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ザレゴトマジカル〜戯言遣いと幻想殺し - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga sage]:2011/04/15(金) 22:21:06.03 ID:w3uvV5S60

「戯言遣いこといーちゃんが学園都市にやってきたそうです」的な戯言×禁書のクロスです。
一応とある本編再構成モノ。現在妹達編かつ最終章。

前スレ http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1297950078/

禁書キャラの死亡注意。
オリジナル能力出ます(第六位)

それでは、新しいスレでもよろしくお願いします。
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713798788/

【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713788018/

ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/

【安価】少女だらけのゾンビパニック @ 2024/04/20(土) 20:42:14.43 ID:wSnpVNpyo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713613334/

ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713522243/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/15(金) 22:31:44.46 ID:f+G4NR+g0
乙!
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/04/15(金) 22:32:20.58 ID:1QbBoUPT0
乙!
4 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga sage]:2011/04/15(金) 22:36:38.57 ID:w3uvV5S60
一応、登場人物とあらすじをば。


――――――――――――――――――

登場人物紹介


ぼく―――――――――――語り部。


一方通行―――――――――超能力者。

垣根帝督―――――――――超能力者。

御坂美琴―――――――――超能力者。

麦野沈利―――――――――超能力者。

青髪ピアス――――――――超能力者。

結標淡希―――――――――大能力者。

ミサカ――――――――――――妹達。

哀川潤―――――――――――請負人。


上条当麻―――――――――無能力者。


――――――――――――――――――

あらすじ

学園都市に【探し物】の回収の為に高校生として行くことになった戯言遣い。
ある日隣人の上条当麻の部屋にインデックスと名乗るシスターが現れ、そのゴタゴタに巻き込まれる。
その騒動は上条当麻とインデックス両名の記憶が無くなるという結末だったが、その直後に通り魔事件解決へ乗り出した戯言遣い。
犯人死亡で幕を閉じたのだが、その事件の影響で様子のおかしい御坂美琴とそのクローン体と出会うことで再び厄介事に流されていく。



現在はアイテムの襲撃を受けてフルボッコ。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/15(金) 22:52:38.73 ID:CURseqfAO
人類最強の>>1
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/15(金) 23:07:51.55 ID:Vv8mE+Wm0
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/15(金) 23:37:28.81 ID:q0aO0pRfo
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/04/16(土) 01:32:33.84 ID:CwaWXbMAO
新スレ乙!
あわきんも登場人物入りかwktk
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/16(土) 09:12:47.01 ID:4XeVRjYDO
前スレで麦のんの顔辺りに真空作って云々ってあったけど
真空内じゃ沸点下がって血が一瞬で沸騰するってのを何かで聞いた気がするけど気のせいか
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/04/16(土) 09:39:50.69 ID:0VYkahoAO
数百かかるよ
11 :名無しNIPPER [sage]:2011/04/17(日) 00:45:57.05 ID:YKsgN4PAO

前スレで青ピの設定がすごいことになってて笑ったww
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) :2011/04/17(日) 01:16:45.71 ID:OUubbRmAO
暗部で超能力者で零崎で請負人ってヤバいよなぁ
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/17(日) 01:25:57.08 ID:RRYo5RMAO
零崎なのに哀川さんと仲良いのはちょっと不味い気がするが、まあいっか
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/04/17(日) 01:36:56.75 ID:Ei+MXDgwo
>>13
仲良くないんだろ?
会いたがらなかったし
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/17(日) 09:18:28.56 ID:RRYo5RMAO
>>14
今はそうだけど昔
16 :名無しNIPPER [sage]:2011/04/17(日) 09:46:10.61 ID:Kj0htpdDO
>>15
あれじゃね、弟子のときは覚醒まえで零崎覚醒で仲悪くなったんじゃね?
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/19(火) 20:37:33.29 ID:+kmtWsvAO
戯言シリーズを最近読んだんだけどさァ
ぜんぜん毛並みが違うのに禁書と共通点ありすぎじゃね?
主人公がイレギュラーだったり
いつも満身創痍だったり
フラグたてまくるくせに鈍感だったり
妹がたくさん出てきたり
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/04/19(火) 20:41:31.98 ID:8TEo/qwr0
ヒロインがロリで完全記憶能力持ちだったり
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/04/19(火) 20:43:05.54 ID:LBhetYHGo
1:主人公がイレギュラーだったり
2:いつも満身創痍だったり
3:フラグたてまくるくせに鈍感だったり
4:妹がたくさん出てきたり

1と3は何処にでもいるラノベテンプレ主人公
2と4がそれぞれの作品の設定、世界観に左右されるから
共通点有りすぎって言うほどでもないと思うが
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/19(火) 20:52:34.98 ID:yNwV7NGIO
続きが来たのかと思ったら・・・
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/19(火) 20:53:52.08 ID:+kmtWsvAO
なるほど
ラノベはこの2作品しか読んだことなかったから知らなかったよ
常識だったんだね…
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/19(火) 20:58:53.01 ID:Z/6uSZxPo
ラノベのテンプレの一つではあるけどその辺は選択性とも言えるので必ずしもそれぞれのテンプレが複数共通する作品ばかりってワケでもない
共通点いっぱいあるよねって意見への否定にするに足るかどうかもその人の感性次第だからどっちに思っても別にいいんじゃないかな
23 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/04/19(火) 22:21:52.78 ID:XUiKGwUI0
お久しぶりです。これより少量ですが投下します。
そして真空に関してはほんとうにスマンかった。
24 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/04/19(火) 22:22:36.89 ID:XUiKGwUI0

「何を超ゴチャゴチャ言ってるんですか!」

「絹旗!待ちなさい!」

蒼き請負人がそう言うと同時に、側に居た絹旗ちゃんが麦野さんの制止も聞かず拳を振り上げて青髪くんへと飛び掛かる。
先程ぼくが吹き飛ばされた絹旗ちゃんの拳。
まともに受けてしまったら悶絶確定な威力を秘めた小さな拳だが、青髪くんは避けようともせず、またぼくも何も言わなかった。

「っ……!」

絹旗ちゃんが振り抜いたその拳は青髪くんの顔面を捕らえる。が、苦い表情を浮かべたのは絹旗ちゃんだ。

「随分と面白い窒素の使い方すんなぁ」

対する青髪くんはと言えば、相変わらず皮肉めいた笑みを浮かべながら、絹旗ちゃんの拳を包み込むように両手で掴む。

「でも残念でした。どんな使い方しよーが気体である時点でボクの支配下なんよ。驚いた?」

「まさか――窒素を!」

驚愕する彼女に満足気に頷いて、彼は口を開く。

「そ、君の周りにあった窒素はボクが散らしといた。ちなみにボクは君みたいに窒素を使っとるけどなぁ」

「超離して下さい!」

「嫌やわぁ、せっかく可愛い子の手を掴んだのに離す馬鹿が何処におるん?寧ろ強う握ってまうわ」

ゴキリ、と鈍い音がする。恐らくは青髪くんが絹旗ちゃんの拳を握り潰そうとしたのだろう。

「させるかよぉぉおお!」

だが、彼等の間に割って入る原子崩しの光線によって遮られた。
思わず手を離した瞬間に絹旗ちゃんは青髪くんから逃れ、彼との距離を置いて「まだ戦える」という意思を示すように構える。
ただ、その両足は小刻みに震えていた。

「フレンダァ!滝壺!絹旗連れてさっさと逃げろ!!」

「で、でもまだ目標を殺して――」

「馬鹿か!」

青髪くんと対峙したままアイテムのメンバーへ逃亡を促した麦野さんはフレンダちゃんの言葉を遮って叫ぶ。

「コイツが現れた時点で任務は失敗してるんだよ!」

それは、意外にも敗北を認める言葉だった。
25 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/04/19(火) 22:23:30.96 ID:XUiKGwUI0
「へぇ、意外やな。第四位」

尋常ならぬ麦野さんの迫力に躊躇しながらも、走ってその場を去るアイテムの三人を眺めながら青髪くんは軽く拍手をしながら言う。

「異常(イレギュラー)で異常(アブノーマル)な異常を相手にするほど、安い人間じゃねぇんだよ、私達は」

「それが意外や言うてんねや」

「……何が言いたいんだよ」

相変わらずな笑みを浮かべながらポケットに両手を突っ込んだままの青髪くんに、麦野さんは怪訝な表情を作る。
ぼくを殺すと言った彼女と、ぼくを助けると言った彼。
どちらもぼくを対象に動いているというのに、最早二人ともぼくを見ていない。
それほどまでに麦野さんには余裕が無いし、青髪くんには緊張がない。
それは、果たして余裕なのだろうか――。

「私達は安くない――ねぇ。ボクが意外に思ったんは君が自らの意思で彼女らを避難させた事、や」

その言葉にピクリと肩を揺らす麦野さん。

「暗部組織っちゅうんは学園都市の道具なはずやん?そこに意思も意識も必要ないし関係ない。君らは死んでもいーさんを殺さなあかんのよ」

「テメエは違うって言いたいのかよ」

「違うなぁ。ボクは君らみたいな道具(アイテム)やない」

意思を持たぬ道具。
意識を持たぬ玩具。
ただ使われるだけの、アイテム。

「ボクは請負人や」と青髪くんは笑みを消し、鋭い目線を彼女へ向ける。
その細い目を、一層細くして。まるで糸のように、何かを意図しているかのように。
麦野さんは、何も喋らない。

「それに、もひとつ意外に思ったことがあるなぁ」

再び笑いながら右手をかざし、くいっと上げて、ついっと下ろす。
走り去っていく三人に向けて右手をかざし、食いっと上げて、終いっと下ろす。
それは涙子ちゃんに向けたものと同じ仕草で、あの子が首吊り学園で見せたものと同じ仕草だった。
この場合、糸は必要ないのだろう。
彼には糸よりも細く、太い意図があるのだから。

「ボクが彼女らを見逃すと思う?」

その言葉よりも速く、遠くの彼女達は、その場に倒れた。
26 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/04/19(火) 22:24:06.20 ID:XUiKGwUI0

「青髪く――」

「テメェェ!!上等だ殺してやんよぉ!テメエの粗末で下品な汚ぇ×××を××してからぶっ殺してやるよ!」

ぼくの言葉を遮って麦野さんが叫ぶ。同時にラミネート加工されたカードを何枚も頭上へ放る。

「拡散支援半導体(シリコンバーン)かいな。流石に自分の能力の欠点(マイナス)は補っとるようやね」

「ハッ!余裕を見せたままそこの野郎と共に死ね」

閃光。
拡散支援半導体とやらが光ったと思えば目の前が真っ白に染まる。きっと原子崩しがあのカードから発射されたのだろう。
弾幕と化した光線はぼく達がいた場所を蹂躙し尽くし、破壊し尽くし、殺し尽くした。
当然、その後には塵も残らない。ぼくと青髪くんの姿もそこにはない。
原子崩しによって跡形もなく消されたわけではない。もしそうならぼくは何も語れないだろう。
ではどうして現場を実況出来るのかと言えば――

「飛んでる……?」

「正確には浮いてるんやけどな」

青髪くんにまるで猫のように首根っこを掴まれた状態で、ぼくは先ほどまで居た場所を見下ろしていた。
そう、原子崩しが発射される瞬間に青髪くんによって遥か上空へ退避したのだ。

「原子崩し自体の軌道を曲げてもよかったけど、そしたらいーさんがバターみたいに溶けてまうからなぁ。仕方なしにや」

「――全く、超能力ってのは、つくづくぼくの理解の範疇を超えてくれるね」

全身を何かに支えられている感覚。なるほど、浮いているとは的を射た表現だ。
文字通り、ぼくは上昇気流に乗って、浮いているのだから。

「――!」

遥か下方から麦野さんの叫び声と共に、原子崩しが何発飛んでくる。
青髪くんは器用にそれを交わしながらさらに高度を上げてビルの屋上までの高さへ浮かび上がる。
27 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/04/19(火) 22:24:42.11 ID:XUiKGwUI0

「さて、いーさん。こっからは一人で頑張ってや。第四位はなるべく離してやるから」

その言葉と同時にビルの屋上へぼくを降ろす。

「やっぱり彼女は強いのか」

「まぁね。このまま逃げてもええんやど、能力追跡使われたら厄介やん?だから話し合いだけでもせなあかん」

「能力追跡?」

聞き覚えのない単語に反応するが、青髪くんには「気にせんでええよ」と流されてしまった。

「とにかくいーさんは早う家に帰り。常盤台に潜入する小道具を置いといたから」

「ちょっと待て」

……今なんて言った?

ぼくが常盤台中学で門前払いに逢ったのを知っているということは、アイテムの襲撃前からぼくを監視していたことになる。
もっと早く青髪くんが登場していれば、絹旗ちゃんに殴られることなく、麦野さんに髪の毛を消し飛ばされることなく済んだのではないか?
まぁ、最悪それはどうでもいい。
いや、どうでもいいということではないが、結果としてぼくは無事なのでそれは理解できる。

しかし、常盤台に潜入する小道具とは一体何なのだろうか。
実はある程度予測ができているのだが、それを口に出すことはしない。言葉にすることでそれ以外の可能性を否定してしまう気がするから。

「いーさんならきっと似合うで、その――」

その言葉と共に、青髪くんは笑みを浮かべる。シニカルでもなんでもない、純粋に楽しそうな邪悪な笑みを。
ああ、確かにこの子は哀川さんの弟子だ。発想が同じだもん。

木を隠すには森の中。森へ入るなら木になるしかないのだろう。
畜生。どうしてこうなるんだ。

青髪くんはそんなぼくを見ながら、未だに飛んでくる原子崩しを避けながら言葉を続けた。

「――常盤台の、制服」

ぼくの残念な脳の記憶が残念だけど正しければ、常盤台中学は、残念ながら女子校だった。
28 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/04/19(火) 22:26:50.81 ID:XUiKGwUI0
以上です。青髪無双臭と麦のんかませ臭がやヴぁいですが、麦のんのメインとなる対戦相手は青髪じゃないので。
突っ込みどころ満載な感じが否めませんが、ご了承ください。

それでは、また。
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/19(火) 22:31:48.59 ID:+kmtWsvAO

さすが青ピさんやでぇ…
わかってらっしゃる
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/04/19(火) 22:38:10.40 ID:FnWwatIAO
真空ってよりは
要は地上にいる人間をエベレストの頂上に
いきなり飛ばしたような感じと脳内補完すれば
何もおかしくはないな
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/04/19(火) 22:53:01.52 ID:BS+TKn5AO


窒素装甲に介入できる青髪さんパネェっす
いーさんに女装フラグ立てたのはGJだが、俺の最愛の手を握り潰そうとしたのは許さねェ
32 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/04/19(火) 22:55:32.77 ID:XUiKGwUI0
追記ですが、青髪さんと哀川さんの関係としては、

哀川さんの弟子

零崎化

学園都市行き

ってな流れです。詳しくはいずれ説明しますの。
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/19(火) 22:56:56.32 ID:hvAZR7FDO
女子中に女装して潜入する主人公とかねーよwwwwwwwwww
って思ったら原作でもやっていたでござる
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/19(火) 23:03:52.22 ID:e+dde0vSO
>>33
女子高に侵入して違和感ない十九歳男子大学生だからな
きっと中学校にも入れるさ
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/04/19(火) 23:07:36.58 ID:UoCbs+bc0
美琴にバレタラどうなるんだろうな
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/04/20(水) 02:17:48.33 ID:4Xi8C3CAO
普通なら変態扱いでレールガンの一発もかましてくるだろうが、
このssの美琴はえらいことになってるからなあ
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/20(水) 02:25:19.25 ID:6xP7ZL1AO
ヤサグレールガン
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/20(水) 07:21:53.45 ID:TPc+R3/W0
今日は葵井巫女子ちゃんの誕生日だよ
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/20(水) 09:07:11.06 ID:RIGCFrVDO
このスレのせいで3日で戯言シリーズ読破してもうた
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/20(水) 11:01:50.66 ID:6xP7ZL1AO
すげぇな
今最終巻読んでる最中だけど結構かかったぜ
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/04/20(水) 20:01:34.57 ID:UmHnsq0AO
さあ次は人間シリーズだ
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2011/04/20(水) 20:35:40.87 ID:PBiSutfGo
やめろ、常盤台全滅フラグが見える
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/04/20(水) 21:35:26.90 ID:TgsIfa0uo
理事長が殺されるのは確定事項
そして海原(真)も死ぬ
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/04/20(水) 22:09:03.20 ID:53WayPrAO
海原「ねぇ、自分のお爺ちゃん……」

いーちゃん「ああ、とっくに殺されてるよ」


そして青ピにバラバラされて哀川さんとバトルか……
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/20(水) 23:33:36.04 ID:RIGCFrVDO
人間シリーズ逝こうと思うんだが刊行順どうなってんの?
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/04/20(水) 23:42:04.79 ID:GGgwWxmA0
零崎双識の人間試験
零崎軋識の人間ノック
零崎曲識の人間人間
零崎人識の人間関係/匂宮出夢との関係/無桐伊織との関係/零崎双識との関係/戯言遣いとの関係
全7巻
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/21(木) 00:40:54.67 ID:3u3gwilDO
>>46
ありがと
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/04/21(木) 00:42:36.84 ID:ro2lb7j+o
人間試験はネコソギまでに読んどくべきだったのに・・・!
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/21(木) 01:06:24.30 ID:aYjdk0qAO
もっと早くいってくれよォ
もう読んじゃったじゃないか
つってもそこまで問題ないよな…?
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/21(木) 21:51:41.44 ID:aYjdk0qAO
質問
ネコソギの前に読んどいたほうが良い人間シリーズって人間試験だけ?
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/21(木) 23:59:00.62 ID:A1/nwP1SO
>>50
発売タイミング的に考えるとそうだな
ちなみに人間関係は出夢→伊織→双識→戯言がお薦め。
後書きで作者が言ってるのとは違う順番だが、多分この順で書いてる
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/22(金) 00:45:54.51 ID:EpsR4VhAO
>>51
ありがとう
53 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/04/22(金) 00:48:01.34 ID:gdGQbg3t0
投下します。
クビツリ的な展開はありませんよー。
54 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/04/22(金) 00:48:53.01 ID:gdGQbg3t0
6

学校という教育機関はどこか排他的な空間で、所属していない人間を快く受け入れない所だという事は大概の人には理解して貰えると思う。
ましてや学生寮ともなれば、尚更だ。
ぼくの様に学生寮とは名ばかりのマンションに居を構えているのであれば幾らかマシだとは思うが、ここ常盤台中学の寮の様にガチガチに固められたセキュリティの中、
食事、門限など制限を加えられていては生徒達が休める空間とは言えなのではないか。
保護という名の監禁であり、寮という名の牢獄。
大げさに言ってしまえばぼくが常盤台の学生寮に侵入して抱いた感想はそれだった。

アイテムの襲撃から青髪くんの助力で逃れた後、学生寮に戻ったぼくを待ち受けていたのは誰も居ない部屋にポツンと置かれた紙袋で、その中には勿論青髪くんが言う
《小道具》が入っていた。
ぼくは今一度他に方法が無いかと思考を巡らせるが、残念ながら、本当に残念ながら考えが至らなかったのでそれを着用することにした。

常盤台中学の制服。無論女子生徒用。

今回は哀川さんのコブラも無いので仕方無しにタクシーを回し、それに乗って常盤台の学生寮へと向かった。
流石にそのままの姿で歩いて行くなどとは思えない。

「それで、何か言いたいことはあるか?」

と。
したくも無い回想をしていると、寮監の声で現実に引き戻される。

「いえ、何もありません」

まるで裁判を受けているかのように正座の状態でそう言うぼくに、寮監は「ほう」と眼鏡を光らせる。
口元は笑っているのだが、目が笑っていない。

「門限を過ぎている、なんて事は言わなくてもいいだろう。だが、この場合『私が把握していない生徒』が常盤台の制服を着て此処に入ってきたということが問題だ」

なんでこんな状況になったかというと、門を開け、こっそりと潜入したぼくだったが、背後で本を閉じる音がしたと思ったら意識を失ってしまい、
目が覚めたらこんなことになっていた。

伝説の傭兵並みの手際の良さだぞ、あれは。

「転校予定なんですよ、だからこうやって下見に来たんですが」

「そんな情報は耳に入ってきていないが」
55 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/04/22(金) 00:49:37.87 ID:gdGQbg3t0
当然。そんな予定は在るはずが無い。だいたいぼくは男だ。

「さあ?連絡不備でもあったんじゃないんですかね。ほら理事長が殺されたとか」

「それで孫まで死んでいたら、考えてもいいがな。生憎だがこの学生寮に関する情報は全て私に入ることになっている。例えどんなイレギュラーでもな」

「そうですか……」

この寮監は思ったよりも固い人物らしい。ちょっとやそっとの事では懐柔できないだろうと思い、ひとまず黙り込んでみると、「常盤台の制服を着てまで、
ここに入りたかったのか?」などと思わぬ助け船を渡された。

「ええ、そうなんですよ。やっぱり常盤台は憧れというか」と返すが、ぼくが普通に女子中学生に見られているということに、内心穏やかではない。
学生の情報を全て把握する前に、鑑識眼をもう少し鍛えて欲しいものだ。いや、この場合は助かるんだけど。

「能力レベル的に絶対に入学は出来ないんですが、友人の進めもあり一度見学しようと思いましてね」

「だったら正規の手続きを踏んでから見学に来れば、こんな事態は招かなかったと思わないか?寮に友人がいるならその子を通して私に伝えれば何も問題は無かった」

ぼくはその言葉を聞いて、声のトーンを落とし節目がちに言う。

「友人というのは、白井黒子ちゃんでして」

「…………」

「なので正規の手続きを、という訳にはいかなかったんですよ。それでこんなスパイみたいな真似事をしたんですが」

続けてぼくは喋る。

「彼女から預かっていた物もあったので、ルームメイトである御坂美琴さんに渡しておこうと思ったんです」

その言葉に何か考えるように顎に手をそえて数秒黙った寮監はそのまま階段へと歩き始め「来なさい」とだけ短く言った。
ぼくはその言葉に後をついて行こうとするが、上手く立ち上がれず、その場に崩れ落ちてしまう。

「どうした?」

不思議そうにぼくを見つめる寮監に、ぼくは一言だけ「待ってください」と言い、足を押さえた。

「足が痺れて、立てません」
56 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/04/22(金) 00:50:17.82 ID:gdGQbg3t0
一分ほどその場に座り込むぼくを優しい寮監は待っていてくれた。そして軽く屈伸をして足が自由に動くことを確認したぼくは立ち上がり「大丈夫です」と言って、
彼女へ歩み寄る。寮監は返事もせずに歩き始め、美琴ちゃんの居る部屋へと案内してくれた。

「それにしても、凄いですね」

「寮の造りか?まぁそうだろうな設計から施工も有名所に依頼したから凝った造りになるのは当然だな」

「それもそうですけど、貴女自身のスキルですよ。まさか一瞬で気を失わされるとは。やっぱり能力なんですか?」

虚を突かれたとはいえ、あの動きはそうそう体験できるものではない。

「いや、私は無能力者だ。能力を持っている大人も居ないことはないが、それでも大多数は無能力者だよ」

「へえ」

「この常盤台はレベル3以上の能力者しか入学できないからな。それにお嬢様だなんだの言われたところでまだ中学生だ。能力の暴走や、能力に頼りきり自己中心的な
 考えを持つ生徒も居る。だから私のような大人が指導をしてやらなければならない。必然的に無能力者のままでも強くなくてはいけないんだ」

寮監は事務的な口調で淡々と話す。

「それに、私の場合は下地があったからな」

「下地?」

「言っても信じられないだろうが超人みたいな人間と知り合いでね。水の上を走ったり、素手で調合金の扉を粉砕したりするような人間とね」

「…………信じますよ」

そんなことが出来る人間など一人しか知らない。逆にあの人じゃないと言うのなら紹介して欲しいぐらいだ。
つうか。哀川さん人脈広すぎ。

「とにかく、少しの期間だけ一緒に鍛えたんだ。残念ながらアイツに適うことはなかったが、惜しいところまではいった」

「それはそれは……」

ぼくは頷きながら距離を開ける。哀川さんのことをアイツとか言ってるし、惜しいところまでいったとか言ってるし。
どんだけ強いんだよ、この人。
57 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/04/22(金) 00:50:49.54 ID:gdGQbg3t0
「それでも越すことはできない。そんな女だったよ……っと少し熱くなってしまったな。ここが御坂と白井の部屋だ」

「どうも」と言ってドアノブに手を伸ばすが、寮監に手を掴まれる。

「分かっていると思うが御坂は不安定な状態だ。くれぐれも慎重に会話してくれ」

「ええ、分かってますよ」

ぼくの返事に掴んでいた手を離し、来た道を戻っていく寮監を見送り、今度こそぼくはドアノブを回し、扉を開く。
ゆっくりと開くいかにも高級そうな、そして実際に高級であろう扉の向こうには、少し子供じみた寝巻きに身を包みベッドに腰掛ける美琴ちゃんが居た。

「やあ、美琴ちゃん」

とりあえず声を掛けるが、しかし美琴ちゃんにあった時は必ずこの言葉を口にしている気がする。挨拶にバリエーションを求めるほうが間違っているかもしれないが、
それでもどこかの小学生と高校生のように毎回深みのあるやり取りをするくらい、凝ったほうがいいのかもしれない。

「誰よ……ってアンタか」

一瞬目を細めてぼくを見た美琴ちゃんは手に持っていた紙を膝の上に置くとつまならさそうに言う。

「何?女装する趣味があったのかしら?」

「それだけはないよ。不可抗力だ」

「どうかしらね。それにしても何の用があって来たのかしら?」

「別に大した用じゃないさ。帝督くんが美琴ちゃんのことを言ってたから来ただけで」

まぁそれが無くとも来るつもりだったけど。

「帝督って、垣根帝督かしら?第二位の」

「そうだよ。面識があるのかい?」

ぼくの言葉に「あるわけないでしょ」と言って美琴ちゃんは溜め息をつく。

「同じレベル5だから名前は知ってるのよ。……ま、どうして第二位が私のことを言ってたかなんて想像できるけどね」
58 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/04/22(金) 00:51:14.86 ID:gdGQbg3t0
美琴ちゃんは一層つまらなさそうな表情を浮かべて膝の上に置いていた紙をぼくに投げる。

「突っ立ってないで座りなさいよ。これから美琴サマが説明してあげるから」

「……よろしく頼むよ」

ぼくは美琴ちゃんの座るベッドではなくもう一つのベッド、つまり黒子ちゃんが使っていただろうベッドに座る。
ベッドのスプリングが沈み、かすかに軋んだ。

「絶対能力進化計画ってのがあってね、詳しくはその紙に書いてあるから説明しないけど、簡単に言えば第一位をレベル6にする計画なのよ」

超能力者の先である、絶対能力者、と彼女は言う。

「そこで必要となってくるのが私、超電磁砲ってわけ。実際に私が参加して第一位を進化させる実験は物理的に不可能だから代用品が選ばれたんだけどね」

その言葉で思い出す一人の少女。

「それが、クローンか」

「そう。私とのスペック差を生めるために二万体のクローンを製造し、第一位が殺す。プチプチとスライムを倒して経験地を溜めていけばレベル6の出来上がりってね」

「…………」

平然と自分のクローンが殺されると言う美琴ちゃんに、ぼくは正直引いていた。
ここまでとは、思わなかった。
彼女が、ここまで、壊れているとは。

「大方、第二位はそれを阻止する為に動いてるんじゃないかしら?噂だと第一位になりたがってるみたいだし、これ以上差を付けられたくなくてね」

ケタケタと笑う美琴ちゃんだったが、唐突に笑顔を消し眉間に皺を寄せる。

「ホント、どいつもこいつも私を利用しようとして、ムカツクわ。どこまで私を苦しめれば気が済むのかしらね」

「実験に協力してたわけじゃ、ないんだ」

「当たり前じゃない。ちっちゃい頃にDNAマップを騙されて提供したら、こんな事になってて、もう笑うしかないよね」

そういう美琴ちゃんだったが、少しも笑ってはいない。
むしろ表情は険しくなるばかりだ。
59 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/04/22(金) 00:51:56.22 ID:gdGQbg3t0
ちょっと席外します。
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/22(金) 00:59:08.33 ID:EpsR4VhAO
女子中学生は無理があるww
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/04/22(金) 01:11:16.25 ID:s7H/aj/AO
寮監さんマジパネェッスwwww
そして美琴やべぇ
62 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/04/22(金) 01:51:51.93 ID:53jhs4Yd0
「だから、私の手で実験を終わらせる」と、短く呟く。

「それは難しいだろう。クローンの作成、レベル5の第一位を使った実験、クローンとはいえ二万体も殺す内容。どう考えても学園都市そのものが絡んでる。
 いくら美琴ちゃんが第三位だからといっても、止められるような規模の実験ではないと思うぜ?」

例えそれがどれだけ非人道的な実験であろうと、黙殺されてしまうのが関の山ではないだろうか。

「それが、方法はあるのよ。この実験は樹形図の設計者の演算結果で始まったから、その演算結果に介入してしまえばいい――でもこの方法は却下。というか不可能ね」

「どうして?」

「公表されてないけど……公表されるわけが無いけど樹形図の設計者は原因不明の熱線で破壊されているの。それの『残骸』を回収するっていう報告書があったから間違いはないわ」

どうやら美琴ちゃんはかなり踏み込んだところまで調べを進めているらしい。

「だから別の方法で研究施設を壊すってのがあったけど、これもパス。学園都市が黙認している実験じゃネズミみたいに研究所は増えるからね、キリが無いわ」

「そうなれば、方法はもう一つだけ」と人差し指を立てる美琴ちゃん。

「私が第一位、一方通行(アクセラレータ)に殺されれば、実験は止まる。この実験の大前提は『超電磁砲を殺害する』ことなんだから、私にそれほどの価値が無いと
 証明されれば研究者は慌てるでしょうね。再演算しようにも樹形図の設計者は無いんだから。本当は私が一方通行を殺したいんだけどね、残念なことに実力差がありすぎる」

「それは……」

少し、希望的過ぎやしないか。
ここまで進んだ実験がそんな簡単に止まるとは思わない。仮に致命的なエラーが発生したとしてもそのまま進められるような気もする。

「できるわよ」と言い切る美琴ちゃん。

「というか、やってみせる。これ以上私を使って実験なんて続けさせるもんか」

「例え自分の命を捨ててでも、止めてみせる」と美琴ちゃんは言う。それは立派なことだ。誰も真似できないし、したくもないだろう。
こんな、命を捨てる行為など。

「幸いな事に失うものは、もう何も無いわ」

黒子ちゃん達のことを指しているのだろう。何か思い出すように天井を見つめていた。
63 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/04/22(金) 01:52:24.64 ID:53jhs4Yd0
「それは、クローン達を救うためでもあるのか?」

「それも少しはあるかもしれないわね。私のせいで勝手に造られて、死んでいくなんて罪悪感を感じないといったら嘘になるわ。だけど自分の為っていうのが一番の理由ね」

自分の為に、自分を殺す。
自己救済の自己犠牲。
矛盾した、結論。破綻した論理。

「で、アンタはどうするの?止める?それとも聞かなかったことにする?」

そんなもの、答えは決まっている。

「君が決めたことに口を挟むことはしないよ、当麻くんじゃあるまいし」

きっと彼がこの実験を知ったら、必ず止めるだろう。自らの命を掛けてでも、実験を、美琴ちゃんを止めるだろう。
だけどぼくにはそんなことは出来ない。

「ただこれだけは言わさせてもらう。自分が死んで解決するなんて、間違ってる。別に誰かが悲しむからって意味じゃないぜ。問題なんてものは死んでも続くもんだ」

「有難いお言葉ね」

「言えば逃げることになるんだよ。問題の放棄だ。死んだところで開放されるのは自分だけ」

「そんなこと、理解してるわよ」

「それならよかった」

ぼくはそれだけ言って立ち上がる。もう彼女に聞くこともないし、言いたいことも無かった。

「この紙はどうすればいい?」

「アンタの自由にしなさい。でもあの馬鹿には見せないでよね、絶対に私の邪魔をするから」

「了解」

ぼくはポケットに紙を押し込んで扉の前へに立つ。

「そういえば、あの子は何体目になるんだ?」

「一〇〇三一人目よ」

それだけ聞いて、ぼくは部屋を出た。
64 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/04/22(金) 01:55:03.12 ID:53jhs4Yd0
今日は終わりです。
寮監の設定は悪ふざけですの。

次回からやっと一方さん登場予定ですの。
まったく話が進まないですの。

65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/22(金) 01:56:59.14 ID:EpsR4VhAO
乙ですの
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/04/22(金) 02:00:24.95 ID:ons8rYjAO
乙乙ですの
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/04/22(金) 02:19:34.05 ID:Prs7zNmio
乙っした
文章のどこが伏線なのか考えながら読んでると全部怪しく思えてくるよね
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/22(金) 07:42:44.77 ID:QA+Hm6hSO
超乙。
寮監さんスゲェー。
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/04/22(金) 21:19:17.32 ID:DC6yDtnC0
たしか、いーくんの戯言って名前のない人には効かないんだよね
青髪ピアスと一方さんには効かないのかな
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) :2011/04/22(金) 22:08:09.87 ID:s7H/aj/AO
>>69

ノイズくんと同じ結末を迎えます
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/04/22(金) 22:37:54.00 ID:n4A2SFQN0
一方通行ってのは学園都市全体に通用する通称だから戯言効くんじゃないか?
禁書でノイズ君ポジできそうなキャラって意外に思いつかんな
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/22(金) 22:42:16.88 ID:Sm4uMVIT0
本名不明だと、例えばインデックスとかもそうだな。正式名称ではあるんだろうが
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/04/22(金) 22:49:41.50 ID:rn1v8Z9to
学園都市最高の頭脳を以ってすればあの名前クイズを解けるのでは
74 :名無しNIPPER [sage]:2011/04/22(金) 23:01:28.36 ID:23KgnHZDO
>>73
解いたらただでさえ死亡フラグがたってるなんていわれてんのに更にそれが強化されんぞww
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/22(金) 23:16:12.24 ID:TSiVz5tSO
>>73
あのクイズ自体は正解となるものが多すぎて名前を特定出来ないらしい
子荻は何故解けたんだ
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/22(金) 23:39:41.53 ID:EpsR4VhAO
わかる方法はあるのかも知れないけど、わかった瞬間死んじゃうんじゃない?
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/22(金) 23:40:10.18 ID:VQZCn6c9o
>>75
別に子荻ちゃんがたどりついた名前がいーちゃんの名前とは限らないんだけどね
戯言だけどさ
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/04/23(土) 00:33:14.11 ID:BMtjCPcAO
>>77が真理

つか、いーちゃんの本名を特定したら死ぬって事自体
そもそも誇張表現だと思う
実際に命を落とすって事でもないみたいだし
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/23(土) 01:37:02.95 ID:DU80km7AO
ホントは特定じゃなくて名乗ったら、だよね
そうでないと親死んでしまう
小萌先生は違うけど別になんもなくても死んじゃうし
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/23(土) 17:14:25.51 ID:6KmZtJCio
でも名前名乗ったら死ぬって言うけど
殆ど死んでいないよな
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/23(土) 17:27:10.39 ID:vzdLvIXSO
大学に行ってるし、病院にもよく行ってる。
もし特定した人間は死ぬんだったら、名前二つあるんじゃないか?
人識でいうなら零崎人識と汀目俊希みたいな
片方は知られても平気、な感じ
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/23(土) 17:51:46.89 ID:zuk+IrUNo
らぶみさんあたり殺しても死ななそうだけどね
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/23(土) 20:40:54.50 ID:DU80km7AO
ギャグキャラ死なない
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/24(日) 01:35:38.56 ID:ZB3C4YsAO
>>81
禁后思い出した
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/24(日) 12:36:50.02 ID:XcCAVkFAO
戯言で可愛さトップ3は子萩ちゃん、姫ちゃん、崩子ちゃん

異論は認めない
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/24(日) 12:47:16.27 ID:eMCiizmFo
>>85
なんで俺と好みが完全一致してる書き込みがあるのだ・・・
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/24(日) 16:12:10.27 ID:IdGEqcDAO
>>85
真理
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/24(日) 16:29:04.85 ID:NnHnQe7uo
                  ;;;;;;;;;;;;;;;;;,> ' ´  ̄ ̄ ` ` 、;;;;;;;;;;;;,,,,
                  ;;;;;;;;;;;, イ             \;;;;;;;;;;
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              ;;;;;;;;;;{                    V \;;;;;    <>>87呼んだか?
                ,;;;;;;;;;;i                         };;;;;
                ;;;;;;;;;∧                           j;;;;;;;,,
              ;;;;;;;;;;;;;',                  人    /;;;;;;;;,,
              ;;;;;;;;;y⌒              _, イヘ }  r';;;;;;;;;;;;;
              ;;;;;;;;;{           __ > ' ´  i j-|  ト- __;;;;;;;;;;;;:::::.,,,
               ;;;;;;;;;ヘ     ト---─ ´   } _j, イ´j i ノ      `>''''、;;;;;;
              ;;;;;;;;;;;;;\    ∨__i_Y, x<´ |  ! /, イ  ,:'         \;;;;;;;;;;;
               ;;;;;;;;;;;;;;;; ̄ヘ ヽ `  i.  ヽ  /_, イ    /;:           Y;;;;;;;;;;;;;;;;
               ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/    >----≦       〃::::            };;;;;;;;;;;;
                ;;;;;;;;;;;;;ノ    -::.._      _,....:::::::::             i;;;;;;;;;;;;
               ,,;;;;;;;;;/         ̄:::::::::::::::::::::            j:.  |;;;;;;;;;;;;;
              ;;;;;;;;;;〃                                 ,'::.  i;;;;;;;;;;;;
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89 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/04/24(日) 16:31:14.94 ID:SfZyN+790
投下します、
90 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga sage]:2011/04/24(日) 16:31:56.63 ID:SfZyN+790
7

生きている意味は生きていく意味を探すこと、という言葉をどこかで聞いたことがある。つまり人生というのは意味を持たず、意味を探し続けて終わっていくという意味だとぼくは理解したが、
それはつまり生きていく意味などを探していない人間は、生きていないということなのだろうか。

「戯言だよな」

「むぅー。また変なこと言ってるんだよ」

朝食を二人で食べながらなんとなく呟いてみたら、インデックスちゃんが四杯目のご飯を口一杯に頬張りながら不満げにそう言った。
インデックスちゃんが居候を始めてから結構な時間が経つが、こうして二人で朝食をとるというのは初めてかもしれない。

「それはあなたが毎日毎日どっかに行っちゃうからかも。しかもどこに行くか教えてくれないしー」

「箸を咥えて喋らない。ま、どこでもいいだろ?大した用事じゃないんだからさ」

「信じられないんだよ……」

ぷくっと今度は頬に空気を貯めて膨らますインデックスちゃんは、どこかリスの様に見える。
疑われても仕方がないか。昨日は体中ボロボロだったし、しかもインデックスちゃんは気を失ってたし。実際は大事だ。

「そういえば、昨日は当麻くんの所には泊まらなかったんだね?」

いつもなら彼にインデックスちゃんを預けた日はそのままあちらの部屋に泊まるというのが通例となっているのだが、昨日常盤台の寮から帰ってきたぼくを待っていたのはベッドで眠るインデックスちゃんだった。
だからこうして珍しく朝食を一緒にしているんだけど、途中で当麻くんがインデックスちゃんを帰したのが気になった。
しかし、眠っていて本当に助かった。あの姿を見られた日には何を言われるのか分からないからなぁ。

あ、五杯目のおかわり。

「んー泊まるつもりだったんだけど、とうまの部屋に封筒が届いてそれを見たとたん出て行っちゃったんだよ。その時あなたの部屋に戻るように言われたから」

「ぼくの部屋に戻ってきたと」

「そうなんだよ」

恐らく封筒とは帝督くんが言っていた《資料》という奴だろう。それもぼくが美琴ちゃんから貰った紙と同じ内容の資料。
すなわち絶対能力進化に関する資料。

【絶対能力進化計画】の概要。
第三位、超電磁砲のクローンを二万体、二万通りの方法を用いて殺害し、第一位、一方通行が絶対能力者(レベル6)へ進化する。

美琴ちゃんも言っていたが、簡単に言えばこれが実験の内容であり全貌。
帝督くんの思惑はともかく、やはり当麻くんを動かすには十分な内容だったらしい。
91 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga sage]:2011/04/24(日) 16:49:54.81 ID:SfZyN+790
「とうまもあなたも、隠し事が多いんだよ」

あっという間に五杯目をおかずと共に平らげ、茶碗の上に箸を並べて置く。どうやらごちそうさまらしい。
修道服を来た少女が合唱して頭を下げるのはどことなくシュールな絵だった。安全ピンだらけだし。

「隠し事というか、言うまでもないことだからさ」

「それってただの誤魔化しかも」

「戯言だよ」

納得がいかないのだろうが、これ以上ぼくと話しても無駄だとわかったのだろう。また頬を膨らませながら自分の使った食器を流し台に持っていった。
洗うのはぼくの役目だけど、ここまで手伝ってくれるだけで十分だ。最初は何もしてくれなかったからなぁ(遠い目)。

「とにかく!私も心配してるんだよ!」

ぼくもようやく食べ終わり食器をまとめていると、インデックスちゃんが戻ってくるなりそう言う。

「あなたも、とうまも無茶するんだから」

「当麻くんはともかく、ぼくは無茶なんかしてないよ」

無謀なことはしているかもしれないが。

「興味があるから、動く。巻き込まれたから、働く。それだけだよ。夏休みってのは意外と退屈なもんなんだよ」

「だったら、一緒に遊んでくれればいいのにー」

「それは当麻くんに一任してるから。生憎ぼくは遊ぶとかそういうのに慣れてないんだ」

付き添うくらいならできるかもしれないが、一緒に遊ぶなんて考えられない。ぼくが普通に友人と呼ばれる存在と楽しい時間を過ごすなんて、想像ができない。
こんなことを考えているうちは、絶対にできないんだろうけど。別にそれで困ることはない。

「私は三人で遊びたいんだよ!今日という日は今日しかないし、この夏は一回しかないんだよ!」

「大丈夫、今日という日に似た明日はやって来るし、この夏と同じような夏も繰り返すから」

「だーかーらぁー!!」

ガチガチと歯を噛み合わせていまにも飛び掛ってきそうなインデックスちゃんを尻目にまとめ終えた食器を持ち上げ、台所へと向かう。
乱雑に積み上げられた食器をひとまず脇に寄せて洗い物を開始する。

「三人で遊びたい、ね」
92 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga sage]:2011/04/24(日) 17:32:02.01 ID:SfZyN+790
きっと思い出をつくりたいんだろう。
インデックスちゃんはあの日以来の記憶がない。だからこそ普通の生活をして、普通の思い出を作って生きたいのかもしれない。
今、彼女の頭の中に記憶されているのは一ヶ月にも満たない記憶と十万三千冊という膨大な量の魔道書だけ。

「もう少ししたらぼくも当麻くんも暇になると思うからさ。その時まで我慢しててくれよ」

「うぅ、分かったんだよ……」

台所からそう言うと、寂しそうな声を上げるインデックスちゃん。
ぼくは無言で洗い物を片付けるとリビングへ戻り簡単な身支度をして、外出することにする。
とりあえず当麻くんと合流しなければならないし、哀川さんにも伝えておきたいこともあった。

「それじゃ、出かけるから」

「ちょっと待ってほしいかも!」

玄関へ向かうぼくにトテトテと小走りで近寄ってきたインデックスちゃんはそう言ってぼくと向き合う。
そして両手を胸の前に組むと、なにやら小声で呟く。

「―――。――」

それはどこか神聖なもので、神秘的な挙動で、神々しかった。

「おっけーなんだよ」

そのままの姿勢で数秒停止していたインデックスちゃんは両手を解くと何時もの笑顔を浮かべる。
いつもと変わりのない、屈託のない笑顔。

「今のは、お祈り?」

ぼくの言葉に胸を張って鼻息を鳴らすインデックスちゃん。

「そうなんだよ。まだ見習いシスターだけど誰かの為に祈るのは、誰でも関係なしに加護を与えてくれるかも!」

「そりゃあ、有難い」

ぼくはポンと彼女の頭に手を乗せてお礼を言った後、振り返って玄関に置いていた靴を履きドアノブに手をかける。

「行ってらっしゃい」

そしてまた、無邪気な笑みを浮かべるインデックスちゃんにぼくは、

「じゃあね」

行ってきますとは、言わなかった。
93 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga sage]:2011/04/24(日) 17:32:29.88 ID:SfZyN+790
ごめんなさい。夜にまた来ます。
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/04/24(日) 17:50:32.59 ID:SsZ80YqAO

あれ?インさんが可愛い?
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/24(日) 18:15:36.12 ID:IdGEqcDAO
一旦乙
どうなるのか読めん
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/24(日) 19:23:48.57 ID:Q5yaf0UDO
妹全滅しても、驚かない
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/24(日) 19:40:10.74 ID:IdGEqcDAO
それは前やりましたやん
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/04/25(月) 02:30:03.03 ID:Xva4hD8AO
インさんがヒロインしている……だと!?
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/25(月) 12:53:29.61 ID:N6NI2PjAO
インさんにはぜひ暴飲暴食して欲しいな
100 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/04/26(火) 22:02:47.67 ID:79JltVUB0
前回は寝てしまいました。ちょこちょこ落としていきます。
101 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/04/26(火) 22:03:28.89 ID:79JltVUB0

「いーさんどこいくんだにゃー」

部屋を出て直ぐにそんな声がかけられる。まずひとつ誤解を生まぬように説明をしておこうと思う。「どこいくんだにゃー」と声を掛けられた。
いや、外出するのに何処へ行くのかを訊くのは別におかしくはない。むしろ挨拶としては常用句だろう。セオリーと言い換えることもできる。
さてここで問題となってくるのはその語尾だ。

『にゃー』

これは所轄ネコ語というものでたまに漫画やアニメなどでキャラ付けの為に利用されるもので、使用者としては美少女が多い。
というか漫画やアニメには美少女しか居ないとも言えるが、その説明に関してはここは割愛しておこう。
これを現実で使用する人間ははっきりいって痛々しい。それもかなり。思い返せばアイテムの麦野ちゃん(青髪くんからぼくより年下だと教えてもらった。嘘だろ)も語尾に『にゃーん』と
付けていた気がするけど、うん。やっぱり聞いてて気持ちのいいものではない。

しかし、この場合は更にたちが悪い。なぜなら。

「ただの散歩だよ、元春くん」

「健康的だにゃー。尊敬するぜい」

金髪にサングラスをかけた、胡散臭い男が言っているからだ。

「珍しいじゃないか、こんな時間に。舞夏ちゃんが来たのか」

「舞夏が来たのなら無駄にいーさんに挨拶なんかせず部屋に篭ってるにゃー。補習も無いし、通り魔事件も解決したし、なんとなく早起きしちまっただけだぜい」

「……そうかい」

隣人である土御門元春くんはぼくと当麻くんと青髪くんのクラスメイト。金髪にサングラス、それに夏休みだからかアロハシャツを羽織り口元を緩めている。はっきり言って怪しい。
半壊した学習塾に住んでそうだなぁ、と彼を見るたびに毎回思うのだが、特に意味はない。

「あ、そうだ。借りていた本だけど、もう少し借りててもいいかな」

「勿論。気の済むまで読んでから、熱く語り合おうぜい」

「ありがとう」

借りている本とは『完全版!メイド全集02』で、当然の如く前回借りた物の続編。

「あれは現在パート13まで出版されてるからにゃー。いーさんは読破できないかもしれないぜい」

「頑張って読みきるよ」

なんとなくそう返しただけど、元春くんがかけるサングラスの向こう側から鋭い視線を感じる。
102 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/04/26(火) 22:25:40.91 ID:79JltVUB0

「ま、続きが借りたくなったらいつでも言ってにゃー。メイド同士が増えるのは大歓迎ですたい」

「そうするよ」

ぼくはそう言いながら右手を軽く振って元春くんの前を通り過ぎ、随分前に直ったエレベーターに向かって歩く。
相変わらず背中には刃が刺さるような視線を感じるが、気にしないことにしてエレベーターのボタンを押す。

「ああ、そう言えば」

元春くんが思い出したような、実に演技らしい言葉を発し、ぼくは振り向かないまま「どうした」と答える。
エレベータが一階から二階に上がり、ランプが灯る。

「第二位と第四位がお前を探していたぞ」

「…………」

エレベーターが四階に到達し、ランプが灯る。

「なんで――」

「なんで知っているか、っていう無粋な発言はよせ。気が付いてるんだろ?戯言遣い。だからこうして話しているんだからな」

冷徹な声が、ぼくの背中を刺す。

「第一位、第二位、第三位、第四位、第六位、欠陥電気、禁書目録、赤き征裁、そして幻想殺し……か。よくもまあここまでの役者を揃えたもんだ。ん?ああ後は座標移動か」

「言っている意味がよく分からないんだけど」

エレベータが、到着する。
ガタガタと音をたてて扉が開くが、ぼくはそれに乗らなかった。いや、乗れなかった、か。

「そう警戒するなよ。俺はあくまで中立であり裏方だ。本来ならこの状態で接触することが異常(イレギュラー)だからな」

「その中立(バランサー)が、何の用なんだ?」

誰かがボタンを押したのだろう。エレベーターは扉を閉めて下降していった。

「プランとやらが狂ってきているらしくてな。詳しく説明できないが、とにかく物語(ストーリー)が正常に動いていないことが問題なんだ」

「だから、ぼくに退場しろと」

これ以上余計なことをするなと、言いたいのか。
学園都市統括理事長は、そう言いたいのか。
103 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/04/26(火) 22:43:12.57 ID:79JltVUB0

「月詠小萌は死ぬ予定ではなかった」

ぼくは振り向かない。

「初春飾利と佐天涙子は通り魔などする予定ではなかった。白井黒子は殺される予定ではなかった」

エレベーターのボタンは、押せない。

「第六位は表舞台に出てくる予定ではなかった。第二位はこの件で動く予定ではなかった。『アイテム』は襲撃する予定ではなかった」

言葉が、続く。
ぼくは答えない。

「第三位はクローンの存在を受け止める予定ではなかった。赤き征裁が介入する予定ではなかった」

淡々と、どこか詠唱するように言葉は、続く。
ぼくは答えない。

「そして、幻想殺しが実験についてこの段階で気が付く予定では、なかった。わかるか?もう修正不可能な所まで進んでしまっているんだよ、この話は」

ぼくは、答えない。

「そこで上は判断した。『修正できないのなら、強制するだけだ』と」

「……違いが、よく分からないな」

やっとの思いで無理やり声を捻り出す。
そしてなんとかエレベーターのボタンを再び押した。

「そんなことは、俺にも分からんさ。全く、理解しようとすること事態、理解に苦しむんだよ、あの人間の話は。さてここで回答だ。『戯言遣いを退場させるために俺はやって来た』。答えはノーだ」

「へえ……」

「お前が導き出してしまった、導き出されることのないはずの答えを確認し、招かれざる客が去った後、道筋を立て直すつもりなんだろう」

その言葉を言い切ると同時にエレベーターが到着し、扉が開く。
ぼくは今度こそ一歩前に出て乗り込むと、ようやく振り向いて元春くんと対峙する。

そして、一つだけ確認をする

「君も、物語には参加するのか?」

元春くんは自嘲気味に短く笑うと、吐き捨てるように言った。

「誰がこんな狂った物語に参加するか。俺も全てが終わってから自分の役割を全うすることにする」

ぼくが、返事をする前に、扉は、閉まった。
104 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga sage]:2011/04/26(火) 23:09:34.50 ID:79JltVUB0
しまった。上の文の一行目にこれを追加です

「本来は禁書目録の記憶は消える予定ではなかった」

ぼくの質問には答えず、元春くんは続ける。

では、続き。

8

学生寮を出たのは良いが、そういえば当麻くんの居場所も分からなかったし、特に思いつく場所も無かったためこうしてブラブラと真夏の炎天下の第七学区を歩き回っている。
きっと彼のことだから路地裏辺りでスキルアウトに絡まれているのだろうが、いかんせんぼくが路地裏へ入っていく気がしなかったので偶然を期待して彷徨うしかない。

「あー元春くんに聞けばよかったかな」

予測だが、彼なら当麻くんの居る場所を把握している気がする。しかし今から学生寮に戻って「当麻くんの現在位置知ってる?」と訊くのも何だか変だし、そもそも簡単には教えてくれないだろう。
ていうか、多分学生寮に居ない。勘だけど。
携帯電話で当麻くんには電話をしてみたが、当然出ない。これは何かに巻き込まれて出ないのか、出られない状況に居るのか、それともあえて出ないのか。
どれも正解でどれも間違いな気がするのでこれ以上は考えないようにしよう。そうだ、哀川さんにこれまでの報告でもしておこうか。
ひょっとしたら、何か知っているかもしれないし。

ぼくは携帯電話を取り出して哀川さんのナンバーを表示させ通話ボタンを押そうとして、止めた。

「取りあえず、一通り歩いてからにしよう」

きっとあの人なら現れるべきタイミングで現れるだろうし、なんならぼくが知った情報なら既に知っているかもしれない。
それに簡単に哀川さんに頼りたくは無いという気持ちも、少なからずあったから。

「って言ってもなぁ……」

言うまでも無いが、学園都市は広い。第七学区だけ見ても徒歩で全て回ろうには丸一日掛かってしまうだろう。
動かない物ならともかく、当麻くんは人間で絶えず移動しているから見つけるのは至難の業だ。
迷子のアナウンス的なものがあれば使おうかなぁなどと暑さで少し可笑しくなった思考をしていたら、見知った顔を見つけた。

「やあ、美琴……ちゃん?」

昨日までぼくが着ていた物と同じ常盤台の制服に身を包み、短い栗色の髪。美琴ちゃんを発見したと思い駆け寄って声を掛けたが疑問系になってしまった。

「おや、先日の男性ではないですか、とミサカは忘れかけていた存在との再会に驚愕します」

「ああ、妹ちゃんのほうか」

頭部には軍用ゴーグル、生気を感じられない目、手元に置いてある、人が一人は入れそうなバッグ。
そして特徴的な語尾が美琴ちゃんではないことを教えてくれた。

「こんな所でどうしたの?」

彼女が立っている目の前には移動型店舗のアイスクリーム屋が営業しており、小さな子供たちが列を成している。
そんな風景をじっと眺める妹ちゃんが、どこかミスマッチに見えて思わずそんなことを訊いてしまった。

「いえ、特に意味はありません、とミサカはアイスクリーム屋に再び目線を移します」
105 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga sage]:2011/04/26(火) 23:30:24.34 ID:79JltVUB0

「アイス、食べたいの?」

これは無言の重圧なのだろうか。ぼくは社交辞令的にそう聞くが妹ちゃんは首を横に振り「そういう訳ではありません」と否定する。
彼女の様な存在が意味の無いことをするとは思えなかったが、どうやら理由はあったようで、「少し、ある事を思い出していただけです、とミサカは視線を目の前の男性に移します」と言った。
その発言に少し驚いたぼくだったが、とりあえず「そうなんだ」と返しておく。

「急な質問で悪いんだけど、君は『あの公園に居た』妹ちゃんで間違いなかった?」

すなわち、本当にぼくと会ったことのある妹ちゃんなのか、ということ。
実験に使用される彼女達ならば、その日にあったことを報告していても可笑しくは無い。だからその確認。

「ええ、ミサカは一〇〇三一号です、とミサカは以前に会話した個体であることを説明します」

「実験は、まだ行われないのか?」

「実験関係者でない人物に情報を与えることは許可されていません、とミサカは実験に関して何も話すつもりはないという意思を示します」

「そりゃあそうだ」

当たり前だ。

「外部研修、だっけ?」

「いえ、今回は別件での外出です、とミサカは答えます」

「別件?」

意外だった。仮にも『実験動物』である彼女が実験に関する事以外で外出することなどないと思っていたのに。
それとも、実験に関する別件なのだろうか。

「実験に関係があると言えばありますが、特に問題がないようなので関係ないと言えば関係ないですね、とミサカは曖昧な返事を返します」

「そっか。そのでっかいバッグが関係してたり?」

ぼくが視線を落としてバッグを見ると、彼女も同じように目線を落としバッグを見つめる。
そして数秒間を置いた後に「これくらいなら問題ないでしょう」と呟いて目線を上げたので、ぼくもバッグから彼女へ視線を戻す。

「想定外の戦闘で発生した後処理の為のバッグです、とミサカはこの件に関して守秘義務がないことを確認してから話します」

「想定外の戦闘って、ひょっとしてこの中身って……」

戦闘ということは、誰かと誰かが戦ったということ。
戦うということは勝者と敗者がいて、後処理ということは何かをこのバッグに入れて回収したということ。
106 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga sage]:2011/04/26(火) 23:46:53.50 ID:79JltVUB0

「どうやら、誤差は生じなかったようですから、とミサカは実験が中止にならなかったことに胸を撫で下ろします」

そんな台詞を言うが、表情に乱れはなく相変わらずの無表情を貫く妹ちゃん。
ぼくは再びバッグに目線を戻し、考える。

人が一人だけ入りそうなこのバッグに、一体、何が、入っているのだろうか。

「誤差っていうと、そんなに精密な実験なんだ」

「はい。樹形図の設計者による演算で導かれた実験ですので予定外の戦闘は実験失敗に繋がるのです、とミサカは説明します」

それは知っている。彼女から昨日聞いたばかりの情報だ。
だから彼女は、それを利用して実験を止めようとしていた。

「でも、今回は実験の中止には至らなかった、と」

「詳しい再演算結果は知らされていませんが、先ほどネットワークを介して確認を取ったところそれはないようです」

――私が第一位、一方通行(アクセラレータ)に殺されれば、実験は止まる。

その言葉に、ぼくは疑問を抱いていた。ここまで進んだ実験が、本当に止まるのかと。
研究者からしてみれば死活問題であり、前人未到のレベル6への道をそう簡単に捨ててしまうのかと。
樹形図の設計者が破壊されたということは、逆に言えば『再演算しなくてもいい』ということで、それは『問題が発生してもそのまま実験を進められる』ということ。

――できるわよ。というか、やってみせる。これ以上私を使って実験なんて続けさせるもんか。

自分の命を投げ捨ててまでも、実験は止まらなかった。
これ以外にも策を考えていたであろう彼女だったが、結果としては無駄に終わってしまった。

「そのバッグには、誰が入っている?」

バッグを指差して、問う。

「そこまではお話しすることはできません、とミサカはこれ以上は話す事が出来ないと暗に伝えます」

そして、一礼をしてバッグを担ぎ歩いていってしまう妹ちゃん。

元春くんは、狂った物語だと言った。
確かに、これは狂っているのかもしれない。少なくともぼくの目の間の風景は常軌を脱している。

結局、これもぼくが導き出してしまった、導き出されるはずのなかった結果の一つなのだろうか。
107 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga sage]:2011/04/26(火) 23:48:23.83 ID:79JltVUB0








妹ちゃんが担ぐバッグのファスナーからは、彼女と同じ栗色の髪が少しだけ、はみ出していた。






108 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga sage]:2011/04/26(火) 23:49:57.05 ID:79JltVUB0
以上、終了。
これからいーちゃんの長い一日が始まります。


正直あわきんの扱いが定まらないぜェ……



ではまた。
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/04/26(火) 23:57:23.12 ID:6sAS9Mzmo
美琴……戯言だとやっぱりこういう扱いですよね
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/27(水) 00:00:36.46 ID:pzt4Q/G1o
いやまだ美琴だと決まったわけじゃない・・・
まぁほぼ確定なんだろうけど
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) :2011/04/27(水) 00:03:04.29 ID:E7f10BxAO
>>1が誰かを死なすときは重大な伏線を張っているはずっ!
だから美琴はまだ死んでない!死んでないんや……


112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/27(水) 00:08:23.18 ID:pVemrm/AO
あっさり…
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方) [sage]:2011/04/27(水) 00:29:58.11 ID:yB6bRDPAO
というか☆、プラン本当に立て直せるのか?
いーちゃんが学園都市去る頃にはもうプランなんて完全崩壊してる気がする
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/27(水) 01:20:12.26 ID:oc3sqkwY0
アレイスターのやってることと狐さんのいってることは近いんだよ、ジェイルオルタナティブとバックノズル
十三階段がどれだけ死んで無効化されて裏切っても、狐さん平気だったろ
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/27(水) 01:48:52.69 ID:SuERxlzDO
まだだ…クビキリサイクル的に考えて髪の毛だけじゃ特定は不可能だ…乙です
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/04/27(水) 01:53:04.73 ID:xA32vy/AO
あーそっか、なるほどね
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/27(水) 02:03:25.52 ID:Dln/umBDO
そうだな。できれば美琴にはもっと活躍してから涅槃行きしてもらいたいな
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/27(水) 09:08:35.55 ID:yWz+V60AO
珍しくインさんがヒロインなのに見せ場はなさそう

しょせん、インデックスはインデックスか
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/04/27(水) 19:38:45.72 ID:sBl1F5IAO
戯言において見せ場が無いのは幸福である
120 :名無しNIPPER [sage]:2011/04/27(水) 20:04:37.13 ID:5/pWNdRDO
見せ場=死亡フラグなとこあるからな
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/27(水) 20:10:02.80 ID:pVemrm/AO
もう死んでるしね
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/27(水) 22:05:07.25 ID:93bDV/8k0
土御門のにゃーとかだぜいとかって、らぶみさんに通じるものがあるよな
123 : ◆d.DwwZfFCo [saga sage]:2011/04/29(金) 01:23:37.01 ID:xiPd6++U0
すいませんが、長期出張に出るためしばらく投下できないかもしれません。
恐らく最速で一週間後ぐらいになるかもです。
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/04/29(金) 02:03:42.54 ID:hvIFUtSc0
いってらっしゃい!
気長に待ってますよ!
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/29(金) 03:34:44.38 ID:qM24AH4AO
待ってます
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/29(金) 09:05:33.68 ID:g5GJ1nVSO
世間はGWなこの時期に長期出張とか大変だな
気をつけて
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/04/29(金) 14:40:53.88 ID:0pTVMGZqo
業種によっちゃ長期休暇中こそ本番ってとこも多いからなぁ

リアルが忙しいなら無理せんでいいよ
SSはせいぜい息抜き程度にな
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/04/29(金) 23:13:29.87 ID:qdKEZmGI0
スレチだと思うけどちょっと質問
ここに居る人って戯言目当てで読み始めたのか、禁書目当てで読み始めたかどっちなんだろ?

これだけ禁書キャラ死んでるのに荒らされないのは羨ましい
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/29(金) 23:17:12.13 ID:m80BMtxfo
禁書も好きだけど戯言も好きなのでドストライクです
人がしぬのは戯言ならではだし、
禁書が舞台だから禁書キャラ死ぬのは必然でありむしろ死なないと違和感があるな

な、なーんて
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/29(金) 23:26:36.35 ID:kpnzveDJo
>>128
幸か不幸か禁書にべったりだった層がISやまどかに分散しつつある
あとは福岡が来てないのが大きい
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/04/30(土) 00:03:43.21 ID:0t1HXga3o
正直俺は禁書熱かなり冷めてきてる
もともと戯言のファンだったからザレゴトがタイトルに入ってなかったら読んでなかった
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/30(土) 00:27:53.54 ID:TcEnOc+Yo
>>128
俺は禁書クロスって理由で読んでる
西尾作品には興味も沸かない
というかはっきり言えば西尾は嫌い

だが禁書側がレイプされようがダシにされようが別に苛立つこともない
暴れるのはクロスなんてのは二次創作に過ぎないってことを忘れてる低脳くらいだ
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/30(土) 02:46:37.33 ID:p/chhwsAO
西尾ってなんでこんなに好き嫌い別れるんだろ
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/30(土) 08:33:29.60 ID:Q1yE7QDco
ドクペみたいなものじゃないか
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/30(土) 09:13:50.30 ID:KMqhFQ18o
ザレゴトも禁書も大好きだよ
舞台は学園都市でも空気はザレゴトだから人死にが出まくるのは始めから分かってたし
それが嫌なら速攻読むのやめてたさ
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/30(土) 09:22:25.48 ID:PVtaRp0IO
俺は西尾作品は原作やらアニメやらだいたいのものには目を通したな
禁書はアニメとSSとwikiくらいかな
禁書の原作は以前読もうとして、1巻の序盤で挫折したwwww
それなのに、禁書で好きな集団はアイテムっていう(^p^)
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/30(土) 09:49:25.94 ID:p/chhwsAO
特殊だなオイ
でも禁書はキャラの魅力で成り立ってるところがあるよね…
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/04/30(土) 10:21:41.04 ID:Zq5LsIgAO
俺は前作の球磨川に釣られて読み始めた
勿論禁書も大好きだからだけど

この作品は死ぬっていってもちゃんと伏線になってるし、直接いーちゃんが手を下してる訳じゃないから納得できる

前作の妹達消滅エンドも元に戻っただけだし
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/30(土) 21:13:04.84 ID:K770lpYDO
それはそれ、これはこれって割り切っる
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/30(土) 22:14:15.25 ID:0Uu/WqWAO
製作まわってたらこの作者の前作を見つけてそこからべったり
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/01(日) 21:41:23.94 ID:H5bmDhEAO
俺も球磨川ので>>1に惚れた
戯言はまったく知らない
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/01(日) 23:06:19.50 ID:g78rEKcAO
戯言シリーズは人を選ぶね
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/01(日) 23:08:54.78 ID:GjnO8Hfro
戯言は話としては好きだ
ミステリーと考えると二流感がすごいけど
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/01(日) 23:19:14.11 ID:g78rEKcAO
そこまで酷くないと思ったが…
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/02(月) 01:17:57.04 ID:oGBteSFAO
戯言というよりは西尾の文体が合うかどうかだろ

確かにミステリーとして考えれば二流だが、あのどうしようもない厨二感が俺は大好きだ。読みづらいけど
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/05/02(月) 02:29:54.48 ID:tmWP9mPlo
いや本当ミステリーとしては結構酷いぞ?
「真犯人は何でも出来ちゃう天才でした」とか「二重人格と思わせて別の体があったから生きてました」とか
「全部未知の寄生虫が見せた幻覚で神様は本当に居ました。キーワードは全部オリジナルの造語でした」なひぐらしレベル

でも好き
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/02(月) 08:30:19.56 ID:0yozuMtIO
一応ネタバレは避けろよ
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/02(月) 09:33:47.70 ID:jl4jDkWAO
ダメなの?
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/05/02(月) 14:03:53.99 ID:tmWP9mPlo
>>147
これは本当にごめん
そりゃそうだった
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/02(月) 18:06:37.47 ID:xpHCa7rdo
>>146
西尾は、ノックスの十戒や、ヴァン・ダインの二十則を真正面から否定してるってだけで酷くはないだろ
ひぐらしは、ミステリーですらないから、比べる意味無くね?
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/05/02(月) 22:39:00.40 ID:ewnxq0eAO
このSSに関係ない話になっちゃってんぞ
西尾作品がどうとかひぐらしがどうとか無関係だろ
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/02(月) 22:51:02.04 ID:EyOJf0oLo
ひぐらしがミステリーですらないというのであれば
西尾が書いたのは小説ですらないな
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/02(月) 22:57:06.93 ID:jl4jDkWAO
じゃあなんなのさ
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/05/02(月) 23:30:55.78 ID:tmWP9mPlo
すまん
俺が原因だ
謝るからもう止めよう
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/02(月) 23:31:27.13 ID:rQLe+v4DO
竜騎士作品をミステリーとか言っちゃう人って
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/03(火) 07:57:15.75 ID:5uTb5XnAO
だからやめろっての

しつこいんだよ
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/03(火) 09:25:42.93 ID:D2K1rIDro
こんな流れ二秒で切り替えして下さいよ
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/03(火) 09:38:33.80 ID:DVKYFSh0P
全部戯言なんでしょ
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/03(火) 10:04:00.06 ID:ttvXhYuSo
何か右翼スレに貼られてから変なの沸くようになったよな…
人口も増えたんだろうがそれ以上に…
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/03(火) 21:54:04.66 ID:5eiNVyoeo
ンフー>>159さん
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/03(火) 22:32:55.85 ID:IfO8XPVDO
戯言だろ
162 : ◆d.DwwZfFCo [sage saga]:2011/05/04(水) 21:32:52.98 ID:sOUv4KA70
いろんな人に見てもらっていて感動です。

それでは、二時間後くらいに投下しますね。
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/04(水) 21:38:00.91 ID:xjsE9JeFo
じゃあ二時間舞ってるわ
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2011/05/04(水) 22:32:11.54 ID:cqOAkVyC0
記憶を無くした上条さんは他人の理想や思想や想像さえもぶち殺して自分の思想に共感従事する様
洗脳してるんじゃないかと考えた事がある。
因果さえもそげぶして見えざる神の手的な抑止力の干渉権すら許さないとか。
何か幼稚園生の頃誘拐までされたとか何かのWikiで見たんで、ぼく(とおとうさんおかあさん)を
ふこうにするやつは皆やっつけてやる、的なパーソナルリアリティが無意識下で確立されたんじゃ
ないかなー、とか。
165 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/04(水) 22:47:45.30 ID:sOUv4KA70
ちょっと早いけど投下しますねー。
166 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/04(水) 22:48:49.93 ID:sOUv4KA70
9

「やぁっとお目覚めかよ」

突然ではあるがどうやらぼくは拉致監禁されてしまったらしい。いや本当に急な説明で申し訳ないのだが気がついたら見知らぬ倉庫のような場所だったのだ。
巨大なコンテナが無数に積み上げられており、室内灯の心もとない光だけが周りを照らしている。どうもあまり使用されていない倉庫のようでかなり散らかっていて汚い。
のんきに説明しているぼくの状況はといえば、監禁というくらいなので当然の如く手足は縄で縛られており身動きが取れない。
それに後頭部がかなり痛い。恐らく思い切り殴打されて気を失いここに連れて来られたのだろう。

記憶を辿ってみれば、そうだ。妹ちゃんと別れた(というか去っていった)後、何かしら実験に関する情報を得られるかもしれないと思い尾行していたんだ。
それでデパートやら玩具屋やらに目線を向ける妹ちゃんが路地裏へと入り、一瞬躊躇った後に続いて路地裏へ向かったところでぼくの記憶は途切れている。

気がつけば、この有様だ。

当たり前だがぼくを殴って拉致って監禁した人物がいる。その人物は一体誰なのか――なんてそれこそ分かりきっている。
推理などする必要はない。

だって、

「随分と荒っぽいデートの誘い方だね」

「これがデートだなんて思えるなんて、やっぱりテメェは随分と頭がイカれてるわね」

犯人が、目の前に立っているのだから。

麦野沈利。
レベル5第四位。
アイテムのリーダー。
原子崩し。

「デートじゃなきゃこれはどんな状況なんだ?心当たりがあり過ぎて逆に分からないぜ?」

理由なんて、分かりきっているけど。現状なんて、知り尽くしているけど。
あえて聞く。
167 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/04(水) 22:49:30.05 ID:sOUv4KA70

「『一体お前はなんなんだ』って聞くためだよ」

「人間さ」

ヒュ、とぼくの真横を原子崩しが通り抜ける。背後にあったコンテナの一部を貫いて消えた。

「次また同じようなクッソつまらねえ事を言ったら塵も残らず蒸発させてやるよ。いいか。一体お前は何なんだ」

「別に。どこにでもいる無能力者の高校生さ。それ以上でもそれ以下でもそれ以外でもない」

ぼくの言葉に沈利ちゃんは微かに眉を潜めて一歩ぼくに近づく。

「どこにでもいる高校生が殺害対象になってたまるかよ。それに第六位とも知り合いみたいだけど?」

「彼はただのクラスメイトだよ。たまたま第六位だったってだけで、別に深い理由はないよ」

「アイツがただのクラスメイトの為だけに表立った行動をするはずねえだろ。暗部の中でも異質中の異質の始末人がな」

「始末人?」とぼくが聞き返すと沈利ちゃんは「ホントに知らないの?」と意外そうに目を少し開いて溜息を吐く。

「物事を終わらせるのが第六位の主な仕事。交渉から殺害までその方法は幅広く、尚且つ徒党は組まず一人で動く」

「だから始末人か」

そう言われれば納得はできるんだけど、一体彼はどれだけ肩書きを増やせば気が済むのだろうか。

「だから第六位が出てきた時点でアイテムの仕事は『終わってた』んだよ。ちなみに話し合いであの場は収まった。絹旗も滝壷もフレンダも気を失っていただけだし、
 なぜかテメェの殺害指令も撤回されてからなー。全く、テメェもテメェで異質だな。殺しの仕事が撤回されたことなんて今まで一度もなかったから」

「それじゃ、ぼくは絶対に殺されないということだね?」
168 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/04(水) 22:50:12.86 ID:sOUv4KA70

今度はぼくの目の前の地面に向けて原子崩しが発射された。
ドロドロと地面が融ける様はなんだかアイスみたいだ。

「今日はアイテムの麦野沈利として来たんじゃない。第四位の麦野沈利としてテメェを殺しに来たんだよ。ようは私怨だ、私怨」

「ぼくにとっちゃ死縁だな」

「随分と余裕じゃねえか。第六位が助けに来るってたか括ってんの?だとしたらそんな幻想は捨てたほうがいいぞ。万が一アイツが来たところで今回は私、引かないから」

その言葉と同時に無数の原子崩しがまるでぼくの周りを囲むように打ちこまれる。
コンクリートの溶けた嫌な匂いが鼻をつく。

「さあてどうやって殺して欲しい?頭だけぶち抜かれて鶏みてぇに血の雨降らせるか、四肢をもぎ取って達磨みてぇにして欲しいか、上半身と下半身の間に『/』を入れて欲しいか。
 好きなのを選ばせて……やらねえよ。上半身と下半身をお別れさせてから手と足無くして最後に頭を融かしてやる」

「……そりゃどうも」

確かにこの状況で青髪くんの登場を期待するのは希望的すぎる。
こんな絶体絶命のピンチに現れるのは主人公のような存在だけであって、都合のいい物語でしかない。
沈利ちゃんはもうぼくに言いたいことなど、聞きたいことなどないのだろう。凄惨な笑みを浮かべながら原子崩しを放とうとしている。
原始崩しを放つために彼女が掌をぼくに向ける・
どれが右手でどれが頭を狙う為の物なのだろうと、死ぬ間際にもかかわらずぼんやりと考える。

「死ね」

そして原子崩しが放たれた。放たれたはずなのだ。あの時青髪くんに空へ逃がしてもらったときと同じように目の前が白く染まる。
が一向にぼくの体には被弾しない。それどころか視界は白いままだ。違う。性格には真っ白ではなく、白い羽がぼくの前に現れて原子崩しを止めたのだった。
そこでぼくは思い出す。元春くんから聞いた話では、ぼくを探していたのは沈利ちゃんだけではなかったことに。

その人物が彼女より上の序列の人間だということに。
169 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/04(水) 22:50:44.68 ID:sOUv4KA70
そして、この羽を見たことがあるということを、思い出した。

「おいおい。せめて少しは抵抗する素振りを見せろよ」

「諦めは早いほうなんだよ。というか最初から諦めているから」

「そりゃ殊勝な心がけだ」

さっきも言ったが絶体絶命のピンチに駆けつけてくる人間は、物語の主人公と言っていいだろう。

「なっ……」

自身の能力を簡単に防がれたのに対して驚きの声を上げたのか、麦野ちゃんの声が微かに聞こえる。
しかし、この天使のような純白の羽には似つかわしくないホストの様な風貌の少年は、どうみても主人公ではない。

……まあ。

「その羽、似合ってないよ。帝督くん」

「安心しろ。自覚はしている」

この狂った物語には、相応しいのは彼のような悪役なのだろう。
170 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/04(水) 22:51:12.42 ID:sOUv4KA70
「垣根……帝督っ……」

「ん?何だよ。戯言遣い攫ったってのはお前だったのか、第四位。コイツから暗部は手を引いたはずじゃねぇのか?」

歯を食いしばり悔しそうに、憎たらしそうにする麦野ちゃんとは対照的に、帝督くんはまるで『どうでもいい』ように言う。
それが気に食わないのか彼女は一層表情を歪め、叫ぶ。

「テメエこそ暗部だろうが!私は個人的にコイツをぶっ殺しに来ただけだ……《スクール》がコイツに何の用だって言うんだよ」

「おお。奇遇じゃねぇか。俺も《スクール》とか関係なしに来たんだよ。ま、半分は違うんだがな。で、提案だ。コイツ、俺にくれよ」

「嫌だね」

個人的な理由は、きっと当麻くん絡みだろうか。できればその半分の理由とやらは前向きなものであって欲しい。
それにしても、ぼくの意思は完全に無視じゃないか。この二人。

「どけよ」と帝督くんを睨み付ける麦野ちゃん。

「断る」と依然不適な態度のままの帝督くん。

場の雰囲気が、固まる。

「!」

先に仕掛けたのは麦野ちゃんだ。原子崩しを連続して三発、帝督くんの頭、胸部、腹部へ向けて放つ。
超至近距離での原子崩しは発射を確認すると同時に着弾するほどの速度で、尚且つ一撃必殺の威力を秘めている。
当然、人間の駆動スピードでは避けきれるものではない。事実帝督くんもその場から動かないでいた。

「――原子崩し」

しかし、勝ち誇った笑みを浮かべているのは麦野ちゃんではなく、帝督くんだった。
彼は青髪くんのように原子崩しを避けてはいない。それどころか、一歩もその場から動いていない
171 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/04(水) 22:51:45.72 ID:sOUv4KA70
なのに、被弾していない。

「確かに強力な能力だよな。だが言っても能力の根っこは電子に関係してる分、コチラとしても対応がしやすいって訳だ。その気になれば第三位にも出来るんじゃねえか?」

先にやったように翼で原子崩しを防いだわけでもない。全て避けたわけでもない。確かに原子崩しは発射された。
では、光線はどこへ当たったのか。

――それは、ぼくの後方にあるコンテナ。

「なに勝ち誇ってんだァァアア!?」

帝督くんの話を遮り、原子崩しを乱発する麦野ちゃん。
しかし。

その破壊的な光線は、先ほどと同じように、まるで帝督くんを避けるように、コンテナへと向かっていく。

「遮蔽物があってもお構いなし。鉄であろうと、何であろうと貫いちまうあたり、文字通り『原子崩し』ってか」

「ッハ!黙れよ!!」

今度はぼくに向けて発射するが、今度は白く発光する翼がそれを止める。

「人の話は最後まで聞け。ったくどういう教育受けてきたんだよ。なぁ戯言遣い?」

「ぼくは義務教育すら放棄したから何も言えないよ」

「そうか。俺も似たようなもんだがな」

急に話を振らないで欲しい。
172 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/04(水) 22:52:17.91 ID:sOUv4KA70

「テメエ等も人を無視してんじゃねえぞ!」

麦野ちゃんが叫びながら宙に投げるカード。あれは確か。

「拡散支援半導体か。……どんな《アイテム》出そうがそれは所詮、この世に存在する物質だろ?」

「塵も残らず融けちまいなぁ!!」

帝督くんの言葉を聞かず、麦野ちゃんは拡散支援半導体へ向け原子崩しを放つ。
目標は、垣根帝督。

「っく……」

目の前の光に、思わず目を閉じてしまう。
そしてゆっくりと目を開ければ、帝督くんのいた場所が煙に包まれていた。

「――残念だが」

徐々に煙が晴れていく。

「お前が持つ能力がこの世の《常識》に当てはまっている内は、絶対に俺は殺せねぇ」

煙の向こうには、発光した白い繭のような物体が存在しており、そこから帝督くんの声が聞こえてくる。
そして、その繭を形成していたのはあの翼で、徐々に元の形へと戻っていく。

完全に三対六枚の翼を背にしたところで、あの狂気が、悪意が、殺意が、全て混ざり合っているような凄惨な笑みを浮かべながら、彼は、言い放つ。
173 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/04(水) 22:52:58.48 ID:sOUv4KA70






「俺の『未元物質』に、その常識は通用しねえ」





174 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/04(水) 22:54:04.07 ID:sOUv4KA70
「関係ねえよ!!カァンケイねェェんだよォォォ!! 」

恐怖からくる笑みなのか、絶望からくる笑みなのか。
麦野ちゃんは歪な表情を浮かべ、絶叫しながら原子崩しを放つ。

放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。

「おいおい。大人しく戯言遣いをこっちに寄こしてくれるだけでよかったのによぉ。こんなことして死なれたら困るんだ――よっ!!」

「っぐぁ!!」

弾幕となった原子崩しを翼一振りで一蹴すると、そのままそれを麦野ちゃんの腹部へ叩きつける。
麦野ちゃんは能力の応用だろうか?防御壁のようなものを作り出して何とかそれを受け止めるが、衝撃を殺しきれずに壁まで吹き飛ばされる。

「お。スゲェじゃねぇか。てっきりビームを放つだけの能力だけだと思ったが、そんな使い方もあるんだな。感心したぜ」

「いちいち、ムカツク野郎だなぁ?テメェはよ」

これだけの攻防で、はっきりとぼくは理解する。
二人の実力差を。

第四位と第二位の、序列の差を。

「なんだよ褒めてやったのに。よくわからねぇ奴だな?戯言遣い」

「無能力者のぼくからすれば、まるで怪獣大決戦だよ」

だからぼくに話を振るな。

「怪獣ね。化け物とも言えるよな、この場合」とどこか表情を曇らせる帝督くんだったが、直ぐに麦野ちゃんへと視線を戻し翼をはためかせる。

「さぁて、これが最終通達だ。戯言遣いを大人しく俺に渡す。それに文句はねぇな?」

倉庫内なのでどこまでも高く、とは言えないが天井一杯まで飛ぶ帝督くん。
青髪くんのように浮いているわけではなく、本当に飛んでいる。
175 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/04(水) 22:59:14.65 ID:sOUv4KA70
命令とも取れる言葉に、麦野ちゃんは少しだけ口元を吊り上げて、言葉を発する。

「黙れよ童貞メルヘン野郎。私は誰の指図も受けねぇんだよ。逆に女受けする服装を教えてやろうか?そのダセェホスト風はねぇわ」

「ムカついた。塵も残らず消してやるよ」

挑発する麦野ちゃんの言葉に、眉を寄せた帝督くんの背に生えた翼が一層強く輝くと、一振りする。
同時に轟音とともにコンテナを巻き込みながら『何か』が麦野ちゃんを襲う。

「じゃぁな。第四位」

原子崩しで防ごうと試みる麦野ちゃんだったが、帝督くんが放ったのは恐らくは《風》なのだろう。幾つかのコンテナを破壊することが出来たが、攻撃自体は止まらない。
そして、直撃する瞬間、それとは別の風が吹き抜けた。

「あ?」

原子崩しが帝督くんを避けたように、帝督くんの攻撃もまた麦野ちゃんに当たることなくコンテナごと壁へ激突した。
外壁が崩れ、外から光が差し込む。どうやらまだ日中のようだ。

麦野ちゃんが攻撃を逸らした、訳ではないだろう。実際、彼女自身も何が起こったのかわからないという顔をしている。
そんな中、ぼくはある人物を思い浮かべていた。攻撃を逸らしたのが、風であること。

それはつまり、風力使いの能力者だということ。

「困るなぁ。風はボクの専売特許や。勝手に真似されたらかなわんで」

全員がその声に反応し、倉庫の入り口へと目を向ける。麦野ちゃんは一回瞬きをして、声の主を睨み付ける。
無理もないか、この間『仕事』を終わらさせられた相手が、今度は自分を助けたとなればプライドの高そうな彼女には我慢しがたいだろう。
帝督くんは品定めをするように、何かを確認するように声の主を上空から観察する。

そんな熱烈な視線などどこ吹く風。声の主は陽気な声を張り上げて右手を挙げる。

「やっほう。いーさん。サポートしに来たで」

そこにはただのクラスメイト、青髪くんが笑顔で立っていた。
176 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/04(水) 23:02:23.67 ID:sOUv4KA70
とりあえずここまでです。
ていとくんを括弧良く書きたいでござる。
明日は休みなのでまた来れたら来ます。

というか出張中に禁書読んでたら垣根さんが「レベル5に風使いはいねぇ」みたいな発言してた気がする。

青ピェ……
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/04(水) 23:14:09.98 ID:QOAr+uwDO


垣根の言葉に常識は通用しないのかもしくは青ピは実は風使いじゃありませんでしたフラグか…
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/05/05(木) 00:07:21.76 ID:k91vUbbRo

二次創作で原作との細かい齟齬は問題ないんだぜ
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/05(木) 00:46:57.74 ID:JTw7mNI2o

青ピならジグザグぐらい使えてもおかしくないけどな
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) :2011/05/05(木) 01:46:37.96 ID:R2wUVuCAO


いーちゃんマジ語り部wwwww
いや、むしろヒロインか……
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/05/05(木) 07:02:47.06 ID:gFVSfojAO
つまりピンチに駆け付ける青ピが主人公か
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 10:20:36.98 ID:pajOMrXDO
球磨川って、駄目な奴でも主人公になれると証明したいと言ってたが、そうなると、いーちゅんみたいになるよな。
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/05(木) 11:28:50.40 ID:ijItSPCAO
目をつむったのは眩しかったからだよね?
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/05(木) 23:04:53.95 ID:/yWtxFQX0
恐怖や痛みでいーちゃんは目を閉じないらしいからな
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/05/05(木) 23:38:43.29 ID:+92Ll73k0
>>182
元々似てるよな、この二人
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 00:22:27.13 ID:kH7qaZgDO
>>185
いーちゃんは悪平等に近いけどな。
狐さんは世界は面白いと思ってる平等で、いーちゃんは無価値だと思ってる平等。
故に最悪なんだろうな
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/05/06(金) 00:45:30.41 ID:iQz5r2Ayo
自分含め全てカス
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方) [sage]:2011/05/06(金) 00:58:04.50 ID:04lspGkAO
>>182
ゴメン。ツッコミたいwwww
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/06(金) 02:05:12.58 ID:5Uy/yupAO
やっちまえ
190 :128 [sage]:2011/05/06(金) 17:04:10.65 ID:Ym0euaOAO
遅れながら乙
カッコいい垣根は久しぶりに見たな。
そしてむぎのんから滲み出る小物臭……素敵です


つか>>128の質問に答えてくれてサンクス。
これで俺も西尾と禁書クロス書く勇気が出たよ。
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/06(金) 22:39:07.57 ID:5Uy/yupAO
>>190
期待してるぜ
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 00:07:00.64 ID:QpjSqKVf0
>>190
応援するぜ
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 14:05:50.01 ID:KpM5c4HSO
おっ、来てたのか。とりあえず乙。
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/08(日) 13:16:48.82 ID:guiOwrLAO
最近誤字脱字がなくて寂しい
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 22:26:55.55 ID:XK50CuKDO
誤字脱字なんて、不慮の事故ですから
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/05/08(日) 22:37:37.70 ID:JGLTtNA4o
>>1の過負荷を虚構にしました』
197 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/08(日) 23:49:06.87 ID:x+lQf3t50
では、ちょこっと投下します。
198 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/08(日) 23:50:31.66 ID:x+lQf3t50
10

この物語は一体どこへ向かっていくのだろうか。
学園都市最強の能力者にカテゴライズされるたった七人しか居ない超能力者(レベル5)。
その内の三人がこの狭い倉庫内に会しているというのは、元春くんの言葉を借りれば『豪華すぎる』。
第二位、垣根帝督。
第四位、麦野沈利。
そして……第六位。

こんな一国をも落とせ得る三人の中に無能力者であるぼくがいるというのは、なんだか場違いに思えるけれど、三人が三人ともぼくが居るからここに居るのだから、
いやはや、驚くしかない。

「よう、第六位。珍しいなお前が誰かを助けるなんてよ」

「いやぁ別に助けた訳やないよ、第二位サマ。君に対抗して放った風がたまたま攻撃に当たっただけや。そうやな、第四位が勝手に助かっただけって具合やよ」

帝督くんと会話しながら青髪くんは右人差し指をくいっと上げる。その動作だけでぼくを拘束していた縄は切れて落ちる。

「そうじゃない」と帝督くんはゆっくりと地上へ降り立ち青髪くんへと歩み寄る。
もう、麦野ちゃんのことは、見ていない。

「戯言遣いを助けた、って意味だよ。何だ。まだあっちの世界へ名残でもあるのか?」

「…………」

青髪くんは、答えない。じっとその細い目を帝督くんに向けて、無表情を浮かべる。
無表情でありながら、今まで見たことのないようなどこか悲しげな顔。

「無い、とは言わせねぇぞ。とぼけた態度ばっかとりやがって。中途半端なんだよお前は。暗部としても、超能力者としても――人殺しとしてもな。いい加減にしろよ。
 所詮はこっち側の、暴力の世界の人間なんだ。俺も、お前もな」

帝督くんは続ける。

「そこの第四位はその点立派だと思うぜ?上の言うことには素直に忠実に堅実に動くんだからな。いや、大した仕事根性だよ」

「クッソ野郎が……」
199 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/08(日) 23:52:07.70 ID:x+lQf3t50

ニヤニヤと笑いながら両腕を広げて言う帝督くんに麦野ちゃんは歯を食いしばり立ち上がろうとするが、ダメージのせいかその場に崩れたままだ。

「――否定はしいへんよ」と今度は青髪くんが帝督くんへと歩み寄り、二人はかなり近い位置まで接近する。

「でも、それを言ったら第二位サマもこの件で動いとるん?まさか『非人道的な実験が許せないからでーす』なんて言わんやろうな。ボクも第二位もその手の地獄は
 通過済みやろうに」

「俺はただ単純に上との直接交渉権が欲しいだけだよ。それに第一位も気にくわねぇしな」

「それなら別にいーさんは必要ないんちゃうか?」

その通りだ、と思う。当麻くんが帝督くんの作戦に賛同しなくて、無理やり従わせる為の人質としてならインデックスちゃんでも構わないはずだ。
ぼくである必要性は、どこにもない。

「そうなんだけどよ。気になるじゃねえか上が気にかける無能力者っていう存在は。一度は手を引け、一度は殺せ、そして最後は好きにさせろってなもんだ。
 それに死ぬ直前でも目を瞑らない。その時点で普通の人間じゃねえだろ。簡単に言えば興味が湧いたんだよ、コイツにな」

「ボクも似たようなもんや。あの人が気にいっとるいーさんがどんな人間かってな」

「ふぅん」

「ちょ、ちょっと待ってくれよ。上がどうたらなんてぼくは知ったことじゃない。それなのに拉致られたり、殺されかけたり、景品みたいに扱われるのは……
 あまりいい気分じゃないね」

思わず、口を挟んでしまう。

「第一位がどうなろうが、帝督くんが何を思おうがぼくには関係の無い話だろう?こんなぼくに興味を持ったなんて言うのなら、今から全部ぼくのことを説明してやるよ。
 高校一年生、無能力者、転校生、以上だ。それだけ。これ以外に説明の仕様がないくらい何も無い。それがぼくだ」

ゆっくりと立ち上がりながら、そう言ってみる。戯言以外の何にでもないが、口を開いてみる。

「別に君たちが争う理由なんて無いんだろ?勿論、ぼくにも」

今にも戦いが始まりそうな雰囲気の中、場違いなぼくの声が響く。
その言葉に一番早く答えたのは青髪くんだった。どこか苦笑いを浮かべながら。
200 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/08(日) 23:52:47.78 ID:x+lQf3t50

「『ぼくを取り合って戦うのはやめてぇ!』ってどっかのヒロインみたいやなぁ。いーさんが女の子やったら萌えるトコなんやろうけど。
 そやね、別にボクは第二位と争う理由は無い。ちゅうか元々戦うつもりなんてなかったけどな」

「俺もだよ」と帝督くんも続く。

「意外と空気を読むんだな、戯言遣い。いや、この場合は読めなかったんだろうけど。まぁいい……俺の目的はあくまでも『第一位を殺す』ことだ。殺せればどんな形でも
 かまわねぇ。幻想殺しはその保険。お前はさらにその保険、と興味対象ってとこだ。お前を殺すつもりはねぇよ」

「保険の保険って……」

「幻想殺しの説得、というか第一位の所へ連れてくるため。少し幻想殺しと話したけどアイツに対して人質なんてとったら逆に俺の障害になっちまうだろ?だから自然な流れ
 で実験場まで連れてきて欲しいんだよ。クローンといえども殺人現場を目の間に動かねえ様な奴じゃないだろ」

「じゃあ当麻くんは今どこにいるんだ?」

彼を放っておいて帝督くんがぼくの所へ居るのは不自然だ。帝督くんは保険と言っていたが、当麻くんは対能力者にとっての切り札(ジョーカー)。
彼の言ったとおり下手なことをすれば厄介な敵になる。

「それがなぁ……大した説明も聞かないまま飛び出して、どっか行っちまったんだよ。思ったよりのお人よしだ、アイツは」

「カミやんは、そうやろうなぁ」

「そうだろうね……」

ぼくと青髪くんが同時に頷く。

「今日の実験は夜に行われるからな。それまでだったら幾ら走り回ってもらってもかまわねぇ。で、先にお前を追ってたら殺されそうになってたんで現れたって訳だ」

「実験の内容を、かなり把握してるんだね」

「当然。じゃなきゃ第一位を殺そうなんて思わんさ」

確かに。
201 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/08(日) 23:53:18.11 ID:x+lQf3t50

「ボクはいーさんのサポートしに来ただけやからなぁ。実験とかどうでもいいんよ。……で、いーさんはどうしたいんや?」

ぼくが実験をどうしたいか。
そんなもの、答えは決まっている。

「ぼくは――」

言いかけたところで帝督くんの翼が展開される。音すらも吸収してしまったのか何も聞こえなかったが、何が起こったかは理解できる。
帝督くんの翼の対角線上は、麦野ちゃんが居た場所。つまり原子崩しが放たれたのだろう。

「ゴチャゴチャゴチャゴチャとよぉ……私を無視して話を進めてんじゃないわよ……」

翼越しに、麦野ちゃんがゆらりと立ち上がる姿を確認した。
心なしか、その表情は笑っているように見える。

「なんや。まだ戦う気なんか?」

「その執念だけは俺らより上かもな」

完全に怒り狂っている麦野ちゃんに対して余裕の超能力者二人。
なんていうか、その言葉が余計だと気がつかないんだろうか?

「おーい。折角助かったんやで?このまま帰りぃな」

「俺も興が削がれちまったから見逃してやるぞ?」

火に油。その一言で麦野ちゃんの何かが切れた。

「死ねェェエエ!!」

空中にばら撒かれる無数の拡散支援半導体に原子崩しを打ち込み、無数の光線が生まれる。
雨のように原子崩しが降り注ぐ。

だが。
202 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/08(日) 23:54:49.84 ID:x+lQf3t50

「学習しねぇなぁ」

帝督くんの翼がそれらを全て無効化し、そのまま高く飛び上がる。
麦野ちゃんは再び拡散支援半導体を取り出そうとするが、帝督くんと取り出すことに意識を集中していたためか青髪くんの能力に対応できなかった。
彼女はぐらりと状態を揺らし、膝をつく。

「地上に居ながら高山病って、中々できん体験やでぇ?」

「テ……テメ」

「今度こそ、じゃあな」

帝督くんが一度、翼を振るう。
それだけだった。

それだけで、彼女はだらしなく口を開き、そこから血を滲ませて顔面から地面に倒れた。

「まさかここまで……」

率直な意見を述べる。

「なかなか見られへんで。レベル5の連携」

「連携するつもりはなかったがな。つうか場所移そうぜ。直に警備員が来るだろ」

まるで放課後にどこに行くか決めるような軽さで話す二人は、ぼくの答えを聞かないまま倉庫から出て行こうとする。

「いーさん。歩きながら目的聞かせてや」

「……分かったよ」

青髪くんに言われ二人の跡を追う。
出口から出るとき、一度だけ麦野ちゃんに目を向けて、倉庫を後にした。
203 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/08(日) 23:57:03.66 ID:x+lQf3t50
以上。
話が迷走してる感がヤヴぁい。
むぎのんの扱いは正直スマンかった。

終わりが遠いぜ。

因みに余り戦闘シーンは書かずにいこうかなぁと思っております。

では、また。
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 00:08:21.48 ID:eZAiylfs0
乙!!

むぎのん…
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) :2011/05/09(月) 00:17:53.42 ID:CZR/HitAO
某スレが完結してほっこり油断してたらここの作品で底まで落とされた
相変わらず素敵なくらい容赦がないですね

そして帝督△青ピ△
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) :2011/05/09(月) 00:19:06.81 ID:CZR/HitAO
某スレが完結してほっこり油断してたらここの作品で底まで落とされた
相変わらず素敵なくらい容赦がないですね

そして帝督△青ピ△
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/05/09(月) 00:19:36.99 ID:dP45TvCoo
(゚д゚ )乙仕様
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/05/09(月) 00:21:19.86 ID:dP45TvCoo
(゚д゚ )乙仕様
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 00:46:48.07 ID:PGyQEzu20
乙です
もう二人死んだと考えるべきかまだ二人しか死んでないと考えるべきか迷うな
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/09(月) 00:52:11.21 ID:DpGNj37E0
乙です

>>209が言うように美琴もむぎのんも「死んだ」とは明言されてないんだよな
うーん、展開が分からん
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 04:21:24.94 ID:YJd3RFzDO
おつかれさま

あの展開で2人共生きてたら萎えすぎて逆に面白いわ
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 06:59:42.46 ID:C5vz6VO5o

生きてたときの展開を書きにくくなるようなことをいうのはやめとけ
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方) [sage]:2011/05/09(月) 08:35:45.15 ID:TaegC91AO

え?麦のん死んだの?
普通にただ気絶したと思ったんだが
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 10:32:05.40 ID:e2fSvtvC0
死んでも死んでなくても、それはそれで戯言っぽい
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 22:01:31.94 ID:Zd6P5u7DO
『死んでしまうとは、なさけない』
216 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/10(火) 20:35:43.77 ID:4ZTFEgKZ0
少量ですが、投下します。
217 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/10(火) 20:36:16.40 ID:4ZTFEgKZ0
11

「ぼくは実験を止めるよ」

倉庫から出たぼく達は歩いて第七学区へと向かっている。
幸いな事にぼくが拉致られた場所から倉庫はそんなに離れていなかったので学区を跨いだとはいえ歩いて十分ほどだ。

「へぇ。そりゃまたどうして」

ぼくの右隣を歩く帝督くんは大して興味のなさそうに言う。

「ぼくにも理由があるんだよ」

理由というか目的というか。
とにかく実験を中止に持ち込んだほうがぼくにとって都合が良い事は確かなのでここまで動いているのだけれど。

「実験を止める、止めないにせよ、ボクぁいーさんのサポートはし続けるで」

「ありがとう」

ぼくの左隣を歩く青髪くんに素直にお礼を言う。
そうだよなぁ、青髪くんが居なかったら何回かは死んでるよな、ぼく。

「それで、どうやって実験を止めるつもりなんだよ。まさか第一位を殺して、なんて言うんじゃねぇだろうな?」

「そんなことは君にしか出来ないだろ?帝督くん。何度も言うがぼくは無力な無能力者なんだよ。力も無ければ能も無い。逆立ちしたって勝てやしない」

最弱なんだ。そんなぼくが学園都市最強の超能力者に勝てるはずが無い。

「研究施設を壊して回るとか?」と青髪くん。

「君も大概だな。美琴ちゃんがあえてそれをしなかった理由ぐらい知ってるだろ?学園都市を母体とする実験だ、研究所を幾ら壊したって意味が無い。
 ていうかそんな大それたことは、ぼくにはできないよ」

だから彼女は自分が死ぬ道を選んだんだろうけど。
218 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/10(火) 20:36:43.04 ID:4ZTFEgKZ0

「帝督くん。確認のためにもう一度訊いておくけど、君は第一位が目的でその実験対象には興味がないんだろう?」

「ああ。実験用モルモットなんざ興味がねえよ。俺にとって実験はあくまで幻想殺しを動かす口実だからな」

二万人死のうが知ったことじゃない、と帝督くんはヒラヒラと右手を振る。

「うん?ああ。そういうことかいな」

青髪くんが一人納得したようで、頷く。

「樹形図の設計者の演算で決められた二万人の超電磁砲クローンを殺害する実験は実験日時、手法、場所あらゆる指定があるやろうからな」

「っけ、戯言遣い。お前も中々エグイ考えを持ってるじゃねえか」

帝督くんもそこでぼくの考える『プラン』に至ったようだ。流石は第二位と第六位、頭の回転が速い。

「理解が早くて助かるよ。それが実行できれば当麻くんを実験場に連れて行くことも容易くなる」

「せやな。カミやんのことや、きっと光の速さで飛んでくるで」

「違いない」

「そうだろうね」

三人が三人、その時の当麻くんを思い浮かべて小さく笑う。
なんだろうな、ハマリ役というかなんというか。

「それで今日の実験はどこで行われるんだ?」

ぼくは帝督くんに尋ねる。

「あー。確か今夜の八時三十分に第十七学区の操車場で行われる。因みに幻想殺しには教えてないから知らないはずだ」

「分かった。当麻くんには最悪電話で伝えるよ。で、そこから先は君が上手くやってくれるんだろ?戦闘には巻き込んで欲しくないんだけど」

「善処しよう」
219 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/10(火) 20:37:50.47 ID:4ZTFEgKZ0

実験開始まで残り十時間もないが、それだけあれば十分だろう。
なんたってこの二人が協力してくれるのだから。

「いーさん。ボクは何をしたらいいんや」

ニヤニヤと笑いながら問いかける青髪くん。もう何を言われるのか分かっているだろうにあえて訊いてくるあたり演出過剰というべきか。

「美琴ちゃんのクローンを一人探し出して欲しい。ぼくも探すけど君のほうが早いだろうしね。くれぐれも間違えないでくれよ」

「りょーかい。それじゃ作戦会議は終了やな」

青髪くんがそういうと同時に彼を中心に風が集まっていき、微妙に彼の身体が地面から離れる。

「俺も行く。色々と準備もしたいしな」

今度は帝督くんが翼を展開する。

「なんだかチームプレイをしてるみたいだよ。全く、ぼくらしくない」

「せやな、らしくない」

「ふん。利害の一致ってヤツだ」

その言葉を最後に二人は飛び立っていった。
ぼくはぼんやりと空に消えていく二人を見送った後、行き先も決めないまま歩き出す。

「やれやれ、それじゃあ操車場で会おうってか――いや違うな、この場合は」

そんな呟きを溢した時、目の前に一台の車がダイナミックなドリフトをしながら現れた。
運転席にはお決まりのあの人。真っ赤なコブラと同じ真っ赤な髪に、真紅のスーツ。
いつもと違うところは助手席にこれまた赤い髪をした少女が乗っているところだけど、まあこれから何をされるかは分かる。
駄目出し、批判、どんとこいだ。

「――それじゃあ地獄で会おう、二人とも」

助手席に座る赤髪の少女が何か手を振るった瞬間に、ぼくはその場から消えて居なくなった。
ようやく、物語が動き出すのだろう。
220 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/10(火) 20:40:19.90 ID:4ZTFEgKZ0
謎の赤毛少女が登場して終了。
もう一人はあの赤い人ですが。

これでようやく話が進む……
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2011/05/10(火) 21:04:53.65 ID:cwI+B1t/0
>>217
逆にね、一位と三位の歴然たる差を樹形図に叩き込んで[ピーーー]てたら或いはとも考えられたのよ。
まぁ数と場数の違いもあるし2:8くらいに分が悪い賭けだろうけど。

再計算「出来ない」と「し様がない」は違うものだったのよミコちん・・・
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/05/10(火) 21:26:44.83 ID:vWxSEg4Fo
(゚д゚ )乙ラッタッタ
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/10(火) 21:51:48.47 ID:LX2hblU3o

謎の赤毛少女・・・一体誰なんだ(棒)
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/10(火) 22:52:03.53 ID:MS/JSbsIO
い、いったい謎の赤毛の少女とは誰なんだ皆目検討もつきやしないぜ!!
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/10(火) 23:02:01.93 ID:ANAOj2PAO
おまえら本当にわかんないの?
あのコに決まってんじゃん!



巫女子ちゃんだろ?
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) :2011/05/10(火) 23:18:45.73 ID:btXgMODAO
赤毛「空間移動系最高位の能力者、ただし自己転移不可能。みたいなっ!」


それにしても戦闘力が一般人より少し上なだけのいーちゃんが実験をどうやって止めるのだろうか。
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/10(火) 23:32:15.64 ID:w8mfmspSO
赤毛の少女!?アニェーゼに決まってんだろ(棒)?
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/11(水) 00:22:28.74 ID:CTlzFunAO
分からんぞ。髪の毛そめた崩子ちゃんかもしれん
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/11(水) 00:32:08.86 ID:EnH8H7hDO
赤髪少女…まさか潤さん(オリジナル)のクローン2万人を統べる打ち止めちゃんか!
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/11(水) 01:30:03.36 ID:6IsTUItAO
赤髪少女といったらりすかだろ
しかしいーちゃんが『プラン』とか言うとそれだけで不吉な感じがする
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/05/11(水) 04:43:27.19 ID:rQ8SEAXAO
>>229
そして負の感情を受信する番外個体(ジュンワースト)

これはただの哀川さんか。
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/05/11(水) 10:12:43.00 ID:HQfY7HDAO
哀川さんのもってる負の感情って怒りと父親への憎しみ位な気がする
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/11(水) 21:30:54.52 ID:oeagAcIAO
なんだかんだ人間くさいし
めんどくさいとか思いそうだけどな
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/11(水) 23:51:58.77 ID:FG/aKaUHo
苗字で呼ぶなよ
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/12(木) 00:01:26.33 ID:QR7UBqLAO
SSで上条さんが死ぬのは多々あるけどいーちゃんが死ぬのはない不思議!
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/12(木) 00:24:24.15 ID:dt5xIJ2AO
なぜか全然不思議じゃない!不思議!
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/12(木) 02:14:05.24 ID:5RLQYAGyo
>>229
ステイル「たまにはインデックスの服を着るのも悪くないな」
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/12(木) 08:11:48.55 ID:jOYNqE2SO
>>229
哀川さんっていっつもイラついてね?
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/13(金) 21:20:24.21 ID:MBZWswKh0
>>226は評価していいと思うんだ
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/13(金) 21:26:58.99 ID:NvRBeJkro
>>239
本人乙
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/05/14(土) 02:39:41.71 ID:ch5v7v4fo
>>339
正直まったく上手くない
だって例えになってないもの
まんまだもの
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/14(土) 20:23:51.00 ID:EiptRRoAO
あの例え方難しいよな
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/14(土) 22:55:37.56 ID:3AWFxVjA0
正直俺程度の頭じゃ理解出来なかったぜ…
244 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/14(土) 23:24:54.00 ID:/ik76D/i0
巫女子ちゃんの素敵比喩に、その常識は通用しねぇ。
ある意味喋る未元物質。

では書き溜めず投下ァ。
245 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/14(土) 23:25:24.51 ID:/ik76D/i0
「ふうん。この子がアナタの言ってた戯言遣いくん?思ってたよりも幼い顔つきをしてるのね。ああ、そんなに怖がらなくてもいいわ。別にとって食おうだなんて
 思っていないから。君の容姿は気に入っているけれど実年齢は大学生なんでしょ?それに女装癖まであるのだから救いようがないわね。なによ、ただの冗談じゃない
 そんな死んだ目で見ないでよ」

「ああ私?そうね赤毛だからこの人の妹ってことにする?それともクローン?どれでも好みなのを言ってくれればそれに合わせて属性を演じるから。
 …………嘘、嘘ですだから拳を握り締めて口元を吊り上げないで、潤さん。え?コンクリートに埋める?そんな人のトラウマがマッハになるような事を言わないでよ。
 思い出すだけで吐き気がするわ、クソ忌々しい過去」

「まぁアナタと戦って少しは克服できたかもしれないけれど、やっぱりトラウマなんてものは一生付いて回るものなのよ。罪と一緒ね。死ぬことでようやく開放される。
 それ以外に克服しようと思うなら原因となった要素を取り外すしかないわ。私がしようとしたようにね」

「結局『樹形図の設計者』……その残骸(レムナント)はアナタに奪われちゃったから叶わない願いだわ。勿論、アナタにも適わなかった訳だけど。ねえ聞いてよ戯言遣い。
 私の能力は座標移動(ムーブポイント)って言うんだけど、それが全く効かない人間ってどう思う?それが高位能力者だったら納得が出来るんだけど無能力者よ、はっきり
 言って悪夢よね。ナイトメア」

「ん、具体的にどんな能力だって?そうね簡単に言えば空間移動(テレーポート)よ。ただそれのレベルが高いってだけで大枠はそれよ。違いといえばポップのメラと、
 大魔王バーンのメラ位違うわ。手で触れなくても物体を転移できるし、重さ、距離全てにおいて最高クラスよ。因みに自己転移なんかもできるんだけれど、これはさ
 っき言ったトラウマの影響でやらないわ。できないんじゃなくて、やらない。ま、できないって言っても同じなんだけどね」

「それでなんで君が拉致られたのか分かる?わからないわよね、だって私も分からないんだもの。いきなり目の前に赤いコブラが停まったと思ったら、中からさらに
 赤い人が降りて来てよ、開口一番『残骸置いていけ』だもの。もうわけがわからないわ」

「さっきの話に戻るけれど、当然簡単に渡す訳ないじゃない?こっちだって仕事というか信念があったわけだし。それで戦った。でも能力が効かなかったのよ。問答無用で
 移動させる私の能力が。能力が効かなければこの街の学生なんてただの一般人よ。戦える訳がない。そこで気が付いたわけよ、能力を捨てようとしていた私が能力に依存
 していたって」

「恥ずかしながらそこで能力が暴走しちゃってねー、いろいろ巻き込んでぶっ飛ぶところだったんだけど、この人に私だけぶっ飛ばされて気が付いたらコブラに乗っていた
 って訳よ。それで質問したわ「どうして能力が効かなかったのか」って。この時点ではこの人は能力者だと思ってたんだけど、無能力者って言われて驚いたわ。
 しかも学園都市外部の人間。しかもそれより驚いたのが能力の攻略法。「ああん?座標移動って読んでその通りの能力なんだろ?だったらお前があたしの座標を捕捉して、
 移動させる前に動けばいいだけだ。簡単だろ?」これよ。確かに理論上は可能だけど、そんなもの信じられるわけがないじゃない」

「私の攻撃方法は別に相手を移動させるだけじゃないのよ。むしろ本筋は車とかそういったのを頭上に移動させたりするの。でもそれすら効かなかったわ。何?なんなの?
 人間が二トントラックを持ち上げられる訳がないし、座標移動よりも早く移動できるわけがないのに、この人は平然とやってのけたわ。そこに恐れる、怖がるぅぅって感じ」

「しかも組織に連絡を取ったら既にこの人に潰されてたって、もう笑うしかないわよね。仲間も全員無事に解放されたみたいだし、本当、ヒーローってこんな人のことをいうのかしら」

「ああ。名前の紹介がまだだったわね。私の名前は結標淡希。結ぶ標は淡い希望って覚えなさい。いや覚えなくてもいいけど。能力はさっき言った通りレベル4の座標移動。
 料理は苦手でトラウマ持ちの年下好き。ああ、ショタコンとか言われるけどそんな気は無いわ。できれば年下がいいって程度よ。よろしくね、戯言遣い」
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/14(土) 23:32:55.69 ID:EiptRRoAO
めっちゃ喋るなwwww
兎吊木さん並だwwwwww
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/05/14(土) 23:43:31.93 ID:ch5v7v4fo
このセリフの羅列は西尾っぽいなww
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/14(土) 23:49:23.52 ID:UVFgJYH/o
素晴らしい西尾再現率wwww
そこに痺れる、憧れるぅぅ!
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 00:06:44.48 ID:JJo2XZ9DO
くろねこさんキャラだったかー
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/15(日) 00:44:43.77 ID:0tA9I2UAO
寝落ちか
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/05/15(日) 00:53:40.28 ID:X57JQ7HAO
寝たか〜

いーちゃんがあわきんのタイプじゃなくよかった
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 01:32:03.62 ID:NhRnFB8to
テレーポートで笑ってしまった

おやすみ
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/17(火) 07:57:10.68 ID:6zrOID3AO
ちょっと心配になってきた
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 19:17:58.12 ID:3PFvYhak0
なにかあったな
寝落ちなら起きてから謝罪とかするし、投下終了なら終わりの一言でも入れるだろう
報告する時間すら惜しい急用かもしくは殺られたか監禁とか?
まあ後者はアリエナイにしろどっちにしても心配だ
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) :2011/05/17(火) 20:39:31.32 ID:rQzUcGDAO
急用か休養

まあまた出張とかじゃないかな
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/05/17(火) 20:41:47.28 ID:rQzUcGDAO
あげてしまった、すいません
257 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/17(火) 22:38:47.12 ID:EdY+aZ+V0
前回は眠ってしまい、そのままバタバタと……
では、続きを投下します。
258 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/17(火) 22:39:33.87 ID:EdY+aZ+V0
「おいおい、あわきん。あたしの紹介に棘があるじゃねえか。まるで人を人外みたいに言いやがって」

「なによ、何も間違っちゃいないじゃない。それに戦いだからって女の子の顔面を思い切り殴るのはマナー違反よ。痕が残ったらどうしてくれるの」

「っは!だからあわきんは負けるんだよ。戦うってのは戦場に立つってことだ。あれが駄目、これが駄目っていうんならスポーツでもやれよ。
 そうだ、お前の能力ならペタンクとかいいんじゃないか?それかボーリング。つーかあたしが全力で顔面を殴ったら完熟トマトみたいに弾け飛んでるぜ?」

「なんでそんなドマイナーなスポーツに精を出さなきゃいけないのよ。それに顔云々は冗談なんだから、真に受けないで。アナタが言うと本気にしか聞こえないから」

「あたしは冗談が嫌いなんだよ」

「冗談が服を着てるようなアナタが何を言ってるのかしら」

コブラの運転席と助手席で会話する赤毛の二人は随分と仲が宜しい様だ。ただ対等に話しているようで主導権は哀川さんが握っている。この辺りの隙のなさは流石だ。
久しぶりに哀川節の片鱗を垣間見たところでぼくは赤毛の少女、淡希ちゃんを観察する。
第一位印象は『露出狂』。これに限る。ブレザーにサラシという、皮膚を衆目に晒されることに喜びを感じる類の人かと勘違いしてしまう超前衛的ファッションをしていては、
そう思われても仕様がないだろう。
淡々と話す彼女はとても人間らしく、ぼくは一方的ではあるが久しぶりに会話をしたように感じた。

「ぼくを無理やりコブラの後部座席にぶち込んだのも君の能力かい?」とギャーギャー言い合う二人の間を割って口を挟む。

「そう。ていうかさっき言わなかった?座標移動。これでヒュってね」

淡希ちゃんは見せびらかすように懐から軍用と思わしき懐中電灯を取り出して光を灯す。
人工的な光がぼくの顔面を捉えて、思わず手でそれを遮ると淡希ちゃんは意地の悪そうな笑みを浮かべて光を消した。

「正確な座標をこれで割り出すの。マーカーみたいなものと考えてくれれば構わないわ」

「ふうん。で、この子を使って演出過剰な登場シーンをかましたのは何故です?あいかわさ……潤さん」

「ギリギリあうとー。今苗字で呼んだだろ」

運転しながら元々空いていた片手でぼくの額へチョップをかます。いつも通りのやりとりが、とても久しく思えた。
ぼくはこれまたお決まりの仕草、額を擦りながら「用件はなんですか、潤さん」と言い直す。

「用件?んなもんは一つしかねぇだろ。真実とは違うんだ。あたしの仕事が終わったから、いーたんの仕事を手伝ってやるってこと。で、どんな案配なんだ」

もとはアンタの仕事だろ。とは言えない。
259 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/17(火) 22:40:14.21 ID:EdY+aZ+V0

「探し物ですか。一つは壊れてしまいましたけど、今晩もう一つを回収しに行こうかと思っています」

「一つ、壊れた、か。あたしがそうやって伝えちまったからなぁ……まぁいい。どうやって回収するつもりなんだ?言っておくけど難易度SSSだぜ」

「真っ向から向かえば、そうでしょうね。勝ち目なんて無い。ぼくは翼も風も電気もビームも生み出せない」

淡希ちゃんのような能力も無い。
無能力者だ。いや、それどころか欠陥製品。

「適材適所、ですよ。そういった面は彼らに任せればいい。それにこっちには切り札だってある」

「なによ、それは」

淡希ちゃんがぼくと哀川さんを交互に見ながら首を傾げる。
彼女の髪が風になびく様をみていると黒子ちゃんを思い出す。そういえば彼女も空間移動能力者だったか。

「潤さん、って言いたいところなんですが……どうせそこまでは踏み込んでくれないでしょう」

「よく分かってるじゃねえか」

あくまで哀川さんは手伝ってくれるだけ。助ける訳ではない。
現段階では、そういった立ち位置。前回の『大泥棒』に扮した時のような感じなのだろう。

「状況によって変わるさ。実験の当事者に会って、観て、感じて決める」

「できればぼくにとって良い方に転がって欲しいですけど」

「お前にとっては悪くても、世界にとっては良いのかもしれないぜ」

運転中だというのに後ろを振り返り、笑みを浮かべる哀川さんにぼくと淡希ちゃんは同時に肩を落とす。

「……じゃあ何が切り札なのよ」と少し疲れた様子で話す淡希ちゃん。

「それはその時のお楽しみってことで……どうせ現場に来るんだろう?」

「まあね……」
260 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/17(火) 22:40:45.21 ID:EdY+aZ+V0

恐らく哀川さんが彼女を取り入れたのは学園都市からの脱出に使うためだろう。
いくら哀川さんといえぼくと探し物を抱えた状態でこのセキュリティを突破することは骨が折れるだろうし。

「別に一人だろうが二人だろうが抱えてても関係ねえよ」

「だから心を読まないでください」

相変わらず哀川さんの読心術は絶好調のようである。

「あたしがあわきんと一緒に居るのは演出の為だよ。戦隊モノでバックに揚がるカラフルな煙みたいなもんだ」

「ちょ!私は小道具扱いなの!?」

「安心しろ。ドライアイス並みに重要視してる」

「使い捨てじゃない!!」

また漫才を始めた二人。このままでは会話が進まないので「ちょっといいですか」と横槍を入れる。
というか哀川さんの目的は訊いたが、ぼくを拉致った理由は訊けていない。

「実験開始までまだ時間はあるだろ?だったら『目標』を見に行こうぜ」

「はぁ……」

既にどこの学区を走っているのかも分からないコブラは、どうやら探し物の下へ向かっているようだ。
それならそこで回収してしまったほうが楽なんではないかと思うけれど、きっとそれは許されないだろう。
いつまでも傍観者を気取るな、物語に参加しろ。そう言われるに違いない。

「あるべき姿は、もう微塵も無い。どう足掻いても修正不可能なんだよ。いつかお前に言ったよな?不満があったら誤魔化すな。不安定なもんは安定させろ。
 不受理は受理の中へと押し込んじまえ。てめえの考えをくだらない感傷だなんて思うな。そして関わったのなら――最後まで足掻け」

「……最初と最後で矛盾してますよ」

この言葉はいつ聞いたのだろうか。すっかり忘れてしまっていたが、不思議と聞いた覚えもある。
案外、本当に心とやらに記憶されているのかもしれない。

……戯言、だな。
261 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/17(火) 22:44:44.31 ID:EdY+aZ+V0

「修正は出来ない。それならいっそぶち壊しちまえよ。全てを同じベクトルで考えるな。最強の矛と最強の盾で戦わせる位ならどっちとも装備しちまえ。
 そうすればお前は最強だ。このバッドエンド一直線の物語だってぶち壊してハッピーエンドに持っていけ。たまには本気を出せよ、いーたん」

「ぼくにハッピーだなんて言葉は、一番似合わないですよ」

「お前の意見はどうでもいい。あたしがここまで関わったんだ」

哀川さんは突然ハンドルを切り、激しすぎる縦列駐車でコブラを路肩に停めて顎でぼくの視線を促す。
そこには常盤台中学の制服に身を包んだ少女が一人。栗色の単発に、整った容姿。それらに不釣合いな軍用ゴーグルを頭に乗せこちらを見ている。
ぼくは覚悟を決めてコブラから降りると哀川さんはシニカルな笑みを――まるで世界そのものを皮肉ったような笑みを浮かべて言い放つ。

「ハッピーエンド以外は認めねぇっつの」

その言葉と共に哀川さんは淡希ちゃんを乗せたままコブラを急発進させ、勢いよく何処かへ走り去っていく。
その場に残されたぼくは、目の前の彼女と黙って見送ると、ゆっくり口を開く。

「やあ、君は《何人目》だい?」

ぼくは初めて彼女を人として呼んだ。
《何体目》でも《探し物》でも《一つ》でも《壊れる》でもない。
《人》で《探し人》で《一人》で《死ぬ》のだから。
死ぬ為に生み出された、《人間》なのだから。

「ミサカは検体番号一〇〇三二号です、とミサカは突如現れた男性に驚愕しながらも答えます」

ぼくがこの学園都市にやって来た《目標》である御坂美琴のクローンである彼女は、ゆっくりと言う。
実験開始まで、彼女が死ぬまで残り数時間のことだった。

この状況をアイツなら傑作だと言うのだろうか。
あの人間失格は、戯言だらけの幻想を、そう言って笑うのだろうか。
262 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/17(火) 22:45:25.43 ID:EdY+aZ+V0

「修正は出来ない。それならいっそぶち壊しちまえよ。全てを同じベクトルで考えるな。最強の矛と最強の盾で戦わせる位ならどっちとも装備しちまえ。
 そうすればお前は最強だ。このバッドエンド一直線の物語だってぶち壊してハッピーエンドに持っていけ。たまには本気を出せよ、いーたん」

「ぼくにハッピーだなんて言葉は、一番似合わないですよ」

「お前の意見はどうでもいい。あたしがここまで関わったんだ」

哀川さんは突然ハンドルを切り、激しすぎる縦列駐車でコブラを路肩に停めて顎でぼくの視線を促す。
そこには常盤台中学の制服に身を包んだ少女が一人。栗色の単発に、整った容姿。それらに不釣合いな軍用ゴーグルを頭に乗せこちらを見ている。
ぼくは覚悟を決めてコブラから降りると哀川さんはシニカルな笑みを――まるで世界そのものを皮肉ったような笑みを浮かべて言い放つ。

「ハッピーエンド以外は認めねぇっつの」

その言葉と共に哀川さんは淡希ちゃんを乗せたままコブラを急発進させ、勢いよく何処かへ走り去っていく。
その場に残されたぼくは、目の前の彼女と黙って見送ると、ゆっくり口を開く。

「やあ、君は《何人目》だい?」

ぼくは初めて彼女を人として呼んだ。
《何体目》でも《探し物》でも《一つ》でも《壊れる》でもない。
《人》で《探し人》で《一人》で《死ぬ》のだから。
死ぬ為に生み出された、《人間》なのだから。

「ミサカは検体番号一〇〇三二号です、とミサカは突如現れた男性に驚愕しながらも答えます」

ぼくがこの学園都市にやって来た《目標》である御坂美琴のクローンである彼女は、ゆっくりと言う。
実験開始まで、彼女が死ぬまで残り数時間のことだった。

この状況をアイツなら傑作だと言うのだろうか。
あの人間失格は、戯言だらけの幻想を、そう言って笑うのだろうか。
263 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/17(火) 22:50:13.22 ID:EdY+aZ+V0
最後二重投稿orz
これで今回の投下は終了。
なるべく両原作に出てる決め台詞以外の台詞は使わないように気をつけていましたが、今回は哀川さんが多用しています。
あわきん、哀川さんの赤色コンビの出番は取り合えず終了。

ではまた次回。
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/05/17(火) 23:07:26.60 ID:J4cxlUiPo
修正はできない
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/17(火) 23:11:51.90 ID:6zrOID3AO

あわきんかわいいよあわきん
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 23:34:00.50 ID:i76eaK0DO
いーちゃんだけだと、『ああ、また死ぬな』しか思わないけど、哀川さんが来ると抜群の安心感があるな。
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/05/18(水) 00:10:17.61 ID:f6YD+mnAO
あれ?次の実験は10031号じやないの?

まあ乙です
安心の哀川さんだなwwww
期待です
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/18(水) 00:26:25.94 ID:0CZR9P3Ro
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/19(木) 12:59:40.61 ID:WI2XPt4SO


欠陥製品を一瞬レディオノイズと読んでしまった
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/19(木) 23:50:15.27 ID:Zkr4lWqAO
四字熟語おおいよね
271 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/20(金) 01:37:41.44 ID:XEp8fIro0
投下します。
今回は色々とオカシイです。今までもおかしいけど更にオカシイです。
272 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/20(金) 01:38:48.01 ID:XEp8fIro0
12

「実験について、いや……君について話がしたい」

ぼくは単刀直入に切り出す。
徐々に日が傾きかけた学園都市の大通り。その脇の歩道でぼくとクローンの彼女は相対している。
完全下校時間のせいか、それともここが寂れている区画なのか大通りと言えども人通りは全く無く、そればかりか両脇に並ぶビルにも人の気配が無い。
学生の街だからだろう。夏休みのこの時間にゴーストタウンと化すのも無理はない。

「……ZXC741ASD852QWE963'とミサカは符丁の確認を取ります」

「え?」

「実験の関係者ではない貴方にはお話しすることはありません、とミサカは不審な男性に物理的距離を取りながら答えます」

言葉の通り半歩下がって話す彼女。

「別に実験に関して聞こうとしてるわけじゃないよ」

ある程度は知っているし、実験に関してこれ以上、必要な情報はない。

「……ミサカについて会話するということは、実験について会話することと同義です、とミサカは暗に話すことは無いと伝えます」

「それは実験用クローンとしての話だろ。ぼくはミサカ一〇〇三二号ちゃん自身について聞きたいんだよ」

「ふむ。妹達(シスターズ)としてのミサカではなく、この一〇〇三二号という個体について質問をしたいと」

「その通り。実験に関してはこちらで資料を手に入れてるからね別に聞こうと思わないんだ」

「ああ。以前に一〇〇三一号が接触をしたのは貴方でしたか、とミサカはネットワークに残る情報から目の前の人物が以前に別の個体と接触していたことを確認します。
 ……ん、どうやら貴方には実験に関して緘口令が布かれていないようですね」

「そうなんだ」

これもきっと統括理事会の決定なのだろう。彼らはぼくを泳がせると決めたと元春くんが言っていたし。

「では実験開始時刻まででしたら貴方の質問にお答えしましょう、とミサカは内心で面倒だと思っていることを隠しつつ話します」

「……隠せてないよ」

正直すぎるだろ、その語尾。革新的過ぎる。
273 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/20(金) 01:39:14.88 ID:XEp8fIro0

「ミサカの語尾は仕様が無いのです、仕様ですので、とミサカは改心のボケをかまします」

「うん。まったく上手くないし、そんな事を考える前に突風で捲り上がったスカートをどうにかしようか」

流石にスカートの下までは美琴ちゃんと同じ、という訳ではないらしく、縞パンツ装備だった。
……うーん。パンチラとは魅力的な展開なんだけれどリアクションが無いとどうも今一つだ。

「ミサカについて聞きたい、と仰られましたが生憎と話すような事例はありません、とミサカはクローン体である自身について語ることが無いと伝えます」

パンチラに関しては完全にスルーされ、会話を戻される。

「実験に参加することに、疑問は覚えないのかい」

自らが死ぬ為だけの実験に、参加する事への疑問。

「愚問ですね。ミサカの製造理由は第一位である一方通行を絶対能力者へと進化させる為であり、それ以上でもそれ以下でもありません」

「……死ぬことに関しては怖くない?」

「それについては、ご心配なく。ミサカは既に一万三十一回は死んでいますので、とミサカはこれまでの実験結果を思い返しつつ答えます」

「少し疑問なんだけど、君達はお互いに意識を共有しているのか?」

ネットワークという単語を一〇〇三二号ちゃんからも、一〇〇三一号ちゃんからも聞いた。
彼女がぼくと別の個体が以前に接触しているという言葉から、特別な手法で感覚や記憶をリンクしているのではないだろうか。

「ええ、ミサカネットワークという同一脳波を利用して情報を共有しています。電撃使いであり、同一のDNAマップを元に造り出された妹達だからこそできる芸当ですが、
 とミサカは簡単にミサカネットワークについての説明をします」

「だから一万三十一回、死んでいると」

彼女達は知っている。死の痛みを、苦しみを。

「それでも恐怖は覚えないんだ」

「欠陥電気(レディオノイズ)ですから」
274 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/20(金) 01:39:41.58 ID:XEp8fIro0

「欠陥電気?」

「素体である超電磁砲の異名を持つお姉さまに比べて、ミサカ達のスペックはかなり劣ります。それ故にミサカの能力は異能力者程度の欠陥電気です、とミサカは説明します。
 そもそも妹達とは超電磁砲のクローンを軍用目的に開発が進められていたのです」

欠陥電気。電撃使い最強の能力者である美琴ちゃんと比較しての命名なのだろう。
なるほど、確かに的を射ている。できそこない、劣っている。それらを集約して『欠陥電気』。

――欠陥品なんかじゃ――ない!

思い出すのは彼女の言葉。友人までも殺してしまった彼女の叫び。
無能だと言い渡され、劣等感に苛まれ、足りない人間だと自惚れた彼女。

しかし、一〇〇三二号ちゃんは違う。欠陥電気と自覚しても、何も思わないし、何も感じていない。
欠陥製品だから、ここに居るのだと。欠陥製品だから、この実験に投入されたと。
割り切ってしまっている。

「ミサカの存在意義は死ぬことで、今を生きる理由は死ぬことで、この世に生まれた理由も死ぬことです。単価にして十八万円、ボタン一つで幾らでも製造可能
 ミサカにとって死というものは直ぐ傍にある存在です、とミサカは言い放ちます」

「…………」

欠陥品であるが故に生み出され、死んでいく。
確かに可哀そうだ、苦しそうだ、理不尽だ、不受理だ。と普通の人ならそう思うだろう。同情、してしまうのだろう。
しかし、普通と呼ばれる人間のどれだけが生きる理由をもって、今を生きているのだろうか。
人生のゴールをここまで明確に決められている人間が、どれほどいるのだろうか。

そしてどちらが、可哀そうで、苦しそうで、理不尽で、不受理なのだろう。

「もし」

実験が中止となり、その理由が無くなってしまったら、この子はどうするのだろうか。
275 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/20(金) 01:40:32.82 ID:XEp8fIro0

「もし、普通に生きていける選択肢が目の前に現れたら……君はどうする」

「さあ?ありえない事態ですので考えたこともありません。ミサカが死んで困るような存在が居るとすれば実験自体が行われないでしょう、とミサカは言い切ります」

「そうかい」

ありえない事態、か。
ぼくは一つ溜め息を吐き、質問を変える。

「生きる理由が無いのに生きている人間は、どうして生きてるんだろうね」

ぼくのように、念の為に生きている人間は、どうして生きている。
何の為に、生きている。

「死ぬことは怖くない。むしろ生きているほうが辛い。人だって簡単に裏切れるし、何も感じずに殺せる。口を開けば嘘ばかりで本当の自分なんてどこにも居ない。
 前に進むことが億劫で、かと言って後ろを振り向くわけでもない。むしろ生きてるなんて言えるのかな」

「質問の意味は分かりかねますが、それは人間として欠落しているのでしょう、とミサカは自身の事を棚に上げて答えます」

「欠陥電気にさえ、欠陥製品扱いされるとはね。こりゃあとんでもない戯言だ。そうかもね、そんなぼくに比べれば君達のほうが人間らしいかもしれない。
 鏡の向こう側、とまでは言わないけれど、どうやらぼくは珍しく他人に共感してしまっているらしい」

同一の脳波だとか、そういった理由ではない。
ぼくは彼女のどこかに、惹かれているのかも知れない。

ただし、決定的な相違点が一つ。彼女達はまだやり直せるということ。

「死を繰り返す修道女に、劣等感の塊の中学生。最後に欠陥電気のクローン人間か。まったく、どうしてこうもぼくを刺激するような展開が起こるんだろうな」

ハッピーエンド以外は認めないと哀川さんは言った。ぼくはどうなればハッピーエンドになるのか分からないし、どうすればハッピーエンドになるのかも分からない。
それが世界にとって、学園都市にとって、超能力者達にとって、哀川さんにとって、欠陥電気にとって、当麻くんにとってバッドエンドかもしれない。
ただ、ぼくにとってはハッピーエンドかもしれない。欠陥製品の戯言遣いには似つかわしくも、らしくもないだろう。
そんな事が、ぼくが生きる理由にはならない。

……だけど少なくとも、この街に居る理由ぐらいにはなるだろう。
276 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/20(金) 01:41:21.10 ID:XEp8fIro0

「ま、なるようになるか」

《なるようにならない最悪》と言われたぼくには、縁の無い言葉を呟いてみる。
たまには語り部も物語に参加してもいいだろう。観客も舞台に上がってみてもいいだろう。
それが悪役となるのか、主役となるのは分からないけれど。

「……質問が終わりなのであれば、ミサカは実験の準備に移りたいのですが、とミサカは現在時刻を気にしながら尋ねます」

「ああ、もうそんな時間か。うん、それじゃまた後で」

「……それでは失礼します、とミサカは頭を下げてこの場から立ち去ります」

その言葉通り軽い一礼をした後に一〇〇三二号ちゃんはぼくの横を通り過ぎていく。
彼女の背中を見送りながらぼくはその場に立ち尽くす。
さてそろそろぼくも行かなければならない。当麻くんを呼び出して、これから一〇〇三二号ちゃんが向かうであろう実験場へ。

そして、ぼくはズボンとベルトの間に挟んでいた斜道卿壱郎研究所で美幸さんから頂いたジェリコ941を取り出して照準を合わせる。

「…………バイバイ、欠陥電気」

それだけを呟いて、ぼくはトリガーを引く。
相変わらず人の気配の無い大通りに、乾いた銃声だけが木霊した。
277 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/20(金) 01:44:43.79 ID:XEp8fIro0
以上です。

さてラストに突如現れたジェリコですが、完全に描写忘れでした。
本来はインデックスさんと出会ったときに登場させてここでバンと出すつもりでしたが、完全に忘れてました。

それにいーちゃんが前向きすぎる気もしますが、多分それはぼくがヒトクイとネコソギを読んでしまったからかと。
まあそうは言ってもいーちゃんはいーちゃんなので気にしないでください。


ではまた自戒。
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/20(金) 01:49:20.39 ID:LBZXkzSko


これまた気になる終わり方
いったいどうなってしまうのでしょう
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/05/20(金) 02:02:35.04 ID:J6/7+EtBo

どう決着つけるつもりなのか楽しみだ
いーちゃんのキャラ、西尾作品のキャラは割とぶれるから大丈夫
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) :2011/05/20(金) 02:04:17.98 ID:WvvsOlFAO


>「生きてる理由が無いのに生きてる人間は、どうして生きてるんだろうね」

今回は胸に刺さる台詞が多かったぜ……


そしてジェリコェ……
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/20(金) 06:32:42.00 ID:OdWDjclAO
ど、どういうことなの…
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/20(金) 19:48:21.68 ID:3PoqJc5m0
駄目だ自戒が気になりすぎてどきがむねむねする…!

283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/22(日) 15:44:28.36 ID:l8+leciAO
誤字脱字なのか言葉遊びなのかわからん
284 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/23(月) 00:30:41.45 ID:tk78kOB00
お疲れ様です。
ちょっと書き溜めてたら切りの良い所が見つからず、後日談の前まで書いてから投下することにしました。
なのでちょこっと遅くなるかもしれませんorz

一方さんが超ハイテンション。
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/23(月) 00:50:48.40 ID:817DyerAO
無理しないで下さい

あと間違えて哀川さんがハイテンションに見えた
あの人いつもだった
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) :2011/05/23(月) 02:02:20.39 ID:vsnRb4HAO
全盛期一方通行対垣根青ピいーちゃんか。

なせだかこの一方さんには勝てる気がしない
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/23(月) 02:43:25.73 ID:V+c8acCEo
ご、後日談だと
そっか、もうおわってまうんか

期待に胸踊らせて待ってます
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/23(月) 20:21:46.13 ID:0quwxXXAO
俺も胸踊らせて舞ってます
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/23(月) 20:25:53.60 ID:hO+cbav50
狂喜乱舞しながら待ってます
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/23(月) 20:26:23.19 ID:hO+cbav50
狂喜乱舞しながら待ってます
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/23(月) 20:26:50.54 ID:hO+cbav50
狂喜乱舞しながら待ってます
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/05/23(月) 23:58:18.59 ID:vsnRb4HAO
落ち着けwww
293 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/24(火) 01:34:45.77 ID:qFDGWBgs0
ふう……。
取り合えず書き溜めたので、切りのいい所まで投下します。
294 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/24(火) 01:35:36.31 ID:qFDGWBgs0
13

午後八時二十五分。
第十七学区、操車場。
実験開始まで、残り五分。

「五分前行動は常識ですってか」

「常識は通用しないんじゃないん?」

「意外とそういう所はマメなんだね」

「うるせえよ」

広い土地に重機やコンテナが所狭しと置かれている一角で、ぼく達は合流し円を描くようにして立っている。
メンバーは言わずもがな。帝督くんと青髪くん、そしてぼく。

「第一位は所定のポイントに居る。ご苦労なこった、こんな事を二万回も繰り返すとはな」

帝督くんが面倒臭そうに言うが、表情は何処か嬉しそうである。
まるで誕生日プレゼントを貰う直前の子供のように、待ちきれないと言った様子だ。

「気が付かれないのかな?」

第一位の能力がどんなモノなのかは知らないが、それなりに戦闘慣れはしているだろう。
だとすれば気配や、能力によってこちらの居場所を把握している可能性もある。

「いや、その点は大丈夫だ」

帝督くんがそんなぼくの懸念を一蹴する。

「俺の能力でこの辺り一体は認識できない状態にしておいた。昆虫の擬態みたいなもんだ。いくら第一位とは言え警戒していなければ気が付かないさ」

「じゃあぼく達は無視って訳か」

「一寸の虫にもなんとやら、ってことやね」

「さっきから上機嫌だな第六位。何か良い事でもあったのか」
295 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/24(火) 01:36:17.96 ID:qFDGWBgs0

帝督くんの言葉で確かに青髪くんのテンションが少し高くなっていることに気が付く。
彼にはこの実験に関わる理由が無い。ぼくをサポートする為、と言っていたがどこまでが本当なのだろうか。

「別に、や。なんとなく懐かしくてな」

そう言って青髪くんは空を仰ぐ。ぼく達も釣られて同じように空を見上げると、そこには銀色の月が浮かんでいる。

「懐かしい?」と帝督くん。

「そ。人が死ぬ前の感覚っちゅうか、殺人前の雰囲気っちゅうか……」青髪くんが糸目を更に細めて口元を吊り上げて小さく笑う。

「懐かしいも何も、お前は仕事でしょっちゅう人を殺してるだろうがよ」

「違うんよ。仕事と『ボクが昔やってた』殺人は違う。食事――いや、呼吸と言ったほうが正しいか」

「…………」

ぼくが青髪くんの言葉で思い出すのは、かつて彼と一賊だったアイツのこと。
人間失格、零崎人識。殺人という概念を殺していると語った彼と、殺人を呼吸と証した目の前の男はやはり流血で繋がっている。
既に零崎ではないと言ったが、果たしてそれはどうなのだろうか。

「まあ遠い昔のお話や。昔々あるところにーって感じのな」

「いまいち掴めねぇ奴だな、お前は」

「褒め言葉として受けとっとくわ」

青髪くんはケタケタと笑いながら両手をズボンのポケットに突っ込んでコンテナに持たれかかり、「それで、カミやんはまだなんか」とぼくに目線を向ける。
右腕につけた腕時計で時刻を確認してみれば、当麻くんへ連絡を入れてから結構な時間が経とうとしていた。

「さあ?ひょっとしたらまた不幸に巻き込まれてるのかもね」となんとなしに返す。

「この場に来ることが、何よりの不幸やと思うけど……ヒーローは遅れて登場するってのが物語の定番やから気長に待つとして、実験相手も現れんっちゅうのは疑問やな」
296 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/24(火) 01:36:57.53 ID:qFDGWBgs0

「そうだな。実験開始までもう二分も無いのにクローンが居ないのは不自然だ。おい、戯言遣い。何か知ってるか?」

「……知るわけが無いだろう」

勿論、理由は知っている。彼女は、一〇〇三二号ちゃんはこの場には来ない。いや来られないと言った方が正しい。
実験側から何らかの動きがあると思ったが、この現状を見るにどうやら安心してよさそうだ。

「んー、第二位サン?実験開始時刻になってもうだけど……どないする?」

「っけ、まあいいさ。このまま第一位を殺しに行く。それで幻想殺しが来たら上手いこと誘導をしてくれ」

そう言いながら発光する白い翼を背に生やし、そのまま飛び立とうと二、三回だけ羽ばたいて見せる。
そして若干だけれど地面から浮いた瞬間「あ?」と疑問の声を漏らした。
ぼくと青髪くんはその声に誘われて同じ方角に目を向ける。コンテナの陰に隠れて第一位の姿は確認できないが、それと相対するようにして立つ一つの影。
「え……」と思わず間抜けな声を漏らしてしまった。そんなぼくの様子が気にかかったのか二人が怪訝そうな表情でぼくを見つめる。

「どうした?まるで死人でも見たような顔しやがって」

「そやでー、いーさん。ちょっとばかりの遅刻は目を瞑ったろうや」

「そう……だね……」

搾り出すように声を発するぼくだが、上手く喋れている自信は無い。だってそうだろう、ぼくの目の前には此処に居てはいけない人間が居る。
栗色の短髪。常盤台中学の制服。そして軍用ゴーグルと手に持たれた自動小銃。紛れもない、あれは御坂美琴のクローンである、一〇〇三二号ちゃんだ。

「……繰上げか?」

一瞬パニックになった思考を押さえ、冷静に考えてみる。そうすれば実験の順番が繰り上がった可能性が浮かび上がってくる。
一〇〇三二号ちゃんは此処には来れない。それをミサカネットワーク(うろ覚えだ)で察知した別の妹達が変わりにこの場所へやって来た。
だとすれば彼女の検体番号は一〇〇三三号で、一〇〇三二号ではない筈だ。
297 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/24(火) 01:37:59.46 ID:qFDGWBgs0

「よォ、実験にはどんな小さな誤差もあっちゃいけねェンじゃなかったのかァ?」

「諸事情により到着が遅くなりました事を謝罪します、とミサカは頭を垂れて謝罪します」

僅かにだが聞こえてくる会話。彼女ではなくもう一方の声が第一位のものだろう。なぜだかぼくはその声に聞き覚えがあった。
どこで聞いたのだろうか。学園都市に来てから第一位と接触する機会など無かった筈なんだけれど。

「……ハァ。社交辞令ってのはお前みてェな奴が一番、似合う言葉だよな。心の篭ってねェ謝罪はいけませンって学習装置じゃ教えてくれなかったンですか?」

「――当初の実験開始時刻より多少の遅れはありますが、これより第一〇〇三二次実験を開始します。被験者一方通行は所定の位置についてください」

第一位、一方通行の語りかけを無視して軍用ゴーグルを額から下ろし装着し、自動小銃を脇に抱え構える。
きっと頭でも掻いているのだろう、コンテナの陰から大きな溜め息が聞こえてくる。

「りょーかい、りょーかいっとォ……それじゃあサクッと終わらしてやンよ」

声が途切れた瞬間、轟音と共に砂塵が巻き起こり彼女の目の前に何かが高速で迫っていく。
その正体は、人間。空に浮かぶ月の様に白い髪と肌。狂気と狂喜に満ち溢れた歪な顔面に埋め込まれた血のように紅い瞳。
……やはりぼくは第一位を知っていた。それはぼくを取り巻く環境がつまらなく変化した日の深夜。殺人鬼に殺された彼女を見つけたあの路地裏。
忘れるはずも無い。ぼくが幾ら残念な記憶力を持っていたとしても、この少年のことは忘れるはずが無い。

――路地裏って結構、使うンだよなァ。

なるほど、この実験に参加しているのなら死体の処理など簡単に行えるはずだ。なんせ、必ず死体が付いて回るのだから。

「おォ!?やるじゃねェか!!」

嬉しそうな叫び声にぼくの思考は現実に戻される。どうやら一方通行の攻撃を、彼女は磁力を応用して後方のコンテナへ自身の身体を飛ばすことで回避したようだ。
欠陥電気と言えども電撃使い。その辺りはお手の物だろう。
一方通行は彼女から放たれる銃撃をものともせずに突進をする。銃弾が彼に着弾する瞬間に跳ね返り撃った本人を襲う。

「んー。何か妙やな」

二人の戦闘を眺めていた青髪くんが呟く。
298 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/24(火) 01:38:51.43 ID:qFDGWBgs0

「何が?」

「いや、何が?って聞かれたら答えられへんのやけど。ちょっと違和感を感じてな……まあいいやん。で第二位サン?どないする」

そうだ、ぼく達はこの実験を観覧するために此処に来たわけではない。
ぼくは実験を止めるため。
青髪くんはぼくのサポートをするため。
そして帝督くんは、一方通行を殺すため。

「ん。そうだな、第一位のクソ野郎の能力も粗方理解したし、ちょっくら行って来るわ」

ちょっと付近のコンビニに買い物へ行くかのような軽いノリで帝督くんは羽ばたいて戦場へ飛び立っていった。
戦闘に集中している二人はまだ帝督くんの存在に気が付いていない。

「いーさんはどないする?」

「そうだね、とりあえずぼくは彼女と話がしたいから場所を作ってもらえると助かるよ」

「了解や、ついでに第二位に加勢してきたる」

青髪くんはぼくの言葉に頷くとポケットから右手を出し、腰の位置から目線の高さまで右腕を振り上げる。
瞬間、突風が巻き起こり砂埃をたてながら次々とコンテナを巻き込んで第一位と彼女の間に臨時のバリケードを作成した。

「ありがとう」

「なんの。そんじゃ、またなぁ」

ヒラヒラと右手を振ったと思えば青髪くんも帝督くんと同じように空高く浮かび上がり、一方通行がいるであるポイントへと移動した。
大きな爆発音と共に狂ったような笑い声が操車場に響き渡る。恐らく、帝督くんと一方通行が交戦を始めたのだろう。
ぼくは青髪くんが作ってくれたバリケードの隙間を縫うようにして内部に入り込み、彼女と対面を果たす。

「始めまして……だよね」
299 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/24(火) 01:39:28.19 ID:qFDGWBgs0

ほんの数十秒の戦闘で、彼女の身体はボロボロになっていた。それだけで一方通行の戦闘力の高さが伺える。
息切れをしながらも、傷ついた身体を引きずるようにしながらも、彼女は強くぼくを睨みつけていた。

「なぜ……邪魔を、するの……ですか……」

邪魔。はっきりと、彼女はそう言い放つ。
死に向かう実験を止める事が、邪魔だと。自身の目的を遮るぼく達が、邪魔だと。

「君は一〇〇三二号ちゃんじゃないだろう。一〇〇三三号?それとも一〇〇三四号?そんなことはどうでもいい。言っておくけどぼくは君達の邪魔をしてるつもりなどない」

ぼくは、ぼくの目的の為に動いているだけだ。その道中に君達が立っているだけ。

「かと言ってぼくが何かをするわけでもない。ぼくがしたいことはもう終わってるんだから。今、コンテナの向こうで行われている戦いはぼくに関係は無いよ」

あくまで、帝督くんの戦いだ。
そして青髪くんの、事情だ。

また一つ、爆発が起こり地面が揺れる。

「できれば戦って欲しくは無かったんだけどね。無血無傷で終わるのが理想だった」

「嘘、でしょう……」

「うん。立てば嘘吐き座れば詐欺師、歩く姿は詭道主義――戯言遣いってのは、言っちまえばそんなもんでね。
 全くいい言葉だ、この言葉は最高にいい言葉だ。いい言葉は決して無くならない」

いつもより言葉を一つ余計に添えて、戯言遣いの口上は止まらない。

「ぼくはじっくり考えた。そしてゆっくり考えた。そして導き出した答えはハッピーエンド。ぼくの都合の良い様に、世界の都合に悪い様に、考えた。
 笑っちゃうよね、ぼくがぼくの為に考えて動くだなんて。まったくらしくない。学園都市に来てかららしくない事ばかりだ。きっとどこかで悪い影響に中てられてしまった
 んだろう。ま、流されるのがぼくのスタイルでね。らしくないなら、らしくないままいけばいいだろう。そう考えたんだ」
300 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/24(火) 01:40:03.74 ID:qFDGWBgs0

「言っている意味が――」

「理解できないだろうね。そうさ、人間は人間を理解できない、しようともしない、してもらうともしない」

一呼吸置いて、ぼくはコンテナの外で何が行われているのかを想像しながら空を仰ぐ。

「それじゃあ、理解してもらえないだろうけど、ぼくの考えたプランを話そうか。なに、固くなる必要は無いよ。誰だって思い至る簡単な結末さ。君達クローンは二万体製造
 されて死んでいく。そこには少しの誤差だって許されない、ここまでは分かってるよね」

ゆっくりと、彼女は頷く。

「ただ樹形図の設計者はもうない、つまり再演算は不可能だ。さてこれを科学者達はどう捕らえるだろうか。答えは簡単『最後まで実験をやり通す』。エラーは無い、
 再演算の結果は異常なし。そう第一位や君達に言い続けるだろう。当然、君達はどんどん実験を進める。異常が発生しても殺し、殺され続ける」

何事も無かったかのように、進められる。
科学者は中止にだけはさせたくないはずだから。

「実験にエラーを発生させる。それはどうすればいいか。二つほどあるんだけどね、まず一つは『実験には想定外の戦闘を行う』。丁度今みたいな感じにね。そしてもう一つ。
 『先回りして、妹達を殺す』ことだ。ここから推測の域を出ない話になるんだけど、研究者達は余分に君達を製造できない状況にあると思うんだ」

「それは、なぜ……」

「樹形図の設計者が破壊されたことはこの実験に関わっている上層部の人間なら誰もが知っているだろう。そんな状態で『クローンが一体殺されたから製造します』だなんて
 言えないよ?高度な演算結果に基づいて実験場所、日時、戦闘方法が決められて行われている実験にそんな致命的なエラーが発生しても再演算できないんだから、当然だろう。
 それに一人だけ殺されるとは限らない。実験には予算があるんだ。そうそう簡単に製造できないし、できたとしても上層部は黙っちゃいないだろうね」

「ですが、そうだからといって研究者達が実験を中止するとは思えません」

「研究者達は、ね」
301 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/24(火) 01:40:46.64 ID:qFDGWBgs0

ぼくはボロボロになっている彼女の手を握ってバリケードの外へ出る。
目に飛び込んできたのはこの世の終わりとも思える光景。嵐が吹き荒れ、地面は抉れ、コンテナは融解し、重機が玩具のように粉々に砕け散っている。
その終末の世界に居るのは三人。
天使の様な羽を背に、空高く飛び上がる帝督くん。
どこかふざけているような笑みを浮かべながらも風を操る青髪くん。
そして、悪魔の笑みを浮かべながらそれらを相手取る一方通行。

「まあ、こんな見世物もなかなか見られないんだ。腰を下ろしてじっくり観よう」

ぼくは丁度いい高さに砕けたコンテナの破片に座ると、彼女にも座るように促す。
少し躊躇った彼女だったが、大人しくぼくの隣に座ってくれた。

「……研究者達は、という言葉の意味が理解できません」

「ん?ああ、学園都市の第一位ってのはそれ相応の頭脳を持ってるんだろ?だったらこの話を彼にしてあげればいい」

ぼくは戦い続ける三人の男に目を向けながらゆっくりと口を開く。

「彼がまだ人間であれば、きっと実験を止めるさ」
302 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/24(火) 01:43:31.36 ID:qFDGWBgs0
あれ?たった8レス?
まあ、まだ書き溜めはあるさ!って感じで取り合えず終了。

今回までがいーちゃんのターン。
次回からは超能力者のターンです。

早く伏線(笑)を回収したくてもにょってるのに、無駄に伏線(失笑)を張る馬鹿なオイラorz


ではまた。
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/05/24(火) 01:57:13.70 ID:Fe6Vexzio

このスレが切欠で読むの止めてた人間シリーズ読み始めたよ
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/24(火) 01:59:20.02 ID:0NsKHS8e0
無駄な複線があるのは西尾ではよくあること。
まあ全て意味があるのだが
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/24(火) 07:46:37.44 ID:NHcASFKAO
謎は深まるばかり
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/24(火) 12:50:45.63 ID:Z0e6qzyAO
あれ?西尾って無駄な伏線張りまくって結局最後まで回収できてなかったんじゃないっけ?
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/24(火) 13:20:37.34 ID:Q2TM/vKNo
西尾の複線は基本無意味でなげっぱの使い捨て用
稀にナイスな回収をする
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/24(火) 19:15:09.94 ID:TrFSL/1U0
いや、実は大体拾ってたりしてる
俺らが気づいてないだけで
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/25(水) 00:10:11.63 ID:aePAfJJ/0
西尾の小説は本当に読めない
伏線が回収されてる事はおろか伏線自体に気づかないことも多いからなあ
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/25(水) 00:16:35.88 ID:CFO9RieOo
西尾の伏線は西尾が今後書きたいなーって思ったこと適当に並べてるだけだろ
311 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/25(水) 00:31:56.77 ID:8gUAMtft0
超☆展☆開

では投下します。
312 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/25(水) 00:32:26.79 ID:8gUAMtft0

「どうしたァ?チンピラとピエロ野郎。そンなンじゃ俺に届かねェぞ!!」

そんな咆哮と共に一方通行は右拳で横にあるコンテナを殴りつける。
どういった能力なのだろうか、それと同時にコンテナが弾け飛び、拡散して二人を襲う。高速で降り注ぐ破片はまるでショットガンの如く、いやこれは大砲と言うべきか。

「は!そんなモンが効くかよ!!」

「いやぁ、エライ攻撃やなぁ」

帝督くんは翼、青髪くんは風で飛ばしたコンテナを盾にしてそれらを防ぐ。
三人が三人とも、傷を負ってはいない所を見るに実力が拮抗しているのか、それともまだ本気ではないのか。
実に恐るべきは一方通行。二人のレベル5を相手取っているにも拘らず、その表情には焦りどころか汗一つ掻いていない。

「お返しだクソ野郎」

帝督くんがそう言うと、コンテナが浮き上がりそのまま一方通行の頭上へ降り注ぐ。
直撃すれば即死は必至。だが彼は避ける事も、何かで身を守ることもせずに口元を歪めたまま立ち尽くしている。
当然、そのコンテナは彼に落下した。

「おいおい、こンな攻撃が効くかよ」

しかし、直撃はしなかった。
落下したコンテナは、まるでビデオの逆再生の如く空高く舞い上がり、落下地点を変えて地面に激突する。
その衝撃でコンテナが破損し、中身があふれ出す。……これは、小麦粉か?

一瞬にして場が白い噴煙に包まれ、視界が奪われる。一メートル手前すら、見えないほど濃い粉塵。

「今夜は風もないし、ちょっとヤベェかもな」

その中から聞こえる一方通行の声。遅れて『ガゴっ』という何か重いものが無理やり移動したような音が届く。
うっすらと見える影から察するに、あれもコンテナだろうか。

「……!」

粉塵、無風、コンテナ。この三つの要素からぼくは彼の取るであろう行動を予測し、脇に座る彼女と共に少し離れたコンテナを手探りで見つけ、陰に隠れる。
ここならば、被害は届くまい。
313 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/25(水) 00:32:55.51 ID:8gUAMtft0

一方通行が行った行動。それは、

「よォ。粉塵爆発って知ってるか?」

轟音。耳を圧迫する重低音と共に爆発が起こり、辺り一体を燃やし尽くす。熱い。コンテナを通じて此方まで熱が届いている。
予測通りではあるが、爆風が届かなかったのは幸いだ。生身の人間があんな爆発に巻き込まれてしまっては生きてはいられないだろう。

「あーあ、死ぬかと思った。酸素を奪われるとコッチもキツいンだっつゥの」

居た。生身で生きている人間。
どす黒く舞い上がる煙の中から汚れ一つ着いていない一方通行が面倒臭そうに頭を掻きながら、ぼくが身を隠していたコンテナの脇から現れた。
急いでその場から離れようとするが、もう遅い。赤い瞳がぼくを捉える。

「ン?なンだ、もう一匹居やがったのか……ってお前はあン時の」

「……やぁ。久しぶり」

無関係を装える状態ではない。なんせぼくの隣には彼の殺害対象が居るのだから。

「ふゥン。これはオマエが描いた絵って訳か」

「いや、ぼくに絵心は無いよ」

間違いなくそんな意味で言ったのではないと思うが、取り合えず軽口で対応してみる。

「そうだな、確かにこンな絵じゃァ合格点も次第点もあげられねェ……で、あのチンピラメルヘンと、青色ピエロは終わっちまったぞ?高位能力者だったろうが、案外
 大したこと無かったな」

メルヘンとピエロとは、的を射ている。なんなら口笛を吹いて拍手をしたいぐらい。
勿論、そんなことをしてはあの二人に怒られるのでやらないが、うん?どうも一方通行は彼らの正体が自分と同じレベル5だと知らないようだ。
帝督くん、青髪くん、それと沈利ちゃんはお互いのことを良く知っていたのでレベル5同士は面識があるものだと思っていたけれど、どうやら認識を改めなければならない。

そして、彼もまた、二人の認識を改める必要があった。

「勝手に人を殺すなや」
314 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/25(水) 00:33:34.07 ID:8gUAMtft0

聞き覚えのある胡散臭い関西弁の後に、火柱が一方通行を包み込み激しく燃え上がる。

「爆風って言っても所詮は風。気体である以上、それはボクの支配下や」

それが例えどれだけ熱を帯びていても、どれだけ有害な気体だとしても、彼の前では武器にしかならない。

「へェ……」

火柱が消滅し中から現れたのは、やはり焦げ一つ無い一方通行の姿。しかしその表情から先ほどまでの笑みは無く、少し感心したようなものだった。

「並みの風力使いじゃねェと思ってたけど、そこまでやるったァ大したもンだな。レベルは?」

「君と同じや、第一位」

既に青髪くんに笑みは無い。うっすらと開かれた両目が一方通行を睨みつける。
その表情が、雰囲気が、気迫が、場の空気を更に緊張させた。

「……第六位か」

自分と同じレベル5。一方通行が青髪くんをそう認識すると、彼も同じように目を細め睨みつける。

「嬉しいなぁ、光栄やなぁ。まさか第一位様に知られとるなんて。どうしてボクの事を知ってるん?同じレベル5だから?暗部に所属しているから?違うよなぁ、第一位。
 同じ殺人鬼だからこそ、ボクのことを気に掛けてたんちゃうん?」

「テメェが中に入って知ったンだよ。外で人を殺した奴が能力開花して第六位になったってよォ」

零崎だった頃の話だろう。そして哀川さんから破門にされた時期。

「そういやァ、こンな噂も聞いたぜ?『第六位は投薬で人格を弄繰り回された』ってな」

一方通行がその言葉を言った瞬間、青髪くんの周りに風が収束し、彼を中心にして竜巻が巻き起こる。
ぼく達まで巻き込んでしまうような激しい嵐。距離を取るぼく達とは対照的に一方通行は再び顔面を歪めて下劣な笑い声と共に絶叫する。

「あはぎゃは!いいねェ、クソ雑魚の欠陥品共とのお遊びにもいい加減うンざりしてた頃だったンだよ!!」
315 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/25(水) 00:34:09.49 ID:8gUAMtft0

「少し黙っとき」

青髪くんが竜巻を一方通行に向けて移動させる。対する一方通行はまたも避ける動作を見せず両腕を広げてそれを受け入れる。

「効かねェっつってンだろうがァ!!」

地面を抉るほどの威力を持つ竜巻は一方通行に接触した瞬間に散開してしまう。物理攻撃は効かない、風ですらも効果は無い。
それは想定内だったのか、青髪くんは慌てた様子を見せずそのまま右手を一方通行にかざし、伸ばした指をくいっと上げてついっと下ろす。

これはぼくが何度か見た、気体や気圧の変化による攻撃。

「……ッカ」

酸素濃度を上げたのか、それとも酸素自体を消し去ったのか、一方通行が自らの首に両手を当て、始めて苦しそうな素振りを見せる。
声にならない悲鳴。

「君の能力はよぉーく分かったわ。とにかくコッチの攻撃は全部、効果が無いってとこを考えると……反射しとるな?」

「…………!」

「それでも人体に必要なモンは反射できへん。そうやな、酸素が無かったら人間は誰でも死んでまうから」

これは厳密に言ったら攻撃ではないかもしれない。強奪だ。
生きるために必要な要素を、取り上げただけ。そうすれば必然的に相手は死を迎える。

「さて、と。ちょっと質問させてもらうわ。喋れんやろうから頷くか首を振るかだけでいいわ。心配せんでも最低限の酸素は肺ん中に入れたっとるから、死ぬことは無いで。
 今はまだ、な」

首を左右に振って音を鳴らしながら一歩だけ前に出る青髪くん。

「君は、どんな理由があって人を殺す――」

それはこの実験に参加する意味を問うたのか、それともまた別の意味を持っているのか。
真っ直ぐ一方通行を見つめる青髪くんの姿勢は揺らがない。
316 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/25(水) 00:34:34.89 ID:8gUAMtft0

人が人を殺す理由。
嫉妬、憎悪、憤怒、哀愁、絶望、利益、興奮。

――理由なんか無い、敷かれたレール、殺人行為を殺す。

とある殺人鬼はこう答えた。

――人を見下して、劣等生を蔑んで、いい加減ムカつくんですよ!

とある殺人犯はこう答えた。

そして、一方通行は……
317 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/25(水) 00:35:17.80 ID:8gUAMtft0

「無敵になる為だァ……」

はっきりと、そう答えた。

「……っく!」

青髪くんが一方通行の答えを聞き、思い切り後ろへ跳躍する。
攻撃をされた訳ではない、彼が放つ異様な雰囲気に気圧された訳でもない。
喋れない筈の彼が、喋ったことに対して距離を取ったのだ。

「人の呼吸を奪うンじゃねェよ。さっきも言ったろ?酸素を奪われるとキツいンだよ」

「……なんでや?」

「オマエ、俺の能力を理解したンだろ?だったら答えは簡単じゃねェか、テメエがそうしたように、俺もちょっと空気の流れを操作しただけだ」

「ベクトル操作……!!」

「そういうこった。気体の操作なら、俺にだって出来るンだよ。流石に酸素濃度とかは無理かもしれねェが……」

今度は一方通行が一歩、前に進む。不敵な笑みを浮かべながら、さらにもう一歩、前へ。

「少しは楽しませてもらったからよ、お返ししてやるよ」

言いながら一方通行は足を上げ、思い切り地面を踏みつける。砕けた石が刃物みたく鋭利に尖り、宙に浮く。
そしてそのまま青髪くんへと飛来していく。

「無駄や!」

青髪くんは突風を生み出しそれらを叩き落そうとする。が、しかし風は石礫を全て防ぎきれずに、何発か被弾してしまう。
体中が切り刻まれ、出血しながら膝を着く青髪くん。

「無駄なのはテメエだ、三下。俺の身体が外気に触れている以上、テメエは満足に能力は使用できねェンだよ!!」

能力の使用には複雑な演算が必要となる。つまり一方通行は青髪くんの『突風を生み出す為に大気の流れを計算する』過程に自然風ではありえない風を混ぜたのだろう。
いや、風ではなく、風向きを。
318 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/25(水) 00:37:09.42 ID:8gUAMtft0

「青髪く――」

ぞわり、と。膝を着く青髪くんに声を掛けた瞬間、ぼくの背中に寒気が走る。

殺気。

思えば青髪くんからは一度も感じたことが無かった。
涙子ちゃんの家でも。
アイテムに襲われたときでも。
沈利ちゃんに攫われたときでも。

誰かを殺すという意思は、発しなかった。

「……よーやく分かったわ。君は殺人鬼やない、殺人犯や。そして零崎でもない」

ゆらりと立ち上がるが、顔は伏せたまま。
身体中から血が滴り、落ちていく。

「あん時に感じたのは、君やなくボク自身のコトやったんやかぁ……はぁ、折角ここまで普通の人に戻れたと思うたのに――《哀川さん》と仲直りできると思うたのにな」

青髪の半分を自らの血で紅く染め、ゆらりと身体を揺らす。

「お調子者の青髪くんも、暗部所属の第六位も、人類最強の請負人の弟子も――もう無理や」

只ならぬ雰囲気に一方通行は嬉しそうに口元を吊り上げて、笑う。嗤う。
目の前の男に『まだ楽しめる』という価値を見出したように、ただひたすら歓喜の醜い笑みを浮かべる。

そして彼は、全ての設定を、属性を、捨てた。
……戻ったといったほうが正しいのか。

「零崎蒼識――これがボクの、名前や」

青髪くん――いや、蒼識くんは顔を上げ嗤ってみせる。
ふざけたような、おどけたような笑みではない。

心の底から嬉しそうな、そんな笑みだった。
319 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/25(水) 00:37:35.85 ID:8gUAMtft0






「零崎――始めるで」





320 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/25(水) 00:39:47.73 ID:8gUAMtft0
青髪さん覚醒で今回は終了。
唐突で申し訳ない。オリジナル零崎(笑)です。
本当は覚醒させる予定は無かったんですが、どうしても見せ場を作りたくて……


とりあえずいーちゃんとミサカちゃんとていとくんテラ空気。

え?一方さんから小物臭?ははまさかそんな

ではまた次回。
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/25(水) 00:43:12.98 ID:U2k5wS1AO
乙!ゾクゾクした…!
そして安心のていとくん空気ww
次回も楽しみに待ってる。
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/25(水) 00:48:17.29 ID:KExy4UyAo
いいねぇいいねぇ

面白くなってきやがった
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/05/25(水) 01:14:33.18 ID:n+wcJzpAO


零崎蒼識ってソウシキ?アオシキ?

とりあえず>>1の青ピはやはりカッコいいである
ただ完全悪っぽい一方通行もカッコいいである///
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/25(水) 01:26:48.31 ID:KExy4UyAo
葬式とかけてたりなかったり
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/25(水) 01:36:06.32 ID:l06AHZ3jo
葬式かー
あれなんか
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/05/25(水) 02:31:16.42 ID:5t1o07rAO
葬式さんか
名乗っちまったな
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/25(水) 07:50:16.36 ID:vPC3V6yDO
双識「…………」
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/25(水) 13:30:28.90 ID:Jw4cRBLDO
誰か神裂さんじゅうはっさいオリ零崎化(笑)で一本書いてくれよ
禁書作品だと名前的に神裂さんくらいしか思いつかない
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/05/25(水) 17:16:46.53 ID:8Mzjje3Xo
>>328
初春飾利→零崎飾織
という電波を受信した
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/05/25(水) 17:27:04.15 ID:n+wcJzpAO

零崎火織の人間救済
零崎飾織の人間情報
零崎蒼識の人間始末


>>1の次回作が決まったな
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/05/25(水) 20:34:06.51 ID:8Mzjje3Xo
>>330
ひらがなにしたとき4文字じゃないとゴロ悪いし、一文字足す+苗字から 零崎紙織なんかどうでしょう
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/26(木) 01:29:15.04 ID:GPYCi39B0
>>331
紙織は流石にないだろ
せめて…逆織とか…炎織(カカオリ)とか…?

すまん、やっぱり忘れてくれ
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/05/26(木) 23:45:20.98 ID:YzKkK7pAO
やっぱりこのSSの主人公は青ピだな
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/27(金) 00:12:35.07 ID:KFFlo3Ywo
火がひとつ増えて炎織(ホノオリ=ほのお+おり)
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/27(金) 00:18:22.14 ID:T9bMKV1h0
一方戦が終わって後日談なら、もうすぐ終わりなのか……
>>1は次も西尾と禁書のクロス書くのかな?
336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/27(金) 00:19:47.28 ID:T9bMKV1h0
あげちまったorz
申し訳ない
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/27(金) 13:56:42.11 ID:uVHMxVtAO
絶対能力者編の後日談じゃあないのか
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/27(金) 14:34:55.03 ID:v6wNjC4DO
現段階で出ている矛盾……
これは伏線なのか…!?
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/05/27(金) 15:26:42.99 ID:xMUJu8VAO
>>338

矛盾ってなんかあったか?
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/27(金) 16:23:02.47 ID:v6wNjC4DO
>>339
一応

だけど言っていいかわからないからとりあえず続編を待つ
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/28(土) 01:41:20.45 ID:mKwsVMbao
>>340
この>>1の場合矛盾かと思った点が伏線だったりするから
それが賢明
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/28(土) 13:07:14.34 ID:nHa3rrEAO
戯言SSは面白いのが多いね
零崎キョンとか
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岐阜県) :2011/05/29(日) 19:10:23.71 ID:ca1XPRKu0
前作に比べてテンポ遅くてなんだかなぁって思ったりする

344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/29(日) 19:54:10.18 ID:WIqOENmu0
戯言は基本こんな感じ
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/29(日) 20:28:23.00 ID:CnAxGInAO
>>342
戯言キョンもオススメしよう
あれはPCだと読み辛くて忌避されるけど、携帯なら読みやすい
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/29(日) 21:31:34.97 ID:bcGmnXfAO
>>345
そんなのもあるのか
探してみるよ
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/05/31(火) 00:15:38.43 ID:EPmqjs3AO
実際は蒼ピさんの能力で、一方通行わ相手にどこまで戦えるのだろう?
気体の性質変化か濃度調節しか思いつかん
カマイタチは反射でアウツだろうし
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 00:19:42.71 ID:wGrAOSwzo
風ってベクトルなんだよね
風を操るってことは=ベクトル操ることにならないかな
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/05/31(火) 04:15:46.64 ID:HKOh1yNAO
原作だと風力使いは念動力の一種だったハズ
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/31(火) 08:40:22.77 ID:irraqOvAO
水使いとか風使いのほぼ上位互換が一方通行なんだろ
細かい操作はともかく
351 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/31(火) 22:40:48.50 ID:TqokYWku0
お久しぶりに投下。本文を修正中に停電⇒書き溜めてた青髪戦あぼんしましたので少量。

皆!古いPCは買い換えたほうがいいぜ!!
352 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/31(火) 22:41:16.29 ID:TqokYWku0

零崎蒼識。
それが彼の名前。

満面の笑みを浮かべ、青髪の半分を血で紅く染め、彼は殺人鬼へと成り変わる。
生り代わる。

「変身ってかァ?ゼロサキだかなンだか知らねェが、ちったァ楽しませてくれるンだろうな?」

一方通行の口調は変わらない。違う、少しばかり嬉しそうだ。
この気が狂ってしまいそうな、ぼくが更に狂ってしまいそうな殺気を向けられてなお、顔面を大きく歪ませたまま、嬉しそうに、愉快そうに。
その根源にあるのは何だろうか。

自らが持つ能力への絶対的な自信?
未知なる敵との邂逅?
戦闘狂の愉悦?

理解できない。理解したくも無い。

グチャグチャで、ドロドロで、まるで絡みつくようにぼくを捕らえる殺気。殺す意思。
こんな物に当てられて、嬉々とした表情を浮かべる人間の思考など。

「いいやん、いいやん、面白いやん。誰かに頼まれて殺すってのは、ちょーっと違うんやな。うん、一つ勉強したわ」

もう彼はクラスメイトではない。
もう彼は暗部の構成員ではない。
もう彼はおどけた道化ではない。

……もう彼は、哀川潤の弟子ではない。

一体どうすれば、どんな見方をすれば、彼を味方と思えるのだろう。

「そんじゃ、ま」

蒼識くんは一、二回その場で跳躍し――
353 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/31(火) 22:41:50.22 ID:TqokYWku0

「さよならや」

一気に加速した。
彼が通過した直後に突風が通り過ぎる。恐らくは風を利用して急加速したのだろう。
一方通行との距離は、文字通りあっという間に詰まっていた。
そして蒼識くんは思い切り右手を振りかぶり、一方通行の顔面へと下ろした。

「あァ?」

やはり、一方通行は避けなかった。コンテナが振ってきた時と同じようにノーガードで迎え、結果、その拳は彼の顔面を捉えた。
だが、何も起きない。
一方通行が吹っ飛ぶでも、蒼識くんが拳を痛めた訳でもない。

停止、だ。

「やっぱり効かんか、残念賞」と蒼識くんはバックステップで一方通行から二メートルほど離れる。
どうも、この事態は想定の範囲内だったようで、笑顔が崩れることは無い。

「おかしィな、普通だったらオマエの右手はおしゃかだぜ?」

対する一方通行も笑みを浮かべてはいるが、明らかに不振がっていた。
蒼識くんが、無事だということに。

ベクトル操作という能力を持つ彼が行っている反射。それはつまり攻撃のベクトルをそのまま反対方向へ向けるという物だろう。
右から来た力は、そのまま左へと返される。つまり蒼識くんの殴りかかった力は、そのまま返って来るという理屈。

だが、当の本人は何食わぬ顔で立っている。

「ちょっと前にとある女の子と戦ってな、その子が面白い能力やってん。だから真似て応用してみたんやけど、意外と上手くいくもんやな」

恐らくは絹旗ちゃんの事だろう。
354 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/31(火) 22:42:25.45 ID:TqokYWku0

「身体を覆うように薄い窒素を展開する……当然これだけじゃ君の反射には耐え切れん。だから何重にも違う気体を纏ったんよ、それぞれ違う向きに気流を持たせてな」

理論として可能なのかはともかく、現実として反射の被害はなかったから成功したのだろう。
つまり、今の蒼識くんは頑丈な装甲を身に着けているといったところか。

「ご苦労なこった。で?テメエの攻撃が俺に届かなきゃ意味がねェように思うンですけどォ?」

その通りだ。幾ら最強の防具を装備していたところで、武器が無ければ話にならない。

「まぁ、こんなもんは余興や。さて、君の反射はどの位まで細かく判別してるんか分からんけど、人体が生命活動を行うのに必要なモンまで反射してはないやろ?」

ピクリ、と一方通行が眉を動かす。

「何から何まで反射してもうたら、直ぐに死んでまうで。特に、空気に関してはな」

「ワリィがカマイタチや風の塊を俺にぶつけても意味はねェぞ。別に皮膚呼吸してるわけじゃねェンだよ、空気だって漏れなく反射対象だ」

実際に爆風、カマイタチなどは反射されてしまっている。
そして酸素濃度を増加させるなどの攻撃も防がれている。

「そやね。皮膚を塞がれて死ぬ……なんてのは最早、都市伝説や」

悠長に、言葉を溜めて話す蒼識くん。
まるで、何かを待っているように。

「本当は好みやないんよ。やっぱり派手に、クールに、格好良く決めたいものやけどね」

「何が言いてェ……」

いまいち意図を掴むことができない話し方に、一方通行は少し苛立っているようで、先ほどまでの笑みは浮かべているものの、眉間には皺を寄せている。

「あは。よぉく考えー、ボクが何を言いたいか、そして……」
355 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/31(火) 23:00:45.48 ID:TqokYWku0

蒼識くんが言い切る前に、一方通行の頭がゆらりと揺れる。
次に身体全体が揺れ、ガクリと膝を折れた。

ぼくは蒼識くんが何をしたのか分からない。
どうやって反射の壁を突破して一方通行にダメージを与えたのか、それはどんな攻撃なのか。

そもそも攻撃方法があったのなら何故、それを初めからやらなかったのだろうか。
出会い頭に仕掛けておけば、《成りたくなかった零崎》に成らずとも勝利を手に入れれたのでは。

「……あ」

そこでぼくは唐突に一つの仮説を思いつく。頭に浮かんだのは能力開発についての項目。
能力者は演算と共に《自分だけの現実》を構築し能力を発揮する。
パソコンに例えると演算能力がハードなら、《自分だけの現実》はソフトと言った具合で、どちらが欠けても強大な能力は生まない。
幾らソフトが素晴らしくても、それを処理できるスペックが無ければ作動しないし、逆はスペックを持て余す。

つまりぼくが思い至った仮説とは、蒼識くんはレベル5だというのにスペックを持て余していたのではないのか、というもの。

《自分だけの現実》は言い換えれば思い込みだ。どれだけ自分の中で非常識を常識と思えるか。

この場合、蒼識くんはソフトの更新を行った。零崎に成ることで強制的に《自分だけの現実》が書き換えられた。
能力開発の際に投薬で人格を弄られたと一方通行は言っていたが、それは《殺人鬼》としての蒼識くんを制御する為にしたのではない。

『殺人行為が当たり前』だという余りにも凶暴で、凶悪な《自分だけの現実》を押さえ込むためのリミッターとして、投薬を行ったんじゃないだろうか。

だから、まだ『青髪くん』だった彼にはこの操作は出来なかった。しなかったのではなく、不可能だった。
リミッターを取り払われた今、恐らく彼の《自分だけの現実》は大きく変化したのだろう。

人を殺すという、最も危険な方向へ。

もう完全に一方通行が浮かべていた醜悪な笑みは消えていた。
出会ってから余裕を保っていた一方通行から初めて苛立ちが、困惑が感じ取れる。

そして、蒼識くんは対照的に口を大きく三日月の様に歪め、嗤う。
356 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/31(火) 23:01:22.54 ID:TqokYWku0






「――どうやって、君を殺すのかを」





357 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/05/31(火) 23:06:21.81 ID:TqokYWku0
今回は終了。
青髪さんは一体、何をしたのでしょうかァ?
※超俺理論満載です。

因みに蒼識はソウシキと読む。葬式とも言える。
双識兄ちゃんとは良き同士(変体的な意味で)ただしスパッツの有無で喧嘩する。

>>330
早くスレを建てる準備に戻るんだ!



ではまた。
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/31(火) 23:19:30.69 ID:rkElpK2U0
乙、
戯言のキャラで一方さんに勝てそうなのって、誰だろう?
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) :2011/05/31(火) 23:26:57.82 ID:EPmqjs3AO

零崎化で自分だけの現実を強化とか熱いぜ
ていうか皮膚呼吸って必要なんじゃないの?金粉まぶしたら息苦しいとか聞くけど


>>358
潤さんしか居なくね?
呪い名ならいけるかもだけど
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/05/31(火) 23:30:17.94 ID:T4Y81CAw0
金粉まぶして苦しいのは汗で熱が逃げないから
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/05/31(火) 23:41:53.22 ID:PAMW2RsI0
潤さんと真心なら木原神拳も余裕でマスターできるだろうな
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 23:56:26.52 ID:CEbmGqino
潤さんなら反射されるより早くぶち抜くとかいう脳筋理論で殴れそう
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/06/01(水) 00:37:27.33 ID:wTHhthAZo
右から左へ受け流す反射
364 :!ninja [sage]:2011/06/02(木) 07:52:28.46 ID:3Afzb9nmo
バキ理論で行くと酸素の毒か?
365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/06/02(木) 23:06:47.43 ID:oeDgNIUAO
酸素の毒はジョジョだろう
366 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/06/02(木) 23:13:05.43 ID:sp25BpKE0
12時ごろ投下します
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/02(木) 23:24:36.00 ID:x1dTDsTDO
オゾン層に手を加えて『悪魔の虹』
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/02(木) 23:27:36.06 ID:cB7WmHhL0
>>362 光を反射できる時点で無理だろww
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/06/02(木) 23:39:24.21 ID:Uj/tmM2AO
真心とかもいけるんじゃないか?
370 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/06/03(金) 00:13:09.82 ID:tSPPA/1D0

呼吸と言えば誰もが耳にした事があり、現在進行形で行っている生命活動だ。
空気中の酸素を体内に取り入れ、二酸化炭素を放出する。こんなことは小学生だって知っている。
呼吸をしなければ人間は死んでしまうし、それ以前に酸欠状態に陥いり眩暈、吐気、頭痛などに苛まれる。

今の一方通行のように。

「テ、メェ……」

当然ここは富士山の山頂ではないし、一方通行が激しく呼吸が乱れる程の運動をしていた訳ではない。
だが見るからに彼の症状は酸欠状態のそれだった。

「何をしやがったァ……」

息も絶え絶えに自らを襲う異変を引き起こした張本人である蒼識くんに尋ねる。

「簡単なことやでー、外呼吸から仕掛けて失敗してもうたんなら内呼吸を乱せばいいだけの話やん」

口から空気を吸い、肺に送るのが外呼吸。血液が酸素を各細胞に送り、代わりに二酸化炭素を吐き出すのが内呼吸。
蒼識くんは一方通行の各細胞に送られる筈の酸素を減らしたのか、それとも逆に排出される筈の二酸化炭素分子を留めたのか。
とにかく分子レベルにまで干渉して一方通行を追い詰めている。

「呼吸活動を行っている時点でこの攻撃からは逃げられん。君の場合は空気中に有毒な気体を混ぜても解析してまうやろうし、酸素濃度を
 上げたところでさっきみたいに対処されてまったらお終いや。だけど、身体に取り込んでまったモンを弄繰り回された場合は、どうしよ
 うもないんちゃうん?」

外部からの攻撃が全て反射されてしまうというのなら、内部から攻撃してしまえばいい。
理屈ではその通りなんだろうが、一体それはどれほど細かい作業なんだ。
371 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/06/03(金) 00:15:34.78 ID:tSPPA/1D0

「……風使いがそんなこと」

「できるんよ」

疑問の声を上げたミサカちゃんに即答する蒼識くん。

「いや、できるようになった、ちゅうのが正しいな。幸い血の流れだとか死に向かうイメージとかには強いからね。ま、細かい演算が必要
 やから一瞬で窒息死、って具合にはいかんけどね」

説明しながら一方通行へ歩み寄る蒼識くん。そして膝を地面に付いた一方通行のわき腹を――

蹴った。

「っが!」

反射膜と気体の装甲がぶつかりお互い停止したままだった先ほどとは違い、今度は一方通行へダメージが加わった。
華奢な一方通行の身体が宙に舞い、コンテナに背中から叩き付けられる。

「おーおー、やっぱり軽いなぁ。それに酸欠状態じゃ上手く演算できんくて反射膜が無くなっとるみたいやね」

両手をポケットに入れて一歩づつ、ゆっくりと一方通行へ近づく蒼識くんに一方通行は反応を見せない。
それとも、反応できないのか。

「一気に窒息死させれんくて結果オーライやわ。やっぱりこんな殺し方はボクの趣味やない。
 やっぱり派手に尚且つクールに、かつ大胆に――零崎蒼識は笑わず殺す」

笑みを消し、殺意を放ったまま、言う。

「これが君の葬式や」

風が蒼識くんを取り囲むように集う。
風の塊を飛ばすのか、カマイタチを起こすのか、それは彼の指揮で決まる。

372 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/06/03(金) 00:17:05.78 ID:tSPPA/1D0






そして風は放たれた。





373 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/06/03(金) 00:18:57.29 ID:tSPPA/1D0





静寂。
  無音。





374 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/06/03(金) 00:27:06.06 ID:tSPPA/1D0
零崎蒼識は動かない。
一方通行も動かない。

音も無い。
風も無い。

ぼくが見たのは真っ赤な血。

彼から流れ、四肢を伝い、地面に血溜りを形成する。

「      」

彼が、何かを呟いた、のだろう。
音の無い空間だというのに、その声はぼくに届くことは無い。

ゆっくりと彼は振り向き、ぼくを見る。

「   」

また何かを言おうと口を動かすが、やはり聞こえない。


代わりに、別の声が聞こえた。

嬉しそうな、楽しそうな笑い声と共に。
375 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/06/03(金) 00:27:53.06 ID:tSPPA/1D0






「良い夢、見れたかァ?」





376 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/06/03(金) 00:28:42.64 ID:tSPPA/1D0
今回はこれで終わりです。
ではまた。
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/03(金) 00:31:20.36 ID:zeuHsOADO
やっぱりやられたのは青ピか
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/06/03(金) 00:33:13.63 ID:cZ2ITvJAO

さすがにこのままイケるとは思わなかったが…
解析されたのか?
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/03(金) 00:34:05.42 ID:lzsyc5rv0
やっぱりこうなったかぁ…

380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/06/03(金) 00:34:16.83 ID:qrhpuxVAO
追い詰めて攻撃方法を自供するのは禁書では死亡フラグです。
蒼ピェ……分子レベルの干渉ってヤバいだろ

381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/03(金) 00:38:26.36 ID:NOU/CAf20
蒼識→葬式→総指揮か
なんにせよ相手は全盛期一方通行だからなぁ、零崎化で能力底上げしても敵わなかったか
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/06/03(金) 14:12:50.44 ID:tuL7hdqjo
考えてみれば、全盛期の反射は発動に意識する必要すらなかったもんな。
じゃなきゃ睡眠中に機能しなくなるし。
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/03(金) 19:22:59.43 ID:08CXvMR2o
幻術使いだとこれが負けor死亡フラグになるんだが…
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) :2011/06/08(水) 06:42:01.56 ID:Gd65BX6AO
まだー?
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/06/08(水) 11:38:31.24 ID:Jc+RyOAAO
気になるぜ…
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/06/11(土) 06:20:05.89 ID:ivJ1nYnAO
まだかな
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/11(土) 12:09:13.83 ID:iSlYUNbs0
どれだけ焦らせばすむんだ>>1は…!
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/06/11(土) 12:38:20.61 ID:CVqStOaAO
>>1が来るまで恥ずかしい告白大会しようぜ
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/12(日) 00:23:42.80 ID:H8sJgvVbo
1番、俺。
俺、実は何も考えて無いんだよ。
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/06/12(日) 00:29:01.53 ID:uVPiubV9o
>>389
それは知ってる
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/06/12(日) 00:54:52.66 ID:UKXPh/wAO
>>389
意図的に思考を停止できるのはスゴいって
否定姫さんが言ってた
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/06/14(火) 14:10:05.57 ID:0vrjNvA30
>>389
あたしも嫌というほど知っている
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/14(火) 21:14:29.83 ID:JCQDN4nG0
>>2
2番、私
実は私エッチな事しか考えてないのだ。
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) :2011/06/14(火) 21:17:34.90 ID:Zc5GTCtAO
>>393
おい、神原。それは周知の事実な羞恥だ。
それに安価間違えてるぞ
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/06/14(火) 21:19:14.38 ID:Zc5GTCtAO
ごめんマジあげてごめん
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/06/14(火) 21:23:37.00 ID:BgFFiu3AO
>>388>>394
大人しく待ってられんのか
これだから「東海」と「AU」は
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/14(火) 22:26:31.20 ID:cINYFItDO
>>396
あ、迷惑Deathぅー 自演されても
構って臭がヒドイ!! ゆとりかっての
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/14(火) 22:31:58.87 ID:uefEZN9Fo
>>1がやっと来たかと思ったじゃねぇか
上げんじゃねーよ
てか焦らさないで早く来てください
399 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga sage]:2011/06/15(水) 23:19:14.45 ID:/5ksELAL0
三番、俺。
実は書き溜めがもう無いんだよ。
それに、今日も投下できない。

いや、お待たせして申し訳ない。
リアルが忙しいのと、佐天さんで本編再構成を妄想してたらこんなに日が空いちゃったでござる。

恐らく、来週の月曜までには投下できると思いますのでー。
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/06/15(水) 23:21:13.97 ID:Po5BU66AO
オッケー
そして再構成kwwsk
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/06/15(水) 23:22:04.45 ID:/Hl5Ifsio
がんばれ
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/06/16(木) 00:51:48.16 ID:9kvx8fBAO
待ってるぜ
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/16(木) 01:51:38.40 ID:OaTB0ndN0
奇遇な事に俺もバット降りかぶりながらペンデックスに特攻かける佐天さんを思い浮かべながら小ネタスレに妄想垂れ流してたわ。
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/06/16(木) 06:23:01.66 ID:EnRgS3tAO
舞ってる

却本作りが使えて、戯言を吐きながら人を[ピーーー]佐天さんが主役の再構成ですねわかります
つか佐天さん再構成って今まであった?
405 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/06/18(土) 15:50:22.98 ID:TEsNDajW0
少量ですが、投下。
406 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/06/18(土) 15:50:59.40 ID:TEsNDajW0
結果からいえば倒れたのは蒼識くんで、立ち上がったのは一方通行だった。
蒼識くんの怪我から推測するに、どうやらカマイタチを発生させ一方通行に攻撃を仕掛けたのだが、反射されたのだろう。
右肩の辺りから左腰にかけて大きな裂傷が生まれ、そこから止めどなく血が流れては落ちていく。

「第六位如きが分子に干渉出来て、第一位の俺ができねェ訳が無いだろうが。解析はテメエに蹴られる前に終わってるンだ」

今回、蒼識くんが仕掛けたのは内呼吸で取り入れられる酸素、又は排出される二酸化炭素の操作だろう。
当然、分子レベルでの攻撃になり、それは気体を掌握できる蒼識くんだからこそ出来る離れ業だった。筈だ。

しかし、目の前の第一位は軽いノリでそれをやってのけた。

「ッハ!酸欠程度で俺の反射膜が消えるとでも思ってたのかァ?良い事を教えてやるよ、俺の反射はデフォルト設定なんだよ。寝ていても、気絶してても、酸欠でも展開され続ける。
 つまりィ、さっきテメェがドヤ顔で俺を蹴っ飛ばせたのは意図的に反射を切ってただけで、反射が出来なかった訳じゃねェ……って聞いてねェのかよ」

何も言わず倒れ伏した蒼識くんを見て、一方通行は楽しそうな笑顔を消して悪態をつく。

「はァ、ちょっとは楽しめたンだけどなァ……結局、第六位程度じゃこンなもンか」

両手をポケットに入れて、つまらなさそうにこちらへ歩み寄る一方通行に、ぼくは何も言えなかった。
彼はまるで蒼識くんを『道端に生えている草』の様に一瞥する事もなく脇を通り過ぎて、ぼくの前に立つ。

「で?もう終わりなのか?」

「だから、君はぼくに何を期待してるんだよ。ぼくは戦えないし、戦わない。ただ……質問はしたいな」

蒼識くんの容体が気になるが、この状態で救援を呼べるはずもない。

「質問だァ?」

「ああ」

一層、顔をしかめる一方通行。

「絶対能力者実験――高度な演算で出された実験内容だというのに、こんな予定外の戦闘行為を行って大丈夫なのかな?」

ぼくの言葉に一方通行は一度、首を傾げた後「うン?あァ実験ねェ」と呟き退屈だと言わんばかりの表情を浮かべ、口を開く。
407 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/06/18(土) 15:51:32.25 ID:TEsNDajW0

「知らねェ。演算結果に異常が出ても研究者共は実験を続けるだろうし、別に中止になろうと知ったこっちゃないンでな」

「一万人以上、殺しておいて中止になったら後は知らないってことか」

「なンだ、なンだよ、なンですかァ?オマエってアレか、非人道的な実験なんて許せませンって人間かァ?ま、確かに普通の人間を一万人以上殺してたら罪悪感ってのも少しは生まれるかもしれねェな」

一方通行は「でもな」と続けて「結局は造り物の人形だろ?いちいち実験用モルモットに同情してたらキリがねェっつゥの」とぼくの隣に立つミサカちゃんを指差す。

「オマエも別に、生きたい訳じゃァ、ねェんだろ」

「…………」

一方通行の言葉にミサカちゃんは答えない。

「さっき第六位にも言ったがな、俺の目的は無敵になる事だ。くっだらねェゴミ共が寄ってくるのは面倒なンだよ。ゴキブリみたいにワラワラと群がってきやがる。その為に絶対能力者になろォと思ってな、
 中止になったら別の方法を考えるだけだ。……そォだ、俺以外のレベル5を全員ぶち殺すってのも面白ェかもな」

レベル5を全員、殺す。
先ほどの蒼識くんのように。

「それで、テメエはどうやって実験を止めようとしてたンだ」

「実を言うと、もう手は打ったんだ。一〇〇三二号ちゃんだったかな?あの子はぼくが殺した」

「……へェ」

「これで君が実験を止めなければ、ぼくはこれから先もずっと妹達を殺していこう」

「ちょっと待って下さ――」

「当然、この子も」

ミサカちゃんが言いかけた言葉を遮り、ジェリコを取り出して照準を彼女の頭部へ合わせる。
妹達を殺し続けることで、実験を止めよう。一方通行が自ら実験を止めるまで殺し続けよう。
408 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/06/18(土) 15:52:03.29 ID:TEsNDajW0

「いいねェ、オマエ面白ェよ。でも良いのかァ?俺が止めなければ結局ソイツらは死ぬ事になるンだぜ」

「あくまでぼくの目的は実験を止めることだ。この子達の生き死には関係ないね」

一方通行は短く笑うとぼくとミサカちゃんの廻りを歩き始め「でもよォ」と呟いてミサカちゃんの肩に手を置いた。

「っぐぁ!」

同時にミサカちゃんの体が投げ出されるようにコンテナに向かって吹き飛ばされた。
いきなりの出来ごとに磁力を利用した衝撃吸収ができなかったのか、彼女はそのままコンテナに背中を強く打ちつけることになった。

「……っつ!」

慌ててぼくは身構えてジェリコを一方通行へと向ける。意味が無いと分かっていながらも戦闘の姿勢はとる。
対する一方通行は再び醜悪な笑みを浮かべながら、言った。

「俺から実験を中止にする気はねェよ!テメエがあの人形共を殺す前に、俺がぶっ殺せば実験は恙無く進むンだからなァ!!」

「実験に、固執する理由はないんじゃないのか」

「中止する理由だって、ねェよ」

ドン、という爆発音と共に一方通行の足元が大きく捲れ上がり、跳ね上がった石がぼくの体を捕え、激しい衝撃と痛みが襲ってくる。
思わず膝を地面につき、体勢を崩してしまった。

「あはぎゃは!それにィィイ!!テメエを今ここで殺しちまえば、邪魔するクソ野郎も居なくなるって訳だァァアア!!」

「ァアアアッ!!」

ぼくの低くくなった顔面に一方通行の蹴りが入る。能力を使用している為かぼくが今まで受けたどんな攻撃よりも重く、鋭いものだった。
スーパーボールのように高く舞い上がったぼくは受け身も取れずにそのまま地面に落下する。

「がっ!」
409 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/06/18(土) 15:52:31.52 ID:TEsNDajW0


息が、肺の中の酸素が、全て吐き出される。
起き上がろうと思っても体が動かない。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い。

「オマエは頑張ったよ、それなりの能力者を集めて、それなりに策を考えて……でもなァ、学園都市の頂点を相手にするには役者不足だったみてェだな」

視界がぶれる。
思考がぶれる。

役者不足とは、まさにその通りだ。

観客が、舞台に上がっちゃ、こうなる、か。

そう言ったつもりだが、言葉が出てこなかった。代わりにヒューヒューと擦れた呼吸音だけが耳に入る。

「目を閉じないのは、立派だなァ最弱」

「……ぁ……え……」

仰向けのままぼんやりと滲む視界に真っ白な死神が映る。
月のように白く、存在感を滲ませる一方通行。

「でもな、いい加減楽になれ」

差し出されたのは右手。
振り下ろされるのは死神の鎌。

なす術など、無い。
抗う力など、無い。

ぼくはこのまま死を待つだけ。
場違いな傍観者は舞台から排除されるのが当たり前。

こんな時、走馬灯とかいうものが脳裏に走ると訊いていたが、残念ながら何一つ思い返す事が無かった。

当然か。
こんなぼくに。
思い返す思い出など。

あるわけが。

――ないだろう。

いいさ。諦めよう。そして受け入れよう。
410 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/06/18(土) 15:52:57.22 ID:TEsNDajW0

「…………」

二人に流れる沈黙を破るコツリ、という小さな音がした。
それは小さな石。どこからか飛んできて一方通行の体に当たり、ぼくの胸へ落ちてくる。

「あ?」

曇った表情を浮かべるのは一方通行。
その顔でぼくは何が起こったのかを理解した。

『小石が一方通行の体に当たり、反射されずに落下してきた』

そんな事実。

「レベル5を皆殺しにするなんて、大言壮語じゃねぇか。第一位」

聞こえてくるのは、ぼくでも一方通行でも蒼識くんでもミサカちゃんでもない声。
辛うじて声のする方角へ首を回すと、くすんだ金髪の少年が不敵な笑みを浮かべながら立っていた。

「ったくよぉ……『助けて』ぐらい言えないのかよ戯言遣い。ま、第六位とお前がそれなりに時間を稼いでくれたおかげで、仕込みはバッチリだ」

「なンだァ、オマエ」

一方通行はぼくから視線を外し、少年へと目を向けている。

「どうも、第一位。俺はお前が殺すといったレベル5の第二位――垣根帝督だ。別に覚えなくてもいいぜ?」

帝督くんは背中に発光する白い翼――異形の羽を展開し笑みを消す。
411 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/06/18(土) 15:53:36.99 ID:TEsNDajW0






「これから、お前は死ぬんだから」






412 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/06/18(土) 15:54:26.45 ID:TEsNDajW0
以上、終了。
待たせたのに少ないでござる。

夜に来れたらまた来ます。

ではまた。
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/06/18(土) 16:03:16.50 ID:DOBM5+Vt0
待ってる
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/06/18(土) 16:04:14.20 ID:+OJkWgVAO
いーちゃんなにやってんの
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/18(土) 16:24:10.82 ID:X4zbid1n0
同じような引きが多くなってきて少しくどい・・・いやくっそ面白いんですけどね。
乙乙です
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/06/18(土) 17:40:17.66 ID:NjBN+YjAO
いーちゃんに違和感があるけど伏線かな
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/20(月) 18:31:11.41 ID:9QrjGE0I0
乙です。
これからどうなるのかねwktk
418 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/06/22(水) 21:58:54.92 ID:F+AV31SL0
書きながら投下します。

>>415
ですよねー。自分で書いてて思いました。精進します。
419 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/06/22(水) 21:59:29.52 ID:F+AV31SL0

「あァン?オマエ、第二位だったのか」

「始めまして。ご挨拶代わりに握手でもするか?」

「今、俺を殺すって言った奴と握手なンざするかよ。それより……」

そんな会話を帝督くんと交わす一方通行は先ほど身体に当たった小石を拾い上げると軽く帝督くんへ投げ返す。

「一体、どんなマホウを使ったンですかァ?」

小石。
なんの変哲もない、そこらに幾らでも転がっている小石だ。

「おいおい。魔法だなんてずいぶんとメルヘンな解釈じゃねぇか」と帝督くんは飛んできた小石を翼で粉砕する。

「小石さ。ただの、とは言えないがな」

小さく声を漏らしながら笑う帝督くんに、明らかに不服そうな一方通行。
仕方がないだろう。気体ですら、分子運動ですら司る一方通行に『何の変哲もない小石』が当たったんだから。
それこそ、魔法の様に。

「…………」

「ま、ご察しのとおりお前じゃ理解できない『物質』だよ。なに、性質以外は何の変わりのない小石だ」

言いながら帝督くんは、上着のポケットから何かを取り出し上手投げでそれを一方通行へ軽く投げつける。
飛来する物体が小石だとぼくが理解する頃には、全て一方通行の身体に当たっていた。

「テメエ……」

「それが何か理解できたか?できねえよな。でもこれだけは解っただろ?お前は俺に勝てない」
420 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/06/22(水) 22:02:12.29 ID:F+AV31SL0

その一言が会戦の合図。
始めに仕掛けたのは一方通行で背中に小さな竜巻のような塊を展開し、空を飛び帝督くんへ襲い掛かる。
帝督くんも翼を大きく広げ高く飛び上がった。

「テメエが何しようと、俺には通用しねェンだよォォ!」

「言ってろ、三下が」

空中で一方通行の右拳が帝督くんへ振り下ろされる。
だが、左翼によって阻まれ、逆に残った右翼の一振りで身体全体を吹き飛ばされてコンテナへと突っ込んでいった。
無傷で済むとは到底思えない勢いでコンテナを破壊しながら地面に叩きつけられた一方通行だったが、直ぐに破片の山から顔を覗かせると歪な笑みを浮かべぼくへと顔を向けた。

「ぎゃは!!おもしれェ隠し玉を用意してくれてるじゃねェか!!」

「ぼくとしては……隠すつもりはなかったけどね」

なんとか呼吸が回復したので、声を出すことができた。でも身体を起こすことができない。
体中が軋む中、聞こえてくるのは帝督くんの声。

「寝てろよ、戯言遣い。お前の役目はもう終わったんだ。この調子じゃ幻想殺しも必要ねぇ」

「それだと、ありがたいね」

だが、学園都市の頂上決戦には興味がある。
最前列どころか、舞台の上で行く末を見守らさせてもらおう。
421 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/06/22(水) 22:02:44.53 ID:F+AV31SL0

「勝った気になってンじゃァ……ねェぞ三下ァ!!」

怒号と共に一歩言う通行が胸元にあるコンテナへ左拳を振り下ろす。彼の能力であればコンテナは空を舞い、帝督くんへ襲い掛かるはずだが。

「!?」

何も。
何も起こらなかった。

「無駄。さっき言ったじゃねぇか、第六位が時間稼ぎしてくれたお陰で仕込みは終わったんだよ」

「チィ……」

仕込とは、つまりこの場にあるコンテナを。いや、ひょっとしたら全ての物質に先ほどの小石のような『細工』を施したのか。

「第六位のように『無害な性質を持つ物質』を利用した攻撃じゃ、解析されてお終いだ」

ゆっくりと、一方通行の前に舞い降りる帝督くんは相変わらず不適な笑みを浮かべたまま。

「だったら『無害な性質を持つ有害な物質』で攻撃すればいい」

「そんなことが」とぼくが思わず言ってしまう。
帝督くんが言う理屈は解る。だけれど、それが可能かと言われれば常識的に不可能だと答えてしまう。

「できるんだよ、戯言遣い。言ったろ?俺の能力に常識は通用しねぇ」

優しく、言う。

「俺の『未元物質』なら、それが可能だ。もうここはお前の知る空間じゃねぇんだよ」
422 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/06/22(水) 22:03:10.63 ID:F+AV31SL0
ごめんなさい、ちょっと外出。
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/06/22(水) 22:07:40.58 ID:xpwTKlZXo
あーネタバレしちゃったー
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/22(水) 22:13:52.00 ID:T82RRXEDO
第二位はどんなに押してても負けフラグしか見えないのは第二位だからかしら
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/06/22(水) 22:59:51.88 ID:dDHiOWGAO
不覚にも一歩言う通行で笑ってしまった
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/06/22(水) 23:01:58.87 ID:1ln6ARaAO
やっと追いついた

427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/06/23(木) 00:10:31.60 ID:itX0bgeAO
未だに誤字脱字は健全か
安心した
428 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/06/23(木) 01:06:09.25 ID:nF5laBc60

「面白ェぞ!第二位さンよォ!!」

コンテナの山から咆哮を上げ、飛び上がる一方通行が取った行動は大気を利用した攻撃。
風のベクトルを利用して、あたかも風使いの能力者が攻撃を仕掛けているような突風を生み出して、帝督くんを襲う。
だが帝督くんは翼を繭の様に変形させ自らを覆い、それを防ぐ。一方通行の反射もそうだったが、彼もまた鉄壁の防御を持っている。

「工夫もなしに、ただの風で俺が殺せるとでも思ってるのかよ」と攻撃が止んだのを見計らって、再び翼を元に戻す。

確かに、この戦いに帝督くんの負けは無いように見える。
一方通行の能力はあくまで『ベクトル操作』なのだから。

大気のベクトルを操作し、突風を生む。
コンテナのベクトルを操作し、宙へ浮かばせる。
地面に転がる小石のベクトルを操作し、弾丸と変える。
分子運動さえも操り、掌握する。
更に絶対的な防御力を誇る、反射。

ぼくが見てきただけで一方通行の能力は『何かしらの物体のベクトル』を操作しなければ、攻撃には転じれない。
つまり、攻撃自体は高位能力者であればある程度、防ぐことが出来るのだろう。

ただ。
攻撃を防いだところで、反射の壁は破れない。

蒼識くんの風のように。

恐らく沈利ちゃんの原子崩しも。
きっと美琴ちゃんの電撃も。

ことごとく反射されてしまい、一方通行に傷一つ負わせることが出来ないだろう。

それは『この世にある性質』だから。
学園都市最強の能力者である一方通行は『知っているモノ』だから。
反射の対象になってしまう。

だから、帝督くんの能力『未元物質(ダークマター)』は唯一、一方通行に対抗できる能力。
一方通行の攻撃に必要な『物質』の性質を変え、反射を突破できる『性質』の攻撃が出来る。
429 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/06/23(木) 01:06:49.21 ID:nF5laBc60

だからこそ、一方通行の攻撃を潰した時点で『負けは無い』ように見えた。

「未元物質はこの世に存在しない素粒子を生み出す――つまり、だ」

帝督くんが未元物質で作り出したであろう翼を大きく開く。丁度、月を背にする形で。

「なンだァ?格好良くキメ顔でキメポーズか……よ……?」

帝督くんを見上げる形で立つ一方通行の言葉が、途切れる。
酸欠状態とは少し違う、状態。

……あ、れ。

ここで、ぼくも異変に気がつく。聴覚はクリアだ。視覚も大丈夫。

だけれど、上手く、言葉が、出ない。

ぼくの/思考が/なぜか/ぶれる。

呼吸は

乱れ
  て、
いない
 け
れど

430 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/06/23(木) 01:07:18.63 ID:nF5laBc60

「なあ、視認できない物質ってどれくらいあるか分かるか?」

声だけが、耳に響く。

「赤外線、紫外線――まあ、それ以外にも沢山あるけどな。それが全部『無害だが有害』な光線に変換されたら、どうやって防ぐんだろうなぁ」

かすれていく意識。
なるほど、つまりこの光自体が攻撃なのか。
だから、身体の内側から壊されていくような、そんな感覚。

「あー、戯言遣いまで効果範囲内だったか……ま、いいか」

耳鳴りが、する。
視界も、ぼやけ始めた。

「    死   ね   。  」

どちらの声なのか、分からない。
ただ、薄れていく意識の中、擦れていく視界の中、ぼくは空を飛ぶ人影を二つ、見たような気がした。
431 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/06/23(木) 01:07:44.86 ID:nF5laBc60







「――解析、終わりだ」







432 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/06/23(木) 01:14:25.66 ID:nF5laBc60

その声と同時に、意識が戻る。
覚醒した思考と、クリアになった視界で現状を把握するために空を見上げる。

見上げた先では、

一方通行が垣根帝督を殴っていた。

「な!?」

驚愕の表情を浮かべたのは、帝督くん。

「ベラベラと喋りすぎなンだよ、テメエは。いいか?その俺に劣るちっぽけな脳みそで理解できるか分かンねェが、よく訊けよ」

機器とした表情を浮かべるのは、一方通行。

「確かにワケの分かンねェ物質を反射したり操作することはできねェ。でもよ、理解しちまえば何の意味もねェだろうが」

一方通行が帝督くんの翼を左手で乱暴に掴み、空いた右手で顔面を殴りつける。

「テメエの敗因その一。余裕を見せてテメエの能力を喋ったこと」

殴る手は止まらない。

「その二。『解析してください』と言わンばかりに周りに置いた未元物質の量」

一方通行の暴力は止まらない。

「そして、その三」

一方通行は抵抗できない帝督くんの両翼を両手で掴み直し、そのまま地面へと叩き落とす。
そして、ゆっくりと地上へ降り立つと落下した帝督くんを見下ろしながら言い放つ。

「オマエが第二位で、俺が第一位だって事が一番の理由だ。クソッタレ」
433 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/06/23(木) 01:14:56.71 ID:nF5laBc60

序列の差。
第二位と第一位の壁。

それがこれほどまでに、圧倒的だとは。
常識外の人間に、常識外の能力は通用しないのか。

「ッハ、第二位ってのもこンな程度かよ。もう少し楽しませてくれると思ったけど、期待外れだわ。やっぱレベル5は皆殺しだなァ」

踵を返し、一方通行はぼくへ向かって歩き出す。
もう、一方通行を止める人間はこの場に居ない。当麻くんもいないし、絶体絶命とはこのことか。

「ン?」

しかし、その歩みは一方通行の背後で鳴った音によって止められる。
帝督くんが落下した場所からの物音。立ち込める粉塵の奥に見えるのは一つの人影。

粉塵が晴れて、徐々に姿が確認できる。

彼は、意識が無いのか虚ろな目をしている。あの発光する翼も生えてはいない。
ただ、彼はひたすらに一方通行を見つめていた。くすんだ金髪に砂が絡まりながらも、整った顔面から血を流しながらも、

標的から、目を外さない。

「―――、―――――。――」

そして、『何か』を口にした。

瞬間、彼の背から翼が、今までよりも大きな翼が生え横一線に薙ぎ払う。
一方通行はそれを『危険な攻撃』と判断したのか、この戦闘で初めて防御体制をとったが帝督くんの翼を止めることは出来ず、そのまま吹き飛ばされる。
帝督くんはその様を見ながら、何も思うでもなく、何を言うでもなく、ただ機械的にその方向へ歩を進める。

ぼくはその姿に、あの時のインデックスちゃんを思い出していた。
無感情に、無感動に、ただ目標を排除するためだけに動く。そんな人形のような、機械のような姿を。

彼は、ゆっくりと口を開く。

「jgo殺ssdve」
434 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/06/23(木) 01:17:42.08 ID:nF5laBc60
ていとくん覚醒で終了。
うん、ワンパターンなんだ。すまない。

どうしてすぐ
いーちゃんピンチ⇒お助けキャラ登場⇒一方さんピンチ⇒一方さん反撃⇒お助けキャラ覚醒
って流れになってしまうん?

いーちゃん一人称という名の三人称展開ですので、違和感があると思いますがご了承ください。


では、また。
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/06/23(木) 01:19:38.39 ID:bJ1zDLmJ0

帝督退場かと思ったけど、この展開は楽しみ
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/06/23(木) 01:44:45.73 ID:itX0bgeAO
2次創作ていとくんのお約束だね
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/06/23(木) 08:18:53.08 ID:qJaCQK0AO
ていとくん覚醒…
帝蔵庫だな!
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/23(木) 22:49:43.36 ID:DllC69Cs0
さすがていとくん。
乙です。
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/06/23(木) 23:18:38.21 ID:epucjj+AO
おお、来てたのか。乙
全盛期一方さんって黒翼だせるのかな?
出せないなら覚醒ていとくん有利か?
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/23(木) 23:40:30.96 ID:v/IquJN0o
とりあえずていとくんはここから逆転されて蹴散らされるまでがテンプレ
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/24(金) 00:14:41.94 ID:5cN1L4Q20
この>>1なら一方通行瞬殺あるで
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/06/24(金) 22:44:44.42 ID:OAmINgmAO
子荻ちゃん展開あるで
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/24(金) 23:41:19.49 ID:0IbfnMDho
一通さんがそげぶされた瞬間に上条さんごと殺される程度なら驚かない
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/06/25(土) 00:06:10.56 ID:VAMhYRowo
>>439
原作では、一方さんの覚醒に応じるようにていとくんも覚醒した。
そして二人は対の存在。
あとはわかるな?
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/06/25(土) 00:36:19.57 ID:p0vGAMCAO
なあに、上条さんなら戯言という幻想すらぶち殺してくれるさ
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/06/25(土) 16:52:20.98 ID:zMNUiO3J0
そういや上条さん今何やってんだろ・・・?
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/25(土) 21:05:02.85 ID:VgUv4X480
>>446
E-mailの所にsage入れ忘れてんぞ
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/07/01(金) 01:06:07.34 ID:TTJh3EVAO



449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/01(金) 22:37:25.81 ID:v+d9paDB0
>>448
なにがあったし
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/07/02(土) 02:33:54.40 ID:/KBPv3wAO
囮物語を読み終わったから来た。
久しぶりに戯言な西尾を読んだ気がするぜ

で、>>1まだー?
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/02(土) 20:46:15.92 ID:wE2bDDFDO
二つ名は萌えキャラ殺し
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/02(土) 23:03:13.94 ID:1JxLD/2J0
何だと・・・
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/05(火) 11:22:02.51 ID:u0yoCqdIO
>>450
前回、今回と戯言的な感じだよな
454 :!ninja [sage]:2011/07/05(火) 12:52:33.09 ID:W9boOqtno
撫子が・・・
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/07/06(水) 21:37:33.51 ID:IEvpTef6o
囮物語も読み終わったし
>>1まだー
456 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/08(金) 23:12:08.18 ID:MqMmq3Py0
超少量。超展開。投下します。
457 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/08(金) 23:12:44.29 ID:MqMmq3Py0

もう、そこから先の戦いを描写する自信と言葉がぼくには、無かった。
恐らくどんな表現をしたところで、彼らの戦いを断片的にでも伝えるのは不可能で、どんな言葉を用いたところで、目の前の惨状を現すのは無理だ。
常識が通用しない、どころではない。これは非常識すらも超越し、非現実でさえ破壊しきっている。
語り部であるぼくが役割を放棄するような形になって申し訳が無いが、ご了承頂きたい。

しかし。

それでも無理やり、有耶無耶に、滅茶苦茶に、安易に、投げやりに表そうとするのならば、この世のモノとは思えない惨状と言える。
肥大化した翼を振るう帝督くんは、言えば『世界の枠組みから外れた力を用いて攻撃し』それに対応する一方通行は『世界の枠組みから外れた力を持って応戦』している。
凡人であり、一般人であり、無能力者のぼくからしてみれば、どちらも理解しがたいが、なんとか表現するならそれが正しいのだろう。

ぼくは帝督くんが生み出す物質の名前など知らない。
ぼくは一方通行が操るベクトルの性質など解らない。

言ってしまえば互角だ。いや、僅かではあるが帝督くんが優勢なのかもしれない。
いくら一方通行が対応できるとはいえ、後出しになってしまうのだから。後手に、回ってしまうのだから。

先手必勝。後手必殺。

並みの人間――この場合、彼らと同列に位置する超能力者だとしても戦いに割ってはいることすら出来ないだろう。
今、こうしてぼくが生きていられるのが不思議なくらい、場は崩壊していた。

コンテナなどもう何処にも無い。
鉄柱などもう微塵も無い。
空気などもう死にきっている。
458 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/08(金) 23:13:14.43 ID:MqMmq3Py0

蒼識くんとミサカちゃんを何とか回収できたぼくは(恐らくは偶然だろう。あの状態の二人が周りを気にしているとは思えない)気を失っている二人を脇に寝かせ戦いを見守っている。
蒼識くんに至っては、意識が無いのか、既に死んでしまっているのか解らない。ピクリとも身体は動かない。

見守る、だなんて大層な発言をしてしまった。
ぼくはただ眺めているだけだ。二人の戦いを、目的などない破壊を。
傍観者らしく、観ているだけだ。

そこで、何を思うでもない。結局、ぼくは何も出来なかったと確認しただけだ。
《妹達》をどうにかしようとした策も。
舞台に上がってみた愚行も。
この状況を招いてしまった愚考も。
やっぱりどうしようもなく、ぼくが居たからだと、改めて解っただけだ。

「しかし」

空を舞う二人を見上げながら呟く。
無表情のまま攻撃を続ける帝督くん。どこか嬉しそうな笑みを浮かべる一方通行。

「こうなったら、どうしようもない」

いつものように。これまでしてきたように。
やっぱりこれからも、逃げていくのだろう。

よくやった、と言い聞かせるでもない。
予想通り、想像通りにいかなかっただけで、やっぱりそこには後悔も反省も無かった。

「ぼくが、誰かを助けるなんて」

思い上がりも甚だしい。
まして、根本ではぼく自身が救われようと思うこんな気持ちでは、迎えて当然の結果だろう。

一方通行が勝っても、帝督くんが勝っても、
待ち受けるのは、死。圧倒的な破壊の矛先はぼくに――いや、学園都市へと向けられるのだろう。
459 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/08(金) 23:13:55.89 ID:MqMmq3Py0

「ajvx壊gvjvav死ppterl」

帝督くんが擦り切れたテープのような声を発したと思えば、何も起きていないのに一方通行の身体が吹き飛んだ。
荒野と化した地面へ、背中から叩きつけられる。

「――ァ、ゥ」

一方通行が声にもならない曇った呻きを漏らす。彼からはもう余裕は感じられない。
恐らく反射も上手く作用しないのか、それとも作用しないように帝督くんが何か仕掛けたのか解らないが、とにかく一方通行の姿は傷ついていた。
ただ、それでも楽しげな笑みは消さないでひたすらに帝督くんを睨み続ける。

「……面白ェよ、第二位――いや、垣根帝督。自慢して良いぜ?第一位を此処まで痛めつけたのはオマエが最初だからよォ」

「…………」

当然の如く、反応は無い。

「なンだよ、ちったァ喜べよ。念願叶って俺と同じ『化物』になれたンだから」

化物。人とは違う存在。
異なる形。

「第一位と第二位の違いっつゥのは、そこに圧倒的で絶対的な壁があるからだ。単純な戦闘行為で測れるもンじゃねェが、テメエはその壁を越えた」

――つまり、俺と同じだ。

「よォやく、真の意味で同レベルができたか。嬉しいだとかそンな気持ちの悪ィ言葉は死んでも吐かねェが……ようこそ、化物」

そう良いながら、一方通行は目を細める。
邪悪な笑みでは、ない。

「言っておくが、俺を『殺せる』だなンて思うなよ?これァただの挨拶だからな」

「…………」
460 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/08(金) 23:14:26.25 ID:MqMmq3Py0

待っていた訳ではないと思うが、帝督くんは一方通行へ手を出すことは無くその言葉を聞き、彼が立ち上がるのを邪魔することなく立っていた。

――静寂。

「お、れは」

それを破ったのは、帝督くん。途切れ途切れではあるが、言葉を紡ぐ。
先ほどまでの声とも思えない音ではなく、しっかりとした言葉を。

「オマ、えを殺して、この街を、潰、す」

「楽しげな目標だなァ」

「第一、いも、ア、レいス、タも、殺す」

「おォ。やってみろよ、できンなら」

軽く返す一方通行だが、お互いに殺気は治まっていない。むしろ増している。
帝督くんには帝督くんの目的が、そして一方通行には一方通行の目的が、やはりあるのだろう。
そしてぼくなんかとは違い、それを成し遂げる力も、持っている。

「さよならだ、一方通行」

「テメエがな、垣根帝督」

さながら認め合った友人に言うように。競い合うライバルに言うように。
二人は小さく笑った。
それこそ週刊少年漫画に出てくる登場人物のように、爽やかな笑みに見えた。

だが、残念ながらこれはフィクションではなく、現実だ。
戦いが終わる頃にはどちらかが死に、どちらかが生きる。
死んだ人間が生き返るなど、都合のいい話があるわけではない。
461 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/08(金) 23:16:10.71 ID:MqMmq3Py0





――そして。

その言葉を交わし終えた瞬間、一筋の光が走り。

垣根帝督の首が落ちた。





462 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/08(金) 23:20:10.47 ID:MqMmq3Py0



とりあえずここまで。

囮物語読んで、どこかに次の巻への伏線が無いものかと物語シリーズ全部読み返してたら遅くなりました。
ついでに戯言も読み返してたらていとくんが死んでしまいました。なにをいt(ry
色々、迷走している感が否めないssですが、終わりも近いのでどうぞ最後までお付き合いください。
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/08(金) 23:23:22.90 ID:9bW6oxdeo
今なら間に合う!ていとクローンを作るんだ!
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/07/08(金) 23:27:13.84 ID:HXjyZz1AO
舞ってた
なんか良い雰囲気だなぁと思ってたら案の定ていてくん死亡か……
ちゃんと死んだって描写されるのは妹達編では初だよな
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/07/09(土) 01:25:36.80 ID:e1Mk7R+AO
ていとくん…
466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/09(土) 03:30:17.57 ID:2cuyNjgho
まだだ
まだ、変り身の術でないときまったわけじゃない
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/07/11(月) 15:48:16.18 ID:5GGZd6ago
昨日読み始めてようやく追いついた
ていとくん…他SSよりはマシな扱いだったけどやっぱり死ぬのか

ところで誰か前スレ>>205>>375の画像を持ってる人いないかい?
気になって仕方ないんだけど
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/11(月) 20:05:22.96 ID:wcQDb8dH0
まとめブログとかにあるよ
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/07/11(月) 20:09:48.89 ID:5GGZd6ago
ザレゴトマジカル まとめでググっても出ないんだけど…
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/11(月) 20:24:28.91 ID:wcQDb8dH0
ttp://himajin777.blog38.fc2.com/blog-entry-438.html
ttp://himajin777.blog38.fc2.com/blog-entry-459.html
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/07/11(月) 20:27:45.34 ID:5GGZd6ago
>>470
感謝してもしきれないぜ
サンクス
472 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/13(水) 00:20:15.68 ID:bjSZMa4O0

「あは」

胴体から離れ落ちる首。
鎖骨の辺りから蒸発したように窪んだ傷口から、数秒のタイムラグの後に噴水の如く鮮血が吹き上がる。
生死など確認するまでも無く、状況を把握するまでも無く、垣根帝督は死んだ。

殺された。

誰に?

一方通行ではない。横たわる二人でもない。
当然、ぼくでもない。

「死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ
 死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ
 死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ
 殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した
 殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した
 殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺したコロシタコロしたころしたころししし」

彼女が、あの時、倒れた筈の彼女が遠くから呪詛を吐き続ける。
壊れたように、空中へ何枚もの拡散支援半導体を投げながら。

「―――。――――、」

閃光。
先ほど帝督くんの首を飛ばしたものと同じ光線が、拡散支援半導体を通り無数に別れ飛び掛ってくる。
目標などなく、目的などなく、ただ目の前に立つぼく達を殲滅させるためだけに、放たれた。

「……」

しかし一方通行が詰まらなさそうに首を鳴らし、自ら光線の前に立って全てを反射した。
来た道をトレースしながら攻撃した本人へと返っていく光線は、彼女の目の前で歪曲しでたらめな方向へ飛んでいく。
自分の能力だ。それくらいは出来て当然だろう。
一方通行も別段関した様子も見せず、倒れ付す帝督くんだった身体と、その横に転がる頭を見下ろしている。
彼女はその態度に激昂するでもなく、一心不乱に、一心腐乱に攻撃を続けている。それがどれほど無駄なのか、なんて誰が見ても明らかなのに。
473 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/13(水) 00:20:42.99 ID:bjSZMa4O0

――いや、彼女は。

原子崩し、第四位、麦野沈利。

この場に居る誰よりも邪悪な笑みを浮かべている彼女は、もうそんな判断は出来ないのかも知れないが。

「なンだよ、これもオマエの差し金かァ?」

何度か見せた気だるい表情を浮かべながら面倒臭そうにぼくへ語りかける一方通行。だが、生憎ぼくは彼女が此処に来るなどとは知らなかったので首を横に振る。
思っても見なかった。なぜなら、倉庫で殺されたはずだと思っていたのだから。生きているなど、思ってもいなかった。
まして、この場に現れるなど。

「……面識はあるけれどね、麦野沈利ちゃん。君達と同じ超能力者だ」

「つまり、このババァは垣根よりも下って事か」

くだらねェと溜め息を吐いた一方通行はそのままの姿勢で沈利ちゃんへ向け急加速する。

「!?」

いきなり眼前に現れた一方通行に幾らか驚いた様子を見せる沈利ちゃんが取った行動。

――原子崩しを放つ事。

「ぁぁあぁあああぁあああああ!!」

それは愚行だった。
反射という性質が生きている以上、原子崩しだろうとなんだろうと問答無用で反射されてしまう。
結果として沈利ちゃんは自らが放った原子崩しによって右腕を肩の辺りから捥がれ、反動で回転しながら地面へと倒れ付す。

「……くだらねェ、くだらねェよなァ」

そんな沈利ちゃんを見下しながら、まるで飛べなくなった蛾を見るかのような目で見下しながら、一方通行は呟く。

「テメエみてェな三下以下のクソ虫が、楽しいイベントの邪魔をするんじゃねェよ。身の程を弁えろよ、クズ」

「っが!」
474 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/13(水) 00:21:10.74 ID:bjSZMa4O0

言いながら、倒れている沈利ちゃんの腹部を一方通行は容赦なく蹴る。
女性にとって、致命的な弱点の腹部を、遠慮なく、蹴る。
規則的に流れる深いな呻き声だけが、耳に響く。

「芋虫みてェにモゾモゾ動きやがって……ン?なンですかァその目は?誘ってるつもりなンですかァ?」

「ぁ……が……」

右腕を飛ばされて、そして腹部への攻撃を続けられ、破綻した思考回路の彼女も流石に気がついたのだろう。
殺される、と。
見たものを射抜くような目ではなく、不適な笑みを滲ませる表情でもなく、自信満々に仁王立ちする麦野沈利の姿はそこにはない。
見たものを射殺すような目で、不遜の表情を浮かべ、人を人とも考えない攻撃を繰り返す一方通行に恐怖している、ただの女だった。
目には涙を溜め、残った片腕で必死に地面を掻き、目の前の化物から逃げようと、必死になっている。

「ぜンっぜン、そそられねェな」

言って、一方通行の足はその右目へと向かって蹴りを繰り出した。

「がぁあぁああぁっぁあああああああ!!」

絶叫。
右目が潰れたのか、彼女は逃走することを止め、その場で顔面を押さえながらのた打ち回る。

「さァて、余興を台無しにした罰だ。右足、右耳をもいで、次は左半身を順番に壊して達磨みてェにまァるくしてやンよ」

「っやめっ、やああああ!やめ、て――」

沈利ちゃんの懇願も、当然届くはずも無い。
一方通行にとってはアリの手足をもぎ取ることより用意に言ったことを実行できる。
そこに慈悲など、哀れみなどあるはずがない。

ブツ、と一方通行が沈利ちゃんの太腿を掴み軽く持ち上げるだけで、皮膚が裂け鮮血が飛ぶ。
いっそ思い切り引き千切られたほうが楽なのではないだろうかと思わせるほどゆっくり、右足を持ち上げていく。

「いやぁぁぁああああああああああああああああああああああああ」
475 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/13(水) 00:21:37.35 ID:bjSZMa4O0

そして三分の一ほどが裂け、傷口から血、脂肪、そして骨が見えかけた時。

「――なにやってんだよ」

その光景を眺めるぼくの背後から聞きなれた、随分と久しく思う声が聴こえた。
ぼくは振り返らずに答える。

「ちょっとした舞台鑑賞――いや、これはそれの後始末を眺めているだけ、かな」

一方通行も何度か目の来訪者に、引きちぎる手を止める。
沈利ちゃんは気を失ってしまったのか、その場から動かない。

「止めなかったのか」

「止めようとはしたさ。実験も、蒼識くんも、帝督くんも、一方通行も、美琴ちゃんも、頑張って止めようとはした」

だけど、誰も止まらなかった。止められる筈もなかった。

「結局、ぼくが舞台に上がっちゃったせいで結末が変わっちゃったんだよ」

決められた物語を、決められた配役が、決められた演技をする。
そんな舞台に台本も持たない、それどころか役割さえ与えられていないぼくが舞台へと上がったせいで、この結末だ。
元春くんが言った通り、狂った物語だ。

「まだ終わっちゃいねぇだろうが」

「終わったさ。跡形も、微塵も残らずね。ぼくには出来すぎた台本で、過ぎた役回りだった」

言葉だけでは、戯言だけでは能力が支配するこの街で立ち回れない。
……違うか。ぼくはどこに居ても、上手く立ち回ることなんてできやしない。
476 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/13(水) 00:22:03.94 ID:bjSZMa4O0

「だったら、俺が終わらせない。最後まで足掻いて足掻いて足掻ききって、このままでは終わらせない。例えどんなことがあっても」

「それじゃ、ぼくは観客席から眺めさせてもらうよ。慣れない事をしていい加減疲れてるんだ」

「それならとっとと舞台から降りろよ傍観者。初めから諦めてる癖して都合のいい事ばかり言うんじゃねえ」

「違いない。それで、勝算は?」

「そんなもん、ねぇよ。俺は生まれてこの方計算ってのをしたことがないんだぜ?」

そりゃあ、そうだろう。だって君はこの間『生まれた』ばかりなのだから。

「ぼくは君がここまでする理由がわからないな。今回の件に関わっているのは今の君が知らない人間ばかりだろう?」

「だからって動かない理由にはならない」

「戯言だな」

「幻想だよ」

その言葉を最後に、彼は――上条当麻はゆっくりと歩を進める。
その先に居るのは学園都市最強の超能力者、一方通行。そんな彼に無能力者の当麻くんは静かに近づいていく。
最強対最弱。違うな、彼は強い。ぼくのような本当の最弱とは違う。

「いい加減、飽きてきたンだ。だからオマエで最後にしてくれよ?」

「ああ、俺で最後だよ。そんでお前を倒す最初の人間だ」

お互いがそんな言葉を交わし終え――
一方通行の能力が発動された。
477 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/13(水) 00:22:57.87 ID:bjSZMa4O0
今回は終わし。
むぎのんの扱いは正直すまんかった。

では、次は日曜に来ます。
478 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/07/13(水) 00:52:17.05 ID:YtHNepCAO

今週のクマーのセリフだね
てか麦のん痛い
479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/07/13(水) 01:07:56.14 ID:iqGNz3RAO
むぎのんのせいでマジで興醒め。そりゃ一方さんも切れるわ。
480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) :2011/07/13(水) 04:30:34.17 ID:i8AECDWAO
おお、来てた。乙です。

むぎのんェ……
そして上条さん登場かぁ、随分と久しぶりですね
481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/07/13(水) 08:18:40.68 ID:YmQvz80AO
なんだこのむぎのんは殺されても仕方ないわって空気は……
482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/07/14(木) 14:35:31.54 ID:8JER6Bp00
KYむぎのんペロペロしたいお
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/14(木) 20:38:23.70 ID:EoRvz0V0o
KYは害悪だよ
クチャラーと共に滅亡すべき
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/16(土) 12:30:43.14 ID:9pRwlswC0
はたして麦のんを出す意味はあったのか・・・
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/16(土) 14:03:43.23 ID:bAdcNukco
だが同作品のキャラに無双されるなら悪い気はしない
ともあれかませ役は必要さ
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage saga]:2011/07/16(土) 18:23:47.97 ID:irwj+PiAO
>>484
覚醒ていとくんは一方さんと互角以上だから、不意討ちで殺すために必要だったんだろ
だからむぎのんは倉庫で死んだとは明記されてなかったんじゃね?
487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/17(日) 21:36:47.36 ID:pF04WcQDO
ババァは止め刺される前に上条来たからへぶんなんとかの力で生き残るんだろな
もう小萌から何から男塾ばりに生き返らせたら?
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/07/18(月) 00:39:35.20 ID:tEHN2j6AO
人は死んだら生き返りません
489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/18(月) 01:11:36.96 ID:9hAp4kako
???「当然、私の出番となる」
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2011/07/22(金) 21:57:34.94 ID:ppsRH9Rxo
落ちないよな?
491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2011/07/23(土) 21:26:23.79 ID:jpgplUJho
492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/23(土) 21:41:13.44 ID:tKhnk80A0
落ちないし保守もいらねえ、後sageしろ
493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/07/23(土) 21:46:28.28 ID:jpgplUJho
すまん忘れてた
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/24(日) 00:19:08.45 ID:JcVcaKYmo
VIPのスレとタブ離接させてるから稀によくここがVIPであると勘違いして保守しちゃったり擦るのよ
495 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/24(日) 01:03:51.12 ID:0zR1KkKE0
お待たせしましたー。
とりあえず投下していきますねー。
496 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/24(日) 01:04:21.02 ID:0zR1KkKE0

一方的だった。
言うまでもなく一方的で、圧倒的で、そこに僅かな勝機すら見出せないほどに一方通行な戦いだった。

「っがぁあ!!」

……どうしようもない位、当麻くんは痛めつけられていた。

「どォした三下ァ!? 狩られるだけの豚で満足してンじゃねェぞ!!」

いくら異能の力を打ち消す右手を持つ当麻くんとはいえ、その効果は触れなければ発動しない。
美琴ちゃんの超電磁砲や、沈利ちゃんの原子崩し、蒼識くんの風、そして帝督くんの未元物質など攻撃そのものが超能力だった場合は無敵と言ってもいい。

だがしかし。

だがしかしこの場合は違う。

「っく!」

当麻くんは苦し紛れに拾った小石を一方通行へ投げつけるが「効かねェっつってンだろォ!」と言う怒号と共に反射され、自らの体へと被弾する。
そう、一方通行の攻撃は『異能』では無い。
現実にある物体のベクトルを操作した攻撃はどれだけ右手で触れようとも打ち消すことは出来ない。
いや、正確に言えば操作されたベクトルは消すことが出来る。しかし触れた瞬間に停止わけではなく、慣性で襲い掛かるのだから防ぎようが無い。
世界一の格闘家だろうが、拳銃の前では成す術が無いのと同じで、どれだけ異常な右手でも触れられなければ意味が無いのだ。

当然、書庫にも登録されていない当麻くんの幻想殺しの存在は一方通行も知らないだろうが(いや帝督くんは知っていたのでひょっとしたら知っているかもしれない)
持ち前の観察眼で『右手で何かしよう』とする意図を察し、遠距離からの攻撃に徹していた。

別に戦いを楽しんでいる様でもない。
先の蒼識くんや帝督くんの時の様に、どこか楽しげな笑みは浮かべていない。

本当に飽きたかのように、もう何も期待していないかのように、ただ当麻くんを蹂躙しつくす。
497 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/24(日) 01:04:50.21 ID:0zR1KkKE0

「つまンね」

と、一方通行は突然攻撃を止めた。

「つまンねェ。なンだよテメエ? 本当に無能力者かァ?」

体中に傷を負い、地面に膝をつく当麻くんを見下げながら一方通行は溜め息を吐く。

「……そう、だ……よ」

「わっかンねェな、無能力者のオマエがどうしてこの俺にそこまで怒ってンだよ」

「…………だよ」

「あン?」

一方通行の言葉に、当麻くんはゆっくりと立ち上がる。

「俺だって分からねえよ……人の命を何とも思わないようなお前の考えが……」

徐々に声が荒くなっていく。

「青髪だって、そこに倒れている二人だって――妹達だって必死こいて生きてるんだよ!! なんだってテメエみたいな野郎の食い物にされなきゃならねぇんだ!!
 最強!? 絶対能力!? くだらねえ幻想に振り回されてんじゃねえ!! 人を傷つけることしかできないお前はどうやったって最強にはなれねえよ!!」

一息で捲くし立てて、身体全体を震わせて、当麻くんは叫ぶ。

「なに言ってンだ?誰よりも強い、それが最強って意味だろォが」

人を傷つけるだけでは最強じゃない。と当麻くんは言う。
誰よりも強ければ最強だ。と一方通行は答える。
互いに違う意見。もちろんぼくには答えなど出せそうも無い。最弱のぼくには到底、たどり着けない場所だろうから。
498 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/24(日) 01:05:53.85 ID:0zR1KkKE0

じゃあ最強とは一体なんだろうか?ぜひともあの人に訊いてみたいものだが返事は決まっているだろう

「それに答えている内は――最強とは言えねえよ」

よりによって最強の意味をここで説くとは、なんとも皮肉だ。
歴史に名を残す偉人達の前で作品を批評する素人のようなもの。
まあ、存在自体が皮肉で出来ているようなこの人の前では、何を取ってみても皮肉に成ってしまうし、意味を持たないだろう。

「そうですよね、潤さん」

ぼくは振り返らずに、言う。
そして人類最強の請負人。真っ赤な哀川潤はゆっくりとぼくの横へと歩み寄り肩に手を回してきた。

「おいおい、いーたん。折角主役の口上なんだから、水を差さずに訊いておけよ。ま、演劇部の物語ってトコだけどなー、残念ながら劇団四季には程遠いぜ」

「あれはミュージカルじゃありませんでしたか?」とぼくは肩にかかった手を振り落とす。

「劇には違いないだろうが。揚げていない足を取るんじゃねえ」

「さいですか」

シリアス部分もどうしてだかコミカルになってしまった気がする。
うーん、この人に空気を読むことは期待してはいけないな。むしろわざと空気を読まない節もあるし。
ほら、当麻くんなんかこっち見て固まってるし。

「おい、なンだテメエ? また学園都市最強の俺に噛み付こうっていう命知らずかよ」

いい加減にしてくれ、と言わんばかりの表情を浮かべながら一方通行は言う。
しかし、そこは哀川潤。後ろに居るので表情こそは伺えないが恐らくはいつものシニカルな笑みを浮かべながら言ったのだろう。

「学園都市最強?残念だったな、あたしは人類最強だ」

「…………」

おお、若干引いている。
499 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/24(日) 01:06:34.42 ID:0zR1KkKE0

「……あれ? いーたん、あたし変なこと言ったか?」

「ええ、かなり」

「あ、そう。別に良いけどなー。今回あたしは観客だから、これ以上は手は出さねえし足も出さねえよ」

もう遅いと思うけど。

「おらぁああああああああああああああああ!!」

「っ!?」

気を取られている一方通行の隙を文字通り右拳で突こうと当麻くんが思い切り突進を仕掛ける。
ギリギリのところで避けるが、紙一重、一方通行の左頬を掠めた。

「なンだよ、無能力者じゃ……なかったンですかァァアァアアア!?」

一瞬だけ困惑の表情を浮かべた一方通行だったが、そんな方向を上げた後に当麻くんへ襲い掛かる。
両手を大きく広げて、空を舞いながら。

「選べよ。毒手か、それとも苦手か」

万物に掛かるベクトルを操作できる一方通行は、つまり血液の流れさえも意のままに操ることが出来る。
そうでなくとも人体に存在するベクトルを操作してしまえば一瞬にしてスクラップ同然にまで破壊することも出来る。

その二択なのだろう。
接近戦を挑んできたというのは。

でも。

「うぁあぁあぁぁぁああああ!!」

一方通行にとっても、彼の右手は毒手であり、苦手だった。
500 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/24(日) 01:08:56.39 ID:0zR1KkKE0

「ごっ……あ…………!?」

当麻くんが一方通行を迎え撃つために振りぬいた右手はカウンターとなり、相手の顔面を捉えその勢いのまま一方通行は後ろへ飛ぶ。
鼻を押さえながら状況を整理しようとしているのだろう。一方通行はフラフラと左右に揺れながらも何かを思考しているように見えた。

「おらぁあ!!」

だが、当麻くんがそれを許さない。
一発、もう一発と一方通行の顔面に拳を振り下ろしていく。

「勝負、ありだな」

その様子を眺めながら哀川さんは呟き、ぼくが理由を尋ねる前に答えてくれた。

「一方通行はあのまま遠距離から攻撃を続けてりゃ万に一つも上条に勝ち目は無かったけどよ、プライドか、慢心か接近したのが悪かったな。
 それに軽いパニックになってるから現状から抜け出せねえ。思い切り後方に飛ぶか、とにかく距離を開ければいいってのにそれにすら気が付かない」

「それだけじゃ、理由にはならないでしょうよ」

「なるんだよ。あたしの勘がそう言ってんだ」

思わず納得しそうになるが首を振って意識を保つ。
危ない危ない。根拠の無い言葉だけれどなぜか哀川さんが言うと説得力があるんだよな。

「くかきけこかかきくけききこくけきこきかかかーーーーーー!!」

しかし、そんな嗤いが聞こえると優勢に攻め続けていた当麻くんの身体が浮き上がり、木の葉のように上昇して鉄骨に背中を打ち付けて落下した。
ベクトル操作で突風を巻き起こしたのか――違う。この場にある風が全て一方通行を中心に集まりだしていた、その余波で当麻くんは吹き飛んだ。

「あれ、は……?」

始めは竜巻を形成したのかと思った。でも違う。
あれは、あんな青白く発光した竜巻など有り得るはずも無い。
501 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/24(日) 01:09:23.91 ID:0zR1KkKE0

「大気の流れを掌握……圧縮、圧縮ゥ――」

高電離気体(プラズマ)、だろうか。
詳しい原理などは解らないが、彼の能力上不可能ではない。でも、だからってこんな。
まだ形成段階だろうが、あれが放たれれば無事に生き残れるはずも無い。

「当麻く――」

哀川さんが動かない以上、あのプラズマをどうにかできるのは当麻くんだけだ。
そう思い彼に呼びかけるが落下の衝撃で気を失っていて、動けそうにも無かった。

「……はあ。無理か、無茶だ、無駄だった」

今度こそ、詰みだ。
もう役者は出尽くした。
残ったのは悪役と、動かない最強と、観客だけ。
結末は決まっただろう。

「――まだ、諦めてない奴がいるぞ」

そんな哀川さんの声が聴こえ、ぼくは目の前の異変に気が付く。
プラズマが、形成されつつあったプラズマが揺らぎ、少しずつ散っていることに。

「アァ!?」

同じように一方通行の顔も曇る。
演算ミスではない。プラズマの作成を止めたわけではない。何者かに邪魔をされたからこその表情だった。
502 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/24(日) 01:13:15.06 ID:0zR1KkKE0

「……残念や、けど」

擦れる声が、消えかかる息が。

「折角、哀川さんが来てくれたんや……」

大気を掌握し、空気を圧縮して生み出すプラズマを消滅させるにはどうすればいいのか。
答えは簡単だ。

自然風ではない風を、介入させればいい。

「一回くらいは、恩、返さな……アカンよな」

そんなことが出来るのは、この場でたった一人しか居ない。

「……あたしのことは名前で呼ぶな。名前で呼ぶのは――敵だけだ。愚弟子」

「そりゃあ……すんませんなぁ……師匠」

人類最強の請負人の弟子。学園都市の第六位、青髪くんぐらいだろう。
503 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/24(日) 01:26:32.60 ID:0zR1KkKE0

「なめンなァァァアァアアアァアアアア!!」

直ぐに横槍を入れてきた犯人を見つけ出した一方通行はプラズマを形成するための演算を中断し、足元に散らばる鉄骨の破片を蹴り飛ばして青髪くんを狙う。
だがその間に割って入った哀川さんの蹴りによって全弾、叩き落されることになった。
青髪くんはその姿を見て細い目を更に細くして、口元を緩めてかざしていた手を落とす。

あの出血量で彼をここまで動かせたものは一体、なんだろうか。

「ハン! 死にぞこないが邪魔すンじゃねェよ!! 直ぐに作り直して――!?」

青髪くんと哀川さんを一瞥した後、両腕を高く挙げてもう一度演算を開始しようとした一方通行の言葉が詰る。
その視線の先には、忌みの対象である当麻くんが立ち上がっていた。

体中から出血している。恐らくは落下の影響で何本かの骨は折れているだろう。
意識も定まらず、足元もおぼつかない。

しかしそれでも、確実に一方通行へと歩み寄る。

「面白ェよ、オマエ……最っっ高に面白ェぞ!!」

咆哮。プラズマの形成を再開。
二人の距離は、プラズマを作り上げるのには十分な距離だった。

走ったところで絶対に間に合わない距離。だけど当麻くんの足は止まらない。
目の前の男を止めるまで、止まらない。

「いいか、いーたん。 物語に参加するなら、あれくらい強情になれよ。一度でいいから、本気を出せ」

そう言って、哀川さんは右腕を高く上げて指を――鳴らした。

「!?」

刹那、あれだけ離れていた二人の距離が一気に縮まった。
正確に言えば、一方通行の立つ位置が上条くんの目の前へと一瞬で移動した。

「言ったろ? 舞台装置の一種だって。ドライアイスは一回しか使えないんだぜ?」

座標移動。淡希ちゃん。
そうか、この為に。たった一度のこの為だけに彼女を囲っていたのか。
504 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/24(日) 01:34:55.87 ID:0zR1KkKE0

「チィィイイ!!」

敵を視認した一方通行はすぐさま打撃へと攻撃を移す。が、もう遅い。
当麻くんは右手で一方通行の左手首を掴む。

「クソったれェェエ!!」

一方通行は右手を振り払おうと暴れるが、当麻くんの手はビクともしない。
つまり、右手に触れられている間は能力が使用できないということだろうか。

「…………」

だが、それだけだ。
当麻くんは右手で一方通行を掴んだまま動かない。動けない。
意識がないのか、拳を握る力がないのか。
――それとも全く別の意図なのか。

「いーさん」

当麻くんは顔をこちらに向けて、言った。
笑っているような、泣いているような、怒っているような表情で。

「頼む」

不安な不安定な不安心な声で。
懇願するように、困憊するように、懇親の声で。

「――終わらせてくれ」

ぼくに舞台の幕を下ろすように、言った。

「――ああ」

ぼくはジェリコを構え
          照準を合わせ
                目を閉じて
                     引き金を引いた。
505 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/24(日) 01:35:21.44 ID:0zR1KkKE0






その時ぼくは、笑ったのかもしれない。







506 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/24(日) 01:37:59.30 ID:0zR1KkKE0
とりあえず終了です。
かなり雑な伏線回収。

青ピを風使いにしたのはプラズマの為。
あわきんを出したのはまさに舞台装置の為。

え?哀川さんが可笑しいって?はははまさかそんな。
キャラ崩壊は今さらでしょうよorz
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/24(日) 03:07:34.24 ID:EzM6MpwX0
乙! 待ってた!
何故か何となく読みながら寒気しつつ、続きも期待wktk



ところで、一方通行の反射は空間移動系の能力にも適応するんじゃなかったっけ?
508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/24(日) 04:39:42.18 ID:1mWLurF+0
矛盾はしょうがない
SS書きにそこまで処理できるはずがないだろうしww
509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/24(日) 05:42:21.39 ID:5EaONzXV0
天井ウイルスから打ち止め助けるとき、演算に必死で反射きれてたろ?
圧縮圧縮ゥ☆のときも結構演算に集中力割くみたいだし、反射きれてても不思議じゃなくね
俺はそれより青髪と潤さんの会話が気になる。
名前で呼んじゃダメなのかよ、そこは名字じゃないのかよww
510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/24(日) 06:28:51.31 ID:JcVcaKYmo
本編の条件での演算に集中力割いてたのが本当なら、本場の風使いとの押し合い圧し合いともなれば反射に演算力回してる暇は無いわな
511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/07/24(日) 08:31:45.95 ID:V7H2+VOAO
乙!相変わらず伏線回収が上手いな

>>509
青髪が零崎化した時に「もう潤さんと仲直りできん」みたいなこと言ってたから、敵として名字で呼んだんだろ
だけど哀川さんは「名前で呼べ」と
正直今回一番の言い回しだわ
512 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/24(日) 09:18:40.78 ID:JcVcaKYmo
問題はその言い回しに誤字っぽいところがある辺りだ
513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/07/24(日) 09:34:45.53 ID:V7H2+VOAO
>>512
うお!誤字に気が付いてなかったwWwW
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/24(日) 12:24:24.22 ID:lod4pp0DO
確か狐さんには名前で呼ぶなとか言ってたっけ
515 : ◆d.DwwZfFCo :2011/07/24(日) 19:59:09.61 ID:XVMHqO/h0
哀川さんの青ピへのセリフは完全に誤字です。

正しくは

「……あたしのことは名字で呼ぶな。名字で呼ぶのは――敵だけだ。愚弟子」

です。

あと一方さんの座標移動のことは圧縮に演算を割いていたって理由です。


では、できれば日付が変わる頃に投下する予定です。
516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/24(日) 20:02:21.12 ID:La72vZnuo
私待つわ
517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2011/07/24(日) 20:14:06.17 ID:aEZ436b+o
いつまでも待つわ
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/07/24(日) 21:13:41.21 ID:/7Z9oNpE0
裸で待つわ
519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/24(日) 22:16:02.29 ID:nXI4MMbDO
左手はそえるだけ
520 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/25(月) 01:28:39.58 ID:uMgi0yLB0




無題





521 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/25(月) 01:29:09.83 ID:uMgi0yLB0

0

傑作だな。
戯言だよ。
幻想だろ。

522 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/25(月) 01:30:04.33 ID:uMgi0yLB0

1

どしゃり、と一方通行はその場に倒れた。
ぼくが放った一発の銃弾は、寸分狂わず彼の眉間へと着弾し真っ赤な血を舞わせた。

同時に当麻くんも倒れ、ついでにぼくも倒れた。

「……意外だな、いーたん」

「ええ、まさか偶然彼の眉間に弾が当たるなんて」

「違えよ、一方通行の身体に当てたことが意外だっつってんだ。いつものお前なら適当な理由並べて当てるどころか引き金を引かないだろ」

「潤さんが言ったんでしょう、本気を出せって。それに当麻くんからも頼まれちゃいましたし」

――頼む。終わらせてくれ。
そんな願いを、聞かされてしまった。

「本当、自分でも意外だらけでくたびれました。柄でもない、らしくもない。ああ、疲れた」

嘘偽りなく、疲れた。
徒労感しかない。

「いーさん……」

地面に仰向けで寝転がっていると、いつの間にやら立ち上っていた当麻くんがぼくを覗き込むようにして横にいた。
彼も同じようにひどく疲れた表情を浮かべている。

「終った……のか」

「ああ、終ったよ。ぼくが一方通行を殺して、お終いだ」
523 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/25(月) 01:30:54.95 ID:uMgi0yLB0

殺して、という単語に眉をしかめる当麻くん。きっと殺すつもりはなかったのだろう。
直接手を下してはいないとはいえ、彼も同罪のようなものだ。
だから、彼の気持ちもよく解る。

だって、ぼくも――

「おら、BLな空気出してんじゃねえぞ。とっとと退散だ、退散。お客様がお見えだぞ」

ぼくの腹を踏みつけて、その後当麻くんの背中に軽く蹴りを入れながら言う哀川さんの脇には青髪くんが抱えられていた。
……ん?というか客?

「…………」

ぼくは上体を起こして周囲を確認する。
倒れている一方通行、沈利ちゃん、帝督くん――そして。

「検体番号一〇〇九〇号までの個体は破損した重機及びコンテナの除去、それ以降の個体は予定通り回収を「了解しました、とミサカは
「確認作業を続行、生体反「各種作業器具の設置「こちらの破損物は「首と胴体はセットで「第四位が意識を「電撃で気絶とミサカは「

同じ顔、同じ髪色、同じ服装、同じ声。
操車場を埋めつくさんばかりの妹達(シスターズ)が群れをなして集まっていた。

「ミサ「ミサカは「ミ「カは「とミ「サカ「ミサカは」

リレーして、言葉を紡ぐ。
まるで一つの生き物のように、群衆が蠢く。
524 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/25(月) 01:31:25.04 ID:uMgi0yLB0

「上条当麻、哀川潤、そして――」

「戯言遣い、でいいよ」

その中の一人がぼく達へ歩み寄り軽く頭を下げた。

「――戯言遣い。皆様はこの場から即刻離れて下さい、とミサカは数十分後に訪れるであろう警備員の到着を危惧し通達します」

「っは!それで嬢ちゃん達は後始末ってか」

哀川さんは命令されたことに腹を立てたのか、若干不機嫌な様子で言う。

「その通りです、とミサカは時間が余り無いことを端末の時計を確認することで暗に伝えます」

「……まてよ」

「どうかしましたか?とミサカは制止の言葉を投げかけてきた上条当麻へ答えます」

「妹達は実験以外では利用されないはずだろ? お前らはこの後始末が終わったらどうなるんだ」

それは当麻くんの目的でもあった。
一方通行を打倒した今、彼の懸念すべきは妹達のその後で、それは自分が撤退することを拒む理由だ。

「……確定事項ではありませんが、実験が破たんした現在、妹達の全個体は『再利用の余地あり』と判断されとりあえず延命調整を受けて
 生き続けることが決まっています、とミサカは答えます」
525 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/25(月) 01:32:04.48 ID:uMgi0yLB0

「そう、か」

再利用の余地、という言葉が引っかかったのかどこか納得のいかない様子の当麻くんだったが当面、彼女たちの命が保障されたことによって
妥協したように項垂れる。

「当麻くん」

「わーったよ、それじゃおさらばしようぜ」

「少し歩いた先にあたしのコブラがあるから」

ぼく達は同じ顔が作業する現場を横目に見ながら哀川さんの車へと向かう。
途中、倒れていた彼らに目をやるが既にブルーシートで包まれ、担架に乗せられていたため誰が誰なのかは分からなかった。

「んじゃ、とりあえず病院だな」

「よろしくお願いします」

哀川さんが何時もより淡々と(どこか事務的な口調だ。恐ろしく違和感がある)言葉を発し、コブラのエンジンを作動させる。
最早お馴染となったエンジンの振動に揺られながら、ぼくは助手席のシートに深く身を委ねた。

どうも、すっきりとしない終り方だ。
哀川さんは何か思うところがあるのだろうが、なんというかぼくは何かを忘れているような気がする。
何時もすっきりと物事を終わらすことのできないぼくは、いつも何かを忘れているので気のせいかもしれないが。

「……え?」

操車場から発進したコブラの車窓から、一人だけ逸れた様に佇むミサカちゃんを発見した。
そして、唐突に思い出す。
一方通行が倒れたあの時。いや、それよりもっと前からぼくと一緒にいたミサカちゃんの姿が消えていたことを。
あの妹達に紛れていた、という線は考えにくい。あれだけ傷だらけで、軍用ゴーグルも取れてしまっていた彼女を見失うなどありえない。

そして、あれだけ歪な笑みを浮かべる妹達など、見失うはずがない。

作業が進む操車場を少し離れて眺めるミサカちゃんは、不気味に笑っていて――
526 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/25(月) 01:33:11.96 ID:uMgi0yLB0







――風に揺れるスカートから、蛙のキャラクターがプリントされた短パンを履いていた。







527 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/25(月) 01:34:07.21 ID:uMgi0yLB0
終り。
次回からはエピローグ――いや、ブロローグか。

戯言だけどね。
528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/25(月) 01:35:29.68 ID:s9+RLLLco
う、うおお……乙
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/07/25(月) 01:45:23.80 ID:2QQ2EujAO
乙……

読み返してくる
530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/25(月) 01:52:02.23 ID:qdh6GGW70
つ、つまりどういうことなんだってばよ……?
531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/07/25(月) 01:53:25.45 ID:fwR29XFAO
くそっ、何故かカエルプリント短パンでシリアスブレイクしてしまった…

乙です
532 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/07/25(月) 01:59:04.34 ID:GBnAaiyAO
この>>1はどこまで伏線を張れば気が済むんだっ…!

読み返して来る。乙
533 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/25(月) 06:50:25.17 ID:j655/SoT0
つまりあれか!?ミサカさんまさか……!?
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/25(月) 07:13:38.25 ID:xe0H4PNI0


てことは、あの時のミサカはミサカで、あのミサカはミサカだったて事か?!
535 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方) [sage]:2011/07/25(月) 08:42:22.93 ID:BgtaRz8AO
え?


え?



536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/07/25(月) 09:44:55.27 ID:IvhfJvbAO
誰か真剣に解説おねがい



おねがい
537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/07/25(月) 10:22:36.53 ID:GBnAaiyAO
読み返した

公園で逢ったミサカ→10031号
次に逢ったミサカ→美琴?
担がれてた死体→10031号
いーちゃんが何かしたミサカ→10032号
実験に来たミサカ→美琴

こう考えれば自然だった
対一方さんのミサカは明らかにオーバースペックだったし
前スレのいーちゃんと美琴の初邂逅で短パンを強調したのがこの為の伏線だったのかな?
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/07/25(月) 14:24:33.09 ID:fbzsU2Ir0
>>537
それを考えると、ミサカ10031を殺したのは誰かという所に行き着くな
539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage saga]:2011/07/25(月) 15:54:16.56 ID:AZJE+HUT0
追いついた
凄い伏線だったな。やけに強調するなとは思ってたが、日常の戯言だと捉えてた
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/07/25(月) 18:44:56.18 ID:2QQ2EujAO
青ピの違和感とかか
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/07/25(月) 18:55:08.79 ID:GBnAaiyAO
>>538
美琴が殺したんじゃね?入れ替わるならさ
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/25(月) 22:48:32.75 ID:5qCo3PQMo
次ので分かるんだからネタバレになるような考察は辞めようぜ
>>1みんな待ってるから早く頼む
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/07/25(月) 23:03:33.55 ID:fR1NxUIAO
いーちゃんが一方通行を殺したんだとしたら違和感が残る
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/27(水) 01:26:40.35 ID:L5AvF6hK0
青髪の言ってた違和感ってこれかい
545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/27(水) 01:29:01.46 ID:L5AvF6hK0
青髪の言ってた違和感ってこれかい
546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/27(水) 09:27:17.81 ID:7p1AGCrDO
>>545
あげんな粕
547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/27(水) 12:33:44.84 ID:iwPlpkKco
連投でageとか救いようがねぇな
548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/28(木) 14:08:51.69 ID:actfd2P20
!!!
549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/28(木) 14:46:24.18 ID:actfd2P20
スン↓マセーーーン↑!!!
550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/28(木) 14:47:05.52 ID:actfd2P20
スン↓マセーーーン↑!!!
551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/07/28(木) 19:16:26.08 ID:hO0XJZXAO
もういいからなにもすんな
552 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/07/28(木) 20:04:31.36 ID:FA8IRbFgo
なんというかアレだな、夏だ
553 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/28(木) 23:32:42.74 ID:rokMSSx20
では最終回を投下します。
554 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/28(木) 23:33:31.37 ID:rokMSSx20







プロローグ







555 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/28(木) 23:36:08.78 ID:rokMSSx20

0




556 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/28(木) 23:38:36.35 ID:rokMSSx20
1

エピローグといえばいいのか、プロローグといえばいいのか正直なところ判断がつかないがとりあえず、語っておくことにしよう。
念の為話しておくが、ぼくが今居るのは学園都市ではない。ではどこなのか、と訊かれれば答える場所は一つしかない。

京都、骨董アパート。
つまり、帰ってきたのだ。

まあ帰ってきた、というよりは戻って来れたと表すのが適切なのかも知れないが、その辺りの微妙な心理描写は実際にあの街から戻ってこなければ
理解できないだろうと思い、割愛させてもらう。日本語は難しいし、人の心だって難しい。適切な表現などありはしないのだから。
と戯言めいた独白が出来るのも、住み慣れた居場所だからだろう。少なくとも学園都市に居たときよりはぼくの心情は穏やかである。

アパートの面々に学園都市みやげ(キワモノのジュース類)を渡し怪訝な表情を浮かべられたのも既に一週間も前になる。
……崩子ちゃんだけはそうでもなかったかな。
とにかく、ぼくが学園都市での仕事を終えてから一週間が経ったということは、あの実験の日から一週間経ったということで、
それはあの後直ぐにぼくはあの都市を去ったということだ。

別れの挨拶などなく、置手紙も無しに。

なのでその後の事はわからない。学園都市から出るに当たって携帯電話を代えメモリも消したため内に居る人間から連絡が来ることもない。
そもそもぼくは携帯電話のメモリ機能など使う人間ではなかったはずだ。あれよあれよと流される内に電話帳の登録人数が増え、そして登録した人間は死んでいった。
別に何も思わない、わけではない。

少なくとも三人に関しては、少しばかり気にはしている。

「うーい、邪魔するぜー」
557 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/28(木) 23:39:58.51 ID:rokMSSx20

ぼくが文字通り何もない自室で思い耽っていると(何も考えていなかった、が正しい)そんな声と共に玄関扉が勢い良く開かれた。
その声の主は確認するまでもなく哀川さんだったけれど、そろそろ登場するんじゃないかなと思ってもいたので驚かなかった。
むしろいつもよりは遅い登場だと言えよう。
この人が現れたということは思い返さなくてはならないし、思い出さなくてはならないし、重い話をしなければいけない。

青髪くんの言葉を借りるのならば、解決編だ。

「解決というよりかは、解消だな」

「人の心を読まないでくださいよ、どこの孤島に居る占い師ですか」

「アイツは一時期だけ学園都市のレベル5だったよ」

「マジで!?」

思わず叫ぶ。なんというか余計な裏設定だ。
そりゃあぼくの周りで超能力者といえば彼女が真っ先に出てくるだろうけどさ。
つーか哀川さん。声帯模写は止めて欲しい。

哀川さんはそれ以上は何も言わずにぼくの正面に座り、胡坐をかいた。

「思ったより普通だよな、いーたん」

「いきなり現れてなんですか、それ」

ぼくは普通の大学生だ。高校生でも、超能力者でもない。

「いや、一方通行を撃ったことについて何か思うところがあったんじゃねーかって思ってただけだよ。思えばお前が直接手を下すなんて見たことが無かったしな」

「あの場合は仕様がないでしょう。っていうかあの時も言ったでしょ?」

「あ、悪い。実はあたし、プラズマが消えた瞬間に入れ替わってたんだよ」

「…………」

はい?
558 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/28(木) 23:41:16.88 ID:rokMSSx20

「いやーあのままあそこに居たら思わず手が出ちまってたからなあ……予め、あわきんと一緒に替えを用意しておいて座標移動でヒョイッと」

「別件で用もあったし」と右手の人差し指以外を握りこんで釣竿を挙げる仕草をする哀川さん。
全然納得がいかない。つーかしてたまるか。

「あ?え、は?じゃ、じゃああの場所に居たのは誰だったんですか?」

あの姿は見紛うことなく哀川さんだった。

「アイツは常盤台の寮監だよ。姿に関して言えば能力を使って認識を変えてたんだ。学園都市トップの精神感応能力者に依頼したからなー、変装なんか目じゃないぜ?」

なにせ脳に直接作用する能力だからな、とケラケラ笑う哀川さんだったがぼくは全然笑えない。
そうか、通りで喋り方が事務的だと思ったよ。ああー寮監ねぇ……。

「どうしてあの人が代わりになったのかは後で訊くとして――結局、どうなったんですか?」

あの後。あの事件が終わった後の学園都市について。
――関わった人間達について。

「珍しく食いつくじゃねえか、いいね。……んじゃまずは超能力者勢から話すとするか」

哀川さんは口元を吊り上げ、前髪をかき上げ、シニカルな笑みを浮かべながら説明を開始する。

「まずは第四位、アイツはまあ無事だ。義眼にサイコガンみたいな右腕になっちまったけど生きてるし、相変わらず暗部に所属してる。
 馬鹿は死なきゃ治らないとは言うけど、アイツはしばらくはあのまんまだろ」

「ふうん」

別段興味は湧かなかったがとりあえず頷く。そうか、そんな姿になってまでも変わらないのか。
559 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/28(木) 23:42:16.63 ID:rokMSSx20

「で、第二位。一応生きてるよ、い・ち・お・う・な」

「首が落ちたってのに、一応でも生きてるってのは流石は学園都市というべきですかね」

植物人間か、それとも五体満足で意識があっても死んだほうがマシな状況にあるのか。

「脳みそを三分割にして、培養液入れられたビーカーに漬けられて、延命装置っつうのか? でっけえ冷蔵庫みたいなのに繋がれてたよ」

「……それを生きてるとは言えないでしょう」

「生きてるんだよ、少なくとも脳は活動してる。能力だけを吐き出す機械みたいなもんだがな」

「そうですか……彼は一体何が目的だったんですかね」

何を求めた代償に、そんな姿になってしまったのだろうか。

「首謀者の割りに、一番行動理由が不透明な奴だったよな。ま、数ある学園都市の『闇』とやらに触れちまったんだろうよ」

「『闇』、ですか」

哀川さんは「おうよ」と言い胡坐の姿勢のまま仰向けに倒れ両腕で脛を掴み足を支える。

「絶対能力進化実験を引き合いに出すまでも無く、非人道的な実験は普通に行われてたんだぜ? それは高位の能力者であればあるほど深く関わっていく」

薬物を投与され、脳を弄繰り回され、対人戦でのデータ採集。
結果が出なかればゴミのように捨てられ、結果が出ればさらに実験が進められる。
それを体験し、他人が堕ちていく様をも見てしまう。否応無しに。否定も無しに。

「だから能力者の頂点であるレベル5なんつうのは、どっかしらぶっ壊れてるんだよ。全員な」

「全員……ですか」

「ああ、あの馬鹿野郎と同じでな」
560 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/28(木) 23:43:00.77 ID:rokMSSx20

《馬鹿野郎》とはもしかしなくても青髪くんのことだろう。

「あの馬鹿、治療が終わったと同時に消えやがって!なにが『合わす顔がありまへん』だ! ぜってえ見つけ出してやっからな!!」

「……」

彼に関しては心配はいらないみたいだ。
とにかく逃げろ、捕まったらとんでもないことになるぞ、と通り魔事件の時と同じような激励を心の中で呟き、同時に合唱をした。
南無阿弥陀仏。

「まま、落ち着いて……縁があれば会えるでしょうよ」

「会えるさ、縁が合っちまってるんだからよ」

「いまいち要領が掴めない言い回しですね……まあ、いいや。それで、一方通行は――」

「生きてるよ」

死んだんですよね、と言い切る前に、哀川さんの言葉が被さった。
生きている?それは帝督くんと同じような状況なのだろうか。

「いや、生きているよ。言語機能と、歩行に障害が残ってはいるが普通に生きてる」

「そん、な……」

一方通行が生きている。

「いーたんが撃った弾が着弾した瞬間、上条当麻の右手が離れただろ? その時に一方通行は能力を使って弾を摘出、止血作業をしたんだよ」

恐らくは無意識の内にな、と勢い良く身体を起こしながら哀川さんは言う。
ひどく詰らなさそうに、続ける。
561 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/28(木) 23:43:47.61 ID:rokMSSx20

「それで妹達が回収、冥土帰しが治療。どうしてもさっきいった障害は残っちまうが一命は取り留めたんだとよ、ああ、心配しなくていいぞ。実験は中止だからな」

「……でも、いずれかは似たような実験が行われるんじゃ」

「だから心配すんなっつってんだろ? そもそも一方通行は満足に能力を使えねえよ。能力者がどこで演算すんのかを考えろ」

「どこでって……あ」

それは脳だ。つまり言語機能に障害ということは脳に障害を抱えてしまったということになる。
高度な演算を要する一方通行に、その障害は文字通り致命傷だったのか。

「でも、多少は使えるんでしょう? 制限はかかるかもしれないけれど」

「制限はかかる――能力の応用にじゃなくて時間制限だけどな。十分間しか能力を使うことが出来ねえよ、アイツは」

「どういうことですか?」

脳に障害を負ってかかる制限が能力の幅ではなく時間というのはいまいちしっくりと来ない。
逆に言えば十分間だけだが一方通行は十全に能力を使えるということになる。

「ミサカネットワーク」と哀川さんは短く言い捨てる。

「妹達が形成している同一脳波を利用したネットワーク。これは単純に意思疎通がワイヤレスで行えるだけじゃなくて巨大な演算装置としても用いることができるんだよ。
 つまり生き残った妹達が形成するネットワークを代理演算装置として再利用して一方通行は能力を使うことが出来る――ま、受信する機械のバッテリーが小型だから十分
 間しかもたないんだけどな」

「そんなことが」

可能なのだろうか。いや、可能だとしても妹達がそれを許容するのか。
自分を一万人以上殺した張本人を助けるような真似を、彼女達は許せるのか。

「可能に決まってるだろ。こんなことを拒否するような奴らがあんな実験に参加するかっての。それに上位個体――打ち止め(ラストオーダー)が許可しちまえばそこに意思なんて関係ねえんだしよ」

「打ち止め?」
562 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/28(木) 23:45:02.69 ID:rokMSSx20

また聞き覚えの無い単語が飛び出す。
自分から聞きたいと願った手前、断ることが出来ないが、既にぼくの要領はパンク寸前だった。

「二〇〇〇一人目の妹達だよ。実験に参加する予定の無かった全妹達の司令塔さ。 もっとも、打ち止めも一方通行を許している訳じゃないけどな」

「自分達が生き残る為に、仕方が無く……ですか」

再利用先を拒否してしまえば彼女達が向かう先は『廃棄』。
その為の共存関係。共依存ならぬ狂依存。歪で、狂いながらもお互いを支える彼等。
命を預けるのではなく、お互いに握っているだけで、そこに信頼などは無い。

それはあたかも――

「……戯言だな」

「傑作だろ?」と哀川さんは零崎の声色を真似て、短く笑う。

「……じゃあ学園都市はもう壊滅状態ですね。七人しか居ないレベル5の内、四人が使い物にならないなんて」

「流石に気付いてるよな」

    、、、、、、、、、、、、、、、 、、、、、、、、、、、、
「ええ。あの場に居た超能力者四人全員が、今までと同じとは言えない」

一人は目と腕を捥がれ、一人は能力を吐き出すだけの装置となり、一人は満足に能力も使えない。
そして、もう一人は――

――あの場に居た第三位も。

「……あの場所に来たのは、美琴ちゃんだった」
563 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/28(木) 23:46:07.49 ID:rokMSSx20

青髪くんが実験開始直後に感じた違和感は、それだったんだろう。
妹達は素体である美琴ちゃんと能力面でかなり劣る。基本的にレベル2〜3程度の電撃使いで、そもそもそのスペック差を埋めるために二万体も製造したのだ。
だが、一方通行との戦いでは明らかにレベル以上の力を使い応戦していた。
磁力を使ってコンテナを足場にしたり、反射された銃弾を誘導したり。
更に言えば軍用ゴーグルを使用していなかった。確かあのタイプのゴーグルは電磁波を視認するためのものだったと記憶している。
それを彼女は使わなかった。否、使う必要が無かった。

なぜなら、彼女こそが素体である超電磁砲だったから。

「つまり、ぼくが日中に出会ったミサカちゃんが美琴ちゃんで、彼女が担いでいた袋の中には一〇〇三一号ちゃんの死体が入っていたということ」

「でもそうすると問題が発生するよな。ミサカネットワークは言うまでもなく全個体を繋ぐもんだ。一人が死ねば直ぐにレスポンスはあるはずだぜ?」

哀川さんは全てを理解している上で、言う。

                                         、、、、、、、、、、、、、
「別に美琴ちゃんがミサカちゃんを殺したわけじゃないでしょうよ。あくまで彼女の目的は妹達の一人と入れ替わることなんですから」

仮説になるが一〇〇三一次実験は通常通り行われ、予定通り一〇〇三一号は死亡。その時にいち早く美琴ちゃんが死体を回収しぼくと出会う。
あの日の前日に美琴ちゃんとあの会話を交わしたぼくが、妹達と同じ格好をした美琴ちゃんを見ても見抜くことは出来ないだろう。
そして、まさか死んだのが一〇〇三一号だなんて判断は、下せなかった。
今にして思えば死体の入った袋を持ってああも移動しているというのが、不可解だ。
彼女はわざとぼくに見つかるように、ぼくを探していたのだろう。

「同じDNAだしな。それこそ変装なんか目じゃねえってか」

「疑いもしませんでしたよ。でも、そう考えてみれば確かに出会った時の彼女はどこかおかしかった気もします」

移動式のアイスクリーム屋を眺めて、何か思い耽っているようなあの表情はしっかりとした感情のある人間にしかできないはずだから。

「御坂美琴が始めて実験を知った日に出会った個体と一緒にアイスを食ったんだとよ。だからだろうな」

「だからですね。まあ理由なんて――彼女の思いなんてしったこっちゃないですが」
564 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/28(木) 23:48:15.54 ID:rokMSSx20

話を続けよう。

「妹達に紛れ込んだ理由は幾つか考えられますが、一方通行と直接戦う為、というのが無難ですね」

「……第三位として戦闘を行えば妹達の介入があるし、一方通行が拒否する可能性もあったからな。死ぬ寸前に『実は第三位でした』って言うつもりだったってか?」

「冷静に考えれば、意味のない策ですけどね」

結果的に帝督くんや青髪くんは何の策も無しに戦うことができたんだから。
一〇〇三一号を利用してまで、入れ替わる必要は無かった。

そこで一つ思い当たる。

「……だから寮監が来たわけか」

「そんなトコだな。ただアイツはあの場に御坂は居ないと思ってた」

つまり、実験を止めるという美琴ちゃんの意思を継いだ気で、遺志のつもりであの場に来たのか。
生きているとも知らず、その場に居るとも知らず。

「結局、御坂が一方通行を殺そうとすることを止めることが出来なかったんだけどな」

「……え? ちょ、ちょっと待ってください。一方通行を撃ったのはぼくで、美琴ちゃんは関係ないんじゃ」

 、 、 、 、 、
「目を閉じて」と哀川さんは鋭い眼光でぼくを見る。

 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、
「目を閉じた状態で撃った弾丸が、人間の額にああも綺麗に当たるわけがないだろう。幾ら照準を合わせていても、どれだけ銃の扱いが上手でも、な」

ぼくは思い出す。自らが考えた事を。
565 :慣れない事はしちゃ駄目だなorz ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/28(木) 23:49:14.32 ID:rokMSSx20

――一方通行との戦いでは明らかにレベル以上の力を使い応戦していた。磁力を使ってコンテナを足場にしたり、反射された銃弾を誘導したり。
反射された銃弾を誘導したり。

「――磁力」

「ご名答。電撃使いの最高位である超電磁砲が自ら操作すれば人間の眉間に当てることなんて、朝飯前だよな」

確かに、ぼくは一方通行の頭部に照準を合わせた訳ではなかった。
ぼくはあの時、当麻くんと同じで―― 一方通行を殺すつもりは無かった。

偶然、当たってしまったものだと、思っていた。

「いいかいーたん。お前は御坂美琴は自らが死ぬことで実験を止めるつもりだったっていう前提で話を進めているけどな、そんなつもりで説明してたけどな良く考えてみろよ」

矛盾がありすぎるだろ、と哀川さんは一呼吸おく。

「考えろ、思考しろ、不安要素を押し殺すな。御坂美琴は垣根帝督、青髪、いーたん、幻想殺しがあの場所に来ることを知っていて、あの状況になることを把握していたんだ。
 垣根帝督が言っていただろ、半分は暗部の仕事だ、と。それに絶対能力進化実験には幾つもの研究施設がある。レベル5の電撃使いは電子ネットワーク上でも無敵なんだよ。
 つまり、アイツは全ての情報を知っていた」

唐突に思い浮かぶ、最後に見た美琴ちゃんの歪な笑み。
人間とは思えないほど醜悪な――悪魔の笑み。

「そして自由に動けることも知っていた。いーたん、全ての前提を覆す事実を教えてやろうか?絶対能力進化実験は第一〇〇三〇次実験の時点で永久凍結される事が決まって
 いたんだよ。つまり、いーたんが常盤台の寮で御坂美琴と話したあの時点で、あの女のプランは動いていたんだ。第一位も、第二位も、第四位も、青髪も、いーたんも、
 幻想殺しも――」

哀川さんは、吐き捨てる。
566 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2011/07/28(木) 23:49:36.77 ID:iVC0GyP+0
問題はあそこまでやってもほぼ「本編通り」ってとこだ・・・電磁勢(ビリビリ含む)は跡形も無いが。
567 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/28(木) 23:49:53.64 ID:rokMSSx20







「御坂美琴の手の上だったって訳だ」






568 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/28(木) 23:51:06.15 ID:rokMSSx20

「……いや、潤さん。それを信じるのは無理がありますよ。だって絶対能力進化実験は学園都市の悲願で、だからこそ第一位を用いた実験で――」

学園都市そのものが母体となる実験が、まだ何もエラーが発生してない時点で凍結になることなどありえない。

「あの実験は、元々中止になる事が前提の実験だったんだ」

「――!」

「あわきんに手伝ってもらって直接学園都市の統括理事長と話したらあの野郎簡単に全てを話しやがった」

哀川さんは、統括理事長の声色を真似る。
男のような女のような子供のような大人のような老人のような、そんな声で。

「『絶対能力進化実験はミサカネットワークを形成する妹達を作成し、全世界へ撒くことが目的なのだよ。そして一方通行の代理演算をさせる為の、ね』」

「じゃあ、帝督くんや沈利ちゃんや一方通行が負傷するのも計画通りって事なんですか?」

「ああ。言い方が悪いかもしれねーが、計画なんてモンを台無しにしちまういーたんを主軸にして動けばどうにかなると思ったんだけどな」

しかし結果として統括理事長の思惑通りって訳か。

「なんだかやりきれませんね……結局、ぼくの思惑通りに動いたのは一つだけですか」

「一つだけでも上等だ。あたしの仕事をこなしたんだからよ」

胸張っていーぜ、と哀川さんはシニカルに笑う。
569 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/28(木) 23:51:57.23 ID:rokMSSx20

「……で、当麻くん達には話したんですか?」

これ以上実験に関した話をしても意味がないと思い、気に掛けていた二人について尋ねてみる。

「かなりボカしてだけどな。そもそもアイツにとって重要なのは妹達が生き残るかだけで、それ以外は割り切ってたよ。幸か不幸か御坂については記憶に無かったわけだし」

「ま、彼からしてみればハッピーエンドだったかもしれないですね」

「バッドだろ。あれだけの出来事に関わった時点でハッピーエンドになるわけがねえ」

「……それもそうですね。それじゃあ、当麻くんとインデックスちゃんは相変わらず学園都市で過ごしてるんですか」

不幸と、ほんのささやかな幸福に巻き込まれて。

「いや? あの二人は今ここにいるぜ?」

「…………はあ?」

「いやー今度の依頼が魔術関連でな? 盾として上条っち、ウィキペディア代わりにインデックスたんを連れて来たんだよ」

おいおいおいおい。なんて身勝手な。
しかも盾とウィキペディアって……。

「別に潤さん一人で十分でしょうよ……」

「あたしはその現場にいかねーから、アイツ等に任せるんだよ」

「自分で請け負った仕事は自分でやれよ!!」

「あたしにその常識は通用しねぇ」

「社会人失格だ!」

「アァ?うるせェなァ……」

「その二人の声もマスターしてるんですか……」

なんというか、締まらない終わりだ。
ぼくが頭を掻いていると哀川さんは座ったままの姿勢で跳躍し、空中で足を伸ばして立ち上がった。
普通に立てばいいのに、と思うけれど言わない。というかやっぱり言えない。

「んじゃ、いーたん」

哀川さんは玄関扉を開きながら、こちらを振り返らずに言った。
570 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/28(木) 23:52:23.73 ID:rokMSSx20








「また今度、なのですよー」







571 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/28(木) 23:53:14.58 ID:rokMSSx20
「…………敵わないな」

バタン、と扉が閉まり部屋の中に静寂が戻る。
ぼくはそのまま仰向けに倒れ、両腕を投げ出すように脱力する。

同時に「不幸だぁぁああああ」という少しばかり懐かしい絶叫がアパート全体を揺らす。
この五月蝿さだと明日あたりみいこさんの甚平の柄が『怒』になりそうだな、となんとなく思う。

数秒目を閉じて考えた後、哀川さんと違って普通に立ち上がりぼくは声がした部屋へと向かう。
先日までは姫ちゃんだけだった部屋。ぼくはノックをすることなくドアを開ける。

「あ、師匠じゃないですか」

まずは黄色いリボンを着けた小柄な姫ちゃんがぼくに気が付き、右手に綾取りの毛糸を絡めたまま手を振る。

「痛い痛い痛い! いーさん、助けてくれぇぇええええ!!」

その動きに連動するように、悶絶するのはツンツン頭の当麻くん。良く見ると姫ちゃんの右手に絡まる毛糸と同じ色の物が体中に走っている。

「久しぶりなんだよ!」

痛みに苦しむ当麻くんの頭部に噛み付きながら満面の笑みを浮かべながら、インデックスちゃんは言う。

やれやれ、どうしすればこんなに愉快な状態になるんだろうか。
これも右腕の効果なのだろうか。

「おや、突然どうしました?」

そして、部屋の一番奥から聞こえてくる声。
この間から姫ちゃんとルームシェアをすることになった新入りだ。
572 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/28(木) 23:54:01.61 ID:rokMSSx20

「久しぶりに当麻くんの声が聞こえたからね。それに哀川さんに会ってそこの二人がこれから死地に向かうと聞いたから餞別の言葉でも」

「うう、やっぱり危険なトコかよ……不幸だ」

「私がしっかりサポートするんだよ!」

姫ちゃん達にはなんのことかさっぱり伝わっていないのか「後で詳しく話すですよ、暇人無礼家」とよく分からない言い間違い(多分イマジンブレイカーと
言いたかったのだろう)を放ち、毛糸の拘束を解く。

「そういえばあなたにお礼を言ってませんでしたね」

姫ちゃんの同居人はそんなやり取りを横目で眺めながらぼくの前に立ち頭を下げる。

「きっとあのまま居たら死んでいたでしょうし、解放して頂き有り難うございました――」

言いながら、彼女は顔を上げる。
栗色の髪を揺らしながら、もうあんな無骨なアクセサリーもない綺麗な髪を存分に揺らせながら、顔を上げる。
まだどことなく感情の篭っていない喋りと表情だが、個性豊かなアパートの面々と関わることで少しずつ人間らしくなっていくだろう。

ぼくとは違って、ちゃんとした人間になれるだろう。
573 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/28(木) 23:55:01.16 ID:rokMSSx20

結局、ぼくが学園都市で関わった事件は全てバッドエンドで幕を下ろした。
傍観者が舞台に立ったところで結末は変わらないし、それどころか悪化するということを再度確認することになっただけだ。

当麻くんとインデックスちゃんは記憶を無くし。
仲良し四人組は死んでしまった。
超能力者達は、全てが狂い。
ぼくは何も変われなかった。

だけど、目の前の彼女はどうだろうか。

生き残ったことは幸せなことだろうか、それとも不幸なのだろうか。
ハッピーエンドかもしれないし、バッドエンドかもしれない。
でも、そんなことはぼくには決められない。

柄にもないけど、願わくばハッピーエンドだと思っていて欲しい――なんて戯言だよね。

ああ、違うか。これは戯言なんかよりもっと儚く、薄っぺらい言葉だ。
希望、夢、そんな触れることも叶わないような幻。
そんな幻を想う言葉だ。

「――とミサカは感謝の言葉を伝えます」
574 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/28(木) 23:55:40.09 ID:rokMSSx20








幻想だな。







575 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/28(木) 23:59:53.54 ID:rokMSSx20







《BAD DREAM HAPPY DREAM》
                 is very very HAPPY END ?







576 :1 ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/29(金) 00:05:18.24 ID:A1FajfYt0


……これにて終了。
長かった。球磨川よりも短いはずなのに長かった。
やっぱり改行入れないとキツイッす。

正直、このSSを読んで(前作の球磨川含め)「なんだよ!禁書勢かませかよ!」と思われた方も多いと思います。
言い訳ですが、一応禁書勢を倒すのは禁書勢、という形を心がけていました。
禁書は大好きです。西尾も大好きですが。

そのせいあってこのSSでは完全に戯言遣いの影が薄かったと思います。
広げた風呂敷を畳めなかった感も否めません。
一応できるだけ伏線は回収したつもりですが、なにか疑問に思ったことがあったら教えてください。

それでは皆様の感想も見たいので一週間後くらいにHTML処理します。


ここまで長くgdgdなSSでしたが、皆様のコメントのおかげで頑張って来れました。
本当に、有り難うございました。
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/29(金) 00:07:48.38 ID:Kqlvk84B0
おつー。結局いーちゃんが学園都市にいく理由になった哀川さんの依頼ってなんだったん?
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/29(金) 00:11:39.90 ID:WsAbIVSxo
乙乙!楽しかったよ!
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/29(金) 00:16:28.55 ID:JL1XGdRE0
完結お疲れさまでした
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/07/29(金) 00:19:52.06 ID:CdmvceAAO
乙!相変わらず伏線回収上手かったぜ!
そして美琴の下りは鳥肌たった
で上条さんとインさんが京都入りってことは御坂妹と共にヒトクイ再構成フラグですねわかります

次回作の予定があったら教えてくれ


>>577
妹達の回収じゃね?
前スレから読み返せば伏線たっぷりだったぜ
581 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/07/29(金) 00:29:46.84 ID:iAtrA+OAO
乙!
レベル5勢はほぼ原作通りの結末なのにこの救いのない感がたまらない
でも一番歪んじゃったのは美琴って気がするな…黒子達がいないしな
とにかく面白かった。最後にもう一回、乙でした
582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/07/29(金) 00:49:48.09 ID:pMaGl34B0
乙カレー
583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/29(金) 01:05:23.20 ID:+7H4Y2UZ0

584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/29(金) 01:15:19.41 ID:hA2OmnXv0
乙。おもしろく読ませてもらいました
アレイ☆が無為式の影響うけなかったのは地味にすごいな
狐さんみたく敵にせず、最後まで無関係でいたのがでかかったのか
御琴はこのままいくとワーストポジションになりそうだが、どっかのヒーローがそげぶしてくれることに期待する
585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/29(金) 02:19:49.35 ID:vwJ+MhpW0
お疲れ様でした。素晴らしかったです。
戯言独特の空気と文章をこれほど再現したssは他に見たことがありません。
このssは今まで読んだssの中でダントツ一位です。
原作の登場人物達の魅力を再確認しました。
本当にお疲れ様です。
586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/29(金) 02:27:41.95 ID:kQbivQgpo
乙乙!
587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/29(金) 02:42:48.49 ID:vwJ+MhpW0
学園都市トップの精神感応って第五位だったりする?
588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/07/29(金) 03:34:14.91 ID:RG4K/frAO

いーちゃんがいい感じにショボくて良かったぜ
楽しませてもらった
589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/07/29(金) 08:17:36.61 ID:QyVNiP6t0
おつかれさん
次回作期待してるよ
590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/07/29(金) 08:18:27.57 ID:QyVNiP6t0
おつかれさん
次回作期待してるよ
591 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/29(金) 15:25:05.13 ID:i17dG+wDO
完結乙!!
概ね原作通りだけど一方通行と妹達や打ち止めの関係は原作ほど友好的にはならなかったか。
まぁ原作も一方通行の善人化のための後付けくさかったからなぁ…
592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/07/30(土) 00:27:44.39 ID:lcOvAdJF0
面白かった。素晴らしい作品をありがとう。
593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/30(土) 00:32:12.41 ID:ktgvgSz8o
完結乙
今作も最初から最後まで楽しませて貰いました
禁書×西尾は難しいとは思いますが次回作期待してるので頑張って下さい
594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/30(土) 01:23:01.77 ID:5ek9vmak0
これは...物語が加速している!?
595 : ◆d.DwwZfFCo [saga]:2011/07/30(土) 13:28:29.86 ID:uiZiSdnAO
沢山のコメントありがとうございます。
これで次を書く気力も沸いて来ました。

……まあまだ何書くか決めかねてるんだけど。
佐天さん再構成か、阿良々木さんが学園都市に来るか、禁書男性陣がどうにかして童貞を捨てようとする話か……
迷ってます

実は平行してやってるスレもあるし


>>577
妹達の一人を回収することが依頼です。
解りづらかったですね

>>587
そうですね、しょくほーさんです。
ただ登場した意味はない。



本当は上条さんとインさんが戯言本編に介入してスレを続けようとしたんですが(青髪やあわきんをネコソギ編で投入とか、一方通行が十三階段入りとか)まとめきれるわけがねえ、
と断念しました。
だって御坂妹ぜってえ死ぬし。
姫ちゃんと共に死ぬし。



まあ長くなりましたがこんな感じで終わりです。

それでは次に十全なる機会がございましたら、またお会いしましょう、お友達。

戯言だけどな。
596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/30(土) 13:57:26.47 ID:k2EGEnWo0
前作と比べるとあっさり終わったな
禁書舞台はやたら簡単だけど戯言舞台はやっぱ難しいだろうな
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/07/30(土) 14:05:59.82 ID:PMnzxBCAO
>>595重ね重ね乙
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/07/30(土) 14:23:15.83 ID:x9JGnLmAO
平行kwwsk
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/30(土) 21:17:10.01 ID:TsJgTGW50
戯言遣いとか御坂とかその後が気になる
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/30(土) 21:25:53.86 ID:TsJgTGW50
阿×佐とかどうでしょう
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/31(日) 01:10:56.66 ID:VyVXmh8d0
平行してやってる奴って何?
是非読みにいきたい。
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/07/31(日) 03:01:41.96 ID:TQv3H2m50
白状するんだこの>>1野郎
603 : ◆d.DwwZfFCo [sage]:2011/07/31(日) 08:02:13.83 ID:/Cc+4iRAO
平行スレは

御坂「サナララ」

ってやつです

酉なし、かなり遅い更新
604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/07/31(日) 10:14:38.74 ID:Teq13NCAO
お疲れ様でした

えぇ!!
サナララ追いかけてますよ!すてきすぎます
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