅街では無いとはいえ人は、居る筈。大声を聞きつけて助けに来てくれる人が、居る筈。


??『無駄ですよー』


男性がそう呟いた瞬間―――首根っこを掴まれた。そして、路地裏に投げ捨てるように転ばされる。


??『通りは人目に付くからさ、路地裏(コッチ)で・・・・・・ね!』


気味の悪い満面の笑み。不細工だとかイケ面だとか、そういう類じゃない。
本能が、コレは拙いと覚ってる。兎角、今は逃げねば何をされるか分からない。必死で走った。


……そして、今に至る。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(徳島県) :2011/03/29(火) 23:00:50.41 ID:NX0Vamy30
本編きたかッッ
6 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/03/29(火) 23:06:03.46 ID:/PiAdqIY0
少女『いや・・・・・・やめて・・・・・・』


まるで自分が世界から弾かれた様な感覚。自分以外、居ない・・・・・・違う。

自分と、アイツ以外、居ない。

只管(ひたすら)走る。死ぬ気で走る。
この路地裏が何処だか分からない。何処を逃げているのか分からない。
もしかしたら袋小路かもしれないし、逃げる先に奴の仲間が待機しているかもしれない。
そんなネガティブな発想しか出てこない。

だが今は逃げる他無い。


少女『だ、誰かあああぁっ!!』


もう一度、叫ぶ。しかし、虚空にさえ響かない。


??『無駄だって』

少女『っ! ひ、ゃ・・・・・・』


まるでいつでも捕まえられる得物を、態と逃がして追いかけっこを楽しんでいる狩人の様。
余裕の笑みで付かず離れずの位置をキープしている男は、少女にポツポツ告げてやった。


??『あー、僕の能力なんだよ。分かる? ちんけな能力だけどさぁ』

少女『こ、来ないでええぇっ!!』


コンビニで買った商品を袋毎投げつける。
男は『あ痛た』とおどける様な仕草を見せつけ、ジリジリ歩み寄った。


??『袋投げつけるかぁ野蛮だなぁ。君、無能力者? それとも攻撃に使えない能力持ち?』

少女『あ・・・・・・やだ・・・・・・こっち、来ないでよ・・・・・・』

??『無駄だって。僕以外の声聞こえないでしょ? 君の声も僕以外には聞こえてませーんから』


自分の声が、聞こえていない?


??『聞いてよ。僕の能力て「音源設定(ミキサーチェック)」っていうんだ。けどさぁ、周りの奴らったら――』

少女『や、だ・・・・・・っ!』

音源設定『――聞けよ』


声色が変わる。まるで仮面を外した有様。逃げようとした少女の腕を掴み、壁に叩き付け・・・・・・話を続けた。


音源設定『皆して「お前の能力は使い道が難しいんだ」って』

少女『し、知らないよ・・・・・・アタシに、関係無いよ・・・・・・』

音源設定『うん。関係無い。でも玩具(獲物)に決定権は無いでしょう?』


気が狂ってる。震える少女は身を縮めた。


音源設定『あ、もう僕の声は《オン》でいいか・・・・・・でね。それによって――」

少女(そうだ! 携帯で、メールを・・・・・・)

音源設定「――就職かしんg・・・・・・だから人の話最後まで聞けっつってんだろ! クソアマァアッ!!」

少女『い、ああああぁっ!!』


こっそりと弄っていた携帯を、右手ごと踏み付けられた―――絶叫。

しかし、男以外には(誰にも)……届かない。
7 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/03/29(火) 23:11:46.27 ID:/PiAdqIY0
音源設定「人が話してんのによぉ携帯なんか打ち込みやがってっ!! 親は何教育してんだっつのぉらっ!!」

少女『やめ、てっ。痛い・・・・・・もう、いやああぁっ!!』

音源設定「うっせぇボケカス!! 弱肉強食なんだよ此の街はっ!! いくら叫んでもテメェの声は《オフ》だァホウ!!」

少女『うぅ・・・・・・だからって、何で!』

音源設定「あー・・・・・・オマエ最っ低だ! 私以外の誰かが、とか考えてるわけ!? [ピーーー]し! 百辺[ピーーー]!!」


違う、そんなわけない。最低なのはアンタの方だ。
そう言ってやりたかったが・・・・・・怖くてこれ以上何も言えない。

男は地に這う少女を十数回踏み付けた後、息を整えながら我に返って、しかし狂人のまま、口を開いた。


音源設定「はぁはぁ・・・・・・ふぅ。取り乱したね、ごめんごめん」

少女『ぁ・・・・・・っ・・・・・・ぃや・・・・・・』

音源設定「とりあえず君は僕のストレス発散道具になってくれればいいだけ。簡単でしょ?」

少女『そんな・・・・・・警備員に・・・・・・』

音源設定「あのさぁ、君馬鹿? 最近の通り魔事件、普通なら解決してる筈でしょ? でもしてないじゃん」


コイツが・・・・・・件の通り魔。


音源設定「うーん・・・・・・そうであって、そうじゃない。通り魔(シリアルキラー)は一人じゃないからね」

少女『どっちにしろ・・・・・・殺人鬼・・・・・・』

音源設定「殺人鬼ねぇ・・・・・・まぁ兎も角、捕まらない理由は色々あるんだよ。WWV(戦争)ばっかに気が行って、自治が疎かだったりさぁ」

少女『で、でも』

音源設定「警備員や風紀委員(ジャッジメント)は優秀だから直ぐ捕まる? ははは! 甘い甘い!」


学園都市の操作レベルなら、直ぐにでも犯人を特定できる筈である。
しかし捕まらない……何故なのだ。


音源設定「簡単だよ。理由は2つ」


少女の身体を無理やり掴み、壁に押し付ける。そして優しく、気味悪く、少女の顔を撫で、語り出した。


音源設定「一つ、今まで襲った奴らには顔を見られてない。大抵は男の無能力者だったね。女も少しはいたかなぁ?」

少女『っ!!?』

音源設定「そいつらは糞生意気なDQN不良だったから、懲らしめてあげたんだ。風紀は大事だよね!」

少女『・・・・・・意味、分かんない』

音源設定「ま! どんな形であれ、一度声を聞けば僕の能力が『スタート』ね。さっきの君と同じ様に」


その声を『覚えれば』使用可能という事か。


音源設定「そんでもって二つ目、殆どの女の場合は・・・・・・痛めつけてから、売り飛ばしたよ!」


平気でそんな事を抜かす、狂人。


少女『売り飛ば・・・・・・っ!!』

音源設定「コネに『裏仕事』やってる奴がいてね。君くらいの女の子って凄く高く売れるんだ!」


満面の笑み。


音源設定「でもその娘らは行方不明届けも出されない・・・・・・なんでだと思う?」
8 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/03/29(火) 23:15:09.83 ID:/PiAdqIY0
少女は恐ろしくて……混乱して……何も答えられなかった。


音源設定「その『裏仕事』の会社名義が私立の女子校なんだよ。薬漬けにして、本人に書類書き換えさせるんだ」

少女『っ!!?』

音源設定「理事役員や官僚さんにも『お得意様』がいるから根回しは完璧。親にはキチンとそれらしい事メールしてあげる」

少女『や・・・・・・やだ、よぅ・・・・・・』

音源設定「大丈夫! 安心して!」


本気で良かれと思ってそうな男の返答に、少女は気がオカシクなりそうな程怯えた。
その姿を見て更に、男の嗜虐心は高まる。


音源設定「ふふっ・・・・・・じゃあ如何しよっかなぁ。やっぱレイプが王道なんだろうけど・・・・・・」

少女『ッ!!』

音源設定「・・・・・・趣味じゃないんだ。どう? 偉いでしょ!」

少女『っ・・・・・・意味が、分かんない・・・・・・お願い・・・・・・帰して・・・・・・』


少女は顔をくしゃくしゃにしながら泣き出した。
嗚咽も徐々に大きくなっていくが・・・・・・その声は男にのみ、聞こえる。


音源設定「くううぅっ!! やっぱ良い顔!! 女の子の泣き顔って萌えるよね!」

少女『や、だ・・・・・・誰か・・・・・・』

音源設定「ははは。だから聞こえないって」


少女はもはや動かない。ただ身を守ろうと膝をたたみ、顔を手で覆っている。

その行為に、男は少々不満を抱いた。理由は単に、つまらない。それだけ。
故に、一つ質問をする事にした。


音源設定「・・・・・・あのさ。この通り魔事件の特徴って知ってる?」

少女『・・・・・・』

音源設定「突然皮膚が切り裂かれ、音が聞こえなくなる。そうニュースで言ってたでしょ。あ、これ僕の事件限定ね。他の『同業』は知らない」


確かに。噂によると、大気操作の風力使いか真空使いだと聞いている。
だが、それがこの男の仕業だとしたら・・・・・・


少女(『皮膚が切り裂かれ・・・・・・』・・・・・・え)

音源設定「ふふっ。気付いた?」

少女『多重・・・・・・能力者(デュアルスキル)!?』

音源設定「君は馬鹿か? 理論上ありえないでしょ」


見下すような表情。ふと・・・・・・腰から何かを取り出した。
形は折りたたみ式の警棒に似ている。


音源設定「能力開発で生み出された能力(チカラ)って、大人が利用するの知ってるでしょ」


発現された能力は何らかの形で、研究者達が役立たせる。
それが如何、役に立っているのかは殆どの学生が知らない。


音源設定「これ、その一つの試作品。真空操作能力を詰め込んだ道具なんだけど・・・・・・見てて」


そう言って、鞭を叩きつける様真下に警棒を振る男性。
9 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/03/29(火) 23:24:19.04 ID:/PiAdqIY0
条件反射的に身を縮める少女。刹那―――



     バジンッ!!



少女『ッッ!!?』


―――表現するのは難しいが、敢えて云うのであれば地面が『弾けた』。


音源設定「名目上は『物質切断』の工具なんだよ。発売される前に見れて良かったね!」

少女『や・・・・・・や、だ・・・・・・やだあああああぁっ!!』


この街の『能力開発』はより良い未来と、新たな力(エネルギー)を創造する為に行われるべき行程だ。
それを大人が利用する為とか、犯罪行為に使用する為とか……戯事向けられたって、分かる訳が無い。

理解できる訳が無い。


音源設定「あはははは。いいねぇ・・・・・・僕にしか聞こえない最っ高の声!」


そして、男は腕を振り上げた。


音源設定「前置きはこれくらいにするよ。『恐怖には鮮度が有る』って大好きな脚本家が言ってたから」

少女『っ!!!?』

音源設定「極力気を付けるけど・・・・・・興奮して手加減出来なかったらごめんね!」


振り下ろされる手。唸る轟音。

少女は己の不遇を恨みながら、身構えて目を閉じ・・・・・・―――
10 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/03/29(火) 23:26:44.76 ID:/PiAdqIY0
 ―――とある日、PM10:35、学園都市第7学区、とある路地裏……




巨大な破裂音はした・・・・・・だが何も、起こらない。

少女は恐る恐る目を開けた。


音源設定「っ・・・・・・何?」


男の手はきちんと振り下ろされている。しかし自分の居る地面から1メートル程横の方へ、クレーターを作っていた。


音源設定「君・・・・・・実は念動能力持ちとか?」

少女『っ・・・・・・知らな・・・・・・』

音源設定「マジっぽいね・・・・・・今、手ぇ弾かれたんだよ」


ほら、と警棒を持つ手の甲を見せ付ける男。確かに甲が赤くなっていた。


音源設定「・・・・・・そっちに誰かいるのかな?」


右斜め上の方を向いて話しかける通り魔。
弾かれた計算からいって此方の方向だろうと、意識を集中させたのだ。

少女は・・・・・・まさか、と神に感謝した。


音源設定「・・・・・・ふんっ」

少女『っ!!?』


再びバジンと風を斬る音。方向は右斜め上。真空刃が壁を打ち抜く。
数秒後ボロボロと瓦礫が落ちてきた・・・・・・が、何も、ない。


音源設定「おかしいね・・・・・・ま、いいか。続きしよ!」

少女『っ!!』


再度獲物に向き直り、再び狂った笑顔。今度は外すまいと、少女をガッチリ掴み、至近距離から警棒を叩き付けようとする。
少女はジタバタと抵抗するが、心地良いといった風な表情の通り魔。

真空刃の効果より、殴打に近い形になるであろう警棒を、少女に向けて―――



 カツ・・・カツ・・・・・



音源設定「・・・・・・まったく、興が覚めるよ」



―――足音。



音源設定「・・・・・・そっちだね」


路地裏の更に奥。漆黒の影で何も見えない。しかし・・・・・・
11 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/03/29(火) 23:30:41.95 ID:/PiAdqIY0
音源設定「今度は・・・・・・外さないっ!!」


奥に向かって乱暴に腕を振るう男。狙いなど無い。ただ『面』で切り刻めば良い。それだけだ。

しかし・・・・・・またもや何も起こらない。
流石におかしい。男はそう考え『奥の手』を準備した―――瞬間。


   ドシン・・・・・


5メートル程先に・・・・・・何かが落ちてきた。


音源設定「・・・・・・派手な演出ですね」


少女はハッと、目の前の【何か】を見遣る。

【それ】は人の形をしていた。
【それ】は黒い格好をしていた。
【それ】は・・・・・・『白いマスク』をしていた。


音源設定「何ですか、貴方は」


【それ】は何も話さない。
通り魔は、きっと先程自分が少女に話してしまったことを聞かれたのだと推察し、少し前の己のうっかりを反省した。


音源設定「警備員・・・・・・ではなさそうだね。見た目からすると、武装無能力集団(スキルアウト)の方かな」


黒い本革のライダースジャケット。黒いメタルブーツ。黒いインナー。
そして対極に栄える『白いマスク』と白い手袋。マスクには所々神々しいデザインの金色刺繍と装飾が入っている。


音源設定「それとも、まさかの正義の味方気取りさん? 今時いるんだ!」

???「・・・・・・」

音源設定「あ、正義の味方一人は知ってる。超能力者の第7位さん! あれ有名っしょ! マジで英雄ごっこしてるし」


2メートルは有る様に見える巨躯が、のそりと、一歩動いた。


音源設定「でもアンタは違うよねぇ・・・・・・あ! 昔、此処ら一帯指揮ってた武装無能力集団のボスに似てるかも!」

???「・・・・・・」

音源設定「でも、アイツ死んだって聞いてるなぁ。確か・・・・・・運動(テロ)の首謀者で人質取ったからズバンって」

???「・・・・・・」

少女『・・・・・・助けて』


只管無言の【それ】。
少女は無意味だと思いつつも、助けの声を上げてしまった。分かっていても、上げてしまった。


???「・・・・・・」


心成しか、マスク越しではあるが【それ】と目が合った気がする。
そして・・・・・・無言の頷き。


音源設定「っ!? ・・・・・・アンタこの子の声、聞こえんの?」

???「・・・・・・」


未だ無言。せめて一言喋らせればコッチのものなのに、と通り魔は心中舌打ちした。
12 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/03/29(火) 23:36:11.87 ID:/PiAdqIY0
音源設定「・・・・・・まぁいいや。アンタ何も出来ないっしょ? この道具。そして人質」

少女『ひっ・・・・・・』

???「・・・・・・」

音源設定「動いたら・・・・・・ヤるよ? いいの?」

???「・・・・・・」


何を言われようが【それ】はまるで、スイッチの入っていない機械の様に不動だった。


音源設定「そらっ」

少女『っ!!?』


刹那、通り魔が【それ】に向けて警棒を振るった。猛スピードで【それ】に奔る鎌鼬。そして・・・・・・直撃。


???「……」


しかし【それ】は揺るがない。


音源設定「おいおいぃ・・・・・・何だ、そりゃ」


不可解。意味不明……だがしかし、何を思ったか【それ】は・・・・・・遂に、言葉を発した。


???「・・・・・・喋りが過ぎるな。黙れないのか」

少女『あ、だ・・・・・・駄目!!』

音源設定「・・・・・・ははっ」


通り魔は、無言から解放された安堵と・・・・・・これで能力が発動できるという優越感に満たされる。
そして歪んだ笑みを【それ】に向け、嬉々とした声で放った。


音源設定「アンタの音・・・・・・覚えたよ」


【それ】の音を認識。その声は《オフ》。自分以外には聞こえない。後は一度でも身体に触れれば、環境音も《オフ》に出来る。

しかし【それ】は、まるでうろたえない。


???「それが、どうした?」

音源設定「どうしたって―――」


言葉を紡ぐ途中で【それ】は動いた。いや『消えた』。


音源設定「―――ッッ!!?」

少女『あ』

???「ふッ!」


通り魔と少女の目の前に『出現』し、少女の右手を掴んで強引に後ろへ引っ張った。
その動きは空間移動能力者(テレポーター)の如く、その腕力は身体強化か念動力者の如き。

少女は小さな悲鳴を上げ、【それ】の数メートル後ろに転がる。
通り魔は本能で『拙い』と覚り、反射的に警棒を【それ】の顔面に向けて振り下ろした。

0距離で放たれた鎌鼬の威力に【それ】の巨躯も、流石に吹き飛ばされた。
13 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/03/29(火) 23:40:03.37 ID:/PiAdqIY0
音源設定「っ!! ・・・・・・ハァハァ・・・・・・《オフ》ってない?」

少女『ぁ・・・・・・っ・・・・・・』


少女は腰を引きながら後ろへ下がる。その後、様子を確認すると・・・・・・【それ】は無言で立ち上がっていた。
彼の者は一体何者なのだ・・・・・・今現在、助けて貰っているという感謝より其方の不思議が優先されてしまった。

暫時、無言。


音源設定「ふぅ・・・・・・アンタ、何モンだ? 念動力か空間移動かは知らないけど、高位の能力者ってとこだろ」

???「そこのゴミ箱の裏に・・・・・・離れてろ。巻き込まれる」

少女『は・・・・・・はい』

音源設定「ああそう無視ですかぁ・・・・・・まぁいいや、『触れた』ぞ。今度こそアンタの全ての聴覚《オフ》だ!!」


通り魔はしてやったりという満面の笑みを浮かべ【それ】に警棒を向ける。
しかし【それ】はあろう事か、場違いな事を言い出した。


???「高位の、能力者か・・・・・・それは違うぞ、連続通り魔・・・・・・音戸、調叉(おと、ちょうさ)」

音源設定「っ!!?」

???「音源設定、強能力者(レベル3)・・・・・・コレだけ、派手に暴れたんだ。調べが、付いてない訳・・・・・・ないだろ」


通り魔の本名を知っていて当たり前のように告げる【それ】。更に言葉は続いた。


???「後は、貴様に・・・・・・全てを吐かせるだけだ。安心しろ、殺しは・・・・・・しない」

音源設定「ふ・・・・・・フザケんなよぉっ!!」


狙いを定め警棒を振る。されど【それ】に当たる気配は無い。
時に高く跳び上がり、時に壁を蹴り上げ、時に己の身体で鎌鼬を弾いていく。

見えない風の刃は、悉く霧消していった。


音源能力「クッッッソがぁああっ!! んだよぉいっ!! ざけんなよっ!! んな化けモン聞いてねぇぞぉっ!!」

???「バケモノ・・・・・・か」


落ち着いた様子で、静かに、堂々と・・・・・・【それ】は答えた。


???「オレは・・・・・・無能力者だ、能力者」


空気が、固まった。


音源設定「・・・・・・んだよ・・・・・・何だよ。何だよ何ダヨなんだよぉっ!! 何なんだよぅっ!!!」

少女『・・・・・・無能力者(レベル0)』


少女と同じ、能力(チカラ)無き、人間。
14 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/03/29(火) 23:43:18.31 ID:/PiAdqIY0
音源設定「嘘言うなよ……じゃあアレか? 実は駆動鎧人間(サイボーグ)とか超人(スーパーマン)ってオチかぁ?!」

???「生憎……普通の血が流れている。特殊な能力(チカラ)なんぞに、頼らなくとも……貴様程度潰すのに、数分と掛らん」

音源設定「マジ、ざけんなよ。・無能共は能力者の玩具だろ!! それがこの街の仕組み(システム)だろぉがよぉ!!」

???「・・・・・・下衆が」



それは一種の選民思想・・・・・・能力者は有能貴族。無能力者はゴミ平民。
エリート思考を持った能力者達は少なくない。この通り魔もエリート思考持ちの一人だった。
その通り、これまで貴族である自分は、平民共を足蹴にしてきた。ゴミ扱いしてやってきた。

自分は、選ばれているのだから。

しかし・・・・・・今、目の前で起こってしまった現実は如何だ?


???「・・・・・・大人しく、捕まれ」


圧倒。


音源設定「い・・・・・・嫌だ」

???「・・・・・・」

音源設定「嘗めるなぁっ!! 自称無能がああああぁっ!!」


我武者羅に警棒を振るいだした通り魔。
目標など無い。自分の目の前にある全てを消し去りたい。その一心だった。

そしてその刃の一部が・・・・・・隠れていた少女の方に。


少女『ひゃっ!!』

???「っ・・・・・・頭を、下げろ!」


【それ】が庇いに走る。しかし通り魔はその動きを見逃さない。


音源設定「[ピーーー]よおおおおっ!!」

少女『っ!!? 銃!!』

???「っ―――」


奥の手は隠す物。
元々、人を脅すには能力なんかより銃や刃物の方が効果的である。
通り魔はしてやったりと、【それ】の顔面に向けてコネから貰っていた不正支給のグロックの弾を撃っ放した。
銃声はしない筈。音源操作で《オフ》になっている。

消音で放たれた凶弾は・・・・・・今度こそ【それ】の顔面を確実に捉え―――


少女『ひっ・・・・・・や・・・・・・』


―――……【それ】を倒した。
15 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/03/29(火) 23:47:18.75 ID:/PiAdqIY0
ドサッと音を立てて崩れる【それ】を見て、少女は神は死んだと云わんばかりに目を瞑った。


音源設定「はは・・・・・・あははははは。あははははははははははははっ!! ざまぁみろよぉ!! ゴミ平民!!」

少女『あ・・・・・・たすけ・・・・・・』

音源設定「あー・・・・・・最っ悪の気分なんですけどぉ・・・・・・君ぃ。やっぱ間違って殺すかも。先に謝っとくね!」

少女『いやだ・・・・・・やめて・・・・・・』

音源設定「無ううううう理いいいいいっ!!」


再び警棒を握り締め、気味の悪い微笑を浮かべる通り魔。少女に警棒の先を向け、軽快な足運びで歩き出す。

少女は出来うる限りの大声で叫んだ。声が枯れて血が出てしまうだろうというくらい叫んだ。
しかし通り魔の能力の前では無意味に終わる絶叫。寧ろ彼を興奮させる劇薬にしかならない。


音源設定「あー、ほら。立てよ。逃げなよ。折角だから遊ぼう!」


少女は頭を隠し、身震いする。歯が鳴る。聞こえる筈の無い通り魔の足音が響いてくる。
眩暈、吐き気、失禁感・・・・・・いっそ舌を噛み切ってやろうかと考えた。

逆に通り魔は在り得ない程、ハイになっていた。

まずは目の前で倒れている〔それ〕の屍骸に鞭を打とう。
それでボロボロにしてやった姿を、少女の目に焼き付けさせよう。

好い恐怖。鮮度が何時までも落ちない。今までで一番の狩りだ。
そうだ! 記念にこの覆面を刈ってやろう。そして自分の部屋にでも飾って――


音源設定「・・・・・・っ」


―――・・・・・・まさか、気の所為だとは思うが・・・・・・


音源設定「・・・・・・おい」

少女『っ』

音源設定「見てないか・・・・・・」


少女と自分を隔て、数歩先に転がる【それ】が・・・・・・動いた気がした。
自分は確かに眉間があるであろう場所を打ち抜いた。それは少女も見ている筈。
しかし・・・・・・動いた。

通り魔は屍であるべき【それ】を凝視した。


音源設定「・・・・・・っ!!!?」


指先が、ピクリと動く。そしてゆっくり、のっしりと・・・・・・――







  『少しは加減して欲しいもんだな・・・・・・能力者』







――・・・・・・そう告げて、立ち上がった。
16 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/03/30(水) 00:01:47.26 ID:DGzwFny30
音源設定「ま、じで・・・・・・バケモン、なの」

少女『え・・・・・・何・・・・・・なの』

???「・・・・・・自分でも、驚いた。生きてるようだな」


眉間にめり込んだ、正確には『マスク』にめり込んだ銃弾が、カランと音を立て地面に落ちた。
【それ】はめり込んでいた部分を摩りながら、他人事の様に告げる。


???「何もかも無傷で済むと言われてたが・・・・・・本当とは」

音源設定「な・・・・・・」


改めて顔面……『マスク』を見る。傷一つない。


???「だが・・・・・・痛いものは、痛い。鉄パイプで……頭を突き刺された、感覚だったな」

音源設定「・・・・・・っ」

???「だが、まぁ確かに……音源設定(聴覚的能力)は無効に出来た・・・・・・完璧だよ。『道化師』」


此処に居ない『誰か』に呟く。


少女『すごい・・・・・・』

音源設定「ふ、不死身ってか・・・・・・有り得ねぇって・・・・・・」

???「不死身・・・・・・まぁその通りだ。一度、死んだ事がある。『コイツ』の分を合わせれば・・・・・・二度目、か」


上着(ライダースジャケット)の胸辺りを叩く。


音源設定「ま、まさか……本当に駒場利徳の【亡霊】だとでも言う気か……止めてくれよ……」

???「駒場の……【亡霊】……ああ。強ち、間違いでは無いのかもしれんな」


死して尚、志は死なず。


???「さておき……テストは、これくらいで良いだろう」

音源設定「なっ」


【それ】は拳を握り緊め・・・・・・





???「・・・・・・法の下で、裁かれろ。狂人」





・・・・・・重々と言い放つ。

その言葉がこれから始まる全ての始まりの合図であり、この事件解決の宣言となった―――
17 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました :2011/03/30(水) 00:26:37.20 ID:DGzwFny30
はい。今日は入りだけなので此処までです。

いやぁ『色々』あった所為で、未だに本屋に足を運べてないんですよ。やれやれだぜ。
そういえば駒場のCvは三宅さんでしたね。兄貴といい駒場といい、スキルアウトのリーダーはオカマ声ゆ……何でも無い。

話は変わりますが、香焼と絹旗の出番が減るかもしれません。理由は[禁則事項です]です。

まぁ今後の展開、どうしようか悩んでますのん。
那由他やテレスティーナを如何すっか、土御門・雲川・半蔵を如何すっか、何より固法先輩ですね……


とりあえずいつもの様に感想質問意見罵倒提案リクエスト等々、コメントお願いします。それじゃあ、また次回! ノシ
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/03/30(水) 00:27:04.53 ID:kladCpteo
乙っした
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2011/03/30(水) 00:34:26.81 ID:qT0LoE6k0
乙ですたい!

被害者の女の子は俺がしっかり面倒見てやるぜ!
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/03/30(水) 00:37:58.07 ID:GXtfSK/AO
盆と暮れがいっぺんに来た! 最高!
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/30(水) 00:52:50.95 ID:mSDnP9FDO
乙! 『亡霊』でファントム思い出したww
ちなみに『おかえりなさい』から見てるが、ホントに新約読んでないの!?
何故、とは言わないけど色々ね。

なんにせよ、今後も期待!
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/03/30(水) 01:10:07.89 ID:xC3HtM6T0

俺はゴーストライダー思い出した
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/03/30(水) 07:36:41.69 ID:So4MmxRM0
スキルアウト駒場利徳は改造人間である!
彼を改造した学園都市は良からぬことを企む悪の秘密結社である!
駒場利徳はスキルアウトの自由のために能力者と戦うのだ!

せまるーサイキッカー 能力集団
我らをねらーう黒い影 路地裏の平和をまもるため
ゴーゴーレッツゴー スーキルアウトー 

発 条 包 帯 ハードテーピング
演 算 銃 器 スマートウェポン

コマーバリートーク コマーバリートーク
コマーバーー リートーク
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/31(木) 01:57:30.32 ID:hVyJFKUio
駒場が南米に行ってる間は変わりに二号ライダー浜面が戦うんですね、わかります
25 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/04/02(土) 22:38:20.47 ID:WLx/fhQ30
こんばんは! やっと連休もらえた……明日か明後日こそ新約探しに行く!


レス返信!
>>19
おまえは なにをい っている んだ?

>>20
Mr.ボンクレー? アン・ドゥ・トゥルァー?

>>21
ネタばれしたらマジ泣きするよ? 良い歳した私が大泣きするよ?

>>22
個人的に駒場が、二代目パニッシャー時代のジョニー・ブレイズにしか思えないんですよ!
そう考えるとゴーストライダー時のジョニーが【今作品】ですよね!            ※アメコミネタ、ついてきて下さい(オイw

>>23
アニメ最終回見たけど、駒場さんパネェっす! でも駆動鎧人間(サイボーグ)はナユタンなんですよ!

>>24
んでもって半蔵が風見志郎ですか? んで兄貴が結城丈二!


はい。ちなみに私はまだワカイデスヨ。ホントダヨ!
とりあえず、投下!
26 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/04/02(土) 22:43:53.29 ID:WLx/fhQ30
 ―――とある日、PM11:30、学園都市第7学区、とある路地裏……



警備員、黄泉川愛穂は大分不機嫌だった。

本日は自分の現場復帰祝いで、たらふく飲み食いできる筈の日。
年齢不詳の同僚教師の音頭の下、グラスを掲げて『乾杯っ!』と叫ぼうとした矢先……この事件だ。
本来、自分は非番で駆けつける必要が無いのだが、そこは一応支部『隊長』として足を運ばねばなるまい。
御蔭で全額タダの宴会料理と銘酒の数々がパァである。

とある生徒の一人ではないが『不幸だ』と呟きたくなった。


鉄装「―――……あ! せ、先輩」

黄泉川「……手短に。即行終わらせるじゃん」


警備員の後輩、鉄装綴里が遅れて到着した黄泉川の下に駆け寄る。


鉄装「その、例の通り魔事件です」

黄泉川「その連絡は受けてるじゃん。まぁ数ある模倣犯の中の『どれ』かは分からないけど……んで、現場はこの先か」

鉄装「はい。被害者は○○高校に通う無能力者の女子高生。名前は――」

黄泉川「……あいよ。もういい、書類寄越すじゃん」

鉄装「――あ、え、はい。えっと、ただ……」

黄泉川「ん?」


随分と歯切れの悪い物言いだ。
確かに、事件後にヘラヘラしてるよりはマシだが、何やららしくない。
普段からオドオドしている奴ではあるが、真面目に仕事はこなせる筈なのだが。

ふと……路地の奥を見遣る。少女が女性警備員に保護されていた。


黄泉川「あの子が被害者じゃん?」

鉄装「え、あ、はい」

黄泉川「そうか、保護を……保護!?」


おかしい。
いや、警備員の仕事として無事保護できるのであれば何もオカシな話ではないのだが、これは例の通り魔事件だ。
大抵の被害者は目を当てられない程に襤褸糞やられていたり……公表されてはいないが、誘拐されたりしている筈。

だが、先に見える少女は怪我の様子は見えど、以前までの被害者より軽傷である。
黄泉川は鉄装から事件ファイルを受け取り、奥の方へ歩み寄った。


黄泉川「お疲れじゃん」

女性警備員「隊長。お疲れ様です」

黄泉川「ガイ者はこの子じゃんね……」

女性警備員「大分パニック状態でしたが、今は落ち着いています。事情聴取は読心能力者(サイコメトラー)の風紀委員が到着してから――」

黄泉川「……私がする。とりあえず書類纏めておいて」

女性警備員「――ちょ、隊長! 話を最後まで……もぅ」


女性警備員が困った様に黄泉川を引き留めたが、言っても無駄だと覚り、先を任せる。
黄泉川は巨大なダストボックスの横に毛布を被って、ちょこんと座る被害者の少女に話しかけた。


黄泉川「こんばんは」

少女「……」

黄泉川「君、名前は何ていうじゃん? 私は警備員の黄泉川っていうじゃん」
27 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/04/02(土) 22:47:33.62 ID:WLx/fhQ30
少女「……」


無言で、目を合わせず、静かに頷く少女。事が終わった後でも相当怯えている様だ。
黄泉川は『ふむ』と少々頭を悩ませたが、微笑みを絶やさず優しく語り続けた。


黄泉川「……もう大丈夫じゃんよ。安心して」

少女「……」

黄泉川「何があったか、話せるじゃん? 言えるとこまでで良いよ」


大きく括れば『暴行』事件だが、詳細には女性として心に傷を負う『行い』も含まれる。
下手に触れれば傷口が広がるだけだ。

しかし見目、少女は衣服を破かれたり、下を剥がされた様な形跡は無い。


黄泉川「……そういえば、君が自分で連絡したの? それとも誰かがしてくれたじゃん?」

少女「わ、たし……です」

黄泉川「そっか……怖かったじゃん。よく頑張ったね」


そっと少女の肩を抱いてやる。こういう時は母性が一番の安堵となるものだ。
さておき、自分で連絡出来たという事は犯人から逃げ切れたのか、それとも逃げる途中で連絡出来たのかだろう。


黄泉川「犯人の顔とかどっちに逃げたとかは覚えてるじゃん? 辛かったら後で読心(サイコメトリー)させて貰うけど」

少女「……あれ」

黄泉川「え」


少女が奥斜め上を指差す。そこには……


黄泉川「……あれ、は」

少女「……犯人、です」


屋上から縄で吊るされている犯人がいた。酷いやられようで、気絶している様に見える。


黄泉川「まさか、君が?」

少女「……」


首を振る少女。
少々事件が複雑になってきた……如何いう事だと頭を捻っていると、此方に鉄装が駆け寄ってきた。


鉄装「先輩、勝手しないで下さいよぅ……まだ現場検証とか終わって無いんですから」

黄泉川「鉄装……アレには、気付いてたか?」

鉄装「え? あ、はい……逮捕の前に病院に連れて行かないといけないようですね」


既に救急車は呼んであるらしい。


黄泉川「……順を追って、話せるじゃん? 分からない所は省いて結構だからね」

少女「わかりました……」


少女の説明がたどたどしくも始まった。黄泉川は上手く話を拾い、要点だけ何とか纏め上げる。
28 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/04/02(土) 22:56:16.40 ID:WLx/fhQ30
まず、少女がコンビニへ買い物に。その帰り、通り魔につけられる。
奴の能力で音が『消され』路地裏へ引きずり込まれる。そして暴行を受けた。
それから試作段階の物質切断工具で撃たれそうになったその時……


少女「あの人が……来ました」

黄泉川「あの人? 助け?」

少女「……多分」


更に説明が続く。白いマスクを被った【何か】が、通り魔の前に立ちはだかった。
通り魔の攻撃は一切受け付けず、顔面に銃弾を喰らっても無傷で奴を圧倒。


黄泉川「身体強化……念動力者か」

少女「本人は、無能力者だと言ってました……でも」

黄泉川「ん?」

少女「……あれは、人間離れした動きです」


今でも信じられないといった顔。


少女「身体は丁度、小型の駆動鎧くらいの大きさ……だけど動きは、身体強化能力者のそれでした」

黄泉川「……そいつの顔は見てないじゃんね」

少女「白い、マスクをしてました……それ以外は黒い服装です」

黄泉川「具体的には?」


黒のライダースジャケット。黒いメタルブーツ。黒いインナー。白く所々神々しいイメージの刺繍と装飾が入っているマスク。白い手袋。
説明を受け黄泉川はふと、ある人物を想像する。だがしかし……『そいつ』が居る訳が無い。

『あいつ』は故人だ。


黄泉川「他に分かる事は?」

少女「あの男を攻撃している最中……色々質問……尋問って言うのかな。みたいな事してました」

黄泉川「それは覚えてるじゃん?」

少女「……所々」


始めに、あの子(少女)に掛けていた能力を消せと脅す。
次に、誘拐した少女達の居場所と人身売買を行っていた会社の詳細を言えと尋問。
詳しい名前は聞き取れなかったが、何でも私立の女子高名義だとか。


黄泉川「そこまで覚えていれば御手柄じゃん……鉄装っ!!」

鉄装「ふぁ、はいっ!!」

黄泉川「都市内の私立女子高を徹底的に調べるじゃん! 最近転入・編入生が多い学校を特に探れ!」

鉄装「わ、分かりました!」


突然の大声に驚きつつも、急いで警備車両備え付け機材で捜査を始めた。


黄泉川「ごめんごめん。大声出しちゃったじゃん。それで……全部終わった後【そいつ】は?」

少女「私に、警備員へ電話を掛ける様促して……それから上に」

黄泉川「は? 上って……上じゃん?」

少女「……このビルの屋上に、跳んで消えました」


真上を見上げる少女。
有り得ない……とは言い切れないのが学園都市。正直何が起こっても不思議ではない街だ。
29 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/04/02(土) 22:59:15.13 ID:WLx/fhQ30
兎角、とりあえず少女を病院へ送ってあげよう。先程の女性警備員を呼びつけ、待機していた救急車に誘導する様促す。
犯人の方も病院へ運んでから、取り調べを行う事にした。


黄泉川「……さて」


此処からは、警備員として動くべきか……黄泉川愛穂として動くべきか。


黄泉川「あー……しゃーないじゃん」


監視カメラのデータを見てから、二次会へ向かうとするか。




 ―――とある日〜翌日、AM00:10、学園都市第7学区、警備員第73支部……




黄泉川愛穂は事件時現場の近隣監視カメラを漁っていた。大通りで少女が路地裏へ引き込まれる瞬間のビデオを何とか見つける。

少女の言うとおり、途中から少女が叫んでいる姿が見えた。しかし誰も気付かない。
その様子から通り魔の能力が詳しく把握できた。
加え、通り魔は極力カメラに映らない様に行動している。設置位置を確認済みだったのか、手際の良い犯行だ。


黄泉川「……この先か」


路地裏の浅い部分で行われている暴行は確認できるが、深い所で何が起きているのかは視認できない。
暫時、衝撃波らしいものによる砂埃や器物破損だけが映った……そこから早送りして、数十秒後。


黄泉川「……屋上?」


少女が言った通り【それ】が、映り込んだ。
黒基調の服装なのは分かる。しかし……顔が……


黄泉川「っ!! 映らない?! 顔だけが!?」


顔だけが、すっぽり映っていなかった。


黄泉川「理由は分からないけど、仕方ないじゃん……だけどこの服装……」


自分はこの服装、そして体格を知っている。


黄泉川「っ」


急いで携帯の電話帳を開いた。そして二人の人物へ連絡する。
まずは一人目……


黄泉川「……もしもし」

???『ドチラ様でしょうか?』


女性の声。
30 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/04/02(土) 23:01:08.90 ID:WLx/fhQ30
黄泉川「惚けんな、半蔵出すじゃん」

???『チッ……半蔵さまー、お電話でーす』


電話越しに『勝手に人の携帯出んな馬鹿女郎!』という叫び声。その後、本人が電話に出た。


半蔵『はい。ドチラ様で?』

黄泉川「私だ。黄泉川さんじゃん」

半蔵『よ、黄泉川さんっ!!? ど、どうして俺に連絡なんか!?』


驚いている。もしかしたら『アタリ』か。


半蔵『お、お茶のお誘いなら日が高い内にでも……あ! ま、まさか……こんな夜中に掛けてきたという事は!』

黄泉川「……おい」

半蔵『だ、駄目です! いくら俺が助平とはいえ、手順ってモノが……って痛ぁっ!! 郭! クナイで突くな!!』


やっぱり『ハズレ』っぽい。


黄泉川「あー、お茶程度なら何時でも一緒してやるじゃん。兎に角、今は質問に答えるじゃん」

半蔵『いいぃやっほぉーぅっ!!』


直後、『ゴツン』という鈍い音が聞こえたが、スルーする。


黄泉川「……今晩、第七学区で起きた事件、知ってる?」

半蔵『じりばぜん……いだいよぅ……』

黄泉川「ハァ……じゃあ最近『オマエら』の縄張り(シマ)で通り魔事件が起こってたの知ってるじゃん?」

半蔵『え……ああ、はい。困ってました』


因みに……警備員と武装無能力集団。
相反していそうではあるが、縄張りを守る(シマ持ち)という自警活動をしている点、アンチスキルとスキルアウトは類似していた。


黄泉川「今日の朝刊で出るとは思うが、犯人が捕まった」

半蔵『……黄泉川さんが?』

黄泉川「残念ながら私の検挙じゃないじゃん」

半蔵『へぇ。まぁ何にせよ、助かりました』


本当に知らないらしい。では……本題をぶつけよう。


黄泉川「率直に聞くじゃん」

半蔵『え』

黄泉川「……駒場は―――」
31 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/04/02(土) 23:03:45.24 ID:WLx/fhQ30
 ―――とある日〜翌日、AM00:30、学園都市第3学区、とあるプライベートマンション一室……




毎度の事ながら暗部の部屋にしては派手過ぎるよなぁ、と、浜面仕上は溜息をついた。
今日は仕事で集まっているのではない。連携訓練……という名の『ゲーム』大会である。
因みに自分は女性陣の給仕係で呼ばれただけ。

畜生、少しは混ぜろよと悪態を付きつつも、滝壺マジ可愛いよ滝壺……と遠目でニコニコ眺めていた。


麦野「うっし、そろそろ……ってちょ、絹旗! 私の膝の上乗んな!!」

絹旗「このっ! えいっ! とわっ!」

滝壺「きぬはた、ゲームで動かすのはコントローラーだけでいいんだよ」

フレンダ「でも結局、動いちゃうもんは動いちゃう訳よねー」


非常に姦しい。これで性格も良ければ最高なのに……少年は嘆いた。

それから暫くして、誰かの携帯が鳴った。


麦野「おいおい。訓練中は携帯切っとくのがマナーっしょ」

浜面「何が訓練だっつの。真夜中にゲーム大会してるだけの癖に……俺の携帯だ」

絹旗「まったく駄目面ですねぇ。私達の気を削ぐような事しないでください」

浜面「やっかましい。良い子は寝る時間だろうが。電話出るから黙ってろ」

絹旗「私は超良い子です! ってぇゐ!!」

フレンダ「いやいやぁ、悪い子でしょう……寝てもいいわよー。寝落ちしちゃいなさいっや!」

絹旗「ちょーいーやーでーすーっとら!」

麦野「寝る子は育つのよ。私みたいなナイスバディになれないわよっと!」

滝壺「この前、『私って……まだまだね』とか嘆いてたむぎの可愛かったなぁ」

麦野「ぐっ……」

絹旗「やーいやーい。言われてやんのーっそぉぃいっ!」

麦野「アンタこそ……いつまでも貧乳で『お兄ちゃん』に女扱いしてもらえないでしょうがっってぅいっ!!」

絹旗「うっ……どうせ、私は……いつまでも超妹分なんですよー……」

フレンダ「ナイス麦野! 今の内に絹旗に攻め込めー!」

滝壺「大丈夫、そんなペタン娘なきぬはたを私はいつまでも応援するから」

絹旗「」

浜面「っせぇ!! テメェらお黙る!!」

麦野「テメェが表行けっつの!! 部屋で電話すんな!!」


……確かに、そうだ。という訳で、ベランダに出て電話を掛け直す。


浜面「……おっす」

黄泉川『一回で出るじゃん。仮にも社会人なんだろ?』

浜面「開口一番キツい説教どうも……それで、どうした?」

黄泉川『ああ。最近―――』


電話の主は知り合い馴染みの警備員(黄泉川)からだった。何でも今晩、巷を騒がしていた通り魔が捕まったらしい。
32 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/04/02(土) 23:08:11.71 ID:WLx/fhQ30
友人(半蔵)というか、嘗ての自分の縄張り(シマ)での騒ぎだった故、幾分ホッとするモノがあった。


浜面「―――で、それだけか?」

黄泉川『本題じゃん……駒場は、死んだか?』

浜面「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」


意味が分からない。


浜面「駒場って……駒場利得か?」

黄泉川『共通の駒場はそいつだけじゃんよ』

浜面「いや、まぁそうだけど……」


アイツは死んだ。学園都市第一位に立ち向かって、殺された。


浜面「……オマエだってアイツの墓参り行ったんだろ」

黄泉川『そうなんだけどさ……今からでも第七学区の73支部来れるじゃん?』

浜面「強制か?」

黄泉川『任意だけど、出来れば早く来て欲しいじゃん。半蔵も呼んだ』

浜面「……上司にすぐ行けるか聞いてみる」

黄泉川『申し訳無いじゃん。半蔵と一緒に来て貰えると、尚助かるじゃんよ』


それではと、電話を切り室内へ戻った。


浜面「……麦野」

麦野「あい?」

浜面「これから移動仕事、有る?」

麦野「んー……急なのが入らない限りは無いわね」

浜面「じゃあ休ませて貰うぞ。要り用入った」

麦野「何それ?」

浜面「警備員の詰め所行ってくる」


瞬間、女性陣が固まった。


麦野「……アンタ、何しでかしたの?」

浜面「別に悪い事じゃ無ぇよ。ただ――」

フレンダ「あーあ……結局運ちゃん交換って訳かぁ。浜面、何だかんだ言って良い奴だったのに」

絹旗「そうですか……それなりに、残念です。塀の中からでも手紙くらい下さい」

浜面「テメェら……マジ、ざけん――」

滝壺「はまづら……私はいつまでも、待ってるからね……」

浜面「」


滝壺にまで自分がやらかしたと勘違いされ、思考がフリーズしてしまった。


浜面「……いってきます」

4人『いってらっしゃーい』


笑って見送る女性陣。このまま帰って来なくていいかも、と割と本気で悩んでしまうぞ……
33 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/04/02(土) 23:15:12.90 ID:WLx/fhQ30
 ―――とある日〜翌日、AM01:00、学園都市第7学区、警備員第73支部署……




夜遅くにも関わらず、消灯していない目立つ部屋が一つ。そこで一人の女性がPCと睨めっこしていた。

二人の人物を待っているのだが、中々現れない。時間を潰す為に2杯のブラックコーヒーと5本の煙草を消費。
そうでもしなければ、飲み会(二次会)へ参加できなかったストレスで物に当たりそうな心境である。

6本目の煙草に火を点けようとマッチを擦った時、ようやく署のインターホンが鳴った。二人の男……と一人の女性の顔が映る。


黄泉川「……遅いじゃん」

半蔵『スイマセン。浜面待ってたら遅れました』

浜面『しゃーねぇだろ。第3学区居たんだから』

黄泉川「まぁいい。今鍵開けるから二階の一般警備員室に来い」


電子ロックを解除してやり、一分後、三人が部屋に入ってきた。


黄泉川「夜分遅く申し訳無いじゃん……そっちの嬢ちゃんは、呼んだ覚えないけど」

郭「申し訳ございませんが、スキルアウト(ウチ)の頭(リーダー)を単独で警備員の詰め所に行かせる訳には行きませんでした故」

半蔵「すいません。付いて来るって五月蠅くって」

黄泉川「……ま、構わないじゃんよ。確かに私以外の警備員がいたら半蔵しょっ引かれるかもしれないからね」


仮にも警備員と相反する組織の頭だ。何も知らない馬鹿な警備員がいたら、容赦無く半蔵を捕まえようとするだろう。
因みに今彼を捕まえると、別スキルアウト組織とのパワーバランスが大きく崩れ、犯罪率が跳ね上がる恐れがある。


浜面「で、俺達を呼んだのは何故だ。電話だけで済む話じゃ無いって事なんだろうけど」

黄泉川「ああ……手っ取り早く、コレを見るじゃん」


PCの前から退き、二人に画面を見せた。


浜面「……何これ?」

郭「○丁目の大通り……10時過ぎですね」

黄泉川「事件の流れじゃん」


本来、一般人に見せることなどできない特秘映像。その中でも自分が視易い様弄った映像を流しっ放しにする。
そして黄泉川は先程火を点け損ねた煙草を再度咥え、紫煙を喫かした。


黄泉川「……ふぅ」


数分後、三人が難しい顔をして黄泉川に向き直る。
黄泉川は少女から聴いた路地裏で起きた事件の証言を、三人に聞かせた。


黄泉川「―――……感想は?」

浜面「何の、冗談だ?」

黄泉川「私が言いたいじゃん」

郭「……アレは……まさか、本当に?」

浜面「おいおい……そりゃねぇって!」

半蔵「……落ち着け、浜面」


冷静を装い、半蔵が煙草を咥える。空かさず郭が着火しようとした際、黄泉川が告げた。
34 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/02(土) 23:19:53.12 ID:WLx/fhQ30
黄泉川「煙草、逆じゃん……あと警備員の前で堂々と煙草喫うな。未成年」

半蔵「……すんません」

黄泉川「まぁいい……で、如何思う」

半蔵「……駒場の兄貴は死にました。これは確定事項です」


浜面と郭が頷く。


黄泉川「ハァ……だよね」


溜息を付きながら立ち上がり、三人にコーヒーを淹れる。それから無言で少年二人の前に灰皿を置き、再び自分の椅子へ座った。

考察する……例えばコイツらが駒場の死を隠蔽するにしても、メリットは有るのか。
駒場が生きていてそれがばれたら再び殺されるという可能性があるなら、それは理解できる。
しかし、それならば今更学園都市に現れる筈が無い。
第一、浜面と半蔵は今は別の仕事(組織)。利害が一致していない限り、話を合わせる必要も無い。
それに……多分コイツらは嘘を言っていない。

申し訳なさそうに苦笑しながら紫煙を喫かす少年二人に、再度質問した。


黄泉川「駒場は亡くなってる……じゃあ【それ】は何だと思う」

浜面「何って……分かんねぇよ。首から上が映って無ぇし」

半蔵「宛ら、兄貴の亡霊ってか……勘弁して下さいっての」

黄泉川「残念ながら、マジで人間らしいじゃん。証言じゃ『白いマスク』をしてたらしいわ」

浜面「マスク?」


素性を、ばらせないという事だろう。


郭「……何にせよ、動きが人間離れし過ぎです。そこまで高くないとはいえ、ビルの屋上までジャンプ? 能力者でもないのに、どうやって」

浜面「マジで駒場と同じく発条包帯(ハードテーピング)でもしてたってか?」

半蔵「おい、馬鹿野郎……」


黄泉川の目を気にする半蔵。浜面は小さく『ヤベッ』と声を上げた。


黄泉川「……時効じゃん。『何の為』に発条包帯を使ってたのかは聞かない。でも『如何』使用してたか、教えなさい」

浜面・半蔵「「……」」


気まずそうに口を開く両名。
発条包帯(ハードテーピング)……超音波伸縮性の軍用特殊テーピング、簡単にいえば筋肉を補強することができる。
種類には色々あるが、駒場が使用していたのは駆動鎧(パワードスーツ)の人工筋肉部分だったらしい。

実際、そんなものを利用したら使用者の身体に甚大なる負担をもたらすであろう。
何故そんな激物を使用していたかは聞かないが……危険な真似を。


黄泉川「駆動鎧の動きを人間で真似ようなんて、馬鹿な事を……」

半蔵「……言わないでやってください。兄貴には兄貴なりの考えがあった」


故に、死んだ、か。
35 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/02(土) 23:22:45.72 ID:WLx/fhQ30
黄泉川「兎も角【それ】は駒場の真似事をした。そういう事じゃん?」

半蔵「どうだか……ただ」

黄泉川「ん?」

半蔵「だとしたら、一度じゃ終わらないでしょう」


静かに告げる。


半蔵「……無能力者(力無き者)の為に働いているのであれば、ね」


弱き者の為。
暫時無言が続いた……ふと半蔵が黄泉川に尋ねる。


半蔵「それで【それ】を如何するおつもりで?」

黄泉川「……今は何とも。上の方針も決まって無いじゃん」

浜面「今日の今の話だしな」

郭「別に犯罪者という訳ではないでしょう。放置してもよろしいのでは?」


そういう訳にはいかない。もしこういった活動を続けていったのであれば、何れ人々に広まる。
不要なパニックを避ける為にも、早急に手を打たねばなるまい。


黄泉川「今後の出方次第じゃん……『無意味』な自警活動は混乱を作るだけ。半蔵(オマエ)んチーム(とこ)と違ってね」

半蔵「……俺んとこは、なーんもしてないですよ。郭に任せっぱでぇ」

郭「御謙遜を」


苦笑。


黄泉川「……とりあえず、以上じゃん。お前らが関係して無いのは分かった」

浜面「ああ。しかし……気になるな」

黄泉川「……心当たりも無いのか?」

半蔵「有ったら此処来ないって」

黄泉川「だろうね……ま、他当たるじゃん。何か情報入ったら報せて欲しいじゃ」

浜面「分かった。オマエも教えてくれよ。一方的ってのは無しだぜ」

黄泉川「あいよ」


こうして二人の事情聴取は終わった。
黄泉川は一人部屋に残って、頭を悩ませる。あの二人が知らぬとなると、残りは……


黄泉川「一応、連絡してみるか」


駒場と親しかった男に電話を入れる。


黄泉川「……出ない。寝てるか?」


コールしても出ない。
まぁこの時間だ。寝ててもおかしくない。あの二人が遅くまで起きていた事が僥倖だっただけだ。

また明日、その男に連絡する事にしよう……―――
36 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/02(土) 23:26:20.33 ID:WLx/fhQ30
 ―――とある日〜翌日、AM02:00、学園都市第7学区、とある廃ビル……




警備員の支部から離れ、浜面と別れて数分後、半蔵と郭は自分達のアジトへ帰って来た。
監視班の仲間から特に異常無しの報告を受け、自室である頭部屋へ足を運ぶ。


半蔵「……さて、俺の方は問題無しだな」

郭「浜面氏も騙せてましたね」


郭がコーヒーと緑茶をテーブルに運んでくる。半蔵はコーヒーを受け取り『ふぅ』とソファに腰掛けた。
反対側の椅子に郭が座り……ようやく肩の荷を下ろす事が出来たと、一服する。

それから紫煙を灯し、ある人物へ電話を掛けた。


半蔵「……おう。此方『影草』」

???『此方「道化」……終わった様だな』

半蔵「ああ。とりあえず第一段階終了ってとこだな」


バンダナを外し、眠そうに頭を掻く。


半蔵「んで? 今『仮面』さんは?」

???『まったく……止めたのに、早速行きやがったぜ』

半蔵「……は?」

???『通り魔さんから、奴らの塒(ねぐら)聞き出したろ。んで……今日中に潰すとよ』

半蔵「馬鹿ですかい……てかマジで止めろよ」

???『言っても聞かねぇですたい』


電話越しから虚しく苦笑が響く。


半蔵「如何すんだよ。長時間の戦闘は身体持たねぇだろ」

???『根性で何とかするとよ……とりあえず、病院直行するように言っておいた』

半蔵「大丈夫なのか?」

???『冥土帰しには一報してある。アレには何ればれるだろうから先に味方にしておくさ』

半蔵「……名判断で」


『仮面』の心配もさることながら、後は事後処理だ。


半蔵「アリバイ作りはオマエに任せて良いんだな」

???『あいよ。既に手は打ってる』

半蔵「じゃあ後は『頭脳』に任せるか」

???『……気に喰わんが、仕方あるまい』

半蔵「まだ納得して無いのな……賽は投げられたんだぜ。仲良くしろよ」

???『絶対に嫌だ。基本オマエに任せる』


ブツリと電話が切れる。まったく、協調性の無い奴だ。
37 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/02(土) 23:30:33.75 ID:WLx/fhQ30
多分これから掛ける『頭脳』も協調性は無いだろう。どうして自分が面倒役を受け持ったのか……半蔵は深い溜め息を付いた。


半蔵「……もしもし」

??『……此方「頭脳」だけど』

半蔵「こっちは須らく問題無しってとこ。『仮面』は今、人身売買会社で『パーティー』開いてるって」

??『大丈夫なの?』

半蔵「大丈夫じゃないだろうねぇ……組織の方は。明日中には新聞の一面だろうさ」


とある私立女子高が裏組織として潰されるのだ。大騒ぎになるだろう。
因みに『仮面』の心配はしていない。絶対の負けないという信頼が有るからだ。


??『そっちもだけど「彼」自身よ』

半蔵「病院直行するだろうって。土……『道化』が言うにはな」

??『……そ。ならいいけど』

半蔵「って事で、裏からの隠蔽等々頼んだぜ」

??『りょーかい。アンタもちゃんと現場サポートするのよ。「影草」さん』


これで、半蔵(自分)の仕事は終わりだ。


郭「……今から援護へ行きますか?」

半蔵「要らないさ。余計だ……それに」


この程度で潰れる様じゃ、今後やっていけないだろう。


半蔵「『影草』に『道化』、それから『頭脳』か……」

郭「もっとマシなコードネーム無かったのですか?」

半蔵「そうか? 各々ピッタリじゃね? あと漢字って恰好良いじゃん」

郭「浪漫主義ですか……呆れます」


名前は兎も角、仕事は完璧な連中だ。

『影草』が現場援護及び指示中継。『道化』が目標索敵及びアリバイ工作。『頭脳』が作戦参謀及び事後処理。
問題が有るとすれば『道化』と『頭脳』が馬鹿な意地の張り合いを続けている事くらいだ。


半蔵「まぁね。何にしろ頑張って貰わにゃいけないのさ……【駒場の兄貴】には」

郭「……」

半蔵「何が起こっても不思議じゃない学園都市(街)……死人が墓場からカムバックしてダンス踊っても、素敵じゃねぇの」

郭「……ま、なる様になるでしょうね。私は貴方様の御随意に従うまでです」


明日の朝刊が楽しみで仕方なかった……―――
38 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/02(土) 23:33:16.99 ID:WLx/fhQ30
 ―――翌日、PM03:00、学園都市第7学区、風紀委員第一七七支部……




 ――……昨夜未明、第七学区○丁目大通り、××ビルの横裏にて、連続通り魔の犯人が現行犯逮捕されました。
                犯人は**大学3年、音戸調叉(21)。自身の能力『音源設定』にて度重なる犯行を……――



白井「はぁ。やっと捕まりましたのね。まぁ悪い事をすれば捕まる、当然ですの」


風紀委員第一七七支部。
数名の少女達の溜まり場と化すこの場所で、正規の風紀委員である白井黒子がニュースの感想を簡潔に述べた。
それに同調するように遊びに来ていた少女も、己の意見をぶちまける。


佐天「何にしろ、安心できますね。これで夜中コンビニに立ち読みしに行けるや」

初春「駄目ですよ。最終下校時間過ぎてるのに、そんな御坂さんみたいな真似」

御坂「……私はいいのかい」

白井「駄目に決まってますの。お姉さまは相変わらず自分の立場というものを理解して―――」

御坂「あー、はいはい」


超能力者(レベル5)とはいえ、一、学生。ルールは守らねばなるまい。
姦しく事件談義なるものを続ける少女達に、この場の最大責任者が呆れた様に口を開いた。


固法「社会のルールを守らない人間は連鎖するモノよ。模倣犯ってヤツね」

佐天「もーほー、ですか?」

固法「模倣、よ。真似っ子……簡単にいえば、誰かさんが始めた事を自分もやってやろうって真似する事」


例えば此処をカフェテリアと勘違いしてる人を真似て屯(たむろ)人が増えるみたいにね、と付け足した。
4人の少女達は先輩からの尤もな指摘に苦笑せざるを得なかった。


御坂「でも、現行犯って……通り魔がヘマったのかしら?」

佐天「いや、もしかして御坂さんみたいにトンデモ無い人襲って返り撃ち喰らったとか!」

御坂「だったりしてねー。ま、警備員に囲まれて取っ捕まったってのが妥当じゃ無いかな?」

佐天「あはは。罠に引っかかったって感じですか」


有り得ない話ではない。この街では『強い者』に喧嘩を売って、襤褸雑巾にされるなど少ない話では無いからだ。
ただ、ハハハと笑い話にしている民間人二人とは打って変わって、真面目な表情の風紀委員3人。


白井「……初春。緘口令」

初春「分かってますよ……」

固法「……」


風紀委員である彼女達は、事の詳細を知っている。いや、風紀委員だから知っているのではない。

『初春飾利』という少女がいたから、知り得た事実が数点ある。

まず、この事件を解決したのは風紀委員や警備員では無い事。そして『裏の立役者』がいるという事。
勿論この件は『知りえない』事である故、3人の秘密にしてある。


御坂「ん……どったの?」

白井「え、あ、いや。何にせよ、お姉さまが犯人探しするぞーって走り回らなくて安心でした」

佐天「もし御坂さんが犯人探ししたら、前みたいに囮捜査で面白かったかも!」

固法「面白いで済むなら良いけど……相手半殺しにするでしょ、御坂さん」
39 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/02(土) 23:56:50.41 ID:WLx/fhQ30
御坂「あはは。酷いなぁ……ちゃんと『話せる状態』で『捕獲』しますよ」


微妙に物騒な言葉が飛び出たが、敢えて無視した。


固法「……兎に角、気を緩めない事。御坂さんも一般人なんだからね」

御坂「分かってます。先輩達も、風紀委員とはいえ学生ですからお互い様ですよ」

固法「勿論、注意するわよ」


風紀委員に説教とは増せガキめとは思いつつ、御坂美琴(この子)の場合はそれに見合う『器』があるのだから仕方ないかと言葉を飲んだ。
それから暫時、遊び呆ける4人を後目に、固法美偉は先程初春が『発掘』した事件データを読み返していた。

犯人を捕らえたと思われる……見知った服装の、不審者。

この情報は自分の先輩に教えるべきかと、紙パック牛乳を啜りながら頭を捻る。
そして一寸悩んだ末、携帯を開きメールを打とうとした……刹那……部屋の扉が開いた。


打ち止め「おっ邪魔っしまーす!! ってミサカはミサカは例の如く既に定期的な遊び場と化したこの支部に跳び込んでみたりー!!」

御坂「あら、打ち止め。いらっしゃい」


オマエの家じゃ無ぇぞと総ツッコミ。


打ち止め「あ! 御姉様も来てたのね! ってミサカはミサカは……どる〜んっ!!」

御坂「そぉいっ!!」

打ち止め「ぬぅあにぃっ!!? 止められた……だと……ミサカのミサカのタックルが……ってミサカはミサカは驚愕してみる!」

御坂「ふふふ。まだまだね、打ち止め。私を誰だと思っているの?」

打ち止め「くううぅ! 流石に元祖タッコォーの御姉様には程遠いかぁ……ミサカはミサカは更なる精進を目指してみたり!」


姉妹漫才はそれくらいにしろ、と誰かが苦笑した。


固法「打ち止めちゃん、如何したの? 今日は彼とお家で遊んでるって言ってなかった?」

打ち止め「うーん……急用が出来たからミィのとこ行けって追い出されたの。ってミサカはミサカはしょんぼり説明してみる」

御坂「……あんの白モヤシ。説教ね」


バリバリ青白い放電が視認できる超妹愛姉(スーパーシスコン)。


白井「それでは……不肖、この白井黒子めが、飽くる事無く遊んで差し上げますわ! 小姉さま!!」

初春「……白井さん」

佐天「始まった……」

固法「痛い目見る前に止めときなさいよー」


呆れる面々。
愛しのWお姉さまを目の前に、いつも以上にテンションを上げる淑女(変態)。
因みに美琴は例の如く御姉様と、打ち止めは小姉(ちいねぇ)さまと呼んでいる。他の妹達(シスターズ)は妹様だ。


御坂「ハァ……黒子、アンタねぇ」

打ち止め「……じとー」

白井「……あああんっ! その目っ! 御姉様と小姉さまから何とも形容し難い熱い眼差しを受けて、黒子は……黒子はもうっ!!」


非常に、度し難い。
40 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 00:18:35.55 ID:uCLf8oVy0
御坂「まったく……蹴るわよ?」

初春「喜ぶだけですけどね」

白井「イエスッ!! っという訳で……小姉さまあああぁっ!! モフらせて下さいましいいぃっ!!」

打ち止め「きゃー……ってミサカはミサカはもういつもの事なので溜息を付きながら棒読み悲鳴を上げてみる」

御坂「コイツ……」


小さな肢体目掛けて瞬間移動(テレポート)する超ミサコン。
※ミサコンとは……『ミサカコンプレックス』の略で、学園都市で最近広まってきている危ない思考である。

さておき白井黒子というなのお馬鹿さんが、打ち止めという小動物へダイブすると決まって姉にハイキックを喰らうのだが……この日は違った。


白井「アイキャン……ゲットゥアアァブベラアァッ!!?」

打ち止め「……ありゃ?」

御坂「……え」


キックではなく、単純に叩き落される白井。
移動(テレポート)の際のAIM拡散力場を予測して、移動点に平手を降ろした人物は……


固法「あら、那由他ちゃん」

那由他「打ち止めちゃんと一緒に御邪魔しました……何ですか? この変態は?」

打ち止め「ナユタンありがとー! ってミサカはミサカは救世主なナユタンに抱きついてみたり!」

白井「ぐ……ぬぬ……ポッと出が……ジェラシイイイイィッ!!」

御坂「黙ってろ変態」


ゲシッと踏み付けで追い打ちを掛ける御坂姉。
残念ながら初春の予想通り、歪んだ笑みを溢す対ミサカマゾヒスト。

そんな馬鹿は如何でもいいといった風な、別支部――先進教育局、特殊学校法人RFO所属の風紀委員、木原那由他。


固法「学校終わったの?」

那由他「うん。打ち止めちゃんがメールで暇だっていうから、合流しました」

佐天「……えっと、この小学生さんはどなた?」

打ち止め「ナユタンだよ! ってミサカはミサカはクロヅマファミリーの新入りさんを紹介してみたり!」

佐天「あー! 噂の!」

初春「先進教育局直属の風紀委員さんです。白井さんと並ぶ程のエースですよ」

那由他「そんなそんな……えっと木原……那由他です」


多少気まずそうに自己紹介する。『木原』と冠する苗字を持つ彼女は己の名を紹介する際、戸惑いを持っていた。
しかし最近では、少しずつ、己の名に恥じない挨拶が出来るようになってきている。


固法「あら、初めましてだっけ?」

初春「私と白井さんは名前だけは知ってましたけどね。佐天さんと御坂さんは初めてでしょう」

御坂「えっと……あはは……」


初めてでは無い。何故なら……
41 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 00:20:46.17 ID:uCLf8oVy0
打ち止め「御姉様は知ってるもんねー。前にナユタン虐めたからってミサカはミサカはジト目で御姉様を見詰めてみたりー」

御坂「あはははは……謝ったでしょぅ……」

打ち止め「御姉様は虐めっこーってミサカはミサカは姉の不良(ヤンキー)っぷりを嘆いてみる……ハァ」

御坂「ら、打ち止めー……許してよー……」

那由他「ま、まぁまぁ……(香焼)兄さんも(絹旗)姉さんも、私も、自業な点もあるしさ」

御坂「ほ、ほら!」

打ち止め「むぅ……調子に乗ってぇ……ミサカはミサカは御姉様を突いて懲らしめてみたり!」

御坂「ご、ごめっ、あひゃひゃ! ちょ、ラス、お……やめっ!! うひひっ!」


このこのっと仲睦ましく小さな攻防を繰り広げる電撃姉妹。
下に敷かれた白井の事などお構い無しだ。


佐天「白井さん、移動(ジャンプ)すればいいのに」

初春「いや、嬉しそうですから放っておきましょう」


ニヤけ顔の素敵淑女が、恍惚と潰されている。


固法「まったく……那由他ちゃん、何飲む?」

那由他「お任せで」

佐天「先輩に任せると牛乳しか出て来ないよ」

那由他「……麦茶を」

固法「なんか、失礼ね……」


那由他の手前に麦茶を、ついでに打ち止めの分のオレンジジュースを机に置く。


那由他「どうも」

固法「どういたしまして」

那由他「あの……失礼な事かもしれないけど、この支部はいつも『こう』なの?」


喧しい、という意味だ。


固法「……私としては悩ましいけどね」

佐天「でも何だかんだ言って先輩も楽しんでるでしょ!」

固法「……まぁね」


ニヤニヤと微笑む佐天に、ヤレヤレと苦笑する固法。
那由他は何となく、賑やかな雰囲気の此処が羨ましく思えた。


初春「木原さんの詰め所は、やっぱり静かなんですか?」

那由他「異様な程に真面目だね。人が少ない所為も有るけど……あの、出来れば名前で呼んで貰いたいな」

初春「あ……すいません……」


以前よりは吹っ切れたといえど、未だに『木原』の名で呼ばれるのには後ろめたいモノが有る。


佐天「ま、まぁほら! 親しみを込めて打ち止めちゃんみたいに『ナユタン』って呼んでも」

那由他「……それは、勘弁して欲しいよ」

初春「そ、そういえば春上さんや枝先さん達ともお友達なんですよね? 彼女達から前に聞きましたよ」

那由他「え、あ、うん。先進教育局で……」
42 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 00:22:31.19 ID:uCLf8oVy0
そこで一寸、顔に翳りが入ったが……意を決したように口を開いた。


那由他「うん……『色々』あったけど、今はまた仲良く会えてるよ」


自分の伯母がしでかした『事件』も、今では過去の話。
その伯母ともぎこちなくは有るが、良い方向に、家族として……解決に向かおうとしている。

ただ、今此処にいる少女達には、後ろめたい気持ちが否めないという事実は、消えていない。


那由他「その……テレ姉……伯母の件では皆さんに迷惑を―――」


御坂「ストップ!」


那由他「―――え」

御坂「それは言わないの。あのねぇ、昔の事引っ繰り返し出したらキリ無いでしょ?」

那由他「……」

固法「そうね。昔は昔……今は今、でしょ。ね」


ポンと固法に頭を撫でられる。
御坂を始め、他の皆も遺痕無い笑顔で那由他を迎える……何とも器の広い人達だと感心した。

それから暫く、御坂姉妹と白井、初春、佐天が談笑していた。
固法、那由他は傍目からそれを眺め、別の話……固法達が先程していた事件について話しあっていた。


固法「―――……先進教育局(そっち)の風紀委員では、詳細入ってるの?」

那由他「……ある程度。普通の風紀委員以上の事は知らされてると思う」


警察レベルでいえば、那由他は警備員と同等の、謂わば都市外での公安レベルの情報を得ている。
つまり、一、支部レベルでは知りえない情報を持ち合わせていた。

それを他で漏らす事はタブーなのだが……


固法「……この画像も?」

那由他「……っ!!?」


この事件の重要参考人らしき人物の写真。
普通の風紀委員レベルでは知り得ない情報を、この支部は掴んでいた。


那由他「何処で、これを」

固法「……独自にね」


同じ風紀委員といえど、此方も易々と『切り札(初春)』をばらせない。
もし大っぴらに彼女の実力が知れれば、此処以上の重要部署へ飛ばされる可能性も無きにしも非ずだろう。
43 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 00:24:23.09 ID:uCLf8oVy0
固法は同等であるという風格を見せつけ、那由他への質問を続けた。


固法「事件の鍵だって事は、何となく分かる。【この人】について何か情報は?」

那由他「残念ながら、私もこの写真までかな……付け加えるなら、顔はマスクで隠してたって」

固法「そう……映像妨害の何かかしらね」


嘘では無いだろう。此処まで知っている人間に隠す事など有りはしまい。


那由他「ただ……」

固法「ん?」

那由他「今朝、とある人身売買組織が潰されました……誰の手によってかは、分からない」

固法「警備員や風紀委員では無いって事?」


知り合いのスキルアウトならしでかしそうだが、第7学区(シマ)内でのみだ。
外の縄張り(シマ)には進んで手を出さないだろう。


固法「もしかしたら……【この人】が、組織を?」

那由他「確定事項では無いけど、そういう噂も」

固法「……仮面の英雄(マスク・ド・ナイト)かぁ」


先輩が好きそうな話だ。


那由他「固法さんは、他に何か知ってるの?」

固法「……知ってるっていえば、知ってる。でも有り得ない」

那由他「へ?」


黒基調の服装に、この巨躯。


固法「死人が、蘇る訳ないよね」

那由他「し、死人?!」

固法「……何でも無い。とりあえず、何か分かったら伝えるわ。那由他ちゃんもお願い」

那由他「うん……分かった」


小さく頷く少女。そして苦笑しながら、姉貴分に告げた。


那由他「無茶、しないでね」

固法「え」

那由他「何だか、思い詰めてる様子だったから。この事件は緘口令敷かれてるし……不用意に足を突っ込み過ぎると危険だよ」

固法「……分かってるわよ。大丈夫」


微笑み、頭を撫でてやる。
幼いこの子に無粋な心配を掛けさせる様じゃ、母姉役失格だなと、固法は内心苦笑した。
44 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 00:27:20.30 ID:uCLf8oVy0
那由他「……ま、固法さんに何かあったら、黒妻さんが暴れるだろうけどね」


その方が心配である。彼一人で戦争しでかしかねない。ある種、特殊導火線付きの一人軍隊(ワンマンアーミー)だ。


那由他「身内逮捕したくないよー。ってことで、導火線の固法さんは火を点けない事」

固法「……生意気娘め」

那由他「あはは」


コツンとデコピン。人工骨格の彼女には少しも響かないが、それでも痛がるフリをして見せた。


打ち止め「あー! ナユタンがミィ一人占めしてるー! ってミサカはミサカは妬ましがってミィにダイブしてみたりー!」

那由他「わっ!!」

固法「ちょ、ら、打ち止めちゃん……」

打ち止め「むふふ……もにゅもにゅー……ミサカのミサカのベリーメロンをもにゅもにゅー」

固法「こ、こらっ!」


この場に男子が居たら、静かに退出しているであろう桃色空間。
その後も最終下校時間が来るまで姦しく談話が続いた―――




 ―――翌日、PM04:00、学園都市第7学区、とある高校・屋上……




7時限目終了の鐘が鳴る。
部活動・委員会等に所属していない生徒達はぞろぞろと校門を抜けて行った。

そんな中、本来立ち入り禁止の屋上に二つの影。


雲川「まぁ、初陣にしては上出来じゃない?」

土御門「さぁな……そんな感想交換の為に一々呼びだすな。貴様と違って暇人じゃないんだよ」


普通に見れば先輩後輩の関係だが……裏の裏に身を置く二人。


雲川「つまらない人。ま、私も慣れ合う気はだけど、ね……で? アリバイは如何処理したの?」

土御門「オマエが知る必要は無い。事後処理だけ徹底しろ」

雲川「それをする上で、必要な情報という事なんだけど」

土御門「……ふんっ」


利害関係のみの共闘。
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/03(日) 00:33:35.14 ID:qqrhpxOm0
雲川だったか
口調、「けど」は必ずつくわけじゃないんだっけ?
46 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 00:34:54.48 ID:uCLf8oVy0
土御門「……昨夜は俺の家で麻雀大会という事にした。他に知り合い二人を言い包めてる」

雲川「貴方の身内?」

土御門「まぁな……口裏合わせには持って来いの輩だ」

雲川「誰かは教えてくれないのね」

土御門「必要であれば書面で送る。それよりオマエの方は如何なってるんだ」


あくまで他人。


雲川「暗部は手出し出来ないわよ。大本に釘を刺してるから」

土御門「大本?」

雲川「暗部ってのはスポンサーが要るでしょ。理事だったり役員だったり、企業だったり」

土御門「成程……女狐め」

雲川「褒め言葉として受け取っておく」


麗しい笑み……だが土御門元春にとって、腹立たしい事この上ない嘲笑にしか見えなかった。
今回の一件、解体させた組織のバックに理事会役員のお得意様(手)が有る。報復活動として【仮面】を詮索し兼ねない。
そこを根底から防ぐという意味での……雲川芹亜の事後処理能力が必要だった。


雲川「本当は退職させても良いんだけどね。年端も無い女の子を性欲の捌け口程度にしか思って無い連中ばっかだし」

土御門「……オマエも人並みの感情は有るんだな」

雲川「当たり前でしょ……ま、でもお得意様の一部は理事運営を行う上で重役を担っている輩もいたし……無闇に跳ばせないのよ」


故に、警告のみ。


雲川「だから闇雲に手出しはしないでしょ」

土御門「鉄砲玉を雇う可能性だってあるぞ」

雲川「そん時はそん時。貴方が準備したあの『マスク』は完璧なんでしょ? じゃあ大丈夫じゃない?」

土御門「……殺しはしないという吟示が有る以上、絶対は無い」

雲川「だったら貴方か、貴方のお友達が出張れば良い。簡単じゃない」


それこそ簡単に言ってくれると、舌打ちした。


雲川「それで……『彼』は今何を?」

土御門「黄泉川愛穂に事情聴取を受けている。警備員では無く、あくまで個人的なものだが……如何すんだか」

雲川「私は彼女にばらす分には問題無いと思うんだけど」

土御門「それは俺らの判断じゃない……本人が決める事だ」

雲川「……あっそ」


自分達は冷静且つ慎重に、ケース・バイ・ケースで身を振るだけ。
かったるそうにフェンスに寄り掛る少年と、棒立ち腕を組み対面する少女。やれやれと溜息を付き……同時に貯水タンクの方を向いた。


雲川「貴女は今回の件、如何思った?」

土御門「……隠れなくても良いにゃー。告げ口する様な悪いお嬢さんだと思ってないから」


オドオドと身を表し、二人の前に歩み寄る一人の……『正体不明』。
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/03(日) 00:35:09.59 ID:zjFu+BuDO
半蔵、つっちー、雲川って‥‥暗部ともまた違う裏側サイドだな。
48 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 00:40:02.07 ID:uCLf8oVy0
>>45
頻繁に使うけど、全部が全部じゃ大変だと思うのだけど……如何かな?

>>47
このSSでは称して『裏の裏』トリオ、です。
49 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 00:44:44.83 ID:uCLf8oVy0
風斬「え、えっと……その……」

雲川「怖がってるの? 私達より貴女の方が格上の存在の筈だけど」

土御門「虐めるなよ『先輩』さん。オマエさんと違って繊(かよわい)少女なんだぜぃ」

風斬「そ、そんな……私は、別に……」

雲川「……不思議な娘」


風斬氷華。


土御門「まぁ風斬の個人的な意見を聞いても仕方ないか……」

風斬「す、すいません……ただ……」

雲川「ん?」

風斬「ヒーローみたいで恰好良いかもしれないけど……でも純粋に危ない事ですよね。【あの人】身体ボロボロなんじゃ……」

土御門・雲川「「……」」


場違いな事を抜かす不思議ちゃん。


風斬「大丈夫、なの?」

土御門「……まぁ問題無い。ガタが来たら『同じ目的』持った一方通行が残業(ボランティア)するとよ」

風斬「それは、それで……余計危ないんじゃ」

土御門「ま、殺さず捕えろって約束だけどにゃー……何なら監視してもいいぜ?」


むぅ、と可愛らしく小首を捻る少女。


雲川「貴女個人の意見はOKだけど……その『上』は如何いう判断?」

風斬「え……」

土御門「……話せないよう強制(プログラミング)されているなら仕方ないが、俺個人から理事長殿(アレイスター)に聞けないんでね」

風斬「……えっと」


一寸考え、口を開いた。


風斬「その……『興味無い』って」

土御門「アイツらしい」

風斬「でも、ね……もし上条くんが関わるのであれば……ちょっと考えるって言ってる」

雲川「でしょうね。でも関わらない筈だけど」

土御門「まぁでもカミやんだから何とも言えないけどにゃ……予想外の行動はいつもの事だし」


関係無くても話が出てくる幻想殺し。


雲川「けど、上条当麻が如何関われば問題?」

風斬「えっと……何て言うか、今回……じゃなくてコレから皆さんがしていこうという計画は、『純粋』に、対犯罪者でしょう」

雲川「そうだけど、何故?」

風斬「うーん……上手く言葉が出て来ないんですけど……」

土御門「ま、はっきり言ってカミやんは異端やアクシデントには強いが、『当たり前』とか『普通』に弱い」

雲川「普通?」


如何いう事だ。
50 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 00:50:10.69 ID:uCLf8oVy0
土御門「例えば、純粋にボクサーと戦う。純粋に傭兵と戦う。純粋に殺人鬼と戦う」

雲川「……成程」


彼自身それなりに喧嘩や格闘は出来る方だが、やはり上には上がいる。
首を圧し折られれば死ぬ。長刀で心臓を付かれれば死ぬ。銃で脳味噌ブチ撒けられれば普通に死ぬ。


風斬「死なない限りは……○○先生(冥土帰し)が何とかしてくれます。でも……」

土御門「オーライ。分かった。危険には晒さない」

雲川「そうね。彼が危険にならなければ問題無い、けどもしも……って事だ」

風斬「はい。でも、もう一つ」


今度は二人が首を傾げる。


風斬「もし、上条くんが……アナタ達の計画とは関係無く、そういった脅威に曝された時は、第一優先として助けろ……との事です」

土御門「……火野神作の様な人物にフラグ建てたらって事か」


純粋なシリアルキラーに襲われた場合。


雲川「つまり非常事態(イレギュラー)? それはまぁ言われなくても助ける筈だけど」

風斬「そう思って頂いて結構です」


面倒が増えたなと、少年は苦笑した。

とりあえず、話は以上だ。


風斬「私も、個人的には応援します……直接、手は出せませんが、情報操作等なら」

雲川「助かるわ。ありがと」

土御門「さぁーてと……んじゃ帰るぜぃ」

雲川「そうね。あ、『彼』は放っておいてもいいの? 黄泉川先生相手じゃちょっと心配なんだけど」

土御門「んー……必要なら俺も呼びだし喰らうだろ。教室戻ってカミやんの補習でも馬鹿にしに行くかなー」


本当は小萌センセのプリチーな怒り顔を拝みにだけどにゃー、と笑いながら消え去った。
雲川も風斬に手を振り、屋上の扉を潜っていった。


風斬「……何もなきゃいいけど」


劃して天使は切に願う。
こんな私でも、友人と呼んでくれる人達の為に、少しでも協力したいという思いは有る。


風斬「黒妻さん……陰ながら、ね」


そしてAIM拡散力場の集合体は、とある高校の屋上から消え去った……―――
51 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 00:53:35.33 ID:uCLf8oVy0
 ―――翌日、PM04:20、学園都市第7学区、喫煙所……




空気清浄機が静かな音を出して稼働する部屋、二人の男女が無言で煙草を喫っていた。
一人は黄泉川愛穂。警備員であり、この学校の教諭でもある。もう一人は黒妻綿流。元不良の、バイト事務員だ。

カップのブラックコーヒーを一啜りし、黄泉川が口を開いた。


黄泉川「ニュース、見たじゃん?」

黒妻「……何のすか?」

黄泉川「通り魔事件の」

黒妻「あー……半蔵の縄張りで暴れてたヤツね。それの処理で学校来んの遅れたんすか?」

黄泉川「まぁね。事件が連鎖して、さ」


気だるそうに、返答するツナギ姿の青年。


黄泉川「随分眠そうじゃん。昨日は平日なのにニャンニャンか?」

黒妻「……セクハラっすよ」


ニヤニヤ問題発言をするセクハラ教師。
黒妻が知り合いの風紀委員と付き合っている事を知っている。このネタで絡んでくるのは今に始まった事ではない。


黒妻「違います。昨日は徹夜(オール)で……ふぁあぁ」

黄泉川「今日仕事なのに別のバイト?」

黒妻「……麻雀」


呆れる。コイツは駄目大学生か、と黄泉川は苦笑した。


黄泉川「しっかし、起きてたんなら電話に出るじゃんよ」

黒妻「朝気付いたんすよ。酒入ってたんで……御蔭で二日酔い。身体痛いのなんのって」

黄泉川「鞭打ってでも仕事しろ……てか、上条混ぜて飲んでたのか?」

黒妻「……上条『は』混ざってません」


真上の住人は麻雀出来ないですから、と付け加えた。
そういう問題では無く、未成年を酒の場に置くなと内心注意したかったが……その程度のヤンチャについて、黄泉川は寛容だった。

さておき、まぁいいと数枚の写真を取り出し渡した。無言で受け取った黒妻は、それをじっくり見つめる。


黒妻「……コレは?」

黄泉川「何だと思う」

黒妻「……駒場、か」


故人である、昔馴染み……の恰好をした〔何か〕。

黄泉川は昨夜起きた話を彼に説明した。風紀委員でも警備員でも無い黒妻に秘匿事項を話すのは信頼足る人物故である。
因みにこの件については警備員の中でも緘口令を敷いており、秘匿中の秘匿だった。


黒妻「コイツが、犯人を……」

黄泉川「らしいじゃん」

黒妻「……駒場が、生きてる?」


この様子だとコイツも知らない様だ。自分の宛ては外れたなと、写真を回収した。
52 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 00:57:29.64 ID:uCLf8oVy0
黄泉川「まったくもって分からないじゃん。墓を掘り返す訳にもいかないし」

黒妻「……」

黄泉川「死人が蘇る……在り得ると思う?」

黒妻「……オレにそれを聞くんすか」


苦笑する黒妻。自分は一度『死んでいる』。


黄泉川「オマエと同じケースだったらだが……」

黒妻「まぁ出てきても不思議じゃないでしょうね。でも、それだったら死体鑑定した医者に話聞いた方が早いんじゃねぇのかな」


自分の場合は死亡したと思われた後、誰も追求はしなかった。故に冥土帰しに助けられた後、身を隠す事が出来たのだ。
書類上は死亡扱いにしてもらい、ゾンビの如くフラフラ放浪していた……その為に今現在、住民票・免許・保険等々厄介な事になってはいる。


黄泉川「むぅ……」

黒妻「兎に角、オレも気になります。半蔵と一緒に捜索しますよ」

黄泉川「……了解じゃん。何か分かったら連絡しろ」

黒妻「そちらもね」


溜息を吐きながら、天井を仰ぐ黄泉川女史。


黄泉川「あとは冥土帰し(先生)だけか……」

黒妻「……しかし」

黄泉川「ん?」


率直な感想を述べる。


黒妻「首から上が無いってのは、亡霊みたいっすね……不気味だ。何で写真に写って無いんだ?」

黄泉川「ああ。理由は分からないじゃん。ただ、『マスク』していたらしいね」

黒妻「マスク?」

黄泉川「白い神々しいマスクだと」

黒妻「……」


苦虫をかみつぶしたような表情を見せる青年。


黒妻「何で、マスクなんかを」

黄泉川「身元を隠すって事以外、思いつかないじゃん」

黒妻「……下らねぇ。堂々とやりやがれっての」


胡散臭いやり方は嫌いだと、男は毒づいた。
53 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 01:00:32.43 ID:uCLf8oVy0
黒妻「目的は何なんすかね」

黄泉川「分かんない。でも……多分、また出てくるじゃん」

黒妻「それは、如何して?」

黄泉川「仮説だけど……駒場の真似事をする輩かもしれないじゃん」


つまり……無能力者(力無き者)の為、理不尽な暴力から彼らを救うという意味での活動。

一部の人間から言わせれば、駒場利徳という男は無能力者のシンボルだった。
やり方は如何在れ、極端にいえば『英雄』活動をしていたということにもなるだろう。

ただし警備員側からしてみれば心無い能力者(力有る者)と同じ、暴力でしかない。見逃してはおけないのだ。
この街で警察行為をする為には、警備員か風紀委員になるしかない。
それ以外は例え、自警団活動をしているスキルアウトであっても……犯罪者である。これが学園都市の一般論だ。


黒妻「……黄泉川さんは、理解ある方っすけどね」


黄泉川愛穂という人物は、自警団活動について肯定派だった。
都市外(日本)でいう、桜田組(警察)とその他の組(ヤクザ)の関係。
公的に認定された組織か、そうで無いかの違いに過ぎない。そういう解釈も有る。


黄泉川「何にしろ通り魔だけでなく、犯罪組織も潰してるじゃん……重要参考人として話を聞かなきゃいけないじゃんよ」

黒妻「参考人ねぇ」

黄泉川「今後如何出るかだが……」

黒妻「……黄泉川さんの読みで合ってそうですが」


駒場の真似事。


黄泉川「……」


口には出さないが、実はこの男を疑っていた。しかし……この様子だとその雰囲気では無い。


黄泉川「……個人的には、取っ捕まえたくないかな」

黒妻「は?」

黄泉川「まぁ今後次第だけどね」

黒妻「そうですか……でもどんな大義を掲げようと、犯罪者は犯罪者でしょう」

黄泉川「それでも、じゃん」


どうやらこの男は【仮面の人物】を嫌っている様だ。まぁ無理もない。亡き友人の姿を模した【何者】かが、好き勝手仕出かしたのだ。
【それ】が駒場本人ならまだしも……賛同できるものではないだろう。


黄泉川「とりあえず以上じゃん」


煙草を消し、職員室の方へ戻る黄泉川。黒妻は一人、コーヒーを啜った。


黒妻「捕まえたくない、か……」


そんな生温い言葉を言う様になったらアンタも終わりでしょう、と……呆れ半分、感謝半分で毒づいた―――
54 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 01:06:40.61 ID:uCLf8oVy0
 ―――翌日、PM06:30、学園都市第7学区、とあるアパート(黒妻宅)……



黒妻が家に帰ると、既に電気が点いていた。
自分の後輩……彼女が夕飯を作っている。他には妹・娘分の少女達が二人、テレビの前で屯していた。


黒妻「ただいま」

固法「おかえりなさい」


エプロン姿の彼女が料理の手を止め家主の上着を受け取る。それから風呂が沸いている事を告げ再び火の下へ戻った。
黒妻がグダグダと風呂へ向かおうとした時、二人の少女達が黒妻へ挨拶する。


那由他「おかえりー」

絹旗「超お疲れ様です」

黒妻「ん。打ち止めちゃんは?」

那由他「彼が迎えに来たよ」


彼とは打ち止めの保護者係……黙ってれば何の危険性も無い核兵器くんの事だ。


黒妻「そっか……最愛ちゃん、今日『バイト』は?」

絹旗「入ってません。まぁ夜中に『緊急』が入らない限りは超暇人です」

黒妻「そりゃ僥倖。二人とも泊ってくのか?」

絹旗「姉貴さんが泊るなら、そうしようかと」

那由他「でも固法さん、明日学校でしょう? 私達は『特殊学級』だから、問題無いけど」

黒妻「あいよ」


学校というシステムに疎遠な子供達だ、と黒妻は考えた。
絹旗は付属の『研究所』にレポート提出するだけで、那由他は所属の『教育局』の手伝いをすれば単位を貰える。
因みに打ち止めちゃんは黄泉川さんの保護下で学業免除扱い、香焼は成績優秀生と定期交換留学生という名目らしい。

普通の学生なら羨ましいと考えてしまう所だが、元不良的には割とどうでもいいと思えてしまった。


那由他「兄さんは海外だって」

黒妻「知ってる。今回は……何処だっけ? イギリス?」

絹旗「はい。そう言ってました」


此処にいないもう一人の『家族』。多分、この中で一番『非日常』的な存在かもしれない少年。


黒妻「英国って特に土産無ぇからなぁ」

那由他「期待してるんだ……」

黒妻「まぁな。前の土産良かったなぁ……香港からの紹興酒」

絹旗「兄貴さんしか飲めませんって」


黒妻以外未成年である。固法は飲めるが……子供達の前で飲む訳にはいかない。


固法「せんぱーい。お風呂入っちゃってくださーい。上がったらご飯にするんで」

黒妻「ん。あいよー」


踵を翻す。少女達も立ち上がり、固法の手伝いに足を運んだ。
55 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 01:08:43.23 ID:uCLf8oVy0
黒妻が風呂場の引き戸を開いた瞬間、こっそり固法が近づいてきた。


黒妻「どうした。一緒に入りたいってか?」

固法「……馬鹿」

絹旗・那由他「「……わぁお」」


耳年増な少女達の目を気にしながら小さく告げる。


固法「……後で、お話が」

黒妻「改まって何だよ」

固法「……兎に角、あの子達が帰ってから」


それだけ言い残し、台所へ戻って行った。
少女達にニヤニヤからかわれているが、何処か深刻そうな表情が窺える。


黒妻「……はいはい」


多分、黄泉川さんと同じ事を言われるだろうと内心苦笑し、浴槽に身を下ろした。




 ―――翌日、PM07:00、学園都市第7学区、とあるアパート(黒妻宅)……




一同『いただきまーす』

固法「召し上がれ」


本日の献立はチンジャオロースに海鮮サラダ、そしてシジミの味噌汁。


禁書「もぐもぐ……チンジャオロースは長谷苑かな?」


そして何故かいる、上の階の居候。


黒妻「……今更だけどよぉ」

固法「ま、まぁまぁ」

絹旗「超図々しい貪欲シスターですね」

禁書「ん! もあい! 私は敬虔なシスターなんだよ! そんな事言ってると罰が当たるかも!」

絹旗「罰が当たるのはドッチでしょうね。あと『さいあい』ちゃんだっつってんでしょうこの超ドベシスター」


因みにこの修道女―――禁書目録(インデックス)の自称保護者である神裂火織から香焼を通して幾らか食費を貰っている。
そうでなければ……数日と足らずで金欠になるだろう。
56 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 01:12:37.77 ID:uCLf8oVy0
さておき居候では無く、上の家主の方が気になった。


禁書「とうまはまだ帰って来ない」

那由他「……最終下校時間過ぎてるけど」


箸を停めムスッとした表情に変わる禁書目録。


禁書「なんでも……『ビリビリに捕まったから遅くなるー!』だって」

絹旗「また超電磁砲ですか……暖簾に腕押しなのに、懲りない人です」

那由他「本来彼女、補導されても可笑しくないくらい不良行動してるよね……」

固法「あはは……ちゃんと注意しとく」


一同苦笑。虚空から『不幸だー!』と心の叫び声が聞こえた。

それから暫く楽しい食事が続く。各々の近況等を話しつつ、話題が無くなった所で、禁書目録が新しい話題を振った。


禁書「むぐ……そういえば、昨日通り魔捕まったみたいだねー」


刹那の一言。風紀委員二人の手が止まる。


絹旗「そういえばテレビで超やってましたね。ニュースそればっかりです」

黒妻「……」

絹旗「その事件で、二人は忙しかったんですか?」

固法「うーん……そこまで、仕事は回って来なかったかな」

那由他「私も……現場調査くらい」


適当な返答をする風紀委員。黒妻は我関せずで、飯を喰らっていた。


禁書「うーん……警察組織がしっかりしてるこの街でも、悪い事する人は悪い事するんだね」

絹旗「逆ですよ。悪い事する人が沢山いるから、警察組織が超しっかりするんです」

黒妻「言い方悪いが、馬鹿にでも潜在性がありゃ能力(武器)与えられっからな」


個人の人間性(人格)と能力の強度(レベル)は比例しない。
そして一種の都市論。一つの社会として機能させる為には、墓場と牢屋が必要である。


禁書「それでも、立派な警察が多いかも。お腹空いて倒れてたら無償でパンを恵んでくれる警備員のお姉さんがいっぱい!」

絹旗「……超呆れます」

那由他「憐れみだって、それ……アナタ宗教人なんだから、そこんとこと私達より詳しいでしょ」

禁書「詳しいけど、普通じゃないよ」


不思議な回答。


禁書「この街っていうか……この国は困ってれば衣食住が提供される。違う?」

那由他「え?」

禁書「無償とは言わないけど、それに近い形で。凄いよね。無宗教の国なのに」

絹旗「む、むしゅー? ……そ、そうですね! 日本は超凄い国なんです!」


首を捻る少女二人。絹旗と那由他は天才と呼べるほど頭が良いが『大人』という訳ではない。
難題な数式や化学式はスラスラ解けても『社会』的な事象・仕組・知識については年相応だった。
57 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 01:15:28.40 ID:uCLf8oVy0
因みに黒妻と固法は『そういえばインデックスちゃん(この子)って日本人じゃ無かったな』といった顔。


黒妻「だが……インデックスちゃんが思っているより、福祉は普通だぞ」

禁書「そうなの?」

固法「インデックスちゃんが見てきたのは殆ど平和な所でしょ? 第十学区のストレンジとか見てみたら、考え方変わるかもね」

禁書「へぇ。この街でもストレンジなんて在るんだ」


捨て去られた街。


絹旗「私にとっては研究所のイメージしかないですけどね……あと死体処理場」

那由他「私も実験施設と墓地かなぁ」

黒妻「……別に行く必要は無ぇよ。伊達や酔狂で住む場所じゃねぇからな」

固法「……」


では、そこに居た貴方は何者なのか……と固法は無粋な質問を心中で考えてしまった。


禁書「それでもまぁ、アフリカや南アメリカの浮浪層よりはマトモな生活が出来てると思うよ。警察も優秀だし」

黒妻「……その警察が、今回の事件も解決してくれたっと。これで平和だ。良かったな」

固法・那由他「「……」」


何とも歯痒い警察組織所属の二名。


禁書「んー、でも何で今更捕まったんだろう。犯人がドジしたのかな……お腹空いて倒れたとか」

黒妻「オマエじゃねぇんだからよ。ま、囮捜査とか何かじゃねぇのか? もしくは『力相応』以上の相手に喧嘩売ったとか」

絹旗「私や那由他に喧嘩売ったらそういう派目になりますね」

那由他「あはは……」


那由他に手を掛けたら手を『捕縛』され、絹旗に手を出したら手を『潰されて』しまうだろう。


禁書「弱い者虐めばっかしてた通り魔が、今回に限って力量間違える?」

黒妻「ははは。インデックスちゃん、中々面白い観察眼持ってるな。シスターやめて探偵にでもなったらどうだ」

禁書「むぅ。別に誰でも考える事なんだよ」


確かに少し考えれば分かる事である。


固法「……兎も角、事件が終わったからといって遅くまで遊び歩いちゃダメよ。模倣犯出る可能性だって有るんだからね」

那由他「そうね。一応最終下校時刻っていうルールがあるんだし」

禁書「私は自宅警備員だから問題無いんだよ!」

絹旗「……自慢できませんって、それ」


一同苦笑。こうして黒妻家の夕食は幕を閉じた―――
58 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 01:18:56.31 ID:uCLf8oVy0
 ―――翌日、PM07:45、学園都市第7学区、とあるアパート(黒妻宅)……



カチャカチャと食器を洗う音。ガヤガヤとバラエティ番組の賑やかな音。バタバタと上の住人が帰ってきた音。
それをBGMに黒妻は一人、ベランダで煙草を喫っていた。紫煙が星の見えない夜空に消える。平和な一時。
テレビ番組のエンディングテーマが聞こえ出した頃、カララとベランダの窓が開いた。


絹旗「兄貴さん、ビール飲みますか? だそうです」

黒妻「んー……要らない」

絹旗「了解です」


そっけない返事をし、煙草を消す。


黒妻「インデックスちゃん、帰ったか」

絹旗「はい。超図々しく幻想殺しの夕飯とマーライオンの餌を持って」


スフィンクスだろとツッコミを入れてやる。


黒妻「そういえば……仕上、何か騒いでなかったか?」

絹旗「何かって?」

黒妻「さっきの話」

絹旗「ああ……まぁそうですね」


途端表情が変わる少女。


絹旗「何やら超不可解な事件らしいですから」

黒妻「何処まで情報入ってる?」

絹旗「私はそこまで聞かされていません……麦野と浜面は色々知ってるみたいですけど」

黒妻「……謎の人物についてか?」

絹旗「っ……まぁ兄貴さんならそこまで知っててもおかしくないって、浜面言ってましたね」


駒場絡みなら黄泉川に聞かされていても不思議ではない、という意味だろう。


絹旗「私が教えられるのは兄貴さんが知っているラインまでです。それ以上は麦野に『干され』ます」

黒妻「……■■女子学校」

絹旗「殆ど知ってるんじゃないですか」


ハハハと乾いた笑みを漏らす。


黒妻「オレも仕上と同じルートから聞かされたよ」

絹旗「成程。兎に角、身体強化能力者ばりの超暴走だったそうですよ。組織潰しの方は」


暴走ねぇと、黒妻は呟いた。


絹旗「監視カメラの映像を入手しましたが……戦闘スタイルは私と似ています」

黒妻「というと?」

絹旗「基本銃弾には当たりませんが、当たっても無傷。それから超ゴリ押し」

黒妻「ふーん」


というか見た目可愛らしい少女が戦闘スタイルって如何なのだろう。
59 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 01:21:30.20 ID:uCLf8oVy0
絹旗「それから、人質を盾にされた際の対処法が超凄かったですね」

黒妻「人質が盾になってるのにか?」

絹旗「心理戦のプロというか……いや、違いますね。アレは超異常です」


むぅ……と小さく唸る少女。


絹旗「可能であれば投げナイフの様なモノで正確に奴らを伸しますが……それでも上手く人質を取る連中がいます」

黒妻「だったら人質取らせる間も無く片付けろっつの。まだまだだな」

絹旗「いや、殆どは人質取らせる前に対処してましたよ。天井からの奇襲だったり、奴らの仲間を逆に人質にしたりって」


割と悪党だなと毒づいき、新しい煙草を咥えた。絹旗は楽しそうに話を続ける。


絹旗「それでも二回程、人質取られてました……さて問題です。犯人側としてその人質を殺されたら如何なるでしょう」

黒妻「盾が消えるな」

絹旗「そう! 結局、警察組織が出来ないヤクザ者の手口なんでしょうけどね。私や麦野なんかもそうするでしょうし」


そんな言葉は聞きたくないのだが……今は目を瞑ってやる。


黒妻「へぇ……だけど自暴自棄で人質殺そうとする輩もいるんじゃねぇの?」

絹旗「そこも超凄かったんですよ! とりあえず脅しを掛ける。それで逃げ出した弱腰から討伐」


何故か目を輝かせて説明する可愛い現役『殺人鬼』。同業というかそれに近い人物の話がそんなに面白いのだろうか。
……歪んでる。残念だ。


絹旗「要は人質を人質として機能させなきゃいいんです! ミスターXが、先に人質を殺しちゃいますから!」

黒妻「駄目じゃねぇか……最低だろ」

絹旗「だーけーどー! 死んでないんですよねぇ、コレが!」


右手で銃を構える真似をする絹旗。


絹旗「超早打ちでズドン! ズドン! でも……ペイント弾。塗料超多めの!」

黒妻「何でだよ」

絹旗「血飛沫が超沢山出るんですよ。平静じゃない輩はそれで怖じ気づきます。後は同じ要領で……成敗!」


一転、シャドーボクシングの真似事。


絹旗「他には爆発しない手榴弾でビビらせてましたね……いやぁ、ダークヒーローみたいでした」

黒妻「……馬鹿馬鹿しい」
60 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 01:26:59.24 ID:uCLf8oVy0
咥えたままの煙草に火を点け、感想を述べた。


黒妻「もっと凶悪な連中や、ホンマもんの軍属なんか相手にしたら如何すんだかな」

絹旗「もぅ。浪漫がありませんね……」

黒妻「浪漫で正義の味方気取ってる輩なら堪んねぇよ。兎に角、そいつぁ完璧じゃない」

絹旗「そりゃ一方通行みたいな完璧超人なんて、そうそういませんよ」


アイツもアイツで人質取られりゃ苦戦するだろうとツッコンでやった。

さておき、人質を取る犯罪者には大きく2パターンある。
一つは苦し紛れ時間稼ぎの甘ちゃん思考。もう一つは自暴自棄自爆覚悟の心中野郎。

前者は如何とでも対処の仕様出来る。しかし後者はどうしようもない場合が多い。


黒妻「やるなら……徹底的にだな。前提から覆さなきゃ」

絹旗「前提?」

黒妻「人質を作らせない。つまり犠牲者が出ない」


理屈は簡単。だが事前事後の関係も有る故、屁理屈になるやもしれない。


絹旗「そんなの超ケース・バイ・ケースですよ」

黒妻「だけどそれを見込んで動かにゃ……仮にも偽善活動するならな」

絹旗「偽善って」

黒妻「心持だろ。最愛ちゃんも……『表』の世界で生活したいって考えるなら、少しは理解しろ」

絹旗「……むぅ」


首を捻る少女。

この子は……『殺人』で生計を立てる様育てられた故、歪んだ生命倫理を持ち合わせている。
戻すには多少強引な矯正が必要だろう。

簡単な事を難しく悩む少女の頭を、男はワシワシと撫でてやる。


絹旗「私が……表に出れる日が有るんでしょうか……」

黒妻「ああ。きっとな」


ただし、今のこの子のままではいきなり表で生活させるのは危険かもしれない。少々『日常』を叩き込まねば……
一寸後煙草を消し『戻るぞ』と絹旗の背中を押して、室内へ戻った―――
61 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 01:30:18.50 ID:uCLf8oVy0
 ―――翌日、PM09:00、学園都市第7学区、とあるアパート(黒妻宅)……




パタパタと忙しなく固法が明日の弁当の準備をしている。どうやら今日は帰るらしい。


固法「すいません。明日、風紀委員の朝番で」

黒妻「ああ。大丈夫だ」


少女達は帰り支度の最中。


固法「朝食はシリアルでいいですね。あと、お弁当はタッパーにしてきます」

黒妻「ん」

固法「インデックスちゃんには冷蔵庫の炒飯チンするように書き置きしました」

黒妻「……助かる」


米三合分の炒飯に一番時間を喰ったのは言うまでもない。


固法「それからさっきの件ですが……」

黒妻「……多分、黄泉川さんと同じ事言うんじゃねぇのか」

固法「……やっぱり、言われましたか」


これで共通の情報だ。


固法「率直に……如何します?」


感想では無く、これから如何動くつもりか問うてきた。


黒妻「民間人のオレが勝手に動いていいのか?」

固法「止めても【駒場くん】の事、探るんでしょう? だったら事前に聞いておきます」

黒妻「……とりあえず、半蔵と一緒に動くよ」

固法「じゃあ何か分かったら連絡を」


真剣な眼差し。そうか、と相槌をうった所で少女達が歩み寄ってきた。


那由他「準備できました」

絹旗「浜面が迎えに来てくれるそうなので、大通りから二人の事も家まで送ります」

固法「ありがと。じゃあ今日はこれで」

黒妻「おう。気をつけてな」


少女達が仲良く玄関に向かう。
62 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 01:34:12.19 ID:uCLf8oVy0
黒妻「……美偉」

固法「はい」

黒妻「深追いし過ぎるなよ」

固法「……分かってます。先輩も」

黒妻「ああ……それから」


一寸置いて、告げる。


黒妻「今のオマエは、何だ?」

固法「今の……私は……――」


暫し考える。そして……


固法「――……風紀委員です。先輩」


語気を強めて宣言した。


黒妻「おう……それでいい。立場を間違えるなよ」


黒妻は彼女に念を入れる。
知人関係……彼女彼氏云々の前に自分は風紀委員であると言う事を忘れてはいけない。


絹旗「姉貴さーん」

固法「あ、うん。今行くー」


少女達をこれ以上待たせる訳にはいかない。


固法「それじゃ……先輩、また明日」

黒妻「また明日」


少女達の別れの挨拶も聞こえた。


黒妻「……」


部屋に、一人。


黒妻「……オレも大概、道化だな」


一日を振り返ってみる。どれだけの人を騙しただろう。


黒妻「偽善活動、か……」


大の字でベットに横たわり、先程自分が溢した言葉を反芻する。

彼―――駒場利得の行動は偽善なんかではない。ましてや独善でもない。

ふと、ベットの下に手を伸ばす。そこにあるのは、透視能力者(自分の彼女)でも中を覗けない頑丈なトランクケース。
それを開き、中から……


黒妻「……ダークヒーロー、ねぇ」


仮面を取り出した。
63 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 01:37:02.17 ID:uCLf8oVy0
独り善がりでも、自分勝手でも、自慰行為でも、偏見的でも、何であっても、やると決めた。行動に移した。
投げ出す事は無い。彼の志を継ぐ為に、自分は奔る。


黒妻「絶対に……妥協しない」


暫時、目を瞑った……



―――ありゃりゃ。お眠かにゃ?



耳に障る声。


黒妻「……何だ」

土御門「ベランダの鍵開けっ放とは不用心だぜぃ、センセ」


道化師。


土御門「身体の具合は如何かにゃ?」

黒妻「……大丈夫な訳無ぇだろ」


最新モデルとはいえ、使用者の身体に甚大な負担が掛る発条包帯を累計1時間以上フル稼働させたのだ。
本来なら数週間動けなくなる程の筋肉痛。もしくは最悪、筋断裂を起こす危険性のある行為。

事が終わった後、急いで病院に行って理学療法を受けていなければ如何なっていた事やら……


土御門「まぁまぁ。結果オーライだにゃー。『マスク』も役に立ったみたいだし」

黒妻「まぁ『仮面』の頑丈さは認める」


歩く教会、といったか。
銃弾は勿論、どんな能力者の能力(チカラ)も受け付けない。
精神・五感干渉能力や広域能力であっても、それが『仮面』で覆われている部分(耳、目、鼻、口)である限り無効になる。

要は脳、そして首から上が無敵状態といった所だ。


黒妻「だがなぁ気軽に言ってくれるよ。痛いっちゃ痛いんだからな」

土御門「ふふーん、気軽ねぇ……残念ながら俺はその『痛み』が分かる人間なんで文句付けれるばい」


そういえばコイツは、無能力(レベル0)だが『肉体再生(オートリバース)』持ちだったか。
64 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 01:39:26.31 ID:uCLf8oVy0
黒妻「ヒーリングファクター……確かに便利だな」

土御門「いやぁ再生するっつっても激痛なのよー、コレが」

黒妻「ははは……で? 本題は?」

土御門「んー……」


口籠る道化師。


土御門「ぶっちゃけ、どれくらい連続行動可能?」

黒妻「昨日の時点で、限界はまだ先だったな」

土御門「ふむ……」


一回の行動で累計フル可動3時間。休憩は最低でも二日といった具合だろう。


土御門「……納得かにゃ?」

黒妻「……駄目だな」


フル可動時間の延長はいらない。だがせめてインターバルのスパンを短縮したい。


土御門「発条包帯抜きで行ってみる?」

黒妻「そうだな。相手見て決めた方が良いかもしれない」


昨日の通り魔程度であれば、発条包帯のサポートは必要無かった。
だがその後の裏組織潰しの際は、やはり対物量戦だったので保険は必要だと思う。

ただ相手に関わらず……発条包帯で、ガタイを『駒場(巨躯)』っぽくしている点もある。
『亡霊』作戦でもある為、外すに外せない。


土御門「ふむふむ。じゃあ警備員の新型チョッキを使ってみるかい?」

黒妻「成程……物は試しだな。準備してくれ」

土御門「あいよー」


土御門は、夜なのに何故か外さないサングラスをクイッと持ち上げ、何やらメモった。


土御門「うっし。OK! それじゃあ明日までには持ってくるぜぃ」

黒妻「助かる」

土御門「いいのいいの。センセには『働いて』もらうからにゃ」


ニシシと笑う。

この活動を行う上で、土御門(コイツ)との約束は2つ。
一つは表と裏の『中間』で起きる事件を捜査。
もう一つは……土御門舞夏(義妹)に『何か』あったら、イの一番で『如何にかする』こと。


黒妻「そういえば……雲川から連絡は?」

土御門「……今は無い」


急に語気が無くなる。そんなに嫌いなのか……

因みに雲川(アイツ)との約束も2つ。
一つは『原石』とやらが事件を起こした場合、オレが止めに入る事。
もう一つは『とある理事』の、『公』では無い会合で警護をする事。
65 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 01:40:36.56 ID:uCLf8oVy0
土御門「……悪いが、俺はアイツを信用できない。絶対に」

黒妻「半蔵もか?」

土御門「服部は……今は何の問題もない」


服部―――半蔵。本人はそう呼ばれるのを嫌がるが、とある銘家(伊賀)の統領息子らしい。

半蔵との約束事も、これまた1つ。
一つ、半蔵のチーム(スキルアウト)の縄張り(シマ)自警活動。
そして……『駒場利得』という男の『恐怖』を、再度、犯罪者共に見せつける事。

半蔵にしては珍しく大胆な考えだった。それだけ『駒場』の自治活動における存在の大きさが名残惜しいのだろう。


土御門「兎に角……賽は転がった」

黒妻「ははっ。目は沢山有りそうだがな」

土御門「理事長殿も関与しないらしい。センセさん……やるからには徹底的にだ。誰にも出来ない事をしてみせろ」

黒妻「……ああ」


絶対に、妥協しない。
警察組織とも暗部とも違う『自治』をしてみせる。


土御門「良し……じゃあ、また来るにゃ。しっかり休めー」

黒妻「おう。お休み」


微笑み消える道化師。


黒妻「……頼りにしてる」


覚悟は決まった。『未練』は無い。一つ『後悔』があるとすれば……


黒妻「ごめんな……美偉」


最愛の者への『嘘』だけだった……―――
66 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました [saga]:2011/04/03(日) 02:04:06.76 ID:uCLf8oVy0
  <おまけっ!>


 ―――とある日、時刻不明、学園都市第7学区、とある病院地下・とある部屋……



垣根「出番がー……無いよー……」ルールルー・・・

テレスティーナ「ハァ?」ポカーン・・・

垣根「まぁ期待してないけどさぁ……何だか伏線回収作業に忙しいみたいだしね」ハァ・・・

テレス「……意味分かんないわよ」

垣根「アニメでオレ出んのは2〜4クール後の3期だろうし」

テレス「間に超電磁砲の2期入るかもね」フフッ

垣根「……オマエは出ねぇよーだ」

テレス「分かんないわよ? 最近『木原』ブランド人気じゃない」クスッ・・・

垣根「何調べだよそれ……ハァ」グデェ・・・

テレス「何かホントに元気無いわね。気味悪い」ジトー・・・

垣根「うるへぇ……新約まだ読めないし、地震で未だに風呂入れないし、昨日まで夜警連勤だったし」

テレス「それ、>>1の事でしょ」

垣根「スレ二つも立てる無謀っぷり……半月ROMってたから溜めて入るんだけど……先に新約見ないと気が済まない」

テレス「そこまで言うなら通販で買いなさいよ」

垣根「来ないんだよぅ……宅急便サービスがぁ……本屋探して歩き回るしかねぇしよー……」ハァ・・・

テレス「あっそ……ま、頑張りな」タラー・・・

垣根「……」ジー・・・

テレス「何よ」

垣根「買い物付き合って。デートキボンヌ」

テレス「寝言は寝て言え」

垣根「つまんねぇ女郎だなぁ……しゃーねぇか……んじゃ次回予告兼アンケート」ビシッ



@引き続き【仮面】の自警活動。希望するシュチュあればよろしくー。

A浜面のトレーニング手伝い。兄貴が浜面と特訓するよん。

B雲川の御使い……謎の仕事(未定)。

Cその他。リクエスト。



テレス「ただ『所用』で送れるかもしれません。御了承を」

垣根「ま、コッチはなるべくシリアス&エロ路線で行くかもしれないからな」

テレス「それでは例の如く感想質問意見罵倒提案リクエスト等々、コメントお願いします」

垣根「それじゃあ、また次回!」ノシ!
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/04/03(日) 02:31:52.44 ID:Gam+/YZgo
Aで
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/03(日) 10:28:04.14 ID:zjFu+BuDO
乙! いやぁ、そういえばナユタンもチート性能だったよな。
アンケはAで。
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/04/03(日) 22:04:41.38 ID:qIfHG9c10
A
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/04(月) 09:25:11.47 ID:vv+DNF46o
4.香ちゃん危機一髪(勿論性的な意味で)
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/04/05(火) 14:32:53.88 ID:IEsvbi3ko
しばらく来てないと思ってたら来てた
おかえりなさいから見返してくる
アンケートはAで
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/05(火) 23:00:57.85 ID:MPwiCTbm0
.┓┏.
73 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/06(水) 23:03:52.41 ID:CBarEwko0
 ―――とある日、時刻不明、学園都市第7学区、とある病院地下・とある部屋……




垣根「こんばんは。やっと新約読めました。アンケの結果はAになりそうですね……しかし今回は書き溜めしてた短編を投下します」キリッ!

テレスティーナ「……オマエはまたメタい事を」ハァ

垣根「っせーし! どうせ本編で二度と出番無ぇんだから二次創作くらい好き勝手やらせろし!」ウガー!

テレス「はいはい……私はもしかしたら有るかもね」ニコッ

垣根「あー! ウゼぇ! 無ぇよ! 絶対ぇ無ぇよ! オレらは脱落組だよ!!」ベー!

テレス「……はいはい」タラー・・・

垣根「ったく……こほんっ。今回の主役は……何と! まさかの! 御坂美琴です!」ジャーン!

テレス「黒妻も固法も超電磁砲キャラなのに『先輩』シリーズで超電磁砲主役で出るの初めてじゃないかしら?」アハハ

垣根「そりゃまぁ>>1が『上条美琴』見飽きて書きたくないって思ってるからだろ? 一番メジャーなのに」

テレス「でも今回カミコトなんだろ?」

垣根「……良いの! 色々あって『先輩シリーズ』だから良いの!」ウガー!

テレス「あっそ。とりあえずレス返すわね―――」サラッ


レス返信!
>>70・・・『アンジェレネ・わふたー』まで御待ちを。

>>72・・・Yes,he's.


テレス「―――以上」

垣根「因みに、今回は22巻直後の話になります……オレ、またハブられた……」ショボーン・・・

テレス「ウザぇ……とりあえずさっさと投下しなさい。私とアンタの絡みなんて誰も見たくないでしょ」

垣根「垣根×テレスティーナとか誰得だよ! 両方ともラスボスコンビってかっ!?」ハァ・・・

テレス「勝手に言ってろ……じゃあ、どうぞ」ペコッ

垣根「あー! おーれーのーせーりーふーとったーぁー!」ギャーギャー!

テレス「……不幸だわ」ヤレヤレ・・・

垣根「うー……まぁいいや。所々に入る【―――】はオレの歌声だと思ってね!」キラッ★

テレス「……御坂美琴本人だと思って下さい」ハァ・・・



では投下!
74 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/06(水) 23:08:15.72 ID:CBarEwko0
 ―――十月三十日、PM10:30、ロシア、とある小さな漁港……





寒い。





それだけしか、考えられない。


御坂10777号「……御姉様(オリジナル)」ザクザク・・・


妹達(シスターズ)の一人が歩み寄って来る。此処、ロシアで合流した妹。
先程までは777(スリーセブン)なんて洒落た名前をつけて呼んでみたりしてた。

しかし、御姉様と呼ばれた少女―――御坂美琴はその声にピクリとも反応しない。


御坂777「此処に居ても、無意味です。一度移動しましょう、とミサカは提案します」ピタッ

御坂「……」ボー・・・

御坂777「ノボシビルスクの変た……20000号が援護に来ました。近くの農村で仮屋を確保したそうです、とミサカは奴のマトモな働きに――」

御坂「……ねぇ」ボー・・・

御坂777「――に驚きつ、つ……何でしょう」チラッ


地面にヘタレ込んだまま、振り向かず、呟く。


御坂「……此処の海って……どの位、深い?」ボー・・・

御坂777「っ!!? お、御姉様ッ!!」ギョッ!?

御坂「……水温は、どれくらい?」スタッ・・・テクテク・・・

御坂777「何を……ッ!!」バッ!


幽鬼の様に海の方へフラフラ歩き出す御坂。
沈んだと思われる『彼』を、無謀にも泳いで引き上げる為か……もしくは後を追う為に。


御坂777「馬鹿な真似は止めて下さいっ!!」ガシッ!!

御坂「……」ピタッ・・・


妹に掴まれ、大人しく……というよりも、無気力故、あっさりと止まる姉。


御坂777「分かっているでしょう……死ぬ気ですか……」グイッ・・・

御坂「……っ……ぅぅ……」クタッ・・・


今の御坂の状態は、何を仕出かすか分からない。
777は急いでセーフハウスを確保している20000号に連絡を入れた。


御坂777「っ……此方、777。二万号(末っ妹)……直ぐ其方に向かいます」ボソッ・・・

御坂末妹『緊急事態でも? とミサカは777に尋ねます』エ?

御坂777「御姉様が、拙い……とミサカは簡潔に説明します。兎に角、シャワーと寝巻きとベットの準備、お願い」ボソッ・・・

御坂末妹『へ、あ、うん。了解……あとセロr……一方通行と運営様が無事との報告がミサカの下に届きました』サラッ

御坂777「そうですか、良かった……とりあえずオーバーと、ミサカは連絡を切ります」スッ・・・


此方とは別に動いていたらしい組の安否が取れた。
それはそれで嬉しい事ではあるのだが……
75 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/06(水) 23:12:28.20 ID:CBarEwko0
御坂「ぁ……っ……うぁ……うううぅ……馬鹿ょ……ああぅ……」ポロポロ・・・


小さなゲコ太の限定ストラップを握り緊め、胸に抱える姉の姿を見詰めると、素直に喜ぶ気持ちが湧いて来なかった。


御坂777「……御姉様。行きましょう」ギュゥッ・・・

御坂「うぁあぁ……っ……アイツ、が・・・・・ぅぅ……当麻がぁ……」ポロポロ・・・

御坂777「ッ……行きましょう」グッ・・・


悲しいのは同じ。だが、悔しいが……自分と姉ではその『大きさ』が違う。
今は自分がしっかりするしかないと、777は姉をそっと抱き、ヘリまで歩き出した……―――

















       【 ――貴方は……今どこで何をしてますか……この空の続く場所に居ますか……―― 】

















 ―――数週間後、とある土曜日、お昼過ぎ、学園都市第7学区、風紀委員(ジャッジメント)第一七七支部……




第三次世界大戦終了後、世界、そして学園都市は何事も無かったかのように回っていた。
此処、風紀委員第177支部もいつもと同じように、自分達の溜り場と勘違いした女子中学生が集まって駄弁っている。
少し前までは治安維持の為、警戒レベルを上げて忙しなく動いていた風紀委員も最早普段と変わらない風。

今はお昼ご飯を終え、呑気にお茶など啜っていた。


白井「―――……しかし、お姉さま。戦争中(今回)は馬鹿な真似をしてくれましたの」ジトー・・・

御坂「え!? あ、いや、その……あははは」タラー・・・

初春「皆心配したんですよ? 都市中探しても居ないって大騒ぎで。白井さんなんて今にも死にそうな顔してましたからね」モー・・・

御坂「ごめんごめん。ちょっと、ね……」ポリポリ・・・

佐天「しっかし、ロシアに飛んでたなんて。もしかしてアレですか! 超能力者に課せられた特殊任務とか!」キラキラ・・・

御坂「そんなんじゃないわよ。ただ……私情で、かな……」シュン・・・


話の中心に居る超能力者(レベル5)第三位―――超電磁砲(レールガン)こと御坂美琴は、大戦後、あまり自分の事を話そうとしない。
周りのメンバーも気を使ってか、深くは聞き出そうとはしなかった。
76 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/06(水) 23:15:24.53 ID:CBarEwko0
固法「私情だろうが任務だろうが、一言掛けてから出てって欲しかったわね。突発的に出て行ったら皆が心配するの目に見えてたでしょ?」ハァ

御坂「すいません……次から気を付けます」ペコッ

固法「……なら、いいけど」ジー・・・


時折見せる翳り。


佐天「……そうだ! 皆で買い物行きましょうよ! 買い物!」ニコッ

白井「良いですわね。久しぶりにお姉さまと二人きりのデートをあウチッ!!」ゲフッ!

初春「皆で、って言いましたよね? 耳聞こえてますか?」ニコッ・・・

白井「……うぃ」コクッ

御坂「でも黒子と初春さん、仕事が」チラッ


上司を気にする部外者A。一応、自身が民間人である事は分かっている様だ。


固法「……良いわよ。行ってきなさい。特に仕事は無いし」コクッ

白井「優しい先輩に恵まれて幸せですの。さぁ、お姉さま! 早速行きましょ! サクサク行きましょ!」グイッ

御坂「ちょ、待、場所も決めないで」アワワ・・・

佐天「いつもみたいにブラブラ行き当たりばったりで大丈夫ですよ! それじゃあレッツゴー!」ニカッ!

御坂「もぅ……仕方ないわね」クスッ

初春「あ! 折角ですから御坂さんの奢りで何か食べたいですねぇ」ニヤッ・・・

御坂「な、何でよ!?」エ?!

白井「そうですわね。勝手に出て行った御詫び……とまではいきませんが、せめて心配掛けたという気持ちくらいは」フフフ・・・

御坂「この……あーはいはい! 奢ってやるわよ、がめつい後輩共め!」ハァ・・・

白井・初春・佐天「「「わーい!」」」ヤッホー!


ワイワイガヤガヤと支部から出て行く仲良し4人組。


固法「……空元気ね」フゥ・・・


一人残された支部長――固法美偉は愛飲しているムサシノ牛乳を啜りながら、ボソリと呟いた。
どれだけ取り繕っていても気付いてしまう御坂美琴の物憂げな表情。

彼女が久しぶりに此処へ顔を出した時……まるで生気が無かった。
後輩――白井黒子に無理矢理連れて来られ、心配掛けた我々への生存報告をしにきただけ、といった感じ。
現在でも顔は明らかに痩せこけ、目元にクマが出ている。本人はダイエットだと苦笑するが、明らかに心配疲労の色だ。


固法「ロシアで何してきたかは知らないけど……」カタカタ・・・


気付いている事。


固法「……上条、当麻くんか」タンッ・・・


天才ハッカー――初春飾利が調べた結果……美琴と仲の良かった一人の男の子の名が『書庫(バンク)』から消えていた。


固法「……辛いわね」フム・・・


それは、いつかの『  』を見ている様で……―――
77 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/06(水) 23:22:58.16 ID:CBarEwko0


















     【 ――今まで、私の心を埋めていたもの……失って初めてきずいた……


                  こんなにも私を支えてくれていたこと……こんなにも笑顔をくれていたこと……―― 】



















 ―――とある土曜日、PM04:30、学園都市第7学区、とある商店街……




少し前までシャッターを下ろし切っていた商店街も、今では通常営業を行うまでに活気づいてきた。
学生達がショッピングを楽しみ、ゲームセンターで学校生活の鬱憤晴らしをし、人気のスイーツを食べ歩いている。

4人も周りの学生たち同様、ブラブラと青春を謳歌している……様に見えた。


御坂「―――あ、これ可愛いかも……如何思う?」ニコッ

初春「相変わらず子供っぽ……いえ、可愛いですよ! わー、いいなー」ボウヨミー

佐天「でも御坂さん、もうストラップ飾るとこ無いですよ? ジャラジャラ多過ぎですって」アハハ

御坂「あ、ホントだ。我慢するしかないっか」ハハハ


痛々しい程、健気。


白井(何も……話してくれませんのね)


今に始まった事では無い。彼女は『全て』を自分一人で抱え込むタイプだ。
常盤台のエースだとか、超能力者第三位だとかのプライド故ではない。御坂美琴たる人間の本質が、意図せずして己を孤高にする。


白井(私……私共では、如何にも出来ませんわ)


ただし悔しいが『彼』だけは……彼女の心に入り込めた。だがしかし、その『彼』が、いない。
ジャラジャラと垂れ下がるストラップの中に、一番のお気に入りだった筈の限定ゲコ太ストラップが消えている……
78 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/06(水) 23:25:49.52 ID:CBarEwko0
白井(居ればプラス。居なければマイナス……私ではお姉さまにとって『0』以上は無い)

御坂「――こ」

白井(なんて、歯痒い……ホント、腹立たしい)

御坂「――黒子―――ねぇ」

白井(顔を見せないさい。お姉さまの安定剤。そして私の好敵手……今すぐ貴方をブン殴って差し上げますのに)ギリッ・・・

御坂「黒子っ! 何ボーっとしてんのよ?」チョップ!

白井「どぅふっ!!? お、お姉さま!?」イテテ・・・


これではいけない。自分がこの調子じゃ彼女に勘付かれてしまう。
白井黒子は道化を演じなければならないのだ。


初春「……白井さん」チラッ

白井「大丈夫ですの、心配しないで……おほほ! お姉さまの幼児思考が如何すれば治るか真剣になり過ぎてしまいましたわ」フフフ

御坂「ったく、余計な御世話だっつぅの……あ! 新作のクレープ出てるじゃん! 戻って来てからチェックしてなかった!」ワァ!

佐天「流石、御坂さん。お目が高い! アレ中々イケますよー!」ブイッ!

御坂「よぅし! じゃあそれ奢ってあげましょうか!」ニコッ!

白井「流石お姉さま! 太っ腹ー! 最近お腹も微妙にふっくらとなぶりゅっ!!」アベシッ!!

御坂「ッ〜〜〜アンタってヤツは……」ビリビリ・・・///


これでいい。これが白井黒子に出来る最善なのだ……





 ―――とある土曜日、同刻、学園都市第7学区、とある商店街外れのビル屋上……





御坂蛇「御姉様(オリジナル)……痛々しいですね、とミサカは率直に感想を述べます」ジー・・・


彼女達に気付かれないビルの屋上から、妹達(シスターズ)の一体―――個体番号(シリアルナンバー)17600号が監視をしていた。
双眼鏡に写る自分の御姉様(複製元)は、見るのが辛い程、笑顔を振りまいていた。

彼女が強い人間なのは知っている。しかし、知っていても……行動を理解できない。


御坂蛇「……何故」ムゥ・・・


笑えるのか。本来であれば四六時中、ベットの上で泣き続けているだろう心中の筈だ。


御坂蛇「師匠……貴方には理解できますか? とミサカは説明を求めます」チラッ

海原「……」ジー・・・


双眼鏡も使わず、裸眼で御坂美琴の居る人混みを見詰める男性―――海原光貴。


海原「……癪ですが、理解できますよ」コクッ

御坂蛇「と、言うと?」ハテ・・・

海原「スネーク……言葉にするのは無粋です」クルッ


多くは語らず、踵を帰す少年の皮を被った魔術師。
79 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/06(水) 23:31:17.79 ID:CBarEwko0
御坂蛇「残念ですが……高確率で上条当麻は死にました。とミサカは個体番号10777号との感覚共有を元にデータを―――」

海原「……」ギロッ・・・

御坂蛇「―――っ……すみ、ません。出娑婆り過ぎました……」ペコッ・・・


分かっている。知ってはいるのだ。だがしかし、それでも……


海原「……彼は約束を破らない」カツカツ・・・

御坂蛇「え」

海原「男の約束ですよ……確率が全てではない。彼はそういうモノを全て引っ繰り返してきた人間です」ピタッ

御坂蛇「……約束、ですか?」

海原「ええ。貴女(ミサカ)達を守る為に、彼は必ず戻って来る」ボー・・・


彼を信じずにはいられなかった。


御坂蛇「ミサカには……分からない」フム・・・

海原「こういう時、男は諦めが悪いんですよ……スネーク。貴女もやはり女という訳です」クスッ・・・

御坂蛇「そういう問題ですか?」ハテ?

海原「僕にも、もう判断が出来ませんね……とりあえず帰りましょう。これ以上は色々失礼だ」テクテク・・・


いつもなら何秒何分何時間何日何週間何ヶ月何年でも追跡するくせに……とは言わなかった。
少なくとも『彼』と縁が有った人物は、現在、多少の心的ダメージを負っている。それを更に叩くような真似など、自分には出来なかった。

願わくば、誰も彼もが、日常に……戻らん事を、信ずる限り……
























      【 ――失ってしまった代償は……とてつもなく大きすぎて……


                        取り戻そうと、必死に……手を、伸ばして、もがくけれど……―― 】














80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/06(水) 23:35:37.77 ID:GQgj+nBDO
今日はこっちか!


と、思ったら‥‥どギツいネタ来たな‥‥
81 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/06(水) 23:40:15.06 ID:CBarEwko0
 ―――とある土曜日、PM06:20、学園都市第7学区、とある商店街……




佐天「ああ、もうこんな時間かぁ」ハァ


星々が輝き、風紀委員や警備員が下校指導を始めた頃、4人は帰路に着く事にした。
特に何を買った訳でも無く、行き当たりばったりではしゃぎ回った一日だったが……これが日常である。


白井「さて、では私共も」チラッ

初春「そうですね。先輩も今日はそのまま家に帰っていいって言ってますし。お言葉に甘えて早引きしちゃいましょ」フフフ・・・

御坂「……」テクテク・・・


彼女(3人)達にとっては、今も昨日も、多分明日も……何も変わらない。
しかし御坂美琴にとっては……


佐天「……えっと、明日は如何しよっかなー! 春上さん達も誘って第6学区でも行こうか!!」アハハ・・・

初春「い、良いですね! 折角ですから婚后さん達も一緒に如何でしょうか!」ウンウン・・・

白井「まったく……二人とも、週末課題が沢山有るから大変だーっ! とか言ってませんでした?」ジー・・・

初春・佐天「「あ、あはははは……」」ポリポリ・・・

御坂「……」テクテク・・・

白井・佐天・初春『……』チラッ・・・ハァ


後輩とはいえ、年相応に怒ってやれば良いだろうか……いや、それで済むならとっくにやっている。
今、彼女にとっては全てのコールが暖簾に腕押し状態なのだ。


白井「……二人とも、今日は此処までに。後は私が」チラッ・・・ボソッ

佐天「う、うん……御坂さんの事、よろしくね」コクッ・・・

初春「白井さん……弱ってる期に乗じて変な『慰め』しちゃ駄目ですよ」ジトー・・・

白井「人をケダモノの様に……分かってますの。お姉さまが自分から告げるまで、私達は控えるしかない」ムゥ・・・


上の空の先輩の数歩後ろで、後輩達は話終えた。


佐天「……それじゃあ、御坂さん。白井さん。私達は此処で」スタッ

御坂「……あ。うん、気を付けてね」ニコッ

初春「白井さんが変な事してきたら直ぐに通報して下さいね。法的措置になればそう簡単には娑婆に出られなぁ痛いっ」ポカッ

白井「一言も二言も多い女ですわね……精々週末課題とやらと格闘して下さいな」フンッ

御坂「あはは。ま、分からないとこ有ったら遠慮無くメールして。先生に教えたってばれない範囲で指導してあげるから」クスッ


他人の心配。


佐天「……御坂さんも」ボソッ・・・

御坂「ん?」

佐天「御坂さんも……何かあったら、遠慮しないで……言って下さいね」ニコッ・・・

御坂「え、あ……あはは。うん、そうだね。『何かあったら』相談するよ」ニコッ・・・


笑顔が、苦しい。

遣る瀬無いが……それ以上は何も言わず、初春と佐天は自分達のアパートの方へ歩いて行った。
残された白井は、多くは語らず、煤けた背中をした御坂の背中をポンッと押し進めた
82 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/06(水) 23:53:18.71 ID:CBarEwko0
白井「さてさて……そろそろあの小五月蠅い寮監(行き後れ)が門前仁王立ちを始める時間ですの。急ぎましょう」テクテク・・・

御坂「そうね……」テクテク・・・


サクサク進む、寮への帰り道。
白井は成るべく……何でもいい、如何でもいい話を御坂に投げ掛ける。勿論、そこにコール&レスポンスが無いのは分かり切っている事。
しかしそうしないと、只でさえ『伽藍』の御坂美琴が消滅してしまう様な気がした。


白井「―――……そしたら、あのイカレ御嬢様の婚后光子が私に向かって……その……」チラッ

御坂「……」テクテク・・・

白井「……っ」グッ・・・


我慢だ……何も言うな。


白井「……ねぇ、お姉さまぁ。今晩一緒にお風呂でストロベっちゃうーなんて計画、如何ですか?」ニコッ・・・

御坂「……」テクテク・・・

白井「ッ……腹を割って、話そー……なんちゃってー……」ジー・・・

御坂「……」テクテク・・・


白井の葛藤……同情。憐れみ。怒り。悲しみ。

此処で彼女に憐れみ同情したとしよう。
例えば『辛いのは分かります……それを私共へぶつけて下さっても構いませんのよ』と優しい言葉を掛ける。
しかし彼女は『あはは。何の事? 気にしてなんか無いよー』と惚けるだろう。

彼女に怒ったとしよう。
例えば『そんなウジウジと、いなくなったものは仕方ないでしょう!!』と此方の感情をぶつけてやる。
そしたら彼女は一言『ごめん』と告げ、その後無言を通すだろう。

何を言ったところで無駄。自分程度じゃ如何しようも、無い。


御坂「……」テクテク・・・

白井「……お姉さま」トボトボ・・・

御坂「……」テクテク・・・

白井「お姉さま、は……何故……」トボトボ・・・

御坂「黒子」ボソッ・・・


ようやくの反応。白井は息を飲み、身構える。


白井「っ……何か」ジー・・・

御坂「……ありがと」ニコッ・・・

白井「ッ!?」ドキッ・・・

御坂「皆して気ぃ使ってくれて……ホント、ごめんね」クスッ・・・

白井「ぁうっ……そんな、こと……」グッ・・・

御坂「ううん。あはは、駄目なお姉さまよね」テクテク・・・


逆に、気を使わせた。


御坂「佐天さんなんか、いつも以上に絡んでくれて……アンタもアンタで無理矢理いつも通りに接してくれて」テクテク・・・

白井「ぁ……ゃ……」テク・・・テク・・・

御坂「もしかして初春さん……調べた?」チラッ

白井「ッ……お姉、さま……」ゴクッ・・・
83 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/06(水) 23:58:10.09 ID:CBarEwko0
御坂「……いいのいいの。別に隠してる訳じゃないし」ニコッ・・・


如何して、そんな顔を……


御坂「いいよ。全然気にしなくたって。元々アイツがいなかったらいなかったの生活をすれば良いだけの事だしさ」クスッ・・・

白井「そん、な……」

御坂「それに、黒子だって……アイツがいなくなって大好きなお姉さまを独占でき―――」




   パンッ・・・・・




御坂「―――っ……」ピタッ・・・



 乾いた音。   白井の、平手。



白井「っ……っうぅ……っ……」ポロポロ・・・

御坂「黒、子……」ジー・・・

白井「冗談でも……っ……ぅぅ……言って良い事と、悪い事が……っ……」ポロポロ・・・

御坂「……ごめん」シュン・・・


独占? ……出来る訳が無い。

元々『彼』と自分では、御坂に対して好きの『基盤』が違う。
御坂は白井にとっての『安心』かもしれないが、彼は御坂にとっての『安心』そして『安定』だ。

それに正直……こんな彼女を自分は尊敬できない。


御坂「……泣かないで」スッ・・・

白井「……こんな、時でも……っ……他人の心配……しないで、下さい・・・・・っ……ぅぅ……」ポロポロ・・・

御坂「別に、そんな」ピタッ・・・

白井「じゃあ……ッ……自分の気持ちをぶつけて下さい! 誰にもぶつけてないのでしょう!? 一人で抱え込んで……っ」ポロポロ・・・

御坂「……」

白井「っ、いつも、通りに? ……ぇぅ……出来る訳、無いですの! いい加減にして下さい……御坂美琴ッ!!」ドンッ!

御坂「黒、子……」

白井「私が、頼りないのは十に承知ですの……ぅっ……でも、初春や佐天さん……彼女達に心配掛けた、その末に……言う事が……」グズッ


この演技だ。そんなんじゃ自分達だって……演技で返してやるくらいしかできない。


白井「『あの方』の、代わりに? そんなの……口が裂けても言えません! でも、それでも……辛いって吐露くらいは……うぅぅ」ポロポロ・・・

御坂「……」グッ・・・

白井「寝言で……ぅぅ……魘(うな)されている、お姉さまなんて……っ……もぅ、見たく、ない……」ポロポロ・・・

御坂「っ……ごめ、ん……」ギリッ・・・

白井「お願いです、謝らないで……せめて……っ……泣いて、下さい……怒って下さい……っ……」ポロポロ・・・


そうじゃなきゃ、自分が馬鹿みたいだ。
84 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 00:12:06.15 ID:pHVfWOdI0
御坂「……黒子」ジー・・・

白井「ぅぅ……っ……私からは、コレ以上何も……」グスグスッ・・・

御坂「……」ギリッ・・・



そして、御坂は―――




   ごめん。




―――謝った。


白井「ッ」ギロッ

御坂「ホントに、ごめん……用有るから……先帰っててっ!」タッ!


やはり謝る。そして……逃げ出した。


白井「ッッ!! お姉さまッ!!」バッ!


駆け出す御坂に手を伸ばす。しかし、届かない。


白井「お姉さまっ!! お姉さまあぁっ!!」タッ!


自分が移動能力者(テレポーター)で有る事さえ忘れ、追い駆ける。
しかし純粋な足の速さなら、御坂の方が上。百メートルと少しくらい走った所で……


白井「ハァハァ……っ……」タタタタッ・・・タッタッ・・・タッ・・・スタッ・・・


御坂を見失った。


白井「お姉、さまぁ……うぅ……っ……」ポロポロ・・・


なんて、無力……

自分『が』泣く事しか、出来ないのか……





















           【 ――……まるで、風のようにすりぬけて……届きそうで、届かない―― 】




85 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 00:16:32.27 ID:pHVfWOdI0
 ―――とある土曜日、PM06:50、学園都市第7学区、常盤台中学女子寮事務室……




白井黒子は一人で帰る。
寮の規則だの寮監の折檻が待っているだの、考える気力は無い。


白井「……」トボ・・・トボ・・・


休日だからといって大目に見てくれる寮監では無い事も承知している。だが最早そんな事、如何でもいい。


寮監「……」ジー・・・

白井「……」テクテク・・・


予想通り、玄関に仁王立ちしている凡そ30くらいの女性。


白井「……」テクテク・・・

寮監「せめて言い訳くらいしたら如何だ?」ギロッ・・・


遅刻常習犯の白井黒子を捨て置く訳も無い。


白井「……すいません。遊び歩いてて、遅れました」テクテク・・・ピタッ

寮監「……やけに素直だな」ジー・・・


誰が見ても気力が無いという事が一目瞭然だ。


寮監「御坂は一緒じゃないのか」キョロッ

白井「……」ピクッ・・・

寮監「それならば、どうせアイツの言い訳を預かってきているのだろう? 言ってみろ」ギロッ

白井「……っ」グッ・・・

寮監「隠した所で、貴様も奴も罰則は待逃れん。早く……ん?」ジー・・・


そこで気付いた。様子がおかしい。覇気が無いのは先程からだが、目の周りが赤く、いつも以上に髪が乱れている。
風紀委員の仕事で危険な真似をしてくるのはいつもだが、そういった感じでは無い。


寮監「……御坂と喧嘩でもしたのか?」ピクッ

白井「ッ……うぅ……っ……お姉、さまぁ……ぇぅ……」ポロポロ・・・

寮監「白井?」ピクッ・・・


まさか、あの超能力者の少女に限って……


寮監「白井、何があった。喧嘩じゃないのか?」スッ・・・

白井「うぅぅ……うわあああああぁぁんっ! お姉さまあぁぁ……うええええぇぇんっ!」ポロポロ・・・

寮監「し、白井!?」ビクッ!?


年相応に泣きだす少女。こんな姿の白井は見た事が無い。一体何があったというのだ。


白井「うわあああぁぁんっ! びええええぇぇっ!!」ボロボロ・・・

寮監「し、白井! 一先ず落ち着け! 話を聞くから!」アタフタ・・・


鬼の寮監とはいえ本気で泣いている娘子には敵わない。此処(玄関)で泣かせたままにしていては、何れ誰かに見られてしまう。
加え白井が泣き喚く言葉の中に御坂美琴(お姉さま)という単語が入ってしまっている以上、他に知れたら大事になりかねない。
86 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 00:22:34.07 ID:pHVfWOdI0
遽しくも多少落ち着かせた後、寮の事務室へ彼女を連れて行った。


寮監「まったく……」ハァ・・・


常盤台の大能力者。そして風紀委員とはいえ、歳にしてまだ12,3。
反抗するいつもの糞餓鬼、もとい御転婆な普段の少女達の方がまだ扱い易い。


寮監「……落ち着いたか?」チラッ

白井「うぅ……っ……すいま、せん……ぇぅ……」グスッ・・・

寮監「ハァ……良いよ、構わないさ」テクテク・・・


ブラックコーヒーとココアを作り、テーブルに置く。


寮監「貴様を泣かせるのは好きだが、元から泣いている貴様を痛ぶる趣味は持ち合わせていないからな」フフッ

白井「……」グズグズ・・・


いつもなら今のジョークに『相変わらず捻くれた根性してやがりますの』と軽口返してくる筈だが、相当滅入っているらしい。


寮監「……話せるか?」チラッ

白井「……」ボー・・・

寮監「別に深くは聞かない。話せるだけ話してみろ。他人に言ったりはしないから」スッ


客人用のソファに座る白井に対し、右斜め隣へとキャスター付きの椅子を移動させる。
暫時無言を続けていた白井は、ココアを一啜りした後、ボソボソと話しだした。


白井「……お姉さまは、大馬鹿者です」グスッ・・・

寮監「……そうかもな」ジー・・・

白井「誰だって、気付くに決まってますの……なんで、いつも自分一人で……」ボソボソ・・・

寮監「……」フム・・・


珍しく御坂を乏しめる発言をする白井。偶に喧嘩はしているが軽口程度がいつもの風だ。
しかし今回は割と本気で怒っている様に見える。


白井「私が頼りないのは自覚しています……でも……今、お姉さまは私くらいにしか気持ちをぶつけられる相手がいない筈です」グズッ・・・


最近―――第三次大戦後、御坂美琴の様子がおかしいのは分かっていた。
寮監としての立場上、深入りはせず傍目から見るに徹していたのだが……それでも違いが分かる。
勿論、常に寮の子供達を見ているという点で自分が敏感だという理由も有るが、それ抜きでも何処か『虚ろ』なのは見て取れた。

行動仕草はいつもと変わらぬ感じだが、雰囲気が、という意味で。


寮監「御坂がああなった理由を知ってるんだな?」チラッ

白井「……」グスン・・・

寮監「言えとは言わないさ。何にしろ私が取るべき行動は変わらない」フッ・・・

白井「……冷たい女ですのね」

寮監「冷静と言って欲しいな。それに……私は大人だ」クスッ


寮生にとって規律、日常。それが『寮監』だ。


白井「もし……お姉さまが帰って来なかったら……」

寮監「長引くようなら捜索願を出すまで。この前(第三次大戦)の時と同じ様に」
87 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 00:27:01.23 ID:pHVfWOdI0
第三次大戦中、学園都市の多くの生徒は自宅謹慎を命じられた。
常盤台も例外では無く、寮生全員が極力寮から出るなと理事の指示が入る。

その際……御坂美琴は、既に寮にいなかった。
捜索願を出すが一向に行方不明のまま。常盤台の超電磁砲といえばこの街の人間殆どが知っている有名人。
見つからないという事は何処かに監禁されている、または都市に居ないのどちらかであろう。

結果的に後者だった。
大戦後、ひょっこり戻ってきた御坂に対して如何折檻してやろうか大激怒していたのだが……彼女の眼を見て、考えが全て飛んだ。

空(から)。

一言、『ごめんなさい』と告げる御坂美琴は、ただ動いているだけの人形。
肌は荒れ、目の周りはクマと涙の痕で赤黒く、髪はボサボサで、総括すると酷い様。
罰則だから何それやれ、反省文を書け、とも言えないくらいフラフラ。正直いって……危険な状態。


寮監「あの時はマイナスだった……しかし、今はプラマイ0の位置だよ」


数日間、部屋に籠りっきりで何も行動しなかったが、今では日常生活に戻れるレベルになっている。


白井「それでも……お姉さまは……」

寮監「分かっている。だが……」


それが分かっていても、我々には何も出来ない。


寮監「戻って来るさ。アイツの家出は長くは続かない」フフッ・・・

白井「……何故ですの?」

寮監「簡単な事だ」ニコッ


寮、そして……白井が待つあの部屋が、御坂美琴の『家』だから。


白井「っ……」グッ・・・

寮監「確かに私は冷酷かもしれないが、それでも寮生の事を第一に考えている」

白井「寮監様……」

寮監「無論、帰ってきたら怒る。だがそれは規律を乱した罰だからであって、私情では無い。追い出したりしないさ」クスッ


此処(寮)は迎い入れる場所。


寮監「寮監ではなく、私個人として……斜に構える奴に、腹を立ててる部分はある……――」


眼鏡を外し、ゆっくり語る。それは孤児院の子供達に語る様に。


寮監「――……でも私は大人。生(なま)の感情を剥き出しにする訳にはいかない。だけどね、白井」チラッ

白井「……はい」

寮監「貴女は子供よ。御坂もね。貴女が、貴女まで、斜に構える事は無いのと思うの」


御坂に憤りを感じるのであれば、素直にぶつかるべきなのだ。
88 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 00:33:30.98 ID:pHVfWOdI0
寮監「それで砕ける関係なので有ればその程度。もしかしたらデリケートな問題なのかもしれないけど、貴女達はまだ中学生」

白井「それが……」

寮監「一度壊れても修復は容易い。コレから先、まだまだ長いんでしょ?」


『この程度』で挫けたら、とは言わない。だけど『此処』で挫けたら、とは言える。


寮監「御坂に気持ちをぶつけてくれという前に、貴女からぶつかってやらなきゃ」

白井「私から、ですの?」

寮監「ええ。どうも私にはどっちもどっちにしか見えないわ」

白井「……一応、腹を割って話をしようと言いました」

寮監「その言い方が、子供っぽくないもの」


子供のくせに、遠慮ばかり。


寮監「そんなんじゃ碌な大人にならないわね」


思いのぶつけ方を知らない子供達。


白井「では、一体如何すれば……」

寮監「我儘になるも良し、喧嘩するも良し。だけど度は過ぎない様にね」

白井「……一発、引っぱたいてしまいましたわ」

寮監「なーんだ。やれば出来るじゃない。それで良いのよ」ニコッ


こっちは存外、何とかなりそうかも。


寮監「とりあえず……貴女はもう自室に戻りなさい。夕食は部屋に届けさせるから」

白井「……お姉さまは?」

寮監「私が待つわ。帰ってきたら教えてあげる。彼女の分も部屋に届けてあげるから……特例は嫌いなんだけどね」フフッ


別に何でもかんでも『規律』という訳ではない。そういったモノが無粋である時だって存在する。
では、と……コーヒーを飲み干した寮監。再び眼鏡を掛け、目の前の寮生に向き直った。


寮監「全ては明日以降……いや、奴が帰ってきて落ち着いてからで構わない。それから罰則を考えよう」シャキッ

白井「はい……寮監様」

寮監「何だ?」

白井「個人的に眼鏡を外した時の方が好きですの」クスッ

寮監「甘えるな。早く行け」


白井は苦笑した後、立ち上った。そして素直に頭を下げる。


白井「ありがとうございます」ペコッ

寮監「……気にするな。しっかり休め」

白井「はい……失礼しました」ガチャッ・・・


白井黒子は部屋に戻った。


寮監「……まったく」ハァ・・・クスッ


世話が焼ける子供ほど、可愛いモノだ。
89 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 00:40:23.26 ID:pHVfWOdI0


















       【 ――孤独と絶望に胸をしめつけられ……心が壊れそうになるけれど……―― 】




















 ―――とある土曜日、PM07:40、学園都市第7学区、とある公園……




後輩を突き離し、一人駆け出した御坂美琴。
当てなど無い。我武者羅に走るだけ。

自分は最低だ。向き合ってくれている後輩、友人から逃げるだけ。
だが、しかし……違うのだ。向き合うとか向き合わないとか、そういう話じゃない。


無理なのだ。


御坂「何が……常盤台のエースよ……」グッ・・・


彼女達は彼女達。彼は彼……『席』が違う。


御坂「何が……超電磁砲(レールガン)よ……」ポロ・・・ポロ・・・


話した所で如何にもならない。泣いた所で彼は戻って来ない。
自分の目の前で……『死』に飛び込んだのだから。


御坂「何が……頂点(トップ7)よ……何が、超能力者(レベル5)よ……」ウウゥ・・・


自分でも如何したらいいのか、分からないんだ。
誇りとか、義憤とか、そんなんじゃない。


御坂「ただの……ガキじゃない……っ」ペタン・・・


そこに居たのは一人の……年相応の少女だった。その現実を受け止めるには、まだ、幼過ぎた。
謂わば現実逃避。それを吐露してしまう事で……何もかもを認めてしまう気がする。
90 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 00:46:00.02 ID:pHVfWOdI0
御坂「そんなの……嫌だよぅ……」グスッ・・・


ロシアで枯れる程泣き喚いてきたのに……まだ涙が出る。

そうだ……自分は、認めたくないんだ。


御坂「っ……うぅ……」ポロポロ・・・


上条当麻の……消失(死)を。


御坂「ばかぁ……ぇっ……ぅぅ……」ポロポロ・・・


ふと、自分が何処に居るのか気付く。


御坂「うぅ……アホ、自販機……」グズ・・・


故障の激しい自動販売機。
よく彼と此処で顔を合わせた。素直になって話せる機会は少なかったけど……それでも、出逢えるだけで心地好かった。


御坂「それだけでも……っ、良かったの、に……ぅぅ……」ポロポロ・・・


喧嘩……尤も自分が一方的に吹っ掛けていただけだったが……に構ってくれた。
デパートの爆破事件で、英雄の名を投げ売って助けてくれた。
量産型能力者計画(妹達)の事件も、部外者である筈の彼が首を突っ込んで、解決してくれた。
正体不明の暗殺者に対して、私に関わる全てを救うと約束してくれた。
その通り後輩が危機に陥った際、当たり前の様に動いてくれた。

そして、自分の知らない所でも……数々の問題を解決していたに違いない。


御坂「自分の事も分からない(記憶喪失)のくせに……人の事ばっか……っ……」ポロポロ・・・


自分を、周りを騙してまで……世界の為に。


御坂「恰好、つけるのは……もういいわよ……っ……英雄……ぇぅぅ……」ポロポロ・・・


口癖(『不幸だ』の一言)で良い……声を、聞かせて……

顔を……見せて……
















         【 ――思い出に残る、貴方の笑顔が……私をいつも、はげましてくれる……―― 】











91 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 00:51:54.70 ID:pHVfWOdI0
 ―――とある土曜日、PM07:50、学園都市第7学区、とある公園……




??『……下んねぇ』カツカツカツ・・・

御坂「っ!!?」ビクッ・・・


足音。そして、聞き覚えのある……響く声。


御坂「っ……アンタ……」グシグシ・・・


トップモデルの様な容姿。そして桁外れの威圧感(オーラ)を醸し出す女性。


麦野「……ったく。阿呆みたい」ピタッ・・・


自分と同じ超能力者、第4位―――原子崩し(メルトダウナー)麦野沈利。
以前会った時とは異なり、右目に眼帯の様なものをしている。


御坂「……何しに、来たのよ」ギロッ・・・

麦野「さぁね。少なくともアンタとお友達ごっこじゃないわ」フンッ

御坂「喧嘩? それとも暗部とやらの命令で、私の事殺しに来た?」グッ・・・

麦野「相変わらず威勢だけは良いガキね……空元気でも」ジー・・・

御坂「ッ……悪いけど、今の私、手加減出来ないわよ……」ビジ・・・バジ・・・

麦野「……ふーん」ジー・・・


咄嗟に身構える。弾丸(コイン)は無い。
しかし、コイツになら限界(リミット)を外して『自爆(放電爆発)』してやっても……良心は痛まない。


麦野「異常なまでの放電……乱雑開放(ポルターガイスト)起こしかけてる超能力者っての久しぶりに見たわ」ジー・・・

御坂「うっさい。要件を言え。喧嘩なら買う」ビリ・・・バズ・・・

麦野「冷静になって人の話聞く気無いでしょ? 如何すっかなぁ……自爆覚悟って輩ってマジ、メンドイわ」ハァ・・・

御坂「ッ……いい加減に……」ギリッ・・・

麦野「喧嘩じゃないわよ。如何してもヤるってんならしゃーないけど……今の私、全力でお相手出来ないわよ?」ジトー・・・

御坂「……じゃあ、何よ」グッ・・・


目の前の女は学園都市(この街)の闇の一部。普通の『こんばんは』で終わる筈が無い。


麦野「まったく……こんな後輩、絶対ぇ持ちたくないわ。『あの子』どんだけ御人好しなのよ」ケッ・・・

御坂「……は?」ピクッ・・・

麦野「ハァ……私の『友達』からの頼まれ事よ……アンタを探すの手伝ってって」ポリポリ・・・


友達? コイツに?


御坂「……暗部の仲間って事かしら?」ギロッ・・・

麦野「あーそうですね。アンタの中じゃ私の位置付け永遠に暗部(それ)なのね……抜けても抜けなくてもコイツはそれで良いけどさ」ジトー・・・

御坂「……え」ピクッ・・・

麦野「因果応報? 自業自得か? まぁ認めんのは癪だけど、認めねぇと五月蠅ぇ奴がたーくさん居っからよ」ムゥ・・・

御坂「ちょ、え……待ってよ……」


今、コイツは……抜けたと言ったか? 暗部を?
92 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 00:59:06.15 ID:pHVfWOdI0
麦野「さぁね。自分で考えな。アンタに教えんの癪だし……ったく、何で私が一番にコイツ見つけちまったんだか」フンッ

御坂「……意味、分かんない」

麦野「私だって分かんねぇわ。あまりにもトントン拍子で行き過ぎた。戦争終わってから……世界は変わり過ぎたのよ」ハァ・・・


状況が掴めない。ただ今回は殺し合いをする為に登場した訳ではない様だ。

暫く睨み合っていたが、ふと、麦野は携帯を取り出し異様な早さでメールを打った。
そしてパタンと閉じ……事も有ろうか近くのベンチに腰掛けた。


御坂「……何なのよ」

麦野「監視。アンタが逃げないように」ジー・・・

御坂「はぁ?」


やはり誰かの命令で動いているのか。


麦野「命令、か……そうね。だけど仕事とは程遠いわ。自分でも何でこんな慈善事やってっか分かんねぇもん」ハァ・・・

御坂「……」

麦野「とりあえず頼むから逃げないでもらえる? 色々困んのよ……暴れんのも止めてね」フンッ

御坂「……もし、逃げたら?」

麦野「そうね……私も『自爆(炉心爆発)』覚悟で止めるしかないわ」ケッ・・・


何故そこまでして、自分を留めたがるのだ。


麦野「義理よ。勿論、アンタにじゃないから安心しなさい」

御坂「……友達とやらに?」

麦野「そうね……数少ない私の友達の為に」フフッ


そうして再び携帯を見遣る麦野。


麦野「もう少しで来るって。アンタも座って待ったら?」

御坂「来るって……誰よ」

麦野「教えてやんね」ヒヒッ


腹の立つ女だ。


麦野「結構結構。アンタとだけは絶ッッッ対ぇ慣れ合う気は無ぇから」ハハハ!

御坂「……決着付けたいって事かしら」

麦野「そうね……いつか付けましょ? でも条件整ってから」

御坂「私の事気にしてくれてるの? 優しいのね……でもお生憎様、いつだって全力でお相手出来るわよ」ジトー・・・

麦野「見栄張んなっつーの。てかどっちにしろアンタの為じゃ無ぇし。私が『ベスト』じゃないのよ」

御坂「は? ……怪我でもしてるの? その右目にモノ貰いでも出来たのかしら?」ジー・・・

麦野「モノ貰い……ああ、確かにキッツいの『貰っちまった』よ……」スッ・・・


麦野はゆっくりと……右顎の辺りに手を掛け―――



    ……いないいないばぁ。



―――歪に輝く機械の眼を露わにした。
93 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 01:03:23.09 ID:pHVfWOdI0
御坂「ッッッ!!?」ギョッ!?

麦野「あはは! 良い顔! ああ『私って綺麗?』の方が面白かったかしらね」クスッ・・・

御坂「あ、あんた……それ……」ビクッ・・・

麦野「へーんっ! 教えてやんね!」フフフ


麦野はお化け屋敷のバイトが客を驚かせるが如きの演出をしてみせる。
そして想像以上に驚いてくれた観客に満足し、微笑みながら眼帯を元に戻した。


御坂「っ……アンタ程の能力者相手を……第一位か第二位とでも戦ったの?」ジー・・・

麦野「教えねぇっつってんじゃん。とりあえず戦闘用の義眼と義手が調整終わり次第殺し合いましょ」ニコッ


また危ない喧嘩仲間が出来てしまったかもしれない。


麦野「ま、いい加減座れって。喧嘩する気無いの分かったろ?」

御坂「……」スッ・・・

麦野「そうそう。ガキは素直が一番よ」ニコッ


渋々隣に座る。


麦野「しっかし……不思議なもんね。アンタもロシア行ってたなんて」ボー・・・

御坂「っ!? 何で……」

麦野「だから教えないって言ってんじゃん。私にコール&レスポンス期待すんなよ?」ハハッ

御坂「……ふんっ」チッ


コイツ『も』ロシアに行ってたらしい。


御坂「そこで眼、怪我したのかしら」チラッ

麦野「だーかーらー―――」ハァ・・・

御坂「良いわよ。私の勝手な妄想……アンタこそ反応(レスポンス)しないんでしょ?」ジトー・・・

麦野「―――……けっ。やっぱ可愛くねぇヤツ」フンッ

御坂「んで、ミスったか何か知らないけど……クビになったってとこね」ハハハ

麦野「……そう思うならそうしとけ」ボー・・・


大分違うが、とは教えてやらない。


麦野「まぁアンタがアッチで何してきたかは、知ってっけどさ」

御坂「っ」グッ・・・

麦野「……馬鹿よね。相当馬鹿」フンッ・・・


言われたくない奴に言われてしまった。


麦野「『幻想殺し(上条当麻)』かぁ……私は知らねぇけど、浜面が知ってたっけ。正義の味方くん? だか何とか。本物なの、それ?」ハンッ

御坂「知った風な口……」ギロッ・・・

麦野「はいはい、悪ぅござんした。所詮私は赤の他人ですよーだ」フンッ

御坂「……」イラッ・・・

麦野「まったく……早く来ないかしら。息がつまりそう」ハァ・・・


それはこっちの台詞だ。オマエは私をからかって活き活きとしてるだろう……御坂はそう言ってやりたかった。
94 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/04/07(木) 01:07:03.99 ID:pHVfWOdI0
麦野「……で」チラッ

御坂「え?」

麦野「幻想殺しと『何処』までの仲だったの? [禁則事項です]ってたとか、まさか[らめぇぇっ!]まで?」ニヤッ・・・

御坂「なあああぁっ!!?」カアアァ・・・///


人差し指と中指の間に親指を通しニヤリと微笑む麦野。
御坂は真っ赤になりブンブンと音が鳴るくらい首を横に振った。


麦野「あはははは! アンタ面白いわ!」フフフ・・・

御坂「う、五月蠅いわねっ! アイツとはそんな関係じゃないわよ!」ガアアァ///

麦野「ははは。そうよね。そんな甲斐性有る奴だったらとっくに火織の事とっくに喰ってるか……ロリコンじゃなきゃだけどね」フフッ


また女の名前か。てかロリコンって……彼と自分とじゃ2つしか違わない。


麦野「そうなの? まぁ、如何でもいいけどね」

御坂「そうよ、アンタにゃ関係無いでしょ……」

麦野「まぁね。でも興味は有るかも。私の友人の一人と、第3位が惚れた男ってんだからさ」クスッ

御坂「……惚れて無い」ムッ・・・

麦野「嘘付け」イヒヒ!


惚れてたか如何かなんて……もう……分からない。
不意に涙が、毀れてきた。


麦野「……泣くなよ」ッタク・・・


麦野沈利は慰めない。


麦野「有り体だが、泣いたって戻って来ねぇんだろーが」フンッ

御坂「っ……ふええぇぇ……」ポロポロ・・・

麦野「……糞っ」ハァ・・・


自分(麦野)が如何こう言えた義理じゃない。
自分はあの時『奪う([ピーーー])側』の人間だった。『表』のドアノブを掴んだ今だって、直ぐに『裏』に引き返すかもしれない。


麦野「とりあえず……」チッ・・・


女を泣かせる男は最低だって事は、分かった。


麦野「……早く来てちょーだいよ、マジで」ポリポリ・・・

御坂「ううぅ……」ポロポロ・・・


此方に向かう『友』がこれ程待ち遠しいと思えたのは、クーデター前のショッピングの時くらいだろう。
95 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 01:11:34.80 ID:pHVfWOdI0
 ―――とある土曜日、PM08:10、学園都市第7学区、とある公園……




涙を見せたくないヤツの前で泣いてしまった。しかし、一旦溢れ出すと止まってくれない。
超電磁砲はなるべく隣の垢抜けた原子崩しに顔を見られない様、泣き伏せた。


麦野「ったくさぁ……こんなんが第3位と第4位なんだから、物笑いの種よね」ハァ・・・

御坂「ぇぅ……っ……五月蠅、ぃ……ううぅ……っ……」ポロポロ・・・


出来るだけ声を殺して、頭を上げずに……


麦野「……人間、いつかは死ぬの」ボソッ・・・

御坂「知った様な、口……ええぅっ……っ……止、めて……」ポロポロ・・・

麦野「知ってるから言うのよ。人の『生き死に』に関しては『専門家(プロ)』だったのよ、私は」ハッ・・・


尤も『奪う』専門だったが。


麦野「殺生与奪の権利を決めんのは神様なんかじゃねぇ……人だ」サラッ・・・

御坂「ッ、止めてっ!!」ガシッ!!

麦野「っ……そう思ってただけさ。でも今は違ぇかも……って思ってる。実際は誰も知らない事」グッ・・・


麦野の軽口が痛かった。
普段の自分なら同意していたかもしれない理屈。だが……大切な者を失った御坂にとっては、苦し過ぎる話。


麦野「……手ぇ離せ。私殴ったって何もなんねぇだろ?」ジー・・・

御坂「じゃあ……っ……ぅあぁ……ぇっ……止め、ろ……うううぅ……」ポロポロ・・・

麦野「あーはいはい。服汚れるから泣くなっつぅの……ガキねぇ……絹旗よりガキだわ」ポンポン・・・


麦野の腹部で泣き崩れた御坂。


麦野「フレンダは……アンタくらいか」ボソッ・・・

御坂「ぇあぁ……ぇぅ……」ポロポロ・・・


自分が殺めた、この娘くらいの体格をした少女。


麦野「救われない者に、救いの手は差し伸べられるのかなぁ……火織さんよー……」


友人の口癖……というか『教義』とやら。
『死せる者』に救いの手は伸びやしない。『残された者』にも、それはまた……―――



   如何かしらね。



―――いや……伸びるかも、しれない。
96 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/04/07(木) 01:14:50.01 ID:pHVfWOdI0
麦野「ん? ……やれやれ。アンタに『知った様な口』を聞ける御方が御到着だよ」ニヤッ・・・

御坂「ぇぅ……ううぅ……っ……ぇ?」ポロポロ・・・

麦野「遅ぇよ、このやろー」ハァ

御坂「うううぅ……えぅ……っ……せんぱ……ぃ……」ポロポロ・・・


息を切らして目の前に現れた、風紀委員の先輩。


麦野「風紀委員さまが遅刻たぁ褒められないわね」チラッ

固法「ハァ……これでも、急いで来たのよ……ふぅ……」ゼェゼェ・・・

麦野「バイクで来りゃいいのに。何で走ってんのよ?」ジトー・・・

固法「冬タイヤに変えてる最中なのっ……ハァ……それより」チラッ


御坂と目が合う。


固法「……まったく、何から言ってやればいいやら」ハァ・・・

御坂「固法……先輩」グズグズ・・・

固法「とりあえず、麦野さん」チラッ

麦野「ん?」

固法「ありがと」ニコッ

麦野「いいよ。この程度」クスッ・・・


苦笑する二人。御坂は一人涙を拭いながら、麦野の傍を離れた。
そしてこの状況に多少戸惑い、結果……重大な事に気付く。


御坂「何……え、ま、嘘」キョトン・・・

麦野「どったの?」ン?

御坂「アンタの『友達』って……まさか!?」ギョッ!?

麦野「……悪ぃかよ」フンッ

御坂「……信じられない」ポカーン・・・


『全て』において正反対の二人だ。まるで共通点が見当たらない。


麦野「おっぱい」サラッ

御坂「……馬鹿じゃないの」ジトー・・・

麦野「まぁ確かに美偉の方が[ピーーー]pくらいデカいけどさぁあ痛っ!!」ポカッ!

固法「っ〜〜〜」カアアァ・・・///


また大きくなったんだ……とは言わないでおく。


御坂「え、あ、でも……何で……」キョロッ・・・

麦野「何でって……うーん……」ポリポリ・・・

固法「私と麦野さんが友達じゃおかしい?」ニコッ


申し訳無いが、オカシイ。固法先輩が『暗部』だとでもいうのか……有り得ない。
ただ、先輩が武装無能力者集団(スキルアウト)時代、レディース仲間として第3位をブイブイ言わせてたというなら分からない話でも無いが。
97 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 01:19:21.64 ID:pHVfWOdI0
麦野「存外失礼な奴だな、テメェ」ジトー・・・

固法「ふふっ、彼女は超能力者でしょ? 私は伸び悩んでスキルアウト入ってたけど、麦野さんがスキルアウト入りする訳ないじゃない」

御坂「じゃあ……如何して」ウーン・・・

固法「友達になるのに、理由がいる?」ジー・・・

御坂「……」フム・・・


しかし、麦野は……暗部だ。それを知っているのか?


御坂「先輩……コイツが何者か分かった上で、その言葉を?」チラッ

麦野「オイ……てめぇ……」ギロッ・・・

固法「二人とも、止めなさい」


静かに重たく、二人に言い放つ。


御坂「でも……」

固法「……麦野さんが私に隠し事をしてる事くらい百も承知よ」

麦野「ふんっ……全部見透かしてるくせに」ケッ

御坂「それなら―――」

固法「御坂さん。貴女は『隠し事』をしている人間とは仲良く出来ない程潔癖症なの?」

御坂「―――っ」グッ・・・


それは、違う。
例え『隠し事』があってもアイツはアイツだ。しかし……コイツとアイツとじゃ、訳が違う。


御坂「先輩は風紀委員でしょ。知ったら、きっと……」

麦野「悪ぃが……固法美偉って女は、例え私が『殺し屋』だったとしても、離してくんねぇんだ」ハァ・・・

御坂「っ!!?」ギョッ!?

固法「大袈裟ね。でも……うん。麦野さんが殺し屋さんでも、テロ屋さんでも、死神さんでも……私は友達」ニコッ


成程。先輩も『こういう類』の人間か。何を言っても無駄だろう。


麦野「ふんっ。くっせぇセリフだぁ……とりあえず私は帰る。あとはどーぞ御勝手に(ごゆっくり)ー」スタッ

固法「うん。どうもね」ニコッ

麦野「ふふっ。じゃあ二日くらい旦那貸し、てぉ……冗談だってば」アハハ・・・タラー


色んな意味で、先輩が怖い。


麦野「やれやれ……浜面(サンドバック)で鬱憤晴らしでもすっかなぁ」テクテク・・・

固法「じゃあ傷心の神裂さん慰めてあげて。多分香焼くん家でグデングデンに酔ってるから……妹さんと一緒に」フフフ

麦野「え……火織酒呑めんの?」エ?

固法「宗教上の関係で赤ワインは常時OK。他にも濁酒(ドブロク)は子供の頃から味噌汁代わりに飲まされてたって言ってたわ」クスッ

麦野「げぇ……呑蛇(ウワバミ)相手とかマジ勘弁してよ……」ハァ・・・


大きな溜め息をつき、トボトボ消えて行った第4位。
98 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 01:21:36.84 ID:pHVfWOdI0
固法「ふふふ。何だかんだ言って、彼女……ヘコんでる友達のとこ行ってくれるのよ。優しいわよね」クスクスッ

御坂「……それで良いんですか、風紀委員さん」ジトー・・・

固法「皆には内緒よ」フフッ


おどけた笑みにドキッとする。真面目な先輩の意外な部分を見たギャップ何たらというヤツか。


固法「風紀委員の私は風紀委員。プライベートの私はプライベート。そういう事よ」ニコッ

御坂「それは……分かんないです」ムゥ・・・

固法「……いいえ、分かる筈。貴女なら特にね」ジー・・・


一転、真面目な顔になる先輩。


固法「……とりあえず座りましょう」

御坂「え、あ、はい……」

固法「麦野さんさっき飲み物の一つも買わずに此処に居たのね? まったく……風邪引くわよ」ハァ


そうぼやき、御坂を座らせたまま自販機(イカレた札飲み機)の下へ向かった。


御坂「私に、分かるって……」ボー・・・


プライベートを?


御坂「……私達と一緒じゃない、先輩?」キョトン・・・


如何いう意味だ。


御坂「麦野……さんと仲の良い先輩って事かな?」ムゥ・・・

固法「大体そんな感じよ」テクテク・・・

御坂「え、あ……えっと……」ポリポリ・・・

固法「はい。カフェオレで良かったかしら?」スッ・・・

御坂「ど、どうも」ペコッ


右手に持つ温かいペットボトルの飲料を渡された。
余談だが、左手の『ぬるいムサシノ牛乳』って美味しいのか? と疑問を抱かざるを得ない。


固法「……御坂さん、ハンカチとティッシュ持ってる?」

御坂「え? い、いや、持ってませんけど」

固法「必死だったのね、もぅ……」スッ・・・

御坂「え、と……」キョトン・・・

固法「目の周り、あと鼻水」フフッ

御坂「っ!!」カアアァ・・・///


忘れてた。というかそんな顔を第4位(アイツ)にも見られていたのか!?


固法「気にしないわよ。とりあえず、落ち着きなさい」クスッ

御坂「あぅ……」モジモジ・・・

固法「そしたら、少し……お話しましょ」ニコッ・・・


先輩は後輩の真っ赤な目の周りをハンカチで拭いてやり、朗らかに微笑んで、諭すように告げた。
99 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 01:24:52.64 ID:pHVfWOdI0
 ―――とある土曜日、PM08:30、学園都市第7学区、とある公園……




それからポツポツと先輩が語り始めた。


固法「白井がね。今にも死にそうな声で電話掛けてきたの」

御坂「黒子が……そうですか」シュン・・・


突き離して尚、喰らい付いて来る後輩。


固法「『びえーんっ!! ほねぇざばぁがぎれだいまじだーっ!!』って、正直何言ってるか解読するのに大分掛ったわ」ハァ

御坂「あはは……すいません」ポリポリ・・・

固法「ええ、まったく……世話の掛る後輩達よ、ホントに」フフッ


じゃあ本題に、と固法は声色を変えた。


固法「私や白井が……上条くんの事知ってるってのは、聞いたのね」ボソッ・・・

御坂「っ……はい」グッ・・・

固法「そう……」コクッ・・・


何処まで、知っているのだ。


固法「『書庫』から名前が消えているって事以外は知らないわよ……私以外は」ジー・・・

御坂「え……」ドキッ・・・

固法「別の友達がね。さっき神裂さんって言ったでしょ。その子が……上条くん……『   』って、嘆いてた」

御坂「……っ」グッ・・・

固法「深くは聞けないけど、とても『大きな物』を相手に戦ってたんだってね。彼」


それは自分も知らない。でも……



 まだ、やるべき事がある。



……そう言って、御坂の手を離れた。


固法「御坂さん。他言はしないわ。何があったのか、聞かせて貰えないかしら?」

御坂「知りません」ギリッ・・・

固法「……そう」フム・・・


思い出したくない。もう……泣きたくない……


固法「さっき……私が『プライベート』って言葉を口にしたわね」

御坂「……」

固法「加えて私にとってのプライベート(それ)を『特に貴女なら』理解できるって言ったわ」

御坂「……分かりませんよ」

固法「いいえ。『知ってる』筈」


優しく、語る。
100 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 01:30:46.08 ID:pHVfWOdI0
固法「風紀委員として白井や初春と活動するのが、風紀委員の私」

御坂「……はい」

固法「それから貴女や佐天さんを交えて、支部でグダグダ過ごす私。これは……まぁ公私混同してるけどプライベート」

御坂「……そうなんですか」

固法「ええ。口では呆れた風で注意してるけど、何だかんだ言って楽しいもの」フフッ


それから、と胸に手を当て……


固法「貴女達の知らない所での、プライベート」

御坂「そんなの、誰だって」

固法「ええ。でもこれは『交友関係』という意味でのプライベートよ」

御坂「交友……ですか」

固法「そう。私にとって碧美や麦野さん、神裂さんは……貴女や白井達が知らないプライベートでしょ?」

御坂「……そう、ですけど」


意図が掴めない。
それこそ誰にだって知られていない秘密(プライベート)はある。別に秘密にしている訳ではないが、秘密にならざるを得ない事だ。


固法「はっきり言うわ。悪いけど御坂さん……貴女、私の知り得る限り本当に信用出来る『友人』少ないでしょ?」

御坂「あ、ぅ……」タラー・・・

固法「図星ね」


確かに……白井達以外の友人と言われるとパッと浮かんでこない。
慕ってくれている常盤台の生徒や学舎の園内の女子達は多いが、友人とは呼べない。プライドという訳では無いのだが、何とも……


固法「御坂美琴(貴女)を一個人として見てくれる人が少ない。尊敬の対象であって、交友の関係には至らない……そうね?」

御坂「……何でもお見通しですか」


この人に隠し事は通用しない。探偵にでもなればいいのに。


固法「少し考えれば誰にでも分かる事よ」

御坂「誰も考えてくれませんよ、そんな事」

固法「そうかしら。少なくとも白井あたりは分かってると思うわ。口にしないけどね」


清々しい程はっきり言ってくれる。


固法「それでね……貴女が『第3位』とか『超電磁砲』として見られる様に、私も『風紀委員』として見られるの」

御坂「え、あ……まぁはい」

固法「多くの人間は『風紀委員』以外の私を知らないわ。固法美偉、一個人としての私を知らない」


確かに。この先輩の第一印象からして『真面目な風紀委員さん』というイメージが浮かんでしまう。


固法「でもね……麦野さん達は逆よ」

御坂「逆?」

固法「風紀委員の私より、固法美偉の私を先考させる」

御坂「……そうなんだ」


個人を見てくれる人。それを『親しい者』と呼ぶのかもしれない。
101 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 01:38:53.19 ID:pHVfWOdI0
固法「うん。碧美(ルームメイトや友人)達が私のプライベート。じゃあ貴女のプライベート……私の知らない範囲でいうと……って事よ」

御坂「それは……」


彼。


御坂「……っ」グッ・・・

固法「理解、出来たわね」ニコッ・・・


自分を、御坂美琴として、見てくれる人。


固法「彼の事、教えてもらえるかしら? 勿論話せる範囲で結構よ。無理にロシアであった事を話してくれる必要は無いから」

御坂「……」コクッ・・・


少しだけ……ちょっとだけ、話そう。


御坂「アイツは……アイツ、は……」グッ・・・

固法「……うん」

御坂「ただ、御人好しで……無能力者(レベル0)だっていうのに……超能力者の私を、普通の女の子扱いして……」グゥ・・・

固法「うん」


自分を……御坂美琴として見てくれた、数少ない人。


御坂「アイツは……っ……馬鹿、で……ぅぅ……自分勝手で……ぇっ……人の事ばっか、優先して……っ……」グッ・・・


言葉が矛盾する。


御坂「弱いくせに、しゃしゃり出て……っ……嘘吐きで、笑ってて……ううぅ……」ポロポロ・・・

固法「……そう」

御坂「なのに……でも……っ……なんで……ぁぅぅ……アイツが……死なな……っ……」ポロポロ・・・

固法「……」


理不尽。だが現実。


御坂「如何して……うううぅ……」ポロポロ・・・


助けられなかった。


御坂「もう、少しで……手が届いたのに……っ……っく……ぅぁ……自分から、離れてって……」ポロポロ・・・


彼の『不思議な能力』の所為もあるが、それよりも彼(自分)の意志で。


御坂「やるべき事って……何よ……うううぅ……っ……知らないわよ、そんなの……」ポロポロ・・・

固法「……一人で、消えたのね」

御坂「自分の、命、懸けて……ふ、ぇ……ぇっ……人の気も、知らないで……っ……消えないで、ょ……うぅ……」ポロポロ・・・


まだ言いたい事が沢山あった。
一生返し切れない莫大な借りがある。素直に言えてない言葉が山ほど残っている。


御坂「あ、うぅ……っ……ヤダ、よぅ……うぁぁ……っ……とう、まぁ……」ポロポロ・・・
102 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 01:42:09.47 ID:pHVfWOdI0
また、泣いてしまった。涙を流す度、彼の事を思い出してしまうのに。


固法「……辛いのね」

御坂「ううぅ……」ポロポロ・・・

固法「男って、そういう生き物よ」


この人まで、知った様な口を―――




  言えるわよ……私には、ね。




―――……聞いて欲しく、無かった……のに。


固法「独り善がりで、命顧みず危険に飛び込んで」

御坂「ぇぅ……っ……せんぱ、い……な、にを……っ……」ポロポロ・・・ビクッ・・・

固法「後先考えず、目の前の危機に挑んで……女が何か言う前に、消えちゃうのよね」

御坂「ぅ……あ……っ」ポロポロ・・・

固法「ホント……そういう男に惚れた女って、辛いわ」クスッ・・・


ああ、そうか……


固法「私はね……自分なりに結構待って……でも、一度諦めた女だけどさ……」ポリポリ・・・


この人は……


固法「貴女は『彼』を、どのくらい待てる? 御坂さん」ニコッ・・・


自分と、同じなのか。


固法「私の大切な人は……戻ってきてくれたもの。事の、現場の大小は別として」フフッ

御坂「ううぅ……あ、ぅ……先、輩……っ……」ポロポロ・・・

固法「まったく……男は死地ってのが好きなのかしら。それとも私達が惚れた野郎共だけ?」フフッ

御坂「ぇうぅっ……う、わあぁ……」ポロポロ・・・

固法「御坂さん……もう、素直になりなさい……泣いていいわよ。私も、泣いたんだから。今は泣いて良い時よ」ニコッ・・・


もう……無理だ……


御坂「うぅ……うぅわああああああぁぁんっ!! 当麻があぁっ! あああああああぁっ!!」ボロボロ・・・

固法「っ……ホント……男って、ズルいわね。でもきっと……ね」ポロッ・・・ギュッ・・・


最後の歯止めが、壊れた。今はただ『同情』出来る者の胸の中で、泣くしかなかった……―――
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/07(木) 01:44:50.25 ID:QYe9AObDO
あ‥‥アニキイイイイイィッッ!!
104 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 01:49:23.67 ID:pHVfWOdI0
 ―――とある土曜日、PM09:00、学園都市第7学区、とある公園……




どれくらい泣いていたか分からない。


固法「やれやれ……大分溜め込んでたのね」フフッ

御坂「ぅぅ……とう、ま……」スゥ・・・スゥ・・・


泣き疲れたのか、固法の膝の上で眠ってしまった御坂。


固法「こんな時期の夜中に、外で寝たら風邪引くわよ」モゥ・・・


移動能力者(テレポーター)の後輩は迎えに来れるだろうか。


固法「最悪、負ぶってかなきゃ駄目かなぁ。タクシー呼べればそっちの方が良いか」ハハハ・・・


仕方あるまい。世話の焼ける、可愛い後輩の為だ。
そう考え、携帯でタクシー会社の電話番号を検索し出した時―――



『まったく……風紀委員が通報の原因とは……考えもんじゃん』



―――知った声がした。


固法「……あらら」チラッ

黄泉川「よう。不良少女」テクテク・・・

固法「元、です。今は模範生徒ですよ」クスッ・・・

黄泉川「夜中騒音で通報される風紀委員がいてたまるか」ジトー・・・


大分長い間大声で泣いていた為、流石に付近の住民が通報したのだろう。
しかし来てくれたのがこの人で良かった。


黄泉川「……御坂か」ジー・・・

固法「はい」コクッ

御坂「ぅぅ……っ……ゃ、だょ……」スヤ・・・スヤ・・・


きっと悪夢を見ているのだろう。


黄泉川「固法が泣かせたってか?」ハハッ

固法「うーん、そうですね……まったく泣いてくれないので、私が泣かせました」クスッ・・・

黄泉川「ははは、言うじゃんよー……まぁ何があったかは聞かない。傷害とは思えないし」ハァ


普通の喧嘩であれば、泣き疲れて寝入っている少女の方に分が有る。


黄泉川「もしかして御坂もロシア帰りで……『訳有り』じゃん?」ジー・・・

固法「『御坂も』って事は?」

黄泉川「ウチの糞餓鬼共も、この前二人仲良くロシアから戻ってきたじゃんよ」ハァ・・・


学園都市第1位の少年と御坂の妹(詳しくは違うらしいが)も、ロシア帰りらしい。
105 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/04/07(木) 01:55:17.94 ID:pHVfWOdI0
固法「二人は無事に?」

黄泉川「ああ……あの馬鹿野郎……何も言わずに出て行きやがって」グッ・・・

固法「そうですか……」

黄泉川「帰って来てから打ん殴ってやったじゃん。そりゃもう態々反射切らせて」

固法「あはは……エグいですね……」タラー・・・

黄泉川「それくらいしてやらないと気が済まなかったじゃん!」フンッ!

固法「……で、その後彼に一言『ごめん』と謝られて、芳川さんと一緒に号泣したと」フフフ・・・

黄泉川「なぁっ?! す、する訳ないじゃん!! そ、そんなの桔梗だけに決まってんじゃんよっ!!」アタフタ!!


分かりやすい人だ。この動揺から察するに、二人が帰って来た時は白井並に号泣したのだろう。
仄暗い水の底に浸かっていたあの少年―――、一方通行の為にそこまでしてやれるのは彼女達だけかもしれない。

さておき、理由は分からないが、第1位くんも御坂さんと同じ様に突発的に行動した訳だ。


黄泉川「もぅ……大人(他人)の頼り方知らないのは今に始まった事じゃないけどさ、少しは頼って欲しいじゃん。私、そんなに頼りない?」ハァ

固法「まさか。黄泉川さんが頼りなかったら殆どの大人が頼りないですよ」フフッ

黄泉川「うんうん。オマエは良い子じゃんよー。一方通行に爪垢飲ませたいじゃん」ケラケラ


遠慮しておきます。


黄泉川「ふふふ。冗談じゃん、オマエの体の隅々は旦那の[ピーーー]だもんな」イヒヒ!

固法「……警備員(アンチスキル)呼びますよ? 変態がいますって」ジトー・・・

黄泉川「私が警備員じゃん。夜間騒音の犯人の風紀委員さん」クスッ

固法「それは……えっと……」ポリポリ・・・

黄泉川「ハハッ。まぁいいさ」テクテク・・・


そそくさと自販機の方へ歩み寄る黄泉川。そして……



      ガンッッ!!



……側面部を防弾盾で打っ叩いた。けたたましく響き渡る故障警告。


固法「よ、黄泉川さん!?」ギョッ!?

黄泉川「……原因は自販機の故障。あー、ほら。よく聞くと人の泣き声に聞こえるじゃん」アハハ

固法「も、もぅ……」ハァ・・・


この人も大概自分勝手だ。それが美徳なのかもしれないが……兎角今回は助かった。


固法「ありがとうございます」ペコッ

黄泉川「構わんさ。その子の為に泣かせたんじゃん? じゃあ……子供達の為だ」ニコッ・・・


子供の味方、か。


黄泉川「アレの警告音止めたら家に送るじゃん。エンジン掛けといて」ポイッ

固法「態々すいません」パシッ


普通自動車の免許は持ってないのだが……この際、細かい事は気にしないでおこう。
106 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 02:01:40.92 ID:pHVfWOdI0
黄泉川「良いよ。てか御坂を寮に返す時、オマエじゃあの寮監(堅物女)説得できないじゃん?」

固法「あはは……堅物って」タラー・・・


知り合いなのか。


黄泉川「大学時代ちょっとね……恵未と一緒によく泣かされたじゃん。物理的な意味で」アハハ・・・


恵未とは警備員本部特殊迎撃部隊副隊長の手塩恵未さんの事だろう。
というかあの寮監、警備員のエース二人相手に泣かせるって……どんなバケモノだ。


黄泉川「まぁとりあえず今はいい。落ち着いてから話聞かせるじゃん」

固法「はい」コクッ


自分にとっては大き過ぎる後輩を警備員に任せ、高そうな都市製の車のエンジンを掛けに向かった。


御坂「すぅ……くぅ……」コクッ・・・コクッ・・・


今は、おやすみなさい。祈りはきっと、届くから……―――























         【 ――もう一度……あの頃に戻ろう。今度は……きっと、大丈夫―― 】













107 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 02:04:07.11 ID:pHVfWOdI0
 ―――翌日、とある日曜日、AM08:00、学園都市第7学区、常盤台中学女子寮208号室(御坂・白井部屋)……




目を開けると、そこはいつもの部屋だった。


御坂「……」ボー・・・


状況が把握できない。
昨晩、白井を突き離した後……公園で第4位に出合い……それから先輩と……


御坂「…………」ボー・・・


あれ?


御坂「………………私、何で此処に居るの?」キョトン・・・


あの後、恥ずかしながら先輩にしがみ付いて大泣きした筈だ。
思い出すと顔から火が出そうだが……それよりも心成しか気持ちが軽くなっている事に驚いた。


御坂「うーん……その後……如何したんだっけ」ポカーン・・・


思い出せない。
此処は如何見ても自分と白井の部屋。自分はキチンとベットで寝ているしパジャマに着替えてある。


御坂「えっと……ん?」キョロッ


枕元に何やらメモが置いてある。内容は……


御坂「『目が覚めたら身嗜みを整えて、私の所へ来い』……寮監よ、り……」ダラダラ・・・


死刑宣告だった。
108 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 02:08:42.08 ID:pHVfWOdI0
 ―――とある日曜日、AM08:30、学園都市第7学区、常盤台中学女子寮事務室……




ベットから飛び起き、浴室へ駆け込む。急いでシャワーを浴び、制服に着替えた。
いつまで、と指定が書いてある訳でもないのだが、兎に角急ぐ。


御坂「昨日の時点で書いてあったとしても……ヤバい! もう8時半じゃん!」タタタタッ!


道理で白井が部屋に居ない訳だ。

この寮の生活リズムとして7時起床、7時半食堂点呼、8時食事終了が規則である。無論、休日だろうがお構い無しだ。

何にしろ日を跨いでしまっている時点で、どんな折檻が待ち受けているか分からないという焦燥感。
バックレても良いのだが、後が怖い。
警備員のエース二人、ましてや超能力者二人相手に圧倒する力量の持ち主だ。自爆覚悟じゃ無ければ敵わないかもしれない……

なんて、馬鹿な妄想をしつつ、現在事務室前。


御坂「……っ」ゴクッ・・・


ノック2回。返事は無い。


御坂「えっと……208号室、御坂美琴です」タラー・・・

寮監『……入れ』


今度はハッキリとした声が帰って来た。御坂は息を飲み、失礼しますと扉を開けた。


御坂「あ、あの……」ダラダラ・・・

寮監「おはよう」チラッ

御坂「え、あ、はい……おはようございます」ヘコッ


軽い目配せだけ。あくまで業務的に話を続ける。


寮監「座れ」

御坂「は、はい」スゥ・・・


直ぐ激怒が飛んでこないのが逆に恐ろしい。御坂はカチコチとぎこちなくソファに腰掛る。
寮監は粗方作業が片付いたのかペンと動かす手を止め、コーヒーメーカーの方へ向かった。


寮監「砂糖とミルク、どちらも入れるぞ」カツカツ・・・

御坂「え」

寮監「……ブラック好きか?」チラッ

御坂「え、あ、いや……お任せします」ペコッ

寮監「分かった」カチャカチャ・・・


何だ……何の真似だ?


寮監「ほら」スッ・・・

御坂「あ、ありがとうございます」

寮監「うん……まず飲め」スゥ・・・


表情を変えず目の前に腰掛ける寮監。御坂はチビチビと、寮監は何気ない風にコーヒーを啜った。
109 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 02:14:34.18 ID:pHVfWOdI0
御坂「……」モジモジ・・・

寮監「ん……何を堅くなっている?」

御坂「え、いや、その……」アハハ・・・

寮監「まぁ気持ちは分からんでも無いがな……では……」コトッ・・・


いよいよ本題か。一体何を言われる……どんな罰則が待っている。御坂は息を飲み、身体を強張らせて……覚悟した。


寮監「……痩せたな。御坂」ボソッ


……え。


寮監「だが昨夜はよく寝れた様だな。幾らか顔色は良い」ジー・・・

御坂「……」ポカーン・・・

寮監「おや? どうした?」


どうしたっていうか……


御坂「……怒らないんですか」モジモジ・・・

寮監「そんなに怒られたいのか?」フム・・・

御坂「い、いえ! まさか!」アハハハハ・・・

寮監「勿論怒るが……今は怒らんよ」クスッ


苦笑する寮監。その反応に戸惑う御坂。


寮監「白井にも言ったが、確かに私は厳しいだろう。しかしそれは貴様らが規則を破る故だ」

御坂「……私は、破りましたよ」

寮監「やれやれ……『如何なる理由が有ろうと寮則を――』……と言いたい訳だな?」

御坂「だって……失礼ですが、いつも……」

寮監「ああ、そうだ。私はこの『寮』というモノ、全てを監督するが……」コクッ・・・


足を組んで、頷き……眼鏡を外す。


寮監「……それは貴女達、寮生あっての事なのよ」ニコッ

御坂「……」コクンッ・・・

寮監「一番は生徒達自身。規則はその次。当たり前じゃない」フフッ


優しい雰囲気。


寮監「ハッキリ言って、貴女は寮則を順守できないレベルまで衰弱していた」フム・・・

御坂「それは、その……」

寮監「別に話してくれる必要は無いわよ。人の心にズカズカと上がり込む趣味は持ち合わせて無いわ。心理掌握(メンタルアウト)と違ってね」

御坂「……すいません」ペコッ

寮監「私じゃなくて白井に謝りなさいな。一番心配していたのはあの子よ」フフッ

御坂「……そういえば、黒子は?」


自分が身支度をしている最中、部屋に戻って来なかった。
110 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 02:18:31.26 ID:pHVfWOdI0
寮監「白井は風紀委員の早番よ。聞いて無かった?」

御坂「あ、う……そういえば聞いてた様な、聞いてない様な……」ポリポリ・・・

寮監「まぁ心此処に非ず状態の貴女に言い聞かせた白井が悪かったわね」フフフ


面目無い。


寮監「とりあえず食事はちゃんと取りなさい。今日は顔色が良いから、しっかり食べられるでしょ?」

御坂「あ、多分、はい」コクッ・・・


数日間、食事が喉を通らなかったが……今日は幾分楽だと思う。


寮監「貴女の事を話したら繚乱の土御門が残ってくれたわ。あの子も居残りが無駄骨に為らなくて良かったわね」フフッ

御坂「舞夏が?」

寮監「実習とは関係無く『友人』として、だって。感謝なさいよ」クスッ

御坂「友人……はい」フフッ・・・


思えば舞夏も『友人(プライベート)』の一人。迷惑を掛けてしまった。


寮監「じゃあ、食堂に」スッ・・・

御坂「あ、その前に……聞いていいですか?」

寮監「ん?」ピタッ・・・


昨晩の事。何故自分が部屋で寝ていたのか。


寮監「ああ、それ」

御坂「私、確か外に……いた筈じゃ……」ポリポリ・・・


本来門限を過ぎていた故、後ろめたい。


寮監「ちゃんと反省はしてるのね」フフッ

御坂「あはは……すいません」ペコリッ

寮監「とりあえず今は不問にするわ。それで、昨晩の事だけど……何処まで覚えているの?」

御坂「えっと……」ウーン・・・


公園で先輩にしがみ付き……大泣き。此処までだ。


寮監「成程成程」フム・・・

御坂「知ってるんですか?」

寮監「『何を』知ってるのか、分からないけど。とりあえず貴女が公園で寝たって事は聞かされたわ」クスッ・・・

御坂「……え!?」ハイ?!

寮監「何で泣いてたのかは聞いてない。でも、泣き疲れて眠ったそうよ」フフッ

御坂「なぁっ!!?」カアアァ・・・///


恥ずかしい……後で先輩に謝らなければ!
111 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 02:23:48.08 ID:pHVfWOdI0
御坂「じゃ、じゃあ先輩が私を送ってくれたんですか?」タラー・・・

寮監「風紀委員の彼女? まぁ彼女もだけど……車を出したのは補導してくれた黄泉k……警備員よ」

御坂「ほ、補導!? 警備員!?」ゲェ・・・


先輩まで補導されたというのか……本格的に拙い。


寮監「いいえ。風紀委員の子は貴女を保護、指導してたって事でお咎め無しだそうね」

御坂「よ、良かった……」

寮監「加えて『訳有り』で済ませてくれたそうよ。まったく……昔から伊達と酔狂とノリで生きてる女だわ、アイツってヤツは」フフフ

御坂「え?」

寮監「ん、何でも無い。兎に角……その後は私が引き継いで部屋に運んだの」コホンッ

御坂「え! す、すいません」ペコッ

寮監「別にいいわよ。それも私の仕事。ただ、幾ら痩せこけているとはいえ中学生は流石に重かったかな」ハハッ


まぁ自分は同年齢の平均くらいだから……いや、アンタそのくらい余裕でしょ。とは口が裂けても言えない。


御坂「じゃあ着替えも……」

寮監「ええ。動き回る『園』の子供達に比べれば楽だったわね」フフッ

御坂「あはは……何とも」ポリポリ・・・

寮監「因みに注意は出来ないんだけど……貴女の下着と寝巻き幼過ぎない?」

御坂「え”!?」タラー・・・

寮監「白井が隠し持ってるレベルのを穿けとは言わないから、せめてプリント物はお止めなさい。今時小学生でも着けないわよ」クスッ

御坂「よ、余計なお世話ですよっ!!」カアアァ・・・///


別に全部が全部そういう訳ではない。その日は偶々それだっただけど。プリントなんて……2,3着くらい。


寮監「ふふふ。そうね、ごめんなさい。とりあえず……そろそろ食堂の待ち人も痺れを切らすだろう。行ってやれ」キリッ


眼鏡装着。仕事モード。


御坂「はい。色々とありがとうございました」ペコッ

寮監「構わない。私の仕事だ」クルッ


この二重人格さんめ。


御坂「うーん……あの」ジー・・・

寮監「眼鏡を外せと言うのは聞かんぞ」フンッ

御坂「え……読心能力?」アハハ・・・

寮監「白井といい貴様といい……甘やかすと付け上がるのであれば、やはり考えものだな」マッタク・・・


いや、自分達以外もきっとそう思っているだろう。


寮監「兎角……もう大丈夫だな、御坂」フッ・・・

御坂「……はい。今日からは、頑張れます」ニコッ

寮監「ふむ。宜しい」コクッ


今まで通りとは言えないけど……少しずつ……頑張ろう。
112 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 02:29:08.72 ID:pHVfWOdI0
 ―――とある日曜日、PM02:30、学園都市第7学区、風紀委員第一七七支部……




元気の無い少女が一人増えてしまった。


白井「……」シュン・・・


姦しければ姦しいで面倒なのだが、こうも黙々されると調子が狂ってしまう。
今日は生憎、初春と佐天は課題と格闘中らしいので支部には来ていないのだが……二人きりでは何ともなん。


固法「まったく……」ハァ・・・


一人解決……とまではいかないが、ある程度回復したであろうというに。


固法「仕事出来ないなら帰っていいわよー」サラッ

白井「……意地悪。冷酷先輩」ボソッ・・・

固法「意地悪だろうが冷酷だろうが結構。膝を抱えて落ち込むのは自分の部屋の片隅だけにしてくれないかしら?」ジトー・・・

白井「……新妻。若妻。団地妻。黒づばふぅっ!!」ボンッ!

固法「次は……クッションだけじゃ済まさないわ」ゴゴゴゴ・・・

白井「くぅ……私の事を『さん』付けしたり、しなかったり」グチグチ・・・

固法「まだ言う? それ『原作者』と『アニメ監督』に文句言って。私の所為じゃない」ハァ

白井「……関西。大阪」ボソッ・・・

固法「悪口なの? あと因みに京都よ」ッタク・・・


何がとは言わない。


固法「折角の休みなのにずっと此処に居る訳かしら? 何にしろ門限までに帰らなきゃ寮監さんに怒られちゃうでしょう」

白井「……」

固法「やれやれ、ね。一応解決したまではいかないけど……もう斜に構える事は無いと思うわ」

白井「……むぅ」


変な所で子供だ。


白井「先輩こそ折角のお休みですの。御友人と遊ぶなり、真っ昼間から彼氏とわっふるわっふるすrぁ痛ぁっ!!」ボカッ!!

固法「……それだけ軽口叩ければ平気ね」ギロッ・・・///

白井「んもー……悪魔! 元レディース! 鬼畜眼鏡! 牛乳(うしちち)! おっぱいお化け! 夫子持ち!」ンニャー!!

固法「はいはい。子供はいないわよー」サラッ

白井「んぎぎ……これがリア充の余裕ですのね……」クソゥ・・・


やはり子供だ。変態思考の子供。


白井「もう良いですの! 物置になってる臨時当番室フル掃除して黒子の部屋にしますの!」ルールル・・・ルルルルールルー・・・

固法「お馬鹿。視察入った時、怒られるの支部長の私なんだから止めて」ハァ・・・

白井「いいえ! 今日から泊まり込みですわ! それから徐々に支部毎私色に染め上げてさしあげぶぅっ!!」ベシッ!

固法「いい加減にする。貴女まで現実逃避しない」メッ!

白井「ううぅ……だってぇ……」ウルウル・・・

固法「御坂さん、昨日ちゃんと帰って来たでしょう? もう大丈夫よ」
113 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 02:32:01.71 ID:pHVfWOdI0
白井「でも……あんな事言ってしまった手前、どんな事話せば良いやら……」グスンッ


一難去ってまた一難とはこの事だろう。寮監さんが色々言い聞かせたと話していたが、効果は薄かったようだ。


固法「気にし過ぎよ。佐天さんが私達くらいは普段通りに接しようって言ってたでしょ?」

白井「ですが……」ウウゥ・・・

固法「ハァ……やっぱりアッチから来て貰わないと駄目みたいね」

白井「……ハァ?!」ヘェアッ!?

固法「もうそろそろ来るわよ、御坂さん」サラッ

白井「ちょ、な、は……何でっ!!?」

固法「さぁ。私も何でかは聞いてない」


大体見当は付いているが……本人の口から聞かねば、ね。



 コンコンッ・・・・・



固法「ほら、噂をすれば何とやら」チラッ

白井「ぎょぶぇいっ!?」ギョッ!


変な声を上げて固まる白井。


御坂「こんにちは……」ガチャッ・・・

固法「いらっしゃい」ニコッ

御坂「すいません、日曜日なのに……あれ? 黒子は?」キョロキョロ

固法「え?」


いない。空間移動し(逃げ)たらしい。


固法「逃げたか、隠れたか」ハァ

御坂「居たんだ」

固法「今の今まで此処にね……ちょっと待ってて」スタッ


立ち上がり、白井のロッカーを開ける。


固法「いないわね」ガチャッ

御坂「あの……何してるんですか?」タラー・・・

固法「白井探し」サラッ

御坂「へ?」ポカーン・・・

固法「いつもなら此処に隠れるんだけど……じゃあ次は」カチャッ


物置となっている臨時当番室の鍵を開ける。
雑多の山の中……二畳の仮眠床の上に、不自然に盛り上がりガクガク震える白黒ニ色の毛布。
114 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 02:34:34.39 ID:pHVfWOdI0
御坂「……黒子」

毛布『此処ニハ誰モ居ナイデスノー』ガクガク・・・

固法「喋ってるじゃない……」ハァ

毛布『座敷童子デスノー』ブルブル・・・


ビビり過ぎて頭のネジが数本飛んだようだ。


御坂「黒子……話、しよ」テクテク・・・

毛布『……』ガクガク・・・

御坂「私の所為で、悩ませて……本当にごめんなさい」ピタッ

毛布『……』ピタッ・・・

御坂「でも……今のが最後。もう、謝らない」ニコッ・・・


毛布がモゾモゾと……御坂に近づいてきた。


御坂「それ取りなって。顔見せなよ」アハハ・・・

毛布『構いませんの……私は毛布の精ですの』モゾモゾ・・・

固法「座敷童子は何処行ったのよ」タラー・・・


自称毛布の精はズルズルとソファに移動し、律義に靴を脱いで体育座りをした。
御坂と固法も苦笑しつつ座る事にする。


毛布『……本当に、もう大丈夫ですの?』モゾモゾ

御坂「大丈夫か如何かって言われると……多分、大丈夫じゃ無いかも」シュン・・・

毛布『……』クシュ・・・

御坂「でも……それ以上に信じなきゃ駄目かなって、思う事にしたから」ニコッ・・・

固法・毛布「『……』」フム・・・


昨晩、話して聞かせた事が良い薬になった様だ。


御坂「だからもう心配しないで。気を使ってくれなくても良いよ」コクッ・・・

毛布『……お姉さま』モフン・・・


普通に戻ろう。当たり前に。


毛布『お待ちください……今、黒子ちゃんを召喚します』モゾリ

固法「何その設定……てか毛布で全身包んでソファの上に乗らないで欲しいんだけど、毛布怪人さん」ハァ

毛布『毛布の精ですの。今の私から毛布を取ったら消えてしまいますの』モゾモゾ


どんな妖精だか精霊の類なんだ、オマエは。
それから三秒後、白井も決心がついたのか、毛布から丁度人一人分の質量が消えモフリとソファに落ちた。
そして背後のロッカーからガタリと音が鳴る。


御坂「今度はロッカーの魔人さん?」フフッ


ゆっくりと現れる……泣きベソ少女。
115 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 02:38:45.64 ID:pHVfWOdI0
白井「えっぐ……っ……うぅ……」ポロポロ・・・ガチャリ・・・

御坂「く、黒子!?」アタフタ・・・

白井「ぼねぇざばぁ……ぇぅ……っ……」ポロポロ・・・テクテク・・・

固法「あらあら」クスッ


御坂の方へ歩み寄る白井。


御坂「ったく……ありがと」ニコッ・・・


瞬間、飛び付く。


白井「う、ぅぅ……うわあああああぁんっ!! おねえざばのバガああああぁッ!!」ダァッ

御坂「ちょ、く、黒子っ」ワトト・・・

白井「ええええぇんっ!! 勝手に一人で解決してだあああぁっ!!」ガシッ!

御坂「も、もぅ……違うわよ。皆の御蔭」クスッ・・・

白井「あああああぁんっ!! ぞうだんじでおしがったのにぃいいいっ!!」ビエエエエェンッ!!


やれやれ、これではまた通報されかねない。


固法「こらこら、白井。御坂さん困ってるでしょ」ハァ・・・フフフ

白井「離じばぜんのおおぉぅっ!! 黒子が許ずまで離じまぜんのおおぉっ!!」ウワアアアァンッ!!

御坂「ハァ……私の所為だから仕方ないっか」ハハハ・・・

固法「程々にしなさいよ。先輩後輩揃って泣き疲れ寝入りましたなんて勘弁願いたいからね」クスッ

御坂「あはは……」ポリポリ・・・


それから暫く、白井の号泣が止む事は無かった……―――

























         【 ――いつもそばで笑っていよう……貴方の、すぐ、そばで……―― 】










116 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 02:41:35.09 ID:pHVfWOdI0
 ―――とある日曜日、PM04:00、学園都市第7学区、風紀委員第一七七支部……




結局、白井が一時間以上も泣き続けたので、御坂も固法も帰るに帰れない状況となってしまった。
やっと泣き止んだかと思うと、今度は無言で御坂の胸に顔を埋める白井。
いつもなら『お姉さまハァハァ』とか言って馬鹿みたいに興奮している筈なのだが……今は落ち着く為に母親に抱き着いている子供の様だ。


御坂「仕方ないわね」クスッ

白井「っく……ずびばぜん……」ヒック・・・ウック・・・

固法「いつもこのくらい可愛げがあれば、御坂さんも優しくしてくれるのにね」フフッ


常に純粋無垢な白井黒子……それはそれで、気持ち悪い。


御坂「とりあえず帰りましょ。もう4時過ぎだし……先輩もお休みなのにいつまでも拘束する訳にはいかないでしょ」

白井「ううぅ……分かり、ましたの……」グズッ

御坂「うわぁ……ま、まず顔洗ってきなさい」アハハ・・・

白井「うぃ……」テクテク・・・


クシャクチャな泣き顔。白井は洗面所に足を運んで行った。


固法「ふふっ。昨夜の貴女もあんな顔だったのよ」クスッ

御坂「ありゃりゃ……それは拙いですね」ポリポリ・・・

固法「さーてと。じゃあ帰り支度しますか」スタッ


コートを羽織り、荷物を纏め出す固法。


御坂「……彼氏さん家ですか?」ジー・・・

固法「さぁ、どうかしらね」ニコッ


一度『死んで』……そして『戻ってきた』想い人。


固法「一度……まぁ結構危ない目にあってるらしいんだけどね。私の知ってる限りでも、知らない所でも」ハァ・・・

御坂「……ふふっ」クスッ・・・


『彼』も……そういうヤツだ。


御坂「……先輩」ボソッ

固法「ん?」チラッ

御坂「先輩は、私に『いつまで待てる』って聞きましたよね」ジー・・・

固法「……ええ。言ったわ」コクッ・・・


御坂は、力強く……


御坂「私は……いつまでだって、待ってみせます」


はっきりと、宣言する。
117 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 02:53:23.91 ID:pHVfWOdI0
固法「そう……辛いわよ」

御坂「上等です」キリッ


もう迷わない。


御坂「私……諦めません」ニコッ


信じてみせる。『彼』の無事を。


固法「うん……私みたいに、妥協しないでね」ニコッ

御坂「はい。ありがとうございます」ペコッ


他者の例を上げるのは不謹慎かもしれないが……先輩の実例話の御蔭だ。


白井「ふぅ……すいません。お待たせし……あれ?」ジー・・・

固法「うん、待たされた。さっさと出なさい。早く鍵閉めたいわ」クルッ

御坂「ほら、先輩に迷惑でしょ。さっさと帰りましょ」ニコッ

白井「え……ま、いっか」ピョンッ


3人で部屋を出て、鍵を閉め、各々の帰路に着く。


白井「おっ姉っさまぁ! 今日こそは久しぶりーに同伴してお風呂に浴いれますのねー!」キャッキャッ!

御坂「ええぇい、引っ付くな! 久しぶりって一度も一緒に入った事無いでしょ!」ガー!

白井「んもぅ、イケずぅ! そんなツンデレールガンなお姉さまだからこそ黒子は愛を捧げらぁ痛っ!」ポカッ!

御坂「公道のド真ん中で訳の分からん事を言うなっ!」ハァ


再び尊敬できる強さに戻った先輩にしがみ付く後輩。困りながらも楽しそうに応対する御坂。


固法「ふふふ……頑張れ。恋する乙女」テクテク・・・



御坂美琴は諦めない。強い男に恋する乙女もまた、強いのだ。
だから、いつまでも……待っている。



御坂(早く帰ってきなさい……上条当麻っ!)ニコッ



『貴方』を……―――
118 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 02:59:36.57 ID:pHVfWOdI0














   【 ――貴方は今どこで、なにをしていますか?―― 】










                                【 ――この空の続く場所に、いますか?――  】












       【 ――何時ものように、笑顔でいてくれますか?―― 】

















                   【 ――今はただそれを……願い続ける―― 】













                                                        ―――・・・fin 。
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/04/07(木) 03:05:33.47 ID:ewtMg/2Q0
深夜におつかれさん
120 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました [saga]:2011/04/07(木) 03:35:54.16 ID:pHVfWOdI0
 ―――とある日、時刻不明、学園都市第7学区、とある病院地下・とある部屋……





垣根「……お粗末さまでしたー」ペコッ

テレス「この作品は新約前に書いていたモノを、新約後に補足した短編です」

垣根「【――】で書かれていた詞は、同人ゲーム『ひぐらしのなく頃に 解』から作曲dai氏、作詞癒月(ユヅキ)氏の『you』って曲だ」

テレス「今更説明するまでも無いでしょうけど、気になる方は是非どうぞ……って何で宣伝してんのよ。私達」タラー・・・

垣根「細けぇ事はい(ry」

テレス「ったく……まぁとりあえず、22巻読み終えた時浮かんだイメージがこれだと」

垣根「他はグレ○ラガ○挿入歌、中川翔子氏の『Happily ever after』や……●トルバスターズ!ED曲、Rita氏の『Song for friends,』な」

テレス「アニソン以外出て来ないのかしらね……」

垣根「仕方ねぇだろ。後は歌詞の意味分かりもしないのに洋画のサントラばっか聞いてんだから」

テレス「ま、如何でもいいけどね……幻想殺しか」フーン・・・

垣根「何? 興味有る?」ジー・・・

テレス「あんまりない。多分私や数多、那由他なら瞬殺出来る一般人でしょ?」フッ

垣根「……浪漫が無ぇ」ハァ・・・

テレス「結構よ。とりあえず次回はアンケ通り書きなさいよ。もう『溜め』無いんだから」ジトー・・・

垣根「そだなー……因みに>>66のアンケート答えてない方いたら御協力お願いしゃーっす!」ペコッ!

テレス「そうね。あと、偶には私達主体の話も欲しいなー……とかボヤいてみる」ジトー・・・

垣根「オレやオマエは話が纏まらなくなった時の便利屋だったりメタキャラだってさ! ……畜生めぇっ!!」ウガー!

テレス「ハァ……とりあえず夜分遅く読んで頂いた方、ありがとうございました。次回の投下予定はまだ未定です」

垣根「てか『アッチ』先に書くかもな!」アハハ・・・

テレス「『アッチ』こそ私達の出番無いじゃない……」

垣根「だから『カキネラジヲ』でジャックしようぜー! 誰かリクで垣根希望って書いてくれー!」ギャーギャー!

テレス「……>>1が却下だって」

垣根「」チーン・・・

テレス「ヤレヤレね……では今日は此処までです。おやすみなさい」ペコッ

垣根「うぃ……宿題したか? 歯ぁ磨けよ! じゃあなっ!」ノシ”
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/04/07(木) 08:24:41.86 ID:mVLVdbUAO
久しぶりに見たがまだ続いてたのか
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/07(木) 12:40:04.05 ID:QYe9AObDO
幸せはいつだって失って初めて、幸せ気付く小さな不幸‥‥かぃ。
良い話でした。乙。
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/07(木) 14:47:14.85 ID:YGYuUIODO


細かいけど
寮監は基本女言葉じゃない
あと固法先輩は基本年下にもさん・くん付け
124 :>>1にかわりましてカキネが報告します :2011/04/08(金) 02:15:44.19 ID:c9t5xVoDO
垣根「携帯からこんばんは。また地震きた‥‥電気死んだ。冷蔵庫死んだ。もぅマジ勘弁してくれ‥‥」チーン…

テレスティーナ「と、いうわけでまた暫く篭るかもしれません」ペコッ

垣根「最悪、虚無るかもしれません」キリッ!

テレス「おまえは何を言っているんだ?」ハァ?

垣根「まぁとりあえず‥‥そんな生存報告っした」

テレス「皆々様もご無事であることをお祈り致します」
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/08(金) 09:22:00.43 ID:ieXz9XrDO
無事で良かったな!
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/08(金) 20:41:55.93 ID:hBPBKkrWo
>>123
よく読め
どっちも文中で説明してる
寮監は眼鏡の有無でで有無口調を切り替えてるみたいだし
固法先輩の方は>>112
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/08(金) 23:53:28.75 ID:3csF9CMg0
これ見て新約二巻の美琴の描写がかなり気になりだしてしまったww
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/01(日) 13:08:58.70 ID:4An4Tr8DO
こっちにそろそろ来てくれー
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/09(月) 17:16:14.30 ID:E69Lqbbt0
もうこっちは書かないんだろうか…
130 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/05/12(木) 22:17:33.96 ID:5Rr44aak0
どーもー! お久しぶりです!
一ヶ月以上経ってしまいましたね。申し訳無い!

もう一つ謝罪。アンケを取らせて頂いたのですが……書き溜めデータが飛びました(苦笑)

てな訳で、ぽつぽつ別話書かせて貰います。厨U成分たっぷりですがお許しください!


んじゃ書くぞー!
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/05/12(木) 22:19:28.13 ID:GTkfg/2H0
よっしゃああああああああああああああ
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/12(木) 22:39:42.00 ID:01fXKnc40
ずっと……ずっと……待ってたよ
133 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/12(木) 22:50:56.35 ID:5Rr44aak0
 ―――とある日、PM09:00、学園都市第7学区、とあるアパート(黒妻宅)……



ベットの上に……一人、死んだように臥している男――黒妻。


黒妻「……身体、動かね」グデェ・・・


とある『慈善活動』を終えて部屋に戻ってきたのは良いが、何のアフターケアもない。所詮ボランティア止まりの行為。
人助けをするのは素敵な事というが、助ける側がブっ倒れては元も子もない。


黒妻「マッサージとか行ってみてぇな……今度先生にどっか良いとこ紹介して貰おう」ハァ・・・


全身の筋肉を振い立たせ跳び駆け周り、1時間半9o弾の集中砲火を浴びてきた。
直接肉体に弾丸は届いてないとはいえ、鉄パイプで刺突され続けている様なモノだ。体中が軋んでいる。
これでは明日は碌に動けないだろう。畜生め。

ただ、幸か不幸か、明日は仕事(バイト)がない。
学生でない自分が仕事を持っていないのは如何なのだろうと悩んではいるが、正直助かった。

兎に角、今日は適当に3分飯(カップラ)でもカッ込んでドブ寝しよう……そう決め込んだ時だった。


 Prrr・・・Prrr・・・・・


黒妻「……3人のうちの誰かじゃありませんように」チラッ・・・


  【 雲川 】


神様の馬鹿野郎。


黒妻「……うぃ」Pi!

雲川『こんばんは。今日は御苦労だけど』クスッ

黒妻「気楽に言いやがって……事前情報と違ぇぞ」ハァ・・・

雲川『事前調査は服部くんかアホ御門の仕事。私に当たらないでほしいんだけど』フフッ


事前情報……能力者による『無能力者狩り遊び(ハンティングゲーム)』の制裁、及び無能力者達の救出。
実際現場……能力者・無能力者関係無しの乱戦。要は『能力vs武器』の喧嘩。


雲川『事後処理は完璧だって。全員、逮捕・補導させたけど』ニコッ

黒妻「そういう問題じゃねぇ……どっちも弱者じゃねぇだろ」ッタク・・・

雲川『でも、無能力者が圧倒的不利な喧嘩だったけど? それに貴方の活動は街の平和を守る事じゃない』

黒妻「んなヒーロー活動してねぇっつの……あくまで弱者救済だ」

雲川『んー……弱者の基準が今一なんだけど』


駒場の意志を継ぎたい一心から始めた活動だ。
コイツらの便利屋になるつもりは毛頭有りはしない。特にコイツ――雲川と土御門の道具には、だ。
134 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/12(木) 23:14:29.09 ID:5Rr44aak0
さておき、本題を聞く。


黒妻「まさか今からもう一件仕事だってんじゃねぇだろうな……」

雲川『そうしたいならそうさせるけど。今は服部くんと郭さん達がパトロールしてるから安心なさい』フフッ・・・

黒妻「……」ホッ・・・

雲川『……正直、そのスタンスは直すべきだと思うけど』ハァ・・・

黒妻「スタンス?」

雲川『あのさぁ……―――』


愚痴が長く、余計な話まで入ってきたので要約すると……

・短時間限定では連続して活動できない。
・一回一回のインパクトが薄過ぎて『駒場利徳』の恐怖を、心許無い能力者共に植え付けられない。
・学園都市を守るくらいのイメージが欲しい。
・銃を使わない。

……だそうだ。


黒妻「……前二つは同意だ」コクッ

雲川『いやいや、全部大事なんだけど』ハァ・・・


都市を守るのは警備員という警察組織であるべきという思想がある。
銃は……ポリシーというのだろうか、ワイヤーガン以外は持ちたくない。


雲川『……貴方とヒーロー談義をするつもりはないけど、それじゃあ飛び道具を使わない透明な3分間ヒーローだ』ハァ・・・

黒妻「透明って……まぁカップラヒーローは認めざるを得ないな」ハハハ・・・

雲川『少し考えさせて貰うけど。スタンスとしては蜘蛛男か蝙蝠男、精神的超人くらい常に動けるようじゃなきゃ』

黒妻「俺は超人でもないし、大富豪でもねぇ。まして完全なプータロでもねぇぞ」

雲川『へぇ。戸籍もない違法バイト繰り返してるくせにそんな事言えるとは、結構驚きだけど』クスッ

黒妻「く、区役所が遅ぇんだよ! 行方不明届2年経って如何こうとか、死亡届が一度如何こうとか!」フンッ!


困ったものだ。マトモに就活できない。


雲川『まぁ貴方の就職なんか如何でも良いけど。もし無能力者が次々と襲われるような事態が起きたら如何すんの?』

黒妻「そん時は……意地でも立つさ」

雲川『ふーん……兎に角、提案させて貰うけど。素の貴方でも余裕そうな時は発条包帯(ハードテーピング)抜きで活動しなさい』

黒妻「……土御門と半蔵にも相談してからな」

雲川『元よりそのつもりだけど。じゃないと貴方、最悪過労で死ぬけど』

黒妻「……大丈夫だ」

雲川『ダイジョーブじゃない。問題だけど』ハァ・・・


根拠の無い見栄を張る。
135 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/12(木) 23:30:31.26 ID:5Rr44aak0
黒妻「とりあえず、それだけか?」

雲川『は? 本題言ってないんだけど』


コイツ、話長ぇ。


雲川『明日、5時に病院前来なさい』

黒妻「普通さ……『明日の予定は?』から入らねぇか?」

雲川『どうせ暇だと思ったんだけど』


当たってるが……腹立つ。


雲川『精々定職着いてから文句言え』

黒妻「」

雲川『兎に角、鞭打ってでも病院来る事。OK?』

黒妻「……待てっつの。理由が無ぇ」ハァ・・・

雲川『理由? 必要なの? 生産者と非生産者のギリギリラインの貴方が?』


カチンと来る。似非御嬢様め。


雲川『慈善活動とは言わない。報酬は出るけど』

黒妻「ったく……せめて何をするのか教えてくれ」

雲川『治験のち改造手術を―――』



 Pi! ツー・・・ツー・・・・・



黒妻「…………………………………さて、飯を食うか」イデデ・・・



 Prrr・・・Prrrr・・・・・



黒妻「……」タラー・・・



 Prrr・・・Prrrr・・・・・



黒妻「……ハァ」Pi!
136 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/13(金) 00:00:12.70 ID:UQfd/7qX0
黒妻「……なんだっつの」

雲川『貴方、女性からの電話切るってどんな神経してんの?』ジトー・・・

黒妻「オマエを女性として見た事無い」キッパリ!

雲川『……いつか泣かす』


女性に泣かされる趣味はございません。香焼とは違います。


雲川『さっきのは冗談なんだけど』

黒妻「いや、オマエと土御門は冗談の境界線が存在しないから怖い」

雲川『アレと一緒にすんな。話戻すけど、貴方には精神病院行って貰う』


人の頭を心配する前に手前の人格疑って下さい。


雲川『違ぇっつってんの! そして貴方無礼過ぎんだけど!』ギロッ!

黒妻「はいはい、さーせん」

雲川『ったく……移動の車は出すけど。とりあえずいつもの病院まではバイクなり何なりで来なさい』

黒妻「待て待て。その精神病院でオレは何すんだ?」

雲川『……PCのアド教えなさい。詳細送るから』

黒妻「オレん家PC無ぇ」

雲川『貴方いつの時代の人間よ……仕方ないから土御門に送る。プリントアウトさせて受け取りなさい」


面倒臭そうに語る似非御嬢様。というか、この件に土御門と半蔵は絡んでいるのだろうか。


雲川『貴方の今後にも関わる事だから話すつもりではいたけど。服部くんには既に伝えてある』

黒妻「土御門にはまだだったのか」

雲川『口出しされるのが厄介だから直前にしようと思ってた。まぁ仕方ないけど』ハァ・・・


雲川と土御門の無言の喧嘩に挟まれている半蔵は大変だろうな。


雲川『良い? 今回の件は土御門の阿呆が何を言おうとも無視りなさい。命令だけど』

黒妻「……そんなに毛嫌いしなくても」

雲川『そうじゃないけど。今回はアイツも貴方と同じ「立場」なの。私の「駒」だけど』


駒、か。


雲川『怒らないで欲しいけど。今は私の策戦に口出ししないで……メリットは多いわ』ニコッ

黒妻「……信じるぞ」

雲川『あら、嬉しいけど』クスッ


その喋り方は意図を掴めないから怖い。
一寸後、目的の精神病院の名前だけ聞き出し電話を終えた。
137 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/05/13(金) 00:27:54.90 ID:UQfd/7qX0
 ―――とある日、PM09:30、学園都市第7学区、とあるアパート(黒妻宅)……




カップラの残り汁(豚骨)にレンジで解凍したご飯をブチ込もうとした寸前、玄関のドアが勢い良く開いた。


土御門「あの腐れアマ、俺をパシリに使うたぁ良い度胸してんじゃねぇか!」ドカドカ!

黒妻「せめてインターホンを鳴らせ、非常識人」ピタッ・・・

土御門「しゃーらっぷ! 元はといえばセンセがPC持ってねぇのが悪いんだぞ」ジトー・・・


んなPC買う金無いし。


土御門「知るか。早く就職しろ! そして俺ん部屋の遠くに住め!」ダンダンッ!

黒妻「五月蠅い。下の階の住人に迷惑だ」

土御門「センセと嫁さんの[らめぇぇっ!]よかぁ静かだっつの!」ガアアァ!


殴って良いか?


土御門「そりゃこっちのセリフですー。前の休み昼夜ブっ続けでわっふるわっふるしてたろ? ホテル行けっつの喧しい!」

黒妻「……さーせん」ダラダラ・・・

土御門「ったくよぉ……さっさと学生アパートから出てって防音完璧な家に引っ越せっての……」ハァ・・・


自称(仮)童貞少年には刺激が強過ぎたようだ。


土御門「んで……ほれ、この二枚だにゃ」スッ・・・

黒妻「ん、さんきゅ」


急いでご飯をカップに入れ、再度電子レンジに入れる。
そして2分にセットした後、土御門から書類を受け取った。


土御門「何とも御丁寧に俺を兵隊の頭数にしてやがる……マジ泣かすぞ、あの糞女」ンギギ・・・

黒妻「……直接電話したのか」

土御門「するかっての! 『[ピーーー]』ってメール送ったら『[ピーーー]』と帰って来た! マジ腹立つ……」ギリリ・・・


仲良いなぁ。


土御門「……まぁだが、あの女の考える事も一理あるぜぃ」ハァ・・・

黒妻「お、デレた……スタイルについてか?」

土御門「デレ言うな……ああ、戦闘スタイルだ。前に話していた事を実行せにゃならんと思ってるのは俺らだけじゃないらしいぜぃ」コクッ


やはり効率の悪い戦い方は避けるべきか。
とりあえず、カップラおじやを食べながら話を続けよう。
138 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/05/13(金) 01:30:32.17 ID:UQfd/7qX0
土御門「それで、内容なんだが……」チラッ

黒妻「ん」ジュルルル・・・

土御門「場所は聞いているんだろうけど……」チラッ

黒妻「むん」ジュルルル・・・

土御門「……」ジトー・・・

黒妻「ん……あ?」ピタッ・・・


サングラスの奥が翳った。


土御門「その畜生の餌喰うの一旦止めろ」

黒妻「は?」

土御門「五月蠅くて話できねぇ」ジトー・・・

黒妻「おま……カップラおじや馬鹿にすんなし! アレだろ? オマエ、猫まんま喰えないタイプだろ」ベー!

土御門「違ぇよ! 汁飯ってのぁ他人が見てねぇ時にだけ許される行為なんだっつの! センセは邪道な上、うっせぇんだ!」ガアアァッ!


見かけによらずナイーブなヤツめ。


土御門「アンタが杜撰なんだよ……続けるぞ。今回の目的地から確認だ」

黒妻「確か、精神病院……って名目の研究施設だったか?」

土御門「そうだ。加えて言えば……刑務所でもある」

黒妻「さしずめ、アーカムアサイラムって事だな」チラッ

土御門「御名答。此処にブチ込まれている輩は皆、狂人だ。本来であれば死刑レベルのな」コクッ

黒妻「……なら如何して縛り首にならない」

土御門「主な理由は二つ。一つはこの施設の成り立ちだ。死刑反対派の理事のバックアップで運営されている」


つまり、反対派の理事が今現在多いのだろう。それは潰すに潰せない。


黒妻「んで、もう一つは?」

土御門「希少能力者や政治犯も収容されているんだ。利用価値があるから殺さない」

黒妻「精神病患者扱いにすれば殺せないってか……上手くやるもんだな」フンッ

土御門「本来であれば一方通行や麦野沈利、垣根帝督なんかも此処の住人だぜぃ」フフフ・・・

黒妻「……ノーコメントだ」


それに関しては首を突っ込まないつもりである。


土御門「まぁ個人的にはまだ何か隠されていると思うんだけどにゃー……気になる点も有るし」フムフム

黒妻「気になる点?」

土御門「ああ……この施設から暗部入りがいないんだ」


暗部……学園都市の裏。汚れ仕事を受け持つ連中。
それに化す者達は多額の負債、生まれ付いての殺人教育、汚職隠蔽、理事会直々のスカウト等、あまり好ましいと言えない影持ちの輩だ。
そう考えると確かにこの施設は暗部養成のうってつけの機関かもしれない。
139 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/05/13(金) 01:59:55.66 ID:UQfd/7qX0
黒妻「とりあえず、オマエはそれを調べる為にも敢えて雲川の策に乗ってやろうって訳か」

土御門「まぁな……ただ、此処を見てくれ」スッ・・・


 ――『道化(土御門)』は2,3名、自分で駒を準備するのは自由。


黒妻「……やっぱ危険なのか」ウヘェ・・・

土御門「場所が場所ってのもあるが、戦闘は無い筈……何故態々兵を増やす必要があるのか不明だ」

黒妻「まぁ念には念をって事じゃね」


正直、オレは当てにならないからな。


黒妻「それから、この活動内容が気になる」ピッ

土御門「『所長に挨拶』、『未成年棟の見学』、それ以降は基本所長の指示に従い必要であれば『頭脳』が追って連絡……やっぱ変だ」

黒妻「ミソは『所長さん』と『未成年棟』やらだな。何か心当たりは?」チラッ

土御門「うーん……知ってるけど……言えないが……関係無い気が……」ポリポリ・・・

黒妻「……裏か?」

土御門「裏、じゃないにゃ……でも裏っぽい……悪い。ハッキリ言えないぜよ。まぁだが、行けば嫌が応にも分かりますたい」ポリポリ・・・


行ってからのお楽しみって訳か。楽しみで泣けてくるよ。


黒妻「じゃあもう一つだけ。此処は研究施設も兼ねてるって話だが、何の研究なんだ? やっぱ精神学とか犯罪心理か?」

土御門「……それが、言えない。行けば分かる」

黒妻「……まさか凄ぇ危険な事してんじゃねぇだろうな」タラー・・・

土御門「危険じゃないが、未知の領域って感じだにゃ。理解するのに時間が掛るぜ?」


つまり中卒のオレには理解できないという訳か。


土御門「じゃなくて、この街の人間には理解し難いんだぜぃ……あ、でもセンセは身体以外、永遠の中学生だから理解できっかも」ニカッ!

黒妻「聞かなかった事にしてやる……とりあえずもう良いぞ。明日またな」コクッ

土御門「あいよ。てか……明日学校迎えに来て。俺授業終わり一回家戻んのメンドイですたい」ニコッ

黒妻「……図々しいヤツ」ハァ・・・

土御門「ふふふ。そう言いながらもキチンと迎えに来てくれるセンセは好きだぜぃ」ヒヒヒ!


相変わらず癪に障る道化師だ。
その後、多少の会話を交わし土御門は自分の部屋に戻って行った。
140 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/05/13(金) 02:00:41.86 ID:UQfd/7qX0
黒妻「とりあえず、オマエはそれを調べる為にも敢えて雲川の策に乗ってやろうって訳か」

土御門「まぁな……ただ、此処を見てくれ」スッ・・・


 ――『道化(土御門)』は2,3名、自分で駒を準備するのは自由。


黒妻「……やっぱ危険なのか」ウヘェ・・・

土御門「場所が場所ってのもあるが、戦闘は無い筈……何故態々兵を増やす必要があるのか不明だ」

黒妻「まぁ念には念をって事じゃね」


正直、オレは当てにならないからな。


黒妻「それから、この活動内容が気になる」ピッ

土御門「『所長に挨拶』、『未成年棟の見学』、それ以降は基本所長の指示に従い必要であれば『頭脳』が追って連絡……やっぱ変だ」

黒妻「ミソは『所長さん』と『未成年棟』やらだな。何か心当たりは?」チラッ

土御門「うーん……知ってるけど……言えないが……関係無い気が……」ポリポリ・・・

黒妻「……裏か?」

土御門「裏、じゃないにゃ……でも裏っぽい……悪い。ハッキリ言えないぜよ。まぁだが、行けば嫌が応にも分かりますたい」ポリポリ・・・


行ってからのお楽しみって訳か。楽しみで泣けてくるよ。


黒妻「じゃあもう一つだけ。此処は研究施設も兼ねてるって話だが、何の研究なんだ? やっぱ精神学とか犯罪心理か?」

土御門「……それが、言えない。行けば分かる」

黒妻「……まさか凄ぇ危険な事してんじゃねぇだろうな」タラー・・・

土御門「危険じゃないが、未知の領域って感じだにゃ。理解するのに時間が掛るぜ?」


つまり中卒のオレには理解できないという訳か。


土御門「じゃなくて、この街の人間には理解し難いんだぜぃ……あ、でもセンセは身体以外、永遠の中学生だから理解できっかも」ニカッ!

黒妻「聞かなかった事にしてやる……とりあえずもう良いぞ。明日またな」コクッ

土御門「あいよ。てか……明日学校迎えに来て。俺授業終わり一回家戻んのメンドイですたい」ニコッ

黒妻「……図々しいヤツ」ハァ・・・

土御門「ふふふ。そう言いながらもキチンと迎えに来てくれるセンセは好きだぜぃ」ヒヒヒ!


相変わらず癪に障る道化師だ。
その後、多少の会話を交わし土御門は自分の部屋に戻って行った。
141 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/05/13(金) 02:40:21.93 ID:UQfd/7qX0
 ―――とある日、PM10:00、学園都市第7学区、とあるアパート(土御門宅)……



まったく以て度し難い。
メリットが多いとはいえ、あの目狐に出し抜かれるのは内心腹立たしい限りだ。


土御門「糞ったれ……」ドサッ・・・


黒妻綿流には言えなかったが……あの施設は『原石』の研究機関である。

正しくは、研究機関も兼ねているといったところだ。名前通り精神病院且つ刑務所としても機能はしているが、主軸はそっちではない。
黒妻に『狂人』を見せつけたいのか、それとも『原石』を見せつけたいのかは知らないが……今一あの女の腹が掴めない。


土御門「まさか……」スッ・・・


自分のアクセス権を用いて『書庫』を探る。そして一人の少年の写真をズーム。


土御門「……利用、するのか?」フム・・・


世界最高の原石―――超能力者(レベル5)第7位、削板軍覇。

確かにコイツは勝手気ままに自警活動を行っている。
小悪党どもの下らない犯罪行為を止める事もあれば、裏が関わっている厄介でデリケートな仕事の邪魔をする事も屡(しばしば)。


土御門「ふざけている……あの女郎、ジャスティスリーグでも作るつもりじゃねぇだろうな」ハァ・・・


黒妻が『ダークナイト』だとすれば、削板は文字通り『超人』だ。


土御門「危険だな……」Pi!


念には念を入れ、今回の私兵を準備する事にしよう。
本来であれば第一位という絶大なカードがあるのだが、アレは顔が知れ過ぎている。故に……


土御門「夜分遅くすまんな」

海原『いえいえ、仕事ですか?』


『顔』がばれないコイツに交渉してみる。


土御門「仕事……確かに仕事だが、受けるか如何かは貴様次第だ」

海原『はいはい。それでは内容を伺いましょう』

土御門「最初に言っておく。これは半分俺の私用だ。一方通行や結標……つまり暗部(グループ)はまるで関係無い」

海原『……詳しく』フム・・・


俺は話せる範囲で、今回の傭兵稼業の説明をした。
142 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/05/13(金) 03:04:57.29 ID:UQfd/7qX0
海原「―――……成程。例の怪しい精神病院ですか」ホォ・・・

土御門『悪いがこれ以上の詳細は話を受けて貰ってからだ。徒労に終わるかもしれないが……やるか?』ニヤッ

海原『先に質問を』

土御門「答えられる範囲なら」

海原『まず、僕の他に今回この件に当たる人間は?』

土御門「黒妻綿流だ。現時点ではヤツのみ」


服部と雲川本人は如何するのか、まだ分からない。


海原『では、何故僕を御誘いに?』

土御門「社交的且つ(腕と緘口性が)信用出来るからだ」

海原『ふふっ。純粋にそう考えているのなら嬉しい限りです』


一方通行は先の理由と社交性に問題アリなので駄目。結標は社交性はまずまずでも大事な時にヘマるから駄目。
魔術サイドの知り合いは私兵として使い辛い。現在都市在住で腕利きなのは五和くらいだが、神裂にばれると厄介なのでパス。
その他の輩で今回の件に首を突っ込む事が出来そうな知り合いは……いないだろう。



土御門「どうだ? 受けるか?」

海原『おっと、大事な事を……報酬は?』ニヤッ・・・


がめついというか、抜け目ない奴め。


土御門「……その前に良いか」

海原『何か?』

土御門「オマエの知り合いで口が堅く、腕が立つヤツはいるか? この際社交性は無口だとか口調がオカシイとかは目を瞑る」

海原『……意味が分からないんですけど』

土御門「そいつも雇ってやるって言っているんだ。予算はある」

海原『ほぉ……暗部では無いのにその資金源(スポンサー)という事は、必要悪の教会(ネセサリウス)の仕事でしたか』

土御門「……違う。個人的な付き合いの輩だ。んな事はテメェが気にする事じゃねぇ」


いるのか、いないのか言えというだけの話。


海原『因みに何名程欲しいんですか?』

土御門「2,3人だな」

海原『分かりました。当たってみましょう……とりあえず僕は引受けますよ』ニコッ

土御門「助かる……では詳細をメールしておくから集合時間場所等を確認してくれ。人員は任せた」

海原『はいはい。しかし……貴方も大概友達少ないですね』フフッ

土御門「喧しい。表(リアル)にはざっと百はいるっつの。テメェらみてぇな社会不適合者と一緒にすんな」ケッ

海原『あはは。これは手厳しいですね』クスッ


これ以上は喧嘩の種になりかねない。
兎角、明日の胡散臭い策に備え床に着く事にした。
143 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました :2011/05/13(金) 03:16:42.45 ID:UQfd/7qX0
はい。長くなりそうなので、今晩は此処まで。次回オリキャラとトンデモ翌理論出すけど大目に見てね(笑)


因みに御報告。
今回の話、一区切りついたら……『アンジェレネ・あふたー』やります! ドロドロですが、勿論ハッピーエンドにしますよ。


んでは例の如く感想質問意見罵倒提案リクエスト等々、コメントお願いします。ではまた次回! ノシ
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/13(金) 06:22:26.16 ID:tai9E+8DO
>>1
乙!

この展開
オラ、ワクワクすっぞ!
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/05/13(金) 08:06:35.67 ID:P0943Nnq0
乙!
親戚の方から聞いてたエロ中心物ですね?待ってました!
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/13(金) 13:03:01.15 ID:D2yOMAvDO
乙! アメコミ好きにとって魅力的な単語がチラホラと出てくるねぇ。
海原が連れて来るのは‥‥やっぱスネークかなww

あと、『あふたー』が楽しみで仕方ないぜよ!
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/13(金) 23:57:13.77 ID:rl8e8lkDO
乙乙!!

アンジェレネアフターwktk
148 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/05/15(日) 22:19:28.99 ID:ULYa6KwH0
こんばんわ。続き投下します。

ちなみに、親戚についてはアレです。太公望と王天君くらい別人ですのであしからず。
149 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/05/15(日) 22:34:20.14 ID:ULYa6KwH0
 ―――とある翌日、PM04:50、学園都市第7学区、とある病院……




次の日の夕方、雲川に言われた通り『いつもの病院』にオレは向った。
途中学校へ土御門を迎えに行ったのだが、どうもヤツはバイクに乗り慣れてないらしく、到着する頃にはグッタリしてしまっていた。
何とも情けないヤツ。


土御門「いや……センセの運転がヤベェんだっつの」ウヘェ・・・

黒妻「そんな飛ばして無いだろ? 精々出しても70`程度だぜ」

土御門「何回ブレーキ踏んだ? 信号有る道通らないのは何故?」ジトー・・・

黒妻「んな道通ったら警備員にしょっ引かれんだろ。あと、ブレーキ踏まなかったのは気分だ」ニカッ!

土御門「スピード狂が……」ハァ・・・


それは褒め言葉だ。


黒妻「それより、待ち合わせ場所は駐車場で良いんだよな?」

土御門「ああ。雲川本人が来るかどうかは知らんがな」

黒妻「今日学校で会ってないのか?」

土御門「アイツの顔は極力見ない様に生活しています……ブチ殺したくなるんだぜぃ」ギリリ・・・


アイツも同じような事言ってた。相変わらず仲良いなぁ。


黒妻「ところで……兵隊は如何したんだ?」

土御門「ヤツらも此処で待ち合わせなんだが……そろそろ来る筈だにゃ」クイッ・・・


コイツが準備する『兵隊』は碌なヤツじゃない気がするが、大丈夫だろうか。


土御門「……ん、ほら。噂をすれば何とやらだぜぃ」ニコッ


土御門が指差す――病院の入り口の方から、数名の男女が歩み寄ってきた。
その中で、自分が知り得る人物も交じっている事に気がつく。


黒妻「御坂ちゃん……いや、妹ちゃんの方か」チラッ

土御門「ふふふふふ……本人から直接自己紹介聞きなってばにゃ」クスッ


とはいえ……同じ顔が二人とはな。
150 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/05/15(日) 23:01:27.80 ID:ULYa6KwH0
土御門「よう、態々悪いな」ニコッ

????「いえいえ。報酬さえ頂ければ問題ありませんよ。仕事も無く、暇でしたしね」ニコッ


土御門と気軽に挨拶を交わす男性。声は何処かで聞いた事がある様な気がするが……


????「どうも。はじめまして……では無いですね、こんにちは」ニコッ

黒妻「ん? え、えっと……」タラー・・・

????「ふふふ。やはり分かりませんよね」クスクス・・・

土御門「まぁオマエを一発で把握できるのは『元同僚』共と『蛇』くらいだぜよ」ニシシ!

黒妻「……そっちは、御坂の妹ちゃんだろ? 一人は……知ってる」


確か、スネークと呼ばれていた妹さん。他の妹さん達とは異なるゴーグルと、腕に巻いてあるバンダナで思い出した。


御坂蛇「ええ……個体番号(シリアルナンバー)17600号、とミサカは簡潔に挨拶を済ませます」コクッ

御坂?「17600号(スネーク)。挨拶はもう少し丁寧にしましょう、とミサカは呆れながら訴えます」ハァ・・・

黒妻「そっちの妹ちゃんは?」

御坂春「私(ミサカ)の個体番号は14510号です。いたって普通の妹達(シスターズ)なので御好きに御呼び下さい、とミサカは――」

御坂蛇「春子、レーコ、春厨と呼んであげるべきでしょう。とミサカは適切な補足を入れます」キッパリ!

御坂春「――す、スネーク! 適当な事は言わないで下さいよぉ! 私の印象がまた悪くなりますから!」アタフタ!


とりあえず、春子ちゃんと呼んであげよう。


黒妻「んで、そっちは?」

????「んー……土御門」チラッ

土御門「面白いから黙ってたいんだけどにゃぁ」フフフ・・・

黒妻「……」ジトー・・・

御坂蛇「彼はエツァリ。貴方の知る所の『海原光貴』ですよ、とミサカは解説します」キッパリ

????「……スネーク。君は本当に空気が読めないね」ハァ・・・

御坂蛇「回りくどくダラダラになるのが嫌いなだけです。とミサカは駄目師匠に指摘もとい説明します」ジー・・・


成程。胡散臭い感じは納得できる……だが、顔姿がまるで別人。特殊メイクか何かしてるのだろうか。


土御門「そういう『能力』とでも思っておけ。詳しくはセンセが知る必要はないぜよ」クイッ・・・

黒妻「……そうか。それじゃあ、海原と呼ばせて貰うぞ」

海山田「今は仮の姿をしているので『海山田ミッチェル』とでも御呼び下さい。何なら『みっちゃん』でも可ですよ」ニコッ

一同『うわぁ……』ドンビキ・・・


ウザいので普通に海原と呼ぶ事にする。
151 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/05/15(日) 23:36:43.29 ID:ULYa6KwH0
(海山田改め)海原「つれませんね……まぁ今は好きに呼んで貰って構いませんよ。ただアチラに着いてからは海山田でお願いします」

黒妻「素性がばれるとヤバいのか?」

土御門「訳有って、今回は『海原光貴』を参加させる事は出来ないんだ。深くは聞かないでくれ」チラッ

黒妻「ああ、分かった」コクッ


元よりコイツらの関係に深入りするつもりは無い。


御坂春「……ところで、土御門さん」キョロキョロ・・・

土御門「ん? 何だ?」

御坂春「……あの人は?」ジー・・・

土御門「は?」ポカーン・・・

御坂春「……え」キョトン・・・

黒妻「春子ちゃん、如何した?」

御坂春「……蛇師匠(スネークマスター)?」ギギギ・・・

海原「おやおや。残念でしたね。『彼』は不参加の様です」クスッ・・・

御坂春「だ、騙しましたね!! 貴方は『彼』が今回の私用に参加すると豪語してたじゃないですか! とミサカは憤怒します!」ムキー!

海原「えー。『グループの【あの有名人】と一緒に仕事をしよう!』って書いただけですけどぉ」フフフ・・・


オレと土御門置いてけぼり。


土御門「……蛇。今回如何やって人集めた?」タラー・・・

御坂蛇「MNW(ミサカネットワーク)内のバイト募集板、短期バイトスレから収集しました、とミサカはコアな説明をします」


……日本語でおk?


海原「スネークにお願いして今日暇な都市在住妹達を選択してもらったのですよ」

御坂蛇「御坂妹(10032)・御坂丸(10039)・御坂.jp(13577)・御坂囁(19090)はまだ看護師勤務です、とミサカは主な都市組の行動報告をします」

土御門「如何でも良いが、打ち止めを通して一方通行に知られる様な事は無いだろうな?」ジトー・・・

海原「一応大丈夫ですよ。R-18バイトのスレに書き込んだので、チビ御坂さんが覗く様な事は無いでしょう」

御坂蛇「その点は御坂龍(18413)が上手くやってくれているので問題ないかと。ミサカもヤツの管理能力だけは高く評価します」

御坂春「そんなの良いから『彼』は何処ぉ!! とミサカは土御門さんに詰め寄り抗議します!」クウウッ!!


面倒臭そうな娘が一緒なのか……


海原「ハァ……レーコ。よく聞きなさい。実はこの仕事……彼の命を狙う組織の謎を解く重大な任務なのです」シー・・・

御坂春「な、何と!?」ギョッ!!

土御門「ああ、本当だ……敵はDr.マ○ハッタ○より強力な力を持つ宇宙人かもしれないという情報を得ている」コクッ・・・

海原「彼を救う為にも、協力して貰いたい……勿論報酬は出します。良いですね、レーコ!」カッ!!

御坂春「わ、分かりました! 微力ながら私(ミサカ)め、通称一方恋心(アクセラレーコ)! 助力します!」キリッ!

御坂蛇「馬鹿ばっか……とミサカは呟きます」ッタク・・・


同意……それからそんな化け物、居てたまるか。
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 23:39:45.22 ID:VwpmwnnDO
キテター! まさかの春厨参戦ww
Dr.マンハッタンより強い能力者なんていてたまるかwwww
153 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/05/16(月) 00:32:55.85 ID:njTDwYoK0
黒妻「そういえば……アイツは来ないんだな。オマエなら誘うと思ってたんだけど」

土御門「アイツって?」

黒妻「上条」サラッ

一同『……』ピタッ・・・


……オレ、何か拙い事言ったか?


海原「……い、いや……えっと、黒妻さん」タラー・・・

土御門「カミやんは、その……極力普通の学生生活を送るべき人間なんだにゃ。ただ勝手に問題事に首突っ込む機会が多いだけで」タラー・・・

黒妻「へぇ。まぁ問題事の中心にアイツか第一位が居るってのは多いよな。最近は仕上もだけど」コクッ

土御門「アイテムのチンピラは知らねぇが、他二人はそういう星の下に生まれちまった人間なんだぜぃ……」


どんな星だよ、それ。


土御門「兎に角だ、今日はこのメンツで仕事をする。増えるとしたら服部と女狐(雲川)くらいだぜぃ」

黒妻「ん……あのよぉ、最後に一つ」チラッ

土御門「中々面倒臭ぇにゃ、センセも」ハァ

黒妻「うっせぇよ……コイツらは……『知ってる』のか?」ボソッ


無論、『仮面』の事だ。


土御門「……14510号だけ知らない。海原と17600号は、協力者だ……服部の所の『くの一』みたいなものだと思ってくれ」チラッ

黒妻「了解だ……因みに今更だが、他に協力者はいるのか?」

土御門「協力って訳じゃないが一方通行はセンセと『同業者』。後は知っての通り冥土帰しだ。今はその程度を知っててくれれば良い」クイッ


先生(冥土帰し)には『活動』を始めてから幾度と世話になっていた。生傷の絶えない活動だからな。


海原「……土御門。来た様ですよ。あのバンでは?」チラッ

土御門「……かもしれん。センセ、雲川に電話して」

黒妻「オマエがし……あーはいはい。そんな顔しないでください」ハァ・・・


結局、迎えのバンだと確認できたので5人で乗り込む事となった。
154 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/05/16(月) 01:18:44.66 ID:njTDwYoK0
 ―――とある翌日、PM05:10、学園都市第7学区、とある道路……




半蔵「ったく……まぁ俺に出来る事っつーのも少ないんですけどねぇ……まさか運ちゃんやらされるとはなぁ」ハァ・・・


何となく想像は出来たが、半蔵が送迎の運転手だった。
勿論、いつもの如く郭ちゃんがセット同伴して助手席に座っている。


土御門「まぁそうカッカするな、服部。あの女に腹が立ってるのはオマエだけじゃねぇって」

半蔵「別に腹立たしい訳じゃねぇけどよ……何だかなぁ」

郭「……ま、策があるというのであれば乗ってあげるべきでしょう」


頭脳はは辛いよって訳か。


郭「ところで……其方の3名は協力者さんですか?」チラッ

土御門「ああ。そんなところだ」


御坂春「スネーク! 凄いですよ! 忍者です! ジャパニーズ忍者がいます! とミサカは終始興奮気味で後ろ指を指してみます!」キラキラ!


一同『……』タラー・・・


あの子は大丈夫なのだろうか。打ち止めちゃんみたいな子供なんだが……


海原「ま、まぁ異・強能力者(レベル2〜3)程の力はあります。大丈夫ですよ」アハハ・・・

土御門「……もう船は出たんだ。信じるしかないにゃ」ハァ・・・

黒妻「そういえば、今向かってんのは精神病院なんだよな……何処にあんだっけ?」

郭「第12学区と第19学区の丁度区間です」

半蔵「距離あるんで環状線高速乗っちゃいますよ。少し休んでて貰って結構です」


ではお言葉に甘えるとしよう。


御坂蛇「……」ジー・・・

海原「如何しました?」チラッ

御坂蛇「……あの二人『専門家(プロフェッショナル)』ですね、とミサカは解析してみます」ジー・・・

海原「ほぉ」ニヤッ・・・

土御門「にゃはは。良かったな、御二人さん。何のプロか分からないが、称えられてるぜぃ」ニシシ!

郭「あら、ありがとうございます。サインでもあげましょうか?」クスッ

御坂春「えっ!? 良いのですか!! ではミサカのブレザー裏にこっそり」

半蔵「郭……この馬鹿女郎。プロとか如何とか話題に上がる時点でプロじゃねぇんだよ」ケッ・・・


何だこの隠密談義……草は華より目立っちゃいけないってヤツか。
155 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/05/16(月) 01:53:53.91 ID:njTDwYoK0
 ―――とある翌日、PM05:40、学園都市第12〜19学区、理事立大学付属病院・精神科(研究所兼刑務所)……




学園都市の内周部を囲むように走っている環状高速。
中心地である第7学区から東に、第18学区を抜け、敷地面積の広い第23学区のインターに入る。
そこから北へ数十分、神学系の施設が多い12学区のインターで降りて……廃れた第19学区との境へ向かう。


半蔵「到着っと……此処ですね」キキィッ・・・


駐車場、というよりは唯のジャリ置き場の様な場所にバンを停める。
目の前にはやたらとデカく重々しい『塀』。


土御門「まさに刑務所だな……センセがブチ込まれてた年少(少年院)もこんな感じだったのかぃ?」ニヤッ

黒妻「馬鹿野郎。オレが入ってた年少はもっと綺麗な更生施設だったっつの」フンッ

半蔵「言って貰えれば何時でも脱獄の手伝いしたのに。兄貴の入ってたとこ、凄ぇ緩いじゃんか」チラッ


逃げたら美偉が死ぬほど泣くので出来ません。


海原「とりあえずこれからの手順を教えて頂きたいのですが、宜しいですか?」ニコッ

土御門「そうだな……多分、2班に分かれて行動する事になるかもしれない。中の教授だか博士だかの指示に従う様言われてるが……」

半蔵「正直、不安だな。出来れば俺か土御門の2頭で行動しよう」

土御門「賛成だ。海原……状況によって、追って伝える」

海原「了解です」

黒妻「オレは如何すりゃいいんだ?」

半蔵「兄貴は……単独行動だけは控えてください。はっきり言って雲川の女郎がブン投げ状態でパスしやがったんで、策を練れないんです」


難しく考え過ぎな気がするけどなぁ。


半蔵「……とりあえず、郭はバンで待機だ。何かあったら直ぐ動かせるようにはしておけ」

郭「えー。私も中に入りたいですよぉ」

半蔵「黙れ。残れ。邪魔すんな」ジトー・・・

郭「ぶーぶー!」ベー!


郭ちゃん、影のくせに派手好きなのは何故だろう。
兎に角、拠点は大事だという事でバンには郭ちゃんと御坂春ちゃんを残す事にした。

何かあった時の保険という訳だろう。まったく頭の回る連中だ。
156 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/05/16(月) 02:55:37.30 ID:njTDwYoK0
土御門「さて、今から入る訳だが……その前に」チラッ

黒妻・半蔵「「ん?」」ピタッ・・・

土御門「アンタら、その恰好で入るつもりかにゃ?」ジトー・・・


いつもの私服だが、何か問題でも。


土御門「仮にも仕事だぜぃ? 俺らは学生だから学生服で済むけど……なぁ」ジトー・・・

黒妻「んな事言ったってよぉ、俺ぁ学生じゃ無ぇしスーツだって持ってきてねぇぞ」

半蔵「歳にしてオマエとタメくらいだが、学校通ってませーん」

土御門「……今度、雲川に経費でスーツ買わせよう」ハァ・・・


ネクタイ嫌いなんだが……仕方ねぇな。


海原「あ、そうだ。今から僕の事は『海山田』でお願いしますね」ニコッ

黒妻「そういえばそうだったな……スネークちゃんは如何する?」

御坂蛇「……」チラッ

海原「如何身繕っても『御坂』ですからね……スネークのままで良いのでは?」

黒妻「あいよ」


それでは入ろう。


半蔵「まず受付か。土御門、頼んだぞー」

土御門「はいはい……あー、すいませーん」ビー!


機械的な受付場でベルを鳴らす。数秒後、声が返って来た。


受付『はい、ドチラ様でしょうか』ガガガ・・・

土御門「貝継理事の使いの者です。アポを入れている筈なのですが、所長さんはいらっしゃいますでしょうか?」ニコッ

受付『少々お待ちを……………………………確認できました。今玄関を開けます。案内ロボに連いて御進みください』Pi!


塀の脇にある小さな扉が開いた。
オレらはそこから中に入り、待機していたドラム型ロボの後をつけ、敷地内を進んだ。
157 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/05/16(月) 03:13:29.09 ID:njTDwYoK0
物々しい外壁とは裏腹、内部は普通に小奇麗な施設が立ち並んでいた。
病院・研究所と言われれば納得できる建物はある。逆に刑務所という感じの建物は見当たらない。


土御門「此処に居る囚人は仮にも『精神病患者』扱いだ。普通の牢屋にゃ入れられんぜよ」テクテク・・・

海原「しかし、地下にあるという可能性も無きにしも非ずですけどね」

半蔵「……土御門」ボソッ

土御門「ん?」チラッ

半蔵「そこの海原とやら、『原石』については?」ボソボソ・・・

土御門「……海原も妹達も齧る程度だ。無論、此処がその研究施設だという事は知らない筈」コクッ

半蔵「隠すのか?」ジー・・・

土御門「俺らの口からは言わない。その博士とやらに任せるさ」


土御門と半蔵がこそこそ話をしているが、無視しておこう。首を突っ込まれたく無いに違いない。

それにしても……普通過ぎる。
人は見当たらないのだが、何故か生活感がある様に思える場所だ。


御坂蛇「不思議ですね……とミサカは率直な感想を述べます」キョロ・・・キョロ・・・

黒妻「ああ。普通なのに、人が居ないから不気味だ」

御坂蛇「……スコープに反応はありませんね。やはり、いたって普通の『生活空間』です。ミサカは観察を続けます」ジー・・・

海原「……観察は勝手ですが、M9はしまいなさい。まさかライフル持ってきてないでしょうね」ジトー・・・

御坂蛇「必要であれば現地調達。潜入の基本です、とミサカは師匠の教えを確認してみます」チラッ


出来た師弟で。


黒妻「ん? ……分岐点か」

半蔵「右に行く様ですね」コクッ


数分歩いた後、分かれ道が見えた。
右側はやはり普通の大学病院の様な建物。左側は……賑やかな声が聞こえた。


土御門「どうせ、そっちにも行く事になるんだぜぃ……今はまず博士とやらが最優先だ」


博士、ねぇ……研究者とか先生とかいう類は苦手なんだが。
だがしかし仕事は仕事。オレ達は誘導されるがままにドラムロボの後を追った―――
158 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました :2011/05/16(月) 03:14:01.23 ID:njTDwYoK0
すいません。一度寝ます。
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/05/16(月) 03:48:00.25 ID:FE59QvSg0
乙!
160 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/05/16(月) 21:31:43.51 ID:njTDwYoK0
こんばんわ。続き書きます。
161 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/05/16(月) 21:51:29.08 ID:njTDwYoK0
 ―――とある翌日、PM06:00、学園都市第12〜19学区、理事立大学付属病院・精神科(研究所兼刑務所)、中央研究所……




歩く事数分、オレ達は見目普通のビルの前に辿り着く。
案内ロボは自分の仕事は此処までですと言わんばかりに、そそくさと消えて行った。


海原「勝手に入れ、という事でしょうか」チラッ

御坂蛇「妙ですね……何か罠でも……ある訳ではない様です、とミサカは簡易チェックを済ませて報告します」キョロキョロ・・・

土御門「んな物騒な施設じゃないぜよ、多分な……受付に人が居る筈だにゃ。まずは建物に入ってみないと」チラッ

半蔵「こっち見んな。手前が先行しろ」ジトー・・・


面倒臭ぇので、オレが先に突っ込んだ。


海原「相変わらず貴方は不用心ですね」フフッ

黒妻「五月蠅ぇ。グダグダしてんのは嫌いなんだよ……すいませーん」オーイ


返事が無い……と思いきや、奥の方から足音が聞こえてきた。


土御門「……『博士』か?」ジー・・・

半蔵「さぁ。話してみないと」ジー・・・


初対面の人の前でコソコソ話とは、失礼な連中め。


黒妻「こんちは」ペコッ

受付「はい、お待ちしておりました。今から御案内しますね」ペコッ


スーツの女性。何処にでも居そうな理系のお姉さんといった感じか。


土御門「えーっと……お姉さんが『博士』さん、かにゃ?」ニコッ

受付「いえ、多分貴方方が『博士』と呼んでいるのは今から会う私の上司でしょう」

海原「上司……失礼ですが、貴女は此処の研究員さんですか? それとも唯の職員さんで?」

受付「私は上司……『博士』の秘書の様なモノです。職員・研究員については歩きがてら説明します。どうぞ此方へ」ニコッ


言われるままに誘導される事にした。
余談だが、土御門と半蔵が『秘書って響き良いよな』『ああ、何かこう……えっちぃ』と馬鹿な会話していた。聞かなかった事にしてやろう。
162 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/05/16(月) 22:16:11.41 ID:njTDwYoK0
所長室に着くまでの間、この『病院』の簡単な説明を受けた。

まず、大きく分けて二つ。
西側:第19学区寄りに精神病棟(という名の刑務所)。東側:第12学区寄りに大学・研究所。
此処はその中心にある管理ビルの様な役割らしい。


土御門「質問しても良いかにゃ?」

受付「はい。私が答えられる範囲であればどうぞ」

土御門「精神病棟には『普通』の患者も居るのかぃ?」ボソッ

受付「……」チラッ


土御門以外を見渡す受付さん。


土御門「言っとくが、俺らは全員貝継氏の使者だぜぃ。この大学施設成り立ちの『さわり』くらいは知ってる」コクッ

受付「そうでしたね……ええ、勿論『狂人』とは別棟ですが入院されてますよ」コクッ

海原「ほぉ。では普通の精神科医も何人かは居らっしゃるのでしょうか」

受付「ええ。医者以外にも保育士、看護師、介護士、警備員上がりが居ますよ」

御坂蛇「警備員、上がり?」フム・・・

受付「理事会立施設とはいえ、個で警備員は常駐させておく訳にはいきませんからね」クスッ


成程。重要な天下り先という訳か。


半蔵「保育士が居るという事は……例の『子供達』は、其方か?」ボソッ

受付「いえいえ、『子供達』は東側ですよ。西側の子供は……単に社会不適合者なのです」

黒妻「如何いう意味だ」チラッ

土御門「分かり易い例えはあるんだが……聞いても怒らないか?」チラッ

黒妻「……ああ」

土御門「絹旗最愛」サラッ

黒妻「っ……成程、な」フム・・・


通常倫理が通用しない子供を外に出さない為の施設もあるらしい。


半蔵「しかしなぁ、『子供達』も不適合っちゃ不適合じゃねぇのか?」

受付「ふふふ、まさか。あの子達は可愛い可愛い子供達ですよ。ただ望まずして強大な『力』を持ち合わせているだけですので」

半蔵「その『力』が問題なんじゃ」

受付「その『力』をコントロール出来るよう教育するんです……詳しくは『彼』にお聞きください」ニコッ


難しい話をしているうちに、所長室の前まで来ていた様だ。
さて……どんな『博士』さんなのやら。
163 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/05/16(月) 22:45:18.88 ID:njTDwYoK0
受付「失礼します。貝継氏の使者をお連れしました……って、また部屋汚くなってる」ガチャッ・・・


後に続く。
所長室という割には……汚い部屋。いやドラマ等の先入観でそう考えてしまうだけかもしれない。


??『……』ジー・・・


しかし件の所長さんとやらはフィクション相応、大きな革張りの回転椅子に背を預け無言状態。此方に振り返る気も無い様子。


受付「……もし?」フム・・・

??『待っていたぞ!』クルッ!


一転、勢い良く振り返る所長とやら。その正体は……


削板「遅かったな! 待ちくたびれて資料漁りに精が出てしまったぞ!」バーン!

一同『……』


F(バカ)が居た。


土御門「……姉ちゃん。まさかこれ、博士?」チラッ

受付「……いえ、ありえません」ハァ・・・

削板「山崎のねーちゃん! ノリ悪いぞ! そこは俺に合わせるべきだ――」

受付「軍覇っ!! 勝手に此処入るなって言ってるでしょ!!」ガアアァッ!!

削板「―――……う、ぃ。さーせん」ショボーン・・・


受付(所長秘書)さんに叱られてしょげる―――超能力者第7位、削板軍覇。


海原「秘書さん……山崎さん、でしたか。何故彼が此処に?」チラッ

受付「此処は『そういう施設』でしょ。彼の主事研究は此処がメインですから」ハァ・・・

御坂蛇「成程。第7学区では無かったのですね……ミサカは第7位をジトジト見遣ります」ジトー・・・

削板「あ。九つ子。その節はどうも」ペコッ

御坂蛇「……ミサカはあの屈辱を忘れてませんよ」ジトー・・・


何やら遺恨があるらしい。
さておき、本当の所長さんとやらは何処に居るのだろう。
164 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/05/16(月) 23:03:26.31 ID:njTDwYoK0
削板「『アイツ』なら中庭出てったぞ」チラッ

受付「え? ……ホントだ」テクテク・・・チラッ


窓の外を見降ろす受付――改め山崎秘書さん。


山崎「お客さん来るって言っといたのに……ホント、軍覇(貴方)と同じで勝手ね」マッタク・・・

土御門「あはは……とりあえず、此処で待ってれば良いかにゃ?」

山崎「少々お待ちを」クルッ・・・Pi!


内線電話らしきモノでコールをする。


山崎「もしもし。貝継氏の……え? ちょ、客人ですよ!? ……あー、はいはい。分かりました」ガチャッ・・・

半蔵「何か問題でも?」ム?

山崎「申し訳ありません。此方に来てくれとの指示です……ホント、あの人は勝手で……」ハァ・・・

削板「アイツは自己中だからなぁ!」アハハ!

山崎「……それに影響された貴方は環を掛けて自分勝手でしょ」マッタク・・・


どうやら大分苦労人らしい。


山崎「中庭へ御案内します。何度もすいません」ペコッ

海原「いえいえ。お察ししますよ」クスッ

削板「ねーちゃん。俺は?」チラッ

山崎「自分の部屋戻ってなさい。あ、此処片付けてからね。あと偶には自分の部屋の片付けもする事!」ギロッ!

削板「えー」ブーブー!

山崎「口答えしないの! 飯抜きにするわよ」┣¨┣¨┣¨┣¨・・・・

削板「んな理不尽なぁ」ゲェ・・・


家族の様な人、なのかもな。


山崎「まったく……どうもすいません。恥ずかしい所を」ペコッ

土御門「……第7位についても、『博士』さんとやらに直接聞けば良いのかにゃ?」クスッ

山崎「まぁそうですね。父親……とは違いますが、彼にとっては研究者的な存在では無い様ですから」フフフ


アットホームな研究所なのか。それとも芳川さんと一方通行の様な関係なのか……少々気になるな。
165 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/05/16(月) 23:25:29.59 ID:njTDwYoK0
 ―――とある翌日、PM06:20、学園都市第12〜19学区、理事立大学付属病院・精神科(研究所兼刑務所)、中央研究所中庭……




三度目の案内で漸く『博士』とやらの所まで辿り着く。
ただ意外だったのは……その場にそぐわぬ賑やかな声が響いていた事だった。


御坂蛇「……子供、ですね」ジー・・・


はしゃぎ回る子供達。上は17,8歳くらい。下は3,4歳くらいだろうか。


少女A「あ! あの時のお姉ちゃんだ!」ビシッ!

少年B「え……本当だ! 僕の事見つけてくれたお姉ちゃん!」ワーイ!

海原「スネーク?」チラッ

御坂蛇「いえ……少々、待って下さい……ああ、成程。MNW(ミサカ達)の『記憶』にありました」コクッ

土御門「……『原石』の子供達、か」ジー・・・

半蔵「1,2,3,4…………………………………………30人は居るぞ」ジー・・・

少年C「おねーちゃん。この人達誰?」ホェ?

山崎「お客さんよ。それより貴方達、そろそろ夕飯の時間だから食堂に向かいなさい」ビシッ!

子供達『はーい!』ワヤワヤ・・・


元気良く建物の中に入って行く子供達。
そして、一人残った……異様な男性。


受付「……まったく。せめて一言掛けてから外に出て下さい」モゥ・・・

??「俺の勝手だ。態々貝継の言う事なぞ聞いてやる義理は無い」フンッ


男性は面倒臭そうに俺達を見遣った。


??「しかし使者である君達には罪は無い、か……何だ。大人は一人だけか。それでも若いな。おまけに妹達まで居るとは」フンッ

土御門「若くて悪かったですねぃ。貴方が『博士』で合ってるのか?」ジー・・・

??「その呼び方は止めろ。まだ所長の方がマシだ」テクテク・・・

受付「ちょ、ドチラへ?!」

??「飯の時間だろう。食堂に決まってる」テクテク・・・

受付「仕事で来てらっしゃるのですよ! 挨拶くらいなさってください!」モゥ・・・

??「……ハァ」ポリポリ・・・


男はだるそうに此方を向き、静かに告げた。
166 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/05/17(火) 00:06:42.90 ID:dMSwLPJ40
神「神(ジン)だ」サラッ

一同『……は?』ポカーン・・・

山崎「もう少しマシな紹介をしてくださいよ……彼は神所長です。因みに『神』という苗字ですので」

海原「その様な苗字が……『ゴッド』ですか」ヘェ・・・

土御門「キリスト教圏でも『マリア』や『ヨセフ』は居るだろ。そんなもんだ」ボソッ


まぁ『土御門』や『服部』って苗字も古来だがな。


神「詳しい話は飯の後でも良いだろう。君達も一緒に来るといい……山崎。軍覇も呼べ」テクテク・・・

山崎「あーもう……すいません。先に食事を。子供達も一緒ですが宜しいですか?」ペコッ

黒妻「オレは構わねぇが。あの人の指示に従う様言われてんだろ?」チラッ

土御門「はいはい……ったく。雲川後で絞めれば何でも良いぜよ」テクテク・・・


また移動かという顔をする面々。


黒妻「あ、半蔵。郭ちゃん達呼んだら」チラッ

半蔵「え? いや、アイツはキチンとベースに置いておかないと」ウーン・・・

海原「良いのではないでしょうか。流石に飯抜きは可哀想ですよ」ニコッ

半蔵「……携帯食は積んである。問題無い筈なんだが」

黒妻「オマエ、ああいう子供相手に郭ちゃんより上手くやれるか?」フフッ

半蔵「……はいはい。分かりましたよーだ」Pi!

御坂蛇「では14510号も呼びますね」ツー・・・


食堂で飯か……碌な思い出がないな。


山崎「それでは所長について行って下さい。私は軍覇を呼んできますから」ペコッ

土御門「あいよー……ハァ」ポリポリ・・・

半蔵「なぁ土御門。あの所長さん、如何思う?」チラッ

土御門「よく分からん……が、聞いてた話と違うな。狂人という噂だったが……まぁこれからだろう」コクッ

海原「狂人、ですか。本来であれば東側にいてもおかしくない人物なのですかね」フフフ・・・


そうは思えない。ああいう風に子供と仲良くできる人間は根は優しい筈だ。
それに……狂人だろうが悪魔だろうがそれなりの『正義感』が無ければ、第7位の様な人間は育たないだろう。

兎にも角にも、暫く接してみねば。
167 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/05/17(火) 00:33:49.16 ID:dMSwLPJ40
 ―――とある翌日、PM06:30、学園都市第12〜19学区、理事立大学付属病院・精神科(研究所兼刑務所)、中央研究所食堂……




子供達『いただきまーす!』ワーイ!


元気の良い子供の声。まるで研究所とは思えない空間。
土御門や半蔵、海原、スネークちゃんは何処か警戒心を持って食事を行っている。
反対にオレと郭ちゃん、春子ちゃんは子供と一緒になって楽しく飯を板出していた。


少女D「ねぇ。お姉ちゃんもこの街に来たの?」モグモグ

御坂春「え? あ、えっと、多分貴方が知るミサカは……15100号でして、私(ミサカ)は別のミサカで……」アタフタ・・・

少女D「へ?」ポカーン・・・

少年E「ねぇねぇ。お姉ちゃんは先生のお客さんなんでしょ? 何しに来たの?」モグモグ

郭「はいはい、まずは口のモノが無くなってから御喋りしましょうねー」ニコッ

少年E「んぐっ……はーい」ニカッ


この二人は自然だな。


少女F「ねぇオジたん」トントン・・・

黒妻「オジ……あ、あのねぇ。オレまだ21歳だぞ」タラー・・・

少女A「えー。21だったらもうオジさんだよー」アハハ!

少年B「はははは。黒い人、オジさーん」ケラケラ!

黒妻「てめ、お兄さんと呼びなさい!」ダァッ!!

土御門・削板「「やーい。オジさーん」」ニヤニヤ・・・


オマエら後で絞める。


半蔵「まぁ後2,3年もすりゃ兄貴は子供出来るでしょうからね……」クスッ

郭「いやいやぁ、存外来年の春辺りには姐さんのお腹がふっくらと」ニシシ!

海原「おやおや。計画的に、ね」クスクス・・・

黒妻「オマエらも……子供の前だっつの!」ダアアァッ!!

少女F「オジたんじゃなくて、パパになるの?」ヘー!

少年数名『ヤっちゃったんだー!』ワーイ!

少女G「ちょっと男子! そういう風に揶(からか)うの良くないわよ! 素敵な事なんだから!」メッ!

黒妻「え、いや、違くて……ハァ……」グデェ・・・


まったく子供は無邪気だ。泣けてくるぜ。
168 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/05/17(火) 00:49:08.39 ID:dMSwLPJ40
山崎「こーら! さっさと食べないと食堂のオバちゃん達に失礼でしょ。お話するのは食べ終わってからにしなさい!」メッ!


秘書さんの一声で、そそくさと飯をかっ込む子供達。成程、この人には頭が上がらないと見た。


黒妻「美偉みたいなモンか」クスッ

神「……」フッ・・・

黒妻「ん? ……何か」チラッ

神「いや、何……子供に好かれるんだな」パクッ・・・

黒妻「まぁ子供好きなんでね。神さんも好かれてるみたいですけど」フフッ

神「まぁ、腐った大人連中……更には歪んだこの街の子供達よりは純粋な此処の子供達が好きなんだよ」モグモグ


歪んだ子供達、ね。黄泉川さんも似た様な事を言ってたな。


神「黄泉川か……まさか今、彼女が警備員のエースになろうとは思いもしなかったよ」フフッ

黒妻「お知り合いで?」

神「若い頃にな。まだ彼女が大学生くらいの時だよ……古い話さ」


古いって、十年前くらいじゃないのか?


神「あっという間さ。君も気をつけとくんだな。直ぐ歳を取るぞ」フフッ

山崎「神さん。貴方もさっさと食べてしまって下さい。子供達が真似るでしょう」ジトー・・・

神「はいはい。女性は怖いねぇ」クスッ


同意します。


神「とりあえずこの後所長室へ行こう。茶でも飲みながら話を聞く」

黒妻「分かりました」コクッ


やはり良い人そうだ。土御門達は難しく考え過ぎなんだと思う。
その後……先のメンバーは所長室へ向かい、郭ちゃんと春子ちゃん、ついでに第7位は食堂で子供達に相手をする事となった。
169 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/05/17(火) 01:19:33.93 ID:dMSwLPJ40
 ―――とある翌日、PM07:00、学園都市第12〜19学区、理事立大学付属病院・精神科(研究所兼刑務所)、中央研究所所長室……



神「それじゃ、自己紹介でもしてくれ」カチッ・・・フゥ・・・


所長室に入るや否や煙草に火を点け、適当にそう言い放った神さん。山崎さんは一同にコーヒーを配って回っている。
俺達は言われた通り、各々簡潔な自己紹介をした。


神「ふーん……一般人は黒妻くんだけか……煙草喫うヤツ喫っていいぞ」ジジジ・・・

山崎「神さん……この子達殆ど未成年ですよ。喫う訳……」

黒妻・半蔵・御坂蛇「「「どーも」」」カチッ・・・フゥ・・・

山崎「」

土御門「おい、海ば……海山田。17600号、煙草喫うのか?」タラー・・・

海原「止めろと言っているんですがね」ハァ・・・


喫い始めちまうと止め時が分からなくなるのが、煙草の怖い所です。


神「ははは。まさか『妹達』の一人が煙草を喫おうとはな! これを天井が聞いたら卒倒するだろう」クスクス・・・

御坂蛇「嗜好品に関しては私の自由。御姉様(オリジナル)の体細胞クローンであるミサカ達とはいえ、如何こう言われる筋合いはありません」

海原「スネーク……」ギロッ・・・

神「いやはや、その通りだ。限られた寿命の中で好き勝手やるのが正解だと言える」フフフ・・・

山崎「発破掛けないで下さい。クローンとはいえ未成年なのには変わりありませんよ」ハァ・・・


因みに半蔵も未成年です。


神「まぁ煙草の一本や二本、些細なもんだ……それで、代表者は何方だ」ジー・・・

土御門「……一応、自分だぜぃ」コクッ

神「土御門、と言ったか。京の家柄か? それとも関東の裏家か?」ジー・・・

土御門「俺の個人情報については内緒だにゃ。それより人に自己紹介させといて自分は無しとは、最近の大人は荒んでるぜぃ」クスクス・・・

神「ガキがよく言う……山崎。名刺でも渡してやれ」クイッ・・・


ヤレヤレと呆れる秘書さんは、はたまた言われた通り所長の名刺をオレらに配った。


半蔵「肩書き凄ぇな……」タラー・・・

海原「理事会立大学特任教授……特別精神病患者治療会副理事……『原石を知る会』特任担当委員……」マジマジ・・・

半蔵「警備員特別指導顧問……対学園都市外害意排他研究員……何だコレ?」ポカーン・・・

神「気にするな。肩書き等上が適当に付けただけだ」フゥ・・・

土御門「上ってのは……貝継氏の事か?」

神「その他スポンサー、更には理事長殿が直接御付けなすった訳の分からんモノまでもだよ」ケシケシ・・・


本当に面倒だという表情で、椅子に腰掛ける所長。では……とマトモに話をする姿勢に変わった。
170 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/17(火) 01:36:34.61 ID:dMSwLPJ40
神「まず何を言われてきたんだ?」ジー・・・

土御門「俺らはとりあえず此処に来る様指示された。その後についてはアンタの指示に従えと言われている」クイッ・・・

神「それは貝継からの指示か? それとも芹亜からの指示か?」ジー・・・

土御門・半蔵「「っ!!?」」ギョッ!!

神「別に驚かなくて良い。能無しの貝継が様も無いのに俺の下へ人を寄越す訳が無いからな」


それよりも雲川を知ってる点で驚いているのだと思う。


神「……土御門くん。芹亜に電話を掛けると良い」クスッ

土御門「分かった……あと、呼び捨てで結構だ」タラー・・・

神「分かった。其方も呼び捨てで良いかな?」チラッ


全員頷く。
さておき、土御門は雲川に電話を入れた。


土御門「……おい」Pi!

雲川『あら。存外遅かったけど。彼の所に着いた?』

土御門「所長さんが電話しろとよ。手前の事知ってんのか?」チッ・・・

雲川『仕方ないじゃない。貝継がその人に脅されてばらしちゃったんだけど』

土御門「脅し……と、とりあえず、俺らはコイツの指示に従えば良いのか? 不気味なんだが」タラー・・・

雲川『何ガキみたいな事言ってる? とりあえず彼と替わって欲しいんだけど』


土御門はブツブツ言いながら電話を所長に手渡した。


神「俺だ」

雲川『こんばんは。お元気そうね』フフッ

神「ああ、残念ながらまだ死なせて貰えないらしい」クスッ

雲川『貴方は死ねないわよ、簡単にはね。さて、今から説明するけど……―――』


それから1,2分くらい話が続いた後……電話を切った。


神「話は聞かせて貰った。さて、と……」チラッ・・・


俺ら全員の顔を見渡してから、不気味なニヒル笑いを浮かべ……呟いた。
171 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/17(火) 02:05:40.19 ID:dMSwLPJ40
神「用件は三つだそうだ」

半蔵「3つ?」

神「……山崎。病棟の『狂人』の資料と『原石』研究の資料を刷って来てくれ」チラッ

山崎「了解です」コクッ


それは態と秘書を退出させたように見えた。


神「まずは今告げた通り『原石』についてだ……何故芹亜が君達に教えたがってるのかは後ほどな」コクッ

海原「やはり『原石』ですか……」

神「皆、『原石』のさわり程度は知っているのだな?」


一同頷く……俺以外。


土御門「センセ……前に少し教えたにゃ」ハァ・・・

黒妻「長ったらしくてうろ覚えだっつの……」ポリポリ・・・


確かこの街の能力者が強化人間だとしたら、『原石』ってのがニュータイプで当ってたっけ?


半蔵「兄貴……大体合ってるけど、物事フィクションに例えんの止めましょうよ。メタいっすから」ハァ・・・

土御門「因みに強化人間っていうより、最早サイキッカーレベルだぜぃ」アハハ・・・

神「何を言ってるか分からんが詳しくは資料が来てからだ。兎角、順を追わせて貰う」

御坂蛇「では次は『狂人』とやらですね、とミサカは推測します」

神「ああ。この街の危険人物達……精神病患者という名の犯罪者共だ」コクッ


犯罪者、か。


神「先に言っておくが、此処の犯罪者共の殆どは軍覇が捕えてきている」

海原「ほぉ……伊達に都市の自治活動してませんね」クスッ

神「まぁな……だがアイツが捕まえてくる大半は能力者だ」

半蔵「は? そりゃまぁそうだろ?」

黒妻「……無能力者もあそこに収容されてんのか?」

神「イエスだ。寧ろ無能力者の方が多い……それについても後ほどだ」コクッ


意外や意外。


黒妻(那由他が言ってた『真の悪党は頭を弄られて無い己ある大人』というヤツかな)


尤も、テレスティーナの受け売りらしいが……不思議なモノだ。
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/05/17(火) 02:09:39.49 ID:BeESKhXEo
    _人人人人人人人人人人人人人人人_
   >        超つまんね        <
    ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^^Y^ ̄

               ヘ(^o^)ヘ 
                  |∧   
                 /
173 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/17(火) 02:26:05.64 ID:dMSwLPJ40
土御門「んで、三つ目は?」

神「その前に……君達は全員、互いの秘密を共有してるのだな?」ジー・・・


如何いう意味だ。


神「まぁ妹達は問題無いとして……男4人」チラッ

半蔵「意味が分からないな。理解し兼ねるぞ」ジー・・・

神「そうかい、伊賀の統領息子。父上は元気かい?」サラッ

半蔵「っ……」タラー・・・


まぁその程度は皆知っているのだが……


神「それから……土御門。叔父上は最近調子が悪い様だな。見舞いに行ってやれよ」ニヤッ・・・

土御門「っ……余計な御世話だ。実家の話は止めて貰おう」ギリッ・・・

神「では暗部の話でもすれば良いのかね? それとももう片方の『密偵』についてか? スパイ・ゾルゲ」フフフ・・・

土御門「ハァ……分かった。口答えしないからベラベラ言わないでくれ」ダラダラ・・・

海原「……とりあえず今の話程度なら共有していますよ。ただそれ以上は、ね」ジー・・・

神「君は……分からないな。情報にない……という事は例の『グループ』の変装屋か。もしくはそういう能力者を寄越したか」

海原「……暗部にまで精通してるとは驚きですね」ハハハ・・・

神「暗部と『原石』、ドチラの気密度が高いと思ってる。少なくとも芹亜が知り得る限りは俺も知っているぞ」


聞かなかった事にしておこう。


神「今から話す事はそれなりの事だよ……黒妻綿流」チラッ

黒妻「……成程な」コクッ


『仮面』について、触れるらしい。


神「君が最近話題になっている『亡霊』とはな……それについても資料を貰ってから話そう」コクッ

半蔵「資料って、『活動』についての資料があるのか?!」ギョッ!?

神「君達の『活動』を支援する様、芹亜に頼まれた。そういう事だよ……分かったか? ブレインくん二人」ニヤッ・・・

土御門・半蔵「「んの女郎勝手に……後で干す!」」タラー・・・

神「ははは。兎角、犯罪者についてと『原石』については今後君らの『活動』に関わって来る。頭に入れておいてくれ」カチッ・・・フゥ・・・


全てお見通し……やれやれだ。
174 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/17(火) 02:44:57.16 ID:dMSwLPJ40
  ―――一方その頃、とあるアパート・・・・・



絹旗「もぐもぐ……兄貴さんはお仕事ですか?」ゴックン

固法「らしいわよ。何でも精神病院で如何こうとか」

打ち止め「ま、まさか!? いくらクロヅマが暴走特急野郎とはいえ頭に爆弾を抱えているとは……ミサカはミサカはあ痛っ!」ポコッ!

固法「そういう事言わないの」メッ!

那由他「そういえば、最近黒妻さんと顔合わせる機会少ないかも」モグモグ

香焼「そういえば自分もっすね」モグモグ

絹旗「私もバイトでアイテム(ウチ)来る時以外は超会わないです」

固法「うーん……」ポリポリ・・・

打ち止め「もしかしてミィもなの? ってミサカはミサカは奥さん放っぽり出して仕事ばっかしてる旦那さんに憤怒してみたり!」プンスカ!

固法「え、えっと、そういう訳じゃないんだけど」アハハ・・・

那由他「じゃあ如何なの?」ジー・・・

固法「……寝てる事、多いかな。仕事で疲れてるんでしょうけど」ハァ・・・

那由他「まぁ真面目に就職考えてるっぽいからね」コクッ

絹旗「でもぉ……実際は姉貴さん、大分『御無沙汰』だから超寂しいんですよねぇ」ニヤニヤ・・・

香焼「こ、こら! 最愛!!」///

打ち止め「ほぇ? ごぶさた?」ポカーン・・・

那由他「……」///

固法「……最愛ちゃん。悪い意味で麦野さんみたいになってるわよ」ハァ・・・

絹旗「うっ……それは超ショックですね。てか良い意味でも麦野チックにはなりたくないです」タラー・・・

打ち止め「えー? ムギノン綺麗だよー! ってミサカはミサカはファッションセンス『だけ』はピカイチのムギノンを褒め称えてみる!」

香焼「それ褒めてるの?」アハハ・・・

那由他「とりあえず、近い内にでも黒妻さん込みで御出掛けでもしたいね」ニコッ

固法「そう、ね……(出来れば、良いんだけど)」クスッ・・・






冷蔵庫『……クーデター間近なりー』ボソッ・・・
175 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました [saga]:2011/05/17(火) 02:49:17.60 ID:dMSwLPJ40
はい。今日は此処まで。

最後に書いた通り、この章で決着付けちゃうかもです。
『とある理由』で香焼達を次の学年にしたいのですよ……予告っぽいですが絹旗を学校に通わせてやりたいので。

んではまた次回! ノシ
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 03:50:57.32 ID:1syIyIsDO
おつー。神って苗字‥‥『あの人』以外浮かびませんでしたww
それから絹旗学校通いとか超期待なんですけど!

あと、あんまり周り気にしないで書いてくれよー。>>1の好きな様に書いてなー。
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 05:06:52.39 ID:hvptzA6DO
>>1

久しぶりにss速報に来たらかなり進んでたwww
相変わらず面白いね
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/05/17(火) 08:07:09.10 ID:XvIMfj5x0

次はいよいよ「あふたー」ですな!
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 09:45:28.94 ID:MkTObraZ0
オリキャラ乱舞でアレさが加速してきたな……
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 23:45:20.61 ID:3PFvYhak0
>>1

>>176
それは恭一郎さんのことか?長髪の
181 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/19(木) 22:02:41.08 ID:TXmrt8p10
こんばんわ。投下します。

ちなみに・・・まさか探偵の方の神さんが出てくるとは思わなかったw
どっちも好きですよ。神大佐も恭一郎さんも!


んじゃ、よろしくー!
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/05/19(木) 22:31:01.04 ID:7l8GQ7IQ0
待ってた
183 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/19(木) 22:55:28.47 ID:TXmrt8p10
 ―――とある翌日、PM07:30、学園都市第12〜19学区、理事立大学付属病院・精神科(研究所兼刑務所)、中央研究所所長室……




秘書さんが資料持ってくるまでの間、酷く沈黙が長かった気がする。
それは資料が来てからも続いたが……あの男の所為だろう。


神「それでは始めに何から話そうか。希望はあるかい?」チラッ

土御門・半蔵「「……」」ジー・・・


特にオレは口を出さない。作戦方針についてはこの二人と雲川に任せてある。
海原とスネークちゃんも土御門の私兵扱いである為、口を開く気は無いようだ。


半蔵「その前に、確認を」

神「何だ?」

半蔵「その3つの共通性は?」

神「追って話そうと思っていたが、先に必要か?」

土御門「分かった……じゃあ『原石』からだ」

神「宜しい……では資料に目を通せ」


一同、細かい字がビッシリの分厚い冊子に目を向けた。オレも言われるがままに目を通す。


黒妻「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

海原「ん? 如何しました?」

黒妻「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

御坂蛇「……フリーズ?」ジー・・・


読むのを諦めました。


半蔵「兄貴にこんなもん渡すのが間違いだな……漫画とか映像じゃねぇと頭に入んないぞ、その人」ハァ・・・

土御門「ハァ……中卒乙だぜぃ」

黒妻「五月蠅っえぇ!! んなもん学者が知っときゃ問題無ぇんだよ!!」ガアアァッ!!

山崎「アレかしら。黒妻さんって……軍覇と同じタイプ?」

半蔵「……残念ながら、ハイ」アハハ・・・


好きかって言いやがって……グレるぞ?
184 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/19(木) 23:16:03.75 ID:TXmrt8p10
神「ハハハハハ!! オマエの様な人間は嫌いじゃ無いぞ。まぁ確かに学会説明用の資料なんぞ前線には必要無い」ククク・・・

黒妻「だろ! ほら見ろ!」ケッ!

半蔵「甘やかすとすぐ付け上がる……」

黒妻「あ?」ギロッ・・・

土御門「睨むな馬鹿野郎……えっとだな、まず簡単に説明すると……」ウーン・・・


オレにでも分かる様な説明を考え中らしい。しかし口を開いたのは……


御坂蛇「先程のNTと強化人間・サイキッカー論であってます。補足すると言葉通りダイヤモンドで考えて下さい、とミサカは説明します」

土御門「……うぃ」

黒妻「ダイヤモンド?」

御坂蛇「はい。まず超能力……『レベル5』ではなく、この街の能力開発で開花される『能力』について想像して下さい」ト、ミサカハ・・・


例えば、美偉の透視能力(クレアボイアンス)。


御坂蛇「はい。ではその『透視』能力者……強度(レベル)を問わず、この街のカリキュラムを受け開花した能力者ですよね」ト、ミサカハ・・・

黒妻「ああ」

御坂蛇「それは所謂、人工ダイヤモンド。その人に問わず、能力者=それ、となります」ト、ミサカハ・・・

黒妻「だから強化人間だろ?」

半蔵「だからアニメに例えんなっつの」ハァ・・・

御坂蛇「続けます。では……鼻から、もしくはカリキュラムを受けていないのに『能力』が具現する者が居るとしたら?」ト、ミサカハ・・・


天然物の……ダイヤ。


黒妻「それが『原石』か……本当の意味で『超能力者』って訳だな」

御坂蛇「そういう訳です。とミサカは肯定します」コクッ・・・


成程な。だから、宇宙生まれという訳じゃないがNTだと。


神「今からそれをもう少し詳しく説明していく……どうやら紙は見ない方が良いらしいな」パサッ・・・

半蔵「すいません……主要人物の一人がアレなんであ痛っ!!」ゴツンッ!!

黒妻「態々口に出すな……自覚してるっつの」グヌヌ・・・
185 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/19(木) 23:40:48.48 ID:TXmrt8p10
神「まずは数について……今さっき見て貰ったが、あの子供達(アイツら)は『原石』だ」

黒妻「へ? そうなのか?」

土御門「センセ。見た目は普通の子供だが、内側まで普通とは限らないにゃ」

海原「能力者がむやみやたらに能力を見せないのと同じですよ」


無能力者(レベル0)のオレには分からないが、美偉がそんな事言ってた気がする。


神「先の資料にリストアップしているが、この研究所では33名の『原石』を保管している」

黒妻「……言い方があんだろ。人間だぜ?」

神「それは君の論だろう。俺は並の人間なんかよりも『子供達』を丁重扱いをしてるから『モノ』なのだ」

海原「ははは。人間嫌いですか」クスッ

神「さぁな……続けるぞ。この地球上に『原石』は50はあると予想されていた」


それでは、この研究所で70%近くを保管してる事になる。


神「あくまで予想だ。あてにはならん……とりあえずは当初の予想の70%を押さえる事が出来てはいる」

土御門「妹達の御蔭だろうに」ジトー・・・

御坂蛇「……ノーコメント」

神「手段など如何でも良い。結果が此処にあるのだ」


裏話の方がよっぽど如何でもいいのだが……聞いてやるしかあるまい。


半蔵「それで?」

神「貝継の馬鹿……というよりも芹亜の突飛押しの所為だな。ヤツらは回収に成功した後の事を甘く考え過ぎていた」

土御門「やーい。雲川のうっかりボケナス女郎ー」ニャハハハ!

半蔵「五月蠅ぇ! ……甘くというのは? 『原石』の収容場所について考えて無かったとかか?」

神「いや、それは設けていた。だがな。ヤツらが甘かったのは『原石』の扱い方についてだ」

土御門「……扱い方?」ピタッ・・・


如何いう事だろう。








冷蔵庫『※この話はクーデター前ですが、10月第二週で起きた作戦を先取りしています。ご了承ください』
186 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/20(金) 00:03:07.07 ID:iznZAeyF0
神「黒妻……綿流にも分かり易い様に例を挙げる。『X−MEN』というアメリカンコミックスは知ってるか?」

黒妻「十八番です」キリッ!!

半蔵「あー、良かったっすねー(棒)」アハハ・・・

神「あの作品には突然変異種(ミュータント)と呼ばれる人間が存在する。先天・後天問わず異能の者だな」


マニアのオレから言わせるとそこに分類があるが……止めておこう。


神「先天性突然変異種を『原石』とする。妹達が彼らを保護したとしよう……君……コードネームはスネークと言ったか」チラッ

御坂蛇「肯定です」コクッ

神「君の回収担当は誰だった?」

御坂蛇「……第、7位です」ギリリ・・・

神「ふむ……アレは参考にならんな。アレは早い内から私が担当していたモノだ」


またモノ扱い、か。


神「では……資料の165pを見てくれ。分かり易く『発火能力者』がいる」

海原「……ベトナム出身の子ですね」

神「ああ。その子の経過を見て貰えば分かるが……始めは能力を暴走させていた。前の施設では職員を消し炭にしてしまってな」

一同『っ!?』ギョッ・・・


制御の仕方が分からなかったのか……


神「その通りだ。次に178pを……『読心能力者』。コイツは日本出身だが鬼子……妖怪扱いされていた」

土御門「……サトリ、か」

神「御名答。流石陰陽師……この様に能力を制御し切れてない『原石』は他10は居た」

海原「逆にコントロールしていた子供も居たのですね」

神「この街風に言えば『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』が確立していた『原石』だな」

半蔵「ふーん……つまり、雲川は『原石』が皆、自分だけの現実(パーソナルリアリティ)を確立してるものだと踏んでたんだな?」

土御門「だが、外れたと。ざまぁねぇぜぃ」ヒヒヒ・・・


雲川も完璧って訳じゃないんだな。
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/20(金) 00:08:15.10 ID:89Bb6jcDO
あなたの読んだ禁書にはセリフの前に名前が書いてあったのですか?
188 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/20(金) 00:33:06.80 ID:iznZAeyF0
黒妻「という事は……差し詰め此処の研究所はエグゼビア機関っつー事か」

神「そんな殊勝なモノでは無いがな。思想までは弄らん……教えているのは能力の制御くらいだ」コクッ・・・

黒妻「……神さん、サイキッカー?」ポカーン・・・

神「馬鹿言え。俺は人間だ。普通のな」ハハッ!

山崎「徒手で人間のハラワタ引き釣り出せる人が普通の人間な訳ありませんよね」ハァ・・・

一同『っ!!?』ダラダラ・・・

神「昔の話だろう……オマエら、気にするなよ」ハハハ


化け物。


神「とりあえず、俺は俺のやり方で『原石』達を教育した。幸か不幸か、皆、ある程度制御できるようになった」

土御門「な……如何やって……」タラー・・・

神「時間があったら教えてやる」ククク・・・

半蔵「……で? 何故この件が俺らに必要な事柄なんだ?」ジー・・・

神「ああ、本題だな。要するに……此処に居る『原石』達が問題を起こしたら、優先的に止めてくれ、だそうだ」

土御門・半蔵「「……は?!」」

神「加え、この先発見される未知の『原石』の回収も手伝えとの事。そう伝えてくれと言われている」

海原「所長さん、疑問が。『問題を起こしたら――』とは……意味が分かりません。貴方がキチンと教育してるのでは?」

神「俺が教えたのは制御法だけだ。悪用するなとは教えてない」サラッ・・・

山崎「ハァ……一応、普通教育を受けさせてはいますよ……」タラー・・・


しかし能力(チカラ)に酔い、溺れ……悪事を働くかもしれないという訳か。


土御門「ちょちょちょちょ! 待った! それはアンタらの勝手だろう? 俺や服部、センセは関係無いぜ!」アタフタ・・・

神「……俺の知った事でもない。だが『原石』を警備員や風紀委員に保護させるのは拙いだろうな」

海原「公にしたくないから、ですね?」

神「ああ。まぁ万引き程度の悪戯レベルならまだしも……人を殺す様な事になったら、流石にな」ククク・・・

半蔵「笑い事じゃねぇだろうが」

神「悪の美酒の味を知った馬鹿はそのまま常習犯や暗部に成り下がるやもしれん」


作品さえ出来上がれば後は如何でも良い、と……最悪な芸術家だな。


山崎「……あの子達には一般的に見て正しい常識道徳倫理は教えています。しかし、所長の言う事が有り得ないとも言い切れません」ムゥ・・・

土御門「だから非常時は止めろと? ハッ!! 笑わせる! お門違いも良いとこだぜ!」フンッ!

神「そうか……ではこの話は終わりだ」サラッ・・・

一同『え』キョトン・・・


随分、アッサリしている。何故だ。
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/20(金) 00:35:31.27 ID:u2h78I/DO
>>187
SS初心者か? 力抜けよ。
190 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/20(金) 00:50:38.19 ID:iznZAeyF0
御坂蛇「……質問、宜しいですか? とミサカは静かに挙手します」スッ・・・


暫時、沈黙が続いたがスネークちゃんが口を開いた。


神「何だ」

御坂蛇「もし彼らが非常時に保護をしなかった場合、また我々妹達が保護を? とミサカは我が身に関わる質問をしてみます」

神「それも有り得るだろう……だがな。彼らのレベルは上がったぞ? 以前の様に易々と保護出来るか?」ジー・・・

御坂蛇「……皆、第7位程に強くなってると?」ギリリ・・・

神「アレは別格だが、制御法は覚えた。君達が保護した時は別の研究機関に弄り回され衰弱した『原石』達だったろう」

御坂蛇「……」

神「因みに『原石』についての案件は全て貝継の担当だ。暗部を使う事はそうそう無いだろう」


では、如何する。


神「俺や軍覇が直々に出るだろうな」

土御門「な、にを……」

山崎「この人が出たら、棺が必要になります……軍覇も手加減を知らないので、死にはしなくとも……」ハァ・・・

半蔵「……雲川の女郎ぉ」グヌヌ・・・


話を聞いた上で、オマエらに人の血が通っているのなら嫌が応にも首を縦に振れ……か。


土御門「……知った事か。ノーに決まってる!」フンッ!

神「其方二人は?」チラッ

半蔵「……兄貴に任せます」ハァ・・・

黒妻「……」ジー・・・


先程を思い出す。
食堂で楽しそうに夕飯を食べていた。中にはで騒がしく目の前の男に遊んで貰っていた。

……決まってる。


神「……そうか」ニヤッ・・・

土御門「チッ……この案件に俺は無関与だ。服部、任せるぜ」フンッ・・・

半蔵「やれやれだ……」ポリポリ・・・

神「まぁ本来の目的は無能力者(力無き者)を守る事なのだろう? 『原石』達の暴走を食い止める事はそれにも繋がる」フフッ

海原「無能力者だけではなくこの街の人間全てが危険でしょうけどね」クスッ・・・

神「そういう事だ。頼むよ、【駒場利徳】」ククク・・・


ああ、良い様に使われちまったよ。畜生め。
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/20(金) 01:04:26.23 ID:apNvm0Vg0
俺は神だとスラムダンクの人しか思い浮かばなかったww
192 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/20(金) 01:07:34.95 ID:iznZAeyF0
山崎「……補足させて下さい」

半蔵「ん?」チラッ

山崎「ドチラかというと此方の方が大事なのですが、仮にもあの子達は『原石』です」

海原「それは知っていますよ」

山崎「そして、貴重……物扱いしたくはありませんが、先の例えの様に天然物のダイヤモンドなのです」

土御門「……誰もが欲しがる、な」フンッ

神「今は此処に置いているが、元はといえば各国各所の超特秘研究機関から奪取してきたモノだ。後は分かるな?」ニヤリ・・・


また奪取しにくる輩が現れるかもしれない、という訳だ。


半蔵「それも、助けろって事かい……」ポリポリ・・・

山崎「厚手がましく申し訳ないとは思います……ですが我々には味方が少ないのです」


この所長じゃそうだろうな。


土御門「その所長とFが居れば問題無ぇぜよ」ジトー・・・

山崎「人海戦、数で攻められた場合は物理的に無理があります……そうなった場合、多少でも仲間が必要です」

海原「ふふふ、成程。さながら『ホープ防衛』ですね……如何します、黒妻さん?」チラッ


まぁこういうのは、取っ捕まえるより守る方が好きだ。それが駒場の本来の理念でもあるだろう。


神「決まりだな」ニヤッ・・・

山崎「ありがとう……」ニコッ・・・

土御門「けっ……メリットも無ぇのににゃぁ……」ハァ・・・

神「そう言うな……君が『実家』と揉めた時、助けてやる。陰陽師だの鬼退治は昔したことがあるからな」ククク・・・

土御門「期待しないでおくぜぃ」マッタク・・・


結局、雲川が描いた通りにシナリオが進んだ様だ。


神「さて、では次の話題だな……一応、別の資料を見てくれ。『狂人』のヤツだ」カチッ・・・フゥ・・・

半蔵「兄貴は見ても分かんないでしょうから、見なくていいよ」サラッ・・・

海原「ぷっ」クスクス・・・


半蔵、後で説教だな……ついでに海原も。
193 :>>191・・・3Pシュートの宗一郎さま! [saga]:2011/05/20(金) 02:01:23.26 ID:iznZAeyF0
 ―――とある翌日、PM08:00、学園都市第12〜19学区、理事立大学付属病院・精神科(研究所兼刑務所)、中央研究所所長室……




一度一服タイムを取り、引き続き話に戻った。


神「まず『狂人』の定義だが……」


・此処の精神病棟に監収されている精神病患者兼犯罪者。
・大多数が第7位が捕獲してきた。
・能力開発をされていない『成年』が殆ど。
・未成年の場合は能力者が多い。


海原「確か能力開発をされていない人間の方が多いのでしたね?」

神「ああ。頭を弄られて無い成人が殆どだ。元研究者、元政治家、元運動家……死刑に出来ない人間共が多い」

土御門「利用価値があるからか? それとも他に何かが?」

神「先も言った通り、死刑反対派が増えてきてな……人権擁護だが何だか知らんが、下らない」フンッ・・・


死刑に関する論争はキリが無いので止めておこう。


黒妻「まぁだがしかし……今回のは分かり易い。要はオレ……【駒場利徳】が捕まえた犯罪者を此処に連れてくれば良いんだろ?」チラッ

神「御名答。話によると『不殺』の理念らしいからな……まったく、少しは暗部の粛清班を見習え」ハァ・・・

土御門「同感だが……それに関してはセンセの方針に従うと決めている。汚れは一方通行にでもさせるさ」チラッ

黒妻「……アイツにもなるべく殺しはしない様、言ってある。後で此処に連れてくるよう伝えろ」チラッ

土御門「アレが素直に聞くタマだと思うかにゃ?」ハァ・・・

海原「ですね……死体回収が大変でしょう」クスクス・・・


物騒な連中め。


神「第1位か……まぁヤツに守る者が無ければ『狂人』共を捕まえるのは容易いだろうな」フッ・・・

御坂蛇「……」ピクッ・・・

神「ヤツらは容易に人質を取るぞ? 二人以上いる場合は小動物を捻る様に、殺す」サラッ・・・

黒妻「っ」ピタッ・・・

神「……オマエらは面が割れてないのだろ? 軍覇も身内なんていない。親しいモノは殆どが此処の中だからな」

海原「それこそ危険なのでは?」

山崎「所長が居る限り大丈夫でしょう。この人への反抗は『死』を意味しますから」

土御門「……人質が取られても?」

山崎「この人は……そういう人ですよ」ニコッ・・・

神「そういう事だ」ジー・・・


納得いかない。だが、今は何も言わないでおく。
194 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/20(金) 02:24:22.38 ID:iznZAeyF0
半蔵「ふむ……とりあえず、この件の本題はそれだけか?」

神「芹亜が詳しくは土御門に聞け、と言っていたぞ?」チラッ

土御門「……は?」ポカーン・・・

神「何でも『幻想殺し』について、だそうだ」コクッ・・・


幻想殺し……上条の事か。
土御門は暫し俯き、何かを思い出したように口を開いた。


土御門「……火野、か」ボソッ・・・

一同『え』

土御門「畜生、あの女ぁ……何処まで筒抜けなんだっつの」グヌヌ・・・

神「思い当たる節があるようだな」フフフ・・・


ヤレヤレと溜息をつき、道化師は説明を始めた。


土御門「……俺がこの『活動』を行う上での条件でカミやん……上条当麻について上げたのを覚えているか?」チラッ

黒妻「ああ。一応、守れだか何だか」

土御門「今まで黙ってたが上条当麻はかなりの重要人物だ。ヤツの不幸伝説を本人から聞いてるだろ?」

黒妻「まぁ色々な」クスクス・・・

土御門「アイツは各所から狙われる。だが本人はその重大性にまったくと言って良い程、無頓着だ」

御坂蛇「彼は自分をタダの無能力者に過ぎないと思ってますからね……ミサカ、というかミサカ達は嘆きます」ハァ・・・

海原「ええ、彼は自分の危うさに気付いた方が良い」


……タダのウニ頭じゃなかったんだな。そういえば香焼も上条を護衛する仕事があるとか偶に言ってた気がする。


土御門「無論、能力者共に関しては問題無い。何だかんだでアイツの取り巻き……御坂美琴や白井黒子、妹達が出張るからな」

海原「暗部や『もっと大きな組織』が関わろうモノなら我々や土御門の別枠仲間が護衛します」

黒妻「……いやいや、それだけ居れば充分だろ。オレ必要無ぇじゃん」アハハ

土御門「話を最後まで聞け……アイツの右手は謂わば『原石』より貴重なモノ。欲しがる連中は多々存在する」

海原「ですが……数々の危険があろうとも彼はその『右手』で解決してきました。無論、一人であっても」


アイツ意外と凄ぇなぁ。


海原「知っての通り御坂さんの雷だろうが、一方通行の能力だろうが打ち消します。第4位の粒子砲でも無効化するでしょう」

土御門「魔法だろうが超能力だろうが、消せるんだよ……オーバーだと思わないで聞け」


魔法って……案外メルヘンだな、土御門も。
195 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/20(金) 02:45:00.04 ID:iznZAeyF0
土御門「だがな……アイツはハッキリ言って、それだけなんだ」

黒妻「それだけって、十分凄ぇんじゃねぇのか?」

土御門「いや、考えてもみろ。異能の条件をキャンセルするだけだ」


今一ピンと来ないな。


半蔵「兄貴。要は異能じゃなきゃ、って話です」

黒妻「普通って事か?」ムゥ・・・

海原「刃物、銃、武術、武具術……何でも良い。それは異能の力ではありません」

半蔵「その類の暗殺者、もしくは刺客に狙われたら……」

黒妻「……そりゃまぁ、な」ポリポリ・・・

土御門「上条当麻はサシの喧嘩ならそれなりに強い。経験上慣れてるからな……だが所詮は素人だ。多分、センセや俺には勝てん」


つまり土御門レベルの武術家に狙われた場合、一溜まりも無いという事か。


土御門「……そして昔、一度だけそのピンチがあった」

海原「それは、初耳ですね」タラー・・・

土御門「火野神作という男を知っているか? 都市外の脱獄した死刑囚だ」


確か30人くらい殺した犯罪者だったか。


土御門「純粋な殺人鬼にゃ敵わない。ましてプロの殺し屋なら尚更だ……所長」チラッ

神「ん?」

土御門「『狂人』達の中で腕利きのシリアルキラーはどれくらい居る?」

神「ざっと6〜70くらいか。無能力者だけなら50は居るだろう」

半蔵「つまり……間違って上条当麻が『狂人』に狙われた場合に、近くに土御門やその他の護衛が居なかったらって事だな」

土御門「ああ。センセが守れ。身を盾にしてでも守り切れ」


たった一人の為に、とは考えない。


黒妻「当たり前だ。アイツも……無能力者なんだろ? 例え違くとも、守るけどな」ハハハ


そんな貴重だとか何とか面倒な理由じゃなく、普通の隣人、ダチ公として。
196 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/20(金) 03:14:46.47 ID:iznZAeyF0
神「……ふふっ。ダチ公か」クスッ・・・

黒妻「悪ぃかよ」チラッ

神「いや、悪くない。戦い守るのに理由は要らないという輩は好意を持てるぞ」ククク・・・


柄でも無い。怖い人だ。


神「だが、兎に角気を付けろ。ヤツらに常識は通用しない」

半蔵「元よりこの街に常識なんてモンは無いでしょ」ハハハ・・・

神「それでも、だ。六枚羽をラジコン感覚で複数操作したり、猟奇ゲームをするが如く狩りを楽しむ輩ばかりだ」

土御門「それなら能力者にも居るけどにゃぁ」フンッ・・・

神「中にはカニバ、人間剥製、悪魔信仰、電子ジャック、新種麻薬、金で自慰、等……イっちまってる趣味のヤツらだ」

御坂蛇「食人や人間模型とは……○チガイ、ですか……ミサカには信じられません」

神「そして目的の為には手段を問わない。平気で仲間を殺す。雑草を抜く感覚で人を殺す。犯す。嬲る」


……カスか。


神「恋人の前で女を犯して殺す。友人の前で自殺を強要し、その友人を殺す……そこまでの過程はあっという間だ」

海原「『狂人』のシナリオの前では全てが無駄という訳ですか……」

神「自分の命も他人の命も軽く考えているのが殆どだ。自殺の延長ついでに殺し強奪強姦でもしておこう……そんな考え」

御坂蛇「しかし……この街でそんなに暴れれば、暗部が粛清に」

神「だから言ったろ? 殺されても良い。一回の犯罪(目的)で命を使う。それが『狂人』だ」

山崎「……此処に収容されているのは軍覇が偶々捕まえてきた者達です。普通であればその場で射殺されていますよ」


その暗部は、きっと『狂人』になりかけてる大人に違いあるまい。


海原「え……何故です?」

黒妻「んな狂った人間は暗部みてぇな汚れ仕事で精神イカレちまった連中だろう。もしくは狂った思想の持ち主だ」

神「良いとこに気付いたな。確かに暗部仕事で精神を病んで狂気に堕ちた輩も多い。元研究者だの元政治家だのは……」

土御門「何かトンデモ無ぇモンを使用して、か? 例えば……生物兵器や破壊兵器等の戦略兵器ってヤツ」

神「ああ。自分の実験結果や高説を通す為にな……まったく、死刑肯定派の俺に此処の所長を任せる理事共の神経が知れん」フンッ!


御尤もだ。オレも此処の勤務は耐えられないだろう。
197 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/20(金) 03:48:50.62 ID:iznZAeyF0
神「とりあえず以上だ。何か質問は?」チラッ


皆無し。後は紙面を見て確認する様だ。


神「宜しい。では3つ目だが……オマエらの計画、というよりも綿流の身体に関してだな」

黒妻「は? オレ?」ポカーン・・・

神「オマエ、身体襤褸襤褸なのだろう。芹亜の資料と教授……冥土帰しのカルテをパクったが、酷い戦い方をするもんだ」

黒妻「……だがよ」

神「だがよ、も糞も無い。駆動鎧の発条包帯を使うなんぞ自殺者の考えだぞ? おまけに武器はチャフとアンカーガンだけとは……」

土御門「だから銃くらい持てって言ってんのににゃー」ハァ・・・


喧しい。同じ人間相手に銃なんぞ邪道だ。


神「暫く発条包帯の使用は控えろ。アレは此処ぞという時にだけ使え」

半蔵「しかし、だ……犯罪者の中にはバケモンレベルだって居る」

神「だからだ。此処ぞという時以外は使うんじゃない。よく分からないが防弾繊維(ケブラー)加工の布を持ってるんだろ?」

土御門「それは……『仮面』以外に流用できないんだぜよ。資金が無いぜ」

神「使えんな。仕方ない……適当な防弾チョッキを作ってやる」


そりゃ有難いが、発条包帯の機動性に関しては?


神「それも考えておこう……兎角、当分は自重しろよ」

黒妻「……あいよ」ハァ・・・


このオッカナイ男を信じるしか無い様だ。
ああ、畜生・・・・・


神「計画に関してはもっとじっくり資料を読んでから、口出しさせて貰う……そんなところだな」コクッ・・・


やっと終わった……これで帰れるのか……


神「……何言ってる? 今から見学だろ?」

一同『』チーン・・・


面倒事が、増えてる。
とりあえずオレらはこの後、所長と秘書さんに案内され、敷地内の施設と『原石』『狂人』達を見せて貰った……―――
198 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました [saga]:2011/05/20(金) 03:49:42.00 ID:iznZAeyF0
今日は此処まで。お疲れ様です。

んじゃオヤスミ!
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/20(金) 04:32:43.02 ID:eEtPPDtDO
>>1

質問だけど
神と山崎って完璧オリキャラなの?
あと他に名前のあるオリキャラいた?
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/20(金) 07:26:56.84 ID:wgbL6FHDO
音戸 調叉(おと ちょうさ)
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/20(金) 12:57:12.06 ID:u2h78I/DO
名前無しオリキャラは「おかえりなさい」から出てたけどなー。
しかし‥‥学園都市の警察事情ってどうなのかな。確かに死刑制度謎だにゃ?
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/21(土) 11:11:08.67 ID:F51Oe6SIO
神で所長で素手で殺害出来る……
ゲッター2のパイロットしか出てこないw
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/23(月) 01:58:54.26 ID:NDgMsedF0
>>1
最初から読んでて気になっていたのですが
「違くて」は一部の人に広まった文法的に誤りがある言葉で正しい日本語ではないのです
ttp://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1211633652
どこからでも繋がって幅広い年代の人が読む可能性がある以上
正しい表現をした方が良いかもしれません、とミサカは改善をお勧めします。
204 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/23(月) 22:09:09.01 ID:zUS5QOsw0
こんばんわ。続き書くよん。

・オリキャラについてですが、微妙なキャラは出してますよー。というか最早黒妻や香焼、那由他はオリキャラみたいなもんですよねw
・神さんは、イメージとして漫画版ゲッターサガの「號」と「アーク」の大佐だと思って下さいw
・警察事情というより法律制度が今一ですよね。治外法権なのか、日本の法制度なのか……
・「違くて」という言葉について、初めて知りました! ちょっと吃驚しましたね……以後、気を付けます。

んでは、投下!
205 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/23(月) 23:05:52.75 ID:zUS5QOsw0
 ―――とある翌日、PM09:30、学園都市第12〜19学区、理事立大学付属病院・精神科(研究所兼刑務所)、中央研究所所長室……




山崎「―――皆さん、お疲れさまでした」コトッ・・・


東西棟、歩きっ放しの一時間半。ようやく見学が終了した。

一同クタクタ状態である。
オレは元より疲れた体に鞭打ってこの使いの仕事をしている訳だが、他の連中もすっかり疲弊しきっている。


土御門「疲れたっちゃ疲れたんだが、何かなぁ」ハァ・・・

海原「精神的にドッと、ね」ハハハ・・・


東側(『原石』)の研究所では、子供達にオモチャにされ……
西側(『狂人』)の精神病棟では、オツムのネジが飛んじまってる野郎共の奇行の説明を受け……


半蔵「まぁB級アトラクションと児童施設が合併してる大学病院なんて滅多に来れたもんじゃないけどな」ハハハ・・・

黒妻「B級ねぇ」ボー・・・


確かに最愛ちゃんが好きそうな刑務所だったな。


神「御苦労。まぁ見学して貰った通りだよ……普段は双方とも大人しいものだろ」

御坂蛇「大人しい……アレでですか? とミサカは率直な疑念を口にします」

神「ああ。子供達は能力を制御しているし、罪人共も安定剤をブチ込んでいるからまだ静かな方だ」

土御門「確かに『原石』達の方は一般学生と差し支え無かったにゃ」コクッ

海原「しかし犯罪者の方は……無論、全員という訳ではありませんが、キマってる人間は完全に……」

山崎「奇行に走ってはいますが、大人しいものです。全て内側(自分)に向けての奇行でしょう?」


壁一面に意味不明な計算式書いたり、鏡の中に話しかけたり、パン屑で身体こすったりしてるのにか?


神「ヤツらも全員が馬鹿では無い。此処に居る限りは命の保証をして貰えると分かっているからな」


刑務所が犯罪者の命綱とは……税金払いたくないな。元から払ってないけど。


半蔵「ん? 全員、が?」

神「ああ……稀に脱獄するキ○ガイもいる。その度被害者が出て、軍覇が処理してるけどな」

土御門「そんなにザル警備なのかにゃ?」

神「……我々とて人だ。完璧という訳ではない」ムッ・・・


そりゃそうだろう。あの変態狂人共を完全沈黙させておく事が出来たら、そりゃ常人の沙汰じゃない。
206 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/23(月) 23:24:01.47 ID:zUS5QOsw0
神「さてと……質問が無ければ、次に移るぞ」チラッ


特に無し。ああいう場所があると分かっただけでも収穫だ。


神「では、倉庫に行く」スッ・・・

土御門「倉庫?」

神「用具庫……要は武器庫みたいなモノだ。綿流の武器が必要なんだろ?」

黒妻「え、いや、別に」サラッ・・・

半蔵「必要です」キッパリ!

黒妻「えー……武器とか現地調達で良いだろ。鉄パイプとか空き瓶とか結構落ちてるし」

半蔵「だから、そんなモンで戦う自警員が居るかってんです!」ガアアァ!


シャッハさん、ディスってんなよ?


土御門「ハァ……とりあえず防弾チョッキくらいは身繕って貰おうぜぃ。どーせ何言っても銃持たねぇんだろうしにゃ」ジトー・・・

黒妻「だからアンカーガンあるだろ! 十分じゃねぇか!」

神「確かに。使い方によっては十分人を殺せるな」コクコクッ

海原「そういう問題では無いと思いますが」タラー・・・


近づいて打ん殴る。それで問題ない。


神「単純明快で結構。コストも掛らん。結構な事だと思う……寿命を縮めるを善しとするならな」ククク・・・

黒妻「……別に、死ぬ気は無ぇよ」ムスー・・・

土御門「……所長。何か超回復のカプセルとかクスリとかは無いのかにゃ? 一番の問題点は行動時間のスパンだ。長過ぎだぜよ」

神「ふむ。クスリ……トンでも良いなら」チラッ


却下。


神「だろうな。とりあえず防弾チョッキ準備してやる。ついて来い」テクテク・・・


またもや言われるがまま、所長の後を付けて行った。
207 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/23(月) 23:49:30.91 ID:zUS5QOsw0
 ―――とある翌日、PM09:40、学園都市第12〜19学区、理事立大学付属病院・精神科(研究所兼刑務所)、研究所倉庫……




神「此処だ」パチッ・・・


地下にある重々しい電子扉を潜り、暗闇の中へ足を進める。
所長が電気を点けたその部屋を一望すると……


半蔵「……完璧、武器庫だな」アハハ・・・

海原「戦争でも始める気でしょうか……って、スネーク。目を輝かせないでください」タラー・・・

御坂蛇「ぱ、パトリオット!! 師匠、パトリオットです! AR-15カスタムですよ! とミサカは珍しく興奮気味であの銃に喰い入ります!」

神「金さえあれば特注してやるぞ。ウチは合衆国側との武器提携してるからな。専門の技師もいる」

御坂蛇「ぜ、是非に!」キラキラ・・・


物騒な連中だ。


神「しかし、先に綿流の方だな……服部の。普段使用してる装備諸々は?」

半蔵「全て兄貴が管理してる。兄貴、持て来てます?」

黒妻「持ってくる訳無ぇだろ。あれ結構重いし」

神「では資料だけで判断、か……土御門の。服部の。ちょっと」チラッ

土御門・半蔵「「……」」テクテク・・・

黒妻「あー……オレらは?」

神「少し武器見て回ってろ。気に入ったのがあれば山崎に言え。尤も、使用は控えてくれよ」ククク・・・


しないっつの……


御坂蛇「こ、高周波ブレード! これなら一方通行でも演算処理に支障が出るのではないでしょうか、とミサカは……ふふふ」ニヤリ・・・

海原「す、スネーク?」タラー・・・

黒妻「しっかし、色々あるな……単分子カッターの軍事使用版、新型セムテック爆弾……あ、このナイフ。香焼好きそう」ジー・・・

海原「……山崎さん。何故彼はこの様な武器収集を? ただの趣味レベルではないですよね?」チラッ

山崎「え、ええ……昔色々と、ね。神さんは入念に保険を掛ける人ですから……」アハハ・・・


保険で戦争の準備とは、穏やかではないな。
208 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/24(火) 00:15:45.29 ID:4pOu+H9k0
それから暫く、銃火器等を見て回った。
スネークちゃんは若干興奮気味で銃器を撫でたりしていたが、オレと海原はそんな気にはなれなかった。


海原「ふむ……これなんて、如何ですか?」チラッ

黒妻「ん?」

海原「ランチャータイプのグレネード」スッ

黒妻「いやいや、だから銃は」

海原「勿論、弾丸は特注で。中に火薬では無く、攪乱の羽(チャフシード)を詰めてみては?」

黒妻「む……だが、チャフってのは絶対じゃねぇだろ」


対能力者対策という点では良いアイデアかもしれないが、風等で『羽(金属膜)』が吹き飛ばされたりしたら元も子もない。


海原「しかし無いよりは有った方が良い。元より貴方は無能力者なのですよ?」

黒妻「そりゃ分かってるが」

海原「貴方が活躍……目的をこなす為には、自分を相手と同等に上げるか、もしくはその逆をしなくてはいけません」


謂わばオレは喧嘩が強い程度の常人。そんな輩が能力者と真っ向に勝負して勝てる訳が無い。
故に……チャフや『C・D』といったAIMジャマーの類で、相手を凡人にしてやらねばならない。


海原「そうなれば貴方のモノでしょう。能力者なんて種は基本的に『能力』に頼りっ放しの傾向にあります」

御坂蛇「むっ。私は能力を過信した事はありませんよ、ミサカは師匠に意見させてもらいます」

海原「スネーク、というより妹達は凡庸性が売りでしょう。言葉が悪くてすいません」

御坂蛇「……褒められてるのだか、何なんだか」ムゥ・・・

黒妻「だがスネークちゃんの言う通り、能力者でも喧嘩が強ぇヤツはタンといる」


現に土御門や麦野さんなんかは、もしかしたらオレより強いかもしれない。


海原「如何でしょうね……ですが、同じ土台に引きづり込めば勝率は上がります。能力を使われるよりはマシでしょう」

黒妻「まぁな。理屈で言ったらそうなんだろうけどよ」ポリポリ・・・

海原「ドチラにしろ、チャフは携帯すべきです。『駒場利徳』も愛用していたのでしょう?」

黒妻「……らしいな」コクッ・・・


伝聞に過ぎない。
オレが年少でタダ飯を喰らってる間に、アイツは戦って……死んでいた。
209 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/24(火) 00:42:08.91 ID:4pOu+H9k0
 一寸後・・・・・


神「待たせた」テクテク・・・

黒妻「あ、いえ」

神「目ぼしいモノは有ったか?」

黒妻「まぁチャフくらいですかね。他は別に」

神「ふむ……後で準備しよう。先に方針を」チラッ


所長の後方から、難しい顔をした二人が紙面を見詰めながら現れた。


土御門「んー……俺は別に駆動鎧の上にジャケット着ても良いと思うぜぃ」ポリポリ・・・

半蔵「いや、無理あるっつの……ポ○太くんじゃあるめぇ」ポリポリ・・・

神「……おい」

半蔵「あ、はいはい……とりあえず発条包帯の使用は当分控えて貰う事にします」

黒妻「ああ、そのつもりだ」

土御門「んで、そうなるとだ……長期戦闘は可能になったが、俊敏性が落ち被弾率が上がる」


能力過信型の犯罪者ならそれでも問題無いが、組織的なタイプだと銃火器を所持している事も屡である為、危険度が増すだろう。


土御門「いや、能力者相手でもやっぱ危ないぜよ。『被弾』ってのは何も鉄砲玉だけじゃねぇんだぜぃ?」

海原「発火能力、風力使い、電気使い……『仮面』で頭は守れても、その他は無防備ですよね」

半蔵「駒場の兄貴のジャケットも防弾加工してるとはいえ、限界がある。となると……」

神「インナーに対応策を仕込むしかないな」


だから駆動鎧、か……無理あるだろ。見た目的に。


神「いや、最新型の駆動鎧はコンパクトになってきている。悪くないと思うが?」

黒妻「そいつぁ那由他の専売特許です……オレは生身で行きますよ」コクッ・・・

神「そうか……では硬化能力者の実験データに基づいた防弾チョッキを準備する。それで良いか?」チラッ

半蔵「兄貴がそう言うなら、お好きに」

土御門「……ただし、チャフに関してはもう少し慎重に考えようぜぃ」クイッ・・・


そのつもりだ。凡人と才人の境を取っ払う重要事項だからな。
210 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/24(火) 01:38:02.13 ID:4pOu+H9k0
暫く話しあった末、新しいスタイル(構想)が出来上がった。

・様々なタイプのチャフを使用する。
・アンダーアーマー(インナー)タイプの防弾着の装備を徹底。


黒妻「あとは、基本的に同じだな」

神「チャフは3つ。一つは対電子、所謂一般的なチャフグレネード。それから攪乱の羽(チャフシード)、これは今まで通りだな」

半蔵「といっても資金に限りが有った当初じゃ、乱用は出来なかった。今回を機に絨毯散布作戦でも取ろうかなー」フフフ・・・


この策士マニアめ。


神「続けるぞ。もう一つが……液状タイプのAIM拡散力場錯乱弾。まぁ攪乱の水(チャフウォーター)とでも名付けようか」

海原「液状タイプ、ですか? 初めて見ましたね……使い方は?」

神「単純だ。ぶつけてやるも良し、散布するも良し。メリットは羽(シード)と違って風で流されない所にある」

御坂蛇「つまり……その液体を浴びた者は、拭いきるまで能力の使用は困難になるという事ですね、とミサカは確認します」

神「そうだ。おまけに液体といっても実際はジェル状。そう簡単には落ちない」


何それ卑猥。


半蔵「喧しい……兎角、【駒場】の兄貴の威圧感は大分残せる様だ。大丈夫でしょう」

土御門「ああ。同じ土台で素手戮になりゃ圧倒的にセンセが有利だぜぃ」

神「……有利、か」ククク・・・


買い被り過ぎだ。オレは多分、そこまで強くない。
発条包帯の使用で【怪物】と化していたがそれが無くなった今、並の喧嘩屋レベルだろう。


黒妻「相手が格闘の専門家だった場合、オレぁ完璧不利だぜ」

神「……綿流の流派は?」

黒妻「だからタダの喧嘩、我流だっつの。空手でも柔道でもねぇ」

半蔵「といっても、並の警備員相手なら悠々伸すでしょ。手段を選ばなきゃ軍人でも相手出来る」コクッ・・・

黒妻「さぁな。純粋な腕力脚力ならそうかもしれねぇが……」


多分、黄泉川さんには勝てない。


神「ふふっ……弁えているのだな。軍覇の様に『俺最強っ!』と馬鹿を抜かす類じゃなくて安心したよ」クスクス・・・

黒妻「生憎、無能力者と分かった時点で弁えてるよ」

神「だが俺は綿流の戦闘法は嫌いではない。資料を見させてもらったが、アレは―――」


所長が何か言いかけた時、山崎さんが小走りに険相で近づいてきた。
211 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/24(火) 01:55:44.83 ID:4pOu+H9k0
山崎「所長……」ボソボソ・・・

神「―――……そうか」コクッ・・・


緊張感が走る。


神「一旦、所長室に戻るぞ……オマエら、何か好きな武器を持って来い」テクテク・・・

一同『……は?』

神「話は後だ。急げ」テクテク・・・


また自分勝手な事を……


半蔵「如何する」チラッ

土御門「如何って……野暮用みたいだにゃ」クイッ・・・

海原「山崎さん。『危ない事』ですか?」チラッ

山崎「なるべく穏便に済ませたいのですが、所長が所長なので……ハァ」タラー・・・


穏便には行かないだろう、と。


土御門「……海、山田。『槍』は?」ボソッ

海原「無論。一応、銃も持ってきてはいます」

半蔵「俺も持ってきてはいるが、弾そんなに無ぇぞ。弾丸だけ貰って良いっすか? マグナム弾」チラッ

山崎「どうぞ。合う弾があれば持って行って下さい。基本、使わないモノばかりなので」

御坂蛇「……」キラーン・・・


先程からイソイソとAR-15カスタム(パトリオット)に手を伸ばそうとしているスネークさん。


山崎「……ど、どうぞ。ただし大分整備してませんよ?」タラー・・・

御坂蛇「構いません。ミサカの手に掛れば数分と掛らずにチェーン出来ます! とミサカは己の武器マニアっぷりを自慢してみせます」ニヤッ

海原「……では、スネークのF2000R(トイソルジャー)お借りしても良いですか」チラッ

御坂蛇「私は人に銃を貸す気はありません、とミサカはキッパリお断りします」ビシッ!

土御門「凄い我儘な妹達だにゃ……御坂美琴(オリジナル)並に我儘なんじゃねぇの?」ニャハハ!

半蔵「如何でも良いが、早いとこ選んで行こうぜ。兄貴も適当なの掴んで行きますよ」チラッ


仕方ないので殺傷能力の低いスタンロッドを持って、所長室に向かった。
212 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/24(火) 02:18:42.04 ID:4pOu+H9k0
 ―――とある翌日、PM10:10、学園都市第12〜19学区、理事立大学付属病院・精神科(研究所兼刑務所)、中央研究所所長室……




部屋に戻ると、所長が年季の入った天井付けディスプレイを見詰めていた。
どうやらオレらが入ってきたゲートを映しているらしい。


土御門「ショチョーさんよ、何があったんだにゃ?」

神「……厄介な連中が来た」ジー・・・

半蔵「厄介?」

神「アレは下っ端共だ……まぁそろそろ来る頃合いだろうとは思っていたがな。タイミングが良いのか、悪いのか」フム・・・


だから何だってんだ。


神「山崎。軍覇は何処にいる?」

山崎「多分、研究所の屋上でしょう。彼らを監視してます」

神「そうか。今日は私が許可するまで動くなと伝えろ」

土御門「オイオイ……物騒って事かい? 穏やかじゃねぇなぁ」クイッ・・・

神「そういうな。この施設は謂わば『宝箱』だから仕方ないんだよ……偶にある」コクッ・・・

半蔵「……成程な」タラー・・・

黒妻「半蔵。オレにも教えろー」ブーブー・・・

半蔵「……言葉通り『原石』は宝。そして『狂人』共も特殊な人間共からすれば宝なんです」


……良く分からん。


海原「『原石』の未知なる能力は、世界中の研究者皆が弄りたいと考えるモノです。磨いて光れば万々歳ですし」コクッ・・・

黒妻「要は『ホープ』って事だな……んで『狂人』は?」

土御門「センセ。昨日言ったろ……此処の刑務所の輩は是非とも『暗部』にスカウトしたい輩ばっかなんだって」

黒妻「あー、それで……じゃあ何か? ソイツらはガキ共か犯罪者連れ出しに来た訳か?」


下らない。理事会の連中も何考えてるんだか。


神「無論、理事会も一枚岩ではない。先程芹亜に裏を取って貰ったが、スポンサーと支持者の動きで連中が誰なのか割れた」


大概、雲川も怖いな。スーパーハカーとかいうヤツだ。


御坂蛇「ハッカーですよ常考、とミサカはテンプレで返します」チラッ

黒妻「……うぃ」ハァ
213 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/24(火) 02:42:24.95 ID:4pOu+H9k0
神「端的に言えば、暗部だな」サラッ・・・

一同『っ』ピクッ・・・


暗部って……色々あるからピンと来ません。


神「……アイテム」ボソッ・・・

黒妻「なっ……」ビクッ・・・

神「と、言ったら如何する?」ニヤリ・・・

黒妻「ど、如何って……」タラー・・・


……想像出来ない。


土御門「チッ……センセ。あんまりアイテムのチビ娘に情沸かすな。アレは異常者だと言ってるだろ?」ジトー・・・

神「ふふふ、脆いモノだ。まぁ綿流も人間という事だろう」クスクス・・・

黒妻「別に……場合によっちゃ正しい方につく」ムゥ・・・

神「ククク。冗談だ。別に俺は粛清対象になった覚えはない。歪んでいるがヤツらの任務は一種の『正義』だからな」


それは麦野さんが言ってた。
都市の浄化の為に『粛清』という『正義』を振りかざす。そう割り切らなければ、やってられない。


神「無論、第4位なら迎え撃っても面白そうだが……今回は違う様だ」

海原「では、ドチラ様で?」

神「『スカウト』か『トレジャー』、もしくは単独で『博士』が動いたかと思ったんだが……」

半蔵「……聞いた事無い連中だな」

神「言ったろ。一枚岩は有り得ない。理事だろうが暗部だろうが同じだ」

半蔵「グループ(土御門ら)が何でも屋で、アイテムが粛清班……とかだっけか?」チラッ

海原「何でも屋って……」アハハ・・・

土御門「……その前に『博士』たぁ、あの『博士』か?」

神「ああ。『メンバー』の指揮だ……我々の業界でもちょっとした有名人でな。しかし、今回は来てないらしい」


最早、さっぱり分からん。さっさと次の行動を示してくれ。
214 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/24(火) 03:03:30.86 ID:4pOu+H9k0
半蔵「……で?」チラッ

神「ああ、全員ではないが……『ブロック』が来てる」コクッ・・・

半蔵「ブロック?」

土御門「服部……手前、ウチとアイテム知っててブロック知らねぇのかよ」

半蔵「す、スクールってのは知ってる! 第2位いるとこだろ!」


皆博識だなぁ……オレぁ暗部事情なんか興味無いぜ。


海原「しかし……彼ら(ブロック)が来るという事は『宝』漁りじゃない様ですね」フム・・・

土御門「アイツらは外交監視、関税官みてぇな連中だからにゃ」クイッ

神「そうとも限らん」ジー・・・

土御門・海原「「え」」

神「……リーダーの佐久が見えない。主要メンバーで来てるのは二人の様だ」コクッ・・・


そう言ってノートパソコンを弄り出す所長。


神「この二人が……確認された」スッ・・・

一同『……』ジー・・・

神「目的は分からんが『意見解析(スキルポリグラフ)』が居るのをみる限り、いきなり戦闘は無いだろう」

山崎「アポイントはありませんが、最悪押し掛けで『病棟』の方に収容されている『誰か』に、というのは考えられますね」

神「ああ……ん? 綿流?」チラッ

黒妻「……」ジー・・・

土御門「……あ、ヤベッ」タラー・・・

神「如何した?」

土御門「……ちょっと、雲川の馬鹿に電話してきまーす」イソイソ・・・

海原「はい?」ポカーン・・・


一枚の、顔写真。


黒妻「……半蔵」ボソッ

半蔵「兄貴……馬鹿な事は考えないで下さい。極力、接触は避けましょう」ボソッ


懐かしい、顔。
215 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/24(火) 03:23:09.79 ID:4pOu+H9k0
神「綿流?」ジー・・・

黒妻「……神さん」ボソッ

神「ん」

黒妻「この後の行動予定は?」

神「アイツら次第だ。大人しくインターホンを馴らす様ならそれなりの対応をする。だが強行侵入なら……」ニヤッ・・・

黒妻「……すぐさっきの戦闘装備準備できますか?」

神「如何してだ?」

半蔵「あ、兄貴……拙いって」タラー・・・

黒妻「黙ってろ……オレが玄関で応答してきます」

一同『っ』ギョッ・・・


どうしても、話をせねば。


神「ヤツらは暗部の中でも警備員所属が多い部隊だぞ? それこそ黄泉川クラスの腕前だっている」

黒妻「知っているから、頼んでます」

神「ほぉ……」ニヤリ・・・


暫時の沈黙。そして……


神「……分かった。下手に荒されるよりコッチから穏便に出迎えた方が早く事が済むだろう」スッ・・・

山崎「ちょ、しょ、所長?!」ギョッ!

神「服部の。オマエらは『原石』が荒されぬ様、影から監視を頼んで良いか? 『狂人』に関しては護衛は不要だ」チラッ

半蔵「え、あ、はぁ……」ポリポリ・・・

黒妻「悪ぃな、半蔵」チラッ

半蔵「ったく……雲川の女郎に給料弾んで貰わねぇとなぁ」ハァ・・・


ついでにこの人からも、ブん取っとけ。


神「そこの男と妹達は服部の指示下に。山崎は軍覇に俺の下に来る様伝えてくれ。その後は君も『原石』の寮へ」

山崎「はいはい。あまり派手に暴れないで下さいよ」ハァ・・・

神「奴(ヤッコ)次第だな……それでは行こうか……【駒場】くん」スッ・・・ポイッ


書類とカードキーを渡される。
216 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/24(火) 03:42:11.81 ID:4pOu+H9k0
神「革ジャケットは無いが、黒の対衝撃作業服がある。図体もデカく誤魔化せるから丁度いいだろう」

黒妻「『仮面』は?」

神「それに関しては土御門だ。関与できんな……とりあえずさっさと準備しろ。先に外で待ってる」テクテク・・・


所長と入れ違いに土御門が戻って来る。


土御門「ったく……あの女郎、仕組んでやがったに決まってる!」ギリリ・・・

黒妻「おい。『仮面』の代わり、持ってるか?」

土御門「はぁ? 何言ってんの?」ポカーン・・・

半蔵「あー、土御門。あのな……」


かくかくしかじか。


土御門「」チーン・・・

黒妻「という訳で、代わり」ホレッ

土御門「ん、の……ボケナス!! 包帯でも巻いてろ!!」ガアアァッ!!

黒妻「えー……」ショボーン・・・

土御門「ハァもう……まるであの女(アマ)が描いた通りになってて面白くねぇ」ゴソゴソ・・・スッ・・・

黒妻「お! 持ってんじゃん!」オー!

土御門「悪いがそれ、前みたいに異能はシャットアウト出来るが物理攻撃にゃ弱いぞ? 銃弾貫通すっからな?」ジトー・・・

黒妻「はいはい。ダイジョーブ……手袋もある! 流石何でも屋!」ニカッ!

土御門「喧しい! とりあえず今日は派手に暴れるなよ……身体も本調子じゃねぇんだからな」ギロッ・・・


分かってる。無茶はしない。


半蔵「それでは俺らは別所に移ります……相手が相手ですから、気をつけて」チラッ

黒妻「ああ、一応電話には出れる様にしといてくれ。何か頼むかもしれん」

半蔵「了解……御武運を。兄貴」スゥ・・・


閑散となる……さて、では御対面しましょうか。此方は『仮面』だが文句はあるまい。


黒妻「手塩さん、ねぇ」グッ・・・


懐かしき、警備員さん……―――
217 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました [saga]:2011/05/24(火) 03:44:13.54 ID:4pOu+H9k0
はい。今日は此処まで。もう少しで終わるね・・・そしたら『アフター』かぁ。

んじゃ色々コメよろしくー。ノシ
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/24(火) 11:02:01.14 ID:peJ/IlVDO
>>203
知ってんだよオオォォッ!!
 国語の教師か、うう…うう…うおお、おっ、おっ、オメーはよォォォォ。


>>1
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/24(火) 14:18:48.03 ID:Ot++CCyDO
おつー。プロスネークさんが楽しそうで何よりです。

気になったんだが、単分子カッターとか高周波ブレードって、もあいちゃんの装甲破れるん?
220 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/25(水) 21:29:58.47 ID:HR1smUKx0
こんばんわ。続き書くよん。


・ギアッチョってか、暗殺班のスタンドってテラチートなの多いよねw
・出来るんじゃない? あとGNブレードとか、超科学的危険なタイプの刃なら、もしかしてね!


んじゃゆるりゆるーり投下!
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/25(水) 22:48:49.45 ID:N4nI2OHDO
舞ってました
222 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/25(水) 23:15:37.44 ID:HR1smUKx0
 ―――とある翌日、PM10:30、学園都市第12〜19学区、理事立大学付属病院・精神科(研究所兼刑務所)、メインゲート……




本来であれば客人など訪れる筈の無い時間帯、病院(研究所)の正門付近に怪しい輩がうろついていた。
数にして凡そ20。多くは警備員の様な武装をした者達だ。

現在、数名を用いて院の長い塀をチェックしている。


下っ端「チーフ」


一人の男がベースとなる機材車に駆け寄ってきた。
その中には……女性が二人。


下っ端「やはり、正門以外からの侵入は不可能かと……」

鉄網「そ、そうですよね。というかこの施設に強硬手段で出たら後が大変なんじゃ……やっぱり日を改めて正式に」

手塩「セムテックは、持ってきてるのか?」

下っ端「は、い? ち、チーフ??」

手塩「C4爆弾……準備できるのかと、聞いてるんだよ」


チーフと呼ばれた筋肉質の女――手塩恵未は重々しく、発破の可不可を尋ねた。


鉄網「手塩さん! そんな事したら後々佐久さんに迷惑を」

手塩「彼の事は、気にしなくて良いよ……出来るか、如何かだけ、聞いてるの」

下っ端「え、えっと……壁の厚さからして、繰り返し発破を掛けなければ穴は開かないかと……」

手塩「その間に、気付かれるね……仕方が無い」スッ・・・

鉄網「な、ど、何処行く気ですか!?」


ただゆっくりと車を降りる手塩。手にはグレネード付きライフルとライオットシールド。そして……閃光弾。


手塩「鉄網、行くよ」チラッ

下っ端「ち、チーフ!? 如何する気ですか!?」

手塩「正攻法しかないね。花火を上げて、門を開かせる……そこからは、交渉次第かしら」

鉄網「だ、だったら佐久さんに話を通して貰って、山手さんも一緒に来ないと!」

手塩「……アイツらは、駄目。貴女だけが、頼りだよ」テクテク・・・


チーム行動の筈なのに、何処か孤独。そんな手塩がチーフである、この『ブロック』特別編成班。
今日の要と言われて来た鉄網は不安な思いでいっぱいだった。
223 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/25(水) 23:54:10.63 ID:HR1smUKx0
下っ端「……鉄網さん」

鉄網「は、はい! ななな、な、何ですか!?」オドオド・・・

下っ端「いや、そんなに怯えなくても……何で手塩チーフ、あんなに急いでるんですか?」

鉄網「え? えっと……すいません。私も分からないんです」


今回の任務は二つ。
一つは、とある『狂人』との接触。可能であればセーフハウスへ連れて帰る事。
もう一つは、似た様なものだがとある『原石』の資料(データ)確保である。

前者も後者も正式に順を追えば、表でも十分こなせる仕事であるのだが……そうはいかなかった。


鉄網「佐久さんがなぁ……」

下っ端「はい? リーダーが?」

鉄網「う、ううん! 何でも無いです! と、兎に角手塩さんに続きましょう!」アタフタ・・・


平然を装い、急いで手塩を追う。

実のところ今回の件、簡単に説明するとスポンサーの関係上、表立っての交渉が不可能になった。
この施設も所謂『裏(暗部)』寄りの施設。しかし……暗部といえど一枚岩ではない。
自分達の『ブロック』は警備員のタカ派と、理事会の中でも外務をこなす右寄り連中がメインスポンサーだ。

反対に此処のバックは保守派の貝継理事、法務の死刑反対派等穏健左寄りの連中がスポンサー。


鉄網「大人って、難しいなぁ……何で皆仲良くできないんだろぅ」ムゥ・・・

下っ端A(ヤベ! 鉄網さん、マジ可愛い……)

下っ端B(ちょ、オマエ、我らがゆるふわアイドル鉄網さんに馬鹿な事したら許さんぞ!)

下っ端C(男達は黙ってなさい! 鉄網ちゃんは手塩さまが主となった私達女組が守るのだから!)


一同妄想馬鹿丸出し。


手塩「……オマエら、さっさと準備しろ」ギロッ・・・

一同『い、イエスマム!』バタバタ・・・


まったく、佐久がいないだけでこれだけ緩み切るのか……現場チーフは嘆いた。


手塩「……閃光弾を、三発上げる。そしたら、嫌が応にも、彼らが声を出すだろう」

鉄網「声って、インターホンに? それとも扉から?」

手塩「さぁね。最悪、第7位が出てくるかもしれない」


一同、『第7位(超能力者)』という言葉を聞いて身を引き締めた。
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/25(水) 23:55:56.74 ID:SbtAefODO
鉄網って確か、腕吹っ飛んだ娘だよね?
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/05/26(木) 00:00:53.80 ID:GFFmUiQ30
>>224
正確には指が何本かとんだ描写だけ(しかも彼女の物とは明言されてない)
……にしても、本当に可愛いなここの鉄網は
226 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/26(木) 00:10:15.42 ID:V7ZwyPf30
鉄網「そ、その時は如何するんですか?」アタフタ・・・

手塩「別に、如何もしない」

下っ端「……え」

手塩「あの子の扱い方は、知ってる……厄介なのは、此処の所長。だから心配しないで」


そう言って、手塩は銃口を空に向けた。


手塩「鉄網は、安全な距離をとって。ゲートに2人、私の傍に4人、その他は鉄網と共に、距離を置きなさい」

一同『了解』ザッ・・・


全員が配置についたのを確認。その後……夜空に、3つの光が昇った。


手塩「鬼が出るか、悪魔が出るか……いや、彼はそれよりも、性質が悪いな」ジー・・・


即座、暗視ゴーグルに手を掛ける。見詰めるは塀の上。
インターホンなら問題無いが……F(バカ)が来るとしたら、高い所と分かり切っているからだ。


下っ端A「ち、チーフ!」ビクッ・・・

手塩「っ……大人しくしてろ。絶対に、手を出すなよ。銃を抜いたら、ヤツは牙を出すぞ」


一人の隊員が叫ぶ。そこには、やはりというべきか……ヤツがいた。


削板「……」ジー・・・


監視のつもりだろうか、何をするでもなく此方を見詰めている。


手塩「……インターホン。反応は?」チラッ・・・

下っ端B「今のところは何も」コクッ・・・

手塩「そうか。じゃあ、あの子に呼んでもらうしか、ないね」ジー・・・


そして、何を思ったか……


削板「……ん?」ピクッ・・・

一同『え』ギョッ・・・


手塩は塀の上の少年に向かって、手を振っていた。
227 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/26(木) 00:29:00.63 ID:V7ZwyPf30
下っ端C「ち、チーフ?!」ポカーン・・・

下っ端D「て、鉄網ちゃ……鉄網さん。何してるんですか、アレ?」ポカーン・・・

鉄網「わ、私に聞かれても……うーん」ムゥ・・・


ブンブンと大きく振る訳ではないが、知り合いに対して気軽に挨拶する様に手を上げている。


下っ端A「ち、チーフ!?」タラー・・・

手塩「黙ってて……今に喰い付くから」ボソッ


そう答えた刹那……少年は跳んだ。


一同『なぁっ!!?』ギョッ!?

手塩「……」ジー・・・


高さにして凡そ10階建ビル程はありそうな塀の上から平然と跳び下りる少年。
普通なら自殺行為だろう。だがしかし……彼はこの学園都市で屈指の『非常識』人間。


削板「ふ、んっ……よいしょっと!」ズシーン・・・・・

一同『』

手塩「ふむ。流石だね」ニコッ


この場で本人を除き、一人だけ平然としている手塩もまた、特別な人間なのかもしれない。


削板「んー……」テクテク・・・

下っ端B「はっ!」ビクッ!!

鉄網「て、手塩さんっ!!」ギョッ!

手塩「良いから、任せて……」チラッ・・・


この奇妙な集団のリーダーを、一人堂々とした態度でいる女性だと判断した少年は、彼女の方へ歩み出した。
対する手塩も周りに余計な手出しをするな、と目配せし憮然と彼を待つ。


削板「……うぃ」ピタッ

手塩「こんばんは」

削板「ん? おう、こんばんは。始めに挨拶するなんて先公みたいだな。あ、オレ学校行った事無ぇや」ニコッ

手塩「そう……良い夜ね。今日は、散歩に出ないのかな?」ニコッ

削板「お、おう。そんな日もあるさ……」アハハ・・・

手塩「そうなんだ。御月見とか?」

削板「え、まぁうん……何か絡み辛ぇな」タラー・・・


彼女のペース。伊達に教員免許は持っていない。
228 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/26(木) 01:07:22.76 ID:V7ZwyPf30
それから暫く他愛ない話を手塩は続けた。
それは普通過ぎる会話で、傍から見れば逆に変だと感じる話し合い。勿論、話相手の削板も十分違和感を感じている。

逆に、手塩は心中でシナリオ通りだねと苦笑していた。


手塩「……ところで、先生は?」

削板「え、あ、せ、先生ってのは?」

手塩「貴方の知る、先生は一人しか、居ないんじゃないかな?」

削板「ん……ああ、ジジイの事か。中に居る筈だぞ」


自然な流れで中の話に切り替わった。


手塩「忙しいの?」

削板「うーん、分かんねぇけど客が来てたぞ。グラサンとか忍者とか九つ子とか」

手塩「え、そう……ちょっとで良いから、呼んでもらえる?」

削板「おう、了解。ちょっと待ってろ」トンッ・・・


再び塀の方へ走り出す。そして……軽く一越え。


手塩「ふぅ……まったく、『原石』だからって、特別扱いし過ぎね。普通教育が、なってないわ」ハァ

鉄網「あ、あのぉ……手塩さーん」ゴニョゴニョ・・・

手塩「ん?」チラッ

鉄網「……いえ、やっぱり何でも無いです」アハハ・・・

手塩「そ」


この子も大概普通教育を受けてないのだろうな、と教師目線で鉄網の事を見てしまった。
逆に鉄網はアンタはカウンセラーか保育士の類ですか、と手塩に聞いてやりたかった。


手塩「とりあえず、次は私一人では、無理。皆にも、動いて貰うからね」

鉄網「わ、分かりました! 頑張ります!」ムンッ!

下っ端A「……チーフ。先程、第7位が『客』と言っていましたが、大丈夫でしょうか?」

手塩「分からない。だけど、穏便に済ませられる。私達は、戦闘をしに来た訳じゃ、ないよ……銃(コレ)は、あくまで、圧力程度だから」

下っ端B「は、はぁ」ポリポリ・・・


『ブロック』内で一番強いくせに、戦闘を好まない……エース。
リーダーの佐久には良く思われていない節があるが、鉄網や下っ端達からは慕われているチーフだった。
229 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/26(木) 01:41:18.20 ID:V7ZwyPf30
 ―――とある翌日、PM10:45、学園都市第12〜19学区、理事立大学付属病院・精神科(研究所兼刑務所)、ゲート裏……




削板「」チーン・・・


ずた襤褸になっている超能力者が一人。


神「オマエは相変わらずアホだな。行動する前に少しは考えろと言ってるだろう」ギロ・・・

山崎「しょ、所長……私が軍覇を捕まえられなかったのも悪かったので……その辺で」タラー・・・

神「……ふんっ」


塀を越えて、神の下までやってきた削板は気軽に『外でお客さんが待ってるよー』と報告してきた。
ヤツらの目的すら聞き出さないままノウノウ帰って来たガキには仕置きを……それがこの所長のポリシーである。

例えそれが何者であろうとも、だ。


神「……服部らは?」

山崎「服部くんだけは所長室で他の方々の指示を。他の方々は散り散りにポジションを固めたそうです」

神「ふむ……では後は綿流だけだな」


研究所の方を見遣る。今、倉庫で黒妻が装備を終えている頃だ。


削板「痛ぅ……ジジイ。ホントに無能力者かよ……」アダダ・・・

神「その括りが間違いだ。才能ある者はそれに過信する……俺はオマエに己を過信する様教育した覚えは無いが」

削板「いや、分かってるけどさぁ……アンタは異常なんだよ」ハァ・・・

神「まぁ素手で俺に勝てるのは最早とある女だけだろうな……今何処で何してるんだか知らんが」


バケモノの上にはまだバケモノが居るようだ。


神「……ん。来たか」チラッ・・・

削板「む? ……何だ?」ジー・・・


全身黒づくめの、駆動鎧の様な巨躯。顔は神々しい刺繍の入った白いマスクで隠れている。
【それ】はゆらりゆらりと削板達の方に歩み寄り、ピタリと止まった。
230 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/26(木) 01:59:01.91 ID:V7ZwyPf30
神「重いか?」

??「……まだ、身体が筋肉痛でね……まぁ問題無い」ジー・・・

削板「……ジジイ。コイツ誰だ?」ジー・・・

神「知る必要はない。例え分かっても口にするなよ? 瞬間、オマエの目玉を抉る」

削板「お、おぅ……」タラー・・・


ボロボロになっている超能力者を見る。
やはりこの神という男、タダモノではないらしい。


神「武器は?」

??「一応、テーザー銃(スタンガン)を借りた……これなら、殺傷力は無いだろう」

神「……山崎。そこの消火斧を」チラッ・・・

山崎「え、アレ非常時用ですよ?」

神「良いから寄越せ」


山崎は渋々緊急用の消火斧を取り外し神に渡す。
その後何かボソボソ告げられ、溜息をつきながら寮の宿舎へ引き返して行った。


神「コレを」スッ・・・

??「……如何しろと」

神「そんなモノより似合う。それだけだ……それに使い易かろう。今まで鉄パイプなどで暴れてきたのだろ?」

??「……分かった」パシッ・・・


斧を受け取る。重くもなく軽くもない、丁度良い重量。


神「では行くか……ところで、何と呼べば良い? 覆面をしているのだから『黒妻綿流』では拙いのだろう?」ジー・・・

削板「へ?! そいつ、ヤンキーの兄ちゃんなの?!」ギョッ!?

神「ぅ……黙ってろよ? 言ったら分かってるな?」タラー・・・

削板「いや、今ジジイが自爆ったんだろーが……あ、うん。分かりました。黙ってます」コクコク・・・


意外とお茶目だな、二人とも。


??「呼び名は……そうだな……―――」


【それ】は静かに『名』を告げる。
神はニヤリと笑い、削板の首根っこを掴んで外へ向かった。【それ】も後ろから、のらりくらりとゲートを潜った。
231 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/26(木) 02:16:17.57 ID:V7ZwyPf30
 ―――とある翌日、PM10:50、学園都市第12〜19学区、理事立大学付属病院・精神科(研究所兼刑務所)、メインゲート……




誰かが『ゲート、開きます!』と叫んだ。手塩や鉄網、他の隊員達一同、門に注目し身構える。
そこから2人の男と……【何か】が現れた。


手塩「……っ?」ジー・・・

鉄網「て、手塩さん……えっと、何ですかアレ……」タラー・・・

手塩「私に聞かれても、ね……とりあえず、鉄網は、私が合図するまで、隠れてなさい」チラッ・・・


色々とツッコミ所が満載だ。
まず超能力者がボロボロ。それを引っ張る様に歩いて来る傷顔男(スカーフェイス)。そして……正体不明の【何か】。


下っ端「チーフ。あの後ろの……最近話題になってる、カメラに移らない【仮面】じゃ……」ボソッ・・・

手塩「静かに……【正体不明】より、先頭を来た男の方が、厄介よ」

下っ端「……戦闘配備で?」

手塩「止めなさい。殺気を読む、男だから……後手に、ならざるを得ない。その時の、犠牲(リスク)は、覚悟しましょう」


彼をその気にさせたら、コミカルでは済まない。
手塩は息を飲み数歩前に進んだ。そして話しかける。なるべく悪い雰囲気にせぬ様、話をする。


手塩「こんばんは……その子、大丈夫なの?」ジー・・・

削板「大丈夫じゃねぇよ……耳千切れそうだった」ハァ・・・

神「喧しい。オマエは口開くな。舌を抜かれたいか?」ギロッ

削板「う、ぃ……」タラー・・・

神「ふん……俺の教え子はこの程度で屁垂れる甘ちゃんではない。貴様とて知ってるだろ」ジトー・・・

手塩「恐怖教育は、好かないのだけど……そうね。貴方は、そういう教え方しか、出来ないものね」ハァ・・・


周りは不思議な目で神と手塩を見る。まるで旧知の仲の様。


手塩「話をしたい、けど……先に」チラッ・・・

神「【それ】か?」ニヤッ・・・

手塩「……【それ】というか、【彼】なのかしら。貴方の、新しいオモチャか、何か?」

神「さぁな。俺にも分からん」ククク・・・


注目が【それ】に移った。
232 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/26(木) 02:47:28.72 ID:V7ZwyPf30
手塩「君……何と、呼べば良い?」ジー・・・

神「ほぉ。『君』とはねぇ。人扱いしてくれるらしぞ」ククク・・・

手塩「……人じゃ、ないの?」ムッ・・・


AI搭載の駆動鎧か、もしくは人間扱いされない『狂人』の一人か。
疑わしい眼で見詰められる【それ】は、静かに……名を告げた。


【駒場】「……―――駒場―――……だよ。手塩恵未」

手塩「っ!!?」ギョッ!?

神「キヒヒヒ……良い顔をするなぁ、恵未」ニヤニヤ・・・

手塩「じ、神さん! 貴方、まさか!?」ギロッ・・・

神「おっと、俺ぁ殆ど関与してないぞ。読心能力者に記憶読ませたって良い」ククク・・・


二重の驚き。二重の矛盾。

まず初対面である筈の自分を知っていた事。
そして今や『故人』である筈の……自分が見知った武装無能力集団(スキルアウト)の元リーダーの名前。


手塩「……っ」フゥ・・・


落ち着け。【コイツ】の正体については後だ。
多分『駒場利徳』の名を騙った知人、もしくは同じ境遇(暗部)の人間だろう。


手塩「率直に言う……話が、あります。どうしても、正式なアポイントが、取れないので、こういう形に。スイマセン」コクッ

神「ああ、分かってるさ。オマエらのバックアップは我々の後ろ盾と犬猿だからな……まぁオマエ個人が来てくれる分には歓迎だ」ニコッ

手塩「ありがとう。では……此処で、話をしても?」

神「いや、折角だ。積もる話もあるだろう……所長室へ来い。ただし5人、いや4人までだな」チラッ・・・


何やら匂う兵隊達を睨む。まるで猛禽類の様な眼光。
手塩は止むを得なしと、鉄網と他の部下2人を指名し、更に前へと進み出た。


【駒場】「……(小せぇな。香焼と最愛ちゃんくらいか? 那由他よか上っぽいけど)」ジー・・・

鉄網「て、手塩さん……何か見られてる気がしますよぅ」プルプル・・・

手塩「大丈夫だよ。それが【駒場】の名を使う以上、むやみやたらに、手は出さない筈……」ジー・・・


流石、スキルアウトが顔を利かせていた全盛期に、黄泉川さんと双頭で警備員のエースを務めていただけの事はある。


神「ククク……ところで恵未。武器チェックは必要かな?」

手塩「任せます。ですが貴方に……銃程度で、如何こう出来るとは、思ってませんけどね」ハハッ

神「ああ。盾(軍覇)が有るからな」ハハハ

手塩「酷い人だ……他の者は、待機しててくれ。一応、無線にはいつでも出られるように、しておく事。良いね?」

一同『了解です』ザッ

削板「ジジイ、いつかブッ飛ばす……」ブツブツ・・・


そして7人は塀の内側へと入って行った……―――
233 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました [saga]:2011/05/26(木) 02:55:17.92 ID:V7ZwyPf30
うい。今回は此処までです。中々進まんなぁ……

余談ですが15巻見直したんだけど暗部少女キャラって結構いるのね。心理定規も14,5歳くらいってのが驚き。
だけど個人的には魅力的な少年キャラが欲しいのよね……13,4くらいの。出て欲しいなぁ。

あ、次辺り『アフター』についてのアンケ取るかもしれないんで協力よろしくね!
んじゃまた次回! ノシ
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/26(木) 08:22:08.28 ID:ZIOuLPZDO
>>1


新約で新しい暗部出てきたんじゃないの?
よく知らないけど
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/26(木) 15:49:32.91 ID:Uy7fgpuDO
>>234
一応クーデター前って話だから、新入生についてはまだなんじゃね?

ところで‥‥鉄網ちゃんも香焼くんの餌食になるん? ww
236 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/26(木) 22:13:55.52 ID:V7ZwyPf30
こんばんわ、続きです。

暗部の少女達ですが、海鳥ちゃんとか素敵キャラですよねー。
香焼の餌食になるかどうかは、今後次第かなw

んじゃ投下!
237 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/26(木) 22:32:31.47 ID:V7ZwyPf30
 ―――とある翌日、PM11:00、学園都市第12〜19学区、理事立大学付属病院・精神科(研究所兼刑務所)、中央研究所所長室……




人気の無い施設内を7人は進んだ。
先導に所長と超能力者。間にブロックの4人。そしてそれを監視する様に後ろから【駒場】が続く。


下っ端A「……チーフ」ボソッ

手塩「今は、余計な事を、考えないで……成り行きで済ませられるなら、そうしよう」

鉄網「うぅ……何だか不気味な所だなぁ……」オドオド・・・

手塩「鉄網。今日は貴女が、要なの。我慢して頂戴」チラッ・・・

鉄網「うーん……」トボトボ・・・


鉄網という少女、場違いといえば場違いである。到底暗部には見えない短髪の少女。
手塩以下二名の大人とは違い、無理矢理軍服を着せられ歩かされている……その様にしか見えないのだ。

恐る恐る三人の後ろを進む少女。如何か何事も起きませんようにと願う刹那……


【駒場】「……」ポンッ・・・

鉄網「ひ、ひゃあああぁっ!!?」ビクッ!!?

一同『っ!?』ギョッ!


【仮面】が、頭に手を乗せた。
鉄網の絶叫に一同振り返る。そして同僚の3人はすかさず銃を構えた。


手塩「っ……何を」ギロッ・・・

【駒場】「……別に」ポンポンッ

鉄網「ふぇ、あわわぅ……」ビクビク・・・

下っ端A「しょ、所長さんよぉ! 何なんだこりゃぁ! 如何いうつもりだよ!!」ギロッ・・・

神「知るか。俺に聞くなよ」

下っ端B「聞くなって……アンタの部下だろ!?」

神「部下? 知らん。提供関係ではあるがな」ククク・・・

削板「え? マジ?」キョトン・・・

神「オマエは知らんでも良い」


一同に緊張が走る。そして【仮面】は……
238 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/26(木) 22:46:46.17 ID:V7ZwyPf30
【駒場】「……幼いな」ポンッ

鉄網「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え、ぁう??」ポカーン・・・

一同『……』ジー・・・


場違いな事を抜かした。


【駒場】「何かされると思ったか? ……それは、済まない事をした」コクッ

手塩「……」ジー・・・

【駒場】「多意は無い。気にしないでくれ」チラッ・・・

下っ端A「気にするなって、アンタ……鉄網さんに何かする気じゃ!」ギロッ・・・

手塩「分かった。神さん、行きましょう」スタッ

下っ端B「って、え?! て、手塩さん??」タラー・・・

神「……進もうか」コクッ


多くは語らず、二人が歩き出す。


鉄網「え、あ、うーん……」アタフタ・・・

手塩「鉄網。安心して。【それ】は『絶対』に、貴女に危害を、加えないから」スタスタ・・・

鉄網「あ、ぅー……」タラー・・・

削板「……変なのー」テクテク・・・

【駒場】「貴様にそれを言われたら、お終いだな……第7位」クスクス・・・


まるで緊張感が無い。いやFはまだしも、この【仮面】は鼻からそんなモノが無いのかもしれない。
下っ端二人は疑念を残しつつも、手塩の後を追う事にした。


鉄網「う、えっと……」チラッ・・・

【駒場】「……怖いか?」ポンッ

鉄網「え、そ、その……」ウー・・・


怖くない訳無いだろう。人間かどうかも定かではない【何か】に触れられているのだから。


【駒場】「そういう事ではなく……まぁいい。歩きながら、話そう」ポンッ

鉄網「は、はい……」コクン・・・


怖がるな……自分は読心能力者。相手を探る専門家だ。自分が探られる様な事があってはならないのだ。
そう強がりつつ、【仮面】に背中を押され先へ進んだ。
239 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/27(金) 00:39:29.81 ID:qBzmVqNj0
研究所内に入り廊下を進む間、『黒妻』は知り合いの警備員から言われた言葉を思い出した。

  『子供を撃つな。子供に銃を持たせるな』

今、まさに銃を持った子供(チャイルドソルジャー)が目の前に居る。
その子はまるで小動物の様に震えながら、只管暗い廊下を小さな歩幅で急いで進んでいた。


鉄網「もう11時……此処、電気つけないのかなぁ……」オドオド・・・

【駒場】「鉄網といったな……やはり、怖いか?」ボソッ

鉄網「え、い、いや……別にそういう訳じゃ……」アタフタ・・・

【駒場】「嘘が下手だな……」フッ・・・

鉄網「あ、ぅ……」ムゥ・・・

下っ端AB((鉄網ちゃん、可愛いなぁ))ムフフ・・・


普通で有れば、家で寝ている時間帯だろう。


【駒場】「安心しろ。オバケなんか、出ないぞ」クスッ

鉄網「そ、そんなオカルト染みたものに怯える程子供じゃありません!」ムンッ!

【駒場】「ふふっ……そうか。現代っ子だな」クスクス・・・

鉄網「んもぅ……」ムスー・・・

【駒場】「それとも、手塩恵未の方が怖いか?」ジー・・・

鉄網「……手塩さんは優しい人です。皆は苦手がりますけど、私はそう思いません」テクテク・・・

【駒場】「そうか……そうだな」クスリ・・・


暗部に居て尚、人望はある様だ。


手塩「……神さん」ボソッ

神「【アイツ】に関しては何も答えん。というか、本当に知らん」サラッ・・・

手塩「……そう」ムッ・・・


自分の知っている『駒場』に、類似し過ぎている。特にあの本当は温厚で優しい性格。


【駒場】「……君くらいの子供を、預かっていてな」ボソッ

鉄網「え」

【駒場】「色々問題のある子なのだが、良い子だよ」

鉄網「貴方……学校の先生か何かですか? それとも児童施設の関係者?」

【駒場】「それは楽しそうな仕事だ。だが、この容姿では無理だろう」

鉄網「ふふっ。そうですね……あ、でも動物感覚で人気になるかもしれませんよ。熊とか馬とか」クスッ

【駒場】「……きっと身が持たないな」ハハッ


嘘をつけ。そのガタイで何を言う……とツッコミたかったが押さえておいた。
240 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/27(金) 00:59:48.04 ID:qBzmVqNj0
【駒場】「ところで……君は此の仕事、長いのか」チラッ・・・

鉄網「え、別に……最近という訳でもないけど……如何してそんな事?」

【駒場】「いや……君くらいの年頃の少女は、意外と暗部に多いのでな……不思議に思うのはおかしいか?」

鉄網「……いえ。そう考えるのが当たり前かと」アハハ・・・

【駒場】「その判断が出来るのに……」フム・・・


その先は言わない。何故か仲の良い少女の事を思い出してしまったからだ。
この先を言えば……彼女に『卒業』を勧めてしまいかねない。今はまだ、それは早計。


神「……だそうだ。如何考える、警備員」ククク・・・

手塩「……」

神「まぁ俺が如何こう言えた立場じゃないか。軍覇を扱き使ってるしな」ハハハ

削板「自覚有るのかぃ……逆に性質悪ぃぞ、ジジイ」ジトー・・・

神「安心しろ。そう簡単に壊れやしない、そういう輩だろ」ククク

削板「あー僕はナイーブなんだよ。だから酷い事しないで欲しいなー(棒)」

手塩「……仲が、良いのだな」クスッ

削板「……姉ちゃん、目ぇ腐ってんじゃねぇの?」ウヘェ・・・


そうは言うものの、世界最高の『原石』に対してこれだけフレンドリーに近づく研究者も珍しい。率直な感想だ。


神「もう着く……あ、少し待て。中が汚ないのでな。ソファくらいは綺麗にしてくる」チラッ・・・

【駒場】「……急げよ。客人はあまり待たせるモノではない。(そういや、中に半蔵居たんだっけ?)」コクッ

手塩「気にしないで欲しい。客人と呼ばれる程、高尚な者ではないよ。私達は」ジー・・・

神「そう言うな。少しくらい待て……軍覇来い」グイッ

削板「ぐぇっ! す、少しは愛情をぉ!」ズルズル・・・


部屋の前に残された4人と【仮面】。


下っ端AB「「……」」チラッ・・・

【駒場】「……」ドドドド・・・


正直、気拙い。
241 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/27(金) 01:34:47.07 ID:qBzmVqNj0
鉄網「手塩さん……これから如何するんですか?」ボソッ

手塩「……」チラッ・・・

【駒場】「オレを気にするな。別に、告げ口などせん」

手塩「そう……とりあえず、私が交渉する。貴方の出番は、まだ先ね」

下っ端A「我々は?」

手塩「A(アーチ)は、鉄網の護衛を。B(ボーイ)は、外との連絡を取れる様、回線を保って」

下っ端B「了解です」


時間はある。なるべく穏便に行こう。


【駒場】「……流石だな。無駄な血は流さない。流したくない、と」

手塩「悪いかな?」チラッ・・・

【駒場】「いや、賛成する。手塩恵未」ククク・・・

手塩「……」フンッ

鉄網「……あのぉ」ジー・・・

手塩・【駒場】「「ん?」」ピクッ

鉄網「二人は、お知り合いで?」ジー・・・


純粋な質問。だが地雷。


手塩「……確証は無い。けど多分、知ってるかも」チラッ・・・

鉄網「ふぇ? かも?」ポカーン・・・

【駒場】「……ノーコメントだ」

手塩「鉄網。【この男】に関しては、貴女が知る必要、ないから」ニコッ

鉄網「……はい」ウーン・・・


幼い者ほど、好奇心は旺盛。止められれば止められるほど気にはなる。
しかしチーフの手塩が念を押すのだから、安易に詮索は止そう。覗く者はまた覗かれる。心理学の真理だ。

さておき『黒妻』は考える。
手塩と如何話をするべきか。この期を逸っしたら、もしかして二度と彼女と接触できなくなるやもしれない。
逆に手塩も悩む。
個人的な交友とはいえ『知人(死者)』の名を騙る【コイツ】を調べるべきだろうか。ただそれは、とても危うい事。


結局、この場では無言が続いてしまった。
242 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/27(金) 02:03:49.14 ID:qBzmVqNj0
 ―――一方、室内では……


半蔵「……あのさ、先に連絡してくれるなりなんなりあったんじゃねぇの?」ハァ・・・

神「仕方なかろう。他に場所が無い」

半蔵「いや、外で良いだろ! 何で態々此処連れてくんだよ!」

神「俺の研究所だ。何しようが勝手だろ」

半蔵「……頭痛ぇ」ハァ・・・

削板「ハハハ。ジジイに何言ったって無駄だぞ。根性ひん曲ってるからな」ケラケラ


その通りだ。コイツらには常識が通用しない。


半蔵「……とりあえず、ヤツらの目的は『原石』か『狂人』なんでしょう? 如何すんですか?」ジトー・・・

神「さぁ。話を聞いてからでないとな」

半蔵「こ、いつ……」プルプル・・・

神「とりあえず他の連中は隠れる様伝えておけ。特に土御門はヤツらと接触すべきではないだろう」

半蔵「言われなくてもそうしますっての……」カチカチ・・・


頭を掻きつつ、急いでメールを回す。そして最後に電話。


半蔵「もしもし。郭か」

郭『はいはい。何か』

半蔵「オマエは外の部隊の監視をしろ。それからスネークにこの室内を屋上から狙えるポイントに移動させろ」

郭『了解です……半蔵様は?』

半蔵「……俺は兄貴に付く。何かあったら拙いからな。兎角、頼んだ」Pi!


後はなるようになるしかないか……


半蔵「俺は天井に行く。アイツらとの交渉はアンタの勝手だが、兄貴に関しては他言無用でな」スッ・・・

神「大丈夫だ。心配は軍覇が口を滑らす事だけだろう」ククク・・・

削板「安心しろ! 俺の根性が口を強固にするぜ!」フフフ・・・


根性論ほど信用ならんモノは無いが、信じるしかあるまい。
半蔵はヤレヤレと音を立てずに物陰に消えて行った。
243 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました [saga]:2011/05/27(金) 02:04:45.00 ID:qBzmVqNj0
すんません。今日はもう寝ます。アンケは次回! ノシ
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/27(金) 07:06:55.53 ID:6ph5mtrDO
>>1
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/27(金) 07:52:06.70 ID:Sd+FfRtDO
乙ー
246 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/28(土) 22:30:29.23 ID:apZSxBHm0
こんばんは。続きです。
247 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/28(土) 22:54:04.63 ID:apZSxBHm0
 ―――とある翌日、PM11:20、学園都市第12〜19学区、理事立大学付属病院・精神科(研究所兼刑務所)、中央研究所所長室……





暫くして、所長が入れと外の5人を中へ呼んだ。多分中に居た半蔵を何処かに移動させたのだろう。
ブロックの4人の内、手塩と鉄網はソファに腰掛け、残る二人はその背後に立つ形となる。

所長は自分の椅子に、第7位は如何でも良さそうに窓の外を眺めている。
とりあえず、と【仮面】はドアの前に立ち彼らのやりとりを見遣る事にした。


神「さて……まずコーヒーでも出した方がいいかな?」

手塩「必要無い。手短に、用件を述べます」サラッ

神「相変わらずつまらない女だな、君は……それとも変な所で佐久に感化されたか?」ジトー・・・

手塩「彼は、関係ありません」

神「ふっ。まぁ良い。それで?」チラッ・・・


本題に入る様だ。


手塩「用件は、二つ……鉄網。資料を」チラッ・・・

鉄網「はい……ええっと、この二枚ですね」スッ

手塩「うん……神さん、これ」


所長は面倒臭そうに二枚の紙を受け取り、ヤレヤレと資料を眺めた。


神「どうも御丁寧に『原石』と『狂人』の話題か」ハァ・・・

手塩「まず『原石』から……貴方は『コイツ』を、知っていますか?」

神「ああ、知ってる」

手塩「この施設に?」

神「居る訳なかろう。オマエは馬鹿か?」ジトー・・・

手塩「……」ジー・・・


疑いの眼を向ける手塩。一体、どんな人物だ。


神「ったく……軍覇」チラッ・・・

削板「ん?」

神「『ホワイトプレイヤー』って『原石(貴様の仲間)』なんぞ、この施設に居ないよな」

削板「は? 誰それ?」ポカーン・・・

神「……ほらな」ニヤッ

手塩「……彼がそう言うのなら、本当なのね」ムゥ・・・


純粋馬鹿には嘘は付けないという基準らしい。
それよりも……『ホワイトプレイヤー』って何だ?
248 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/28(土) 23:18:14.31 ID:apZSxBHm0
神「居るかどうかも定かではない『原石』の事だ。『未来移動(タイムトラベル)』なんて馬鹿げた能力と言われている」

【駒場】「……随分とまた、SFチックな能力だな」タラー・・・

神「まぁ確かに誰もが欲しがる『原石』だが……何故コイツに拘っている?」チラッ・・・

手塩「さぁ。上(スポンサー)の指示よ。私が知る所では、ない」

神「だろうな。オマエ個人は『過去』の方が気になろう」ククク・・・

手塩「っ……」グッ・・・

神「『ホワイトプレイヤー』は『未来』への干渉だ。オマエの欲するモノではない」カチッ・・・フゥ・・・


まるで他人事。自分の世界に入ったかの様に煙草を吹かす。


神「それで、上には如何報告する? 居なかった、で済ますのか?」

手塩「……此処に居る『原石』のリストは、貰えませんか?」

神「馬鹿言うな。俺が貝継にネチネチ言われてしまうだろ」

手塩「では、一応読心を」ジー・・・

神「……構わないが、良いのか?」

手塩「……貴方では無く、第7位の方を」チラッ・・・

削板「え、俺?」ポカーン・・・

鉄網「て、手塩さん?」キョトン・・・


何故、所長に真偽を問わないのだ。


手塩「鉄網……貴女の能力は、凄い。正直に認める。だけど……それに反して、心が未熟」チラッ・・・

鉄網「うっ……分かってますよぅ……でも、仕事ですからキチンと」

手塩「私より『闇』が深い彼の心を、貴女が覗いたら……精神崩壊を起こしかねないよ」

鉄網「っ!!」ギョッ・・・

神「ハハハ、別に構わん。どうぞ覗いてみろ、俺の『運命』を」ククク・・・


『闇』とか『運命』とか、良い歳した大人が厨二病だと部下が困るだろう。
さておき、鉄網は手塩の指示通り第7位の読心をする事にしたらしい。


削板「あー、どうすりゃいいの? 握手だけ?」キョトン・・・

鉄網「ええ。余計な解析はしないので……貴方も余計な考えはしないで下さいね」グッ・・・

削板「おう」ジー・・・


数秒後……


鉄網「……分かり辛いけど、やはり嘘は無い様です」ウーン・・・

手塩「そう。分かった」

削板「あれ、もう終わり?」キョトン・・・

鉄網「貴方の心、ごじゃごじゃしてて分かり辛いんです。もう読みたくない」ハァ・・・


多分血液採取の時、血管見えないタイプの人間だな。
249 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/28(土) 23:55:47.24 ID:apZSxBHm0
手塩「……『原石』に関しては、以上です。ご協力感謝します」

神「ああ、それでもう一つは……ふーん」ジー・・・


先程渡された資料を再度見遣る。


手塩「先日、第23学区にて、違法な武器取引を、仕出かしていた者です。多分、君が捕まえたんじゃないかな」チラッ・・・

削板「俺が? うーん……色んな根性悪い奴等捕まえてっからなぁ」

手塩「資料を見れば、思い出すと思うよ」

削板「おう。ジジイ見せろ」チラッ・・・

神「ん」スッ・・・

削板「む……字が小せぇ」ハァ

神「相変わらず馬鹿野郎だな」フンッ…チラッ・・・


同レベルと言いたいのだろうが、コチラを見るな。


手塩「……『水鉄砲』の取引よ。覚えてない?」

削板「は? みずてっぽー?」ポカーン・・・

【駒場】「随分と、可愛いモノを取引するのだな」

神「……やはり、貴様も馬鹿だな。喋るな。ボロが出るぞ」ハァ・・・

【駒場】「……」ハァ・・・

手塩「ま、まぁ『水鉄砲』とは。名ばかりで、実際は『能力活用』武器の一つだよ」


能力活用武器。
確か、テレスティーナが使っていた駆動鎧に搭載されてる『疑似超電磁砲(ニア・レールガン)』も、それだったな。


手塩「水流使い、水質操作、水圧変化……水力系能力(チカラ)を集約した銃剣だ」

鉄網「ウォーターカッターとか、超水圧弾とか……そんなのです」

削板「ああ! 居たなぁ、そんな連中! ベルト切られてパンツ一丁のまま戦ったぞ、うん」

下っ端A(いや、普通腹真っ二つだぞ)タラー・・・

下っ端B(アイツに常識望むなっつの)ハァ・・・


……兎角、優れた能力はいつの時代も戦場で利用される様だ。
ノーベル大先生涙目だぜ。
250 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/29(日) 00:42:56.56 ID:JOCPNvNu0
神「それで……確か元外交理事だった男だな。政治犯として精神病患者扱い(収容)されてる」

手塩「はい」

神「そいつを如何したいんだ?」

手塩「出来れば、引き渡しを。とある上(スポンサー)の、元部下らしいので、自分で『ケジメ』を……との事です」

神「バックスポンサーの話を出すなよ。その話は頭が痛くなる……」ハァ・・・


そういえば麦野さんが『誰』にかは分からないけど、偶に電話でヘコヘコしてるのを見た事が有る。
暗部といっても組織だ。一筋縄ではいかないのだろうな。


土御門『そういう事だぜぃ!』Pi!

【駒場】「っ!!?」ギョッ!


突如聞こえた【道化】の声。


土御門『心配すんな。マスクの裏っ側に通信機を付けてる』

【駒場】「……」タラー・・・

土御門『音漏れは気にしなくて良い。ただアンタは喋るなよ? 左耳を塞いで、念じる様に心で話してみろ』

【駒場】(……こうか?)

土御門『そうそう! 良く出来ましたー』フフフ!


凄いな。これも能力活用か?


土御門『うーん……魔力を使わない魔術(マジック)ってヤツ?』

【駒場】「は?」ポカーン・・・

一同『ん?』チラッ・・・

土御門『こら馬鹿! 声出すな!』アニャニャニャ・・・

【駒場】「……んんっ。すまん、煙草を喫ってくる」コホンッ・・・テクテク・・・

神「……別に此処で喫っても構わんぞ」ジー・・・

【駒場】「子供が居る場では、喫わん。外に出る」

鉄網「え、あ……すいません」ジー・・・

手塩「……駒場、か」クスッ


逃げる様に一旦外に出た。


土御門『バーカ』クスクス・・・


五月蠅ぇ。手前の所為だ、アホ。
251 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/29(日) 01:10:29.84 ID:JOCPNvNu0
  ――引き続き、所長室内部……



手塩「……続けます。確かに、此処の『狂人』を、勝手に外に出しては、色々と問題でしょう」

神「分かっているなら始めから諦めて欲しいな」

手塩「ですので、尋問を任せて貰いたい」

神「……尋問?」ジー・・・


この施設に収容されている『狂人』は皆、ある程度の秘密は持っている。
特に政治犯ともなれば尚更だ。


神「……何を聞き出したい。場合によっては俺がしておくぞ?」

手塩「貴方に任せたら、大事になるでしょ……鉄網に、任せるつもりでした」チラッ・・・

神「読心、か。まぁ内容によるぞ」

手塩「先程述べた『水鉄砲』の隠し場と、援助を受けていた結社の、聞き出しです」

神「その程度の事か……何故事前に調べられん? その程度容易かろう?」


するとブロックの一同は苦そうな顔をして、第7位と所長の顔を交互に見た。


手塩「基本、削板軍覇が捕まえた犯罪者は、此処に収容される」

削板「ああ。ジジイが連れて来いって言うからな」

手塩「しかし、そうなると……他が中々介入できない。特に暗部は、『新入生』のスカウトの場を失う所か、機密の尋問さえも出来ない」

神「まぁな。俺は暗部という形が嫌いだ。堂々と悪い事しやがれ」ハハハ

手塩「……暗部は、必要悪なのです。貴方だって、分かる道理でしょう」

神「必要悪だぁ? ……逃げ口上だろ。汚れ仕事の」フンッ


白でなければ黒。灰色もまた黒なのだ。


神「もし知りたかったら『警備員』として正式に取り調べ証を持って来い。それとも、表立っては拙いのか?」ニヤッ・・・

手塩「……」タラー・・・

鉄網「て、手塩さん……」チラッ・・・

削板「やっぱり、良い根性してんよ……可哀想になってくるぜ」ハァ・・・

神「喧しい。裏でこそこそしてるヤツらの言葉など、耳に入れる必要は無い。俺の信条だ」


天井に隠れている半蔵は内心ドキッとした。
252 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/29(日) 01:45:20.29 ID:JOCPNvNu0
手塩は悩む。
上からは強行してでも情報を聞き出して来いと、命令されていた。
しかし正直この程度の任務で強行突破はしたくないし、何より目の前のバケモノ二人に牙を剥きたくない。

次の手を考えようとした時……部屋のドアが開いた。


【駒場】「……失礼」ガチャッ

手塩「……」チラッ・・・

【駒場】「小難しい話は終わったか?」

神「いや、余計難しくなりそうだよ。スポンサー様々の関係でね」クスクス・・・

【駒場】「下らない」ジトー・・・


一同同意。


神「……そうだな。ではこういうのは如何だ?」チラッ・・・

手塩「え」キョトン・・・


いきなりの提案。更なる驚愕。


神「【ソイツ】はある種、公の存在であり裏の存在でもある。謂わば俺承認済みの暗部役だ」ニヤッ・・・

【駒場】「……は? (そうなの?)」

土御門『知らん。だけど話合わせとけ』

手塩「……それが、何か?」

神「【ソイツ】を通せ。公的な取り調べとしてな。それなら構わん」ニヤリ・・・


それは公的とは言わないぞ。


手塩「如何いう、意味だ」

神「【ソイツ】にメリットがあれば、動いてくれる。例えば……その外交理事によって無能力者が何らかの犠牲になった、とか」

手塩「……」ジー・・・


成程。そのついでと言っては何だが、武器の在り処と協力関係にあった結社を聞き出せという訳か。


手塩「『狩り』は知っているな……ヤツは、ある『狩り団体』の主催者に、武器を流していた……という噂が有る」ボソッ

神「ほぉ……十分だ」ニヤッ・・・

手塩「あくまで噂、だぞ……『水鉄砲』の様なモノではないが、普通の銃器をだ」

神「……だそうだぞ。【駒場利徳】」チラッ・・・


何だか信憑性の低い話だが……要は話に乗れという事だろう。


土御門『ああ。それにその話が真なら新たな情報ゲットだし、手塩らに貸しを作れる……乗っても良いぞ』

【駒場】(半蔵は?)

土御門『……多分、センセの意志に任せるだろう』


そんじゃあ、乗るっきゃないか。
253 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/29(日) 02:46:46.17 ID:JOCPNvNu0
【駒場】「……所長」

神「ん?」

【駒場】「少しでも『狩り』に関する手掛かりが有るのであれば……オレは動くぞ」チラッ・・・

神「……だそうだ」ククク・・・


『狩り』……要は無能力者を狩るゲームの略称だ。
心許無い能力者が暇潰し感覚で始めたこれ等が、今や裏の社会問題にまで発展している。

性質悪いのは、その遊びに大人がスポンサーとして付きだした事。


手塩「……では、頼めるか」ジー・・・

【駒場】「オマエらのはあくまで、ついでだ……構わんな?」

手塩「ええ」コクッ

【駒場】「因みに、手塩恵未。そこの少女を借りても構わないのか」

手塩「鉄網を?」

【駒場】「読心能力者なのだろう? ヤツから事の真偽を聞き出したい」

鉄網「え、えっと……」オドオド・・・


所長の方を見遣る。


神「……好きにしろ。ただし武器は預かる。良いな?」

手塩「はい、感謝します」コクッ

【駒場】(……っつー感じで良いか?)Pi!

土御門『ま、上手くやれ。でも如何すんだ? マジで尋問すんのかにゃ?』

【駒場】(基本は鉄網ちゃんに任せるよ。だがもし……『狩り』に関して、マジで情報持ってたら……)

土御門『……任せた』Pi!


場合によっては……な。


神「では行こうか。もう夜も遅い……軍覇。山崎を呼んで来い。病棟に移る」スタッ

削板「もう眠いんだけど……」ムゥ・・・

神「あ?」ギロッ・・・

削板「……うぃ」テクテク・・・


トボトボと部屋を出る第7位に続き、一同は外に出た。
254 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました [saga]:2011/05/29(日) 03:23:04.10 ID:JOCPNvNu0
うい。全然進まん……とりあえず今日は此処まで。次回で追われる様頑張る。
あと、もっと早い時間に書きたい。んでアンケートもしっかりしたい。

てなところで、ばーい。ノシ
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/29(日) 11:10:53.49 ID:WOIYGB9DO
>>1
256 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/31(火) 22:24:36.89 ID:6OUMuH5Y0
ばんわ。少しだけど投下します。
257 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/31(火) 22:47:38.72 ID:6OUMuH5Y0
 ―――とある翌日、PM11:40、学園都市第12〜19学区、理事立大学付属病院・精神科(研究所兼刑務所)、西・精神病棟……




研究所を出て数分、西側の別棟に移る。
先程の『原石』の研究施設とは打って変わって、物々しい雰囲気の建物。


手塩「……病院の、何処に向かうの?」チラッ

神「カウンセリングルーム……要は取調室だな。そこを使う」テクテク・・・

鉄網「病院なのに、取り調べ。物騒ですね」ムゥ・・・

神「病院なんてのは名ばかりだ。知っての通り、実際は頭のネジがブっ飛んだ連中の監獄だよ」フンッ


能力者の様に頭を弄られて無いのに、キチガイ染みてる連中だと鼻で笑った。


土御門『もしもーし。気を付けろよー』Pi!

【駒場】「……」テクテク・・・

土御門『さっきアッチの病棟は見学したが、所詮建物見学だ。「狂人」を見て回った訳じゃねぇ』

【駒場】(分かってる。個人的には手塩さんの動向の方が怖い)

土御門『まぁそっちはショチョーさんに任せとけ。因みに、服部から連絡の連絡だが配置変えしたって』


半蔵は【仮面】を追尾。土御門は病棟へ先回り。郭ちゃんと海原が東・研究所で『原石』の護衛。
そして御坂妹ちゃん二人は塀の外の兵隊達の監視に移動、との事。


【駒場】(監視必要か?)

土御門『手塩恵未の動きに注意するんだろ? 今怖いのはヤツ個人より外で待機している2個小隊だぜぃ』

【駒場】(……スネークちゃんと春子ちゃんだけで大丈夫なのか?)

土御門『まぁ妹達の中でもズバ抜けてるのが一人居るからにゃ。心配すんな。指揮は服部がちゃんと出してるっぽい』


相変わらず現場に出たがらない男だ……土御門も半蔵も。


神「そろそろ着くぞ。規則で手錠を付けられないから、俺と軍覇がヤツを連れてくる。待機室で待ってろ」

削板「えー。俺も行くのか? 地下牢の方?」ジトー・・・

神「グチグチ抜かすな……恵未。余計な場所へ行くなよ。【駒場利徳】、キチンと監視しておけ」テクテク・・・


念を押すように告げる。そして5人を待機室へ案内した後、2人は地下の方へ降りて行った。
258 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/31(火) 23:18:36.31 ID:6OUMuH5Y0
 ―――一方、メインゲート屋上・・・・・



御坂蛇「……やれやれ、物騒だ。とミサカは下の兵隊どもを観察します」ジー・・・

御坂春「17600号。何ですか、その銃……とても羨ましいんですけど。とミサカは羨望の眼で貴女の銃を見詰めます」ジー・・・

御坂蛇「ふふふ、良くぞ聞いた……AR-15カスタム……『パトリオット』です! とミサカは誇らしげにゲッチュした銃を自慢します」ドヤッ!

御坂春「ちょ、私達にはF2000R(トイソルジャー)という新世代ライフル渡されてるでしょ! ミサカは勝手な新装備を手に入れてる貴女に――」

御坂蛇「はいはい。嫉妬の眼は苦しいです、14510号。これは私の実力(※嘘)で手に入れたモノ。とミサカは立て続けにドヤ顔します」フフフ・・・

御坂春「――ぐ、ぬぬぅ……」

御坂蛇「悔しければ愛しの『彼』にでもオネダリしてみれば如何です? とミサカは少々意地悪な言葉をぶつけてやります」ニヤッ・・・

御坂春「」ブチッ・・・

御坂蛇「まぁ冗談はさておき……私達の帰りのバンが荒されない様、監視を―――っ!!?」ギョッ・・・

御坂春「……」カシャッ!

御坂蛇「……14510、号?」タラー・・・

御坂春「……MNW内に、その銃の写真流します」ジー・・・

御坂蛇「な……待て! わ、私が悪かった! だからコレは私達だけの秘密に――って、ぎゃあぁっ!! クレクレ厨共黙れえぇっ!!」ギャー!

御坂春「すねぇーくぅ……今のはミリヲタ板です……次は速報板に流しますよ? とミサカは貴女を脅します」ニヤリ・・・

御坂蛇「ば、馬鹿な真似は止めて……運営にばれたら、色々と面倒な事に……」ハラハラ・・・

御坂春「では……如何すれば良いか、分かりますよね?」フフフ・・・

御坂蛇「ぐっ……ぱ、パトリオットは渡せませんが、所長に貴女専用の銃を注文してあげます……これで良いですね?」グヌヌ・・・

御坂春「OKOK! 演算機能付きの対物ライフルでよろしくー!」ウッシ!

御坂蛇「チッ。自分で頼めよ……その前に、先程の写真は釣りでしたと宣言してください。とミサカは懇願します」ジトー・・・

御坂春「はいはい……って、あ」タラー・・・

御坂蛇「……如何しました?」ジー・・・

御坂春「……てへぺろっ☆」エヘッ♪

御坂蛇「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!!? 速報に載ってる!!?」ギョッ!?

御坂春「あー……12345号が告げ口したみたいだね……とミサカは……げ!? やっぱり運営にもばれてーら」アハハ・・・

御坂蛇「あ、の……腐れジェバンニ娘えええぇっ!! いや、その前に貴様だ! 春子!!」ガアアァッ!!

御坂春「きゃあああああぁっ!!」イヤアアアァッ!!






ブロック兵s『……何アレ?』ポカーン・・・
259 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/05/31(火) 23:46:47.66 ID:6OUMuH5Y0
 ――再び、待機室・・・・・



さて、そろそろ元外交担当の理事さんがお出ましする。


手塩「……」チラッ

【駒場】「……何か?」

手塩「……ホントに、任せて良いの?」ジー・・・

【駒場】「信用ならんか」

手塩「そういう訳じゃない、けど……」


あからさまな演技をしてまで付き合ってくれるオレへの不信、というより不安か。
何か裏が有るのではないかと思っているのだろう。


【駒場】「……オレに対する信用云々は知らんが、オレはアンタをそれなりに信用している。それでは不服か?」

手塩「……貴方、本当に『駒場』なの?」

【駒場】「さぁな。だが志は今も昔も『駒場利徳』だよ」

手塩「……分からない」ハァ


そりゃ分かられたら困る。


下っ端A「……チーフ。さっきから気になってたんですが『駒場』って名前、何処かで」ジー・・・

手塩「調べれば出てくる。ある筋では、かなりの有名人」

下っ端B「有名人……凄い能力者とかですか?」

手塩「……無能力者」

鉄網「む、無能力者なのに有名人なんですか?」

手塩「一時期、最大勢力を誇った、武装無能力者集団の、頭……でも、故人の筈」

鉄網・下っ端AB「「「っ!!?」」」ギョッ・・・


それを言ったら『黒妻綿流』も故人の筈なんだけど。


【駒場】「生死など些細な事……目的や志が生きてれば、問題無い」

手塩「力無き者達の、代弁者。そう言いたい訳?」

【駒場】「そこまで大袈裟なモノではない。それを為すとしたら……真の大人足る、貴女や黄泉川愛穂の様な警備員だと、オレは考える」

手塩「過大評価よ……愛穂には、出来るかもしれないけど、私には……」ムゥ・・・


そこで言葉が止まる。そして所長が来るまで、誰も口を開かなかった。
260 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/01(水) 02:40:10.08 ID:x8oUuAvt0
神「……準備が出来た」ガチャッ・・・


面倒臭そうな表情で所長が戻ってきた。


【駒場】「……どういう形式で面会すれば良い?」

神「特に形式など無い。【オマエ】と読心能力者の嬢ちゃんだけ部屋に入る。それでいいだろ」

鉄網「え、あの……理事の方は?」

神「机に座って待ってるよ。どうも眠いとこ無理矢理起こしたようで機嫌が悪い様だがね……気にするな。ヤツに人権など無い」


勧善懲悪主義か。


神「入口には軍覇を置く。何かあればヤツが黙らせるだろう。安心して質問なり尋問なりするがいい」

【駒場】「……分かった。行くぞ」テクテク・・・

鉄網「あ、は、はい!」ドキドキ・・・

手塩「……利徳」ボソッ

【駒場】「……」チラッ・・・

手塩「最悪、その子を守ってくれ……頼む」ジー・・・

鉄網「て、手塩さん!?」ギョッ・・・


やはり……この人は、この人か。


【駒場】「……」コクン・・・テクテク・・・

手塩「ありがとう。よろしく頼む」ペコッ

下っ端AB「「……」」ペコッ・・・

神「……ふっ」ククク・・・

手塩「……何か?」チラッ

神「いやぁ、なぁに……どうして心持は同じでも、こうまで境遇が違うのかと嘆かわしくなってな」ククク・・・

手塩「っ……私と、愛穂を比べないで……彼女に失礼よ」

神「そうかいそうかい」ククク・・・


やっぱり……アンタも大人なんだよ。手塩恵未(警備員)。
261 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/01(水) 02:57:17.83 ID:x8oUuAvt0
 ―――翌々日、PM00:00、第12〜19学区、理事立大学付属病院・精神科(研究所兼刑務所)、西・精神病棟、カウンセリングルーム……




所長、他3名は部屋の外からカメラでオレらの遣り取りを視るらしい。

さて……いざ部屋に入る前、第7位に声を掛けられた。ヤツは力はそう無いが『大人』として歪んでいる、と。
【仮面】は頷き、少女と共に部屋に入った。

中に居たのは……何処にでも居そうな、小太り白髪の容姿をした中年男性。
名前は何やらややこしかったので、元外交官とでも呼んでおこう。


【駒場】「……」テクテク・・・

鉄網「こ、こんばんは」コクッ

元外交官「こんばんはも糞も無いだろう……何時だと思ってる?」ジトー・・・


気味の悪い甲高い声。


元外交官「取り調べだか何だか知らんが、睡眠時間くらいは保証して貰いたいものだな」

鉄網「す、すいません……」シュン・・・

【駒場】「だったら、嘘をつかずに全てに答えろ。嘘の分だけ長引くぞ」

元外交官「……何だ、貴様は? マスクでの審問官など今時笑いモノだぞ?」ハハハ

【駒場】「減らず口を叩いてもやる事は変わらん。黙ってろ」


低い声で、威圧を掛ける。
それから少女を席に着かせ、【仮面】は質問を始めた。


【駒場】「早速始めるぞ……」

元外交官「黙秘権は?」

【駒場】「有ると思うか?」

元外交官「……」

【駒場】「嘘をついても無駄だぞ。この子は読心能力者だ」

鉄網「は、はい」コクッ・・・

元外交官「チッ……何だ」フンッ・・・


では最初の質問……まずはこの子達の用事から済ませる。
262 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/01(水) 03:12:38.74 ID:x8oUuAvt0
【駒場】「まず……『水鉄砲』。それの在庫を何処に隠した?」

元外交官「……さて、何処だったかね」フム・・・

【駒場】「嘘は、無駄だぞ」

元外交官「嘘など付いていないだろう。少々物忘れが酷くてねぇ」クスッ


詭弁を。


【駒場】「……鉄網」チラッ

鉄網「え、えっと……その……」タラー・・・

【駒場】「……何だ?」ム?


耳を貸してと呟かれる。


鉄網「実は……私の能力、応用利かなくて……」

【駒場】「ん?」

鉄網「相手の手を握らないと……」ムゥ・・・

【駒場】「……分かった」コクッ


簡単に説明を受け、それを伝える。


【駒場】「すまない。待たせた」

元外交官「おいおい。そのお嬢さん、使い物になるのかね? 先程から怯えてばかりじゃないか?」

【駒場】「汚職塗れの貴様よりはずっと優秀だ。御託は良いから続けるぞ」

元外交官「はいはい」ハァ・・・

【駒場】「……じゃあ手を出せ」

元外交官「は?」

【駒場】「手だ」


戸惑う中年男。


元外交官「……ほら」スッ・・・

鉄網「あ、はい……続けて」ピタッ

元外交官「おやおや。若いお嬢さんの手に触れられるなんて、オジさんとしては嬉しい限りだねぇ」フフフ・・・

鉄網「っ!」ビクッ・・・

【駒場】「余計な事を言うな。次馬鹿の事を言ったら、タダじゃ済まんぞ」

元外交官「はいはい。それではそれでは」フフッ
263 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/01(水) 03:30:48.23 ID:x8oUuAvt0
【駒場】「まず『水鉄砲』を何処に隠した?」

元外交官「……何処、という言葉では表せんな」フンッ

【駒場】「……曖昧な表現をするな」

元外交官「いやいや、本当本当」コクコクッ


これでは心を読めない。少女も困っている。


【駒場】「痛い目見なければ、分からんか」スッ・・・

元外交官「っ!? ま、待て! 何も嘘は言っとらん!」アタフタ・・・

【駒場】「では如何いう事だ」グッ・・・


中年の小指を握り、机と直角程に曲げてやる。


元外交官「っ!! ち、散らせた! だから正直分からんのだ!」

【駒場】「散らせた? では在庫数は?」

元外交官「わ、私の知る限りでは50は有った……だが正直現状は知らん! 量産されていれば最早一人歩きだ!」アタフタ・・・

【駒場】「……」チラッ

鉄網「……嘘では無い様です」


成程、性質が悪い。


【駒場】「では協力者、援助を受けていた結社が居るな」

元外交官「そ、それは……っ……」ゴクッ・・・

【駒場】「都市内部、か? それとも外部か?」

元外交官「……知れば、後悔するぞ」ギリッ・・・

【駒場】「……分かった」フンッ

鉄網「え、な……」


簡単な話だ。コイツは我々を都市の人間だと分かっている。しかも暗部の類と。
つまり、そういう手合いに後悔の念を抱かせる様な協力者……


鉄網「……り、理事会」タラー・・・

【駒場】「しかし……理事会(供給する側)が有れば、相手(需要ある側)も居る。国内か? 海外か?」

元外交官「……私の身の安全は絶対だな?」

【駒場】「あの所長と第7位の監視下より安全な場所が有るか?」

元外交官「……―――」


ベラベラと語り出す中年男。鉄網の顔を見るに、嘘偽りなく吐露している様だ。
成程、第7位が言った通り大した器の男では無いな。
264 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/01(水) 03:47:29.09 ID:x8oUuAvt0
 *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *



手塩「……」ムゥ・・・

下っ端A「ち、チーフ……上が別理事の指示だったとあれば、我々には如何にも……」

手塩「仕方ない。佐久にそのまま、伝えるしかないね」

下っ端B「在庫の回収も我々だけでは不可能です」ハァ・・・

手塩「……頭が痛くなる」ポリポリ・・・

神「ふんっ。一枚岩ではない暗部の弱点だな。別理事が関与してるとなると即座には動けん」

手塩「それは、貴方も同じでしょう」

神「何を言う。俺は何時でも勝手に動くぞ? その気になれば軍覇と一緒に『原石』達と外へ逃げてやっても良い」ククク・・・

手塩「……喰えない人だ」



 *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *



ある程度の暴露が終わり、一段落つく。
鉄網が何やらメモをこなす最中、中年男は嫌な汗を流していた。


元外交官「しょ、所詮私は『水鉄砲』の管理を任されていたに過ぎないんだ……今回だってあのFに邪魔されなければ『公務』として――」

【駒場】「では何故、統括理事が助けに来ない?」

元外交官「――そ、それは……まだ、タイミングが……」

【駒場】「貴様が別に『何か』をやらかしてたからだろう。捨駒には持って来いだったという訳だ」フンッ

元外交官「ぐっ……」ダラダラ・・・


それ相応の結果だ。悪い事をすればタダでは済まない。


【駒場】「……安心しろ。命の保証はしてもらえる。此処はそういう施設だ」

元外交官「……親船や貝継の様な穏健派など」

【駒場】「しかしヤツらの御蔭で暗部の粛清班から『制裁』を受けてない……違うか?」

元外交官「っ」

鉄網「こ、『駒場』さん……そろそろ」チラッ


余計な喋りが過ぎた。自分の質問へ移ろう。
265 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/01(水) 04:05:29.17 ID:x8oUuAvt0
【駒場】「さて、では……『狩り』について。知っているか?」

元外交官「狩、り?」

【駒場】「無能力者狩り……元理事役員であれば、聞いた事くらいあろう」


次の瞬間……中年の顔が一転した。


元外交官「ああ! あの会員制クラブだな!」コクン!

【駒場】「会員制?」ピタッ・・・

元外交官「ん? 何だ、知ってて聞いたんじゃないのか?」

【駒場】「……詳細を教えろ」グイッ

元外交官「ちょ、ま、待て待て……何故そんな事を聞く?」タラー・・・


確かに、先の質問とは打って変わり過ぎだろう。だが……拒否権は無い。


元外交官「あ、アレに関しては私も会員だっただけで特に関与はしとらんぞ」コクンッ

【駒場】「……貴様も参加者だったのか?」チラッ

鉄網「で、でもこの人は能力者じゃないタダの役員ですよ」タラー・・・

元外交官「別に私が直接『狩り』を楽しんでいた訳ではない。あくまで一、スポンサーみたいなものだからな」

【駒場】「……加担するメリットは何だ」ギリッ・・・

元外交官「め、メリットだなんて……ただ催しだったり賭け事だったり、『商品』が素晴らしいから参加してるだけに決まってる」


何だ、それ。


元外交官「金に困って自ら催し物になった無能力者が何分間逃げられるか、とか。偶に能力者同士でのデスマッチもあったなぁ」クスクス・・・


成程……やはりコイツも『狂人』だ。


鉄網「もしかして……貴方は、その会に『水鉄砲』を提供した事あるんじゃ」ジトー・・・

元外交官「んー……そういえば、3丁程……あ、だがしかし私の金で貸したモノだから理事会的に何も問題は―――」


 
 グキッ・・・・・


鉄網「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え」ピタッ・・・

元外交官「ぎ、あ、ああああああああああああああああああああああぁっ!!?」ガタンッ!!


……我慢できなかった。
266 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/01(水) 04:18:02.34 ID:x8oUuAvt0
 *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *



神「理事会に見捨てられた理由……それが原因だろうな」

手塩「……良いの? 怪我したみたいよ」

神「別に構わん。人権など無い」

手塩「……」

神「それに……オマエだって、殴っていただろう? なぁ」ククク・・・

手塩「……多分ね」ジー・・・



 *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *



小指を折られ、椅子から転げ降りる中年男。


元外交官「ひ、ぁ……ふざける、な……こ、これじゃ拷問だぞ……っ……」ガタガタ・・・

【駒場】「鼻から、そのつもりだったよ……鉄網」チラッ

鉄網「は、はぃ!」ビクッ・・・

【駒場】「……戻って良いよ。後は一人でやる」

鉄網「で、でも……」オドオド・・・

【駒場】「大丈夫だ。コイツはもう嘘は付けん……な?」グイッ

元外交官「ひぃっ……」コクコク・・・


恐怖。


【駒場】「さて……『狩り』の会員制とやらについて、だ」ゴンッ・・・

元外交官「わ、分かった! 分かったから手を離せ! お、おい嬢ちゃん! 行くな! 助けて!」ガタッ・・・

鉄網「ひぁっ」ビクッ・・・

【駒場】「逃げるな」ガンッ!!

元外交官「ぶっ!」ゴンッ!


少女は、逃げる様に部屋を去った……これで良い。



【駒場】「さぁ……洗い浚い、答えて貰うぞ……憎たらしい大人。心許無い権力者!」グイッ・・・



正義という名の恐怖を振り翳す―――
267 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました [saga]:2011/06/01(水) 04:18:59.74 ID:x8oUuAvt0
うい。此処まで。おやすみ。
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/01(水) 09:30:01.50 ID:I87hzgQDO
乙。
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/01(水) 09:30:36.46 ID:cnh/vQGDO
>>1

正直に話してる最中に拷問かけると隅々まで話さなくなるんじゃ…
270 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/01(水) 21:41:59.62 ID:x8oUuAvt0
こんばんは。続きっす。

>>269・・・兄貴は別にプロの尋問官じゃないです。ましてや元不良ですし沸点低い系だったり……まぁ色々とねw

んじゃ、投下!
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/01(水) 21:47:59.87 ID:cnh/vQGDO
>>270
たしかにwww

今日は早いね
支援
272 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/01(水) 22:20:07.72 ID:x8oUuAvt0
 ―――翌々日、PM00:30、第12〜19学区、理事立大学付属病院・精神科(研究所兼刑務所)、西・精神病棟、待機室……




神「……あの馬鹿」ハァ・・・

手塩・下っ端AB「「「……」」」タラー・・・


カウンセリングという名の尋問室で繰り広げられている暴力行為。
モニタリングが付いている外の待機室で、4人は言葉を無くしていた。


下っ端A「あれ……アイツ、聞きたい事聞き出せてないんじゃ……」タラー・・・

手塩「……」ジー・・・

下っ端B「……あ、鉄網さん戻ってきた」チラッ


ドンヨリと、何とも言えない表情で戻ってきた少女。


手塩「大丈夫?」チラッ

鉄網「……はい」コクン・・・

手塩「少し休んでなさい……神さん、何処か座らせてあげたいんだけど」

神「奥のソファでも使え」

鉄網「すいません」テクテク・・・


やつれた顔の少女に水筒を渡す。


神「……あのガキ、無理矢理暗部に入れられた口か」フンッ

下っ端A「好きで暗部に入る輩なんて3割居るかいないかだろ」

神「まぁその鼻からっつうか、根っからっつぅか……暗部になるべくして成るヤツが『狂人』なんだ」


有名どころでは『木原』の一族とか。


神「貴様らのリーダー(佐久)もそれに近い気はするがな」フッ・・・

下っ端B「……」アハハ・・・

神「否定しないか。正直で何よりだ」ククク・・・


多分、アンタも狂ってますよ……とは言えなかった。
273 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/01(水) 22:55:35.10 ID:x8oUuAvt0
手塩「暫く休んでて良いよ。貴女は十分、仕事した」ナデナデ・・・

鉄網「い、いえ……途中で抜けちゃってすいません……」

手塩「いいよ。此処から先は、『駒場利徳』の暴走みたいなモノだもの。貴女には、関係無いからね」ポンッ・・・


少女を宥めて戻ってきた手塩は、責任者たる神へ尋ねた。


手塩「神さん。彼、止めなくて、良いの?」

神「別に。ヤツの気の済むまでやらせればいい」サラッ

手塩「しかし、アレでは無意味だ。対象への生傷だけが増えて、効果的では……」

神「何処が?」

手塩「え」


モニターを指差す。


神「この中年デブ。今現在、小指以外に酷い怪我してるか?」

手塩「……ん」

神「ギャアギャアと根性の無いガキめ……大袈裟なんだ。どうせゲロするんだったら大人しくゲロしろ」

下っ端AB「「……」」ゾッ・・・

神「分かったのは『会員制』と『出資者(スポンサー)』って言葉だな……しかし肝心な所まで踏み込めてない」フンッ


アクションはオーバーで声も荒げてはいるものの、実際大きな怪我は小指だけだ。
胸倉を掴んだり、机に顔を押し付けたりしているのは恐怖演出のブラフなのだろうか。


手塩「流石、『駒場』の名を騙るだけの事は、あると?」

神「さぁな。だが効率的ではないのは確かだ。質疑応答がマトモに出来ていない……冷静さを欠いている」

手塩「……ふむ」

神「アレでは疲れるだけ、か……一度軍覇に止めさせるとしよう。それとも貴様が止めてみるか? 恵未」ククク・・・

手塩「遠慮する。第7位に任せるよ」コクッ


所長はカウンセリングルームの扉前に居る門番に電話を入れた。
門番の少年は二つ返事で了承し、部屋の中へ向かう。


神『とりあえず、今日はもう終わりと伝えろ。なるべく穏便にな』

削板「話通じんのか?」

神『上手くやれ。無理であれば、黙らせろ』Pi!

削板「……物騒だねぇ」テクテク・・・ガチャッ


削板は考える。成るべく、彼とは喧嘩したくないのだが、と……
274 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/01(水) 23:17:25.67 ID:x8oUuAvt0
削板軍覇は部屋に入る。

扉と【仮面】と元外交官がいる空間には、大きな防弾ガラスで仕切られている為、彼らの行動をじっくり見る事が出来た。
外で聞いていた怒声や殴打音。中に入るとこれまた大きい。


削板「……ったく」ハァ・・・


じっくり聞く。


元外交官「も、ぅ……話せる事など、無いと、言うにぃ!」ガタガタ・・・

【駒場】「どうやって出資者になった……『狩り』が会員制だという事は、何らかの『会』があるのだろ……何処だッ」ガンッ!

元外交官「ひ、し、知らないぃ! わ、私も紹介されただ、け……ひゃっ!!」ビクッ!

【駒場】「では誰からだ……答えろ!」ググッ・・・

元外交官「と、匿名でメールが来た!! 嘘ではない!!」ヒィ!

【駒場】「そのメールは貴様の家にあるのか? ……渡せ」グリッ・・・

元外交官「ぎゃああぁっ!! 小、指は止めぇ……な、無い! もう消しぎいいぃっ!!」ジタバタ・・・


傍から見ても、無駄骨だ。もうあの男から絞り出せるモノなどあるまい。
削板少年は所長に言われた通り、【仮面】を止めに向かった。


削板「……邪魔するぞ」ガチャッ・・・

元外交官「ぎ、た、助けてぐれぇ……」バタバタ・・・

【駒場】「……何しに来た」チラッ

削板「ジジイからの伝言だ。終わりだってよ」ジトー・・・


その言葉に、元外交官は安堵する。しかし……


【駒場】「まだだ」グイッ

元外交官「っ!!?」ギョッ・・・

削板「……はい?」

【駒場】「まだコイツは答えていない……」グググ・・・

元外交官「ぐ、へぇ……だ、だから、もぅ……何もぅぐっ!!」ゲホゲホッ


これまた大分脳味噌が煮えたぎっている様だ。仕方ない……
275 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/01(水) 23:32:40.15 ID:x8oUuAvt0



  ―――すごいパーンチ―――




【駒場】「っ」バッ!

元外交官「ぐっ、ぎゃあああぁっ……」バタッ・・・


『狂人』に念動力弾(自称)をブチかました。
紙の様に吹き飛び、壁に打ち当たる中年男性。そのまま力無く、気絶した。


【駒場】「……何のつもりだ」テクテク・・・

削板「何もかーにも有りはしないぜ? もうソイツからは何も出て来ねぇってば」ツンツン・・・

【駒場】「……しかし」ジー・・・

削板「必要であればジジイが続き聞き出してくれんだろ。兎に角、根性が一周してオーバーヒートしてんぜ?」チラッ

【駒場】「……」チラッ

元外交官「」チーン・・・


【仮面】の男は、漸く我に返った。


【駒場】「……すまん。やり過ぎた様だ」

削板「まぁ気にすんな。よくある事だ」ハハハ

【駒場】「少し……この部屋で休んでから戻る。構わないか?」

削板「ああ、伝える」コクッ


削板少年は内線で待機室の方へコールし、所長に事の終了を告げた。


神『御苦労。では一服して来い。カメラは消してやる……元外交官は縄拘束目隠し猿轡でもして、そこらに転がして置いてくれ』


酷い責任者も居たもんだ。


削板「やれやれ……とりあえず、カメラ消したってよ。一服でもしろだとさ」チラッ

【駒場】「灰皿は?」

削板「あるけどよぉ……【仮面(それ)】付けたまま喫うのか?」

【駒場】「……」チラッ

元外交官「」

削板「ソイツは目隠しして此処に置いとく。煙草はガラスの向こうで喫え」テクテク・・・


言われるがままに【仮面】は移動した。
276 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/01(水) 23:52:47.07 ID:x8oUuAvt0
一寸後……【駒場】は、仮面を脱いだ。


削板「インスタントのコーヒーしかないけど、文句言わないでくれ」コトッ

黒妻「……ん」カチッ・・・フゥ・・・


男はタダのチンピラに戻る。


削板「……」ジー・・・

黒妻「……何だ?」チラッ

削板「いや……何だかな、って……」ジー・・・

黒妻「そうか」ジジジ・・・


特に言葉は無い。
黒妻綿流は削板軍覇を知っている。だが、削板軍覇は……


削板「知ってるだろ。何度か顔を見てる」

黒妻「そうだったな……けど普通に話した事は無かったか」ゴクッ・・・


確かその時は香焼や一方通行が一緒だった気がする。        (※『おやすみ』参照)


削板「それ以外にも、アンタは路地裏とかでよく見かけてた」

黒妻「そりゃまた光栄だな」ハハハ

削板「タダの喧嘩屋だと思ってたけど、違うみてぇだ」クスッ

黒妻「失礼な。オレは普通の就活青年だぜ?」ククク


カメラが回ってないからこそできる、他愛ない会話。


黒妻「そういえば、さっき何で『オレ』を殴らなかった? 普通止めるんだったらヤツじゃなくオレを殴るだろ?」

削板「んー……」ポリポリ・・・


削板は困った様に答えた。
277 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/02(木) 00:07:46.78 ID:tOnsC5JX0
削板「ソイツ殴っても心は痛まねぇけど、アンタ殴ると何だか……なぁ」ポリポリ・・・

黒妻「……ん?」ジジジ・・・

削板「何つったら良いかアレなんだけどよ……香焼を、な……」アハハ・・・


意外な人物。


削板「アンタ、香焼・最愛と仲良いんだろ?」チラッ

黒妻「まぁ……何でその二人?」

削板「分かんね。でも……何だか殴り辛ぇ」


知り合いだから殴り辛い、か。
タダの単純根性F馬鹿だと思っていたが、一応人間らしいとこがある様だ。


黒妻「香焼と最愛ちゃん……仲良いのか」クスッ

削板「最愛はよく分からんけど、香焼はまぁ……一応『友達』って」ムゥ・・・

黒妻「……ふっ」プカプカ・・・


照れ臭そうに頬を掻く少年。
しかし香焼も香焼だ。人類皆兄弟思想というヤツだろうか。


削板「なぁ。その『マスク』の事、香焼達知ってるのか?」

黒妻「いや……黙っておく」

削板「そっか。分かった」コクッ


俺も黙っとく、と無言で頷く。物分かりは良いらしい。やはり意外と悧巧というか空気を読める少年である。


削板「でもアンタ、無能力者なんだろ? どうしてこんな危険な真似すんだ?」

黒妻「ダチ公との約束だよ。ま、オレの勝手な思い込みの約束だがな」ハハハ

削板「ダチ公、かぁ。じゃあ仕方ないな」クスクス

黒妻「オマエこそ、ヒーロー活動みたいな真似してるみてぇだが何でだ?」

削板「恰好良いから、じゃ駄目か?」

黒妻「ははは。いやいや。らしいっちゃらしいよ」クスッ


謂わば『正義』に従順という訳だ。
力もある、バックアップもある……象徴的な英雄像だろう。流石ヤングスーパーマンだ。
278 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/02(木) 00:23:38.81 ID:tOnsC5JX0
削板は言葉を続けた。


削板「でもな、この街が好きだからそうしてるんだ。嫌いだったら態々恰好良い真似なんかしねぇ」

黒妻「そうだな……オレも好きだ」

削板「だろ? だから兎に角、根性曲ったヤツは許せねぇ」パシッ


ある意味、潔癖症なのだろう。では……


黒妻「暗部は、如何だ?」

削板「……暗部が如何こうじゃねぇな。個人だろ」

黒妻「へぇ」

削板「だって正直、神(ジジイ)は危ねぇ仕事してる人間だ。けど筋は通ってる」


筋道通せば何とやら、か。


黒妻「……香焼達については、何処まで知ってる?」

削板「詳しく知らねぇけど、香焼も最愛もよく夜の街中に居るのは知ってる」

黒妻「……それで?」

削板「別に……ただ、最愛はやり過ぎかもしないとは思ってる」

黒妻「そっか……だろうな」フゥ・・・


悩みの種だ。あのままでは何れ……死ぬ。
例え死ななくとも、戻れない所まで踏み込んでしまっている。


削板「アンタ、止めないの?」

黒妻「オレ程度がか?」

削板「いやいや、十分止めれるんじゃね? 物理的な意味じゃなく、根性的な意味で」ウンウン

黒妻「根性論なぁ……それをするとしたら、オレじゃなく……」


香焼や那由他、打ち止めちゃん……美偉の仕事だろう。


黒妻「兎角、今は期じゃない。仕掛けるのはもうちょい先かな」

削板「そうか……まぁそん時は手伝うぞ」ハハハ

黒妻「ああ、よろしくな」クスッ


片や本物の超人、片や紛いモノの精神的超人。
下らない御喋りを二三続け、二人は再び待機室へ戻った。
279 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/02(木) 00:50:26.03 ID:tOnsC5JX0
 ―――翌々日、PM01:00、第12〜19学区、理事立大学付属病院・精神科(研究所兼刑務所)、中央研究所所長室……





一段落着いた所で、一同は所長室に戻った。
勿論、再び『マスク』を着け直している。


神「――……さて、恵未。まだ何かあるか?」

手塩「……いえ。聞き出したい事は、聞き出せた。あとは佐久の判断次第よ」

神「だろうな。一応テープのダビングは要るか?」

手塩「頂けるのであれば、貰う」

神「分かった。軍覇、山崎にダビングテープを作る様伝えてくれ」

削板「んな面倒臭ぇ。ROMデータとかで渡せよ」エー・・・

神「阿呆。複製防止を掛けるんだ。分かったらさっさと行って来い」


ヤレヤレと肩を落として部屋から出て行く削板。


神「兎角、以上だな。テープは追って軍覇にでも届けさせる。今日は帰れ」スタッ

手塩「ええ、そうするわ。長居しても、良い事はなさそうだし」コクッ

神「悧巧で結構だ……門まで送るぞ。オマエもついて来い」チラッ

【駒場】「ああ……」スッ・・・


一同、部屋から出てゲートへ向かう。その最中、一つの不安が浮かんだ。
このままだと……多分、もう二度と手塩さんに会えない。


【駒場】(土御門)Pi!

土御門『うぃうぃ』Pi!

【駒場】(今後、手塩恵未とコンタクトをつける手立ては可能か?)

土御門『んー……難しいにゃ。俺のメインコネクションは親船の婆ちゃんだから、ブロックの連中とはねぇ……でも何で?』

【駒場】(彼女が暗部を辞めた際、強力な仲間になると思う)

土御門『……マジで言ってんの?』ゲッ・・・


マジも何も、彼女の実力は本物だ。
裏事情にも長け、黄泉川さんに負けず劣らずの格闘術。そして子供に対しての愛情は本物……申し分ない『大人』である。
280 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/02(木) 01:03:59.28 ID:tOnsC5JX0
土御門『だったら黄泉川センセでも……あー、駄目だな。一方通行に殺される』タラー・・・

【駒場】(如何にか出来ねぇか?)

土御門『手塩恵未の引き抜きは同意しかねるが……まぁ足取りを掴んでおくのは確かに賛成だ。実力者ってのは認めるからな』コクッ


土御門は数秒黙り込み、嘆息交じりに呟いた。


土御門『……服部と相談して決める。少し待ってろ』Pi!

【駒場】(よろしく頼む)


作戦を考えるのはオレの性分じゃないからな。


神「……時に『駒場』。先は聞きたい事聞き出せたか?」ニヤッ

【駒場】「気になる言葉は引き出せた。後はそれを元に、自分で探しだす」

神「そうか。ま、頑張れ」ハハハ


まるで他人事……いや、この人が暴れると拙い様なので自粛して貰ってても構わないか。


鉄網「……」ジー・・・

【駒場】「……ん」チラッ

鉄網「っ……」ビクッ・・・

【駒場】「……先程は、すまなかった。怖がらせてしまったな」コクッ

鉄網「え、あ、えっと……」オドオド・・・

【駒場】「君の能力は、素晴らしいよ。自身を持つと良い」ポンッ

鉄網「ぁ、ありがと……です……」コクン・・・


ただし、使い道を誤って欲しくは無い。


手塩「……」チラッ

神「やはり気になるか?」チラッ

手塩「……だからといって、如何なる問題でも無い。私も『彼』も、きっと隠し事ばかりで、話が進まないよ」テクテク・・・

神「いや、オマエ次第だな。言っておくがヤツは暗部でも何でも無いんだぞ」

手塩「そういう問題じゃない……」ムゥ・・・


色々と複雑なのだ。まだまだ平和だったあの頃の自分達には、もう戻れない。
そう決め込んでいる。
281 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/02(木) 01:47:08.61 ID:tOnsC5JX0
そして、ゲート裏・・・・・


手塩「此処までで、結構」チラッ

神「そうか」コクッ


所長と『駒場』はその場で止まる。


手塩「出来れば、もう会わない方が、良いわね」クスッ・・・

神「悲しい事言うじゃないか。昔馴染みなのだから何時尋ねて来てくれても良いのだぞ?」

手塩「……ありがとう。その言葉だけで、十分です」フフッ


この人は、自ら『壁』を作ってしまっている。典型的な裏の色……暗部病に罹った人間だろう。


神「……オマエからは?」チラッ

【駒場】「……」ジー・・・

手塩「……」チラッ

【駒場】「……少し、質問させてくれ」

手塩「私に?」

【駒場】「アンタと鉄網にな」コクッ

鉄網「わ、私!?」ドキッ・・・

手塩「内容による、けど、私からも質問、良いかな?」


勿論、内容による。まずは【仮面】から。


【駒場】「鉄網。君は……学校へは?」

鉄網「え……えっと……」モジモジ・・・

【駒場】「別に、学校名を聞き出そうとしている訳ではない。ただ……通っているか、いないかだ」

鉄網「……通えるわけ、無いじゃないですか」シュン・・・

【駒場】「そうか……」チラッ


これもまた、暗部病。


【駒場】「では、手塩……仕事は今でも?」

手塩「……」チラッ


他3人を気にする。成程……表が警備員だと知らない者も居るのか。
282 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/02(木) 02:01:24.95 ID:tOnsC5JX0
【駒場】「……辞めたのか?」ボソッ

手塩「……一応、所属は本部付け」ボソッ

【駒場】「そうか……鉄装の言うとおりだったな」コクッ

手塩「鉄装……そう、あの子が……あの子は元気?」クスッ

【駒場】「相変わらずだよ。苦労人の様だ」コクッ


優しい笑み。


手塩「じゃあ、私から質問……手を握っても、良い?」ジー・・・

【駒場】「……何?」

手塩「質問じゃなく、お願いだったね……それだけよ」


意味が分からないが……いきなり投げ飛ばされるのではなかろうか。


手塩「失礼ね。そんな物騒な事、しないよ」

【駒場】「……」スッ・・・

手塩「ありがとう……じゃあ」パシッ


手首を掴まれ―――



手塩「鉄網。『意見解析(スキルポリグラフ)』なさい」サラッ



―――……あー。


鉄網「え、な……はい!?」ギョッ・・・

手塩「……良いわね?」チラッ

神「俺は知らん」フンッ


薄情者。


【駒場】「……やられたよ。抵抗したら組伏せるのだろう?」

手塩「貴方次第ね。騙す様で悪いのだけど……どうしても、死者の衣を被っている輩の、正体が気になってね」

鉄網「て、手塩さん……でも私……『駒場』って人のプロフ知らないから、正否が分からないですよ」アタフタ・・・

手塩「読み込めたモノを、言ってくれれば、私が判断できる……ごめんなさい。私情で貴女を、使う様な真似して」

鉄網「え、あぅ……」チラッ・・・


こっちを見るな。オレも困ってる。
283 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/02(木) 02:10:12.83 ID:tOnsC5JX0
【駒場】「……所長」チラッ

神「……」ジー・・・

【駒場】「宛てに出来んか……」

鉄網「……ごめんなさい。直ぐ終わらせます」スッ・・・


手を掴まれた。


下っ端AB「「……」」ゴクリ・・・

神「……」フンッ・・・

手塩「……如何?」ジー・・・


そして……


鉄網「……あれ?」ポカーン・・・

手塩「鉄網?」

鉄網「……読めません」タラー・・・

手塩「え」

鉄網「この人……分からない」


やれやれ。土御門から貰った『マスク』と同じ素材(新型試作:歩く教会)『手袋』の御蔭で助かった。


手塩「……鉄網。彼、手袋してる」ビシッ

【駒場】・鉄網「「あ」」キョトン・・・


何とまぁ、目敏い……あっという間に手袋を取られてしまった。
大ピンチ。


手塩「……もう一度、お願い」グイッ

鉄網「はい」スッ・・・


どうする。無理にでも抵抗すべきだろうか……と決断しかけた次の瞬間―――
284 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/02(木) 02:28:16.13 ID:tOnsC5JX0


  ――ダダダンッ!!



一同『っ!?』ギョッ・・・


まさかの銃声。重々しい三点バースト音。


神「……施設内での発砲は御法度だぞ」ギロッ・・・

手塩「っ……オマエ……」ジー・・・


物陰からゆっくりと、正体を現す忍び草。


半蔵「ったく……アンタが厄介がって止めないのが悪いんでしょ、神さん」ハァ・・・

神「ふんっ。オレは別にお前らの完全な協力者って訳じゃない。あくまでプランの見直しや装備の提供相談を受けただけだ」

手塩「……神さん。嘘つき」ジトー・・・

神「嘘なんぞついてねぇ。関係者ってのは親身ななる輩の事を言うんだろ? 俺は親身じゃないからな」


何という屁理屈詭弁。


手塩「……半蔵」ジー・・・

半蔵「……まぁ互いに色々言いたい事はあるんすけどねぇ、手塩さん。とりあえず今はそういう事止めて貰えます?」ジー・・・

手塩「……」ジー・・・

半蔵「スナイパー二人が狙ってますよ? そこのお嬢さんの事」クイッ


塀の上を指差す……確かにスコープを覗いている影が二つ見えた。


半蔵「んな命懸けてまで知りたい事ですか? 『駒場』の兄貴も困ってますって」ジー・・・

手塩「……ホントに、駒場、なの」スッ・・・

【駒場】「……さぁな。もしかしたらそうなのかもしれん」ジー・・・


半蔵の出現によって、更なる混乱。
確かこの子は駒場の側近というか、最も仲の良かった少年。昔何度か留置所で話をした事が有る。

兎角、手塩は『駒場』から手を離し、鉄網の安全を確保した。
285 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/02(木) 03:25:38.45 ID:tOnsC5JX0
半蔵が出張って来てしまい、下手に動けなくなった一同。
【仮面】も対応に困っていたが、突如通信が入った。


土御門『おう、もしもし』Pi!

【駒場】(……何だよ)

土御門『とりあえず服部を送った。ヤツが上手くやるだろう。任せておけ』


この期に乗じた策が有るらしい。


半蔵「とりあえず、今日の所は御引き取りを……でしょ? 所長さん」チラッ

神「暴れなけりゃ居座ろうが勝手だよ」

半蔵「アンタも大概適当だな……」ハァ・・・

手塩「……」ジー・・・

下っ端A「ち、チーフ……此処は素直に帰った方が……」タラー・・・

半蔵「ほら、アンタの私情で居残る訳にもいかんでしょ?」コクン・・・

手塩「……分かった。B(ボーイ)、引き上げの連絡を」チラッ

下っ端B「了解です」コクッ


先にゲートを抜ける下っ端さん。続けて鉄網少女も抜けようとした。
空気を読んだのだろう。今この場には旧知の人物だけが残るべきだと。


【駒場】「……鉄網」チラッ

鉄網「え、はい」ピタッ

【駒場】「現状に絶望して、表に戻る事を諦めるな……君はまだ若い。戻る事を諦めなければ、救いはある」ジー・・・

鉄網「……ありがとう。『駒場』さん」クスッ


まるで身近の親しい誰かに告げる様に……


手塩「……」ジー・・・


そして、此方は複雑な顔。仕方あるまい。
286 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/02(木) 03:42:24.16 ID:tOnsC5JX0
半蔵「さて……手塩さん」チラッ

手塩「……」ジー・・・

半蔵「『駒場』の兄貴について、気になるかい?」

手塩「気にならない……と言ったら、嘘になるね」コクッ

半蔵「おーけぃおーけぃ……教えてやっても良い」ニヤッ

手塩「っ!」ドキッ!


一体何を……


半蔵「ただし、此処では駄目だ。もし本気で正体を知りたいのであれば機会を改めさせて貰う」

手塩「……何故?」

半蔵「悪いが今のアンタは『個人』じゃない。あくまで暗部の一部だ。『駒場』の兄貴について、暗部の関与を受けるのは真っ平なんでな」

手塩「私個人で来れば、という事?」

半蔵「物分かりが早くて助かるね……コレ、俺の連絡先。悪戯で掛けてきちゃダメだぜ?」フフフ

手塩「……追って連絡しろ、と」

半蔵「ああ。正直に言えばアンタの力、俺や兄貴は買っている。だから信じても良いと考えた訳っすよ」


あくまで『手塩恵未』としてである。


手塩「……分かった。後日改めて、連絡する」コクッ

半蔵「マジ一人で来て下さいよ。悪ぃが俺は手段問わない暗部連中ってのがオッカナくて仕方ねぇんだ」ハハハ

手塩「暗部を出し抜ける貴方が、よくもまぁそんな事を言う」クスッ

神「まったく……恵未、彼らが待ってる様だぞ」チラッ


ゲートの方を見遣る。数名の兵が此方を伺っていた。


手塩「ええ……今日は失礼したよ。では」コクッ

神「ああ……俺も、君が個人で訪問してくる分には歓迎だよ。久しぶりに愛穂や桔梗の顔も見たくなった」ククク・・・

手塩「そうね。私もよ……さよなら」クスッ


そして『またね』とは言わずに、彼女は去った。
時刻は深夜一時過ぎ……突然のドタバタ騒ぎは呆気らカンと幕を閉じた。
287 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/02(木) 03:52:56.31 ID:tOnsC5JX0
 ―――翌々日、PM01:30、第12〜19学区、理事立大学付属病院・精神科(研究所兼刑務所)、中央研究所所長室……





一同、所長室へ戻ってくる。皆憔悴しきった表情だ。


山崎「皆さん、お疲れさまでした」コクッ

土御門「うい。はぁ……眠い。明日学校午後から出よ」グデェ・・・

半蔵「大変だな、学生さん」ククク・・・

黒妻「……オレ、明日バイトなんだけど」タラー・・・

海原「頑張って下さいな。ヒモじゃないところを世間に証明しなければね」クスッ

郭「ぷっ! ……あ、兄貴さん……女子高生の、ヒモ」プルプル・・・


喧しい。美偉に養って貰ってなんかねぇ。


神「兎角、今日の所はコレで終わりだ。芹亜には俺から報告しておく。帰ってゆっくりしろ」

削板「ジジイ……俺ももう寝て良い?」

神「……まぁ良いだろ。今日は稽古無しだ」

削板「うっしゃぁ……んじゃオヤスミ」スピー・・・

山崎「部屋で寝なさい」ベシッ


苦笑。


神「一応、今日の尋問のテープは後で送ってやる。『狩り』の『会員制』や『出資者』については芹亜に調べさせた方が良かろう」

土御門「ああ。アイツ今日全っ然仕事してねぇから押し付けてくれ」キッパリ!

半蔵「同意」キッパリ!


コイツらは相変わらずだな。
288 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/02(木) 04:03:39.36 ID:tOnsC5JX0
半蔵「んじゃ帰るとしようか……郭、運転任せて良い?」チラッ

郭「……蛇さん、春さん。お任せします」チラッ

蛇・春「「……」」チラッ

海原「僕は免許を持ってませんので……黒妻さん?」ニコッ


都合の良い時だけ大人扱いすんな。


郭「やれやれ……今日だけですよ」ハァ・・・

半蔵「わーい」ニヤニヤ

山崎「ふふっ。郭さん……良ければまた来てくださいね」ニコッ

郭「え、はぁ」コクッ

山崎「妹達も、子供達が喜びます。是非来て話相手だけでもなってください。お願いします」コクッ

御坂春「え、ええ。ミサカ程度で良ければ、時間が有る時にでも、とミサカはお答えします」

神「そうだ、綿流。給料払うから遊び相手しに来い」ククク・・・


オジさんと呼ばない様伝えておいてくれるなら考えよう。


黒妻「ま、今日はありがとう。また何かあったら頼む」

神「ああ。また近い内にな。武器や防弾チョッキも揃えておく……くれぐれも無茶はしないように」

黒妻「分かってる。そんじゃまたな」


そしてオレらは部屋を後にし、門を出て帰路に着いた―――
289 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました [saga]:2011/06/02(木) 04:09:01.45 ID:tOnsC5JX0
はい。次回で『原石・狂人』編は終わりです。


さて……アンケ! 今回と次回、二回取ります!


・『If.アンジェレネ・アフター』について。
ドロドロと予告してましたが諸事情でデータが飛びました。なので書き直してますが……


@構わん! ドロドロをやれ!

Aいやいや、ほんわかの方が良い。

Bその他、何か新たな方向性を! (※具体例も添えて)


ご協力お願いします。そんじゃまた次回! ノシ
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/02(木) 10:18:33.97 ID:wmWLvwXDO
>>1


アンケはAで
平和に行きましょ
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/06/02(木) 17:55:55.33 ID:8aTwFEOQ0
>>1 乙!?

いやいや、Aでしょ!!
ところで、最近香焼分、最愛分が摂取できずに死にそうなんだぜぃ・・・
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/06/02(木) 18:25:04.47 ID:fQGSun9AO
>>1乙ッス!

@の展開も見たいがやはりここはAで!
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/02(木) 19:09:51.05 ID:Tq+grt870
Bアンジェレネアフターの後でもいいけど
アフターが香焼sideに偏ってるから、視点を変えた話を読んでみたい
学園都市内で科学側…「半蔵と郭」最近よく出てるミサカの話も面白いかも。
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/02(木) 19:30:15.17 ID:U0GTiGr00

1でも2でも好きな方で良いと思うよ
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/06/02(木) 22:09:36.56 ID:p9ol3gnJ0
正直@を見たくないと言えば嘘になる
あの二人が「溺れる」経緯、そして過去最大であろう濡れ場シーン……

でも、迷った挙句Aを選ぶ
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/03(金) 03:29:51.49 ID:jp3TOZCDO
元々の通り‥‥@だな!

てか気になったんだけど、「コッチ」と「アッチ」の世界観が混ざってきてるの?
あとこのりんの出番が‥‥
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/06/03(金) 06:33:51.30 ID:6bRy0ni10
・・・やっぱり@だな!
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/06/03(金) 21:45:38.56 ID:/SOkX88X0
ここまでで一旦集計をば

@:2票
A:5票
B:1票
他:1票(@かA)
299 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/03(金) 22:51:31.98 ID:FTV15ue50
こんばんわ。続きっす。

アンケはAが多いみたいっすね。やっぱりアンジェレネにはホンワカが良いのかな?

何にしろ、今日で一区切りつけます。では投下!
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/03(金) 23:00:23.63 ID:PHnp3riDO
支援
301 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/03(金) 23:13:36.90 ID:FTV15ue50
 ―――とある数日後、PM11:30、学園都市第7学区、とある廃ビル……




病院での一件から数日後、オレと土御門、そして雲川は半蔵がベース地としている廃ビルに集合した。
尋問に手聞き出した事など、色々と厄介事が溜まっているので一度3人が洗った情報を確認し合う為だ。


雲川「……しっかし、汚い建物だ。もっとマシな場所が無かったかどうか聞きたいのだけど」ハァ

郭「文句があるなら出て行って貰っても構いませんよ?」ジトー・・・

土御門「そーだそーだ出てけー」ヤーイヤーイ!

雲川「あそう。じゃあ……お言葉に甘えるけど」スタッ

半蔵「まぁまぁ。我慢してくれ。内緒話をするには一番良い場所なんだ……郭と土御門の、ガキじゃねぇんだから一々カッカすんな」ッタク・・・


ホント、こいつら仲良いな。


半蔵「さて、んじゃ誰から報告する?」チラッ・・・チラッ・・・

雲川「……じゃあ私からだ」スッ

土御門「はいはい。さっさとしろ」ドカァ

雲川「チッ……神所長から連絡が来た。防弾チョッキとチャフ等の武器ができたらしいけど」

黒妻「仕事速ぇな。早速夜にでも取り行く」コクッ

半蔵「車出します。バイクで行かないで下さいよ? 荷物嵩張り(かさばり)ますから」

土御門「てかセンセさぁ、車持たないのかにゃ?」


車買う金、ありません。


郭「我々の方から一台『準備』しましょうか?」

黒妻「駄目だ……違反プレート見つかったら色々面倒なんでな」

雲川「じゃ、私の方から回す? 防弾使用にするけど」フフフ

黒妻「どっちにしろ、黄泉川さんに見つかったら『何処で手に入れた』とか聞かれて厄介だから止めとく」アハハ・・・


それに美偉にも同じ事言われそうだ。泣かれるのは勘弁だからな。


土御門「……センセ。奥さん人質に取られたらアウトじゃねぇの?」ボソッ

半蔵「いや、固法さん色んな意味でそれなりに強いし……何かあれば超電磁砲(御坂美琴)が動いてくれるからよ」ボソッ

土御門「成程。そりゃ僥倖だぜぃ」ニャハハ・・・
302 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/03(金) 23:44:58.12 ID:FTV15ue50
しかし、社会人になるつもりなら何時までもバイクじゃ拙いよな。
今度真面目に車のカタログ買ってみよう。


雲川「んな平和馬鹿な事は家に帰ってから勝手にやれ。それよりも、だ……本気で武器持たない気らしいけど」ジー・・・

黒妻「いや、演算銃器(スマートウェポン)あるじゃん」

雲川「あれアンカーガンに改造しただろ。んな物、銃と呼べないんだけど」

土御門「まぁ確かに今までは発条包帯(ハードテーピング)の御蔭で弾避けてたけど、これからは難しいぜぃ?」

黒妻「だからその為の防弾チョッキじゃねぇか。当たっても良い様にって」

半蔵「当たる前提ですか? それだと今までの方針と変わってきますよ」


いや……まぁ、弾幕張られなきゃ当たるつもりは無いけどな。


土御門「接近戦主体のセンセは、如何に相手に近づけるかが問題だぜぃ。でーじょぶなの? 弾幕張られたら無理じゃん」

半蔵「……煙幕(スモーク)と閃光(フラッシュ)、チャフ系を上手く使って貰うしかないっすね」

雲川「て事は、前線支援の貴方(服部)の仕事が増えるけど、OK?」フフフ

半蔵「仕方ねぇっしょ……元々、兄貴一人で無茶すんのにも限界はあった」

黒妻「悪いな……とりあえず、極力発条包帯は使わない方針で行く。それで良いんだな?」

雲川「だけど、常に使える状態にはしておけ。使うタイミングの判断は……私達3人の許可が下りた時だけど」コクッ


3人が頷く。一回のフル活動より、数回の安定性だ。


半蔵「そんじゃ次は……つっちー」チラッ

土御門「つっちー言うなボケ……『狩り』についてだ」


空気が変わる。


土御門「先日出てきたワード、『会員制』と『出資者』……確かにその筋の情報は有ったんだが、これは特定するのに時間が掛る」

黒妻「如何いう意味だ?」

土御門「バラバラなんだ。どっちも、な。『狩り』のギルドみたいなのは有るんだが、『頭』が見つからない」

雲川「……『管理人』も?」

土御門「それは分かった」

一同『っ!!?』ピクッ・・・


じゃあ、ソイツを潰せば万事終わるんじゃ……
303 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/04(土) 00:12:28.37 ID:S0B9F4d/0
土御門「んな簡単な話な訳ぁ無ぇっしょ……」クイッ

半蔵「……何?」

土御門「死んでんのさ……『狩り』の発端者さん」

黒妻「なっ……」ギョッ・・・

雲川「誰かが引き継いだって事だけど」

土御門「最初はそうだったようだ。しかし……『管理人(纏め役)』がコロコロ変わり過ぎて、今じゃ誰が『頭』なのか分からない状態らしい」


ネット中の管理者不在掲示板みたいなものか。
『狩り(ゲーム)』を創った者はいなくなっても、『それ』は残る。まさに一人歩きの状態。


半蔵「……だが『会員制』って事はそれを承認する『何か』が必ず有る。違うか?」

土御門「それが今一分からねぇ。俺の勘じゃ、幻想御手(レベルアッパー)騒ぎの時みたいに『ひょっこりクリック』じゃねぇかと思ってる」

郭「でもそれだと簡単に警備員に見つかるのでは?」

土御門「いや、見つからない。現にあの事件、音声ファイルだって事が中々見つからなかっただろ?」

雲川「でも今回は音声ファイルじゃないけど。まぁ広告とかをクリックしたら飛んだ、とか在り来たりなのも隠れ蓑としては考え得るわね」


何だか難しい話になってきた。中卒にも優しく伝わる様、よろしく。


一同『……』タラー・・・

黒妻「……こ、こほんっ。兎に角、この件については引き続き調査頼んだ。場合によっちゃ警備員や風紀委員も使おう」コクッ

土御門「馬鹿。この活動ばれるにゃ。少し考えろってんだ」ハァ

半蔵「土御門……その件だが、提案がある」スッ


半蔵は携帯を取り出し、卓上に置いた。そして画面を指差す。


黒妻「……これは?」

半蔵「手塩恵未からのメール」Pi!

土御門「っ!?」エー・・・

黒妻「ああ、連絡来たのか。あの人、てっきり無視るかと思ってた」アハハ

雲川「……何それ?」ポカーン・・・


土御門が面倒臭そうに説明をした。その後……雲川の表情が土御門と同様に面倒臭そうな顔に豹変した。
304 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/04(土) 00:36:40.94 ID:S0B9F4d/0
雲川「服部、言いたい事分かったけど……本気?」エー・・・

半蔵「おいおい、俺ぁまだ何も言ってねぇぞ」

土御門「いや、オマエさん、ヤツを仲間にする気だろ? ……馬鹿な真似は止せ。アイツは暗部だ」

半蔵「まぁ待てよ、オマエら。人の話は最後まで聞け」スッ・・・


携帯の文面を読む。


黒妻「……『何故、今、駒場が出てきた』……ふーん。ま、当然の疑問だな」

半蔵「ええ。そんで俺は方針通り『無能力者、はたまた弱者の象徴(シンボル)』です、と返した」


無論、能力者との『平等』。能力(チカラ)に屈しない、という意味だ。


半蔵「そしたら彼女は『話を、聞かせて』だとさ……如何する?」

土御門「無視しても良いんだろ?」

半蔵「勿論だ。だが彼女は良い駒だぞ? これを機に警備員本部にも手を伸ばせる」

土御門「……アレイスターの目より深い所は無い。必要無いぞ」

半蔵「悪いが、俺はその統括理事長の目ってのを信用してない……いや、語弊が有るな」ジー・・・


道化師のサングラスの奥を覗き込む様に、半蔵は続ける。


半蔵「あんたら二人、情報全ては公開しない。だろ?」

土御門・雲川「「……」」タラー・・・

半蔵「それに、土御門。オマエが引き出していると思ってる統括理事長からの情報は確実か?」

土御門「それは……」

雲川「……違う。彼の方が貴方より何枚も上手だと思うけど」

土御門「……」ギリッ・・・


認めざるを得ない、か。


半蔵「何もアンタを責めてる訳じゃない。寧ろ良くやってくれてると思う。情報開示だって必要な分だけで十分だしな」

郭「あら、優しいんですね。全て出せ(フルオープン)要求するかと思いましたよ」

半蔵「馬鹿言え。俺だって隠し事くらいしてる」ハハハ

土御門・雲川「「……」」フンッ


相変わらずコイツらは、変な所でドロドロしてるな。
305 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/04(土) 00:54:25.27 ID:S0B9F4d/0
半蔵「とりあえず……判断は、兄貴。アンタだ」チラッ

黒妻「え、オレ?」キョトン・・・

半蔵「如何する? 暴露するか? それ即ち『活動』への協力支援に繋がる」

土御門「ちょちょちょ、待て! それはオカシイぜぃ!」アタフタ・・・

雲川「正体を暴露した所で彼女が協力してくれるとは限らないけど!」アタフタ・・・

半蔵「……兄貴は如何思います?」


如何って……


黒妻「あの人なら手伝うだろ」コクッ

雲川「なっ……何を根拠に」タラー・・・

黒妻「あの人との付き合いだ。オレや駒場とは長い付き合いだからな……基本的に弱者の味方だよ」


根本は黄泉川さんと似ているんだ。ただ、進む道を間違えただけ。


土御門「んな昔の話は知らねぇけどさぁ、今ヤツは『暗部(ブロック)』の一員なんだ。甘い事ぁ言ってられんぜよ」ジトー・・・

半蔵「甘い? ……この『活動』は甘いか?」ジー・・・

土御門「っ……そ、そういう訳じゃ」タラー・・・

半蔵「上条当麻にシリアルキラーの手が伸びた時。そして手前の『義妹』に危機的状況が訪れた時……一人で頑張るか?」ジー・・・

土御門「あー、分かった分かった! ……まぁメリットが無ぇ話じゃない。センセに一任するにゃ」ハァ・・・

半蔵「雲川は?」チラッ

雲川「……手塩恵未が誰かに私達の『活動』を密告する可能性は?」ジー・・・

黒妻「無い。多分」キッパリ!

雲川「多分って、不安なんだけど」ハァ・・・

半蔵「大丈夫……一番効果的な手を打つさ」ニヤッ・・・

土御門「……もう良いや。その件に関しては手前とセンセでやれ。だがキチンと報告しろよ」ハァ・・・


毎度有りー、と半蔵はメールを打ち出した。


黒妻「んじゃとりあえず、今日はこれで終わりか?」

土御門「ああ。今分かってる『狩り』参加者のリスト書き直すから、それ出来次第また行動だにゃ」

黒妻「一方通行(アイツ)が『消した』分と照合か」

土御門「加えて削板軍覇が『消してた』分。それから『勝手に消えた』分……んで残念ながら『増えた』分だぜよ」

雲川「『会員制』らしいから、常に増える訳だ……」


厄介な連中。
306 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/04(土) 01:05:35.70 ID:S0B9F4d/0
土御門「雲川。手前は『出資者(スポンサー)』を調べろ。得意だろ?」チラッ

雲川「命令するな。活動指針として動くけど」

半蔵「一々喧嘩すんな……ま、今日は終わりでOK。兄貴は残ってね。手塩さんについての話が有る」チラッ

黒妻「了解だ」コクッ


それでは、と土御門と雲川は立ち上がった。郭ちゃんが面倒臭そうに帰りの車の場所まで誘導する。
オレも一旦煙草を……


雲川「ちょっと」ボソッ

黒妻「ん?」ピタッ

雲川「後で大事な話があるけど。電話する」ボソッ

黒妻「二人の前では言えないのか?」

雲川「少なくとも土御門の前では無理……それじゃ」テクテク・・・


大事な話、ね……物騒な事って。


半蔵「兄貴ー。話するよー」オーイ!

黒妻「ん、ああ。外で煙草喫ってからなー」テクテク・・・

半蔵「煙草喫いながらでも良いでしょ」モー・・・


外の空気が吸いたいんですよーだ。


半蔵「あ、ったく。行っちまった」ハァ・・・

郭「……半蔵様」

半蔵「んー?」ポリポリ・・・

郭「最近、兄貴さん……家族サービスしてない様ですよ。姐さんがぼやいてました」

半蔵「それ今言われてもなぁ……」

郭「我々の志の為に時間を削って貰ってるんです。何か良い休暇をプレゼントしては如何かと」

半蔵「……やれやれ。考えとくよ」ハァ・・・
307 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/04(土) 01:17:09.90 ID:S0B9F4d/0
 ―――とある数日後、AM00:00、学園都市第7学区、とある廃ビル……





深夜を回った頃、オレは再び半蔵の部屋に戻った。
半蔵は首を捻りながら紙に『何か』を書いている。


黒妻「……何それ?」ジー・・・

半蔵「脚本です」

黒妻「しなりお?」ポカーン・・・

半蔵「役者を、如何するかねぇ……俺、兄貴……これじゃ足りねぇんだ」ポリポリ・・・


策士は大変だな。


黒妻「んー、仕上とかは?」

半蔵「分かってないのに適当言わんで下さい……どっちか……」ポリポリ・・・


だからドッチとかコッチとか、ハッキリ言え。


半蔵「……如何します? 兄貴、顔出ししても良い?」

黒妻「まぁ仲間にすんだったら構わないだろ」

半蔵「仲間、か……多分、協力関係程度にしかならないと思うんだよ。忙しそうだし」

黒妻「それでも良いだろ。黄泉川さん並の敏腕なんだし」

半蔵「その黄泉川さんが仲間だったら一番良いんだけどねぇ……あの人にばれたら『表立って行動しろ!』って言われるっしょ?」

黒妻「あー、うん」アハハ


それじゃ駄目だ。心許無い能力者達への『畏怖』が薄れる。


半蔵「……んじゃ、良し! こうしよう! 兄貴、役者演じてねー」バッ!


半蔵から策が書かれた紙を渡される。
それでまるで首筋にナイフを立て合うかの如く、危ない賭けだった……―――
308 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/04(土) 01:49:44.88 ID:S0B9F4d/0
 ―――とある数日後(その翌日)、PM05:00、学園都市第7学区、とあるファミレス・・・手塩side・・・





先の病院での一件後、服部と連絡を取り合った。勿論『駒場』についてだ。
警備員だとか暗部だとか抜きにして、手塩恵未個人的に『何故』と考えさせられる。

私が『こんなとこ』まで堕ちる以前、警備員を本職としていた頃……彼らと知り合った。
昔語りをする気は無いが、あの頃は良かった。『素敵な馬鹿』が多い時代。今のネチネチした悪党とは違い、豪気有るとでも謂うのだろう。

その時代の代表的な馬鹿(チンピラ)、それが『駒場利徳』だ。
無能力者にして、能力者に屈しない弱者の味方。純粋無垢な子供や動物に優しい大男。
不思議なカリスマの有る人物だった。


手塩「だけど……死んだ」


やり過ぎた。いや、やり方を誤ったというべきだろう。理事会に手を出すのは目を瞑れる行為ではなかった。
警備員内で報告されている公の報告書では『テロ首謀者。人質を取った為、射殺』とあるが……違う筈。
噂では第一位の手にかかって死んだとか、誰かを庇って自殺したとか。
真相は闇の中だ。佐久は知っている様だが、私に教える気は無いらしい。あの男らしい良く分からない判断だ。

さておき今、私はとあるファミレスに居る。
普段なら絶っっっ対に訪れたくない様な場所ではあるが、約束とあらば仕方あるまい。


手塩「でも……」ムゥ・・・


賑やかだ。周りの目が気になる。
こういうのは苦手だ……いや、少し前までは多少の耐性はあったのだが、今ではすっかり不得手となった。
久しぶりに着た私服の7分袖のOネックシャツ&ダメージジーンズ。やはり筋肉の所為でキツくなっていた。

それにしても、彼らは遅い。


手塩「それとも、この遅刻まで……服部の、策かな」フフッ


あの子は聡い。多分、並の大人よりずっと賢い。
今回も『駒場』の正体と引き換えに私を利用する手立てを練っているのだろう。
構わない……敢えて乗ろう。


手塩「利用する側も、また、利用されるんだ。特に、こんな街じゃね」カランッ・・・


ドリンクバーを飲み干し、窓の外を見る……街は眩しい程に、平和だった。
309 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/04(土) 02:12:41.61 ID:S0B9F4d/0

??「―――……何で黄昏てんのか知りませんけど、コップ空ですよ」コンッ


先日聞いた声。来たようだ。


手塩「年上を、待たせるモノではないよ」チラッ

半蔵「ははは、すいません。ちょっと忙しいのが立て込んでましてね」ポリポリ・・・


優位性からくる表情か。もしくは、これすら策なのか。


手塩「……一人かい?」

半蔵「今はまだ、ね。あ、俺もドリンクバー注文して良いっすか?」ニコッ

手塩「御勝手に」クスッ


至って普通に動く少年。『まだ』仕掛けない訳だ。


半蔵「いやぁしっかし、手塩さんの私服見るの初めてですね。少しサイズ小さいんじゃないっすか?」ハハハ

手塩「女性に向かって、失礼な子だな」クスクス・・・

半蔵「こりゃまた失礼。警備員服の印象が強いモンで……わぅ。思い出しただけでも鳥肌が」アハハ・・・

手塩「ふふっ……貴方達は、補導し甲斐が有ったからね。豪快な、不良少年だったもの」クスクス

半蔵「いやぁ昔話は止して下さいよ。恥ずかしい」ダハハ!


昔話、か。今はもう武装無能力集団(スキルアウト)では無いのだろうか。


半蔵「ん? ……手塩さん、意外と情報収集してない口ですか?」

手塩「え、まぁ……そうかもしれないね。下っ端業務で、忙しいから……」


本当は自分の『目的』のみ、情報を収集 している。
故にそん所そこ等の小さな世間話など気にも留めない。


半蔵「……実は俺、今頭(リーダー)っすよ」ニコッ

手塩「そうなのか? それは、何とも……意外だね。君が表役職とは」ヘェ・・・

半蔵「色々、あったんでね……時代は変わるってか、無慈悲ってか」フフン・・・


それは、同意しよう。残念だけどね。
310 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/04(土) 02:27:43.29 ID:S0B9F4d/0
さて、そろそろ本題に入りたい。


半蔵「構いませんが……確認を」ジー・・・

手塩「何かな?」

半蔵「手塩さん、アンタ『駒場』の兄貴の正体知った所で、如何すんの?」

手塩「え」

半蔵「いやいや、アンタも馬鹿じゃないでしょ。コッチから無理難題吹っ掛けられるかもとは予想してるでしょうけど、アンタからのカードは?」

手塩「……好奇心じゃ、駄目かい?」


呆気に取られた表情。


半蔵「それだけ?」ポカーン・・・

手塩「それだけというか……正直、分からないんだ。頭で考える前に、行動してしまう性質でね」ハハハ・・・

半蔵「アンタもそっち寄りだったか……仕方ない。じゃあ約束事を」ジー・・・

手塩「守るとは、限らないよ」

半蔵「いや、嫌でも守る……『駒場利徳』の正体を知っても、口外しないっすね?」

手塩「やはり、ばれたら拙いの?」

半蔵「ええ。3つの意味で」


一つ、暗躍していたテロ首謀者扱いの男を公に出来ない。
一つ、服部達(誰かは知らないが)の『活動』に支障が出る。
一つ、『駒場利徳』の正体その人の私生活に支障が出る。


手塩「一つ目は、テロ事態を、公にしないという事かな? それとも、暗部からの、再刺客を憂いて?」

半蔵「ドチラもです。というかテロを公にしない為、再びテロを起させない為に暗部が動くでしょう」

手塩「成程……その件については、了解したわ」


最後のは、まぁ仕方ないとして……二つ目の『活動』とは何なのだ?


半蔵「……今はまだ教えられません。貴女が『駒場利徳』と会ってからです」

手塩「ふむ……分かった」


相変わらず、手を凝らす子だ。
311 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/04(土) 02:49:55.53 ID:S0B9F4d/0
半蔵「さて、それじゃあ選んで貰いますよ」

手塩「何?」

半蔵「『彼』を待ちたいですか? それとも『彼』の下へ行きたいですか?」


意味が分からない。


半蔵「悪いが俺の口から正体は言えません。直接『本人』に会って下さい」

手塩「……」ジー・・・

半蔵「無理矢理吐かせます? 手塩さん……悪いが第7学区(此処)は俺のホームだ。そしてこの店からもキチンとミカジメを貰ってる」ジー・・・

手塩「私のアウェイ、か……やれやれ。流石というか、呆れるというか」ハァ


立派なシノギめ。厄介事を起せばタダでは帰れないと脅してきた。
齢15〜7くらいだろうに、しっかりしてる。


手塩「……直接会うというのは、如何いう事だい? その『駒場』が、今はまだ就学勤労中だとか?」

半蔵「そんな所です。だけどもう少しで終わる。呼べば来ますし、此処っから俺らが向ってもそう遠くない場所だ」

手塩「じゃあ、ドチラでも良いよ。因みに、場所は?」

半蔵「学校、とだけ……学生か教師か、ドチラかはまだ教えられないのでね」フフッ


上手い返し方をする。


手塩「分かった。それじゃ、向かおう。私の興味で、呼びだしたんだ。そっちの方が、筋が通るでしょ」スッ

半蔵「あいさー。んじゃ……此処は奢らせて貰いますよ」スタッ

手塩「子供に、奢らせられないよ。私が払うから、寄越しなさい」

半蔵「良いから良いから」ニコッ


サクサク行ってしまった……と思いきや、厨房に……あ、戻ってきた。


半蔵「行きましょ」スタスタ・・・

手塩「……何したの?」タラー・・・

半蔵「んー……お得意様割引かな?」ハハハ


それはシノギ特有の脅しだ。
私はレジに札を一枚置いて、外に出て直ぐ、この馬鹿な子の頭をゲンコツした。
312 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/04(土) 03:20:17.79 ID:S0B9F4d/0
 ―――とある数日後(その翌日)、PM05:40、学園都市第7学区、とある学校(上条当麻の通う高校)・・・・・・




服部の運転する車――免許云々は目を瞑る――に乗り、数分奔った所にある高校へ向かう。
この学校は確か学力・運動・能力開発共に、あまりレベルの高くない学校だった筈。
今は放課後らしく、部活に勤しむ生徒、校門から出て行く生徒で賑わっていた。

何とも清々しい空気。教職時代が懐かしい。


半蔵「着きました。行きましょうか」

手塩「……」ジー・・・

半蔵「手塩さん?」ン?


そして……『彼女』が勤務していたと記憶している。


手塩「此処で待ってちゃ、駄目かな」ジー・・・

半蔵「何故?」チラッ

手塩「……もしかして、分かってて連れてきたの?」ジトー・・・

半蔵「え?」ポカーン・・・


この反応、偶然なのか。


手塩「申し訳無いけど……学校の中には、入れない」

半蔵「……じゃあ呼んで来ましょう。少々お待ちを」


車から降り、校舎の方へ歩き出す服部。
何だか、逃げたくなってきた。此処まで我慢して、正体を知る必要があるのだろうか。


手塩「外に出よう」ハァ・・・


車の外に出る。それから暫く、平和な学生達を見送りながら時間を潰した。
313 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/04(土) 03:40:52.17 ID:S0B9F4d/0
数分後、服部が一人で戻ってきた。何やら困った様な顔をしている。


手塩「如何したの?」

半蔵「いやぁ、何だか仕事長引いてるみたいで……やっぱ来て貰いたいそうです」

手塩「……日を、改めるのは?」

半蔵「うーん、都合あえば良いんだけど……色々忙しいからなぁ」ポリポリ・・・

手塩「……愛穂は」ボソッ

半蔵「え」

手塩「……まだ愛穂、居るの?」

半蔵「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ」タラー・・・


忘れてたのかい。


半蔵「あー、成程……すいません」ポリポリ・・・

手塩「……仕方ない。一旦帰りましょう。都合あう日で、良いから」ニコッ・・・

半蔵「そうですね、気拙いでしょうから……」


気遣われるのも申し訳ないが、彼女には会えない。
私は彼女の前から姿を消したのだ。オメオメと『こんにちわ』と言えた立場じゃない。

申し訳なさそうに頭を掻く服部に、気にするなと微笑み再び車内へ―――


上条「うわああぁっ!! ちょ、勘弁して下さいよおおおおぉ!! 二人を上条さんは止めましたってぇ!!」フコウダアアァッ!!

青ピ「いやああああぁっ!! ほんの出来心だったんですううぅ!! てかカミやんだけ逃げんのズルいですからああぁっ!!」ウギャアアァッ!!

土御門「にゃはははははっ!! まぁ例の如くカミやんが一番ガン見してたけどにゃあ! 眼福眼福ぅっ!!」ケラケラケラケラ!

上条・青ピ「「手前は反省しろおおおぉっ!! 首謀者あああぁっ!!」」ダアアアァッ!!


―――……何だか騒がしいのが通り過ぎてった。何なんだ?


土御門「ニシシシシシィ! 流石学園都市No.1おっぱいだぜぃ! (あー、もう二度としねぇからな。覚えてろよ?)」チラッ

半蔵「五月蠅いっすねぇ……学生楽しそう。(あはは。GJ。後で一杯奢ろう)」ハハハ・・・

手塩「君も、送ろうと思えば、普通の学生生活送れるでしょ」ハハハ

半蔵「……いや、俺の学ラン姿とか想像できないって」タラー・・・


いや、十分学ランみたいな格好だと思うのだけど。などと苦笑した……刹那、息が止まった。
314 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/04(土) 03:56:14.88 ID:S0B9F4d/0
半蔵「っ!!? て、手塩さん! 隠れて!」ギョッ・・・

手塩「……」ピタッ・・・

半蔵「手塩さん! (良し……完璧だ)」アタフタ・・・ニヤッ・・・


目の前に……


黄泉川「くぉるぁあああああぁっ!! 糞餓鬼共おおおおぉっ!! 逃げんなじゃんよおおおぉっ!!」ダアアアァッ!!


猛ダッシュで此方に向かってくる、彼女。昔と何ら変わりない、子供の様な女性。
服部の言葉も耳に入らず、まるで思い出のフィルムに魅入った子供の様に……私は動けなかった。


黄泉川「ぜぇぜぇ……あんのガキ共ぉ……明日学校来たらブチのめしてやるじゃんよ」グヌヌ・・・

手塩「……」ボー・・・

黄泉川「ハァ……ん?」チラッ・・・

手塩「……ぁ」ピクッ・・・


目が合った。


半蔵「あ、そ、えっと、あはははは! よ、黄泉川さーん! お久ー! 元気っすかぁぶべらっ!!」ゴンッ!

黄泉川「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おい」グイッ・・・

半蔵「う、べぃ?」グヘェ・・・

黄泉川「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・オマエは半蔵じゃん」ズンッ

半蔵「う、うぃ……見て分かるっしょアウチっ!!」ドンッ!

黄泉川「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃあ、こっちは」チラッ・・・

手塩「……」

半蔵「え、ええっと、その……お、俺の知り合いの弟の姉の伯母の従兄の友達の上司の孫の先生の友人の母親の同級生のお痛ぁっ!!」ブヘラッ!

黄泉川「喧しいじゃん。もう細かい事ぁ良いや……」テクテク・・・


此方に近づいて来る愛穂。


半蔵「よ、黄泉川さん。ちょ、待ってくれ! えっと、その、ちょっと今日は……」

黄泉川「黙ってろ。盗車容疑でブチ込むじゃんよ」ギロッ・・・

半蔵「……ぁ、う」ダラダラ・・・


三人共に、沈黙。
315 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/04(土) 04:11:27.44 ID:S0B9F4d/0
黄泉川「……恵未?」

手塩「っ……」

黄泉川「ホントに、恵未じゃん? ホントのホントに?」

手塩「……」


目を逸らす。


黄泉川「ねぇ、恵未……い、色々言いたい事とか聞きたい事あるじゃん……」

手塩「……」

黄泉川「ねぇってば!」スッ・・・

手塩「っ」パシッ!

黄泉川「な……」


まるでコミュニケーション方法を知らない子供や動物の様な対応。


黄泉川「め、恵未……」

手塩「ご、めん……っ」バッ!

黄泉川「あ、待、恵未!!」バッ!!


如何する事も出来ない。だから、逃げる。


半蔵「ちょ、て、手塩さん!?」

手塩「……今日は、もう良い」ダッ・・・

黄泉川「待つじゃん! 走るな!」ダッ!


本来の用事を忘れ、只管逃げる。車の存在を忘れて、ただ走る。宛など無いが、止まれない。
しかし彼女も走ってついて来る。


半蔵「……もしもし」Pi!

黒妻『あいよ。やれやれ、トンデモねぇ脚本だな。土御門に女子教員更衣室覗かせるたぁ。黄泉川さんマジギレしてたぞ』ハハッ

半蔵「良いんですよ。アッチの精神状態を普通にしなきゃ良い。あの人は兄貴と同じで野性的にキレる。だから正常にさせない」

黒妻『エゲツねぇよ……んで、この後は黄泉川さん追い駆けりゃ良いんだな?』

半蔵「はい。あくまで消えた先生を呼びに行った『バイトの事務員』としてね」フフッ

黒妻『あいよ……でもオレぁそんなに演技上手ぁねぇぞ?』

半蔵「見越してますよ。とりあえず黄泉川女史の前でボロ出さないようにだけ宜しくですね」ハハハ

黒妻『りょーかい。そんじゃ行きますよー』Pi!
316 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました [saga]:2011/06/04(土) 04:15:21.32 ID:S0B9F4d/0
すいません。一度寝ます。存外伸びてしまった……

引き続き >>289 のアンケート、御協力下さい。

ではまた次回。次こそこの話終わらせる! ノシ
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/04(土) 04:18:38.79 ID:iR3TVZcDO
>>1


今オレの中でwktkが止まらない

アンケはもう答えたけどAで
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/06/04(土) 07:25:19.98 ID:LTLvKamE0
>>1
色々考えたが@んだぜや。
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/04(土) 09:22:35.12 ID:5SeEmR9DO
おつー。前書いたからアンケは無しで。

ちとグダグダ展開かなぁとか思ってたけど、この警備隊コンビは期待したい!
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/04(土) 19:49:38.71 ID:5U5oWJXDO
乙〜
面白い事になってきたぜぃ

アンケは2で
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/06/04(土) 21:12:13.49 ID:LP7WfqXoo
乙!
アンケは@かな
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/06/04(土) 21:37:48.63 ID:7HLFnLVz0
乙!
>>319と同じ理由でアンケはパス
323 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/06(月) 22:03:19.28 ID:dfgCrYiL0
こんばんわ。続き投下です。
324 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/06(月) 22:04:11.64 ID:dfgCrYiL0
こんばんわ。続き投下です。
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 22:07:27.12 ID:KPMBKGxDO
待ってました!
326 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/06(月) 22:24:26.30 ID:dfgCrYiL0
 ―――とある数日後(その翌日)、PM05:55、学園都市第7学区、とある公園・・・・・・




結構遠くまで逃げた筈、と手塩恵未は息を整えつつ公園のベンチに腰掛けた。
本来の目的が何だったのか忘れそうな程、混乱している状況。

一体何なのだ。まさかコレを見越して私をアソコに連れて行ったのか……だとしたら、あの少年を許しはしない。


手塩「……駄目だよ。愛穂には、会えない」シュン・・・


有り体の言葉だが、最早住む世界が違うのだ。
180度とは言わない。だが90度違う。
多分、正反対であった方が楽だっただろう。だが微妙なラインで『志』が同じである為、性質が悪い。

彼女は日の下の守護正義。私は日蔭の汚れ者。
昔の様に、タダの『警備員(同僚)』席に居られなくなった。


手塩「……帰ろう」ハァ・・・


服部には、改めて連絡するしかない。いや……『駒場利徳』の事はもう、諦めるとしようか。
そんな事を考えた刹那。


 Prrr・・・Prrrr・・・・・・・


手塩「……服部め」ジー・・・


少年からの電話。辺りを確認し、通話ボタンを押す。


手塩「何?」

半蔵『何? じゃないですよ……まぁ此方の不手際もありましたが、如何します?』ハァ

手塩「……とりあえず、今日はもういいよ。愛穂に見つかると、厄介だから」

半蔵『そうですか。ただねぇ……言えた義理じゃねぇですが、さっきの手塩さん。恰好悪かったですよ』

手塩「それはお互い様でしょ。それに、余計な御世話」


恰好悪いのは自負してる。だが、無理なモノは無理なのだ。
兎も角、今日はもう帰る旨を報告して―――


黄泉川「あ……恵未っ!!」ハァハァ・・・ダッ!!


―――……拙い。


半蔵『手塩さん?』

手塩「ごめん、また後で」Pi!

半蔵『ちょ、まだ話が―――……』Pi!


逃げなければ……
327 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/06(月) 22:48:24.53 ID:dfgCrYiL0
黄泉川「ぜぇぜぇ……チッ……言う事聞けっ!!」バッ!!


荒い息を整えながら、腕を伸ばしてきた。それはもう殴りかかる勢いで……これは本格的に拙い。
彼女は今、軽くキレてる。


手塩「あ、愛穂……落ち着いて」タラー・・・

黄泉川「宥めようったって無駄じゃん! オマエ、それで逃げる気だろ!」ブンッ・・・ギリッ!

手塩「べ、別にそういう訳じゃ」アタフタ・・・

黄泉川「恵未の手口は知ってるじゃんよ! クール気取って、ちゃっかり逃げる! 桔梗よりセコいじゃん!」オラァッ!!


共通の知人……芳川桔梗と比べられても、何とも言えない。彼女は別にクールじゃなく『自称』甘ちゃんなヘタレだし。

兎に角、捕まらない様逃げなければ。
結構な喫煙者(スモーカー)の彼女は、持久戦にしてしまえば如何にか撒ける。


黄泉川「持久戦とか考えても無駄ぁ!! ふんっ!!」シュッ!!

手塩「なっ……て、手錠出すとか、何考えてるんだ!!」ギョッ・・・

黄泉川「逃がさない為じゃん!! こら待てっての!!」ブンッ!!


何という職権乱用。誰か警備員か風紀委員呼んで下さい。


手塩「こ、の……ったく!」グルッ・・・タタタタタッ・・・・


逃げる。


黄泉川「待てっつってんじゃんよ、ボケ恵未ぃ!!」バッ・・・タタタタッ・・・・


追われる。

バカみたいな光景だった。大の大人が公園で追い駆けっこしている。
しかも片方はスタンガンやら捕縛用のロープやらを出そうとしているのだから、完全に危ない大人だ。

私はブっ壊れてるらしいと有名な自販機の辺りまで逃げ、そこから雑木茂みの方へ飛び込んだ。


黄泉川「猪口才なっ!!」ゴンッ!!

自販機『ぎゃあああああああぁっ!!』ビービー!!

手塩「ちょ、公共物壊さないの!! (自販機、今喋った?!)」アワワワ・・・

黄泉川「恵未が止まれば壊れなかったの!! 大人しく御縄に付けってんじゃん!!」ギャーギャー!!


あー、もう、誰か助けて下さい。
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 22:49:37.95 ID:4CkMitGDO
キテター!
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 23:19:58.16 ID:KCsZE/jDO
最近更新が多くて嬉しいのう

支援
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 23:20:26.94 ID:KCsZE/jDO
最近更新が多くて嬉しいのう

支援
331 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/06(月) 23:52:24.41 ID:dfgCrYiL0
 ――数分後……


木などの遮蔽物を利用して逃げきろうとしたのだが……意味が無い。
流石、エースオブエースの警備員。この程度では撒く事は出来ない様だ。


黄泉川「ハァ・・・ハァ・・・…この、こんにゃろおおぉっ!!」ガアアァッ!!


しかし、確実にスタミナが切れてきている。煙草の所為か、歳の所為か……


黄泉川「五月蠅ぇじゃん!! テメェと同い年じゃんよ!!」ダアアァッ!!

手塩「だったら年相応に、『疲れた〜』とか言って、引き下がってよ」ハァ・・・

黄泉川「嫌だっ!! 恵未こそ捕まれ!!」ゼェゼェ・・・


何言っても無駄か。こういう性格なのは知ってるが……面倒臭い。


黄泉川「だー、もう……こうなったら鉄装と桔梗に応援頼んで捕獲の手伝いを!」スッ・・・

手塩「馬鹿な事、言わないで!」アタフタ・・・

黄泉川「だったら止まれ! じゃないと……『先輩』呼ぶじゃんよ!!」ガアアァッ!!

手塩「い”……あの人は、マジで駄目だって……というか、あの人の連絡先、知ってるの?」タラー・・・

黄泉川「この前、悪ガキ捕まえようとちょっとバイオレンスな事してたら、見つかって……首折られそうになったじゃん!」ダラダラ・・・


多分この街最強と名高い『先輩』を呼ばれたら、流石の私も逃げ切れない。


黄泉川「兎に角……ふんっ!!」ヌルポッ!!

手塩「通りに出れば……あ」ガッ!!


ヤバい、掴まれた。緩めのシャツなんか着てくるんじゃなかった。


黄泉川「逃がさん!!」ドンッ!!

手塩「っ!!」グラッ・・・


アメフト選手よろしく、押し倒される。
そのまま手錠を私の手に向かって振り降ろしてきた……仕方ない。


手塩「……ツ」ブンッ!!

黄泉川「な……け、警備員に向かってサブミッション掛けようとすんなってんじゃん!!」バッ!!


残念。腕を取って三角絞めしようとしたが、逃げられた。
332 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/06(月) 23:52:59.75 ID:dfgCrYiL0
 ――数分後……


木などの遮蔽物を利用して逃げきろうとしたのだが……意味が無い。
流石、エースオブエースの警備員。この程度では撒く事は出来ない様だ。


黄泉川「ハァ・・・ハァ・・・…この、こんにゃろおおぉっ!!」ガアアァッ!!


しかし、確実にスタミナが切れてきている。煙草の所為か、歳の所為か……


黄泉川「五月蠅ぇじゃん!! テメェと同い年じゃんよ!!」ダアアァッ!!

手塩「だったら年相応に、『疲れた〜』とか言って、引き下がってよ」ハァ・・・

黄泉川「嫌だっ!! 恵未こそ捕まれ!!」ゼェゼェ・・・


何言っても無駄か。こういう性格なのは知ってるが……面倒臭い。


黄泉川「だー、もう……こうなったら鉄装と桔梗に応援頼んで捕獲の手伝いを!」スッ・・・

手塩「馬鹿な事、言わないで!」アタフタ・・・

黄泉川「だったら止まれ! じゃないと……『先輩』呼ぶじゃんよ!!」ガアアァッ!!

手塩「い”……あの人は、マジで駄目だって……というか、あの人の連絡先、知ってるの?」タラー・・・

黄泉川「この前、悪ガキ捕まえようとちょっとバイオレンスな事してたら、見つかって……首折られそうになったじゃん!」ダラダラ・・・


多分この街最強と名高い『先輩』を呼ばれたら、流石の私も逃げ切れない。


黄泉川「兎に角……ふんっ!!」ヌルポッ!!

手塩「通りに出れば……あ」ガッ!!


ヤバい、掴まれた。緩めのシャツなんか着てくるんじゃなかった。


黄泉川「逃がさん!!」ドンッ!!

手塩「っ!!」グラッ・・・


アメフト選手よろしく、押し倒される。
そのまま手錠を私の手に向かって振り降ろしてきた……仕方ない。


手塩「……ツ」ブンッ!!

黄泉川「な……け、警備員に向かってサブミッション掛けようとすんなってんじゃん!!」バッ!!


残念。腕を取って三角絞めしようとしたが、逃げられた。
333 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/07(火) 00:12:04.87 ID:48Pzi7xs0
黄泉川「何つー真似を……」タラー・・・

手塩「それはコッチの、台詞だよ。相変わらず愛穂は、暴力的ね」ハァ・・・

黄泉川「恵未に言われたらお終いじゃんよ」ジトー・・・


ああ、そうだ。彼女の拳は加減が出来る。だが私の拳は加減が苦手だ。

さておきとりあえず、雑木林から公園の方へ出れば誰かが通報してくれるかもしれない。
そう考え、急いで表の方へ逃げた。無論彼女の追跡は止まない。

こうなったら大声で助けを呼んでみようか。


手塩「……柄じゃないね」ハァ・・・

黄泉川「さっきからチョコマカと……いい加減にしろっ!!」ガチャッ!!

手塩「て、テイザースタンは、やり過ぎじゃない?」ピタッ・・・

黄泉川「そっちがその気なら、手段は選ばない!!」ギロッ!!


本気か……


手塩「……そろそろ、私、怒るよ?」ジトー・・・

黄泉川「ああ……そっちの方が私達らしいじゃんよ。構えな!」フンッ・・・

手塩「模擬戦じゃ、6体4で、私の勝ち越しだよ。忘れたの?」スッ・・・

黄泉川「いつまでも昔の事をネチネチと……良いから黙ってかかって来い! チキン女郎!!」ダッ!!

手塩「っ! かかって来いって、そっちから、来てるじゃん!」バッ!!


胸倉に向かっての貫手。そのまま掴まれると読み、その手を右脚を蹴り上げる。


黄泉川「つっ」イテェ!

手塩「……恨まないでよ」スッ・・・


上げた脚を愛穂の肩に向かって振り降ろす。
彼女は即座に反応し、頭上で両手を交差。私の脚を挟んだ。


黄泉川「こ、の……嘗めるな!!」グッ・・・

手塩「だけど……甘い」グルッ・・・

黄泉川「な―――」


左脚が残っている。そのまま……


黄泉川「―――ッッ……」ガンッ!!


左脇腹に飛び回し蹴りを打ち込んでやった。
334 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/07(火) 00:35:07.61 ID:48Pzi7xs0
黄泉川「お、ま……」グラッ・・・

手塩「……」ジー・・・

黄泉川「チッ……こんにゃろぉ!!」ブンッ!!

手塩「な、砂っ」バッ・・・


砂粒手。思わず目を閉じる。


黄泉川「今度こそ……腕取った!」ガシッ!

手塩「っ……私を掴んで、勝った事、ある?」グイッ


そのまま再びサブミッションへ……


黄泉川「五月蠅ぇ! 離さん!!」ゴンッ!!

手塩「ずっ……痛ぃ」グラッ・・・


まさかの胸部へ頭突き。危険な真似をする。


黄泉川「ぐぬぬ……恵未、胸筋鍛えんの止めなさいって学生時代から言ってんのに」ヒリヒリ・・・

手塩「……それ、愛穂が言うと、嫌みにしか、聞こえないんだ」ジー・・・

黄泉川「喧しい。好きでデカいんじゃないじゃん、ボケ!」グッ!

手塩「それも嫌み……そんな事如何でも良いけど、私に、関節技掛けれた事、無いでしょ?」フンッ!

黄泉川「一々五月蠅い! 今成功させてやんじゃんよぉ!!」ギリリ・・・


必死に直立アームロックをしようとする愛穂。
しかしさせない。空いた手で再び左脇腹にブローを入れてやる。


黄泉川「っ……密着(この)距離からのブローなんてタカが知れてるじゃん!」グググ・・・

手塩「……じゃあ、弱点狙うわ」スッ・・・

黄泉川「え―――」


豪快に、左胸部(乳房)を鷲掴みにしてやった。


手塩「―――い”! だだだだだっ!! は、離せえええぇっ!!」ギャアアァッ!!

手塩「っ……愛穂こそ、放しなさい」グヌヌ・・・


声は情けないものの、互いに力は緩めず。一向に妥協の色を見せない―――
335 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/07(火) 01:11:38.96 ID:48Pzi7xs0
 ―――とある数日後(その翌日)、PM06:20、学園都市第7学区、とある公園・・・・・・




黒妻「あー、もしもし。只今二人はキャットファイト中。どーぞ」Pi!

半蔵『……冷静に解説しないでください、おーばー』ハァ・・・

土御門『早く止め入れよ、おーばー』ッタク・・・

黒妻「あ、手塩さんが黄泉川さんの胸揉みしだきだした」

半蔵『●RECで送って下さい!!』イヤッホゥイッ!!

土御門『いや待て近くの公園だな!? 直ぐ向かう!!』ニャッホォッ!!

黒妻「……じゃーな。半蔵、手筈通り電話しろよ」Pi!

土御門・半蔵『『ちょ、待―――』』ガチャッ・・・


足の速い二人を追い駆け遅れて公園に入ったのは良いが、もれなく喧嘩中だった。
周りに人が居ないのが唯一の救いだろう。傍から見ればかなり奇妙な光景だ。


黒妻「……問題はこっからだな」ポリポリ・・・


道化を演じる。問題はタイミングなのだが……


黄泉川「痛だだだだっ!!」ギャアアアァッ!!

手塩「ぐっ……」ダラダラ・・・


……これでは入れない。如何にか動いてくれないだろうか。


黒妻「ん? 待てよ……」ピクッ・・・


こういう時こそ、風紀委員の役目だろう。


黒妻「電話してみるか。オレが上手くやれば……問題無い」Pi! Prrr・・・


多分脚本(シナリオ)にイレギュラーが生じ、後で半蔵に怒られるが大丈夫だろう。きっと上手くいく。
そういう訳で、着信履歴で一番多い名前をコールした。


固法『はい』Pi!

黒妻「もしもし。何処居た?」

固法『え? 何処って……まだ支部に居ましたけど』

黒妻「公園で喧嘩してるぞ」サラッ

固法『……えっと、もう少し言葉を足して貰えます?』

黒妻「大の大人が二人喧嘩してるよ」

固法『……先輩。何も無いのに喧嘩はしないで下さいと、あれほど忠告したのに』ハァ・・・


オレじゃねぇ、馬鹿女郎。
336 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/07(火) 01:52:12.42 ID:48Pzi7xs0
とりあえず詳細を伝えた。


固法『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・黄泉川先生?』ポカーン・・・

黒妻「ああ」

固法『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それって、風紀委員より警備員呼んだ方が』タラー・・・


警備員だろうが風紀委員だろうが、あの人の暴走止められないだろ。


固法『うーん……じゃあ、芳川さんか一方通行くんに連絡するのは?』

黒妻「それで止まるかなぁ」ポリポリ・・・

固法『それじゃ如何しようも……あ、ちょ、御坂さん行こうとしないの! 打ち止めちゃんも座ってなさい!!』ワーワー!

黒妻「……後輩共も聞いてるんかい。てか打ち止めちゃんまで」ハァ・・・

固法『彼女達が勝手に聞き耳立ててるだけです! 白井さん早く止めて!』ギャー!


流石に超能力者……というか完全部外者は拙い。
残念だが美偉は宛てに出来ないか。仕方あるまい。


黒妻「うーん……じゃあ良いや。何とかオレ止めてみる」ハァ・・・

固法『え、でも……大丈夫ですか?』

黒妻「ばーろー。オレを誰だと思ってやがる」ニコッ

固法『誰とかっていう問題じゃなく……ハァ。しょうがない、一応向いますからあんまり無茶しないで下さいね』

黒妻「ああ。それと、美偉一人で来いよ」

固法『え? 私より白井さんの方が』

黒妻「喧嘩の相手は手塩さんだ」ボソッ

固法『え……あ』


双方、警備員。加えて昔の『色々』で喧嘩中っぽい。
ならば諸々を和らげる為にも、多少顔見知りであるオレや美偉の方が良いだろうという事だ。


固法『内輪解決ですか……了解です』

黒妻「じゃあ待ってるぞ」Pi!


さて……では止めるとしましょうか。
337 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/07(火) 01:53:34.93 ID:48Pzi7xs0
とりあえず詳細を伝えた。


固法『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・黄泉川先生?』ポカーン・・・

黒妻「ああ」

固法『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それって、風紀委員より警備員呼んだ方が』タラー・・・


警備員だろうが風紀委員だろうが、あの人の暴走止められないだろ。


固法『うーん……じゃあ、芳川さんか一方通行くんに連絡するのは?』

黒妻「それで止まるかなぁ」ポリポリ・・・

固法『それじゃ如何しようも……あ、ちょ、御坂さん行こうとしないの! 打ち止めちゃんも座ってなさい!!』ワーワー!

黒妻「……後輩共も聞いてるんかい。てか打ち止めちゃんまで」ハァ・・・

固法『彼女達が勝手に聞き耳立ててるだけです! 白井さん早く止めて!』ギャー!


流石に超能力者……というか完全部外者は拙い。
残念だが美偉は宛てに出来ないか。仕方あるまい。


黒妻「うーん……じゃあ良いや。何とかオレ止めてみる」ハァ・・・

固法『え、でも……大丈夫ですか?』

黒妻「ばーろー。オレを誰だと思ってやがる」ニコッ

固法『誰とかっていう問題じゃなく……ハァ。しょうがない、一応向いますからあんまり無茶しないで下さいね』

黒妻「ああ。それと、美偉一人で来いよ」

固法『え? 私より白井さんの方が』

黒妻「喧嘩の相手は手塩さんだ」ボソッ

固法『え……あ』


双方、警備員。加えて昔の『色々』で喧嘩中っぽい。
ならば諸々を和らげる為にも、多少顔見知りであるオレや美偉の方が良いだろうという事だ。


固法『内輪解決ですか……了解です』

黒妻「じゃあ待ってるぞ」Pi!


さて……では止めるとしましょうか。
338 :なんか今日ダブル投下になるねw [saga]:2011/06/07(火) 03:01:20.86 ID:48Pzi7xs0
黄泉川「んぎぎ……ね、ねぇ……一旦、離れない?」イテテ・・・

手塩「……そ、そうだね」グヌヌ・・・

黄泉川「5カウントでOKじゃん?」フゥ・・・

手塩「分かった……絶対よ?」ジトー・・・

黄泉川「そっちこそね……行くじゃんよ。5,4,3……」


双方の空気が変わった。


手塩「2,1……―――」ブンッ!!

黄泉川「0ッ―――」ブンッ!!


互いの手を離した瞬間……クロスカウンター。


黄泉川「ぎっ……い、いきなり殴んな!!」ブッ・・・

手塩「ぐっ……どの口、言うか……」ブッ・・・

黄泉川「だあああぁっ!! こうなったらとことんやったるじゃんよぉっ!!」オラァッ!!

手塩「スマートじゃ……無いわねっ!!」チィッ!!


本格的に殴り蹴り合いが始まった。


黒妻「アハハ……まぁさっきよりはコッチの方、止め易いな」タラー・・・


半蔵にメールをする。『殴り合い開始』……後はオレ次第だな。


黄泉川「こんのぉ! いつもいつもスカしやがってぇっ!! そういうのクールじゃなくて根暗っつーじゃんよ!!」ミギストレート!

手塩「別にっ、何と言われようがっ、構わないっ! そう言う愛穂こそっ、熱血じゃなくてっ、ウザったいのよ!!」ミギローキック!

黄泉川「喧しいじゃん! アンタが勝手に消えた所為で諸々の仕事私に押し付けられたんだ!! 謝れ馬鹿!!」ミギマワシゲリ!

手塩「だからっ、手紙で謝った筈だろっ。グチグチっ、言うな!! 脳筋女!!」ヒダリシュトウ!

黄泉川「顔見て謝れってんじゃん!! あとポーカーの負け金払ってないじゃんよ!!」ミギショウテイ!

手塩「アンタがっ、貸した5万返したらっ、払ってやる!! それとっ、私のライフル壊したのっ、愛穂まだ弁償してない!!」ヒダリヒジウチ!

黄泉川「んなモン支給品なんだからチマチマすんな! 良いから大人しく私に頭下げて、その後桔梗とか色んな人に頭下げろ!!」ミギハイキック!

手塩「ふざけるな! いつもっ、姉貴ぶって……そういう所っ、気に喰わないのよ!!」ミギフック!


かなり下らない会話だが……オッカネェな、おい。
339 :なんか今日ダブル投下になるねw [saga]:2011/06/07(火) 03:02:02.27 ID:48Pzi7xs0
黄泉川「んぎぎ……ね、ねぇ……一旦、離れない?」イテテ・・・

手塩「……そ、そうだね」グヌヌ・・・

黄泉川「5カウントでOKじゃん?」フゥ・・・

手塩「分かった……絶対よ?」ジトー・・・

黄泉川「そっちこそね……行くじゃんよ。5,4,3……」


双方の空気が変わった。


手塩「2,1……―――」ブンッ!!

黄泉川「0ッ―――」ブンッ!!


互いの手を離した瞬間……クロスカウンター。


黄泉川「ぎっ……い、いきなり殴んな!!」ブッ・・・

手塩「ぐっ……どの口、言うか……」ブッ・・・

黄泉川「だあああぁっ!! こうなったらとことんやったるじゃんよぉっ!!」オラァッ!!

手塩「スマートじゃ……無いわねっ!!」チィッ!!


本格的に殴り蹴り合いが始まった。


黒妻「アハハ……まぁさっきよりはコッチの方、止め易いな」タラー・・・


半蔵にメールをする。『殴り合い開始』……後はオレ次第だな。


黄泉川「こんのぉ! いつもいつもスカしやがってぇっ!! そういうのクールじゃなくて根暗っつーじゃんよ!!」ミギストレート!

手塩「別にっ、何と言われようがっ、構わないっ! そう言う愛穂こそっ、熱血じゃなくてっ、ウザったいのよ!!」ミギローキック!

黄泉川「喧しいじゃん! アンタが勝手に消えた所為で諸々の仕事私に押し付けられたんだ!! 謝れ馬鹿!!」ミギマワシゲリ!

手塩「だからっ、手紙で謝った筈だろっ。グチグチっ、言うな!! 脳筋女!!」ヒダリシュトウ!

黄泉川「顔見て謝れってんじゃん!! あとポーカーの負け金払ってないじゃんよ!!」ミギショウテイ!

手塩「アンタがっ、貸した5万返したらっ、払ってやる!! それとっ、私のライフル壊したのっ、愛穂まだ弁償してない!!」ヒダリヒジウチ!

黄泉川「んなモン支給品なんだからチマチマすんな! 良いから大人しく私に頭下げて、その後桔梗とか色んな人に頭下げろ!!」ミギハイキック!

手塩「ふざけるな! いつもっ、姉貴ぶって……そういう所っ、気に喰わないのよ!!」ミギフック!


かなり下らない会話だが……オッカネェな、おい。
340 :なんか今日ダブル投下になるねw [saga]:2011/06/07(火) 03:02:40.02 ID:48Pzi7xs0
黄泉川「んぎぎ……ね、ねぇ……一旦、離れない?」イテテ・・・

手塩「……そ、そうだね」グヌヌ・・・

黄泉川「5カウントでOKじゃん?」フゥ・・・

手塩「分かった……絶対よ?」ジトー・・・

黄泉川「そっちこそね……行くじゃんよ。5,4,3……」


双方の空気が変わった。


手塩「2,1……―――」ブンッ!!

黄泉川「0ッ―――」ブンッ!!


互いの手を離した瞬間……クロスカウンター。


黄泉川「ぎっ……い、いきなり殴んな!!」ブッ・・・

手塩「ぐっ……どの口、言うか……」ブッ・・・

黄泉川「だあああぁっ!! こうなったらとことんやったるじゃんよぉっ!!」オラァッ!!

手塩「スマートじゃ……無いわねっ!!」チィッ!!


本格的に殴り蹴り合いが始まった。


黒妻「アハハ……まぁさっきよりはコッチの方、止め易いな」タラー・・・


半蔵にメールをする。『殴り合い開始』……後はオレ次第だな。


黄泉川「こんのぉ! いつもいつもスカしやがってぇっ!! そういうのクールじゃなくて根暗っつーじゃんよ!!」ミギストレート!

手塩「別にっ、何と言われようがっ、構わないっ! そう言う愛穂こそっ、熱血じゃなくてっ、ウザったいのよ!!」ミギローキック!

黄泉川「喧しいじゃん! アンタが勝手に消えた所為で諸々の仕事私に押し付けられたんだ!! 謝れ馬鹿!!」ミギマワシゲリ!

手塩「だからっ、手紙で謝った筈だろっ。グチグチっ、言うな!! 脳筋女!!」ヒダリシュトウ!

黄泉川「顔見て謝れってんじゃん!! あとポーカーの負け金払ってないじゃんよ!!」ミギショウテイ!

手塩「アンタがっ、貸した5万返したらっ、払ってやる!! それとっ、私のライフル壊したのっ、愛穂まだ弁償してない!!」ヒダリヒジウチ!

黄泉川「んなモン支給品なんだからチマチマすんな! 良いから大人しく私に頭下げて、その後桔梗とか色んな人に頭下げろ!!」ミギハイキック!

手塩「ふざけるな! いつもっ、姉貴ぶって……そういう所っ、気に喰わないのよ!!」ミギフック!


かなり下らない会話だが……オッカネェな、おい。
341 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/07(火) 03:18:55.64 ID:48Pzi7xs0
黒妻「水を指す様で悪いが、こっちも色々あるんでね……止まって貰う」スッ・・・


足元のに落ちてた石を二つ拾う。そして軽く放る。


黄泉川「―――五月蠅い! 恵未はだから……ッ」バッ!

手塩「―――しつこい! 人を馬鹿にして……ッ」バッ!


見事に避けられた。『ヒューッ!』ってヤツだな。


黒妻「はいはい、止まった」テクテク・・・

黄泉川「……黒妻」チラッ・・・

黒妻「ったく、女性があんな格闘戦するもんじゃないですよ……御蔭で止めるタイミング迷いましたね」ハハハ

手塩「……え」ポカーン・・・


オレの顔を見て、目を丸くする手塩さん。
仕方あるまい……この人はオレが『生きてる』事を知らない。


黒妻「……お久しぶりですね、手塩さん」ペコッ

手塩「黒妻……綿流、なのか」ポカーン・・・

黒妻「ええ、幽霊じゃないですよ。ちゃんと足も有りますし」ホラッ

手塩「……」キョトン・・・

黄泉川「……如何でも良いが、何の様じゃん? 見ての通り今『お話中』なんだけど」ジトー・・・


貴女(肉体言語)の『お話』程、怖いモノは無いな。


黒妻「そりゃ無いっしょ。黄泉川さん、アンタ仕事放っぽり出して何してんすか? 追い駆ける様、教頭に頼まれたんですよ」ジー・・・

黄泉川「うっ……」タラー・・・

黒妻「しかも随分と走り回ってくれて……後で煙草の一箱でも奢って下さいよ。割に合いませんって」ハァ・・・スッ・・・カチッ

手塩「……」ジー・・・

黒妻「ふぅ……ん? 何か?」ジジジ・・・

手塩「何故……生きてるの」ジー・・・

黒妻「『色々』あったんすよ。生きてちゃ駄目っすか?」ハハハ


誰も彼もが『色々』あるのだ。貴女と同じ様にね。
342 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/07(火) 03:40:47.89 ID:48Pzi7xs0
黒妻「兎に角、黄泉川『先生』。一緒に帰って貰いますよ」ジトー・・・

黄泉川「で、でもさぁ……」ウー・・・

手塩「……言うとおりになさい。愛穂、仕事中なんだろ」

黄泉川「ぐっ……だけど逃がさないじゃんよ」グヌヌ・・・

黒妻「ったく……そんじゃ手塩さん。少しばっか黄泉川さんと話してやってくださいよ。じゃないとこの人帰ろうとしないんで」ハァ・・・

手塩「それは……無理」ムゥ・・・


後ろめたいってか。顔にそう書いてある。


黒妻「……忙しいんすか?」フゥ・・・

手塩「え、ええ。今から用事があって」

黄泉川「嘘付け。私服のくせに……恵未の嘘は分かり易いじゃんよ」ヘンッ!

手塩「兎に角、無理ね。黒妻、久しぶりに会って、悪いのだけど、愛穂無理矢理にでも、連れて帰って頂戴」クルッ・・・

黒妻「無理ですね。オレの力じゃ」ハハハ・・・

黄泉川「……大人しくしろ。逃げても無駄じゃん」ジー・・・


手塩さんは嘆息を漏らし、再びその場から逃走しようとしている。そろそろだ……
オレは携帯を取り出し、急いで電話を入れた。


黒妻「……手塩さん」ポイッ!

手塩「え?」パシッ・・・

黄泉川「は? 何してんの?」ポカーン・・・

黒妻「いや、今さっき半蔵から電話掛ってきましてね。校門前居たんでしょ? 見つけたら電話くれって言われてて」

黄泉川「そういえば一緒に居たじゃん……」

黒妻「手塩さん、安心して出て下さい。電話中は馬鹿な真似させませんから」ニコッ

黄泉川「オマ……生意気を」ジトー・・・

黒妻「電話中に喧嘩売る程、常識無いんすか? 黄泉川『先生』」ジトー・・・

黄泉川「むっ……さっさと終わらすじゃんよ。あと終わったら電話貸せ。何であんな場所に恵未と半蔵居たか聞き出してやる」フンッ!


やれやれ、頑張れよ半蔵。とりあえずオレは煙草一本渡して落ち着かせるくらいの事しか出来ないからな。
343 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/07(火) 04:01:42.29 ID:48Pzi7xs0
 ―――とある数日後(その翌日)、PM06:30、学園都市第7学区、とある公園・・・(手塩side)・・・





先日から本当に驚いたり悩まされたりと忙しい。
愛穂もそうだが、目の前の男についても色々と因縁は有る。

兎角、幸か不幸か黒妻が愛穂を留めていてくれているうちに携帯の方に集中しよう。


手塩「……もしもし」

半蔵『ああ、手塩さん。落ち着いた?』

手塩「本気で、そう思ってる?」

半蔵『あはは。まぁ黄泉川から逃げ切れるまで無理ですよね』クスッ

手塩「ところで……また色々、聞きたい事が、増えたんだけど」チラッ


煙草を喫いつつ、此方を見遣ってくる二人。


半蔵『兄貴?』

手塩「……何故、生きてるの?」

半蔵『先日からその質問ばっかですね』アハハ

手塩「良いから、答えろ」ギリッ・・・

半蔵『やれやれ、せっかちな……何故生きてたかはオレも知りませんよ。兄貴、教えてくれませんもん』


あの大火災から生き延びれる筈が無いのだが……


半蔵『まぁ兄貴ですからね。戸籍無くなって大変らしいっすけど、それ以外は不自由無く暮らしてるみたいですよ』ハハハ

手塩「……じゃあ何で彼、此処に居るの?」

半蔵『あれ? 聞きませんでしたか? 黄泉川の紹介で学校の事務バイトしてるんすよ』


あの都市一の走り屋集団―――『大蜘蛛(ビッグスパイダー)』の頭がカタギになったというのか。


半蔵『嫁さん……固法さんの世話(ヒモ)になってますからね。あ、本人に言っちゃダメっすよ』クスクス・・・

手塩「固法……あの固法か。最近、風紀委員になったとか」

半蔵『最近? 結構前ですけど……手塩さん、ホントに情報収集して無いんすね』


確かに『一つの目標』にしか目がいってなかった。
今後少しは他の話題の情報も聞き入れる事にしよう。
344 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/07(火) 04:16:57.45 ID:48Pzi7xs0
では話はこれで……と電話を切ろうとした瞬間、ふと疑問が浮かぶ。

服部と、黒妻の共通は?

確かにスキルアウト出身同士仲が良いのかもしれないが、あまりに都合が良過ぎる。
愛穂についてもだ……まるで仕組まれているかの様で―――


手塩「ぁ……っ!」ギリリ・・・

半蔵『……ふふっ、ははは』


―――やられた。


半蔵『手塩さん……今日本来の目的は?』クスクス・・・

手塩「……」

半蔵『気付くのが遅すぎましたね。そうですよ……「死者」は「死者」なんです』ニヤッ・・・


この、策士め。


黒妻「……」コクッ・・・


ああ、成程。辻褄が合う。


半蔵『そういう事です。言った通り……【仮面】の下は「死者」だったでしょ?』ハハハ!

手塩「……覚えてなさい」ギリリ・・・

半蔵『おっと、怒らないで下さいよ。その場に黄泉川居るんでしょ?』

手塩「っ……暗部の事、ばらすの? 脅す気?」

半蔵『まぁまぁ、そんなに気を張らずに。俺らはアンタなら信用出来ると思って今に「至らせてる」んだ。あーゆーおけ?』


全て筋書き通り。まんまと乗せられた。
完全にアチラが有利。此方が【仮面】についてばらした所で、アチラも開けるカードがある。


半蔵『とりあえず「正体」は分かったでしょ。今回は此処までです。何れ、しっかりと話の場は設けます……兄貴込みでね』

手塩「……従えと」

半蔵『いえ、協力ですよ。無碍にはしない。寧ろ貴女有利に話を進めても良いと思ってる。安心して下さい』


ああ、畜生。お手上げだ。
345 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/07(火) 04:31:49.88 ID:48Pzi7xs0
半蔵『それじゃあ黄泉川に換わって下さい。手塩さんは少し兄貴と御喋りでも』ニコッ

手塩「……秘密は、守りなさい」ボソッ

半蔵『分かってます。フラットな関係なんだから言えませんよ』クスッ


電話を愛穂の方に投げる。
それから私に向かって『逃げるなよ!』と釘を刺し、怒鳴る様に服部と会話を始めた。

私は……黒妻の方を見る。彼はゆっくりと此方に近づいてきた。


手塩「……何と言ったらいいか、分からないよ」

黒妻「そうっすか……鉄網ちゃんは元気で?」

手塩「いつも通り、元気にオドオドしてる」

黒妻「そりゃ可哀想に」ククク・・・

手塩「……」ジー・・・


この男が『駒場利徳』を騙っている。何故だ。


黒妻「……駒場の死因は御存じで?」

手塩「詳細は、知らない」

黒妻「理事会への反攻作戦。無能力者を守る為にね……そんで暗部と戦った。第1位に立ち向ったそうですよ」

手塩「……そう。彼らが殺し合いを」ジー・・・


一方通行。彼もまた、私の馴染みの者。


黒妻「その一方通行も今は黄泉川さんの居候ですよ。知ってました?」

手塩「なっ……今日はつくづく、驚かされっ放しだ」ハハハ・・・

黒妻「……アンタ、過去に取り残され過ぎだよ」ハァ・・・

手塩「……」クスッ・・・


過去に取り残される、か。その通りかもしれない。
346 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/07(火) 04:49:22.83 ID:48Pzi7xs0
黒妻「さて……さっき『何故』と聞きましたね」

手塩「ええ。死者の真似事を、する意味は?」

黒妻「志半ばで倒れた友の意志を継いだ……ってんじゃ駄目ですか?」


志……友、か。


手塩「……無能力者の為に、立ったと?」

黒妻「助けが必要な者の為です。それから……『狩り』を止めます」

手塩「『狩り』……あの、狂ったマンハントパーティーね」

黒妻「それは知ってましたか。ええ、潰してやりますよ。その為には『抑止力』が必要です」


それが『駒場利徳』。
成程、無能力者(弱者)の象徴。能力者(強者)に負けない無能力者。


黒妻「凄腕の悪党であっても畏怖する存在。アイツはそのくらい強かった」

手塩「でも、それなら貴方だって」

黒妻「知名度の差ですよ。オレは所詮、第十学区……小山(ストレンジ)の大将に過ぎないから」


そんな事は無い。駒場、黒妻、横須賀、服部……マル武(武装無能力集団対策警備班)の中では屈指の有名人だ。


黒妻「昔の話でしょ。だけど駒場のヤツはまだ忘れ去られる程時間が経ってない……利用って言葉はアイツに申し訳無いが、幅が効く」

手塩「……警備員としては、止めなきゃいけないんでしょうけど、目を瞑るよ」

黒妻「ありがとう」ニコッ


今に生きるモノの邪魔はしない。それが過去に縛られた私の信条だ。


黄泉川「―――……だぁっ!! 喧しい!! 何で私じゃ無くて黒妻の方が先なんじゃんよ!! ……五月蠅い! 後で叩きのめす!」Pi!

黒妻「おっと、そんじゃまた後ほど……黄泉川さん。オレの携帯乱暴に扱わないで下さいよ」テクテク・・・

手塩「……」


……話だけでも、聞いてみるか。
347 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/07(火) 05:11:02.93 ID:48Pzi7xs0
 ―――とある数日後(その翌日)、PM07:00、学園都市第7学区、とある公園・・・(固法side)・・・




連絡のあった公園へ来てみると、何とも厄介そうな光景が目に飛び込んだ。
騒ぎ立てる黄泉川先生。それを宥める先輩。そして……俯いたまま棒立ちの手塩さんの久しい姿。


固法「ハァ……こんばんは、風紀委員です」テクテク・・・

黄泉川「―――うがー! 口開けこのスカポンタン恵未ぃ!!」ギャーギャー!

黒妻「ちょ、いい加減に……あ、良いとこ来た! 止めるの手伝え美偉!」アタフタ・・・

固法「まったく……」チラッ・・・

手塩「……今度は、固法か。大きくなったな」クスッ・・・

固法「御無沙汰してます、手塩さん」ニコッ・・・


この人はスキルアウト時代の私しか知らない筈。本当に久しぶりだ。


黄泉川「無視すんなやぁごるぁっ!!」ガーガー!

黒妻「あーもう……黄泉川さん! これ以上はホントにヤバいですから、帰りましょう!」ンモー・・・

固法「……手塩さん、少しお話してあげれば気が済むんじゃないですか?」ハァ・・・

手塩「多分、もう無理……今の愛穂は、何言っても、怒ってて聞き入れないよ」

黄泉川「うっせぇじゃん!! 澄ましてんじゃねぇぞ!! 面と向かって話せっつってんじゃん!!」ギリリ・・・


いっその事、警備員の本部にでも連絡してやろうか。


手塩「……私、今本部勤めだから、止めて」ポリポリ・・・

固法「え? そうだったんですか。栄転ですね、おめでとうございます」ニコッ

手塩「デスクに、左遷されただけだよ」ハハハ・・・

黒妻「何を呑気な……何とかしてくれよ! 風紀委員殿!!」ハァ・・・


やれやれ、一応手は打ってるから大丈夫だと思う。


黒妻「手って……何を?」グヌヌ・・・

固法「白井さんに頼んで『とある人』にお願いをしました。そろそろ来る頃だと思いますよ」

黒妻「……内輪でって言ったろ」ジトー・・・

固法「安心して下さい。白井さんも空気は読めますよ。黄泉川先生が問題を、って言ったら黙って首を縦に振ってくれました」

黄泉川「んぎぎ……固法まで私を馬鹿にするかぁ!!」ギャーギャー!


まったく、この人は変な所で子供っぽい。まるで先輩の女性バージョンだ。
あ、噂をしてれば黄泉川さんの背後から……―――
348 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/07(火) 05:13:02.63 ID:48Pzi7xs0


























               コキャッ・・・・・


























349 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/07(火) 05:30:04.74 ID:48Pzi7xs0
首が変な方向へ曲がる軽快な音。


黒妻・手塩「「なっ……」」ギョッ・・・


確か、黄泉川先生が頭上げられない人だって聞いてたから呼んで貰いました。


寮監「……」フンッ・・・

黄泉川「」チーン・・・


常盤台中学女子寮の寮監さん。


寮監「昔から人様に迷惑を掛けるなと、口を酸っぱくして忠告してきた筈だが……警備員になっても変わらないのか、貴様は」グイッ・・・

黄泉川「せ……ぱ……ぃ……」ガクッ・・・

寮監「少し寝てろ」ギロッ・・・


首を元の位置に戻し、先輩の方へ黄泉川先生を放った。


固法「寮監さん。態々すいません」ペコッ

寮監「いや、此方こそ愚かな後輩共が馬鹿騒ぎして何と謝罪すれば良いか」チラッ・・・

手塩「……っ」ビクッ・・・

寮監「……久しいな、手塩」ジー・・・

手塩「……はい」コクッ・・・


何やらシリアスな感じだ。


寮監「……今は何も聞かん」スッ・・・

手塩「え」

寮監「聞かれたくないのだろう? だったら貴様が自分から話すまで待つ……おい、男。黄泉川を寄越せ。連れて帰る」ヨイショッ・・・

黒妻「え、あ、はい……でも学校には」ドーゾ・・・

寮監「私が電話をしておく。警備員の仕事だと言えば何とでも誤魔化せるからな」

手塩「……」


黄泉川先生を肩に背負い、踵を翻す寮監さん。
そのまま消える……と思いきや、眼鏡を外して優しく呟いた。


寮監「恵未……必ず挨拶しに来なさい。時間が経っても良いから……私や愛穂にキチンと、もう大丈夫ですって報告しにね」ニコッ・・・

手塩「先輩……」

寮監「……前を向きなさい。頑張るのよ」クスッ・・・


それだけ告げ、再び眼鏡を掛けて……帰って行った。
350 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/07(火) 05:42:18.93 ID:48Pzi7xs0
さて、残るは私を含めて3人だけ。


黒妻「やれやれ……んじゃオレらも帰りますか」ハァ・・・

固法「……何だかなぁ」ポリポリ・・・

手塩「……」ジー・・・

固法「あ、手塩さん。もう大丈夫ですよ。報告書類は黄泉川先生宛てに回しときますから」ニコッ


しかし無言。動く気配がない。


固法「手塩さん?」キョトン・・・

手塩「……黒妻」ボソッ

黒妻「……何か?」チラッ・・・

手塩「オマエの『顔』は……彼女の為か?」

黒妻「それもかもね」クスッ・・・


顔?


手塩「そうか……大事にしろよ」クスッ・・・

黒妻「言われんでもそうしてます。手塩さんも、前向きにね。貴女は生きてるんですから」ニコッ

手塩「生意気だよ。死人のくせに」フフフ・・・テクテク・・・


悲しそうな、でも少しほっとした様な顔で帰って行く手塩さん。
一体何なのだ?


黒妻「うーん……生き死にって難しいな」ハハハ

固法「先輩の言葉遊び、嫌いです」ムゥ・・・

黒妻「あはは。ま、生きて様が死んで様がオレらは変わりないな」ニコッ

固法「……ばーか」フフフ・・・///


恥ずかしいセリフ、禁止です。
351 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/07(火) 05:54:10.03 ID:48Pzi7xs0
 ―――とある数日後(その翌日)、PM07:30、学園都市第7学区、とある道路・・・・・・




その後、一度学校にバイクを取りに行くと告げ、美偉を先に帰らせた。

帰り道、半蔵へ報告の電話をする。


半蔵『……兄貴馬鹿でしょ』ハァ・・・

黒妻「うっせぇよ。自覚してるわ」ケッ

半蔵『土御門から聞きましたよ? 部外者二人も入れて……何かあったら如何すんですか?』ッタク・・・


あの道化、見てやがったのか。


半蔵『兎に角、手塩さんは確実に此方のペースには乗せました。後は交渉次第ですね。それは雲川にでも押し付けましょう』

黒妻「そこん策(とこ)はオマエらに任せるよ。とりあえず、今日は御苦労さん」

半蔵『ええ、御気をつけて』Pi!


さて、そんじゃぁ今晩くらいはゆっくりと――


 Prrr・・・・・


――したいなぁと思った矢先、電話だ。相手は……雲川。


黒妻「……あいよ」Pi!

雲川『おや、お疲れの御様子だけど。如何した?』

黒妻「今の今まで黄泉川さんと手塩さんの相手してたんだっつの」ハァ

雲川『成程な。それはお疲れ様』フフフ


そういえばオマエは何もしてないな。


雲川『私は私なりに動いてるけど……まぁ良いわ。話があるんだけど』

黒妻「今回の件か? それとも……『狩り』について?」

雲川『違う。この前、大事な話があるから後で電話すると言ったろ。それだけど』


そういえばそんな事言ってたな……何だ。
352 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/07(火) 06:12:34.82 ID:48Pzi7xs0
雲川『悪いけど、他言無用の話だ。土御門や服部にもだぞ』

黒妻「……ああ」コクッ・・・

雲川『……まず、今世の中が戦争ムードだって事は知ってるな?』


確か第三次世界大戦がおきそうだとかいう話か。


雲川『それに乗じてるのかは知らんが、理事会の威厳が落ちてきている』

黒妻「まぁ責められるのは政治家の役目だろ」

雲川『まぁね。ただ戦争の所為だけじゃないんだけど……度重なる不手際ってヤツだな』

黒妻「不手際?」

雲川『「0901テロ」や「0930テロ」……そして「1003運動」。貴方が良く知る駒場が起こした運動よ』


※0901・・・シェリー。  0930・・・ヴェント。  1003・・・駒場。


雲川『正直言って、理事会の信用はガタ落ち状態だけど』ハァ・・・

黒妻「だから何だよ」ポリポリ・・・


ハッキリ言え。


雲川『……じゃあ率直に言う。暗部が今危険な状態だけど』

黒妻「暗部が?」

雲川『ええ。彼らの「親」は理事会。その「親」に対して「子(暗部)」らが疑念を抱いているけど』

黒妻「疑念……信用できないって訳か?」

雲川『そうだ。非常に危険な状況にあるらしいね』


つまり……親元から離れるってか。


雲川『そんな生易しい言い方で済まないけど』

黒妻「何?」ピクッ・・・

雲川『反逆、親殺し、クーデター……何でもいいけど、その類よ』


トンでも無い事を宣いやがった。
353 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/07(火) 06:26:36.88 ID:48Pzi7xs0
雲川『……具体的な決行日は分からない。でもそう遠くない筈だけど』

黒妻「お、おいおい。ちょっと大袈裟じゃねぇか? しかも決行日って……まるでマジで反逆が起こるみたいな事」

雲川『起こるわよ。確実に……私の読みは外れない。少なくとも2グループは既に準備を始めてるみたいだけど』

黒妻「穏やかじゃないな」ハァ・・・


だが、それがオレに何の関係があるんだ。


雲川『……分からない?』

黒妻「いや、危ないって事ぁ分かるけど……」

雲川『……アイテムも、暗部だけど』

黒妻「っ」


そういえば……忘れていた。


雲川『まぁそれはさておき』

黒妻「さておきって、それが問題なんじゃ!」

雲川『それはあくまで貴方の身内に関する事だろ……そうじゃない。街の問題を言っているんだけど』

黒妻「む……街、か」

雲川『ハッキリ言って、平穏が崩れる。それはもう個のレベルじゃない』


確かにそうだ。オレらがチマチマ動いた所で、大規模なクーデターが起こったらどうしようもない。


黒妻「だが……巻き込まれる無関係な人間は居る」

雲川『ええ。それらを守りなさい。ついでに……「私情」の方も動けばいいけど。OK?』

黒妻「ああ。だけどさ、何で二人には伝えないんだ? 土御門は暗部っぽいから仕方ねぇけど」

雲川『……今はまだ駄目。服部に教えるのは直前で十分だけど』

黒妻「何で?」

雲川『今回ばかりは彼、掻き乱す方に回りかねないから怖いんだ……兎に角、黙っといて。直前で気付けば馬鹿な事はしない筈だけど』


成程……だが考え過ぎだと思うけどな。
354 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/06/07(火) 06:42:09.39 ID:48Pzi7xs0
雲川『いい? あの二人にはまだ伝えない事』

黒妻「……分かった。この件についてはオマエの指示を仰ぐ」

雲川『宜しい。それから……土御門舞夏を保護出来る様にしておきなさい。一応約束だけど』


ほぉ……遂にデレたか。


雲川『うっさい。それから上条当麻もだぞ……まぁアレは事件に勝手に首突っ込みそうで怖いんだけど』

黒妻「まぁ出来得る限りの事はするさ」

雲川『ええ……あ、最後に』

黒妻「……」

雲川『……アイテムには暫く干渉しない事、特に、絹旗最愛』サラッ・・・


何故だ。


雲川『何故? 言わせる気?』

黒妻「……悪いが、当日は動くぞ?」

雲川『ハァ。何言っても無駄だろうけど、一応言っとく……―――





       絹旗最愛を見殺しにする覚悟、しときなさい。





    ―――……情が入ってしまってるのは分かってるけど、でも……』


お断りだ。


雲川『……やっぱ無駄ね。何も言わない』

黒妻「兎に角……探りは入れない。だがもし『審判の日』が来ても……オレは自分を通すぞ」ギリッ・・・

雲川『……また連絡する。急にこんな事話してすまなかった』Pi!


電話が切れる。



黒妻「くーでたぁ……あはははは……反逆、ねぇ。はははは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・く、そったれがぁッ!!」ガンッ!!



目の前が真っ暗になりそうだった。
ふと子供達と美偉の顔が浮かぶ……誰かこの低脳なオレに画期的な判断を授けてくれ……―――
355 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました [saga]:2011/06/07(火) 06:50:20.87 ID:48Pzi7xs0
はい。以上です。何か今日、訳分かんない投下になってになってごめんなさいね(汗”

兎に角やっと一段落だ……次から遂に『クーデター』編です。なるべく本編には差し支えない様努力します。


んでもって……次回はおまけの『If.アンジェレネ・アフター』です。期待しないでお待ち下さい。
あ。えっと、>>289 、のアンケートまだお答えしてない人、御協力よろしくね!


そんじゃあ、例の如く感想質問意見罵倒提案リクエスト等々、コメントお願いします。ではまた次回! ノシ
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/07(火) 10:16:29.88 ID:7ze2915DO
>>1


アイテムて
クーデター側だったけ?

まあこのSSはどっちでもいいのか
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/06/07(火) 18:38:46.24 ID:CjRDZVBN0
実際アイテムは学園都市の反逆者を[ピーーー]のが仕事だけど、
こまけえこたあ
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/06/07(火) 18:39:19.35 ID:CjRDZVBN0
実際アイテムは学園都市の反逆者を[ピーーー]のが仕事だけど、
こまけえこたあ
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/06/07(火) 18:40:03.99 ID:CjRDZVBN0
わりぃ連投しちまったorz
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/08(水) 00:05:22.02 ID:L9/GKbeDO
>>359
こまけえこたぁ
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 02:11:56.48 ID:CiGtCfKDO
>>356
クーデター計画してたのはスクール、ブロック、メンバーだよね。
まぁでも『2グループ』って言ってるしアイテム入ってないんじゃね?

クーデター連中を『粛正』する最中に『最悪』が有るのを覚悟しとけ、って意味かもにゃ。
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/06/09(木) 03:02:49.68 ID:5MidYBqpo
クーデターが起きたらアイテムはその性質上、どっち側でも巻き込まれるからってことだろう
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/10(金) 23:44:15.13 ID:t+5SbxgDO
そんなこまけえこたぁなあ
〇∧〃 関係ねえよ!!
 / >   カァンケイねェェんだよォォォ!!
 < \
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [sage]:2011/06/27(月) 04:01:11.42 ID:m2ahLiGno
黒妻が関係しない場面と日常場面はおもしろい
365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 22:46:42.05 ID:vrVFobSDO
>>364
黒妻の兄貴がいないと始まらんだろ
366 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/07/09(土) 23:38:05.25 ID:GpMENNTc0
こんばんわ。ただいま。お久しぶりです。

遅くなりましたが、予告です。
明日の午後5〜6時頃から『If.アンジェレネ・あふたー』投下します。

ちょぴっと苦い感じの話だけど、よろしくねー! ノシノシ”
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/10(日) 00:23:41.09 ID:dxmB9tBG0
きたあああああああああああああああああ!!!
待ってたぜ、>>1!!
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/10(日) 02:14:29.13 ID:83ndihJDO
やっと来たか!
セレブティッシュ買って全裸待機しとく!
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/10(日) 17:12:59.96 ID:d3OZ1Lej0
待ってるよ〜
370 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/07/10(日) 19:07:20.40 ID:bDFd73HO0
こんばんわ。遅くなってスイマセン。


レス返信!

>>356-363
クーデター派はブロックとスクールだと思ってました。メンバーの動きというか動機は今一理解できなかったので。
アイテムとグループは暗部という事で、嫌が応にも巻き込まれます。
そこに兄貴やら香焼(魔術サイド)が介入したら大問題……という感じです。



では次に注意事項。

・今から投下する話はR−18です。
・香焼が15%くらい『カミやん病:ゲス条症状』発症してます。
・『アンジェレネは清純な娘だ、穢すなボケ!』という方は見ない方が……

以上を踏まえて、ご覧下さい。ではどうぞ!
371 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/10(日) 19:17:20.75 ID:bDFd73HO0
 ―――とある日(一日目)、PM08:30、英国ロンドンシティ北部、日本人街、とあるアパート・・・・・








WWV(第三次世界大戦)を終え、更に幾多の問題が過ぎ去ったとある未来。自分――香焼は嘗ての五和程の年齢になっていた。
天草内での立場は未だに変わらず平教徒。それが別に嫌だとか偉くなって出世したい等と急いてはいないが、
周りの同年代の友人たちを見るに、若干、置き去られた感が否めない。

さておき、今は7月棒日。日本では梅雨前後で厄介な時期だが、ロンドンではそんなに変わりない天候だ。
雨はしょっちゅうだし、湿気はまぁまぁ。暑くもなく、寒くもない。平均的な街だと思う。因みに今日も雨。


香焼「……はぁ」


この歳になって詩的な事を謳うつもりはないが、自分の心も雨模様。
残念ながらゲーテの言う様に、全部放っぽり出してその中を踊るのが自由だなんて到底思えない。

その心の雨雲――今、自分が抱えている悩みの理由は成り行きで……一匹の『犬』を拾ったからである。












アンジェレネ「わんっ」












本当に真似しなくていいから。












If.アンジェレネ・アフター













372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/10(日) 19:22:52.28 ID:83ndihJDO
キター――――(>∀<)―――――!!!
373 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/10(日) 19:26:46.43 ID:bDFd73HO0
アンジェレネ「おかえり。今日は遅かったね」パタパタッ


スリッパを鳴らし玄関に駆け寄ってくるわんこ……もとい、アンジェレネさん。


アンジェレネ「ご飯、作っておいたよ。インターネットで調べてミソスープ作ってみたの!」ペカー!


彼女がこの狭い1LKのアパート(しかも和風造り)に転がり込んできて約二週間。
何故『転がり込む』なんて表現を使うのかというと、現状アンが『勝手に居る』からである。
しかも居座ってから一度も家から出ていない様だ。当初着ていた修道服は、洗濯して以降、まるで袖を通していない様子。


アンジェレネ「先にシャワー浴びちゃう? あ、一応バス(浴槽)にお湯入れといたよ」

香焼「別にシャワーでいいのに」

アンジェレネ「だって日本人はオンセン好きなんでしょ。じゃあバスタブにお湯必要じゃない? それよりご飯どうしますかー」

香焼「温泉関係無いし……折角だから、先食べるよ」コクッ

アンジェレネ「りょーかいです! 温めるから荷物置いてきちゃって」パタパタッ


楽しそうにキッチンへ戻って行った。


香焼「……、」


男物の半袖パーカーとハーフパンツ姿。サイズが合っているのは3,4年前の僕のお古を何時の間にか引っ張りだしたからだ。
因みに髪は編んでいないので、ウェーブの掛ったストレートが無造作に揺れている。

不用心な彼女と帰って来た自分。傍から見ればまるで同棲している学生カップルに見えなくもないだろう。
だが、彼女と付き合っているという訳ではない。あくまで『成り行き』故だ。


アンジェレネ「コォヤギくーん。準備出来たよー」オーイ


とりあえず今は飯か。


香焼「何、かな。これは?」タラー・・・

アンジェレネ「ミソスープだよ。あとコッチはサシミサラダ。それからライス(米粉パン)、ツケモノ。全部和食にしてみたよ!」ニパー!


何故かミソではなく醤油の匂いがプンプンする味噌汁。そして米粉パン……もはやご飯じゃない。
刺身サラダ……って、紫蘇ドレッシング掛けたカルパッチョ。漬け物に至っては西洋漬け(ピクルス)である。


香焼「……アン。普通、味噌汁に醤油は使わないよ」ダラダラ・・・

アンジェレネ「え? ミソペースト(お味噌)が無いからソイソース(醤油)でも良いかなぁって。同じお豆(ビーンズ)でしょ」ポカーン・・・

香焼「ぇ……味見は?」ダラダラ・・・

アンジェレネ「うん。それなりに飲めた」コクンッ


まぁ喰えれば良いか。足りなかったら後で米早炊きして卵かけご飯でも食べよう。
374 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/10(日) 19:34:22.34 ID:bDFd73HO0
香焼「それじゃあ、食べようか」

アンジェレネ「はいどうぞ。あ、箸(チョップスティック)必要だね。忘れてた」

香焼「別にフォークとスプーンでも良いよ」


また楽しそうな顔。僕が食前の祈をしてる最中も、ニコニコ。


香焼「―――……いただきます」

アンジェレネ「うん、召し上がれ」ニコニコッ


二人だけの夕飯。二人だけの、オママゴト。


アンジェレネ「おいしい?」ジー・・・

香焼「ん。食べれるよ」モゴモゴ・・・

アンジェレネ「酷いなぁ。感想欲しいのに」ムゥ・・・

香焼「……濃い、ね」アハハ・・・


世辞でも美味いとは言えん。


アンジェレネ「じゃあもっと修行だね!」ムンッ!

香焼「……、」


真っ当な料理を作れるようになるまで、居座る気なのだろうか。


香焼「あの、さ。アン」

アンジェレネ「あ。そういえば今日インターネットで学園都市の学校調べたの! コォヤギくんの学校、学力だけならTop10なんだね!」ニパー!

香焼「……アンジェレネ」

アンジェレネ「でも凄いよねー。私今までパソコン弄った事なかったけど、アレ有れば何時間でも時間つぶせるよ」フフフフ・・・


まるで、駄目人間……ではなくて、話を逸らすな。


香焼「今更だけど、これから如何するのさ」

アンジェレネ「えっと……如何って、その……うん」ボー・・・

香焼「ウチに誰か尋ねて来ないとも限らないし」

アンジェレネ「……隠れる」

香焼「馬鹿かぃ……あとオレだって3日後もすれば都市に戻るんすよ。その間、如何するの?」

アンジェレネ「……、」


俯いて難しい顔をする少女。


アンジェレネ「……鍵、預かる」チラッ・・・

香焼「駄目。どっちにしろ財布も携帯も持ってきてないから、此処に居ても生活出来ないだろ」キッパリ・・・

アンジェレネ「お金、貸して」ムゥ・・・

香焼「やだ」キッパリ・・・

アンジェレネ「……お願い」シュン・・・

香焼「……ハァ」


まるで駄目だ。アニェーゼ部隊に戻る気がサラサラ無いっぽい。
結局それから食事が終わるまで、無言が続いた。
375 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/10(日) 19:45:52.50 ID:bDFd73HO0
 ―――とある日(一日目)、PM09:50、英国ロンドンシティ北部、日本人街、とあるアパート・・・・・







英国(こっち)のアパートは都市の便利なオール電化マンションとは違い、至って質素な作りである。
備え付けの食器洗い機やIHシステムなんかない。故に、食器の手洗いは当たり前である。


アンジェレネ「ふんふふ、ふんふふ、ふんふーふ〜♪」カチャカチャ・・・


先とは一転、再び陽気に戻るアンジェレネ。何故か楽しそうに食器を洗っている。


アンジェレネ「コォヤギくん、今日は書類書き無いの?」

香焼「報告書は書き終えてきたよ。明日明後日はしっかり休みたいからね」ボー・・・

アンジェレネ「そっか。じゃあのんびーり、だね」ニパー!


食器を拭き終え自分の居るリビングへ。僕が座っていたソファの目の前にいきなり座ると、何気ない顔でリモコンを奪った。
そして勝手に天気予報を、バラエティ番組へ変える室内大型犬。


香焼「ちょっと」ジトー・・・

アンジェレネ「テレビよりネットの方が詳しい予報見れるでしょ」パタパタッ

香焼「……はぁ」

アンジェレネ「うーん、全部面白くない。モンティ・パイソンみたいなのやらないかなぁ」ムゥ


そのチョイスは奈何せん如何かと思う。
さておき……目の前の床にペタンと座る少女と真剣に話をせねばなるまい。


香焼「……ねぇ。アン。真面目に話そう」

アンジェレネ「むぅ……コォヤギくん、そればっか」

香焼「君が話逸らしてばっかだからだろ」


2週間前からずっとそうだ。只管、現実逃避。


アンジェレネ「……、」

香焼「皆心配してるよ」

アンジェレネ「……してないもん」ムスー・・・

香焼「してないわけないだろ。きっとアニーとルチアさんは特に――」


アンジェレネ「知らない」ザックリ・・・


香焼「――……あっそ」ハァ・・・


どうしようもないな。


香焼「勝手にしろ」スッ・・・

アンジェレネ「……、」


何も言わず席を立ち、バスルームへ向かう。今日はもうさっさと寝よう。
376 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/10(日) 20:05:10.41 ID:bDFd73HO0
アンジェレネ「何処行くの」

香焼「シャワー」テクテク・・・

アンジェレネ「私も行く」スゥ・・・


……。


アンジェレネ「駄目?」キョトン・・・

香焼「駄目」ジトー・・・

アンジェレネ「この前は一緒に入ってくれたのに」ブーブー!

香焼「……兎に角、駄目」テクテク・・・


自分が『最低』で有るのを自負した上で、彼女を拒絶する。
寂しそうな表情を浮かべるアンジェレネを後目に、自分は風呂場に向かった。


香焼「ったく……せめて大人しくしてて欲しいよ」ガチャッ・・・チャプン・・・


雨の日外から帰って来た後の風呂は、風邪が治った後浴びる熱い湯の感覚に似ている気がする。
体温が中途半端な状態になっているからだろうか……詳しい理由は分からない。
都市に戻ったらその手の能力者(専門家)にでも聞いてみよう。


香焼「ん?」チャポン・・・


ドアの前に気配。


香焼「……駄目だぞ」

アンジェレネ『まだ何も言って無いじゃん』ムゥ・・・

香焼「風呂場には入れない。鍵閉めてるだろ」

アンジェレネ『ふーん……ねぇ。身体洗った?』

香焼「は?」ポカーン・・・

アンジェレネ『身体と髪、洗ったの?』

香焼「まだ湯船だけど……え?」


嫌な予感。


アンジェレネ『ボトルの中』ボソッ・・・

香焼「おま……、」タラー・・・

アンジェレネ『ふふっ。ね、開けてー』トントンッ


策士め。だが、しかし。


香焼「石鹸取らなかったのは甘かったね。身体洗えるよ」フンッ

アンジェレネ『むぅ……髪は?』

香焼「明日朝シャワー浴びる」アハハハ

アンジェレネ『ずるーい!』ワーワー!


ずるくない。寧ろ狡いのはオマエだ。
377 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/10(日) 20:30:50.21 ID:bDFd73HO0
香焼「だから諦めて大人しく……って」エ・・・

アンジェレネ『うーんっと……、』カチャカチャ・・・


嫌な音がした。この音は……五和のキーピックの音に似ている。


香焼「ちょ、待――」


アンジェレネ『よっと! 開いたー!」ガチャッ!


香焼「――……おい」ドキッ・・・

アンジェレネ「コォヤギくん帰ってくる前に事前練習しといて良かった!」ヤッホーゥイ!


一糸纏わぬ姿で堂々と風呂場に入ってくるアンジェレネ。
絹の様な肌。数年前と比べ幾らか膨らんだ乳房。淡い桃色の乳首。歳の割には薄い陰毛。


アンジェレネ「あはは。えっちー」クスクスッ///

香焼「っ」フルフル・・・///


満面の笑みでアホな事抜かしやがった。いくら暇人だからといってやって良い事と悪い事があろうに。


アンジェレネ「お邪魔しまーす」ニコニコッ

香焼「だ、や、来るな!」アワワワ・・・///

アンジェレネ「えへへ♪」チャポンッ・・・


あー、畜生……『また』だ。


アンジェレネ「ぶー! そんな嫌な顔しないでよー!」ツンツン・・・ウリウリ!

香焼「五月蠅い頼むから黙って……、」ミエナイミエナイミエナイ・・・///


狭い湯船に二人きり。無論、互いに裸。しかし何故か男である僕の方が股間を隠している。


アンジェレネ「コォヤギくん、足伸ばして良いのに」キツー

香焼「……伸ばしたらアン入れないだろ」ハァ・・・

アンジェレネ「私、コォヤギくんの上に座るから問題無いよ」ニパー!


大アリだ、馬鹿者。


香焼「やっぱ風呂出るよ」スッ・・・

アンジェレネ「何でー?」エー・・・

香焼「何でも糞も無い。駄目に決まってるだろ」

アンジェレネ「……ふーん」ジトー・・・


淡々とした声。まるで機械。彼女はいきなり身体を自分の向け、逃がさぬ様、詰め寄ってきた。
378 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/10(日) 20:57:17.23 ID:bDFd73HO0
そして告げる。


アンジェレネ「いまさら?」


何も、言えない―――







アンジェレネ「もう、Hしちゃったのに?」







―――言い返せない。


アンジェレネ「ねぇ、聖職者さん。何回ヤッたか覚えてる?」スゥ・・・

香焼「……、」ゴクッ・・・

アンジェレネ「ふふっ、もう4回だよ。射精の回数で数えたら11回かなー」ニヤッ・・・


彼女は卑怯だ。


アンジェレネ「倫理のお勉強? あー……うん。私は悪い子だからね」フフフ・・・

香焼「止め……、」

アンジェレネ「コォヤギくんは何も悪くないの。悪いのは、ぜーんぶ私。悪い子に『なった』私だよ」ペロッ・・・


笑顔で毒を吐きながら、自分の胸元を舐めてきた。


アンジェレネ「ん……大きくなってるの?」スッ・・・ギュッ・・・

香焼「っ、身体洗う!」ザバッ///

アンジェレネ「あ、逃げた。ふふっ」クスクスッ


彼女の『手』から離れる。
ペースに乗せられたら、また『して』しまう。何が何でも逃げなければ。


アンジェレネ「因みに扉は魔術で『ロック』してますよー」ヘヘヘー!


畜生。何から何までお見通しか。
379 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/10(日) 21:21:40.19 ID:bDFd73HO0
緊張しながら身体を洗う。髪を洗い終え、今は身体。因みにアンはずっと笑顔で僕の方を見遣ってくる。


アンジェレネ「ふんふふ、ふんふふ、ふんふーふーん♪」ニコニコッ

香焼「……何でコッチ見てんの?」タラー・・・

アンジェレネ「楽しいから?」ウーン・・・


何故に疑問形。


アンジェレネ「かわいいー」ジー・・・

香焼「意味が分からない」ハァ・・・

アンジェレネ「男の子の身体って不思議だねーって。今は小さいのにHする時は倍々なんだもん」フフッ


何処見てんだオイ。


アンジェレネ「ドコでしょーねー。あ、身体流す?」ザバッ

香焼「別に良ぅぶはっ!!」バシャッ!!

アンジェレネ「かけちゃった♪」テヘッ!

香焼「……、」ダラダラ・・・

アンジェレネ「怒った? 叩く?」ニコッ・・・

香焼「っ……叩かない」グッ・・・


先日、今と似た様なケースがあったので心苦しくも手を上げてしまった。だが、効果が無い。
ただただ良心が傷付いていくばかりだ。


香焼「はぁ……ったく」

アンジェレネ「じゃあ次私洗っちゃうねー」ザバァッ・・・


恥じらいも無くバスタブから飛び出す彼女。目のやり場に困る。


アンジェレネ「私の裸なら沢山見たじゃん……す・み・ず・み・までっ♪」ニヤリ・・・

香焼「だからそういう事言わないでよ」カアアァ///

アンジェレネ「あはー! んもう、相変わらず女々しいなー。とりあえずコォヤギくんお風呂入ってて」トンッ

香焼「はいはい……ってかもう外に出してよ。オレが此処居る必要ないだろ」ポリポリ・・・

アンジェレネ「だめー。あ! 何なら私の身体洗ってくれても良いよ」フフフッ


だから止めろと言うに。


アンジェレネ「恥じらう女の子の方が好きなの? じゃあアニェーゼちゃんとかレッサーちゃんはドンピシャだね。二人とも実はヘタレだし」

香焼「おま……そういう問題じゃないから。もぅ、さっさと洗うなら洗って」ハァ・・・

アンジェレネ「はーい」ニコニコッ


鼻歌交じりで髪を洗いだす。とりあえず自分は気を逸らす為に天井の水滴を数える事にした。
380 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/10(日) 21:43:57.09 ID:bDFd73HO0
自分が水滴を193まで数えた時、彼女が身体を洗い終えた。


アンジェレネ「ふぃーっと。コォヤギくん、明日コンディショナー買ってきてね」スッ・・・

香焼「リンスで良いだろ」ボソッ

アンジェレネ「癖っ毛直したいからリンスじゃ駄目なの」メッ!


リンスとコンディショナーとトリートメントの違いが分かりません。


香焼「ってか自分で買いに行きなって。コンビニならすぐ近くにあるっすよ」

アンジェレネ「ヤダ」キッパリ!

香焼「即答かい……ヒッキーめ」ハァ・・・

アンジェレネ「他の人に見つかったら拙いもん……コォヤギくんだってそうでしょ?」チャプンッ

香焼「それは、その……っていきなり入ってくんな!」アタフタ・・・///

アンジェレネ「ふふふふふー♪」ニコニコッ


何故か仁王立ち。色々モロ見え。兎に角、目を瞑る。


アンジェレネ「優しいねー。この場に至っても我慢するんだ」クスクスッ

香焼「我慢も何も無い! 良いから上がるなら上がってよ! じゃなきゃオレ外に出して」グヌヌ・・・///

アンジェレネ「どうしよっかなー」フフフッ


きっと目を開ければ、悪い笑みを浮かべている彼女の顔を見れるだろう。


アンジェレネ「……じゃあ」スッ・・・チャプチャプ・・・

香焼「っ!」ビクッ


彼女の手が僕の股間を掴み、そして……上下に動いた。


アンジェレネ「えへへー。きもちーの?」クスクスッ///

香焼「ちょ……止め」ゴクッ///

アンジェレネ「えいっ」キュッ・・・

香焼「っ!!」ビクッ!!

アンジェレネ「えへへ。やっと目ー開けたー」ニコニコッ


身体が密着し、ペニスを強く握られた所で目を開けてしまう。というか開けるなという方が無理だ。
381 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/10(日) 22:02:22.20 ID:bDFd73HO0
身体を無理矢理引き離す。だが彼女の右手はブツうぃしっかり掴んで離さない。


アンジェレネ「むー。人とお話する時は、キチンと相手の方見なきゃダメなんだぞー」クスクスッ・・・チャプチャプ・・・

香焼「っ……、」ゴクッ・・・

アンジェレネ「コォヤギくんだって昔に比べたら大きくなったでしょ。毛も生えたしー」チャプチャプ・・・ジー///

香焼「見なくて良いから。あといい加減手離してよ……ぃっ」ハァ・・・ピクッ・・・

アンジェレネ「イヤだよー。私は毛薄いからなぁ。コォヤギくんも、男性の中では薄い方なの?」フフフ・・・


知りません。知りたくありません。


アンジェレネ「ノリ悪いなぁ……てか、思いっきり突き放さないんだ」ニヤッ・・・チャプチャプ・・・

香焼「っ。此処で、突き放したら……危ないだろ……っ……んっ」グッ・・・ピクッ・・・

アンジェレネ「やっぱりコォヤギくん、優しいよ……もしかしてイキそうなの?」チャプチャプ・・・///

香焼「……、」フルフル・・・

アンジェレネ「あはは。我慢してー。出してもいいよー、早いの知ってるんだよ」クスクスッ


それを言われると、男として落ち込みます……じゃなくて!


香焼「……止めろ」ギロッ・・・

アンジェレネ「んー……男の子は口で何言っても、心と脳ではHしたくて堪らないんだよねー。下心ってヤツかな」スゥ・・・

香焼「そんな、事……ッ」ピクッ・・・

アンジェレネ「レッサーちゃんが読んでた本に書いてたもん。あ、でもコォヤギくんの場合は特殊だね」クスクスッ


特殊?


アンジェレネ「口と心と頭は嫌がってても、身体は正直。女の子みたいだー」ニパー! スリスリ・・・

香焼「笑顔で何言ってんすか……って、オイ!」バシャッ///

アンジェレネ「はははは。『イヤらしい奴め。身体は喜んでるじゃないか!』ってこと?」ニヤリ・・・

香焼「あ、アンジェレネ!?」ギョッ///

アンジェレネ「レッサーちゃんとオリアナさんが読んでた本、前に見たの」クスクスッ


あの破廉恥淑女共……毒撒き散らすんじゃない。変な知識与えんな。
382 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/10(日) 22:15:25.70 ID:bDFd73HO0
彼女は誘惑を続ける。


アンジェレネ「ねぇ……別に良いよ。ヤっても」ピタッ・・・

香焼「な……駄目だ」グッ・・・

アンジェレネ「私をこれ以上傷つけたくないとか考えちゃってるの? だったら心配しなくていいよ」クスッ・・・

香焼「違……、」

アンジェレネ「うそつきー。ずーっとそんな事考えてるくせにー」フフフ・・・


悔しいが図星だ。
付け足すとすれば、彼女を犯す度に……自分の良心も傷付く。結局のところ自分が可愛いから彼女と情を交えたくない。


アンジェレネ「でも追い出さない。でも犯しちゃう」ペロッ・・・

香焼「……、」ゴクッ・・・

アンジェレネ「欲望に負けちゃうのが悔しい」ペロペロ・・・

香焼「ぃ……、」

アンジェレネ「怒って良いよ?」フフフッ・・・


僕の身体を舐める彼女。上目遣いで、怒気と慾を誘う。


香焼「っ……のぼせるから、上がろう」グッ・・・

アンジェレネ「話逸らさないでよー。H、する? するならお風呂の方が良いなー。シーツ洗うの大変だし」チュッ・・・

香焼「だからしないって」ゴクッ・・・キッ!

アンジェレネ「……まだ我慢するの?」ニコニコッ


それなら。


香焼「……アンが真面目に話してくれるなきゃ、オレもアンの話聞かない」

アンジェレネ「えー、卑怯だよー」ブーブー!

香焼「卑怯なのはドッチだっつーの」タラー・・・

アンジェレネ「……じゃあ真面目に話したらHしてくれるの?」サラッ・・・

香焼「ぇ……ハァ!?」ダラダラ・・・

アンジェレネ「じー……、」


オマエは 何を 言ってるんだ ?
383 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/10(日) 22:36:17.52 ID:bDFd73HO0
再び無言で僕に迫り、今度は唇を重ねようとするアンジェレネ。


香焼「止め……アン。何でそうなったの? オレの所為なのか?」プイッ・・・

アンジェレネ「ん……違うよ」グッ・・・

香焼「オカシイよ……絶対」

アンジェレネ「自覚してるもん」

香焼「いや、してないよ」


軽く狂気すら感じる。


アンジェレネ「じゃあもうコォヤギくんの言う通りでいいから……キスしてよ」ギュッ・・・

香焼「っ……しないって言ってるだろ!」グググ・・・

アンジェレネ「……、」ジトー・・・


不服そうな眼。こっちがその視線をぶつけてやりたいわ。


アンジェレネ「……もういい」ザバッ・・・

香焼「アン……、」

アンジェレネ「先上がる」ガチャッ・・・


彼女の手がやっとペニスから離れた。機嫌を損ねたのか、そそくさと浴場から出て行く。


香焼「……助かった、のかな」フゥ・・・


心には色んな物が溜まったままだが、これでやっと足を伸ばせる。


香焼「やっぱ……最低だ」ハァ・・・


やり場のない怒りの矛先は何処にぶつければ良いのだろう……誰か教えてくれ。
384 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/10(日) 22:50:18.57 ID:bDFd73HO0
 ―――とある日(一日目)、PM11:00、英国ロンドンシティ北部、日本人街、とあるアパート・・・・・







風呂から上がるとアンジェレネはベットで寝ていた。寝巻きは少し大きめの白い甚平。何年か前に五和と浦上からプレゼントされたものである。
彼女が来てからというものベットは彼女に渡して、自分はソファで寝る形となっていた。


香焼「一安心、か」ハァ・・・


偽善といわれようが構わない。彼女と身体を交えない日は心底安堵する。

冷蔵庫を開け牛乳を取り出す。勿論、ムサシノ牛乳。態々日本から取り寄せたモノだ。
ステイルや建宮さん程とはいわないが、せめて上条さんくらいの身長は欲しい。


香焼「……メール」チラッ


光る携帯。


香焼「仕事(天草)用は良いとして……最愛とアニー、か」カチッ


都市に居る妹分と女子寮に居る親友から。前者は他愛ない内容だが、後者は……後ろめたい。




【DATE】XX/XX 22:41 
【FROM】アニェーゼ
【sub】RE7:
------------------------
そうですか・・・

何でも良いので、手掛かり
有り次第連絡下さい。




彼女は今も、アンジェレネを探している。
そして自分は匿っている事を隠している。


香焼「……ごめん」


始めは直ぐにでも教えようとしたのだが、アンジェレネの涙交じりの訴えにより、その事実を言えないでいた。


香焼「アン……、」


誰が悪いでもない。事の始まりは身内の問題だったらしい……―――
385 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/10(日) 23:00:20.90 ID:bDFd73HO0
 ―――とある日(2週間前)、PM07:30、英国、ランベス宮、女子寮・・・・・






その日はアニェーゼ部隊がとある難民キャンプから戻ってきた日だった。
部隊の全員に披露の色が見える中、特に顔色が良くない人物がいる。


ルチア「……ハァ」


部隊長補佐。応接室(サロン)のメインテーブルに書類を置き、どっかり座り込んだ。


フロリス「お疲れさん。どったの? 顔色悪いけど」

ルチア「……面倒事です。というかフロリス。何故居るんですか?」

フロリス「暇だったからルチアちゃんの顔でも見ようかなぁと来てあげんだよ」ニカッ

ルチア「……ったく。あ、シスター・オルソラ。少々手伝って欲しいのですが、御時間宜しいですか」ポリポリ・・・

オルソラ「あらあら。書き物でございますか? ではハーブティーでもお出ししましょう」

シェリー「私も頼む。んで、始末書かぃ? アンタにしちゃ珍しいわな」

ルチア「始末書じゃありません。ちょっと、色々と」ハァ・・・


そう言って頭巾を取り、テーブルに倒れ込んだ。


オルソラ「今回の任務の報告書でございましょう。はい、お茶でございます」カチャッ・・・

ルチア「ありがとう、シスター・オルソラ……ええ。その通りです」

シェリー「報告書って、そりゃアニェーゼ嬢の仕事じゃないのか? 部隊長なんだし」

ルチア「……、」


更に渋い顔。口籠る辺り何かあったらしい。


フロリス「何したのさ? 今回何処行って来たんだっけ?」

ルチア「中東のとある難民キャンプですよ。教皇庁から頼まれた慰安訪問で、要人と共に現地入りしました」

シェリー「へぇ。バチカン(アッチ)の指示だったり英国(コッチ)の指示だったり大変だねぇ」

フロリス「でもそれだけだったら特に問題起きないんじゃないの? 爺婆子供と遊んだり、看護手伝ったり、飯支給したりだしさ」

ルチア「紛争地帯の難民キャンプです。問題が起きても不思議ではないでしょう」


そういう場所だからこそ、武道派戦闘修道女集団であるアニェーゼ部隊が選ばれたのだろう。


シェリー「……火種が、オマエらんとこのキャンプ地に飛んだのか?」

ルチア「いえ……、」

フロリス「じゃあ如何したのさ。どうせ後で報告書出せばバレんでしょ。英国にも情報行くんだろうし」

ルチア「貴女は教皇庁と最大主教の職務室に入れるのですか?」ジトー・・・

フロリス「レッサーが何やらかんやらでアニェーゼとアンジェレネに聞くから、それを私が聞き出す」ニヤリ・・・


ふざけるなよ、カルテッ娘。
386 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/10(日) 23:16:20.67 ID:bDFd73HO0
さておき、ルチアが仕方なしと口を開く。


ルチア「ハァ……あんまり口外しないでくださいよ」

シェリー「多分しない」

ルチア「絶対するなっつの……地元の猿公共がウチのシスター数名に手ぇ出そうとしました」ハァ・・・

フロリス「えっと……英語でおk?」

シェリー「つまり慰安部隊だからって慰安婦と間違えられたか……下衆共め」フンッ

ルチア「ええ……だから私は有色人種がいる場所には――」

シェリー「……ふむ」

ルチア「――あ、ぇ、と……すいません……、」シュン・・・

シェリー「別に良いさ。オマエの性格は知ってる」ハハハ


軽く流してくれる器量の大きい大人の女性。


オルソラ「それで、如何なったのでございますか?」

ルチア「はい……隊長が、その、男性達に手を上げてしまいまして」

フロリス「あら、仲間思いね。駄目なのそれ?」

ルチア「……限度が」タラー・・・

オルソラ・シェリー・フロリス「「「あー」」」コクンッ・・・


リミッターが外れたアニェーゼの暴れっぷりは物凄い。
全般的に『F』口調。当たり構わず物を壊す。誰の声も聞き入れない。


ルチア「まぁその怪我の大小が問題では無くですね……はい」

オルソラ「難民に手を上げた事が問題、という訳でございますか」


仮にも教皇庁の遣いで訪問したのだ。そこで問題を起こしたら『上』の面子が立たない。


フロリス「うわー。だから組織勤めって嫌なのよねー」ゲェ・・・

ルチア「地元の方々は自業自得と擁護してくれるのですが……教皇庁の司祭(ジジイ)共が五月蠅くって」ハァ・・・

シェリー「ヴェントかアックアに言いなさいって。アイツらなら何とかしてくれんでしょ」

ルチア「一応お願いするつもりですが……報告書を如何するべきやら」ハァ・・・

シェリー「だから対応上手なオルソラ(コイツ)の助言が聞きたいってか。まぁ若いんだし頼っとけ」ハハハ

オルソラ「……シェリー?」ゴゴゴゴ・・・

シェリー「あ、あはは……何でもない。オルソラサンハ、ワカイデスヨ」タラー・・・


結局、始末書の様なものか。


オルソラ「因みに、シスター・アニェーゼは?」

ルチア「一度マグヌスの所へ。謹慎処分を下されてるでしょう。御蔭で私がとばっちりです」

フロリス「あー、不良神父と喧嘩して憂さ晴らししてくるのね」ハハハ


予想だとステイルの部屋は改装する羽目になるだろう。
387 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/10(日) 23:21:03.26 ID:bDFd73HO0
報告書を書き始めて数分後、やたらデカい足音が聞こえてくる。
ついでに汚ない言葉も飛び込んでくる。一発で誰だか分かった。


アニェーゼ「[ピーーー]!! [ピーーー]!! あの木偶の坊糞っ垂れ不良神父がっ!!」ガンガンッ!!

レッサー「うへぇ。おっかねー」ニヒヒ!

アニェーゼ「『やり方あっただろ、単細胞』ですって!? あのゴリラ男共の[ピーーー]ナマスにしてやりゃ良かったんですかねぇ!!」ギリリ・・・

アンジェレネ「それでも問題無かったと思うよ」ニコニコッ


カルテッ娘、もとい一人ロシアに帰ってるのでトリオ・ザ・チビ娘。


アニェーゼ「畜生が……ん?」チラッ・・・

ルチア「……、」チラッ・・・

アニェーゼ「……ルチア。それ後で私ん部屋に持ってきなさい。アンタが書かなくて良いですよ」フンッ・・・

ルチア「いえ……隊長は早めにお休みを。疲れているのでしょう」カキカキ・・・

アニェーゼ「そりゃアンタも同じでしょう。良いから私の部屋に持って来――っておわっ!?」ギョッ!?

オルソラ「まぁまぁ。此処は一旦お部屋に戻って欲しいのでございます」ポンッ

アン・レッサー((ど、どっから現れた!?))ドキッ・・・


いきなり3人の背後から忍び寄った寮長(仮)。


オルソラ「シスター・ルチアも直ぐに寝せますからね。任せて欲しいのでございますよ」

アニェーゼ「でも……、」

オルソラ「心配しないで。貴女はちょっと不器用だっただけでございましょう。今日は安心して就寝して貰って構わないのでございます」

シェリー「周りが上手くカバーしてくれっからダイジョーブだぞー。多分マグヌスが特に頑張っから」ハハハ


必要悪の教会(ネセサリウス)『bPツンデレ』こと、ステイル・マグヌス主教補佐。


オルソラ「とりあえず寝なさい」トンッ

アニェーゼ「……、」

オルソラ「んー……聞きわけない娘は無理矢理運ぶのでございまーす」ガシッ!

アニェーゼ「ちょ、待、あー……ぅー」ズルズル・・・

レッサー「はははは。お休みー」


苦い顔をしながら強制就寝させられる隊長殿16歳。


アンジェレネ「……、」ジー・・・


一寸後、オルソラが応接室に戻ってきた。修道服が乱れてるのは我儘娘を『粛清』してきたからだろう。


シェリー「やっぱオメェが一番怖ぇよ」タラー・・・

オルソラ「あの子は無理矢理そうしないと全部を自分の責任にしようとしてしまうのでございますよ。多少強引に寝付かせないと、ね」フフッ

ルチア「すいません、助かります」コクッ


隊長として、エースとしての責務。
388 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/10(日) 23:27:18.75 ID:bDFd73HO0
フロリス「やっぱ重責は分担されてる方がチーム上手く回るよねー」ハハハ


謂わばアニェーゼは若くして主将で4番でエースピッチャー。負担は大きい。


オルソラ「とりあえず今日はある程度書いて休みましょう。シスター・ルチアも疲れているのでございましょう」チラッ

ルチア「ええ。そうですね、キリの良い所で寝ます」コクッ

オルソラ「貴女達も、今日は早めに消灯するのでございますよ」チラッ・・・

アンジェレネ「……、」ジー・・・

フロリス「……アンジェ?」キョトン・・・


不動のまま、ルチアを見詰めるアンジェレネ。


レッサー「アンジェっち? どったの?」キョトン・・・

シェリー「おい、ルチア。チビ子がオマエにガン垂れてんぞ」ボソッ・・・

ルチア「放っておいて構いません」サラッ・・・

フロリス「え」キョトン・・・

オルソラ「……シスター・アンジェレネ。今日はもう休むのでございます」スッ・・・


オルソラが伸ばした手を潜り、ルチアの方へ近づく。


アンジェレネ「……、」ジー・・・

ルチア「何か」チラッ・・・

アンジェレネ「……、」ジー・・・

ルチア「用が無いなら寝なさい」カキカキ・・・


瞬間、ルチアの手元が揺れた。アンジェレネが……机を叩いた。


一同『っ!!?』ギョッ・・・

ルチア「……邪魔です」カキカキ・・・

アンジェレネ「そんなの、書く必要無いです」ギリッ・・・

ルチア「貴女が如何こう言う問題ではないのです。さっさと寝なさい」カキカキ・・・

アンジェレネ「如何して……っ」バンッ!

ルチア「邪魔」カキカキ・・・


ルチアはあくまで冷静。逆にアンジェレネのボルテージは上がっていく。


アンジェレネ「隊長は仲間の為に身体張ったんですよ! 何で馬鹿みたいに攻められなきゃなんないんですか!」キッ

ルチア「だからそれを皆でカバーすると言ってるんですよ。シスター・オルソラの話を聞いてなかったんですか?」チラッ

アンジェレネ「そんなの要りません! 隊長は何も悪くないんですからそもそも書く必要無いでしょう!」ガッ!

ルチア「事情があるんです。良いから貴女は寝なさい」カキカキ・・・

アンジェレネ「そうやって子供扱い……事情なんて現場を知らない司祭組の勝手でしょ! 付き合う必要ありません!」ドンッ!

レッサー「あ、アンジェレネ?」タラー・・・

アンジェレネ「レッサーちゃん、黙ってて……ちょっとルチア! 書かないでよ!」ビリッ・・・

ルチア「チッ……アン」ギロッ・・・


遂に報告書を破いたアンジェレネ。不穏な空気、高まる緊張。
389 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/10(日) 23:38:34.64 ID:bDFd73HO0
しかしルチアは未だ冷静を装う。


ルチア「アンジェレネ……少し頭冷やしなさい」ハァ・・・

アンジェレネ「ルチアがおかしいんでしょ! 如何してそんなに冷酷でいられるのよ!」ギリッ・・・

シェリー「おい、ちっこいの。良いから大人の言う事聞いとけ」ッタク・・・

アンジェレネ「だから子供扱いしないで下さい!」カッ!

シェリー「……、」ギロッ・・・

オルソラ「シェリー、駄目よ……シスター・アンジェレネ。とりあえず一服するのでございます。そしたらきっと――」

アンジェレネ「シスター・オルソラまで! 誰もアニェーゼちゃんの味方いないの!?」ギリリ・・・

レッサー「ちょ、あ、アンジェレネ……少し落ち着こうって」タラー・・・


怒りで何も耳に入らない状態らしい。


ルチア「アン。元はといえば貴女がダラしないのが原因でもあるのですよ」チラッ

アンジェレネ「は? 意味が分かりません」ギロッ・・・

ルチア「最近弛んでるでしょう。だから変態野郎に狙われるんです。今回良い薬になってでしょう。今後ちゃんと――」

アンジェレネ「私の所為にしないでよ! それって責任転嫁? 何も言えなくなったからって私の所為にする?!」ガンッ!

ルチア「――……、」ガタッ・・・テクテク・・・

オルソラ「シスター・ルチア!」バッ!


流石にキレたルチアが立ち上がり、アンジェレネの方へ歩み寄った。
今回の任務で襲われた隊員の一人が彼女である。しかも、イの一番だ。


アンジェレネ「そう……怒ったんですか?」ジー・・・

ルチア「……最近甘やかし過ぎましたね。少しお灸を饐(す)えましょうか」ギロッ・・・

オルソラ「二人とも! 止めなさい!」

アン・ルチア「「……、」」ギリリ・・・


睨み合う二人。そして……―――



  パンッ


         パンッ



―――乾いた音が二つ。


一同『っ!』ギョッ・・・

アン・ルチア「「……っ!?」」ビクッ・・・


互いでは無い。



アニェーゼ「……、」ギロッ・・・



手を上げたのは、隊長。
390 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/10(日) 23:44:04.95 ID:bDFd73HO0
驚きで言葉が出ない。


オルソラ「あ……アニェーゼ」チラッ・・・

アニェーゼ「寝れる訳無ぇじゃねぇですか……こんな騒がれたらよぉ、ボケナス」ギロッ・・・

アンジェレネ「あ、ぇ……ぁ……、」ビクッ・・・

アニェーゼ「ルチア。やっぱアンタも今日は寝やがれってんです。それ明日やりましょう」フンッ

ルチア「……了解です」コクッ


固まる一同。


アンジェレネ「あ、アニェーゼ、ちゃん……」タラー・・・

アニェーゼ「……アン。皆の言うとおりです。少し頭冷やしなさい」ハァ・・・

アンジェレネ「……っ」グッ・・・

アニェーゼ「別に今回の件はアンが悪いとかそんなんじゃなくて、ただ――」

アンジェレネ「もぅ……良いよ!」ダッ!

アニェーゼ「――って、オイ!」ギョッ・・・


飛び出すように逃げ出した。


アニェーゼ「アンジェレネ!」バッ!

オルソラ「シスター・アニェーゼ」スッ・・・

アニェーゼ「お、オルソラ!?」ナ・・・

オルソラ「少し……一人にしてあげるべきなのでございますよ」ジー・・・

アニェーゼ「……、」グッ・・・


誰もが、動きを停めた。


オルソラ「貴女は寝なさい。また無理矢理寝かしつけられたいのでございますか?」

アニェーゼ「でも……アンを」ムゥ・・・

オルソラ「どうか私達に任せて欲しいのでございますよ。さぁ、今晩はベットに」ポンッ・・・

アニェーゼ「……何かあったら知らせて下さい。ルチアも、早く寝て下さいよ」チラッ・・・

ルチア「……はい」コクンッ

アニェーゼ「……レッサー」チラッ・・・

レッサー「ん……はいはい。アンジェっちを追い駆ければ良いんですよね」テクテク・・・

アニェーゼ「お願いします」コクッ


やれやれと頷きレッサーは応接室を後にする。
アニェーゼはそれを見送った後、深い溜息をつきながら部屋へ戻った。
391 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/10(日) 23:49:22.66 ID:bDFd73HO0
気まずい空気の中、残った面々は項垂れ眉間を押さえるルチアを見遣った。


ルチア「っ……、」ハァ・・・

シェリー「気ぃ病むな……まぁオマエさんは我慢した方だと思うぞ」ポンッ

オルソラ「シスター・ルチア。私が新しい用紙を貰っておくので、貴方はもうお休みになるべきでございます」

ルチア「……、」シュン・・・

フロリス「うん、まぁその……反抗期の身内持つと大変だな」ポリポリ・・・


反抗期。
確かに近年アンジェレネは少しずつ変わってきた。年相応の反抗期(ソレ)だが、部隊勤めで反抗期は禁忌(タブー)である。


ルチア「……本当は優しい良い子なんです、分かってますよ」ハァ・・・

オルソラ「ええ、私共も充に承知でございます。ただ今は、少々心が不安定な時期なのでございましょう」

シェリー「まるで母親の悩みだな」フム・・・

フロリス「まぁ普通だったらあの年娘は背伸びしたがっからなぁ。レッサーは結構昔から背伸びしたがってたけど」


ルチア自身、反抗期という物を経験していない。故に如何接して良いか分からない。


オルソラ「難しく考え過ぎなのでございます。心を開いて話を続けていけば大丈夫でございますよ」ニコッ・・・

ルチア「あの子が突っぱねるので、何とも……、」ムゥ・・・

シェリー「時間が解決してくれるの待つっきゃねぇな。もしくはアニェーゼが何とかするかもしんねぇし」

フロリス「そういえばアニェーゼは昔から変わらないよね。自分勝手で怒りっぽいのも昔からだけど」アハハ・・・


だが今も変わらず『隊長』なのだ。彼女は昔から『大人』である。
そうある必要があったから。


ルチア「……ごめんなさい」ハァ・・・


本来は年長たる自分が全ての責任を負うべきなのだが、相応の器ではない。
己の不出来さをルチアは嘆いた……―――
392 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/11(月) 00:01:44.12 ID:Ht0ugU9y0
 ―――とある日(2週間前)、PM09:00、英国、ロンドンシティ、とある路地裏・・・・・







今にも降り出しそうな曇天の中、寮を飛び出した友人を追い駆ける嘱託魔術師の少女。
勿論仕事の範囲外だが、友情は金とか利害関係とかそんなんじゃないと誰か(甘ちゃん)が言ってたのを思い出し後を追う。

彼女が行きそうな所など宛ては無いが、とりあえずそう遠くは行っていまい。


レッサー「ホント、不器用なんですよね」ハァ・・・


アンジェレネの気持ちは良く分かる。個人的な関係ならまだしも、今回は『組織』的なメンツを保つために生じた問題。
元よりレッサーは組織的な柵(しがらみ)は好かぬ故、ドチラかといえばアンジェレネ寄りの思い入れだ。


レッサー「でも、アンタらは部隊(チーム)なんでしょーが」テクテク・・・


団体の輪を乱すのは悪い事。アウトローな自分でもその程度の事は分かる。


レッサー「……ん?」チラッ・・・


ふと、大通りから外れた道で修道服を着た女性を発見。
この空模様で傘も持たずに幽鬼の如くフラフラしてるのは彼女くらいしかいないだろうと、後を追った。
如何やら教会関係者の人目が行き辛い路地裏の娼館街へ入っていく模様。不用心ではあるが、考えたモノだ。


アンジェレネ「……、」トボトボ・・・


放っておいたら、ああいうのを『食い物』にする女衒師やら人身売買屋に掴まるだろう。
早めに取っ捕まえてやらねばなるまい。


レッサー「アンジェっちー……アンジェレネー」テクテク・・・

アンジェレネ「……、」ピタッ・・・チラッ・・・

レッサー「はい、ストーップ。捕まえましたよ」テクテク・・・

アンジェレネ「レッサーちゃん……何か用?」ボソッ・・・

レッサー「何って、迎えに来たんです。さぁ帰りますよ」スッ・・・


彼女の手を取る。だが、動かない。


レッサー「……アンジェレネ?」

アンジェレネ「……、」ボー・・・

レッサー「……はぁ、あのですねぇ」ポリポリ・・・


如何言ったものか。とりあえず多少なりとも人目があるので、無理矢理誰も居ない所へ連れて行く。


レッサー「ったく、家出したい気持ちも分からなくないですが、こんなとこ居たって意味ないでしょう」

アンジェレネ「……寮よりマシだよ」

レッサー「人の事言えないけど、ガキですねぇ……色々腹立つのは分かりますけど引くとこ引かないと。角立てても良い事ありませんってば」

アンジェレネ「……ヤダ」ボソッ・・・


これだからお年頃は、と内心嘆いた。
393 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/11(月) 00:24:17.86 ID:Ht0ugU9y0
しかし自分は頼まれた。彼女を宜しくと。何とかせねばなるまい。


レッサー「まぁ庇うのは癪ですけど、ルチアだって部隊(チーム)の事思って嫌々始末書書いてんでしょ」

アンジェレネ「……、」

レッサー「もしアレ書かなかったら最悪部隊解散だって有り得るでしょう。誰が得するんですか?」

アンジェレネ「……そんなの、上の勝手だもん。部隊はアニェーゼちゃん中心なんだから上の命令なんて関係無いもん」ムスゥ・・・

レッサー「お馬鹿。今時スポンサー無しで自由に動ける組織なんてありません。アニェーゼ隊は私達んとこ(新たなる光)とは違うんですから」


仮にも十字教を冠する部隊だ。レッサー達の革命運動組織(結社)とは訳が違う。


アンジェレネ「だったら運動屋でも良いよ。それか魔術結社でも……250以上も隊員居るし」

レッサー「そりゃアンタの勝手な判断です。先の理屈だと結局はアニェーゼが如何思うかでしょ?」

アンジェレネ「……、」

レッサー「アニェーゼはルチアに賛同した。だからアンジェも二人に従う。それで皆幸せでしょ。おk?」ポンポンッ


されど納得がいかない御様子。未だにこの場を動こうとはしない。


レッサー「ハァ……そんじゃあさ、アンジェがフリーになれば良いでしょ。そうすればルチアの言う事聞く必要無いですし」

アンジェレネ「……、」

レッサー「でも独り(それ)が嫌なら大人しくしとくべきです。悧巧な判断しなさいって」

アンジェレネ「……レッサーちゃんは、悔しくないの」グッ・・・

レッサー「は?」タラー・・・

アンジェレネ「アニェーゼちゃん、悪い事してないのに……馬鹿にされて」

レッサー「いや、まぁその……アニェーゼのした事が悪いとは思いませんよ」


自分だって、友人や仲間が危険な目にあったら手を出す。


アンジェレネ「じゃあ非を認める必要無いよ」ギリッ・・・

レッサー「だからさぁ……始末書なんてモンは謝罪云々じゃなくて作業みたいなモンで」ポリポリ・・・

アンジェレネ「そんなのオカシイよ!」キッ・・・


面倒臭い。正直自分は気が長い方では無いのだ。女々しいヤツを見てると、イライラする。


レッサー「……アンジェレネ。アンタ、昔はもう少し物分かり良い子でしたよ」ジー・・・

アンジェレネ「知らないよ、そんなの」

レッサー「あっそ……まぁ良いや。さっさと戻りましょう。話の続きはその後にでも」グイッ・・・


無理矢理袖を引く。


アンジェレネ「離して……止めてよ!」バッ!

レッサー「っ……、」ピクッ・・・

アンジェレネ「はぁ……はぁ……っ!」キッ・・・


友である自分に対し、まるで『敵』を見る眼。
394 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/11(月) 00:37:33.44 ID:Ht0ugU9y0
アンジェレネ「結局……レッサーちゃんも同じなのね」ギリッ・・・

レッサー「は?」イライラ・・・

アンジェレネ「レッサーちゃんも、アニェーゼちゃんの敵なんでしょ!」


オマエは何を言ってるんだ?


レッサー「あのさぁ……私今、何で此処に居ると思います? 言っちゃなんですけど、アニェーゼに頼まれたからですよ?」

アンジェレネ「アニェーゼちゃん自身、今自分が日和ってる事気付いてないの!」

レッサー「あ、アンジェレネ……アンタ」タラー・・・

アンジェレネ「だから、そのアニェーゼちゃんに従うレッサーちゃんはアニェーゼちゃんの事分かってない!」ギリッ・・・


駄目だ。今の彼女は正常な判断が出来ない。かなり危険な幻想を見ている……薬でもキマってるのか?
立て続けに彼女は続ける。


アンジェレネ「アニェーゼちゃんは自分に責任を押し付ける人は敵だよ……だから、私は正常なの!」ギロッ・・・

レッサー「わ、分かった。分かったから、少しトーンダウンしましょう……そうだ。通りのカフェで少しお茶でも、ね」

アンジェレネ「……レッサーちゃん」ボソッ・・・

レッサー「な、何でしょう?」ダラダラ・・・

アンジェレネ「……何言っても、私帰らないよ」ボソッ・・・


じゃあ如何したら帰るのだ。


アンジェレネ「……、」

レッサー「えっとさ、自分自身でも分かってないんでしょ? だったら最悪部屋に籠りっぱなしでも良いですから」

アンジェレネ「寮に、戻りたくない」

レッサー「じゃあアレです。仕方ないから私の部屋に招待しましょう。特別ですよ」アハハ・・・

アンジェレネ「……、」ジトー・・・


目が座ってらっしゃる。


レッサー「え、と……アンジェっち?」

アンジェレネ「……ヤダ」ボソッ・・・

レッサー「」ガーン・・・

アンジェレネ「レッサーちゃんの近くに居たら、何れはアニェーゼちゃんとルチアさんとこ戻らなきゃいけないもん」

レッサー「……戻りたくないんですか」ハァ・・・

アンジェレネ「戻らない」サラッ


レッサーは動けなくなった。目の前の少女の言動が理解できず、自らの耳を疑った。
彼女は冗談でも……アニェーゼの傍から離れたいとは言わない筈だ。
395 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/11(月) 00:40:04.77 ID:Ht0ugU9y0
レッサー「……冗談、でしょ?」タラー・・・

アンジェレネ「本気」

レッサー「あ、ぇと……ぶ、部隊を抜けたいっていうなら、別の形でも……何なら新たなる光(ウチ)に入れば今後も」

アンジェレネ「そういう問題じゃないの」

レッサー「あ、アンジェレネは、アニェーゼの……ベッタリの……その、だから……うん」アタフタ・・・


自分でも言ってる事が分からない。それくらい混乱している。


アンジェレネ「……レッサーちゃん」スッ・・・

レッサー「え」

アンジェレネ「バイバイ」クルッ・・・

レッサー「へ」


いきなり、馬鹿言うな。再び彼女の袖を―――




    「触らないで」パシッ




―――拒絶、された。


アンジェレネ「…――…、」ボソボソ・・・テクテク・・・

レッサー「な……、」ボー・・・


彼女は何処かへ消えた。最後に何か言った様だが聞き取れない。ただ友達(レッサー)を一方的に拒んで……去った。


レッサー「……、」ボー・・・


思考が戻る。
ああ、そうか。自分は引き留めに失敗したのか……我に戻ったレッサーは立ち上がり、近くの壁に寄り掛かった。


レッサー「……、」


消えた。蔑まれて、去った。



レッサー「ぁの……糞っ垂れ(ファッキン)!! 糞(ファック)っ!! 糞々!! 糞女郎(ファッキンビッチ)がぁあぁっ!!」ガンガンッ!!



近くにあった大型ダストボックスを蹴ったくる。感情のまま怒りをぶつける。
留めれなかった自分に。そして何より……彼女の眼。


レッサー「アホ小娘ぇ……メンヘラ気取ってんじゃねぇですよぉ! 自分に酔うのが恰好良いってか、キチガイ女ぁ!!」ギリリ・・・


確実に脳内麻薬でキマってる反抗期少女だ。手に負えない。
時間が解決するのを待つ? そんなんじゃない……アレは分かってて間違った方向に突っ走ってる眼だ。


レッサー「だあぁ!! もう知りませんっ!! 誰が助けてやるかってぇの!! 女衒師にでも取っ捕まって犯されろボケぇっ!!」ガスガスッ!


結局、何も出来ないまま、レッサーは寮へと退却する羽目になった……―――
396 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/11(月) 01:02:03.30 ID:Ht0ugU9y0
 ―――とある日(一日目)、PM11:10、英国ロンドンシティ北部、日本人街、とあるアパート・・・・・







―――……と、此処までが人伝に聞いた話である。
そこから先は結局、自分と彼女しか知り得ない話。僕が彼女を拾うまでの話だ。

あの日の9時頃、アニェーゼから電話が来た。内容は短く『アンが家出した』と。
自身は今寮から出れない為、自分に代わってレッサーと共に探して欲しい。そう告げた。
その日の仕事は既に終わっていたので二つ返事で了承し、アンジェレネを探しに街へ出た。

ついでにレッサーと協力しようと考え電話をしてみたのだが、何やら様子がおかしい。


香焼「『あんな馬鹿娘、勝手に野垂れ[ピーーー]ば良いんです!』って……そりゃないよ」ポリポリ・・・


自分はもう関与しないと一方的に電話を切られ、僕一人で捜索する羽目に。
雨の中2時間くらい探し続け……ようやく、エンバンクメント駅付近の公園でずぶ濡れになっているのを発見した。

小刻みに震え、嗚咽を漏らす少女。

その時は事の経緯を知らなかったので、何を言って良いか分からなかった。そこで、とりあえず近づき傘をさしてあげた。
僕に気付いた彼女は……大声を上げて泣き出した。ただ『ごめんなさい』と繰り返し、僕にしがみ付いた。


香焼「……如何すれば良かったんだよ」グデェ・・・


何も聞かず、雨を凌げる場所に移動。
話を聞いてやっても良かったが冷静さを欠いていた彼女を見るに、そんな雰囲気ではなかった。
暫く泣かせてやる事しか出来ない。その時の僕には理解できない懺悔(ごめんなさい)を聞き続ける事しか出来ない。

そして数十分後、ようやく落ち着く。だがしかし何も喋らない。
会話は無駄だと察したので、とりあえずアニェーゼへ連絡しようとした時……携帯を奪われた。
少女は『連絡しないで』と震える声で頼みこんできた。

何故と尋ねると『戻らない。戻れない』と涙を流して訴えた。


香焼「その後……誰かに頼むべきだったんだ」ポリポリ・・・


これから何処に行くのだ、と聞いてしまった。彼女は何も言わない。そこで言ってしまった。深くは聞かず『とりあえず、家に来るか』と。

己の甘さというか、人の良さ、優しさが裏目に出た。
無論自身の甘ちゃんだとか善人だというのは未だに認めていないが、それでも、思い返せば周りの言葉が身に沁みた時だった。
あの時キチンと状況把握しておけば、今の事態にはならなかった……かもしれない。何れにしろステイル辺りに自業自得と怒られるだろう。


香焼「風呂入れて、寝巻き貸して、そして……、」ジー・・・


ベットを譲った。だがそこで……彼女の様子がおかしい事に気付く。始めは熱でも出したかと思ったが、違う様だ。


香焼「自分が……悪いんだ」グッ・・・


抱き着いてきた。
意味が分からなかった。正直、思考が止まった。彼女は何故泣きながら僕から離れようとしないのか理解できなかった。

 『一人にしないで』

そう呟いた。アンジェレネ(自分)を、アニェーゼを、一人にしないでと。


香焼「でもそれは独り善がりっすよ」ボー・・・


確かにアニェーゼは重責塗れだ。ただ重責=『敵』という意味では無い。アンジェレネはそれを勘違いしている。
もう一つ……アンは自身(厄介事)が居なくなればアニェーゼの負担は減ると思いこんでる様だが、それこそ一番の勘違い。

独りは嫌だ。だから味方が欲しい。そしてその味方役を僕に頼んだ。今の僕なら確実に彼女を叱っている。だが、あの時は出来なかった。
397 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/11(月) 01:10:31.99 ID:Ht0ugU9y0
あの時の彼女程、弱々しいモノはない。今にでも消えてしまいそうな、そんな儚い感じだった。


香焼「……、―――」ギリッ・・・


そこからは己が不貞を恨むばかり。その場のノリなんて言葉で片付けるのは甚だおこがましい。
しかし……それ以外の言葉が浮かばない。

引き寄せられ、口付けされた。離れようとしたが、放してくれなかった。そして……

































        堕ちた。






























398 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/11(月) 01:14:04.38 ID:Ht0ugU9y0
真っ当な男子で有れば性に敏感な年頃。いくら健全を心掛けていても、欲望には敵わなかった。

1度目は泣いた。

2度目は慾を楽しんでしまった。

3度目で事実に気付いた。

4度目で、引き返せなくなった。


そして……



香焼「―――……っ!」バッ!


部屋の明かりは落ちた。


香焼「アン?」バッ・・・


何時の間にか、真後ろに彼女が立っている。物思いに耽り過ぎて気配を察せなかった。
顔は良く見えない。動きが読めない。


香焼「寝て、無かったの」ゴクッ・・・

アンジェレネ「寝れない」ジー・・・

香焼「そ、そう……何で電気消すのさ」

アンジェレネ「……、」スルル・・・


衣擦れ音……拙い。


香焼「あ、アン! 待って!」ギョッ・・・

アンジェレネ「……ヤダ」スッ・・・

香焼「駄目だ! もう駄目だよ!! イヤなんだ!!」タッ・・・


立ち上がる。がしかし、腕を掴まれる。


アンジェレネ「何で、逃げるの」グッ・・・

香焼「駄目だよ、こんなの……何も良い事無い! 麻薬と一緒だ!」ブンッ

アンジェレネ「……、」ギュウゥ・・・


本当は彼女だってこんな事望んでいない筈。僕は彼女が悔やんでいるのを知っている。
彼女は事後、寝言のように『ごめんなさい』と繰り返している。

それだけではない。
何を意味するかは分からないけど『私が男の子だったら良かった』とか、『アニェーゼちゃんと付き合わないの?』とか……間違ってる。
兎に角、快楽に溺れるだけの自傷などあってはならない。
399 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/11(月) 01:17:05.01 ID:Ht0ugU9y0
アンジェレネ「いまさら?」

香焼「ああ、今更だよ。でも駄目なんだ……これ以上は――」

アンジェレネ「……勘違いしてない?」

香焼「――な、に……え?」

アンジェレネ「別に私、コォヤギくんに傷つけられてないよ」

香焼「……嘘だ」

アンジェレネ「えっと、『そんな事』で嘘ついて如何するの?」


そんな事って……何だよ。


アンジェレネ「セックスを『慰め』と取るか、『強姦』と取るか、はたまた『救済』と取るかはその人次第だよ」グイッ・・・トンッ

香焼「そんな事…――…っ」グラッ・・・


ソファに押し付けられた。彼女の腕が僕の首に回る……動きが取れない。


アンジェレネ「相変わらず、コォヤギくんは物事難しく考えるんだね」アハハ

香焼「そういう問題じゃないよ。アンは間違ってる」キッ・・・

アンジェレネ「ホント女々しいなぁ……これじゃ、どっちが男の子か分からないね」クスクス・・・

香焼「話を聞いてよ!」

アンジェレネ「ヤダ。長いから……黙ってよ―――」スッ・・・


口付け……狂ってる。
舌が入ってくる。拒む。しかし歯茎を蹂躙される。


アンジェレネ「―――ぷはっ」フフッ

香焼「けほっ……力(魔術)で押さえつけないと分からないか?」ギロッ・・・

アンジェレネ「うーん、私とコォヤギくんの魔術だったら同程度(どっこい)だよ」ハハハ

香焼「純粋な力なら、男(コッチ)に分があるだろ」

アンジェレネ「ふーん……野蛮。でもそういうの嫌いじゃないかも」クスッ


阿呆抜かすな。君は売女か。
いや、もしくは病気か、アッパー系のジャンキーか……何れにしろ、こんなアンジェレネは認めたくない。
400 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/11(月) 01:23:35.19 ID:Ht0ugU9y0
アンジェレネ「多分お医者さんには処方箋出されないし、クスリもやってないよ」

香焼「……、」

アンジェレネ「ねぇコォヤギくん……貴方は私を裏切る? 貴方『も』私を裏切る?」

香焼「だから誰も君の事を裏切ってなんかいないよ……ホントは分かってるんだろ!」トンッ・・・


僕を押し付ける彼女を諭す。


香焼「もし本気でそう思ってるなら……周りを裏切ってるのが君だ」ギリッ・・・

アンジェレネ「……、」

香焼「一緒に謝ろう。オレも一緒にアニーとルチアさん、その他のみんなにも謝るから」スッ・・

アンジェレネ「如何して……そんなに、大人なの」ジー・・・

香焼「……え」


いきなり何を言う。


アンジェレネ「私はイヤだよ……認めるのはイヤ。それこそ本当はコォヤギくんだって分かってるんでしょ」グッ・・・

香焼「何が、さ」

アンジェレネ「私達……置いてけぼりなんだよ」スッ・・・スルル・・・

香焼「っ……、」グッ・・・


いつの間にか彼女は僕の下着を脱がし、小さな口で、愛撫を始めていた。


アンジェレネ「んぁ……独りに、しないでよ」ギュッ・・・チュッ・・・ペロ・・・

香焼「っ」ピクッ・・・


彼女の本音を理解した……今、彼女が己の非を認めたらずっと子供扱いされると勘違いしているのだ。
ステイルやアニェーゼ、サーシャやレッサー(レッサーは自由気ままだが)達は『先』へ行った。

残っているのは、僕と彼女。


アンジェレネ「レッサーちゃんには……酷い事しちゃったから、もう……許して貰えないもん」ギュウゥ・・・チュゥ・・・ペロペロ・・・

香焼「ぅ……っ……そんな事、無いよ」ポンッ・・・グッ・・・

アンジェレネ「……、」ピタッ・・・

香焼「キチンと謝れば、許してくれる。レッサーはそんなに器量の狭いヤツじゃないだろ」グイッ・・・


引き離し、話を聞かせる。


アンジェレネ「例えそうでも……今は、まだ無理」シュン・・・

香焼「無理じゃないさ」

アンジェレネ「……私、抜け駆けしたもん。ズルして……うん」ボソッ・・・ゴニョゴニョ・・・

香焼「は?」キョトン・・・

アンジェレネ「ぁ……何でも無い。今のは忘れて」タラー・・・


またよく分からない事を言う。抜け駆けって何だ?
401 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/11(月) 01:36:18.78 ID:Ht0ugU9y0
香焼「え、と……兎に角、ベットに戻りな。絶対にやらないよ。ほら、服着て」スッ・・・

アンジェレネ「何で?」キョトン・・・

香焼「何でって……話聞いてた?」タラー・・・

アンジェレネ「聞いてたけど、意味分かんないもん」ジトー・・・

香焼「……えー」ダラダラ・・・

アンジェレネ「コォヤギくんの話で私納得して無いから」サラッ・・・


カチンと来る一言。


香焼「……もう知らん」グルッ・・・

アンジェレネ「じゃあ勝手にするー! こっち来てー!」ヤッター!

香焼「ちょ!? んな事誰も許して無いだろ!」ギョッ・・・

アンジェレネ「知らない=勝手にしろ、でしょ?」ポカーン・・・


そんなテンプレこそ知りません。ドサクサに紛れて抱き着くの止めて下さい。
さておき、今度は彼女が毒を吐いてきた。


アンジェレネ「ねぇ、じゃあこういうのは如何? 私達……皆より少し大人になっちゃったっていうのは。勿論、性的な意味で」ニヤッ・・・

香焼「クリスチャンにあるまじき言動っすよ」ジトー・・・

アンジェレネ「クリスチャン、ねぇ」ウーン・・・


纏わりついてくる彼女を押し退けながら、話は続いた。


アンジェレネ「環境の問題でしょ? クリスチャンか如何かなんて」スッ・・・ペロペロ・・・レロ・・・

香焼「環境? って、だからちゃっかりと……っ……続き、すんな!」ビクッ・・・

アンジェレネ「日本が無宗教なように、ローマは基督教。そこで拾われた孤児は自ずとその地域の風土に染まる」ペロペロ・・・レロレロ・・・チュウゥ・・・

香焼「ぃ、や……それ前に……ぐっ……オレが、教えた事っすよね……だから離れろ!」ジトー・・・グイッ!

アンジェレネ「ふん、ふぁっふぉふぉひゃふ……ぷはっ! うーん。納得しちゃったから小難しいけど覚えてたよ」ジュルル・・・カポ・・・チュプッ


一種の性悪説環境論。
アンジェレネやアニェーゼ達孤児が修道女になった様に、最愛や春上さん達『置き去り』が科学塗れになった。


アンジェレネ「私がもし学園都市で捨てられてたら、今頃能力者になってたかもしれないじゃん」ニコニコッ・・・スッ・・・シュッシュッ・・・

香焼「っ……でも、アンはクリスチャンだろ、ってだから……っ! 止めろ!」ピクンッ!

アンジェレネ「あはは、可愛い。あ、でもそういう考え嫌になったって言ったら、私を嫌う?」シュッシュッ・・・カプッ・・・ジュルジュル・・・

香焼「ぁ……っ! い、そんな事、無いけど……っ」グググ・・・

アンジェレネ「ひゃへひゃいひょー、っとうわっ! うーん、だったら良いじゃん……ね?」チュププ・・・クスッ


だが、貞操については別だ。宗教云々関係無しにふしだらであるべきではない。
たとえ『いまさら』であっても、幾らでもやり直しが効く筈である。
402 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/11(月) 01:41:25.17 ID:Ht0ugU9y0
アンジェレネ「私だって宗教とか関係無く、コォヤギくんの事求めてるんだけど」ウーン・・・

香焼「だからそれは気の迷いで」ハァ・・・

アンジェレネ「あのさぁ……それ、本気で言ってる?」ジトー・・・

香焼「え」キョトン・・・

アンジェレネ「確かに淫らな事してるって自覚はあるし、罪悪感ってか背徳感はあるけど……でもさぁ」ジトー・・・


愛撫が止まったと思ったら、何故か不服そうな顔をしだした。


アンジェレネ「いいや……昔からそういう人だってのはイヤ程知ってる。でも、これだけは絶っ対に教えない」ハァ・・・

香焼「な、何だよ」ムゥ・・・

アンジェレネ「とりあえず……カミやん病滅びろ」ボソッ・・・


やはり偶によく分からない事を言う。


アンジェレネ「まったくもぅ……コォヤギくんの話聞くの疲れる」ドンッ

香焼「ちょ!」バタッ!

アンジェレネ「さっき『力なら自分の方が』って言ってたよね」フフフ・・・

香焼「そ、そりゃまぁ男なんだし」タラー・・・

アンジェレネ「だけど魔術対純粋な腕力だったら?」ニヤッ・・・


そりゃまぁ敵わない。


アンジェレネ「えいっ☆」ドンッ!

香焼「がっ……な、ぁ……アン?」ダラダラ・・・

アンジェレネ「コォヤギくん、今魔術使えないでしょ。何年間一緒に居ると思ってるの?」フフフ


僕の上に跨るアンジェレネ。不敵な笑顔が微妙に怖い。
確かに今の『手持ち』では天草特有の術式は組めない。だがそんなモノ幾らでもカバーしようがある。


アンジェレネ「今の私の魔力量分かってる?」ジトー・・・

香焼「え」

アンジェレネ「いつもの3倍はあるよ。全く使ってないし……コォヤギくんの『魔力』大分吸い上げたから」ニヤニヤ・・・

香焼「っ!! ちょ、待て待て待て!!」ゲェッ!!

アンジェレネ「待たないよー」フフフ・・・


彼女の腰が下りてきて……、


アンジェレネ「ん……ぁ……ふふっ……挿入ったね」グググ・・・

香焼「ぃっ……、」ジュブブ・・・

アンジェレネ「私の、勝ち……っ……だよ♪」ズプッ・・・ニュプッ・・・ユサユサッ・・・

香焼「」プツッ・・・


性器が……交わった。
こうなったら理性が効かない。アンの宗派(カトリック)なんて遠慮せず、都市製の避妊薬(ピル)とコンドーム使っとけば良かった―――
403 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/11(月) 01:44:26.37 ID:Ht0ugU9y0
 ―――とある日(二日目)、PM00:15、英国ロンドンシティ北部、日本人街、とあるアパート・・・・・




















 虚無感。






















香焼「あー……頭真っ白」ドヨーン・・・


気付けば二人してソファの上で寝ていた。
自分はTシャツ一枚、アンは甚平一丁……共に下を穿いていない。


香焼「最低だ」ハァ・・・


時計を見る。もう昼を回っていた。まったく以て堕落し過ぎだ。反省の念しか浮かばない。


アンジェレネ「すぅ……くぅ……」スヤスヤ・・・


珍しくグッスリ寝ている様だ。しかし、よくこんな狭いソファに二人で寝たモノだと苦笑せざるを得ない。
とりあえずシャワーを浴びずに寝(果)てしまったので『臭い』がキツい。さっさと何とかしよう。


香焼「アンの言うとおり、風呂でシとけばよかったかも」ハァ・・・


いや、そんな事を考えてはいけない。元々情を交える事事態が間違いなのだ。
404 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/11(月) 01:52:24.82 ID:Ht0ugU9y0
アンジェレネが目を覚ます前にシャワーを浴び終えた。


香焼「ご飯と……掃除だな」ポリポリ・・・


パスタを茹で、氷で締めておく。それからサラダとドレッシングを準備。五和に教わったパスタサラダだ。
その後、洗面所から雑巾と消臭スプレーを持ってくる。これで準備OK。

後は……彼女を起そう。


香焼「もしもーし」トントン・・・

アンジェレネ「……んー」ムゥ・・・

香焼「おはよう。お風呂入ってこーい。入れといてやったから」

アンジェレネ「あー……一緒にー」ムニャムニャ・・・

香焼「いい加減にしろ。オレはもう入ったから一人で行ってきなさい。かなり臭うよー」ジトー・・・

アンジェレネ「うぇー……うぃ」グダグダ・・・


無理矢理起こして風呂場へ押し込む。彼女が風呂に入っている間にソファの掃除を終わらせてしまおう―――




 ピンポーン・・・・・




―――と思った矢先の事だった。


香焼「ぇ……まさか」タラー・・・


嫌な予感。
天草の同僚か、もしくは……アニェーゼか。一応鍵は閉めている。最悪居留守を使う覚悟で玄関へ向かった。


香焼「……、」チラッ・・・


玄関の覗き穴からは見るに誰もいない。ふと、手紙がポストに挟まっている事に気付く。


香焼「誰から、か」スッ・・・


宛名を見ようと、手紙を引っ張り―――



 『居るのであればお返事くらいして頂きたいのでございますよ』



―――……出せなかった。


香焼「な……お、オルソラ、さん?」タラー・・・

オルソラ『はい。お休みの所、お邪魔して申し訳ないのでございます』フフッ


覗き穴に写らない様、しゃがんで手紙を引っ張っていたのか。何という子供の悪戯。
405 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/11(月) 02:05:20.53 ID:Ht0ugU9y0
香焼「えっと、何か用っすか?」

オルソラ『ええ、少々。中に入れてもらいたいのですが』ニコニコッ

香焼「ちょっと、今日は、その……、」

オルソラ『あら……ガスメーターが回っているのでございますよ。貴方は此方に対応されているのに何故でございましょうね?』クスッ・・・

香焼「え、えっと……ヤカンでお湯を」タラー・・・

オルソラ「あら? シャワーの音が聞こえるのでございますよ」クスクスッ


ああ、畜生……お見通しか。


オルソラ『安心して欲しいのでございますよ。寮の皆さんには内緒で来ているのでございます』

香焼「……、」

オルソラ『私は貴方の味方です。というより、どうしようもない貴方の相談を聞きに来たのでございます』

香焼「アンジェレネを諭しに来たんじゃないんすか」タラー・・・

オルソラ『今の彼女は大人の言う事を聞かない筈でございましょう……あ、でも一目見るつもりではございましたよ』ニコニコッ


通して良いものか悩むんだが……結局、家の中に上げてしまった。どうも自分は押しに弱い。
アンジェレネが風呂から上がってきた時の言い訳を考えなければなるまい。


オルソラ「貴方がヘタれなのは昔からでございましょう」フフッ

香焼「……言わないで下さい」ハァ・・・


急いで拭き掃除を終え、臭いを誤魔化す為にキツめのお香(ブース)を焚く。
だがソファに座らせるのは気が引けるのでキッチンの椅子に腰掛けて貰う事にした。


オルソラ「お食事前でございましたか? 折角でございますから、御一緒しても宜しいかしら」ニコニコッ

香焼「あの……えっと、その……、」タラー・・・

オルソラ「あら? そのお香は日本のカトルセンコーでございますか? 日本人といえばそうでございましょう!」フフフ・・・


この人もどっかずれてる。元からだけど……じゃなくて、会話をしなければ。


香焼「お、オルソラさん。その、何故此処に……アンジェレネが居ると?」ポリポリ・・・

オルソラ「きんちょーる〜……って、はい? ああ、ええっと虱(しらみ)潰しに当たったので此処で正解かと」クスッ

香焼「……は?」ポカーン・・・

オルソラ「家出少女の定番といえば男の家でございましょう? マグヌス神父の方に居なかったので此処かと」フフフ・・・

香焼「何すか、その偏った知識」タラー・・・

オルソラ「オリアナとレッサーが読んでいた(ry」アーダコーダ・・・


またアイツらか。
406 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/11(月) 02:10:23.47 ID:Ht0ugU9y0
オルソラ「さておき……如何したものでございましょうね」

香焼「……、」コクッ・・・

オルソラ「時間が経てば帰ってくると踏んでいたのでございますが、如何です?」

香焼「居座る気っすね……自分は明後日から日本なんすけど、鍵貸せって」ハァ・・・

オルソラ「あらあら。単身赴任の夫を待つ奥方でございますのね。羨ましい」ニコニコッ


そういう問題じゃありません。


オルソラ「あら? いつから此方に居るのかは存じ上げないのでございますが、『手』を出して無いの?」エ?

香焼「手って……あの……、」タラー・・・

オルソラ「ふふっ、私がこういう事を言うのは変でございますか?」クスッ・・・


まぁイメージではしそうにない。女教皇様が積極的に猥談するくらい貴重だ。


オルソラ「神裂は意外にそういうノリ、興味津々でございますよ。彼女はムッツリさんなだけですので」ウフフ

香焼「それは知ってます」キッパリ


何処かで誰かがクシャミをした。


オルソラ「聖職者が恋愛沙汰や色恋沙汰話をしても、主は咎めないのでございましょう」クスクスッ

香焼「は、はぁ」ポリポリ・・・

オルソラ「それで……と、此処から先は彼女も交えてお話したいのでございます」チラッ・・・


真っ裸の少女Aが現れた。


アンジェレネ「……、」ジー・・・

オルソラ「うーん……色々ツッコむべきなのでございましょうが、シスター・アンジェレネ」クスッ

アンジェレネ「……何か」ジトー・・・

オルソラ「身体をキチンと拭かないで上がってくるのは昔と変わっていないのでございますね。風邪をひきますよ」クスクスッ


……。


香焼・アン「「はぃ?」」タラー・・・

オルソラ「それにしても毛が薄いのは羨ましい限りでござますね。あ、別に私が濃いという訳ではございませんから、想像しない様に」フフフ・・・


……。


アンジェレネ「……ええっと、コォヤギくん」チラッ・・・

香焼「ごめん、テンション負けした」ハァ・・・

オルソラ「あ、扇風機で身体を乾かしたらさぞ気持ちが良いのではないでございましょうか!」パアアァ!

香焼「違うよね。まず全裸指摘しようね」ハァ・・・

オルソラ「私は同性ですし、貴方には身体を許した間柄なのでございましょう? だったら問題無いのでございますよ」ニコニコッ

アンジェレネ「……、」チラッ・・・ジトー///

香焼「い、言ってない! 言える訳ないだろ!!」ダラダラ///

オルソラ「あらあら、若い若い。うふふ」クスクスッ


駄目だ、この人。親戚のおばちゃんテンションだ。
407 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/11(月) 02:14:02.18 ID:Ht0ugU9y0
その後、アンジェレネがハーフパンツとTシャツに着替え、三人で昼食を取る事に。
暑い暑いとフードを取り、サラダパスタをニコニコ頬張るオルソラさんに反し、予想通りアンジェレネは無言を決め込んでいる。


オルソラ「もきゅもきゅ……うん、美味しい。流石、神裂と五和の弟でございますね」ニコニコッ

香焼「……あのー」タラー・・・

オルソラ「お話は食事を終えた後にね。あ、シスター・アンジェレネ。ドレッシングを取って頂きたいのでございますが」モキュ

アンジェレネ「……、」ドンッ!

香焼・オルソラ「「っ!?」」ギョッ・・・


かなりご機嫌斜めな様子。


香焼「あ、アン……すいません、オルソラさん」タラー・・・

オルソラ「いえいえ。どうも、シスター・アンジェレネ」ニコニコッ

アンジェレネ「……、」モグモグ・・・


結局、食事が終わるまで沈黙の食卓。
気まずい空気の中、食事を終え、三人分のアイスティーを準備する。


オルソラ「まぁまぁ、態々コーヒーまで。招かれざる客なのに、嬉しい限りでございますよ」ニコニコッ

香焼「いえ、そんな事は」タラー・・・

アンジェレネ「……、」フンッ

香焼「アン、いい加減にしてよ」ハァ

オルソラ「ふふふ……さて、ではお話を」チラッ・・・

アンジェレネ「話す事なんてありません」キッパリ!

香焼「……アン」ギロッ・・・


本気で怒るぞ。


オルソラ「そうカッカせずに。貴女に話す事は無くとも、私と香焼さんにはあるのでございますよ」チラッ・・・

アンジェレネ「……、」ジトー・・・

オルソラ「それは無論貴女についての話でございます。陰口の様な話し合いはしたくないので、貴女が聞いていても構わないのでございます」

アンジェレネ「……御勝手に」ムゥ・・・


流石大人の代表。物腰柔らかな対応だ。


オルソラ「ふふっ、ではまず……シスター・アンジェレネの今の処遇をお知らせします」スッ・・・

香焼・アン「「え」」

オルソラ「『特別任務3週間。秘匿事項により派遣場所は明記せず――』」キッパリ


一枚の紙。


香焼「え、それ……えっと」タラー・・・

オルソラ「『――尚、この任務は主教補佐直属の命によるものである』……やはりマグヌス神父はツンドラでございますね」フフフ・・・

アンジェレネ「……、」グッ・・・

オルソラ「まぁ実際はシスター・アニェーゼとレッサーが無理矢理書かせたものなのでございますが」クスクスッ

香焼「そう、ですか」ホッ・・・


その無茶を容認したステイルには感謝すべきだろう。
408 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/11(月) 02:18:18.65 ID:Ht0ugU9y0
オルソラさんは、無言のアンジェレネに言い聞かせるように続ける。


オルソラ「つまり貴女はあと一週間は自由。考える猶予があるのでございますよ」フフッ

アンジェレネ「……知らない」プイッ

オルソラ「ただし問題として、香焼が日本へ行く明後日以降でございますね」

香焼「……はぁ」ポリポリ・・・

オルソラ「寮へ戻る気が無いと?」ジー・・・

アンジェレネ「サラサラありません」フンッ

オルソラ「……そうでございますか。では如何するおつもりで?」

アンジェレネ「此処に住んでます」キッパリ


ふざけろ、こんにゃろ。絶対鍵渡さない。


アンジェレネ「別に鍵なんて無くていいもん。勝手に居座ってるもん」ムスー・・・

香焼「いつまで馬鹿言ってんのさ」マッタク・・・

オルソラ「……では香焼。貴女は彼女を追い出すのでございますね」チラッ・・・

香焼「え"っ!?」ギョッ・・・

オルソラ「今の彼女は何処の誰の下に居座っても可笑しくない様に見えるのですが……宜しいのでございますか?」

香焼「そんな、事……、」チラッ・・・

アンジェレネ「……そうだね。素性聞かず養ってくれそうな人の所にでも居座ろうかな」フンッ

オルソラ「ほら」フゥー


そんな事したら、本気で殴るぞ。


オルソラ「あらあら」ウフフ

アンジェレネ「ぅ……じょ、冗談だよ」タラー・・・

香焼「冗談でも言うな」ギロッ・・・

アンジェレネ「え、と……ごめん」ムゥ・・・

オルソラ「ふふっ……しかし困りましたね。如何したらよいのでございましょう」ウーン・・・


さっきからオルソラさんの一挙一動が演技掛ってる様にしか見えない。今この人は道化師なのだろう。
解決策を持ち合わせているのなら早く提示して欲しい。


オルソラ「そういえば……泣いていたのでございますよ」ボソッ・・・

香焼・アン「「は?」」

オルソラ「シスター・ルチアが」チラッ・・・

アンジェレネ「っ……、」ドキッ・・・

オルソラ「彼女にしては珍しく弱気でございましたね。ずうっと『私の所為だ。ごめんなさい』と繰り返してばかり」ハァ・・・


誰も彼もが責任を引き受けたがる……敵なんかいない。悪者なんていない。


オルソラ「逆にシスター・アニェーゼが怒っていましたね。それはもう、マグヌス神父をサンドバックにするくらいに」アハハ・・・

香焼「……あはは」ダラダラ・・・

オルソラ「まぁでも、きっとアニェーゼも影で泣いているのでございましょうね……如何思いますか? シスター・アンジェレネ」チラッ・・・

アンジェレネ「……、」グッ・・・

オルソラ「二人だけではなく、寮全体の雰囲気も暗くなっているのでございますよ。まるで昨日の土砂降り曇天の様に」ハァ・・・
409 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/11(月) 02:20:47.94 ID:Ht0ugU9y0
結局のところ、僕らは子供なんだ。特に彼女はモラトリアムというか、反抗期を経験してみたかっただけなのかもしれない。
表情を見れば分かる。今の彼女の顔は……後悔塗れ。


アンジェレネ「……でも、私は」ボソッ・・・

オルソラ「あ、別に私は命令しにきたわけでも答えを聞きに来た訳でもございませんよ」クスクスッ

アンジェレネ「え」

オルソラ「後は御二人でお話して決める事でございましょう。私の『独り言』は此処まででございます」フフッ

香焼「うわぁ……ブン投げたっすね」タラー・・・

オルソラ「ふふふ。如何捉えるかは貴方達次第でございますが……大人は汚いのでございますよ」クスクスッ


アンジェレネに火を点けに来ただけかっての。


オルソラ「将来性のある子供には選択の機会を。では選択の機会とは何ぞや?」フフッ

香焼「機会の均等っすか。社会政策みたいな事を」ハァ・・・

オルソラ「それが自由(モラトリアム)でございましょう。いっその事、機会など与えず全て指示してくれば楽なのにとは思いませんか?」

アンジェレネ「そんなの……自由じゃないです」

オルソラ「そう感じられる内が子供なのでございます。それはそれは残酷な事かと」フフフ・・・


妙に哲学的だ。多分、アンジェレネは半分理解したかどうかだと思う。


オルソラ「他力本願は楽。自己選択は苦難……悩みなさい、子供達」ニコニコッ

香焼・アン「「……、」」

オルソラ「誰も彼も貴女の決定を恨んだりはしませんよ、シスター・アンジェレネ。それは貴女が望んだ事でございましょう」

アンジェレネ「……私は、組織に反したんですよ」

オルソラ「誰もその様な風には思っていないのでございます。ただ……貴女がいないと、寂しいですね」クスッ・・・

アンジェレネ「……、」

オルソラ「特に……アニェーゼとルチア。彼女達の寂しさは私などの比にはならない筈でございましょう。ね、シスターさん」


姉妹。


オルソラ「努々(ゆめゆめ)忘れぬ様。貴女は自分が思っているより重い存在なのでございます、シスター・アンジェレネ」

アンジェレネ「……、」ジー・・・

オルソラ「後は香焼」チラッ・・・

香焼「え、あ、はい」コクッ

オルソラ「手伝ってあげなさい。男の子でございましょう」ニコニコッ

香焼「あはは……ええ」コクンッ


性別を出されると何とも、断れない。
410 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/11(月) 02:31:39.57 ID:Ht0ugU9y0
カラリと氷が鳴る。

自分は如何すべきか何となく分かった。アンジェレネも分かった筈。
オルソラさんは彼女の顔を見て微笑む。多分、こうなる様シナリオを立ててきたのだろう。流石寮長(仮)さんというべきか。


オルソラ「さて……私の話は此処まででございますよ。若者二人のお楽しみを邪魔する様な事はしたくありませんからね」ニヤリ・・・

香焼「……は? 楽しみ??」ポカーン・・・

オルソラ「あらあら、皆まで言わせるなんてー。香焼は神裂と違ってオープンなのでございますねー」フフフ・・・


意味が分かりません。


オルソラ「……あら?」チラッ・・・

アンジェレネ「何か」

オルソラ「……んー」チラッ・・・

香焼「えっと、はい?」タラー・・・


何故かニコリと笑い、人差し指と中指の間に親指を通すオルソラさん。



オルソラ「『しない』のでございますか?」ウフフ・・・



……。


オルソラ「あらら? シスター・アンジェレネが裸で出てきたものでございますから、てっきり……おほほ」クスクスッ

香焼「し、しません!」カアアァ///

アンジェレネ「……、」カアアァ///

オルソラ「まぁまぁ。隠さずとも宜しいのでございますよ。今時婚前性交禁止だなんて言わないのでございます」フフフ・・・

香焼「え、と……調子狂うなぁ」ポリポリ・・・///

オルソラ「ふふふふふ……初々しーのでございますねー」ニヤニヤ・・・


というか、この人こういう話するイメージが無いので違和感バリバリ。
あと……修道女たるアンジェレネと情を交えた事を公にする訳にはいかないだろう。


オルソラ「ふふっ。まぁ周りより早く初体験を済ませたとあっては、確かに恥ずかしい筈でございますからね」クスクスッ

香焼「えっと、その、そういう事じゃなくて……アンジェレネ的に」タラー・・・

オルソラ「え? ああ、そういう事……えっと、シスター・アンジェレネ」チラッ・・・

アンジェレネ「言う必要が無いと思ったので……てかコォヤギくん、まだそんな事言ってるの?」ジトー・・・

オルソラ「要は処女性を気にしていると?」ジトー・・・

香焼「……、」コクン・・・


罰なら受けるつもりだ。なんならルチアさんの前に出向いて去勢される覚悟もある。
411 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/11(月) 02:50:17.91 ID:Ht0ugU9y0
成り行きとはいえ、一人の女性の貞操を犯したのだ。それ相応の審判は必要だろう。


オルソラ「犯すって……呆れた。強姦じゃないでしょうに」ポカーン・・・

アンジェレネ「カミやん病マジ滅びろ」ボソッ・・・

オルソラ「ふむふむ。色々と順序が逆になってしまったのでございますね?」チラッ・・・

アンジェレネ「だって……私からは絶対に言えませんよ」ハァ・・・ゴニョゴニョ・・・

オルソラ「そりゃまぁ女性の口から告げるのはねぇ……香焼、とりあえずブン殴って宜しいのでございますか?」ニコニコッ・・・

香焼「え!?」ギョッ・・・

アンジェレネ「止めたげてください。悪気は無い筈なんです……結局、セックス誘ったのは私ですし」タラー・・・


二人は一体何を言ってるんだ。


オルソラ「ハァ……いいですか? まずですね、処女検査たるモノは無いのでご安心を」

香焼「それは分かってるっす。今の時代、それやったら人権委員会とか五月蠅いでしょうから」

オルソラ「うーん。それだけじゃなく……、」チラッ・・・

アンジェレネ「私は、というか孤児出身のシスターには、そういう履歴検査とか出来ないんだよ」

香焼「え」

オルソラ「孤児達の……『棄てられる前』は自己申告でございます。とてもデリケートで難しい問題でございますからね」

香焼「あ……はい」コクン・・・


孤児の種類は様々だ。
アニェーゼの様に親を亡くしたモノ。私生児。捨て子。そして今オルソラさんが暗喩した、虐待。

知られたくない過去を公開させない為、トラウマを喚起させない為にも自己申告制なのだろう。


アンジェレネ「誰かは言えないけど……私達(アニェーゼ部隊)の中にも孤児の頃に、虐待とか強姦された娘はいるよ」シュン・・・

香焼「そう、なんだ」

オルソラ「故に、検査など悪しき風習は過去のモノなのでございます。ただ聖職者の中にも心許無い者はございますので……何とも」ウーン・・・

アンジェレネ「私達の担当神父様は良い人だったから、魔術指導以外は何も」フルフル・・・

オルソラ「私の知り合いにはございますよ。祭司からセクシャルハラスメントとパワーハラスメントを受けた友人」ハァ・・・


十字教徒の性に関する悪習は今に始まった事では無い。汚れた部分だろう。


オルソラ「……とりあえず、貴方は責任の『取り方』は再考すべきでございますよ」ハァ・・・

香焼「だからそれなら、然るべき罰を」

オルソラ「違うっつってんのでございますよ、大馬鹿野郎」ゴゴゴゴ・・・

香焼「……う」タラー・・・


さっきからオルソラさんの僕を見る目が、悪人を見る目だ。怖い。
412 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/11(月) 02:53:26.69 ID:Ht0ugU9y0
オルソラ「もぅ……あと『責任』なんて言葉は使うべきではございませんね。シスター・アンジェレネに失礼です」チラッ・・・

アンジェレネ「私は別に」アハハ・・・

オルソラ「いえ。まぁある意味貴女も素直に言えてないの悪いのかもしれませんが……全般的に彼に非があるので」ジトー・・・


それは認めるが、何か誤魔化されている気がしてならない。


オルソラ「やれやれ……兎に角、私はそろそろ帰るのでございます。後は二人で話すのでございますよ」

香焼「あ、はい」

オルソラ「シスター・アンジェレネ。最悪は『率直』に伝えるべきでございましょう。そうしないと彼にも毒が残ります」

アンジェレネ「……、」

オルソラ「シスター・アニェーゼに遠慮をしてるなら、それは間違いでございますよ」ボソッ・・・

アンジェレネ「っ!」ドキッ・・・

オルソラ「言っては何ですが『早い者勝ち』という言葉もあるのでございます。反則っぽいですが、割り切るのも女でございましょう」フフッ


アニェーゼが何だって?


オルソラ「お黙る」ピシッ

香焼「あ痛っ」テテテ・・・

オルソラ「何にせよ、私共の気持ちは変わりません。戻ってきてもらえたら、それはそれは嬉しい事なのでございます」フフッ

アンジェレネ「……、」

オルソラ「貴女が何を選んでも、私達は受け入れるのでございます。良き判断を」クスッ


そう言って、オルソラさんは立ち上がった。帰る様なので玄関まで彼女を送る。
アンジェレネは何か考え込むように軽く頭を下げ、その場で見送った。

玄関でフードを被りオルソラさんは、最後に、と告げる。


オルソラ「ヒント。鈍感は罪でございますね」チラッ・・・

香焼「え、ええっと……あはは」ポリポリ・・・


意図が読めない。
413 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/11(月) 02:56:19.08 ID:Ht0ugU9y0
オルソラ「とりあえず、二人が寮に顔を出すまで内緒にはしておくのでございます」

香焼「えっと……はい。ありがとうございます」ペコッ

オルソラ「ただ、シスター・アニェーゼやマグヌス神父辺りは気付いてるやもしれませんよ」ボソッ・・・

香焼「匿ってる事っすか……覚悟はしてます」コクン・・・

オルソラ「宜しい」フフッ


もしかしたら生涯で一番大きな隠し事だ。


オルソラ「では、これで……あ、そうだ。大事な事を聞くのを忘れていたのでございますよ」ピンッ!

香焼「はい」

オルソラ「ちゃんと避妊はしてましたか?」チラッ・・・

香焼「……は?」ポカーン・・・

オルソラ「避妊」ニコニコッ


……。


オルソラ「……えー。今時の若者なのに、そういう知識も無いのでございますか。仮にも科学の街にも席を置く少年が」ジトー・・・

香焼「い、いや、だって……アンはカトリックで」タラー・・・///

オルソラ「いくらカトリックでも最近では表向き『性病防止』という名目で、教皇庁が避妊を認めているのでございますよ」ハァ・・・

香焼「あ」


そういえば、そんな話を聞いた気もする。


オルソラ「これはもう『もしも』があった場合、マジで『男』として責任問題でございますね。この件は神裂にも報告」ジトー・・・

香焼「い、一応……『中』にはしてないっすよ」ダラダラ・・・

オルソラ「お馬鹿。それでも身籠る時は身籠るのでございます。快楽主義や避妊よりも、堕胎の方が罪でございますよ」マッタク・・・


反論できない。


オルソラ「新装7つの大罪。他者を貧困にせしめる者……計画性の無い性行為は罪でございます。悧巧な貴方なら意味がわかりますね?」ビシッ

香焼「計画性無く無為に子を為す末路は貧困っすか……、」タラー・・・

オルソラ「今夜からでも構いません。キチンと『性病予防』なさい」メッ!


何も言えない。頭が下がるばかりだ。


オルソラ「やれやれ……学習しましたね。反省しろとは言いません。彼女に失礼でございますから」モゥ・・・

香焼「すいません」ペコッ

オルソラ「あと、それから……―――」フフッ

香焼「え」カアアァ///

オルソラ「―――……ふふふ。簡単な事でございますよ。それでは御機嫌よう」ペコリ・・・


彼女はまたもやよく分からないヒントを置いて帰って行った。
鈍感は罪。それから……性交の子作り以外の意義。如何いう意味だ?
414 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/07/11(月) 03:06:09.47 ID:Ht0ugU9y0
はい、今日は此処まで。次回『わっふるわっふる』沢山入るので良い子は回れ右してくださいね。

個人的には……アニェーゼ・アフターよりはエッチくないかなぁと思うよ。
でも絹旗アフターよりはエロいかも。

そんじゃ適当に感想よろしくです。
ちなみに、リクエストって訳じゃないけど『こういうプレイして欲しいなぁ』って希望があれば可能な限り反映するかも。

とりあえず、また明日ー! ノシノシ”
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/11(月) 08:03:55.81 ID:Db+1AzWW0


ドロドロってこういう事か……何というか、皆色々とすれ違っちゃってるな
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 11:20:10.86 ID:GOAl5f4E0
ここまで鈍感だと異性・同姓関係なく殴られても仕方が無いレベル
変に堅物過ぎる上に超の付く鈍感…全く共感できないなぁ
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/11(月) 15:48:36.42 ID:m3BiDc7DO
香焼にアンジェレネの行動は一時的な気の迷いと見えるのかもしれんが……さすがに鈍すぎね?

しかしアニェーゼやレッサーとアンのすれ違いといい、未だ出番すらないサーシャといい、バカルテットがここまでバラバラになるとは……
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/07/11(月) 15:53:37.47 ID:+SBKSK7Co
おっつん
アンジェレネが言葉攻めとかしようとがんばるけど結局こーやぎに主導権握られるとかいう展開だと僕が一人で勝手に喜びます
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/11(月) 19:13:11.31 ID:XSHhAAoDO
ふむ‥‥これがカミやん病末期か。今までに無いタイプのゲス条さん化だな。

まぁとりあえずわっふるわっふるは次回っぽいから、>>1の本番描写に期待します。
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/11(月) 19:16:03.01 ID:XSHhAAoDO
ふむ‥‥これがカミやん病末期か。今までに無いタイプのゲス条さん化だな。

とりあえずわっふるわっふるは次回っぽいから、>>1の本番描写に期待!
421 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/07/11(月) 23:40:34.69 ID:Ht0ugU9y0
こんばんわ。0時から投稿します。
422 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/12(火) 00:04:19.56 ID:hz0d4PSO0
 ―――とある日(二日目)、PM04:30、英国ロンドンシティ北部、日本人街、とあるアパート・・・・・








オルソラさんが帰って以降、無言が続いた。
自分はベランダで上の空。アンジェレネは心此処に非ずの状態でボーっとテレビを見ている。

ふと……彼女が呟いた。


アンジェレネ「大人にならなきゃ……駄目なのかな」ボソッ・・・


独り言なのか、僕に対しての問なのか。


アンジェレネ「むぅ……、」

香焼「……焦る必要は無いんじゃない」

アンジェレネ「でも周りは……、」

香焼「周りは周り。君は君」

アンジェレネ「よく、分かんないや」


振り向かずに口を出す。
歳の頃16,7程。自分らはまだ若い。


香焼「あとさ、ステイルやアニーが『大人』かって言われたら違うと思う」

アンジェレネ「……、」

香焼「大人だとか子供だとか、ツマんない事っすよ」


確かに彼らは重責重役。だが老若なんかに拘るだろうか。
無論、オリアナさんが言っていた事も真理だろう。しかし僕らは僕らだ。ちっぽけな枠組に捉われるのは間違いだと思う。
もし灰色の青春が嫌なら、逃げ出すよりも自分から変えてやらねば。

それが我々が『彼』から学んだ美学だろう。


香焼「『英雄』になれなくても、その真似事くらいは出来るさ」クスッ

アンジェレネ「……、」

香焼「尤も、オレは灰色だなんて思った事無いけどね」


僕達の今までを否定したくない。良くも悪くも想い出だ。


香焼「アンは、嫌なの?」チラッ・・・

アンジェレネ「やっぱり……コォヤギくんの話、難しくてよく分かんない」

香焼「……そりゃ悪うござんした」ハァ・・・


だけど彼女も分かってる筈。あとは認められるか如何か。
423 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/12(火) 00:29:21.12 ID:hz0d4PSO0
一寸後、彼女は立ち上がり此方(ベランダ)へ歩んできた。
そして何も言わず僕の後ろに佇む。


香焼「気持ち、決まったの?」

アンジェレネ「一応、ね」コクン・・・

香焼「そう。良かった」クスッ


振り向き微笑む。その刹那――抱き着かれた。


香焼「な、ちょ……え」ドキッ・・・

アンジェレネ「……ごめんなさい」ギュウゥ・・・

香焼「え、と……謝らなくて良いよ」

アンジェレネ「……、」フルフル・・・

香焼「オレに迷惑掛ける分には構わないからさ」ポリポリ・・・


矮小な自分は、その程度の事しかしてやれない。


アンジェレネ「違うよ……助かったもん」ギュッ・・・

香焼「あはは……何とも」ポリポリ・・・

アンジェレネ「沢山甘えてごめんなさい」ペコッ・・・


そして彼女は、僕に頼んだ。


アンジェレネ「最後に二つ、我儘良い?」ボソッ・・・

香焼「叶えられる範囲ならね」コクッ

アンジェレネ「……アニェーゼちゃんに、電話して」キュッ・・・

香焼「直接、言いに行かないの?」

アンジェレネ「……、」シュン・・・


決心はついたが直接顔を合わせる勇気がない、か。


アンジェレネ「コォヤギくん……その……、」モジモジ・・・

香焼「……分かってる。ちゃんとオレも謝るから」ポンポンッ・・・

アンジェレネ「……ごめんね。私の所為で」ウルウル・・・

香焼「違うよ。オレの方が悪い」


何時だって男性の方が悪い。男としてケジメを、筋を通す。
自分の周りの小父貴・兄貴分からは、そう教わってきた。


アンジェレネ「……ありがと」クスッ・・・ギュッ・・・

香焼「どういたしまして」フフッ


小さな彼女を、純粋に笑わせたかった。ただそれだけだ。
424 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/12(火) 00:35:14.09 ID:hz0d4PSO0
ソファに戻り、電話を取る。アンジェレネは不安そうな顔で僕を見る。


香焼「……大丈夫、安心して」


微笑み、電話帳から『アニェーゼ』の番号を押す。
1コール・・・・・2コール・・・・・3コール……4……5…――


アニェーゼ『はい』Pi!


――9回目のコールでアニェーゼが出る。


香焼「もしもし。今大丈夫?」

アニェーゼ『大丈夫だから電話出たんでしょうが……んで?』

香焼「大事な話」

アニェーゼ『……アンの事?』


今の僕らには、その話題しかないだろう。


アニェーゼ『見つけたんですか!?』

香焼「……うん」

アニェーゼ『そう、良かった……コーヤギ、そこにアン居るんですか? 替わって下さい』ホッ・・・

香焼「……、」チラッ・・・

アンジェレネ「……、」シュン・・・

アニェーゼ『……コーヤギ?』


如何切り出すべきか。


香焼「アニー。あのね……、」グッ・・・

アニェーゼ『ん……待った』

香焼「え」

アニェーゼ『アンタは今如何でも良いんです。とりあえず、アンを出しやがれってんですよ』

香焼「……だから、さ。ちょっと」

アニェーゼ『うっさい。黙れ。いいから替われっつってんです、ボケ。あの子の声聞かせろ!』ガーガー!


駄目だ。冷静じゃ無い。


アンジェレネ「……コォヤギくん。自分で言うよ」フッ・・・

香焼「ん、分かった……アニー。今替わる」

アニェーゼ『あいよ』ムスー・・・

アンジェレネ「……もしもし」ボソッ・・・

アニェーゼ『ん』

アンジェレネ「えっと……ごめんなさい」ゴニョゴニョ・・・

アニェーゼ『……、』ホッ・・・

アンジェレネ「うん……、」ボー・・・


とりあえず、今は席を外そう―――
425 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/12(火) 00:57:04.09 ID:hz0d4PSO0
アニェーゼ『アン』

アンジェレネ「……はい」

アニェーゼ『色々言いてぇ事はありますが……とりあえず、無事で良かった』グズッ・・・

アンジェレネ「……うん、ごめんなさい」ウルウル・・・

アニェーゼ『良いんです。謝んな……今、何処なんです?』

アンジェレネ「……、」

アニェーゼ『……コーヤギん家ですか』

アンジェレネ「……うん」

アニェーゼ『そう……いつから?』

アンジェレネ「……、」グッ・・・

アニェーゼ『怒らないから言いなさい』

アンジェレネ「……、」

アニェーゼ『そう……分かりました。予想通りっちゃ予想通りですね』ハハハ・・・

アンジェレネ「え」キョトン・・・

アニェーゼ『ずっと居たんでしょ』ハァ・・・

アンジェレネ「あ、ぅ……っ」

アニェーゼ『何となく、分かってましたよ。あの甘ちゃん坊やは嘘下手クソですからね……メールの内容見りゃ誤魔化してんの一発です』

アンジェレネ「あ、アニェーゼちゃん! その……コォヤギくんは悪くないの!」

アニェーゼ『別に誰も責めませんよ。んな器量狭い女じゃねぇですから……、』クスッ・・・


暫時、無言。


アニェーゼ『あー、えっと、さ……帰ってきなさい。すぐにじゃなくても良いから、必ず』

アニェーゼ『もしかして他の誰かに好きにしろとか言われてたかもしんねぇですけど……私は、イヤですからね!』キッ・・・

アニェーゼ『アンタは私の妹なんです! 勝手にどっか消えたら困ります! ずーっと離れるなんて許しませんから!!』ガアアァ!!


アンジェレネ「あ……ぅ……うぅ……っ」ポロポロ・・・

アニェーゼ『ルチアだって同じです。戻ってきなさい、馬鹿妹……勝手に、消えんな』グスン・・・

アンジェレネ「ぇぅ……ごめ、なさっ……、」ポロポロ・・・

アニェーゼ『泣くな、馬鹿……っ……皆、アンタの……うぅ……味方、なんです。帰って、来てよ』グズッ・・・

アンジェレネ「ごめん、なさい……ごめんなさい」ポロポロ・・・

アニェーゼ『もぅ……怒ってないですから』フフッ・・・


違う。それだけじゃない。


アンジェレネ「わ、たし……私、ね……っ」ウウゥ・・・

アニェーゼ『待った。アンの行動なんかお見通しなんです。何年姉貴分やってっと思ってんですか……後でしっかり聞きます』

アンジェレネ「あ、アニェーゼちゃん……、」ドキッ・・・

アニェーゼ『まずはコーヤギに替わりなさい。じゃなきゃ怒る……コーヤギを』キッ・・・

アンジェレネ「う、うん……分かった。ごめん」コクッ・・・


ベランダの香焼を呼び寄せ、電話を渡した。
426 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/12(火) 01:04:30.00 ID:hz0d4PSO0
―――アンジェレネと何処まで話たかは分からないが、僕を御指名らしい。
覚悟を決め、電話を受け取る。


香焼「替わったよ」

アニェーゼ『おー、嘘吐きコーヤギ』Hahaha!

香焼「……あー」ダラダラ・・・

アニェーゼ『アンタ、メールの文章でも嘘が下手ですねぇ。あの子の事匿ってるの薄々気付いてましたよ? この大馬鹿野郎』ケッ!

香焼「あはは……ごめんなさい」

アニェーゼ『私ん中で一生覚えといてやりますよ。腹括れー』フフフ・・・


勘弁して下さい。


香焼「……えっと、アンと何処まで話したんすか?」ボソッ・・・

アニェーゼ『殆どです。まぁもうちょっと話はあるんですけど……先にテメェですね』

香焼「……、」

アニェーゼ『全部吐け。黙って聞くから』


口調は雑だが……それはまるで僕の懺悔を聞く修道女。


香焼「……彼女を、拾いました」

アニェーゼ『おう』

香焼「でも……救えたかどうかは、分からないっす」

アニェーゼ『んなモンはテメェの主観です。聞きてぇのはそういうこっちゃねぇんですよ……主は全てをお見通し。あーゆーおk?』フンッ


分かっているなら、皆まで言わせないで欲しい。


アニェーゼ『吐け。懺悔は全部ゲロるまで終わらねぇんですよ』

香焼「……彼女を」ゴクッ・・・

アニェーゼ『……あの子を?』フム・・・

香焼「……、」グッ・・・

アンジェレネ「コォヤギくん……、」タラー・・・

アニェーゼ『……言え』




 犯しました。




アニェーゼ『……、』フーン・・・

アンジェレネ「な、こ、違う!」ギョッ・・・

アニェーゼ『……それも、主観ですか?』

香焼「いや……違う。嫌がる彼女をオレが犯した。何度も」ボソッ・・・

アンジェレネ「嘘言わないで! アニェーゼちゃん、違うの! 本当は」アタフタ・・・

アニェーゼ『アンジェレネー。電話口じゃなくても聞こえる程に騒がねぇでくださーい……おい、強姦魔。まだ言う事ありますか?』

香焼「いや、無いっす」


自分なりの、男としてのケジメ。
427 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/12(火) 01:25:32.60 ID:hz0d4PSO0
アニェーゼ『っ……テメェとの話は最後です。一度、アンジェレネに。あと、一回消えなさい』

香焼「分かった……アン」チラッ・・・

アンジェレネ「……、」ギロッ・・・


睨まれようが、自分にはこういう方法しか浮かばなかった。絞首台へ立たされるのも、覚悟の上である。
僕は再び、ベランダへ戻り審判を待った―――

アンジェレネは慌てて電話を受け取り、急いで香焼の言葉を訂正した。


アンジェレネ「アニェーゼちゃん、今のは違うの! 本当は、その……、」アセアセ・・・

アニェーゼ『んな事ぁ分かってますよ。アイツにアンタの事強姦できる度胸ある訳無ぇですからね』クスッ・・・

アンジェレネ「……え」

アニェーゼ『さて、さっきは姉妹の話でしたが……今度は女の話です』

アンジェレネ「あ、ぇ」

アニェーゼ『正直、アンタの事……本気で打ん殴ってやりたいですよ。ズリぃです……、』グッ・・・

アンジェレネ「っ……、」シュン・・・


妹(アンジェレネ)は、抜け駆けをした。しかも情に訴えるという卑怯な手段を用いて。
姉(アニェーゼ)の気持ちを知らない訳ではない。その他の少女達の気持ちもだ。


アンジェレネ「ごめんなさい……本当に、ごめん」

アニェーゼ『ん……情に流されたコーヤギも悪いっちゃ悪いですけど、やっぱこればっかはアンタが悪い。卑怯ですね』

アンジェレネ「……、」

アニェーゼ『まぁでも、私が男なら間違いなくアンタの事犯してますから……ギリギリまで我慢できたアイツは偉いんでしょう』クスッ・・・

アンジェレネ「っ……アニェーゼ、ちゃん」グッ・・・


修道女にあるまじき言葉。だが……純粋に、嬉しい。


アンジェレネ「私も……私も、男の子だったら……良かった。そしたら、アニェーゼちゃんの事……抱いてた」ポロポロ・・・

アニェーゼ『ありゃりゃ。嬉しい事言ってくれますねー。でも私の貞操はそう易々とくれてやんねぇですよ?』クスクスッ

アンジェレネ「無理矢理でも、モノにするもん」ウウゥ・・・

アニェーゼ『ははは。同性愛(レズ)は勘弁ですよ。ソッチの気は無いので』フフフ・・・

アンジェレネ「あはは、は……あの、ね……本当に……っ……ごめん」ポロポロ・・・

アニェーゼ『もう謝らねぇでください。私が惨めでしょう』ハァ・・・


とてもとても、残酷な話。


アニェーゼ『キチンと……皆に宣言なさい。もうアイツは、アンタのモノなんだから』クスッ・・・

アンジェレネ「それは……、」ポロポロ・・・

アニェーゼ『隠れて付き合うなんつーのは絶っっっ対ぇに許さねぇですよ。公言しやがれってんです』ケッ

アンジェレネ「え、と……そうじゃなくて」グシグシ・・・

アニェーゼ『……は?』


まだ、ドチラからも告白はしてない。
428 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/12(火) 01:32:50.63 ID:hz0d4PSO0
アニェーゼ『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・へ』ポカーン・・・

アンジェレネ「その……横暴やっといて、私から好きだなんて言えないし」タラー・・・

アニェーゼ『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・コーヤギ、アンタに告ってねぇんですか』キョトン・・・

アンジェレネ「……うん」シュン・・・

アニェーゼ『……、』


現状、恋人同士とは言えない。無論そんな話は納得できる訳も無いので……


アニェーゼ『ふ……っざけんなああああぁっ!!』ガアアァ!!

アンジェレネ「ひぅ」ビクッ!

アニェーゼ『オイ、ゴラァ……あの強姦野郎に替われ。サッサと替われボケ!!』ガンッ!

アンジェレネ「だ、だから、無理矢理やったの私の方だよ」ダラダラ・・・

アニェーゼ『じゃかましぃ!! 痛ぇ思いすんのは女の方なんだっつのアホンダラ!! 悪ぃのは野郎なんだ駄阿呆っ!!』ギリリ・・・


口調が拙い。アニェーゼは只今暴走モード。


アニェーゼ『ファックとアイラヴュの順序が逆になったのはしゃーねぇ。だがよぉ……セフレたぁ許せねぇぞボケこのタコ!』ギャオォ!

アンジェレネ「ご、ごめんなさい……そんなつもりは、無いんだけど……、」ダラダラ・・・

アニェーゼ『だからオメェは悪くねぇっつってんだろ馬鹿女郎が……いいからさっさと電話替われや』ギチチ・・・

アンジェレネ「……だ、だめ」フルフル・・・

アニェーゼ『あん?』


今替われば、アニェーゼは間違いなく香焼にブチ切れるだろう。


アニェーゼ『ったりめーじゃ糞っタレが。人様の妹分傷モノにしてから、のまま玩具代わりにしてただとぉ……殺すっつの!』ギチッ・・・

アンジェレネ「ち、違うの! 私が……悪いから。全部全部、私の所為だから!」グッ・・・

アニェーゼ『……、』

アンジェレネ「お願い……コォヤギくんの事、責めないで。好きって言わせなかったのも、多分私の所為だから」シュン・・・


彼には負い目があった。成り行きで情を交えてしまった事を悔いている。
彼も彼で、彼女に告白できない理由がある。


アニェーゼ『……はぁ。似た者同士が。罪庇い合ってんじゃ無ぇです。二人とも優し過ぎんですよ……昔から、ね』ヤレヤレ・・・クスッ・・・

アンジェレネ「ごめんなさい」

アニェーゼ『だから謝んなと……まぁ良いや。コーヤギに替わって下さい。アンタとの話は終わり』

アンジェレネ「え、ぅ……はい」シュン・・・

アニェーゼ『ったく……心配しねぇでください。アンタが危惧してる様な説教はしませんよ』クスッ・・・

アンジェレネ「……ありがとう、アニェーゼちゃん」ホッ・・・

アニェーゼ『こういう時は機転利かせて「お姉ちゃん」とでも言ってもらいてぇですね……次は寮で会いましょう』

アンジェレネ「うん、お姉ちゃん……あ、やっぱ駄目。違和感バリバリ」ウーン・・・

アニェーゼ『あらら。残念です』フフフ・・・


そして、同僚であり親友であり姉妹である二人は“またね”と告げた。
429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/12(火) 01:38:59.33 ID:0ELaRctDO
>>428
まぁこれが普通の反応だよな。
430 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/12(火) 01:44:23.74 ID:hz0d4PSO0
―――怒号が聞こえた。詳しくは分からなかったが、多分、アニェーゼはカンカンだろう。
やはりルチアさんの前で腹を掻っ捌く覚悟をした方が良いだろう。

数分後、再度電話を受け取る。


アニェーゼ『おう、強姦魔。よくもまぁ人様の妹君をよぉ……、』ギリリ・・・

香焼「……、」

アニェーゼ『ったく……まぁ今はあの子に免じて次の話に移ってやんよ』

香焼「え?」

アニェーゼ『さっきテメェはケジメと言いやがりましたね。そんじゃその具体的行動を教えなさい』

香焼「具体的って……責任は、その……任せるよ。煮るなり焼くなり好きにしていいさ」

アニェーゼ『駄阿呆。んな事になったらアンタ間違いなくルチアに去勢されますよ』

香焼「覚悟の上っす」

アニェーゼ『んなヤッスい覚悟要らねぇですよボケ。他人任せにすんなゲス野郎』ケッ


安いって、そんな……じゃあ如何しろと。


アニェーゼ『自分で考えろ! ……って言いたい所ですが、超鈍感のコーヤギにそれ言っても答えに辿り着くまで一生涯使いますね』ハァ・・・

香焼「むぅ……、」

アニェーゼ『二つです……一つは、もう二度と謝んな。アンジェレネを抱いた事、絶対! 何が何でも! 謝んな!!』ガアアァッ!!

香焼「な!?」キョトン・・・

アニェーゼ『もう一つは公言しろ。間違っても、強姦しました、じゃねぇですよ』フンッ・・・


では、何を宣言するのだ。


アニェーゼ『アンタ、アンの事嫌いなんですか? だったらルチアじゃなくリーアさん(リメエア姫)に今回の事言いますから』


止めて下さい。死ぬより恐ろしい事が待ってます。


香焼「えっと……嫌いな訳、ないだろ」ポリポリ・・・

アニェーゼ『……良かった。じゃあ後は自分で考えろ。これ以上は癪ですから絶っ対ぇ教えません』フンッ・・・

香焼「え、と……しゃく?」ウーン・・・

アニェーゼ『チッ……気付きなさいよ。アンタは、誰よりも……あの子を……っ』グスッ・・・

香焼「あ、アニー?」エ・・・

アニェーゼ『っ……ぅ……何でも、無ぇです……悔しいから、教えません……ぇっ』グズッ・・・


泣いてるのか。


アニェーゼ『うぅ……いい加減、あの子の気持ち……気付けってん、です……泣かせたら……っ、許さない……ううぅ……以上、ぇぅ』グズッ・・・

香焼「アニー……、」

アニェーゼ『っ……こほんっ! んん! はぁ失礼……理由は教えませんけど、多分他の娘も泣きますから。特に、サイアイはね』フゥ・・・クスッ・・・

香焼「え?」

アニェーゼ『ったく……後は互いに素直になりやがれってんです馬鹿野郎共!! テメェらなんか大っ嫌いで大好きだ!! じゃあな!』Pi!

香焼「ちょ、待……え?」タラー・・・


一方的に切られた。素直になれ、か。
431 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/12(火) 01:59:05.34 ID:hz0d4PSO0
 ―――とある日(二日目)、PM08:30、英国ロンドンシティ北部、日本人街、とあるアパート・・・・・







気がつくと、静かな雨音……ソファの両端に各々が座って数時間。何から話せばいいか分からない。
時計を見ると、既に六時過ぎ。夕飯の準備やら何やらしなければなるまい。


香焼「……ご飯、作るよ」スッ・・・

アンジェレネ「あ、うん……手伝う?」チラッ・・・

香焼「大丈夫、座ってて」テクテク・・・


立ち上がりキッチンへ向かう。彼女は未だにボーっと放心状態。


香焼「……米(ライス)モノで良い?」

アンジェレネ「何でも良い」ボー・・・

香焼「じゃあ梅干しを」チラッ

アンジェレネ「そんな真似したら大声あげて泣くよ」ジトー・・・

香焼「あはは。冗談だよ」クスッ・・・


やれやれと苦笑し、やっと感情らしい感情を表すアンジェレネ。
一寸後、ゆらりと立ち上がりベランダの方へ向かった。如何やら洗濯物を取り込むらしい。すっかり慣れたもんだ。


アンジェレネ「そりゃ慣れるよ。二週間も居ればね」クスッ・・・

香焼「そだね」フフッ

アンジェレネ「……二週間も、居れば」ジー・・・


多分、それももう終わる。


アンジェレネ「私は……変かもしれないけど、楽しかったよ。この上なく馬鹿迷惑な家出だったけど、良い想い出になった」ハハハ・・・

香焼「まぁうん。正直言って迷惑だったさ」クスッ・・・

アンジェレネ「ありゃりゃ、酷いなぁ。嘘でも楽しかったって言って欲しいのに」クスクスッ


それは無理な願いだが、想い出という面では強く残る筈だ。


アンジェレネ「そっか……ねぇ、コォヤギくん」チラッ・・・

香焼「何?」

アンジェレネ「あのね……明日……帰ります」コクン・・・

香焼「うん……そっか」

アンジェレネ「もう、迷惑掛けないから安心してね」クスッ・・・

香焼「……、」ポリポリ・・・


少し寂しい。彼女の声も心成しか、寂しそうに聞こえる。


香焼「……一緒に、謝り行くよ」

アンジェレネ「アニェーゼちゃんに謝るなって言われたんでしょ。来なくて良いよ、怒られるから」アハハ・・・

香焼「だけど……うん」ボー・・・


まだ答えが、見つからない。
432 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/12(火) 02:08:43.99 ID:hz0d4PSO0
夕食の準備を終え、後は米が炊きあがるのを待つ。
アンジェレネは雨音をBGMに洗濯モノをたたんでいる。僕はそれを見てるだけ。


香焼「……、」ジー・・・

アンジェレネ「ふんふふ、ふんふふ、ふんふーふ〜……」パタッ・・・パタッ・・・


見るからに空元気。


アンジェレネ「ん」チラッ・・・

香焼「如何したの?」

アンジェレネ「ううん、何でも無いよ。コォヤギくんこそ、如何かした?」フフッ

香焼「うーん……分かんないや」アハハ・・・


何故か調子が狂う。重荷は降りたのにもかかわらず、ポッカリと心に穴が空いた感じ。


アンジェレネ「じゃあさ、もし……もしね」

香焼「うん」

アンジェレネ「コォヤギくんが家出っていうか、反抗期になったら如何なるかなぁ」

香焼「オレが?」

アンジェレネ「私みたいな馬鹿行動はしないと思うけど……如何なるんだろ」フフッ


想像したことが無い。
まず女教皇様の意に反する様な真似はしないだろうし、友人達の居る教会にはタテつかないだろう。


アンジェレネ「ははは、らしいっちゃらしいね。やっぱり優しい」クスッ・・・

香焼「うーん……まぁ卑怯者なんすよ。喧嘩嫌いだし、人に嫌われたくない。あと飼い犬の方が楽だから、逃げてるんだと思う」

アンジェレネ「シスター・オルソラが言ってたまんまじゃない?」クスッ

香焼「そうだね……ズルの味を覚えちゃったから、かな」ハハハ・・・

アンジェレネ「それは……違うでしょ。コォヤギくんは本当に優しくて良い子だから、良い子に育ったから、立派なの」


過大評価、買い被りだ。実際僕は沢山の事から逃げている。ステイルが言ってた……実現不可な理想論者に過ぎない。


アンジェレネ「世の中には綺麗事だけの人間も必要なんだよ……私は、逆を走ってみたかったのかもね」アハハ・・・

香焼「逆?」エ・・・

アンジェレネ「自分で言うのは何だけど、人に沢山迷惑掛けてみて……本当の意味で『普通』の女の子なりたかった」

香焼「普通、かな?」

アンジェレネ「あはは、方法間違っちゃったっぽいけどね。もしかしたら仕事したくなかっただけかも」ポリポリ・・・


簡単にいえば、年相応に憧れた、という事か。


香焼「昔のままでも十分、年相応だったと思うっすよ。人それぞれだしね」

アンジェレネ「ふふふ、ありがと……まぁ自分がしたい様に出来た二週間だったから、悔いは無いよ」

香焼「その言葉、本当は怒るべきなんだろうけど……良かったね」フフッ

アンジェレネ「……、」クスッ・・・


二度と、自分を軽く見る様な真似はしないでもらいたい。
433 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/12(火) 02:13:06.43 ID:hz0d4PSO0
数分後……米が炊けた。作り置きしておいた麻婆豆腐と卵スープを再度加熱する。
その間にアンジェレネが食器を準備し、席に着いていた。


香焼「とりあえずスプーンで食べれるモノにしたから。辛さは七味で調節してね」

アンジェレネ「大丈夫、ありがと……あはは、やっぱ美味しそう。私とは違うや」クスクスッ

香焼「慣れっすよ。一人が長いと、ね……さぁ食べよう」フフッ

アンジェレネ「うん……―――」ゴニョゴニョ・・・


食前の祈。やっと彼女も『十字教徒』に戻ったようだ。


アンジェレネ「―――……頂きます」ペコッ

香焼「うん、召し上がれ」フフッ

アンジェレネ「もきゅもきゅ……おー。辛いけど美味しいです」クスクスッ

香焼「ありがと。作った甲斐あるっす」クスッ


優しい笑顔。楽しい食事。こんな食事は久しぶり……いや、ある意味初めてかもしれない。


アンジェレネ「うんうん。今度、料理教えてね」

香焼「自分より女教皇様やオルソラさんに習った方が良いよ」

アンジェレネ「良いの。コォヤギくんに教わりたいの……迷惑じゃなきゃ、ね」クスッ・・・

香焼「ははは、そっか。じゃあ喜んで」フフッ


そして彼女はおかわりまでして、旨そうに平らげてくれた。
そんな彼女の御蔭か、僕も自分の料理がいつもより美味しく感じられた。


アンジェレネ「――ふぅ……ごちそうさまでした」ニコニコッ

香焼「お粗末さまでした」クスッ

アンジェレネ「あ、食器は私片付けるよ」スッ・・・

香焼「良いよ、流し置いといて。オレ洗っとくから」

アンジェレネ「いーの。もう迷惑掛けないって決めたから」フフッ

香焼「そんな気使わなくても良いよ。その程度なら問題無しっす」

アンジェレネ「じゃあ一緒に洗お」ニパー!


では御言葉に甘える。アンジェレネが洗って僕が食器を拭く。流れ作業で効率アップ。


香焼「――……これで最後だね」カチャカチャ・・・

アンジェレネ「うん。あっという間でしょ」

香焼「ははは、お疲れさん」ジャー・・・

アンジェレネ「はいはい、おつかれさーん」


他愛無い事が新鮮に思える。やはり改心……といったら彼女に失礼だが、心境が変わった効果だろうか。


アンジェレネ「色々……終わっちゃった」アハハ・・・

香焼「……そうだね」

アンジェレネ「……、」ジー・・・


全部、終わり。
434 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/12(火) 02:26:18.93 ID:hz0d4PSO0
後は寝て、起きて、一緒に寮へ行って、謝罪して……何もかもが元通り。


香焼・アン「「……、」」ボー・・・


何と声を掛けるべきか、言葉が見つからない。


香焼「とりあえず……シャワー浴びてきなよ」

アンジェレネ「……、」チラッ・・・

香焼「明日の何時に出るかは分からないけど、慌しくなるんだろうから早めに寝ときなって」

アンジェレネ「……、」モジモジ・・・

香焼「アン?」ポカーン・・・


様子がおかしい。


アンジェレネ「……あのね」モジモジ・・・

香焼「ん?」

アンジェレネ「一緒に……最後に、一緒に……、」チラッ・・・///

香焼「えっ」ドキッ///

アンジェレネ「駄目、かな」ジー・・・///

香焼「え、えっと……、」ゴクッ・・・


いけない。此処で飲まれたら、先までと変わらない。


香焼「だ……駄目」フイッ・・・

アンジェレネ「……そう。ごめん」アハハ・・・

香焼「もう終わったんだろ……良い子に戻るんでしょ」クスッ・・・

アンジェレネ「っ……、」ズキッ・・・


そんな顔、しないでくれ。


アンジェレネ「うん……っ……ごめん、なさい」ポロポロ・・・

香焼「……泣かないでよ」ムゥ・・・

アンジェレネ「っ……お風呂、いってくる」スッ・・・

香焼「……、」グッ・・・


やっぱり僕は最低だ。こんな時でさえ、如何していいか分からない。
誰かに縋って、応えを待つ方が楽なのだ。アンジェレネはサポート有りきも、自力で答えを出した。
結局……逃げているのは、僕だけになったのかもしれない。

ふと、今日言われた事を振り返る。

オルソラさんからは『鈍感は罪』、そして『性交の子作り以外の意味』を問われた。
それからアニェーゼには『もう謝るな』、『何かを公言しろ』と言われた。


香焼「正しい判断をしろ……正しい責任を取れ、か」ボー・・・


難しい。


香焼「正しい事って、何だろう」ムゥ・・・


救われぬモノに救いを……では無いか。今回はそうではないと思う。
435 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/12(火) 02:31:22.31 ID:hz0d4PSO0
アンジェレネ「難しく考え過ぎだよ」テクテク・・・


気がつくと、彼女が風呂から上がっていた。


香焼「アン……って、また服」プイッ///

アンジェレネ「あ……ご、ごめん。慣れで」アハハ・・・///


急いで服を着に行く彼女。寮へ戻ってから悪い習慣と化さなければ良いが。


香焼「……で」チラッ・・・

アンジェレネ「んーと……私から教えたら、駄目だから」ペコッ・・・

香焼「皆そればっかっすよ。自分で考えろって」ハァ・・・

アンジェレネ「難しい事じゃない、筈なんだけど……コォヤギくんには難しいのかなぁ」モゥ・・・


甚平を羽織って戻ってくる彼女。ワイヤレスのドライヤーで髪を乾かしながら歩んでくる。
ハッキリ言って欲しいが、どうせ応えてはくれないのだろう。


アンジェレネ「じゃあ、ホントは駄目なんだけど最後のヒントあげるよ」クスッ・・・

香焼「え」

アンジェレネ「とりあえずコォヤギくんもお風呂入ってきなって。上がったら教える」コクン・・・

香焼「……、」ウーン・・・

アンジェレネ「大丈夫だよ。今日は侵入したりしないから安心して」クスッ・・・


その心配はしてないのだが……何か、怖い。


香焼「……ホントに来ない」チャプン・・・


ホッとすると同時に、何故か寂しい。どうやら自分は本格的にゲス野郎へと堕ちた様だ。マジで去勢すべきだろうか。


アンジェレネ「馬鹿な事考えないの」ペシッ

香焼「あ痛っ」ムゥ・・・


上がって早々叩かれた。何したっていうんだ。


アンジェレネ「何となくお馬鹿な事考えたんじゃないかなぁって思ったの」

香焼「うっ……ごめん。やっぱり『ケジメ』で、切る?」タラー・・・

アンジェレネ「違うっつってんでしょ……まったく、数年前ならまだしも今のコォヤギくんの男の娘姿なんか見たくないよ」ハァ・・・

香焼「はい?」ポカーン・・・

アンジェレネ「何でもない。兎に角、自分を責めないの。私もなるべく自分を責めないから」モゥ・・・


またしても、アバウトな言葉。益々こんがらがりそうだ。
436 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/12(火) 02:45:18.77 ID:hz0d4PSO0
さておき、ヒントとやらを教えてくれ。


アンジェレネ「あ、うん。そうだったね」ポリポリ・・・

香焼「一体何なんすか」

アンジェレネ「えっとね……うーん、怒らないでね」チラッ・・・

香焼「怒る様な事がヒントなの?」

アンジェレネ「違くて、その……、」モジモジ・・・///


何故に頬を染める。


アンジェレネ「いや、昨日まで言ってきた言葉なんだけど……何だか恥ずかしくて」アハハ・・・///

香焼「恥ずかしい?」

アンジェレネ「……うん」コクン・・・///

香焼「え、と……うん?」

アンジェレネ「コォヤギくん……――」ジー・・・///


……。


香焼「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」ポカーン・・・

アンジェレネ「――……うん」モジモジ・・・///

香焼「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・今・・・・・・・・・・・・・・・何つった?」タラー・・・

アンジェレネ「だから……二度も言わせないで!」カアアァ///


彼女は『一緒に、寝よぅ』と告げた。この期に及んでまだ言うのか。


アンジェレネ「如何してそう受け取るかなぁ」ハァ・・・

香焼「いや、駄目だよ」ッタク・・・

アンジェレネ「……如何して?」ジトー・・・

香焼「如何してって……駄目に決まってるだろ。『不貞腐れる』のはもう終わりだ」ギロッ・・・

アンジェレネ「……、」ジー・・・

香焼「何?」ジトー・・・

アンジェレネ「流石に殺したくなってきた。いや、この件では前々から殺したかったけど」ハァ・・・


物騒な事言うな。


アンジェレネ「あのさ……私、別に不貞腐れて無いけど。てか、それって所謂売女扱いだよね?」ジトー・・・

香焼「は?」ポカーン・・・

アンジェレネ「何で一緒に寝ちゃいけないの?」

香焼「何でって、それは……、」

アンジェレネ「それは何? 言っとくけど『僕達はまだ子供だから』とか抜かしたら本気で怒るからね」ギロッ・・・

香焼「い、いや、そんなんじゃなくて……その、セックスは好きな人同士じゃないと駄目、だから………………………………ぁ」ピタッ・・・


……あ。
437 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/12(火) 03:01:22.57 ID:hz0d4PSO0
香焼「……っ!」ドキッ・・・

アンジェレネ「やっと気付いたの?」ハァ・・・

香焼「え……えぁ?!」ドキドキッ・・・///

アンジェレネ「どんだけ鈍感なのかなぁ……カミやん病マジ死滅しろ。『あの人(根源)』殺せばコォヤギくんのも治るかな?」ヤレヤレ・・・


ヒントが繋がる。それはとても単純な事。


香焼「う、そ……、」ダラダラ・・・

アンジェレネ「え……コォヤギくん、まさかマジで私の事……娼婦感覚で抱いてたの?」ジトー・・・

香焼「ち、違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違うっ!」アワワ・・・

アンジェレネ「良かった。肯定してたら殺してたよ♪」ゴゴゴゴ・・・

香焼「な、ちょ……、」カアアァ///

アンジェレネ「私だってさ……誰にでも簡単に身体許す訳じゃないよ。しかも初めてだし」クスッ・・・///


もしかしたら、気の迷いで抱いた。
もしかしたら、情に流されて抱いた。
もしかしたら、互いを慰める為に抱き合ってた。

……そう思ってた。


アンジェレネ「それも否定は出来ないよ……さっきまではだけど、ね」アハハ・・・///


でも今は違う。


アンジェレネ「あーあー……なんか結局私が告白しちゃったじゃない。このヘタレー。女の子に告白させんなー」クスクスッ///

香焼「……う、そ」ポカーン・・・

アンジェレネ「嘘じゃない。好きだから身体求めたの。コォヤギくん『気の迷いだ』とか言って、まともに聞かないでしょ?」フフッ

香焼「好、き……誰、が? 誰、を?」ポカーン・・・

アンジェレネ「……やっぱ殺していい?」ドドドド・・・


すいません。混乱してるだけです。許して下さい。


アンジェレネ「んもー……私馬鹿みたいじゃん。馬鹿だけど」ハァ・・・

香焼「え、と……その……いきなりで……、」ドキドキ・・・///

アンジェレネ「セックスの時より緊張してるって如何いう事なのかなぁ? 信じられないよ……で?」マッタク・・・

香焼「でって?」イウ?

アンジェレネ「皆まで言わせないでよ……返事は?」ハァ・・・

香焼「返事って……告白の?!」ギョッ・・・

アンジェレネ「それ以外何があるのかな?」ギロッ・・・


些か急な話だ。正直、驚愕のあまり頭が回らない。
438 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/12(火) 03:24:17.65 ID:hz0d4PSO0
成程……鈍感は罪だ。もっと早くに気付いていれば、彼女を無闇に傷つける事は無かった。
セックスは好き合ってなきゃいけない。彼女は僕を純粋に求めていた。なのに僕は歪んだ解釈でそれを受け止めていた。

故にもう謝らない。誰に何を言われようが彼女と情を交えた『事実』と『気持ち』は偽りない。そして……公言する。


香焼「アン」ガシッ!

アンジェレネ「な、何ですか?」///

香焼「き、君が……好きだ!」ギュッ・・・

アンジェレネ「っ……その……混乱して、適当な事言ってるんじゃない? 随分急だったし」グッ・・・

香焼「嘘じゃない! 確かに、急過ぎて混乱してるかもしれないけど……だけど本気だ!」グイッ!


彼女と離れるのが寂しいと思えた。このまま一緒に居られたら嬉しいと感じた。


アンジェレネ「うん……・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・私も……好き、です」クスクスッ///

香焼「あ、ありがと」///


両想い。『恋人ごっこ』じゃなくて、本当に……恋人同士。


アンジェレネ「でもね、本当は……コォヤギくんは、アニェーゼちゃんと付き合って貰いたかった」クスッ・・・

香焼「な……ぇ」ギョッ・・・

アンジェレネ「だって私が一番である必要が無いもの。コォヤギくんは私の何処が好きなの?」


それは……純粋に可愛いし、優しいし、それでいてしっかし芯がある娘だ。


アンジェレネ「それは他の子達も同じじゃない? 私、今とーっても意地悪な事言ってるよ。反論できる?」ジー・・・

香焼「それは……、」グッ・・・

アンジェレネ「……だからアニェーゼちゃんと付き合って欲しかった。『番(つがい)』になって、彼女を支えて欲しかった」フッ・・・


そんな大袈裟な。彼女が僕をパートナーとして選ぶ訳が無いだろう。
それはアニェーゼに限らず、チビで女々しくて何の取り柄も無い僕の事を好きになってくれる人なんてそうそういない筈だ。


アンジェレネ「えいっ☆」ゴチンッ!

香焼「痛ぅ!! な、何で殴んのさ!?」イテテ・・・

アンジェレネ「それってコォヤギくん選んだ私が貶されてるのと同じだよ!」ギロッ・・・

香焼「ご、ごめん。で、でも何でアニェーゼが出てくるのさ。彼女の番って……え?」タラー・・・

アンジェレネ「教えない……プライドの為にも絶ぇっ対に教えないっ!」ギロッ・・・イライラ・・・

香焼「む、ぅ」ポリポリ・・・


乙女心とは難しい。


アンジェレネ「自分を過小評価し過ぎってか鈍感過ぎるの! 多分サーシャちゃんなら今頃キレて拷問かけてるよ!」フンッ!

香焼「ご、ごめん」タラー・・・

アンジェレネ「はぁ……でも、もう良いよ。他の子の話はもう良いの」クスッ・・・ギュゥ・・・

香焼「……、」ドキッ・・・

アンジェレネ「私も覚悟決めたから……もう絶っ対、コォヤギくんの事諦めないよ。私が一番なの」ジー・・・///


僕も、男として……諦めない。責任とかではなく、純粋に彼女を愛す。
439 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/12(火) 03:31:44.88 ID:hz0d4PSO0
香焼「大好きだ! アンジェレネ!」ギュウゥ・・・///

アンジェレネ「うん……っ……私も、大好きだよ……、」ポロポロ・・・///


本当に簡単な事だった。好きだから頼ってくれた。好きだから身体を重ねた……それだけの事だったのだ。

暫く、ソファの上で抱擁を続けた。彼女は僕の胸の中で涙を流していた。
それは二週間前の悲しみの涙とは違う……『喜び』なのだと思う。


アンジェレネ「あはは……泣いちゃって、ごめんね」クスッ・・・

香焼「ううん。良いんだよ」ポンッ・・・

アンジェレネ「うん……ありがとう」クスッ・・・

香焼「ちゃんと皆に報告する。隠したりしないよ。アンが自分の彼女ですって、公言する」ナデナデ・・・

アンジェレネ「あ、ぅ……よ、よろしくね」モジモジ・・・///


それが正しいケジメ。僕はもう間違わない。


アンジェレネ「……あはは」クスッ・・・

香焼「何か、恥ずかしいね」ポリポリ・・・///

アンジェレネ「……あのね」ジー・・・///


一度抱擁を解く。だが手を握ったまま……彼女の話を聞く。


アンジェレネ「改めて言うのも、恥ずかしいけど……、」キュッ・・・///

香焼「う、うん」ゴクッ・・・///

アンジェレネ「私を……抱いて、ください」カアアァ///

香焼「っ!!」ドキッ///

アンジェレネ「お願いします」ペコッ・・・///


思えば、いつも誘惑されて彼女を抱いていた。主体的に彼女を抱こうとした事は無い。
それは勿論付き合っていなかった所為でもある……だがしかし、今は違う。

僕達は『番』だ。


アンジェレネ「間違った形で処女を捨てちゃったけど、改めて……恋人として……『初めて』、抱いて下さい」グッ・・・///

香焼「アン……、」ポリポリ・・・///

アンジェレネ「……、」ジー・・・///


何も言わずに、抱き締める。


香焼「……行こう」ナデナデ・・・///

アンジェレネ「えへへ」モジモジ・・・///


恋人としての順番は違えてしまったけど、もう迷わない。僕達はベットに向かった……―――
440 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/07/12(火) 03:33:28.93 ID:hz0d4PSO0
ごめん。眠い。
本番は明日で・・・そのうち安価祭りやるから許して下さい・・・
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/12(火) 08:29:14.45 ID:9kzJwMZ2o
わっふるわっふ…あれ?
>>1乙!
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/12(火) 16:46:59.93 ID:0ELaRctDO
あるぇ? 今回オリアナ姐さんの18禁教室無いのん?
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/12(火) 18:07:20.41 ID:tsBKmNo60
飛び出して来たから、指南してもらう暇なかったんだろうな
444 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/07/12(火) 22:47:01.62 ID:hz0d4PSO0
こんばんわー。さて、本番です。わっほい。

・オリアナ姐さんの18禁教室とか需要あんの? あれば無理矢理ブチ込むけどww

はい・・・んじゃ良い子は回れ右ね! 11時スタート!
445 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/12(火) 23:10:05.46 ID:hz0d4PSO0
 ―――とある日(二日目)、PM10:00、英国ロンドンシティ北部、日本人街、とあるアパート・・・・・






―――互いの顔もハッキリ見えない尾灯だけの、仄暗い部屋。
僕もアンジェレネもベットの上で向き合って正座し、妙に緊張している。

2週間で6回目とそれなりに数をこなした筈なのだが……何故だかやけに胸が熱い。


アンジェレネ「よ、よろしく、お願いします」ドキドキ・・・///

香焼「うん……よろしくね」ポリポリ・・・///


妙に恥ずかしい。何からしていいか分からない。


香焼「とりあえず……服、脱ごう」ドキドキッ///

アンジェレネ「そうだね……ちょっと後ろ向いててもらって良いかな」アハハ・・・///

香焼「わ、分かった」ゴクッ・・・///


今までの彼女とは違う。行動に恥じらいを感じる。


香焼「昼までは堂々と真っ裸で部屋歩いてたのにねー」クスクスッ

アンジェレネ「だ、だって……その……意地悪」モジモジ・・・///

香焼「ごめんごめん。そうだね」アハハ・・・

アンジェレネ「えへへ……ううん、良いの」シュルルル・・・


衣擦れ音。


アンジェレネ「こ、コォヤギくん……コッチ向いて良いよ」スッ・・・

香焼「う、うん……っ」ゴクッ・・・ジー・・・///


可愛らしいピンクのブラとショーツ。そして黄色人種(僕)とは違う、透き通るような白い肌。


アンジェレネ「ジロジロ見ないで……やっぱ何か恥ずかしいなぁ」ムゥ・・・///

香焼「はは、昨日までのオレの心境分かった?」クスクスッ

アンジェレネ「むー……良いからコォヤギくんも脱いでよ!」ガルルッ!

香焼「はいはい」フフッ


自分も下着一丁になる。そして向い合った。


アンジェレネ「……やっぱりコォヤギくん、女の子みたいな身体だね。綺麗だもん」クスクスッ///

香焼「そ、そんな事ないだろ」ムゥ・・・///

アンジェレネ「腋の毛とか全然無いじゃん。下の毛も少ないわふんっ!」モフッ!

香焼「ぐぬぬっ……これから生えるんだ! てか殆ど生えてないアンが言うな!」カアアァ///

アンジェレネ「ぷふー、あはは。じゃあコォヤギくんロリコンだねー」クスッ・・・


君、僕と大して年齢変わらないでしょ……さておき、いくらか和んだ。問題はこれから。


香焼・アン「「……、」」モジモジ・・・///


如何しようか悩む、が……これからは自分が引っ張らねばなるまい。
446 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/12(火) 23:24:05.74 ID:hz0d4PSO0
昨日までとは違うのだ。僕が彼女を引っ張る。


香焼「キス……しよう」ジー・・・///

アンジェレネ「う、うん」カアアァ///


彼女の腕を引き寄せ、背中に左手を回す。そして右手を頬にそっと添え……――


アンジェレネ「ん……、」チュッ・・・


――優しく口付けする。

短いキスの後、彼女の両手が僕の両頬を挟んでくる。僕は彼女の首に腕を回す。
そして今度は深い口付け。


アンジェレネ「んっ……ぁ……っ……ぁぅ……、」チュッ・・・ピチャ・・・ピチャ・・・


互いの舌が絡み合い、艶かしい音が響き渡る。


アンジェレネ「あ、ぃ……んん……う……っ……こ、や……もぅ……ぷはっ!」ニュチュ・・・レロ・・・チュゥ・・・ハァハァ・・・

香焼「ハァ……ハァ……ご、ごめん」クチュ・・・フゥ・・・

アンジェレネ「ん……大丈夫だよ」ネチャ・・・フフッ///


苦しそうな彼女の吐息に気付き、唇を離す。熱中し過ぎて我を忘れてしまった。
互いの口に繋がる糸が尾灯に照らされ、生々しく輝く。


香焼「無理矢理しちゃいけないね」アハハ・・・///

アンジェレネ「ううん……ちょっとくらいの無理なら、嬉しいかも」ポッ・・・///

香焼「え」キョトン・・・

アンジェレネ「今までコォヤギくん、ちゃんと私の事求めてくれなかったでしょ。だから……嬉しいよ」クスッ


拙い。そんな事言われると、初めての時くらいドキドキする。


アンジェレネ「あはは。私はあの時より緊張してるかも」フフフ・・・///

香焼「……、」ゴクッ・・・///

アンジェレネ「あ……っ」グイッ・・・


再び腕を取り今度は多少強引に口付ける。口から頬へ、そして首へ……そして胸元へ。


アンジェレネ「ん……っ……ひゃぅ!」ピクッ・・・

香焼「アン……ん」ギュッ・・・

アンジェレネ「く……ぅ」キュウゥ・・・


全身を舐め回す様に、優しく撫でる。彼女は眼を瞑り、身体を強張らせていた。
息が荒くなる。身体が紅潮する。局部が徐々に堅くなる。
447 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/12(火) 23:35:05.38 ID:hz0d4PSO0
アンジェレネ「こ、ゃぎ……ぁ……、」ピクッ・・・

香焼「……っ」スッ・・・

アンジェレネ「ぃっ……あっ」ビクッ・・・///


彼女の局部に手を伸ばす。ショーツ越しに……ゆっくりと割目をなぞる。


アンジェレネ「あ、ぃ……っ!」ピクンッ・・・///


アンジェレネの膝立ちがペタリと崩れる。
そのまま押し倒して横にしたまま、優しく摩り……強引に擦る。その間に内太腿を舐めた。


アンジェレネ「やっ! っ……ぁんっ!」ヌチャ・・・ビクッ!

香焼「……ふふっ」クスッ・・・///

アンジェレネ「い、いじわる……ひぁ!」スリスリ・・・ピクンッ!

香焼「ん……強引な方が良いんでしょ?」クスクスッ///

アンジェレネ「し、知らないですっ!」カアアァ///


彼女の下着が少々濡れている。何故か妙な達成感。
今まで蹂躙され続けてきた反動か、彼女を嬲れる事に恍惚さ(エクスタシー)を感じてしまっているのかもしれない。

一度彼女を起し、髪を撫でる。それだけの事でも彼女は嬉しそうな顔をした。


香焼「じゃあ……下着を」ドキドキ・・・///

アンジェレネ「あ、うん……えっと、コォヤギくん」ジー・・・///

香焼「ん?」

アンジェレネ「ブラジャー……外して欲しいな」モジモジ・・・///


上目遣いでモジモジと口籠るアンジェレネ。まさに小動物の様。


香焼「っ!? ん、と……分かった」ドキッ・・・スッ・・・


彼女の背中に手を伸ばした。そしてホックを外してやる。


アンジェレネ「あれ? ……あのさ、何で手慣れてるのかな?」ジトー・・・

香焼「え!? あ、えっと、その……あはは」タラー・・・


馬鹿1号2号V3(姉達)の下着を洗濯していたので……はい。すいません。


アンジェレネ「神裂達の? へぇ、弄ってたんだ……えっち」ジトー・・・

香焼「し、仕方ないだろ。アイツらオレが男だっていうの気にせず洗濯籠ブチ込むんだから、洗う時に絡まらない様、その……、」ムゥ・・・

アンジェレネ「あー……まぁそれなら仕方ないね」アハハ・・・


因みにアンジェレネのブラは外すのが楽だ。女教皇様と五和のブラはホックが3つも有ってややこしい。


アンジェレネ「小さくて悪かったですねー。これでも大きくなったのに……はぁ」ムスー・・・

香焼「い、いや。世の中には小さい方が好きって人もいるし」アハハ・・・

アンジェレネ「……コォヤギくんは?」ウー・・・

香焼「え、えっと……どっちでも」タラー・・・


というか、好きな人の胸であれば大きさなんて関係無いだろう。
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/12(火) 23:40:33.43 ID:0ELaRctDO
Oh〜‥‥キましたかー!
449 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/12(火) 23:56:27.84 ID:hz0d4PSO0
アンジェレネ「逃げたね……なーんか納得いかないけど、とりあえずありがと」クスッ・・・

香焼「あはは……、」ポリポリ・・・


ブラを脱がす。小ぶりで綺麗な胸。軽く桃色に紅潮している。


アンジェレネ「……下も」ドキドキ・・・///

香焼「……うん」スッ・・・


横たわる彼女のショーツに手を掛ける。そしてゆっくり……降ろした。
恥部には白金色の薄い陰毛。秘所は尾灯の光で僅かに濡れているのが分かる。


アンジェレネ「……、」カアアァ///


丸まったショーツを表返し、ブラと一緒にテーブル脇に置く。
そして、自分も下着を脱ぎ……互いに全裸となった。


香焼・アン「「……、」」ゴクッ・・・///


身体を交える準備は出来た。


アンジェレネ「え、と……先にフェラ、する?」ドキドキ・・・///

香焼「いや……オレが舐めるよ」コクッ・・・///


今までは、彼女が僕のペニスを強引に舐め濡らし自らのヴァギナへ挿入れ込んでいた。
だが今日はそうはさせない。


アンジェレネ「別に気にしなくていいよ。コォヤギくん、早いんだから一回出してからでも」クスッ

香焼「駄目……それ許すと、また『暴発』あるでしょ」ポリポリ・・・


3回目の際に、彼女の口内へ射精してしまった。しかも事もあろうか精液飲み込みやがって。


アンジェレネ「あはは。でも……好きな人のだったら飲めるよ。顔に掛けられるよりもマシだし」クスッ

香焼「……でも、駄目だ」

アンジェレネ「ふふっ。じゃあ期待する」クスクスッ///


今日は頑張る。色んな意味で『耐える』と決めた。
アンの両足を掴み、股ぐらへ顔を近づける。そして小さな割れ目に、舌を伸ばす。


アンジェレネ「っ……んっ」ピクッ・・・


上手な愛撫の仕方なんか分からない。クンニリングスを試したのは今回でまだ2回目だ。
兎に角舐める。膣口を、尿道を、陰核(クリトリス)を、襞(ひだ)を、周りを……全体を舐め回す。


アンジェレネ「ぃっ……ぁ……んんっ……ひゃぅ!!」チュプ・・・ヌプ・・・ピチャ・・・ビクッ・・・

香焼「ハァ……ハァ……んっ」クチュクチュ・・・

アンジェレネ「あ……っ……ん、ぅ……ゅ、びは……ぃんっ!」ジュプ・・・ニチャ・・・クチャ・・・ピクンッ・・・


指で恥骨や陰核を撫でる度に、身体が小刻みに跳る。
ふと彼女の手が僕の頭を押し退けてきたが動きは止めない。更に加速させる。
450 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/13(水) 00:13:33.08 ID:lCdsEnAR0
アンジェレネ「こ、ゃぎ……っ……くんっ……いっ! い、一回……止ま、て……ぃ……よぅ……んっ!」ヌチャ・・・ジュポ・・・ニュプ・・・ビクッ

香焼「やだ……、」スッ・・・ミチミチッ・・・ジュプッ

アンジェレネ「いっ……んんっ!!」ビク……ビクッ・・・///


膣口に指を入れ、蹂躙する。同時に陰核を舌と歯で弾く。


アンジェレネ「だめっ……いあっ! いっかぃ……っ……ひぁっ……らめてっ……ぁんっ!!」クチャ・・・ジュブブ・・・ヌプヌプヌプッ・・・キュウウゥ・・・///

香焼「っ」ハァハァ・・・カリッ・・・

アンジェレネ「ん……ぃ、あああぁアぁっ!!」ビクンッ!!


陰核を甘噛みした瞬間、彼女の身体が大きく揺れた。そろそろヤバいかと察し、一度動きを休める。そしてゆっくりと陰部から顔と手を離した。
彼女の艶かしい愛液と女性器独特の匂いが自分の右手に纏わりつく。


香焼「ふぅ……ごめん。やり過ぎた」ヌチャッ・・・ペコッ

アンジェレネ「ひぁっ……ハァハァ……変態……、」ムウゥ・・・///

香焼「あはは。でも自分も昨日までこういう事されてたんすよ」クスッ・・・

アンジェレネ「……もぅ」カアアァ///


昨日までの行いが、やっと身に沁みたか。

その後、少し水を飲み……本番へ。


アンジェレネ「コォヤギくんの方、舐めなくていいの?」チラッ・・・

香焼「うん。今日はゴム着けるから」スッ・・・

アンジェレネ「別に良いのに」クスッ

香焼「オルソラさんに怒られたからね。あ、性病予防って事で」フフッ


無論、詭弁だ。だが旧約派(カトリック)の彼女に対し、声を大にして避妊とは言えない。


アンジェレネ「あはは。まぁ……10日以内に生理来なかったら、連絡するから」クスクスッ///

香焼「うん。ちゃんと責任持つよ」ナデナデ・・・///


軽くキスをした後、コンドームを着ける。
アンジェレネは珍しそうにゴムを見詰めていた。まぁ見る機会はそうそう無いだろう。


アンジェレネ「レッサーちゃんが持ってたから見た事はあるんだけど……面白いね」ジー・・・

香焼「何でレッサー、そんなモン持ってるの?」タラー・・・

アンジェレネ「知らない。ベイロープさんの部屋に有ったのパクったとか言ってたよ」ハハハ・・・

香焼「……その事については深く追求しないでおこ」ダラダラ・・・

アンジェレネ「あはは……あの人、結構怖いからね」アハハ・・・

香焼「うん。ルチアさん並に」ポリポリ・・・

アンジェレネ「ふふっ……言っちゃおー」クスクスッ


勘弁してくれ。さておき、御喋りは此処までだ。彼女の両脚を持ち上げ……―――


香焼「それじゃあ……いくよ」ゴクッ・・・

アンジェレネ「ん」コクン・・・///


―――始める。
451 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/13(水) 00:32:47.90 ID:lCdsEnAR0
香焼「……っ」グッ・・・ズプププッ・・・

アンジェレネ「っ……ん」ジュポッ・・・


正常位からのスタートは初めての時以来だ。結構緊張する。
一度奥まで差し込んだ後、大きく息を吐いてゆっくりと動かし始めた。


アンジェレネ「ぁ……ん……無理、しなくて良いからね」ジュプ・・・チュプ・・・チュポ・・・

香焼「ん……してないよ」フゥー・・・

アンジェレネ「ぅ……ふぁ……っ……、」ニュプ・・・ジュブ・・・ジュブ・・・ジュブ・・・

香焼「……、」ユサ・・・ユサ・・・


徐々にスピードを上げる。


アンジェレネ「ん……っ……だいじょぶ?」ジュポジュポジュポッ・・・

香焼「……頑張る」フー・・・

アンジェレネ「我慢、しないで……ぁ……最初は……ん……すぐ……良いよ」プチュプチュッ・・・ニュプ・・・


ペースを工夫しながら努力する。


アンジェレネ「ふぁ……ぁっ……んっ……、」ヂュブッ・・・ジュプ・・・チラッ・・・

香焼「……、」ツッ・・・

アンジェレネ「……えいっ」グンッ!

香焼「っ! ちょ、アン!?」ドサッ・・・


いきなり身体を押し倒され、騎乗位に移られた。
驚くのも束の間、彼女が顔を近づけ優しく微笑んだ。


アンジェレネ「んっ……今は……繋がってられるだけで、嬉しいんだよ」ジュブブ・・・フフッ・・・///

香焼「な……っ」グッ・・・///

アンジェレネ「出そう、なんでしょ……んっ……我慢しなくて、だいじょぶ……っ……、」ヌチュ・・・ジュポジュポジュポッ

香焼「や、ぃ……っ」グッ・・・

アンジェレネ「気にしない、から……ぁんっ……いっぱい、出して」パンッパンッパンッパンッ・・・クスッ・・・


腰の動きが早まる。何度もトビそうになるが歯を食いしばって踏ん張る。


アンジェレネ「んー……っ……頑張ってるみたいだけど、私……ぁ……まだ、イケないよ」ヌプヌプヌプヌプッ・・・アハハ・・・

香焼「っ……ごめんっ」クッ・・・///

アンジェレネ「うん。良いよ……っ」チュプチュプッ・・・グンッ・・・

香焼「ぃ、あ……ッッ」ビクンッ・・・ブルッ・・・


アンジェレネが深く腰を落とした際に亀頭が子宮口へあたった。同時に限界―――


香焼「ふぁ……っ……ご、めん」トローン・・・


―――……射精。
452 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/13(水) 00:54:11.56 ID:lCdsEnAR0
アンジェレネ「ふぅ……あはは。相変わらず可愛いねー。やっぱり女の子みたいだよ」クスクスッ・・・ヌチャ・・・

香焼「ハァ……怒るよ?」トローン・・・

アンジェレネ「艶っぽく潤んだ眼で訴えられても迫力無いですよー」ツー・・・


彼女はゆっくりとヴァギナからペニスを抜いた。
態と粘液の糸を見える様にしてくる辺り、やはり小悪魔的思考は残ったままなのだろう。

ついでにといわんばかりに、ゴムの先に堪った精液を興味津々に突いてきた。


アンジェレネ「へー。先っぽに精子が溜まるんだ。面白いね」ジー・・・

香焼「……そんなに見ないでよ」モゥ・・・///

アンジェレネ「あはは、ごめんごめん。でも沢山出たね……気持ち良かった?」クスッ///

香焼「まぁ……今まで無いくらいにね」アハハ・・・///

アンジェレネ「ふふっ、良かった」クスクスッ///


嘘ではない。
今まで外出しを続けてきたので、ゴム有りとはいえ射精の際に亀頭を刺激されるのはとても衝撃的だった。
加え精神的にも……果てた後に虚無感や罪悪感が無い。清々しく、どこか嬉しい。


アンジェレネ「うん……私も、いつもより嬉しい」フフッ///


セックスの最中、『好き』とか『愛してる』と言えない昨日までとは違う。


アンジェレネ「大好き」チュッ・・・

香焼「うん……僕もだよ」ギュッ・・・

アンジェレネ「あ、やっと僕って言った」クスッ

香焼「あ」タラー・・・

アンジェレネ「絶対『僕(そっち)』の方が良いのに。正直、『オレ』って似合わないもん」クスクスッ


ただでさえ童顔チビなのに、僕(その一人称)にすると更に女々しく思われるので嫌だ。


アンジェレネ「えー、良いじゃん。ムッサい男の人より美少年相手の方が嬉しいな」ハハハ

香焼「美少ね……後で覚えてろ」ジトー・・・///

アンジェレネ「はいはい。頑張って泣かせてねー」クスクスッ


生意気なわんこ。
453 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/13(水) 01:21:45.50 ID:lCdsEnAR0
 ―――とある日(二日目)、PM11:00、英国ロンドンシティ北部、日本人街、とあるアパート・・・・・






暫く休憩を兼ねベット上で雑談をした後、続きを始める。


アンジェレネ「―――じゃあ次……舐めていい?」スッ・・・

香焼「えっ」ドキッ///


僕の股間に彼女の手が伸びる。


香焼「でも……、」ムゥ・・・

アンジェレネ「あんまり気にしなくていいよ。別に愛撫(フェラ)イヤだと思った事無いし」クスッ///


そういう訳ではない。仕様も無い理由なのだが、あまり彼女の好き勝手は良しとしたくない。
此方のスパン的にも、男としてのちっぽけなプライド的にも。


アンジェレネ「あはは、男の子だねー」クスクスッ

香焼「また馬鹿にして……じゃあ、こうする」グイッ

アンジェレネ「ひゃっ!?」ドサッ・・・


右手で彼女の左脚を押さえ強引に彼女の股ぐらへ顔を近づける。そして、愛撫。


アンジェレネ「ん……っ……強気なの、嫌いじゃないよ」ピチャピチャ・・・クスッ

香焼「……指、挿入れるよ」グプッ・・・

アンジェレネ「ぁ……ふぁあ……っ」ピクンッ・・・

香焼「ん……痛かったら、言ってね」カプッ・・・チャプチャプッ・・・

アンジェレネ「ッッ!」ビクッ!


陰核を甘噛みし、舌先で転がす様に舐める。同時に右手の人差指と中指で、膣内をゆっくりと撫で回す。


アンジェレネ「ぃ……これ、は……あぅ……良い、かも……ッ」チャポチャポッ・・・ヌチャヌチャ・・・グッ・・・

香焼「頭、押さえないで」ジュルッ・・・カリッ・・・


彼女の両手がシーツを強く掴む。一寸表情を見遣ると……歯を食いしばり、出来るだけ吐息を漏らさぬ様に努力してる様だ。
陰核が弱いのか、それとも膣内の方でピンポイントに弱い部分が在るのか。


香焼「此処か……こっち、かな」ジュブチュ・・・クチュクチュ・・・

アンジェレネ「ふぁ……ひぁっ!」ピクッ・・・ビクンッ!!

香焼「(やっぱ核か……)じゃあ、もう少し」カプッ・・・クリクリッ・・・

アンジェレネ「や、ちょ……っ……そこぁ……ヤだ、ょぅ……ッッ!」ガクンッ・・・ヌピュッ・・・

香焼「……、」クスッ・・・


荒い息遣いと苦悶の声を聞く度に、嗜虐心が擽られる。
指で抓んだり、舌で弾いたりを繰り返してやった。


アンジェレネ「いじわ……ぅっ! しない、で……ッ!!」ジュブジュブ・・・ピチャピチャ・・・ギュウゥッ・・・


悲鳴にも似た嬌声を耳にする度、サディスティックな恍惚さを感じてしまう。
彼女を蹂躙している内に、いつの間にか再度勃起してしまっていた。
454 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/13(水) 01:38:14.02 ID:lCdsEnAR0
良い感じに彼女も感じてきている様なので、そろそろゴムを着けて挿入しようかと考えた。
だが……彼女もやられっ放しでは気が収まらない御様子。


アンジェレネ「うぅ……酷いよぅ」ジトー・・・///

香焼「昨日までのお返しっす」クスクスッ

アンジェレネ「むぅ……コォヤギくん、ゴム着ける前に、ベット座って!」グイッ!

香焼「あはは……じゃあお願いするよ」クスッ


僕がベットに腰掛けると、彼女は勃起したペニスを小さな口で咥えてきた。


アンジェレネ「んっ……ふぁぅ」カプッ・・・チゥチゥ・・・レロレロ・・・

香焼「ん……、」ピクッ・・・

アンジェレネ「んー。ふぃふぉひぃ?」チャプチャプ・・・ジュルル・・・

香焼「うん……っ……良いよ」グッ・・・クスッ・・・


あまり褒められた事ではないがフェラチオは大分し慣れている故、彼女の歯がペニスに当たる様な事は無い。
寧ろ、僕の弱い箇所を把握しているらしい。


アンジェレネ「んぁ……っ……あ、んっ」レロロ・・・スッ・・・クチュクチュ・・・


自然と、彼女は左手で自慰を掻き始めた。


アンジェレネ「ふぁ……ふぃは……っ……ん……はぃっ」ヂュプ・・・チゥチゥ・・・クチャクチャ・・・

香焼「ッ……アン」ビクッ・・・スッ・・・

アンジェレネ「ふぇ……何?」ピタッ・・・

香焼「おいで。自分で弄らないの」ナデナデ・・・

アンジェレネ「ぁ……ふぇ!?」ドキッ・・・カアアァ///


無意識だったのか。とりあえず彼女をベットの上に乗せ、『二つ巴(69)』の体勢を取った。


アンジェレネ「な、なんかこれ恥ずかしいなぁ……続けて良いの?」チラッ///

香焼「良いよ。オレも愛撫するから」クスクスッ

アンジェレネ「……ん」カプッ・・・


互いの性器を舐め、撫でる。粘液が摩れる音、それから嬌声交じりの吐息……淫靡な音が部屋中に響き渡る。
僕は先程知った彼女の弱い個所を重点的に攻める。彼女はペニスを舐め回しながら、ゆっくりと上下に扱(しご)く。

それを暫く続けた辺りで……彼女の手が止まった。


アンジェレネ「っ……ひぅっ!」ビクッ・・・


絶え間無く続けられる陰核攻めに耐えられなくなった様だ。
苦しそうな表情を見せるが、手と舌を休めない。更にはついでと言わんばかりに全体を刺激させる。


アンジェレネ「ごめ……っ……スト、ぷ……ぃっ!」ヌチャヌチャ・・・ビクンッ・・・

香焼「……ん」クリクリクリ・・・

アンジェレネ「止め……ひ、ゃあぁああアぁぁっ!!」ヌチュル・・・

香焼「……ふふっ」ヌブッ・・・グピュ・・・

アンジェレネ「そ、こっ……ッッ! お尻っ! ふぁ……ひゃわっちゃ、らめっ!!」ビクンッ・・・プシャ・・・///


肛門を刺激した瞬間、愛液が多めに流れてきた……そろそろ頃合いか。
455 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/13(水) 01:54:52.54 ID:lCdsEnAR0
一度離れ、再度ゴムを着ける。彼女はグッタリ気味だが、続けて良いモノだろうか。


アンジェレネ「ん……気にしないで」ハァハァ・・・トローン・・・

香焼「えっと……じゃあ、どの体勢が楽?」チラッ・・・

アンジェレネ「特に無いけど……折角だから後ろからお願い」スッ・・・


ベットの上で四つん這いの恰好を取るアンジェレネ。
僕は彼女の腰に両手を添え、ペニスをヴァギナに近づけた。


香焼「挿入れるよ……っ」グッ・・・プチュチュ・・・

アンジェレネ「んっ……動かして、良いよ」フゥ・・・


ゆっくりと動かす。一度射精してしまったので、先よりは大分楽だ。


アンジェレネ「あぅ……っ……んっ、ひゃぅ……いぃょ……んッ」ジュブッ・・・クチュッ・・・チャボッ・・・

香焼「う、ん……苦しく、ない?」ハァ・・・ハァ・・・

アンジェレネ「心配、しないで……ぁ、ぅ……っ! もっと……速くしたり、強く突いたり……っ……出来る?」ヌチャッ・・・ニュチッ・・・チラッ・・・

香焼「……、」ウーン・・・

アンジェレネ「出そうになったら、んっ……止めて、良いから……ふぁぅ」ジュボッ・・・ブチュッ・・・フフッ


避妊しているので誤射する失敗は無い。要望に応えてみるか。


香焼「じゃあ……っ!」グンッ!

アンジェレネ「あうっ! んっ……良い、よぅっ!」ビクッ!

香焼「腕、持つよ」スッ・・・グッ!

アンジェレネ「い、ぁ……んっ! ぁ、ぁ、ぅ……っ……ん"んぅっ!!」ズンッ・・・ギチギチギチギチッ・・・


掴む場所を腰から肩に移しペース速め、力強めにピストンする。次第に彼女の嬌声も大きくなる。
だが、僕の限界も近づく。

しかし此処で止めたら彼女に申し訳無い気がしてならない。


香焼「っ……アン……身体、持ち上げるよ」グイッ・・・

アンジェレネ「ぇ……っ!」ピクッ・・・


今度は手の位置を肩から乳房へ変え、そしてそのまま身体を持ち上げる。
俗にいう『絞り芙蓉』に似た形だ。


香焼「続ける、よ……っ」ズブッ・・・ギュッ・・・

アンジェレネ「ッ! ち、乳首は……ひゃぅっ!! 抓まないで……んぅ!!」ヌプヌプッ・・・ビクッ・・・///

香焼「……っ」スッ・・・クリクリッ・・・

アンジェレネ「い、ぁあアあぁあぅっ!! ら、らめてぇ!! そ、そこぁふぁめらよぉっ!!」ギチギチギチギチッ・・・ビクビクッ・・・///


ピストンを止めずに左手で彼女の左乳首を、右手で陰核を、口で首筋を刺激する。
彼女はヨがりながら止めて止めてと頼み込んできたが……絶対に止めない。こういう小細工でもしないとまた僕が先に果ててしまう。
456 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/13(水) 02:14:47.30 ID:lCdsEnAR0
暫くその体位を保ち、ピストンや愛撫を続けた。途中無理矢理此方を振り向かせ、濃厚なキスをする。


アンジェレネ「ぁんっ……ッッ!」ズッブズッブズッブ・・・ビクッ・・・

香焼「……、」レロレロ・・・ヌチュ・・・ハァハァ・・・


今までに無いくらい彼女を滅茶苦茶にしている……とはいいつつも、そろそろ僕の方も厳しい。


アンジェレネ「ん……ぁ……良い、ょ……私も、そろそろ……ッ! イけそぅ、ぽぃ……んッッ!」グチュグチュグチュ・・・ハァハァ・・・

香焼「(正直、助かる……)っ……アン、向き変えても……いい?」ピタッ・・・ハァハァ・・・

アンジェレネ「うん……んっ」ゴソッ・・・


繋がったまま、正常位の体勢へ。


アンジェレネ「ふぅ……座位のままでも、良いよ」ハァハァ・・・クスッ

香焼「アンが疲れるだろ……座位だと勝手に上下動くし」ジトー・・・

アンジェレネ「えへっ」ペロッ♪


彼女が上になる体勢だと毎回勝手に上下されるので、僕がペース調性出来ない。
という訳で、正常位で続けよう。


アンジェレネ「あはは……っ……コォヤギくん。キス、して……っ」ギュッ・・・ジュブブ・・・

香焼「ん……ぁ、ぅ」チュッ・・・ヌッチュヌッチュヌッチュ・・・


彼女の両腕が僕の首に回る。更に両脚までもがガッチリと腰に回り、完全な密着状態となった。


アンジェレネ「くぅ〜ん、っ……んンぁっ……ぁ、ああアぁあぁ!! こ、やぎ……んっ! 離さなぃ、でぇ!!」ニチュニチュニチュニチュッ・・・ギュウゥ・・・

香焼「んっ……アンジェレネ……ぁ……好き、だっ……ッ」パンパンパンパンッ・・・ギュウッ・・・

アンジェレネ「うんっ……っ……わふぁしも……大、好きぃ、んくっ! らょ……っ、ふぁあぁあアぅ!」ズプズプズプズズプッ・・・


そろそろ、限界。


アンジェレネ「わたひ、も……ちょと……ッ!! ッ、あっあッ……がん、ばてっ……いっひょ、に……くぅううウんっ!!」ブルルルッ・・・・グッ

香焼「ッ……、」ギチギチギチギチギチッ・・・

アンジェレネ「んんんッ……イっ……こ、ゃぎく……す、きッ!! くウぅぅッ……〜〜〜、」ジュブッ・・・ビシャッ・・・///

香焼「ッッ……〜〜〜、」ギリッ・・・


ディープキスと抱擁を離さないまま―――



アンジェレネ「っ〜〜……ひ、ぅ……ッ、ん、ふぁあアああアぁあぁ〜〜〜〜ッっ!!」ガクガクッ・・・ビクビクンッ・・・--

香焼「ぃ〜〜……っ、く……ッッ〜〜〜〜……、」グンッ・・・ドバァッ・・・--



―――共に、絶頂を迎えた……
457 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/13(水) 02:37:29.88 ID:lCdsEnAR0
 ―――とある日(三日目)、PM01:00、英国ロンドンシティ北部、日本人街、とあるアパート・・・・・







あの後、彼女は暫く僕の上で果てていたので動けなかった。

動ける頃合いを見て、二人で一緒にシャワーを浴び、ベットに戻った。
因みに暑いので服は着ていない。


アンジェレネ「ふぁあ……疲れたね」クスッ・・・

香焼「うん。でも、良かった」ファサッ・・・

アンジェレネ「ふふっ、そだね……ぶっちゃけると、私今まで何回かしかイケてなかったもん」チラッ・・・クスッ・・・

香焼「知ってるよ……だからってお風呂とかトイレで自慰するのは止めて欲しかった」アハハ・・・

アンジェレネ「し、知ってたの!?」カアアァ///


申し訳ありませんが、毎度声聞こえてますよ。多分、僕が家に居ない時も一人で……それは考えないでおこう。


アンジェレネ「あわわ……わ、忘れてよー!」ウグゥ・・・///

香焼「ふふっ。どうしよっかなー」クスクスッ

アンジェレネ「ぐぬぬ……じゃあコォヤギくんがキチンと毎回私と一緒に絶頂イケるようなってよ! てか今からもう一ラウンドだー!」ガー!

香焼「」ダラダラ・・・

アンジェレネ「……ぷっ。冗談だよー、ヤルにしてももう少し休んでからねー」ニヤリ・・・


正直、今日は寝たいです。勘弁して下さい。


アンジェレネ「むぅ……これからもっとトレーニングだね! コォヤギくんの『早い』のも徐々に治していこう!」エヘヘ♪

香焼「余計なお世話っす」ッタク・・・


僕の横で楽しそうに寝転がる……恋人。


アンジェレネ「うん。コォヤギくんの恋人です」ギュウッ・・・///

香焼「ああ、そうだね」ナデナデ・・・

アンジェレネ「明日、ってもう今日かぁ……帰らなきゃいけないね」ジー・・・

香焼「ケジメは、大事だよ……、」ジー・・・


勿論、僕の男としてのケジメもある。


アンジェレネ「……やっぱり、コォヤギくんは来なくていいよ。シスター・ルチアに殺されちゃうかも」ムゥ・・・

香焼「審判は受けるつもりっすよ。キチンと今日までの事正直に話して、アンと恋人になった事も伝える」ポンッ・・・


多分怒られはするが、オルソラさんやアニェーゼが助けてくれると思う。
もし来ていれば五和や女教皇様も味方になってくれる筈だ。
458 :If.アンジェレネ・アフター [saga]:2011/07/13(水) 02:53:47.10 ID:lCdsEnAR0
香焼「てか、アニェーゼ部隊のシスターで彼氏持ち何人かいないっけ? 噂で聞いたけど騎士派や宮仕えの執事と付き合ってる人いるとか」

アンジェレネ「居るけど……情交わしたか如何かなんて知らないよ」

香焼「多分、聞かれないから言わないだけだろ」

アンジェレネ「じゃあ私達だって暴露する必要無いんじゃ」

香焼「オルソラさんとアニーにはばれてるだろ……聞かれるからキチンと応えるっすよ」


あの二人が空気を読んでそこまで言う必要無いと止めてくれたら、その行為に甘えよう。


アンジェレネ「というか、コォヤギくんの同僚さん達には報告良いの?」

香焼「まぁその……五和にばれれば皆にばれるから。そっちの方が手っ取り早いし」アハハ・・・


とんだ有難迷惑だ。


アンジェレネ「そっか。じゃあ私、挨拶いかなくても良いね」アハハ・・・

香焼「今回の件は色んな人に心配かけたから謝罪がメインで一緒に寮行くんだろ。付き合いましたってのがメインじゃないっす」

アンジェレネ「あ、なるほど」フムフム・・・

香焼「……ホントに分かってるのかなぁ」ハァ・・・


心配になってきた。


アンジェレネ「あはは、ごめんごめん……でもちゃんと謝る事は分かってるからダイジョブです」スリスリ・・・

香焼「レッサーにも謝るんだよ」

アンジェレネ「あ……サーシャちゃんとか都市の皆にも謝らなきゃ」ボソッ・・・

香焼「は?」ポカーン・・・

アンジェレネ「な、何でもない何でもない!」アハハハハ・・・


付き合っても尚、よく分からない事を言う。


アンジェレネ「兎に角……私、しっかり大人になります。もう我儘言いません」クスッ

香焼「あはは。まぁ急ぐ必要はないけど、反抗期は卒業しましたくらいでね」フフッ

アンジェレネ「は、反抗期じゃないもん! ちょっと、その……ルチアとの喧嘩の期間が長かっただけだもん!」ムゥ・・・

香焼「それを反抗期って言うんすよ」クスクスッ

アンジェレネ「ぐぬぬ……えいっ」ガブッ!

香焼「あ痛っ!! む、胸噛むな!!」イダダ!

アンジェレネ「ひゃあ、ひたはんだほうふぁひぃ?」チラッ・・・


何言ってるかさっぱり分からん。
459 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/13(水) 03:15:09.73 ID:lCdsEnAR0
アンジェレネ「……別のとこ、噛んだ方良い?」フフッ

香焼「そういう問題じゃないよ……この2週間で分かったけど、アンって結構S寄りだよね」モゥ・・・

アンジェレネ「うーん。というか臆病だけど腹黒いんだよ」アハハ

香焼「自分で言うな」ポンッ

アンジェレネ「えへへ♪」カプッ! ペロペロッ!

香焼「ひゃんっ!? ちょ……乳首舐めんな!」ビクッ・・・ガアアァ!!

アンジェレネ「あははー。女の子みたーい! やっぱ私達が男の子でコォヤギくんとステイルくんが女の子だったら良かったんだよ」ケラケラ!


何その妄想怖い。お願いですから止めて下さい。


アンジェレネ「あははは。まぁ……そうだね。貴方が男で、私が女で……だから今、幸せなんだね」フフッ・・・


そ自然と口数が減った。ただ互いの身体(股間以外)を抱き締めたり、撫でたり、舐めたり……キスをしたり、優しく微笑んだり。


香焼「ん……あむっ」カプッ・・・ペロッ・・・

アンジェレネ「ふぁぅ……おっぱい、大きかったら……んっ……もっと楽しい事、出来たのになぁ」ピクッ・・・フフッ・・・

香焼「別に良いよ。これ以上アンに武器要らない」タラー・・・


身体が持ちません。


アンジェレネ「だってコォヤギくん、実は胸ばっかり吸って……おっぱい星人なの知ってるんだぞー」ジトー・・・

香焼「え!? そ、そんな事ないよ」タラー・・・

アンジェレネ「やっぱ神裂と五和に囲まれて過ごしてきたからそっちに目が行くのね……豊胸マッサージしてみよう!」グッ・・・

香焼「馬鹿な真似しなくていいから。そのままで良いよ」ナデナデ・・・

アンジェレネ「コォヤギくんの『下のサイズ』は身長の割に大きいから、私の『下の口のサイズ』だとキツいんだよね?」チラッ・・・

香焼「何言ってんだ、このお馬鹿。そんな事気にしなくていいから。どんなんでもアンはアンだろ。サイズの問題じゃないっす」ポンッ・・・

アンジェレネ「身長が1[ピーーー]pなのに下が16pくらいって事は大体10分の一サイズ?」ウーン・・・

香焼「ぐっ……身長の話は出すな!」ペチッ!

アンジェレネ「にゃはは。まぁ私とかアニェーゼちゃん達もこの歳で150前後だし、コォヤギくんだけじゃないよ」クスクスッ


深刻な悩みなんです。アソコのデカさとか早漏なんか如何でも良いので、身長下さい。


香焼「ったく……そろそろ寝ないと拙いっすよ。明日は長くなるっす」スッ・・・ファサッ・・・

アンジェレネ「うん……ねぇ、コォヤギくん……キス、して」ギュッ・・・

香焼「ん……おやすみ」チュッ・・・ナデナデ・・・

アンジェレネ「おやすみなさい」フフッ・・・


手を繋ぎ、頬を口付けをして、彼女は僕の腕を枕に目を瞑る。

2週間前、ずぶ濡れの犬を拾ってきた筈が、いつの間にか恋人になっていた。まるで御伽噺の様。
ページを捲ると決して良い話とはいえないけれども……それでも僕らの中では色濃い物語り(想い出)となった。

家出少女は『大人』の自覚を持ち始め……そして僕は大事な『人』を見つけた。


アンジェレネ「くぅ……すぅ……、」キュッ・・・


もう迷わない。自分を蔑まない様、心掛ける……大事な人の為に……―――
460 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/13(水) 03:45:44.25 ID:lCdsEnAR0
 ―――とある日(約二週間後)、PM08:40、学園都市第7学区、某所……







数日後、都市での休暇中にて……とある数名に公言した。


香焼「―――……以上っす」コクン・・・

上条「へぇ……色々あったんだな」

ステイル「本っっっ当に、馬鹿だよコイツは……一人で抱え込んだ挙句、意味不明な事になってる」ハァ・・・

土御門「にゃははははっ! 流っ石、カミやん病感染者だぜぃ!」ケラケラケラ!


どうして上条さん宅にこの面子が……と野暮なツッコみは無しだ。


上条「まぁでも、おめでとうだな。だけど……ルチアとか大丈夫だったのか? あと生理は?」

香焼「えっと、はい……勿論怒られましたけど、オルソラさんが止めてくれたので。他の皆も同じような対応っす」

上条「ははは、皆大人で良かったな」クスクスッ

香焼「生理は、幸か不幸か来ませんでした」ハハハ・・・

ステイル「呆れてモノも言えん状態だな」ッタク・・・

土御門「んまぁでもぉ、裏で一番手回ししてくれたのはステイルだってぇ噂だがぁ、そこんとこ如何なん?」ニヤリ・・・

香焼「確かに、迷惑掛けっ放しで」アハハ・・・

ステイル「し、知らん! 自分の職務上で面倒事を回避する最善の手がそれだっただけだ」ケッ!

上条・土御門「「……ぷふー」」ニヤニヤ・・・

ステイル「燃やすぞゴラァ」ギロッ・・・


苦笑。


土御門「あ、そういやぁセンセの所にはもう伝えに?」

香焼「……黒妻さん達は問題なかったんすけど、最愛が」ハァ・・・

上条「絹旗?」

香焼「多分、幻滅したんだと思います。色々順序とかが不純でしたから……兄貴分として嫌われたんじゃないかと」ムゥ・・・

上条「ん……まぁ時間が解決してくれるさ。固法さんも色々宥めてくれると思うし」ポンポンッ


そうなる事を願う。


土御門「……オイ、ステイル。コイツ、英国でもアニェーゼ達に同じ事を?」チラッ

ステイル「ああ、言ってたよ。やはりコイツは一度刺された方が良いんじゃないかと思うね」ジトー・・・


物騒な事言わないでくれ。
461 :If.アンジェレネ・アフター :2011/07/13(水) 04:08:55.10 ID:lCdsEnAR0
土御門「ま、香焼は一区切りついたしー……後はカミやんが如何なるか期待だぜよ」ニシシ!

上条「は?」ポカーン・・・

ステイル「……貴様は未だに風に揺られてフラフラ状態だからな」ジトー・・・

上条「え、えっと……、」チラッ

香焼「お、オレ見られても」アハハ・・・


上条さんの恋愛事情はカオス過ぎて把握できない。


上条「と、兎に角その……『運命的』な出会いが有れば、うん」アハハ・・・

土御門「カミやんまだフラグ建てるつもりですたい」ジトー・・・

ステイル「コイツも刺されなければ分からないだろうな」ハァ・・・

上条「お、おっかない事言うなよ」ダラダラ・・・

土御門「はいはい、さーせん。もてる男は辛いねぇ」ジトー・・・チラッ


何故僕を見る。


香焼「つ、土御門だって黙ってれば恰好良いっすよ。てか舞夏さんいるんじゃ」アハハ・・・

土御門「……そこはタブーで」ジトー・・・

香焼「ステイルだって実際もててるのに何でもかんでも跳ね除けてるから」

ステイル「君に、言われたくないな」ジトー・・・


何か嫌な空気。


上条「ま、まぁまぁ。今日はオレと土御門が奢るからさ。お祝いって事で」ニカッ!

土御門「な!? 俺までカウントすんな! カミやん一人で奢りやがれ!!」ギャー!

ステイル「土御門、感謝するよ」ニヤリ・・・

土御門「てめ、ステイル関係無ぇだろ!!」ウガー!

ステイル「一番の功労者云々と言ってくれたのは君だろう? だったら奢れ、やれ奢れ、ほら奢れ」ニヤニヤ・・・

土御門「ぐぬぬぅ……リア充爆発しろっ!! 後で海原と結標と二次会じゃああぁ!!」ガアアァッ!!


ちょっと前まで『リア重』だったが、確かに今は充実してるのか。


上条「ん……香焼」チラッ

香焼「はい?」

上条「少し……背、伸びたな」ポンッ

香焼「っ……ありがとうございます」ペコッ・・・

上条「ははは。まぁ男として如何こう難しいのは建宮や黒妻さんから聞くだろうから……とりあえず大事な人の為に、頑張れよ」クスッ

香焼「……はい」コクン・・・


その言葉が自分には嬉しい。僕は……とある一人の為に、小さな英雄になれたのかもしれない―――
462 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/07/13(水) 04:12:32.20 ID:lCdsEnAR0
はい。お疲れ様でした。
そんなにエロくなかったよね? 微妙にしょーもないギャグ入れたし(苦笑)

次回は本編です。アンジェレネの話やっといて何だけど、絹旗と香焼の話だよ。
クーデター前日前々日辺りなので……そろそろキリつけるかもね。

とりあえず、適当に感想やら罵倒やら質問意見等々下さい! そんじゃまた次回ー! ノシノシ”
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/07/13(水) 04:23:38.71 ID:/5wvQb7Lo
・・・ふぅ

早いとダメなのかね
童貞だから分からんのです

それはそうと乙
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/13(水) 06:50:08.51 ID:UI5cpeeDO
ふぅ‥‥‥相変わらずエロかったよ、>>1乙。


次は誰アフターか分からんけど期待してるぜ。
あとそろそろ女装香焼期待!
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/14(木) 16:24:16.17 ID:S90KJwXDO
次はいよいよレッサー、もしくはサーシャのターンだな!
466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/14(木) 19:52:58.69 ID:UlSvf+2S0
いや、次は姉×3との近親相姦プレイだろ
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/14(木) 23:37:08.76 ID:7Z3Oe0Hio
念願のアンジェレネはやっぱり可愛かった

あと上条さんは多分刺されてもわかんない
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/15(金) 11:10:35.09 ID:GYspGX670
もう香焼のアフターはお腹一杯って感じ、しばらく本編に集中してほしいかな。
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/16(土) 21:33:28.40 ID:FTejYtcb0
アフターって、これで何人目だっけ?
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/17(日) 00:29:47.34 ID:uQkkKHgDO
>>469
黒妻兄貴×このりんのわっふると、おふざけってか夢落ちでのねーちん・あわきん抜かせば三回目じゃね
471 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/07/22(金) 21:08:23.39 ID:MC+bhyz30
こんばんわ。お久しぶりです。

此処の所忙しくて中々投下できませんが、ボチボチ書いていきます。


今回からは、少々時系列に沿って話を進めます。という訳で、どうぞ!
472 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/07/22(金) 22:01:01.17 ID:MC+bhyz30
 ―――十月七日、PM10:00、フランス、パリ、シャルル・ド・ゴール国際空港・・・香焼side・・






10月。
世界中のローマ正教徒達による反科学デモが起き始めた。勿論、主なる理由は学園都市をはじめとする『科学サイド』への糾弾。
その混乱の最中、霊装『C文章』が元凶であると英国、必要悪の教会(ネセサリウス)は嗅ぎつけた。

そこで僕達―――天草式十字凄教はフランス各所へ飛び、その原因を探り当てる任務に着く。


建宮「―――……とりあえずオマエら、御苦労さんなのよな。特に五和、良くやった」チラッ

五和「い、いえ。上条さんがいなければ、はい」ポリポリ・・・


ジョーカーが伏せられていたのは五和が担当したアビニョン。そこの教皇庁宮殿。
ローマ正教、神の右席が一人―――『左方のテッラ』と死闘を繰り広げ、何とか『C文章』の破壊に成功したらしい。
尤も、今回もまたあの『英雄』さんが手を貸してくれた様だが……何にしろ一難は去った。

そして現在、フランス首都パリのシャルル・ド・ゴール国際空港、通称『ロワシー』に教徒52名+αが集合した。


牛深「ふぅ……やっとロンドンに帰れんのかぁ」グデェ・・・

野母崎「折角パリに来たってのに土産の一つも買えないで帰るってのも如何なのかねぇ」ウヘェ・・・

対馬「あら、要領悪いわね。既に何人か土産買い終えてるわよ」

野母崎「え!? マジ?! ちょ、教皇代理ー! 土産買ってきて良いー?」ハイハーイ!

建宮「じゃあ俺の分も買って来い」ビシッ!

牛深「あ、じゃあ俺のもー」ビシッ!

諫早「おい、三馬鹿少し黙れ……建宮、先に話終わらせなさい」ギロッ・・・

建宮・牛深・野母崎「「「ぅ……、」」ダラダラ・・・


この人達は、此処に何しに来たつもりなのだろう?


建宮「はぁ……しゃーねーのよな。じゃあとりあえず残念な話から伝えよう。まぁ一部の人間だけなんだけどな」


一同息を飲む。


建宮「学徒一同。それから大人も数名」チラッ

五和・浦上「「……え?」」ポカーン・・・


『学徒』とは所謂、成人していない学生教徒の面々だ。付け加えれば学園都市の学生として潜入している連中である。


建宮「五和は急がなくていいが、それ以外の輩。直ぐにでも都市へ戻って貰う」サラッ・・・

学徒s『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ!!?』ギョッ!!

浦上「ちょ、きょ、教皇代理!? な、何故にですか!?」ゲェ・・・

建宮「上からの指示なのよな……『上条当麻が都市に戻るから、お前らも早く何人か戻しとけ』ってねぇ」ハァ・・・


重要度が高まっている『幻想殺し(上条当麻)』の保護監視、という訳か。仕方ないな。
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/22(金) 22:13:16.24 ID:MHgAKOSS0
アックアか…………
474 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/07/22(金) 22:20:49.30 ID:MC+bhyz30
建宮「という訳で、都市への直行便がスタンバってるのよね。急げ若者ー」ノシ

五和「た、建宮さん。私も行きますよ。特別扱いってのは……同じ学徒ですし」チラッ

建宮「……、」チラッ・・・

浦上「やれやれ……お姉ー、ちょっとこっち来てくださいネー」コクンッ・・・

五和「え、あ、うん」テクテク・・・


無理矢理でも休ませる、か。正しい判断だろう。


建宮「それから……申し訳無いが対馬。引率、頼めるか?」チラッ

対馬「ったく……お願いじゃなくて命令して下さい。教皇代理」ハァ・・・

建宮「ああ、すまん……学徒一同。五和が都市へ戻るまでは対馬が現場責任者とする。いいな?」

学徒s『はーい』グデェ・・・


皆、お疲れの御様子。上手くシフトを組んで監視を回さねばならないな。


牛深「しっかし、こんなエッグい任務、誰の指示だ? 最大主教さん?」チラッ

建宮「上は『上』だ。一々詮索しないで欲しいのよね」チラッ

建宮「兎に角……30分後には出発する。荷物なんて要らないのよな。都市戻れば色々あるんだろ?」

野母崎「まぁ学徒は都市のアパートの方が立派だしなー」

建宮「そんじゃあ……対馬、それから爺さん(諫早)。ちょっとこっちに。今後の話だ」チラッ

対馬・諫早「「……、」」クイッ・・・


それから三人は物陰へ消えていった。入れ違えるように戻ってくる五和と浦上。


五和「はぁ……まぁ、うん。ウラ、頼んだわ」ポリポリ・・・

浦上「大丈夫だって。お姉は一日二日でもしっかり休んでから都市来なさいナ!」ポンポンッ!

五和「うー……ごめんなさい、上条さん……、」グデェ・・・


仕事熱心というか、一途馬鹿というか、何ともな。


浦上「やれやれー……香焼、御土産とかは良いのカナ?」チラッ

香焼「別に、今回は仕事だって伝えてあるし」

浦上「ツマんない子だねー。ピンバッジの一つでも買って行ってあげりゃー可愛げも有るっていうのに」


別に可愛いなんて思われたくないっつの。
475 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/07/22(金) 22:42:08.02 ID:MC+bhyz30
 ―――十月七日、PM10:10、フランス、パリ、シャルル・ド・ゴール国際空港・・・建宮side・・






一方、物陰にて。


対馬「……で? 話って何かしら? メールじゃ駄目なの?」チラッ

建宮「重要事項だからな、口で伝えておくのよね」


本来であれば自分(建宮)や神裂(聖人)が向わなければいけないモノだ。
残念ながら『立場』という厄介な壁が邪魔をしてしまう……因みに諫早も『相談役』としての肩書きを持っている。


建宮「一難去ってまた一難だ」

対馬「ん?」

建宮「今回の指示は一応、女教皇様をを通して最大主教からの命なんだが……ちょっと面倒な訳有りでなぁ」

対馬「その裏に更に都市そのもの……人質、ね。何もそんなに急ぐ必要はないでしょうに」ハァ・・・

諫早「いや、今回は人質として学徒を欲している訳ではない」

対馬「え? いつもと違うの?」


普段は――表向きは――学徒を『潜入工作員』として都市に置いている。
実際は……都市への人質、所謂アレイスターの掌の上に必要悪の教会の人間を置いておくといった裏がある。
これは統括理事長殿と最大主教の勝手な約束だ。主教補佐次席たる女教皇(神裂火織)は口を出せない。

さておき、話を戻す。


建宮「嫌なニュースってかタレコミが入ってな……土御門も知らん事よ」ハァ・・・

対馬「……それはまぁ、何とも」

建宮「結論から言うとだな……都市で内戦が興るやもしれんのよ」ボソッ・・・

対馬「……は?」ポカーン・・・

諫早「所謂クーデター。能力者連中や科学兵器での大規模なドンパチが興るかもしれないんだ」


呆気に取られた顔をする対馬。無理も無い。俺らだって信じられないのだから。


建宮「先に言うが……任務は二つ。一つはいつも通り上条当麻及び禁書目録の監視・保護なのよな」

諫早「もう一つは、街の様子見。もしかしたら旗取りに変わるかもな」フム・・・

対馬「ちょ……マジで?」タラー・・・

建宮「残念ながらな。ぶっちゃけ、五和を行かせられない理由の一つでもある。下手すると上条当麻が動いてアイツも動くからな」


万全の状態でない以上、能力者達と半分私情でドンパチやらせるわけにはいかない。
476 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/07/22(金) 23:06:35.22 ID:MC+bhyz30
建宮「まぁ一つ目の任務は半分無視して良い」

対馬「え、な……やっぱ文章にして報告して欲しいわ。ハッキリ言ってこんがらがる」ハァ・・・

諫早「まぁまぁ。とりあえず、上条当麻は『病院』の一部屋に缶詰させる。これで分かったかい?」

対馬「……冥土帰し?」フム・・・


一日二日、少なくとも天草本隊が都市入りするまでは冥土帰しが彼をベットの上で保護しておいてくれるという訳だ。


建宮「つまりメインは……都市の『危ない動き』を見張っとけっつー最大主教の読みなのよな」

対馬「……女教皇様は?」

諫早「動ける訳がなかろうて。建宮も動けんよ」

建宮「他の教徒も数名付けようかと思ったが、一度に何人も大人連中が都市に入ったらヤツらに変に勘繰られるからな」

諫早「今回は代表として対馬、オマエが行ってくれ。オマエが一番大人だからな」ハハハ


女は強い。実際、男の何倍も役に立つ。


対馬「ハァ……とりあえず学徒達は『緊急事態』って事で動かせばいいのね?」

建宮「そゆ事。だが旗取りだけだぞ? 介入はさせるな……言わなくても分かってるとは思うがな」


旗取り……所謂、戦況図記録・報告だ。


建宮「とりあえず以上なのよな。もっと細かいのは浦上辺りにメールして持って行かせる」

対馬「……あの子、直ぐ気付くわよ?」

建宮「大丈夫だ。浦上は空気を読める……五和はいないから、他に危ねぇのは『坊や』なのよね」ハァ・・・

対馬「坊や……ああ、香焼ね」フムフム・・・


あのガキは少々、危ない所へ首を突っ込み過ぎだ。


諫早「任務となれば私情は挟まないとは思うが、あの子の動きは良く見ておきなさい。馬鹿しそうな時は止めるんだぞ」

対馬「オーライ。そんじゃ準備を……っと、ビジネスホテル取ってくれてるの?」

建宮「あ……、」タラー・・・


忘れてた。


対馬「まったく計算高いんだけど何処か抜けてるのよね……五和の部屋借りるのは忍びないし」ウーン・・・

諫早「やれやれ。建宮、急いで現地の協力者に連絡を」

建宮「……あ!」ピコーン!

対馬・諫早「「ん?」」


一石二鳥の手が浮かんだ。
477 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/07/23(土) 00:24:07.39 ID:dw9mEDkA0
 ―――十月七日、PM11:00、フランス、パリ、シャルル・ド・ゴール国際空港・・・香焼side・・






建宮「そんじゃ先行組、宜しくなー。対馬の言う事聞くのよねー」ノシ


学徒十数名と対馬さんが特別機に乗り込む。
凡そ五時間(所要時間約11時間)で成田に着き、朝の7時には都市入りできるだろう。

時差ボケは厄介だが、実質半日近くも休憩が取れるのだ。文句は言うまい。
ふと、自分の隣に浦上が座し、話しかけてきた。


浦上「やれやれ、忙しい事この上ないネ」アハハ・・・

香焼「仕方ないだろ。仕事だし」


実際、同年代のステイルやアニェーゼ達はもっと過酷なスケジュールをこなしている。
そう考えると大した働きもしてない自分が、此処で弱音を吐くのは何だか忍ばれた。


浦上「殊勝なこって。せめて機内ではしっかり休んでおくんだよー。ほら、他の学徒は安眠グッズ常に携帯してるし」クスッ

香焼「世界各地飛び回る生活なんだからそのくらいの知恵は回るさ……浦上は寝ないの?」

浦上「うーん……まぁその内。あ、そういえばさぁ。お友達の主教補佐さんに今回の任務内容秘密裏に聞けたりしないの?」ニヤッ・・・

香焼「……そんな真似、しないっすよ」ムゥ・・・


友達とはいえ、公私混同はしない。
自分は一介の平教徒で、アチラは大本(ネセサリウス)の主教補佐。立場は間違えない。


浦上「ありゃ? プライドってヤツ?」

香焼「違うよ……五月蠅いなぁ」ハァ・・・

浦上「あはは、悪ぅござんしたー。そういえば……到着した次の日、都市の独立記念日ダヨ」クスクス・・・

香焼「……10月9日か。そういえばそうだったね」


都市に居る人間は羽を伸ばす日なのだろう。だが自分等は仕事である。


対馬「そうね。そのくらい割り切ってくれると助かるわ」スッ・・・

浦上「あ、どもども」フフッ


浦上の横に対馬さんがやってくる。気だるそうにやれやれと腰掛けた。
478 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/07/23(土) 00:41:42.26 ID:dw9mEDkA0
浦上「いやはやー、大変デスね」フフフ

対馬「まぁね。でも子供達だけで危険な都市に放り込む様な真似出来ないでしょ」チラッ

香焼「危険って、今までだって学徒だけでやってこれましたし」

対馬「そういう事じゃなくて……、」フム・・・


何やら言葉を選んでいる。


対馬「今回のデモ事件、都市から治安維持部隊が派遣されたでしょ」

浦上「そういえば、確かに。駆動鎧やら都市製の装甲車やらを見かけましたネ」


今回の事件で科学とは無関係の黄色人種が襲われる事態も起きた。
狂信的なカトリック信者達が『日本人っぽい』=『科学信者』と勝手に決め付け、襲いかかってきたのだ。


対馬「それで、都市関係者を守るっていう名目で治安部隊が海外に派遣されたのよ」

浦上「だから警備員の数が減ってる今の都市が危ないと? そのくらいじゃ別に如何って事無いんじゃないカナ? 風紀委員も優秀だし」

対馬「……とりあえず、色々あるのよ」


物憂げな表情。何かを隠している様だ。
とりあえず、深く詮索するのは止めておこう。必要とあらば彼女の方から何か告げてくるだろうし。

今は溜まっていたメールやら電話やらの返事を……――


対馬「あ、そうそう。香焼、部屋綺麗にしてた?」

香焼「え?」ポカーン・・・


――……突然何を仰る?


対馬「だから部屋綺麗なの?」

香焼「え、ま、まぁ……浦上(コイツ)と五和が無駄に荒して無かったら綺麗な筈っす」

浦上「……ふむふむ」ニヤニヤ・・・


一体全体何でそんな事を聞くのだ。


対馬「じゃあ問題無いわね」コクッ

香焼「へ?」

浦上「対馬さん、冷蔵庫のチューハイ勝手に開けたら五和怒りからネ。あと床下の日本酒も女教皇様のだから飲んじゃ駄目デスよ」フフフ

香焼「……へ!?」

対馬「はいはい、ちゃんと自分でビール買って飲む……って、アンタら未成年でしょうが! てか女教皇様まで何してるの!」ガアアァッ!!

浦上「てへ☆」ペロッ♪


……What’s!?
479 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/07/23(土) 00:58:27.87 ID:dw9mEDkA0
不穏な単語が飛び交ってる気がする。


対馬「んもー、察し悪いわね。流石カミやん病患者」ジトー・・・

香焼「い、いやいやいや! そういう問題じゃなくて……ええぇ!?」ギョッ!


ウチ、来るの!?


対馬「だって建宮、私のホテル取るの忘れてたんだもの」ハァ・・・

香焼「な、ま、だってまだ間に合うでしょ! 日本はもう朝方っすよ!?」

対馬「ゴダゴダうっさいわね……アンタの部屋学徒の中で一番広いんでしょ? しかも立派だし」

浦上「まぁ私とお姉と女教皇様が一緒に泊まりますからネー」アハハ

香焼「オマエは黙ってろ! い、いや、駄目とは言いませんけど……いきなりで」ハァ・・・

対馬「何よ、別に気ぃ使わなくていいわ。それとも……見られちゃ拙いものでもあるの?」ニヤリ・・・


そんなモノはない。断じて無い。


対馬「そんじゃあ実は彼女と同棲してるから叔母役が来るのは困るとか?」ニヤニヤ・・・

香焼「い、いません!」グヌヌ・・・

浦上「まぁ香焼なら英国と日本に別々の彼女が居ても可笑しくないけどネー。あの子とかあの子とか……ふふふ」ニヤリ・・・


ブッ飛ばすぞ?


浦上「あ、因みに香焼の『素敵』類は全部自室なので、絶対見つけられませんヨ」アハハ

対馬「あー、噂の鉄壁プライベートルームってヤツね。なーんだ、つまんない子ね」クスッ

浦上「妹モノが多いだろうって予想してました! もしくは幼馴染系。姉モノが無いのは姉貴分としてちょっとぶわふっ!!」ゴツッ!

香焼「黙ってろ! 手前ぇの予想なんざ聞きたくないわ!」ガアアァッ///

対馬「ふふふふふ……じゃあ私がこっそり調べといてあげるわ」ニヤリ・・・

浦上「何なら私も泊まりに行こー!」ニヤリ・・・

香焼「来んな! 対馬さんも寝床は貸しますけど、余計な事しないでくださいよ!」モゥ・・・

浦上・対馬「「えー」」ブーブー!

香焼「……面倒臭ぇ」ハァ・・・


これはまた五和や女教皇様とは違う悩みの種が飛びこんできそうだ。
480 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/07/23(土) 01:17:22.56 ID:dw9mEDkA0
 ―――十月七日、AM01:00、特別機内・・・香焼side・・






周りの教徒の殆どが寝静まった頃、自分はまだ寝付けなかった。
ふと、携帯を開く。何だかんだでメールやら電話着信に目を通せてなかった。


香焼「メールは……結標さんに、佐天さん、那由他に、最愛……固法さんも」ジー・・・


佐天さん、那由他、固法さんは海外に行ってる事に対してのメール。及び独立記念日は都市(コッチ)に戻ってくるのかという質問。
だが、結標さんと最愛は……少し違う。


香焼「『無事?』……か」ムゥ・・・


互いの素性がある程度ばれている関係。
自分がフランスにいると伝えただけで危険な任務についているという事を察したのだろう。

とりあえず『問題無い』と、無事のメールを入れておく。


香焼「次に電話は……女子寮と、黒妻さん……また結標さんか」アハハ・・・


因みに結標さんには猫(もあい)を預かって貰っている。確かに心配をかけざるを得ないが、そこまで心配して貰わなくても。


香焼「……女子寮は、まぁアニェーゼがまた愚痴る為に電話したんだろ」アハハ・・・


夜分遅くに『F(素)口調』全開のアニェーゼが書類仕事やらステイルに対しての愚痴を吐いてくる。
偶にアンジェレネとも普通の会話をするが、これももう慣れたモノだ。


香焼「……黒妻さんは、何だろう」フム・・・


男の彼は心配だから如何とかいう事で連絡をつけてきたりはしない。
考えられる一つとしては打ち止めちゃんに頼まれて電話を掛けてきた、といった所か。

もしくは……それ以外の『非常事態』。


香焼「まぁ……空の上じゃ何とも、ね」ハァ・・・


兎に角、成田についてから連絡を取ろう。今は次の任務に備え眠りに着くべきだ。
自分は後ろに座る教徒が迷惑にならないか確認を取り、椅子を後ろに倒して目を瞑った……―――
481 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/07/23(土) 01:38:33.40 ID:dw9mEDkA0
 ―――十月七日、AM01:30、特別機内・・・浦上side・・






香焼が寝た様だ。


浦上「さて……対馬さん、起きてる?」ボソッ・・・

対馬「……何?」ムゥ・・・

浦上「香焼の監視、必要カナ?」チラッ

対馬「……その話、明日じゃ駄目?」ハァ・・・


そりゃまぁ眠いか。


浦上「じゃあ大事な話を」

対馬「ん」コクッ・・・

浦上「都市の治安維持部隊、戻ってくるのはいつ頃になると思います?」

対馬「……、」

浦上「独立記念日(明日明後日)には間に合わないでしょうね。一週間後か、もっと先か」


『C文章』無き今でもまだデモが続いてる場所は有る。それが終わってから駆動鎧等回収作業をしたら大分遅くなる筈。


浦上「その間……『何も』無ければ良いですネ」ボソッ・・・

対馬「建宮はアンタが都市に独自のコネ持ってても可笑しくは無いって言ってたけど……何か知ってるの?」

浦上「いえいえ、買い被り過ぎですよ。ただ……路地裏や廃屋でオッカナイ事してる連中が騒がしくなってるなぁって事くらいカナ」フフッ

対馬「……、」

浦上「そのくらいは学徒皆知ってますヨ。ただそこから異臭を感じてるのは私とお姉くらいです」

対馬「香焼(この子)は?」

浦上「……一番『近い所』に居るけど、気付いてないでしょうネ。まぁこれについては女教皇様が半分公認してますケド」


複雑な表情をする大人(対馬さん)。


対馬「明日明後日、女教皇様は如何すると思う?」

浦上「まぁ……『カオリ姉様』も都市のお友達が心配でしょうネ。でも、此方には向えないでしょうが」


第4位……いや『御友人』の麦野沈利さん。


浦上「でもねぇ……必然は起きちゃうんですヨ。どんなに足掻いちゃってもネー。回避できない運命ってのカナ?」ハハハ・・・

対馬「……詩的な事言うのね、って褒めるべき? それとも厨二病、って呆れてあげた方が良い?」ジトー・・・

浦上「あはー。お好きにどうぞー……とりあえず、起こしてすいませんでしたー」クスッ


不思議な顔をして眠りに戻る対馬さん。


浦上「……第4の壁を越える役回りってのは、辛いですネ」ボー・・・


この物語に『英雄』は現れない、ってね……―――
482 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました :2011/07/23(土) 01:44:24.87 ID:dw9mEDkA0
はい、今日は此処まで。

先に言っておくと、クーデター編やアックア編での歴史改変はしません。
ただ『見えない所』で何かが起こっているのかもしれない、というだけです。
まぁ今回はクーデター前で終わるんすけどねー。


とりあえず、次は久しぶりに香焼が都市で一日を過ごします。
ノホホンとした日にするつもりなので、てきとーな具合でいきましょう。


そんじゃ適当に感想やら罵倒やら質問意見等々下さい! そんじゃまた次回ー! ノシノシ”
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/23(土) 02:18:55.34 ID:ADPzJuBDO
つまり色々悪い方にしか転ばないんだな‥‥特に、このりんとねーちんは。
とりあえず香焼は絹旗助ける為に奔走して欲しいぜよ。

黒妻さんは、任せる。
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/24(日) 15:21:53.10 ID:AtPm2XQDO
いつの間にか更新しとる…

>>1
クーデター編で完結すんの?
485 :>>1にかわりましてカキネがお送りします。 :2011/07/24(日) 21:32:18.72 ID:NSZJEJUv0
こんばんわ。ボチボチ投下します。


>>483・・・ねーちん・このりんについては、むぎのんがどんな姿になっても友達止めないと思うよ。

>>484・・・固法『先輩、―――』シリーズは終わりです。というか『WWV編』は兄貴とこのりんまったく出番無くなるから……はい。


んじゃスタート!
486 :>>1にかわりましてカキネがお送りします。 :2011/07/24(日) 21:43:50.64 ID:NSZJEJUv0
 ―――十月八日、AM07:30、学園都市第7学区、とあるアパート(黒妻宅)……






この街には独立記念日なる物がある。
日本国内にありながら一つの『国家』の様な存在である学園都市の建立(建国?)記念日。
それが明日……十月九日。また中途半端な時期に建立したものだ。


固法「先輩には関係ないでしょ?」

那由他「ですよねー」アハハ


就学無し定職無しには無関係だと、昨日泊まっていった後輩兼彼女と妹・娘分が辛辣な言葉を投げつけてきた。


固法「第一、何で今日まで休みにしてるのか分からないんですけど」

黒妻「……バイト休みなんだっつの」

那由他「明日も?」

黒妻「明後日も」サラッ

固法「……呆れた」ハァ・・・


そんな顔をされてもシフト入ってないものは入ってないのだ。
主に仕事を斡旋してくれる麦野さんは此処の所忙しい様だし、土御門も如何やら日本に居ない御様子。
黄泉川さんも昨今のデモやら戦争ムードやらで逐一オレに構ってられない様だし、半蔵と雲川は何やら『宜しくない』動きをしている。


固法「いや、人に頼らないで自分で職安行くなり求人誌読むなりして」

黒妻「あのなぁ……低学歴で、しかも前科持ちを普通の職場が雇うか?」

固法「……はぁ」


という訳で、とりあえず新しい部屋探しが優先だ。アパート情報誌に手を伸ばす。


固法「絶対順番可笑しいですって」

黒妻「しゃーねぇじゃん。そろそろこの部屋(学生寮)から出てけって催促も来出したし」

固法「……え"。何それ聞いてない」タラー・・・

黒妻「言ってねぇもん」サラッ

那由他「……あーあ」ハァ・・・


次の瞬間、ぎゃーぎゃー騒ぎ出す彼女。
『どうして相談してくれなかったんですかー!』とか『書類見せろー!』とか……朝っぱらから面倒臭い。

とりあえず……オマエらパジャマ着換えろ。話はそれからだ。


固法「っ! わ、忘れてた! 急がないと!」アタフタ・・・

那由他「さ、先に洗面所借りまーす!」ドタバタ!


まったく、学校遅れるぞ?
487 :>>1にかわりましてカキネがお送りします。 :2011/07/24(日) 22:13:31.21 ID:NSZJEJUv0
何やかんやで、朝食。
因みに今日は時間が無いのでトーストとムサシノ牛乳、フルーツゼリー(198円)の簡易朝食。


那由他「そういえば最近最愛姉さんと香焼兄さん忙しそうだね」モキュモキュ・・・

固法「打ち止めちゃんは病院だし……何だか皆大変ね」ゴクゴク・・・

黒妻「ん」ゴキュゴキュ・・・


香焼は英国へのショートステイ、最愛は研究が忙しいと嘘を付いている。
実際は共に『仕事』。それもあまり褒められたモノではない職種。


固法「あ、でも今朝香焼くん日本に着いたってメール来たわ。多分、夜にでも来るんじゃない?」クスッ

那由他「じゃあ無理にでも姉さん誘おー」ニパー!

黒妻「来るのは無理って、オマエら急いでる時電話きた。最愛ちゃんも明日明後日くらいまでは忙しいって」モグモグ・・・サラッ

固法・那由他「「……」」ジトー・・・

黒妻「……な、何だよ」

那由他「……黒妻さん、報告遅すぎです」ハァ・・・

固法「まったく、全部そうなんだから」ハァ・・・


もし、子供を作るとしたら男の子を作ろう。味方が欲しい。


黒妻「因みに、オマエら明日は忙しいの?」

固法「ええ、残念ながら。祭日ですから学生が遊び歩くでしょ。忙しいんです」ハァ・・・

那由他「同じく。しかも私は先進教育局のシンポジウムにも参加……『MAR(先進状況救助隊)の今後』とか訳分からない」ハァ・・・

固法「それって……まさか、代理?」チラッ

那由他「テレね……伯母は関係無いよ。まぁ一部の人間は嫌みってか『責任(一族関係)』で参加させたのかもしれないけどさ」


MARって何ですか? MMRの親戚?


固法「はぁ……でもまぁ先輩みたいな人、MAR向きだと思うんですけどね。体力あるし。駆動鎧操れるし」

那由他「あー、無理だと思う。新体制になってから入隊・転課試験難しくなったし」

黒妻「どうせ馬鹿ですよーだ……無駄口良いからオマエらさっさと喰い終われ。遅刻するぞ」ジトー・・・

固法「おっと、危ない」アタフタ・・・

那由他「あわわ! 早く薬飲まないと!」パタパタ・・・


二人もバイクで送れないからな。
488 :>>1にかわりましてカキネがお送りします。 :2011/07/24(日) 22:39:44.17 ID:NSZJEJUv0
 ―――十月八日、AM09:00、学園都市第7学区、とあるアパート(黒妻宅)……






結局、美偉がオレのバイクを半ば強引に借りて二人で登校していった。
何が『これでパチンコ行けませんね!』だ、余計な御世話だっつの。

さておき……ベランダへ出る。目的は、餌やり。


黒妻「……飯だ」ゴトッ

スフィンクス「みゃー」トコトコ・・・


『ひゃっほーう! 一晩ぶりの飯だー!』と言わんばかりにガッツく子猫。
飼い主は『所用』で不在。因みにその隣人も不在である。


禁書「……くろづまー」ブラーン・・・グギュルルルルゥ・・・

黒妻「出たな、妖怪ハラヘッター。オレにブラ=サガリは利かんぞ」カチッ・・・フゥ・・・

禁書「ぶわっ!? 煙草喫わないでほしいんだよ!」ゲホゲホッ!


妖怪退治の一環です。


禁書「うぅ……人を妖怪(モンスター)扱いするー。私はアンデットとは真逆の善なる清き修道女なんだよ!」プンスカ! ギュルルル・・・グルポッ・・・

黒妻「んな変な腹の音鳴らした修道女が居てたまるか」

禁書「せーりげんしょーです」フンッ! グルル・・・ギリリリ・・・

黒妻「意味分かって言ってんのか? ったく……ってか土御門妹が今日の昼飯分まで作り置きしててくれてたんじゃねぇの?」

禁書「昨日の夜の時点で空鍋なんだよ」


呆れてモノも言えない。仕方ないので哀れな乞食にトースト3枚とカップゼリー2個、牛乳1,5ℓを恵んでやった。
『まだ足りぬ!』といった表情で子猫の猫まんままで手を出しそうだったので、早々に煙で追い払った。

昼は……油増し増しチャーハンでも持ってってやろう。


黒妻「とりあえず日課終了だな」フゥ・・・ジジジ・・・


ペットの餌やり・植物への水やり感覚である。
489 :>>1にかわりましてカキネがお送りします。 :2011/07/24(日) 22:56:57.35 ID:NSZJEJUv0
次は、その隣の部屋だ。
今度はベランダからではなく、階段を上り正面玄関からその部屋を訪ねる。鍵は預かっているので下手な心配は無い。


黒妻「……ん?」ピタッ・・・


ドアノブを回した瞬間、違和感。どうやら元々鍵が開きっ放しだった様だ。
ということは、もう帰って来たのか?


黒妻「邪魔するぞ」ガチャッ・・・


閉じたカーテンの隙間からの木漏れ日程度しか明かりが無い仄暗い部屋。
ベットの上に……一匹のメイド。


黒妻「……おい、妹」ハァ・・・

舞夏「む……なんだい?」ムグゥ・・・

黒妻「昨日の夜、インデックスちゃんに餌あげて帰ったんじゃなかったのか? 兄貴の部屋に泊まったのか? 学校は?」

舞夏「……私の勝手でしょー」ゴロゴロ・・・


勝手は勝手だが、よくもまぁこんな無機質で男臭い部屋に居座っているものだ。


黒妻「因みに、何してんだ?」タラー・・・

舞夏「兄貴の匂いクンカクンカー」モフモフ・・・


やはりこの兄妹……もとい義兄妹は、どこか歪んでいる。


舞夏「ねー」チラッ

黒妻「ん?」

舞夏「昨日はエッチしてないのかー?」

黒妻「今日アイツ学校だろ? それに那由他も泊まったし」サラッ

舞夏「ぐっ……つ、つまらん。普通に返す辺り大人の男の余裕を感じられる……香焼なら『何馬鹿な事聞いてんすかー!』とか赤面するのにー」

黒妻「あはは。アイツの真似上手いな」ケラケラ!

舞夏「因みに絹旗最愛は『そ、そんな超ハレンチな真似する訳ないでしょう! 超々々ーっ変態っ!!』だぞー」ケラケラケラ!


的を得ている。大したものだ。
490 :>>1にかわりましてカキネがお送りします。 :2011/07/24(日) 23:16:09.35 ID:NSZJEJUv0
とりあえず、コイツが居るならまた後で邪魔すれば良いだろう。


黒妻「あ、そうだ。まだ居るんだったら後でインデックスちゃんに朝飯やってくれ。食パンだけじゃ足らないとかほざいてたからな」

舞夏「あ、あの食欲魔人め。多めに作ったんだぞ……はぁ」グデェ・・・

黒妻「ご愁傷さん。んじゃ兄貴帰って来た頃にまた来る」クルッ・・・

舞夏「んー……なぁ、黒妻綿流」ゴロゴロ・・・

黒妻「何だ?」チラッ

舞夏「……兄貴、何処?」ボソッ・・・


応えられない。


舞夏「上条当麻と一緒に、どっか行ったのかー?」ボソッ・・・

黒妻「……さぁ」

舞夏「もしかして『本家』とか」ボソッ・・・

黒妻「は? ほんけ?」ポカーン・・・

舞夏「……何でも無いぞー」ムグッ・・・


不貞腐れた様に布団に包まる義妹さん。


舞夏「何にしろ……危ない事してるんでしょ?」モゴッ・・・

黒妻「んな事知らねぇよ。兄貴に聞け」

舞夏「聞いても教えてくれないもん」ムグゥ・・・

黒妻「オマエに教えない事をアイツがオレに教える訳ねぇだろ」ハァ・・・

舞夏「……そっかー。ごめんねー」アハハ・・・

黒妻「いや。まぁ頼りにならなくて悪かったな……んじゃ」テクテク・・・

舞夏「おー。またなー」テクテク・・・


義妹殿が兄貴の『素敵本』の束を熟読し出したので退散する事にする。


黒妻「あの子にゃ悪いが……まぁ難儀なもんだな」ポリポリ・・・


実際は薄らと分かっている。詳細は聞いては居ないが、上条と一緒に海外へ飛んだらしい。確実に危ない事をしているだろう。
因みにこれは雲川情報である。

土御門には『一応、変な輩が侵入してないか確認を頼む』と頼まれただけだ。
『変な輩って何だ?』と聞くと、『裏側の馬鹿』とだけ返事が帰って来た。
道化師の楽屋は何人たりとも荒させない、との事。オレは所謂、『自宅警備員』だとか。良い意味で。


黒妻「ま、とりあえず生きて帰って来てくれよー……ってね」ハハハ・・・


あんなのでも、居なくなると寂しいからな。
491 :>>1にかわりましてカキネがお送りします。 :2011/07/25(月) 00:25:55.95 ID:/TyJRzvl0
 ―――十月八日、AM09:30、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・・・







三時間前に成田に到着。一時間半前に第23学区のステーションへ入関。そして三十分前に我が家へ帰宅。
疲れた。横になりたい……正直な今の感想だった。


対馬「我慢なさい……私だって寝たいわ。疲れてんのは皆一緒よ」ハァ・・・

香焼「とか言いつつ、ソファ占領しないで欲しいっす。思いっきし休んでんじゃん」ジトー・・・

対馬「あ〜……アンタらの任務時間振り分け(シフト)組まないと」ウヘェ・・・

香焼「対馬さーん、無視すんなー」オーイ・・・

対馬「香焼ー、ノートPC貸しなさい。あ、別に『色々』覗くとか野暮な真似はしないから安心して。資料作るだけよ」グオォ・・・


駄目だ、この大人。


香焼「まったく……というか、任務っといっても実際上条さん病院に居るんすよね?」

対馬「ん。まぁだから病院近辺と彼の家……要は禁書目録の監視が主な仕事になるわ」

香焼「成程……楽っちゃ楽っすね」

対馬「A級任務&長旅直後にハードな任務押し付けないわよ。一先ず本隊が合流するまでは、ね」


本隊が合流したら、ハードな仕事が待っているのか。何ともなん。


対馬「最大主教さんの読みが当たれば数日内に『神の右席』が動くってんだから、仕方ないでしょう」

香焼「どうだか……この街に二度も『神の右席』が侵入するっすかねぇ。アレイスターもそこまで馬鹿じゃないでしょ」ムゥ・・・

対馬「侵入は容易でしょ。その後を如何するかは都市側の勝手だけど、とりあえず信用無んないから私達が動く。OK?」

香焼「それはそうだけど……もしかしたら暗部が動くかも」

対馬「無いんじゃない? 能力者って『対魔術』の相性悪いし。未だ衝突した例が少ないから何とも言えないけどさ」


確かに……だが高位の能力者なら或いは。


対馬「さぁ。そこの判断は首脳陣がする事よ……兎に角、PC貸せ。資料作っちまうわよ。あとビール一本出しといて」ハァ・・・

香焼「……はぁ」テクテク・・・


どうして、ウチに来る女性陣は皆だらけてしまうのだろう。変な魔術でも掛っているのか?
492 :>>1にかわりましてカキネがお送りします。 :2011/07/25(月) 01:11:29.58 ID:/TyJRzvl0
一寸後、対馬は朝っぱらからビール片手にPCと睨めっこを始めた。
傍から見れば実にシュールな光景である。


香焼「酒は控えろと……ん?」


携帯が鳴っている。自分の私用携帯の方だ。相手は……黒妻さん。
一度対馬に目配せし、ベランダへ出る。


香焼「もしもし」Pi!

黒妻『おう。五体満足か?』

香焼「ええ、御蔭さまで」ハハハ

黒妻『なら結構。今は家か? 学校?』

香焼「家っす。ちょっと開けられなくて」

黒妻『仕事かい』

香焼「まぁそんなとこっす……如何しました?」

黒妻『ん。特に如何って事ぁ無ぇが、美偉と那由他が寂しがってたぞ』


そういえば、此処の所彼女達の声を聞いていないな。


黒妻『少しでも時間作れたら夜にでも遊びに来い。明日は風紀委員の仕事で忙しいってからな』

香焼「はい、可能ならそうします」

黒妻『おう……そういえば最愛に連絡したのか?』

香焼「一応。ただ忙しいみたいで返事はまだっす……もしくは昨晩忙しかったから今寝てるのか」

黒妻『じゃあメールじゃなくて電話してやれ。多分、オマエと一緒で今色々大変みたいだからな』


それは、あまり好ましくない。


黒妻『……分かってると思うが、あんまり深く追求すんなよ』

香焼「……、」

黒妻『今はまだ、な。いずれ何とかすっから、とりあえず今は互いに無事だって事確認して安心しとけ』

香焼「……はい」


ジレンマとでも言うのだろうか。正直、辛い。


黒妻『それじゃあ、ウチ来る時は一報しろ。一応オレは今日……てか三日間は暇だから』アハハ

香焼「三日って……それ大人として如何なんすか?」ジトー・・・

黒妻『うっせ。今は週休6日がモットーだ。んじゃまず、またな』Pi!


この人も大概だな。というか週休6日ってどんな仕事だよ、とは名誉の為に突っ込まないでおく。
493 :>>1にかわりましてカキネがお送りします。 :2011/07/25(月) 01:33:29.86 ID:/TyJRzvl0
電話を切り、今度は電話帳を開く。カ行を下へ……『絹旗最愛』の項目。
出るか出ないかは分からないが、一応コールする。


香焼「やっぱ寝てるかな?」Prrr・・・


40秒近く鳴らした所で、呼び出し音が止まった。


絹旗『え、えっと……香焼?』Pi!

香焼「うん。おはよう。もしかして寝てた?」

絹旗『い、いえ。大丈夫ですよ』


心成しか彼女の声が疲れているようにも聞こえた。


絹旗『えと、如何しました? 電話してくるなんて超珍しいですね』

香焼「あはは。まぁ特に意味は無いんだけど……ごめん。迷惑だったよね」

絹旗『ううん。超暇してましたから』ハハハ・・・

香焼「そっか……えっと、昨日は『仕事』なかったの?」

絹旗『午前の仕事でしたから。今日は休みです……でも明日も仕事。最近、出勤回数超増えてきてるんで超大変なんですよ』ハァ・・・

香焼「……うん」

絹旗『デモだか何だか知りませんけど、学園都市見限って外の組織に乗り換えようとか考える輩が……って、あ、ご、ごめん』


最愛の口から、あまりそういう話は聞きたくない。


絹旗『と、兎に角、ちょっと今は忙しいかなぁって感じですよ……香焼は? 海外飛んでたんでしょう?』アハハ・・・

香焼「うん。自分は大丈夫だよ。忙しいのは同じみたいだけど……嫌な世の中だってのは同意っすね」アハハ・・・

絹旗『あはは。ですね、ホント……皆仲良くすれば良いのに』ハァ・・・


心底そう思う。


絹旗『あ、えっと……香焼。今日はこれから忙しいの?』

香焼「うーん、今任務……じゃなくて、シフト組んでる最中だからそれ次第かな」

絹旗『も、もし暇だったら……暇だったらで良いんですけど』モゴモゴ・・・

香焼「……うん。時間できたら公園行こっか」クスッ

絹旗『っ! は、はい!』ニパー!


やっと彼女の元気そうな声が聞けた。出来得るならずっとそうであって欲しい。
それから二言三言告げて、電話を切った。
494 :>>1にかわりましてカキネがお送りします。 :2011/07/25(月) 02:08:41.78 ID:/TyJRzvl0
そういえば結標さんからも電話が来てたという事を思い出し、コールしてみる。
あの人も夜行性だから寝てるかもしれないが一応……


香焼「伝言残せば――」Prr・・・

結標『はいはい!』Pi!

香焼「――早っ!?」ギョッ!


僅か2秒。


結標『香焼くん、大丈夫!? ホントに怪我して無い?! 今何処!? もう家に着いたの!?』ガーガー!

香焼「あ、あははは……も、もう家っす。ホントに大丈夫っすよ」タラー・・・

結標『そう……良かった』ホッ・・・

香焼「結標さん、この時間帯起きてるのは珍しいっすね」アハハ・・・

結標『夜勤から帰って来たばっかなのよ。最近無駄に「円柱(ビル)」への客が多くてね』ハァ・・・


案内人、だったか。その仕事が忙しいらしい。


結標『まぁさっきは土御門がアレイスターに報告あるってんで座標移動(案内)してきたの……ったく、人が寝ようって時に』グヌヌ・・・

香焼「あれ? 土御門ももう都市に帰って来てたんすか?」

結標『あら。一緒に帰って来たんじゃなくて?』

香焼「あの人の動きは正直分かんないっす……とりあえず、結標さんもお元気な様で安心しました」

結標『あらあら、嬉しい事言ってくれるわね。嬉しいついでに今から私の抱き枕にこない? ギャラ弾むわよ』フフフ・・・

香焼「んな女衒師(ホスト)みたいな真似お断りっす」タラー・・・

結標『あはは。ざーんねん。とりあえず……近い内遊びにいらっしゃい。小萌も喜ぶわ』クスッ…ファアアァ・・・

香焼「はい。就寝前に電話してすいませんでした」

結標『良いの良いの。身体に気を着けてね。無茶しない事。何かピンチの時は連絡寄越しなさい。可能であれば手を貸してあげるから』


この人は良くも悪くも味方で居てくれる人だ。自分にとっては五和達や固法さんとは別の意味で、良い姉貴分である。
兎角、眠りを妨げるのも忍びないので早めに電話を切った。


香焼「後は……女子寮だけど」カチッ・・・


今現在、ロンドンは深夜帯である。電話は控えよう。
495 :>>1にかわりましてカキネがお送りします。 :2011/07/25(月) 02:52:10.54 ID:/TyJRzvl0
部屋に戻ると……空き缶が4つ。更に何故か一升瓶まで蓋が開いている。


香焼「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・って、ああああぁっ!!?」ギョッ!

対馬「っさいわねぇ」カタカタ・・・グイッ・・・

香焼「五月蠅いじゃないっすよ! それ五和の氷結っすよ!? あとその日本酒女教皇様のっす!!」アワワワ・・・

対馬「だってビール切れたんだもん。てか女教皇様、白鷹吟醸なんてコアいもんを隠して」ヤレヤレ・・・

香焼「あーもうツッコみが追い付かない」ダラダラ・・・


現在昼前10時。人の酒を勝手に開け、チャンポン呑みを仕出かす淑女一名。


対馬「大体ねぇ……未成年の癖に平然と酒持ち込んでる方が間違いなのよ。しかも中坊の家。ねぇ香焼、私何か変な事言ってる?」ジトー・・・

香焼「ぐっ……そ、それは」タラー・・・

対馬「しかもアンタは基本食前酒(ワイン)くらいしか飲めない筈でしょ? 何でアンタが飲まない酒が此処にあんのよ」

香焼「……え、えと」ダラダラ・・・

対馬「これが私じゃなくて爺さま(諫早)なら完全説教よ? 黙って勝手に飲んでるだけの私と丸一日説教の爺さん、どっちがマシかしら?」


何も言えない。だが、アンタも間違ってるのは確かだ。


対馬「私は良いのよ。仕事捗(はかど)らせる為の栄養剤みたいなもんだから」ヘーン

香焼「昼前からビールとチューハイ(ストレート15%)と吟醸酒をチャンポンするのが栄養なんすか!?」

対馬「んなの私や建宮達からすれば朝飯前よ。それより、このExcelバージョン変だからVer.2015くらいに下げてよ」

香焼「はぁ……都市Verの方が多機能で便利っすよ」ッタク・・・

対馬「私は基本古い(都市外の)人間なのよ。良いからさっさとバージョン変更して。あと書き込みで終わりなんだから」アーダコーダ!


何だかんだでシフトは考え終えたらしい。この人は凄いんだか馬鹿なんだか分からない。


対馬「そういえば、さっき誰と電話してたの?」

香焼「え……友達っすよ」

対馬「ふーん……まぁ良いや。兎に角、さっさとして。あと布団の準備も宜しく。書き込んでメール送信終わったら少し寝るわ」グデェ・・・

香焼「監督代行がそんなんで良いんすか?」ジトー・・・

対馬「中途半端にダラつくよりもしっかり休んだ後フル稼働した方が効率良いでしょ。ほら、小間使い急げー」ワーワー


何が小間使いだ。手間賃取ってやろうか。この堕落女郎。


対馬「……折角今日は空きシフトにしてやろうかと考えたのに、やっぱアンタ今日明日夜勤ね」カタカタ・・・

香焼「すいませんでした。素直に言う事聞くので善処して下さい、対馬お姉さま」バタバタ・・・

対馬「うん、宜しい。ついでにビールももう二三本所望しよう……ってアンタじゃ流石にアルコール買えないか」ハハハ・・・


今背丈見て苦笑したな、こんにゃろ……いつか目にモノ見せてやる。覚えてろ。
496 :>>1にかわりましてカキネがお送りします。 :2011/07/25(月) 03:56:19.48 ID:/TyJRzvl0
 ―――十月八日、AM11:00、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・・・








それから約一時間後……対馬は作業を終え、爆睡状態に。
自分は晴れて一日休暇をゲット。尤も、明日の昼から本隊が集合するまでフル任務なので何とも言えない。
一先ず今日のうちに、此処最近の疲れを取れると考えれば幾分か楽である。


香焼「そんじゃあ、公園行こうかな」


対馬が飲み散らかした空き缶空きビンを片付けた後、最愛にメールを入れる。
その後軽めの軽食を取って、鍵を閉め家を出る。

佐天さんや春上さんは学校なので、久しぶりの二人きりかもしれない。


香焼「まぁもしかしたら軍覇が居るかもしれないけどね」アハハ・・・


学園都市No.1と言っても過言ではない不思議少年、削板軍覇も偶に一緒になる。


香焼「アイツも忙しいのかな」


自分達と同じく戦争ムードの所為で自警活動が忙しくなってたりするのやもしれない。
残念ながら、暫くは『平和』な日常を期待できないだろう。


香焼「暗い顔してちゃ、駄目だね」パシッ!


自分は今から『平穏』を求めに行くのだ。例えそれが僅かな時間であれ、ネガティブな感情で臨みたくはない。
無論、それは此方からも提供すべき事でもあるので、やはり翳りを持ったままでは……


香焼「って、こんな事考えてるから理屈っぽいって言われるんだよな」アハハ・・・


……あーだこーだ、頭で悩むのは止めよう。もはや邪推の域だ。


香焼「とりあえず、バス乗って、公園向かって、最愛に会って……それで良いんだ」


後は彼女が望む事を出来得る限りで叶えてあげよう。それで十分だ。
その後に黒妻さんの家に向かって、ウチに帰る。それだけの事。難しく考えない。

ミュージックプレイヤーでアップテンポな曲を選択し、テンションを上げて、妹分と待ち合わせた公園へ目指した……―――
497 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました :2011/07/25(月) 03:58:38.05 ID:/TyJRzvl0
はい。今日はこのくらいで。
書き溜めじゃないとこのくらい、のらりくらりです。申し訳無い。

とりあえず次回は香焼・絹旗の超ほのぼの話にします。

それではまた! ノシ”
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/25(月) 04:00:45.41 ID:n9dLVuCDO
>>1


次回が楽しみだね
499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/25(月) 23:00:47.30 ID:sNDRZ6oDO

週休6日って…兄貴ェ
500 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/07/26(火) 20:40:58.07 ID:+mLA8bes0
こんばんわ。投下っす。
501 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/07/26(火) 21:13:42.61 ID:+mLA8bes0
 ―――十月八日、AM11:30、学園都市第7学区、都市立ホテル『Alexander』、VIPプライベートルーム・・・・・







統括理事長の名を冠した高級ホテル。
そのとある一室に見目場違い・歳にして不釣り合いな少女達が居座っていた。


麦野「あー……んどくせー」カタカタ・・・

滝壺「ホント、最近忙しいね……はい、むぎの。お茶」コトッ

麦野「うぃ」カタカタ・・・


暗部『アイテム』。簡単にいえば『粛清』を専門とする裏組織だ。
リーダー・麦野沈利は『上』への報告書並び必要経費の申請に追われる日々。
本来ならデスク専門を一人雇っても良いところなのだが、中途半端な輩が来ても邪魔なだけなので自分が全てをこなしている。


フレンダ「てかさぁ結局、纏まった休暇は暫く貰えない訳なの?」グデェ・・・

麦野「仕方無いでしょ。上も外も、やれ戦争やれデモ運動だのでゴダゴダ状態なんだから」ハァ・・・

滝壺「緊急要請の回数も増えてきたし、困ったね。休める時休んでおかないと」アハハ・・・

絹旗「……、」カチカチ・・・


ここ数日の内に緊急出動5件。堪ったものではない。


麦野「しかも駆動鎧部隊が抜けたのを良い事に三下共が猪口才なコソ泥行為働かせてるみたいだし……マジうぜぇ」ヤレヤレ・・・

フレンダ「ぶっちゃけそんなのは下っ端やら警察(警備員・風紀委員)に任せればいいんじゃないかと思う訳よ」ブーブー!

麦野「しゃーないでしょ。表に出せない秘密握ったド低脳共が阿呆してるんだから」

フレンダ「まったく、下請けが好きかって暴れるなんて……結局『上』の連中は興味本位で風呂敷広げ過ぎな訳だと思うわ」ハァ・・・


広げた結果、都市や理事会を見限って『外』の組織と提携しようなんて輩が増えている。
暗部、特に『粛清』担当からすれば願い下げの状況だ。


麦野「とりあえず今夜は仕事入ってないからしっかり休んどきなさい。緊急あるかもしんないけど……出来るだけ蹴るわ」フゥ・・・

フレンダ「わーい、むぎのんのそういうとこ大好きー」アハハハ

滝壺「はまづらにもしっかり休む様連絡しとくね」


寝れる時に寝ておかないと、正直疲れが取れない。付け加えればお肌の大敵。
女性である彼女達からすると厳しいモノだった。
502 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/07/26(火) 21:50:04.83 ID:+mLA8bes0
とは言いつつも、リーダーたる麦野は書類仕事を終わらせねばならない。
滝壺とフレンダも仕事に必要な『道具』の準備や『資料』に目を通したりしている。

故に、まだ休む事は出来ないので正直、憔悴状態もしくはご機嫌斜めである。


絹旗「……あの、麦野」トコトコ・・・

麦野「ん?」


先程から無言で携帯を弄っていたチーム最年少の大能力者が歩み寄ってきた。


絹旗「出かけてきても良いですか?」

麦野「買い物? 浜面にでもパシらせなさいよ」カタカタ・・・

絹旗「……じゃなくて」モジモジ・・・

麦野「こんな時に映画行きたいとか言うんじゃないわよ。どうしても見たいならPCかホテルの有料チャンネルでも見てなさい」

絹旗「……、」ムゥ・・・


口籠る絹旗。戸惑った表情を浮かべる彼女を見て、滝壺が何かを察し口を挟んだ。


滝壺「……大丈夫だよ、きぬはた。行っておいで」

麦野「……、」チラッ・・・

絹旗「えっと……でも」タラー・・・

滝壺「遅くならなきゃ大丈夫だよ。何かあったらはまづらが迎えに行くし、好きにすると良いよ」トンッ・・・


リーダーの顔色を伺う。


麦野「……遊び疲れましたなん言ったらブッ飛ばすからね」カタカタ・・・

絹旗「っ! あ、ありがとうございます!」パアアァ!

フレンダ「台詞だけ聞くと絹旗がMっ娘に聞こえる訳よ」アハハ

滝壺「……フレンダ」ニコニコッ・・・

フレンダ「お、おぅ……さーせん」タラー・・・


さておき、絹旗少女は急いで外出支度をして部屋から飛び出していった。
残った三人はヤレヤレと各々元の作業に戻った。
503 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/07/26(火) 22:35:32.09 ID:+mLA8bes0
人形に火薬を詰める作業をしていたフレンダが、ふと呟いた。


フレンダ「お優しいこって」チクチク・・・

麦野「……別に。仕事に差し支えなけりゃ如何でも良いわよ」カタカタ・・・

フレンダ「ふーん」チクチク・・・


絹旗が何をしに行ったのかは大体見当がついている。


滝壺「リフレッシュになるなら、此処に居るより良いと思うよ」パラッ・・・パラッ・・・

フレンダ「リフレッシュかぁ。そんなもん?」

滝壺「多分、ね。二人も気分転換にお出かけしてみるの、アリだと思うよ」クスッ

麦野「じゃあアンタがこの書類の山片付けてくれんの?」ハァ・・・

滝壺「あはは……そだね」タラー・・・


決して暇ではないのだ。


麦野「あの坊やも暇じゃない筈なんだけどねぇ……火織も、忙しそうだし」ボソッ・・・


今現在『裏』の人間に暇は無い。
絹旗が会いに行った友人の姉貴分で、自分の『とある友人』も、この戦争ムードで骨が折れる忙しさだそうだ。


滝壺「嫌な感じだね。戦争って」ハァ・・・

フレンダ「稼ぎは増えても、結局自由は増えない訳よねー」アハハ・・・

麦野「……チッ」カタカタ・・・


いけ好かない。何が、という訳ではないが……何故か気に喰わない。


滝壺「むぎの……甘いものでも買ってこよっか?」チラッ

麦野「んなモンはデリバリーで十分よ……良いから休んでなさい。フレンダも」カタカタ・・・

フレンダ「……あいよ」ポリポリ・・・


これ以上、リーダーを刺激しない方が良い。二人はそう感じ、そそくさと別室へ移動した。


麦野「……ったく」グデェ・・・


カレンダーを見る。明日は独立記念日……ふと、携帯を開く。


麦野「『今度の祝日、久しぶりに遊ばない(@ω@)??』って……休みなんて無ぇわよ」ハァ・・・


先日入った友人からのメールを無視し、作業を続けた。
504 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/07/26(火) 23:00:57.74 ID:+mLA8bes0
 ―――十月八日、PM00:00、学園都市第7学区、とある公園・・・・・







平日昼間の都市の公園は静かなモノである。
都市外であれば小さな子供を連れたママさん達が集まったり、御老人達が憩いの場として利用したりするのだが、此処は学生の街。
基本的には皆学校に行ったり、数少ない大人達も仕事の真っ最中だろう。


絹旗「……私の方が先着いちゃいましたか」テクテク・・・


故に、この場に居るのは彼女くらいだ。
手にはコンビニで買ったサンドイッチと菓子パン、ムサシノ牛乳、それから猫缶である。


絹旗「うーん……警備ロボが増えましたね」チラッ


人は少ないがロボは多い。最近多発している軽犯罪の所為だろう。


絹旗「猫達、今日は少ない」ジー・・・


普段、公園をウロウロしている野良猫野良犬達。だが今日は数匹しか見当たらない。
昨今の物騒な雰囲気を野生の勘で感じ取ったか、はたまた……保健所の職員が『迎え』に来たのか。
何れにしろ、どこか寂しい。

自販機近くのベンチに座って、一寸後、待っていた少年が現れた。


香焼「あ、もう来てる」テクテク・・・

絹旗「超遅刻ですね。罰金100万です」フフッ

香焼「ごめんごめん。昼飯買ってきたから遅れた」ポリポリ・・・


言ってくれれば一緒に買いに行ったのに、と少女は苦笑した。


香焼「……久しぶり」

絹旗「え、あ、うん。そうですね……お久しぶりです」クスッ


顔を合わせるのは、久しぶりである。


絹旗「とりあえず、ご飯食べませんか?」ガサッ

香焼「そうっすね。食べながら話しよう」コクッ・・・


コンビニの袋から昼食を取り出す。互いにムサシノ牛乳が入っている辺り何処か虚しくもあり、可笑しかった。
505 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/07/26(火) 23:47:23.37 ID:+mLA8bes0
少年はおにぎりを頬張りながら呟いた。


香焼「平和だね」モグモグ・・・


少女はサンドイッチを咥えながら頷いた。


絹旗「そうですね」モキュモキュ・・・


ほんの昨日前まで血腥い所に立っていた。だが今は、恐ろしい程に平和だった。


絹旗「えっと……フランス、でしたっけ?」チラッ

香焼「え? あ、うん。今朝方学園都市に戻った」

絹旗「超ハードスケジュールですね」

香焼「あはは。慣れだよ……最愛は……、」

絹旗「私も、超忙しかったです。まったく、ヤになりますよ」ハァ・・・


溜息か苦笑しか漏れない。


絹旗「ずっと平和なら良いんですけどね」

香焼「うん……そうだね」


平和なら、彼女も暗殺者の様な仕事をしなくて済む。自分も、普通の学生でいられる。


絹旗「どうして戦争なんてするんでしょうか?」ムゥ・・・

香焼「哲学的っすね」クスッ

絹旗「まぁ事の優劣決めたり所有権だの主義思想だの主張したりで争いになるのは分かりますけど……でも、その根っ子が分かりません」

香焼「そんなの、神様だけが知ってる事じゃないかな」

絹旗「じゃあ神様って超最悪ですね」ベー!


何とも言えない。


絹旗「第一、ローマでしたっけ? 宗教如何こうで今更学園都市(ウチ)と戦争しようって気を起す意味が分からないんです」

香焼「……、」ポリポリ・・・

絹旗「そこのところは、香焼詳しいんじゃないですか?」

香焼「そうでも、無いっすよ」ボー・・・


詳しいっちゃ詳しいが、教えられる話ではない。
506 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/07/27(水) 00:51:02.40 ID:JwtT1Etc0
絹旗「そんなに科学が嫌いなんですかねぇ。じゃあローマ教の人達は原始人みたいな生活送ってるんでしょうか?」

香焼「科学が嫌いっていうより、ドチラかといえば都市の在り方が気に喰わないんじゃないかな」

絹旗「在り方?」

香焼「行き過ぎた技術(オーバーテクノロジー)。人の身に余る所業って事だよ」

絹旗「そんな事言ったらアイツらだってそうでしょう。『魔術』でしたっけ? 科学的超能力開発機関とかいう胡散臭いヤツ」


先日、学園都市発で『ローマ正教にはトンデモ機関が存在する』というニュースが世界中に報道された。
言ってしまえばコレがデモやら何やらの風潮を拡大させた原因なのだが、触り(真相)を知るモノとしては複雑な心境である。


香焼「最愛は、そんな馬鹿げた組織あると思うの?」

絹旗「否定は出来ないでしょう。学園都市っていう超SF都市がありますし、何より私も『0930』事件の資料は見てます」


0930事件……前方のヴェントがテロを起した日。


絹旗「学園都市(ココ)の技術じゃ証明できない超技術です。『魔術』だか何だか知りませんが、アチラも超SF機関なんでしょうね」

香焼「SFかぁ。便利な言葉っすね」クスッ

絹旗「サイキックでファンタジー。サイコでファンシー。超面白いじゃないですか。B級モノの常套句ですよ」フフッ


確かに『SF』で片付ければ、超能力も魔術も一括りだ。


絹旗「ただ、その『SF』の所為で私の仕事が増えるってのは嬉しくないですね。SFは見るモノであって経験するモノじゃないです」ムゥ・・・

香焼「そうだね……自分も、困ってる」

絹旗「いっその事、学園都市の理事連中とローマの御偉いさん達を打ん殴れば全部終わる話じゃないんでしょうか」ハハハ

香焼「アニェーゼみたいな事言うなよ」アハハ

絹旗「そんじゃ、アニェーゼと私で超打ん殴りに行きますよ」ニャハハ!


コイツらならやりかねないからオッカナイ。


絹旗「そういえば超気になってた事あるんです……聞いて良いですか?」チラッ

香焼「うん、何?」

絹旗「前にアニェーゼ達が都市に来た時、同僚ってか仲間って言ってましたよね」    ※『おはようございます』参照。

香焼「……、」コクッ・・・

絹旗「……やっぱり、そうだったんですか」フム・・・


彼女は僕が『裏』の人間だと知っている。つまり……アニー達も『裏』だと察したのだ。
507 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/07/27(水) 01:09:27.01 ID:JwtT1Etc0
それを知ったからといって、今更驚いたりはしない。
だがしかし、大分思う所はある。


絹旗「彼女らも、忙しいんですか?」

香焼「多分、自分よりも」

絹旗「多分って、部署が違うの?」

香焼「うん……、」


ドチラかというとアニェーゼ達の方が忙しいと思う。
現在微妙な立ち位置に立たされているアニェーゼ部隊は汚れ仕事を回される事が多い。

その点は、絹旗と似ているっちゃ似ているのやもしれない。


香焼「誰も彼も、被害者っす」

絹旗「……そっか」


嘆かわしい。


絹旗「早く、終わると良いですね。また兄貴さんの家でご飯食べたいです」

香焼「うん。皆でね」


固法さんや那由他も忙しい。皆が揃える機会が減っている。


絹旗「ところで……フランス土産とかは無いんですか?」ニヤリ・・・

香焼「え!? あ、その……ごめん」タラー・・・

絹旗「あはは。冗談ですよ。超忙しいのにそんなの強請りませんって」クスクス・・・

香焼「こ、今度は何か買ってくるよ」ポリポリ・・・

絹旗「ふふっ。期待しないで待ってます」クスッ


浦上の言うとおり適当に何か買っておけば良かった。


絹旗「気にしなくて良いですよ。香焼ばっかに土産とかプレゼント貰ってばっかですし、超申し訳無いですから」アハハ・・・

香焼「別に見返り求めてる訳じゃないっすよ」

絹旗「ははは。優しいんだか何なんだか」クスッ


彼女が無事でいてくれるだけで、十分幸せである。
508 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/07/27(水) 01:26:49.75 ID:JwtT1Etc0
その願いは、彼女も同じである。


絹旗「……超弱っちい癖に、人の心配ばっかして」クスッ

香焼「むぅ……、」ポリポリ・・・

絹旗「私は超強いんですから心配ご無用ですって。香焼の方が心配ですよ」フフフ

香焼「……馬鹿にしないでよ」モゥ・・・


自分だってそんなに弱くは無い……と強がっておく。


絹旗「だって香焼って、どっちかっていうとデスク組じゃないですか。頭で解決する方」

香焼「まぁ、話し合いで解決できるのであればそれに越した事は無いっすよ」

絹旗「私はそういうの、超苦手ですもん」グッ・・・


拳を握り前に突き出す少女。見ていて嬉しいモノではない。
彼女にその『拳(能力)』は何の為か、と問うのはナンセンスである。以前、この街最強の能力者が言っていた。


香焼「そういう風にしか……生きられない」ボソッ・・・

絹旗「はい」クスッ・・・


違う。それ以外の生き方をしてこなかっただけだ。知らないだけで『今から』覚える事は可能だ。


絹旗「それ以外の、生き方ですか?」

香焼「本来は『守る』為の能力なんでしょ?」

絹旗「まぁ……でも、守りっ放しってのは性に合いませんけどね。攻撃を超無効化して、そんでもってコッチは超ドデカいパンチ!」アハハ

香焼「……、」


やはり性格も矯正していかないといけないのか。


香焼「そんなの……仕事、イヤにならない?」

絹旗「疲れるのは超嫌いですよ。でも仕事(それ)で『ご飯』が食べれるんです。仕方ないじゃないですか」アハハ

香焼「それ以外の仕事も……ごめん、何でも無い」シュン・・・


これ以上は聞けない。また彼女を情緒不安定にしてしまう。
『殺し屋』として育てられた彼女は、それで生計を立てる様教育されてきているのだ。

彼女の中(根本)で『何か』きっかけが無い限り、変わる事は出来ないだろう。
509 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/07/27(水) 01:43:27.18 ID:JwtT1Etc0
小難しい顔をする少年の表情を見て、苦笑する少女。


絹旗「相変わらず超甘ちゃん(猛毒)ですね……私に出来る仕事、『殺し』以外に思い付きます?」クスッ

香焼「……それを考えるのが、僕達の年頃だろう」

絹旗「そういうもんなんですかね。私には分かりません」


当たり前の事が当たり前では無い少女。彼女に必要なのは母性と教育。心底この街の『闇』を呪う。


絹旗「おまんまに有り付ければ万々歳。違いますかねぇ」カパッ・・・モグモグ・・・


デザートのカッププリンを頬張りながら、彼女は可愛らしく小首を傾げた。


香焼「そんなの、知識人じゃないっすよ」

絹旗「うーん……忙しい事を抜かせば、衣食住は充実してますし、娯楽は十分足りてます」モグモグ・・・

香焼「……もう、分かんないっす」

絹旗「超珍しいですね、香焼が折れるのは」クスクス・・・


彼女と生命倫理の話が出来ない以上、これ以上は話せない。少なくとも『今はするな』と黒妻さんと第1位に口止めされている。


絹旗「兎に角、心配する必要ありませんよ。私は超々々々ぉー最強なんですから! って……アレ?」キョトン・・・

香焼「自分から最強とか言うヤツは大抵馬鹿っすよ……どうしたの?」ン?

絹旗「……んー」ジー・・・

香焼「え?」キョトン・・・


椅子の上に置いていた紙パック牛乳。どちらも同じ500mlのモノだ。


絹旗「……、」タラー・・・

香焼「どっちでも良いんじゃない?」

絹旗「な、何言ってんですか!?」ガアアァ///

香焼「ご、ごめん」タラー・・・


先程までのシリアスな彼女ととは一転、年相応の反応に戻る絹旗少女。
これこそ如何でも良い問題だろう……香焼少年は溜息をついた。
510 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/07/27(水) 01:55:34.96 ID:JwtT1Etc0
されど少女にとっては大問題。一歩も違えれば俗にいう間接キスという事になってしまう。


絹旗「重さは……大体同じ」ウーン・・・

香焼「ストロー取れば同じっすよ」

絹旗「そういう問題じゃないんです!」ムゥ・・・


乙女心を分かっていない。人の仕事云々を気にする前に、自分の鈍感さに気付くべきである。
絹旗は内心毒づいた。


香焼「……じゃあコッチ」スッ・・・

絹旗「あ! ちょ、待った!」グッ!

香焼「わっ! あ、危ないなぁ」

絹旗「……そ、そっちが私のです」ダラダラ・・・

香焼「どっちでも良いよ」ハァ

絹旗「よくないの!」カアアァ///


胃に入ってしまえば同じだろう。呆れる。


香焼「じゃあソッチね」スッ・・・

絹旗「っ!」ガシッ!

香焼「なっ!?」ギョッ・・・

絹旗「ま、待って下さい……それが、私のです」ダラダラ・・・

香焼「どっちだよ」ッタク・・・

絹旗「……ええい! 超コッチです!」バッ!


やっとの事選択決定した少女。たかが牛乳でどれだけ悩むのだ。


香焼「変なの」ポリポリ・・・

絹旗「ぐぬぬぬ……っ」ジトー・・・///


少年は少女の気持ちを余所に、開け口を唇元に……―――


絹旗「やっぱ駄目ええええぇっ!!」ガンッ!

香焼「ぶぼぁっ!!」ガバッ!!


―――……ぶちまけた。
511 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/07/27(水) 02:31:13.27 ID:JwtT1Etc0
 ―――十月八日、PM01:00、学園都市第7学区、とある公園・・・・・







絹旗「……ごめんなさい」ショボーン・・・


牛乳塗れになったパーカーを水道で洗い、近くの柵に干した。
流石にTシャツ一枚は肌寒いが、仕方あるまい。


絹旗「……ごめん」シュン・・・

香焼「もう良いよ」ポリポリ・・・


ずっと項垂れる彼女に微笑み、顔を上げさせる。
何を持って牛乳をブっ掛けられたかは知らないが、もう済んだ事だ。


香焼「悪気があった訳じゃないんだろ……いや、あったのかもしんないけど」アハハ・・・

絹旗「顔面に白いのブっ掛けっちゃったんですよ……しかも超生ぬるくなったヤツ」プッ・・・

香焼「そういう言い方すんなコラ」ジトー・・・


やっぱ許さない。


絹旗「じょ、冗談ですって。ごめんなさい」アタフタ・・・

香焼「ったく……はぁ」ブルルッ


臭いは取れたが髪がベトベトする。


絹旗「じゃあ……これを」スッ・・・

香焼「え?」

絹旗「動かないでくださいねー」ピタッ・・・


ヘアピン。両サイドを留めて、おでこが出る形に。


絹旗「よいしょっと……あら可愛い」クスッ

香焼「……やだ」パラッ

絹旗「あー、超もったいない」アララ・・・

香焼「可愛いって言われるの大っ嫌いなんすよ。知ってるだろ?」ジトー・・・

絹旗「あはは。まぁねー」クスクスッ


まったく意地が悪い。本当に反省しているのかどうか疑わしかった。
512 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/07/27(水) 03:07:30.90 ID:JwtT1Etc0
絹旗「……んー」ジー・・・

香焼「今度は何さ」ハァ・・・

絹旗「香焼って、華奢な割に筋肉あるんですねー」ジー・・・


二の腕辺りをマジマジ見詰める少女。実にシュールだ。


香焼「一応、鍛えてるからね」アハハ

絹旗「……身長伸びなくなりますよ?」

香焼「ぐっ……た、多分、大丈夫」タラー・・・

絹旗「私は適度に動く程度ですから心配ありませんけど、香焼、仕事の上に筋トレなんてしてたらチビのままですよ」クスクス・・・

香焼「そ、そんな事ないよ! 最愛こそ、能力に頼ってばっかじゃ丸くなっちゃうっすよ」ジトー・・・

絹旗「ぐをっ……だ、大丈夫な筈、です」タラー・・・


彼女の能力は凄腕の魔術師顔負けの実力だが、自身の筋力体力その他諸々は並の少女以下かもしれない。
現に能力無しの腕相撲では打ち止めとドッコイである。


絹旗「わ、私の装甲はそう易々と破れません!」ムンッ!

香焼「AIMジャマーや攪乱の羽(チャフシード)展開されても?」ジトー・・・

絹旗「……えっと」ダラダラ・・・

香焼「一皮剥がされただけで普通の少女以下なんだから、用心しないと」ッタク・・・

絹旗「う、ぐぅ」ムゥ・・・

香焼「……ホント、怖いよ」ハァ・・・


彼女の装甲が破れ、銃弾の雨にさらされたら……彼女の装甲が破れ、鋭利な刃の餌食になったら……
そんな恐ろしい『If』が浮かぶ。


香焼「能力は絶対じゃないし、完璧じゃない。無能力者の自分にでも分かる事っす」

絹旗「私だって、理解してますよ……心配しなくても事前情報で敵が『対能力者兵器(ジャマー)』使ってるかどうかは調べられます」

香焼「……だけど」

絹旗「人の心配する前に自分の心配してくださいよ。弱者が負ける。これが理でしょ。実際私は超強い」ピンッ!

香焼「あ痛っ」ゴンッ!


少女のモノとは思えない威力のデコピン。


香焼「つぅ……いきなり酷いなぁ」ジトー・・・

絹旗「気ぃ抜いてるからです。ま、私が傍に居れば超SPで雇われてやりますけどね。ボディーガード料は超高価ですけど」フフフ

香焼「そりゃ頼もしいこって」クスクス・・・


可愛い殺し屋なんて渾名よりも、可愛い守護者の方が誉れだろう。
513 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/07/27(水) 03:39:53.91 ID:JwtT1Etc0
それから少女は『いつも』の様に猫達へ餌やりを始めた。
普段は十数匹いるのだが、今日は4,5匹程度。


絹旗「皆、どこ行ったんでしょうか」ムゥ・・・

香焼「……、」

絹旗「保健所に連れて行かれたのかな」シュン・・・

香焼「……きっと、出かけてるだけだよ」


猫達が俯く少女を見上げる。


絹旗「……此処で殺してあげた方が、この子達は」ジー・・・

香焼「っ!」ガシッ・・・

絹旗「ぁ……、」タラー・・・


彼女の不謹慎な発言に、思わず腕を掴んでしまった。


香焼「思っても無い事、言うな」スッ・・・

絹旗「……ごめんなさい」シュン・・・


残酷。彼女にとって殺生はゲーム感覚なのだろうか。


絹旗「別に……そんな事、思ってませんって」

香焼「楽しんでたり、しない?」ボソッ・・・

絹旗「まさか! 基本、仕事以外での殺しなんてしませんよ。殺人狂じゃあるまい、スナック感覚で人は殺めません」クスッ

香焼「……そう」


だが、殺しの善し悪し・是非は否定しない。彼女はそこまで深く考えない。


絹旗「……気になってたんですが、香焼こそ、人殺した事無いんですか?」ジー・・・


いきなり何て事聞くんだ。


香焼「絶対しない」キッパリ・・・

絹旗「超変なの」フーン・・・

香焼「……は?」

絹旗「実際、香焼がどんな仕事してるか知らないけど……戦場に立つんでしょう?」

香焼「それがどうしたのさ」

絹旗「戦場に立つのに、人殺さないんですか? もしかして基本は非戦闘要員だとか?」キョトン・・・


相変わらず可愛らしい顔で恐ろしい事を告げる少女。
質問が、おかしい。もはや狂ってる。
514 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/07/27(水) 04:16:02.52 ID:JwtT1Etc0
絹旗「うーん……こればっかしは香焼の方が超謎ですよ。だって規模の大小、公式非公式は別としても戦場でしょう?」

香焼「違う……そういう問題じゃないよ」

絹旗「え?」

香焼「如何して、そういう質問をするの?」


流石に許せない。


絹旗「純粋に、気になっただけなんですが……その……うん」ムゥ・・・

香焼「じゃあ応えるけど『戦場に血が流れない様にする為』に戦場に居る」

絹旗「……意味が分かりません」ポカーン・・・

香焼「助けを求める人の為にだけ戦うんだ。そこに見返りなんてない」

絹旗「答えになってない様な」ポリポリ・・・

香焼「……兎に角、護る為に戦う。綺麗事かもしれないけど正義とか平和の為。冗談とかじゃなく真面目にそう考えてるっすよ」


救いの手。


絹旗「じゃあ、何の為のナイフなんですか?」チラッ

香焼「誰かを守る為の短刀だよ」

絹旗「じゃあ誰かを守る為に、また別の誰かを殺さなきゃいけない場合は如何するんですか?」

香焼「そ……れは、二人とも死なない手段を考える」

絹旗「……、」ポカーン・・・


呆気に取られた顔。自分でも馬鹿な事を言っているのは分かっている。
だが、そういう教えしか受けていない。


絹旗「香焼……そんなんじゃ死んじゃいますよ。香焼も、助けるべき人も」

香焼「……それでも、殺さない」

絹旗「仲間も全員そうなんですか? それとも香焼だけそんな超馬鹿なんですか?」キョトン・・・

香焼「……そういう仲間もいるし、そうじゃない仲間もいる」


天草式は基本的に非殺傷。だが必要悪の教会としては、別。


絹旗「よく……今まで生きて来れましたね」ジー・・・

香焼「余計なお世話っすよ」フンッ・・・

絹旗「……是非とも香焼の戦場ってのを見てみたいです。不殺(コロサズ)っての、超気になりますね」ヘー・・・


やはり、狂ってる。
515 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/07/27(水) 04:48:05.48 ID:JwtT1Etc0
絹旗「狂ってるのは、同じですよ」

香焼「っ」

絹旗「殺さない。でもきっと殺されない……そんな考えで戦場立ってませんか?」

香焼「まさか」

絹旗「有り体の言葉ですが『やらなきゃやられる』って、知ってます?」

香焼「だからって殺し云々は関係無いよ」

絹旗「……香焼の組織ってどんな教育してから兵士を戦場に送るんですか? 超不思議ですね」


正反対。
人の命を軽く見る少女と、自分の命を軽んじる少年。
戦場での常識を貫いてきた少女と、まるで兵士とは思えない言動をする少年。


絹旗「申し訳無いんですけど、命の重さ云々を香焼に語って欲しくないです。人の事如何こう言えた立場じゃないでしょう?」

香焼「……、」

絹旗「同じく、戦場立たない方が良いですよ……言っても無駄でしょうけど、一応言っておきます。死んでほしくないですから」


まったく同じ事を言われた。だが含む意味は大分異なっている。


絹旗「ホント、疑わしいですよ。でも『裏』の人間だっていうのは本当みたいですからね」ハァ・・・

香焼「自分は確かに弱いっす。でも」

絹旗「はぁ……この話、もう止めましょう。膨らましても良い事ありませんね」

香焼「……ん」コクッ・・・


今の僕では彼女を論破できない。
せめて五和か教皇代理程の腕前があれば、非殺傷を平然とする実力が伴っていれば……彼女に声高らかに反論出来た。

正直言って、悔しい。


絹旗「一つだけ」ボソッ・・・

香焼「……、」

絹旗「懐のナイフ、自分に突き立てる様な真似だけはしないでくださいよ」チラッ

香焼「は?」

絹旗「マーダージョークですよ……分かんなかったら良いんです。気にしないで下さい」ポリポリ・・・


殺人鬼ジョークなんて分かってたまるか。
516 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/07/27(水) 05:21:56.82 ID:JwtT1Etc0
それから暫く、何も言えなかった。
平静を装ってはいるものの内心ネガティブになっているのはバレバレの様で、絹旗は偶に此方を見ては苦笑していた。


絹旗「あー……ごめんって」スッ・・・

香焼「……別に」

絹旗「機嫌直して下さいよ。そんなしかめっ面されたままじゃ超つまんないですよー」バサバサッ


パーカーの水気を掃おうとする少女。


絹旗「見てて下さいよー。私の能力を持ってすれば超雑巾絞りの要領で」グッ!

香焼「ちょ、馬鹿――」

絹旗「ふんっ! ……ぇ」ブチッ!

香焼「――……はぁ」


やりやがった。


絹旗「あ、あははは……えっと、穴は開いてませんよ」タラー・・・

香焼「超伸びてるじゃん」ジトー・・・

絹旗「ろ、ロングパーカーってヤツです。今年はきっと男性モノのロンパーも流行りますって!」アタフタ・・・

香焼「……最愛」ジトー・・・

絹旗「うっ……ごめんなさい」ポリポリ・・・


やっぱ彼女からは一度能力を取り上げた方が良い。


絹旗「それは超勘弁願いたいです」アハハ・・・

香焼「君は一度でいいから普通に学生してみるといいよ。世界変わるから」バサッ・・・

絹旗「ぜ、絶対無理です。超無理。すんごい無理」ガタガタ・・・

香焼「……超人見知り」ハァ・・・


彼女の場合、心を開くまでに時間が掛り過ぎる。困ったモノだ。
いっその事、人間も野良猫の様に見れば良いのではなかろうか。


絹旗「無理ですね。人間はこの子達と違って超醜いですから」ナデナデ・・・


猫が『にゃー』と絹旗に擦り寄る。『純心』故に、残酷か。昔の児童心理学者がそんな事を謳っていた気がする。
集まってくる猫達を拾い上げ、撫で続ける少女。いつの間にか少年の方へも子猫が攀じ登ってきたので、持ち上げて膝の上に置いた。

何をするでもなく、のんびりと、余計な事を考えるのを止め……少年と少女はベンチで猫と戯れた……―――
517 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました [saga]:2011/07/27(水) 05:23:17.91 ID:JwtT1Etc0
はい、此処まで。何か重い話になっちまったなー……こんちくしょー。

そんじゃまた次回。ノシ
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/27(水) 08:47:53.78 ID:ntz/jDODO
今回のは面白いというか興味深かったわ
>>1
519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/27(水) 15:25:03.89 ID:kCTLuhdDO
実際、絹旗は装甲破れなきゃ防御の面ではトップクラスだよね。死ぬ心配は殆どしてないのかな。
攻勢の面では、結局、殺人についてどう考えてるの? 楽しいとか罪悪感じてるとか‥‥イマイチ謎だ。
520 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/07/29(金) 22:24:37.26 ID:97XMW6PS0
こんばんわ。ボチボチ投下。


・絹旗は殺人に対して特別な感情を抱いてないんじゃないかな。知り合い殺すわけじゃないし、生計立てるのにゲーム感覚で稼業してそう。
521 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/07/29(金) 22:51:07.29 ID:97XMW6PS0
 ―――十月八日、PM02:00、学園都市第10学区、共同墓地…(黒妻side)…








一日中家で寝転がっているのも無為である。そう考えブラリとバイクを走らせた。
第七学区から南に数十分向う。


黒妻「……誰も居ねぇな」ザッ・・・


閑散とした共同墓地。その中にある『K』区画へ足を進める。


黒妻「おう」カツカツ・・・


声を掛ける。だが勿論、返事は無い。死人に口は無い。


黒妻「線香代わりに煙草で良いか」スッ・・・


甚だ罰あたり。だが墓参りの正しいルールなんか学んではいない。
そもそも宗教とは無縁のこの街に、墓参りの流儀なんて有りはしないのだ。

神だろうが仏だろうが科学だろうが、信じてなければタダの単語に過ぎない。


黒妻「人の名前使って勝手な事しやがって、って怒るか?」カチッ・・・ジジジ・・・


紫煙を点し、線香(煙草)を備える。


黒妻「戦争だかデモだか知らねぇが……嫌な世の中だな。如何思う?」カチッ・・・フゥ・・・


自分の分の煙草に火を点け、上の空気味に呟く。
答えが無いと分かっていても語りかけてしまうのは、取り残されてしまった人間だからなのだろうか。

本来、自分は『彼』と同じく死んだ筈の人間。
こんな事を言っては仲間や後輩、彼女に怒られるだろうが……幸か不幸か生き返らされてしまった。
よくよく振り返ると、自分の時は2年前で止まっているのかもしれない。


黒妻「……真相を墓穴まで持っていきやがって」ボソッ・・・


詳細は分からないが『彼』は無能力者(レベル0)の為に立ち上がり、命を落としたという。
心許無い能力者の横暴。それを知りつつ救いを寄越さない理事会。それが許せないとはいえ……無謀である。
だが『彼の行動』は波紋を起した。

少なくともあの『第1位』に想いを託したとみえる。
522 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/07/29(金) 23:10:00.54 ID:97XMW6PS0
第1位だけではない。加えて『志』を引き継いだ後に残された者……仲間達がいる。
自分もまた、その一人。


黒妻「ところで、耳にしたんだが……クーデターだとよ」ハッ・・・


先日耳にした不吉な言葉。


黒妻「オマエのはクーデターってよりは『発破』だったのかもな。だが今から起きそうなのは……オレにゃ分からん」フゥ・・・


政府(理事)への不満は同じだが、決起するのは『暗部』らしい。
自分達の地位の為という点では似ているかもしれないが、多分労働抗議の様なモノだと思われる。ぶっちゃけ下らない。
そんな低レベルな主張の為に犠牲になる人間がいるかと思うと、呆れてモノも言えない。


黒妻「ま、起こっても無ぇ事だから本意は知らねぇけどな」ハハハ・・・


何故、全ての人間が仲良く出来ないのか……流石に綺麗事か。


黒妻「オレは如何すればいいかなぁ」ポトッ・・・ケシケシ・・・


無論、この期に便乗してテロ紛いな事をする気は無いし、かといって喧嘩の仲裁に入るつもりも更々無い。
自分の様な半端者が介入して良い様な問題では無いのだ。
力有る者らが自分の主義主張を訴える為に暴れ回る。そしてきっと、皆、勝手に死んでいく。

だが、無視出来る話でもない。


黒妻「……とりあえず、やれるだけの事はするさ」ジー・・・


巻き込まれる無関係な人間、そして自分の大切な人達……第1位ほど役には立てないが、出来るだけの事はするつもりだ。

無能力者、力無き者、争いを好まぬ者達を守りたい。この街が好きだから、戦える。
学園都市は御偉いさん方の理想で成り立つのではない。民(学生)の日常(当たり前)から出来上がるのだ。


黒妻「ん……あばよ、ダチ公」クルッ・・・


落ち着いたらまた足を運ぶ。今度は酒でも持ってこよう……―――
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/29(金) 23:23:57.33 ID:ADsaGNRDO
> あばよ、ダチ公

兄貴、それフラグじゃ‥‥
524 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/07/29(金) 23:26:14.41 ID:97XMW6PS0
 ―――十月八日、PM03:30、学園都市第7学区、風紀委員第177支部・・・・・








殆どの学生が授業を終え放課後を迎えたであろう時間帯、常盤台中学一年の白井黒子も例外ではなかった。
尤も、名門常盤台となれば7限目だったり課外授業だったりと並以上の授業スタイルなのだが自分は特例。
とりあえず風紀委員を優先して良いという事になっている。

最近パトロール要請が増えているので尚の事、治安活動を優先せよとの事だ。


白井「ほーんと、戦争ムードだからって世紀末気分のお馬鹿さん達にはつける薬が無いですわね」トボトボ・・・


軽犯罪から強盗、暴行、強姦、過激な学生運動、暴走行為などなど……此処のところ逮捕・補導件数が軒並み上がっている。
その理由の一つとして戦争ムードというのもあるが、別の一つに『警備員』の減少という点があげられる。
何でも海外の都市関係者を守る為だとか何とか。


白井「ぶっちゃけ人手不足ですの。人員増加は不可能ですかねぇ」ハァ・・・


独り言を呟きながら支部までの道のりをヨレヨレと進む。傍から見ればちょっとした不思議ちゃんだろう。


白井「だからといって無闇矢鱈に研修生(アマチュア)なんかを前線に出す訳にはいきませんし」ボー・・・


いくら『数』が欲しいとはいっても、警察組織として『質』は落とせない。


白井「あと、何でしたっけ……『自警』? あれも可笑しな話ですの」ポリポリ・・・


一部の武装無能力集団(スキルアウト)や能力者達が『自警団』、『自警行為』を称して治安維持活動を行っている。
政府(理事会)からの嘱託ならまだしも、自主的にそんな事をしてしまえば『暴力団』、『喧嘩屋』と変わりなかろう。
警察組織で無いのにも拘らず能力等で犯罪を捩じ伏せれば、それもまた『犯罪』である。

因みに……自分が慕う先輩もそうなりかねないので恐ろしいところだ。


白井「お姉さまも然り婚后光子も然り、その他の『ヒーロー気取り』も然りですが、理事会は『公認英雄』なんて設けていませんの」ッタク・・・


英雄を監視者と呼ぶのであれば、その監視者を監視するのは誰がする? という問題も生じる。有名な言葉だ。
英雄行為をしたいのであれば御上(理事)に従け。これが『正義』の鉄則である。


白井「……なーんて、別に哲学者を気取りたい訳じゃありませんものねー」


実際は猫の手でも借りたい。
品性倫理道徳が立派でなければならないなんて事は望まないから、『筋』が通ってる人間を手伝いに回して欲しい。
525 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/07/29(金) 23:42:52.17 ID:97XMW6PS0
例えば『超電磁砲(お姉さま)』や『幻想殺し(あの殿方)』の様な『筋』の通った人間を……
さておき数分後、支部に到着。昼勤風紀委員との引き継ぎを終え、自分一人が支部に待機。


白井「初春も先輩も、まだ来れない様ですのね」カチカチッ・・・


4時前。
風紀委員本部や警備員から何か連絡が入っていないか、支部長(固法)のPCチェックする事にする。


白井「1,2,3,4・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・数えるの止ーめた」グデェ・・・


訓示の様なモノから過去の出動要請分まで。全てに目を通していたらキリがない。
とりあえず重要そうなモノと気になる情報だけピックアップする。

祭日の風紀指導について、理事の講演会の護衛について、戦争ムードに乗じたテロ行為の警戒……連日似たメールばかり。


白井「結局、普段と変わらない休日って事。まぁ私達風紀委員はそれなりに忙しいけど、ね」ハァ・・・


グッタリと背凭れに身を預け仰け反る。


白井「……あ」ヤベッ・・・

固法「……ったく」ヤレヤレ・・・


いつの間にか小姑、もとい先輩が来ていた。


白井「えっと……お早いですのね」オホホホ・・・

固法「人の席で何してるのかしら? しかもPC勝手に開いて」ジトー・・・

白井「あ、あの、ほら! 風紀委員の支部長様がいかがわしいデータを保有していないかチェックを!」

固法「もし本気でそんな事考えてるなら寮監さんに引き渡すわ」キラン・・・

白井「すんませんですのおおおおぉ!!」ガダッ!!


即座に空間移動(テレポート)で天井まで移動、落下しながらスタイリッシュ土下座。
この間わずか2,4秒……プライドは重力と共に堕ちるモノである。
526 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/07/30(土) 00:04:11.83 ID:3moh/jgC0
あまりの潔さに呆れ半分哀れみ半分の思いで固法は自分の椅子に座った。


固法「ったく……で? 勝手に何してたの?」ハァ・・・

白井「その、暇だったもので、つい『上』からの報告メールを……さーせんですの」ペコッ

固法「ならパトロールでもしてきなさい。最近じゃ一時間に3件ペースで逮捕・補導者出てるんだから」

白井「ぐぅ……了解」スッ・・・


ユラリと立ち上がり、腕章を持って玄関へ向かう。
それでは散歩がてらにパトロールでも、と『鉄針』を持ち、支部を出ようとした時だった。


固法「とりあえず、初春さんが来てからもうちょっと『深く』調べましょう」チラッ・・・

白井「……、」ピタッ・・・


何やら不穏な事を呟く先輩。


白井「……先輩も、大概危ない橋渡るの好きですわね。『上』に怒られるのは勘弁ですのよ」クスッ・・・

固法「大丈夫よ。初春さんの『腕』は信頼してるし、もしもがあったら私の責任だから」フフッ・・・

白井「逆探される心配は無いですか? あらら。頼もしくなったものですわね、初春(ルーキー)も」ヤレヤレ・・・


堅実な人生も素晴らしいが、時にはスリルも必要との事。
悪い男の味でも覚えた女みたいなセリフを……悪い男?


白井「……先輩。先輩の先輩さん、今日は仕事で?」チラッ

固法「え? 何で?」

白井「なんとなく」

固法「……家でゴロゴロしてるんじゃないかな」ハァ・・・


やっぱり悪い男に掴まってたか。


固法「うっさい。さっさと行け!」ダー!


おー、怖い怖い。
527 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/07/30(土) 01:04:42.14 ID:3moh/jgC0
 ―――十月八日、PM04:00、学園都市第7学区、とある公園・・・・・







犯罪率が上昇しているといっても、時と場所ってものがある。此処ら辺は第7学区の中でも比較的平和な区域だ。
理由としては怒らせるとオッカナイ人間がゴロゴロ居るからである……超能力者とか警備員・風紀委員のエースとか。
因みに風紀委員のエースとは白井(自分)の事ではなく、先進教育局のエリート風紀委員の事である。
悪童達の一部からは白井黒子こそ『風紀委員の白黒(モノクロ)悪魔』と呼ばれ畏怖の権化とされているが、本人は知らんぷり。

さておき、今現在は公園に到着。平日の公園だ。人は殆ど居ない。
丁度良い。初春が支部に着くまでジュースでも飲みながら時間を潰そう。


白井「……ん?」チラッ・・・


自販機近くのベンチ。


白井「……リア充か」ケッ!


自分と同い年くらいのカップルが肩を寄せ合っている。
こんな渡世だからだろうか。何故か無性に腹が立つ。


白井「あーあー……やってらんないですの」トボトボ・・・


自分もお姉さまと、あんな事やこんな事をしたいモノだ。
兎角、イチャついてる輩の顔なんぞ見たくも無いので、その場を離れる事にする。

腹いせに銀行強盗や誘拐犯の一人や二人しょっ引いて帰ろう。そうしよう。



*   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   



一方……そのベンチはというと。


ぬこs『なー』クルクル・・・

香焼「すぅ……くぅ……」コクン・・・

絹旗「ん……ふぁぅ……」コクコクッ・・・


何故か少年少女が疲れて寝ていた。
528 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/07/30(土) 01:39:44.37 ID:3moh/jgC0
 ―――十月八日、PM04:30、学園都市第7学区、とある病院・とある教授(冥土帰し)の部屋……







濃いめのコーヒーを啜りつつ、とある患者のカルテを見る。
名は『上条当麻』。もはや常連となりつつある患者だ。

彼の『諸々』については深く関与しない様にはしているが、やはり如何したものかと頭を悩まされる限りである。


土御門「まぁそう言わんで欲しいにゃ」ポリポリ・・・

冥土帰し「言わない訳にはいかないだろう。僕は医者だ」ハァ・・・

土御門「恰好良く言えば大義の為、だぜぃ」ニャハハ


そんなモノ、犬にでも喰わせておけ……とは言えない。
目の前に居る『道化師』もまた、犠牲者被害者、患者である。


土御門「本来はカミやんの事、ずぅっと此処(病院)に置いておきたいんだけどにゃぁ」ポリポリ・・・

冥土帰し「彼は『火種』なのだろう? 他の患者まで巻き沿いには出来ない」コトッ・・・

土御門「残酷ですたい」クスクス・・・

冥土帰し「それに、彼自身が此処には居たくない。学校へ行きたいと言うのだから仕方ないだろう」チラッ・・・

土御門「ん……まぁカミやんは『普通の高校生』であるべきなんだよ」クイッ・・・


それは君もだ。


土御門「にゃはは。俺は良いの良いの」ケラケラ!

冥土帰し「……既に『博士号』を持ってるからという訳ではない。『年相応』という意味でだ」

土御門「……、」


加え、誰よりも傷付いて運ばれてくる機会が多い道化師。
もしかしたら『英雄』達よりも傷付くペースが早いのではなかろうか。


土御門「甘ぇ事言ってられないんだ。分かってくれ。今は世界中大変なんだよ……知ってんだろ?」

冥土帰し「ローマだろうがロンドンだろうが学園都市だろうが……結局、最後に力を振うのは僕達(医者)だ。知ってるだろ?」テクテク・・・

土御門「……、」

冥土帰し「自分が傷付くても、涙を流す人間が居ないから……とは考えてないだろうね?」コポッ・・・

土御門「……そんなメルヘン染みた思考は持ち合わせてないな」

冥土帰し「少なくとも、彼は涙を流してくれるよ。それから……親族も。ほら、カップが空いている」コトッ・・・


彼の分のコーヒーを足す。
529 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/07/30(土) 02:03:29.43 ID:3moh/jgC0
若者たちの自由の街。
若者たちが率先して駒扱いされる街。
若者たちがモルモットとして被検体になる街。

海外から見ればそういうイメージを持たれているのが、この学園都市だ。
彼はその最たる例かもしれない。


冥土帰し「土御門くん……君の『親父さん』だって、君が死ねば泣くよ」ボソッ・・・

土御門「……、」

冥土帰し「お家の為、義妹の為に生きるのは素晴らしい事かもしれない。だからといって自己犠牲が激しいな」

土御門「……説教は勘弁してほしいぜぃ」

冥土帰し「君だけじゃない。君の周りの若者は基本的にそうだろう? マグヌス然り、神裂然り、『彼ら』然り」


否定できない。


冥土帰し「無論、止める事は出来ない。それが君(ら)が掲げる『必要悪』なら」

土御門「へぇ……アンタは必要悪について如何考えてるんだ?」

冥土帰し「別に僕は潔癖症じゃない。全てが正義であれとは言わない」


だが、『死者』を出す行為(暗部)には絶対に賛同できない。それは僕ら(医者)へのアンチテーゼである。


冥土帰し「平和の為に犠牲は必要。だけどね、土御門……僕は医者なんだ。その質問をされるのは苦痛だよ」

土御門「……ああ、すまない」コクン・・・

冥土帰し「生きている限りは救おう。だから僕は、死ぬな、としか言えない」


これ以上の生死・正義云々については不毛の討論だ。


土御門「とりあえず完治するまではカミやんを頼む」

冥土帰し「ああ。僕の患者である内は『使徒』が来ても手は出させないよ」

土御門「はははは……んじゃ、またにゃ」テクテク・・・

冥土帰し「……土御門」ボソッ

土御門「ん」

冥土帰し「分かってると思うが、能力を過信するな……今更言う事でも無いが、君の能力は完璧では無い。無茶をするな」

土御門「にゃはは。あいよー」ガチャッ・・・


肉体再生。とある国の超人計画から引っ張ってきた能力開発カリキュラム。
彼に無理矢理詰め込む羽目になったのは、自分の責任でもある。


冥土帰し「中心は『英雄』達だけじゃない。君みたいな狂言回しだって、中心なんだ」ボー・・・


それはそれは残酷な話。
530 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/07/30(土) 02:38:30.07 ID:3moh/jgC0
土御門が出て行った直後、電話が入る。
急患かと思いきや、案の定、地下に居座らせている暇人からの内通だった。


冥土帰し「僕まだ仕事中なんだけど」ハァ・・・

テレス『用件直ぐ終わるわよ』ケッ


特殊精神障害扱いの患者――テレスティーナ・木原・ライフライン。
犯罪者を匿う為の口実というモノもいるが、何と言われようが『上』が患者と看做したのだ。患者は患者である。


冥土帰し「で?」

テレス『垣根は如何した』

冥土帰し「……、」

テレス『此処最近見ないんだけど』

冥土帰し「……後で、下に行く。その時詳しく話そう」


彼女と同じく特殊な患者扱い……だった、少年。


テレス『……さっさと来い』ブツッ・・・


そそくさと電話を切るテレスティーナ。多分、彼女も分かっている筈。
冥土帰しは内線でナースセンターへ一報入れてから、重い腰を上げ、地下へ向かった。

途中で『妹達』と自分に会いに来た木山春生と鉢合わせる。


木山「先生、どうも。先日お借りした資料を帰しに……ん、如何しました?」

冥土帰し「じゃじゃ馬姫がお呼びでね。時代劇宛ら『爺は何処じゃ!』って感じに」ハァ・・・

御坂妹「相変わらず自分勝手な女ですね、とミサカはあの魔女を酷評します」ムンッ・・・

木山「い、妹くん」マァマァ・・・

冥土帰し「……とりあえず研究室で待っていてくれ。10032号、彼女にコーヒーでも出してあげて」テクテク・・・

木山・御坂妹「「……、」」ジー・・・


元々大きくない彼の背中が、更に丸くなって見えた。
531 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/07/30(土) 03:11:48.21 ID:3moh/jgC0
 ―――十月八日、PM04:45、学園都市第7学区、とある病院地下、隔離病棟・・・・・・







地下の駄々っ広い空間。檻も監視カメラも無いこの部屋に、彼女は『収容』されている。
そのある一角に彼女が座って待っていた。


冥土帰し「……待たせたね」テクテク・・・

テレス「御託は良いから本題に」

冥土帰し「そうかい」スッ・・・


紫煙を吹かそうとした彼女を目で制止し、口を開く。


冥土帰し「その前に、何故彼の事なんて聞くんだい?」

テレス「別に拘ってる訳じゃないけど、居なきゃ居ないで静かだから」

冥土帰し「……それだけ?」

テレス「何が言いたい?」ギロッ・・・

冥土帰し「何でも無いよ」クスッ・・・


舌打ちするテレスティーナ。早く本題に入れと机に足をブン投げた。
実にはしたない。


冥土帰し「彼の寝室、行ったかい?」

テレス「行く訳無いじゃない」ケッ

冥土帰し「行ってみるといい」

テレス「……は?」

冥土帰し「まずは見てきなさい。話はそれからだ……入った事は無くても場所は知っているんだろ? すぐそこの扉だ」

テレス「……変なモン置いてたら打ん殴ってやるわ」スッ・・・


面倒臭そうに立ち上がり、彼―――垣根帝督の部屋に向かうテレスティーナ。
冥土帰しは、ただ悲しそうに、彼女の背中を見詰める。
532 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/07/30(土) 03:55:43.66 ID:3moh/jgC0
テレスティーナは自ら一度も開けた事のない垣根の部屋の戸に手を掛ける。
『カキネ様の部屋♪』と書いてある時点で気色悪いと毛嫌いしていたのだが、今回ばかしは仕方あるまい。

鍵も掛けずやけに軽い扉。中は、やはりというべきか……暗かった。


テレス「居る訳無ぇか……ん?」ジー・・・


目を凝らす。


テレス「……爺さーん。電気点けるわよー」

冥土帰し「御勝手に」


部屋の電気スイッチを探し、ボタンを押す。そこには……


テレス「っ」

冥土帰し「……別に見てもいいよ」カツカツ・・・

テレス「書類……何、これ」

冥土帰し「見れば分かる」


書類の山。企画書というか、計画書というか……恐ろしい程の枚数の紙が部屋一面に散らばっていた。
とりあえずテーブル上の目立つ大文字表紙の紙を手に取る。


テレス「な……アイツ、馬鹿じゃね」

冥土帰し「僕も、そう思う」

テレス「死にに行ったようなもんじゃねぇか……、」


デカデカと目に飛び込んできた文字……『反攻作戦』、『第一候補(メインプラン)』、『交渉権』。
つまりは、理事会に対してのクーデター。


テレス「爺さん……止めなかったのか」ギロッ・・・

冥土帰し「止めても無駄だろう」

テレス「……アンタなら如何とでも仕様があっただろ」グッ・・・

冥土帰し「君の言葉を借りるけどね……『必然』だよ。君だって分かってるだろ?」ボー・・・

テレス「っ」


変えられない未来(決定事項)。


冥土帰し「男のプライドだって……何ともね、残念ながら……そういうの見せられると男として止め辛いんだよ」ハァ・・・

テレス「下んねぇ」ギリッ・・・

冥土帰し「彼然り、土御門然り、他の男子一同然り……どうして若いくせに」ボー・・・

テレス「……意味分かんね」グゥ・・・

冥土帰し「テレスティーナ……ベットの上を」チラッ・・・


ベットの上……無駄に丁寧に畳まれた布団の横に、手紙と、マーブルチョコレートの山。
533 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/07/30(土) 04:37:19.95 ID:3moh/jgC0
唖然。


冥土帰し「因みに、僕には未元物質(超合金)新ゲコ太ーロボ・エンペラーのプラモを置いていったよ」ハァ・・・

テレス「」

冥土帰し「……とりあえず手紙読んだら?」


茫然。


テレス「……あ」パラッ・・・


愕然。


冥土帰し「……先に戻る」クルッ・・・


踵を翻す冥土帰し。テレスティーナは放心状態のまま手紙を開いた。


『多くは書けないんで……色々楽しかった。さいなら!』


それだけ。


テレス「……そう」スッ・・・


手紙を置く。幽鬼の様に元居た場所へ戻る。


冥土帰し「あっさりだね」

テレス「アイツ……何処行ったの?」

冥土帰し「止める気かい?」

テレス「……、」

冥土帰し「分かってるだろ。彼は統括理事長に喧嘩を売りに行く……多分、アレイスターもこうなる事は先読みしてる筈だ」


彼は、死ぬのか。


冥土帰し「さぁ……死なない限りは、助けてやるつもりだよ」

テレス「爺さん、アンタ残酷ね」

冥土帰し「医者ってのはね。そいつが『患者』になって、初めて、そいつと向き合えるんだよ」

テレス「……、」


暫し無言。
534 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/07/30(土) 04:52:24.84 ID:3moh/jgC0
医者は、淡々と告げた。


冥土帰し「彼の計画を見させてもらった。多分、明日は忙しくなるだろう」ボソッ・・・

テレス「……理事会に密告しないの」

冥土帰し「無粋だよ」

テレス「そうすれば死傷者が減るわよ」

冥土帰し「無駄だよ……アレイスターは、こういう狂乱騒ぎが好きなんだ。敢えて実行させるだろう。成功失敗は別としてね」


この街を作った意味……『計画』の為に。


冥土帰し「君は如何する」チラッ・・・

テレス「アンタは?」

冥土帰し「言っただろう。『忙しくなる』って……で、君は?」


医者として動く他無い。


テレス「私は……どうすればいい」グッ・・・


如何するべきか、分からない。


冥土帰し「君は動くべきではないだろうね。立場的にも、感情的にも」

テレス「……、」

冥土帰し「予想だが、君が垣根くんに肩入れ又は制止に入った場合、アレイスターが君を消しにかかるよ」

テレス「……じゃあ、何をすれば良い」

冥土帰し「何もしない、がベスト。だけど、ね」チラッ・・・


整備済みの彼女専用駆動鎧を見る。


冥土帰し「はぁ……仕事をやろう」テクテク・・・

テレス「え」

冥土帰し「放っておいたら、君、飛び出して行きかねないでしょ? 君が出れば確実に死傷者が増えるだけだ」チラッ・・・

テレス「……何を」

冥土帰し「とりあえず、あの駆動鎧を万全の状態にしておいてくれ。夜にでも指示を出す」ウィーン・・・


禿げた頭を掻きながら部屋から出ていく冥土帰し。
テレスティーナは、無言で垣根の部屋へ。手紙とマーブルチョコの束を拾い上げ、駆動鎧の方へ向かった……―――
535 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました [saga]:2011/07/30(土) 05:29:06.68 ID:3moh/jgC0
うい。今回はこれで終わりです。多分、次回で前日話終わるかなぁ・・・


因みに、ちょっと尺余り過ぎたんでリクエスト募集します。できれば香焼モノ。
時系列とか設定とか無視で結構ですので、何か希望があれば書いて下さい!

とりあえず例の如く質問意見感想罵倒リクエスト等々、くださいな! では!ノシ”
536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/30(土) 11:44:53.50 ID:uE1kpcbDO
>>1
カッキーってなんで地下病棟にいるんだっけ?
セロリと戦ったあと?
537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/30(土) 13:07:30.07 ID:W8J8UyfDO
乙!

>>536
そこら辺の時空のズレは、大人の事情と次元の魔女のせいじゃないかなぁ
リクエストの件だけど、候補上げてアンケート取ってくれると嬉しいなー
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/31(日) 07:57:33.30 ID:S6ez6TTU0
>>1
そりゃやっぱり大戦後のあまくさっ!っぽいのを…!
539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/07/31(日) 11:41:31.50 ID:IlQZwGYAO
リクエストか…

まだギリギリ7月、8月でも旧でいいやってことで、「イギリス勢がひょんなことから七夕を知って、天草組から詳しく(情報の正誤はどうかな笑)きいて、彦星たる香焼を取り合う」とか
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/31(日) 12:07:51.54 ID:B7ktA91G0
あえての美琴afterで
>>538
あまくさ!2があるだろ
541 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/07/31(日) 22:30:30.51 ID:9sZwdw/b0
こんばんは。ボチボチ投下。


・駒場が死んでから御都合時空があったのでご了承を。とりあえず現在はクーデター一日前って事で。
・あと「あまくさっ!!」的なものはする予定なので、大きい括りは別で。


とりあえずどうぞ!
542 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/07/31(日) 22:47:17.32 ID:9sZwdw/b0
 ―――十月八日、PM04:30、学園都市第7学区、とある廃ビル・・・(黒妻side)・・・







やる事も無いので『とりあえず』半蔵の下へ行く。
ヤツの所に居れば退屈はしない。あわよくば稼ぎ話なんかも飛び込んでくるので儲けものだ。


半蔵「んな都合良い話、こっちが欲しいくらいですっての」ハァ・・・


と大量のPCディスプレイと睨めっこしてる少年がぼやく。


黒妻「忙しいのか?」

半蔵「見りゃ分かるでしょうに」チラッ

黒妻「何か手伝う?」

半蔵「じゃあ部屋掃除して下さ……冗談です。グー作らないで」タラー・・・


偉くなったもんだ。


黒妻「んで、結局のところ何してんだ?」

半蔵「……色々」カタカタ・・・

黒妻「は?」


随分アバウトな返事だ。というか帰ってくれオーラがプンプンする。


郭「いわば『縄張り(シマ)』の管理ですよ、兄貴さん……はい、コーヒー」コトッ

黒妻「さんきゅ。縄張り、ねぇ」フーン・・・

半蔵「……んな大それた事じゃないですけど、ならず者が顔大きくして歩いて貰っても困るんでね」ハァ・・・

郭「半蔵様、それを縄張り管理っていうんですよ」


学園都市最大級の武装無能力集団(スキルアウト)ともなれば運営が忙しいって事か。


郭「本来、警備員がしっかりしてくれていれば問題無いんですけど、今の渡世ですからねぇ」ヤダヤダ・・・

半蔵「ったく、戦争だか何だか知らねぇけどピーピー小賢しい事しやがって……こちとら良い迷惑ですよ」ポリポリ・・・


だが、責任感と要領はある。そんなキレ者の半蔵だからこそ、黄泉川さんも自警を黙認しているのだろう。
543 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/07/31(日) 23:11:47.43 ID:9sZwdw/b0
というか、こういう時こそ【駒場(仮面)】が活動すべきではなかろうか。
少なくとも駒場の名前を知っている奴らに対し、抑止効果にはなるだろう。


半蔵「無駄ですね。最近じゃ余所者も平和ボケして暴れ甲斐の有る第7学区に流れ込んできてる」

黒妻「だがよぉ」ムゥ・・・

半蔵「本当にヤバい時はお願いしますが、兄貴はなるべく小さな事では動かないで下さい」


腑に落ちない。


郭「英雄(ヒーロー)の数に対して悪役(ヴィラン)の数が異常に多いんです。此方も無能力とはいえ集団(数)で攻めるしかないでしょう」

黒妻「……そうかい」カチッ・・・ジジジ・・・

郭「幸い、縄張り内ではコソ泥や車上荒らしが殆どですし。我々でも対応できます」

黒妻「だがデカい事件とかもさぁ」

半蔵「そっちに関しては問題ありません。公になれば警備員や風紀委員動きますし、裏でもF(削板)が出しゃばってくれるので」


超能力者か。


半蔵「能力者にも人格者はいますよ。固法さんの後輩(御坂美琴)だって抑止効果として良い具合に暴れ回ってくれますし」

郭「裏側では第1位が顔を利かせてますからね。流石この街の二大看板」クスッ

黒妻「ならいいが……『狂人』は?」

半蔵「今のところは無し。まぁ皆ピリピリしてる中でそんなデカい事する度胸有るヤツもいませんよ」

郭「雲川(頭脳)の方からも連絡ありませんから、大丈夫でしょう。兄貴さんは然るべき時の為に英気を養っといて下さいな」


然るべき時。それはきっと近いと思う。


郭「ん……失礼、電話です」テクテク・・・

半蔵「あいよ。A班だったら出店の準備に戻って来い。B班ならモノレールに沿って北上しろって言っといて」

郭「了解です」ガチャッ・・・

黒妻「……慣れたもんだな」クスッ・・・

半蔵「元々、駒場の兄貴も浜面のヤツもこういう事務的な事ぁ俺任せにしてましたからね」ハハハ・・・

黒妻「だがトップ&参謀兼任で良くやってるよ」

半蔵「本来、俺はカリスマなんてもんコレっぽっちも無いんですがねぇ……早く浜面に戻って来て貰いたいですよ」


先天性のカリスマ程先読み(周り)が見えなくても、後天性の方が内部(下から上まで)が良く見える。
人は付いていきやすいだろう。
544 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/07/31(日) 23:45:17.75 ID:9sZwdw/b0
ところで、浜面についてだが。


半蔵「ああ。アイツが戻ってくる気あるなら俺らはいつでも歓迎しますよ」コクッ

黒妻「でも、大丈夫なのか?」


普通に考えればアイツは組から逃げた様にも見える。


半蔵「んー……別に。下請けでアイツが駆り出されてるって考えれば、そうは思いませんよ」

黒妻「でも数日間とはいえ一国のトップだぞ」

半蔵「下請け勧誘してくる『上』の連中にすりゃ、頭も尻も同じスキルアウトですよ。階級なんか関係無い」

黒妻「そりゃそうだがよ……何つーかさぁ」

半蔵「まぁ言いたい事は分かりますが……駒場の兄貴の『遺言』もありますから」ハハハ・・・


遺言?


半蔵「あの人、死ぬ前に『もしもがあったら、次のリーダーは浜面だ』って言ってました」

黒妻「もしもって……そうか」フム・・・

半蔵「古参連中は色々言ってましたけど、あの人キチンと説得しましたし。何より今は俺が頭なんで、文句言わせませんよ」ニヤリ・・・

黒妻「……アイツも、良いダチ持ったな」

半蔵「ホーント、俺ってば何て友達想いなんでしょうねぇ。あ、でも浜面のヤツには今の話内緒にしてくださいよ。恥ずいんで」ハハハ!


流石駒場。良い後輩達を持った。オレは……色々失敗しちまったからな。


半蔵「まぁ……黒妻兄貴の場合は突然でしたからね。駒場の兄貴は『決死』でしたから後の準備も万端で……はい」

黒妻「蛇谷達はまだ塀の中だからな……、」

半蔵「……あんまり自分を責めんでくださいよ。跡目問題なんてのは時と場合にもよりますから」


オレは、何も残せなかった。結局は後ろを振り返らず自分勝手にアクセル回して、後続諸共大破した。


半蔵「んな事無いですって。兄貴の後輩達も塀から出てくれば色々改心してる筈ですから」ポリポリ・・・

黒妻「……そうだな」フム・・・


とりあえず、今は目の前の事から片付けよう。


半蔵「ま、今んところ兄貴が出張る様な異常は無いんで安心して下さい」スッ・・・

黒妻「おう。ところで……所長さんからフルセット届いたのか?」カチッ・・・

半蔵「あ、ども……はい。今やってる作業一段落着いたら見せますよ」ジジジ・・・フゥ・・・


紫煙を点し、資料を自分に回した。
545 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/01(月) 00:04:15.76 ID:CsjNTYVl0
軽量化、運動性を主にした革ジャン。それから新素材の発条包帯(ハードテーピング)。
詳細資料に目を通そうとした時……電話が鳴った。


黒妻「(雲川か)……ちょっと電話」チラッ・・・

半蔵「りょーかいです」カタカタ・・・


多分、半蔵に聞かせられない話とやらだ。部屋から出て非常階段の扉を開け、電話に出る。


黒妻「あいよ」Pi!

雲川『今何処』

黒妻「開口一番何様だオマエ」ハァ・・・

雲川『良いから言え』

黒妻「……半蔵んとこ」

雲川『馬鹿な事、言ってないだろうな?』

黒妻「言う訳無ぇだろ……で?」

雲川『例の件。情報が入ったけど』


クーデター。


黒妻「ガセじゃねぇだろうな」

雲川『態々嘘吐く為に電話するくらいなら図書館で昼寝してるけど』

黒妻「……何が分かった」

雲川『色々。もし学校来てたんなら直接言おうと思ったけど、仕方ないわね』

黒妻「暇だから行ってもいいぞ」

雲川『結構。精々休んでおきなさい。あ、今日絶対彼女とセックスしちゃダメだけど』サラッ


……。


黒妻「……あのよぉ」ハァ・・・

雲川『何?』

黒妻「いや、オマエはそういう女だよな」ヤレヤレ・・・

雲川『ふーん……セックスするなよー。彼女とラブプロレスするなよー。お触りすら禁止だぞー。リア充爆発しろー』フフフ・・・

黒妻「うっせぇ!」ガアアァ!!


女性が何度もアホな事言うな、ボケナス。
546 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/01(月) 01:24:24.89 ID:CsjNTYVl0
さておき、要は『明日』って事だな。


雲川『ええ』

黒妻「ソースは?」

雲川『暗部の連絡会がゴダゴダしてきたけど。やはり2,3つ、言う事を聞かない班が出てきてる』

黒妻「それだけか」

雲川『あと、やたら外部組織が動いてるらしいな。協力を仰いだか、便乗するかだと思うけど』


何でも理事会の連絡網を聞き渡ったらしい。流石というべきか。


雲川『お褒めの言葉は嬉しいけど。ただねぇ……厄介なんだ。ヤツら部外者への被害は計算に入れてないと見える』

黒妻「は?」

雲川『よく言うだろ。大義の下には犠牲が必要。夢関係者も巻き込む可能性がある』

黒妻「……、」

雲川『主力治安部隊が抜けている今がチャンスと踏んだのだろう。まったく、困ったものだ』


そんな楽観的で良いのか。


雲川『楽観視なんかしてないけど。馬鹿じゃない?』

黒妻「喧しい。兎に角、オレは明日に備えておけば良いんだな」

雲川『ええ……あ、先に重要事項を幾つか伝えておくけど』

黒妻「ん」

雲川『優先度の話だ』


まずは一般人の保護だろう。


雲川『んな事ぁ既存の警備員や風紀委員、服部んとこのスキルアウトにでも任せときなさい』

黒妻「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ?!」

雲川『あのねぇ、貴方一人で大多数は守れないけど。そのくらい分かるだろ』

黒妻「そりゃそうだけど……でもよ」

雲川『口答えするな。忘れたの? 貴方、公に顔出せないのよ?』


確かにそうだが……弱者を守るのが本来の目的の筈。
547 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/01(月) 01:54:20.92 ID:anX9DFfg0
だが、雲川の言う事も正しい。【駒場利徳】は表に出せない。


雲川『【仮面】は警察組織から目ぇ付けられてるんだぞ。決して公認されている訳じゃないんだ』

黒妻「……うい」

雲川『暗部とも別枠で動いている。後見人は貝継と神氏、私らだけ。融通利かないだろう』

黒妻「分かったよ……じゃあ話聞かせろ」

雲川『大人しく聞きなさい。で、貴方にして貰うのは今のところ3つ、だな』

黒妻「ん」

雲川『一つ目は親船最中。彼女の監視』


護衛じゃなくて?


雲川『必要無いけど。アレは所謂、偶像だ。新聞やニュース見てれば知ってるだろ』


親船最中。子供思いの真面目な理事だと記憶している。
この街では珍しい『左寄り』な人間だが、それ故に弱者層からの支持も厚い。


雲川『兎角、ヤツらが本気ならアレが犠牲の口火になる筈だけど』

黒妻「ちょ、ちょっと待て。分かる様に話せ」

雲川『はぁ……明日、独立記念日の式典で講演会やるだろう。アレが絶好の的だ』

黒妻「的……クーデター成功の暁には尤も邪魔な存在だからか。盛大な開幕アピールとして、とか?」

雲川『ま、次第点だけど……政治屋共の汚い駆け引きだ。今の貴方が知る必要は無い』


とりあえず指示は分かった。だが内容は容認できない。


黒妻「殺されるのを見す見す見逃せってのは、無理な相談だな」

雲川『チッ。面倒なヤツ……悪いんだけど、如何暗殺するとかも掴んで無い。だから手の打ちようがないけど』

黒妻「狙撃とか爆破とかじゃねぇのか」

雲川『知らない。だけど暗殺なんて、この学園都市の技術を用いたなら幾らでもやりようがあるんだけど』

黒妻「下手に動けない、か」

雲川『本当に親船がターゲットか如何かも核心は無い。狙われる%が一番高いだけで、もしかしたら他の理事に奇襲をかけるかもしれないけど』

黒妻「でもとかもしとかばっかだな」ハァ・・・

雲川『うっさい。あまりに漠然とし過ぎてるんだ。だから思考回路を回すきっかけが欲しいんだけど』チッ


完全に後手じゃないか。
548 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/01(月) 02:09:42.85 ID:anX9DFfg0
だが、と雲川は続ける。


雲川『怪しい単語を見かけたけど』

黒妻「単語?」

雲川『人材派遣(マネージメント)っていうんだけど……多分、「狂人」ね』

黒妻「じゃあ、オレが!」

雲川『動くな。コレに関しては暗部を使う……そうだな。土御門を手駒として動かしてみようか』ククク・・・


この女、根性腐ってらっしゃる。


雲川『兎も角、貴方は指示があるまで監視任務がメインだ。分かったな』

黒妻「はいはい」ハァ・・・


拒否権は無いのだろう。


雲川『それから二つ目……明朝、冥土帰しの所へ行け』

黒妻「病院? 何で?」

雲川『仕事だ……多分、今までで一番辛いぞ。精神的にだけど』

黒妻「意味分からん」

雲川『……負傷者回収任務。先程、アチラの方から連絡が来た。貴方を貸して欲しいとの事だ』


衛生兵?


雲川『つまりは銃弾がめり込む瞬間を見過ごしつつ、負傷者を病院へ担ぎ込め、という訳だけど』

黒妻「……、」

雲川『拒否権はある。だけど、これを逃したらもうクーデターには関与できない筈だけど』


それは困る。だが衛生兵が、人の傷付く瞬間を見逃せというのも可笑しな話だ。


雲川『クーデターを起したヤツらなんか……戦闘不能状態になって貰った方が助かるの。分かるな?』

黒妻「悪魔だな……だが利には適ってる」

雲川『納得する必要なんかない。理解したら肯定とさせてもらうけど』

黒妻「ああ」


とりあえず、参加してしまえば冥土帰し公認の看板を背負って好きに動ける。
それから最愛や仕上達の救出に向かえば良い。
549 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/01(月) 02:26:32.43 ID:anX9DFfg0
そんな事を考えてると、お見通しだと言わんばかりに口を挟んでくる頭脳明晰天才少女。


雲川『何考えてるか知らないけど、貴方にも監視はつけるからな』

黒妻「はいはい。んで、最後は?」

雲川『……土御門舞夏を隠せ』

黒妻「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」


これまた意味が分からない。


雲川『今晩中にでも良い。クーデターが起る前には絶対に安全な場所へ移せ。良いな』

黒妻「ちょ、な……それ、土御門の為か?」

雲川『違う……厄介な連中までこの街に引き入れたくないんだけど』

黒妻「厄介?」

雲川『土御門の家……ん。兎に角、知る必要は無い。この街が日本に在って欲しいと思うならそうしろ』


土御門? 日本?


雲川『深く考えるな……とりあえず以上だ。後は出たとこ勝負だけど』


靄が残るが、とりあえず整理する。
病院へ行き冥土帰しと会う。講演会にて親船最中の監視。そして土御門舞夏の安全確保。


雲川『よろしい。それじゃ、また連絡する』

黒妻「ああ……ところで半蔵達には?」

雲川『別口で動いて貰わねばならないんだ。それにヤツらも出たとこ勝負……負担は増やさないけど』

黒妻「分かった。黙っとく」

雲川『うん。では……今晩は彼女とセックs――』Pi!


皆まで言わせるか、このデコビッチ。


黒妻「はぁ……ジャケットと包帯引き取ったら帰るか」


きっと明日が修羅場になるだろう。
550 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/01(月) 03:06:19.63 ID:anX9DFfg0
 ―――十月八日、PM06:00、学園都市第7学区、とある廃ビル・・・(黒妻side)・・・








必要な道具一式をトランクケースに詰め込み、お暇する事に。


黒妻「忙しい所悪かったな」

半蔵「いえ、御気になさらず」

黒妻「……明日も今日と同じ作業か?」

半蔵「基本的には同じだけど、明日出店しますから的屋の見回りしに外出ますよ」

黒妻「そうか」


コイツの事だから臨機応変に動いてくれるとは思うが……やはり心配だ。


半蔵「良かったら手伝い来ますか? 普通にバイト代出しますよ」ハハハ

黒妻「行きたかったんだが用事出来ちまってなー。悪ぃ」ポリポリ・・・

郭「ふふふふ、姐さんですかぁ?」ニヤリ・・・

黒妻「ばーろー。美偉も風紀委員で忙しいってよ」

半蔵「一般学生の為の祭日であって、俺らは平日以上の稼ぎ時ですからねー」ハァ・・・


その道を選んだのは、自分達だ。


郭「まぁ少しでも時間出来たら寄って下さいよ。私達はコンサートホール前広場ら辺に居ますから」

黒妻「あいよ。ガキ共連れて行けたら行くさ」クルッ・・・

半蔵「……お子さん方は、皆ご無事で?」

黒妻「まぁ疲れてるが元気みたいだよ。打ち止めちゃんだけは病院だか何だか増えて大変っぽいけどな」

郭「一番小さい子が可哀想に」


そういえば黄泉川さんから可能であれば迎え頼めるかとか言われたけど、多分無理だろう。断りの電話を入れておかねばなるまい。


黒妻「とりあえず、何かあったら連絡しろ」テクテク・・・

半蔵「兄貴も」

郭「御気を付けて」ペコッ


明日以降もまた無事に会いたいものだ……―――
551 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/01(月) 03:45:07.29 ID:anX9DFfg0
 ―――十月八日、PM06:30、学園都市第7学区、風紀委員第177支部・・・・・・







初春が着いたとの連絡を受け白井が支部に戻ると、御坂美琴、佐天涙子、春上衿衣が支部へ遊びに来ていた。
この糞忙しい時であってもまだ彼女達は此処を喫茶店か何かと勘違いしているらしい。

例の如く喋り続けていると、いつの間にか最終下校時刻間近となっていた。


固法「ほら、そろそろ帰り支度しなさい」

御坂「え? ぁ……うげ。門限ヤバいかも」タラー・・・

初春「相変わらず寮生は大変ですね」アハハ・・・

春上「でも一日中素敵な洋館に、お友達と一緒に居れて楽しそうなの」

白井「あそこはそんなメルヘンチックな所じゃありませんわ。ドチラかというとゾンビ館の方の洋館に近いかと」ハァ・・・

佐天「相変わらず寮監さんの事苦手なんだね」アハハ・・・


この街で一番怖い人間です。


御坂「そういえば明日、寮監さんにボランティアの手伝い頼まれてたんだった」

佐天「ボランティア? もしかして、あすなろ園の?」

御坂「うん。祭日だから手伝い来ないかって……でも私一人だと正直アレでさぁ」アハハ・・・

白井「残念ですが、風紀委員は忙しいので」ポリポリ・・・


一人、顔をキョトンとさせているのは春上少女。


春上「あすなろ園?」

初春「13学区の……児童保護施設ですよ。大圄先生がボランティアしてるって言ってたでしょう。あそこの事です」

白井「そういえば大圄先生、入籍はもう?」

佐天「あはは。式はまだだけどね」クスッ

春上「ほぇ?」ポカーン・・・


自分の担任が如何したのだ、と言いたそうな顔。見かねて初春と佐天が詳細を話した。


春上「わぁ。それはそれはロマンチックなの!」キラキラ・・・


寮監の事も有り何とも言い難いので、発言は控える面々。
552 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/01(月) 04:00:52.34 ID:anX9DFfg0
さておき、御坂は再度確認を取ってみた。


佐天「私はアケミ達と出かける約束してたんですよね」スイマセン・・・

春上「私は大丈夫なの。大圄先生の奥さん、見てみたいの!」パアァ!

御坂「あ、あはは」タラー・・・


無論、それだけではない。


春上「ねぇ……その施設の子供達は『元気』なの?」

初春「……勿論ですよ、心配は要りません」コクッ


『置き去り』として、利用されてたりなどしない。


御坂「……、」ポリポリ・・・

白井「これで逃げれませんね、お姉さま。頑張って下さいまし」ボソッ

御坂「え!? あ、いや、別にバックレようだなんて思ってなかったわよ!」ダラダラ・・・

固法「ふふっ。頑張りなさい」クスクス・・・

春上「御坂さん。明日はよろしくなの!」キラキラ・・・

御坂「え、ええ……(寮監さんと春上さんのコンボを私一人で、か)」アハハ・・・


気持ちは分かるが風紀委員組としては悩みの種が減って助かった。
明日辺りお祭り気分でドンチャン騒ぎしそうな能力者と喧嘩される心配がなくなる。


固法「上条くんのお見舞いは、夜にでもこっそり行きなさい。インデックスちゃん預かっといてあげるから」フフッ

御坂「な、何でアイツが出てくるんですかぁ!!」カアアァ///

白井「む、きいいいいいぃっ!! お姉さま!! あの家畜人ヤプーの所へ夜這に行くなんて許しませんのおおおおぉ!!」ギャー!!

御坂「よ、夜這、ば、馬鹿な事言わないでひょ!!」マッカッカアァ///

佐天「まーた始まった」アハハ・・・


いつもの超電磁砲組(私達)。
553 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/01(月) 04:33:32.20 ID:anX9DFfg0
一般人4人を帰した所で、風紀委員組はPCに向かった。
初春飾利が書庫(バンク)への侵入を試みている。


初春「うーん。いつもより規制(ブロック)が堅くなってますね」カタカタ・・・

白井「御託は結構。貴女にしてみればその程度朝飯前でしょう」

初春「はいはい……一応、踏み込みましたよ」タンッ


警備員背広組クラスの情報事項。


固法「やっぱり警戒度がマックスね……テロの危険、かぁ」

初春「0930事件の事もありますからね。『魔術』からの攻撃に備えるのは妥当でしょう」

白井「日本カトリック教会からの運動も怖いところですわね……ん?」ピタッ


白井の目に気になる文字が止まる。


白井「『第13学区の重点警備』……いつも以上に?」

固法「幼稚園や小学校が多いのは確かだけど。警備を強化するなら理事長の居る第7学区(此処)じゃないのかしら」

初春「分かりませんね……『内部犯(スパイ)の可能性』も気になります」

白井「それは流石に警備員(身内)で処理して欲しいものですの。私達には如何しようも」ハァ


とりあえずこんな所だ。これ以上は理事役員レベルの情報。流石にそこまでの深入りはしない。


固法「実際起こるかどうかは分からないけど、危険度は高いわね。気を抜かない様に。些細な事でも連絡マメにね」チラッ

白井・初春「「はい」」コクッ


今は警備員の関所班を信用するしかないだろう。後は賽の目次第だ。


固法「今日の所はこれで上がりよ。お疲れ様」

白井「明日は支部員全員7時集合ですわね」

初春「うへぇ……起きるのシンドイですよ」ハァ・・・

固法「皆同じよ。今日は早く寝なさい」クスッ

白井「先輩こそ、彼氏さんと夜遅くまでニャンニャンしてちゃブリゃあっ!!」ガンッ!!

固法「……喧しい」ゴゴゴゴ・・・


余計な御世話だ。互いにそこまで性欲に飢えちゃいない。
554 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/01(月) 04:48:13.03 ID:anX9DFfg0
と、噂をすれば何とやら。先輩からの電話だ。


白井「ほら見ろ」ニヤニヤ・・・

固法「何が見ろだ……はい、もしもし」Pi!

黒妻『おう。仕事終わったか?』

固法「今終わる所です」


後ろでヒソヒソ話している後輩二人を打ん殴りたい。


黒妻『忙しかったら今日ウチ寄らなくても良いぞ』

固法「いえ。バイク返しに行かないと」

黒妻『良いよ。駒場のV−MAX借りてたし』

固法「……は?」

黒妻『V−MAX』サラッ・・・


何言ってんだ、この人。


固法「……先輩のZUは?」

黒妻『半蔵んとこ。代わりに駒場の古いヤツ借りてた。オマエ暫くZ−1000持ってて良いぞ』

固法「呆れた……どっちにしろ、先輩の家にはお邪魔しますよ。じゃないとカップラーメンか雑な創作料理でしょ」

黒妻『別に良いだろ』ブーブー!

固法「他の子達も食べるんだから駄目です」キッパリ!

黒妻『……オレの心配じゃねぇのな』ハァ・・・


そういえば香焼くん達は如何したのだろう。


黒妻『那由他ちゃんしか連絡来てないぞ。もし二人が来るようなら迎え来て欲しいだって』

固法「……了解です。何にしろもう少しで帰ります」


電話を切り、後ろ二人にサブミッションを決めた後、香焼くんと最愛ちゃんにメールを入れる。


固法「元気なら、それでいいけど」ムゥ・・・


便りが来ない内は元気な証拠というが、彼らはまだ幼い。片や理事校生、片や強能力者(本来は大能力)といえど子供なのだ。
ママゴトと言われようが、母親として、子供が心配なのである……―――
555 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました [saga]:2011/08/01(月) 04:53:00.58 ID:anX9DFfg0
すいません。次回まで続きます。


リクエストについてですがもう少し募集したいです。何度でも良いのでネタ下さい(苦笑)。
アンケート取るならその後に取ります。

・親戚の『あまくさっ!!』は、その内やるそうです。
・アメコミネタとか無いかなぁ。私が知っていれば作品関わらずクロスオーバーっぽいネタのもアリです。
・別にカミやん主役でもOKだよ。

等など。


とりあえず、質問意見感想罵倒リクエスト等々、くださいな! ではまた!ノシ”
556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/08/01(月) 10:44:20.71 ID:1TCMMNmAO
学園都市ならトランスフォーマー造れそうだよね。

希望は削ぎーの1日。
557 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/01(月) 22:49:55.69 ID:Mm6LgAOn0
こんばんわ。投下します。
558 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/01(月) 23:07:29.22 ID:Mm6LgAOn0
 ―――十月八日、PM07:00、学園都市第7学区、とある公園・・・(鉄網side)・・・








秋中・寒露の日の最終下校時刻。星の明かりが消えるくらい月明かりが勝っている夜。
警備員が下校指導を始める時間帯、鉄装綴里も第7学区のとある公園を巡回していた。
明日は祝日という事で夜遊びをする学生がいても可笑しくはない。本部からは普段より一層警戒を務める様にと訓示が来ていた。

だがしかし、街中や路地裏は騒がしいかもしれないが、此処の様なのどかな公園に屯する様な子供は居ないだろう。
そう考え、夜の散歩気分で巡回を続けていた。


鉄装「明日は忙しいから早めに上がりたいなぁ……って、あれ?」チラッ・・・


ふと、自販機近くのベンチを見遣る。二つの人形……の様な少年少女。


鉄装「えっと……え?」タラー・・・


ピクリとも動かない。
自分がもしホラー映画のモブキャラなら、確実にこの二人(?)に不意を突かれて御釈迦にされるだろう。


鉄装「そ、そんな訳ないか」アハハ・・・


此処は科学の街。そんなオカルト染みた話があってたまるか。


ぬこ「……フシャー!」ザッ!

鉄網「ひっ!!」ビクッ!!


茂みから猫の声。ますます恐怖度が。


鉄装「あ、あはは……あ、えと……うん」ポリポリ・・・


警備員として話しかけるべきなのだろう。自分の先輩ならきっとベンチに一発蹴りを入れる所だ。


絹旗「ん……、」モゾッ・・・

鉄網「う、動いたあああぁっ!!?」ギョッ!!


傍から見たら『彼女は何に怯えてるんだ?』状態である。
559 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/01(月) 23:21:47.28 ID:Mm6LgAOn0
 ―――(香焼・絹旗side)・・・・・




何やら騒がしい。それから、寒い。
朦朧とする意識の中、絹旗少女は薄ら目を開き、ボンヤリと周りを見た。


絹旗「……ぁ」ボー・・・

鉄網「あ、え、えっと……こんばんわ」アハハ・・・

絹旗「……ん」ジー・・・

鉄網「だ、大丈夫? どうかしたのかな?」アセアセ・・・


目の前の女性は何だ?


鉄網「えっと、警備員ですよ。最終下校時刻なので下校指導してまして、はい」ポリポリ・・・

絹旗「最終下校じ……っ!!?」ギョッ!!

香焼「ふぇっ?!」ドサッ!


急遽立ち上がる。そして携帯を取り出し時間を確認。


鉄網「良かった。幽霊じゃなかった」ホッ・・・

絹旗「え、あ……えっと……その……、」シュン・・・

鉄網「あ、何でもない何でもない……えっと、此処で何してるのかな? もしかして迷子かしら?」

絹旗「……、」シュン・・・

鉄網「……ん?」ポカーン・・・


極度の人見知り故、一人では話せない。


鉄網「うーん……隣の子はお友達かな?」タラー・・・

絹旗「……、」コクッ・・・


無言で香焼を揺する。その香焼もいきなり起こされたので何が何だか把握できていない模様。


香焼「え……あれ?」ポカーン・・・

絹旗「……香焼」ギュッ・・・

香焼「へ?」ボー・・・

鉄網「あのー、大丈夫?」ポリポリ・・・


……状況解析中。
560 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/01(月) 23:54:35.52 ID:Mm6LgAOn0
一寸後・・・・・色々把握。


香焼「す、すいません! 急いで帰りますので!!」アタフタ・・・

鉄網「あはは、そういう事なら仕方ないわ」クスクス・・・


最愛が猫と戯れた後、ベンチで寝む掛けしだした。
その時3時くらいだから少しだけ寝かせてあげようと思い肩を貸したのだが……自分も寝てしまっていたらしい。


鉄網「でも吃驚したー。誰も居ない公園でまったく動かない二人が幽霊か何かに見えたから」クスクス・・・

絹旗「……超人間です」ムスー・・・

香焼「さ、最愛」タラー・・・

鉄網「兎に角、早く帰るのよ。夜のデートは素敵だけど、最近は物騒だから」フフッ

絹旗「で、デートじゃないです! 馬ぁ鹿っ馬あああぁ鹿!!」カアアァ///

香焼「最愛、相手警備員さんだよ」ダラダラ・・・

鉄網「あはは。女の子同士なのに真っ赤ね。冗談よ」

香焼「自分は男っす!」ガアアァッ!!

鉄網「あ、あれ。ごめんごめん……と、とりあえず私はこれで。寄り道しちゃダメよー」テクテク・・・


また女扱いされた。


絹旗「超失礼な眼鏡です。きっとあの眼鏡が本体なんですよ。姉貴さんみたいに」ジトー・・・

香焼「違うからね。固法さん普通に視力悪いだけだから。あと能力制御」アハハ・・・


オマエは今まであの人をそういう目で見ていたのか。


香焼「それより……もう行ったよ。隠れる必要無くない?」チラッ・・・

絹旗「あ……す、すいません」モジモジ・・・///

香焼「もう七時だ。知らない間に3時間以上も寝ちゃってた」アハハ・・・

絹旗「むぅ……ごめんなさい」ペコッ・・・

香焼「良いよ、気にしないで。自分も良い休養になった」クスッ・・・


互いに疲れていたのだ。
先の昼寝は身体は冷えてしまったが、精神的な疲労は軽くなった。素直に嬉しい事だ。
561 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 00:50:11.29 ID:I09iOaXY0
それにしても……寒いな。


絹旗「超寝てたから余計に超寒いです」ブルル・・・

香焼「装甲は?」

絹旗「窒素が温かいと?」

香焼「……成程」アハハ・・・


自分は魔術で簡易保温を掛けれるからまだしも、彼女は厳しいだろう。


香焼「って……実は寒いの弱点なの?」チラッ・・・

絹旗「うっ」ギクッ・・・

香焼「……そう考えると、最愛の能力って万能じゃないんだね」クスクスッ

絹旗「な、ちょ、超最強ですよ! ただ、その……装甲関係無い精神操作系とか音波系はアレなだけで」タラー・・・


それを弱点というのではなかろうか。


絹旗「う、五月蠅いです! ブッ飛ばしますよ!」ムキー!

香焼「あはは。ごめんごめん。最愛は最強だねー」フフッ

絹旗「超馬鹿にしてる!」フシャー!!


馬鹿にはしてない。寧ろ褒めてる……と言ったらおかしいかもしれないが、正直嬉しい。


絹旗「……私は弱いなんて言われても嬉しくないですよ。てか、香焼も超変です。何で私が弱いと嬉しいんですか」ジトー・・・

香焼「それだけ最愛が普通の女の子って事だろ」クスッ

絹旗「……よく分かりません」ムゥ・・・


可愛らしく小首を捻る彼女の背中に、そっと手を置く。そして……数節詠唱。


絹旗「っ!!?」ドキッ!!

香焼「……あったかい?」チラッ・・・

絹旗「え、あ、う、うん。な、そ……ふぇ!?」オドオド・・・

香焼「手品(マジック)だよ」クスクス・・・

絹旗「あ、ああ……ふぉあぁ」ヌクヌク・・・


身内に見られたら確実に説教されるだろう。自己満足の魔術使用。
562 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 01:14:01.35 ID:I09iOaXY0
 ―――十月八日、PM07:30、学園都市第7学区、とある公園・・・・・・







ふと、携帯を見る。メールが数件入っていた。
同時に最愛も同じような反応。


香焼「『飯は?』ってあの人(対馬)……自分で作れよ」タラー・・・

絹旗「麦野……『何処?』って三文字だけで送らないで下さい。超怖いです」タラー・・・


そろそろ帰らないと拙い様だ。


香焼「あ」カチカチッ・・・ピタッ・・・

絹旗「あらら……姉貴さんから来てましたね」ヤバイ・・・

香焼「今からお邪魔するのは流石に迷惑だろうし」ウーン・・・

絹旗「電話入れときます?」

香焼「そうしよっか」カチカチ・・・Pi!


履歴から固法さんの番号をクリックする。


絹旗「もしかして夕飯中かもしれませんね」

香焼「うん……また掛け直そう」スッ・・・


電話を切ろうと瞬間……声がした。


黒妻『ん。よう』Pi!

香焼「あれ? 黒妻さん?」

絹旗「え?」

黒妻『美偉料理中で手ぇ離せないから代わりに』

香焼「成程。あ、えっと」

黒妻『来れるのか?』


苦笑。


黒妻『そうか……まぁ、時間出来たら遊びこい』

香焼「はい……あ、最愛と変わりますか?」

黒妻『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・オマエ、何でこの時間に最愛ちゃんと一緒に居んの?』ハ?


一緒に昼寝してました、とは言えない。
563 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 01:35:30.72 ID:I09iOaXY0
さておき、一応最愛と変わる。


黒妻『よう。香焼に変な事されてないか?』ハハハ

絹旗「こんばんわ。超お久ですね。大丈夫ですよ、何かされる前にし返しますから!」フンッ!


本気で言ってそうだから怖い。


黒妻『おう。最近忙しいみたいだからな。オレもお邪魔してないし』

絹旗「兄貴さんならいつでもウェルカムですよー……と言いたい所ですが、色々と立て込んでるので」アハハ・・・

黒妻『行ったら怒られるか?』

絹旗「うーん……麦野がピリピリしてますから控えた方が良いですね。機嫌良くなったら私か浜面が連絡するので」

黒妻『ん、分かった……あ。美偉変わるって。ちょっと待って』


固法さんの手が空いた様だ。


固法『もしもし。最愛ちゃん?』

絹旗「ええ、私です。超御無沙汰してます」

固法『うん。思ったより元気そうで良かった』ホッ・・・

絹旗「あはは、心配掛けてすいません。姉貴さんこそ、今風紀委員で忙しいんじゃないですか?」

固法『私は大丈夫。それより貴女や香焼くんの方が心配よ。あと……麦野さんも』

絹旗「……麦野は大丈夫ですよ。超忙しいのは確かですけど、体調崩したとかそういうんじゃないんで」

固法『そう。まったくメール帰って来ないから心配で』ハァ・・・


そういえば女教皇様も麦野さんからメール帰って来ないとか心配してたな。


絹旗「……後で超キツく言っておきます」ハァ・・・

固法『別に返事しろとは言わないけど、身体に気をつける様言ってね。あと神裂さんには連絡してあげてとも』

絹旗「超了解です。じゃあ香焼に変わります」チラッ・・・


電話を手渡され、久しぶりと挨拶をする。


固法『最愛ちゃんに変な事してないわよね?』


夫婦して開口一番同じ事言わないで下さい。
564 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 02:03:46.08 ID:I09iOaXY0
固法『冗談よ。そんな度胸無いでしょ』フフフ・・・

香焼「……何だかなぁ」ハァ・・・

固法『ふふっ。とりあえず香焼くんも元気そうね』

香焼「ええ。御二人も元気そうで何よりっす」

固法『神裂さんも元気?』

香焼「忙しいみたいっすけど、とりあえず問題無いかと」ハハハ・・・


書類の山に頭を突っ込んで寝る毎日だとか何とか。


固法『そっか。皆大変ね……、』

香焼「……きっと大丈夫っすよ。近い内に平穏戻りますから」

固法『そうね。そう願ってる……那由他ちゃんも打ち止めちゃんも会いたがってるから、また皆でご飯食べましょ』

香焼「はい。お邪魔させて貰います」


それを成す為に僕らも尽力する。


固法『よろしい。それじゃあ、ちゃんと最愛ちゃんの事送り届けるのよ。良いわね』

香焼「ええ。責任持って見送ります」

固法『うん。じゃあ……あ、先輩が話あるって』


まだ何かあるのか。


黒妻『悪い悪い……なぁ。最愛ちゃんの様子、いつもと違ってなかったか?』

香焼「忙しくて疲れてるって事以外は特に……、」チラッ・・・

絹旗「ん?」

黒妻『そうか……分かった。因みに明日の予定は?』

香焼「明日はフルで仕事っすよ」

黒妻『……、』


急に黙った。様子がおかしいのは黒妻さんの様な気がする。如何したのだろう。
565 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 02:16:58.77 ID:I09iOaXY0
数秒して、深刻そうな声で口を開いた。


黒妻『最愛ちゃんも……明日仕事か?』

香焼「ええ、そう言ってましたよ」

黒妻『……どんな仕事だ? オマエも教えろ』


それは流石に秘匿事項なので教えられない。例え親しい中であっても公私混同は出来ない。


黒妻『……教えろ』

香焼「く、黒妻さん?」タラー・・・


半分怒っている様な声。まるで『別人』。
彼の迫力に蹴落とされて、曖昧に返事を帰してしまう。


黒妻『……街中での仕事か?』

香焼「え、えっと……とりあえず、そんな感じっす」

黒妻『「力」使う仕事か? 偵察とかSPとかそっちか?』

香焼「こ、後者かと」

黒妻『……なら良い。最愛もか?』


最愛に今の内容を説明し、回答を貰う。


香焼「とりあえず『仕事』が有るとだけ……状況によって変わる内容だから、待機しといて臨機応変に動くとか言ってます」

黒妻『……そうか』

香焼「黒妻さん。あの……何かあったんすか?」

黒妻『何も無きゃ良い。それだけだ』


怖い……本気で怒った時の教皇代理の様な雰囲気が電話越しで伝わってくる。


黒妻『何かあったら絶っっ対連絡しろよ。良いな?』

香焼「え、ええ」

黒妻『……うん。それじゃあ気を付けて帰れよ。冷えてきたから風邪引かない様にな』

香焼「はい。それでは」Pi!

絹旗「……如何したんですか?」

香焼「分かんない……でも、何か怖かった」フム・・・


あまり良い予感はしない。だが深く考えるのも拙いだろう。
566 :>>1にかわりましてカキネがお送りします :2011/08/02(火) 02:36:01.55 ID:VwxvoNBo0
さておき、最愛帰りは如何するのだろう。


絹旗「今日は『ビル』の超近くのホテルなので歩いて帰れます」

香焼「じゃあ途中まで送るよ。そこから近くの駅で電車乗るから」

絹旗「悪いですよ。バス拾って貰った方が良いんじゃ」

香焼「あはは。ビルの屋上駆けて……ん。何でも無い」コホンッ・・・

絹旗「へ? ビルの屋上?」ポカーン・・・


天草学徒専用路の事をばらす訳にはいかない。


香焼「兎に角送るよ。気にしないで」

絹旗「あ、うん。ありがと」


干していたパーカーを着て、ゴミを捨て、帰り支度。


香焼「でも『ビル』の近くって、理事長宅(アレイスターんとこ)の近くだろ?」

絹旗「はい。『あれくさんだー』ってホテルです」


よく女教皇様やステイルが泊まるホテルだ。プライベート使用なら一泊20万5000円。


絹旗「あそこそんな高いんですか?!」ギョッ!!

香焼「知らないで止まってるの?」タラー・・・

絹旗「む、麦野が勝手に予約してるので……給料から引かれてたら如何しましょう」アワワ・・・

香焼「……因みに、最愛の月給聞いて良い?」

絹旗「月に拠りますけど、平均して[禁則事項です]万円です」サラッ

香焼「」


自分の[ピーーー]倍だ。


絹旗「だってまぁ仕事内容が……ね」アハハ・・・

香焼「っ……ごめん。この話止めよう」

絹旗「……そうですね」コクッ・・・


折角楽しく話していたのに、嫌な事をぶり返すのはナンセンスだ。
567 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 02:58:50.28 ID:VwxvoNBo0
 ―――十月八日、PM07:45、学園都市第7学区、とある大通り・・・・・・







明日が祭日なので街中では夜遊びをしている学生が居るかと思いきや、そうでもなかった。
戦争ムード故に自粛傾向なのか、それとも明日はしゃぐ為に大人しくしているのか。まるで嵐の前の静けさの様だ。


絹旗「ま、暴れてる連中の殆どは路地裏でしょう」

香焼「そうなのかな」

絹旗「表通りはいつも以上に警備員やら風紀委員が目を光らせてますからね。デカい事出来る勇気が有るヤツなんて居ませんよ」


確かに。良い事だ。


絹旗「……あ」チラッ・・・

香焼「ん? どうしたの?」

絹旗「……あれ」スッ・・・


コンビニを指差す。立ち読みをしてる人?


香焼「あ……御坂さん」ウワー・・・

絹旗「超能力者(模範生徒)が聞いて呆れますね。普通に週刊誌読んでますよ。姉貴さんに言いつけてやりましょうか?」ハハハ

香焼「放っておいてあげようよ」アハハ・・・

絹旗「こっち気付いてませんし、もうちょっとだけ観察しません?」クスクス・・・

香焼「えー(何か嫌な予感しかしない)」タラー・・・


確かにコンビニで立ち読みしている人を観察するのは面白いが、自分が立ち読みしてる時の事を考えさせられるのでオッカナイ。


絹旗「ぷっ。今ニヤってしましたよ、ニヤって」プププー

香焼「最愛止めようよ……ぷっ」クスクス・・・

絹旗「今度は何か呟いてる! 超呟いてます! 超恥ずかしー!」ウェヒヒ!

香焼「今度は赤くなってるし……って、外で見てる自分らかなり怪しいっすよ」タラー・・・


誰かに見られたら確実に変人である。


絹旗「あはは! 超思いっきり顔近づけましたよ! 何か超気になる展開だったんでしょうか!」ケラケラ!

香焼「さ、最愛。そろそろ……―――」


御坂『……ん』チラッ・・・


香焼・絹旗「「―――……ぁ」」ピタッ・・・


現在、最愛が御坂さんを指差して笑っている所で停止中。
三者、暫時フリーズ。
568 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 03:16:56.23 ID:VwxvoNBo0
そして……先に此方が始動。


絹旗「超エスケープ!!」ダッ!

香焼「な、に、逃げるなよ! 怪しまれるだろ!」アワワ・・・


刹那、後ろからビリビリしたプレッシャー。


御坂「待てええええええええぇっ!! 変人兄おおおおぉ妹いいいいいぃ!!」ビジバジ!!

香焼「ほら追ってきたああああぁっ!!」ギャアアアァッ!!

絹旗「うわぁ! こっち来ないでくださいってばああぁ!!」ウワアアアァ!!


その形相、雷神の如く。そこまで怒るか?!


御坂「何人の顔見て笑ってんのよおおおおぉ!! 死ねええええぇっ!!」ビリビリッ!!

香焼「ご、ごめんなさい! 御坂さんがコンビニ居るの気になって……最愛も謝って!」アタフタ!!

絹旗「漫画見ながら超ニヤニヤして超ー気持ち悪ーですねー。エロ漫画でも見てたんでしょうか?」アハハハ!

御坂「……殺すっ!!」カアアアァッ///

香焼「ぎゃあああっ!! 余計に火ぃ点けて如何すんのさああっ!!」ウワアアァンッ!!

絹旗「やーい。超ムッツリすけべ超電磁砲(レールガーン)! 最終下校時刻過ぎにエロ本読んでるスケベ絶対能力者(レベル6)ー」ベー!

御坂「百回殺す! 千回死なす!!」ビジバジバリバリッ!!


勘弁してくれ!


絹旗「へへへー。こうなったら力で黙らせてやりましょうか!」ピタッ・・・ニヤリ・・・

香焼「怒るよ! 良いから謝って逃げるぞ!」ガシッ! グイッ!

絹旗「うわっと!? ちょ、手引っ張んないでくださいよ!」アタフタ・・・///

御坂「馬鹿にするだけじゃなくてイチャイチャしやがってぇ……私だってしたいのに……真ヒロイン(笑)を嘗めんなああぁっ!!」ガー!!

香焼「すれば良いでしょうが!! あと自分で『(笑)』とか付けないでください!」タッタッタッタッ!

絹旗「い、イチャイチャなんかしてないです! ヴぁかヴぁーかっ!!」ギャーギャー!!

香焼「下らない事で喧嘩すんな!!」ダアアアァッ!!


結局、路地裏に逃げ込んでしまい……大きなお兄さんや魅惑的なお姉さんに絡まれそうになりながら、御坂さんを巻いた。
後方で雷が落ちる様な音や『すごいパーンチ』とかいう声がしたが、聞かなかった事にしよう。
569 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 03:40:19.65 ID:VwxvoNBo0
一寸後……何故かとあるビルの屋上に逃げ込んでいた。
正直疲れたので動きたくない。


絹旗「あーあ。折角の休日に、最後の最後アイツの所為で超疲れましたよ」ハァ・・・

香焼「最愛の所為でしょうが」ッタク・・・

絹旗「まぁ私は喧嘩買ってやっても良かったんですけどね」

香焼「いや、だから売ってただろ」ハァ・・・


彼女らしいといえば彼女らしいのだが、不思議な性格だ。
好意を寄せているか苦手か、両極端には感情豊かに対応する。微妙なラインは人見知り。不器用なこって。


絹旗「あー……超稲妻走ってますね。アソコら辺に居るんでしょうか」オー・・・

香焼「多分、軍覇来た気がするから喧嘩になってるんじゃないかな……止めるべきかなぁ」ハァ・・・

絹旗「チッ。削板のヤツに獲物取られました……大丈夫でしょう。これだけ暴れれば警備員が来ます」

香焼「獲物って……まぁサイレンの音聞いてあそこに居る人達散ってくれれば良いんだけどね」ヤレヤレ・・・

絹旗「心配症ですね。路地裏民ってのは逃げる事にかけては天才的ですから大丈夫ですよ」クスクス・・・

香焼「何だかなぁ」ポリポリ・・・


あそこの人達に申し訳ない。


絹旗「あ! あのホテルですよ。『ビル』の左奥のヤツ」ピッ!

香焼「うん、知ってるよ」アハハ・・・

絹旗「なーんだ。超つまんないのー」ブー!


口を尖らせ柵の方へ歩み出す最愛。それから寄り掛り、空を見上げた。


絹旗「えっと……アレが『おりおん』でしょ。アレが『ぽーらスター』」ビシッ・・・ビシッ・・・

香焼「うん、詳しいね」ハハハ

絹旗「香焼が教えてくれたんじゃないですか」クスッ・・・


そんな事も有った様な……無かったような? まぁドチラでも良いか。


香焼「この時間だと北極星(ポーラ)から定距離に……北斗七星(ディッパー、ピロー)っすよ」

絹旗「あ、知ってますよ。横に8つ目の星が見えるヤツですよね」ニコニコッ・・・

香焼「……冗談だよね?」タラー・・・

絹旗「あははは。勿論」クスクス・・・


苦笑。
570 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 03:57:26.50 ID:VwxvoNBo0
それから騒ぎが収まるまで屋上で待機。
互いに身内には『ゴダゴダに巻き込まれたから身を潜めてるから、帰りが遅くなる。心配するな』と一方入れた。


絹旗「……星見ってのも楽しいですけど、寒くない準備しとかないと駄目ですね」ブルル・・・

香焼「……、」スッ・・・

絹旗「ふぇ!? だ、大丈夫ですよ!」アワワワ・・・///


最愛の肩にパーカーを掛ける。自分は『保温魔術』があるので幾分か我慢できる。


絹旗「あ、ありがとう……、」キュッ・・・

香焼「流石に夜は七分袖じゃ寒いでしょ」ハハハ

絹旗「香焼だって半袖ですよ。見てる方が超寒いです」ジー・・・

香焼「こう見えても鍛えてるから大丈夫だよ」

絹旗「……身長止まりますよ?」


余計な御世話だ、バカヤロー。


香焼「……あ、来た」チラッ・・・

絹旗「え?」キョトン・・・


サイレンの音。これで少しは収拾がつくだろう。


香焼「やれやれ……後で御坂さんに謝らなきゃダメだよ」メッ!

絹旗「何で」

香焼「最愛」ジトー・・・

絹旗「うっ……まぁその、その内」タラー・・・


仲良くしないと打ち止めちゃんに怒られる。


絹旗「それは超困ります」ウー・・・

香焼「じゃあ仲良くする事。OK?」

絹旗「……はい」ムゥ・・・


すまない、とフードを深く被ってみせる最愛少女。舌を出して笑って無ければ完璧だったが、許してやろう。
571 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 04:12:51.68 ID:VwxvoNBo0
頃合いを見計らって下に降り、大通りに戻る。
途中コンビニで買い物したので夜食でも買いに来た兄妹くらいに見えるだろう。職質はされまい。

あんまんを美味しそうに頬張る彼女の横顔を見る。


 普通の女の子。


だが……しかし……


絹旗「もきゅもきゅ……ん」チラッ・・・

香焼「……、」ボー・・・

絹旗「……えいっ」ムギュッ!

香焼「ひゃっ!?」ギョッ!


いきなり頬を抓られた。


絹旗「また超難しい事考えてたでしょ」モキュモキュ・・・

香焼「え」

絹旗「超顔に出てます。相変わらず超分かり易いですね」フフッ


読まれたか。


絹旗「……私だって、もう、何が正しいのか分かんないんです。考えたら負けなんですよ」クスッ・・・

香焼「最愛……、」

絹旗「兄貴さんが前に言ってました―――」


『世界がもう少しだけ私(最愛ちゃん)に優しければ、君は普通に学校へ通い、普通に友達とショッピングへ行く女の子だった』と。


絹旗「―――……そう思ってくれる人が少しでも居るってだけで、超嬉しいんですよ。十分世界は優しいです」ニコッ・・・

香焼「……そんな」シュン・・・

絹旗「それよりも……香焼や兄貴さんに娼婦を憐れむ目で見られる方が……悲しいんです。特に貴方には」ハハハ・・・

香焼「っ……、」グッ・・・


アニェーゼと同じ事を言われた。良かれと思って考えている事が全て自分に酔っているだけ。
レッサー曰く、『正義の味方的な俺カッケー』状態だったか……まさにそれだ。


絹旗「だから深く考えないで下さいよ……自己嫌悪してる香焼も嫌いですって」ムンッ

香焼「……ごめん」


ホント、最低だ。
572 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 04:33:06.69 ID:VwxvoNBo0
絹旗「はぁ……香焼」クスッ・・・ギュッ・・・

香焼「ぁ……え!?」キョトン・・・ドキッ///


手を握られた。


絹旗「お返しです……帰りましょう」ニカッ!!

香焼「う、うん」ポリポリ・・・///


『いつ』のお返し(仕返し?)か分からないが、そのまま最愛のホテル付近まで歩く事に。
暫く無言。先程の様な気まずさはなかったが……何か恥ずかしい。

次の曲がり角を曲がったら到着というところで、最愛が口を開いた。


絹旗「例えば……例えば、ね」ボソッ・・・

香焼「……うん」コクッ・・・

絹旗「私が殺されそうになったら、如何します?」

香焼「っ!!?」ギョッ!!


いきなり何を言う。


絹旗「あはははは……やっぱ超驚きますね」アハハ・・・

香焼「な……縁起でも無い」タラー・・・

絹旗「……ううん。忘れて」ニコッ・・・

香焼「……助けるよ」

絹旗「私より弱いのに?」クスッ・・・

香焼「そういう問題じゃない。助けるって言ったら助ける」ギュッ・・・


近くに居る限り、必ず助けに行く。それが例え学園都市の超電磁砲(第3位)や一方通行(第1位)でも。


絹旗「近くに居なきゃ助けてくれないんですね。超ショックです」クスクスッ

香焼「その時は……友達とか仲間を頼るよ。誰か最愛を助けてくれって。軍覇然り、那由他然り……自分らより強いだろ」コクッ


誰かに『助けを求める』のも勇気。自分は一人ではないのだ。
573 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 04:54:17.12 ID:VwxvoNBo0
それは彼女にも訴えたい。


香焼「助け、呼んでよ。絶対に……何かあったら必ず」ギュゥ・・・

絹旗「あんまり期待しないで待ってます……香焼こそ、助けてって言って下さいよ」クスッ・・・///


彼女が弱音を吐く時……本当に『救い(助け)』を求めた時こそ、自分が『手』を差し伸べる。
それが彼女に対しての真意(気持ち)であり、望み(想い)である。


香焼「それからお願いなんだけど……えっと、命令かも」チラッ・・・

絹旗「え? あ、うん」ハテ・・・

香焼「もしローマの『魔術(科学結社)』と戦う仕事回されたら……絶対断って。何言われても断って」グッ

絹旗「は?」ポカーン・・・

香焼「もし強制的に参加させられそうになったら逃げて。必ず逃げて」ジー・・・

絹旗「ちょ、な、何で」タラー・・・

香焼「良いね? 隠れる場所に困ったら郊外の『オルソラ教会』って所に逃げれば安全だから……分かった?」

絹旗「え、ええ」コクン・・・


畳み掛ける様に言い放つ。こればかりは有無を言わせない。
彼女を死駒にさせる様な組織に、彼女を置かせはしない。


香焼「……うん。迫ってごめんね」ペコッ

絹旗「いえ……それより、その『魔術』だかっていう結社について何か知ってるんですか?」

香焼「……皆まで言えないけど、一人ひとりが『C・D(キャパシティ・ダウン)』を使うと思って」

絹旗「なっ……そ、そんなの、能力者側が勝てる訳無いじゃないですか!」ギョッ・・・


科学的に証明できない『魔術』を彼女達能力者が防ぐのは不可能だ。
現に今僕がナイフに魔力を込めて、彼女の脇腹に突き刺せば『装甲』を突き破り、ハラワタを抉る事が出来る……だろう。


香焼「だから頼む……戦わないで」

絹旗「俄かには信じがたいですけど……分かりました。頭に入れておきます」ムゥ・・・


科学と魔術が交差しない様、必要悪の教会(自分ら)も努力する。
574 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 05:11:48.84 ID:VwxvoNBo0
話している間にホテルの門前に到着。


絹旗「次いつ会えるか、分からないですよね」アハハ・・・

香焼「うん。互いに決まった休みなんて貰えないだろうから」ポリポリ・・・


今生の分かれという訳ではないが、いつ何時『最悪』があるやもしれない。


香焼「……死なないで」ギュゥ・・・

絹旗「自分の心配して下さいよ」モゥ・・・///

香焼「……、」クスッ・・・


手を、離す。


絹旗「……えっと」ジー・・・

香焼「……うん」ジー・・・

絹旗「……、」モジモジ・・・


名残惜しいが、明日も互いに忙しい。


香焼「また、ね」スッ・・・

絹旗「ぁ……、」シュン・・・

香焼「……大丈夫。電話するよ」ニコッ・・・

絹旗「うん……分かりました」ニコッ・・・


……。


香焼「っ……最愛、ちょっと待って」カキカキ・・・メモメモ・・・

絹旗「え?」

香焼「……これ、本当に非常時に電話して」スッ・・・


『077』から始まる電話番号。


絹旗「これは?」

香焼「……非常時用。いつもの番号で電話出なくても、こっちなら必ず出る」コクッ・・・

絹旗「……うん。ありがと」クスッ・・・


仕事用。悪用される心配はしてない……心配なのは彼女の安否だ。


香焼「それじゃ……またね」ノシ

絹旗「うん。ばいばい」ノシ


また無事に会えると信じて……―――
575 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 05:33:54.39 ID:VwxvoNBo0
 ―――十月八日、PM09:00、学園都市第7学区、都市立ホテル『Alexander』、VIPプライベートルーム・・・・・





 ガチャッ・・・・


絹旗「……ただいま」ソー・・・

麦野「遅ぇっつのバカヤロー。早く帰って来いっつったろ」ギロッ・・・

絹旗「っ……すいません」ビクッ・・・

滝壺「むぎの……きぬはた、おかえり。ご飯食べてきた? 食べて無かったらデリバリーするから先にお風呂入っちゃってね」ポンッ・・・

絹旗「食べてません……超簡単なものでいいので、お願いします」トコトコ・・・



麦野「チッ」ゴクゴク・・・

滝壺「むぎの……カッカしないで」

麦野「……してないわよ。遅く帰ってきたから叱っただけ」フンッ・・・

フレンダ「ま、まぁまぁ。とりあえず炭酸ガブ飲みでもしてリフレッシュしとこー」コトッ

麦野「……明日以降の任務で、あの子が躊躇ったり怪我したりしたら、あのガキ(香焼)如何してくれようか」ガキッ・・・

フレンダ「む、麦野!?」ギョッ・・・

滝壺「むぎの。落ち着いて……大丈夫。こんな時期にきぬはたの心揺さぶる様な危険な事しない筈だよ。あの男の子、利口だもの」トンッ・・・

フレンダ「そ、そうね。絹旗の事少しでも知ってれば結局、あの子がブレて命取りになる様な事言う筈無い訳よ」アハハ・・・

麦野「チッ……、」スッ・・・


着信アリ・・・『固法美偉』、『神裂火織』。


麦野「……寝る。明日は昼前にファミレス集合よ。遅れたら殺すからね、フレンダ」テクテク・・・

フレンダ「じゃあ泊めてくれたりなんかして一緒の布団でニャンニャンと……あ、冗談です、睨まないで。帰ります」アハハ・・・タラー・・・

滝壺「……私はきぬはたがご飯終わるまでは居るよ」チラッ・・・

麦野「御勝手に。私は寝る。じゃーな」ガチャッ・・・

滝壺「……ハァ」ヤレヤレ・・・

フレンダ「結局麦野、かなりフラストレーション溜まってる訳よ。飛び火は御免だわ……にしても、早くパァーっとやりたいモンね」フゥ・・・

滝壺「……、」ジー・・・


 ジャアァ・・・・・


絹旗「パーカー……借りパクしちゃいましょうか」フフフッ///
576 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 05:52:42.32 ID:VwxvoNBo0
 ―――十月八日、PM09:20、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・・・





 ガチャッ・・・・・


香焼「ん? 靴が多い……浦上来てるのか」テクテク・・・


対馬「……やっとお馬鹿が帰って来た」チラッ・・・

香焼「ただいま」

浦上「香焼、ご飯は?」

香焼「食べてない」

浦上「じゃあ早く食べちゃって。あと直ぐ寝た方良いヨ」

対馬「アンタ、明日フル勤務って言ったわよね。忘れたの?」ジトー・・・

香焼「超電磁砲と軍覇の喧嘩に巻き込まれたんだから仕方ないっすよ」ムゥ・・・

対馬「……4時半には起きなさい。幸いローマの動きはないって連絡来たから、警戒を緩めるわ」

香焼「ありがとう」コクッ・・・

浦上「とりあえずシャワー浴びておいでヨ」

香焼「うん」ガチャッ・・・


対馬「……危ないわね」ハァ・・・

浦上「何とも……一応、私バックアップ入るんで。本体が合流するまでは大丈夫かと」

対馬「明日が『ポイント』って決まった訳じゃないけど……気は抜けない状態だからしっかりして欲しいわ」

浦上「外からは大丈夫でも内側が怖いですネ」チラッ・・・

対馬「賽の目次第よ。非常時に誰か一人でも動けないって事態は困る」

浦上「ダイジョブです。体調に関しては問題無いですヨ……心配なのは……、」

対馬「……建宮が居てくれれば一番良いんだけど。兎に角、今あの子の対応はアンタに一任するわ」

浦上「まかせろー」ブイブイ!

対馬「はぁ」ヤレヤレ・・・

浦上「任せて……『全部、分かり切ってる事』デスから」ボソッ・・・


 ジャアァ・・・・・


香焼「……何事も有りませんように」ジー・・・
577 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 06:16:48.37 ID:VwxvoNBo0
 ―――十月八日、PM09:30、学園都市第7学区、とある病院、とある病室(個室)……





 ガラッ・・・


冥土帰し「……失礼するよ」スッ・・・

御坂妹「……、」シー・・・


上条「……、」スゥ・・・クゥ・・・


冥土帰し「うん……良く寝てる様だね」ボソッ・・・

御坂妹「はい。まるで仮死状態の様ですね。とミサカは小声で返答します」ボソッ・・・

冥土帰し「強めの睡眠薬で長めに寝て貰う事にしたからね。彼には『明日』起きて貰っては困る」

御坂妹「何故?」

冥土帰し「『運命』や『必然』、『決定事項』と言ったら詩的かい?」

御坂妹「今時は詩的とは言いません。厨二というらしいですよ、とミサカは先生に当て嵌まる適切な言葉をレクチャーします」ジトー・・・

冥土帰し「手厳しいな。まぁ『上』からの指示、とでも言っておこうか」

御坂妹「『上』、ですか……、」ムゥ・・・

冥土帰し「『君達』が『上』を嫌っているのは知っているが、我慢してくれ。私もこれが彼の為になると思う」ジー・・・

御坂妹「先生がそういうのであれば、とミサカは渋々納得します」フム・・・

冥土帰し「ありがとう……あと、先程伝えたが……明日は皆大丈夫かい?」

御坂妹「都市在住の妹達(シスターズ)を全員病院へ、ですね。数名返事無しですが9割方OKです、とミサカは回答します」

冥土帰し「蛇(17600号)と管理人(18413号)辺り? 仕方ないな……明日は忙しくなるからね。申し訳無いが頑張って貰うよ」コクッ・・・

御坂妹「イエッサー、とミサカは軍隊の真似事をしてみます」ビシッ!

冥土帰し「……テレスティーナ。君もだよ」チラッ・・・


テレス「……、」フンッ・・・


冥土帰し「……今日は早めに休んでくれ。二人とも、ね」テクテク・・・ガラッ・・・

御坂妹「はい。夜勤担当と引き継ぎ終わり次第、休ませて貰います。とミサカは眠気眼で返事をします」ムニャムニャ・・・

テレス「ジィさん……垣根が動いたら絶対起こせよ」テクテク・・・

冥土帰し「分かってる。だが……手は出さない約束だぞ。良いね」ギロッ・・・

テレス「チッ……、」カツカツカツ・・・

御坂妹「まったく……居ても居なくてもトラブルメーカーですね。第2位は……とミサカはある意味同類の貴方に愚痴ります」クスッ・・・


上条「……、」クゥ・・・スゥ・・・
578 :>>1にかわりましてカキネがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 06:42:07.12 ID:VwxvoNBo0
 ―――十月八日、PM10:00、学園都市第7学区、とあるアパート(黒妻宅)ベランダ……








黒妻「……、」カチッ・・・ジジジ・・・フゥ・・・

固法「悩み事ですね」テクテク・・・チラッ

黒妻「……そうかもな」ボー・・・

固法「私に話せる範囲?」

黒妻「絶対無理だな」クスッ・・・

固法「そう言うと思った」フフッ・・・

黒妻「……打ち止めちゃん、明日昼頃検査終了だったな」チラッ

固法「迎え、行けるの?」

黒妻「無理だな。何だかんだで仕事入っちまった。黄泉川さんに断りの連絡入れたよ……中々全員揃わねぇな」ジー・・・

固法「そう……早く平和になって欲しいですね」ギュッ・・・

黒妻「ああ……、」フゥ・・・ジジジ・・・

固法「……居場所」ボソッ・・・

黒妻「ん?」

固法「『自分が自分で居られる場所』……先輩の言葉」

黒妻「そうだな」

固法「あの子達にとって……此処は『居場所』になってるかな。私と先輩の……ママゴトセットで終わってないかな」ジー・・・

黒妻「……心配すんな。皆『らしく』在れてるよ」ポンッ・・・

固法「だと、良いけど……、」ムゥ・・・

黒妻「美偉は、アイツらが無事に『ただいま』言える環境(居場所)を守ってくれ」フゥ・・・ケシケシ・・・

固法「……先輩は?」

黒妻「オレは、アイツらの尻叩いてでも此処に戻すのが仕事だ」ハハハ

固法「よく分かんないです」ムゥ・・・

黒妻「大丈夫だ。アイツらも麦野さんも纏めて元通りにしてやっから」ナデナデ・・・

固法「……、」ギュッ・・・

黒妻「もう寝よう……明日、早いだろ」クルッ・・・

固法「はい」コクン・・・


スフィンクス「にゃーん」フシフシ・・・


黒妻「……おやすみ」ポンッ・・・

固法「おやすみなさい」チュ・・・
579 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました [saga]:2011/08/02(火) 06:50:13.32 ID:VwxvoNBo0
お疲れ様でした。これにてこの章の本編終了です。
次章で一応『先輩――』シリーズ最終章。原作からはなるべく反れない様、書いていくつもりです。

まぁ実際如何なるかはアヤフヤですけどね。


とりあえず次回は、まるっきり別枠なのでアンケート取りからスタートするかも。
もしくは……『あまくさどうでしょうっ!』を親戚から借りて安価形式再びとか(苦笑)。


それでは質問意見感想罵倒リクエスト等々(※特にリクエスト)お願いします! じゃ、おやすみ!
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/02(火) 10:29:17.78 ID:EEVb90UDO
>>1


まさに決戦前夜という感じだね
ワクワクする

残りあと500レス程度で足りるの?
ここでキリよく新スレ立ててもいいと思うよ
581 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/02(火) 16:38:03.71 ID:CzF5MDeDO
>>1乙! 結末変えないのか‥‥フレ/ンダ、工場長‥‥

次スレ行っても良いし、小話入れてもOK。
リクエストはアメコミでパニッシャー風兄貴とか、打ち止め・禁書メイン話がみたいぜよ! もちろん『どうでしょう!!』もアリ!
582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/02(火) 22:50:26.44 ID:zXuf+UuDO
1乙ー

リクエストは、まさかのカッキーとテレスの話が読みたいです
583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/02(火) 22:51:18.68 ID:zXuf+UuDO
1乙!

リクエストは、カッキーとテレスの話が読みたい
584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/02(火) 22:52:32.81 ID:zXuf+UuDO
ダブったorz
585 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/03(水) 23:34:50.60 ID:cMf558BC0
こんばんわ。今日はアンケだけです!


の前に、謝罪数点。

・美琴アフターについてですが・・・私の中では「美琴→上条」は絶対なんです。申し訳無い。
・イギリス組については、なるべく香焼の争奪戦みたいのはして欲しくないので今回はすいません。


ではアンケート。


@香焼くんと削板くん。

Aあまくさどうでしょうっ!! 〜姉×3と真剣勝負!?〜

Bもし黒妻兄貴が銃を使ったら!(パニッシャーorロアナプラ風禁書)

CMs.テレスティーナと垣根さんの割とヴァイオレンスな一日。

Dその他。(注文をどうぞ)

Eおまけは良いから、さっさと次スレに移れ!


ご協力お願いします!
586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/03(水) 23:48:54.20 ID:4uyDI5gDO
Aの詳細が凄ぇ気になるww
だけどCで! てか400近くレス残ってんだからチョイチョイにして全部書けば良いさ!
587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/08/03(水) 23:53:25.68 ID:cal8tn0AO
588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/04(木) 00:48:02.37 ID:21CDL4mr0
Aぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいい!!!
589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/08/04(木) 01:12:08.95 ID:eq8DRf/uo
2
590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/08/04(木) 01:13:58.37 ID:2N7rNFHvo
3
591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/04(木) 01:22:35.68 ID:mP7AHo2DO
C
592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/08/04(木) 01:23:35.55 ID:85CX481AO
593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/04(木) 06:41:41.09 ID:BWz3XX5DO
4!4!
594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/08/04(木) 06:50:47.06 ID:pYN+vM6AO
2
595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/08/04(木) 15:09:49.21 ID:z9FucE3e0
4
596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/08/04(木) 15:10:14.66 ID:z9FucE3e0
4
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/08/04(木) 15:12:10.99 ID:z9FucE3e0
連投してしまったorz
スマソ
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/08/04(木) 22:32:01.85 ID:hrgEpDfho
2
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/05(金) 03:38:22.06 ID:mEi3yNOv0
4
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/05(金) 06:09:43.37 ID:ENXEBd9/o
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/08/05(金) 21:50:32.51 ID:nagLBEM00
てか、前々からちょっと気になってたんだけど、チャフシードって電波だかを乱反射させて電子機器とかを使えなくするもんじゃなかったですっけ?
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/06(土) 03:50:43.83 ID:ZlsL1M/DO
4
603 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/06(土) 22:13:02.34 ID:puhgvW3n0
こんばんは。アンケはCですね。


・攪乱の羽(チャフシード)についてですが、要はチャフグレネードの高機能版の様でしたね。
  一方通行みたいに補助演算に頼ったり、クーデター後のむぎのんや那由他みたいにAIM義肢使ってたりすると危ないのかも。
  もしくは触蜂ちゃんや電子電波系能力者みたいなのもアウトかもしれないけど・・・普通の能力者じゃ意味無いのかもね。
  今後気を付けます。


とりあえずグダグダ書きます。んじゃスタート。
604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/06(土) 22:27:02.11 ID:dij19S4DO
待ってました!
605 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/06(土) 22:35:46.49 ID:puhgvW3n0
 ―――とある日、AM10:30、学園都市第7学区、とある病院、特任教授(冥土帰し)研究室……






眠い。

とある医師―――冥土帰し(ヘブンキャンセラー)は革張りの椅子に背を預けながら呟いた。
只でさえ忙しい学園都市の病院なのに、此処最近更に患者の数が増えてきている。
万年医者不足に悩まされる現代社会とはいえ、この街のそれは異常だ……そう思う。

だが決して不満は漏らさない。
医者になると決めた時から我が身の運命は現場に預けたも同然である。
自分が他の医者の世話になるその日まで……だが、少なくとも自分はまだピンピンしている。


冥土帰し「だけど……僕も歳なんだよね」ハァ・・・


若くは無い。老体に鞭を打って頑張っている。厳しいモノだ。


御坂妹「失礼します」コンコンッ

冥土帰し「ん? ……どうぞ」


看護師の一人が研究室の戸を叩く。『妹達(シスターズ)』の長姉、とでも言うべきか……10032号。


御坂妹「内科の――先生から、403号室○○さんのレントゲンを回して欲しいとの事です。とミサカは業務連絡を伝えます」

冥土帰し「ふむ……一報くれればメールで送ったのに」

御坂妹「と、言われましても」クスッ・・・


未だにローテク(アナログ)な医師も多い。やはり新しい風が欲しいモノだ。


冥土帰し「君、医大に行ってみない?」

御坂妹「御冗談を。考えた事ありませんよ。とミサカは再度苦笑します」


だがしかし、妹達の演算機能を持ってすれば医師技術の習得など容易いのではなかろうか。


御坂妹「いえいえ。御姉様(オリジナル)ならまだしも、妹達(クローン)では先生の要求なさるレベルに達するまでは時間が掛り過ぎますよ」

冥土帰し「まぁアプリ的に医師技能を組み込むのも胡散臭いだろうからね……はぁ」

御坂妹「この街にも医科大はあるのでしょう。とミサカは初歩的な確認を取ります」


在るには有るが、殆どは『研究』の為の医科大だ。職業医の養成校など2,3在るか無いかだろう。
606 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/06(土) 22:54:43.16 ID:puhgvW3n0
では、と10032号が続ける。


御坂妹「直接御弟子を取ってみては如何でしょう? とミサカは提案してみます」

冥土帰し「弟子ねぇ。僕自身まだまだ未熟だというのに、そんな恐れ多い事はできないよ」ハハハ

御坂妹「……先生が未熟なら、世界中の全ての医者が生卵状態ですよ。とミサカは呆れてみます」フゥ

冥土帰し「大袈裟な……仮に弟子を取るとしても、君がなるかい?」

御坂妹「いえいえ。先程も言った通り……芳川女史や木山女史は如何でしょう? とミサカは安直なところを示してみます」

冥土帰し「確かに彼女達は優秀だが……、」


残念ながら別の夢がある。無闇にそれを奪う事など出来ない。


御坂妹「教師と兼任は如何でしょう。恰好良いと思いますが」

冥土帰し「医療の現場も教育の現場もそんなに甘くは無いよ。簡単な話じゃないんだ」

御坂妹「ふむ……難しいものですね。とミサカは小首を傾げます」


ただ個人的には、空間移動能力者(テレポーター)と透視能力者(クレアボイアンス)の医者が居れば心強いな、とは思っている。
レントゲン無し、メス無しの画期的・先未来的な手術。


冥土帰し「……高望みというか、SF思考過ぎるかな」ハハハ・・・

御坂妹「いえ。ただこの街に不可能はありませんから……ただその両名が都合よく医者に、というのは難しいでしょう」ト、ミサカハ・・・


だろうね、と呟き。冷めたコーヒーを啜った。


冥土帰し「ま、現実逃避は止めてそろそろ次の仕事に移ろうか」

御坂妹「そうですね。と、その前にレントゲンを」コクッ

冥土帰し「ああ、うん。えっとデータから落として……―――」




 ゴガンッ!!




冥土帰し「―――……、」ピタッ・・・


部屋が……いや、多分病院全体が揺れた。


御坂妹「じ、地震!?」ギョッ・・・

冥土帰し「いや……『いつも』のだ。地下だろ」ハァ・・・

御坂妹「え……あ……でも、昼間ですよ!? とミサカはあの『二人』の非常識っぷりを……あ、いつもの事だ」タラー・・・

冥土帰し「ハァ……ちょっと行ってくる」テクテク・・・


地下に拘束・監視室(という名の遊び場)を与えている『二人』の所為だろう。
まぁ病院内に上がって来ないだけマシだと考えよう……じゃないと、やってられません。
607 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/06(土) 23:10:06.83 ID:puhgvW3n0
 ―――とある日、AM10:45、学園都市第7学区、とある病院、地下隔離施設……







テレスティーナ「―――……んー、如何?」ガチャンッ・・・プシュウウウゥ・・・

垣根「うーん、やっぱあんまり変わってねぇな」バサバサ・・・

テレス「そんじゃあもう一段階だけ上げてぶっ放してみるわ」Pi・・・キュイイイイィ・・・

垣根「砲身持つの?」ポリポリ・・・

テレス「前よか頑丈」ジジジジジ・・・・

垣根「あいよー」バサバサ・・・ファサッ・・・


冥土帰し『……、』タラー・・・


テレス「じゃあもう一発イくわよー」ガチャコンッ!!

垣根「カモーン!」ファサッ・・・コイヤー!!

テレス「……ッ―――」ガジュンッ!!




 ビジバジバリバリゴギャンギギギギィ・・・・・ズドンッ!!




垣根「ふぃ〜」バサバサッ!! ジュウウウゥ・・・・

テレス「―――……今度はー?」ガチャンッ・・・プシュウウウウウゥ・・・

垣根「威力は上がってるけどさー……砲身曲ってんぞ?」ジー・・・

テレス「大丈夫大丈夫。予備準備してあるから」ガチャッ・・・ゴトッ・・・

垣根「ありゃりゃ。何時の間に……まぁオレら暇だもんな」アハハ

テレス「御託は良いからもう一発付き合って。次予備電の半分使ってみるからー」カチャカチャ・・・Pi!

垣根「やれやれ。懲りないね」Hahaha!


冥土帰し『……君達。何してんの?』


垣根「あ、ジジイ」チラッ

テレス「見て分かんないのー?」カタカタカタ・・・タンッ!

冥土帰し『しかも……自家発電機(予備バッテリー)使って』

テレス「だから見たまんまよー……よし! 垣根ー。次こそドテっ腹に風穴開くわよー」ガチャンッ!

垣根「言ってろー。俺の未元物質(ダークマター)は贋作超電磁砲(レールガン・ダミー)なんぞじゃ傷も付かねぇぜー」ケラケラケラ!


冥土帰し『……、』ポチッ・・・


垣根・テレス「「あbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbッッ!!」」ビリビリビリッ!
608 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/06(土) 23:25:47.60 ID:puhgvW3n0
 一寸後・・・・・



垣根・テレス「「」」プスプスッ・・・プスー・・・・・


冥土帰し「……で?」ゴゴゴゴ・・・・・

垣根「だからぁ、テレスティーナのババアが贋作超電磁砲の発射テスト付き合えってぶべらぁっ!!」ゴンッ!

テレス「テレスティーナ『御姉様』、でしょ?」ゴゴゴゴ・・・

垣根「だからって焼き付いた砲身で殴るのって非常識じゃね?!」ギョッ!

テレス「存在が非常識なアンタに言われたくないわよ!」キー!

冥土帰し「喧しい」ギロッ・・・

垣根・テレス「「……うぃ」」ショボーン・・・

冥土帰し「ハァ……あのね。確かに僕は『地下内なら好きに暴れて良い』と言ったよ」

テレス「ええ」コクッ

垣根「言ってんじゃん」ブーブー!

冥土帰し「最後まで聞け不良少年……だがしかし、病院(上)に迷惑掛けて良いとは言ってない」

テレス「揺れの話? 避難訓練でもやっとけば良いじゃない」

垣根「スモーク焚く程度の何も起こらないツマんねー訓練よりマシだろー」アハハ

冥土帰し「……それだけじゃない。予備電に手を出すのは甚だ非常識だろ。『最悪』が起きたら責任取れるのかい?」

垣根「監督責任はジジイの役目なので俺らは無罪放免。はい、論破」キリッ!

冥土帰し「……、」ポチッ・・・

垣根「あbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbッッ!!」ビリビリッ!!

テレス「ぷふー! ざまー!」キヒヒヒッ!

冥土帰し「だから注意しにきたのだろう! ったく……正直、僕の身が持たないよ」ハァ・・・

テレス「歳だものねー。そういえば、アンタと御爺様(糞ジジイ)とどっちが上なの?」

冥土帰し「幻生くんの方が上じゃないかな……ってそんな事は如何でも良い」ジトー・・・

テレス「ノリノリじゃないの」クスッ・・・

冥土帰し「……、」スッ・・・

テレス「ああ、ごめんなさい! 何でもない、何でもない」アハハ・・・

垣根「くっそぉ……あの『御仕置きボタン』さえ奪えればなぁ」グヌヌ・・・

冥土帰し「邪な事考えるな。兎に角だ、自重してくれ。僕は君達に不自由はさせてないだろ?」ハァ・・・

垣根・テレス「「ふじゆーだー」」ブーブー!!

冥土帰し「……ハァ」ポチッ・・・



 ぎゃあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァ・・・・・・・・・・・・---



609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/06(土) 23:29:04.58 ID:Q1OMf6NDO
かwwきwwねww
テレスもおバカ木原ちゃんw
610 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/06(土) 23:53:39.24 ID:puhgvW3n0
冥土帰し「はぁ……駄目だ。付き合いきれない」グデェ・・・

テレス「クッソ! いってぇなぁ、オイ……、」シュウウゥ・・・

垣根「だって暇なんだもん! 俺ら部屋ROM専ちゃうもん!」ムキー!

冥土帰し「君ら立場分かってる? 犯罪者だよ?」ハァ・・・

垣根「じゃあ脱獄すっぞ! あ、嘘ですからボタンから手ぇ離してくぁbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbッ!!」ビリビリッ!

テレス「まぁ待遇良いのは知ってるけどさぁ……どうせ『懐け』でしょ?」

冥土帰し「懐けって……一応、精神病患者だよ。危険なね」

テレス「『上』が私達の事『飼い子』に出来るかもしれないって思って下した恩情だろうけどさぁ……無駄よ」

垣根「俺を飼い慣らしたきゃぁ理事長の椅子寄越せぉらっ!」ギャーギャー!

テレス「……そうね。私は超電磁砲の首が欲しいかも」ニヤニヤ・・・

垣根「あ。じゃあ俺も追加で一方通行の首ー」ニヤニヤ・・・

冥土帰し「もはや……神くんの所に送った方が良いかい?」スッ・・・

テレス「げっ!? 元革命軍切り込み隊長のキチガイ脳医学者……じょ、冗談よ。ま、せめて偶には外に出して欲しいわね」タラー・・・

垣根「え? 冗談?」ポカーン・・・

冥土帰し「……外出は認められない。規則だ」

テレス「じゃあ新しい規則を設けなさい」

冥土帰し「は?」

テレス「そうね……社会復帰練習・研修なんて如何?」

冥土帰し「そんなの詭弁だろう」

垣根「ふーん……でもさぁ。遠隔操作でビリビリ出来る様にすりゃ問題無いんじゃね?」

冥土帰し「……例えそうしても、君達が社会復帰できる可能性は皆無だよ」

テレス「だから詭弁で良いって言ってんでしょ。要はリフレッシュの為に外出させろ。無論暴れないから。そういう事」

垣根「なんなら警備員でも風紀委員でも第一位でも第三位でも、監視つけて良いぜ」ハハハ!

冥土帰し「……ったく。少し待ってってくれ。確認取ってくる」

垣根・テレス「「イィヤッホーゥイッ!!」」Yes!!
611 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/07(日) 00:21:41.89 ID:Wf4h1E7b0
 約一時間後・・・・・



冥土帰し「はぁ」ウィーン・・・

テレス「……で?」チラッ

冥土帰し「『病院内で断続的に地震を起こされるよりはマシ』だそうだ」ポリポリ・・・

垣根「そんじゃあ!」ガタッ!

冥土帰し「待て待て……普通じゃ外に出せないよ。やっぱり君らは危険すぎる」

テレス「あら、首輪(ネックレス)でもくれるのかしら?」クスクスッ

冥土帰し「大体合ってる……手錠(ブレスレット)だ」

垣根・テレス「「は?」」ポカーン・・・

冥土帰し「今から外出における条件を言う……―――」


@犯罪行為の禁止。 A都市外へ出る事は禁止。 B能力の『私用』は禁止。 C駆動鎧の持ち出しは禁止。


冥土帰し「―――……まぁ常識の範疇だろう」

垣根「『私用』ってのが気になるが……もしルール破ったら?」

冥土帰し「手首吹っ飛ぶよ。しかも連帯責任」コクッ

テレス「なっ!!? 意味分かんない! 勘弁してよ!」ダラダラ・・・

冥土帰し「あ、そうそう言い忘れたけど……D互いに200m以内から離れちゃダメだよ」

垣根・テレス「「嘘っ!?」」ギョッ!!

冥土帰し「ツーマンセル。絶対。別々のとこ行かせると収集付かないからね」

垣根「冗談キツいぜ」ハァ・・・

冥土帰し「あと外に出てからの君達の監視は衛星カメラで『上』が直接行う。もしくは誰か風紀委員・警備員が行くかもしれない」

テレス「こういう場合どうせ超電磁砲のダチとか来るんでしょ?」

垣根「いやー、案外なゆたんかもしんねーぞ? もしくは鉄装の姉ちゃんとか」ハハハ!

冥土帰し「さぁね。兎角、くれぐれも馬鹿はしない様に。分かったかい?」

テレス「爺さん。車貸してくれんのかしら?」

冥土帰し「無事返すなら貸すよ。壊したらテレスティーナの著作(キャパシティダウン)費用から弁償だから」

垣根「ざまぁ!」pgr!

テレス「……銃の携帯の許可が欲しいわ。もしコイツがカメラ外で強姦紛いな事してきた時の正当防衛の為に」ギロッ・・・

冥土帰し「無いとも言い切れないか……テーザー銃(スタンガン)だけ預けておこう」コクッ

垣根「食指が動かねぇっつの!」ベー!

テレス「チッ……後で泣かす」ギリリ・・・

冥土帰し「はぁ……ホント、君らの為にも、この街の為にも暴れないでくれよ」タラー・・・

垣根・テレス「「はーい(棒)」」

冥土帰し「……不安だ」ハァ・・・
612 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/07(日) 01:04:40.08 ID:Wf4h1E7b0
すいません。今日は触りだけ。次回から安価取ります。では!
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/07(日) 17:51:10.81 ID:ebPDsMDDO
614 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/14(日) 21:19:47.15 ID:f9syeuYc0
こんばんわ。
風邪やら仕事やらでアタフタしてました。


そんじゃ久しぶりに投下。
615 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/14(日) 21:35:39.73 ID:f9syeuYc0
<前回のあらすじ>
・垣根とテレスティーナが病院の地下で暴れまくったから、追い出されるよ。




 ―――とある日、AM11:30、学園都市第7学区、とある病院、関係者専用駐車場……





冥土帰し「いや、追い出す訳じゃないからね。キチンと帰って来なきゃダメだよ」

垣根「うい」ボー

冥土帰し「もし12時間半以内に病院の敷地内へ帰って来なかったら、自動的にその『ブレスレット』がドカンだからね」

テレスティーナ「はいはい。わーってる」

冥土帰し「はぁ……不安だ」

垣根「心配すんなよ。ガキじゃねぇんだから」

冥土帰し「君達はそん所そこ等の悪童よりも性質悪いから注意してるの……手首から先、無くしたくないでしょ」

テレス「あら、心配してくれるの。お優しい事」

冥土帰し「君らに巻き込まれる人達の事が心配なの。あと僕の車」

垣根「ははは。防弾加工のクラウンがそう易々と傷つかねぇだろー」

冥土帰し「君達に『絶対(常識)』は通用しないでしょ」

垣根「だはははは! まーなー」

テレス「とりあえずちゃんとガソリン満タンにして返すから安心なさいよ」

冥土帰し「……はぁ」

垣根「ジジイ、考え過ぎだって。別に俺ら過激運動家みてぇな脳味噌してねぇからよ。兎に角、時間勿体ねぇからさっさと行こうぜ」

冥土帰し「……一応、親切心として犯罪手前な事しそうな時は『警告』してあげるよ」

テレス「は? 警告?」

冥土帰し「これ」ポチッ

垣根・テレス「「アbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbb・・・…」」ビリリリリリリリッ!!

冥土帰し「……OK?」

垣根「……ご親切に、あんがとよ」プスー・・・

テレス「チッ……気ぃ付けるわ」プスー・・・
616 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/14(日) 21:50:02.72 ID:f9syeuYc0
 一寸後・・・・・



垣根「はぁ……外に出られたのは嬉しいが、手前ぇとデートたぁ何ともなぁ」

テレス「まんまお返しするわよ」

垣根「……んで? 行く宛ては?」

テレス「私は最後に墓参り行ければ良いから。まずアンタの好きなとこで」

垣根「じゃあラブh……冗談だっつの。睨むな」タラー・・・

テレス「あのさぁ、例え私がトチ狂ってアンタと寝たとしても、それを監視(他人)に見られんのはゴメンだわ」

垣根「十分狂ってるっつの……てか、誰が俺ら監視してんの?」

テレス「さぁね。衛星でも暇そうな役人でも、何でも同じよ」

垣根「いっその事、間近に居てくれた方が気楽なのにな」

テレス「それはそれで御免よ。超電磁砲の妹達(クローン・トルーパー)が後ろ座席座ってたらイヤでしょ?」

垣根「んー……春子(14510号)や御坂丸(10039号)ならアリだな。デートしても良い」

テレス「アンタ、妹達(シスターズ)の違い分かるの?」エ・・・

垣根「会った事あるヤツらならな。あ、スネーク(17600号)とかファイズ(15555号)は無理だぞ。怖ぇから」アハハ・・・

テレス「……まぁ良いわ。で、とりあえずアンタ何処行きたいの?」

垣根「そんじゃあ……―――




・安価!  >>618 (行きたい場所、もしくは会いたい人)


617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/14(日) 22:25:49.88 ID:+rfTzdJz0
水族館
618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/14(日) 22:26:50.60 ID:gspgpTaDO
キテター! とりあえず広場で昼飯とか。
んで、超電磁砲組!
619 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/14(日) 22:35:39.71 ID:f9syeuYc0
垣根「―――……まぁ昼飯食おうぜ」

テレス「昼飯? ……そうね。そんな時間か。メニューご希望は?」

垣根「ジャンクフードいっぱい」キッパリ!

テレス「……あのさぁ」

垣根「ホットドック。バーガー。山盛りポテト!」ビシッ!

テレス「……久しぶりの外よ? レストランとか」

垣根「安っぽいのが喰いてぇ! 病院の健康食みたいなのじゃなく脂っこいの!」ニャー!

テレス「……はぁ。ファミレスか大広間、ね」





―――とある日、AM11:50、学園都市第7学区、コンサートホール前大広間……





テレス「はい、とーちゃく」キキッ

垣根「んーっ!! この平凡な賑わい! 久しいねぇ!」ウイー!

テレス「……私、そこのカフェでサンドイッチでも頼むからアンタ勝手に出店回りなさい」

垣根「あいよー」テクテク・・・

テレス「あ、そうだ。あんまり離れ過ぎるんじゃないわよ。爆発したくないから」

垣根「わーってる。飯買ったらオマエんとこ戻るからさ。オープンカフェにでも座ってろ」バタバタ・・・

テレス「……何だかんだ言っても、ガキか」フッ・・・
620 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/14(日) 23:03:01.82 ID:f9syeuYc0
 一方・・・・・



御坂「あー……あづぃ」グデェ・・・

白井「同じく、ですの……あ、クラッとした」クラァ・・・

佐天「んもー。いっつもクーラーガンガン利かせて寝てるからですよ」ムンッ!

初春「いや……そういうの抜きでも暑いですよ」ウハァ・・・

春上「初春さんの髪飾りのシナシナさが物語ってるの」ウー・・・

佐天「やれやれね。仕方ないから私がフローズンでも買ってきてやりますか」グイッ!

御坂「え、いや、悪いよ。私も行くって」スッ・・・

佐天「良いから木陰で待ってて下さい。あ、とりあえず味は私チョイスで良いですよね」ニカッ!

白井「では、御言葉に甘えましょうか」

春上「佐天さんの分は皆でカンパなの」

佐天「えへへ。ありがと」クスッ・・・


御坂「……佐天さん、何であんなに元気なの?」

白井「クーラー使わないからとか……じゃないですわよね」

初春「純粋に体力の差かと……能力抜けば私達の中で一番スタミナとか根性ありそうですからね」アハハ・・・

春上「もしかして……この後のデートかも、なの」ボソッ・・・

御坂・白井・初春「「「なんぞ!?」」」ガタッ!!

春上「あ、あははは。冗談なの。憶測にすぎないの」タラー・・・

初春「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あの男娘、佐天さん魅了したら泣かす」ギリリ・・・

御坂「……で、でーと」ポー・・・

白井「んぎゃあああああぁっ!! お姉さまがあのウニ猿野郎とドッキュンな自分を妄想してトランスしなすったあああぁっ!!」ウギギギ!

春上「……何だかんだ言って、皆元気なの」アハハ・・・
621 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/14(日) 23:32:14.95 ID:f9syeuYc0
 <かき氷屋>



佐天「ありゃりゃ……混んでるわ」タラー・・・


垣根「もごもきゅもぐ……ん? かき氷か……喰いてぇけど並ぶの面倒だな」チラッ・・・


店員「―――お待たせしました。ご注文をどうぞ」

佐天「えっと……ストロベリーとブルーハワイ、レモンを二つずつ」

垣根「アセロラ梅酒練乳マシマシ味とブルーチーズはちみつあずき味も追加だ。あとストロベリーサンデーは別の袋で寄越せ」

店員「え、あ、と」ポカーン・・・

佐天「な、はい!?」ギョッ!?

垣根「金は全部俺が出すから。万札で悪いな。釣りは全部この子に」バンッ!

店員「え、えっと……かしこまりました」タラー・・・

佐天「ちょ、あ、その……はぁ?!」ポカーン・・・

垣根「悪ぃ。並ぶの面倒臭ぇから割り込ませて貰った。金は迷惑料って事で取っとけ」モキュモキュ・・・

佐天(な、何この人……両手いっぱいにジャンクフード抱えて訳分かんない事言ってる)タラー・・・

垣根「おーい、聞いてる?」モキュモキュ・・・

佐天「え、あ、あははは……何と言って良いか」タラー・・・

店員「……あー、そのお客様。申し訳ありませんが『アセロラ梅酒』は未成年には販売が」タラー・・・

垣根「……あー」


 Ppppppppp!


垣根「げっ、こんなんも犯罪に……じゃ、じゃあキャンセルで」ダラダラ・・・

店員「はぁ」コクン・・・

垣根「……のかわり、さっさと持って来い。俺がフライドチキン喰い終わる前までにな」

佐天(何この人……非常識っていうか、変人っていうか)アハハハ・・・

垣根「ん? フランクフルト食うか?」

佐天「い、いや……結構です。(この糞熱い時によくそんなものを)」タラー・・・

垣根「じゃあ俺のフランクフルトをお食【Ppppppppppppp!】なあああぁんでもない!!」ダラダラ・・・

佐天「は、はぁ?」ポカーン・・・


テレス「腕輪、鳴ってる……あんの糞野郎。連帯責任とかマジざけんなよ」ビキッ・・・
622 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/14(日) 23:55:10.19 ID:f9syeuYc0
 一寸後・・・・・



店員「お待たせしました。此方ストロベリーサンデーの袋です。ありがとうございました」

垣根「あいよ、どーもね」テクテク・・・

佐天「えっと……ありがとうございます」

垣根「後ろの客に恨まれる役を押し付けたんだ。金で謝礼だよ、謝礼」

佐天「はぁ……あの、お一人ですか?」

垣根「……今時の若い娘は逆ナンするの?」

佐天「い、いえ! そういうんじゃなくて!」アタフタ・・・

垣根「あはは。まぁ一人っちゃ一人だし、二人っちゃ二人だな」ケラケラ!

佐天「え?」

垣根「物理的な意味でも哲学的な意味でも……んー、二心同体?」

佐天(な、何この人。頭大丈夫かなぁ)タラー・・・

垣根「んで、オマエさんは?」

佐天「え、あ、私は友達と……ほら、あそこの面々です」チラッ・・・

垣根「ふむ」ジー・・・


白井「あ〜……融けますのぉ〜」グデェ・・・

御坂「うぁ〜、佐天さんまだかなぁ」ダラァ・・・

春上「……あ、佐天さん来たの!」

初春「何か連れも居ますね。男のひ……、」


佐天「ごめーん、お待たせ」テクテク・・・

垣根「……ふむふむ」ジー・・・


初春「」

白井「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うげっ。人間災害男」タラー・・・

御坂「だ、第2位(未元物質)」ダラダラ・・・

春上「ん?」ポカーン・・・
623 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/15(月) 00:30:10.47 ID:6OQYEC0j0
御坂「サテンサン……ソイツ」タラー・・・

佐天「え? あ、そうそう。この人、割り込みした謝礼にって奢ってくれたんだよ」

春上「む! 割り込みはいけないと思うの! でも奢って貰ったから何ともなんなの」ムゥ・・・

白井「えっと……うーん」チラッ・・・


垣根「もぐもぐ」ボケー・・・


白井(お、お姉さま)ボソッ

御坂(え、あ、うん……だ、大丈夫だと思うわよ。爆弾は導火線に火ぃ点けなきゃ爆発しないし)コクッ・・・

垣根「……ん?」チラッ・・・

白井「っ!! お、おほほほほ」タラー・・・

垣根「……ふむ」チラッ・・・

御坂「ど、ども」アハハ・・・

佐天「そういえばお名前をまだ聞いてなかったですね」

垣根「んー……エンジェル☆カッキーです。サインいる?」モグモグ・・・

佐天「え、あ、あはは……遠慮しときます」タラー・・・

垣根「そりゃ残念。んじゃ俺は自分のかき氷貰って帰るから」コクッ

御坂「……ほっ」タラー・・・

初春「……、」ジトー・・・

垣根「あ……何で俺ガン飛ばされてんの?」

佐天「へ?」ポカーン・・・

白井「う、初春!?」ギョッ・・・

御坂「ちょ、ま……え、えと、この子普段からこういう目付きで」ダラダラ・・・

垣根「……ふーん」ジー・・・

初春「……早く冷蔵庫に戻れ」ボソッ・・・

春上「はぅ?」ポカーン・・・

白井「な、ちょ、初春!?」ダラダラ・・・

御坂「こ、この子暑さで頭ん中ハワイアンになっちゃってるんです。気にしないで」アワワワ・・・

垣根「……、」ジー・・・

初春「……過去の人(笑)」フフフ・・・

垣根「」ビキッ・・・

白井「んなっ、ちょ、アンタ何でそんなに喧嘩腰なの!!?」ダラダラ・・・

御坂「お兄さーん、押さえて押さえて」ダラダラ・・・
624 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/15(月) 01:33:02.27 ID:6OQYEC0j0
春上「えっと、初春さん」タラー・・・

初春「……、」ジトー・・・

佐天「ちょっと、この人何もしてないってば」タラー・・・

垣根「……んー」ポリポリ・・・

白井(ど、どうしますのぉ!?)タラー・・・

御坂(チッ……最悪、意表ついて『弾丸(コイン)』ぶっ放せば)グッ・・・


 Ppppppppppppppppppp!


一同『え?』

垣根「……は?」


テレス「こんのぉ……死ねボケナス!!」ガンッ!


垣根「うごっ!!?」ガンッ!

一同『なっ!!?』ギョッ・・・


テレス「ったく。少し目ぇ離せば犯罪行為を……って、あら」チラッ・・・

御坂「げっ……面倒なの二人目」タラー・・・

白井「人間災害女(テレスティーナ)!!?」タラー・・・

春上「っ」グッ・・・

テレス「……やれやれ、ね」ハァ・・・

垣根「……こんの、糞ババア! いきなり何しやがる!! ゴミ箱で頭殴んじゃねぇ!!」ギロッ!!

テレス「喧しい。テメェ、何度アラーム鳴らしゃあ気が済むのよ! 連帯責任忘れたの!」ギロッ!!


御坂「え、と……え」タラー・・・

佐天「ちょ……誰か今の状況詳しく」タラー・・・

白井「……応援呼んだ方が良いのかも」

春上「多分……那由他ちゃんに連絡した方が早いの」ウーン・・・

初春「……迷惑人間共」ジトー・・・
625 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/15(月) 02:15:34.85 ID:6OQYEC0j0
御坂「えっと……て、テレスティーナ」ジー・・・

テレス「あん?」チラッ・・・

御坂「何でアンタ、此処に……あと第二位も」タラー・・・

テレス「……外の空気吸って来いって追い出されたのよ」フンッ・・・

白井「信じがたいですわね」タラー・・・

テレス「じゃあ爺さん……冥土帰しにでも聞いてみなさいよ。マジだって言うから」ケッ

垣根「ったく……勘弁してくれよな」チッ

テレス「うっせぇ。ロリコンメルヘン犯罪者。死ぬならテメェ一人でおっ死ね」

垣根「そりゃコッチのセリフだ! 狂気のマッドサイエンティスト!」ベー!

テレス「どこぞの厨二病みたいな呼び方するんじゃねぇ! 良いからさっさと行くわよ」グイッ!

垣根「いぢぢぢぢっ! 耳引っ張んな!!」ウギャー!

御坂「……随分、大人しいわね」ジー・・・

テレス「『首輪』掛けられてるから暴れられないのよ。私もコイツも……だから『喧嘩』はまた今度ね」クスクス・・・

御坂「いや、遠慮しとくわ」タラー・・・

テレス「あら、最近じゃ第4位と喧嘩相手(ラブラブ)してるそうじゃない。好敵手(前妻)としては悲しいのよ」ククク・・・

御坂「うっさい! 早く塀の中に戻っとけ」タラー・・・

白井「ラブラブ……前妻……ジェラスイィィイイイイイイィッ!!」ムキー!

初春「痴女は黙ってて下さい」ビシッ!

テレス「……ま、近い内にね。そちらの無能力者さんや絶対能力者(仮)さんも」ニヤッ・・・

春上「っ……、」ビクッ・・・

佐天「……会わない事を願ってます」ジトー・・・

垣根「……俺空気なの」ショボーン・・・

佐天「あ、えっと、エンジェル☆ポッキーさんも、さようなら」ペコッ

垣根「」チーン・・・

テレス「ぷっ……行くわよ、ポキネ」プルプル・・・

垣根「う、うっせぇ死ね」ムキー!


佐天「はぁ……嵐みたいな人達ですね」アハハ・・・

御坂「実際『災害レベル』の犯罪者だから」タラー・・・

春上「……あの人、やっぱり怖いの」


垣根「ったく……そういえば、絶対能力者(仮)って何ぞ?」

テレス「失敗作。所詮、異〜強能力(レベル2,3)止まりでしょうね」

垣根「は?」

テレス「……絶対能力(レベル6)なんて御伽噺、って事よ。兎に角、車戻るわよ」テクテク・・・
626 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/15(月) 03:18:20.80 ID:6OQYEC0j0
 <車内・・・・・>


垣根「んじゃ、次オマエ選べよ」

テレス「アンタ選べば良いでしょ」

垣根「何だよ。行きたい場所無ぇのか?」

テレス「……色々在り過ぎる。でも別にメールのやりとりですむ場所ばっかだから」

垣根「は? ビジネス?」

テレス「アンタと違って獄中で無為徒食してるわけじゃないのよ」

垣根「ふーん……まぁ良いや。兎に角オマエが選べよ。ビジネス関係でも、プライベートでも良いからさ」

テレス「そんじゃ……―――


 >>628
627 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/08/15(月) 06:03:43.16 ID:lyZ4cKrAO
か そ く し た
628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/15(月) 06:48:56.27 ID:aJBvp5X70
美術館で、固法と麦野&絹旗、その後心理定規
629 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/16(火) 19:39:37.86 ID:2ctRio0K0
こんばんわ。寝落ちてました・・・続きです。
630 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/16(火) 20:02:05.04 ID:2ctRio0K0
テレス「ちょっと気になる『モノ』があるから、そこ寄っていい?」

垣根「気になる物?」

テレス「近くの美術館よ。興味無かったら車で寝てなさい」

垣根「美術館ねぇ。怪盗ごっこでもするのか?」

テレス「アホ。手首フッ飛ばしたくは無いわよ」

垣根「ははは。純粋な興味って事ね。どーぞどーぞ」




 ――とある日、PM01:30、学園都市第12学区、都市立第二美術館……




垣根「第12学区か……何で9学区の第一館の方じゃないんだ?」

テレス「気になるモノが有るって言ったでしょ。アッチには用は無い」

垣根「ふーん……で? 何見んの?」

テレス「……、」テクテク・・・

垣根「教える気無し、と……やれやれだねぇ」ハァ・・・


 < 碑石館 >


垣根「……しっかし、気色悪い品ばっかだな」キョロキョロ・・・

テレス「この学区は何処もそんなモノばっかでしょ」

垣根「神学を科学側からアプローチね。何か分かるのかよ。てか何調べてんのかもよく分かんねぇな」

テレス「あら? アンタの得意科目じゃないの? 此処に有る『モノ』の多くは『未元』な物ばかりじゃない」

垣根「何て言うかさぁ……俺自身、自分の産み出す『物質』は理解し切れてないんだ。だから此処に有るモンだって分かんねぇって」

テレス「へぇ……そこの岩石とかは? まさに『未元物質』じゃない。まるで知らないの?」

垣根「だからああいうの、如何見たってオカルトだろ。隕石だか魔石だか知らねぇけど、何でこの街(科学側)で取り扱ってんだ」

テレス「考古学=科学って括りなんじゃない?」

垣根「じゃあ尚更知らない。俺は考古学者でも民俗学者でも無ぇからな」

テレス「……使え無いヤツ」

垣根「うっせぇ。さっさとお目当ての品んとこ行け」チッ・・・
631 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/16(火) 20:34:01.38 ID:2ctRio0K0
 一寸後・・・・・


テレス「……此処ね」

垣根「なぁにこれぇ?」ポカーン・・・

テレス「さぁ。とりあえず未元物質(ダークマター)」

垣根「一緒にすんな……えっと『化合石』?」

テレス「それは科学側からの呼名でしょ。そこの資料見てみなさい」

垣根「『Azoth』……あぞっす? 何……オカルト誌?」

テレス「アゾット。研究資料よ」

垣根「えっと……医学……錬金術……黄金……000……00,0……何ぞ?」

テレス「それ『アインソフオウル、アインソフ、アイン(000 00 0)』って読むの」

垣根「……で?」

テレス「医術や科学ってのは一部の賢者しか知り得ぬ知識だった。故に昔は奇術だの魔術だのオカルト扱いされてた」

垣根「あー……魔女の理屈?」

テレス「『魔術師・賢者=科学者・医者』論。その理屈でいくと『絶対能力者=魔法使い』なの」

垣根「まほ……へ???」

テレス「『神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの(SYSTEM)』の長ったらしい説明を、この6文字で省略できる……って考え」

垣根「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・へ???」

テレス「……アンタ、統括理事長(アレイスター)の論文読んだ事ある?」

垣根「んー……絶対能力論か? オマエ、まだ固執してんの?」

テレス「アンタも、でしょ」チラッ・・・

垣根「……別に」

テレス「どうだか。ま、兎に角最近これが入ってきたって聞いたからどんな『モノ』か気になったの」

垣根「ふーん……それだけ?」

テレス「盗めるなら盗んで研究したいけど、残念ね」

垣根「……俺の能力で産み出せるなら出しても良いけどよ」

テレス「アンタの能力で出せる物質ってランダムでしょ? 『この石』は規則に法った物質……の筈」

垣根「ランダムってか『昔』出した物質=『今』出した物質なのかすら把握できない」

テレス「相変わらず非常識ね……それって『原石』じゃないの? てかアンタ、超能力者になる前も未元物質使えたの?」

垣根「うーん……兵士ってのは銃を使う時、その銃がどんな物質で構成されてるか逐一把握するか?」

テレス「とりあえず『手段』としての『能力』なのね。そりゃまぁ科学者泣かせなこって」ハハハ・・・
632 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/16(火) 20:50:51.56 ID:2ctRio0K0
テレス「まぁ良いわ。とりあえずどんな『モノ』か見れたから」クルッ・・・

垣根「ただのグミみたいな石みただけかよ……つまんねー」

テレス「つまんない事の積み重ねこそが知『識』なのよ。ガキには分からないでしょうけどね」クスッ

垣根「へいへい、ガキですよー」


 < レストラン >


垣根「とりあえず一服しようずら」

テレス「何その語尾。キモい」

垣根「うっせぇ……って、おろ? 珍しいのがいる」チラッ・・・


絹旗「むぅ……こう、ですか?」カキカキ・・・

麦野「おま……えー」タラー・・・

固法「……あはは」タラー・・・


テレス「……超電磁砲のツレの牛乳眼鏡だわ」

垣根「あとむぎのんと絹旗だな絡んで(弄って)くるか」テクテク・・・

テレス「じゃあ私煙草喫ってくる……あ、腕輪鳴らしたら打っ殺すから」ニコリ・・・

垣根「大丈夫大丈夫。安心しろ」

テレス「……はぁ」


絹旗「ぐぬぬぅ……どうしろっていうんですか」カキカキ・・・

麦野「だからこんなモンはネットのコピー張れば問題無いのよ。態々摸写するなんてアホみたいな」ハァ・・・

固法「まぁまぁ。こういう勉強は大事よ」クスッ

垣根「じー」チラッ・・・

絹旗「てか、こんな課題出されるなんてこれっぽっちも思いませんでしたし」

固法「普通の学校はこういう社会見学とか美術見学みたいなのやるものなのよ」

麦野「え? マジ?」

垣根「俺はしてないな」

絹旗「ほら、二人もしてないの、が、ぃ……た」ピタッ・・・

麦野「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」タラー・・・

垣根「こんにちわ。エンジェル☆カッキーです。願い事を3つだけ叶えてください。お願いします」ニヤリ・・・

固法「叶えて貰う側なんだ」タラー・・・

麦野・絹旗「「」」チーン・・・
633 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/16(火) 21:05:51.55 ID:2ctRio0K0
麦野「なっ……何でテメェが!!」ガタッ!

垣根「それはコチラのセリフでございますです」スッ・・・

麦野「ちょ! 何で私の席座るんだボケぇ!!」

垣根「えー。だって立ったじゃん。『ガタッ!』って」

固法「あー、えっと……こんにちわ。珍しいですね」タラー・・・

垣根「おう。お互いにな。蜘蛛の兄ちゃん元気?」

固法「うーん……多分」ポリポリ・・・

絹旗「今日はスロットデーなので諭吉三枚握って超朝早くから超長者の列並びに出かけむごぉっ!!」

固法「さ、最愛ちゃん、余計な事言わないで!」アワワワ・・・

垣根「……○モな彼氏持つと大変だな」

固法「ひ、ヒ○じゃありません!」カアアァ///

絹旗「ニートじゃないだけマシでしょう!」ムンッ!

麦野「絹旗。ヒ○モはニートと同じ様な物よ……って、だから何でアンタ此処にいんだっつの!」ギロッ!

垣根「居ちゃ悪い?」

麦野「チッ!」ビキッ!

固法「あー、押さえる抑える……垣根さん。何で美術館にいるのかなぁって」

垣根「テレスティーナが此処来たいっていうからついてきた。特に意味は無かった。以上」サラッ

麦野「ムキー! 何で美偉の質問には応えんのよ!!」ギリリ!

絹旗「物腰と人間性の差でしょうねってぁキャンっ!」ゴンッ!!

固法「こら、麦野さん。そんな牙剥き出しにならないの」メッ

垣根「そーだそーだ」ニヤニヤ・・・

麦野「ぐににぃ……、」メラメラ・・・

固法「垣根さんも喧嘩売らないの。小学生の男の子みたいよ」メッ

垣根「……うぃ」ショボーン・・・

絹旗(相変わらず姉貴さんは対超変人相手には超強いですね)アハハ・・・
634 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/16(火) 22:34:40.45 ID:2ctRio0K0
垣根「んで? オマエらは?」

麦野「誰が教えるか!」フンッ!

固法「最愛ちゃん教えても良いの?」チラッ

絹旗「うーん……まぁ別に邪魔にはならないので構いませんよ」

固法「あはは……最愛ちゃんの宿題の為に来たんです」

垣根「は?」

絹旗「これ」スッ・・・


 【形容しがたい何かの絵】


垣根「……未元物質?」タラー・・・

絹旗「絵巻物の……えっと……演奏会? だかの絵を描きました」

垣根「……えっと」タラー・・・

固法「あー、その、社会のレポート課題なんだって。奈良・平安時代の貴族について、だっけ?」

絹旗「はい。オマエだけ社会見学で美術館行ってないから行けってセンコーに言われました。パンフレットと絵日記を提出だそうです」

垣根「……何それ」タラー・・・

固法「普通の宿題ですよ。ね?」クスッ

絹旗「はい」ニカッ!

垣根「あー……ちょっとむぎのん。こっち来い」ボソッ

麦野「むぎのん言うな! ったく……アンタら続きやってなさい」テクテク・・・

固法「はいはい」

絹旗「帰ってくるまでに終わらせときますよ」カキカキ・・・


麦野「……んで、何?」

垣根「絹旗何やってんの?」

麦野「だから説明通りじゃない」ハァ・・・

垣根「じゃなくてさぁ……何つーか」ポリポリ・・・

麦野「……、」ムゥ・・・


絹旗「ふむ……やっぱ色鉛筆よりクレヨンの方がベタ塗りしやすいですね」カキカキ・・・

固法「あ、あははは……(ベタ塗りとかそれ以前に、絵心が……最早画伯よ)」タラー・・・
635 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/16(火) 23:01:02.90 ID:2ctRio0K0
麦野「……宿題なんかする必要ない、って言いたいんでしょ?」チラッ・・・

垣根「そういう事った」

麦野「研究と仕事だけしとけば自動的に博士号まで取れる……私達みたいなのはそうよね」

垣根「いや、まぁ勉強すんなとは言わねぇけど……何であんな無意味な事してんのかと」

麦野「ほんと……無意味よね」ジー・・・


絹旗「あ。黄色の芯が殆ど無くなりました」アリャリャ・・・

固法「鉛筆削りは……無いのね。じゃあカッター貸して。削っといてあげるから」

絹旗「カッターで削るんですか?」ポカーン・・・

固法「カッターで芯削るの意外と面白いのよ。今度教えてあげるから今は別の色塗りなさい」フフッ

絹旗「はい。りょーかいです」カキカキ・・・


垣根「……んー」ポリポリ・・・

麦野「絹旗のヤツ、学校から郵送されて来たプリントを美偉に見せたのよ」

垣根「ん」コクッ

麦野「それで色々聞かれて、呆れられて……一緒に美術館行きましょうって事になったの」

垣根「一人で行けっつの」

麦野「無理よ。絹旗って……実は一人じゃ何も出来ないタイプ。人見知りだし、一般常識欠けてるし」

垣根「でもなぁ」

麦野「アンタが思ってる事は私も思ってるわ。でもね……、」ハァ・・・


絹旗「何で帽子の色が一人一人違うんですかねぇ。微妙な色なんて持ってませんよ」ムゥ・・・

固法「烏帽子(えぼし)っていうの。色によって階級を示していて紫が一番偉い……だったかな。香焼くんが詳しいから後で聞いてみなさい」

絹旗「ふむふむ。でも女性は誰も『えぼし』被ってませんよ?」

固法「政治に関わる女性は少なかったからね。その代わりに華やかな着物で着飾ってるでしょ。十二単っていって名前通り12の―――」

絹旗「へぇ。超動き辛そうですね……でも和服かぁ―――」


垣根「……見る限り、ただのガキだな」

麦野「能力無きゃ、社会不適合でコミュニケーション障害持ちの理系だけズバ抜けて出来る学習障害児ね」

垣根「オマエ、相変わらず言葉悪ぃな」

麦野「ほっとけ……とりあえず『普通の女の子』にしたいんだとさ」

垣根「普通、ねぇ。それをオマエが良しとするのか?」

麦野「……さぁ」

垣根「オマエは普通の女の子宣言しないの?」

麦野「そいつはテメェがインテリ優等生宣言する様なもんだわ」ケッ

垣根「ボクは知的で瀟洒な学園都市第二位の天才児ですよ」キリッ

麦野「くたばれ」

垣根「……オマエはやっぱ普通にゃなれねぇな」ハッ
636 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/16(火) 23:21:09.15 ID:2ctRio0K0
テレス「―――……さて、そろそろ行くか。垣根は……ん?」チラッ・・・


垣根・麦野「「……、」」ジー・・・


固法「うーん……最愛ちゃん。もう少し作文の書き方勉強しましょうね」アハハ・・・

絹旗「え? これじゃ駄目なんですか?」ポカーン・・・

固法「報告書(レポート)じゃなくて絵日記だから……あと『貴族』とか『平安』、『和歌衆』くらいは漢字で書きましょう」

絹旗「むぅ……PCじゃないんで変換できません」

固法「えっと……あとで辞書の引き方も覚えましょう。今は携帯で調べていいわよ」

絹旗「超面倒臭いです」ブーブー!

固法「だーめ。ちゃんと国語や社会も最低限は覚えましょ。じゃないと高校行ってから大変よ」

絹旗「兄貴さんみたいにですか?」

固法「えっと……先輩は中二レベルで勉強諦めたから」アハハ・・・

絹旗「成程。最低高卒じゃ無きゃ仕事に就けなくなりますね! 兄貴さんや浜面みたいに」

固法「え、えっと……そ、そうね。だからしっかり勉強しましょう(先輩、浜面くん。ごめんなさい)」タラー・・・


垣根「……暗部の仕事は如何したよ。一生食いっ逸れないぞ」

麦野「無駄よ。あの子、美偉と居る時は仕事の事一切頭に無いから」

垣根「……何だかな」ポリポリ・・・

テレス「……歪んでるわねぇ。アンタ達」ジー・・・

麦野「をわっ!?」ギョッ・・・

垣根「ヌッと現れんな! オマエは妖怪か何かか!」タラー・・・

テレス「んな非科学なモンに例えんな」

麦野「……あー」タラー・・・

テレス「ん? 第4位、何かしら?」

麦野「……何でもないわ」

テレス「そ。じゃあ垣根。そろそろ行くわよ」

垣根「ん、おぅ」コクッ
637 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/17(水) 00:01:49.15 ID:r6bw5nOG0
垣根「そんじゃ挨拶してっかな……おーい、ボイン眼鏡と超ペッタン娘ー」Ppppppppp!

テレス「腕輪鳴らすなボケナスっ!!」

絹旗「な、せ、セクハラです!」カアアァ///

固法「ったく……あ、テレスティーナ」チラッ

テレス「……ん」コクッ

絹旗「あ、那由他の叔母ちゃんです」

垣根「ぶっ……オバちゃん……、」プルプル・・・

テレス「チッ……先車行くわ」

垣根「ひゃはは。ひー、まぁ怒んなよ。俺も行くって。とりあえずじゃあな。絹旗、勉強頑張れよー」

絹旗「言われなくても超頑張ります。天才少女の私を嘗めないで下さい」フンッ!

垣根「自分の名前と能力名を漢字で書けるようになってから天才自称すんだな」テクテク・・・

絹旗「なっ!?」カアアァ///

固法・麦野「「同感」」コクッ

絹旗「むぅ……へ、変換出来れば良いんですよ! それか読めれば良いんです! N2って書けば良いんですよ!」ウガー!


垣根「当分残念な子のままだな」アハハ・・・

テレス「あんなんが大能力者ってんだから可笑しなモンよ」ハァ・・・

垣根「まぁ能力強度(レベル)については個人の人格やら倫理常識には依らないからな」

テレス「アンタが良い例よね」クスッ

垣根「うっせ。まぁでも……強度進化(シフトアップ)よりは人格矯正の方が楽かもな」

テレス「どうやって?」

垣根「どうやってって……うーん」ポリポリ・・・

テレス「……アンタも悲しいガキね」

垣根「喧しいわ。そんじゃあオマエは如何すりゃいいか分かるのかよ」

テレス「分かるわよ。大人だもの」

垣根「……あのさ。子供扱いすんなとは言わねぇが、そういうのに大人だの子供だの関係無いだろ」

テレス「うーん……そうね。とりあえず人生経験の差よ。学習装置(テスタメント)なり刷り込み(インプリンティング)なり」フフフ・・・

垣根「それは矯正じゃなく強制だろ」タラー・・・

テレス「冗談よ。兎に角、普通の子に育てるには普通の『温もり』が必要なの。あの子にはそのチャンスがある」

垣根「……らしくないな」

テレス「あら。私は一応『普通の家庭』を経験してるのよ。思春期辺りに色々あったけど……あの頃は何処にでも居る可愛いガキだったわ」

垣根「自分で可愛いとか言うなよ。気色悪い」

テレス「うっせぇ。オマエよりはマトモなガキだったって事よ。つっこむな」ケッ
638 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/17(水) 00:23:40.66 ID:r6bw5nOG0
 < 駐車場 >




垣根「……まぁ絹旗はさておき、問題は麦野だろ」

テレス「知らねぇし、興味無いわ」

垣根「……オマエの姪娘、アイツらと仲良いんだろ?」

テレス「那由他は那由他。私は私よ。第4位があの『置き去り少女』を如何しようが知ったこっちゃないのよ」

垣根「冷てぇのな」ケッ

テレス「……例えば、第4位が柔和になったとする。そしたら私にデメリットが生じるのよ」

垣根「は?」ポカーン・・・

テレス「『能力体結晶』……今は『体晶』ね。第4位、お得意さんだから」

垣根「……クスリか」

テレス「一応私の特許品なの。牢の中でも少しは私の利益になるわ」

垣根「表に出せないクスリなのに?」

テレス「理事会は『体晶』のデータ、重宝してくれてるみたいよ。需要が有る。研究者としてはそれでOKって訳」

垣根「……やっぱマッドサイエンティストだな。撃った銃弾の行く先は何処でも良いってか」

テレス「基本アフターケアはしない主義なの。研究者の本分ね。自己満足。自慰行為。それの何が悪い? って事よ」

垣根「オッカネェな、おい」ハハハ・・・

テレス「でもまぁ……今んところ、研究したい事無いし、する気力も無いけどね」

垣根「ふーん……じゃあもし俺の事を絶対―――」


????「はーい♪ ボスぅ☆」カツカツカツ・・・


垣根「―――能、力……ありゃ?」チラッ

テレス「……ん?」ピタッ・・・

垣根「……今はボスって呼び方、して欲しくないね」

テレス「……、」フーン・・・


心理定規「ツれないわね。折角会いに来たのにー」クスクス・・・

テレス「……監視、か」

垣根「かもな……まぁ、御苦労な事って」ポリポリ・・・
639 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/17(水) 01:04:14.06 ID:r6bw5nOG0
心理定規「ソチラのお姉さんは……木原の暴走令嬢ね」ペコッ

テレス「……、」

心理定規「私は彼の部下、かな?? そんなとこよ♪ よろしく〜☆」

垣根「まったく……んで? 何か用有ったんじゃないの?」

心理定規「まぁ色々とぉ……まずコレをボスにー♪」スッ・・・

垣根「ん……メールで送ってくれりゃ良かったものの」

心理定規「だって病院居ないんでしょ? メール届かないじゃなーい。それに御顔も見ておきたかったの」クスクス・・・

垣根「ほぉ。殊勝な事って」

心理定規「うーん、問題無さそうねぇ。でも少し垢抜けしたかしら??」

垣根「元々垢なんて無いぜ」ハハハ!

テレス「垢塗れだろ。心も体も」ケッ

垣根「うっせ。ったく……それで、外部に委託出来たか?」ボソッ・・・

心理定規「順調順調♪ しかも周りも便乗しそうな雰囲気にぃ」フフッ・・・

垣根「……派手になりゃそれだけアイツを困らせる事が出来るからな」

テレス「……エンジン掛けとくわ」テクテク・・・

心理定規「あらぁ? 空気読んだのかしらん?」

垣根「……放っておけ。とりあえず他に今伝えなきゃならない事は?」

心理定規「そのチップの中に全部詰め込んだわよ♪ 私ってば敏腕でしょ」クスクス・・・

垣根「上出来だ。この後も頼むぞ」スッ・・・

心理定規「毎度ぉ☆」クスクス・・・

垣根「因みに……これだけか?」

心理定規「え?」

垣根「いや……もしかしたら監視かと思ってな」

心理定規「ああ……それなら貴方達ずぅっと付けられてるわよ」

垣根「はぁ!?」

心理定規「……内緒♪ そんじゃね。残り数時間楽しんで頂戴☆」テクテク・・・

垣根「……けっ」キョロキョロ・・・ハァ・・・
640 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/17(水) 01:40:46.28 ID:r6bw5nOG0
垣根「……お待たせー」ガチャッ・・・

テレス「大して待ってないわよ」

垣根「行って良いぞ」

テレス「ん? 監視じゃないの?」

垣根「いや、とっくにツケられてるって」

テレス「……そ。根暗な連中ね」

垣根「まったくだ。堂々と同席して欲しいもんだ。心理定規(アイツ)くらいふてぶてしくても良いのに」

テレス「そうね。でもアンタと同じくらい御喋りなのは勘弁よ」

垣根「……アイツは俺以上に御喋りだよ」

テレス「まぁ14,5歳くらいって考えたら仕方ない、か……アンタ、あの子に手ぇ出してたら犯罪よ?」

垣根「出す気無いけど、多分アイツ俺よりエロいよ」

テレス「んな事ぁ聞いてない。アンタの問題を言ったのよ」ハァ・・・

垣根「はいはい……んで、次は?」

テレス「アンタが決めなさいよ」

垣根「えー」

テレス「いいからさっさとしなさい」

垣根「……じゃあ―――



             >>642
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/17(水) 01:45:04.75 ID:oTJqvroDO
kskst
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/17(水) 01:48:05.09 ID:oTJqvroDO
ちょいと公園ぶらりしてたら削板軍覇と遭遇
643 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/17(水) 02:43:59.16 ID:r6bw5nOG0
垣根「―――そんじゃとりあえず、どっか公園にでも寄ってくれ」

テレス「は? 何で?」

垣根「……何となく」

テレス「意味分かんない」

垣根「……日和てぇだけだ」

テレス「……あっそ」




 ―――とある日、PM03:30、学園都市第7学区、とある公園・・・・・




テレス「此処でいい?」

垣根「ああ、何処でもいい」

テレス「……何するの?」

垣根「ボーっと……オマエ今の内に墓参り行って来ても良いぞ」

テレス「500m以上離れたらアウトでしょ」

垣根「あ、そうだっけ」

テレス「しっかりしてよ……とりあえずブラブラしてきたら」

垣根「オマエは?」

テレス「気が向いたら外出る」

垣根「へいへい。そんじゃあ行ってきます」バタンッ・・・


テレス「……ほんと、行動っていうか思考読めない男ね」フッ・・・
644 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/17(水) 02:53:47.61 ID:r6bw5nOG0
垣根「……平和だなぁ」テクテク・・・


子供「ワーイ♪ゝ(▽`*ゝ)( ノ*´▽)ノワーイ♪ ((*´∀`))((*´∀`))ケタケタ ((*´∀`))ヶラヶラ (^0^)ノヾ(@^▽^@ )ノわはは」


垣根「平和だねぇ……ベンチに座ってジュースでも飲むか」テクテク・・・


 チャリン・・・Pi・・・ガタンッ・・・


垣根「ヤシの実ソーダがメジャーだな」ヨイショッ・・・


??「そのヘルシーMixプロテインもイケるぞ!」ビシッ!


垣根「……あん?」チラッ

削板「いょう!」ニカッ!

垣根「……F(メンドイの)がいる」ハァ・・・

削板「はははは! まぁそういうなよ。メルヘン兄ちゃん」ケラケラ!

垣根「オマエこそ何でこんなとこに居んだよ、スポ根野郎」テクテク・・・

削板「パトロールだ! って、俺に奢ってくれないの?」チラッ

垣根「いや、自分の金は?」

削板「財布は持たない主義だ!」

垣根「……ほれ」ピンッ!

削板「お! さんきゅー! おつりは貰って良い?」パシッ!

垣根「図々しいヤツだなぁ……勝手にしろ」

削板「おう。いつか借りは返そう」ビシッ!

垣根「やれやれ。期待できねぇな」スッ・・・
645 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/17(水) 03:00:18.51 ID:r6bw5nOG0
 ワヤワヤ・・・・・


垣根「……、」チラッ

削板「ゴキュゴキュ……ぷはぁ! 拙い!」カアアァ!!

垣根「何で隣座ってるの?」エ・・・

削板「駄目か?」

垣根「……五月蠅くしないなら別に良いよ」

削板「おう」ビシッ!


 シーン・・・・・


削板「……むぅ」ムズムズ・・・

垣根「……、」ボー・・・

削板「ぐぬぬぅ」ポリポリ・・・

垣根「……、」ボケー・・・

削板「な、なぁ」ボソッ

垣根「あん?」

削板「何してんだ?」

垣根「何もしてないをしてる」

削板「お、おう」タラー・・・

垣根「……つまんねぇだろ。どっか行けよ」

削板「そう言われると、なぁ」ポリポリ・・・

垣根「因みに今俺能力使えないからな。喧嘩出来るかもと思って近づいたのかもしんねぇが諦めろよ」

削板「ベ、別に俺はそんな戦闘狂(バトルマニア)じゃねぇよ」

垣根「どうだかなぁ」ハハハ・・・


 シーン・・・・・


垣根「なぁ」ボソッ

削板「お、おう! 何だ?!」ビクッ・・・

垣根「……オマエ、友達居ないだろ」

削板「」チーン・・・
646 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/17(水) 03:16:16.71 ID:r6bw5nOG0
削板「い……居るぞ! 多分な! 最近増えてる!」ダラダラ・・・

垣根「ふーん……まぁ心配すんな。俺も少ない」ハハハ

削板「そ、そうか。その、ドンマイ」

垣根「というかさ、超能力者(レベル5)なんてそんなもんじゃね?」

削板「それは……アレだろ。人間性だと思うぞ」タラー・・・

垣根「じゃあアレか。超能力者たる輩は皆人格破綻者か」ケケケケッ

削板「……その理屈で言ったら、序列が高い程壊れてるって事になるぞ」ムゥ・・・

垣根「そんなんじゃね?」

削板「いや、まぁアンタと白いの(第一位)はそうかもしんねぇが……第三位はよぉ」

垣根「分かんねぇぞ。俺らの知らない所で色々壊れてるかもしんねぇし」

削板「……アンタ変な事考えるんだな。やっぱメルヘンだ。それともメンヘラってヤツか?」

垣根「メンヘラの意味分かって言ってるのか?」

削板「香焼の友達のノッポ神父はメンヘラ、らしいぞ」ウンウン・・・

垣根「……とりあえず知らないらしいな」

削板「兎に角だ。アンタ変だぞ」

垣根「オマエは物事簡潔に言うから気持ち良いな」ハハハ

削板「だはは。褒めるなよ」ポリポリ・・・

垣根「皮肉だよ」ケケッ

削板「ソイツは失礼」ケッ


 ワヤワヤ・・・・・


垣根「俺も、原石扱いされてたら変わってたのかなぁ」ボソッ

削板「お? 仲間入りするか?」ニカッ!

垣根「そういう話じゃないっつの……オマエはホント独特だから調子狂うんだよ」ハァ・・・

削板「だけど兄ちゃんさ、悪ノリとか大好きだろ? 俺はアンタのそういうとこ好きだぜ」

垣根「悪ノリね……まぁそうだな。メルヘンでコミカルな人生を送りたいのかもしれねぇ」

削板「よしっ! じゃあ俺と一緒にヒーロー活動を!」ビシッ!

垣根「俺はヴィランの方が好きだ」

削板「えー。アークエンジェルよりエンジェルの方が似合ってるぞ」

垣根「同一人物じゃねぇか……まぁどっちでも良いか。オマエは如何見ても超人(スーパーマン)だもんな」ハハハ

削板「まぁ不殺で全てを救うのが最高の正義の味方だからなー。全部根性で乗り切る! 根性論こそが人間の源だ!」ムンッ!

垣根「成程ね。それがオマエの宗教か。ソイツぁ素敵だ」ハハハ
647 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/17(水) 03:45:23.47 ID:r6bw5nOG0
削板「でもよ、兄ちゃんの中には正義は無いのか?」

垣根「俺の正義かぁ……考えた事無いかもな」

削板「うーん、まぁ野良犬をその日の気分次第で助けたり殺したりしそうだからなぁ」

垣根「んな狂っちゃいねぇさ。とりあえず俺が正義で、邪魔なのが敵だ」

削板「ジコチューだな」

垣根「オマエの正義だって似た様なモンだろ?」

削板「……でも如何していいか分かんない時は、ちゅんと人に聞くぞ。信頼できる人間にな」

垣根「信頼ねぇ。オマエ存外大人なんだな」

削板「また皮肉か?」

垣根「いや、素直に褒めてるよ」

削板「ありがとう。それじゃあ良い事教えてやるよ」

垣根「はいはい、教えて超人先生」

削板「ふむ! 根性だ! 以上!」

垣根「どーも……良い言葉だが、参考にならんわ」ハァ・・・

削板「死ぬ気でやれ。死なないもんだから、な!」ハハハ!

垣根「ははは……そうだな。死なないモンかぁ」

削板「ああ。正義に順じて死ぬ気でやれば死なないもんだぞ!」ビシッ!

垣根「……暗部とかでも」

削板「胡散臭いのは嫌いだが、この街の為に働いてるんだろ? イケない事か?」

垣根「そう言われると、何ともなぁ」

削板「まぁその中で非人道的な事してるんだったら『歯止め』が入る。そうだろ?」

垣根「歯止め?」

削板「『ヒーロー』の事だ。悪事はそう長続きはしない。絶対に救いが入る。運命ってか必然ってヤツだ!」

垣根「……ホント、楽観的だな」

削板「だけど、そういうモンだろ。世の中に悪が栄えた試しが有るか?」

垣根「じゃあ悪って何だっつの」

削板「大多数から見ての『敵』。この街のシステムだって同じだ。大多数が正義だろう」

垣根「この街自体が悪だとしたら?」

削板「そりゃ別の話だ。だけど少なくとも、この街の多くの人間(一般人)は悪じゃないだろ」

垣根「……、」

削板「とりあえず兄ちゃんの考えは間違って無いぞ。自分が立ってる場所が正義。んで何を味方にするか、護るモノとするかが課題だ」

垣根「それを違えたら?」

削板「誰かが止める。でも大抵残った方が正義だ。勝てば官軍、だっけか? 強ち間違いじゃねぇよ。だって悪は栄えないもん」ドンッ!

垣根「……良いな。その根性論ってか英雄論」ハハハ・・・

削板「よしっ! だったら今日から兄ちゃんもヒーローとして俺と一緒に!」

垣根「それは断る」ビシッ

削板「……おぅ」タラー・・・
648 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/17(水) 04:05:06.44 ID:r6bw5nOG0
 ―――一寸後、ワヤワヤ・・・・・



テレス「ん……何してんのよ、アイツ?」タラー・・・


子供A「ねぇ、こんじょーマン! さっきのスーパージャンプやって!」キラキラ!

削板「おう、見てろ……ふんっ!!」ブンッ!!

一同『おー』

子供B「……落ちてこないよ?」ジー・・・

垣根「大丈夫だ。飛んでる訳じゃないから自由落下で落ちてくる」

子供C「……あ! ホントだ! すんごい早さで落ちてくるよ!」

子供D「わー! えんじぇる兄ちゃんの後ろにかくれろー!」

子供s『きゃーきゃー!』ザザッ


削板「――……・・・・・・・・ぁぁぁあああアアアア、そぉいっ!!」ゴガンッ!!

子供s『うきゃぱー!』キャッキャッ!

垣根「……はぁ」ファサッ・・・

子供A「おー! やっぱスゲェな! じしょー超能力者(レベル5)は!」キラキラ!

削板「自称じゃない。マジもんだ!」フンッ!!

子供B「えー。でも能力に名前ついてねぇんだろー。じゃあ能力者じゃねぇじゃん。まー、すげーからカンケーねぇけど」ジー

子供C「それよりコッチのお兄ちゃんのツバサかっこいいよ!! もう一回出せないの!」キラキラ!

垣根「あー、えっと……オマエらがピンチの時にしか起動しないんだぜ。自動防御ってヤツだ」アハハ・・・

子供D「つまんねぇの。でも見た目カッケェから許してやるよ」ウンウン!

垣根「全力出せば飛べるんだぞ。そこのインチキジャンプと違って滞空ってヤツでな」ムンッ!

子供s『うそだー』ジトー・・・

削板「兄ちゃん、嘘はいけないぞ」ウンウン・・・

垣根「……泣けるぜ」ハァ


 ワヤワヤ・・・・・


テレス「何だか……楽しそうね」クスクス・・・
649 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/17(水) 04:37:43.17 ID:r6bw5nOG0
 ワヤワヤ・・・・・ワヤ・・・


子供s『じゃーねー!』ノシ

削板「気を付けて帰れよー。悪者に襲われたら俺を呼べー」ノシ

垣根「素直に風紀委員か警備員呼べよー」ノシ

子供s『はーい』パタパタ・・・

垣根「ふぁあ。疲れたな」グデェ・・・

削板「子供と遊ぶのは並の筋トレより体力使うからな。良いトレーニングになるぞ」ハハハ!

垣根「オマエのポジティブさが羨ましいよ」ハァ・・・


テレス「……珍しいわね」テクテク・・・


垣根「あ? まぁ……かもな」

削板「ん? 誰コレ?」

垣根「この街の有名なヴィランだぞ」

削板「へー。見た目は垢抜けしてんよ?」

テレス「貴方は第7位くんね。有名人とお会いできて光栄です」クスクス・・・

削板「えっと、はじめまして。削板軍覇です。好きな言葉は根性。嫌いな言葉は根性無しです。そうぞよろしく」コクッ

テレス「あらら。じゃあ私達二人とも嫌いな類じゃないかしら?」クスクス・・・

垣根「うっせ。俺は根性無しじゃねぇっつの。テメェだけだろ」ケッ

削板「あー……兄ちゃんの彼女?」チラッ

垣根「ただのカキタレの一人でぶぉ痛たたたたぁっ!!」ギュウウウゥッ!

テレス「……同僚、みたいなもんよ」フフフ・・・

削板「お、おぅ」タラー・・・

テレス「物分かりの良い子で嬉しいわ……さて、そろそろ帰るわよ。ボンクラ」ギロッ・・・

垣根「きゅぅ……こんにゃろー」グヌヌ・・・

テレス「君も、早いところ研究所に帰りなさい。所長さんが心配するんじゃなくて?」

削板「ジジイは俺の心配なんかした事ねぇぞ……って、ジジイ知ってるのか?」

テレス「私のお爺様(糞ジジイ)とも知り合いだったもの。相変わらずお元気? ギラギラしてる?」

削板「元気だぞ。ギラギラっていうよりキリキリしてるな」

垣根「あー、例の危険な所長か? 原石担当の」

削板「ジジイってそんな有名人なの?」ポカーン・・・

テレス「この街の開発当初から関わっていた人よ。見た目以上の年齢だから今度歳聞いてみなさい」フフッ

削板「……怖くて聞けません」タラー・・・
650 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/17(水) 04:52:58.40 ID:r6bw5nOG0
削板「まぁとりあえず、夜のパトロールに移動するよ。街中の方がチンピラ多いしな」スッ・・・

垣根「ん。頑張れよー」

削板「おう。兄ちゃんもなー」テクテク・・・


テレス「……不思議な子ね」

垣根「不思議っていうか、信じられねぇほど純粋なんだよ。そんでもって実際馬鹿じゃねぇ」

テレス「アンタみたいなもん?」

垣根「オレは純粋じゃねぇだろ」

テレス「……そうね」クスクス・・・

垣根「……行こう。十分日和った」テクテク・・・

テレス「了解っと」テクテク・・・


垣根「次は……って、そろそろ墓参り行かないと拙いか」チラッ

テレス「そうね……墓参り行って、夕飯食べて帰りましょ」カチッ・・・




 ―――とある日、PM05:30、学園都市第10学区、共同墓地……




垣根「墓場、かぁ」テクテク・・・

テレス「車で待ってなさい」チラッ

垣根「……掃除くらいは手伝うよ」テクテク・・・

テレス「掃除は、無駄よ」ボソッ

垣根「は?」

テレス「……、」テクテク・・・


 寸・・・・・


垣根「……成程。こりゃ無駄だわな」ジー・・・



 【・・・ざまぁ!! 死んで当然っ!! 天誅っ!! 百辺死ね!! 名前すら残すな!! この街の汚点っ!! ■■■■■!!・・・】



テレス「前よりは綺麗なモンよ……ただ、どんなに綺麗にしても墓荒しする馬鹿な連中が居るわ」テクテク・・・

垣根「オマエも那由他も、この墓に入るのか?」チラッ

テレス「さぁ。どうしようかしらね」カチカチッ・・・

垣根「……、」ボー・・・

テレス「悪の末路……逆に清々しいんじゃない?」フフッ・・・
651 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/17(水) 05:27:55.68 ID:r6bw5nOG0
 カー・・・カー・・・・・


テレス「……、」ジー・・・

垣根「……、」ボー・・・

テレス「……行くわ」スッ・・・

垣根「線香だけで良いのか?」

テレス「キリが無いもの。清掃はバイトを雇うわ……丁度良いのがいるから」

垣根「ん……なぁ」

テレス「何?」

垣根「この街から出てけば、荒されないんじゃねぇのか」

テレス「……この街の研究者はね。死んでも、この街から出れないのよ」

垣根「那由他もか?」

テレス「……気にする必要無いわ。死んだら終わりでしょ。実際、キチンと骨埋められた親族なんて数えられるほどしかいないし」

垣根「いや、でも残されたモンがさ……オマエらみたいに」ポリポリ・・・

テレス「じゃあ此処に入るのは、私で……最後よ。那由他は何れ何処かに養子に出すわ。児童相談所に動くよう冥土帰し(ジジイ)に頼めば」

垣根「……寂しいヤツ」フンッ

テレス「……言われなくても分かってるわよ」

垣根「死者に鞭打つのは、俺的には御法度だな」テクテク・・・

テレス「……何してるの?」

垣根「此処『K』ブロックだろ……あ、此処なんか目立つな。あれ? 『黒妻』って……何で蜘蛛男の墓あるの?」タラー・・・

テレス「アイツ戸籍上死んでるからよ……空き探し?」

垣根「俺だって死ねばこの下だろ。多分、木原(オマエ)んとこみたいに荒されるかもな」ハハハ・・・

テレス「……、」

垣根「でもよ……死んだ後くらい『普通』に暮れてぇよ。違うか? 非常識人その2」ボー・・・

テレス「……そうね」

垣根「もしオマエ死んだら、墓、街の外に移動させてやるよ。そんでもって那由他もそっちに送ってやる」

テレス「きっとアンタの方が早死にするわよ」クスッ・・・

垣根「はははは。そん時は線香の一本でも上げてくれ。あ、その前に墓作って貰えんのかなぁ。俺の死体って貴重そうじゃん?」アハハ

テレス「……腐れ縁って事で作ってやるわ。アンタにお似合いなのをね」

垣根「そりゃ頼もしいな。任せたよ」テクテク・・・

テレス「……その歳で死後の事考えるなんて世も末ね」

垣根「如何生きたか。如何死ぬか。永遠のテーマだろ? 動物は死に場所を求めて生きるんだよ」

テレス「アンタが哲学的な事言ってもメルヘンにしか聞こえないわ」クスッ

垣根「うっせ。帰るぞ」フンッ・・・
652 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/17(水) 06:11:40.15 ID:r6bw5nOG0
 ―――とある日、PM08:30、学園都市第7学区、とある病院、特任教授(冥土帰し)研究室……







冥土帰し「……ふぅ。一応終わりだな」グデェ・・・

御坂妹「お疲れさまでした、とミサカは労いの言葉を掛けます」

冥土帰し「君も上がって良いよ。夜勤じゃないでしょ?」

御坂妹「はい。しかしまぁ……平和でしたね、とミサカは当り前な事に苦笑します」

冥土帰し「あの二人か……ホント気が楽だよ」ハハハ・・・

御坂妹「今頃はご飯でも食べてる頃でしょうか、とミサカは推測します」

冥土帰し「そうかもね。僕もカップラーメンでも食べようかな」

御坂妹「先生、レトルトや肝移植は控えて健康的な物を食べて下さい、とミサカは医者の不養生を注意します」メッ

冥土帰し「はいはい、手厳しいね」ポリポリ・・・

御坂妹「……そういえば質問が」

冥土帰し「ん?」

御坂妹「あの二人って如何いう関係なのですか? とミサカは少々アダルティな答えを期待しつつ質問します」フフフ・・・

冥土帰し「……自称ヴィラン同士で良いんじゃない? 仲は良くも悪くもない」

御坂妹「……それだけですか?」

冥土帰し「もしかしたら一度くらい『寝てる』のかもしれないし、互いの部屋にすら入り込んで無いのかもしれない」

御坂妹「つまり知らない、と」

冥土帰し「そういう事。聞く気無いし、調べる気も無い。興味があるなら本人達から聞いてみれば」クスッ

御坂妹「……遠慮します」タラー・・・

冥土帰し「ははは。でもまぁ……あの二人は色々互いに共感してる部分はあるみたいだよ」

御坂妹「共感? 精神感応(テレパス)か何かでしょうか? とミサカは先生の謎掛けにヒントを求めます」

冥土帰し「謎掛けって程じゃないさ。言ったろ、彼らはヴィランだ。それも中途半端なヴィランじゃない」

御坂妹「悪役……ふむ」ポリポリ・・・

冥土帰し「結構似た者同士だよ。ただプライドは高いだろうから傷の嘗め合いに為りかねない性交はしないんじゃないかな」フム・・・

御坂妹「……私には、良く分からない」

冥土帰し「理解されても困るんだ。深く考えないでくれ」

御坂妹「はい」コクッ

冥土帰し「それじゃあ二人が帰ってくるまで仮眠を取るよ。車がついたら夜勤担当の妹達に僕を起すよう伝えてくれ」

御坂妹「了解しました。ではミサカはこれで失礼します」ペコッ・・・

冥土帰し「……ヴィランは敗れる決まり、か。だが生きてれば悪役だろうが英雄だろうが助けるんだよ」ボー・・・
653 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/17(水) 07:18:22.51 ID:r6bw5nOG0
 コンコンッ・・・・・


冥土帰し「ん?」

御坂丸「失礼します」

冥土帰し「まだ何か……ああ、10039号かい?」

御坂丸「はい。先生、今さっき先生の車が到着した模様です、とミサカはいきなり報告します」

冥土帰し「思ったより早いな。車に外傷無い?」ハァ・・・

御坂丸「ええ。如何しますか?」

冥土帰し「……すぐ行くよ」ヤレヤレ・・・

御坂丸「ご一緒しましょうか? とミサカはお疲れの先生に提案します」

冥土帰し「いや、大丈夫だ。通常業務に戻って良いよ」テクテク・・・

御坂丸「了解です。何かあればミサカのPHSに連絡お願いします」ペコッ・・・

冥土帰し「……さて、何してきたのやら」フム・・・テクテク・・・



 < 関係者用駐車場 >



冥土帰し「……御帰り」テクテク・・・

垣根「出迎えどうも」

テレス「ちゃんとガソリン満タンにしておいたわよ」

冥土帰し「そりゃ殊勝。それより、思ってたより早かったね。もうちょっと夜遊びしてくるのかと思ったよ」

テレス「コイツと二人で夜遊びなんて色んな意味でオッカナイ」

垣根「失礼なヤツ。俺ぁ神士だっつの」

冥土帰し「まぁとりあえずは問題無し、と……この調子で地下でも大人しくしててくれ」

垣根「気分次第だな」

テレス「そうね。暴れそうになったらまた外出してよ」クスッ

冥土帰し「度し難い連中だね」ハァ・・・

垣根「はいはい、さーせん。そんじゃあオレは先寝るぜ。お休みさん」テクテク・・・


冥土帰し「……変わった事は?」

テレス「さぁ。相変わらずメルヘンだった。ま、ちょっとだけネガティブだったかも」

冥土帰し「そう……とりあえず君も休みなさい。研究したい事があるならまた明日からね」

テレス「ねぇ」チラッ

冥土帰し「ん?」

テレス「私達は貴方の、患者? それとも別の何か?」

冥土帰し「……偽りでもカルテがある以上は患者なんじゃない?」クスッ

テレス「適当なんだか、優しいんだか」

冥土帰し「少なくとも今は敵じゃない。それで良いだろ……あとまぁ、嫌いじゃないさ。二人ともね」テクテク・・・

テレス「……ジジイも大概、メルヘンかもね」クスッ・・・
654 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/17(水) 07:21:42.24 ID:r6bw5nOG0
お疲れさまでした。グダグダだったけどこの小話(?)終わり。
次は次に票が多かった『あまくさっ!ぷらすっ!』をちょこっとやろうかと思ったけど……どうしようね。


とりあえずまた次回。質問意見感想罵倒等などよりしくねー。では! ノシ”
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/17(水) 10:26:54.38 ID:oTJqvroDO
>>1


面白かった
即興でできるってすごいね
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/17(水) 15:57:54.60 ID:I4rKZZPDO
乙。垣根からものすごく死亡旗臭がする‥‥お前、消えるのか‥‥


あまくさっ! の小話キボンネ!
657 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/17(水) 21:32:50.63 ID:r6bw5nOG0
こんばんわ。小話投下します。
これが終わったらHTML化お願いすると思う。

そんじゃスタート!
658 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/17(水) 21:47:28.13 ID:r6bw5nOG0
 ―――とある休日、PM00:30、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・・・




 カタカタカタカタ・・・・・


香焼「……はぁ。レポート終わったぁ」グデェ・・・

香焼「もうお昼回ってるよ。如何しよっかなぁ……多分、五和達呼んで無いのに来るだろうし」ハァ・・・

香焼「……、」ボー・・・

香焼「少し、昼寝しようかなー」グダッ・・・

香焼「……あ、メール返さなきゃ」スッ・・・

香焼「……、」カチカチッ・・・

香焼「……ふぁぁ」クタリ・・・


 ・・・・・寸・・・・・


香焼「……くぅ」ペタン・・・





 約三十分後・・・・・



五和「おっ邪魔っいかーんっ!!」ガチャッ!!

浦上「お姉、そんなバタバタ走ってったら香焼に怒鳴られるヨ」ンモー

五和「大丈夫大丈夫。害虫を見る様な冷ややかな目をされた後、溜息吐かれるだけだから!」

浦上「分かってるなら反省しなさいって」タラー・・・

五和「謝りはしよう! しかし私は反省しない! って事でこんちわー!」ガチャリンコッ!



香焼「……くぅ……すぅ」zzz...



五和「んなっ!!?」ギョッ!!

浦上「ん? アレレ? 珍しいですネ。五和の騒音聞いて起きないなんて……相当疲れてるのカナ??」

五和「くっ……ウラ。これはトラップです。香焼が私達を陥れる為に態とあんな無防備な姿を曝け出して誘っているんです!!」ガタガタ・・・

浦上「なぁにそれ……いや、普通に昼寝してるだけっしょ? かーなーり、グッスリと」ジー

五和「……ほぅ」ニヤリ・・・
659 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/17(水) 22:00:40.25 ID:r6bw5nOG0
五和「よしっ。現状確認!」ビシッ!


・ソファの上にグッスリの香焼。

・開きっ放しのノートPC。

・放置された漫画雑誌数冊。


浦上「いや、そこまで大したモンじゃないですヨ」

もあい「なー」フシフシ

五和「ふふふ……ウラ。これはチャンスなのです! コウちゃんに色々とあんな事やこんな事をしたり、調べたり!」ムフフフ・・・

浦上「あ。もう少しでカオリ姉様来るってー」ナデナデ

もあい「にゃ?」

五和「無視するでない! ウラ、聞きなさい……よくよく考えるとね、これほど無防備なコウちゃんの現状は無いんだよ!」

浦上「一応、聞いて上げる」ハァ

五和「あのね! 普段、コウちゃんのPCなり本は自室……あの『開かずの間』の中にある!」

浦上「うんうん」

五和「その中には例え大人の対馬さんや女教皇様たるカオリ姉様さえも入れない!」

浦上「まぁ自室だからねー。無闇矢鱈に入れないっしょ」

五和「あの部屋にはコウちゃんが眠る今であっても入れない。しかし! 今、普段は見られないこの子のPCが此処にあるのよ!」ビシッ!

浦上「……えっと」タラー・・・

もあい「にゃー」ジー・・・

五和「ふふふふふ……、」キランッ!

浦上「止めときましょうヨ。起きたら大変ダヨ。只でさえ今騒いで起きるかもしれないってのに」ポリポリ・・・

五和「お黙る! レッツチャレンジングよ!」ビシッ!

浦上「うーん……そっち(PC)じゃなくてもさぁ、香焼自身に悪戯すれば良いじゃん」ニヤリ・・・

五和「な、なんと!?」ギョッ・・・

もあい「なぅ?」ポカーン・・・
660 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/17(水) 22:17:50.15 ID:r6bw5nOG0
浦上「お姉……この部屋には私達の私物も結構置いてあるよネ」

五和「そ、それが如何したの」

浦上「私はふと、思い出した……先日姉様と買い物行って、化粧品買ったばかりだなぁ、と」フフフ・・・

五和「ま……まさかっ!!?」ギョッ!!

浦上「……その通り」ニヤリ・・・

もあい「……みゃう」トコトコ・・・

浦上「だがしかし! 私はお姉の判断に任せよう」ウンウン・・・

五和「なっ!!」

浦上「PCを弄るも良し。香焼をメイクアップするも良し……もう少しでカオリ姉様来るから大人しくしとくも良し」コクン・・・

五和「そ、そうか……姉様が来た時の事を考えると、拙いわね」ゴクリ・・・

浦上「さぁどうするっ?!」ビシッ!

もあい「にゃー!」ベシッ!

五和「じゃ、じゃあ……―――



@香焼のPCを色々調べちゃう!

A香焼の寝顔をメイクアップしちゃう!

B大人しく神裂を待つ。

Cその他!(具体例を!)




     >>663 
661 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/17(水) 22:18:33.50 ID:r6bw5nOG0
浦上「お姉……この部屋には私達の私物も結構置いてあるよネ」

五和「そ、それが如何したの」

浦上「私はふと、思い出した……先日姉様と買い物行って、化粧品買ったばかりだなぁ、と」フフフ・・・

五和「ま……まさかっ!!?」ギョッ!!

浦上「……その通り」ニヤリ・・・

もあい「……みゃう」トコトコ・・・

浦上「だがしかし! 私はお姉の判断に任せよう」ウンウン・・・

五和「なっ!!」

浦上「PCを弄るも良し。香焼をメイクアップするも良し……もう少しでカオリ姉様来るから大人しくしとくも良し」コクン・・・

五和「そ、そうか……姉様が来た時の事を考えると、拙いわね」ゴクリ・・・

浦上「さぁどうするっ?!」ビシッ!

もあい「にゃー!」ベシッ!

五和「じゃ、じゃあ……―――



@香焼のPCを色々調べちゃう!

A香焼の寝顔をメイクアップしちゃう!

B大人しく神裂を待つ。

Cその他!(具体例を!)




     >>663 
662 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/17(水) 22:20:34.85 ID:r6bw5nOG0
ごめん、ダブった。    >>665   で。
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/17(水) 22:31:40.45 ID:tTAF0EHN0
無論、@だぁぁぁぁぁぁぁぁ!
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/17(水) 22:32:35.63 ID:tTAF0EHN0
無論、@だぁぁぁぁぁぁぁぁ!
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/08/17(水) 22:32:54.19 ID:rVMNe79ho
kskst
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/17(水) 22:33:00.35 ID:tTAF0EHN0
無論、@だぁぁぁぁぁぁぁぁ!
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/17(水) 23:06:36.89 ID:tTAF0EHN0
無論、@だぁぁぁぁぁぁぁぁ!
668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/17(水) 23:08:21.52 ID:tTAF0EHN0
ど、どんだけ連投しとんの…俺…orz
ちょっと首吊ってくる
669 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/17(水) 23:41:04.99 ID:r6bw5nOG0
五和「―――……決まってるでしょ!」ビシッ!

浦上「おー、PCに行きますかぁ」ニヤッ・・・

五和「ふふふ……見よ! コウちゃんはシャットダウンすら忘れて寝入ったのだ。何たる僥倖!」

浦上「駄目だよ香焼ー。敵は身内に有りなんだからシッカリ閉じとかないとー」ムフフ・・・

五和「ではではー! さっそくネットを開きましょー」カタカタ・・・

浦上「……あ。お姉ー、姉様来たら如何するの?」

五和「心配無いわよ。弄ってるんじゃなく、私の私用でネットを開いてる事にすれば良いんだから!」

浦上「……まぁあの人機械音痴だし、適当言えば何とでも誤魔化せますネ」ハハハ・・・

五和「と、いう訳で!」カチッ・・・

浦上「何調べるの? Dドラ? ネット履歴?」

五和「……まずはブクマよ」ニヤリ・・・

浦上「うわぁ。いきなり攻めるネ」タラー・・・

五和「さて……では御開帳!」


 寸・・・・・


五和「……うわぁ。クッソつまんねー」ジトー・・・

浦上「何期待してるのサ」

五和「ヤホーのトップで、ゴーゴル先生、ようつぼ、あーまーぞーんっ!」

浦上「まぁこの子らしいよネ」

五和「何かこうさぁ……ドキドキニャンニャンする様なモノは!」

浦上「……えー」タラー・・・

もあい「なぅ」ジトー・・・



 ピンポーン・・・・・



浦上「あ、姉様来たヨ」チラッ
670 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/18(木) 00:23:08.03 ID:NQqd4aHS0
>>668・・・こまケぇ事はいいんだよ!



 ・・・・・寸・・・・・



五和「ぐぬぬ……、」カタカタカタ・・・


神裂「……五和は何をしてるのですか?」タラー・・・

浦上「うーん……ネット、ですかネ」アハハ・・・

もあい「なー」

神裂「ネット、とはインターネットの事ですか?」

浦上「ええ。女子寮にもPCありますよネ。回線繋いでる筈ですケド」

神裂「私はPCを弄らないので……そんなに熱中できるものなのですか」フム・・・

浦上「今の時代、ネットあれば何でもできちゃいますからネ」

神裂「へー……それより、香焼は」チラッ


香焼「すぅ……くぅ……、」zzz...


浦上「珍しく昼間から爆睡です」

神裂「……タオルケットくらい掛けてあげなさいよ」

もあい「みゃー」コクンッ

五和「だあぁ……駄目だ! 履歴すら残って無い!」グヌヌ・・・

神裂「五和、一体インターネットで何をしてるんです?」

五和「あ。姉様。何時の間に」ピクッ

浦上「お姉、熱中し過ぎ」タラー・・・

五和「ちょっとした調べ物ですよ……でも見つからない」ハァ・・・

浦上「もう諦めたら?」

五和「でもさぁ……何も出て来ないのよ? これっぽっちも! ウラだって気になるでしょ?」チラッ

浦上「気になるけどサ」フム・・・

神裂「???」ポカーン・・・


香焼「……むぅ」グルッ・・・


五和「うをっ!」ビクッ・・・

浦上「ビビり過ぎだって」ハァ・・・

もあい「んな」ゴロゴロ・・・
671 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/18(木) 00:34:15.13 ID:NQqd4aHS0
五和「ふぅ……もしかして、コウちゃんまだそういうの目覚めて無いのかな」チラッ

浦上「まぁ中一だからネー。目覚めるか目覚めないか微妙な時期じゃん」

五和「かなぁ」ハァ・・・

神裂「な、何の話をしてるのですか?」

五和「え、えっと……うーん」ポリポリ・・・

浦上「……香焼の思春期についてですヨ」

神裂「思春期?」

五和「因みにウラは?」

浦上「私? えっとねぇ……建宮さん達の馬鹿話聞かされて来たからナー。小4くらいかも。お姉は?」

五和「早いわね……私は父さんの隠してあった『本』見つけたのが中一だったわ」

浦上「ほら、大体気付くか気付かないかの瀬戸際なんだって」

五和「でもさぁ香焼って建宮さんや牛深さん達に囲まれて過ごしてるんだよ。何ていうかこう……早そうじゃない?」

浦上「まぁねぇ……てか最低小5で保健の勉強入るだろうし」

神裂「え、あ、その……何??」ポカーン・・・

五和・浦上「「……、」」ジトー・・・

もあい「にゃん」ジトー・・・

神裂「な……え?」タラー・・・

五和「姉さん……少し腹を割って話しましょうか」キリッ・・・

神裂「い、いつに無く真剣な眼差し……い、いいでしょう。話して下さい」コクッ・・・

浦上「……あーあ。知ーらない」タラー・・・



 ・・・・・寸・・・・・



五和「―――……という訳です!」

神裂「」カアアァ///

浦上「やっぱりムッツリ姉様には無理な話ですヨ」ポリポリ・・・

もあい「みゃう」コウコクッ・・・


香焼「……、」グデェ・・・
672 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/18(木) 00:52:09.67 ID:NQqd4aHS0
五和「と、言う事で、コウちゃんのそういう事情気になりません?」チラッ

神裂「き、気になるとかならないとかそういう次元じゃなくて! こういうのは本人抜きに出来る話では!」アタフタ・・・

五和「でも本人交えたらもっと出来ない話ですよ?」

神裂「ぐっ……し、しかし」タラー・・・

浦上「話戻すけどサ、香焼の周りを考えたら絶対『目覚め』は有る筈なんですヨ」

五和「周り?」

神裂「そ、そんな! この子に限って」アタフタ・・・

浦上「仲の良い連中で考えると……学校の友達はまず無い。香焼、自分の学校には友達いないから」サラッ・・・

神裂「言わないで上げましょうよ」タラー・・・

浦上「んで、天草で考えれば基本馬鹿な男衆と一緒にいます。その時点でアホな話には混ざっている筈」

五和「それは同意する」コクッ

浦上「それから英国で考えたら、尚更でしょ。ステイル神父、サーシャ、アンジェレネは別として……アニェーゼとレッサーに絡まれてますネ」

神裂「あの二人は、まぁ……知識は無駄に多いですからね」コホンッ・・・

浦上「そしてコレが本題なんですケド……リアルに……オカズがいっぱいある」ボソッ

五和「そ、それは!!?」ギョッ!!

神裂「おかず??」ポカーン・・・

浦上「まぁだから紙媒体やデータ媒体での『餌』が要らないのかもしれませんが……妄想で『可能』な程、香焼は偏ってるとは思えない」

五和「ちょ、ちょっと待って……り、リアルの『オカズ』って、その……えっと」カアアァ///

浦上「普段、お姉に冷たく当たってるけど……もしかしたら……、」ニヤリ・・・

五和「だ、駄目よコウちゃんっ!! 私達義姉弟じゃない!! それに私には心に決めた人がっ!!」イヤアアァッ///

神裂「喧しい! ったく……この子は何に悶えているのですか?」タラー・・・

浦上「……姉様。耳貸して」スッ・・・

神裂「ん?」



 ゴニョゴニョ・・・・・



神裂「い、いけません!! 私達は血が繋がっていなくとも肉親の様なモノです!! そんな不埒なっ!!」ウアアアァッ///

浦上「でもまぁ妄想内ですから。妄想内ではあんな事やこんな事したりされたりでも自由ですヨ」ハハハ

五和「禁断の愛なんていけないわ!! 姉ちゃんをそんな風な目で見るなんて……コウちゃんったら」カアアァ///

神裂「これからどうやってこの子に接していけばいいのか……ああぁ」カアアァ///

浦上「……アンタらの方が危ないですヨ」タラー・・・

もあい「なぅ」コクコクッ・・・
673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/18(木) 00:54:38.75 ID:3SofSkFDO
馬鹿姉妹ww
そのまま香焼の事襲っちまえw
674 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/18(木) 01:31:47.38 ID:NQqd4aHS0
浦上「はぁ……仕方ないなぁ」ポリポリ・・・

五和「な、何よ」ジトー・・・

浦上「要は香焼が『健全』な青少年の様に、それ相応の本や画像、映像を見ていれば妄想してないって事になる?」

神裂「そ、それは……そうなのですか?」

五和「ま、まぁ不安は減るわね」

浦上「……じゃあお姉、そこ退いて」

五和「何するの?」

浦上「履歴調べるヨ」スッ・・・

五和「履歴って……さっき調べたよ」

浦上「クッキーまで弄ったりした?」

五和「くっき……へ?」

神裂「???」ポカーン・・・

浦上「ちょっと待ってて。香焼の紙でも弄って遊んでて下さいナ」カタカタ・・・

神裂・五和「「お、おぅ」」タラー・・・

もあい「……なぅ」ジトー・・・



 ・・・・・寸・・・・・



五和「コウちゃん髪伸びたねー」ワシャワシャ・・・

神裂「あ。おでこ出すと余計幼く見えますね」アハハ

香焼「う、うーん……、」ムニャムニャ・・・


浦上「……よしっ。とりあえず契約時から利用してきたURL全部見れるよ」チラッ

五和「お!」ガタッ!

浦上「待て待て……一から見てったらキリがないからそれっぽいモノを開いていこう」カチッ・・・

神裂「私は良く分からないので二人にお任せします」プニプニッ

香焼「くぅ……むぐっ」ウーン・・・


もあい「にゃぅ」ムニャムニャ・・・


浦上「あ。これ何かは?」カチッ・・・

五和「何々?」

浦上「R18だネ」フフフ・・・

神裂・五和「「っ!」」ガタッ!

浦上「落ち着きなさいな……そんじゃ御開帳ー!」カチッ!
675 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/18(木) 01:49:09.77 ID:NQqd4aHS0
サイト名 < 刃モノの森 >


五和「……なぁにこれぇ」タラー・・・

浦上「え、えっと……日本のサイトじゃないね。多分アメリカ」カチッ・・・

神裂「軍用ナイフや儀礼用短刀。あら、日本刀も取り扱ってるんだ……あの、これは?」タラー・・・

浦上「実際通販で販売してるんですネ。もしかしたら購入履歴あるかも」

五和「……つまり、刃モノ買ってると?」

浦上「まぁ香焼短刀マニアだからネ」タラー・・・

香焼「……くぅ」グデェ・・・


三姉妹『……、』チラッ・・・

もあい「うなー」キュー・・・


五和「……か、カオリ姉様の所為ですね」コホンッ

神裂「わ、私!? な、何故ですか! 関係無いでしょう!!」ギョッ

五和「コウちゃんの得物選んだの姉さんでしょ。しかも幼い頃から自分の趣味に付き合わせて刃モノの魅力を云々」コクコクッ

神裂「わ、業(ワザモノ)の刃の美しさを否定する理由など……じゃなくて、それは関係ありません!」アタフタ・・・

五和「だって『ぼく、大きくなったらぷりえすてすみたいに長モノふるうんだ!』ってずっと言ってましたよ」ジトー・・・

神裂「そ、それは幼子の憧れに過ぎないでしょ! 私はこの子を洗脳する程光りモノを推した事はありません!」

浦上「まぁまぁ……兎に角、このサイトで買った刃モノは『開かずの間』に隠されてますヨ」チラッ

五和「多分このサイト以外で買ったモノもあそこに保管されてそうですよね」ジトー・・・

神裂「それが本当なのであれば、キチンと注意せねばなりませんが……って五和。だからその目を止めなさい!」

浦上「とりあえず別にサイト飛んで良いですか?」チラッ

神裂・五和「「どうぞ」」ハァ・・・


香焼「むぅ……ん……、」ウウン・・・

もあい「くぅ」ムニャ・・・
676 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/18(木) 01:59:17.22 ID:NQqd4aHS0
サイト名 < 厳選AV館 >



浦上「これはまた……何とも」タラー・・・

五和「つ、遂にキタのか!?」グイッ!!

神裂「咋(あからさま)過ぎるタイトルですよ」タラー・・・

浦上「しかも18禁じゃないし……一応見てみますか」カチッ・・・


 『通が選んだ厳選動画! ……幼娘との戯れ』


神裂「い、いけませんっ!! 犯罪です!!」カアアァ///

五和「こ、コウちゃん……まさかのロリコンなの」タラー・・・

浦上「とりあえず一つ再生してみよう」ポチッ・・・


 『にゃー……うにゅぅ……みゃんっ! にゃーん』


もあい「なうっ」ピクッ!


三姉妹『……は?』


 『ふにゅ……みゃーう。にゃっ。にゃっ!』


もあい「んなー」ジー・・・

五和「……子猫の、動画」

神裂「……その様ですね」

浦上「……AV(アニマルビデオ)か」


 『なーぅ』


もあい「なーぅ」フシフシッ

香焼「ん……くぅ」zzz...


浦上「釣られましたネ」タラー・・・

神裂・五和「「」」チーン・・・
677 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/18(木) 02:21:28.07 ID:NQqd4aHS0
 ―――とある休日、PM02:30、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・・・






香焼「……ん」グズッ・・・


浦上「―――さぁ、もう無いんだって。諦めようよ」ハァ・・・

五和「―――有る筈! このままではコウちゃんが私達で、その……禁断は駄目なの!!」カアアァ///

神裂「―――やはり、まだ目覚めてないのではないでしょうか。それならそれで、安心ですが」ムゥ・・・


香焼「……何してるの?」ジー・・・


五和「ウキー! 分かった! もう履歴には頼らない! きっと借りてきたDVDとかを焼いてるのよ! もしくは受信保存!」

浦上「でも流石にダウロードフォルダとかDドラはロックされてるっしょ」

神裂「そ、そんなに探らなくても……変に此方から刺激して目覚めて貰っても困りますから」

もあい「なぅ」ジー・・・

香焼「……、」ジー・・・

五和「目覚めも何も……あ。分かった! 携帯だ! 携帯で見る様にしてるのよ! コウちゃんの携帯!」バッ!

香焼「これ?」スッ・・・

五和「そうそう! この私用携帯のデータフォルダかSDカードの中に、あ……る」ピタッ・・・

浦上「……あーあ」タラー・・・

神裂「こ、香焼!」ギョッ・・・

五和「」チーン・・・

香焼「……何してた。洗い浚い話せ」ポンッ・・・ニコリ・・・

五和「きょ、拒否権は」ガクブル・・・

香焼「拒否ったらオバさん(五和の母親)に有る事無い事言いつける」ゴゴゴゴ・・・・

浦上「わ、私達はこれで」アハハ・・・

神裂「そ、そうですね。二人でごゆっくり」タラー・・・

香焼「神父様(浦上の育て親)と固法さんにも有る事無い事言う」ジトー・・・

神裂・浦上「「」」チーン・・・

もあい「……にゃん」トコトコ・・・
678 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/18(木) 03:09:27.28 ID:NQqd4aHS0
 ・・・・・寸・・・・・



香焼「……下らない」ハァ・・・

五和「……だってぇ」ムスゥ・・・

香焼「そんなモノ知って如何するんすか」

神裂「貴方が、その、健全というか年相応というか……そういうのが歪んで無いかとか」モジモジ・・・

香焼「少なくとも姉さんよりは知識有りますし、間違った方へは進んでません」ッタク・・・

浦上「でも実際さぁ、香焼ってまったくそういうの表に出さないじゃん。普段一緒にいるのにそういう匂いとか気配全然だヨ」

香焼「良い事じゃんか。てか、むやみやたらと他人にそういうもん見せないのがマナーだろ」

五和「……じゃあ持ってるの?」ジー・・・

香焼「……さぁ」フンッ・・・

神裂「持ってないんですか?」ジー・・・

香焼「如何でしょうね」フンッ・・・


もあい「なー」カリカリ・・・


五和「……やっぱり妄想族なんだ。ムッツリなんだ」ジトー・・・

香焼「は?」

神裂「わ、私達の事をその……そういう目で見る事があるのですね」ジトー・・・

香焼「……え?」タラー・・・

浦上「つまり『オカズ』という意味だヨ」ニヤリ・・・

香焼「……ば、馬鹿じゃないんすか!!」カアアァ///

浦上「あ。真っ赤になった」ニシシ!

五和「だ、駄目よ! 禁断の関係なんてフィクションの中だけ! 例え妄想でもそれは許されないわ!」モジモジ!

香焼「や、喧しい! んなトチ狂った真似出来るかぁ!!」カアアァ///

神裂「では誰を、そういう……『おかず?』でしたか。それにしてるのですか?」ポカーン・・・

香焼「だぁ!? な、何言ってんすかこの変態!!」カアアァ///

神裂「へ、変態!?」ギョッ!

浦上「最愛ちゃん? それともカルテッ娘の誰か? 私達の知らない娘? それとも……複数?」ニヤリ・・・

神裂・五和「「ふ、複数!!?」」カアアァ///

香焼「するかボケぇ!! 人をそんな目で見れるかっての!!」カアアァ///

もあい「……なぅ」ハァ・・・
679 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/18(木) 03:44:36.34 ID:NQqd4aHS0
浦上「まぁそこは問わないとして……とりあえず物的証拠が無いと色々心配なんだヨ」

香焼「だから余計な御世話だと」ハァ・・・

浦上「じゃあ見せろとは言わない。有るの? 無いの?」

香焼「えー」タラー・・・

神裂・五和「「じー」」グイッ・・・

香焼「……、」タラー・・・

浦上「ほれほれ。応えなさいナ」

香焼「……あ、あるよ」コクッ///

神裂・五和「「お、おおぅ」」グイッ!

香焼「近寄んな!!」グググ・・・

浦上「自室に有るって事? ベット裏とか押し入れの中とかに本とかDVDがあるの?」ニヤリ・・・

香焼「……そうだよ。悪いか」フンッ・・・///

五和「い、いや」ホッ・・・

神裂「安心しました……その言葉、信じましょう」ウンウン・・・

香焼「何だこの羞恥プレイは」ハァ・・・

浦上「ふむふむ。じゃあジャンルとか媒体とか詳しく……おっと。まぁこれ以上聞くのは二人にとって刺激が強過ぎるので止めときましょう」

神裂・五和「「何っ!?」」ギョッ・・・

香焼「……言えるかボケ」カアアァ///

五和「あ、姉モノなの!? 姉モノなのね!!?」グイッ!!

神裂「い、いけませんよ! 私達は義姉弟! 邪な感情はタブーです!」

香焼「んなモン無い!! 普通のだ! 普通の!」カアアァ///

神裂「普通……普通というのは、その……えっと」チラッ

五和「あ、あれですよ。多分、その……ノーマル?」タラー・・・

浦上「興味有るんなら……今度、建宮さん達に見せて貰ったら如何です? それかいっその事上条さんにお願いして」ニヤリ・・・

神裂・五和「「か、借りれる訳無いでしょう!」」カアアァ///

浦上「あ。麦野さん辺りならネタで持ってそうですヨネ。最近女性向けってのも出てきたし」アハハ

神裂「む、麦野さんなら、確かに貸してくれそうですが……、」ムゥ・・・

香焼「『え……ねぇ。火織ぃ。それ何に使うの? ねぇねぇ。お姉さんに言って御覧なさい』ニヤリ……ってなりますね」ウンウン・・・

神裂「む、無理無理無理!」カアアァ///

五和「オリアナさん……は余計無理か。あ……フロリスならいける!」グッ!

神裂「ちょ、何一人で解決策を! ……って、浦上。貴女、実は持ってるとか言わないですよね?」チラッ

浦上「見ようと思えばDL等で如何とでもしますカラ」アハハ

神裂・五和「「それ見せろ!」」ギャーギャー!


香焼「人ん家のPCで義姉達がAV観賞会……不幸だ」ハァ・・・

もあい「なーぅ」フゥ・・・

香焼「もあい……上条さん家逃げよう」テクテク・・・

もあい「にゃう」トコトコ・・・


 ギャーギャーギャー・・・・・
680 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/18(木) 04:11:24.34 ID:NQqd4aHS0
 ―――とある休日、PM05:00、学園都市第7学区、とある学生寮(上条宅)・・・・・






上条「―――……んで、逃げてきたと」

香焼「すいません」ハァ・・・

上条「いや、別にいいよ……ってかアイツら何考えてんの?」タラー・・・

香焼「自分にも分かんないっす」ポリポリ・・・

ステイル「良い事を教えてやろう。必要悪の教会(ネセサリウス)の女性陣は基本変態だぞ」モグモグ・・・

上条「オマエは偶にウチ来ると思ったら何勝手に○ロリーメイト食ってんだ」タラー・・・

ステイル「禁書目録(彼女)は不在だ。問題無い」モグモグ・・・

上条「そういう問題じゃ無く……あー、うん。そうだね。日本語は通じないね」ハァ・・・

ステイル「まぁアレだ。最大主教(トップ)が弩変態だからな。下も変態になるんだろ……おい、お茶寄越せ」パサパサ・・・

香焼「その理屈だとオマエや自分も変態っすよ……あと○ロリーメイトはお茶じゃなくて牛乳が合うよ」

ステイル「だから先程言っただろ。基本女が変態なのだ。男性陣は紳士で……おい、牛乳無いぞ」ガチャッ・・・

上条「え? 何? 自称紳士の天才14歳は一般常識学んできてないの? 義務教育クリアしてない所為?」ジトー・・・

香焼「あ。ほら! やっぱり上条さんも言うじゃん。ステイルも学校通おうよ」ウンウン

ステイル「馬鹿言え。そんなモノ僕には必要無いね……仕方ない。麦茶貰うぞ」フンッ・・・

上条「……いや、真面目に通うべきだ。そんでもって煙草の害悪と一般常識、あと理系分野をみっちり勉強して来い」ジトー・・・

ステイル「必要無い」ゴクゴク・・・

香焼「……もし、禁書目録も同じクラスって言ったら?」ニヤリ・・・

ステイル「ブボォッ…………、」ダラダラ・・・

上条「おお、良いじゃん。インデックスもマトモに義務教育受けて無いし、お前ら一緒に学校行けよ」ハハハ

ステイル「……冗談キツイぞ」タラー・・・

上条「ほら。アニェーゼ達も学校通って無いみたいだし、いっその事皆で一緒にさ」ハハハ

香焼「あ。それ良いっすね」ハハハ

ステイル「非常識……いや、そんな常識的な事今更できるかっての」ハァ・・・

上条「英国の力使えば各所に圧力掛けて可能なんだろ?」

香焼「多分、はい。自分が楽々理事校に転入出来たんで」コクンッ・・・

ステイル「あのなぁ……はぁ。何言っても無駄か……それより神裂達だが」スッ・・・

香焼「あ、話逸らした」ニヤリ・・・

上条「なぁステイル。勉強は面倒臭いけど学校は楽しいぜ」ニカッ!

ステイル「……やれやれだね」ハァ・・・


もあい「にゃん」オワレ!
681 :>>1にかわりましてカキネがお送りしますん [saga]:2011/08/18(木) 04:16:35.40 ID:NQqd4aHS0
うい。お疲れ様でした。さて今後の方針ですが……


@クーデター、アックア戦、開戦直前まで。

A親戚の『あまくさっ!?』の手伝い。

B絹旗世代の学生物語。


かなぁ。途中で頓挫するかもしれないですが、とりあえず頑張ります。


質問意見感想等などよろしくお願いします! ではまたいつか! ノシ
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/18(木) 09:35:44.12 ID:NRVZg6jDO
>>1


このスレ内に確実に収まるなら@
そうじゃないならAで
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/08/18(木) 12:18:41.01 ID:Sy4oubGAO
3で
684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/18(木) 12:33:34.46 ID:3SofSkFDO
あれ? HTML化してから別スレで、って話じゃないの?
どっちにしろ>>1乙。次も楽しみにしてる!
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/19(金) 18:38:08.44 ID:RBJdfo3d0
AかBで
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