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姫神「ごめんね。上条君」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/05(火) 22:04:57.49 ID:8p1vlqVPo
某姫神スレの書き込みから発想を頂いたSSです
スレタイの通り姫神×上条です

ちなみにSSどころかこんな風に文章を書くのもほぼ初めてなもので何か不愉快な表現をしてしまったり読むに堪えない拙い文になってしまったりするかもしれません
そんな時は容赦なく叩いてください
それらの意見を活かして精進したいと思います
遅筆なもので更新が遅くなってしまうかもしれませんがどうにか完成だけはしたいと思っています
よろしくお願いします

>>某姫神スレのネタ提供者へ
ちょっと待ってろとか言ってこんなに遅れてしまってすいません
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ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
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いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
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【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
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こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
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アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/05(火) 22:08:01.92 ID:8p1vlqVPo



私は今一体何をしているのだろう。
ふと、我に返る。

目の前にはバスタブで寝ている上条君がいて、私は規則的に開いたり閉じたりしている彼の口に自分の血が滴った右手の人指し指を入れようとしている。
包丁で指先を切ったためにさっきから鋭い痛みが続いているけど、今は気にならなかった。
無意味なことをしようとしている自覚はあったはずだ。
だけどいざそれを実行する直前になって、我に返ってしまった。
私は今一体何をしているのだろう、と。
これを思いついた時点でこの行為には何の意味も無く、誰も得をしないただの自己満足であることに気づいていたはずなのに。

それでも私の指は止まらず、ただ一直線に彼の口に向かっていく。

「ごめんね。上条君」

誰に聞こえるわけでもない謝罪の言葉を呟くが、これもまたただの自己満足なのかもしれない。


彼の口の中はお世辞にも気持ちいいとは言えなかったけど、それでも不思議と気持ちが少し落ち着いていくように感じた。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/05(火) 22:13:47.45 ID:8p1vlqVPo



遠くでまた上条君が騒いでいる。

四限目が終わったあとの昼休み、教室の隅の方で自分で作ってきたお弁当を横にぶら下げた学校指定の鞄から取り出している最中に、
彼の口癖がまた聞こえてきた。
そちらに目を向けるとちょうど上条君が吹寄さんにおもいっきり頭突きを食らってふっとばされているところだった。
その近くには既に倒されていた土御門くん達も倒れている。
そこから推察すると、どうやらまた吹寄さんの機嫌を損ねることをしたみたいだ。
死体のように倒れている三人の前でイライラとした表情をしながら、腰に手を当て威風堂々と立っている吹寄さんはさながら学級帝王HUKIYOSEだった。
ちなみにそれは本日二度目の光景で、一度目は彼女の胸について上条君が何か言ったために頭突きを食らったようだ。
二度目である今回は彼と離れていたために原因はよくわからなかった。

「ったく…上条のヤツは…」

しばらくして騒動の中心人物であった吹寄さんが不愉快そうな顔をしながら私の前の席から椅子だけをこちらに向けて座った。
その手にはお弁当箱があり、きっと私と同じく手作りなのだろう。

「今回は。どうしたの?」

吹寄さんより一足早くお弁当を食べ始めながらさっきの騒動の原因を尋ねる。

「ノーコメントで。思い出したらまた腹が立ってきそうだし」

お弁当の包みを解きながら吹寄さんはさも平静そうに答えているけど、声には少し隠しきれていない怒気が混じっていた。
そういえば吹寄さんは上条君のフラグ体質に対して完全ガードを持っているらしくて、彼の周りにいる女の子にしては珍しくフラグが立っていない。
そのためか上条君について話をしてもいつも反応が素っ気ない。

「毎日のように。ケンカしてるね。まるで。昭和の不良同士の友達みたい」
「上条当麻はともかくとして私を不良って呼ばないでよ。私はそれなりに真面目な学生なんだから」
「……うん。そうだね」
「その微妙な間は何なのよ」

弁当箱を開きながら吹寄さんがツッコミを入れる。弁当箱の中身を覗いてみるとどうやら今日はサンドウィッチのようだ。
上条君によると味気がないらしいあのパンは飽きてしまったのだろうか。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/05(火) 22:15:53.27 ID:8p1vlqVPo

「そういえば。友達っていうのは。否定しないんだ」
「ついでに言うとケンカっていうのも否定しておきたいわね。いい? 姫神さん。争いは同じレベルの人同士じゃないと起きないのよ。」

「うん。そうだね」

じゃああの騒ぎは一体何なの? という疑問は飲み込むことにした。
そこで彼の話題は終わり、今日の数学は眠かったやら通販で買ったものがまた微妙だったやらいつもしているような他愛のない会話を続けた。



吹寄さんとはそれなりに仲がいいと思う。少なくとも今のように一緒にお昼ご飯を食べたり、放課後に一緒に寮まで帰ったりする程度には。
こんな風に仲良く学校生活を送れるような友達は彼女が初めてで、彼女との関係は大切にしていきたいと感じている。
それこそ何年後もたまに会って遊ぶような関係になれたらとても嬉しいと思う。

こう思う気持ちの一方で私は吹寄さんに嫉妬してしまっている。
彼女は毎日のように上条くんと喧嘩をしているけど、そうじゃない時は普通に話したりしている。
この前は一緒にクラスでのすき焼きパーティーを企画していた。
さっき彼女は上条君と友達であることを否定していたけど多分それは本音で、彼のことをクラスの風紀を乱すヤツぐらいにしか思ってないんだろう。
友達とすら思っていないのにそんなことができる彼女が妬ましくて、そんな感情を大切な友達に向けてしまっている自分が嫌いでたまらなかった。

きっと自分は独占欲が強いのだろう。だから吹寄さんと上条君が仲良くしているのを見ているだけで辛いのだと思う。
彼を狙う人はたくさんいて、いちいち彼女に嫉妬してもきりがない筈なのに。
もし街中で彼が私ではない別の女の子と幸せそうに歩いているのを見てしまったら私は一体どんな行動を取ってしまうのだろうか。
想像もつかないし、想像したくもなかった。

嫉妬深く、わがままな私では彼に相応しくないだろう。
だから私は目立たないのだ。
私はヒロインではないのだから…
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2011/04/05(火) 22:20:38.48 ID:Gk15kNPAO
地の文もう少し減らしていいと思うよ‥‥‥
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/05(火) 22:22:14.21 ID:8p1vlqVPo

「おーい姫神さん私の話聞いてる?」

そこまで考えたところで吹寄さんの呼びかけによって私の奥底まで沈みきっていた意識は引き上げられた。
ぼやけていた目の焦点を何回か瞬きすることによって元に戻して吹寄さんを見ると、少し怒ったような顔をしてこちらを見ていた。
話を無視されたのだと思ったのかもしれない。
実際それに近いことを私はしてしまったのだけど。
とりあえず吹寄さんには悪いけど誤魔化してしまおう。ごめんね吹寄さん。

「うん。聞いてるよ。吹寄さんには一体どんなメイド服が。似合うかっていう話でしょ」
「私は一秒たりともそんな会話をした覚えはないわよ! そして土御門! 
 これ以上盗み聞きをしたらさっきより酷い目に遭うわよ!」
「なんでバレたにゃー!?」

それほど離れていない位置でお昼ご飯を食べていたさっき吹寄さんに倒されていた三人組の一人である土御門君がビクッッ!! と反応していた。
ついでに上条君をちらっと見ると彼の近くには食べ物が何も無かった。多分さっきの騒ぎのせいでまた購買に行きそびれたんだろう。不幸だね。

「土御門…メイドという単語にがっつき過ぎだろ。さすがに引くわ」
「仕方ないやんカミやん。土御門クンはメイドさん命なんやから。」
「いやいや違うぜい二人とも。いつも言っているように俺はメイドさん命なんかではなくメイド服を着たロリ命なんですたい」
「というかやっぱりロリが至高なのであってそれ以外は認めないにゃー」

その土御門君の一言でまたギャーギャーと上条君達が騒ぎ始めた。
転校して始めの頃は珍しい光景だと思っていたけど周りのみんなはまた始まったみたいな顔をしてるし、慣れた今では別段気に掛かることではなかった。
でもこういう時の上条君の顔は私と話している時や、私を助けてくれた時の顔とかとは違う顔をしているので見ておきたくなる。
ギャグ顔というやつだろうか。
ぼーっと騒ぎを眺めていると私の前に座っていた吹寄さんが突然立ち上がった。
チラッと見えたトレードマークの額には青筋が浮いていたような気がする。

「貴様らは一体何度説教すれば学習するのよ!! そんなどうでもいいことでクラスの風紀を乱すな!!」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/05(火) 22:26:35.28 ID:8p1vlqVPo

ビシッ! と指された指と共に放たれた吹寄さんの叫びを聞くと、
今にもルール無用の世紀末バトルを始めようとしていた上条君達はピタっと動きを止めて小声でなにやら相談を始めた。
というかまた吹寄さんが上条君に絡んでいる。羨ましいなぁ。

「これまた吹寄にボッコボコにされる流れやない? 本日三度目はさすがのボクでも勘弁願いたいんやけど」
「うーん俺もそれは勘弁だぜい…あっ、そうだ説教といえばカミやんだろ。吹寄にいつものをやってやるんだにゃー」
「何だよいつものって?」
「戦っている時に相手が何か語ってきたときにするあれだぜい。ほらっ早く行けっ!!」

そう言うと土御門君が上条君の背中を蹴って無理やり吹寄さんと向かい合わせた。
上条君は一瞬混乱したみたいだけど、すぐに真面目な顔になっていつもの決めゼリフを言い始めた。

「いいぜ吹寄。お前がどの属性が至高なのかっていう俺達の大事な大事な議論がどうでもいいって言うなら、まずはそのふざけた幻想をぶちk」
「問答無用!」
「ごっ、ばァァああああああああああああああああああッ!?」

轟!! という音と共に決めゼリフを言いきれなかった上条君がボロ雑巾みたいにノーバウンドで二、三メートルは離れた私の近くまで吹き飛ばされてきた。
さすが学級帝王HUKIYOSE。説教殺しとは。
吹っ飛ばされてきた上条君が口から泡を出しながらピクピクしている。
というかあのタイミングで上条君のあのセリフを言っても何の意味もないような気がするけど。

「さて、次は貴様達ね。」

手をパンパンと叩きながら吹寄さんは上条君を囮にしてコソコソと逃げようとしていた土御門君達に宣告した。
二人は動きを止めてギギギ、と顔だけを吹寄さんに向ける。
その顔には尋常ではない程の冷や汗。

「「ふ、不幸や(だにゃー)…」」

開戦の狼煙は上がった。
今、ルール無用の世紀末バトル(一方的な)が幕を開ける。
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/05(火) 22:33:31.54 ID:8p1vlqVPo



私のすぐ横まで吹っ飛んできたので何となく上条君の頬をツンツンとつついてみる。
周りからは土御門君たちの悲鳴と、もの凄い物音が聞こえてくる。

「ツンツン」

モチモチとして意外と感触が心地良い。男の子の筈なのに。
だけど意識が軽く飛んでいるみたいで上条君は何も反応しない。
むう。反応しないならもうちょっとつついてみるか。
そう考えてもっとしっかりつつけるように身を乗り出し顔を近づけたところで、意識を取り戻したらしい上条君がパチッと目を開けた。
今のお互いの顔の距離は恐らく二十センチもないだろう。
よって私と上条君は超至近距離で目が合うことになった。思わず指が上条君の頬に押し付ける形で止まってしまう。
久しぶりに間近で上条君の顔を見たために胸がすごくドキドキしている。
顔が赤くなってたら恥ずかしいな。
目を覚ました上条君は少し目をキョロキョロしてようやく頬に指を押し付けている私に気がついたみたいだった。

「ん? なんか違和感があると思ったら姫神の仕業か。何で俺の頬なんて触ってんだ?」
「そこに。ほっぺたが。あったから。ツンツン」

胸のドキドキを悟られないように必死に押さえながら上条君の質問に答える。
だけどその間にも頬をつつくことは忘れない。うん、やっぱり気持ちいい。

「そうか…? …なあ男の俺の頬なんて触って楽しいのか?」
「うん。梱包材のぷちぷちを潰すぐらい。楽しい。ツンツン」
「それって結構微妙じゃね? …まあ姫神が楽しいならそれでいいか」

そう言うと上条君はニコッと笑った。
超至近距離からのその笑顔に私はまたしてもドキッとしてしまい今度こそ本当に頬が赤くなるのを感じ、
咄嗟にそれを悟られまいと上条君から顔を背け、その影響で指も頬から離してしまった。
それを上条君は終わりの合図と受け取ってしまったみたいで、近くの机に手をかけながらよろよろと立ち上がってしまった。

「もう少しこうしていてもよかったんだけど、俺を囮にしやがった土御門達を一発殴らねえと気が済まないからさ。ごめんな」
「うん。わかった。頑張ってね」

私の言葉を聞くと上条君は煙が上がるほどの勢いで走っていった。
もう少し触っていたかったな。またの機会はあるかな。

「よかったわね」

気がつくと吹寄さんが私の前の席に座っていた。
その顔は少しだけ笑っているようにも見える。

「何が?」

吹寄さんにはまだ言ってないけど、きっとばれているんだろうなぁ。
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/05(火) 22:37:36.53 ID:8p1vlqVPo
とりあえず今はこんなところで
後でもう少し投下します

>>5
読んでくださってありがとうございます
とりあえず次の投下分は削れるところは削ってみたいと思います
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) :2011/04/05(火) 23:11:02.94 ID:hrLi8QiU0
地の文はこれぐらいでちょうどいいと思うけどなー。
口数少ない姫神の視点だから、地の文も減らしたら薄っぺらくなる気が。

続き期待。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/04/05(火) 23:39:48.08 ID:LdhYUzeAO
やっぱり。上条×姫神が一番。期待
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/05(火) 23:51:01.67 ID:8p1vlqVPo
>>10
>>11
ありがとうございます

自分としてはできる限り地の文を入れたいと思っているので
とりあえず読み直してみて不自然な程多いと感じたら削っていきたいと思います
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/05(火) 23:53:42.08 ID:bw/7GfIfo
書かれてるけどひ姫神の口数が変に多くなるより字の文が多い方が良いと思う
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/05(火) 23:58:36.91 ID:8p1vlqVPo



それに気がついたのは五限目の授業が終わり、休み時間の間に次の授業に使う教科書をロッカーから取ってこようと席を立った時だった。

席から立って歩き始めると何か金属のようなものを蹴ったような音がした。
足元に目をやると一メートルほど前にキーホルダーのついていない鍵が落ちているのを発見した。
なるほどこれが蹴った物の正体か。
鍵が落ちているのは教室の隅の方なのでそれに気がついている人はどうやら私以外にはいないみたいで、こちらを気にしている人はいなかった。
その鍵を拾ってよく見てみると、形が自分の寮の部屋の鍵と似ていることに気づいた。
もしかしてと思って自分の部屋の鍵があるかどうかポケットを調べたが、きちんと鍵は入っておりどうやら私が落とした物ではないようだ。
そこから私と同じ寮に住んでいる女子のうちの誰かが落としたのかと考えたが、すぐにこの学校の寮は男女で分かれてはいるがその作りはどちらも同じであることを思い出した。
それを考慮するとこの鍵の落とし主は女子の可能性だけではなく男子の可能性もあるようだ。
つまり落とし主の候補者はかなり多い。
探すのには骨が折れるだろう。

鍵を指で回したりしていじりながら更に考えていく。
落とし主は落としたことにまだ気がついてないのだろうか。だとしたら少し面倒だ。
そういえばここに鍵を落とす可能性がある人は誰だろうか…
そう考えたところで突然この鍵の落とし主に思い当たった。いや、閃いたという表現の方が正しいかもしれない。
届けてあげないと彼はすごく困ってしまうだろう。きっといつもの口癖を叫ぶに違いない。早く届けてあげよ―――

「どうしたの? 姫神さん?」
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/06(水) 00:03:16.69 ID:BgWwLXazo

後ろから突然声を掛けられ驚いて振り向くと、そこには吹寄さんがなんだか心配そうな顔をして立っていた。
考えごとに集中しすぎて吹寄さんの気配に全く気がつかなかった。
ちなみに今の私の状況は教室の隅のほうであらぬ方向を向いて直立している状態だ。
他の人から見たらさぞおかしな光景に映るだろう。
だから吹寄さんは心配そうな顔をしていたのか。
ふむ。いらぬ心配を掛けさせてしまったな。謝らないと。
あ、そうだ。まだこれが彼の物であるとは決まっていないし、謝った後に私の直感が正しいかどうか彼女に相談してみよう。
これを彼に届けるのはそれからでも遅くはないだろう。
私はそう考えて吹寄さんの質問に答えた。

「何でもないよ。大丈夫」

自分の口から出た言葉に自分でビックリする。
私は何を言っているの?
私は謝る筈ではなかったの? その後にこの鍵のことを相談する筈ではなかったの? 
頭の中が疑問符でいっぱいになってゴチャゴチャになる。

その上気がつくと私は手を後ろにまわして、手に握っている鍵が吹寄さんには見えないように隠していた。
これでは私がこの鍵のことを誤魔化しているみたいではないか。
私はどうしてこんなことをしているの?

自分の行動に混乱しきって二の句が継げなかったけど、吹寄さんは今の一言で納得してくれたのか、

「そう? 変な所をジッと見てたから何か非科学的なものでもいたのかと思ったわよ。」

と言ってロッカーの方へ歩いて行ってしまった。
そんな彼女を目だけで追う私の頭の中では今からでも遅くはない、早く吹寄さんに相談するんだと誰かが叫んでいた。
それなのに私の身体は棒立ちのままちっとも動いてくれず、結局始業の合図であるチャイムが鳴りそのまま休み時間は終わってしまった。




始業を伝えるチャイムが鳴り響くなか、一つの可能性に思い当たった。
もしかして私はこの鍵が欲しいのか?
“上条君”の部屋の鍵を開けることができる、この鍵が。
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/06(水) 00:11:18.62 ID:BgWwLXazo
>>13
意見ありがとうございます

かなり少ないですがこの後のは推敲が終わっていないため今日はここまでです
ちなみにこの後も地の文が多いです…
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/04/06(水) 00:14:55.97 ID:RFctqYtqo
地の文が多いと感じるのは、多分一つの文の中に沢山の事を詰め込みすぎているせい。
状況や感情の説明が、一つの文で収めるには多い、という箇所が結構ある。
もうすこし簡潔に、短く区切るようにすれば、格段に読み易くなるんじゃないだろうか。

偉そうな事言って悪いとは思うけど、姫神好きなんで期待している。
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/06(水) 00:23:51.73 ID:BgWwLXazo
>>17
アドバイスありがとうございます
確かに詰め込みすぎですね…言われてみて気が付きました


姫神の可愛さの1%も伝えられないでしょうが姫神好きを増やせるように頑張りたいと思います
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [saga sage]:2011/04/06(水) 00:31:56.91 ID:P2MYU/xH0
姫神好きとしては支援せざるを得ないな。うん。
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/04/06(水) 00:41:00.48 ID:STH0P6lso
つまんね
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) :2011/04/06(水) 01:00:41.37 ID:AqunX0oC0
詰め込みすぎか? けっこー読みやすいと思ったけどなあ。

>>20預かっておきますね^^
まんね⊂
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/06(水) 01:52:35.47 ID:sDywcaOZ0
これくらい詰め込んであるほうが好き。
読みやすいと思うし。
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/06(水) 01:54:55.02 ID:mORBFhzDO
>>21にふいた
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/06(水) 02:31:47.71 ID:lI3uxmIIO
説明が丁寧過ぎる気はしないでもない。
>>14で言うと、
「なるほどこれが蹴った物の正体か。」
「鍵が落ちているのは」
「その鍵を」
「自分の部屋の鍵があるかどうか」
「きちんと鍵は入っており」

辺りは削っても通じるし、思考の過程をそっくりなぞるスタイルも損なわないと思われ
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/06(水) 08:20:32.37 ID:eLEpX9nIO
これはこれでいいと思うし期待してる。
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/04/06(水) 11:14:33.15 ID:RkAVJVBzo
批評家が多いスレですね^^;
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/06(水) 14:11:37.45 ID:fb/oZtm80
おお、姫神スレか。応援するよ。書き方はこのままでいいと思う
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/06(水) 15:36:33.61 ID:qRoucFsA0
姫神スレは応援せざるを得ない
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/06(水) 23:54:27.20 ID:BgWwLXazo
様々なご意見ありがとうございます
それらを参考にして色々試してみたいと思います


期待してくださっている人が想像よりも多くて正直少しビビっていますが、
みなさんの期待に応えられるように頑張りたいと思います
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/06(水) 23:57:07.38 ID:BgWwLXazo



五限目の能力開発に関する授業を聞き流しながら、上条君に対する私の気持ちの変遷について考える。
どうせ能力開発の授業なんて私には関係ないのだから。

彼とのことを思い返して最初に出てくるのは、彼が文字通り命を懸けて私の世界を変えてくれた時のことだ。


幼少期にある能力によって私達と何も変わらない彼らを殺し尽くした。
その能力を研究するという名目で三沢塾に監禁され、口に出せないような酷い扱いを受けた。
そこから助け出してくれてその能力を封印してくれると約束してくれた錬金術師に裏切られ、殺された。

これがあまりに救いの無い私の物語。
だけど彼はそんな物語に突然現れて、全てをぶち壊してくれた。
彼の姿は私の物語には絶対に現れることは無いと思っていた救世主のそれだった。

最初に彼に対して抱いた感情は憧れと、淡い、淡い恋心だった。
例えるなら超が付くほど人気な芸能人にただの一般人がファンになるような、そんな感じだろうか。
言動を見る限り彼女とかはいないとわかっているのに私は半分諦めてしまっていた。
彼は到底手の届かないような所にいるのだと。
だけどその状態のままだったらすごく楽だったと思う。
半分諦めてしまっているのだ。例え失恋をしてしまってもダメージは半分で済む。
予防線を張った恋というのは褒められたものではないかもしれないけど、それでもこんな私には丁度いいものだった。
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/07(木) 00:05:51.16 ID:bSoag0qXo

その後にも細かい思い出はたくさんあるけど、次に思い出すのは大覇星祭の時だ。
やっと手に入れた、この能力を封印するための十字架のせいで魔術師に殺されかけた時私はやっぱりこの物語には救いなんて無いのだと思った。
彼がぶち壊してくれたはずの物語はあの時から終わることなんてなく、今まで続いていたのだと。
   
だけど彼はまた私の物語に現れてくれた。
全く思い通りになってくれないこの世界を呪い、絶望している私にたった一言の約束で希望を与えてくれた。
交わした約束は守られなかったけど、カーテンの先の世界はとても眩しかった。
彼は今度こそ私の世界にまだ救いがあるということを教えてくれた。

二度目の救済の後、彼への想いはどうしても諦めきれないものに変わった。
予防線を張ることなんて不可能なくらい想いは強くなってしまった。
それは私を助けることは彼の負担になってしまうのでは、という不安をあの子が払拭してくれたことにも一因があると思う。

想いが強くなればなるほど辛くなって、私は嫉妬という初めての感情に戸惑うことになった。
彼と話したり、仲良くしたりする人が妬ましく思うようになってしまったのだ。
その前では絶対に考えられないような状態だった。
特にいつも一緒にいるあの子が羨ましくって仕方なくて、もしかしたらあのポジションにいるのは私の可能性だってあったんじゃないか、
なんていう下らない妄想をしたこともあった。
あの子を見ているときの彼の顔は私や他の誰かに向けるものと、全く違うということに気がついていたというのに。
彼があの子に向けている感情が恋愛感情なのかどうかはわからない。
だけどわかることがある。
彼の行動原理の根本に彼女はいて、それは他の人が取って代わることは不可能なポジションなのだと。
彼とあの子の間には誰も立ち入ることのできない絆があるのだと。

傍から見たらあまりにも絶望的な状況だろう。
それでも私は諦めない。諦められない。
勝利なんて望めないこの戦いを。


「じゃあこの問題は上条が解け」

ふと上条君の名前が聞こえてきて意識が授業に戻される。
気がつくとクスクスという笑い声もしている。
上条君に目を向けるとどうやら今日一番の難問を当てられたようだった。
対してそんな不幸な上条君はというと問題が当てられるまで爆睡していたみたいで、キョロキョロしていてまだ何が起きたか理解してないようだった。

彼の姿を見てなんとなく自分のポケットに入っている鍵を手のひらの上に出してみる。
彼の部屋の鍵を開けられる鍵。
吹寄さんに嘘をついてまで手に入れた鍵。
私はこの鍵を手にいれて何がしたいのだろうか。
自分自身でもその目的はわからない。
でも、そんな気味が悪い状態でも不思議と彼にこの鍵を返そうとは思えなかった。


暫くしてチャイムと彼の口癖が同時に鳴り響いて五限目の授業は終了した。
最後までこの鍵を手に入れようとした私の目的を思いつくことはなかった。
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/07(木) 00:15:48.87 ID:bSoag0qXo
行間 一


「…不幸だ」

自宅の玄関の前で上条はため息とともに口癖を呟いた。
その理由はこうだ。
学校から帰ってみるといつもなら開いている自宅の鍵が閉まっており、
それは彼の部屋に居候している修道女がたった一つのスペアキーを使ってまた外をふらふらとしていること如実に表していた。
ちなみに以前は鍵も掛けずに外出してしまっていたので、これはこれでかなり進歩していたりする。
まあそれだけだったらまだ『面倒だけど不幸っていうレベルではないなー』という感じだった。
とりあえず上条は手に持っている荷物を部屋に置いてからインデックスを探しに行こうと考え鍵を取り出そうとした。
だが制服に付いているポケットを全部裏返しにするどころか鞄を引っくり返して中身を盛大にぶちまけても鍵が見つからなかったのだ。
そんなこんなでただの面倒事が不幸にレベルアップした上条当麻なのであった。

「しょうがない…管理人さんに相談して開けてもらおう。」

荷物を手に持ったままエレベーターまで移動し、
管理人室のある一階に降りようとボタンを押して待っていた上条であったのだが、

「おー。上条当麻ではないかー。そんな辛気臭い顔をして一体どうしたんだ?」

エレベーターが開くと中からクラスメイトであり隣人でもある土御門元春の義妹にあたる土御門舞夏が出てきたのだった。
いつものようにメイド服という装いでクルクル回り続ける掃除ロボを巧みに操縦しながら移動しているようだった。
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/07(木) 00:21:07.45 ID:bSoag0qXo
彼女の問いかけに対してあまり今の状況を自分から話したくない上条であったが、
たまにインデックスの面倒を見てもらっている彼女をあまり無下に扱うことはできず、渋々説明することにした。

「どうやら鍵を無くしちまったみたいでさ、今から管理人さんに鍵を開けてもらえるように頼みに行くとこだ」
「なるほどーいつもの不幸ってやつだなー」
「うっ、他の人からそう言われると結構来るものがあるな…」
「元気を出すのだ上条当麻。悪いこともあればそのうち良いこともあるんだぞー」
「それ上条さんが信じられない言葉第二位に輝いてるやつなのですが…まあ慰めてくれてありがとな」
「いやいやこれくらい礼には及ばないぞー。それじゃあ私は急いで兄貴の料理作ってやらないといけないからまたなー」
「ああ、じゃあな」

上条に別れを告げ舞夏は掃除ロボを手に持ったモップで操作し、そそくさと土御門元春の部屋へと向かった。
それを見届けた上条は少し話したせいで閉まってしまったエレベーターのドアを開けるためにもう一度ボタンを押し、中に入ろうとした。

「あっ、そうだ上条当麻ー」

しかし既のところでまた声を掛けられたため入るのを止め後ろを見ると、土御門の部屋の玄関から顔だけを出して舞夏がこちらを見ていた。

「なんだ? まだ用事あったのか?」
「伝えるべきことがあったのを思い出したのだー」
「も、もしかして土御門からの伝言か?」

また土御門元春の依頼によって超音速旅客機に乗せられるハメに遭うのではないのかと身を硬くした上条であったが、
その防御は全く別の角度からの攻撃を受けることになった。

「そうではなくて、遅い夏休みだとかで管理人さんは今日から来月の終わりまで休みみたいだぞー」




「えっ」
「それじゃあ今度こそじゃあなー」

一方的に衝撃的な事実を伝えると土御門舞夏は玄関を閉めて部屋の中に入ってしまった。
後に一人残された上条は手に持った荷物(タイムセールで買った卵も含まれる)をドサっと落とし暫くあ然とすると

「不幸だああああああああああああ!!」

寮中に響き渡るほどの大きな声でいつもの口癖を叫ぶのであった。
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/07(木) 00:23:50.99 ID:bSoag0qXo
今日はここまで
書き溜めもここまで
という訳で次回の投下は更に短くなってしまうかもしれません
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/04/07(木) 00:25:31.78 ID:J6suE7Nco
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2011/04/07(木) 02:00:09.32 ID:V3qgm8Nho
あなたの切ない文章が好きです
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/07(木) 23:45:16.52 ID:bSoag0qXo
すいません投下できるほどの量が溜まっていないので今日は投下できそうにありません
でも明日は一日暇なのでどうにか投下できるかと思います

と書きこもうとしたらでかい地震が…
みなさん大丈夫でしょうか?
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/07(木) 23:46:13.12 ID:bSoag0qXo
すいません投下できるほどの量が溜まっていないので今日は投下できそうにありません
でも明日は一日暇なのでどうにか投下できるかと思います

と書きこもうとしたらでかい地震が…
みなさん大丈夫でしょうか?
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/04/08(金) 00:45:20.90 ID:ULSVREEuo
待ってるで〜
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/04/08(金) 01:06:19.15 ID:RijSZEk5o
こういう文章好きだー
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/09(土) 01:57:37.52 ID:gTtUvAiXo
見直したら二重書き込みしてますね恥ずかしい

スレを建てた時は不安でしたが、楽しんでもらえてるようですごく嬉しいです
では量は少ないですが投下します
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/09(土) 02:02:39.71 ID:gTtUvAiXo


「ごめんね。今日は一端覧祭の準備があって一緒に帰れない」

吹寄さんは大覇星祭に続いて一端覧祭の委員もやっているため、最近ではこんな風に一緒に帰れないと言われることが多かった。
私には吹寄さん以外には一緒に帰るほど仲の良い友達はいないので、そういう日は一人で帰ることしていた。
というわけで今日もその例に漏れず、私は一人で帰ることにした。
断じて友達が少ない訳ではない。
まだ教室に残っている人に挨拶をして下駄箱へ向かう。
完全下校時刻にはまだかなり余裕がある。
だけど時刻は四時を過ぎていて、教室や廊下など校舎の至る所に血の色のような夕陽が差し込んでいた。
下駄箱に到着し靴に履き替える。
昇降口を出るとグラウンドからは運動部の掛け声が聞こえてきた。
一つのことに集中し、そこに向かって一心不乱に頑張れる彼らが私は少し羨ましい。

校門を抜け暫く歩いていると突然風が吹いた。
それに合わせて私の長い髪がゆらゆらとなびく。
カランコロンと音がして横を見ると、十メートル程離れたところで落ちている空き缶が転がっていくのが目に入った。
その空き缶を掃除ロボが掃除しようと追いかけているけど、
空き缶は風に吹かれて不規則に転がり掃除ロボを翻弄しているように見えた。
乱れてしまった髪を手で整えながら、風に吹かれたことによってほんの少しの肌寒さを感じる。
それもそうか。
十月に入り残暑の厳しかった以前に比べれば気温はグッと下がったし、それに伴うように陽が落ちるのも早くなった。
やっと暑さから解放されたという喜びと、もう夏は終わりかという寂しさが混じって何とも言えない気持ちが私の胸の中で渦巻いた。
ふと、掃除ロボが空き缶を捕まえられたのだろうかと気になり周りを見渡す。
探している最中に目に入った街路樹は葉の色を変えつつあり、もう秋になるのだと感じさせられた。

彼と出会って二ヶ月。
長いようにも短いようにも感じられた。
これから先はどのように感じることになるのだろう?
できれば短いように感じていて欲しいな。

そのまま十秒ほど探したけど、結局掃除ロボも空き缶も見つからなかった。
きちんと目的を達成できたのかな。
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/09(土) 02:05:58.02 ID:gTtUvAiXo
そろそろ寮が見えてくる辺り。
周りはなんだか特定の方向へ急いでいる人が多いような気がした。
歩きながらその理由を考え、今日は近くのスーパーがタイムセールをしている日だということを思い出す。
冷蔵庫の中身にはまだ余裕があるけど、私は買い物をすることにした。

寮とは反対方向に五分ほど歩いてスーパーに到着。
外見は少し寂れているけど商品の何もかもがとにかく安く、
この辺に住んでいる人がこぞって買い物をしに来るのでなかなかに繁盛しているみたいだ。
いつ来てもその安売り目当ての人達によって混雑しているのに、
今日はそれにタイムセールという客寄せ要素が加わったことでものすごい人だかりができている。
この様子ではタイムセールの商品を買うことは無理かも。

お店に入ったはいいものの人だかりから押し寄せてくる、
何としてでも安い物を買ってやるという勢いに負けて私は入り口付近まで押し戻されてしまった。
どうしようかとキョロキョロしながらそばに貼ってあるチラシを見ると、どうやら今日は卵が特に安いみたいだ。
それがこの争いに拍車を掛けているのかな。
ちなみに彼が言うには酷いところでは能力を使って人から商品を奪ったりするらしい。
全く恐ろしい話だ。

戦争のような騒ぎを遠くから眺めながらこのまま買い物を続けるかどうか考える。
わざわざここまで来たのだから何か買うべきかな? 
それともタイムセールを逃したのだから無駄な買い物は控えるべきかな?
暫くの脳内の二人の自分の議論の結果、無駄遣いは止めようという決定が出たので買い物は止めることにした。
怒声やら罵声やらを背後に聞きながらそそくさとお店を出る。
結局五分もお店にいなかったことになる。
やっぱりタイムセールというものは恐ろしいものだと再認識した。
自動ドアが開き、外に出ると夕陽はかなり傾いていてそろそろ暗くなってきそうだった。
慌てることはないが、寄り道をしたら真っ暗になってしまうだろう。
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/09(土) 02:11:46.59 ID:gTtUvAiXo
気持ち早めで歩きながら無駄足を踏んでしまったなと考えていると、十字路から見慣れた人物が通り過ぎていった。
その人物を目で追う。
後ろから見ても金色の刺繍を施した白い修道服を着た彼女はやはり目立っていた。
そのまま少し様子を見ていると彼女はなんだかフラフラとしていて、いつ倒れてもおかしくないような感じだった。
そうなっている理由は大体察しがついていたけど、心配になってなんだか声を掛けずにはいられなかった。
走って追いかけ、後ろから話し掛ける。

「こんなところで。どうしたの?」

その声に反応し彼女はゆっくりと力無く振り向くと、

「お腹へったんだよ、あいさ。助けて」

力の篭っていない、もう三日三晩何も食べてないみたいな声で助けを求めてきた。


目の前で死にそうになっている彼女の名前はインデックスというらしい。
どう考えても偽名にしか思えないけど、みんな何も言わず普通にそう呼んでいるから気にしないようにしている。
気にしたら負けなのだろう。

彼女は上条君と同居している。
私は一度気になって、彼女に何故そうなったのか聞いたことがある。
その時の答えによると彼女は私よりも前に彼に助けられ、そのまま彼の家に転がり込んだらしい。
それを聞いて私は彼女と共通点があることに気がついた。
彼に助けられる前は自分の居るべき場所が無かったという点だ。
彼女は記憶を失い、帰る場所も持たないまま一年間宛てもなく逃げ続けたそうだ。
私は帰る場所を自分の能力で全て灰にして、その能力を消せると思って逃げた先はあの地獄だった。
それなのに彼女は彼に引き取られ、私は小萌先生に引き取られるまで街を浮浪することになった。

今では私は学校にも通い、居場所もある。
だけど疑問に思わざるをえない。
彼女と私はどこで差がついたのだろうか、と。
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/09(土) 02:16:53.97 ID:gTtUvAiXo
今日はここまで
相変わらず量が少ないです

早く書こうとは思うんですが上手くいきませんね
本当にすいません
予定ではインデックスのとこまで終わらす予定でした…

読んでくださってる方は本当にありがとうございます
まだまだ未熟ですが頑張りたいと思います
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/04/09(土) 02:26:29.88 ID:pOLuQTD7o
遅筆でもいい
完成させてほしい
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/04/10(日) 00:43:13.42 ID:5z8aLpYTo
応援してるぞ

それはそうと、これから投下する時は最初だけageたら?
專ブラ使ってない人が見つけやすいように
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/10(日) 07:48:31.99 ID:HYKs69opo
>>47
わかりました
次の投下からはそうしたいと思います

とりあえず報告としては今日の投下は無理だと思われます
なるべく間を開けないように頑張りたいのですが、いかんせん書くのが遅くなってしまって…
みなさんの応援を無駄にはしないためにもいくら遅くなっても完成だけは絶対にさせたいと思います
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/21(木) 01:51:17.23 ID:v6SoUjGDO
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/21(木) 02:23:29.29 ID:BsIkDzrto
なんだかスレが上がっているので近況報告を
前回と同じような量になってしまいますが明日か明後日には投下できるかと思います
こんなに更新が止まっているのにも関わらず待ってくださっている方、相変わらず遅筆で申し訳ありません
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/04/21(木) 04:21:14.71 ID:zl697Cgso
期待
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2011/04/21(木) 12:18:57.71 ID:ymef92W90
姫神が可愛いSSならいくらでも待てる
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/21(木) 21:54:02.56 ID:5ZixrpMSO
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/04/21(木) 23:42:17.91 ID:TTjm7UUG0
地の文が多いとか言う批評家がいたせいか、、、さらに増えてるww むしろ地の文だけになってるし。

可愛い姫神スレは少ないんで期待してます
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2011/04/23(土) 01:23:46.61 ID:BGsQlpcYo
正直自分の書いている姫神がかわいいかどうか自信が無かったんですが
かわいいと言ってもらえて嬉しいです

では予告通り投下したいと思います
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) :2011/04/23(土) 01:24:42.60 ID:Lc0PesnQo
待ってた
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/23(土) 01:25:34.85 ID:BGsQlpcYo
「どうして。そこまで空腹に?」

彼女が尋常ではない程の大食いであることはここ二ヶ月間にあった様々な経験から知ってはいた。
だけど今の彼女はこう話している最中も相変わらずフラフラとしているし、
俯いているためによく見えなかった顔をよく見ると、いつもはキラキラと輝いている目も心なしか光を失っているように見えた。
いつもの『お腹へった!』なんて騒いでいる調子に比べてこの様子は少しばかり異常だと感じた私は彼女に理由を尋ねたのだった。
どこか体を悪くしているのであれば一大事だ。

「よくぞ聞いてくれたんだよあいさ! とうまったらお昼ごはんを用意するのをまた忘れたんだよ! 
 全くとうまは私を空腹で[ピーーー]つもりなのかな!?」

……私の心配は全くの杞憂だったらしい。
彼女は私の質問を聞くや否やグワッ!! と顔をあげて元気いっぱいに答えた。
さっきまでの今にも死にそうな様子はもうどこかへ行ってしまっている。

「だったら。自分で何か作ればいい」
「だ、だってこの前とうまの言う通りにでんしれんじーを使ったら、中で爆発が起きて死ぬかと思ったんだよ!
 やっぱりとうまの教え方が悪すぎるのかも!」
「それとこれとは。話が別では」
「でも、その後とうまが危ないからお前は料理をするなって!」
「それなら。尚更練習するべき」
「だけどとうまが―――」

それ以上はもう聞きたくなかった。
彼女は気づいているのだろうか。
まるで不満そうに『とうま』なんて言ってはいるが、その声には全く怒りが篭っていないということを。
彼の話題になった途端に元気を取り戻しているということを。
実際は違うのだけど、私には彼女がダメな彼氏の愚痴をたまたま通りかかった友達にこぼしているように感じられてしまった。
簡単に言えば惚気話だ。
58 :>>57やってしまった… [saga]:2011/04/23(土) 01:27:24.81 ID:BGsQlpcYo
「どうして。そこまで空腹に?」

彼女が尋常ではない程の大食いであることはここ二ヶ月間にあった様々な経験から知ってはいた。
だけど今の彼女はこう話している最中も相変わらずフラフラとしているし、
俯いているためによく見えなかった顔をよく見ると、いつもはキラキラと輝いている目も心なしか光を失っているように見えた。
いつもの『お腹へった!』なんて騒いでいる調子に比べてこの様子は少しばかり異常だと感じた私は彼女に理由を尋ねたのだった。
何か体を悪くしているのであれば一大事だ。

「よくぞ聞いてくれたんだよあいさ! とうまったらお昼ごはんを用意するのをまた忘れたんだよ! 
 全くとうまは私を空腹で殺すつもりなのかな!?」

……私の心配は全くの杞憂だったらしい。
彼女は私の質問を聞くや否やグワッ!! と顔をあげて元気いっぱいに答えた。
さっきまでの今にも死にそうな様子はもうどこかへ行ってしまっている。

「だったら。自分で何か作ればいい」
「だ、だってこの前とうまの言う通りにでんしれんじーを使ったら、中で爆発が起きて死ぬかと思ったんだよ!
 やっぱりとうまの教え方が悪すぎるのかも!」
「それとこれとは。話が別では」
「でも、その後とうまが危ないからお前は料理をするなって!」
「それなら。尚更練習するべき」
「だけどとうまが―――」

それ以上はもう聞きたくなかった。
彼女は気づいているのだろうか。
まるで不満そうに『とうま』なんて言ってはいるが、その声には全く怒りが篭っていないということを。
彼の話題になった途端に元気を取り戻しているということを。
実際は違うのだけど、私には彼女がダメな彼氏の愚痴をたまたま通りかかった友達にこぼしているように感じられてしまった。
簡単に言えば惚気話だ。
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/23(土) 01:29:42.29 ID:BGsQlpcYo
彼女はたまに会って話したりすると、よくこんな惚気話のようなものをしてくる。
それに付き合わされると私はどうしても嫉妬をしてしまうのだった。
こんな風になりたいと。
だけど彼女は吹寄さんと同じように私の大切な友達だ。
三沢塾から解放されて初めてできた友達だし、『あいさ』なんて言って懐っこく話してくれる彼女は非常に可愛らしく感じた。
だから彼女には向けてしまった妬みを私はすぐに忘れて捨てるようにしていた。
具体的に言えばちょっと高いプリンを買ったり、一人でカラオケに行って熱唱したりなどだ。
謂わばストレス発散に近いのかもしれない。
その行為は友達という大事な関係を壊さないためにもとても重要な事だと考えていた。
きっと私は溜め込んでしまうときっと大変なことになると頭のどこかで理解していたのだろう。

今日彼女と会うまで私はそれらの努力は実を結んでいると思っていた。
でも、彼女と話して私は気がついた。
捨てきれなかった妬みは私の気づかない間に確実に、着実に心に溜まっていたということを。
それはいつの間にか灰のように積もり、彼女への友情や愛おしさを上から覆っていた。
真っ白に、塗り潰すように。
そして灰が蓄積しきった今、彼女が『とうま』と言うたびに嫉妬が強くなっていくのを私は抑えきれなくなってしまった。
燻っていただけのそれは瞬く間に火力を増していった。
そしてこのたった何分かの間にそれはとてつもなく大きな嫉妬の炎に成長していた。
塗り潰すのではなく、全てを焼き尽くし灰に帰してしまうように。

今、私は彼女には嫉妬以外の感情が無い。
それを抑制するための他の感情はついさっきまであったはずなのに、どこかに消えて無くなってしまった。
もう私は彼女への嫉妬を止められない。抑えられない。

「――でね、今度はとうまが―――」

彼女は相槌も打たなくなった私に気づかないでまだ話し続けていた。
こんな風に彼のことを誰かに話せる彼女が羨ましい。
きっと私には無理だ。
何故なら誰かに語れるほど彼との思い出が無いから。
彼女の表情は楽しそうで、すごく可愛かった。
こんなかわいい顔を出来る彼女が妬ましい。
きっと私には無理だ。
何故なら私は嫉妬のせいで酷い顔になってしまっているから。

これがヒロインである彼女とただの脇役である私の差なのだろう。
気づいていた筈なのに改めてその事実を突きつけられると、更に彼女への妬みが強くなった。
これ以上は大きくならないと思っていたのに。
もう自己分析は意味を成さないだろう。
自分でもこの感情がどこまで大きくなるのか予想も付かない。
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/23(土) 01:38:58.38 ID:BGsQlpcYo
「どうしたの、あいさ?」

ようやくおかしいと感じたのかいつの間にか彼女は話を止め、首を軽く傾げながら私を覗き込むように見上げていた。
その顔からは私を心配する気持ちが滲み出ていた。
大方嫉妬に顔を歪め、何も言わず俯いていた私を体調不良か何かと勘違いしたのだろう。
悟られないように頑張ってはいたがどうやら努力が足りなかったみたいだ。

きっとここは彼女に心配を掛けさないために取り繕うべきなのだろう。
次に会った時も友達として普通に話せるように。
彼女との友情をぶち壊さないように。
だけどこれ以上彼女と話すのは耐えられなかった。

―――だって私がこんなにも劣っていると気付かされてしまうから。


「ごめんね。もう。耐えられない」

口から出たのは謝罪の言葉だった。
彼女のことを罵倒するのかと思ったけど、まだ幾許か理性は残っていたみたいだ。
返答を待たず、その場から私は逃げ出した。
後ろからは心配そうに私の名前を呼ぶ声がしていたけど、無視した。
何も考えずに走りだしために寮とは違う方向に走ってしまっている。
それでも立ち止まらずに私は走り続けた。
そうしないと心がどうにかなってしまいそうだったから。


息も上がり、心臓がおかしなほど早く打っている。
ブラウスが汗によって張り付いて気持ちが悪い。
もう何分走っているのだろうか。
時間の感覚があやふやになっている。
まだ数分しか走っていないような気もするけど、何十分も走ったような気もした。
何にせよ時間が経ったために私は少しだけ冷静さを取り戻した。
このまま闇雲に走っては寮に帰れない。
立ち止まり、今私がどこにいるのか周りを見渡して確認する。
さっきまで肌寒さを感じていたのに今は体が火照ってひどく暑かった。

なんだか見覚えのある所だと思ったら、どうやらここは彼の寮の近くのようだ。
意識せずに私はこんな所まで来てしまったらしい。
これは偶然なのだろうか。それともわざとなのだろうか。
考えても結論は出なさそうな議題だった。
そんな事よりもさっきから私の直感があることを告げていた。
早くここから立ち去らないと彼と出くわしてしまう、と。
今だけは彼に会いたくなかった。
走り続けたことによる疲労のせいで顔は酷い状態だろうし、髪のセットも崩れてグチャグチャになっているだろう。
そしてなにより、嫉妬にまみれているこの醜い精神状態で彼と話したくなかった。
彼に対してどんな行動を取ってしまうのか全く想像ができない。
出会ってしまうのは間違いなくお互いのためにならないだろう。

幸い何回か彼の家を訪れたことがあったので、周囲を見回せばどの方向に向かえば帰れるのかはすぐにわかった。
当たりをつけた方向へ急いで歩き出す。
ここからならそれほど時間も掛からない。


「あれ姫神、こんな所で何してんだ?」

だけど、現実はそう上手くはいってくれなかった。
こういう時に限って直感が当たってしまった。
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/23(土) 01:42:36.94 ID:BGsQlpcYo

もう陽は落ちかけていて、街灯も至る所で点いている。
そんな暗がりのなか、スポットライトのように街灯に照らされながら上条君が立っていた。
どうしてこんな時に会ってしまうのだろう。
自分の不運を呪わずにはいられなかった。
少し離れていた距離を彼が手を振りながら走って詰めてくる。
すぐに逃げ出したい衝動に駆られたが、そうしてしまったら心証を悪くしてしまうかもと思えてそれはできなかった。
それに上条君のことだ。
逃げたらきっと私を追いかけてくるだろう。

「ちょっと。散歩をしてた」

彼が立ち止まるのを待ってから質問に答える。
鈍感な彼のことだからこんなみえみえな嘘でも騙されてくれるだろう。

「ふーんなるほどな。でも危ないからあんまり遅くまで歩きまわるなよ。
この辺はスキルアウト少ないけど夜になったらそうでもないだろうし。」

ほらやっぱり。
でも、こんな私でも心配してくれる彼の心遣いが嬉しい。
それとともに、優しい彼から更に特別に見られているあの子がより一層妬ましく思えた。

「大丈夫だよ。もうそろそろ帰るから。じゃあね」

彼になるべく表情を見られないために、別れの挨拶をしてすぐに後ろを向いて歩き始める。
たぶんあまり顔は見られてないはずだ。
せっかくの機会が少し勿体無く感じるけどしょうがない。
今はここから逃げ出すのが最優先だ。

「ちょっと待ってくれ」

だけどそんな思惑は外れ、彼に呼び止められてしまった。
これまでの私の振る舞いは、客観的に見ると少し不自然だったような気がする。
いくら彼が鈍感だからとはいえ、態度があからさま過ぎたかな。

…でも、彼に気に掛けてもらえるならそれはそれで嬉しいかもしれない。

「なに?」

後ろは振り向かずに返事をする。
返事こそぶっきらぼうだったけど、その時私の心のなかでは淡い期待が生まれていた。
彼はもしかしたら今の私の状態を見抜いてくれているのではないか、と。
私に何かやさしい言葉を投げかけてくれるのではないか、と。
彼はいつだって私が助けを求めていると、必ず救いの手を差し伸べてくれた。
だから私は期待してしまった。
彼がまた私を助け出してくれると。


だけど私の儚い幻想は彼の一言でぶち壊されることになった。

「どっかでインデックス見なかったか? 
あいつ部屋の鍵を勝手に持ち出してどっかに行っちまったんだよ」
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/23(土) 01:46:02.38 ID:BGsQlpcYo

彼女の名前に反応して体全体がビクッとして、呼吸も一瞬止まった
その瞬間から心のなかに様々な感情が流れこんできて、それらは混ざり合い大きな渦となって私の心を掻き乱し始めた。
わかっていたはずではないか。
鈍感な彼のことだから私の嘘には気がつかないと。
それにこれが会ったときに私が望んだ展開だったではないか。
そう頭では理解していた。
だけど心が納得してくれなかった。
彼の口から彼女の名前が出てくるのが許せなかった。
今は彼女の出番ではなく私の出番ではないか。

「どうして」

呟きにしてはやや声が大きく、問いかけにしては小さかった。
それは意図せずに発した言葉。
でも今の私の心情を最もよく表していたかもしれない。
そして、その声はひどく震えていた。

「どうしたんだ、姫神」

おかしな私を見て、さすがの彼でも異変に気がついたようだ。
先程と比べ声のトーンが落ちて、真面目なものになっている。
後ろを向いているからわからないが、きっと顔も声に則したものになっているだろう。

「ごめん。上条君。ちょっと一人にさせて」

まだ声は震えていた。
むしろさっきよりもひどくなったかもしれない。
捨て台詞のように言い放って、彼から逃げるように歩き始めた。
急げばまだなんとか後戻り出来る位置に私はいるはずだ。
だけどこれ以上彼と話していると越えてはいけない一線を越えてしまうような気がする。
早く、早くしないと。

「ちょ、ちょっと待ってくれ」

突然彼が私の右腕をつかんだ。
彼は私を引きとめようとしてくれたのだろう。
でも彼の手は恐らく本人の予想以上に力が篭っていて、私をひどく驚かせた。
だから私は振り向いてしまった。
あれだけ見せたくなかった私の顔を彼に見せてしまった。

「へっ?」

私を見て驚いたような声を出すと上条君は私の腕から手を放した。
その隙に私は体を半回転させて、彼から走って逃げた。
なんだか今日は逃げてばかりな気がする。
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/23(土) 01:50:59.53 ID:BGsQlpcYo

暫く走ると私は彼が追いかけて来ているのか気になった。
そのためにその場に立ち止まり、後ろを振り向いて暗闇のなかをじっと見つめる。
丁度その位置は街灯の真下であり、スポットライトのように私に光が差す形になっていた。
光のなかで二十秒ほど注意深く見ていたけど、彼が来ることはなかった。
急ぐ必要はなくなったので後は歩いて寮まで帰ろうと思い足を動かそうとしたけど、重くて動いてくれなかった。
今日は走ることが多かったので疲労が足に溜まっていたのだろう。
立ち止まったついでに私はそこでしゃがみこんで少し休憩を取ることにした。
周りは真っ暗で、もう街灯の照らしている所以外はよく見えなくなっていた。
暗くなる前に帰る筈だったのに、結局こんな時間までそれは叶っていない。
本当に私は何をしているのだろう。
軽い自己嫌悪に陥ったけど、体力は回復したので私は立ち上がって再び歩き始めようとした。
でも、そこで私は違和感を覚えた。
視界がやけにぼやけているのだ。
目が疲れているのだろうかと思って、指で目を擦ると今度はその指が濡れている。
訳がわからなくなって今度は手全体を使って目を拭うと、動かすたびにどんどん手が濡れていった。
そこまでやって私はやっと気がついた。
自分がさっきからずっと泣いているということを。


心のなかで微かに、だけれども確かに何かが壊れるような音がした。
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/04/23(土) 01:54:04.03 ID:BGsQlpcYo
今日の投下は以上です
次はいつになるかわかりませんがなるべく早く投下できるように努力します
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/04/23(土) 02:10:31.72 ID:Lc0PesnQo
頑張れ
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/23(土) 02:21:43.46 ID:BGsQlpcYo
応援してくれている書き込みを読むとすごく嬉しくなります
本当にありがとうございます


地の文ですがこれからも多くなると思います
コンセプト的にどうしてもそれは避けられなくて…
ただ読み直すとちょっと無駄に多すぎるような気もするのでもしかしたら少し減らすかもしれません
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/04/23(土) 02:35:10.24 ID:Lc0PesnQo
地の文は最初よりも良くなってると思うよ
姫神というキャラの特性上、量が多いのは仕方ないけど読み易くなってる
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/04/23(土) 14:04:30.00 ID:Y/2eBij90
姫神は文系少女なんだから脳内思考が多いし、むしろ会話文が無くてもいいくらいじゃね?
姫神という存在を表現するには、>>1の地の文と会話文の比率はかなりいいと俺は思うよ。
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2011/04/23(土) 22:28:34.55 ID:vO/Z9RNO0
面白いよー
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) :2011/04/29(金) 23:58:28.44 ID:LSwQMtKAO
期待して待ってます。最近いかがですか?
姫ちゃんは、「上条さん以外では幸せにできない」数少ない少女だと思います。なんとかくっついて欲しいもの…
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/30(土) 14:00:23.34 ID:ZYbMbxuWo
御意見ありがとうございます
とりあえずは自分のやりたいように書いていきたいと思います
その中でおかしいと感じるものがあればご指摘下さい

そして現状報告ですが…申し訳ありませんここ最近はとても忙しかったので書き溜めが出来ていません
ですがゴールデンウィークは幸いにも予定が全く入っていないので、その間に投下できるほどの量を書き溜めできると思います


>>70
まさか自分と同じ考えの人がいるとは…
そこら辺をこのSSにも反映できたらいいなと思っています
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) :2011/05/01(日) 22:46:43.05 ID:gPq9DAzAO
>>71
同志!われらが姫ちゃんを、なにとぞ幸せにしてあげてください。
話の進め方自体面白いし、この姫神は生き生き、というかちゃんとしてるので、続きが楽しみです。
明らかにプロットは出来てそうですし(笑)、大変でしょうが頑張ってください。応援しつつ全裸正座待機してます。
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 07:48:35.87 ID:90qIM1oSO
待ってる
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/05/06(金) 18:34:46.52 ID:/4mz0twFo
ゴールデンウィークって昨日までだったんですね…
勘違いして日曜日までだと思ってました…
というわけでゴールデンウィークは終わったにも関わらず投下はできそうにありません
本当にすいません

日曜日までには投下できるように努力します
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2011/05/09(月) 02:18:13.70 ID:l2exwLWoo
日付は変わりましたがどうにか今回の分が完成しました
では投下します
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/05/09(月) 02:21:09.31 ID:l2exwLWoo
5
目を覚ますと私はいつの間にか自室のベッドに突っ伏していた。
記憶は無いけどどうやら帰ってすぐに寝てしまったようで、鞄が投げ出されるようにベッドの脇に落ちていた。
テーブルの上に置いてある時計を目だけで確認すると、時刻は午前の一時を越えていた。
かなり長い時間寝ていたみたいだ。
ちなみに目を覚ましたとは言ったけど、実際はほとんど寝ている状態で目もほぼ開いていない。
起きなくてはと思うけれど眠気には抗えず、そのままうとうとする。

もう後何秒かで落ちてしまう、最も気持ちがいい状態。
このまま眠気に身を預けてしまうのも悪くないかもしれない。
起きてやらなくてはいけないことは山積しているけど、そんな煩わしいことは頭の隅に追いやって私は深い、深い暗闇へと落ちていく……


「ぐーー」

そんな物凄く気持ちがいいタイミングで突然、間抜けな音と共に空腹感が襲ってきた。
しかも眠気を一気に吹っ飛ばすレベルの。
さっきまではあれだけあった眠気も今はどこへやら。
もう、ちょっとやそっとのことで寝ることはできないだろう。
少し腹が立ちはしたけど、このまま服も着替えずお風呂にも入らないで寝てしまうという最悪の展開はどうにか避けることができた。
目を指で擦って覚醒を促し、両腕を上へ伸ばしてほんの少し残っていた眠気を消し去る。
とりあえず何か食べることにしよう。

立ち上がってみると今更ながら自分が制服を着ていることに気がついた。
帰ってから寝るまでの間に着替える暇も無かったみたいだ。
パッと見て目立った皺になっているところが無いのが幸いだろうか。
制服のままご飯の準備をするのは気が引けるけど、さっきからうるさいくらいお腹は鳴っているし、軽い物を作る程度なら汚さないで済むだろう。
着替えるのは後回しだ。
台所へ向かい、冷蔵庫を開ける。
本来ならば今日は揚げ出し豆腐を作る予定であり、そのための材料として豆腐やしめじなどが入っている。
その他にも幾つか買い置きしておいたものがある。
決して材料は多くないが使い方の選択肢があり、つい何を作ろうか迷ってしまう。
だけど今は深夜の一時過ぎ。
軽く済ませないと後々に大きな影響が出てしまう。
しょうがない、豆腐は冷奴にして買い置きの納豆を食べよう。
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/05/09(月) 02:24:39.72 ID:wjd1ist7o
待ってた
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/05/09(月) 02:32:58.50 ID:l2exwLWoo
とんとんとん、とネギを切る度に包丁とまな板が当たって小気味のいい音が鳴る。
後ろの電子レンジでは冷凍保存しておいたご飯を解凍している。
流石に豆腐をそのまま食べるのは品がないと感じて、上に乗せるためにネギを切ることにしたのだ。
それでも質素なご飯であることに変わりはないけど。

時間こそ遅いけど、これは一見したら日常の風景だろう。
だけど私の心のなかはそれとは程遠い状態だった。
冷静を装っているけど本当は嫉妬心や独占欲でごちゃごちゃだ。
彼と話したい、彼と仲良くなりたい、彼と親密な関係になりたい。
彼が誰かと話すのが許せない、彼と誰かが仲良くなるのが許せない、彼と誰かが恋人になったりしたら許さない。
そんな考えが起きた時から頭の中でぐるぐるぐるぐる回っている。
そして僅かではあるけどそんな私を客観視して冷めた目で見ている私もいる。
その全てに共通するのは彼が好きだという感情だった。
私は彼を思う心を全く制御できていない。

「つっ」

痛みに顔をしかめる。
そんなうわの空の状態で包丁使っていたのだからこれは当然の結果だろう。
右手の人指し指から血がどくどくと、溢れるように流れだす。
痛みを感じるまで切っていることに気がつかなかったために、咄嗟の回避行動もできずかなり深い傷になっていた。
早く止血しなければならない状態だ。
だけど、私はそれをしなかった。
これを見てあることを思いついてしまったのだ。

私の存在証明の一つである吸血殺しの能力が私の血には宿っている。
きっと吸血殺しというものはこの血があってようやく成り立つものなのだろう。
つまりこの能力の本質はこの血にあるのだろう。
そこから私はある仮定を導き出した。

もしこの血を彼に飲ませ続ければ吸血殺しとまでは行かないにしてもそれに近い、
私の能力に似た何かを得るのではないのだろうか?
そして私の存在証明であるこの血を彼が飲むということはつまり、
彼は私の一部を摂取することになりほんの少しだけ彼が私のものになるのではないか?


そんなことは有り得ない。
すぐさま私のなかの誰かが否定した。
私の血にそんな効果がある訳がない。
そしてもし私の血を誰かに飲ませて能力が発現するとしても、
彼の右手には何かしらの能力であれば全て打ち消してしまう右手がある。
私の血にそんな効果があったとしてもすぐさま打ち消されて終わりだろう。
そんな行為には意味なんてないんだ。

完璧な理論で、私もその通りだと思う。
でも彼を私のものにできるかもしれないこの方法を、理に叶っていないと切り捨てることはできなかった。
無駄になるとわかっているのに私は諦められなかった。
彼が好きだという気持ちを押し殺せるほど、大人ではなかった。
私は圧倒的に正しいその理論を結果的に無視することになった。
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/05/09(月) 02:34:34.12 ID:l2exwLWoo

だけどどうやって彼に血を飲ませる?
当然の疑問が降って湧いた。
彼に私の血を飲んで欲しいなんて言える訳ないし、気づかれないように飲ませるのも大変だ。

しかしそんな疑問は浮かんだ瞬間には答えが出ていた。
ポケットを探ってその答えの正体を取り出す。
昼間に拾った彼の部屋の鍵だ。
因果というものが恐ろしく感じられる程にタイミングがよく出来ていた。
でもこれを私は運命だとは思わない。
単なる偶然であり、彼にとったらそれこそ不幸というやつだろう。

時刻は一時過ぎ。彼も寝ているだろう。
やるなら今しかない。
目を瞑って覚悟を決める。
嫉妬も独占欲も間違っているこの理屈も全部飲み込む。
目を開けて私は歩き始める。
ゆっくりと玄関を開けて部屋を出た。
上を見上げても空は曇っていて月も星も眺めることはできなかった。


いつからか指の痛みは感じなくなっていた。
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/05/09(月) 02:52:19.53 ID:l2exwLWoo
今日はここまでです

このSSを書き始めて一番苦労しました
力不足を痛感させられました…
精進したいと思います
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/05/09(月) 02:53:25.42 ID:wjd1ist7o
お疲れ
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 03:55:04.85 ID:1gJ/b9D20
姫神さんちょっとネジがズレてきてらっしゃる…!ゴクッ
愛ゆえにと思うと可愛いからいいけどね!
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/09(月) 14:18:22.35 ID:VyGBSuLAO
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/10(火) 00:26:47.20 ID:l3PeQi1AO
読ませていただきました。お疲れ様。
あくまで個人の感想。
ちょっと無理をしてませんか?プロット重視で力わざをしてるように見受けられます。嫉妬の部分までは順調にいってたと思ったから、そっから先かな?
偉そうに申してすみません。書けるとき、書きたいときに書けるだけ書いて下されば、と存じます。応援してますので。
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2011/05/10(火) 00:48:43.32 ID:QySyP/Qzo
全くもってその通りでございます
自分も同じように感じていたのですが、いくら書き直してもこれ以上の物が書けませんでした
本当に申し訳無いです

一つお願いがあります
もしよろしければここだけ書き直させてもらえないでしょうか?
自分としてもここは最も大事にしたい場面だったので、このままでは納得できなくて…
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/05/10(火) 21:10:01.44 ID:/5Zq5yLyo
俺は作者が納得して迎える結末を見たい
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/10(火) 21:31:23.64 ID:If2Tx5Noo
いいんじゃないですかね
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/10(火) 23:10:36.97 ID:l3PeQi1AO
84ですが、これで三票。ま、最終的にはむろんup to 作者さんですし。無理しないで書いてね。
二日書き込みなくても落ちないっぽいのがわかったので、適度に保守します。
余談ですが、指摘が的外れじゃなくて良かった(笑)そこそこちゃんと読めてたようで。
プロットと、既にあるキャラクタを動かす壁は厳しいでしょうが、くじけずに。応援してます。
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/05/11(水) 01:49:25.79 ID:GNBENofwo
こんなワガママ聞いてもらって本当にすいません
最初から完成品を投下しろっていう話なのに…


投下できるのはいつになるのか予測できません
プロットの見直しも考慮する可能性もありますし、どれだけ修正を加えればいいのか見当もつかないもので…

色々とgdgdな作品ですが読んで下さってありがとうございます
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/17(火) 00:51:49.14 ID:VELsCdTAO
定期保守。急かしてないので、ごゆっくり。
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/25(水) 00:25:18.52 ID:5/ZLrfeAO
さて
定期保守
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/05/26(木) 16:49:41.97 ID:qyw2h9R0o
2週間も経っているので近況報告です
色々とやらなくてはいけないことが重なってしまいあまり進んでいません
本当に申し訳ありません

そろそろ暇ができそうなので書けるかと思います
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/29(日) 03:29:50.23 ID:UoFVybHIO
のんびり待ってるよ〜
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/29(日) 15:57:13.34 ID:gLpbE0wAO
ども。保守のひとです
生きてるなら、いいんだ。ゆっくりでいいから、納得のいく良いものを書いてください。
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/06/04(土) 23:49:30.68 ID:rXonO9vAO
保守。ひゃっはー!






以下チラウラ。
好きな子が、ひめちゃん並に感情が読みにくくて困っています。御飯やお酒には付き合ってくれるんですが、今一楽しんでるのか不安になる…
上条さん並の器と感受性が欲しい…
ちらうらすみません…
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/06/05(日) 00:00:38.00 ID:t+tlWagAO
保守。ひゃっはー!






以下チラウラ。
好きな子が、ひめちゃん並に感情が読みにくくて困っています。御飯やお酒には付き合ってくれるんですが、今一楽しんでるのか不安になる…
上条さん並の器と感受性が欲しい…
ちらうらすみません…
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/06/08(水) 00:52:12.30 ID:tQ6ENq5Ho
まあ頑張って。>>1>>96

支援
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/06/09(木) 03:13:50.01 ID:jKbDnSH0o
また2週間経っちゃってますね…
今更ですが大した量を投下している訳ではないのにこの遅さは…
待たせてしまって申し訳ないです

現状報告ですが、少しづつではありますが着実に進んでおります
投下したものと全くの別物になりつつありますが…
まだ忙しいので投下できる目処は立っておりませんが、合間を縫ってちょこちょこ書き溜めたいと思います


>>96
アドバイスなんてものはできませんが、ゲット出来るように頑張って下さい!
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/06/17(金) 19:03:21.97 ID:29OXAv4AO
保守。6月は祝日がないから、書くヒマ見つけるのは大変だよなー
あせらずゆっくり書いてくださいな。
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/06/23(木) 22:45:16.98 ID:Y9eE4hBAO
100踏んでみた。
週末ですね。姫ちゃんとカラオケ行きたい。
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/06/23(木) 23:00:25.93 ID:KJ4YbDxTo
中島みゆきとかCoccoとか歌いそうなイメージ
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/06/25(土) 01:03:11.27 ID:5iJ+PT4Go
姫神はドロドロっとした歌が似合いそうですね

定期報告です
それなりに進んでおり、指摘された展開の強引さはどうにか解決できそうです
ただ前にも書きましたが投下した文とはまるで違うものになっていて、その上ある事柄に対しての独自解釈がかなり増えています
そういったものが苦手な方は申し訳ありません

今はすこし暇になりましたが嵐の前静けさのようなものでまた忙しくなりそうです…
あまりお待たせしないように努力したいと思います
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/06/27(月) 18:58:22.41 ID:EkW+irbAO
作者氏が納得いく出来ならば文句などあろうはずもなく。逆に、満足いかないなら粘ってください。〆切りなぞないんですから。

しかし、ドロドロしてるのは能登のイメージではあるまいか。
Coccoもみゆきも能登ボイスでしっかり再生されてしまったが。
ちなみに、姫ちゃんに似た彼女は恥ずかしがってほとんど歌ってくれませんでした(笑)。
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/06/27(月) 21:04:35.19 ID:aaiyHb9wo
今日このスレを見つけました。最近姫神スレを見てなかったから嬉しい限りです
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/03(日) 19:05:17.79 ID:tB+QWV1po
>>103
ちょっと何言ってるのかわからないです
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) :2011/07/03(日) 19:52:16.16 ID:hjiBR8nAO
姫ちゃんのリボン

陰気な君が好き
紅い袴もキリリと
ほら魔法を ううん 起こしそうな
フシギな力だね

っていう電波が届いた。歳がバレる。
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/03(日) 21:29:17.87 ID:UwMZvviR0
なんか関東さん怖い
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/04(月) 01:53:02.51 ID:KOKXXf7SO
さっき発見したよ〜
あれをここまで面白く広げられるなんてすごい

舞ってるぜ〜クルクル
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2011/07/04(月) 17:15:29.01 ID:yIL5JHRw0
>>106
ここは保守はいらないのよ
というより何か怖いよ文は簡潔にね
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/15(金) 15:23:26.21 ID:HPEslNzIO
頑張れ
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/07/25(月) 23:40:07.40 ID:Iv2ABzVto
応援してます
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/07/26(火) 03:52:53.22 ID:FPwU9huQo
時間を空けてしまってすいませんとりあえず生きています
ようやく暇になったので見直しに時間が掛からなければそのうち投下できるかと思われます
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2011/08/04(木) 02:10:11.86 ID:tOrZDzqRo
長らく時間を空けましたが投下できるものが完成しました
あまり待たせないようにすると書いておきながらこんなに時間を掛けてしまって申し訳ないです


以前にも書きましたがかなり大きな独自解釈があります
原作との矛盾が生じているかもしれません
申し訳有りませんがそういったものが苦手な方は注意して下さい
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/08/04(木) 02:11:44.50 ID:tOrZDzqRo
5
目を覚ますと私はいつの間にか自室のベッドに突っ伏していた。
記憶は無いけどどうやら帰ってすぐに寝てしまったようで、鞄が投げ出されるようにベッドの脇に落ちていた。
テーブルの上に置いてある時計を顔を動かさず目だけで確認すると、時刻は午前の一時を越えていた。
かなり長い時間寝ていたみたいだ。
ちなみに目を覚ましたとは言ったけど、実際はほとんど寝ている状態で目もほぼ開いていない。
起きなくてはと思うけれど眠気には抗えず、意識が宙をふわふわとする。
もう後何秒かで落ちてしまう、最も気持ちがいい状態。
このまま眠気に身を預けてしまうのも悪くないかもしれない。
起きてやらなくてはいけないことは山積しているけど、そんな煩わしいことは頭の隅に追いやって私は深い、深い暗闇へと落ちていく……


「ぐーー」

そんな一番気持ちがいいタイミングで突然、間抜けな音と共に空腹感が襲ってきた。
しかも眠気を一気に吹っ飛ばすレベルの。
さっきまではあれだけあった眠気も今はどこへやら。
もう、ちょっとやそっとのことで寝ることはできないだろう。
少し腹が立ちはしたけどこのまま服も着替えず、風呂にも入らないで寝てしまうという最悪の展開はどうにか避けることができた。
目を指で擦って覚醒を促し、両腕を上へ伸ばしてほんの少し残っていた眠気を消し去る。
とりあえず腹の虫を抑えるためにも何か食べよう。

立ち上がってみると今更ながら自分が制服を着ていることに気がついた。
帰ってから寝るまでの間に着替える暇も無かったみたい。
パッと見て目立った皺になっているところが無いのが幸いかな。
制服のままご飯の準備をするのは気が引けるけど、さっきからうるさいくらいお腹は鳴っているし軽い物を作る程度なら汚さないで済むだろう。
着替えるのは後回し。
台所へ向かい、冷蔵庫を開ける。
本当なら今日は揚げ出し豆腐を作る予定であり、そのための材料として豆腐やしめじなどが入っている。
その他にも幾つか買い置きしておいたものがある。
決して材料は多くないが使い方の選択肢があり、つい何を作ろうか迷ってしまう。
だけど今は深夜の一時過ぎだ。
軽く済ませないと後々に大きな影響が出てしまう。
しょうがない、豆腐は冷奴にして買い置きの納豆を食べよう。


とんとんとん、とネギを切る度に包丁とまな板が当たって小気味のいい音が鳴る。
後ろの電子レンジでは冷凍保存しておいたご飯を解凍している。
流石に豆腐をそのまま食べるのは品がないと感じて、上に乗せるためにネギを切ることにしたのだ。
それでも質素なご飯であることに変わりはないけど。
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/08/04(木) 02:15:30.37 ID:tOrZDzqRo
時間こそ遅いけど、これは一見したら日常の風景だろう。
だけど私の心のなかはそれとは程遠い状態だった。
冷静を装っているけど本当はぐちゃぐちゃだ。
彼と話したい、彼と仲良くなりたい、彼と親密な関係になりたい。
彼が誰かと話すのが許せない、彼と誰かが仲良くなるのが許せない、彼と誰かが恋人になったりしたら許さない。
彼を独占したい。彼に独占されたい。
そんな願望が頭の中でぐるぐるぐるぐる回っている。
そして僅かではあるけどそんな私を客観視して冷めた目で見ている私もいる。
あの瞬間からずっとこんな調子だ。

嫉妬や独占欲、愛情や切なさ。そして諦念。
様々な感情が混ざり合ってできた渦は彼からあの子の名前を聞いた時から大きくなるばかりでまるで収まる気配はなく、どんどん私を侵食していた。
その結果意識は霧に覆われたようにぼんやりとしていて、彼のことだけしか考えられなくなっていた。
まさに心ここに在らずという状態だ。
私の心は彼のところからずっと動けないでいるのだろう。

「つっ」

突然振って湧いた痛みによって意識が目の前のまな板に戻された。
今更気づいたのだけど、私はほぼ無意識でネギを切っていたらしい。
それではこんなことにもなるだろう。
まな板では包丁とネギが赤く染まっていて、なかなかグロテスクな光景だ。
痛みの発生源に目をやると案の定と言うべきか右手の人指し指がぱっくりと割れており、そこからは鮮血がゆっくりと、溢れ出すように流れ出ていた。
早く止血しなければと思い、足を台所の外へ向けようとする。
だけどそれは実行されなかった。
足がまるで地面にへばりついているように動かなかったのだ。
ようやく自分の異変に気づく。
目が流れている血から離れてくれないのだ。
まるで金縛りにあったかのように視線は固定され、それに合わせるように身体は静止してしまっている。
そしてそれを見れば見るほど私の意識はどんどんとどこかに沈んでいった。

――脳裏に薄暗い部屋の景色が浮かんでくる。
周りを見渡すと拘束用に使うと思われる縄や手錠などが散乱していて、気味が悪い。
視線を正面に戻すと、私の目の前には誰かが跪いているのに気がつく。
その人物の顔をよく見ると口元から赤い液体を垂らしていて、顔全体はだらしなく緩みきっている――

ゾクッと寒気がして指先の痛みと共に意識が戻る。
足を試しに動かしてみると、何の問題も無く地面から離れてくれた。
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/08/04(木) 02:17:59.58 ID:tOrZDzqRo
その部屋がどこなのか、あの人は誰なのかということは考えるまでもなかった。
私が三沢塾で一時期よく監禁されていた部屋であり、そこの狂信者だ。
まるで数珠繋ぎのようにその記憶に連なって三沢塾での様々な記憶が鮮明になっていく。
でも、それは彼に助けてもらった時の事ではなく、全て塾の講師や生徒に監禁されていた時の記憶だった。
あまりに俗物過ぎて彼にさえ話すことはできなかった、数々の忌まわしい出来事。
もう既に風化した過去だと割り切っていたのに、蘇ってきたその記憶はやけに生々しく、やけに鮮明だった。
別に思い出したくもないトラウマという訳ではない。
それでもやっぱりなるべくは忘れておきたい事だった筈だ。
どうして今更こんな事を思い出したのだろう。
もう身体は動いてくれるのに指先からぽたぽたと垂れている血を棒立ちのまま眺め、原因を考える。
答えを出すのにそれほど時間を必要としなかった。



私は三沢塾で研究と称されて、様々な事をされた。
幾つもの研究施設を回った私にとって最初のうちは別に大した事ではなく、
それまでに行われたものとさほど代わり映えしないものだった。
例えばAIM拡散力場と吸血鬼を惹きつける能力の関係性の調査や、血液に含まれている成分の解析などだ。
様々な実験。そこから得られる様々なデータ。そのデータから考えられる様々な仮説。
研究者達は毎日忙しそうにしていた。
私の能力の解析は一見順調に進んでいるように思えた。

だけどすぐに研究は行き詰ってしまった。
それもその筈だ。
私は三沢塾に行くまで学園都市の数多くの研究施設をたらい回しのようにされたが、どこも私の能力をまるで解析できなかったのだ。
もちろんAIM拡散力場と能力の関係性の研究なんてなんてどこもやっていたし、血液の成分なんてもっての外だ。
なのにも関わらず、未だにその二つに代表される私の能力は『わからない』のだ。
何故吸血鬼を惹きつけるのか、どうして吸血鬼は私の血を飲むと灰になるのか。
そもそも吸血鬼というものは存在するのか。
どれ一つとして解明されたことはなかった。
ただの大きな学習塾の研究施設が、世界の科学の何十年も先の技術を持っている学園都市を超える功績なんて出せる訳がなかったのだ。

結果の出せない彼らの苛つきは次第に大きくなり、段々と私をその捌け口にし始めた。
そして不幸にもそれは三沢塾全体が宗教的な色見を帯びてきた時期とほぼ同じだった。
その二つの要素が相まって、私はそれまでどこの研究施設でも経験したことのない扱いを受けることになった。
時にはまるで意味のないほとんど宗教の儀式のような実験をされ、
時には研究の進まない苛だちをその原因である私にぶつけて発散させる人もいた。
その時の私は三沢塾でのある種の宗教的象徴になっており、
彼らはそんな私を好きなようにすることによって征服欲を満たしていたのだと思う。
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/08/04(木) 02:22:13.91 ID:tOrZDzqRo
私が受けた奇妙な実験の数は幾つもあった。
そんな中でもとりわけ変わっていたのは『吸血殺しの他者への移植は可能であるか』という実験だった。
学園都市で少しでも勉強した人間であれば誰だって知っているだろうけど、
能力の移植なんていう事は能力の原理的に不可能だ。
他の研究者が聞いたら鼻で笑うどころか本気で頭の心配をされるレベルだろう。
だけど、彼らはその事実を重々承知した上でその狂った実験を実行した。
そこに当時の三沢塾の恐ろしさがあったのだと思う。
彼らにとって実験の結果はまるで意味が無くて、大事だったのは実験そのものの内容だったのだ。
その実験の行為だけを述べるなら、『被験者に私から採取した血を飲ませる』ということだろう。
それだけ、と思ってしまうかもしれない。
だけど一体『三沢塾』という一種の宗教団体のシンボルたる私の生血を信者が飲む、というのは『それだけ』の行為にどれだけの意味合いを持たせる事になるのだろう。
詳しいことは何も知らされていなかったので、私にはよくわからなかった。
それは少なくとも彼らにとって喜ばしい事のようだった。
何故なら私の血を飲む彼らは皆、恍惚とした表情を浮かべていたから。
その顔は幾ら見ても慣れることはなくて、なるべく目を背け見ないようにしていた。

そして血を飲まれている私はというと、血が誰かに飲まれることによって征服されるような、それともしているような、奇妙な感覚を覚えていた。
今ではその感覚ははっきりとは思い出せない。
だけど、今でもまだしっかりと私の中に存在しているみたいだ。

この事は彼に助けられた後もずっと消えること無く脳裏の片隅にあった。
だから『血』というキーワードからどんどん連想して、あの日々を思い出したのだろう。
たとえ現在がどれだけ幸せな状態でも、きっと苦しかった過去が消えるなんて事はないのだろう。
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/08/04(木) 02:24:48.45 ID:tOrZDzqRo
頭の中でそう結論付けて、止血のために台所から出て救急箱を置いてある棚へ向かう。
でも、今さっき思い出したばかりのあの日々からはそう簡単に抜けられず、
私の感覚は現在と過去を宙ぶらりんな状態でうろうろしていた。
もちろん頭の中では彼の事がちらついて離れない。
ボーっとしながら救急箱に手を掛け、その場に座り込みながら中から消毒液や絆創膏を取り出す。
それと並行作業でまずガーゼで血を拭き取ろうとしたけど、
丁度切らしてしまっていたみたいで救急箱には入っていなかった。
先に必要なものを救急箱から取り出し、ガーゼ代わりのティッシュを取るために立ち上がって目の前にあるテーブルへ向かう。
しかし立ち上がった拍子に血がつつっと垂れて、カーペットに零れてしまいそうになった。
それを見て私は血が垂れてしまうのを抑えるため、思わず指を口に咥えた。
指の生温かい感触と共に、口の中に鉄の味がじんわりと広がっていくのを感じ――。

突如あの感覚がフラッシュバックのように蘇る。
そして瞬く間にその感覚が私の一つの願望と結びついていく。
―――上条君を独占したい。上条君に独占されたい。
ずっと頭の中でぐるぐる回っていた願望がまるでその叶え方を発見したかのように主張を大きくし始める。

その叶え方は違う。その実現の仕方は間違っている。
頭を振ってその誘惑を振り払おうとしても焼け石に水だった。
気持ちがどんどんと『それ』をする方へ傾いてしまっていくのがわかる。
彼は命の恩人だ。
彼は私を救ってくれた人だ。
彼は私の想い人だ。
そんな人間にそんなことをしていい訳がない。
幾らそう自分に言い聞かせても、たがが外れたように私は考えるのを止めてくれなかった。

ポケットをまさぐって学校で拾った鍵を取り出す。
これはこの為にあったのか、と私は微かに笑った。
まるで今日起きた事が全て運命のように感じられた。
そっと大事に鍵を握って胸に抱きながら、作りかけの料理も、出しっぱなしの消毒液や絆創膏もそのままにして私は部屋を出た。


どうして?
どうして私はこんなことをしているのだろう?
どうして私は私の言うことを聞いてくれないの?

階段を駆け降りていく。



ああ。そうだった。
私は。もう。壊れていたんだ。

寮の玄関を抜ける。



上条君に血を飲ませるため、私は静かな街並みを駆けていく。
その足取りに、迷いはなかった。
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/08/04(木) 02:30:38.53 ID:tOrZDzqRo
とりあえずこれで書き溜めは以上です
これだけ間隔を空けてしまった事については弁明のしようがないと思います
本当に申し訳有りません
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/08/04(木) 02:39:28.64 ID:dNTgGy5i0
乙〜
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/08/04(木) 03:01:36.73 ID:1ED4p2oUo
アニメしか見てないから姫神の過去がよく分からん
三沢塾では具体的に何されてたの?

薄い本によくあるようなこと?
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/08/04(木) 03:49:28.27 ID:Kb4msrRBo
待ってました!
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/08/04(木) 03:50:03.73 ID:Kb4msrRBo
待ってました!
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/04(木) 03:57:41.51 ID:xdI5hE8DO
>>121
俺と一緒に寝てたよ
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/04(木) 11:49:22.75 ID:xjxNxEMN0

今まで読んでなかったから全部通して読んできた
若干、地の文がくどく感じるのは気のせい?

あと、ここは保守いらないけど3か月間作者の書き込みがないとHTML化されるから気を付けて

>>121
原作でもその辺はほとんど触れられてなかったはず
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/04(木) 13:02:32.51 ID:OeXlpbuPo
>>1乙!やっぱり嫉妬姫神は最高だね!この書き方がそれを引き立ててるな!

>>124
よく見ろ、その姫神は髪が緑色だ
127 : ◆XJPA/Uk1qM [sage]:2011/08/04(木) 18:53:18.26 ID:tOrZDzqRo
想像以上にレスが貰えて嬉しい限りです

>>125
すいません
スレの最初の方でも色々とあったんですがこんな感じで通させてもらいます
なるべくしつこくならないように気をつけてはいるのですが…


あと落とされるのは困るので自分だと分かるようにトリップをつけてみました
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/14(日) 11:19:26.14 ID:Bn0lWyYBo
未だこの話は続いてるんだよね
なら読んでくる
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/18(木) 19:03:35.02 ID:4B31Yqj90
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130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/20(土) 15:11:52.72 ID:ya+MQgulo
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131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/20(土) 23:51:42.82 ID:V2wUNvpi0
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132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/06(火) 01:54:05.42 ID:tlcANOxxo
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133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/11(日) 08:35:24.84 ID:Hyu5JMYQo
まだか
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/09/12(月) 05:36:39.23 ID:pgHQSVxdo
姫神可愛いなぁ
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/16(金) 16:44:11.30 ID:iqaINhaIO
いつまでも待ってます
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/09/23(金) 20:31:39.25 ID:Nn33Z4hao
まあだかな
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/09/29(木) 23:25:50.24 ID:1fZZUQngo
まあだかね
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/10(月) 19:52:54.05 ID:dpmJYpyNo
もういいよ
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/10/18(火) 19:07:53.93 ID:GaPVsjc+o
そろそろ
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/28(金) 12:44:00.90 ID:bcvipeKIO
きたか
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/05(土) 15:41:15.03 ID:JDdxwNZ50
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